衆議院

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第5号 平成19年3月27日(火曜日)

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平成十九年三月二十七日(火曜日)

    午後二時三十分開議

 出席委員

   委員長 桝屋 敬悟君

   理事 鈴木 恒夫君 理事 田野瀬良太郎君

   理事 西村 明宏君 理事 平田 耕一君

   理事 松浪健四郎君 理事 藤村  修君

   理事 笠  浩史君 理事 伊藤  渉君

      阿部 俊子君    秋葉 賢也君

      新井 悦二君    江崎 鐵磨君

      小川 友一君    小渕 優子君

      加藤 紘一君    小島 敏男君

      佐藤  錬君    柴山 昌彦君

      杉田 元司君    鈴木 俊一君

      西本 勝子君    原田 憲治君

      平口  洋君    福田 峰之君

      藤田 幹雄君    藤野真紀子君

      二田 孝治君   山本ともひろ君

      奥村 展三君    田島 一成君

      高井 美穂君    野田 佳彦君

      牧  義夫君    松本 大輔君

      松本 剛明君    横山 北斗君

      西  博義君    石井 郁子君

      佐々木憲昭君    保坂 展人君

    …………………………………

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   文部科学副大臣      遠藤 利明君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山中 伸一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            藤田 明博君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        樋口 修資君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       小野  晃君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官)   青山  伸君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十七日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     藤野真紀子君

  飯島 夕雁君     杉田 元司君

  馳   浩君     新井 悦二君

  石井 郁子君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     馳   浩君

  杉田 元司君     飯島 夕雁君

  藤野真紀子君     原田 憲治君

  佐々木憲昭君     石井 郁子君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 憲治君     井脇ノブ子君

    ―――――――――――――

三月二十六日

 独立行政法人日本原子力研究開発機構法の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人日本原子力研究開発機構法の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

桝屋委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官山中伸一君、文部科学省大臣官房長玉井日出夫君、研究開発局長藤田明博君、スポーツ・青少年局長樋口修資君、文化庁次長高塩至君、厚生労働省労働基準局安全衛生部長小野晃君及び資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官青山伸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

桝屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

桝屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧義夫君。

牧委員 伊吹大臣には、私、一般質疑はたしか初めてであろうと思います。

 昨年は教育基本法でいろいろお世話になりまして、改めて感謝を申し上げたいと思います。

 一般的な質疑でありますから、きょう、特に細かい通告はいたしておりません。大まかに、教育再生について、それから知財立国を目指してということで、大臣の率直な所見をお聞かせいただきたいと思いましたから、細かいことは申しません。決して意地悪な質問もするつもりもございません。昨年、大臣の堂々たる答弁を聞いておりますから。

 下手な大臣であればきちっと通告をするんですけれども、きょうは、そういった意味で、質疑というよりも懇談みたいなつもりでお話ができればなと。ただ、時間に限りがございますから、大臣一流の逆質問はちょっと御遠慮いただきたいと思います。約三時十分までよろしくおつき合いのほどをお願い申し上げたいと思います。

 また、きょうは、再生会議のことも少しお聞かせをいただきたいということで、下村官房副長官にもおいでをいただきました。下村副長官と私は多分、歴史認識はほぼ重なるんだろうと思いますけれども、現状認識が本当に一緒かどうか、その辺のところもお聞かせをいただきたいと思う次第でございます。

 まず一つ、先に下村さんの方からお聞きをしたいんですけれども、昨年十二月八日、教育再生会議規範意識・家族・地域教育再生分科会(第二分科会)、こちらで野依座長から、塾は禁止した方がいいんじゃないか、こういう発言があったように聞いております。塾はできない子が行くためには必要だが、普通以上の子供は禁止にすべきだ、公教育を再生させるかわりに塾を禁止とする、昔できたことがなぜ今できないのか、我々は塾に行かずにやってきた、塾の商業政策に乗っているのではないか、このように強く訴えたというように聞いております。ノーベル賞学者の発言として、私はこれは非常に重い発言だと思いますけれども、これが十二月二十一日の第一次報告原案には盛り込まれなかったわけですね。このときの議論というのも相当盛り上がったかのように報告をされておりますけれども、なぜこれが第一次報告原案に盛り込まれなかったのか、まずその辺のところをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 今御指摘の野依座長の御発言については、その詳細や背景は承知してございませんが、我が国の法制度において、一定の教育事業を禁止するということは、これは極めて難しいことであるというふうに思います。

 その上で、野依座長の御発言は、基本的には、塾に行かなくても済むような、公教育を再生する、そのことがまず必要だ、そういうメッセージではないかというふうに理解をしております。

 教育再生会議の第一次報告におきまして、この公教育再生への第一歩として、ゆとり教育を見直し、学力を向上させることを目指し、その一環として、塾に頼らなくても学力がつくようにすることが提言として盛られたところでございまして、現在の初等中等教育において、すべての子供にしっかりとした基礎学力がつくよう、公教育の再生に早急に取り組むことが喫緊の課題である、そういうふうに認識しているところでございます。

牧委員 まさにそのとおりだと思うんですね。公教育を再生させるということが目的であって、塾を禁止するというのは、一つのアフォリズムというか、レトリックというか、そういう内容だったと思うんです。そこのところを御認識いただいていれば、私はそれで十分だと思うんですけれども、今までのゆとり教育、これを見直さなきゃいけないという問題意識がやはりそこに入っているんだという認識でよろしいわけですね。

 というのは、今、格差社会と言われますけれども、教育の格差というのも大きいわけで、一方で公教育が学力低下をもたらして、一方では塾に行く子だけが勉強ができるようになる。ということは、つまりは、ゆとり教育が教育の格差を生み出したと言っても、私は過言ではないと思うわけで、そこら辺のところをきちっととらえていただいていれば私は問題ないと思うんですけれども。

 極端な言い方をすれば、ゆとり教育というのは文部官僚の陰謀じゃないか、こんなようなことも言う人がいる。これは言い過ぎだと思います。一方で、平均的に学力を低下させておいて、官僚の子供がまた官僚になるためにと。実際に文部官僚の子供が越境通学していたりあるいは私学へ通って、あるいは有名な進学塾へ通ってと、そういう現象を見ればそういう言葉が出てくるのも、私は無理からぬ話だと思います。

 そういった意味で、本当の意味での公教育を再生させる、つまりは、学力をボトムアップさせるんだという認識でよろしいですか。大臣と官房副長官からお聞かせをいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 基本的認識は、ただいま副長官からお話をしたとおりで結構だと思います。

 ゆとり教育は、例えば鳩山邦夫先生もこれを大変推進されたお一人だと思いますけれども、その当時、ゆとり教育という言葉で考えられていたことと、今総合学習の中で行われている実態というのが、私はかなり理想と現実は違ってきているんじゃないかと思います。

 やはり基礎学力をしっかりとして、そして、その上で現実社会にそれをどう応用するかということを学ばせるのが総合学習の時間。だから、総合学習については、御承知のように、点数をつけておりません。また、各教師の自由な判断にゆだねられております。それが、残念ながら、当初、鳩山邦夫先生たちが考えていたとおりに運用されていないというところに、私はゆとり教育と言われるものの大きな問題があると思うんですね。

 ですから、基礎学力をもう少しやはりしっかりとつけるということを前提に、総合学習のあり方を見直していくということを、今、学校教育法を改正し、そして、それに応じて学習指導要領を変えながら実現をしていきたい。ですから、基本的な認識は、先生のおっしゃっていることと我々が考えていることはそう違わないと思います。

下村内閣官房副長官 御指名でございますので。

 基本的な認識は伊吹大臣と同じでございますが、教育再生会議におきましても、「「ゆとり教育」を見直し、学力を向上する」、「教育格差を絶対生じさせない」という見出しで、幾つかの提言をいただいております。

 本来のゆとり教育の理念は、間違っていない、正しいことだと我々思っているわけでございますが、学校現場においては、父母の皆さんからすると、ゆとり教育という理念が緩み教育になってしまっているのではないか、そういう危惧を持っておられる方々が多いのではないかと思います。

 私、二十三区に住んでおりますが、例えば今、二十三区で私立中学校に通っている、進学している子供が三八%もいるそうでございまして、これは公立学校が、学力それから規範意識等、公教育がしっかりしていないということで私立中学への進学が高くなっているなという、データ的に推測できるわけでございますが、そういう意味で、公教育がしっかり頑張ることによって、私学にも負けないような、そういう再生が必要ではないかというふうに思います。

牧委員 基本的な認識はそれで全くいいと思います。私もそのように思いますけれども、なぜ、あえて教育再生会議というものをこしらえてこういう議論をするのかということに思いをいたしたときに、やはりそれは、基本的な認識は一緒ですけれども、私はそんな生っちょろいものじゃないなという意識を持っているんですね。野依さんも多分そういう意識があるからこそ、あえて塾禁止だというぐらいの発言をされたんだろうと思います。そこら辺のところを下村副長官はどう受けとめているのかということを私はお聞きをしたいわけです。

 やはり、教育再生という言葉そのものからすれば、本当にドラスチックな改革が私はその言葉から期待されるわけで、教育再生会議と、中教審と、屋上屋を重ねるようなことをして何になるんだと思いましたけれども、私は、野依座長の発言を聞いて、やはりそれだけの覚悟というものがあるんだなと思ったからこそ聞いているのであって、そういった意味で、今の答弁では私は納得できないわけで。

 むしろ、本当に下村さん、塾を禁止だと、下村先生の立場では言いづらいのはよくわかりますけれども、それぐらいのことをおっしゃっていただかないと、私は、せっかくの教育再生会議の意味がないと思います。

 教員免許のお話やら、あるいは地方教育行政のあり方等々、これからまたいろいろ議論になろうかと思いますけれども、そういう、小手先と言ったら語弊があるかもしれないけれども、そういう部分じゃなくて、本来、もっと掘り下げて、本質からきちっと議論するのがこの教育再生会議のあり方であると思うし、だからこそ議論の過程もしっかりと公開をして、国民的な議論に高めるべきだと私は思っておりますけれども、下村さん、どうでしょうか。

下村内閣官房副長官 委員御指摘のとおりの趣旨で、教育再生会議が安倍総理のもとでつくられたものであるというふうに認識しております。

 これは、中央教育審議会が文部科学省の諮問機関としてあるわけでございますが、教育再生会議は必ずしも文部科学省の枠だけにこだわらない、いろいろな分野において教育が本質的な影響をしている部分がある、これを徹底的に議論していこうということで、とりあえず、第一次報告の中では、まず喫緊の、学校現場をどう改革していくかということで、公教育に絞って提言をしていただいておりますが、これから、第二次報告を五月、それから第三次報告を十二月、ほかのあらゆる分野における議論をしていただいて、しっかりと教育そのものをこれから再生、活性化することによって、この国を再生するという思いで、これからいろいろな分野においても提言をしていただくことになっておりますので、そういう危機感のもとでまた御期待にこたえていただくような議論をぜひ教育再生会議でしていただきたいというふうに思っております。

