衆議院

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第21号 平成16年5月21日(金曜日)

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平成十六年五月二十一日(金曜日)

    午後一時二十分開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 川内 博史君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      今津  寛君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      奥野 信亮君    加藤 紘一君

      上川 陽子君    城内  実君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      鈴木 恒夫君    田村 憲久君

      西村 明宏君    馳   浩君

      古川 禎久君    保坂  武君

      山際大志郎君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    小林千代美君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      鳩山由紀夫君    肥田美代子君

      牧野 聖修君    松本 大輔君

      笠  浩史君    富田 茂之君

      石井 郁子君    横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       河村 建夫君

   文部科学副大臣      稲葉 大和君

   文部科学副大臣      小野 晋也君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 白川 哲久君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       有本 建男君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省原子力安全監)            小田 公彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中島 正治君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長)            松浦祥次郎君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  山際大志郎君     保坂  武君

同日

 辞任         補欠選任

  保坂  武君     山際大志郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九〇号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 この際、小野文部科学副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。小野文部科学副大臣。

小野副大臣 昨日、文部科学副大臣を拝命をいたしました小野晋也でございます。

 河村大臣を支え、副大臣、政務官ともどもに日本の教育、スポーツ振興等に力を注いでまいりたいと思います。

 池坊委員長そして各委員の皆さんには、温かい御指導、御鞭撻を心からよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

池坊委員長 内閣提出、参議院送付、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長松浦祥次郎さんの出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として文部科学省大臣官房官房長白川哲久君、科学技術・学術政策局長有本建男君、研究振興局長石川明君、原子力安全監小田公彦君及び厚生労働省大臣官房審議官中島正治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 放射線障害防止法の改正案について質問させていただきますが、文部科学委員会になりましてから何か初めてではないかと思うぐらいの科学技術関係の改正案、法律案審議というふうな気がいたします。そういう意味では、しっかり質問させていただきます。

 まず最初に、今回の改正案の一つの大きな動機に、国際原子力機関、IAEA等が国際標準値、免除レベル、放射性核種の免除レベルの考え方を導入したので、それを国内法令にも取り入れる、そのための改正だ、こういうことでございます。ということは、今まで免除レベルがなかったことも意味するわけで、今までの私の理解では、やはり核種ごとに、そういう免除レベルという名前ではなかったかもしれませんけれども、ある一定のレベルが設定されていたのではないかなという気がするわけですけれども、今回の免除レベルの意味、そしてその導入の理由をまず最初にお伺いします。

有本政府参考人 お答えいたします。

 斉藤先生御質問の件でございますけれども、今回の法律改正は、国際原子力機関、それから世界保健機関、WHOでございます、それから国際労働機関、ILO、こういった国際機関が共同で科学的見地から提唱いたしました放射性同位元素の規制下限値、いわゆる国際標準値、今斉藤先生がおっしゃいました免除レベルと言っておりますけれども、これを我が国に導入するということで御提案をしているところでございます。

 現行の規制対象下限値、これは当然、数量、濃度あるわけでございますけれども、これは基本的には、昭和二十年代、三十年代、かなり古うございますけれども、この時期の各国の規制値などを踏まえまして、当時の科学的な知見あるいは使用状況、こういったものを踏まえて制定をされてございます。

 一方、今回のIAEAなどが定めました国際標準値、これは少し細かくなりますけれども、どういう方法で定めているかというところを述べさせていただきますと、まず、一定の線量基準、人間が被曝をするときの線量基準、これは年間十マイクロシーベルトを設定いたしてございますけれども、これを設定します。その上で、それぞれの、非常にたくさん、数百種類ございますけれども、放射性同位元素の気体でありますとか液体、固体、こういった状態、それから産業応用、あるいは教育研究、あるいは医学の利用の現場でのさまざまな被曝の経路というものを想定いたしまして、先ほどの一定の線量基準に達するおそれのある放射性同位元素の数量あるいは濃度をそれぞれ細かく算出をいたすわけでございます。その上で、最終的に最も厳しくなる値をとっておるということでございます。

 そういう意味で、今回の国際標準値というものは、現行のものに比べまして非常にきめ細かく、それから、より現代的な意味での科学的、合理的な根拠を有しておるということでございまして、今回の御提案に先んじまして、原子力安全委員会あるいは放射線審議会等の専門家の御議論も幅広くいただいておるわけでございます。

 さらに、海外におきましても、欧州、アジアの主要国、それから航空、海上のそれぞれの国際機関がございますけれども、こういったところで既に基準値を導入いたしておるわけでございまして、そういう意味で、私ども、我が国においても、そういった整合性あるいは科学的な合理性という観点から今回の導入を御提案しているところでございます。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 よく、すそ切り値という言葉を使います。もうこのレベル以下は放射性物質として扱わないというすそ切り値というのをよく使うんですが、そのすそ切り値と今回の免除レベルというのは、同じように聞こえるんですが、どう違うんでしょうか。

有本政府参考人 先生御質問の免除レベル、今回の国際標準値、それからクリアランスレベル、すそ切り値と申しています。この二つでございますけれども、御指摘のように、それぞれ異なる概念でございまして、国際的にも別のものということで議論をされておるわけでございます。

 今回法令に取り入れる国際標準値は、いわゆる規制を免除するためのレベルということでございまして、この値は、放射性物質を使用するに当たりまして、規制対象として放射線防護のための措置を講ずる必要があるかないかということを区分するレベルということでございます。

 一方、クリアランスレベル、すそ切り値というものは、規制対象として放射線防護のための措置を今までは講じてきておりましたものを、廃棄などの機会にこの防護措置というものをやめてよいかどうかというものを区分するレベルでございます。

 言ってみますると、免除レベル、今回の国際標準値というものは規制の入り口と言うことができると思いますし、それからクリアランスレベル、すそ切り値というものは出口と言えるのではないか、出口の基準ということではないかと思います。

 なお、クリアランスレベル、いわゆるすそ切り値というものの扱いにつきましては、現在、原子力安全委員会それから国際原子力機関、こういうところで検討が行われておりまして、文部科学省といたしましても、これらの検討状況を踏まえて今後検討していくことになろうかと思います。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 免除レベルとすそ切り値の違いはわかりました。免除レベルは規制の入り口の話、すそ切り値は出口の話、これはよくわかりました。

 もう一度最初の質問に戻るんですが、そうしますと、こういう理解でよろしいんでしょうか。これまでも一応下限値というのは設定されていたわけですが、一応全部が、その下限値以下のものも一応規制の対象だった、しかし、今回は免除レベルを設定して、免除レベル以下についてはもう規制の対象にしない、こういう理解でよろしいんですか。

有本政府参考人 今までの二十年代、三十年代の経験を基準にしまして制定しておるものも、一応設定をいたしまして、それ以下は対象外ということでございますので、考え方としては同じということで、より今回の方が精密に、現代の知識あるいは経験を踏まえて精密にやっているということで、考え方としては同じだと思っております。

斉藤(鉄)委員 よくわかりました。

 それでは、今回の改正によって具体的にどう安全性が向上するのか、わかりやすく説明していただきたいと思います。

河村国務大臣 放射線の利用ということになりますと、安全確保、これがまず第一、これが大前提になっておるわけでありますから、今回の改正においても、この点に留意をして改正をお願いするわけでございます。

 今、日本には五千弱の放射線障害防止対象事業所がございます。近年、許可を受けていない放射性同位元素の発見、あるいは放射線量の管理の不備、こういうもので、安全管理面に起因した事故の割合が高くなっておりまして、この五年間で、二十三件の事故のうち十八件が安全管理に起因いたしております。八割でございますね。

 そのことを踏まえて、今回の放射線障害防止法の改正におきましては、第一点は、安全管理に関する記録あるいは記帳の定期確認制度を創設する、これができていなかったということであります。第二点は、放射線取扱主任者に事故の事例に関する科目を含む定期的な講習を義務づける、こうした措置を講ずることにしたわけでございます。

 従来からの施策に加えてこうした新しい施策を講じることによって、事業者の放射線利用における安全性の一層の向上を今回のこの改正と相まって図ってまいりたい、このように考えております。

斉藤(鉄)委員 今回の改正によって、例えば規制の対象になる機器も大きくふえると聞いております。例えば煙感知器、これはいろんなところに設置されているわけですけれども、これも一応対象になるというふうに聞いております。

