衆議院

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第6号 平成17年3月16日(水曜日)

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平成十七年三月十六日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 川内 博史君 理事 牧  義夫君

   理事 河合 正智君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      佐藤  錬君    下村 博文君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      寺田  稔君    西村 明宏君

      葉梨 康弘君    萩生田光一君

      馳   浩君    古屋 圭司君

      保利 耕輔君    山際大志郎君

      青木  愛君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    須藤  浩君

      高井 美穂君    武山百合子君

      達増 拓也君    樽井 良和君

      長島 昭久君    肥田美代子君

      松本 大輔君    笠  浩史君

      池坊 保子君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  鈴木 俊一君     寺田  稔君

  西村 明宏君     萩生田光一君

  古賀 一成君     樽井 良和君

同日

 辞任         補欠選任

  寺田  稔君     鈴木 俊一君

  萩生田光一君     西村 明宏君

  樽井 良和君     古賀 一成君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省生涯学習政策局長田中壮一郎君及び初等中等教育局長銭谷眞美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。保利耕輔君。

保利委員 大臣、連日御苦労さまでございます。参議院の予算委員会等、本当に御苦労なことと思います。頑張っていただきたいと思います。

 また、委員各位も、きょうは野党の先生方もおいでをいただいて、いろいろ曲折はありましたが、こうして皆さん御出席のもとに審議ができますことを大変私もいいことだと思っております。

 さて、この問題については、私も随分悩みました。義務教育費の国庫負担の堅持という線でずっと活動をしてまいりましただけに、この法案が出てまいりまして、促進する立場から、可決しなければならないという立場から質問をするということは、私にとっては大変きついことでございます。また、大臣も堅持の方向で頑張って、最後まで本当に死力を尽くして頑張られた。その大臣が、四千二百五十億の負担金の削減ということについての法案を通すという、通さなければならないという立場にお立ちになった。互いに非常に苦しい立場でありますけれども、政府・与党が合意のもとにこの法案をつくったということを考えますと、やはりこれは通していかなければならないのかなと私も思っております。

 しかし、気持ちの上では、日本の義務教育を考えるときには、私どもは、国庫の負担というのは堅持し、国の責任というのはしっかり保っていかなきゃならぬということをつくづく考えておるわけでございます。

 そこで、この問題の経緯というのはもう既に御承知でございますが、この問題についてのきちんとした文書というのは、昨年の五月二十五日に出ました「義務教育費に係る経費負担の在り方について」という中教審の中間報告がございます。これは少し厚目のものでございますが、中を見ますと大変にいいことが書いてございまして、特に二十ページには、国庫負担の必要性、なぜ必要なんだということを六項目にわたってきちんと解説がしてある。さらに、二十五ページ、二十六ページを見ますと、地方財政についても心配をしておられて、国庫負担を外してしまうと地方財政が非常に苦しくなるんじゃないかというような意味のことをきちんと文章で述べておられます。

 そして、私どもの方に、地方議会からも、「「義務教育費国庫負担制度」の堅持を求める意見書」というのが来ておりまして、恐らく文部科学省にも来ておるんだろうと思います。各地方議会から上がってきております。その中の一節を読んでみますと、

  義務教育費国庫負担制度の一方的な見直しは、地方財政が厳しさを増す中にあって教育の質的向上が望まれる今日、財政状況の差を教育に影響させ、保護者・地域住民の望みに逆行するなど、憲法・教育基本法が保障する義務教育制度を踏みにじるものといわざるを得ない。

さらに、飛ばしまして、

  よって、国におかれては、「義務教育費国庫負担制度」を見直す前に、憲法に規定された国の責務をどのように果たしていくのかという視点で、十分な論議を行うとともに、同制度本来の趣旨である憲法・教育基本法が保障する「教育の機会均等・水準の維持向上」を担保する新たな仕組みが国民の合意を得られるまでは、現行制度をそのまま堅持されることを強く要請する。

これは、県議会から意見書として正式に上がってきているものであります。

 地方の意見、地方の意見とおっしゃるが、地方の意見の中に、意見書としてこれだけはっきり国庫負担の維持、堅持を言っている意見書、これが恐らくいろいろな議会から来ていると思うのであります。

 そういう中にありまして、この問題が大きく取り上げられて、御承知のように地方六団体の意見書というのが出てまいりましたのが昨年の八月のことであります。暑い中、知事さん方が徹夜で御論議をなさって、ここにありますが、「国庫補助負担金等に関する改革案」として、平成十六年八月二十四日付、地方六団体ということで出てきております。

 地方六団体のこの中を見てみますというと、これは、最終的には、現在の教員の給与であります二兆五千億について、これは教員の給与の半分に相当しますが、二分の一の二兆五千億について、一期、二期に分けて全部行うということがここの中に書いてある。今の県議会の意見書と全く違うことが書いてあるということでありまして、しかも、それは地方六団体の名前で出てきておるということであります。

 これは非常に問題があると思うのでありますが、この意見書の中にも、地方の財政が厳しくなるということを一生懸命言っているくだりがある。ですから、それは交付税等でしっかり面倒見てくださいということを言っている。地方自治のために地方にお任せくださいと言っていながら、片方では地方交付税等によってきちんとその財政的裏づけをしてほしいということをおっしゃっている。それならば、国がきちんと義務教育については全面的に負担をするというのがいいのではないかなと私は思いますけれども、地方六団体の御意見というのはそういうことであったわけであります。

 私は、その後になりますが、九月になって、ここにございますが、「義務教育費国庫負担の堅持を訴える」という冊子をつくりまして、そして自民党の総務会の中でも、これを読み上げて皆さんに御理解を求めたのであります。その中に、この六団体の言っていることについての意見等も言っております。先ほど申しましたように、財政についてはきちんと交付税等で面倒見ろよと言っていることは、ある意味では矛盾ではないかという趣旨で物を申しているわけでございます。

 その後、いろいろ政府・与党間で調整が行われまして、「三位一体の改革について」という平成十六年十一月二十六日付の政府・与党合意が行われたわけでございます。

 大臣はこれにどのように参加されたのか承知をしておりませんけれども、その中で、各分野に分けて記述がありますが、義務教育の部分については、文教の部分については、

  義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する。その方針の下、費用負担についての地方案を活かす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討する。

  こうした問題については、平成十七年秋までに中央教育審議会において結論を得る。

  中央教育審議会の結論が出るまでの平成十七年度予算については、暫定措置を講ずる。

これが今問題になって、ここで議論になっている四千二百五十億、負担金の削減、それを裏打ちする措置等についての法案になってきているんだろうと思うんです。

 そこで、大臣にこれは伺っておきたいなと思うのでありますが、まず、この中に言っている「その根幹を維持し、」ということについて少し突っ込んだことを伺ってみたいと思うんですけれども、根幹とはそもそも何なんだ。根と幹だと書いてあるんですが、根幹とは何だ。義務教育制度の根幹、そこの中には費用の負担という部分が入るのか入らないのか。これは、文部科学大臣並びに文部科学省の解釈を伺っておきたいと思います。根幹とは何か。これが第一の質問でございますので、お答えをお願いいたします。

中山国務大臣 まず、保利委員には、昨年の三位一体の改革の中で義務教育費国庫負担制度の堅持という立場から御支援いただきましたことを改めて感謝申し上げたいと思います。それから、目下問題になっておりますが、教育基本法の改正につきましても、与党の協議会の座長として御尽力いただいておりますことについても改めて敬意を表し、また御支援いただきたいと思っておるところでございます。

 今、昨年の三位一体改革につきまして、中央教育審議会の中間答申から始まりまして、るる御説明いただきました。ずっとその経緯を思い出せたわけでございます。特に、保利委員がつくられました義務教育についての小冊子、これは本当に、しっかりと言うことは言い、しかも余計なことは入っていないという意味で、まさにそれにこの問題が凝縮されている、私は、そういう思いで自分でも何度も読み返し、またいろいろな方々にも読んでもらうようにお願いしたところでございます。そして、最終的には、昨年十一月二十六日の政府・与党合意、あの文書になったわけでございます。

 いろいろな過程の中で、私は、義務教育費国庫負担制度は堅持すべきである、単なる財政論、特に補助金改革から始まって義務教育の国の責任を放棄していいのかという思いから、必死に反論といいますか主張したわけでございますが、ああいう形になったわけでございます。

 しかし、あの合意文書の中に中央教育審議会の議論を経てという言葉が入ったということは、これは本当によかったと思っておるわけでございまして、まさに今、剣が峰といいますか徳俵でやっと踏みとどまることができたな、こう思っておるわけでございます。今、大相撲も始まっておりますが、中央に寄り返して、がっぷり四つに組んで中央教育審議会で議論いただいている、このように考えているところでございます。

 そこで、この義務教育制度の根幹とは何かというような御質問でございますが、これは私は、憲法の要請によりまして、機会均等、それから水準の維持、そして無償制、この三つが根幹であろう、これを国の責任としてやっていくということであろうと思うわけでございまして、それを裏打ちするものとして義務教育費国庫負担制度がある、このように考えているわけでございます。

 国といたしましては、いわゆる標準法によりまして、学校の先生方のある一定の確保を図る。何といいましても教育におきまして、特に義務教育におきましては、先生の質、量というのが非常に大事であると思っておりまして、その学校の先生を必要数確保する、そういう標準法と、それを裏打ちするものとして国庫負担制度というのがある、そして給与の二分の一を持つ、この二つのことがあって、私は、国の責任、この根幹を維持できる、このように考えておるところでございます。

保利委員 費用の負担を含むというふうに私は解釈をさせていただきました。初中局長も首を縦に振っておられますから、それでいいんだろうと思います。

 そうすると、政府・与党合意の中には「根幹を維持し、」という言葉が入っているわけですから、費用負担を維持し、こう読みかえてももちろんいいわけですね。これは文部科学省の解釈かもしれません。しかし、地方案を見ますと、地方案は、将来は二兆五千億全部地方に渡すんだ、こういうことで書いてあるわけです。

 そうすると、地方は地方分権の立場から物を言っておられる。国はといいますか文部科学省は、国の責務をしっかり果たしていくために、費用負担を含んで自分たちがしっかりやるんだとおっしゃっている。そこのすり合わせというのは非常に難しいだろうと思いますね。

 ですから、ここはよく中教審で御議論をいただかなきゃならないポイントだと思います。ただ、中教審も中間答申の中ではきちんとそのことについて触れておられますので、今後さらに検討を加えられましょうし、きょう夕方から、中教審の義務教育に関する部会があるようでございますので、そこでまた議論が始まるんだろうと思いますが、こういうことはしっかり議論を詰めていただきたいなと思っております。

 そこで、これは地方側がいつも言うことでありますけれども、義務教育は、機関委任事務であったものを自治事務に直しているという経過がございます。平成十二年、地方分権一括法の中でそういう措置がされております。この地方事務ということに対して、そして国が片方では費用を負担しなきゃならない、負担すべきだということとのその整合性をどこに見出すのか。これは文部科学省からお答えをいただきたいと思います。

銭谷政府参考人 御説明申し上げます。

 平成十一年に地方分権一括法が成立をいたしまして、小中学校の設置管理に関する事務は市町村の自治事務と整理をされたわけでございます。これは、それまでの団体委任事務などの事務の概念、名称を改めたものでございまして、戦後から一貫して、小中学校の設置管理の事務は地方自治体の事務でございました。

 義務教育につきましては、これまで都道府県に対する市町村からの機関委任事務ということで教職員の任免をしていただいていたわけでございますけれども、その事務につきましても、事務の考え方の整理はなされたわけでございます。

 ただ、義務教育費というのは、学校の設置管理のための教職員の給与費でございますから、これまでも国庫負担制度によりまして市町村の設置管理に係る義務教育費について財源を保障してきたところでございますが、学校の設置管理が自治事務になったからといって国が一切の関与もできないというわけではもちろんございませんし、国の責任として、基準を設定したり必要な財政的援助を行うということは当然可能でございます。事実、地方分権推進委員会の勧告を受けました平成十年の閣議決定におきましても、義務教育は、生活保護と並び、真に国が義務的に負担を行うべき分野の代表例として位置づけられておりまして、財源保障の問題と自治事務であるかどうかは直接関係するものではないと思っております。

 平成十一年当時、将来、財源保障の議論において、自治事務であることが、廃止、一般財源化の論拠として主張されるということは私どもも想定はしていなかったわけでございますけれども、ただいま申し上げましたように、義務教育費国庫負担制度は、もともと地方の事務として位置づけられている義務教育の経費を国庫負担してきたものでございますから、自治事務として整理されたとしても、引き続き地方の事務であることには変わりなく、一般財源化を主張する論拠にはならないと考えております。

保利委員 今の御説明、わかったようなわからないような気がいたします。自治事務であって、何で国が負担をしなければならないかということについて、負担をすべきかということについて国民にわかりやすく説明をしていくということが、この問題に対しての国民の理解を得るポイントじゃないんだろうか。

 総務省がつくりました広報用のデータによりますと、義務教育は地方の自治事務であるということを大宣伝していらっしゃる。町村長さんの集まりのときに僕は行ったんですが、そこでこういうものが配られておって、自治事務ということを非常に強調しておられる。だから全部地方に渡しなさいという論点になっている。だから、今、銭谷局長が御答弁になった内容をわかりやすく、自治事務なんだけれども国が負担すべきである、そこのところをきちんと解説していただくように要望をいたしておきたいと思います。

 なお、今後、文部科学省としては、この問題にどう取り組んでいかれるか、どういう立脚点に立ってこの問題を将来やっていかれるか。二兆五千億全部渡せというのが地方の考え方である。地方案を尊重すればそうなっていく。しかし、国の責任というのを一生懸命考えれば、それじゃいかぬということになる。イギリスにおいての例が、ブレア政権で国庫負担を一〇〇%にしようということになっておるわけでして、そういったことをもあわせ考えて、今後の方向、今後どういうことで文部科学省は政策を進めていくのか。その点については、大臣から御所見をお伺いできれば幸いだと思います。

中山国務大臣 義務教育費国庫負担制度の費用の負担につきましても、今、中央教育審議会の特別部会で議論を始めていただいているところでございますが、私としては、先ほども申し上げましたけれども、義務教育の国の責任というのはあるんだろう、根幹を維持する上において、やはり費用負担といいますか、予算的にも担保していくということが国の責任を全うする道である、このように考えているわけでございます。

 そういう点で考えますと、地方六団体、地方六団体といっても、先ほどお話がありましたように市町村段階、あるいはもう議会の方では堅持しろという声が強いわけでございますが、いわば知事会側の考えております一期、二期に分けて二兆五千億全部、国の負担といいますか支出を削減して、全部地方が持つということは、私はあってはならないことだ、こう考えております。

 と申しますのも、まさに諸外国の趨勢を見ましても、国の関与をふやす方向、イギリスなどは全部国が持つ、そういった趨勢の中で、なぜ日本だけが国の責任を放棄していいのか。そしてまた、まさに議会の方で心配しておられますけれども、財政力が非常に乏しくなってきている。そして今後、交付税の改革といいますか、削減は避けられないと思うわけでございまして、そうなりますと、本当に地方によりまして、財政力の差によって機会均等ということが脅かされると思うわけでございまして、こういう事態は絶対避けなければならないと思っております。

 というよりも、私は、大きな顔ができないと思っていますのは、今、義務教育に十兆円かかっているわけですけれども、国はそのうちの三兆円、三割しか負担していないということがそもそも問題なのではないか、私はこう思うぐらいでございます。今後とも、もちろん中教審のこれからの検討を待つわけでございまして、予断を持って語ることはできませんが、文部科学省としては、そして文部大臣としては、この義務教育費国庫負担制度を堅持することによりまして憲法の要請による国の責任というものを果たしてまいりたい、このように考えております。

保利委員 ありがとうございました。

 大臣のそういうお考えを伺って、私も、今後ますますこの問題を大事に扱っていかなきゃならぬという気持ちがいたしました。

 そこで、実は、感想を申し上げますれば、この四千二百五十億の暫定措置をやったというのは、私はいかがなものかなと思います。そこら辺の、今大臣がおっしゃったような教育論をちゃんと煮詰めておいて、そうしてから移行措置を決めていく、あるいは八千五百億なら八千五百億の措置を決めていくということをなさるのが普通であって、その半分をここで、ことし限りの措置としてやるということはいかにも中途半端な感じがいたしております。

 しかし、政府・与党で合意されて、私の手の届かないところで合意をされて、それが法案になって出てきて、これを通さなきゃならぬという立場でありますので、反対もできない、苦しい立場であります。そのことを申し上げておきたいと思います。

 最後に、余った時間で、憲法の問題についても申し上げたいと思います。

 教育基本法の議論を、今与党の中でやらせていただいておりますが、その中で、憲法については、義務教育について触れている部分は憲法二十六条であります。憲法二十六条「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」こういう二十六条がある。

 明治憲法にはこの条項はありませんから、大変重要な条項だと私は考えておるわけでありますが、ここで言っております中で、言葉として一つ気になるところがあります。それは、普通教育という言葉が入っております。義務教育ではない、普通教育という言葉が入っておる。

 この普通教育というのはどういう教育なのか。物の本を調べたり何かしてみますというと、国民として必要な教育であるということでありますが、もう時間がありませんので、私の方から一方的にお話をしてしまいますけれども、普通教育が、実は文部科学省の判断では三段階に分かれておる。初等普通教育を小学校でやっている、それから中等普通教育を中学校でやっている、そして高等普通教育を高等学校でやる、このことは学校教育法の中にきちんと書いてあるわけであります。

 そうすると、普通教育というのが国民として必要な知識を得させるための教育であるというならば、これは国民がだれしも普通教育の課程を卒業していなきゃならない。しかし、高等学校で行います高等普通教育を終わらないと、普通教育は終わらないという組み立てになっている。ということは、高等学校が義務化されていれば別ですけれども、私は義務化しろと言っているわけではありませんが、そこまで普通教育が入り込んできている。ということは、中等学校を卒業した段階では普通教育は完結していないというふうに感じられるわけであります。そこのところは是正をしていく必要がある、私はそう思います。

 それは、とりもなおさず高等学校の位置づけであります。高等学校においては高等普通教育を授けるのではなくて、高等学校においては高等教育の初歩的段階を授ける、こういうふうに置き直していった方が、私は、全体としてのすっきりした姿になる、普通教育を憲法で言っている意味がはっきり出てくると思うのでありますが、御所見をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

中山国務大臣 今、普通教育についての保利委員の御見識を賜ったわけでございまして、お聞きしますと、以前からこの主張をしていらっしゃるということでございます。

 今の制度では、小学校、中学校、高校におきまして普通教育を行う、高校においてはその普通教育とプラス専門教育も行う、こういうふうな仕切りになっているわけでございます。高等学校を普通教育とするのかどうかということについても、お考えのようなこともあるかなと、私も今お話をお聞きしておったところでございます。

 これは法律制定時のいろいろな経緯もあったようでございますし、今、中央教育審議会におきまして、義務教育のあり方そのもの、年限とかそういったものも含めて御検討をいただいておりますので、その検討を待ちたいと思っておりますが、今の保利委員のようなお考えがあるということもしっかり心にとめておきたい、このように考えておるところでございます。

保利委員 教育基本法上も、この問題を扱うのは義務教育の条項のところで非常に重要なポイントになってまいりますので、きょうは生涯学習局長さんもおいででございますけれども、よく省内で検討していただいて、どう扱うかということについて決めておいていただいて、そしてそれを教育基本法の中に反映させるようにお願いをしたいと思っております。

 時間が足りません。いつかまた質疑の時間がありましたらやらせていただきますが、よろしくお願いをいたします。ありがとうございました。

斉藤委員長 池坊保子さん。

池坊委員 皆様、おはようございます。公明党の池坊保子でございます。

 今、次世代における教育の危機と言われる義務教育費国庫負担制度について、これは私、二度も質問させていただきまして、中山大臣からしっかりとお答えもいただきました。お考えは十二分にわかっているつもりでございますので、私は、それも含めて、二十一世紀の教育はどうあるべきなのか、国と地方はどのような関係、かかわり方がいいのか、そういうことの幾つかを質問させていただきたいと思います。

 私ども公明党も今勉強会を重ねておりまして、先週は、百升計算で有名な陰山先生をお招きいたしました。百升計算だけでなくて、生活改善の改革こそが学力低下に歯どめをかけるのだという大変示唆に富んだお話を伺いました。また、けさ八時から東大の苅谷先生のお話を伺っていて、少子化と言われているから人件費が削減されると思ったら大間違いで、四十代半ばの人たちの退職金で財政は苦しくなるのだというお話で、私は、これからいろいろな視点でのお話を聞くことが必要なんだなというふうに思いました。

 その中にあって、もしかしたら文部科学省も、二十一世紀にふさわしい抜本的な発想の転換をしていかなければいけないのではないか。考えてみれば、今までいろいろな時代に合わせて、例えば、基礎が足りない、詰め込み式だと言われたら、今度はゆとり教育になる、学力が低下したと言われたら、今度は確かな学力にと、そのたびごとに批判を受けて、そして方向転換をしてきた。そうではなくて、教育というのはこうあるべきだというもっと毅然とした信念というものが私は求められているのではないかと思っております。

 また、いろいろな地域でやっているいいことはどんどん取り入れて、それを文科省が地方に先駆けて発信する、そこに私は文科省の存在価値というのがあるんだと思います。そうでないと、地方におくれて、文科省は要らないじゃないかということになりますから、これからいろいろ学ぶべきことがあるのだなというふうに感じております。

 私は、PISAの調査によってフィンランドが一位になりましたときに、早速フィンランドに視察に行ってまいりました。そして、幾つかのことを学んでまいりました。読書の時間を大変に大切にし、そして家庭においてもそれを奨励している。これがやはり読解力に結びついているのではないかと思っております。これはぜひ大臣も奨励していただきたいと思います。フィンランドだけでなく、イギリス、アメリカ、フランス、どこの国も、読書をすることによって、さまざまな数学的リテラシーも科学的リテラシーも身につけることができるのだと思いますので、これはやはり読み書き算数というのは基本だと思っております。

 それからもう一つ、時間数でございます。中山大臣は、子供たちの勉強の時間が足りない、特に自習の時間が最下位ではないかとおっしゃいました。これは嘆かわしいという感じでおっしゃいましたけれども、例えばフィンランドは、前も申し上げました、九時から二時までが授業時間でございます。そして、文科省、日本の政府は、居場所づくりというのをいたしましたよね。ですから、学校で過ごす時間も多いわけです。自習の時間が少なくなっていくのではないかというふうに思っております。

 フィンランドの中学校における年間授業数は五百五十五時間でございます。我が国は九百八十時間、六割私どもの方が多いのです。にもかかわらず、きちんと、学力低下はしておりません。つまり、時間数が足りないから日本の学力低下を呼んだのではないと私は思います。これから時間数をふやせばふやすほど学力は上がるというのには私は反対で、かえって落ちこぼれの子供たちが出てきたりして平均値が下がるのではないかと思っておりますので、その点についてお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 フィンランドが世界一だということで、早速視察に行かれたということは本当にすばらしいことだと思っています。私も行きたいなと思っているんですけれども、逆にフィンランドの方は、日本がいいということで来週か再来週、日本に来られるということでございまして、大臣も会ってくれということでございます。しかし、お互いにいいところがあればそれを学びに行こうという姿勢は本当にいいことだなと思っているところでございます。

 そこで、池坊先生が、授業時間をふやせば学力が上がるものではない、こう言われましたが、そういう面もあると思うんですが、やはり勉強しないと学力はつかないのじゃないかなと思うと同時に、ゆとり教育の中で言われましたけれども、基礎、基本をしっかり教えるということで教科内容を削減いたしました。授業時間も削減したんですが、私は、教科内容を削減する、これはよかったと思うんですが、授業時間まで減らしたということがどうかなと思っているんです。

 というのは、今、落ちこぼれという言葉も出ましたけれども、わからない子供もわかるまで繰り返し繰り返し教える必要があると思うんですね。そういう意味では、時間数というのはしっかり確保するべきではなかったかなと。教科内容も削減し、時間も減らして本当に学力は上がるか、これは上がるはずがないと思っているわけでございまして、そこにやはり工夫があるのではないかな、私はこう思っております。

 また、きのうの新聞でしたか、けさでしたか、もう日本の子供は本当に勉強しなくなっているという数字が出ていましたけれども、現に学校を視察いたしますと、学校には遊びにあるいは休みに行くんだと。学校から帰って塾が中心になっている子供もいるわけでございますが、逆に、学校から帰ったらもう何にもしないでいるという子もいるわけですね。その子供たちは勉強はしないわけですから、そうしますと、せめて学校にいる間にきちっと勉強させる。そういう意味で、ある程度授業時数というものを確保する、ふやすと言うとまたちょっといろいろ問題になるかもしれませんが、必要な時間は確保すべきじゃないかな、私はそういうふうに感じております。

池坊委員 子供が学校で勉強しなくて塾で勉強するというのは、授業数をふやせばいいという問題ではなくて、私は学校のあり方の問題ではないかと思います。もっと学校が積極的に勉強をすることが楽しいような雰囲気になったならば、塾と同じように子供たちは勉強するのだと思います。ですから、時間数をふやすのでなくて、いかに学校で勉強しようか、そういう創意工夫をこれから探していくべきではないかと思っております。

 それから、今、教科の内容の削減ですが、陰山先生をお招きしたときに、中学の地理では、アメリカとヨーロッパで一国、それからアジアで一国、それしか教えておりません、教科書に載っていないのですというお話を伺いました。私も教科書を取り寄せまして勉強いたしましたら、確かに世界の国名などというのは載っていないんですね。新学習指導要領には、世界の国名をしっかりと勉強させましょうというふうには書いてあるんです。それは事細かに学習指導要領には書いてあるんですけれども、教科書にはそれがないんです。絵入りであったり、子供たちに迎合するように易しく書いてあるんじゃないかと私は思うんですね。

 やはり、教科書を読めば、その年代に必要な基礎知識は身につくような教科書でなければならないと私は思いますので、ぜひ大臣、教科書というものもチェックをしていただいて、これが子供の勉学で本当に足りないのじゃないかということもお考えいただきたいというふうに思っております。

 二つ目は、フィンランドがいいよいいよ、まねしようというふうに私は思って申し上げているわけではございませんが、参考にしていただきたいというので申し上げているのですが、何といっても教師の質がいいのです。子供たちに、何になりたい、先生になりたいよ。先生になることが子供にとっての誇りなんですね。そして、学校現場が大幅な裁量権を、例えば六年制、初等教育ですと四年じゃなくて修士号の取得というのが必要になっております。そして、半年間の教育実習がございまして、その期間中に不適当とされた学生については移行措置が手当てされておりますし、また、教員としての適性に疑問がある学生というのは、その途中で進路を変更することができるわけです。

 日本はどうかといいますと、何と懲戒処分を受けた教師千三百五十九人、その中に、わいせつ教職員懲戒というのが百五十五人いるんですよ。私、本当に恥ずかしいことじゃないかと思います。そして、戒告等、諭旨免職というのは四千三百四十一人です。これでは、もちろん頑張っていらっしゃる先生方も多くいらっしゃいますけれども、教師の質がいいのだよというふうには言いがたいのではないかと思っております。

 お医者様も歯科医師も薬剤師もこれから六年になります。私は、ぜひ教師も六年にしていただきたい。これは中教審でも諮問をしていらっしゃると思いますが、十年研修ができただけでもまだましで、私は教師の更新制を導入すべきというふうに考えております。

 お医者様と同じように体を診る、心もやはり接するので、どんな先生とめぐり会っていくかによって子供は大きく伸びてまいります。人生に多大な影響を与えるということを考えて、私は、もうちょっと教師の質を上げよう、それから優秀な先生は表彰する、もう何年もこれは言われてまいりまして、まだ改革されていないというのは何か情けないという気がいたしますけれども、大臣、これに対してぜひメスを入れていただきたいと思います。

中山国務大臣 教科書の問題につきましては、これも中教審で議論していただこうと思っておりますが、まさに委員が御指摘のように、もっと授業が楽しい、そして知的好奇心をかき立てるようなエキサイティングなものでなければ、今の子供たちの関心を引きつけることはなかなかできないんだろうと思うわけでございます。そういう意味では、教科書の内容も今いろいろと見ておりますし、また、先生方の指導方法といいますか指導技術、こういったことについてもやはり考えていかなければいけないと思っていますが、御指摘のように、やはり先生次第だなということは、現場に行っても本当に感ずるわけでございます。

 では、日本の小中学校の先生方はどうかといいますと、ほとんどの方はやはり一生懸命、本当に一生懸命頑張っていらっしゃる。これはもう身にしみて感じるわけでございますが、中にはいろいろ不適格な先生、あるいはさっき言われたような処分を受ける先生方もいるということは、これはもう歯がゆい問題だと思うわけでございまして、やはりそれは採用のときにもう適格性ではじくということでないと。それはフィンランドみたいに、その以前にだめな人は進路変更と。日本の場合には、今、先生になってから進路変更等させている面もありますが、この辺のところもしっかりこれから考えていくべきだ、こう思っています。

 いい先生はきちんと評価する、こういう評価制度についても、今徐々に進められておりますが、本当にしっかり頑張っているいい先生はしっかりとした評価を与えて、そういう処遇をするということについてもちゃんとやる。要するに、めり張りをしっかりした処遇というものが教育界においてもやはり必要ではないか、こういうふうに考えております。

池坊委員 授業のあり方ですけれども、陰山先生の百升計算、そんなことをさせて子供たちはついていけないのじゃないか、不登校の子がふえるのじゃないかと私は心配いたしましたけれども、そうではなくて、競わせるのではなくて、競うんですね。子供たちがみずから競うことと、親や塾の先生や学校の教師が競わせるのは、根本的に違うわけです。ですから、子供たちが自発的にしていますから、大変楽しんでやっているんですね。

 フィンランドの子供たちも、学校が楽しい。これは助け合いの学習というので、落ちこぼれがないように、学校の先生だけでなくて両親たちも、親のサポートというのが充実しておりまして、落ちこぼれは困るよといってそれを阻止するのではなくて、授業というのはみんなが助け合ってやるんだというのが根本にあるわけですね。私は、それが大切なのではないかと思っております。

 今、私どもの子供たちを見ておりますと、自分たちだけなんですよね。利己主義になる。そして、助け合いどころか、批判精神ばかり身についてしまっている。これは私は、どこか問題があるのではないかというふうに思っております。

 もう一つは、教育委員会のあり方です。文科省の方々が大変いい政策を出していらしても、これが教育委員会まで行っていないのではないか。フィンランドを見ますと、大枠は国が決めているんですね。あとは、授業の内容だとか教科書とかさまざまな、あるいは人材確保とかは、現場が尊重されております。

 このごろ、法律も変わりまして、校長の裁量権も出てまいりましたし、学校運営協議会、私の委員長の時代につくりました法律でもございます。地域と保護者が一緒になって学校を運営してまいりましょうという風潮になってきておりますけれども、もうちょっと教育委員会を柔軟性があるものにしていく御努力をしていただきたいと思うんですね。地元の方が、教育委員会は、助けてほしいと思うときには本当にそっけなく、何も助けてくれない、それでいながら、つまらないことには本当に逐一口を出すと言われております。

