衆議院

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第2号 平成20年11月19日(水曜日)

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平成二十年十一月十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 岩屋  毅君

   理事 木村  勉君 理事 佐藤  錬君

   理事 馳   浩君 理事 原田 令嗣君

   理事 茂木 敏充君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      阿部 俊子君    井澤 京子君

      井脇ノブ子君    飯島 夕雁君

      浮島 敏男君    小川 友一君

      岡下 信子君    加藤 勝信君

      鍵田忠兵衛君    亀岡 偉民君

      中森ふくよ君    西本 勝子君

      萩生田光一君    平口  洋君

      福井  照君    福田 峰之君

      藤田 幹雄君    安井潤一郎君

      山本ともひろ君    市村浩一郎君

      田島 一成君    高井 美穂君

      土肥 隆一君    藤村  修君

      細野 豪志君    松本 大輔君

      山口  壯君    和田 隆志君

      富田 茂之君    西  博義君

      石井 郁子君    日森 文尋君

      保坂 展人君

    …………………………………

   文部科学大臣       塩谷  立君

   文部科学副大臣      松野 博一君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   文部科学大臣政務官    萩生田光一君

   文部科学大臣政務官    浮島とも子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 高宅  茂君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 知原 信良君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 田中 一穂君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        山中 伸一君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十九日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     安井潤一郎君

  高井 美穂君     細野 豪志君

  笠  浩史君     市村浩一郎君

  日森 文尋君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  安井潤一郎君     飯島 夕雁君

  市村浩一郎君     笠  浩史君

  細野 豪志君     高井 美穂君

  保坂 展人君     日森 文尋君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

岩屋委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房審議官高宅茂君、外務省大臣官房審議官知原信良君、財務省大臣官房審議官田中一穂君、文部科学省大臣官房文教施設企画部長布村幸彦君、生涯学習政策局長清水潔君、初等中等教育局長金森越哉君、高等教育局長徳永保君、スポーツ・青少年局長山中伸一君、文化庁次長高塩至君、厚生労働省大臣官房審議官中尾昭弘君及び職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岩屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許しますが、きょうは昼休みが短うございますので、質問者はそれぞれ時間厳守でお願いをしたい、こう思います。馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩です。

 まず最初に、君が代の話から大臣に見解をお伺いしたいと思います。

 きのう、閣議の後の記者会見で、国歌君が代、このときに起立をする、しないということを学習指導要領に書くか書かないか、こういうことについての言及があったと思っております。大臣が答弁を考えておられる間に、私は、古文の元教員として、ちょっと文学的な話をしたいと思います。

 この君が代、国歌と言われておりますが、そもそも最初に古今和歌集巻七、賀歌の部分に「我が君は千代に八千代に」云々、こう出てまいりまして、その後に、和漢朗詠集の中で「君が代は千代に八千代にさざれ石の巌となりて苔のむすまで」。

 ここで言う「君」は何ぞやということになりまして、そもそも古典文法で言う格助詞の「が」と「の」の使い分けは当時されていたということをまずお伝えしたいと思います。何か朝から国語の授業みたいになってしまいました。「が」と「の」の使い分けを別に大臣にお伺いするわけではありません。申し上げます。

 「が」を使った場合には、自分にとって対等ないしは目下の者に対して使う場合、そして、さらに言えば、親愛なる、敬愛なるあなた様という言い方で使っておりました。したがって、「我が君は」、「君が代は」のときの格助詞の使い方として、「君」というのは、敬愛なる、親愛なるあなた様、ないしは自分より目下の者に対して使っていたということが文法的にも理解されていて、そうではない、自分より、より上位の者に対して使うときには「の」を使っていたんですね。したがって、「君の代は」となった場合には、はるかに位の高いあなた様。

 したがって、「君」というのを天皇陛下と限定する必要はないというのが古典文学作品の観点から見た君が代の歌の解釈であるということをまず最初に申し上げておきます。したがって、私が言いたいのは、時代によってとか、政権によって、こういった文学作品の解釈が一々変えられてはならないということを申し上げたいのであります。

 そこで、そうはいうものの、国旗・国歌法によって君が代が国歌として制定をされている現状において、これを教育現場でどのように子供たちに、歌詞の意味も含めて、歴史的な意味も含めて、またどのような態度で国歌君が代を斉唱するかということを指導することは、私は重要な課題であると思っております。

 文部科学大臣として、きのうの記者会見も踏まえての見解をお伺いしたいと思います。

塩谷国務大臣 おはようございます。よろしくお願いします。

 朝から馳委員の大変御高邁な御高説を伺いまして、本当にありがとうございます。大変大事なことだと思っております。

 当然ながら、我が国としても、国旗・国歌の指導については、児童に対して、その意義を理解させ、そして尊重する態度を育てるということで、具体的には、小学校学習指導要領では、入学式や卒業式など、その意義を踏まえて、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するように指導するものとなっておるわけでございまして、解説書においても、正しい認識と、それらを尊重する態度を育てることが大切であるということがうたわれているわけでございます。

 昨日の記者会見については、神奈川県のある学校で、君が代が斉唱されるときに、特定の先生方が起立をしなかったということの、いろいろな、学校なりの、そのときのリストをつくったとか、そういうことに関するものでございました。起立に対してのいろいろな議論がきのうは記者会見でされたわけですが、やはり私としては、国歌を斉唱するときに起立することは当然常識だというふうに思っておりますので、もし起立しないということが、各学校でどの程度そういう実態があるのか、そういうことを改めて認識をする必要があるなということを感じましたので、もしそういうことがあれば、ここは、指導の上でも、何らかの形で起立に対する指導は行っていく必要があるのかなということを申し上げたところであります。

 一般的に言えば、国歌斉唱のときには起立するのが常識と私自身考えておりましたので、そういうことがもしそうでないなら、何らかの指導も必要かなということを申し上げたところでございます。

馳委員 これはやはり私は議論は必要だと思います。

 そこまで学習指導要領に書く必要はないという考え方と、そもそも国旗・国歌法を制定するときに、慣習法として国民に広く伝わっているものを法律にまでするのはいかがかという議論がありましたが、残念ながら、当時、いわゆる君が代・日の丸の指導によって自殺をされた高校の校長先生もいらっしゃいました。現場でこういうあいまいな対応をせざるを得ない場合には、やはり法律として対応せざるを得ない。そして、今回も、私は、この態度というものについての指導のあり方だと思います。

 教育基本法が改正されて、第二条で、いろいろと態度、愛国心についてもそうでしたが、「態度を養うこと。」というものが制定されました。私は、態度をどのようにするかということは、これはこれで非常に重要なことだと思います。法律に書いてあるから態度をしっかりしろというのではなくて、そういう観点ではなくて、人間というのはどの場面においてもやはり態度は必要だと思います。

 私がもし塩谷大臣ととても仲がよいからといってここで大臣にタメ口をきいたら、何だ、君、その態度はと万人から非難されると思いますし、あるいは、私がこの国会の場でこうやってポケットに手を突っ込んだりふてくされた態度をして質問していたら、私の品位をみずからおとしめるようなことになると思います。

 そういった意味では、社会的通念、観念といったもの、これを態度として必要なことであると教育の現場でも理解をさせることも必要なのではないかと私は思っていますので、いろいろな観点から、学習指導要領に書く書かないは最終的に判断してください、私はまだそういった意味では十分に自分なりに決断しているわけではありませんが、この議論が出てきた以上は、大いに議論をし、決断もしていただきたいなと思います。

 次に、鍼灸マッサージ師の、業界の話で申しわけありませんが、ちょっとさせていただきます。業界の皆さん方は大変困っているというふうに私も陳情をいただきましたので、あえて見解を伺います。

 まず、大学、医学教育の現場で、いわゆる東洋医学について講座が設けられて、将来お医者さんになろうとしている方々に対して基礎的な知識としてこの鍼灸、マッサージ、こういった基礎的な知識が講座としてとられているのかどうか。私の希望としては、ぜひ講座としても採用していただきたいということです。

 ちょっと参考までに、私の地元の金沢市で、助成券、チケットを配って、鍼灸マッサージ師の皆さんのところに行って、チケットを配りますからどうぞ施術を受けてくださいということで市が配っているんですが、そのときにアンケートをとったんですね。そのアンケートを見て、この助成チケットを使って行った方々にこういうアンケートをとったら、「あなたが、はり・きゅう・マッサージを利用するようになった理由を教えてください。」「かかりつけの医療機関・医師の紹介で」「医療機関で治療を受けてもよくならないから」「医療機関にかかるほどの病気やケガではないと思ったから」、これがアンケートの上位の答えでありました。

 それから、「あなたは、はり・きゅう・マッサージを利用するようになり、身体の状態に変化がありましたか。」というものの答えで、「病気やケガが治った、改善した」が四二・六%、「医療機関にかかる回数が減った」二八・三%。「あなたは、はり・きゅう・マッサージの効果をどのようなものとお考えですか。」という問いに対して、「病気やケガの治療に大きな効果がある」四七・八%、「病気にかかりにくい体をつくり、医療費の節約や介護予防に効果がある」「健康の保持・増進に効果がある」、それぞれ上位の答えでありました。

 どうでしょう、僕は、そういう意味ではなかなか、東洋医学と西洋医学は厳密に分離されているというよりも、今後連携を図っていく必要性もあるのではないかな、その第一歩として大学の医療教育の現場で講座を設けることを始めてもよいのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。

徳永政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のように、医療ニーズが複雑化している状況に対応して適切な医療を行うために、多様な視点から多様な医療人の養成を行うということは大変重要だと私どもも認識をしております。

 今御指摘の、いわば専門の教授等を持つ意味での講座、そういったことの中で、いわば漢方でございますとか鍼灸に特化した講座自体は全国で十一大学に設けられておりますが、しかしながら、授業としてはすべての大学の医学部で東洋医学に関する教育を行っております。さらに、そのうちの二十四大学では鍼灸に係る授業科目を設けているわけでございます。

 私どもといたしましても、できる限り、医療、医学部関係者の間で鍼灸等を含む東洋医学の重要性の理解が深まりますよう、このために各種会議等でさまざま、教育の実施状況でございますとか、参考となる資料の配布、そういったことを通じまして関係者の理解が深まるよう努力をしていきたいと思っております。

馳委員 何かわかったようなわからないような答弁でありましたが。

 東洋医学と西洋医学の連携については、今後、東洋医学に関して言えば、科学的知見、効用、こういったものがやはり証明されないとそれはもちろんだめでしょうね。それはみんながわかっていることであります。しかしながらも、厚生労働省は養成機関をつくって、特に鍼灸マッサージ師という業界でいうと、現状では視覚障害者の方を中心に、もちろん視覚障害者ではないいわゆる健常者の方も養成学校を出て鍼灸マッサージ師として活躍をしておられます。こういった現状の中で、もうちょっと連携を図っていく重要性についても文部科学省としてもより検討を深めてほしいということを求めた上で、次に、同じ関連した問題で、厚生労働省にちょっとお伺いしたいんです。

