衆議院

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第24号 平成16年6月1日(火曜日)

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平成十六年六月一日(火曜日)

    午後一時一分開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 川内 博史君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      今津  寛君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      奥野 信亮君    加藤 紘一君

      上川 陽子君    城内  実君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      鈴木 恒夫君    田村 憲久君

      西村 明宏君    馳   浩君

      古川 禎久君    山際大志郎君

      大谷 信盛君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    小林千代美君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      肥田美代子君    牧野 聖修君

      松本 大輔君    笠  浩史君

      富田 茂之君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   参考人

   (社団法人日本レコード協会会長)         依田  巽君

   参考人

   (漫画家)        弘兼 憲史君

   参考人

   (音楽評論家)      高橋健太郎君

   参考人

   (GERA Japan国際レコード小売協会日本支部世話人)        ポール・デゼルスキー君

   通訳           森岡 幹予君

   通訳           友田 淳治君

   通訳           於保 実樹君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月一日

 辞任         補欠選任

  鳩山由紀夫君     大谷 信盛君

同日

 辞任         補欠選任

  大谷 信盛君     鳩山由紀夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第九一号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、社団法人日本レコード協会会長依田巽さん、漫画家弘兼憲史さん、音楽評論家高橋健太郎さん及びGERA Japan国際レコード小売協会日本支部世話人ポール・デゼルスキーさん、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、文部科学委員会を代表いたしまして、四人の参考人の方々に一言ごあいさつさせていただきます。

 本日は、四人の方々には、大変お忙しい中、本委員会のためにおいでいただきまして、心よりお礼申し上げます。大変大切な法案でございますので、現場で御活躍の皆様方の忌憚のない御意見を伺い、しっかりと当委員会の参考にさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序でございますが、依田参考人、弘兼参考人、高橋参考人、デゼルスキー参考人の順に、お一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言はすべてその都度委員長の許可を得てお願いいたします。また、参考人は委員に対して質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御了承お願いいたします。

 それでは、まず依田参考人にお願いいたします。

依田参考人 ただいま御紹介いただきました日本レコード協会会長の依田でございます。

 本日は、私どもの意見や要望を申し述べる機会をつくっていただきまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。

 十分間という短い時間でございますので、日本レコード協会の概要につきましてはお手元の配付資料に譲ることといたしまして、早速、音楽レコードの還流防止措置の導入を要望する理由から御説明申し上げたいと思います。

 まず、この音楽レコードの還流防止措置は、レコード製作者だけでなく、作詞家、作曲家などの著作権者、歌手、演奏家などの実演家、さらにはレコード販売店など、音楽関係者の総意として導入を要望しているものであります。

 近年、中国、韓国、台湾、香港などの東アジアの国々で日本語の歌が広く受け入れられるようになってまいりました。アジア諸国に日本の音楽を普及させるため、平成五年に、日本レコード協会を初め音楽関係団体が中心になりまして、財団法人音楽産業・文化振興財団、略称PROMICを設立いたしまして、日本音楽情報センターを北京、ソウル、上海、済州島に設立いたしまして、現地の人々が気軽に日本の音楽を試聴できる環境を提供してまいりました。また、これらの国々では今なお海賊版が多く流通しておりますので、著作権セミナーや啓発コンサートなど、種々開催してまいっております。十年たった今日、このような活動が日本音楽の人気となって実を結ぼうとしているわけでございます。

 さて、このようなアジア諸国での日本音楽に対する需要にこたえるためには、現地のレコード会社に対して積極的なライセンスを行うことが必要ではありますが、還流防止措置がないままライセンスいたしますと、日本より大幅に安い価格のレコードが日本に還流し、国内で流通しているレコードの販売と競合することになります。そのようなことになれば、レコード製作者にとって、レコード製作への投資を回収することができなくなるばかりでなく、日本のレコード価格を基準に収入を得ている日本の作詞家、作曲家などの著作権者や、歌手、演奏家などの実演家は極めて少ない収入しか得ることができなくなりますので、活動の基盤が脅かされ、新たな音楽作品をつくり出す上で大きな打撃となります。その結果は、日本の音楽文化の衰退につながることになるわけでございます。

 還流防止措置が導入された場合には、日本の音楽文化の海外への普及が促進され、音楽を通してアジア諸国の日本及び日本国民に対する理解が深まるものと考えております。また、音楽産業の活性化によりその効果は関連産業にも波及し、日本経済全体に好影響をもたらすものであります。そして、権利者に適正な利益が確保されることによって音楽創造サイクルが円滑に循環し、日本国民に、幅広いジャンルの、多様な価格の音楽作品を提供し続けていくことができるわけでございます。

 このように、音楽レコードの還流防止措置は、著作権者、実演者及びレコード製作者の適正な利益を確保し、日本の音楽文化の海外普及を促進するために必要不可欠な制度であります。

 次に、音楽レコードの還流防止措置の導入に関する消費者の方々からの懸念や意見に対し、日本レコード協会長としてお答えしたいと思います。

 まず一番目でございますが、欧米からの輸入盤がとめられるのではないかとの懸念に対してでございますが、この法律ができても欧米からの輸入盤がとめられることはございません。

 その理由は、欧米で圧倒的なシェアを持つソニー、ワーナー、ユニバーサル、BMG、EMIといういわゆるファイブメジャーの日本法人が、一番目といたしまして、欧米諸国で製造、販売されたいわゆる洋楽レコードの直輸入を禁止するようライセンサーに対し働きかけを行う考えがないこと、二番目、ライセンサーであるファイブメジャー各社にも洋楽レコードの日本への直輸入を禁止する考えがないことを確認しております。三番目に、したがいまして、ファイブメジャー各社が欧米諸国で発売するレコードに日本販売禁止の表示をして権利行使する考えのないことを確認していること、以上の三点を明確に表明していることをお伝えしたいと思います。

 また、日本レコード協会からの照会に対し、アメリカレコード協会、RIAAも、RIAA会員であるファイブメジャーに日本への輸入を禁止する考えがないことを書面で回答しております。

 したがいまして、アメリカ、イギリス等の欧米で販売されているレコードの日本への輸入が禁止されることはございません。

 二番目のポイントといたしまして、日本のレコードの価格は高過ぎるのではないかという御指摘でございますが、まず、私は、日本のレコードの価格は、欧米先進国と比較して、決して高くないと考えております。

 日本のレコードは、価格の多様化、低価格化が進んでおりまして、昨年一月から十一月までに日本レコード協会会員レコード会社が発売した邦楽アルバム四千四百四十五タイトルの価格を分析いたしますと、二千五百円未満の価格のものが四一・五%と最も多く、平均価格も二千三百十五円であります。

 確かに、欧米先進国の中でアメリカは日本より二割から三割程度安いと認識しておりますが、世界の六十二億人のマーケットを対象とするアメリカと一億三千万人をマーケットとする日本との市場環境の差、あるいは欧米に比べて豪華な仕様を好む日本の国民性などを考えますと、単純に比較することはできないと思われます。

 もちろん、よりよい音楽をより安い価格で国民に提供することがレコード会社の責務でもありますので、今後も不断に経営努力を続けてまいりたいと考えておりますが、具体的には、価格の多様化や低価格化、収録曲数の増加、CDとDVD複合商品の販売など、消費者ニーズに応じた作品を提供してまいりたいと思います。

 三番目でございますが、レコードの再販制度は廃止すべきとの声に対しまして、このように考えております。

 再販制度は、日本の音楽文化を維持するために極めて重要な制度であると考えております。日本では、全国津々浦々どこでも同じ価格でレコードを購入することができ、また、売れ筋商品に集中することなく、邦楽のJポップ、純邦楽、童謡から、洋楽のポピュラー、ジャズ、クラシックまで、世界有数の幅広いジャンルのカタログが発売されております。

 また、制度の運用については、二〇〇一年三月の再販存置の結論以降も、消費者利益の確保のために弾力運用を積極的に進めております。例えば再販期間は、二年から一年へ、さらには六カ月へと、短縮に向ける取り組みが進んでおります。さらに、価格の多様化、低価格化が進んでいることは、先ほど述べたとおりでございます。

 再販制度については、公正取引委員会において、著作物再販協議会など消費者の代表も入った検討の場が設置されております。そのような場で私どもからも運用状況を十分に御説明し、御理解を得たいと思っております。

 最後に、音楽レコードの還流防止措置の導入に当たり、私の決意を申し上げて、意見陳述を終わらせていただきたいと存じます。

 一番目、還流防止措置が導入された際には、アジア諸国からの日本音楽に対する需要の拡大に備え、積極的に海外進出を図り、日本の音楽文化の海外普及の促進に努めます。

 二番目、日本の音楽のアジア諸国へのマーケット拡大によって得られた利益は、権利者だけではなく消費者にも多様な形で還元していきます。

 何とぞ、音楽レコードの還流防止措置の導入について御理解をいただきますよう、よろしくお願いを申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

池坊委員長 依田参考人、ありがとうございました。

 それでは次に、弘兼参考人にお願いいたします。

弘兼参考人 漫画家の弘兼憲史です。

 きょうは、昨年八月に設立された貸与権連絡協議会の幹事代理として参りました。よろしくお願いいたします。

 お手元の資料一ページをごらんください。貸与権連絡協議会は、著作者十一団体、業界関係四団体で構成されています。著作者というのは、文芸作家、美術家、写真家、児童文学作家、そしてコミック作家ですね。今回問題となっている著作権法附則四条の二の廃止を求めて、作家、出版業界の意思統一をすることと、法改正後の管理スキームなどを検討することを目的に活動しております。

 コミック業界の状況を申し上げたいと思います。資料二ページ目にあります。

 御存じのとおり、近年は出版不況と言われて久しいのですが、コミック業界も最近の五、六年は大変厳しい状況が続いております。そこに、一昨年秋ごろからレンタルコミック店と言われる業態が急増してまいりました。これが、今回私たちが貸与権獲得を目指して活動を始めたきっかけでした。

 レンタルコミック店の特徴はといえば、お手元の資料の三ページから五ページ目をごらんください。ここで言うレンタルコミック店というのは、いわゆる伝統的な貸し本屋とは異なり、レンタルビデオ店と同じように、大規模に売れ筋のコミックを貸し出している店舗をいいます。時には、コミックを一冊十円で何冊も貸し出しているというところもあります。今後も大手レンタル業者がレンタルコミックに参入を予定していると聞きますので、これからレンタルコミック店が全国に急増する可能性が高いと危惧しております。

 ここで、韓国の実例を申し上げたいと思います。

 貸与権の適用がないままにレンタルコミック店が乱立した場合、どのような事態になり得るのかというのを考えるときに、お隣韓国の例は無視することはできません。お手元の資料六ページ、七ページをごらんください。韓国では、一九九〇年代後半にレンタルブック店が乱立した結果、コミックの発行部数が五分の一から十分の一になったと言われています。今では、九割の読者がコミックをレンタルして読んでいる状況です。つまり、コミックは買って読むものではない、借りて読むものだという空気が支配的になっております。

 昨年我々が実験的に運営したレンタルコミック店、これは千葉県の白井市にあるんですけれども、レンタルコミック店のアンケート調査でも、一たんレンタルコミックを利用すると、それまで購入していた本でも今後はレンタルで済ませるという回答が全体の約四分の三を示しています。韓国の先例は決して対岸の火事ではなく、日本も、貸与権の適用のないままにレンタルブック店の増加を放置しておりますと、同様の事態に陥る可能性は極めて高いと考えております。

 ぜひ御理解いただきたいのは、私たちは決してもっとお金をよこせ運動をしているのではありません。手前みそかもしれませんが、日本のコミック文化は世界に誇り得るものであると考えております。コミックは、単にコミックとしてだけではなくて、アニメーション、ゲーム、テレビドラマなどさまざまなコンテンツに複合的に転換され、まさにコンテンツ・オブ・コンテンツと呼ぶにふさわしい位置を占めております。

 資料の八ページをごらんになってください。一つの統計によりますと、アメリカへの日本のアニメーションの輸出額は、アメリカへの鉄鋼製品輸出額の約三・二倍に当たるとも言われています。ちなみに、数を申し上げますと、二〇〇二年の数字なんですけれども、鉄鋼はアメリカに対して十三億八千万ドル輸出しておりますが、アニメは四十三億五千九百十一万ドル、こういう状況であります。

 この世界に誇り得ると言っていい日本のコミックが、作家にリターンのないまま読み捨てられる状態を放置すれば、韓国の例でもわかるように、必ずコミック文化は衰退します。リターンのない業界に人材は入ってきません。優秀な才能はその才能の発揮場所を求めてゲーム業界、アニメ業界、映画業界など、コミック界を去ってしまうのではないかという強い危機感を抱いています。コミックが衰退すれば、ほかのゲームや映画業界も共倒れになるという可能性もあります。実は、映画の興行収入の約八割はコミックを原作としたものであるというデータも出ておりますので、これはかなり大きい数字であります。