 そういたしますと、かなり広範な事業者が、これまではある意味では対象でなかった事業所が対象になってくるわけで、このことの周知徹底というのは大変重要なことだと思いますけれども、この点についてお伺いします。

有本政府参考人 斉藤先生御指摘のとおりでございます。

 この法案を提出する前の準備段階におきましても、原子力安全委員会あるいは放射線審議会等の場の御専門の先生方の検討、こういったものを踏まえまして、私どもの文部科学省の中の検討会、この検討会も、大学等の専門家のみならず、製造メーカーの方々あるいは消費者団体の方々、こういった多様な方々から成る検討会を構成いたしまして、公開の場でいろいろ議論を積み上げてきてまいっております。その上で、ある程度の意見が、方向性が出ますと、シンポジウムあるいは学会、講習会等での意見交換、説明というものを積み重ねてきております。

 そういう意味で、今までも、私どもの今の方向性というものは、業界あるいは学界の中でもかなり浸透しているのではないかというふうに考えてございますけれども、さらに、今後、法律を通していただきますと、先ほど来出ておりますように、数百種類の核種について非常に細かい基準を設定いたしますので、この政省令をつくる段階におきましても、放射線審議会、これは公開の場で御議論をいただき、さらにパブリックコメントを求めるという手続も踏もうと思っておりますし、それからまた、事前準備と同じように、広く、説明会、シンポジウム、こういったものを開きたいというふうに考えてございます。

 その上で、この法律の改正を受けまして影響を受けるであろういろんな事業がございますけれども、これについては、円滑な移行に伴います適切な経過措置というものも講じた上で運用していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 本改正案で、いわゆる埋設処分ということが初めて打ち出されました。現実には、しかし、この埋設処分場を選定するというのは大変な困難が予想されますけれども、この埋設処分ということについての今後の見通しをお伺いいたします。

稲葉副大臣 先生からの今の御質問でございますが、放射性同位元素、またさまざまな研究所から排出される廃棄物の処分につきましては、行き着くところ、我が国の原子力政策、そして研究開発を進めていくその過程において、必ず直面して解決していかなければならない重要な課題になっているわけであります。

 したがって、このために平成十四年に設置されましたRI・研究所等廃棄物の処分事業に関する懇談会、ここにおいてことしの三月に報告書を取りまとめられました。この報告書におきましては、特に廃棄物を処分する主体について報告書の中に盛り込まれ、また、さまざまな廃棄物を排出する機関が主体的に、また共同してその施設を設置するように望んでいるということと、特に、原研あるいは核燃料サイクル機構、これが統合されるわけでありますが、その統合する時期、平成十七年度を予定しておりますが、そのときまでに、この実施主体をどのようにするか、どこにするか、これを早急に結論づけてほしい、こういうふうに報告書に書かれております。

 いずれにしましても、処分廃棄物につきましては、高濃度、低濃度を含めまして、高レベル、低レベルを含めまして、その処分場、埋設する場所を選定することが大変大事なことでありまして、それには国民の皆さんの正しい理解、御協力が必要になってくるわけで、このキャンペーン、理解をしていただくような作業を国を挙げて、また機関を挙げて取り組んでもらいたい、このように文科省も要望しますし、また指導もしてまいりたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 放射線の平和利用、放射線利用は、いろいろな、工業、我々の生活面で広く使われております。この安全を期すということは原子力の平和利用を推進するという意味でも大変重要なことだと思いますので、これからもしっかり取り組んでいただきたいとも思います。

 質問を終わります。

池坊委員長 川内博史君。

川内委員 民主党の川内でございます。

 けさ新聞を見まして大変びっくりいたしました。私、尊敬をし、敬愛をしておりまして、先日の一般質疑の場では好きだということまで告白をさせていただいた原田副大臣が辞任をされたという記事を見まして、本当に残念な思いがいたしました。最近は九州国立博物館のことなども大変一生懸命お取り組みになられていらっしゃった副大臣でありまして、本当に返す返すも残念だなという思いを持つわけでございますが、大臣、原田副大臣の辞任という事態についてどのような御感想をお持ちになるか、一言コメントをいただければというふうに思います。

河村国務大臣 私も、一昨日になりますか、突然その話を聞きましてびっくりいたしました。向こうの同窓会の方にもきちっと載っているので、ちゃんと卒業したつもりというか、した思いでずっとおられたそうでありまして、よもやと思ったそうでありますが、そういうことになったので、文部科学行政を担当する者としてはざんきにたえないという思いで決断したということでございましたので、その思いや非常に重い、決断は重いものでございますから、私も尊重して、これから長い人生のことでありますし、大いにこれからの再起を期して頑張っていただかなきゃならぬ。これまでの文部科学副大臣としての御努力、功績に感謝をしながら、さらに一層お互いに手をとり合ってお互いに頑張っていこうと申し上げて、やむなし、こう決断に至ったところであります。

川内委員 我が党の議員でありました古賀潤一郎氏は、みずからのお金でというか私費で留学をし、また、卒業していないということが判明をした結果、離党をしたわけでございます。

 私、新聞を読みまして、これは、一般的なことで結構なんですが、教えていただきたいんですが、原田前副大臣の場合には、旧通産省の官僚だった七四年から七六年当時、公費で、すなわち国のお金で留学をしたというふうに記事に出ております。そして、人事院によると、原田氏は、国の長期在外研究員制度を利用して、公務として二年間のコースで留学したというふうに、これはあくまでも新聞の記事でございます。

 通産省と文部省、あるいは文部科学省との違いはあったとしても、同じように公費で長期在外研究員制度などを利用して留学をされるお役所の方というのは大変たくさんいらっしゃるんだというふうに理解をしておりますが、税金を使って留学をする場合、国として、あるいは役所として、その卒業を確認するのかどうか。留学はさせたけれども単位が足りなくて帰ってきた、そのまま帰ってきたとしても、別に追跡の調査もしないということなのか、あるいは、とにかく単位を取るまで頑張ってこいということなのか。その辺の一般的な制度について教えていただきたいというふうに思います。

白川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のように、原田前副大臣のホームページを拝見いたしますと、原田前副大臣は、一九七四年から七六年、すなわち昭和四十九年から五十一年まででございますが、選抜試験を経て、人事院の政府派遣留学生として渡米されまして、アメリカ・ボストンのタフツ大学フレッチャースクール法律外交大学院に在籍をされておったというふうに記載がございます。

 そこで、今お尋ねの、これは実は人事院の制度でございますので、その当時の、昭和五十二年五月でございますが、人事院のこの行政官長期在外研究員制度の実施要項におきましては、修士号の取得について特段の記載はございませんで、修士号の取得は義務づけられていなかったというふうに承知をしております。

川内委員 そうすると、済みません、ちょっとわかりやすく御説明をいただきたいんですが、国の制度としては、留学をして勉強してきなさいということでアメリカの大学院に留学はさせるけれども、そこを卒業することは義務づけていないということでございますか。

白川政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどお答えいたしましたように、今回の原田前副大臣のケースにつきましては、その当時の人事院の制度として修士号の取得については特段の義務づけがなかったということでございます。

 それから、それぞれの省庁、私ども、すべて熟知をしておるわけではございませんですけれども、例えば文部科学省の場合にも、もっと短期でございますけれども、海外留学と申しますか、海外における研修制度がございます。その場合にも、期間が短い、すなわち一年ということもございますので、例えば修士号といった学位を取得するということは特段義務づけていないところでございます。

川内委員 いや、私は、役所の方というのは優秀な方々ばかりですから、当然卒業も義務づけられているんだろうというふうに予想していたんですが、卒業が義務ではない、義務づけられてはいないという今の官房長の御答弁には、ちょっと意外な感じを持っております。

 せっかく国のお金を使って留学をさせるのであれば、多少時期はずれたとしても、しっかり卒業して修士号を取って帰ってきていただく方がその後の仕事にはいい影響を与えるのではないかなということを、御提言を申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 それでは、今回の法案の中身に質疑を移らせていただきたいというふうに思います。