 実は、全国の盲学校の卒業生は毎年大体六百人ぐらいなんですね。ところが、いわゆる養成学校で鍼灸マッサージを卒業する、これはいわゆる視覚障害者ではない方も卒業する方は六千人を超えているんですね。この十年間に十倍ぐらいにふえているんですよ。当然もう皆さんおわかりのように、そうすると、盲学校を出た視覚障害者が働く場が限定をされておりますので、その圧迫感たるや物すごいものがあるんです。そうすると、視覚障害者の団体で、何となく、これは困ったぞ、規制をしてくれよと言いたいんですが、なかなか養成学校の設立についての規制はできません。これは、最高裁判所の判例で平成十年に出ておりますのでできないんです。

 そうすると、前向きに考えると、鍼灸マッサージ師の皆さん方の、特に視覚障害者の方の雇用の場の確保について、もうちょっと厚生労働省も計画的に前向きに検討してほしいな。なぜならば、障害者の雇用促進法も成立をした現状でありますから、例えば企業とか自治体とか介護の現場とか医療機関であるとかにおいて、やはり優先的にこういった視覚障害者の職場の確保に向けて取り組む姿勢は示していただきたいな。このことも私は障害者の雇用促進法に則した一つの現実的な問題だと思います。

 何度でも言いますけれども、養成機関を規制することは難しいんです。であるならば、鍼灸マッサージ師の身分といいますか社会的地位の向上も考えると、パイを大きくせざるを得ません。こういった御意見が多くございますので、あえて厚生労働省さんに質問させていただきますが、見解を伺いたいと思います。

岡崎政府参考人 視覚障害者の雇用につきましてはなかなか難しい面があります。そういう中で、一方では、従来のはり、きゅう、マッサージ以外の事務職、これも音声読み上げパソコンとかいろいろなものが出てきておりますので、そういったものも進めていきたいと思っておりますが、一方ではやはり、御指摘のように、はり、きゅう、マッサージが大きな職場であることには間違いがありません。

 その中で、一般の施術院等々だけではなくて、そういう職場をふやすということは非常に重要だろうというふうに思っておりまして、御指摘のような、企業の中でのいわゆるヘルスキーパー、要するに企業の福利厚生対策として従業員向けのマッサージ等を行う職種、あるいは特別養護老人ホーム等の中で利用者の方向けのマッサージをする、そういったような新しい部分につきましても職域を拡大していくということでやっていきたいと思っておりますし、現にハローワークにおきます紹介ではそういう面での就職がふえてきておりますが、今後とも、そういう方向でやらせていただきたいというふうに考えております。

馳委員 あえてお願いを言っておきますが、ハローワークなどで、こういった視覚障害者に対して、雇用の場を拡大すべく、その場にどんどん声をかけるのも厚生労働省としての役割の一つだと思うんですよ。特に介護施設、介護の現場で働いている皆さんというのは本当に体を傷めます。また高齢者の方も多くいらっしゃいます。そういったところで常駐をさせるとか、契約をするとか、あるいは医療機関においてリハビリの対象としてお願いをするとか、いろいろなやり方は考えられてしかるべきだし、特に障害者の雇用に対して余り積極的ではない自治体においても、自治体で契約して自治体の職員向けの福利厚生としてそういう方を雇用しても、いろいろなアイデアがあると私は思いますから、取り組みをお願いしたいと思います。

 次に、スクールカウンセラーの事業についての質問をしたいと思います。

 まずお伺いしますが、現状での小学校、中学校、高校、私学も含めてのスクールカウンセラーの配置状況をお伺いしたいと思います。

金森政府参考人 スクールカウンセラーの配置状況についてでございますが、平成十九年度、スクールカウンセラー活用事業補助におきまして、公立の小学校、中学校、高等学校の配置状況は、中学校八千八百三十九校、小学校千九百八十八校、高等学校六百三十三校にスクールカウンセラーが配置されているところでございます。

 また、私立学校におけるスクールカウンセラーの配置状況につきましては、必ずしも詳細に把握しているところではございませんが、スクールカウンセラーを配置する私立学校に対して都道府県が補助した場合に、国はその一部を都道府県に補助をいたしております。平成十九年度に国庫補助の対象となりましたスクールカウンセラーやそれに準ずる者は、小中高等学校合わせて六百五十九名となっているところでございます。

馳委員 今、金森局長が最後におっしゃった、準ずる者の配置状況を教えてください。

金森政府参考人 公立学校の状況でございますが、平成十九年度のスクールカウンセラー活用事業補助におきましては、スクールカウンセラーが四千六百三十名、また、スクールカウンセラーが不足している地域等に配置されるスクールカウンセラーに準ずる者につきましては千百三十一名となっているところでございます。

馳委員 これは、私、二点指摘したいんです。

 いつもこういう統計をお伺いすると、私学は後回しでもありますし、もちろん私学についての詳細を文部科学省は数字として把握しておられません。都道府県の教育委員会が公立学校を所管し、私学については恐らく総務部ですか、私学助成を配るので責任は総務部にあるんだと思いますが、でも、お子さんを学校に出している保護者という観点から見れば、どこが所管であろうと、よりよい教育が文部科学省によって確保されているという認識を持っております。

 したがって、これは一つの課題ですが、私学と公立と、こういったスクールカウンセラーの統計の数字等についても、いや、公立は把握しています、私学はちょっとということのないようにすべきであると私はまず申し上げた上で、この準ずる者、平成七年からスクールカウンセラー事業が始まりました。何でこれが始まったのかということであります。

 当時、いじめの問題とか不登校にある部分特化して、子供の内面に寄り添う職種としてスクールカウンセラーの配置を進めてきた。これは文部科学省としての方針だったと思いますが、それからもう十三年たちました。スクールカウンセラーの役割を考えると、いじめとか不登校ばかりではなく、学校現場では、大臣、いろいろな問題、課題が山積しておりますので、子供たちの心の問題、保護者のいろいろな圧力、そして管理職や教育委員会からの圧力で教職員も大変です。本当に、これはちょっと冗談の話をしますけれども、教職員の皆さんと飲み会をしていると、いや、我々学校の教員も飲む、うつ、買うだよと言うから、何ですか、飲む、うつ、買うはと言うと、飲む、睡眠薬を飲む。眠れないんです。うつ、うつ病。買う、宝くじでも買って、早くとっとと学校の先生をやめて、家でも買ってのんびりしたいという冗談が出るぐらい、本当にストレスになっています。

 それと、スクールカウンセラーの役割も、教育的な観点からあらゆる教育現場の問題に対応できて、そして、保護者であったり、時には教職員であったり、時には管理職に対してすらも相談相手となっているのがスクールカウンセラーの現状だと私は思っているんですよ。そうすると、臨床心理士とか精神科医がスクールカウンセラーの本分で、それに準ずる者として教育カウンセラーとかほかの方々が資格を持って入っているという分け方は、ちょっとだんだん時代にそぐわなくなってきたのではないかなと思っております。

 そこで、教育現場でスクールカウンセラー、スクールカウンセリングの役割、重要性というものを、現状どのように認識して、今後どのように対応していかなければいけないのかな、これを考えるのも私は文部科学省の仕事じゃないかなと思います。これは大臣かあるいは金森局長か、どちらかお答えください。もし金森局長がお答えになったら、大臣としての考えもお知らせいただきたいと思います。

金森政府参考人 スクールカウンセラーの果たす役割でございますが、御指摘ございましたように、スクールカウンセラーは児童生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識や経験を有する者でございまして、カウンセリング等の手法を通じて児童生徒の心のケアを行っております。その職務内容は、児童生徒へのカウンセリングのほか、教職員や保護者に対する助言、援助を行っておりまして、学校の教育相談体制に大きな役割を果たしていると考えているところでございます。

 今後、少年非行の低年齢化などを踏まえ、小学校への配置など配置拡大に伴い、臨床心理士の有資格者の少ない地域などにおきましては、スクールカウンセラーを確保することが困難になることも予想されるところでございます。このため、文部科学省におきましては、現在、教育相談等に関する調査研究協力者会議を設けまして、スクールカウンセラーに関係する資格認定関係団体や地方自治体からの意見聴取などを行っておりまして、スクールカウンセラーに準ずる者のさらなる活用など、スクールカウンセラーのあり方について検討しているところでございます。

塩谷国務大臣 最近の学校現場においては、本当にさまざまな問題が学校に持ち込まれて、先生方のいろいろな対応が迫られている中で、相当にそういう意味ではいろいろなプレッシャーがあり、ストレスがあり、そういうことだと認識をしておりまして、できるだけこの問題に対しては、今後、その内容等を細かく把握して、当然、スクールカウンセラー初め、いろいろな役割を持ったカウンセリングができる人たちの配置も考えていかなければならないと思っているところでございます。

 特に父兄に対する問題も含めて、最近いろいろな形で先生方の役割というのがまた改めて問われているところでございますので、本当に現場は、馳委員も実際にずっとそこにいらした中で、私どもも現場もできるだけしっかりと見させていただいて御意見を聞いているわけですが、そういったことが多くこの時代の変化の中で出てきておりますので、しっかりと今後とも対応してまいりたい。

 特に、今局長の方から報告がありましたように、小学校のカウンセラーの配置がまだ九%ぐらいですか、したがって、そこら辺のところも当面は充実していく必要があると考えております。

馳委員 一言、いわゆる臨床心理士とか精神科医の皆さんのスクールカウンセリングと、準ずる者として代表的な教育カウンセラーの皆さん方の手法の違いをわかりやすくお伝えすると、相談室を使うか使わないかが実は大きく違うんです。いじめとか不登校とか、いろいろ内面に関する問題等々ありましたら、やはり相談室に呼んで、静かな環境でお話をしながら、これが臨床心理士や精神科医の皆さんのやり方です。教育カウンセラーの方々、これは教師そのものが、カウンセラーそのものがカウンセリングルームなんです。この哲学の違いがあるんですね。したがって、子供たちがどこにいても、先生が、子供の表情とかまさしく態度とか様子を見ながら、常にあらゆる場面において子供たちに接して相談に乗ることができる。そして、このカウンセラーに対して、何でもすぐ、この人は、この人だけは世の中すべてが敵であってもわかってくれる、こういう安心感を持たせることが教育カウンセラーの一つの大きな目的でもあるわけです。

