衆議院

メインへスキップ



第13号 平成17年6月10日(金曜日)

会議録本文へ
平成十七年六月十日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 奥村 展三君 理事 川内 博史君

   理事 牧  義夫君 理事 河合 正智君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      佐藤  錬君    下村 博文君

      菅原 一秀君    鈴木 俊一君

      鈴木 恒夫君    中馬 弘毅君

      西村 明宏君    葉梨 康弘君

      馳   浩君    古屋 圭司君

      保利 耕輔君    山際大志郎君

      青木  愛君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    古賀 一成君

      須藤  浩君    武山百合子君

      達増 拓也君    長島 昭久君

      肥田美代子君    松本 大輔君

      村越 祐民君    笠  浩史君

      池坊 保子君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   会計検査院事務総局第四局長            千坂 正志君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      大島  寛君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       有本 建男君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            清水  潔君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十日

 辞任         補欠選任

  鈴木 恒夫君     中馬 弘毅君

  西村 明宏君     菅原 一秀君

  高井 美穂君     村越 祐民君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     西村 明宏君

  中馬 弘毅君     鈴木 恒夫君

  村越 祐民君     高井 美穂君

    ―――――――――――――

六月九日

 三十人学級の早期実現、私学助成の大幅増額に関する請願(石井一君紹介)(第一七四六号)

 すべての子供たちに、行き届いた教育を進め、心通う学校に関する請願(石井一君紹介)(第一七四七号)

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(高井美穂君紹介)(第一八二三号)

 小中高三十人以下学級の早期実現、行き届いた教育に関する請願(村井宗明君紹介)(第一八八三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 学校教育法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、学校教育法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房文教施設企画部長大島寛君、生涯学習政策局長田中壮一郎君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長石川明君、高等教育局私学部長金森越哉君、科学技術・学術政策局長有本建男君及び研究振興局長清水潔君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第四局長千坂正志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村明宏君。

西村(明)委員 自由民主党の西村明宏でございます。学校教育法の一部を改正する法律案について質疑させていただきます。

 私自身も大学にて教鞭をとらせていただいておりますので、大学の中からの視点というのを踏まえて質問させていただきたいと思っております。

 まず、大学の教員組織についてお伺いいたします。

 法律案を見ますと、助教授にかえて准教授を設け、そしてまた助教を新設するとともに、教授、准教授、助教、助手の職務内容に関する規定を整備するものとなっておりますけれども、現行制度をなぜ今このように改正することになったのか、その基本的理念と経緯をお伺いいたします。

中山国務大臣 おはようございます。またよろしくお願いいたします。

 今回の改正の趣旨についての御質問でございます。

 大学教員の職のあり方など大学の教員組織のあり方につきましては、従来より種々の場で検討課題として議論されてきておりまして、平成八年の大学審議会、これは今の中央教育審議会でございますが、この答申におきましては、助手の職務内容や名称の見直し等を含めた教員組織のあり方について検討の必要性がある旨指摘されているところでございます。

 また、平成十三年三月に閣議決定されました第二期の科学技術基本計画におきましては、若手研究者の自立性向上の観点から、「研究に関し、優れた助教授・助手が教授から独立して活躍することができるよう、制度改正も視野に入れつつ、助教授・助手の位置付けの見直しを図る。」こととされているところでございます。

 このように、現在の大学の教員組織というのは、若手の大学教員が柔軟な発想を生かした活動を展開する上で必ずしも適切なものになっていないという指摘があるところから、若手教員がみずからの資質、能力を十分発揮して活躍ができるように、助教授や助手の位置づけ等の見直しを行うこととしたものでございます。

 具体的には、現行法の助教授や助手は、「教授の職務を助ける。」または「教授及び助教授の職務を助ける。」と規定されておりまして、教授等との関係をもとにして職務内容や職名が定められておりますが、新しい制度の准教授や助教については、みずから教育研究を行うことが主たる職務であるという観点から職務内容や職名を定めまして、教授等との関係は各大学の判断にゆだねることにしたものでございます。

 これらによりまして、各大学の裁量による柔軟な教育組織の編制がより一層可能となり、特に、若手教員がみずからの資質、能力を十分発揮して活躍することができるような教員組織の編制に資するものである、このように考えております。

西村(明)委員 我が国では、常勤の助手または講師になると、基本的に助教授、教授というのが約束されて終身雇用となる場合が多いんですけれども、すぐれた研究者を養成するためには、アメリカのテニュア制度のように若手のうちは任期つきの契約で雇用して、その任期期間中にすぐれた業績を上げた者にテニュア、すなわち終身雇用権を与える、そういった制度を導入すべきだと考えますけれども、この新制度においてこうしたステップを検討されておられるんでしょうか。

石川政府参考人 お答えを申し上げます。

 大学教員の採用や昇進等に当たりましては、ふさわしい資質、能力を有するか否かにつきまして公正かつ厳格な評価を行うということが大変重要でございます。かつ、評価に当たりましては、研究能力に偏することなく、教育能力や実践的な能力を適正に評価するということが大切であると考えております。

 このような評価のあり方につきまして、一定期間ごとに定期的に審査を行う方法ですとか、あるいは昇進ごとに審査を行う方法等があるわけでございまして、各大学の理念や目標、各分野の特性に応じて、適切な方法により行われるべきものと考えております。

 そして、ただいまお話ございましたように、例えば教育研究に大きな成果を上げておりますアメリカの大学では、一般的に、任期つきの契約で雇用され、研究者として一定の実績を積んだ後で、審査を経ていわゆるテニュアの取得が決定されるといったような仕組みもとられているところでございます。我が国におきましても、大学によりまして、若手教員につきまして期間を定めた雇用、いわゆる任期制でございますけれども、こういったこととか昇進のための審査を定期的に行う再審制など、一定期間ごとに適性や資質、能力を審査する制度が導入されております。

 これらの制度を導入するか否かということにつきましては、各大学がそれぞれの実情ですとかあるいは各分野の特性に応じて判断するものでございますけれども、助教が将来の大学教員を目指す者がつく最初の大学教員の職、こういう位置づけであるということにかんがみますと、若手教員の流動性を高め、あるいは、すぐれた人材の養成ですとか教育研究の活性化を図るためには、一般的にこれらの制度が積極的に活用されることが望ましい、このように考えているところでございます。

西村(明)委員 助教、准教授、教授へとステップアップしていく段階で、現状は、論文を何本書いたか、そういった研究面での業績のみが重視される傾向があるんですけれども、例えば教育に対する熱意でありますとか教え方の訓練度合い、そういった教育面の資質向上も昇進に反映されるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

石川政府参考人 大学の教員の役割は、高いレベルですぐれた教育を実践するということ、そしてまた高度な学術研究を推進する、こういった教育と研究の両面あわせた役割を持っておるわけでございまして、当然のことながら、研究だけでなく高度ですぐれた教育能力を持つ方、そういった方は今後とも大学において重要視されなければいけませんし、そういった方々がまた大学教育を支えていくことになろうかと思っております。

 そういった意味で、ただいまお話がありましたように、大学教員におきます教育能力というようなことにつきましては、今後ともこれを重視していくべきもの、このように考えております。

西村(明)委員 助教は、知識及び能力を有する者であり、学生を教授し、その研究を指導し、または研究に従事するというふうに記載されております。そして、助手に関しては、所属組織の教育研究の円滑な実施に必要な業務を行うというふうにされております。

 簡単に言って、現在いる助手さんのうち、主として教育研究を行うことを職務として、将来の大学教員や研究者となるということが期待されている者が助教になって、教育研究を補助していく、これを主たる職務とする者が引き続き助手となるというふうに理解してよろしいんでしょうか。

石川政府参考人 ただいまお話がございましたように、現行の助手の方々にはさまざまな役割、機能を果たしておられる方が現実問題としていらっしゃいます。そういった意味で、今回は、現在の助手の職を分けて、ただいまお話がございましたように、みずから教育研究を行うことを主たる職務として、将来の教授あるいは准教授等を目指す方々、そういった方々のつく最初の大学教員の職として助教といったような職を新たに設ける、こういうこととしております。

 また、助手につきましては、いわゆる新しい形での助手でございますけれども、カリキュラム編成ですとか実験実習の支援を初めとする教育研究の補助を主たる職務とする職として明確化する、このように考えているところでございます。

西村(明)委員 現在ある助手を助教と助手に区分けしていくことなんでしょうけれども、これは現実的には非常に厳しい話じゃないかなと思っております。というのは、確かに法律上は職務内容によって区別されることになっていますけれども、助手の方が教授のいろいろな、さまざまな補助をしながら教育研究を行っているというのが現状ではないかと思います。実態として、助教と助手の間に上下関係、すなわち年次の上の者が助教になって、年次の下の者が助手になる、そういった格差が生じる可能性があるんじゃないでしょうか。

石川政府参考人 ただいま、現在の助手を分類といいましょうか、区分するに際してのそういった差あるいは格差というようなお話がございましたけれども、このたび、助手というものを区分いたしまして、助教とそれから新しい意味での助手に分けるということにつきましては、上下関係ということではなくて、先ほどお話し申し上げましたように、その役割、機能の性格によってこれを区分していこうというようなことで考えているところでございます。

西村(明)委員 法律面の分類はよく理解しているんですけれども、ただ、実態として、人数割りとかそういった中で、まず助手で下積みをしてそして助教になりなさいよという可能性も否定できないと思いますので、その辺の御指導のことはよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 そして、我が国の大学は、いわゆる講座制というのを採用しております。一人の教授に一人の助教授、そしてまた一人から三名ぐらいの助手がいらっしゃるというのが基本的な形になっておりますけれども、このため上下関係に縛られて自由濶達な研究というものが妨げられてきた側面というのも、なかなか否定できないと思います。文科系や理工系、また医学系といってそれぞれ状況は異なりますので、画一的にはやるのは難しいと思いますけれども、この一講座一教授、こういったのをいわゆる小講座制というんですかね、これから複数の教授によって教育を行うようなのを大講座制と申しますか、これの導入も検討すべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

石川政府参考人 講座制のあり方についてのお尋ね、御質問がございました。

 講座制につきましては、本来、教育研究の責任体制を確立するために導入されたものでございまして、しかし、主として、国立大学の講座制につきましては、人事、予算等のさまざまな側面におきまして硬直的であるとかあるいは閉鎖的な運用を招いて、教育研究の進展等に応じた柔軟な組織編制でありますとか、あるいは各大学の自主的、自律的な取り組みを阻害している面があるのではないか、こんなような指摘がなされてきているところでございます。

 ただいまお話がありましたように、ある程度小さな組織ですと、そういった面がまた強く出るようなことは確かにこれまでもあったかと思っておりまして、もっと大きな単位にして、今お話がありましたような例えば大講座制、そういった形でその柔軟性を増していくというような試みも、実際の形として今積極的にとられてきているところでございます。

西村(明)委員 今まで、ある先生が教えている講義が、その先生が退官するなり異動されることによってあかないとそのポストにつけないというような、ずっとそういった形があるのも現実でございますので、文系であれば公法関係とか私法関係とか、大きなくくりの中で、一つのものに対して、右から見られる講義、左から見る講義というのもあっていいんじゃないかと思いますので、そういったものを含めた御検討をよろしくお願いしたいと思います。

 そして、こういった大講座化していくと、全体のポスト数の関係があって、教授をふやそうということで、教授の数がどんどん肥大化していく傾向があったりしますので、若手研究者のポストが減少することになったら大変ですので、どうかこの点もよろしく御配慮いただきたいと思っております。

 若手研究者の活性化というのが何より重要なのはもう言をまちませんけれども、法律上の名称や職務内容の変更だけでなく、実質的な研究環境の整備、これを行うべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

石川政府参考人 若手教員の活性化を図るために、そういった環境整備を行うべきではないかという御指摘でございます。

 本法律案につきましては、若手教員の活躍等によります大学全体の教育研究の活性化を図るために、助教授や助手の見直しを行おうとするものでございます。

 このような制度改正が円滑かつ実効性を持って機能していくためには、各大学が制度改正の趣旨を生かしまして積極的に取り組むということとともに、文部科学省といたしましても、各大学における取り組みが教育研究の活性化に一層つながりやすくなるように、若手教員に対する支援措置の充実を図っていく、こういったことが大変重要である、このように考えております。

 このような観点から、例えば、若手の教員がみずからの資質、能力を十分に発揮できますように、若手教員が利用できる競争的資金の充実ですとか、あるいはスタートアップも含めました教育研究活動のために必要な環境を整備すること、それから、若手教員に配慮いたしました組織的な教育研究を展開するための各大学におきます施設整備等の支援を行います、そういったことですとか、あるいは、国が行っております研究教育拠点の形成支援に係る事業などこういった審査を行う場合に、その申請内容において、例えば若手教員が十分に活躍できる環境づくりに配慮しているかどうか、こんなようなことについてもしっかり考慮していきたい。このようなことを通じて若手教員が活躍できる環境を整備していきたい、このように考えているところでございます。

西村(明)委員 次に、短期大学についてお伺いします。

 平成八年の五百九十八校、これをピークにして、平成十六年には五百八校と短期大学が減少傾向にあるわけですけれども、まず、短期大学の存在意義についてどういうふうに大臣はお考えでしょうか。

石川政府参考人 短期大学の存在意義について少し具体的な御説明をさせていただきたいと思いまして、私の方からお答えをさせていただくことをお許しいただきたいと存じますが、短期大学につきましては、戦後、高等教育への進学率の上昇を支えますとともに、特に女子の高等教育の機会の拡大に大変大きな役割を果たしてきているところでございます。

 ただ、近年は、十八歳人口の減少ですとか、あるいは女子の四年生大学への進学志向の高まり、こういったことによりまして短期大学の学生確保もなかなかに厳しい状況に置かれておりまして、その規模も少しずつ縮小してきているというのが現状でございます。

 しかしながら、中央教育審議会答申でも指摘をされておりますが、短期大学は短期の高等教育機関として我が国の高等教育において大変大きな意義を果たしておりまして、今後とも、教養と実務が結合した専門的な職業教育ですとか、あるいは多様な生涯学習機会の提供など、身近な高等教育機関として積極的にその役割を担っていくということが期待されている、このように考えております。

 文部科学省といたしましては、こういった短期大学の役割の重要性といったものにかんがみまして、短期大学卒業者に対する学位授与を制度化することについて、今回法案を提出してお願いをいたしているところでございますし、その一層の発展に向けた支援に努めているところでございます。

 また、短期大学関係者におきましても、今回の制度改正を契機に、教養教育の充実等を通じて教育内容の一層の改善を図るなど、さらに魅力ある短期大学づくりに向けて、今後とも積極的に取り組んでいくという考えであると私ども聞いているところでございます。

西村(明)委員 今回、この短期大学士という学位の創設は、短期大学課程の修了について、学位、ディグリーとして国際的な通用性を確保する上でも意味を持つものと考えますけれども、しかし、学位を新設するだけでは短期大学の教育向上のための振興策としては十分ではないんじゃないかと考えますが、いかがでしょうか。

石川政府参考人 このたびの短期大学の卒業者に対する学位の授与といったようなことは、国際的な観点から、国際的な通用性あるいは高等教育の国際交流という観点からも、大変大きな意義を持っておりますし、先ほどもちょっと触れさせていただきましたけれども、短期大学関係者は、これを機にその教育内容をより一層魅力のあるものにして、短期大学の地位といいましょうかその価値を高めていこう、こういった決意をしているというふうに聞いておりますし、これからそういった方向でさまざまな努力が行われていくことになるだろう、このように考えております。

 また、私どもといたしましても、こういった制度改正だけでなく、現在は国公私立大学を通じて、例えばすぐれた教育の取り組み、こういったものがある場合に、特別にそういった取り組みに対して支援をするといったような枠組みを設けているところでございまして、この関係の予算につきましても、年々拡充、増加を図っているところでございます。こういった支援を通じまして、これからも短期大学の教育内容、その魅力がますますいいものになっていきますように、こういった支援をしっかり取り組んでいきたい、このように考えているところでございます。

西村(明)委員 筑波と高岡の国立短期大学が統合により、なくなります。現在の短期大学の九割が私立ということで、短期大学がより質の高い教育を行っていくためにも、私学助成の充実というのは何より重要であると思いますが、私学助成の充実について、お考えをお伺いします。

中山国務大臣 今御指摘ありましたように、私立の短期大学というのは、短期大学の約九割を占めておりまして、先ほど来説明しておりますように、地域における身近な高等教育機関として極めて重要な役割を果たしていると考えております。

 文部科学省では、従来から、私立学校の教育研究条件の維持向上、あるいは修学上の経済的負担の軽減等を図るため、私学助成を充実してきたところでございます。平成十七年度予算におきましては、短期大学を含む私立大学等経常費補助金につきまして、対前年度三十億円増の三千二百九十二億五千万円を計上しております。今後とも、私立短期大学等における教育の質的向上を図るため、私学助成など、私立学校に対する各般の支援策を推進してまいりたいと考えております。

西村(明)委員 高等専門学校についてお伺いします。

 高等専門学校は、高度な実践的な技術教育を行うということで、大変評価されております。就職率が一〇〇%、また求人倍率が十倍という数字にもあらわれているとおりだと思います。また、私の地元に、地元に豊かな地域社会形成をしようという町づくりの組織があるんですけれども、その会が実施したまちづくりアイデアコンペで、地元にあります宮城高等専門学校建築学科の四年生の女子学生が最優秀賞を受賞しました。視覚的に見る庭や遊ぶ庭、そういったさまざまな庭を利用した、まさに高等専門学校の学生らしい町づくりのアイデアでした。大学教育とはまた異なった実践的教育を受けた成果じゃないかなと感じ入ったところでございます。

 さて、こうしたすばらしい教育を行っている高等専門学校についても、さらなる質の向上を図るために、「我が国の高等教育の将来像」という中央教育審議会の答申にも施策が提言されているところでございます。このような提言を受けて、一層のサポートを行っていくためにはどのような施策を考えておられるんでしょうか。

中山国務大臣 今委員が御指摘ありましたように、高等専門学校、高い評価を受けていると思っておりまして、中学校卒業後の早い段階から五年間一貫の体験重視型の専門教育を行って、実践的で創造的な技術者を養成する我が国固有のユニークな学校制度でありまして、これまで多くの優秀な人材を産業界や大学に送り出し、社会から高く評価されているところでございます。

 このように、高等専門学校というのは、大学とか短期大学とは異なる特色を備えた高等研究機関であることに大きな意義があるわけでございまして、今後とも、教育の充実を図ることを中心にいたしまして、高等専門学校としての特色を一層明確にすることが重要である、このように考えておりまして、文部科学省としては、高等専門学校の教育活動の一層の活性化を支援してまいりたいと考えております。

西村(明)委員 それでは、関連として学校施設の耐震化についてお伺いします。

 公立の文教施設費補助金の予算額が大幅に減少している中で、まさに学校施設の耐震化というのは急務であると思います。阪神・淡路大震災以来、新潟中越地震や福岡西方沖地震と、全国至るところで地震が発生しているわけでございます。また、宮城沖で大規模地震の発生する確率は三十年のうちに九九%という、まさに直近の大きな課題となっているところでございます。

 昨年は日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策特別措置法の成立を見たところではございますけれども、文部科学省としても、学校施設の耐震化に真剣に取り組んでいかなければならないというふうに思います。地方財政の窮状を見れば、地方の力のみで耐震化を進めるというのはなかなか困難も多いと思います。引き続き、国としてしっかりと責任を果たしていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 公立小学校の学校等の耐震化についてのお尋ねでございますけれども、御指摘のように、現在耐震化の進捗状況というのは、公立小学校においては、耐震性が確認されている建物はまだ四九・一%にすぎないという状況でございます。半数以上の建物について耐震性が確認されていないということで、いまだ十分に進められていない、こう認識しているところでございまして、このため、文部科学省といたしましては、国の財政が極めて厳しい状況にある中で、耐震関連予算の確保に最優先で取り組んでいるところでございます。

 また、文部科学省におきましては、より効率的に耐震化を推進できる方策について、有識者会議を設けて検討を行い、去る三月にはその報告書をいただいているところでございます。

 なお、公立文教施設費全体の取り扱いにつきましては、平成十七年秋までに結論を出す中央教育審議会の審議結果を踏まえ、決定することとされているところでございますけれども、国民の安全確保は国の基本的責務と考えております。

 文部科学省といたしましては、有識者会議の報告書、それから中央教育審議会における議論を踏まえつつ、公立学校施設の耐震化の推進について最大限努力をしてまいりたいと存じます。

西村(明)委員 学校は、言うまでもなく子供たちが一日の大半を過ごす場所でございますし、地域住民にとりましても非常時の避難場所となるところでございます。しかしながら、今もお話ございましたけれども、平成十六年四月段階で、公立小中学校が十三万千八百十九棟あるうち、耐震性が確認されていない建物が六万七千六十八棟と、まさに耐震化が半数にも至っていないという現状でございます。

 多くの学校施設について、より効率的にまた耐震化を進めていくために、今お話もございました耐震化の推進など、今後の学校施設整備のあり方にも一部触れてありますけれども、今までの改築方式から、工事費が安くて工期の短くて済む改修方式による再生整備への転換というものも検討されてはいかがでしょうか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のように、先ほどの有識者会議における報告書の中におきまして、まさしく、工事費のかかる建てかえ方式、いわゆる改築から、より経済的な耐震補強改修方式へ重点を移すべき、このような報告も受けているところでございまして、今後五カ年間で、倒壊等の危険性の高い建物、こういったものを優先的に耐震化を図るべきではないか、このような報告も受けております。こういった報告を踏まえつつ、全力を挙げて努力してまいりたいと考えております。

西村(明)委員 次代を担う子供たちのために、また地域の防災拠点とするためにも、ぜひとも小中学校の耐震化の促進を強くお願いするところでございます。

 最後に、大学改革の推進、高等教育改革の推進と、その実現に力を尽くしていただきますよう重ねてお願いを申し上げまして、質問を終わります。

斉藤委員長 城井崇君。

城井委員 民主党の城井崇でございます。

 引き続き、学校教育法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 本日は二時間ちょうだいいたしました。大変ありがたいことだと思っております。服装は涼しく、そして議論は熱く、締めるところは締めて頑張っていきたいと思いますので、大臣、よろしくお願いいたします。

 さて、我が国の高等教育の将来、とりわけこれからのあり方についてまず触れさせていただいた上で本題の質問に入ってまいりたいと思いますので、お願いしたいと思います。

 我が国の高等教育、これまでもいろいろな点で、ある意味曲がり角に差しかかっているのではないかというふうに思っております。先日発表されました中教審の答申にもございましたけれども、本来二〇〇九年と言われておりました大学全入時代への突入が二〇〇七年と、前倒しという状況が出てきている点、そして、それの裏表ということなんでしょうけれども、学生数が減ってくることによってこれまである大学の経営が非常に厳しくなっている、そういう経営が厳しくなっている大学の数がとてもふえているということ、そうした状況などが、この曲がり角という点ではあるのではないかと思っております。

 しかしその一方で、今我が国がこれから進めていかなければならない点、例えば、国として戦略的に基幹技術の研究開発を進めていく、そういう高等教育をしていかなければならないのではないかというふうにも感じております。