 今回のこの法改正の目的というのは、第一に、国際標準値の導入に伴う規制の合理化ということで聞いておりますが、許可制を届け出制に改める、あるいは埋設できなかったものを埋設できるようにするとか、規制の緩和という印象が強いわけでありますが、これが安全基準の緩和とかあるいは安全性の低下ということにつながるのではないかということを、私どもは放射線ということに関しては素人でありますので、放射線物質のことについて基準を緩和するというと、何となく大丈夫だろうかと心配になってしまうわけでありますが、これは、大丈夫だということを、国民の皆さんに納得できるように、大臣、御説明、あるいはその理由というところをお述べいただきたいというふうに思います。

河村国務大臣 今回の法律改正は、IAEA、国際原子力機関や、WHO、世界保健機関、それから国際労働機関等の国際機関が科学的な見地から提唱いたしました放射性同位元素の規制下限値の国際標準を我が国も導入しようということになったわけで、それで、今回の放射性同位元素の規制の見直しをする、そのときに、放射性同位元素の利用の進展、あるいは安全規制に関する実績等も見て、安全規制をより合理化しよう、こういう観点で改正をするものであります。

 まず第一点には、国際標準値の導入に伴う規制対象となる放射性同位元素等の範囲の拡大がございましたので、それを受けて、数量それから濃度の小さい放射性同位元素を用いた機器に対する設計認証制度、あるいは販売業、賃貸業の規制の合理化を行うというものであります。第二点は、安全性の向上をさらに図らなきゃなりませんから、施設の定期検査に加えて、安全管理等の使用方法においての定期的な確認、あるいは放射線取扱主任者の定期講習等の義務づけを行う。さらに、三点として、この点にあわせて、放射性廃棄物の埋設による最終的な処分に関する規定を整備する等の改正が行われるわけでございます。

 これによって、我が国の放射線利用に対する安全規制が、国際的に見ても整合性がとれて、最新の科学的知見によって合理的なものになると考えておるわけでございます。

 これをもうちょっと具体的に言いますと、特に御心配の、許可制から届け出制になるという部分がございます。この販売、賃貸業についても、放射性同位元素を取り扱う場合には使用の許可または届け出を要することとしておるわけでありますが、このような場合に、影響の大きい部分を実際に使用するケース、あるいは文書上だけでやらなきゃいけない部分、そういうものは、見直しをして届け出でいいんだけれども、実際に使用するようなものについては許可制もちゃんと残しておくというようなことで、今回の改正によって安全確保の水準は低下させるものではないということでありまして、そういう観点から、安全確保という点は十分万全を期して今回の改正に臨んでいる、こういうことでございます。

川内委員 続いて、国際基準値、すなわち国際免除レベルでは、合計七百六十五核種分の免除レベルが示されているということだそうでございますけれども、これらは従来の我が国のレベルと比べて厳しくなるものが幾つで、基準が緩和されるものが幾つ、あるいは変わらないものが幾つあるのかということについて教えていただきたいというふうに思います。

小田政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の放射線障害防止法では、規制下限値として定められております放射能量につきましては、基本的に密封されていて放射性同位元素を使用するか否かによって大きく分かれております。ちょっとこの密封というのは専門用語でございますが、放射性物質を漏れない容器に入れてそのままの形で使用するもの、それを密封と称してございます。その密封された放射性同位元素につきましては、核種によらず一律、ちょっと専門的でございますが、三・七メガベクレルという放射能量を定めてございます。それから、密封されていない放射性同位元素につきましては、四群に分類した上で、上の方は三・七キロベクレルから十倍ごとに三・七メガベクレルまで定められております。

 一方、国際標準値につきましては、規制の下限値としては密封の有無は考慮しないで、七百六十五核種分についてそれぞれ定められております。

 したがいまして、現行値と国際標準値を比較いたしますと、密封された放射性同位元素につきましては、厳しくなるものが六百一核種、緩和、緩くなるものが百六十四核種でございます。また、密封されていない放射性同位元素につきましては、厳しくなるものが二百二十六核種、緩くなるものが五百三十九核種ございます。また、変わらない、同じかどうかについての御指摘でございますが、前の値は三・七ということで、昔の単位のキュリーという数値を引きずっている関係で、三・七が今回は全部一という数字になっていますので、したがって免除レベルが変わらないものはありません。

 以上でございます。

川内委員 ありがとうございます。

 続いて、この法案の第四条の販売業者及び賃貸業者というのは、それぞれ何社ぐらいあるんでしょうか。

 そしてまた、今は許可制でありますから、許可された業者というか会社が何社かあるんでしょうけれども、それを届け出制に改めるということになると、これは一般的に、基準が許可から届け出になるわけで、緩くなるわけですから、ふえるのかなというふうに予想をするんですけれども、そうすると、大体何社ぐらいになると予想されていらっしゃるのかということを教えていただきたいと思います。

有本政府参考人 お答えいたします。

 現在、販売業者といたしまして百二十六事業所、それから賃貸業者といたしまして二事業所が許可を受けてございます。今後の届け出販売業者それから届け出の賃貸業者の増加数、先生がお問い合わせの件でございますけれども、この具体的な予測データというのは有してございません。

 ただし、届け出販売業者について申しますと、今回の国際標準値の導入に伴いまして、従来規制対象外でありました機器が規制対象になるということがございますので、これらの規制対象外であったものの機器を扱っている業者の方々、届け出販売業者の方々が増加するというふうに考えております。

 それから、届け出賃貸業者について申し上げますと、こういったリースの業界団体としまして社団法人リース事業協会というものがございますけれども、ここの予測によりますと、近年の民間設備投資額に占めるリース設備投資額、これが約一割という調査結果がございます。また、同協会では、リースによる調達比率が高いと言われる分野が御存じのように医療分野でございまして、医療分野の主要な放射性同位元素装備機器につきましては、年間販売台数の三割から五割程度がリースになるであろうという見込みをこの業界団体では有しておられます。

 こういうのをかみ合わせますと、現在許可を受けておられます賃貸業者の数、先ほど申しましたように、二事業所でございますけれども、ある程度の増加があるのではないかというふうに見込んでおるところでございます。

 以上でございます。

川内委員 今回の安全性に関する一層の向上について、管理面、施設面のそれぞれにおいて、まだ我々の記憶に生々しい出来事であるわけですけれども、茨城県のジェー・シー・オーの事故を例にとりますと、どのように安全性が強化をされたのか、今回の法改正というものがあればあのような事故は防げることになるのかということを教えていただきたいというふうに思います。

小田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘のジェー・シー・オーの臨界事故の原因といいますのは、ジェー・シー・オーの違法な行為によるものということでございますし、我々規制する当局にとっても、こういった事故は二度とあってはいけないということで反省しているものでございます。特に二点ほどあると考えてございますが、特に運転管理の段階におきます安全規制の強化、それから二点目が万一事故が起こった際の防災対策の備えという二点を重大な教訓として我々は受けとめているものでございます。

 一方、我々の、今御審議いただいております放射線障害防止法の対象事業所は約五千弱に上るわけでございますが、これはジェー・シー・オーの臨界事故のような事故は発生していませんし、発生しないわけでございますが、しかしながら、近年、教育訓練や被曝管理が不十分であるということなどの安全管理面に起因した事故の割合が高くなっております。最近五年間の法令報告事故二十三件を見ましても、そのうちの十八件が安全管理面に起因してございます。

 このため、今回御提案させていただいています法律改正におきましては、安全管理面の重要性ということにかんがみまして、一つは、安全管理に関する記録、記帳の定期確認制度を創設する、それから二点目は、放射線取扱主任者に事故の事例に関する科目を含む定期的な講習を義務づけるといった措置を講ずることとしてございます。

 また、立入検査ということがございまして、事前通告を行わない抜き打ち検査といった手法も取り入れておりまして、今後、定期確認において問題が指摘された事業所などを重点的に検査を実施することなどで、より実効あるものとしてまいりたいと考えておりますし、これは制度面の充実によりまして安全面の強化が図られるものと考えております。

 ただ一方、我々は、原子力の安全確保というのは規制を強化するのみでは達成できるものではない、事業者自身がそのモラルを強く認識いたしまして安全管理の徹底を図るということが大事でありますので、事業者と我々規制当局の健全な緊張関係のもと、厳格な規制を実施するとともに、事業者自身の安全確保活動の充実を強く指導していきたいと考えてございます。

 以上でございます。

川内委員 ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 続いて、放射性廃棄物の埋設処分について、現行法では埋設することは認められていないわけであります。なぜ認められていないのか、その理由、そしてまた、そういった理由があるにもかかわらず今回埋設を認めることにするのはなぜなのかということをあわせて教えていただきたいというふうに思います。