 今、金森さんがおっしゃったように、初中局の中でも、スクールカウンセリングのあり方についてとか配置について、より一層前向きに検討されているということでありますから、こういった観点も踏まえて、私は、臨床心理士がだめとか精神科医がだめとか言っているわけではないんです、より有効なスクールカウンセラーの活用が現場でなされるようにしていただきたいということを改めて申し上げたいと思います。

 では、政務官の浮島さんに質問いたします。

 実は私、こう見えても新国立劇場の賛助会員でありまして、文部科学委員の皆さん方にも、年間十万円でありますので、何とか頑張って賛助会員になって応援してあげてください。何を応援するかというと、私は、オペラとか舞台とかバレエとか、そういったものを見るのが非常に大好きで、新国立劇場に月に一回ぐらいは通っている者でありますが、やはり、そういった現場で頑張る若手の舞台芸術者、バレエダンサーというのは恵まれておりません。なかなか日本はそういった芸術活動、文化活動に対しての理解が少ないのかなという思いもあります。

 そこで、政務官はバレエダンサーでもあります、ありましたと言った方がいいのかな、最近も踊っているの、踊っていない。ということで、現場の実情を御存じなのであえて質問いたしますが、バレエダンサー、いろいろな教室とかはありますが、私はあえてプロ、プロというか、バレエ学校を出て実際に舞台で頑張っている日本のバレエダンサーがプロとして活躍するには、残念ながら、日本では食べてはいけないのが現状であります。

 来年、海外で活躍するプロのバレエダンサーを日本にお招きをして日本公演をして、その活躍の場を提供すると同時に、多くの子供たちに本物のバレエ、そして世界で活躍しているバレエダンサー、やはり本物を見せてあげようという企画を考えておられるようであります。本当にすばらしいことだと思います。

 本当にもっともっと、日本全国いろいろな箱物を、文化ホールとかつくっておりますが、つくるばかりじゃなくてソフトの面でも支援していくのが文化庁の役割ではないかと思いますが、象徴として、浮島とも子政務官の、現状とまた今後の課題、こういったことのお話をいただきたいと思います。

浮島大臣政務官 馳委員には、常日ごろからバレエの振興にお力添えを賜りまして、本当にありがとうございます。

 委員御存じのとおり、日本の新国立劇場には、国立のバレエ団そして研修所を設置しているところでございます。今、新国立のバレエ研修所の方では、世界に通用するトップダンサーをということで、指導、育成を目的に平成十三年度に開設をされましたけれども、二十年度の三月までに、三期で二十三名が二年間の研修を修了しているところでございます。また、そのうち、現在約二十名が新国立劇場のバレエ団に所属をし、現役で踊っていただいているとともに、二名の方が今現在海外で所属して研修に従事をしているところでございます。

 なお、隔年で募集をしていたところなんですけれども、隔年ではなかなか人数がふえないというところから、平成二十年度からは毎年募集をさせていただくことになったところでございます。

 今御指摘がありました、日本ではなかなか食べていけないというのが現状でございまして、本来であれば、日本で育てていただいて、日本のダンサー、私も含めてそうだったんですけれども、この日本で踊りたいというのが第一の希望でございます。でも、なかなか食べていけないということが現実でございまして、みんな海外の方に出てしまうんですけれども、今度、逆に、海外で活躍をして主役をいただいたりして踊っていても、日本に帰ってきたときに踊る場がない、踊る機会がなかなかないということで、今、海外のさまざまなダンサーとも連絡をとっておりますが、ぜひとも日本の皆様の前で踊りたいということが第一希望でございました。

 そんなお声をたくさんいただきまして、今海外で活躍している日本人バレエダンサーが日本で公演を行うということは、海外で活躍しているダンサーに機会を与えるということのみならず、日本で今バレエを一生懸命頑張っている子供たちにとっても大きな刺激が与えられるのではないかということで、これは初めての試みでございますけれども、日本で、新国立劇場におきまして、来年の夏に、海外で活躍しているバレエダンサーと、そしてバレエ研修所のバレエダンサーの公演が実施されるということを今伺っているところでございます。

 文部科学省としても、この公演の意義にかんがみ、大きな成果を上げられるようこれからも全力で力を注いでまいりたいと思いますので、どうか委員のお力添えの方もよろしくお願いいたします。

馳委員 岩屋委員長におかれましても、ぜひ新国立劇場の賛助会員に。賛助会員になると、私のささやかな資金で若手の芸術家が育てられる舞台に貢献しているんだなという自己満足と、新国立劇場にネームプレートが出されますので、岩屋委員長のネームプレートがあると、やはりみんな、ああ、さすが文部科学委員長だなと思いますので、御協力をよろしくお願いします。

岩屋委員長 わかりました。そういたします。

馳委員 さて、文化の話をしたので、スポーツの話も一つしたいと思います。

 実は、ロンドン・オリンピックに向けて、JOCが、これは報道で私も知りましたが、先週ですか、理事会で、ロンドン郊外のラフバラ大学を拠点施設として、強化合宿をしたり、あるいは、我々、世界のスポーツ界ではファーイーストと呼ばれていて、なかなか世界の情報を集めて分析して、そして競技力向上に生かし、試合で勝てるようにしていくということが、そういうことについてとてもハンディを背負っている地域とも言われています。

 そこで、JOCも一念発起いたしまして、ラフバラ大学と契約をして、拠点として、ロンドン・オリンピックに向けての競技力強化ばかりではなく、アンチドーピング対策であったり、あるいは、来年の十月二日に二〇一六年東京オリンピックが招致成功するかどうかが決まりますが、実は、オリンピックムーブメントの拠点ともすべきではないか、こういうふうな考え方で今努力をしておりますが、これはやはりJOCだけでは十分活動を続けていくことは無理だと私は思っています。資金的な面が一つ、それから、国際的なスポーツの現場では、もう既に外交力も問われるところであります。

 そういった意味で、文部科学省としてのこのラフバラ大学とJOCの提携に向けてのバックアップ体制は極めて重要であると考えておりますが、こういった情報を把握しておりますか、あるいは今後の方針をどう考えておられるかをお伺いしたいと思います。

山中政府参考人 委員御指摘のとおり、JOCの十一月の理事会におきまして、今度、二〇一二年、ロンドン・オリンピックでございますけれども、そのロンドン・オリンピックの事前の合宿あるいは情報の拠点として、英国、イングランドにありますラフバラ大学、これはロンドンから車で一時間半ぐらいのところにある大学でございますけれども、スポーツ学部を持っていて、非常に施設等が整っているということでございまして、ここがその有力な候補として挙げられて、今後、各競技団体の方からも意見を聞きながら、ここを正式に拠点としていこうかどうかということを決定しようという段階にあるというふうに伺っております。

 文部科学省といたしましても、今回、北京オリンピックの場合は非常に日本に近いということもございまして、直前まで練習して行くとかいろいろな事情があったと思うんですけれども、ほかの国が、アメリカなんかが北京の師範大学の方にそういうセンターを設けて、ちゃんとリハビリとかバックアップ体制をしいたというのに比べるとどうも弱かったんじゃないかという反省も踏まえて、もうロンドン・オリンピックの四年前にこういうふうな拠点を決めようということで選手の競技力向上を図ろうというのは非常に画期的なことで、前向きな姿勢であるというふうに思っております。

 また、先生おっしゃられましたように、二〇一六年の東京オリンピック招致に向けても追い風になるんじゃないかというふうに思っております。

 こういうふうに、海外拠点ということをやって競技力向上に努めていこうというものは非常に重要だと思っておりまして、JOC、あるいは国立スポーツ科学センターでございますとか、あるいはスポーツ振興センター、こういう関係機関と連携しながら、JOCの活動がしっかりと行われまして、ロンドン・オリンピックで成果が上がる、あるいはさらに東京オリンピック招致の追い風にもなっていく、そういう環境がつくられますよう、しっかりと支援してまいりたいと考えております。

馳委員 私がロサンゼルス・オリンピックにレスリングの代表として出場したのはもう二十五年前のことで、私もいいおじさんになったなと思いますが、当時は、世界のだれが強くてどういう戦術を持っていてとか、そういった情報はほとんどありませんでした。言うならば突撃作戦みたいなもので、監督、コーチから気合いで行けといって、でも、今ではもう気合いだけで勝てるような時代じゃないんですよ。そういった意味では、ビデオを持ってきたり、ルールを持ってきたり、あるいは審判の審判傾向、あの審判はどういう審判の仕方をするかとか、そこまでしないと勝てないのが現場ですよ、大臣。ぜひラフバラ大学とのJOCの提携をバックアップする体制をとっていただきたいと思います。

 次に、留学生三十万人計画にちょっと文句を言いたいと思います。

 留学生三十万人計画をおっしゃったのは福田前総理で、とっととやめてしまったので、私は福田総理にも文句を言いたいところでありますが、いないので言えませんので、でも、行政の継続性という観点からいくと、二〇二〇年までに来年からあと何年ありますか。十一年か十二年ですよ。現状は十二万人。これを三十万人にふやすということは大変なことなんですよ。

 まず、文部科学省にお伺いしますが、では、二〇二〇年を目途にというロードマップ、これを受け入れる体制、どの地域から、あるいは受け入れるのも、学部なのか大学院なのか専門学校なのか、いろいろ受け皿はありますが、文部科学省としてどのようなロードマップ、何年度までに何人、最終的に二〇二〇年を目途に三十万人達成する、このロードマップをお知らせいただきたいと思います。

徳永政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ございましたように、留学生三十万人計画、グローバル戦略の一環といたしまして、二〇二〇年を目途に留学生受け入れ三十万人を目指すものでございます。

 ただ、具体的な留学生のいわば数、途中段階での数といったことにつきましては、送り出し国の経済社会状況、高等教育に対する需要、私どもの受け入れ環境、さまざまな要因がございますので、例えば二〇二〇年までの期間を区切って受け入れ数をお示しするということは困難だと考えております。

 ただ、留学生三十万人計画、既に関係閣僚の合意に基づいて計画が策定されておりますので、日本留学の動機づけから就職に至る出口まで体系的に施策を推進し、計画の達成に向け努力をしていきたいと考えております。

 特に、計画期間の当初におきましては、日本留学を促進するための基盤をつくる、こういったことを重点に置きまして、海外における留学情報提供、あるいは相談の一元的サービスの展開、あるいは留学生を多く受け入れる国際化拠点大学の育成、こういったことを二十一年度概算要求でも要求をし、こういったことに努めていきたいと思っております。