 先日から文部科学省の方に少しお願いをして、国として戦略的に推進すべき基幹技術の候補リストというものを挙げていただいておったんですが、その中でも、例えば、地球シミュレーターを初めとするスーパーコンピューターですとか、ロケットの開発、あるいは衛星等での地球規模の統合観測・監視システムとかといった、ある意味で世界でナンバーワンあるいはベストスリーに入るような形の技術を、お金になったり商売になったりというような形も含めて何とか進めていこう、かなり重点的にやっていきたいということで、こうした候補なども挙げていただいておるわけですが、この技術、一つ一つお話を伺っていきますと、やはりその技術を支える人材をどのように継続的に育成し、輩出していくかということはとても大事だというふうに感じました。

 こういった点も踏まえながらまずお伺いいたしたいのが、先ほど触れました、中教審から示されている答申であります「我が国の高等教育の将来像」、先ほどの西村委員の質問にもございましたけれども、この将来像の答申を受けまして、本改正も含めましてということになりますけれども、今後この高等教育についてどのような取り組みを行っていくか、その将来像と今後の取り組みという点について、まずお聞かせをいただきたいと思います。

中山国務大臣 時代がどんどん変わってまいりまして、大学をめぐる環境も変わっておりますし、また大学に求められる役割というのも変わりつつあるなということを実感しているわけでございます。

 今回の法律案につきまして申し上げますと、本年一月の中央教育審議会の答申「我が国の高等教育の将来像」におきまして、新時代の高等教育は、各学校種ごとの役割、機能を踏まえた教育研究の展開を図るとともに、各学校ごとの個性、特色を一層明確にすべきであるというふうに提言されているところでございます。

 今回の法律案は、このような方向に向けた諸施策の一環として、まず第一に、学位についての国際的な動向等も踏まえつつ、短期大学を卒業した者に短期大学士の学位を授与する制度を創設することによりまして、短期大学の基本的な性格を明確にするとともに、個々の短期大学の特色、個性の一層の発揮を期待するものでございます。

 また、助教授及び助手の位置づけを見直しまして、若手教員がその資質、能力を十分発揮することができる環境を整備するとともに、各大学や各高等専門学校がより一層自由に教員組織を編制することを可能とすることによりまして、それぞれの個性や特色を発揮した活動をさらに展開していくことを期待しているものでございます。

 このように、文部科学省といたしましては、本法律案を初めとするさまざまな施策を推進することによりまして、個性豊かで魅力的な質の高い高等教育の展開、そして、それによりまして国民の期待にこたえていくということで今後とも取り組んでまいりたいと考えております。

城井委員 ありがとうございます。

 今るる御説明をいただきましたような将来像に基づいて、今回の法改正を位置づけておられるということは理解をしておるわけですが、この改正案、御承知のとおり、大きくは三つの部分から成っております。

 短期大学卒業者への学位授与、そして大学の教員組織の整備に加えて、高等専門学校の教員組織の整備についてでございます。一つずつ丁寧にお伺いをしてまいりたいと思います。

 まず、短期大学卒業者への学位授与の部分についてでございます。

 この点については先ほどの将来像の御説明の中でも触れていただきましたけれども、短期大学の学位について論じます前に、まず、先ほどの将来像にもございました高等教育における学位のあり方、短期大学を含めてということになると思うんですけれども、この点についてお伺いしたいと思います。この学位というものについての全体像をどう形づくっていくのか、文部科学省のお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 学位の全体像をどのように考えるかという御質問でございますが、学位は、大学教育の課程を修了した知識、能力の証明として大学が授与するものでございまして、このような理解は国際的にも共通しているものでございます。各大学における教育水準の維持向上、教員、学生の国際交流の推進等において重要な役割を果たしていると考えております。

 このため、文部科学省といたしましては、学位に関する国際的な動向を踏まえつつ、我が国の大学や大学院におきます学習歴が適切に評価されるよう、これまで必要に応じて学位制度の見直しを行ってきたところでございます。具体的には、平成三年には学士を学位と改め、平成十四年には専門職学位を新設するなどの学位に関する制度を改正してきたところでございます。

 今回の法律案におきまして、短期大学を卒業した者に対して短期大学士の学位を授与することによりまして、短期大学、大学学部、大学院を通じて、大学教育の各課程に応じた学位が整備されることになるわけでございます。

 今後とも、我が国の学位が国際的にも信頼され、適切に評価されるように、短期大学も含めた大学における教育の質の維持向上に努めてまいりたいと考えております。

城井委員 ありがとうございます。

 では、そうしたそれぞれに学位が設定されるということでございましたけれども、特にわざわざ短期大学士という学位をつくることによって今後の短期大学の役割にどういったことを期待されるのかという点についてぜひお伺いしたいと思います。

 先ほどの答弁の中でも、これまではいわゆる女性の方々の進学志向の高まりに従ってという点の御説明はあったわけでございますが、国立の短期大学自体はなくす方向になってきているという状況等も踏まえますと、そういった中で期待する内容というのは何なのかという点について少々疑問があるわけです。この点についてぜひ具体的にお聞かせいただきたいと思います。

石川政府参考人 短期大学について、今回の学位の創設といったようなこととも関係して、今後どのような役割を期待しているのかというお尋ねかと存じます。

 短期大学につきましては、中央教育審議会の答申でも指摘されておりますとおり、我が国の高等教育において大変大きな役割を、そして意義を持っておるわけでございまして、多様な生涯学習機会の提供ですとか、身近な高等教育機関として、地域とも連携をして積極的にその役割を担っていくことが期待されているわけでございます。

 今回の短期大学士の学位の創設につきましても、短期大学がこのような身近な高等教育機関であるとともに、国際的に通用する大学の一つの類型として、その特色を一層発揮する制度的な基盤を整えようという趣旨のものでございます。

 学位創設の具体的なメリットといたしましても、例えば、幾つか考えられるところでございまして、一つには、大学教育の特質である教養教育とその基盤の上に立った専門教育の提供の充実、あるいはグローバル化しつつある社会における国際交流の充実、そしてまた教育研究水準の不断の維持向上に対する各大学への刺激、こういったものが期待されるところでございます。

 先ほど、戦後の短期大学の伸びといいましょうか、その人気、女子の方が支えてきているというようなことを私御紹介申し上げましたし、今先生からもそういったことについて触れられたわけでございますけれども、そういった従来から持っておる身近な、そしてある意味で実務的な、職業的な面も兼ね備えた教育を提供しているというところにそういった要素、人気もあったものだと思いますし、そういうメリットというようなものはこれからも十分に生き続けると思いますし、また、それも大きく発揮していくということは、短期大学にとって今後とも重要であろう、このように考えております。

 こういった制度改正を契機に、短期大学がその個性、特色をより一層発揮した教育研究を展開して、ほかの高等教育機関と相まちまして、高等教育全体として国民の多様なニーズにこたえていく、こういったことを私どもとしても大いに期待しているところでございます。

城井委員 多様な生涯学習の機会の場を確保していくということは、とても大事だと私も思います。

 その上で、先ほど触れられた短期大学の果たす役割ということで、教養の部分と実務の部分と二つを合わせたという御答弁があったかと思いますけれども、先ほどの我が国におけるニーズというものに目を向けましたときに、最近、とりわけ学生の中でいわゆる実務に対する志向が高まっているという部分があろうかと思います。

 その意味で申しますと、これまで短期大学に我々が期待をしてきた教養と実務の合わせわざという部分で、特に実務の部分に目を向ける学生の数がふえていることにかんがみますと、その実務に特に焦点を当ててきたこれまでの既存の専門学校との役割の違いというものが、なかなか見えにくくなっているのではないかと考えるわけですが、実務という点から見たときの短期大学と専門学校の違いと申しますか、その役割分担というものを、お考えがあるのでしたらお聞かせいただきたいんです。

石川政府参考人 短期大学と専門学校との違いといいましょうか、その特徴に関するお尋ねでございます。

 この点につきましては、ただいま先生の方からもお話がまさにございましたように、専門学校は基本的に、特別な、そして深い意味での専門的な、職業的な知識、技能を身につけるといったような教育に特化をされた学校である、このように考えられるところでございますし、そういった位置づけであるわけでございます。

 また、ただいま御紹介ございましたように、短期大学につきましては、一定の教養教育といったものをベースにいたしまして、その上にさまざまな生涯教育の視点、あるいは職業教育の視点、そしてまた実務的な技能を身につける、こういう視点が組み合わさっている、そういった性格の高等教育機関である、このように理解をしております。

城井委員 実際、そのような御理解に立っておられるということですと、今、私が先ほど申し上げましたような実態をどれぐらい調べておられるかという点についてもあわせてお伺いをしておきたいと思うんです。

 例えば、実際に短大に通っておられながら専門学校に行かれるという、いわゆるダブルスクールの状況ですとか、あるいは出られた後にいま一度専門学校に通うといったような状況というのが現状としてあるわけですけれども、そういった例えばダブルスクールの状況についてお調べになっておられますか。

石川政府参考人 ただいまお尋ねのございましたダブルスクールの状況というようなことは、そういった状況があるということは耳にしておりますけれども、大変恐縮でございますけれども、今手元にその実態の資料は持ち合わせておりません。そういった状況でございます。

城井委員 実際にお調べにはなっているんでしょうか。

石川政府参考人 現時点では、私どもの方でそういった調査は行っていないところでございます。

城井委員 まさにこのダブルスクールという状況は、国民の多様なニーズを一番反映した状況なのではないかというふうに思っております。政府の側で、あるいは国の側で、それぞれの学校の役割分担というものをある程度規定するという形にしても、実際にそういった部分が出てきているとすれば、そういう最新の実態についてもぜひ文部科学省として把握をしていただきたいというのを強く要望したいと思いますので、お願いいたします。

 それでは、次に移りたいと思いますけれども、先ほどのお話も伺っておりますと、これだけの、非常に短期大学に対する引き続きの大きな期待というものがあるわけですけれども、それでは、なぜ今まで学位授与のための改正というものをこの時点までやってこなかったのかという根本的な疑問が一つあるわけですが、なぜ今まで学位授与のための改正をやってこなかったのかという点について、お聞かせいただきたいと思います。

石川政府参考人 短期大学につきましては、昭和二十五年に戦後の暫定的な制度として発足をいたしまして、昭和三十九年に恒常的な制度となったわけでございますけれども、学位、称号等の制度は未整備のままで推移をしていたわけでございます。そこで、平成三年に、学士の学位化等の学位制度の見直しに合わせまして、短期大学の発展状況も踏まえまして、短期大学卒業者に準学士の称号を付与するということにしたところでございます。

 そうした状況で推移をしてまいったわけでございますけれども、しかしながら、近年、アメリカですとかイギリスにおきまして、短期の高等教育の課程を修了した者にディグリー、これは日本語に訳しますと学位ということになるわけでございますけれども、これが授与されるようになっておりまして、グローバル化が進行する中で、国際的な通用性の観点からも、短期大学の課程を修了したことをもって、称号ではなくて学位とすることが求められるようになってきている、こんな状況が生じてきておるわけでございます。

 さらに、短期大学関係者からも、短期大学の制度的な位置づけを明確化するために学位授与を可能とすべきである、ぜひ学位授与を創設してほしい、こういった要望が高まってきておりました。このような中で、本年一月、先ほど来お話が出ておりますけれども、「我が国の高等教育の将来像」という中教審の答申におきまして、「短期大学における教育の課程修了を学位取得に結び付けるよう制度改正を行うことが適切である。」こういった提言が行われてきたわけでございます。

 このような状況を踏まえまして、今回短期大学卒業者に短期大学士の学位を授与できるように、今般、学校教育法の一部を改正する法律案を提出させていただいている、こういうことでございます。

城井委員 ただいまの御答弁の中にもございましたけれども、平成三年の学校教育法改正の中で、いわゆる準学士と称することができるようになった、では、その称することができるようになった後の短期大学及びその卒業された方々の社会的位置づけというのはどのように変化をしたというふうに評価をされておられるんでしょうか。

石川政府参考人 平成三年に、短期大学卒業者に対しましては準学士の称号を付与するということにしたわけでございますけれども、この改正によりまして、我が国社会におきまして、短期大学あるいはその卒業者の位置づけが具体的な形でにわかに大きく変化したということは、率直に申し上げてなかなか言いがたいところがありますけれども、この制度の改正後、既に十年以上が経過しておりまして、関係者の間において短期大学の卒業をあらわすものとして準学士の称号はかなりといいましょうか、しっかり定着をして、適切に評価されているものと受けとめられております。

 また、短期大学自身もこの制度改正等をきっかけに、学習歴の評価につながります教育の質の維持向上への意識を大変高めてきたところでございますし、身近な高等教育機関として、教養と実務が結合した専門的な職業教育ですとか、あるいは先ほど来申し上げておりますが、生涯学習機会の提供、充実に従来以上に努力するようになってきている、このように私どもとしては考えているところでございます。

城井委員 そうしますと、これまで学位授与でなかったことによって現在起こっているとされる不都合が実際にあるのかどうかという点で申しますと、先ほどの御答弁を確認しますと、いわゆるアメリカとイギリスにおいてディグリーの授与ということがされる流れになってきたものに合わせてきているという点、それから、短大側からの要望があったという点をもってということは先ほど触れられましたけれども、それ以外に、では、いわゆる物理的な不都合があったからということではないということなんでしょうか。また、今回の学位授与への改正というものは平成三年の改正時には想定外だったのかという点、あわせてお聞かせください。

石川政府参考人 お答えを申し上げます。

 具体的に学位が授与されていないという状況であれば、例えばどのような不都合が生じているのかというようなお尋ねかと存じます。

 短期大学につきましては、教育研究上、大学の一つの類型としての特色を有して、我が国の高等教育に大変大きな、重要な役割を果たしてきているところでございまして、国民のニーズにもこたえている一方、その個性、特色が必ずしも明確になっていないというようなことなどから、学生確保の点などで厳しい状況に置かれているなどの問題も抱えているところでございます。

 そして、最近、例えば英国において、先ほども御紹介申し上げましたけれども、短期高等教育機関の修了者に授与される学位として、ファウンデーションディグリー、こう称しておりますけれども、こういったものが導入され、あるいは米国においても、短期高等教育の修了者に授与されるアソシエートといったようなものが学位として定着しつつある。グローバル化の進む国際社会の中でこういった状況が生じてきているわけでございまして、短期大学修了者に学位を与えるという傾向が進んできているわけでございます。

 例えば、こういった中で、我が国の短期大学卒業者が諸外国に留学をする際の転入、編入などの局面におきまして、あるいはまた我が国に来られました留学生の方々が帰国後にきちっとした正当な評価が受けられるか。こういった点などにおきまして、いわゆる国際交流面に、そういう側面で我が国の短期大学が国際社会の中で必ずしも有利ではないといいますか、むしろ不利な状況となってきている、こんなようなことも出てきておるわけでございます。

 こういった状況等も踏まえまして、今回、この学位制度の創設といったようなことを御提案させていただいているわけでございます。また、昔にはそういった状況はなかったのかというお尋ねもございましたけれども、この点につきましても先ほど御紹介いたしましたように、諸外国がその当時はまだそういう短期の高等教育機関の卒業者に対して学位を授与するというような環境が醸成されていなかった、あるいはそういう実績も十分に積み上がっていなかった、こういった状況があるわけでございまして、現在の状況をしっかり見据えさせていただくとしますと、国際的にもそういう状況が十分に整っている、こういう認識をしているところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 今の御答弁の中で、国際交流面での必要性からという趣旨の御答弁があったかと思いますけれども、確かに、今回の短期大学における学位授与を行えるようにするという改正内容は、最初に伺った中教審答申「我が国の高等教育の将来像」においても、国際的通用性を確保する必要性並びに各短期大学における個性、特色を発揮した教育の一層の充実を図る必要性から提言された内容であります。

 ただ、例えば、この国際的通用性の確保ですね。一体どの点をもって学位の授与と関係しているというふうに言っているのか、正直言ってよくわからない部分があります。

 少し具体的に伺いたいと思いますが、この学位の国際的通用性にかかわるといえば、先ほども答弁の中にございましたように、言わずと知れた学位を持っている方、卒業者であります。この卒業者の中でも、日本の短大から海外へ留学あるいは就職などをする方、また逆に海外から日本の短大へ来て学んで自国へ帰る方というのが恐らくその関心層なんだろうというふうに推測はいたします。

 ここで、実際に短大から海外へ留学されている留学者の数、それから海外から我が国の短大へ留学されている方の数を具体的に数字で示していただきたいと思います。できれば、その推移もあわせてお聞かせいただければと思いますが、お願いいたします。

石川政府参考人 短期大学における学生の国際交流の状況についてのお尋ねでございます。

 平成十六年の三月に短期大学を卒業して外国の大学等に進学した者の数、これは二百二十二名でございます。そしてまた逆に、十六年五月現在でございますけれども、短期大学におきます留学生の数、これは我が国の短期大学でございますけれども、この数は三千四百八十一人ということになっておりまして、近年の傾向といたしましては、全体としてその数字、水準は増加傾向にございます。これが現在の状況でございます。

城井委員 今のお答えですと、日本の短大から海外に留学された方が二百二十二名で、海外から日本の短大へ来られている方が三千四百八十一人ということで、全体としては増加傾向だというお答えだったんですが、日本の短大から海外へというのが三けたですね。今の全体の学生数からすると、ごくごく限られた状況かと思うんです。

 その点を踏まえてもう一点お伺いするとすれば、では、こうして学位の創設まで行った上で、海外でも通用する人材をこれからどの程度ふやしていこうというお考えがあるのか、例えば目標数値等があるのかという点について、お聞かせください。

石川政府参考人 これから短期大学における卒業者として学位を取得された方、これがどんな数字になるのか、あるいは私どもの方で例えば目標を立てるか、持っておるか、こういったお尋ねかと存じますけれども、今、私どもとして具体的な目標を定めてそれに向かってというようなことを必ずしも考えているわけではございません。

 確かに、先生がお話しされましたように、また私が先ほど御紹介いたしましたように、我が国の短期大学の卒業者として海外の方に進出しておられる方、二百二十二名と大変少ないわけでございますけれども、今般の改正をお認めいただいて、短期大学卒業者に学位というようなものがしっかり与えられる、そういった暁には、私は、こういう海外へ積極的に出ていこうという学生さんはもっとふえるだろうと思いますし、そして、こういったことを軸にいたしまして学生の国際交流というようなものはますます盛んになっていくだろう、こう強く期待をしているところでございます。

城井委員 今お答えいただいたような内容、理解できるわけですけれども、しかし、今お答えいただいたような内容が、この学位の改正にかかわるもととなりました中教審の答申が出てくるまでの議論の間で、どれぐらい具体的にされたか、具体的な意見として出てきたかという点については確認をしておかなければならないと思います。今のお答えはお答えで受けとめさせていただきますけれども。

 その中教審の段階での議論、私も公開されている議事録を見ました。中教審の大学分科会の制度部会における短期大学士の創設についての議論の議事録です。ホームページで公開されたものしか見ておりませんので、もしそのほかのものがあれば御紹介いただきたいと思いますが、その短期大学士の検討の経緯の内容を見る限りで申しますと、今回この改正で出されている準学士の学位化に関する議論はほぼないと言っていい状況ではなかったかと見ております。

 さしたる意見もなかったと言わざるを得ないと思うわけですが、この検討経緯の中で出てきた具体的な意見について、どういった立場の方から、具体的な個人名は恐らく差し控えられるかと思いますけれども、どのような意見が具体的に出てきたかという点についてお聞かせいただきたいと思います。

石川政府参考人 今回の短期大学卒業者に対する学位の授与といった御提案、あるいは、その前の段階としての中教審の答申でのそういった提案、指摘、これに至る議論の経過というお尋ねでございますけれども、中央教育審議会の「我が国の高等教育の将来像」といったような答申の取りまとめに当たりましては、主に審議会の中の大学分科会の制度部会というところで、社会や時代の変化に対応した短期大学の位置づけですとか、あるいは短期大学卒業者に与えられる従来の準学士の学位としての位置づけ等を論点の一つとして審議が行われております。

 審議の中では、例えば、現在、短期大学の卒業者には準学士の称号が付与されているけれども、これは国際的に見れば正式な第一学位に位置づけられるべきものではないかというような指摘ですとか、あるいは、短期大学教育の実績を踏まえますと、短期大学を学位を授与する課程として位置づけるよう考慮が必要という指摘がされているところでございます。また、委員の中には、当然のことながらといいますか、短期大学関係者も何人か入っておりますし、そういう方々からは積極的にそういった御意見が出されているところでございます。

 また、審議に際しましても、短期大学の関係団体から審議会といたしましてもヒアリングを行うなどしましてその意見の把握に努めてきたところでございまして、短期大学卒業者に学位が授与されるということに対しまして大きな賛意が、あるいは賛意というよりは強い要請と言った方が的確かもしれませんけれども、そういった気持ちが示されているところでございまして、学位を与えるという社会的責任への自覚に立って教育研究の充実に取り組むべきであるというような決意、あるいはそういった意見も出されているところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 もう一つだけお伺いをさせていただきたいと思います。この短期大学、学位の創設以外の取り組みについて、先ほどの西村委員の質問への御答弁の中でありましたもの、一つがいわゆる短期大学自体が努力をしていくという点と、それからもう一つが国としての支援もという、この二つに触れられたかと思うんですが、では、具体的に今回の学位の創設以外で、今後、短期大学の取り組みに対して国として支援をしていく具体的な施策についてお示しいただきたいと思います。

石川政府参考人 短期大学の振興に向けた支援の施策、私どもの取り組みの内容についてお答えを申し上げさせていただきたいと思います。

 現在、短期大学におきましては、資格の取得ですとかビジネス、あるいは語学など、社会生活に役立つさまざまな授業を展開する新たな学科への転換など、既設学科の見直しが進められているところでございます。

 また、米国のコミュニティーカレッジをモデルにいたしまして、地域の多様なニーズに対応して多彩な科目と柔軟なコース展開を目指す、いわゆるこれは地域総合科学科と呼んでおりますけれども、そういった構想への取り組みも進められているところでございます。

 このように、各短期大学が社会の多様なニーズに機動的に対応し、一層主体的な組織改編が行われるよう、例えば、平成十四年には設置認可制度を弾力化いたしまして、これまで認可事項であった学科の設置ですとかあるいは収容定員の変更を、一定の要件のもとで届け出事項といたしております。この結果、短期大学におきます教育研究組織の見直しも大変活発に行われ始めているところでございます。

 さらに、短期大学の教育改革の取り組みを促進するために、特色ある大学教育支援プログラム、先ほどちょっと御紹介をいたしたかと思いますが、そういったものなど国公私を共通いたしました支援の充実を図るとともに、私学助成を充実するなど、その支援に努めているところでございまして、今後とも、さまざまな制度改正を初めとしてさまざまな施策を総合的に展開して短期大学の発展を支援していきたい、このように考えているところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 それでは、短期大学についてはこのあたりにとどめさせていただくといたしまして、次に、大学の教員組織の整備並びに今後の大学における教育及び研究のあり方について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、現在の教員組織に生じている問題点について、文部科学省としてここが問題だと考えている部分についてお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 大学教員の職のあり方等、大学の教員組織のあり方につきましては、従来よりいろいろな場で検討課題として議論されてきているところでございます。

 平成八年の大学審議会の答申におきましては、助手の職務内容や名称の見直し等を含めた教員組織のあり方について検討の必要性がある旨、指摘されているところでございます。また、平成十三年三月に閣議決定されました第二期科学技術基本計画におきましては、若手研究者の自立性向上の観点から、研究に関してすぐれた助教授、助手が教授から独立して活躍することができるよう、制度改正も視野に入れつつ助教授、助手の位置づけの見直しを図ることとされているところでございます。

 このように、現在の大学の教員組織というのは、若手の大学教員が必ずしもその自主性あるいは独自の発想を生かした活動を展開する上で、適切なものとなっていないのではないかという御指摘がなされているところでございます。

