衆議院

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第2号 平成16年10月27日(水曜日)

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平成十六年十月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 奥村 展三君 理事 川内 博史君

   理事 牧  義夫君 理事 河合 正智君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      岸田 文雄君    佐藤  錬君

      下村 博文君    菅原 一秀君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      西村 明宏君    葉梨 康弘君

      馳   浩君    古屋 圭司君

      山際大志郎君    青木  愛君

      加藤 尚彦君    城井  崇君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      高井 美穂君    武山百合子君

      達増 拓也君    長島 昭久君

      肥田美代子君    松本 大輔君

      笠  浩史君    池坊 保子君

      石井 郁子君    横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   文部科学副大臣      小島 敏男君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   文部科学大臣政務官    小泉 顕雄君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        石川  薫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 白川 哲久君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            坂田 東一君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (文化庁次長)      加茂川幸夫君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十七日

 辞任         補欠選任

  近藤 基彦君     菅原 一秀君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     近藤 基彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 議事に入るに先立ちまして、たび重なる台風と新潟県中越地震により亡くなられた方々と御遺族に対し、心より哀悼の意を表します。

 また、負傷された方々を初め避難生活を続けておられる方々に心からお見舞いを申し上げます。

 ここに、亡くなられた方々の御冥福を祈り、黙祷をささげたいと存じます。

 御起立をお願いいたします。――黙祷。

    〔総員起立、黙祷〕

斉藤委員長 黙祷を終わります。御着席願います。

     ――――◇―――――

斉藤委員長 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として総務省自治財政局長瀧野欣彌君、外務省大臣官房国際社会協力部長石川薫君、文部科学省大臣官房長白川哲久君、初等中等教育局長銭谷眞美君、研究開発局長坂田東一君、スポーツ・青少年局長素川富司君及び文化庁次長加茂川幸夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤信太郎君。

伊藤(信)委員 自民党の伊藤信太郎でございます。

 きょうは、国にとっても、また国民にとっても、そしてまた地球の未来にとっても最も大事な教育、その教育の中でも根幹の部分である義務教育、その義務教育の国庫負担制度、これを中心に質問したいと思います。

 この件は、国民の間で大きな議論のあるところでございまして、また、小泉総理や、あるいは中央教育審議会の方でも、また知事会の方でも、それぞれの御意見もあるようでございます。きょうの委員会で、できればそういった方々もお呼びして一緒に立体的な議論をしようと考えていたわけでございますが、諸般の情勢あるいは手続上の問題、前例がないとのことにより、きょうはそれが残念ながら可能ではありませんので、それぞれの方の発言も引用しながら、文部科学大臣にお尋ねしたいと思います。

 思えば、小泉内閣ができた当初、平成十三年五月七日、小泉首相が所信の表明演説で非常にいいことをおっしゃったんですね。それは、米百俵の精神だということであります。これは、私の理解するところ、どんなに財政状態が厳しくても、社会の未来をつくるのはやはり人間であるし、特に若者、そういった若者の教育にお金なりいろいろなものを投資していくんだ、そのことが社会や政治の要諦である、そういう哲学なり価値観というものを示した非常に立派な所信表明演説ではないかなと思います。当時まだ生きておりました私の父も、これを聞きまして、大変すばらしい総理だと申しておりましたし、その後、大学の教員の職にあった私が政界に入ったのも、やはり政治を通じて教育をよくしたいという信念からでございます。

 ところが、今日、この所信表明演説が別の形で少しとらえられているのではないかなという危惧もあるわけでございます。そんなことから、文部科学を所管する中山文部科学大臣に、この米百俵の精神と小泉総理がおっしゃった意味というものをどのようにとらえているかをお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 おはようございます。

 まず、ただいま黙祷いたしましたけれども、ことしはたくさんの台風、そしてまた先般は新潟中越地震、たくさんの方が犠牲になられましたけれども、亡くなった方々に改めて御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 ということで、今、米百俵の精神、どのように考えているかという御質問でございまして、御承知のように、米百俵の故事というのは、国が興るのも町が栄えるのもことごとく人にある、食えないからこそ学校を建て、人物を養成するのだという小林虎三郎氏の思想に基づくものでございます。そしてまた、先般の所信表明におきましても、小泉総理は、「新しい時代の国づくりの基盤となるのは、人です。」こういうことで、教育の重要性について述べられたわけでございます。

 義務教育費国庫負担制度というのは、義務教育の根幹であります機会均等、水準の維持向上、そして無償制を支える極めて重要な制度であると考えております。私といたしましても、小泉総理のこの米百俵の精神をしっかり受けとめまして、義務教育の充実に努めてまいりたい、このように考えております。

伊藤(信)委員 先日の大臣のあいさつ、そして今の御答弁、両方お聞きいたしましても、前段の部分は繰り返しでよくわかるわけでございますけれども、そのような検討の結果どのような結論を出すかということについて、甚だ不明瞭であると思います。現実に今、知事会の方から義務教育の国庫負担制度、今年度については中学分を廃止すべしというようなお考えも出ているようでありますけれども、この件に関して、大臣はどのようなお考えでお進めになるつもりか、明確にお答えをお願いしたいと思います。

中山国務大臣 義務教育というのは、憲法の要請によりまして、知育、徳育、体育の調和のとれた児童生徒を育成し、国民として共通に身につけるべき基礎的な資質を培うものでありまして、国はすべての国民に対しまして無償で一定水準の教育を提供する最終的な義務を負っていると考えております。義務教育費国庫負担制度というのは、国がその責任を制度的、財政的に担保する制度でありまして、地方公共団体の財政力の差にかかわらず、全国のすべての地域においてすぐれた教職員を必要数確保し、教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るための極めて重要な施策であります。

 この義務教育費国庫負担金の取り扱いにつきましては、このような重要性にかんがみまして、義務教育制度のあり方、義務教育における国と地方の役割分担などの観点を踏まえつつ、教育改革の一環として十分に検討してまいりたい、このように考えております。

伊藤(信)委員 今お聞きしたんですけれども、日本語というのは大変便利な文章構造になっておりまして、結論が最後の方に来ると同時に、その結論を不明瞭のまま文章を終えることもできるということでございまして、十分検討した結果どうなるのか、要するに、現在の二分の一補助というのを堅持するということで中央突破を図るのか、それとも、ある妥協をするのか、その辺、実際のところどうなのかをはっきりお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 御指摘のように、極めて大事な、重要な問題でございますが、この義務教育に係る経費の負担のあり方につきましては、御承知のように、平成十四年十二月の総務、財務、文部科学大臣による三大臣合意もあります。また、平成十五年六月に閣議決定されました経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三等によりまして、現在進められている教育改革の中で中央教育審議会において義務教育制度のあり方の一環として検討を行い、これを踏まえつつ、平成十八年度末までに所要の検討を行うとされているわけでございます。

 そういう意味で、この国庫負担制度のあり方につきましては、中央教育審議会の議論も踏まえつつ、今後平成十八年度末までにしっかり検討していく必要がある、このように考えておるわけでございます。

伊藤(信)委員 今三党合意の話が出たので申し上げたいと思いますけれども、その三党合意の第二条のところ、今大臣がおっしゃられたように、十八年度末までに国庫負担金の一般財源化について所要の検討を行うと書いてあるわけでありまして、今は十六年だと私は思うんですね。ですから、この十六年に中学の分をどうこうするということはこの三党合意に反するのではないかなと思うんですけれども、その件についての大臣の御所見をお伺いいたします。(発言する者あり)三大臣合意ですね、済みません。

中山国務大臣 今回の地方団体側の改革案というのは、一方で二〇〇四でそのように検討しろというふうな指示がありましたので、それに基づいてなされたもの、そういうふうに理解しております。

伊藤(信)委員 と申しますと、この三大臣合意は拘束力を持たないという御理解でいらっしゃいますか。

中山国務大臣 あれはちゃんと拘束力は持っていると思っていますし、一方ではまた、今申し上げましたように地方六団体からの改革案は基本方針二〇〇四に基づいて政府からの要請を受けて取りまとめられたものでございますから、その両方を勘案しながらこれから検討されるものだ、このように理解しております。

伊藤(信)委員 まさに玉虫色の御回答なわけですけれども、これは決断が迫られていることでありますので、玉虫色ということでいつまでも結論を逃げるというわけにはいかないんだろうと思います。ですから、文部科学委員会ではここでしっかりと議論を詰めたいと思うわけですけれども、このことに関してはやはり中央教育審議会というものが大きな役割を果たすんだろうと思うんですね。

 そして、中央教育審議会の鳥居会長は、二十一日に総理官邸を訪れて、国庫負担制度の堅持というものを強く訴えて、その法的論拠であるとかいろいろな必要性についてしっかりと総理にも話されたと聞いておりますし、漏れ承るところによると、もし知事会の一部の意見を聞いてこの国庫負担制度が形骸化するあるいは廃止されるということになれば、中央教育審議会の存立の意味そのものにもかかわることなので、会長を辞するということもほのめかされたということも漏れ承っております。

 一方、知事会、これは決して全会一致ではありませんけれども、知事会の三分の二、おおよそ三分の二は、これは廃止の方向で動いておりまして、その中で、リーダー格といいますか急先鋒は宮城県の浅野史郎知事でございます。

 先日、私は、浅野史郎知事とこの件に関して約四十分間率直な意見の交換をさせていただきました。

 その中で、浅野知事は、義務教育は地方自治体の住民サービスであるとおっしゃいました。したがいまして、住民が選んだ知事なり町長なり市長がそれぞれのお考えでやる、そのことに対しては住民が判断するんだからいいのだ、もし教育に熱心でない、義務教育のいろいろなことについてないがしろにするような首長がいたら、次の選挙で落ちるからいいのだ。さらにおっしゃったのは、住民の方が文部省より偉いんだ、逆の言い方でしたか、文部科学省は住民より偉いのかというような言い方をおっしゃったわけですね。

 私は、ちょっと議論の論点が違うんじゃないかなと思うんです。一つは、まず直接義務教育を受ける住民というのは有権者ではありませんね。それからもう一つ、それに気づいた、我が子の教育レベルの低さに気づいた親が次の投票行為をするとしても最大四年あります。そのときには既に四年学年が済んでいますから、遅かりし由良之助ということになりますね。それから、首長の投票行為というのは、私も選挙の研究をしたことがありますけれども、必ずしも教育政策のみによってされるわけではありません、やはりいろいろな地方自治がありますから。そう考えると、果たして、住民によって教育が左右されるから地方自治ということでいいのだという論拠が成り立つかどうか、私は甚だ疑問です。

 さらに、仮に小中学校の義務教育の教職員の国庫負担がなくなってそれを住民税に転嫁しますと、宮城県の例では百六億円減ると言われております。知事に、百六億円減りますけれどもどうしますか、これはどこかほかのものをなくしてでもとにかく減らさないようにしますかとお尋ね申し上げたところ、減らすかもしれないとおっしゃった。さらに私は知事に、それじゃ、どうやって宮城県の義務教育のレベルが下がらないようになさるんですかと言ったら、それは工夫でとおっしゃる。どのような工夫かについては具体的な言及はありませんでした。

 事ほどさように、中央教育審議会のお考えとそれから知事会の一部のお考え、大きく違うわけですね。このように大きく考えが違う社会団体といいますかグループがある。この際に、文部科学大臣としてはどちらの意見をおとりになるのか。この辺、お聞かせ願いたいと思います。

中山国務大臣 地方六団体の方でも本当にいろいろ議論されました。本当に苦吟されて取りまとめられたというふうにも伺っているわけでございます。

 さらに、委員が御指摘のように、要するに教育も住民サービスの一環なんだ、そういうようなお考えもあると思います。しかし、住民サービスにもいろいろあるわけでございまして、その知事さんによりまして、福祉に重点を置くのか教育に重点を置くのか、あるいはもっと道路とか橋とかそういう公共事業に重点を置くのか、いろいろなお考えがあると思うわけでございまして、そういった全体の住民サービスの中で教育をどのように位置づけるかということだろうと私は思うわけでございます。

 基本的には、確かに住民サービスの一環でもございますが、学校教育につきましても、それぞれの地区におきまして、その地区の風土、成り立ちあるいは伝統文化、いろいろあるわけですから、そういったものを踏まえて、本当に郷土色豊かな子供たちを育ててもらいたいな、そういう気持ちはあるわけですけれども、しかし、今御指摘のように、地方によりましては本当に財政力の乏しいところもございますから、必ずしも、教育、一生懸命やりたいんだと思っていてもなかなか十分なことができない、そういった県があるいは出てくるかもしれない。そこで国としては、全体として、たとえどんなに山間僻地に生まれても、やはり日本人として生まれた以上ひとしく義務教育を受けることができる、こういう最低限の保障だけはしなきゃいかぬ。

 そういう意味で、全体的な枠組み、それを担保するこの負担制度は維持しながら、かつそれぞれの教育というのは地方が創意工夫をして施してもらいたい、そういうふうに私は考えております。

伊藤(信)委員 正直言って、わかったようなわからないような御答弁だと思うんですけれども、さらにお聞きいたしますと、この件に関しては、中央教育審議会もありますし知事会あるいは地方六団体もあるでしょう。そして、文部科学大臣の任免権者である小泉総理のお考えもあると思います。最終的に、このように教育の根幹にかかわる重大な判断、国家百年の計で、これからの日本の浮沈がかかっていると思いますけれども、この最終判断、決定はだれがなさるんですか。文部科学大臣がなさるんですか、それとも小泉総理がなさるんですか。これは文部科学大臣にお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 教育に関しましては、総理から、この私、文部科学大臣がしっかりやれ、こういうふうに御指示を受けているわけですから、少なくとも、私の段階でひとつ頑張っていろいろと考えていかなきゃいかぬ、こう思っていますけれども、いろいろな事情もありますし、いろいろなお考え方もあるでしょうから、最終的にはやはり総理の決断といいますか裁断ということになるかもしれませんが、そうなる前に、私としては、文部科学大臣としてきちっとやっていきたい、このように考えております。

伊藤(信)委員 文部科学大臣の信念、お考えと小泉総理のお考えがどうしても歩み寄れない、その際に、文部科学大臣としてはどのような政治行動なり判断をとられるおつもりですか。

中山国務大臣 最初にお答えいたしたわけでございますが、総理はまず内閣総理大臣になられた最初に、米百俵の精神をうたわれたわけでございますし、先ほども言いましたように、今回の国会でも、国づくりの基盤は人であると言われたわけでございます。そういう意味で、小泉総理も、教育というものは本当に大事なんだ、人づくりのもとだということについては全く私と同じ考えではないか、こう思うわけでございまして、最終的には小泉総理もそういった方向で考えていただけるものだ、このように考えております。

伊藤(信)委員 ぜひ、文部科学大臣の信念に基づいた果敢な行動を期待したいと思います。

 この問題を少し、ケーススタディーではないですけれども、具体的な論拠で考えようと思いまして、東京の中央にある割合豊かな地域にある小中学校と、宮城県の中でも仙台市の中心部にある小中学校、そして宮城県の中でも大変郡部、山間僻地にある小中学校で、財政状況、また手当等も含める教職員の報酬なり待遇、これにどのような差異があるかということで、私なりに調査を進めたわけでございますけれども、残念なところ、これもちょっと不思議なことなんですけれども、多くのところから、そのような資料はないとか、それは出せないとかいう回答が来たんですね。これは非常に逆の意味で奇妙なんですけれども、私は国庫負担制度というものがしっかり機能するために討論をするためにこの資料を使いたいと思っているわけですけれども。

 ということでございますので、文部科学省が把握している範囲において、今回、国庫負担制度がなくなると格差が広がると言われているわけですけれども、既に格差があるのではないかと私は思うんですね。例えば、都市部の小中学校には都市手当というものがあるということも聞いておりますし、そのパーセンテージについても開きがあるということも聞いております。それから、いろいろな形の手当があるということも、そして手当の財源についても複数のものがあるということも聞いております。

 そのようなことも含めて、特定の都市を挙げる必要はないと思いますけれども、いわゆる大都市の中心部で人口稠密で所得水準の高い地域の小中学校と、地方の県における県庁所在地、そして地方の県における大変人口が薄いような地域、その間で教職員の待遇や学校の財務状況にどのような格差があるかどうかについて、把握している範囲で、これは細かい数字ですので、初等中等教育局長の方からお答え願いたいと思います。

銭谷政府参考人 平成十五年に文部科学省が行いました教員給与の実態調査、これによりまして御説明を申し上げたいと存じますけれども、まず、東京都と宮城県仙台市の給料の水準を、経験年数など同一の指標によりまして比較をいたしましたところ、ほぼ同水準となっております。

 ただ、先生もお話ございましたように、東京都と仙台市におきましては、いわゆる物価あるいは生計費が高い地域に在勤をする観点から、調整手当というものが支給をされているわけでございますが、その調整手当につきましては、東京都が一二%で仙台市が三%ということで、差はございます。ただ、その他の諸手当につきましては、特段の格差は生じていないというふうに思われるところでございます。

 それから、お話にございましたように、宮城県内において、仙台市と僻地を含む町村部の教職員の給料を比較いたしますと、これは同一額でございます。ただ、先ほど申し上げましたように、仙台市の教職員には調整手当が支給される一方で、僻地に勤務をする教職員には僻地手当というものが支給をされたりするということで、その辺、若干の差が出てくる。これは、僻地の方が多くなったりする場合もございますけれども、差が出てくるということはございます。

伊藤(信)委員 それらの手当の財源はどこになっておりますか。

銭谷政府参考人 いわゆる県費負担教職員の給与につきましては、現在、給料と諸手当が国庫負担の対象になっております。ですから、県費負担でございますので、県が給与を負担し、その二分の一を国が負担をするということになっております。

伊藤(信)委員 次に、人事の面をお聞きしたいと思うんですけれども、公立小中学校への教員の配置、これはどのような法律に基づいてなされているか。そしてまた、法律論は別として、実態的に、例えばある教員がこちらの方の中学校、小学校に行きたいと言った場合、どれぐらい実際通るのか。これは地域による格差はあると思いますけれども、この辺の実態について、これは局長からお伺いしたいと思います。

銭谷政府参考人 県費負担教職員の人事につきましては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律にその手続が定められております。同法の三十八条によりまして、県の教育委員会が人事を行うわけでございますが、その際には市町村の教育委員会の内申を待って行うということになっております。また、同法三十九条におきまして、市町村の教育委員会に対しまして校長先生が意見具申をすることができるということになっております。

 ですから、通常は、各教員から校長先生がいろいろ希望をお聞きして、教育委員会の方に意見具申をして、そこから人事がスタートをするということになるわけでございます。

 ただ、各県とも、それぞれ人事の方針というものを立てまして実際の人事を行っているわけでございます。例えば、できるだけ市部と郡部、僻地などの広域にわたる交流ということを心がけたり、同一校の在任期間の長い方は異動の対象とするとか、あるいは学校によって教員構成が年齢その他適正化を図らなければいけないといったようなこともございますので、そういったことを考慮しながら人事を行っている。

 一般的にこれは申し上げられることだと思いますけれども、やはり教員も都市部を希望する教員が多いのではないかと思います。その場合、市町村間、あるいは都市とそれ以外の地域との交流に苦慮するという実態もあるのかなというふうに思っておりますが、最終的には、円滑な人事に向けて今、皆努力をしているということでございます。

伊藤(信)委員 今、後段におっしゃられた部分が非常に肝の部分だと思うんですけれども、要するに、教員も人の子ですから、いろいろな意味で条件がいい都市部に行きたがるという傾向がありますね。このことがやはり義務教育国庫負担制度がなくなると助長されると思います。その結果どういうことが起きるかというと、やはり都市部、人口稠密で所得水準の高い地域の小中学校の教育レベルが上がりと言うと語弊があるかもしれませんけれども、に多くの希望教員が集まる、結果としてレベルが上がる蓋然性が非常に高いと思いますね。そして、郡部、僻地は希望者が少なく、結果として教育レベルが下がる蓋然性が非常に高いということが私は言えるのではないかと思います。

 次に、今度知事会が出してきた中で、とりあえず中学をやるという話が出たわけですけれども、同じ義務教育の中で中学だけやるということの論拠、これは知事会に聞いた方がいいのかもしれませんけれども、この件については文部科学大臣としてはどのようにお考えか、お尋ねしたいと思います。

中山国務大臣 地方六団体からの改革案におきましては、十七、十八年度を一期、その後、十九、二十を二期と二つに分けておるようでございまして、二期までに義務教育費国庫負担金全額を税源移譲の対象、こういうふうにしているわけでございまして、その第一期におきまして、前半におきまして、中学校分八千五百億円を先行して廃止する、税源移譲の対象、こういうことになっているわけでございますが、どうして中学校分が先なのかなということについては私もよくわかりませんが、数字合わせの中でそのようになったのかなと推察しているところでございます。

伊藤(信)委員 まさに今大臣がおっしゃられたように、数合わせで何の教育論もないんですね。今、小中一貫であるとか、あるいは小学校の年限を見直すとか、こういう歴史段階にあるのに、中学だけを変えるというのは、何の論拠もないし、全く教育を考えない、数合わせというか財政論からきた考えではないかと私は思います。

 そして、そのとおりやると、日本国憲法の第二十六条、教育基本法の第四条、義務教育国庫負担法の第一条に私は抵触するのではないかなと思うんですけれども、この件に関して文部科学大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

中山国務大臣 義務教育費国庫負担法というのは、今御指摘ありましたけれども、憲法二十六条や教育基本法の第四条に定めます義務教育無償の原則にのっとりまして、国民のすべてに対してその妥当な規模と内容を保障するため、国が必要な経費を負担することによりまして、教育の機会均等とその水準の維持向上を図ることを目的としているものでございます。

 仮に、この義務教育費国庫負担金を一般財源化した場合に、地域によっては教育の機会均等や教育水準の確保に著しい支障を生じるという事態になれば、それは憲法等の要請に対する国の責任を果たしているとは言えない状況になると考えております。

伊藤(信)委員 まさにこれは憲法違反の疑義があるということなんですね。やはり憲法は国民がひとしく教育を受ける権利というのを保障しておりますし、逆に、義務教育というのは国民がやはり義務として受けなければならないところですから、逆に、国民がひとしく、ひとしくというのは、必ずしも九年ということだけを指しているのではなくて、同水準のということを指しているわけですね。ひとしく義務教育を受ける権利があるわけですから、それを担保することが国に課せられている。つまり、これは地方自治法でも政令でもなくて、憲法であり、教育基本法であり、そしてまた義務教育国庫負担法ですから、国が責任を持つべきだと思います。私は、もう国庫負担五〇%じゃなくて一〇〇%にすべきだというのが私の私論ですけれども。

 そういうことですから、今回の地方六団体といいますか、知事会の一部の考えというのは私には全く理解できないわけでありますけれども、このように、自治体の首長の思想性とか価値観あるいはそれぞれの自治体の財政状態により、義務教育のレベルというものに地域格差が出る、特に都市が上がって郡部が下がるというようなことになる。

 そしてまた、そのことによって、子供たちが住んでいる地域によって、また親の財政力や親の持つ職業の種類によってその子弟が受けられる義務教育のレベルが異なってしまう。子供にはもうチョイスがないんですね。特に、小中学校の場合は親元から行きますから、親が住んでいるところの公立小学校に行かなきゃならないわけですね。それで、都市部においては私立小学校もありますけれども、これはもちろん財政力がなければ行けないわけです。

 そうすると、教育の機会均等の原則、憲法で保障しているものがここで崩れると私は思うんですけれども、この件についてもう一度文部科学大臣にお考えと決意をお聞かせ願いたいと思います。

中山国務大臣 義務教育というのは、憲法が保障します国民の権利でございますが、それとともに、国家社会の発展を担う人材育成という国家戦略に位置づけられた国の責任である、このように考えております。

 そういった中で、今御指摘のように、この制度が廃止されるということによりまして、地域ごとの教育水準やあるいは保護者の経済力に影響を与えるというふうな事態になれば、これは憲法の要請に対する国の責任を果たしていないということになると考えているわけでございまして、この義務教育費国庫負担制度の取り扱いにつきましては、このような制度の重要性にかんがみまして、義務教育のあり方、そして義務教育における国と地方の役割分担などの観点を踏まえまして、教育改革の一環として十分慎重に検討してまいりたい、このように考えております。

伊藤(信)委員 前段は勢いがよかったんですけれども、最後に、慎重に検討をというので、ちょっと私もがくっときてしまったんですけれども、ぜひ、憲法違反の疑義のある今回の義務教育の国庫負担の廃止については、文部科学大臣は信念を持ってこれを堅持する方向で動いていただきたいと私は強く希望いたします。

 次に、地方六団体の補助金廃止リストの中に、私立高等学校等経常費助成金補助金、それから幼稚園就園奨励費補助金、これが入っているわけでございますけれども、この件についてどうお考えか、これは塩谷副大臣にお伺いいたしたいと思います。