 次に、貸与権獲得後はどういうシステムになるかということについてお話しいたします。

 貸与権獲得後に円滑に権利行使ができるように、ことし三月一日に出版物貸与権管理センター準備会を立ち上げました。ここで行われることは、改正著作権法施行後のレンタルコミック店との間での契約、商品の物流、許諾料の作家への分配など、全体のシステムをスムーズに運営する体制を整えるために、現在着々と準備を進めております。

 貸与権獲得後の許諾条件、つまり、どういう条件でレンタルコミックに貸し出しを認めるかということなんですが、許諾料と貸与禁止期間の二つを大きな柱とします。そして、レンタル業者の団体である日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合、CDVジャパンと何度も話し合いを重ねて、作家、出版社などとレンタル業者が共存共栄できるような条件を模索しているところです。

 我々は、何もレンタルコミック店をなくせと言っているのではありません。なぜなら、それはある程度消費者ニーズにかなっているからです。だからといってどんどんふえてしまっては、韓国のように業界の崩壊を招きかねないので、それは困ります、適度の数で適正なルールで、双方にそれなりの利益を得ようということなんですね。

 特に、貸与禁止期間の必要性については、発売日当日からレンタルを開始した場合は、新刊本の売り上げに多大なる影響を与えるというデータを私たちは持っております。この点、先日、参議院での附帯決議におきまして、一定の貸与禁止期間の必要性が言及されたことに大変感謝しております。

 最後に、我が国が知的財産立国として国際競争社会を生き残っていこうとしているときに、コンテンツの源泉であるコミックが廃れるようなことは絶対に防がなくてはなりません。そのためには、作家が安心して創作活動を行えるよう、法的権利確立が不可欠です。法的権利確立、つまり知的所有権を認めていこうという世界的な趨勢の中で、貸与権を雑誌、書籍にも認めるということを妨げる理由は見当たらないと私は思います。それによって、世界に誇る日本のコミック文化がますます豊かになると信じています。

 何とぞ、貸与権獲得のために皆様のお力添えをお願いする次第でございます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

池坊委員長 弘兼参考人、ありがとうございました。

 それでは次に、高橋参考人、お願いいたします。

高橋参考人 高橋健太郎と申します。

 本日は、このような意見陳述の機会を与えてくださったことに深く感謝、お礼申し上げます。

 私は、過去二十五年ほど、新聞、雑誌などに音楽評論を執筆する仕事をしてきた者ですけれども、去る五月十一日に、私を含む二百六十八人の音楽メディア関係者が、今回の著作権法改正案によるレコードの輸入規制に反対する共同声明を発表いたしました。その二百六十八人の中には、二十五誌以上の音楽雑誌やオーディオ雑誌の編集長、二百人を超える音楽評論家や学者、作家ほかの執筆者の方々がいます。きょう現在、その声明への追加賛同者はさらにふえて三百五十名を超えています。

 また、私たちの共同声明を支持するミュージシャン、アーティストの方々も続々とふえています。その中には、坂本龍一さんのような世界的な音楽家もいらっしゃいますし、人気コーラスグループのゴスペラーズもいます。ゴスペラーズは現在、アジアからの還流盤が流入しているアーティストの一つですが、その還流盤を防止することよりも、現在あるリスナーの選択肢が守られること、そして自由に幅広い音楽を聞くことのできる音楽シーンが日本にもあり続けること、その方がアーティストにとってもプラスであると信じるからこそ彼らも反対の声を上げている、私はそう理解しています。

 さらに、一般の音楽ファンが草の根的な署名運動によって集めた署名が既に五万七千名を超えつつあります。

 さきに私たちは、そうした声を取りまとめた公開質問書を河村文部科学大臣あて及び日本レコード協会依田会長あてにお送りさせていただきました。残念ながら、この委員会で委員の皆様にお配りする締め切り、それは昨日の午後一時ごろだったんですけれども、それまでには御回答をいただくことができませんでしたので、きょう、皆様のお手元には公開質問書のみをお配りさせていただいています。

 さて、以下、法案の内容について私の意見を簡単に述べさせていただきます。

 著作権法というものは、何よりもまず著作権者の利益を、権利を守る法律であると私も考えます。その意味においては、消費者に多少の不利益があることもあるかもしれない。しかし、著作権者の権利が守られ、それによってアーティストがより一層の創造性を発揮することによって消費者であるリスナーにすばらしい音楽が届けられていくなら、消費者もそれは納得し得るものであると考えます。

 しかし、今回の著作権法の改正案、それによる輸入レコードの規制は、著作隣接権者である内外のレコード会社のコントロール、それは価格のコントロールであるとか購入することのできる商品ラインナップのコントロールでありますが、そうしたコントロールばかりを強める法案になってしまっています。それゆえ、このようなリスナーとアーティストからの大きな反発が起こっているのです。

 私は、音楽評論の仕事の傍ら、小さなレコードレーベルと音楽著作権管理会社も運営しております。そういう意味では、私も著作権、著作隣接権を扱う仕事をしております。二〇〇〇年代に入ってから三〇%も売り上げが落ちてしまったレコード業界の窮状も肌身に感じておりますし、私自身、日本の音楽産業が明るい未来を取り戻すことを切に願っておるものであります。

 しかし、音楽シーンの活力を生み出すものは何かといえば、それは、まず、アーティストの創造性の増大であり、そしてリスナーの音楽への高い関心、その関心の高まり、あるいはほかの楽しみよりも音楽の楽しみにお金を使おうとする購買力の増大だと思います。

 アーティストとリスナーの間に位置する著作隣接権者であるレコード会社のコントロールばかりを強めることによって、あたかもアーティストとレコード会社が、あるいはリスナーとレコード会社が敵対するように見えるような状況が今の日本の音楽業界には生まれようとしています。今回の著作権法改正案に限らず、この一、二年、別の原因によっても、アーティストが望まないレコードのリリース方法をレコード会社が行おうとし、そのために、本来創造に向けられるべきエネルギーが、音楽制作の現場で今この瞬間にも別の闘いのために浪費されてしまっているのを私は感じます。そのような状況の中で、音楽産業が発展することはあり得ません。

 アジアでの市場拡大のために還流盤を防止したい、それは私も十分に理解いたします。しかし、そのために、このような副作用の大きい法案を生み出し、その副作用によって、日本国内のアーティストとリスナーがつくり出す音楽シーン、その音楽文化自体が活力を失ってしまったら、今回の法案資料の中にあるような、三菱総研による非常に楽観的な、アジア市場での飛躍的な成長がその中では予測されていますが、そのような成長など到底あり得ないでしょう。

 音楽産業の再生のために何よりも必要なのはアーティストの創造力です。著作権法の改正を行うならば、まず、著作権者であるアーティストの権利を十分に守るための法案を考えるべきと私は考えます。しかし、そのための配慮が今回の法案には十分ではありません。レコードというエンターテインメントが魅力的でなければ、消費者はほかのエンターテインメントを選びます。再販制度と輸入権という二重の保護を受けても、価格や選択肢に魅力がない商品を消費者が買うことはありません。過剰な保護はかえってその産業を衰退させます。

 先週末、私は大手レコードチェーンの代表者と会合を持ちましたが、彼らは、法案が成立した場合の消費者の反発、落胆、怒りが不買運動というような形につながるのではないかということを強く懸念してもいます。あるいは、そもそも還流盤防止のための法案を求めていた著作権者あるいは著作権者の団体の中からも、実際に提出された法案の条文に対する危惧の声が大きくなっていると聞きます。

 このような法案で、果たして本来の目的であった還流盤をとめることができるのか。グレーゾーンが余りに大きく、裁判をしてみなければわからないという条文ゆえに、法案施行後は輸入盤の輸入業者は輸入することに萎縮的にならざるを得ないということが予想されていますが、全く逆の立場から、著作権者が還流防止を求めようとしても、このようなあいまいな条文では、やはり怖くて裁判ができない、萎縮的にならざるを得ない、そういう声が著作権者あるいは著作権者を保護する立場の人々の中からも上がっています。

 なぜそのようにグレーゾーンが大きく、文化庁と税関による運用次第、あるいは裁判所の判断次第という法案になってしまったのか。

 その理由は、そもそもは還流盤防止という差別的な輸入盤の規制が趣旨であったにもかかわらず、提出された法案は非差別的なレコード輸入権を創設するものであったからでしょう。その非差別的なレコード輸入権を創設した法律を差別的に運用すると、現在文化庁は説明されています。しかしながら、内国民優遇の差別的な運用をすれば、それはアメリカを初めとする海外諸国からの非難を受けかねません。そして、欧米のレコード会社が輸入権を行使した場合、それをとめる手だてがどこにもないことが既に先週の委員会でも明らかになっています。

 五大メジャー系のレコード会社だけがレコード会社ではありません。どこかの国の独立レーベルが輸入権を行使したら、ほかもやるならうちもやるという形で、瞬く間に雪崩的に数多くのレコード会社が輸入権の行使を始めることも考えられます。もし独立系のレーベルが行使を始めれば、五大メジャー系のレコード会社ももはや行使をしない理由を失うはずです。

 法案の趣旨と提出された条文の間にこのような矛盾を含む法案、そして海外からの非難を受けかねない差別的運用をしなければならない法案は、施行後に大きな問題を引き起こす可能性があります。そして、それらすべてが日本の音楽文化の未来あるいは音楽産業の未来に大きな傷を残すでしょう。

 その危険性を考えたとき、少なくとも今国会においてはこの法案は一度廃案とし、推進派の方々が還流防止を趣旨とする法案を求めるならば、もう一度、アーティストやリスナー、あるいは私たちのような音楽メディア関係者、さらにはレコード会社の内部、さまざまな音楽関係の業種の間で十分なヒアリングを行い、国会でも十二分に議論を尽くした上でそれをつくることを私は強く望みます。

 以上で、私の意見陳述を終えさせていただきます。(拍手)

池坊委員長 高橋参考人、ありがとうございました。

 それでは次に、デゼルスキー参考人にお願いいたします。

デゼルスキー参考人(通訳) 御紹介いただきましてありがとうございます。ただいま御紹介にあずかりましたGERAジャパン国際レコード小売協会日本支部世話人ポール・デゼルスキーでございます。

 GERAとは、グローバル・エンターテインメント・リテーラーズ・アライアンスの略でございまして、ジャパンのほかにGERA・USA、GERA・UK等、世界十二カ国に姉妹団体を持っております。また本日は、HMVジャパン株式会社代表取締役社長兼HMVアジア・パシフィック統括代表としても意見を述べさせていただければと思っております。

 HMVジャパンはCDのチェーン店でございます。一九九〇年に渋谷に第一号店をオープンし、現在、日本全国に四十五の店舗を構えております。そして、日本で現在、千五百名以上の従業員を雇用しております。HMVは、香港、シンガポール、オーストラリアを含む世界八カ国で音楽ストアを営業しております。

 通常、私どもは、法的または政治的な議題には関与しないようにしております。しかしながら、今法案の場合、幾つかの深刻な懸念があり、これは日本の多くの消費者の皆様と共通の気持ちであると確信しております。

 まず、今回の著作権法の一部を改正する法律案の中の、音楽レコードの還流防止措置に関しまして申し上げます。

 その目的とされている、アジア諸国等でライセンスされた日本よりはるかに安い日本の音楽レコードが還流してくるという問題は理解できるものであり、何らかの措置が必要であることは同意できます。しかしながら、非常に大きな懸念点があります。

 現在の法律案では、残念ながら、私どもの店舗でも消費者の方に楽しんでいただいております洋楽の輸入盤CDも、副作用としてこの規制の対象になります。そして、この点は先日の審議でも明らかになっております。この洋楽の輸入盤の売り上げ枚数は、弊社だけでも年間五百万枚にもなります。

 昨年九月より、日本レコード協会を初めさまざまな関係省庁、団体とも協議を行ってまいりました。そして、何とかこの洋楽の輸入盤が明確に規制の対象にならないようにできないものか、お願いしてまいりました。しかし、著作権法では、内外無差別の原則により、洋楽と邦楽を差別できないとの説明を受けました。

 そういった中、参議院文教委員会での答弁、日本レコード協会が提出されている確認書、参院本会議で可決された附帯決議等、さまざまな形で洋楽輸入盤を適用除外にするという言質は既にいただいております。それは非常に高く評価するものです。しかし、五月二十八日の文部科学委員会の答弁でも、これらには法的拘束力はないというお話がございました。これでは、まだ不安が完全に払拭されないものであります。

 ここで、念のため、実際にCDをお見せしながら御説明したいと思います。

 こちらは、現在日本全国の洋楽チャートでも上位にランクしております、プリンスというアメリカのアーティストのCDでございます。こちらは、再販制度により価格が決まっております国内盤で、二千五百二十円で販売しております。そして、こちらが輸入盤で、当店では千八百九十円で販売しております。この販売価格の差額は六百三十円、つまり国内盤の方が三三%高いということになります。