 きょうも、私、閣議で報告いたしましたが、平成十六年度の科学技術白書におきましても、こういった若手研究者、あるいは女性研究者、さらに外国研究者のもっと活躍をというふうなことも出ているわけでございますが、そういった中で、若手教員がみずからの資質、能力を十分発揮して活躍ができるように、助教授や助手の位置づけ等の見直しを行うこととしているところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 そうした数ある問題点を踏まえまして、今回の法改正によって実現される大学の教員組織の整備によって、具体的に一体どのように教育や研究、特に、今大臣が触れられました若手研究者による教育あるいは研究が活性化されるのでしょうか。人材育成あるいは学術研究の面でどのように改善されるのか、このもたらされる成果について具体的にお聞かせいただきたいと思います。

石川政府参考人 このたびの改正によりましてもたらされる具体的な成果、メリットについてのお尋ねでございます。

 従来、助教授ですとか助手は、教授の職務を助けることを主な職務として規定をされていたところでございまして、今回の改正によりまして、各大学がそれぞれの教員の職務内容を主体的に定めることが可能になったわけでございます。

 これによりまして、各大学の実情や各分野の特性を踏まえました教育組織の編制が可能となるわけでございまして、特に若手教員が大学の教育研究に係るみずからの資質、能力を十分に発揮して活躍するようになる、こういったことが大きく期待されるわけでございます。

 また、助教の職が新たに設けられることによりまして、将来の教授等を目指す者が最初につく若手教員の職ということが明確化されたわけでございまして、これとあわせまして、各大学におきまして若手教員が柔軟な発想を生かして研究活動を行い、将来の大学の教育研究の中心を担う者としての力量を養うための環境がより一層整備される、こういったことが期待されるわけでございます。

 さらに、近年、大学院の整備が進んでいるわけでございますけれども、その量的規模も拡大をしております。こういった中で、組織的あるいは体系的な教育の充実が強く求められているわけでございますけれども、今回の改正によりまして助教が新たに設けられ、そして大学院生の指導に当たるということが可能になることから、大学院教育につきましても、これが一層充実されるというようなことを私ども期待しているところでございます。

城井委員 今の部分を少しだけ言いかえた形になるかもしれませんが、確認なんですけれども、今回の改正で、ある意味、教授、准教授、助教、それぞれのお立場で、恐らく教育面でも研究面でも独立性が高まるのではないかというふうに想像いたします。

 これまで教員組織にあったとされる教授を頂点としたピラミッド構造のような形はこれで改善をされるという方向を期待しているのではないかというふうに受け取っておるわけですが、この認識でよろしいでしょうか。

石川政府参考人 そういった大きなメリットも期待できるのではないか、このように考えております。

城井委員 ありがとうございます。

 ただ、その期待の部分、私は、少々疑問と申しますか懸念を持っております。というのは、今回の組織改編を行いましても、今申しました教授を頂点とする大学内におけるピラミッド構造というのは変わらないのではないか、結局、改編前と同じ状況になるのではないかということを非常に懸念いたしております。

 むしろ、今回の改正でその力の構造が強まり、恣意的な任用につながるおそれがあるのではないかという指摘をする声も、大学の現場の一部からでございますけれども、出ております。イメージでいうと、ドラマに出てくる医学部に見られるような、「白い巨塔」のような感じかもしれません。

 特に、研究内容を適切に評価していけるのか、人事や採用といった面で、そうしたそれぞれの人材の研究内容を適切に評価できるのかという点はとても心配をするところです。狭い専門領域ほど、同じ大学の中でそういった研究内容の適切さを評価できる人材は限られるのではないかというふうにも思います。結局、直属の教授しか判断できないような状況になってしまうのではないか。先ほどの御指摘にもありましたが、論文の数などいわゆる外的な要素のみで判断をするということに偏りがちな危うさもあります。

 この新しい准教授、助教、加えて新しい助手などの任用方法について、こうした懸念があると思いますが、この懸念される点について、お考えをお聞かせください。

石川政府参考人 若手の教員の任用ですとか昇進に対する御懸念が示されたわけでございます。

 大学教員の採用あるいは昇進等におきましては、そのふさわしい能力等を有するか否かにつきまして、まずもって公正かつ厳正な審査を行うといったようなことが大変重要であり必要である、このように考えられるところでございます。

 その際、例えばアメリカにおきますテニュア審査、こういったところにおきましては、大学外の該当する専攻分野の専門家に意見を求める等の工夫がなされている、このように承知しておりますし、こういったものを一つの参考にするというようなことも有力なことであろうと考えております。

 それから、新しく准教授や助教を採用する際に、当然のことながら、内部昇進に限定をするのでなく、広く公募を行うといったようなことが大変有意義であろうと考えられておりまして、公募を行う大学の数も、現実にますます増加をしているところでございます。

 いずれにいたしましても、どのような選考や募集の方法を採用するかといったようなことは各大学が判断すべき事柄でございますけれども、本当にすぐれた人材が公正かつ厳正な審査で採用されますように、責任の所在の明確化ですとか、あるいは手続の透明性を確保していくといったようなことがこれからも大変重要になっていくのではないか、このように考えているところでございます。

城井委員 今御答弁の中で触れられました米国の決め方の一例、この例を参考にというお答えでございましたけれども、実際にそういった方法を導入している日本の大学というのはございますか。幾つぐらいございますか。

石川政府参考人 現実にどの程度のところで採用しているかということについては、恐縮でございますけれども、しっかり把握できておりません。ただ、アメリカでこういう取り組みが行われているということは、私どもの国においてもこれは大いに参考にしていいのではないか、こういう視点から申し上げた次第でございます。

城井委員 把握をされていないということでございますので、もう一つお伺いいたしますが、先ほど御指摘を申し上げましたように、大学自体が決定するとされる人事、採用の決定の方法、この部分に関して、では、文部科学省として、その決定の方法についての一定の基準ですとかあるいは指導といったものは、この米国の例を参考にしながらなども含めたことになるかもしれませんが、そういったことは行わず、どちらかというと大学に任せるという認識でよろしいんでしょうか。

石川政府参考人 教員の任用につきましては、基本的に、それぞれの大学が現行制度等、あるいは関係法令等も踏まえながら、それぞれの大学において考え、任用を行っていくべきものでございまして、私どもの方でそういったルールとか基準を決めるような性格のものではないと考えております。

城井委員 そうすると、大学の自主性に任せた場合に、恣意的な任用というものが出てきた場合に、それをどこでチェックするのか、チェックするのがだれかといった場合には、どの点でその部分をチェックするんでしょうか。文部科学省はそこにかかわらず、大学の自主性に任せるということならばという点からお願いします。

石川政府参考人 基本的には、ただいま申し上げましたとおり、大学における教員の採用につきましては、大学それぞれの判断に任せるべきことと考えております。どの程度の不都合があったときにどの程度の対応をというふうな先生のイメージ、おっしゃっているイメージ、ちょっとその辺ははっきりつかみかねますけれども、私は理解が難しいところでございますけれども、基本的には各大学の自主性とその判断に基づくべきもの、このように考えておるところでございます。

城井委員 今申し上げた、いわゆる恣意的な任用というのを少しだけ具体的に申し上げますと、文系、理系で申しますと、特に理系の方面がそういう点が強いと思いますが、各教授ごと、研究室ごとということになるかもしれませんけれども、そこについて、非常に限定された狭い分野で学んでいる大学院生、それから今後ですと、助手、助教、准教授といった形になるかもしれません。そういった非常に限られた分野に連なる研究者の間での、人間関係を含めてその中でのやりとりで、恐らく大学の研究室内あるいは大学の学部内自体における人事、採用が決まってくるだろう。そうすると、そこの人間関係に強く依存してしまうと、いわゆる研究者としての資質や研究内容の成果の優秀さとかいったところではなくて、人間関係が例えばこじれてしまっている場合に、そこで、あいつは採用ができないというような形でけられてしまうような例が出てくるのではないかというところがある。

 先ほどの公募といったところも、まだまだ大学間の交流が進んでいない、あるいは、先ほど申し上げましたように、分野自体が非常に狭い場合に、ほかの大学ではなかなかその分野をサポートできないところがある中で、ある意味で、教授や准教授といった上司に当たる方々がかえって天井をつくってしまう例が出てくるという懸念が現在の大学の現場でもある。

 とすると、そういった懸念を振り払うのに、先ほどの文部科学省さんのお答えですと、文部科学省としてはその部分にはタッチをしません、大学の自主性に任せますということだったら、ある意味で実際に公正で厳正ではない人事、採用の判断、決定が出てきた場合に、どこでチェックをするのかということをお伺いしているわけです。この点について、もう一回お願いします。

石川政府参考人 公正でない、あるいは恣意的な人事が行われた場合に、どこでどうチェックするかといった点についてのお尋ねでございますが、基本的には、教員の採用、それから任免についての人事につきましては、それぞれの大学が判断されるべき事柄であると私どもは考えておりますし、そしてまた、本来、それが大学が持つべき良識であろうと思っております。

 私どもは、むしろそういった恣意的な、あるいは余り適当でない人事が行われるようなことがないように、例えば、公募制を積極的に導入すべきであるとか、あるいは外部のレフェリーを設けたらどうかとか、そういうさまざまな公正で透明性のある任用方式を心がけるべきだ、そういったことを強く呼びかけ、あるいは注意喚起をしていくことによって、そういう公正さをこれからもできる限り担保していきたい、このように考えているところでございます。

城井委員 大学の現場における任用については、やはり師匠と弟子という非常に濃い人間関係が善とされがちなところもありますし、その点についてはしっかり今後見ていってほしいと思います。今後、問題が出てきてからではおそいというふうに思いますので、ぜひお願いをいたします。

 さて、次に移らせていただきたいと思います。

 今回の法改正で出されております法律案の内容を見ますと、先ほど触れました中教審の大学分科会から出された答申の内容と少々相違点があるのではないかと思っております。中教審の段階での「審議のまとめ」にはあったけれども、法律案には含まれていない内容、以下の二点が盛り込まれていないのではないかというふうに思います。

 一つは、各職種における資質に言及しているという点、それから助教の職務の限定、大学が定める特定の事項についてというところだと思いますが、この二点がなぜ盛り込まれなかったのかという点。盛り込まれないに当たって、どのような観点から文部科学省は検討を行って盛り込まなかったのかということについて、御見解をお聞かせいただきたいと思います。

石川政府参考人 今回の教員組織に関する改正案につきまして、中央教育審議会の答申で触れられておる指摘内容との差についての御指摘でございます。

 中央教育審議会の大学の教員組織の在り方検討委員会の「審議のまとめ」におきます助教の職に関する記述におきましては、ただいま御指摘のありましたような文言があります。また、同時に、そのまとめにおきましては、助教は将来の教授、准教授を目指す若手教員が最初につく職である、そして教授等と同様に教育研究を行うことを主たる職務とするが、責務等の点において教授とは異なる職である、このようにも言われているわけでございます。

 本法律案を作成するに当たりましては、これらのことを総合的に踏まえつつ、教授、准教授の職務の規定ぶりとの関係なども含めまして、法制上の観点から整理を行いました結果、ただいまお示ししておりますように、「専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の知識及び能力を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。」このような規定ぶりにするということにしたわけでございます。

 そういった意味で、もう少し言葉をかえますと、「審議のまとめ」におきましては、助教が担うこととなる具体的な職務に即して、大学、学部等の定めた特定の事項についてという文言を付すことが提言されているわけでございますけれども、例えばこのような文言をそのまま規定するというような形をとるといたしますと、これは法制的な見地から見ました場合には、教授等も大学や学部等の定めた特定の授業科目や研究プロジェクトに従事するといったようなことがあり得るわけでございまして、教授等と助教の職務の違いをあらわすことが非常に困難になるというような状況がございます。また、職務を限定的に書くということが、若手教員の職であるという位置づけをあらわすことには条文上必ずしもならないというような事情もあろうかと思っております。

 こういったようなことを踏まえまして、今回は、中教審の検討結果の趣旨、その実質的な意味を極力きちっと生かした範囲で、法制的に成立する規定ぶりとして現在の法律案の文言を採用させていただいているところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 では次に、教員の新しい名称についてお聞きしたいと思います。

 准教授、助教、どうもいまだに耳なれない言葉の響きで、少々戸惑うところがあるわけですけれども、この名称、特にこの名称の国際的通用性の議論というものが不十分なのではないかと感じる部分が具体的にございますので、御指摘を申し上げて質問をさせていただきたいと思います。

 まず、先ほどの響きもそうなんですが、非常に不自然な名称だという点でございます。これまでの名称についての問題が単に翻訳の問題であるならば、英語の訳語を統一すればいいのではないかと思うわけです。英語の訳については法律には書き込んでいないわけですから、そちらで対応するという考え方もあるのではないかというふうにも思うわけであります。

 もう一つ、この日本に生まれ育った人間の一人として見逃せない点があります。それは今回の名称、准教授及び助教が、アジア圏、言いかえますと漢字文化圏との通用性が確保されていないという点でございます。まず准教授、准教授は、中国あるいは韓国では副教授という訳が定着をしているのは恐らく御承知のとおりかと思います。助教については、韓国や台湾では研究者としてみなされてはおりません。

 そういった点を踏まえると、助教は助教授、助手は助教に変更する方が、東アジアにおける国際的通用性という観点からは妥当だという意見もあるわけでございます。今後使う教員の方の名刺ですとかあるいは紹介文に一々解釈をつけたりするわけではありませんので、このままですと、漢字の表の意味、この漢字の字面から混乱が起こるということは避けられないのではないかというふうにも思います。

 漢字文化圏における国際的通用性を無視している今回の名称について、大臣、いかがでしょう、ある意味で、英語の訳語は欧米の大学向けには通用するかもしれませんけれども、今の漢字をそのままアジアの方々から見たら混乱されるわけですが、この点、どうお考えなんでしょうか。ぜひ御見解をお聞かせください。

石川政府参考人 具体的なお尋ねでございまして、また少しくそういった点も御説明させていただきたいと思いまして、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 ただいま御指摘がありましたように、中国や韓国におきましては副教授という名称が定着をしておりますし、韓国や台湾におきましては助教は研究者とみなされていないといったような状況があることは御指摘のとおりでございます。

 ただ、今回、こういった名称を定めるに当たりまして、中央教育審議会でも相当長い時間をかけて幅広い議論が行われたわけでございまして、例えば、准教授の職を設けることにつきましては、教授の次に位置づけられた職という意味を端的にあらわしたものがいい、そういうものにするべきだというようなことで、次に位するという意味の准を教授に付した准教授という名称が最も適切である、このように考えられたわけでございます。

 また、助手のうちから設けられます助教につきましても、若手教員の職という位置づけをあらわすことができるというような観点、あるいは助教授や講師など、従来の他の職名との間で混乱や混同を起こさない、こういった点、そしてまた国語的、文化的な面から見ても、歴史的、社会的に一定の用例があること、こういったことなどが必要と考えられまして、中央教育審議会でこういった点につきまして総合的にさまざまな議論をしっかりとした時間をかけて行った結果、助教という名称が適切であるという結論を得たところでございます。

 そして、少しまた話が戻りますけれども、こういった趣旨から、准教授あるいは助教という名称を設けたわけでございますけれども、この中央教育審議会におきましても、その検討の場では、副教授という名称についても検討の対象として上がりました。ところが、副という字が、これは漢字の意味としては助けるというような意味を強く持っておる漢字であるということから、現行の助教授と同じく、実態や位置づけを適切にあらわすものにはならないんじゃないかといったようなこともあって避けたということがございます。

 そしてまた、助教につきましては、先ほど申し上げましたような主に三つの大きな要件でございますけれども、そういう要件から、助教といったものが一番適当な名称であるということで、これを採用しているところでございます。

 確かに、韓国あるいは中国におけるものとは少し職務内容が違う面がございますけれども、漢字文化圏におきます助教というような位置づけは必ずしも統一的なものではないわけでございますし、こういったことを考えますと、助教というような名称を用いるといたしましても、特に漢字文化圏における通用性に反する、あるいは著しい問題が起こる、そういったようなことにはならない、このように私どもは考えているところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 この名称について、もう一つ別の問題が今後あるのではないかというふうに思っております。ぜひお聞かせをいただきたいと思いますが、これまでに幾つかの大学では自由な職名の利用が認められておりました。例えば首都大学東京あるいは国際基督教大学などの私立の大学で自由な職名を利用するということについて、今後どうなっていくのか。今回の法案の成立後、そういった大学は引き続き使うことができるのか。大学の自主性、あるいは国際的通用性の観点から見てどうかという点、この使える場合の根拠となる法律も示していただきながら、御見解を伺いたいと思います。

石川政府参考人 ただいまお話がございましたように、首都大学東京あるいは国際基督教大学等におきましては、現在でも、学校教育法に定められた大学教員の職名以外の職名を用いたりしている、こういった実態があるわけでございます。

 もともと、各大学には、学校教育法に規定する職名を有する教員を大学設置基準に定められた水準を満たすように配置するということが求められているわけでございまして、またその一方で、大学設置基準を満たす場合においては、各大学における沿革ですとかあるいは教育研究上の理念に応じまして、学校教育法に位置づけられた職につきまして別の職名で呼称するということについても、実態上、慣行上、認められてきたところでございます。

 他の職との混同を来すような取り扱いがされていない限りは、その取り扱いは今回の改正後も基本的に変わるところではないもの、このように考えているところでございます。

 ただ、現実問題といたしましては、ただいまちょっと申し上げましたけれども、名称にはある程度の自由はありますけれども、実態面でほかのものと誤解をされるようなケースはやはりこれは避けるべきであろうと思いまして、そういったものについてはやはり不適切であろう、このように考えているところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 そういたしますと、今後も、いわゆる実態上そして慣行上使われているものについては、あるいは使いたいというものについては、ほかの名称との混同を来さない限りは使用することができるという理解でよろしいですか。

石川政府参考人 そのように考えているところでございます。(発言する者あり)

斉藤委員長 与党側の出席が少ないという指摘がございましたので、出席方要請、よろしくお願いいたします。

 質疑につきましては、引き続き。

城井委員 では、引き続き、与党の方々がお戻りになるのを待ちながら質問をさせていただきたいと思います。

 次に、准教授について何問か詳しくお聞きをしたいと思います。これまでの助教授と今回導入される准教授の違いというのはどこにあるか。先ほど来のお話ですと、これまでのいわゆる助けるという役割ではなくて、独立性を高めるという点については理解をするわけですが、そのほかにもございますか。

石川政府参考人 従来のといいますか現在の助教授と、改正後の准教授の違いについてのお尋ねでございますけれども、現在の助教授の職務につきましては、教授の職務との関係をもとに、教授を助ける、こういうふうに規定をされているわけでございまして、これに対しまして、改正後の准教授の職務は、みずから教育研究を行うことを中心に、「学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。」このように規定されているわけでございます。

 すなわち、既に現在でも助教授が教授から独立的に専攻分野の教育研究活動を行っているという例は非常に多いわけでございまして、またその職務内容につきましては、教授との関係という観点からではなくて、現実に行っている職務の内容に即して規定をするということが適当と考えられるところでございます。

 このような点にかんがみれば、実際上の助教授と准教授との職務上の違いはほとんどないものと私どもは考えているところでございます。

城井委員 では、そうした准教授にはどのような人材が充てられるというふうに想定されておりますか。具体的にお聞かせいただきたいと思うんです。

石川政府参考人 准教授にどういった人材が充てられるか、あるいはどういった人材が期待されるかということでございます。

 現在の助教授においても基本的にそうでございますけれども、大学の教育研究の中心的な役割を担う教授という存在があるわけでございますけれども、その次にはその教授という職を担うそれだけの能力や資格のある人材として、これまでは助教授、それから今後の准教授というようなものがそういった役割を期待されているわけでございまして、今回の規定におきましても、すぐれた教育研究能力、教育研究上の実績、こういったものが求められる職として位置づけられているところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 続いて、助教についても二、三お伺いしたいと思います。

 一つ目は、この助教になるための資格要件、そして二つ目に、期待される役割、三つ目に、ほかの職務との相違について教えていただきたいと思います。

石川政府参考人 助教についてのお尋ねでございます。

 助教につきましては、将来の教授等を目指す者が最初につく若手教員の職であるということから、大学教員としてみずから教育研究に従事し、その中で資質、能力を高めていくということが期待される職であります。また、このような教員組織におきます位置づけをあらわすために、学校教育法上、専攻分野における知識及び能力を有する者がつく職であるということを定めることとしているところでございます。

 これを踏まえまして、本法案が成立した暁には、中央教育審議会に諮問をいたしました上で、大学設置基準を改正しまして、具体的な教員資格を定めることとしております。

 現在、事務的には、中央教育審議会の大学分科会、そこに置かれました大学の教員組織の在り方検討委員会が取りまとめをいたしました「大学の教員組織の在り方について」、その「審議のまとめ」を踏まえまして、基本的に、修士または専門職学位を有するとともに、大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有することも求める、このような形にしたいと考えております。

 それから、助教とそれ以外の教員との違いについてのお話がございました。

 これにつきましては、例えば准教授は教授に次ぐ位置づけの職でございまして、すぐれた知識、能力、実績を基礎として教育研究活動に従事する、さらに資質、能力を高めていくことが期待されるという職でありまして、教員資格といたしましては、現在の助教授と同じような内容のものを考えているところでございます。

 また、教授につきましては、教育について責任ある位置づけの職ということで、特にすぐれた知識、能力、実績を基礎とした教育研究活動に従事するという職といたしまして、これに加えて、また教授会の構成員として大学における重要な審議に参画するといったような役割も負っておるわけでございます。このようなことから、教員資格といたしましては、現在と同様に、大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有するとともに、博士の学位を有し、研究上の業績を有するといったようなこと等を資格として求めることにいたしたい、このように考えているところでございます。

城井委員 今のお答えを踏まえて一点、確認でお伺いしたいんですが、今回の法律の改正案において、いわゆる教授や准教授に対しての助教、この助教とそれぞれの教授、准教授との職務上の関係について、この法律案の中で具体的に規定されておりますか。規定されているんだったら、どこかというのを教えていただきたいと思います。

石川政府参考人 このたびの改正案につきましては、教授、准教授それから助教とも、教育研究に従事をするといった意味で、その具体的な職務内容については同様の書き方をしているところでございまして、それぞれの関係について規定を設けているというものではございません。

城井委員 職務内容についてはわかりましたけれども、では、職務上の関係については法律には書いていないんですね。どこで規定をするんですか。

石川政府参考人 今回の教員組織に関します改正のねらいの一つの大きな点は、こういった規定をすることによりまして、従来の、例えば助教授は教授を助けるとか、あるいは助手は教授や助教授を助けるといったような関係中心の書き方から、実際の職務内容中心の書き方にするということでございまして、実際、現実的な組織を編制するということにつきましては、それぞれの大学の自主性あるいは独自性といったようなものを尊重していこうという考え方をもとにしているものでございます。

 そういった意味で、今回の新しい姿になりました暁には、そういった大学の教員の組織のつくり方について、さまざまな形あるいは独自性、そしてそれに伴った大きなメリット、こういったものも期待できるのではないか、このように考えているところでございます。

城井委員 そういたしますと、これまでのものが関係性に基づいていたものなので、今回の部分はそういうのではなくてという御説明なんですが、職務上の関係の部分については、これまでも非常に問題になってきたところだ、先ほど恣意的な任用というところでも御説明申し上げたようなところとも深くかかわる部分だと思うわけです。

