衆議院

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第10号 平成20年5月21日(水曜日)

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平成二十年五月二十一日(水曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 佐藤 茂樹君

   理事 伊藤信太郎君 理事 小渕 優子君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 淳司君

   理事 渡辺 具能君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 富田 茂之君

      阿部 俊子君    井脇ノブ子君

      飯島 夕雁君    浮島 敏男君

      江崎 鐵磨君    小川 友一君

      岡下 信子君    加藤 紘一君

      近藤 基彦君    佐藤  錬君

      篠田 陽介君    鈴木 恒夫君

      中森ふくよ君    原田 令嗣君

      平口  洋君    二田 孝治君

      保坂  武君    馬渡 龍治君

      松野 博一君   山本ともひろ君

      逢坂 誠二君    田島 一成君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      藤村  修君    細野 豪志君

      松本 大輔君    山口  壯君

      笠  浩史君    和田 隆志君

      西  博義君    石井 郁子君

      日森 文尋君

    …………………………………

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   文部科学大臣政務官    原田 令嗣君

   文部科学大臣政務官    保坂  武君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 御園慎一郎君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  福田 峰之君     浮島 敏男君

  藤田 幹雄君     篠田 陽介君

  田島 一成君     細野 豪志君

  山口  壯君     逢坂 誠二君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     福田 峰之君

  篠田 陽介君     藤田 幹雄君

  逢坂 誠二君     山口  壯君

  細野 豪志君     田島 一成君

    ―――――――――――――

五月二十一日

 すべての障害児に行き届いた教育の保障を求めることに関する請願(牧義夫君紹介)(第三一二七号)

 著作権保護期間の延長反対に関する請願(土肥隆一君紹介)(第三一七〇号)

 同(川内博史君紹介)(第三一九四号)

 同(高井美穂君紹介)(第三二〇四号)

 同(楠田大蔵君紹介)(第三二一一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 社会教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、社会教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る二十三日金曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官御園慎一郎君、文部科学省生涯学習政策局長加茂川幸夫君、初等中等教育局長金森越哉君及び文化庁次長高塩至君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。逢坂誠二君。

逢坂委員 おはようございます。民主党の逢坂誠二でございます。

 大臣、きょうはお世話になりますけれども、よろしくお願いいたします。

 社会教育法の改正に関連しまして、図書館についてきょうは幾つか質疑をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 まず最初に、個別の事項に入る前に大臣と若干やりとりをしたいと思っておりますけれども、図書館というのは一体何かというか、図書館というのはどういうふうに大臣、おとらえになっているかなというところをお伺いしたいんです。

 一般論として、図書館といえば、本があって、本の貸し借りをするところというようなイメージがあるわけでございます。ただ、やはり図書館というのは、もちろん本の貸し借り以外にも、さまざまな情報に関してアドバイスをいただけたり、さまざまな情報について相談をしたり、場合によっては、地域によっては、地域のある種のコミュニティーのような役割を果たしていたりとか、人間が、子供から大人、大人からそして壮年、お年寄りになるに従って、一生を通じての学習の場であったり、あるいはまた民主主義、私は民主主義で非常に大事なのは、やはり適時適切に情報が出されていることが大事だと思うんですが、ある種の色眼鏡なしに、公平公正に情報を提供してくれる場所も図書館の機能なのかなというふうにも思ったりするわけです。

 ですから、一般論として図書館というと、本の貸し借りということがどうしてもメーンになりますけれども、それ以外の相当大きな機能を持っているのが図書館ではないかなというふうに私自身は感じているわけですが、大臣は図書館についてどのような御認識をお持ちでしょうか。

渡海国務大臣 一昨年末に教育基本法が改正をされまして、その中で、人生のあらゆる段階といいますか、生涯にわたって教育をする、こういった概念がより明確にされたわけでございます。時代に応じて人生観というものも変わるわけでありますし、社会の状況も変化をいたします。そういう中にあって、今委員がおっしゃいましたようなさまざまな機能、単に本が置いてあって、そこへ行って本を読む、または貸し出して知識を得るという単純な機能だけではなくて、幅広い情報発信の場であり、また、地域の学習の拠点といいますか、住民の皆さんが大いにそういった観点から利用していただくということが今求められているというふうに考えております。

 そういう観点からも、今回、さまざまな改正をするわけでありますけれども、これは社会教育法の改正という中で行われているわけでありますけれども、我々はやはり不断に、そのときの状況状況に応じた見直しというものを行っていって、時代に合った、また、これは後でいろいろな議論が出てくるんだというふうに思っておりますが、より地域の主体性で運営をされるような、そういった図書館というものをこれから目指していかなきゃいけない。これが私の基本的な認識でございます。

逢坂委員 今まさに、大臣の発言の中に、地域での学び続ける重要な拠点だという話がございました。私もまさに図書館というのはそういうものなんだろうなということで、全く同感でございます。

 そこで、大臣、ちょっとお考えいただきたいんですけれども、図書館というものが、本のあるところ、情報がたくさんあるところだというふうに位置づけたときに、今ITの時代ですから、全く無人の図書館というものを想定したら、ただし蔵書の冊数は世界で一番多い、それから、さまざまな情報端末によっていろいろな情報もとることができるというようなことで、もし無人の図書館というものがあって、それが最高のIT技術を駆使して情報が出てくるというものがあったとしたら、どのようにお考えかというのを聞きたいんです。

 私は、そういうものがもしあったとしても、もしかしたら図書館としては余り機能しないんじゃないかなと。やはり地域の図書館のいろいろな働きを見ていますと、いろいろな催しをやったり、気づきがなかったところに新たな気づきを与えていただいたり、やはり図書館が図書館という機能をするためには、人の存在というものが、介在していることが極めて大事なことだというふうに私は思うんですが、大臣、この点、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 基本的な認識としては、今委員がおっしゃったとおりだと思います。

 IT時代でございますから、情報を得るということを考えますと、そういった手段でいろいろな知識を得るということもあるわけでございますが、これは、ある意味一方通行でございまして、求めに応じて情報を得ることができる。これはやはり検索システムが非常に実は発達をして、私が最初にインターネットをやったのはもう今から二十年近く前でございます。そのころは皆さん余りやっていらっしゃいませんでした、今私は全くおくれておりますけれども。しかしながら、どう考えてもこれは一方通行なんですね。

 しかし、双方向のいろいろな手段というものは今あります、ITを通じても。しかし、やはり人間と人間が直接いろいろなやりとりをし、なおかつ、その中で感じるもの、また、その情報発信一つにしてもそういったことは非常に重要であろうと思いますし、いろいろな意味で、専門家がいれば指導も受けられる、そういった体制を整えていくことが非常に図書館に求められている機能であろうというふうに思っております。

逢坂委員 まさに今大臣から御答弁いただいたとおり、図書館が図書館として機能するためには、やはりそこに人の介在というものがどうしても不可欠だという御認識を御披瀝いただきましたが、私もまさに同感でございまして、そういったものが全国にふえていくことが望ましいがなというふうに思っているところでございます。

 さてそこで、政府参考人の方にお伺いをしたいんですけれども、まず最初に、日本の図書館の整備の状況、現況についてお伺いをしたいんですが、全国の公立図書館の整備の現状に対する認識についてお伺いをいたします。

 お手元に資料を用意いたしました。資料のナンバー1をごらんいただきたいんですけれども、この中に「公立図書館の設置」というものがございまして、「G7各国」という表がつけてございます。

 これは日本図書館協会が作成した資料を引用させていただきましたが、これを見ますと、G7の各国平均では、人口十万人当たり五・五館の図書館がある。日本は残念ながら、その中でこれの半分程度、二・四館しかないということなんですね。これは上を見ても下を見ても切りがないという気もするわけですが、フィンランドなんかは人口十万人当たり二十二・二六館というような数字も出ているわけですが、図書館整備の現況について、まず政府参考人、どのように御理解しているでしょうか。

加茂川政府参考人 公立図書館の整備状況について御説明申し上げたいと思います。

 現在、公立図書館は全国に二千九百九十五館設置をされておりまして、先ほどのお話にもございましたように、各地域における生涯学習推進のための重要な拠点となっておるわけでございます。

 委員御指摘なさいましたように、関係団体の調査によりますと、諸外国と比べまして整備状況がおくれているというデータもあるわけでございます。これを子細に見てみますと、町村レベルにおける設置率が依然として低い状況にございまして、その機能が十分に発揮されているという状況とは言いがたいと思っております。

 具体に数字を見てみますと、千百八十町のうち六百三十六町、設置率が五三・九%。村の場合には、二百九十五村のうち六十五村、設置率がわずか二二%でございまして、やはりこの数字を見ても十分とは言えないと思っております。

 先ほど、全国の公立図書館の数を間違えたように思っております。全国では二千九百五十五館設置されておりますので、訂正させていただきます。

逢坂委員 今、政府参考人から話がありましたとおり、マクロの数字で見ても、G7の中では決して整備が進んでいる方ではない。そして、その中でも、とりわけてもなお町村部において整備がおくれているというような御認識だったかというふうに思うんです。

 そこで、政府参考人、これはやはり何とかして、せめてG7水準ぐらいには引き上げたいものだなと私なんかは思うわけですが、例えばそういうふうに、人口十万人当たり五館程度を何とか確保したいと思えば、日本の場合は、中学校区に一つぐらい図書館があると大体その水準になるんだそうですね。

 そこで、政府参考人にお伺いしたいんですが、過疎地や町村部においてこの図書館整備を促進するために、私は何らかの特別な手当て、対策というものが必要ではないかというふうに思うんですが、このあたりの御認識、参考人いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 図書館の設置、廃止、あるいはその具体的な事業の内容というものにつきましては、第一義的にはその設置者、具体には地方公共団体がそれぞれ判断、定めるものでございまして、各館の運営もその地域の実情に応じて行われている、運営されているものと認識をいたしておるわけでございます。

 図書館の設置につきましては、実はかつて社会教育施設整備費補助金というものがございましたが、これは既に平成九年に廃止されておるわけでございます。公立図書館を整備しようといたします際には、現在では、起債等の手段をもちまして、各地方公共団体が単独で整備をすることとなっておるわけでございます。

 公立図書館の整備がどんどん進んでまいりまして、主要諸国に比べて遜色のない整備状況が実現することは、委員御指摘のように、私どもとしても望ましいことと考えておるわけでございますが、何より地方自治体のまず判断があるということを前提に考えますとき、私どもとしては、地方公共団体の取り組みがより進んでいくように、これを促すことに今努力をいたしておるところでございます。具体には、その公立図書館の建築等に活用できる支援策等の紹介、情報を提供することによりまして、そういった取り組みを促しておるところでございます。

逢坂委員 公立図書館を設置するしないはまさに自治体の主体性だということは、確かにそのとおりだというふうには思うわけですが、例えば子どもの読書活動推進法でありますとか、文字・活字文化振興法など、この法律の中には、いずれも公立図書館振興の施策を国に求めているという側面もあるわけですね。すなわち、国家としてやはり図書館に期待すべき役割というのは非常に大きいわけですね。設置をどうするこうするは、やはり自治体が主体的にやるとはいいながらも、国家としての施策の中にもこれは位置づけてやられているわけですから、私はもう一歩踏み込んだ対応、対策というものが必要になってくるのではないかというふうに思います。

 しかも、先ほどの答弁では、それは起債によって何とかなるというような話でございますが、現在の財政事情を考えてみますと、市町村もやみくもに起債の発行はできないというような状況もございますので、文部科学省としてもう一歩踏み込んだ見解というものはないのかどうか。政府参考人、いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 委員御指摘にございました文字・活字文化振興法におきましては、市町村が公立図書館を設置し、適切に配置に努めるものとする、市町村の義務という規定になってございます。また、子どもの読書活動の推進に関する法律に基づきます基本計画におきましても、その取り組みは地方公共団体を前提とした整備を促すことになっておるわけでございまして、国としては、そのことを前提にしながらいろいろな支援策、先ほど情報提供のことを申し上げましたけれども、前提にしながら、その促進方策を考えていかざるを得ない状況にあることも御理解いただきたいと思っております。

逢坂委員 ここで大臣にお伺いしますけれども、確かに公立図書館の法律上の設置義務は市町村だ、自治体だということでございますけれども、果たしてそういう状況で、この日本の図書館整備が先ほどのG7の水準に追いついていくのかどうか。私は、やはりもう一歩踏み込む必要があるのではないかという気がするわけですね。

 例えば、財政支援というのは、もちろんそれは一つの方法だと思いますし、もう一つは、図書館というのは、ある一定の規模、グレードみたいなものは一般的にはイメージされるわけですが、小規模な地域においては、それぞれの多様なあり方みたいなものを国としても導いていくとか、そういう事例を蓄積していくとか、さまざまなやり口はあるんだというふうに思うんですが、大臣、これはG7並みに追いつくために大臣として、何かこうした方がいいなというのはどうでしょうか、ございますでしょうか。

渡海国務大臣 委員の質問にお答えをいたします前に、最近私は、いろいろな案件で考えているのは、例えば地方分権という大きなテーマがございます。その中で、できるだけいろいろなことは主体的に地方がやっていただく、ただし、その財政的な裏打ちをどうするか、税の移譲というような方法もございましょうし。身近な行政というのは基本的に地域でやっていただく、その税財源を国と地方でどうやって配分をしていくか、このことを全体像としてやっていかなきゃいけないということで、三位一体という改革を行ったわけでございます。

 これが完璧だとは思っておりませんから、不断の努力を重ねて、より地方がやるべきこと、国がやはりこれはちゃんとやらなきゃいけないだろうということを、その時代に応じて見直していくということはあるとしても、そういう大原則に立って、今委員がおっしゃったような、そうはいっても、小さなところでなかなか言うようにはできないといったようなところをどういうようにするかという観点が要ると思います。

 そのときに一つできますことは、やはりこういう小さなものであっても、例えばこういうやり方をやれば、地域の住民に対していろいろな情報を提供できるよといったようなものをしっかりとしたモデルとして示してあげる、そのことによって地域が地域で努力をしていただければやれる、そういったことをモデル事業として我々もやっておりますし、また情報発信をしていくということは非常に大事なことであるというふうに思いますし、今後とも努力をしていきたいというふうに考えております。

逢坂委員 大臣、ぜひそのG7の水準に追いつくように頑張っていただきたいし、私もアイデアがあればどんどん出していきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。

 次に、図書館の職員についてお伺いをしたいんです。

 先ほどの大臣の答弁の中でも、私も全く同感でございますけれども、人のいない図書館、職員のいない図書館などというものは、やはり機能しないということでありまして、図書館がいい図書館かどうかを決めるのは、やはり、その設備や蔵書の充実さもあるけれども、職員のよしあしというものがその浮沈を決めるというふうに私は思っているわけですね。こういう観点からお伺いをしたいんです。