牧委員 わかったようなわからないような気がいたしますけれども。

 もう一度聞きますけれども、再生というのは、再生という言葉は、辞書を調べれば、死にかかったものが生き返ることというふうになっているんですね、意味合いとしては。では、ちょっと大臣に御認識をお伺いしたいんですけれども、教育のどこが今死にかかっているんでしょうか。

伊吹国務大臣 やはり率直に言って、特に公教育は、自分の保護している児童生徒を安心して預けられるのかということを御父兄の方みんな考えているんだと思います。だから、私学へ行ったり、あるいは塾へ通ったりしているわけで、これは本来の姿としては、やはり、公立学校に通っていれば一応最低限の基礎学力と規範意識を身につける、そして子供をそこへ預けていれば、現場が荒れているとかいじめがあるとかということが、それはどこにでもそういうことはあるでしょうけれども、まあまあ何とか安心だなと思っていただける状態になっているかどうかということなんだと思いますね。

 それがそうなっていないという認識が多くの方々にあるから、教育の再生、教育の改革という議論になってきているわけで、そのことは、学校現場の今の現状を改めるのは、安倍内閣として、私は四、五年の間には必ずやり遂げたいと思います。

 しかし、そこで教育を受けた人が父母になって、そして子供を産んで、そして子供をしつけて、そのしつけられた子供がまた父母になってその子供をしつけてという繰り返しをして、本当にいい日本人が出てくるというのは、私はやはり五十年仕事だと思うんですね。しかし、そのときは我々はもう、安倍さんも含めてこの世にいないと思いますけれども、あのとき安倍内閣というものがあって、ああいうことをやってくれたから、日本のイノベーション、そして日本人の勤勉意識、日本人の品性というものは維持できて、世界から侮られない国であるんだと言われるようにする、これが教育の再生の私の願いであるし、私の義務だと思ってやっています。

牧委員 今の大臣の御発言は一面においては正しいと私は思います。ただ、果たして物事の全体をとらえているのかなと。

 今大臣のお立場で、今の公教育の現場がこうだという認識については、私は正しいと思います。ただ、現状、今の教育が死にかかっている状況というのは決して容易ならざるものがあって、それは公教育の学校現場だけじゃなくて、私が例えば地元でいろいろ見聞きした事柄から判断をするに、むしろ、家庭の方が死んでいるんじゃないか、死にかかっているんじゃないかと。

 例えば、民生委員の方やらそれに準ずるボランティアで、家庭を巡回して世話をされている方からお話を聞くと、もうこの現状を見てもらったら国会でやっている議論なんてあほらしくなるよと。その家庭の現状は、もう足の踏み場もないような。それで、小学校の低学年の子供が乳幼児の面倒を見ている。お母さんどこ行ったのと言うと、パチンコ行っているというような家庭が幾つもあると言うんですね。自分たちだけじゃ面倒見切れないと。

 こういう現状を見たときに、果たして、お子さんを安心して預けられる学校がどうのこうのとかという次元じゃなくて、これは文科省だけで対応できる話じゃないと思いますけれども、本当に国民的な、国全体としての取り組みが私は必要だと思っておりますし、その意味で中教審とは別に教育再生会議というのがあると思うんですけれども、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 それはもう先生がおっしゃるとおりだと思います。

 私は文部科学大臣としての立場がございますから先ほどのような御答弁は申し上げましたけれども、これは豊かな国には常に起こってくる現象で、小さな子供が乳幼児を見ながらお母さんがパチンコに行っているということも、先生、それはあると思いますよ。

 しかし、そうじゃなくても、産業構造が変わって工業化が進んで、これだけ人口の都市集中が起こって、そして共働きということが起こると、家庭は実質的にありませんよ。四時、三時に学校が終わって子供が家へ帰ってきたときは、お母さんもいなければ、少子化で兄弟もいないんですよ。お父さんは従来どおり勤めに出ている。そして、それが地域社会の崩壊をもたらしているわけですね。

 ですから、この前お願いした改正教育基本法には、教育の原点はまず家庭であるということが書いてあるわけですね。そして、家庭と地域と学校とが一体となって、しつけと教育とをやっていくというのは、それはもう先生がおっしゃっているとおりなんです。

 ですから私は、むしろ教育再生会議が、余りこういう表現はいけませんけれども、学校現場の小さなことに携わるよりも、いかにすれば地方を再生できるか。地方を再生するということは、家族が定着する場所ができるということですよね。家族が定着する場所ができるということは、地域コミュニティーの教育力がもう一度復活するということなんですよ。だから、先ほど副長官が申しましたように、再生会議というのはもう少し大きな枠組みの議論をしていただいて、公教育の部分だとか何かはむしろ中教審に任せていただいた方が本来の役割分担としてはいいんじゃないかということは、私は再三申し上げてきたことです。

牧委員 理念的な認識においては、私も大臣と全く変わりません。ただ、私が申し上げたいのは、もう少し現状の認識をしていただければなと、そこなんですよね。現状はそんなもんじゃないんですよ。

 地域と家庭と学校が一体となってと、それは言いますよ、そういうふうに。だけれども、私の地元だけかもしれないけれども、その地域、コミュニティーの教育力というのはそこそこあるんですね。意識のある方たちが本当に手弁当でいろいろなことをやっていただく、そういう土壌というのはあるんですけれども、何よりもその、家庭の中ですね。これは、そこまで立ち入れないと言われたらそれまでかもしれませんけれども。だからこそ、これは文科省では限界があるのであれば、もうちょっと何らかの措置が必要じゃないかと私は思うわけです。

 例えば今回の十九年度の予算を見ても、生涯学習政策局の予算案の中に、家庭の教育力の向上に向けた総合的施策の推進と、ずらっと、こうありますけれども、これを見ていても、家庭教育支援総合推進事業九億八千万、新家庭教育手帳(子育てヒント集)の作成ですとか、こんなことで現状に対応できるのかと、私は甚だ疑問に思わざるを得ないわけで、本当に、全国的あるいは国民的な取り組みがなければそういったことに対応できないというのが私の意見であります。

 そのためのいろいろな施策というのはあろうと思いますし、しっかりと、その人材の確保も必要だし、あるいはその人材が時には他人のプライバシーにも立ち入る場面もあろうかと思います。そういったことについての法的な裏づけですとか、あるいは総合的な、その全体の予算だとか、そういうことについて、では、例えば安倍内閣としてその覚悟があるのかないのか、そういったことをちょっとお聞かせください。

下村内閣官房副長官 教育再生会議の第一次報告の見出しも、委員御指摘のような認識のもとに「社会総がかりで教育再生を」とうたっておりまして、その第一弾が、まずは「公教育再生への第一歩」ということで、具体的な提言をしていただいているわけでございます。この中で、社会総がかりでの全国的な参画ということで、今御指摘のような危機感というのは我々も共有をしているというふうに思っております。

 改正教育基本法の中で、先ほど大臣からお話がございましたように、子供の教育の第一義的責任は家庭にあるということから、今後、家庭は教育の原点で、保護者が率先し子供にしっかりしたしつけをするということで、例えば、家庭の日を利用しての多世代交流とか、食育の推進、あるいは子育て支援窓口の整備等々、具体的な提案もこの再生会議の中で盛り込んでおりますし、また、地域社会の対応ということで、学校を開放し、地域全体で子供を育てるという放課後子どもプランの全国展開、この四月から本格的に始めるわけでございますけれども、地域リーダー、教育コーディネーター等を活用しながら、家庭を中心としながら地域ぐるみで子供たちを育てていこうと。

 そしてまず、現実問題として、そこに小学生、中学生がいるわけでありまして、この小学生、中学生に対して、議論だけしているのでは、卒業してしまって、今の子供たちに対する何ら救済策なり支援策なり教育施策ができないということであっては責任放棄だと思いますが、まず今いる子供たちに対して的確に対応するような施策ということで提言もいただいておりますし、これから第二次、第三次の中でさらに幅広い提言、議論が展開されるものというふうに思っております。

牧委員 時間がございませんから、この話はこの辺にしておいて、次に移りたいと思います。

 冒頭申し上げましたように、知財立国を目指してのさまざまな取り組みが、もちろんこれは文科省だけじゃなくて、省庁またがってあろうと思います。ただ、特に著作権を中心に、それをつかさどるところはやはり文科省でありますから、きちっとそこら辺のところを一つ一つ私はこれから、きょうはさわりのところだけで、今後、シリーズでずっと詰めていきたいなというような希望もございます。

 というのは、前国会で著作権法の改正があって、その場で私も質問させていただきましたけれども、医学書の文献が薬事行政手続上は無許諾で使用ができる、そういうお話になったわけですけれども、現状として、製薬会社の営業活動なんかにサービスで文献のコピーが出回っていたりとか、そういった侵害というのもまだ私は聞くわけで、そういったことについてもこれからやっていきたいと思います。

 つまりは、結局、例えば薬品というものは特許権で守られている。一方は著作権で守られている。その権利と権利のバランスというものがきちっと適正にとられていなければ、一方が他方の権利を侵害してそこで利益を上げれば、それは不当利得ということになるわけですから、それはきちっと許諾があればそれに対する補償があってという表裏一体の関係というのがやはり今後もきちっと確立をされていかなければならないと思うわけであります。

 そういった意味で少しきょう質問させていただきたいのは、まず、事務方の方で結構ですから、ちょっと基礎的なことだけ確認させていただきたいのは、例えば不当利得がなければ取り締まりの対象にならないという理解でいいのかということであります。

 言葉をかえれば、例えば、文庫本を買ってきて、その文庫本が字がちっちゃいから、自分は読みづらい。拡大コピーをとって自分で読む分については、それは別に許諾も必要ないけれども、それを例えば大量にコピーをとって、それを人に売った場合には権利の侵害になる、つまりは、利得がある場合は許諾が必要である、そういう理解で間違いないのかどうか、まず確認したいと思います。

高塩政府参考人 先生のおっしゃる理解で、私どもも同じ理解をしております。

牧委員 そうすると、著作権法の第三十六条に、入学試験や何かは無補償、無許諾で使うことが許されているけれども、営利目的の、例えば予備校の模擬試験なんかは補償金の支払いを義務づけられている、これで間違いないですね。