 もう一点御指摘を申し上げると、先ほどございましたいわゆる「審議のまとめ」の中もあわせて見ますと、今回の職務上の関係については、法律上には書いていないものの、後ほど政令あるいは省令で手当てをするという形になるのではないかということを、「審議のまとめ」にある表現から推測をいたしますとそう考えるわけですが、この法律の施行後、政省令で、助教とそれぞれ教授、准教授との職務上の関係については規定をするということになるんでしょうか。

石川政府参考人 あるいは、先ほどあわせてお答えをすべきであったかもしれません。その点をおわびしなければいけませんが、先ほど御説明申し上げましたように、今回の新しい形はそういった教員の、例えば教授、助教授、助手という関係に基づいてその組織を定めるというような思想をとっておりません。

 しかしながら、それでは、それぞれの職が全部独立して、ばらばらになって大学に存在するのか、極端に言うと、そういった疑問も当然にわくわけでございます。私ども、それぞれの教員の独自性といったものは尊重していくということが大学の教育研究の発展にとって大切であると考えておりますけれども、かといって全員が一人一人、独立独歩、ばらばらでいいという点も、必ずしもそれがいいというふうに思っておるわけではございません。

 そういった意味からは、ただいま先生から御紹介のありましたような政省令、実際にはこれは省令レベルになると思いますけれども、そういったところで、それぞれの教員は大学の教育研究の例えば発展に向けて有機的な、あるいは有効な、有益な連携関係を保つようにしなければいけないとか、そういう観点のもとに組織編制が行われるべきであるとか、そういったことが望まれる、そんなような規定を置きたい、このように考えているところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 職務上の関係については後ほど省令でということのようですが、今の御説明、ちょっと矛盾したところがあるんじゃないかと思うので、少し詳しくもう一回聞きたいと思うんです。

 一つは、関係に基づく組織編制ではない、ないという形に今回の教員組織の整備はなっていると。ただ、そうはいいながら、ばらばらではだめなのでということになりますと、先ほどおっしゃっておりました有用な連携というのはまさに関係ではないかと思うわけですが、関係に基づかなくて有用な連携というのは何なのか。もう少し具体的に、関係に基づかない有用な連携を省令で定めるというのは、具体的にどのような形になるのかというのを聞かせていただきたいんです。

石川政府参考人 先ほどちょっと御紹介を申し上げましたけれども、具体的な大学設置基準の改正内容等につきましては、ただいま、まだ検討中でございますけれども、例えば、講座制、学科目制等の規定を削除いたしました上で、教育研究上の目的を達成するために必要な教員を置くこととする、そして、主たる授業科目は例えば専任の教授あるいは准教授が担当すべきこととか、そして助教等につきましてはこういった教育研究上の目的を達成するために、助教だけではありませんで、教授、准教授、助教等のすべての教員について、役割の分担あるいは連携等の組織的な体制が確保されるような、そういった視点で教員組織を編制すべきであるというような規定を置きたい、このように今考えているところでございます。

城井委員 職務上の関係を規定する省令についてはまだ成案がないということのお答えだったかと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、非常に、どうしても関係性に引きずられてしまうのではないかという懸念が大きくありますので、その点については、省令の文言を定める段階できっちりと議論をされた上でぜひお決めいただきたいということを、このことについてもお願いを申し上げたいと思います。

 では、引き続き質問をさせていただきたいと思いますが、今回の改正案の中で、先ほどの准教授あるいは助教については、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には置かないことができるというのが第五十八条一項の関係で定められておりますけれども、この教育研究上の組織編制として適切と認められる場合というのは具体的にどのような場合をお考えかという点、教えていただきたいと思います。

石川政府参考人 ただいま御指摘がありましたように、今回の准教授、助教、助手につきましては、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には置かないことができるというふうに規定をされているわけでございます。

 この規定の趣旨は、先ほども触れさせていただきましたけれども、それぞれの大学がそれぞれの理念等に基づいて、教育研究上の個性、特色を発揮して緩やかに機能分化をしていくということが考えられる、こういったこと等を踏まえまして、必ず置かなければならないというようなことにはしないで、それぞれの大学の理念あるいは専攻分野の実情等によりまして、教育研究上の組織編制として適切な場合には、准教授等を置かないことができるということとしたものでございます。

 具体的なケースは、これからさまざまなケースが出てこようかと思っておりまして、典型的なものとして御紹介できるかどうかわかりませんけれども、例えば、学生への教育に重点を置いて他大学において既に業績を確立しているベテランの教授の方々を中心に採用して、レベルの高い、あるいは教育に特化した大学を運営していこうというような場合、こんな場合はそういうケースに当たろうかと思います。

 また、例えば、最近の教育研究は非常に大きく目まぐるしくまた発展をしております。そういった観点で、例えば学際分野などにおきまして、教育研究分野の特性に応じまして、教授、准教授、助教等の重層的な教育体制をしいて一定の分野をより深く履修させるというような形よりは、教授のみを置いて幅広い関連領域を履修させる方が有効である、例えばそういったことが考えられるような、あるいはそういう方針をとられるような大学においては、特定の職を置かないというようなこともあり得るのではないか、このように考えております。

城井委員 ありがとうございます。

 そうすると、置かないことを踏まえますと、新しく設置される准教授及び助教、それから新しい形の助手、それぞれの配置される数というものはどの程度を見込んでおられるのか。その配置数の想定について、現在の助教授あるいは助手との比較という点から、もし可能ならば、踏まえてお答えいただければと思うんです。

石川政府参考人 この法律が施行された場合の、現在の教授、助教授、助手の構成比と比較して、新しい教授、准教授、助教、助手の割合がどのようになると予想されるかというお尋ねかと存じます。

 現在、大学教員に占めております教授、助教授、助手の割合は、それぞれおおむね教授が約四〇%、助教授が約二五%、そして助手が約二五%、こういう状況でございます。今回の改正におきまして、准教授は教授の次に位置づけられる職といたしまして助教授にかわって置かれるものでございますので、大学教員に占める准教授の割合は、現在の助教授の割合と大きく変わることはないのではないか、このように予想されるところでございます。

 また、今回の改正では、現在の助手の職につきまして、既に御案内のとおり、みずから教育研究を行うことを主たる職務として将来の教授等を目指す、そういった方々が最初につく大学教員の職としての助教、それから教育研究の補助を主たる職務とする職としての助手、これを明確に分けて位置づけるということにしているわけでございます。

 この点につきましては、全国の国公私立大学あるいは短期大学等の約一割を抽出いたしまして、私ども、調査を既にいたしております。そうしたところ、現在の助手の方々のうち約八割の方が、その職務実態は助教の職務内容と同様と見られるというふうに考えられるところでございます。そんなことから、大まかに、現在の助手の方々のうちの約八割の者が助教につくという形が推測されるところでございます。

城井委員 そうしますと、現在の配置数ということでいうと、准教授は助教授とほぼ同じ、助教については助手のうち八割で、新しい助手については古くの助手の同じく二割ということでございます。そうすると、そういうふうな組織自体が変わっていくという意味ではそういう数字の割り振りになると思うんですが、では、その部分を踏まえつつになりますが、職種が新しくなることで新しい雇用が生まれるのか、新規の雇用をどれぐらい見込んでいるのか。

 つまり、今まで助教授であったり助手であったりというのをされていた方が、名前が変わるというのは想定の範囲内だと。それに加えて、今回新しい名前ができることによって生まれる新規の雇用の部分についてはどれぐらいを見込んでおるか、この点を教えてください。

石川政府参考人 ただいま御紹介いたしましたように、基本的に、新しく准教授という職名が設けられるわけですが、その准教授は、今までの助教授のところにニーズ的には実質上移り変わるというような形になることが考えられます。

 そしてまた、新しい形での助教、そして新しい意味合いでの助手という方々については、従来の助手の世界を区分してこれを設けるということでございますので、そういった意味では、今回の職名を変える、あるいは新しい組織編制を法令上規定するということによって、直ちに新しく人材的な需要あるいはニーズがふえるということにはならないであろうかと思いますが、先ほど来御紹介申し上げておりますように、こういう組織編制、柔軟な組織編制がとりやすくするような改正、新しい姿、それぞれが活躍できる、そういう形の改正をするということによりまして、大学自体が活性化をしていく、あるいは活性化をさらに強く求めていくというようなことは大いに考えられるところでございまして、それに伴った需要というようなものも期待できるのではないか、こんなふうなことを考えております。

城井委員 この点をお伺いしたのは、いわゆるポスドク問題の解決の一助となるのではないかという期待があったのでお伺いしたんですけれども、直ちにそのような効果は見込めないというお答えだったかと思います。その点については理解をいたしました。

 続いて、新しい助手についてお伺いしたいと思います。法改正後の助手の扱いですね。これまでの助手と今回の新しい助手というのは、名前こそ同じですけれども、大分位置づけが変わるのではないかというふうに思っております。この新しい助手の扱いが、研究者という扱いになるのか、教員の扱いになるのか、そして、いわゆる事務職員や技術職員との具体的な相違点はどこにあるのかという点について、お聞かせいただきたいと思います。

石川政府参考人 新しい形での助手についての取り扱い、位置づけについてのお尋ねでございます。

 例えば本法律案におきましては、助手は、教育研究の補助を主たる職務として明確に位置づけるということとしているところでございます。このため、例えば研究者ということにつきましては、一般にはみずから研究を行う者を指すというふうに考えられることからすれば、これは教員ということについても同じ考え方が当てはまると思いますけれども、新しい制度における助手というものは研究者ではないということになろうかと思います。

 しかしながら、各法令による位置づけあるいは調査の趣旨によって、あるいは事業、いろいろなプロジェクト、そういったものを立てる場合の位置づけ、そういう場面では、それぞれの法令の趣旨あるいは調査の趣旨によって、研究者と同じ扱いをするといったようなことが適当であったり必要な場合も出てこようかと思っております。そういう場合には、研究者に含めるということも大いにあり得るのではないか、このように考えております。

 それから、改正後の助手と事務職員、技術職員などとの具体的な相違点についてお触れいただいたところでございますけれども、制度上は、事務職員及び技術職員は、大学または学部全体の観点から必要な事務ですとか、あるいは技術に従事する職として設けられているわけでございます。これに対しまして、新しい制度の助手は、所属組織の教育研究活動に直接必要な補助的な業務に従事をするというところが異なるものと考えております。

 ただ、この言い方ですとやや抽象的でございますので、それぞれの具体的な職務内容について少し敷衍をさせていただきますと、具体的な職務内容そのものについては、各大学において、分野ですとか個々の職員によって実態は多様になってくる。部分的には、あるいは個々の業務においては多少重なっていくようなこともあり得るのではないかと思います。

 一般的な例を挙げて御説明をさせていただくとすれば、例えば事務職員は、大学または学部全体の運営上の必要な人事、会計、庶務等に従事をする、これは比較的わかりやすい世界でございます。そして、技術職員につきましては、大学または学部全体に共通して必要な技術、技能を要する、例えば実験装置の維持管理ですとかあるいは材料の製作、加工、こういったものに従事をするといったことが通常予測されるわけでございます。

 一方、助手につきましては、所属組織の具体的な教育研究活動を補助する、こういった観点から、講義等のための教材作成の補助ですとか、あるいは研究プロジェクトに係る実験の補助あるいは観測といった活動、こういうものに従事をする。こういった形が一つの典型的な形態かな、このように考えられるところでございます。

城井委員 そうすると、基本的に新しい助手は研究者というような扱いにはならず、そして教員というような扱いにもならないという中で、いわゆる所属組織に限った補佐の仕事というのが主になるだろうという認識になろうかと思いますが、では、そういう新しい助手がその職についた場合に、将来のキャリアパスというふうな歩みをしていくことが想定されるのかという点についても、あわせてお伺いをしたいと思います。

 今、この法律案が前提としている仕組みですと、この新しい助手については、そのほかの助教や准教授とは違って、いわゆる昇進というものが前提にはなっていないのではないかというふうに思うわけですが、例えば、いわゆるポストドクターから助手、助手から助教、助教から准教授というキャリアパスがあり得るのか、あり得るとする場合にはどんな条件がつくのか。この点、新しい助手の将来のキャリアパスについてお聞かせください。

石川政府参考人 新しい助手のキャリアパスについてのお尋ねでございます。

 従来から、助手の配置状況や職務のあり方につきましては、各大学あるいは各分野によって多様でございます。

 特に最近は、教育研究の補助につきましては、ティーチングアシスタント、いわゆるTAでございますが、あるいはリサーチアシスタント、RA等が増加するとともに、競争的資金の間接経費によって大学が雇用し得るというような余地がふえてきたりしております。こういったことから、教育研究の補助を主たる職務とする者としての助手の配置あるいは職務内容のあり方というのは今後一層多様化していくのではないかな、このように考えております。

 また、助手についている方の将来の処遇や職業能力の開発あるいは将来の他の職への転換等を含めたキャリアパスということについて考えてみますと、この点につきましては、各大学や各分野の実情に応じて、それぞれの大学において判断することが基本的には適当であると考えております。

 例えば、それぞれの大学の判断によりまして、主任助手など、教育研究を補助することを主たる職務とする職につきまして独自の体系を設けるといったようなやり方、位置づけもございましょうし、それから、情報化、国際化への対応、あるいは入学者選抜等の専門性の高い職務が近時非常に拡大をしておりますので、そういう専門性の高い職務を担う職を事務局内に設けまして、こういった助手の方々との間で人事交流を行うというようなことも大いに考えられることでございます。

 それから、先ほど先生ちょっとお触れになりましたけれども、こういったものが大いに考えられるわけでございますけれども、助手の職についている個々人の資質あるいは能力によっては、そういう適性や資質、能力に基づいて、各大学の判断によって准教授ですとか助教等に採用されるといったようなこともこれまた当然にあり得ることか、このように思っております。

城井委員 ありがとうございます。

 今お答えいただきましたけれども、いわゆる本人の資質、能力に基づいてというところは当然あるんだろうと昇進については思うんですが、逆に、先ほど事例も挙げていただきましたが、職務規定がとてもあいまいで、それぞれにやっている仕事が違う、その上で昇進すなわちキャリアパスが各大学の判断に任されているということになれば、ある意味で専門性も発揮できずに、そして昇進も据え置かれる万年助手というようなものが生まれる可能性もあるという考え方もできると思いますので、ぜひこの点についてはしっかり見ていただければと思います。

 この助手についてもそうですけれども、今回の改正がいわゆる研究者の独立を主眼とした改正であるという点を考えたときに、それぞれの研究者の研究を支える手足となる人材というものをどうやって確保するのかという点についても確認をしておかなければならないと思っています。

 実際に教授のサポートを、例えば准教授や助教がしないということになると、先ほど来のお話ですと、その役割は主に助手が担うということになるかと思いますけれども、この教授などをサポートする人材をどうするのかという点、とりわけ若手研究者の駆け出しということの位置づけである助教の研究をサポートする人材をどうするのか、この点についてお聞かせください。

石川政府参考人 今回の改正につきましては、先ほど来御議論をいただいておりますように、例えば新しい准教授、そして助教、そういう若手のあるいは中堅の教育研究職員、こういった方々が積極的にその能力を発揮できるようにという観点から改正を行うものでございます。

 そういった意味で、それでは、それぞれの方々のサポートをするスタッフをどう確保していくか。これは、ある意味では今に始まった議論ではなくて、我が国の大学において、そういった教育研究、特に研究面においてすぐれた研究をしっかりと推進していくためには、やはりそういう研究をしっかりと支えていく人材、特に専門的な素養を持った人材、そういう方々をしっかり配置していくことが大切であるということが従来から言われているわけでございます。

 そういった意味では、これは今回の改正を契機にということに限らず、これまでも言われてきていることでございますし、私どももそういう観点を十分に頭に置きまして、大学における教育研究体制のさらなる充実に向けて支援を強めていきたい、このように考えておるところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 さて、そうした点も踏まえつつということになりますけれども、今回の大学の教員組織の整備を行っていただく際に、同時に考えなければならない部分があると考えております。

 それが、先ほど来取り上げさせていただいております大学教員だけではなくて、いわゆる教員の予備軍である、大学院の拡充で人数が格段にふえております若手研究者、特にポストドクターに対する研究職としてのポストあるいは財政的な支援のあり方、そして教員などにかかわる人事、採用、配置転換の流動性のあり方、これは先ほど来御指摘をさせていただきましたが、こういった点などがどのくらい同時に整備をされるか、この点がとても大事だというふうに思っております。大学院の拡充でふえている若手研究者、特にポストドクターに対する部分についても、とても大事だと思っております。

 実際に大学の現場に目を向けてみますと、私の友人にもたくさんおりますが、博士号を取得したのに定職につけない、余った博士号の人々がふえております。ふえ続けていると言ってもいいかもしれません。博士号の取得者が毎年大体一万五千人、平成十六年三月段階では一万五千百六十人だそうですが、生まれております。しかし、それに対して、常勤の研究職の空席は、毎年約三千人分、平成十六年では二千五百一人分だったそうです。

 それに加えて、日本学術振興会が採用しているこのポストドクターも含めて行っている特別研究員制度では、延べで六千人しか手当てをできていません。平成十七年度の新規採用分では千八百九十六人しか手当てをできておりませんし、実際にこの特別研究員制度も三年間の限定で、一人一回のみしか適用ができない。

 そうすると、この毎年約一万五千人生まれている博士号の取得者の中で、常勤の研究職にありつけない一万二千人が出てくる。その中で、三年分、つまり三万六千人のポスドクの中から、この日本学術振興会の特別研究員制度、その手の方々の中では学振員と呼ばれているそうですが、学振員に当たったというふうに言われる六千人を差し引いた三万人、つまり、一年で約一万人の人が研究職からあぶれる、そういうポスドクが生まれているという結果になっている状況でございます。

 お聞きしますと、文部科学省さんの方でも、この博士号取得者の進路を調べて分析をしていただいているというふうにも聞くわけですけれども、最近十年間で、実際にこの数自体も二倍にふえている、つまり、博士号ばかりがふえていって、その方々が行く進路というものが実際には見えてきていない。

 先ほどの約一万五千人のうちの一万人ちょっとは自然科学系の博士という状況だそうですけれども、こういった方々は、実際に大学の教員や公的な機関の研究者という職種を希望するわけですけれども、そういう職種での採用人数は、この十年間でさほどふえていない。しかも、民間の企業の方に伺うと、博士号を持っている人は社会的経験が乏しくて視野も狭いので使いにくいというような理由で、博士号を持っている方の採用を避けるという傾向があるとも聞いております。

 このために、実際これまでの博士の就職率は大体五割から多くても六割ぐらいというふうにとどまっておって、しかもこの十年間で一〇ポイントぐらい下がっているということだそうでございます。となると、本来ならば高度な専門知識を生かして社会のために活躍すべき博士が、全体の四割も職にすらつけないという博士余りの現象が年々深刻になっていると言わざるを得ないと思います。

 このことは今に始まった話ではなくて、これまでも、科学技術・学術審議会の人材委員会の第一次、第二次、第三次の提言、それぞれ平成十四年、十五年、十六年というところでも同様の指摘がなされておるところから見ても、今に始まった話ではないというのは明らかだというふうにも思うわけであります。

 大臣、将来大学教員にもと目しておるはずの博士号取得者、いわゆるポスドクと呼ばれている方々の部分はとても深刻な状況になっていると思います。この点について、御見解をぜひ大臣の方からお聞かせいただきたいと思うんです。

有本政府参考人 私から、大臣御答弁の前に、少し状況あるいは今御指摘の科学技術・学術審議会の提言の状況を御説明いたしたいと思います。

 今先生御指摘のありましたように、ポスドクのキャリアパスというところ、一つ重要なところは、当然でございますけれども、今回の改正案で創設を予定しております、先ほど来御議論がございます助教として大学あるいは研究機関において研究者として活躍していただくということが、一つ大きなキャリアパスとしてあるわけでございます。

 それ以外に、科学技術・学術審議会の人材委員会、これは民間の小林陽太郎富士ゼロックス会長に主査をお願いしているわけでございますけれども、ここでも、このポスドクのキャリアパスというところに非常に関心を持っていただいておりまして、先ほど申しましたようなアカデミックキャリアパスだけではなく、今後は産業界、マスコミあるいは行政、あるいは科学館とか博物館、こういった非常に多様な場所、それから、研究をやるだけではなくてその活動といたしましても、例えば最近非常にニーズが高まっております知的財産の管理あるいは技術経営、あるいは社会と科学技術との間のコミュニケーション、こういった非常に多様なキャリアパスをつくっていく必要があるだろうという御指摘を御提言いただいておるわけでございます。

 私どもとしましては、こういう御提言を踏まえまして、人材養成をする場合に産学官の連携で人材養成をやっていこう、あるいは、先ほど申しましたような社会的なニーズの多様性、あるいは学問が大きく変化をしている、あるいは融合しているということを踏まえての大学、大学院教育の工夫、改善、こういったところを今後しっかり取り組んでいきたいというふうに思っているわけでございます。

 具体的ないろいろな施策というのは、少しずつ手を打ってございますけれども、さらに、先ほども申しました人材委員会におきまして、この点非常に関心が高まっておりますので、さらに御審議の上、具体的な施策というものをさらに拡大していきたいというふうに考えておる次第でございます。

 以上でございます。

中山国務大臣 今、局長もお答えいたしましたけれども、これからの科学技術創造立国、それを支えるやはり非常に創造性豊かなすぐれた研究者をいかにたくさん輩出させるかということが一番大事なことだろう、こう思っているわけでございます。

 今話がありましたように、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選ばせながら、生活の不安なく研究に専念させる、そしてその能力を十分に発揮させる、そしてまた将来も見据えた研究ができる、そういう体制をつくっていくことは絶対必要だ、こう考えているわけでございまして、さまざまな支援策を講じているところでございますが、今後とも、それについては一段とやはり考えていかなければいけないと考えておるところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 今大臣がおっしゃったさまざまな支援策の中には、恐らくこのポスドクにターゲットを絞ったポストドクター等の一万人支援計画というものなども含まれておると考えておりますけれども、先ほど挙げられたより望ましいキャリアパスについても、こういったところでふえればいいなという希望の部分にすぎないところもありますし、また、これまでの支援についても、例えば、先ほど御紹介を申し上げた日本学術振興会の特別研究員制度についても、数年の期間が終わった後にはやはり就職難に直面しているというような状況もあります。そういう意味では、この施策も問題の先送りでしかないというふうにも思います。

 実際に支援できている人数についても、大体二年から三年の延べ人数で博士課程の方対象で三千二百二十人、そしてポスドクの方で千三百六十四人と、これは平成十六年の特別研究員制度の数字でございますが、延べ人数でもこの程度という状況がありますので、毎年一万人、職のない博士が生まれているという状況からすると、正直言って焼け石に水だという状況もあると思いますので、この事態を抜本的に改めるには、もう少し踏み込んだ取り組みが必要だろうというふうに思います。

 実際に、科学技術白書の中でも、我が国の科学技術の研究に対する支援対策は非常にもろくて弱いという点については、毎年白書にも書かれております。そうすると、やはり取り組みはもっともっと踏み込んでやらなければならないだろうというふうにも私としても思うわけです。

 そこで、ではどのような形が現実的かということなんですけれども、実際に現状を見た場合には、そうしたポストドクターの方々を研究支援に参加させていくという選択肢が現実的ではないかというふうに考えています。

 これまでの研究支援という面を見ますと、いわゆる研究のプロジェクトごとにお金を落とすか、あるいは、先ほどの日本学術振興会の特別研究員制度のように、いわゆる個人向けのフェローシップの形をとるか、このどちらかというふうに思います。