 また、こちらはやはり人気のあるアーティスト、ノラ・ジョーンズです。このCDの場合、国内盤が二千五百四十八円、そして輸入盤は、当店では千八百九十円で販売しております。この国内盤との価格差は三五%となっております。

 いわゆる洋楽の輸入盤のこのような価格差は、大変一般的であります。そして、五月六日に奥田先生、川内先生より提出された質問主意書に対する答弁書でも、この点は回答されております。しかし、このような価格差があっても、この商品は、今回の法案の言葉で言いますと、不当に利益を害することに当たらないと明確に保証していただきたく、お願いいたします。

 この質問に関しましては、非常に多くの日本の音楽消費者が明確な保証を求めております。既に私たちは、日本先行発売という形で輸入盤より国内盤を先に日本で発売し、ディストリビューターが再販で規制された高い小売価格のCDをより多く売ることにより追加の収入を得るという多くの事例を見てきております。

 つまり、私どもの最初の懸念は、この法案が利益の優位性を利用し、将来的に乱用されるのではないかという点でございました。依田会長からは、そのようなことは起こりません、私どもを信じていただきたいとお願いされました。そして、もちろん、依田会長のお言葉は信じております。

 しかし、この法律は、多くの利害関係者に非常に大きな権限を与えるものです。そして、将来的には会長がコントロールし切れない状態になり、してくださったお約束を守り切ることが難しくなる状況を危惧いたします。

 次に、導入された場合において、実運用面に関する大きな懸念について申し上げます。

 私はHMV香港も統括しておりますので、弊社の事例として、導入されている輸入権がどれほど似通ったものであるか、香港での実例を申し上げます。この件に関しましては参考資料を御提出させていただきました。ここでは詳しいことは申し上げませんが、何千というタイトルの商品が毎週発売になります。それに対して一つずつ許可をとるという作業は非常に困難でございます。そういった影響、こういった輸入規制により香港の市場はダメージを受けて、顧客の選択肢は間違いなく減ってしまいました。

 オーストラリアでは、ここ数年、逆の動きがございました。つまり、輸入規制を撤廃しました。そして、この結果、決して安価な商品や海賊版が市場にはんらんすることもありませんでした。逆に、消費者の選択肢は広がりました。

 私どもの考えでは、この法案は日本での実務面で実際にどのように運用されるかという点において非常にあいまいであると思われます。

 弊社だけでも年間十二万六千種類ものCDの輸入を現在行っております。どのCDが還流防止との表示がされていたとしても、一つ一つ確認作業を行うことは余りにも膨大な作業となります。万一、税関でそのような作業を行った場合、商品が滞留するのではないかとの危惧もあります。流行商品であるCDは、滞留することで商品価値を大きく損なうリスクがあると思われます。また、CDを輸入する行為において、商品を没収されるおそれや、訴訟の可能性などによって輸入行為自体の縮小も懸念されます。

 では、ここで、お時間もありませんので、私が本日申し上げた点につきましてまとめさせていただきます。

 まず第一に、私どもは、日本よりはるかに安いアジア盤の日本音楽の還流を防止する措置には、これは日本の音楽市場に悪影響を及ぼすおそれがあるという点で同意いたします。

 第二に、私どもは、この法案が洋楽の輸入を規制するためには絶対に行使されないという一〇〇%の法的担保をいただきたいと存じます。

 第三に、この法案が導入された場合の実務面に関し、さらに明確な御説明をいただきたいと思います。

 消費者の皆様が一日も早く安心し、懸念を払拭できるよう、ぜひともこの文部科学委員会で十分な検討がなされますよう心よりお願いする次第でございます。

 私からの意見は以上とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

池坊委員長 デゼルスキー参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤信太郎君。

伊藤(信)委員 自由民主党の伊藤信太郎でございます。

 参考人の皆さんにおかれましては、それぞれ専門的な立場から大変有意義な御説明をいただきまして、ありがとうございました。

 私も、議員になる前に映画をプロデュース、監督しておりまして、また、アメリカにおいて、モーリス・ジャールであるとかエラ・フィッツジェラルドとか、あるいはフランク・シナトラとか、いろんな方と交渉して、実際にはモーリス・ジャールやエラ・フィッツジェラルドと一緒に音源をつくって、それを映画のサウンドトラックに使う、また、そのCDを発売しようとしていろいろすったもんだというような経験もありますので、今回の著作権改正の問題というものが、日米の著作権に対する考え方の違いとか、音楽あるいは映画業界の構造の違いということにも関連して、非常に複雑で、ある意味においてはわからない部分も多いことだと思うんです。

 今まで参議院及びこの衆議院においての議論も、議事録も含めて全部読んでおりますので、重なるところは避けて、きょうは少し専門的な部分、かつ日米の法律の差という部分についてお聞きしたいと思うわけでございますけれども、まず依田参考人にお伺いしたいと思います。

 CDを発売するに当たって、今度、映像も入れるということで、DVDといいますか、映像の入った、そしてもちろん音楽の入ったDVDなども出しておられるようですけれども、今度の法律のレコードという範疇にこのDVDも入るかどうかをまずお聞かせください。

依田参考人 お答えします。

 私どもは音楽製作をベースにしておりますが、ただし、音楽製作のマスターライセンス契約の中には、シンクロ権と称しまして映像の権利が入っている場合もございます。したがいまして、それは個々の契約によって違うと思います。

 以上であります。

伊藤(信)委員 まず、メディアのあり方でいろいろ幅広い可能性があるということがもう一つ。

 それと、音楽の権利、著作権であれ、著作隣接権と一口に言っても、御存じのように今度の場合はメカニカルが中心だと思いますけれども、シンクロ権もありますし、ブロードキャスト権もありますし、楽譜の出版権もありますし、それからパブリックパフォーマンスというか公演権もありますので、そういった権利も著作権という範疇には当然入るんだろうと思うんですね。そのことが今度の主にCDだと思うんですけれども、それに多少波及するんだろうと私は思います。ですから、そのことも含めて、個別のことについてお聞きしたいと思うんです。

 まず、今、両参考人から具体的なCDの値段について開陳があったわけでございますけれども、では、その値段の中で、ライセンス料であるとか小売マージンであるとか、あるいは音楽出版社の取り分であるとか、いろいろ諸掛かりといいますか、そういったものは大体どういう配分になっているか。特に、今回問題になっている、アメリカからの直輸入盤がストップするんじゃないかという御懸念が多くの音楽愛好家から寄せられていますので、日米の間でどう違うかということについて、特に依田参考人については、日本人のアーティストによる場合と、それからアメリカの方は、日本の会社がマスターテープを日本で受け取って日本でプレスしている場合との比較、それと、トップアーティストといいますか、一番売れているアーティストの一般的な数字をお聞かせ願えればありがたいと思います。

依田参考人 レコードには、いわゆるレコード会社が、アメリカのレコード会社から日本のレコード会社がそれをライセンスしまして、マスターライセンスをして現地で、日本で製作する、生産する国内盤と、それからアメリカのレコード会社が製作したレコードをそのまま直輸入で日本の子会社が輸入するいわゆる洋盤ですね。それから、アメリカのレコード会社がアメリカの市場で販売したレコードを流通業者がアメリカの国内で買い付けて日本に流通させる並行輸入盤と、三種類あるわけでございます。

 このベースになりますのは、基本的には、日本ではリテールプライス、小売価格から割り出すところの著作権使用料あるいは原盤使用料であります。これにつきましては、日本の例えば二千五百円のCDが発売されているとすれば、その二千五百円に対しての、リテールプライスに対しての著作権使用料六%、あるいはまた一般的には原盤使用料として、私どもは各社マターでございますので私がここで細かく申し上げることは全くできませんが、概算では約三〇%ぐらいの原盤使用料が二千五百円のリテールに対して課せられて、その分が本国の原盤所有者であるレコード会社に払い込まれるということであります。

 そして、著作権の場合には、六%と申しますのは、あくまでも作詞家、作曲家が制作した音楽のいわゆる録音使用料だけでございます。したがいまして、今先生がおっしゃっておられる演奏権であるとか放送権であるとか、いわゆるそういう著作権のほかの支分権については、この六%は何ら支払いはしておりません。

 そういうことでございますが、よろしゅうございましょうか。(伊藤(信)委員「はい、結構でございます」と呼ぶ)

池坊委員長 伊藤信太郎君、挙手して御発言ください。

伊藤(信)委員 はい、失礼いたしました。

 それでは、デゼルスキーさんの方に、アメリカから直輸入する場合の価格の中での案分について、一般的な例で結構でございますが、特に、ヒットメーカーといいますかトップアーティストがつくったものについて、アーティストに対するライセンス料あるは中間マージン、いろいろあると思いますけれども、その辺の案分について、数字をお伺いしたいと思います。

デゼルスキー参考人(通訳) 御質問は非常によくわかったんですけれども、残念ながら、私ども小売という立場でございまして、ライセンス料ですとかそういったことは、全く存じ上げないといいますか、お客様に商品を販売するだけの立場でございますので、ちょっとそちらの方はお答えできないと思います。

 ただ、ここで唯一申し上げられることといたしましては、私ども小売店が得られる粗利、マージンとしましては、国内盤を販売するよりも輸入盤を販売した方が高くなっております。ですから、こちらとこちらのコストの比較をしていただいても、国内盤の方が非常にコストが高く、割高になって生産されているということがおわかりいただけるかと思います。ただ、ごらんになっていただけるとおり、ほとんど同じ、同商品でございます。ただ、こちらの輸入盤に関しましては、もちろん価格の方の設定も当店の方でできますので、そういったところで柔軟性を持たせてお客様に幅広く商品を展開できるようになっております。

 ただ、日本のレコードメーカーさんは、どちらかといいますと小売店には国内盤の方を売ってほしいと思っていらっしゃいます。ただ、それは私どもが決めることではなく、消費者の皆様がお選びになって、国内盤にするか輸入盤にするかを決めるべきだと私は思います。そちらは、選択肢がなくなるということを非常に大きく心配しているわけです。

伊藤(信)委員 ありがとうございました。全部が明らかになったわけではありませんけれども、多少なりともライセンスとかあるいは小売マージンの関係が明らかになったんだなと思います。

 そこで、日本では著作権と著作隣接権というふうに分けておりますけれども、アメリカの場合は、それ全体をひっくるめて著作権というくくりになるというような大まかな違いであろうと思います。日本で言うところの著作権者、著作隣接権者の中に、例えば私が音楽をつくった場合は、それを例えば、どこでもいいですけれども何とかチャペルとかに管理契約を結んでもらうわけですね。その管理契約は、ライセンスフィーの中のパーセンテージで取るのが一般的な商慣習だと思いますけれども、そのほかに、音楽出版社というものがそこのライツを持つということもあるわけでございまして、また、その音楽出版社から権利を譲り受けるというところもありまして、サブパブリッシャーになるということもあるわけですね。そこからライセンスをもらうライセンシーというのもいるわけで、事ほどさように音楽業界というのは非常に多くの方の権利関係というものがふくそう的になっております。

 アメリカの場合は相対契約ですので、ケース・バイ・ケースで、例えばアーティストが非常に強い場合はロイヤルティーのパーセントが最大、リテールの二〇%とかいう場合もありますし、逆のケースもありますし、それから、さっき言ったメカニカルとかブロードキャストとか、個別にパーセンテージが異なるわけなんです。

 今度の法律改正で問題になるとすれば、いわゆる今申し上げた、管理契約を結んでいる管理会社とかあるいは音楽出版社とかサブパブリッシャーとかライセンシーも、日本で言うところの著作隣接権者あるいはアメリカで言うところの著作権者に入るのかどうか。

 つまり、流通経路あるいは製作プロセスの違いによって、それぞれの権利者の取り分というのがおのずから異なってくるわけなんですね。そして、当然、自分の取り分が減らされたグループといいますか会社なり組織が、そのことをもって著作権の侵害だというふうに訴える可能性がないのかどうか。

 そのことをもって、並行輸入といいますか直輸入盤がとまるケースがないのかどうか。その辺について、前段の質問と後段の質問とあわせて、まず依田会長にお伺いしたいと思います。

依田参考人 大変に重要な御質問で、かつその辺の御説明を申し上げますと多分よく御理解いただけると思うんですが、アメリカの、欧米といいましょうか、アメリカのレコード会社は、全世界、六十数億人に向かって作品をつくっております。英語でつくるわけでございます。したがいまして、アメリカで製作されるCDというのは、日本だけを限定にしたものでは全くありません。全世界です。そして、そのCDが、アメリカの国内に流通しているおびただしいCDの一部が日本に輸出されてくる、これが並行輸入です。

 いわゆるそういう並行輸入でも、アメリカでは既に著作権者に対する著作権使用料はレコード会社が払い込んでおります。ですから、アメリカで流通するレコードの生産数がふえればふえるほどアメリカの権利者は潤うわけでございますね。