塩谷副大臣 お答え申し上げます。

 私立学校については、それぞれの建学の精神にのっとり、特色のある教育を展開していただいております。我が国にとっても大変重要な教育を支える役割を担っていただいておりますので、私立高校等経常費助成費補助金につきましては、私立学校の振興助成法に基づいて、都道府県が助成を行った場合にその一部を補助するものであります。これまで、私学振興に対する国の一定の財政責任を果たしつつ、都道府県における助成の核として、その水準を引き上げる役割を担ってきたと思っております。

 仮に、この補助金が廃止された場合には、一般財源化されて、財政状況の厳しい地方団体においては私学の助成が削減されるおそれがありますので、その結果、学費等の値上げや教育条件の低下、さらなる公私の格差の拡大、あるいは都道府県の格差の拡大が予想されますので、この補助金についても、やはり義務教育の国庫負担制度と同じように、先生の御意見を踏まえて、その重要性をかんがみて引き続き十分に検討してまいりたいと思っているところでございます。

 また、幼稚園の就園奨励費につきましても、幼稚園教育の重要性をかんがみ、幼稚園就園を希望するすべての者に対して就園の機会を保障するために、保護者の経済的負担の軽減や就園奨励事業を実施する地方団体に対して国が必要な経費を補助するものであります。

 このことから、本補助金が仮にまた一般財源化すれば、市町村の財政事情等により、就園奨励事業が縮小されたり保護者の負担が増大する可能性があり、幼児の就園機会が失われることが予想されるわけでございまして、また、小学校以降の教育にも大きく影響があるということを考えております。

 したがって、幼児期の教育というものがいかに大切か、人間形成の基礎が培われる極めて重要な課題でありますので、国としても、幼稚園教育を希望するすべての者に対して就園の機会を保障するという観点で補助を行うことは必要であると考えておりますので、この就園奨励費補助金についても、大変重要な国の責任であり、また地方との役割分担も踏まえて、義務教育あるいは私学の高校等の助成金と同じように十分に検討してまいりたいと思っているところでございます。

伊藤(信)委員 最後が十分検討してというところでちょっと腰抜けになるんですけれども、大意は私もわかりましたので、ぜひその信念に基づき、大臣と力を合わせ、日本人の多様な教育機会というものが失われないように、私立の高校についての補助金についてもしっかり堅持して、むしろふやす方向で頑張っていただきたいと思います。

 それから、最後になりますけれども、公立学校の施設整備負担金、これも補助金廃止のリストに載っているわけですけれども、今回も新潟中越地震があったわけでございますけれども、これが廃止されますと、やはり財政力の弱い自治体の小中学校の耐震化、これも進まなくなりますね。それからこれも、都市やあるいは財政力の差による学校施設、教育施設の格差というものも、まさにまた広がってくるんだろうと思います。

 この件についての大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 公立学校施設整備費負担金でございますけれども、まさにおっしゃるように、教育の機会均等とその水準の維持向上を図る観点から、国が果たすべき責務を実現するための極めて重要な施策と考えておりまして、その取り扱いに当たりましては、この施策の重要性また教育における国と地方との役割の分担というようなことも踏まえまして、引き続き十分に検討していきたい、このように考えております。

伊藤(信)委員 地球の未来のために、日本の将来のために、文部科学大臣以下皆さんが、全力を挙げて、信念に基づいて、余りそのときのせつな主義でなく、それこそ米百俵の精神を持って果敢に判断し、行動し、いい結果を出すことを強く期待して、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

斉藤委員長 池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 三年弱の政務官、そして一年間の委員長、委員長時代は質問も答弁もできませんでして、ストレスがたまっておりまして、きょうは四年ぶりの質問でございますので、ちょっと緊張しております。中山大臣、よろしくお願いいたします。

 質問に先立ちまして、新潟県中越地震で亡くなった方々に心よりお悔やみ申し上げますとともに、被災を受けられた方々の一日も早い御回復を祈りたいと思いますとともに、私たち政治家も全力を挙げて復興のために力を尽くしていきたいと思っております。

 この地震につきまして、心身ともにケアのことについて大臣に伺いたいと思っております。

 児童も数名亡くなりまして、胸が痛んでおります。一日も早く学校が再開され、元気に登校できますことを願っておりますけれども、身内で亡くなった子供たちもおりますし、また、地震の恐怖、余震、さまざまなことで心に傷を負っているのではないかと思います。PTSDにかかりませんような心のケアが大切ではないかと思っております。

 特に、阪神大震災では、スクールカウンセラーの拡充あるいはまたトライやる・ウイークなどの体験活動が、子供たちが立ち上がってまいりますときの大きな力になってまいりました。これらの経験を踏まえて、文部科学大臣はどのような対策をお立てになるのかを伺いたいと存じます。

中山国務大臣 池坊委員、文教委員長を初め、教育には本当に熱心に取り組んでこられまして、むしろこちらの方こそよろしくお願い申し上げたいと思います。

 ところで、今回の新潟県の中越地震のような災害が生じた場合、犠牲者になられた方も痛ましいわけでございますけれども、そういった経験といいますかをした子供たちに生じますいわゆるPTSDなどのさまざまな心の問題に対しましては、適切に対処していくことが極めて重要であると考えております。

 今文科省の方で現地の状況に関する情報収集等に努めておりますが、今後、地元の教育委員会との連携のもとに、必要な対策について検討していくことが必要であると考えております。さらに、児童生徒や保護者、教職員に対しまして、スクールカウンセラーによるカウンセリングなど、心のケアに努めることも重要でありまして、これから、県の教育委員会と連携を図りつつ、スクールカウンセラーの配置等について検討を進めることとしております。

 委員の御指摘も踏まえまして、今回の新潟県中越地震における児童生徒の心のケア対策について適切に対処してまいりたいと考えております。

池坊委員 二番目に、学校の耐震化についてお尋ねしたいと思っております。

 公明党はこれに大変力を注いでまいりましたけれども、先日のごあいさつの中にも、学校の安全管理に組織的、継続的に取り組むとともに、学校施設の耐震化に一層努めると大臣はおっしゃいました。また、二〇〇四年の骨太の方針でも、「地域の防災拠点となる公共施設の耐震化等を推進する。」と書かれてございます。でも、現状は極めてお粗末でございます。

 言うまでもなく、五十七年度からの学校施設は十二分に地震に耐えることができますけれども、五十六年以前のものは、これは地震に耐えられない、ですから耐震チェックをというふうに言っておりますけれども、現実には四五%しか受けておりません。そして、その四五%のうちの二割だけは耐震できる、でも八割は、これは危ないのだと言われております。つまり五五%、多分そのうちのまた八割ほどは危ないと思いますけれども、これがチェックを受けておりません。

 そのようなことを考えますと、子供たちが安心して学べるだけでなく、このような防災のときの公共施設でもございますので、安全な学校施設というのは緊急の課題だというふうに思っております。大臣の予算を含めた御決意を伺いたいと思っております。

中山国務大臣 御指摘のように、学校施設というのは、児童生徒が一日の大半を過ごす活動の場でもありますし、また、御指摘のように、公立学校については、非常災害時には地域住民の応急避難場所としても使われているわけでございまして、その安全性の確保というのは極めて重要である、このように考えております。

 しかし、今御指摘もありましたけれども、本年四月に実施した調査によりますと、公立小中学校のうち耐震性が確保されている建物は全体の四九・一%にとどまっておりまして、耐震化の取り組みがおくれているような状況にあります。

 このため、文部科学省といたしましては、現下の厳しい財政状況ではありますけれども、平成十六年度予算におきましては、耐震化関連予算といたしまして千百五十五億円、対前年度六億円増、そしてまた来年度予算要求では千七百五十一億円と大幅な増を要求しているわけでございまして、学校施設の耐震化に努めていくということでございます。

 今後とも、安全、安心な学校づくりの実現に向けて、公立学校施設の耐震化が適切に図られるよう努めてまいりますので、どうか御支援もよろしくお願い申し上げたいと思います。

池坊委員 それでは、今緊急の課題となっております義務教育国庫負担制度についてお伺いしたいと思います。

 大臣は、ごあいさつの中にも、義務教育国庫負担制度の堅持は教育改革の一環として十分に検討するとおっしゃっております。私は、ちょっとこれは生ぬるいのではないかというふうに思っているのです。もう検討するような余地はない、むしろ教育論を踏まえて重大な決着をするとぐらいに言っていただきたかったというふうに思っております。

 憲法二十六条の教育を受ける権利、並びに教育基本法の三条にも機会均等ということがうたわれております。戦後これだけ日本が発展することができましたことは、先達の人たちが、たとえ自分が食べるものは食べなくても、子供の教育にだけは力を注いできたからではないか。そして、僻地にあっても都市にあっても、子供たちは環境を選ぶことはできません。そういう子供たちがひとしくきちんとした教科書を持ち、すばらしい先生にめぐり会えてこそ、初めて教育水準の維持ができるのではないか。

 そして、そういう人たちが二十一世紀の日本をこれからつくっていくんだと思いますときに、やはり財源の確保ということも、これは制度設計として必要だというふうに考えております。

 そもそも、地方分権というからには、国がやるべきことは何なのか、そして地方にゆだねることは何なのか、こうした峻別を明確にするべきであって、この中身の議論なくして、財源だけの地方分権というのはあり得ないと思っております。

 にもかかわらず、本年八月の地方六団体の国庫補助負担金等に関する改革案においては、平成二十一年度にはこの補助金全部廃止する、税移譲してほしい、平成十八年度には八千五百億、中学校の教職員の給与は税移譲してほしいと。これは、極めて教育論とはかけ離れた、数合わせでしかないと思っております。この地方分権の急先鋒に立っていらっしゃる方々でも、これはおかしいんだと皆様おっしゃっておられます。私は、これはいいんだよと言う教育学者と今までお話ししたことがございません。

 地方六団体のある方が、裁量権のないものを税移譲してもらっても困るんだとおっしゃいました。では教育は裁量権があるのかと私はそのとき申し上げたんですけれども、このような教育論を抜きにした数合わせの今回の措置をどのようにお考えでいらっしゃいますか。

中山国務大臣 御質問というか、激励の言葉、意味も含まれているのではないかと思うわけでございますが、義務教育というのは、憲法の要請によりまして、国民として共通に身につけるべき基礎的な資質を培うものでございまして、何度も申し上げますけれども、国はすべての国民に対して無償で一定水準の教育を提供する最終的な義務を負っていると思っているわけでございます。

 地方六団体の方からはいろいろな御意見も出ております。しかし、そういったことを踏まえまして、やはり国と地方の教育についての責任のとり方というのもあるのではないか、このように思うわけでございます。

 財政力、経済力の差によりまして、やはり生まれたところ、育ったところで差がつくようなことはあってはならない、このように考えておりまして、その信念でもってこの問題には対処していきたい、このように考えております。

池坊委員 次に、手続論としてこれはおかしいのではないかと、大臣のお考えを伺いたいと思っております。

 平成十四年度の財務、総務、文部科学大臣の三大臣合意、この中に、教育改革の中で義務教育制度のあり方の一環として検討を行う。そもそも、私は、教育改革ということを総務大臣、財務大臣は何とお考えになったのかな、これはお金を削ることとお考えになったのか、むしろこの中に、教育論を踏まえてというぐらいのことを書いていただきたかったというふうに思っておりますけれども。同時にまた、平成十五年度の骨太方針二〇〇三によりますと、義務教育国庫負担制度のあり方については、教育改革の中での中央教育審議会における義務教育制度のあり方の一環としての検討を踏まえつつ、平成十八年度末までに結論を出すというふうに言われております。

 これは、五月に、中教審からの中間報告では、義務教育国庫負担金は堅持すべきであるというふうに言っていると思います。この検討は全然されずに今結論だけを出そうというのは、手続的にも私はおかしいと思っておりますので、この手続論的な見地から、文部科学大臣はどうこれから御主張なさっていくおつもりであるかをちょっと伺いたいと思います。

中山国務大臣 御指摘のように、三大臣合意あるいは閣議決定によりまして、現在進められております教育改革の中で中央教育審議会において義務教育の制度のあり方の一環として検討を行い、これを踏まえつつ、平成十八年度末までに所要の検討を行う、こういうことになっているわけでございます。一方では、骨太二〇〇四に基づきまして、政府からの要請によりまして、地方六団体の方からそういう改革案が出されているわけでございます。

 その二つをどういうふうに考えていくかということでございますが、私としては、中央教育審議会で今熱心な議論がなされておりますから、その推移も踏まえながら、なおかつ、この六団体の改革案にどのように対処していくかということで、今いろいろと、十分にといいますか慎重に、かつ毅然とした態度で検討しているところでございます。

池坊委員 大臣合意というのはそんなに軽いものではなくて、それぞれして、次、大臣がかわったからそれで変わるというものではないと私は思っております。やはり政治は継続していかなければならないのでございますから、その点はしかと言っていただきとうございます。

 それからまた、とんでもない考えをなさる方があって、では数合わせで、これは負担金をもうちょっと減らせということなら、二分の一ではなくて三分の一にしたらどうかとおっしゃる方もあるかと聞いておりますけれども、それについての大臣のお考えを伺いたいと思います。

 私は、先ほど伊藤議員がおっしゃいましたように、国はもう一〇〇%持つべきだというふうに思っております。国がやるべきこと、教育、福祉、防衛、外交等々ございますけれども、教育というのは国が果たすべきものの最大のものではないかと思っております。

 例えば、もしそれを、ただ制度を堅持するために二分の一を三分の一にしたら、今度は十分の一というふうになってまいります。ここは絶対に頑張りどころだと思っておりますし、このような数合わせをまさかなさらないと思いますけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。

中山国務大臣 負担割合を三分の一にするとか、いろいろなお考えがあることは承知しておりますが、他方、諸外国を見ますと、例えばアメリカ、あるいはイギリスでもそうでございますけれども、もう地方に任せられない、全部国でやろうという方針をとろうとしているところもあるわけでございます。そういった世界的な潮流の中で、日本が国の負担を減らしていくということを本当にやっていいのかどうかというところも考えていかなければいかぬということで私は考えております。

池坊委員 先ほどもちょっと伊藤議員の方から質問に出ておりましたけれども、このたびは、義務教育国庫負担金の陰に隠れて一緒くたにやろうとしている魂胆なのでしょうか、幼稚園の就園奨励費、そして小学校、中学校の私学助成というのも税移譲されようといたしております。言うまでもなく、今、少子化だ、少子化だ、少子化対策を立てなければいけないといいながら、これは、国が責任を持って幼稚園に入る子供たちの奨励をしないのかということになっていくので、私は時代に逆行しているのではないかと思います。

 幼稚園の八割は私立でございます。そして、公立と私立との格差は今二十万と言われております。それだけに、公立に入れたいと思っても、近くに公立幼稚園がないからやむなく私立幼稚園に入れているというお母様方、お父様方もたくさんいらっしゃるわけです。

 そういうのを考えますときに、幼稚園でまず二十万の格差がある、とんでもないことでございますし、それからまた、この私学助成というのは、やはり公立と私立との小学校、中学校の授業料の格差を少しでも埋めなければいけないということで、これは行われているわけでございます。

 日本において、私学の果たす役割は極めて大きいのではないかと思っております。それぞれの建学精神にのっとって、特色ある子供たちをつくり、そしてまたそれらの教育の水準を維持していくためにも、この助成金のカットというのは、削減し、そして税移譲するということは、さらなる地方に格差を生んでいくと危惧いたしております。これについても大臣の御見解を伺いたいと思います。

中山国務大臣 幼稚園就園奨励費、私立高等学校等経常費助成費補助、公立学校施設整備費を初めとする文部科学省関係の補助金、負担金は、教育の機会均等の確保や教育水準の維持向上、あるいは私立、公立間の格差の是正などを図る観点から、国が果たすべき極めて重大な施策である、このように考えておりまして、義務教育費国庫負担金の陰に隠れてちょっと影が薄いようでございますけれども、これらの施策の重要性、あるいは教育における国と地方の役割を十分踏まえつつ検討していきたい、このように考えております。

池坊委員 文部科学省は、今まで、地味なところだとか、パフォーマンスがないとか、押しがないというふうに言われていたようでございます。これは本当に文部科学省の危機、これは文部科学省を守るためとかいうことではなくて、子供たちの教育を守るということなんだと思うんですね。

 この際、やはり私は、国民のコンセンサスを得ることが必要ではないかというふうに思っております。まだまだ保護者の中にも実感としてそれを受けとめていらっしゃる方は少ないですし、お話を申し上げると、それはいかぬ、これは絶対に堅持しなければならないのだとおっしゃる方が多いのですが、そこに行き着くまでの理解が、私は極めて少ないのではないかと思います。一人でも多くの方に認識していただくということが必要だというふうに思っております。

 この間、新聞をよく見ておりますと、例えばノーベル賞受賞者の方々が手をとり合って、これは日本の未来のために堅持すべきだというような声明を出してくださっておりますことを大変心強く思っておりますけれども、文部科学省としても、これはきちんとした対応が必要であると思います。そして、大臣が率先してそういう対応の旗振りをしていただきたいと思っておりますが、そのことでどんな対策等を立てていらっしゃるかをちょっと最後に伺いたいと思います。

中山国務大臣 確かにこの問題は文部科学省だけで対応できる問題ではありませんが、ノーベル賞受賞学者の方とか文化人とかいろいろな方々が、この義務教育費国庫負担制度を守るべきだ、教育にもっと力を入れるべきだということで、いろいろな動きをしていただいております。

 今委員が御指摘のように、これは本当に国民的な運動としてやっていかなければいかぬ、義務教育費国庫負担制度を廃止することがどういうことなのかということについて、まだまだ皆さんわかっていらっしゃらないような、そういうふうなことだと思いますので、もっともっとそういったことの重要性、周知徹底を図りますとともに、私といたしましては、教育をおろそかにする国に未来はない、こういう思いで頑張っていきたいと思っております。

池坊委員 時間がやってまいりました。

 最後に、正論が通らないような政治をしてはならないと思っております。私たちは、今を生きている人間として、次の世代に何をなすべきかを真摯に考え、禍根を残すようなことをしてはならないと強く思っております。そういう意味では、中山大臣、心強い応援団でございます。これからも手をとり合いながら、子供たちの教育に力を注いでまいりたいと思います。ありがとうございました。

斉藤委員長 達増拓也君。

達増委員 新潟地震で被災された皆様方に、改めてお見舞いを申し上げたいと思います。

 十万人を超える方々が避難生活をされているということで、本当に大変だと思います。学校も、たくさんの学校が避難所に使われて、学校関係者の皆さんの御労苦も本当に大変なものがあると思います。政府は、必要な措置を迅速にかつ的確に行っていくべきということを改めて申し上げたいと思います。

 さて、義務教育費の負担の問題であります。これは我が国だけの問題ではなく、世界共通の課題でもあります。

 そこで、まず取り上げますのが、子どもの権利条約です。子どもの権利条約第二十八条1(a)には、「初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする。」と定めています。

 外務省に伺いますけれども、この「初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする。」ということは、これは日本政府が国として約束したものであり、これを守る義務があるのは日本国政府である、その義務を守らなければならない主体というのは、これは地方自治体ではなく国であるという理解でよろしいでしょうか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの児童の権利条約でございますけれども、我が国は、国会の御承認をちょうだいいたしまして、平成六年、一九九四年の四月に批准をいたしました。したがいまして、政府としてこれを遵守する義務がございます。

達増委員 国として、日本国政府として遵守する義務があるわけであります。

 その際、国際約束というものは空約束になってはいけませんので、国内法上の担保というものが必要になります。国が約束を守っていくときには、法治主義でありますから、国は法律をきちっと持って、法律に基づいて約束を守っていくわけですけれども、外務省にまた伺いますが、この子どもの権利条約の該当箇所、子どもの権利条約の「初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする。」というこの箇所については、政府はいかなる国内法によって担保されていると判断して批准に至ったのでしょうか。

石川政府参考人 ただいまの御質問の、義務教育の無償を担保する国内法といたしましては、憲法第二十六条のほか、教育基本法及び学校教育法がございます。

達増委員 きょう、伊藤委員の質問の中で、伊藤委員は、地方に義務教育費の負担を丸投げしてしまうことは、これは憲法違反ではないかと質問の中で述べられましたけれども、教育基本法にも違反することなんだと思います。小泉内閣は、イラク特措法など、憲法違反でも法律で決めてしまえばいいんだというような傾向があると思っておりますけれども、やはり憲法違反や、また教育基本法に違反するような、法律を改廃したり予算措置をするということはあり得ないわけでありまして、また、そういったことが、国際条約違反のおそれも出てくるということだと思います。

 こういう子どもの権利条約もございますので、大概の国は義務教育費を国が財源保障しているのだと思いますけれども、文科省に質問しますが、諸外国で義務教育費を原則的に国、連邦制の場合には州が国の役割を果たすわけですけれども、そういった国や州が負担しないような制度になっている国というのはあるんでしょうか。

下村大臣政務官 お答えいたします。

 ごく一部の国、ベルギー等ではあるようでございますが、ほとんどの先進国におきましては、義務教育は、国家戦略という位置づけの中で国が負担をしております。義務教育の、特に教職員の給与等については、フランス、イタリア、韓国、シンガポールなどがその全額を負担しておりますし、また、身分は国家公務員でございます。

 また、近年、アメリカ、イギリスにおいては、特に中央政府が積極的な役割を果たしておりまして、今月の上旬、超党派で、ここにおられる笠議員とも一緒にイギリスに行ってまいりましたが、イギリスでは、二〇〇六年から今までこの財源は国から地方に一般財源化しておりましたが、これを日本的に言えば義務教育費国庫負担と同じような形で教育費として位置づけて、きちっとその範囲内で地方が学校に対して渡すということで、七五%ということで、ほとんど国が責任を持っております。

達増委員 イギリスも連合王国でありまして、イングランドとスコットランドが別の通貨を発行したりするようなところでありますから、そういうところですら、地方だけではなく、国が全体としてやっていかなきゃならないというふうになっているということだと思います。

 子どもの権利条約は、国連を舞台として特に開発途上国の現状を改善するためにできたものでありますから、その規定は、今の義務教育の無償を初め、先進民主主義国にとっては当たり前のことばかりだと思います。義務教育の無償は、開発途上国にとっては財源確保が大変でありますけれども、先進国にとっては国が財源を確保して保障するのが当たり前ということ、今の答弁からも明らかになったと思います。

 文科省にこれも質問しますけれども、大学などの高等教育ですら国が積極的に費用負担している、そういう国が多いのではないでしょうか。高等教育についても伺いたいと思います。

下村大臣政務官 お答えいたします。

 OECDの調査によれば、二〇〇〇年における我が国の初等中等教育の公財政支出学校教育費のGDPに対する割合は二・七%でございますけれども、御指摘のように、アメリカは三・五%、イギリスは三・四%、フランスは四・〇%、ドイツは二・九%となっており、高等教育における同じGDPに対する割合は、我が国は〇・五%でございますが、アメリカは〇・九%、イギリスは〇・七%、フランスは一・〇%、ドイツは一・〇%ということで、いずれも、我が国の公財政支出学校教育費のGDPに対する割合は諸外国の方が高くなっております。

達増委員 今、下村大臣政務官が答弁されたのに引用したOECDの調査、私もその表を見ましたけれども、諸外国の教育費公費負担の対GDP比、これは大体先進国は、初等中等教育には三%台、四%台くらいの負担をしており、高等教育には、今の答弁にもありましたように、一%程度から多いところでは一・六%や一・七%という負担をしている。

 比べてみますと、旧共産圏で、ハンガリーですとかチェコですとか、市場経済に移行中の国々、後発国と言ってもいいんでしょうが、そういった国々の場合ですと、初等中等教育に二%台、高等教育に〇・五%から〇・九%という傾向があると思います。また、開発途上国、アフリカの国などでは、意外に教育費公費負担の対GDP比が高いところがありますけれども、これは外国や国際機関から支援を受けてやっているわけでありまして、そういう特殊な事情があるようであります。

 日本は、さすがに外国や国際機関からお金を借りるという段階は卒業しているわけですけれども、二〇〇〇年、初等中等教育に二・七%、そして高等教育には〇・五%という公費負担対GDP比というものは、先進国レベルというよりは、移行国、旧共産圏諸国の後発国レベルにとどまっていると思うんですね。

 私は、日本の教育財政全体がいまだ先進国レベルに達しておらず、後発国型を脱していないのではないかという問題意識を持っております。

 明治維新後になかなか義務教育費国庫負担制度が確立しなかったこと、また最大でも二分の一負担にとどまったというものも、国全体が貧しい中で、軍事予算に多くの国家予算を割かねばならなかったという構造があったからだと思います。戦後、一九五三年に義務教育費国庫負担制度が復活しましたが、このときも二分の一負担にとどまったのは、やはり国が貧しかったからなのではないかと思います。

 物の本によりますと、戦後、六・三制導入の際、予算が工面できなくて、全国で何人か自殺する村長さんが出たということであります。これは戦前は義務教育は六年で、それをGHQの指令で義務教育を三年延ばさなきゃならなくなった。六・三制にして、全然お金の工面ができないわけですね。当時、衆議院の委員会審議で、六・三制に伴う設備、学用品、教科書等の準備について質問をされた当時の文部省学校教育局長は、答弁できなくなってしまって、涙を流し、約五分間沈黙が続いた。

