衆議院

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第16号 平成17年8月3日(水曜日)

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平成十七年八月三日(水曜日)

    午前九時三十五分開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 奥村 展三君 理事 川内 博史君

   理事 牧  義夫君 理事 河合 正智君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      加藤 勝信君    岸田 文雄君

      近藤 基彦君    佐藤  錬君

      下村 博文君    鈴木 俊一君

      鈴木 恒夫君    西村 明宏君

      葉梨 康弘君    馳   浩君

      原田 令嗣君    古屋 圭司君

      保利 耕輔君    宮路 和明君

      山際大志郎君    青木  愛君

      内山  晃君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    古賀 一成君

      須藤  浩君    武山百合子君

      達増 拓也君    長島 昭久君

      肥田美代子君    松本 大輔君

      笠  浩史君    池坊 保子君

      石井 郁子君    横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   安藤 隆春君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      大島  寛君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (文化庁次長)      加茂川幸夫君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           阿部  健君

   参考人

   (社団法人日本音楽著作権協会理事長)       吉田  茂君

   参考人

   (社団法人電子情報技術産業協会法務・知的財産権総合委員会委員長)     小林 利治君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動 

八月三日

 辞任         補欠選任

  加藤 紘一君     原田 令嗣君

  佐藤  錬君     宮路 和明君

  長島 昭久君     内山  晃君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     加藤 紘一君

  宮路 和明君     佐藤  錬君

  内山  晃君     長島 昭久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として社団法人日本音楽著作権協会理事長吉田茂君及び社団法人電子情報技術産業協会法務・知的財産権総合委員会委員長小林利治君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として警察庁長官官房長安藤隆春君、刑事局長縄田修君、文部科学省大臣官房長玉井日出夫君、大臣官房文教施設企画部長大島寛君、生涯学習政策局長田中壮一郎君、初等中等教育局長銭谷眞美君、研究開発局長森口泰孝君、スポーツ・青少年局長素川富司君、文化庁次長加茂川幸夫君及び国土交通省大臣官房審議官阿部健君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮路和明君。

宮路委員 山梨県の日教組、いわゆる山教組問題、これは大変ゆゆしい問題でありまして、教育改革が叫ばれる中に、教育行政あるいは教育のあり方そのものにかかわる大きな問題であります。

 このため、我が党もプロジェクトチームを去年の秋発足させまして、これに当たっておるわけでありまして、私も、去る二月八日、衆議院の予算委員会でこの問題について質問させてもらいました。また、そのプロジェクトチームの一員であります佐藤錬議員も、去る七月二十日、この委員会で同様に質問をさせていただいているわけであります。

 絶対にこの問題は風化させてはいけない、我々としては、徹底してこの問題を追及して、教育行政あるいは教育そのものの本来の姿というものを取り戻してまいらなければならない、こんな思いできょうも質問に立たせていただいたわけであります。

 まず最初にお聞きしたいことは、文部科学省がどうして山梨へみずから足を運んでこの問題解明のための現地調査を実施しないのかということであります。

 我々党としても、既に何回か足を運んで、現地でいろいろな人たちの意見を聞き、また資料提供を求めて、その実態解明を迫るというようなことで、いろいろと努力いたしておるわけであります。そして、文科省に対して我々は、一刻も早く、権限を何ら持っていない我が党ですらそういうことをやっているわけだから、権限を持っている文科省がどうして現地へ出ていってしっかりとこの問題の解明、追及に当たらないのか、こう口を酸っぱくして前から言っているわけでありますけれども、行く行くとは言いながら、一向に行かないのが実態であります。

 これまで何回も指導はやっている、指導はしているということを言っておるわけでありますし、この間、三月二十九日、教育委員長を呼んで、実態の解明を、再調査をやって一層全容を明らかにすることが第一点。

 それから、第二点は、関係者が関与した資金カンパ集め等々の行為は、これは県教育委員会の調査結果を見る限り、人事院規則に定める政治的行為に該当する、つまり違法行為であるということも言っておるわけであります。

 また、去年の十二月二十七日に、校長や教頭あるいは山教組の幹部十九人に対して文書訓告等の処分を行っているわけでありますけれども、これも懲戒処分で本来やるべきところをこの程度の服務監督上の処分に終わっている。その服務監督権限は、そういうものについては市町村の教育委員会にあるのに、県教育委員会がやっているということで、これも極めて違法ないわば処分であるということを指摘しておるわけですね、その三つについて。

 それを指摘しながら、教育長は、新たな事実が出ない限り再調査や再処分は行わないという方針を、五月二日に文部省にやってきて、そういう意向を表明している。そこで、これ以上やってももう前進がないから、文科省は、みずからが現地へ行って調査をしよう、こういうことを示唆しているわけですね。にもかかわらず、今もってこれがなされていない。これは一体どういう理由によるのか、そこの辺をまず聞かせてもらいたいと思います。

中山国務大臣 お答えいたします。

 この山梨県におきます山教組の政治的活動に係る問題につきましては、何度かこの委員会でも取り上げられたわけでございますが、文部科学省といたしましては、これはやはり教育という非権力行政であるということで、まずは教職員の任命権者であります山梨県教育委員会において襟を正して事実関係を明らかにし、毅然とした対応をとることが必要であると考えておりまして、このような観点から、これまでも再三にわたりまして県教委に対しまして指導を重ねてきたものではございます。

 しかしながら、指導を繰り返しても適切な対応がなされず、県教育の自浄作用に期待できないのであれば、何らかの手だてを考えざるを得ない。その一つとして、現地において関係者から事実関係についてヒアリングを実施することもある旨を、五月の二日に山梨県教育委員会の教育長に対し伝えたものでございます。

 また、この政治的活動に係る問題につきましては、現在、政治資金規正法違反の告発を受けて山梨県警による事情聴取が行われているものと承知しておりまして、文部科学省としては、その動向も見きわめつつ、現地調査について検討を進めてきたところでございます。

 しかしながら、現在なお、残念ながら山梨県教育委員会においては、文部科学省からの指導事項に対し、その改善に努めようとする姿勢が見られないところでございます。このため、昨日、八月二日でございます、山梨県教育委員会の教育長を呼び、文部科学省として、近く山梨県において県及び市町村の教育委員会関係者よりヒアリングを実施する旨を通告し、協力を要請したところでございます。

宮路委員 捜査の状況も見きわめながら検討しておられたという大臣の答弁であります。

 実はきょうは、文科省側は局長答弁で勘弁してくれという話もあったんですが、これはもう局長じゃだめだ、大臣じゃないと、政治的な判断をもとにこの問題は対処していかなきゃならぬということで、あえて大臣にこういう問題についてまでお答えをいただいている、そういう事情なのであります。

 大臣、実は、告発は二月の七日に行われているわけですね。そして、五月の二日に、先ほど申し上げたように教育長を呼んで現地調査もあるべしということを表明しておるわけでありまして、地元の新聞なんかは、その直後、五月の二日の後は次から次へと、文科省の現地調査あるべしという新聞報道も非常になされているわけであります。

 ですから、地元も大変期待をしておった、我々もこれはもう間近だな、こういうふうに思っておったわけですが、今もってそれが行われていない。こういうことでありますので、捜査は捜査、これは別に文科省が調査に入ったからといって、それを邪魔するというようなことも多分ないと思います。そういうことで、これは切り離してしっかりとまずやってもらいたい、このことをお願いしておきたいと思います、早急に。

 それから、次に、そういう中にあって、今度は山梨県の教育研究所なるものが七月の二十六日に開いた公開研究会というのがあるんですね。この山梨県の教育研究所なるものは、実態は、山教組が実は傘下におさめている研究所なんです。これは知る人ぞ知るなんです。その研究所が主催の研究会に、実は文科省の山中審議官が出席するということが大きくPRされまして、皆さんにその研究会への参加を呼びかけるということが実はあったわけなのであります。この問題が、ついこの間七月の三十一日、産経新聞にも大きく取り上げられております。

 ところが、実際は、先ほどのその告発、県政連を告発した、その告発人であられる元参議院議員の小林先生を初めとするいわゆる民間教育臨調の皆さん方が、おかしいじゃないか、こういう会に文部省の官僚が出かけていってやるなんというのはということで、物すごいクレームを発出された。その結果、これがとまったんですね。ところが、こういうようなクレームが出なかったとすれば、我々もクレームを言った当事者なのでありますけれども、この出張講演が恐らく実行されておったに違いない。

 常識的に考えて、我々が問題になっている山教組系列のその教育研究所であるということで、その問題解明のための実態調査には文科省は行かないで、これが主催する研究会には出かけていくということは、一体どういうことなのかねと。極めてこれは文科省の姿勢を疑わざるを得ないわけですね。こういうぐあいにビラで相当PRもされているということでありますから、事前にこれは当然本人も納得して、そしてこのビラもつくられてばらまかれたということだと思うんですよ。

 一体この出張は、こういう高級官僚が出張に出かけるということについては、事前にこれは許可が当然必要ですよね、当局の許可が。この許可は一体だれがやったんでしょうか。

玉井政府参考人 お答え申し上げます。

 職員に出張を命ずるかどうか、その用務についてそれが必要かどうか、またそれが公務に支障があるかどうか、こういったことは当然ながら適切に判断せねばならないことだろう、こういうふうに思っております。

 その場合の出張命令につきましては、私どもの内部の規則によりますと、局長等に権限が委任されているわけでございまして、今回の件につきましては、担当部署において出張の手続を進めてきたわけでございますけれども、しかしながら、この研修会というのが、まだ詳細では明らかでないとはいえ、現在その政治的活動が問題となっている教職員組合が加わっている団体が主催する研修会に参加することは必ずしも望ましくない、また当該職員の日程上の都合もあり、出席しないということになったと承知しておりまして、そういう観点から出張は取りやめになったというふうに了解をしているところでございます。

宮路委員 局長が、何局長か知りませんが、局長が既に判こをついておったということですね。となると、これは公務出張、旅費を払っての公務出張になるという予定であったんでしょうか。

玉井政府参考人 出張の取り扱いにつきましては、先方負担もあればこちらから出す場合もございます。それで、この段階においては先方負担ということを聞いておりましたけれども、しかし、この出張命令につきましては、手続を進めておりましたけれども、今申し上げましたような諸般の事情から、そもそも出張しないという取り扱いにしたわけでございます。

 私どもとしては、これまでも公務出張等の服務規律の保持というものは大変重要だろうと考えておりまして、その周知を図ってきたところでございますが、今後とも適切に対応してまいりたい、かように考えております。

宮路委員 これは山梨の教育行政といいましょうか、それは山教組に牛耳られているということは、もう前々から我が党も指摘をし、我々も言っておることなんですね。にもかかわらず、この教育研究所、これは調べてみたらすぐわかるんですよ。そういうことも調べもせずに、本当にすぐさま、友人から言われたからそこへ、パネリストの三人のうちの最初に載っかっているんですね、山中伸一、官房審議官と書いてあるんですが、そういうことを承諾して出かけていく。本当に無神経というかのうてんきというか、これだけ山教組問題が問題になっているさなかに、本当に文部省の姿勢を疑わざるを得ない。

 ぜひ大臣、こういう規律のない文科省の行政姿勢といいましょうか、ぜひともこれはひとつ改めるようにやってもらいたいと思うんです。

 びっくりすることは、この研究会への参加を呼びかけている文書なのでありますが、そこに、この研究所の所長、民間の所長ですね、さっき申し上げた山教組の教育研究所たる山梨県教育研究所、その民間団体の所長名で出している。県の教育委員会教育長、市町村教育委員会教育長、各教育事務所長それから各小中学校長に全部文書を出しているわけでありますが、その中に、「各小中学校の教職員の参加にあたっては、「公務出張扱い」で御対応願います。」と。公費出張でこの研究所に出てこいということを言っているわけですよ。民間の教育団体の所長が、学校の先生方の出張は公費扱いにしろ、一体どういう権限に基づいてこれは言っているんでしょうか。

中山国務大臣 この研修会の出席につきましては、私が聞いたところ、校長会、教頭会が主催する研修会であるので来てほしい、そういう話があって、実は今文部科学省は教育改革を進めておりまして、できるだけ現場に行って実態を調べると同時に、また、広くいろいろな方々の御意見も聞きたいということで、できるだけいろいろなところに出かけるようにしているという事実はあるわけでございます。

 しかし、この研修会が、今官房長が答えましたけれども、まだその詳細は明らかでありませんけれども、現在その政治的活動が問題になっている教職員組合が加わっている団体が主催する研修会ということがわかりまして、これに参加するのは望ましくないということから出席しないことにしたものである、このように聞いているところでございます。

 なお、この研修会への参加を公務扱いにするようにこの研究所が指示しているということはこれは問題だと思うわけでございまして、教員の研修会等への参加について公務扱いにするかどうかということは、これは服務監督権限者であります校長あるいは教育委員会が、研修会等の対応とかあるいは内容等を勘案の上、その権限と責任に基づいて決定すべき事柄であります。

 したがいまして、民間団体が、校長あるいは教育委員会に対して、その主催する研修会等への参加について公務扱いにするよう指示する権限は、これはもうないものである、このように考えております。

宮路委員 これは、まことにもって思い上がった考え方が背後にあるということなんですね。ですから、こういう全くでたらめな違法なことを平気でこういうぐあいに文書に載せて流している。しかも、「市町村教育委員会において本文書を管轄の小中学校へ配布する必要はありません。」私どもの方で、研究所でやっているから市町村教育委員会において配付する必要はない。こういった研修会の参加なんかは、小中学校については当然市町村教育委員会の要請あるいは市町村教育委員会の指示に基づいて出張というのはなさるべき、研修会の参加なんというのはなさるべきところを、自分たちがやっているから教育委員会に対してはやる必要はないと。

 全く自分たちが教育委員会よりももっと何か上部の組織であるという思い上がった考え方で行われているんですね。本当にでたらめもでたらめ、こういうのが山梨県の教育界の実態だということを山教組、県政連のあの政治資金カンパを初めとする違法な政治活動、選挙運動の展開、全くこれはこれと表裏一体をなす事柄である、こう我々は認識をせざるを得ないわけであります。

 そこで、ぜひこれは徹底解明をしてもらって、場合によっては、我々は、関係者をこの委員会等に来ていただいて参考人質疑をしてみてはどうかなという思いもあるわけでありますが、ぜひその前に、文科省の方で実態についてひとつ調査を徹底してやってもらいたいということを強くお願いしておきたいと思います。

 次の質問でありますが、先ほど大臣は、繰り返し指導をやっている、やっているけれどもなかなかこれが言うことを聞いてもらえない。そして、先ほど申し上げた佐藤錬さんの質問に対しましては、中山大臣、指導を繰り返しても適切な対応がなされない場合、国として現行法上どのような措置が可能なのか、十分に検討してまいりたいということを、去る七月の二十日の委員会でそういう答弁をなさっておられるわけであります。私は、文科省としては、いわゆる地教行法の四十八条に基づいて指導助言をしておられるというふうに理解をしているわけでありますが、言えども言えども効果はないということであります。

 そこで、私は、地方自治法の第二百四十五条の五の規定による是正要求ですね、これをおやりになったらどうかなということを提案したいと思います。二百四十五条の五は、

 各大臣は、その担任する事務に関し、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるときは、当該都道府県に対し、当該自治事務の処理について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる。

こうなっているんです。幾ら言っても指導では聞かぬときは、是正のそういう措置を求めることができる、こういう規定であります。

 先ほど冒頭申し上げたように、山教組の皆さんあるいは学校長、教頭が行ったところの政治資金カンパについては、文科省も、教育委員会の調査結果を見る限りこれは違反である、違法であるということを言っておられるわけですね。それから、後援会入会カードの取りまとめの要請についても同様に、これは禁じられている、制限されている政治行為に該当する、こう言っておるわけでありますが、そこに違法性は明らかであります。

 その違法性が明らかであり、それに対する処分をやったわけだけれども、その処分は、明らかにこれは先ほど申し上げたように権限のない、そういう処分を行っているということであります。自治事務の処理が、処分が、きちっと懲戒処分をやっていない、やった処分が全然間違ったとんちんかんな処分をやっている、こういうことでありますので、これは事務が著しく適正を欠いているということが言えるわけであります。あるいは違法性もそこに認められるわけでありますから、この二百四十五条の五の規定による措置の対象になるというふうに考えられるわけであります。衆議院の法制局とも私はこの質問の前に打ち合わせをしたわけでありますが、十分その可能性はある、こういうことでありますので、ぜひこれをやっていただきたい、こういうことを提案したいと思うんですが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 先ほどからお答えいたしておりますけれども、この問題につきまして、文部科学省からの再三にわたる指導にもかかわらず、山梨県教育委員会においてまだ適切な対応がとられていない、本当に遺憾というか問題だ、私はそのように考えております。

 このため、国として現行法上さらにどのような措置が可能であるかということを検討しました結果、文部科学省としては、山梨県の教職員による違法な政治活動の実態について現地での調査を実施する必要があると判断いたしまして、先ほど答弁いたしましたように、八月の二日に山梨県の教育長に対しその旨を通告したところでございます。

 また、今御指摘がありましたけれども、是正の要求を行うことができるかどうかにつきましては今後検討したいと考えますが、まずは実態関係を確定させることが重要であるというふうに考えておりまして、そのためにも、文部科学省として、現地に赴いて必要な資料の収集や関係者からのヒアリングを実施する必要がある、このように考えておるところでございます。

 文部科学省としては、今後とも、山梨県教育委員会に対しまして、違法な行為に対しては毅然とした態度で厳正な対応を行うように厳しく指導してまいりたいと思いますけれども、地方分権の時代で、これから私どもも教育はできるだけ現場に任せる、地方に任せる、こういう方針であるわけですから、地方の方でもその重みをしっかりと受けとめて対処していただきたいと心からお願いする次第であります。

宮路委員 大変正義感にあふれ、また憂国の情に富む中山文科大臣、我々も大変今期待をいたしておるわけでありまして、このゆがんだ教育行政、これをぜひとも是正すべく、一層の思いを込めてひとつ立ち向かっていっていただきたいと期待をいたしておきたい、お願いしておきたいと思います。

 それで、違法性の問題をめぐっては、文科省は、先ほどのようないろいろな政治的行為が違法である、こう言っているんですけれども、向こうは、向こうといいましょうか山梨県の教育委員会側は、これは明らかに違法ではない、紛らわしいかもしれぬけれども違法じゃない、こういうことを言っているんですね。つまり、この法律については文科省が有権解釈を、教特法の十八条第一項のこの有権解釈は文科省が持っているはずなのに、全然、その有権解釈を持っている文科省が言っても、自分たちは違法ではありませんというふうなことを言っている。これでは水かけ論で、本当に一向にこの問題は解決しない。

 したがって、結局は私はこれは裁判で決着を図るしかないかと思うんですが、残念ながら、今これらの行為について刑事罰の適用がないものですから、したがって、裁判に持ち込んで黒白をはっきりさせたいと思ってもできない。刑事罰が適用になれば、これは裁判になって、その辺の文科省の有権解釈というものがきちっと、私はこれが通るということになると思うんです。

 そこで、やはりこれは教特法を改正して、違法な政治行為についての罰則を適用するということを考えるべきだというふうに思うんですけれども、これは政府はどう考えておられるでしょうか。

中山国務大臣 もう既に御承知だと思いますけれども、公立学校の教員など、教育公務員につきましては、昭和二十九年の教育公務員法特例法の改正によりまして、政治的行為の制限は国家公務員の例によるものとされましたけれども、罰則、刑事罰があった政府案が修正され、罰則を設けないこととされた経緯があるわけでございます。これは、教育界において起こったことはできるだけ教育行政によってこれを是正すべきであり、外部の力によって矯正するというのは好ましくないという理由からでございまして、それ以前と同様、刑事罰を適用せず、懲戒処分にとどめるとの趣旨からでございました。

 私は、教育委員会におかれては、この趣旨をしっかり踏まえた上で、まずはみずから姿勢を正すと見識を示してもらいたい、こう思うわけでございますが、なかなかそうもいかないということになりました場合には、罰則を適用する改正について、地方公務員制度全体の動向も踏まえ、十分に考える必要がある、今、このように考えておるところでございます。

宮路委員 この問題も、中山大臣、前回もまた迫ったわけでありますが、もうここまで事態が来れば、これはやはり法改正をして刑事罰を適用するということをやっていくべきだと思いますので、ぜひそういう前向きのお取り組みを願いたい。我が党としても、この問題、重大な問題でありますので、議員立法でも行ってまた改正に臨んでまいりたい、こう思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 最後に、警察庁なのでありますが、去る七月十二日の地元の山梨日日にも「山教組幹部ら参考人聴取」というのが大きく記事が出ました。今申し上げたように、一般的な政治行為については刑罰の適用がないわけでありますので、我々も切歯扼腕の気持ちなのであります。ですから、せめて政治資金規正法違反でもってこの実態解明を捜査当局に強力に進めていってもらいたい、このことを思っておりますが、今後のその捜査にかける意気込み、見通しについて一言答弁願いたいと思います。

斉藤委員長 警察庁縄田刑事局長。

 時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

縄田政府参考人 御指摘の事案につきましては、現在山梨県警察において捜査中であります。法と証拠に基づきまして所要の捜査を遂げた時点で、関係書類及び証拠物等を検察官に送致することになろうかと思います。

 具体的事案、具体的捜査の状況についてお答えすることは差し控えたいと存じますけれども、いずれにいたしましても、警察としては、いかなる事案におきましても、具体の事実に即して、法と証拠に基づいて適切に対処してまいりたい、こういうふうに思っておりますので、御理解をいただきたいと思います。

宮路委員 どうもありがとうございました。

斉藤委員長 葉梨康弘君。

葉梨委員 おはようございます。自由民主党の葉梨康弘でございます。

 冒頭の冒頭でございますけれども、茨城県選出の代議士として、またお隣の選挙区から選出されている者として、八月一日に急逝された永岡洋治議員に対して、心から弔意を表させていただきたいと思います。

 ただ、永岡先生については、平成八年にもともとは私の現在の選挙区から新進党から立候補され、そして、平成十二年には自民党の公認を得られないまま現在の茨城七区から立候補され、そして、平成十五年の補欠選挙で自民党の公認で当選された、そういういろいろな経緯がございます。隣の選挙区にある者として、日々の御苦労、いろいろな要素があるということを大変よくわかっているつもりです。ですから、軽々に、今現在政局絡みの話として永岡先生の死が語られるということは、個人として、故人に対する冒涜ではないかというふうに思うとともに、子供の教育上も決してよろしくない、やはり永田町ももっともっといい天気になってほしいなというふうに思う一人でございます。

 冒頭の質問に移らせていただきます。

 いい天気ということなんですが、私が思い出しますのは、三木内閣時代の文部大臣の永井道雄先生、私中学生でございましたけれども、甲子園の開会式のあいさつで、きょうはいい天気です、甲子園のいい天気というのをつくるのは皆さんの元気とはつらつとしたプレーです、そういうあいさつをされたことを極めて鮮明に覚えております。そして、私も、小さいころでございましたけれども、大変な元気を得ました。

 実は、私の住んでおります取手市、その取手市の中にあります藤代高校という高校が、茨城県の代表として今度夏の甲子園に、夏としては初出場いたします。中学時代、野球少年でありました大臣から、ことしの高校球児や全国の少年少女に対してどのようなメッセージ、励ましを伝えていただけるお考えか、簡潔にお答えを願いたいと思います。

中山国務大臣 永岡議員の御逝去につきましては、日ごろの本当にまじめな誠実な人柄をしのびまして、本当に心から御冥福を祈りたいと思っております。

 甲子園大会の話でございますが、スポーツ大会の中でも全国高校野球選手権大会、これは全国の高校球児があこがれる国内最大の高校生スポーツの一つでございまして、私も、国会の先行きが心配でございますけれども、何とか開会式に行きまして、高校球児に激励の言葉を贈りたい、このように考えております。

 私の宮崎県も初出場の、この前まで女子校だったんですけれども男女共学になりまして、出てくることになりましたので、本当に活躍を期待しているところでございますが、私、全国各地の予選を勝ち抜いてきた選手たちには、日々の厳しい練習に耐え抜いたという自信と誇りを持って、正々堂々と全力で試合をしてほしいということを伝えたいと思います。また、全国の皆さん方には、選手のひたむきなプレーに惜しみない拍手と声援をお願いしたい、こういう旨のあいさつをしたいと思っていますが、まだ具体的には前の晩ぐらいに考えたいと思っております。

葉梨委員 ありがとうございます。ぜひとも政局の行方も透明になりまして、そして開会式がすばらしい天気であることをお祈り申し上げたいというふうに思います。

 それでは、質問に移らせていただきたいと思いますが、時間の関係もございますので、通告しております質問、多少はしょりながら質問させていただきたいと思います。

 まず一つは、学校の適正規模、適正配置の確保と、それから通学時の安全の確保対策ということで何点かお尋ねをしたいと思います。

 実は、小学校の児童数、少子化の関係もございます、五年前の平成十二年は七百三十六万六千人でございましたけれども、平成十六年は七百二十万九百三十三人と、十六・五万人、二・二五%の減少を見ております。しかしながら、この間、先生の数は減っておりません。本務教員の数は約七千人以上、一・八%の増加となっています。

 児童数が減少しているにもかかわらず本務教員の数が増加している、この理由について文部科学省の御見解を伺いたいと思います。

銭谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 ただいま先生御指摘のとおり、児童数が減少しているにもかかわらず教員数が増加をしているわけでございますけれども、この点については、まず第一に、平成十三年度から平成十七年度までの五年計画によりまして実施をしている第七次教職員定数改善計画による教職員定数の増という要因がございます。

 第二に、近年、いわゆるノーマライゼーションの理念の普及の中で特殊学級における教育への理解が進んでまいりまして、特殊学級が増加をし、それに応じた教職員定数が増加をしているということがございます。

 第三点には、平成十三年度からの学級編制の弾力化によりまして各都道府県の判断で少人数学級を実施することが可能となりまして、平成十六年度には四十二道府県で少人数学級が実施されているわけでございますが、そのための教員の増員があるといったようなことがあると考えております。

葉梨委員 ありがとうございます。

 今お話ありましたとおり、やはり学級数弾力化ということで増加している、これ自体、私自身は教員数がふえているということを非難するつもりでこういう質問をしているわけではございません。

 次の質問はちょっと時間の関係ではしょらせていただきたいと思いますけれども、現実に、平成に入って減少傾向にありました小学校の学級数でございますが、平成十三年を底として増加に転じているというのが今の現状でございます。今もお話がありましたとおり特殊学級の増加、あるいは複式学級の単式学級化、そういうような中で、一学級当たりの児童数は現在全国平均で二十六・三人まで下がってきております。

 このことについてどうこうというわけではないんですけれども、実は、小学校について申し上げますと、私の地元の取手でも、合併前の取手市は十二の小学校がございましたけれども、東から言いますと、小文間小学校、それから白山西小学校、稲小学校、高井小学校、四つの小学校は、一つの学年で一つのクラスしかつくれない小規模な学校でございます。大体一クラスですと十五人とか十一人、本当に複式学級すれすれというような人数の学校でございます。そうなりますと、このような小学校については六学級を下回った学級数とすることができない、そういった事情もあろうかと思います。

 そこで、文部科学省としては、このような学校、特に小学校でございますけれども、学級数の適正規模ということについて従来どのような御見解をとられているのか、お伺いをしたいと思います。

銭谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 小学校の適正規模でございますが、学校教育法施行規則におきましては、「十二学級以上十八学級以下を標準とする。ただし、地域の実態その他により特別の事情のあるときは、この限りでない。」旨定められております。

 これは、十二学級から十八学級を標準といたしましたのは、学校の教育活動におきまして必要な教員組織、児童生徒の学習の効果、学校経費の合理化などの諸点につきまして検討をした結果、このように規定をされているというふうに承知をいたしております。

葉梨委員 それでは次の質問ですが、十二から十八ということでございます。小学校の場合ですと、一学年が大体二から三ということで、大体そんなところなのかなというような感じを持っているんですが、全国に現在二万三千百六十ある公立小学校の中で、適正規模の下限とされております十二学級、これを下回る小学校数は何校ほどあるのでございましょうか。

銭谷政府参考人 平成十六年五月一日現在でございますが、十二学級を下回る公立の小学校は一万一千九百三十四校、全体の五一・五%でございます。

葉梨委員 もちろん学級編制の関係もございましょうけれども、一学年で一学級しかつくれない学校というのが全国の小学校の中の半分以上あるというのが今の現状でございます。

 そこで、ちょっと観点を変えてお尋ねをしたいんですが、小学校におけるいじめの現状と対策について簡潔にお伺いしたいと思います。

銭谷政府参考人 公立小学校におけるいじめの状況についてのお尋ねでございますが、いじめの発生件数は、平成八年度以降減少傾向にございましたが、平成十五年度に八年ぶりに増加に転じまして、公立小学校全体で平成十五年度は六千五十一件となっております。増加率では六・九%という状況でございます。

葉梨委員 対策もということでお伺いしたんですが、まあちょっとそこの点は後であれだと思うんですが。

 実は、私自身も警察庁の少年課というところにおりまして、いじめの問題、問題行動の問題というのにいろいろと携わったことがございます。中学校のいじめというのが基本的には大きな問題であったというふうに認識しておりますけれども、小学校におけるいじめというのも、必ずしもこれは軽視できるような問題ではないという認識に立っております。

 そこで、地元の小学校なんかでもよく父兄の方とお話をしながら話すことがあるんですが、一学年一学級の小学校でいじめが発生した場合、これは極めてその子供たちにとって大きな悲劇をもたらすことになります。

 といいますのは、いじめに対する対応策で最もいいのは、個人的にいろいろ指導するということの前に、特に小学生の場合は、これがいじめだというふうにいじめている方もいじめられている側も認識をする前にクラスがえをしてあげるということが、いじめの対策としては最も王道といいますか、本来やはり顕在化する前にそういう対策をとる。ところが、なかなか一学年一学級ということになりますと、そういう対策がとれないということでございます。

 そうなりますと、だからといって必ず統廃合をしなければいけないということを申し上げているわけではない、そうではないんですけれども、やはり学校の適正規模をどういう形で確保していくかということは大変大きな問題ではないかなというふうに思います。一学級当たりの児童数の課題、教育が行き届かないということはもちろん問題です。しかし、一学級当たりの児童数が過少であったり、一学年も一学級という学校ばかりになるのはやはり問題があろうかと思います。文部科学省として小学校の統廃合の問題についてどのような見解を持たれているのか、お伺いしたいと思います。

銭谷政府参考人 ただいま先生の方から、いじめの問題とも関連をいたしまして、統廃合の問題についてお尋ねがございました。

 確かに、一学年一学級のような小規模の学校におきましては、例えば一たん人間関係がこじれた場合の修復が難しい、それから人間関係の変化が少なく、社会性の育成や集団活動が難しい、さらには仲間同士で切磋琢磨する機会が少ないなど、教育効果の面で多くの課題があることは事実かと思います。

 一方、児童生徒の通学上の負担や地域社会における学校の役割を考えると、小規模であっても学校が存在する意義は大きいという考え方もございます。したがって、公立の小中学校の統合につきましては、学校を設置する市町村の判断に基づきまして、それぞれの地域の実情に応じて適切に行われることが重要だと思っております。

 文部科学省としては、これまで学校の規模や通学距離の目安を示すとともに、教育の効果あるいは将来の児童生徒数の増減、住民に対する啓発等に意を用いながら、適切な学校規模という問題についてそれぞれお考えいただきたいということを申し上げているところでございます。

 中教審、今義務教育について特別部会で議論しておりますけれども、その中でも、教育活動の充実のためには、子どもたちが過ごす学校の規模が適正であることも必要と考えられるといった指摘もあるところでございます。今後、この問題について、市町村の取り組みを促進する方策等について私どもとしてもよく検討していきたいと思っております。

 なお、いじめの問題について先ほどちょっと答弁が不十分でございましたけれども、いじめの問題については、やはりいじめは絶対に許されないという認識を一人一人の児童生徒に徹底させ、学校はいじめられている子供をしっかり守るという姿勢で、それぞれの小学校で今御努力いただいていると思っておりますし、そういうための支援を文部科学省としても積極的に行っていきたいと思っております。