 そのようなことを考えながらも、どういう対応をしていくべきかを伺いたいと思います。

塩谷副大臣 お答え申し上げます。

 今、池坊先生おっしゃったように、学校現場で裁量を広げていくことは非常に重要だと思っておりまして、先生も既にいろいろな点で御尽力いただいたこと、感謝申し上げる次第でございます。

 やはり、保護者や地域の声を聞いて、子供や地域の状況に応じた特色ある学校づくりを進めていくためには、教育課程、予算、人事など、学校運営に関する学校の裁量を拡大し、学校や地域が創意工夫を発揮できるようにすることが重要だと基本的に考えている次第でございます。

 そのために、文部科学省としては、教育課程の基準の大綱化、弾力化、人事に関する校長の意見の一層の反映を進めるとともに、各教育委員会に対しては、学校に対する教育委員会の関与の縮減、そして予算に関する学校の裁量拡大などの取り組みを推進してきたところでございます。

 実際には、平成十六年度四月現在で、市町村教育委員会のうち、教育課程の編成に許可、承認を求めないものが約七割。これは、以前の十一年の調査ですと約五割でしたのが七割まで広がっております。それから、学校提案型の予算の導入も十一年の調査に比べて約二倍になっております。ただ、数としては、この予算については全国で三百市町村ということで、まだ少ないものですから、一層のこの推進をしてまいりたいと思っております。

 いずれにしましても、中央教育審議会においても、今、学校と教育委員会との関係について、義務教育のあり方全般の検討の中で議論をしているところでございまして、今後より一層、この問題については文部科学省としても議論を重ねて、やはり教育現場の裁量をいかに広げていくかということに対して推進をしてまいりたいと思っているところでございます。

池坊委員 ゆとり教育についてお伺いしたいと思います。

 昨日、三月十五日の朝日新聞の世論調査ですけれども、ゆとり教育を見直すことを七八%の方が賛成していらっしゃるんですね。それでいながら、また片方では、生きる力を学校で身につけさせてほしいと六六%の方が考えていらっしゃる。文部科学省も学校も教師も大変だな、本来なら、生きる力は学校だけでなく家庭で教えるべきではないかと私は思っておりますけれども、こういう期待にやはりこたえなければならないとしたら、これから教育課程というのはどういうふうに見直すおつもりなのか。見直していらっしゃるなら、どうなさるおつもりなのかを伺いたいんですね。

 私は、総合的な学習の時間というのを、月曜日、こちらは都立ですか、ある公立の小学校三年生の授業を見てまいりました。パソコンをやっておりまして、非常に熱心な先生のもとで、自分たちがその基礎を学んで、創意工夫でパソコンを駆使していろいろなまとめをしておりました。

 私、それもやはり生きる力なんじゃないかと感じましたことと、総合学習時間をきちんとしたものにするならば、やはり教師の力量が問われるんだな、土日のお休みのうちの土曜日はそれに当てるぐらいの勉強がやはり教師自身に必要なんだと思いました。

 私は、職場体験あるいは自然体験、こういうものが大変必要だと思っております。それも私、職場体験を視察いたしましたが、例えばホテルだと、礼儀作法が大切だとかいうようなこと、あいさつの仕方から習っていくんです。親が幾らあいさつしなさいと言ってもわからない子供たちも、ホテルの従業員に言われると静かにそれを聞いておりますし、例えば着物だったら、呉服を畳みますことも本当は技術が要るんだな、こんな簡単なことも技術が要るんだ、あるいはお花でしたら、きれいに咲いているけれども、お花屋さんになるには、冬本当にお水に手をつけて寒いんだ、いろいろなことの発見をするんですね。

 私は、やはりこの体験活動というのをなくしてはならないと思っておりますが、その点も含めてお答えいただきたいと思います。

中山国務大臣 先日の新聞の世論調査の結果を私は本当に深刻に受けとめているんですね。

 というのは、要するに、今のゆとり教育は変えてほしいが七八%でしたか、だけれども生きる力が必要だ、そのとおりなんですね。それがなかなかそういうふうになっていないところが問題だ、これは私ども文部科学省と同じ考えなんだなと思うわけでございます。生きる力を育てるために、今のゆとり教育と言われる方向でやっているわけですけれども、それが国際的なテストの結果でもどうもそうなっていないし、また実感として我々が感ずるところで、では今の子供たちに生きる力が本当に身に備わっているんだろうか、どうもそうではないんじゃないかということから、このゆとり教育を見直してくれ、そういうふうな大多数の声になっているのかな、こう思うわけでございます。

 私がいつも申し上げますが、いわゆる現行の学習指導要領が目指すところは、その理念とか方向というのは間違っていない、これはまさに生きる力を養うという意味で間違っていないんだけれども、果たしてそれが実現されているのか、今のままでいいのかというところが大きな問題ではないか、このように思うわけでございます。

 池坊先生も現場を見られたと言われました。私も見ておりますが、ただ、行くところは大体うまくいっているところなんですね。あそこが問題で、本当は抜き打ち的に行ってみたい、こういう気持ちもあります。行ってみると、なかなかうまくいっていないところもあるんじゃないかなと。また、うまくいっていても、相当先生方の負担も大きいなと思いますし、また、総合的学習の時間をやってもらうよりは基本的な教科をやってほしいという現場の先生方からの声も出るわけでございます。

 そういう意味で、この総合的学習の時間というのも先生次第だなと思うと同時に、先生方の負担も大変だな、こういうふうな感じもありますので、一体どうやっていったらいいのか、さらに現場を踏む、スクールミーティングを重ね重ねて、いろいろな御意見を聞きながら、何とかして生きる力を子供たちに授けたい。

 昔に比べて自然体験が本当に少なくなりました。また、昔に比べると生活体験といいますか、昔はみんな、みんなといいますか農家の子供がいたり商売の子供がいたりして、家の中でそういう生活体験、仕事を手伝いながら学ぶことも多かったんですけれども、最近そういうのが全くなくなりましたから、自然体験とか生活体験というのを、大人がそういう場を、そういう経験を子供たちに与えてやる、そこをやらなければいけない、そういう時代になっているんだということを踏まえた上で検討してまいりたいと考えております。

池坊委員 ぜひ、検討ではなくて実行に移していただきたいと思います、私、余り検討という言葉は信用いたしておりませんので。

 それと、今まででしたら家庭でやってきたことを学校に肩がわりしてほしいと願っている親たちが多いことも確かでございます。家庭との連携が必要ですけれども、家庭でなされないならば、どこかでやらなければならないんですから、その責任を担うのもやはり学校かなというふうに考えております。

 それから、公立中学校と私立学校の義務教育段階のあり方について大臣に伺いたいのです。

 これも昨日の毎日新聞の記事でございますが、私立中学校に入った、でもいじめとか学校内暴力とか、肌が合わないということでやめる、こういう子供たちが三百五十九人おります。やめるとどこに行くかというと、今度は公立に行くわけですね。公立に行っても、途中から入ってきた子供、何で私立に行っていたのに入ってきたのか、これもまたなじめないということで、大変かわいそうな目に遭っている子供たちもおります。

 きちんとした受け皿があったらいいなと思っておりますけれども、そのような点についてどんなふうにお考えになり、対策を立てるまでは行っていないかもしれませんけれども、御感想をお聞かせいただきたいと思います。

塩谷副大臣 この問題、きのうの新聞ですか、私どもも初めてこういう数字的な結果を見たわけでございますが、大変新たな課題として取り組んでいかなければならないと思っているところでございます。

 今おっしゃったように、十四年度で二百五十九名が十六年度で三百五十九名と非常にふえているわけでして、退学については、私学の方々も大変慎重にやっていると思いますが、自主退学、懲戒処分という退学、両方あるわけですが、特に懲戒処分については、真に教育的な配慮を持って慎重かつ適切に行ってもらわなければならないということで、事情や意見を十分に聞くと同時に、個々の状況に十分に留意をしていただきたいということを指導しているところでございます。

 それと同時に、私個人的な考えかもしれませんが、やはり、こういった退学のような状態になったときには、十分に連携をとっていくようなシステムをつくっていくことが必要だと思います。

 それと同時に、今お話がございましたように、受け入れ施設のようなところも今後検討していかなければならないと思っておりますので、この問題は改めて文部科学省としても、検討という言葉は言ってはいけないと思いますが、しっかり対応すべく努力をしてまいらなければならぬと思っておるところでございます。

池坊委員 ちょっとがらっと話が変わります。

 私も、かつては思春期の娘を持った母でございました。全国高等学校PTA連合会が、性感染症の予防対策のために高校生一万人に全国調査をいたしました。高校三年生の性経験者、男性は三〇%、女性が三九%でした。そして、女子の過半数が、初体験に後悔とか戸惑いを感じて、肯定的ではない意見を言っているんですね。ということは、何かのきっかけでそうなってしまったというだけであって、後で後悔している子供たちが多いのではないかと思います。

 こういう子供たちはどうしてそうなったか。家族と会話がない、あるいは小学校のときに性描写の漫画を見た生徒、あるいは性感染症への危機意識が少ない、携帯電話を持っているとか、出会い系サイトを利用している、泣きたくなるほどつらい気持ちになる、こういう子供たちがふと性体験をしているのです。

 私は、これは学校でも、もちろんこれも家庭がやるべきことですけれども、せっかく道徳という時間がございます、週一回ですね。ですから、小学校、中学校、中学校では特に、性教育ではなくて、生命のとうとさ、それから倫理、あるいは、そういう関係になったらどういうような、例えば人を愛するということは大変な喜びである、だけれども、そういうようなことをしたらリスクがあるからということもきちんと教える必要があるのではないかと私は思っております。このごろは、これは家庭の領域だよじゃなくて、やはり学校で、そのために倫理があるのではないかと私は思いますから、生命の尊重、尊厳、それから自分の意思をはるかに超えたものへの畏敬の思い、そういうものも込めて、毅然と先を歩む人間として中学生には教えていっていただきたいというふうに私は思っておりますが、それについて。

中山国務大臣 最近、性教育についていろいろ取り上げられることが多くなりましたけれども、今、道徳の時間においてもきちっと教えるべきじゃないか、まさにそのとおりだと思っております。

 今までは、中学校で、保健体育において、異性の尊重、情報への適切な対処や行動の選択が必要となることについて取り扱うことにしておりますが、道徳の時間におきましても、男女は、互いに異性についての正しい理解を深め、相手の人格を尊重する、こういうことについて指導することとなっているわけでございます。

 最近、高校生は本当に、半数近くが性体験があるんじゃないか、こんなことも言われていますし、そのことについて反省するというような言葉もあるわけでございます。世の中全体が何かそういった、早く性体験をしなければいけないというふうにかき立てられるような、そういうものもあるのかなと思いますけれども、命というものの神秘さ、またその命をつなぐ性の神聖さ、そういうことについてもきちっと中学段階で教えるべきだ、私はこう思っているわけでございます。

 今の性教育はちょっと行き過ぎた面もあるということで、私ども実態調査をやろうとしているわけでございますが、教えるべきことはやはりそういうことではないか。もっと本当に大事にしようということ、そのことをもっと小さいころから教える。これはもう家庭においてもそうでございますけれども、なかなか家庭で教えにくい面もあるかもしれませんので、学校においてそういったことについてもきちっと教える方向で今考えております。

 これも、検討ではなくて、中央教育審議会においても性教育についても議論していただこう、こういう方向で取り組んでいるところでございます。

池坊委員 終了時間が参りましたので終わらせていただきますけれども、最後に、私の三十分の質問時間の間、野党の方は三名しか出席していらっしゃいませんでした。池坊保子の質問はつまらないから聞いてもしようがないとお思いかもしれませんけれども、次世代の子供たちに対して先を歩んでいる人間が何をできるのか、私は私なりに真摯に誠実にまじめに質問しているつもりでございます。人の話を聞くということはこの委員会の大切な役目ではないかと私は思っておりますので、何かの意図があったのか、あるいは自然発生的にそうなったのか私は存じませんけれども、このことを大変残念に思って、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 川内博史君。

川内委員 民主党の川内でございます。大臣、きょうは長丁場でございますが、よろしくお願いをいたします。

 今、池坊先生の人の話を聞くことは大事なことだというお言葉を聞かせていただいて、まさに我が意を得たりという気持ちであります。人の話を聞く、本当に大事なことだと思います。特に、本委員会は国家百年の計である教育を論ずる場であり、教育については、恐らく、一億二千五百万人の国民の皆さん一人一人、教育はこうあるべきだ、さまざまな意見があると思います。

 そういう中で、教育の根幹とも言える義務教育費国庫負担法の一部を改正する法律案が、三位一体関連の重要広範議案の一つとして本委員会に付託をされている。幅広い意見を、まさしく人の意見を聞く必要があるだろうということで、参考人質疑を内々では合意をしていたわけであります。参考人質疑をやるということ自体は本委員会は合意をしていたわけでありますが、委員長の裁定により、それが流れた、中止になった。

 それは、田中康夫長野県知事を私どもは参考人としてぜひとも御意見をお伺いしたかった。知事会の意見書の中でも、国の責任として義務教育に係る国庫負担はしっかりと堅持をしていくべきだと堂々たる論陣を張られている、選挙で選ばれたれっきとした長野県知事である田中康夫さん、意見を聞きたかったです。しかし、協議の過程の中で、自民党さんから、田中康夫さんはだめだという御意見が出されました。

 私たちは、それはなぜですかということをお聞きいたしました。理事会で、党の方針であるという御説明がありました。党の方針、まあ自由民主党の方針ということでありましょう。では、その党の方針とはいかなるものであるのかということについて、議論をさせていただきたいというふうに思います。

 大臣、大臣は自由民主党の党員でいらっしゃいますか。

中山国務大臣 そうでございます。

川内委員 党員であるとするならば、今回の参考人質疑のてんまつについての党の方針というものの説明を、どこかでお受けになられましたでしょうか。

中山国務大臣 党の方針については、伺っておりません。

川内委員 党の方針というからには、どこかの機関で決定をされたのか。自民党さんの組織のことを私は余り詳しくは存じ上げておりませんが、例えば総務会なり、あるいは自民党さんの場合は役員会というんでしょうか、いろいろな会があると思います。どこかの機関でその党の方針というものが決定をされたんだというふうに理解をいたしますが、大臣、どの機関で決定をされたというふうにお思いになられますか。

中山国務大臣 党の方針にもいろいろあると思うんですよ、基本方針から、そのときそのときの方針もありますし。ですから、私は、はっきり言って、承知しておりません。

川内委員 大臣、こんなことをなぜ川内はおれに聞くのかというふうに今お思いになっていらっしゃると思うんですね。ところが、私が聞けるのは、この場では大臣しか党員がいらっしゃらないので、後ろに控えていらっしゃる文部科学省の皆さん方は恐らく党員の方は一人もいらっしゃらないので、大臣にしか聞けないので大臣に聞いております。

 そして、大臣、そちらにいらっしゃる自由民主党のまさしく議員の皆さんは、恐らく全員党員であります。大臣は、その党の方針について聞かされていない、自分はわからないというふうにおっしゃられた。しかし、党の方針だとおっしゃった方が、まさしく大臣の三メートルぐらい横にいらっしゃいます。その方に今、党の方針というのはどこで決まったんだと聞いて、今ここで答えてください。

中山国務大臣 ちょっとそういうことができるんでしょうかね。この委員会で私が委員の方々に一回一回聞くというのは、私はちょっとそれはできないんじゃないかなと思いますけれども。

川内委員 理事会の場で聞いてもお答えいただけなかったので、しようがなくこの委員会の場でお聞きをしております。池坊議員が、人の話を聞くことは大事だとおっしゃられたわけです。まさしくそうですよ。人の話を聞く、そのための参考人質疑の場を設けようと。

 田中知事は呼んじゃだめだ、それが党の方針だというふうにおっしゃる。田中知事は出たかったんですよ、東京までいらっしゃったんですからね。出たくないという人を無理やり呼ぶという話じゃないですよ、これは。出たくない人のことはまた別問題です。出たいという人を呼ばないということに関して、党の方針だとおっしゃるので、その党の方針とは何ですかということを、今ここで、党員の大臣でいらっしゃる中山大臣にお伺いをしているわけです。すぐそこにその事情を知っている方がいらっしゃいますから、ぜひ聞いて答えてくださいよ。そうじゃないと、これ以上質問を続けることはできなくなりますよ。

中山国務大臣 これは、委員会運営の話じゃないかと思いまして、私に言われてもちょっと対応できません。

川内委員 いやいや、委員会運営の話をしているわけではなくて、大臣、横にその党の方針を知っている方がいらっしゃいます。我々は聞かされていません。大臣は党員としてその事情を聞けるお立場にあられるので、その党の方針とは何ぞやということを今ここでちょっと聞いていただいて、お答えください。

 私は、ここに出たくなかったですよ、きょうここに。しかし、党の方針で出ていますから。審議に復帰しろという党の方針で、我々は出たくないけれども出ているんです。党の方針というのは国対の方針です。国対委員長と国対委員長代理が、出ろ、出てしっかりと審議をしろと言うから、ここに出ているんです。

 今、私は党の方針を説明しました、ここで。皆さんにも、党の方針とやらを堂々とここで説明しなきゃいかぬ、説明責任があります。田中知事を拒否したんですからね。

 民主主義、自由民主党というのは自由と民主でしょう。自由と民主主義を守るには、言論の自由、表現の自由を死んでも守るというのが大事なんですよ。大臣、そう思いませんか。

 大臣、きょうは私はちょっと演説をするわけですから、聞いてくださいよ。大臣、いいですか。おれは右だ、しかし、おまえが左と言うのであれば、おまえが左と言うその自由は死んでも守るというのが、私は自由と民主主義のあり方だというふうに思いますよ。しかし、この人は気に食わないから意見は聞きたくないというのは、言語道断、許されざる行為だと言わざるを得ないです。

 中教審の答申とかあるいは教育改革国民会議の答申にも、人の立場に立って考える、人の立場に自分の身を置くことは大事なことだということが書いてあります。教育を論ずる立場にある私たちが、では大臣、言葉をかえて聞きましょう、大臣が、もし、おまえは発言しなくていい、中山成彬、おまえは発言しなくていい、おまえの意見なんか聞きたくないと言われたら、どうお思いになりますか。

中山国務大臣 聞きたくないと言ったら、黙っていますけれどもね。

川内委員 大臣、黙っているというのは行為ですよね。私が聞いたのは、どう思われますかと、黙っていることの内面の心情をお聞きしたんです。

中山国務大臣 そのときの状況にもよるでしょうけれども、黙っていたくないときもあるかもしれませんが、基本的に、黙っていろと言われたら黙っていますね、私は。

川内委員 だから、黙っていろと言われたら黙っていると。私だって、黙っていろと言われたら黙っていますよ。しかし、気持ちの中はいろいろなことを思うわけですね。おまえの意見を聞きたくはないんだと言われたらどう思いますかと、どうしますかと聞いたんじゃないんです、どう思いますかと聞いているんです。大臣、どう思いますか。

中山国務大臣 まあ、そういう状況によっていろいろ考え方はあると思うんですよ。何で黙っていろと言うのかなと思ったり、あるいは、黙っていたくないんだけれども我慢するかな、黙っておれと言われても黙っておれないなとか、いろいろなことはあると思いますけれども、何でこんな答弁をしなければいかぬのかよくわからないんですけれども。

 私は、はっきり申し上げますが、自民党員でありますが、今、政府の一員で法律を出しているんですよ。それで、自民党から共産党までいらっしゃいますこの文部科学委員会に法案をお諮りしている立場ですから、私が聞くという立場にないということは御理解ください。

川内委員 法案を出していらっしゃる責任者として、本委員会は、法律案の審査の一連の過程の中で、参考人質疑をやりましょうということを理事会では一たん合意をした。しかし、田中康夫知事の参考人招致をめぐって、自民党さんが党の方針という言葉をお出しになられ、田中さんを拒否されたということから混乱が始まっているわけであります。

 本人は、ここに出てきて、きのうの朝東京にいたんですから、出たかったんです。お話をしたかったんです。それにもかかわらず、党の方針であるという一言のもとに田中さんを呼べない、話は聞く必要ないんだという態度は、私どもはどうにも理解できないわけですよ。その党の方針とやらを説明していただかないことには、我々は納得できないんです。きょうは、その党の方針を聞くためにここに出てきたんです。

 この場で我々に対して説明できるのは、党員である、そしてまた法案の提出の責任者でもある中山大臣しかいないんです。理事会の場では、何ら説明がなかったんですからね。(発言する者あり)今、不規則発言で政治不信が募るという言葉がありましたが、言論を封殺する、言論を弾圧する方が、よっぽど国民の皆さんの政治に対する不信は、一体何をやっているんだという気持ちは募ると私は思いますね。

 大臣、私は、何と言われても、何としても、党の方針というものを御説明いただけるまでは、きょうはここを動く気はございませんので、ぜひ大臣、横にいるんですから、そこにいらっしゃるわけですから、もし直接聞くのがあれでしたら、別に時計は進めていただいて結構ですから、裏に行っていただいて、党の方針は何だということを聞いて、また戻ってきてください。そして、答えてくださいよ、党の方針。(発言する者あり)いや、私は親切で申し上げているんです。

中山国務大臣 私がこの委員会の場で聞いてくれということですけれども、私も、皆さん方の質問を聞きながら、逆に聞きたいこともあるんですよ。反論を受けぬと言われて、だめだと言われますけれども、では先生はどう思っていらっしゃるんですかと聞きたいこともあるんですけれども、そういうことは許されていませんからね。そういうことをこれから許してもらえるというならまた話は別ですけれども、ここでどう思っていますかと聞くというのは、これは変な話じゃないですか。そういうことをこれから許すんですか。聞いてもいいんですか。あり得ない話だと思いますよ。

 まさにこれは、委員会の場じゃなくて外で、これは委員会運営の話ですから、そういうのは外でやってくださいよ。それを私に聞くというのはちょっと無理ですよ。それは、川内先生、わかってくださいよ。

川内委員 聞いてもいいですかと今大臣がおっしゃっていただいたので、私は聞いてくださいということを申し上げているわけでございます。聞いていただいて、自由民主党の党員である大臣の口から、党の方針とはこういうことだということを御説明いただかなければならないというふうに思うんですね。

 大臣が、自分もおまえに聞きたいことがあるというのであれば、川内さん、あなたはこれについてどう思っているのかが自分にはよくわからぬとか、質問という形ではなくて、その質問の前振りみたいな形で文章の中でおっしゃっていただいて、私がそれに答えるべきだと思えば、それは答えますよ。(発言する者あり)いや、国会法では発言は自由ですから、どんなことも自由ですから。

 大臣、党の方針というものを明らかにしていただく、参考人質疑をつぶした自由民主党の党の方針とは何ぞやということは、これは私が知りたいわけではなく、私を含めて国民の皆さん全体が知りたいと思っていることです。なぜそこまで田中知事を参考人として呼ぶことを忌避されるのかということに関しては、これは明確な説明をいただかなければ、単なる言論の弾圧だということになりますからね。

 私は何回でも聞かせていただきます。大臣、党の方針だということをおっしゃった方が横にいらっしゃるんですから、そのことを聞いて答えてください。

 そして、委員長も、委員長がこの参考人質疑を委員長裁定という形で流したんですから、委員長だってこの党の方針ということに関して説明をさせる義務がありますよ。委員長からも言ってくださいよ。

斉藤委員長 委員長として発言させていただきます。

 今回は、参考人質疑を翌日に控え、かつ参考人質疑の原則でございます全会一致、合意が得られておりませんでしたので、今回はできないというふうに判断をさせていただきました。

 川内委員、法案についての質疑をお願いいたします。

川内委員 失礼なことを言わないでくださいよ。法案についての質疑って、法案の最大の課題であった参考人質疑のことを聞いているのに、何が法案について質疑してくださいですか。法案そのものにかかわる参考人質疑のことを私は理解ができない、納得ができないから、その党の方針とやらを説明してくださいということをここで申し上げているんですよ。その党の方針が説明できないというのであれば、これ以上質問を続けられないですよ。聞けば答えられるんですから、すぐそこにいるんですから。

斉藤委員長 川内君、質問を続けてください。

川内委員 何回でも申し上げます。大臣、横にいらっしゃるんですから。説明責任があるんですよ。(発言する者あり)いや、大臣にもありますよ、法案の提出の責任者なんですから、そして自由民主党の党員なんですから。

 党の方針だということをおっしゃられたわけです。その党の方針というのは何ですか、教えてください。それが明らかにされなければ、今回の参考人質疑でなぜ田中知事が招致できなかったのかということに対する明確な説明にはならないというふうに私どもは考えます。それが説明できたならば、それが明らかにされたならば、私どもは、なるほどということになるのか、そこからさらに議論が進むのか、それはその時点のことですけれども、とにかくその党の方針とやらをまず聞いていただいて、大臣から。大臣は、聞かされていないと冒頭おっしゃられた、わからないとおっしゃられた。ですから、大臣が知っていればその場でお答えいただけるわけですが、大臣さえも知らない党の方針というものを、この場で聞いていただいてお答えいただきたいということでございます。

 私は何回でもお聞きします。党の方針についてお答えいただきたい、聞いていただいてお答えいただきたいというふうに思います。

 それでは、聞き方を変えましょう。

 自民党の長野県連の村井仁県連会長が、新聞に田中知事参考人招致問題についてこんなコメントをしていらっしゃいました。県連の方針を党本部が理解しつつあることの証拠だと書いてあって、自民党の方針というのは自民党長野県連の方針ということなのかなというふうにも思うんですけれども、これはそうなんですかと聞いても大臣はわからないということでしょうか。

 さらに、しかし、同じ長野県選出の小坂憲次先生は、県連の事情を国会に持ち込むことは断じてない、こうテレビのニュースでコメントをしていらっしゃいます。

 県連会長は、県連の方針を党本部が理解している、あるいは、もう一人の県選出の国会議員である小坂憲次先生は、県連の事情を国会に持ち込むことはないというふうにおっしゃっていらっしゃる。一体自民党の方針というのは何なんだろうと、ますますわからなくなるわけでございます。(発言する者あり)自民党というのはおもしろいことをおっしゃる方がたくさんいらっしゃいますね。天下に明らかにした党の方針という言葉を説明してくださいということに関して、わからぬでいいんだよ、おまえに教える必要はないんだ、まさしく自民党の体質があらわれた言葉だなというふうに思います。

 大臣、私は、言論の自由というのはどんなことがあっても守らなきゃいけないことだというふうに思うんですね。大臣もそうお思いになられると思うんです。どうでしょうか。

中山国務大臣 言論の自由は守らなければいけませんね。

川内委員 発言したいと手を挙げている人がいるときに、その方の意見に耳を傾ける、意見を聞くということが、私は民主主義の最も根本であるというふうに思っています。

 大事な大事な参考人質疑をやろうとしたときに、田中知事が否定をされた。私どもは、田中知事はすばらしい御意見を持っていらっしゃると思うからこそ、この国会という場でその御意見を承りたいということで希望しておったんですが、義務教育国庫負担問題については、田中知事は国庫負担堅持だと。先ほど、保利耕輔先生の質問の中でも、自分も国庫負担堅持だという立場で今まで頑張ってきた、大臣も同じ立場だろうというお言葉があったわけでございます。

 田中知事も、知事会の意見書の中で、附帯意見として、反対意見として、国が責任を持つべきだ、国庫負担は何としても堅持をすべきなんだということを堂々と書かれていらっしゃいます。大臣は、田中知事のこの御意見についてどう思われますか。

中山国務大臣 田中知事がどういう発言をされたか定かには承知していませんので、コメントを差し控えたいと思います。

川内委員 では、大臣は知事会の意見書の中の田中知事の御意見については読んでいらっしゃらないということでよろしいですか。

中山国務大臣 意見書というのはどういうのがあったか覚えていませんが、まとまったものは読んでいますけれども、個々の発言がどうだったかということについてまでは承知しておりません。

川内委員 田中知事の意見の一部を申し上げると、「義務教育費国庫補助負担金についていえば、人材こそが唯一無二の資源である日本において、基礎的な学力を全ての子どもに授ける義務教育は、その実施主体を問わず、国家が責任を持って財源保障すべきものである。」というふうに田中知事は述べられています。

 今私が代読をしたこの意見について、大臣はどう思われますか。

中山国務大臣 それが発言のとおりであれば、いいことを言われているな、私と同じ考えだなと思います。

川内委員 その中山文部科学大臣とほぼ同じ意見、中山文部科学大臣をしてなかなかいい意見を言うなと言わしめている田中知事を参考人として呼びたいというふうに私どもは思っているわけでございますけれども、大臣も田中知事に参考人として来ていただいて意見を聞きたいとお思いになられませんか。

中山国務大臣 それは、みんな私と同じ意見の人だけ呼ぶというわけにもいかぬでしょうし、これはすべて委員会、理事会でお決めになることだろうと思いますので、それ以上私は言いませんです。

川内委員 意見の同じ人だけ呼ぶわけじゃなくていろいろな人を、そうじゃない地方案の推進者の知事さん。

 私ども本委員会が呼ぼうとしていたのは、中教審の義務教育部会の委員に地方六団体を代表して選出をされた石井岡山県知事、それから、中教審の会長である鳥居会長、この二人は中教審という立場になるわけですから、意見は違うでしょうけれども。さらに、全く違う立場から国庫負担堅持を唱えられる田中知事。この三人をお招きして話を聞きたいというふうに私どもは考えていたわけです。この人選はすばらしいと私は思うのですが、大臣、どう思われますか。

中山国務大臣 参考人をだれにするかということも含めて、そもそも参考人を呼ぶかどうかということについても、これは委員会でお決めになることだと思いますので、私のコメントは差し控えたいと思います。

川内委員 大臣、私は、参考人質疑ができなかったことに関して大臣の御所見を承っているわけではなくて、今、参考人質疑が今回流れたことに関して、大臣は、それは委員会がお決めになることだというふうにおっしゃられたわけであります。

 私が今聞いているのは、石井岡山県知事、鳥居会長、田中知事、この三人で参考人質疑をやろうとしていたのです、この三人の人選というのはどう思いますかと。だから、この三人で、大臣がその人選はすばらしいなと言えば、それで参考人質疑やれやれとか、そんな簡単なものじゃないということは私どもはわかっていますから。

 あくまでも田中知事を求めていく立場は変わりませんよ、我々は。必ず参考人質疑を実現します。必ず参考人質疑は実現します。しかし、大臣のこの三人の人選に対する感想を聞かせてくださいということを私は言っているのです。

中山国務大臣 決まっていないものに感想を求められる、これはちょっと答えにくいですね。

川内委員 では、参考人質疑という立場を離れて、一般論としてお聞きします。

 石井岡山県知事、義務教育部会委員、鳥居中教審会長、さらに田中知事、この三人が義務教育国庫負担について語るということであれば、大臣、それはちょっといいな、話を聞いてみようかというふうにお思いになりませんか。

中山国務大臣 話を聞かれるのはこの委員会でございまして、私が別に聞くわけじゃないので、何度も申し上げますが、人選も含めて、これは委員会の運営マターだと思いますので、私は発言するあれはないと思っています。