 政府参考人にお伺いをしますが、まず一つ、私、図書館法を読んでおやっと思ったのですが、第四条に、「図書館に置かれる専門的職員を司書及び司書補と称する。」と書いてあるんですけれども、専門的職員というのは、これはどういう意味なんですか、専門的というのは。専門職員となぜ呼ばないのか。専門的職員という奥歯に物の挟まったような言い方をしておるんですが、これは一体どういうことなのか。これについては、ほかの例えば学芸員なんかも実はそうなんじゃないかというような話もあったんですが、学芸員がどうであれこうであれ、ほかがそうだからここもそうでいいということではなくて、なぜここが的なのかどうか。専門職員でいいんじゃないかと思うんですが、参考人、いかがですか。

加茂川政府参考人 委員御指摘なさいましたように、図書館法の四条には専門的職員、的という言葉を使った職の規定があるわけでございます。ここで規定されております専門的職員とは、私どもの理解といたしましては、高度な専門的知識、技能を有する図書館のスペシャリストということを指しておると理解をしておりまして、専門的、すなわち高度な専門的知識、技能を有するという意味でございますので、言葉としては、的がなくてもいいではないかと委員からお話がございました、その専門職員と同じ意味であると理解をしております。

 ただ、法律の条文としてこの専門的職員という用語が使われました経緯を調べてみましたら、類似に、博物館法にも見られるわけでございますが、この図書館法よりも先に制定されてございます教育公務員特例法、これは昭和二十四年にできた法律でございますが、ここでも専門的教育職員という用語が用いられておりまして、法の整備としては、恐らくこの例に倣ったのではないかと思っております。

 的が入っておりますために、その専門性でありますとか専門職員として違ったものという意味ではなくて、中身としては同じもの、同じ専門性を持った職員を指しておるものと理解をいたしておるところでございます。

逢坂委員 という答弁であるならば、的などというあいまいなものは取っていいと私は思うわけでありまして、よろしくない過去の前例にとらわれる必要はないというふうに思うわけですね。この際、一気に的を取るというふうなことをお考えになってみてはいかがか。その方が、いわゆる専門職員として、まさに今政府参考人がおっしゃったような専門性をばしっと発揮できるようになるんだと私は思っておりますので、ぜひ御検討いただきたいなというふうに思います。

 それから次に、法の十三条についてお伺いをしたいんです。

 法の十三条を読むと、これもどうも私はよくわからなかったんですが、公立図書館に館長を置くということは書いてあるんですけれども、館長並びに当該地方公共団体の教育委員会が必要と認める職員を置くと書いてあるわけですね。館長については、まさにこれは必置、置くというふうに書いてあるんですが、あとは、必要と認める職員を置くというふうになっているんです。

 政府参考人、ここもお伺いしたいんですけれども、先ほど来の議論からしてみますと、館長さんだけでは図書館というのはやはり動かぬわけですね。だから、そこにまさにその専門性のある職員を置くということは非常に大事なことではないかと思うんですが、これは、館長及び専門職員を置くというふうにはなぜならないんでしょうかね。そうすべきだと私は思うんですが、政府参考人、いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 先ほど来のお話にございますように、図書館がいわばその地域の知の拠点、学習の拠点として重要な役割を果たしていく上で、専門性を備えた司書が、専門的職員としてその重要性が高いというのは私どもも同じ認識を持っておるわけでございます。特に、利用者のニーズが多様化、高度化する昨今、司書がその専門的な知識、経験を十分に生かして図書館における中心的な役割を果たすべきだという考えを私どもも強く持っておるわけでございます。

 その前提で考えますときに、御指摘にございました現行図書館法第十三条でございますが、館長につきましては、規定上、必置と理解をしてございます。ただ、司書に相当する職員につきましては、教育委員会が必要と認める専門的職員を置くということになってございまして、条文の解釈上、または制度上は必置になっていないわけでございます。教育委員会の判断がここに介在をして専門的職員の配置が行われるということでございます。

 司書の専門性、図書館における役割を考えますときには、できるだけ配置してほしい、配置すべきであるというように私どもは考えておりまして、「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」、運営のガイドラインを私どもは定めておるわけでございますが、この基準におきましては、専門的職員を確保することということを前提にこれを促しておるわけでございます。

 ただ、具体的に公立図書館にどのような職員を配置いたしますかにつきましても、これは設置者である地方公共団体個々に判断をしておりますので、現状を申し上げますと、先ほど申し上げました全国二千九百五十五館ございます公立図書館のうち、司書が配置されていない図書館が約三割、九百七十二館見られるのが現状でございます。

逢坂委員 政府としても、政府参考人の口から、いわゆる専門的職員の配置が望ましいという基本姿勢を持っておられるわけでございますので、そして、現実にはそうはいいながらも配置されていないところがあるというのであれば、やはりその配置を促すことのできるような取り組みをしていくことが大事であろうなというふうに思っているところでございます。これもぜひ御検討いただきたいことの一つでございます。

 次に、ちょっと館長さんのことについてお伺いをしたいんですけれども、資料のナンバー2をごらんください。資料のナンバー2の四番「資料の貸出し」の前に「図書館長」というようなところがあるんですが、図書館長さんが専任であるかどうかとか司書資格を持っているかどうかというのを見ると、司書率というのは二〇%程度なんですね。これは、やはり私は、図書館のある種の専門性を思うと、館長さんというのは司書資格を持っていることが望ましいというふうには思うわけですが、このあたりについて政府参考人はいかがお考えですか。

加茂川政府参考人 図書館長の基礎資格につきましても、先ほど申しました「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」の定めを御紹介いたしますと、「館長となる者は、司書となる資格を有する者が望ましい。」と定めておりまして、私どもは、委員御指摘のように、館長の基礎資格としては司書の資格を持っていることが望ましいものだという考え方を持っておりますし、公にしておるわけでございます。

 ただ、館長の基礎資格につきまして司書という資格を有するべきかどうかにつきましては、かつて議論がございました。それは平成十一年の地方分権一括法の審議のときでございまして、この際に、国庫補助を受ける場合の図書館長の資格についてでございますが、司書資格要件に関する規定がそれまでございましたものが削除された経緯がございます。これは、こういった、図書館長の基礎的な資質についてどのようなものを求めて実際任用、配置していくかを地方にゆだねるべきだという基本的な考え方に基づいているものと理解をしておるわけでございます。

 ですから、公立図書館長について司書資格保有者であることが望ましいということは私、理解しておりますけれども、改めてそのことを法的レベルで求めることにつきましては、今申し上げました地方分権の流れとなかなか一致せずに、難しい課題ではないかと思っておるわけでございます。

 また、一つ事例を申し上げますけれども、図書館長について、司書という専門資格を持っていることが望ましいことは繰り返し申し上げたいと思いますが、具体的な図書館長の発令事例を見てみました際に、専門的な資格の代表である司書資格を必ずしも持っていない行政職が図書館長に任用された場合にも、司書資格を有している者と劣らない実績を上げているというケースも実際見られるわけでございまして、そういった事案も勘案しながら物事を判断していかなきゃならないかなと思っていることも御理解いただきたいと思っております。

逢坂委員 今の後段の答弁はちょっと私は残念だな。せっかく今回の法改正で、司書の資格についても専門性を高めようとか、研修をふやして頑張ってもらわないかぬという基本姿勢を持っているのに、いや、司書資格のない人もちゃんとやれている人がいるから、館長の司書資格は法では決めなくてもいいんだみたいな発言をするのは、ちょっと姿勢がぐらついているような気が私はするんですね。

 そうじゃなくて、やはり、その望ましい基準に定めているんだったら、法においてそれはきっちりと政府の姿勢を示して、館長は司書資格を持っていることが望ましいと法で書いた上で、だから我々は司書の資格をさらにスキルアップするためにさまざまなことをやっているんだという論理構成にしなかったら、こんなの整合性とれませんよ。

 そこのところは、何か自分で提案しておいて自分で否定するようなことを言っちゃいけないような気がするんですが、大臣、いかがですか。

渡海国務大臣 法律で書くかガイドラインを示すかというのは、縛りの度合いというのが確かに違うというふうに思います。

 ただ、今ちょっと議論を聞かせていただいて、これは私の率直な印象でございますが、いわゆる専門的な知識を持っている人でなければできないかどうかということはやはり考えていいんだろうと思います。

 社会にはいろいろな形態がございますから、例えば大学の学長さんは必ず専門的な何かを、どこかの分野ですぐれていなきゃいけないということもないわけでありまして、これは少し話が肥大化しておるかもしれませんが、例えばメーカーがありますね。そこの社長さんが必ずものづくりにたけた人とは限らないわけでして、これは小さな組織と大きな組織というのは違うかもしれませんが、私は、専門家を生かし得る、そして、図書館をちゃんと運営する、そういった能力がある人、しかも専門性を持っている人がそれは一番望ましい、こういう記述に今ガイドラインはなっているというふうに私自身は理解をいたしております。

 もう一点言わせていただくと、正直にお答えしますが、いわゆる専門性があるからその人がなるということは、とかく実は弊害もあるんですね。これは私はいろいろな組織というのはそうだと思いましたよ。私も技術者の集団にいましたから。結局は、自分の考えというものが非常に強く出過ぎて、では現実にマネジメントがうまくいっているかというと、いっていないケースもたくさんあるんですね。ですから、そういったことも考えながら、ガイドラインという形の中で、適材適所に選んでいただくということを決めさせていただいたというふうに私は理解しております。

 私も委員と同じような議論を内部でいたしました。私の理解としては、そういうことはあっていいんじゃないかというふうに考えております。

逢坂委員 この点についてはもう少し相互理解が必要かなというふうに思いますが、でも、前提としては、先ほど政府参考人もおっしゃられたように、基本的には館長さんも司書資格を持っていることが望ましいというのが大原則であることの確認は、大臣、よろしいですね。うなずいていただきましたので。

 それで、次にちょっと資料費の方へ行きたいと思うんです。

 また資料のナンバー1をごらんいただきたいんですけれども、公立図書館の資料費が実は年々減少している。例えば、一館当たりの資料費で見ますと、一九九三年に一千六百十七万円ということで一番多かったんですが、以降どんどん激減をしまして、二〇〇七年では一館当たりの資料費が約一千万円程度になっているというようなことで、図書館の資料費というのは相当厳しい状況になってきているわけですね。

 先ほど大臣からも話がありましたけれども、三位一体改革の後で、私は三位一体改革、全く評価をしていないんですが、というのは、自治体の財源が、交付税で五・一兆円、補助金で一・七兆円、都合六・八兆円も一般財源を減らされただけの結果に終わっているわけですから。そういうことも反映して、公立図書館の資料費というのは大変厳しい状況になっているわけですね。

 そこで、また資料をごらんいただきたいんですが、学校図書の整備費についてちょっと見ていただきたいと思うんです。資料を行ったり来たりで恐縮ですが、ナンバー6をちょっとごらんいただきたいと思います。

 ナンバー6を見ますと、これは実は四月二十一日に文部科学省が発表した報道資料でありますけれども、基準財政需要額に対して、文部科学省と総務省が相談をして、学校図書の費用として平成十八年度は百三十一億円措置した。これは上の表ですね。そして、その横を見ていただきますと、十九年度には、小学校、中学校分合わせまして基準財政需要額として百九十九億円措置したということになっているわけですね。これを見ると、おお、すごいなというような感じがするわけですが、そこで一方、今度は、三つ戻っていただきまして、資料のナンバー3をごらんいただきたいんです。

 これは五月十日に共同通信が配信した記事なんですけれども、「学校図書館を充実させるため、〇七年度に国が市町村などに補助した図書購入費二百億円」という記載があるんですが、これは、基準財政需要額で二百億措置したということと、市町村に補助した図書購入費二百億というのは、適切な表現なんでしょうか。これはまず、交付税の専門家である総務省の方にお伺いしたいんですけれども。

御園政府参考人 御指摘の学校図書整備費でございますけれども、これは六十年度に一般財源化されまして、各年度の所要額を文部科学省と我が方とで協議しながら地方財政計画に計上して地方交付税で措置しています。

 今御指摘の地方交付税は、言うまでもありませんが、地方公共団体の財政運営のために使途を制限しないで交付させていただく一般財源でございますので、これは、使途制限されて使用目的が限定されている補助金とは全く性格の違う財源でございます。そのことに関しては、地方交付税法においても、「国は、交付税の交付に当つては、地方自治の本旨を尊重し、条件をつけ、又はその使途を制限してはならない。」こういうふうに規定されておりますので、私どもとすれば、具体の使途については地方公共団体の自由裁量に任せているというふうに認識しておりますので、今御指摘のこのような記事というのは適当でないというふうに思っております。

逢坂委員 今総務省の方からこういう記事は適当でないという話がありましたけれども、私もまさに同感なんですね。これはやはり、基準財政需要額に算定した約二百億というものがあたかも補助金であるかのごとくに扱われることは、自治体の現場をかつて私自身も預かっていた者として、極めて不都合な表現になりまして、しかもこれは、ほかに流用しているなどと書かれると、あたかも、現金もらったものを悪いことに使っているかのように思われるわけですね。これはやはり、こういう誤解を招くような報道発表というのは控えるべきだというふうに私は思うわけですね。

 そして、さらにもっと言わせていただきますと、ナンバー6をもう一回ごらんいただきたいんですが、平成十八年度に百三十一億の地方財政措置、基準財政需要額に計上した。十九年度は百九十九億。約六十億円以上もふえているわけですが、それでは、実際の自治体の予算措置額というのは、十八年度百五十八億であり、十九年度は百五十五億なんですね。すなわち、基準財政需要額にどんなに上増しをしたとしても、自治体ではお金を出せない現実があるということなんだと思うんです。

 これは、まず文部科学省にお伺いしたいんですが、基準財政需要額をふやしたのに自治体の現場で予算がふえていない原因は何だとお考えですか。

金森政府参考人 学校図書館の図書整備につきましては、平成十九年度より新しい五カ年計画が始まっておりまして、御指摘ございましたように地方財政措置額が単年度当たり約百三十億円から約二百億円へと大幅に増額されましたが、平成十九年度における全国の図書予算総額は、学校図書館図書関係予算措置状況調べによりますと、前年度約二億円減の約百五十六億円にとどまっているところでございます。

 この調査におきまして、予算措置額が基準財政需要額より少なかった市町村につきましてその理由をお尋ねいたしましたところ、学校図書館図書標準を既に達成したとか前年度以前に集中的に図書を整備したなどの理由によるものは少数にとどまる一方、例えば、他の教育費に予算を集中した、当該自治体全体として財政状況が厳しいなど、その他の財政事情のためとの回答が多く寄せられたところでございまして、各市町村等の財政事情が学校図書費の予算措置にも影響している状況がうかがえるところでございます。

逢坂委員 文部科学省に申し上げたいんですけれども、これはやはり、基準財政需要額にどんなにカウントしても、交付税の総額がふえていない中では、残念ながら自治体の現場では学校図書費にお金を回す余裕というのはなかなかないのが現実なんですね。

 それで、ナンバー4をごらんいただきたいんですが、ナンバー4は高知新聞の社説なんですけれども、一番最後をごらんください。

 「文科省は今回の図書費調査によって地方の意識改革を促しているようだが、文科省の公教育に対する戦略のなさも逆に浮かび上がっている。」という指摘がされているわけですね。これは、文科省さん、この報道発表をして、自治体に、ほら金使えと言っても、現実にはもう米びつの底には米がないところへ幾らやってもそれは自治体いじめにしかなりませんので、このあたりをもう少しお考えになって予算措置をやるべきではないか。それで、中段に、「本来問われてしかるべきは先進国では最低レベルの教育予算であり、限られた教育予算を文科省が有効活用しているかという点だ。」という指摘もされているわけですので、ぜひこの指摘を真摯に受けとめていただきたいというふうに思います。