馳委員 最初から、何かできない言いわけをするような答弁はやはりよくないな。

 徳永さん、もう一度出てきて答弁してほしいんですが、では、実は平成二十年七月二十九日に、文科省、外務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、六省が連名で留学生三十万人計画の骨子を出しております。民間の会社だったら、社長がゴールを決めたのならば、毎年の事業計画を出して、それに予算をどう張りつけるかということ、各部署の連携を出すのが当たり前ですよ。そうではなくて、確かに国家というのは単年度予算ということでありますから、最大限来年努力しますというのは、そんなの毎年繰り返していけば、二〇二〇年には、やはりできませんでしたという言いわけになっちゃうんですね。

 そんな言いわけを先に言われても困るので、では、あえてこういったシステムの中で申し上げれば、関係六省の担当課長の入った連絡協議会をつくってロードマップをつくる。できないのであるならば、どういう受け入れ体制をとっていけばいいのかということの議論がなされているのかどうかをお答えいただきたいと思います。

徳永政府参考人 委員御指摘のように、留学生三十万人計画、これは文部科学省、外務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、多くの省庁が連携に当たることが大切でございます。このために、私どもを中心に、今申し上げました関係六省が集まりました局長級及び課長級の関係省庁会議を適宜開催し、留学生三十万人計画の推進に向けた連携について協議をすることにしております。

 今御指摘ございましたように、特に、私どもが当面重点を置きます海外での留学情報提供、相談の一元的窓口によるワンストップサービス、あるいはまた宿舎の確保、就職支援、在留資格審査といったことの問題につきましては、関係省庁会議を通じて十分な連携を確保していきたいと思っております。

馳委員 では、しっかり連携をお願いします。

 そこで、留学生三十万人計画骨子、これを読んで私は、大臣にお伺いした方がいいのかな、それとも徳永局長にお伺いした方がいいのかなと思うんですが、「優秀な留学生を戦略的に獲得していく。」こうあるんです。「優秀な留学生」。

 公文書、文書、言葉は定義をしっかりやってほしいんですが、優秀な留学生をどうやって獲得するの、優秀な留学生というのは何よ、優秀な留学生をどうやって社会に送り出すの、ここの哲学が私はよく見えないんですよね。まさか、何か間にブローカーでも入って、国費留学生を成績さえよければどんどん入れますよといって優秀と言っているのか、それとも、やはり人格とか態度とか、そんなことを余り強調しちゃうとどこかの高校の校長先生みたいになってしまいますが、優秀なというのはどういう意味なんですか。

 これは、留学生十万人計画をスタートさせた中曽根元総理、あれから二十年たってやっと十万人は達成したわけですよ。今度は、十一年かそこらで十二万人から三十万人と言っているんですよ。我が国にとって、税金を使ってやる事業ですよね。どうやってこの入り口の部分、優秀な学生を獲得するという部分、では、受け皿である大学や大学院でどういうふうな教育を、あるいは研究を、環境を整えてしなければいけないのか。

 さっきから徳永局長の話を聞いていると、受け入れのハードの部分が非常に強調されておりますが、我が国の国民の税金を使っての事業でありますから、どう優秀な、そして日本の大学、学部や大学院、ここをステップにして、さらに研究を深めるためにアメリカやヨーロッパのところに、踏み台にされちゃ、また何となく困るわけですよ。せっかく送り出すならば、日本経済のためにもあるいはアジアの地域のためにもなるような、そういった戦略的な目標を持っていただきたいと思っております。

 現状を申し上げれば、アジアからたくさん来ています。受け入れているのは学部留学生がほとんどです。そして私費留学生がほとんどです。そして私学がほとんどです。国費留学生なんというのは私学にはちょっとしか来ておりません。こういう現状を踏まえた三十万人計画のロードマップをつくるべきだと私は思っています。

 大臣にあえてお伺いしたいんです。この優秀というのは何なんですか。優秀な学生をどう獲得するのか、これについて私は大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

塩谷国務大臣 委員おっしゃるように、この三十万人計画というのは大変な計画であると私どもも受けとめておるわけでございまして、日本へそれだけ来ていただくには、今局長の方から答弁ありましたように、受け入れ体制というものも大事でありますし、どういった学生をということで、優秀なということをうたっているわけです。

 今現状、お話あったように、現在の約十二万人の留学生の中にはさまざまな留学生がいて、そういった実態を踏まえて、やはりこれからグローバルな社会に進展する中で、日本がより国際化に対応した拠点づくりということでこの三十万人計画が生まれたと認識しておりますので、それなりにやはり国際社会で対応できる人材を養成することが必要でありますので、そういった意味で、総称的に優秀なということでうたっているわけでございますが、当然ながら、勉学に対する意欲、あるいは学力、成績の優秀な者と同時に、やはり将来的に国際社会の中でいかに活躍できるかという観点も含めて、総合的に考えていきたいと思っております。

 具体的にどうするかというのは、おっしゃるとおりなかなか難しいところがありますし、これから計画を具体的にする中で、我が国の考え方、そして各省庁のいろいろな機関を通じて、来てもらうためにはまずは我が国に魅力を持たせなきゃいけない。したがって、そういうことも含めて、今後対応してまいりたいと考えております。

馳委員 終わります。ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で馳浩君の質疑は終わりました。

 次に、井澤京子君。

井澤委員 おはようございます。自由民主党の井澤京子でございます。

 今国会より文部科学委員に所属をさせていただきました。どうぞ皆様、改めてよろしくお願いいたします。

 早速、大臣所信に対して質問をさせていただくということで、限られた三十分の時間でございます。頑張ってまいります。よろしくお願いいたします。

 私も、実は当選以来、子供、青少年という問題をテーマに取り組んでおりまして、現在も、青少年に関する特別委員会の方に所属しながら、子供や青少年、教育など、いろいろな環境につきましても取り組ませていただいております。

 最近の、特に夏以降の今の日本の状況を考えますと、アメリカに発した金融危機、そして百年に一度の世界恐慌というような形で、今閉塞感が日本の中には漂って、ちょうど今、外を歩いておりますと、クリスマスのイルミネーションで明るい、子供たちにとっては今一番年間の中でも楽しい時期になってきたのではないかなと思いながら、今外を歩いたりもしております。

 しかし、暗い話題ばかりではなく、この間、大臣の所信のお話にもありましたように、この夏には北京オリンピック、そして、先月にはノーベル賞を四人の日本人の科学者が受賞するというような明るい話題も今いろいろと出ております。女性にとりまして今私も応援団として大変うれしいのが、日本人初のママさん宇宙飛行士が誕生し、それが今新聞や報道等で話題になっております。女性の社会進出は、私のころに比べますと、日本のみならず、世界、宇宙へと羽ばたいていくんだなと今心強く思っております。

 他方、子供や青少年を取り巻く環境を見渡してみますと、学校の裏サイト、あるいはいじめ、児童虐待、また無差別殺人や、最近は、交通事故、飲酒運転によるひき逃げというような形で、本当に想像がつかないような時代、事件性が出てきている。その事件や事故というのも、複雑かつ多様性な現状ではないかと思っております。

 そこで、この文部科学行政というのは、それだけに、スポーツや教育を通して、明るい兆し、明るい方向にこの日本の将来を向かわせていく大きな役割を持っているのではないかと思っておりますので、そんな思いも含めまして、限られた時間内で質問させていただきたいと思っております。

 まずは、教育の格差についての問題です。

 去る九月に、OECDの加盟国三十カ国が教育に関して質問をいたしました。この「図表でみる教育」というものが発表されまして、それによると、教育に対する公的支出の割合は対GDP比でOECD諸国の平均が五%なのに対し、日本では教育に対する国や地方自治体の公的支出の対GDP比が三・四%と、加盟国の中では最下位でした。トップのアイスランドが七・二%、二位のデンマークが六・八%に比べると、日本の公的支出は何と半分でございます。今の国や地方の赤字の財政、また、少子化で子供の数が減っていく中、公立学校の教職員の数が減少、給与が減っていくというような中で減少傾向になっていくのかなとも考えられます。

 これらのことを考えますと、教育に対する公的支出が不十分であるということ、それだけ家計への負担が、例えば私費での負担が大きくなってきて、その分、所得の格差が教育の格差につながり、格差の固定化を招いているのではないかと考えております。

 各種の調査やマスコミで、最近報道も取り上げておりますように、東大生の親は東大出身が多く、また、今の東大生の親には富裕層が多いという結果は、教育の平等、教育は平等に受けるという観点から見ても非常に問題ではないかと言えます。低所得者階級や中所得者の階級の方々には、入学金や授業料の問題が非常に深刻です。いろいろな調査によりましても、子育てをする中で一番経済的負担というのが教育費の負担であるというような結果も出ております。そのためには、保護者の教育費の負担の軽減、例えば奨学金制度の充実や学費負担の拡充、そして教育に対する戦略的な投資というのが、日本では、長期的な視野に立ってまず取り組むべきことではないかと思っております。

 先日、春ごろでしたか、朝日新聞の記事の中に、道路財源ではなく子育て財源というものを取り上げてはどうかというような話がありましたが、子供特定財源というと大きなくくりになりますので、ここで、教育特定財源とでもいうような、教育に関する財源の確保や手当てはできないものなのか。今年度、これから平成二十一年度の税制改正の要望の中にも、家庭教育費の負担の軽減も盛り込まれております。

 この教育格差問題につきまして、大臣の御認識と御見解をお聞かせいただければと思います。

塩谷国務大臣 ただいまの教育格差問題については、最近特に、経済の厳しい中でまた問われているところだと思っておりますし、我が国としても、だれもが、平等で、どこでも同じような教育が受けられるということが一番の目標でありますので、そのように努力をしているつもりでありますが、一方で、経済的な理由あるいは地域格差も含めて、そういったことが少しずつあらわれているのではないかと思っております。

 OECDの調査の中でも、そういった保護者の職業や、あるいは学力、学歴等によって子供の学力にどう影響するかという調査もあったわけですが、それに対しては、日本は比較的余り差がないという結果が出ております。我が国の全国学力・学習状況調査においても、必ずしもそういった結果ではなくて、もちろん、就学援助を受けている児童生徒の割合が高い地域は学力が低い傾向がある一方で、かなり高い結果も出ていることもあります。ただ、結構この上下の幅が広いという状況もありまして、一概には結論は出せないわけです。

 いずれにしても、そういった格差が出ているところもある中で、OECDのいわゆる公財政支出の比較において、GDP比五%という平均、これに対して私どもも何とか将来的にその五%を目標ということで、御案内のとおり、教育振興基本計画においてもそれを盛り込むべく皆さん方の努力があったのですが、残念ながら、数値的な具体的なものは載せられなかったわけでございます。