川内委員 それでは、ちょっと聞き方を変えましょう。

 大臣、中教審の鳥居会長について大臣の御評価を、どういうふうに思われていらっしゃるかということをお尋ねいたします。

中山国務大臣 鳥居会長は、長らく中央教育審議会の会長をずっとしていただいておりまして、一言で言うと、大変立派な方だと思っております。

川内委員 それでは、地方六団体案の中の義務教育の部門をおまとめになられた石井岡山県知事、この方について大臣はどのようにお思いになられますか。

中山国務大臣 余りよく存じておりません。

川内委員 御存じない、中教審の委員に今回、中教審の委員というのは大臣が任命するんじゃないんですか。ちょっとこれは確認させてください。

中山国務大臣 まだ手続中でございます。

川内委員 いや、手続中って、私が聞いたのは、中教審のメンバーというのは大臣が任命をされるわけですよね。

中山国務大臣 発令は私がいたしますが、まだ手続中でございます。

川内委員 大臣が任命される方を、大臣自身が手続中だからよく存じ上げないというのは、今、ちょっと無責任な御答弁であったというふうに思います。

 石井岡山県知事、今手続中ということでございますが、中教審のメンバーに大臣が任命をされるわけであります。石井知事についてどう御評価をされ、中教審のメンバーにされるのかということを御答弁いただきたいと思います。

中山国務大臣 岡山県知事をしておられまして、大変立派な方だろうと思っていますが、今回は地方側の推薦の中に入っている方でございます。

川内委員 立派な方だろうと。私も、立派な方だろうというふうに思います。

 それでは、田中長野県知事について、大臣、どう思われますか。

中山国務大臣 週刊誌等では知っていますけれども、直接は知りません。

川内委員 石井岡山県知事については、岡山県知事であり、立派な方であろうと思うと大臣はおっしゃられました。その前の答弁では、よく存じ上げない、知らないとおっしゃられたんですよ。しかし、中教審のメンバーでしょう、なるんでしょうと私がお聞きしたら、岡山県知事であり、立派な方だろうと思うとおっしゃられました。田中知事についてどう思いますかとお聞きしたら、週刊誌等では存じ上げているが、よく知らないというふうに御答弁されました。

 岡山県知事、長野県知事、同じ選挙で選ばれた知事ですね。同じ県民の負託を受けている知事であります。そういう意味では、大臣の御答弁としては、石井さんは岡山県知事として立派な方であろうと思うということでありますから、田中長野県知事も長野県知事として立派な方であろうと思うと私はおっしゃっていただけると思っていたんですが、もう一度、田中長野県知事についてどう思われるか、聞かせてください。

中山国務大臣 私は、石井知事につきましては、六団体が推薦してこられるぐらいだから立派な方であろう、こう思っているところでございます。

川内委員 大臣、最初は、石井知事を存じ上げないとおっしゃられたわけですよ。存じ上げないと大臣はおっしゃられたわけですね。しかし、やりとりの中で、立派な方であろうと思うというふうにおっしゃられた。田中知事についても私はそういうふうにおっしゃっていただけるんではないかなと思うんですけれども。

 それでは、選挙で選ばれた知事という、一つの県を預かる責任者の立場、あるいはポストについて、知事という職務について大臣はどうお思いになられますか。

中山国務大臣 非常に答えにくいので、言葉じりをとられると困っちゃうんですけれども、私は、石井知事については、よく存じ上げないけれども、六団体が中央教育審議会の委員として御推薦いただけるぐらいだから立派な方であろう、こういうふうに言ったわけでございまして、田中知事については、はっきり申し上げて週刊誌等でしか知りませんので、評価云々の話ではなかったということでございます。

 もちろん、知事に選ばれる方でございますから、それなりの方であろうと思っております。

川内委員 大臣、私はきょう、大臣の言葉じりをとらえようなんてこれっぽっちも思っていませんから。(発言する者あり)いや、私は、大臣とやりとりをさせていただく中で、一つ一つ確認をしたり、あるいは、私が間違っていたら、それは違う解釈だとおっしゃっていただいていいわけですから、解釈をお聞きしたりしているわけですね。しかも、私は、どう思われますかと聞いているわけで、大臣の感想とかあるいは思いを述べていただけばいいわけですから、それによって何か法的なものが生じるということは一切あり得ないというふうに思いますので、気楽にお答えいただきたいと思うんです、気楽に。

 大臣、今、長野県知事についてはちょっとよくわからないが、知事に選ばれるぐらいの方だからそれなりの方であろうと思うというふうに大臣はおっしゃられました。それなりの方というと、それなりという言葉にはいろいろな意味がありますよね。大臣がおっしゃられたそれなりという言葉は、別な言葉で言いかえる、あるいはもっと、私に対してあるいは国民の皆さんに対して、今使ったそれなりというのはこういう意味だということを御説明いただけますか。

中山国務大臣 川内委員と私は高校の先輩後輩になりまして、同じ薩摩の国で生まれ育った人間でございます。日ごろから率直に私どもは意見交換している仲でございますから、きょうも私は、あなたの立場も考えて、一生懸命誠実に答えようと思っているんですけれども、それなりにというのはどれなりかと言われると、当選されるような、そういうそれなりの方であろうということしかちょっと言えないですね。

川内委員 大臣、私も大臣を尊敬しています。本当に大好きですよ。いや、こんなことをこんな場で言うなと言われるかもしれませんが、議論することと先輩後輩という立場というのはまた、それを大事にしながら私もきょうは議論をさせていただいているつもりでございます。

 なぜかならば、私たちは、参考人質疑ができなかったということに関して、正直申し上げて物すごく悔しいという思いを持っているんですね。なぜできなかったんだろうと。それが理由がわからないだけに、なお一層、何かわけのわからない大きな力で押しつぶされてしまうのかなというふうに感じたりもするものですから、だからここまでこだわってこだわって、そしてまた、きょうは大臣しか御答弁いただける方がいらっしゃらないのでこうしてお尋ねをしているので、もうしつこいからやめろというお気持ちもわかりますが、私も、聞かないわけにいかないので、聞かせていただくんです。

 きょうは五時間、私は時間をいただいておりますので、ゆっくりと話を聞かせていただく時間をいただいて本当にありがたいと思っているんです。

 そういう意味では、大臣に、いつも私に話をしていただけるときみたいにフランクに話をしていただきたいんですけれども、やはり事の重大性、選挙で選ばれた知事さんというのは重い重い職務だと思うんですね。選挙で負託を受けたという意味において、重い重い職務であるというふうに思うんです。

 それで、私がお聞きしているのは、田中知事はおいておいて、知事という職務について、大臣は知事という立場に対してどう思われますかということを私はお聞きしておりまして、田中知事と結びつけて聞いてはいないんです。知事という職務そのものを大臣はどう思われますか、尊重しなければならない職務なのか、これは私の感想ですが、大臣がどう思われているかということをお聞きしたいというふうに思います。

中山国務大臣 一般的に聞かれれば、知事という職はこれは大変な職、激職でありますと同時に、都道府県県民の本当に運命を握っていると言ってもいいぐらい非常に大事な職務である、私はこのように考えていまして、知事というのはそういう大変な責任も持っている、このように考えております。

川内委員 知事というのは大事な責務を負っている、今大臣から、知事職というものに対する御評価の御所見をいただいたわけであります。私も全く同感であります。本当に大事な職務だというふうに思います。

 私どもは、この義務教育費国庫負担法の一部を改正する法律案というのは、三位一体関連として、国と地方の役割分担についての議論をしている中での、今私は、知事という職務に対して大臣はどう御評価をされますかということをお聞きしたわけであります。国と地方、国がやるべきこと、あるいは地方がやるべきこと、そしてまた、その地方の行政の長、政治の長として、知事という職務のあり方、これを私どもは真剣にこれから議論をしていかなければならないし、今その議論の真っ最中だということなんですね。

 そういう中で、石井知事、中教審のメンバーに選ばれて、立派な方であろうと思うという御所見をいただきました。田中知事も、私は、立派な立派な知事だ、重い重い職務を果たされている長野県知事であるというふうに思います。

 では、大臣、私がどう思いますかと聞くとなかなか答えづらいということでしょうから、私は、田中知事は立派な知事だ、立派に職務をこなされていらっしゃる知事であるというふうに思います。大臣、同意していただけますか。

中山国務大臣 あなたがそう思われるのなら、そうなんでしょう。

川内委員 大臣、ありがとうございます。

 国と地方の役割を論ずる、あるいは、国の役割、地方の役割を論ずるこの法案の参考人質疑の場に、地方教育、地方教育行政の責任を持つ知事をお招きしようとして、それが、また冒頭の議論に戻りますが、党の方針として拒否をされた。

 では、参考人としてふさわしくない人物に教育をゆだねることができるんでしょうか。大臣、どうでしょうか。

中山国務大臣 要するに、これは参考人の問題ですから、委員会でお決めいただくことであろう、こう思っております。

川内委員 大臣、誤解なく聞いていただきたいんです。私がお聞きしたのは、参考人としてふさわしくないような人に教育をゆだねることはできるんでしょうかということを聞いたのでございます。ふさわしくないような人にと聞いているんです。

中山国務大臣 これは、人選、評価についても、これはやはり委員会で決めてもらう話じゃないでしょうか。

川内委員 一般論としてお尋ねをしております、一般論として。

 この義務教育費国庫負担法の一部を改正する法律案を審議しています。そしてそれは、三位一体関連という小泉内閣の大きな方針のもとの、いろいろ議論はあったけれども、法案がまとまって出てきた。国の役割、地方の役割を論ずる大きな議論の中の一つの法案として出てきた。そういう中で、当然、教育に関連する分野ですから、参考人質疑をやるとしたら、参考人の方は、教育にかかわるお仕事をされていらっしゃる方が参考人としてお出になるわけです。

 そこで、では参考人としてふさわしくないような人に教育をゆだねることが適当であることなのかどうかということについて大臣の御所見を求めたいと、一般論ですよ、一般論としてお聞きをしております。

中山国務大臣 参考人の人選にかかわる問題ですから、発言は私は差し控えたい、こう言っているところでございます。

川内委員 いや、もう具体論はおいておいて、一般論ですよ、一般論。

 私たちが、もし委員会で参考人質疑をやりましょう、いろいろな方の御意見を聞きましょうということになって、当然、教育にかかわる分野の方たちを参考人としてお招きするわけです。それで、参考人としてふさわしくないというような、ような人ですよ、ような人に教育をゆだねるということに関して、参考人としてふさわしくないような人には教育はゆだねることはできないというふうに大臣はお思いになられますか。あるいは、そうではない、参考人としてふさわしくない方であっても教育の現場はまた別だとお考えになられるか、お聞かせをいただきたいと思います。

中山国務大臣 一般論であっても、参考人にかかわる問題ですから、これは私は委員会のマターであろうと考えます。

川内委員 それでは、別な聞き方をいたしましょう。

 大臣、文部科学行政に最高の責任を持つお立場の中山大臣として、田中知事を含めて、四十七都道府県のそれぞれの知事さん方は、教育をゆだねるにふさわしい知事さんが四十七都道府県にそろっているというふうに文部科学大臣としてお考えになられますか。

中山国務大臣 私の立場として、各都道府県知事の人物評価をするとか、そういうのはちょっととてもできることではないと思いますね。

川内委員 国と地方のあり方、これから分権改革が進んでいくわけでございます。そういう中で、文部科学行政に責任を持つ文部科学大臣として、それぞれの都道府県の知事さん方を信頼していらっしゃいますか。

中山国務大臣 それぞれの都道府県で選ばれた知事さんでいらっしゃいますし、信頼しなければいけないと思っております。

川内委員 信頼をしなければいけないと。しなければいけないという言い方は、私には若干不服でございます。文部科学大臣として、これから、今までもそうですが、都道府県知事にある部分教育をお任せしてやってきているわけですから、それは信頼をしているとお答えにならなければおかしいのではないかと思います。信頼をしているというふうに御答弁いただきたいと思います。

中山国務大臣 教育というのは、特に義務教育につきましては、国と都道府県と市町村が役割に応じて、それぞれ責任を持ってやっていただかなければいかぬわけですから、そういう意味で、しっかりやっていただける、いただきたいと思っております。

川内委員 しっかりやっていただける、やっていただきたいと思っているということでございますが、その四十七都道府県の知事さん方に対して、大臣が信頼をしていらっしゃるのか、していらっしゃらないのか。信頼しなければならないという言い方は、信頼していない人もいるということなんでしょうか。

中山国務大臣 どうも、個々の知事さんについて、人物評価というようなことについては、これは私は差し控えるべきだと思っています。

川内委員 個々の知事さんの人物評価を私は今聞いておりませんよ。もうそれは終わりました、先ほど。

 今お聞きしているのは、国と地方の役割分担の中で、制度なりあるいはシステムというものを構築していくときに、文部科学大臣が四十七都道府県の知事を信頼しているのか、いないのかということをお尋ねしているわけでございまして、そのことについてお聞かせをいただきたいと思います。

中山国務大臣 それぞれの都道府県で何に力を入れるかということはそれは違いますから、それなりにその地域、地域の実情に合わせて努力しておられるんだろうと思いますので、お互いに信頼し合いながらやっていかなければいかぬなと思っております。

川内委員 大臣、僕は何も大臣の言質を、言葉じりをとろうなんて思っていないですから。会話の中でわからないことは聞き返す、あるいは確認するということは、これはどうしてもしなきゃいかぬことですから、しているだけの話です。

 私がお尋ねしているのは、信頼していますかということを聞いているのであって、信頼していかなければならないという言い方は、信頼しているという現在の状況と、信頼していかなければならないという未来の状況、未来への意思とは違うわけですよ。現在信頼していますかということを聞いているわけです。

中山国務大臣 実際、一人一人の知事さんを全部存じ上げているわけじゃないものですから、信頼しているのかしていないのか、それは、先ほども申し上げましたように、県民から選ばれた知事さんですから、これはまず県民も信頼して選んでいるわけですし、それを受けて、文部科学大臣としても当然信頼していかなければいかぬ、こう思っているということです。

川内委員 それじゃ、なかなかお答えいただけないので、また違う聞き方をさせてください。(発言する者あり)まあ先輩、怒らないでください。違う聞き方をさせていただきたいというふうに思います。

 四十七都道府県の知事さん方は、全員、子供たちの教育をゆだねるに足る立派な知事さんであるというふうに思われますか。

中山国務大臣 ですから、私は個々の知事の方は存じ上げないのでよくわからないんですけれども、先ほども答えましたけれども、県民が選んだ知事さんですから、それは信頼していかなければいけない。国も地方も一緒になって子供たちの教育に当たっていくという今の仕組みになっているわけですから、それが前提だと思っていますよ。

川内委員 ありがとうございます。

 個々の人物、個々の知事さんについては存じ上げないけれども、しかし、選挙で選ばれた各県の知事さん方については、文部科学省としてもしっかりと御信頼を申し上げて、国、県、市町村が一体となって教育行政を推進していくんだということでよろしいでしょうか。

中山国務大臣 まさにそのとおりでございます。

川内委員 そういう意味では、大臣、大臣が今おっしゃられたように、ともに子供たちの教育に対して信頼し合いながら、お互いにその責任を分かち合って教育行政に当たってきた四十七都道府県の知事さん方、その中には、岡山県知事もいれば長野県知事もいる。それで、本委員会は、田中知事と石井知事をお招きしようとした。田中長野県知事だけは拒否された。ともに文部科学行政に当たってきた文部科学大臣としては、田中知事も仲間の一人じゃないですか、文部科学行政という中で見れば。その仲間を否定されたわけです。そのことに対して、おかしいというふうにお思いになられませんか。

中山国務大臣 結局、ぐるぐる回ってまたもとに戻るわけですけれども、人選というのは委員会のマターですから、私がそれに対して口出しをする立場じゃないと思います。

川内委員 御答弁を差し控えたいということのようでございます。

 しかし、延々一時間二十分にわたって、この参考人質疑に関していろいろなことをお聞きしてきたわけでありますが、私は、どう考えても、今回のこの参考人質疑が実現できなかったということに関する理由というものが、ここに至るまで全くわからない、大変憂慮すべき状況であるというふうに思います。

 委員長、ぜひ、参考人質疑については、必ず実現をする、人物については留保しないということを、委員長職権で参考人質疑を流したんですから、今この場でお答えいただきたいと思います。

斉藤委員長 今後の参考人招致については、理事会で協議をさせていただきたいと思います。

川内委員 ありがとうございます。

 それでは、次の話題に移らせていただきたいと思います。

 本法案は、当初、日切れ扱いということだったんですね。それがだんだん変わってきて、日切れ扱いを希望する法案だというふうに説明が変わりました。

 この日切れ扱いと日切れ扱いを希望するということの違いは何なんでしょうか。

中山国務大臣 法案によっては三月三十一日で失効するものもありますから、これはもう日切れそのものだと思いますし、日切れ扱いというのは、そのときまでに成立しないといろいろな支障を来すということから日切れ扱いということだろうと思うわけでございまして、希望するということについていえば、まさにこういったものをお願いする場合には、希望するわけでございまして、ぜひとも日切れ法扱いということにしてもらいたい、こういうことでございます。

川内委員 今大臣、多分、御自分で説明していらっしゃって余りよくわからなかったんじゃないかなと。――わかっていますか、わかっていますか。

 それでは、私の手元に今一枚の紙があります。これは文部科学省がおつくりになられたペーパーであります。「国の補助金等の整理及び合理化に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案について、予算が年度内に成立し、仮に本法案が年度内に成立しなかった場合の問題点」というペーパーであります。

 一、二、三とあって、三に、「税源移譲予定特例交付金の根拠法に瑕疵が生じることになる」というふうに書いてございます。「四千二百五十億円の税源移譲予定特例交付金の根拠となる法律(改正後の地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律)は、本法律案による義務教育費国庫負担法の改正を前提としているため、本法律案が成立しない場合には法律上の瑕疵が生じることとなる。」法律上の瑕疵が生じることになるというふうに書いてございます。この法律上の瑕疵ということを御説明いただけますか。

    〔委員長退席、河合委員長代理着席〕

中山国務大臣 この地方特例交付金法の改正案は、義務教育費国庫負担法の改正案を前提としておりまして、仮に義務教育費国庫負担法の改正案が成立しなければ、地方特例交付金法も施行されないこととなっておりまして、税源移譲予定特例交付金としても措置されないこと、このようになるわけでございます。

川内委員 特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律は、本法案の成立を前提としていると。したがって、本法案が成立しなければ、特例交付金の方に問題が生じるから、法律上の瑕疵が生じるんだという御説明だったのですね。それには三月三十一日という日付は関係ないですね。

中山国務大臣 瑕疵が生ずるというよりも、不整合が生ずるということだろうと思いますね。

川内委員 私がお聞きしているのは、日付は関係ないですねと。この義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案が成立すれば、自動的に税源移譲予定特例交付金の根拠となる法律も発効するわけですから、それには三月三十一日という日付は関係ありませんねということをお聞きしています。

中山国務大臣 三月三十一日という日付は関係ありませんが、その日までに成立させてもらいたい、こういうことでございます。

川内委員 今大臣が正確に御答弁になられました、三月三十一日という日付は関係ないが、成立させてもらいたいと。したがって、日切れ扱いではないが日切れ扱いを希望するということは、日付は関係ないがなるべく成立させてもらいたいという意味だということに理解をさせていただきます。

 そうすると、では、なるべく成立させてもらいたいというのは、いかなる理由でなるべく成立させてもらいたいという理由になるのかということをお聞かせください。

中山国務大臣 これは先ほどから言っていますように、不整合が生じますし、地方は地方で、それぞれの執行の予算を組みまして、つくっているわけですから、そういう意味では、国民に対していろいろ不都合なことが生ずるわけですから、日切れ扱いとしてほしい、こう言っているところでございます。

川内委員 それでは、別な聞き方をすると、本法律案が三月三十一日までに成立しなかったとしても、法律上の瑕疵は生じないですね。

中山国務大臣 瑕疵とまでは言いませんが、先ほどから言っていますように、不整合、合っていないなということにはなると思います。

川内委員 法律上の瑕疵とまでは言えないが不整合が生じるというのは、いかなる意味でしょうか。

 私は、三月三十一日までに成立しなくても、法律上は、ではこうしましょう、聞き方を変えます。ちょっと後ろの人も、私の質問を聞いてから説明した方がいいですよ。

 この法律が、この義務教育費国庫負担法の一部を改正する法律案が四月十五日に成立したとしても、法律上は何ら問題はないですね。

中山国務大臣 瑕疵が生ずるというのは、これは税源移譲予定特例交付金として措置されないということから瑕疵を生ずるわけですけれども、実際問題としては、先ほど話をしましたように、都道府県においていろいろと、給料をいつ払うとかそういうのがあるわけですから、それについていろいろ御迷惑をかけることになる、こういうことです。

川内委員 行政の実務上はいろいろあるんでしょう。それは別に義務教育費の国庫負担金の問題だけでなくて、いろいろあるわけです、ほかの費目でも。

 私が今聞いたのは、この法律が、義務教育費国庫負担法の一部を改正する法律案が永遠に成立しなければ、それは問題だ、困る、しかし、本法律案が年度内に成立しさえすれば、年度内というのは、今年度じゃなくて来年度ですよ、来年度、平成十七年度内に成立しさえすれば法律上の瑕疵は生じませんよねと。行政の手続とか事務のことを言っているんじゃないんですよ、法律上の瑕疵は生じませんねということをお聞きしています。

    〔河合委員長代理退席、委員長着席〕

中山国務大臣 ですから、これは予算案との不整合が生ずるということでございまして、これが来年度ずっと通らなかったら大変なことになるわけでございますし、やはり県の方で単独でやるというようなことに、途中で、いつの時点かによりますが、単独で執行ということになりますと、これは県予算の流用とかあるいは組み替えとか、そんな措置をしなければならなくなるわけでございまして、そういう意味では、県の予算執行にも大きな支障を生ずる、このように考えております。

川内委員 私は、予算の執行に支障を生じますかと聞いているわけではなくて、法律上に瑕疵を生じますかということをお聞きしているんですよ。

 大臣、聞いたことに正確に答えていただきたい。法律上、瑕疵が生じますかということを聞いています。極端に言えば、平成十八年三月三十一日にこの法律が成立しても、私は、法律上の瑕疵は生じないというふうに思いますよ。

中山国務大臣 だから、法律上の瑕疵は生じませんが、実際の執行とかそういったものについて、ふぐあいといいますか不整合が生ずる、こういうことです。

川内委員 ありがとうございます。今、大臣から明確にお答えをいただきました。この法案の成立は三月三十一日でなくても法律上の瑕疵が生じることはない、ただ行政の手続の上で若干の混乱をするであろうということであります。

 しかし、義務教育費国庫負担法本則二条は、本来、義務教育諸学校の先生方の給与は都道府県が負担する、全額負担する、その実支出の二分の一を国が面倒見るというふうに書いてあるわけですね。実支出、実際に県が払った給料の二分の一というのが、金額が確定するのはいつですか。

中山国務大臣 年度末ですけれども、あといろいろと、御承知だと思うんですけれども、端数整理とかいろいろありますから、その後になることもありますが、しかし実際の給料というのはその月その月に払っているわけです。

川内委員 年度末とおっしゃられました。大臣の言う年度末というのは、この法案に関して言えば、平成十七年度末ということですからね。平成十七年度末、いいですか、大臣、ちょっと確認してください。

中山国務大臣 そのとおりです。

川内委員 そうすると、先ほど私が申し上げたとおり、今、平成十六年度、平成十六年度内に成立させなければいけないということは、全く論理的な根拠はないと。ただ、行政上の手続として、あるいは予算執行の利便性を考えれば、なるべく年度内に成立させてくださいということだろうというふうに理解いたしますが、それでよろしいでしょうか。

中山国務大臣 これまでも日切れ法案扱いということでやっていただいたので、今回もお願いしたいわけでございますが、厳密に言えば、まさに川内委員のおっしゃるとおりでございます。しかし一方では、予算案も審議しているわけでございまして、予算案で、これは参議院の方を通ると成立するわけですね。そうしますと、この法案との不整合が生じてしまう、こういうことがある。

川内委員 私も、何回もその辺をお聞きして、まだちょっと自分自身、十分に理解していない面があります。

 ただ、私が理解したのは、この義務教育費国庫負担法の一部を改正する法律案が年度内に成立せずとも、法律上問題が出ることはない、したがって、日切れ扱いではなく、日切れ扱いを希望する法案だ。そして、本法案が規定する四千二百五十億という金額、そしてまた、法案二本ですから、義務教育と養護学校と二本法律があって、それぞれの法律で幾ら減額するかということが確定するのは、金額が確定するのはおよそ平成十七年度末である。平成十七年度末ということは、平成十八年の年が明けてから。平成十八年の年が明けてから金額が確定する、この法律によって規定される金額が確定するということですね。それでよろしいでしょうか。

中山国務大臣 計数も含めて全部決定するのはまさにそういうことですけれども、先ほど言いましたように、月々払っていきますから早く決めてもらいたいということでございますし、これは、予算案が通って、それを執行するための法律が通らないということでは不整合が生ずるわけですから、こういったものは予算関連法案としてこれまで年度内に成立させてほしいということで、日切れ法案扱いということでこれまでもずっと認めてきていただいているところでございます。

川内委員 この法律は、四千二百五十億を減額する法律であって、金額が確定するのは平成十八年になってからだと。

 一方で、この義務教育国庫負担法そのもので予算措置がされているわけですね。幾ら予算措置されているかというと、二兆円近く、二兆円を超える金額でしょうか、予算措置をされているわけですね。その予算は、平成十七年度予算案というのは成立するであろう、参議院で何が起こるかわかりません、平成十七年度予算というのは成立するかもしれない。その予算案が成立すれば、義務教育国庫負担法そのもので予算措置をされている学校の先生方の国庫負担分というのは、使えるお金ですね。

中山国務大臣 使えるといっても、国から金は出せないわけですね、だから、実質上使えないですね。

川内委員 使えるといっても使えないというのは、どういう意味なんでしょうか。私もその辺をちょっとレクのときに詳しくお聞きしていないので、多分この議場の先生方もその辺は御興味がおありになられるところだと思うので、詳しく御説明をいただきたいというふうに思います。

中山国務大臣 予算案、予算本体の方で、これは通るだろう、通ってほしいんですけれども、通らなきゃ困るんですけれども、これで予算は確保するわけです。その支出の権限といいますか、それは国庫負担法でやるわけですから、国庫負担法が通らないと、最終的に支出できないということになりますから、どうしても通してほしい、こういうお願いをしておるところです。

川内委員 この一部改正案は減額するための附則の改正であって、現在生きている義務教育国庫負担法によれば、予算措置をされた学校の先生方の給料というのは支出できるんじゃないんでしょうか。支出できないんですか。

中山国務大臣 法律上は支出できるんですけれども、予算本体で四千二百五十億を削減されていますから、だからその部分が支出できなくなる。だから、それを受けて特例移譲交付金の法律で手当てをする、こういう仕組みになっているわけです。

川内委員 大臣、ありがとうございます、やっと私もわかりました。四千二百五十億減額する法律案が出ているので、その分は支出できない。しかし、現在予算措置をしている、ちょっと金額を持ってこなかったので、こんなにいっぱい資料を持ってきて、一番肝心の予算を持ってきていないというのがちょっと私も間が抜けているところですが。では、金額を確認させてください。義務教育国庫負担法本体で予算措置をしている金額は、平成十七年度予算案は幾らですか。

中山国務大臣 予算案は、これは義務教育費国庫負担金と公立養護学校教育費国庫負担金、合わせまして二兆一千百四十九億九千九百万、こういうことになっております。

川内委員 その二兆幾ら、二兆一千億というお金は支出できるという理解でよろしいですか。

中山国務大臣 はい、できます。

川内委員 そうすると、この法律案が成立をせずとも、二兆一千億は使えるわけですから、毎月大体二千億ぐらいの出費がおありになるんでしょうか、そうすると十カ月はもつということでよろしいですか。

中山国務大臣 出せるんですけれども、四千二百五十億削減されていますから、最後にはもうどうしようもなくなる、こういうことです。

川内委員 それは私もわかっているんです。ただ、私がここで明らかにしたかったのは、大臣、二兆一千億までは使えるわけですし、本法律案は、平成十七年度内の二兆一千億を使い切るまでの間に成立をすれば何の問題もない法律であって、日切れ扱いを希望する法案でもないということが今明らかになったわけであります。大臣、お認めいただけますか。

中山国務大臣 突き詰めたら、そう言えばそういうことになりますけれども、これは金額も大きいですし、しかも県の段階でいろいろな歳出歳入の予算を今つくっていますから、そういったところに大変な迷惑をかけることになる、支障を来す、こういうことです。

川内委員 大臣、突き詰めればそういうことになると私の発言を肯定していただいて、さすが大臣は、大臣の発言の中でどこかで、よく我々鹿児島の人間が言われる、うそをつくな、負けるな、弱い者をいじめるなという三つの教えがありますけれども、大臣もどこかでおっしゃられていたというふうに思いますが、正直にお答えをいただいて、敬服をいたします。

 それで、私、文部科学省の事務方の体質として、もちろん、法律案ですから、早く通したいというのはわかりますよ。私がもし事務方であったとしても、早く通したい、通して荷物をおろしたいという気持ちはわかります。それはよくわかります。しかし、みんなによく説明をして、十分審議ができるのであれば、十分審議して大丈夫ですよというぐらいの余裕は持っていただきたいなということを、これは一つお願いでございます。

 私自身も、いろいろな経緯の中で、今回こうして質問をさせていただいているわけでございますけれども、参考人質疑のことから始まって、結局は、この法律は大体平成十七年の十月か十一月、秋の臨時国会でも十分間に合った法律だということが明らかになったわけでございますし、行政のいろいろなことはそれはあるでしょうけれども、そういう、我々国会議員を欺くとは言いませんよ、だますとも言いません、ただ、正直にいろいろなことをお話しいただきたいなということを私は思うんです。

 僕は文部科学省を応援しているんですよ。みんな非常にいい方たちばかりだし、頑張っていただきたいと思っているんです。義務教育費のことについても、小泉さんのやり方というのは私は到底納得できないやり方だと自分自身強く思っています。この議論の流れを変えなきゃいかぬというふうに私自身も思っているんですよ。そういう中で、子供たちの教育にかかわる法案について、堂々たる議論を、どうぞ何カ月でも議論してくださいというぐらいの気持ちで当たっていただきたいなと思うわけでございます。

 さて、この日切れがそうではなかったということが判明しましたので、次の論点に移らせていただきます。

 この義務教育費の問題については、平成十年五月二十九日閣議決定、地方分権推進計画のところにまずさかのぼらなければならないというふうに思います。そうすると、この平成十年五月二十九日閣議決定の地方分権推進計画によれば、「国庫補助負担金の整理合理化」というところに、「(一)基本的考え方」として「整理合理化の方策」というふうに書いてあり、

 国が一定水準を確保することに責任を持つべき行政分野に関して負担する経常的国庫負担金については、国と地方公共団体の役割分担の見直しに伴い、国の関与の整理合理化等とあわせて見直すことが必要であり、社会経済情勢等の変化をも踏まえ、その対象を生活保護や義務教育等の真に国が義務的に負担を行うべきと考えられる分野に限定していくこととする。