葉梨委員 基本的には、今の御答弁のとおり、地方の実情によるということでございました。これは前も銭谷局長に私、党の会議の場でも伺ったことがあるんですが、ただ現実に、やはり地方にいますと、地方の住民の声からすると、なかなか統廃合というものについては反対も強うございます。特に、保護者ということよりも年のいかれた方が、やはりかつて私が学んだ小学校がなくなってしまうということに対する拒否反応、これが極めて強い。つまりノスタルジー、小学校は文化の拠点だというノスタルジーが非常にあります。

 それからもう一つは、遠くなってしまうという問題があって、今現在小学校の配置は、大体おおむね四キロには一つ置きなさい、中学校は六キロには一つ置きなさいという通達になっていたかと思うんですけれども、余り遠くなってしまうと、近くてもやはり交通量があったり、それから通学時の事件、事故という問題も大変多くなっているものですから、そこら辺で先にどうしても進めないという問題がございます。

 そこで、私もずっと地元でいろいろとPTAの方々、父兄の方々とお話ししていますけれども、この問題を考えるに当たっては、やはり三点、非常に重要なところがあるんじゃないか。

 というのは、一つでございますけれども、小学校の統廃合の問題、これを財政の論理や大人のノスタルジーで考えてはいけない。やはりあくまで子供に対してしっかりした教育を徹底する、そういう視点から考えていくことが一つじゃないか。

 それからもう一つは、学校が遠距離になる分なんですけれども、スクールバスが非常に大事でございます。私立の学校ではスクールバスというのはございますけれども、公立学校ですと、ちょっと質問は飛ばさせていただきますけれども、僻地ぐらいしか、今、国としては手当てということがされておりません。

 しかしながら、現在の子供の安全、子供に対する犯罪が極めて増加している現状においては、登校時、さらに下校時も含めて、双方の場面でスクールバスなどの通学の安全確保方策をとっていくことがやはり必要だ。ですから、そういう観点からもさらに検討を続けていただきたいということが二つ。

 三つ目ですけれども、さらに大人のノスタルジーという観点、それから子供あるいは地域の拠点という観点からしますと、廃止された学校施設というのが地域の文化やコミュニティーの拠点として活用される、こういうような方策を講じるということも大事だと思います。

 この点については、少子化の中で空き教室をどうするかということは文部科学省においてもいろいろ検討されているかと思うんですけれども、学校の適正規模、それから、あいてしまった、あるいは廃止になってしまった学校施設をいかに地域の文化の拠点としていくかということは、初等中等教育局だけではなくて、ほかの局ともあわせていろいろと調整しながら考えていただくということが非常に必要なんじゃないかと思います。

 そういうことで、ちょっと質問をはしょらせていただきまして、この問題の最後に大臣にお答えを願いたいと思うんですが、今もお話し申し上げましたとおり、私自身は、学級は少人数であっても学校はにぎやかであってほしい。そして、いじめの問題をかじった立場からしますと、学校の適正規模というものの確保はぜひ必要だと思います。

 さらに、もう一つは、これはあくまで財政の論理からの立論ではないんですけれども、これから義務教育国庫負担の問題あるいは学校の耐震改修の問題、物入りをいろいろと要求していかなければいけない。そのときに、やはり学校の施設の配置面、それから学校の適正規模という問題でも、文部科学省ではこういう形でしっかり検討しているんだ、これはもちろん、あくまで財政の論理ではない子供のためではあるけれども、付随的な効果として財政的な効率性というのも高めることができるだろうというように思います。

 ですから、このような観点から、大臣には学校の適正規模の確保ということについてぜひとも正面から取り組んでいただきたいと考えますけれども、御見解をお願いしたいと思います。

中山国務大臣 今、葉梨委員から、お地元の実情とか、あるいはいじめの問題に携わったという経験から、大変示唆に富んだ御意見をいただいた、こう考えております。私自身も、スクールミーティングということで、大規模な学校から小さな学校までずっと回っておりますが、学校の規模ということについてはやはり真剣に考えなければいかぬな、こう思っております。

 今御指摘ありましたように、確かに大人、その学校の卒業生にとりましては我らが母校、精神的なといいますかやはり支えでもありますし、また地域の団結の象徴でもある小学校という、そういうところもあるわけでございます。

 しかし、子供の立場になりますと、やはり余りにも少人数で、小学校一年から中学校三年までずっと一緒ということになりますと、本当に仲がよければいいんですけれども、そうじゃないときのこともございます。また、自分の経験からでも、クラス編制のときのあのわくわくするような期待感もやはりあるわけでございます。

 現実に、現場の先生方に聞きましても、そういったところの子供たちというのは、本当に仲がよくて人はいいけれども、もう一つ元気がないというか覇気がないというか、やはりほかのところに行ったときにどうも見劣りがするというようなことも聞かれるわけでございまして、そういうところでは、ほかの学校との交流授業をしたりとか、いろいろやって補完しているところもあるようでございます。

 そういう意味で、これから学級編制をどうするか、今中教審でもいろいろ御審議いただいておりますが、単に財政的な面だけではなくて、むしろ子供の立場に立って、子供の発達状況、子供の社会性とかを身につけるとか、集団心理を勉強するとか、そういう意味からも学校というのは、あるいは学級規模というのはある程度大きくなければいかぬのじゃないか。

 また、交通機関も発達していますし、そういうことを考えますとやはりそういった方向で、またもう一つは、今御指摘ありましたが、財政的なことを考えますと、やはりかなり設置主体の市町村の負担も重くなるんじゃないか。耐震とかそういったことについての費用もふえるわけでございます。

 そういうものをもろもろ含めて考えたいと思いますが、繰り返しになりますが、やはりこれは子供の発達、子供のためということを第一に考えてこの規模というものを考慮していきたいな、このように考えております。

葉梨委員 私も全く同じ考えでございます。ぜひとも前向きに検討していただきたいと思います。

 五、六分残っておりますが、教育委員会制度についてお尋ねしたいと思います。

 国から地方へ構造改革が進む中で、間違いなく、知事を初めとした首長さんの権限は教育の部面においても強くなってまいります。ただし、教育の政治的中立性の確保あるいは一定の継続性を確保するためにも、今後は、私は個人としては、教育委員会制度をどう機能させていくかということが大きな課題だと思います。

 その意味でも、平成十七年一月、中央教育審議会の地方教育行政部会、ここでまとめていただいたまとめは非常に示唆に富んでいて、多くの論点について真摯な検討がなされているというふうに評価している立場でございますが、部会まとめでも、教育委員に対して十分な情報が上がっていないという問題も報告されています。

 一般的な都道府県の場合、これは定例会で結構ですけれども、どの程度の頻度で県の教育委員会が開催されているのか、お尋ねしたいと思います。

銭谷政府参考人 都道府県の教育委員会の会議の状況でございますけれども、平成十五年度間におきましては、お尋ねの定例会が平均で十三・二回でございます。なお、このほかに臨時会が三・六回、公式の会合ではない委員による協議会などが平均七・四回開催をされております。

葉梨委員 今もお話ありましたとおり、定例会は月一回程度ということでございます。

 同じ行政委員会として、警察庁にお尋ねいたします。

 都道府県公安委員会の場合、どのような頻度で会議が開催され、そしてどのようなことが話題となっているのか、お尋ねしたいと思います。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 御案内のとおり、都道府県公安委員会につきましては、平成十二年の警察改革要綱に基づきましてその管理機能の充実と活性化等が図られまして、会議開催頻度の増加などが図られたわけですが、現在、おおむね月三回から四回の定例会議を開催しておりますほか、必要に応じまして臨時に委員会を開催しているところであります。

 会議につきましては、もちろん所掌事務に属する事項についての審議、決裁のほか、日々発生しますが、特に重要な事件、事故、災害等の発生状況とこれに対する警察の取り組み、あるいは各都道府県の治安情勢とそれを踏まえた施策の方針等、さまざまな警察業務につきまして報告を徴することをいたしております。

 また、会議以外の活動としましても、やはり各種現場の視察とか警察職員との意見交換など、具体的な警察活動を把握する活動なども実施しておるというところでございます。

葉梨委員 今お話ありましたとおり、公安委員会については月三回から四回ということでございます。もちろん、公安委員会と教育委員会とは全然機能も違いますし、また、やっている仕事も違ってまいります。しかしながら、同じ行政委員会ということでございますと、今も安藤官房長からお話がありましたとおり、平成十二年の警察改革の中で、相当公安委員の方々にも情報が上がる形で、いろいろな形での諸改革がなされているというふうに私自身は承知をしております。

 そこで、こういった部会まとめも踏まえて、やはり地方の時代に対応した教育委員会制度、これを構築していくということは非常に大事なことだと思います。月一回程度の教育委員会の開催で本当にいいのか。やはり教育委員の方々が住民の声を代弁しながら、しっかりと、しかも、かつ教育についての継続性を持ちながら本当に機能を発揮していくということが、これからどんどん、首長さんが余り恣意になられても困るものですから、そこら辺に対してしっかりといろいろと意見を申していく、そういうような機能というのはこれから地方教育行政の中で求められていくんだろうというふうに私自身は思います。

 そして、今後、地方教育行政の枠組みの中で、教育委員会の機能の強化を図るためどのような取り組みを行うお考えか、大臣から御見解を承りたいと思います。

中山国務大臣 今御指摘ありましたように、教育委員会というのは、教育の政治的中立性や継続性、安定性を確保するとともに、多様な民意を反映するために設けられた地方教育行政の基本的な組織でありまして、現在でも非常に重要な役割を果たしてきていると考えております。

 今御指摘にありましたように、今後、地方分権が進展する中で教育委員会は引き続きこのような意義を果たしていくことが重要でありますし、またその活性化を図る必要があると考えております。特に小中学校の設置者であります市町村教育委員会の活性化は重要でございまして、教育委員の研修等必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

 また、教育委員会のあり方につきましては、現在、中央教育審議会に諮問いたしまして、義務教育全体のあり方の一環として検討を進めているところでございます。議論の中では、それぞれの自治体の実情に合わせた行政が行われるよう制度をできるだけ弾力化するとともに、首長と教育委員会の連携の強化を図ることが適当であるといった指摘もなされているところでございます。

 しかし、先ほど宮路委員からも御指摘がありましたようなこともあるわけでございまして、そういう意味では、教育委員会もやはりしっかりとした見識を持ったそういった委員会でなければいかぬということも要請されるわけでございまして、文部科学省としては、いろいろなことを考えまして必要な改革方策についてしっかりと検討してまいりたい、このように考えております。

葉梨委員 ありがとうございました。

 本日は、学校の適正規模の問題あるいは教育委員会の問題、これから国から地方へ、地方においていろいろ教育について担っていただかなければいけない部分がふえてくるわけですけれども、かといって、このような改革は、単に国の権限を地方に与えて、そしてもう国は何もしなくていいんだということではやはりないんだろうと思います。

 学校の適正規模の問題、それから教育委員会のあり方の問題にこれからも文部科学省としてできるだけ戦略性を持って対応していただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 馳浩君。

馳委員 おはようございます。

 最近、若者言葉にはいろいろございまして、きょうの大臣のファッションはやばいとか、いや、それは格好いいという意味ですからね、例えば先ほどの局長の答弁が微妙だとか、いわゆる本来の趣旨とは違った意味での言葉遣いもまた広がってきているということがございました。

 この国会で、民主党の肥田美代子先生、また我が党の鈴木恒夫先生が大変努力されて活字文化振興法がなされて、今後施策がとられていくことは大変よかったと思います。やはり正確な日本語の利用、これは活字を通して子供たち、また私たちが理解をし、ふだん使っていくということから美しい日本語が子供たちに伝えられていくべきものと思いますので、このことはまた御理解いただいて、私の質問にはやばい答弁とか微妙な答弁は必要ございませんので、まさしく今素直に思うところをお聞かせいただきたいと思います。

 きょうは、副大臣に主にまずアンチドーピングの話からお伺いしたいと思います。

 昨年の国際会議に我が国から大臣や副大臣、政務官等が出席しなかったことはよくないことだという指摘をいたしました。この秋にも第三十三回のユネスコ総会が行われます。まず、この秋のユネスコ総会でどんな議題が最重要課題として考えられているのか、準備されているのかということをお答えください。

塩谷副大臣 ユネスコにおきましてアンチドーピングの国際条約の案がこの十月に採択をされる予定で、昨年一月から各国間の話し合いが始まっておりまして、これにつきましては本年は大臣か副大臣かだれか出席をしていきたいと思っておりますので、ぜひまた御指導いただきたいと思います。

馳委員 スポーツにおけるアンチドーピング国際条約の採択の重要な会議でございますので、我が国の意気込みということで、十月と考えれば臨時国会会期中、それを考えると副大臣なのか政務官なのか、ぜひ政治家を担当者として出していただくことをまず申し入れておきます。

 それで、それを受けて、我が国として、スポーツにおけるアンチドーピングの国内法の整備が求められると存じます。ただし、国内でのアンチドーピングということを考えた場合に、薬なのか薬品なのか、また国際的な流通の問題と考えると、これは教育の問題も絡めれば他省庁にまたがる案件であることは言うまでもありません。我が国においても、文部科学省が主体となってアンチドーピングに取り組む法律というものを整備していただきたいと私は考えておりますが、今のところ、文部科学省としてどのようなお考えであるかということをお聞かせください。

塩谷副大臣 このたびの国際条約につきましては、国際的にも日本がこのアンチドーピングの常任理事国として今努力をしているところでございますが、今先生おっしゃったように薬物の問題、この禁止物質の法令的な整備が必要となっておりますので、この点につきましては、薬物使用を禁止するもの、あるいはその入手や使用を規制することなど求められておりますので、その法的整備を関係省庁とともにしっかりと対応してまいりたいと考えております。

馳委員 関係省庁とともにではなくて、文部科学省が所管となって協議をし、やっていただきたい。ほかの省庁も一緒にやったら、それは内閣府でやればいいじゃないかという話になりかねませんので、そうではなくて、基本的にはスポーツに関するアンチドーピングということになりますので、その辺のところはしっかりと押さえておいていただきたいと思います。

 それで、これは私からの提案ですが、アンチドーピング、この理念から含めて、なかなか我々には耳になれない言葉であります。

 ただし、今後オリンピックの国際大会で、昨年のアテネでは、室伏選手が幸いにも金メダルを獲得することができましたが、これもやはりドーピングにひっかかって金メダルの選手が剥奪されての室伏選手金メダル、やはり我々日本人としては素直に喜べないことでもありました。

 それを考えると、私から幾つか提案がございますので、今後の政策に生かしていただきたいなということを申し上げます。

 一つは、中学校、高等学校の保健体育の授業においてアンチドーピングの精神、また具体的に四分野ありますね、利尿剤がだめとか、興奮剤がだめとか、筋肉増強剤がだめとか、あるいは鎮静、心を静める、そんな薬はだめよと。理念から始まって、どういったものが対象となるのか、なぜいけないのか、こういったことを教育の中に入れてほしいと思いますが、いかがでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 アンチドーピング活動の推進、これは私ども、非常に重要な事項だと思っておりまして、スポーツ振興基本計画におきましても、政策目標を達成するための施策として位置づけているわけでございまして、その教育啓発活動を実施しているところでございます。

 今御指摘のありました学校教育活動におきまして、これは心身の健康のみならず、人格の形成にも大きな影響を与えるということで、小中高等学校において、薬物乱用防止教室という観点から実施をしているわけでございます。また、高等学校につきましては、必修の教科内容として盛り込むというところまではまだ行っておりませんけれども、その学習指導要領の解説の中で、公正に競技を行うことの観点からドーピング問題を取り上げるよう示しているところでございまして、今後とも引き続き検討してまいりたいと思います。

馳委員 現状はわかりましたよ、局長。ただ、その国際条約を我が国でも批准するという態勢に入ったときに、我が国の中学、高校でも必須科としてやはりお願いしたいという提案であります。

 二つ目は、これは専門的になりますが、ナショナルトレーニングセンターが平成十九年度中にできる予定です。そうすると、ここのコーチアカデミー事業あるいは日本体育協会の指導者育成事業においてのアンチドーピング講義、これを必須化していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘いただきました日本体育協会の指導者養成事業、これは平成十七年度から体系的に整理したものでございますけれども、既にその共通科目のカリキュラムにおきまして、アンチドーピングを内容として取り上げているところでございます。また、御指摘のありましたナショナルコーチアカデミー事業、これはナショナルトレーニングセンターの有する機能の一つとして考えられているわけでございますけれども、まだ具体的にその講習内容等については詰める段階ではございませんけれども、JOCや日本スポーツ振興センターと、今後、先生の御指摘を踏まえて十分相談してまいりたいと考えております。

馳委員 次に、アンチドーピングのことをよりわかりやすく、詳しく伝えることのできる教員養成も必要でございます。大学における、特に体育系大学におけるアンチドーピングに関する講義はぜひ必修化をしていただきたい。

 それに関連しますけれども、鹿屋体育大学、柴田亜衣選手の活躍で何か六年間の予算が少し確保されたような報道もされておりますけれども、ああいった鹿屋体育大学などで特色のある教育ということを考えると、このアンチドーピング教育に関しての拠点とするぐらい、やはりそういった取り組みもしていただきたいなと現場の経営者に思うんですけれども、いかがでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 大学教育につきましては、社団法人全国大学体育連合と協力いたしまして、平成九年にアンチドーピング教材の作成委員会を設けまして、広く一般学生までを対象としたアンチドーピングの教材「スポーツとアンチドーピング」、これを作成いたしました。各大学、特に今御指摘ありましたような大学の体育学部に対してアンチドーピング教育を求めてきているところでございます。

 具体的には、私の手元には例えば筑波大学の体育専門学群のカリキュラムもございますけれども、この中にもアンチドーピング概論というものが具体的に入っているところでございます。個別の大学の体育学部におきましても授業内容として取り上げてきているところでございますので、今後とも、引き続きこの教育の充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。

馳委員 我が国には、日本アンチ・ドーピング機構というのがございますが、これを設立するときには、totoの方で予算を一千万ほどは確保しようかという話があったんですよ。我が国のtotoも厳しゅうございますから、我が国におけるアンチドーピングの関連予算というのはJADAと連動してまいりますので、これの今後の確保については、予算編成を前にしてどのように考えておられるのか。考え方で結構です、局長、お願いしたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 アンチドーピング活動に対するスポーツ振興くじの助成でございますけれども、これはJADAに直接出しているものもございますし、また、JOC、日本体育協会、各競技団体が個別の競技上の検査をするというための財源としても支出しているところでございます。いずれにいたしましても、その助成財源が減額しているということは事実でございます。

 今後とも、日本におきますアンチドーピング活動を考えます場合は、やはりJADAの役割というものをどのように考えるかということは非常に重要になってまいります。国とJADA、各競技団体の役割分担、その支援方策など、今後の我が国におけるアンチドーピング活動のあり方について、関係者と相談しながら検討してまいりたいと考えているところでございます。

馳委員 実は、このアンチドーピングに関して、文部科学省として死角になっているところがあるんですよ。塩谷副大臣、これはプロの世界なんです。文部科学省とプロスポーツの世界というのは、プロスポーツ協会というのかな、毎年プロスポーツ大賞などを表彰する、こういったところぐらいでしか実はつながっておりません。

 では、はっきり言えば、大相撲や競艇、競輪、プロ野球、プロレスも入るのかな、入るんですよ。文部科学省として関係のあるプロスポーツ協会の中には、こういったプロスポーツの団体、プロゴルフも入っていますね……(発言する者あり)ダンスも入っているのかな。そして、アンチドーピングを我が国として、国際条約ができて批准して、採択して法律もつくっていこう、文部科学省がやっていこうというときに、プロスポーツの世界を抜きにしては語れないというのが私の持論です。

 ということは、これは、アマチュアの選手ばかり抜き打ち検査をやるとか厳しくやるばかりではなく、プロスポーツの世界にも、アンチドーピングを国内法をつくってやるんだ、国際条約に基づいてやるんだ、ましてやオリンピックにだってプロ選手は出ているんですよ。これは、やはり文部科学省の所管以外のことですので知らぬ存ぜぬとはいかないと私は思うんですよ。

 ここは考え方の整理のことですから、これは局長はいいですよ。塩谷副大臣、担当として、この認識をまず持ってほしいんです。プロスポーツの世界、我が国もたくさんのプロスポーツ、すばらしいです、野球も大相撲も、子供たちのあこがれであるばかりでなく、国民にとってのあこがれですよ。それが今後、いや、知りませんでした、コーチもトレーナーも、いや、うっかりしていましたで、アンチドーピングにひっかかって国際的な問題になりかねないとも限らない。

 ですから、プロスポーツの世界に対するアンチドーピング、これをいかに浸透させていくのか。あるいは、法律をつくるときにある程度強制力を持たせるのか。これはやはり指導的役割を果たすのは、厚生労働省でも経済産業省でも内閣府でもないです、文部科学省の責任ですよと私は考えておりますが、塩谷副大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

塩谷副大臣 今後、法律、法制化の段階で大変重要な課題だと思っております。特にプロスポーツに対するドーピングの問題は、野球の問題も、いわゆるアメリカの大リーガーがドーピング検査を拒否しかねないので競技から外したということも言われておりますので、今後我が国においてもプロスポーツを対象としてどうするかというのは、しっかりと我々文部科学省で一つの方向性を出さなければならないと思っております。

 特に、我が国のドーピングについては、いわゆる各競技団体に任せているところが多いと思いますので、やはりJADAが、あるいは文部科学省が中心になって、抜き打ち検査的な、量的な検査をふやしていくことも求められてきますので、そういう意味では、プロスポーツもしっかり対象にして、どこまでできるのかということを今後検討してまいりたいと思います。

馳委員 これはスポーツ振興法をちょっといじって改正して、アンチドーピングの規定を書きますよという問題ではないということをはっきり申し上げておきます。やるならば、アンチドーピングに関してしっかりした法律を持ち、同時にプロスポーツも含めるような強い姿勢でいかないと、また、日本相撲協会に対しても、文部科学省がどういうかかかわり方をしているかということを考えれば、余り影響力を持たないのかもしれませんが、今後はそうはいかないと思います。日本相撲協会に対しても、アンチドーピングについては文部科学省が厳しく取り組む。野球協会、野球の方もそうですよ。その姿勢を持っていただくことが必要であるということを申し上げておきます。

 次に、スポーツ行政で先ほどから名前が出ておりますナショナルトレーニングセンターのことを質問いたします。

 基本計画はできました。大変な御努力に感謝申し上げますが、今後は管理運営のあり方について問題が出てこようと存じます。

 これも私の私見を申し上げますが、日本スポーツ振興センターとJOCの協力が不可欠と思っておりますし、はっきり言えば、施設の管理は日本スポーツ振興センター、ナショナルトレーニングセンターの運営に関してはJOCが担当することがベストと私は考えております。実際の施設の管理と運営と、ノウハウをどこが持っているかということを考えた場合の結論というのはこうなるのかなと私は思っております。

 そうなると、ここが大事だと思います、ナショナルトレーニングセンターのセンター長が、JOCや競技団体、現場の声を聞いて予算を執行する、それからいろいろなプログラムを執行するための人事権を持つ。その人事権と予算権の権限を持つには、ナショナルトレーニングセンターのセンター長、所長がJOCの理事であり、日本スポーツ振興センターの理事になる、これが一つの望ましい形なのかなと思います。

 こういうナショナルトレーニングセンターの所長がJOCの理事になったり、日本スポーツ振興センターの理事になるということは、これは法律的には大丈夫なのでしょうか。また、私は今全体的なことを申し上げましたが、ナショナルトレーニングセンターの今後の管理運営に臨む現状での文部科学省の考え方をお聞かせいただきたいと思います。その後、副大臣の方からお願いします。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から何点か御提案があったわけでございます。ナショナルトレーニングセンターに関しましては、我が国の競技力向上の中核的役割を果たす重要な施設と認識しております。したがいまして、施設の管理運営に当たりましては、選手強化に中核的な役割を担っておられるJOCと密接に連携することが重要でございますし、また、各競技の全体の強化に役立ちますように、ナショナルトレーニングセンターがリーダーシップを発揮した一体的な運営がされることが重要であると思っております。また、JOC、各競技団体や選手が利用しやすいものであること、さらには、隣接する国立スポーツ科学センターとの密接な連携が図られることなどが重要であろうと考えております。

 このような観点から、この管理運営につきましては、文部科学省、JOC、各競技団体、日本スポーツ振興センターから成るナショナルトレーニングセンター管理運営委員会を設置しているところでございまして、この場を活用して検討を十分進めてまいりたいと考えているところでございます。また、ナショナルトレーニングセンターの運営に当たる責任者の役割、これは重要なものと認識しております。その位置づけなどにつきましては、適切なものとなるようこれも検討してまいりたいと思っております。

 それから、ナショナルトレーニングセンターの責任者、これをJOCの理事とするかどうか。これはJOCにおいて検討いただくべきことでもあろうかと思っておりますけれども、制度的、法的には、独立行政法人の理事がJOCの理事を兼ねるということは可能であるというふうに理解しているところでございます。(馳委員「日本スポーツ振興センターの理事は」と呼ぶ)JOCの理事を兼ねるということは制度的には可能であると考えております。(馳委員「日本スポーツ振興センターの理事とJOCの理事を両方兼ねることが」と呼ぶ)はい。法的には可能であると理解しております。

塩谷副大臣 大変立派な国際スポーツ科学センターができて、成果も出ているところでありますので、今後、スポーツ振興について、またトップの競技者の育成については、いろいろな形でそれを活用していきたいと思っております。

 今、馳先生からお話がありました、ナショナルトレーニングセンターの所長がJOCのメンバーとして人事権とかあるいは予算の執行権、これも一つの方法かと思いますが、いろいろな各競技団体あるいはさまざまな意見を聞くために管理運営委員会というものを設置して、その中でどうするかということを今考えておりますので、またその点については十分検討してまいりたいと思っております。

馳委員 なぜ私が具体的なことまで口を挟むのかというのは、反省があるんですよ。JISSの反省があるんです。JISSのセンター長の浅見さん、今笠原さんにかわったのかな。ところが、残念ながら日本スポーツ振興センターの理事ではないので、人事、予算について上の雨宮理事長の方から何か来れば、抵抗できないんですよ。現場からは、研究員の方々、利用する各競技団体の選手からは、ああしてほしい、こうしてほしいという要請、任期制の研究員の方々からこういうふうなことをやりたいという、なかなかそれを実現することができないんです、人事的に。JISSのセンター長はなかなか、やはり親方日本スポーツ振興センターの枠の中にいて、予算も人事も限られているという現実がございます。同じことを繰り返してはならないというのが、実は私がここまで踏み込む理由なんです。

 そしてさらに、そのことはそのこととして御理解ください、その上で、JISSの隣にナショナルトレーニングセンターができるんですよ。では、JISSとナショナルトレーニングセンターの関係をどうするのかという問題が新たに出てくるんです。

 そして、ここで提案ですが、JISSもナショナルトレーニングセンターの一部門として、管理運営について一体的に考えていただきたい。JISSはJISS、ナショナルトレーニングセンターはナショナルトレーニングセンターでやると、また管理運営について二重になったり、JISSが有効にナショナルトレーニングセンターのために活用されなかったりということがあります。この辺の仕切りは、これはやはり塩谷副大臣の方で考えておいてください。これは私の提案ですから、答弁は要りません。

 もう一つ、ナショナルトレーニングセンターの問題に関して、きょうは各党の先生方がいらっしゃるのでお願い申し上げておきますが、場所は北区につくるんです。北区の住民の皆さんとの折り合いが大事なんです。はっきり言えば、北区の区議会とうまく調整が必要なんです。

 なぜかといえば、北区という住宅密集地でございますから、なかなか子供たちや一般住民、高齢者が運動する場所がないんですよ。今現在でも、テニスコートなどJISSの関連施設をお使いいただいているんですよ。共存共栄という考え方です。あんなどでかいものをあれだけつくるわけですから、住民の皆さんにも御理解いただいてということから使っていただいているんです。

 今後ナショナルトレーニングセンターをつくるときに、これは工事期間のこともあるでしょうし、でき上がった後、あんなでかいものを、景観の問題や日照権の問題等、いろいろ文句を言いやすい立場にあるんです、北区の方、区議会は。

 そうなったときに、どうぞ各党各会派の先生方は、ナショナルトレーニングセンターの管理運営がうまくいくように、北区の区議会とも、まさしく意思疎通ですね、お互いに意見交換をして、問題点があったらすぐ解決できるような、やはりそんな人間関係も構築しておくことが重要だと思います。これも答弁は要りませんが、裏方の文部科学省の担当官は、北区の区議会と何十回となく何百回となく行き来をして、うまく建設が進みますように、運営していくことができますようにという人知れぬ努力をしておられるんです。そういったことも踏まえて、今後の、でき上がるまで、でき上がった後の管理運営について、各先生方にも御理解いただきたいということを申し上げておきます。

 続きまして、スクールミーティングの話をちょっと。大臣、これはとてもすばらしいんです。ただし、これは大臣、副大臣、政務官、政治家なんですよ。スクールミーティングで学校現場に行くということは、教育の中立性ということを考えると、これは現場の組合とかあるいは教育基本法に照らして、大臣、副大臣、政務官が来るよりも、政治家がやってくるというふうな意識が結構強いんですね。

 ですから、スクールミーティングに当たっては、私は二つ注意を促しておきますけれども、やはりどう考えても我々は選挙で選ばれた政治家なわけですから、政治家の側面を持っているということを理解し、現場に不当な圧迫感を与えないように、これを一つ指摘しておくことと、もう一つは、スクールミーティングはよいのですが、行くぞ行くぞ行くぞとやると、これは準備してみんな待っているんです。ではなくて、大臣や副大臣は顔が売れているからもうしようがないですが、政務官ぐらいだったら別に顔が売れていませんから、時にはさっと行って、どうですか、これもまた現場の実態をうかがうにもよいことですから、時には、いきなりさっと行って、校長や教職員の方、あるいは保護者の方も最近PTAなんかでよく入っておられますから、どうですかという、やはりこういうふうなリサーチのあり方、意見聴取の仕方も考えていただきたいと思います。

 では、最後に学校選択制の話を聞いて終わります。

 金沢市は今もめているんですよ。教育委員会が中学校の学校選択制を来年度から進めようとしておりますが、公民館あるいは地域の方々、市議会、もうちょっと時間をかけて議論してから選択制をやった方がいいんじゃないかということでもめているというだけの話なんです。

 そこで、問題点を一つ。選択制は私も賛成です。しかし、選ぶ方にしてみれば、どんな学校なのかな、教育理念は、これは大体わかり得る話。次に親として知りたいことは教員の情報なんです。住所、氏名、年齢とかそういうのじゃないんです。その教員がどんなプロフィールで、今までどんな研修をし、何年生の担任をしとか、そういった情報を知り得て、ああ、こんな先生にうちの子供を習わせたいな、こんな校長のもとでこの教員たちが、こういう能力のある教員たちが頑張っているんだな、これも、学校開放以上に学校の情報公開として重要なことだと私は思っています。学校の情報公開は教員の情報公開なくしてあり得ないというのが私の考えです。

 ただし、これには必ず日教組の反対がついて回ります。個人情報保護の話とともに、なかなか自分たちの教授権を表に出したがらないという、これは人間としての、余り私がやっている授業についてああだこうだ言われたくないという本音もあるんです。

 学校選択制の前に、学校の開放のあり方、教員の情報公開のあり方についての見解をお伺いして、私の質問を終わります。

銭谷政府参考人 学校教育の質の保証を求めるためには、地域に開かれた、信頼される学校づくりを進める必要があるわけでございますが、そのためにも、学校の教育活動について情報の公開、提供を行うということは不可欠であろうかと思っております。