 私自身もこの教育費については、もう一度全体的な見直しをする中で、諸外国と比べて家計の負担が非常に多いということはもう明らかでございますので、これをどう考えていくか。そういうことを、将来の教育費のあり方全般に対する考え方を明確にしていく必要があると考えておりますので、今御指摘の、格差をまずはできるだけ軽減するという観点、そして、家庭においての教育費負担、これを軽減するという観点、そういった点を含めて全体的な教育費のあり方を検討してまいりたいと考えております。

 これについては、今、例えば消費税の問題も含めて、将来的な社会保障の大変な負担が増大する、それに対して消費税をという話があって、社会保障国民会議では将来的なその絵を示しているわけでして、教育についても、そういったことを目指して、こうあるべきだということを明確にする中で、私は、今後の税制あるいは予算の枠組みをしっかりと確保していく努力をしていかなきゃならぬと考えているところでございます。

井澤委員 ありがとうございました。

 次に、教育における学校、家庭、地域の連携についてお伺いしたいと思います。

 私の地元京都には、昨年の三月に三町が合併した、人口六万七千人の木津川市という市があります。この地域は、関西文化学術研究都市というものがあり、大阪、京都、奈良のちょうど中間地点に当たりまして、近年、人口がふえており、ベッドタウン化が進む市になります。人口増加に伴い、もちろん子供たちもふえ、学校も新しくできたりしております。

 実は、つい先日、木津川市でやましろ子育てアクションフォーラムという催しが開催されまして、私も伺ってまいりました。この趣旨というのは、少子化、核家族化が進み、地縁関係な同世代の同居もなく、新しい家族がこの地に住んできて、周りとのつき合いもなかなかない中で子育ての不安や悩みが大きくなってきている。そういう中で、社会全体で家庭の教育や子育てを支援するということを学校、家庭、地域の中で考えていこうというような催しでした。

 私も当日会場に参りますと、各部屋ごとに、保護者、PTAの方などが中心になって、今地域でこんなことに取り組んでいる、学校の安心、安全に始まって、子育ての悩みや、あるいは今教育の現場でどんなことが起きているのかというようなことが、保護者が中心になってこのフォーラムを運営しているというようなことでした。ですから、それだけに、新しい市ができて、学校、家庭、地域の連携というものが地域の中では本当に必要になっていく、もちろん学校教育の現場では必要になっていくのではないかと、私も各部屋を見ながら感じたところでございます。

 これは、家庭教育支援協議会が主催しまして、京都府の教育局が主管、そして教育委員会や各PTA連合会が後援するというような、学校、家庭、地域が一体となって子育ての教育を考えようというシンポジウムでした。

 しかし、後日、担当者の方に、今回この文部科学委員会で大臣に質問をするから、地元の声、今取り組まれている中でどんな課題や要望があるのかということを伺いました。木津川市では、週一回、小学校の運動場や体育館、多目的ホール、図書館などを開放し、放課後子どもプランというものを積極的に実践もしております。いろいろと実績を踏む中で幾つかの問題点があるそうなので、御紹介をさせていただきます。

 登下校や開催時のまず安心、安全の問題がある。地域に開放するわけですから、その責任の所在を、学校側なのかどこにあるのか、その意識改革をしていかなければならない。また、運営をする中では、では、だれが子供たちとともにその時間を過ごすのか、人材の確保と保護者や地域の理解を得るという取り組みがこれからも必要だ。でも、何といっても運営費の確保もしていかなければならない。

 そのほかにもう一つ、これはぜひお答えをいただきたいんですが、厚労省による放課後児童クラブというものがある。文部科学省は文部科学省で一つプランがある、また厚労省でもプランがある。こういう行政の縦割りの中で現場は動いていかなければならないという責任の所在も含めまして、いろいろな課題を持ちながら今運営をしているというようなことを聞きました。

 先日も大臣の所信の中で、学校、家庭、地域の連携というものの重要性についてお話をされていらっしゃいました。今、私が紹介をしました現場での問題点も含めまして、大臣の方で、縦割り行政の中で各省庁との連携、また、地方公共団体、地域での、地域といいますか、学校現場での連携も含めまして、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 子供たちの教育については、私も所信で申し上げましたように、学校、地域、家庭が一体的になって協力していくことが必要であると考えておりまして、このことについても、教育振興基本計画においても、社会全体の連携の強化が必要だということで指摘をしているところでございます。

 今御指摘の放課後子ども教室、これは、我が省で特に地域と連携して、放課後、子供たちにいろいろな活動をする場を設けていこうということで始まったわけでございます。特に、学習も含めてそういういろいろなプログラムを用意しようということでございますので、これは新たに今度始まった計画でございますので、今、この普及そして市町村との連携を深めて、具体的に進めてまいろうと思っているところでございます。

 一方、厚生労働省の放課後児童クラブにつきましては、もう三十年来、いわゆる共働きの家庭とか子供を預かるという観点で、しかも、そこでしっかりと人員も確保して今日まで活動をしてきましたので、大変長い歴史と一つの体制がつくり上げられておりますので、そういったところとこの放課後子ども教室ができれば連携して、あるいは場合によっては一体的にも進めていただきたいということで、地域の実情に応じてそこは連携をとっていただきたいということで進めているわけでございます。

 したがって、全国的にはいろいろなケースがあると思いますので、地域がそういった話し合いを深めていただいて運営委員会を形成するとか、あるいは、県においても推進委員会という形で連携を推進していくようなそういった仕組みを今つくっておりますので、これからより連携をとって、その地域に合った子供のそういったクラブあるいは教室をつくっていくことを考えていきたいと思っているところであります。

井澤委員 ありがとうございました。

 次に、今言われております有害情報対策について、情報モラル教育という観点から御質問をさせていただきたいと思っております。

 私、先ほど最初に申し上げましたように、情報化社会がこれだけ進む中で、子供たちをめぐる環境が本当にがらりと変わってきた。インターネットによる子供をめぐる事件や事故はまた相次いで起きております。私も青少年特委では、児童虐待やネットいじめ、学校裏サイト、携帯電話のフィルタリング、有害情報を事前に削除をするというようなことにつきましてもいろいろと取り組んでまいりました。

 特に、有害情報対策や携帯電話へのフィルタリングの対策については、先日の通常国会で青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案が与野党一致で成立をして、来年四月の一日の施行を予定していることは、大きな成果であったのではないかと思っております。

 ただし、ここに至るまでは、自民党の中でも実にさまざまな意見がありました。そもそも小中学生に携帯を持たせるべきなのかどうなのか、それはおかしいんじゃないか、あるいは、フィルタリングというものは事業者へその義務化をするのかどうか、その責任はどうするのかという点について法的に罰則規定を設けてはどうかというような議論、あるいは、これはそもそも親と子のコミュニケーションの問題、家庭教育の問題である、いやいや、学校での情報モラル教育の問題ではないかというようなことで、いろいろな議論がありました。その法案では、いろいろな議論の中で、本当に何十人の参考人も来ていただきながら、現場の声を聞きながら今日まで来たというところが現状でございます。

 最近の取り組みを見ておりますと、例えば、全国webカウンセリング協議会という民間団体があります。その代表の安川理事長は青少年特委でも何度も参考人として来ていただいて、いろいろな現場の状況も聞いておりました。この協議会がいわゆる学校裏サイトを検索するための案内サイトを教育関係者向けに開設をしたら、何と、二カ月で五千件以上もの閲覧申請が学校等から寄せられた。今、これが教育現場の現状で、どれだけ教育現場と子供たちが知っている知識、インターネットワールドと言っていいんでしょうか、その差がどれだけあって、立ちおくれているのかなというのが現状ではないかと思っております。

 この情報モラル教育については、今後もっと重点的に力を入れていただく必要があるかと思います。

 一つ、私の経験なんですが、青少年特委でこの問題に取り組み、情報モラル教育というのが必要ではないかということで、この夏を使いまして地元の小中学校二十カ所ぐらいを回って、学校の校長先生や現場の担任の先生などにもお話ししました。そこでわかりましたのが、なかなか教育の現場と政治という現場の距離感があるというようなことです。情報モラル教育というものが必要だと各学校の先生方にお話しされても、文部科学省からの決められたことがなかなか現場におりてくるまで時間がかかるというような問題があったり、あるいは、議員というものがなかなか教育現場に入れなかったりというような、距離感があるような気がしてなりませんでした。そういう距離感を縮めていくことが、地域、学校、家庭というものの距離感も短くしていくのではないかなと学校を回りながら思ったところでございます。

 ここで萩生田大臣政務官にお伺いしたいと思います。この情報関係につきましては、いろいろと自民党の中でも積極的に議論を進めていただきましたので、今どのような現状認識かも含めまして、御意見を伺いたいと思います。

萩生田大臣政務官 今、井澤先生から御指摘のありました、情報化に子供たちをどう対応させていくかというモラル教育の充実というのは、極めて重要だというふうに文部科学省でも認識をしております。

 来年四月から先行実施される小中学校の新学習指導要領では、総則において、各教科にきちんと指導をするように情報モラルを身につけることを新たに明記して、指導の充実を図ろうとしているところでございます。

 また、先生にも大変御苦労いただきまして、本年六月に、子供たちを有害情報から守るためのネット環境の法律が成立をしました。この過程の中でも、今お話がありましたように、ネットですから総務省がもっとしっかりするべきだ、いやいや、コンテンツ業界を所管する経済産業省がだらしないからだ、いや、もっと言えば、使う人たちをきちんと教育していない文科省がいけないんだというような堂々めぐりがありましてあの法律が成立をした過程を私も十分承知しておりますので、これを縦割りで取り組んでいったのでは、子供たちを守ることはできないというふうに思っております。

 そこで文科省としましては、情報モラル指導のカリキュラムですとか教員向けのガイドブック、教員向けのウエブサイトの作成、また、この夏は夏休みを返上で、とにかく二学期までに間に合わせるようにということで、保護者や子供向けの携帯電話の危険性に関するDVDを作成して、既に地方教育委員会には配付をしたんですが、委員の先生方には予算の関係でまだお手元に届いていないのかもしれません。こういった取り組みを迅速に行っているところでございます。

 ただ、いずれにしましても、こういったマニュアルをつくっても、日々変わるネット社会にきちんと対応していかなきゃいけない。まさに未曾有の社会に子供たちが今生活をしているわけですから、このネット環境から子供たちを守るためには、省庁横断で、各省の取り組みをお互いの省がきちんと理解しながら、網目をきちんと張って、子供たちの情報モラル教育を向上させていくために、各省を挙げて、社会総がかりで取り組んでいくことを改めて決意として申し上げておきたいと思います。

井澤委員 ありがとうございました。

 次に、食育についてお伺いいたします。

 二〇〇五年に施行された食育基本法が、今もずっとこの三年、進められております。食という漢字は人に良いと書きます。食を糸口にして、環境や文化まで幅広く教育として学ぶことが重要ではないかと思っております。