高塩政府参考人 先生御指摘のように、著作権法では、教育の公共性を踏まえまして、教育現場での著作物の利用を円滑にするために、一定の場合に著作者の許諾を得ずに著作物を利用できる例外措置を規定しているわけでございます。

 先生御指摘のように、営利を目的とする、例えばテストの問題でございますと、学校においてそのテストの問題でいわゆる著作物を使う場合には許諾は不要でございますけれども、予備校等の模擬試験でそれを利用する場合には、やはり後日の使用料の支払いというものが必要になる、こういう理解でございます。

牧委員 そこで、具体的に質問ですけれども、そうすると、例えばこの春実施される全国一斉学力テスト、例えばこの中で使用されるどこかの文献から引っ張ってきたものだとか、その中身については許諾が必要で、なおかつ補償が必要であるという理解でよろしいですか。

高塩政府参考人 この春の全国学力テストにつきましては、許諾は不要であるというふうに考えております。そして、その使用料の支払いにつきましては、営利を目的としていないということで、不要というふうに考えております。

牧委員 そこら辺のところが、ちょっと私、今にわかには理解ができません。というのは、次長、よろしいですか、この試験というのは民間が請け負って実施されるんですよね。どこの業者でしょうか。民間が請け負うんですよね。違いますか。

高塩政府参考人 大変申しわけございませんけれども、私、学力テストの担当でございませんで、どういう形で実施するか、ちょっと、必ずしも理解していないということで、大変恐縮でございます。

牧委員 今ここで確認したかったんですけれども、たしかNTTデータとベネッセですか、それが委託を受けてこの試験が実施されるということだと私は聞いております。

 この実施主体は文科省なのかもしれません。ですから、文科省が営利を目的としてこの試験を実施するわけではありませんから、そこはいいんですけれども、ただ、これを委託された業者というのは、やはり業としてやるわけですから、これは営利目的なわけですよね。そこら辺のところの理解がちょっと違うんじゃないかなと。

伊吹国務大臣 文化庁ではちょっとわかりかねると思いますから、私の知っている範囲のことを申し上げたいと思います。

 実施主体は、先生がおっしゃっているように、文科省であって、その業務を委託しているわけですから、問題の作成等は業者がやるわけではありません。問題の作成はこちらがやるわけです。そして、もちろん、試験の実施を彼らに委託しているわけですから、その守秘義務ですね、勝手にこの受験者の氏名だとか住所を使っちゃいかぬとか、そういうことはもう詳細に契約書の中に書き込んでやっておりますので、問題の中に引用した著作物について、業者がそれで利益を上げるという構成にはならないと思います。

牧委員 そこら辺のところ、ちょっと私も、今の大臣の説明だけでは判断できかねます。これはひょっとすると、場合によっては司法の判断ということにもなるかもしれませんし、例えば、カラオケへ行って、我々がお客さんで行って歌う分には、我々には別に許諾の補償の義務はないわけですよね。それを業としてやっているお店にその義務があるわけで、それと同じように、文科省にはその義務はないのかもしれないけれども、この業者が、どういう関与の仕方かにもよるんでしょうけれども、そこら辺は難しいところだと思うんですよね。そういったことがまだ整理がつかないところが、特にこういう試験問題だとか、あるいは、それをまたもう一回書物にして再発行するような、例えば過去問題集だとか、そういったものについてはきちっとしていないところがたくさんあると思うんですね。

 やはり、こういうところをきちっとしておかないと、後々いろいろ問題も出てきかねないし、これまでもいろいろな訴訟というのが起こっているわけで、これは訴訟ですから、それは行政の話じゃなくて司法の話だと、我々は関係ないと言われるかもしれませんけれども、あいまいな部分がそのまま残っているからこそ訴訟がたくさん起きるということもやはり行政としてはしっかり考えなきゃいけないし、我々立法の立場にある者も、そこをきちっとしなければ、それはいずれは立法の不作為だと言われてもいたし方ないこともあろうかと思うので、そこら辺のところをきちっとしておきたいと思うんですよね。

 特に試験問題なんかは、その著作物の中の一定の、部分的なものをそこから勝手に抜粋したりして問題をつくったりすることもあるわけで、その著作権者の持っている著作者人格権みたいな、そういったものが本当にきちっと担保されているのかどうなのか、そこら辺のところも、私は今後きちっとしていくべきだと思います。

 文化庁として、過去にもいろいろないきさつがあったと思いますけれども、どんなふうにそこら辺のところを認識されておりますか。特に、冒頭、塾の話もしましたけれども、大手の学習塾なんかでそういった権利の不当な侵害があって、そういうことが過去に裁判にもなっているという事例もあるわけですね。これは野依さんがおっしゃるとおり、やはり塾というのは商売だということを野依さんもはっきり明快に述べられたわけで、商売であるからこそ、それはもうけるからにはきちっと義務も果たさなければならないわけですし、そこら辺のところを、まず文化庁としてどういう認識を持っておられるか。

高塩政府参考人 先ほどは申しわけございませんでした。

 全国学力テストにつきましては、文部省が実施をするわけでございますけれども、文部省自身に試験問題作成の、使用料に相当する報酬を払うという義務はないわけでございますけれども、委託された業者が、その試験問題を作成するにつきまして、その試験問題を作成する場合に、報酬を受けてこれは行うということになると思いますので、その場合には業者に補償金の、業者といいますか、まさに業者に義務が生ずるということでございます。

 それと、先生おっしゃられたように、試験問題を後日、これは入試問題等におきましても、入試そのものだけではなくて、その後日にホームページとか過去の問題集への掲載という場合には、当然、その作成者につきましては、著作者の許諾が必要であるということになっております。

牧委員 そうすると、先ほどの大臣の答弁とはちょっと違うんですね。さっきの大臣の答弁とちょっと違うじゃないですか。ちょっと、それをはっきりさせてくださいよ。

桝屋委員長 それじゃ、文化庁高塩次長、再答弁。

高塩政府参考人 済みません。私、学力テストの担当でないので、その仕組みを知らずに、一般論を申し上げたところ、大変おわび申し上げたいと思っております。

 印刷だけの外注だということでございまして、学力テストの仕組みを知らない者が答弁したことをおわび申し上げたいと思います。大変失礼しました。申しわけございません。

牧委員 ちょっと今のやりとりを見ていると、本当に、大臣を信用しないわけじゃないんですけれども、一回調べられて、また前言を翻すという今の現象だけ見ていると、やはりこれは難しい問題だなということはよくわかりました。

伊吹国務大臣 それは、先生、文化庁は全国統一の学力テストの所管の役所ではありません。ですから、私が大臣として、問題の作成はどこでやるのか、そしてベネッセその他に何を委託するのかということは初中局からきちっと聴取しております。だから、私はそれを先生に御答弁申し上げているわけで、今次長が申しましたのは、一般論として、委託を受けた業者がもし問題をつくるのであれば、営利を伴う場合は当然その費用を払わねばならないということを言っているわけで、別に、今のやりとりは完全に間違ったことを言っているだけのことであって、何ら私が答弁したことが事実と違うことはありませんから、御心配になることはないと思います。

牧委員 いずれにしても、難しい問題だなと思うんですよ。また、こういったことが万一訴訟にならないとも限らないわけですね、その見解の違いというのが今これだけの議論の中でも出てくるわけですから。それでも、やはりそれは許諾が必要なんだと権利者が言うかもしれない。

 だから、そこら辺のところをあいまいにしていちゃいけないと思いますし、きょうはちょっと時間切れになってしまいましたからあれですけれども、今後、例えば、さっき申し上げたような、著作者の人格権というものが例えばこういう試験問題なんかで本当に守られているのかどうなのか、そういうことも含めて、また今後ちょっと議論をしたいと思いますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 どうもきょうはありがとうございました。

桝屋委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。きょうは、四十分間時間をちょうだいいたしました。大臣以下、文科省に対して質問をさせていただきたいと思います。

 ちょうど昨年十月、大臣御就任の演説に対する質疑の機会をちょうだいし、教育現場の実態をということから、小学校、中学校の学校給食問題を事例として取り上げて、現場の教職員の勤務実態の問題に言及させていただいたところでありました。大臣の御理解をいただいて、早速文科省が全国の小学校そしてまた中学校でこの給食費の未納状況の把握を調査いただきまして、その結果を公表いただいたところであり、それこそマスコミも、昨年の末から随分、各紙が社説等ででも取り上げていただくくらい、この給食費の未納問題の実態調査の結果をクローズアップしていただいてきたところであります。

 この未納問題、マスコミが取り上げているのは、どちらかというと保護者のモラルの問題を随分クローズアップいただきました。それはそれで大変大きな問題だと思うわけでありますが、私が十月、質疑の中で取り上げさせていただいた未納問題は、未納者に対する徴収また督促事務、こういった、言ってみれば教職員の本来の仕事以外の部分に教職員が随分苦労をしているのではないかという問題提起でありました。その点についてきょうはお尋ねをしたい、そんなふうに思っております。

 まず、十月二十日に質問をさせていただいてから、全国の実態調査をしていただいたわけでありますが、この実態調査の経緯と申しますか、どのような流れでこの調査を行われたのか、これを簡単に、事務的に御説明いただきたいと思います。

樋口政府参考人 お答え申し上げます。

 学校給食費の未納問題につきましては、各学校や市町村教育委員会等が大変対応に苦慮されておられる事例が多く伝えられておりましたことから、委員御指摘のように、昨年十月の二十日の本委員会の委員御指摘も踏まえまして、文部科学省といたしましては、昨年十一月から十二月にかけまして、学校給食を実施している全国すべての国公私立の小中学校を対象に、平成十七年度における学校給食費の徴収状況を悉皆で調査をさせていただいたところでございます。

 本調査は、学校給食費の未納の件数でありますとか、その未納額、学校給食費の徴収方法など、平成十七年度の学校給食費の徴収の実態を調査するとともに、学校給食費の未納の主な原因や最近の未納の増減の状況などについての学校の認識を調査させていただきました。そしてまた、学校給食費を未納されておられます保護者に対します対応方策や、具体的にどういった方々がこの対応に当たっておられるのか、その際の学級担任等に対する校務分掌上の配慮の有無等について、都道府県教育委員会を通じて、各学校の給食費の徴収状況等について調査をさせていただいたものでございます。

田島(一)委員 私の手元にもこの調査の結果がありますので、その中を幾つか、概要的にピックアップしてみたいと思います。

 未納の児童生徒がいた学校が全国の四三・六%、そして未納の児童生徒数は全体の一%、微々たる数字だというふうにとらえる方がいるかもしれませんけれども、この未納額の総額は二十二億円にも上っております。