 学校の情報公開につきましては、例えば、学校の開放週間の設定、ホームページや学校便りなどによります情報提供、地域住民への説明会の開催など、各教育委員会が地域の実情に応じていろいろ取り組みを行っていただいているところでございますが、さらに、学校選択とまた関連をいたしますれば、教育目標ですとか指導計画、年間の学校行事、部活動などの情報や、教員につきましても、その教育方針など、個人情報の保護に配慮しながら幅広く情報を提供していくことが望ましいと考えております。

 文部科学省といたしましては、こういった学校の情報公開につきまして適切な情報が提供されるように、すぐれた事例の紹介などを行いながら、各教育委員会における多様な工夫を促してまいりたいと考えております。

馳委員 ありがとうございました。

斉藤委員長 達増拓也君。

達増委員 達増拓也でございます。

 まず最初に、高松塚古墳の壁画の問題について伺います。

 これは私もNHKテレビの放送で見たんですけれども、高松塚古墳の壁画はひどく劣化が進んでいて、これはもう色も変わっていますし、また描線がもう全然見えなくなっているようなところもあり、一九七二年に発見され、以来、現地保存ということで、空調設備を取りつけて、文化庁の監督のもとに保存されてきたわけですけれども、何で最近になって大騒ぎになり、結局、石室解体、壁画搬出、修復ということに急遽決まったわけでありますけれども、何でこんなことになってしまったのか。やはりこれはあってはならないミスだと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

中山国務大臣 お答えいたします。

 この高松塚古墳壁画の保存につきましては、昭和四十八年に高松塚古墳保存対策調査会で決定された保存方針に基づきまして、狭隘で高湿度という厳しい作業環境に置かれながらも、その時々における最新の保存科学の研究成果に基づき最大限の努力をもって対処してきたところでございます。

 御指摘がありました壁画劣化の原因につきましては、解明されているわけではありませんが、カビ防止のために使用した薬品の影響、石室前工事の際のカビ防止策の不十分さに加えまして、予想外の温度の上昇、カビと小生物の食物連鎖の進行などが有力な原因として考えられているところでございます。これらにつきましては、その都度最大限の努力を払い、対処してきたわけでございますけれども、結果として現在のような緊急の事態に至っていることについては厳しく受けとめております。

 今後の対策につきましては、国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会におきまして、本年六月二十七日に、現在の環境で壁画を維持することは困難との結論に至りまして、石室を取り出して解体修理を行う方法を恒久保存方針として決定したものでございます。具体的には、古墳を発掘して石室を解体し、壁画の修理及び保存処理を適切な施設で行うこととなるわけでございます。

 文部科学省といたしましては、この恒久保存の方針を尊重し、貴重な文化財の保存に万全を期すことといたしたいと考えております。

達増委員 この問題についてはさらに笠浩史議員から詳しく質問を続けてもらいますけれども、日本を代表する文化財でありますから、本当に日本の文化財行政が問われているところだと思いますので、全力で当たっていただきたいと思います。

 次に、スペースシャトルと、それに関連して日米宇宙協力について伺います。

 ディスカバリー号が今軌道上にありまして、そして日本人宇宙飛行士野口さんの船外活動、非常に日本としての、宇宙科学そして日米の宇宙協力、そうしたことを一般国民に対しても非常にアピールされて、国民的に関心が高まっているところだと思いますけれども、そういう中での耐熱タイルのふぐあいであります。これが今のディスカバリー号の計画自体をおくらせなければならないとかいった事態を引き起こしておりますし、またアメリカ、NASAの方では、今後のスペースシャトル計画を見合わせなければならないというようなことを言っている。

 また、このスペースシャトル計画というのは、宇宙ステーション協力とも関連し、日米また日本の国際的な宇宙協力、宇宙科学協力の非常に大きな柱であると思うんですけれども、そういった耐熱タイル問題に発するスペースシャトル計画全体の見直しというもの、これが日米宇宙協力にどう今後影響を与えるのか、伺いたいと思います。

中山国務大臣 今回の野口宇宙飛行士の活躍ぶり、報道されているとおりでございまして、同じ日本人として大変誇りに思っておるところでございます。

 一方で、今御指摘がありましたように、米国航空宇宙局、NASAは七月二十八日に、今回のスペースシャトルの打ち上げ時に外部燃料タンクの断熱材が剥離したことについて、その解決策を実施するまでは次のスペースシャトルの飛行を行うことはできないと発表したところでございます。次の予定につきましては今後NASAが検討することとなるわけですけれども、安全確保に万全を期して打ち上げが行われ、我が国も参加しております国際宇宙ステーションの組み立てが順調に進められることを期待しております。

 日米間では、これまで、国際宇宙ステーション計画を含む宇宙環境利用、地球観測、宇宙科学等の幅広い分野で、緊密かつ良好な協力関係を築いてきているところでございます。宇宙開発は大規模な研究開発経費を必要とする分野であることから、我が国としての自立性を確保しつつ、国際協力により推進していくことは大変重要であると考えております。また、米国におきましても、我が国を重要なパートナーと認識しておりまして、日米宇宙協力の重要性は今後一層高まるものと考えております。

 今後とも、さまざまな共同プロジェクトを着実に実施することなどを通じまして、米国との協力関係を深めてまいりたいと考えております。

達増委員 では次に、義務教育費用負担の問題について幾つか質問をしたいと思います。

 なお、この義務教育費負担の問題に関連して、田中康夫知事を参考人として呼んでいただきたいと希望していたんですけれども、理事会の満場一致の了承が得られなかったということで、できないことになってしまうんですけれども。

 岩波書店が出している「世界」という雑誌の八月号は「地域再生 「三位一体改革」を超えて」という特集でありまして、ここにも田中康夫長野県知事がインタビューを受け、登場しています。また、田中康夫知事は、フジサンケイグループ、扶桑社の出している「スパ!」という雑誌に連載を持っていたりもしまして、余り右だ左だというレッテル張りをするのはよくないんですけれども、そういう出版界でも右の方から左の方まで、今や国民を代表する有識者としての地位は確立していると思いますし、特に、国と地方の関係、義務教育費用をめぐっても欠くことのできない有識者だと思いますので、そのことを指摘したいと思います。

 さて、中央教育審議会義務教育特別部会、審議が進み、いわば中間報告のようなものが世に出まして、いろいろ新聞にも論説が載ったりもしております。今回の中教審の義務教育特別部会、経緯からすると、何といっても義務教育費の費用負担問題にいわば決着をつけるために設置され、そしてそのための議論が進んでいると言っていいと思うんですけれども、義務教育費用について都道府県の一般財源化するべきだという主張の最大の根拠の一つは、その方が地方の自由度が高まるということなんですね。したがって、教育、特にこの場合、義務教育に関する地方の自由度の問題というのが、義務教育費用負担問題について正しい決断を下すためにも非常に重要だと思いますので、まずその関係の質問からさせていただきます。

 これは第二回の特別部会の議事録に載っているんですけれども、ことし三月十六日に開かれた第二回の義務教育特別部会におきまして、ある市の市長さんから次のような意見が述べられています。

 それは、学校給食に出るバナナの皮を三回洗わないと子供に出したらいかぬ、そういう縛りがあるという話なんですけれども、意見を言う前にこの市長さんは、自分は地方行政に携わって四十年になる、三十年間は職員で十年間が市長、「現場の実情だけは一番よくわかっとる中の一人かな」、そういう自負をまず述べた上で、教育について、「ほんとに現場は中央の手取り足取りというか、もう細かい行政指導、監督等が隅々まで行き渡っておるんです。」と述べ、「その典型的な例を一つだけ挙げさせてもらいます。」として、次のとおり述べています。

 「学校給食に出るバナナ、」「学校給食に出すときは、あの外側の皮を三回も洗わないと子どもに出したらいかんというようなことになっております。そういう指導が文科省から来とるんです。全国の調理員がこんなむだなことをと言いながら、みんなこれをやっています。そのぐらい中央集権というのが地方の隅々に渡っております。」

 これは事実でしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 三月の中教審の義務教育特別部会におきまして、ある委員から御指摘のような発言があったということは、議事録を今お読みいただいたとおりでございます。

 文部科学省におきましては、学校給食における衛生管理の改善充実や食中毒の発生防止につきまして、学校給食の特質を踏まえた全国的なガイドラインとして学校給食衛生管理の基準というものを定めているわけでございます。この基準は、平成八年に、御存じの、堺市におきましてO157により児童が死亡するという食中毒事件が発生したことを踏まえまして、学校給食における衛生管理上の目安というものが望まれたことを踏まえて作成されたものでございます。

 今具体的にお話のあるバナナでございますけれども、バナナというわけではないんですが、皮をむいて食する果物、こういったものにつきましては、実は学校給食衛生管理の基準では、特に洗浄回数を初めとする洗浄の具体的な作業工程というものは記述しておらないわけでございます。衛生上の安全を確保するために、汚染の状況それから食べ方などを考慮しながら、各学校給食の実施者などが実情に応じて判断していただくという性格のものであると考えているところでございます。

達増委員 この発言というのは、いわば満を持して、義務教育の費用負担の問題、これが本当に国民的な議論になっている中で、そのために開かれた義務教育特別部会の中で全国の市長さんを代表するような立場から述べられ、そしてそういう中で、満を持してこれは絶対言いたいという中で挙げた一つの例というものが、実は非常に根拠のない、あるいは大きな誤解であったということだと思うんです。

 発言された方は、費用負担については、第一期改革において中学校部分を、第二期改革において小学校部分を税源移譲する、そういうふうにすべきだという立場からこういうバナナの皮の例を出したわけでありますけれども、実は、このバナナの皮を三回洗わなければならないという、実際はそうではない例を挙げた後に、このように述べられています。「お金を、文部省が少々握ろうが握るまいが関係なしに、そのぐらい日本の地方行政というのは中央が管理しておるんです。」図らずも、お金を文部省が少々握ろうが握るまいが関係なしに、そのぐらい日本の地方行政というのは中央が管理しているという、いわば費用負担の問題とは関係なく、それだけ地方が中央に縛られているという言い方をしているんですね。

 私は、これは民主党全体としてもそうなんですけれども、教育に関する地方の自由度、なかんずく学校現場の自由度というのは、これは今よりどんどん高めていかなければならない。今学校が直面するさまざまな課題、学力の問題ですとか安全の問題ですとか、また、いじめや不登校や暴力の問題、そういったことに対する最大の処方せんは、現場の自由度を高めながら、そしてその現場に、地域の大人、家庭、保護者、PTAのみならず、町内会、自治会、さらに商店街といった、そういう学校と直接関係ない大人もどんどん学校現場に参加して、地域の力で学校を再生、また学校を守る、さらには、そういった活動を通じて地域の活性化、これを景気や雇用の回復にまでつなげていくような、改革の核としてそういう現場の自由度を高めるということは非常に重要だと思っているんです。

 一つのポイントは、費用負担の問題と関係なしにそれは進めなければならないということ、もう一つは、実態としては既にいろいろな努力と工夫によってかなり自由にやっている現場はあるわけですね。そうしたところをどんどんふやせばいいんですけれども、ある種の思い込みや誤解によって今はそういうことができないようになっているということが、ある種そういう活動が進まない理由にも、そういう自由化が進まない理由にもなっているのではないかという懸念もいたします。

 そこで、少し具体的に、そういう学校現場あるいは地方の自由度を高める動きというのがどれだけ進んでいるのかを幾つか伺いたいと思いますが、まず少人数学級の推進についてであります。

 これは、特に税源移譲、一般財源化の論拠として、少人数学級など、先生、教員の配置を自由に地方で、学校でやることがその目的だという論もあるわけで、一つの重要なポイントだと思うんですけれども、一方では、現行の制度でも総額裁量制の導入によって、やろうと思えばかなり自由な教員配置はできるようになっている。その点、現状はどうなっているんでしょうか。

銭谷政府参考人 少人数学級の状況についてのお尋ねがございました。

 少人数学級は、平成十三年度に学級編制の弾力化を実施したということから導入をされたわけでございますけれども、総額裁量制が導入をされました平成十六年度には、四十二道府県で少人数学級が実施をされております。これは、対前年度十二県の増ということになっております。

 この少人数学級を実施するために新たに必要となる教員数六千百五十四人のうち、七一%に当たる四千三百八十二人については、国庫負担金が活用されているところでございます。これは、国が四十人学級を前提として教職員給与費の二分の一を負担することによりまして、確実な財源保障をした上で学級編制の弾力化や総額裁量制を導入し、地方が独自の判断と一部予算を上乗せすることにより初めて実現をしているというものでございます。

達増委員 また、現在いわゆる構造改革特区制度を利用することで、市町村の費用負担で教員を配置できる制度があるわけですけれども、これは今現状どうなっているでしょうか。

銭谷政府参考人 お尋ねの市町村費負担教職員任用事業は、構造改革特区におきまして市町村が教職員給与費を負担することによりまして独自に教職員を任用することを可能とするものでございまして、平成十五年度から制度化されております。

 本年の七月現在においては、二十六の市町村におきましてこの特区の認定を受けておりまして、約二百人の教職員が任用されているところでございます。

 具体的には、地域社会と密接した内容の授業、いわゆるふるさと学習を実施したり、少人数学級の導入によるきめ細かな指導の充実に活用したり、不登校児童のための支援の充実、英語学習の推進などの取り組みが各地で実施をされているところでございます。

達増委員 これは、今のところは特区制度ということで、ただ、二十六もできているということは、ある特定の地域の地域性に基づくような特区というよりは、もう全国一律にやってもいいような、もはやそういう制度になりつつあるのかなと思うんですけれども、文科省として、近々そのように全国展開が一律にできるような方向に持っていくことは検討しているでしょうか。

銭谷政府参考人 この市町村費負担教職員任用事業は、今は構造改革特区で実施をしているわけでございますが、この事業につきましては、構造改革特区基本方針の一部変更という閣議決定が昨年十二月ございまして、これに基づきまして、文部科学省としては平成十七年度中に全国展開のための措置を講じたいというふうに考えております。

達増委員 ぜひそういう方向で進めるべきということを申し上げたいと思います。

 現状でも、都道府県また市町村がその気になりさえすればかなり柔軟に教員配置をすることができ、その中で少人数学級というのを進めていくことができるわけであります。ただ、それが進まないのは地方の頑張りが足りないというふうに切って捨てるわけにもいかないわけでありまして、国としてもより使い勝手のいい制度に変えていく、そういったことをやはり不断の努力としてやっていくことが国として進めていかなければならないことなんだと思います。

 市町村の努力ということについて、もう一つ質問いたしますけれども、教員の採用や配置については都道府県でやっているのが基本なわけですけれども、今の特区を利用して市町村でもそれをやろうということが可能になってきている。さらに、喫緊の課題の一つでもあります教員養成、これを都道府県ではなく市区町村独自で進める動きがあるということが報道されていますけれども、この辺の現状はどうなっているでしょうか。

銭谷政府参考人 市町村独自の教員養成への取り組みの状況についてのお尋ねでございました。

 教員の養成は大学で行われるわけでございますけれども、例えば東京の杉並区におきましては、こういった教員養成段階の学生とかあるいは免許取得者を対象に講習を行いまして、地域の独自の教育事情に精通したすぐれた教員を確保するための教育を重点的に行う、こういう試みをしようということを考えていると承知をしております。

 杉並区の事例に即して申し上げますと、地域の独自の教育事情や学校の状況を踏まえたすぐれた教員を育成、確保するために、区独自で杉並師範館というものを設置いたしまして、平成十八年度の開塾に向けまして現在準備を進めていると承知をいたしております。具体的には、教員養成段階の学生等を三十人ほど募集いたしまして、一年間にわたりまして講義や地域の教育事情に即した講習、区内の区立小学校での特別教育実習などを履修させまして、修了者は杉並区立の小学校の教員として採用する予定であるというふうに承知をいたしております。

 杉並区のこういった試みは、地域の特色ある教育実践の一つと認識をしておりまして、私ども、その具体化につきまして今後とも見守ってまいりたいと思っております。

達増委員 義務教育費用負担をめぐる議論の中で、国が地方を縛っている、それで地方は自由な教育、その地域地域で本当に必要な教育をすることができないという一つの大きい論があるわけですけれども、これはかなり実態とは違っていて、巨大な誤解と言ってもいいと思うんですけれども、そうした一つのイメージといいますか、そういう思い込みがかえって現場の動きを萎縮させ、封じ込めているところがあるんではないかと思います。特に市町村は、その上に都道府県があるわけでありまして、もっともっと積極的に市町村が動けるようにしていかなければならないと思います。

 民主党としても、教育における地方分権というのは、都道府県に分権すればいいわけではなく、むしろ義務教育の場合であれば、設置者である市区町村のところに権限をおろしていかなければ、かえって都道府県のコントロールのもとで自由に学校現場が動くことができなくなるという問題意識で教育改革を訴えているところであります。

 こうした地域の自由な取り組みに関して一つ話題になるもので、民間人校長という、学校の校長先生を民間人の方が務め、これのかなりうまくいっている例が幾つか報告されておりますけれども、民間人校長といいますか、また教員出身でない方の校長就任というのは、現在どのくらいなっているんでしょうか。

銭谷政府参考人 教員出身でない校長任用の状況についてのお尋ねでございますけれども、基本的に、学校運営の責任者である校長に人を得るというのは大変重要なことでございます。このため、文部科学省としては、学校の管理職に幅広く人材を確保できるように、平成十二年に校長等の資格要件を緩和いたしまして、教員免許を持たず、教育に関する職の経験がない方であっても校長に登用できることとしたところでございます。

 この改正を受けまして、ことしの四月現在、全国で百三名の教員出身でない方が公立学校の校長として登用されております。これは昨年に比べますと十八人増員、増加となっております。この百三人の校長先生のうち九十二名の方がいわゆる民間人の校長ということになります。

 民間人校長につきましては、教職員人事に関する多様な取り組みの一つとして、今申し上げましたように、毎年少しずつ増加をしているところでございまして、民間人校長の登用によりまして、目標やビジョンを明確に示した学校運営、保護者や地域住民への積極的な情報提供、教員組織の活性化などの効果が上がっているという報告を受けているところでございます。

 文部科学省といたしましては、こうした各教育委員会の取り組みを支援してまいりたいと考えております。

達増委員 これは平成十二年、学校教育法施行規則改正、その時点では民間人校長というのはゼロだったところからしますと急速にふえているとは思いますけれども、全国の学校の数からすればまだまだ本当にごくごく一部の現象にとどまっていまして、実際には市区町村の教育委員会、また都道府県の教育委員会の決断次第というところだと思いますので、平成十二年に国がそういう規則改正をしたというところが原点ではありますけれども、これも国と地方とそれぞれが強い意思と主導権を持ってこの教育の改革に取り組んでいけばうまくいくし、またそうしなければならないという例なんだと思います。

 さらに、都道府県や市町村の教育委員会からより学校現場に権限を移して、地域の人たちと一緒に学校をつくっていこうというのがいわゆるコミュニティ・スクール、学校運営協議会制度でありますけれども、民主党としても、このコミュニティ・スクールというものがどんどん普及し、いわばすべての義務教育学校がコミュニティ・スクール化していくことが最大の教育改革、いわばそこが教育改革の本丸ではないかと考えているんですけれども、コミュニティ・スクールの普及の現状について伺いたいと思います。

銭谷政府参考人 いわゆるコミュニティ・スクールについてのお尋ねでございますけれども、コミュニティ・スクールは、昨年制度改正をいたしまして、地域や保護者が権限と責任を持って学校運営に参画できる仕組みをつくって、地域に開かれた信頼される学校づくりを実現することを目的としているものでございます。

 昨年九月の制度施行以来、ことしの七月五日までに全国で二十五校がコミュニティ・スクールとして指定をされております。その内訳は、小学校が十四校、中学校が十校、養護学校が一校となっております。現在までにコミュニティ・スクールとして指定された学校は今申し上げましたように二十五校でございますが、文部科学省において現時点で把握をしている状況では、これ以外の学校もいろいろと今計画を持っておりまして、総数では百五十校ほどがコミュニティ・スクールの指定をし、あるいはそれを考えているという状況にございます。

 文部科学省としては、この制度の全国的な展開が図られますように、モデル事業の実施あるいはフォーラムの開催、さまざまな広報活動を通じましてコミュニティ・スクールに関する情報提供をさらに幅広く行って、各地域における取り組みを積極的に支援していきたいと考えております。

達増委員 民主党でも、岡田克也代表そして仙谷由人政調会長、それぞれネクストキャビネットの総理大臣、ネクストキャビネットの官房長官、党を挙げて幾つかのコミュニティ・スクールを視察してまいりまして、非常に心強く、またこういった方向での改革を全国で進めていかなければならないという決意を新たにしたところであります。

 やはり学校を取り巻く地域がその気にならなければならないということもありますけれども、市町村の教育長さんの決断、言いかえますと、教育委員会の決断といいますか、市町村の教育担当者の決断でありますとかイニシアチブでありますとかやる気というものがかなり成否を左右しているようなところもあるということに気づきまして、そういった草の根からの地域地域での運動ということを展開していかなければならないということも感じました。いずれ政府としてはそういった方向を、地域、地方にとって使い勝手のいい制度化というものをさらに進め、また、そういう啓蒙活動をやっていくべきということを指摘したいと思います。

 さて、幾つかそういった事例について質問しましたけれども、ここで大臣に伺いたいと思います。

 こうした義務教育財源の一般財源化をめぐる議論の中で、地方の自由度、学校の自由度の問題が議論の中ではいろいろ行われているわけですけれども、既に議論以上に実態が進んでいるというところもあると思います。こういった教育現場主導の教育改革の推進、そして義務教育費用負担の問題についての大臣の考えを伺いたいと思います。

中山国務大臣 この義務教育国庫負担制度につきましては、昨年末の政府・与党の合意によりまして、中教審の方で議論していただくということになっているわけでございまして、中教審の中に特別部会を設けまして、大変精力的な御議論をいただいているところでございます。

 その議論の内容等をずっとフォローしているわけでございますが、国はナショナルスタンダードを設定して、それが履行されるための諸条件を担保し、地方はその上に立って地域における最適な教育を実現するという考えのもと、国は必要な財源を保障するという方向で議論は進んでいるようでございます。

 中でも義務教育国庫負担制度は、教育の質の向上につながること、財源を確実かつ安定的に確保できること、地方や現場の自由を妨げるものではないことから、今後とも堅持すべきだという意見が圧倒的に多いわけでございまして、国民的な議論、これは地方の公聴会等も開いておりますが、この中におきましても、義務教育国庫負担制度の重要性が十分理解されているものと考えておるわけでございます。

 いずれにいたしましても、この国庫負担制度の取り扱いにつきましては、ことしの秋までに中央教育審議会において結論を得ることになっておるわけでございまして、私といたしましては、この結論を踏まえ、義務教育に対する国の責任をしっかりと果たせるように今後とも努力していきたい、このように考えておるところでございます。

    〔委員長退席、保坂委員長代理着席〕

達増委員 去年の異常なムード、極論が横行するような去年のムードに比べれば、ことしに入ってかなり国民的な議論も冷静、的確な議論がふえているのかなというふうには思いますので、ぜひきちっと教育の理念、目的というものに沿った形で合理的な結論が得られるようにすべきということを重ねて申し上げたいと思います。

 さて、ここからは、広い意味での学校の安全について質問をしていきたいと思います。

 犯罪関係のいろいろな問題が起きて、ショッキングな事件も多々生じているわけでありますけれども、そうした犯罪関係の安全の問題のほかにも、学校をめぐる非常に重要な安全の問題があると思うんですが、まずアスベストであります。

 最近になってまた、アスベストが使われている塗料が知らない間に使われていたでありますとか、そういった知らない間にアスベストが使われているところが発見されたというところが出てきていまして、そういった問題が、アスベスト吸引による死亡例、そういう報告と相まって新たな国民の不安を招いていると思うんです。

 特に学校について、八〇年代に一度、学校におけるアスベスト問題ということは非常に問題になって、そのとき、一たんそれなりに解決したことになっていると思うんですけれども、今回のこうした国民のアスベスト不安を受け、文科省として今どのように対策を講じているのか、伺いたいと思います。

中山国務大臣 アスベストがまた大きな社会問題になっているわけでございますけれども、思い出しますと、昔もそういうことがあったなと。

 今御指摘ありましたように、昭和六十二年当時でございますけれども、学校施設とかあるいは公営住宅等におけるアスベスト使用が社会問題になったときでございますけれども、このときに文部科学省では、公立学校施設におきます吹きつけアスベストの使用状況の実態調査を実施し、その調査結果を踏まえて、アスベストの除去等のための補助制度を設けるとともに、関係法令や関係省庁からの通知等について速やかに都道府県教育委員会へ通知する等、アスベスト対策を実施してきたところでございます。

 このようにアスベスト対策に努めてきたところでありますけれども、昨今またアスベスト被害が社会問題化していることにかんがみまして、文部科学省としては、子供の安全対策に万全を期すために、このたび改めて学校施設等に対する吹きつけアスベストの使用実態調査を実施することといたしまして、去る七月二十九日、実態調査の依頼を教育委員会等へ発出したところであります。全国の公立学校におきまして、子供たちが安心して学び、生活できる環境が確保されるように、今回の使用実態調査の状況等を踏まえ、速やかに適切な対策を講じてまいりたいと考えております。

    〔保坂委員長代理退席、委員長着席〕

達増委員 徹底的にそこはやるべきということを申し上げたいと思います。

 次に、学校の耐震化について伺います。

 これは最近の岩手日報紙に載った、岩手県の話なんですけれども、「進まぬ耐震診断」という見出しで、岩手県内の公立小中学校における耐震診断、わずか三七・三%、全国平均より一九ポイント低いということなんですが、全国平均もまた低いということだと思います。これは、市町村における財政難、また合併がありますので、統合を見越しての先送りといったこともあるようです。

 しかし、東北、北海道、関東、東海、中南海、東南海もでありましょうが、大規模地震の警告は日本各地でそれぞれ発せられているわけでありまして、そういう中で、耐震診断すら全然進んでいないというのは非常にゆゆしい問題だと思いますけれども、この耐震診断を含め、耐震化の問題、対策はどの程度今進んでいるんでしょうか。

中山国務大臣 いつも申し上げるところでございますけれども、学校施設というのは、児童生徒等が一日の大半を過ごす場であると同時に、地域住民の避難場所としての役割も果たすことがあるわけでございまして、その耐震化を図ることは極めて重要であると認識しております。

 しかしながら、今御指摘ありましたように、その耐震化につきましては、現在半数程度の建物しか耐震性が確認されておりませんで、いまだ十分に進められている状況ではないと考えております。

 また、学校施設の耐震化推進のためには、その前提として、各学校ごとに必要な耐震診断を行い、耐震性能を確認することが重要でございますけれども、耐震診断実施率は約六割にとどまっておりまして、残りの四割につきましては、いまだ耐震診断も行われていないという状況でございます。

 このため、文部科学省といたしましては、国の財政は極めて厳しい状況にある中ではございますけれども、耐震関連の予算の確保に最優先で取り組んできたところでございます。

 また、去る三月の有識者会議の報告書におきまして、工事費のかかる建てかえ方式、改築から、より経済的な耐震補強、改修方式に重点を移して、今後五年間で倒壊等の危険性の高い建物について優先的な耐震化の推進、国が必要な財源を安定的に保障すること等の提言がなされたところでございまして、文部科学省としては、この提言も踏まえまして、公立学校施設の耐震化の推進について最大限努力してまいりたいと考えております。

達増委員 民主党では、こうした安全関係の施策をきちっと進めていくためには、学校安全基本法とでも言うものをつくるべきではないかという議論を今党内で進めておりまして、学校安全対策プロジェクトチームを党内につくり、そこでの議論をもとに、防犯、防災、老朽化、事故防止、そしてアスベスト問題を含む環境衛生対策、この四本柱について国と地方公共団体に必要な施策を講ずることを義務づけ、さらに、国に対しては、特に必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならないということを定める学校安全基本法というものを今準備しているところであります。

 最後にこうした基本法の必要性について伺って、終わりにしたいと思います。

中山国務大臣 今、民主党が党内で検討されております学校安全基本法案につきましては、議員立法でございますので、現段階でコメントすることは差し控えたいと思います。

 なお、学校の安全管理につきましては、学校教育法におきまして、学校の設置者は、その設置する学校を管理するという規定が置かれておりまして、学校における安全管理責任が学校の設置者にあることは明確であります。

 また、学校の安全確保についての国の責任につきましては、文部科学省設置法におきまして、学校の安全に関することや地方教育行政の一般的運営に関する指導助言及び勧告等が文部科学省の所掌事務とされておりまして、法律的な担保はなされていると考えております。

 したがいまして、こうした法令や個別の安全にかかわる法律に従いまして、国や自治体が実効性のある学校の安全管理の取り組みを継続的に推進していくことが重要であるというふうに認識しておるところでございます。

達増委員 終わります。

斉藤委員長 牧義夫君。

牧委員 民主党の牧義夫でございます。

 ちょっと中途半端な時間でございますけれども、今週末には国会が、衆議院が解散するかもしれない、そんなお話もあり、ひょっとすると委員の皆様方とはきょうが最後のお別れになるかもという思いもあって、あえてお時間をちょうだいした次第でございます。

 冗談はさておいて、実は四年前、前の教科書の採択のときにも質問をさせていただいた経緯がございますけれども、残念ながら、また四年後のこの夏に至っても似通ったような質問をせざるを得ないような採択の状況、そんな環境であろうという私なりの認識に基づいて、きょうは、いわゆる歴史教科書の問題について若干の質問をさせていただきたいと思うわけであります。

 四年前の私の質問は、当時の朝日新聞に、もう検定合格した、済んだ後の教科書について、二十一の国内の学会が五十六の誤りを指摘したということを記事として掲載をいたしました。大きな見出しをとって記事を掲載したわけでございまして、その学会が大体どの程度の、何ぼのものかということは別として、こういう記事が載ること自体、一つの大きな妨害行為ではないかということを私なりに指摘をさせていただいて、当時の岸田副大臣、きょうは残念ながらお見えになりませんけれども、御回答をいただいたわけであります。

 そういう中で、その採択の公正を確保するための教科書公正取引実施細則というものがあって、それに抵触するかどうか、これは公取の所管としてきちっと対応していただけるだろう、そういったような回答をいただいたわけですけれども、私は、それだけじゃないだろうという気持ちも込めて、そのときは質問をさせていただいたつもりであります。

 そもそも、これは検定そのものにかかわる問題じゃないか。教科書検定というのは、国が最終的な教育権者であって、国権の発動として検定を行うわけですから、その中身については、その後けちをつけられたら、それはそれなりに調査をするか、あるいはそれに対して反論するか、そこまで国としての最終的な責務が私にはあるという認識でございます。

 というのは、検定の実施についての教科書検定の概要あるいは教科用図書検定基準を見ると、これは、単なる誤りのチェック、ミスのチェックだけじゃなくて、全体としてバランスがとれているか、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げていたりするところはないだろうか、全体として調和がとれているかどうか、そういうことも全部ひっくるめて総合的に判断をした上で、この教科書は我が国の教科書としてふさわしいと検定合格を出すわけですから、そういった意味での文科省の責任というのは、この後、もうこれは地方の教育委員会の裁量にゆだねているんだとか、あるいは公取の基準にゆだねているんだとか、それだけの次元の話ではなくて、最終的な責任はやはり文科省にあると思っております。

 その辺についての御見解をまず大臣からお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 まず、牧委員が教科書検定についてずっと関心を持ち続けておられることに敬意を表したい、このように考えております。

 教科書の検定は、学習指導要領や教科用図書検定基準に基づきまして、検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本として、教科用図書検定調査審議会の専門的な審議を経て、適切に実施しているところでございます。

 また、検定は記述内容を具体的に指示するものではなく、どのような記述とするかは申請者の判断にゆだねられているものでございます。

 今御指摘がありましたように、研究者の間で、それぞれの立場から、個別の教科書の記述についていろいろな意見があり得るということは当然だろうと思いますけれども、文部科学省といたしましては、教科書がこのような検定を経て、学習指導要領を踏まえて適切なものになっていると自信を持って送り出している、このように考えているところでございます。

