衆議院

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第5号 平成16年12月1日(水曜日)

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平成十六年十二月一日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 奥村 展三君 理事 川内 博史君

   理事 牧  義夫君 理事 河合 正智君

      井上 信治君    小渕 優子君

      加藤 勝信君    岸田 文雄君

      小西  理君    近藤 基彦君

      左藤  章君    佐藤  勉君

      佐藤  錬君    下村 博文君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      西村 明宏君    葉梨 康弘君

      馳   浩君    原田 令嗣君

      古屋 圭司君    保利 耕輔君

      御法川信英君    山際大志郎君

      青木  愛君    岡本 充功君

      城井  崇君    楠田 大蔵君

      小宮山泰子君    須藤  浩君

      高井 美穂君    武山百合子君

      達増 拓也君    長島 昭久君

      肥田美代子君    松本 大輔君

      笠  浩史君    池坊 保子君

      石井 郁子君    横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   山本信一郎君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        石川  薫君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   松元  崇君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 白川 哲久君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 井上 正幸君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月一日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     小西  理君

  加藤 勝信君     御法川信英君

  加藤 紘一君     佐藤  勉君

  鈴木 俊一君     左藤  章君

  西村 明宏君     井上 信治君

  加藤 尚彦君     小宮山泰子君

  古賀 一成君     楠田 大蔵君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     西村 明宏君

  小西  理君     小渕 優子君

  左藤  章君     鈴木 俊一君

  佐藤  勉君     加藤 紘一君

  御法川信英君     原田 令嗣君

  楠田 大蔵君     古賀 一成君

  小宮山泰子君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     加藤 勝信君

  岡本 充功君     加藤 尚彦君

    ―――――――――――――

十一月十六日

 父母・学生の負担軽減と私立大学の充実に関する請願(城井崇君紹介)(第一五七号)

 同(牧義夫君紹介)(第一五八号)

 同(城井崇君紹介)(第一六七号)

 同(川内博史君紹介)(第一七五号)

 同(横光克彦君紹介)(第一七六号)

 同(小林千代美君紹介)(第二二九号)

 同(肥田美代子君紹介)(第二九二号)

 父母・学生の負担軽減、私立大学の充実に関する請願(城井崇君紹介)(第一五九号)

 同(小林千代美君紹介)(第一六〇号)

 同(川内博史君紹介)(第一七三号)

 同(横光克彦君紹介)(第一七四号)

 同(肥田美代子君紹介)(第二九一号)

 子供たちの多様な体験学習や奉仕活動等に取り組む環境整備に関する請願(西田猛君紹介)(第一六六号)

 同(下条みつ君紹介)(第一七七号)

 同(前原誠司君紹介)(第二三〇号)

 同(坂本哲志君紹介)(第二五五号)

 義務教育費国庫負担制度堅持、文教予算の充実、人材確保法堅持・教育専門職としての教職員の待遇改善に関する請願(遠藤利明君紹介)(第二六九号)

同月二十六日

 子供たちの多様な体験学習や奉仕活動等に取り組む環境整備に関する請願(達増拓也君紹介)(第三五六号)

 同(松野頼久君紹介)(第三九七号)

 同(園田博之君紹介)(第四四九号)

 父母・学生の負担軽減、私立大学の充実に関する請願(池坊保子君紹介)(第四三七号)

 同(高井美穂君紹介)(第四六三号)

 父母・学生の負担軽減と私立大学の充実に関する請願(池坊保子君紹介)(第四三八号)

 同(高井美穂君紹介)(第四六四号)

 私学助成の大幅拡充、三十人学級の早期実現、教育費の父母負担軽減に関する請願(坂本哲志君紹介)(第四四七号)

 同(松野信夫君紹介)(第四四八号)

 同(林田彪君紹介)(第四五三号)

 同(西川京子君紹介)(第四六五号)

 同(野田毅君紹介)(第四六六号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第四九〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四九一号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成に関する請願(和田隆志君紹介)(第四五二号)

 同(城井崇君紹介)(第四九二号)

 同(古賀一成君紹介)(第四九三号)

 同(手塚仁雄君紹介)(第四九四号)

 同(楢崎欣弥君紹介)(第四九五号)

 同(西村智奈美君紹介)(第四九六号)

 同(藤田一枝君紹介)(第四九七号)

 同(横路孝弘君紹介)(第四九八号)

 同(横光克彦君紹介)(第四九九号)

 私立学校の保護者負担軽減、教育環境改善のための私学助成充実に関する請願(石崎岳君紹介)(第四八四号)

 すべての子供に行き届いた教育を進め、心の通う学校に関する請願(市村浩一郎君紹介)(第四八五号)

 同(梶原康弘君紹介)(第四八六号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成等に関する請願(荒井聰君紹介)(第四八七号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第四八八号)

 同(横路孝弘君紹介)(第四八九号)

同月二十九日

 すべての子供に行き届いた教育を進めることに関する請願(浜田靖一君紹介)(第五二四号)

 同(田嶋要君紹介)(第九一三号)

 父母・学生の負担軽減と私立大学の充実に関する請願(小林千代美君紹介)(第五二五号)

 同(渡海紀三朗君紹介)(第五八三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第八九五号)

 同(石井郁子君紹介)(第八九六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八九七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八九八号)

 同(志位和夫君紹介)(第八九九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第九〇〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九〇一号)

 同(山口富男君紹介)(第九〇二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第九〇三号)

 同(笠浩史君紹介)(第九〇四号)

 私学助成の大幅拡充、三十人学級の早期実現、教育費の父母負担軽減に関する請願(江田康幸君紹介)(第五二六号)

 同(松野頼久君紹介)(第五八五号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成に関する請願(青木愛君紹介)(第五二七号)

 同(江田康幸君紹介)(第五二八号)

 同(海江田万里君紹介)(第五二九号)

 同(城島正光君紹介)(第五三〇号)

 同(松本大輔君紹介)(第五三一号)

 同(松本龍君紹介)(第五三二号)

 同(村越祐民君紹介)(第五三三号)

 同(高木陽介君紹介)(第五八六号)

 同(東順治君紹介)(第五八七号)

 同(松原仁君紹介)(第五八八号)

 同(佐藤公治君紹介)(第六三四号)

 同(藤田幸久君紹介)(第六三五号)

 同(水野賢一君紹介)(第六三六号)

 同(井上和雄君紹介)(第九〇五号)

 同外一件(池坊保子君紹介)(第九〇六号)

 同(菅直人君紹介)(第九〇七号)

 同(北橋健治君紹介)(第九〇八号)

 同(楠田大蔵君紹介)(第九〇九号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第九一〇号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成等に関する請願(小林千代美君紹介)(第五三四号)

 同(三井辨雄君紹介)(第五三五号)

 同(金田誠一君紹介)(第五九一号)

 同外二件(佐々木秀典君紹介)(第五九二号)

 同(丸谷佳織君紹介)(第五九三号)

 父母・学生の負担軽減、私立大学の充実に関する請願(渡海紀三朗君紹介)(第五八二号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第八八五号)

 同(石井郁子君紹介)(第八八六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八八七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八八八号)

 同(志位和夫君紹介)(第八八九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八九〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八九一号)

 同(山口富男君紹介)(第八九二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八九三号)

 同(笠浩史君紹介)(第八九四号)

 子供たちの多様な体験学習や奉仕活動等に取り組む環境整備に関する請願(福島豊君紹介)(第五八四号)

 すべての子供に行き届いた教育を進め、心の通う学校に関する請願(渡海紀三朗君紹介)(第五八九号)

 同(松本剛明君紹介)(第五九〇号)

 同(赤松正雄君紹介)(第九一一号)

 同(石井一君紹介)(第九一二号)

 学校事務職員・学校栄養職員等の定数改善と給与費等半額国庫負担の拡充に関する請願(阿部知子君紹介)(第八六七号)

 同(石井郁子君紹介)(第八六八号)

 同(岩國哲人君紹介)(第八六九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八七〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八七一号)

 同(田嶋要君紹介)(第八七二号)

 同(東門美津子君紹介)(第八七三号)

 同(中津川博郷君紹介)(第八七四号)

 同(中根康浩君紹介)(第八七五号)

 同(中村哲治君紹介)(第八七六号)

 同(永田寿康君紹介)(第八七七号)

 同(古川元久君紹介)(第八七八号)

 同(前田雄吉君紹介)(第八七九号)

 同(牧義夫君紹介)(第八八〇号)

 同(横光克彦君紹介)(第八八一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八八二号)

 同(笠浩史君紹介)(第八八三号)

 義務教育費国庫負担制度の維持に関する請願(阿部知子君紹介)(第八八四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官山本信一郎君、総務省自治財政局長瀧野欣彌君、外務省大臣官房参事官梅本和義君、大臣官房国際社会協力部長石川薫君、財務省主計局次長松元崇君、文部科学省大臣官房長白川哲久君、大臣官房総括審議官玉井日出夫君、生涯学習政策局長田中壮一郎君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長石川明君、高等教育局私学部長金森越哉君、スポーツ・青少年局長素川富司君及び国際統括官井上正幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中野清君。

中野(清)委員 自由民主党の中野清でございます。

 中山大臣は、大臣就任後、意欲的に行動されて、特に義務教育国庫負担制度のあり方につきましては、教育本来のあり方を求めての御努力に、私は敬意を表しております。

 さて、義務教育国庫負担金の取り扱いでございますが、去る二十六日の政府・与党協議会において決定された三位一体の改革の今後の工程におきまして、一、制度の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する、その方針のもとで、費用負担についての地方案を生かす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育のあり方について幅広く検討することとし、こうした問題については平成十七年秋までに中教審において結論を得る、また、中教審の結論が出るまでの平成十七年度予算については暫定措置を講ずるものとし、四千二百五十億円を削減し、平成十八年までに義務教育国庫負担金を八千五百億円削減することが決定されました。

 私は、この三位一体の取りまとめに当たっての関係者の皆さんの御努力には敬意を表したいと考えてはおりますが、暫定的な措置としてでも平成十七年度に四千二百五十億円を削減するということは、初めから削減ありきではということでありまして、中教審の審議が形骸化をし、無意味になると恐れているものであります。

 仮に中教審が削減に反対の結論を出した場合には、では、十八年度の四千二百五十億円の削減は取りやめるのか、十七年度については復活の可能性があるんだろうかということが言えます。また反対に、このまま推移して、義務教育は地方が責任を持って執行するという事態も考えられるわけですね。

 私は、大臣に、暫定という意味を含めまして今回の合意内容をどのように評価し理解しているか、まずお伺いをしたい。

 それからもう一点は、私は、義務教育というのは憲法の定めるところによって国民としての必要な基礎知識を得させる、つまり、教育の機会均等の確保と全国的な教育水準の維持向上を図ることが義務教育に対する国の重要な責務であると考えておる一人であります。諸外国に目を転じますれば、韓国やフランスなどは全額国庫負担になっておりますし、イギリスなども、最近、七五%から一〇〇%に引き上げようという動きがあるということも御承知のとおりです。

 今、この問題について、中教審のあれは別にしまして、例えば、有馬さんとか小柴先生とかという研究者とか、または全国の都道府県の議会とか市町村議会、それからまたPTAの皆さんとか、そういう皆さんから、この義務教育の国庫負担を堅持すべきだという決議や意見が出ております。私も当然と考えていますけれども、この点について、とりあえず大臣の御見解をお伺いいたします。簡単で結構です。

中山国務大臣 中野委員にお答えいたします。

 この義務教育費国庫負担制度の論議に当たりましては、中野委員初めこの委員会の皆様方、与野党を通じて、堅持すべしということでいろいろと御支援、御激励をいただきましたことにつきましては、まずもって御礼を申し上げたいと思うわけでございます。

 今中野委員が読み上げられましたように、政府・与党の合意によりまして、この義務教育費国庫負担制度につきましては、十七年度に四千二百五十億、十八年度に同じく四千二百五十億、トータルで八千五百億円の減額ということになっておりますが、これはあくまで暫定ということになったわけでございます。

 このことにつきましては、本当に、私が大臣になりましたときには、相撲で例えて言いますと、土俵際まで追い込まれて、まさに中央教育審議会という徳俵に足がかかって、そこから押し返すことができた、このように評価しているわけでございます。そういう意味では、本当に、中央教育審議会で今後議論していただくということになるわけでございまして、その結果いかんによりましては、十八年度以降、国庫負担金として全額が復活する可能性もあるんだ、このように認識しているわけでございまして、そのように認識しているということを御理解いただきたいと思います。

 また、韓国とかフランスなど多くの国で全額国が負担している、これもそのとおりでございます。イギリス等はむしろ全額国が持とうとしている、そういうような世界的な風潮の中で、なぜ日本だけが国の負担を減らしていくんだということも随分私は主張したわけでございますが、地方分権といいますか、補助金の改革という大きな地方の声もあったわけでございまして、このような結論になりましたが、そもそも、昭和二十八年に、日本におきましても、全額国庫負担すべきであるという義務教育学校教育職員法案が国会に提出されたこともあるというぐらいでございまして、政策上の選択肢としては全額国庫負担ということも当然あり得る、私もそういうこともあり得るんだということを協議の過程で発言したということもあるわけでございます。

 そういう意味では、この義務教育につきまして国の責任というのはしっかりあるんだというふうに認識しているところでございます。

中野(清)委員 この三位一体につきまして大臣の御意見、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 私はどちらかというと、地方にいろいろな地方分権というのは当然の流れと思っておりますけれども、どうもこの議論が、いわゆる国民的な立場、つまり納税者の立場の議論というよりも、各界各層の議論があったと思うんですよ。その中でこの国庫負担の問題がやられているのは非常に不幸だと思っておりますけれども、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 そういう意味でのいろいろな中で、実は十一月二日の産経新聞トップに、山梨県の教職員組合がことしの参議院選において、輿石候補の選挙資金として校長が三万円、教頭が二万円、一般職員が一万円を組織的に集めて、領収書も発行していないし、政治資金規正法の届け出もしていないじゃないか、政治資金規正法に抵触する可能性があると記事が出ております。

 この対応については、参議院の文科委員会で有村治子議員の質問に対して、大臣は、組織的、強制的に行われたとすれば問題であり、事実関係をしっかり把握することが大事と思うと答弁されておりますけれども、もしこういうことが事実とすれば、文科省として、その後もう一カ月たっているわけでございますから、どのように対処されてきたか、有村議員への答弁を踏まえた上で御答弁願いたい。

 このような事件はこれだけじゃなかったんですよ。九月七日の産経新聞では、神奈川県の教組委員長と川崎市の教組委員長等三人の方が、参議院選で民主党の比例候補への票の取りまとめを依頼して、見返りに現金を十五万円渡した容疑で逮捕されたということが報じられておるわけです。

 もしこれらが事実ならば、国民に信頼されて、子供たちにルールや約束を守るということを教える立場の教師、この団体のリーダーが違法行為を行い逮捕されたというのは、私はゆゆしき問題と思うんですよ。このような事態というのは二度と起こしちゃいけないわけです。私は、文科省や地方の各教育委員会が全組織を挙げて真正面から取り組む必要があると考えております。

 大臣は、この再発の防止のためにも、厳正な、しかも国民が納得できるような措置というものを早急に私は発動すべきと思いますけれども、御見解を伺いたいと思います。

中山国務大臣 お答えいたします。

 子供の規範となるべき教員が違法な行為を行うということは、これはもう許されないことでございまして、極めて重大な問題であると考えております。文部科学省といたしましては、これまでも国政選挙のたびごとに、教職員の選挙運動の禁止等について各教育委員会に対して通知を出すなどいたしまして、教職員の服務の確保を図ってきたところでございます。

 神奈川県の例につきましては、逮捕されたのが団体職員で、公務員ではありませんで、処分の対象になり得ないものでありましたけれども、元教員でもあり、社会的な影響等にもかんがみまして、九月八日付で各教育委員会に対しまして教職員の服務の確保について改めて通知を出しまして、指導を行ったところでございます。

 山梨県の事案につきましては、まずは早急な事実確認が必要であると考えておりますが、いずれにいたしましても、教職員の服務規律の一層の確保を図るよう、今後とも、さまざまな機会をとらえて各教育委員会に対して指導いたしますとともに、違法な行為があったら厳正な対処をするというふうに指導してまいりたいと考えております。

中野(清)委員 大臣、私ちょっと調べてみましたら、公職選挙法違反とか、それからいわゆる教育公務員特例法ですか、これに違反したというので処分されているのが、年に一人か二人なんですよ、毎年。少なくとも公立学校で八十万人以上の先生がいるわけですよ。その中で一人か二人しか出ていないということは、私は、教育委員会とか文部科学省の姿勢が真正面から取り組んでいないと思うんですが、いかがですか。

中山国務大臣 まさにこれは適正に対処していくべき問題である、このように考えます。

中野(清)委員 この問題については、今の御答弁では不満ですけれども、しっかりやっていただきたいということだけお願いをしたいと思います。

 次に、我が国は、戦後の過度の受験競争とか暗記ばかりの知識詰め込み教育との批判を受けまして、昭和六十年以降に臨教審の累次の答申を踏まえまして、ゆとり教育の中でみずから学び考える力など、いわゆる生きる力をはぐくむ教育が実践されまして、完全学校週五日制の実施とか授業時間数の二割削減とか教育内容の三割削減など、いわゆる子供たちにゆとり教育が行われてきたわけでありますね。ところが、一方、分数ができない大学生に代表されるような学力の低下が国を滅ぼすという教育危機論が叫ばれておるのも事実だと思うんですよ。そういう中で、今日、ゆとり教育の崩壊という声さえ聞こえております。

 これに対して、文科省の対応は、ゆとり教育が子供に与えた影響について何の検証もなく、学力向上や競争力意識の涵養とか土曜日の補習の黙認等は、文科省が今まで進めてきたゆとり教育、つまり、新学習指導要領の方向とは違った印象を受ける、悪く言えば朝令暮改と言われてもやむを得ない側面があるような気がします。

 しかしながら、十一月四日に、大臣が経済諮問会議において、「甦れ、日本!」として、危機的な日本の教育の現状を憂えて、諸改革の基盤となる人材の育成のための教育改革の重要性とその方針について明示されました。私も読ませていただきました。私はこの大臣の提言については大方賛成でありますけれども、この方針の中に、ゆとり教育に対してはどうも見直しのような要素が含まれているように思えてならないんですけれども、そういう点についてお伺いしたいと思います。

 基本的な国の教育の方向性というのは、国民に対して具体的かつ明確な形で示すべきでありまして、もしこれが政策変更となるのなら明示すべきだと思うんですよ。私は、ゆとり教育が目指すもの、ねらいが達成したかどうかの検証が必要だろうと思っておりますし、今こそ文部省がその方向性を明確にして、現場の創意工夫を生かしながら、改善のために適切な措置をする必要があるというふうに考えております。そういう立場から三点お伺いします。

 まず、平成十四年、十五年から実施されたいわゆる新学習指導要領のゆとり教育で、かえって学力が低下してしまったという指摘が各方面から出ていますけれども、実際に学力は低下したんでしょうか、それとも向上したんでしょうか。これは大臣として御認識をはっきりしていただきたいと思うんです。

 それから、二番目としましては、この新指導要領の考え方、このゆとり教育の考え方が正しいともしした場合に、例えば、小学校で三割とか中学で五割とか高校では七割、いわゆる七五三の問題と言われる学力の理解の問題。それから、それがいわゆる学習到達度とか学習意欲の低下につながっている、その問題。それから、児童生徒の問題行動というのは、いわゆるいじめとか不登校とか高校中退とか校内暴力とか学級崩壊など、これがこの教育によって解消されたのか。私は解消されていないと思いますけれども、これについて文科省としてどう考えているか、お伺いをしたい。

 それから、この検討の進路としまして、例えば文科省から「義務教育改革の内容とスケジュール」というのが出ておりますね。その中では、義務教育の到達目標の明確化、明確化ですよ、と制度の弾力化、こんな問題が、十六年に中教審で検討をして、十七年には答申を受けて、十八年に制度改正して、そして、特にその中で十八年の末までに学習指導要領の見直しを検討すると言っていますけれども、今私が言ったようないろいろな問題を考えた中で、これで間に合うのかどうか、はっきりお伺いをしたいと思うんですよ。それに対してはどうしようとするのか、この点について、まず、基本的な問題でありますから、お伺いしたいと思います。

中山国務大臣 幾つか御質問でございましたけれども、まず、我が国の子供たちの学力はどうか、新学習要領によりまして上がったのか下がったのかという御質問でございますが、これにつきましては、まだそれこそいわゆるゆとり教育というのが始まって間もないわけでございまして、その結果がどうなったかということを検証するにはまだ早いかと思うわけでございますけれども、今、国際的な学力調査の結果を見ますと、まだ日本の学力というのは上位に位置している。しかし、その一方で、勉強が好きだと思う子が少ない、あるいは何のために勉強するんだということなど、学習意欲は必ずしも高くないということが指摘されるわけでございますし、さらに、学校の授業以外の勉強時間が少ないということで、学習習慣が十分に身についていないというふうなことが指摘されるわけでございます。

 そこで、この新学習指導要領による教育が果たしてどのような影響を及ぼしているんだろうかということにつきましては、まだ今の段階ではっきり判断するということはいささか早いかなと思うわけでございますし、今中野委員が言われましたように、いわゆる朝令暮改になってもいけない。しかし、子供たちが受けた授業というのはその子供たちに一生ついて回るわけでございますから、それがもし間違いであったとすれば、それこそ過ちは改むるにはばかることなかれというふうな言葉もあるわけでございます。ほかのことと違いまして、この教育の問題というのは非常に大事な問題だ、こう思いますので、その辺のところは慎重に見きわめながら考えていかなければいかぬな、このように考えているということを御理解いただきたいと思います。

塩谷副大臣 お答え申し上げます。

 ただいま中野委員から、新学習指導要領の考え方が正しいならば、それを前提にした現状としてはさまざまな課題が多くあるのではないかという御質問でございますが、確かに、この新学習指導要領がすべて今の教育問題を解決しているとは思っておりません。

 その実行上の中で、まず学校の授業の理解度についてでございますが、これにつきましては、平成十年と平成十五年の調査を比較しますと、中学校では、授業がわかると答えた生徒が四四・二%から五一・八%に増加をしております。しかしながら、小学生、高校生には大きな変化はなかったという結果が出ております。また、学習意欲につきましては、国際学力調査の結果からは、数学や理科が好きとか、あるいは学校外の勉強時間などが国際的に見て低いレベルという結果にありますので、これは多少やはり問題があると思っております。

 また、いじめ、不登校あるいは高等学校の中退、学校暴力等の状況につきましては、これも過去五年間の状況の比較をしますと、いじめや不登校、高等学校の中途退学についてはいずれも減少をしております。しかしながら、一方、暴力行為については増加している状況があります。これは、五年前が二万九千六百七十一件だったのが、五年後、昨年は三万一千二百七十八件と増加しているところで、これも問題としてこれから取り上げていかなければならないと思っております。

 このような学校における諸問題につきましては、単に教育課程、いわゆる学習指導要領だけで改善がされるものとは思っておりませんし、その他教員の指導力あるいは学校の組織運営体制、家庭や地域の教育の状況、そういったさまざまな要因が影響していると思っておりますので、我々文部科学省としては、こうした問題を総合的に取り組み、義務教育の改革案を立案して学習指導要領の不断の見直しを進めるとともに、教職員の資質向上、学校や教育委員会の改革等に全力を挙げて取り組んでいるところでございます。

 また、これからのいわゆる学習指導要領の見直し、検討につきまして、今鋭意進めているところでございますが、平成十四年度から順次実施している現在の新しい学習指導要領につきましては、一部に、ゆとりを過度に強調するということで現場に大分混乱を与えたような状況があって、それがまた学力に対する軽視であるということも受けとめられておりますが、そういうことを改善すべく、特に、この新しい学習指導要領については、知能、技能のみならず、学ぶ意欲や考える力等を含む確かな学力をはぐくむことを基本的なねらいとしております。

 そして、昨年五月からは、中教審において新学習指導要領の実施状況の不断の検証を進めているところでありまして、昨年十二月にはその一部改正を行って、児童生徒の学習状況等に応じて発展的な学習や補充的な学習ができることを明確化したところであります。

 また、中央教育審議会においては、ことし春から、国語や理科、英語などの各教科別の教育課程の実施状況について専門的な検討を行っているところでございます。小学校及び中学校の目的、目標のあり方、義務教育の制度の弾力化のあり方など、学校教育法の見直しに関する検討を踏まえる必要があることから、こうした点を踏まえて、平成十八年度末を審議スケジュールのめどとして考えて進めているところでございます。

 いずれにしましても、文部科学省としましては、確かな学力向上のために、少人数指導、習熟度別学習の推進、あるいは学力向上アクションプログラムを推進しているところでございまして、引き続き、新学習指導要領のねらいの実現を目指して、確かな学力の向上のために取り組んでまいる所存でございます。

 以上でございます。

中野(清)委員 時間がございませんので、今の大臣の御答弁についても、私は、大臣なんですから、やはり現状をきちっとはっきりした方がいいと思うんです。

 今、塩谷副大臣が丁寧に答えていただきましたけれども、そのようなことをここで言ったらば、教育の専門家しかわからないんですよ、もっと国民にわかりやすく今の制度をどうするかということを言わなければ、私は、そういう意味で今の文部科学省の姿勢というのはだめだと思いますよ。しかも、さっきの義務教育の問題もそうだったんですけれども、すべて中教審にお任せして意見が決まったらこっちでやるというんじゃなくて、むしろ文科省としてちゃんとやってもらいたいということだけは申し上げたいと思います。

 時間がありませんから、実は申し上げることがいっぱいありましたけれども、その中で、例えば、大臣、あらゆる事業とか改革とか企業とか、いろいろなところでプラン・ドゥー・シーというのが当たり前なんですよ、はっきり言って。特にシー、検証ということですよ。

 ところが、今まで、学校を序列化するとか、学校の学力の都道府県ランクづけにつながるという批判があって余りやっていない。しかも、各都道府県なんかに聞いてみれば八割もやっている。だから、大臣がいつもおっしゃっているように、学力テストを全国的に実施すべきだと私は思いますけれども、どのようなテストをいつごろやるか、大臣としてお答え願いたい。

 それから、もう一点ついでに申し上げておきます。

 学力テストとは別に、例えば、小学校で身につけるべき九九や分数計算ができているかどうか。これは、小学校や中学、高校の各学校の段階での卒業試験のような学習到達度評価というのがきちんとなければ、さっき言ったシーなんてありっこないんですよ。それから、大臣がさっきおっしゃったとおり、結論も出っこない。少なくとも、OECDは今度、あれはPISAというんですか、それが今月七日に発表されるわけですよ。

 そうしますと、そういう意味で、要するに、その中で申したかったのは、文科省が、これも何か聞いてみると、ちょっとうわさですけれども、これをやるとすぐ混乱しちゃうからというので消極的だというので、少なくとも、先ほど来言ったいろいろな教育の問題、児童の問題とか学力低下の問題について真正面からぶつからなければ、これは解決なんかできっこないんですよ。いろいろな美辞麗句を言って、いろいろなことをやっている。専門家に言われれば、我々は教育なんかわからなくなっちゃう。

 だけれども、本当は国民一人一人が、はっきりと方針を明示してもらって、それについてやはりまた大臣の文科行政を支持していく、これが当たり前と思うんですけれども、いかがでしょうか。この二点についてお伺いをしたいと思います。

中山国務大臣 文部大臣として中央教育審議会だけに任せるな、こういうふうな話でございました。まさにそのとおり考えまして、私は、大臣に就任して間もなかったんですけれども、大臣就任前からいろいろ考えておりました日本の中における教育のあり方、これはどうすればいいんだろうか、このままでは本当に日本は弱いいわゆる東洋の老小国に、余りいい言葉かどうかわかりませんが、なってしまうという危機感のもとに、十一月四日の日には、私の考えを「甦れ、日本!」ということにまとめまして、経済財政諮問会議に提案したところでございます。

 その中におきましては、やはり頑張る子供をもっと応援する教育をやるべきじゃないかということを強く訴えたわけでございまして、そういう意味では恐る恐る言い出したんですけれども、もっと競争意識をお互いに持つような、それではちょっと強いかと思いましたので、お互いに切磋琢磨するという精神とかいろいろなことを申し上げたんですが、要するに、もっと子供たちが、よし、やるぞ、頑張るぞと意欲を持って人生を歩み出せるような、そういう教育をすることが必要ではないかということを実は提案したわけでございます。

 全国学力テストにつきましても、いろいろ御批判はあったことも承知しておりますけれども、やはりそういったテストによりまして、学習への動機づけ、あるいは教育の成果が一体どうなっているかということを適切に評価して、それを改善に生かしていくということをねらいといたしまして、こういう全国学力テスト等も行っていくべきじゃないか、このようなことも実は提案しておるわけでございます。このことも私の一存ではできませんので、中央教育審議会を初めいろいろな方々の御意見も聞きながらこれからやっていきたい、こう思っておるわけでございます。

 なお、いわゆる到達目標ということにつきましても、これも、学習到達度につきましては、今後、中央教育審議会におきまして義務教育の到達目標の明確化などについても検討を進めていくということになっておりまして、そういった中で、確かな学力、これは、そういう意味では新学習要領の目的とするところがちょっと誤解されたというところもあるんですけれども、真に、本当に、これからの人生、世の中を生きていくためのしっかりした学力を、体力も含めてでございますけれども、子供たちが身につけるという意味で、そういった到達目標みたいなものも必要ではないかな、私はこのように考えておるところでございます。

中野(清)委員 もう時間も少なくなりましたから、実は、私は、今の大臣の御答弁をいただきながら、本当に時間がないんですよ、子供たちは毎年かわっちゃうわけですよ。そうすると、ゆっくりやっていたんじゃ困るわけですね、今の子供たちが。そういう点で、例えば、完全学校週五日制の問題とか、それから、いわゆる総合的な学習時間の問題、これなんかははっきり言って、とかく教師の力量不足で遊びの時間になっちゃったとか、また、いわゆる偏向教育の温床だというような議論さえあるんです。だから、どうか、それは批判は批判で結構ですけれども、一生懸命やってもらいたいと思うんです。

 私は、そういう意味で、最後に、これはもう質問じゃなくて、大臣に一言申し上げたいんです。それは教科書に関連しての問題なんですけれども、過日、大臣はタウンミーティングで、歴史教科書の記述について、どこの国の歴史にも光と影がある、悪かったことは反省しなきゃいけないけれども、すべて悪かったという自虐史観に立って教育はしてはいけない、自分たちの民族や歴史に誇りを持って生きようとするような教育をすることが大事であるという趣旨の御発言をなさいましたね。私は、大方これについては同感でありますよ。

 大臣は、よその国の話じゃなくて、我が国の教科書の内容についてコメントしたんでしょう。それにもかかわらず、韓国のメディアはいわゆる妄言を吐いたとかという報道を行って、いわゆる問題視が今されようとしておりますね。私は、どうもワンフレーズだけとらえて、いわゆる一部分だけとらえて、あなたの発言の本意が取り違えられているんじゃないかと思うわけなんです。

 私も、いろいろ中国や韓国の中学校の歴史教科書なんかを勉強させてもらいますと、反日感情を助長するような記述が多くあるんですよ、実際には。ところが、我が国政府は、お互いの国が内政干渉をしない、つまり、隣国との友好関係というのを配慮して、これまで中国や韓国とかアジアの諸国に対して教科書の日本についての記述の誤りについて抗議すらしていないというのが現状じゃないですか。私は、それはそれで今までの姿勢としてはあるけれども、相互理解というのをしてもらった方がいい。きちっと、決して何も抗議するとかけんかするというんじゃなくて、やはり日本の実情というのをわかってもらうべきだ。それは私はそう思っているんです。

 だから、大臣が言った意味もそうだと思いますが、そうすると、今回の大臣の発言に対して、抗議だか問題視だかわかりませんけれども、これは、ある意味では内政干渉が甚だしいんじゃないかと私は言いたかったわけです。

 どうか、私たちも応援いたしますので、中山大臣、自信を持って、それで、あなたの信念に従って日本の文部科学行政というのを進めていただきたい。それはきっと弾力的にも、また積極的にもやっていただけると思いまして、そのことをお願いして、このことは答弁は結構でございますから、ぜひ頑張っていただきたい、そのことだけを申し上げて、私の質問を終わります。

斉藤委員長 葉梨康弘君。

葉梨委員 おはようございます。自由民主党の葉梨康弘です。中野委員に引き続き質問をさせていただきます。

 今、中野委員の方からも、義務教育についての問題については詳細御議論があったところですけれども、私自身も、地方の裁量の拡大によるローカルオプティマムの実現、しかしながら、国においてしっかりとナショナルミニマムを確保していかなければいけない、そういう観点から改革を進めていかなければいけないというふうに考えております。

 今資料をお配りしているものがございます。先にその一枚目の方を見ていただきたいんです。本日、この観点についての議論は少し見方を変えまして、各都道府県においても、それぞれ都道府県の県庁、本部、それから教育委員会、それから公安委員会ということで、教育と公安、治安というのがパラレルの関係にございます。そして、教育制度、この左側の部分につきましては、まさに文部科学大臣初め皆さんには、文部科学省の方々には釈迦に説法ということになろうかと思うんですが、この右側の治安制度の面については、まだ多少私の方が一日の長があるのかなと。