と書いてあります。

 まずこの「義務教育等」の「等」というのは何ですか。この「義務教育等」の「等」をちょっと解説していただけますか。

中山国務大臣 お答えする前に、この負担法の話で、要するに、きちっと、絶対日切れでなきゃいかぬのかということを言われたんですけれども、これについては、これまでもそうでございましたけれども、こういう必要な予算措置がされないと、あるいはまた、されないという不安感がありますと、都道府県に負担を求めることになりますし、また、県で極力支出を控えることになりますと、文科省関係でいいますと、本来配置すべき教職員の配置の抑制とか、あるいは給与の抑制とか、そういった教育活動に不可欠な経費まで抑制される可能性が出てくる。これは義務教育の水準確保にも支障があるということでございますから、従来どおり、年度内には成立させてもらいたい、こういうことでございます。

 また、その四千二百五十億円の税源移譲予定特例交付金の根拠となる法律はあるわけですけれども、この法律というのはこの負担法の成立を前提としておるところでございますから、この法案が成立しない場合には、税源移譲予定特例交付金を交付することはできない、こういうことにもなるわけですから、ぜひ年度内の成立をお願い申し上げたい、こう思っているところでございます。

 なお、この「対象を生活保護や義務教育等の真に国が義務的に負担を行うべき」もの、この「等」は何かという御質問でございますが、要するに、生活保護とか義務教育と同じようなレベルで、真に国が義務的に負担すべきものというものだろうと思います。具体的にはどういうものか、ちょっとすぐにはわかりませんから、お答えは差し控えたいと思いますが、後からでも、もし必要であればお答えしたいと思います。

川内委員 この平成十年の閣議決定は今でも生きていると大臣は、もともとちょっと私も不勉強で申しわけないです。閣議決定というものがその効力がいつまでなのかとか、どういう法的な効果を持つのかということについて不勉強なので教えていただきたいんですが、この閣議決定は今でもキャビネットメンバーを拘束するものであるのかどうかということについて御指導いただきたいと思います。

中山国務大臣 この平成十年の閣議決定、これは私は今でも生きていると思っていまして、生きていればこそ、いろいろな機会にこの閣議決定をもとに、生活保護と同じようにこの義務教育費国庫負担というのも真に必要なんだということで主張してきたわけでございまして、これを覆す閣議決定でもあればそれはまた別ですけれども、今でも生きている、このように私は考えております。

川内委員 これを覆す閣議決定でもあれば別だがと今大臣はおっしゃられたわけでございますが、大臣、閣議決定で申し上げると、例えば平成十五年の六月二十七日閣議決定、これによれば、廃止する国庫補助負担金の対象事業の中で引き続き地方が主体となって実施する必要のあるものについては、基幹税の充実を基本に税源移譲する、税源移譲に当たっては、八割程度を目安として移譲し、義務的な事業については徹底的な効率化を図った上でその全額を移譲することというふうに書いてあります。

 この廃止する国庫補助負担金という平成十五年の六月二十七日の閣議決定の中には、じゃ、この義務教育費国庫負担金制度というのは含まれていないという理解でよろしいでしょうか。

中山国務大臣 もちろん含まれている、こう思いますけれども、その中でこの平成十年の五月二十九日の閣議決定の精神はまだ生きている、生きていればこそ、私どもは今御審議をいただいている、このように考えております。

川内委員 私は、この義務教育費のことをずっといろいろな資料を読ませていただいて、本当に不思議だなと思うのは、出発点がこの平成十年の閣議決定だというふうに文科省の方から聞いたんですね。これを読めば、なるほどなるほどというふうに思うんですね。義務教育については国が義務的に負担を行うべきだということを閣議決定している。しかし、今お聞きしたらば、先ほど大臣は、それと全く違う閣議決定があれば、これは打ち消されたのかもしれないがというふうにお答えになられたんだが、しかし、私は、この廃止する国庫補助負担金の対象事業の中に義務教育国庫負担金制度が含まれているということで、もう全く違う閣議決定がなされていると理解するんですけれども、それでも大臣は、平成十年の閣議決定の精神は生きておるんだというふうにおっしゃる。これは、我々にはちょっと理解しがたいんですよね。

 一方の閣議決定は、国が義務的に負担すべきだ、義務教育については国が負担すべきだと閣議決定している。しかし、その後に出た閣議決定では、国庫補助負担金について廃止すると、その廃止する中に義務教育費国庫負担金も含まれているんだと文部科学省自体が理解をしている。これは一体どういうことなんだ、どう文部科学省の中で論理的にそこに整合性をとっていらっしゃるんだろうということを思うんですけれども、ちょっと私たちにわかりやすく御説明をいただきたいと思います。

中山国務大臣 私は先ほど、平成十年の閣議決定というのは生きている、それを否定する閣議決定がない限りは生きている、こういうふうに申し上げたわけでございますし、今言われたこの平成十五年の閣議決定、これによりましても、「検討を行う。」というふうに書いてあるわけでございまして、これをやめるとは言っていない。

 さらに、昨年の、あれは十二月二十四日でしたか、閣議決定がございますね。三位一体に関する閣議決定がありまして、あれにおいても、中教審において検討を行ってと、それをもとにして結論を出す、こういうことになっていますから、これが一番直近の閣議決定ですから、これに基づいて今、中教審で議論いただいている、このように私どもは認識しております。

川内委員 大臣、義務教育費国庫負担を堅持していく、あるいは子供たちにかかわる教育予算、私たちは、財源は国がしっかり確保する、お金はしっかり確保する、しかし口は出しませんという法案を今準備させていただいております。

 義務教育費財源確保法という法案を今準備させていただいておりまして、それこそ、中教審の結論が出る秋には法案の形にして皆様方に御提示を申し上げ、御批判を仰ぎたいと思っておりますが、大臣が義務教育費国庫負担について今の制度をしっかりと堅持するんだというのであれば、私は今の答弁はちょっと弱いと思います。

 なぜかならば、もうこの平成十五年の時点で「廃止する国庫補助負担金」という表現になっているわけですね、「廃止する」と。全額廃止するか一部廃止なのか、あるいはどういう形で廃止するのかはわからないけれども、その対象事業の中にもう義務教育費国庫負担制度が組み込まれてしまっている。もうその時点で文科省は負けていると私は思うんですよ。平成十年の時点では、義務教育を「義務的に負担を行うべきと考えられる分野」だということを閣議決定の中に書き込ませている。しかし、この平成十年の閣議決定を読むと、「社会経済情勢等の変化をも踏まえ、」と書いてある。「社会経済情勢等の変化をも踏まえ、」と書いてあって、要するにこの平成十年の閣議決定は、社会経済情勢が変化したというとらえ方を内閣としてはされて、その後の閣議決定の変化につながっているのではないかなと思うんですが、大臣は、平成十年のこの閣議決定以来、社会経済情勢が変化したというふうな御認識でいらっしゃいますか。

中山国務大臣 今、時代の流れは非常に速いですから、刻々変わっていく、こう思います。そういう中で、平成十年、今平成十七年ですね、七年たったのかな、そういう意味ではかなりな変化があるものかな、こういうことは思っています。

川内委員 とりあえず午前中の二時間の私の質疑を終わらせていただきますが、私のようなタフネゴシエーターを文部科学省もお雇いになられれば、必ず義務教育費をお守りしますということを申し上げて、午前中を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございます。

斉藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。松本大輔君。

松本(大)委員 民主党の松本大輔です。

 先週金曜日の質疑で、大臣が中学校時代に野球部で四番バッターでキャプテンだった、そういうお話をお伺いしました。中二の秋に野球部の監督に請われて入部をされて、入ったその日から四番バッターでキャプテンを務められた、格好よかったんだ、こういうことだったんですけれども、大変うらやましい限りだなと私は思いました。スポーツの振興を担当される役所の最高責任者としても大変結構なことだなというふうに感じたわけなんです。

 もちろん、そうはいっても、野球は四番バッターとキャプテンだけでやるものではないわけでありまして、四番の打つホームランがソロに終わるかそれとも満塁ホームランになるかは、その前のバッターにかかっているんじゃないかなと思います。

 とりわけ挑戦者である我々野党、自称政権準備党なんですけれども、とりわけ我々挑戦者は全員野球で臨まなければいけないんじゃないか、このように思うわけであります。午前中の質疑の川内委員が華麗な切り込み隊長であるとすれば、私はよい二番バッターでありたいな、そのように思います。川内委員のようにきれいに、ラインドライブのかかったきれいなヒットは打てないかもしれない、あるいは大臣のように豪快なホームランは打てないかもしれませんが、少なくとも相手ピッチャーに嫌がられるような、そんなしぶといバッティングで、きょうの私の後質問に立つ笠委員、城井委員、肥田委員、本日のクリーンナップにつなげていきたいな、このように思いますので、どうぞよろしくお願いします。(発言する者あり)いや、そんなことはないですよ。

 まず、午前中の質疑についてちょっと振り返りたいと思うんですけれども、午前中の質疑で、参考人質疑が委員会で内々合意していたけれども、最終的には委員長の職権で中止となったというようなお話がありましたけれども、一応お昼休みの間に衆議院規則を読みまして、第七章、委員会、第二節、委員長の権限、第六十六条「委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持し、委員会を代表する。」から、七十五条「委員長は、委員会において、懲罰事犯があると認めたときは、これを議長に報告し処分を求める。」までの条文がそれだと思うのですが、この中に参考人質疑を中止するというような内容はなかったんですけれども、改めて、高校の先輩に当たられる斉藤先輩にお伺いしたいんですけれども、参考人質疑が委員長の権限で中止となったというのは、こういう理解でよろしいんでしょうか。御確認です。

斉藤委員長 先ほども申し上げましたが、参考人質疑の大前提は、全会派一致でございます。翌日に参考人質疑を控えて、その時点で全会派の合意が得られていなかったということで、委員会の運営に責任を有します委員長として、参考人質疑はできない、このように判断したものでございます。

 なお、先ほど内々の合意というふうにおっしゃっておりましたが、私の認識では、内々の合意は得られていなかった、いなかったからこそ全会一致でなかった、だから参考人質疑を開くということが決定できなかった、こういうことでございますので、御理解を賜りたいと思います。

松本(大)委員 ということは、つまり、委員長の権限で参考人質疑を取りやめたということではなくて、開くに当たっての条件となる全会一致という状態になかったので開けなかった、こういう理解でよろしいですか。

斉藤委員長 そういうことでございます。

松本(大)委員 なぜ全会一致とならなかったのか、与党の理事の方々が反対をされていたのかという理由は、午前中の質疑で川内委員から何度も御質問があったんですが、少なくともこの委員会では明らかになっていない、こういうことなんです。

 なぜ参考人質疑をやりたいか。それは、非常に重要な問題であって、なおかつ国民的な関心も強いテーマだからこそ、池坊先生もおっしゃっていたように、いろいろな人の、人の話を聞くことが重要である、いろいろな方の意見を聞かなければならない、こういうことだと思うのです。いろいろな人の意見を聞こうという場合に、発言したいという方が手を挙げていらっしゃって、にもかかわらず、いや、あいつはどうも気に入らないから当てない、発言させないというような判断があるとすれば、これは非常に問題ではないかなというふうに思われるんです。

 大臣は道徳教育の最高責任者でもあられると思いますので、ぜひ、発言したいと手を挙げている人がいる場合に、いろいろな人の意見を聞きたいとこっちも思っている場合に、それでも、気に入らないからという理由でその人の意見を聞かないという事態があるとすれば、それは道徳教育上からも非常に問題があると考えますが、大臣の御見解をお願いします。

中山国務大臣 その前にちょっと、私の中学の野球部の話がありましたが、あれは別に自慢しようと思って話したんじゃなくて、家が貧しくて、農作業で忙しくて表に出ていなかったんですけれども、担任の先生が、そういう私を抜てきしていただいてありがたかった、これは本当に先生次第だというふうなことを申し上げたかったということでございまして、決してそういう、自慢するつもりは全くございませんから、御了解いただきたいと思っています。

 発言したい人がいたら、もちろんこれは発言を許すというのが民主主義の世の中だろう、当然の常識だろう、こう思っているわけでございます。そのことと、どうも今回の参考人の話とはちょっと違うような気がするわけで、やはり、道徳ということを言われましたが、発言したい人は発言させる、これは道徳というよりも民主主義の根源だと思うわけです。自分の主張ばかり言って相手の話を聞かないというのは道徳の問題かな、こう思うわけでございまして、自分の意見も主張すると同時に、ほかの人の意見もよく聞いて、そしてやっていく、その一番の象徴が私はこの委員会ではないかな、こういうふうに感じております。

松本(大)委員 私は次元の違う問題だとは考えておりません。委員会の中で質疑することも十分、その重要性をもちろん否定するわけではないんですけれども、各界から見識を持った方をお呼びして、それでより我々の問題意識を深めていこうというのは大変有意義なことではないかなというふうに考えるわけであります。

 もう一点、ちょっとお伺いしたいんですが、特定の個人が出席できないという場合に、これは道徳という観点から先ほど御質問したんですが、憲法第十四条には「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とあります。

 昨日、記者会見を行われた田中知事は、アパルトヘイトだというようにおっしゃったということなんですが、これはまさに田中知事の信条によって、政治的関係において差別されたということではないかと思うんですが、大臣はいかがお考えですか。

中山国務大臣 発言したい人はいっぱいいると思うんですね。特に義務教育についてはもう全国何万何千という方が発言したいと思っていらっしゃると思うので、その方々の声を全部聞くわけにいきませんので、その人選をだれにするか、だれを参考人にするかということがまさにこの委員会の方に相談して決めていただく問題じゃないかな、こう思っていまして、アパルトヘイトとかそういうふうな大げさな話になるようなことじゃないんじゃないかと私は思っています。

松本(大)委員 いろいろな方の話を私はぜひ聞いてみたいと思いましたし、恐らく、田中知事がこの場に出られて発言されれば、この文部科学委員会の質疑の模様をごらんになりたいとお考えになられている全国の保護者の方も多いと思うんですね。大臣は、とりわけ現場を重視されている、三百校近いスクールミーティングをされようという方だからこそ、保護者の方あるいは教員の方と生の声を闘わせていこうとお考えになられている方だからこそ、その保護者の最大の関心事と言ってもいいかもしれないこの義務教育の問題に関して、世間が非常に注目されている方の発言をかたずをのんで見守っていらっしゃったかもしれない可能性を消してしまったということが大変私は遺憾であるというふうに考えているんですが、大臣はその点はいかがですか。

中山国務大臣 いろいろな人の話を聞くのは大変いいことだと思っていまして、今スクールミーティング等を通じまして現場の声を吸い上げようとしているわけでございまして、そういう意味で、知事の方々の御意見も聞いてみたい、四十七都道府県全員の方にお聞きしたいと思っているんですけれども、何か聞きますと知事会の方が、石井さんですか、だれか来られるということでございますから、その方の話も十分に聞きたいなと。どういうことを言われるのか私はわかりません、そしてまた田中知事がどういうことを発言されるのかはわかりませんが、できるだけたくさんの方の声、しかも地方におきまして教育を担当しておられる知事さんたちの話はできるだけたくさん聞きたいとは思っております。

松本(大)委員 知事の方のお話はできるだけたくさん聞きたいと今大臣にもおっしゃっていただきましたし、午前中の質疑では、参考人質疑をやるかどうかというのはまた理事会で協議しますというふうに委員長からもおっしゃっていただきましたので、ぜひ前向きに御検討をいただきたい、このように引き続き強く要請というかお願いを申し上げます。

 次に、先週金曜日の委員会についてちょっと振り返ってみたいと思うんですが、これは八千五百億円の根拠という部分になろうかと思います。まず私が審議を聞いていて思ったことは、大臣の先週金曜日の答弁内容は、三月二日の予算委員会における牧委員と大臣とのやりとり、この際の、つまり予算委員会での答弁と明らかに変わっているのではないかなというふうに感じたということをまず申し上げておきたいと思います。

 ちょっと答弁を引用してみたいと思うんですが、まず三月二日の予算委員会において八千五百億という数字の根拠をただした牧委員に対して大臣は次のように答弁をされております。「今申し上げましたように、この八千五百億円というのは、まさに中学校の分の先生方の給料の半分ということで、それがそのままだというふうに御理解いただきたいと思います。」と。この予算委員会における答弁については、三月九日のこの文部科学委員会の審議において説明不足を大臣は陳謝されたわけですけれども、一方で、終盤と申しますか、「何か間違ったことを言っているとは思わないんですけれども。」ということをおっしゃっていらっしゃいます。

 その後、先週金曜日ですが、三月十一日の審議において牧委員は再度同じ趣旨の御質問をされました。それに対して大臣は次のように答弁をされています。「額として、相当する分であるということで、その中身が中学校の先生方の給料の分そのものであるということじゃなくて、」「わかりやすく言えば、かりてきたと言えばわかっていただけるかなと思いますが。」と。このように答弁が三月二日、三月九日、三月十一日とこういう変遷をたどっていらっしゃるわけです。

 大臣、御質問したいと思いますが、これは説明不足ではなくて、同じ質問に対して明らかに前言を翻していらっしゃると私は思いますが、実質的に予算委員会の答弁を修正されたと考えてよろしいでしょうか。

中山国務大臣 修正したとか陳謝したとか、そんな思いは全くございませんで、牧議員もいらっしゃいますけれども、議論がありまして、最後のときで時間がなかったものですからはしょったという点はあるんです。この点はおわびしなければいかぬと思うんですが、その前に牧議員がいろいろ言われる中で、八千五百億を案分して地方に渡すとか、そういう話をしておられましたから、当然そういうことはわかっていらっしゃって聞かれるので一体どういうことなのかな、そういう感じがいたしましたものですから、八千五百億というのはまさにそのものです、こういうふうにお答えしたということ、しかも、急げ急げ時間がないぞということでせかされて答えたものですから、ちょっと説明不足だったかな、こう思うわけでございます。八千五百億円というのは額としてそのものです、そういう分です、向こうの六団体が要求してきた削減してくれという八千五百億円のそのものの数字でございます、こういうふうな意味で答えたところでございました。

松本(大)委員 私はどうしても納得できないわけなんですが、修正もしないし陳謝もしていないというふうにおっしゃるので、もう一度ちょっと引用したいと思いますが、三月二日の予算委員会では、「まさに中学校の分の先生方の給料の半分ということで、それがそのまま」とおっしゃっています。しかし、三月十一日、先週金曜日のこの文部科学委員会では「その中身が中学校の先生方の給料の分そのものであるということじゃなくて、」とおっしゃっておりますね。

 私が辞書で調べましたら、そのままというのはそれと比べたときに違いのない様子ということでございました。まさにというのは間違いなくということだそうです。そのものというのはそれ自身ということなんですが、つまり三月二日は、間違いなく中学校の分の先生方の給料の半分ですとおっしゃった、しかし三月十一日のこの文部科学委員会では、中学校の先生方の給料の分それ自身であるということじゃないとおっしゃっているんですよ。ということは、間違いなくそれだと三月二日にはおっしゃったけれども、三月十一日はそれ自身ではない、このようにおっしゃっているわけですね。これは、明らかに前言を翻していらっしゃるとしか思えないわけであります。

 なぜ私が言葉にこだわるかといいますと、大臣みずから国語力の強化が重要だというふうにおっしゃっていらっしゃるからであります。二月二十三日、大臣所信に対する質疑において、いつも男前の馳委員がかつて国語教師であられたということで御質問をされています。大臣は、「すべて国語が基本になるわけでございまして、この国語力の強化ということについてはどうしても力を入れないといけないと思います。」と答弁されていらっしゃいます。日本語を正しく使うということは大臣が強化しなければいけないとおっしゃっている国語の基本中の基本だというふうに考えますが、いかがですか。

中山国務大臣 牧議員に対して答えたのは、額としてはそのままですということでございますし、その後この委員会で答えましたのは、それ自身ではない、それ自身というのは中学校の先生方の給料の二分の一というそれ自身ではないということでございまして、そのままという言葉もその都度そのときで理解してもらわなければいかぬ、読解力の問題だと思います。

松本(大)委員 読解力の問題だと言われると非常に心外であります。

 大臣は、額としてはそのままですというふうに今答弁されたんですが、正確には違います。三月二日の予算委員会では「まさに中学校の分の先生方の給料の半分ということで、それがそのまま」とおっしゃっています。つまり、額という言葉なんて入っていないんですよ。中学校の分の先生方の給料の半分、それがそのままなんだとおっしゃっているんですね、つまりそのものだとおっしゃっているわけですね。額としてそれをとったとは一言もおっしゃっていないわけです。明らかに前言を翻していらっしゃるのじゃないかなというふうに思います。

 それについて、国語力の強化を述べられる一方で、読解力の問題であると言うのは非常に心外であると思います。むしろ、そのように開き直られるのであれば、大臣みずから国語力を疑われかねないような状態が起こってくると思いますが、大臣、いかがですか。

中山国務大臣 中学校の先生の分の半分ですというのは額じゃないでしょうかね。中学校の先生の給料の分の半分ですということの半分というのは、額としての半分ということでしょう。(松本(大)委員「違います、違います」と呼ぶ)そうだよ。それはもう見解の相違で、読み方の相違、読解力の差でございます。

松本(大)委員 中学校の先生方の給料の半分ということで、それがそのままとおっしゃったということは、額としてもそうですし、中身もそうだとおっしゃっているということですよ。だって、それがそのままとおっしゃっているのですから。大臣、いかがですか。

中山国務大臣 八千五百億円というのは何かと言われているから、額ですと。半分ですと言えば額のことでしょう。中身のことを聞いておられるわけではなかったのですからね。

松本(大)委員 先ほど道徳教育の最高責任者でもあられるというふうに私申し上げたのですが、過ちを改むるにはばかることなかれという言葉がございまして、先週の委員会のときにも大臣は高井委員に非常に心優しいお言葉をおかけになられていました。知りませんでした、無事の御出産をお祈りしておりますというふうに非常に心優しいお言葉をおかけになられたので、間違っていることを、説明不足だ、そういう趣旨で最初から言ったのだというのは、これは非常に胎教上もよろしくないのではないか、教育の観点から非常によろしくないのではないかというふうに考えるのですが、大臣、いかがですか。

中山国務大臣 私は間違っていることはもう素直に謝る性格、これは今いませんけれども、川内君も同じ、薩摩の人間はそうなんですけれども、間違っていないと思うから話をしているわけでございまして、あのときの議論の中でも八千五百億円という額は、規模は何なんだ、こういうことでございました。ずっとそういう議論をしてきたわけでございまして、何度も申し上げますが、あのとき、何でこんなに何度も聞かれるのかなということで、読解力不足というより理解力不足だったかなと思いますけれども、私は、牧委員も当然理解された上で八千五百億円という数字を聞かれたので、これはまさに額の、中学校の分の半分ですと、あくまで中身じゃなくて額を念頭に置いて答えたつもりでございます。

松本(大)委員 先ほど大臣からは理解力不足だという御指摘があったのですが、牧委員の御質問というのは八千五百億の根拠を問われたわけですね。その根拠を問われて、いや、それは中学校の先生の給料の分の半分なんですと大臣がお答えになられたから、それがそのままなのか、金額もそうだし中身もそうなのかというふうに当然ながら思ってしまうということです。大臣、いかがですか。

中山国務大臣 中身ということは一言も私は言っていませんで、これはもう長い経緯がありまして、三兆二千億のうちの八千五百億円なんですよね。それがずっと議論になってきたわけでございまして、何を削るかといったときに、その八千五百億円というのを削るということでございまして、もう中身の問題ではなくて、額として削る、それで十七年度についてもその半分の四千二百五十億を削減するということなんです。

 だから、中身の議論じゃなくて規模として、まさにこれは地方側も、要するに三兆二千億、何を詰めるかという議論だったわけですね。たまたま、たまたまと言っては悪いかな、私はもう九番バッターで無理やり見つけ出してこられたのが八千五百億なんだという認識がありますけれども、それを持ってこられた。それで、それを削減することになったということでございますから、私どもとしては反対ではございましたが、二兆五千億の中の中学校の分に相当する八千五百億の二分の一、十七年度はですね、それが削減された、こういう認識でおるわけです。

松本(大)委員 何度お伺いしていても、どうもしっくりこないというか、違和感を払拭することができません。どう考えても、これはやはり前言を翻されているだろうととるのが普通の国語力を持った人の理解ではないかなというふうに考えます。

 なぜそこにこだわるかというと、平成十七年度予算案というのは既に衆議院を通過しております。予算委員会での答弁、要するに予算の採決のときの前提条件である大臣の答弁と、その予算関連である今回の法案の審議における大臣の答弁が食い違っているというのは、これは説明不足という一言で片づけることはできないんじゃないかと考えるからなんですが、大臣、その点はいかがお考えでしょうか。

中山国務大臣 何回もお答えしますけれども、よく聞こえない、ざわざわしておりましたので、聞こえない中で耳を傾けて一生懸命聞いたのですけれども、同じことを何でこんなに繰り返して聞かれるのかなという思いがありましたし、もちろん牧委員もわかっておられて聞いておられるんだと思ったものですから、何を聞かれるんだろうと思いながら答えたことは覚えています。私としてはあくまで、中学校の給料の二分の一の分です、このように答えたということは、額としてそういう分なんですよと。何も根拠がないわけじゃなくて、まさに中学校の給料の二分の一という額です、その分ですと、こういう意味で答えたものでございまして、全く前言を翻したとかそういうこともありませんし、ずっと同じ考えのもとに私は答弁しているつもりでございます。

松本(大)委員 多分終わりがない議論になっていると思うので、もうこの辺でやめたいと思いますが、まさに中学校の分の先生方の給料の半分ということで、それがそのままというお言葉と、その中身が中学校の先生方の給料の分そのものであるということじゃないというのは、どう考えても、普通の国語力をもってすれば、これは前言を翻したと理解するのが普通であるということを指摘しまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 先週の金曜日の委員会では、総理が四十七年ぶりにこの委員会に御出席をいただいたということだったのですけれども、総理の答弁を伺っていて私が感じましたのは、教育についても地方分権の流れはもはやとめられないというふうに、少なくとも総理は考えていらっしゃるのではないかなという点であります。

 三月十一日の審議で、総理は、「私は、教育を重視しております。まして、地方団体が自分に任せてもできると言っている、その基本的な考えは今後も尊重していきたいと思います。」と答弁されています。総理は、端的に言えば地方を信じると、このようにおっしゃっているわけなんですが、一方で文科省さんの御認識はどうなのかな、大臣の御認識はどうなのかなという点でございます。

 これまでの審議でも、一般財源化された教材費あるいは学校図書整備費の話が何度となく取り上げられまして、一般財源化されたら地域格差が生じるということをおっしゃっているわけです。

 総理は地方を信じるとおっしゃっているわけですが、大臣はいかがですか。地方を信じていらっしゃるのでしょうか、それとも信じていらっしゃらないのでしょうか。

中山国務大臣 小泉総理が地方にできることは地方にという方針のもとに地方分権を進めておられる、このことは私どももよく承知しているわけでございまして、文部科学省といたしましても、できるだけ教育は現場現場でということで地方分権を進めている、この点では同じ方向だろうと思うわけでございます。

 私どもとしては、そういう地方分権で地方に任せながらも、しかし国は国としての責任があるだろう、それが、標準法とかいろいろなことで基準を決めておりますし、それを裏打ちするものとしての義務教育国庫負担制度である、このように考えておるわけでございます。

 これは午前中の川内議員の質問にありましたけれども、地方を信じるのか信じないのかという話がありましたが、地方を信じたい、信じているわけでございますが、今までの一般財源化された費目について調べてみますと、中には随分減ってきているなというのもありますし、あるいはまた地方によって非常にアンバランスがあるということもあるわけでございます。そういったことを考えますと、本当に地方の方々が教育は大事だということでやってはいただくと思うのですけれども、いわゆる財源ということを考えますと、ないそでは振れぬという事態も生じ得るのではないかな。

 こういうことを懸念して、私どもとしては、少なくとも義務教育の国庫負担制度、これは堅持しながら国の責任を全うしていきたい、こう考えているところでございます。

松本(大)委員 懸念してというお言葉があったのですが、先日発表されました平成十六年度の文部科学白書の百三十一ページに一般財源化の主な問題点を二つ挙げていらっしゃるわけです。

 一つ目は、地方にすべてゆだねた場合には、義務教育に対する国の責任放棄となるんだということ、二つ目は、義務教育に著しい地域格差が生じるという二点であります。一般財源化されたらこれは大変なことになっちゃうんだよという、脅迫というか、不安を駆り立てていらっしゃるわけなんですけれども、文部科学委員の皆様の中にも小学校、中学校のお子さんをお持ちの方も大勢いらっしゃると思いますし、大臣には、スクールミーティングを続けていかれるということでありますので、ぜひ、全国の小中学生のお子さんを持たれる親御さんのお気持ちになって考えていただきたいなというふうに思うわけであります。

 一般財源化されたら非常に困るんだよという、不安ばかりあおるようなやり方のように私はこの白書を見ても思うわけなんですが、こういうやり方について、小学校、中学校のお子さんをお持ちの親御さんに対してこういうやり方はいかがなものかと私は思うんですが、大臣、いかがですか。

中山国務大臣 不安をあおるというふうな気持ちで執筆されたものではない、こう考えております。

 もう既に御承知のように、戦後一時期、昭和二十五年から二十七年にかけまして、これが一般財源化されたことがございました。そのときに、地域間格差ができて、これはいけないということで、知事会を初めとしていろいろなところからの陳情があって、また今の制度に戻ったということもあるわけでございますし、また、先ほども言いましたように、一般財源化されたものの中で本当に減ってきているものもあるんだ、これは事実は事実としてやはり国民一般に、一般の方々にも理解していただかなければならない、これもまた私は文部科学省の責任ではないかな、このように考えております。

松本(大)委員 過去に義務教育国庫負担金が廃止されたときに格差が拡大したということをおっしゃっているんですが、しかし、ちょっと時間の関係で詳しく取り上げられないんですが、これには反論もあります。昨年八月二十七日付の朝日新聞に、地方財政審議会の木村陽子さんの論説として、財源と教育水準は別問題じゃないかという話をされていらっしゃいます。国庫負担金が復活した後でも格差は拡大した、二〇〇一年でも格差は依然として残っている、この五十年間、実はそれほどその格差は大きな変化はないんじゃないかということをおっしゃっているわけなんです。

 もし時間があれば、後でまた取り上げたいと思いますけれども、なぜ不安をあおるのが問題なのかと考えるかといいますと、その不安を払拭するための担保というものを文科省さんとして今用意されようと努力していないように見えるからなんですね。中教審の結論が出るまでの暫定措置だという逃げ方をされているんですけれども、その中教審の結論の取り扱いについてちょっと取り上げてみたいと思います。

 三月二日の衆議院予算委員会で、総理はこの中教審の結論について、「今後のことについては中教審等の意見を踏まえましてよく協議していこうという判断をしたわけであります。」とおっしゃっています。中教審の意見は踏まえるだけにすぎない、ひょっとしたら参考意見になってしまうかもしれないという御認識ではないかなというふうに思います。

 この「中教審等」の「等」の部分について、先週金曜日、三月十一日のこの文部科学委員会で牧委員が御質問されました。その際に小泉総理は、地方と中央政府との協議の場もその「等」には含まれるんだというふうに答弁をされました。この点について、横光委員も同じ趣旨の御質問をされておりますので、改めて大臣に確認させていただきたいと思うんですけれども、中教審の結論がそのまま平成十八年度に講ずる予定の恒久措置に反映されるわけではない、こういう理解でよろしいんでしょうか。