牧委員 自信を持って検定の合格を出されているという今確かなお話がございましたので、あえてきちっとお願い申し上げたいのは、検定合格したものについての、今回もさまざまな新聞記事もまだございますし、意見広告等はどういうふうに扱うのか、また詳しくお聞かせいただきたいと思うんですけれども、意見広告も新聞に大きく出されているわけでありますから、そういう現状をかんがみると、これは自信を持って送り出したからということをもっと広く世間に向けて発信をしていただきたいとお願い申し上げたいと思います。

 それから、これは国内だけの話に限らず、御承知のように、近隣諸国からも公式な申し入れがあるわけでございます。早速、もう四月の初旬には中国あるいは韓国からの公式な申し入れがあるわけで、これはもう当然大臣も御存じだと思います。

 どちらの文面を見ても大体似通った文面なんですけれども、いずれの文書を見ても、例えば、いまだに過去の過ちを合理化し美化する内容を含んでいるとか、あるいは、歪曲された歴史教育を通じて、未来の世代が平和と共存、そして協力の方向へ進んでいけるのか、憂慮を禁じ得ないとか、そういった文言が書き連ねてあるわけです。

 これについてもう一度大臣からはっきりと、向こうの、相手の主張が正しいのか正しくないのか、検定において歴史を歪曲したような教科書が、先ほどのお話からすれば検定合格するわけがないわけでございますから、相手の主張がこれで正しいのか正しくないのかということもやはり大臣からはっきりおっしゃっていただきたいと思います。

中山国務大臣 平成十六年度の中学校歴史教科書検定の結果につきまして、中国それから韓国政府から申し入れがあったことは承知しておりますけれども、先ほどもお答えいたしましたように、我が国の教科書検定は、学習指導要領や検定基準に基づきまして、教科用図書検定審議会の専門的な審議を経て、適切に実施したところでございまして、今回検定合格した教科書はいずれも適切なものになっている、このように考えております。

 なお、検定制度につきましては、既に外務省のホームページで韓国、中国語でも紹介されているところでございますけれども、さらに、歴史教科書につきましては、中国語そして韓国語に直しましてホームページで見られるように八月の上旬までにはするということに外務省の方でしてくれますので、ぜひ中国そして韓国の政府の方々もこのホームページを見ていただいて、本当に日本の歴史教科書が、言われているような侵略を否定し美化する右翼の歴史教科書云々ということになっているのかどうか、しっかり見ていただいてから御批判いただきたいな、このように考えております。

牧委員 ありがとうございます。

 同様の質問ですけれども、外務省にもお伺いをしたいんです。

 他国の教科書の内容についてこういうことを言われるというのは、日本の国の責任において教科書検定をやって合格を出したものについてこういうことを言われるということは、やはり日本に対する主権の侵害だと私は思うんですけれども、外務省の見解はいかがでしょうか。

小野寺大臣政務官 お答えいたします。

 牧委員おっしゃるとおり、我が国の教科書検定制度というのは、国が特定の歴史認識や歴史観を確定するという性格のものではなくて、検定結果によりその教科書の歴史認識や歴史観が政府の考え方と一致するものと解せるべきものではないと思います。

 また、これと同時に、中国側に対して、日本政府の歴史認識は、一九九五年の内閣総理大臣談話、一九九八年の日中共同宣言に明確に記されているとおりでありまして、あわせてこれを中国側には説明しております。

 それから、先ほど大臣の方からお話がありました、現在、外務省としましては、日本の歴史教科書につきましては、中国語、韓国語に鋭意翻訳する努力をしておりまして、できましたらこれをそれぞれの国の日本の大使館のホームページに載せ、より理解していただく努力をしていきたいというふうに思っております。

牧委員 より理解していただきたいという努力はやはり怠ってはならないと思いますけれども、私、阿南中国大使の向こうに対する回答を見て若干残念に思ったわけで、相手に理解を求めるという行為そのものは別にいいんですけれども、重要な点を二つ指摘しているんですね。

 一つは、日本は国定教科書じゃないということ、それから、日本のように言論、出版の自由が保障されている社会にあっては、さまざまな思想に基づく教科書が一定の基準を満たせば出版されるのであってというようなことが説明としてあるんですね。

 だけれども、私は、できたら下村政務官の感想をお聞かせいただきたいんですけれども、こんなことは向こうは百も承知だと思うんですよね。そうじゃなくて、日本の教科書は別に偏ってもいないし誤った記述もありませんよと言うだけでいいんじゃないですか。何か、国定教科書じゃないからとか、こういう説明の仕方そのものが私はおかしいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

下村大臣政務官 大使から直接お聞きしたわけではありませんので詳しい内容は存じ上げませんが、恐らく大使も、趣旨としては牧議員がお考えのような趣旨で発言したというふうに私は理解をしておりますが、ただ、丁寧過ぎて、誤解を相手に与えるような発言に聞こえている部分があるとしたら、その点ではないかというふうに感じております。

牧委員 もうちょっと率直な御意見をお聞かせいただきたかったんですけれども、つまりは、日本の教科書には、調べたけれども、誤りもないし、特定の偏った記述もないし、戦争を美化するような、あるいは正当化するようなところもないとはっきり言えばいいじゃないですか。そう思いませんか。もう一回、ちょっと自分の言葉で言ってください。

下村大臣政務官 おっしゃるとおりです。

 我が国の教科書検定で合格している内容でございまして、そのような主張は当たらないというふうに思っております。

牧委員 ありがとうございました。

 時間がございませんので、どうしても確認だけしておきたいことをもう一点だけ質問させていただきたいと思います。

 前回、七月二十日に長島委員から大洗町の採択の件についてのお話がございましたけれども、こういった事象というのはほかでも起こり得ると思うんですね。

 実際に、岡山の総社市でも、採択地域の中の一部に総社市が含まれていて、総社市だけがある別の教科書を採択したいという意見の隔たりがあったんですけれども、聞くところによると、先日、結局、全体の中で、みんなに合わせるよという形で折れてしまったということでございます。

 この採択地域について、これは無償措置法があって定めているんでしょうけれども、もう一つは、地教行法で、教科書採択については各教育委員会にその最終的な権限があるということでございますけれども、どちらの法律を優先させればいいのか。あるいは、採択期間中に意見が分かれたときに、独自で採択をする権限のあるところは、その採択期間中でも、では、うちはこの地域から離れて独自の採択権者として、うちは独自にやりますよということだけはやはり国会の場できちっとしておいていただかないと、まだほかにもこれから出てくる可能性もあると思うんですよね。そういうときの一つのガイドラインをぜひこの場を使ってお示しいただければと思うんですけれども、いかがでしょうか。

斉藤委員長 簡潔にお願いいたします。

銭谷政府参考人 地教行法の二十三条におきましては、教科書採択の権限がその学校を設置する教育委員会にあることを規定いたしております。

 一方、義務教育諸学校の教科用図書無償措置法におきましては、教科書採択の権限がその学校を設置する教育委員会にあることを前提としつつ、その権限を行使するに当たっては、採択地区内の市町村教育委員会は協議して種目ごとに同一の教科書を採択しなければならないということになっております。

 前回、平成十三年度の採択の際に、採択権者である市町村教育委員会と採択地区との関係が明確でない、あるいは採択手続に関してさらなる改善が必要ではないかということで、平成十四年の八月に採択の改善方策について各都道府県教育委員会に対して通知を発出し、採択地区協議会等の中におきまして、各市町村間で、協議に臨む前に方針を決めておくことや、一度で協議が調わない場合も想定をして再協議が可能なスケジュールで採択事務を進めるとか、採択事務に関するルールをそれぞれで定め公表することによって採択手続を明確にしておくといったようなことを指導しているところでございます。

 なお、市町村教育委員会間の協議が調わない場合には、都道府県教育委員会が適切な指導助言を行って採択の適切な実施を図っていくことが必要なわけでございます。採択地区内において協議が調わない場合には、再協議を繰り返していただく、そこに都道府県が指導に入るということになろうかと思います。

 なお、採択地区協議会につきまして、採択地区の変更の問題でございますけれども、都道府県教育委員会が採択地区を決するわけでございますけれども、採択地区を変更する際には、採択地区を構成する各市町村からの意見を聴取した上で、採択地区を変更することについては時期的な制約ということはございませんので、そういうことから法的には可能ではありますけれども、各市町村教育委員会からの意見を十分聞いて判断する必要があるというふうに思っております。

斉藤委員長 簡潔にお願いします。

牧委員 今のお話を聞いておわかりのように、これは実は総社市も、そういうことで法的には問題ないわけですから、独立して採択することもできたわけです。ただ、これは聞くところによると、やはりいろいろな圧力があって、もう面倒くさいから、ではこっちで一緒にやってしまえというのがどうも実情のようであります。

 そういうお話は、例えば都内の渋谷区の最終的な判断、これは議事録を見ても、ある社の教科書は余りに話題になり過ぎた、だからはじくというような、そんな採択の状況がこれは全国で多々散見されるということを私は強く指摘申し上げたいと思いますし、各採択地域においてはそういった圧力に屈しない採択を毅然と行っていただきたいと思いますし、文部科学省としてもそれをしっかりとバックアップしていただきたいということをお願い申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。城井崇君。

城井委員 民主党の城井崇でございます。

 午前中に引き続き質問をさせていただきたいと思います。

 本日は、問題としては大きく一点、具体的には、国の官民人事交流制度による現職文部科学官僚のJR東海に対する交流派遣、具体的な日時は、二〇〇三年一月から派遣されたものなんですけれども、この派遣が官民人事交流法並びに人事院規則に違反しているという件、そして並びに、この件について、つまりこの違法行為が文部科学省によって隠ぺいをされているという件について、以下述べさせていただく点を中心に、その詳細を伺ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 現在、私ども民主党では、特殊法人改革本部を設置いたしまして、これまでのいわゆる官僚OBによる天下りの弊害あるいは国の出先機関への郵貯、簡保などを主に原資といたします無節操な貸し付けですとか、あるいは流用によるむだ遣いの問題をただしてきているところでございます。

 私ども、その本部の一員といたしまして、例えば文部科学省の事務次官経験者の天下りでございます日本学術振興会など、文部科学省所管の公益法人を今しっかりと目を皿のようにしてチェックをさせていただいているところでございますけれども、この天下り、これまでのいわゆる官僚OBによる天下りのみならず、最近では現役キャリア官僚の天下り、具体的には平成十二年度から始まっております官民人事交流において、新たな不正の芽が出てきている懸念があるというふうに、調査の結果、確信に至っておるところでございます。それが、本日取り上げさせていただく問題でございます、国の官民人事交流制度による現職文部科学省官僚のJR東海に対する交流派遣が官民人事交流法並びに人事院規則に違反しているという件であります。

 以下、順次質問させていただきますので、お願いいたします。

 まず、官民人事交流法に基づく文部科学省から人事院に対して提出された今回の交流派遣の派遣計画の内容並びに業務状況についてお伺いしたいと思います。

 委員会の提出資料として、お手元に二枚紙のペーパーをお配りしていると思いますので、ぜひごらんをいただきながらと思いますけれども、こちらが、先日人事院からいただきました、今回問題としております派遣の派遣経過が書かれた要請のコピーであります。本来でしたら、ここに、派遣された際に本来どのような仕事をするはずだったかということが書いてあるはずであります。

 そこで、まず伺います。まず、派遣先であるJR東海の社内における、派遣された当該官僚の配属部門それから地位、業務内容、派遣期間、これは予定の派遣期間ともちろん実際の派遣期間という二つになると思いますが、この派遣期間、そして勤務場所、出勤状況など、派遣期間中のJR社内における当該官僚の業務の詳細並びにそれを証明するものについて、まずお聞かせいただきたいと思います。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のJR東海のいわゆる官民人事交流法に基づく派遣の件でございますが、これは、JR東海での配属部門及び地位は人事部人事課担当課長でございます。

 それから、業務内容はJR東海の社員教育制度の現状把握及び実務経験に基づく適正な指導であります。

 また、派遣期間でございますが、予定されておりましたのは平成十五年一月十五日から平成十七年一月十四日でございましたけれども、実際の派遣期間は平成十五年一月十五日から平成十五年十二月三十一日でございました。

 また、勤務場所でございますが、これは愛知県名古屋市の東海旅客鉄道株式会社、いわゆるJR東海でございますが、この会社でございまして、なお出勤状況ということでございますが、これはJR東海の社員として勤務していることから、文部科学省では把握をしておりません。

 それから、ではそういうところがどういう形で証明されているのかという配属部門等の証明でございますが、これはもう御案内のとおり、人事院とJR東海が取り交わした交流派遣に関する取り決め書等によって明らかだと思っております。

 以上でございます。

城井委員 今御説明いただきましたように、役職はJR東海の人事部人事課担当課長ということでよろしいかと思います。

 それでは、先ほどの話で申しますと、いわゆる出勤状況については、JR東海の社員として勤務していたということでございますので、文部科学省としては、例えばその業務記録ですとか出勤簿ですとかタイムカードですとかといった具体的なものについては確認をされていないんですね。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、これはJR東海の社員としての勤務でございますので、文部科学省として御指摘のような業務報告あるいは業務記録というところを持っている、あるいはそういうことを掌握していることではございません。

城井委員 では、その派遣されている間の部分がないとすれば、当該官僚が、約一年弱で戻ってきているかと思うんですけれども、派遣された後に、派遣されているときの業務報告、JR東海人事部人事課担当課長として働いていたという業務記録について、文部科学省への報告のようなものがあったか、その記録があるかという点についてお聞かせいただきたいと思います。

玉井政府参考人 この勤務につきましては、先ほど申し上げましたとおり、もともと派遣の取り決めによって勤務しているわけでございますので、それ以上に文部科学省として、その後に御指摘のような記録を把握しているわけではございません。

城井委員 それでは、その交流時、交流派遣で行っていたときの内容というのは、文部科学省としては一切把握をしないということですか。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 これは、本来そういう派遣計画に基づきまして、もう既に、JR東海の社員として勤務する、そのときの勤務の条件等については、その取り決め書に決められているわけでございますので、それにのっとって適正に行われているというふうに聞いております。

 ただ、こういうことでいろいろな御指摘がございますので、もう少し申し上げますと、私どもとして、今申し上げたような把握ということではございませんけれども、このような御指摘もございますので、把握しているところによりますと、これは、JR東海へ派遣された職員というのは、先ほど申し上げました社員教育というところでそういう仕事をするという約束で行っているといいますか取り決めで行っているわけでございまして、その中身としては、社員教育体制、すなわち職場内教育だとか、あるいは自己啓発とか、あるいは集団研修、JR東海の中でこういう社員教育が行われているということでございまして、その現状を把握し、実務経験に基づく適正な指導を行っていたということでございます。

 具体的な業務として私どもが承知する限りでは、若手社員の技術力の確実な習得を目的に全社的に推進している職場内教育だとか、あるいは平成八年度から開設しております、技術継承が円滑に行われ、専門技術を体系的、計画的に学習する社内通信研修がそうでございますが、それの推進だとか、あるいは昇進試験合格者が受講する正規課程、あるいは専門技術向上等を目的とする特設課程、あるいは選抜による研修等の集合研修の実施、これらの業務であるというふうに聞いております。

城井委員 実際の勤務の中身を確かめるすべを持たないのに、つらつらと読み上げていただけるとは思ってもみなかったんですが。

 ちょっと確認をさせていただきますが、御答弁にもありましたけれども、今回の官民人事交流法に基づいて当該官僚がJR東海に派遣されて行うことになっていた本来の業務は、先ほどお述べいただいたものを恐らく一言でまとめた形となりますけれども、この二枚紙のペーパーにも書いてあります。「多くの現業職員を抱えた当社の教育制度」当社というのはJR東海、「の教育制度の現状把握及び実務経験に基づく適正な指導」ということでございますけれども、この派遣計画に書いてあるとおりということでよろしいかと思いますが、この文言、先ほどの説明を聞いてさらに確信しましたけれども、国語力がある程度人並みかなと思っております私から見ますと、これはJR東海の社員教育の現状把握と考えるのが当然であり、かつ、実務経験に基づく適正な指導においても、JR東海の社員教育に対してなされる指導だというふうに読めると思うんですけれども、以上の認識でよろしいでしょうか。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 業務内容は、先ほどのお示しになった資料にもございますとおり、多くの現業社員を抱えたJR東海の教育制度の現状把握と実務経験に基づく適正な指導でございますので、まさにJR東海の社員の教育研修、こういうことと理解をしております。

城井委員 ありがとうございます。JR東海の社員に対する教育の現状把握と指導ということで確認をさせていただいたと思います。

 ここで強く御指摘を申し上げたいと思うわけですが、今回の交流派遣に関して、派遣をされた当該官僚が、人事院に提出をされております派遣計画に記載のない業務に従事をしていたということを皆さん御存じでしょうか。さらに、その事実について、文部科学省が違法行為の事実隠しを行っているんではないかと思わざるを得ない状況がございます。

 以下、具体的に御指摘を申し上げたいと思いますが、まず、当該官僚が行った業務について、これまでもマスコミ等を通じて文部科学省がある一定程度の見解を示しております。具体的には、文部科学省はJR東海から学校設置に関し助言を求められた場合には対応したこともあると聞いていると認識を示した、これは毎日新聞の取材に対する文部科学省大臣官房人事課のコメントです。

 この学校設置に関し云々ということが何かということを具体的に申し上げますと、実際には、この派遣された官僚は、JR東海の社内で社員教育の現状把握及び指導に当たっていたのではなく、常勤で、愛知県に今新設で準備をされております海陽学園という、エリートを育てる学校というふれ込みで今準備がされておりますあの海陽学園という学校の開校の事務、設立の業務に従事していたということであります。このことは、ことしの七月十九日の毎日新聞の一面でも報じられております。この実際に派遣された官僚が、JR東海の社内には勤務せずに、社員教育の現状把握及び指導という業務ではなく、この海陽学園という学校の開校の業務、設立の業務に従事していたというこの点について、文部科学省の見解をお聞かせいただきたいと思います。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほどから申し上げておりますが、これは派遣の取り決めに従ってJR東海のもとで勤務しているわけでございますが、いろいろ御指摘がございますので、私どもとしてもそれなりの掌握をしているわけでございます。

 そういう点で申し上げますと、この職員は、先ほど来申し上げておるとおり、人事部人事課担当課長として、JR東海の職員教育制度の現状把握、それから実務経験に基づく適正な指導の業務を行ったものでありますが、なお、JR東海から学校設置に関し助言を求められた場合には対応したこともあるというふうに私どもは承知しているわけでございまして、そういうことは、また同人がこれまでの教育全般について携わってきた経験をもとにして、こういう助言を求められた場合に対応してきたというふうに理解をしているわけでございます。

城井委員 先ほどそれなりの掌握をしているというふうにおっしゃいましたが、それなりの掌握では済まない事態になっているから御指摘を申し上げているわけであります。それに、もう一点申し上げますと、JR東海から学校設置に関し助言を求められた場合には対応したこともあるという部分についても、この表現ではおさまらないレベルになっているから御指摘を申し上げているというわけであります。

 私も、正直言って、今回の新聞記事を見た後、少し調べたときに我が目を疑いました。どうなっているんだと思いました。実際にこの官僚が海陽学園の開校準備の実務に携わっていたということが毎日新聞の取材でも事細かに明らかになっているわけでありますけれども、実際にこの業務、先ほども御指摘申し上げましたように、今回の派遣計画には一文字たりとも書いていません。学校設置の業務が、どこが社員教育の現状把握なんでしょうかということであります。

 この派遣計画に記載のない海陽学園の設立業務に従事していたとすれば、これは重大な違法行為であります。具体的には、官民人事交流法第七条並びに人事院規則二一―〇の七条及び十条の違反であります。決して見逃すわけにはまいりません。大臣、この違法行為の部分について御見解をお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 お答えいたします。

 いわゆる官民交流法によりましてJR東海に派遣された職員は、人事部人事課担当課長として、JR東海の職員教育制度の現状把握及び実務経験に基づく適正な指導の業務を行っていたものであります。

 なお、JR東海から学校設置に関し助言を求められた場合には対応したこともあると聞いておりますが、特に問題はないと認識しております。

城井委員 大臣、渡されたペーパーを読んでいる場合ではないと思いますので、少し実際の現実をお話しいたしますので、お耳をかしていただければと思います。

 先ほどのそれなりの掌握といういいかげんな状況で今回の問題が文部科学省として把握をできているかというふうには思わないわけであります。後ほど具体的に状況を御説明申し上げますが、今回のことは、いわゆる官民人事交流法の趣旨を著しく踏みにじる重大な違反行為であるというふうに思います。今回の件は、国民の目から見ますと、法の趣旨を外れた人事交流が、高給取りの高級官僚をていのよい社員として使って、間接的に国民の税金を盗んだだけなんだというふうにも言えるわけであります。しかも、一般人が知り得ない情報のおまけまでつけているわけであります。

 そもそも官民人事交流という考え方は、かつての行政改革の中から生まれた官僚の意識改革のためにできたはずだったというふうに思うわけです。官僚に一般社会のことをもっと知ってもらって、よりよい行政制度やサービスの創設あるいは向上に生かしてもらうためのはずだった。それが、残念ながら、先ほど御指摘申し上げたように、淡い期待がとっくに裏切られているわけであります。

 ここで、先ほどから御指摘申し上げている、それなりの掌握で完全に見逃してしまっている違法行為の部分について具体的に申し上げたいと思います。

 当該官僚が実際に派遣をされていた一年間、この一年間の間に行っていた派遣計画には記載のない業務の詳細について、順次お伺いいたします。実際には何の仕事をどのようにやったのか、この一件を報じた毎日新聞の取材内容も参考にしながらお伺いしたいと思います。

 まず、当該官僚が実際にやっていたのは明らかに海陽学園の開校準備の実務なんだという点についてであります。

 以下、具体的に指摘を申し上げるのが、当該官僚が実際に携わった職務の中身です。以下の点について事実との認識があるかどうか、お尋ねをしたいと思います。

 まず、この官僚が派遣をされて最初にやったことは、海陽学園の開校までのスケジュールを決めることでありました。そして二つ目に、学校の規模、すなわち海陽学園の生徒数を決めることでありました。そして、当該官僚は設置場所の決定にも主体的に関与していたということが調査で明らかになっております。

 そしてもう一つ、つけ加えて申し上げるならば、私も聞いて非常に驚いたんですが、学校の設立の準備のために、エリート学校の視察ということで、イギリスへも当該官僚は訪れております。非常に著名でありますイートン校を含む英国のパブリックスクール、いわゆる貴族学校でございますが、七校の見学を行ったのも事実として確認をいたしております。

 まず、この四点について、事実との認識があるか、御見解をお聞かせください。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 私どもが承知していますのは、学校の設置について、開校までのスケジュール決定あるいは学校の規模の決定、設置場所の決定、こういう御指摘でございますが、これらの業務に直接携わったものではないというふうにJR東海からは聞いているわけでございます。

 なお、これらについて助言をしたかどうかについては私どもは承知はしておりません。

 また、もう一つ御指摘がございました、当該職員が英国の教育全般についての事情視察、これは、JR東海の職員とともに当該職員が英国の教育全般についての事情視察に出張したことは私どもは事実と承知をしております、七校であったかどうかはちょっとわかりませんけれども。

 JR東海からは、同人は、教育についての幅広い知見を踏まえて、視察の際のアドバイスをするなど、広く教育的問題について助言をしたというふうに聞いているわけでございます。

城井委員 それでは、もう一度お伺いいたしますが、先ほど御指摘を申し上げた実際にやっていた業務の中身の四つのうち、一つ目の開校までのスケジュールを決めること、これは実際には、当該官僚の派遣時期が海陽学園開校に当たっての最初の審査の前年に当たる二〇〇三年の一月で、まだ学校自体の理念やカリキュラムというものまで議論が煮詰まっていない段階、その手前のスケジュールづくりのところから当たらなければならなかったという事情も勘案しての最後の取りかかりだったわけですが、開校までのスケジュールを決めるという点、そして学校の規模を決める、学校の規模が決まらなければ、必要な教員数も、あるいは校地面積や施設の大きさも決まりませんから、学校規模を決めるということと、それから設置場所の決定への主体的な関与というこの三点、実際にやっているにもかかわらず、JR東海から聞いていないからという理由でお認めにならないわけですね。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど来申し上げましたとおり、当該職員は、JR東海から学校設置に関し助言を求められた場合には、教育全般についての経験をもとに対応したこともあるというふうに聞いておりまして、そして、JR東海から、先ほど御指摘ありましたこういうスケジュール決定、学校の規模の決定、設置場所の決定等の業務に直接携わったのかというと、直接携わったことはないというふうに私どもは聞いているわけでございます。

城井委員 直接携わったことではないというのは、JR東海から聞いているだけですか。当該官僚からは確認をしましたか。

玉井政府参考人 当該職員からも、学校設置に関し助言を求められた場合について、自分の経験を生かしながらそれに対応した、助言をしたということは承知をしております。

城井委員 それでは、お伺いいたしますが、実際に、派遣された当該の官僚は、毎日新聞の取材に対して、上から言われた仕事をやっただけですと答えております。これは先ほど御指摘申し上げた、二〇〇五年の七月十九日の毎日新聞一面の記事の中にもあった話であります。

 今回の業務、上から言われた仕事をやっただけということで先ほどの大きくは四つの派遣計画には記載のない業務をやっていたわけですけれども、今回の派遣されて当たった業務は文部科学省が命じてやらせたんですか。命じた上司はだれでしょうか。そして、命じた業務は具体的に何か。これは大臣、明確にお答えいただきたいと思います。

中山国務大臣 JR東海へ派遣された職員は、人事部人事課担当課長として、JR東海の職員教育制度の現状把握及び実務経験に基づく適正な指導の業務を行っていたものでありまして、JR東海の社員として、JR東海の上司の命を受け、業務に当たっていたものと認識しております。

城井委員 お答えが足りないのでもう一回お伺いしますが、文部科学省が命じて今回の業務をやらせたのか、命じた上司はだれか、この二点をまだお答えいただいておりませんので、大臣、お願いします。

中山国務大臣 もう答えましたけれども、JR東海の上司の命を受け、業務に当たっていたものというふうにお答えいたしました。

城井委員 それでは、今回の業務を文部科学省は命じていないんですね。

玉井政府参考人 これは、官民人事交流の派遣の仕組みから申し上げましても、既にJR東海に派遣されて、その社員となっている職員に対し、文部科学省が仕事を命じて従事させるという事実はございません。

城井委員 それでは、その点からお伺いしますが、先ほど大臣もおっしゃっていただいた、今回の業務を命じたJR東海の上司とはだれですか。

玉井政府参考人 社員の勤務体制の中、その具体名を承知しているわけではございませんけれども、人事課長の上に当然担当の上司がいるはずでございますので、職務命令としてはそのラインであろう、こういうふうに思います。

城井委員 そうしますと、今のお話のように、その業務について、JR東海の人事のラインにのっとった上司が今回の先ほど申し上げたような派遣計画に記載のない業務をやらせていたということ、つまり、もし文部科学省が今回命じていないということならば、文部科学省もていよくだまされているのだろうかという推測にもなるわけですが、JR東海が助言を求めるという形で、先ほどの御指摘申し上げた四点のように、派遣計画に記載のない業務を勝手にやらせていたということになりますよ。その際のJR東海に対する見解、この点、いかがでしょうか。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 そもそも毎日の御指摘の記事の部分でございます上司の命を受けてという部分、いかなる趣旨で話したのか、私どももそこを別に把握しているわけではございませんので、多分こうであろうというふうに今申し上げているわけでございます。

 そして、今の御指摘でございますけれども、確かに本来の業務というものはもう御案内のとおりでございますし、るるお答えをしたとおりでございます。

 その際、業務の、いかにも命令という言葉をお使いになっておりますけれども、本人から聞きますところは、学校設置に関しアドバイスを求められたならば、それに経験を生かして対応してきたし、それから、JR東海からも確認いたしましたときに、同人に対して学校設置に関する助言を求めた際にはアドバイスをいただいたことはあるけれども、設置業務そのものに直接携わっているわけではないし、また、そういう意味では、勝手にとおっしゃいますけれども、JR東海は、本来の業務に変更がないことから、業務の変更ということも申請はしていないというふうに言っているわけでございます。

城井委員 まず、今の答え、ちょっと聞き逃せないところがありましたので確認をしますが、先ほどの、上司に言われてというところで私がさせていただいた質問ですけれども、上から言われた仕事をやっただけですという点のことだと思いますが、この点、先ほど多分とおっしゃいましたね。私、この部分については、質問の通告でかなりはっきりとお伝えしているはずですから、そういう推測を述べられても困るわけであります。事実確認をした上での答えでないと納得がいきません。もう一回お願いします。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 毎日がどういう文脈でこの部分を取り上げているのかまでは私どもは承知していない、こう申し上げているわけでありまして、そこで、文部科学省がそういう業務を命じたのかという御指摘に対しては、そういう事実はないというふうにお答えをしているわけであります。

城井委員 質問通告の段階でも、毎日新聞の記事にありましたということは書いてあるわけであります。その点を勘案した場合に、毎日新聞の意図を確認してから答えをつくる、答弁をされるというのが筋じゃないですか。確認をされていないんですか。

玉井政府参考人 もちろん、毎日新聞のことは私どもは承知して、これをもとにしての御指摘もあり、それから、同時にほかからの御議論もございますので、したがって、本人に聞き、またJR東海にも確認をしたわけでございます。そういう中からお答えを申し上げているわけであります。

城井委員 では、その御本人、どう答えられましたか。

玉井政府参考人 毎日新聞からの取材があり、それなりにお答えをしているということでございます。

 そのときに、私が先ほど申し上げましたとおり、本来の業務を行って、そして学校設置に関してアドバイスを求められればそれに対応してきたというふうに答えたというふうに私は承知をしているわけでございます。

城井委員 もう一回お伺いしますけれども、先ほどの二〇〇五年七月十九日の毎日新聞の記事にあった当該官僚が答えた答え、上から言われた仕事をやっただけですというこの上からというのはどこかということと、言われた仕事は何だったかという点、本人に確認して本人が言ったことをお答えください。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 本人が毎日新聞からの取材に対してお答えしたのは、人事部人事課担当課長として職員の研修業務と、そして学校設置に関しての開設について助言を求められたからそのお手伝いをした、つまり対応したということを答えているわけです。そして、自分の仕事は、まさにこの取り決め書にあるとおり、人事課長でございますから、それはまさに上司の命を受けながら本来の業務を行っているということを本人は言っているわけでございます。

城井委員 大変ずれ過ぎた認識かと思うんですが、事実とかなりかけ離れていると言わざるを得ないと思うわけです。

 先ほどお伺いしたように、もし文部科学省が命じていないとすれば、JR東海が助言を求めるという形で、派遣計画に記載のない業務を勝手にやらせていたことになるわけですよ。この点は先ほど申し上げたとおりです。となれば、これは違法行為。違法行為をやったのに、今こうして御指摘申し上げているわけですけれども、何のおとがめもないわけですか。JR東海に抗議すべきだと考えますが、この点についても、大臣、御見解をお聞かせください。

中山国務大臣 先ほどから官房長が答えておりますけれども、JR東海から学校設置に関し助言を求められた場合には対応したこともあると聞いておりますが、これは、本人がこれまで教育全般について携わってきた経験をもとにして答えたものでありまして、特に問題はないと考えています。

城井委員 大臣にもぜひ事実に目を向けていただきたいと思うわけですが、今回の件、仮に文部科学省が命じていたにしろ、JR東海が命じていたにしろ、正直言ってかなり問題だと思うわけです。ただ、誤解のないように一つ申し上げておきたいと思いますが、この派遣計画の変更自体はできないことではないということは恐らく文科省の方々も御存じのはずだと思うわけであります。

 官民人事交流法の第七条並びに人事院規則二一―〇の第十条にある派遣計画の変更についての項目にはこうあります。官民人事交流法は第七条で、職員を民間企業に派遣する際に、計画を記載した書類を人事院に提出することを定め、人事院規則二一―〇第十条は、実施の計画を変更する必要があるときには人事院の認定を受けて変更すると定めているわけであります。