 そういうことで、今世界に流通しているアメリカのいわゆるCDが、メジャーと称して全世界の七五%を占めているというのが実情です。

 ですから、日本が日本のいわゆる国内事情によって、世界六十二億人に向けてつくられたCDに日本輸出禁止、そういう表示をすることが現実的にあり得るのかということなんですね。それはないと見ています。

 もしも、あったとしても、今度はアメリカの原著作権者等が、なぜそうするんですか、私たちは全世界に向けてつくっている、もともとアメリカが中心であっても、それは全世界に流れていくことは承知の上でつくっているわけですから、それを日本が日本の国内事情で輸入禁止ということにしますと、これは逆にアメリカサイドから、あるいは欧米の原著作権者からクレームを受けることになります。そういう問題が一点ございます。

 それから、今回の還流防止措置についての法的な、著作権法的な支分権でいきますと、これはあくまでも、先ほどから申し上げていますが、録音印税という形で、音楽を複製して、それをCDに複製して録音するその権利についてのみ我々は支払いをしていますから、そういう意味においては、アメリカで流通しているCDはすべてその権利は権利処理を行っておりますので、申し上げましたように、日本でそれをとめるということは、アメリカの著作権者の皆さんにとっては不利益ということになるわけでございます。

 ということで御回答、よろしゅうございましょうか。

伊藤(信)委員 依田会長の御見解だと、そういうことはないということでございましたけれども、私もアメリカでビジネスをしていまして、アメリカの音楽関係のローヤーといいますか弁護士は本当に厳しい闘いをしておりまして、どこでもすきがあれば法的なものを見つけてみずからの利益を獲得するということは、それは弁護士の仕事だと思うんですけれども、そういうことでございます。

 今回は、日本の法律で還流を阻止させようということでやっているわけですけれども、その副作用ということで、洋盤の輸入がとまるかどうかということが今イシューになっていますけれども、これをアメリカの弁護士が見つけた場合、原著作者とか出版管理契約とか、あるいはライセンスの契約そのものは大体アメリカで行われていますね。そうすると、その間の係争の一般的な準拠法はカリフォルニアローであったりしますし、また裁判管轄権もアメリカになるケースが多いし、私の持っている契約書は全部大体そう書いてありますね。そうすると、それらの権利者が訴えた場合に、これはアメリカで裁判をしてほしいという話が出てくるだろうと思うんです。しかし、これはあくまで日本の法律ですから、裁判管轄権は日本にあると思いますけれども、いろいろその辺の御経験もあるので、実態なり、危惧を払拭できる御自信について、依田会長からお伺いしたいと思います。

依田参考人 ちなみに、私は日本のレコード協会長を務めると同時に、世界の、インターナショナル・フェデレーション・オブ・フォノグラフィック・インダストリー、国際レコード産業連盟の理事もしております。そういう意味では、いわゆる原盤権関係については、世界的に支持されております。先週もロンドンのIFPIの中央理事会に出て説明してまいりました。

 一方、日本のJASRACは世界で最大級の著作権使用料管理団体でございまして、JASRACも私どもと全く同じ意見を持っておりまして、例えば、JASRACが、海外で行われるそういう会議において、その辺の説明は随時していただいております。

 例えば、最近でいえば、録音権協会国際事務局、BIEMという会合がございます。そこでも説明をしていただいたそうでございまして、そこで得たリアクションは、経済的な利益の伴わない権利行使をすることはあり得ない、このことは、録音権管理国際事務局における還流問題の討議の場において、JASRACにより、還流防止措置の趣旨を報告し、各国著作権団体も十分理解しているところであります、ということで、これは、全世界のいわゆるレコード製作者あるいは著作権団体も、ぜひこの措置は必要であるということで理解を得ております。

 以上であります。

伊藤(信)委員 そうすると、ASCAPとかBMIとも話がついているということと理解していいでしょうか。

依田参考人 ASCAPにおきましては、これは演奏権でございますので、私ども、先ほどから申し上げております録音権とは別でございますので、逆に言いますと、この並行輸入盤がとまって、日本での市場のいわゆる存在感が失われることによっての、コンサート等に影響がありますから、逆に言えば、ASCAPもこれについては賛同するはずでございます。そういうふうに考えております。

伊藤(信)委員 委員長、その辺、ぜひ書面をもって確認していただきたいと思います。

 残り少なくなりましたけれども、弘兼憲史様にちょっとお伺いしたいと思います。

 私も小さいころ、小遣いが少なくて、そのころは小さな貸し本屋に行って、よく先生の作品なんかも読ませていただいたんですけれども、そういう従来からある貸し本屋、その営業なりのあり方というものは、やはり日本には愛着がありますし、またそういうニーズもあるんだろうと思うんです。今回の措置によって、そういう従来の貸し本屋が生き残れる道というのはどのように担保されているか、それを最後にお伺いしたいと思います。

弘兼参考人 お答えいたします。

 旧来の貸し本業界の方が極めて零細であるということは承知しております。全国貸本組合との間で一昨年末から協議を重ねてまいりまして、貸与権連絡協議会としましては、零細な貸し本業者さんに対しては権利行使をしないという決議をいたしました。

 では、どこまでが零細だという一定の基準があるんですが、具体的には、二〇〇〇年一月一日以前から継続している店舗で、かつ蔵書が一万冊以下の店舗という、そういう数字を出しております。その方々に対しては、権利行使はいたしませんと。ただ、レンタルコミックというような大きな業態といいますか大きな業界に対しては、我々の権利を主張したいなというふうに考えております。

伊藤(信)委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。

池坊委員長 川内博史君。

川内委員 民主党の川内でございます。

 依田会長様、弘兼憲史さん、そして高橋さん、ポール・デゼルスキーさん、きょうは、お忙しい中をお運びいただいて、ありがとうございます。心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。

 時間も二十分と限られておりますので、早速お伺いをさせていただきたいと思います。

 まず高橋参考人、それから依田会長に伺わせていただきたいんですけれども、今回の法案というものが、著作権者あるいは創造の源であるアーティストにとってどのような影響が出てくるというふうにお思いかということを聞かせていただきたいと思います。

高橋参考人 時間も限られていますので、幾つかのポイントにだけ絞ってお話しさせていただきたいと思います。

 まず、音楽の創造のサイクルというものは、特にこの日本においては、幅広い音楽を聞くことによって育ってきたということがあると思います。その意味において、輸入盤規制によって、もしリスナーの選択肢が狭められるなら、アーティストというのももともとはリスナーから育つものですので、その意味において、アーティストが育ちにくくなる、あるいは音楽の創造性が狭められるという危険性があると思います。

 今のは総論的なお話ですけれども、具体的に、今回の法案の中に、私が非常に懸念を持つポイントがあります。それは、政令において定める最大七年の輸入禁止期間というところです。国内盤が発売されてから最大七年間は輸入禁止措置がとられるようにこの法案ではなっています。同じような輸入権が創設されている香港でも、現在、それは十八カ月です。

 一方、日本の国内のレコード会社は、最近、発売したタイトルをどの程度の期間、生産、販売するかといいますと、一年程度で生産、販売を中止してしまう例がとても多いです。これを私たち廃盤と呼んでおりますが、コンテンツを利用するという意味では、例えば、私は音楽出版社をやっておりますので、作詞、作曲に廃盤はありませんですから、廃盤にしてほしくない、生産、販売を中止してほしくないわけですけれども、一年程度で生産、販売が中止される例がとても多いです。

 もし輸入禁止措置がとられたレコードが一年程度で生産、販売を中止された場合、そして、もし最大七年の輸入禁止措置が解除されない場合、最大六年間、そのタイトルは日本で買うことができません。買いたいけれども買うことができないということは、著作権者にとっては、売りたいけれども売ることができないということです。この点では、作詞、作曲家あるいは実演家といった著作権者の不利益が起こり得る可能性をこの法案はとても持っています。

 これを避けるには、生産、販売をレコード会社が中止する際、そのことを文化庁、税関にレコード会社が通告し、あるいはすべての著作権者、著作隣接権者に通告し、輸入禁止措置を解除するようにしなければ、必ず著作権者の不利益が起こります。日本のマーケットを六年間も失うということは、そのアーティストにとって致命的です。ですので、私はそのようにレコード会社に、生産、販売を中止する際には、それを税関、文化庁、そしてすべての著作権者、著作隣接権者に通知する義務をこの法案の中に加えるべきだと考えます。

依田参考人 お答えいたします。

 七年間というのは、私どもが、過去数十年にわたってリリースされたレコード、CDがライフサイクルで何年あるのかという科学的な数値をベースにしてつくり上げた七年間でございます。

 実を申しますと、私は五十年を主張しておりました。それは、著作権、著作隣接権は五十年であります。なぜその五十年の権利を我々は七年まで詰めなければならないのかということについては、はっきり申し上げて非常に不満です。しかし、何とかこの法律を皆さんに理解していただくためには、この辺の調整はやはり必要であろうということで、一つの論拠として、過去発売した作品の平均的なライフタイムを七年というふうにつくり上げたわけでございます。

 それから、先ほど香港とかオーストラリアの話が出ましたが、香港もオーストラリアも輸入大国でありまして、いわゆる洋盤をベースにする、要するに輸出を目的としたレコード生産国ではありません。日本は世界第二位のレコード生産大国でありますが、オーストラリアはほとんど自国での生産はございません、輸入だけでございます。状況が違います。香港の場合も、そういう意味で違う論理であるというふうに私は考えておりまして、いずれにしましても、七年間はそういう論拠がきちんとございます。

 以上でございます。

川内委員 オーストラリア、香港のことは、また会長と、今度別な場でゆっくり議論をさせていただいてもいいかなというふうに思います。では、今、日本も音楽の輸出国であるかというと、そうではない、まだそうではないということは言えると思いますから、オーストラリア、香港、あるいは日本というのは現状では同じ状況であるというふうに私どもは思っているからこそ、この法案に対する質疑をさせていただいているわけでございまして、では、その観点から依田会長にお尋ねをさせていただきます。

 会長がまだレコード協会の会長としてお仕事をしていらっしゃるうちは、いろいろな約束は有効かもしれない。しかし、歴史は流れるし、時も流れるし、人も変わるということであります。現在は欧米からの輸入盤がとまるということはないかもしれない。しかし、その約束は将来に向けて、未来に向けて約束をされたものであるかどうかということに関しては、会長はお約束ができないというふうに思いますが、いかがですか。

依田参考人 社団法人日本レコード協会は六十二年の歴史を持っております。そして、今回、このような法律制定でいろいろお願いしているのは初めてでございます。

 その中で、四月末のレコード協会の理事会におきまして、私はレコード協会会長として、社団法人日本レコード協会の理事の総意でこの問題についての審議をいたしました。そして、日本レコード協会としては、将来洋楽がとまることはないという理解であることを議事録にとどめて、文化庁に提出をいたしております。したがいまして、私は、一個人ではなく協会長として、社団法人日本レコード協会が存続する限りにおきましてこの議事録は重いと思っております。

 であるがゆえに、附帯決議で、もしも私どものとる商活動が今回の法律の本旨に基づくものとかけ離れた場合には、その存廃も含めてのいわゆる決定を立法府の皆様方に、先生方にお任せするという形で、リスクをしょったそういう議事録もつくっておりますので、御理解賜りたいと思います。

 それから、先ほどの点で一つ申し落としましたが、まず、今世界じゅうで非常に大変な音楽業界の中で、ビートルズが四十年も前に出したレコードがなぜ今でもきちんと存在して、そしてアルバムとして発売されるんでしょうか。これは、やはり著作権であり、著作隣接権がある。これがいわゆる再リリースで出てくるわけでございますから、七年間、一度出したら七年間眠っているわけではございません。そのアーティストはいろいろな形で、亡くなったアーティストであっても復刻盤として出たりします。ですから、そういう意味においては、楽曲一曲一曲に瑕疵があってはならない、こういうことでございます。

 以上でございます。

川内委員 依田会長、ここは会長の意見を聞く場ではなくて、私の聞いたことにお答えをいただきたいと思うんですが、その約束が将来まで拘束するものであるかどうか、権利行使をしないというメジャーの言葉が将来にわたるまで担保をされているものであるかどうかということを私はお尋ねしたんですが、今の会長のお答えは、レコード協会の議事録は重いというお答えで、若干すれ違っているわけであります。

 それでは、言葉をかえてお聞きしましょう。

 ファイブメジャーの本社の取締役会なりあるいは社長さん方なりの権利行使をするつもりはないという意思の表明は、今まで私たちは一度も聞いたことがないし、一度も見たことはございません。依田会長がそこまで自信を持っておっしゃられるその根拠、いつ、どの会社のどういう立場の方がどの場で、そのようなことをおっしゃられたのか、また、それは文書としてしっかりとあるものであるかどうかということを教えていただきたいというふうに思います。