 そのころ、やはり文部省の方がラジオ放送で当時の状況を解説する中で、これは六・三制、しないも地獄、するも地獄。しないというのはGHQに逆らって、日本の独立を脅かされるからということなんですけれども、それだけ貧しい時代に、二分の一負担の義務教育費国庫負担制度が定められたということだと思います。

 ちょっと話が長くなってしまいますが、一九七四年に人材確保法ができますが、それまで教師の給与は民間の給与水準より著しく低く、また公務員行政職と比べても低かったわけであります。戦前は、それ以上にひどかったということであります。

 軍事優先の後発国家から先進国に発展するに従って、教育予算も充実していく傾向というのが諸外国にあり、また日本にも見られるわけですけれども、私は、国家の役割というものは、十九世紀は夜警国家、二十世紀は福祉国家と言われますけれども、二十一世紀は教育文化国家だと思っております。絶えざる戦争の危機から解放され、一定の生活水準を確保した国家に期待される役割、しかもグローバルな情報化の時代に期待される役割というものは、国民の教育文化を保障して高めていくことだと考えております。

 それにもかかわらず、小泉構造改革、三位一体改革の名のもとに今行われようとしているのは、義務教育費国庫負担制度の廃止と教育の地方への丸投げ、国の役割の放棄なのではないでしょうか。諸外国も驚く無責任さだと思います。国というもの、国家というものがわかっているのかと諸外国から疑われるのではないかと懸念しております。

 そこで、文科大臣に伺いますけれども、国が教育を地方に丸投げして国の役割を放棄するということは、極めて無責任なことではないでしょうか。今、政府・与党では、教育基本法の見直しも議論されているようですけれども、先ほど申し上げたように、教育基本法違反の疑いもあると思います。もし教育が完全に地方の役割だというのであれば、教育条例があればよく、教育基本法は要らないということになってしまいます。この点、政府・与党の中で、文科大臣になられた中山大臣、どのようにお考えでしょうか。

中山国務大臣 今、達増委員、外国の例、また歴史をひもとかれまして、教育の大切さを説かれたわけでございます。まさに二十一世紀は教育文化の世紀である、本当にそのとおりだ、こう思っているわけでございます。

 また、今御指摘ありましたけれども、教育基本法の改正の問題もございます。御承知のように、教育基本法というのは、戦後間もなくでございますけれども、昭和二十二年に制定されて以来、一回も改正されることもなく今日に来ているわけでございますが、その間、日本の経済社会情勢は大きく変わりまして、教育についてもさまざまな問題が生じているということで、今、精力的に教育改革に取り組んでいるところでございます。

 それに加えまして、やはり教育の基本にさかのぼった改革が必要ではないかということで、教育基本法の改正が議論されているわけでございまして、中央教育審議会におきまして、まさに教育の根本にさかのぼった議論がなされまして、昨年三月に、新しい時代にふさわしい教育の基本となる理念を明確にするために、教育基本法の改正が必要という答申をいただいているわけでございます。

 そして、その答申におきまして、国と地方が適切に役割分担をしながらそれぞれの責務を果たしていくということについて、教育基本法についてきちっと規定すべきだということが提言されたわけでございまして、御指摘のように、教育というものが非常に大事であるということを前提にいたしまして、教育基本法の改正の答申の趣旨を踏まえまして、教育について国がおろそかにすることのないようにということで我々は頑張ってまいりたい、このように考えております。

達増委員 いわゆる三位一体改革の中で、義務教育費の負担は地方の責任だというふうになっていくとすれば、教育基本法から、国が義務教育の無償というのを約束する、それは削除しなければならなくなると思いますし、多分、教育基本法の改正は、国は高等教育や研究開発には責任を持つが、あとは全部地方だというような教育基本法の改正になってしまうんだと思いますけれども、今全然そういう方向での議論になっているわけじゃないということで、この辺、矛盾なきよう、政府・与党できちっとやってほしいところであります。

 前任の河村文部科学大臣は、ことしの通常国会におきましても、教育の最終的な責任は国が負うべきであるですとか、義務教育費国庫負担制度の根幹は維持しなければならないですとか、そういった趣旨の発言を繰り返していましたけれども、これは中山大臣も同様の考え方、河村大臣から中山大臣に内閣改造があったわけですけれども、そこには連続性があるというふうに認識してよろしいのでしょうか。

中山国務大臣 私も、文部科学大臣を拝命する前に、教育についても関心を持っていたわけでございますが、河村前大臣が教育の重要性、特に義務教育費国庫負担制度の堅持ということについて主張されておられることを聞きながら、本当にそのとおりだ、このように考えておりました。

 確かに、三位一体改革、補助金改革は必要でございますけれども、しかし、教育改革というのはそれ以上に大事なものではないか、このような認識でございまして、そのことにつきましては河村前大臣と全く同じ認識で教育行政に取り組んでまいりたい、このように考えております。

達増委員 今、日本の教育を取り巻く経済社会環境、これが著しく悪化していると思います。また、政治環境も悪化しているのかなと思っております。そういういわば教育を取り巻く環境が悪化する中で、教育の現場にいらっしゃる皆さんは英雄的な努力で、あるいは画期的な工夫でさまざまな成功例をつくり出していると思います。

 例えば、民間人校長を迎えた杉並区立和田中学校の例でありますとか、また、アテネ・オリンピックで日本選手がたくさんメダルを獲得したことも、これはスポーツという教育分野での成功例でありましょう。また、百升計算ですとか、声に出して読む日本語ですとか、そういった新しい工夫が、広く全国的に本が読まれ、また多くの学校現場でも活用されていると聞いております。

 こうした教育関係者の努力によって、子供一人一人がぎりぎりのところで救われるケース、あるいは才能の開花に成功したすばらしいケース、こういったケースは多々あると思いますが、しかし全体としては、今、教育は危機に瀕している、苦戦を強いられているんだと思います。そういったときに、国のリーダーとして、政府として何をなすべきかと考えますと、やはり英雄的に戦い続けている現場や、あるいは苦しい戦いを続けている現場に人員や予算をきちんと補給していくことが今必要な局面なのではないかと思います。

 第二次世界大戦の末期に日本が苦戦を強いられているときに、歴史をひもときますと、当時のリーダーたちがしたことは、精神論を振りかざして現場をたたくことであったり、あるいは、戦争指導大綱という、今日の教育現場に置きかえれば教育基本法に当たるような、そういった国策の基本方針というのをいじくり回して、それで作文をして現状をごまかすというようなことを当時のリーダーはしていたわけでありますけれども、今、小泉内閣が何をしているのかを見ていれば、それと似たようなことをしていることに加え、言ってみれば、大本営が戦争から手を引いて、個々の部隊にあとは任せるぞ、それを教育の分野でやろうとしているのではないか。

 物資の補給はもうしない、各部隊、必要なものは現地調達せよ、こういう現地調達主義が中国戦線でさまざまな悲惨な事件を当時引き起こしたというのは、まさに歴史の教訓なわけですけれども、本当言うと、第二次大戦後半の失敗の本質と同じような失敗の本質が、今、日本の教育政策の中で行われているのではないかという危機感を抱いております。

 そこで、人員また物資の補給に関連しまして、総務省に幾つか質問をしたいと思いますけれども、小泉内閣には交付税全体を減らしていこうという強い覚悟があるわけですね。それは、平成十六年度、今年度予算でも、地方交付税が大きく削減されました。

 そういう中で、仮にですけれども、義務教育費国庫負担金を地方税に財源移譲した場合、足りない分は交付金で補うということになっているわけですが、マクロで、全体で交付金が減っていく中で、結局、基準財政需要額、教育にはこれだけ必要だという額と地方税収入との差額を交付金で補てんするという建前にはなっているんですけれども、その義務教育費が現状よりも安く済むだろう、もっと少ない額で済むだろうといって値切って、それで、少ない交付金でも埋められるような、つまり、意図的にギャップを少なくして交付金を値切るということに必然的になるのではないかと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

瀧野政府参考人 義務教育費と交付税の算定についてのお尋ねでございます。

 補助金の見直しにつきましては十六年度にも行っているわけでございますが、その中で、引き続き地方団体が行わなきゃいけない事務につきまして一般財源化された部分につきましては、基準財政需要額というところに全額算入いたしまして、今御指摘のように、地方税と交付税でその額が確保されるように算定をしてきたところでございます。

 交付税につきまして、全体として縮減傾向にある中で、きちんと財源が確保できるのかというお尋ねでもございますが、十六年度の交付税につきましては、投資的経費につきまして、一部、地財計画の見直しを行う中で交付税の総額の見直しを行ったわけでございますけれども、地方団体が標準的な事業として行うべきものにつきましては、確実に財源の措置をしてきたつもりでございます。

 十七年度につきましても、基本方針二〇〇四におきまして、地方団体の財政運営が安定的に実施できますように一般財源総額は確保するということを閣議決定しておるところでございますので、そういった中で、仮に義務教育費が一般財源化されますれば、それについてきちんと財源措置をしてまいりたいというふうに考えております。

達増委員 結果としてはきちっと財源措置がなされたことになっても、その算定の段階で厳しいことを地方に強いる、教育現場に強いることになるんじゃないかという疑いは晴れないんですけれども。

 具体的な例として、都道府県によって、当然、負担金でお金が来ている額に比べ、地方税に切りかえた場合、東京はふえるでありましょうが、多くの地方は額が減ってしまうことが予想されるわけですね。

 その場合に、所得税を住民税にスイッチした場合の東京都のケースを推定すると、約一千九百億円増額となる。ただそれは、東京には地方交付金、交付税を渡していないわけですから、それがその分交付税交付金のゆとりとなって、他の貧乏な県といいますか、税収がなかなか確保できない県の方にその千九百億円が回っていくわけではなく、これは国の借金の返済に使われてしまうんでしょうか。そうした地方へのお金の流れをカットして、そして国の借金を減らしていこうということがこの点にも見受けられるわけですけれども、この東京都問題についてはどのように措置されていくんでしょうか。

瀧野政府参考人 国庫補助負担金を廃止いたしまして、税源移譲を実施いたしますと、御指摘のように、特に東京都には税源が非常に多く行って、ほかの団体は税源がそれほど行かないというギャップが生じるだろうということは想定されるわけでございます。

 したがいまして、今想定して考えておりますのは、税源移譲をする場合の税制のあり方を、現状を変えていこうという考え方を持ってございます。

 それは、所得税から住民税への税源移譲をするわけでございますが、現在の住民税の仕組みは税率が超過累進課税となってございまして、五%、一〇%、一三%というぐあいに所得に応じて税率が高くなるようになってございます。これの税率をフラットにいたしまして、一定の比例税率にいたしますと、高所得者のいる地域とそうでない地域について、むしろ税収の帰属が平準化するであろうということでございまして、そういうような税制の仕組みを改正することによりまして、できるだけ税源偏在のないような仕組みに持っていく。それによりまして、御指摘のような税収と国庫補助負担金の差のギャップを縮めていこうというのが一つでございます。

 それから、前に地方財政計画というものを立てまして、地方の必要な財源措置をしておるわけでございますけれども、その中におきましては、不交付団体と交付団体、交付税をもらう団体ともらわぬ団体につきまして、的確に算定を分けまして、交付団体の中で財源がきちんと確保できますように計算をしておりますので、税制の見直しあるいは地方財政計画の立て方の中で御懸念のようなことは解消できるというふうに我々は考えております。

達増委員 そういった具体的な数字を早く見せていただきたいわけでありまして、通常国会にはきちっとした予算案という形、それに法案もくっついてくるのかもしれませんけれども、ただ、内容についてよくわからないまま議論が先行して、そして気がついたときには取り返しのつかないことになっていたということではまずいと思っております。

 また、結局地方税だけで義務教育費というのを賄えない、今でも地方負担の二分の一負担については交付税交付金の財政需要額に算入されているわけでありまして、そういう意味で実質的に、なかなか義務教育費を地方で、自分たちで調達するというのは、現地調達というのはやはり非常にこれは難しいことなわけでありますね。

 もう一つ、理念的に考えても、例えば私の場合は、私は岩手県で初等中等教育を受けまして、大学以降は東京に住むことになったんですけれども、納税者となった私が、教育費分の税金についてそれを東京の子供たちのためだけに納税するというのは忍びがたいものがあるわけです。やはり岩手県の子供にも資するような形で税を納めたいと思いますし、これは多分、田舎から都会に出てきた人のみならず、すべての日本国民にとって、全国の納税者からのお金で義務教育を受けさせてもらったわけですから、今度は自分が全国の子供たちのために税金を納めて恩を返すんだという、そういう気持ちが自然な気持ちなんだと思うんです。

 そういった、全国の皆さんから恩を受けた、次は全国の子供たちに恩を返そうという、そういう国民的な、歴史的なサイクルを断ち切ってしまおうという発想は非常にこれは無慈悲な発想だと思うんですけれども、小泉内閣にはそういった無慈悲な財政政策や経済政策がありますので、それがついにこの教育分野にも押し寄せてきているのかなということを懸念しているわけであります。

 さて、前向きな話をしていきたいと思いますけれども、先ほども言及したアテネ・オリンピックのメダル増であります。これは私、日本オリンピック協会、JOCの役員をしている方から、いかにJOCが苦労して子供の潜在能力の発掘、育成、強化、これを科学的に、システマチックに、マネジメントとして効率よくやったかという、そういう話を聞く機会がありまして、非常に感銘を受けました。大人たちが子供たちに才能を開花させる、その機会を与えたいということで強くアプローチしていく、こういったことはオリンピック、スポーツの分野のみならず、他の職業分野でも必要なことではないかと思うんですね。

 折しもキャリア教育ということが重視されているわけでありますけれども、ことしの夏休みには榊原英資さん、元大蔵省の榊原さんが中心になって、全国の高校生を強化合宿で、将来日本を支えるリーダーを養成しようというような強化合宿がありました。

 こういった、例えば農業者を育成するということもあると思います。もう小学生のころからやはり自然や植物、動物に対する関心、物すごく高い、そういう子供たちにそういった農業現場に触れる機会というものを小学校の時代から与え、そして中学、高校に至っては世界最先端の技術に触れる機会を与える。こういったことは物づくりの分野でもそうでしょうし、弁護士やお医者さんのようなそういう分野でもあり得ると思います。

 ただ、エリート主義的になってもよくないわけでありますけれども、例えば将来の町内会長の、そういう発掘、育成、強化ということもあり得るんだと思います。親の後を継いでこの子供は地元に残るだろうというような子供を子供会の会長をさせるとかから始まって、地域の歴史や地域の地理、そういったことについてだれよりもよくわかっているというようなことを小中高通じて、そういうエリートというのはどの分野にもあり得ると思うんですね。それは町内会にもあり得るし、これから必要とされる介護のホームヘルパーさんといったそういう分野にもあり得る。こういったあらゆる分野について子供の才能を開花させたいという大人側からのアプローチ、JOCについては文科省も密接な関係を結んでいろいろ共同でやっていると思うんですが、こういったことを他の職能諸団体でありますとか地域と連携して、そういう形でキャリア教育というものを進めていくと非常に効果的じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

塩谷副大臣 ただいまの榊原さんが行っていることについては、私は十分把握はしておりませんが、議員御指摘のとおり、高校生が物づくりや農業体験をすることは、生徒の勤労観や職業観の育成に資するとともに、専門的知識あるいは技能を身につけるために大変重要なものであると思っております。

 実は、私も生徒の国際交流をやっておりまして、毎年シンガポールの生徒を受け入れているわけなんですが、その生徒を日本の生徒がホストになってホストファミリーを引き受ける。日本の生徒がシンガポールの生徒に、日本へ来ても勉強しているので、何でそんなに勉強するんだと聞いたら、私は医者になると言って勉強する。ところが、日本人は受験のために勉強しているというような感じがしたということで大変ショックを受けたという話がありまして、まさに目標を持って勉学に励む、あるいは、職業観あるいは勤労観があってそういった目標が生まれると思っておりますので、その点は我々としても、しっかり受けとめて考えていかなきゃならぬと思っているところでございます。

 そして、文部科学省としても、キャリア教育の推進の観点から、児童生徒たちに対して、できるだけ早い時期に職業や進路にかかわる啓発的な体験機会を積極的に設けたいと思っております。その発達段階に応じて、きめ細かな指導や援助を行うことを重視しているところでありまして、このために、今現在、専門高校等における日本版のデュアルシステム、あるいは専門的職業人を育成するスーパー専門高校、一週間程度の職業体験活動を行うキャリア教育実践プロジェクト実施など、さまざまなキャリア教育に取り組んでおりまして、児童生徒の職業観あるいは勤労観の育成を行って、将来の日本を担う人材を育成するために努めてまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

達増委員 やはり大人の側の熱意というのが非常に重要なんだと思います。子供の才能を開花させたい、子供の潜在能力を発掘、育成、強化して才能を開花させる、そういう機会を与えるということですね。そういう機会というものは、やはり大人の側がどんどんつくって、あちこちに機会の窓というものをあけていかなければならないんだと思います。

 これは、文科省に特に関係のある教員養成についても同様だと思います。これもやはり、子供が好きな子供とか教えるのが好きな子供とか、そういった子供、もう中学生のころから小学生に対して物を教える、そういう機会を与えるとか、そういう機会を用意するとか。与えるという言い方は余りよくないかもしれません、大人の側でそういう機会を用意する。そういった、子供たちが主体的にどんどん新しいチャンスに挑戦していけるような形で教員養成についても考えていくべきだと思います。

 オリンピックの例であれば、国立スポーツ科学センター、そういう立派な施設があって、あの体操選手団がアテネの体操の器具と同じもので練習して、それが日本チームの金メダルにつながったという話があります。

 教育関係の施設も、筑波大学でありますとか、あと各地にあります大学の教育学部でありますとか、施設はいいものがあり、またたくさんあるわけでありますから、そういったところもどんどん子供たちにも開放して、教員養成ということを真剣に取り組んでいくべきだと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。

中山国務大臣 オリンピック、大活躍でございましたけれども、この陰にはいろいろな方々、団体がそれこそ総合的に取り組まれたその成果ではないか、このように考えているわけでございます。

 このことにつきましては、やはり選手といいますか子供もその指導者たちも一緒になってやっていかなければいかぬわけでございますが、そういう意味では、委員が御指摘になりましたように、キャリア教育というか、小さいころから、自分はどういうところに向いているのかな、自分は可能性はどういうところにあるのかなということを認識できるような仕組みといいますか、そういったものが必要だろう、このように考えているわけでございます。

 学校の先生につきましても、先生としての専門的な知識も大事でございますけれども、やはり先生としての使命感、あるいは本当に子供が好きだ、そういうような人、子供もいるわけでございますから、そういった子供たちを見つけるといいますか、関心を持ってこれは周りの大人たちがそういうことをしっかり見てなきゃいかぬわけでございます。そういった子供たちを将来本当に優秀な先生として、教師として育てていくようなそういったことについても考えていかなければいかぬ、このように考えております。

達増委員 次に、地域の活性化にかかわる政策論、幾つか取り上げたいと思いますけれども、これは、小泉政権が三年半続きまして、地方経済の疲弊、非常に著しく、地方の力が弱くなっている、地方が非常に苦しい状況になっているということが背景にございます。これに関して、文部科学政策を通じて地方を活性化するという分野が幾つかあると思うんです。

 ブレア首相がイギリスで総理大臣に就任したときに、何をやりますかと聞かれて、エデュケーション、エデュケーション、エデュケーションと答えた。もう教育、教育、教育、一に教育、二に教育、三、四がなくて五に教育という、日本語のフレーズにも合うようなことなんですけれども。これは、教育というものが、当時イギリスが直面していた課題、経済で国際競争力を高め、そういった国際競争に経済で伍していくということ、また、サッチャー保守党政権時代に、貧富の差の拡大でありますとか、そういう社会的な格差が国内で広がったものを是正していくという社会政策的な側面。

 教育政策の目的は、もちろん人格の完成という教育固有の目標ということは忘れられてはならないんですけれども、夜警国家、福祉国家、教育文化国家という発展段階論に絡めますと、やはり教育文化政策というものは、そういう国と国の競争であるとか社会福祉であるとか、そういったところにも資するものであるからこそ、二十一世紀に教育文化国家というものが求められるんだと思います。

 それで、何とか地域の経済を立て直すということで、文科省は、知的クラスター創成事業ですとか都市エリア産学官連携促進事業ですとか、あと大学知的財産本部整備事業といった、そういう地域における産学連携というのを推進するとやっているわけであります。私も、現場の大学の先生方、本当に必死に、地域に開かれた大学、そして産業界とも連携して、いろいろ実績を上げていこうと頑張っている皆さんに実際会ってお話を伺っておりますけれども、そういったところへの文科省からの政策、今後どのように進めていくのか、伺いたいと思います。

小島副大臣 お答えいたします。

 副大臣になって初めての御質問で答弁ということで、心から感謝を申し上げます。

 今、達増委員お話がありましたように、産学官の連携というのは、地域の活性化に大きな役割を果たすと同時に、我が国全体の科学技術の高度化、多様化にも大きく貢献をしているところであります。地域の主体的な取り組みを重視しつつ、産学官連携を中心とした地域科学技術振興政策を強力に推進しているところであります。

 今御指摘がありました知的クラスターの関係でありますけれども、平成十四年から始めたわけでありますが、全国で十八地域で実施をされています。これは、委員御指摘のように地域の活性化ということでありまして、五億円のお金を一地域に五年間出すということであって、その成果が着々と今上がっているところであります。なおかつ、都市エリア産学官連携促進事業、これは全国で三十七地域で実施をされておりまして、一地域一億円で三年間という形でありまして、ちょうど今、御指摘ありましたように二年半が経過したわけでありまして、中間報告が取りまとめられてきているところであります。

 今後とも、文部科学省といたしましては、経済産業省を初めとした関係省庁と連携を図りつつ、効果的、効率的に施策を推進していきたいと考えております。

 以上でございます。

達増委員 今の答弁にもあったように、経済産業省等他省庁との連携というのが非常に大事だと思います。経済産業省も、産業クラスター計画でしたか、やはり何とかクラスターという似たような地方での産学連携のプロジェクトを持っていて、それとばらばらではしようがありません。

 特に、知識社会、知的生産で価値をつくっていく、それが経済社会にも役に立つということで、そういう知的なネットワークがつながっていかないと意味がありませんので、経済産業省はもちろんですけれども、農林水産ですとか国土交通ですとか厚生労働ですとか、ありとあらゆる、今は縦割り省庁になっていますけれども、それぞれ研究施設を持っていたりしているわけですから、そういったところ、本当に総合的に連携してやっていくこと、これが大事だということを指摘したいと思います。

 さて、医師の養成についてであります。

 これは、地方の過疎地における医師というものがやはりいまだに不足している。そこで、文科省は、医科大学あるいは医学部といったところを所管してその定員、医大のあるいは医学部の定員を定めているわけでありますけれども、全国一律に一〇%削減していかなきゃならない、そういう数年前の閣議決定に基づいて全国一律に減らしていこうという中で、今、過疎地の医師不足という弊害が見えてきているんだと思います。これは、あちこちの県から是正のための意見書というものが文科省にも届いていると思います。

 こうした観点から、地方の医大の定員について、地方の医大は、卒業した後、そこの地方のお医者さんになる割合が非常に高いわけですね。そういう意味でも、地方の医大の定員をふやすといったことをしなければならないときが来ていると思うんですけれども、この点、いかがでしょう。

塩谷副大臣 達増議員の地元の岩手県議会からも、その定員についての要望が文部大臣あてに届いておりますが、この医学部の入学定員につきましては、昭和五十七年の臨時行政調査会の答申や閣議決定を受けて、昭和六十一年に、医師の過剰を招かないということで、厚生省における医師数削減の考え方を踏まえて、既存の入学定員の削減を行うとともに、新たな入学定員の増は行わないということになっております。

 しかしながら、今お話にございましたように、現在、僻地や離島において医師不足が大変深刻な課題となっておりますので、十五年の十一月、厚生労働省と総務省と連携して、地域医療に関する関係省庁連絡会議を設けました。そして、本年二月には、当面取り組むべき課題を取りまとめたところであります。

 この取りまとめについては、今後の検討課題の一つとして、厚生労働省において平成十七年度中を目途に医師の需給見通しを見直すこと、そして、それに伴って、文部科学省としても大学における医師養成のあり方を検討するということであります。

 なお、この取りまとめを受けて、文部科学省としては、大学関係者に対して、自治体や地域の中核病院と連携して、医療機関の機能分担や必要な医師の確保等について協議を行うための地域における医療対策協議会の開催、そして大学病院による地域医療の支援、さらには地域医療を担う医師養成確保の推進のため地域医療に関する教育の充実などを、地域における医療体制の充実のために積極的な対応をお願いしているところでございます。