 今回のケース、先ほど来事実を述べさせていただいておりますように、当初人事院に提出された計画にある社員教育の現状把握及び実務経験に基づく適正な指導と、実際に当該官僚が、先ほどのお答えですと、JR東海の上司から命じられて行った海陽学園という学校の開校準備の実務とでは全く異なるわけで、これは計画変更に該当すると考えられます。

 では、この派遣計画、実際に人事院に計画変更の申請がされたでしょうか。どのように把握をされておりますか。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 派遣計画の変更は、派遣期間変更に関しまして、平成十五年十月二十三日にJR東海から申請があったというふうに承知をしております。派遣期間の変更を行いましたけれども、業務の変更は行っておりません。

 これは先ほど来申し上げておりますけれども、JR東海に確認しますと、同人に対して学校設置に関する助言を求めた際にアドバイスをいただいたことはあるけれども、学校設置業務に直接携わっているわけではない。また、JR東海としては、本来の業務に変更がないところから、そういう業務変更申請も提出していないというふうに言っているわけでございます。

城井委員 今のお答えですと、計画変更は期間のみであって、業務内容についてはなかったという認識かと思います。

 では、その点を踏まえて申し上げるならば、計画変更の申請もされずに、そして当然人事院の認定もないわけですが、先ほど来事実を申し上げておりますように、申請すべきをせずに派遣計画のない業務に携わされていたという時点で、申請すべきところをしなかった時点で法律違反、具体的には官民人事交流法第七条並びに人事院規則二一―〇の第十条違反ではないでしょうか。

 大臣、法律違反ではないかという点について御見解をお聞かせください。

中山国務大臣 最初から述べておりますとおり、このJR東海へ派遣された職員は、人事部人事課担当課長としてJR東海の職員教育制度の現状把握及び実務経験に基づく適正な指導の業務を行っていたものであります。

 JR東海から学校設置に関し助言を求められた場合には対応したこともあると聞いておりますけれども、これは同人がこれまで教育全般について携わってきた経験をもとにして答えたもので、特に問題はないと考えます。

城井委員 大臣、実際には海陽学園の開校の実務ばかりやっていたんですよ。その上で、それが、先ほどの文部科学省さんの説明をそのまま信じるならば、JR東海の上司が命じてやらせているわけですよ。

 今お伺いしたのは、その事実ベースのもう少し手前のところで、申請もされなくて人事院の認定もされなかった場合に、そういう計画の変更の申請をすべきところをしなかった。この計画の変更をしなかった時点で官民人事交流法と人事院規則に違反ということになるんではないかという、この場合の法律の中での扱いについて聞いているわけであります。この申請すべきところをしなかった時点で法律違反だという点については、お認めになりますか。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど来申し上げておりますが、JR東海は、本来の業務に変更がないことから人事院の業務変更申請も提出していないというふうに言っているわけでございまして、私どもとして、これが法律に反するというふうには理解をしておりません。

 ただし、これが本当にどうかというのは個々具体の事情によることでありましょうから、それは同法を所管するそれぞれの人事院のまた判断ではないか、かように思いますが、私どもとしては、あくまでも本来の業務に変更がないことから人事院の業務変更申請も提出していないというJR東海の説明によって理解をしているところでございます。

城井委員 先ほどから、JR東海とか人事院とか、責任をたらい回しにしていますけれども、今回の派遣元はあくまで文部科学省ですよ。しかも、その文部科学省から派遣された官僚がしていた仕事が、海陽学園という一私立学校の開校の実務のみですよ、実務のみ。実際にその点もよくよくお調べにならずに、そういう建前論ばかりを振りかざされるというところはいかがなものかというふうに思いますよ。

 では、確認でもう一度お伺いしますが、実際に当該官僚がJR東海に派遣された後に行っていた仕事は、海陽学園の開校実務のみだったという事実を私どもとしては確認をしているわけですが、この点についての認識、いま一度お伺いしますが、いかがですか。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 JR東海から聞いているところによりますと、派遣された職員は、人事部人事課担当課長として、JR東海の職員教育制度の現状把握、実務経験に基づく適正な指導の業務を行っていたものであり、なお、JR東海から学校設置に関し助言を求められた場合には対応したこともあるというふうに承知をしているわけでございます。

城井委員 先ほどから、JR東海から学校設置に関し助言を求められた場合には対応したこともあるというお答えに終始しているわけですが、この助言を求められた場合には対応したこともあるの範囲はこんなに広いんでしょうか。九割九分ぐらいの業務を覆えるぐらいの拡大解釈ができるんでしょうか。

 正直言って、助言を求められた場合に、派遣計画に記載のない内容でも対応が可能ということになりますと、派遣計画で業務内容を確認して制限をわざわざ設けている官民人事交流法の趣旨を曲げることになってしまいますよ。そして、これ自体、みずからの法律違反を認めることになるんじゃないですか、この拡大解釈ということが認められるならばですね。

 この点からいえば、助言も可能ということでも、違法行為、先ほど申し上げた官民人事交流法第七条並びに人事院規則二一―〇第十条違反であるというふうに考えます。もしこれが違反でないというのなら、助言を求められたらどんな仕事でもやれるということになって、人事院の認定など有名無実となるのではないか。この点について、大臣、御見解をお聞かせください。

中山国務大臣 同じような答えになりますけれども、いわゆる官民交流法によりましてJR東海に派遣された職員は、人事部人事課担当課長として、JR東海の職員教育制度の現状把握及び実務経験に基づく適正な指導の業務を行っていたものでございまして、なお、東海から学校設置に関し助言を求められた場合には対応したこともあるというふうに聞いておりますけれども、繰り返しになりますが、特に問題はないと認識しております。

城井委員 大臣、ですから、その文部科学省の方からの大臣への御報告の内容が間違っているし、虚偽なんだ、偽りなんだということを御指摘申し上げているわけです。ですので、その報告の内容自体を問題ないと信じ込んでしまうのは問題だと思うわけです。

 先ほどの当該官僚の実際にやっていた業務の内容、その派遣されていた期間の中での業務の実際の内容、中身を詳細にもう一度お調べいただきたいと思うわけです。大臣、この点についてお願いします、もう一回。大臣に言っているんです。大臣に言っています。

玉井政府参考人 この職員に関しますことにつきまして、先ほど来申し上げておりますけれども、本来二年であったものが一年に変更になったわけでございますけれども、そのときに、変更申請におきましても、この変更の理由として、JR東海の方からは、この職員につきましては、社員教育の一層の充実を目的としての官民人事交流法に基づいて教育制度全般に精通した人を派遣いただいた、そして、その人は、駅だとか運転区所だとか工務区所等々、多くの現業社員に対する当社の教育の把握について御理解を深めていただくとともに、さまざまな指導を賜ったというふうにJR東海は言っているわけでございまして、それによって、私どもとしてはこの官民交流法に基づく適正な対応ができているというふうに理解をしているわけでございます。(発言する者あり)

斉藤委員長 時間が来ておりますので、それでは、最後に簡潔にお答えください。

 中山文部科学大臣。

中山国務大臣 私は文部省の事務方から聞いた説明、虚偽ではないと。私には正しく報告してくれていると信じております。

斉藤委員長 城井君、もう時間が過ぎておりますので、簡潔に。

城井委員 大臣、今回の件は明らかな違法行為ですよ。正直言って、こんなに好き勝手に官民人事交流制度が使えるんだったら、今後、OB官僚の天下りだけではなくて、現役キャリア官僚の、例えるならば青田買い的な天下りがこれから横行しますよ。幾らでも使えますよ、このままほっておいたら。ここで、そういう実態も調べもせずにほっておくということならば、幾らでも今から十分にされてしまいますよ。

 その芽を、不正の芽を摘みたいから、今ここで、そういうふうなことにならないように、きちんとあらかじめチェックをしている範囲内で官民人事交流が行われるように確認をしてほしい。ですから、今までにもし誤りがあるならば調べてほしいということなんです。この点を言っているわけであります。実際に今回の件は、もとの文部科学省の事務次官が文部科学省に言って、現職を海陽学園へ送れという指示をしたという報道まであります。かなり根は深いんです。

 その意味で、大臣、この調査、もう一度お願いしたいというのと同時に、ここまで文部科学省がもしお調べにならないのであれば、当委員会、この文部科学委員会として、当該官僚と、そしてJR東海の今回の派遣にかかわる責任者の参考人招致を要求したいと思いますけれども、委員長、いかがでしょうか。

斉藤委員長 後ほど理事会で諮らせていただきます。

城井委員 最後に、大臣に一言お伺いをさせていただいて終わりたいと思いますので、お願いします。

斉藤委員長 大臣、時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

中山国務大臣 何度も申し上げていますけれども、何ら問題はないと認識しております。

 なお、今後ともこの官民交流法の趣旨に基づきまして、職員を派遣する場合には、この法律の趣旨に基づきまして適切に対応してまいりたいと考えております。

斉藤委員長 もう時間が過ぎておりますので。

城井委員 では、終わります。

斉藤委員長 笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。よろしくお願いをいたします。

 きょうは、二つのことについてお伺いしたいんですが、まず最初に、今中教審の方で議論をされております義務教育のあり方について、この問題についてまず先にお伺いをしたいと思います。

 先ほども午前中の質問等でも、大臣、秋までにこれはまとめるという方針のもと、今作業を進められていると思うんですけれども、今後の具体的なスケジュールなんですけれども、中教審に今諮問されて、当然その答申が出てきて、これを受けてどういう形で文科省として、もうそのまま例えば来年の通常国会へ向けて必要な法整備なりをやっていくのか、その辺についての文科省としてのスケジュールをまず伺わせていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 中央教育審議会義務教育特別部会は、昨年の政府・与党合意を受けまして、義務教育のあり方について、ことしの秋に結論を得るべく議論を今精力的に進めていただいているわけでございます。この七月の十九日に審議経過報告のその二というものを出しまして、先般五月に出しました審議経過報告その一とあわせまして、この二つの審議経過報告をもとに、今、一日中教審の開催でございますとか、この審議経過報告に対する各界の団体等の御意見をお伺いしながら、秋の審議に向けて作業を進めているところでございます。

 今後、こういったヒアリング等を終えまして、いわば委員同士の審議をまた再開いたしまして、この秋に結論を得て、それに基づいて所要の措置がとられると思いますので、その結果を踏まえて、その内容に盛られた所要の事項について必要な制度改正等について文部科学省としては取り組んでいくということになろうかと思っております。

笠委員 今、各界のまた意見を聞きながらということがありましたけれども、これは先般、審議経過報告ですか、この中にも出ておりますけれども、「今回の審議経過報告を機に、国民各位が義務教育への関心をいっそう高め、活発な議論を展開してくださることを期待したい。」というようなことで締めてあるわけでございます。

 今、文部科学省としてホームページの方にもこの取りまとめについて掲載をして、国民から意見を聞くというようなことをやっているようでございますけれども、現在どれくらいの数の意見が来ているのか、まずそれを教えてください。

銭谷政府参考人 文部科学省では、この審議経過報告につきまして意見募集を行っております。現在、八月一日現在でございますけれども、意見といたしましては、手紙、はがき等で百六十八通、メールで百四十二通、ファクスで十六通、合計三百二十六通の御意見を今のところお寄せいただいております。

 意見募集につきましては、文部科学省のホームページ、パンフレット、政府広報等で今周知をして、さらに幅広く意見を募集しているところでございます。

笠委員 今の数、こんなものしか国民は興味がないのかということですよね。というよりも、私はそれは違っていて、まずこういう大事な義務教育に関しての議論が行われているということを全く知らないんですよ、普通の人たちは。先ほど局長は政府広報と。郵政の民営化はあれだけでかでかと政府広報して、この前文科省の、ありましたね、何か小さい、どこに載っているのかわからないような。要するに、それをホームページに載せていても、そこにアクセスしない人は知らないわけですし、もっと徹底をしていかないと広く国民の声を聞くなんということ、意見を聞くなんということはできないと私は思うんですけれども、その辺について、さらに多くの方々に議論を喚起していくための方策というものをお考えなのかどうかをお聞かせください。

銭谷政府参考人 ただいま先生お話ございましたように、この義務教育の問題について広く国民世論に対して御意見を伺い、国民の間で十分御議論いただくということは大変重要なことだと私ども思っております。現在、団体ヒアリングや一日中教審、さらにはスクールミーティングなどを通じて、中教審あるいは文部科学省自身、いろいろ会議の場に出向いてお話を伺っているわけでございますが、あわせて、ホームページを開いたり、先ほど申し上げました意見募集を行ったり、あるいはパンフレットをつくりまして、それをお配りしてまた御意見を伺う、いろいろなことをやっておるわけでございます。

 私どもといたしましては、さらにこういった広報活動、広聴活動についていろいろ工夫をしながら、一層その充実に努めていかなければいけないというふうに思っているところでございます。具体的な内容としては、やはりもう少し広く国民の間にこういう議論が浸透するようなやり方について十分、余り時間もございませんけれども、考えていかなければいけないというふうに思っております。

笠委員 今から考えても、恐らくやらないんでしょうね。

 私、このパンフレット一つとっても、これはどこで配っているんですか。

銭谷政府参考人 このパンフレットにつきましては、各教育委員会、それから各種の会議、これはPTAの会議とかいろいろございますけれども、そういうところで幅広く配るようにしているところでございます。

笠委員 文科省の幅広くと私の認識をする幅広くというのがちょっと違うのかもしれませんけれども、PTAだとか、PTAといっても多分全国のPTAじゃないでしょう、恐らく。その幹部の方でしょう。あるいは教育委員会に渡すだけじゃなくて、こんないいんですよ、ぜいたくな、何が書いてあるかわからないような、カラーのものじゃなくてもいいから、この半分ぐらいのサイズで、もっとわかりやすく。

 例えば、今回の義務教育のあり方に関する検討というのも、では義務教育は本当に九年でいいのかどうかとか、いろいろな議論がされていますね、五歳から入学させたらどうだとか、あるいは先ほど来議論にもなっている教育委員会のあり方がどうだとか、学校の評価についてとか。私は、なるべく幾つか本当にわかりやすい具体的な問題提起を両論併記でもいいからやって、そして、多分恐らくは当委員会の議員の先生方皆さんそうだと思うんですけれども、やはり選挙区で、地元でいろいろな方と話すと、教育というのは皆さん関心を持たれているし、それぞれ考えがあるわけですよね。そうすれば、例えばそういうわかりやすいパンフレットをつくって、学校単位で、例えば保護者の方々とか、もちろん学校の先生もそうでしょうけれどもそういう方々、もっと言えば子供たちにだってわかりやすいようなそういうものをつくって、お金をそんなにかけなくたってできるんですよ。別にカラフルじゃなくたっていいんですから、活字は大きくわかりやすく。

 やはりそういうようなことをもっとやっていくというようなことをしないと、いつも国民の意見を幅広く幅広くといっても、結局は中教審が取りまとめて、そして国民の議論になっていく前にもう法案の審議ということになって、そこから方向をがらっと変えるようなことはなかなか難しい、その繰り返しなんですよね。

 コミュニティ・スクールのときにも私は指摘させていただきましたけれども、地域の方々が学校をしっかりと、自分たちで新しい学校づくりをしていこうというような、私はあの法案自体はまださらに進化させないといけないと思っていますけれども、いろいろなことができるようになった。でも、知らないんですよ、そういうことを。

 だから、今回、この義務教育の基本にかかわるこれだけ大事なテーマを幾つもやっているわけですから、まさに私は、広報活動をどうやったらそういう議論が沸き起こってくるのかということをもっと真剣に考えてもらわないと、いつまでたったってこれは形だけの国民の意見を聞くになってしまいますよ。

 大臣、その点いかがでしょうか。

中山国務大臣 自分が文部科学大臣ということもあるかもしれませんが、昨年の秋からこの教育問題に関して非常に国民の関心が高まっているなということを実は感じております。

 今、スクールミーティングのことを局長が申し上げましたけれども、スクールミーティングでも保護者から本当に真剣な質問等も飛び出しますし、また、タウンミーティングというのを今内閣でやっていますけれども、いろいろなタウンミーティングの出席者を私はチェックしているんですけれども、やはり教育問題に関するタウンミーティングは飛び抜けて参加者が多いということもあるわけでございます。

 それから、今自民党の方でも、なぜ今教育改革かというしおりをつくりまして、十万部以上つくったんじゃないかと思うんですけれども、私はそれをさらに、PRのこともあったんですけれども、自分の顔写真を入れまして、一万部以上つくってあちこちにばらまいているんですけれども、やはり非常に関心が高まっているということ。

 これは、昨年末の世界的な学力調査の結果で日本の学力が低下傾向にあるということで、国民の皆さん方もやはり危機意識を持たれているということもあると思いますし、義務教育費国庫負担制度がどうなるかというようなこともありまして、これまで以上に国民の関心は高まっていると思っていますが、今御指摘のように、まだまだという見方もあるかもしれません。

 やはり、関心のある方は関心がありますけれども、教育なんか関係ないよという方もいらっしゃいます。特に、私は、もう既に自分たちは子育てを終わったんだという、そういった方々もぜひ教育問題に関心を持ってもらいたいということをいろいろなところで申し上げているわけでございますが、ひとつ教育改革を国民運動として、みんなが関心を持っていただくような、そして、これからの教育をどうするんだ、日本の将来をどうするんだということについて、もっともっと国民の関心が高まるように我々も努力していかなければいけないと思いますけれども、どうか民主党におかれましてもよろしくお願い申し上げます。

笠委員 御心配なさらなくても、民主党はそれぞれやっておりますので、それはいいんですけれども、ただ、やはりこういう意見を、自分たちの意見が求められていると。本当に求めているんだったら、あえてそういう言い方をさせていただきますけれども、やはり三百人ぐらいの人しか関心がないということはないはずですよね。これも、「郵送または電子メールにて、下記までお送りください。」なんて書いているんですけれども、こういう意見を求められているということすら、恐らく九割以上、いやいや九九%近い人は知らないんじゃないんですか、普通の人は。そうやって文科省、だって三百人ぐらいしか来ないわけですから。

 だから、そういう実態をしっかりと、そういう意見を本当に聞くということを、ただ単に、この手の話をするときは必ず国民の意見を聞きましょうというようなことだけでなくて、格好をつけるためにやるんじゃなくて、やはりしっかりとそれを告知していく、あるいは本当にこういうパンフレットを配付して、そして広く求めていく、そういうことをぜひ前向きに早急に取り組んでいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 今、委員が、先ほどはもう遅いんじゃないかということを言われましたが、決して遅いということはないと思いますし、この中教審の結論といいますか、大体この秋までに出ることになっています。それをもとにしまして、できることから改革を進めていこう、そして、再来年、十九年の三月ごろをめどにして、教育改革全般について推進していきたい、こう考えていますから、ぜひそれに向けて、御指摘もありましたので、文部科学省の広報活動を一層力を入れていきたい、このように考えております。

笠委員 よろしくお願いします。特に、秋の中教審の結論、これはあくまで中教審の結論が出るわけでございますから、そこで出た結論をもとに、恐らくは幾つかのテーマについては、まず、方針を決める前にやはり国民の声というものをしっかりと聞いていくという姿勢も求められていくと思いますので、ぜひその点についてはお願いを申し上げたいと思います。

 それで、きょうはもう一点、先ほど午前中、達増委員の方からも冒頭に指摘がありましたように、高松塚古墳の壁画が劣化をしたという問題についてちょっと質疑をさせていただきたいと思います。

 先ほど達増委員の、これは文化財行政が根本的に問われる問題だ、私もそういう同じ認識をしております。そして、それに対して大臣が、これまでその都度最大限の努力で対処してきた、原因が解明されていないけれども、これからはしっかりと万全を期していく、今回のこういう措置、一度石室を解体して、そして壁画を取り出して、別の場所でこれを修復し、また保存をしていくというようなこの方針について、厳しく受けとめているという発言がございました。

 ただ、私は、大臣、本当にその都度最大限の努力で文化庁は対処してきたのかどうかというところを非常に今回疑わしい、そこが私は若干大臣とは認識が違いますので、まずその点から幾つか質問させていただきたいと思うんです。

 今回、この遺跡というのが、これまで、本来であればその場で保存をしていく、あるいは、現地で古墳と壁画というものをしっかりと一体として残していくことを基本としてきたのが文化財保護の基本的な理念であるというふうに私は認識をしておるんですけれども、その点について、まず文化庁としてはどういう認識なのか、お聞かせください。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘の高松塚古墳壁画の保存につきましては、昭和四十八年当時に保存対策調査会でいわゆる保存方針、原則が決定されたわけでございます。現地保存という大原則でございました。文化財はあるべきまま現地で保存をするという考え方でございまして、基本的には、この原則を今も私どもは維持しておるわけでございます。

 大臣の答弁にもありました、今回の恒久保存方針の決定につきましても、古墳を切り崩して石室を取り出すという、いわば大変非常手段を用いるわけでございますが、特別史跡の現状変更という解釈の中でぎりぎり解釈、運用できる範囲内ではないか、原則を守りながら対応がとれるのではないかと考えておるところでございます。

笠委員 今次長おっしゃったように、これは本当に文化財保護法に照らしてもぎりぎりの解釈、つまりは言いかえるならば、本来はこういうことはあってはならない、もう本当にここがぎりぎりの決断だったということなんでしょうけれども、きょうは、その文化財保護法について触れるかどうかという議論をするつもりはございません。ただ、これは一言申し上げておきますけれども、私は、かなり拡大的な解釈ではないかという気がしております。

 それで、そもそも一九七二年三月に発見をされて、古墳が特別史跡ですよね、そして壁画は国宝という中で国として文化庁が、これはまず本当の確認なんですけれども、この責任者というのはどこになるんですか。この最終的な責任、文化財を保存していく、保護していく責任というものは文化庁でよろしいでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 文化財の保護、管理でございますから、文化庁が担当する責任を負うことになります。

笠委員 今回、こういうふうにぎりぎりの状況までなったということでございますけれども、これまで、例えば劣化をしていないのか、あるいは今カビの問題というものもこれは大きな要因の一つでございますけれども、こういう点について、どういう形で文化庁としてはこれまで調査をし、そしてそのことをしっかりと公表してきたのかどうか、その点についてお聞かせください。

加茂川政府参考人 高松塚古墳壁画の保存につきましては、実はこの保存作業といいますのは、委員も十分御案内のとおりでございますが、これまで全く未経験の領域の作業を強いられたわけでございます。いわば試行錯誤を繰り返しながら、その都度最善と思われる方策で対応してまいりました。大臣の答弁にもございましたように、その時点での保存科学の研究成果を十分に踏まえながら最大限の努力をして、その都度適切に対応してきたと私どもは考えておるわけでございます。

 これまでの点検等の作業の概要を申し上げますと、少々長くなりますが、お聞き取り願いたいと思います。

 四十八年当時、専門家等の有識者のさまざまな検討の結果、先ほどの現地保存という大方針が決まったわけでございます。発見当時の環境でそのまま保存することがこの壁画にとっては最善の方策であるとされたわけでございまして、私どもはこの大原則のもとに、それ以後、方針に沿って保存対策を進めてきたわけでありますが、基本は壁画の保存修理という観点から、カビの除去対策でございますとか、それから、しっくい層の補強と剥落どめの措置を逐次行ってきたというのがその大要でございます。

 具体的には、大きな修理が三度行われてございます。これまでも、何度も何度も試行錯誤でございますが修理を繰り返してまいりました。第一次修理は主に調査と剥落どめが中心でございましたが、昭和五十一年度に、四十八年度に発見されましたけれども、五十一年に既に第一次修理を行っております。これは二週間程度の作業を六回行いまして、最も緊急に対応を要する部分の保護措置を重点的に行ったものでございます。

 それから、第二次の修理。これはカビ対策が中心でございましたが、昭和五十三年度から五十五年度にかけて、十日間程度の作業を毎年四回実施いたしました。

 それから、第三次の修理でございますが、これは五十六年度から昭和六十年度にかけまして剥落どめ中心の作業を行いまして、これは四日間程度の作業を年一回実施したものでございます。

 こういった一連の修理作業の成果もございまして、それ以後は若干落ちつきが見られたものですから、昭和六十一年度以降は、基本的に年一回の点検を行いまして、その際に問題があると判断した箇所の剥落どめを実施してまいりました。

 こういった点検作業をこれまで逐次重ねてきたというものでございます。

笠委員 今、昭和六十年以降は、要するにそれまでのいろいろな苦労が実って大体うまくいっているというようなことで、年一回の点検で済ましてきたというようなことなんですけれども、実態は全然違っていたわけですよね、全く。むしろ、緊急的な対応をしないといけないような状況に、この遺跡が、壁画がなってしまっていたということについて、私は少々認識が甘いんじゃないか。

 例えば、早い段階から色があせたりあるいはカビが生えたり、いろいろな形での劣化が始まっていた。ただ、これは完全に非公開として保存をされてきましたから、国民は知る由がないんですね。まさに文化庁が情報を独占してきているわけですよ。だから、国民からすれば安心して、もちろんこれは別に文化庁の遺跡じゃないですから、文化庁の文化財じゃないわけですから、国民の財産ですよね。それをまさに文化庁が一手に調査あるいは管理を引き受けながら臨んできたということなんです。

 では、これはたしか昨年の六月ぐらいだったでしょうか、大きな問題になってきたのが四月でしたか、今日のような状況になるということは、全く予測としてはできなかったのか、そういう危険性という指摘はなかったのか、これまでの文化庁の中で。その辺についてはいかがでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 まず、その昭和六十年以降の安定期について、委員から御指摘がございましたので補足をさせていただきますが、毎年の点検を行っておりました際には、一部カビの発生も六十年当初に見られておりますけれども、総体としては異常ない、カビの大きな発生等は見られなかったという事実確認ができてございまして、六十一年以降十年余りの安定期について申しますと、実態を実際に把握した上で、今から振り返ってみますと、現状のように急激に悪化をするということは、この時点では想定できなかったことはやむを得ないのではないかと思っております。

 ただ、十三年度以降について申しますと、いろいろな原因があるわけでございますが、十三年度に石室前方での工事を行う際に、その作業でカビの防止対策が必ずしも十分でなかったことが引き金となって、または、それまでいろいろ修理を行っております際に使われました薬品の影響があったり、そのほかにも異常な気温の上昇でありますとか、カビとか小さな生き物の食物連鎖の思わぬ進行でありますとか、さまざまな要因が加わっておりましたために、この十三年度以降急激に、それまで平衡状態を保って、カビの増殖等についていいますと抑える環境にあったものが急に悪化をしたという急激な変化が見られたわけでございます。

 これが予想できなかったかどうかということについて申しますと、今から申しますと、先ほど申し上げました六十一年度以降の十年間の安定期を前提に考えますと、予想のできないような大きな変化であったと私どもは考えておるのでございます。

 また、二点目でございますが、こういったことについての情報公開が不十分ではなかったかという指摘を受けたわけでございますが、私どもとしては、今思いますには、例えば毎年ベースで、もしくは毎年でなくても、定期的にこの古墳壁画の管理に関する情報を国民広く一般に提供すべきであったという反省点を正直持っておりますけれども、これまで情報公開に全く手をこまねいていたばかりではないのでございます。

 一つ、これまで、発見当時から現在までの点検結果、作業結果を含めました経緯、その全体につきましては、随分遅くなってからではございますけれども、平成十六年の八月に、去年の八月に、この恒久保存対策の検討会に対してすべての資料をまとめて報告いたしまして、公表しておるところでございます。

 さらに、それに先立つことでございますが、昭和六十二年には報告書、これは写真も含まれておるものでございますが、報告書を刊行いたしまして、それまでの応急処理が一応の進捗を見たことを踏まえた報告、すなわち公表を行っておるものでございます。昭和六十二年にまとまった報告をさせていただいておるというのが私どもの認識でございます。

 また、写真集等のレベルで申しますと、平成十六年には発見から三十年を経た保存状況を公表するという趣旨のもとに、高画質の撮影機器を用いた写真集として報告書、いわば報告書になると思いますが、題名は「国宝 高松塚古墳壁画」を刊行して公表しておるところでございまして、回数が少ないではないかとおしかりを受けるかもしれませんけれども、その都度できるだけの情報公開には努めてきていたところでございます。

笠委員 今、るる次長おっしゃったんですけれども、その平成十三年以降急激に悪化した、それは予想できなかったことである、予想以上ということなんでしょう、多分、初めてのことでと。ただ、そのときに、本当にこれは大変なことだという認識を文化庁として持っていたのかということを私は指摘したいわけですよ。

 これは、次長、ちょっとお伺いしますけれども、その十三年度以降もうこれは急激に悪化して、そこあたりから、これは大変なことだ、劣化が進んでいるという認識を持たれたということで間違いないですね。これは文化庁として持っていたわけですね、そういう認識を。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 そのとおりでございます。十三年度以降に黒カビ等悪質のカビが広範に広がり繁殖をいたしまして、この時点では大変な事態に立ち至ったという認識を持ちました。持ったがために、緊急対策の検討会議を立ち上げたわけでございます。そこで議論していく中で、この緊急事態に対応する方法についても検討して、大臣の答弁にもございましたが、今回の方針決定に結びつくわけでございます。

笠委員 今、そういう認識を持った、さらにしっかりと情報公開、悪い話も含めてきちんとしてきたということをおっしゃるんだけれども、先ほど次長おっしゃった、これですよね、「国宝 高松塚古墳壁画」、ここに、私は、きょうちょっと文化庁長官がおられないので次長にお伺いしますけれども、最初の巻頭のところにあいさつの、最初の頭のところに河合さん、文化庁長官の名前であいさつ文みたいなものが載っていますよ。その中に、驚くことに、「前例のない壁画の保存・管理は決して容易なものではありませんでした。幸い、三十年を経ても壁画は大きな損傷あるいは褪色もなく保存されておりますが、」と。

 全然違うじゃないですか。これが出たのは去年ですよ。平成十三年にはもうそこまで悪化しているという状況を認識していたわけでしょう。これはどういうことなんですか。これはどなたが書いたんですか。

中山国務大臣 御指摘の写真集でございますが、これは壁画の全体についてそのままの写真を公開することによりまして、本壁画発見後三十年を経た現在の状況を公表し、広く国民の皆様に御理解いただく趣旨のものとして刊行したものでございます。

 この写真集の序言によりますと、本壁画の保存事業は、厳しい環境のもとで前例のないカビの除去と防止を繰り返す大変困難なものであったことも明らかになっていると承知しております。

 ただし、今御指摘がありました部分につきましては、私もちょっと読んでみましたけれども、必ずしも丁寧な説明がなされていると言えず、あるいは誤解を与える表現だったという御指摘については、これは理解できるところであります。

笠委員 私は、これは本当に難しいと思うんですよ。初めてのケースで、だれがやっていたらもっとよかっただろうとか。ただ、僕は本当にこの文化財の保護ということに関しての文化庁の体質というか取り組む姿勢、その危機感というものが欠けているんではないかと。

 もう去年こういうものを発行したんだったら、そこで、いろいろと頑張ってきた、けれども、なかなか困難をきわめて、こういう形で残念ながらやはり劣化をとめることができなかったというようなことを正直に書けばいいじゃないですか。だって、翌年のことしに、解体までしないといけない、そして壁画を取り出さないといけないというような事態を招いているわけでしょう。これが出たときに、もう全然これが今のこのような大きな損傷とか退色もなくということであれば、まあ、ことしこういう事態になっていませんよね。

 そこあたりをしっかりと反省してもらわないといけないんですよ、国民の皆さんに向かって。いかがですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 大臣の答弁にもございましたように、委員御指摘のこの序言部分だけを見ますと、確かに十分そのカビの現状、壁画が劣化しているという厳しい状況を踏まえた表現にはなっていないという受けとめ方をせざるを得ないわけでございます。

 この序言全体をごらんいただきますと、その管理作業が決して容易ではない、困難な作業である、カビの発生も見られるんだということを記述してございますから、趣旨としましては、文化庁が三十年以上管理をしてまいりましたが困難な作業でございましたということは伝えておるわけでございますが、委員御指摘のように、この部分だけを見ますと、国民に正しい説明責任を果たしているか、情報提供ができているかということについて言うと、本当に反省すべき点があろうと思っておりますし、これを踏まえて、以後改めるべき点はきちんと改めてまいりたい、こう思っておるわけでございます。