 徴収の実態を見ておりますと、どうも、金融機関の口座から引き落とされているケースが七割を超えているということから、本来ならば、学校が直接納付状況に関与せずとも、銀行そして保護者の間で行われているべきはずであり、どちらかといえば、現場ででもなかなか把握しにくかったところが多分あったのではないかと思います。

 しかしながら、今申し上げたように、四割以上の学校で未納問題が起こっていた。このことによって、現場も、未納に対してどのように対応されているかと聞けば、電話や文書による説明、督促をやられている学校がほとんどでありますが、中には、家庭訪問によって保護者に対し説明をし、また督促に回るというのも半分以上、五五%の学校が対応しているというふうに聞いています。中には、PTAの会合等を通じて保護者に呼びかけるという取り組みもされているようでありますが、残念ながらPTAの会合は一〇〇%の出席率ではありません。

 そういった中で、成果が上がっている学校、そして成果が全く上がらずに依然苦慮している、そんな学校というのも見え隠れしているところであります。

 もちろん、この主たる原因は、保護者としての責任感であるとか規範意識の欠如を理由に、原因だとして挙げている学校が大半でありますが、今回のこの数字、調査結果が出てきたわけでありますけれども、この結果をどのように分析され、結論に達せられたのか、そしてまた、この結果を大臣としてどのようにお受けとめいただいているのか、御所見をお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 数字は、むしろ先生が今ずっと我々の方から御報告したことをお述べいただけましたから、もう言葉を重ねる必要はないと思いますが、率直なところ、給食の意味というのを御父兄の方が、保護者の方がやはり十分理解していただくということがまず一番大切だろうと思います。

 そして同時に、未納の保護者から代金を払っていただくということについて教師にできるだけ負担のかからないように考えていかないと、教師の本来の仕事ができなくなるということですね。

 それから三番目は、私は実は、この数字を事務局がつくって持ってきたときに、未納の児童生徒と書いてあったので、ちょっと意識としてはよくないぞと。やはり未納しているのは御父兄であって、だから納めていない父兄の保護のもとにある児童生徒が学校でいじめられたりつらい思いをしないように配慮はしておかないといけないよというようなことを、私のとらえ方としてはとらえております。

 そして、やはりそれを、全体を指導し、今申し上げたようなことを担保していくのは市町村の教育委員会であると思いますから、都道府県教育委員会を通じて、後ほど参考人から御説明をさせますが、文部科学省としてはこういうやり方でやってもらいたいということを通知しているところでございます。

田島(一)委員 大臣、いい御指摘をやはりされているなというふうに私も思います。

 今回のこの全国の実態調査の結果の中で、未納の保護者に対する説明また督促をだれがされているのかという点で、特定の方に負担の行かないように、特定の方といいますのは担任の教員であるとか学校の教頭先生であるとか、そういった方々に対して負担にならないよう配慮をしているかという問いも実はされています。していると答えたのは四五・五%、特に配慮はしていないというのは半分を超えている、五四・五%であります。言ってみれば、まだまだ教育現場においては、督促であるとか説明に回っているのは現場の先生方である。

 私が冒頭御紹介をしたように、本来学校の先生は教科の指導であるとか先生としての仕事をしてもらわなきゃいけないという中から質問の例として取り上げたわけであって、その配慮をしていない現場がある。

 今、大臣は、それぞれの教育委員会が頑張れ、やるべきだという御指摘をしていただいたわけでありますが、現状はそうなっていないということでありますね。相当強力にそれぞれの教育委員会の方に通達をしていただかないとこれは改まらないのではないかというふうに思いますが、もう一度そのあたりの姿勢をお聞かせいただけますか。

伊吹国務大臣 どういうことを通知したかというのは、少し参考人から後ほど御説明をさせていただきたいんですが、特に学校の先生に負担をかけないように、例えば、従来保護者に渡していた給付金を直接校長に渡すとか、あるいは、PTAぐるみで保護者に働きかけたらうまくいったという成功事例とか、こういうことはみんなが共有をしないといけません。

 ただ、地域ぐるみ、PTAぐるみで学校の先生の事務を肩がわりしていくというのは、これはプライバシーの問題があって非常に難しいですね。

 ですから、そのあたりのバランスを考えてやはりやっていかないと、かえって反発を食うということもありますから、かなりその辺の詳細を配慮して通知を出しておりますので、もしお許しをいただければ参考人から説明をさせてやっていただきたいと思います。

樋口政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘のとおり、給食費の未納対応に当たりまして、一部の教員に負担がかかっているのではないか。現場では、五割を超えるところでこの未納問題について特に配慮していないという実情が浮かび上がったわけでございます。

 私ども、この問題、給食費の未納問題については、市町村教育委員会がこの未納状況を随時把握して学校をサポートしていく、そのことが大切だろうと思っているところでございまして、昨年のこの調査結果を受けまして、本年一月二十四日付で、都道府県教育委員会を通じまして、市町村の教育委員会や学校にそれぞれその留意事項を通知いたしまして、未納問題への対応を促したところでございます。

 具体的には、学校に対しては、学校給食の意義や果たす役割を保護者に十分認識していただくよう周知すること、それと、教育に専念すべき教員に過度の負担がかからないよう、PTAとも連携しつつ、それから校務分担をきちんとしながら、学校全体で取り組むことなどを指導させていただいております。

 一方、学校の設置者、そして同時に給食の実施者でございます市町村の教育委員会等に対しましては、まずは就学援助の充実にお努めいただくこと、それと、保護者に対しまして生活保護や就学援助制度の活用を奨励いたしますとともに、これまで教育委員会から保護者に直接交付をしておりました就学援助金等々についても、学校長への交付ということについても検討をいただく必要があるのではないか、そしてまた各学校の未納状況を教育委員会みずからが随時把握しながら、当該学校と連携して未納問題の解消に努めるよう促したところでございます。

 以上でございます。

田島(一)委員 冒頭、大臣は、教育委員会がやはり主体的にこの未納問題に取り組むべきだというふうにお話しいただきました。しかし、今、通達の内容を局長が御紹介いただきましたけれども、学校全体としての取り組み体制を整えろというような御指示をなさったようですけれども、教育委員会というキーワードは全く何か見えないような気がするんですね。

 学校がやはりやるべきだとお考えの局長、それと、教育委員会がやはりもっと汗をかけとおっしゃる大臣、何か、この辺のずれは、私はどのように理解したらいいんでしょう。

樋口政府参考人 私どもは、今回の通知に当たりましては、教育委員会が取り組むべき事柄、そして学校が取り組むべき事柄があろう。教職員に過度の負担がかからないように、特定の教職員に負担がかからないように、学校全体でも校務分掌の中でこの未納問題に対応していただくように配慮いただくことを学校に求めますと同時に、もう少し教育委員会が主体的に未納問題に取り組むということで、学校と連携をしながらこの未納家庭等に対しての徴収等にもかかわっていく等々、教育委員会としても主体的にこの未納問題にかかわっていくように促しをさせていただいたところでございまして、学校のみにこの未納問題の対応を求めるといった趣旨ではないわけでございます。

田島(一)委員 私の手元にもそのときの通知があります。教育委員会が主体的に頑張れというようなキーワードは、どう探しても、局長名のこの通知には私には発見することはできません。この文書を読む限りは、学校が全体として取り組み体制を整えろ、それから地方公共団体あてに通知をされているのは、就学援助事業の充実に努めろというキーワードであり、とにかく学校が何とかしろみたいなふうにしか私にはとれないんですね。大臣がせっかくおっしゃってくださっているんだったら、この通達、本当に誤解を招いているんじゃないかと私は思うわけであります。

 これは水かけ論っぽくなってしまいますからあえて深掘りはいたしませんけれども、実際に現場の教育委員会ないし学校でも、本当にさまざまな、手をかえ品をかえ、取り組み、回収に苦悩されている実態をお伺いしています。

 例えば、山梨県の石和中学校ですと、二カ月の未納が発生をした場合は給食停止に踏み切るという文書を家庭に配付するであるとか、再三の支払い要求を無視した世帯に対して、保護者の給料を強制執行で差し押さえたという広島県の呉市など、千葉県では回収専門の収納補助員を雇っているなんてところもあります。もともとから少子化対策という名のもとに北海道の三笠市では小学校の給食費を完全無料で実施しているというところもあり、あの手この手で本当に回収に苦悩されている様子を私も随分勉強させていただいたわけでありますが、果たして、自治体であるとか学校現場に回収の苦労を、回収の取り組みを押しつけておくのがいいのかなとさえ思ってしまうところが正直ございます。

 何やら全国一貫した知恵と申しますか対応策、文部科学省から、そろそろ各自治体、学校現場におろしていただくような、そんな取り組みが私は必要ではないかというふうに思うわけでありますが、大臣、どうお考えですか。

伊吹国務大臣 これは、先生、地教行法の改正をお願いすることにもかかわってくることですが、御承知のように、私たちが学校現場に頑張れとかどうだとか言う権限は今のところ一切ありません。これはすべて教育委員会を通じてお願いをしているわけです。そして、学校給食の実施者は市町村教育委員会なんですよ。だから、教育委員会が、学校現場にお願いするということも、すなわち教育委員会を通じてお願いしているわけで、文部科学官僚というのは、何か自分たちが物を言えば学校現場がすぐ動くという意識を持っているとしたら、それは間違いなんです。

 だから、教育委員会に何を頼むのか、学校における、その際頼む留意事項は何かということですから、学校でこういうことをやってもらいたいということについては、地域の教育委員会ぐるみで支援をしてやらなければ学校現場は動けません、それは。当然のことなんですね。だから、学校にこうしてくれということはもちろん書いてありますよ。しかし、それをどういうふうに学校現場でやらせるかというのが各教育委員会の感性であり知恵なんですよ。そのことを私は申し上げているわけです。

田島(一)委員 ただ、問題がこれだけ大きくなってきている中で、当然地方自治体の教育委員会の知恵を絞って取り組むべきことだ、そういう御趣旨の答弁だったというふうに思いますけれども、余りにやはり、それぞれのケースがほとんど、ばらばらだとはいいながら、大体保護者のモラルに引っかかっている、問題が起因しているわけであります。そう考えると、私は、これはもう全国一律こういうふうにするべきだという、いわゆる地方自治体、地方の教育委員会、学校現場の苦労、苦悩を軽減させるための知恵を文部科学省としてもう少し授けてやってもいいんじゃないかと考えるんです。