 文部科学省としては、引き続き、厚生労働省と総務省と連携して、地域における医師確保対策に対して努めてまいりたいと思っているところでございます。

達増委員 小泉内閣のもとでは、経済財政諮問会議を中心に、ともすればアメリカ流といいますか、新保守主義流といいますか、とにかく効率をよくしさえすればいい、そして、効率的でないところはどんどん切り捨てていけば、そこはそれなりに努力して何とかするんだろうから、そういうむだを省いていきさえすれば日本全体よくなる、そういう方針が経済財政諮問会議を中心に小泉内閣は強いと思うんですけれども、そういうやり方で三年半やってきて、日本の現状は全然がらっと好転していない、むしろ悪くなっているところがあちこちに出ているわけでありまして、そうした方針の是正というのがいろいろな分野で必要になってきているということを指摘したいと思います。

 次に、ユネスコの世界遺産、これは最近、熊野古道の登録が話題を呼びましたけれども、その本来の目的であります自然や文化財の保護、そして、そういった自然や文化財に対する国民の関心をグローバルな、世界的な形で高めていくということに非常に資するわけでありますけれども、その熊野古道、もうこれはきれいなホームページなどもできていまして、それが町づくり、村づくり、あるいは観光といった、そういう地域振興の一つの非常に有効な材料にもなっている。

 そういう観点からも、日本は長い歴史があり、豊かな自然に恵まれて、これは世界全体の中で見てもユネスコ世界遺産登録がふさわしいところがたくさんあると思うんですけれども、この点、現状と、また、文科省としてさらなる登録を目指していく姿勢というものを伺いたいと思います。

小泉大臣政務官 お答えいたします。

 先生の御地元の平泉の文化遺産につきましても、十三年度に暫定リストに掲載をさせていただきました。本登録を目指して頑張りたいと思いますが、よろしく御指導もいただきたいと思います。

 いずれにしましても、日本を代表する固有の文化遺産の中から普遍的な価値を有するものを世界遺産に推薦、登録していくということは、日本の文化を世界に向けて発信するとともに、我が国の文化を改めて我々自身が認識をし、歴史と文化をとうとぶ心を培うことになるというのは申すまでもありません。

 また、今御紹介ありましたように、最近の例では熊野古道の事例があるわけでありますけれども、非常に大きな観光資源といいましょうか、効果を発揮したということは、御案内のとおりであります。この事例からもわかりますように、世界遺産としての登録を受けることは、地域振興に非常に大きな役割を果たすものだというふうに考えております。

 文化庁では、平成四年の条約締結後、我が国の文化財を順次世界遺産に推薦をしているわけでありますが、現在、文化遺産は十件、自然遺産二件、合計十二件を登録しているところであります。また、今も申しましたように、平成十三年四月には、御地元の遺産並びに島根県の石見銀山遺跡の二件を暫定リストに追加をしたわけでありますけれども、現在、トータルで四件の文化財が暫定リストに登録をされているところであります。

 今後は、登録の条件が整いましたものから世界遺産に推薦していくことになるわけでありますけれども、県あるいは市町村の条件整備に向けた取り組みに積極的に支援をしてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

達増委員 今答弁の中で平泉の話も出ましたが、平泉というのは、昔、京都ではない別のところにもう一つの日本の首都があったというような、イギリスで言うと、スコットランドのエジンバラといいますか、スコットランド王国とイングランド王国が分かれて戦っていた時代のもう一つの首都で、そういうものが日本にもあったというのは、世界に知られていないだけでなく日本人にも意外に知られていない。ともすれば、日本というのは、昔から単一民族、一つの国で、そこが日本の特徴だ、こう言われるんですが、実はそういう二つの国に分かれていたというような、ほかの国々というのは大体そういう歴史を持っていますから、そういう意味で他の国々とそこは共通している、相互理解にも資すると思いますし、また、日本人、日本国民自身が日本という国をさらに深く理解するためにも、こういった世界遺産登録を目指した取り組みというのが非常に有効だというふうに考えます。

 さて、地域の活性化に関する文部科学政策、もう一つは映画振興であります。

 この映画振興、国を挙げて取り組む、フランスでありますとか韓国でありますとか有名ですけれども、やはり文化政策として非常に重要な分野、日本でも映画人の関係者の皆さんから、ぜひぜひそこは政府の方でもきちんと理解して振興を図ってほしいという声が出てきています。

 総理大臣が先頭に立って映画振興という姿勢を示すのは時と場合をわきまえなければならないという経験を我々は最近したわけでありますけれども、そういったことはあるんですけれども、基本的に映画振興というものは国全体にとっても大事ですし、特に各地方でいろいろ、東京国際映画祭のみならず地方でもいろいろな映画祭が行われていますし、また、映画のロケ地としてより使いやすくしてくれというようなことを各地の商工会議所、コンベンションビューローのようなところが中心になってやっている。そうした地域の努力に対して文科省はどのようにこたえていくか、伺いたいと思います。

小泉大臣政務官 お答えいたします。

 現在、二十三日から東京国際映画祭が開催をされまして、非常に多くの方がおいでをいただいているということを聞いておりますが、映画は、演劇、音楽、美術などを包含する総合芸術でありまして、その国や地域の文化的状況の表現であるとともに、その文化の特性を示す重要な文化活動であるというふうに認識をいたしております。

 このため、映画振興につきましては、魅力ある日本映画・映像の創造、日本映画・映像の流通の促進、映画・映像人材の育成と普及等の支援、さらには日本映画フィルムの保存・継承の四つの柱から成ります「日本映画・映像」振興プランを策定しまして、総合的な施策を講じているところでございます。

 一方、各地域におきましては、地域の特色やそれぞれの趣旨を生かした映画祭や映画制作などが展開されていくことが大変重要なものであるというふうに考えておりまして、文部科学省では、国内で行われます映画祭への支援、地域において企画制作される作品の制作支援等を実施しておるところであります。

 本委員会には映画の専門家の伊藤委員もおいでになるわけでありますけれども、今後とも、地域における映画振興も含め、日本映画の振興に総合的に取り組んでいきたいと考えております。

達増委員 実際、ロケ地を提供していく場合に、道路交通法との関係ですとかあるいは文化財保護法との関係なども出てくると思います。文部科学省の中で、そういった規制の緩和、規制改革的なこと、文科省限りでできることはどんどん進めなければならないと思いますし、また、他省庁との関係でも、そういった規制を取り払っていくことで、より自由な映画撮影でありますとかプロモーションでありますとか、できると思いますので、そういった工夫をさらにしていっていただきたいと思います。

 時間ですので終わりますけれども、義務教育費の負担の問題に戻りますが、行財政改革は確かに重要であります、行財政改革は確かに重要であります。これはどんどんしなければなりません。規制の改革などもそうであります。

 ただ、今我々が直面する国や地方の財政危機の原因と結果を考えた場合に、教育がむだ遣いをした結果、今の七百兆円の財政危機というのが、教育にむだ遣いをしたのが原因であったという、そういう因果関係はないんだと思うんですね。したがって、その財政難を解決するために教育費用というものが刈り込まれるというのは、これは原因と結果の関係を無視して間違った政策を進めるということで、事態をより悪化させると思いますので、そういうことがないようということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 笠浩史君。

笠委員 中山大臣には本日初めて質問をさせていただくわけでございますが、どうかよろしくお願いをいたします。

 質問に先立ちまして、新潟での中越地震、この被災に遭われた方々に対して深くお見舞い、そしてお悔やみを申し上げたいと思います。先ほどもまた、十時四十分ごろに震度六弱の地震が起こったということで、地盤も緩む中での二次災害等も心配をされます。

 私は、この二十三日に地震が発生した翌日に、民主党の調査団の一員として、午前中、小千谷市、長岡市を中心に視察をし、また被災者の方々のお見舞いに参ったわけでございますけれども、いろいろな声を、いろいろな悲痛な叫びを聞かせていただきました。ただ、その中でも、お子さんが、学校にいつから行けるんですかとか、そういった声も多々あったわけでございます。ぜひ中山大臣には、我々もこうした問題については与野党超えてしっかりと対応してまいりますので、リーダーシップを発揮され、一刻も早い復旧に努めていただきたい、そのことをお願い申し上げたいと思います。

 ところで、先般、大臣の所信を聞かせていただきました。私は、本来でありますと、きょうこの場で、限られた時間とはいえ、例えば教育基本法の問題、国がどう責任を持って教育をやっていくのかという問題、こうしたことについて十分な議論をしたいというふうに考えておったわけでございますが、これはまたこの臨時国会中大いに、今、大きな問題、きょうもさまざまな指摘がされておりますけれども、抱えているさなかでございますので、与党の皆様にも、審議を毎週二日ぐらいはしっかりとさせていただくことをお願い申し上げたいと思います。

 そして、この大臣の所信の中で、私、ちょっと一つ残念なことがあるわけです。

 どちらかといいますと通常国会のときの前河村大臣の所信とほとんど変わらないような内容であったわけでございますけれども、参議院選挙が終わって、八月、短い臨時国会が行われました。一日だけ当文部科学委員会も開かれたわけでございますけれども、それ以降、約二カ月半の中で幾つかの、文部科学行政に監督責任のある不祥事というものが起こっておりまして、あるいは引き続きの懸案がございました。

 例えば、東北文化学園大学のでたらめな申請を一たんは受理をし、開設の認可を出した、しかしそれが破綻をしたといった問題、さらには、世界青少年交流協会あるいは日本学会事務センターの破綻、こういうまさに文部科学省所管の財団法人の問題というものが何度も報道もされ、社会問題化しております。こうしたことについての大臣自身の、当然、再発防止に努めるんだ、こういうことはあってはならないんだというようなことが中に入っていてもいいんじゃないかと私は思ったわけでございます。

 こういう問題について、河村大臣からもいろいろなお引き継ぎがあったと思いますけれども、中山大臣の決意と、そして、なぜ所信の中でそういうものに対する対応についての御自身の考えが述べられていなかったのか、その点についてまずお伺いをいたしたいと思います。

中山国務大臣 河村前大臣からは、人間力向上のための教育改革の推進、それから教育基本法の改正、義務教育費国庫負担制度と三位一体改革への対応、大学改革への推進、基礎研究、学術研究と重点分野の研究開発の推進、生涯学習やスポーツ、文化の振興など、文部科学行政全般にわたりまして取り組むべき課題について引き継ぎを受けております。

 私は、河村前大臣が進められておりました取り組み、画一と受け身、それから自立から創造へ、こういう転換、このことについては大賛成でございまして、確かな学力をはぐくむことや豊かな心の育成ということについても大賛成でございます。

 さらに私が申し上げたいのは、十三年ぶりに実は文部科学省に戻ってきたような感じでございますけれども、その間、経済社会が大きく変わりまして、いろいろな仕事をしてまいりましたけれども、やはり人づくり、教育は大事だな。特にこういう大競争の時代なものですから、もう少し若いときから競い合う心といいますか、切磋琢磨する、そういった気持ちを子供のころから植えつけるべきではないかな、そういったことを感じながら実は就任したような次第でございまして、そういったことも含めまして、前向きの教育改革をやっていきたい、こう考えているわけです。

 今御指摘がありましたように、私の就任前後、いろいろな不祥事が起こりまして、そういう意味では、まことに遺憾なことだ、このように考えているわけでございまして、私の就任前後におきましても、これらの不祥事にかんがみまして、公益法人の指導監督につきましては、今般、公益法人の指導監督に係る改善策というのを取りまとめまして、臨時の実地検査や外部監査の積極的導入を図るなど、これまで以上に厳正な取り組みを行っております。

 また、学校法人につきましては、設置許可時の審査に当たりまして、寄附金の受け入れに係る審査方法等の改善強化、学校法人の管理運営に対する審査を強化することなどの改善策を講じておるところでございまして、このような取り組みを進めることによりまして、そういった不祥事が起こらないように、もっと前向きの、教育改革に取り組めるような、そういう体制を早くとっていきたい、このように考えております。

笠委員 おっしゃるとおりだと思います。私も、人づくりこそが本当にこの国の基本であり、すべてであると思います。

 そうした中では、やはり青少年の心をきちんとはぐくんでいかなければならない。また、文部科学省というものはそれをリードしていく、大臣はその先頭に立たれるお立場でございます。今おっしゃったような不祥事に対する再発防止についてのこれからの善後策というものについては、しっかりとお取り組みをいただきたいわけでございますけれども、その前に、今起こっている問題についての事実解明ということについて、みずからがやはりリーダーシップを発揮されるということもあわせて私は大事なことではないかと思っております。

 そこで、きょうは、限られた時間でございますので、世界青少年交流協会の問題についてちょっと集中して大臣にお伺いをさせていただきたいわけでございます。

 この問題が発覚しましたのが、ちょうど臨時国会、この文科委員会が開かれていた前日でございましたか、私ども、当時の平野筆頭理事が質問させていただいた。そして、そのときにも、まだ情報がない、しかしこれから調査をしていかなければならない、あるいは小泉総理も、不正があれば調査しなければならないと、八月四日、記者団に言い切っているわけです。

 この点について、今現在把握されていること、その点についての報告をお願いいたします。簡単にで結構でございます。

中山国務大臣 本件につきましては、なお警視庁において捜査中でございますけれども、文部科学省としても、当省が保管する世界青少年交流協会への補助、委託等の事業関連書類の確認を行うとともに、過去の担当者からの聞き取りや世界青少年交流協会からの聴取を随時行うなど、事実関係の把握に努めてきたところでございまして、調査の結果、同協会は、旅行代理店に水増しした見積書を作成させ、それに基づき事業計画書等を作成し、補助金等の不正受給を行ったものと承知しておるところでございまして、今後、引き続き、警視庁の捜査状況等を踏まえつつ、事実関係の把握に努めまして、補助金の返還等、文部科学省として必要な対応をとりたい、このように考えております。

笠委員 幾つか具体的に質問させていただきます。

 この協会、ちょっと確認なんですが、解散するというような方針が既に出されているわけでございますけれども、もう解散したんでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 八月の四日の記事でございましたでしょうか、一部新聞に、同協会を解散する方向で手続を進めることを決めたという記事がございました。その段階で私どもは確認いたしましたが、まあ自主解散でございますけれども、法人としてそれを決定したということはないということを聞いておったわけでございます。

 十月の八日に理事会が開催されまして、裁判所に対して破産の申し立てを行う方向を決定した。これは一部新聞にも報道されているようでございます。それで、十月の二十日に裁判所に具体的に破産の申し立てを行ったというふうに私どもは聞いているところでございます。

 そういう意味で、現在、裁判所で審査中であるというふうに理解しております。

笠委員 今文科省として把握しておられる不正受給額は幾らになるでしょうか。局長、お願いいたします。

素川政府参考人 文部科学省は、平成十一年から十五年まで、補助金と委託費という形で当協会に対しまして助成、支援をしているところでございますけれども、細かい補助金等の不正受給額、これにつきましては、御案内のように、七月二十日に警視庁が協会に入ってから、資料が全部押収されているということもありまして、正確な数字というのはなかなか把握しかねるということでございますけれども、私ども、協会の関係者からの聞き取り等を踏まえまして、一億以上、一億数千万程度の不正受給額、平成十一年から十五年にかけましてあったのではないかというふうに見ているところでございます。

笠委員 局長、それはおかしいですよ。私も資料をいただいているんですけれども、その一億以上というのは、これは流用された金額でしょう。私が聞いているのは不正受給額なんです。不正受給額というのは、私の認識では、補助金の一部が流用されたときには、その補助金全体の金額をいうはずじゃないですか。

素川政府参考人 事柄の定義でございますけれども、返還請求するときに、どれくらいの額を返還するのかという観点に立ってその額を確認しなきゃいけないという努力をしているわけでございます。その中において、私どもは、そういった返還を前提とした額をどのようにするかということで今申し上げたわけでございますけれども、今先生がおっしゃいますように、一部でもそういう不正受給があれば全体を不正受給というのだという定義といいますか、そういう考え方に立ちますと、平成十一年から十五年までに約四億八千万、補助金と委託費につきまして、そういう金額になってございます。

笠委員 最初から正確な答弁をお願いいたします。

 それで、文科省が調査報告というもの、三枚のペーパーを出しておられます。私、この中で、「不正受給金の使途」というところがあるのでございますけれども、この中で、これは私流に言うと流用された金額ですね、不正受給金じゃなくて。流用した疑いのある金額の中の「大部分は協会の運営経費(人件費、需要費及び事務所費等)として使用。」と。これは、私が聞いておるところでは、大部分じゃなくて一部がそうしたお金に充てられて、大部分は使途不明金になっているんじゃないですか。

 この大部分というものの根拠というか、きちんと帳簿なりあるいは領収書なりを確認した上で、大部分と言うに値する金額の実態を把握しているということでよろしいんでしょうか。

素川政府参考人 先ほど申し上げましたように、第一次資料といいますか、資料に直接アクセスするということは今の段階ではかなうことではございませんけれども、私ども、協会から聴取しているところによりますと、これは不正受給の手法というものをお話しするのが先かもしれませんけれども、この使途につきましては、具体的に特定の年度、例えば平成十一年から十五年までですと、平成十一年から十三年度までに、いわゆる裏口座の段階から直接当協会の職員に対して個人利得といいますか、そういうものがあったという事実を聞いているわけでございます。

 それ以外につきましては、すべて基本的に、いわゆる正規の口座というところに移しまして、それを協会の運営経費、通常でいいますと補助対象外経費といいますか、補助金につきましては事業費補助でございますので、その常勤職員の給与でございますとか事務所の賃借り料、そういったものについては補助対象外でございますけれども、そういったいわゆる補助対象外経費としての協会の運営費に充当していたということでございます。そういう意味におきまして、その報告書においてそのような表現をとっているところでございます。

笠委員 私も今の話を聞いてもわからないのですけれども、十一年から十三年度においては個人利得とされた部分があったと。これは、どういう形で確認したのですか。

 要するに、私が言っているのは、領収書とか帳簿とか、聞き取りなんてのは調査じゃないですよ、それは参考にはなるけれども、この後聞きますけれども、それをもって告発するとかということはまさかないと思うんですけれども、どういうふうな裏づけをとったのかということを私はお伺いしているんです。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、七月二十日の時点で協会に警視庁の捜査が入りまして、書類はすべて警視庁に押収されているわけでございます。

 そういう意味におきまして、協会においても、具体的な資料を提示して私どもに説明するということはかなわないわけでございますし、私どもも、直接資料そのものに、一次情報にアクセスして確認をとるということは現段階ではかなわないわけでございますので、そういう限られた状況のもとで、私どもとしては、関係者からの聞き取りというものを踏まえて、現段階の概要の把握といいますか、調査というものを行わざるを得ないということでございますので、その点を御理解いただきたいと思います。

笠委員 つまりは、確認はされていない。

 それで、九月の十七日に、文部科学省として、もう既に逮捕されている方の中、五人の中からお二人の方を告発されていますね。

 それで、私、ちょっと疑問に思うんですけれども、最もこの協会を取り仕切っていたと言われている、もう詐欺容疑で逮捕されている鈴木さんという副会長、一九九八年から二〇〇〇年三月、事務局長もやっていたんですけれども、この人が首謀者だと。要するに、全体の責任者なんですよ。この方は告発されていないんですね。この五人のうち二人だけを告発されている理由というものは何なんでしょうか、根拠というものは。

素川政府参考人 御指摘のように、九月の十七日の段階で、事務局職員二人につきまして私どもの方から刑事告発をいたしたところでございます。それは、先ほど先生少し触れましたけれども、個人利得があったわけでございます。それは、平成十三年度につきましては、具体的に当人が、二人につきましては各六百万、裏口座から直接個人利得したというふうに言っているわけでございますけれども、そういう協会としての不正受給に加えまして個人利得があった、その個人利得に主体的にかかわったのが二人の職員であるということでございます。それで、今先生御案内の副会長につきましては、個人利得という事実は確認されていないわけでございます。

 そういう意味におきまして、よりその問題の重大な二人につきまして、私どもとしては警視庁に告発をしたということでございます。

笠委員 局長、ちょっと確認なんですけれども、では、今、六百万の個人利得というのは、御本人がおっしゃったわけですね。今、確認したということをおっしゃっていますけれども。それでよろしいですか。

素川政府参考人 そのとおりでございます。

笠委員 そこで、それ以上はわからないと。なかなか、捜査当局が資料等、帳簿等をすべて持っていくので、文科省としてはこれ以上の調べようがないということなんです。私、ちょっと二点お伺いしたいんですけれども、この中の一つのあれで、流用されたお金の一部で文科省の職員を接待していたというような疑惑もあるわけでございます。この点については、報じられたこともあるわけでございますけれども、当然、調査を省内の方に対してされたということでよろしいでしょうか。

白川政府参考人 お答えいたします。

 今先生からお話ございましたように、報道等でそういう報道、確かにございました。私どもは、文部科学省職員と協会との関係につきましては、現在、文部科学省におきまして、過去の補助金担当者から事情の聴取をしておるところでございます。したがいまして、現時点で確たることは申し上げられないわけでございますけれども、事情聴取をいたしました結果、例えば国家公務員倫理法上の問題が確認されるというふうな場合には、私ども、当然でございますけれども、厳正に対処してまいりたいと思っております。

笠委員 官房長にお願い申し上げます。

 その調査結果が出たら、また当委員会の方にもぜひ資料として提出をしていただきたいことを理事会で検討をいただきたいと思います。お願いをいたします。

 それと、今お話ありましたけれども、その調査の中で、だれから接待を受けたのか、そのこともあわせてしっかりとやっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

白川政府参考人 先ほども答弁いたしましたように、現在、事情聴取をしておりますところでございますので、その結果につきましては、委員会の方の御指示に従いましてまた御報告を申し上げたいというふうに思います。

笠委員 私、これしっかりと、その百万の出どころが本当にやみで処理をされた、流用されたお金なのかどうか、そこあたりというものは今となっては難しいかもしれません。けれども、やはりこれだけ大きなお金が一部流用された、補助金がまさに不正に使われていた、受給されていたというような、これは大変大きな問題でございますので、やはり国際交流の青少年の育成事業の一環ですよね、掲げているこの協会の事業内容というものは。だからこそ、これはただ単に捜査がどうだとかということではなくて、大臣自身が、やはりできる範囲でしっかりと調査をする、その先頭に立っていただくということが大事だと思うんです。

 この協会、会長が森元総理なんですね。設立時からと伺っておりますけれども、あわせて、理事に国会議員の方々が名を連ねられているわけでございますけれども、これは、何かこんなに国会議員が名を連ねる必要というのがあるんでしょうか。そこあたりについて、大臣の感想というかお考えを、こういう実態の協会でございますから、よろしくお願いいたします。

中山国務大臣 まさに笠委員御指摘のように、これは子供を食い物にしているということで、まことにけしからぬ、こう思っているわけでございまして、先ほどから説明がありますように、文科省といたしましても、これまで、世界青少年交流協会事務局や今回の事件に関連して、同協会から事務処理等の委任を受けた代理人を通じて事実関係の把握に努めてきているということでございます。

 それから、国会議員が名を連ねる必要があったのかどうかということでございますけれども、この協会は、三十年間以上にわたりまして青少年及び青少年指導者の相互交流などの国際交流活動事業を推進しまして、青少年教育上の大きな成果を上げてきた、このことは否定できないと思うわけでございまして、その中に国会議員の方が入っておられたということについては、それなりにまた評価してもいいんじゃないか、このように思っております。

笠委員 逆に国会議員が入るんであれば入ったなりの、私はしっかりと、なかなか役所では目の届かないところも、理事だ会長だということで名を連ねるんであれば、むしろきちんとした運営がされるようなチェックをするようなこともやはりやらなければいけないんじゃないか、そうしなければその意味はないですよね。

 むしろやはり、私はぜひ大臣に一つお伺いしたいのは、これはもう本当にとんでもないことだということを大臣も今お述べになりましたけれども、森元総理にはこの件についてはどうなんだということを大臣として、あるいは前の河村大臣が、お伺いになったことがあるのか、その点についてお伺いいたします。

中山国務大臣 こういったものに国会議員が関与するといいますか、入っておるということはどういう意味があるのか。むしろ、そういう監査といいますか、チェックするよりは、前向きにもっとやろうやろうという推進の方向にどうしても目が行ってしまうんだろう、こう思うわけでございます。

 それで、森会長から直接事情を聴取すべきじゃないか、こういう御質問でございますけれども、この交流協会の森会長としては、代理人に事実関係の調査を依頼しているというふうに聞いておりまして、文部科学省としては、同代理人や同協会の事務局を通じて事実関係の把握を行っているところでございまして、会長自身から直接事情を聴取する必要はない、このように考えております。

笠委員 ただ、これは森さん自身も、事件が発覚したときに、もし水増し請求というものが事実だとしたらまことに残念だ、事実関係の把握に努めたいと。だから、代理人の方に任せるとかじゃなくて、どなたに解明させるかは別として、当然この言葉を信用すれば、そのまま読み取れば、森さん自身が、やはり会長としてこれだけの問題が起こったから事実関係をしっかりと把握する責任があるという思いでおられると思うんですね。

 であるならば、その方から、そうした結果が出てくるのを待ってでも結構でございますけれども、やはり話を聞かせていただくということは、私は当たり前のことじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