中山国務大臣 この国庫負担制度につきましては、いろいろな方々の御意見も聞きながら判断していくということだろうと思いますけれども、昨年末の政府・与党合意に基づきまして、ことしの秋までに中教審において結論を得ることとされておりまして、政府としてはこの結論を踏まえて判断することとしているわけでございます。判断をする際に、その過程の一部として地方団体との協議の場においても議論するということは考えられるわけでございますが、最終的には、政府・与党合意の趣旨を踏まえて、中教審における結論というものが十分に尊重されるもの、このように考えております。

松本(大)委員 済みません、確認なんですが、はいかいいえでちょっとお答えいただきたいと思うんですが、中教審の結論は必ずしも採用されるかどうかわからないということについて、イエスかノーでお答えください。

中山国務大臣 そのことは、今予断を持って語るべきじゃないと私は考えております。

松本(大)委員 予断を持って語るべきじゃないとか、仮定の話には答えられないとかというような答弁が過去にもあったんですけれども、それで本当にいいのかなという気がいたします。

 というのは、先ほどの文部科学白書、引用させていただきましたけれども、一般財源化されたらこれは地域格差が生じて大変なことになるんだぞと一方では不安はかき立てておきながら、最終的に採用されるかどうかについては予断を持って語ることはしないというのでは、これは余りにも無責任じゃないかなと。最終的に大臣がよしとされている方向性が担保されるかどうかわからない、文科省さんとしてよしとされている方向が担保されているかどうかわからないのに、不安だけあおっておいて、いや、今はそれはどうなるかはわかりません、これにとどまっている限りは余りにも無責任な話ではないかと考えるんですが、大臣、いかがですか。

中山国務大臣 その白書だけではなくて、私ども、スクールミーティング、いろいろなタウンミーティングがありますね、教育改革に関するタウンミーティングとかいろいろなところがありますが、そういうところにおきましては、この義務教育費の国庫負担制度については、過去の経緯も含めてできるだけたくさんの方々に理解していただきたいということで努めているわけでございますが、それを不安をかき立てているというふうにとらえるのはどうかなと思うわけでございまして、私どもは私どもとして、しっかりとこれからもこの義務教育国庫負担制度の重要性については広くPRしていきたい、このように考えております。

松本(大)委員 先ほども申し上げましたが、ぜひ、スクールミーティングに出席された親御さんだと思って僕の質問に答えていただきたいんですけれども、そのスクールミーティングに僕は出席しているとします。それで、一般財源化されたらどうやら大変なことになるんだ、地域格差がついてしまうんだということに不安を持っていらっしゃる出席者の方がいらっしゃったとします。それで、大臣、どうもことしの秋に中教審が結論を出されるそうなんですが、それは必ずしも反映されるとは限らないんですよねと。いや、今の段階では仮定の話には答えられませんと言われたら、おいおい、大丈夫かというふうに親御さんは恐らく不安にお思いになられるんじゃないかなと思うんですね。

 それまでの間、文科省さんとして何か取り組むんですか、そういう地域格差が生じる事態を回避するために、あるいは中教審の結論が採用されるように、何か前向きな努力をされるのかということなんです。仮定の話には答えられないということではなくて、責任を持って主体的に取り組むことは何かないのかという趣旨でお話を申し上げているんです。

 もしもスクールミーティングに参加された親御さんから、今の大臣のお話では非常に不安です、どうなるかわからないと言われているようなものです、ただ、万が一のことがあれば非常に大変なことになってしまうんだというふうに私は感じました、大臣、その辺どうなんですか、しっかりやってくれるんでしょうねと、もしも親御さんから尋ねられたとしたら、そのとき大臣はどのようにお答えになられるんですか。

中山国務大臣 いろいろなタウンミーティングとかそういったところで、まさに松本委員のような御質問も出るわけでございまして、そういうときには、文部科学省としてはしっかり義務教育についての国の責任は果たしてまいりたい、このように考えておるわけでございまして、そういったところのいろいろな意見、議論が出ますから、そういったことも中教審におきます議論の参考として出させていただく、いただいているということでございます。いずれにいたしましても、中教審において議論していただく、政府としてはその結論を十分尊重する、こういうスタンスで臨んでいるところでございます。

松本(大)委員 尊重するというのが採用されるかどうかまでを担保するものではない以上は、親御さんの懸念というのは払拭されないのではないか。しかも、その懸念というのが、文科省さんの側から、地域格差が生じますという形で発信されたものであるがゆえに、なお一層、親御さんの不安は払拭され得ないというふうに私は考えます。

 もし、中教審の結論が尊重されず一般財源化された場合でも、親御さんたちには、大丈夫なんですというようなメッセージを教育の最高責任者として発するべきではないでしょうか。大臣、いかがですか。

中山国務大臣 それこそ仮定の問題でございますから、答える立場にはないと思います。

松本(大)委員 仮定の話には答える立場にはないというのは、一般の人が言うならともかく、教育の最高責任者のお言葉としては余りにも当事者意識を欠いているというか、無責任ではないかなというふうに思います。

 もしも内閣のトップ、総理が、教育の分野でも地方分権の流れは変わらないんだ、このように考えていらっしゃるのであれば、そして中教審の結論が必ずしも採用されないという可能性を残しているのであれば、そうなったときの、万が一のときのリスクヘッジといいますか、当然考えておくのが最高責任者の仕事だと私は思います。

 ぜひ、今後のスクールミーティングを通じて、大臣には、教育の分野においても地方分権がこれから加速していく中で、本当の意味で国と地方の役割分担について、確固たる認識のもとで、それでも大丈夫なんだというメッセージを発信していただきたいと考えますが、大臣、いかがですか。

中山国務大臣 それでも大丈夫なんだと思っているんだったら、私は何も義務教育国庫負担制度堅持ということでこんなに頑張らぬわけでございますから、大丈夫じゃないと思うから頑張っているわけでございまして、ならなかったときにどうするんだ、そのときのことを考えて云々と、それはもちろん考えなければいかぬと思いますけれども、今のところはそうならないように頑張るのが私は義務教育の最高責任者としての文部科学大臣の責任だと思って、今頑張っているところでございます。

松本(大)委員 頑張るというお言葉をいただいたんですけれども、過去の答弁の中で、今、各市町村の教育委員会にアンケートもとっているんだと。本当のところは国庫負担制度についてどのようにお考えなんですかと、県知事の御意見だけではなくて、現場の、市町村の教育委員会の意見も聞きたいということでアンケートを出しているんだというような答弁もなさっているわけですが、その頑張るという取り組みの中には、アンケートを集めて何がしかのアクションを起こすということも含まれているんでしょうか。

中山国務大臣 もちろん、先ほど申し上げましたように、それを資料として中教審にも出しますと先ほどもお答えしたところでございますし、その資料といいますか、統計的にまとめたものを、私は、総理を初めとしていろいろなところに御説明にも回って、そして、この義務教育国庫負担制度の重要性について御理解をいただくような努力を続けてまいりたいと考えております。

松本(大)委員 三位一体改革について、この義務教の問題についての与党間の合意の際に、大臣の署名はそこになかったということで、後から聞いた話だというようなニュアンスの文面を私は読んだことがあるんですけれども、私が心配しているのは、頑張ってまいりたい、事あるごとに主張してまいりたいというふうに大臣がおっしゃっていても、また欠席裁判をされてしまう可能性があるんではないかということについて、私は、そういうことを見据えてどんな手だてを講じられるんですかということを親御さんの懸念の払拭という意味でも取り組んでほしいなと思うからなんです。

 今のお話では、アンケートをとって頑張ると言われても、それが最終的な地方と政府の協議機関の場で担保される保証は何もないわけですから、もう少し何かアンケートをとる以外に、具体的な頑張る中身について御説明をいただきたいと思うんですが、何かほかにあれば具体的に御説明をお願いします。

中山国務大臣 担保される保証はないからまさに頑張るわけでございまして、担保されているなら昼寝でもしていればいいんでしょうけれども、そうじゃないと思って、アンケート調査もその一環でございますし、いろいろなところに出かけて国民的な議論を巻き起こしたい、これもやはり私は頑張っていることだろうと思います。

 また、午前中の議論にもありましたけれども、市町村長さんの中には、堅持してくれ、地方の議員さんの中にも、どうしても堅持してくれ、こういった声もあるわけですから、こういった方々に対する働きかけも必要だろうと思うわけでございます。また、知事さんの中には、やはりこれは国の責任だよと言っていただいている方もあるわけですから、そういった方々をできるだけ多くするというのも、これもまた私は努力の一環かなと思うわけでございまして、そういったあらゆる努力をすることによりまして、この義務教育国庫負担制度を堅持していきたい。

 私は、この前も申し上げましたが、何といっても、十兆円ほどかかる義務教育費でありますけれども、国は三割しか負担していないんですね。それで大きな顔ができるかというのが私の率直な気持ちでございますから、そういった思いを起点にして、私は堅持の方向で頑張っていきたい、こう思っているところでございます。

松本(大)委員 今いろいろと御説明をいただいても、やはり精神論以外の具体的な方策というのが私には聞こえてこなかったんです。

 質疑時間が終了したということなのでこれで終わりますけれども、ぜひ全国の親御さんの懸念を払拭するような具体的な取り組みを、目に見える形でいつまでにどういう取り組みを行っていくんだという、当事者として、教育の最高責任者としてのリーダーシップをぜひとも発揮していただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。

斉藤委員長 笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 本日は、義務教育の国庫負担をどうするのか、また、義務教育全般にわたりましてのこの議論を秋へ向けてどうまとめていくのかというようなことでの質疑をさせていただくわけでございます。

 先ほど来、きょう午前中より、私どもの筆頭理事であります川内委員からもさまざまな角度での大臣に対する質問がありましたが、やはり私は、一たん参考人というものが理事間で決まっていた、それが、理由わからず、その人の問題なのかどうなのか、そこが全く我々にもわからない中でこれが取りやめられた、そして委員長の裁量によってということは、これはまさにこの議会において汚点を残すことになる、私は、このことについては強く遺憾の意を表させていただきたいと思っております。

 それで、今、松本委員の質問にもありましたけれども、大臣にまずお伺いをいたしたいのは、先ほど来、この秋、この義務教育の問題についてどういう結論を得るかということに対して、中教審等の答申を踏まえてというようなことをおっしゃっているわけですけれども、私はここにもう一つこだわりたいんですが、この等という中には当委員会の質疑ももちろん含まれるという認識でよろしいでしょうか。

中山国務大臣 中教審の結論がそのままということになれば一番いいんでしょうけれども、やはり尊重されるというか、結論を得て、いろいろとまた政府内においてもいろいろな議論があるんだろうと思うわけでございます。

 その中でも、しかし、中教審というものの重みが、昨年来、随分出てきたなと思うわけでございまして、私も昨年来、とにかく中教審抜きで、経済財政諮問会議で単なる補助金改革とかそういう財政論からだけでこの義務教育国庫負担制度を論じてほしくないということを一貫して主張してきたわけでございます。

 そういう意味で、何といいましても、まずは教育全般をこれまでも真剣に考えてこられた中央教育審議会、この結論というものを最大限尊重してもらいたい、こう思いますけれども、それ以外にも、いろいろな方々の意見ももちろん、この委員会も含めてそれは反映されるべきものであろう、このように考えております。

笠委員 大臣、もちろん中教審の答申というものは尊重しないといけないでしょう。ただ、再三大臣はいろいろな場で、幅広く意見を聞くと。そして、まさに国権の最高機関のこの場所で、それぞれの委員がやはり義務教育に対する思いというものを持ってここは議論をさせていただいている場だと私は認識をしております。

 ですから、もう一度確認しますけれども、今大臣からお話ありましたけれども、当然ながら、大臣としても、この委員会の場でのいろいろな質疑というものは、やはりこれも踏まえてまた結論を出していきたいということでよろしいですか。

中山国務大臣 私も、文部科学大臣としてこの委員会に臨みまして、委員の皆さん方お一人お一人の教育にかける熱情、情熱、気持ちというものはしっかり酌み取った上で、また閣内においていろいろな議論等もあると思いますから、臨んでいきたい、このように考えております。

笠委員 であるならば、私はぜひ大臣にも考えていただきたいことは、今まさに審議をしているこの法案の採決、あるいはこれがどこでということとは切り離して、やはりこの義務教育の問題というものは、秋へ向けて、当委員会でもこれからさまざまな角度からの当然ながら審議を行っていかなければなりません。ですから、そうした過程で、我々としても、幅広く、参考人の方にも時にはおいでをいただいて、やはり意見を聞かせていただきたい。

 こうしたことについてぜひ大臣にも御理解をいただき、また、大臣もそういう場にも時にはお越しになって、ぜひそういう意見を聞いていただきたいし、また、その質疑をしっかりと踏まえていただき判断をしていただきたい、そのことを改めてお願い申し上げたいと思います。これはあわせて委員長にもお願いをいたしたいと思います。

斉藤委員長 理事会で協議をしていきたいと思っております。

笠委員 そして、この審議、さまざまなこれまでの議論が行われているわけですが、私は、一たんちょっとこの義務教育の話はおいておきまして、どうしても一点、大臣にただしておかないといけない問題がございます。これは、またこの四月に予定されております教科書の検定の問題について、ぜひちょっと大臣に二、三確認しておきたいことがございますので、まず先にそのことについてお尋ねをいたします。

 大臣、またこの季節、今も韓国の有志の議員団が来ていろいろと外務大臣にお会いになったりしているようでございますけれども、先月、韓国で超党派の議員七十九人が日本の歴史教科書歪曲中断を促す決議案というものを国会に提出したという報道がございます。

 他国の教科書の内容について、歴史認識について、一方的に歪曲という言葉を使って決議が出された。これが果たして、これは提出したということなんでしょうけれども、こういう事態について、大臣、どう思われますか。

中山国務大臣 いろいろな国との関係、領土の問題、歴史認識の問題、いろいろあると思うので、それぞれの国の意見や主張があると思うんですけれども、私としては、余りそういったことを感情的にならずに冷静に判断していくべきだ、このように考えております。

笠委員 私もそのようには思うんですね。ただ、やはり我々も、それぞれの議員として、議員の立場で、個人的な思い、いろいろな心情がございます。

 ただ、やはり私はちょっと心配しているのは、逆に国会の場にそういう、教科書ですよ、しかもこれは恐らくまだこれから、私も内容は知りません、検定がまさに今行われている教科書について、なぜかわからないけれども事前に中身が漏れている、そしてその一部を取り上げてこういった動きになっていると私は認識をしているわけですけれども、ちょっといささか、やはりこういう特に隣国との外交というのは非常に難しいです。時に感情的な対立があるでしょう。

 だからこそ、今大臣がおっしゃったように、冷静な対応をやはりお互いにしていくということは大事なんですけれども、大臣、そこで一つお伺いしたいのは、今現在使われている歴史教科書で、何かこうしたほかの国から、近隣諸国から、これはおかしい、歪曲であるというような記述があると考えておられますか。

中山国務大臣 よその国から、何かそういうふうな具体的に言われているということは承知しておりません。

笠委員 いやいや、大臣、違うんです。今既に使われている検定済みの教科書、採択されている教科書の中で、そういうことを言われるような表現あるいはその事実というものがあると考えていますかということを聞いているんです。

中山国務大臣 ですから、ないというふうに考えているということでございまして、これはもう御承知のように、教科書検定調査審議会でいろいろ専門的な分野から議論していただいて、それをもとにして適切にやっているわけでございまして、そのことについて、今の現行の教科書についてとやかく言われているということは承知しておりません。

笠委員 大臣、私は、それぞれの国の歴史には光もあれば影もある、そして、それをきちんとやはり子供たちに教えていくということは非常に大事なことだと思うんです。

 ただ、これは大変残念ながら、日本と韓国、あるいは日本と中国の歴史の中において、これまでなかなか共通の歴史認識というものを整理していくことがまだできていない。戦後この六十年の中で積み残された大きな課題の一つであると思います。

 ただ、まず日本の歴史というものが何なんだ、どうなんだということは、まさに我々がしっかりと責任を持って検証し、そしてそれについて何を子供たちに教えていくのかということは、私は、自信を持ってしっかりとやっていかなければいけない責務があると思っております。

 そうした中で、やはり、検定前のまだ世に出ていない教科書に対して、たとえ一部であれその問題をとらえて、我が国の外務大臣に対して問題があるということを言うようなこのやり方というのは、いささか、先ほど言った冷静な議論を我々もやろうと思っているからこそ、ちょっと行き過ぎではないかな、そのように私は感じております。その点については、大臣いかがでしょうか。

中山国務大臣 今検定の期間中でございまして、それがもう外に漏れるということ自体がおかしいわけでございますし、そういったものをもとにしていろいろ言われるのはこれはいかがかな、こう思うわけでございまして、この検定につきましては今粛々とやっているところでございますから、これ以上のことを申し上げることは差し控えたいと思っております。

笠委員 この問題について、最後に一点だけ確認をします。

 大臣、粛々ときちんとやっていただけると。そういういろいろなものが、だれが出したのか、だれが広めているのか私はよくわかりません。けれども、そういう周りの、外野の声に決して惑わされることなく、しっかりと検定をしていただけるということを約束していただけるでしょうか。

中山国務大臣 文部科学省としては、これからの時代を生きていく子供たちに責任を持っているわけでございまして、その子供たちがこれからの時代を自信と誇りを持って生きていけるような、そういったしっかりとした歴史認識といいますか歴史の勉強ができるようにということを基本に置いて検定をやっていきたいと考えております。

笠委員 よろしくお願いをいたします。

 また、大臣、恐らくこの問題、いろいろとマスコミも含めてこれからどんどん出てきますよ。ですから、私は、そういう歴史認識なんかについても、実は、こういう委員会の中でも、教科書の検定がどうこうということじゃなく、議論もしていくべきではないか、もっと広く国民を巻き込んでやはり議論をしていくことも必要ではないかと考えておりますので、またその点についてはよろしくお願いをいたしたいと思います。

 さて、本件の義務教育の国庫負担制度をどうするのかという問題について話題を移させていただきますけれども、大臣、この四月号の中央公論、これに大臣の記事が出ているわけですけれども、この中で、

 今年は、義務教育改革の正念場の年である。

  子どもの現状、学力をどうとらえ、教育内容をどう変えていくのか、信頼され尊敬される教師をどう養成していくのか、現場主義の立場に立って学校をどう変えていくのか、家庭、地域社会はどういう役割を果たすのか、それを支える教育行政はどうあるべきか、こうした幅広い問題にしっかりした答えを出さなければ、いくら財源論だけを議論しても支持は得られない。

と大臣は書かれております。

 また、この委員会等の審議の中でも、財源論だけじゃないんだ、義務教育全体のあり方を考えるんだということを大臣は再三再四おっしゃっているわけでございます。私も全く同じような思いを持っているんですよ。

 そして、大臣は、先ほど義務教育の根幹について、機会の均等だ、水準の確保だ、そして無償制だというようなことをおっしゃっていますけれども、私はまず最初に大臣に確認をしたいことは、あるべき姿をまず具体的に示していく、このことの方がまず先であろうと。

 その中で、当然ながら、義務教育にかかるお金について、どの部分を国が持つのか、あるいは全部国が持つのか、いやいや、全部もう地方でいいのか、そういった議論がやはりあわせて行われると認識をしているわけでございますけれども、大臣、例えば、当然ながら、秋に財源論だけが切り離されて結論を得るということはないですよね。そのことをちょっとまず確認させてください。

中山国務大臣 まさに、財源というかお金、銭金でもって義務教育を論じてもらいたくないということを再三主張いたしまして、中教審におきまして、教育論にさかのぼって議論してもらいたい、そして費用の問題につきましても、その中で議論して結論を出してもらいたい、こういうことをお願いいたしまして、中教審で議論していただいているわけでございますから、決して財源論だけでこのことが決せられるとは思っておりません。

笠委員 一つ確認なんですけれども、それでは、今度中教審の答申の中には、もちろん財源の話もあるでしょうけれども、あるべき義務教育の姿、あり方、こうしたものがきちっとした答申として出てくるということでよろしいですね。

中山国務大臣 もう既に御承知のように、中央教育審議会のもとに直属の機関として義務教育特別部会というのを設置したわけでございまして、これに対して私が諮問した事項というのは、義務教育の制度・教育内容のあり方、国と地方の関係・役割のあり方、学校と教育委員会のあり方、義務教育に係る経費負担のあり方、学校と家庭・地域の関係・役割のあり方などにつきまして幅広く御審議いただくということになっているところでございます。

笠委員 大臣、私も、この会長の「検討の論点」、今、大臣は項目をおっしゃって、そこにまたいろいろと細かく、すばらしいことを書いてありますね。

 ただ、大臣、これはどれも大事なテーマですよ、この中にもちろんお金の問題も入っている、これを本当に秋に答申出せますか。これだけのテーマですよ。この中でいきますと、例えば義務教育の目標の明確化、制度の弾力化、年限等のあり方、義務教育を、九年をどうするのかと。私は私なりに考えがございます。

 こういう根幹にかかわる問題について、本当に秋で期限を切ってきちんとした答申が出されるという、私はちょっと不安なんですよね。今おっしゃったように、特別部会がきょうも行われるんですか、もう既に二回目になるわけですか、これが月に二、三回程度開かれるということですけれども、そして随時総会なども開くんでしょうが、これを今から、例えば十月、十一月までにといっても、まあ毎日やれば別でしょうけれども、二十回、三十回、精力的に取り組んでもせいぜい三十回ぐらいのものでしょう。そういう中で、本当にここに掲げてあるテーマについてすべてに、きちんとした一つの中教審としての考え方をまとめ上げることができる、大臣、それは必ずできるということでよろしいんですか。

中山国務大臣 確かに、スケジュール的には非常にきついかと思いますけれども、それぞれの専門家の方々が入っていただいておるわけでございますし、また、これまでの議論の蓄積もあるわけでございます。大変タイトなスケジュールではございますが、委員の先生方に精力的に御審議いただきまして、秋までには結論を出していただきたい、このように考えております。

笠委員 努力はしていただくんでしょうけれども、ただ、私は一番危惧していることは、例えばお金の問題についてはどうしても予算編成なりの時期というタイミングがあります。来年の予算の、再来年度予算ですけれども、来年の通常国会での審議というものも考えていかなければなりません。

 ただ、そのために、そもそもがこれ、数合わせなんですから、去年混乱したのも、数字が丸投げされて知事会の方に投げてこられて、これでいいじゃないか、そういう中で教育の本質論というものが抜けていたと。では、なぜこのお金を地方に任せるんだというような、そもそもの義務教育の根幹にかかわる議論が欠落しているじゃないかというところは、恐らくはほとんどの議員が同じ思いだと思うんですよ。

 であるならば、大臣、これは場合によって、もしこのあるべき姿、あり方、検討するべき論点についてまとまらなかったときには、これはやはり大事な、もうこれから十年、二十年先、またころころ変えていたのでは、ゆとり教育と一緒になっちゃうんですよ。本当にここですべてしっかりと、十年後、二十年後を見据えた改革案を出すんだ、制度をきちっと変えていくんだという決意のもと取り組んだら、私はこれは多少時間がかかっても仕方がないと思うんです。ただ、そのときに、また財源論だけが切り離されてということはくれぐれもないということをぜひお約束していただきたいんです。

中山国務大臣 まさにこれからの教育を決定づけるような重要な中教審だろう、今実際にやっていただいている中教審はそうだろうと私は思っておりますが、一方で、この財源論については、ことしの秋までに結論を出すという与野党の合意があるわけでございますから、そのことをしっかりと視野に入れて、これは議論していただかなければいかぬということでございます。

笠委員 大臣、与野党じゃないですよね、政府・与党。(中山国務大臣「失礼いたしました。ごめんなさい、間違えました」と呼ぶ)

 それで、大臣、しかし、私がなぜそこにこだわるかというのは、このお金の問題、財源論を考えるときには、では一体全体義務教育にどれだけのお金が必要なんだということをまずやはり考えなければいけない。今確かに、十兆公的に負担している。そのうちの三兆が国だ、四兆、三兆が県だ、そして市町村だ。でも、それを前提としたものじゃなくて、まずやはりあるべき姿がなければ、では、今の十兆円で足りているのか、あるいは足りないのか、多過ぎるのか、こうしたこととも絡んでくる問題だと私は思うんですよ。

 まず、義務教育の形というものを、姿というものをこういうふうにするんだと。そして、当然ながら、そのためにはどれくらいの義務教育費というものが、お金がかかってくるんだということが、やはり初めて出てくるんですよね。そして、そのお金に対してどこが責任を持つのが一番いいのかというのが、私は議論の順番じゃないかと思うんですよ。

 そこを切り離して、今の三兆円をどうするのか、二・五兆円をどうするのかという議論だけを切り離してやるべきではないし、それだと、まさに今から中教審で御審議いただく、あるいは我々がまたそういったものを受けてここの国会の場でも議論していく、これはこんな小さな話じゃないですよね、大臣。そこのところの認識についてお伺いしたいんです。

中山国務大臣 まさに笠委員御指摘のとおりでございまして、そのことを昨年来主張したわけでございます。

 この三兆円をどうするのか、二兆五千億、一期、二期で地方に渡せとか、そういう地方側の主張でございましたけれども、しかし、まさに御指摘のように、一体あるべき義務教育の姿は何なんだ、その中で国と地方の役割分担というのはどういうことなんですか、そういうことを含めて、総体として義務教育全般について議論しようじゃないですか、こういうことから、中央教育審議会において、そもそも論から始めてもらおうということになったわけでございます。

笠委員 ですから、大臣、念を押すようですけれども、これは今から、一つのめどがあるわけですから、そこへ目指してしっかりと議論をしていくことは本当に大事でございます。

 ただ、これは、このあるべき姿がまとまらなければ、この結論も得られないというぐらいのやはり覚悟を持って臨んでいただきたい。その点について、決意をお示しいただきたい。

中山国務大臣 私も、第一回のこの特別部会には出席させていただきましてお願いしたところでございますが、委員の皆様方は、まさにその私の決意をしっかり酌み取っていただいて、今もう議論を始めていただいている、このように考えております。

笠委員 私が大臣にあれしたのは、ちょっと私、ここのところのこの問題についての答弁を聞いていて、よく大臣が、けさもおっしゃっていました、いや、大きな顔できないんですよ、三兆円しか負担していない、それだけしか負担していないのがそもそもの問題と。いいんですよ、それは大きな顔して。お金が三兆だからって、今から義務教育の全般的なあるべき姿を検討していくわけでしょう。そして、やはりその担当の責任者である大臣じゃないですか。お金を出していないから、国が出していないから大きな顔できないなんという認識では、私は本当にリーダーシップを発揮していただけるのかなと疑問に思うんですよ。

 例えば、お金をどこがどう出そうと、これはその後の議論としましても、子供たちの将来のために、そしてこの義務教育というものをどうやっていくのかということをやはり国が一義的にまず考える、その中で国と地方の役割分担、あるいは学校との役割分担、家庭との役割分担というものもしっかりと示していくというのが、私はこの改革の原点じゃないかと。

 だから、大臣が三割しか出していないからと言うことは、今後、私は絶対こういう答弁はしないでいただきたいんです。金は出さなくても口を出したっていいんです、国として責任を持ってやるという覚悟があって、誇りがあるならば。その点について、大臣の決意をお願いいたします。

中山国務大臣 十兆円のうち三兆円しか出していなくて、余り大きなことは言えない、大きな顔はできない、私は個人的にそう思っているわけでございます。

 なぜかというと、世界の趨勢を見ますと、既にフランスとか韓国みたいに全額国が持っているところもありますし、あるいはまた、イギリスのように今度全部持とうとしているところもある。アメリカなんかも国がどんどんふやそうとしている。そういった中で日本だけが、三兆円しかと言ってはいけないのかもしれませんが、三兆円しか負担していない、これをさらに減らそうとしているわけでございまして、そういう意味で、私は、国際的な観点から見て、では、日本の国は義務教育にしっかり責任を果たしているんだ、これはお金だけじゃないということもわかりますけれども、しかし、ほかの国に比べて金は余り出していないんだなということを私は言っているわけでございます。

 それと、金は出さなくても、国として、文部科学省としてできることはあるんじゃないか、それはあると思うんですけれども、これは総務省的なお考えなんですけれども、何か法律をつくればいいじゃないか、決めればいいじゃないかということなんですね。しかし、それは私は地方分権じゃないと思うんですね。ただ上から命令して、こうしろ、ああしろと言って金は出さない、口は出すが金は出さない、これが本当に地方分権なのかなと。

 私は逆に、どうぞ地方で、現場でできるだけ自由にやってください、そういう工夫を凝らしながら、自分たちの子供として本当に誇りに足る子供たちを育ててもらいたい。そのうちの、本当は全額と言いたいところですけれども、一部なりとも国もちゃんと責任持ちますよ、これが私は本来の地方分権のあり方ではないかなと。命令や規則でこうしろ、ああしろと言って縛りつけるということについて、私はちょっと疑問を持つものですから、今までそういったことを主張してきたところでございました。

笠委員 私が言っているのは、何でも縛れということじゃなくて、大臣がその三兆円という、今もお話ししますよね。違うんですよ。どこが今負担していようと、義務教育全体にかかっているお金について、どうあるべきかということに責任をきちっと持っていただきたいということを私は言っているんです。国が三兆円出しているから三兆円分しか責任を持たないとか、そういう話じゃないんですよ。

 私は、ではちょっとお伺いしますけれども、これは事務方でも結構ですけれども、今、では義務教育、一体全体、義務教育に公費は十兆円プラスアルファでしょうけれども、義務教育段階でどれだけの教育費が、この日本で子供たちのためにかかっておるんでしょうか。その点についてまず聞かせてください。

田中政府参考人 保護者の方が子供の学習費として支出した経費につきましては、子どもの学習費調査というもので調べておるところでございますけれども、この最新が平成十四年度調査でございまして、平成十四年度一年間に支出した教育費を申し上げますと、公立小学校では二十九万二千円、それから公立中学校では四十三万七千円、私立中学校では百二十三万二千円ということになっておりまして、この中身といたしましては、学校……(笠委員「中身はいいです。トータルで言ってください」と呼ぶ)

 今申し上げましたように、一人当たりの経費というのは、公立小学校で二十九万円、公立中学校で四十三万七千円、私立中学校で百二十三万円というふうになっておるところでございます。(笠委員「合計」と呼ぶ)

 これは、全国で九百五十校、幼稚園から高等学校まで九百五十校について調べておるところでございまして、トータルの調査はいたしておらないところでございます。

笠委員 だから、私は思うんですけれども、今国が持っている、あるいは県が払っている、あるいは市町村が払っている、あるいは国から当然私学助成という形で行っているお金もあるわけですね、私立については。そしてまた、家庭が払っている。果たしてどれだけのお金が今、全体でかかっているんですか。では、その中のどの部分を国として責任を持とうというような議論がなければ、まさに財源を抜本的に考えていくということはそういうことじゃないんですかということを私は申し上げたいんですよ。

 全部でお幾らぐらいかかって、いや、別にそれはきちんとした数字じゃなくて、トータルでいいです、内訳は要らないです。

田中政府参考人 ただいま申し上げました一人当たりの年間の単価に児童生徒数を掛けて算出いたしますと、公立小学校で約二兆七百七億円、公立中学校で約一兆四千八百四十六億円、私立中学校で二千九百七億円ということで、合計いたしますと三兆八千四百六十億円ということになっております。