 といいますのは、私は十七年間、警察庁というところに勤めておりました。そして、昭和五十八年には、戦後第三のピークと言われた少年非行に対処するための風俗営業法の改正、それから昭和六十三年には、昭和から平成にかかる時期、学童の安全確保などに当たる交番、これを持っております外勤課の課長補佐として、そして、平成九年には神戸の連続児童殺傷事件等ございましたけれども、その当時は少年事件の捜査あるいは少年の保護に当たる警察庁の少年課の理事官として、計約六年強にわたって少年問題に携わってきたという経緯がございます。

 ちょっと資料を、特に右側を説明させていただきたいと思うんです。

 戦前期、もう簡単に申し上げますけれども、経費の負担面等から見ていきますと、経費の負担については、戦前も義務教育の国庫負担という制度があったということはまさに釈迦に説法だと思いますが、警察においては都道府県の負担とされていました。ただし、戦前においては、教育についても治安についても、教員それから警察官の任命権は国、国の機関たる都道府県知事、これが持っておりまして、言ってみたら国家の関与が極めて強かったということが言えるかと思います。

 そして、占領期の改革というのは何が起こったかということなんですけれども、私が個人的に考えますに、まだ地方にそんなに力がないにもかかわらず、地方に移し過ぎてしまって大混乱を来してしまったというのがこの占領期の改革であったかと思います。教育基本法、教育委員会法はまあいいとしまして、シャウプ勧告、これによって教員の給与は都道府県が負担するという形になりましたけれども、実際のところは大きな教育の格差が出てしまったということは御案内のとおりだと思います。

 警察についても実は同じことが行われて、変なことが行われたんです。人口五千人以上の市町村については自治体がそれぞれ警察を持って、国は全く関与することができない、そして、その給与についても、五千人以上の市町村は大体全部自治体が持つということになりました。当初、二十二年に発足当時、これは二対一と書いてありますけれども、大体九万五千人ぐらいの警察官を自治体が抱えて、そして、五千人以下の自治体というのも幾つかございます、そこについては国の警察官が治安を守るということで、約三万人ぐらいだったというふうに聞いています。

 ところが、これは大変なことになってしまって、つまり、隣の町に行ったらお巡りさんが追っかけてくれないものですから、治安は大変悪くなりました。さらには市町村の方も、こんなんじゃ給与が負担できないということで、教育の問題と同様に大変なブーイングが全国各地から起こってきた、これが占領期の改革でございます。

 そして、昭和二十六年にサンフランシスコ講和条約において独立が回復され、当然、やはり調整、直していかなければいけないということで、教育については義務教育の国庫負担制度、これが再び復活して現在に至っている。ただ、警察については、なかなか給与を国が負担するというのは、やはり昔の特高警察のイメージなんかもあったんでしょう、そういうことじゃなくて、一般財源として都道府県に残されました。しかしながら、一般財源として残していきますと、当然のことながら、財源の保障の問題がどうなんだ、それからナショナルミニマムの確保の問題はどうなんだということが起こってきます。

 そこで、ここの紫に書いてあることなんですが、都道府県ごとの警察官の最低数を地方財政計画ではなくて政令に規定して、そしてこれを確実に地方交付税交付金の算定に反映する。あるいは、施設費、活動費などの半額補助、これは国が国庫負担します。さらに、国の公安にかかわる経費の全額国庫支弁、こういった制度が行われる。さらに、国家公安委員会に、先ほど服務の問題もありましたけれども、一般的な服務も含めて、全警察職員の活動の基準となる国家公安委員会規則の制定権を付与する、そういったような改革が行われました。

 もちろん、教育と治安というのは大きく違うと思います。また、当時とは事情も相当異なるかと思いますが、今後いろいろな形で議論するに当たっては、ナショナルミニマムを確保するという観点から、まず、義務教育に係る人的体制のミニマム水準、これをしっかり打ち出して確実に財源保障措置に反映させたり、あるいは施設整備のあり方、これを明らかにして財源保障に反映させたり、さらに教育活動のあり方についても国としての考え方を明らかにして、そして実績についてもしっかり評価する、こういったいろいろな多面的な検討が必要だと思われますけれども、文部科学省から御見解をいただきたいと思います。

中山国務大臣 お答えいたします。

 葉梨大臣、お父様、よく存じ上げておりますが、大変お世話になりました。立派な政治家だったなと御尊敬申し上げておりますし、また先生御自身、今お話がありましたけれども、長年警察関係で経験を積んでこられ、またすばらしい実績を上げてこられましたので、ぜひこれからは国会議員として、特に非常に大事な治安ということ等について我々に対して御教授いただければありがたいな、こう考えているところでございます。

 そこで、今警察制度と教育関係につきまして比較しながら御質問あったわけでございます。実はこの議論は、いわゆる義務教育費国庫負担をめぐる三位一体の議論の中でも、四大臣会議のときにもこういう議論が出されまして、私もいろいろお答えしたんですけれども、要するに、警察制度はうまくいっているじゃないか、あるいは、全部あれは地方が金を持つ一般財源化されている、なぜ義務教育についてはそういうことができないんだ、こういうふうなお話があったわけでございます。

 それに対する反論として私が申し上げたのは、警察というのは極めて権力的な行政である、それに対して、教育というのはその逆の極めて非権力的な行政なんですよということ。ですから、政令で基準を決めて、はい、おたくの県は警察官何人以上ですよと決めればそのとおり守るということでございまして、そのかわり金は出さない。このことは、ある意味では極めて中央集権的な考えなわけでございますが、そもそも、この三位一体改革というのは地方分権ということから始まったわけでございまして、義務教育につきまして基準を示して金を一般財源化して地方が持つようにすればいいじゃないか、警察もうまくやっているよという話に対しては、いや、そうじゃないんじゃないでしょうかというふうなことを実は申し上げたわけでございます。

 文部科学省が今やっていますように、総額裁量制ということである程度の固まりを教員の給料としてぽんと地方に渡す、後は定員の問題とか学級編制等はどうぞそれぞれ創意工夫を重ねてやってください、そういうふうにやっているわけでございまして、地方分権がもし基準だけ決めて金は自分で調達しろということになりますと、これは極めて非地方分権的なことになるのではないかというふうな反論も実はいたしたわけでございます。

 そういう意味では、日本の警察制度、本当にしっかりやっていらっしゃる、見習うべきところもありますけれども、この教育の問題、特に義務教育の問題というのはそれと違う観点から考えるべきところが多いんじゃないかな、このように考えてあのような結論になった、このように理解しているところでございます。

葉梨委員 ありがとうございます。

 ただ、今私自身も警察の制度のとおりやれということを申し上げたのではなくて、多面的にいろいろ検討していく必要がある、そして、その上でやはり財源保障というのはしっかりやっていかなきゃいけないし、それから、ああせいこうせいということではしの上げ下げを論じるのではなくて、一体ナショナルミニマムが何かということをしっかり考えていくことが必要だということを申し上げたつもりでございます。

 それで、実は平成十年に、ナイフをもって当時栃木県の黒磯で中学生が女子教諭を殺傷するという事件が起こってしまったんですが、その後全国的にずっといろいろな事件が頻発しました。当時、官邸の肝いりで次代を担う青少年について考える有識者会議というのが開かれました。そこで、私も事務方としてそれを聞いていたんですが、当時の生涯学習審議会のたしか会長だったと思われます、奥島当時の早大総長が、レーガン・レポート、「危機に立つ国家」ですか、これについてこんなことを言われていて、あれっと思ったことがあるんです。

 「アメリカでは一九八八年にレーガン大統領が退任される直前に、いわゆるレーガンレポート「危機に立つ国家」というものが出たわけです。レーガンレポートの内容を簡単に申し上げますと、アメリカの教育は崩壊寸前である、その最大の理由は、アメリカの社会が余りにも長い間、先生という職業の社会的地位と俸給を低くしてきたからだというものです。」「それに対するアメリカ社会が出した回答の一つは、教育を含む公益活動の市場化という考え方、つまり公立学校の運営でさえも民間に任せるという新しい措置をとり始めているわけです。」

 私自身は、レーガン・レポートは公務員給与が低いということで給与を上げたのかなと思っていたら、そうじゃなくて、競争原理の導入とかあるいは評価の導入という形で一応アメリカは対応した。それであれっと思ったわけですが、権力的にいろいろと規制するということじゃなくて、やはりそういった評価の問題、あるいは大臣も発言されていますけれども教育基本法の改正とか、そういったソフトの面でどういう形でナショナルミニマムを確保していくのか、それから、いかに財源保障を確保していくのか。

 ちょっと時間、大分なくなりますので、ここは最初に大臣に答えていただきましたので答弁求めませんけれども、多面的にやはりぜひ中教審で検討していただくことが私は必要だと思っております。ですから、この問題というのは大きな意味では教育改革の問題、これにもかかわってくるわけです。

 そこで、多少問題は異なるんですけれども、教育改革ということについては、例えば、先ほども中野委員からもお話ありましたけれども、教科書であるとか教育内容の問題も大きな問題です。それについて言うと、私自身は、政治家個人としては大いに思うところを述べるべきだと考えています。その意味で、先般のタウンミーティングにおける発言も私十分理解できます。

 ただ、その一方で、役所の行う検定は、先ほど申し上げましたナショナルミニマムの確保という観点からも公平であり、また公正であるべきものと思われます。ですから、ポリティカルオプティマムとアドミニストレーティブミニマムという言葉があるのかどうか、私わかりませんけれども、ですから、大臣の発言は、個人としては、政治家としてどんどん発言していかなければいろいろなことを検討もできません。ただし、それは文部科学省が実際行う検定、それとは、実際に行っているものとは異なる次元の発言であったというふうに私自身は理解しておりますけれども、大臣から御所見をいただきたいと思います。

中山国務大臣 先ほどの、中央教育審議会におきましては、まさにおっしゃるとおり幅広い分野からいろいろな意見を出していただいて協議をしていただきたいということを考えていることをまず申し上げたいと思います。

 それから、大分県におきますタウンミーティングでの私の発言に対しての御質問でございますけれども、あのとき大分県におきまして、あちこち、自分は転勤族だったけれども、特に大分における平和教育というのが日本の悲惨な面ばかり、いわゆる自虐的な教育に偏り過ぎているんじゃないか、こういう御質問でございましたので、さて、文部大臣としての立場からどう答えるべきかと思って非常に悩んだんですけれども、その前のあいさつの中できょうは忌憚のない意見を聞かせてくれという話を私もしたものですから、本当に迷いましたけれども、瞬間的に個人の立場と文部大臣としての立場はやはりしっかり切り分けるべきだ、こう思いましたので、いわゆる大臣になる前まで日本の前途と歴史教育を考える会のメンバーだったという立場からはあのような発言をしたわけでございます。

 一方、大臣になりましたから、これからはやはり中立的で、何が中立かわかりませんが、いわゆる今までの政府の立場というものがありますので、そういう意味で、先ほど中野委員もおっしゃいましたけれども、どこの国の歴史にも光と影がある、悪かった点は十分反省しなきゃいけない、しかし悪かったことばかりを子供に教えることはどうだろうか、こういうふうな発言に実はなったわけでございまして、まさに文部大臣になりまして教科書検定の責任者になったわけでございますから、そういう意味で個人的な意見というのは差し控えるべきじゃないかなということもあのときも考えたわけでございますし、これからもそこのところは十分注意しながら発言していかなければいかぬな、このようには考えているところでございます。

葉梨委員 ありがとうございました。

 では次に、生きる力と児童生徒の安全確保ということについて申し上げたいと思います。

 平成九年に神戸で連続児童殺傷事件が起こりました。そこで、その五月でしたけれども、みんな御父兄の方々も教員の方々も困っちゃって、当時の文部省で会議が開かれて、大臣は小杉大臣だったと思いますが、私招かれて行ったのです。何をしゃべったらいいかな、まだ捕まる前でしたから。そうなったときに、その前年、平成八年に岐阜県の可児市で子ども一一〇番の家という制度が始まっていまして、では、それを紹介しようかということで、その会議で紹介をいたしました。そうしたところが、その事実が当時の産経新聞の一面で取り上げられまして、全国的に子ども一一〇番の家が広がるというようなことになった経緯がございます。ですから、皆さんの御地元にもあろうかと思いますけれども。

 ただ、今そういった目で、ずっと私もPTAなんかもやりながら子ども一一〇番の家という実態をいろいろと見ていますけれども、なかなかこれはマニュアルどおりになってしまっているところがあるのです。子ども一一〇番の家、すごくいいんだけれども、だれかに追っかけられて子ども一一〇番の家を捜している間に捕まっちゃうとか、あるいは、よく私も支持者のうちを訪問して、子ども一一〇番の家というのがついているんですけれども不在の家が多くて、そこには猛犬がいて、とても入れるような状況じゃないとかというようなこともございます。この辺は、こうなっちゃうと笑えないわけです。

 またさらには、今、非常に危険というのは高まっています。先般の奈良の小学校一年生の殺害事件、これにも見られるように、詳しく申し上げますと時間がなくなってしまいますけれども、小児性愛、いわゆるペドファイルの問題というのは実は全世界的に大変な問題になっています。

 ですから、やはり問題をしっかりと認識した上で、その怖さを認識した上で、やはり余り萎縮するんじゃなくて、子供にもあるいは委嘱する大人の側にも、臨機応変で生きる力を持っていくということが児童の安全確保のためには大切なことじゃないかと思います。

 そこで、現場の実態を見てみますと、例えば子供に対して、だれかに追っかけられそうになったらまず大声を上げなさいとか、あるいは、その子ども一一〇番の家というものの委嘱の仕方についても、広く委嘱するんですけれども、基本的にはやはり昼間営業している店舗とかそういったものを優先的にやるとか、そういった配意というのがなかなか行われていなかったりします。あるいは、実際のところ、小児性愛者、ペドファイルの実態についても、どの程度それが怖いのか、あるいは怖くないのか、どうもそれも教えてくれるところもない。

 ですから、この手の安全にかかわる問題というのは、警察に聞いてもかたいこと言うばかりなので、特に全国的ないろいろな事例を持っています文部科学省の方々、これは全国的な事例を背景に、時間がなかなかないと思いますけれども、いろいろと全国行脚して、ひざを突き合わせていきますと、これはやはり文部科学省も本当に真剣なんだなということで、実際の教職員の方、父兄の方とも信頼関係がますます高まってくるんじゃないかというような感じを持っておりますけれども、文部科学省から御所見を伺いたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、児童生徒の安全の確保のためには、学校が家庭、地域の関係団体と連携しながら安全対策を講じるということがまず重要であると考えております。

 例えば、文部科学省においては、平成十四年に、学校の安全対策について参考になるような危機管理マニュアルを策定いたしまして、全国の教育委員会、学校に配付したところでございまして、この中では、例えば大声を出すとか逃げるといった万一の対応の仕方につきまして、日ごろから子供に指導するというようなことについて具体的に示しているところでございます。

 また、平成十六年、本年の一月には、具体的な学校の安全対策を推進するために学校安全緊急アピールを公表したところでございますが、この中では、今先生からお話のございました子ども一一〇番の家の取り組みへの一層の協力など、「地域社会に協力願いたいこと」ということが盛り込まれておるところでございまして、文部科学省といたしましては、日本PTA全国協議会の会議の場においてこのアピールの趣旨を説明して、御理解と御協力をお願いしているところでございます。

 また、学校安全の担当の教職員等を対象とした研修会におきまして研究協議の場を設けましたり、学校関係者や保護者を対象としましたフォーラムを開催して、学校現場の方や保護者の方との意見交換を行っているところでございます。

 今後とも、学校現場の方とかPTAの方とも意見交換を行いながら、安全対策に関する施策につきまして積極的に、継続的に取り組んでいきたいと存じております。

葉梨委員 ありがとうございます。

 マニュアルというのは出しただけだとずっとひとり歩きしてしまいますから、ぜひとも、そのフォローアップ、危機管理の場合はフォローアップが絶対大事です。ですから、そういった意味で、ひざを突き合わせて、いろいろな形で臨機応変、最後はそれぞれ個々人の生きる力にかかってきますので、そんな取り組みをお願いしたいと思います。

 次に、生きるための知恵と若年者雇用対策について伺います。

 総理も大変熱心になって、フリーターの問題あるいはニートの問題、若年者の雇用問題、これは大きな社会問題になっています。ただ、この問題に対処するためには、雇用機会の提供とか適切な職業訓練とあわせて、やはり若者自身の雇用意欲の問題にもどう対処していくかという問題が必要だと私は考えています。

 例えば、これは大変厳しいようなんですけれども、この資料を見ていただいたらと思うんですが、こちらの「若年者のキャリア支援に関する実態調査」、UFJ総合研究所の資料です。この二枚目の下以下なんですが、

 中途採用を行う際のフリーター経験の影響については、「評価に影響ない」とする企業が六一・九%にのぼった。

例えば、これは大企業も含めての話です。

 一方、全労働者数が

こちらの方が多分機会は多いと思いますが、

 百人未満・売上高百億円未満の企業では、「評価に影響あり」が過半数を占めた(ここでの影響とはマイナス評価を意図している)。

 評価に影響ありと回答した企業に、通算フリーター期間や年齢、正社員経験が採用時の評価に与える影響を尋ねたところ、下表のような結果が得られ、通算フリーター期間一年、年齢二十五歳でマイナス評価になることがわかった。この傾向はいかなる企業属性においても共通していた。

すなわち、正規の職業の転職についてはほとんど問題視されないんですけれども、みずから正規の雇用を望まないフリーターについては、一年以上続けてしまうと格段に労働市場における価値が下がってくるということなんです。

 こういう現実を厳しいようだけれども伝えていくことというのは、ある意味で生きるための知恵を若者に教えていくことだし、教えないということ自体が、これは若者に対しては非常に失礼だし、かわいそうなことじゃないかというふうに私自身は思っています。

 ですから、学校教育の段階で勤労の義務ということをどういうように教えているのか、また就職指導等で、長くフリーターを続けると企業から歓迎されなくなるという事実をどのように指導し、またどのように指導していくおつもりか。時間がございませんので、本当に簡潔にお答え願いたいと思います。

銭谷政府参考人 学校教育におきましては、社会科あるいは道徳、特別活動の時間を通じまして、勤労のたっとさや意義を理解させたり、実際の職場を見学、体験するなどいたしまして、将来の進路や職業に係る啓発的な体験活動が行われているところでございます。現在、これらの教育をキャリア教育というふうに位置づけまして指導を行っているところでございます。

 特に、今先生のお話のございました実際の企業の人事部門担当者などを社会人講師として学校に招いて、企業の採用動向やどのような人材が求められているか、こういうことについての講話をしてもらうなど、安易にフリーターの道を選択することがないような指導に努めているところでございます。

 先生の御指摘も踏まえまして、キャリア教育の充実に努めてまいりたいと思っております。

葉梨委員 ありがとうございます。

 それでも、どうしても教える側も優しいものですから、ある程度、時には厳しい現実も伝えていかなければいけないということ、ぜひ御配慮願いたいなというふうに思います。

 そして、人づくり、これは勤労者の勤労意欲を高めてそのスキルを増していくことは本当に極めて大切な要素だと思います。その意味で、最近、大学も加わった産学官連携のプロジェクトが見られるようになってきたこと、これは非常に歓迎すべきことで、ぜひとも、文部科学省にあっても、経済産業省、厚生労働省、内閣府と連携した取り組みを行って、国としての人材への投資を活発化させる施策に取り組んでいただきたいと思いますが、大臣から御所見をいただきたいと思います。

中山国務大臣 まさに委員御指摘のように、フリーター等の解消につきましては、学校だけでなくて、職場、企業、いろいろな方々の御協力も得ながら、しかし、学校の中において、やはり将来は職業人としてちゃんと立派にやっていかなければいかぬのだよ、そういったことも含めて教育をやっていかなければいかぬ、このように考えております。

葉梨委員 それでは、最後の質問に移らせていただきます。幼保の一元化ということについてでございます。

 かつて、有馬元大臣が中教審の会長をされていたときに、心の教育の関係の小委員長を中教審の中で引き受けられた。私、ある座談会で御一緒させていただいたときに有馬会長の方から、あれは幼児期からのというのが入っているから私は引き受けたんだ、幼児期からの心の教育というのが本当に大事なんだということをおっしゃられていました。

 その意味で、幼児期の教育、保育については、現在、幼保一元化というのが進んでおります。それで、二歳児から幼稚園入園を可能とする平成十五年六月の特区、これは全国的にも大分広がってきているようですが、この問題、ちょっと時間がございませんので問いは飛ばさせていただきますけれども、まだまだ評価という段階にはならないですけれども、おおむねの方向として、時期の問題は別として、多分、幼保の一元化、これは進んでいく方向にあるんだろうと理解できます。

 ただ、幾つかやはり問題があります。つまり、幼稚園とか保育園の機能が似通ってくる。例えば今、老朽施設の改築補助の補助率については、幼稚園は国庫補助率が三分の一、それから保育園は二分の一になっています。財政的支援の差異が浮き彫りになってきます。総合的施設が検討されているといってもなかなか実際に難しくて、現場で起こっていることというのは、幼稚園経営者が補助率のよい保育園経営に乗り出すという幼保経営の一元化、幼保一元化じゃなくて幼保経営の一元化でございます。ですから、補助率については三位一体との関連もありますけれども、これからどのような調整、均衡を行っていくべきかということが一点。

 それからもう一点は、保育園についても、先ほどの心の教育の問題もありましたが、これは重要なことでございます。やはり心の教育ということについて一定の指導や水準の確保が必要と考えます。厚生労働省任せということじゃなくて、文部科学省としての取り組みがあれば、ぜひお伺いをしたいと思います。

銭谷政府参考人 ただいま先生お話ございましたように、幼稚園と保育所では財政支援にさまざまな違いがあるのは事実でございます。これは、幼児教育を行う学校としての幼稚園といわば児童福祉施設としての保育所という、それぞれの目的、機能などの違いを踏まえて講じられている措置でございます。今後、幼稚園と保育所のあり方の検討の中で、こういう問題についても、私ども、幼児教育の充実の観点から検討していく課題だと思っております。

 それから、保育所における保育の内容、心の教育の問題についてでございますが、現在、保育所の保育指針の改訂あるいは幼稚園の幼稚園教育要領の改訂の際に、幼稚園、保育所関係者が両方、それぞれ参加をいたしまして、両施設における教育、保育の内容の整合性の確保に努めているところでございます。また、幼稚園教諭と保育士の合同研修を実施するなど、両者の質の向上ということに努めているところでございます。

 今後とも、厚生労働省とよく連携をしながら、幼稚園と保育所における教育、保育内容の充実に努めてまいりたいと思っております。

葉梨委員 ありがとうございました。

 本日は、私自身の経験に基づいて、本当にさわりの部分について幾つか質問をさせていただきました。もちろん、大分飛ばしたものもございますが、もうほぼ時間が近くなっておりますので。

 ただ、冒頭も御議論いたしましたように、今回の義務教育費国庫負担制度、これの見直しについて、私自身は、そのマイナス面ばかりを言うんじゃなくて、むしろ前向きにとらえて、そして教育の評価の問題あるいは競争原理の導入、そしてやはり必要な財源保障、これはしっかりとやっていかなきゃいけないということで、ぜひとも、義務教育改革の大きな機会ととらえて、中教審において徹底的に議論をしていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 河合正智君。

河合委員 公明党の河合正智でございます。

 私は、十一月二十六日に三位一体の改革につきまして政府・与党の合意ができましたけれども、その件につきまして質問させていただきたいと思います。

 と申しますのは、国民から見て非常にこの議論はわかりにくい。学校の先生の給与を国が払うのか地方が払うのか。それが現在の、例えば、二日続けて子供が親を殺し、そして小さい子供を誘拐して殺害するといった社会、これはやはり国も地方もかかわりのあることでございますけれども、家庭、社会、学校すべてが根本的に教育力を失っているのではないかという国民の非常に大きな不安とこの三位一体改革の議論がどうしても結びつかない。したがって、私は、国民の皆さんから見てわかりやすくこれを御説明いただきたい、論点整理をさせていただきたい、こういう質問でございます。

 三位一体改革につきまして、「国庫補助負担金の改革について」というところ、文教につきましては、「義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する。その方針の下、費用負担についての地方案を活かす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討する。 こうした問題については、平成十七年秋までに中央教育審議会において結論を得る。」「2中央教育審議会の結論が出るまでの平成十七年度予算については、暫定措置を講ずる。」ということになっております。

 そこで、本日は、文部省、総務省、財務省に、それぞれの考え方の根拠をまずお示しいただきたいと思います。

 まず、文部省に対しまして、法律論として、義務教育費の国庫負担制度を堅持する必要がある、その法的根拠、また、この制度が廃止、もし廃止されましたら、憲法二十六条に反することになるのかどうか、これをお示しいただきたいと存じます。

銭谷政府参考人 義務教育費国庫負担制度を直接定めた法律は義務教育費国庫負担法でございますけれども、この義務教育費国庫負担法は、憲法第二十六条や教育基本法第四条に定める義務教育無償の原則にのっとって、国民のすべてに対してその妥当な規模と内容を保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上を図ることを目的としているものでございます。すなわち、義務教育費国庫負担制度は、憲法二十六条の教育を受ける権利と義務教育の無償化を具体的に実現させる制度としての役割を果たしているものでございます。

 なお、このことは、憲法二十六条の規定を具体化させるための立法措置が義務教育費国庫負担法に限定されるということではなくて、仮に同負担法が廃止されても、そのことで直ちに義務教育の機会均等と無償制が維持できず憲法二十六条違反になるとまでは言えないのではないかと思っております。

 ただ、同負担制度が廃止をされて、教育の機会均等や水準の確保に著しい支障が生じるという事態が生じた場合は、憲法の要請する国の責任を果たしている、こういうことが言えない状態になるのではないかというふうに考えております。

河合委員 同じ質問を総務省にお願いしたいと思いますが、総務省の立場としましては、地方六団体案の提案を是とする立場、また、義務教育費国庫負担金を一般財源化してもよい、あるいは積極的に一般財源化すべきだというお考えかと思いますけれども、その正当性の根拠、これを法的にどのように説明されるのか、お伺いします。

瀧野政府参考人 義務教育費国庫負担金の一般財源化についてのお尋ねでございますけれども、現在、教育環境の整備が一定の水準に達してきておるわけでございますけれども、その中で、地方分権の方向性を踏まえて、国、地方の役割分担というものの見直しが時代の要請であるというふうにまず考えているわけでございます。

 特に、その中で、義務教育につきましては、地方自治法上、自治事務というふうに位置づけられておるわけでございまして、したがいまして、国は制度の大枠を法律で担保してその所要財源を確実に保障するという役割、一方、地方団体には具体的な運用を任せるというのがこの事務の性格上よろしいのではないかということで、我々としては、地方の自由度を最大限拡大する方向でこの義務教育費負担金についても考えるべきではないかというふうに考えているわけでございます。

 なお、憲法上の論点が先ほど指摘されているわけでございますけれども、憲法上機会均等の要請があるということから、直ちに所要財源をどういう形態でとるかということが導かれるというものではないと考えているわけでございまして、国費によるか地方費によるか、それはそれぞれの時代の流れを踏まえて選択し得るものではないかなというふうに考えております。

河合委員 憲法の要請である機会均等、教育水準の維持ということにつきまして、文科省と総務省の見解が明らかになったと思います。

 それでは次、教育論についての観点から見た場合にどういうことになるのか。

 まず、文部科学副大臣にお伺いさせていただきますけれども、教育基本法や学校教育法などが定める教育の目的を達成するという教育論の立場から見まして、義務教育費国庫負担制度が必要と考える理由についてお伺いします。

塩谷副大臣 お答え申し上げます。

 義務教育国庫負担制度のあり方については、今回、三位一体の中でさまざまな議論がされたわけでございますが、私どもとしては、特に財政論が先行する中で、どうも教育論が大変薄れた中での議論があったのではないかと非常に心配しているところでございまして、もちろん、さまざまな教育課題があるわけでございますから、より一層教育的な見地からしっかりと議論することが必要だと思っております。

 そういう点で、中山大臣も、経済財政諮問会議や四大臣との会合においては、義務教育の意義や基本的性格、国と地方の役割分担、さらに「甦れ、日本!」と題した義務教育の改革案を説明したところでございます。

 その中で、義務教育の改革の方向としては、一つは教育基本法の改正、そして学力向上、教員の質の向上、そして現場主義といった方針を示したところでございまして、この改革を推進するに当たっては、例えば学習指導要領や学級編制など国の基準は必要最小限のものとして、地方で創意工夫を生かした多様な取り組みが行われるようにすること、そしてこういった取り組みを全国どこでも財源に心配することなく存分に進めるようにすることが国の責任であって、その財源は国が保障するということが義務教育の国庫負担制度の必要性であると思っております。

 十一月二十六日の政府・与党の合意において、義務教育国庫負担制度のあり方については、来年秋までに中央教育審議会において結論を得ることとされたところでありまして、我々文部科学省としても、教育論の観点から幅広く今後とも検討してまいりたいと思っているところでございます。

河合委員 ありがとうございます。

 必ずしも通告に含まれていないかもしれませんけれども、再質問させていただきたいと思います。

 それは、教育水準を最低限維持する、国民から見ますと、教育水準を維持するためには教職者の給与を保障することが教育水準の最低限の維持であるという理屈がいま一つわからない。

 例えば、教育水準の維持だけでしたら、そういった水準を国が指し示す、しかし、財政的には地方で自由に賄っていく。といいますのは、教育水準の維持に対しましては、それは画一的であり、硬直的であるという批判がございますけれども、教育水準の維持のためには教員給与を国で負担しなければいけないということにどうして結びつくのか、その点について、どなたでも結構でございますが、文科省から御説明いただきたいと思います。

塩谷副大臣 義務教育を担っていくのはやはり教員が直接携わるわけでございまして、この教員の給与が全国で一般財源化された場合に、大変な不均等が予想されるわけでございます。

 したがって、過去においても昭和二十五年から二十八年までこの国庫負担制度が廃止された中で、財政豊かなところと貧しいところの給与の格差が生まれまして、その結果、教員の配置で相当に地方格差が生まれたということでございますから、やはり先生方がそれぞれの地域でしっかりと配置されるようなことを保障するためにも、給与が結果的に教育水準を一定にするということでございますので、この相関関係はなかなか簡単に理解できないところもありますが、そういう意味で国が教育水準を保障するための国庫負担制度だということで御理解いただきたいと思います。

河合委員 要するに、身分保障という見地からの御説明だったと思います。これは、戦後の教育改革の中で田中耕太郎博士も教職員の身分保障法を検討された経緯を伺ったことがございますので、副大臣の見解として拝聴させていただきました。

 それでは、同じ質問でございますけれども、総務省に対しまして、憲法上の要請である教育水準の維持という観点からいたしますと、義務教育国庫負担金を一般財源化した場合に、教育水準の維持とか、もう一つ機会均等という憲法上の要請をクリアできるのかどうか、御答弁いただきたいと思います。

瀧野政府参考人 教育水準との関係で義務教育費国庫負担金の一般財源化をどういうふうに考えるかということでございますが、現在の状況を見てみますと、都道府県におきましては、基本的に国の標準を踏まえて教員の配置をするわけでございますが、実情といたしましては、国の標準を大幅に超えまして独自に教職員を増員配置しているという実態がまずあるわけでございます。それから、全額地方負担にされております高等学校を見ましても、教職員数につきましては適切に確保されている、そういう実態がございます。

 こういったことを考えてみますと、やはり教育水準につきましては、教職員数等につきまして基準を法律できちんと明確にしておくということと、それからその財源につきまして交付税等で所要財源を確実に担保されているということがあれば、一般財源化が行われましても教育水準の低下という事態は想定しがたいというふうに我々は考えておるところでございます。

 むしろ、一般財源化によりまして、それぞれの地域社会におきまして当事者意識と申しますか、それぞれの地域の実情に応じた取り組みということが喚起されまして、住民を取り込んで活発な議論を生じ、むしろ教育の活性化につながるじゃないかというふうに考えるところでございます。

河合委員 次に、財政論の立場からお伺いさせていただきます。

 義務教育の国庫負担金が現在どのように扱われているかということにつきましては、義務教育は地方の地元の子弟の教育であると同時に、次世代の国民を育てるという観点から、国と地方が分担し合うということになっているのではないかと思います。

 したがって、国がカリキュラムや教科内容、教育時間等を定めて教科書を検定する、都道府県が教師を任用し給与を支払う、市町村が校舎を建て運動場や教室を整備し、国が定めた基準に基づいて教えるということになっていると思いますけれども、この三位一体改革の中で、およそ教育費というものを国の財政としてどのように考えるかという視点が示されてこなかったのではないかと私は思います。

 財務省として、教育費なかんずく義務教育費のあり方について、どのように財政の立場からお考えですか。お伺いしたいと思います。

松元政府参考人 お答えいたします。

 義務教育の実施に当たりましては、ただいま御指摘いただきましたように、国と地方が適切に役割分担を行いつつ、教育の質の向上を目指して相互に協力するということが大切でございまして、義務教育に係る経費負担のあり方につきましても、そのような役割分担の姿を踏まえた上でのものとすべきと考えております。