 ただ、同時並行で、先ほど申しましたが、この十三年度以降の急激な変化について対応を検討しておりましたその緊急対策の検討会、あるいはそれを踏まえての恒久対策の検討会はこれと同時に十六年からスタートするわけでございますが、その場では、現状を詳しく、発見当時からのデータも踏まえて報告をし御審議をいただいてきたわけでございまして、決してその情報について文化庁がこれを、適切な言葉ではありませんが、隠ぺいするとか隠すとか、そういう気持ちは全くなかったということもぜひ御理解をいただきたいと思います。

笠委員 私は、この決定がされたときに、恐らく多くの国民の皆さんが、え、どういうことなんだという思いを持ったと思います。テレビのニュースでも報じられました。

 それで、そのときに、このことについてちょっと私確認なんですけれども、解体をする、こういう非常事態宣言、本来であればやりたくない、だれもやりたくない。けれども、そうしなければ壁画が守れない。しかし、壁画を守るためにこの特別史跡、この古墳をやはり一度壊していくということになるわけですよ、一部であるとはいえ。これはもう壁画を守ることありきで、やはりそれを最優先しての措置だと私は認識をしております。

 それの是非は別としましても、そういう事態を招いたということで、文化庁長官なりあるいはこれは大臣なのか、文化庁長官、当然文化庁長官がきちんとした形で記者会見なりをしておわびをしましたか。ちょっと確認させてください。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 委員が御指摘のような形での会見はまだ実施されておりません。

 私どもの考えは、何度も答弁を申し上げておりますが、これまでの三十数年間のうち、その時々にできる知見を前提に、研究成果を前提に、大変困難な作業を、実はその作業現場、詳しく申し上げて恐縮ですが、幅が一メートル、高さが一メートル二十、その長さにしても一間半ぐらいしかない狭いところで、人が二人入ったらもう身動きがとれなくなるようなところで、湿度一〇〇%での作業、本当に汗、血のにじむような努力をして、その修理作業に担当者は当たってまいりました。

 ですから、この間何もしていなかったという非難を受けること、それは行政全体の不十分さからくるのかもしれませんが、作業に当たった者たちにとっては大変耐えがたい厳しい指摘かと思ったものですからあえて言わせていただきました。

 この間、そういう努力をしてまいりましたのは、そのときできることはすべてやってきたんだ、しかし、残念ながら結果として、原因は全部解明できておりませんけれども、国民の貴重な財産について十全な保全ができなかったという重大な結果をもたらしたことについて、そのことについては大変、どういう表現をしたらよろしいのか、本当に遺憾とか残念に思っている、その気持ちは持っておるわけでございますが、果たすべき責任を果たさないで、なすべき行為をなさないでこういった結果をもたらしたのかということについては、私どもは違った考え方を持っておるわけでございます。

笠委員 私は、これまでいろいろな作業あるいは調査に当たられてきた方には敬意を表しますよ。

 そうじゃなくて、文化庁として、先ほど言ったじゃないですか、この保護に当たる責任者は文化庁なんでしょう。当然ながらそのトップの方が、僕は責任をとれとかそういうことじゃなくて、しっかりとやはりおわびをしなければいかぬでしょう。

 そして、当然ながらそのときには、今後こういうことが起こらないように、やはりできるだけ早急に、先ほどきょうの午前中、大臣の答弁でも、いろいろなこの原因というものは考えられるけれども、まだ確信を持って言えるものまではわからないと。しかし、それをやはり急いでしっかりと調査をして、そして、こういうことが原因だった、問題だったんだということを説明していくという姿勢が感じられないということを私は申し上げているのですよ。個々のだれのせいとか、そんなことを言っているわけじゃない。

 それで、一つ私指摘したいのは、ちょっと文化庁というものに対して、あのレコードの、CDの著作権の問題のときもありましたけれども、オープンに議論するという体質がないんですね。オープンに議論する。

 ことしの五月十一日に検討会でこの方向性が示されましたね、壁画を取り出すというところの。ただ、その後、そのためには、国民の大事な財産だから、当然ながら国民の合意が必要だということを一応は言っていた。けれども、わずか一カ月半で決定するわけですよ、この石室の解体が。この間、ではどういうふうな形で国民の合意形成を図っていったんですか。その点について。

 もう一点。作業部会というものがこれまである程度の方向性を決めてきているのですけれども、これは完全に非公開の中で実施されているんですよ。私、この審議会については、検討会については、審議の内容というものはいただきました。私、作業部会でこれまでこの一年、二年、どういう議論があったのかということをぜひこの際見てみたいと思って、それをいただきたいと言ったら、ないと言うんですよ。どういうことなんですか。しかも、そこでいろいろな実験はもうやっていたわけでしょう、予算を使ってこの解体を進めるに当たっての。そういう決定もしている部会じゃないですか。なぜそれを公開してやれないのですか。

 そういう体質が、だから、文化庁というのは何か隠ぺい体質があるんじゃないかというふうに誤解を招くような、見られがちな、やはりそういう役所であるというふうに私は思えてしまうわけですよ。その点についてお答えください。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 本件に関しましての情報公開、説明責任の履行について申しますと、先ほども申しましたように、私ども、正直、反省すべき点があったと思っておりまして、今後、こういった責任の履行については十分改めてまいりたいと思っておりますし、国民の皆様に広く意見を求めることも含めた機会の提供については意を用いてまいりたいという気持ちを持っておることをまずお伝えしておきたいと思います。

 それから、今回の大方針の決定につきましては、恒久対策の検討会で、作業部会から上がったさまざまなデータ、検討資料をもとに、石室の取り出し、解体という方針を決定する前に、一たんその結論を見送って、一月ほど時間をあけたわけでございます。六月二十七日まで、一月期間をあけたわけでございます。

 そして、この間、もちろんマスコミ等でも報道されましたから、国民の関心も高まっていたということが前提で、ホームページで国民の意見を求める機会も提供したこともございまして、私どもは、この期間で広く国民の合意形成に役立つ機会は提供された、十分かどうかという御議論はあろうかと思いますが、そのための工夫はなされたのではないかと考えておるものでございます。

 また、二点目、もともと文化庁には物事を隠す体質があるのではないかという趣旨の御指摘がございました。特に作業部会の審議にかかわってのことであったと思いますが、この作業部会での審議の内容、そこで検討されました事柄、用いられたデータ、整理されたものは、私ども検討会にすべて上げておりまして、作業部会で上がったことを何か隠すとか一部見せないようにするといったことは考えてもおりませんし、実際にも検討会において、作業部会本体ではありませんけれども、作業部会から検討会に資料の提供、課題の整理の作業を提出する際にすべて上がっておりまして、検討会を通じてオープンになっておるのだという認識でございます。

 それならば、作業部会からなぜオープンにしないのかという御指摘かと思いますが、作業部会自身は、専門的な事項について、専門家にも加わっていただきまして必要な調査研究をする。データの整理でありますとか、先ほど実験のこともおっしゃっていただきましたが、そういう技術的なことの論点整理をして、検討会での意思決定、正式な決定に役立つ作業を請け負う、その責務を担うものでございます。ここで物事を決定する場所ではないわけでございます。作業部会での検討やデータを隠すということでは全くなくて、いわば親会議である検討会議に持ち上げて、すべての情報は公開されておるんだということで御理解をいただきたいと思います。

笠委員 ここでもう作業部会の結論というものが、大体この検討会で、この壁画の取り出しありき的な議論が続いてきているわけですよ、この検討会では。やはりデータを持っている本当の専門家は作業部会にいるわけですから、なかなかそれに反論できない。あわせて、検討会のメンバーというのは文化庁関係者、OBの方が多いわけですよ、半分以上そうじゃないですか。

 だから、こういう初めてのことだから、やはりそういう情報をオープンにして、いろいろな有識者がいるでしょう。私は、こうした遺跡をどうやって保存していくのがいいという専門知識はありません。しかし、全国にはたくさんのそういう専門的な知識を持っている人だっているわけですよ。だから、そういう方々の意見もどんどん聞けるようにもっと、これまだ早くても〇七年一月でしょう、今後の作業がスタートするのは。こんなに拙速に決定する必要ないんですよ、たとえ結論が変わらなかったとしても。

 ですから、私は、その進め方というものについて若干の疑念がどうしても生じるし、もうちょっと時間がなくなってきたので、あと二点ばかり確認したいんですけれども、地元の明日香村の方でもこれは大変な問題になっているようで、地元の議会の方で特別委員会をつくられたりとか。

 それで、確認なんですけれども、修復作業を地元でやってほしい、そして、修復した後は、十年ぐらいかかるということですけれども、きちんともとの場所にしっかりと戻してほしいというような声が強いと伺っていますけれども、こうした要請がまた文化庁の方にも来ているということですけれども、これについては、そういう地元の声を大事にしていくということでよろしいわけですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 地元明日香村からの要望については私ども承知をいたしております。修復後の壁画の扱いについてでございますが、恒久保存対策の方針の中では、壁画の修理が完了した後は、カビ等の影響を受けない環境を確保した上で石室を現地に戻すこと、こうされておりますので、この方針に基づきまして、あとは具体的な方法を検討する必要があろうかと思いますが、この原則に従った対応をすることになるわけでございます。

笠委員 二点。それと、この修復後に文化庁の方としては公開をすることを前提にというようなことをどうも方針として示されているようですけれども、こういうことを本当にそんなに安易に約束できるのかどうか。そして、壁画を取り出すときに一〇〇%傷つけないという自信があるのかどうか、そのことをお答えください。

加茂川政府参考人 二点お答えをいたします。

 一点の修復後の公開についてでございますが、現時点では確かなことを申し上げることができません。と申しますのは、修理はこれから始まるわけでございまして、修理状況をまず勘案しなければなりませんことと、先ほど申しましたように、原則は石室をもとに戻すわけでございますから、戻す方法等にもよりまして、その公開ができるのかできないのか、できるとしたらどういうことが可能なのかといったことをこれから検討することになろうからでございます。

 それから、石室を解体する場合の作業の安全性についてのお尋ねもございましたが、これから実施作業工程案を具体に作業部会に依頼をして検討していくことになるわけでございますが、大きく三つの工程がございまして、そのうちの第一番目が石室の解体工程でございます。いろいろな準備をしなければなりませんけれども、一番大きな解体実験を十分に行って、壁画の損傷が起きないように、または最小限のダメージで終わるような十分な準備をしたいと思っております。

 一〇〇%という御質問もあったわけでございますが、こういった準備を十全に行って、国宝、国民の宝であるこの壁画を少しでも十全な状態で守るべき十分な準備をしたいと思っております。

笠委員 時間が来たので、最後、一つだけ御質問して終わりますけれども、本当に文化遺産というのはかけがえのない国民の財産で、また、後世にしっかりと残していかなければなりません。今、今後も作業部会でいろいろなことをやりながら、そして実際の作業に入っていくということですけれども、ぜひ作業部会を含めて、その辺はすべてオープンに公開をしていくように、そして広くまたそういう意見も承りながら進めていくように、その点を約束していただけますか。もうイエスかノーかでいいです。

斉藤委員長 時間が来ておりますので、簡潔に。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 作業部会を含めました公開についてでございますが、特に作業部会につきましては、検討会での議論への影響等も考えながら、できるだけ、例えばいわゆるブリーフィングでございますとか、マスコミを通じた公開方法の工夫について努力をしてまいりたいと思います。

笠委員 一〇〇%の約束ができないんだから、しっかりとそこあたりの情報公開はしていただきたい。文化庁の中だけで、関係者の中だけで議論が進められることだけは絶対にやらないように、そのことを念を押しまして、私の質問を終わらせていただきます。

斉藤委員長 川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 きょうは幾つかの論点についてお話をさせていただきたいと思いますが、メーンは、今大変にホットな話題になりつつあります私的録音録画補償金制度のことについてお伺いをしたいと思っておりまして、きょうは、大変お忙しい中を、参考人として日本音楽著作権協会の理事長であります吉田茂さん、名前がすごいですね、吉田茂さん、それから、電子情報技術産業協会の法務・知的財産権総合委員会委員長小林利治さん、お運びをいただきました。本当にありがとうございます。

 私的録音録画補償金問題といっても、多分、本委員会のメンバーの方は、何じゃそれという方が多かろうと思いますが、しかし、音楽ファンにとっては非常に関心の高いテーマでございますので、きょうは、参考人の方々の御意見並びに文化庁の見解、そしてまた私の意見なども加えさせていただきながら、ちょっと議論をさせていただこうと思います。

 その前に、いきなり話題が飛ぶんですが、国土交通省の方から阿部大臣官房審議官にお運びをいただいておりまして、というのは、大臣、私の地元の、大臣の地元であると言ってもいいと思うんですが、鹿児島市の武岡中学の子供たちが、戦時中に掘られた防空ごう、行政用語では特殊地下ごうというそうですけれども、この特殊地下ごうの中でたき火をして、一酸化炭素中毒によって亡くなるという事件が最近、最近といっても何カ月か前ですが、発生をいたしまして、鹿児島は特に特殊地下ごうがたくさん残っておりまして、さらに全国的にも、今国土交通省が中心となってこの特殊地下ごうの調査というものをやられているようでありますが、子供たちの安全、学校の安全というものを確保していく上でも、これは文科省としても無関心ではいられないことであるというふうな観点から聞かせていただきたいと思います。

 まず、阿部審議官にお尋ねをいたします。

 戦時中に築造された地下ごうを地方公共団体が埋め戻すなどをする場合に適用されるものとして、特殊地下壕対策事業という補助制度がございますが、この補助対象となる地下ごうの築造主体というものがどのようなものかということをお教えいただきたいと思います。

阿部政府参考人 御指摘の特殊地下ごう対策でございますが、戦時中に旧軍あるいは地方団体などが築造しました地下ごうのうち、陥没あるいは落盤などによりまして危険で放置しがたいもの、これを防災上の見地から、地方公共団体が埋め戻しなどの対策を講ずるわけでございますが、それに対して国がその二分の一を補助する制度でございます。

 そして、この築造主体でございますが、とにもかくにも終戦から六十年を経過する今現在でございますので、その築造主体がだれであったかというのはなかなか難しいわけでございますが、基本的にその対象としましては、旧軍、軍需工場あるいは地方公共団体それから地方公共団体の指示を受けた町内会といった方々が築造したものを対象とするというふうになっています。

 これは今申し上げましたように非常に難しいわけでございますが、文献調査あるいは地元の古老からの聞き取り、それから記録、証言あるいは地下ごうの形状、構造等から、総合的に地方公共団体が勘案し、認定したものについて補助対象として採択しておるわけでございます。

川内委員 さらにもう一点、確認をさせていただきたいと思いますが、この特殊地下壕対策事業では、地下ごうの埋め戻し等を行う事業に対し補助するというふうにされております。この埋め戻し等の等の中には、入り口封鎖も含まれているというふうに解釈をしてよろしいでしょうか。

阿部政府参考人 今の、入り口の封鎖も含まれるかということでございますが、概念的には、入り口を封鎖し、内部に立ち入ることができなくすること、これもごうの中に落盤などの危険性がある場合には大変有効でございますので、そういった観点から補助対象にいたしておりますが、零細補助というのはなかなか認められぬものですから、対象事業としては、事業費が二百万円以上ということになっております。

 そうしますと、立て看板をつけるだけだとか、あるいは鉄条網をやるということになりますと、それがなかなか、対象になるかどうかというところが非常に難しいわけでございますが、私ども、これ農林水産省とも一緒にいろいろやっておるわけでございますが、そこら辺、どういった対応ができるかということは、今いろいろ勉強しているところでございます。

 なお、先日の、先生御指摘の痛ましい鹿児島での事故の直後に、私ども、農林水産省あるいは林野庁と共同いたしまして緊急調査を実施いたしました。その結果、全国で五千三カ所の地下ごうがあるわけでございますが、そのうち二千百五十カ所の地下ごうの入り口がまだあいたままになっているということが判明したわけでございまして、これは先ほど御指摘のとおり、鹿児島県あるいは長崎県などに偏在しておりまして、大変地域では人命にかかわる大きな課題であるというふうに認識されておりまして、私どももそういうふうに考えております。

 そういったことで、その事故以降緊急に、私ども、全国都道府県、政令指定都市、こういったところの担当部局長に対しまして、緊急調査を実施してください、あるいは埋め戻しまたは入り口を封鎖するなど、適切な対策を講じるようお願いしたところでございます。

 その結果、先ほど申しました二千百五十カ所のうち約一千四カ所につきましては、土地所有者が何がしかの形で、既に実施しているか、今後やりますというお話をいただいております。それから公共団体が実施するか、あるいはその予定というものが六百八十九カ所というようなことで対応することになっております。

 なお、残る四百五十七カ所の地下ごうというのがまだありまして、またその後、さらに詳細な調査をしましたら、三千カ所ぐらいまた新たに出てまいっているというのが、今暫定の取りまとめ結果でございます。

 そういった状況になっておりますので、今後は市町村ごとに地下ごうの位置図の提出、こういったことをお願いしたいと思っております。そして、土地所有者の御理解をいただき、危険箇所の公表を含め、地方公共団体と協議、検討を行ってまいりたいということで対応してまいりたいと思っておりますが、いずれにしましても、農林水産省、林野庁等々も、今後とも対策の拡充、充実に努めてまいりたいと思っております。

川内委員 中山大臣、今お聞きのとおりでありますが、審議官もおっしゃられたように、鹿児島県は特に特殊地下ごうがまだ多く残っておりまして、子供たちの安心、安全を確保するという上でも、文部科学省としても、この特殊地下ごう対策というものには非常に強い関心を寄せていただき、御配慮をいただきたいというふうに思います。

 事業費は二百万を超えなければならないということで、入り口封鎖等はなかなか、その制度にどうやって乗せていくかが難しいというようなことも今おっしゃられましたが、恐らく平成十八年度予算については工夫をされるものというふうに考えますが、大臣も、国土交通大臣や農林水産大臣それから財務大臣に、閣議後の懇談会のときなどに、特殊地下ごう対策を頼むというようなことを一言おっしゃっていただけると大変ありがたいというふうに思いますが、御所見をいただきたいと思います。

中山国務大臣 本年四月に、鹿児島市で中学生四人が死亡した事故が起こりましたけれども、大変痛ましい事件でありまして、極めて残念でありますが、私も実は身につまされたのは、宮崎にもいっぱいありまして、宮崎は日向灘に米軍が上陸してくるんじゃないかということで、たくさんの防空ごうがありました。私も小さいころ、そこで遊んでおりました。あっちの山、こっちの山に防空ごうが幾つあるか、全部知っていたわけでございまして、そこで遊んではおやじに怒られたのを今さらのように思い出すわけでございまして、まだまだそういったのがたくさん残っているんだなと、そういう意味では、戦後はまだ終わっていないんだなということを本当に感じたわけでございます。

 これはまさに、川内委員に御指摘されるまでもなく、子供の安全ということを考えたら、これはもう本当にイの一番に取り組まなければいけない、こう思っているわけでございまして、今アドバイスもありましたので、閣議後でもいいですし、いろいろな機会を通じまして、国土交通大臣、そして農林大臣等にぜひ十分なる予算措置をお願いしたいということをお願いしてまいりたいと思っております。

川内委員 ありがとうございます。

 それでは、本日の質問の本題であります著作権法三十条一項、二項に関係をいたします私的録音録画補償金制度の議論をさせていただきたいというふうに思います。

 著作権法では原則的に、三十条において、著作物を個人的または家庭内など限られた範囲内で使うことを目的にした複製、コピーを合法としています。しかし、CD、DVDに代表されるデジタルコンテンツについては、コピーを繰り返しても品質がそれほど劣化をしないということなどを理由に、私的複製ではあっても、本来私的複製は三十条一項によって認められているわけですが、ただしコピーを繰り返せるという理由によって、消費者は相当額の補償金を著作権者に支払うということになっております。これは三十条二項、これが私的録音録画補償金制度でございます。

 この私的録音録画補償金制度について、技術がどんどん発達しますね。最近はアイポッドなどという大変すぐれもののプレーヤーが出てきたりしまして、このアイポッドを指定するか否か、これは法律上政令で指定することになっているんですが、指定するか否かについて、大議論を今法制問題小委員会でおやりになられているということであります。

 難しく言うと、ハードディスク内蔵型の携帯型デジタル音楽プレーヤーの普及あるいは音楽配信サービスの開始などによって、この私的録音録画補償金制度というのは大きな転換期を迎えているわけであります。

 現在、先ほど申し上げたように、賛否両論真っ二つで大激論が交わされているわけでありますが、折しもあす、きょうは八月三日ですから、あす八月四日には、東京フォーラムというでっかいところがありますが、だあんと借り切って、アップルが、iTMS、アイチューンズ・ミュージックストア、恐らくですよ、何をするかは正式には聞いていないんですが、iTMS、アイチューンズ・ミュージックストアという、今爆発的にヒットしている音楽配信サービスを日本でも始めるというようなことを記者会見されるのではないかというふうに言われておりまして、このアイチューンズ・ミュージックストアというのはアイポッドじゃないと使えない、聞けないんですけれども。

 きょうはちょうどそういうときに、アイポッドへの録音補償金の課金を主張している著作権の権利者七団体を代表して、日本音楽著作権協会のJASRAC吉田理事長、そして、アイポッド等への課金には反対である、なぜならば、デジタル技術が発達をして、アーティスト、クリエーターと消費者、音楽ファンとの間を直接結ぶ技術があるのだから、その都度個別に直接課金をして、アーティスト、クリエーターと消費者との直接の関係にしていく、それが著作権法が予定しているものなんだというふうに御主張をされる電子情報技術産業協会、JEITAの小林常務に、私の主張が間違っていたら後でそれはちょっと違うとか言ってくださいね、参考人としてお越しいただきました。本当にありがとうございます。

 私は、自分自身がテナーサックスの奏者でありますし、また、音楽ファン、音楽が大好きだ、音楽の利用者、消費者の立場で質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、吉田理事長、あす、アップルのアイチューンズ・ミュージックストアのこれから日本での展開を始めますというようなことが恐らく発表されると思いますが、大変強硬にこのiTMSに反対をされていらっしゃった吉田理事長として、このアイポッドへの課金問題について、まず御所見をいただきたいと思います。

吉田参考人 初めに、アーティストあるいはクリエーターの意見を申し述べる機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 ただ、アイチューンズについて、私ども著作権団体としては、配信事業に反対だということではなくて、既にアップル社との協議を進めておりまして、基本的な合意に至っておるということだけを基本的に申し述べたいと思います。

 現在、主としてデジタル録音録画の用に供する機器あるいは記録媒体といたしまして政令に指定されたものについては、私的録音録画補償金の支払いが録音録画をする人に義務づけられておるわけでありますが、最近、特に今御指摘のアイポッド等ハードディスク内蔵型あるいはフラッシュメモリー内蔵型の機器、記録媒体について、私どもとしては、この政令に早急に追加指定されるべきであるというふうに考えております。

 その理由でありますが、一つは、やはり音楽の私的録音がますます拡大している。特に、ハードディスク内蔵型等の大容量の録音機器が急激に普及しておりまして、私ども、昨年六月に実施した実態調査でも、こうした録音機器の爆発的普及直前であるこの時期ですら、既に、録音機器購入者一人平均、年間に直して四百十曲を私的録音しているという状況がございます。その五一%は補償金が支払われていない機器を用いて録音されている。その後、こうした趨勢は非常にさらに拡大しているということが一つございます。

 もう一つは、法体系の問題でありますが、やはり著作権法三十条一項、これは零細な利用を前提に私的複製を認めたというふうに言われておりますが、それと、複製のうち、音楽録音の補償金支払い義務を定めた二項、そして著作権を制限する特別の場合については非常に厳しい条件を定めたベルヌ条約のパリ改正条約あるいはWIPO諸条約、こういった一連の法体系から導かれる結論を指針として、これを尊重して対応すべきではないかというふうに考えております。

 もう一つ、MD、いわゆるミニディスクは既に指定がされております。これに取ってかわるような大容量のこういったハードディスク内蔵型等の録音機についてが指定されないというのは不公平なのではないか。国際的にも、フランス、ドイツを初めヨーロッパ先進国では補償金が支払われている。

 もう一つは、現在の私的録音録画補償金制度に早急に取ってかわることができる、現実的あるいは具体的な効果的代替システムが現在のところ国内外で提案されていないということもございまして、これら機器について早急に指定されるべきである、それが消費者あるいは機器製造者、権利者の負担のバランスを図る、あるいは文化振興、著作権制度の振興にもつながってくるよりよい方策であるというふうに考えておる次第でございます。

 パソコン等のいわゆる汎用機器、記録媒体については、このハードディスク内蔵型録音機器等の政令指定と切り離しまして、別途協議していくべきものではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

川内委員 ありがとうございます。

 さまざまな論点をお示しいただきまして、後で議論をさせていただきたいと思います。

 続いて、JEITAの小林委員長から御主張を展開していただきたいと思います。

小林参考人 御紹介いただきました小林でございます。よろしくお願いいたします。

 今、お話ございました私的録音録画の補償金制度でございますけれども、この制度は一九九三年に制定をされておりますけれども、私どもといたしましては、この制度そのものが現時点ではさまざまな問題を内包するに至っている、このように考えております。

 幾つか申し上げますと、一番目には、まず消費者の方々、機器を買われた皆様方がこの著作権料、先ほど申し上げましたデジタル著作権料を支払っていらっしゃるわけですけれども、そのことを皆さん認識されていますかと言うと、ほとんどの方が認識されていないのではないでしょうか。こういう問題。

 それから、そういう録音録画機器は、私的録音録画に使わずに、さまざまな使い方があるわけですね。御自分の声を録音したり、あるいは英会話の練習に使ったり、あるいは、作曲家が自分のメロディーを録音してそれを修正したりあるいは編曲したり、さまざまな形で用いられるわけでございまして、これは必ずしも私的録音録画の世界ではないわけでございます。この人たちも、この機器に乗っかっている補償金というものを機器代金の何%かという形で支払わされているわけであります。その人たちは、もちろんその部分についての還付請求ができるわけで、戻せということはできるわけでございますけれども、その制度はなかなか煩雑のようでございましてほとんど機能していない、こういう状況だと認識しております。

 それから、先ほど来お話がございましたように、アイポッドのようにさまざまなネットから配信されてくる音楽あるいは画像もあるんでしょうか、それを有料で自分のマシンにダウンロードして楽しむ、こういう人たちもふえているわけでございますけれども、そういう人たちにとってみますと、これは少なくとも、理屈はいろいろあるのかもしれませんが、その人にとってみれば二重払いの感は免れないわけであります。すなわち、機器を買うときにお金を払い、そして一曲ダウンロードするたびに、はい百円、はい二百円、はい三百円と、こういくわけですから、そういう支払いの重複感があるのではないかというのが三つ目。

 それから、クリエーターあるいはアーティストへの権利料の支払いのところが、これも恐らくきちんとしたシステムはあるんだろうと思いますけれども、我々から見ると、あるいはユーザーから見ると、その辺がどのように支払われているのかというのはいまいちわかりにくい、不透明ではないか、このような問題点があるというふうに私どもは認識しております。

 九三年に制定されたと申し上げましたけれども、この九三年の状況と十二年たちました二〇〇五年の状況、大分世の中は変わっているのではないかということをまず申し上げたいと思います。

 今申し上げましたように、機器一台につき何%払いなさいというこのスタイルは、当時は、一回一回の録音録画に際して一回幾ら、やったんだから幾ら払いなさいということを、技術的にチャージをする仕組みができなかったんですね。ということもあって、仕方なしに、機器一台につき、レコーダー一台につき一%払いなさい、二%払いなさい、こういうことにしたわけでございますけれども、現状では、先ほど来お話に出ておりますように、もうインターネットから一曲百円、二百円という形でネット配信を受けられるわけでございます。あるいは、携帯音楽プレーヤーに十曲なら十曲、二十曲なら二十曲しかダウンロードできないよ、それ以上するならお金を払いなさいみたいなことが技術的にできる、すなわち、個別に、都度、契約ベースで支払いができるということが技術的に可能になっているわけでございます。

 したがいまして、それができなかった九三年当時とはまるで状況が違っているという中で、先ほどのような問題があるわけです。すなわち、二重払いの問題とか、あるいは、私は私的録音録画はしないのにもかかわらず払わされているというようなことを続けるというのはいかがなものかということでございまして、その制度を、世の中が変わり、技術が変わった中で改めて見直していくべきではないか、こういうふうに考える次第でございます。

 携帯音楽プレーヤー、アイポッドのお話が出ましたけれども、こういう形で対象製品を広げていく、先ほど政令というお話が出ましたけれども、その政令指定商品を広げていくということになりますと、これはアイポッドのみならずさまざまな機械がもうさまざまな形で情報を蓄積できるわけですね。パソコンもできます、携帯電話もできます、あるいはデータ記録用のCDもできます。いろいろな汎用機器にまでその補償金の対象範囲を広げるということになるわけでございまして、このような方向は私どもとしてはどうも納得いかないといいますか、合理的な理由を見つけにくいということを感じているわけでございます。

 したがいまして、この制度は、今申し上げた理由で凍結すべきではないか。そして、二〇一一年の放送がすべてデジタル化されるときを目指して、新しい制度をつくっていくという抜本的な見直しをすべきではないかというふうに考えているわけであります。

 理由はもう既に幾つか申し上げましたけれども、技術的にこのようなことが可能になったということで、消費者の二重負担の問題を避けられる、あるいは使っていない人からお金を取るということも避けられる、こういうことでございますので、それをぜひ実現をしていきたい。逆に、そういう問題点を増幅する、拡大する方向で対象機器を広げていくというのは方向として違うのではないか、こういうことでございます。

 先ほど外国の状況のお話がございました。確かにヨーロッパの一部の国では、携帯音楽プレーヤーに補償金をかけるという例も見られるやに聞いております。一方、アメリカでは、コンテンツ産業の意向もありまして、補償金ではなくて技術的手段と、それから課金システムを活用して新しいビジネスモデルをつくる、そしてクリエーターにきちんと利益を配分するというシステムができ上がっているというふうに聞いておりますし、また、カナダでは、詳細は分析しておりませんけれども、先月、携帯音楽プレーヤーへの補償金の支払いというのは違法である、こういう最高裁の判決が出ているやに聞いております。補償金の制度のある国は、世界の状況を見ましても、ベルヌ条約加盟国百五十九カ国のうち二十二カ国に過ぎないという状況のようでございます。

 という中で、我が国はどういう方向を目指すべきかということでございますけれども、やはり繰り返しになりますけれども、技術的手段を活用したコンテンツビジネスというものの新しいビジネスモデルといいましょうかそういうものをきっちりつくって、クリエーターあるいはコンテンツ産業は、きっちりとした形で、丸まっただんごの形で補償金を受け取るよりも、きっちりとした透明感ある形でチャージをしたお金を受け取ってもらうという方が、より利益も大きいし、またわかりやすいのではないか。また、消費者にとってもその方がとても理解がしやすいのではないか。そして、消費者にとってみれば、そういうビジネスモデルができれば、競争原理が働くわけでございますから、当然よりよいサービス、よりよいコンテンツをより安くもらえる、こういうことになるわけでございますが、ぜひそういう方向に持っていけないものか、こういうふうに考えているわけでございます。

 そしてまた、技術的手段が活用されるということで、いろいろなところで問題になっております海賊版の問題とかあるいは違法なファイル交換の問題とか、そういったものの抑止にもつながっていくのではないかと考えている次第でございます。

 クリエーターにきちんと報いていくというためには、やはり今の問題含みの補償金制度というものに拘泥し、あるいは固執をしてその対象範囲を広げていくというよりも、申し上げたような形で新しいビジネスモデルを確立していくという方向で検討をしていただくことが重要ではないかというふうに考えている次第でございます。