 時間もございませんので、次の質問に入りたいと思います。

 図書館法の九条に規定があるんですが、私はどうもこの規定がようわからぬのです。図書館法の九条に、「政府は、都道府県の設置する図書館に対し、官報その他一般公衆に対する広報の用に供せられる独立行政法人国立印刷局の刊行物を二部提供するものとする。」という規定があるんですが、この提供の趣旨というのは、要するに政府は都道府県の図書館に政府刊行物を二部ちゃんとやりますよという規定だと思うんですが、それでよろしいんでしょうか、政府参考人。

加茂川政府参考人 御指摘の趣旨だと私どもも理解をしております。

 図書館法九条は、公の出版物を優先的に公立図書館に提供して一般国民の広報の用に供しようとする趣旨の規定でございます。特に都道府県としておりますのは、都道府県立図書館が当該都道府県内の図書館奉仕、図書館サービスの中心になることが期待されておりますことから、こういう規定になっているものと理解をいたしております。

逢坂委員 であるならば、政府参考人、これは現実に行われているのかということをいろいろ調べてみると、必ずしも行われていないということでありますので、法にこういう規定があってやることになっているわけですから、ぜひこれはしっかりやってもらわなきゃ困るというふうに思います。よろしくお願いしたいと思います。

 そこで、もう時間も残り少なくなってまいりましたので、大臣、私、図書館というのは極めて国家の存立に大事なものだというふうに考えています。直接的にはすぐ効果がないのかもしれませんけれども、国家の全体の安定を考えると、最終的にはじわっと、この図書館が整備されているか否か、図書館の活動がしっかりしているかどうかによって、国家の将来というのは大きく変わってくるような気がするんですね。

 そこで、全国に広く図書館文化といいましょうか図書館活動を広げていくということについて、大臣の思い、御見解みたいなものをお伺いしたいということが一つと、私、そろそろ日本の図書館の設置の根本原理というか原点を変えるべき時期に来ているんではないかなというふうに思うんですね。

 図書館法を読みますと、法律の目的が「社会教育法の精神に基き、」というふうにあるわけですが、社会教育法の精神に基づくこともこれは非常に大事なんですけれども、現在のこの民主主義の社会を思うと、例えば国民の知る権利だとか多様な情報の自由な利用や活用に対する権利を保障するといったような観点も、これは図書館設置の非常に大きな原理原則、原点になるのではないかなと思うんですね。だから、法の目的をそろそろ変えるということも検討してしかるべきではないかというふうにも思うわけですね。

 大臣、この点も含めて、この図書館の活動をがっちりとやっていくということに対する意気込み、思いを、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

渡海国務大臣 時間が限られておりますから。要するに、地方にいろいろなことをゆだねることによって地方で格差が出るというこの構造を考えながら、是正措置を講じていくというのが基本だというふうに私は思っております。

 ただ、今、国民の例えば知る権利、また国民が広く生涯にわたって自分自身を研さんしていくといいますか教育をしていく、こういった機会を提供するというのは、これはやはり広く国民間で行われなきゃいけないということを考えれば、この地財措置という方法でなかなか先に進まないという場合には、それは法の目的を変えるということもありますが、やはり有効な手だてをどうやって打っていくかということは問題意識としてしっかり持たなきゃいけないんだろうというふうに思っております。

 今、学校耐震化のことが話題になっておりますが、これだって同じことなんですね。そういうことも含めて、そのときの時代の要請に応じてしっかりと目的が達成をされるように我々は不断の努力をしていきたい、そのように考えております。

逢坂委員 以上で質疑を終わりますけれども、大臣、これは国家の存立にかかわる重要なことだと私は思いますので、ぜひ長い目でこれからも御議論をおつき合いいただければと思います。

 ありがとうございます。

佐藤委員長 以上で逢坂誠二君の質疑は終了いたしました。

 次に、細野豪志君。

細野委員 逢坂議員の高尚な質問の後で、若干トーンが変わって恐縮でございますが、質問させていただきたいと思います。

 この法律案の中で、博物館に関しての運営状況を詳細に評価をする、さらにはそこからの情報提供、そういうことが法案の趣旨となっております。

 私が質問させていただきたいのは、日本に存在をする博物館、国立が四つあるわけでございますけれども、この四つの博物館が、いわゆるそこで並んでいる陳列物、それを適切にきちっと調達をしているかどうかということについて、突っ込んで質問させていただきたいというふうに思います。

 きょうは資料を配らせていただいておりますので、大臣、ちょっとごらんいただけますでしょうか。

 一枚目、二枚目、これが文部科学省の方からいただいた資料なんですが、一枚目は、文化庁本体が重要文化財であるとか国宝を買い取る場合のやり方について書いてあります。細かくは説明をしませんけれども、買い取り候補が挙がってきた後に、買取協議会というところで協議員が五人で議論して決める。買取評価会、これは価格を決めるんですね、ここも五人で評価を決めて、最終的に調達に至るということが流れになっています。

 ちなみに、本庁で買うときもそうですし博物館で買うときもそうですが、金額が結構かさみますので、一般競争入札というのが望ましいわけではありますが、事美術品に関して言うと、当然持っている人が限定されるわけですし、これを買うということになるわけですから、そういう意味で競争入札にはこれは適さないということで、随意契約による買い取りが認められている、これは当然だと思います。そういう前提での流れ。

 もう一つが、国立博物館の方の資料なんですが、二枚目をごらんいただけますでしょうか。こちらも似たようなプロセスにはなっているんですけれども、文化庁の場合には国宝であるとか重文に限って買いますが、博物館の場合には、それぞれの博物館、例えば東京博物館なら東京博物館、京都博物館なら京都博物館でそれぞれテーマを持っていろいろ展示物を買っていますから、これは初めの段階から、研究員による購入候補作品の選考というところからスタートをします。そこが申し出によるものと少し違うんですね。

 その次は似たようなプロセスになっていまして、外部有識者で構成される選考委員会で最終的にその選考が正しいかどうかをチェックして、そして評価委員会で価格を決めるという形になっています。事前に伺ったところだと、この評価委員会というのも五人で構成をされているということでございますので、四つある博物館、ほぼ同じ形で運営をしているということでございます。

 まず、文部科学省の政府委員に聞きたいんですが、この選考委員会と評価委員会、文化庁では買取協議会と買取評価会ということになるんですが、基本的には同じような運営をされているようですが、ここの適正な運営をどのように確保するという考え方に立っているのか、答弁を求めたいと思います。

高塩政府参考人 先生御質問でございました文化庁におきましては、国宝、重要文化財、それに準ずる文化財につきまして文化財の買い取りを行いまして、いわゆる我が国の貴重な文化財の散逸を防ぐ、こういった任務で買い取りを行っているわけでございます。

 今先生から御指摘ございましたように、まず最初に売り渡しの申し出があるわけでございますけれども、その後、調査の後に、買い取る際には買取協議会というものを開催いたしておりますけれども、その委員につきましては文化庁の場合は五人以上ということになっておりまして、文化財の種類によりまして、その都度大学の教授や研究者、学芸員だとかの学識経験者からその意見を聞くということになっておるところでございます。

 そのうち、私ども文化庁には文化審議会に専門委員会というのが置かれておりますけれども、そういうところのそれぞれの分野の先生方に多く委嘱をしているということをいたしているところでございます。

 また、買取協議会におきまして買い取りすることが適当であるという判断が出た場合に価格評価というのを行いますけれども、これもその都度、文化財の種別に応じまして、価格評価を行います委員、これにつきましては、博物館の学芸員、またいわゆる古美術を扱っている業者の方など、いわゆる専門家を、評価員をこれも五名以上委嘱しましてその評価を求める、こういった手続にしているところでございます。

細野委員 後ほど具体的に例示をしたいと思うんですが、さらにちょっと確認を求めたいと思います。

 五人で価格を決めるということでございますが、これは文化庁がやるケースも各博物館がやるケースも同じやり方をとっているというふうに聞いていますが、五人でどうやって価格を決めるんですか。この価格の決め方、また適正さにおいて、私もちょっといろいろな関係者に話を聞きましたが、率直に言って、本当に適正な価格で買えているのかというところに私は疑念を持っています。五人でどうやって価格を決めているのか。文化財の価格というのは非常に難しい判断になるんですが、決め方を教えてください。

高塩政府参考人 価格の評価につきましては、先ほど申し上げましたように、価格評価員というものを委嘱するわけでございますけれども、実際買い取る物件につきまして実地に検分をいたしまして、そこに各委員にそれぞれお集まりいただきまして評価をしていただくということでございます。

 五人の委員の場合ですと、五人がそれぞれ単独でそれぞれの評価をいたしまして、その結果を集計いたしまして、いわゆる最高額と最低額をカットといいますか除外いたしまして、残りの三人の評価額の平均額をもって予定買い取り価格というふうに決定しているところでございます。

細野委員 上と下を取って、三人で平均するんですね。そういう形になっていると。

 私は、評価委員会のメンバーをやっていた方から話を聞きまして、ちょっと委員長にお許しをいただいて、物を提示したいと思うんですが、よろしいでしょうか。

佐藤委員長 はい、結構です。

細野委員 ちょっと小さい絵なので見にくいと思うんですが、これが九州博物館に平成十七年に買い取られた中国の飾り布です。実は、この二点、この飾り布とこの飾り布の合計で、二点が購入をされて、一億八千五百万で買い取られているということなんですね。

 どういう相場になっているのかということを少し調べてみますと、私も素人ですから正確なことはなかなかわかりにくいところがあるんですが、例えばこの清朝の飾り布、これは大体の評価というのは五百万円ぐらいが相場だろうと、大体そういうオークションの価格なんかではなっているようです。これはほぼ価格が決まっている。一方で、それより古い明朝のもの、こちらはやはり時代が少しさかのぼるということもあって高いようでございまして、この方は評価委員会で実際に札を入れているのですが、一千万円で入れている。ということは、これとこれを合わせると、その方の評価は千五百万なんですね。

 推察をするに、さっきの文化庁の話でいえば、この方は一番低い価格を入れたので、上と下で、下の部分で取り除かれていて、ほかの方が一億五千万とか三億とか二億とか入れたということになるんでしょうか、一億八千五百万円で購入価格が決まったということなんですが、果たしてこれが適切かという問題が一つ。

 もう一つ、こちらはさらに具体的なんですが、このお皿です。これは装飾皿ということなんですが、東京博物館に平成十八年度に買い取られたものですが、三千五百万で買い取られています。実は、この方は、かつてこの皿を買い取りを打診されたことがあって、預かっていたことがあるそうです。その方が預かっていたときの評価額は三百万円。十倍になっているんですね。

 こういう一つ一つの事例を見てみると、果たして適切にこの価格がなされているのか。私は、文化財のことについて、税金の無駄遣いとかそういうことは余り言いたくはないんです。言いたくはないんですが、買い取るのはいいと思うんですが、けたが一つ違うということになるとこれはさすがに見過ごせないので、文化庁として本当に適切に買い取りがなされている、文化庁本体のものもそうですが、博物館のものも含めてきちっと適正な価格で買い取りをされているというふうにお感じになっているかどうか、評価を聞きたいと思います。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御質問ございましたのは、いずれも国立博物館における購入の件でございまして、最初にお尋ねがございました平成十七年度に九州国立博物館において購入いたしました花卉鳥獣刺繍飾布二枚につきましては、十六世紀の後半から十七世紀初頭の大航海時代にアジア各地において制作されました、アジアの工芸技法とヨーロッパの生活様式が融合した美術様式と歴史的には認められる、全面を刺しゅうで覆ったいわゆる長方形の飾り布と、それと同じような意匠構成をとりつつも、各モチーフの表現などに相違が認められる十九世紀の制作と言われておる一枚、合わせて二枚でございまして、九州国立博物館としては、今後の展示におきまして、この両二枚を展示することによりまして効果的な活用ができるものであるということで、一億八千五百万円で買い取ったということでございます。

 先生から御指摘ございましたように、委員のうち一名につきましては、おっしゃるような低い価格の評価がございましたけれども、残りの四名の方の評価額のうちの最高額を切りまして、その残りの三人の方の平均額が、一億八千五百万円というのはこれは売り主の申し出価格でございまして、それよりも若干高い金額の平均額が出たものですから、その内数にあるということで、一億八千五百万円の買い取りということを決定したというふうに伺っております。

 また、東京国立博物館において購入いたしましたこぶ牛文装飾皿につきましては、紀元一世紀のイランのパルティア王国時代のペルシャ美術の優品でございまして、部分的な鍍金がよく残っておる、またペルシャ文の銘文が記されてあるということから、五人の評価額の最高と最低を除いた平均額が三千五百万円ということでその決定をしたというふうに伺っておりまして、私どもとしては、いずれも適正に手続に従って行われたものというふうに考えているところでございます。

細野委員 今、ちょっと聞き捨てならない話があったのですが、売り主の申し出価格というのは、これは何ですか。売り主の申し出価格よりも高い値段で買い取られたとおっしゃいましたが、それを評価委員は知っているんですか。売り主の申し出価格というのは何でそこで出てくるんですか。

高塩政府参考人 文化財の買い取りにつきましては、まず売り主の方から幾らで売りたいという申し出がございます。金額が示されます。その金額よりも同等ないし高い金額で平均額が出ない以上、買い取れないということなんでございます。ですから、その評価委員の額が売り主の金額より低ければ、高い金額で買うということはいわゆる適正な評価を上回る額ということになりますので買えない、こういうことでございます。

 ちなみに、九州国立博物館の場合には、申し出価格が一億八千五百万円、評価委員の、先ほどの最高額と最低額を除いた平均額は一億九千万円ということで、その内数にありましたので、そのどちらかの低い額ということで、申し出価格の一億八千五百万円で買ったというふうに伺っているところでございます。

細野委員 私の存じ上げている限り、それぞれの評価委員は申し出価格を知らないということですね。知らないにもかかわらず、上と下を除けば、たまたま一億八千五百万のものが一億九千万、ぴたっと合った、そういう話ですか。

高塩政府参考人 先生おっしゃいますように、評価する委員はその申し出額は存じ上げませんということでございまして、事務方の方で集計をして、その結果を見て買い取る価格として適正かどうかを決定する、こういうことになっているところでございます。

細野委員 これは実に不思議な話なんですね。

 もう一つちょっと不思議な話は、評価委員の選定なんですが、これは固有名詞は私もさすがに控えようと思いますが、評価委員の選定において、必ずしも専門的でない人が入っているという話はこの業界ではよくある話のようです。特別、例えば学芸員の資格を持っているとか学者ではないような方も含めて、そういう方々が、いや、これは多分一億九千万だろう、二億だろうとばしっと言えるか。これは、博物館の方から何らかの示唆があるとか、文化庁の方から何らか示唆がないと、こんな価格にならないんじゃないですか、ぴったりに。そういうことはないと断言できますか。