有本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先ほども御議論が出ましたけれども、放射線の利用というものは、がんの診断、治療あるいは害虫の駆除、あるいは産業利用ですと半導体や自動車のタイヤの加工といったところで、さまざまなところで非常に利用が拡大をいたしておりまして、国民の方々の生活にも欠くことができないものになっているということでございます。

 そうなりますと、利用の拡大に伴いまして、どうしても放射性廃棄物、放射線利用による廃棄物、ごみが必然的に発生をするということでございます。ごみの形態としましては、いろいろ放射性物質を扱うことによります衣類あるいは手袋、ビーカー、ガラスの容器でありますとか、プラスチックの容器とか、さまざまな形態があろうかと思いますけれども、こういった廃棄物が非常にたくさん出てくるということになるわけでございます。そういう意味で、事業者にとりましては、これを最終的に処分していく方向が見えないということが大きな負担になっているということがございます。

 こういった状況を踏まえまして、平成十年に原子力委員会の方で埋設処分というものの基本方針が出ております。そういったものを踏まえまして、先ほど副大臣から御答弁がありましたように、文部科学省の中に懇談会を設けて、御議論の上で、本年三月に処分の方向性というものについて報告書がまとめられたところでございます。一方で、安全規制の側からは、原子力安全委員会におかれましても、安全規制をいかにすべきかということで検討が深められて、ことしの一月に埋設処分の安全規制の基本方向というものが示されております。

 こういった状況、検討の深まりというものを踏まえまして、今回、廃棄物埋設に関する規定を整備するということで今御提案をいたしているところでございます。

川内委員 ぜひ、くれぐれも安全性ということについては十分な配慮を払っていただきたいというふうに思うんです。自分のうちの近くに放射性廃棄物が埋設されるということを聞いたりすると、ちょっとぎょっとするような感じを恐らくだれでもが受けると思うんですが、付近の住民の皆さんへの説明というか理解というものがやはり一番かぎになると思うんです。その辺については、文部科学省としてはきちんと責任を持てるということなんでしょうか。

石川政府参考人 ただいま先生からお話ございましたように、原子力施設あるいはその廃棄物の埋設施設等の立地に当たりましては、立地地域の住民の皆様方の理解と協力を得て進めていくということが大変重要であるということを、重々認識しているところでございます。

 文部科学省といたしましても、廃棄物の埋設施設の立地に当たりましては、周辺住民の方々への説明が十分に行われるということは当然のことであろうというふうに考えておりまして、地元の自治体や住民の皆様方の理解と協力が得られますように、廃棄物の発生者やあるいは埋設事業の実施主体によりまして、埋設する廃棄物やあるいは埋設処分施設に関する情報公開、そしてそれらに関する必要な説明が適切に行われますように私どもとしても精いっぱい努めてまいりたい、このように考えております。

川内委員 その辺が一番難しいところだと思いますので、ぜひ頑張ってやっていただきたいというふうに思います。

 私の質問がすべて終わったんですが、質問しながら、先ほどの公費留学のことについてつらつら考えておったんですが、制度として、卒業が義務づけられてはいない、それはわかりました。では、卒業したかどうかの確認は役所としてされるのかされないのかということをちょっと尋ね忘れたような気がするんですが、官房長、その辺をちょっと、確認するのかしないのかということだけ、お休みのところだったんですが、恐縮ですが最後にお答えいただきたいと思います。

白川政府参考人 追加の質問がございましたので、お答え申し上げたいというふうに思います。

 まず、人事院の制度、これは人事院が運営をしておりますので、人事院の方に我々が問い合わせをいたしました結果でございますけれども、人事院におきましては、平成九年に実施要項を改正いたしまして、それ以降につきましては、修士号と申しますか学位の取得について努力をするということで、義務づけられておるという言葉が適当かどうかでございますけれども、修士号、学位を取得するものとするというふうに書かれております。したがいまして、現在の制度では、これは人事院の制度でございますけれども、留学の方から帰りました後に、帰国後一カ月以内に修士課程修了証明書写しまたはこれに準ずる文書写しを提出するようにという格好になっております。

川内委員 それは、済みません、平成十何年に改定になったとおっしゃいましたですか。

白川政府参考人 平成九年でございます。

川内委員 そうすると、平成九年以前はそのような制度はなかったという理解になるんでしょうか。

白川政府参考人 この人事院の行政官の長期在外研究員の実施要項を拝見いたしますと、今先生がおっしゃるとおりだというふうに思います。

川内委員 どうも解せないんですね。自分の役所の若い衆を留学に行ってこいと送り出して、帰ってきて、卒業したかどうかは無関心ということにはなかなかならぬのじゃないかなというふうに思いますが、また人事院に聞かせていただきたいと思います。

 終わります。

池坊委員長 松本大輔君。

松本(大)委員 民主党の松本大輔です。

 私の出身は、先週も申し上げたとおり広島県です。今週の月曜日に県内の尾道市立の土堂小学校を訪問いたしました。先週から地教行法の改正というのが審議に入っていたからなんですけれども、百升計算、音読、それから漢字の前倒し学習、こういったユニークな学習方法で有名な陰山英男校長のお話をお伺いしてまいりました。実際に現場の先生方がやっていらっしゃる授業の内容も見せていただいたわけなんですけれども、百升計算に五年生の生徒さんが一心不乱に取り組んでいる。それから、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」というのを暗唱されていたり、あと、萩原朔太郎の「竹」という詩を朗読したりというような姿勢を見て、私も非常に元気づけられたわけでございます。朔太郎が「竹」という詩に書いたとおり、まっしぐらという形容がまさにぴったりの様子でした。

 私は、学ぶことの喜びというのは、きのうできなかったことがきょうはできるようになること、そういうことにあるのではないかなというふうに思っています。きのうは二分台でしかできなかった百升計算が、きょうは一分半でできた、きょうは暗唱は完璧にできなかったけれども、あしたはできるようになるかもしれない、あるいは、あしたもできないかもしれないけれども、いつかはできるようになるかもしれない。こういうことが学ぶことの喜びなのではないかな。そして、それが将来、生きていく上での大きな自信、生き抜く力、強さ、たくましさというものにつながっていく。そして、それは幾つになっても変わらない。これがやはり学ぶことの重要さ、喜びではないかなというふうに考えた次第であります。

 一年生、二年生の授業も実は参観させていただきまして、そこに、黒板の前ですけれども、クラスのお約束というのが張ってありました。クラスのお約束、何が書いてあったかというと、けじめをつける、人を傷つけない、うそをつかないということが書いてあったわけです。

 つまり、一年生とか二年生のうちにしっかりと身につけておくべき、まさに人としての基本というものが、うそをつかない、けじめをつけるということにあるのではないか、私はそのように思うわけです。道徳教育とか教育基本法の改正とかいうことが取りざたされるわけですけれども、やはりこの基本というものはきっちり押さえておかなければならないのではないか、私はそのように思ったわけです。

 おかげで、教室内を徘回している生徒さんもいませんし、携帯電話でテトリスをやっているような人もいませんし、いつまでたっても私語が終わらないというようなこともない。国会の方がよっぽど学級崩壊しているんじゃないかと私は恥ずかしくなったわけであります。

 さて、けじめをつける、うそをつかないというのはやはり小学生でも知っている道徳の出発点ではないか、私はこのように考えるわけですけれども、このことを大人である私たちがみずから実践することで、子供たちにしっかりとそのことを教えていかなければならない、こういうふうに思うわけであります。

 本日、JR西日本が安全検査についてうその報告をしていた、それから三菱自動車がクラッチの欠陥を八年間放置していた、このようなニュースが流れているわけであります。もちろん運輸行政についても、それからきょうの議題になっております原子力行政についても、やはり安全確保それから信頼というものが大前提となってくるわけですけれども、けじめをつける、うそをつかない、これこそが人の基本であるということに関して、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 おっしゃるとおり、私も非常に大事なことだと思います。

 先般、そこの校長先生のお話も、一部ではございましたがお伺いをいたしました。学校が生き生きとしてやっておられる姿、大変頼もしく、うれしく思ったわけでございます。特に子供のとき、初めていろいろ出会うことがありますが、そのときにやはりきちっと教え込んでおく、そしてまた、そうしたまさに道徳的倫理観的なもの、やはり、いいこと悪いことをきちっとしておくということ、そこのところをおろそかにしていると、先々で親もほぞをかみますが、後でそういうところが出てくるということだろうと思います。