中山国務大臣 森会長としても、この事態の重大さを認識しているからこそ代理人を立てられたんだろうと思うわけでございます。やはり、そういったことを調査したりするには専門家でないと、ちょっと国会議員の手には負えないところもあるんじゃないかと思いますので、そういう専門家の代理人を立ててやっておられるということに私は森会長の気持ちをうかがい知ることができる、このように理解しております。

笠委員 では大臣、その代理人の方というのの調査結果がいつ出るのか、あるいは今どういう状況なのかというようなことを含めて、やはり私は、この委員会にもあわせて報告をしていただかなければならないし、やはり捜査とは別に、しっかりとみずから文科省がリーダーシップを発揮して、もう二度とこうしたことを、これは五年だけの話が出ているわけですけれども、これだけの組織立った悪質なやり方というのは、恐らくもっと前から、以前から行われていたんではないかという疑いもあるわけですよ。だれが聞いたってそう思うんですよ。ですから、この委員会としても私はこれは看過できない。

 ぜひ、また森さんにもお話を聞く機会というものを理事会で御検討いただければということを委員長にもお願い申し上げたいと思います。

斉藤委員長 その件及び先ほどお話がありました調査結果について理事会の方に報告をしてほしいという件につきましては、また理事会で協議をさせていただきます。

笠委員 大臣、本当に交流協会の問題というものは、文部科学省のみならず、あとほかに国立オリンピック記念青少年総合センターとか日本自転車振興会あるいは国際協力機構、日中緑化交流基金、こうしたところからも不正に補助金を受けていたという、まさにとんでもない協会ですので、この件について、改めてしっかりと私もまたこの場で質疑をさせていただきたいと思っておりますので、ぜひ大臣も、就任してもうそろそろ一カ月でございますけれども、この点については、同じ派閥の先輩であるとはいえ、だからこそ、そこあたりで、捜査では出てこないような事実関係を委員会の場でまた御報告いただけることを期待申し上げまして、本日の質疑を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

斉藤委員長 城井崇君。

城井委員 民主党の城井崇でございます。

 まずは、私からも、一連の台風そして地震などの被害に遭われた皆様に対しまして、お悔やみとお見舞いを申し上げたいというふうに思っております。

 さて、本日、私から冒頭お伺いいたしたいのは、ここ最近議論伯仲、そして先ほども出ておりました義務教育の問題についてでございます。

 ちょうど国会が開かれておりませんでしたことしの八月の十日に、河村前文部科学大臣より「義務教育の改革案」、いわゆる河村私案というものがペーパーとして発表されました。この改革案についてまず大臣にお伺いをさせていただきます。

 前大臣が発表されたこの案に示された各種アイデアを含めまして、現在の大臣も引き継がれるということなんでしょうか。文部科学省の今後の基本的なスタンスと考えてよいのかどうか、大臣からお答えをちょうだいしたいと思います。

中山国務大臣 そのように考えております。

城井委員 ありがとうございます。

 この改革案、実際に出てきたときに内容を含めまして余りにも唐突だったということがありまして、聞き及びますと、文部科学省の中でも、一体このアイデアはどこでつくられたんだろうかということで、つくられた部署すらわからないというような声もあるわけでございますけれども、引き継がれてはおるということでございますので、それを前提にもう一つ質問させていただきたいと思っております。

 具体的な内容についてお伺いしたいと思っておるわけですが、まず、この案にございます一番目の「義務教育制度の弾力化」、そして四番目にございます「国による義務教育保障機能の明確化」という二つの点でございますけれども、一方である意味でこれまでの枠組みを崩していくという、そのもう一方で機能を明確にしていくということでございますが、実際これは矛盾をしないでしょうか。どのように具体的に両立をしていくのかという点について、大臣、お願いします。

中山国務大臣 河村プランというのが唐突に出てきた感があるかもしれませんが、実は、御承知のように、中央教育審議会におきましても、教育改革全般について議論しているわけでございまして、その中で義務教育のあり方ということについて検討していくべきだということからこの河村プランというのが出てきた、私はこのように考えているわけでございます。

 それで、この義務教育の枠組みの問題をどう考えるかという話だと思うんですけれども、これにつきましては、やはり子供の発達段階というのが大分変わって速くなってきていることもありまして、義務教育のいわゆる到達目標をどうするかということ、それの明確化ということと、九年間の義務教育の中でどういった形でカリキュラムを組んでいくかというようなことについてもう少し弾力的に考えていこう、こういうふうな話だというふうに私は理解しているわけでございまして、その中で義務教育の国庫負担制度についてもしっかりと保障していかなければいかぬ、そういうような絡みで検討されている、私はこのように考えております。

城井委員 今、義務教育費国庫負担についても触れられましたけれども、この改革案にもその表現がございます。「義務教育費国庫負担制度については、義務教育の根幹を支える財源保障としての役割を明確にし、地方の自由度を更に高める観点から改革。」とあるわけでございますけれども、ある意味で実情を踏まえながら弾力化をしていくということでございましたが、今実際に例の三位一体改革の議論を含めまして行われているところを見ますと、現在提起されている全国知事会の皆さんからの提案に対して文部科学大臣として対案を出しようがないというコメントをされたということを伺っておりますし、また先日の文部科学省の説明で見ますと、三位一体改革が進めば、実際に、この義務教育関連ということで申しますと、アイヌ対策とそれから僻地対策の予算としての十億円分しか文部科学省の手元には残らないという説明が私ども民主党にもございました。

 そういった意味で申しますと、先ほどの説明を含めました、今大臣がお話をされているいわゆる教育論の観点からの部分がかなり現実味を帯びたものでないと、そういった議論に対して対抗していくのは厳しいのではないかというふうに感じるわけであります。

 それにあわせまして、ここが文部科学省として非常に弱い点だと私が思っておりますのは、その教育論のところに余りにこだわりを持ち過ぎる余り、今議論のまないたの上にのっている財政論の部分、そして分権論の部分といった観点について、文部科学省として、いわゆる文部科学省内の予算の中では対案が出しようがないにしても、そのほかのところを含めてきちんと対案を示していくということがなければ、これまでも再三おっしゃられております義務教育に対する国の責任というものを果たせないのではないかというふうに思っています。

 私ども民主党でも、いわゆる文部科学省内の予算だけではなく、そのほかも含めて、今回の教育論を実現していくために必要な予算のあり方というものを具体的にも提示してまいりたいと思っておりますので、この点についてはまた次の機会に譲らせていただきたいというふうに思っております。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 次に伺いたいのは、ITER計画、いわゆる国際熱核融合実験炉の計画についてでございます。

 このITERについてですけれども、大臣所信にもございました、日本への誘致に向けて引き続き最大限の努力ということでございました。ただ、その問題を見ますと、今いわゆる建設地を決める政府間交渉が膠着状態にあるというふうに聞き及んでおります。

 政府はこれまでに、ITER計画を青森県六ケ所村に建設候補地として国内誘致を閣議決定して、その後に交渉が続いているということを承知しているわけでございますが、実際に、日本の国内でこの問題について今でも、ITER計画はエネルギー政策としてはリスクが大き過ぎるのではないか、研究としてもお金がかかり過ぎるという声もございます。

 私から見ますと、このITER計画、ある意味で、においはするけれどもいつまでたっても出てこないウナギのかば焼きみたいなところがあるのではないかというふうに思っています。ある方が言いますと、実はたれすらないんじゃないのといううわさもあるわけですが、もう少し細かく言うと、この今のITER計画の取り組み、私から見ますと、余りにも危険でむだが多いのに、政府サイドが楽観的過ぎるのではないかということ、そして、非常に大きな額の税金が投入される割には、その理由が国民にきちんと説明されているか、足りない、そんなふうに思っています。そして、誘致活動を進めていくに当たっての外交戦術というものが余りにも不器用だ。こういった点からいうと、実は、今のこの計画の状況はかなり末期症状にあるのではないかというふうに思っています。

 今後、誘致活動を一層強化するにしても、あるいは別の選択肢を考えていくにしても、いま一度このITERの誘致について国民の理解をきっちりと深めていくということが必要であるのとともに、この計画自体の再評価というものをすべきときだというふうに考えております。この点について、まず大臣、お願いします。

    〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕

中山国務大臣 今お話がありましたように、ITER計画というのは、世界で初めて本格的な核融合反応を実現するもので、人類にとって究極のエネルギーである核融合に向けて重要なステップになるもの、このように考えておるところでございまして、今お話がありましたように、本当に大丈夫か、そういった懸念もあるわけでございますけれども、私どもとしては、まだ基礎的な段階にあるということで、その実現までにはITER計画を含めて着実な研究開発が必要である、このような認識を持っているところでございます。

 そして、今後、ITER計画と並行して核融合の材料の研究等を進めまして、三十年程度で核融合発電の実用化にめどがつけられるのじゃないか、このような見方をしておるところでございます。

 こういった意見を踏まえまして、今現在、六極でできるだけ早くITER計画の実現を目指して我が国としても努力しているわけでございますが、外交交渉がちょっと下手ではないか、こういうような御指摘もあったわけでございますが、御承知のように、先般我が国から新しい提案を出したところでございまして、それらに基づきまして今交渉が進められている、このように承知をしておるところでございます。

城井委員 今の御説明ではまだ国民は納得できないのではないかというふうに思っています。もう少し踏み込んだ点を大臣にお伺いしていきたいと思っております。

 まず、先ほどの非常に大きな金額がかかってしまうという巨額の負担の問題についてでございますけれども、現在、ITER計画、総事業規模が一兆三千億円と言われています。非常に大きなお金だと思っています。これをもし日本に誘致した場合に日本が負担するべきお金というものは、先ほどの三十年間ということになりますと、総額で七千億円に上るというふうに言われています。

 今までの科学技術関係の予算を見ますと、あのニュートリノ研究のスーパーカミオカンデ、初期の段階から含めても百十億円かかったというふうに言われています。巨大電波望遠鏡をつくるというあのALMA計画についても、三百億円というお金。正直言って、このITER計画の七千億円と比べると比較になりません。それぐらい大きなお金だ、膨大な出費だというふうに思っています。

 さらに、ただでさえ少ない科学技術の予算であるのに、今回ITER計画を本当に進めてしまうと、その大部分をとられてしまうのではないかというふうに思うわけです。しかし、よく見てみますと、ほかの国につくれば、我が国の負担というものは約四分の一で済むということでございます。

 ただ、そういう大きな負担を背負ってでも進めた場合に、もし三十年後に成功すれば、その後の原型炉ですとかあるいは実証炉を経て、本当に実現をすれば、将来の核融合発電の市場規模は大体七百兆円ということを原子力研究所の方が試算をされているのを聞きましたし、周辺技術のすそ野の広さですとか、あるいは日本の科学技術自体への信頼というものも高まるということならば、この投資に見合う成果という期待をおっしゃる方もおられるかもしれません。

 しかし、先ほどの三十年ということをおっしゃる前に、それまでも、特に、自民党においてこのITERの推進議連の現在は顧問をされているかと思いますけれども、加藤紘一議員、非常に積極的に進められてきたと聞いておりますが、この方をして言わしめても、約二十五年前、核融合は三十年後に実用化できるというふうに言っているわけでございますが、先ほど大臣がおっしゃったように、これから三十年またかかってしまうというのはある意味逃げ水ではないかということをこの自民党の加藤議員も指摘をされています。

 その時間自体が、ある意味でいつまでたっても出てこないウナギのかば焼きという状況が続いているというのとともに、技術自体についても、ノーベル賞を受け取られた小柴東大名誉教授によりますと、ITERで大量に出る高速中性子への対応ですとか、あるいはそれに伴って大量に出る放射性廃棄物の処理というものをどうするかということを考えると、はっきり言って税金のむだ遣いではないかという指摘すらあるわけでございます。

 我が国の技術レベル、先ほど基礎的な段階という言葉もございましたけれども、ある意味で、実態に見合っていないのならば、この大きな投資に踏み切るに当たっての現在の我々が置かれている状況というのはかなり現実味が乏しいのではないかと考えるわけですが、この点を踏まえても、大臣は本当に三十年後に核融合の実用炉が実現するというふうにお考えなんでしょうか。お願いします。

    〔稲葉委員長代理退席、委員長着席〕

中山国務大臣 今御指摘ありましたように、総経費七千億円というふうなことも言われているわけでございまして、もし日本に誘致された場合にはホスト国としてその相当部分を負担するということになるわけでございますが、具体的な負担額については、現在、六カ国でその建設地を含めて協議中であるというふうに承知しているわけでございます。

 そこで、今委員が、果たして三十年後にちゃんとしたものができるのかという御質問でございます。

 これにつきましては、私も確たることを言えるわけじゃないんですが、先ほど言いましたように、やはり今の我々が使っているエネルギーというのは有限でございまして、次のエネルギー源を何に求めるか、これは人類共通の課題だと私は思うわけでございます。この核融合というものが究極のエネルギー源であるというふうに今言われているわけでございまして、それについて日本が責任を持って、もちろんほかの国と一緒になりながらですけれども、先頭を切って頑張っていくということは非常に大事なことではないか、私はこのように考えておりまして、今いろいろな国に働きかけて、ぜひとも日本に誘致できるようにということで頑張っているところでございます。

城井委員 お気持ちと頑張りは非常によくわかるわけですが、国民に対して説明をするときに、やはりお金の面で、予算の面でリアリティーがなければ、結局それは単なるかけ声でしかなく、そしてむだ遣いにしかならないというふうに思うわけであります。

 そういった意味で、もう少し今のいわゆる予算の面について、あと二点ほどお伺いをしたいと思っております。

 まず、ことしの六月の六極次官級会合で、我が国がそれまでの負担金をさらに一〇%上積みをするという方針を提示しています。競っているEU側も同額を提示したために膠着状態に陥っているわけでございますが、今後も日本として、状況によってはこの日本側の負担金というものをさらに上積みをする用意があるのかどうか。この点、大臣、お願いします。

中山国務大臣 今協議中でございまして、今おっしゃいましたように、日本が新しい提案をしているところでございますが、できるだけ早期に関係六極の合意によりまして我が国への誘致が実現するように最大限努力していくつもりでございますが、その際、これ以上負担をふやすということを考えるのではなくて、ホスト国と非ホスト国の役割分担などについて知恵を出し合いまして、欧州を初め関係国と粘り強く話し合うことによって解決策を見出していくことが必要である、このように考えております。

城井委員 そうしますと、その最大限の努力の中には、負担を上積みするという選択肢はないということでよろしいですか。

中山国務大臣 そのように考えております。

城井委員 もう一つお伺いをさせてください。

 この予算についてですけれども、当初から、出資は原子力予算の範囲を超えないというふうに言明をされているわけでございますけれども、その方針は今後も堅持をされるんでしょうか。

中山国務大臣 このITER計画につきましては、平成十四年五月三十一日の閣議了解におきまして、「他の科学技術上の重要政策に影響を及ぼすことがないよう、既存の施策の重点化、効率化を図り、原子力分野の予算の範囲内で確保すること。」とされておりまして、ITER計画に係る経費については、今後ともこの方針に沿って適切に確保してまいりたいと考えております。

城井委員 今、大臣がおっしゃったその閣議了解のところでも、その根拠となっている総合科学技術会議からの意見のペーパーにも、先ほどの重要政策に影響を及ぼさないという点を含めて五つの留意点がございました。この中にも、予定外の経費の増加がないようということも指摘がありますので、その点、ぜひお含みおきをいただきながら進めていただきたいと思っております。

 そういった点を頭に置きながら考えますと、まず誘致ありきということではなく、やはりそういう予算の面含めまして、我が国として、戦略的な視点、そしてリスクマネジメントの視点というところからも見ながら、今回の、今突っ走っている状況だけではなくて、ほかにもきちんと幾つかの政策オプションを持ちながら進んでいく必要があるのではないかというところがあるというふうに思っています。そのために、今回、再評価が必要なのではないかということを申し上げているわけです。

 ただ、その選択肢が必要だというふうに思う中で、今進められている誘致活動、とりわけ外交の場が舞台になっているわけでございますけれども、これが、先ほど御指摘申し上げましたように、非常にお粗末きわまりないと言ってもしようがないぐらいの状況にあると思っています。対戦相手のEUがある意味で二枚舌のような外交をされている一方で、我が国はどうか。非常に正直過ぎると思いますし、弱気過ぎるのではないかというふうな指摘もあるわけであります。

 さきの十月の二十日の毎日新聞によりますと、このITERの建設地問題で、EUが日米韓の三カ国抜きでフランスに独自建設をするということを想定した予算案を作成していたことがわかったというふうな報道がございました。

 例えば、先ほど言ったほかの選択肢といったときに、フランスに対抗している我々からしますと、日米韓、今応援していただいているアメリカと韓国と共同する形で独自に建設をするという選択肢を交渉カードとして持っているんでしょうか、いないんでしょうか。この点、大臣、お願いします。

中山国務大臣 御指摘のように、EUが単独でこのITERを建設するということを想定した検討を行っているという旨の報道を受けまして調査しましたところ、フランスの中にそのような議論があったということを確認いたしました。仮に、欧州が単独でITERの建設を行うとすれば、これまで六極で築いてまいりました協力の枠組みを欧州が崩すことになるわけでございまして、これは大変遺憾なことであると考えております。そうすれば、ITER計画自身はもとより、科学技術の国際協力全般にもはかり知れない影響を及ぼすこととなりまして、思慮深い行動とは言えません。

 日本といたしましては、このITER計画は基本的に六極協力枠組みの中で進めていくべきものと考えておりまして、これにつきましては、各国とも共通認識を形成しながら、できるだけ早期に六ケ所でのITER計画実現に向けて最大限の努力を行っていくということでございます。

 今後、御指摘ありましたように、三カ国でどうかというふうなことにつきまして、交渉カードにつきましては、今後の交渉に差し支えますので、この場でお答えすることは差し控えたいと考えております。

城井委員 では、この点についてはお答えいただけるのではないかと思うんですが、実際、今カードを仮に見せないとしても、せめて今の交渉過程での相手の動きの情報については当然つかんでおかなきゃならないはずですけれども、今回のこのフランスから出た独自案が作成されているという状況を当然事前に御存じでしたよね。事前に御存じだったかどうか。この点、お願いします。

坂田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣からお答えいたしましたとおり、単独といいますか、ヨーロッパが日米韓を抜きにして建設を進めるというような考え方が、フランスの方でそういう議論があり、それらの議論がEUの中に議論用として提起された経緯があったということを私ども確認いたしましたけれども、それは新聞報道の前ではございません。新聞で報道されたことを機に私ども調査いたしました結果、そのような議論があったことを確認いたしました。

 ただ、この情報につきましては、九月の二十四日に実はEUの閣僚理事会がございましたけれども、その前にフランスがそういう議論を提起したということでございました。しかし、先生もあるいは御存じかもしれませんが、九月二十四日の閣僚理事会では全くそのようなことは決定されておりませんので、一つの見方ではございますけれども、必ずしもそういう単独行動がいいというぐあいにヨーロッパの中でコンセンサスがあるとも言い切れないというぐあいに私どもは見立てております。

城井委員 実際のフランスの独自建設案がいいか悪いかという話ではなくて、我が国が外交を進めていく上で必要な情報をきちんと得られているかどうかというところの方が今の段階では非常に問題だと私は思っています。

 特に、今のお答えからしますと、いわゆる報道の前にはその動きをつかんでいなかったということがはっきりしたと思うんですが、その点については今の理解でよろしいですね。

坂田政府参考人 私が申し上げましたことは、報道された内容そのものの確認につきましては報道後でございますけれども、欧州が日米韓とは例えばたもとを分かって、そして独自に建設を始める、そういう可能性といいますか、そういう懸念といいますか、そういうものにつきましてはかねてより私どもは持っておりまして、そのために、例えば日本を支持してくれております米国あるいは韓国とともにどのように対応するか、あるいはまた、そういう問題について、一応フランスといいますかカダラッシュの方を支持しておりますロシア、中国がどのように考えるか、決してそういうような欧州の動きは好ましくないということで常々議論をしてまいりました。

 私どもが確認しておりますのは、中国あるいはロシアも含めまして、そのような単独の行動は決してよくない、やはりこのITERの問題につきましては六極で実現を目指すことが一番大事なことである、こういう点につきまして、中国あるいはロシアも含めて私どもは確認をとっておりますので、そのような方向で今後とも対応していきたいと思っているところでございます。

城井委員 そのあたりのことも踏まえながら何点かお伺いしたいと思っておりますが、先ほどの御答弁の中にも少し触れられていたと思うんですけれども、日本が、九月の会合でEU側に、いわゆる非ホスト国でも十分なメリットが得られる枠組みを提案したというふうに聞いているわけでございますが、その提案の部分、実際にEU側から何らかの反応があったんでしょうか。そして、その反応があったとすれば、それに対する日本の評価というものはどうだったか。大臣、お願いします。

中山国務大臣 九月に欧州に対して、ホスト国と非ホスト国の役割やメリットができるだけ近づくような新たな提案を行ったところでございます。この提案につきましては、欧州以外の他の参加国にも説明いたしました。各国から、日本の真剣な対応を多とするとの評価を得ております。

 今月に入りまして、欧州からは本提案に対する対案が示されましたが、双方の考えが一致する点、一致しない点がありまして、今後とも欧州と協議を継続するということになっているところでございます。

城井委員 次回の六極次官級会合の日程というのはいつになっているんでしょうか。

坂田政府参考人 今大臣からも御答弁がございましたとおり、日欧それぞれの提案をもとにいたしまして日欧間での協議を継続することになっております。また、他の四極の反応もしっかりとこれから確認しながら進める必要がございます。したがって、そのあたりを十分見きわめまして、今後、六極による次官級の会合をいつやるか考える必要がある、決定する必要がある、このように考えております。

城井委員 実際に、次の交渉のとき、非常に大きな山場になるというふうに思うわけです。恐らく政府サイドからはオプションについては詳しくは語れないと思いますので、私の方から、恐らくこういうことが考えられるだろうということを具体的に申し上げて質問したいと思っております。

 実際に、先ほどのフランスの独自案というのは、今回の交渉の決裂を見越しての話だろうというふうに思うわけであります。その点をきちんと考慮した上で、日米韓による独自建設というものが本当に可能なのかどうかということはしっかりと詰めておくことは選択肢の一つとしてあるだろうと思うわけです。そのほかに、若干楽観的にはなりますけれども、日本とフランスとどちらに決まるにしても六カ国の協力体制を続けるというオプション。そしてもう一つ、これはいわゆる分散型ということになるかもしれませんが、建設自体をフランスに譲って分析センターを日本に置くという分散した考え方というのも一つ選択肢としてはあるんだろうというふうに思います。

 先ほど御指摘を申し上げたように、七千億円というのは非常に大きなお金です。かつてこれだけの金額をかけた科学技術予算があったかというふうなところを考えますと、非常に慎重に当たるべきだろうというふうに思うわけであります。

 そういった考えと、そしてオプションを頭に置きながら、いずれにしても、次のところ、具体的には、十一月の下旬の恐らくEU理事会のあたりでEU側が何らかのアクションに出てくるというふうに考えるわけですが、今私が挙げた三つの点を含めて、日本としてどのオプションを優先して取り組んでいくというお考えがあるかという点を大臣にお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 我が国といたしましては、人類の将来のためのエネルギー開発というITER計画の計画等にかんがみまして、基本的に現在の六極の協力枠組みによりましてITER計画を進めていくことが重要と考えております。

 今後とも、欧州を初めとした関係国との協議を粘り強く進めながら、六極により六ケ所村でのITERが実現できるよう、最大限努力してまいりたいと考えております。

城井委員 今までの御説明で国民は本当に納得できるか。今までもどれぐらい例えばITERという名前を国民が知っているかといったところを含めて、非常に弱いというふうに思っているわけです。

 私も、今伺いながら、いわゆる交渉作業が継続中だから言えないというようなところでこの議論を流してしまうわけにはいかないというふうに改めて思っているわけであります。特に、今回のこの七千億円あるいは一兆三千億というお金は、さきに起こりました、今回の例の新潟地震の今計算をされている被害額と匹敵するぐらいの大きな大きな規模のお金でございます。

 そういった意味では、文部科学省は、この大きな税金の重みというものをしっかりと改めて自覚していただいて、きっちりと我々を含めて国民に見える形で戦略的に取り組んでいただくという義務があるということを改めて御指摘申し上げて、お時間が参りましたので、このあたりで私の質問を終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。奥村展三君。

奥村委員 民主党の奥村展三でございます。

 自然との闘い、集中豪雨あるいは台風、そして新潟の地震を考えますと、我々人間がどうしても闘いができないようなことが起こっております。それの犠牲になられた方々、本当にお悔やみを申し上げると同時に、また被災に遭われた皆さんにお見舞いを申し上げたいというように思います。

 いろいろなことを考えますと、やはり国民はすべて健康であってほしいな、そんな思いをいたす一人であります。そういうことから、まず、国民すべての健康づくりについて大臣にお伺いをいたしたいというように思います。