 御指摘の義務教育費国庫負担金の取り扱いにつきましては、先般の政府・与党合意に従いまして、今後、費用負担についての地方案を生かす方策や、義務教育のあり方について幅広く検討を行っていただきまして、平成十七年秋までに中教審の結論を得て、平成十八年度において恒久措置を講ずることといたしているところでございますが、その際、財政当局といたしましては、義務教育に投じられております公費総額の高さをもって教育の質、水準の高さとを同一するという考え方は適当ではないのではないか、義務教育の質を向上させるにはどのような仕組みで教育を行うのが最も効果的なのか、そういった政策論の観点から議論をまず深めていただくことが重要と考えております。

河合委員 ただいまの御答弁の前半部分でございますけれども、これは、たまたま私が次に引きます考え方と一致しているのではないかと思います。

 それは、平成十年五月二十九日に閣議決定されました地方分権推進計画、ここでは、国庫補助負担金の整理合理化、これは後ほど国庫負担金として恐らく整理されたんだろうと思いますけれども、その基本的な考え方は、「国が一定水準を確保することに責任を持つべき行政分野に関して負担する経常的国庫負担金」につきましては、「その対象を生活保護や義務教育等の真に国が義務的に負担を行うべきと考えられる分野に限定していくこととする。」という内容で閣議決定されているところでございますが、平成十三年の六月十四日の地方分権推進委員会、諸井会長のもとで小泉総理に最終報告を提出いたしました。

 この中におきましても、同じ整理が引き続いてなされているところでございまして、今、財務省から御答弁いただきました、相互に役割分担をするという整理の仕方は、国対地方で対決するという考え方でないことを示しているのではないかと思います。

 さて、その次に総務省にお伺いさせていただきますが、いわゆる地方が一番心配しておりますのは、三位一体改革の三位の一つは地方交付税でございますけれども、補助金の削減と税源移譲はされます、しかし地方交付税も削減するというのが三位一体の改革であると思いますけれども、地方交付税が削減されますと、各自治体が実質的に義務教育費を確保できるという担保はなくなってしまうんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

瀧野政府参考人 三位一体改革の中で補助金の廃止、縮減と税源移譲を行うこととしているわけでございますけれども、財政力の弱い団体におきましては、ただいま御指摘がございましたけれども、税源移譲額が補助金の廃止、縮減に見合わない場合もあり、そこのところを交付税で調整するということが必要であろうかというふうに我々も考えております。

 このように、交付税の財政調整機能が今回の改革の中では非常に重要でありますので、こういった方針を、この六月に閣議決定されました基本方針二〇〇四におきましても明記しておりますし、去る十一月二十六日の今回の三位一体改革につきましての政府・与党の合意におきましても、「地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保する。」ということが明記されているところでございます。

 現在既に、義務教育に係ります経常的な経費の七二%は地方税と交付税で賄われておるという状況にあるわけでございまして、地方税と地方交付税の仕組みがきちっとしていなければ義務教育財源の大宗が確保されないということになるわけでございますので、我々といたしましては、そういう観点から、必要な財源につきまして総額確保ということについてさらに努力していきたいというふうに考えております。

河合委員 今の御答弁はよくわかります。しかし、この合意の文書を読みますと、平成十七年度、十八年度は「一般財源の総額を確保する。」と書いているわけでございまして、それ以降につきまして、三位一体改革が進んだ場合にどうなるかという地方の不安に対してはどのようにお考えになりますでしょうか。

瀧野政府参考人 十七年度、十八年度につきましては、十六年度におきます地方交付税が二兆九千億余という非常に大きな額の削減がある中で特にメンションがされておるわけでございます。十九年度以降につきましても、基本的なスタンスといたしましては、必要な地方公共団体の一般財源を確保するということは同様でございます。

 ただ、全体の国の財政状況の中で、国、地方通じましてプライマリーバランスを二〇一〇年初頭に向けまして回復していきたいという目標がございますので、そういう全体的な中での調整を図っていかなきゃいけないということはあるわけでございます。

 したがいまして、我々といたしましては、必要な地方公共団体の全体の歳出の見直しは進めなきゃいけないだろう、十九年度以降進めなきゃいけないだろうというふうに考えておりますけれども、義務教育のような基幹的な事務については、きちんとそれぞれの地方公共団体で安定的に運営ができるような、そういった財政的な総額はきちんと確保していきたいという考えでございます。

河合委員 ここは文部科学委員会でございますが、ただいまの瀧野自治財政局長の御答弁はしっかりと議事録にとどめておいていただきたいと存じます。

 それでは、最後の質問でございますけれども、教育基本法の第十条についてお伺いさせていただきます。

 御案内のように教育基本法第十条では、不当な支配に服することがないように教育の独立性もしくは自主性、それから中立性をうたっております。これは、教育の一般行政からの独立性、自主性を確保するためのものでございますが、戦後、教育委員会を導入したのもその一環であると考えております。しかし、義務教育費の国庫負担金を一般財源化した場合及び今後地方分権が進んでいく中で、教育の独立性とか中立性はどのように担保されていくのでしょうか。まず最初に、総務省にお伺いさせていただきます。

瀧野政府参考人 教育につきまして独立性、中立性が重要であるということは、既に教育基本法においても触れられているところでございます。そういった中で、地方公共団体におきましては、こういった教育基本法を初めとします法律の範囲内でそれぞれ自主性、自律性を発揮していくということになるわけでございまして、このことは、国庫負担金が一般財源化され、あるいは地方分権が進展した場合でも同様であるというふうに考えているわけでございます。

 いずれにいたしましても、今回議論されているのはある面では財政論でございまして、全体の教育のシステムについてどうあるべきかということは、また重要な問題としていろいろな立場で御議論されるべきものというふうに考えております。

河合委員 私は、地方六団体の議論の中でこの点は非常に欠落しているのではないかと思って心配しております。といいますのは、先ほど私が引きました教育基本法というのは、戦前戦後の教育改革の中で最も声明的な役割を担っている条項だと言われておりますけれども、この教育基本法第十条第一項「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。」。

 不当な支配というものはどういうことかにつきまして、当時の文部大臣である田中耕太郎博士は、不当な支配というのは、その規定に、条文の見出しに「教育行政」という表題がついている以上は、これは国及び地方公共団体という教育について公権力を行使する権限を持っているものが対象になっていることは疑いがないと答弁しております。

 さらに、文部省の法令研究会がこの点につきまして、戦前の教育行政制度の問題点といたしまして、地方行政は一般内務行政の一部として教育に関して十分な経験と理解のない内務系統の官吏によって指導せられてきて、日本の国自体を、進路を間違った、こういう評価をしておりまして、この不当な支配の対象として国と地方公共団体を田中耕太郎博士は挙げているわけでございます。

 この点について、六団体は本当に、自治事務だから税財源は地方にという主張の中で、教育の独立性というのをどのようにお考えになっているのか、議論を深めていただきたいと思いますが、この点につきまして文部科学大臣に最後にお尋ねしたいと思います。

 その前に、ただいまの総務省からのお答えは、法律の範囲内で行っていくという答弁でございましたが、これは非常に理屈的にはそうでございますが、戦前、教育勅語が、教育勅語であったがゆえにかもしれませんが、勅令によって内務官僚支配が不当に教育を圧迫したという事実だけは忘れてはいけないと存じます。

 では、大臣、お願いします。

中山国務大臣 御承知のように、小中学校は市町村が設置する一方で、その教職員の給与というのは都道府県が負担するということになっておりまして、この都道府県の予算編成というのは知事の権限とされているところでございます。そこで、この義務教育費国庫負担金がすべて一般財源化されたということになりますと、これによりまして知事の影響力が極めて強くなってくるということは御指摘のとおりでございます。

 地方教育委員会制度というのは、教育の中立性、安定性、継続性の観点という、教育への多様な民意の反映を図るものとして大きな役割を担っているわけでございまして、そういう意味で、今後、義務教育における国と地方の関係について中央教育審議会でいろいろ議論されていくわけでございますけれども、その中で十分これを考えていかなければならない、このように考えております。

 教育委員会というのは、教育の中立性確保の要請にこたえつつ地域の課題に主体的に取り組んでいくという極めて大事な役割を担っているということはしっかり認識していかなきゃいかぬ、このように考えております。

河合委員 ブレア首相がおっしゃったように、この国にとって最も必要なものは第一に教育であり、第二に教育であり、第三にも教育であるという考え方を私たちは持っておりますが、大臣が三位一体改革で御尽力されましたことに対しまして敬意を表するとともに、今の御答弁の中で、やはり地方から見ますと、教育の水準が画一化し、硬直化しているという地方からの強い意見に対しましては、私は、教育水準というのは、例えば地方教育委員会が教育の独立性を担保するものであるとしたら、国はそれの水準を維持するだけではなくて、水準を向上させるためにどのように地方教育委員会を指導というより助言、アドバイス、サポートしていけるか、それも国の、本当に地方から期待する問題でもあると思います。このことを要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

斉藤委員長 高井美穂さん。

高井委員 民主党の高井美穂と申します。私は、昨年初めて当選した一年生議員でございますので、どうぞよろしくお願いします。

 徳島県の生まれで、三好郡の三野町という人口五千人少々の小さい町で生まれ育ちまして、今、私の二歳になる娘もそこで育っています。いずれそういう小さい町の中で義務教育を受け、中学生となり、高校生となりという過程を歩むことになるはずですので、本当にこの義務教育にかかわる議論は私にとっても大事なことであります。

 そういう観点で、通告に従いまして、今まで先生方が議論されてきた続き、三位一体の中での義務教育の議論、それから、先般大臣が出された全国統一テストに関する質問、大きくはその二つ、もし時間があれば、今回通りました発達障害者支援法にかかわる文部科学行政の取り組みについてもお伺いしたいというふうに思います。

 では、早速ですけれども、今回の三位一体改革について、さまざまな地方からの批判も上がっております。地方財政の自立というテーマからはほど遠いものであるというふうな厳しい批判もあり、もちろん政府内部ではよくできた案だという声もあるのかもしれませんが、率直に大臣は政治家として、今回の三位一体改革についてどのように評価しておられるのか、地方六団体案についてどう思われているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

中山国務大臣 高井委員にお答えいたします。

 義務教育費国庫負担制度につきまして、三位一体の中でさまざまな議論がなされたわけでございますが、私としては、主張すべきことはすべて主張した、こういう感じがいたします。

 この前もある知事さんが、義務教育費国庫負担制度というのは九番バッターのはずだった、だけれども、いつの間にかトップバッターになった、こんな話をされました。トップバッターというか何か四番バッターみたいなことになってしまいまして、そういう意味では非常に大変だったわけでございますが、その方も認められておりましたが、まさに数字合わせといいますか、ほかになかったのでというのは九番バッターに失礼ですけれども、ほかになかったからということで入ったのが脚光を浴びたということについて、どうだったのかなというふうな疑問も呈されたわけでございます。

 いろいろな議論の中で、先ほどもお答えいたしましたが、本当に全部を廃止するんだということを前提にして、とりあえず今回は中学校の分八千五百億を削減する、そういう地方の案に対しましては、私はとんでもないことだというふうな反論をいたしました。そもそもが補助金改革というものから始まったのに、なぜ義務教育の国の責任を放棄するということになるのか全くわからない、これは世界の趨勢にも反している、こういうことで反論したわけでございます。

 しかし、先ごろ政府・与党の合意がなされました。政府・与党全体として決められたことでありますので、国務大臣としての立場からはやむを得ず受け入れざるを得なかったということだということを御理解いただきたいと思います。

高井委員 今の話だと、渋々受け入れたというお話でございますが、それでは、小泉首相が掲げる三位一体改革について反対しておるというわけではないということなんですね。閣僚の一人として三位一体改革は進めなくてはならないという認識の上で、しかし、義務教の国庫負担金が上がるのはおかしいだろうというお話であるならば、では政治家として、多分すべての、各省庁間の調整なり、目指す三兆円というふうに小泉首相が言われたのであれば、そのために働くというのが基本的には筋であろうと思います。

 ということで、では大臣は、もともと分権社会をつくるという必要性については強く認識しておられるというふうに思ってよいのでしょうか。そして、教育分野において、地方主権の立場から改革がどのように必要であるというふうに思われているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

中山国務大臣 三位一体の改革、要するに地方分権の重要性ということについてはしっかり認識しているわけでございます。

 ですけれども、今回の地方六団体からの案というものは地方六団体からの案でございまして、それを政府としてどのように考えるかということは、これはまた別途考えてもいいんじゃないかということで、もしそれがなかったら、私は何のための大臣か、何のための政府かわからないじゃないかということで、政府全体として考えようじゃないかということを再三再四にわたりまして議論したわけでございまして、その結果があのような形になったということでございます。

 地方分権の中の義務教育ということにつきましては、これはまさに今文部科学省もその重要性を認識しておりまして、教育というものは、できるだけ子供に近い現場、学校あるいは市町村の段階でいろいろ創意工夫を重ねながら、私流に申し上げますれば、それぞれの風土もありますし、歴史、伝統もありますし、そういった地方色豊かな子供たちが育ってくれればいいな、そういう思いもありますので、これからも、そういうのを地方分権というのかどうかわかりません、多分地方分権だろうと思いますけれども、できるだけ現場主義で、子供に近いところで教育が行われるようにということについてはこれからも進めてまいりたい、このように考えております。

 それにかかるお金というものについては、今でもまだ全体のうちの三割しか負担していないわけで、本当に余り大きなことは言えないんですけれども、国としてもしっかり担保していきたい、このように考えております。

高井委員 六団体案を政府としてどう受けとめるかは別だとおっしゃいましたけれども、それはとても問題がある発言ではないかと思います。

 というのは、小泉首相が六団体にまとめてこいというふうに投げたわけでございますね。そして、それを真摯に受けとめるということを首相として発言されているわけでありますから、もちろんそれを受け入れることを前向きな前提として投げられたものであると私は受けとめていました。

 もちろん、民主党の中にも、私どもが持っている分権案というのもありまして、六団体案に照らし合わせて、もちろんいいものも、前向きなところもあるし、そうでもないものもある。でも、姿勢としては、やはり投げた以上は責任を持ってきちんと受けとめるべきであるというふうに思っていますが、その点についていかがでしょうか。

中山国務大臣 地方の案を真摯に受けとめろ、こういうふうな首相の指示でございましたけれども、地方の声に耳を傾けろ、真摯に耳を傾けろという御指示でございましたが、耳を真摯に傾ければ傾けるほど、そうじゃない意見もたくさん聞こえてきたわけでございます。

 この文教委員会におきましても、義務教育だけは別だよというふうな御激励もいただいたように、やはりいろいろな声が地方にもあるわけでございます。また、知事さんの中にもいろいろな意見があったということも事実でございます。それを丸投げ、丸のみしますと、まさにこれは皆さん方が、小泉さんというのはいつも丸投げ、丸のみだ、こう言われるわけでございまして、やはりそこには政府として、大臣、閣内の一員として、責任を持って、地方のことも考えながら、国のことも考えながら、何よりもこれからの子供たちのこともしっかり考えて議論しなければいけないんじゃないか、そういう観点で申し上げたところでございます。

高井委員 市町村の長の中には、自分の町に、自分の市に住む子供たちは責任を持って自分たちがやるんだという発言をされる方ももちろんいらっしゃいます。なかなか、地方に任せると格差が生じるんじゃないかという懸念もあるのももちろん承知しております。

 ただ、大臣もさっきおっしゃった、現場を重視するという観点で国の政策を進めると。そういう中で、できれば早く国の本当の果たすべき、国として最低限果たす役割は何か、ナショナルミニマムというものを保障する具体的な機能について、何をどうすればいいのかというのを本当に早く検証したい、検討したい、こういう議論を進めたいというふうにかねてから私も思ってきました。

 そこで、順次引き続いて、その質問に対してもお伺いをしたいというふうに思っているのです。

 十一月二十六日に与党の合意がなされて発表されたと。それを読みますと、義務教育のあり方について幅広く検討し、平成十七年の秋までに中央教育審議会で結論を得るというふうになっていますね。そして、その結論が出るまでの十七年、十八年度には八千五百億程度の減額を暫定措置として行い、うち、十七年度は暫定措置として四千二百五十億を減額する、つまり、交付金としてその税源移譲予定特例交付金に振りかえるということですね。

 これは、つまり、前向きに税源移譲していくということを進めながら、とりあえずは試しでやってみるということで、どちらにも読める、ある意味では矛盾しているように感じるんですが、これはどういうふうに読めばよろしいんでしょうか。

中山国務大臣 これは試しにやってみるということではございません。私が主張いたしましたのは、義務教育というとても大事な国の制度というものを、単に経済財政諮問会議という、財政論といいますか銭金の問題から先に入って議論してもらっては困ると。とにかく中央教育審議会で今いろいろな議論を行っているんだから、その中で、少なくとも教育的な立場からこの義務教育費国庫負担制度についても検討させてくれと。その結論を得た後で、この負担制度のあり方、国と地方のあり方をどうするかというようなことについても結論を出してほしいということを主張したわけでございまして、決して試しにやってみるとか、そういうことではございません。

高井委員 ということは、検討するということは、恐らくまずゼロベースでどうするかということを検討するということなんですね。とりあえず、でも、来年じゅうに四千二百五十億は税源移譲される。それで、その後の十七年の秋の中教審で結論が出て、その結果によりどうするか決めるということであれば、もし先に中教審の審議の中で、やはり今の制度のままがよいという回答が出たとすれば、そうしたら、先に税源移譲されるはず、恐らく来年の通常国会で法律が上がってくるのであろうと思いますが、その分というのはまた差し戻しになるんでしょうか。それとも、とりあえず移譲された分は移譲された分として、何というか、次を移譲する方向で中教審は考えていくのか、その点はいかがでしょうか。

中山国務大臣 これは四千二百五十億円というのは税源移譲されるものではありません。税源移譲予定交付金という形で出されるわけでございまして、すべてのものもそうですけれども、これはほかの項目と一緒に、一括して税源移譲されるという形になっております。

高井委員 今の御答弁は、つまり、予定としては法律が通って含まれるけれども、実施されるのはもうちょっと先だからということなんでしょうか。ちょっと今のはよくわからなかったんですが、とりあえず中教審の審議の結論が出るまで待つということなんでしょうか。

中山国務大臣 要するに、四千二百五十億円につきましては来年度予算で暫定的に削減される。その分については、これはそのまま移譲する財源に来年なるわけじゃありません、これはその後ということでございまして、とりあえず交付税の形でしばらく面倒を見る。きちっとした税源移譲というのは、ほかの項目とまとめて移譲するということになっております。

 その前提の上で、八千五百億円全体につきましても、中央教育審議会等の議論を経ましてそれで来年結論を出す、こういうことになっていますから、あるいは、八千五百億がそのまま将来税源移譲されることもあるかもしれませんし、ゼロになる、もとに戻ることもある、このように理解を、考えておるところでございます。

高井委員 この暫定措置がとられる趣旨というか目的は何なんでしょうか。

中山国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたように、中央教育審議会という教育のことについて議論している審議会をすっ飛ばして、経済財政諮問会議で単なる財政論からだけ義務教育費国庫負担制度について結論を出してもらっては困るという私どもの主張が通った、こういうことだと御了解をいただきたいと思います。

高井委員 それは、つまり、教育論の話ではなくて、経済財政諮問会議が先に走ったからけしからぬ、ちょっと待てという話なんですよね。

 先ほど中野議員の御質問にもありましたけれども、中教審という専門家の機関というか、文部省の諮問機関であるというふうに認識していますが、そこに任せる、そこで結論を出されることにすべてを、一つの歯どめとして、それでこういう形でちょっと交渉していくのは本当に、もっと大臣が政治家としてなぜこうするべきなのかどうなのか、この暫定措置という響きが教育論からはとても離れているような気がして、どうしても納得がいきません。

 大臣としては、本当にどうしたいのか。これは、義務教育は国庫負担制度を守りたいという御主張でありましたけれども、そうであるならば、本当に今の制度のままで完結していいのか。今の制度が最高にすばらしいのか。決してそうではないからこそ、こういう議論が起こっているんだと思います。

 だからこそ、国のナショナルミニマムをどうするか、どう保障するか、どう担保するか、そしてどこまで現場に任せるかという議論を徹底的にやはりやらなければならないと思います。その中で、それにもかかわらず、本当に中教審だけの議論を待つというのであれば、本当に文部科学省として、また大臣としてどうしたいのかというのが全く私には納得がいきません。いかがでしょうか。

中山国務大臣 よく理解できるわけですけれども、そもそも、あれは平成十四年度でしたか、総務大臣、財務大臣、それから文部科学大臣の三大臣合意というのがございまして、その中には、平成十八年度末までにおいて義務教育費国庫負担全額について、中央教育審議会の議論も踏まえて、も踏まえてと書いてあるわけでございます。もというと非常に弱いなとは思うんですけれども、ということは、ほかのいろいろな議論も踏まえてということだろうと思いますし、そのことは今でも同じだろうと思いますから、全部中央教育審議会に任せているということではなくて、それまでにいろいろな方々の御意見も聞きながら、しかし中央教育審議会の議論も踏まえた上で、これを無視してはいけませんよと。やはり教育問題については中央教育審議会が一番の専門といいますか、教育に造詣の深い方々がお集まりでございますから、大所高所に立ったそういう議論をしていただけるんだろう、こう思います。

 私としては、どういう形になるのか、私としては義務教育費国庫負担は全額国が持ってもいいんじゃないかと思っているぐらいの男でございますが、これからその負担のあり方とかそういったことについても御議論がなされるんじゃないかと思いますけれども、義務教育の骨幹だけは守りたい。その骨幹が何かということについては、これから皆さん方の御意見を聞きながら決められていくんじゃないかな、このように考えております。

高井委員 そうしたら、大臣としては全額国庫負担するということも可能性としてお考えになっておられるということも考えていいのでしょうか。

 もう一つお聞きしたいんですけれども、財務省の方に聞きますと、ここで中教審が、やはり国庫負担、現状を維持しようということになったときに、では、予定交付金として入れていた分はまた戻す可能性はあるのかと財務省の方にお聞きしたら、それはちょっとというような回答で、とても大臣の認識と違うように感じました。

 先ほども、三大臣合意のときには中山大臣は入っていないから、別のところで審議されたからという理屈もおっしゃいますけれども、政治家として本当に、国庫負担制度を全額国で見るんだという方向だって一つのあり方であろうと思います、本当に今までの御主張を聞くのであれば。いかがでしょうか。

中山国務大臣 これまでの先生方の御意見の中にも出てまいりましたが、フランス等は全額国庫負担しているわけでございますし、イギリスも、二年間かけて全部国で持とうというふうな国もある。

 世界の中には全額国庫負担という国もある中で、なぜ日本だけが下げていくんだという基本的な疑問も持っているわけでございまして、私としては、全額持つぐらいの気合いで、迫力でもって義務教育を考えるべきだ、このように考えているということだけ御理解いただきたい。しかし、それで私の意見が全部通るような世の中ではないということもよくわかっておるわけでございます。

高井委員 それでは政府としての一体感もなかなかないように思いますね。本当にそういう思いがあるのであれば、財務省と交渉するなり首相とやはり交渉するなり、三位一体の改革の場できちんと形を出すときにぜひとも議論をしていただきたいというふうに思います。

 我々の考えとしても、教育の財源保障は本当に大事だというふうに思っていまして、私どもは地方分権案の中で、十八兆円の補助金を廃止して、これを五・五兆の税源移譲と、それとあと一括交付金、五分野に分けた一括交付金という形で保障しよう、その中には、もちろんまずは教育です、それから町づくり、社会保障、農業・環境、地域経済という大くくりの一括交付金としてちゃんと保障しようという案を私たちの中では、民主党として考えております。

 財政格差が生じると確かに、教育の財源保障はきちんとしなければならないという感覚は全く同じで、できるだけ地域に、地方の方に自由度を与えながら、国の最低限の、ミニマムの保障として財政をきちんと確保するんだという考え方は全く同じものであります。そういう認識で私どもも、どういうふうに具体的に任せていけばいいのかということを検討しておりますので、ぜひとも引き続き、多分次の国会では本当にもっと具体的な議論の話になってくると思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 次の質問に移らせてもらいたいと思います。

 先ほど来から話が出ておりました全国学力テストの御発言でございますが、競争激化を招いたというふうに言われる六〇年代の全国学力調査以来の実施、もし実施されれば実施となり、教育行政の大きな転換となるというふうに感じました。そして、大臣が披瀝されたペーパーをいただきました。「危機的な日本の現状 このままでは東洋の老小国へ」、先ほどの御答弁の中でもおっしゃっていましたけれども、これはどういう状況認識の上にこういう御発言が出てきたのか、お聞きしたいと思います。

 というのは、OECDの調査や、またIEAという数学や理科の発達度調査をしている学会等の調査によると、日本の子供たちの学力は、すごく下がっている、すごく悪いという現状ではないというふうに聞いています。世界の国に随分とおくれをとっているという認識というのはどういうところからこられたのか、この「老小国へ」というのは高齢化のことを指すんでしょうか、どういう意味なんでしょうか。

中山国務大臣 お答えをいたします。

 近年、かつて発展途上国と呼ばれた国々が大変目覚ましい発展を遂げておる中で、我が国におきましては、日本社会を新たな成長に導くイノベーションを創出するチャレンジ精神に満ちた人材が必要とされているわけでございますが、お年寄りがふえる一方で子供たちが少なくなっておりまして、やはり新しいいろいろな科学技術に対応できるのは若い人たちでございます。例えばITとかいろいろなことについてもそうでございまして、そういう意味で、少子化ということも、これは日本の国力をだんだん落としていくのかな、そういった懸念をしているわけでございます。

 また、その中で、社会で最も活力をもたらすべき若い世代の人々の働く意欲が減退して、ニートと言われる人々がふえるなど、無気力な若者がふえている。集団自殺するとかそういった方々もおるわけですけれども、もう少し、生きるということはどういうことか、命の大切さということをもっと考えてほしいな、こんな感じがあるわけでございます。そのような我が国の現状というのは将来的に社会全体の活力を失わせていく、そういうふうな懸念があるんじゃないか、大変ゆゆしき問題と考えているわけでございます。

 こういった状況の中で、いわゆる天然資源に恵まれない我が国でございますから、今後とも競争力を維持して、将来にわたって活力ある国家として発展していくためには、夢と希望を抱き明るい未来を切り開いていく、要するにチャレンジ精神を持ったたくましい人材の育成が不可欠である、このように考えまして今回の教育改革案を公表したものでございます。

 今高井先生の御指摘にありましたけれども、確かに日本の子供の学力というのは、全国的、国際的な調査結果などから見てもまだ上位にありますけれども、しかし、それは低下傾向にあることはこれはもう事実でございまして、例えば判断力、表現力が十分でないとか、あるいは学習意欲とかあるいは学習習慣が十分ではない、このような指摘があるわけでございます。

 私は、このような状況を踏まえまして、学校教育において確かな学力をはぐくみ、世界のトップレベルの学力向上を図るということ、そして、学校教育の到達目標の明確化とあわせて、児童生徒の学力状況を全国的、客観的に把握して、そして教育の成果を評価するということ、そしてまた、全国状況との比較におきまして、各都道府県や学校における教育指導の改善あるいは児童生徒の学習意欲の向上についての動機づけを与えることになるんじゃないか、このように考えておりまして、全国的な学力調査を実施する必要があるということを考えた次第でございます。

高井委員 私には、ニートがふえたこととか確かにいろいろな問題はあるのでしょうが、それが、どうしてその発想が全国学力テストの実施に結びつくか、どうしても、先ほどの答弁でも理解ができません。

 というのは、大臣は、競争がなくなった、競争意識の涵養をしなくてはいけないというふうにテストの目的を一部お書きになっているようなんですが、大臣もお子さんやお孫さんがおられるのであると思いますが、私は、まだ子供たちの世界には、中学受験もあり高校受験もあり大学受験もあり、ある程度の競争というのはやはり今でもあるというふうに思っています。

 この間、私自身も近い問題としてニートの問題をずっといろいろ調べ続けてきたんですが、むしろそのニートの問題の中でやはり大事なことは、好きでニートになっているわけではなくて、働かないのではなくて、働けない。自信が持てない。競争の中で敗れて、はい上がれない。外へ出ていけない。引きこもっている。それが今となっては、この間の厚生省の発表、二〇〇四年版の労働経済白書によると、二〇〇二年には四十八万人と推計される、二〇〇三年には五十二万人と推計されるという大変な、ふえている現状があります。

 その中で、やはり今、競争がなくなって全体的に学力が低下したというふうに考えるよりも、むしろ私は、いろいろな親の経済状況やゆとり教育の中で二極分化をしているんじゃないかという危機感がとても強いのです。勉強しなくなる子供は、ゆとり教育の中で余計勉強しなくなったと。いろいろな民間の調査機関やほかの個人の塾等の調査など、いろいろ本を読んだ中で、一部の抽出ではありますが、ゆとり教育という中で全体的な学力が低下した背景として、勉強しない子供はより勉強しなくなった、勉強する子供はより勉強する、そういうふうなデータもあるというふうに聞いています。

 だから、全体でテストを実施してより序列をつけることによって、より二極分化は進むのではないか。個人的な意見でもありますけれども、むしろ私がこれから教育行政に望みたいことは、やはり、普通の教育から漏れていく、はみ出していく子供たちに対してどう階層的に手当てをしていけるのか、レベルアップさせていけるのか、そういう点にとても目を注がなくてはならないんじゃないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

中山国務大臣 やはり豊かな社会になりますと親の財政力もありますので、そんなに無理して働かなくてもいいよというふうな、そういった親の風潮とか、そういったこともあるのかもしれません。

 それとともに、やはり思いますのは、学校にいる間は、競争は悪である、競争をしちゃいかぬというような、そういう風潮がある中で、社会に出ますと、私がいつも言っていることでございますけれども、まさに激しい競争の社会でございます。

 その大きなギャップに戸惑ってニートになったりあるいはフリーターになったりする子供たちも多いんじゃないかなということもあるんじゃないか、こう思うわけでございまして、もっと小さいころから、自分の将来について考え、自分の人生をたくましく生きていく、生き抜いていける力というもの、そういう意欲というものをもっと子供のころからはぐくんでいくことがやはり必要なんじゃないかな、そういうことを考えるわけでございます。そういう意味で、頑張る子供を応援する教育とか、あるいはチャレンジ精神というようなことも申し上げたわけでございます。

 今まさに安泰といいますか、とどまっていてもいい状況ではあるわけですけれども、先ほど言いましたように、発展途上国等がどんどん追い上げてまいりますから、このままでは取り残されていく日本という国。そして、個々の子供たちにとりましても、いつまでもニートとかフリーターでは、自分の人生設計もできない。そういう子供がふえるということは子供たちにとっても不幸でございますから、もっと若いときから、子供のころから、頑張る意欲とか競い合う気持ちとか、世の中というのはなかなか厳しいものだよということを自覚させられるような、そういった教育というものをやはりやっていくべきじゃないかな、このように考えるわけでございまして、決して、序列をつけるために学力テストを行うとか、そういうことではございません。

高井委員 これは価値観の違いなのかもしれませんが、私は、やはり学校の社会にはいまだそれなりの競争は存在するというふうに思っています。私が教育を受けた八〇年代、九〇年代にもやはりテストは、学校の中での競争というのも存在しておりましたし、一概に、競争が本当にすべての学校でなくなってきたのか、競争は悪であると各義務教育のレベルで教えられてきたのか、とても私には疑問が残るところであります。

 ニートの問題は、本当に日本全体の労働力人口の問題、経済の問題、それから少子化の問題、高齢化の問題にもすべて絡む大きな問題でありますので、教育行政の現場でもいろいろな取り組みがこれからなされていくだろうというふうに考えていますが、私自身も、年が若いということもあって、この問題をずっと追いかけていきたいというふうにも思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。

 少し延びましたけれども、ありがとうございました。

斉藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。牧義夫君。

牧委員 民主党の牧義夫でございます。

 午後一番ということで若干ギャラリーがまだ少ないので、一抹の寂しさを禁じ得ないんですが、ぜひ出席の委員の皆様方には一緒にこの問題についてお考えをいただきたい、そんな質問をさせていただきたいと思うんですけれども、ただ、限られた時間でございますので、きょうはテーマを一つに絞って質疑を進めさせていただこうと思います。

 話の内容は、ほかでもない、テネシー明治学院の件についてでございます。

 御認識のある委員もいらっしゃるかもしれません。一部報道もされたわけでございますけれども、御存じない方もいらっしゃると思いますので若干経緯を申し上げると、テネシー明治学院というのは、一九八九年、日本の学校法人明治学院がアメリカ合衆国において、テネシー州において開校した全寮制、男女共学の高校でございます。アメリカにおいて初めて設立された日本の文部大臣指定の在外教育施設指定校として開設されて以後、十五年間にわたって数百人の高校生が学んだという経緯がございます。

 この間、現地のテネシー州住民とも貴重な交流を築いてきた、一つの、日本の文化を向こうにもしっかりと知っていただくような、そしてまた日本の子弟が国際性を涵養するいい場所でもあったわけでございますけれども、このテネシー明治学院がこのたび学校を閉校するというお話になって、そして、この話が起こった後で、その差しとめの仮処分の申請といったような、こういった法廷の場にもその問題が持ち込まれているというのが現状でございまして、そういった経緯からマスコミ等による報道もあったわけです。