 その点について、文部科学省として取り組みをする姿勢はお持ちかどうか、お答えいただけますか。

伊吹国務大臣 これは、先生のお手元に行っておりますでしょう、各都道府県における未納問題の取り組み状況と今後の対応方針例というのが。

 その中で、文部科学省が十九年の一月二十四日に出しておる通知によれば、教育委員会における留意事項というのをまず書いているわけですね。それは何かというと、経済的な問題により学校給食費を未納している保護者に対しては、生活保護や就学援助制度の活用を奨励するとともに、給付金の学校長への給付について検討すること、就学援助の充実に努めること、各学校の未納状況を随時把握し、当該学校と連携して未納問題の解消に努めること、これが教育委員会に対する我々の連絡です。

 そして、同時に、学校における留意事項として、教育委員会を通じて学校に通知をしてくださいと言っているのは、学校給食の意義や果たす役割を保護者に十分認識していただくとともに、一部の保護者が学校給食費を未納することによって他者に負担が発生することを保護者に周知し、理解と協力を求めること、特定の者に過度の負担がかからないよう学校全体で取り組むとともに、PTAとも連携して未納の解消に努めること、こういう構成になっているわけです。

 ですから、学校現場における留意事項まで書いているわけですが、これをどう動かしていくかということについては、教育委員会が、熱意があるところはいろいろな工夫をしてやるでしょうし、学校現場にだけ押しつけているような教育委員会じゃだめなんですよね。

 だから、文科省としては、現在の地教行法上学校現場に直接の立ち入りはできませんから、あとは、まさに地方自治とおっしゃるのであれば、そういうことをしっかりとやっていない教育委員会を抱えている地方議会が、そのことについてしっかりとした批判をしてそれを正さなければならないし、それが地方自治という権限を主張する者の私は義務だと思いますよ。

田島(一)委員 地方それぞれが独自性を発揮してお取り組みをされている、その状況も随分掌握をさせていただくことができました。しかしながら、これが過度に進んでいくと、先ほど大臣も懸念をされていた個人のプライバシーの問題など、本来であるならば知らなくてもよい情報まで開示してしまいかねない、PTAという地域社会の集団にその事実を知らしめるというような問題も懸念するわけであります。そうなりますと、地方に、それこそ、頑張れと任せることがかえって大きな、違う問題まで引き起こしてしまう可能性もあるという点を私は一方で心配をしております。

 どうか今後、この未納問題に対してはさまざまな通達や状況把握を文科省としてもされていくことだろうと思いますけれども、そういった、違った問題まで派生することのないような十分な配慮、それと、教育現場にそのしわ寄せが来ないような配慮に対しての通知等を進めていただくように要望をしておきたいと思います。

 変わりまして、次に、教職員の勤務実態をめぐる諸課題についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 去る二月の二十一日にこの文部科学委員会の中でも我が党の藤村委員が賃金関連について取り上げたところでありますが、今回、この給食費の未納問題と前後して、教員の勤務実態調査の集計も上がってきたところであります。

 平成十八年の七月から十二月までの六カ月間、四週間ごとに六期に分けた調査の結果が出てきたところでありまして、これの詳細については当時の銭谷さんから丁寧に御報告をいただいておりますから、あえてこの数字までは挙げませんけれども、各月おおむね一日約二時間程度。二時間程度という非常に軽い扱いをされている、そんな御答弁だったというふうに思いますが、教員の超過勤務時間が、この数字からは平均約四十時間という数字が上がってきております。

 これは、御承知のように、超過勤務手当というのは教員に対しては支払われておりません。他の地方公務員等においても、手当というのは支給されておりますが、約十時間。民間においても、一定の調査をされた数字が、それこそ厚生労働省の毎月の勤労統計調査で、十時間から十一時間という数字が平成十八年度では出てきております。

 そんな中で、一昨年、厚生労働省が所管する労働安全衛生法が改正をされたところでありますが、きょうは参考人として厚生労働省からも労働基準局安全衛生部長にお越しをいただいておりますけれども、この労働安全衛生法の改正の趣旨、そして学校教育の現場においてこの労働安全衛生法に基づく必要性はどのように配慮されるべきだというふうに考えていらっしゃるか、その辺をちょっとお答えいただきたいと思います。

小野政府参考人 御質問にお答えを申し上げます。

 一昨年、労働安全衛生法が改正をされました。この趣旨につきましては、その大きなものとして、過重労働による健康障害防止を図る一環として、長時間労働を行う者に対して労働者の健康管理に関する措置を適切に実施する、こういう趣旨で、一定時間以上の長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対する医師の面接指導制度というものを導入して、平成十八年四月、昨年の四月から施行をしているところでございます。

 これは、全体の業種の事業場において働かれる労働者にもちろん適用されるものでございますけれども、今御指摘の学校の教職員の方につきましても当然適用されるということで、私どもとしても、労働安全衛生法の改正時に、きちっとこうした法の趣旨が徹底されるようにということで、その後指導しているということでございます。

田島(一)委員 当然学校現場の教職員についてもこの改正労働安全衛生法が適用されるものと明確に御答弁をいただきました。

 先ほど申し上げたとおり、教員の超過勤務時間は、勤務実態調査から分析をしても平均約四十時間ということであります。

 同様に、この調査の結果明らかになったこと、これが教員の平均休憩時間、休みの時間ですが、一期から五期までそれぞれあります。第二期というのが夏季休業期、夏休み期間でありますからこれはちょっと該当しないのかもしれませんが、学校が子供たちに授業を教える二学期それから三学期において、休憩時間を見ますと、小学校では実は六分間、一日ですよ。一日わずか六分間。中学校でもわずか七分間というのが四期、五期の結果であります。

 安全衛生部長、休憩時間が六分、七分というこの教育現場の実態、これをとらえて、労働安全衛生法に照らし合わせてどのようにお考えか、お聞かせください。

小野政府参考人 お答えをいたしたいと思います。

 今お尋ねの休憩時間、私も教員の方の勤務実態調査の詳細を承知しているわけではありませんけれども、休憩時間につきましては、委員も御承知のとおりだと思いますが、安全衛生法というよりも労働基準法の方で、労働基準法三十四条に、使用者は、労働時間が六時間を超える場合は少なくとも四十五分の休憩時間を、また、八時間を超える場合は少なくとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない、こういう規定になっております。

 休憩時間の置かれる位置は労働基準法上は特に問われているわけではございません。トータルとして、先ほど申し上げた四十五分あるいは一時間というものが与えられればいいということで、当然、こういった労働基準法の内容は遵守をされているというふうに私どもとしては考えております。

田島(一)委員 大臣、今私が説明をしたとおり、教育の現場は、先ほど取り上げた給食費の滞納問題に対する取り組みも含めて、かなり現場の先生が、随分、ゆっくりどころか休む暇もなく頑張っていただいている様子は御理解を多分いただいたかと思います。大臣もこの調査結果はごらんになられていらっしゃいますよね。

伊吹国務大臣 先生のところへお出しするものは当然大臣は目を通しております。

 そして、私が出しましたコメントは、この調査はもう少し実態もよく考えて、もう一度見直した方がいいということを、調査をした者に申してあります。

 それは、例えばお昼は給食を一緒に食べますね。これは、給食を一緒に食べる時間はみんな勤務時間になっているんです。仕事をしているということになっています。休息時間になっておりません。それから、例えば授業と授業の間のこまあきの時間がありますね、この間は授業準備時間ということで、休息の時間とはカウントされていないんです。ですから、これは人によってかなり受けとめ方が違う数字じゃないかという気は私はしているんです。

 通常期においては六分しか休暇がないなんというようなことは、人間として耐えられないことですよ、率直に言えば。ですから、私どもも、例えば、先生からなかなか質問の要旨が出てこない間、ずっと待って、待機している、例えばですよ……(田島(一)委員「ちょっと、誤解を招くようなことを言わぬでください」と呼ぶ)いや、それじゃ、議員からの質問要旨がなかなか出てこない場合ならいいでしょう。ずっと待機をしている時間は、これは勤務時間とカウントするのか休憩時間とカウントするのかとか、そういうことはやはりたくさんあるわけなんですよ。だから、教師の人たちの勤務の特殊性というものがありますから、従来から、超過勤務手当を支給せずに特別の手当でこれに対応しているということもやってきているわけなんですね。

 ただし、私は、先生がおっしゃっている基本認識は共有していますよ。学校現場はかなり大変だなということは共有しています。しかし、六分しか一日にほっとする時間がないというのは、これはどうだろうなという気が私自身はしているので、もう少しきめ細かく調べた方がいいよというコメントは出しました。

田島(一)委員 非現実的な数字なんですよね。

 ですけれども、恐らく本当に気の休まる暇のない教育現場、先ほどもわざわざ大臣が御披露いただいたように、給食時間も、子供たちに目配り気配りをしなければならないから休憩ではなく勤務時間だと。そして、休み時間も、まあとれてトイレに行く時間があればいいような状況で、私も、教育の現場に何度もお邪魔をいたしましたし、実は、一月に、ゲストティーチャーで自分の母校の教壇にも立たせてもらいましたが、本当に精神的に疲れることを身をもって経験させていただきました。休み時間でも、ほとんど、先生が中庭や校庭に出て子供らと一緒に接する努力をされている様子を見ていると、準備もままならないような状況があるかというふうに思います。

 それと、実は、古いデータを私ちょっと引用させていただきたいと思うんですが、一九六六年、私が生まれてまだ間もないころの文部科学省の勤務実態調査の時間と比較をさせていただきたいと思います。大臣のお手元の方にはこの数字をお示ししておりませんのでちょっと耳を澄ませていただきたいんですが、子供と接する時間もしくは授業時間、いろいろな対比をさせてもらっています。

 実は、授業時間も、一九六六年に比べると、小学校では約一時間四分ふえています。中学校でも三十分増加をしています。そして、子供の指導に直接関係しない事務活動といいましょうか、いわゆるPTA対応だとか、報告書の書類を作成したりする時間、これが、六六年当時小学校では四十三分だったのが、今回の調査結果では一時間四十三分と、実は一時間以上もふえているわけであります。中学校もまたしかり、四十九分から二時間一分とふえています。子供たちと接する時間が減って、そして、指導に直接関係のない時間がふえている教育現場。