 文部省の十五年度の体力あるいは運動能力調査というのが出ておりますが、特に子供たちの運動能力が二十年前に比べて大変低下しているというデータが出てもおりました。そしてまた一方、御案内のとおり高齢化社会を迎えているわけですが、六十五歳以上の割合は一九%だと言われて、二千四百万人をもう既に超えているとも言われておるわけであります。そうした高齢化社会を迎えて、要介護認定者と言われる皆さんが約三百九十万人、実に六十五歳以上の方々の一六%も占めているというのが現況のようでございます。

 こういうことを考えますと、私は、要介護の、やむを得ずなされている方もわかるわけでありますけれども、やはりできるだけ寝たきり老人をなくしていく、そういうことを考えますと、常に健康保持、体力強化というものが大事ではないかなというように思っているわけであります。

 社会保障費等々がだんだんとふえてきているわけでありますが、やはり、国民すべてに健康基盤がなし得るならばもう少し社会保障費も削減ができるのではないかなというような思いをするわけですが、大臣はどのようにとらまえておられるか、まずお聞かせをいただきたいというように思います。

中山国務大臣 今、奥村委員からもお話がありましたが、今現在でも寒い中で余震におびえながら耐えていらっしゃる新潟県民の方々がいらっしゃるということを思いながら、真剣な議論を続けていきたい、こう思っておりますけれども、今御指摘ありましたように、スポーツというのは、人々の体力の向上や心身の両面にわたります健康の維持増進に資するものでございまして、人生をより豊かにして充実したものにする上で極めて大きな意義を有していると考えております。

 特に、御指摘にありましたように、要介護認定の方が非常にふえておりますが、そういった中で、この要介護の予算を何とか抑えたいということで、今厚生労働省の方でも予防介護ということを真剣に考えているようでございますが、これから高齢化社会が進展する中で、国民のだれもが生涯にわたりスポーツに親しむことによりまして、高齢者が健康を維持していく、死ぬまで健康でいる、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、そのような観点から非常に大事だ、このように考えております。

 文部科学省では、平成十二年の九月にスポーツ振興計画を策定いたしまして、国民のだれもが、それぞれの体力や興味、関心に応じて、いつでも、どこでもスポーツに親しむことができる生涯スポーツ社会の実現を目指しているところでございまして、先ほどお話ありましたけれども、今月発表いたしました平成十五年度の体力・運動能力調査の結果によりますと、定期的、これは週に一回以上でございますけれども、スポーツを行っている成人の体力水準は高くなっている。また、近年のスポーツ実施率の高まりに伴いまして、中高年、四十歳から七十九歳の方の体力は向上してきておりまして、体力年齢が実際の年齢より若い人の割合が非常にふえているということになっております。

 今後とも、身近な地域で、だれもが生涯を通じて気軽にスポーツに親しめる、そういう環境づくりを目指して各種施策を推進してまいりたいと考えております。

奥村委員 先日ですか、スキーヤーの三浦雄一郎さん、あの方の体力は二十代らしいですね。やはり、訓練、鍛錬をしながらやっていけば、そういうような体力も維持できるというように言われております。

 今大臣から御答弁いただきましたが、確かに成年の皆さん方の体力は上がってきていますけれども、一番大事な小学生あるいは就学前、そこらの体力がやはり以前からいくと非常に劣っている。それはやはり、外に出ない、遊びをやらない、外で遊びをやらないということですね。ですから、中でゲーム機を持って遊んでいる、そういうことが言われているのではないかなというような思いをいたしています。やはりそういうものをしっかりとリードしていく、そういうことも大事ではないかなというように思います。

 先ほど来いろいろ義務教育費云々の話が出ていますが、やはり、国の根幹は教育でありますし、国民が健康であるべきだということ、ぜひそういう視点に立って、より以上進めていただきたいというように思います。

 二つ目でありますが、今もちょっと御答弁の中にありましたけれども、スポーツ振興基本計画についてお伺いをいたしたいというように思います。

 確かにオリンピックは、東京オリンピックよりもよりすぐれたチャレンジ精神で頑張っていただいて、三十七個のメダルをおとりいただきました。これにはやはりいろいろな環境があったと思います。よき指導者に恵まれた方もおられますし、また、小さいときから学校やあるいはまた職場、そういう環境が整ってこそ、そういうオリンピック選手、チャンピオンスポーツの選手が生まれてきたんだというように思います。そういうことをまだより以上も充実をしていただかなければなりませんが、やはり私は指導者によるのかなというように思います。

 滋賀県出身の近藤高代という、女子で初めてですが、棒高跳びでオリンピックに出たんですが、彼女に聞きますと、風の計算あるいは太陽の向き、いろいろなところで指導していただいた先生のおかげで、近藤選手は四メーター三十五をクリアしてオリンピックに出たわけなんですけれども、やはりそういう体験を聞きますと、なるほど、すばらしい指導者がおられたんだなというようなことも感じさせていただいたわけでございます。

 そういう中で、ぜひこれからもそういうチャンピオンスポーツはもちろん進めていただかなければなりませんが、やはり、先ほど申し上げました国民の健康からいきましても、地域でのスポーツあるいはまたいろいろなところで今進めていただいている学校でのスポーツ等もそうでございますが、私は、心身ともに健康であってほしいということで、スポーツを通じていろいろなお手伝いを現在もさせていただいております。健康な町づくり、健康な国づくりだということでいつも標榜しているわけなんですが、そういうスポーツを通じて、いろいろな人に出会いもさせていただいたり、いろいろな御経験のお話を聞かせていただいたり、いろいろな勉強をさせていただいているわけであります。

 そう考えますと、やはり、すべてこれも生涯スポーツ、それとの取り組みが大きくウエートを占めてくるのではないかなというような思いをしているところでございます。そういうことを考えますと、今日、チャンピオンスポーツはオリンピックを通じていろいろなことになっているんですが、地域のスポーツあるいは職場でのスポーツ、いろいろなものを振興させていかなければならないんですが、どうも、文部科学省、従来の文部省も、各競技団体、日本体育協会のそれぞれの競技団体に余りにも頼り過ぎて、国が何かもっとリードをして健康な国づくりをと標榜するような中に、いろいろな競技団体にももっと頑張っていただきたいというような思いが、なかなか通じていないのではないかなというように思います。

 私も地方のいろいろなスポーツの代表をお預かりいたしておりますが、競技団体は、お金はないわ、汗して一生懸命頑張って、登録料を取ってでもやる、それが本来かもわかりませんけれども。しかし、従来、何かもっともっと、大会を開くのにでも、浮き浮き、その大会を誘致してでもやりたいなというような思いがあったんですけれども、このごろ、それぞれの上部団体がリードして、その上部団体も、もう日本体育協会の補助金がほとんどない、少ない、そういうようなことで、運営が大変な状況になっておるというのを実感いたしております。

 そういうことを考えますと、どうも競技団体に頼り過ぎているというのが今日のスポーツ振興ではないかな、実態がそうではないかなというように私は感じております。ぜひその点も今後、中山大臣も、今御答弁いただきましたように、健康づくり大切だということをおっしゃっていただきましたが、そういうことで進めていただきたいというように思っておりますが、このスポーツ振興についてどのようにお考えか、まずお聞かせをいただきたいと思います。

中山国務大臣 委員がお話しになりましたように、いろいろなスポーツ競技大会をするのにも、やはり先立つものが必要でございますけれども、景気が悪いということもありまして、非常に苦渋しておられるという話もよく聞くわけでございます。

 我が国のスポーツ振興を推進する上で、国、地方公共団体、民間スポーツ団体がそれぞれの役割に応じた取り組みを行っていくことが重要と考えておりまして、特にスポーツ振興のためには、スポーツ基本計画におきまして掲げました、生涯スポーツ社会の実現に向けた地域におけるスポーツ環境の整備、充実と、我が国の国際競争力の総合的な向上、この二つが重要でございまして、国としては、この方向に沿って、競技団体や企業の主体的な取り組みに対して必要な支援をしていくことが大切であると考えております。

 このため、競技団体や企業の取り組みに対する支援といたしまして、競技力向上のためのトップレベルの競技者の強化活動や、大会開催等に対するスポーツ振興基金から競技団体への助成ということと、企業チームを支援するためのトップレベルスポーツクラブの支援活動事業などを行っているところでございまして、今後とも、競技団体等の自主的、主体的取り組みを基本としながら、文部科学省といたしましてもできるだけの支援をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。

奥村委員 きょうの質問の中に入っておりませんが、塩谷副大臣とまたいろいろ議論をしたいと思うんですが、toto、つまりサッカーくじですね。私は参議院のときに、それは確かに一つの浄財として大事かもわからない、しかし、そのサッカーくじを運営していく上にはお役所仕事であってはならないということを当時は申し上げておりました。案の定、一千億からのとらぬ皮算用をして、結局どんどんどんどん落ち込んでおる。もう五十億を切れる云々のところまでいっておる。けた違いな話になっているわけであります。ぜひそういうことはまた今後議論していきたいというように思うんですが。

 私の滋賀県は、毎年八月の第一土曜に、全国から百二十チームの小学生の男女においでをいただいて、全国小学生男・女ソフトボール大会をやっているんです。これで十三年間やったんですが、私は、そこで必ず毎年ごあいさつで言っているんです。立派なユニホームを着て、立派にこうして入場行進できたけれども、やはりこれには、監督やコーチ、そして御家族の皆さんの応援があって、そして地域の皆さんの御声援があって、こうして出てこられたんですよということを常に言うんです。そこに感謝の心を持ってほしい、それがスポーツをする上で一番根底でもある、それに、みずからに厳しくチャレンジをしてくださいというごあいさつを必ず申し上げるんです。

 そういう子供たちはまだ恵まれた子なんですけれども、最近、私、田舎の方なんですけれども、先ほど申し上げたように、子供たちが余り外で遊ばないで、何でやと聞きましたら、遊ぶところがないと。遊ぶところはたくさんあるじゃないか、じいちゃんやばあちゃんがゲートボールしてはる、あるいはグラウンドゴルフしてはる、僕らが遊ぶところはないんや、こういう子供、ああ、そうかなという感じを受けました。

 大臣、このごろ、本当に子供たち、お年寄りは健康な人も多いですから、一方ではそうしてグラウンドゴルフをやったりゲートボールをやったり、気張ってやっていただくのはありがたいんですが、子供たちは家に閉じこもってしまっているんですけれども、考えてみると、なるほど、そうかな、ここはおじいさん使うてるな、おばあちゃん使うてはるなというような思いをすると、やはり草の根広場的な、子供たちが遊ぶような場所をもっと提供してやるべきだと私は思うんですが、大臣、どのように思われますか。

中山国務大臣 本当におっしゃるとおりでございまして、私の小さいころを思い出しましても、まさに野や山や自然の川が遊び場所でございました。そういった中で本当に思う存分遊んできたものでございますけれども、今の子供たちが家に閉じこもって、もちろん、テレビゲームとかいろいろおもしろいものはあるんですけれども、どうも、外に出て遊ぶとか、自然体験といいますか、この前驚いたんですけれども、日の出とか日の入りを見たことのない子供が四割いるという話、太陽が西に沈むということも知らない子供が三割というのは、本当かなと思うぐらいでございましたけれども、そういうふうに、自然体験といいますか生活体験のない子が非常にふえている。

 これは非常に問題でございまして、私は子供たちに、外に出よう、スポーツや運動で汗をかこう、こういうことを提唱したいと思いますし、そのためには、今まさに委員がおっしゃいましたように、施設がないわけでございます。昔と違いますから、つくってやらなければいかぬわけですね、我々がつくってやらなければいかぬということで、そういった遊び場の整備ということについても文科省は一生懸命取り組んでおるところでございます。

奥村委員 ぜひよろしくお願いをいたしたいというように思います。

 五月でしたか、ある新聞に、小泉総理が、野球とサッカーは人気があるが、他の競技は全国での基盤がない、月に一回、日曜日に各種スポーツの全国大会が開催できるようにならないかというようなことを言われたようで、確かにいい思いつきであり、いいことではあるんですけれども、これは受け入れ側、先ほど言いました各種競技団体、大変なことなんです。大臣もおっしゃったように、浄財がないんです。これは、やれと言われればやらざるを得ませんが、本当に大変なことなんです。

 確かにアイデアはいいんですが、私は、こういうことよりも、今、埼玉で国体が開かれて、私、ここへ来るまでに電話が入って、私のところの理事長が、野球連盟ですが、会長、優勝しましたと言うから、何の優勝したんやと言ったら、いや、国体で滋賀県が優勝です、初優勝ですと言って、今電話をくれたんですけれども、私は、この国体すらもうマンネリ化して、見直していかないと。これも大変なんです。開催地も大変ですけれども、やはり内容そのものもしっかりとマンネリ化したところを見直していくぐらい、出ている選手なんかも、監督なんか常にそう言っているんですよ。

 だから、そういうことも十二分にまた御配慮いただきたいんですけれども、この総理が言われた、こういう指示をされたことについてどのように今取り組んでおられるのか。まだわずかな時間ですから一遍には進んでいないと思いますが、まずお聞かせをいただきたいと思います。

中山国務大臣 実は、土曜日に私も国体秋季大会の開会式に行ってまいりました。

 すばらしい施設ができておりましたし、すばらしい天気でございました。また、準備に当たられた方々も本当に大変だったんだろうな、こう思ったわけでございます。また、選手団も続々入場してまいりましたが、何か若い、子供たちといいますか、中学生、高校生みたいな人が非常に多いということで、聞きましたら、最近そういう傾向だということでございました。

 マンネリ化と言われますが、毎年毎年やっていますと、やはりついつい感激が少なくなるのか、余り新聞でも、どこが優勝したとか、滋賀県おめでとうございました、余り報道されないので、もう少しマスコミでも取り上げてもらいたいな、こう思うわけでございます。

 そこで、小泉首相の提案でございましたけれども、野球の甲子園とかあるいはラグビーの花園とか、そういったものをつくってやったらどうか。私は、そういう意味ではすばらしいことじゃないかと思うんです。私も、ことしの夏、地元の高校が甲子園に行きましたので応援に行ってまいったんですけれども、やはり野球をする子供たちにとりましては、甲子園というのは一つの目標なんですね。

 そういう意味で、いろいろな地方に、例えば、スキーは北海道のどこだとか、あるいは剣道はどうだとか、ゴルフは、我が宮崎県に来てほしいと思うんですけれども、そういうふうな形で、あこがれの何とか、そういうふうなことになれば、またマンネリといいますか、そういうのを打破することにもなるんじゃないかということで、今、文部科学省と総務省は、全国各地へのスポーツ大会の拠点形成を推進するために、スポーツ拠点づくり推進委員会をこの九月に発足させたところでございまして、現在、スポーツ団体と市町村のニーズの把握、調整を行っております。年明けには、来年度に拠点形成の対象となる大会を決定する予定でございまして、こうした取り組みを通じまして、子供の目標やあこがれとなるスポーツの拠点がたくさん形成されることによりまして、スポーツ振興が一層推進されることを望んでおるところでございます。

奥村委員 ありがとうございます。

 拠点づくりと今おっしゃいましたけれども、これは大変なことで、受け入れ側は大変でございまして、もうそれ以上言いませんが、しっかりとやはり、まさしく三位一体、会場と選手、競技団体、そしてそこには浄財がしっかりとついていなければなかなか開催ができないということだけは申し添えておきたいというように思います。

 それと同時に、今、各企業が、大変不景気なときですから、大臣も御承知のとおり、冠大会といいまして、スポンサーについていただいて、いろいろな全国大会や地方の大会をやるんですけれども、やはりなかなか不景気ですから今やってもらえない。しかし、従来、文部大臣大会だとか内閣総理大臣杯争奪大会だとか、いろいろな大会があったんですけれども、今ほとんどなくなってきたんですよ。それは全部、冠大会でスポンサーをつけて、お互いにそこで何とかやっているんですけれども。

 これは要望にしておきたいと思うんですけれども、ぜひもう一度、やはり国を挙げてスポーツの振興、国民の健康を考える意味で、そういう大会を開くだけが国民の健康につながるとは思いませんが、しかし、いろいろなことを考えますと、そのようなこともひとつぜひお考えをいただきたいというように思います。

 それと、大臣ぜひ、私は、今、国体にお行きをいただいた、ありがたいことだと思いますが、あらゆる競技の大会に、時間がありましたらひとつ顔を出してやってください。本当に、選手ももちろんですが、各競技役員といいますか、競技団体の者たちがボランティアで一生懸命になってそれを支えてきておりますし、まだまだそれをまた大きくしていこうと努力していますから、ぜひ、そういう皆さんが御努力されているところを、やはり大臣が出かけていって励ましの言葉をいただければ、またより一層充実をしていくと思いますので、お願いをしておきたいというように思います。

 それでは、最後でございますが、三つ目ですが、国の顔となる文化芸術について、ちょっと考え方も交えてお伺いをいたしたいと思います。

 先日のごあいさつの中にもございましたけれども、二〇〇一年に施行されました文化芸術振興基本法というものをお述べになっているわけでありますけれども、新たな需要や高い付加価値を生み出して、そして、これによって文化そのものの価値がやはり産業の発展にも寄与するものであると位置づけられるのではないかなというように私は思います。

 そうしたときに、特に私は、文化芸術の体験ですね、これはやはり小さいときからそういう文化芸術になじむ、親しんでいく、そういうことが一番大事ではないかな、やはり小さいときからそういうものがあれば、自分にいろいろな興味もわいてきますし、そういうものが自分の体に体験として培われていく、そういうように思いますと、ぜひそういうようなものも推し進めていただきたいというように思いますが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 子供の文化芸術体験活動の推進を図ることは、子供の文化芸術を愛する心を育て、感性を豊かにするとともに、豊かな情操を養う上でも大変重要でありますし、また、我々が一生生きていく上で、そういった芸術に親しむあるいは鑑賞できるということはすばらしいことだ、このように考えております。

 そのため、文部科学省では文化芸術創造プランを推進しておりまして、まず、学校や公立文化会館における本物の舞台芸術に触れる機会の充実、それから、地域の芸術家等を学校に派遣しまして、みずからのわざを披露してもらうことなどによりまして、学校の文化活動を推進する、三番目に、子供が土曜日や日曜日などに、学校あるいは文化施設等を拠点にして、我が国の伝統文化を計画的、継続的に体験、習得できる、伝統文化子ども教室というんだそうですけれども、これの提供、あるいは、地域文化リーダーの育成などを通じた子供が参加できる文化活動の活性化、そして、子供が日常の生活圏の中で、年間を通じてさまざまな文化に触れ、体験できるプログラムの実施というようなことを実施しているところでございます。

 これからも子供たちがいろいろな文化芸術に触れることができますように、これらの事業を通じまして、子供の文化芸術体験活動の充実に努めてまいりたいと考えております。

奥村委員 ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 もう一つですが、やはりふるさとにはそれぞれの歴史がありますし文化があります。こういうものは、やはりしっかりとその地域それぞれの学校で教育の中で取り込んで推し進めていただきたいというように思いますが、いかがですか。

中山国務大臣 まさに仰せのとおりだと思っておりまして、子供たちがふるさとの歴史、文化あるいは伝統を受け継ぎまして、そのことによりまして、地域社会に対する誇りあるいは愛情を持つということは極めて重要なことだと考えております。

 このため、例えば、小学校の三年、四年生の社会科では、地域の歴史を伝える文化財や年中行事について学習したり、地域の発展に尽くした先人の具体的な事例を調べたりすることにしております。また、小中学校を通じまして、総合的な学習の時間などにおきまして、地域の歴史やあるいはさまざまな伝統、芸術、文化などを調べたり伝承したりする活動が行われているところでございまして、今後とも、子供たちがふるさとのよさに気がついて、それを受け継いでいけるように、地域の歴史や文化に関する学習の充実に努めてまいりたいと考えております。

奥村委員 ありがとうございました。

 先ほど来申し上げましたように、スポーツあるいは文化芸術、それぞれ推し進めていただきますことをお願い申し上げ、そして、大臣も、先ほど申し上げましたように、できるだけあらゆるところに出向いていただいて、いろいろな国民の皆さんが御努力をいただいているその場所で励ましをいただければ、それぞれの顔ができてくるのではないかなというように思っております。ありがとうございました。

斉藤委員長 須藤浩君。

須藤委員 民主党の須藤浩でございます。

 最初に、先ほども続けて二回ほど大きな地震がありましたが、新潟県中越地震の被災者の方々に心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 本日は、文科省とそれから厚労省にまたがることになるんですけれども、児童自立支援施設についての質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず最初に、大臣にちょっとお伺いしたいんですが、大臣は、この児童自立支援施設というところに行かれたことがございますでしょうか。

中山国務大臣 私は、去年一年間、衆議院の厚生労働委員長をしておりまして、そういった縁もありましていろいろなところを見せていただきました。特に、知的障害者の支援をする施設だとか、あるいは、子供たちをもっとみんなで育てよう、そういうようなことをみんなで取り組んでいる、そういう施設等には行かせていただきました。

須藤委員 では、こういった施設にも御理解があるということで質問させていただきたいと思いますけれども、児童自立支援施設、施設そのものの扱いといいますか、担当されているのは厚労省であると思いますけれども、自立支援ということで、この施設は、従来は、御存じのように感化院であるとか教護院であるとか、そのように呼ばれていた施設です。

 わかりやすく言いますと、少年のころに悪さをしてしまって、毎日学校には当然義務教育ですから行っているんですけれども、そういういたずらをしてしまったときに、このままではこの子の将来は悪い方向に行ってしまうのではないかというようなときに、こういった施設で矯正をするといいますか、しゃんとしっかりするように教育をする、更生をさせる、そういった施設なわけですね。

 この施設は、実は、今よくあります児童虐待であるとか、あるいは青少年の非行の低年齢化であるとか、さまざまなところで、最近注目といいますかスポットを浴びたりしているんですけれども、なかなか、私たち自身がその現場に行ってみて、どういう施設であるかとか、あるいはそこで少年たちがどういう行動といいますか日常を送っているかというふうになりますと、結構目にしていないんじゃないかな、このように思います。

 そこで、実は、先般、平成十年から児童福祉法に関する法律の改正があったわけですが、その第四十八条の改正がありました。これは、実は、児童自立支援施設にいわゆる学校教育をどうするかということの改正であったんですが、このことについて、その背景も含めて、できましたらまず最初に御説明をいただきたいというように思います。

銭谷政府参考人 御説明申し上げます。

 平成九年の法改正以前におきましては、教護院につきましては、その入所児童が小中学校に通学することが困難であるということから、いわゆる当該児童の就学義務を猶予または免除されるということになっておりまして、教護院において学校教育に準ずる教育を行って、修了証書を発行することができるということになっていたわけでございます。これについては、教護院に入所中の児童につきましても福祉と教育の緊密な連携によって学校教育を実施することが望ましいということがかねて指摘をされていたわけでございます。

 これを受けまして、平成九年に法律の改正が行われまして、教護院、すなわち現在の児童自立支援施設に入所中の児童についても、施設長に就学義務を課すことによりまして、学校教育を実施し、当該児童の自立に向けた指導、支援の一層の充実を図るというふうにされたと承知をいたしております。

須藤委員 今の御説明にありましたように、平成九年の改正以前は、教護院における少年の教育というものがなかなか整備をされていなかったということになるわけですね。そして、この九年の改正によって、実質は十年からですか、学校教育をその施設に通っている子供たちにもきちっとさせていくということになったわけです。

 そこで、実は、学校教育を自立支援施設で行うということになってから、平成十年からだとしますと六年ちょうど経過をしたことになるんですが、この六年間の間に、いわゆる教育環境、学校教育環境といいますか、施設における教育環境というものがどの程度変わってきたのか。その辺の状況というものを御説明いただければと思います。

銭谷政府参考人 文部科学省といたしましては、児童自立支援施設が制度化をされた際に、各教育委員会に対しまして通知を発出いたしまして、入所児童に対する学校教育に関して適切な配慮を求めたところでございます。

 現在の状況でございますけれども、児童自立支援施設に入所中の児童に対する学校教育の実施の形態でございますけれども、これは各関係教育委員会が判断をしているわけでございますが、具体的には児童自立支援施設の中に分校とか分教室を設けて指導するというやり方をとっているわけでございます。

 平成十六年の四月現在でございますけれども、入所中の児童に対しまして、既に学校教育を実施している、あるいはことし実施をする予定があるという児童自立支援施設は、全国で三十施設あるというふうに把握をいたしております。児童自立支援施設自体は五十七施設ございますので、これ以外の二十七の児童自立支援施設においては、経過措置として、児童自立支援施設の長が学校教育に準ずる学科指導を実施しているということでございます。

 なお、分校、分教室を設けて学校教育を実施している施設における具体的な教育内容としては、教科指導はもちろんでございますけれども、地域の協力を受けて、老人福祉施設での体験活動とか交流活動、地域の清掃活動、職場見学や実習、社会人講師による講義などが実施をされているところでございます。

須藤委員 そうしますと、この六年間で五十七あるうちの三十施設、半分強ぐらいは学校教育にかかわる整備がほぼ整ってきたということになろうかと思いますけれども、これは、文科省から見て、このスピードというのは、どのように、評価といいますか、実施率に関しては考えていらっしゃいますでしょうか。