 ただ、現場の研究者の方々に実際の状況というものを聞きますと、プロジェクトごとの研究費だと、どうしてもプロジェクトの長である教授の力が強くなる。そうすると、そこに参加をしているこれまでの助教授の方あるいは助手の方というのは、やはり教授の研究の手足にならざるを得ず、自分の研究にまでは十分取り組むことができない状況だというふうにも聞いています。

 そうすると、今回、法改正によってせっかく研究者の独立性を確保しようというふうに考えている文部科学省の意図も、このプロジェクトごとの研究費の助成というところの持っている今の仕組み上の問題を考えたときには、残念ながらこの意図は生かされないという形になるのではないかというふうに思うわけであります。

 もう一つ、個人向けのフェローシップの形においても、実際の数字でいいますと、カバーできているのはポスドク全体の人数のわずか一四%にしかすぎないという状況にありますし、ちょっと細かい話になりますが、そればかりか、一個人に対する金額が単年度にかけられる研究の予算としてはちょっと大き過ぎるのではないか。とりわけ理系の場合には大き過ぎるケースがあって、個人の方に上げたフェローシップの金額を、使われ方、何月に幾ら予算が執行されたかというのをぜひ調べてほしいんです。特に三月に予算消化のためにその個人の方の名義ということで、その研究室に要らない実験器具を買ったり、かなりもったいない使い方をしている例が後を絶たないというのが、特に理系の研究室にいる研究者の方から多く声を聞きます。

 そういった点、予算を使い切るために三月に道路を掘り返すということをいきなりわざわざふやしてしまうような、そうした研究支援のお金の使い道、使われ方というのは、やはり文部科学省としてもきちんと調査をしていただきたいというふうに思うわけですけれども、そうしたこれまでのプロジェクトへの支援、あるいはフェローシップといった点についてのお金の使われ方、調査というものはされておりますか。

有本政府参考人 お答えいたします。

 まず、今、先生がおっしゃいましたように、ポスドクの支援と申しますのは非常に現在多様化しております。学術振興会のフェローシップ、あるいは最近は競争的資金が額あるいはいろいろな制度ともに拡大をいたしておりますので、この実態調査をいたしますのはなかなか困難でございますけれども、今回、十六年度に初めて悉皆調査をいたしまして、全体として一万三千人弱の方々のいろいろな状況、これは社会保険加入率も含めて調査をいたしたわけでございます。

 今、先生御指摘のフェローシップに伴う研究資金の具体的な使われ方までは、いまだ調査をいたしてございません。必要ならばさらに調査をいたしたいと思ってございます。

 こういう悉皆的な調査をいたしましたのは、特に科学技術基本計画の第三期に向けて、今、総合科学技術会議あるいは私ども文部科学省も含めまして、政府全体で取り組んでいるわけでございますけれども、この中で、若手の人材育成あるいは生活安定的に、しっかり研究に取り組んでいただくという環境整備というところが非常に大事な今後の大きな政策になろうかというところで、まずきちっとしたファクトをしっかりつかんでいこうということで、現在いろいろな分析をやっておるわけでございます。

 そういう分析に加えまして、先ほど少し申し上げましたけれども、産業界の方も、先生御指摘のとおり、今までは受け入れ側として自分たちのニーズに合わない人が多いということを言っておられましたけれども、今やこの世界大競争の中で、せっかくのこういうポスドクあるいは博士課程修了者の能力を自分たち産業界でも生かそうということが、非常に関心が現在高まっておりまして、経団連初め産業界と大学との間で連携して、例えば三カ月あるいは半年ぐらいの長期インターンシップをやりまして、それで単位を取っていこうというような、具体的な施策が今広がっている段階でございます。

 そういうことを、諸般いろいろございますので、今後さらに一段とこの問題については分析をし、さらに施策を拡充していきたいというふうに思ってございます。

城井委員 ありがとうございます。

 このフェローシップの予算の使われ方については、ぜひお調べをください。そうしますと、せっかくのフェローシップが、今までのような使われ方をしていてはもったいないということが恐らくおわかりいただけると思います。

 その点を踏まえて、一つだけ御提言を申し上げて次の質問に行きたいと思いますが、三月の予算消化のように使われるぐらいだったらという点を踏まえて、先ほど額が大き過ぎるということを申し上げましたが、もう少し研究支援の金額を細かく振り分けてフェローシップの対象の人数をふやして、自立的な研究がポスドクの方でできる人数を物理的にふやすという形のフェローシップの拡充を図っていただく方が、研究者自体の動機づけも高めると思いますし、先ほどそういう産業界からの要請があるということでしたら、より多様な人材、研究のすそ野ということを提供できるのではないかというふうに思いますので、ぜひ御検討いただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 さて、時間も限られてまいりましたので、最後に、高等専門学校の教員組織の整備について何問かお伺いをしたいと思います。今回の法改正、教員組織の整備によって、今後の高等専門学校の役割に一体どのようなことを期待するのかという点についてお伺いをしたいと思います。お願いいたします。

中山国務大臣 高等専門学校というのは、中学卒業後の早い段階から五年一貫の体験重視型の専門教育を行うことによりまして、実践的で創造的な技術者を養成する我が国固有のユニークな学校制度でありまして、これまで多くの優秀な人材を産業界や大学に送り出して、社会から高く評価されていると考えております。

 このように、高等専門学校というのは、大学あるいは短期大学と異なる特色を備えた高等教育機関であることに大きな意義があるわけでございまして、今後もその特色を一層明確にしながら、我が国のものづくり基盤技術分野を支える人材育成や地域貢献に一層大きな役割を果たすことを期待しているところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 今回、この高専の教員組織の部分については、大学の教員組織とほぼ同様の組織改編を行うという説明でございました。

 にもかかわらず、高等専門学校の卒業者への学位授与に関する改正は、今回なされておりません。同じ準学士であった短期大学士は創設するのに、なぜここで差がつくのか、何か理由があるのか、具体的にお聞かせいただきたいと思うんです。

石川政府参考人 中央教育審議会の「我が国の高等教育の将来像」の答申におきまして指摘されておりますように、高等専門学校は早期からの体験重視型の専門教育等の特色を大学や短大との対比において一層明確にしつつ、今後とも実践的、創造的技術者等を養成する教育機関として重要な役割を果たすことが期待されている、こういうふうに中教審でも言われております。

 こうした観点からいたしますと、高等専門学校につきましては、学位を授与する学校である大学の一種となるのではなく、実践的、創造的な技術者の養成という大学とは異なった本来の個性、特色の明確化を図るということが適切であると考えているところでございます。

 そもそも学位は、中世ヨーロッパにおける大学制度の発足以来の沿革を有しておりまして、学術の中心として自律的に高度の教育研究を行う大学から、大学教育修了相当の知識、能力の証明として授与されるというものでございます。

 他方、高等専門学校につきましては、目的に教育研究という項目、研究が含まれず、教育研究を行う学術機関という位置づけではないこと、そしてまた、例えば教授会を置くことというような形にはなっておりませんで、自律的な運営が制度上定められていないことなど、大学とは異なる学校制度でございます。

 したがって、高等専門学校が学位を授与するということは、国際的な通用性の観点から見ても困難と考えられるところでございまして、高等専門学校の卒業生への学位授与に関する改正は今回は行っていないところでございます。

城井委員 今の御説明ですけれども、今回、高専には学位授与を行わないという考えに立つまでの議論で、特に先ほど来触れております中教審における議論の内容の中で、実際に審議会において学位を授与するかどうかという議論は具体的にあったんでしょうか。それを踏まえての今の御説明なんでしょうか。もう一回お願いします。

石川政府参考人 御指摘のような御意見が一部の高等専門学校の関係者から出されたこともあったということは承知をいたしております。しかしながら、そうした意見につきましては、他の高等専門学校関係者を含めまして慎重に考えるべきといったような議論がございまして、そのようなやりとりを経まして、最終的には審議会として取り上げられなかったもの、このように理解をしているところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 最後に一点、お伺いしたいと思います。先ほど大臣からもございましたけれども、高等専門学校、私の地元にもございます。北九州高専という高専なんですけれども、非常に大きな役割を果たしてきた。私の友人もたくさん通っておりましたしというところも含めてですけれども、非常に私も高く評価をしているところであります。特に、国際的な技術者教育水準の確保ですとか、あるいは地域の教育拠点としての役割も本当に大きいというふうにも思うわけです。

 そうした教育水準の確保ですとか教育拠点としての役割を今後も各地域で果たしていただこうとした場合に、一つだけぜひ確認をさせていただきたいという点があります。それは、高専における教育内容、教授する内容の維持と向上のためにどのようなことが行っていけるかという点でございます。

 今回の法改正をずっと検討させていただく中で、この点どうなんだろうかというところで、ぜひ委員会の場で確認をさせていただきたいと思っておりますのが、高専における教育内容を維持向上させる目的で行う、高専におられる教員の方々、今後だと教授、准教授、助教という方々になると思うんですが、そうした高専の教員の方々の研究活動、あくまで高専の設置目的に即した形で、教育内容を維持向上させる目的で行う研究活動というものは、現行法制と、それから今回の法改正で規定をされる高専教員の業務の範囲内でそうした活動を行うことは可能かどうかという点についてお聞かせいただきたいと思うんですが、お願いいたします。

石川政府参考人 高等専門学校におきます研究活動についてのお尋ねでございます。

 学校教育法に定める高等専門学校につきましては、同法の下位法令で、下位すなわち下の法令であります高等専門学校の設置基準の第二条におきまして、「教育内容を学術の進展に即応させるため、必要な研究が行なわれるように努めるものとする。」こういった規定が置かれているところでございます。

 したがいまして、高等専門学校の教員がこのような観点から行う研究活動につきましては、本来の職務である学生を教授するということに資する活動として積極的に取り組むことが求められているわけでございまして、この点につきましては、現行法制におきましても、そしてまた改正後の学校教育法上も変わるものではないもの、このように考えております。

城井委員 ありがとうございました。終わります。

斉藤委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十四分開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。肥田美代子さん。

肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 午前中に、同僚の城井委員から二時間にわたりまして網羅的に本改正案について御質問がございましたので、私は、この法案につきましては三問だけ質問させていただきまして、その後、日ごろ気になっている事柄について、話し合いをさせていただきたいと思っております。

 中央教育審議会の答申「我が国の高等教育の将来像」を受けまして、本改正案が提案されました。提案された当時、さほど大きな反響を呼びませんでした。なぜかなと首をひねりましたが、読ませていただきました。私の読後感は、将来像といいながら、関心を引くような制度改革の提言に欠けているなということでございました。将来像とうたう以上は、これまでの高等教育のあり方を吟味して、将来の制度改革につなげるという視点がなければならないと私は思うわけでございますけれども、そうした視点を残念ながら読み取ることができませんでした。

 この法案は、どのような高等教育の将来像を描いていると読み取るべきなのか、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 お答えいたします。

 本年一月の中教審の答申「我が国の高等教育の将来像」におきましては、高等教育の質的変化の動向等を踏まえまして、新しい時代の高等教育は、学校種ごとの役割、機能を踏まえた教育研究の展開を図るとともに、各学校ごとについても個性、特色を一層明確化すべきであるということを提言しております。

 この法律案におきましては、そのような方向へ向けた諸施策の一環として、まず第一に、学位についての国際的な動向等も踏まえつつ、短期大学を卒業した者に対し、大学を卒業した者と同様に学位を授与する制度を創設することとしております。これによりまして、短期大学が教養教育やそれに結合した専門的職業教育等を提供する点を基本としながら、幅広い学習需要に対応した身近な高等教育機関としての特色、個性を発揮することが期待されておるわけでございます。また、助教授及び助手の位置づけを見直しまして、若手教員がその資質、能力を十分発揮することができる環境を整備するとともに、各大学が、より一層自由に教員組織を編制することを可能としているものでございます。

 これによりまして、各大学が、柔軟かつ機動的に教員組織を編制し、それぞれの個性や特色を十分発揮した教育研究をさらに展開していくことが期待されているわけでございます。

 文部科学省といたしましては、この法律案を初めとするさまざまな施策を推進することによりまして、個性豊かで魅力的な質の高い高等教育の展開に取り組んでまいるということで、新しい時代に対応した、かつ国民の要望等にもこたえられるような、そういう高等教育の改革の一環と位置づけているところでございます。

肥田委員 大学の個性化、それから自主的な研究活動、そして職務の自立とかいうことを今るるおっしゃっていただいたんですが、私、まだぴんとこないんですね。高等教育の将来像につきまして、どういうふうに読み取るか、まだぴんときません。

 今、社会全体が国際社会の中で競争時代に入っておりますが、大学の研究活動もその大きな波を避けることはできない状況にあると思っております。また、少子社会の進行で教育人口が伸び悩んでおりまして、学生獲得競争も激化しております。改めて、高等教育の目的、それからシステムの新しい形態、仕組みなどが実は問われている状況だと思っております。

 我が国の高等教育は、長いこと計画と規制をその枠組みとしてまいりました。そして、今それにかわる新しい枠組みがどのようなものであるべきなのかということが問われているわけでございますが、その方向性を示すことが高等教育の将来像と呼ぶべきものではないかと思っておりますが、大臣の見解をさらに伺いたいと思います。

中山国務大臣 計画と規制からまさにこの規制を外して、各高等機関、大学等が、自由に、そして競争的な環境の中で、それぞれの特色を生かしながら、かつ効率的な学校運営をしていく。それによりまして、まさに大学全入時代と言われる、そしてまた一方では、知的な国際大競争の時代に大学は生き延びていく。そしてまた、先ほど申し上げましたけれども、我が国の社会の期待に、ニーズにこたえられるような大学に変わっていく。

 そういう意味では、大きな流れの中で、私は、今回の法律改正もあるんだろう、このように認識しているところでございます。

肥田委員 これまでの教員組織は、講座制、それから学科目制等を軸にしておりまして、その改革の必要性は、随分長い間、大学の人材育成や学術研究の両面からも指摘されてまいりました。

 今回の改正で、教授、助教授、助手というふうに序列化されていた縦割りの教員組織から、ややフラットぎみの組織に変わるようでございますが、教授、准教授、助教、助手という新しい組織は従来の講座制とどう違うのか、確認しておきたいと思います。

中山国務大臣 この講座制というのは、本来、各専攻分野におきます教育研究の責任体制を明確にして、当該分野の教育研究水準を高めるために導入された教員組織の形態であります。例えば国立大学では、分野ごとに、教授一名を責任者として、これに助教授一名、助手一―三名を一団となって配置される形が典型的でありました。

 現行法は、このような講座制を念頭に置きながら、助教授の職務は「教授の職務を助ける。」、助手の職務は「教授及び助教授の職務を助ける。」と規定されておりまして、教授等との関係をもとにして職名や職務内容が定められているところでございます。

 この法律案におきましては、これを改めまして、新しい制度における准教授や助教については、みずから教育研究を行うことが主たる職務であるという観点から職務内容や職名を改めまして、教授等との関係は各大学の判断にゆだねるということとなっているわけでございます。

 これによりまして、各大学におきましては、従来よりもより一層広い裁量を持って具体的な教員組織を編制することが可能となり、固定的な講座制の考え方に制約されず、各大学の理念や目標、各分野の特性に応じた柔軟かつ多様な教員組織を編制しやすくなるものと考えているところでございます。

肥田委員 そうすると、つまるところ、講座制はなくなるんですか、まだ続くんですか。

中山国務大臣 一概になくなるということじゃありませんが、講座制という極めて硬直的なものでございましたが、これを大学の自主性に任せまして、より柔軟にそういう教員組織が編制できるようにということを目的としているものと思っております。

肥田委員 次に、先般発表されました学力テストにつきましてお尋ねしたいと思います。

 国立教育政策研究所教育課程研究センターは、二〇〇三年度小中学校の教育課程実施状況の調査結果を発表されました。これは、二〇〇二年四月から実施されました新学習指導要領のもとで学んだ児童生徒を対象に、学力がどうなったかを調べたものでございます。

 前回と同じ問題で比べますと正答率は、上がった、または同じ程度、合わせると八割を占めております。学習意欲を調べるアンケートでも、勉強が好きだ、授業がわかるという回答がふえております。

 テストの結果も学習意欲も好転の兆しを見せておると私は感じておりますけれども、こうした子供たちの変化を大臣はどのようにごらんになっていらっしゃいますか。

中山国務大臣 先般公表いたしました平成十五年度の小中学校教育課程実施状況調査の結果につきましては、平成十四年一、二月に実施しました前回の調査と比較した場合、今御指摘ありましたように、正答率が前回を上回る問題数が下回る問題数より多くなっているわけでございまして、このことから、全体としては、学力の低下傾向に若干の歯どめがかかったかなとも考えております。しかし、これは主として、各学校におきまして教員の方々が熱意あるきめ細かな取り組みによりまして基礎的な事項を徹底する、徹底して教えるという努力がなされたあらわれであるとも考えているわけでございます。

 しかしながら、結果を子細に見てみますと、前回調査との同一問題の比較で、国語の記述式問題に関する正答率が下がっております。六四・三%が六三・四%。それから、前々回調査、これは平成五年から七年度実施でございますが、これとの同一問題の比較で、中学校の数学が下回っております。さらに、学習意欲や学習習慣につきましても、改善の兆しが見受けられますものの、必ずしも十分であるとは思えません。といった中でございまして、これらは昨年末に公表されました国際学力調査の結果と類似した傾向があるものと考えております。

肥田委員 今回の学力調査は、授業内容を三割削減して、そして総合学習の時間を導入して、そして学校の授業を完全五日制に移行した、この新学習指導要領のもとでの初めての実施でございます。前回調査が公表されましたとき、学力低下が大変問題になりまして、文科省も発展的な学習や補充的な学習を奨励する二〇〇二アピールを作成するなど、随分強い反応をお示しになりました。

 今回の調査結果を見ておりますと、私は、子供たちが、大人たちよ、ばたばたしないで少し落ちつきなさいよ、そう言っているように聞こえてならないわけでございます。前回の調査に比較しまして学力が改善された理由は、新指導要領の成果として見るべきなのか、それとも違うのか、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 新学習指導要領が始まりまして間もないときの試験でもございますし、また先ほども申し上げましたが、現場の先生方がこれではいかぬということで、やはり基礎的なところに力を入れて頑張られた、そういったことが私はあるのじゃないかな、こう思っております。現行の学習指導要領が今回の調査結果にどのような影響を与えたかにつきましては明確に言うことはできないと思いますけれども、この点につきましては引き続き検証していくことが必要である、このように考えております。もちろん、私どもは、一つ一つの試験に一喜一憂することなく、全体として、傾向としてやはりしっかり子供たちの実態を見詰めていくことが必要であると考えております。

肥田委員 大臣は、昨年のOECDの学習到達度調査の結果を受けまして、日本の子供は勉強時間が短い、そして勉強への動機づけも希薄である、そして学ぶ意欲に乏しいとおっしゃいまして、学力を再び世界トップにすると発言されました。そして、学習指導要領全体の見直しを諮問されているところでございます。諮問内容は、国語力の育成、それから授業時数の見直しなど、ゆとり教育を掲げた現行学習指導要領の全面的な見直しを求めるものとなっております。

 私は、どの子供にも基礎学力や考える力、それから自発的に学ぶ意欲を身につけさせるというゆとり教育の理念は、早々と引っ込めることはまずいんじゃないか、むしろ、もう少し継続してじっくりと見てやるべきじゃないかという考え方でございますが、ゆとり教育とも関連しますが、今回の学力テストの結果は、これからの教育課程や指導方法の改善に当たってどのように生かされるのか。それとも、先ほど大臣がおっしゃいましたように、それは個々の教師の努力であって、ですから、もう少し頑張ってそれこそ学力をトップにするというところに突っ走っていこうとされるのか、どうなんでございましょうか。

中山国務大臣 それこそ、前回のテストの結果に一憂するわけにもいきません。私は、全体としてまだ低下傾向に完全な歯どめがかかったとは考えておりません。というよりも、私ども、スクールミーティングということで全国の学校を、三百校を目標にして、もう大分達成いたしましたが、回ってまいりまして、やはり子供たちの学習態度といいますか、そういったことについてはまだ問題があるんじゃないかなと。先ほど委員も御指摘ありましたが、日本の子供たちが世界で一番勉強しない、また、何のために勉強しているのかという動機づけも乏しいということは変わっていないな、こう思うわけでございまして、いかに子供たちに、勉強しなければならない、勉強したくなる、そういうふうな環境をつくってやるかということが非常に大事なことではないかな、こう思っているわけでございます。

 そういう意味で、今回の状況調査の結果につきましては、既に、現行の学習指導要領の成果と課題の検証のための重要な材料として、中教審の審議にも活用いただいているところでございます。

 また、いわゆるゆとり教育と言われておりますけれども、私は、基礎、基本的な知識をしっかりと身につけさせて、それをもとにして子供たちが自分の頭で考え、判断して行動する、そういう生きる力といいますか、主体性のある子供に育てるということは絶対に必要なことであると思いますし、このゆとり教育がそういったことを目標としているということについては大賛成なのでございますが、問題は、その目標とか理念というのに間違いはないけれども、それが実際十分達成されているんだろうか、必要な手だてが十分に講じられているんだろうかということを、今文科省を総動員して調査しているところでございます。

 そういったことを踏まえまして、本当に子供たち、学力だけではございません、体力的にも、気力やあるいは道徳性の問題、いろいろなことで今さまざまな問題が指摘されているわけでございまして、心優しくもたくましい子供たちを育てていく、それで、どういう時代が来ようとも、どういう社会になろうともたくましく生き抜いていける、そういう子供たちを育てていく、これは絶対に必要なことである、このように考えているところでございます。

肥田委員 先ほども大臣が先にお答えくださいましたけれども、今回の学力テストの結果を冷静に見ますと、国語の読むこと、書くこと、数学の量と測定、数量関係、それから英語の読むこと、書くことなどが、前回調査を下回る問題が全体の半数を超えておりますね。成績は上がったといえどもこういう状況なんですよね。昨年の国際調査では考える力の低下が明らかにされております。今回のテストでも、やはり思考力、記述力が必要な問題がどうも苦手な子供が多いようでございます。ですから、日本の中の調査と国際調査がいみじくも同じような結果になっているわけでございます。

 したがって、学習指導要領の改善に当たっては、ドリル学習や詰め込みに逆戻りするのではなくて、思考力それから判断力を育てる方向で見直すべきだと思いますが、それは大臣は十分おわかりだと思いますが、どうぞ。

中山国務大臣 先ほど来お答えいたしておりますが、まさに思考力、判断力、決断力も含めてですけれども、そういう主体性のある、自分で考えることができる子供を育てる、しかし、そのためには、基本的なこと、基礎的なことの知識がなければ何もできないわけでございますから、私は、基本的なこと、基礎的な知識はしっかりと身につけさせるということは非常に大事なことであろう、このように思うわけでございまして、その上で思考力といいますか応用力といったものが身につくのではないか、こう思っているわけでございます。

 そういう意味で、今後とも、思考力や判断力の基礎となる基本的な知識とか技能についてもしっかりと身につけさせるということが必要であると考えておりまして、中教審におきましても、学習指導要領全体の見直しにつきまして、こういった課題を含めて御審議いただいているところでございまして、本年秋までに基本的な方向性をお示しいただきたい、このように考えております。