笠委員 そうしますと、これはやはり大臣、十五兆円ぐらいの、今ざっと聞いたお金でも、この義務教育にいろいろな形でのお金がかかっているわけですよ。だから、この中には当然、学習塾に通っているお金なんかも家計負担ということで含まれているんでしょう。

 ただ、ではなぜ今学習塾にそれだけ子供たちが行かないといけないのかという現状、そして学習塾の置かれている意味、こうしたこともすべて含めて考えていかないと、この義務教育というものを考えると、私はそういうことだと思っているんですね。

 その中で、では本当に、今言っている学校の二兆五千億だ何だというのは、しょせんはこれは使い道の決まっているお金でしょう、あくまで。これだって、先生達の給料というものが本当に今のレベルでいいのか、もっと上げてあげないといけないんじゃないか、いやいや、高過ぎるのか、例えば私立の先生たちと比べてどうなのか、そういったことも当然一つ一つやはり検証をしていかないといけないですね。

 そういう中で、どれくらいのお金を国として全体で責任を持っていけば日本の義務教育は大丈夫だ、国際的に比較しても大丈夫なんだというようなことがやはり検討されるべきではないかなと私は思っているんですね。何か、もう今ある、決まっている前提の予算、お金、これを前提にどこがどれだけ負担するという議論ばかりしているから、国民から見ると非常にわかりづらい。

 ですから、私は、あるべき姿をしっかりと、そういったところからも、財政という面でもそういう面からやはり検討していかないといけないんじゃないかと思うんですよ。

 そして、制度が変われば、あるいは義務教育が本当にこのまま九年でいいのか、私などは、個人的には、やはり就学前もきちっと無償というもので位置づけるべきだと考えておりますけれども、そうすれば、それが十年に、十一年になることだってあるじゃないかと。そうすると、当然ながらお金だってもっとかかる。そういったところまで含めてやはり議論をしていくということが、抜本的な改革、私はそういうふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

中山国務大臣 そのことを今、中央教育審議会で御議論いただいておるところでございます。

笠委員 大臣、そして、こうした義務教育については、当然ながら本当に多くの方々がいろいろな、さまざまな思いを持っていますよね。中教審のメンバーだけが、それぞれ代表されているすばらしい方でしょう。けれども、先ほどちょうど同僚の松本議員も指摘しておりましたけれども、やはりこれは本当に幅広く国民の声を聞いていかないといけないですね。

 中教審の答申は答申として尊重しましょう。けれども、同時に文科省としても、中教審に丸投げしました、待っています、それが出たところで検討しますではなくて、どういう努力をしていくのか。国民の方々の幅広い意見というものもまた聞いていく努力を、具体的にどういうふうに、これから八カ月、九カ月、わかりませんけれども、やっていこうというおつもりがあるのか、その点についての何かプランがあれば、お聞かせいただければと思います。

中山国務大臣 私どもも、中教審に丸投げということではなくて、やはり中教審の議論に資するようにいろいろなデータとか資料も提供したい、こう思っているわけでございまして、例えば、義務教育費の保障の歴史的経緯とか、あるいは義務教育に係る諸外国の財源保障制度、あるいは義務教育の将来推計など、さまざまなデータも、これは私どもとして提供したいと思っています。

 それとは別に、私どもとしても、今進めておりますスクールミーティング、三百校を目標にしていますが、もう大体半分近くまで行きましたけれども、これをやることによりまして、現場の先生方の声とか保護者の声、そして子供たちの実態等もしっかり把握したい、このように思っています。

 また、先ほども御指摘ありましたけれども、実態調査というのも、アンケート調査をやりまして、父兄とか先生とかあるいは市町村の首長とか教育関係者とか、そういった方々から幅広く御意見をいただいて、それをもとにして、文部省は文部省としていろいろ議論していきたい、このように考えておるところでございます。

笠委員 大臣が相当なリーダーシップを発揮しないと動きませんよ。

 それで、ちょっと一つ指摘させていただきたいんですけれども、これまでもさまざま、例えば公立学校をよくしていこうということで、コミュニティ・スクールであるとか、あるいは小中一貫の指定校、研究校であるとか、この何年間かいろいろな取り組みをしていますよね。そして、いいものについては全国に広げていこうじゃないか、あるいは問題点というものも蓄積していこうじゃないか。

 私、当然、文科省としても、これはいろいろ私もお伺いしました、そして、確かに学校からの報告書なりも届いたり、あるいは教育委員会からまたそこについてのいろいろな形での報告というものもあったりしていますけれども、文部科学省の方が、指定校ですよ、研究校ですよ、そういったものについて全く訪問していないような学校だってあるんですよ、現場を視察して。歩いていないですよ、現場を。そういう体質なんですよ。制度はつくった、あとはお任せ。

 これはやはり僕は、監督するとかそういうことじゃなくて、新しい何か試みをしたときにはその現場に行って、現場の方々、一週間ぐらい泊まり込んだっていいんですよ、しっかりと、そこの保護者の方々はもちろん、学校の先生もそう、地域の方々もそう、実態がどうなんだ、どういう問題点があるんだと。やはりそういう姿勢というのは、せめてこういう研究校とかのたぐいぐらいは、年に一回か二回、きちっとだれかしらが、別に大臣が行くとか副大臣が行くとか政務官、そういうレベルの話じゃないんです。

 やはりそういう体質に持っていかないと、これからまさにこの義務教育、どうするんだという、今大臣おっしゃったように、幅広く意見を聞いていくと。大臣たちのタウンミーティングみたいなのもいいでしょう。そういう機会も大事でしょう。けれども、そうじゃなく、ただ単に団体の代表さんとかそういうところと話すだけじゃなくて、やはり本当にこのデータについては文部科学省しか持っていないんだというぐらいの聞き取り調査なりを、しっかりとリーダーシップを発揮されてやっていただきたい。そのことについての御決意をお願いいたしたいと思います。

中山国務大臣 笠委員御指摘のとおりだと思いまして、研究指定校とかいろいろなものを今お願いしているわけですから、そういったところでどういう取り組みがなされているか、どういう実績が上がっているか、このことについては、文部科学省としても十分これは関心を持って見守るべきだ、こう思っております。

 例えば、コミュニティ・スクールの実践研究校、七地域九校に対しては、平成十四年から三年間の指定期間中に延べ十三回の視察を行っている。そうやってすべての地域に最低一回は視察を行って、学校現場の視察、関係者との意見交換などを通じて取り組みの状況の把握に努めている、こういうことでございますが、先ほど私が申し上げましたように、それにプラスいたしまして、スクールミーティングというのをやり始めた。

 私が提唱いたしましたのは、まず現場から、現場でどういう教育が行われているんだ、特に総合的学習はどうなっているんだ、そういったことについて、まず現場を見ようと。私は現場主義なものですから、いつもそう思って言っているんですけれども、特にこの教育に関しては、実際にどういう教育が行われているかということを自分の目で見てから議論を始めるべきじゃないかということで、今精力的にスクールミーティングを実施しているところでございます。

笠委員 大臣、今、行っているところだけ挙げられましたけれども、まだまだ十分じゃないというような認識はきっとお持ちでしょうから、しっかりとその点はよろしくお願いをしたいと思います。

 それで、一つお伺いしたいんです。これは大臣じゃなくても結構なんですけれども、そもそも、この義務教育の国庫負担の問題、これは文科省的には、いよいよ小学校、中学校の先生たちの給与の部分についてもやられちゃうぞというようなことは、いつごろ気づかれたんですか。

銭谷政府参考人 いわゆる三位一体の改革ということが随分言われるようになりまして、十四年の夏ぐらいだったと思いますけれども、そのころから、義務教育費国庫負担のあり方についてもいろいろ議論がなされるようになりました。

 御案内のように、共済長期あるいは退職手当についても、いわゆる一般財源化の議論が、十五年度、十六年度と行われてまいりましたので、私ども、十四年、十五年度ごろから、いわゆる給与費の問題についても一般財源化の問題が話題になってきているということは認識をしていたところでございます。

笠委員 二年半以上前に、もう既にその時点で、少なくとも認識をしている。いや、恐らくいろいろな流れからいうと、もうちょっと前ぐらいから、これはいよいよねらわれるなと。だったら、私思うんですけれども、何でそういうときに、では、今出てきているような、この義務教育のあり方に関する検討とかいうものをやってこなかったのか、この間何をやっていたんだと。

 昨年の議論の中で知事会がああいう答申を出して、これは小泉さんやるぞ、いよいよ大変なことになったというようなことで、もうこれは自分たちで文科省として積極的にじゃないんですよね、あくまで。もうそういうときから、この二年半ぐらいの間に、やはりみずから率先して改革をしていこう、このままじゃ大変なことになる、しっかりと我々が義務教育の新しい姿を見せていかなければ、その中で財源の話もきちっとやっていかなければ、これは大変なことになるんだという危機感をなぜ持たれていなかったのか。

 私は、その間にやってきたことというのは、六・三制をちょっと自由にするとか、あるいは総額裁量制を導入してみたり、まさに二・五兆円を守るために何か懸命に、最後の最後、そこだけを守るために、そういう小手先のことをやってきたとしか受け取れないんですよ。もっと早く抜本的にやっていればいいじゃないですか。これまでの二年半、本当に何をやっていたんだと。

 だから、これから、もういても立ってもいられずおしりまで、最後の、ことしの秋だという期限までつけられて、区切られて、ばたばた慌てて今から大変なテーマを、結論を出していかないといけないという状況に陥っている今の状況こそが、私は本当に反省をしていただかなければならない。だからこそしっかりと、逆に言うと、経済諮問会議だ何だで、財政論の中で、こういう大事な教育の問題が、ともすると全く財政論優先の中で議論をされていくというような状況を生んでいるんだと私は思っているんです。その点については、大臣の認識はいかがですか。

中山国務大臣 昨年の九月の二十七日に文部科学大臣を拝命いたしまして文部省に参りまして、いろいろな話を聞きました。その中で、この義務教育国庫負担制度についての経緯といいますか、も聞いたわけでございまして、笠委員が御指摘のように、ここ二、三年、じわじわと攻められてきていたんだなと。

 特に、平成十四年の十二月十八日の三大臣合意、これは、本当にこんなことあったのと思うぐらい、私、知らなかったものですから、文部科学大臣も入って署名しているわけでございますが、あれを見て、実はびっくりしたというのが正直なところでございました。まして、その中に、中央教育審議会の議論を経て十八年度末までにということがありましたものですから、それをてこにして、もう一回中央教育審議会でやってくれということを主張してきたわけでございます。

 そういう意味で、全体として地方分権の流れがある中で、文部科学省は、その地方分権の流れに乗って、総額裁量制だとか、できるだけ権限を地方に、現場に渡していくという方向をとりながら、しかし、やはり国の責任としての国庫負担制度はしっかり堅持する、こういう方針で頑張ってきたんだろうと思うわけでございまして、今後ともその方向でやっていかなければならない、このように考えているところでございます。

笠委員 大臣、ですから、秋にまず中教審の答申が出る。当然ながら、それまで、文科省の中でも、またこういう委員会の場でもいろいろな審議が行われる。そうしたことも含めて、当然ながら、これは官邸との調整ということも出てくるでしょう。

 ただ、何よりも大事なのは、やはりこれだけ大きな改革ですから、国民的な合意を形成していくということが絶対に大事なことなんです。ですから、説明責任をしっかりと果たしていって、小泉総理はとにかく地方に、三位一体、もう恐らく頭の中では大臣とは反対のことを考えておられますよ。私は、小泉さんよりはまだ教育に対しての思いは大臣の方が強いと思っておりますから、その点に期待を申し上げます。

 最後に一つ、大臣、今、サラリーマンの川柳というのがあるじゃないですか、こういうのがあるんですね。丸投げを投げ返されて雪だるま、これは恐らくどこかの総理のことを想定してやっているんでしょうけれども、ぜひ、今中教審に、丸投げとは言いません、投げているこの議論、そこだけでなくて、しっかりと責任を持って、一緒になってこの制度の改革ということにまた取り組んでいきたい。全力を挙げていただきたいし、また議論をさせていただきたいと思います。

 そのことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

斉藤委員長 城井崇君。

城井委員 民主党の城井崇でございます。引き続き、大臣よろしくお願いいたします。

 まず、私からも参考人質疑について一言申し上げてから、質疑に入りたいと思います。

 詳細が明らかになっておりません党の方針を理由に、田中長野県知事を参考人として認めないと与党自民党が言い、委員長裁定で参考人質疑自体が中止となった。今回取り扱います法案はいわゆる重要広範議案の一つであり、広く国民の声を聞く参考人質疑という場は非常に重要であると考えます。

 にもかかわらず、その機会を前代未聞の委員長裁定でつぶした。我々が一生懸命に求めております徹底した審議に逆行し、国会審議を軽んじる愚行であると考えます。また、選挙で選ばれた知事を愚弄するものであり、何よりその知事を選んだ長野県の人々をばかにしているということをよくよく御自覚いただきたいと思います。

 それでは、質疑に入らせていただきます。

 本日は、この改正案に関しまして、これまでさまざまな委員会等でなされております大臣答弁で我々に説明をされております政府の統一見解について、本改正案の責任者たる中山大臣に順次お聞きをしたいと思います。

 まず初めに、小泉総理の出されている方針、そして示されている認識についてお伺いしたいと思います。

 先日の三月二日の衆議院予算委員会におきまして、小泉総理がこう言われているのを何度か私どもの委員からも引用させていただいている部分がございます。「私は、この補助金の問題、今回、義務教育の国庫負担金の中学校にかかわる部分、こういう点については、地方にその権限を渡してもいいのではないかと思って、そういう方針を決めて、今年度は約八千五百億円の中での約半分、今後のことについては中教審等の意見を踏まえましてよく協議していこうという判断をしたわけであります。」と答えました。

 八千五百億円の部分については後ほどまた伺いますが、まずお伺いをいたしたいのは、今回の法律案の中では暫定的に削減というふうになっておりますけれども、将来どのようにこの制度を見直すのか、その道筋、そして考え方というのがはっきりと示されておりません。

 その中で、この総理の御答弁の中で、中学校分の権限の移譲の方針を決めたととれる部分があるわけでございますけれども、この「地方にその権限を渡してもいいのではないかと思って、そういう方針を決めて、」という部分について、大臣、今年度は暫定だけれども、それ以外、つまり将来の中学校分の権限移譲に関する方針は決めたのかというところ、この点について、総理大臣のこの発言の御趣旨を踏まえながら、政府の一員としての大臣の御見解をお聞かせください。

中山国務大臣 総理の発言をそのまま記憶しているわけではございませんが、総理はその中で、教育は重視している、このようにも発言をされたと思っております。全国的な教育水準の確保というのは国の責任であるという中で、教育においても地方独自のやり方があってもよいのではないかということを総理は言われたんじゃないかなと思いまして、どちらか一方の考えのみを重視しているというふうな発言ではなかったんじゃないかな、私はそのように認識しております。

城井委員 そういたしますと、小泉総理大臣としては、あくまで考え方の一つを披瀝した、示したということであって、中学校分の権限移譲という方針を決めたのではない、この理解でよろしいですか。

中山国務大臣 私はそのように認識しております。

城井委員 ありがとうございます。

 そういたしますと、現在存在します義務教育費国庫負担制度がカバーをしている項目、この委員会でも何度も議論しておりますけれども、現在残されておりますのは教職員の給与部分のみというのは御承知のとおりかと思います。とすると、いわゆる一部かつ暫定的で、項目を特定したものではないとはいえ、義務教育に携わる教職員の給与そのものが今回税源移譲特例交付金という形で一般財源化されるという認識でよろしいんでしょうか。

中山国務大臣 地方の案というのもあったわけでございますし、私たちは私たちの案があったわけでございまして、そこで政府と与党の間であのような合意がなされて、その中で、暫定として十七年度四千二百五十億円、トータルして八千五百億円が暫定になったということである、私はそのように考えております。

城井委員 ここで確認したいのは、大臣、義務教育に携わる教職員の給与自体が削減をされて、特例交付金という形で移しかえられたということ、私が今こう申し上げた部分の理解で、認識でよろしいかという点について、もう一回お聞かせください。

中山国務大臣 小中学校の先生方の給料の二分の一、そのうちの一部がまさに、移しかえといいますか、暫定的にせよ移しかえられている、このように認識しております。

城井委員 ありがとうございます。

 では、引き続き、この総理答弁の中でも触れられておりました、今回の法律案の対象となっております四千二百五十億円の部分についてお伺いします。

 本日、先ほど、松本委員からも御指摘ございました。この点について、さまざまな言葉のやりとりがありましたので、ここで一度言葉の整理をさせていただきたいと思いますけれども、四千二百五十億円という金額は、中学校の教職員給与である八千五百億円の半分にたまたま相当する額であって、中学校分に特定しているのではない、金額の規模としてであって額として削るものだ、この理解、認識でよろしいですか。

中山国務大臣 そういう認識で結構でございます。

城井委員 といたしますと、金額の規模としてということになりますけれども、この金額の大きさ、規模で適当だということで決められたんでしょうか。

中山国務大臣 それも暫定ということで、そういう規模でいいということで決められたんじゃないかと思います。

城井委員 暫定とはいえ、これだけの大きな規模を決めるのには合理的な理由があるのではないかというふうに思うわけですけれども、この合理的な理由がもしおありでしたら、お示しをいただければと思うんですが。

中山国務大臣 地方案では、十七、十八年度の両年度にわたって八千五百億円、これは、向こう側としては中学校の分と言っているわけですけれども、この削減を要求してきたわけでございます。

 ですから、四千二百五十億円というのはその半分、要するに、二年間のうちの半分を十七年度に暫定的に計上している、このように認識しております。

城井委員 今大臣が御答弁いただきましたように、いわゆる地方六団体が出された案、つまり地方六団体が要求した金額というのがベースとなっているというところ、それ自体ではないというのは確認したとおりというふうに受け取ります。

 だとした場合に、地方六団体としては、いわゆる一般財源化、つまり、使い勝手を金額をふやす形でよくしたいということを考えている地方六団体が出してきた案であり、数字であり、金額であるということを考えますと、先ほど来お示しになっておられます大臣及び文部科学省の懸念というものが現実になってきているんではないか、心配の部分が現実になってきているんではないかと思うわけであります。

 その中で、本日も、先ほど来お話を伺っておりました大臣のお言葉の中で一番出てきているのは、実は、頑張るという言葉ではないかと思います。頑張る、頑張るとおっしゃっておられます。しかし、ここまでの御説明ですと、残念ながら私にも精神論というふうにしか受け取れない部分があるのではないかと思うわけでございますけれども、大臣がこれまでお答えいただいている御答弁の部分、これは政府のほかの閣僚の説明と照らした場合にどうか。いわゆる統一見解としてきちっと一致した答えになっているかというところ、この点をつぶさに見ていきますと、かなり疑問の点が出てくるんではないか。この点をきょうはぜひ確認をしておきたい。今後の運営に非常に大事だと思いますので、ぜひ確認をさせていただきたいと思います。

 まず、もう一回、小泉総理の別の御答弁をここで引用させていただきます。恐らく御記憶の部分はあろうかと思いますけれども、具体的に引用させていただきながらと思います。

 三月三日の参議院予算委員会におきまして、小泉総理がこうおっしゃられております。恐らく文部大臣に対しては一番厳しいお言葉ではないかと思いますけれども、そのまま読みます。「これは、文部科学省の主張と私の主張とは違っていたと。文部科学省にしてみれば、断固として私の主張は受け入れ難いと抵抗してきたわけです。しかし、それを私が押し切ったと。」これは総理の発言です。そして、もう一つおっしゃられております。これは三月十一日の衆議院文部科学委員会におきまして、小泉総理は、閣僚間での意見の対立はあるが、結論を出す場合には一致協力していくのが内閣だ、こうおっしゃられております。

 私は、この発言を踏まえまして、こう考えます。当然これは与党の方々にも御理解いただけると思いますが、閣議を経た法律案でありますから、法律案並びにその法律案の提出に至った背景の解釈と見解については、閣議を経た時点で当然統一をされているはずだというふうに考えます。この点について、まず大臣、御見解をお聞かせください。

中山国務大臣 政府・与党合意、それから十二月二十四日の閣議、このときまでにはそれこそけんけんがくがく議論いたしましたが、最終的には、四千二百五十億、それで八千五百億、これを暫定的に計上するということについては一致しました。それで、その後のことにつきましては中央教育審議会の結論を待つ、こういうふうなことになったわけでございます。

城井委員 そうすると、今回の法律案に関しては押し切られたということですか。

中山国務大臣 総理が私に、済まぬな、こらえてくれと言われたということは、総理は押し切ったという思いかもしれませんし、私としては、暫定という名がついていますが、四千二百五十億削減ということは、ちょっと私の主張がそのまま通らなかったなとは思っております。

城井委員 実際に、総理は押し切ったというふうにおっしゃっておられ、今大臣、御答弁いただきましたように、大臣の受け取りは少し違うというところもあるわけですけれども、そういう思いの部分の違いは横に置かせていただくとしても、答弁で、我々に対して説明をされている部分で、実際に法律案並びにその背景の解釈あるいはその見解というものに食い違いがある、そごを来しているという部分がかなりあります。これは非常に大きな問題であるというふうに考えます。各大臣が好きに答弁していいわけがないという点は御承知のとおりかと思います。

 具体的に、まず、中山大臣と小泉総理の部分について御指摘を申し上げたいと思いますけれども、三月十一日の衆議院文部科学委員会で、中山大臣はこうおっしゃっております。「私は私なりに何とか堅持したい。」これは負担金をということかと理解しております。それを受けて小泉総理は、義務教育の重要性と地方の裁量権の拡大という点は意見の隔たりを認めるとおっしゃっています。ただ、そうは言いながら小泉総理が、三月三日の参議院予算委員会ではこうもおっしゃっておられます。「中山大臣の主張が通らなくて、意向に反して決定したもんですから、そこは内閣の一大臣として内閣の方針に従ってほしいと、まあこらえるところはこらえてくれ、我慢してくれという気持ちで言ったわけであります。」というふうになっています。

 この発言を踏まえて、実際、総理のリーダーシップが今回の法律案取りまとめで当然働いているんですね。リーダーシップを発揮されているんですね。この点、いかがですか。

中山国務大臣 閣内においては本当にいろいろ議論いたしましたが、最終的には総理の御意向に沿った形になっていると思います。

城井委員 とすると、今回の中山大臣の御説明の部分の中で、実際に閣内不一致と申しますか、意見の食い違いを来している部分があるんではないかと思います。

 というのは、これまでの小泉総理の部分と照らしますと、これまで中山大臣が我々に対して主張をされている内容、例えば、不退転の決意で臨みますとか、あるいは、私なりに堅持したいですとか、そういった閣内の中で中山大臣御自身が主張した内容については理解できるわけですけれども、国民への説明として必要なのは、「こう主張しました。」という、そういう内容ではなくて、むしろ、主張した後に政府として一致して決定した統一見解、こちらの方が必要だし大事なのではないかと考えるわけであります。

 これまでも、大臣の思いと、そしてかたい御決意というものは十二分にお伺いしておりまして、我々も理解をしているつもりではおります。ここでは、文部科学大臣として、これが政府の一致した見解だというものを改めてもう一度示してください。閣内不一致でやめさせられた大臣は過去にもたくさんおられますので、この点は非常に大事だと思います。この点を踏まえて、大臣、もう一回お願いします。

中山国務大臣 いろいろな議論がありまして、地方側の案をそのままであれば八千五百億円削減、それは二年間で削減するとすると、十七年度は四千二百五十億円削減ということになったんだろうと思うんですけれども、私が主張いたしました、要するに、財源の中で議論してほしくない、中教審の議論も踏まえてやってくれ、こういうことになりまして、暫定的に四千二百五十億円計上する、そして、この四千二百五十億円も含めて八千五百億円、そして義務教育全般について中央教育審議会で議論していただいて、秋までに結論を出す、こういうことになったわけでございます。

 ですから、私としては、いろいろ主張し議論はいたしましたが、最終的には、四千二百五十億円を十七年度に暫定的に計上するということについては納得したわけでございます。

城井委員 今のお答えで覆い切れない部分で、これまでの大臣答弁における具体的な意見の対立があるというふうに、私は、これまでの答弁すべてチェックをさせていただく中で感じています。

 そのほかの部分についても、具体的に御指摘を申し上げながら順次お伺いしていきたいと思います。特に、先ほどの中山大臣と総理の部分もそうなんですけれども、もう一つ、どうしても決定的な対立があるというふうに思いますのは、中山大臣と麻生太郎総務大臣の国会答弁、これが正反対になったままの部分があると思うわけであります。以下、具体的に御指摘を申し上げます。

 具体的には、先ほども少し触れられておりましたけれども、この義務教育費国庫負担金を一般財源化した場合、今後のいわゆる見通しも含めた部分ですね、一般財源化した場合の教育水準に地域格差が生じるかという点について、決定的に違っていると思っています。

 まず、中山大臣が、三月一日の衆議院文部科学委員会でこのようにおっしゃられました。既に一般財源化された図書購入費や教材費が大幅に下がっており、懸念はぬぐい切れない、これは教職員給与に使われるかということだと理解をしますが、懸念はぬぐい切れない、必要な財源が確保されるか大変心配だというふうにおっしゃっております。これはつまり、言いかえますと、地域格差への懸念があるということ、そして、財源確保がされない可能性というものを示していると私は理解をしております。

 それに対して、麻生大臣、これは三月八日の衆議院総務委員会において答弁をされておりますが、学校図書整備費と違い、教職員の場合は標準法で学級編制や教員の数が決められている、教育問題は選挙でも一番の関心事、これは道路や川などの事業ということだと思いますが、道路や川に使ったら次は落選だとおっしゃっています。

 つまり、標準法の存在によって地域格差は生じないんだ、しかも、選挙という点に触れられておりますように、政治主導で財源は確保されるというふうに、この点、御説明をされておると理解いたしますけれども、この格差への懸念についての認識が全く正反対だという点、そして、財源確保の部分についてもかなりの食い違いがあるというこの二点に非常に問題があると思いますけれども、この点について大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 私の見解についてはもう既に承知していただいていると思うんですけれども、麻生大臣が、標準法があるから大丈夫なんだ、こう言われましたけれども、私どもの考えとしては、標準法プラスそれを裏打ちする予算措置、これが両々相まって義務教育というのがスムーズにいっているんだ、私はこういうふうに認識しております。

 それから、教育に力を入れない知事は落選するんだと言われましたが、この辺については私と見解を異にするところでございまして、中には福祉に力を入れているから当選する方もいるでしょうし、なかなか教育というものは目立ちませんから、地方行政においては、教育のことを主張して知事選挙を戦う、そういう方もいらっしゃると思いますし、そうじゃない方もいらっしゃるんだろう、こう思うわけでございます。

 それと、教育費というのは、そういう意味でじわじわと減っていったりすると、なかなかその痛みがわからないということもあるわけでございますし、何より、知事を含め四年間という任期があるわけですね。ですから、私に言わせますと、四年間あるいは二期、三期、八年、十二年、教育に力を入れていないから落選する、これはなかなか数字が直接には結びつかない。そうしますと、少なくともその期間、四年なり八年間、極端に言えば、ほっぽり出された子供たちの将来はどうなるんだ、だれが責任持つんだということにもなるわけでございまして、選挙だけでこの義務教育費国庫負担制度を論ずるわけにはいかないんじゃないかな、私はそのように考えております。

城井委員 そうすると、私は、本日お伺いしたいのは政府の統一見解ということでございますけれども、先ほどの麻生大臣がおっしゃっている部分について、標準法については、中山大臣がおっしゃっている、両輪であるので含まれるんだという考え方であるということと、それから、政治主導の部分に必ずしも依拠することはできないというふうに今の御答弁を理解させていただくと、中山大臣がおっしゃっている部分が政府の統一見解ということでよろしいんでしょうか。

中山国務大臣 その政府・与党の合意文書の中には、標準法の話とか選挙の話は出てきていないと思うんですね。専ら、義務教育制度は維持する中で国の責任は堅持する、そして、そういったもとで地方案を生かす形で、かつ、教育全般について教育審議会で議論していただく、この合意があるわけですから、私は、そういう意味で、予算委員会とかいろいろな議論を聞いておりますが、この政府・与党の合意の範囲内で話はしておられるなということは感じております。

城井委員 大臣、今の御発言はその言葉でよろしいのかともう一回確認させていただきますが、大臣、標準法とあるいは選挙の話というのは政府・与党合意には書かれていないというふうにおっしゃいました。ただ、麻生大臣は総務委員会において、今回の三位一体関連の法案の審議の中で、正式の答弁でおっしゃっていることです。これが合意の範囲内でないとすると、これは非常に大きな問題ではないかというふうに思いますけれども、この点についてもう一度お伺いします。

中山国務大臣 麻生大臣が総務委員会でどういう発言をされているかわかりませんが、少なくとも、これまで麻生大臣が発言されている、答弁されている言葉を聞いておりますと、政府・与党の合意文を逸脱しているものはないな、そういうふうに感じているところです。

城井委員 大臣、私も、そうおっしゃられると困るので、とても丁寧に引用をさせていただいて、今質問を申し上げているわけです。

 もう一回読みます。三月八日の衆議院総務委員会です。麻生大臣がこうおっしゃっております。学校図書整備費と違い、教職員の場合は標準法で学級編制や教員の数が決められている、教育問題は選挙でも一番の関心事、道路や川に使ったら次は落選だ、これは総務委員会での正式の麻生大臣の答弁であります。それをそのまま引用させていただいております。これが政府・与党合意の範囲外の答弁という理解でよろしいんですね。

中山国務大臣 範囲内外じゃなくて、それとは違う見地から発言されているんじゃないかというふうに感じます。

城井委員 そうすると、この麻生大臣の答弁は、今回の法案説明の統一見解とは違うということでよろしいんですね。

中山国務大臣 いや、あくまでこの政府・与党間の合意の中で答弁されていることだと私は思っています。

城井委員 大臣、先ほど大臣は、この麻生大臣が答弁をされている内容の二つの大きな部分、標準法についてと選挙については合意の範囲外だという御答弁をされました。今の大臣のお答えでは、その部分と食い違いが出てきます。もう一回お願いします。

中山国務大臣 範囲外というか、その合意とは違う議論ではないか、別の議論ではないか、このように考えております。

城井委員 そうすると、大臣が今おっしゃったように、この麻生大臣の総務委員会における答弁は、いわゆる法案の部分の政府の見解を説明したものではなくて、個人的な意見を勝手に言ったものだという理解でよろしいんですね。

中山国務大臣 どういう発言をしておられるかわかりませんが、総務大臣は、総務大臣のお考えを述べていらっしゃるんじゃないかと思います。

城井委員 大臣、どういう発言をされているかわからないというのは、私は二度も引用して御紹介を申し上げているので、それはちょっとひどいのではないかと思います。

 ただ、先ほど大臣から、この麻生大臣の発言が、いわゆる個人的な一つの意見として言ったという趣旨の、そういうことだったというふうに今大臣は御説明をされたと受け取りたいと思いますけれども、もう一つ、別の大臣も、この意見の食い違いというところでは例外ではないと思っています。その大臣というのは財務大臣であります。