 というわけで、大所高所を見据えた観点からぜひ検討していただければと思う次第でございます。以上でございます。

川内委員 ありがとうございます。

 JASRACの吉田さん、それからJEITAの小林さん、両者のお話を伺わせていただきましたが、そもそもこの私的録音録画補償金制度が導入をされて、そこからさらにデジタル技術が進化をし、この制度自体が非常に制度疲労を起こしている、これは両者にとって制度疲労を起こしているということが言えるのではないかというふうに思うんですね。

 それをどう解決していくのかということについて、著作権法三十条一項が予定をしている私的複製あるいは私的利用というものの言葉の定義、あるいは範囲というものについて、しっかりとしたまず議論が行われなければならないのではないかというふうに思うんです。

 その前に、しっかりした言葉の定義をしなければいかぬということを申し上げた上で、まず文化庁に確認したいんですけれども、先月二十八日の法制問題小委員会終了後、権利者七団体の共同記者会見というものが行われて、そこで吉田理事長が、アイポッド等を補償金の対象としないのはベルヌ条約違反であるという趣旨の発言をされていらっしゃいます。

 私は、この言葉遣いは間違っていると思います。これは、きちんとした法的手続でアイポッド等に課金をしない、あるいは課金をすると決めること、あるいは、きちんとした手続にのっとってこの私的録音補償金制度自体を凍結しましょう、あるいは廃止しましょうとすること、今、四つの選択肢を私は示しましたが、いずれもベルヌ条約に違反することはないというふうに思いますが、文化庁の見解をお示しください。

加茂川政府参考人 ベルヌ条約といわゆる私的複製についてのお尋ねでございます。

 御指摘のベルヌ条約は、私的録音録画の問題に対しまして、各国に明示的に一定の制度をとることは義務づけてはおりません。委員の御指摘のとおりでございまして、複製権を認める権能、こういうのが公定訳でございますが、権能につきましては、各国の立法に留保されているわけでございます。複製権を立法により制限できるのは、要件が二つございまして、一つは、当該著作物の通常の利用を妨げない場合、さらに第二点目としまして、著作者の正当な利益を不当に害さない場合、この二つの要件をともに満たす場合に限られているとされておるところでございます。

 なお、現在とられております私どもの補償金制度でございますが、この正当な利益を不当に害する場合については、補償金の支払いによって権利侵害が回復される場合と考えられまして、この場合には権利制限も認め得るという制度の運用がなされておるわけでございます。

 この制度の背景でございますが、委員御指摘の点とダブるかもしれませんが、この制度は、制定されました昭和四十五年当時におきましては、私的録音録画について補償金を設けずに複製権を制限してもベルヌ条約違反にはならなかったわけでございますが、いわゆるデジタル方式の録音録画機器の普及に伴いまして、市販のレコード、CDあるいはビデオソフトなどの販売に影響が生じるなど、権利者の経済的な利益が脅かされており、著作者の正当な利益を不当に害する状況に至っているのではないかという認識のもとにこの制度の議論が始まり、平成四年の改正によって、いわゆる補償金制度が導入されたわけでございます。

 したがいまして、現時点での判断になるわけでございますが、御指摘のいわゆるアイポッド等のハードディスク内蔵型録音機器等を私的録音録画補償制度の対象にすべきかどうかという議論につきましては、仮に、仮にでございますが、指定がなされないという条件下で、我が国の私的録音録画補償金制度が十分に機能しなくなってしまう、かつ、さらに、これは万一かも知れませんが、他の一切の補償的な機能が全く講じられない、現在の補償金制度のみならずそれ以外の補償も全く講じられないという場合であって、著作者の正当な利益を不当に害する状況が生じた、こういう場合であれば、ベルヌ条約違反のおそれがあるのではないかと考えるわけでございます。

川内委員 今の議論はめちゃめちゃですね。

 次長、ベルヌ条約の九条は、私的録音録画補償金制度を予定していないでしょう。それは冒頭おっしゃられたじゃないですか。ベルヌ条約が想定しているのは、私的利用については権利の制限をしてもいいですよということだけが書いてあるわけでしょう。私的録音録画補償金制度は国内の制度であって、だから、ベルヌ条約加盟国の中でこの制度をとっている国は百七十何カ国のうちちょっとしかないわけじゃないですか。私が聞いたのは、どういう結論になろうがベルヌ条約とは関係ないでしょうということを聞いているんですよ。アイポッドに課金しようがしまいが、あるいは補償金制度自体をなくしたっていいんですよ。それはEUのディレクティブにも書いてあるじゃないですか。ベルヌ条約とは何ら関係ないですよ。

 ベルヌ条約と関係ないということを言わなきゃだめでしょう。だからみんなわからなくてぐうっと寝ちゃうんですよ、長々しゃべるから。もう一回答えてくださいよ。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 ベルヌ条約上は、各国の制度について一様に義務を求めてはおりません。複製権を認める権能は各国の立法に留保されている、各国の制度は各国の判断で採用することができるわけでございます。

 我が国は、現在のいわゆる私的録音録画補償金制度を一つの判断として採用しているということでございまして、ベルヌ条約から必然的にこの補償制度は出るものではないというのは御指摘のとおりでございます。

 とおりでございますが、全く無関係かと申しますと、先ほども申しましたように、ベルヌ条約上は、著作権者の利益を不当に害さない、二つの要件のうちの二つでございますが、これが求められるわけでございまして、補償金制度が機能しない、もしくは別の、これからどんな制度ができるのかわかりませんけれども、権利者の保護のためのシステムが一切とられない場合には、ベルヌ条約違反の状態も生じるおそれがあるということを申し上げたにすぎないのでございます。

川内委員 私が聞いたのは、アイポッド等を補償金の対象としないのはベルヌ条約違反であるという、JASRACさんを初めとする権利者七団体の記者会見での発言は間違っていますねということを聞いているんですよ。

 いいですか、もう一回言いますよ。アイポッド等を補償金の対象としないのはベルヌ条約違反であるとおっしゃっていらっしゃるのは、この言葉遣いは正しくない、間違いと言いたくなければ正しくないでいいですよ、正しくないですねということを言っているんです。それは否定できないでしょう。違いますか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 委員が御指摘なさいました会見での発言ぶり、前後の流れ等、詳細に把握をしておりませんので、そのことについてのコメントは差し控えたいと思いますが、ベルヌ条約との関係で申しますと、ベルヌ条約上、締結国が求められる制度については、画一的なものはない、各締結国ごとに判断ができるのだということを繰り返し答弁させていただきたいと思います。

川内委員 ベルヌ条約と私的録音録画補償金制度とは、それは関連はありますよ、ベルヌ条約という条約に基づいて日本の著作権法がつくられているわけだから、それは関係はあるが、私的録音録画補償金制度は日本の国内的な措置であって、ベルヌ条約にのっとったとか、あるいは基づくとか、そういう制度ではないということを私は確認しているだけですよ。どうですか、次長。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 繰り返しの答弁で恐縮でございますが、ベルヌ条約上の締結国の義務については、画一的なものはないわけでございますから、締結国の中にも、いわゆる補償金制度をとっているものととっていないものの違いがあるわけでございます。

川内委員 それでは、ベルヌ条約九条は、私的複製について何か触れていますか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 ベルヌ条約九条、複製権の条項でございますが、これにつきましては、まず第一項で、著作物の複製については、著作権者で保護されるものが、許諾をする排他的権利を享有するという原則をうたった上で、第二項につきまして、特別の場合について著作物の複製を認める権能は、同盟国の立法に留保される、先ほど申したとおりでございます。ただし書きとして、特別に複製が認められることの条件について、その後記述をしておるものでございます。

川内委員 いや、私が聞いたのは、私的複製についてベルヌ条約九条に何か書いてありますかと聞いているんです。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 ベルヌ条約九条二項は、著作物の複製に認める権能について規定をされておるわけでございます。

川内委員 だから、私的複製については特に記述はないわけですよ。私的録音録画補償金制度というのは、まさに私的な録音、私的な録画、私的複製について、私的利用についての制度であるわけで、ベルヌ条約と直接関連するものではないということなんじゃないかなと。何でこれを認めないのかがよくわからないんですけれどもね。

 まあ、時間もありますので次に行きます。

 とにかく、吉田理事長、これから何か大々的に国民向けにアイポッド等への課金を広報するというふうにおっしゃっていらっしゃるわけですから、アイポッド等を補償金の対象としないのはベルヌ条約違反である、国際条約に違反するみたいなことを平気でおっしゃられるのは去年の還流防止措置と全く同じようなことだと思いますので、それは議論はフェアにやりたいというふうに思いますので、そういう言い方は、ちょっと間違っていたとは言えぬでしょうから、改めるとか考え直すとか、そのぐらいちょっと言ってくださいよ。

吉田参考人 今お話がございましたので、記者会見のときの私のメモを取り出して見ているわけですが、我が国として、今のままでいって何らの措置もとられないということであれば国際条約違反とのそしりを免れずということを申し上げていることは事実でございます。全く何らの措置がとられないということは、それは違反という言い方ではなくて、そしりを免れずという言い方を申し上げております。

 これは、何にもなかった場合に、おっしゃるように、私もベルヌ条約から必然的にこの私的補償金制度が出てくるという意味では申し上げているわけじゃなくて、補償のためのいろんな方法がある、その中の、何もなくなったらやはりそしりは免れないのではないか、こういう趣旨で申し上げているので、何が何でも違反だということではないので、そういう考えでこれからもまいりたいと思います。

川内委員 いや、理事長、プレスに配られたこの七団体の資料の中には「必要な政令指定を行わないのは、我が国著作権制度の危機であり、明確なるベルヌ条約、WIPO著作権条約違反」こうはっきり書いてあるわけです。

 私は、JASRACさんやら七団体はお金持ちだから広報予算もたくさんあるので、こういう間違った情報を国民の皆さんに流すのはいかがなものかというふうに思いますよ。アイポッド等に課金されようがされまいが、それはベルヌ条約とは関係ない。日本の著作権法上の、三十条二項の問題であって、ベルヌ条約やWIPO著作権条約を持ち出して、何かあたかも日本が著作権後進国であるかのように言うのは、私はちょっと時代おくれな手法であるということを御指摘申し上げたい。日本は、著作権法制については、岡本前々課長や吉川前課長の御尽力によって大変先進的な法整備をされてきているわけです。世界に比べても、こんなに権利者というか権利者団体に配慮した法制度はないと思うぐらいにしっかりつくられてきているわけですから、余りこういう人をごまかすようなことをして、さらにそれを広報するというのはいかがなものかということを申し上げておきたいというふうに思います。

 さらに、もう一つ吉田理事長にお伺いをしたいと思います。

 補償金を求めるというからには、アイポッド等による経済的利益の損失というものが証明されなければならないと思いますけれども、このアイポッド等によってもう既に経済的な損失が発生しているんだとお考えなのか。さらには、その経済的損失がいかばかりのものなのかということについて、御所見を承りたいというふうに思います。

吉田参考人 先ほど申し上げました実態調査は、昨年の六月に私ども関係団体共同でやったわけでございますが、その後、アイポッドミニが発売されまして、これが非常に普及拡大しているというのが現在の状況でございます。したがいまして、未指定機器による録音の実態が、先ほど申し上げました五一%からさらに拡大しているということが一方にあると思います。

 それからもう一つは、今の法律制度が立ち上がった平成三年の第十小委員会の報告書を見ますと、やはり私的録音というのは全体として著作者等の利益を害している状態に至っていると言うことができるということで、既に平成三年あたりでもこういう認識をしているわけでございます。

 ただ、現在の段階でアイポッド等の新しい技術的な製品によってどのくらいの損害が行われているかということは、これはあくまで推計でございます。

 いろいろな形で仮置きの数字をあれしながら、二〇〇五年全体の出荷額も推計をいたしながら数字を出したわけでございますが、少なくとも年間約百四十一億円というのが、これは前提がございまして、コピーがされるとそのたびに今の録音使用料だけをいただくという前提ですと、年間百四十一億円という形でございます。ただ、これを私的複製補償金のベースに直しますと、私どもだけで約二億五千万円強という形になると思います。ですから、その間には物すごく、複製の金額と補償金の金額には差があるというのが実態でございます。

 ただ、各家庭に調査に行くとか、そういうことはこの問題の性格上非常に難しいものですから、あくまでも推定、こういう数字でございます。

川内委員 推定、推定と、余りよく明確に根拠もわからないわけでございますけれども。

 結局、ちょっと時間もないので途中を省略して申し上げますが、文部科学省が「著作権法に関する今後の検討課題」というもののペーパーを出しておりまして、「1 著作権法に関する今後の検討課題」、基本問題、法制問題小委員会において検討、(1)私的録音録画補償金の見直し、(2)権利制限の見直し、(3)私的使用目的の複製の見直し、(1)(2)(3)ということで、今(1)を法制問題小委員会でやっているわけですが、この私的複製とは何ぞや、私的使用目的の複製とは何なんだということをまずしっかり議論しなければ、結局、今回法制問題小委員会で議論されているものがいつまでたっても結論が出せないんだ。

 いわゆるデジタル時代においては、著作権管理のあり方がどうあるべきなのか。使用される回数ごとに課金をされて、使用されたアーティストにその分が配分される、そのような新しいビジネスモデルをつくるべきだという意見も出ておりますし、法制問題小委員会の議論が、まずはこのアイポッド等に課金するかどうかを、私的複製というものがどういうものなのかということが全く定義づけがない、議論されていない中で、アイポッドをどうするかという現象面だけを議論しているというのが今の状況で、私は順番が逆だというふうに思います。

 三十条一項では、あくまでも複製権の権利制限として、私的使用、私的複製というものは認められているわけで、ではその範囲はどこまでなのかということをしっかりと見きわめた上で、ではどういう私的録音録画補償金制度のあり方、あるいはDRM、デジタル・ライト・マネジメントという制度に移行していくのかというような議論をしていかなければ、今回のこの議論というのは全く不毛な議論になるというふうに思うんですね。

 そこで、JEITAの小林委員長に、今の私の意見、まずデジタル時代にふさわしい私的複製のあり方を議論した後に制度全体について検討すべきである、その間は、とりあえず私的録音録画補償金制度については凍結をすべきだというふうに私は思うんですね。この意見について小林委員長の御所見を、ちょっと済みません、手短にお願いします。

小林参考人 うまく理解ができたかどうかわかりませんけれども、私は、先ほど申し上げましたとおり、アイポッドのようなものに対する補償料の支払いというようなものは、データを蓄積する、記録することができる、ストレージできるような機器に関して全般的にすべての補償金システムを広げていくことにつながるわけでありまして、そうなりますと、これは今の私的録音録画の補償金制度そのものを原点に立ち戻って見直す話につながる。しかも、先ほど来申し上げておりますように、個別に都度、契約ベースでできるにもかかわらず、そういう形で逆を向いて走り出すということにつながりますので、それは非常に現実的ではないのではないかというふうにまず思っております。

 したがいまして、何とか個別、都度、契約ベースという形へ持っていくということを主張申し上げているわけでございますけれども、その前提として、今御指摘がありましたように、そもそも私的録音録画とは何かということを改めてきっちり定義をし直すということは、もう当然だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 例えばアイポッドにつきましても、私のイメージでは、MDなんかと違いまして、MDというのは、例えばあるものを複製して、その複製物を拡散させるという機能がそもそも製品としてあるわけでありますけれども、アイポッドのような製品というのは、多分、そういうコンセプトでできているのではないのではないかという気がするんですね。ここで聞くのをやめてあっちで聞こう、電車で聞くのをやめてふろ場で聞こうとか、ふろ場で聞くのをやめて寝床で聞こうとか、聞く場所をシフトさせるための機器であるというふうに理解をしておりますので、いわゆる複製機器とはまた違うのではないか。

 そういう中で、今おっしゃった私的録音録画とはそもそも何なんだというところを、アイポッドのような新しいコンセプトの製品が出てきている、これからも出てくるわけですけれども、そういうものを前提に改めて議論していただくというのは大賛成でございます。

川内委員 ありがとうございます。

 それでは、最後に文化庁に確認をしたいんですが、七月二十八日の法制問題小委員会で、新しい甲野著作権課長が、この制度は行政機関である内閣が粛々と決めるべきものと思うと発言をされて、法制問題小委員会の議論がどうなろうと行政が決めるんだというふうにもとれるわけでありますが、文化庁は、法制問題小委員会に、アイポッド等について政令での指定をするかしないかということを諮問されたのか。

 それとも、これは同じく私の理解では、著作権法に関する今後の検討課題と各資料との関連表というやはり文部科学省が出している資料によれば、指定を求める団体、そして指定をすべきではない、あるいは全体を見直すべきだという反対の団体、両側からの要請を受けて議論をされているものというふうに、要するに中立の立場で議論をされているものと認識をしておりますが、その認識を確認させていただきたいということ。

 さらに、今後のスケジュール、意見募集を九月にやるという話も聞いておりますので、期間をどのくらいとるおつもりなのかということについて。ちょっと最後に全然違うことを一問聞かなければいけないので、一分で答えてください。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 さきの法制問題小委員会での担当課長の説明についてでございますが、あくまでも中立的な立場に立ちながら、現行制度のもとで法律に基づく政令指定の制度を説明する中での言葉でございまして、アイポッドの課金について特定の予断を持っているものではございません。

 それから、現在、法制問題小委員会でこの問題を検討しておりますのは、委員御指摘のように、権利者側からのこういったアイポッド等の録音機器の追加指定について要望があったこと、他方、製造者側からは補償金制度の抜本的な見直しについても要望があった、そういう双方の要望も踏まえながら今中立的な立場で検討が進められているということを、ぜひ御理解いただきたいと思っています。

 さらに、私的録音録画、私的複製の制度についても検討すべきではないかという御指摘もございましたが、この小委員会の論点整理の中では、そのことも含めて検討課題として認識をしていることもつけ加えさせていただきたいと思います。

 最後に、今後の手順についてでございますが、次回の法制問題小委員会を八月の二十五日に予定をしておりまして、ここでは、予定どおりに参りますと、審議の経過について議論をしたいと思っております。これを踏まえて九月には著作権分科会に報告をさせていただいて、その後、一カ月程度、意見募集のためと御理解いただきたいと思いますが、国民の意見を広く求める機会を提供させていただきたいと思っておる次第でございます。

川内委員 ありがとうございます。

 加茂川次長、ちょっと一つだけ指摘をさせていただいておきますが、権利者側からの要望というふうにおっしゃられたんですが、権利者団体からの要望でございますので。これは権利者と権利者団体というのは違う、さらにアーティスト、クリエーターと権利者というのも違う。非常に言葉遣いに注意を払っていただきたい。

 最後に一つ聞かせていただきます。ちょっと手短にやります。

 馳委員からもスクールミーティングのことが先ほど出たんですが、文部科学省主催のスクールミーティングで、本来、スクールミーティングというのは、文部科学省主催で大臣、副大臣、政務官あるいは文部科学省の職員の方が学校現場の意見を聞くという、文部科学省としての広報・広聴活動であるというふうに位置づけられておると思いますが、全国三百八十カ所で行われたスクールミーティングの中で、ただ一カ所だけ、一都市だけ、その御地元の国会議員が出席をされて、真ん中にお座りになっていらっしゃったという事例があったようでございます。

 私は、学校現場は子供たちのものだし、学校の先生方のものだというふうに思います。そこに本来のスクールミーティングの趣旨に沿わない御地元の国会議員の方が中心におられたというのは、問題があるのではないかというふうに思います。

 今後、学校現場で行われる文部科学省主催の行事については、かかることのないようにしていただかなければならないというふうに思うんですけれども、事実経過を含めて、責任者の田中局長に来ていただいておりますので、公務員の政治的中立あるいは教育の政治的中立、今後とも厳格に守っていくんだということを含めて最後に御答弁をいただきたいと思います。

斉藤委員長 田中生涯学習政策局長。

 もう時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

田中政府参考人 スクールミーティングについてのお尋ねでございますけれども、御指摘のように、文部科学省主催事業として行っておりますスクールミーティングへの、政府の一員ではない国会議員の方がオブザーバーとして参加した際に、私どもの配慮が十分でなかったというふうに受けとめておるところでございまして、今後、スクールミーティング等の実施に当たりましては、これは公教育の場において行われるものでございますから、細心の注意が必要であるというふうに考えておるところでございまして、今後、同様の事業等を実施する場合には、適切な実施に努めてまいりたいと考えております。

川内委員 ありがとうございます。

 大臣、済みませんでした。どうも、参考人の方も本当にありがとうございました。感謝申し上げます。ありがとうございます。

斉藤委員長 池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 このごろ文部科学省は多少柔軟的に政策に取り組んでいる傾向があるのではないかと私は心強く、頼もしく思っております。その一つが、十八年度に向けた学級編制を一律ではなくて学校現場の裁量性にゆだねようという、この決断です。

 私は前にも申し上げましたけれども、公明党は、さまざまな方を呼びまして、今、教育の勉強をいたしております。そして、子供たちの声を大切に、子供たちの視点に立ったさまざまな教育改革の提言を行っております。

 子供の視点に立つということは子供を甘やかすということではございません。子供が一番何を望んでいるのか、子供のためにどうしたらいいのか、二十一世紀を担い、国際社会の中に生きていく、たくましくも心優しい子供を育てていくには、教育現場はどうなければならないだろうか、そういうことを考えております中で、私は前にも申し上げましたけれども、もう文部科学省が一律に学級編制を四十人だ、三十人だなどと決めるのは時代おくれではないだろうか。

 なぜならば、地域もですけれども、子供たちはさまざまな事情がございます。三十五人でいい地域もございます。また、二十人でも荒れていて、もっと少なくしてほしい、そういうところもございます。また、同じ学校でも、一年しか違わなくても、大変落ちついた生徒たちが集まっている一学年もあれば、そうではなくて、荒れていて指導がきめ細やかにもっと必要だというような学校もございます。それぞれの子供たちの持っている資質を大きく引き伸ばしていくためには、個別のニーズに合わせることが必要だというふうに考えております。

 市町村が学校を設置しているのですから、市町村の教育委員会が一番事情がわかっております。学校現場とよく相談しながら、その学校にふさわしい学級編制を行うべきだというふうにいつも提言してまいりましたが、このたび大臣はそういうお考えにおなりになったということで、大臣には大臣なりのお考えがあってのその経過だろうと思いますので、ちょっと御意見を伺いたいと思います。

中山国務大臣 お答えいたします。

 学校現場の裁量を拡大することにつきましては、今、中教審の特別部会とか、あるいは教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議等におきまして、今後の教職員配置等のあり方の議論の中で検討しているところでございますが、これらの議論の中で、学校や地域の実情がそれぞれ異なっている、今委員の御指摘のとおりでございまして、そういったことを踏まえまして、学校ごとの課題に対して迅速かつ適切に対応できるように、学級編制についての現場の裁量を拡大すべきという意見が多く出されているところでございます。

 また、今話がありましたけれども、ことしの五月には、池坊議員が座長をしておられます公明党の義務教育費国庫負担制度検討小委員会から、子供たちの声を大切にとして義務教育改革案が公表されました。その中でも、画一的ではなく、学校が主体的に、それぞれの実情に応じた指導方法を選択できるような新たな少人数教育システムについて、次期定数改善計画として速やかに実現する必要があるとの御提言をいただいているところでございます。

 学校現場の裁量拡大につきましては、私は常々現場主義ということを申し上げているわけでございまして、それぞれの地区、地方によりまして実情は区々でございますから、まさに委員御指摘の点というのは非常に重要な観点であると認識しておりまして、今後、この中教審あるいは協力者会議等の検討結果を踏まえまして、この問題については前向きに取り組んでまいりたい、このように考えております。

池坊委員 一律に三十人学級にいたしますのは、財政的にも七千八百億かかりますから、今、四千二百五十億だって、地方に譲ってくれとか言っております中で、これは非現実的な話だと思いますが、財政上のそういう問題ではなくて、新しい時代にふさわしい学級編制だということで、もっと文部科学省は皆様方へ学級編制の意義ということをPR、パブリシティーをぜひ行っていただきたいというふうに思っております。

 それと、今こうやって市町村が、では第八次定数改善に向かって加配をするのか、学級編制を自由に行えるのか、ではお金も自由にもらったらいいんじゃないかと思う人がいるかもしれませんが、ここで大切なことは、きちんと義務教育国庫負担金が維持されて、堅持されているからこそ、こういうことができるんだと思うのですね。地方六団体などによりますと、この四千二百五十億は既に解決済みなんですよなどというとんでもないことをおっしゃる方もございます。

 この際、そうではなくて、担保する土台があればこそ、新しくいろいろなものを組み立てることができるんだということの御決意を、大臣から、財政的な面でのお話をお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 御答弁いたしましたように、現場主義にのっとりまして、クラスの編制をどうするかというようなことについては、それぞれの地区地区の意向を十分に踏まえた形でやっていただきたい、こういうふうに考えておりますけれども、それと義務教育費国庫負担の話は別でございまして、今委員御指摘のように、バックにきちっとした国の担保があるということが、やはり現場が自由に伸び伸びと創意工夫に富んだ学級編制ができるもとになるんだろう、私はこう思うわけでございます。

 この義務教育費国庫負担制度の堅持ということにつきましては、我々も頑張ってまいりたいと思っていますけれども、どうか公明党におかれましても、よろしく御支援のほどお願い申し上げます。

池坊委員 ここにぜひ財務省も総務省の人も呼ぶべきであったというふうに思っております。

 学校耐震について、前回も私この場で申し上げましたけれども、遅々として進んでおりません学校耐震をさらに推し進めていかなければいけない。今度ちょっと制度改革を行う、そういう方針を持つということを伺いました。今までは一つの学校に逐一細やかな計算等がございましたが、今度はそうじゃなくて市町村の裁量にゆだねて、市町村で、三校だけは先にやろうとか、危ないところは十校やってというような制度改革をというふうな話も出ておりまして、私は、それはこれから改築に向けて大変いいことではないかというふうに思っておりますが、その制度改革についてちょっと伺いたいと思います。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、公立学校施設整備費負担金・補助金についてでございますが、これは、御承知のように、三位一体の改革に関する昨年十一月の政府・与党合意に基づいて、本年秋までに結論を出す中央教育審議会の審議結果を踏まえて決定する、こうされているところでございます。

 この政府・与党合意を受けて、現在、中央教育審議会で審議が行われているわけですが、その中におきましても、公立学校施設整備費負担金・補助金につきましては、地方の使い勝手を改善する改革を検討すべきといった指摘もなされておりますし、また、去る三月に有識者会議からの報告書を受けておりますが、ここにおきましても、地方の裁量を拡大するとともに、事務の簡素化などの方策についても検討すべき、こういった提言を受けているところでございます。

 文部科学省といたしましては、このような提言等も踏まえまして、引き続き、国として、公立学校の施設の整備に目的を特定した財政支援を維持しつつ、地方がより使いやすい制度とするため、例えば一部を交付金化するなど、地方の自主性、裁量性を拡大するために必要な制度改革の検討を行ってまいりたい、かように考えているところでございます。

    〔委員長退席、河合委員長代理着席〕

池坊委員 ぜひ、市町村が、それから学校が使い勝手がいいような制度設計をしていただきたいと思います。

 今、小学校、中学校、十三万棟あります中で、言うまでもなく五一・八%しか耐震化は進んでおりません。なぜ進んでいないのかと一覧表を見ましたところ、二分の一、三分の一、国が負担をしてくれたとしても今財政は大変赤字なんだ。だから、とてもやらなければいけない、学校の耐震化が最優先であるということは頭でわかっていても、ほかの方にすぐお金が回ってしまうのだと。二分の一とか三分の一を、もっとその補助率をかさ上げしてくれたら耐震化が進むのに、あるいはひもつきの補助金、これは耐震に使ってくださいというお金があったら私たちもできるんだというような声もよく聞いております。

 例えば、地方によりますと、文科の方は御存じのように、本当に耐震が進んでおりますところと耐震が進んでいないところ、これは本当に首長次第なんですね。教育はお任せください、地方にお任せくださいと言っておきながら、この耐震にすらこんなばらつきがある。これで地方に教育を任せていいのだろうかと私は案じておりますけれども、この耐震化のばらつき、地方の財政がどうなっているのか。

 そして、このばらつきがありますのは、調査して一度きちんとやっていないところは公表するぐらいの気持ちであったらいいと思うんですね。それぐらい、子供を守っていくためにはそういう手だてをしなければならないと思いますけれども、それについてはどうお考えでしょうか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘のとおり、耐震化につきましては、現在、半数程度の建物しか耐震性が確認されていないという状況がございます。また、地域間においても非常に大きい格差がある、まさしく御指摘のとおりでございまして、いまだ十分進められているとは言えないということでございます。

 このため、国としては、これまで財政が極めて厳しい状況の中で、可能な限りということで耐震化関連予算の確保に最優先で取り組んできたところであります。また、先ほど申し上げた去る三月の有識者会議の報告におきましても、「地域間の財政力格差がそのまま学校の安全性の格差につながらないよう、国が必要な財源を安定的に保障し、適切に学校施設の安全性の確保を図っていく必要がある。」こういった旨の提言もいただいているところでございます。

 文部科学省においては、国民の安全確保は国の基本的責務と考えておりまして、引き続き国として、公立学校施設の整備に目的を特定した財政支援を維持いたしまして、耐震化の推進について最大限努力してまいりたい、かように存じます。

池坊委員 遅々として進まない耐震問題について、私は、これで本当に子供たちの安心、安全が守られるのかといらいらいたしております。

 大臣にぜひお願いしたいのは、例えば科研費は二十何兆円伸びております。これは大変喜ばしいことではございますけれども、その百分の一でもいいから義務教育の方に回すことはできないのだろうか。今まで予算というと、文部科学省の予算は少ないです。その少ない中で、それぞれの局が少しでもとりたいとりたいと縄張り争いをする。もうそういうのはやめて、文科として、十八年度はどういうふうな方針でいくか、こういうことをできるのは、やはり大臣それから副大臣、政務官という政治家でいらっしゃると思うんですね。ですから、そういう予算の配分の仕方をやっていただきたい。

 それからまた、耐震というのは、これは国交省からももらってほしいんですよね。耐震、公共工事の唯一最大は、私はやはり子供たちを守る、それからみんなの拠点なんですから、これはやはり縦割りの省庁じゃなくて、横でみんなが連携し合うということが必要なんだと思いますけれども、それに対しての積極的な大臣のお考えをちょっとお伺いしたいと思います。

    〔河合委員長代理退席、委員長着席〕

中山国務大臣 基本方針二〇〇五におきましても、公共施設の耐震化を初めとした防災対策投資の推進が示されているところでございまして、私としても、公立学校施設の耐震化の推進は政府の重要課題であると認識しているわけでございまして、これまでも文部科学省、国の財政が極めて厳しい中にありましても、設置者における耐震化計画が進捗するように、耐震関連予算の確保に最優先で取り組んできているところでございます。

 今御指摘ありましたように、文部科学省は、決して予算のとり合いをしているわけではない、全体として考えているわけでございますが、特に子供の安全、そしていつも言われますように、いざというときの地域住民の避難場所ということにもなるわけでございまして、耐震化につきましては最優先で取り組んでいきたい、こう考えております。

 なお、この公立学校施設整備費につきましても、いわゆる補助金改革の一環として挙げられているわけでございまして、これにつきましては、今御指摘ありましたが、地方によって非常に財政力にばらつきがありますから、この施設整備費につきましても絶対堅持していくということが大事だろう、こう思っておりますので、御理解のほどをよろしくお願い申し上げます。

池坊委員 まずは健やかに子供たちを育てることなくして、すばらしい技術者を生むことも、芸術家も政治家も経済人も生むことはできないのですから、その基礎をしっかりしなければいけないという意識をやはり私たち政治家が積極的に国民にアピールしていくことが必要ではないかと思います。国交省の予算ももらえるように、大臣、御一緒に乗り込んでまいりましょう。

 では、今度はちょっと違うんですが、学校教育における和楽器教育の現状についてお伺いしたいと思います。

 私は、戦後六十年、日本人が、こんなに自国の伝統文化や芸術について理解を示す教育をしてこなかった国はないと思っております。自分が大切だから相手も大切なんです。自国の歴史、すべてのことについて冷静に見る、認識するということが必要ですが、でも、そういう中にあって、なおかつ、やはり日本人、日本の持っているすばらしいところを大切にすることなくして、国際社会の中でどうして尊敬でみんなが見詰めることがあるのだろうかと私は不思議でたまりません。