肥田委員 私は、今回の調査結果を読みながら、学力低下に危機感を持つ現場の教師たちが随分一生懸命取り組みしてくださったなと。さっき大臣もおっしゃいましたけれども、これを軽視してはいけないと思うんです。私の周辺にも、やはり補充的な学習で基礎学力をつけさせようと懸命に頑張っている教師たちの姿がございます。この教師たちの努力は決して軽視してはならないと思っております。

 しかし、他方で、文科省が次々に打ち出す教育行政をこなしてきているベテラン教師が現場からぼつぼつ消えつつあります。もう定年になっていくわけですね。ですから、いろいろな教育を経験していない新任教師が主流になる、そういう日が近づいてまいっております。三位一体による財政事情も追い打ちをかけておりますが、予算面からもなかなか優秀な人を採れなくなっているという可能性も出てまいっております。現場の教師たちは、こうした構造的な変化を放置すれば学校教育そのものが危機に陥るということを大変危惧しておられます。

 こうした教育現場の構造変化についてどのような認識をお持ちなのか、そしてどのように解決しようと思っていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。

銭谷政府参考人 御説明申し上げます。

 今先生からお話がございましたように、公立の小中学校の教員の年齢構成でございますけれども、四十代、五十代の教員が六割を超えておりまして、今後とも教員の高齢化、それから退職者の増加が予想されております。こういった退職者の増加に伴いまして採用者数の増加も予想されるということで、先生の構成に今後大きな変化が出てくるというふうに考えられるわけでございます。このため、量及び質の両面からすぐれた教員を確保していくということが重要な政策課題であるというふうに認識をいたしております。

 例えば、採用につきましては、現在、すぐれた教員の確保に向けまして、採用選考試験の受験年齢を緩和したり、教職経験者や民間企業の経験者を対象に優遇措置を講じるなど、さまざまな工夫を講じているところでございます。文部科学省としても、引き続き、採用選考の工夫、改善を促してまいりたいと思っております。

 また、すぐれた教育実践を行ってこられた経験豊かな退職教員等を再雇用等により登用し、子供の指導とあわせて、後輩の先生方のいろいろな助言に当たっていただくということも意義があることと考えておりまして、そういったことも推進をしてまいりたいと思っております。

 さらに、教員養成につきましても、今後、学校現場が要請する量と質を確保できるように、その充実を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

肥田委員 次に、学力調査の結果とも深くかかわりを持つわけでございますが、学校図書館の充実についてお尋ねしたいと思います。これ以降は、しばらくの間、ミスター学校図書館に質問をさせていただきたいと思います。

 文部科学省は、例年、各都道府県に「公立義務教育諸学校の学校図書館の図書の購入に要する経費の地方財政措置について」という通知を出しております。内容は、毎年百三十億円、総額約六百五十億円の地方財政措置が講じられること、この措置を活用して学校図書館図書標準の早期達成に向けて学校図書館図書の計画的な整備を図るよう、域内市区町村教育委員会に適切な指導助言をお願いする、そういう内容のものでございます。

 この通知によってどのような効果が上がっておりますか。

銭谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 ただいま先生からお話がございましたように、文部科学省では毎年、学校図書館の図書の購入に要する経費の地方財政措置につきまして、各都道府県教育委員会に対して通知を発出し、周知を図っているところでございます。これは、公立義務教育諸学校における学校図書館の図書につきまして、平成十四年度から十八年度までの学校図書館図書整備五カ年計画によりまして、学校図書館図書標準に足りない分を整備するための経費として、毎年約百三十億円、総額約六百五十億円の地方財政措置が講じられていることを踏まえて行っているものでございます。

 この通知におきましては、各都道府県教育委員会が市町村教育委員会に対しまして、学校図書館図書の計画的な整備を図るよう適切な指導助言を行うように求めているところでございます。各市町村におきましては、この通知により示される地方財政措置における経費の額によりまして、例えば、当該年度における地方財政措置を確認し、来年度の予算要求の際の参考にする等々、御活用いただいているものと考えております。

 私どもといたしましては、各市町村教育委員会におきましてこういった活用を図りながら、本通知を踏まえまして、学校図書館の図書の整備が図られるよう、今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

肥田委員 学校図書館図書標準の早期達成につきまして、通知を出し始めてから十年が恐らく過ぎたと思っております。達成率は惨たんたるものなんですね。ことしも、つい先日、六月六日に通知をお出しになりました。

 昨年の通知とことしの通知とどこが違うのか、教えていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 ただいまお話がございましたように、本年も六月六日に、各都道府県教育委員会教育長あてに通知を発出したところでございます。

 本年の通知におきまして、昨年と異なる点でございますけれども、かねて先生からも御指摘をいただいておりますように、学校図書館図書として全国で百三十億円の地方財政措置が講じられている経費は、学校図書館図書標準に足りない分を整備するための経費、すなわち増加冊数分であることを明示しているというところが大きな違いでございます。

 各市町村教育委員会におきましては、この通知を踏まえまして、さらに計画的な図書の整備を図っていただきたいというふうに考えております。

肥田委員 確かに、増加冊数分について言及していただいたということは去年と違う新しい部分だと思います。

 しかし、今までの通知の文面で、私は、どうもさほど効果がないと思うんですよ。地方に行って聞いてみますと、これは大変失礼な話なんですけれども、ああいう通知が来ても右から左へ、ぽんとごみ箱に捨ててしまう、そういう不届きなところもあるわけです。ですから、十年一日のごとく同じような文書で出していては、これはおっつかないんじゃないかと。もう少し何かが必要じゃないかと私は思うわけですね。

 それで、例えばの話ですけれども、通知の中に指標を明示して、結果を公表します、そういう文言を明記することによって随分と効果が上がるんじゃないかと思うんですが、どう考えられますか。

銭谷政府参考人 私ども、学校図書館に関しましては、地方財政措置に関する通知のほかに、毎年、学校図書館の現状に関する調査結果というものを取りまとめまして、その調査結果をお知らせするという形で通知も発出しているところでございます。

 この学校図書館の現状に関する調査結果におきましては、各地方公共団体における図書の購入額や学校図書館図書標準の達成状況につきまして把握をいたしまして、それをお知らせすることによって、各地方公共団体においてみずからの実態と照らし合わせるということができるようにしているわけでございます。例えば、図書の購入額につきまして、自分の学校と全国の平均との比較とか、あるいは図書標準の達成割合について、当該市町村における割合と全国との比較などができるように、調査結果を御通知申し上げているところでございます。

 私ども、こういった各地方公共団体で把握できるみずからの実態をどのように今後の施策に生かすかが、まさに各地方公共団体で主体的に取り組んでいただきたいというふうに考えているわけでございますけれども、このような各地方公共団体の主体的な取り組みに資するために、毎年度行っておりますこの学校図書館の現状に関する調査結果がよりわかりやすく使いやすいものになるように、公表のあり方について今後改善を加えていきたいというふうに思っているところでございます。

肥田委員 現在の制度は、教育に関する権限と財源が地方自治体に移譲されるという地方分権型の財政構造にはなっておりません。ですから、文科省は、交付税措置については本来の目的に使われているかどうか、この指導や支援は可能であるし、また必要だと思っております。

 つまり、マクロの地方財政措置がミクロの団体において実際に使われているかどうか、このチェックは文科省のまさに仕事であると私は思うわけです。通知や調査票に記入して報告させることももちろん大切でございますけれども、それがこの十年、はかばかしい効果がなかったとすれば、やはり何か工夫しなければいけない段階に入っていると思います。

 これからは、各都道府県や市町村に自主的に学校図書館図書標準の達成に向けた実施計画を策定させる、そういうことを促してほしいし、自治体の施策実施の流れについて自己評価してもらうんですね。教育の中で自己評価という言葉がこれからどんどん出てくるはずでございますが、自己評価させまして、そうした取り組みを文科省が支援すれば、自治体の自主的な取り組みは活性化すると私は思います。

 自治体の取り組み状況は文科省のホームページで発表しまして達成率を競争させる。今おっしゃいました、まさに競争を刺激するということが必要だと思うんですけれども、さらにいかがでしょうか。

銭谷政府参考人 現在、学校教育の状況につきまして、それぞれの学校における自己評価、それから、それに加えての第三者評価といったようなことが非常に大きな課題になっております。

 学校図書館あるいは読書指導に関しましても、自分の学校が今どういう状況にあるのか、そこをそれぞれの学校において十分自己点検していただいて、その上で、学校図書館の利用計画あるいは読書指導のあり方について各学校が計画を立てて取り組んでいくということは非常に大事なこれからの学校教育の方向になるというふうに私ども思っております。

 先ほど来先生からお話がございましたように、できるだけ私どもも、調査結果につきまして、わかりやすい情報を提供し、それぞれの各学校が自己評価を行ったり、あるいは保護者等からの第三者評価を行う場合に活用できるような、そういうあり方についてさらに検討していきたいというふうに思っております。

肥田委員 具体的な質問にちょっと切りかえてみたいと思いますが、平成十五年度の一校当たりの図書購入費、全国平均で四十四万円です。最高は神奈川の六十六万四千円、最低は青森の十九万二千円となっております。小学校では最低の県と最高の県で三・四六倍、中学校では三・三四倍の開きがございます。これが文部科学省の主張です。

 これほど格差がありますよ、このアピールは何のために、だれに向かって行われているんでしょうか。また、このデータは学校図書標準達成のために今後どのように生かしていかれるのか、そのことをお尋ねします。

銭谷政府参考人 ただいま先生の方からお話がございましたように、図書購入額につきましては、一校当たりで、高い県と低い県では約三・四六倍の格差が小学校ではございます。また、中学校でも高い県、低い県の格差が約三・三四倍ということで、県によりまして、一校当たりの図書購入額に非常に格差があるということが明らかになっております。

 私ども、これを各県ごとにデータを提供し、かつ、図書標準の達成率というのも各県ごとにお示しして、各都道府県に対しまして、学校図書館図書の充実を図るように通知を出したり、各種会議において周知及び指導を行っているところでございます。

 こうした格差が生ずる理由といたしましては、先生のお話にもございましたけれども、図書購入に係る財源が一般財源であって、各地方自治体において、それぞれの地域の状況や財政事情を踏まえて、予算措置をどれだけ講じるかを判断しているということによるものと考えております。

 ただ、私ども、学校教育における学校図書館の果たす役割、読書指導の重要性ということを考えまして、こういうデータを繰り返しお示ししながら、学校図書館図書の計画的な整備が図られるように、引き続き指導の工夫、改善に努めてまいりたいというふうに思っているところでございます。

肥田委員 小学校で格差が三・四六倍、中学校では三・三四倍、これはいいんですよ。いいんですというよりも、そうですかという話なんですが、私がどうしてこういう質問をしたかといいますと、情報公開するときの正確さが私は大事だと思うんですよ。といいますのは、一校当たりの図書購入費を比較するのは、ひょっとしたら間違いじゃないかと思うんですよ。

 というのは、この交付税がクラス単位でつけられておりますから、クラス当たりの図書購入費を見ますと、先ほど例示しました最高の神奈川県と最低の青森県の格差は一・七五倍に縮小するんです。中学校の場合は、最高の愛知県と最低の高知県では、一校当たりの格差は三・三四倍ですが、一クラス当たりになりますと、その格差は一・三九倍に縮小するんです。一人当たりの図書購入費になりますと、愛知県と高知県では格差は逆転してしまいます。〇・九七の格差となって、逆転するんです。

 文科省は、一校当たりの図書購入費をグラフで格差を公表していらっしゃいますけれども、それだけでは、義務教育費の国庫負担に絡めていらっしゃるのではないかという妙な誤解を生むわけですね。クラス当たりとか生徒一人当たりの図書購入費も数字としてあるわけでございますから、またグラフにもしていらっしゃいますから、お出しになるときは一緒に出してほしいと思うわけでございますが、こうやって、先ほど銭谷さんがおっしゃいましたように、わかりやすい、そういう情報公開をするためには、やはり意図的でない、正確を期した資料公開が私は大変必要だと思うんです。

 数字だけでなくて、可能な限り、先ほどおっしゃいましたけれども、小中学生にも理解できるデータをホームページで公表するなり、また、もっともっと工夫するなりして、とにかくこの情報を開示していくと、一人ずつが自分たちの住んでいる学校の学校図書館の状況が一目でわかるというようなことにしていただかないと、だれも、なかなかあの難しい調査結果を読み取れませんよね。私はあれを読んでいると頭が痛くなるんですよ。ですから、ぜひその辺の工夫をお願いしたいと思うんですが、いかがですか。

銭谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 確かに、先生お話がございましたように、調査結果は数字がずっと書いてあるものでございますので、非常に読み取りにくいという御指摘もあろうかと思っております。最近、できるだけその状況を図や表で示すように私ども工夫をしているところでございますけれども、さらにその工夫を行っていきたいと思っております。

 若干答弁が長くなって恐縮でございますが、例えば、現在は、学校によって規模の大小はあるものの、図書の購入に一校当たりどれぐらい措置されているのかということで数値を示すことを中心にやっておりますけれども、先生お話しのように、クラス当たりあるいは生徒一人当たりの購入額ということも、これも大事な考える要素でございますので、私ども、こういう点についても今後工夫をして、お示しをしていきたいというふうに思っております。

 ちなみに、一クラス当たりの学校図書館の図書の整備費でございますが、小学校で申しますと、全国平均が一クラス当たり約三万六千円でございますけれども、高い県は六万二千五百円ぐらい、それから低い県は二万円ちょっとということでございまして、格差は約三倍ございます。

 それから、一人当たりの図書購入費でございますけれども、これは同じく小学校の場合でございますが、全国平均が千三百六十五円というものに対しまして、高い県が二千五百八円、低い県が八百八十九円ということで、やはり格差は約二・八倍あるという状況でございます。

 今後、こういったデータをグラフにしたりして、私どものホームページ等において掲載するということを考えてまいりたいというふうに思っております。いずれにいたしましても、毎年行っておりますこの調査結果をできるだけわかりやすく、かつ効果のあるものになるように、工夫をしていきたいということでございます。

肥田委員 一学校当たりでは不正確ですよと申し上げたのは、学校によってクラスの数が違いますから、それを一学校当たりということにしてクラス単位で予算措置されている金額を掛けるのは、やはり少し間違いであろうかと私は思っておりますので、これ以上この件に関しては申しませんけれども、ぜひ正確を期していただきたいと思います。

 学校図書館の図書の達成率はパーセントで公表されております。この四月に公表されたものを見ますと、小学校では達成率は三六・〇%、中学校では三〇・八%です。遅々として進んでいないことがこれでもわかります。

 三月の本委員会でも質問いたしまして、廃棄図書それから更新図書をどう扱うかについてお尋ねした記憶がございます。平成十五年度一年間の購入冊数、それから寄贈冊数、増加冊数、廃棄冊数の関係を見てみますと、一校当たり、小学校で、購入冊数は三百、寄贈冊数は六十七冊、廃棄冊数は二百四十七冊、増加冊数は百二十冊です。中学校の場合には、廃棄冊数は二百三十七冊、増加冊数は百九十冊。小中学校ともに、購入冊数に対して、廃棄する分、廃棄冊数が六〇%から八〇%となっているわけですね。いかに図書館図書の増加が厳しい状況にあるかということは、本当に明らかなわけでございます。これでは達成までにあと何年かかるのかと、私は目の前が暗くなる思いがするわけです。

 現在の学校図書館図書整備五カ年計画は、学校図書館図書標準による基準冊数が二億七千万冊、現状の蔵書冊数は二億三千万冊で、差し引き四千万冊、これが計算されたものですが、この中に廃棄冊数が含まれていませんでした。これが大きな間違いなんですね。これが達成率の困難な原因になっているわけです。

 予算の構造もややこしいんですね。教材費の中の図書購入費と図書整備費の中の図書購入費と、二本立てになっているわけですね。これはややこしくて、現場で混乱しています。図書費としてきちんとやはり一本化して、教育委員会にきちんと予算化させる、こういう整理が私は必要じゃないかと思います。

 こういう状況が続きますと、図書館を活用した教育実践なんてできませんよ。幾ら文科省がかねや太鼓で騒いでも、私はできないと思います。それはもう多分大臣が、それぞれに行かれて実感されていらっしゃると思いますけれども。ですから、この仮死状態の学校図書館を、一日も早く息を吹き返させなきゃいけないんですね。

 ですから、何をすることが一番早いか。まず、私は、図書整備策定、それをするときには、廃棄冊数を十分に考慮していただきたいし、予算の一本化もしていただきたいと要望したいんですが、いかがですか。

銭谷政府参考人 先生からお話がございましたように、図書の廃棄に伴う更新分につきましては、消耗品や備品購入費などとともに、公立学校の維持運営に要する経費として所要の額が基準財政需要額に算入をされている。一方、増加冊数分につきましては、先ほど来お話がございましたように、図書整備計画に基づいて毎年約百三十億円の交付税措置がされているという状況でございます。

 私どもといたしましては、この両方の経費をあわせて学校図書館の図書整備に充てる額を増額していただきたいという思いを込めまして、本年度、通知におきまして、学校図書館図書整備計画に基づく地方交付税措置は増加冊数分ですよということをきちんとわかるようにしたわけでございます。

 こういったことを受けて、現在の計画、平成十八年度まででございますけれども、十七年度、十八年度、まず、しっかり各学校、地方公共団体におきまして図書整備に取り組んでいただけるように努力をしていきたいというふうに思っております。現在進めている五カ年計画の最終年度である十八年度までの状況をよく踏まえて、十九年度以降の財政措置等について、十分今から検討していきたいというふうに思っております。

肥田委員 調査をしてくださいまして学校図書館のデータが出るわけですけれども、それがフローが軸になって、それで、必要なことはやはりストックと増冊計画だと思うんです。

 各学校のストックベースが冊数はどれくらいか。そして、更新すべき冊数は何年度でどのくらい必要なのか。それから、新規冊数分はどのくらいなのか。基礎的な計画は内々つくっていらっしゃると思うんですけれども、いかがですか。

銭谷政府参考人 従来から、図書の購入冊数それから廃棄冊数については、私ども調査をしていたわけでございますけれども、本年度の調査におきまして、図書を廃棄する場合に、どういう基準、理由で廃棄をしているのかということについて初めて調査をいたしました。

 さまざまな理由があるわけでございますけれども、古くなったとか利用度が低いとか、あるいは、内容が随分変わってきているので子供たちの教育上の使用にたえないとか、さまざまな理由が挙げられてまいったわけでございますので、図書の廃棄について十分実態を把握しながら、それから増加冊数につきましても、その廃棄分を購入しているのか、あるいは新しい子供たちの教育上の要請に従った増加冊数なのか、その辺を十分分析しながら、今後の図書整備について、もちろん、予算的にはまだまだ十分措置されているとは言えない状況もあるわけでございますけれども、現在各学校が取り組んでいる図書の整備が有効に機能していくように、私どももさらに研究をしていきたいというふうに思っているところでございます。

肥田委員 先ほど銭谷さんもおっしゃいましたように、来年度でこの五カ年計画はおしまいになるんですね。もうあと一年しかないわけでございます。ですから、一年の状況を見てというようなかったるいことを言っている場合じゃないわけでございます。

 この計画が始まったとき、もう十年になりますけれども、関係者たちがどう言ったか。干天の慈雨と言ったんですね。すなわち、子供たちにとってありがたい恵みの雨が降ってきた、そう評価されたんですね。それが、全体的に見れば学校図書館の活性化に結びついていったと思います。大変ありがたい施策が始まったということは私も感謝しております。朝の読書活動が全国で二万校近くに達しておりますし、子供の読書人口も確かにふえております。調べ学習も確実に広がっております。この流れをとめることはもうだれにもできないと思います。

 それで、もう一回確かめておきたいんですが、十八年が終わりました次の年度、恐らくそれが五カ年計画か十カ年計画か、七年かわかりませんけれども、本当に今から、今からでも遅いくらいですが、きちんと関係省庁に頭を下げ、そして心を込めてお願いされて、きちっと子供たちのために五カ年計画なり十カ年計画を施して、学校図書館が本当に息を吹き戻すようにしていただけるかどうか、もう一度お願いいたします。

銭谷政府参考人 ただいま先生からお話がございましたように、もちろん、まだ図書標準の達成状況は十分ではないわけでございますけれども、一連の図書整備の動きを関係者と協力しながら私ども進めてくる中で、全校一斉の読書活動、あるいは必読書、推奨図書を定めている学校の増加とか、ボランティア等の協力を得て図書館活動を展開する学校がふえてきているとか、あるいは公共図書館との連携を実施している学校がふえているとか、こういった学校図書館、読書指導をめぐる状況というのは最近非常に大きな動きがあるというふうに私は思っております。

 先ほど来お話がございます現在の学校図書館図書整備五カ年計画は、平成十八年度で終了するという予定になっておりますけれども、学校図書館図書の充実の必要性というのは、十八年度までで終わるものではなくて、平成十九年度以降も継続的にこれは取り組んでいかなければいけない課題であるというふうに思っております。

 今申し上げましたように、現在の五カ年計画終了後の図書整備に係る財政措置のあり方につきましては、関係省庁とよく連携協力をし、理解を求めながら、私どもしっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。

肥田委員 学校図書館の人の問題で一つだけちょっと確かめておきたいんですが、今十二学級以下は司書教諭の配置がされておりません。それで、十二学級以下の学校といいますと、全国で半分ぐらいあるんですね。ですから、全国の半分ぐらいの子供たちがまだ司書教諭のいない学校図書館にいるわけでございますが、十二学級以下に配置するためには、法改正が必要ですか、それとも政令でいけますか。

銭谷政府参考人 お答え申し上げます。

 それは政令改正ということになります。

肥田委員 そうしたら、文科省がその気になってくだされば、いち早く実現できるわけですね。そうですね。

銭谷政府参考人 現在、十二学級以上の学校に司書教諭の配置をするということで、その配置を推進しているわけでございます。司書教諭の必置基準を引き下げるべきとの考え方につきましては、十一学級以下の学校におきましても、学校図書館における司書教諭の重要性にかんがみて、司書教諭の設置がなされるよう努めることが望まれる旨の通知等によりまして周知をしているところでございます。

 今後は、司書教諭の有資格者数の状況などを把握しながら、その状況に応じて検討してまいりたいというふうに思っております。

肥田委員 多少偏っているかもしれませんけれども、有資格者についてはほとんど心配ないと私は思っておりますので、ぜひミスター学校図書館、頑張っていただきたいと思います。

 それから、司書教諭の専任化の問題でございます。これもなかなか困難なハードルだと伺っておりますけれども、やはりこれは、学校図書館がきちんと学校教育の中に中心で位置づくべきときには、専任化でないとやっていられないという話になってくるわけですが、十八年度からの定数改善計画に入り込むことができるのかどうか。そして、どうしてもそれがだめならば、どうしてもだめならばというのは、私は可能性として認めたくないわけですが、それまで事務職員をどんどん置いていくとかボランティアをもっともっと進めていくとか、経過措置としてそういうこともお考えくださいますか。

銭谷政府参考人 現在、司書教諭は教諭をもって充てるということになっているわけでございます。充てられました司書教諭につきましては、担当授業の軽減などにつきまして、各学校の実情に応じて、校務分掌上の工夫によって行っていただけるように、その旨通知もしているところでございます。

 司書教諭を現在専任としていない理由につきましては、いろいろあるわけでございますけれども、一つには、学校図書館について、司書教諭のみならず、校長のリーダーシップのもと全教職員が協力してその運営に当たることが必要ではないか、教育指導と学校図書館の指導は極めて重要な関連がございますので、司書教諭は、教員としての教育活動を行いながら学校図書館の業務に携わる仕組みとすることが適当である等々の理由によるものでございます。