 今日、日本の子供たちをめぐる状況あるいは大人社会の緩みは一体何であろうか、これが強く今言われておるわけでございまして、先般ここで武士道のお話もいただいたわけでございますが、まさに日本人がこれまで大切にしてきたそういうことを、やはりいま一度ここでそういうことに思いをいたしながら、教育も再考し、大人社会ももう一度今再考しなきゃいけないときに来ておるのではないか、その一端の役割を文部科学行政が担っておるのではないか、そう思いながら、その責任の重さもかみしめておるところでございます。

松本(大)委員 ありがとうございます。

 実は、陰山校長も同じようなことというか、似たような趣旨のことをおっしゃっていらっしゃいまして、教育問題、これは学校問題だけに矮小化されるべきではない、社会問題としてぜひとらえてほしい、社会全体で子供を元気にしていかなければならないとおっしゃっていたのが、私にはとても印象的でありました。やはり、大人が範を示さなければ、子供の見本となって社会全体で子供の教育というものに取り組んでいかなければならない、私はそういう思いを新たにしたわけであります。けじめをつける、うそをつかない、大変重要なことだと思うわけであります。

 本日は、放射線障害防止法の改正案をめぐる審議ではありますが、先ほど川内委員からも御指摘ありましたとおり、きのう大変残念なニュースが飛び込んでまいりました。この残念な報道についてお伺いしなければなりません。

 原田副大臣の学歴虚偽記載問題についてであります。申し上げるまでもないことですけれども、報道が行われたのは十七時過ぎで、質問取りはもう過ぎておりました。辞任の会見が事前に通告されていれば私も質問を通告することができたんですが、通告は行っていないということをあらかじめお断りしておきます。本来であれば御本人にぜひお伺いしたいというところですけれども、本日は、私のたっての希望で、いつも男前な馳政務官においでいただきました。ぜひ御見解をお伺いしたいと思います。

 さて、先日、五月十四日、ちょうど先週の金曜日になります。私立学校教職員共済法等改正案をめぐる審議の中で、同僚の高井議員が、自民党も所属国会議員の年金納付状況を公表すべきではないか、こういう趣旨の質問をしたわけであります。馳政務官は次のように答弁されまして、私たち民主党から拍手喝采を受けたわけであります。御紹介させていただきます。

 公表に関して言えば、我々国会議員であれば資産公開、また政府の要人になれば、私は女房とは財布が別なんでありますが、女房の資産まで報告させられるというか、しなければいけないという、倫理上の問題もありますから、こういう保険料の支払いといった情報は公開することは当然のことなのではないかなと私は個人的には思っておりますが、私が個人的に思っているということでありまして、それだけ政治家には社会的な倫理性が求められるのではないかなというふうに思っています、こういう答弁をなさっていらっしゃるわけです。

 先ほど、うそをつかない、人を傷つけない、けじめをつける、道徳の基本であるというお話を紹介させていただきました。大人が率先して範を示していかなければならないのではないか、そんなお話をさせていただいたわけです。馳政務官もさきの答弁でお認めになっていらっしゃるように、国会議員となれば、単に大人だということだけでなく、それ以上の、社会的倫理性という言葉を使われていらっしゃいました、社会的倫理性というものが求められる。

 大臣、私たちは単なる国会議員ではなく文部科学委員であります。原田議員は、しかも教育行政をつかさどる文部科学副大臣でいらっしゃいました。教育行政をつかさどる文部科学省の副大臣が経歴を詐称していたということに関して、その倫理的責任、馳政務官は社会的倫理性という言葉をお使いになっていらっしゃいますけれども、その倫理的責任についてはどのようにお考えでしょうか。これは政務官にお答えをいただきたいと思います。

馳大臣政務官 原田副大臣が辞任に至るに当たって河村大臣とどういったやりとりがあったかということは、これはまた河村大臣にお聞きいただければいいと思います。

 私も、昨日の夕方、政務官室におりましたら、原田先生がいらっしゃって事実をおっしゃいまして、大変申しわけなかった、こういうことが、確かに調査をしてきのうわかったことであるけれども、副大臣という立場である以上、私はやめますとおっしゃいました。そういう観点からいえば、原田先生が国民に対してできる限り事実に基づいて報告をなされて、そして人間としてのけじめをつけるということは必要だと思いますし、また、そういう観点からも、正直、事実がわかったということですぐに副大臣の職をおやめになったというふうに私は認識をいたしております。

 先ほどから川内先生と官房長のやりとりも拝聴しておりましたけれども、公費での留学ですよね。どうして、帰ってきて成績証明書であるとか卒業証明書であるというものを提出するのを義務化していないのかなと、私は正直疑問に思いました。また、それは今後どのように、これは文部科学省だけではなく、各省庁は公費によって留学をさせた職員に対してどういうふうな対応をするのかという、全体として十分考えていかねばならない問題であるということがわかりました。

 でありますから、今般の原田副大臣の辞任に際しましては、私は原田先生を尊敬しております、その心中をおもんぱかるとともに、できる限りの説明責任を果たしていくことによってけじめをつける問題である、こういうふうに思っております。

松本(大)委員 ありがとうございます。

 河村文部科学大臣には、後ほど御見解をお伺いしたいと思います。

 ちなみに、政務官は、御自身のホームページの中で次のような文章を載せていらっしゃいます。一月二十七日付「はせ日記」。

 古賀潤一郎代議士が今朝、地元福岡の街頭演説で「辞職せず。民主党離党。歳費もらわず国庫に返還。閉会中にはペパーダイン大学にいって単位取得する!」などとむちゃくちゃな、意味不明な理由を述べて幕引きをしようとしたという情報が入る。

  辞職するしないは本人の道義的責任。しかし、経歴詐称は明白であり、選挙民から告訴されれば福岡地検は捜査に入り、事実関係を調べたあと、おそらく起訴されて司法判断がなされるであろう。その際には、故意か勘違いかが争点になるであろうが、起訴された時点で辞職は避けられまい。なんといっても、経歴が違うことは本人も大学側も認めているのであるから、間違いなく公職選挙法違反。である以上は、早くやめたほうが賢明では。

  民主党離党で、民主党に対する責任は取れるであろうが、有権者に対する責任を取ったことにはならない。ちなみに、国会議員の歳費の国庫への返納は、寄付行為にあたり認められていない。初歩的な勘違い。ましてや、議員であり続けながら閉会中に大学の単位をとるなんて言語道断。国会議員としての職責放棄と受け取られる。

  有権者は、大学の単位を取得させるために古賀さんに一票を投じたわけではない。……どうも、勘違いが勘違いを呼んで、自分を見失っているようだ。民主党は彼を公認した責任をどう考えているのか。

こういう内容を日記に載せていらっしゃるわけです。「経歴詐称は明白」「離党で、民主党に対する責任は取れるであろうが、有権者に対する責任を取ったことにはならない。」「民主党は彼を公認した責任をどう考えているのか。」と政務官は書いていらっしゃるわけですけれども、ぜひ民主党を自民党に置きかえて考えてみていただきたいな、かように思うわけであります。

 文部科学行政の推進には、国民の信頼が不可欠であります。副大臣を起用された、その起用にかかわった大臣にぜひお伺いしたいと思います。

 原田さんの有権者に対する責任というものはどうとっていかれるのでしょうか、どうとるべきかというところでございますが、説明責任を果たすべきではないでしょうか。この委員会の場にぜひお招きする必要があるのではないかと考えますが、大臣の御見解をお願いします。

河村国務大臣 有権者に対する責任は、選挙区の皆さん方、原田先生を応援して当選させられた方々に対しては、みずからも今回の辞職についてホームページでそのことについてきちっとおわびを兼ねて説明されておりますし、また、選挙公報等のそういうものに大学院卒業ということを明示されたことはないと伺っておりますから、さっきの古賀さんのケースとはちょっと違うのではないか、私はそう思っております。

 しかし、先ほど来お話しのように、結果的に事実でなかったことをホームページや何かに書いたということは事実だから、これはやはり子供たちに対する説明責任もある、いわゆる文部科学行政の担当の副大臣としてはふさわしくないということで潔く身を引かれた、このように思っておりますし、これからも、恐らく選挙区に対しては、どういう理由でおやめになったかということについてきちっと説明を果たしていかれるであろう、このように思っております。