 今、食というと、食の安心、安全の問題から、食料の自給率の回復に向けていろいろな食にまつわる問題があるかと思います。その中で食育というのが、地産地消、自分のとれたところで自分で消費をするというものが自給率の向上にもつながっていくのではないかという思いがございます。

 今回、食育推進プランとして平成二十一年度に予算を計上されていらっしゃいます。食育の推進、安心、安全な学校給食という問題も含めまして、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

塩谷国務大臣 食育については、子供たちにとって大変重要な課題だと思って私どもも推進をしているところでございます。

 特に、最近、偏った栄養摂取とか朝食欠食など、あるいは食生活の乱れが肥満傾向を高めたり、こういったことが、食習慣を身につけさせなければならないという観点で、学校においても食育を推進していくことを重要課題としてとらえているところでございます。

 特に、今お話にございました平成二十一年度の概算要求においての食育推進プランにおいては、まずは、栄養教諭を中核とした食育の推進事業、そして、食に関する指導の手引の改訂や食育推進等のための啓発資料作成、配布、そして、今委員がおっしゃった地場産物の活用方策に関する調査研究等を含めて六億三千万円を計上しているところでございまして、今年六月に改正した改正学校給食法の趣旨を踏まえて、今後も学校における食育の推進に取り組んでまいりたいと考えております。

井澤委員 ありがとうございました。

 では最後に、日本映画の振興についてお伺いいたしたいと思います。

 実は、私の祖父大曾根辰夫は、昭和初期の京都松竹の映画監督でした。亡くなるまで約百本の映画を監督し、日本映画、その昭和初期の時代劇の創成期を、映画づくりの職人と言われていろいろな数多くの作品をつくってまいりました。当時の映画制作というと、映画技術を担う、例えば衣装から大がかりな実物のセット、細かい小道具に至るまで、多くのスタッフがその道のプロの職人として映画づくりに参画してきたことは、祖父の資料や遺品からもわかります。

 日本映画は一時低迷期を迎えておりましたが、最近は、海外でもいろいろな作品が公開されたり評価をされております。世界への輸出産業としても考えられていいのではないかと思います。

 実は、京都というのは、約百年前に映画発祥の地でもありました。太秦という映画スタジオがあり、ここの太秦を中心にして、その資源を生かして、観光や商店街振興など幅広い波及効果が見込めるような形で、映画、映像産業の振興に取り組んでおります。

 先日も大臣の方で、伝統や芸術というものは豊かさのつながりになるというようなお話もありました。今後、日本の映画産業がどのような形で振興され、世界に向けて輸出産業としても育っていくのかということを御質問させていただきたいと思います。

 このような文化、芸術、特に日本の映画振興に対しての文部科学省のお考え、そして、来年度の税制改正や概算要求などを通して、今後、日本映画をどのような形で国で取り組んで振興されていくのか、お伺いしたいと思います。

浮島大臣政務官 大曾根監督をおじい様にお持ちになられる委員には本当に申し上げるまでもないと思うんですけれども、映画というのは、国民の多くに支持され、そして総合芸術であります。またかつ、海外に日本文化を発信する上でも極めて重要なものと考えております。

 日本映画は、平成十八年に二十一年ぶりに興行収入が海外の外国の映画を上回りまして、十八年、十九年度と公開本数も二年連続で海外の映画を上回る回復傾向にあるものの、昭和三十年の半ばには十一億人を超えた映画館入場者数も、昨年は一億六千万人と、六分の一に減少してしまっているところが現状でございます。

 また一方、海外においては、近年、日本の映画やアニメそして漫画といったコンテンツがジャパン・クールと呼ばれておりまして、高い評価を獲得しており、国内のみならず、海外も視野に入れた積極的な文化の発信が実を結びつつあると実感しているところでもございます。

 また、日本の映画の振興に関しましては、文化庁において、映画の自律的な創造サイクルの確立を目指し、平成十五年度より、魅力ある日本の映画・映像の創造、日本映画・映像の流通の促進、映画・映像人材の育成と普及、また、日本映画フィルムの保存・継承の四つの柱から成ります「日本映画・映像」振興プランを推進しているところでございます。

 また、平成二十一年度の概算要求におきましては、新たに設けました芸術創造活動特別推進事業の中で、すぐれた日本映画の作成への補助金や、海外への日本映画の発信、そして映画フィルムの収集、保存、デジタル化などの、四億増の十九億一千七百万を要求しているところでございます。

 また、税制改正につきましては、文化芸術活動への寄附の促進を図るため、寄附税制の拡充の要望を行っているところでございます。

 今後とも、我が国の映画そして映像、さらなる振興に努めてまいりたいと思います。

井澤委員 ありがとうございました。以上で質問を終わります。

岩屋委員長 次に、阿部俊子君。

阿部(俊)委員 自由民主党の阿部俊子でございます。

 本日は、このような貴重なお時間をいただきましたことにまず感謝を申し上げまして、文部科学行政の基本施策に対しまして、三十分間、質問をさせていただきます。

 先日、大臣のごあいさつがございました。その中で、資源の乏しい我が国の発展を担ってきたものは人の力にほかならない、国づくりは人づくりであるとのお言葉がございました。私もかねてより本当にそのとおりだと思っておりましたので、大臣のお言葉に大変共感をいたしました。

 そこでまず、高等専門学校、いわゆる高専の今後のあり方について質問をさせていただきます。

 高専は、戦後、中堅技術者の養成を目的としてつくられて以来、日本の高度経済成長を支え、これまで多くの優秀な技術者を輩出し、技術立国としてのものづくり日本を支えてまいりました。現在、全国に五十五校の高専がございます。しかし、少子化の影響でいわゆる統廃合が進みまして、高専の数は減少傾向にございまして、今後二年以内で既に四校の統廃合が決まっておりまして、五十一校になると聞いております。

 私の地元、岡山県津山にも津山高専という学校がございますが、十五歳人口の減少、いわゆる大学全入時代によりまして、こちらも入学希望者が年々減少し、縮小していく一方となっているところであります。

 他方で、産業界からは高専の卒業生に対する評価が非常に高く、就職率は大学を上回り、求人倍率は平均二十倍以上、就職率は一〇〇%でございまして、ほとんどの学生が、いわゆる希望する企業へと就職することができると聞いているところであります。

 企業にとって即戦力になる高専の卒業生、能力的にも非常に高い評価を受けているところでありますが、このような高専の高い実力を考えると、何としてもこの高専を再生していくということも、ある意味必要ではないかと考えているところであります。

 平成二十年、中教審の方から、高等専門学校教育の充実についての答申が出されました。これによって、高専の今後のあり方として、地域ニーズを踏まえた専攻科の整備充実の必要性、質の高い入学志願者の確保など、今後高専が生き残りをかけて目指すべき方向性について提言がなされたことは、非常に評価されているところでもあります。

 しかしながら、これを実現していくために、具体的にはどのような計画でどのように実現していくか、さらには、日本が技術立国としてどういう方向性で行うかに関しましては、経産省などの関係省庁との連携も含めて、しっかりとした具体案を示していくことが不可欠であると思っています。

 これに関しまして、文部科学省として大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

塩谷国務大臣 ただいまの高専の問題につきましては、この役割、そして果たしてきた実績、大変重要なものがあると受けとめておるわけでございまして、五年制の高等専門学校は、今後もその重要な役割を担っていくよう考えておるわけでございます。

 特に、中教審がまとめましたこの高専についての答申につきましては、今お話ございましたように、各高専が自主的、自律的に改革に取り組むとともに、産業界や地域社会との連携を強化してイノベーション創出に貢献できるよう、教育の一層の充実を図るということをうたっておるわけでございまして、最近の少子化に伴い、高専が大変な役割を担ってきた一方で、やはり課題も出てきておるわけでございます。

 そして、今回の四地域における統合につきましては、大体一県に二つあるところを統合して、ある程度新しい学科というものをつくり上げて、現状のいわゆるニーズにこたえようというところでございますので、決してそれを削減していくという考え方ではなくて、より教育内容を充実させていくために、一つの県で二つあるところを中心に今回の統合を考えたわけでございます。

 今後、特に技術的なもの、そしてものづくりに貢献してきた高専、さらには職業教育という観点から、私どもも、例えば専門高校の問題、いわゆる商業高校とか工業高校のあり方の問題、さらには、専修学校等職業の専門的な各種学校の考え方、そして大学院に至っては、専門職大学院も今できているわけでございまして、今後、高等教育における職業教育というものをどうとらえていくかという観点も含めた考え方を今しているわけでございまして、そういったトータル的な中での高専の役割ということを踏まえて今後の職業教育ということを考えてまいりたい。

 今、そういう考え方で、これについてもまた中教審に来月諮問をしてまいりたいと考えているところでございます。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 今の大臣のお答えですと、国家戦略としてのいわゆる技術教育のあり方ということで、さらなる具体案が中長期的にこれから出される予定であるというふうに理解してよろしいでしょうか。

塩谷国務大臣 特に職業教育ということが、もちろん義務教育段階でも今言われておりますし、そして、最近の特にニート、フリーターが多く現存する状況から考えますと、やはり、職業教育というものをもう一度しっかり確立させるためにも、高専の今までの実績を踏まえて、全体的な高等教育の中での職業教育を考えていきたい。当然、国家戦略として、我が国が今まで培ってきた技術、ものづくり、そういったものもこれからしっかりと育て継承していくということも含まれていると思いますので、おっしゃったような考え方であります。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 資源の少ない日本の資源が人であること、また、労働力として若者人口が少なくなる中で高専の果たす役割は非常に大きく、現代社会に合わせた高専のあり方を考え、高専を活用していくことが、強い国づくり、強いものづくり日本というための国家戦略として不可欠であることを大臣が全面的に出してくださったこと、本当に感謝いたします。今後とも、国策として高専の充実整備をぜひともよろしくお願いいたします。

 次に、看護の基礎教育の制度の充実についてお願いをいたしたいというふうに思います。

 ことし、保健師助産師看護師法が制定されて六十年の節目を迎えました。この間、医療技術の進歩や在宅医療の推進など、看護職の働く場や看護職に求められる役割も非常に拡大いたしまして、教育カリキュラムの追加、学習時間の延長などが行われてまいりましたけれども、いわゆる医師や歯科医師、ほかの医療職と違う看護の基礎教育期間が三年以上という期間のまま、六十年間全く変わっていないところでございます。