依田参考人 まず、メジャーファイブの話が出ておりますが、世界には無数のレコード会社がございますが、メジャーファイブがほとんどの、七五%のビジネスをやっておりますということでメジャーファイブと申し上げていますが、そのメジャーファイブの中にもそれぞれの会社の特性がございますから、ほとんどのメジャーは日本の判断に任せます、これは日本の問題ですというメーカーもございます。あるいは、本部の方でこれについては了解しましたというメーカーもおありのようです。ただ、それが取締役会として決議されたかどうかについては、私は存じておりません。

 ただ、少なくとも、日本レコード協会の理事である会員社の理事の皆さんの考え方をきちんと整理したところ、洋楽の並行輸入をとめる、そういうことを依頼するつもりもないし、また、本邦においては現地のライセンサーとしてはとめませんということを言っておりますということで、私どもは、一応担保しているというふうに考えております。

川内委員 確認します。レコード協会長として、依田さんは、メジャーの本社の方々に対して一社一社確認をおとりになられたわけではないということでありますね。

依田参考人 これは、各社のそれぞれの考えがございますので、私の方から日本のレコード協会長としてそれを行うことはできません。また、いたしてもおりません。各社の、日本の法人のトップがレコード協会の理事でございますので、皆様方の考え方をお聞きし、整理したということでございます。

川内委員 ファイブメジャーの実際の権利者であるファイブメジャー本社の意思というものは確認をされていないということが、今ここではっきりとしたわけであります。

 空き地があって、その空き地を通っていいですか、通れるだろうかと考えたときに、隣のうちの人とかあるいはその土地の所有者の親戚とかが、いや、通っていいんじゃないでしょうかといって通ったら、実際に土地の所有者が後で、そこは通っちゃいけない土地だったんだ、おれの土地だぞということは十分あり得るわけで、ちょっと会長のおっしゃることは、実際の権利者がどう考えているのかということを確認していないという意味において、私は、今までの音楽ファンに対する説明として不誠実なものじゃないのかなという気がいたします。

 さらに続けてお伺いをさせていただきますが、消費者団体との説明会の中で、ドン・キホーテなどのディスカウントストアで売られているアジアからの還流盤、数は少ないですけれども売られています。私も見に行きました、今回のことが契機で。大体、千五百円とか千六百円ぐらいで売られているんじゃないでしょうか。その千五百円、千六百円で売られているものについて、問題にする気はないと会長がおっしゃいました。

 会長は、日本の邦楽については権利者でありますから、権利行使をするかどうかを決定する権限を持っていらっしゃいます、邦楽については。洋楽については権利者ではありませんから、決定権はありません。邦楽については権利者で、決定権を持っていらっしゃる。そうすると、ドン・キホーテなどで売られている邦楽の還流盤、現状の値段のレベルであれば権利行使をするおつもりはないということを消費者との懇談会でおっしゃっていらっしゃいますが、それでよろしいですか、確認させてください。

依田参考人 詳細にわたった点についての整理はまだしていませんが、基本的な考え方を申し上げますと、もしもレコード流通のお店あるいは一般の小売店で販売されているCDに還流品という表示があった場合には、これは還流品として認められないものは認められません。ですから、価格によって認める認めないの問題ではないと思います。千五百六十円という価格が果たしてどういうものなのか、一過性のものなのか、プロモーションなのか、ロスリーダーなのか、それもわかりませんし、ですから、価格のことで私が一つ一つコミットすることはあり得ないと思います。

 ただ、そこで還流品というコーナー、山があって、隣に正規品があって、そこで大きく権利者の利益を損なうような状態においては、この還流品は違法ですということを言わざるを得ない。これがみなしだと思っております。

 以上です。

川内委員 もうあと質疑時間がなくなってしまいました。

 私も、著作権というか、権利者の権利の保護ということについては十分に理解をしておるつもりでございます。したがって、貸与権については、弘兼先生、理解をしているからこそきょうここで何もお聞きしなかったわけでありまして、貸与権については、先生がお願いしますと言われなくても、わかりましたということは申し上げることはできるわけでありますが、還流防止措置については、まだまだ理解が浸透していないし、説明も不十分だと思うからこそ、こうしてしつこくいろいろなことをいろいろな観点からお伺いをさせていただいているわけであります。

 レコード輸入権、還流防止措置と再販制度、二つの保護措置にこれからレコード業界は守られる業界になっていくのかもしれない、まだ法案が通っていないですから。そうなると、世界でただ一つの国ですね、再販制度と還流防止、輸入を規制するという二重の保護措置を持っている国は。私も、どっちかだと思うんですよ。再販制度で国内価格の維持を図るのか、それとも外から入ってくるものをシャットアウトして国内的には価格は自由にするのか、その二つに一つだと思うんです。そうでなければ価格競争が全くなくなるわけですから。

 依田会長、ここで、日本全国の音楽ファンがこれは聞いていますから、ここには傍聴席にはだれもいませんが、何人かいますが、ネットで物すごい数の方が聞いていますから、CDに関しては輸入権はどうしても欲しい、だから再販はあきらめる、再販は手放すということをおっしゃっていただきたいと思います。

依田参考人 そういうお返事をしなければ答弁できないのであると困るのですが、はっきり申し上げまして、二つとも全く違ったものでありまして、その必要性について、時間の関係もありますので端的に御説明申し上げます。

 再販があっても、競争ができないのではなくて、再販の中で幾らでも競争が行われています。三百円のCDもあります、三千円のものもあります、千五百円も、千二百円も、千八百円も。ですから、再販があるから価格を高どまりしているのではございません。ただ、一定期間のいわゆる小売価格を再販で守って、それによって原権利者にきちんとした対価を払い、そして製作者もそれによってコスト計算ができる、これは世界にまれに見る大変立派な法律だと思っています。

 これは、決して我々の、産業界のエゴのために存在するのではございません。それによって、日本の多くの音楽ファンが、愛好家がたくさんの音楽を楽しんでいるわけです。もしもすべて高どまりしているのであれば、これは問題です。実際よくごらんになってください。昨年一年間で、日本の一番安いCDは三百円から三千三百円までございます。その中で競争しているわけでございます。それは、海外のレコードも同じ土俵で競争、かえってフェアでございます。なぜならば、同じ値段で売れるか売れないかの競争をするわけでございますね。売れなければ、非再販になったら、値段が下がるわけでございますから。

 それから、輸入権については、レコード還流防止措置については、したがって、これは全く違う問題でございまして、日本のレコード産業は今四千五百六十億の産業基盤まで縮小しておりますが、しかし、通関統計だと輸入が三百億、輸出が二十七億、こういう数字でございます。輸入が三百億で輸出が二十七億なんです。要するに、何もしていない、できないということなんですね。それを海外に展開しよう、それは決して産業論ではなくて文化論として、例えば中国の北京に行って、ぜひ今度、私どもが展開しております北京の音楽情報センターを訪れてみてください。多くの若い中国の子供たちが一生懸命聞いています。これは大変なやはり文化的な側面を、我々は中国政府からも非常に評価をいただいております。

 そういう意味で、私どもは、決してこの還流防止措置が、日本の業界のエゴのためではなくて、海外進出で東南アジアの近隣諸国との善隣友好を深めるという意味においても大変大事な法律でございますので、再販と還流防止措置を一緒にしないで、また別途、我々は、再販については非常に気をつけて、なるべく国民の皆さんに理解を得られるような形で努力しておりますので、ぜひその辺の御理解を賜りたいと思います。

川内委員 質疑が終わっておりますので手短にさせていただきます、委員長。

 還流防止も再販の維持も、どちらも独禁法上の適用除外ですから、保護政策なんですね。そういう意味では、二つの制度を別々だと言うのは詭弁だということを、これは音楽ファンが皆さん言っているわけです。

 みんなに理解をされる制度でなければ、どんな制度をつくってもそれは意味がない制度になってしまうんだということを私たちは繰り返し繰り返し申し上げておりますが、依田会長とはこれからも長いおつき合いをさせていただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げさせていただきたいと思います。

 終わります。

池坊委員長 横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。きょうは、四人の参考人の皆様方、それぞれのお立場からの貴重な御意見ありがとうございました。

 それでは質問させていただきます。

 今回の法改正、これはレコードの還流防止措置、そしてまた書籍、雑誌の貸与権付与、これがテーマでございますが、日本全体の実演家の著作権あるいは著作隣接権、これはちょっと実演家の話になりますが、まだまだ保護されていない部分が多いんですね。音の方に関する権利はWIPOでもかなり進んでおります。しかし、映像に関してはまだまだそれぞれ意見がございまして、今回も、ほとんどの項目は合意できたんですが、最後の一項目だけアメリカとEUが対立して合意できない状況にあるわけですが、映像に関する権利。国内においても、実演家の著作隣接権、私も実は隣接権者なんですが、要するに権利がまだまだ弱いんですね。

 とりわけ、これだけいろいろなメディアの進展によって、二次利用、いわゆる再利用が非常に多い。しかし、局で制作される番組あるいは制作会社でやられる番組、差があるんですね、保護されている部分、あるいは保護されていない部分、著作隣接権、実演家、俳優その他含めて。私たちが出演した作品で再放送、再々放送をやられても、一銭も実は入りません。それぐらい保護されていない部分もある。そういうことも含めてちょっとお尋ねをいたしたいんです。

 デゼルスキーさんにまずお尋ねをいたします。

 米国の国内向けに出荷されました音楽CD、これを仕入れた後に保険料を含めて輸送に係るコストというのは一枚当たり大体どれぐらいかかるのでしょうか。

デゼルスキー参考人(通訳) こちらの方は、仕入れの枚数によってこういった輸送のコストは変わってきますけれども、大体の概算で申し上げますと、その商品の仕入れ値の四%から五%が輸送費並びに保険が入ったコストになります。ですから、小売価格の二、三%とお考えいただければよろしいかと思います。

横光委員 販売価格というのは、仕入れ値、そして保険料、輸送料、そういったものがトータルされての販売価格になろうかと思うんです。

 先ほどCDを持参されて説明がございましたが、私が調べたCDをちょっとお尋ねしたいんですが、ロレッタ・リンというアーティストがありますね。ここで、「ヴァン・リア・ローズ」という若者に大変有名な曲があるんですが、これが米国では大体十二・九九ドル、これぐらいの小売価格で売られているんですね。大体十二・九九ドルというと千四百円ぐらいでしょうか。これが日本のHMVでは、メード・イン・USAの輸入盤が税込みで二千五百十九円で販売されております。どうしてこういうことになっているんでしょうか。

デゼルスキー参考人(通訳) 残念ながら、個別のタイトルごとに関しまして、私、手元に資料がございませんのでお答えできないかと思うんですが、やはり、ここで申し上げられますのが、どこのお店で売っているかにもよりますけれども、そのお店がその商品を仕入れる際、どれぐらいのボリュームでその商品をアメリカから輸入してきたかということによって大きく変わってくると思います。

 アメリカでありますと、一枚買っても一万枚買っても、そんなに、さほど差はないと思いますけれども、そういったことを考えていただければ、日本に輸入してくるということで、一枚なのか一万枚なのかで大きく輸入費の差が出てくるということはおわかりいただけるのではないかと思います。

横光委員 同じ輸入盤でも、今度、今私が言った同じこのCDでも、例えばamazon.co.jp、レコードのインターネットを通じての通販ですね。先ほど言ったHMVで二千五百十九円が、ここでは税込みで千六百二十八円で販売されておる、同じCDが。これはきのう調べた価格です。

 要するに、私がお聞きしたかったのは、なぜこのように価格差があるのか。ここは直輸入、並行輸入という問題に行くんじゃないかということで、お尋ねをいたしたんです。

 次に、依田会長にお尋ねをいたしたいと思っております。

 きょうの御説明、そしてまた参議院での御説明におきましても、欧米からの輸入盤がとまるようなことはないんだ、そのためにファイブメジャーのお話もされました。そういったことは非常に高く評価したいと思っております。しかし、多くの消費者が今大変不安感を抱いているんですね。これまた歴然たる事実なんです、現実なんです。

 私のところにいっぱいファクスが来るんですが、各議員のところにも来ておるでしょうけれども、一つ挙げてみますと、「私にとって音楽とは、生きていく上で欠くことのできないものであり、音楽と、その音楽を創ってくれた人たちを愛しています。 ですから、著作権者の権利が蔑ろにされてもいいとは、全く思っておりません。」こういうふうに、これが大前提なんですね。これが大前提、恐らく音楽愛好家は。「しかし、」とつながるんですね。そこから不安や不信がいっぱい書かれておるんですが、大前提はそこなんです。そこのところをまずアーティストも生産者も私はしっかりと認識していただきたいという思いで、今御紹介をいたしました。

 依田会長の先ほどのお話、還流防止によって禁止するようなライセンサーに対して働きを行う考え方は日本にはありません、また、還流防止措置によって直輸入を禁止する考えのない旨を日本から本国に確認した、いろいろされて、努力をされております。しかし、これは、考えてみましたら、すべて直輸入ということになっておるんですね。