 そして、もう一つ興味深い調査結果を御披露させていただきたいと思います。例えば、教員が、先ほどおっしゃったように、休み時間を利用して、専門性を高めたり、授業で子供たちにわかりやすい授業をする、指導力を向上させるといった趣旨の、いわゆる学校内での研修、もちろん先生同士が集まって、こういうふうにこの課題については指導をしましょうというような学校内での研修というのもあるわけでありますが、この研修、民間でいえばOJT、オン・ザ・ジョブ・トレーニングですけれども、この時間が、実は、小学校で比べても一時間十分から五十五分と減っておりますし、中学校では何と一時間二分から七分に減っているんですね。

 本来ならば、教員同士がお互いの指導力を高めていこう、そういう学校内、もしくは教育委員会が主催する研修等でそれぞれの先生方の指導力を高めてもらう、そういうことが必要不可欠だと私も考えますが、絶対的な時間が今なくなってきている。もちろん、大臣が懐疑的に、このデータに対して余り信頼を置いていらっしゃらない様子は何となくわかるんですけれども、しかし、如実に、随分この数字が減っているということは、どんなに例えば計算を精査したところで間違いなく減っているんだと私も思いました。

 指導力向上に必要なこういった研修に時間が割けないということは、今議論されている指導力不足の教員の増加という点にまで関連性があるのではないかと私は思うわけであります。そう考えると、短絡的に指導力不足とレッテルを張る前に、もう少し学校現場でやるべきことがあるのではないかなと考えるわけであります。もちろん、今申し上げた、直接子供たちの指導と関係のない事務業務の時間を減らすことも一つです。それ以外にも、指導力向上に寄与できる研修の時間を確保するということも大きな課題の一つではないかというふうに思いますが、大臣、どのように認識をされ、取り組まれようとお考えか、お答えください。

伊吹国務大臣 いずれ委員会、立法府にお願いをしなければならない学校教育法の改正案においては、副校長あるいは主任等の、いわゆる事務の処理、単なるペーパーワークだけじゃなくて、先生のお手元に行っている資料でいえばPTA対応だとか地域対応だとかいういろいろな渉外事務、こういうことを扱う職を新たにつくるようなことを、今、立法作業の中でやっております。

 先生がおっしゃるとおり、研修をしたり児童生徒と向き合ったりする時間をやはりできるだけたくさんとっていくということは、もうこれは当然のことでございますから、その方向で努力をさせていただきたいと思います。

田島(一)委員 冒頭、私、労働安全衛生法の話をして、もう少し時間があれば引き続きやらせていただきたいと思ったところなんですけれども、残念ながら、この労働安全衛生法においての勤務実態の把握、これは実は、学校現場では学校長なんかも全然できていない状態が続いています。こういった全国調査がなされればこういうような数字が出てきて、おやっと首をかしげるところがありますが、実際、この労働安全衛生法の遵守についての通知を教育現場、教育委員会に対してされているところではありますが、なかなかこれが、今の体制からすると、現場ではそれを掌握できるような状況にはありません。

 先ほど副校長云々のお話もされたところでありますけれども、学校長が本当に勤務実態を把握できるような体制が整えられるのかどうか。もちろん、今では現場の教師が仕事を自宅へ持ち帰ってやっているというケースもあります。学校内でやっているその勤務実態すら掌握できない体制に今ありますから、この辺の問題点はまた後ほど御提案なりに対して問いただしていきたいというふうに思いますが、何しろ課題の多い教育現場であります。

 この点について、地方自治体任せではなく、その全体をとらえた中での今後の法律に対するあり方という点でまた議論を重ねていきたいと思いますので、お願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

桝屋委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 私は、三月一日に予算委員会第四分科会で、伊吹大臣に、公益法人に対する監督権限の問題について質問をいたしました。大臣は、民法で監督権限が定められているというふうに答えられたわけであります。

 それに該当する民法の条文は、六十七条の二項、「主務官庁は、法人に対し、監督上必要な命令をすることができる。」三項、「主務官庁は、職権で、いつでも法人の業務及び財産の状況を検査することができる。」七十一条、法人が「主務官庁の監督上の命令に違反し、その他公益を害すべき行為をした場合において、他の方法により監督の目的を達することができないときは、主務官庁は、その許可を取り消すことができる。」というふうになっていると思いますが、これに間違いありませんね。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員御指摘になられました、民法第六十七条第二項、第三項及び七十一条で、それぞれの公益法人の監督に関する主務官庁の権限を規定しているものでございまして、委員の御指摘のとおりでございます。

佐々木(憲)委員 非常に強力な権限を持っているわけであります。

 そこで、取り上げたいのは、文部科学省の所管のもとにある公益法人日本美術刀剣保存協会、これが、刀剣、刀装具の審査に不正が見られた。役員、職員、その親族が申請できないにもかかわらず、不正に申請をしていた。そのため、文化庁は二〇〇一年に改善の指導をし、協会はそれに応ずると言っていたわけであります。

 ここに、二〇〇一年の十月二十九日付の、業務の改善措置結果報告についてという、内部の稟議書のコピーを私いただいておりますが、ここに、今常務理事で当時学芸部長の田野辺道宏さんの判こがはっきりと押してあるわけであります。ところが、にもかかわらず、不正が繰り返されております。

 昨年五月十七日に文化庁は刀剣協会に対して指示を出したそうですが、その内容はどういうものだったでしょうか。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の五月十七日に日本刀剣協会の担当者を呼びまして事情を徴したところでございますけれども、その際には、平成十三年のいわゆる業務改善の措置の報告にたがう事例があるかどうかの報告を求めたということでございます。

佐々木(憲)委員 このときは、その要請の内容は、一部の役員と一部の業者の癒着があると投書及び電話があったそうであります、この癒着によって私物化され、信用が失墜されていると。文化庁として、放置できない、したがって早急に文書で回答されたい、回答文書は、林専務理事、後藤事務局長及び田野辺前学芸部長、それぞれ作成し、回答をお願いします、こういうことだったと思いますが、そういうことですね。

高塩政府参考人 今先生御指摘のございました日本美術刀剣保存協会の三名の理事に対しまして、同協会の刀剣審査の透明性、公正性に疑義が生じていることに関しまして、事実関係を調査し、報告をするよう求めたところでございます。

佐々木(憲)委員 私が紹介をしたとおりのことを求めたと。

 当時この刀剣協会の会長は橋本龍太郎元総理でございます。橋本さんは、昨年五月十八日に開催された理事会・評議員会に出席をされております。そして、この文化庁からの指示内容について確認をし、その内部の文書に協会の中で判を押して決裁をされているわけです。その上で、この評議員会で、橋本さんは、それを実行するようにということで、筋の通った発言をし、それを確認されております。こういうことですね。

高塩政府参考人 昨年五月十八日に開催されました理事会におきまして、私どもはその理事会の議事録を入手いたしておりますけれども、橋本前会長におかれましては、文化庁の指導を守る旨の発言をしたというふうに承知いたしております。

佐々木(憲)委員 橋本元総理は、このときは、三人それぞれ、一括して回答するんじゃなくて、一人一人の良心に従って回答するように、こういうふうな発言もされていると聞いております。

 その際、理事会・評議員会では、人事関係についてはこの案件処理の後のことである、こういうことも確認されたと承知しておりますが、間違いありませんね。

高塩政府参考人 五月十八日の議事録によれば、その前日私どもを訪れました当時の庶務課長が、文化庁の指導として、まずは文化庁の指導を守る、人事はその後からという発言をしておりますけれども、私どもといたしましては人事案件について言及したということはないというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 最後の言葉がよくわからなかったんだけれども、人事案件について、どういうことなんですか。どう言いました。

高塩政府参考人 私どもといたしましては、日本美術刀剣保存協会の人事につきましては、協会内部のことでございまして、私どもが介入することは適当ではないということから、人事について私どもの方から言ったことはないということでございます。

佐々木(憲)委員 それはでたらめじゃないですか。「人事関係については、上記の案件処理後とする」、つまり案件の処理が先だ、人事は後だと、はっきりとあなた方はこの指示内容をそういう形で出しているじゃないですか。違いますか。

高塩政府参考人 私どもの指導といたしましては、文化庁といたしましては、今先生から御指摘ございましたように、刀剣審査をめぐる事実関係につきまして、林専務理事、後藤事務局長から早急に文書で回答いただきたいということでございます。さらに、その上で、人事の件につきましては文化庁は介入できないわけでございますけれども、審査をめぐる疑惑の事実関係の解明を先に行ってほしいということは申し上げたところでございます。

佐々木(憲)委員 だからそのことを聞いているんですよ。「人事関係については、上記の案件処理後とする」、人事については処理後であると明確にそういう指示をし、内部でもそのことが報告され、そして橋本元総理もそのことを確認し、判こを押し、そして組織的に評議員会で確認をされているわけです。文化庁が指示をしただけじゃないんです。まあ、指示はできないと言いますけれども、要請をした。それに対応して、はっきりとその方向でやりますということが内部の評議員会で確認をされているわけです。

 ところが、昨年の七月一日、橋本元総理がお亡くなりになりました。それ以後、事態が急変いたします。人事は行わないとされていたにもかかわらず、八月十四日、突然緊急理事会が招集をされました。まあ、八月十四日といいますとお盆ですよ、大体みんながお休みのときですけれども。当時、そのとき常務理事であった佐々淳行氏が突然会長となりました。後藤事務局長を即刻、当日解雇する、それから日高、野原両氏を契約が切れるまで自宅待機だ、こういう命令を出す。

 しかも、張り紙まで、こういうものが張られていた。これはコピーでありますが、後藤事務局長は本日をもって解雇となりました、日高庶務課長(管理課長兼務)、野原会計課長は一カ月の自宅待機の後解職となります、以上、事務連絡いたします、平成十八年八月十四日、財団法人日本美術刀剣保存協会会長佐々淳行。手書きのこういうもの、張り紙を入口に張ってある。これは、一般の人も博物館に行ったらこういうものが目に入るわけですよ。何が起こったんだろうと当然普通は思うわけでございます。驚くべき状況なんですね。

 しかも、九月一日、新しい人が突然事務局長だといってあらわれたそうでございますが、これは、人事関係は案件処理が終わってからだという文化庁の要請、あるいは橋本龍太郎会長のもとで行われた刀剣協会の側の確認を覆すものであります。

 伊吹大臣にお聞きしますけれども、こういうやり方は非常に私は異常だと思いますが、真っ当なものだと思いますか。

伊吹国務大臣 先生と予算委員会の分科会でお話をした認識は私は変わっておりません。

 あす、今お話しの佐々会長が文化庁次長のところへ面談に来るようでございますので、よく話を聞かせまして、余りに非常識なことが起こっている場合は、一番最初におっしゃった民法の規定にのっとって適切に対処していただくようにお願いをしなければならないと思っておりますが。