銭谷政府参考人 率直に申し上げまして、私ども、児童自立支援施設が新しいスタートをしたときは、かなり分教室、分校を設けた学校教育が実施をされ始めたわけでございますけれども、まだまだそのスピードアップ、学校教育実施のスピードアップを図る必要があるというふうに考えております。

 なかなか、分校、分教室の設置がおくれているところ、それぞれ事情があるようでございますけれども、例えば、市町村合併の予定があるため今調整中であるとか、あるいは福祉部局と教育委員会の間でまだ十分協議が調わない、あるいは、児童自立支援施設は都道府県立が多いわけでございますけれども、担当する、分教室、分校の設置は市町村の教育委員会であるということで、相互の理解を得るのにもう少し時間がかかる、さらには、地域的ないろいろな事情もあるというふうに承知をいたしておりますけれども、私どもとしては、分校、分教室の設置に向けまして、当該施設、福祉施設と教育委員会が連携をし、また、国においては、文部科学省と厚生労働省が連携をして支援をしていきたいというふうに思っております。

須藤委員 実は私も、こういった施設、実際お伺いをしていろいろお話を伺ってきたんですけれども、学校教育、いわゆる教育を受ける権利といいますか、教育の環境がたかだかまだ六年しかたっていない。つまり、六年前は、その保障といいますか、そういったことさえなかったということを知らなかったわけですね。実際行ってみて、そこの子たちと話をしてみましたし、施設も見せていただいていろいろ勉強させていただきましたが、そういう意味では、本当に私も驚いています。今、きょうの質問の中でも、義務教育の国庫負担ということで、国が教育に関してしっかりと責任を持っていくんだという大きなテーマの議論がなされているんですけれども、他方ではこういった現実もあるということなわけですね。

 そこで、きょう私が質問させていただいている中身は、まずこういう部分があるということと、そこでの実態を少し皆さんにもおわかりいただいて、教育というものの現場での環境というものをより整備していただきたい。これは文科省だけではなくて厚労省にもかかわりますので、その意味では、縦割り行政ではなくて、相互に協力あるいは情報交換をしてぜひ進めていただきたい、このように思っております。

 そこで、もう一つお聞きしたいのは、この施設そのものは厚労省の管轄ということになるんでしょうけれども、先ほどの局長の答弁の中で、県ないし市町村、地域の教育委員会が動いてという話がありましたけれども、国の管轄というと二つにちょうど分かれていますので、どっちが声をかけるのかとか、どっちから言い出すのか、あるいは動き出すのかという話になってしまいますと、恐らく、双方が見合って譲り合ってしまうというようなことになりかねないかと私は思うんですが、文科の方としては、このことに関しまして積極的に都道府県ないし市町村に対していろいろアドバイスをしたりとかいうことをされているのかどうか、お伺いしたいと思います。

銭谷政府参考人 児童自立支援施設に入所中の児童に対する学校教育の実施は、やはり施設の存する教育委員会において判断をして施設内の分校、分教室の設置がなされるものでございます。したがって、平成十年の私どもの通知においても、関係教育委員会において判断をしてほしいということを通知しているわけでございます。ただ、その際には福祉部局と十分に連携をとってやっていただきたいということを申し上げているわけでございます。

 現在、分校、分教室においてはいろいろな工夫を凝らして指導が行われているわけでございますけれども、やはり課題もあるわけでございまして、児童の状況に応じた教育課程の編成ですとか、教職員と施設職員との相互理解の推進、施設退所後の立ち直りを目指した指導の充実等の課題があるというふうに承知をいたしております。

 私ども文部科学省といたしましては、こういった子供たちに対する指導、支援の充実を図るために、児童自立支援施設内分校、分教室における指導のあり方について調査研究を今実施しているところでございます。これは、研究チームをつくったり、それから児童自立支援施設の方々と協力をして実情把握をしながら調査研究を進めているわけでございますけれども、こういった調査研究の成果を各地域に送付をしたりして、施設内の分校、分教室における指導の充実に役立てるとともに、いまだ分校、分教室が設置されていない地域への必要な情報提供を行うなど、施設が存する教育委員会の支援の充実に努めてまいりたいと思っております。

須藤委員 前向きにどんどん動いていただけるということは大変うれしい限りです。

 具体的な例を一つお話ししたいと思うんですが、こういった分校やあるいは分教室をつくるということでは徐々に徐々に進んでいるということですので大変喜ばしいんですが、そこにおきます学習環境、当然、先生が生徒に勉強を教えるわけですけれども、その学習環境が今どれほど整っているかといいますと、これは、これまたびっくりしたんですけれども、なかなかそれが整っていないわけですね。

 例えば、私、家はたまたま千葉県なんですが、各都道府県に一つずつ自立支援施設がございまして、政令市にも当然ある、一つつくるということになっているんですが、千葉県の場合は千葉市が政令市になって、従来県にあった施設が、その後、千葉市に移行というような形をとることになるわけですけれども、そこで分教室が一つ開かれておりまして、そこで教えている先生たちは、千葉市の場合は中学校の先生がそこに行って教えているんですが、そこで教える先生というのは、ほかの都道府県も見てみますと、本職の先生ではない人が多いんですね。結局、教師というものがしっかり配置をされて、そこで生徒を教える体制になっていないわけです。

 では、だれが教えているかといいますと、県の学校として置いてあるところは県の職員、これは県によって違うんでしょうけれども、社会部であるとかそういった関係の職員が一生懸命自分たちで勉強をして、教職の課程はとっているんだと思いますけれども、そこで工夫をして生徒に勉強を教えている。これが実態なんですね。確かに、生徒数が多いわけでもないし、三年間あるいは六年間、その期間をみっちりやるということもないんでしょうけれども、それでも専門の教師が、正規の教師がそこで教える体制にはなっていない。つまり、ある意味で善意の塊でそこが成り立っているというのが現在の状況であろうと思いますけれども、この辺の状況というものは文科省では認識をされているかどうか、お伺いしたいと思います。

銭谷政府参考人 児童自立支援施設内に分校、分教室が設置をされた場合、もちろん児童の数に応ずるわけでございますけれども、教職員が措置をされまして、その教職員については国庫負担の対象になるわけでございます。したがって、もちろん立派な先生が教えているケースも多いわけでございますけれども、例えば子供の数が大変少ないといったような場合には、対象児童中学生相当、中学生が多いわけでございますので、なかなか教科の先生が全部行き渡らないといったような事情もあるところがあるのではないかというふうに思っております。

 それぞれの教育委員会において教員配置等につきましてもいろいろと工夫をして充実が図られるように、私どもも配意してまいりたいと思っております。

須藤委員 実は、このことに関してはまだまだいろいろなところで問題がありまして、分教室の位置づけが決まっていないとか、あるいはこの教室自体が普通学級なのか特殊学級扱いなのか、これは一クラスの編制の人数にもかかわってくる問題もありまして、ちょっと時間内ではとてもとても言い尽くせるものではないんですが、要するに、普通の子供たちが受けているような教育環境というものが、この児童自立支援施設においてはほとんどと言っていいか、整っていない。当然、義務教育でありますし、将来を担う、日本の未来を担う青少年育成ということに関しても、しっかりとその環境を整えることが必要だと思います。

 そして、特に言えるのは、今、公教育、義務教育費の国庫補助の問題がありますけれども、結局地方も予算がない。そういうようなことで、下手をするとこういったところで今削られているわけですね。下手をすると白墨一本ないみたいな、ちょっと信じがたいようなこともあり得る。これから先、補助金が廃止されて一般財源化されるというと、まさにこういったところに各地方でお金を使わないとか使えないとか、もう目前にそういうことが出てくるのではないかということが非常に私は心配をされるんですけれども、大臣は、このことに関して、感想でも結構ですのでいかが思われますでしょうか。

斉藤委員長 中山大臣、時間が過ぎておりますので簡潔にお願いいたします。

中山国務大臣 確かに、これが地方の財源ということになりました場合に、おっしゃるように、そうしたいんだけれどもできないというところも出てくるんじゃないかと思いまして、そういう意味では、国がちゃんとした最低限の保障はするというこの義務教育費国庫負担制度はきちっと堅持すべきだと、そういった点からも考えております。

須藤委員 どうもありがとうございました。

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 初めに、新潟県中越地震におきまして亡くなられた方、また被災された方々にお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。二次災害のおそれがある中で、長期化する避難生活を強いられるわけでございます。政府といたしまして、万全の体制と対策を講じられますように、要望申し上げましておきたいと思います。

 さて、まずその新潟の問題でございますけれども、学校からいろいろ要望も出されておりますので、一点伺わせていただきます。

 まだまだ避難所が足りない、それから避難している体育館も壁や外壁が落ちている、また補強が必要ということでございます。だから、危険な体育館であるということを承知の上で使用しなければならなかったり、また使用できずに避難場所としてはもう放棄する、そういう小学校、中学校もあるというふうに聞いております。

 私ども、阪神・淡路の大震災のあのときに、学校施設というのがいかに防災センターの役割をするか、避難場所として重要な役割をするかということを感じましたし、それが大きな教訓だったというふうに思うんですね。

 そういうことからすると、新潟県の場合の耐震診断がどうだったのか、それから耐震化率がどうだったのかということですけれども、大変お寒い状況でした。耐震診断が一三・四%で全国四十二位だと、耐震化率も四二%で全国三十六位だということでございます。ですから、大変おくれていると言わなければなりません。

 私は、そういうことに立って、学校再開に向け、子供たちもいつ学校に行けるだろうかという希望があると思いますし、安全診断を緊急に行うということ、また外壁の補強など安全対策を行うということを急がなければなりません。その上で、耐震診断を早急に行って、耐震化を強めてほしいということが地元の要望でもございますし、またこれはぜひ文部科学委員会としてもその声にこたえなければいけないというふうに思います。いかがでございましょうか。

中山国務大臣 午前中もお答えいたしましたけれども、学校施設というのは、子供がほとんど一日のうちの大半を過ごす施設でありますと同時に、災害時には地域住民の応急避難場所にもなるわけでございます。そういう意味で、避難したところがまた崩れたのでは本当に困るわけでございますが、委員が御指摘のように新潟県では耐震がおくれていまして、今まさに御指摘のように耐震性が確保されている建物は全体の四二%にとどまっている、非常に耐震化がおくれているということでございます。

 そういうことで、大変心配しているわけでございますが、文部科学省といたしましては、非常に厳しい財政の中でありますけれども、平成十六年度予算におきまして、耐震化関連予算といたしまして千百五十五億、前年比六億円増、来年度は千七百五十一億、大幅に予算要求しているということでございまして、学校施設の耐震化に今後とも努めてまいりたい、このように考えております。

石井(郁)委員 今回の地震の調査と災害調査に、新潟大学の理学部地質科学科あるいは積雪地域災害研究センター含め、教員や院生、学生、総動員で当たっているというふうに聞いております。その上、東大とか千葉大とか、そういう地震研究者も現地に駆けつけているということでございますけれども、この現地の地理を熟知している、災害の状況とともにその地震に伴う地変などを調査しているのが、やはり地元新潟大学の研究者ではないかというふうに思うんですね。ですから、中央、地方ともに連携して協力できる、そういう体制が求められているというふうに思います。

 ところが、問題なのは、新潟大学における研究体制が、この春国立大学の法人化になりましたけれども、著しく困難になっているという実態がございます。それで、この地質科学科へは大学院生の経費も含めて、十五年度では千六百二十三万円の予算が配分されていました。しかし、十六年度の予算、現時点では法人化で半分以下の七百五十三万円だと。十五年度で千六百二十三万円なんですね、それが半分以下で七百五十三万円なんです。だから、実に五四%のマイナスということになっているわけです。

 本当に驚くような話が聞こえてきまして、個人研究費が一人十五万円で、それでコピー代、電話代、郵便、実験用材料、学生指導の経費も一年間賄わなければならないということなんです。だから、旅費はもう一銭も出ない。それから、今回の応急対応の旅費ですね、これも自費、自己負担でやらざるを得ない、もう原資は底をついているということでありました。

 私は、こうした状況は見過ごすわけにいきませんし、放置するわけにいかないというふうに思うわけでございます。直ちに予算を組んで、今回の地震の発生メカニズム、周辺地質との関係の解明とか防災のために奮闘し研究している学者や研究者を、また学生も含めて、院生含めて支援をすべきだというふうに考えますが、大臣の御答弁をお願いします。

中山国務大臣 こういった地震等が起こりますと、本当に地震に対する研究というのをもっともっと進めていかなければいかぬなということを痛切に感じるわけでございます。

 国立大学法人におきます地震研究を初めとする学術研究の推進というのは、これは基本的には運営費交付金によって推進されておりまして、さらにこれに加えまして、独創的、先駆的な学術研究を対象に科学研究費補助金等、競争的研究資金を活用して、さらなる支援を行っているというのが現状でございます。

 そういった中で、今御指摘のようなことも起こっているようでございますけれども、国立大学法人に係る予算につきましては、文部科学省といたしましては、「法人化前の公費投入額を踏まえ、従来以上に各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保するよう努めること。」という、これは国会の附帯決議をいただいておりまして、これに十分留意して十六年度予算を措置したところでございます。

 具体的には、平成十六年度における運営費交付金予算全体では、人事院勧告などの当然減となる要因などを適切に加減算すると平成十五年度と実質的に同水準の額を確保しておりまして、この中には教員の教育研究活動に必要な従来の教育研究基盤校費に相当する額についても盛り込まれているところでございます。

 なお、研究費等の学内における取り扱いにつきましては、これは法人化の趣旨にのっとりまして、重点的、戦略的な配分を行うなど、各大学において、それぞれの判断によりまして機動的、弾力的な執行が行われているというふうに承知しております。

 運営費交付金につきましては、六年間の中期目標、中期計画期間を通じまして、着実に教育研究を展開し得るよう必要な運営費交付金を措置することとしておりまして、文部科学省といたしましては、今後とも所要額の確保に努めてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 実態は、なかなか大臣のおっしゃるようなふうにはなっていないんです。

 少し申し上げたいと思います。先ほどは新潟大学の理学部地質科学科を申し上げましたけれども、これは理学部の数学や物理や生物学科も大同小異だと。さらに人文系も、ある面では一層深刻でもあるということなんですね。教官一人当たり十五年度は百万円だった。それが、今回予算は四十七万円になっている。コピー機を撤去しなきゃいけない、学生のコピーはもう自腹でする、卒論用の図書も買えないというような実態。だから、これは事実として起きているわけですから、こんなふうに教官用の予算がもう現実に少なくなっている。学部の紀要の論文なんかも、それを有料にして五万円、十万円徴収する、こういうことまでせざるを得ない。ですから、全国的にも、どうも、学部・学科によって教育研究予算が四割から七割ぐらい前年度よりも減っているというところに来ているんですね。

 先ほど大臣も御紹介いただきましたけれども、国会の審議もございましたし、参議院の附帯決議では、法人化前の公費投入額を踏まえて、従来以上に各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保するようにということがございました。しかし今、教育研究は確実に確保されるような予算になっていない。

 そのことで、既に大臣は、これは戦略的な学内配分の資源の問題ですということをおっしゃって、それぞれ学内がやっているかのように言われたわけですけれども、こういう予算配分しているのは、実は、おっしゃったように、文科省自身が、何かこういうふうに使えというような誘導があるからではないのですか。

 それは、ことしの六月十八日の学長会議で、新たな教育研究組織の編成や教育研究プロジェクトの実施を積極的、機動的に行うように、こういう指示のもとに、ある大学では、役員の人件費が一億五千万円にふえている、その他、すべて学長裁量経費、学系長というんですか、裁量経費、予備費に多くがとられてしまう。だから、その分、学部・学科、教官一人当たりにおりる予算、研究費というのは大幅にやはり減らざるを得ない。全体は運営費交付金で出していると言われても、そういう配分の仕方をしますと、当然、研究の予算は減ってくるということになりますね。だから、そういうこと自身が、やはり法人化に伴って文科省が指示を下している、文科省の誘導のもとに進んでいる、私はこのことをやはり言わざるを得ないわけですね。

 ですから、大事なことは、前年度の運営費交付金しか組まないと。その上で、しかし新たな経費負担というのはかかってくるわけですよ、法人化で。その新たな経費負担を押しつけていけば、当然、下の方というか研究組織は大きな影響を受けるということになるわけです。

 私は、だから申し上げたいのは、何より基盤的教育研究経費、これが確保されているのかどうか、ここを文科省としてはきちんとやはり見ていただきたい。そして、その後、実態を調査する。そして、運営費交付金というのが必要ならば、やはり増額する以外にないわけですから、そのための予算措置をとるべきだということを申し上げたいわけでございます。いかがでしょう。

中山国務大臣 おっしゃることはごもっともでございまして、すべてそういった要請にこたえられればいいんですけれども、予算は限られているわけでございまして、文科省といたしましては、この十六年度というのは十五年度と実質的に同水準の額を確保したということがまず前提でございまして、次には、せっかく法人化されたわけでございますから、その趣旨を生かしまして、重点的、戦略的な配分ということで、これは各大学のある程度自主性といいますか主体性を尊重しながら、それぞれの判断で機動的、弾力的な執行が行われることを期待しているということだろうと思います。

石井(郁)委員 では、十六年度は同水準を確保したとおっしゃいますけれども、十七年度は、教官人件費を除いて一%の効率化係数を掛けるとなっていますね。では、明らかに来年度は減額じゃありませんか。来年度も同水準を確保するというふうに私は言っていただかなくちゃいけないと思うんですね。

 この来年度の概算要求は、既に各大学に示されていると思います。どんな実態になっているでしょうか。ある大学では、一%の削減どころか三%近い削減になっている。これは大変なものですよということがございます。だから、減らさないと言いながら、どんどんどんどん落ち込んでいっている。では、ぜひ、文科省の方で八月の概算要求で各大学にお示しをした来年度の支出予算の見通し、これをちょっと実態を提出していただけますか。

中山国務大臣 国立大学法人の運営費交付金につきましては、国民の理解を得ながら引き続き国費を投入していくということで、当然、経営改善努力を求めながら教育研究の特性に配慮するという観点から、算定ルールにおきましては、まず、効率化の対象となる教育研究経費から大学設置基準等により必要な教員の給与相当額を除外した上で、一定の効率化、マイナス一%でございますが、この経営改善努力を求めますとともに、新たに、教育研究ニーズに対応した各国立大学法人の取り組みに応じて増額できる特別教育研究経費の仕組みを設けたところでございます。

 来年度の予算につきましては、この算定ルールに基づきまして各国立大学法人がみずから所要額を算定して、文部科学省といたしましては、これを踏まえて、国立大学全体といたしまして対前年度二百五十億円増の一兆二千六百六十六億円の概算要求を行っているところでございまして、文部科学省といたしましては、今後とも、運営費交付金につきましては所要額の確保に努めてまいりたい、このように考えております。

石井(郁)委員 私は、資料提出の要求をしたいと思います。委員長にお願いします。

 各大学に示している来年度の支出予算の見通しというのがあるんですね。つまり、一%効率化係数を掛けるということになっていますが、それは示されていますから、それをぜひこの委員会に提出していただくようにお願いしたいと思います。

斉藤委員長 理事会で協議したいと思います。

石井(郁)委員 はい。

 私は、その上で、やはり法人化の審議のときには効率化係数なんて話はなかったんです。それで、運営費交付金で研究予算はしっかり確保するという答弁をされていました。それが突然、効率化係数なんて話が出てくる。これは今のところ一%です。それから、病院の場合は経営改善係数は二%掛けるということになっています。大変重大な問題で、こんなことは私はやめるべきだということを強く申し上げておきたいというふうに思います。

 法人化に伴って、もう一点出てきている問題でございまして、それは職員の業務量が非常に増大しているということなんです。職員の残業がふえている、超過勤務手当の不払いが蔓延しているという問題。

 これは広島大学では、月百九十時間を超える残業が発覚しまして労基署が調査に入りました。これはもう改善指導を受けて新聞にも出ている。また、信州大学では、労使協定の限度を超える残業を附属病院の事務職員七十名にさせた、賃金の計七百二十万円が不払いだ、未払い分を支払うようになったというふうにいいます。これはこの大学の総務、人事担当の理事の方は、法人化による混乱で対応が不十分だったと。だから、この四月からの法人化というのは、いかにいろいろと無理を重ねてきているかということがこの中にはあらわれていると思います。

 私はきょう問題にしたいのは、やはり超過勤務をしていて手当が支払われない、これも放置するわけにまいりません。これは不払い労働を野放しにすることになるし、これは黙認するというのはまさに違法行為ですから、するわけにいかない。だから、全国の大学で、この点も実地調査を直ちに行うべきじゃありませんか。そして、超過勤務をやめさせる、不払いが出ているんだったら、やはりきちんと払う、当然、そういうことこそ文科省は指導してしかるべきじゃありませんか。いかがでしょう。

中山国務大臣 国立大学法人の職員の労働時間管理は、各国立大学法人が労働基準法等の関係法令の規定にのっとり、適切に行うべきものであります。したがいまして、基準外労働に係る割り増し賃金につきましては、業務を確実に実施するために措置した運営費交付金等により適切に支払うべきものであると認識しております。

 各国立大学法人におきましては、各大学の自主的な判断に基づき、柔軟かつ機動的な組織編成や人員配置、多様な勤務体系を活用するとともに、教職員の意識改革を通じて、運営の効率化に積極的に取り組むことが重要であると思っております。

石井(郁)委員 予算の中で各大学に配分されているんですが、この運営費交付金の算定基準、事務系職員で月十二時間分です。看護師で月二十六時間分なんです。これは到底間に合わない。

 これは山形大学のアンケート調査に出ていましたが、事務職員で十五時間以上超勤した人が三九・四%、四割もいらっしゃる。看護師で三十時間以上の方が二一・一%ですから、今二割の方が超過勤務をしている。現実にせざるを得ない。だから、この算定基準、運営費交付金の算定基準が実態にまず合っていません。私は、超勤手当で全時間分支払われたのは何と三・九%ということですから、本当にわずかだと。

 この点でも、附帯決議では、この法人化に伴う労働関係法規等への対応については、法人の成立時に支障の生じることのないよう、財政面その他必要な措置を講ずることとなっていたわけです。だから、それは各法人のおやりになることではなくて、やはり政府として、文科省として、予算措置ですから、当然しなければいけない問題である。

 これは、私は、文科省としての本当に、法人化を進めた文科省としての責任が問われる問題だというふうにも思います。ぜひ調査をして、必要な補正予算を組むということを求めたいと思いますが、御答弁ください。

中山国務大臣 文部科学省といたしましては、法人化に当たりまして、まず、労働基準法等の法令をきちっと守るようにいろいろな会議で指導してきたところでございます。

 また、労働基準の管理につきましては、柔軟かつ機動的な組織編成や人員配置等により、各国立大学法人がみずから取り組むべき事柄であるということで、文部科学省として個別の事案について調査することは考えておりません。

 また、各独立法人におきましては、柔軟かつ機動的な組織編成、人員配置等によりまして、まず超過勤務の縮減を図るということが大事である、このように考えております。

 平成十六年度におきまして、この運営費交付金は平成十五年度と同額を確保しているわけでございます。これは使途のない渡し切りの交付金でありますから、そういう意味で、そういったことも含めて、ちゃんと国立大学の方で適切に対応すべきものではないか、このように考えております。

石井(郁)委員 私は、個別の名前、大学名を挙げましたけれども、これは決して個別の事案ではありません。全国的に起こっている問題だというふうに認識していただきたいと思います。

 そして、運営費交付金の算定基準として一定計上しているわけですから、それで十分なのか十分でないのかというのは、実態を調査しないで、また来年度の予算などは計上できないんじゃありませんか。

 そういう意味でも、私は、きちんとやはり本来、実態をつかむべきだということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 次の問題で、三位一体改革で少しお聞きいたします。

 先日、大臣のごあいさつをいただきました。そしてまた、きょうの質疑もございますけれども、率直に申し上げまして、姿勢がトーンダウンしているのではないかと言わざるを得ないわけでございます。

 あいさつの中では、義務教育費国庫負担制度については、「教育改革の一環として十分に検討してまいりたいと考えております。」ということで、なぜか、大臣生命をかけてでも堅持するとか死守するというような言葉を期待いたしましたけれども、ございませんでした。

 さらにきょうの質疑でもその点はいろいろありましたけれども、この義務教育費国庫負担金は、言うまでもなく、憲法二十六条の教育の無償の問題、教育基本法三条の教育の機会の均等に基づくものです。これまで義務教育費国庫負担は改悪に次ぐ改悪にされてまいりまして、教材費、旅費、児童手当、退職手当が一般財源化されました。残るは給与費本体のみとなっている、そのところに来ているわけですね。

 この委員会でも、この問題は本当にたびたび質疑になりまして、歴代の文部大臣、文部科学大臣が、義務教育費の根幹は死守する、給与本体は維持する、これが答弁でございました。だから今、この給与本体が風前のともしびなんですから、本当にこれは、やはり断固死守するというふうに大臣から力強い御答弁をいただきたいと思っているわけでございます。いかがですか。