 これは、例えばレコード会社を経由しないで輸入されてくる並行輸入の場合はいかがなんでしょうか。

依田参考人 お答えします。

 先ほども申し上げましたように、アメリカのレコード会社がCDを製作するときに、これは日本向け、これはイギリス向けなんということをやらないんですね、あくまでもアメリカ国内に向けて生産、販売をしますから。ですから、その段階で、直輸入だからオーケー、並行輸入だからとめるというようなことは事実上できないんです。

 アメリカにはおびただしい数のレコード卸業者がいます。一般的にはワンストップといいますけれども、多くのレコード会社がその卸屋さんに商品を卸した段階で、その行く先はもうわからなくなるわけですね。ですから、このロットは日本発売禁止ということは、論理的にあっても、実質的にできないんです。

 そういうことでよろしゅうございましょうか。

横光委員 ということは、このファイブメジャーで確認をとったことは、直輸入の問題だけでなくて、並行輸入もすべて含まれるということでよろしいんですね、輸入がとまることはないということは。

依田参考人 おっしゃるとおりでございます。そのように理解しております。

横光委員 それは信じたい。それは信じたいんですが、仮に、百歩譲って、並行輸入がとまったというようなことが起きた場合、レコード協会としてはどのような対処をされるおつもりなんでしょうか。仮にの話で大変恐縮ですが、あり得ないことでもありませんので。

依田参考人 現状では機関決定も何もしておりませんから、申し上げられませんが、この法律が国会を通過しますと、当然、制度設計がなされます。そして、その段階で関係諸官庁あるいはまた立法府の先生方の御指導も仰ぎながら、どのような運用をするのが一番妥当なのかということについてはこれから決めることでございますが、レコード協会としては、とにかく附帯決議にそごを来さないようにきちんとした運営を図っていくということについては既に確認をしております。どのようにするかについてはこれから決めることでございます。

横光委員 高橋健太郎参考人から今回の法案について大変厳しい御意見が今開陳されました。アーティストとリスナー、それにレコード会社は敵対関係にあるんじゃないかという不信感、また、そういった創造に向ける力を浪費しているんじゃないか、これはいずれは業界の衰退へつながる可能性もあるという御意見、さらには、著作権者、アーティストの権利が第一なんだという御意見、されました。さらに、この法案が成立したら、レコードチェーン店等のお話から、不買運動さえ起きかねないというお話さえございました。いろいろ厳しい意見があったわけですね。

 そこで、依田会長にお尋ねしたいんですが、五大メジャーでは今おっしゃるような確認をとって、心配するなというお話がございましたが、五大メジャーだけではないわけですね、レコード会社は。先ほど高橋さんのお話にございましたように。独立系のレーベル会社、レーベルが権利を行使した場合、この場合、この五大メジャーに与える影響も非常に大きくなってくると思うんですが、これはあり得ることでございますので、いかがお考えでしょうか。

依田参考人 論理的にはあり得るんですけれども、しかし、まず、アメリカの数、アメリカのレコード協会には大体七百社以上のレコード製作者が加盟しているというふうに聞いておりますが、しかし、そのほとんどのレコード製作者は海外に進出したいわけであります、当然であります。

 ですから、それを、要するに輸出をとめる、並行輸出をとめるということは考えられませんし、また、多くのいわゆる独立系のレコード会社は、私ども日本のレコード会社がライセンシーとして商品を扱ってもおりますから、ですから、アメリカ・レコード協会と日本レコード協会が機関としてそういう確認をするということは、五大メジャーのみならず、多くのレコード製作者、レコード会社がこの意見に賛成であるということで私は差し支えないと思います。

 それから、先ほどのアーティストの権利の件でございますが、この点、御理解を賜りたいんですが、レコード会社というのは、CDをプレスしているのは一つの最終段階でございまして、アーティストを育て、アーティストをプロモーションし、アーティストと一緒に制作をしているのがレコード会社でございますから、レコード会社の浮沈はアーティストの浮沈につながるわけでございます。

 日本のアーティストに対する音楽業界の利益分配について、私は、世界でもまれに見る公平、公明正大な分配システムをつくっておりまして、これは本当に日本の音楽産業、レコード産業が世界各国のレコードメーカーから非常に高い評価をされるゆえんであります。

 したがって、私は、アーティストにとっても、実演家ですね、あるいはまた著作権者にとっても、我々レコード会社にとっても、この法律はみんなが喜ぶことでありますから、ですから、あとは消費者の理解さえ得られれば非常にすばらしい法律であると思っております。

 以上です。

横光委員 確かにそのとおりですが、その消費者が今大変大きな反発の声を上げておるんですね。今、五大メジャーの方の考えとその他のレコード会社の方も同じ意見だということでしたが、これは、確認をとっているわけではないんですね、五大メジャーのように。

依田参考人 確認はとっておりません。一々やったら大変なことになります。そこで、一社でも反対するところがあれば、これをどうするかという問題があります。したがって、私は、RIAAの見解にすべて、全幅の信頼を置いておるわけでございます。

 それから、消費者の皆さんについては、実は、昨年十二月八日の日に消費者団体の皆様とも説明会を行いました。そして、御理解いただいたと思っておりますが、この数カ月前から突然、いわゆる洋楽がとまるのではないか、とまるんだ、そういうパブリシティーが、あるいはそういうコメントが散見されるようになりました。そこで、消費者の皆さんは、とまるということは大変だということになってきました。私どもはとまりませんと申し上げているんですが、とまりますということを言われますと、やはり消費者はどっちなんだと。やはり、評論家の皆さんとか、いわゆるパブリシティー、マスコミの言うことは正しいのかと思うかもしれません。

 私は、その辺から、今回非常に消費者の皆さんに混乱を与えていることにつきましては、私どもも少しやり方をきちんとすればよかったかなという反省はしておりますが、消費者の皆様方には御理解いただけるというふうに確信を持っております。

横光委員 そのようになるのがベストなんですが、なかなか、まだまだ消費者の批判の声は激しい、逆に激しくなっているんですね。

 先ほどのデゼルスキーさんのお話で、この法案には同意である、やはり著作者の権利は守る、それはわかるんです。ただ、デゼルスキーさんのお話で、一〇〇%の法的担保、この輸入盤に関して、これが欲しいという御意見もございました。

 これは、恐らく消費者の声でもありましょうし、こういった声があるということを、依田さん、これからもまだまだ審議は続きますので、何とか解消していく努力をしていただきたい。

 それから、弘兼さんにお尋ねをいたしたいんですが、この書籍、雑誌の貸与権ですね。これも、やはり、私も法的な権利の確立は必要だと思っております。そこで、ちょっとお尋ねしたいんですが、出版貸与管理センターですかね、これを今立ち上げようとしているんですが、今の現状をちょっと御報告いただけますか。

弘兼参考人 現在は、来年の一月にスタートするという形で鋭意出版社を通じてそのスキームをつくっている最中でございます。

 私は、作家なもので現場に直接関与しているわけではないので、現在どの辺まで進捗しているかというのはつぶさにはわからないんですが、この配付資料の十一ページに出ておりますけれども、こういう形で、今現在その管理センターの運営についての意見交換を重ねている段階でございますので、契約書ひな形の作成及び代行業者との料金交渉など、実際に運営するときに問題となるような部分を詰めているという報告を受けております。

横光委員 一月一日なんですよ、施行が。そして、この出版貸与管理センターの方で、ある意味では、著作者の許諾を得てすべてそこにお任せする、委託する、そういう形ができない場合は、やはり施行日が来たときに非常に問題が起きるんじゃないかという気がいたしておるんですが、あくまでもこれはレンタル業者との公正ないわゆる使用料というところでの問題にたどり着くわけでございますので、もし、そういったセンターがすべての著作権者の意見を集約してその貸与許諾の同意を得ていかないと、私は、書籍、雑誌のレンタルが、実際の現行のレンタル業者にとっては一時的に貸与サービスが中止になる可能性も起きると思うんですが、その点はどのようにお考えなんでしょうか。

弘兼参考人 具体的な許諾料及び禁止期間というのは、こちら側の条件を提示すれば、相当な条件で提示したい、向こうは向こうの有利な条件で提示したいと言うんですが、双方歩み寄って落としどころを見つけていくという方法しかないのであります。

 作家側の希望というか、私個人の希望もあるんですが、許諾料は定価の一倍ぐらいではいかがだろうかと私は考えております。つまり、定価の倍の価格でレンタルの本は購入していただきたい。それから禁止期間は、これも私の個人の意見でもあるんですけれども、コミックの場合は三カ月という案が現在も提案されております、向こうに対して。この三カ月というのは、週刊連載の場合、ちょうど次のコミックが出るまでの間という形なので、そういう具体的なところで落としどころを見つけつつ、今鋭意努力しておるという状況でございます。

横光委員 一月一日ですので、どうにか努力して混乱が起きないような形でスタートしていただきたいと思います。

 高橋さんに一度お聞きしたいんですが、先ほどデゼルスキーさんが、この法案は輸入盤に一〇〇%の法的担保が必要だという意見がございました、輸入業者として。高橋さんは、この一〇〇%の法的担保というのはどのようなことが考えられると思いますか。

高橋参考人 私は法律の専門家でありませんので、立法府においてどのような法文がつくられれば実際一〇〇%の担保が得られるかというのは、少なくとも現在提出されている著作権法の改正案をどのように修正したらということに関しては、うまくお答えすることができません。

 しかし、私の基本的な考えを申し述べさせていただくならば、著作権法というものを使ってこのように流通の仕組みを変える、そのこと自体に問題があるのではないかとは考えます。先ほど私が意見陳述の中で申し述べましたように、非差別的な輸入権を設ける、これ自体はアメリカはやっておりますし、検討に値することだと思います。しかし、非差別的な輸入権を設けるならば、非差別的に運用すべきです。非差別的な輸入権を設けて差別的に運用する、そのことがすべての問題を生み出していると思います。

 これをもしこの国がやった場合、国際社会においてどうであるか。私は、これは例えば、欧米諸国がそのことに対してどう反応するのか、あるいは、現在アジア盤ということが問題にされていますが、アジア諸国がどう反応するのか。アメリカ盤は規制しないけれどもアジア盤は規制する、あるいは、アメリカ側の権利者にとってみれば、アジア、日本の権利者は権利を行使できるがアメリカの権利者は行使できない、そのようなことが行われた場合、日本という国はどのように国際的に映るか、そのことは非常に問題に思います。

横光委員 終わります。

池坊委員長 富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。四人の参考人の先生方、きょうは貴重な御意見をありがとうございます。

 還流防止措置の質問ばかりが先に出ておりますので、私の方からは貸与権について弘兼参考人にまずお伺いをしたいと思います。

 今、横光議員の質問に対して、三カ月間の禁止期間と定価の一倍の貸与料を個人的には考えていらっしゃるというようなお話がございました。これまでのこの法案の審議、また今回の法改正の背景ということでいろいろ説明されてきた点から考えると、ちょっとそこの部分が詰まらないまま今回の貸与権付与というふうになったのかなというふうに、ちょっとあれっという感じが実はしたんですね。

 今回の法改正の背景ということで、調査室等からいただいた資料によりますと、先ほど弘兼参考人がおっしゃっていたレンタルコミック店、新しい形のレンタルコミック店が大体二百五十店舗ぐらいになりつつある、これも多分急速にふえていくだろう、参入を希望しているところがある。また、韓国でのレンタルコミックの実情から考えて、同じようになったら日本のコミック文化は大変だというような点を指摘していただきました。

 そして、千葉県の白井市での実験の御説明もしていただいて、そういったことを踏まえて、やはり昭和五十九年に経過措置が規定されたときとは状況が違ってきているんだから、今回、貸与権を与えてもいいんじゃないかというのが一点と、従来の貸し本業者の皆さんと協議が調った、きちんと協議ができたんだというのが二点目。そして、集中管理体制、先ほど横光議員の方から御質問ありましたけれども、管理体制についても準備ができてきた。

 大きく分けてこの三つが整ってきたので、今回やはりきちんと貸与権の付与ができるようにすべきじゃないかというふうになったと思うんですが、やはり禁止期間とか貸与の金額の点について詰まっていないというふうになると、やはりレンタルコミック店、先ほどの御答弁の中で、弱小業者には権利行使しない、すばらしいことだと思うんですが、そこの部分があったとしても、もう少し協議がきちんとできていないと、今回の改正に至った背景という前提がちょっと崩れちゃうんじゃないかなというふうに私は御答弁を聞いていて感じたんですが、そのあたりはいかがでしょうか。

弘兼参考人 お答えします。

 これは順番という形になると思うんですが、この問題を論ずるに当たって、まず貸与権というものをやはり認めていただいた上で、小さい、細かい作業にいくというのが我々順番としてはいいのではないかと考えておるんです。

 かつて、レコード業界、貸しレコード屋さんができてきたのが昭和五十九年ですね。そのときには貸しレコード屋さんしかなかったから、当分の間、雑誌及び書籍に関しては貸与権はおいておいていいんじゃないかという形で、それは我々は承諾したんですけれども、さらに二十年たちまして、現在はやはり貸しレコード屋さんができたのと同じ状態の業態ができておるので、とりあえず、まず、小さいことよりも、先に貸与権というのを我々も確保しておいて、その後、細かい作業を詰めていこう、こういう順番でやるのが妥当ではないかという形で現在こういう形をとっておるということです。