松本(大)委員 選挙公報に載せていないということなんですけれども、この点については後で触れます。

 馳さんのホームページにも、「故意か勘違いかが争点」という部分がありました。この点に絡めて、ちょっとお伺いしたいと思います。

 原田さんは、故意にはやっていないと主張されています。しかし、万が一ですけれども、もしも卒業していないという事実を事前に知っていて、故意に選挙公報に載せなかったとしたら、この場合はどうなのか。むしろ、そちらの方が悪質なのではないか。先ほどからお話が出ておりますとおり、政府派遣留学生、つまり国費が投じられていたわけです。

 なぜそのようなことを思うかといいますと、ここに衆議院要覧というものがあります。乙と書いてありますね。衆議院事務局が発行している公文書のたぐいじゃないかと思うんですけれども、ここの百七十八ページに、「政府派遣留学生として、ボストン(タフツ)大学政治外交大学院を卒業。」というふうに記載をしているわけです。

 この衆議院事務局発行書類に虚偽の記載をすることというのは、何の罪にも問われないんでしょうか。これはぜひ、もし御回答いただける方がいらっしゃらなければ、後日の委員会の場で明らかにしていただきたいと思いますけれども、その点についてよろしくお願いしたいんですが、どなたか見解を述べられる方がいらっしゃれば、しかるべき照会箇所を教えていただければその方にお伺いしますし、今ないのであれば、大臣、教えてください。

河村国務大臣 この問題については、どなたに聞けばわかるのか、私自身は、それがどういうような形になるのかわかりません。衆議院の事務局にでも照会されたらいかがでしょうか。

松本(大)委員 ありがとうございます。しっかり照会させていただきたいと思います。

 ちなみに、文部科学省のホームページにも、副大臣の学歴はこのように掲載していたわけであります。これは文部科学省のホームページのコピーです。要覧にも載せるし、文部科学省のホームページにも載せるという非常に誇らしい学歴であるにもかかわらず、なぜ選挙公報には載せなかったのか、むしろ不思議に思うわけであります。

 では、もし、この時点で本当に知らなかった、選挙のときには卒業していないという事実に本当に気づいていなかったとしたらどうなのかという部分でありますけれども、本日付の新聞報道によれば、「四月に報道関係者から促され、」この促されというのが僕はよくわからないんですけれども、うわさを聞いたが大丈夫かというような指摘を受けたということでしょうか。「同大学に詳細な確認を求めたところ、五月三日に成績表が届き、必須科目の一つに「不可」があることが判明した。同窓会名簿の記述は不正確で、同十九日に、大学から「学位はない」との正式回答を受けたという。」とありました。

 選挙のときは知らなかった。しかし、どういうわけか選挙公報には載せなかった。誇らしい学歴です。載せなかった。そして、選挙が終わって半年たった五月三日になって大学から成績表が届いて、必須科目を落としていたことがわかった。

 本来であればこの時点で、必須科目を落とせば卒業できないというのは、聡明な原田副大臣ともあろう方が気づかないはずはないわけでありまして、少なくともその時点で、大臣に報告の義務があったのではないか、あるいは文部科学省のホームページを訂正する必要があったのではないか、私はそのように思います。そして、この時点で対外的なリリースで明らかにすることもできたのではないかというふうに考えるわけです。

 新聞報道によれば、十九日に大学から学位はないとの正式回答を受けたとおっしゃっているようですが、三日に単位を落としたという文書が届いているのに、何で正式回答は十九日まで十六日間もかかっているのか、最終的な結論がどうして出ないのか。ここについても、私は非常に不思議に思うわけであります。IT全盛時代、電話だってあります。なぜこんなに最終確認に時間がかかるのか。

 百歩譲ってそれを認めたとしても、つまり、三日に文書が届いて、そんなはずはないだろうということで大学に照会をされて、それから二週間以上たって五月十九日に最終的な回答が来た、ここを認めたとしても、少なくとも十九日の時点では公表できたはずです。

 さて、ここで思い起こしていただきたいのが、三日という日付、十九日という日付が政治的にどのような意味を持つかということです。三日といえば、年金法案の衆議院通過前です。つまり三党合意の修正案が採決される前です。そして、十九日といえば、有事法制の修正案の本会議採決前です。きのうの発表も夕方の五時でした。あすには首相の訪朝で、恐らく関心はそちらの方に、つまり本件学歴虚偽記載への関心も薄れると。

 法案修正についての政党間合意を図る場合、何より重要なのは政党間の信頼関係ではないかと私は思います。本日の議題である原子力行政についても、大臣自身、所信の中で述べられていらっしゃるように、最も重要なのは国民の信頼ではないか、私はそのように思うわけです。

 この政党同士の信頼関係とか国民との間の信頼関係とか、これを抜きにして法案審議をすることなど到底できないのじゃないか、私はこのように思います。法案審議をする際、与党と野党で、賛成、反対という意見が分かれることは大いにあり得ることです。しかし、意見は分かれても審議は尽くすと。だからこそ、今回のこの放射線障害防止法の改正案の最後にも、「何とぞ、十分御審議の上、」というふうなただし書きがあるわけであります。

 ところが、イラク特での自衛隊派遣のときもそうだったし、厚生労働委員会での年金法案の採決のときもそうだった、一方的に質疑が打ち切られて、強行採決が行われたわけです。とても十分御審議の上などと言える状況ではあり得ませんでした。加藤委員には、少なくともイラク問題については認めていただけるのではないか、私はそのように思います。誠実さを尽くすという意味での信義と、それから議論は尽くさなければならないという意味での審議も両方ない、まさにシンギなき国会ではないか、私はそのように思うわけであります。

 大臣、大臣は、原子力について触れられた所信にも、原子力については「安全規制の充実を図る」という言葉とともに、「国民の信頼と安全確保を大前提として、」という内容を盛り込んでいらっしゃいました。もしも、今回の事実公表のタイミングを故意におくらせていたのであれば、これは非常に問題ではないかなと私は思うわけであります。有事関連七法案についても、年金制度改革についても、国民の同意の大前提となる信頼関係というものが根底から崩れ去ってしまうわけであります。

 そこで、大臣にぜひともお伺いしたいことがあります。

 大臣、大臣はたしか、同郷の偉大な方でいらっしゃいます吉田松陰先生を非常に尊敬なさっていたというふうに思っております。所信にもたしか引用されていらっしゃいました。ホームページにもお好きな言葉として至誠通天というものが挙げられていました。誠意は必ず通じるということだと思います。吉田松陰が江戸に立つ前に、至誠にして動かざる者いまだこれあらざるなりという書からきているわけであります。

 今回の事実公表に至るまでの過程、あるいは今回の国会運営の中にも、天にも通じるような誠が果たしてあったのかと私は疑問に思うわけであります。今回の公表のタイミングについて、故意にタイミングをはかっておくらせたのではないか、私はそのような疑いを非常に強く思っているわけですけれども、大臣、今回の一連の過程に、どこに大臣が何よりもたっとばれている誠というものがあるんでしょうか。閣僚としての責任ある答弁をお願いいたします。

河村国務大臣 至誠通天ということは私も大事な言葉と思っておりますし、原子力行政というのはまさに信頼関係に基づいていかなきゃいけません。一歩間違えますとそれは大きな影響を受ける、そういうものでありますから、みんなの協力をいただかなきゃ原子力行政等は進まないわけでございます。

 今のお話は、これは物の考え方、物を疑ってかかればいろいろなこともまた疑えるものだなと私も思ったのでありますが。

 私は、原田副大臣が、まさに、私に対しても本当に苦渋に満ちた顔で、誠意を持って、自分のこういう事実があったということに対して申し開かれた。このことは私は、そして特に、ましてや私は子供たちあるいは大学行政、そういうものに携わる文部科学副大臣でありますと。そのことからしても、今回については、私にも、それは説明いろいろつけたとしても、事実と違ったということについてはやはり責任を感じて、その職にふさわしくないんだと思ったからという思いで言われたわけでありますから、私もその思いを尊重させていただいた。