 監督官庁という言葉はいかがかと思いますけれども、民間の公益法人との関係は、余り公権力を強制的に発動せずにうまくおさまっていくのが本来のあるべき姿だと私は思って、我慢に我慢を重ねてきているということでございます。

佐々木(憲)委員 そろそろ堪忍袋の緒が切れるころだと思うんですね。このやり方というのは余りにも常軌を逸していると私は思います。

 それだけではありません。いたたまれなくなった職員がこういうビラも配布をしたそうなんです、お願いというものですね。これを見ますと、今文化庁の指導を無視すれば、刀剣協会は財団法人としての存続が難しくなり、数年後の公益法人の見直しを前に解散させられる危機的状況にあります。こう訴えて、協会は、刀にかかわるすべての人のためにあります、ある一部の人のためのものではありません、文化庁並びに故橋本会長が言明したように、文化庁指導の処分が終わらないうちに人事を優先することは断固反対いたします。こういうことで、庶務部一同ということで、こういうビラを出したんですね。

 ところが、これに対して、これはけしからぬということで、佐々淳行氏を初めとする関係者が懲罰委員会というものを開きまして、そして、だれが首謀者だということで庶務部の全員を一人一人つるし上げるみたいなことをやった。本当に私はびっくりしましたけれども。

 しかも、十二月一日には、庶務課内で四名の不当な配転が行われております。一週間後に引き継ぎ、翌日即日席を移動せよ、こういうことでありましたので、職員は、もうこれは大変だというので、庶務課の五人が女性ユニオン東京という労働組合に加入したんです。そして、この不当なやり方に闘っているわけですね。

 これは、私、今の事態というのは非常に重大な事態で、文化庁の要請にもまともにこたえないばかりか開き直り、内部で、反対するあるいは常識的な行動をする者を排除するというようなことが行われているとすれば極めて重大でありまして、委員長にお願いしたい。佐々淳行氏をこの際、参考人として呼んでただすべきだと思いますが、理事会で諮っていただきたい。

桝屋委員長 後刻理事会で協議をいたします。

佐々木(憲)委員 次に、協会役員、職員、審査員などの内規違反の問題、これもたくさんあるんですよ。

 平成十三年の文化庁指導を受けて、協会では、理事会で、役員は刀剣を申請できないと決めたはずです。ところが、現職理事が内規に反して申請をしている。これは前回、私も一部取り上げました。その後新たに判明したことを含めてただしたいんですけれども、ここに一枚のコピーがありますが、右の物件について審査を申請しますというふうに書いているんですね。平成十六年三月十六日、申請者氏名は林盈六と書いてあります。この林氏は専務理事の林盈六氏であることは間違いないと思いますが、いかがですか。

高塩政府参考人 林盈六氏は現在も専務理事でございます。

佐々木(憲)委員 専務理事はできないんです、こういうことは。それをやっている。

 もう一枚あります。平成十六年九月三十日、鯉沼昇。この人は、重要刀剣への申請でありますが、申請者は小林祥人となっているんです。この小林祥人という人は非会員、会員じゃないんです。それで、重要刀剣、特別重要刀剣への申請というのは会員でなければできないんです。鯉沼理事は非会員からの申請を扱っている。非会員からの申請を扱うのは違反じゃありませんか。

高塩政府参考人 日本美術刀剣協会におきましては、重要、特別重要につきましては、会員からの申請のみを受け付けているというふうに承知しております。

佐々木(憲)委員 私どもが調べたところによると、二〇〇二年四月から二〇〇六年四月までの四年の間に現職理事が違反したのは、林盈六氏九点、森政雄氏十六点、小泉陽氏三点、鯉沼昇氏八点、これだけあるんですよ。

 さらに看過できない実態があります。我々が独自に調べたら、こういうことなんですね。本来会員しか申請できない重要、特別重要刀剣に、非会員ということで申請されている、非常に多いんです、これが。しかも、会員番号が同じなのに申請者の名前が次々と変わっている。

 例えば、平成十七年、重要刀剣の部で、会員番号二五〇一〇〇五四、この方は、名前は明確にはここで言いませんが、あるときはNさん、あるときはIさん、あるときは、別の受付でNさんと、ころころ変わっているわけです。番号は同じなんですよ、会員の番号は。平成十六年、特別重要の部で、同じ会員番号の方が、Kさん、Nさん、Nさんと名前を使い分けて申請しております。さらに不可解なのは、今紹介したこの番号のNさんが、平成十五年の重要刀剣の部では二六〇〇〇八五九、全く別の番号で申請されているんです。

 これは何を意味するかということですが、Nさん、Iさん、Kさんなどと次々と名前が変わるというけれども、これは実体が伴わない、実際には幽霊会員である、あるいは非会員である。しかも、これらの申請者を扱っているのが、私が前回指摘した刀剣商の真玄堂、高橋歳夫氏であります。つまり、刀剣を扱う刀剣商が、みずからの名前あるいは親族の名前で申請することができない、あるいは目立ち過ぎる、何度もやると目立ち過ぎる、したがって架空の名前を使って申請したことが考えられると思います。

 こういう事実は当然把握しているはずでありますが、非会員からの申請が非常に多いわけです。平成十六年、特別重要刀剣の二十二件の申請の中、非会員が十五件、七割近いんですよ。やってはならないのが、何で七割もあるんですか。これは一部でありますが、こうした非会員の人たちは本当に実在するのかどうか、私は、これは徹底してこの内容を調査すべきだ。

 単に文化庁との関係だけではないんですよ。内部の審査のあり方が根本的にもうでたらめになっている。これは業者との癒着があり、その裏に金が動いているかもしれない、そういう状況なんですからね。これは明らかに、こういうものを放置しておくとすれば、文化庁や文科省そのものの、あるいは大臣の姿勢さえ問われかねないという事態であります。文化庁はぜひこれを調査し、そして違反者ははっきりと処分をするということで、根本的に出直すという指導をやるべきだと思います。

 大臣、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 公権力の行使には否定的な日本共産党の先生から、特にしっかりやれということでございますので、拳々服膺して、あすの、会長が文化庁次長のところへどういうことを言ってくるかもよく踏まえて、先生が御心配になっていることはごもっともなことだと思いますので、よく話を聞いた上で私どもとして措置をとらせていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 以上で終わります。

桝屋委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 私も、この委員会で三回目になりますが、日本美術刀剣保存協会の問題を引き続き文化庁並びに伊吹大臣に問うていきたいと思います。

 長年滞り、また混迷してきた刀剣協会の不正常な事態、今佐々木議員からもありましたが、この事態を解消しようとして、故橋本龍太郎元総理大臣、会長になられて、昨年の五月十八日には理事会で、文化庁の指導に従って本案件の解決を図れ、それまでは人事を凍結するとおっしゃっているというふうに伺っています。

 前回も取り上げました二月二十六日付のこの協会の文書は、「文化庁とのやりとりについて」という表題でありまして、前回は私と大臣とのやりとりが正反対に解釈されて、国会の審議で大丈夫なことがわかった、こういう話で、これも不愉快でしたが、よく読み直してみると、平成十八年になって改善案が蒸し返された経緯とあって、先ほど名前が出ました後藤事務局長の退任問題ということに引っかけて、こんなことが書いてあるんですね。

 橋本会長からは、文化庁との問題が片づくまで人事は凍結するとして、後藤氏の、これは事務局長ですね、後藤氏の退職問題は文化庁との問題処理後とすることになったわけである、こういうふうに書いてあるわけです。その後、なお、橋本会長の指示した人事凍結というのは後藤退職人事のことを意味し、つまり、事務局長をやめろということを意味し、御自身の死後の会長選任のことではないと。

 私は、こういう、ちょっと驚いてしまうんですね。日本の伝統文化の資産である刀剣の保存と継承をやっていこうという団体が、公益法人が、たとえ内部文書とはいえ、人事を凍結するというのは御自分が亡くなった後の会長の選任のことじゃないんだなんということを、間違っても書いてはいけない、いかぬと思いますね。

 文化庁に確認しますが、当時の橋本会長のこの発言内容はどういうふうに理解されていますか。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 橋本会長は、平成十八年五月十八日に開催されました同協会の理事会及び評議員会におきまして、同協会の刀剣審査の透明性、公正性に対する疑義が指摘されていることに対しまして、文化庁の指導に基づき、まずその事実を調査することが重要であるとの発言をされた旨、協会から報告を受けているところでございます。以上でございます。

保坂(展)委員 だれがどう読んでも、この文化庁との平成十三年以来、二〇〇〇年以来の滞っている問題をきちっと整理するのが先決事項ですよ、人事のことはそれからだということをおっしゃりたかったんだろうと。また、それが、大臣も含めて、そういうことが当然ルールどおりの正常化だということだと思うんですが、ここに、先日の質問を受けて、三月二十日付で、この佐々会長に対して文化庁の山崎課長から、これは報告書を期限つきで出しなさいという、文化庁がこれまで出した文書の中ではかなり強いと思われる要請書があります。文化庁としては、貴協会が公益法人として適切な法人運営を行い社会的信頼を確保することが最も重要であると考えており、このことを踏まえ、改めて、以下の事項を記載した報告書を三月二十六日、つまりきのうですね、までに提出していただきたく強くお願いします、こう書いてあるんですね。報告事項の内容は、十三年の十月、文化庁の指導を受けての貴協会の業務改善措置結果報告以降の協会の対応と事実関係について述べよ。二番目は、刀剣審査の公正性、透明性を確保するための今後の方策。

 これだけ強く要請して、当然きのうは報告書があるんだろうと思ったんですが、ここまで強く要請したものをどうして延期したんですか。確かに佐々会長が来られて次長と会うというのはあるでしょう。しかし、これだけ強く要請しておいて、あっさりと、三、四日延ばしましょうと、そんなもんなんですか。どうして延ばしたんですか。

高塩政府参考人 この通知を出しました後に同協会の会長でございます佐々会長から、私どもの方に訪れたいということがございまして、その日程調整の結果、明日午前中ということになったわけでございまして、私どもとしては、その話し合いの結果を経た上で報告書を提出していただいた方が妥当というふうに考えまして、三月三十日までに提出するようにということを口頭で伝達したところでございます。

保坂(展)委員 先ほど文化庁の室長に伺いますと、三月三十日には同協会の理事会が開催されるそうなんですね。ここでは、評議員の方々の任期切れの人事案件があると。理事は評議員から選出をされるという大変重要な日なんですね、三月三十日というのは。