高塩政府参考人 先ほどもお答えいたしましたように、買い取り価格を決めます方は、博物館の学芸員、さらには業者の方のうち、当然、利害関係のない方を多く指名しているところでございます。

 と申しますのは、買取協議会、この物件を買うかどうかということについては、多くは大学の研究者、博物館の学芸員もおりますけれども、いわゆる研究者の方は、その価格が幾らかという相場観といいますか、そういうものに対しては基本的に余り多くの知識を持っていないという現実がございます。その物件が非常に貴重なものかどうかという判断は研究者の方にゆだねるわけでございますけれども、それを果たして幾らで買い取るかということにつきましては、やはりそういったものの市場といいますか、そういうものに詳しい方ということで、博物館の学芸員や、いわゆる業者の方で利害関係のない方を選任しているということでございます。

 そういった経緯がございますし、今先生から御指摘のありましたような、いわゆる事前にその額等申し出を知っているかということについては、私ども文化庁を含めて、ないものというふうに私は考えております。

細野委員 今の御答弁は、そういう申し出価格については伝わっていなくて、偶然、一億八千五百万のものが一億九千万で三人の平均になったと。先ほど私が申し上げたお皿は、その前市場に出回っていたときに三百万であったものが、ぴったりこれも三千五百万、十倍以上の価格になっている、そういう御答弁ですね。

 個別のことを余り言っていても仕方がありませんので、文科省にもう一つ申し上げたいんですが、そういうおかしなことを避ける一つの方法として、評価委員、だれが評価をしたのか、個別の価格はいいですが、この物については評価委員はだれなのかということについては公表するというのは一つの考え方なんですよ。評価委員の方何人かに私、話を聞いてみましたが、自信を持って評価している方は、それでもいいですよとおっしゃいます。これを公表すればある程度、いろいろな、その評価が果たして正しいかということも含めて、当然それぞれの方の信用にもつながるわけですから、しっかり評価していただけると思いますが、それについてどうお考えになりますか。

高塩政府参考人 買取協議員及び評価員の氏名、職歴を公表することにつきましては、これは懸念ということでございますけれども、文化財の所有者等が当該委員に働きかけなどを行うことによりまして公正公平な審議が損なわれるおそれもあるということも含めまして、慎重に対応を考えてまいりたいというふうに考えております。

細野委員 働きかけは確かに困るんですね。事後的に公表することについてはどうですか。

高塩政府参考人 それも含めまして慎重に対応を検討してまいりたいというふうに考えております。

細野委員 では、もう一点聞きます。三枚目をごらんください。

 これは、平成十六年度から平成十九年度の四年間に、一個人、二社がそれぞれ、文化庁及びそれぞれの博物館にどれぐらいの金額のものを何件ぐらい納入したかというのをリストにしたものです。

 一人目のY氏は、四年間で毎年数千万ずつ納入をしていて、四億六千万。A社はさらに多くて、六億六千万。B社は五億四千万。大体一年間に、東京博物館、それこそ一番日本で有名な博物館ですが、そこが調達をしている購入文化財の合計額が四億ぐらいですから、文化庁を含めてもこの六億とか五億という金額がいかに高額かというのは、これは一目瞭然です。

 ちなみに、先ほどの布、これもこの三者のうちの一者が納入をしています。

 これは相当固定的な関係なんですよ。こういう世界ですから、特定の人にそういう物が集まっているという関係は、これはやむを得ないところがあるんだろうとは思うんですね。ただ、聞くところによると、こういう文化財というのは、一人がたくさん蔵に持っているのではなくて、いろいろなところに流通するわけですね。流通をしていて、だれかのところにぽっと行ったときに、それが東博に行ったり、例えば九博に行ったり、文化庁に行ったりする。どこにとまるかで、とまる場所でとまったものが行くという意味で、この三者を初めとした非常に固定的な関係が見てとれるんですが、これは文化庁としては問題ないというふうにお考えになっていますか。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 先生からお示しいただいた、個人それからA社、B社につきましては、いずれも文化財の購入をしている者でございますけれども、特に国の場合には国宝、重要文化財を中心に買い取るということがございまして、全国の美術商の中でも極めてやはり優品を扱っている業者を中心に、そういった申し出もございますし、私どもも買い取るということがございます。

 ちなみに、この先生からの資料は、十六年度から十九年度までの文化庁及び国立博物館四館の総計の購入額は約百二十三億円でございます。また、文化庁だけに限りますと約五十七億円でございます。文化庁では、この四年間で六十一件の物件を買っております。そのうちいわゆる古美術商は三十七件でございますけれども、場所としては三十者から買っておるということ。また、国立博物館につきましても、四年間で古美術商から七十一件の物件を買っておりますけれども、それが三十七者ということでございまして、平均すると一つ当たり二件以上になるわけでございますけれども、やはりその物件ごとに私どもは適正な手続をとって購入をしているということがございますので、こうした結果になることも、ある程度は当然予想の範囲内というふうに考えているところでございます。

細野委員 ここからちょっと大臣に聞きたいんですが、大臣、今この説明を、やりとりを聞いていただいていかがお考えかということなんです。

 この世界は私もそれほど詳しいわけではなくて、博物館にたまに行くことはありますが、そんな一つ一つの評価はわかりません。ですから、さまざまな評価がある中で購入をするということについては理解をします。ただ、これまで私が事例として少し挙げたようなケースを見ると、果たして本当に適正に納入をされて、いいものが本当に展示をされているのかということについて、疑義なしとは私は言えないと思うんですよ。

 聞くところによると、文部科学省の中も、学芸員の資格を持ったような技官の人というのは、それほど数が多いわけじゃないですね。毎年入られるのが一人とか二人だと聞いています。そういう方は、同じような能力を持っている方というのは、博物館にもいるし、在野にもいらっしゃるんでしょうけれども、当然それぞれの専門分野は近いですから、お互いによく知っている仲の間柄なんですね。要するに、文化庁もそうだし、博物館もそうだし、民間の皆さんもそうなわけですよ。そういう、言うならばツーカーの間柄の中でこういう形になっているんですね。これは少し文科省として見直していくべき時期に来ているんじゃないかと思うんですよ。

 一つさっき提案した、例えば評価委員の事後的な公表、これをやると随分調達については透明化されると思うんですが、大臣としてぜひリーダーシップを持ってやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 公表の件につきましては、やはり疑義を持たれないような形の手段として、そのことが一つの手段であるということは私も理解をいたしております。

 ただ、今回、少し具体的な例を申し上げますと、例の運慶の仏像というのがございましたね。あれを日本からやはり出してはいけないだろうというふうに我々も思っておりまして、そういう多くの議員の意見も寄せられました。そのときに、では具体的に今何をしているか、後どうだったかということを果たして公表することが、事前は別にして事後にしても、これは非常にいろいろな影響があるなと判断をいたします。事実、内部で行っておりました事前の作業といいますか、もし買い取るとした場合の価格と、実際に落ちた価格というのは、これは雲泥の差があります。ですから、そういうことからすれば、美術品の扱いというのは大変難しい部分があるというふうに考えております。

 ただ、今委員がお示しをいただきました、そういう疑義が生じる、委員は、これはおかしいじゃないかとはおっしゃっていない、疑義が生じるとおっしゃった。そういうことについて疑義が生じないようにするために我々はどういうことをやったらいいかということについては、私はしっかりと検討していきたいというふうに思っております。

 やはり今の五人でいいのか、五人以上と書いてあるわけですから、数をふやせば、逆に言うと情報が漏れやすくておかしなことが起こるのかもしれない。その辺も含めて、きょうまたこういう御指摘をいただいたわけでありますから、今までの審議のあり方というものについては、私は例の仏像のオークションに関して審議のあり方は果たしてこれでいいんだろうかという疑問を持っておりましたので、その透明性、また税を使うという仕組み、こういったことも含めて検討していきたいというふうに思っております。

細野委員 運慶のものというのは大変この世界では話題になった事例で、ああいうものをきちっと買い取れるようにせにゃいかぬという議論は確かにあるんですね。その際、背後に、もしかしてこういうところで本来はもう少し節約できるものがお金が出ているとしたら、これはやはり相当もったいない話ですよ。

 大臣、私も理解ができるのは、いろいろな情報が行き交っていて、いろいろなところにこういう美術品なんて存在するわけですから、事前のプロセスやネゴシエーションにおいていろいろな情報が行き来をすることについて全部開示できないというのは理解できるんですね。ただ、最終的に購入をされるものについて、その価格がどういうふうに決まったかということを事後的に検証することは、決してそういうものを妨げるものではないと思うんですよ。

 その意味では、だれが評価委員で、それぞれ幾らで入れたかは別にして、最終的にこういう価格になりましたということは、事後的に検証してもいいんじゃないですか。これは、ぜひ大臣、確約していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 私は、ファイアウオールというのはいろいろな形でつくり得ると思っております。ですから、公表することもその一つの方法であるということは申し上げたいと思いますが、そういったこと全般を含めて、そんなに時間をかけないでいいと思います、要するに、こういう方法がある、きょう細野委員から示されたいろいろな疑義に対して、こういうことであれば疑義が晴れるんじゃないか、税を使うわけでありますから。

 しかし、一つの問題は、これはちょっと議論をそらすわけじゃありませんが、政府が買い取りに、オークションに参加するということは、できるんですけれどもできないんですよ。これはもう値段がつり上がっちゃってどうしようもない。こういった問題もありますから、こういったことも含めて、私は、買い取り制度というものを一度見直す必要がある、こういうふうに考えております。

細野委員 私もオークションに参加することをちょっと考えたんですが、オークションというのは、政府が出てこれは絶対買うとなると、高く買い取るように上げる人がいる可能性もありますから、そこは確かに危険なんですよ。

 ただ、大臣、オークションの値段は参考にはなります。これはちょっと私、いろいろ話を聞いてみましたけれども、昔は相場がなかったのが、オークションができることによって大分相場観ができてきたんですね。それぞれのものが大体幾らぐらいの相場かというのは、これは大変参考になるんですよ。ですから、政府がオークションに参加する必要はないけれども、そういうものを参考にして適正な価格で買い取れる方法はぜひ模索をしていただきたいと思います。

 最後、一点だけ提案をして終わりにしたいんですが、それぞれの博物館で買い取ったものは、一週間ぐらい、こういうものをことしは買い取りましたよという展示をするそうです。これは一般の方も見れるようですが、それぞれの博物館にいろいろな専門家が集まって、ああ、なるほど、ことしは東京博物館はこういうものを買ったのか、京都博物館はこうなのかというのを見て回るいい閲覧の機会なんだそうです。そこにせめて、これは幾らで買いましたよというのを開示することは、これは私は、適正な価格で買い取ることを担保する意味で大変効果があると思うんですね。

 ちなみに、私も、それぞれの価格が、これが幾らでこれがどうだというのがわからなかったものですから、官報をひっくり返しまして、官報の中に小さく書いてある、ああ、これがそうかなと照合する作業をやりまして、これは結構大変です。ですから、それぞれが幾らでそれぞれの博物館に納入をされたのかは、国会議員である我々も調べるのに結構往生するんですよ。それを、我々国会議員だけではなくて専門家も含めてきちっとチェックをするという意味では、ずっと値段をつけていると一般の人がううんと値段ばかり見ちゃってもいかぬので、そこは外した方がいいと思いますが、一週間の展示期間は少なくとも各博物館は値段を出してください、適正に調達していることを一般の方にもわかるようにしてください、証明してくださいというのは、これはいいと思うんですが、大臣、最後にこの提案についてどう思うか、お伺いしたいと思います。

渡海国務大臣 個人的な意見としては、必ずしも賛成しません。私は、物というのは値段で見るものじゃないと思っていますから。だから、やはり、ああ、こういうものはいいものだなというのは、来ていただく方がどういうふうに判断をされるかという国民の目で見ていただいたらいいと思っております。

 ただ、この値段が正しいかどうかという観点で物を考えるとしたら、その情報公開のあり方というのは、今、細野委員は、これも一つの情報公開のあり方だというふうに多分おっしゃっているんだろうと思いますけれども、一つの方法でありますけれども、でも、今どうですかと言われて即座に、値段がそこに書いてあるということは、個人的な意見と聞いていただいて結構ですが、余り私は適切じゃないと思いますね。

 情報公開、今、千六百万以上はすべて、これはガットでやっているのかな、調達でそうなっておるわけでありますし、国民が情報公開請求という手段をとられれば情報公開されるということになっておるわけでありますから、そこに書くことがいいか悪いか。これは個人のいろいろな考え方によると思いますけれども、今即座に聞かれますと、どうかなというのが正直な気持ちでございます。

細野委員 時間が来ましたので終わりますが、早急に検討していただけるということでございますので、またしっかりとそれを私も検証させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

佐藤委員長 以上で細野豪志君の質疑は終了いたしました。

 次に、高井美穂さん。

高井委員 民主党の高井美穂です。

 引き続いて、社会教育法、図書館法及び博物館法の一部改正について質問をさせていただきたいと思っています。

 私の方から、まず、資格要件と研修についてお伺いをしたいと思います。

 図書館法第五条で、大学において履修すべき図書館に関する科目を法令上明確にするものとし、文部科学省令で定めることになるが、今までの大学のカリキュラムから大幅に科目がふえるということもあり得るのでしょうか。図書館利用者や現在働いている方々の現場のニーズにこたえた法案であるというふうなことを文科省の方は御説明していただきましたけれども、その現場のニーズに応じたカリキュラム等の編成を計画しているのか、中身がどのようなものになるのか、お答えいただきたいと思います。

加茂川政府参考人 現行の司書の養成科目、大学において履修すべき科目と言いかえるべきかもしれませんが、この養成科目につきましては、現行の制定された時点から見ますと、既に十年が経過しておるという事情にございます。この間、社会の変化もございますので、これらに対応し、新しい図書館に対する展望を持って現状を積極的に改革していく人材、こういった司書を養成していくことが求められると思っておりますが、その際には、いわゆる養成科目の見直しを検討する必要があるという指摘もいただいておるところでございます。

 私どもとしましては、こういったことも踏まえながら、今日の図書館の現状、課題を把握、分析すると同時に、生涯学習社会における図書館のあり方について調査研究を行っておるわけでございますが、このための検討協力者会議を平成十八年九月に設置をいたしております。この中で、御指摘の図書館に関する科目についても現在御議論をいただいておるところでございまして、まだ意見のまとまり段階まで至っておりませんけれども、本年夏以降に、そういった時期を目途に報告をまとめていただければありがたいと思っておるところでございます。

 その際には、私どもとしましては、今回の法案の御審議での国会での御意見、あるいは協力者会議で出される意見がまず前提になるわけでございますが、さらに、図書館関係団体、あるいは図書館職員のみならず、御指摘の司書養成を行っている大学等も含めまして、幅広く関係者から意見を伺って、科目内容の見直しについて検討を進めていきたいと思っておるわけでございます。その後に、御指摘にございました施行規則、省令の改正が課題になるわけでございます。