 今の三日、十九日というのは、松本先生言われることは、そのタイミングですから、そういう考え方もあるのかと私は今初めて聞いてそう思ったんですが、少しこれはうがち過ぎじゃないか。物の偶然とかそういうことはありますから、そういう見方をすればそういうふうになるのかもしれませんが、ちょっとこれは余りにもうがち過ぎて物をごらんになっておるのではないか、私はそういうふうに感じております。

 そういうことと、原田副大臣がその事実をつかんで、どういうふうに自分で考えたらいいか、それは、即その日におやりになれば、それはそれでよかったのかもしれぬけれども、自分でもいろいろ悩み、考え、その上で最終的にああいう決断をされた。私は、原田さんの、私に対して説明されたときに、その思いがわかっておりますだけに、今松本委員の方から御指摘あったことは、私自身にとってもちょっと、至誠通天の考え方からいっても、どうもこれをそのとおりですと受け入れる問題じゃないし、むしろ、少しうがち過ぎて、そっちの方へ話を余りにも引っ張っていかれたのではないか、そのように私自身は感じました。

松本(大)委員 原田前副大臣が、実は古賀議員と同じ福岡県選出でいらっしゃるわけですけれども、私は、不思議に思うのは、古賀議員のことを受け、おれは大丈夫かというふうにどうして調べられなかったんだろうかなと非常に疑問に思うわけです。あるいは、地元の有権者の方に、原田先生大丈夫でしょうねとか、地元のマスコミの方に、先生は大丈夫ですよねというふうに聞かれることはなかったのか、非常に不思議であります。

 古賀さんの問題が初めて持ち上がったのが一月十七日、今から四カ月も前ですね。それから調べる時間は十分過ぎるほどあった。

 実際、原田さん、御自身のホームページで次のようなことを書いていらっしゃいます。一月二十二日、「ヨッシー日記」。

 このところ毎日衆議院議員古賀潤一郎さんの学歴詐称問題がマスコミで騒がれています。同じ福岡県でまた隣りの選挙区でもあり、多少の面識もあるため複雑な気持ちにもなりますが、仮にそれが事実であれば、政治家以前に人間として決して許されるものではなく、早晩なんらかの決断は必要となると思います。そしてこれを他山の石として私たちも今後一層自らを律していくことが必要です。

人間として決して許されるものではない、非常に重い一言です。人格まで否定していらっしゃいます。しかも、教育行政をつかさどる文部科学省の副大臣なわけであります。文部科学行政の重要な職責を担う立場にありながら、これまで虚偽の記載により誤った情報を有権者に伝えてきたわけです。

 そういった政治的責任、道義的責任、社会的責任というものを考えた際に、やはりどうしてもこの場にお呼びする必要があるのではないか、果たしてその責任、説明責任ということももちろんでありますが、副大臣の職を辞すればそれで事足りるものなのかどうか、御自身が口をきわめてののしっていらっしゃったことを考えれば、この問題は何としてでもきっちりけりをつけていかなければならないのではないかなというふうに思います。

 きょうのテーマは放射線障害防止法改正です。何度も申し上げるとおり、原子力行政については国民の信頼回復が第一です。もちろん年金制度改革も有事七法案も国民の信頼が大前提であります。しかし、厚生労働副大臣は年金未納、文部科学副大臣は学歴詐称。一体この内閣はどうなっているんでしょうか。こんな状態では、内閣そのものを信任できないのではないか、政治そのものへの信頼が根幹から崩れ去ってしまうのではないか。

 大臣、誠は一体どこにあるんでしょうか。「意を決して之を為す」の覚悟で文部科学行政に取り組んでまいると所信でも決意表明をされていらっしゃった河村大臣に、ぜひ、原田先生の、こちらへお呼びいただくとともに、今後の責任問題も含めて、最後に見解をお聞かせいただきたいと思います。

河村国務大臣 原田前副大臣をこの委員会でどうされるかは、これは委員長以下理事会の皆さん、委員会の皆さんがお決めになることでございまして、私からこれをどうこう言う立場にございません。

 ただ、私どもとしては、極めて残念なことでございますが、文部科学行政、いろいろ難しい問題がたくさんある中でございます。新しく、原田副大臣が文部科学副大臣としての責任を感じておやめになった後、文部科学行政に練達の小野新副大臣を迎えましたので、皆さんと一緒に、さらに文部科学行政の遺漏なきを期して、その政策の達成に努力することがこの責任を貫いていくことにつながっていく、このように考えております。

松本(大)委員 質疑時間が終了いたしましたので、最後に、きょうは、突然のニュースで、田村政務官には質問通告をしてお越しいただきながら、ちょっと御質問できなかったことをおわびいたします。

 ありがとうございました。

池坊委員長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 本法案の改正は、放射性同位元素の使用や汚染されたものの廃棄などを規制して放射線からの障害を防止するという点で、今回の改正は賛成できると考えております。

 きょうは、放射線と人体への影響について幾つか質問をさせていただきます。

 まず、劣化ウランによる内部被曝のことでございます。

 劣化ウランというのは今イラクで大変問題になっていることでございますが、この劣化ウラン弾は、標的にぶつかると燃え上がる、非水溶性の二酸化ウラン、水溶性の三酸化ウラン、ほかに八酸化三ウラン、酸化物の微粉末となって、呼吸により、また飲み水や食べ物にまざって口から体内にとり込まれる、その微粉末によって内部被曝を起こすことが指摘されているところでございます。

 イラクのバスラ大学のアル・アリ医師による疫学調査がございまして、イラク南部のバスラでは、がん死亡者数では、湾岸戦争前の一九八八年と比較して、二〇〇〇年以降が二十倍、がんの発生率が十倍になっている。同氏は、発がんに結びつく出来事は劣化ウラン弾の大量使用ぐらいだと述べているわけでございます。また、劣化ウラン汚染地区は、非汚染地区と比べても、リンパ腫、白血病、脳腫瘍の発生率が高いという報告もされております。

 このように、劣化ウランの危険性についてどういう認識を政府としてお持ちでしょうか。

有本政府参考人 劣化ウランの毒性についての御質問だと思っております。

 劣化ウランの毒性には、重金属、例えば鉛でありますとかカドミウム、そういう重金属としての毒性、化学的な毒性だと思いますけれども、これと放射線による人体影響という二つがあろうかと思っております。

 まず、重金属としての毒性につきましては、ウランとの比較で申し上げますと、ウランとほぼ同じであろうということでございます。それから、放射線による人体影響という観点で見ますと、ウランに比べまして、物理的な原子核の構造というものからかんがみまして、その影響は一般的には小さいというふうに理解をされておると思います。

 このように、劣化ウランの放射線による影響はそれほど強いものではないわけでありまして、体の外にこれがある場合には、空間的に被曝をするという、長時間にわたる被曝をしない限りは影響は問題ないであろうということではございます。ただし、今先生おっしゃいましたように、これが粉末となって吸入される、あるいは摂取される、それで体内に長期にわたってとどまるというような状況あるいは形態ということになれば、内部被曝をよく評価するという必要があろうかというふうに考えております。

石井(郁)委員 今、一応、一般的なというか科学的な知見としてお示しいただいたんですが、この劣化ウランに関する政府の見解というのが、文科省の防災環境対策室で、米軍の鳥島射爆撃場における劣化ウラン含有弾誤使用問題に関する環境調査という中でも触れられているわけでございます。この調査結果をちょっと簡潔にお示しください。

有本政府参考人 まず、劣化ウラン弾の米軍による誤使用という事実でございます。

 これは、平成七年の十二月と平成八年の一月に在日米軍の航空機が、沖縄本島から約百キロ西の方に久米島というところがございまして、ここから北に約二十キロのところに無人島で鳥島、ここが米軍の射爆場になっておるわけでございますけれども、ここで訓練中に劣化ウラン弾千五百二十発を誤って使用したという事柄でございます。

 その上で、平成の七年及び平成八年の事象を受けまして、まず、米軍によります劣化ウラン弾の回収、それから同島の環境調査が行われております。それから、日本政府におきましても周辺の環境調査を実施いたしておりまして、この環境影響調査、これで専門家による総合評価を行っております。その結果、周辺環境への劣化ウランの影響は無視できるとの安全評価を、平成九年に取りまとめてございます。

 以上でございます。

石井(郁)委員 今御説明いただきましたように、この劣化ウラン弾というのは使用禁止のものだ、在日米軍の規則でも使用禁止になっているものが千五百二十発も使用されたという事件であります。