 この件に関して、テネシー州出身の駐日アメリカ大使、ベーカー大使から河村前文部大臣にあてて書簡も送られてきております。本当は、きょうこちらにコピーもございますし、またその翻訳もあるので、本来お配りすればよかったんですけれども、簡単にざっとこの書簡を読み上げさせていただきたいと思います。

 昨年十二月九日付でございますけれども、「大臣殿」ということで、

  合衆国テネシー州スウィートウォーター市にあるテネシー明治学院高校を閉校する案が検討されているとお聞きしました。

  ご存じのとおり、テネシー明治学院高校は、合衆国においてはじめて認可された日本の高等学校です。本校は、創設以来十五年間、数百人の若者を教育し、草の根から両国の間の知的かつ文化的な交流を促進してきました。

  特に、テネシー州東部の人々は、本校の日本人生徒や教員との間で、多くの積極的な触れあいを通して、多大な恩恵を受けてきました。本校は、地域の人々に大いに支持されており、多くの地域住民と政治指導者たちは、本校の存続について、声を大にして賛同しております。

  要するに、テネシー明治学院高校は、合衆国と日本との友好関係に多大な貢献をしてきました。したがって、もし本校を閉校するのであれば、(両国にとり)恥となると考えます。お互いの国において、若者たちが学ぶ機会を広げることが私たちの相互の関心事であるという観点に立ち、貴大臣が本件教育活動を続けることに関心を持って下さることを希望いたします。

       ハワード・H・ベイカー 2世 大使

という文面でございますけれども、これだけの関心を向こうからも持たれている、そして、正式に文書でこういう意見を前文部大臣にあてているわけでございます。

 もとより、私は、別に明治学院とは何の縁もゆかりもない人間でございますし、父兄の皆様方のただ声を代弁する、その仮処分の申し入れをされている方たちの声を代弁するためにここに立たせていただいているわけではないわけで、こういった事態を踏まえて、私としては、これはやはり日米両国のいわば一つの国際問題でもあろうかな、そういった観点からこの問題を提起させていただきたいと思うわけであります。

 これは、アメリカにおいて設立された法人が一方的に閉じられようとしていることに対する問題提起であるわけですから、そういった意味で、私は、この問題はやはり国会できちっと議論をすべき、国会の議論になじむ話であろうということで質問をさせていただいたわけであります。

 そこで、この書簡に対する文部省あるいは文部大臣からの回答、これは一体どんなものだったのか、その辺のところをまずお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 牧委員にお答えいたします。

 米国のテネシー明治学院につきましては、設置者側として、財政状況の悪化に伴い、本年度の新入生が卒業する二〇〇七年三月をもって閉校する方針であり、これに対し、保護者の一部が東京地方裁判所に仮処分の申し立てを行っているということを承知しております。

 文部科学省としては、私立在外教育施設というのは、海外に設置されるという特色を生かしまして、先ほど来話がありましたように、外国語の習得や現地の学校や社会との交流を通じて、国際社会に生きる人材を育成するという観点から意義あるものと認識しております。また、先ほどベーカー大使の書簡にもありましたが、これは日米間の国際交流という意味からも大きな貢献をしたもの、このように考えておりまして、そういう意味で、今回、テネシー明治学院が閉校する方針を示したということは残念に思っているところでございます。

 しかしながら、同学院は私立在外教育施設でありまして、設置者が存続の判断をすべきものであるということから、同校関係者に対して、閉校となる場合においても、在校生の進路を確保することなどについて十分留意するよう勧めて、助言しているところでございます。

 なお、ベーカー大使に対して返答したかということでございますけれども、ベーカー大使からの書簡に対しましては、このような在外教育施設に係る制度上の位置づけや文部科学省との関係につきまして、詳細に直接説明を行って理解していただいた方が適切であると考えまして、書簡をいただいた後速やかに、文部科学省の担当課より、米国大使館に対しまして、テネシー明治学院の位置づけや文部科学省としての考え方や対応等について直接御説明をさせていただきまして、御理解いただいたもの、このように理解しておるところでございます。

牧委員 どのように返答されたのか、ちょっともう一度確認をしたいんですけれども、向こうは、アメリカのいやしくも特命全権大使が書面でこちらにそういった意見を申し述べられた。それに対して、今の大臣のお話ですと、担当者が口頭で伝えたということでよろしいんでしょうか。直接会って伝えたんですか、それとも別の手段ですか。

銭谷政府参考人 べーカー大使から書簡をいただいたわけでございますけれども、この件につきましては、私どもの文部科学省の担当課の方から米国大使館に対しまして電話で御説明を行ったところでございます。

 その内容は、私立在外教育施設は国内の学校法人を母体として海外に設置をされ、日本の国内の学校と同等の教育を行うことを目的とする学校であり、文部大臣は、国内の学校と同等の教育課程を有する、つまり高等学校と同等である旨の認定を行っているかかわりにあること、また、これらは、テネシー明治学院は私立の教育施設であって、その存続については設置者に判断がゆだねられているといったような、テネシー明治学院の位置づけや文部科学省としてのかかわり等につきまして御説明をし、御了解いただいたものと思っております。

牧委員 私は、形式論を言っているのではなくて、形式的な説明をされたんでしょうけれども、いやしくも特命全権大使が、この文書を見ると、「イット ウッド ビー ア シェーム イフ イット ワー ツー クローズ」、これは恥だと言っているんですよ。これはやはり日本の文科省の姿勢が問われたということだと私は思うんです。

 だから、私がちょっと文部省の方から比べると意識がずれているのかもしれないけれども、その辺の重大性というか、そういう認識があったらそういう回答にならないと思うんですけれども、それでもう説明は済んだというふうにお思いですか。

銭谷政府参考人 べーカー大使から書簡をいただいたわけでございますけれども、文部科学省とテネシー明治学院とのかかわりについて、私どもとしては丁寧に御説明を大使館の方に申し上げて、あくまで設置者が存続の判断をすべきことであるので、所要の助言、先ほど大臣の方からもお話ございましたけれども、閉校になる場合における在学生の進路の確保あるいは教職員のケア等については、明治学院側の方に助言はしているわけでございますけれども、あくまでも設置者が存続の判断をすべきものであるという私どもの立場につきまして御説明をし、御理解をいただいたものと承知をいたしております。

牧委員 念のために聞いておきます。

 これは、外務省はその経過について認識をされていたんでしょうか。

梅本政府参考人 私ども外務省といたしましても、本件問題につきましては報道等を通じまして概要について承知をしておりましたし、それ以降、文部科学省の方とも御連絡をさせていただいているところでございます。

牧委員 これは、ある意味では、一つの外交問題にも場合によっては発展しかねない問題であろうという認識を私は持っているわけです。

 その理由として、先ほど銭谷さんの御説明では、設置者の判断で閉じる、閉じないというのは決められるんだというお話でしたけれども、この学校法人明治学院とテネシー明治学院というのは別法人なわけですね。これは、アメリカで設立されたアメリカが認める法人なわけで、当然、寄附行為に基づいて設立をされ、したがって、アメリカにおいて免税特権を受けているテネシー州の非営利法人法によるアメリカ法人であるということですから、恐らくべーカー大使からすれば、アメリカの国内法人に対する権利侵害だといったような意識もあるいはあったのかもしれない。そんな意味で、この閉校については遺憾だという意思を表明されているんだろうなと私は理解をしておりますけれども、その辺がちょっと認識のずれがあると思います。

 私、明治学院の方からも事前にお話を伺っておりますけれども、学校法人明治学院としては、これはあくまでも日本の本校から現地の法人に対する貸し付けによって設置をされた学校なんだ、したがって、今度閉校すれば、財産等は一定の整理を行って引き揚げた上で処分をするというようなお話が返ってきました。

 文科省と学校法人明治学院の認識はそういった意味では一致するのかもしれませんけれども、私の認識とは一致しないわけで、これは、場合によって向こうで、普通ですと公益法人が解消するということになれば、その基本的な財産等については現地の州政府なりなんなり、向こうの法律を詳しく知りませんが、そちらに帰属するという形になろうと思うんですけれども、そもそもそこら辺の認識のずれが、少なくとも私どもと文科省あるいは明治学院との間にあるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 ただいまの先生のお話に関連してでございますが、まず、私どもがテネシー明治学院を在外教育施設として認定をする際に、設置者の要件というのがございます。

 それで、その要件の一つとして海外に在留する邦人が組織した団体が設置者である場合と、もう一つが在外教育施設の所在国の法令等に基づき設立される法人等で、国内の学校法人が当該施設の設置運営に関与しているものという要件がありまして、テネシー明治学院の場合は後の方の要件に該当して認定を受けているというふうにまず理解をいたしております。

 それから、文部科学省としては、この在外教育施設が国内のいわば高等学校と同等の教育課程を有するか否かという認定の観点からの関与ということになるわけでございまして、財政状況、学校の存続問題自体については、やはり学校運営に責任のある設置者が判断すべきものではないかというふうに考えております。

牧委員 時間がありませんので急いで言いますけれども、今のお話、私は決して納得したわけじゃなくて、これはアメリカの法律に照らし合わせて、向こうは公益目的を有する団体に寄附するものであるという規定がありますから、向こうの国内法で今後どういうことになるのか、そこら辺のところもやはり文科省としてしっかり研究してとらえていっていただかなければ、そう簡単に済まされる問題ではないと私は思っております。

 ちょっとそれに関連して、今財政上の事情というお話がありましたけれども、このそもそものテネシー明治学院の設立に当たっては、学校側からお話を聞く限りにおいては、学校法人の法人本部のいわば剰余金の中からそれを出資した、貸し付けと言っておりますけれども、それだけのお金が当時あったということでありますけれども、今はそれだけのゆとりがない、もうこれ以上面倒見切れない、一言で言えばそういうことであろうと思います。

 文科省からこの学校法人明治学院に対しては毎年助成金が行っていると思うんですけれども、その金額と、それからこのテネシー明治学院を設立した当時の補助金、助成金について教えていただきたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 明治学院大学の運営費等といたしまして、学校法人明治学院に対して交付された私立大学等経常費補助金は、平成元年度、一九八九年度から平成十五年度までの十五年間の累計で百十二億四千五百九十万円となってございまして、平均をいたしますと、毎年度、約七億五千万円程度の交付額となっているところでございます。

牧委員 済みません、私の質問は、八九年とそれから平成十五年、平均じゃなくて、それぞれ単年度の。もう一回お願いします。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 明治学院に対する私学助成の助成金の交付状況でございますが、平成元年度、一九八九年度は七億八千三百十万六千円、それから平成二年度は九億五千五百九万八千円、これが私学助成の交付金の交付状況でございます。(牧委員「平成十五年」と呼ぶ)それから平成十五年度でございますが、平成十五年度は六億七千八百二十万三千円でございます。

牧委員 またこれはちょっと別の機会にその辺詰めていきたいと思うんです。つまりは、今回、テネシー明治学院に対しては、今の法律の枠組みからすると、制度の枠組みからすると、それは助成はできない、あくまでも現地の法人であるということであろうと思うんですけれども、では、今、本校、学校法人明治学院に対する補助金の中から、それを上乗せするからそっち何とか助けてあげてくださいということを言っても、制度上はそういう枠組みがないという御説明でありました。

 ただ、そうやって考えると、現時点の補助金と、お金が余っていて、十二億ぐらい向こうに出資した当時の助成金と比べると、当時の方が多いじゃないですか。お金が余っているときに助成金をこれだけ出して七億八千万、今、財政的に逼迫して大変だと言っている現在が六億円台と。だから、私、そこら辺のところがどうも釈然としない。この問題からちょっと離れてしまうので、またこれは改めて詰めていきたいと思うんですけれども、制度的に今この救済策がないのであればないのであるとして、私はそこら辺のところも今後またきちっと精査をしていきたいと思います。

 もう時間が過ぎてしまいましたので、この辺でやめますけれども、この問題というのは、つまりは私は何が言いたいかというと、学校法人明治学院自身、明治十九年、アメリカの宣教師の人たちによって寄附を受けて成り立った学校ですから、当然、アメリからすれば、もともとおれたちがつくっちゃった学校じゃないか、そこが今度、テネシーでちょっと財政的に厳しいということで引き揚げてしまうというのは、これは釈然としないというのは当然だと思います。

 日本の国がこの国際社会の中で名誉ある地位を占めたいという気持ちがあるのであれば、イラクに兵隊を派遣するよりも先に、やはりこういうことから一つ一つ私はきちっとやっていっていただきたいなということだけ申し述べて、もう時間が過ぎましたので、これまた日を改めてやっていきたいと思います。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 肥田美代子さん。

肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。

 中山文部科学大臣に対する初めての質問をさせていただきます。

 私は、まず義務教育に関して大臣の御所見を伺いたいと思います。

 今回の三位一体改革の中で、大臣は改めて義務教育は国の責任であると主張されました。午前中の審議の中でも、土俵際で踏みとどまった、これからは押し返すのみともおっしゃいましたし、さらには国庫全額負担もあり得ると、数えていたら四回か五回おっしゃいました。大臣の熱さが伝わってくるようでございます。

 そこで改めて、いま一度、すべての子供について教育を受ける権利、それを保障して教育の機会を確保することは国の責任であるという御所見を伺っておきたいと思います。大臣、よろしくお願いいたします。

中山国務大臣 私が日ごろから大変尊敬申し上げている肥田委員からこうして質問を受ける立場になりまして、大変恐縮しているところでございます。

 今の義務教育、国の責任であるということについて大臣どう考えるかという御質問でございましたが、まさに私はそのように考えているわけでございまして、義務教育というのは、憲法の要請に基づき、知育、徳育、体育の調和のとれた児童生徒を育成し、国民として共通に身につけるべき基礎的資質を養うものでありまして、国はすべての国民に対して無償で一定水準の教育を提供する最終的な責任を負っている、このように認識しておるところでございます。また、義務教育は、憲法が保障する国民の権利であるとともに、国家社会の発展を担う人材育成という国家戦略に位置づけられているものでございます。

 厳しい経済環境の中で国際競争を生き抜くたくましい人材の育成とともに、個人として見ますと、幸せを自覚しながら、そして有意義な人生を送れるようにするための土台づくりとして国が全国的な視野に立って教育改革の方針を打ち出す必要がある、このようにも考えているわけでございまして、今後とも国の果たす役割は極めて大きい、このように考えておるところでございます。

肥田委員 ただいまの御所見の中にも、もちろん障害を持つ子供たちも含まれていると受けとめました。この子供たちのために国がなすべき課題は本当に山ほどございます。きょうは限られた時間の中でございますので、目の不自由な子供の教育について質問いたします。

 盲学校に通う視力障害の子供たちにつきましては、全盲であれ弱視であれ、教科書一つとりましてもそれなりの配慮がなされております。ところが、通常の学校に在籍する弱視の子供たちは、全盲の子供と晴眼の子供の谷間に置き去りにされているというのが実情でございます。私たちも随分長い間そのことに気づかなかった。このことを私も深く反省をいたしております。

 この子供たちの教科書問題について、当時、遠山文科大臣は平成十五年六月の本委員会で、拡大教科書を無償という形で予算措置すると明言されました。谷間の子供たちに光を与えてくださったわけでございます。そして、河村前文科大臣も平成十六年五月の本委員会で、児童生徒のすべてに国が最終的な責任を持って適切な教育を受けられるように教育環境を整備する、そういう御趣旨の御答弁をいただきました。これは、歴代の文科大臣が忘れられていた弱視の子供たちに高い見識を示してくださったと私は大変評価しております。

 こうした国会論議を経まして、拡大教科書の製作費用も保護者負担から国の無償給付となりました。しかし、大きな制度転換でありましたので、初年度のことし、実施過程では改善すべき幾つかの点も浮き彫りになりました。どんな改革の課題が明確にされたのか、現行制度の運用について順次質問させていただきたいと思います。

 まず、弱視学級や普通学級に在籍する弱視の子供の中で二〇〇四年度に拡大教科書の無償措置を受けた子供たちの数は何人ぐらいか、また、無償措置された拡大教科書の冊数はどのくらいか、お尋ねしたいと思います。

銭谷政府参考人 先生からお話がございましたように、障害のある子供たちについて一人一人の教育ニーズに応じて適切な教育に努めていくことが大切でございまして、弱視の子供たちにとって、いわゆる拡大教科書を使用するということは学習を進める上で有効な方策の一つだと考えております。

 こうした観点から、平成十六年度から、通常の学級に在籍可能な視覚に障害のある子供たちに対しましても拡大教科書を無償給与できる取り扱いとしたところでございます。平成十六年度において、都道府県教育委員会からの報告に基づき国が無償給与を行った通常の学級に在籍して拡大教科書を使用する児童生徒数及び給与冊数は、小中学校合わせまして五百十八名分、四千三百三十八冊となってございます。

肥田委員 今答弁がございました五百十八名、私はどう考えても少ないなと実感いたしております。

 弱視の子供は現在二千名から三千名と推定されております。その根拠は、全国で全盲の人たちが三十万人いらっしゃる、発生率から考えて、就学適齢期の子供は三千人から五千人と推定されております。このうち拡大教科書を必要とする子供が約六割と計算するならば、三千人だとすれば千八百人の子供たち、それから五千人だとすれば三千人ということになりますが、この二千から三千人の子供たちの中で、今回、国の計らいで教科書が手にできた子供が五百十八名でございます。ちょっと少ないなという気がいたします。

 これは、学校現場や子供たちが、拡大教科書の無償措置について情報を持たなかったか、それとも知る機会がなかったという結果ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 通常学級に在籍可能な視覚に障害のある児童生徒に対する拡大教科書の無償措置につきましては、昨年の十二月以降、私どもといたしましても、会議や文書などさまざまな機会をとらえまして、教育委員会に対する周知に努めてきたところでございます。いろいろな事務連絡あるいは関係者の連絡協議会、説明会等々を通じまして周知に努めたところでございます。

 今後とも、拡大教科書の無償措置につきましては、より一層の周知が図られますよう、引き続きさまざまな機会をとらえて対応してまいりたいと思っております。

肥田委員 拡大教科書の無償給付は、就学適齢期にある弱視の子供の実態把握とも関連しております。今のところ、何度お聞きしましても、現状を把握していないというお答えが参っておりますけれども、政府の責任で拡大教科書が無償給付されることになった以上、この現実を踏まえたら、これまでのように把握しておりませんでは済まないんじゃないかと私は思います。

 さらに、私、先ほど二千人から三千人と言いましたけれども、本当に子供は一人一人なんですよね。ですから、そういう大ざっぱなくくりをすること自体が、私は子供たちに対して大変失礼だと思っております。

 それで、実態の把握のないまま今後の方策を考えることは、暗やみで鉄砲を撃つということに等しいと思いますので、ぜひ子供たちの教育環境をよりよいものにするためにも、基本的なデータであります弱視の子供たちの就学実態を調査していただきたいと思います。どうしてもできないとおっしゃるならば、できない理由を述べていただきたいと思います。

中山国務大臣 通常の学校の特殊学級に在籍しております弱視児童の数につきましては、平成十五年五月一日現在で、小学校百八十三名、中学校五十四名でございますが、通常の学級に在籍している数は把握しておりません。

 私の、思い出したんですけれども、いつも机、一番前に座っている同級生がいたんですね。どうしてかなと思って後で聞きましたら、実はこうだったんだという話を聞きましたが、そのように、やはり知られたくないという子供もいるわけでございまして、通常の学校に在籍する弱視児童の実態調査につきましては、一つには視力の数値のみで特定できるものではありませんし、また障害を知られたくない保護者とかあるいは児童生徒への配慮も必要であるということから慎重に対応してまいりたい、このように考えているところでございます。

肥田委員 お言葉を返すようですけれども、もちろん子供のプライバシーも大事でございます。しかし、一番最初に申し上げましたように、そういうことの結果、谷間に落ち込んでしまって、今まで教科書も何もなくてボランティアの人たちに助けられてきた子供たちのことを考えますと、大臣、やはり視力検査もするわけですし、大体の数をきっちりつかんでほしいんですが、できるだけのことは一度調査してみるという御答弁をいただきとうございますが、いかがですか。

銭谷政府参考人 先ほど来お話し申し上げておりますように、通常の学校に在籍する弱視の児童生徒の実態については、視力の数値のみで特定できるものでもなく、また障害を知られたくないという保護者への配慮、子供たちへの配慮も必要であることでございますので、私ども、もう少しこの点については研究をさせていただきたいと思っております。

肥田委員 知られたくないということの配慮ということで、もしどうしても調査をされないということでしたら、私は今回教科書を無償にされる政府の姿勢としては間違いだと思うんですよ、税金を使うわけですから。

 では、対象がどれだけいるかということは、知られたくないか知られたいか、子供たちに聞けばいいわけでございまして、文科省が勝手に決めることじゃないと思いますが。もう一度お願いします。

銭谷政府参考人 よく研究してまいりたいと思います。

肥田委員 前向きの御答弁ととらえさせていただきます。次の質問ではぜひ人数を教えていただきたいと思っております。

 そこで、拡大教科書の無償措置の手続が煩雑過ぎる、こういう問題が浮き彫りになってまいりました。ここで、拡大教科書に係るボランティアの事務作業を考えてみたいと思います。

 ボランティアの方々は、まず学校と話し合います。次に市町村教育委員会への手続、都道府県教育委員会への手続、最後に文部科学省に手続をとります。このほか、四月には前期分、九月には後期分、転学扱い分といった事務作業に加えて、納入通知書、完了通知書の書類も提出しなければならないんです。過渡的にはやむを得ないとしても、すべての子供の義務教育に国が責任を持つという大臣の重い決意からしますと、せめて申請手続は行政が行うことが正しいのではないかと私は思います。そして、ボランティアの人々には拡大教科書製作に専念してもらいたい、なるべくいい本をつくってもらいたい、その努力の方に力を傾けてもらいたいと私は思うわけですが、申請手続はまだボランティアでないといけませんか。それとも、行政でやりましょうというお答えが出ますでしょうか。改善すべき点があったら、お答えください。

銭谷政府参考人 拡大教科書の無償給与は、国と拡大教科書を作成しているボランティア団体等との間で購入契約を締結して行うということになります。この教科書の無償給与に係る事務手続につきましては、したがって国の会計制度等にのっとって拡大教科書の確実な供給や納入完了後の速やかな購入代金の支払い等の会計処理を遅滞なく行うために必要な手続ということになります。やはり国の会計制度等にのっとって行う必要があるわけでございます。

 ただ、実際の事務処理においては、契約の当事者でありますボランティア団体が行っている事務の簡素化について、会計制度の範囲内でいろいろ検討するなどして、拡大教科書の無償措置が円滑に行われるように私ども努めてまいりたいと思っております。

 例えば、これはまだ一つのアイデアでございますけれども、今は国が個々にボランティア団体と契約をするわけでございますけれども、ボランティア団体が約四十ぐらいあったと思います、それらのボランティア団体がネットワークを構築いたしまして、その拠点となる団体と国が一括で契約をするといったようなことになれば、双方の事務作業の一層の合理化、簡素化が図られるということもあるのかなと思ったりもして、よくこの辺も検討してまいりたい、あるいは御相談をしてまいりたいというふうに思っております。

肥田委員 当然ボランティアがするべきだという発想には立たないでいただきたいと思います。これは国がやるべき仕事です。そのことを私はもう一度申し上げておきたいと思います。

 それから、現行の申請期限にも問題がございます。盲学校や弱視学級に在籍する弱視の子供たちが拡大教科書を使用する場合、申請期限は九月末です。

 この申請期限につきまして、二〇〇四年の五月二十八日の本委員会でも質問いたしました。そのとき、平成十七年度用の拡大教科書についても、申請期限後に生じた追加分は無償給与の対象とする、拡大教科書の納期とか申請期限の弾力的な扱いについても都道府県の担当者に周知徹底を図ったという御答弁をいただきました。私も十分に納得できる答弁でございました。

 しかし、平成十六年九月十日に教科書課無償給与係から各都道府県教育委員会に出された連絡事務、弾力的な扱いがどのように表現されたかと申しますと、「やむを得ない理由により需要数に変更が生じた場合はその都度速やかに報告願います」と記述されているんですね。これを弾力的扱いと読み取れない教育委員会もあったらしいんです。原則として九月末でなければいけないと行政側が弾力的な扱いを求めるボランティアに押しつけたものだから、混乱が生じたという例もございます。

 こうした混乱の再発を避けるために、国会答弁にもありますが、弾力的な扱いをするということを明記したらどうですか。

銭谷政府参考人 ただいま先生からもお話がございましたように、拡大教科書の無償給与に係る申請期限の弾力的な取り扱いにつきましては、各都道府県教育委員会に対しまして周知をしているところでございます。文部科学省への申請期限である九月三十日以降に生じた追加分についても、その都度速やかに御報告するようお願いをしているところでございます。

 これがわかりにくいというお話もあったわけでございます。私どもとしては、このような申請期限の弾力的な取り扱いにつきましては、事務担当者を対象とした会議、事務連絡などによりまして、都道府県教育委員会を通じまして域内の市町村教育委員会への周知を図ってきたところでございます。ただいまも先生から御指摘がございました申請期限の弾力的な取り扱いについては、より一層周知が図られるように工夫をして努めてまいりたいというふうに思っております。

肥田委員 もう一つ周知徹底を図っていただきたいことがあるんですね。これは納品期限の話なんです。

 ボランティアの皆さんにとって、無償措置契約の条件が四月十五日までに全冊納品する、これは相当過酷な条件なんですね。文部科学省はボランティアと新規に無償契約を結ぶに当たり、納品期限が守れるかの確認を求めていらっしゃいます。もちろん当然のことだと私は思います。

 しかし、ボランティアと教育委員会の間で納品期限の解釈をめぐって折り合いがつかず、拡大教科書の無償措置を進めることができないという事態が起きております。ボランティア側は、四月に一分冊を納め、あとは授業に間に合うように納めると説明しても、行政側は、四月十五日までにすべて納入することが規則であると主張しているわけですよ。

 本委員会における文部科学省のこれまでの答弁は、四月の授業開始までに納入することにしているが、四月以降の納入にも柔軟に対応できる、そういうことをちゃんと答弁でおっしゃっているわけでございますから、こういう答弁を受けて頑張っていただいていると思います。

 しかし、現場では空回りしているということを認識していただきまして、現場の担当者にわかりやすい事務連絡文書を出していただきたいんですよ。よく理解できるような文書をお願いします。

銭谷政府参考人 拡大教科書の納期の問題でございますけれども、これも先生お話がございましたように、分冊になっているものにつきまして、学校での授業に支障が生じないように、年度当初の授業から使用される分の分冊については四月の授業開始時までに納入する、その後に使用される予定の分冊につきましては、四月以降の納入にも柔軟に対応できるようにしているところでございまして、学校での授業に支障が生じない範囲で弾力的に取り扱っているところでございます。

 お話ございましたように、このような納期の弾力的な取り扱いについて、私どもとしては、事務担当者を対象とした会議や事務連絡などによりまして、都道府県教育委員会を通じて市町村教育委員会への周知を図っているところでございますし、ボランティアの団体の方々に対しましても、団体主催の会議等で御説明するなど、納入期限の弾力的な扱いについては周知に努めてきているところでございます。

 ただ、円滑な納入ということが本当に必要なことでございますので、私どもとしては、拡大教科書の無償措置が円滑に実施をされるよう、引き続き納入期限の弾力的な取り扱いの周知に努めてまいりたいと思っております。

肥田委員 情報公開ということも私は文部科学省の大切な仕事だと思っております。

 そこで、どのように拡大教科書や点字教科書が製作されているか、こういう情報は保護者や学校現場に十分に伝わっていないんです。文部科学省は、居住地にかかわらず、どの地域のボランティアにでも作成を依頼することができると柔軟な方針で臨んでいらっしゃるわけでございますから、そうであるならば、この方針の実効性を高めるためにも情報公開は絶対に必要だと思います。拡大教科書や点字教科書に関する総合的な情報を各教育現場に通知したり、文部科学省のホームページに掲載して広く周知する方法があろうかと思います。

 注意していただきたいことは、通知文書を出す場合に、拡大教科書等と書くのではなくて、拡大教科書及び点字教科書と明記した方が解釈の余地がなく風通しがいいと思いますので、そのこともつけ加えさせていただきたいと思います。

 そこで、この情報公開、しっかりとやっていくぞという御意思を伺いたいと思います。

銭谷政府参考人 平成十六年度でございますけれども、都道府県教育委員会からの報告に基づき、国がボランティア団体等を含む発行者と契約をした実績は、拡大教科書については千六百九十八種類、点字教科書については六十二種類でございます。これらの実績は、契約予定一覧として各都道府県教育委員会へ情報提供をしているところでございます。引き続き、情報提供に努力してまいりたいと思っております。

肥田委員 例えば全国で拡大教科書を製作しているボランティアグループ、約七十団体あると伺っております。このグループが首都圏に偏在しているんです。首都圏を離れたところに住む弱視の子供は、ボランティアとのつながりも少ないわけですね。ですから、拡大教科書を希望しても入手できないという厳しい現実もございます。

 また、数少ないボランティアに依頼や問い合わせが殺到して、全国教材製作協議会は、今回の拡大教科書の製作に当たって、七割の子供の依頼は受けることができた、しかし三割の子供の依頼は断らざるを得なかったとおっしゃっているわけでございます。

 ボランティアに依存することの限界、これは明らかだと思います。ボランティア、保護者の努力に左右されるのではなくて、安定した拡大教科書の供給体制のあり方について文科省はどのような対策を今後講じていかれるつもりか、お聞きしたいと思います。

銭谷政府参考人 拡大教科書につきましては、視覚に障害のある児童生徒にとって大変有益な教材でございまして、お話のように、安定的に供給をするということが重要であると認識をいたしております。

 現在、ちょっと教科別に見てみますと、国語、英語、数学の拡大教科書につきましては、民間の出版社から刊行されております。そして、図表等が大変多くて編集が難しいとされている理科、社会については、独立行政法人国立特殊教育総合研究所の編集により刊行しているところでございます。

 独立行政法人国立特殊教育総合研究所では、作成についてのノウハウの普及を図るため、平成十六年に拡大教科書の作成マニュアルというものを作成いたしまして、教科書会社やボランティア、都道府県等の教育委員会などへ配付をしているところでございます。

 こういった作成マニュアルなどの活用をしていただきながら、拡大教科書の安定した供給に私どもも留意してまいりたいと思っております。

肥田委員 今、局長のお話を伺いましたけれども、安定供給にはまだちょっとほど遠いなという実感を持ちます。これは今後の課題なんですね、本当に大きな課題なんです。この拡大教科書の製作、今、試行錯誤しておりますが、関係者の連携についても文科省の努力が期待されているところでございます。

 例えば、拡大写本ボランティアは、現在、手書きやパソコンで入力する、写真、挿絵はスキャナーで読み取る、そういう方法で拡大していらっしゃいます。しかし、検定教科書出版社にはすべてのデータがあるわけでございますから、欧米のようにすべての教科書の内容をデジタルデータ化してだれでも手に入れられるようにするという、そこまでのシステムを今後組んでいこうという方向に努力していただけませんか。

中山国務大臣 今、教育出版社では、教科書の電子データをボランティアに提供する試みについて話し合いが持たれているというふうに聞いておりまして、そういった取り組みを引き続き見守っていきたい、このように考えております。

肥田委員 データを集めてくださっているのは伺っております。ただ、あの表を見ますと、先生のための指導本にくっついたCD―ROMとかなんとかなんですね。ですから、本当にデジタルデータ化してだれでも手に入れられるというシステムをもう少しきちっとつくっていく必要があると私は思います。

 それからもう一つ、次の段階でありますけれども、検定教科書を出版している会社にこれからは同じように拡大教科書をつくることを義務化していく、そういう方向も次のステップで大事だと私は思うんですが、いかがですか。

銭谷政府参考人 ただいまの御提案については、やはりそれぞれの会社の御判断ということになるのかなと思っております。

肥田委員 そう冷たいことをおっしゃらないでください。といいますのは、納本制度だって法律をつくればできるわけです。ですから、法律でもってそのようにお願いをすればできるんですよ。もう一度お願いします。私は最終的にはそのような方向がいいんじゃないかと思います。

 そして、次のステップです。これはやはり、先ほどの大臣の意気込みから思えば、私は拡大教科書を検定教科書にするべきだと思います。そして、国が責任を持って文部科学省著作の教科書を発行しますと、今まで私が申し上げたすべての問題が解決するんです。そうじゃないと、ボランティアも大変、そして最終的には子供たちが救われません。ですから、検定教科書にするべく、もし私たちの力が必要ならば努力いたしますから、その方向で大臣、頑張っていただきますようにお願いいたします。

中山国務大臣 検定教科書になるためは、個々の図書ごとに文部科学大臣の行う教科書検定に合格することが必要である、これはもう御承知のとおりでございます。

 拡大教科書につきましては、もととなります検定教科書の文字等を単に拡大するとともに、文字や図形の配置を変更するなど、弱視の児童生徒が使用しやすいように編集されているものでございます。このため、それ自体が検定を経たものではなく、検定教科書として位置づけることはできないものであります。

 また、拡大教科書は、教科書会社などの出版社が発行するとともに、見え方の違う児童生徒に応じたボランティアが編集したものなど、多様な発行形態が存在するわけでございまして、文部科学省発行にはなじまないもの、このように考えているわけでございます。