高井委員 直接的に科目がふえるかどうかのお答えはございませんでしたけれども、今検討中ということでございました。ただ、大学側の方も、これは二十二年から施行になるということですが、準備等、また人員、人材というか、どんな教科を教えられるか、きちんと中身の検討等もありますし、できるだけ早目にお伝えをしていただきたいと思うと同時に、また、大学側の方からも、そういう対応が可能かどうかも丁寧なヒアリング等もお願いをしたいと思っています。

 今の検討会のメンバーには大学の関係者も入られているということでよろしいんでしょうか。

加茂川政府参考人 現在の検討協力者会議のメンバーといたしましては、大学の図書館に関する専門的な知識をお持ちの学識経験者を初め、図書館に関する経験等、または関係団体の代表等、諸々の資格を勘案いたしまして、公正なメンバー構成となっておるところでございます。

高井委員 私が懸念しているのは、次々と新しい科目ができたり、研修がふえていっても、それが実効性が上がるものでなければ、大学側の負担だけになってしまって、内容がやはり何といっても大事だと思いますし、せっかく大きな法改正でございますので、ぜひ充実した中身になるものになるよう検討を重ねていっていただきたいと思っています。

 博物館法と図書館法第七条に、司書及び学芸員の研修について、資質向上のための研修という規定が加わりましたけれども、この研修の方は具体的にはどのようなことを想定しているのか、これもまた検討中ということなんでしょうか、お答えをいただきたいと思います。

加茂川政府参考人 司書及び学芸員の研修についてでございます。

 まず、図書館は、資料の貸し出し等を行うとともに、その地域のビジネス支援のためのレファレンスサービスの充実など、住民の多様化、高度化するニーズに適切にこたえる必要が高まっておるわけでございます。また、博物館についてでございますが、資料の展示を行うとともに、我が国の伝統文化あるいは人類の知的資産を将来、後世に伝えるため、常に保存技術に精通する必要があるわけでございます。

 こういった課題を踏まえながら、司書や学芸員の資質、能力の向上を図るための研修機会を十分確保することが求められておると認識をいたしてございまして、今御指摘のように、今般の御審議いただいております法案におきましては、文部科学大臣及び都道府県教育委員会の研修の努力義務規定を設けることについて御提案をさせていただいておるところでございます。

 具体にでございますが、文部科学省としましては、文部科学大臣が行う研修ということでございますが、図書館については、例えばでございますが、著作権問題などの法律問題、あるいは図書館資料の電子化への対応といった課題もございます。博物館につきましては、保存科学に基づく資料の保存など、地方公共団体にとっては必ずしも情報が十分ではない、あるいは先進的な知見等が必要とされる分野、課題等があるわけでございますが、こういった課題、テーマにつきまして、館長でありますとか指導的立場にある司書や学芸員等を対象に、文部科学省として研修を行うことを現在考えておる次第でございます。

 また、都道府県レベルにおける研修もあるわけでございますが、都道府県におきましては、域内の図書館あるいは博物館の連携の促進を図るなど、広域行政の推進の観点から研修を行うことを想定しておるものでございます。具体的な研修の実施方法等につきましては、それぞれ地域の事情がございますので、事情等も勘案しながら、個別に判断していただくことを考えておるわけでございます。

高井委員 国及び都道府県の教育委員会が研修の実施を主体的に行うということでございますが、国がやるものはともかくとして、やはり都道府県の教育委員会にお任せするものは、必要経費などをすべて自治体が負うということになると思います。先ほどお話があった研修の内容、大変いいものであるというふうにはお聞きをいたしますけれども、自治体間の予算の格差、財政力の格差というものもかなりありますので、これがやはり研修に影響を及ぼしていくのではないかということを私は懸念しております。

 研修内容も、現実的に今やっていると思うんですが、その内容についても少し自治体間で格差もあるのではないかというふうに思いますが、その点はいかがでしょうか。

加茂川政府参考人 先ほども御説明申しましたように、具体的な研修の実施方法等につきましては、それぞれの地域の実情を踏まえて、地域ごとに御判断をしていただくことになるわけでございますが、お話にございました必要な経費につきましては、一般の研修につきましても任命権者が費用負担をしながら行うのと同様に、図書館や博物館にかかわります研修についても、実施主体が負担することになるわけでございます。

 ただ、その際に、いわゆる地方の財政事情等、地域の事情によってはいろいろな差が出ることも心配をされるわけでございます。公務員の研修について申し上げますと、その任命権者が研修を行う仕組みは、司書や学芸員に限ったものではなくて、公務員一般について同じような状況に置かれているものだと理解をいたしております。ただ、この司書、学芸員につきましては、先ほど来御説明申し上げておりますように、専門的な知識、経験が求められるわけでございますから、こういった職員については、期待される職責を十分に果たすために必要十分な研修機会が用意されるべきだと私どもは考えております。

 このため、地方公共団体間の研修の取り組みの差によってその専門性の維持が損なわれる、または失われるということは必ずしも好ましいことではないと言わざるを得ないわけでございまして、地方事情いろいろあろうかと思いますけれども、任命権者の地方公共団体におかれましては、研修の意義を十分御理解いただいて積極的に取り組むことを期待申し上げますし、私どもとしては、それを促してまいりたいと思っております。

高井委員 本当に、問題意識をお持ちでいらっしゃいますので、ぜひ促していけるよう、フォローアップというか、バックアップをよろしくお願い申し上げたいと思っています。

 先ほど来、逢坂委員の質問の中で、やはり現状、図書館においても司書の方々は必置とされていないということでありますので、採用が現実的に少なくて資格取得を生かせないという方も多いというふうに承知をしております。

 先ほど大臣も御答弁がございました。必ずしも専門的な職員がトップではない方がいいこともあるというふうな御意見もございましたが、先ほど来政府参考人の加茂川局長が答弁していただいたように、大変、この中身を聞くと、専門的な部分も必要だということで、研修も濃い中身を想定しているようには思いますけれども、それと、ある意味で専門性を生かせる環境をつくっていかないということになると、やはり矛盾が生じると思いますので、ぜひ大臣も、そういう意味では、先ほどの御答弁の、おっしゃることもわかるんですけれども、やはり専門の方ができるだけつけるように、環境整備の方、環境を整えていくということをお願いしたいと思います。

渡海国務大臣 私も、ちょっと言葉が足りなかったかなと思います。

 ただ、望ましいという言い方は、基本的にそういうふうにやってください、ただし、例えば非常に専門的である、また能力がすぐれているためにマネジメントがうまくできないという方は世の中にはいらっしゃいますから、そういうことはやはり避けていただきたいというふうに申し上げたいと思います。

 それから、やはり基本的には地方に任せるということを我々は決心したわけでありますから。今、これは御党でも、もっともっと大胆に任せたらいいじゃないかという話もあります。財源を全部持っていって、そして権限を持っていって、何が起こるか。今御指摘をいただいているようなことがいろいろな分野で起こりますよ。そういうことを一々、では国が全部手当てをしなきゃいけないということになったら、これは、地方分権の趣旨は生きてこない。ただ、先ほど逢坂議員もおっしゃいましたように、図書行政として国民が広く利益を受けるということを考えますと、やはり我々がやるべきところはこういうところだという議論をしていかないと、いつまでたったって、逆の意味で、私は、地方分権というのは実は起こらないんじゃないかというふうに思っております。

 できるだけ適正な指導をし、なおかつガイドラインに乗ってやっていただきたいということは我々も強く申し上げたいと思いますし、また、地域がそういった意識を持っていただいて、今回の法改正の中でやはり一番いいのは、ある種の情報公開をちゃんと住民に対してしなさいよという部分があります。これは、私はきくだろうなと。要は、うちの図書館というのはこういうところが欠けているのかということをいながらにして住民がよくわかるわけでありますから、そういったことを通じて、地域の行政が、やはり我々は図書館をもっとやらなきゃいけない、こういう形になっていくことがこれからの時代の一番大事なことだというふうにも思います。ただ、我々は、指導はしっかりしていきたいというふうに思っております。

高井委員 もちろん大臣のおっしゃることはわかるんですけれども、やはり今地方分権といっても、やることだけは国がきっちりと定めて細かく指導し、そして権限は渡さずに、お金も渡さずに、やることだけをきちっと決めていくということになれば、それはやはり本当の分権ではないと思いますので、権限もきっちり渡す、財源もきちんと渡す、それによって自分たちでやっていってもらうということで原則的にやっていっていただきたいと思います。

 とりわけ、今回の資格要件等についても、大学の科目等も文部科学省令で事細かく定めるということでございますので、やはりそこまで事細かくきちんとやる以上は、ある程度の、そこがきちんと実施されているかどうかを確認する責務はあると思いますし、研修等も、充実しているものかどうか口を出す以上はきちんと責任を持ってもらうということで、口を出さないのであればもうお任せするというふうに分けていかなくてはならないのではないかなというふうに思っています。

 そして、社会教育主事、この三資格は、ともに専門性を持った資格制度ということでございますけれども、中教審答申の中には、将来的に一元化をするべきであるというふうな提言もあったと理解しています。本法律の改正案は、これに沿ったものとなるのか。つまり、文科省として将来的に三資格をどのように扱っていくつもりなのか、今後の方向性をお伺いしたいと思います。

加茂川政府参考人 社会教育主事、司書、学芸員の三資格の一元化ということについて委員から御指摘があったわけでございますが、中央教育審議会の答申を引用させていただきますと、社会教育士や地域教育士のような汎用資格を設けることを検討するという提言はいただいておりますけれども、今申し上げました三資格の一元化という趣旨ではないと理解をいたしております。この部分は、社会教育主事、司書、学芸員とは別に、社会教育の推進を図るため地域の多様な人材を活用するべきである、こういう観点から、長期的にこういった課題についても検討すべきであるという御提言だと受けとめをさせていただいておるところでございます。

 今回、改正案として御提言をしておりますのは、社会教育施設の事業の充実、あるいはその施設相互間の連携協力の一層の推進を図るために、社会教育に関する専門的職員となる資格を得ることに当たりまして、専門性を確保するために講習を受講すること等に加えまして、いわゆる実務経験を必要とする場合がございます。こういった場合に、このような実務経験として他の社会教育に関する専門職に三年以上あったことも評価しようとするものでございます。

 例えばでございますが、社会教育主事の資格を得るための実務経験としまして、社会教育主事補だけではなくて、司書や学芸員等としての実務経験を評価できるようにする必要がある。これも中教審答申にございましたので、これを踏まえて御審議をいただいておるところでございます。

高井委員 私も、確かに一定の職に三年以上あったことを社会教育主事、司書及び学芸員の資格を得るための必要な実務経験として評価できるようにするということはいいことだと思っています。

 ただ、今はその明確な方向性はまだないという感じの御答弁だったと思います。汎用資格を設けるなど検討中であるということでございますが、大臣は、今の御答弁に対して同じようにそういうふうに考えている、三資格については汎用性のある資格を設けるということで方向性を考えていくということでお考えはよろしいんでしょうか。

渡海国務大臣 この件は、中教審でそういう御意見が出されまして、時代背景、今局長の方からもお話ししましたが、その世代で恐縮でございますが、団塊の世代がどっと社会でリタイアする、そういう時代にあって、いろいろ経験を積んだ方々が社会で活躍していただく、そういったところから出てきたと理解をいたしております。

 そういうときに、ただ単に今までの専門的なこういう資格を新たに取り直してもらうということではなくて、より幅広くいろいろな社会の役に立っていただくような社会教育士といったような概念、こういったものを想定されて、こういう議論が出てきたというように理解をいたしております。

 ですから、従来の資格をこれは統合するとかそういうことじゃないわけでありますけれども、少し検討させていただきたいというふうに思っております。

高井委員 よろしくお願いしたいと思います。

 次に、私立図書館に対する設置運営上望ましい基準の適用についてお伺いをしたいと思っています。

 まず、図書館法の指すところの私立図書館という定義を教えていただきたいと思います。

加茂川政府参考人 私立図書館の定義についてでございますが、図書館法上はこういう規定がございます。「日本赤十字社又は民法第三十四条の法人の設置する図書館を私立図書館という。」設置者が限定されたものが私立図書館という位置づけでございます。

高井委員 今回のこの図書館法第七条の二で、これまで公立図書館を対象とするものであった文部科学大臣が定める設置運営上望ましい基準を、今回の改正で私立図書館に対しても適用するということになると思います。今御答弁があったとおり、私立図書館の定義、先ほどのようなお答えでしたので、つまり、個人の小さい図書館や、私立とはいえど、今把握しておられる図書館以外には適用にならないということでよろしいんでしょうか。

 その第二十六条の中には、「国及び地方公共団体は、私立図書館の事業に干渉を加え、又は図書館を設置する法人に対し、補助金を交付してはならない。」という条文がございます。それにもかかわらず、設置運営上望ましい基準を定めるという規定を置くことによって、その自律性や自主性に影響を及ぼさないか。私、最初、私立図書館と聞くと個人の図書館なども入るのかなと思っていたので、そうではないということは先ほどの御答弁の中で理解できたんですけれども、この点は、自律性や自主性において影響を及ぼさないということはいかがでしょうか。

加茂川政府参考人 私立図書館につきまして、図書館法上の定義あるいは設置者が限定されておりますことは、先ほど御説明を申したとおりでございますが、実際、私立図書館の数は現在二十四館ございます、数として決して多いとは申せませんが。個々に見てみますと、例えば女性専用図書館でありますとか、我が国唯一の雑誌図書館でありますとか、さまざまな特色ある有意義な取り組みが行われているものが私立図書館だと理解をいたしております。

 御指摘のございました、今回、新設をお願いしております図書館法第七条の二の規定でございますが、これまで公立図書館の設置及び運営上望ましい基準についてのみ規定しておりました現行の十八条を削除いたしまして、この第七条の二におきましては、私立図書館も含めた基準として新たに規定をしようとするものでございます。

 図書館の健全な発達を図るために、その設置及び運営上望ましい基準を定めることによって運営改善に努めてもらえる場合、利用者の立場から見ると、公立、私立の別はないと考えておりまして、今回、私立図書館もその基準の対象と考えるべきであるという基本的な認識に立っておるものでございます。

 私立図書館につきましては、設置する公益法人が主体として認められるということを先ほど申しましたけれども、公益法人の場合には、これは税法上の観点でございますが、固定資産税等の税制上の優遇措置が講じられておりますので、こういった公益性の観点からも、一定の図書館サービス、図書館奉仕について期待をしながら、基準の適用があるということも考え方に合理性があるのではないかと思っておる次第でございます。

 その一方で、これも御指摘のございました図書館法二十六条との関係でございます。この条文は、国や地方公共団体は、私立図書館の自主性を尊重して、その活動に不当に干渉してはならないという大きな原則を示しておるわけでございます。しかしながら、その七条の二で御審議をお願いしております望ましい基準は、あくまで各図書館、これは公立図書館も私立図書館もでございますが、各図書館が自主的な取り組みを行う上で指針として利活用していただくものという性格でございます。この基準が私立図書館に対する不当な干渉とは当たらないもの、私どもとしましては、この基準のもとでも各私立図書館がその自主性や自律性に基づいた運営を維持できる、悪影響を及ぼさないものと理解をしておるところでございます。