 それで、調査結果を読ませていただきますと、今ちょっとお述べになりましたように、環境調査もしている、環境に仮にすべて放出されたとしても無視できるレベルだ、さらに経口摂取されたとしても、水に溶けにくいし、速やかに体の外に排出されてしまうので問題ありませんと、一貫して、政府は使用量が少ないから問題ない、体内に入ってもすぐ排出されるという結果を出されているんですね。

 私は、一つお尋ねしたいのは、周辺地域の環境調査はしたようであります。しかし、風下に当たる久米島などに住民がいらっしゃる。その住民の皆さんの健康調査というのは行いましたか。

有本政府参考人 先ほど私、平成九年の安全評価について申し上げましたけれども、その後も、平成九年以降につきましても五年間にわたりまして周辺の環境調査というものをやってございます。

 具体的に申しますと、この環境調査は、久米島における、ここに住民の方々がおいでなわけでございますけれども、久米島における空間放射線量の測定、あるいは大気の浮遊じん、土壌、海水、海産生物、こういったものの分析を行ってございまして、劣化ウランの影響がないということを引き続き確認をしておるところでございます。

 この周辺環境の影響調査、これはいろんな評価をいたしておるわけでございますけれども、一番厳しい評価といたしましては、未回収の劣化ウラン、これがすべて海水中に溶けた場合、あるいはすべてが微粒子となりまして空中に拡散をし、それを久米島の住民の方々が吸入される、こういう非常に厳しい評価をいたしましても、身の回りの自然放射線に比べて極めて小さく、無視できる程度のものであるというふうに専門の方々が評価をいたしておられるわけでございます。

 そういう意味で、久米島の環境や一般公衆の健康への劣化ウランの影響はないというふうに考えております。

石井(郁)委員 そういう調査をされたようですが、しかし、いろんなことで影響はない、ないとあなた方はおっしゃるわけでしょう。しかし、人体の健康調査、人体の影響、そういうことはされていないんですね。

 聞くところによりますと、この久米島の住民の皆さんは、きちんと健康調査もしてほしいという要望も出されている。現地で、政府もそういうことを直接伺っているんじゃないですか。私は、やはりそういう要望にきちんとこたえるべきだと思いますよ。速やかに周辺地域の住民の健康調査をすべきだというふうに思います。その点、いかがでしょう。

 また、五年間調査してきた、だからこれでもう終わりだということではなくて、そういう点での環境調査というのは本当に定期的にまた継続的に進めるべきではありませんか。

有本政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、環境影響調査というものはずっと継続的に進めてきておるわけでございまして、この影響調査、先ほど申し上げましたように、いろんなサンプリングをしてきちっとそれを化学的、物理的に分析をして、影響がないということを確認してきておるわけでございます。そういう意味で、文部科学省といたしましては、健康診断につきましては必要はないというふうに考えてございます。

石井(郁)委員 私は、やはりそういう姿勢というのは本当に問題だと思いますね。

 例えば、専門家の皆さんからも意見が出ているんです、政府のやっているサンプリングは本当にいいのか、十全かと。サンプリングというのはいろいろあるでしょう。シミュレーションもいろいろある。だから、そういう点でも専門家の意見だって分かれているわけですよ。それをこの時点で、人体への影響はもうする必要がない、調査もしないでする必要がない、こういう言い方はないと思いますね。私は、大変それは問題だということを強く指摘して、この問題だけでやりとりするわけにいきませんので、きちんと調査を継続し、人体への調査もすべきだということを強く申し上げておきたいと思います。

 きょうのもう一点ですが、放射線の過剰照射の問題が起きております。先日、和歌山県立の医大病院でも、咽頭がんの患者が放射線過剰照射で死亡した可能性が高いという報道もございました。

 この間、弘前の国立病院、それから山形の市立病院などでも同様の事件が起こっております。こういう事件に対して、なぜ起きたのかという問題ですね。ちょっと御見解、簡単にお示しを、そしてどうしていくのかということを含めて御答弁ください。

中島政府参考人 ただいまの御質問でございますが、この放射線による事故につきましては、現在、この病院におきまして、調査委員会を設けて原因の調査究明を進めているところでございます。したがいまして、この発生原因につきましては、そういった分析の結果を待ってさらに検討する必要があるものというふうに考えております。

石井(郁)委員 では、まだ厚生労働省としての何らの防止策というか、その指示もお示しになっていないという状況ですか。ちょっともう少しやっていらっしゃることあるでしょう。四月九日でいろいろと、防止等の徹底という文書も出されているわけでしょう。その内容を示してください。

中島政府参考人 この事件等を踏まえまして、私どもといたしまして、今後こういった過誤照射等が起こらないようにという観点では、ただいま御指摘のありましたような通知等を発出いたしまして、注意を喚起するというようなことも行っているところでございます。

石井(郁)委員 何でそんな答弁ぐらいしかできないのかと、私は本当に不思議に思うんですが、厚生労働省としては、過剰照射の防止等の徹底の中で述べられているのは、もちろん個々の病院で起こった事例についての原因の究明はそれぞれあるでしょうけれども、最近新たにリニアック装置という医療機関の装置が取り入れられて、照射量の設定等を含めて、自主点検やダブルチェック体制がどうだったのかという問題が起きているということはあなた方もお示しになっているんですね。しかし、ただ、厚労省は、それについて、ちゃんと配慮しなさい、これをちゃんと徹底してやりなさいというだけで終わっている。

 もう時間ですので、私、ちょっと早口で言いますけれども、しかし、現場は本当に深刻にこれを考えているんですよ。だって死亡が起きている事件でしょう。

 それで、弘前病院の場合では、過剰照射が行われている患者二百七十七人ですよ。生存者はそのうち八十九人、死亡者が百六十六人ということになっている。何でこんなような事態が起こったのかという問題です。

 もう時間ですので、これは青森県の放射線技師会の会長さんがおっしゃっていらっしゃいます。実は技師不足なんだ、医師とか看護師は医療法で必要な定数が定められているけれども、技師というのはどんどん減っている、行政、医療機関は、医療事故をなくそうと呼びかけながら、そういう措置がないんだ、現場はこういう深刻な事態になっているということを言っていらっしゃいます。だから、いろいろな点でも、技師が複数でチェックするような体制だとか、そういうものが必要なんだ、国立大学病院、国立病院では放射線技師らの増員がどうしても必要ですということが、現場から強く上がっています。もう御答弁いただきません。

 だから、大変深刻な問題が起きているということについて、私、今の御答弁だと、厚生労働省も、本当にこれでは心配だというふうに言わざるを得ません。文科省も、先ほどの人体への影響調査をしないでどうして安全だと言えるのか。私は、大変問題に感じているということを強く申し上げて、きょうは質問を終わります。

池坊委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池坊委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、遠藤利明君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。牧義夫君。

牧委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 放射性同位元素等は社会で幅広く使用されていることにかんがみ、放射線業務従事者及び一般公衆の放射線障害防止には万全を期すること。

 二 放射線業務従事者及び一般公衆の安全確保を大前提に、関係府省は連携して、実効性が高くかつ効果的な規制の実施に努めること。

 三 医療分野における放射性同位元素等に係る規制の在り方については、関係府省は相互に連携を取りつつ、安全の確保を大前提に、その改善に取り組むこと。

 四 放射性同位元素に係る国際免除レベルの導入に伴い、これまで規制対象外であった機器等が新たに規制対象となることにかんがみ、事業者等が本法の内容を適確に理解できるよう、分かりやすい形で広く周知すること。

 五 安全性のさらなる向上に向け、放射性同位元素等に関する事故の報告及び記録の作成等の安全規制を適確に運用するとともに、それらの収集した情報を公平・適切に評価し、安全確保の観点からその周知に努めること。

 六 登録認証機関等に対しては、業務の実施状況及び財務の状況について定期的に総点検を行うなど、適正な業務実施が確保されるよう万全の措置をとること。

 七 埋設処分に関する規定の整備等の改正が行われることについて、国民の十分な理解を得られるよう情報提供を行う他、放射線やその利用に関する基礎的知識についても引き続き積極的な普及活動を行うこと。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

池坊委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池坊委員長 起立総員。よって、本案に対して附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、河村文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。河村文部科学大臣。

河村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

池坊委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

池坊委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十八分散会


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