 なお、拡大教科書の作成を適正かつ円滑に行うため、作成の際に、検定教科書と同様に、著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できるよう著作権法の一部を改正するなどを行ってきたところでございまして、今肥田議員がおっしゃいましたように、文部科学省といたしましても、今後とも、障害のある児童生徒の教育ニーズに応じた支援を行うための施策を推進してまいりたい、このようには考えておるところでございます。

肥田委員 今できない理由をるる述べていただきましたけれども、私、これでは発展がないと思います。

 確かに、子供たちの見えにくい度合いもいろいろあります。拡大しなきゃいけない。いろいろなことも工夫しなきゃいけない。しかし、大臣が最初おっしゃいましたように、子供の教育は国が面倒を見るんだ、最後まで面倒を見るんだとおっしゃった、あの気迫をいま一度、この拡大教科書、弱視の子供たちは今まで教科書がなかったんです。やっと国が措置をしてくれることになった。しかし、その次の段階は、やはり検定教科書として、すべての子供が同じように学べる、そういうチャンスを大臣、私はつくるべきだと思います。

 もう一度、できない理由はお述べいただかなくて結構ですが、頑張ってみようというお言葉をちょうだいしたいと思います。

中山国務大臣 できない理由はるる説明する必要はないとおっしゃいましたが、やはり今のこの検定の仕方、検定教科書として文部省が認めるかどうかという問題もございますし、また、先ほど来申し上げていますように、個々の生徒の見えぐあいというのは違うわけでございます。そういう意味で、個々に当たりまして、まさにボランティアの方々にはお世話になっているわけですけれども、そういった方々のお力もおかりして、個々の子供たちの本当の実情に合わせた、そういった教科書をつくっていきたいということと、検定教科書として文部省が果たして認められるかどうかということは、また別の問題だ、こう思うわけでございます。

 まさに、委員の熱意もあるわけでございまして、そういった方向でできないものかということについては検討させていただきたい、このように考えております。

肥田委員 ぜひ前向きに進めていただきたいと思います。

 次に、センター入試について一問だけお尋ねしたいと思います。

 大学入試センターでは、現在、弱視の受験生に対して特別措置をとってくださっております。ただ、この特別措置の範囲なんでございますが、弱視受験生の問題用紙の文字は、十四ポイントに拡大コピーされております。明朝体となっております。ところが、弱視用の教科書で使われている教材は、その多くが二十二ポイント、ゴシック体なんです。ですから、試験用文字を十四ポイントからせめて英検並みの十八ポイントへ。そして、時間延長もしてくださっているんですが、現在は一・三倍です。しかし、筑波大学の附属学校なんかは一・五倍になっております。それから、視力制限も、〇・一五から盲学校基準の〇・三未満へ。

 これは、細かい数値の話になりますけれども、子供たちにとって大変大事なんですね、受験の場ですから。やはり一生懸命頑張っている子供たちが正々堂々と入試試験に臨めるように変更してくださる方向でお願いしたいと思うんですが、いかがですか。

中山国務大臣 大学入試センター試験におきましては、弱視受験者に対する試験実施上の特別措置として、昭和五十九年度から、十四ポイントに拡大した試験問題冊子を作成しております。また、昭和六十三年度から、試験時間を一・三倍に延長しておるところでございます。

 文字サイズを十八ポイントにすることにつきましては、結果として、一般的に一ページの文字数が少なくなるため一つの設問が複数にわたってしまう、あるいは、図表に伴う設問においては図表が大きくなり過ぎて全体を見ることができなくなる、さらに、問題冊子の分量が膨大になり扱いづらくなるなどの可能性がありまして、拡大鏡などを利用する弱視受験者にとってはかえって見づらくなることも考えられるわけでございます。

 また、試験時間のさらなる延長や視力制限の緩和につきましては、現在は、弱視受験者と点字受験者を対象とした研究結果を踏まえまして、視力〇・一五以下の者については試験時間一・三倍延長の特別措置を講じておりまして、これを変更するのであれば、通常の受験者や点字受験者との均衡や公平性を十分考える必要があるわけでございます。

 受験機会の公平性を確保する観点から、大学入試センター試験におきまして受験者の障害の種類、程度に応じた特別措置を講ずることは重要であると考えておりますけれども、弱視者の受験の実態、実情等を見きわめながら、今後必要に応じて特別措置の内容について検討してまいりたい、このように考えております。

肥田委員 今さっき申し上げましたことは、子供たち自身が陳情しているんです。ですから、文科省がどうおっしゃっても、現場で試験を受ける子供たちの陳情なんです。だから、そのことをしっかりと認識をしていただきたいと思います。

 それで、ここまで教育問題について、わずかでございますが、取り上げてまいりました。私、文科省の御努力も大変大きいと思っております。評価しております。しかし、大臣、今なお障害を持つ子供たちの教育環境の改善については、相当まだ努力の余地があると私は思いますけれども、大臣はどのように考えていらっしゃいますか。

中山国務大臣 ただいままで肥田委員がるるいろいろとお話しされました。また、これまでの御尽力につきましても承ったわけでございます。

 障害のある児童生徒については、障害の状態に応じましてその可能性を最大限に伸ばす、そして自立して社会参加するために必要な力を培うというために一人一人の状態に応じた適切な教育を行う必要がある、これが重要であると考えております。また、教育の機会均等を保障するため、障害のあるなしにかかわらず、義務教育を受けている児童生徒すべてに対して国は最終的な責任を持っているものとも考えておるところでございます。

 今後とも、すべての児童生徒一人一人が十分に適切な教育を受けられるよう、教育環境の整備に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

肥田委員 視力に障害を持った子供たちは、障害を持ったこと自体、私は決して不幸なことだと思っておりません。それは、子供たちが精いっぱい生きようとする、その真摯な姿からも十分に想像できます。彼ら、彼女たちにとっては、不幸なことは、生きていく上で余りにも社会的障害が厚いということでございます。厚く広く存在するということなんです。障害を持つ子供たちの個性を認めて、その尊厳を守るには、学校教育を含む社会的な障害を一つ一つ取り除いていって、差別扱いされることがないよう環境を少しずつ整えていくことが、私たち政治に身を置く者の責任じゃないかと思います。教科書問題、受験問題は、その象徴的な事例にすぎません。

 きょうの大臣の積極的な御答弁を受けまして、事務方もきっとなお一層張り切って頑張ってくださることと信じておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

斉藤委員長 城井崇君。

城井委員 民主党の城井崇でございます。本日も元気いっぱいに質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、大臣、冒頭一問目、お聞きしたいんですが、私、やはり人間、引き際、やめ際が肝心だというふうに思っています。女性とのおつき合い、引き際が肝心です。たばこをやめるときにもやめ際が肝心です。政治家としての仕事もそうではないかというふうに日々感じることが本当にたくさんあるわけですが、この引き際、やめ際が肝心という点について、まず大臣、お考えをお聞かせください。

中山国務大臣 突然の御質問でございまして、どきっといたしましたが、これは政治家のみならず、出処進退ということは常に大事なことだ、こう考えております。特に政治家、また大臣になりますと、もうそのことをいつも考えながら、大臣になりましたら、いつやめるんだということもいつも念頭に置いて、やはり言動には十分留意してやっていかなければいかぬなということを考えておるところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 そこまでのお気持ち、お覚悟をお持ちの大臣でしたらきっと御賛同いただけると思うんですが、その引き際、やめ際が大事だというのを考えるときに、本日、ぜひ一緒にお考えいただいて、御決断をいただきたいということがあります。

 それは、文部科学省としてこれまで行ってきた政策で失敗したもの、この失敗した政策について決意を持ってやめていただくということをぜひしていただきたいということについて、本日はお伺いしたいと思っております。

 具体的には、二〇〇一年から全国販売の始まっておりますスポーツ振興くじ、ちまたにいいますサッカーくじ、いわゆるtotoであります。このtoto、先日も新聞含めての報道がございました。売り上げが非常にひどい状況になっております。そのために、本来、そもそもの目的であるはずのスポーツ振興のための助成、地方に対しての助成が中心ですけれども、この助成がもう既に成り立たない状況になっています。私、そういう状況を見ますに、この際、このtoto事業を即刻やめたらどうかというふうに思わざるを得ません。

 以下、細かい点を申し上げながら、なぜやめなきゃいけないかというところをぜひ御賛同いただければと思っております。

 まず一点目。そもそも、このtoto、始める前、導入前の仕組みとその売り上げの試算というものが間違っていたというふうに思っています。まず、この導入前の年間の売り上げ試算の額、そしてその根拠という点についてお聞かせください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十年に、旧文部省が民間の調査機関に委託いたしまして、スポーツ振興投票の実施に関するアンケート調査というものを実施したわけでございます。

 これは、十九歳以上の二千名を対象として、サッカーやサッカーくじへの関心でございますとかサッカーくじの購入の希望などにつきまして行ったアンケート調査でございますけれども、その結果を踏まえまして、年間の需要額を一千六百億から二千二百億というふうに推計したというふうに承知しているところでございます。

城井委員 あきれて物が言えなくなってきているんですが、一千六百億から二千二百億という非常に甘い需要の試算に基づいて始まったこのtotoでございますが、さて、ここで現状を伺いたいと思います。

 今期の販売が終了したと聞いています。今年度の売り上げの金額、そして全国販売の始まった初年度と比較した場合の割合について教えてください。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 スポーツ振興くじはJリーグの試合の結果を予想するものでありまして、Jリーグのシーズンというのは、御案内のように、三月から十一月にかけて実施しておるわけでございまして、今シーズンが先般終了したところであるわけでございます。

 今シーズンの売り上げは、約百五十六億というふうになっているところでございます。これは、最初の平成十三年のシーズンの売り上げと比較いたしますと、約四分の一となっているわけでございます。

 今、年度の売り上げということでございますと、これは四月から翌年三月までの売り上げとなるわけでございまして、若干異なってくると思いますけれども、いずれにいたしましても、シーズンごとの比較ということでお答えしたわけでございます。

城井委員 余りにひどい数字で、皆さんもお気づきいただいたかと思いますが、試算に比べますと十分の一です。初年度の売り上げから見ても、もう既に四分の一近くまで落ち込んでいるということになります。

 しかし、私の調べたところによりますと、本来の今年度の売り上げ、見込み額の時点では二百六十億円という数字が出ておりました。結果的には、先ほどありましたように、過去最低の百五十六億円ということであります。試算から十分の一、余りにもひどい結果だというふうに思っています。実際にこれまでも、二〇〇一年に約六百億円、二〇〇二年に四百億円、二〇〇三年に約二百億円、そしてことし、二〇〇四年が約百五十六億円という結果になっております。

 今のこの現状の売上金では、正直言って、いわゆる当せん払戻金、そして運営のための経費、この二つを差し引きますと、収益がほとんど出ないということになります。売上金から配分される来年度のスポーツ振興のための助成金、計算上、二年連続で事実上ゼロということになります。今年度こそ、助成金の執行の残金あるいは経費の削減などで五億八千万円の助成金を確保したというふうに聞いております。しかし、来年はもっと厳しい状況になるということは子供でもわかると思うんですが、来年度の助成金の見込みについて教えてください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申しましたように、くじの助成金は、前年度のスポーツ振興くじの売り上げによる収益を財源としておるものです。来年度の助成金の額の基礎となる今年度の売り上げというものはまだ確定していないわけでございますけれども、これまでの売り上げ状況から判断いたしますと、先生が今御指摘のように、収益を確保するということが極めて厳しい状況にあると考えております。

 そういうことから、来年度の助成金の額につきましては、いわゆる時効金でございますとか事業の執行残というものによることとなると考えておるところでございます。

城井委員 この助成金の金額の決定については、大枠については計算式が決まっているはずです。そういう意味では、売り上げが確定した時点で金額が見えるはずですよ。

 おまけに言えば、今、具体的な金額が出てこなかったのでもう一回お伺いしますが、その執行残というものも今の時点で見えている金額があるはずですから、具体的に答えてください。もう一回お願いします。

素川政府参考人 時効金につきましては、約一億円程度と推計しております。

 昨年度の執行残、これは補助対象事業ができなかったということで執行残になるわけでございますけれども、これにつきましては、一億から二億程度というふうに推計しているところでございます。

城井委員 今の数字で大臣もおわかりになったと思いますが、時効金一億円、執行残が一億から二億ということですから、来年度は最大でも三億しか助成金の原資というものがないということになります。これでは、全国のスポーツ団体、振興助成を待っている人たちの、これまでのお約束をしている内定額を含めて、とてもじゃないけれども期待にこたえることはできないというふうに私は考えます。そうした本来の目的である助成金が、今御指摘を申し上げましたように、非常に惨たんたる状況にあります。そんな中で、この運営元である独立行政法人日本スポーツ振興センターが取っている控除率が五三%、払戻金が当面四七%となっているからであります。

 この日本スポーツ振興センター、売り上げがこれだけ低迷をしているのに、だれも責任をとっていない。職員が一人でも身銭を切って、営業努力を一人でもしたでしょうか。(発言する者あり)そうですか。建物が立派だという声もあります。文部官僚、役員、職員、給料が一人でも減りましたか。天下りの原資になっているという声も、結果としてなっているという声も、もう既にファンから上がっているわけですよ。

 そもそも、今、いわゆる理事を初めとする役員そして職員というのは何人いるんですか。その中で天下りしている文部官僚というのは何人いるのか、その人数についてお示しください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 役職員数でございますけれども、役員が、理事長、理事、監事、合わせまして七名でございます。職員数でございますけれども、四百名ということでございます。そのうち文部科学省出身の役員数でございますけれども、これは三名ということでございます。

城井委員 では、その役員の給与金額は幾らですか。

素川政府参考人 お答え申します。

 この役員等の給与金額につきましては、独立行政法人の役員の報酬、職員の給与水準の公表についてというガイドラインにより公表されているわけでございますけれども、それによりますと、理事長につきましては一千九百万円、理事、これは四人分の合計でございますけれども、約六千四百万円、それから監事、これは常勤でございますけれども、一千四百六十万円ということでございます。もう一人は非常勤でございますので、これは謝金になっているところでございます。

城井委員 売り上げがあれだけひどい状況になって助成金がゼロなのに、理事長の給料は一千九百万ですか。国民が聞いたら怒りますよ。

 ちなみに聞きますが、職員の平均収入は幾らですか。

素川政府参考人 常勤職員の平均給与、これは年齢で申しますと四十四・九歳ということでございますけれども、七百五十四万八千円ということでございます。

城井委員 言うまでもありませんが、助成金ゼロの状況で四百名の職員の方の平均が七百五十四万八千円ですか。国民がどういう状況に今この不景気の中で置かれているか、よく御存じのはずですよね。

 ちなみに、そういったものを含めまして、同センターの一番広い意味で、最広義での人件費の総額は幾らですか。

素川政府参考人 最広義の人件費、これは、基本給、諸手当等々すべて含んだものでございますけれども、四十七億九千二百万円ということでございます。

城井委員 ちょっとあきれて物が言えない状況が続いておるのは皆さんも御承知のとおりと思いますが、人件費四十八億ですか。これだと、ほとんど、スポーツ振興というよりは職員振興と申しますか、天下り振興と言わざるを得ないんじゃないですかね。

 これだけ、どんなに売り上げが減っても、自分たちの給料とかだけ確保した上で問題を解決しようとしているから、改善策なんか出ないんですよ。民間を見習ってください。スポーツ振興に使われている額はほとんどゼロで、今、もしこれが民間企業だったらどうなりますか。売り上げ四分の一ですよ。倒産じゃないですか、倒産。

 このくじの売り上げ低迷の責任はだれにあるんですか、大臣。だれか一人でも責任とりましたか。お答えください。

中山国務大臣 今いろいろとお話を聞きまして、本当に大変だなと思います。(発言する者あり)いや、これはサッカーくじだけじゃなくて、競輪、競馬、地方でやっているものも全体そうでございまして、もうやめようというふうなところもある中でございます。

 また、サッカーにつきましても、サッカー熱は盛んになる一方でございまして、なぜサッカーくじがこんなふうになっているんだろうと。私も、サッカーくじ、疑問に思いながらも、しかしスポーツ振興のためということで、やむを得ないのかなと思って賛成した一人でございますが、今いろいろと実態をお聞きしまして、これはえらいことになっているな、こう思うわけでございます。そういう意味で、いろいろと議連の方でもどうしたらいいか本当に深刻に考えていますし、中央教育審議会の分科会でもいろいろと改善策等を考えているようでございます。

 確かに、こういったシステムをやっていく上にはある基礎的な人数は必要なのでございまして、減らせないのかなと思いますし、減らせる部分もあるんだろうと思います。しかし、何はともあれ、売り上げをふやすということをまず考えなきゃいけないんじゃないか、やはり当面は前向きに考えていくべきかな、そんなことを考えておるわけでございまして、何とか売り上げが伸びていくような方策を、ひとつ皆さんで知恵を出して考えていかなければいかぬ、私も一生懸命考えていきたい、このように考えております。

城井委員 大臣、大変だなとかやむを得ないとか言っている場合じゃないぐらいひどいというのは、後からもう少し御指摘申し上げますので、ぜひお酌み取りいただければと思うんです。議連とか中教審の議論を待っていてはおさまらないぐらいひどい状況になっています。どれぐらいひどいかというのをこれからもう少し御指摘しますが、先ほど言った助成金が既に深刻な影響が出ているということを少し申し上げたいと思っています。

 実際、都道府県の体育協会の多くで今実施をされているスポーツ事業への助成金、これはストップをしています。あるいは、オリンピックのメダル候補、先日のアテネ・オリンピックであれだけ活躍をした人たちですけれども、そういった人たちを含めたJOCの強化指定選手に支給される助成金も、支給停止あるいは支給対象者を絞るという動きがもう既に出てきているわけです。totoを導入したために逆に運営が苦しくなったという地方の体育協会の声が非常にたくさんたくさん我々のところにも聞こえてくるわけですよ。

 地方の助成先が今どれぐらい干上がってきているか、厳しい状況にあるかということをどれぐらい認識されているのかというその認識についてお聞かせください。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 スポーツ振興くじの売り上げ減少に伴う助成金額の減少によりまして、地方のスポーツ関係団体におきましては、例えば事業の重点化とか他の事業、補助金の活用を行わざるを得ないとか、一部事業を縮小するとかというようなことを行わざるを得ないというふうになっている状況は承知いたしております。

 私どもといたしましては、スポーツ振興くじによる助成が不安定になり、このような団体にこれ以上の影響を与えることがないように、くじの売り上げ増に努力してまいらなければいけないというふうに考えておるところでございます。

城井委員 理事長が一千九百万もらったり、職員が平均で七百五十万もらっているうちは、努力をしているというふうには私は言えないと思うわけです。

 この地方に対する助成、選考過程もちょっと不透明になってきているというふうに思っています。実際、本来ならば、どれぐらい大切か、その重要度で判断をすべき助成事業、これに、驚くなかれ、売り上げ貢献度、どれぐらいその売り上げに貢献をしたかという売り上げ貢献度という尺度を加える計画があるというふうに聞きました。これは本当ですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 助成の選考に関しましては、日本スポーツ振興センターに置かれました外部有識者から成る助成審査委員会の意見を踏まえて、事業の継続性とか緊急性、重要性等を勘案して助成を行っているところでございます。

 先生今御指摘のありました、地域における売り上げ貢献度ということでございますけれども、実は、昨年度決定されました審査委員会におきまして、地域のスポーツクラブの活動助成に当たりまして、人口千人当たりのくじの売り上げ状況、これは都道府県別でございますけれども、それを若干その指標といたしまして加味したということでございまして、今年度につきましてどのような指標を設けるかということはまだ決まっておらないわけでございますけれども、計画があるということではなくて、昨年度の指標として一部使ったということでございます。

城井委員 ということは、昨年行われたということで申しますと、これだけある意味で割り当てをされて、売り上げに貢献をするために一生懸命頑張っても、助成がほとんど出ないですとかゼロですとかという状況になっているということですよね。そういうことだったら、最初から、そのスポーツ団体にしても、自主的な事業等で頑張ろうというふうにするわけですけれども、そもそも、それが成り立たないから公的な助成があったはずで、ある意味でそういう弱みにつけ込んで割り当てをするようなやり方というのはいかがかというふうに思いますが、この点についてどうですか。

素川政府参考人 売り上げ貢献度という尺度、これは全体の一割程度のシェアといいますか、そういう評価になっているようでございますけれども、これは、当該補助金を受ける団体がどれだけ購入したかということではなくて、その地域全体でどのような売り上げの実績があったかということをその指標にしているということでございます。

 そういう意味におきまして、地域のスポーツ振興について、ある程度このようなことを反映させるということについては特に問題なことではないんじゃないかというふうに考えております。

城井委員 地域全体に割り当てるということは、その後に何が起こるかというところまで想像がつかないんですか。それぞれノルマになるんでしょう。ノルマを課してという形になるんじゃないんですか。そういう、ある意味で逃げ口上みたいなことを言われても困るわけであります。この余りにもひどい割り当ての分に加えて、これは、はっきり言って、仕組み的にも最初から不備がありました。その点を御指摘申し上げたいと思います。

 このくじの導入に関して、システム構築あるいは機器の設置というものについて三百五十億円の初期投資が必要でございました。これを毎年の売り上げの中から七十億円ずつ五年間で返済をする計画がある、立てていたというふうに聞いています。しかし、今年度は、この七十億円を、結局、売り上げが上がらなかったということで捻出することができない、来年度以降に繰り越すということになったと聞いています。今後二年間でこれを上乗せ返済する予定だということのために、来年度以降の経費負担というものは一層苦しくなるわけです。これらの点についてはどのようにお考えになっているわけですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、平成十三年から始まりました第一期の契約におきまして、受託金融機関におきまして初期投資経費として約三百五十億を支払ったということでございまして、これは日本スポーツ振興センターにおいて償還していかなきゃいけないということになっているわけでございます。これにつきまして、売り上げの減少によりまして償還が順調に進んでいないという状況がございます。売り上げの減少によりまして償還をめぐる状況というのはより厳しくなっているということは、事実でございます。

 私どもといたしましては、日本スポーツ振興センターと連携いたしまして、各種のキャンペーン等を通じてこのくじに関する売り上げの増加に努めるということの中で償還計画を考えていく、また、所要経費につきましてもその節減を図ることで未償還金を償還するということができるようにしていきたいものと考えているところでございます。

城井委員 実際、独立行政法人に対する管理監督責任も、一義的には文部科学省にあるわけです。もちろん、その長は大臣です。大臣、今も御説明いただきましたように、いわゆる果実である助成金が生まれないんですよ。その助成金を生まない上に、先ほど明らかになりましたように、初期投資のローンも払えないわけです。会社だったら倒産です。これを破綻と言わずして何と呼ぶんでしょうか。大臣、お考えをお聞かせください。

中山国務大臣 まさに、そういう意味では危機的な状況にあるというふうには認識するわけでございます。

 しかし、長年にわたりましてこのサッカーくじの設立に当たってこられたたくさんの方々の思いもあるわけですけれども、それがこういう形になっている。やはり、システムに欠陥があるのか、そういったことも含めて、どうしたらいいのかということは本当に皆さんで……(発言する者あり)

斉藤委員長 不規則発言はお控えください。

中山国務大臣 ということで、今不規則発言がありましたけれども、いろんな売り方もありますし、いろんなことをまた考えられるんじゃないかと思うわけでございまして、まさに今そういった状況にあるということを考えながら、しかし、では、これをやめてもいいのかというふうな逆の発想からどうしたらいいんだということを考え、先ほど申し上げましたように、今サッカーは非常に盛んになっていましてサポーターもふえているわけでございますから、サッカーくじのサポーターをいかにふやすかということを真剣に考えなきゃいかぬ、このように考えているところでございます。

城井委員 大臣、やめてよいのかというお答えで申しますと、やめてよいと思います。スポーツ振興の助成、支え方もほかに方法がありますから、我々から後ほど御提案しますので、ぜひそこはおやめいただくという方向でお考えいただければと思います。

 というのは、今の売り上げを伸ばそう伸ばそうとする場合にも、結局、今肝心の顧客の中でのtotoに対するなぜ買わないかという理由のところ、先日もセンターの方で調査を行われたということを聞いておりますが、この部分がもうかなり致命的なレベルにまで達しているというところがあります。

 その理由なんですが、少し細かく申しますと、私の分析でも大きくくくって十個ほどあります。その点、何点かお伝え申し上げながら、ぜひおやめいただくということを御決断いただきたいと思うんです。

 まず、一番目の理由としては、このくじは正直言って当たりません。当たらないから、その結果、当たらないを繰り返すことで当たる気がしないに至っているわけです。

 実際、totoは今百六十万通りのくじの組み合わせがあります。二十六回実施で七回しか一等が出ていません。新しくできたtotoGOALというゴール数を当てるものも百六万通り。これは宝くじと同じレベルなんですが、昨年の三十八回中、全部的中の一等が結局出なかったという一等当せんなしが十二回もあるんですね。全然当たらないんです。

 しかも、一般の方々の御意見を聞きますと、今Jリーグのチームは二十六ありまして、チームが多過ぎて予想ができない、しかもtotoのくじの当て方がよくわからない、というか存在すら知らないというような状況になるわけであります。totoGOALに至っては、引き分けの導入で予想が非常に難しくなったのに文部科学省はこれで全然策を講じていませんし、当たりやすいと宣伝している割にはもっと難しい予想になっているというところがあるわけですが、当たらないというところに対してまず根本的な問題があると思うんですが、この点、どうお考えでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 このスポーツ振興くじにつきましては、制度設計の段階におきまして宝くじ並みにするということで、百万通りといいますか、一等が百万分の一であるということが、これは射幸心をいたずらにあおらないという観点からあえて一等の確率というものを百万通り以上にするということが議論されたわけでございます。そういうようなことで、今、totoにつきましてもtotoGOALにつきましても、百五万通りもしくは百六十万通りということになっているわけでございます。

 いずれにいたしましても、日本スポーツ振興センターが行ったアンケート調査におきましては、そもそも当たらないということについて、購入頻度とか購入金額が下がった理由の高い位置にあるわけでございます。そういうことから、現在、私どもの方ではより当たりやすいくじについて検討してまいりたいと考えているところでございます。

城井委員 先ほど射幸心をあおらないという言葉がありましたが、当せんを目指す心というのはまさに射幸心じゃないかというふうに思うわけで、既に文部科学省自身も自己矛盾に陥っているというところを指摘させていただきたいと思います。

 この当たらないという部分に加えまして、もう一つ致命的なところがあります。それは……(発言する者あり)ぜひお聞きください。配当が余りに安過ぎるというのを二番目に挙げさせていただきたいと思います。

 実際に買っているファンというのは、当せん金を目当てに買っているというのは間違いないわけですし、外れてもスポーツ振興に役立てればいいというふうに考えたわけです。でも、先ほど御指摘申し上げましたように、当たりにくい上に、当せん金は安い、助成金にもならないとなれば、だれも買わなくなるのはもう言わずもがなだというふうに思うわけであります。

 全体的に見ると、一等当せん金が大体数百万円から二千万円前後となるケースが多いわけですけれども、この金額は、高額だけれども人生が変わるほどではないという微妙な金額だというふうに思います。それだけで集客と売り上げが望めるという域には達していないというふうに思うわけですが、この配当が余りにも安過ぎるという点について、いかがお考えでしょうか。

素川政府参考人 配当につきましては、全体の配当の枠と実際に当たった数の割り算でございますので、必ずしも理論値でいくわけではございませんが、先生御指摘のように、特に平成十三年度、最初のころには延長Vゴール方式をとっていたということで、当たる確率というのが非常に高かったというようなことで、これにつきましては平成十四年度から、Vゴール方式ではなくて、その他ということで、引き分けを含むその他の分類を統一した結果、低額の当せん金が少しは少なくなったということでございます。

 いずれにいたしましても、最高当せん金額ということにつきましては、平成十六年度より従来の一億円から加算金がある場合には二億円としたということでございますけれども、この配当金につきましてくじを買う方の一つのインセンティブになっているということは十分認識しておりますので、この点につきましても十分配慮してまいりたいと考えております。

城井委員 今、当せん金の上限について触れられましたが、実際にもう一回、売り上げのグラフ一覧表をぜひ後ほど見ていただきたいと思うんですが、当せん金の上限を引き上げた後にも、残念ながら売り上げ低迷に変化は起こっておりません。問題は上限ではないというところもあわせて御指摘をしたいと思いますので、後ほど御検討ください。

 この理由の三つ目ですが、購入が非常に面倒くさいという声が大きく上がっています。実際、十三試合も予想させて用紙に書き込む労力をかけさせている割には宝くじと同じぐらいに当たる確率が低いというのは先ほど御説明があったとおりです。これだけ難しいと、素人さんはまず近づきません。

 おまけに、実際にくじを売る売り場が非常に場所が限られています。余りに顧客の利便性に配慮がないというふうに思っています。実際に販売を行っているのが、金券ショップ、宝くじ売り場、携帯電話ショップ、ガソリンスタンド、あと最近、会員さんの限定でコンビニが始まりましたけれども、その多くが都市圏の繁華街に偏在をしているわけであります。地方によっては、車で数十キロ行ったガソリンスタンドに行かなきゃならないわけですよ。その上で、ガソリンも入れなくてサッカーくじだけ買いに来たのかと店員に文句を言われたという例すら起こって、顧客に嫌な思いをさせるというのはどういうことなのかというふうな話すら聞こえてくるわけです。

 売り場が限られているのに加えて、実際に売り場たる販売店、現在、収支が見合っていないという深刻な問題があります。この販売店の支出が、今、端末リース料と通信料を加えた支出が収入の売上手数料よりも圧倒的に多いというふうに聞いています。この支出としての端末の貸し出しの総数と、その一台当たりの端末リース料それから一台当たりの通信費、あわせて販売店一店舗当たりの売上手数料、どうなっているのかお聞かせください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 販売店の端末の貸出総数、これは本年の九月現在で約四千八百台でございます。一台当たりのリース料、これは専用端末で年間十二万円、そして通信費につきましては年額が八万円ということになっているわけでございます。そして、販売店一店舗当たりの売上手数料は売上額の五%というふうになっているところでございます。

城井委員 今、売上手数料が五%というのがありましたけれども、私ちょっと、これは何%出てくるかわからなかったので、いろいろ計算をしてきました。

 そうすると、開始当初の売り上げですと、三%でとんとん、これはぎりぎりもうけなしということになります。でも、今年度、〇四年度の売上水準と店舗数から見ますと、どう見積もっても、二五%以上の売上手数料がなければ最低限の経費も出ません。ある意味で、それだけ販売店にしわ寄せをしているという状況があります。

 便乗する効果や本業の売り上げが伸びるどころか、むしろ迷惑をしているのではないかというふうに思うわけですが、採算がとれている販売店というのは実際にあるのか、あれば幾つか、それは全体の販売店数の何%になるのかというところをお聞かせください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 販売店につきまして、それぞれ採算がとれているかどうかということを全体の調査はしておりませんけれども、一定の推計によりましてお答え申し上げたいと思います。

 今お話しいたしました、リース料と通信料を合わせますと年額二十万円ということでございますので、売上額の五%ということが手数料といたしますと、そこから導き出せる計算式といたしまして、年間約四百万円の売り上げが一種の収益の分岐点というふうに推計される、想定されるのではないかというふうに考えられます。

 そういうことで、年間四百万円以上の売り上げの店舗ということを見てみますと、約四分の一が黒字の状況ということでございます。

城井委員 四分の三が赤字ということだと思いますが、いかにひどいかというのを、大臣、おわかりいただいたかと思います。

 このように、今幾つか、十個のうちで挙げた状況の中でも相当にひどい状況にある、それはあくまで仕組みの不備だけではなく、運営の面でもかなりひどい状況になっているというのをぜひぜひ御理解いただきたいというふうに思っています。

 もう一点お聞きしますと――もう余り時間がないのでこれで締めますが、というある意味で、指摘して余りある問題点を踏まえて、大臣、やはりこれはやめることを含めて真剣に御検討いただくということが、私は先ほどの御答弁からしてもかなり確信を持って必要だというふうに思うわけですが、大臣、御見解をお聞かせください。

中山国務大臣 今、城井委員からるる御説明いただきまして、先ほども言いましたように、危機的な状況にあるなということも認識しましたが、今、いろいろと御説明いただきましたように、この仕組みだとか運営方法だとか、あるいはくじの多様化とか販売方法だとか、いろいろなことを工夫していけば、むしろこれはこれから明るい展望が開けるなと逆に激励をいただいたような感じがあるわけでございます。

 先ほども申し上げましたけれども、これだけサッカー熱が盛んになってきているわけでございます。サッカーを楽しみながら、自分がサッカーくじを買うことがスポーツ振興にもつながっているんだと言えば、そのことがわかっていただければ、もっともっとこのサッカーくじを買う若い人たちもふえてくるのじゃないかなとむしろ激励されたような思いでございまして、もう一回こういうことについては前向きに検討させていただきたいな、このように考えておるところでございます。

城井委員 時間がなくなりましたので最後にしますが、大臣、先ほど言った、こういう部分は工夫できるのではないかと大臣がお考えの部分、実はこの導入の前の国会審議で、それをやってはならぬということで国会審議の中でわざわざ見送りをして、規制をかけた部分でございます。そういう意味では、今、文部科学省は国会審議に付することなく政省令の改正で改革までいこうというふうにしておると聞いておりますけれども、ある意味で、事業の改廃を含めてかなり根本的な議論を国会でやってからでなければ、小手先を繰り返すと、第二、第三の例えばグリーンピアのようなああいう形になってしまうのではないかというふうなところを強く強く御指摘申し上げたいと思っています。