高井委員 ありがとうございます。

 今回の法改正については、現状の取り組みを後押しするのも含めて法的根拠を与えるということもあり、私どもも反対するものではないんですけれども、やはりさまざまな規定の整備等もきちんと整合性があるもので、そして、予算についても後押しができるようなことをしていただきたいというふうに思っています。

 そこで、次の質問に移るんですけれども、この間から新聞報道等にもございました、文科省の教育基本計画の件でございます。この中に、原案に、今後十年間で教育への公的支出をGDPの五%を上回る水準に引き上げるというふうに盛り込もうとしたという報道がございましたが、検討は事実でございますでしょうか。

加茂川政府参考人 現在、文部科学省におきまして、中央教育審議会の答申、これは四月十八日にいただきましたが、答申後のさまざまな御議論も適切に踏まえながら、教育振興基本計画の策定に鋭意取り組んでおるところでございますが、我が省として、計画案が確定したと言える段階にはまだ至っておらないところでございます。

 御指摘の課題につきましても、そういった事柄も含めまして、現在、鋭意検討を進めておるところでございます。

高井委員 私は、このところ、政策上の教育の優先順位が下がっているのではないかと思いまして、懸念をいたします。この数値目標を入れない教育振興計画というものに実効性がどこまで果たしてあるのか、ないに等しいんではないかというふうに思うんですけれども、指導要領の改訂などで、この間、教育内容をふやしていくということはされましたけれども、予算手当てはなしということでは、教育を充実させるつもりが本当に政府の意思としてあるのかどうか疑問を持ちます。

 そもそも、この日本の子供の一人当たりの予算は高いレベルではないと思います。この間、財務省が出している「教育予算をめぐる議論について」という、文科省の出した資料と財務省の出した資料と対比的に全部、反論的に書かれてあるのを丁寧に拝見はしましたけれども、子供一人当たりの予算は決して先進国の中で高いレベルではないというふうな認識に立って、やはり教育立国である、教育は大事であるというふうに恐らくすべての委員がおっしゃるんですから、この点、大臣にもうちょっと頑張っていただきたいなと思うのでございます。

 少子化というのが予算を削る理由になっているようでございますけれども、学校の規模が小さくなっていけば一人当たりのコストは高くなっていくわけですし、財務省の見解は財務省の見解としても、これに従わなければいけないということはないですし、大臣がぜひこれは政治判断で、盛り込むように努力していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 私は、この間、教育投資というのをどう考えるかということをずっと考えてまいりました。これはやはり、日本の国、国家が人材にどれだけ期待をするかという期待度のあらわれ、政策選択だという結論に達しました。

 それを考えたときに、どういう主張ができるだろうか、またどういうプレゼンテーションがいいだろうかということで、今委員がおっしゃいましたような、出していないわけですからまだ確定とは言えませんが、そういった、我々は今作業をさせていただいておるわけでございます。

 これは十年先までの計画を描くわけでありますから、日本の国は資源がなくて、教育で頑張り、そしてその人材がここまでの発展する国をつくり上げたわけでありますから、やはりこれからもそのことを大事にしないとこの国は長続きしないんだ、そんな思いで今頑張っております。

 もうすぐ出しますから、そういうことで頑張らせていただくということできょうは答弁をさせていただきたいというふうに思います。それで大体おわかりいただけると思いますが。

高井委員 ぜひひとつ気合いを入れて頑張っていただきますように期待を申し上げております。

 OECD加盟国の三十カ国の中で、過去五年間で教育投資が減り続けているのは日本だけというふうなこともございます。ぜひ大臣、よろしくお願いを申し上げたいと思っています。

 最後の質問ですけれども、この社会教育法第五条の十号の改正で、情報教育について、教育委員会の事務に、「情報化の進展に対応して情報の収集及び利用を円滑かつ適正に行うために必要な知識又は技能に関する学習の機会を提供するための講座の開設及び集会の開催並びにこれらの奨励に関すること。」というふうに書いていますけれども、つまり、これは情報リテラシー教育ということだろうと思います。

 情報の格差の解消、それから有害な情報から子供たちを守る有害情報対策ということも含んでいるというふうに思うんですけれども、具体的にはどういうことを想定しておられるのか、お願いいたします。

加茂川政府参考人 委員御指摘の観点、課題を踏まえたことを想定しておるわけでございます。

 情報化社会の進展に伴いまして多様な情報がはんらんをいたしております。もちろん、情報通信技術のみならず、情報及び情報伝達手段を主体的に選択して活用していくための基礎的な能力、態度等を身につけることが必要になっておることは申すまでもないわけでございますが、同時に、有害情報対策を初めとするいわゆる情報化の影の部分への対応も重要な課題となっております。社会教育行政におきましても、これら双方の課題に積極的に取り組んでいくことが求められておるものと認識をいたしております。

 これまでの市町村の教育委員会の取り組みにおきましても、こういった課題に関する学習機会を提供してきたところでございますけれども、その重要性を踏まえ、このたび、市町村の教育委員会の事務として新たに社会教育法上明記をお願いしようとするものでございます。

 具体の取り組みでございますが、現在取り組まれております例を見てみますと、パソコンの基礎、入門など情報通信機器の操作方法に関する内容はもちろんのこと、情報セキュリティー、情報モラルなど、情報を適切に扱うための内容など多様なテーマについての講座の開設が行われておりまして、ここの規定上の事務も、そういった取り組みを前提に想定をいたしておるところでございます。

 こういった取り組みが、委員御指摘にございました情報リテラシーの向上、あるいは情報格差、デジタルデバイドの解消など、有害情報対策の充実などにも資するものと大きな期待を持っておるところでございます。

高井委員 最後に大臣に。

 こういう情報リテラシー教育ということが書き込まれただけでも私はいいと思うんですけれども、現在の取り組みをいろいろ調べてみましたが、リテラシーというところの能力までを教えるということよりも、まだ情報モラルの教育の域を出ていなくて、本当の意味で子供たちが生きる力を持ち、情報を選び取る能力を身につけるまでにはやはりさまざまな中身の検討が必要だろうと思っています。

 もちろん大人にも、最近、フィッシングなどいろいろ犯罪に巻き込まれたり、ネットオークションでだまされたりとかいった、大人の方も必ずしも情報リテラシー能力がある方ばかりではないというふうにも思いますし、大人も子供も含めてこの分野は大事だと思うんですが、目下、子供に対して、とりわけ低学年の子供に対しては、違法・有害サイトに対する何らかの対策が必要だと思っていまして、大臣として、個人的見解でも結構でございますが、法規制などを含めて何か、先ほどの加茂川局長の答弁で十分とはお考えになっていらっしゃらないと思いますし、この件で対策は必要というふうに考えるかどうか、御意見を伺って終わりにしたいと思います。

渡海国務大臣 大事なことは、やはり正しい使い方を教えるというのが教育の場における一つの大きな責任だと思っております。

 ただ、有害情報というのはどこからでも入ってくるわけでありますから、そういうことに対して、今度はツールとしてどういう手だてを講じるか、こういう議論が教育再生懇でも実は今行われております。大変熱心な議論を土曜日の朝やっていただきました。やはり機能を限定した、そういった手段も要るのではないかとか、いろいろな議論が行われております。

 ただ、あらゆる手だてを今、これはもう数年前からやろうとしてまだ解決しないという、正直大変難しい問題でもあると思います。ですから、そういったことを含めて、私どもは、まず正しい使い方をしっかり教える、そして、これは保護者を巻き込んで、そういった教育をしっかりしていくという責任があろうかと思っておりますし、また別の面からは、政府を挙げてこういった問題に対して、これは大人も子供もあるわけでありますから、有害な情報に対してどういう手を打つかということを、これは政府も早急にまとめる、今出している法律もあるわけですから、参議院に行った法律ですね、こういうものもあるわけですから、そういったことも含めて対策を講じていかなきゃいけないんだろうというふうに考えております。

高井委員 ありがとうございました。

佐藤委員長 以上で高井美穂さんの質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 今回の法改正は、社会教育法、図書館法、博物館法と三法ございまして、それぞれ慎重な審議が求められています。さらに、一昨年の教育基本法改定を受けた法改正でもありますから、私は、とりわけ社会教育の今後のあり方を左右する極めて重要な問題を含んでおりますので、慎重審議を行うべきだということを最初に述べておきたいというふうに思います。

 まず、社会教育法の第一条で、「この法律は、教育基本法の精神に則り、」とあります。そこで、教育基本法との関係で一問ただしておきたいわけでございます。

 教育基本法改定の審議のときには、第二条の目標、これは五項目掲げられました。新しく掲げられた目標ですね。その中には、例えば伝統と文化の尊重、我が国と郷土を愛しというような徳目的な項目の達成ということが問題になったわけであります。そこで、社会教育や家庭教育にもこの目標の達成はどうなるのかという疑問は当然出てくるわけでありますが、当時の国会審議ではこういう政府答弁でした。「あらゆる教育主体についてすべての目標を一律に取り扱うことまでも求める趣旨ではない。」ということがございましたので、この見解は確認できるでしょうか、大臣。

渡海国務大臣 そのように考えていただいて結構かと思います。

 それでいいんですよね、確認すれば。

石井(郁)委員 まあ、単刀直入というか、そういう御答弁をいただきました。

 その政府見解をもう少し述べておきますと、こういうふうに言っていたんですね。「家庭教育や社会教育は、その実施主体の責任のもと、本来自主的に行われる教育であるわけであって、具体的にどのような教育を行うかについては、当該その教育を行う者にゆだねられている、現場にゆだねられている、」というのが、これは塩崎官房長官の御答弁でございました。これは確認させていただいたと思います。

 その上で、条文に沿って少し具体的にお聞きをいたします。

 今回、社会教育法の第五条では、これは教育委員会の事務の部分での追加変更なんですけれども、「家庭教育に関する情報の提供」というのがあります。図書館法でも、第三条「図書館奉仕」として、「家庭教育の向上に資すること」ということが追加されているんですね。これは具体的にはどんなことを行うんでしょうか。どんな情報を提供するということを想定しておられるのか、ちょっとお聞かせいただきたい。

加茂川政府参考人 改正教育基本法第十条は、保護者の子の教育についての責任と役割とともに、国、地方公共団体が家庭教育の支援に努めるべき旨を規定しておるわけでございます。この国等における家庭教育支援の主な方法として、保護者に対する学習機会の提供とともに、情報の提供が例示されておるわけでございます。

 近年、従来の子育て講座等の開設に加えまして、例えば、国にあっては、家庭教育手帳の作成、配付等によりまして、家庭教育に関する情報の提供など、より積極的な支援を行うことが求められておるものと認識をいたしておるわけでございます。こういったことを踏まえまして、今回、御指摘にもございましたが、教育委員会が行う社会教育に関する事務として、社会教育法五条第七号に、現行の「講座の開設」等に加え「家庭教育に関する情報の提供」を明記するものでございます。

 具体的に申し上げますと、現在でも、家庭教育に関する学習講座等の情報提供に加えまして、例えば、しつけを行う上での留意事項でありますとか子育てのヒント、さらには保護者より上の世代や他の保護者の体験を踏まえましたアドバイスなど、保護者が家庭で子供を教育する上で大変有益、有効と考えられる情報につきまして、手段もさまざまでございますが、手帳あるいはパンフレット等の作成、配付、ホームページの開設、電子メール等による提供といったことに工夫を用いながら、さまざまな事業を展開しておる地方公共団体も見られるところでございまして、本条では、具体的な情報の提供のあり方として、こういった取り組みを前提に想定しておるわけでございます。

石井(郁)委員 昨年、教育再生会議がこういう提言をいたしまして、ちょっと話題になりました。子守歌を聞かせておっぱいで育児、父親もPTA行事に参加というような形で、親も子育てを学ぶ必要がある、親学とこれを称して提案を盛り込もうとしたわけです。

 しかしこれは、さすがにというか、皆さんの大きな批判、反響がありまして実らなかったわけですけれども、お聞きしたいのは、結局行政がこのような形で家庭にあれこれと指図したり押しつけたりする、こういうことが家庭教育に関する情報提供ということを含んでいるのかどうかということなんですけれども、この点ではいかがですか。

渡海国務大臣 先ほどから、局長もお答えしましたが、何かを押しつけたり、そして、こうしなきゃいけないとか、そういうことは一切ないというふうに私は理解しております。

 例えば、子育てをするのにこういうところがあるよとか、そういった情報を家庭に発信していく。また、いろいろ困ったことがあればこういうところで相談に乗ってくれるところもありますとか、そういったことの正しい情報を提供していくというのがこの趣旨だと、きのうの夜も私は確認しました。

 それはやはり押しつけてはいけないことだと思います。さすがに、再生会議の言ったことであろうと、それが完全に提言にならなかったというのは、それはやはりいろいろな意見がありますから、いろいろな意見の中にはそういう意見もあるわけであります。それが正しいと思って、実際、家庭で教育者である母親、父親がそういう教育をされているところもあれば、そうじゃないところもある。ただ、そのことに対して、いろいろな情報を届けることによって家庭教育に資するといいますか、主体はあくまで第一義的には両親でございますから、そのことにそごがあるようなことはこの情報提供はなっていないというふうに御理解をいただいたらいいと私は思います。

石井(郁)委員 やはり問題は、行政が行う教育の情報提供ですから、単なる機会の提供ではなくて、そこに一定の内容が持ち込まれる、ある教育観なり教育理論なり内容が持ち込まれるというところが問題になるだろうというふうに思うんですね。だから、どういう基準で、だれがそこを判断して、何をするのかということについては、本当に慎重でなければいけないということが大前提としてあるだろうと思うんですね。

 例えば、ちょっと例を申し上げますけれども、二年前、二〇〇六年の三月に、福井県の生活学習館というところでこういう意見があったということなんですが、家族を否定し過激な性教育を進め伝統思想を否定する思想は排除すべきだということで、いわゆるジェンダー関係の書籍百五十冊が書架から撤去された、こういう事件があるんですよね。

 だから、図書というのは基本的な資料なんですが、それを行政の側が特定のものを排除したり撤去したり、こういうことは決して許されないと思うんですが、先ほど大臣の御答弁をいただきましたけれども、こういう例についてはどのようにお考えですか。

加茂川政府参考人 委員御指摘の事例について、詳細な情報を今持っておりませんので判断をしかねるところでございますけれども、地方公共団体におけるさまざまな取り組み、例えば講座の開設でありますとか講演会の実施でありますとかさまざまな取り組みが行われるわけでございますが、そういった事業をどのように行うか、または見直していくか、場合によってはやむを得ざる事情下で計画を変更したり取りやめることもあるわけでございますが、そういった判断は、すべて第一義的には主催者が判断すべき事柄だとまず思っております。

 ただ、そういった実施に当たってのさまざまな判断や判断の変更については、それにかかわる背景もしくはさまざまな団体との関係もあろうと思いますから、そういったことをケースごとに検討してみなければなかなかコメントのできない事柄ではないかと感想を申し上げたいと思います。