 三月二日の衆議院予算委員会において、谷垣財務大臣がこうおっしゃっておられます。まだ、率直に言って、例えば麻生大臣と私の間の意見もまとまっているわけではないんですがと言っています。つまり、素直に読むと、財務大臣と総務大臣の意見が、法律案とそれに関連する予算を審議する場で一致していないということを財務大臣が公の場で認めているわけですが、この点、大臣、政府の一員として御見解をお聞きしたいんですが。

中山国務大臣 細かなところではみんなが全部一致するというわけにはいかないので、少なくとも法案を提出する段階で、政府として出しているわけですから、その法案の範囲内では私は意見が一致しているんだろうと思うんです。これは、私と麻生大臣との間でも同じでございまして、細かなところとか、こういう思いを持っているんだけれどもとか、そういう思いとか、そういったものはそれぞれ違っているのかなと思います。

城井委員 法案の部分だけで一致をするということですけれども、その法案が出されるときに、その背景としてこれまでの流れがあり、そして、今回暫定措置ということですから、当然、将来像を含めての部分も一体として考えるべきではないかと思いますけれども、今回の法律案の部分だけで政府の見解が一致していればいいというお考えですか。

中山国務大臣 この法案をまとめる前といいますか、合意に至るまでは、いろいろな意見の食い違いがあったわけでございまして、それをああいう合意という形でまとめたわけですね。そのことについてはまとまっているというか、意見は一致しているわけでございまして、これから先のことについては、まさに暫定ということもあります、今何度も御指摘になっていますけれども、中教審で議論していただくということになっているわけですから、これから先のことはまたこれから先のことでございまして、少なくともこの法案については、考え方は一緒である、このように理解していただきたいと思います。

城井委員 中教審の答申に丸投げをしてしまって、食い違いをそのままで置くということで、今回の法律案に対する責任が果たせているのか、私は甚だ疑問であります。

 実際、先ほど御指摘申し上げましたように、総理大臣、文部科学大臣、そして総務大臣、財務大臣と、それぞれが好き放題にお話しになっているだけではなく、政府参考人による説明も対立をしたままで流れていっているわけであります。

 実際に、総務省の自治財政局長がこんなふうにおっしゃられております。「一般財源化されることによりまして教職員の配置の地域間格差あるいは教育水準の低下というような事態を我々は想定できないというふうに考えておりますし、むしろ、補助金事務から解放されまして、より創意工夫のある形での教育ということが地方ごとにできるのではないかというふうに考えておるところでございます。」これは二月二十三日の衆議院文部科学委員会においてですけれども、その一方で、文部科学省の初等中等教育局長、銭谷局長でありますが、このようにおっしゃっておられます。「現在、各都道府県が国から負担金として受けている額に比べますと、四十道府県で財源不足ということに陥るおそれがあるわけでございます。」というふうに言っております。先ほど申し上げましたように、この点だけでも大きな食い違いがあるという点、政府参考人の御説明にしても、そのまま残っているということでございます。

 そういった食い違いがあって、これはなぜ問題かということなんですけれども、ここでもう少しだけ具体的に申し上げたいと思いますが、先ほど中山大臣から、両々相まって、つまり財源の保障と、そして水準の確保のための基準づくりというところ、この二つが両々相まってということがとおっしゃっておられました。

 ただ、その二つの関連性について、政府・与党の一員であり、公式の答弁に立たれております今井総務副大臣、これはたしか池坊委員の質問のとき、三月九日の衆議院文部科学委員会での御答弁であるというふうに記憶しておりますが、こうおっしゃられておりました。「教育水準と財源の種類、この種類ということは国費でやるのかあるいは地方費かということとは直接的なかかわりがない」。また別の項目で、こうおっしゃられております。「結局財源が国であれ地方であれ、学力そのものにイコールでリンクしていない」とおっしゃられています。この財源保障と教育水準確保は関係ないというのを総務副大臣すら正式の答弁でおっしゃっておりますけれども、この点一体どういう、何が政府としての統一の見解なのかという点、余りにもかけ離れていると思うんです。両々相まってという表現と今の部分と余りにもかけ離れていると思うんですが、大臣から、政府としての統一した見解の部分についてお聞かせください。

中山国務大臣 まず前段の丸投げではないか、私は丸投げでよかったと思っているんですよ。丸投げというと何か悪い言葉みたいですけれども、中教審に、何か限定つきではなくて、とにかく全部中教審ですべて議論してくれと言われたんですから、この丸投げほどすばらしい丸投げはないな、いい丸投げだったな、こう思っております。

 それから、政府参考人もいろいろなことを発言していると思いますけれども、私は、それもそれぞれの省の立場からいえばそうだろうなと。今井副大臣の話も、私も聞きましたけれども、国庫負担制度と学力の問題、それが相関するものじゃない、それはそうだと思うんですね。

 だから、学力ということではなくて、私が言いたかったのは、やはり国の責任ということ、しかし、その学力はそれぞれですから、まさにそれぞれの地方が責任を持ってやっているわけでございますし、これは家庭とかいろいろな責任もあるわけでございます。

 私は政府委員のいろいろな答弁を聞いておりましたけれども、それぞれの立場からいい議論をしておられるなと。まさに私は、中教審にも、幅広い立場から、タブーを設けることなく議論してほしい、こういうふうにお願いしているわけですけれども、私ども政府内でも自由濶達な意見を闘わせていきたい、それまでの間にいろいろな意見があるのは、立場の相違があるのは当たり前であろう、こう考えております。

城井委員 大臣、丸投げというのは悪いように聞こえるがということですが、今回の部分はあくまでその答申を尊重するという非常に弱い表現になっておりますから、その扱いがまだはっきりと決まっていない状況のところに丸投げしてしまうという危険性を私は申し上げているということであります。

 それで、今大臣おっしゃられたもう一つの部分ですけれども、私が今井総務副大臣の答弁から引用申し上げました「財源が国であれ地方であれ、学力そのものにイコールでリンクしていない」というのはそのとおりだと今おっしゃったと思いますが、その点、確認をしたいんですが。

中山国務大臣 リンクしているわけじゃない、このように今井副大臣はおっしゃったと記憶していますが、そういう面もあるでしょう。しかし、長い目で見ますと、やはり私は、費用はどこで持つかということはいろいろ影響するのじゃないかと。そうでなくても財政力格差が出てきておりますし、これからますます地方財政厳しくなる、交付税のことも考えますと、ないそでは振れぬといいますか、そういったことも出てくれば、学力にリンクしてくるということも考えられるんじゃないかなと思っています。

城井委員 といたしますと、先ほど私がお聞きした部分にまだお答えいただいていないと思うんですが、財源保障と教育水準の確保の関係、これは関係あるのかないのかというところをもう一度はっきりとお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 今財源確保と学力教育水準とは、これはリンクすると思うからこそ、私どもは国の責任として義務教育費国庫負担制度を堅持すべきだ、こういうことを主張しておるわけでございます。

城井委員 ありがとうございます。そうすると、これは、今井総務副大臣はほかにもその考え方とかなり離れた御答弁をされているので、今後政府部内できちっと詰めていただかなければならないというふうに思います。

 具体的に一つだけ御紹介申し上げますと、三月十一日の衆議院文部科学委員会において、義務教育国庫負担制度の弊害は何かという長島委員の質問に対して、今井総務副大臣はこう答えておられます。これまで確かに役割を果たしてきたが、義務教育国庫負担制度によって地方の運用の幅を狭めている、国に要望を上げていかなければならないので、手続が煩雑になる、かなりの分量になる、一般財源ならばこういった部分の弊害がなくなる、活性化を図ることができる、財源が国費によるべきかどうかは時代の状況による、教育費の削減の議論ではなくて、財源保障のあり方の議論であるというふうにおっしゃっております。

 こういった部分を見ておりますと、今の大臣の御説明とは全く異なるというふうに思いますので、この点、きちっと政府部内で詰めていただきたいと思います。

 そのことをお願いした上で、さらにお聞きしたいんですけれども、今回の法案の提出の趣旨という中で、小泉総理からこういった説明がありました。三月十一日の衆議院文部科学委員会においてでございますが、地方にできるだけの裁量権を拡大したいというふうにおっしゃっておられました。法律案の審議の中の説明でおっしゃっておられます。

 この発言を見ながら私は思うんですが、今回、先ほど大臣と御確認をさせていただきましたように、教職員給与の一部移譲、つまり一部一般財源化、交付金化ということですけれども、この一部移譲で具体的にどれくらい、どんなふうに地方の裁量権が拡大するのかということであります。この教職員給与というものは、政治的にも行政的にも義務的経費に近いのではないかと思います。つまり、動かしがたいところを動かすということで、裁量権の拡大ということとはほど遠いと思うわけですけれども、この点、大臣、見解をお聞かせください。

中山国務大臣 今井副大臣も、弊害は何かというようなことで、いろいろな報告文書等がたくさんになる、それよりはもっと裁量権を拡大することになる、こんなことも言われた、このように思っているわけでございます。

 一般財源化されたということでは、これは裁量権拡大ということになると思うんですけれども、まさに御指摘のように、これは学校の先生の給料に使うということでございますから、ほかのところには使えないわけですね。そういう意味では、裁量権といっても、今文部科学省が進めております総額裁量制と似たようなものじゃないかなと私は思っております。

城井委員 大臣も苦しい御答弁だと思うんですが、裁量権拡大とはいいながらほかに使えないというのは、ちょっと矛盾をしておるというふうに思います。ただ、この矛盾が、肝心の権限を受ける側になります地方の方でもやはりその点について声が上がっております。

 具体的には、国の関与が残る補助金の交付金化という点について、次のような声があります。これは、具体的に梶原拓前全国知事会長がおっしゃっておられることでございますが、この補助率の引き下げというのは、地方が自由に使える金がふえるのではなく、金を出すのは国か地方かという機械的な金の移動にすぎない、使い道で地方の裁量範囲が広がっても、相変わらず財務省の査定を受けなければならず、本質は変わらないということをおっしゃっておりました。つまり、財務省の査定を前提とするならば、交付金で地方の裁量権は広がらないという考え方、この点について、大臣、いかがですか。

中山国務大臣 財務省がかかわっているということについて言えば、これはすべての予算がそうでございますから、一般財源化されようとされまいとやはり財務省がかかわっているということで、だから裁量権が拡大しないんだということではないと思っています。

城井委員 そういたしますと、先ほどの御答弁とあわせて確認をさせていただくならば、手続上の裁量権はとても大きく広がったが、実際に事実上使える裁量権の拡大部分というのはとても小さいという理解でよろしいですか。

中山国務大臣 ですから、この義務教育費国庫負担制度というものについて、この負担をふやしてくれとかなんとかいうことで文部科学省に陳情というのは上がってこないんですよね。これが国土交通省とか農林省なんかの補助金と違うところでございまして、学校の先生のお給料としか使えない、極めて硬直的といいますか、でございますから、地方団体側の趣旨はどこにあったのかなということも思うわけでございますが、暫定的にせよ、今回一般財源化ということになりましたけれども、それが地方の裁量権といいますか、ほかのものに使えるという意味では、これは全く裁量権は広がっていないと思っております。

城井委員 今大臣がおっしゃられたように、今回の部分は、あくまで税源移譲特例交付金ということで、一般財源化であります。使い道については、文部科学省からの御説明の紙には、基本的に教職員給与分に配分というような表現だったと思いますけれども、これは何か根拠の法律があってということではないと理解をしております。とすると、いわゆる一般財源化された部分について縛りをかけることが可能なのかどうかというところは改めて確認をせねばならないと思っています。

 先日、銭谷局長の答弁で、平成十七年度予算、今ちょうど組まれているものですね、この予算における税源移譲特例交付金を前提にした各都道府県の予算の措置状況について説明があったのは、大臣、御記憶でしょうか。あの予算状況の把握について、銭谷局長はこうおっしゃっておりました。簡単に申しますと、三月十一日の衆議院文部科学委員会において、今回の措置は暫定で、全体の一六・七%、来年度分については何とか措置できている状況というような御説明があったということでございます。

 しかし、今回のこの税源移譲特例交付金は一般財源であります。これまでの国庫負担の対象となっていた教職員給与というのは、どれぐらい確認できているのか、減少が確認できたところがあるのか、都道府県でいうと幾つかという点、そういった詳しいところまで大臣、把握されているんでしょうか。この点、わかれば。

中山国務大臣 これは文部科学省としても大変重大な関心を持っているところでございまして、ちゃんと学校の教員の給与に計上されているかどうかということについては関心を持っていますので、それは事務方の方でチェックしていると聞いております。今のところといいますか、計上されているというふうに聞いておりますが、あとはそれがしっかりとそのように施行されるかどうかということも見ていかなければいかぬな、このように思っております。

城井委員 そういたしますと、今回の減額分に関しては教職員給与費を基本に配分することとされているということですけれども、一般財源とされるこの交付金の使い道について、文部科学省として縛りをかけることはできない、つまり見守るしかないということでよろしいんですね。

中山国務大臣 そのとおりでございます。

城井委員 時間が参りましたので終わりますけれども、最後に一言申し上げたいと思います。

 中山大臣も、これまでも御答弁の中で、一般財源化によって教育以外の目的に使われることについておそれなしとはしないというふうにおっしゃっておられました。実際にそういう可能性は出てくるだろうと思います。

 ただ、今のところ防ぐ手だてはないということでございますので、例えば、我が党でも検討しております、先ほど川内筆頭からもございました義務教育財源確保法という法律で規定をする。その内容がどういう形がいいかというのは、我々も今検討を進めているところでございますけれども、いわゆる見守るという点だけではなく、実際に基準の策定という大きな役割を担っている文部科学省として、できる部分というのを法律で模索するという点については、今後ぜひ御検討いただくということを考えていただきたいと思います。

中山国務大臣 もちろん、今でも標準法とか人確法というのがありますから、そういった観点からのチェックといいますか、それはやっていかなければいかぬと思っていますが、今、民主党の方でそういう法律をつくっていらっしゃるということでございます。定かには存じませんが、そういう法律をつくるぐらいなら、義務教育費国庫負担制度をきちっと守った方がいいんじゃないかなと私は思っております。

城井委員 今申し上げましたのはいわゆる財源確保に関する法律だということを最後につけ加えさせていただきまして、これで質問を終わります。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 肥田美代子さん。

肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。よろしくお願いいたします。

 本委員会における参考人質疑をめぐりまして遺憾な状況が起きましたことについて、同僚議員からるる申し上げてまいりました。私は、これを聞いておりまして、実は十年ちょっと前でございますけれども、子どもの権利条約が国会で批准されたとき、あのときの議論を思い出しておりました。あのとき、チャイルドという言葉を児童と訳すか、それとも子供と訳すか、議論が巻き起こったわけですね。そのときに、子供たちが国会にやってきまして、僕たちは児童じゃない、子供と呼んでほしい、そういう陳情をいたしました。私も、やはり子供という言葉の方がふくよかさがあるし、いいんじゃないかというふうに思っておりました。

 そのときに委員会審議がありまして、私は、参考人に子供を呼んで、当事者としての意見を聞いてほしいということを申し上げました。そういたしますと、与党の方から反対が起きまして、実はそういう子供を呼んだ先例がない、そういうことで断られたわけでございます。私は新米議員でございましたから、それ以上強引に言い募ることもできませんでした。しかし、今でも、あのときのことを思い出しますと、やはりもっと強く主張しておくべきだったと、つくづく思っているわけでございます。

 ですから、法案審議の際には、先例とか先入観にこだわらず当事者や関係者の話を聞くということはやはり間接民主主義の根幹だと思っておりますので、このことを申し上げて、私なりの強い抗議にかえさせていただきたいと思います。

 それでは、義務教育の国庫負担制度についてお尋ねしますが、この間、多くの方々が、この国庫負担制度をお話しになるときに、学校図書館の図書整備費について例示を挙げてお話をされました。きょうは、このことについて議論をさせていただきたいと思います。

 まず、子供の読書傾向についてお話をさせていただきたいんですが、一九九五年、一カ月に一冊も本を読まない子供たちは小学校で一五%、中学校で四六%、高校で六〇%。それが、二〇〇三年になりますと、小学校で七・七%、中学校で一八・八%、高校で四二・六%。好転の兆しが見えてきたわけでございます。

 この十年間、学校図書館法の改正がございました。そして、子ども読書年の衆参の決議もございました。そして、子どもの読書活動推進法の制定もございました。そういうこともやはり後押しとなって、子供たちの読書傾向がよくなってきたと私は思っております。

 今申し上げた数字の中で、大臣もおわかりのように、小学校時代にはまあまあよく本を読んでいたけれども、中学校、高校になるとどんどん読まなくなる傾向が高くなってくるんですね。ですから、幼児期に絵本の読み聞かせなんかをして、親たちが一生懸命読書の習慣をつけていくんですけれども、その習慣が、小学校、中学校と進むにつれまして、だんだん息切れしてくるんですね。ですから、その年齢に応じた読書指導というのがとても大切だと思うわけでございます。

 読書の習慣というのは自然に身につくものではないと私は思っております。やはり、適切な指導がどうしても必要だと思います。これまでの学校教育は、本を読みたいけれども、どんな本を読んだらいいのかわからないという子供のためにこたえ切れていないと私は思っております。また、本を読むことをプラスアルファのように考えて、本は単に趣味の世界に棚上げしていくような雰囲気もございました。本を読まなければならないのだという確固たるものが、家庭にも学校にも不足していたんだと思います。

 読解力の低下は、その負の遺産だと思っております。これからは、読書力の養成を学校教育の最大の課題として考えることが大切だと思っております。私は、読解力を再生するには、カリキュラムとして読書力の養成をきちんと位置づけ、すべての教科学習が読書力の養成につながるように構成する必要があると思いますが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 今、肥田委員のお話を聞きながら、自分の小さいころのことを考えておったんですけれども、やはり、小さいころに読書の習慣をつけるということは本当に大事なことだなと私は感じております。

 私どもの小さいころは活字というのが余りなくて、本もありませんでしたので、小学校のころは新聞を本当に隅から隅まで読んでいましたけれども、小学校の五年、六年のときの担任の先生が読書の大事さを強調されまして、クラスに学級文庫というのをつくられました。ああ、そうか、本を読まなければならぬのか、こういうようなことを思ったんですけれども、その先生が、大して図書もなかったんですけれども、図書館の本は全部読むぐらいの気持ちでやれ、こういうようなことで子供たちにハッパをかけられたのを思い出すわけでございます。

 今問題になっております読解力の低下ということが言われています。これについては、やはり本を読む習慣というのがないからじゃないかなと思うわけでございまして、今、小学校、中学校、高校と、だんだんと本を読まなくなる傾向、これは高学年になるに従って、いろいろと関心を引くといいますか、興味がだんだんと分散してきますし、いろいろと楽しいことがいっぱいありますから、どうしてもそっちの方に引っ張られてしまうということもあるんでしょうけれども、小さいころにきちっと本を読むという習慣が身についていれば、高学年になっても、余暇を見つけては、あるいは一生懸命本を読む、そういったことは守っていけるんじゃないかな、私はこう思っていまして、読書の習慣というのはとても大事なことだ、このように考えております。

肥田委員 先ほど申し上げましたように、子供たちの読書活動は好転の兆しを確かに見せておりますが、それを支える学校図書館を充実させないと、子供たちの読書欲に冷水を浴びせることになると私は思っております。

 一番の問題は、依然として図書館に本が不足していることでございます。大臣も、中央公論の四月号で、図書室の蔵書が少ないのが気になったと述べておられますが、恐らくスクールミーティングに行かれての御発言だと思います。

 ちょっと、これを見ていただきたいんですね。これは「世界の国ぐに」という本でございます。ある小学校から借りてきました。この小学校というのは山の分校でも何でもありませんで、三十万都市の中ぐらいの規模の小学校です。子供たちが手にとりますから汚れてくるのは当たり前なんです。

 ただ、問題は内容なんですね。もう既に世界の歴史から消えたソ連について「世界一ひろい国」と説明されておりまして、「社会主義六十年の歴史 ソビエト連邦」というタイトルがついております。社会主義の実験は失敗に終わって、冷戦後は独立国家が相次ぎまして、国名まで変わってしまいましたけれども、子供たちが学校図書館で手にする「世界の国ぐに」には、社会主義社会が、その生誕の歴史を含めて、生き生きと描かれているわけでございます。この本が廃棄処分もされずに、とうに役割を終えました古い参考書が無批判に学校図書館に残っているんです。子供に読まれているわけですね。

 それから、もう一つお見せしたいと思うんですが、この本は平成六年に購入されております。比較的新しいといえば新しいんですが、しかしもうぼろぼろです、子供たちに恐らく人気のある本だと思うんですけれども。セロテープで張って、それでもばらばらになって困るという本でございますが、こういう本が実は珍しくなくて、私が行きました学校図書館にはずらりと並んでおります。別に、悪いのをあえて借りてきたわけじゃないんですよ。

 私はこういう状況が学校図書館の今の厳然たる姿だと思うんですけれども、大臣、今どのように感じておられますでしょうか。

中山国務大臣 私も同じ問題意識を持ちまして、スクールミーティングに出かけたときには必ず図書館に足を運ぶようにしているんですけれども、本当に図書館は学校によって区々ですね。立派に新しい本がずらっと並んでいるところもあれば、本当に蔵書が少ない、しかも、手にとってみましたけれども、本当に古い、何十年前の本だろうかというような本が並んでいるところもあるわけでございまして、これではいけないなと。とても子供たちが読んだ形跡もないし、また、読む意欲も起こらないような本がずらっと並んでいる学校もあるということにつきまして、私は極めて憂慮しているところでございます。

肥田委員 本を読む前に手を洗いなさいというよりも、本を読んだ後に手を洗いなさいと言っている先生もいらっしゃるようでございますけれども、どうしてこんな古い本が廃棄されないのかと聞きましたら、そんなことをしたら、もちろん、本棚が空っぽになるということもある。そしてもう一つは、この二、三年、教育委員会が、廃棄してはならず、そういう通達をしているそうです。恐らくこれは、図書の冊数を調べられ始めた結果だと思いますが。

 昨年五月の本委員会で、私は学校図書館図書の廃棄図書についてお尋ねをいたしました。そのときの答弁は、どういう考え方でどのような図書を廃棄しているのか、調査項目も精査して、できるだけ早く調査してみたいということでございましたが、その後どうなっておりますか。

銭谷政府参考人 学校図書館の図書の廃棄の状況についての調査の件でございますけれども、実は、平成十六年度から学校図書館図書の廃棄について、文部科学省において調査を実施いたしました。現在、その具体的な数値について集計中でございます。

 それで、例えば調査の内容としては、各学校における廃棄基準の設定状況、それから図書の廃棄の基準内容等について調査を行っているところでございます。調査結果につきましては、近く集計できる見込みでございますので、まとまり次第、公表したいというふうに考えております。

肥田委員 十二年前の平成五年を初年度といたしまして、五カ年計画で五百億円、単年度で八十億円の学校図書館図書整備費が交付税措置をされました。これは、公立の義務教育諸学校における学校図書館の蔵書数を一・五倍程度の冊数までふやそうというものでございました。画期的な措置でありまして、長い間顧みられなかった学校図書館にようやく政府が本格的な施策を打ち出してくださったと、私はひそかに文部省に拍手を送ったことでございます。

 この五カ年計画を発想してくださったのが当時の銭谷課長、現在の銭谷局長でございます。省内ではどうやらミスター学校図書館と呼ばれておられたそうでございますけれども、その銭谷さんの発想、これは学校図書館図書を一・五倍にしようということでございましたけれども、現在既に二期目の学校図書館図書五カ年計画、これが執行途中でございます。

 そこでお尋ねしたいと思いますけれども、およそ毎年百億円程度交付税措置をされてまいりまして、十二年たちますから千二百億円、こういうお金が予算化されているわけでございますが、現在の計画が終了いたします平成十八年度までにこの蔵書一・五倍計画は実現すると思われますか。見通しをお話しください。

銭谷政府参考人 学校図書館の整備につきましては、今先生からお話がございましたように、平成十四年度から学校図書館図書整備五カ年計画を構築いたしまして、毎年約百三十億円、総額約六百五十億円の地方交付税措置を講じているところでございます。計画期間が平成十四年度から十八年度までということになっております。

 結果でございますけれども、文部科学省の調査によりますと、目標としております学校図書館図書標準を達成している学校の割合は、平成十五年三月の時点でございますけれども、小学校で三四・八%、中学校で二九・〇%でございます。まだ図書標準まで達成している学校の割合が依然として低いという状況がございます。

 したがって、平成十八年度までに学校図書館図書標準が各学校において達成できるかどうかについては、現時点では申し上げにくい状況でございますけれども、今後、各地方公共団体におきまして、より一層、学校図書館図書の充実のための努力といいましょうか、取り組みが求められると考えております。

肥田委員 はっきりおっしゃいませんけれども、恐らく絶望的な予測だと私は思います。

 一つお尋ねしたいんですが、義務教育諸学校における平成十六年度の学校図書館図書の新規図書購入冊数、それから廃棄図書冊数を教えてください。

銭谷政府参考人 今まとまったデータとして平成十四年度間の冊数でございますが、その点お許しをいただきたいと存じますけれども、平成十四年度間の新規購入冊数は、小学校で約六百五十三万冊、中学校で三百六十五万冊でございます。

 それから、これに加えて寄贈冊数というのがございまして、いろいろ御寄附をいただいた冊数でございますけれども、これが、小学校で約百三十万冊、中学校で約四十七万冊でございます。

 それから一方、廃棄をした冊数でございますけれども、これが、小学校で約五百九十六万冊、中学校で二百四十四万冊でございます。

 したがいまして、新規購入冊数と寄贈冊数の合計から廃棄冊数を引いた増加冊数というものを見てみますと、小学校で百八十七万冊、中学校で約百六十八万冊という状況でございます。

肥田委員 この数を聞きましても、いかに一・五倍になるまでには遠い遠い道のりであるかということがわかろうかと思います。

 それで、学校図書館図書標準が達成されないなぞの一つ、これをあえてなぞと言わせてもらいますが、図書の廃棄処分とも関連しておりますね。それから、昨年三月の本委員会で、学校図書館五カ年計画の中に、廃棄される図書はきちんと見込まれておりますかとお尋ねしましたが、その際の大臣の答弁は、廃棄処分を見込んだ数字なのかどうか、一度きちんと検討し直します、そういう内容でございました。

 廃棄処分を見込んでいたのかどうかは、学校図書標準を達成する上でとても重要なポイントだと思うんですね。ですから、検討し直すと約束されてからちょうど一年たちますけれども、五カ年計画は廃棄図書を見込んでおりましたでしょうか。御答弁お願いします。

銭谷政府参考人 ちょっと昔の話になるのでございますけれども、平成五年ごろ、私が担当課長のときに学校図書館図書標準をつくりまして、学校図書館の図書の整備のための交付税措置を初めて措置いたしました。

 そのときの金額は、初年度たしか八十億円だったと思いますけれども、それからふやして五年間で五百億という計画だったと思いますけれども、そのときの考え方は、図書標準に達するための増加冊数分を整備するということでございました。したがいまして、いわゆる現にある図書を廃棄して新しいものに買いかえるというその冊数はカウントしていなかったというふうに記憶をいたしております。

 その結果、ちょっと長くなって恐縮ですけれども、どういうことになったかというと、例えば最近の例で申し上げましても、百三十億円の交付税措置に対して、図書購入費自体はかなりそれと同額ないしは上回る額が措置はされているわけでございますけれども、なかなか冊数がふえないという状況がございます。

 それは、既に平成の五年度ころから、更新分の図書整備については、いわゆる地方交付税措置の中で、消耗品とか備品購入費などとともに、公立学校の維持運営に要する経費として所要の額が図書の更新分についても基準財政需要額に算入されていたわけでございます。現実に、例えば私が担当しておりました平成五年ごろでも、図書の購入費としては百億円前後の購入費があったわけでございます。

 ですから、従来からあります百億円前後の図書購入費にプラスして、現在、図書標準に達するまでの増加冊数分としての図書整備計画に基づく地方交付税措置、百三十億ですね、これがプラスされないと、なかなか図書標準に達するまでの増加冊数に至らないということになろうかと思っております。

肥田委員 今、銭谷局長が答えてくださったのは、要するに、あのときの思いとしては、更新分についてはそれまでの教材費を充て、そして新しい五カ年計画の図書費については新規購入分ということで、実は銭谷さんの名前で通知されているんですね。公立義務教育諸学校の図書購入に要する経費の地方財源措置についてというのがございまして、内容は、学校図書館図書標準に掲げる水準まで増加冊数分の図書購入に要する費用を一般財源で措置する、平成五年度から平成九年度までの五年間に増加冊数分の図書の購入に要する経費として総額で五百億円見込んでいるということでした。実にわかりやすい内容だと思うんですね。

 増加冊数分図書の購入に要する経費という明確な位置づけがあったわけですね、この五カ年計画の最初の思いというか、もともとの思いは。ところが、廃棄図書の更新に必要な経費、これが、先ほど申しました教材用の図書費で補うわけですが、それがどうもごちゃごちゃになってしまったというか、ごまかされてしまったというか、予算化されずにどこかに消えてしまったんですよね。

 そこで、今銭谷さんがお答えくださいましたように、公立義務教育諸学校の図書購入に要する経費の地方財源措置の通知が、更新図書費用と増加冊数分の費用についてこういうふうな考え方であるということをいただきましたけれども、その考え方は今もって変わっておりませんよね。

銭谷政府参考人 先ほど申し上げましたように、更新分につきましては、学校の消耗品や備品購入費などとともに公立学校の維持運営に要する経費が全体として地方交付税で措置されているわけでございます。消耗品とか備品購入費などとともに、更新分については別途地方交付税で措置をされているわけでございますので、図書整備計画における地方交付税措置は、増加冊数分であるということでございます。

 そういうことで私ども整備を進めてまいったわけでございますけれども、だんだん時間がたつにつれて、どうも中心がいわば新たな地方交付税措置の方にどんどん移ってきているという感じがございますので、更新分も別途必要なんだよということを私どももう少し周知していかなければいけないというふうに思っております。

肥田委員 せっかくのミスター学校図書館の思いがどんどん薄まってしまってこういうありさまになっているということでございます。

 歴史的な経過をもう一回振り返ってみますと、教材用の図書及び備品費、これは義務教育費国庫負担法による教材費措置でありましたけれども、昭和六十年から一般財源化されたんですね。この交付税化されました教材用図書及び備品費は、予算項目として残されて、その後に新しい学校図書館図書の整備費、五カ年計画が始まるわけですが、平成四年、学校図書館図書整備五カ年計画が始まる前年度ですけれども、このとき、実は図書費は百十五億計上されていたんですね。計画が始まる前にです。これがもともとの学校図書館の図書費なんですね。これが基礎部分です。これとは別に、平成五年から毎年八十億円から百億円ぐらいの図書整備費が交付税措置されたわけですね。これが上乗せ部分です。ですから、もうさっきから繰り返しになっておりますけれども、蔵書一・五倍のもともとは、教材費及び備品と新五カ年計画の合体した交付税でなければいけない、こういうことになりますね。