 これに対しましては、基礎教育期間を延長し、現行の三年から四年に引き上げて看護教育の質の向上を図ろうということで、日本看護協会を中心にさまざまな検討が重ねられているところでございますが、私もその早期実現に向けて大変期待しているところでございます。文部科学省におかれましても、厚生労働省と十分な連携を図っていただきまして、ぜひとも看護教育四年化の実現に向けまして強力な御支援をいただきたいというふうに思っておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。

 さて、一方で、看護教育課程に関しまして、非常に多様で、資格取得までさまざまなコースがございます。中学を卒業してすぐに看護の勉強を開始する高等学校の看護科、高校三年と専攻科二年を統合いたしました五年一貫教育と呼ばれる看護教育課程など、今後四年化を進めていく中で、整合性のとれない制度も実は存在いたします。現在、この五年一貫教育は、全校で六十七校、年間約三千五百人の卒業生を輩出しているところでありますが、大学や看護学校の卒業生と比較して就職して一年以内の離職率も低いなどと、評価もされているところであります。

 しかしながら、看護教育の四年制に合わせまして、この五年一貫教育の制度も当然見直す必要が出てくると考えているところでありますが、一方で、その学生の要望も、大学に進学したいなどという声も聞かれているところであります。

 五年一貫教育はあくまで中等教育という位置づけでございますので、大学や短大、専修学校とは教育の質が違う、現行制度では大学へ直接編入することはできない、このことは理解しているところでありますが、学生は、入学試験を受験し、一年生から看護大学に入学して単位取得のため同じ教科を、国家試験を既に通過しているにもかかわらずすることになります。

 この件に関しまして、平成十六年に清水嘉与子前参議院議員が参議院の予算委員会で質問させていただいたところでございますが、それ以来私も関心を持っているところでございまして、現在どのような状況になっているのか、お聞かせください。

金森政府参考人 高等学校看護学科につきましては、御指摘ございましたように、平成十四年度から高等学校本科の三年間と専攻科の二年間を合わせた五年一貫の看護師養成課程を設けることができるとされ、既に、二期にわたる卒業生を出しているところでございます。

 こうした中で、今後さらなる知識、技術の習得を希望する卒業生が出てくるものと見込まれておりまして、これらの生徒が大学などにおける学習機会を適切に得ることができるよう、五年一貫高校から大学への円滑な接続を図るなど、卒業後の教育を充実することが重要でございます。

 このための方策といたしましては、大学進学を希望する卒業生に対する大学推薦枠等の拡大でございますとか、専攻科の学習内容に対する大学による単位の付与、また、専攻科から大学への編入学などが考えられるところでございますが、大学による単位の付与や専攻科から大学への編入学などにつきましては、初等中等教育である高校専攻科の法的な位置づけや教育内容等の基準、また、看護学科以外の他の専攻科の取り扱いなどの検討課題があるところでございます。

 現在、文部科学省におきましては、高等学校の看護教育に関する検討会を設置いたしまして、こうした大学への円滑な接続に係る方策などを含む看護教育の充実のための方策について、検討しているところでございます。

 こうした課題も踏まえながら、卒業後の教育の充実に向けて引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。

阿部(俊)委員 私、前職は看護教員でございました。やはり、看護の基礎教育の四年化ということは、時代のニーズとともに私の悲願でもございまして、その達成のための過渡期における諸問題の解決には、ぜひとも御尽力をお願いしたいと思うところでございます。

 次に、質の高い看護師の養成についてお伺いをしたいというふうに思います。

 文部科学省におきまして、医師、コメディカル、技術者、質の高い医療従事者を養成することを目的にさまざまな取り組みが行われているところでございますが、例えば平成十九年から、質の高いがんの専門医を養成するすぐれた教育プログラムに対しまして財政支援を行うがんプロフェッショナル養成プランということが、大学教育の活性化の促進、さらには、今後のがん医療を担う医療人の養成の推進が進められるなど、医療従事者の資質の向上が非常に期待されているところであります。

 ところで、大臣のごあいさつにございましたように、現在、医師不足、これが課題となっておりますが、医師不足の解消のために、医学部の定員を増員するとともに、地域医療を担う医師養成教育の充実に努めるということがごあいさつで述べられたところでございます。しかしながら、医学部の定員枠の増加だけで必ずしも医師不足は解消されないのではないかという意見も聞かれるところでございます。

 昨年末に厚生労働省から出された、医師及び医療関係職種と事務職員との間の中でいわゆる役割分担の推進については、医師でなくても対応可能な業務について整理をし、医療関係職種、事務職員間で役割分担の推進が期待されているところでございます。

 米国などでは、家庭医不足を補うために、ナースプラクティショナー、フィジシャンアシスタントと呼ばれる、医師の管理下で簡単な処方や診察ができる看護師や医療従事者が重要な役割を担っているところであります。

 最近、日本でも、一定の臨床経験を有する看護師に、フィジカルアセスメント、さらには薬学の知識を習得させるナースプラクティショナーの養成を開始した大学がございますが、ナースプラクティショナーという名称をつけると特別な資格のように感じますが、実際には、その役割は、医師との連携のもとプロトコールなどを整備することで、現在看護師に認められている業務範囲のもとで、現行の中で実践できることがほとんどでございます。

 六月に舛添厚生労働大臣が取りまとめました安心と希望の医療確保ビジョンでも、医師とコメディカルの協働の充実がうたわれているところでございまして、ぜひともこのような形で看護師を有効に活用し、医師との協働を推進していく必要があると考えますが、これについての考えをお聞かせいただきたいと思います。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 全国的に産科、小児科などの診療科や僻地等で医師不足問題が深刻であり、地域で必要な医師を確保していくことが喫緊の課題となっております。

 これら医師不足の背景には、大学医学部の医師派遣機能の低下、病院勤務医の過重労働、女性医師の出産、育児等による離職、医療に係る紛争の増加に対する懸念などの複合的な要因が関係しており、御指摘のように、大学医学部の定員増のみでは医師不足が解消するものではないと考えております。

 このため、緊急対策といたしまして、本年度補正予算におきまして、医師派遣緊急促進事業、また、事務作業を行う医師事務作業補助者を設置、養成する際に必要な経費の助成、短時間正規雇用を導入する病院に対する経費の支援などを盛り込んでおりまして、医師不足地域への医師派遣や、勤務医、女性医師の勤務環境の改善を図ることとしております。

 さらに、本年六月の医療確保ビジョンや、骨太の方針、七月の五つの安心プランに基づきまして、病院勤務医の過重な勤務環境の改善の一環として、医師と看護師等の役割分担と協働の推進を図るため、御指摘のありましたとおり、昨年末に、医師でなくても対応可能な業務について整理をした通知を発出いたしました。

 これに続きまして、来年度の予算におきましては、このために必要な看護師等の研修の実施、また、専門家によるさらなる役割分担に関する調査研究等を進めることとしております。また、中長期的対策といたしまして、医師の臨床研修制度の見直し、産科医療補償制度の創設、医療安全委員会の設置に向けた検討など、医療リスクに対する支援体制も整備をするなど、さまざまな対策を講じることにより、地域に必要な医師の確保に努めてまいりたいと考えているところでございます。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 必要な医療の提供は、国民の安全、安心の観点から非常に重要でありますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 次に、障害児教育についてお伺いをいたします。

 現在、自閉症などの発達障害が非常にふえているところでございまして、二〇〇六年六月に成立いたしました改正学校教育法では、その対象を「心身に故障のある者で、特殊学級において教育を行うことが適当なもの」から、「教育上特別の支援を必要とする児童、生徒及び幼児」という文言にかえられたところでございます。さらに施行規則では、通常の学級において特別の教育課程によることができるものに、学習障害、LD、注意欠陥多動性障害と言われるADHDが追加されまして、特別支援教育の対象に含まれたところであります。

 発達障害は病気であることが周囲になかなか理解されず、これまで余りに支援の対象から取り残されていたところでありますので、特殊教育ではなく、学校全体、教育全体でかかわる必要があることが明確化されたことを私自身は高く評価しておりまして、これは、たびたび地元でお話を聞かせていただきます発達障害の子供たちを持つお母様方にも、大変感謝されているところでもございます。

 そういう中でよく御意見をお聞きするのが、支援員の質の拡充についてでございまして、特別支援教育が本格的にスタートし、小中学校については地方財政措置により支援員の配置が行われ、増員が進んでいます。しかしながら、支援員については特に資格要件がなく、教員免許の有無は問われませんので、各市町村の裁量で採用が決定されているところであります。

 これに対しまして、特別支援教育や発達障害に対して十分な知識や教育の機会を受けていない支援員もいるということで、支援員の増員が必ずしも教育の充実につながっていないという現状もあると聞いているところであります。特別支援教育におきましては、普通の子供以上に障害児を忍耐強く見守り、必要な支援を適切に提供する力量と資質、さらには強い熱意が必要であります。

 本年六月、自民党の特別支援教育小委員会におきまして、「特別支援教育の更なる充実〜自立と共生を目指して」が取りまとめられたところでございまして、特別支援教育二年目に対しての提言が行われたところであります。これは、先ほど質問に立たれました馳先生が委員長となりましておまとめいただきました提案でございますが、これまでの特別支援教育の成果を踏まえつつ、課題となっている支援員や教員の資質の向上も含めまして、今後、特別支援教育の充実を目指していく必要性が示されたところであります。

 この提言を受けまして、平成二十一年度に向けて具体的にどういう計画を立てて、どのように進めていくのか、政府としての御見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。

金森政府参考人 文部科学省におきましては、ことし六月に取りまとめられました自民党の小委員会における提言を踏まえつつ、来年度概算要求におきまして、特別支援教育の充実のための教員定数の改善を初め、障害のある児童生徒の実態把握や専門的な助言等を行うための専門家チームの派遣や教職員研修の実施などを内容といたします、発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業の充実、また、発達障害等のある児童生徒のための教材のあり方や効果的な指導方法等について実証的な研究を行う、発達障害等に対応した教材等の在り方に関する調査研究事業の実施などに必要な予算を要求しているところでございます。

 また、ことしの七月には、特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議を設けまして、特別支援教育のさらなる充実方策について現在検討を行っているところでございます。

 この協力者会議における議論も踏まえながら、引き続き特別支援教育の充実に努めてまいりたいと存じます。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 発達障害に関しましては早期対応というのが非常に重要でございますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 最後に、放課後子どもプランについてお伺いいたします。

 大臣の所信の中でも、放課後等に子供が安心、安全に体験交流活動ができる場を確保するという放課後子どもプランを引き続き推進するというお話がございました。働くお母さん方がふえる中で、放課後の子供の安全確保、子育て支援という観点からは、大変心強いお話でございました。

 この放課後子どもプランは、地域社会の中で放課後や週末等に子供たちが安心して健やかに過ごせるという、文部省の放課後子ども教室推進事業と厚生省の放課後児童健全育成事業、これが学童保育でございますが、一体的に連携して実施するものとして、平成十九年から実施されました。