石井(郁)委員 公民館で行われている講座についても、こういう事例というのはあるんですね。

 これは行政の考え方と違うからその講座は中止しろということで中止に追い込まれたというような例が、これも二〇〇六年、東京の国分寺市でありました。これは東京都の教育委員会の委託事業として企画した講座だったんですけれども、ジェンダーフリーについて議論するのならば実施できないということで都教委の側が見直しを求めて、市の側がそれを受けて講座を中止するということに至ったわけです。さすがにこの点では、ジェンダーの研究者を中心に、言論、学問の自由の重大な侵害だということで、いろいろな抗議が広がりました。こういう例がやはり起こっているわけですよ。

 だから、行政の側が特定の図書を認めない、特定の講座を認めないという点で、こんなことは憲法上あってはならない話なんですけれども、こういう行政の介入という問題について、あってはならないことだという点での政府のきちんとした態度を改めて表明していただきたいというふうに思いますが、いかがですか。

加茂川政府参考人 教育基本法の定めにもございますように、教育に関しましては、中立性、例えば政治的な中立性が代表例でございますが、さまざまな中立性が求められるものと思っておりますし、その観点から、さまざまな公平、客観的な判断が当然導き出されるべきものだとも思っております。

 行政も、そういった原則に従って対処、判断をしていかなければならないと考えております。

石井(郁)委員 この点、大臣にも一言御答弁いただきたいんです。

 今、家庭教育支援ということで一連出てきている部分があるんですけれども、私は、やはりそこら辺は本当にきちっと議論をしなきゃいけないと思っておりまして、そういうさまざまな問題を含んでいるというのはあるんですけれども、特に情報の提供、家庭教育、家庭に対する情報の提供ということで今条文化されているわけですから、これをどう考えるのかということが非常に重大だと思うんですね。今例を挙げましたように、政府自身が取り組んでいる男女共同参画基本法、これにも反するような家庭教育論を取り上げていくというような方向が出てきたりということがあったわけでしょう。それが一点。

 それから、家庭教育の支援といっても、今、貧困、格差が広がる中で、本当に困難が広がっています。情報の提供というだけで支援になるのかという、これは根本の問題があるわけですが、今そこまで私は広げようと思いませんけれども、いずれにしても、やはり家庭教育論ですから、家庭の親が行うというその主体性は確認できたと思いますけれども、どういう情報提供を行うのか、特定の価値観に基づくものであってはならないということがありますので、この情報の提供というところについてきちんとした担保があるのだろうかという心配はぬぐえないわけでございまして、大臣からその点での御答弁をいただければと思います。

渡海国務大臣 要するに、情報の提供という特定の価値観を何か押しつけるということはありませんと私はお答えしたつもりでございます。

 今先生が指摘をされたジェンダーフリーのこのケース、これも情報提供の一つだといえばそうなんですが、要は、何らかのものを押しつけたり、一方的にこういう価値観でやりなさいということではないということであって、少し問題は正直私は違うと思って聞いていました。何でこの話が、今先生言われているのはちょっとわかりにくかったんですが、これは主催者側がこういうものについてということを判断したわけでありますから、情報がある程度コントロールされているじゃないかという御認識かなというふうに理解をしたわけであります。そういうことについては、やはり中立性というものが保てなきゃならないというのは大原則であります。

 ただ、ジェンダーフリーの問題でいいますと、私は、社会の理解というものがやはり少しちゃんとされていないんじゃないかと思います。随分我々もこの問題にぶつかりました。これは非難される側も、おかしいと言われる側も、両方とももう少しいろいろ話をして、そして、この問題についてこれはこういう認識なんだねと。言葉だけが先行して、往々にして理解がちゃんと進んでいないという印象を私は正直持っておりまして、瞬間的にお答えができなかったわけでございますが、基本は中立公正、これを旨としてやっていただきたいというふうに考えております。

石井(郁)委員 この問題は以上で終わりたいと思います。

 次に、第五条なんです。やはり教育委員会の事務に関する部分なんですけれども、新たにこういう規定がございます。これは十五号ですけれども、「社会教育における学習の機会を利用して行つた学習の成果を活用して学校、社会教育施設その他地域において行う教育活動その他の活動の機会を提供する事業の実施及びその奨励に関すること。」というふうにあるんですね。この規定は図書館法にも博物館法にもございます。私は非常に政府としての一定の中身を込めての規定だというふうに思うんですけれども、まず、この規定の新設、学習の成果を活用するということ、それから、いろいろな活動の機会を提供する事業を実施する、教育委員会が事業を実施するわけですから、これはどういう内容を含んでいるんでしょうか。

加茂川政府参考人 社会教育法の第五条第十五号についてでございます。

 この規定は、教育基本法第三条におきまして、生涯学習の理念として、生涯にわたり、あらゆる機会、あらゆる場所において学習することができることと並びまして、その学習の成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない旨規定されたことを踏まえたものでございます。教育委員会の事務といたしまして、地域の住民に対し、社会教育に係る学習の成果を活用して行う活動の機会を提供する事業の充実等について規定するものでございます。

 例えばでございますが、具体の事例としましては、平成二十年度新規事業としてお認めいただいております学校支援地域本部事業のような取り組みを想定した規定と御理解いただきたいと思っております。

石井(郁)委員 これまでというか、社会教育における学びとか学習、成人、青少年、それぞれが行うわけですけれども、今度はその学習したことの成果を活用しなきゃいけないということになってきているわけで、確かに教育基本法でそれが入ったわけですけれども、しかし、今度は社会教育法にそれがより具体化されるわけですから、そこの内容をもう少し厳密にとらえておく必要があるんだろうという意味で私はお聞きしたんですね。

 今の説明でも、要するに、ちょっとよくわからないんですけれども、学習の成果、行政の側がそれを生かせ、活用するということになりますと、学ぶこと自身がそれに合わせて行うようなことになりはしないか。学び自身がそういう意味での枠がはめられる、あるいは限定的なものになるということになっていきはしないか。そういう心配についてはいかがですか。

加茂川政府参考人 先ほど御説明いたしましたように、この規定は、教育委員会の事務として、地域の住民に対して、社会教育に係る学習の成果を活用して行う活動の機会を提供する事業の実施等について規定をするものでありますが、ここで想定をしております学習した成果の活用についてでございますが、あくまでも学習者本人の意思に基づいて、または本人の選択した方法によって行われることは当然の前提でございます。行政が学習の成果について型をはめて押しつけるといった前提に立つものではございません。

 社会教育の振興を図ることの任務は教育委員会が負っておるわけでございますが、社会教育施設の設置、運営、学校施設の利用等、さまざまな方法によって教育委員会がこれら学習のあるいは活動等の機会を提供するための事業を行うことを想定しておるものでございます。

 繰り返しになりますが、この機会を利用して個々人が参加する際は、あくまでもみずからの意思、みずからの選択によって学習することができるということでございまして、あくまでも機会の一つでございます。この提供をもって個々人の学習への勧誘を行ったり、または学習内容を一定の方向に導く、誘導するといったことは全く考えていないところでございます。

石井(郁)委員 そういうふうに答弁をされますけれども、私は、こういう分野、このことがどんどん進められていきますと、やはり、ああ、行政はこういうことを求めているんだ、ではそういう学び方をしようとかそういう内容のものを身につけようだとかということに動きかねないわけですよ。

 だから、学習というのは本来自由で自発的で内発的で、そして何よりも自己実現のために行う、そういうものだと思うんですね。まさに権利としての学習というのはあると思うんですけれども、そういう学習の成果が活用される。それはあくまでも自発的ですよ、自主的ですよとおっしゃっても、行政がそういうことをやるということについては非常に大きな問題を含まざるを得ない、そういう懸念を私は持たざるを得ないということを、さっき御答弁を一応いただきましたからこれ以上はもういいですけれども、表明をしておきたいというふうに思います。

 つまり、自発的な自由な学習ということが行政によって制限されるんじゃないか、ゆがめられていきはしないかという懸念を持つということを表明しておきたいというふうに思います。

 次に、社会教育委員なんですけれども、お聞きをしたいというふうに思います。

 今回、社会教育団体への補助金の交付の際に、社会教育委員が置かれていない場合は、条例で定めるところにより審議会その他の合議制の機関の意見を聞いて行わなければならないというふうにされました。つまり、社会教育委員の意見を聞かなくてもいいという、これはある種の規制緩和なんですけれども、そういうふうになりますと、社会教育委員を置かなくて結構だということになっていくのではないかという問題。

 それから、社会教育委員は、二〇〇六年度現在で都道府県では一県を除きすべてに置かれています。市町村でも九七・九%の自治体に置かれているわけですね。そして、社会教育委員というのは、社会教育に関する基本計画を立案する、こういう任務を持っているわけでありまして、そういうことからすると、文部省としては、このような重要な会議だとか機関ということは今後なくしていくというか、あるいはなくなってもいいということまで考えているのかどうかということをちょっとお尋ねしておきたいわけです。

加茂川政府参考人 社会教育委員の役割の重要性につきましては、委員と同じような認識に立っておると申し上げたいと思います。

 今回の第十三条の改正についてでございますが、社会教育に係る補助金交付に際して、社会教育関係者等外部の有識者から成る合議体の意見を聞く仕組みを維持しつつ、地方分権や規制緩和の観点から、意見聴取の対象となる機関の拡大を図るものでございます。その意味では、委員御指摘のように、規制緩和の流れに沿った対応ということが言えると思います。

 これまで意見聴取の対象であった社会教育委員の設置についてでございますが、現行法上も各地方公共団体の判断による任意設置の性格を持っておるものでございまして、社会教育委員を置くかどうかは第一義的には各地方公共団体が判断すべき事柄と言わざるを得ないわけでございます。

 ただ、このような社会教育委員でございますが、これまで高い設置率が維持されてきましたのは、この十三条に基づく補助金審査ということもございますけれども、これも委員がお触れになりました社会教育委員の役割でございますが、社会教育に関する諸計画の立案あるいは青少年教育に関する助言と指導を行うといった、こういう重要な役割が正しく評価されたもの、それが背景にあるものと認識をいたしておるわけでございます。

 こういった役割の重要性については今後も変わるものではないと私どもは考えておりますので、この重要性を踏まえたその改正の趣旨についても、今後とも関係団体、関係方面に十分周知を図りまして、社会教育の振興に努めてまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 今回の法案には、国と地方自治体の任務に「生涯学習の振興に寄与する」ということが加わりました。これも教育基本法改定に伴ってということになるのでしょうけれども、そういう問題と、そして今、社会教育委員の重要性ということについてはきちんと周知をするという御答弁でしたけれども、教育委員会のもとにある社会教育委員を置かなくてもいいというようなことになっていけば、結局、生涯学習を担当する首長部局に社会教育行政が吸収されていくのではないか、こういう問題もまたあるのですね。

 そこで、この点では私は、きちんと文科省として、社会教育行政は教育委員会で行うんだ、こういう原則をやはり崩してはならないということでの、崩していいという姿勢はとっていないと思いますけれども、文科省としてはどういう方向性、姿勢なのかということをきちんと伺っておきたいと思います。これは大臣。

渡海国務大臣 先ほどから先生が御議論されていますように、中立性ということは非常に大事なことだと私は思っております。これは、教育委員会が常に、教育委員会なんか要らないんじゃないかというふうな議論もあるわけですね、それは、ちょっと荒っぽい言い方かもしれませんが、教育委員会が本当にちゃんと中立性を保っているのかという疑問なんです、逆に言いますと。私は、そんなふうにその疑問が投げかけられていると思いますよ。

 中立性というのは何に対して中立か、あらゆるものに対して中立でなければいけない。要するに、学校寄りでもいけないわけでありますし、それから、首長寄りといいますか、行政寄りでもいけない。そういった意味で、この教育委員会の事務局というのも首長に移管するというふうには余りなじまないだろうと私は思いますし、中立性を保つためにも現行のもので行っていただきたいというふうに思っております。

 ただ、教育委員会の中立性ということに関しては大変疑問が投げかけられているということもしっかりと我々は考えながら、これからの教育委員会に対して指導していかなきゃいけないというふうに考えております。

石井(郁)委員 私が伺ったのは、やはり社会教育というのは教育委員会で行うんだ、教育委員会のもとで行うという原則を崩してはならない、こういう立場に文科省がきちんと今後とも立っていかれるのかどうかということなんですが、その点、確認をさせていただければと思います。

渡海国務大臣 それで結構ですが、私が申し上げたのは、それでいいんだけれども、その大前提は中立性であるということが担保されなければ、教育委員会に行っていただいた、そのことだけでこれでいいんだというふうには我々は言うわけにはいかないというふうに感じております。ですから、教育委員会もそういった意味で、去年は法律も変えたわけでありますから、そういったしっかりとした運営を各都道府県教育委員会はやっていただきたいというのが正直な私の気持ちでございます。

石井(郁)委員 今の話は、なぜ私はこだわったかといいますと、もう現実に社会教育行政が教育委員会から首長部局に移っていっているという動き、これはかなり広く進んでいます。

 公民館が生涯学習センターなどに転換をしましたよね。だから、地域から公民館というのはなくなってきているんですよ。全体を見ても、これは一九九九年には一万八千二百五十一館ございましたけれども、それをピークに、二〇〇五年には一万七千百四十三館と減少傾向にあるわけですね。

 大阪府の枚方市というところなんですけれども、ここでは枚方テーゼというのをつくって、社会教育のあり方を全国に発信していたということでちょっと関係者の間では知られているわけですが、こういうふうに言っておりました。社会教育の主体というのは市民である、社会教育は国民の権利である、社会教育の本質は憲法学習である、社会教育は住民自治の力となるものである、社会教育は大衆運動の教育的側面である、社会教育は民主主義を育て、培い、守るものだというような、一部分引用なんですけれども、しかし、ここでも公民館条例というのは廃止をされました。生涯学習センターに転換をしました。

 私は、問題にしているのは、公民館では原則無料だった使用料、これが受益者負担となって有料化されていきます。市民にとって身近な公民館が失われていく。つまり、学習の機会が少なくなっていくという問題なんですね。

 そこで伺うんですけれども、公民館は社会教育法に規定されている社会教育の基点となる施設だと思うんです。そういう公民館を廃止や削減してはいけない、これからも充実させていくということが必要ではないかと思いますが、その点での御見解を伺いたい。

加茂川政府参考人 公民館の現状につきましては、委員が御指摘なさいましたように、平成十七年度には一万七千百四十三館となってございまして、もちろん、市町村の合併でありますとか地方の財政事情等もありまして、そういったことが影響していると思いますけれども、公民館数が減っておるというのは事実でございます。

 申すまでもなく、公民館は、地域住民に対してさまざまな学習機会を提供すると同時に、地域住民の自主的な学習活動あるいは交流の拠点としての役割を果たすものでございます。このため、あくまでもその設置者である地方公共団体の判断によるわけでございますけれども、地域の実情や要請に適切にこたえながら、公民館の設置、運営が進んでいくことを私どもは期待をいたしておるわけでございます。

 公民館の設置及び運営に関する基準というものを文部科学省としては定めておりますけれども、ここにおきましても、公民館の設置、運営について、各地方公共団体の努力を促しておるところでございます。

石井(郁)委員 公民館では職員の配置状況も極めて少ないという問題もございますけれども、この質問はまた後ほどにするといたしまして、社会教育法第三条一項、これはもともとの項ですけれども、国とか地方公共団体は、「すべての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するように努めなければならない。」と。