 現下の厳しい財政状況のもと、司書教諭を専任とするための新たな定数措置を講じるということは、率直に申し上げまして、なかなか困難な状況がございます。

 ただ、私ども、最前から申し上げておりますように、学校図書館の充実、読書指導の充実ということは非常に重要なことでございますので、ボランティアの活用、それから教員の協力体制の構成といったようなさまざまな方法を工夫し、さらに事務職員の方の活用といったことも考慮しながら、図書館の充実について努力をしていきたいというふうに思っているところでございます。

肥田委員 現在、超党派の活字文化議連では、読書人口を底上げしようということで、文字・活字文化振興法案の国会提出に向けて作業を続けております。学校教育のすべてにわたって読書活動を行おうという趣旨も盛り込んでおりますし、ぜひ文科省の応援団になりたいというのが思いでございます。

 現在の小学校の学習指導要領には、かなりの箇所にわたりまして、学校図書館を活用した授業や本の読み聞かせについて触れておられます。それから、中学校の指導要領にも、学校図書館を計画的に活用した学習指導や読書活動の充実が盛り込まれております。

 それで、子供が本に触れるということがどれほど人生にとって大切なことかということを私たちは認識しなければいけないわけですが、実は元アナウンサーで青森県の県立図書館長をなさいました鈴木健二さんが、著書でこんなふうにおっしゃっているんですね。歴史を見れば、本離れと暴力はほぼ同時に始まって、同じ速さで日本社会を駆けめぐっている。教育の目標は、よい市民を育てることです。そして、今、読書が日本人を救うんだと。これは本のタイトルにもなっているわけですが、そのくらいの熱い思いを、私は、ぜひ文科省に、そして大臣に持っていただきたいと思うわけでございます。

 それで、これは大臣に最後にお尋ねしますけれども、今後の学習指導要領の見直しに当たりましても、学校図書館が読書センターであり、そして学習情報センターとして、教育の中心に、ど真ん中にあるという発想を省内でぜひしっかりと皆さんに共有していただきたいし、そして教育委員会にも、そして学校現場にもきちんと伝えていただきたいと大臣に深くお願いするものであります。よろしくお願いします。

中山国務大臣 読書の必要性、重要性につきまして、日ごろから肥田委員が御熱心に主張されておりますこと、敬意を表しているところでございます。

 私自身も、スクールミーティングに参りましたら、必ず図書館に寄ることにしておりまして、寄ってみますと、学校全体を活性化しているところは、図書館に行きましてもやはり図書館が活性化しているのがわかるわけですね。ですから、朝の読書活動だとか、あるいはいろいろな調べ、総合学習のときのいろいろな調査、そういったことで図書館が本当に利用されているというところもありますし、行ってみましても、ひんやりとしていて、子供たちが果たして来ているのかなというようなところもあるわけでございます。また、図書の充実ぶりも全く違うわけで、これはいけないなということも思っておるわけでございます。

 そういう意味で、今委員から御指摘ありましたように、この図書館というのが、読書センターあるいは学習情報センターとしての機能、学校の真ん中にあるべきだ、まさに私は、それは物理的にも図書館というのは学校の真ん中にあるべきじゃないかと思うんですけれども、ついつい隅っこの方にあるのが通例でございます。

 そしてまた、図書の充実につきましては、文部科学省としても地方に対して督促しているところでございますが、地域ぐるみで子供たちの教育にということを今やっているので、ぜひ地域の方々が、家にある本だとか、あるいはなくても、皆さんが学校に図書を寄附しようというふうな運動でも起こしていただいて、学校図書がそれこそもっともっと充実するように、そして本好きの子供たちがたくさんふえること、これが私は日本の教育のためにも、また、今言われましたが、日本の社会のためにもとても大事なことだと思っていますので、引き続きそういった方向で検討していきたい、こう思っています。

 今、学習指導要領全般につきましては、中教審で御議論いただいておりますけれども、ぜひ、そういった方向の中で取り組んでまいりたいと考えております。

肥田委員 ありがとうございます。終わります。

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 法案の審議に入ります前に、一点確認をさせていただきたいと思います。

 五月の十一日に与党の教育基本法改正に関する検討会がありまして、文部科学省が教育基本法改正の仮要綱案を提示されたということでございますけれども、これは事実ですか。

中山国務大臣 お答えいたします。

 去る五月十一日の与党教育基本法改正に関する検討会におきまして、これまでの中教審の答申とかあるいは与党内での議論を踏まえまして、与党検討会における議論のたたき台としまして、文部科学省が作成いたしました仮要綱案を提示したところでございます。

 現在、与党検討会におきましては、この仮要綱案に基づき議論が深められているというように承知しております。

石井(郁)委員 文部科学省の手によって教育基本法改正の法案、仮要綱案ですけれども、それができているということですね。戦後初めてのことだと思います。私は、極めて重大な問題だというふうに考えております。

 それを新聞報道などで見ているわけですが、前文、それから教育の目的とか目標、それから補則ということまであって、十八条立てだというふうに聞いておりますけれども、どのような柱立てになっているのか、報告してほしいと思います。

田中政府参考人 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、与党の検討会に提出しております仮要綱案につきましては、与党の検討会における議論のたたき台として私どもの方で作成したものでございまして、具体的中身については、現段階では公表することは差し控えたいと思っております。

石井(郁)委員 文科省がつくられているものでありまして、与党には提出するけれども、それ以上ほかには提出できないと。その理由は、どういう理由でしょうか。

田中政府参考人 ただいま与党におきまして、中教審の答申等も踏まえまして、この検討会の中でいろいろ改正につきまして御検討が進んでおるところでございまして、今の段階では、与党の検討会の中でまだ一致した方向性が出ていないというようなことで、まだ、現段階で公表することは文部科学省としても考えておらないところでございます。

石井(郁)委員 私、ちょっと問題にしたいと思うんですが、憲法の十五条には「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」とありますよね。一体、文科省は、与党のためには一々、逐一お示しをしながら、ほかには公表しない、こういうことはあっていいんでしょうか。

 ですから、当然、与党にお出しするんですから、野党の私たちにも出してほしいということがきょうの一点の質問でございますが、いかがですか。

中山国務大臣 この仮要綱案につきましては、与党検討会における議論のたたき台にしたいということで、検討会の方から文部科学省の方につくってくれ、こう言われたわけでございまして、これに基づきまして今検討会で議論がされておるところでございます。この仮要綱案の取り扱いについては、これは与党検討会の判断にゆだねられるべき問題であろう、このように考えております。

石井(郁)委員 本当におかしいんですよ。

 文部科学省が出した仮要綱案というのが既にある、これはお認めになりました。五月十九日、二十五日、六月一日、八日、与党の検討会で、その法案内容が逐条的にというか検討されているということですよね。

 今問題にしているのは、与党と相談するということはあるかもしれないけれども、文部科学省が今法案を作成しているんですから、そこまで案がもうまとまったということですから、それは当然、野党の私たちにも示していただかなくてはならないということですよね。そうしないと、先ほど申し上げた憲法十五条、あなた方はこれに反してこの作業を進めているということになるわけですよ。

 与党のための文部科学省ですか、まず文部科学省は。

中山国務大臣 これは、各党からいろいろな資料をつくってくれとかなんとか頼まれれば、それに応じてつくっているわけでございまして、こっちから頼まれたからというのでこっちにも全部出したらどういうことになるかということはよくおわかりだと思いますから、あくまで頼まれたからそこに出しているということでございまして、そういうものをすべて文部科学省が公表するということも、またこれはいかがなものかと思います。

石井(郁)委員 私、文部科学大臣のそういう姿勢というのも大変問題だというふうに思うんですね。与党、与党と言われますけれども、一体、文部科学省は与党のための機関なんですか、与党のためだけの機関なんですかと言わなければならないと思うんです。

 というのは、ずっとこの間の経過も、柱立ても与党協議会の中間報告に基づいてつくられました。内容も、与党検討会の検討に基づいて政府が法案をつくっているんですね。異常じゃないでしょうか。

 この与党の教育基本法改正に関する検討会というのは、公的な機関なんですか。公的な機関でも何でもありません。それを密室で、ここに出された仮要綱案というのは全部回収されるそうですけれども、一転、新聞記者には、こういう経過でこういう議論をしていますということは記者レクはされているんですね。なのに、その資料は全部回収される。何か異常なやり方じゃないんでしょうか。

 私は、文部科学省として、文科省がこの教育基本法改正の作業に取りかかっているんだ、ここまで案がまとまったというんですから、それは野党である我々にも当然示してしかるべきじゃないんですか。いかがでしょうか。

田中政府参考人 先ほどからお答えしておりますように、この仮要綱案というのは検討会における議論のたたき台として作成したものでございまして、私どもといたしましては、この検討会並びに協議会の御議論の結論を踏まえまして、きちんとまた積極的に対応してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

石井(郁)委員 当委員会にはその検討会にかかわっていらっしゃる方もおいでですから、そういう事情もあるのかもしれませんけれども、私は、今の経過をお聞きしてもわかるんですけれども、公的でも何でもない、与党の検討会ですよ。その与党検討会が、まさに文科省の上に、政府の上にいわば君臨しているような姿じゃないんでしょうか。そして、法案の逐条検討をしていると。そして、法案の作成をしていると。

 私は、この流れでいきますと、文科省というのはまさに与党の下部機関に成り下がっていると言わなければいけませんし、これはもう教育行政に対する政党の支配そのものだ、極めてゆがんだ形だというふうに言わざるを得ないと思うんですね。しかも秘密裏にやっているわけですから。

 教育基本法改正という問題は、まさに国民挙げての、国民的な関心事じゃないですか。まさに日本の将来にかかわる重大問題じゃありませんか。何でこんな秘密裏に文科省と与党が進めるのかという問題は、今極めて異常に、あるいは異例に映っている、国民から見たらそのように見られているということを申し上げまして、このような秘密裏な検討は私はやめるべきだということを主張しておきたいというふうに思います。

 さて、続きまして、法案の質疑に移らせていただきます。

 今回の学校教育法の一部を改正する法律案の中では、現行助手を助教と新助手というふうに区分けするという問題がございます。まず、その問題から入るわけですけれども、この新助手、助教の処遇についてちょっとお聞きしておきたいというふうに思います。

 基本的には現行助手のままだというふうに理解をしているんですけれども、それでいいのかどうか。それから、新助手への移行または新規採用についても、現行の給与水準などの維持というのはきちんと守られるのかどうか。私は現行を守るだけでいいとは思いませんで、水準アップを図るべきだというふうに思いますけれども、その点でお答えください。

石川政府参考人 このたびの改正によって新しく設けられることになります新助手の処遇等についてのお尋ねでございます。

 今回の制度改正は、ただいまお話がございましたように、現行の助手を、教育研究を主たる職務とするものに相応する職としての助教の職を新設するとともに、教育研究の補助を主たる職務とする職として、新しい制度における助手を明確化するというものでございます。これを踏まえまして、新しい制度におきまして、各大学における助手の処遇ですとかあるいは職階上の位置づけにつきましては各大学の判断により適切に定められるということが基本であると考えております。

 ただ、これまでの経緯ですとか、あるいは実際に当該助手が行う職務の実態も踏まえまして円滑な処遇等が行われるということが望ましいことは当然でございます。例えば、従来から改正後の助手の職務に属するような職務を行っていた方々につきましては、処遇等は基本的に継続されるべきもの、このように考えているところでございます。

石井(郁)委員 とりわけ新助手の処遇なんですね。

 さらに伺うんですが、この法案を準備する検討委員会でも懸念が表明されておりまして、このような記述がございました。教授、准教授、新職というのは、この職階の中でプロモートの可能性がある。だから、助教まではプロモートの可能性があるんだと。事務職員の場合は事務職員としてのプロモーションの仕組みがある。新助手だけはそれがないというと、非常に不満を生じる。だから、新助手を独自の専門職として認めて、その中で新しい職階制なり給与体系を入れない限り、学校教育法上の職として新助手をつくってみても問題の解決には必ずしもならない。これは、昨年八月二十四日の検討委員会の議事要旨から、私、見たんですけれども。

 だから、こういう問題点は払拭できているんでしょうか。新助手の昇進とかあるいは職階制について、どのような措置がとられるのでしょうか。

石川政府参考人 今のお尋ねは、いわゆる新助手の将来のキャリアパスに関することではないかというふうに理解をいたしておりますけれども、助手についている方々の将来の処遇ですとか、あるいは職業能力の開発、将来の他の職への転換等を含めました、いわゆるキャリアパスにつきましては、各大学や各分野の実情に応じまして、各大学におきまして判断するということが適当であると考えております。

 例えば、各大学の判断によりまして、主任助手など教育研究を補助することを主たる職務とする職につきまして、独自の体系を設けるというようなこともありましょうし、また、近時、情報化、国際化への対応などあるいは入学者選抜等、専門性の高い職務がますます拡大をしております。こういったことから、専門性の高い職務を担う職といったようなものを設けまして、助手との間で人事交流を行うといったようなことも考えられることではないかと思っております。

 なお、助手のキャリアパスとしては主にこのようなものが考えられるわけでございますけれども、助手の職についている個々人につきまして、その適性でありますとか資質、能力に基づいて、各大学の判断によって准教授ですとかあるいは助教等に採用されるといったようなことも大いに考えられるもの、このように考えております。

石井(郁)委員 私どもがちょっと伺った中では、助教と新助手に分けて、助教にはキャリアパスとしての道はいろいろあるということでしたけれども、新助手にはその辺が想定されていないんじゃないかという心配があるものですから、お聞きしたわけです。

 そして、なぜこれをお聞きしたかといいますと、国立大学には長いこと教務職員という方がいらっしゃいました。本当にそこから、実際には研究の一助を担っていたりいろいろなことをやっているんですけれども、そこどまり、その上がなかったということがあるんですね。

 さて、それで、今一部には、この新助手というのは教務職員問題の再現ではないのかという心配の向きがあるんです。それでちょっと伺っておくんですが、教務職員制度というのは、どんな実態で、どういうものとしてあったのか、ちょっと簡単に説明していただけませんか。

石川政府参考人 教務職員についてのお尋ねでございます。

 教務職員につきましては、学校教育法上の直接の根拠規定を持った職ではございませんで、国立大学の法人化前の内部職制といたしまして、旧国立学校設置法の施行規則、この規則は国立大学の法人化に伴いまして廃止されておりますけれども、これに規定されていたものでございます。なお、その職務の中身につきましては、「教授研究の補助その他教務に関する職務に従事する。」このように定められていたところでございます。

石井(郁)委員 その教務職員なんですけれども、教育職の給与表一級というのが適用されていましたけれども、教員として研究費とか旅費等は措置されていませんでした。それから、職務内容としても、いろいろ本当はされてきたんですね、実験、演習の指導、実験装置、機器の開発、設計、製作、実験、測定のデータ処理だとか、動植物の飼育とか栽培、管理等々、また論文の整理。だから、助手と同様の職務を担いながら助手でもなかったという方々でした。私もかつてそういう方々をいろいろ親しく見てまいりました。だから、研究者としてやりたい、研究者として伸びたいと思っても、研究支援者としても昇進がなかった、一生教育職俸給表一級のままだった、いわゆる袋小路だったということを言われていたんですね。そういう教務職員でした。

 それで、あえてお聞きするわけですが、今回の新助手というのは、助教ではなくて新助手というふうに位置づけたわけですから、この教務職員とどう違うんですか。

石川政府参考人 教務職員につきましては、先ほど御説明を申し上げたとおりでございますけれども、他方、助手につきましては、国公私立を通じた大学制度につきまして定めた法律でございます学校教育法に根拠規定を持っておりまして、「教授及び助教授の職務を助ける。」これは従来といいますか現状の規定でございますけれども、このような形で位置づけられております。そして、職務内容を含めまして、その法制的位置づけは教務職員とは異なっておるものでございます。新しい改正後の助手につきましても、学校教育法上の現行の助手の職務の整理といたしまして、「教育研究の円滑な実施に必要な業務に従事する。」職として明確化しようとするものでございます。

 そういったことで、国立大学の内部職制として法令上規定されていた教務職員とはその制度的な位置づけを異にするものである、このように考えております。

石井(郁)委員 先ほど、キャリアパスについてもそれぞれ法人の内部でいろいろ工夫はできると考えられるということもありましたので、決して袋小路の職ではないんだということですね。そこら辺は確認をしておきたいというふうに思います。

 それにしても、やはり助教と新助手というふうに分けるわけですから、いろいろ問題が出てくるだろうというふうに思うんですね。とりわけ、どちらを選ぶかという問題が出てくると思います。

 その移行なんですけれども、やはり本人の意思を尊重すべきだというふうに思いますし、やはり格差をつけていくわけですから、新助手への移行というのは強制してはならないというふうには思いますが、それはそのように確認してよろしいですか。

中山国務大臣 今回、現行の助手を助教と助手に分けようとするものでございますが、この新制度のもとで現在の助手の職にある個々の方を助教とするかあるいは助手とするかは、各大学において制度改正の趣旨等を踏まえつつ関係法令に従い決定されることになるものでございます。その際、各大学におきましては、現在の各助手の方々の具体的な職務の実態、今後の職務分担等を総合的に踏まえ判断が行われることになりますが、その一環として、現在の助手本人の意思も適切に踏まえた対応がなされるものと考えております。

 なお、文部科学省としては、新制度施行に伴う移行に関して、特定の基準を作成したり、各大学における個々の人事について指導や調査を行う考えはございませんが、今回の制度改正の趣旨をさまざまな機会を通じて大学関係者等に対して周知することに努めてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 そのように進められることが望ましいと思いますけれども、単なる各大学の判断というようなことに任せたらやはりいろいろな混乱が起きるんじゃないかということは当然のこととして心配が起きるわけでございまして、あるいは一方的に強引に進めるだとか、そういうことは避けなければいけないというふうに思います。

 今、大臣のそういう御答弁ですから、こういう新制度をこれは文科省として新たに導入するわけですから、その混乱が起きないようにする責任は文科省にあるというふうに思うんですね。各大学の判断に任せるということだけでは済まないというふうに思います。そういう意味で、あくまでも新助手への移行というのは強制がないように、また、本人の希望によって選ばれるように、その辺の注意と配慮というのは文科省としてきちんと見ていただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 さて、次の問題なんですが、研究支援体制のことでございます。私は、日本の科学技術研究体制、基礎研究にとってこの問題が今非常に急がれる喫緊の課題じゃないかというふうに考えているところです。

 国立大学で研究者二人に研究支援者一人を確保するというふうに述べられたのが一九九六年の科学技術基本計画だったんですね。十年前のことです。これまで、欧米諸国と比べて日本の研究支援体制というのは非常に弱い、そういう人的な配置という点で弱過ぎるということは指摘されてきたんです。新しい昨年度版の科学技術白書によれば、主要国における研究者一人当たりの研究支援者数というのは、もう本当に格段の違いがありまして、EUで〇・八一人、イギリスで〇・九六人、フランスで〇・八八人、ドイツが〇・八二ですけれども、日本が〇・二八なんですね。

 先ほど十年前を言いましたけれども、十年前の水準では約〇・四人でしたから、何と十年前に、こういう研究支援者数はヨーロッパに比べても落ち込んでいるし、これは上げなければいけないというふうに白書で言われながら、上げなければならないというか、こういう実態は変えなければいけないと言われながら、どんどん落ちてきている。これは欧州の三分の一の水準ですよね。

 これがやはり研究の阻害要因になっているんじゃないかというふうに思いますが、こういう現状については文科省はどのような認識をお持ちでしょうか。

清水政府参考人 ただいま先生から御指摘がございましたように、我が国の研究体制を考える場合に、研究支援者の問題というのが大きな問題であるということは私どもも認識しております。

 ただ、先ほど先生御指摘ございましたように、諸外国との比較というのは、正直言ってなかなか難しい要素もございます。難しい要素というのは、国ごとにそれぞれの対象をどういうふうにカウントするかという問題もございますし、また、そういう意味での正確な比較というのもなかなか難しい。

 例えば、研究者でありますと、日本とアメリカで申し上げますと、日本は大学の教員に助手も含めているわけでございますが、アメリカの場合ですと、教員については、教員のうちでも博士号を有して、かつ研究を主たる業務とする者に限定し、一方で、大学院博士課程の在学者を日本は丸ごととっておりますけれども、アメリカの場合ですと、研究支援で報酬を得ている、いわゆるRAとなっている者に対して、五〇%の専従比率を掛けている。

 こういうふうなことで、例えば外国との比較では、日本の研究者数は相当数小さくなっておるという問題もございますし、また、別な部分でさまざまな、難しい、それは支援者の場合は裏腹の職務の重層、複層性の問題もあるわけでございます。

 ただ、しかしながら、そういう中で、全体として平成九年から十四年の研究支援者総数というのは減少傾向にあるわけでございますけれども、例えば、科学技術基本計画の推進によりまして、大学等では研究者一人当たりの支援者数は低落傾向に歯どめがかかっている。このような状況でありまして、全体として、そういう意味で、さまざまな形の努力が行われているということを申し上げたいわけでございます。

石井(郁)委員 私は、そういう御答弁を聞きますと、やはり文科省って何だろうなと本当に思わざるを得ないんですね。

 私は、科学技術白書に載せられている、そのデータで、こういう現実をどう見たらいいんですかとお聞きしているんですよ。そうしたら、いやそれは比較は簡単にはできないんだ、いろいろ事情があるんだと。そういう事情を、では書かなければいけないんじゃないですか、数字を。これは国民向けに出しているんでしょう、科学技術白書。これは科学技術白書ですよ。こういう白書を出しながら、いやそれはちょっと事情がいろいろ違いまして、何かそういう話というのはないでしょう。何か白書はそれなりのリアルにある現実を述べながら、しかしそれはいろいろ読み方があるんです、何のための白書ですかと言わなければいけないですよ。ちょっと、そういう答弁はだめですよ、本当に。政府として本当に無責任ですねと言わなければいけない。

 大学の研究支援者数が極端に少ないんですよ。この科学技術白書によりますと、公的研究機関は〇・八九人です。大学は〇・一八人なんですよ。だから、トータルでは〇・二八人とかいうふうになりますけれどもね。この問題について、では白書がどう述べているかといえば、七〇%以上に及ぶ多くの研究者が、雑用を排し、研究に集中できる環境があることを海外で研究を行うことの魅力としてきたと。だから、よく日本の研究者が海外に逃げていくという話ですけれども、その問題を述べていまして、これは、日本においては、研究体制の不備により研究に集中できないことを示しているんだ、研究支援者の量的、質的な充実と研究支援体制の充実が必要であることが浮き彫りにされている、こう述べているわけでしょう。

 だから、ここまで指摘しながらというか、あるいは指摘されながら、では文科省としてこの研究支援体制の充実というのをどのようにやってきたのか。先ほどは減少している、充実どころか後退しているということをはしなくも言われました。どうなんでしょうか。

清水政府参考人 若干数字的なことを先に申し上げさせていただきます。

 例えば、平成十一年度における大学等の研究支援者の総数は、四万八千五百人でございます。平成十六年度現在で研究支援者総数は五万一千六百人という形でございまして、全体といたしましては二千人強ということ、二千人から三千人近くでございましょうか、それなりに研究支援者数の増はこの数年間の中で見てきているというふうな状況でございます。これは、私ども、さまざまな基盤的経費とあわせながら競争的資金の拡充を図りつつ、そういう形の努力を続けさせていただいてきているということでございます。