 こういう課題の責任は、一義的には文部大臣、そして法案を提案して審議してきたこの文部科学委員会にもあるということを最後に御指摘申し上げて、早急に私のやめてほしいという考えを検討していただくことを要請して、質問を終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 長島昭久君。

長島委員 民主党の長島昭久です。

 この文部科学委員会に所属をさせていただいて初めての質問でございます。

 私は、外交、安全保障をやりたくて政治家を志したわけでありますが、ですから、口の悪い同僚には何でおまえがここにいるんだといつも言われるんですけれども、私も、小学四年生の娘、それから幼稚園の年中に通っている娘、二人おりまして、やはり教育の問題は避けて通れない、とりわけても義務教育の問題は避けて通れないということで、きょうは、午前中も先輩議員の皆さんから質疑がありましたけれども、改めて、中山大臣を初めとして文部科学省の皆さんにこの義務教育にかかわる国庫負担金のあり方について質問させていただきたいというふうに思います。

 先ほど中山大臣は暫定措置というような御説明をされていましたけれども、やはり私の認識では、中山大臣の御健闘もむなしく、来年度予算に四千二百五十億円の国庫負担金の削減が決まってしまった。

 そして、これも先ほど塩谷副大臣が御指摘いただきましたけれども、どうも守る側も攻める側も、義務教育の将来といったものに議論を闘わせるのではなくて、何となく数字合わせで終わってしまったような、もちろん攻める側は三兆円ありきという議論であったことは言うまでもないわけですけれども、その中で一番大きな二・五兆円の義務教育の国庫負担金に目をつけた、そして最終的には中学校分、なぜ中学校なのか私には理解できないんですけれども、その削減を先行させた、これはまさに数合わせだ、こういう世間の評価だと思います。

 ただ、守る側も、結局のところ国庫補助金というのは、全国の教職員の皆さんの給与額、そしてその職員の数、こういうことに帰結されるわけですから、いずれも数の闘いだったんじゃないか、こんなふうに思うんですね。

 その中で、私がまず最初に伺いたいのは、前回の十月二十七日の伊藤委員の質疑に対する中山大臣のお答えの中に、これはほかのところでもいろいろおっしゃっているんだと思いますが、国庫負担制度が廃止されると、端的に言うと、教育の質が落ちる可能性があるんだ、だからこれは受け入れることはできないんだと。ちょっと引用しますけれども、「仮に、この義務教育費国庫負担金を一般財源化した場合に、地域によっては教育の機会均等や教育水準の確保に著しい支障を生じるという事態になれば、それは憲法等の要請に対する国の責任を果たしているとは言えない状況になると考えております。」このようにおっしゃっておられるんですが、改めて、なぜ国庫負担金制度が廃止というか削減されると教育の質が落ちる可能性があるのか、御説明いただきたいと思います。

下村大臣政務官 それでは、最初に私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 仮にこの制度が廃止になった場合、これによって、地域間の税収格差によりまして都道府県における教育費の財源不足に陥る、これが四十道府県あるのではないかと試算されます。その財源不足を地方交付税で調整するということになるわけでございますけれども、そもそも地方交付税自体が今度の三位一体改革によって総額抑制されるということで、必要な財源が確保されないということになるのではないかというふうに思っております。

 既に学校の図書費等も交付税化されていますが、これが自治体によって全額使われていないという実態があるわけでございまして、結果として、すべてのところで義務教育における質が落ちるということではございませんけれども、義務教育の水準に著しい地域格差が生じてくるおそれがあるということは必然的ではないかというふうに思っております。

 文部科学省が平成十三年に行いました教育課程実施状況調査、この結果によりますと、現在は、公立の小中学校の大都市においても、また市においても、あるいは町村、この三つにおける学力格差はないということで結果は出ておりますけれども、これは現在、財源保障を含む教育政策の成果であるというふうに思っておりまして、義務教育の国庫負担については、このような観点から、国がきちっと財源的にも責任を持つということが、義務教育の地域における質の違いが出ない、最低基準を守るということにつながるのではないかと思っております。

    〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕

長島委員 ありがとうございます。

 確かに、今お話がありましたように、財源不足の問題というのは一つの懸念材料になるんだろうというふうに思うんですね。しかも、国が負担している二・五兆円というのはかなり大きな規模でありますね、その数字自体は。しかし、全国の小中学校にかかっている経常経費の総額からすると、これは実は三割弱。さっき大臣も三割弱ぐらいでと少し自嘲ぎみにおっしゃられましたけれども。

 義務教育費総額、これは釈迦に説法かもしれませんが、総額が八・七兆円。今お話がありました運営費、これは先生方の旅費とか教材費、そして図書費、光熱水道費、これが合わせて一・二兆円、そして人件費が七・五兆円、そのうち国庫補助を受けるのが二・五兆円、三割弱。つまりは、逆に言うと、地方が今でも六・二兆円という、七二%、先ほど数字ありましたけれども、義務教育費の大半を負担している事実には変わりないわけですね。

 改めてお伺いしたいんですけれども、地方が負担している義務教育費全体の三割に満たない、小中学校の教職員の皆さんの給与額の半分を文部省がどうしても握っていないと、今言ったような、財政の不均衡から教育の質が落ちていくというのは、私はちょっとにわかには信じがたいのであります。

 つまりは、これはもう地方から、地方六団体も含めて、地方から声が上がっているわけですけれども、義務教育費に係る経費の三割弱という国庫補助では、そもそも政府が強調されている制度の根幹を支える財政保障の役割は十分には果たし切れていないのではないかというふうに思うわけですね。もちろんフランスやイタリアのように全額国庫負担、先ほど大臣はそれが一番望ましいというお話もされていましたけれども、そうであるなら、これがなくなるかなくならないかというのは、まさに教育の質に直結する可能性を秘めていると思いますけれども、この三割に満たないというシェアの中で義務教育の質を云々するというのはいかがなんでしょうか。大臣、もう一度この点について大臣から御答弁いただきたいと思います。

中山国務大臣 まさに国が義務教育をしっかりと堅持していくということであれば、それは一〇〇%国ということも考えられるんでしょうけれども、現実問題としてはそうなっていない。では、義務教育の根幹とは何かということをずっと考え続けてきているわけですけれども、やはり教育は人であるというふうによく言われますが、立派な先生方をいかにして確保していくかということが一番大事だろう、こう思うわけでございます。

 そういう意味で、今、学校の先生方の給料の二分の一は国が持ちます、こう言っているということは、トータルとして、二分の一の倍、まさに一、先生方にこれだけは、どんな都道府県でもちゃんと先生方の給料を払ってくださいよという大きな方針みたいなものを示しているということにもなるわけでございますから、そういう意味で、二分の一とはっきりわかっているということは、ああそうか、これは半分なんだなということを含めて、地方の方でも教育費、学校の先生方の給料を含めて義務教育費の予算というのを確保する、その大きな支えといいますか土台になっているんじゃないか、そういう意味で意味があるんじゃないかな、このように考えております。

長島委員 確かに土台というのはいい表現だなと思いますけれども、しかし、公立の高校を考えていただきたいんですね。二・四兆円、これは全部地方自治体が負担していますね。ここでの教育水準というのはしっかり確保されているんですよね。ここでの水準は、地方自治体に任せていると確保されないんでしょうか、それともしっかり確保されているんでしょうか。そこをお答えいただけますか。

銭谷政府参考人 高等学校の教育水準の確保についてのお尋ねでございますけれども、高等学校と義務教育をちょっと比較してみたいわけでございますけれども、高校は、義務教育と異なりまして、地方自治体には設置義務が課されておりません。設置や収容規模については、公私立の比率や地域の実情に応じまして、各地方自治体の裁量にゆだねられているわけでございます。また、高校は、受益者負担の考えに基づき授業料を徴収する有償の教育機関でございます。以上、お話し申し上げましたように、制度上も高校は義務教育と大きく異なっております。

 その結果、地方自治体の財政力に応じまして、設置、入学定員、授業料など独自の調整が可能でございまして、現在一般財源でも対応できているという状態でございます。したがって、その結果、公立の高等学校の比率は、都道府県におきまして大変大きな差がございまして、九割以上を占める県から四割台の県まで区々でございます。

 なお、高校の教職員につきましても、配置基準は高校標準法というもので定められております。また、教育内容については、学習指導要領で全国的な教育課程の基準が定められているわけでございますが、義務教育、小中学校と比較した場合には、非常に多様な教育活動ができるような設定となっております。

 国庫負担金がなくても、一般財源でも高校の教育水準が確保されているというのは、以上のような義務教育と高等学校との違いによるところが大きいと考えております。

    〔稲葉委員長代理退席、委員長着席〕

長島委員 今触れていただきました標準法、これはやはり大きな要素なんだろうというふうに私は思うんですね。つまりは、結局、国として、根幹と言われている保障すべき学級の編制とか教職員数といった教育行政の水準というのは、確かに義務教育において国庫負担金が担っている部分というのは無視できないかもしれませんけれども、むしろこれは標準法の規定、基準によって確保されていると考えるのが合理的ではないんでしょうか。そして、給与についても、地方公務員法の二十四条でしっかりと、ある意味でいったら下げどまりしているというか、これ以上下げてはいけない、こういう規定がございます。

 つまり、全国一律といいますか均等に、教職員の数を確保して、学級編制を確保して、そして教師の人材の質を確保したいというのであれば、これは標準法やあるいは一九七四年にできた人材確保法があれば十分なのではないか、こういう声は地方から随分上がっているわけですね。

 ですから、文部科学省がしきりに気にしている教育水準という話は、このような法律上の基準をしっかりと地方自治体に遵守させるという担保をつければ、私はそう簡単には義務教育の根幹は揺るがないんじゃないだろうかというふうに思うんですが、いかがでしょう。

下村大臣政務官 委員がおっしゃるとおり、どんな担保をつけるかということがポイントになるというふうに思いますけれども、仮に義務教育費の国庫負担制度を廃止した場合に、使途に限定のない一般化財源ということになるわけでございまして、現行において、たとえ法律で教員配置の標準を定めたとしても、現実問題として、三位一体後の地方の財政状況が厳しくなる中で、各都道府県が法律で定めた標準に見合うだけの予算を確保できない状況に追い込まれる可能性というのは十二分にあるというふうに思います。

 また、御指摘の人材確保法でございますけれども、教員の給与について優遇措置を講じるということでございますけれども、標準定数を充足させるための予算が措置できなければ、やはりすぐれた教員を必要数確保するということが事実上できなくなるというふうに思います。

 このように、標準法とそれから人材確保法、そして義務教育費の国庫負担制度、この三つが相まって初めてすぐれた教員を必要数確保できるという仕組みに今なっているのではないかというふうに考えております。

長島委員 その三つの要素が相まってというのは非常にわかりやすい表現でありまして、ありがとうございました。

 ただ、仮に現行法制度のもとでも、例えば標準法の十九条、一定水準を下回る地域に対しては文科大臣が指導できることになっていますね。十九条を読ませていただきます。「文部科学大臣は、公立の義務教育諸学校における学級規模と教職員の配置の適正化を図るため必要があると認めるときは、都道府県に対し、学級編制の基準又は公立の義務教育諸学校に置かれている教職員の総数について、報告を求め、及びあらかじめ総務大臣に通知して、指導又は助言をすることができる。」これで十分担保し切れるんじゃないだろうか、こういうふうに私は思うんですが、中山大臣、いかがでしょう。

中山国務大臣 これは一つには、考え方の違いでございますが、そういうふうに基準だけ示して後はそちらでちゃんとやれということと、今私どもがやっていますように、一応の基準を示して、そして総額としてまとまった予算を地方にやりまして、総額裁量制といいますけれども、それでもってある程度自由に使ってほしいということなんですけれども。

 前者については、いろいろ議論いたしましたが、まさにこれは地方分権に反するといいますか、権力行政ではないかと。先ほど御質問がありましたけれども、警察がそうなんですけれども、こういう基準を示したからこれでやれよときちっとやるのと違って、教育というのはまさに、そういう意味では逆に、極めて非権力的な行政ではないか、こう思うわけでございます。そういった指導助言で果たして地方が聞いてくれるのかどうか、それは、ないそでは振れぬというふうなことだって考えられるわけでございますし、そのようなところはきちっと国の方である程度は責任を持ってやるべきだ、そういうような考え方に立っているわけでございます。

長島委員 確かに全額国庫負担をしていれば今の大臣の御発言は非常に意味深い発言だと思いますし、あるいは財政状況が国も地方も許されれば、私は、これからのトレンド、後でもう少し詳しく触れようと思っていますけれども、地方分権の流れとか、あるいは国の財政の状況とか、こういうことを考えたときに、この国庫負担制度だけをある意味で握り締めていくことが本当に文部科学省にとっていいのだろうかということは、問題意識として持っているんです。

 今大臣がお触れいただいた標準法の解釈の弾力化、総額裁量制なんですけれども、例えば以前は、少人数学級を地方の努力、これは自主財源で実現しようとすると国庫負担金の配分額を削減されちゃうとか、こういう非常に理不尽な制約が加えられていたようなんです。しかし、聞くところによると、ことしの四月から導入された総額裁量制で地方の裁量権が大幅に拡大した、こういうことが言われているわけですけれども、ぜひ、国民の皆さんはこれをごらんになっておりますので、具体的にどんな地方のフレキシビリティーが高まったか、実例を幾つか挙げて、以前はこういうことはできなかったけれども、この総額裁量制のもとでこういうことができるようになったんだという事例を挙げていただければありがたいと思います。

銭谷政府参考人 総額裁量制についてのお尋ねでございますが、総額裁量制は、基本的には、都道府県の教職員の平均給与に標準法で定める教職員定数を掛け合わせて得た、これを総額といたしまして、その二分の一を国庫負担するという制度でございます。負担金総額の範囲内で給与額や教職員配置について都道府県の裁量を大幅に拡大するものでございまして、先生のお話にございましたように、今年度から新たに導入した制度でございます。

 この総額裁量制の導入によりまして、従来国庫負担の対象とならなかったいわゆる少人数学級の実施ということが可能になってございます。現在までのところ、四十五県で学級編制の弾力化といったようなことが行われております。それから、非常勤講師の活用による少人数指導や習熟度別指導の実施、障害を持つ児童生徒への支援、小学校における専門性を生かした専科教員の配置など、多様な教育活動の充実が図られているところでございます。また、三点目といたしましては、能力、実績に応じためり張りのある給与支給といったようなことも可能になってございます。地域や学校の実情を踏まえまして、特色をより生かした教育施策の展開を可能にしたものだと考えております。

 私どもといたしましては、今後とも、この総額裁量制のメリットをより生かした多様な教育施策の展開が図られるように、総額裁量制について十分アピールをしてまいりたいと思っているところでございます。

長島委員 ありがとうございました。

 総額裁量制の今後の課題などについては後で少し触れさせていただきたいというふうに思います。

 今お話を伺っているように、文部科学省としても、地方分権の流れ、先ほど、内閣の一員として分権化の流れは、大臣も、これは志向するんだ、こういう御発言がありましたけれども、地方分権の流れというのはある意味で認識をされている、そして、教育の根幹については国が責任を持つけれども、具体的な取り組みについてはなるべく地方に自由にさせていこう、こういうトレンドは十分に認識をされておるんだと思うんです。特に、平成十二年に施行された地方分権一括法におきまして、義務教育は機関委任事務から自治事務になっておりますから、地方分権の推進というのは、これは歴史の必然と言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、もはやだれにもとめられない流れなんだろうというふうに思うんですね。

 そこで、現状認識を伺いたいんですが、これまでも、歴史的に見れば、徐々にこの義務教育の国庫負担というのは地方に移されてきた、一般財源化してきた流れがあると思いますね。運営費なんかは昭和六十年に一般財源化されているわけです。

 大臣、今後、この二・五兆円という、全体から見れば三割弱なんだけれども、しかしここはもう根幹の譲れないところだ、こういう御指摘なんですけれども、今回ですら地方六団体からの相当な波風にさらされました。財務省や総務省からも相当な攻撃を受けて、攻撃というのはちょっと語弊があるかもわかりませんが、何とかこの中学校分の八千五百億の半分で、先ほど徳俵というお話がありましたけれども、徳俵で残ったんです。そして、来年の秋の中教審の審議の結果を待とうという、先送りの感がなきにしもあらずですけれども、こういうことで辛くも今回四千二百五十億円という結果におさまったわけです。

 しかも、現在が全額国庫補助であれば、これから、あと十年、二十年、三十年、どんなに地方分権の流れがすさまじかろうと、少しずつそこから地方へ移していこう、こういう話になろうかと思うんですけれども、しかし、何かずっと譲ってきて、最後の徳俵、二・五兆円、もうこれは絶対譲れない、こういうことで、何が何でも死守しますと。

 前回の委員会でも、自民党の皆さんから社民党の皆さんまで、とにかく文科大臣頑張れ、何か一昔前の農業団体の、米一粒たりとも外国からは入れないというような、そんな趣であったので、私は初めてこの文科委員会に所属させていただいて、本当にそうなのかなと実は思った部分もあるんです。ぜひ事実認識が誤っていれば正していただきたいんですが、もしこの国庫負担制度が維持できないとすると、文科大臣、教育の質に関しては、文部科学省としてはもうお手上げなんでしょうか。この部分というのはそれぐらいデスパレットなぎりぎりの状況なんでしょうか。

中山国務大臣 先ほどから副大臣等も答えておりますが、一般財源化された教材費だとか旅費だとか、あるいは図書整備費等がどんどんどんどん減ってきているということもあるわけですね。

 そういう意味で、この義務教育費国庫負担が全額地方に行った場合、最初のうちはそうかもしれません。これは今までの例と同じかもしれませんが、実はこれから非常に地方財政は厳しくなってまいります。交付税の改革と言われるものも、この改革期間中二年間は特別だということになっていますが、実はその後は大変なことになる、この辺が見通されるわけでございまして、果たしてそういうときに財政力の弱い県がきちっとした負担ができるんだろうかということになりますと、極めて心細いと思っているのが率直な私の感想でございます。

 そこで、先ほど申し上げましたように、これだけはとにかくきちっと手当てをしなきゃいけないんだよ、そういうふうな基準といいますか土台みたいなものを国が示すということは絶対大事なことだろう、こう思っているわけでございます。

 先ほど、地方分権の流れがとまらない、こういうふうに私も申し上げました。実際、教育についても、地方は地方でいろいろ工夫しながら本当にいい子たちを育ててほしい、その方が子供たちにとっても本当にハッピーだろう、こう思うわけでございますが、何も文科省は、義務教育費国庫負担をてこにして地方を支配しようとか、そんなことは全く考えていないんですね。これは本当に違うなと思うわけでございまして、そこのところは御理解をいただきたい、こう思っているところでございます。

 私どもは、とにかくこれから先、日本経済がどうなっていくか、財政がどうなっていくか、その中で子供たちの将来ということを考えた場合に、やはり文部科学省も責任を持たなければいかぬ、本当にそういう責任感からこのようなことを主張しているということを御理解いただきたいと思います。

長島委員 大臣のその責任感というのは大変私にも響く言葉でありますが、やはりトレンドというのはひとつ見きわめておかなければならないと思うんですね。つまり、この義務教育の国庫負担金二・五兆円、あと十年、二十年、絶対に守り通せるというふうに断言できる方、このお部屋の中におられますか。私は、これは、大きな流れの中でなかなか難しいというふうに思うんですね。

 ですから、私は、文部科学省として、今ある二・五兆円、さっき大臣おっしゃった、その土台だということで、守り切るという選択肢ももちろんあり得ると思いますよ。ただ、仮に国庫負担金制度が分権の流れの中で廃止になってしまっても、日本の義務教育の将来はかくかくしかじかの理由で大丈夫ですよ、こういう文部科学省の明確なビジョンも一方でぜひ披瀝をしていただきたい、こういうふうに思うんですね。そうでなかったら、私は、文部科学省の存在意義はあるのかというふうに思うんですね。

 つまりは、この分権時代が徹底化していく、私たち民主党もそういう意味では物すごく加速化していこう、こういう理念を持っているわけですけれども、ポスト国庫負担金制度における新しい国と地方の教育に関する役割分担の、ある意味であるべき姿というのをぜひ一方でお考えをいただきたい。そうでなかったら、何か、あくまでも本土決戦かというような半世紀前のような状況に立ち至ってしまうんじゃないかというふうに思うんですが、そこの点、しつこいようですが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 現時点でこの義務教育費国庫負担金がゼロになるということはちょっと考えられないし、またそんなことがあってはいけないと私は考えているわけでございますが、もし仮に、仮にだんだんと減っていくという場合に、どのようにして日本の教育水準、子供たちの学力水準を維持していくんだということもまた考えていかなければいかぬわけでございます。

 そういう意味では、これは教育だけに限らないんですけれども、いわゆる地方分権というのは地方、地方の競争なんですね。いろいろな意味で、各県が、各地方が、自分のところはこういうことをやっている、こういう成果を上げているという面で、そういう意味で競争の社会なんだろう、私はこう思うわけでございます。

 その点、どういうことになるかわかりませんが、例えば、私が先ほどから申し上げていますが、学力テストということについても、個々の子供たちの学力状況を調べてみるということもありますが、各県ごとに、一体どういうふうな教育が行われているんだ、教育に対してどれほどの予算をつぎ込んでいるか。あるいは、どこの県が学力がいいか。これは、学力だけではなくて、例えば体力測定、さらには、例えば近視の子がどれぐらいいるかという健康度チェック。すべて、そういう意味で、いかにどこの県が健やかに子供たちが育っているか、子育て競争みたいな、そういった観点から、要するに各都道府県のいろいろな行政の、特にその中における教育の評価、それをトータルとして評価いたしまして、それをまさに公表するという形でもって、各県の教育水準といいますか、そういったことを確保していくということもだんだん強めていかなければいけないのかなということも考えております。

長島委員 子育て競争というのは、まさに私も大賛成です。国庫負担金制度だけではなくて、今文部科学省が、つまり国が、義務教育を初めとして、日本の教育に責任を持っていく上で必要なツールというのはかなりあると思うんです。

 例えば、先ほどから触れている標準法による学級編制とか教職員定数の基準の設定とか、あるいは学習指導要領によって教育課程の基準を設定するとか、あるいは、もちろん教育基本法の問題も非常に重要でしょう。それから教科書の無償給与、そして検定制度、こういったツールをやはりもう一度見直して、先ほど言った地方の競争と、そしてそれを国がお金だけではなくて補完するような、そういう行き方というのは十分あり得るんだろう、私はこういうふうに思っています。

 今、やはり問われているのは、そういった教育の内容とか質に対する問題、つまり、教職員の数もさることながら、地方やコミュニティーが欲している、必要としている教育の内容というのは一体何なのかという、もっと多様なニーズにやはりこたえていく、そういう行き方はあると思うんです。どうも、文部科学省の今までの説明を伺っていると、何となく機会均等という方向に重点が置かれ過ぎていて、まだまだちょっとキャッチアップ型の教育の理念になっているんじゃないかな、こう思うんですね。

 十三万人に上る不登校の、学校に行きたくないと言ってしまっている児童がいる現状、これは、今、一生懸命文部科学省の方々がある意味で考え出した教育方法に対して、拒否されているわけですね。これだけ多くの子供たちが学校に行きたくない、そういう思いを政治は受けとめる必要があると思うんですね。

 繰り返しになりますけれども、クラス編制とか教職員の数で教育の質を担保するのではなくて、別のやり方、つまりは、子供の視点に立ってやはりもう一度教育を見直していく、大人の、ある意味で数合わせというのではないやり方をぜひ考えていただきたい。

 私は、先ほど申し上げましたように、小学生の娘を持つ父親として、教育や子育てで最も重要なことは、無限の可能性を持った子供たちになるべく多様な選択肢を提供してあげられる、ここが一番のポイントだと思うんです。そうなってくると、いわゆる座学、つまり教室に座って先生の授業を受ける、そういうところから学び取れることは実は限界があるんじゃないかと最近教育関係者の中で言われていますね。つまり、子供の無限な可能性というか、吸収力や好奇心、そういうものを、興味を引き出していくような、エデュケーションというのは、何か引き出すという語源があるそうですけれども、そういう教育のやり方というのは、やはり私たち、考えていく必要があると思うんです。

 インターネットが普及していますから、子供たちの情報量というのは意外と大人よりも大きいものがあったりして、教室の先生が言っていること、そんなことはもう知っているよと言って授業がつまらなくなってしまっている子供たちが今かなり多くなっている。

 だから、そういう意味で、もう少し彼らの好奇心にこたえられるような、刺激のあるような、これは、今までのような学級編制とか教師が生徒何人に一人必要だとか、こういうレベルの話を実は超えているというふうに思うんですね。

 そういう意味で、実は、私は、時間もないんですけれども、一例を申し上げたいと思っているんですが、品川区の区立の小学校で、別の区立の小学校の空き教室を利用して、スチューデント・シティというのをつくって、つまり、これはミニチュアの町をつくって、区役所をつくって、区長も決めて、区議会議員もいて、あるいはいろいろな、警備会社もある、銀行もある、コンビニもある、こういうお店をずっとあるスペースにつくって、そして、そこで実際に子供たちが、電子マネーの使い方、あるいは伝票の記入の仕方、こういう準備の授業を受けた後こういう町に入っていって、それぞれの役割を担って、この企業をどうしていったらいいだろう、この商品をパッケージで売ったらどうなるだろう、これは商品をどうやって開発していくべきだろう、企業人としてあるいは消費者として。

 まさに、今文部科学省が目指している生きる力、社会において生き抜いていく力を、教室の中で、つまらないと言ったら語弊があるかもしれないけれども授業を受けるんじゃなくて、こういう形でもし子供たちの意識を涵養できれば、これは私は教育において大きな刺激になるんだろうというふうに思うんです。

 最後に、そこで、総額裁量制の課題について一つ触れて、御意見を伺いたいと思うんですけれども、今申し上げたような非常に臨場感あふれた教育の現場というものをもしつくったとしても、今の国庫負担金というのは、対象があくまでも教職員の給与に限られてしまいますから、教材の開発費とか教育施設費とか、あるいは、今回このスチューデント・シティをプロモートしたのはあるNPOなんですけれども、彼らに例えば委託費を払ったりしてサポートしてもらうといったような、そういう場合にはこの国庫負担金は対象になりません。

 総額裁量制で改善されたとは言っているけれども、しかし、やはり先生方の給料に限られてしまっていますから、こういうもう少し弾力的な使い方というのができないんですね。ですから、地方から、それなら一般財源化して我々が好きなように使えるようにしてもらった方がより教育の質の向上には資するんじゃないかという議論が出てきてしまうんですね。その辺のところ、中山大臣、いかがでしょう。どなたでも、担当の局長でも結構です。

銭谷政府参考人 今、文部科学省の義務教育に対する支援の仕方というのは、幾つかの手法がございます。

 教員の給与につきましては、最前からお話がございましたように、義務教育費国庫負担制度に基づいて総額裁量制というやり方で負担をして、各地域の特色ある教員配置等が可能なやり方で取り組んでいただいている。それ以外に、施設などにつきましては国庫負担もしている。それから、設備についても一部国庫負担をしている部分がございます。

 加えて、教育活動につきまして、研究開発学校でございますとか、あるいは研究指定校とかモデル地域とか、そういうさまざまな手法を使いまして、全国に特色ある教育活動を展開している学校、地域に対しまして、奨励的な意味合いあるいは実験的な意味合いを込めて委託費などを出しまして、研究を行っていただいたり実践を行ったりしていただいている、そういう支援の仕方もございます。

 ですから、基本となる義務教育費の七五%を占める教職員給与費については国がしっかり負担をした上で、さまざまな意欲的な試みに対して委託費などの形で支援を行っているというのが、今の初等中等教育行政、とりわけ義務教育に対する私どもの支援の仕方でございます。

斉藤委員長 塩谷副大臣、時間が過ぎておりますので、端的にお願いします。

塩谷副大臣 長島委員のいろいろな今のお話等、ぜひ私どもとしては、いわゆる義務教育費の国庫負担金の金額ではなくて、教育内容の議論をするべきだったわけでございますが、今回の三位一体の改革では、まさに幾らよこせの話になってしまって、まことに残念に思っているところでございます。

 今、品川の件も、明らかに子供たちに体験を通じて社会性とか自主性を養うということで、我々文部科学省としても非常に注目をしているところでございまして、そういった教育内容については、ぜひ、義務教育で国が責任を持つ部分、あるいは地方で自主的にやる部分というのはどこまでかということをしっかり議論することが大事だと思っておりますので、そういう点で、今後、文部科学省としても、中教審の審議も含めてしっかりと検討してまいりたいと思っているところでございます。

長島委員 ありがとうございます。

 最後に、今、幾らよこせという議論は不本意だったという話ですけれども、国民から見ると、文部科学省の方が幾らよこさないという、何かそういう水かけ論に終わってしまったような気がするので、ぜひ国庫負担金死守という硬直した発想ではなくて、今るるお話をいただいたように、もっと柔軟な発想で、どうしたら国としての憲法で保障されている義務教育の根幹が守れるかということを、私たちも大いにこの委員会で議論させていただきたいと思いますので、今後ともどうぞ考えていただくようによろしくお願いいたします。ありがとうございました。

斉藤委員長 笠浩史君。

笠委員 大臣におかれましては、またきょう委員会ということで御出席をいただき、ありがとうございます。

 私、きょうは、さきの通常国会で成立をした中でも最も重要な、そして、教育の根本を変えていくんじゃないか、あるいは公立学校というものを新しく生まれ変わらせていくためのコミュニティ・スクール法に基づく開校、来年の四月からこれが開校できることになったわけでございますけれども、そのことと、もう一つは、領土、領海などについて、今の義務教育でどう教えるべきかというようなことを中心に議論をさせていただきたいと思うんです。

 ただ、それに先立ちまして、先般私は十月に、文科省所管の世界青少年交流協会が補助金を不正に受給した問題について、この場におきまして、文科省の役人が、職員が接待を受けていたというようなことで、この実態をきちんと、そのときにも御答弁をいただきましたけれども、事実関係についてしっかりと今事情聴取をしているということでございましたけれども、いまだその結果が当委員会に対して示されておりません。そこのところの状況などについてまず最初に、冒頭お伺いをしたいと思います。

白川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘の点につきましては、現在、私ども、人事院の方に設置をされております国家公務員倫理審査委員会、こちらの方と御相談申し上げながら調査を進めておるところでございます。前回にも御答弁したところでございますけれども、調査の結果、国家公務員倫理法上の問題が確認された場合には、私どもは厳正に対処をしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。

 本件につきましては、本委員会の理事会の場においても御議論があったところでございまして、結果が出次第、速やかに御報告をさせていただきたいというふうに思っております。

笠委員 もう一カ月以上たつわけですよね。多分、あの委員会の時点ではもう事情聴取を始められていたということですから、何でそんなに時間がかかるんですか。

 私、今おっしゃった国家公務員の倫理審査委員会ですか、ここと相談しながらとおっしゃっているけれども、これはまさしく文科省としてどうなんだと。私は、だれがとかそういうことを、個人の責任を責めようとかということじゃなくて、そういう実態がどの程度あったのかということをきちんとみずから明らかにしてほしいということを申し上げているんです。それが倫理法に違反しているのかどうかということではなくて、まさに補助金を不正受給したような、お手盛りのような、もし職員の方が協会から日常的に接待を受けられているというようなことがあったら、このことこそが私は問題であると。

 だれが悪いとかそういうことじゃないんです。そういう体質がいけないということを私は指摘をさせていただいているわけで、私自身も調べておりますので、もしあれでしたら、いずれまた私も具体的にお伺いしてもよろしいですよ。その前にまずは文科省として、大臣もおっしゃいました、きちんと事実関係に基づいてしっかりと調査をして、そして悪いものは悪いということで明らかにしたいというようなことを。だから、そのことについて、いま一つ今の御答弁ではそういう積極的な姿勢が感じられないですね。

 では、いつぐらいまでに出していただけるでしょうか。

白川政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもも、この件につきましては、事案が出てまいりました当初から、協会との関係で国民の疑惑を招くような行為があってはならないということで、当時の補助金の担当者から鋭意事実関係の調査を進めておるところでございます。

 何分にも、調査の結果によりましては、例えば、先ほど申し上げました国家公務員倫理法上の問題等が出てまいりますと、職員の処分というふうなことにつながり得るケースでございますので、そういう点で、一点は、慎重に調査を進めておるということ。

 それから、国家公務員倫理法上の体系の中で、こういう事案の場合には、人事院の方の国家公務員倫理審査会の方と相談をしながら進めるという枠組みになっております。そちらの方と相談をしながら進めておりますので若干時間を要しておりますが、先ほど御答弁申し上げましたように、結果が出次第、速やかに御報告を申し上げたいというふうに思っております。

笠委員 きょうはこれ以上この問題は取り上げませんけれども、繰り返しになるんですけれども、その処罰とかなんとかというのはあくまで結果で、私はそれを求めているわけじゃないんです。