 私は、少し懸念をいたしますのは、これだけ迷走しているわけです、この問題は。何を懸念しているかというと、この三月三十日の理事会などで、文化庁の指導やルール、規範に基づくべきだという声がこういう協会の中にあるわけです、あるから我々のもとにも届いてくる。そういう人たちをいわばカットして、二月二十六日の文書のような、文化庁なんというのはいろいろ言っているだけだということで、おかしいよ、文化庁の指導に従った方がいいよというような関係者の声も一切無視するような人事が起こってしまわないだろうかということをすごく心配しているわけですね。その辺はどう考えていますか、文化庁は。

高塩政府参考人 日本美術刀剣協会からは、同協会の現評議員の任期は本年の三月三十一日で満了するというふうに伺っております。評議員の選任につきましては、協会の寄附行為第二十一条によれば、「評議員は、会員の中から理事会の推薦により、会長がこれを委嘱する。」ということとされておりまして、協会内部の方で決定されるべき問題だというふうに考えております。

保坂(展)委員 大臣、大丈夫ですかね、こんな感じでね。次長があした会うというんですけれども。私はとても心配ですよ、はっきり言って。

 もう一点申し上げましょう。もう一点聞きますよ、次長。

 三匠会、こういう刀剣にかかわる皆さんが協会に要望書を出しているんですね。三点です。これは昨年の十一月八日ですよ。文化庁の行政指導に従えというのが一点。二点目は、不正疑惑対象への厳正な対応をしろというのが二点。三番目には、公益性を高いレベルで保持してほしい、この三点を協会に要望しているんです。そして十一月十六日には、三匠会の会長及び副会長が山崎課長を訪ねて厳格な指導を求めているというんですが、同じ中身でしたか。どういう中身でしたか。

高塩政府参考人 今御指摘ございましたように、平成十八年十一月十六日、日本美術刀剣保存協会の所属団体でございます三匠会の竹井会長ほかの皆様方が文化庁に来訪いたしまして、日本美術刀剣保存協会の刀剣審査に係ります文化庁と同協会の対応状況についての質問や、文化庁から同協会を厳しく指導してほしいとの要請がございました。

 これを受けまして、文化庁から三匠会に対しましては、日本美術刀剣保存協会に対しまして平成十三年の同協会への業務改善措置報告以降の刀剣審査への申請に関する事実関係等の報告を求めていることなどを伝えたところでございます。

保坂(展)委員 次長もまじめな方だと思いますけれども、ここは本当に大事な、あした午前中ですか、どういう対応をされるのか。今のような答弁ぶりで、協会の規約を読み上げていただいても、私はすっきりしないんです。

 こういうことで迷走してきて、相当国会での議論もあったのに、私と伊吹大臣の議事録さえ、このままで大丈夫なんだという根拠になってしまうわけですから、やはりこれは厳しく。本当は期限を延ばしたのもよくないですよ。

 そして、なお、絶対に確保してほしいと思うのは、文化庁の言っていることはもっともなことなんですよ。疑いがあったりするようなことはなくさなきゃいけないんですね。というようなことを言う人に対して、それを人事から一掃したりするようなことが起こったら、これは改革でも何でもなくて、逆の作用ですから。これは大臣から、ちょっと自信なげなんで、しっかり激励をして、筋を通せと言っていただきたいと思います。

伊吹国務大臣 仕事の指示は文部科学省できちっと私がしております。

 きょう各先生から御指摘があったことは、あす、そのまま次長は佐々会長にお伝えするでしょうし、佐々さんも、私は全く面識がないわけではありません。この方は警察庁におられて、仕事の上では私は幾らかのおつき合い、面識がかつてございました。物のわからない方ではないと思いますので、あす十分話をさせて、次長には、もうきちっと決着をつけろと指示してありますから、大臣の指示に従えない次長であれば、それは次長がみずからの進退は判断することですから、私の指示どおりの仕事はすると思います。

保坂(展)委員 この問題は、先ほど佐々木委員からもお話があったように、どうも奥が深いようです。どういう事情でこういう迷走を続けているのかは、私もちょっと理解しかねるところがあるんですね。ちょっと常軌を逸しているなと。

 ですから、参考人で佐々会長をお招きいただきたいという要望を私からも委員長にしておきます。

桝屋委員長 後刻、理事会で協議いたします。

保坂(展)委員 原子力関係、あしたイーターの条約にかかわる法案審議がありますが、そちらに話題を移したいと思います。

 前回、私は、「もんじゅ」の方に視察に行ったときに、原子力機構、あしたの法律改正案の中で出てくると思うんですが、こちらの責任者から、いわゆる活断層について、まさに志賀原発周辺で記録が余りなかった大地震が起こった直後でございますが、その当時も、他の二者と連携をして調査をするというふうに言っておりました。

 しかし、この能登半島沖地震も踏まえて、これは徹底しなければいけないだろう、グレーゾーンとか、ぼんやりやっているなんということは許されないというふうに思いますが、文科省、どうでしょうか。

藤田政府参考人 御説明申し上げます。

 先日の御質問にお答えを申し上げましたとおり、現在、「もんじゅ」等の周辺の海域及び陸域におきまして、日本原子力発電、関西電力、そして原子力機構、三者が連携協力して地質調査を実施しているところでございます。

 それで、今回実施中の調査におきましては、原子力安全・保安院の定めました新耐震指針に照らしました耐震安全性の評価方法並びに確認基準、こういった指示文書に基づきまして、周辺の半径三十キロメートルにわたります陸域及び海域につきまして、地質に関する最新の文献に照らして各種の調査を実施する。それから、特に敷地近傍にありましては、不明瞭もしくは小規模な変動地形までも含めて詳細な調査を実施する、こういった調査を実施いたしまして、活断層等の分布を把握するなど、綿密に調査を実施してきているところでございまして、機構といたしまして、できる限り地質調査の信頼性が確保されるよう努力をしているというふうに聞いているところでございます。

保坂(展)委員 甘利大臣が指示をされた、電力会社各社で、OBも含めて洗いざらいこの際何があったのかを徹底調査せよというところで、当初、原発の温排水の問題とかいろいろ出てきましたけれども、最近に至って、一つ一つ見れば、もう大変な大事故につながりかねない問題が各社から続々上がってきております。

 そこでなんですけれども、例えば、「ふげん」や「もんじゅ」、あるいは東海再処理工場など、例えば原子力機構などがやっている文科省管轄の原子力施設において、こういう調査を指示されているのかどうか、これはいかがですか。つまり、電力会社系でこれだけあった。同じ指針、同じ基準でやるべきじゃないかということなんですね。文科省、どうですか。

藤田政府参考人 御説明申し上げます。

 電力会社等で臨界等におきます情報の開示がなされていなかったというふうなことも踏まえまして、原子力機構におきまして、「もんじゅ」「ふげん」等の機構の保有をいたします原子炉の自動停止、それから、臨界事故にかかわる未報告事例の有無に関しまして、過去の対応状況の記録を確認するなど、自主的に現在調査を進めてきているところでございます。

 私どもでこれまで機構から聞き取りをいたしました範囲では、「もんじゅ」「ふげん」に関し、臨界事故を含め、計画外停止など、国に対し報告すべきであるにもかかわらず報告を行わなかった事例は、これまでのところないというふうに聞いているところでございます。

保坂(展)委員 これまで電力会社もなかったんですね、これね。こんなことがあっちゃいかぬということで、表に出したら大変だということで隠してきたということですね。

 保安院にちょっと聞きたいんですが、私、原子力保安院というのは、電力以外の、今の原子力機構の、すべての原子力施設に対する規制を行っていると思っていて、例えば伊吹大臣が洗いざらい調べろというふうに命を発したときに、保安院も、文科省管轄の原子力施設についても規制を担当しているので、我々の仕事ですときのう言ったんですね。私が帰ろうとしたら、また飛んでこられて、いや、ちょっと違っていました、あれは文科省ですと。何かエアポケットみたいになっちゃって、これは重要なことがうまく図られないんじゃないかという心配があるんですが、その辺はどうなっていますか。

青山政府参考人 御指摘のとおり、私ども経済産業省におきましては、電力会社におけるデータ改ざん等の問題についての総点検を昨年求めているところでございます。

 先生御指摘の、ほかの原子力関係の施設、特に核燃料サイクルの関係の施設につきましては、私ども原子力安全・保安院が担当いたしております。

 その観点でいきますと、日本原子力研究開発機構におきましても、その関連の施設、例えば、「ふげん」「もんじゅ」、再処理施設などがあるわけでございます。これらにつきましては、旧動力炉・核燃料開発事業団の抜本的改革、いわゆる動燃改革におきまして、動燃みずからが業務品質の向上、それから、全施設設備の安全性の向上ということを目指して総点検を実施してきているものでございます。

保坂(展)委員 ちょっと時間が押してきてしまいましたけれども、伊吹大臣に最後に一言お願いしたいんですが、経済産業省のこのプレスリリースを見ると、とにかく洗いざらい調べろと、そして、文書が残っていなくてもリタイアした人が証言するかもしれないということでやったわけですね。同じことを文科省管轄のところでもやってほしいんです。原子力事故が起きたら、どの省庁がやっているかは国民には関係ありませんから。ぜひお願いします。

伊吹国務大臣 電力会社において、事故がなかったと言っておりながら、そういうことが甘利さんがいろいろ手を入れた結果出てきたわけですね。その事実を見まして、私から担当局長には、よくその辺をもう一度再確認しろという指示は出してございます。

保坂(展)委員 時間になりましたので、ぜひそれは厳重にやっていただきたいということをお願いして、終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

桝屋委員長 次に、内閣提出、独立行政法人日本原子力研究開発機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。伊吹文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 独立行政法人日本原子力研究開発機構法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

伊吹国務大臣 このたび政府から提出いたしました独立行政法人日本原子力研究開発機構法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 政府は、核融合エネルギーの実現に向けた研究開発を国際協力により実施するイーター事業等に我が国として参加するため、今国会において、イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定等の締結について、御承認をお願いしているところであります。

 同協定等において、加盟者は、国内機関等を通じて、イーターに必要な機器の製作等を行うこととされております。

 この法律案は、独立行政法人日本原子力研究開発機構を当該国内機関等に指定して、同協定等に基づく我が国の義務の履行を確保するために、所要の規定の整備を行うものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、主務大臣は、国際約束の履行に必要があると認めるときは、独立行政法人日本原子力研究開発機構に対し、必要な措置をとることを求めることができることといたしております。

 第二に、主務大臣から当該求めがあったときは、独立行政法人日本原子力研究開発機構は当該求めに応じなければならないこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

 以上です。

桝屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、明二十八日水曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十八分散会


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