 もう一回お聞きしますが、この理解でいいですね。

銭谷政府参考人 平成五年度当時の状況につきまして、今先生からお話があったとおりでございまして、平成四年度、市町村の図書購入費実績が百十五億円でございました。平成五年度、新たな図書購入費の地方交付税措置として八十億円を措置したわけでございますので、ある意味では、その二つを合わせた額が図書購入費になってくるということでございます。

 なお、平成五年度から上乗せ分の図書購入費を始めたわけでございますけれども、上乗せ分については、平成十年度ぐらいまでの間は大体五、六十億ぐらいの実績で推移してきたと記憶いたしております。

肥田委員 ですから、本当に驚くような話なんですけれども、この基礎部分の百十五億円に上乗せ部分の八十億円、平成五年から実行されますと、これは二百億円の予算がつくはずなんですね。ところが、結局、予算措置はこの年は百二十億円で終わっております。そして平成十四年、一番最近のデータですけれども、百三十億円の五カ年計画の措置がされておりますが、実際は、そこに百十五億を足しまして二百四十五億なければいけないのに、百六十億円ですね。当然あるべき五十億円から八十億円がどこかに消えてしまっているんですね。

 こういうことで本当にいいのかなと思うんですね。せっかく文部科学省が学校図書館の図書として頑張ってつけられたものについて、そういうふうにして何となく消えちゃっていて、いつまでたってもこういう古い本が学校図書館に並ぶ。これでは本当に困るわけです。今、思い切って学校図書館の図書、学校図書館の整備検討委員会のようなものをつくって、しっかりともう一回やり直されたらどうでしょうか。提案してみますが、どうですか。

銭谷政府参考人 現在の図書整備計画が十八年度まででございまして、十九年度以降どうするかという検討も必要でございます。

 それから、学校図書館につきましては、非常によくやっていただいている市町村、学校もございますし、残念ながら余り御関心のない学校もあるというのが実態でございます。それが、先ほど大臣の方からもお話し申し上げましたように、図書購入費について地域間格差、都道府県間の格差があるという実態にもなっているわけでございます。

 ですから、私ども、そういった時期的なこと、あるいは、現在の学校図書館が抱える課題といったようなものを踏まえながら、学校図書館の充実のための資料などをこれからつくっていきたいと思っておりますので、そういった中で、今後、学校図書館の問題を検討する調査会なりのあり方について少し研究をしていきたいというふうに思っております。

肥田委員 大臣、このやりとりをお聞きくださっておりまして、どういう感想を持たれますでしょうか。

中山国務大臣 文部科学省の思いがなかなか通じていなかったのかな、こう思うわけでございまして、もし当初のような形でずっとやってくれば、図書の購入といいますか、図書館も相当充実したものになっていたんだろうなと思うわけでございます。

 中でも、私、自分の目でも確かめてまいりましたが、これは都道府県によって全然違う。本当に一生懸命力を入れているところは力を入れているけれども、そうではないところはそうではない。物すごく格差が広がっているということが一番私は懸念しているところでございます。

肥田委員 確かに、格差がだんだん大きくなっていることは事実だと思います。

 それで、モデル校とまではいかないんだけれども、すばらしい学校についてはどんどん褒めていかれて、そして皆にその情報を公開して、啓発を行うようなことをしたらどうかと思うんですけれども、どうでしょうか。

銭谷政府参考人 先ほどもちょっと御説明いたしましたけれども、大変よく実践をしていただいている学校図書館が各地にあるわけでございます。私ども、そういったすぐれた事例を収集して、学校図書館の運営の実践事例集というものをつくっていきたいと思っております。

肥田委員 学校図書館は、もう既に本を読む場所ということではなくて、学校教育の一番真ん中に置いてしっかりとそれを活用していく、一番お宝の場所にあると私は思いますので、ぜひ予算措置も含めて頑張っていただきたいんです。銭谷さんもさっきから、平成十八年度で終わって、その後の五カ年計画ということについて話していただいたんですが、大臣、十九年からのまた五カ年計画についてしっかりとやっていくという言葉をいただきたいと思います。

中山国務大臣 まずは、実態が一体どうなっているかということを踏まえた上で、それをもとにして新しい、十九年度から始まりますけれども、それについてはしっかり取り組んでいきたい。

 何といっても、本を読むという習慣をつけさせるということが一番大事でございます。今まさに肥田委員がおっしゃいましたように、図書館が学校の真ん中にある、行っても、隅っこの方に置いてあるんですけれども、真ん中にあるような、そういった学校にしなければいけないなと思っております。

肥田委員 大臣が学校教育のど真ん中とおっしゃってくださって、私は心強い思いがいたしました。

 それでもう一つ、高校なんですね。高校の図書費がまたどんどん下がっていって、この数年、いっときの三分の一ぐらいに図書の数が減っているそうでございます。高校生が本を読まないというような先ほどデータがございましたけれども、高校の図書館の整備は喫緊の課題だと思うんです。大学は本を読むところですから、高校時代に読書のトレーニングがないと大学教育もおぼつかないと私は思うわけですね。

 ですから、何としても高校が大切だということで、学校図書館図書整備計画を高校も含めたものにしていただきたいと私は思うんですけれども、いかがでございましょうか。

銭谷政府参考人 現在の学校図書館図書整備計画は、平成五年当時、高等学校に比べて大変貧弱でございました義務教育諸学校の学校図書館について計画的に整備するということを目指して始めたものでございます。以後、進めてきているわけでございますけれども、なかなか図書標準の達成に小中学校が至らないということで、平成十四年度から新たにまた五カ年計画を策定して、義務教育段階での図書の整備充実を図るということで今やっているものでございます。

 したがって、十八年度までは義務における図書整備ということで進めてまいりたいと思いますけれども、先ほど大臣からもお話がございましたけれども、十八年度までの状況をよく踏まえて、その実態をよく把握した上で高等学校をどうするかということも考えていきたいと思っております。

 ただ、高等学校の蔵書冊数につきましては、実態を申し上げますと、平成十三年度末が八千百七十万冊だったわけでございますが、平成十四年度末で、若干ふえまして、八千三百二万冊と増加傾向にはございます。

 ただ、先ほど申し上げましたように、十八年度までの現在の計画終了後、その後の計画をどうするかという中で高等学校の問題も検討してまいりたいというふうに思っております。

肥田委員 多分見たところが若干違うと思います。この間、岐阜県の恵那にお邪魔しましたときに、高等学校の図書の本の数がうんと減っているということを陳情いただきました。それも申し上げておきたいと思います。

 それから、人も大切でございます。本ももちろん必要ですが、人の配置も必要でございます。

 司書教諭の配置についてお尋ねしたいと思いますが、司書教諭は全国小中学校への配置が進んでおりまして、ほとんどの学校に今配置をされることになりました。もちろん、専任でなくて充て職でございます。

 司書教諭の皆さんに聞きますと、大変忙しいと言うんですね。授業時間軽減をなされていない。時間軽減をしているというところが全国で一割でございます。あとは、司書教諭に任命された途端に大変な状況が起こるわけでございます。ですから、オーバーワークになってしまって本当につらい、頑張っているんだけれどもつらいんだよという話も聞きました。学校司書も、心ある校長さんは嘱託などで雇ってくださっておりますけれども、まだまだいわゆる学校司書さんも置いていないところが多いわけでございます。子供に手渡す本の不足だけでなくて、手渡すべき人もいないというところに今学校図書館の不幸があるように私は思います。

 大臣、子供はやはり読書のよきパートナーがいまして初めて読書力がつくものだと思っております。ですから、司書教諭の授業の時間軽減、それから、私は本来ならば絶対専任であるべきだと思いますけれども、まだそこに到達しないならば時間軽減を考えていただきたいし、学校司書にもやはりきちんとした配置すべしという指示もいただきたいと思うわけでございます。ですから、まさに人の問題もこれから大きなテーマになろうかと思いますが、大臣の見解を伺いたいと思います。

中山国務大臣 司書教諭につきましては、私も地元の教育委員長からもお願いされておりまして、読書活動を推進していくにはどうしても司書教諭が必要だ、何とかしてくださいという陳情も受けているわけでございます。

 それから、学校司書につきましても、これは設置管理者の方で考える話でございますが、文部科学省といたしましても、いい取り組みをしているところを紹介するとか、あるいは、その重要性にかんがみまして、もっともっと充実するようにまた今後とも指導していきたい。

 何といいましても、やはり子供たちが本を読むに当たりましても、どういう本を読んだらいいのか、どういうふうな方法で読んだらいいのかということを教えることも大事だと思うんです。ただ読めばいいというものじゃなくて、子供たちの興味、関心を引くような、あるいはその子供たちの程度に合わせて本を選択してあげられるような、そういった専門の先生方というのはどうしても必要だ、このように考えております。

肥田委員 文科省は、学校図書館が充実するまでの経過措置として、公共図書館から貸し出しサービスを受ける、そういうことも進めていらっしゃいますけれども、実は公共図書館の設置がおぼつかないわけです。五二・五%の設置率でございます。この充実が急がれるわけです。実は大臣のときに、公共事業として公共図書館未設置自治体を解消するというようなことを、基本方針を打ち出していただけたらなと思うわけでございます。これが一つ。

 もう一つ、きのう、国際子ども図書館の司書の方にお会いしました。そうしますと、全国の学校図書館にセットで貸し出しているんですね。例えば、韓国セットだとか中国セットだとかカナダ・セットだとか、その国の絵本とか本を何十冊かまとめて学校図書館に送ってくださっているそうです。その貸し出しが大変人気がありまして、九十ぐらいの貸し出しに二百五十ぐらいの申し込みがあるというんですね。ですから、いかに学校図書館が今飢えているかということをあらわしている数字かと私は思うんです。ですから、ぜひこのことについてもしっかりと見守っていただきたいのです。

 公共図書館の設置について、大臣、お願いいたします。

中山国務大臣 学校の図書館も大事でございますが、やはり地域の住民にとっての文化、教養の向上に非常に資するものでありますし、生涯学習という観点からも、地域の図書館というのはとても大事な役割を果たしている、私はそう思うわけでございます。

 文部科学省といたしましても、平成十三年七月十八日の告示で、公立図書館の設置及び運営の望ましい基準というのを定めまして、都道府県は、市町村立図書館の設置、運営に対する指導助言等を計画的に行うこと、市町村は、住民に対し適切な図書館サービスを行うことができるよう、公立図書館の設置に努めることを求めておるところでございます。

 なお、図書館の設置率につきましては、都道府県及び市においては九八%ということになっております。また、町村においては設置率は低いのですけれども、ここ最近、平成八年から十四年で見ますと、三二%から三九%に伸びているわけでございまして、この数字は町村合併等が進んでおりますからもっと高くなるのではないかなと思うわけでございます。

 文部科学省といたしましては、図書館の現状とか課題を把握、分析いたしまして、これからの図書館のあり方についての調査研究に着手しておるわけでございまして、今後、ビジネス支援あるいは医療、法律に関する情報の提供、相談機能とか新たな図書館像を事例とともに示しまして、市町村における図書館設置の意義について認識を促してまいりたいと思っております。

 また、これにつきましては、魂も入れなければいかぬわけでございますから、地区の方々が自分の蔵書を寄附するとか、そういった形でそれぞれの地区の図書館を充実するということで、これもやはり地区の方々の御協力を得ながらやっていくということになるのじゃないかな、このように考えております。

肥田委員 今回、読解力の低下が露見しまして社会問題にさえなっておりますけれども、私は、今それが見つかったことはある意味で不幸中の幸いかなと思っているわけでございます。今ならまだ間に合うという思いがいたします。ですから、先ほどからの大臣の御見解もございましたけれども、学校図書館を充実させること、そして公共図書館をしっかり設置するように進めていくこと、それをぜひお願いしたいと思います。

 そして、何回も申し上げますけれども、学校教育の真ん中に学校図書館があるということを大臣みずからおっしゃってくださったのですから、それを省内の皆さんに伝えていただき、そして教育委員会にも伝えていただいて、そして学校の校長さんにも伝えていただいて、学校の先生方にも伝えていただく、そこの一番末端までの啓発をぜひお願いしたいと思いますが、大臣、最後にお願いします。

中山国務大臣 本当に読書離れといいますか本離れが進んでいるということもわかりました。それから、学力も低下しつつあるということもわかりました。勉強しなくなっているということもわかりました。しかし、勉強しなくなっているけれども、学力は比較的上位にあるということで、まだ救いがある、今なら何とかなるんじゃないかということで、この教育改革を早く、スピードを上げてやっていかなければいかぬな、こう思っているわけでございます。

 何といっても本を読むこと、読解力を高めるということが一番大事だと思いますから、そういう意味では、図書館も学校の真ん中、地域の真ん中にあるようなそういう学校づくり、地域づくりというのを目指していかなければいかぬな、このように考えております。

肥田委員 ありがとうございました。

 終わります。

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。朝九時から始まりました質疑も最後の質疑者となりました。よろしくお願いいたします。

 きょうは、法案の中の就学援助費についてお聞きをいたします。

 経済的理由によって就学困難な児童生徒に学用品など就学援助費が出されているわけですね。これも憲法二十六条と教育基本法の掲げる義務教育無償の原則、教育機会均等を実現するためのものであるということを、私は前回の質問で確認させていただきました。これまで国は、要保護、準要保護児童生徒に対する就学援助を行う自治体に対して予算の範囲内で補助を行ってきました。

 そこで、まずお伺いします。予算措置をしてきた要保護、準要保護児童生徒の人数及び予算額をお示しください。

銭谷政府参考人 平成十五年度におきまして、生活保護法による教育扶助を受けた要保護者は約十二万人でございます。また、就学援助による準要保護者の数は約百十三万人でございます。それから、要保護者に対する国庫補助は約六億円でございます。それから、準要保護者に対する国庫補助は約百四十億円ということでございます。

石井(郁)委員 今回の改正によりまして、準要保護児童生徒に対する国からの補助がなくなるわけですよね。人数にしまして九割以上です。今お示しの百十三万人が補助対象から外れるということになるわけですね。自治体によっては、果たしてこれまでどおりの予算措置がなされるだろうか、極めて不安定になるのではないかと思われます。

 そこで伺いたいのですが、市町村がこれまで行ってきた準要保護児童生徒に対する就学援助を引き続き行わなければならないとする法的規定はございますか。

銭谷政府参考人 準要保護者に対する市町村が行う就学援助の法的な根拠についてのお尋ねでございますけれども、私ども、基本的には、学校教育法の第二十五条がそれに当たると考えております。学校教育法第二十五条におきましては、「経済的理由によつて、就学困難と認められる学齢児童の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない。」ということで、この学校教育法二十五条によりまして市町村に就学援助の実施義務を課しているところでございます。

石井(郁)委員 そういう根拠はあるという話ですが、しかし、就学援助法とか学校給食法にあります「生活保護法第六条第二項に規定する要保護者に準ずる程度に困窮している者で政令で定めるもの」という準要保護規定が、就学援助法とか学校給食法からなくなることになるんじゃありませんか。そうなりますと、今御案内の学校教育法二十五条の就学困難者というのが、要保護に限定する、そういう自治体も出てくるのではないかというふうに思われますが、これは大臣、いかがでございましょうか。重要な問題です。では、どうぞ。

銭谷政府参考人 学校教育法の第二十五条に基づきまして、各市町村におきましては、これまでも、準要保護者を含めた地域の実情に応じた就学援助を行ってきたところでございます。今回、準要保護者に対する就学援助に係る国庫補助が廃止、税源移譲されるわけでございますけれども、私ども、学校教育法の趣旨を踏まえまして、今後とも市町村において実施をされるように、市町村に対しては指導していきたいというふうに思っております。

石井(郁)委員 ここは重要なところでございますので、重ねて確認させていただきたいんです。やはり、就学困難と認められる学齢児童の中には、これまでどおり要保護者と準要保護者を対象としているということを私はきちんと大臣からも明言していただきたいと思いますが、いかがでございますか。

中山国務大臣 今回、準要保護者に対する国庫補助につきましては一般財源化されることになるわけでございますが、学校教育法におきまして、就学援助の実施義務は市町村に課せられていること、それから、準要保護者の認定は、従来どおり、地域の実情に応じて市町村の判断で行っていくこと、財源につきましては、これは所得譲与税として税源移譲されるとともに、所要の事業費が地方財政計画に計上されて、地方交付税を算定する際の基準財政需要額に算定されることになっておりまして、市町村における事業が縮小することはない、このように考えております。

石井(郁)委員 本当にそのようにあってほしいし、なければならないと私は思いますが、そのようにしないと、これは本当に大変なことになるんですよ。既に就学援助の対象を狭める動きが各自治体で出てきています。私は、少し例示申し上げたいと思うんです。

 生活と健康を守る会というところがございまして、調査をしたところ、札幌市では国基準を上回る支給分はもう廃止する。東京都東久留米市でも基準を切り下げる。三重県の松阪市では、入学金の三千円をカットする、中学一年生につけていたクラブ費千円もカットする。大阪・八尾市では、持ち家か借家かで格差づけをする、そこで割り振りしていく、支給額の国基準の引き下げもする。柏原市というところもありますが、基準を切り下げる。堺市でも基準の切り下げが行われようとしている。大阪市、これは私のいるところですけれども、ここは区役所の窓口をなくして申請そのものをしづらくしていくという形で、実際に対象を狭めていくということが行われているんですね。そういう基準を狭める、実質的な引き下げを行うということが出てきているわけですね。

 だから、今回の地方へのこうした移譲というのは、この動きをさらに助長するのではないか、また支給額を引き下げることにつながるのではないかということがもう既に危惧されておりますので、この点はいかがでございましょうか。

中山国務大臣 これも、三位一体の改革の中で地方団体側が、自分たちでちゃんとやるからということで、まさに税源移譲された部分でございますから、これは責任を持って措置してもらいたいし、文部科学省としては、きちっとやられているかどうか、そういう事業がちゃんとやられているかどうかについては、しっかり関心を持って見守っていきたい、このように考えております。

石井(郁)委員 そういう問題でいうと、本当はもっと大きな問題にまた戻ることにもなるんですけれども、都道府県知事会レベルでこういう地方自治体の要望という形で出てきていますが、大臣がよくおっしゃる現場、市町村レベルでいいますと、必ずしもそうじゃないでしょう。ここまで、国のいわば責任の部分の要保護児童、準要保護児童についても税源移譲と市町村レベルが果たして言ったのかということをやはり見ておかなければいけないんですね。

 だから、そういう点では、文科省は、安易に要保護部分と準要保護部分を切り分けて、ここまでは国の責任だけれども、準要保護部分はいいですというふうにしたという点では、私は安易に認めるわけにいかないんですね。実際に、この額も大きいし、そして九割方対象者になっているということを考えますと、今の文科大臣の御答弁ではちょっといかがかなと私は言わざるを得ないと思います。

 さらに、この就学援助費が本当に実態に見合っているのか、現在の補助額が実態に見合っているのかどうかということも見ておかなきゃいけないんですね。

 この点でも、私はお聞きしたところをちょっと例示申し上げますけれども、この就学援助を受けている御家庭では教育費がどのくらいになっているのかという問題なんですが、これは神奈川県大和市の方から聞いたんですが、小学一年生と中学二年生と中学三年生、三人を抱えている、だから、その御家庭では塾や習い事にはとても行けない状況です。しかし、そんな中で、給食費や学納金、学用品、体操着、靴、上履き、子供会費、部活動費、学校にかかった費用というのは三人で五十七万百七十円だ。そのうち、就学援助費が約半額で二十八万三千百四十五円、二十八万七千二十五円というのが持ち出しなんですよ。義務教育費で、やはりかなりの持ち出しというか、家計負担になっているということでしょう。

 こう考えますと、この就学援助費というのは、この半額の援助費というのがどんなに重要なものであるかということと、今の援助費自身が決して十分ではない、だから、就学援助費の削減ではなくて、やはりもっとここを充実する、あるいは増額をする、今そのことをやるべきではないのかと私は考えますが、大臣の御見解を伺います。

中山国務大臣 これは、地方側の要請によりまして、自分たちでやる、責任を持ってやるということでこのようなことになったわけでございますから、私どもとしては、本当に地方側が、市町村が責任を持ってやるわけでございますから、それをしっかり見守って、もしそうじゃないところがあれば指導していきたいというふうに考えております。

石井(郁)委員 具体的に少し伺いますが、この五年間で就学援助を受けている児童生徒の推移、人数ですが、どのようになっていますか。

銭谷政府参考人 過去五年間の就学援助を受けている児童生徒数の推移についてのお尋ねでございますけれども、平成十一年度の数字をまず申し上げますと、要保護、準要保護の児童生徒数、合わせまして約九十万人でございました。平成十五年度は、要保護、準要保護を合わせた児童生徒数が百二十六万人という数字でございます。増加の傾向にございます。

石井(郁)委員 大変な増加ぶりだと思いますね。この五年間で約九十万から百二十六万ですから、四〇%ぐらいの増加じゃないでしょうか。なぜ、このようにふえているんでしょうか。その理由はどのように把握していらっしゃいますか。

銭谷政府参考人 やはり、昨今の厳しい経済状況というのはあろうと思いますし、準要保護の子供につきましては、基準等は各市町村がつくるということでございますので、各市町村の基準設定ということも若干かかわっているかなというふうには思います。

石井(郁)委員 基準自身はそんなに、ここ二、三年あるいは五、六年の間に変えているという話は余り聞きませんから、やはり厳しい経済事情、非常に家計の状況の悪化ということがこの数字にあらわれているんだと思うんですね。

 次に、ではそれに見合って、国からの補助金の決定額というのはどうだったんでしょうか。これもこの五年間の推移で明らかにしていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 就学援助の補助金額でございますけれども、厳しい財政状況のもと、平成十二年度予算におきましては約百五十三億円でございましたが、平成十六年度予算におきましては約百四十一億円となっておりまして、約十二億円の減ということになってございます。

石井(郁)委員 実際に対象となる児童はふえ続けている、四〇%も増加しているということが明らかになりながら、国の補助金額というのは減ってきている。何ともこれはつじつまが合わない話だなというふうに思うんですね。

 それでは、市町村が給付した就学援助額と国からの補助金額を比べると、これはどうなっているかという問題で考えますと、平成十一年で三〇・一九%でしたが、平成十五年では二一・一七%まで落ちているんですね。ですから、補助率というのは、もう三割から二割です。本当は、これは半額補助、国が二分の一負担ということが原則ではなかったんでしょうか。これは私は大変問題ではないかというふうに思いますが、この点でも、大臣はどのような見解をお持ちでしょうか。

中山国務大臣 学校教育法におきまして、就学困難な児童生徒の保護者に対して必要な援助を与えなければならないということになっておりまして、国としても、就学援助法等に基づきまして予算の範囲内で補助を行ってきたところでございます。

 この就学援助法施行令によりまして、具体的に、予算で定める学用品等の単価に、予算の範囲内で定めた補助対象児童生徒総数を各市町村ごとに配分した人数を乗じて得た額を限度として、その二分の一の補助を行うこと、こうなっているわけでございまして、各市町村がそれぞれの地域の実情に応じて実際に支給する額ではなくて、国が諸般の事情を総合的に勘案して定める額を限度として、その二分の一を補助するということになっているわけでございます。

石井(郁)委員 今御答弁いただきましたように、結局予算額を減らしているわけですから、その予算の範囲内で対象児童を決めてくる。実際、この対象児童、準要保護児童生徒については全児童生徒数の三・八%とする、今度は三・三四%に下げる、こういう形で文科省は対応しているわけでしょう。ですから、先ほど来例示を挙げましたけれども、自治体では基準を引き下げるということにならざるを得ないわけですよね。

 私は、やはり今の文科省の姿勢というのは非常に問題だというふうに思うんですよ、根本には財政が厳しいと絶えずありますけれども。しかし、教育の機会均等の原則あるいは教育の無償という原則からして最も守らなければいけない、こういう部分でやはり守り切れていないじゃないかということなんですね。

 だから、就学援助制度というのは憲法二十六条、教育基本法の原則から要請されるということであるならば、真っ先に国がきちんと予算措置をする、負担金として措置をする、そういうことではちゃんとやはり姿勢を示していただきたいと思うんです。いかがでございましょう。

中山国務大臣 先ほど言いましたように、そういうふうな計算式によりまして額を出して、それで、予算といいましてもいろいろな諸般の事情がございますから、すべてを認めるというわけにいきませんので、そういう中で、こういった予算につきまして振り向けた予算、その範囲内で市町村はそれぞれの実情に応じて支給してきたというのが実情だ、私はこのように考えております。

石井(郁)委員 今回の法案のいろいろな議論を通じてでも、教材費や旅費やそれから学校図書費の推移がどんどん各地方自治体で下がっている、格差が広がっているということが指摘をされてきているわけですね。だから、地方の格差が助長されている状況だ。加えて、今、この生活保護費にかかわる準要保護児童の就学援助費が地方へ移譲になるということになれば、子供たちへの影響、家庭への影響がどう起きてくるかというのは私は本当に心配だし、明らかだと思うんですね。そういう意味では、一般財源化などに加えてこの部分も地方移譲などすべきではない、やはり国が国の責任できちんと予算措置をするということを貫くべきだと思うんです。

 そういう点では、大臣に再度、義務教育無償の原則、教育の機会均等を保障する、やはりそういう立場に立っていただきたいということで、私は、重ねての質問になりますけれども、どうお考えになるのかを伺っておきたいと思います。

中山国務大臣 教育の機会均等という観点からいたしましても、生活困窮の児童、その保護者に対して手を差し伸べていく、これは当然のことでございまして、一般財源化されてもこれは市町村が責任を持ってやるべきことだろうと思うわけでございます。そして、それを含めて、私は言っておりますように、本当に地方が自分たちでやれると言いますけれども、苦しい財政事情、これからの財政事情を考えますと、本当にやろうと思っていてもやれるのか、そういう懸念もあるわけでございます。

 まさに、義務教育の根幹を守っていくという立場から、私は議論していかなければいかぬわけでございますが、中学校の先生方の給与負担二分の一ということだけに焦点が当たっておりますが、実はそれ以外にもいろいろな形で地方に今回されている、自分たちでやると言っている予算があるわけでございます。このことにつきましては、文部科学省としてもしっかりウオッチして、必要に応じて指導していく、こういうことをやっていきたい、このように考えております。

石井(郁)委員 本当にこの部分での国の責任をきちんと守り抜くということが今最も求められている。国の責任放棄と言われないようにぜひしなければいけないということを私からも強く申し上げまして、この質問は終わりたいと思います。

 少し時間がありますので、義務教育費国庫負担の問題で一、二伺っておきたいと思います。

 これは、既に議論になっております総務省の今井副大臣の答弁との関係での問題なんですが、総務省と文科省の間でのいろいろちょっとそごがあるんじゃないかという話が出てはおりますけれども、私なりに一つ、二つ大臣の御見解を伺いたいと思うわけです。

 これは、先日の当委員会で、総務省の今井副大臣が、池坊議員の質問に対してのお答えなんですけれども、このようにありました。「現実に、国の基準以上に、職員その他も実態としては都道府県は加配しているんです。国の基準よりも多くなっているわけです。国の基準よりも実際に地方がお金を使っているわけです。」ということを述べられたわけですね。

 確かに、きょうは参考人の問題で長野県が話題になっておりますけれども、長野県では小学校四年生まで三十人学級を実施していますよ。もう四十五都道府県で少人数学級に踏み出している。今四十人学級にとどまっているのは東京と香川だけなんですね。そういう点では、各地方自治体で非常にやはり少人数に踏み出して、教員の配置、加配、確保ということでは国以上に努力をされているという事実があると思うんです。

 だから、こういう国の基準よりも実際に地方でお金を使っているんだ、こういう形で言われているように、これは逆に言うと、国の学級編制規模の縮小ということについてのおくれがあるために、地方の方がどんどん進んで国がおくれているんだということで、義務教育費の国庫負担を地方に移譲すべきだ、地方でもっとやらせてほしいという理由づけになっているんじゃありませんか。私はそのように聞こえるわけですが、このことについて大臣はどのように思っていらっしゃるでしょうか。

中山国務大臣 今でも給与費の二分の一しか負担していないわけでございますね。その中において地方は地方独自でいろいろな施策をやっていらっしゃるわけでございますから、国からの金では足りない、自分たちはもっとやるんだということでプラスアルファして出しておられるというところもあるわけでございます。逆にそうじゃないところもあると思うわけでございますが。

 そういう意味では、国というのは、標準的な基準をはじき出しまして、それに対する予算措置をしているということでございますから、それはそれぞれ、いろいろな地区地区でやられることは自由でございますし、ぜひやっていただきたい、こう思うわけでございますが、それができないところが出てくるんじゃないか。先ほど準要保護の話もございましたけれども、そこを私は懸念しているわけでございます。

 その点で、今定数の話もございましたけれども、これは四十人学級の中で、それぞれの都道府県におきましてそれぞれ工夫しておられる、このことについては、文部科学省としても、総額裁量制ということで、本当に自由にやってくださいという方針でやっていただいているわけでございまして、この二つが相まってそれぞれの地方で、それぞれの都道府県でそれにふさわしい教育が行われるものだ、このように考えております。

石井(郁)委員 もう時間ですので締めたいと思うんですが、やはり学級編制基準というのは、日本は、世界、少なくともサミット諸国やそういうところからも大きく立ちおくれているということは当委員会でもたびたび取り上げられてきたことですね。そういう中で、国の基準以下の学級編制に地方が取り組み出しているという問題が出てきているわけですね。私は、こういう点で今本当に国の姿勢が問われている、このことが義務教育費国庫負担の問題にもつながっていると考えております。

 今年度で教職員の配置計画の第七次計画が終わると思います。次期の計画はどのように今お考えでしょうか。今、計画についてどのような進捗か、教えてください。

銭谷政府参考人 お話ございましたように、第七次の教職員定数改善計画が十七年度で完成の予定でございます。五年間で二万六千九百人の定数改善を行ってきました。私ども、これまで七次にわたる定数改善計画というのは教育条件改善のためにいわば中期的、長期的な計画により実施をするということで、こういう計画をつくって定数改善を行うことの意義は大きいものと考えております。

 次期の定数改善計画をどうするかにつきましては、これまでの改善計画の実績等を踏まえて対応すべきと考えておりまして、義務教育のあり方について十七年秋までに中央教育審議会において幅広く検討することとされておりますので、その中でよく検討してまいりたいというふうに考えております。

石井(郁)委員 私は、当然この段階で、こんな重要な審議ですから、次の計画はこのように今考えておりますという御答弁を期待したんですが、中教審にこれも投げている、中教審待ちだということは何とも心もとないし、問題だというふうに思うんですね。概算要求まであとわずかしかないじゃありませんか。義務教育費国庫負担の問題についても、本当にこの間文科省は、中教審も含めてやはり防戦的だった、これは防戦に努めたということになっているわけで、しかも、この第八次計画で三十人学級など、国の責任で学級規模縮小に取り組む、こういうことを積極的に明確にして、そして義務教育費国庫負担制度を堅持するということは今やるべきではないかと私は考えているわけです。

 そういう点で、本当に教育のあり方、義務教育のあり方をやはり国の責任で国民的に広く訴えていくということが今いろいろな角度からいろいろな点で求められているし、重要ではないかということできょうは質問いたしましたし、次期計画では、国として三十人学級だということをぜひ入れていただきたいということを申し上げて、きょうの質問を終わります。

斉藤委員長 次回は、明十七日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十三分散会


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