 だから、行政の任務というのはやはり社会教育の環境の整備にあるということがうたわれているわけですけれども、私は、今回の法改正でその役割が後退することになりかねないという問題をはらんでいるという問題と、もう一点が、教育基本法の具体化としての社会教育、家庭教育への行政のいわば関与や統制を強めようとするものであるということと、社会教育全体として縮小という方向に向かわざるを得ないんじゃないかという問題点があるということを指摘して、きょうの質問を終わります。

佐藤委員長 以上で石井郁子さんの質疑は終了いたしました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 大臣、また最初からお金の話で恐縮なんですが、今回の改正問題で、教育委員会、公民館、図書館、博物館の役割というのが改めて重視をされて、これまで以上の課題あるいは役割がこれらのところに課せられるということになると思うんです。それはそれで大変重要なことだと思いますし、評価をしたいと思います。

 現在の状態を見ても、例えば公民館の学級、講座、これもふえていますし、公共図書館の貸出書籍数、貸出者数、これも増加をしている。これは、実際現場で働いている人たちが必死で頑張って、努力をして、その成果だというふうに私は思っています。

 しかし一方で、この間の社会教育関係予算、これの推移を見ていると、大臣は恐らく違うでしょうが、外圧もありまして、有無を言わさないシーリングというのがありまして、ともかく、文科省予算全体もそうなんですが、減少あるいはよくても現状維持という格好になっているんじゃないかと思うんです。こうした推移がこれからも継続されるということになると、社会教育関係の組織の課題、役割をふやしても、それが重要だということを幾ら強調しても、机上の空論に終わっちゃうんじゃないかという心配があるわけです。

 今回の法改正の趣旨、これを実際に現場で生かしていくということになると、文科省だけではなくて、分権というふうに先ほどからおっしゃっていますので、自治体の中でも社会教育関係の予算は増加させなきゃいけない、これは結果としては当然そうなるんだと思いますが、文科省としてどう対応していかれるのか。

 お金の話で最初から恐縮ですが、お聞きしたいと思います。

渡海国務大臣 社会教育全般の予算という意味では、確かに、ある意味スクラップ・アンド・ビルドという部分がございますが、例えば放送大学なんかはかなり強化をしてきております。たしかBS放送が今度始まるということもこの前理事長からも聞きました。そういったことを通じて広く国民が教育に接するということを強化してまいりたいと思いますし、また、子供を対象とした、これは生涯教育といいますか、そういった予算としては、学校外の地域子ども教室、放課後子ども教室、これも昨年は七十七・七億とふやしているわけであります。こういった部分もございますし、学校支援地域本部、これは学校予算なのか地域予算なのかというと少しわかりにくいところもありますが、社会のいろいろな方々のお力添えをいただくわけでありますから、これを新たにつくったわけでありまして、今後広げてまいります。

 ただ、これは朝からずっと議論になっておりますが、公民館、図書館、こういったものの今の財政の仕組み、これを考えますと、これは地方財政措置をどう考えていくか、もう一度戻すのかという議論になると思います。

 私は、例えば地方に財源を渡し、なおかつ権限を渡すというのは大賛成であります。しかし、そのことで起こっていることは、実は、地方に自主性を持たせる、このことによって非常に大きな格差が起こるんですね。そうするとやはりもう一度国でやるのかということを、これはしっかりと議論をしなきゃいけないと思います。例えば図書館なら日本全国やる、これはさっき高井委員もおっしゃいました、そういう形に持っていくのであれば、それは、ではこの地方分権が本当に正しかったのかどうかという議論もしなきゃいけないわけなんですね。そういうことを全般的に見た上で、我々としてはやれることをやっていかなきゃいけない。

 そうはいいながら、まだ移管してからそんなに時間がたっていないわけでありますから、地方が自主的に努力するためにどういう支援ができるか、そういうことを考えていくというのが現在の状況ではなかろうか、そんなふうに考えておるところでございます。

日森委員 そういうことであれば、まず六兆八千億円地方に返して、それでおやりなさいということも言わなきゃいけないんだろうというふうに私は思いますが、それはともかくとして、その関係でいうと、本来この社会教育事業を担っていくマンパワーといいますか職員数、これがやはり減少傾向にあるということだと思うんです。

 市町村教育委員会における社会教育主事、これは配置人数、配置率ともに減少傾向、また公民館も、先ほども出ました、公民館の数、職員数、これも減少しています。図書館についても、専任職員である司書の数が減少しているという格好になっていて、結局、地方でいうと、やはり財政の関係が一番大きいと思うんですね、ほかにも理由があるかもしれませんが。こういう格好で、今度の法律改正では社会教育全体について重視をすると言っているけれども、現状は、現場はそうなっている。

 これについて、具体的に何をどうしていくのか、どういう対策をとっていくのか。これは具体的にやっていかないと、さっき机上の空論と言いましたけれども、幾らかけ声をかけても現場は動かない、動けないということになって、問題点はあるかもしれませんが、せっかく大臣や文科省がすばらしいことでやっていこうといってもできないことになるんじゃないか、こんな気がしているんですが、対応策というのがありましたらぜひお聞かせいただきたいと思います。

加茂川政府参考人 社会教育関係の職員の数についてでございますが、委員一部御指摘もございましたけれども、私どもが把握しておりますデータで申し上げますと、教育委員会事務局、社会教育主事等を含めての、社会教育に関する事務局の職員数、あるいは公民館についての職員数でございますが、近年減少しているのは事実でございます。ただ一方で、図書館、博物館については、データの上では減少することなく増加しておる数字も見られておりますので、これは指摘をさせていただきたいと思っています。

 教育委員会の事務局あるいは公民館、図書館等を初めとします社会教育施設にどのような職員を配置するかということは、申すまでもなく、その設置者である地方公共団体がまず判断すべき事柄だと思っておるわけでございますが、私どもとしましては、社会教育関係職員は、その専門性を生かした指導助言を行いまして、社会教育の振興のために大変重要な役割を果たしておるという認識をしておりますので、こういった職員がきちんと配置されることを促してまいりたいと基本的に思っておるわけでございます。

 こういった社会教育関係職員の費用につきましては、御案内のように地方交付税措置によって手当てがなされておるわけでございますが、社会教育施設の運営上望ましい基準を私ども定めておりますが、この基準を通しまして、必要な専門的職員の配置を求めておりますし、今後とも求めていきたいと思っておるところでございます。

日森委員 やはり六兆八千億円返してやってほしいという気がしますよ、交付税措置ということであれば。

 まあ、それはわかりました。しかし、実際にマンパワーが減少しているような事実について、もう少し掘り下げて分析をして、どんな手当てが必要なのかということについても、それは地方がどう判断するかにお任せしていますということであってはならないという気がしますので、ぜひ文科省としてもそこはちょっと掘り下げた分析をしていただきたいと思っています。

 三番目に、図書館における司書の役割について、これはいろいろなところでお話が出ていますが、改めてお聞きをしたいと思います。

 平成十七年の社会教育調査報告書というのがあるそうですが、これによると、全国二千九百七十九の図書館で、専任司書がいない図書館が九百八十四カ所。割合にして三分の一の図書館に専任の司書がいないということですね。ちょっとびっくりしました、司書がいない図書館が三分の一もあるのかと。これは本当に図書館としての仕事が十分にこなしていけるのかという疑問も同時に持ちました。

 この司書の役割ということについて、改めてどう位置づけをされているのかお聞きをしたいということが一点。

 それから、専任司書がなぜ三分の一の図書館で配置をされていないのか、なぜこんな状態になっているのか、これをどうお考えになっているのかというのが二点目。

 図書館には専任司書を配置するように言って義務づけしないといけないのではないか、それについてどうお考えになるのか。

 この三点について、まとめてで恐縮ですが、お答えいただきたいと思います。

加茂川政府参考人 まず、司書の役割についてでございます。

 図書館が地域住民の身近にあって、図書その他の資料を収集、整理、保存して、その提供を通して住民の個人的な学習を支援するという役割を担っておりますこと、これに加えまして、特に近年では、地域が抱える課題の解決、具体には、医療、健康、福祉、法務等に関する課題解決あるいはこれらに関する情報提供、さらには地域資料等、地域の実情に応じた情報提供サービスを行うことが求められておるわけでございます。こういった図書館の役割の高まりに対応する形で、その専門性を備えた司書の役割も一層高まっていると言うことができると思っています。

 利用者の観点から見ますと、利用者のニーズが大変多様化、高度化する、こういう状況に対応して、司書がその知識や経験を十分生かしてその職責を果たすことが求められていると私どもは認識をいたしておるわけでございます。

 ただ、そういった認識に立つわけでございますが、一方では、御指摘のように、専任の司書の配置が十分ではない状況も見られるわけでございます。現在、公立図書館は全国に二千九百五十五館ございますけれども、専任司書が配置されていない館が九百七十二館、率にしますと約三三%あるわけでございます。

 図書館法では、公立図書館に館長並びに当該図書館を設置する地方公共団体が必要と認める専門的職員等を置くことが規定をされておるわけでございます。また、先ほど来申しておりますけれども、公立図書館に関します望ましい基準でも、専門的なサービスを実施するに足る必要な数の専門的職員を確保することを定めながら促しておるわけでございます。

 ただ、残念ながらと申したらよろしいのでしょうか、個々の司書の配置につきましては、こういった図書館法あるいは望ましい基準の規定等を踏まえまして、設置者である地方公共団体がまず判断すべき事柄と言わざるを得ないわけでございまして、それぞれの地域が財政事情を含めましたそれぞれの実情を勘案して、職員の配置あるいは運営の適正化に努めるべきものと認識をいたしておるわけでございます。

 もう一つ、専任司書の配置について義務づけを行ってはどうかという御提言もございました。そういったことにつきましては、今申しましたように、設置者である地方公共団体がまず司書の配置について判断すべきである。その背景として、地方の財政負担についての判断あるいは地方の裁量を尊重すべきであるという地方分権の流れ等を考えますときに、総合的には、義務づけについてはなかなか困難な点が多いと言わざるを得ないのではないかと思っております。

日森委員 今ずっとお答えを聞いていて、すべて地方公共団体が判断することで、文科省は傍観をしている。しないんですか。やはりここでもそうおっしゃって、例えば、本来、規定で専門的職員を置かなきゃいけないと書いてあるのに置けないのは、お金がないからと言っているんでしょう。首長さんの理解がないからですか。お金がないからじゃないですか。やはり六兆八千億円まず返してあげて、交付税措置をちゃんとできるようにしなきゃいけないんだ。あんな三位一体なんていいかげんなことをやって、六兆八千億円も地方から国がかすめ取ったんだ。これをしっかり、それはまた、ここで三回目になりますけれども、これは腹が立って仕方がないということで申し上げておきたいと思うんです。

 やはりこれも、地方が十分に大事な図書館業務を遂行していけるような具体的な支援を考えないと、これはますますそうなっていきませんよ。そのことをぜひお願いしておきたいと思います。

 それからもう一つ、館長の問題、先ほどお話が出ました。館長は司書であってもマネジメントができない人もいるという大臣のお答えもありましたが、かつては司書である館長は五割ぐらいいたんですね。今二割ぐらいになっているという資料がありました。これはいろいろな事情があるんでしょうけれども、これもやはり、専門司書がいないという図書館が三分の一以上あるということと関連して、これはますます司書の館長がいなくなっちゃっているという傾向になっているんですが、これについて、なぜそうなってしまったのか。それから、今これからガイドラインだとかいうことで、本来司書であることが望ましいというお答えもいただきました。ガイドラインなどでこういう傾向にしっかり歯どめをかけていくことができるのかということについて、ちょっとお答えをお聞きしたいと思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 委員からは、公立図書館の設置、運営について、地方任せで文部省は何もしないのかという厳しい御指摘もあったわけでございますが、文部科学省としては、公立図書館の設置、運営については、地方がまず判断をする事柄であるということを踏まえながら、望ましい運営については基準を定めまして、ガイドラインを定めまして、地方を誘導する、取り組みについて促しをしてきた、これからもしていきたいというのが基本的な立場でございます。

 地方の取り組みも実はさまざまでございまして、地方自治体、特に首長の御判断によるところが大きいと思いますが、図書館行政を県レベルで、あるいは市レベルで、まちづくりの中核に位置づけながら積極的に取り組んでおられる例もございますので、そういったよい事例を情報提供しながら、各自治体の公立図書館振興に役立つ取り組みをしていきたいと思っておりますので、まずそのことを申し上げておきたいと思います。

 図書館長の資格要件についてでございますが、これはこれまでの御質問、御審議の際にも御説明申し上げましたが、平成十一年の地方分権一括法における改正におきまして、国庫補助を受ける場合の図書館長の司書資格要件に関する規定が削除をされたという経緯があるわけでございます。このため、公立図書館の館長の資格要件として改めて司書であることを義務づけることは、この地方分権一括法あるいは地方分権の流れと一致せずに、適切ではないのではないかと考えておる次第でございます。

 ただ、先ほど来申しております望ましい基準におきましては、私どもとしましては、「館長となる者は、司書となる資格を有する者が望ましい。」と示しておるところでございます。具体的には、図書館長としましては、図書館についての専門的な知識に加えて、経営力あるいはリーダーシップ、さらには説明能力といったさまざまな資質、能力が求められるわけでございますから、こういった事柄を勘案しながら、多様な観点から人物評価を行った上で、個々の地方公共団体で適切に任命される必要があると考えておる次第でございます。

日森委員 望ましい状態に近づいていくと思っていらっしゃいますか。

加茂川政府参考人 各地方が置かれております状況は、財政事情も含め、必ずしも容易ではない事情があることも承知をいたしておりますが、私どもとしましては、先ほど来の望ましい基準を十分に活用させていただきながら、各地方自治体の取り組みを促し、よりよい振興結果が実現できるよう、期待を持って取り組んでいきたいと思っております。

日森委員 時間がないので、改めて、確認の意味も含めて最後に一点だけ質問させていただきたいと思いますが、家庭教育に関する情報提供。

 先ほど石井委員さんからのお話があって、大臣の考え方などについてはよくわかりました。まさにそのとおり進めていただきたいというふうに思うんですが、教育基本法、「家庭教育の自主性を尊重」ということが改めて明記をされているわけです。と同時に、教育委員会における家庭教育に関する情報提供、この兼ね合いについてもう一度明快な御答弁だけいただいて、質問を終わりたいと思います。

加茂川政府参考人 家庭教育に関しましては、保護者の第一義的責任と、地方公共団体による、または国による家庭教育支援の努力義務が教育基本法十条に規定をされておるわけでございます。今回の改正におきましては、市町村教育委員会等における家庭教育に関する情報提供がより一層推進されることを期待いたしまして、改正案を御審議いただいておるところでございます。

 教育基本法十条には、委員御指摘のように、「家庭教育の自主性を尊重しつつ、」という条文もあるわけでございまして、この事柄を十分に体しながら、行政が家庭教育の支援を行う際にもしっかり肝に銘じながら取り組んでいく必要があると思っておる次第でございます。

日森委員 終わります。どうもありがとうございました。

佐藤委員長 以上で日森文尋君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る二十三日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十分散会


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