富田委員 ちょっと重ねての質問になってしまうんですが、全国貸本組合連合会ですか、これが平成十五年十二月二十四日に、「「文化審議会著作権分科会報告書(案)」に関する意見」という形で、一定期間の貸出禁止や高額の使用料を課すことについては反対だ、レンタルコミック店の有志の皆さんも同じような見解を言っているというような資料もございます。

 ここの部分、貸与権、この法案が通れば認められますので、今後の実際の行使に当たって、弘兼参考人のような御意見で全部まとまればいいんですが、そうじゃないという方もきっと出てくると思いますので、そのあたり、実際にレンタルされている方たちの意見、またこれは最終的にはそこから借りて読む読者の皆さんの負担になっていくわけですから、そこの部分を考えると、やはりちょっとそのあたりについても連絡協議会の皆さんの方でも相当な考慮をするべきだというふうに思うんですが、その点はいかがでしょうか。

弘兼参考人 全国貸本組合が文化審議会に提出した意見書には、「「書籍・雑誌等の貸与」に係る暫定措置の廃止については、“関係者間の合意が形成された事項”とはいまだいえず、協議を続行中であり、さらに検討を重ねるように求めます。」とありますが、この意見書の提出をもって協議会との合意を撤回したものではないという形ですね。私は、余り詳しいことはわかりませんが、この程度しかちょっとお答えできませんけれども。

富田委員 先ほど弘兼参考人が日本のコミックは世界に通用する文化であるというふうに言われたんですが、私は本当にそのとおりだと思うんですね。

 ただ、私自身、余り今、小さいころは確かに貸し本屋で借りていましたけれども、今はレンタルに行って借りるというような思いが余りありません。弘兼参考人が今かかれている「黄昏流星群」は私大好きで、いつも早く出ないかなと思うぐらい、多分そういう読者の方が多いと思うんですね。

 レンタルコミック店に対してそういう貸出禁止期間とか使用料を決める際にも、やはり国民の皆さんが実際に本当に見やすいようなことを考慮してぜひ決めていっていただきたいということを御要望しておきたいと思います。ありがとうございました。

 それでは、次に、還流防止措置の点について御質問しますが、まず依田参考人にお伺いしたいんですが、依田参考人の御説明を聞いていて、もっともだと思うんですよ。自信を持って答えられている。ただ、何となく、きょうの委員会の質問を聞いていると、一人悪者にされているような感じがして大変申しわけないんです。

 この委員会できょう質疑に立つということが先週末に決まったんですが、そうしましたら、いろいろな方からメールがどんどん、全く存じ上げない方からメールが送られてきました。きちんと消費者の側に立った質問をしろ。どうも一般の役所に対する質疑と間違えられてメールをいただいているんだと思うんですが、きょうは参考人質疑ですので、私が問い詰めたりするような場ではないんですが、一つ、そういう中で、全国消費者団体連絡会の方からきちんとした形でお手紙をいただきました。

 その中に書いてあることで、これはやはりちょっと懸念されるんだろうなと思うことがありますので、この点についてちょっと依田参考人にお伺いしたいんですが、こういうふうに書いてあります。「当会の要望事項は参議院文教科学委員会の附帯決議に一定盛り込まれたと捉えています。また、文化庁やレコード協会は、アーティストを含めた幅広い音楽ファン・消費者の懸念について払拭すべく活動を展開されていることも承知しております。」こういうふうに評価していただいた後に、「しかし、一九九一年の著作権法改正に伴い、洋楽CDのレンタル(期間)が国内のあらゆる関係者の合意があったにもかかわらず、米国政府をバックにしたメジャーによってあっけなく踏みにじられたという現実を振り返りますと、CDレコードの価格の高止まり等の懸念は払拭しきれません。」

 ここがやはり、ずっとこの問題に取り組んでこられた方たちにとっては、一つのトラウマでもあるかもしれませんし、せっかく国会でやったけれども、現実問題として、こういう圧力等があったら、やはり動いちゃうんじゃないかというふうな懸念を持たれているんだと思うんですね。そういった点については、レコード協会の皆さんとしてはどんなふうに考えていらっしゃいますでしょうか。

依田参考人 お答えします。

 レンタル制度導入については、これは実は世界に日本しかないレコードレンタルシステムであります。そして、このレンタル制度導入についての論議が始まった二十年ほど前から、世界じゅうのレコード会社はレンタル導入は大反対でした。それが基本になっております。そこで、洋盤、邦盤の区別がありまして、邦盤からスタートした、こういういきさつでございますが、その後のことにつきましては、今私が申し上げることではなくて、当時のいろいろな、政府間、いろいろあったと思います。それについて私はちょっとコメントを差し控えさせていただきますけれども、少なからず、メジャーの皆さんというよりも、レコード業界としてレンタルは大反対、今でもそのように彼らは主張しております。

 そういうことで、ちょっと今回はその逆でございまして、世界のレコード産業もこの還流防止措置導入については賛成をしているわけですから、みんなが賛成していることを私どもやろうとしているわけですから、ちょっと論旨が違うと思うんですね。その程度しか申し上げることができないんです、恐縮ですが。

富田委員 川内議員が大分首をひねっていますけれども。やはりこういう懸念は払拭するようにこの衆議院の委員会でも努力する必要はあると思います。

 デゼルスキー参考人にお伺いしたいんですが、意見陳述の最後に三点ほど御指摘がありました。洋楽輸入規制につながらないんだという一〇〇%の法的な何か保証をしてもらいたいというまとめの中の二番目の御意見ですけれども、一〇〇%の法的な保証というのは、今御自身で考えられているパターンとしてどんなものがあり得るとお考えですか。御意見をお聞かせ願えればと思います。

デゼルスキー参考人(通訳) 私も法律の専門家でないので、ちょっと法的なことは詳細にわたってはお答えできないと思うんですけれども、ただ、いろいろやり方はあるかと思います。

 実は、私どもの方で、各五大メジャーの日本支社の方にコンタクトをとりまして、そういった覚書のようなものを交わしてほしいというお願いをしたことがございます。ただ、残念ながら、そちらの覚書の方はどちらの会社も署名をしてくださっておりません。その当時は、この法案の案がまだできる前だったということもありまして、これがどういった形になるかがわからない状態で、覚書にはサインは、署名はできないというようなお断りのお手紙はいただいております。

 ですから、そういった各社さんの方で個別にそういった覚書を交わすというような方法も一つではないかというふうには考えております。これを日本の各レコード会社さんと私どもの方で結ぶことができれば、アメリカ本社の方からの意向というものは関与できないというふうに思っております。そうすれば、夜もよく寝られるんじゃないかと思っております。

富田委員 ありがとうございます。

 今の点、ちょっと確認ですけれども、それは、国際レコード小売協会あるいは今やられている会社の方が個別に五大メジャーの日本支社と覚書を締結するという方向ですか。それとも、何か別の形でそういったことはないんだという、当事者は一体だれになるんでしょうか。

デゼルスキー参考人(通訳) これは、個別対応ということで言われておりましたので、HMVジャパンとしてお願いを申し上げました。ですから、これは各社さんと私どもとの個別の契約になります。

富田委員 ありがとうございました。

 高橋参考人にお尋ねいたしますが、参考人が配付された資料の十ページに、クエスチョン十九というような形で、権利者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることの論点についていろいろ御指摘がありますが、その前のクエスチョン十八とあわせて、どうも、デゼルスキー参考人の先ほどの御意見の中でも、やはり三割ぐらいは洋楽の方が安いのは当たり前だみたいな印象もちょっとあります。それは、クエスチョン十九の中に書いてあるように、日本における価格差というところじゃなくて、やはり原盤のライセンス印税とか作詞・作曲印税というのはそれぞれまた国によっても違うんでしょうし、そういったところで出てくるんだなというのは、きょうの参考人質疑でよく理解できたんです。

 それを前提にして、このクエスチョン十九の十一ページの三行目、四行目のところに、「今後誤解に基づいた法の運用がなされないよう、法的拘束力を持った形で明確に示していただいて差し支えないはずであり、そのほうが万人にとって有益かと考えます。」というふうに最終的に御意見を言われているんですが、ここの部分、先ほどもちょっと横光委員の方から、別の部分で、一〇〇%の保証の部分で聞かれていましたが、法的拘束力というような形で高橋参考人がお考えになっているような手段は何かございますか。

高橋参考人 何が権利者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることに当たるかというのは、私が考えましても非常に難しい問題であります。最初に御質問された伊藤信太郎先生のお話にもありましたように、著作権というのはいろんな支分権がありますので、きょう、HMVジャパンの方からお配りされた資料の中にフローチャートというものがありましたと思いますが、もしこのフローチャートに従うならば、ちょっと私の手元に今ないので――一つのレコードのさまざまな権利者に、利益があるか不利益があるかというのを確認するのは非常に煩雑な作業になりますね。

 一つの、例えば著作隣接権者であるレコード会社に対して利益がある、不利益がある、著しい不利益があるというようなことが見込まれる場合でも、別の権利者にとってはそれが違う立場になるということもあり得ると思います、著作権契約というのはとても複雑ですから。

 具体的に申し上げれば、例えば、今アジアの音楽が対象になっていますので、例えば台湾のアーティストがいるとします。台湾のアーティストが台湾盤から得る、この場合、実演家印税ですが、実演家印税と、その台湾のオリジナル盤が日本なり海外にライセンスされて発売されるときに得る実演家印税は、多くの場合、自国、台湾で受け取る印税の方が倍ぐらい高いです。というのは、海外でライセンスするに当たっては、ライセンサーとライセンシーの間の交渉などにレコード会社は非常にエネルギー、お金も使いますので、海外にライセンスしたものから得る実演家印税は低く抑えられるようにほとんどの契約においてなっております。

 もし、この場合、レコード会社サイドから見れば、安い台湾盤よりも高い日本盤が売れた方が、例えば価格差が四割あったとしますと、日本盤が売れた方が当然大きな利益が見込まれますが、四割の価格差というのは不当な権利の侵害であると考えられるかもしれませんが、もし実演家の立場から見た場合は、台湾の国内盤の方が倍の実演家印税が設定されておりますので、台湾のオリジナル盤が日本に輸入されて売れたときの方が一枚から得る印税は高くなりますね。

 このような場合が必ずあるかどうかというのは非常に難しい問題ですけれども、本当に著作権の契約というのは複雑でして、特にアメリカなんかの場合は、アメリカの音楽業界というのは弁護士さんが物すごい力を持ちますので、本当にそういうわずかなところに突っ込んできます。多分、伊藤先生などはその難しさをとても御存じだと思いますが。ですので、現在ライセンス料、ライセンス料ということだけが問題とされていますが、すべての著作権者、著作隣接権者の利益、不利益というのを推しはかるのはとても難しいです。

 なおかつ、先日川内先生外が出されました質問主意書に対して文化庁の答弁書がありましたが、それを見ますと、権利者の利益を不当に侵害したということを証明するには契約書を税関に提出させると述べられています。しかし、多くの場合、著作権者、著作隣接権者が結ぶ契約というのは守秘義務がある契約です。守秘義務がある契約を果たして税関に提出しなければならないのか。この辺、実は私にとっても非常に疑問がありまして、ここの部分をどのように解釈して実際に運用されていくのかというのはとても疑問があります。

 ですから、ちょっと私はこの質問にうまく答えることはできないんですが、私の疑問をさらにつけ加えさせていただくような形のお答えになってしまいました。

富田委員 時間が参りましたので終わりますが、我が党の斉藤理事から絶対これを紹介しろと言われまして、文化芸術振興基本法の第二十条に「著作権等の保護及び利用」という条項がございます。この中に、「国は、文化芸術の振興の基盤をなす著作者の権利及びこれに隣接する権利について、これらに関する国際的動向を踏まえつつ、これらの保護及び公正な利用を図るため、これらに関し、制度の整備、調査研究、普及啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。」となっております。これに基づいて今回の著作権法の改正案が出たと思います。衆議院できちんとした審議をして、この国会で必ず通すという決意を述べさせていただいて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

池坊委員長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。最後になりましたけれども、きょうは、四人の参考人の皆様方、当委員会においでいただきまして、どうもありがとうございます。また、貴重な御意見も本当にありがとうございました。

 今回のこの還流防止措置と貸与権の改正についての審議が始まっているところでございますけれども、いろいろと論点も大体見えてきたかなというふうには思っておりますけれども、そういう中で、最後でございますので、私は確認的な質問をさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

 初めに依田参考人にお尋ねしますけれども、文化審議会著作権分科会報告書、報告を見ますと、日本レコード協会によるアンケート調査で、レコード会社十九社中十三社が、この還流防止措置が実施されればアジア諸国に積極的な国際展開をするということが出されています。こういう文化振興のために還流防止措置の積極的な意義があるかと思いますけれども、そういう意義について、先ほども冒頭述べられましたけれども、加えてさらに述べていただくことがございましたら、伺いたいと思います。