 私、先ほど御答弁申し上げましたのは、言いわけを申したわけではありません。研究者と研究支援者数をいわゆる一人当たりで諸外国と比較するときに、往々にしてそこの部分は単純化できない問題があるということを申し上げさせていただいたわけでございまして、我が国における研究支援体制というもの、研究の全体の体制を考える上で、支援体制は同時に、研究者、人の問題と、施設設備の問題等々、資金の問題とあわせながら基本的に考えていかなければならない重要な課題であることは認識しているところでございます。

石井(郁)委員 今の御答弁でも、そうしたら、この科学技術白書を書き直さなければいけませんよ。「主要国における研究者一人当たりの研究支援者数」というふうに出ているんですよ。では、これを書き直してもらわなくてはいけないということになりますよね、今の御答弁だと。これは、ちょっと宿題に置いておきたいと思います。

 研究支援者数というのは、研究従事者とか技能者とか職員とかいろいろあるようですけれども、二〇〇二年の科学技術白書でも、研究支援業務が職能体系として確立していない、この業務への人材確保を困難にしているというふうに言われていると指摘がございます。

 技術系研究支援者に対する人事処遇上の主な問題点としては、研究者に比べてやはり給与水準が低い、特殊な技能、専門知識が人事評価に反映されていないということも挙げられています。だから、今後、研究支援者の不足を解決していくためには、その能力や業績を踏まえた適切な処遇を行うこと、その上で研究支援者が誇りを持って働けるような環境を構築していくことが必要である、ここまでの指摘もあるわけですね。

 そういうことを受けて、私は、今度新助手ということですけれども、これまた後で言いますけれども、単なるこれは今の助手を切り分けただけですから、もっともっといろいろな研究支援者が必要なんですけれども、新助手も研究支援者の職能体系だというふうに言うんだったら、もちろんこの新助手の給与水準など処遇の向上がなければならないと思うし、そのほかの職種として置かれる方々も同様に処遇の向上がされなければならないというふうに思うんですね。

 聞くところによりますと、理化学研究所では、研究者と同等の給与体系が研究支援者にもあるというふうに聞いておりますけれども、こういう考えを国立大学にも広げていくというようなこと、あるいはその処遇の面でどのように措置されているおつもりなのか、伺っておきたいと思います。

清水政府参考人 ただいま理化学研究所の例を御指摘いただきましたわけでございますけれども、理化学研究所に限らず、研究活動が高度化し、複雑化し、大規模化するという状況の中で、研究支援のあり方も、それにどう対応していくかというのが課題になっているわけでございます。理化学研究所はまさにそのための対応をする一つの例であろうというふうに思っております。

 そういう意味では、まさに白書にも述べておりますように、研究支援に従事する者の専門性を高めるか、高度の人材をどう確保するか、そういう意味での職能体系の確認というのは、理化学研究所のみならず、各大学においても重要となってきている、こんなふうに思っております。

 これは法人化以前でございますけれども、これまで国立大学にありましては、例えば、業務の効率化、機能化、集約化ということで、支援体制の組織化の推進というのを第一に推進し、それとあわせながら、技術専門官とか技術専門職員などの新たな職を設け、またその処遇の改善、上位号俸への格付等々を行ってきております。

 法人化によりまして、国立大学等において研究組織をどのように編制し、どのような研究支援職員を育成、配置し、そしてどのような処遇あるいは職能の体系としていくか、これは法人にまさにゆだねられたということになるわけでございますが、いずれにいたしましても、国立大学等における研究活動をどう支援していくかということが重要となってきておる、こういうことにかんがみますと、これまでのそういう流れというものを十分踏まえながら、そういう職能体系の確立も含めた一層の支援体制の充実整備が必要である、こういうふうに考えております。

石井(郁)委員 研究者一人当たりの研究支援者数というような比較は簡単にできない、そんなことを言われたら、本当にこの科学技術白書は何を書いたのかということになるわけですけれども、明らかに日本は少な過ぎる。しかも、十年前よりどんどん下がってきているということが問題だと思うんですよ、実数では多少ふえたとしても、研究者一人当たりの数でどうしても比較するわけですから。

 では、この十年、政府としてこの分野でその充実のために何をしてきたのかという、まさに国の責任が問われる問題だというふうに私は考えているんですね。ですから、何度も、内部的にどういうふうに仕分けをしていくかだとか、それから、法人としてどのように進めていくかだとかいうふうに言われるわけですけれども、これは国が責任を持って整備しなければならない問題じゃありませんか。

 その意味で、国の責任をもっとはっきり自覚してもらいたいし、国自身が、文科省自身がやはり責任を持って取り組んでほしいということを強調しておきたいというふうに思います。

 だって、これでは先が見えてきませんよ、あなた方、余りにも法人任せなんだから。国は何をしてくれる、何をするのか、よくなるという方向が見えてこないじゃないかということになるわけで、いかがですか。

清水政府参考人 先ほど、科学技術白書の私の説明が不十分だったかもしれませんが、科学技術白書で指摘しております研究支援者の総数は、企業の研究活動における支援者を含めた数字でございます。

 現実に数字を見てみますと、我が国の研究者、研究支援従事者数の約六割が企業等のセクターでございます。そういう中で、全体としてこの五年間の傾向を見ますと、一番そういう意味で一人当たりの支援者数の減少率が大きいのが、いわゆる民間の研究機関及び企業等でございます。大学につきましては、先ほど若干数字を挙げさせていただきましたように、それなりに歯どめといいますか、低落傾向には歯どめがかかっている、実数としては増加している、こういうふうな状況であるということでございます。

 ただ、私、そういう実態を申し上げたいということでございまして、全体として、我が国の研究活動を支える、そこにおける支援体制というものを考えてみた場合に、研究支援体制というもの、あるいは支援者の問題が重要であるというのは否定しているものではございません。しかしながら、そこで、企業のあれについてどこまで国が役割を果たすべきか、そこはいろいろな議論があるだろうと思っています。

石井(郁)委員 次の問題なんですけれども、准教授以下を置かないことができるというただし書きがつけられました、この問題でございます。

 これまでは、「大学には学長、教授、助教授、助手及び事務職員を置かなければならない。」としていましたが、今度は、「ただし、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には、准教授、助教又は助手を置かないことができる。」このただし書きをつけた理由は何でしょうか。ちょっと御説明ください。

中山国務大臣 今回の制度改正におきましては、若手の教育研究者の養成が大学の重要な責務の一つである、あるいは、大学の教育研究の活力を維持していく上で若手教員の活躍が必要であるということから、基本的には大学に准教授等を置かなければならないということにしているわけでございます。

 ただし、今後、各大学がそれぞれの理念等に基づきまして、教育研究上の個性、特色を発揮し、緩やかに機能を分化していくことが考えられること等を踏まえまして、すべての大学に必ず准教授等を置かなければならないということにはしないで、各大学の理念とか、あるいは各専攻分野の実情等によって、教育研究上の組織編制として適切な場合には、この准教授等を置かないことができるということとしたものでございます。

 具体的にはいろいろなケースが考えられると思いますけれども、例えば、学生の教育に重点を置いて、他大学において既に業績を確立しているベテランの教授を中心に採用している場合とか、あるいは、学際分野など教育研究分野の特性に応じて、教授、准教授、助教等の重層的な教育体系をしいて一定の分野をより深く履修させるよりも、教授のみを置いて幅広い関連領域を履修させる方が有効な場合等が考えられるというふうに思っております。

石井(郁)委員 ちょっと一点確認させていただきたいんですけれども、今の御答弁の中で、今までは置かなければならないとした、これは若手養成の観点からだというふうにおっしゃったと思うんですが、それでいいんでしょうか。とすると、逆に、今度、置かなくてもよい、置かないことができるというのは、若手養成という観点はよそに置いたということですか。ちょっとそこの関係を、若手養成という問題がここにはどうかかわってくるのか。

中山国務大臣 まさにその若手養成ということが今回の非常に重要な目的でございますけれども、それとまた別の観点で、やはり大学の自主独立性ということもあるわけですから、それにつきましては、やはり大学は柔軟に教員編制ができるようにと、そういう配慮があったということでございます。

石井(郁)委員 最初の御答弁は大変重要だと思ったんですね。今までは若手養成の観点があったから置かなければならないということだけれども、それは否定はしていないということですね。ちょっともう一度。

中山国務大臣 若手の養成ということは、今までもそうですが、これからもっと重要になるということでございます。

石井(郁)委員 確認させていただきました。

 それで、今の御答弁のように、多様性だとか機能的にだとか大学の特色等々というふうにいろいろ言われるんですけれども、先ほど私も申し上げたように、研究支援者を人的にどう充実させるかということもそうですが、やはり、研究者ポストの数というのが今後本当にどうなっていくのか。研究者の数、研究者ポストがどうなっていくのかという問題も大変重要だというふうに思いますのでお聞きするんですが、最初に数字をお示しいただきたいのは、一九八六年度から二〇〇一年度までの、これは国立大学に限りますが、教授の人数と助手の人数、推移をちょっとお示しください。

石川政府参考人 国立大学におきます教授あるいは助手の人数の推移についての御質問でございます。

 国立大学の教授につきましては、昭和六十一年では一万五千二百四十七人という数字でございます。これが、平成十三年におきましては二万七百十三人ということになっております。助手につきましては、同じ昭和六十一年から平成十三年でございますけれども、一万七千五百七十四人から一万七千六百三十一人、こういう状況になっておりまして、教授につきましては年々増加しているところでございますが、助手につきましては必ずしもふえているとは言えない、こういう状況かと思っております。

石井(郁)委員 私はこのことを問題にしたいと思うんですけれども、今の御答弁のように、国立大学の中で見れば、教授はかなり、これは五千数百人ぐらいになると思うんですけれどもふえているけれども、助手というのはほとんど増加していないということがあると思うんですね。

 この問題も検討委員会でも指摘されていたようですが、非常にトップヘビーの構造になっている、新しい血が必要だと言いながら、新しい血が大学の中にいる場所はどんどん狭くなっていると。これは今の数字の実態を言ったと思うんですけれども、なぜこういう構造というか、こういう比になったんでしょうか。それはどのような認識でしょうか。

石川政府参考人 先ほど申し上げましたような傾向を招いた原因といいましょうか、その原因につきましてはいろいろな面が考えられると思いますけれども、そしてまた、特定の原因に限定をするということもなかなか難しい面もあろうと思います。

 例えば大学院、大学の学部もそうでしょうが、大学院におきます教育研究機能の強化というような観点などのために、各国立大学におきまして教授のポストをふやして教育研究体制を整備した、あるいは整備してきたというような要因も働いているように思われますし、そしてまた、そういった際に、各大学からの要望を踏まえまして、定員上は助手のポストを活用して整備するといったケースもあったりした、こういったことが影響しているのではないかな、このように考えておるところでございます。

石井(郁)委員 国立大学の半数近くが、教授と助教授、助手の比というのはこれまで一対一対二、それがベストかどうかというのはまた問題ですけれども、それが今、三対二対一、逆ピラミッドだというふうに言われているんですね。

 今御答弁ありましたけれども、やはりこのような形になったのは定員削減の問題じゃなかったんでしょうか。これも検討委員会での発言を引用しますけれども、助手を一番たくさん抱えている医学部では、国立大学で第十次の定員削減があった、多くを助手から減らしてくる。助手を減らしたために実際には弊害として出てきてしまう、現在の助手の業務分担が物すごく多様になってしまった。やはりこういうことが非常にいびつな大学の状況を生み出しているということを言われているわけです。

 助手に膨大な仕事が押しつけられている、それで研究活動に支障を来している。もちろん、若手の養成ということにもそれがつながらないということだと思うんですね。その辺の御認識はどうなんでしょう。定員削減が、助手のポストあるいは事務職員のポストを非常にそこから奪ってきたということはお認めになりますか。

石川政府参考人 法人化前の国立大学の教職員も、いわゆる定員削減の対象となっていたところでございます。教官につきましては、大学における教育研究の充実の観点から定員上も配慮されてきたところでございます。

 また、定員削減についても、どの職種をどういうふうに削減していくかということにつきましては、これは各大学の判断を踏まえてきたところでございまして、文部科学省として助手の削減を指導してきたということではございませんので、それぞれの各大学が対応してきた結果が現在の形になっておるということかと思っております。

石井(郁)委員 それぞれの大学の事情、実情に応じてやってきたという面もあるかもしれませんけれども、今現状が、教授、助教授、助手は三対二対一という逆ピラミッドだ。ある大学のある学部なんかでは、本当に助手が一人とか二人とか、あるいはいないところも出てきているというようなことも聞いておりますけれども、これは、そういう大学の職員の構成として、やはりよくないというか是正の必要があるという認識はございますか。

石川政府参考人 大学におきます教員組織のあり方、そしてその具体的な、例えば教授、助教授、助手等の配置の考え方というものにつきましては、それぞれの大学の特色ですとかあるいは方針、それからそういった個性、そういったことによってさまざまに変わってくるものであろうと思います。

 先生御指摘がありましたように、支援職員あるいは若手を厚くしてこれからの勢いに期待をするというような考え方も、例えば新しい研究を切り開いていこうという場合にはそういう考え方もあろうと思いますし、それから、教育面をしっかり重視してこれを中心にやっていこうといったような場合に、例えば教授層を厚くしよう、こういった考え方もあろうと思っております。これも、やはり大学のポリシー、そして教員組織が置かれる分野とか置かれている状況等によって、それぞれまた変わってくるものではないかな、こんなふうに思っております。

石井(郁)委員 とにかく国立大学は、十次にわたる定員削減で、相当な助手あるいは技術職員、事務職員等々の人が減らされました。そのことがこういう逆ピラミッドという形になっているし、このままでは本当に若手研究者の養成がどうなっていくんだろうかという声が今や聞こえるわけです。

 私は、そういう中で、今問題なのは、法人化にして、今度はさらに運営交付金がこれから先減らされていくという問題です。ただ、それがやがて定員にもあるいは非常勤にも及んでいって、結局、人をどんどん減らさざるを得なくなってきているということが今大問題になっていると思うんですね。また、私学でも、十八歳人口百二十万人時代を迎えている。それぞれが何か生き残りをかけた、いわば大学間の競争ということが言われているわけです。

 そんなときに、そこにやはり歯どめこそ必要だ、本当に研究者、研究支援者をどう確保していくのか、将来を展望するのかということになるのに、先ほどに戻りますけれども、それぞれのいろいろ職種を置かないことができるということをわざわざここで法律として決めるということは、このただし書きを加えたら、まさに、置かないことができるんだから、その定員を外そうか、あるいは大学のリストラということの根拠を与えることになりはしないか。これはどうお答えになりますか。

石川政府参考人 今回の置かないことができるという規定の仕方につきまして、こういった規定をするとリストラとかあるいは人員削減につながるのではないか、こういった御心配かと思います。

 現在、先生も御案内のように、大学設置基準におきまして、大学につきましては、学部の種類あるいは収容定員に応じまして、必要な専任教員数といったようなものが定められております。仮に各大学の判断によりまして、准教授や助教について、置かれないあるいは数において少し違った配置の仕方をする、いろいろなことがあるといたしましても、最低限必要な専任教員数といったようなものは今回の法律の改正前とその点は変わるわけではございませんで、同じということでございます。

 そういった数字的な面から見れば、専任教員全体として見た場合には、今回の制度改正によりまして、各大学における定員削減が促進される、あるいは進んでしまうというようなことはないと考えておりまして、どういった構成で教員組織をつくっていくかということは、まさにそれぞれの大学のイニシアチブ、御工夫によっていくものであろう、このように考えておるところでございます。

石井(郁)委員 きょうは、先ほど来、研究者あるいは研究者支援、研究支援体制というのを本当に充実させなければいけないということでの質問を私は申し上げてきましたし、文科省もそういうことは需要をお認めになったわけです。

 今御答弁のように、専任教員数も決して減らしたりはしないんだ、また研究者支援体制も今後も充実させていくんだということであれば、ぜひ運営費交付金、こういうスタッフの強化というか人的体制の確保という点での運営交付金の確保あるいは私学助成というのは、もう抜本的にふやすべきだというふうに思います。この点ではぜひ大臣の御決意も伺っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 我々としてもしっかり運営交付金等の確保には努力してまいりますが、国立大学法人化には、教育研究の高度化とかあるいは個性化とか、さらに運営の効率化といったことも当然あるわけでございまして、日本全体として行革を進めているという中にありまして、大学だけが別だというわけにもいかぬわけでございますから、そういった全体のことを踏まえながら大学運営にしっかりと当たっていただきたい。

 そういう意味で、自由度も与えながら自律性に任せてやっていくという方針で文部科学省はおるわけでございます。

石井(郁)委員 もう少しの時間ですが、ポストドクター、ポスドクの問題で、ちょっと二、三伺っておきたいと思います。

 先ごろ、文科省はポストドクターの実態調査を行ったようですけれども、二〇〇四年度は何人というふうに把握していらっしゃいますか。

有本政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のポスドクの実態調査でございますけれども、昨年からことしにかけまして、全国の大学、公的研究機関、千七百機関以上、初めて悉皆的に本格的な実態調査をいたしたわけでございます。

 それで、十五年度実績の人数といたしまして一万二百人、それから、十六年度の見込みの人数といたしまして一万二千五百人程度ということになってございます。

石井(郁)委員 人数がふえていますけれども、その原因というのは文科省はどのように考えていらっしゃいますか。

有本政府参考人 一般的な傾向といたしまして、最近は、御存じのように、競争的資金によりますポストドクターがたくさん、ポスドクのうち約半数が競争的資金によって支えられているという状況にございます。そういう意味で、競争的資金が拡充されているという中で、その研究を支えていただいておりますポスドクの人数も増加傾向にあるというふうに推察いたしてございます。

石井(郁)委員 年齢別で見ますと、四十歳以上の方が約八%いらっしゃるというふうに私は見ているんですけれども、大変高齢化が進んでいる。つまり、ポスドクで、それから正規のというか研究職についていかなければいけないわけですから、それが既に四十歳以上だということは、私は大変問題じゃないかというふうに思うんですね。

 だから、まさに大学の助手などの常勤ポスト、あるいは助手以上でももちろんいいんですけれども、やはり空席待ちというのが長引いているからじゃないのかというふうにも思いますが、ポスドクの経済状態についてはどのように把握していますか。

有本政府参考人 まず、先生御指摘でございますけれども、この実態調査によりまして、四十歳以上のポスドクの方が約八%おいでになるということ、それから、御指摘ではありませんでしたけれども女性が二割ぐらい、それから外国人のポスドクが二割ぐらいおいでになるということがわかってございます。

 その上で、経済状態でございますけれども、いろいろなポスドクのサポートの制度がたくさんございますので、どれぐらいの方がどれぐらいの収入を得ているかというところまでは十分把握いたしてございません。

石井(郁)委員 やはりそういうことを文科省としてはきちっとフォローしていただきたいなというふうに思うんですね。常勤研究者並みの待遇を受けている方というのはポスドクの半数ぐらいしかありません。それから、先ほどあったように、競争的資金ですから、それはもうプロジェクトですよね。それは年数も限られているでしょうし、非常に不安定ですよ。

 やはりポスドクの方というのは、自立した研究者として、本当に将来日本の科学研究を担っていくわけですから、そういう人としてやはり研究活動をしていかなければいけないということがあると思うんですけれども、自立した研究をするフェローシップというのはわずか一四%しかいない。あとはもう競争的資金、研究プロジェクトに組み込まれてやらざるを得ないということになっているということなんですね。

 いずれにしても、若手の研究者が経済的に非常に苦しい状況に追い込まれている、あるいは、苦しい状況で研究活動を進めているということが言えるというふうに思うんですね。こういう状況について、ぜひ、最後は大臣としての御見解を伺っておきたいというふうに思います。

 私は、研究に専念できる環境をつくるというのはやはりこれは国の責務として、特に文科省が負わなければいけない責務ですし、特に常勤研究者ポストの確保というのは本当に必要なことだと思いますし、そのことが日本の若手研究者の育成や将来の日本にとっての重要な課題だというふうに思いますので、最後に大臣のこの問題での御認識と御見解を伺って、終わりたいと思います。

中山国務大臣 ポスドクにつきまして、人数もふえているし、また高齢化も進んでいるということでございまして、これは我々としても大変残念なことだと思っております。そういった方々がそれぞれの能力に応じてやはり活躍していただくということが日本経済の活性化にもつながるわけでございます。

 特に、これからの科学技術創造立国の達成に当たりましては、こういった方々をいかに活用していくかということが大事だろうと思うわけでございまして、これは、経済がもっともっと活性化していくことも大事でございましょうし、大学とか研究機関がそれぞれもっと工夫をしながらそういった方々を活用していくという観点からもっともっと考えていくべき問題ではなかろうか、このように認識しております。

石井(郁)委員 大体時間が参りました。

 私は、女性研究者の問題も、今回、政府の白書でも大変強調されまして、科学技術分野で日本の女性研究者が余りにも冷遇、少な過ぎるという問題もありますけれども、きょうは以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

斉藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党を代表して、学校教育法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 本法案において、短期大学卒業者への学士号授与や准教授の設置、また、現行法で研究者間の封建的ともいうべき従属性を規定していた教授、助教授を助ける規定が削除されたことについては賛成できるものですが、以下の問題点から、本法案には反対せざるを得ません。

 一つは、准教授、助教、新助手について、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には置かないこともできるとただし書きをつけたことは、若手研究者のつくべきポストの削減に法的根拠を与え、ひいては、科学研究の継承、発展と若手研究者の養成を困難にするからです。ただし書きのない現行法においてさえ、数次にわたる定員削減が助手や職員にしわ寄せされ、教員組織の在り方に関する検討委員も、大学に新しい血が入る余地がなくなっている、トップヘビーになっていると指摘せざるを得ない状況をつくり出しています。国立大学運営費交付金と私学助成一般補助の削減の中でこうしたただし書きをつけることは、大学リストラを一層加速させることになりかねません。

 二つ目に、教育研究支援者として新たに規定された助手は、研究者としても教員としても昇進がない袋小路の職階であり、これまで解消に努力してきた教務職員制度の復活でしかありません。科学技術白書などで指摘されてきた研究支援者の充実については、量的充実はもちろんのこと、専門職員としての誇りを持てるような給与体系の確立など、その処遇を抜本的に向上させることこそが求められています。

 ノーベル賞をとった研究の多くは、遅くても四十歳代までのものである、日本ではそういう年齢の研究者の才能が浪費されているという利根川進氏の指摘にあるように、若手研究者にこそ、教育と研究に専念できる環境の整備が必要です。研究者のそうした願いを裏切りかねない本法案には反対であることを表明し、討論とします。

斉藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、学校教育法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

斉藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、伊藤信太郎君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。城井崇君。

城井委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    学校教育法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 若手研究者の待遇改善に資するため、大学等においては、各人の能力や業績を公正・適切に評価し、処遇に反映させること。また、政府においては、優れた若手研究者に対し積極的な支援を行う等、その能力を発揮しやすい環境を整備すること。

 二 大学教員等の資格等について、特に、助手については、教育研究の活性化や優れた人材養成に資するよう、そのキャリア・パスについて検討を行うこと。

 三 短期大学においては、学位の質を確保するため、自己点検・評価等による教育の改善・充実に一層努めること。

 四 高等専門学校が、早期体験重視型の専門教育等の特色ある教育により優秀な人材を輩出し、また、地域の教育拠点として高い評価を得ていることにかんがみ、その教育水準の維持・向上を図るための研究に対する必要な支援を行うこと。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

斉藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

斉藤委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中山文部科学大臣。

中山国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

斉藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.