 そういうふうな、文科省とその所管をするこういう団体の中に、協会の中になあなあの談合の関係があるんじゃないか、その点についてきちっと役所自身で、こういうことがあった、けれども、これからはそういうことはやらないんだということをしっかりと国民の皆さんに見せていただきたい。あと、それが倫理法に触れるかどうかとか、それはきちんと法律にのっとってやっていただければいい話で、私は、この問題で個人をどうこうしようとか、あるいは処罰が足りないとか、そういうことを申し上げているわけではございませんので、大臣にもしっかりとこの点については御要望をさせていただきたいと思います。

 ところで、まず、コミュニティ・スクールの問題の方に質問を、本題に入らせていただきたいんです。

 さきの通常国会で、学校運営協議会を立ち上げて、四月から新しいタイプの公立学校をつくることができるようになったわけでございます。このコミュニティ・スクール、私は、本当に今一番教育で大事なことは、やはり私立とかあるいは塾に通わないと学力が身につかないとか、そういう声を私もたくさん聞かせていただいているわけでございますけれども、特に義務教育、小中学校、この公立学校というものをいかに魅力ある学校にしていくのか、そのことが今本当に一番大きな課題であると思っております。

 中山大臣には、このコミュニティ・スクールというものを全国にどんどん普及させていきたいというようなお考えがあるのかどうか、まずその点についてお聞かせをいただきたいと思います。

中山国務大臣 現在、既にコミュニティ・スクールとして全国で四校がスタートをしておるわけでございまして、本年六月に法改正が行われ、九月に施行されたという状況を見れば、かなり早い対応ではないか、こう思うわけでございまして、この制度への期待の高さのあらわれではないか、このように受けとめております。

 今後、この制度がどの程度広がるかにつきましては、具体的な数値で予測することは難しいわけでございますが、全国の可能な限り多くの地域で活用され、学校、家庭、地域社会の共同による新しい学校運営が実現されることを期待しているところでございます。

 文部科学省といたしましても、コミュニティ・スクールについての積極的な広報や先進事例の情報提供等を通じまして、各地での効果的な導入に向けた支援に努めてまいりたいと考えております。

笠委員 何か余り、大臣、私は、このコミュニティ・スクールというものに非常な期待を持っているわけでございますけれども、もう少し思いがこもっていればなと感じるところなんですけれども。

 これでお伺いしたいのは、今、四校既にスタートをさせていると。五反野小学校がたしか今月、一番にこの届け出があったと思うんですけれども、来年の四月から開校を予定しているような学校の数というもの、どの程度になるのか、今把握をされているのかどうか、その点についてまずお聞かせください。

銭谷政府参考人 コミュニティ・スクールの設置をめぐる全国的な検討状況でございますけれども、法の施行前のことしの七月一日の時点で私どもが調査をいたしましたところ、全国で六十七校及び三教育委員会において、コミュニティ・スクールの設置についての検討が行われているという結果を得ております。六十七校につきましては、小学校が三十五校、中学校が十九校という状況でございました。

 それから、先ほどお話がございましたように、現在までに東京都足立区及び京都市におきまして、計四校がコミュニティ・スクールとして指定されたところでございます。

 それから、現在までに、来年設置を予定しているということで公表をしているのが、東京都の世田谷区の教育委員会、それから杉並区の教育委員会、それから横浜市の教育委員会という状況でございます。

笠委員 今お話のあった六十七校、これが検討しているということで、まだ決めたわけではないけれども検討している。全国で六十七校ということなんですけれども、小学校、中学校で五十四校でしょうか、私、これは余りにも少ないと思うんですよ。これは、設置を決めるためにはなかなかいろいろな時間というものも必要でしょうけれども、やはりもっと多くの学校が、まさに小中合わせて約三万三千、この学校の中で六十七校というと、限りなくゼロに近い。

 これはどういうところにその原因があるのか、この制度そのものに原因があるのか。あるいは、こういう制度が導入されたことが余りにも知られていない、そういうところなのか。そこのところについて、大臣、どういう認識を持たれているでしょうか。

中山国務大臣 平成十四年度から、全国七地域九校において、新しいタイプの学校運営のあり方に関する実践研究を実施しておりまして、それぞれの学校において、地域の特色を生かしたさまざまな取り組みが行われているところでございますけれども、この実践研究の過程で生じた課題というのは多様でございます。

 例えば、学校現場に外部の人材が入ってくることへの教職員の抵抗感や戸惑い、あるいは学校運営協議会と校長や教職員の間での役割分担のあり方、さらに、外部の人材が学校の教育活動を評価することの難しさ等が指摘されているわけでございます。

 とりわけ、これまでややもすれば閉鎖的と言われがちであった学校現場にさまざまな形で外部の方々を受け入れることへの難しさは、多くの実践研究校で直面した課題というふうに聞いておりますけれども、実際にともに活動していく中で、保護者とか地域住民、あるいは教職員、双方の意識が大きく変わりまして、双方の壁を乗り越えて、共同して、より充実した教育活動の実践につなげることができるようになったというふうな話も聞いているわけでございます。

 今後、こうしたこれまでの取り組みの中での試行錯誤の成果についても十分に情報提供してまいりたい、このように考えております。

笠委員 先般、NHKの番組だったでしょうか、今大臣おっしゃったモデル校、この指定校の幾つかが取り上げられまして、私、実はそれをビデオに撮りまして、自分自身で教育についてタウンミーティングなんかやるときに、映像で、やはりわかりやすいんですよね。皆さん、なかなか学校運営協議会なんていっても、文科省はこういうパンフレットを今たくさんつくって配っていますけれども、これはやはり活字で見ても、普通の地域の方は、教育関係者の方ならともかく、なかなかどういうイメージなのか、あるいは地域の方が参加するといっても、どういう形で具体的に参加をしていいのかどうか、参加をするのかどうか、そういうイメージというものがまずわかりにくいということが一点。

 それで、ほとんど知らないですよ。私も地元の学校なんかへ行っても、まあ校長先生は、そういうことを教育委員会の方からちょっと聞いたことがあるなという方はおられますよ。でも、学校の先生方に至っては、今の学校評議会とどこが違うの、それのことを言っているんでしょうとか、非常に誤解されている、あるいは全く浸透していない。

 だから、このことが非常に文科省としても、もっと私は広報に力を入れていくべきではないかと思うんですけれども、まず知っていただく、そして知っていただいた上で、やはりこのコミュニティ・スクールというのは、あくまで上がやってくれる話じゃなくて、上からおろされてくる制度ではなくて、地域の方々が自分たちで新しい公立学校をつくっていくんだというその意識なしには、これは絶対に学校というものはよみがえらないし、このコミュニティ・スクールというものはつくることができない、私はそのように考えているわけです。

 そういう意味で、まずは知っていただくということが非常に大事だと思うんですけれども、その点についてどういう形で具体的に広報されているのか、その点を御説明いただきたいと思います。

銭谷政府参考人 先ほど、七月の時点で六十七校及び三委員会で設置を検討しているということを申し上げて、この数はまだまだ少ないのではないかという御指摘もいただいたところでございます。私どもとしては、実はその七月の後から、大変全国各地からいろいろな問い合わせが参っておりまして、コミュニティ・スクールに対する関心は高まりつつある、こう認識をいたしております。

 私自身も、教育改革国民会議の時代からコミュニティ・スクールの問題には多少かかわってまいりましたので、私自身もいろいろなところに行きまして説明をしたりしているところでございます。

 具体的なところをちょっと申し上げますと、まずはこのパンフレットをつくりまして、これ現在二十五万部ほど刷っておりますけれども、私どもとしては、できるだけわかりやすいものにしようということでつくったのでございますが、さらに工夫が要るかもしれませんが、このパンフレットをお配りしたり活用したりしながら、いろいろな場で、あるいは機会をとらえて、このコミュニティ・スクールの趣旨や概要について説明を行っているところでございます。

 また、つい先日でございますが、十一月の二十九日に、平成十四年度からの七地域九校で実施をしております実践研究の成果発表会でございますコミュニティ・スクール・キックオフ・フォーラムというものを開催いたしまして、私どもの下村大臣政務官にも御出席をいただいて、みんなでコミュニティ・スクールについて話し合いをし、広報活動もあわせて行っているということでございます。

 今後、広報のあり方につきましては、さらに工夫を加えながら、一層コミュニティ・スクールのPRに努めていきたい、こう思っている次第でございます。

笠委員 関心は高まりつつある、私もそう感じているんですけれども、やはり高めていく努力をしっかりとやっていただきたい。そして、今お伺いしたところでは、文科省の中ではこの窓口が、教育制度改革室ですか、ここが大きく問い合わせ先として載っているんですけれども、六人ぐらいの職員の方が、ほかの仕事もかけ持ちする中で対応されているということなんです。問い合わせが今たくさんあると言いました、時々は出かけていっていると。すべて出かけていって、関心を持ってくださっている人がいるんだったら、私は手分けして、若い職員の方なんかやはり現場に行って、そして逆に言うと、一生懸命PRもしてくるし、時には検討しているような学校、具体的な段階に入っているような学校があれば、そこに二カ月、三カ月いたっていいですよ。一緒になってその立ち上げに参加をして、やはり現場を見て、その蓄積を今後広げていく中で生かしていくというような、私はそれぐらい力を入れていいテーマではないかというふうなことを考えているんです。

 何か従来型の縦割りの組織じゃなくて、コミュニティ・スクール室とか、広く国民に知ってもらうための大運動を盛り上げていこうというような、大臣ぜひ、私はそれぐらいの意気込みでやっていただきたいなと思っておるんですけれども、いかがでしょうか。

中山国務大臣 まさに御指摘のように、これからの教育、子供たちの育て方ということを考えた場合には、家庭と学校と地域が一緒になってやらなきゃいかぬ、地域ぐるみで子供たちを育てていかなければいかぬという、まさにそういう意味では、このコミュニティ・スクールというのは、それをまさに実現するための大きな方策だ、こう考えているわけでございます。そういう意味で、広報といいますか、もっともっとPRには力を入れていかなければいかぬ、こう思うわけでございます。

 先ほど来、義務教育国庫負担の議論の中でも申し上げましたが、文部行政というのは、これは権力行政ではございませんで、上からこう決まったからこうやれというわけにいかないわけで、あくまでこの導入というのは学校を設置します地方公共団体の教育委員会が判断するものである、このように認識しているわけでございます。

 したがいまして、全国一律に導入するというものではありませんけれども、私といたしましては、先ほど申し上げましたように、コミュニティ・スクールというのは、公立学校の管理運営にこれまでにない新しい仕組みを導入することによりまして、地域に開かれ、そして地域とともに歩む、信頼される学校づくりに向けた非常に大きな転換である、このように認識しておりまして、保護者や地域のニーズも十分認識しながら、できるだけ多くの地域で、主体的かつ効果的にこのコミュニティ・スクールというのが活用されることを期待しているわけでございます。

笠委員 大臣、私も、まさにこれはバランスだと思うんです。国がやれと言ってやらせることじゃない。しかし、やはりどうしても地域任せの中で、私は、地域が主導的にこれからの教育行政というのは担っていく。

 ただ、一方で、国として何に責任を持っていくのかというのは、やはりその地域が、あるいはその地方の行政が、教育に、制度に前向きである人と、後ろ向きな人と、やはりそういう方々もおられるし、教育委員会だってそうでしょう。そういう中での格差が広がっていかないようにきちんとやはり文科省としてもそこは注目をしておくということは、特にこれは法律をつくったまた我々の責任でもありますし、また役所としての、文科省としての大事な役割であると私は思っております。

 本当にこういう意味で、きょうの六十七校、あるいは都道府県別でも出ておりますけれども、こういうところに早速に手を挙げているような自治体なり教育委員会というのは恐らく熱心なところなんですよ。また、現場にもっと目を向けますと、校長先生がやはりやる気があるか、開いていくという姿勢を持たれるか持たれないかで全然違ってくる。

 そういう意味でも、地域からの声というものをいかに巻き込んでいくかという、盛り上げていくかというようなことが一番大事なことで、だれにでもできるんだ。例えば、あのNHKの紹介VTR、スペシャルでありましたけれども、かなりの方が見られていて、ああいう学校、何でうちはないんだろうねという話を聞かされます。しかし、私はそのときに言います。だれでもできるんだ、ただし、やるためには自分たちがつくるんだという意思がなければ絶対にできない。

 やはりそういったことをしっかりと伝えていって、とかく先生のせいだとか、あるいは親のせいだとか、何々のせいだとかという教育論には、最近だれに責任を押しつけるのかというような後ろ向きな議論がなされるわけでございますけれども、しっかりとやはり前向きな、そして地域の人たちがこのコミュニティ・スクールを一つの舞台にして、新しい地域の活性化、まさに私、学校というのは自分のふるさとでもあると思いますので、ふるさとづくり、そういう地域社会の活性化に向けても非常に大事な取り組みだと思いますので、ぜひとも大臣、力を入れていただき、本当に文科省に特別なそういう、先ほど申し上げましたようなコミュニティ・スクール推進室とか、何かそれぐらいのことをぜひやっていただきたいなと。

 いいじゃないですか、若い入省したての人たちを入れて、どんどん現場へ行かせて、これは必ず将来役に立ちますよ。そして、一緒に汗もかいて。どうですかね、具体的に来年ぐらいからそういうのをぜひつくっていただけないかなと思っておるんですけれども。

中山国務大臣 まさに強制はできないわけですけれども、知ることによって、ああ、こんないい制度なのか、では、うちでもつくってみようかということになるようにしていくことがやはり非常に大事だ、こう思うわけでございます。

 そういう意味で、コミュニティ・スクール設立推進室、名前はどう呼ぶか知りませんが、そういう部屋でなくても、一つのそういうチームをつくりまして、全国行脚といいますか、あちこちへ出かけていってPRするということぐらいは、これはやらなきゃいけない。それが国会の意思でもあっただろうし、それは私も受けたわけですから、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

笠委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 あくまで私が言っているのは、やはり押しつけじゃなく、そうやって文科省というのが開かれた役所で、しっかり地域で頑張りたい、やってみようという人たちに、同じ目線に立ってしっかりと協力もしてくれるところだというような姿勢で、行って何も指導するということじゃないんです。やはり現場を見ていく、そしてそこの苦労をともにする、蓄積をしっかりと残していって、これはまだ来年、再来年、ずっと続いていく話ですので、しっかりこの立ち上げのときに、やはりスタートの時期が大事だと思いますので、そういう現場から見た、いろいろとそういう蓄積をふやしていっていただければと思います。

 ところで、先ほど申し上げましたが、ちょっと一つ、私ここで話題を変えさせていただきたいんですけれども、最近とても気になりますのが、先般も中国の原子力潜水艦が領海侵犯をするといったような事件が起こっております。あるいは、さきの尖閣諸島の領土に侵犯を犯してくる。竹島の日韓との対立。

 こういういろいろな問題があるわけですけれども、私、どうも我が国というのは、こういう領土ということについて、教科書をちょっと調べてみたんです、義務教育段階でどの程度領土というものについて子供たちに教えているのか。

 小学校で教えるかどうかというのは、ちょっとこれはいかがかな、どうなのかな、そこはいろいろな議論があるでしょうけれども、せめて私は中学ぐらいではしっかりと、義務教育だからこそ、我が国のこの領土というものがどこなのか、あるいは領海というものがどう位置づけられているのか、そのことを一人一人がしっかりと認識をしていないと、やはりこういう問題にこれから対応していけない。ともすると、こういう問題に無関心な方が非常に多い。それは、やはり教育現場において教育されていない、教えられていないという問題も一つあるのではないかと思うんです。

 大体、北方四島については、北方領土については、少なくとも記述はほとんどすべての教科書にあるわけでございますけれども、竹島とかあるいは尖閣の問題、海洋権の問題、こうしたことについて余りにも記述が見られない、ほとんど見られない。この点について、ぜひ大臣、これは学習指導要領にきちんと盛り込むぐらいのことを、指導力をぜひ発揮していただきたいと私は考えるんですけれども、いかがでしょうか。

中山国務大臣 日本というのは、周りが海に囲まれているせいか、余り領土意識といいますか、自分の国はどこまでなんだという意識がないわけでございます。私も、かつて防衛予算を担当したときがありまして、そのときに日本の領土というのはどういうものだろうかと言っていて、東西南北一番遠いところまで行った経験があるんですけれども、北の方は稚内、南の方は与那国といってもう台湾のすぐ近くでございますし、西の方は対馬ですね、そして東の方はマーカス島という、本当に広いんだなということを実感したわけでございます。

 そういう意味で、これからの我が国を担っていく子供たちが、日本の領土とか領海、あるいは経済水域などの海洋にわたる権益について正しく理解するということは極めて重要なことだと考えておるわけでございまして、このため、例えば中学校の学習指導要領におきましては、我が国の国土の位置及び領土、領海などの領域について考察させるとともに、経済水域を含め我が国の領土をめぐる問題に着目させることとしているわけでございます。

 実際、中学校、社会のすべての教科書におきまして我が国の領域と経済水域に関する記述がありますし、また、学習指導要領は大綱的な基準であることから、北方領土の問題を代表的な例として示しているところでもありますが、竹島とかあるいは尖閣列島について記述している教科書も見られます。さらに、教科用図書としてのすべての地図で竹島とか尖閣列島を我が国の領土として明記されておりまして、これに基づきまして指導が行われているわけでございます。

 今後とも、我が国の領土などに関する指導が適切に行われるように指導してまいりたいと考えております。

笠委員 今の中学校の学習指導要領、私ももちろん拝見させていただいたんですけれども、それは建前は、領土とは何か、領海とは何か。しかし、今大臣は、北方領土を代表的なというふうなことでおっしゃいましたけれども、確かにこう書いてあるんですね。「北方領土が我が国の固有の領土であることなど、我が国の領域をめぐる問題にも着目させるようにする」と。だから、やはりすべての教科書、北方領土についてはきちんと説明がしてある。

 けれども、竹島とか尖閣については、ほとんどないですよ。私も全部一応見ました。一部あります、確かに。でも、それはこういう問題があるというので、ただ単にその竹島という言葉、そして尖閣諸島という言葉、ほとんどこれが出てきているだけですよ。

 ですから、私、例えば北方領土と竹島が我が国の固有の領土であることなど、そしてもう一つ、これはちょっと違うわけでございますけれども、尖閣などをめぐる領海侵犯、あるいは海洋権などについてもきちんと教えるということを、この学習要領、不断の見直しを行うというような方針も掲げているわけですから。しかし、私、今の時代、これだけ大きな、しかも相手の国がある、他国との問題にもなっているわけですから、しっかりとこれは北方領土と同じように位置づけて教えていくということが大事なことだと思うんですが、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 今先生お話ございましたように、学習指導要領におきましては、「北方領土が我が国の固有の領土であることなど、我が国の領域をめぐる問題にも着目させるようにすること。」ということが記載をされておりまして、現実の指導におきましては、竹島や尖閣列島等につきましても触れて指導を行っているという状況もございます。また、教科書におきましても、竹島、尖閣諸島について記述をしている教科書があるわけでございます。

 指導要領自体につきましては、不断の見直しということで検討はしているわけでございますけれども、教科の内容の改訂ということは、他の事項とのバランスとか、あるいは内容が過多にならないようにするといったような全体的な検討を行うことが必要でございますので、直ちにということはなかなか難しい面もございます。

 私どもとしては、北方領土を初め尖閣諸島や竹島などの我が国の領土の問題について子供たちが理解をするということは重要でございますので、研究協議会の場などを通じまして、それらにかかわる実践事例を収集、提供するなどいたしまして、学校における指導の充実が進められるように努めてまいりたいと思っております。

笠委員 ちょっと心もとないですね。学習指導要領というのは、別に他の事項とのバランスなんてとる話じゃないですよ、これは。しっかりと何を教えるのかということを、この基本的な問題について、その結果バランスがあるわけで、別にほかの、領土とかあるいは拉致問題だってそうです、拉致事件だってそうです。こういうまさに国家の基本にかかわる、主権にかかわる問題については、これをどうして義務教育の段階でもっとしっかりと教えていくか。何がいい悪いではなくて、今起こっているまさに事実をしっかりとやはり教えていくということは、これこそまさに私は教育に責任を持つ国のあるべき姿だと思うんですけれども、大臣、いかがですか。今のバランスの一つなんかでこの問題を認識されていては非常に困ります。いかがですか、大臣。

中山国務大臣 私としては、まさに御指摘のとおりだと思っていまして、一体、日本の領土がどことどことどこなんだ、どこからどこまでなんだという認識はしっかり持っておく必要があると思うんですね。

 そうでないから、先般の例の原子力潜水艦の侵入事件等について余り日本の国民というのは関心がないといいますか、これは実は大変なことなんですけれども、余り反応がなかったというのはまさにそういったことにも起因するのかな、こんな感じもありますから、バランスの問題とかいろいろあると言われますけれども、何がバランスかということの前に、一体、日本の国の領域というのはどこからどこまでなんだということはしっかり子供たちに教えておくべきだ。逆に、ここから先は違いますよという意味も含めて、やはりきちっと教えることが大事じゃないかな、このように考えます。

笠委員 ぜひ大臣、大臣の間に、大臣が文科大臣のときに、今の答弁にふさわしい、今度はやはりぜひ不断の見直しをしていただいて、もちろん、今おっしゃるように、いろいろと難しい部分もあるのかもしれませんけれども、やはりとにかく国土であるとか、あるいは海洋国家と先ほど大臣もおっしゃいました。まさにそうです、日本は。だからこそ今、よく私なんかが小学校、中学校のころに習ったのは、海洋権益ということでは、どっちかというと漁業の方に焦点が、魚がたくさん北方領土もとれるんですとか。しかし、今まさに石油、天然ガス、この資源をめぐって中国との本当に対立というものがあるわけです。これは仕方ありません、対立があるのは。

 けれども、そのときに、一方の中国は、七〇年代にここの東シナ海に、ここにたくさんのエネルギー資源があるんだ、海底資源があるんだというような報告を受けてから、戦略的に海底調査等もして、また試掘もし、さらには採掘に至っているというような状況で、たびたび日本の領海にまで侵犯を犯すというようなことまでやって、踏み込んだことをやっているにもかかわらず、非常に我が国の方はのんびりしておりまして、やはり私は、国民がしっかりと守らないといけない権益があるんだというようなことを、海洋国家だからこそ認識していなければならないと思うんです。

 他人事じゃありません、これは。竹島の問題だって、島根県の方は意識があるでしょう。けれども一方で、じゃ、全国的に関心があるかというと、これが不法に韓国によって五十年間も占拠されている状況、これに対してやはり、まず竹島というのが日本の領土なんだという意識がなければ、もちろん世論というのは盛り上がりませんね。そういう意味でも、私は、この学習指導要領をもう少し踏み込んでやっていただきたい。

 ぜひ、大臣、もうひとつ前向きな御答弁を、大臣が在任中に必ずやると踏み込んだ形で、具体的な文言までは今ここではもちろん私はお聞きしませんけれども、やはりちょっと見直すというようなところ、その点について一歩踏み込んだ御発言をいただければと思うんですが。

中山国務大臣 しっかりと受けとめまして対処してまいりたい、こう考えております。

笠委員 私、実は、教科書の問題というのもあるんでしょうけれども、これは、きょうこの場ではもう時間が限られておりますので、またの機会に譲らせていただきますけれども、先ほどのコミュニティ・スクールの話がありました。地域にどんどん任せていっていいと私は思います。だからこそ国として、そのときの大前提は、もうこの学習指導要領もそろそろこの形でいいのかどうかということも、やはり本当に真剣にこれを見直す時期に来ているんじゃないかと思います。

 これから公立の学校をどんどん地方に任せていく。教科書の採択などもこれからは、例えば教育委員会単位、学区単位とかで採択するのではなくて、こういうコミュニティ・スクールの精神からすれば、当然ながら学校に任せていくというような形になっていかなければならないわけです。そのときに、じゃ、何でもかんでも自由にやればいいのかと。そこはしっかりと、この学習指導要領にかわるような、例えばイギリスのような国定カリキュラム的なものをきちんとつくり上げて、そしてそれに基づく共通テストなども、きちんと学力というものもはかっていく。

 やはりそういうふうなことでやっていかなければ、何か場当たり的な分権論と、あるいはこういう今回の義務教育の国庫負担というような問題があれば、じゃ、お金は国が責任を持つんだとか、何かばらばらに議論が行われている。そうしたことで、本当に今抜本的な改革というものを、何に対して国が責任を持つんだということがやはり具体的に見える形でぜひ出していただきたい。

 中教審にいろいろと丸投げすることももちろんいいんですけれども、それはあくまで中教審。やはり方針というものは政治家が示す。そしてそれを国会で議論し、また国民の皆様にきちんと提示をして、それを選択していただくというようなことがやはり一番大事だと思うんですけれども、大臣、その点についていかがでございましょうか。

中山国務大臣 これからコミュニティ・スクール等をだんだんと展開していく中で、それが地方分権というよりはもっと地域に密着した、それこそ家庭教育、地域が一緒になった教育というものが進められていくわけでございまして、その中で教科書の採択等も本当はそういったところでできるようにするということも考えられるのかもしれませんが、であればこそ、さらに教科書というものが余りアンバランスなものであっても困るし、やはり国として一定の基準に達したものというような観点から考えていかなければいかぬのかな。

 そういう意味で、地方分権をどんどん進める一方で、やはり国としてしっかり守るべきものは何かということの議論が、まさにこれからしっかりやっていかなければいかぬということだろうと思いますし、おっしゃいましたように何も中央教育審議会だけに丸投げしているわけではなくて、文部科学省も一生懸命やりますけれども、国会の皆さん方も含めて、この問題についてはどうか一緒に議論していただきたいな、こう考えているところでございます。

笠委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので終わらせていただきますけれども、来年の通常国会、恐らくは教育基本法の問題というものも出していただけるんでしょうから、きちんとこれが最大のテーマとなってきますけれども、この基本法ももちろん大事です。同時にやはり、制度そのものをどうしていくのかという本当の大枠の仕組み、そうしたものも、ぜひ頻繁に委員会を開いていただいて、また議論をさせていただければと思います。どうもありがとうございました。

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 大臣には、お疲れのことと思いますが、御答弁よろしくお願いいたします。

 まず、三位一体の問題でお聞きをしたいと思います。

 当委員会の十月二十七日でございますが、中山大臣はこのように述べておられました。義務教育費国庫負担法というのは、憲法二十六条や教育基本法の第四条に定める義務教育無償の原則に沿ったものである、仮に、義務教育費国庫負担金を一般財源化した場合に、地域によっては教育の機会均等や教育水準の確保に著しい支障を生じるという事態になれば、それは憲法等の要請に対する国の責任を果たしているとは言えない状況になると考えている、だから、義務教育費国庫負担制度は堅持するという御答弁をされたところでございます。

 ところが、十一月二十六日の政府・与党の三位一体改革についての決定がなされたわけですけれども、二点、一つは義務教育費国庫負担金の改革については、全体像において八千五百億円程度の減額を計上する、だから全体像の枠がかかっている。二点、その間、十七年度の暫定措置として四千二百五十億円程度を減額することとして、その旨を法律で規定するというわけですね。私は、結局、義務教育の国庫負担は堅持できなかったのではないかと言わざるを得ないわけです。

 そこで、伺いたいのですが、大臣として、憲法や教育基本法の要請にやはりこたえることができなかったというふうに言わざるを得ないわけですが、その点ではどのように受けとめていらっしゃるでしょうか。

中山国務大臣 先般の委員会におきましても、この義務教育費国庫負担制度は堅持したいという決意を申し上げたところでございますが、そういった強い気持ちで今回の三位一体の改革に臨んできたわけでございます。その結果、今御指摘をいただいたような形になったわけでございます。

 そもそも、地方側の改革案というのは、今回は中学校分、第二期においては小学校分の国庫負担制度を全部削減するということだったわけでございまして、そんなことはとんでもない、社会の趨勢にも反するし、それでは我が日本国憲法の要請にも合わないのじゃないかということで、私としては全力を挙げて頑張りました。また、国会の先生方も、与野党問わず、このことについては頑張っていただいたし、また、教育界初めPTAの皆さん方までも本当に一生懸命頑張っていただいたと思っております。

 そういった皆様方の御支援もいただきながらやってまいりましたが、結果としては、先ほど御指摘があったように、平成十七年度、来年度は四千二百五十億、そして十八年度は同じく四千二百五十億、合わせてトータルとしては、全体像としては八千五百億円の削減ということになったわけでございます。

 ただ、御指摘がありましたように、これはあくまで暫定ということになったわけでございまして、まさに、午前中の議論でも申し上げましたが、義務教育というものを経済財政諮問会議だけで決めてもらっては困るということを貫き通したわけでございまして、来年の秋までに中央教育審議会の議論をいただきまして、その結果、義務教育費国庫負担制度はもう一切手を触れさせないんだということにあるいはなるかもしれませんし、やはり地方分権という立場も考えて、ある程度はやむを得ないという形になるのかどうかわかりませんが、私といたしましては、頑張った、しかし全く全部守ることはできなかったけれども、少なくとも義務教育の根幹、これは根幹は何かという議論もありますけれども、これは教育の機会均等、一定水準以上の維持、そして無償制というこの根幹は守ることができたのではないか、このように考えております。

石井(郁)委員 私は、暫定ということで済まされる問題ではないというふうに思うわけですね。

 これは新聞報道で見たわけですけれども、総理が中山大臣に対して、済まぬな、こらえてくれと言われたということですが、私はやはり、こらえてくれで済む問題ではない、事は憲法と教育基本法の要請にこたえるかどうかだ、こういう根本的な問題だというふうに思うわけであります。文科省も、一般財源化すれば四十七都道府県のうち四十道府県で収入減になるという試算を出してきたところでございます。

 私は、きょうは、それに加えてもう一点ですが、これも先日新聞の報道がされまして大変驚いたんですけれども、東京大学大学院の教育研究創発機構のプロジェクトチームが公立小中学校の教職員の人件費が今後どのようになるのか、本当に非常な勢いで急増するのではないかということがございました。二〇〇七年度から一七年度まで毎年度、現在よりも三千億から四千億円上回るという試算であります。十八年度までの増加分を足すと、計四兆四千七百五十二億円になるということを明らかにしています。

 この試算を行った苅谷教授のコメントによりますと、試算の結果、少子化で必要な教職員が減る、人件費が下がるというこれまでの議論の前提が崩れる、国、地方自治体のどこが負担しようと財政を圧迫することは必至だ、財源をどう確保するか、実態に基づいた議論をやり直す必要があるという御指摘であります。

 このような検討とか議論というのは、これは文科省として、あるいは政府として行ったんでしょうか。私は、今回の引き出された結論というのは、まさに数字合わせ以外の何物でもないというふうに思うのですが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 私も先般新聞記事で見まして、実はちょっと驚いたわけでございます。この記事がもっと早く出れば、地方側も義務教育費を改革案の中に入れることをちゅうちょしたんじゃないか、こう実は思うわけですね。

 要するに、地方側というのは何を考えたかというと、これからどんどんふえていく経費については国で持ってくれ、どんどん減っていくものについては自分たちで持つと。要するに、少子社会ですから、教育費、義務教育国庫負担金は減っていくだろう、こういう考えでああいう案を出したんだろうと思うわけでございまして、私どももそうだと思っていましたから、こういうふうな数字が出されたということについては、いささか驚いているわけでございます。

 ただ、本当にそうなのかどうかということについては、まだ私ども実は計算していないということでございまして、これまでの三位一体の改革におきましては、義務教育の根幹を保障するためのこの負担制度の意義そのものの議論が中心であったと考えていまして、今後は、将来の人件費の動向、まさにこういった試算もあるわけでございますので、この動向を踏まえた上で、義務教育制度のあり方、あるいは義務教育における国と地方の役割分担について、中央教育審議会において幅広く検討される必要があるものと考えております。

石井(郁)委員 やはりこうした重大な問題というか、人件費の問題なんですから、そこが一番根本なんですから、それが将来の増加分というのが計算されていないというのは大変重大だというふうに思うんですね。

 教材費のことを私もたびたび取り上げましたけれども、これは既に一般財源化されてきたわけでして、文科省として、今回私も初めて見ましたが、教材費の都道府県別の予算措置というのが出されております。

 これはワーストテンの県名を挙げてほしいと思います。その際、措置率というのは何%になっているでしょうか。

銭谷政府参考人 教材費につきましては、現在、地方交付税措置が講じられているわけでございますけれども、これは市町村費ということでございますけれども、その額を各都道府県ごとに集計した場合、全国ベースでは基準財政需要額に対する予算措置率は七五・七%という結果でございます。

 これを予算措置率の低い県から順番に申し上げますと……(石井(郁)委員「いや、ワーストテンだけ、ワーストテン」と呼ぶ)では、十県ですね。徳島県が実は一番低うございまして、三五・六%の予算措置率でございます。以下、富山県、埼玉県、香川県、石川県、滋賀県、兵庫県、愛媛県、岩手県、福島県の順となっております。(石井(郁)委員「その数字をちょっと言ってください」と呼ぶ)

 数字も申し上げましょうか。徳島県が三五・六%、富山県が三八・二%、埼玉県が四五・七%、香川県が四五・八%、石川県が四六・五%、滋賀県が四七・〇%、兵庫県が四七・三%、愛媛県が四七・九%、岩手県が五〇・五%、福島県が五〇・九%でございます。