中山国務大臣 何度もお答えいたしましたけれども、この義務教育というのは国の責任である、すべての国民に対して無償で一定水準の教育を提供する最終的な責任を負っている、このように考えております。

 したがいまして、先ほど来、十分に検討してまいる、こう言っていますが、十分に検討をして――静かな闘志を燃やしているわけでございますが、必ず堅持するという決意のもとに頑張ってまいりたい、このように考えております。

石井(郁)委員 この問題では、私は、地方分権の時代だとか、地方に任せてもいいのではないかとか、いろいろな議論がありますし、首相の方ももっと地方を信用しろとか、いろいろあるかというふうに思うんですね。しかし、やはり義務教育の水準、それを維持する及び向上させるという責務というのは国にあるということだと思うんですね。そういう意味で、国がその責任を放棄してはならないという立場で私ども考えていますし、ぜひ大臣も頑張っていただきたいというふうに思うわけです。

 私は、その点で、この義務教育費国庫負担の今まで対象となっていたものが一般財源化されるとどんなことになったかということで、これは自治体によって本当にばらばらですし、国の水準以下という事態を迎えているという問題があるんですね。

 これは一つの例でございますけれども、教材費というのは一九八五年に一般財源化されました。そのときも、国会では連合審査の席で、これは当時松永文相ですけれども、地方財政計画の中でこれまで以上に財源措置がなされるようなことが続いていくならば、教材の整備は進んでいくというふうに私たちは考えていると。

 教材の整備は進んでいくと考えている、だから一般財源化しても大丈夫だというようなことでございましたが、現実にどうなっているでしょうか。これは文科省がおつくりになった資料ですけれども、平成十年以降の市町村の予算の措置状況、教材費は本当に、いかがでしょうか、大臣、ちょっと簡単に御説明ください。

中山国務大臣 教材費につきましては、一般財源化されました昭和六十年度以降も、各学校における標準的な教材整備が図られるように、整備計画を策定しまして、必要な経費については地方交付税措置を講じてきたところでございます。

 しかし、実際に調べてみますと、地方公共団体における予算措置状況は、基準財政需要に対しまして、平成十年度で九三・四%、十一年度九〇・四%、十二年度九一・一%、十三年度九二・一%、平成十四年度は八五・五%ということになっておりまして、まさに、所期の目的といいますか目標に対しまして、だんだん下がってきているということがここで確認できるわけでございます。

石井(郁)委員 今、御答弁のように、やはり安易に一般財源化するとどういうことになるかということがここにも示されているというふうに思います。

 それで、私は、きょうの質疑でも、各党、与党の自民党、公明党の方も初め、各民主党の方も、この義務教育費国庫負担の堅持ということについては皆さんが質問をされました。この義務教育費国庫負担だけではなく、もちろん、私立高等学校等の経常費補助、幼稚園就園奨励費補助等々もあるわけでございますけれども、そういう表明がされましたので、これはまた委員長にちょっとお願いでございますけれども、本委員会では、これらの制度の維持、負担金、補助金の堅持という決議を委員会として上げてはいかがでしょうか。これを提案したいと思います。

斉藤委員長 理事会で協議をさせていただきます。

石井(郁)委員 あと一分だけありますので。

 今回は、地震だけじゃなくて、その前には一連の台風被害もございました。過去最大級の台風もありまして、私は、文科省、文化庁としては、やはり文化財の保護、復旧に本当に全力を挙げなければいけないというふうに思うんですね。

 私、これで一つの例で、先日行ってまいりましたのは、滋賀県の大津市に、奥村先生いらっしゃいますけれども、国宝三井寺があります。何とこの屋根が、ひわだぶきがもう飛んでしまって、非常に悲惨な状態になっているんです。ここはもう穴があいて、そして水漏れがしているという状況でありました。これほどの被害があったのは三井寺始まって以来だとおっしゃっておりました。

 それで、具体的なお話は、何しろひわだぶきでしょう、これ自身は一定耐用年数もあるわけですから、本当は先々保護しなければいけなかったのがおくれていたと。私は、文化財の保護自身が後手になっているということが一つあったと思います。それは今問わないとして、緊急にやはりこれは、こんな状態なんですから、もう本当に次の台風、水害が来たら危ないという状況がありますから、緊急に修復の措置をとられるようにお願いをしたいと思います。最後、一言どうぞ。

中山国務大臣 三井寺の被害については報告を聞いておりまして、現在の復旧状況といたしましては、所有者であります三井寺において、飛散して抜け落ちた部分に鉄板を用いて緊急措置を行っているというふうに聞いております。

 文部科学省といたしましては、別途、全面ふきかえの要望がなされているところでもありまして、所有者の意向を踏まえつつ、今後適切に処理してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 質問に先立ちまして、去る二十三日の新潟県の中越地震により亡くなられた方々の御冥福を心からお祈りを申し上げます。また、地震により困難な生活を余儀なくされております方々に対しまして、またお見舞いを申し上げたいと思います。

 大変な台風に続いての被害が発生して、ここはもう政府といたしましても、何としても一刻も早い補正予算を組んで、災害復旧に全力で取り組んでいただきたい、このことをまず強くお願いをいたしたいと思います。

 また、道路の寸断で孤立した山古志村におきましては、村民のほとんどが隣の長岡市の方へ避難されたわけでございますが、このことで大変心配されますのは、子供たちの状況なんですね。学校教育の面におきましても、地震に遭った人々、とりわけ児童生徒、この子供たちに対する心のケアというものが非常に重要であろうと。

 きょうも十時四十分に震度六弱の余震が起きて、もう多くの報道陣が入っていますから、もろに撮影が、ほとんど報道されましたね。その状況を見たときに、やはり子供たちが非常におびえている、恐怖で顔を引きつらせている映像をきょう何度も見ました。大変不安な精神状態にあろうと思っております。驚天動地という言葉がございますが、まさに天が動いて、地が動いたわけでございますので、それを子供たちは目の当たりにしたわけですので、想像を絶する、私は、今恐怖心から来る精神的な不安状況にあろうと。そういった意味でカウンセラー、スクールカウンセラーの配置を何よりも早急に対応していただきたいということが一つ。

 それから、この山古志村の場合、生徒もほとんどこれから長岡市で、当分の間、村に帰れないという状況らしいです。道路が遮断されて、半年ぐらい帰れないのではないかという報道がある。そうすると、この長岡市での教育体制、村でちゃんと受けていたそういった教育体制を長岡市でも早急に整備する、そして万全の体制をとる、このことが重要ではなかろうかと思いますが、この二点につきまして、まずお願いでございますが、お話を聞かせていただければと思います。

素川政府参考人 まず、児童生徒の心のケアについて、お答え申し上げます。

 今回の新潟県中越地震の被災地域の児童生徒の心のケアに適切に対応するということは極めて重要な問題であると考えております。文部科学省といたしましては、地元の教育委員会との連携のもとに、必要な対策について検討していくことが必要であると考えているところでございます。

 特に、先生御指摘の児童生徒に対するスクールカウンセラーによるカウンセリングなどに努めることも重要でございまして、地元の教育委員会と連携を図りながら、スクールカウンセラーの配置等について検討を進めてまいりたいと考えておるところでございます。

銭谷政府参考人 被災した子供たちの修学の機会の確保ということは大変重要な課題であると思っております。特に、甚大な被害によりまして、中長期にわたる避難が見込まれる場合等におきましては、安全確保あるいはただいまの心のケアにも十分配慮しながら、学校等において速やかに受け入れを進めるということが重要だと思っております。

 今後、被災した児童生徒の修学の機会の適切な確保のために、各県に対して要請を行うとともに、受け入れ先となる学校の教職員配置などにつきまして配慮を行いたいと考えております。また、受け入れ先の学校において適切な教育環境の確保が図られるように、災害で失われた教科書についての無償給与や学用品等の給与、施設の整備など、個々の状況に応じ、適切に対応してまいりたいと考えております。

横光委員 どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、義務教育費国庫負担制度についてお尋ねをいたします。

 これは大臣も先ほどから御説明されておりますように、憲法第二十六条、そして教育基本法第三条の規定を受けて、この義務教育費国庫負担法があるわけでございます。その第一条で、「義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的とする。」このように定められておりまして、まさにここに国の責務が明記されているわけでございます。

 つまり、公立の義務教育諸学校の教職員の給与費を、国と都道府県、それぞれ二分の一ずつ負担するというこの制度をつくったのは、都道府県の財政状況に関係なく、義務教育を行う上で最も重要なこの教員給与を全国的に安定させるのが目的である、私はこう思っているんですね。

 その制度が今非常に危うくなっている。それも教育論的からではなく、財政論的からこの制度の廃止という動きがあるわけでございます。

 そこで、まず大臣にお聞きしますが、教育論的にこの義務教育費国庫負担制度に何か問題点があったのでしょうか。

中山国務大臣 この義務教育費国庫負担制度、今の制度になりましたのは昭和二十八年でございまして、このときは全国の知事会側からの要請によりまして、こういった制度ができたわけでございます。

 この義務教育費国庫負担制度というのは、その後、長年にわたりまして、我が国教育の向上といいますか教育水準の向上ということについては大変な効果があった、このことにつきましては世界の方からむしろ評価されているぐらいのものであった、私はこのように考えております。

横光委員 全くおっしゃるとおりだと思います。やはりこの制度が私たちの国の人材の育成、そしてまた国の繁栄、いわゆる経済成長、この大きな礎になったと言ってもいいぐらい、私は貴重な制度であると思うんです。

 それが、そういう問題点がないにもかかわらず、今度は財政の方からこの制度を廃止しようという動き、これはもう私は看過できない問題であろうと思うんですよ。教育論的に問題点があるなら、まだ議論の余地はありますよ、論議する余地があります。しかし、そういったところでは何ら瑕疵もなければ、大変大きな、私たちの国に貢献した立派な制度であるにもかかわらず、財政論だけでこれを廃止という動きになってしまえば、これはまさに、先ほどからお話ございますように、教育は国の根幹でございますので、根幹が崩れていく、こういった危機があるわけでございます。

 大臣は、二十二日のあいさつでは、「憲法の保障する教育の機会均等、教育水準の維持向上などを図るために極めて重要な施策」である、このように述べられております。ところが、これを最後には「十分に検討してまいりたい」と。

 先ほどちょっと堅持という言葉が聞こえましたが、余り大きく聞こえませんでしたので、もう一度お聞きしたいんですが、ここは検討するような状況じゃないんです。もう十分に私は検討されたと思う。もう今や決断のときですね。決断ということは、私は、文部科学省のトップに位置する大臣としては、堅持ということが決断だと思うんです。

 もう一度お聞きしたいんですが、義務教育費国庫負担制度は堅持してまいる、そういう決意でよろしいでしょうか。

中山国務大臣 文部科学大臣就任に当たりまして、小泉総理大臣から、地方の改革案を真摯に受けとめ、ちゃんと検討しろ、こう言われましたので、ずっと検討してまいったわけでございます。

 私自身としては、まさに今委員が言われましたように、何も悪いことはない、むしろ今の日本経済、日本社会の発展の基礎となったこの義務教育費国庫負担制度は、本当に今後とも堅持すべきものであって、単なる財政論からこれをなくすというのは、本来本末転倒ではないかというぐらい思っているわけでございますけれども、なおかつ、総理大臣の重い指示でございますから、まだきょう一日あるものですから、慎重に十分検討してまいりたい、このように考えているということでございます。

横光委員 まだ検討ですか。ボクシングじゃないですから、大臣、もうケントウはいいじゃないですか。もうあしたが提出期限でしょう。何か対案があるんですか。

中山国務大臣 ここに来て何もないと言うわけにもいきませんので、心づもりはありますけれども、あしたが提出期限でございますから、最後の最後まで、拳闘じゃありませんが闘って、検討していきたい、こう思っております。

横光委員 私は、なぜこれをしつこくお聞きするかといえば、先ほどからお話しのように、順次文科省の補助金等は一般財源化がされていって、本当に義教費だけが最後に残っている状況でもあると思うんですね。ここが今度崩れようとしているときには、いわば文科省の存亡の危機だと思うんですよ。そのときにその大臣がまだ検討と言っているようでは、それは船長さんがそんな状況では、それは船員はたまったものじゃない。また、船が遭難するのを阻止するためにサポートしている多くの人たちもたまったものではない。やはり船長がここは意思を表明、しっかりと決意を表明してほしい。

 先ほど、何ら悪いところのない制度を財政論から崩すのはおかしいという論法を言われましたし、全く正しい主張だと私は思うんですね。それは、総理は、真摯に地方の意見も受けとめてほしいという意見は言われました。それは地方の苦労してまとめた案は尊重しなければなりません。しかし、地方の六団体の案が、ではすべて正しいということになるわけじゃないんです、案として来ているわけですから。そこのところはまたこちらでしっかりと受けとめて、それは地方の案ではあるが、国としてはそういうことにはまいりませんよということを正しく主張していくことには、何ら腰を引く必要がない。ですから、ここはしっかりと堅持してほしいということを訴えているわけでございます。

 これまでの歴代の文科大臣、そうそうたる方々が、堅持ということで小泉大臣に申し入れをしておるんです、連名で。ここで非常に大事なことを、「義務教育における国の役割を見定めて、後世に禍根を残すことのないようにすべきである。」ここが非常に私は重要なポイントである。さすがに各歴代の文科大臣の押さえるところはここなんですね。

 結局、一時的な問題でこの制度を見直してしまえば、私は、後世に禍根を残すことになるだろう。一回これは、実はこの制度は一般財源化されたことがありますね。しかし、結果的に、各地域で教育のバランス、格差が出てきたために、再びこの制度が必要だということで始まって、今日まで来ているわけです。そのときも恐らく財政論だったと思う。

 今回のようにこのような形で崩されていくことには、恐らく後世に禍根を残すということを歴代の文科大臣も非常に憂えております。敬称を略しますが、奥野誠亮、海部俊樹、西岡武夫、森喜朗、保利耕輔、鳩山邦夫、町村信孝、中曽根弘文、大島理森、有馬朗人、これらの方たちが連名で、まさに本当に危機感を感じて総理に申し入れをしているわけです。そして、その後の遠山元大臣、そして河村前大臣も同じ趣旨で賛同いたしております。

 ですから、現大臣である中山大臣に、ぜひとも堅持ということをしっかりとここは表明して、この問題に対処していくときであろうと私は思うんですが、いま一度堅持という言葉をお聞きしたいと思います。

中山国務大臣 先ほど話がありましたように、昨年五月二十八日には、歴代の文部大臣が義務教育費国庫負担制度の堅持に関する申し入れを総理にされたところでございます。また、本年十月二十一日には、中央教育審議会の鳥居会長らが義務教育費国庫負担制度に関する緊急要請を出されました。また、同日、有馬朗人元文部大臣、小柴昌俊東京大学名誉教授を初めとする研究者の方々から、国庫負担制度に関する緊急メッセージをいただいております。

 このほか、日本PTA全国協議会など、幅広い方々からも義務教育の必要性に関する決議が寄せられております。また、きょうも、質問をいただいた本当に皆さん方から、堅持についての要望を出されているわけでございます。

 私といたしましても、日本の将来にとって義務教育がいかに大事であるか、また、義務教育の無償制のもと機会均等を実現し水準の維持向上を図るためには、この義務教育費国庫負担制度は極めて重要な制度であるということにつきましては、機会をとらえて申し上げてきたところでございまして、このことは、文部省の存立ということではなくて、日本の国の存立にかかわる問題である、これぐらいの決意でおるわけでございます。

 歴代の文部大臣等が一生懸命頑張っていただいておりまして、しかし、その重みはずっしりとこの私の肩にかかっているわけでございまして、その重みをしっかりと受けとめまして、この義務教育費国庫負担制度につきましては、しっかりと堅持するという方向で頑張ってまいりたい、このように考えております。

横光委員 どうもしつこくて済みませんでした。ありがとうございます。

 今お話がありましたように、先ほどの歴代の文科大臣のみならず、全国の知事会の中でも全会一致でこれは決まったわけではないし、それぞれ各知事さんが悩みながら私はまとめられたんだと思うんですね。いわゆる、ある意味では地方へ税源移譲をする最大、千載一遇のチャンスであるという思いから、非常に難しい問題でありながらも、こうしてまとめた。

 しかし、すべての知事さんが賛同しているわけではありませんし、実際に今七人の方はしっかりと反対を表明しておる。私の大分県の広瀬知事も、今大臣がおっしゃられたような思いで、非常にこの問題ではしっかりと反対を主張しております。また、石原都知事も、やはり六団体の答申が出た後、でも公教育の根幹である義務教育の水準確保はあくまでも国の責任であると述べられている。これは、石原都知事がこういうことを言うということは、全国の小中学校の生徒数の比率からすると非常に重い、一知事であっても、私は非常に、比率からすると十人分、二十人分の価値があると思うんですね、全国の生徒数の中で東京都の児童生徒数は非常に多いわけですので。そういった意味で、そういった声もある。

 そしてまた、何よりも中教審の鳥居会長と木村副会長が、自分たちが審議をしたことを無視してこの六団体の改革案どおり進んだ場合は、まさに中教審の存在理由はないということで、辞任をする意向を示しているんですね。非常にこれはまた大きな問題になろうかと思います。

 さらに、先ほど言いましたように、日本の世界に冠たる経済繁栄を遂げたもととなる頭脳であるノーベル賞受賞者の方々、小柴先生、野依先生、江崎先生、利根川先生、これらの方もこの制度の必要性を強く訴えております。非常に周りのサポートする声は大きいし、多いんです。ですから、大臣、絶対これは憶することなく、自信を持って、私はあしたでも闘ってほしい、本当の話。大臣がその気であれば、絶対突破口は開ける、私はこのように思っております。

 ところで、地方の六団体がまとめられた案でございますが、堅持ということをおっしゃっていただきましたので、当然のことと思いますが、この改革案には反対ということでよろしいですね。

中山国務大臣 地方六団体の改革案につきまして反対かということでございますが、これは、政府の方として取りまとめるということを指示したものに対して、本当に苦労されて出されたわけでございますから、もちろん、私どもとしてはそれを尊重しなきゃいけないと思っております。

 しかし、それを丸ごと受け取るということだったら政府は要らぬわけでございますから、私としては、それを一つの非常に重要な案として、それをもとにして、これから政府内でいろいろと検討していくべき筋合いのものではないかな、このように理解をしております。

横光委員 ちょっと弱いですね。

 地方案は、中学校職員分として十八年度、そして義教費の全額を二十一年度までに全額税源移譲して、義教費制度そのものの廃止を政府に求めておるんですよ。そういう案を投げ返してきておるんですよ。これをもし実行されてしまえば、大臣が言われた、教育の機会均等、教育水準の維持向上などを図るために極めて重要な施策である、この施策はなくなるということなんですから、当然、地方案には反対をしなきゃならないと思いますが、いかがですか。

中山国務大臣 ちょっと誤解があるといけませんが、私が申し上げましたのは、地方の案そのものについては全部反対ではないということでございまして、その中の、義務教育を含みます文部省関係につきましては絶対反対ということでございます。

横光委員 よくわかりました。それで非常に私もよくわかりました。

 ぜひそういった思いで、なぜならば、どこから見ても地方案は、いわゆる数字合わせのために義教費をいわば引用してしまったと言っても過言じゃないと私は思うんです。では、なぜ中学校だけなのか、小学校は義務教育じゃないのか、そういった問題もありますし、このことが実際に行われてしまえば、文科省の試算でも四十道府県で財源不足になると試算されておるんですね。一般財源化されて、相当額を個人住民税で、フラット税率で移譲した場合、四十道府県、つまり、ほとんどの全国の県で財源不足になる。

 しかも、この財源不足が起きた場合、地方六団体の案では、財政措置すべき額に満たない地方公共団体については、地方交付税の算定等を通じて確実に財源措置を行うこと、こういうふうに明記されている。政府として、三位一体改革では地方交付税の総額は抑制する、そういった方向が示されておりますね。それを、財源が満たない場合は、それは地方交付税で財源措置を行うこと、こういう前提条件がついている。

 一方、国の三位一体改革では、地方交付税は抑えようとしている。にもかかわらず、税源移譲して足りないところは地方交付税で補ってほしい、全く矛盾するわけで、こういうことでは地方交付税で財源措置を確実に行うことは私は困難であると思いますが、この点はいかがですか、大臣。

中山国務大臣 御指摘のように、試算いたしますと、四十道府県につきまして財源不足を生ずるということになっているわけでございます。

 そこで、地方側の案によりまして、その分については交付税で措置するということでございますが、まさに足りない分、措置する分というのが、そもそもこの義務教育の二分の一の分じゃないかなと。この文案は、何をさておいてもまず措置しておくということではないかと思うわけでございまして、まさに地方側の案にあるのを実現しているのがこの義務教育国庫負担二分の一制度ではないか、私はこのように理解をしております。

横光委員 それともう一つ、やはりこういうふうに、地方六団体の案は非常に義教費の件に関しては私は結構矛盾があると思うんですね。

 それと、二年前、十四年の十二月に、総務大臣、財務大臣、文科大臣、この三大臣が合意しておりますね。このことは、平成十八年度末までに国庫負担金全額の一般財源化については所要の検討を行う、まさにこれが検討を行うわけで、十八年度までに。

 ところが、そういった、三党合意じゃない、三党合意は年金ですね、あっちの方じゃなくて三大臣合意、三大臣合意がありながら、ことしの六月にはいわゆる骨太の方針二〇〇四を閣議決定した。そこでは、二年間で三兆円規模の税源を地方に移譲することになった。そして、それに見合う国庫補助金の具体的な削減を、小泉総理は全国知事会にまとめるように、いわば丸投げしたわけですね。そして、まとめてきた。そして、それを受けとめて、今度それを丸のみしようとしている。しかし、大臣が言われたように、義務教育費国庫負担金のところはそうはいきませんよというお話でございます。

 この三大臣の合意事項、これが、政府そのものがこれを無視して閣議決定して、新たな方針を出しておるんですが、仮にこれが、改革案がもし総理等のいわば圧力で受け入れられるようなことになってしまうと、この三党合意はほごになることになりますが、三党合意の……(発言する者あり)三党合意じゃない、三大臣合意の重みというものはどういうふうに受けとめておられますか。三大臣合意、失礼いたしました。

中山国務大臣 三党合意も重く受けとめていただきたいと思いますが、三大臣の合意も重く受けとめるべきだ、こう思っております。一方ではまた、地方六団体の方に、骨太二〇〇四に基づきまして政府がそれを要請したわけでございますから、そのことも重く受けとめなきゃいかぬと思っています。

 いずれにしろ、私は、政府内におきまして申し上げておりますのは、地方の方も本当に苦労しながら、汗をかいてまとめられたわけでございます。特に義務教育関係につきましては反対も多かったわけでございますね、必ずしも皆が同じじゃなかったわけでございますから。

 これから政府の中におきまして、それこそ総意を挙げて、丸のみにならないように、本当に今度は国の責任においてこれをまとめていくということが大事だろうと思いますし、その中におきましては、午前中の審議でも申し上げましたが、小泉総理も米百俵の精神ということを言われたわけでございますから、最後には必ず理解していただける、こう信じて頑張ってまいりたいと考えております。

横光委員 そのとおりだと思います。

 小泉さんは、米百俵の精神というものを就任のときにもう本当にすばらしい思いで訴えたわけです。あの精神と今度の精神だと大分ギャップがあって全く逆行しておるんで、そこは大臣が改めて説得していただいて、あのときの気持ちを思い起こしてほしいと強く訴えていただきたいと思います。

 それで、大臣も言われております教育の機会均等、教育水準の維持向上などを図るために極めて重要な施策である、この義教費制度は。そして、憲法や教育基本法あるいは義教費負担法の中にも言われておりますように、国が必要な経費を負担することということになっております。

 今や、諸外国では教育に物すごく力を入れている。韓国、フランスなどでは全額国庫負担なんですね、全額国庫負担。イギリスが七割も国庫負担。そして、発展途上国でも非常にこの教育予算を大幅に計上して、教育、教育という時代が世界で進んでいるにもかかわらず、私たちの国は、その二分の一の国庫負担を削減しようとしている、廃止しようとしている、まさに逆行しようとしている。

 むしろ全額国庫負担すべきであるという考えでございますが、最後に大臣に、このお気持ちをお聞かせください。全額国庫負担でやるべきだ、それぐらいの気持ちで小泉総理に立ち向かっていただきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。

中山国務大臣 本当に、大変な激励をいただいておりまして、ありがたいことだなと心から感謝を申し上げます。

 まさに、委員御指摘のように、世界の潮流というのは、教育について、地方に任しちゃだめだ、もっと国の関与を強めるべきだというのが大きな流れだ、こう考えるわけでございまして、その中にありまして日本だけが教育費を減らしていくというようなことは、もうとんでもないことだ、こう思いますので、そのことは強くこれからの協議において主張してまいりたい、このように考えております。

横光委員 どうもありがとうございました。終わります。

斉藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十二分散会


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