 今まで六十年、西欧音楽の教育にはすごく熱心であったにもかかわらず、お琴は知らない、三味線なんて見たことないという子供たちがいることを私は大変嘆かわしいと思っております。

 平成十年七月二十九日の教育課程審議会の答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」を受けて、我が国の伝統的な音楽文化のよさに気づき、尊重しようとする態度を育成する観点から、和楽器などを活用した表現や鑑賞を通して、我が国や郷土の伝統音楽を体験できるようにするため、中学校の現行学習指導要領、音楽において、和楽器については、三年間を通じて一種類以上の楽器を用いることということが織り込まれておりますが、これは本当にあいまいな案ですね。三年間のうちに一学期だけ和楽器を一つだけさわったらそれで済むのだろうか、私はそんな教育というのはないんだと思います。

 こういう何かあいまいな記述になっておりますので、平成十四年に全国の公立中学校を対象に実施した、和楽器を用いた器楽指導の実施状況の調査結果によりますと、授業時数がゼロとなっている割合が、一年生で三六・八%、二学年で二三・六%、三年生で四三・六%となっております。現状は今どうなっているかをちょっと伺いたいと思います。

銭谷政府参考人 お話がございましたように、学校教育において我が国の文化と伝統を尊重する態度を育成することは非常に重要でございまして、和楽器を用いた音楽教育についても、我が国の伝統を受け継ぐという観点から、その充実を図る必要があると考えております。

 平成十四年度から、中学校におきまして、三学年を通じて一種類以上の楽器を用いることというふうに学習指導要領が定められ実施をされているわけでございますけれども、実情につきましては、実は直近の調査として、今先生のお話のございました調査しか手元にございませんので、状況としては、先ほどお話がございましたように、必ずしもまだ十分な実施の状況にはなっていないというふうに把握をいたしております。

 基本的に、和楽器を用いた器楽指導にかかる授業時数でございますけれども、大体、年間通してでございますが、一時間から五時間程度の学校が七割ぐらいということで、そういう学校が一番多い状況でございますので、私どもといたしましては、さらにこの指導要領の趣旨に即して、各学校において和楽器を用いた器楽指導が充実するように指導していかなければならないというふうに考えているところでございます。

池坊委員 これは文言でなくて、ぜひやっていただかなければならないと思います。

 確かに、お琴とか三味線というのは、それは一台ずつがお金がかかりますから、一つの学校がそれをすべて購入するのは難しいと思うんですね。だけれども、市町村の学区ごとにそれを購入しておいて、そしてそれを貸し出ししたら、運搬だけだと思うんです。それから、今三味線がある、あるいはお琴があるけれども、うちでは使わないから、寄付を募れば、学校にだったらぜひこのいいものを、私の母の形見だけれども寄進したい、そう思っていらっしゃる方もあると思うんですね。これは工夫なんだと思います。ところが、工夫をする気がないから楽器がないという現状がある。

 それからもう一点は、教えられる先生がいないということなんですね。この教えられる先生がいないということも、NPOの方とか地方で教えていらっしゃる方、たくさんございます。文化庁で伝統文化こども教室をやりましたけれども、そのときにもたくさんの応募があったぐらいです。ですから、やる気があればできるんですけれども、これはやる気がないんだと思いますが、十八年度に向けてどんな工夫、計画をしていらっしゃるかを銭谷局長から伺い、そして大臣から御方針を伺いたいと思います。

銭谷政府参考人 ただいま先生の方から、和楽器教育について、教材それから指導者の問題について御指摘をいただきました。

 現在、私どもといたしましては、学校教育を担う教員がきちんと和楽器について理解を深めて指導できるようにするということがまず大切でございますので、平成十二年度から、我が国の伝統音楽について解説や講演、実技指導を行います伝統音楽研修会というものを毎年開催して、指導力の向上を図っているところでございます。

 また、教員養成の段階でも、中学校、高等学校の音楽の免許状の取得要件として、平成十三年度から伝統音楽に関する内容、すなわち日本の伝統的な歌唱及び和楽器を必修としているところでございます。

 加えまして、平成十七年度からの新規事業といたしまして、文部科学省におきまして、我が国の伝統文化を尊重する教育に関する実践モデル事業を実施しているところでございます。この事業は、我が国の伝統的な文化でございます生け花とか茶道とか日本舞踊とか和装、礼法、それに伝統音楽、あるいは郷土芸能、伝統工芸といったような教育について、教育課程の位置づけ、指導方法、指導内容、教材や、それからお話もございました外部人材の活用、あるいはそういう伝統芸能関係の団体との連携のあり方とか、こういったことについて実践研究を進めていただく事業でございまして、和楽器を活用した我が国の伝統音楽に関しても積極的に取り上げていただいているところでございます。今後、この事業の充実ということを大きな課題として取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。

 それから、楽器の問題でございますけれども、和楽器を含めまして、小中学校における教材の整備に関する経費につきましては、現在、地方交付税により措置されているところでございます。ただ、和楽器につきましてはなかなか整備が進んでいないという状況があるのは事実でございます。

 先ほど、先生の方から、市町村教育委員会において、地域の実情に応じて一括して和楽器を整備して各学校に貸し出すというやり方もあるのではないかといったようなお話がございましたが、最近幾つかの市町村で、市町村教育委員会としてまとめて和楽器を買って、各学校の方で授業時間等の調整を行いながら有効にそれを使用するというやり方をとっているところも出てまいりましたので、私どもこういった積極的な取り組みも紹介をして、楽器の整備を図っていきたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、今後とも、こういった取り組みを通じまして、各学校における我が国の伝統音楽に関する教育の充実に努めていきたいというふうに思っております。

中山国務大臣 私が訪問した小学校でも、中央区の阪本小学校、これは和楽器を用いて見事な演奏をしてくれました。それから、広島県の尾道市の土堂小学校でも、太鼓を、これは本当に歴史のある、ずっと先輩から引き継いでいるんだという太鼓をたたいて見せてくれました。聞きますと、この楽器というのはやはり地区の方々が寄附していただいたという話でございまして、あるいはまた、地元の方が時々学校に来ていろいろと教えているんだということでございまして、そういった方々にとりましては、自分たちが長年なれ親しんだといいますか、またけいこをしてきた、そういう日本の伝統というものを次の世代の子供たちが受け継いでくれる、これは大変うれしいことで、もう本当にみずから出かけていって教えたい、そういうふうな気持ちもあるようでございます。

 今局長も答弁いたしましたが、予算措置も含めて、もっともっとこういう伝統のある日本の和楽器の、さらに普及といいますか、そういったことに努めていかなければいかぬな、このように考えておるところでございます。

池坊委員 寄附をしてもらえば、やはり地域との連携も生まれてくると思います。

 それから、地方交付税というのは私は余り信頼しておりませんで、地方交付税で和楽器を買いましょうなんて言ったって買われたためしがない、ほかのことに使われている。教材費だって教材費として使われない。大臣も御存じのように、今現場ではファクスをする用紙がないので困っている、それが現状なんですね。本当に現場に行っていろいろなことを見ていただきたいと思いますけれども、和楽器はただ演奏するだけではございませんで、それに伴ってさまざまなことを学ぶわけですから、ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。すばらしい私立学校は、今和楽器を一生懸命やっておりまして、お琴の大会で優勝したり、そういうこともいたしておりますので、国公立、やはり私立におくれをとらないように、きめ細やかなこういう指導をしていただきたいと思います。

 最後に、もう数分でございますから、私、大臣がいろいろなところにお出ましになって、タウンミーティングですか、現場を大切にということ、大変うれしく思っております。大切なことは、机上で政策を立てることではございません。その政策を生かしながら、子供たちがどれだけ生き生きと学んでいるかということではないかと思っております。

 現場の学校を見ていただくだけでなくて、教科書を見ていただくとか、あるいは、私、きょうはなぜそれを申し上げますかというと、課題プリントとかございますよね。余りにもびっくりいたしました課題プリントがあったのでちょっとお話ししようと思うのですが、これは中学二年生の国語の課題プリントです。教科書に基づいてやっているプリントでございまして、教科書十二ページから「短歌を味わう」、教科書に基づいて、こういう課題プリントがたくさんあるわけですね。

 その中で「課題1:短歌を作ってみよう(必ず一首は作ること)」ポイントは「(1)テーマを決めよう(ふっと気づいたこと・感動したこと) (2)五・七・五・七・七のリズムにあわせよう。 (3)区切れ・破調・技巧は使わなくてもよい。難しい言葉も使わなくてもよい。」子供たちが苦心して短歌をつくっております。これは子供たちの感性を豊かにするために大変にすばらしいことだと思っているのですが、「課題2」というのが「与謝野晶子の子供の名前」を調べて書きましょう。ばからしいとお思いになりませんか。つまり、与謝野晶子の短歌を何か一首覚えましょうとか、どういうのを感動しましたかで書くならいいですよ。与謝野晶子の子供の名前というのはどうやって調べるんですか。もう子供たちがインターネット、すごく調べておりますが、子供たちの名前を知ることにどれだけの意味があるのか。それの性別も書かなければいけないんです。

 私、それを見ましてびっくりいたしまして、こんなことに時間を費やすというのは本当にむだなことなんじゃないかと思いました。でも、そばにいて、ああ、そうなんだ、政治家与謝野馨さんを引いたらあるいはそこに出ているかもしれないというヒントを子供たちに与えましたら、それを調べましたら、ちゃんと与謝野晶子さんのお子さん、系図が出ておりましたからこの宿題はできたのですが、まるでなぞ解きではないだろうか、こんなことに時間を費やしている勉強というのは一体何なんだろうかと私思ったんですね。

 こういうことに対しても、細やかに、全部を見る必要はありませんよ。でも、見ておりますと、ふっとこれはおかしいとかこれはいいとかいうことがわかってくると思うんですね。ですから、そういうことに対しても、やはり現場と歩調を合わせながら、今子供たちがどういう状況であるか、何を学んでいるのか、そういうことに対しても細やかな心配りをしていただきたいと思います。いかがでございましょうか。

斉藤委員長 中山文部科学大臣。

 時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

中山国務大臣 スクールミーティングを通じまして、本当に子供たちの実態というのもよくわかったわけでございます。

 先ほど、やはりその実施に当たっては十分気をつけなければいかぬということもございますが、これからも私ども現場にできるだけ行きまして、本当に子供の立場に立って、子供の一生にとって大事なこと、これをまず教えるべきだと思いますし、私どもだけじゃなくて、先ほど午前中馳議員が言われましたが、ふだんに行ってもらいたい。ぜひ国会の先生方も、ふらっと母校でも何でもいいですから行っていただいて、ちょっと校舎の外からでもあるいは廊下からでも、どういったことが教えられているんだなということを自分の目で見ていただきたい。やはりそれが一番大事なことではないかなと。先ほど言いましたが、子育ての終わった方々も、ぜひもう一度日本の子供たちの教育ということに関心を持っていただきたいと心からお願いを申し上げる次第でございます。

池坊委員 大臣のお言葉に期待し、終わらせていただきます。ありがとうございました。

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 きょうは、サッカーくじ、スポーツ振興くじの問題で質問をいたします。

 サッカーくじが実施されてことしで七年目を迎えているわけでございますが、本年の五月八日からtotoGOAL3が販売されたようです。まず、この当せん確率及び投票の内容について説明していただきたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 totoGOAL3は、従前のtotoGOALにかわりまして、先生お話のありました五月に販売を開始したものでございますけれども、指定されましたJリーグの三試合の六チームの得点につきまして、零点、一点、二点、三点以上、この四つの区分で得点を予想し投票するものでございます。この当せん確率につきましては、一等が約四千分の一となっているところでございます。

石井(郁)委員 このような新聞があるんですね。これは五月九日の読売ですが、私も見てびっくりいたしました、「カンタン=当たりやすい! totoGOAL3」。今、百五万通りから四千通り。こういう一面、ほかの新聞にも出ていると思いますけれども、ありました。本当にびっくりしたんです。

 サッカーくじについては、これがギャンブルに当たるのかどうかというのが大問題でありました。このとき、この当せん確率という問題について当国会でどんな審議があったかということなのでちょっと御紹介しますが、そのときの答弁者は、法案の提案者ですけれども、「公営競技と比較しまして当せん確率を極めて低く設定してございます。百万分の一程度というふうに我々は想定しているわけでございますが、百万人買っても一人しか当せんしないというふうな確率でございます。」ということを、これは平成九年五月、衆議院の文教委員会で福留議員の答弁です。

 同じ日の当文教委員会で、島村議員ですが、「当せん確率は百六十万分の一と想定しております。こういうことからいいますと、まさに宝くじ並みでありまして、ギャンブル性は極めて低いということです。」と。そして加えて、丁寧に紹介しますが、これは別の委員会で、参議院で平成十年の二月の三日ですが、福留議員の答弁によりますと、「これは十数試合をまとめて予想するわけでございますので、当せん金を手に入れる確率というのは計算上は百六十万分の一ということでございます。」当時は百万分の一とか百六十万分の一ということだから、ギャンブル性というのは極めて低いんだという説明に終始していたわけですよ。この国会審議の経過からいって、四千分の一というのはどこから出てくるんでしょうか。いかがですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 スポーツ振興くじの当せん確率につきましては、その当時から、宝くじの例などを参考にしながら、百万分の一以下といいますかということで、toto、いわゆる十三試合の勝ち、負け、引き分け等を予想するくじということをメーンにしているわけでございます。

 他方、宝くじにおきましても、その後、ジャンボ宝くじに加えまして、いろいろな数字選択式の宝くじが、多様な商品といいますか、くじが出てまいっております。日本スポーツ振興センターが行ったアンケート調査によりますと、スポーツ振興くじの購入頻度が下がった理由として、当たる確率が低いとか、得点予想に自信がなくなったという声が多かったわけでございます。やはり多くの方に親しんでいただけるくじということが大事ではないかということで、中教審の分科会等の検討を踏まえまして、今年度このようなくじを出せるようにしたわけでございます。

 いずれにいたしましても、組み合わせが百万通り以上のくじ、いわゆるtotoですけれども、これが基本でございまして、これに加えまして、より当たりやすい宝くじが追加的に販売できるようにしたものでございます。

石井(郁)委員 私は、一つ一つ反論しなければいけないんですが、ちょっと先のこともありますのでやめますけれども、何か宝くじと同じだからいろいろな商品を出していいんだとか、それから追加的なものなんだとかいう説明というのは、これはとんでもないと思うんですね。だって、四千分の一、当時の国会の審議の中ではどこからも出てこなかった数字ですよ。すると、これはもうサッカーくじの本質にかかわる、そういう問題じゃないですか。そういう当せん確率が今突如として出てくるというのは大問題だと思うんですね。

 では、投票内容についてはどうなんでしょうか。この点でも、当時は、「このスポーツ振興くじは、十数試合のサッカー試合を対象として、その勝ち負けそれから延長以上での決定、この三通りを十数試合すべて予想していただいて、すべて当せんした方を当せんとするという考え方でございます」と、十数試合だったんですよ。ところが今度は、これを見たって、たった三試合でいけますよ、そのどこか一部が当たったらいいんだということになっているんです。そして、「その十数試合の投票用紙の、マークシートになろうかと思いますけれども、投票用紙に予想を記入していただきます。」という答えでしょう。だから、今度は勝ち負けではなくて、得点を選ぶという形にこれはなっているということで、これも国会答弁のまさに想定外のことですよ。全くなかったことです。

 こういう形でいいますと、本当に国会審議、法案審議というのはもうほごにされている、全く無視されているというふうに言わなければいけないと思うんですね。大変重大だと私は思っています。

 さらに、来年からtoto5を発売しようとしているんじゃないですか。では、その当せん確率、内容、いかがですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘がありましたように、現在のスポーツ振興くじには、十三試合の結果を予想するtotoと、ことしの五月にtotoGOALにかえて導入いたしましたtotoGOAL3があるわけでございますけれども、日本スポーツ振興センターにおきましては新しいくじの販売について現在検討しているところで、その中で、今お話がありましたように、toto5という名前が確定したわけではございませんけれども、例えば五試合以上を対象としたtotoについてもその検討の一つとして考えているというふうに聞いているところでございます。

 この投票方法は、指定されたJリーグの五試合以上の試合結果につきまして、勝ち負けその他、その他というのは引き分け等でございますけれども、それを予想し、投票するものでございます。

 もし試合対象数を五試合ということにした場合には、一等の当せん確率は約二百四十三分の一となるわけでございます。

石井(郁)委員 今、二百四十三分の一と言いましたよね。これまた驚くような数字ですよね。二百四十三分の一で当せんが決まるということですね。これは全く本当に想定外の、ここまで来たかというような当せん確率だというふうに思います。

 さらに、この八月からは、イーバンク銀行と提携して、インターネットでのtoto直接販売ということにも踏み切るんじゃありませんか。これはどんな仕組みなのか、ちょっと御説明願います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 日本スポーツ振興センターにおきましては、八月末の販売開始分から、銀行の口座保有者に限りまして、インターネットによるくじの販売を開始するということを決めたわけでございます。全国あまねくくじを購入できるという点での特徴を持っているわけでございますけれども、この前提といたしまして、年齢確認を担保できる、年齢確認を確実に行えるシステムというものが前提になると認識しているところでございます。

 それで、年齢確認につきましては、銀行の口座保有者に限定しまして、インターネットの販売サービスの事前登録を行う方法で考えているところでございますので、いわゆる口座開設時の金融機関本人確認法、このデータを用いて生年月日の確認を行う、さらに、投票申し込みの段階におきまして口座番号でございますとかシステムに接続するためのログインパスワードの入力、さらに、購入の段階におきましては口座決済のための暗証番号、こういった複数の入力が必要となるなど、十九歳未満の購入禁止措置の徹底を図ることにいたしているところでございます。

石井(郁)委員 私は、この点も本当に国会答弁、国会審議を無視しているやり方になっているというふうに言わざるを得ません。

 これも平成十年の二月の参議院の文教・科学委員会での答弁者の答弁でございますけれども、一番問題になっているのは十九歳未満の者がくじを購入するということだ、子供たちをギャンブルに巻き込まないということが当時の論点の中心でありましたから、その規定で禁止したということでありますと。

 ちょっと読み上げますと、こう言っています。

 それだけでなく、スポーツ振興くじの実際の販売においても、さまざまな歯どめといいましょうか、そういったものを考えている、例えば、対面で確認をして販売させるというマニュアルをつくる、あるいは人目の行き届いた場所で販売するということ、あるいはまた試合当日の販売とか試合会場、競技場で直接販売するというようなことを行わないということ、こういう措置をとることによりまして青少年の購入禁止の趣旨が徹底されるように慎重に配慮したいと。

 これだけの幾つかの歯どめを当時考えていたじゃないですか。こうしないとやはり十九歳未満の購入ということを防げないということがあったからだと思うんですね。今あなたは、年齢制限、年齢のことだけ言われましたけれども、この点はどうなっていくんでしょうか。

 さらに、ちょっと加えてこの答弁を御紹介しますと、これは基本的に対面販売せざるを得ないのでございまして、自動販売機でなんかできるものではございません、ここまで言っていました。それから、十九歳未満の担保については、基本的にはこれは当せん金を引きかえるという行為が後に出てくるわけでございます、当せんした場合には、そのときにはきちっと身分証明書を提示しなければならないことになってございますので、ここは私どもある程度は担保できるのではないかと思いますと。つまり、身分証明書を提示するということもあったんですよね。

 では、対面販売の原則あるいは証明書提示というのはどうなったんですか。今後も行うんですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 対面販売につきましては、先生今お話がありましたように、法律に規定されました十九歳未満には購入できないようにするということの一つの方法として、導入といいますか、議論されたわけでございます。それを踏まえまして、例えば販売店の関係者はそのような講習会を受けるとか等々をやっておりまして、現在でもそういうことは続けているところでございます。

 インターネットにつきましては、私どもの、私どもといいますか、totoでの導入ということが最初ではございませんで、近年、いろいろな方面におきまして、インターネットを使いまして、例えば年齢確認その他のことを確実に証明できるような方法が発達してきたということでございますので、その場合には、対面販売というものがなくても十九歳未満の購入禁止ということは守ることができるというふうに考えているところでございます。

石井(郁)委員 私は、それはそうならないと思いますね。

 昨年の九月二日に開かれたスポーツ投票の特別委員会をちょっと見てみますと、このようなやりとりがあったんですね。コンピューターは子供の方が大人より使っている、年齢確認の担保をどうするかは今後の大きな課題になると。だから、やはり子供に使わせていこうという方向がここで出されてきている。

 もう一つは、十九歳未満購入禁止は当分外せないと思う、こう言いつつも、今やインターネットにアクセスするのは子供の方が多い、自分がIDを持っていなくても、親のIDを借りて購入することも考えられるという御意見がありました。

 インターネットでの購入ということになると、対面販売の原則がなくなる、身分証明書の提示もなくなるわけですね。これは極めて緩やかな甘い対応になっていくわけです。親のIDを借りれば十九歳未満でも購入は可能だ、当せん金獲得も可能になってくる、こういうことになるんですよ。これは十九歳未満への販売禁止を困難にする、事実上外していくということになるわけで、私はこれは本当に国会答弁に反する、やはり重大な逸脱だというふうに思うんですね。

 さらに、それだけじゃありません。これは私、産経新聞も見て驚いたんですけれども、七月二十五日にありましたね、「ジリ貧toto 当たらぬ戦術」と。産経新聞の一面ですよ。ここにこう書いてありました。センターはJリーグやカップ戦に加えて、天皇杯での販売やスタジアムでの当日販売を視野に入れて検討中とあったんですよ。どうなんですか。スタジアムでの当日販売などを考えているんですか。

素川政府参考人 お答えを申し上げます。

 スポーツ振興くじはJリーグの試合を対象とするということに制度上されておりまして、基本はリーグ戦の優勝戦、これは年間といいますか、三月に始まりまして十一月までやるものでございますけれども、それに加えまして、ナビスコカップ、これもJ1の優勝チームを決定する闘いでございますけれども、現在これも対象にいたしているところでございます。

 加えまして、先生今新聞の引用がございましたけれども、天皇杯につきましては、日本サッカー協会に加えてJリーグが主催に加わったことによりまして、Jリーグのチーム同士の対戦に限るわけでございますけれども、そういう対戦カードに限りましてスポーツ振興くじの対象とできるようになるわけでございます。

 なお、もう一点お話がございました、新聞に載っていたと言われているスタジアムにおける当日販売、これは中教審のスポーツ・青少年分科会等の提言におきましては、当日販売につきましても、試合当日の午前中でございますとか試合開始の二時間前、そういった一定の条件を付して行うということが提言されているわけでございますけれども、スタジアムと当日販売、これをあわせて行うということは余り現実的ではないのではないかと思っているところでございます。

石井(郁)委員 ですから、このように幾つかの中身について見ていきますと、本当に国会審議は何だったのかということになるんですよ。こんな形であの法案を通したということについては、大方予想もしなかったことだと思うんですね。試合当日の販売とか試合会場、競技場で直接販売をするということは行わない、繰り返し答弁がされていました。

 今本当にそれが踏みにじられようとしているわけで、ましてや天皇杯には高校生も参加するわけでしょう。Jリーグ同士だと今まで言ってきましたけれども、高校生、大学生が参加する争奪戦をいわばかけの対象にしていくという問題で、本当にこう見ていきますと、売らんがための、収益を上げるがための、もう何でもあり、恥も外聞もないというふうに言わなきゃいけない。国会答弁を無視してここまで進めている。サッカーくじの性格上、こういうことはやはりやってはいけないことなんだということだったわけですけれども、それがどんどんと踏みにじられていっている。私は、これは文科省の官僚の暴走以外の何物でもないということを強く指摘したいと思います。

 では、別の角度から問題を聞きますが、サッカーくじの売り上げとサッカーくじによるスポーツ振興の助成金、それはこの間一体どのように推移してきたでしょうか。

素川政府参考人 スポーツ振興くじの売上額、初年度、平成十三年度六百四十三億円であったわけでございますが、十四年度は三百六十一億円、そして十五年度は約百九十九億円、そして昨年度は百五十七億円ということで推移しているわけでございます。

 また、この売り上げ減少に伴いまして助成金の額も、これは翌年度に助成金を出しますので十四年度が最初でございますけれども、十四年度の五十八億円から十五年度は二十四億円、そして平成十六年度は約六億円、そして十七年度はまだ確定しておりませんけれども、二・五億円という形になって、十分な助成を行いがたい状況になっているわけでございます。

石井(郁)委員 驚くような数字ですね。十三年度六百四十三億円、それが昨年は百五十七億円ですから、何分の一ですか。助成金に至っては最初五十八億円が二・五億円ですから、もう何か寒々としたような中身になっているわけですね。

 この売上金、助成金についても法案審議の中ではどのように説明されたんでしょうか。

 これは平成十年の二月の参議院の文教・科学委員会での柳澤議員の御答弁ですけれども、こう言っていましたね。売上金について、平成五年度の調査によりますと二千億円ぐらいというのが出ている、それから平成七年度は千八百億円ぐらいという結果が出ている、この調査結果をもとにしまして、法律に規定された方式に従ってスポーツ振興のための助成金に充てられる金額が幾らかということになると、前者の場合には三百五十億円だ、それから後者でも三百十五億円ぐらいになる、こう言っていたんですよ。

 別の答弁者、これは船田議員でございますけれども、現状のスポーツ予算の倍というか、そのくらいのものを何とか振興くじにより捻出して、そして振り向けることにより頂点を上げること、そして底辺を広げること、その両方に我々としては力を尽くすべきではないかと。

 だから、言うことはいいかもしれませんけれども、三百十億円から三百五十億円助成金を捻出すると言っていた、スポーツ予算の倍を捻出する、それが今二・五億円です。これは余りにも落差というか、かけ離れているというか、ひど過ぎる試算と言わなければならない。この試算自身が極めてずさんだったとしか言いようのないものです。全くの架空の見込みでしかなかったということにもなるんですね。

 しかも、サッカーくじの会計はこの二年間赤字なんですよ。これは初期投資にかかった三百五十億円、これはいろいろ、端末機購入等々がありましたから、三百五十億円のうちの二百二十億円もりそな側への返済が滞っているというふうに聞いています。こういう問題があるということについて、当時、これは工藤政府委員ですけれども、仮に赤字が出た場合に、国庫から税金でわざわざそれを補てんするというのもなかなか考えにくいところでございますという答弁がございました。

 今、こういう返済、赤字があるという実態でどうするおつもりですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生お話しのように、平成十年に民間調査機関に委託して行ったアンケート調査の結果では、御指摘のような一千六百億から二千億を超える推計があったということでございます。その関係で、初期投資額というのが三百五十一億円かかっているわけでございますけれども、毎年度それは償還を行っているわけでございます。

 先生今赤字というお話でございましたけれども、確かに、毎年経費に加えて七十億を償還していくという面におきましては、赤字という表現ということはあるのかもしれませんけれども、毎年七十億ではございませんけれども、三年目以降は、額は少のうございますけれども、少しずつ返済していっているという状況にございます。

 この償還の残額につきましては、今後日本スポーツ振興センターにおきまして、業務経費の節約でございますとか、売り上げ増加の努力によりまして、十八年度以降も含めてでございますけれども、できるだけ速やかにその償還を図っていくことになっているところでございます。

石井(郁)委員 もう時間もありませんので先ですけれども、ところで、この間の国のスポーツ予算というのはどうだったんでしょうか。これもちょっと簡単に数字をお示しください。

素川政府参考人 先生のお話は、スポーツくじが導入される前の十三年度との比較のお話かと思うわけでございます。

 少しデータを御紹介させていただきますと、スポーツ関係予算、これはとり方はいろいろあろうと思いますが、いろいろな局にまたがっているものもありますし、どういう形でとるのが一番正確なのかというのはいろいろあると思いますけれども、一つのとり方でとりますと、平成十三年度が二百七十五億円ということで、これが十七年度は二百十五億円ということに、約六十億円ほど減っておるわけでございます。

 ただ、これは主に地方の事業量等の減に伴います社会体育施設整備費補助の減が十三年から十七年まで八十億ほどあるわけでございますので、さらに加えまして、十七年度の税源移譲額というのも一定額あるわけでございますので、それを除きますと、所要のスポーツ予算ということにつきましては確保してきているということでございます。

石井(郁)委員 しかし、くじの導入によってスポーツ予算がふえるということからしますと、決してふえていないわけですよ。それが現実ですよ。実際です。しかも減りぎみだという問題があると思うんですね。

 ですから、私は、サッカーくじで助成額をふやすというんじゃなくて、やはり国がスポーツ予算をちゃんと確保する。当時は、なぜサッカーくじと、国会が本当にそういう問題になったかというと、余りにもスポーツ予算が少ないんだ、それを何とかして、サッカーくじを導入してスポーツ振興に充てようという話で、ある面では善意も含めてあったかと思うんですけれども、しかし大変議論があったわけですよ。

 ですから、実際は国のスポーツ予算はふやしていないということが問題なんですから、そこはやはり国としてきちんと財源を保障する、スポーツの予算をきちんと保障する、この立場に立つべきだと思いますが、大臣、ぜひ御決意をお示しください。

中山国務大臣 スポーツ振興のために、国あるいは都道府県の予算でスポーツ団体の活動あるいはスポーツ施設整備等に対して助成を行っていくというのも大事なことだと思っていますけれども、これに限らず、スポーツ振興のためのより多様な財源があるということも望ましいと考えております。このような観点から、スポーツの振興に関心のある多くの人々に楽しみながら購入され、その収益によってスポーツ振興のための財源を確保することを目的としておりますこのスポーツ振興くじは非常に大きな意義を有している、このように考えております。

 問題は、売り上げの減少に伴いまして、今御指摘ありましたように助成額も減少しているということでございまして、売り上げ回復が喫緊の課題であると認識しておりまして、くじの種類とかあるいは販売方法等について工夫するなど、さまざまな取り組みを進めておるところでございます。我が国のスポーツ振興のためには、予算の確保とともに、このスポーツ振興くじの売り上げの拡大に努めて、全体としてスポーツ関係予算の充実に努めてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 もうちょっと時間をいただきまして、私は、やはり大臣、今決断をすべきときじゃないのかというふうに思うんですね。

 法施行七年ということで、附則三項で、七年目、「実施状況に照らして、スポーツ振興投票制度の在り方について見直しを行う」、ことし、そういう年になっているんですよ。

 私、今ずっと幾つか例を挙げて申し上げました。この間の実績を見ても、サッカーくじがスポーツ振興の財源確保になっていない、国会審議から逸脱しているし、一層ギャンブル性に拍車をかけるものになっている。つまり、売り上げを上げたい、そういうことだけに走っているわけですよ、結局。一方ではサッカーの人気は非常に高まっていますよね。なぜ売り上げが落ちるんですか。考えなければいけないんじゃないでしょうか。

 そして、続ければ続けるほど国のスポーツ予算は削られ続けていく、スポーツ振興が本筋から離れていく、ますますギャンブル性を増していく、子供たちに悪影響を及ぼしかねないということになりますと、もう一度あの当時の審議に立ち戻って、これは見直しをすべきだというふうに思います。大臣、再度、一言いかがですか。

中山国務大臣 今申し上げましたけれども、スポーツ振興のためには、今後ともスポーツ振興くじにより独自の財源を確保することが重要である、このように認識しております。

 スポーツ振興くじにつきましては、中央教育審議会のスポーツ・青少年分科会等から、くじの種類や販売方法等、さまざまな改善策の提言をいただいておりまして、現在、その実現方策を検討しているところでございます。制度の改善につきましては、まず、現行の枠組みの中でできる限りの取り組みを進め、その成果を見きわめる必要もある、このように考えております。その上で、必要があれば見直し等の措置を講じ、スポーツ振興のための財源を確保していくことが文部科学省の役割である、このように認識をしております。

石井(郁)委員 終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十三分散会


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