石井(郁)委員 大変な数字だと思うんですね。つまり、三割台、また四割台の県がこう並んでいるわけでしょう。私は、教員給与も、一般財源化したらこういうことになりかねないと。まさに教育の機会均等どころではなくなるわけですよね。もう既になくなっている面も出ているわけですけれども。

 この教材費の交付税積算ベースですと、いただいた表だと、一〇〇%を超えているのが東京と大阪と福岡だけなんですよ。あとは本当に少ない状況になっているということですね。ですから私は、これは政府・与党の決定というのは、憲法、教育基本法の要請に照らしても、これは断じて認められない。教育の機会均等あるいは無償の原則が本当に保障されないという点で、やはり改めて大臣として態度を明確にすべきではないかと思いますが、いかがでしょう。

中山国務大臣 まさにこういった数字が示されるんですね。一般財源化された場合には、本当に地方によっては大変なことになる。こういった数字もあるわけでございまして、それを踏まえまして、どうしてもこの義務教育費国庫負担制度は堅持すべきだということで主張してまいりましたし、これからもそういう方向でやっていきたいと思っております。

石井(郁)委員 そこで、これはいわば最終結論が来年の中教審の検討、答申を待ってになるという共通の理解が大方あるわけですけれども、私は、この中教審の基本的立場というのももう既に明確ではないかというふうに思うんですね。

 これはことしの五月二十五日ですが、「義務教育費に係る経費負担の在り方について」というところで、一般財源化された場合は国の責任放棄という事態になるということで、六点にわたって問題点をもう既に指摘しているわけです。以上のような理由から、義務教育費国庫負担金は一般財源化すべきではなく、義務教育費国庫負担制度の根幹は今後とも堅持していく必要があるというのが、当作業部会としての結論であるということがございます。

 だから、もう立場というか態度は明確になっているし、中教審のこうした立場を堅持するということではないのかと思いますが、重ねて大臣、いかがですか。

中山国務大臣 中央教育審議会におきましては、教育基本法の見直しについて議論が行われる際に、これからの時代における国と地方の役割分担のあり方について、例えば公教育における地方分権について、これまで文部省が果たしてきた役割等を踏まえて、国と地方の役割を切り分けていく必要があるとか、あるいは、義務教育費国庫負担制度などナショナルミニマムのあり方について中教審で危機感を持って議論する必要があるとか、あるいは、ナショナルミニマムにとらわれず、地方の特性を反映させる仕組みへの転換が必要であるとか、さまざまな議論があったところでございます。

 これらの議論を踏まえまして、昨年三月の答申におきましては、例えば、義務教育について、国及び地方公共団体は共同して良質の教育を保障し、その充実を図る必要があることが明記されておりまして、また、国と地方が適切に役割分担しながらそれぞれの責務を果たすべきことについて新たに教育基本法に規定することが提言されたところでございます。

 このように、教育、とりわけ義務教育を初めとする初等中等教育につきましては、国と都道府県、市町村が連携協力しながら、それぞれの責任と役割を果たしていくことが大切である、このように考えているわけでございます。まさにそういう意味で、今、中央教育審議会でこの義務教育全般についていろいろな議論が行われている中で、もう一度こういった役割分担等について議論をされるもの、このように考えております。

石井(郁)委員 昨年の三月三十日、中教審答申が出されましたけれども、しかし、ここでは、地方と国との役割分担ということは出てきますが、財政的に地方分権型教育体制というものがどういうものなのかとか、そういう検討はなされなかったんじゃないでしょうか。

 私は、この点で、最近ちょっとある冊子を読ませていただきまして、なるほどと思ったので御紹介いたします。これは当委員会にもいらっしゃる、元文部大臣の保利委員の出された冊子なんですけれども、このようなことをおっしゃっておられたんですね。

 目下、与党において教育基本法改正の検討がなされているが、もし国庫負担金を廃止して、義務教育を原則各都道府県に任すということになれば、教育基本法もこの観点から見直さなければならない。与党の検討会も最初からやり直す必要があるし、さらには、中教審においても見直し作業をしなくてはならない。つまり、地方分権型義務教育体制について新たに基本法の構成を考えなければならないのである。これは大作業であり、かなりの時間を要すると考える。現行基本法の改正についても、地方分権型義務教育体制については全く想定していない。

これは、与党の座長として責任ある立場にいらっしゃる保利委員のみずからお書きになっていることなので、私は、まさにこのとおりだというふうに思うんです。

 そこで、大臣に伺いますけれども、大臣は、所信的あいさつで、それからまた今国会のそれぞれの委員会の中でも、昨年三月の中央教育審議会の答申や与党における議論を踏まえて、教育基本法の速やかな改正に向けて精力的に取り組んでまいりたいということをおっしゃっておられますけれども、これはその教育基本法改正の前提が崩れてしまっているということではないんでしょうか。

 私は、もう前提がこのように崩れている以上、やはり教育基本法の改正作業というのはやめるべきだ、進めるわけにいかないのではないかというふうに思いますが、この点、いかがですか。

中山国務大臣 この三位一体の議論の中で、義務教育費国庫負担制度の論議が行われた際にも私が申し上げましたのは、今進められております教育基本法の改正作業にも支障がある、こう申し上げたわけでございます。

 なぜかといいますと、この教育基本法の中に、義務教育の国の責任ということと、それから負担制度の負担の地方と中央の役割分担というようなことも入っているわけでございますから、地方と中央との役割分担が、国がなくなるということであれば、そもそも今論議されている教育基本法の論議そのものがまた振り出しに戻ってしまう。そういう観点からも、この義務教育費国庫負担制度というのは堅持しなければならないんだ、こういうような主張をしたところでございました。

石井(郁)委員 今の大臣がそのように主張されたということはあるんですけれども、重要なことは、国と地方の教育のあり方の根本が今問われている。そして、その財源措置をどうするのかということが大問題になっているときに、基本法を決めることがこの義務教育国庫負担の堅持につながるかといったら、そんな保障にはならないわけですね。つまり、教育基本法を審議して、それが覆されたら、またこれは何のための審議かということになるわけですし、また、基本法はやはり今決めるわけにいかないというのが現時点の状況ではないんでしょうか。だって、来年秋の中教審の答申を待って最終的に結論が出されるということになるわけですから、それに先んじてここで基本法をなぜ御審議できるのかということにもなるわけですね。

 それで、私は、国の義務教育からの財政的撤退という、これまでの中教審でも想定していないことが出てきている。また、与党の検討会でもこのことは想定もしていないということですから、そして、憲法違反、現行の教育基本法違反ということがやられる可能性がある以上、私はこの作業はもうやめるべきだと申し上げたいと思うんですね。

 既に、文科省が与党と一体となって条文の作成に着手しているということは伺っております。しかし、これはやはりこの時点では私はもう進めることに意味がないのじゃないかと言わざるを得ませんが、いかがですか。

中山国務大臣 全く逆に考えたわけでございまして、私としては、中央教育審議会の議論をスピードアップさせるためにもできるだけ早くこの教育基本法の改正をやってほしい、こういうことを保利会長にも実はお願いしたわけでございます。

 と申しますのは、先ほども申し上げましたが、今度の改正案の中に、教育行政につきましても、これは、国と地方公共団体の相互の役割分担と連携協力のもとに行われることということと、国は、教育の機会均等と水準の維持向上のための施策の策定と実施の責任を有すること、こういったことを盛り込もうというふうなのが今の与党の案の中にあるわけでございますから、これをきちっと教育基本法の改正として出していただければ、また中央教育審議会の議論もさらにスピードアップをするし、それを踏まえたまた国と地方のあり方、義務教育のあり方ということについて中央教育審議会の方でも議論が進めやすくなり、来年の秋ごろまでには中央教育審議会の答申もいただけるんじゃないか、このように考えておるところでございます。

石井(郁)委員 私が申し上げたのは、この教育基本法の改正が中教審の昨年の答申に基づいて作業が進められている、その昨年の答申の中には、義務教育国庫負担が堅持されるのかそれとも廃止になるのかということは想定されていなかった。いないんですよ。ただ、一般的に国と地方の役割分担ということであって、それはもう広くいろいろな問題を含むわけですから、義務教育費の国庫負担の制度が堅持されるか堅持されないかという重大問題というのは、想定なしに答申が出ている、では、その答申に基づいて教育基本法の改正の作業はできないじゃないですかということなんです。

 私は、これは、保利先生の冊子を読ませていただいて、本当に、現行教育基本法の改正についても、地方分権型義務教育体制については全く想定していないということで、これはもうやり直さなきゃいけないという話をされていらっしゃるんですよ。だから、そういう意味で、これはもう本当に、今文科省の取り組んでいらっしゃることは矛盾したことになるんじゃないかということを申し上げているわけであります。

 そして、現行の教育基本法は、国の責務というのは条件整備だ、教育内容については口を出さない、いわゆるお金は出すけれども口は出さないということが原則で教育行政は進んできたというふうに思うんですね。ところが、お金を出すが口も出す式でやはり実際のところは教育内容、いろいろ学習指導要領もそうですけれども、統制を強めてきたというのがこれまでの政府・与党のやってきた教育行政だというふうに私は思うわけです。今度は、お金は出さないけれども口を出す、義務教が廃止ということになっていけばですよ、お金は出さないけれども口を出すという式に変えていく。これは既にもう教育基本法改正の案の中にもその方向は出ているわけですね。

 義務教の国庫負担がどうなるかという問題はあるんですけれども、それは例えば、教育振興基本計画には法的根拠を与えて国家戦略としての教育改革、人づくり、人材養成というものが押しつけられようとしているということがありますので、私は、今本当に重大なこの義務教の国庫負担制度を堅持できるかどうかというときに当たりまして、何かそこのところはしっかりとした文科省の立場で進めていただきたいということだし、また、教育基本法の改正をこの中でやろうというようなことはやはり断じて認めるわけにいかないということを申し上げておきたいというふうに思います。

 きょう、もう一点お尋ねいたします。先ほど来これも出ていますが、大臣が大分県別府市で開かれたタウンミーティングでの歴史教科書に関する発言でございます。

 大臣は、やっと最近、いわゆる従軍慰安婦とか強制連行といった言葉が減ってきたのは本当によかったと発言をされて、一応陳謝の表明というのをされていますけれども、私は文部科学大臣として極めて重大な発言だというふうに思いますので、お尋ねさせていただきます。

 一つは、従軍慰安婦問題、強制連行というのは歴史的な事実だと思うんです。侵略戦争の反省として重要な加害の事実ということであるわけですが、なぜ教科書に掲載してはいけないんでしょうか。つまり、減ってきたことがよかったとおっしゃったわけですから、なぜ教科書に載せてはいけないんでしょうか。

中山国務大臣 午前中のお話、委員の御質問にも答えたわけでございますが、タウンミーティングの席上で、あちこち転勤族であった奥様から、大分県というのはちょっと自虐的な教育が行き過ぎているんじゃないか、それについてどう思うかというふうな御質問でございましたものですから、私はかつて日本の前途と歴史教育を考える会のメンバーであった、そういう立場からは、従軍慰安婦というふうな記述が減ってきたことはよかった、余りにも過度なそういう自虐的な教育が行われたことについての反省としてよかった、こう答えたわけでございますが、一方では文部科学大臣を拝命しているわけでございますから、そういった立場からは、やはりどこの国の歴史にも光と影があり、悪かったことについてはこれはもう率直に反省しなきゃいけないというふうなことも申し上げたわけでございまして、そういう意味で申し上げたんですけれども、このことが思いもしなかった誤解等を生むということであれば、これからはそういった発言は差し控えたい、このように考えておるところでございます。

石井(郁)委員 私は、やはり歴史の事実に目をふさぐべきではないし、ふさいではならないというふうに思うんですね。

 この問題は国会でもずっと議論されてきたことでもありますから、もう大臣は御存じのはずですけれども、これは一九九三年の八月、河野洋平官房長官談話がございました。

 改めてそこを見ますと、「本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多くの苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。」我々は歴史の真実を回避することなく、むしろこれを教訓として直視していきたい。歴史研究、歴史教育を通じて、「永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。」ということでございました。

 私は、閣僚の一員として、ましてや歴史教育あるいは教科書行政の責任を負う立場の文部科学大臣として、こうした政府見解、立場をきちんと貫くべきではないのかというふうに思いますが、いかがですか。

中山国務大臣 きのうも閣議後の記者会見で申し上げたんですけれども、名称のいかんはともかくといたしまして、慰安婦として、心身にわたりいやしがたい傷を負われたすべての方々に対しおわびと反省の気持ちを申し上げたい、これはこれまでの政府の見解といいますか、今言われたとおりでございまして、内閣の一員となった以上はそういったこれまでの方針に従って発言し行動していくのは当然だろう、こう思うわけでございまして、そういう意味で、これからは、個人的な心情等についてはいろいろ申し上げたいこともありますが、これからは、大臣になった以上は内閣の一員としてきちっと守っていく、こういうことを申し上げたところでございます。

石井(郁)委員 終わりますけれども、教科書検定を行う文部科学省でございますし、その最高責任者でございますから、これが自虐的だとかこれがどうという、そうしたことで教科書に載せてはいけないとかよかったとかというようなことを行ってはいけないというふうに思うんですね。また、文部科学大臣の立場としてはやはり言ってはいけないことだという点で、それを踏み外したらこれはもう大臣の資格が問われる問題だということを厳しく申し上げざるを得ません。

 このことで今後の大臣の対応をしっかりしていただきたいということを要請いたしまして、質問を終わります。

斉藤委員長 横光克彦君。

横光委員 社会民主党の横光克彦でございます。

 この臨時国会、そして本文科委員会の最後の質問になると思います。よろしくお願いいたします。重複するところがありますが、確認ということでよろしくお願いいたします。

 早速、重複するところからお尋ねいたしたいと思います。

 大分県別府市で開かれたタウンミーティング、実は私の地元でございまして、これは私の選挙区なんですね。そういった意見もあったわけでございますが、しかし、そうでない意見もあるわけですね。そういった中で、大臣が先ほど言われたようなことをおっしゃった、そしてまたその後の記者会見では、今回、文科相になりましてから別の見方をしなきゃいかぬのかな、中立的に見ていかないといけないかなと思っておると述べられたということでございます。

 そこでまず、大臣の歴史教科書観といいますか歴史教科書の記述についての認識をちょっとお尋ねしたいと思うんです。

 歴史教科書についてはどのような認識を持つかは、これは個人としてもあるいは一政治家としては私は自由だと思います。どのようなお考えをお持ちでも、これは構わないと思うんですね。しかし、現在の新たな文部行政の責任を持つ文科大臣という立場にある、そして先ほどお話ございましたように、大臣は教科書検定の最終責任者という立場にもあるわけですね。

 しかも、現在、まさにこの二〇〇六年度から使用する中学校の歴史教科書についての検定作業が文科省で行われているんでしょう。来年の春にはこの検定結果が発表される予定という時期なんです。そういった時期に、この教科書の内容について、教育行政の責任者である文科大臣が発言するということは、これはどうしてもこの検定作業に影響を及ぼすと思うんですね。

 かつて、文部大臣は民間から登用されたこともあります。これは、ある意味では政治的な中立性を大事にしたい、政府にもそういった思いもあったと思うんですね。その政治的中立からも、今回の発言は、私は逸脱した発言であると言わざるを得ません。もしこれを認めてしまうと、まさに国定教科書につながりかねないわけでございます。ここは文部科学委員会でございますので、いま一度、ぜひとも文部科学大臣としての責任について、大臣自身のお考えをお聞かせください。

中山国務大臣 先週の土曜日、まさに横光委員のおひざ元でタウンミーティングを開かせていただきました。極めて幅広いといいますか、いろいろな意見が出されまして、大変実のあるタウンミーティングになったな、このように考えておるところでございますが、私の発言がちょっと問題になったということは残念だったな、こう思うわけでございます。先ほど葉梨議員にもお答えしたとおりでございまして、大臣になる前の個人的なそういう認識といいますか、発言を申し上げたということでございます。

 もちろん、その席上でも、文部科学大臣という立場は十分認識していたわけでございまして、光と影がある、反省すべき点は反省しなきゃいけないということもきちっと申し上げたわけでございます。しかし、私の発言が、もし考えもしなかったそういった誤解を生むということになりましたら、これは本当に残念なことでございますから、これからはしっかりとそういったことも考えて、そういった発言は差し控えていきたい、このように考えているわけでございます。

 また、文部科学大臣といたしましては、当然のことでございますけれども、歴史教科書におきましては、学習指導要領の範囲内で、具体的にどのような歴史的事象を取り上げ、それをどのように記述するかは民間の執筆者等の判断にゆだねられているところでございます。このため、検定では、申請図書の内容に現在の学説状況などに照らしまして、明らかな誤りやあるいは著しくバランスを欠いた記述などがある場合に、検定意見を付してその欠陥を指摘することを基本としているわけでございまして、文部科学大臣といたしましては、この学習指導要領や検定基準に基づき、教科用図書検定調査審議会の専門的な審議を経て適切に教科書検定を行ってまいりたい、このように考えております。

横光委員 先ほど申しましたように、これは一政治家としてはそれぞれのお考えを述べるのは自由だと思いますが、今のお立場ということで、そのようなお言葉を今いただきました。

 ちょっとお聞きしますが、大臣、「冬のソナタ」というのを見たことはありますか。忙しくて見たことがないでしょうけれども、今大変な韓流ブームなんですね。いわゆる私たちの国の若者、そして女性に韓国のドラマやあるいは俳優が物すごく今人気になっているんですね、そういうことが。韓国の文化への関心もかつてないほど高まっていると言ってもいいでしょう。私は、これは非常にいいことだと思うんですね。

 しかし、その一方で、過去の日本と韓国の関係、あるいは日本による朝鮮半島の植民地支配に関しては、教科書の記述も少なくなっている。そして、その結果、その関係を日本の若者の間では全く知らない者も少なくなくなってきているんですね、日韓あるいは朝鮮半島の状況を。ヨン様のことは何でも知っているんですが、こういった植民地支配のことを全く知らないという事態もある。つまり、知識が非常にアンバランスになっていることも現実なんですよ。ですから、韓国人との交流の中で過去の問題を突きつけられて、初めてあの植民地支配のことを知る、そういう例も多くなっていると聞いております。これは非常に問題だと思うんですね。

 ですから、大臣は、従軍慰安婦とか強制連行といった言葉が減ってきたのは本当によかったとおっしゃったわけですが、本当によかったのかなと、私はちょっと違う考えを持っているんですね。むしろ、日本では教えられるべきものが十分に教えられていないんじゃないかという気がしてならないんですね。

 韓国では、つい二、三カ月前、韓国で植民地時代の日本に積極的に協力した人々を洗い出す、いわゆる親日反民族行為真相究明特別法、こういった法律が成立しておるんですよ。つまり、この事例でおわかりのように、支配された側の記憶というのはいまだに鮮明なんですね。しかし、支配した側の記憶というのはだんだん薄れていきます、これはどうしても。しかし、つい二、三カ月前、このような法律がなお韓国でつくられるということは、支配された側の記憶というのはいまだ鮮明なんだなということをつくづく思うわけです。

 そういった意味からも、日韓外交あるいは日韓交流という意味からも、私はやはり、先ほど大臣も言われたように、反省すべきところはしっかり反省して、たとえ影であっても歴史的な事実であるならば教えていくべきだろう、私は知らないことが一番危険だなという気がいたしておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、前回もちょっとお尋ねしたんですが、新潟県の中越地震の対応についてお尋ねします。

 被害を受けた児童生徒にとっては、勉学にスポーツに最適な秋、この秋の時期を失ってしまったことになるんですね。もう一つ加えれば、これに食欲の秋も奪われてしまった。そして、間もなく厳しい冬の季節を迎えるわけですが、特に来春に受験を控えている子供たちにとっては、これからが一番に重要な時期になるわけでございます。そういった意味で、早急に通常の学校生活を取り戻して、子供たちの不安をなくすことが何よりも今求められていると思うわけでございます。

 そこで、お尋ねをしたいんですが、避難所となっている学校施設に関してちょっと伺いたいんですが、現在の状況は、文科省の十一月十一日現在の集計をお聞きしたら、避難所となっている施設が二十九カ所、避難所で生活している児童生徒数が四千五百五十三人中四百九十二人となっております。これらの児童生徒の通学状況、そしてまた受け入れ態勢はどうなっているのか、教科書あるいは学用品等はしっかりと確保されているのか、そのあたりをまずお聞きしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 新潟県の教育委員会からの報告でございますけれども、現在、学校施設が避難所として使用されている箇所は十六の小中高等学校でございます。それから、児童生徒が避難所で生活をしている数でございますが、四百三十四人でございます。このほか、五十四人がテント、三人が車中で生活をしておられまして、仮設住宅や親戚、知人宅を含めますと、千三百七十八人が自宅外から通学をする状況にございます。これらは十一月二十九日現在でございます。

 このような自宅外から通学する児童生徒に対しましてきめ細かく対応するために、被災地の小中学校では、全学校が再開をした十一月の八日以降、児童生徒の所在確認というものを毎日行っております。

 それから、教科書につきましては、災害により失われたものや転学に伴い必要となったものとして、これまで小中学校では約一万一千冊が無償給与され、必要数が確保されているという状況でございます。

横光委員 その一方で、避難所とされている学校の方から見れば、学校施設が従来のように教育目的に使用できないという状況もあるわけですね。この点については、何らかの支障とか、あるいはどういう対応をされているのか、お聞かせいただけますか。

銭谷政府参考人 先ほど申し上げましたように、十一月二十九日現在で、十六の小中高等学校が避難所として使用されているところでございます。これらの学校では体育館などが避難場所となっているところでございますので、授業に当たりましては、グラウンドや学校外の施設を活用するなど、指導上の工夫を行っていると伺っております。

 これらの状況につきましては、避難されておられる住民の状況に十分配慮しながら、災害対策担当部局と密接に連携をして、応急仮設住宅の建設など、避難住民の方の生活の場を確保することによりまして、できるだけ早期に学習環境を回復していくということが必要であると考えているところでございます。

横光委員 そのあたり、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 前回も、特に被害の大きかった山古志村の状況について質問したんですが、当時は地震直後のことでございましたし、また余震も続いておりました。そのときの御答弁では、受け入れ先学校への教職員の配置などに配慮したい、受け入れ先学校で適切な教育環境の確保が図られるよう適切に対応したいという御答弁がございましたが、あれから一カ月ちょっとたつんですが、現在の教職員の配置等の状況についてお聞かせください。

銭谷政府参考人 まず、山古志村の児童生徒の状況でございますが、山古志村の住民の方は、児童生徒を含め全員、現在、長岡市に避難しているところでございます。十一月二十九日現在、山古志村立の小中学校在籍の児童生徒百二十一人のうち、百八人の方が避難所から、それから十三人の方が親戚、知人宅から通学をしております。山古志小学校は、現在、長岡市立阪之上小学校の校舎を使用して、また山古志中学校は長岡市立南中学校の校舎を使用して授業を行っているところでございます。

 それから、教員等の措置でございますけれども、この十二月の一日から、子供たちの心のケアを行う教育復興担当教員というものにつきまして新潟県からの要望を受けまして、百四十七人配置が行えるよう、義務教育費国庫負担金によりまして加配措置を講じたところでございます。

横光委員 私は、今のそういった対応は非常に評価できると思うんですね。今言われたように、教育復興担当教員を百四十七人増員した、義務教育費国庫負担制度のもとでやるということでございますが、例えば、これが今三位一体改革で論じられております一般財源ということになると、果たしてこういうことが緊急に対応できたのか、非常に心配になるわけですね。国の立場ではできなくなるし、また、地方の負担は相当負担増になるでしょうし、そういったことを考えるにつけ、私は、改めてこの義務教育費国庫負担制度の意味というものは大きいなという気がしているわけでございますが、その件についてちょっとお尋ねしたいと思います。

 大臣は、これまでもずっと本委員会で、この義教費国庫負担制度について、長年にわたり我が国教育水準の向上に大きな効果をもたらしたもので、世界から評価されており、この制度を廃止することは我が国の存立にかかわることであり、しっかりと堅持する方向で頑張っていきたい、そういう旨の発言を、答弁を何度もお聞きいたしました。

 それから一カ月余が経過しまして、先週の末、二十六日に政府・与党協議会において、この取り扱いの焦点とされておりました義教費国庫負担金についてが合意されたわけですね。しかし、この合意内容を見ると、非常にあいまいもことしておりまして、それはどちらでもとれるというような内容になっております。

 一番の場合、制度の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する。その方針のもと、費用負担についての地方案を生かす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育のあり方について幅広く検討することとし、これらの問題については平成十七年秋までに中央教育審議会において結論を得る。ここだけを読めば、まさに義務教育費国庫負担制度堅持、これからも義務教育は国の責任でしっかりやるんだということがはっきり受けてとれるわけです。

 しかし、二番目では、中央教育審議会の結論が出るまでの平成十七年度予算の暫定措置として四千二百五十億円を削減するものとする。このあたりになると、もうさっぱりわからなくなるんですね。これを削減したら、この制度は堅持できるかどうか非常に難しいわけです。

 この取り扱いについて、マスコミ等は、平成十八年度までに義務教育費国庫負担金を八千五百億円削減することとされたなんて報道も多いんですね。こんなことを書かれたら、これは制度堅持も何もあったものじゃないと思うんですが、この十七年秋の中教審の結論を待たずに、暫定的な措置としても平成十七年度は四千二百五十億円削減するということは、これは初めからもう削減ありきということであって、中教審の審議が無意味になってしまうんじゃないかという気がしてならないんですが、そこのところをちょっと確認させていただきたいんです。

中山国務大臣 この国庫負担制度の議論につきましては、私としては不退転の決意で頑張ったわけでございますが、先ほど御披露がありましたが、小泉総理から、済まぬな、こらえてくれということを言われたわけですけれども、本当に、こらえようかこらえまいか考えたぐらい、実は考えたわけでございます。

 ただ、ここに書いてあることは、私どもの主張がまさに通った、こう思うわけでございまして、この義務教育国庫負担制度については、根幹を堅持し、国の責任を引き続き堅持する、そして、費用負担の問題も含め、義務教育のあり方については、平成十七年秋までに中央教育審議会において結論を得るということで、これでまずぴしゃっと一回踏みとどまったわけでございます。

 しかし、一方では、地方からの改革案、改革案なのか、私は単なる案と言っているんですけれども、案においては八千五百億円とにかく削減しろ、こういうふうなこと、これについては小泉総理も真摯に受けとめる、受けとめろ、こう言われたわけでございます。

 そこで、十七年度については、八千五百億円の半分の四千二百五十億円について暫定的にカットするということでございまして、暫定でございますから、十七年秋までの中央教育審議会の議論いかんにおいてはゼロになる、このことは、私はもう最後に、細田官房長官のところに乗り込みまして、ゼロになることもあるんだなということは確認をとったところでございます。

 そういう意味では、これから中央教育審議会において、制約なしで義務教育全般について議論をしていただく中で、この負担制度についても、中央と地方の役割分担、負担の問題等について議論していただけるものと考えております。

横光委員 あくまでも中央教育審議会の意向を尊重するということでございますので、そうであるならば、もう一度確認します。

 仮に、中教審がその削減に反対、来年そういった結論を出した場合には、十八年度における四千二百五十億円の削減を取りやめること、これは当然のことだと思いますが、十七年度、来年度の暫定の削減四千二百五十億円もこれを復活させる可能性はある、こう理解していいわけですね。

    〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕

中山国務大臣 これは、中央教育審議会の議論がどのようになるかわかりませんが、まさにその結論いかんによっては来年度、十七年度分もゼロになるということで、私は細田官房長官に念を押してきたところでございます。

横光委員 よくわかりました。

 それでは、十七年度において四千二百五十億円を暫定措置として削減するということでございますが、具体的にはいかなる経費なら削減できるのか、お聞かせください。

銭谷政府参考人 去る十一月二十六日の政府・与党合意においては、十七年度限りの暫定措置として四千二百五十億円程度の国庫負担金を減額する、こういうふうになっているわけでございます。

 その具体的な取り扱いでございますけれども、今後詰めることになろうかと思いますが、各都道府県に対する国庫負担金額のうち一定額について税源移譲予定特例交付金として措置をする方向で検討するということになろうかと思っております。

 この場合、例えば教員、事務職員、養護教諭、栄養職員といった職種ごと、あるいは小中学校種ごとに異なる措置をとるということは考えていないわけでございます。すなわち、各都道府県に対する国からの支出については、国庫負担金と税源移譲予定特例交付金とを合わせた総額が、減額する前の国庫負担金の額に相当する額となるように配分をするということにしたいなというふうに考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、これまで国庫負担しておりましたその水準が維持されるように、減額後の国庫負担金と税源移譲予定特例交付金との総額、これについて国が責任を持って都道府県に配分できるようにしたいというふうに思っております。

横光委員 この四千二百五十億円の、いわゆるどういう形でどの項目で削減するというのはまだこれから検討されるというようなことでございます。それの削減により必要となる財源措置は、今言われました税源移譲予定特例交付金ということでしっかり対応するということでございますが、ちょっと心配なのは、この税源移譲予定特例交付金、これは教職員給与費を基本として配分ということになっておりますが、これは大くくりでは一般財源ですね。となりますと、給与以外にもこれは使えるんですね、交付金となりますと。各都道府県で学級数あるいは教員の数を減らした分、そういった減らした分、要するに、ある意味では浮いた金をほかに使うということもこれは可能な道となるんですが、そのあたりのところは、教職員給与費を基本として配分するということで総務省と確認はしっかりとれているんですか。

銭谷政府参考人 これは、政府・与党合意の附属文書におきまして、教員給与費を基本として配分をするということになっておりますので、教員給与費に使用していただくということになるようになっております。

横光委員 つまり、交付金となっているといっても、しっかりとこれは使途がはっきりしているということでございます。

 次に、大臣が今度、十月二十日に中教審に「今後の教員養成・免許制度の在り方について」、諮問を行っております。これは、現行の教員免許制度において、教員免許状は大学等で教科、教職等に関する科目について所要の単位を修得した者に授与されており、実際の教科等の指導力やあるいは適格性を含めた教員としての資質、能力は十分判断されていないわけですね。

 教員免許の更新制の導入については、中教審で審議を行い、平成十四年二月に答申を行っておるんです。

 この答申では、教員免許に更新制を導入することができれば、適格性を欠く教員への対処が格段に進む可能性が広がると。そういう思いがありながらも、結論として答申は、現行の教員免許制度において、免許状授与の際に人物等、教員としての適格性を全体として判断していないことから、更新時に教員としての適格性を判断するという仕組みは制度上とり得ないこと。そして二番目に、免許状に有効期限を付して更新することは、他の免許との比較上、また一般的な任期制を導入していない公務員制度全般との調整の必要性等の制度上、実行上の問題があること。

 これらの理由で、現時点において、つまり十四年の二月、二年八カ月前において、教員にのみ更新時に適格性を判断したり、免許状取得後に新たな知識、技能を修得させるための研修を必要として課する教員免許の更新制を導入することは、なお慎重にならざるを得ないと結論づけたばかりでございます。

 そして、その答申を受けて現実に教員免許の更新制導入が見送られて、そして行ったことは、教育公務員特例法の改正によって教員に十年経験者研修を義務化したことは記憶に新しいわけですね。当面はこれでいこうということになったにもかかわらず、この答申からわずか二年八カ月経過して急に再浮上した。余りにも朝令暮改ではないか。

 答申からわずか二年余りでまたしても同様の諮問を行うということは全く理解に苦しむわけでございますが、急遽諮問した理由について、大臣から見解をお聞きしたいと思います。

中山国務大臣 まさに今御指摘のように、この教員免許更新制につきましては、平成十四年度の中央教育審議会で導入を見送る結論が出たところでございますけれども、ただ、その答申におきましても、今後の科学技術や社会の急速な変化等に伴い、再度検討することもあり得るということが示されているわけでございます。

 近年、教員をめぐりましては、義務教育における国の役割の議論に関連して、教員の資質、能力をどのような形で国が責任を持って担保するかが課題になっているわけでございます。また、いわゆる指導力不足教員の増加等を背景に、教員の資質、能力のあり方が改めて問われているわけでございます。

 さらに、教員を含む公務員制度全体につきましても、能力等級制の導入等を柱とする改革が検討されるなど、大きな変革の時期を迎えているわけでございまして、このような社会状況の変化の中で、今後、信頼される学校づくりを進めていくためには、教員としての適格性や専門性を適時適切に確認することによりまして、質の高い教員を養成、確保して、国民の信頼にもこたえていくということが重要であります。

 このため、中央教育審議会におきまして、今後の教員養成、免許制度のあり方について幅広い御議論をいただくことといたしまして、この一環といたしまして、教員免許更新制の導入についても検討をお願いしたところでございます。

横光委員 ありがとうございました。

 ちょっと一言、あれをお示ししておきます。今、教育現場は難問が山積しておる。学力重視からゆとり、ゆとりからまた学力重視と、教育改革に矢継ぎ早に変わるということで、全国の教職員は長時間の勤務を強いられているものの、真正面から取り組んでいるんですね。

 ここでちょっとお示ししておきますが、連合の調査による教職員の平均在校時間、ことしの一月、二月に調査したそうです。小学校、十時間三十五分、中学校、十一時間四十一分、高校、十時間三十二分。今のまま働くと病気になるという答え、教員五八・四%、民間の従業員三九・五%。この現実を認識していただきたいと思います。

 終わります。

稲葉委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十二分散会


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