依田参考人 お答えします。

 今我々が身近に接している問題として、海賊版の問題、これは日本のコンテンツビジネスに対して大変大きな問題になっておりまして、これは、我々音楽セクターだけでなくて、あらゆる産業セクターで今非常に大きな問題になっていますが、私どもが、海賊版が生まれてきている大国、例えば中国であるとかその近隣諸国を見ていますと、やはり海賊版の撲滅で幾ら我々が切歯扼腕しても、なかなかその効果が上がってこない。しかも、当該国においては政府もかなり力を入れて我々の意見を聞いてくれています。事実、そのようにいろいろな制度も整備されていますが、海賊版はなくならない。

 その中で、我々が海賊版に手をこまぬいているのではなくて、現地に出向いて海賊版に競合できる価格で生産をし、そして音楽文化を一緒につくり上げていこうとする、その努力をする以外に残された道はないということで、少なくとも、先ほどの十九社中十三社というのは、あればすぐに出たいというところが十三社という意味でありまして、基本的には、日本のレコード産業、音楽産業が非常にこの還流防止措置によって担保を得て海外展開をして、海賊版とのフレンドリーな競合の上で、我々の文化産業を、音楽文化を広めていきたいということで、みんな、産業界一丸となって今その成立を待ち焦がれているということでございます。

 以上でございます。

石井(郁)委員 先ほど来ファイブメジャーのことがいろいろと取り上げられておりまして、大変論議も呼んでいるところでございますけれども、この点でも依田参考人に伺いたいと思いますが、私どものところに今いろいろな洋盤CDの問題についての御意見が寄せられますけれども、これもちょっと本当に繰り返しになるかもしれませんけれども、申し上げたいと思います。

 ここには洋楽CDの並行輸入品の存続を望む有権者有志一同によりまして「著作権法改正法案の修正のお願い」という文書が届いているわけでございます。その中にあるのは、日本レコード協会が傘下のレコード会社をして関連のメジャーレーベルに輸入権を行使させないことを約束しても、米英の作詞家、作曲家、実演家が並行輸入を阻止するために輸入権を行使すれば、洋楽CDの並行輸入は許されないことになるということで、これでは、文化庁がレコード輸入権を創設しても洋楽CDの並行輸入には何らの影響もないということで、数少ないよりどころである日本レコード協会の念書はその意味を失うんじゃないかということでございますね。

 こういう御意見が多々ありますので、レコード協会としては、これに対してはどのような見解をお持ちなのかということを、またどう対応されるのかということをお聞きいたしたいと思います。

依田参考人 お答えします。

 先ほども申し上げたと思うんですけれども、音楽産業は、非常にすそ野の広い、数多くの権利者がかかわっております。ですから、異口同音に一〇〇%皆さんが法律等についての理解をできるかどうかについてはまだ定かではない点がございますが、であるがゆえに、RIAAであるとかRIAJが業界全体の総意としての取りまとめをしているということであります。

 なお、私ども著作隣接権者であるレコード業界は、この法律を施行された後、一部のほかの権利者が反対をすればとまるのではないかというお話でございますが、そうあったとしても、我々としては、それは違うんだということをRIAAにも申し上げますし、RIAJとしてもきちんとしたスタンスはもう決まっていますが、もしもそれでこの法律が施行後そういう不都合が起きたときには、そこで附帯決議が有効になるわけでございます。

 今、この世の中において、一般の消費者の理解を得ることができないビジネスはあり得ない、もう昨今は、皆様方、先生方よく御存じのとおり、一つの過ちも即座にインターネットで寄せられる時代でございますから、そんな、業界として、決められた法律にきちんと準拠しないビジネス活動はあり得ませんし、そのときにはきちんとした判断に私どもは従いますということで、これは最大の担保であるというふうに思っております。

 以上であります。

石井(郁)委員 重ねてというか、繰り返しになって大変恐縮にも思うんですけれども、なかなか心配というか懸念が払拭されないという状況もありますので、あえてお聞きをしなければいけないわけですけれども、この文書の中には、今も出てきていますように、レコード協会としてはファイブメジャーの各社に一つずつ念書をとったり何か文書でもらったりという形になっていないという問題がやはりあるかと思うんです。そういう意味で、先ほどの文書なんですけれども、その中に、メジャーの経営者がだれ一人としてそのような表明を行っていない、ファイブメジャーにおいて本当に洋楽CDの並行輸入を阻止する意思がないのであれば、メジャーの経営者自身が直接その旨を表明して洋楽ファンの疑念を晴らすのが合理的だ、そのような行動が一切とられていないということが述べられているんですね。

 今もうお答えいただいているんですけれども、やはり、こういうことに対してレコード協会としてどういうふうにお答えになるのか、ちょっともう一度お聞かせいただきたいと思います。

依田参考人 ファイブメジャーが非常に大きな力を持ちますアメリカにおいて、すなわち、アメリカは法律、契約の社会であります。そのアメリカの企業と我々民間の団体が契約を結ぶことによって法律的に担保されるとは私は思っておりません、これはあくまでも商取引上の契約でございますから。したがいまして、そこで念書をとったとしても、しかし、何かの理由でその念書を維持できなくなるような事態が起これば、やはりそこでまた問題になるわけでございますから、いずれにしましても、念書をとったから、契約書をとったから、これは未来永劫にこの問題は解決というわけにいかないというふうに、そういう考え方も私はあると思っています。

 したがいまして、それよりも、そういういろいろな状況が想定される中において、世界のレコード産業をほとんどカバーしているアメリカのレコード協会、RIAAとRIAJが、そういう意味で、やはりグッドフェースに基づく、善意のそういう取り決めといいますか理解があれば、これで十分であって、しかも、一対一の、一企業と一企業あるいは団体が結んだ契約ということになりますと、アメリカの全レコード会社と契約を結ばなければ瑕疵があります。そういうことができるでしょうか。

 したがって、その総意を代弁するのがRIAAでありますから、一社一社その契約を結びましたかと言われるのであれば、メジャーであってもそれは一〇〇%保証されません。アメリカの全レコード会社と契約を結ぶことは不可能でありますから、その辺についても御理解をいただければと思います。

石井(郁)委員 次に、高橋参考人にお伺いいたします。

 これも五月十一日に「私たち音楽関係者は、著作権法改定による輸入CD規制に反対します」という音楽関係者の声明が出されているかと思いますが、その中に、日本に販売されている作品の輸入盤が、レコード会社が輸入権を行使すると輸入禁止になります、まだ日本販売されなくとも、日本販売された瞬間に、売ることばかりではなく、在庫を所持していることも違法になるので、日本販売予定がある作品の海外盤は、事実上、輸入することができませんということがございました。

 この根拠なんですね、これはどういう根拠なのかということと、この現実的な可能性、こういう事態がどういうふうにして発生するのかということについてお聞かせいただければと思います。

高橋参考人 これは法文を読みまして、私たちはそのように理解しております。法文にそのように書かれております。

石井(郁)委員 いや、そこまでありましたかね、ちょっとなんですけれども。

 その現実的な可能性ということなんですけれども、法律はつくった、法文にあるけれども、どういう事態でそれが起こるかということを、それは私たちが見なきゃいけないことではあるんですけれども、皆さん方の方からはこの法律からどういうことが予想されるとお考えなのかということをちょっとお聞きしているわけでございます。

高橋参考人 法律で与えられた権利をだれかが行使するということはあり得ると思います。ですので、法文にそのように書かれているということは、私たちはそのとおりに読むしかありません。

 また、法律に書かれている以上のことが起こり得るか、起こり得ないかについて申し述べさせていただきますと、この法律が施行されますと、輸入業者には非常に大きなプレッシャーがかかります。なぜなら、もし何らかのレコードを輸入して、それが輸入権を行使したライセンサーあるいはライセンシーなりから裁判が起こされた場合、最大一億五千万円の罰金を伴う著作権法に触れて裁判に負けた場合のリスクがとても大きいです。ですから、疑わしいCDは輸入しない、このような状況に陥ると思います。ですので、この法文に書かれている以上の影響力をこの法律は持つと思います。

 それから、先ほどから五大メジャー、五大メジャーということが言われていますが、私は先ほど、どこかの国の独立系レーベルが行使することはあり得ると申し述べました。現実に、私はたくさんの友人をこの音楽業界の中に持っておりまして、その中の友人の幾つかはレコード会社を経営しております。そのレコード会社は、海外の独立系レーベルからレコードをライセンスを受けて発売しております。

 そうした独立系のレーベルの作品は、現状でも実は並行輸入を締め出すために多くの努力をしております。それはライセンサーとライセンシーの間の契約において実行されております。つまり、オリジナル盤を発売するレコード会社が、アメリカならアメリカ国内において輸入業者になるべくそれを販売しない。特にヨーロッパの場合は、輸入経路がかなり限られておりますので、そうした契約者間の努力によってほとんど並行輸入は売られないぐらいの状況ができております。

 しかし、この輸入権がもしここで創設された場合、日本のレコードレーベルがライセンサーに対して並行輸入をできるだけとめてください、輸入業者に卸さないでくださいと言うことは、実質的に輸入権の行使と同じことになります。もちろん輸入権の行使のために表示などをするという努力をしないかもしれませんが、いざとなれば輸入権を使って完全にCDをとめられるわけですから、その輸入権を行使しなくても輸入盤業者には大きなプレッシャーがかかります。ですから、輸入権を行使しなくても輸入盤はとまるという状況がこの法案によってできると私は考えております。

石井(郁)委員 今の件でございますけれども、ですから、在庫を所持していることも違法になる、日本販売予定がある作品の海外盤は事実上輸入することができないという輸入業者にとっての問題点を指摘されたわけですが、この点、依田参考人に伺いたいと思いますけれども、現実的にこういう事態が起こっていくのかどうか、いかがでしょうか。

依田参考人 お答えします。

 反対するためにはどういう論拠でもスタートできますから、ですから、反対である、それはこういう理由であるという理由は幾らでもつきます。しかし、レコード会社が自分の作品を、アーティストが自分の作品を少しでも多く売ろうとするときに、日本発売禁止なんということを書く人がいるとすれば、この法律の有無にかかわらず、そういう人は売りたくない人なんですから。それは普通あり得ないことなんですよね。

 先ほどから申し上げているように、どこの国でもいいです、メジャーでなくても結構です、どこかの当該国において、これは日本で少しでもたくさん売りたいからこれをとめてしまおうと。そこで、そのシールを張った場合に、その商品がとまったとしても、しかし、その当該国にはたくさんのディストリビューターがいるわけですから、そこから勝手に日本に輸出すればいいわけですよ。

 ですから、Aというレコード会社がAという国で、日本には一〇〇%売らないということであるとすれば、これは張るでしょう。その場合には残念ながら買えませんが、しかし、その国が隣の国で売っているものがあればこっちに入ってきますね。

 ですから、我々が意識的にとめるということができないということなんですよ。それを、できないことをできる、だから反対と言われても、なかなか論理がかみ合わないというところが今回の最大の問題でありまして、もう一つ突っ込みますと、それは、著作権というのは内外無差別なんです。これがすべてでございまして、したがって、私どもは、こういう非常に悩ましい説明をずっと言い続けてきておるわけですが。

 私は、総論で申し上げますと、そういうことはまず起こらないだろうというふうに申し上げることができると思います。

石井(郁)委員 その辺がなかなかと、今議論がかみ合っているようでいないような部分もあったりするというふうに私も考えているところでございますが、あすの審議にも生かしていきたいと考えております。

 最後に、弘兼参考人に、最後になりましたけれども、一問伺います。

 先ほどコミックの出版、販売状況について詳しいデータでお示しいただきまして、大変ありがとうございました。

 平成十二年以前に貸し本店として営業を開始して貸出対象書籍が一万冊以下の店舗の場合、権利行使は行わないというふうに今回なっておりますけれども、そういうふうにした根拠を教えていただければというふうに思います。

弘兼参考人 申しわけありませんが、私はその根拠については存じ上げません。ただし、大体どの辺が妥当かなというところは、グレーゾーンからはっきり線を引くとしたらその辺であろうというので、専門家の方々がそういうふうにお決めになったというふうに理解しております。

石井(郁)委員 音楽文化、活字文化ともに社会生活に大変重要な分野について、本当に深い背景を持った議論だというふうに私も思っておりますけれども、きょうは本当に貴重な御意見をありがとうございました。

池坊委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、四人の参考人の方に一言お礼を申し上げたいと存じます。

 四人の参考人の方々には、それぞれのお立場から有意義な御意見を伺うことができ、本当にありがとうございました。あすもまたこの委員会はこの法案の質疑をする予定でございますので、それぞれ参考にさせていただきたいと思います。委員会を代表いたしまして心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、明二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十一分散会


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