 同じ学童期の子供たちを対象としたこれらの取り組みにつきまして両者が連携をとって協力していくというコンセプトは大変重要であり、平成十八年度の新しい少子化対策、少子化社会対策会議におきましても、両者が連携をとって全小学校区での実施を目指しているところでございます。

 しかしながら、文部省におけます放課後子ども教室推進事業と厚生労働省の放課後児童健全育成事業、これがいわゆる学童保育、放課後児童クラブでありますが、そもそも目的とする趣旨が異なること、一方は一般会計、他方は特別会計で運営されるなど、予算や規模の違いもございまして、実際には連携することが非常に難しい、また、連携したくないというようなお話が現場からよく聞かれるところであります。

 これにつきまして文科省、厚労省の両者でどういう検討が行われているのか。連携を進めていくために、具体的な方策についてお聞かせいただければと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに先生御指摘いただきましたように、文部科学省と厚生労働省が、放課後子どもプランということで一体的あるいは連携して実施するということでこのプランはスタートしているわけでございます。

 そして、具体的にこれを進めるために、私ども、例えば市町村段階での連携として厚生労働省とお話し合いをさせていただきまして、例えば市町村では、放課後対策事業、これは両方を含めてですけれども、運営委員会を全市町村に設置しよう、コーディネーターを全小学校区に配置しよう、あるいは活動場所における連携促進を進めよう、これは市町村の話でございます。

 それから、都道府県での連携として、市町村における取り組みをバックアップするために、放課後対策事業、両事業を含めた対策事業の推進委員会を両方の関係者で設置し、そこで総合的なあり方を共同で進めていこう、あるいは研修は合同でやっていこう、こういうふうなことを進めてきているわけでございます。

 今、実際上そういう意味で、連携の状況について、両方の部局が共同で作成するということで厚生労働省と一緒に調査をいたしました。一体的実施あるいは連携ということで、合わせて大体三割が、そういう意味で今、連携、一体的な推進を図っているという状況でございます。

 私ども、さらに厚生労働省と十分連携しながら、地域の実情に応じて、プランの趣旨というものが生かされる、そういうニーズも十分踏まえたものとなるように、例えば学校施設の一層の活用促進でありますとか、いろいろなそういうさまざまなすぐれた活動事例、グッドプラクティスを、いわゆる全国の方々にそういう情報を提供しながらいろいろその解決策について話し合っていく、そういう機会も設けていきたい、このように考えております。

阿部(俊)委員 ありがとうございます。

 対象者が子供であること、子供たちの安全、安心を確保するためにも、ぜひともその部分はよろしくお願いしたいと思います。

 また、指導員についてでございますが、放課後児童健全育成事業、いわゆる学童保育に関しまして、保育所のかわりに遊びや生活の場を提供して保護者の仕事と子育ての両立を支援するという重要な役割を担っているところでありますが、保育所と違いまして、学童保育の運営に法的拘束力が全くございません。ようやく昨年十月に、放課後児童クラブガイドラインがつくられたところでございますが、しかしながら、実現可能なものとなるような対策が必要ではないかと私は思っています。

 中でも、子供の育成に必要な継続性のある保育を提供するには指導員の役割が重要であると思うわけでありますが、現在、公的な資格もなく、数時間パートの方がほとんどで、賃金も安くて、とても継続して働き続けられる環境にはございませんし、待機児童に関しまして指導員の数が圧倒的に不足している段階でございます。

 これに関しまして、ガイドラインに示されたような仕事内容に見合ったいわゆる指導員の処遇の改善が急務であると思いますが、これに関して、簡単で結構でございますから、お考えをお願いしたいというふうに思います。

清水政府参考人 放課後児童クラブの指導員の資質あるいはその体制について、ちょっと私もなかなか答えにくうございます。

 私どもが行っている放課後子ども教室で申し上げますと、例えば、コーディネーターでありますとか、安全を図る安全管理員、あるいは学習アドバイザーとか、いろいろな多様な活動を行っていくということでございますので、特に資格は設けておらず、地域の実情に応じて、協力いただける方にお願いする、こういう考え方でございます。

 ただ、いずれにいたしましても、放課後子ども教室の場合でも、指導員の確保は非常に大きな悩みでございます。まさに実施していない理由というのは、指導員の確保が私どもであるとまず一番に挙がってくる。あるいは放課後児童クラブさんの場合ですと、ニーズの問題、場所の確保の問題に次いで指導員の確保が困難であるというふうな状況が挙がっているということは、私ども承知しております。

 いずれにしても、いろいろな意味で、地域、いろいろそこの中で協力できる方、子供の安全のそういう趣旨に沿った活動ができる場というのはどうしても限りあるということもございますので、両方でいろいろな形の連携というものがこれから重要になってくるだろう、こういうふうに思っております。

 以上でございます。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 やはり、障害者に対しても私は放課後子どもプランの必要性を非常に感じるところでありまして、特に障害児は目が離せないということを考えますと、この子どもプランで障害児の一時預かりということもぜひとも御検討いただきたいと思っているところでございますが、少子高齢化の中、特に資源のないこの日本の資源はやはり人であるということを考えましたときに、大臣の所信表明にございましたように、ぜひとも教育にしっかりと力を入れていただきたいと思うところであります。

 私の時間は終了いたしました。大変ありがとうございました。

岩屋委員長 次に、池坊保子君。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 まず、塩谷大臣、御就任おめでとうございます。私も久しぶりの質問でございますので、ちょっと緊張しております。

 私はずっとこの文部科学委員会に所属しておりますけれども、文部科学委員会のよいところは、党派を超えて教育、文化、芸術、スポーツ、科学技術、つまり人間にかかわるすべてのことにおいて心を一つにしていい政策を打ち立てようとしている、ある意味では知的水準が高いのではないかというふうに、私はいつも誇らしくもうれしくも思っております。

 この文部科学委員会に属そうと思いましたのは、つまり政治も経済も文化もすべて人間がやるわけです。単に教育行政に携わるということだけではなくて、教育というものはすべての人間を網羅した社会の縮図ではないかと思っております。

 例えば、今日のように経済が大変不況になりますと、子供たちは安心して学業を続けることができない。まず真っ先に高校生の中退ということが出てまいります。また、私たちのために働いてくれた人生の先輩たちが、年金あるいは医療、福祉で不安を抱えていたならば、そして手厚く扱われなかったら、幾ら授業の中で、道徳でいいことを言っても、健全な人間育成ができるはずがございません。

 そういう意味では、この委員会に所属できるなら、すべてのことにおいていろいろな問題提起ができるし、問題解決ができ、そして政策を打ち立てることができるのではないかというふうに思っております。

 話がかわりますけれども、十一月四日にオバマ次期大統領が誕生し、そして演説をなさいました。大臣、お聞きになりましたか。お聞きになってどんな感想をお持ちになったか、一言ちょっとお伺いしたいと思います。

塩谷国務大臣 アメリカの大変ダイナミックな選挙の結果、また新しい、すばらしいニューリーダーが出たなという印象を持っております。

 すべて演説は聞いておりませんが、現状を踏まえた、そしてまさにチェンジという言葉を振りかざして戦った結果の、今回新しいニューリーダーの誕生だというような印象を持っております。

池坊委員 私は久しぶりに感動をいたしました。

 黒人、白人、ヒスパニック系、アジア系、ネーティブアメリカン、障害者、そうでない人も、同性愛者、そうでない人も、高齢者も若者も、そして富裕層も貧しい人も、すべてが心を一つにして新しい国をつくっていくんだ。長い道のりではあったけれども、人民の人民による人民のための政治、それを今果たすことができたんだ。貧しい人は政治に無関心だと言われているけれども、五ドル、十ドル、私に寄附をしてくれて、そして新しい国ができたんだ。

 それで、彼は百六歳の女性の話に言及いたしまして、かつて、肌の色が違うから、女性であったから投票することができなかった。だけれども、今日、二十一世紀を迎えて、彼女は自分の意思で投票することができる。その中で言っておりましたのは、ニューディール政策、彼女はあの大恐慌の中にあっても、ニューディール政策で新たな雇用と新たな共通の目標をつくり出して国が恐怖に打ちかつ姿も見てきたんだというふうに言われていました。

 きょう私は、そのニューディール政策についてちょっとお話ししたいというふうに思います。

 これは七年前に予算委員会で小泉総理に今の斉藤環境大臣が説明されておりましたので、重複するかもしれませんけれども、私は共通認識を持っていただきたい。きょうの私の質問のテーマは、文化芸術は心に希望を持たすだけでなくて、経済対策においても大きな力を発揮するんですということを申し上げて、幾つか大臣からの答弁をいただけたらというふうに考えております。

 このニューディール政策というのは、ルーズベルト時代の大恐慌の中で行われた。例えば三百万人の失業者を雇用した、それから公共工事を行ってきた、ダムだとかテネシー渓谷というのが私どもの中にはすぐ頭に浮かんでまいりますけれども、一方でまた忘れてならないのは、フェデラル・ワンと言われました芸術家雇用政策を展開したのです。これが、七十年たちました今でも、私はこの大不況の中においてちょっと考える政策の一つではないかというふうに思っております。

 これはどんなものかと申しますと、連邦音楽プロジェクト、連邦演劇プロジェクト、連邦作家プロジェクト、連邦美術プロジェクトといって、四つのプロジェクトがあるんですね。公共工事だけでなくて、文化芸術家たちを本当にたくさん雇用いたしまして、建築物をつくったり、それから絵画をつくらせたり、そして飾ったり、また演劇をしたりしたんです。

 音楽プロジェクトでは、一万六千人の音楽家及び関連の専門職が雇用されて、毎週およそ三百万人の聴衆に五千もの公演を行ったほか、五千五百曲が創作され、これらの活動は地域の教育委員会や各種の民間団体による支援と連携して行われました。

 また、連邦美術プロジェクトは、五千三百人の美術家及び関連の専門職を雇用して、一万点を超える絵画と一万八千点の彫刻が制作され、学校、病院などに飾られたほか、二千五百カ所の公共建築物に壁画が制作されました。この影響として、地域社会にアートセンターやギャラリーができたほか、同時に行われた教育的プログラムによって美術愛好者がふえたんです。

 また、演劇プロジェクトは、一万三千人の演劇関係者が雇用され、四年間で一千二百の新作を世に出し、百人の新人劇作家を育成し、毎月千を超える公演を行い、これは七八%が無料公演だったんですね。

 作家プロジェクトでは、七千人近い作家を雇用して、公式ガイドとか、風土記の要素をあわせ持つアメリカンガイドシリーズや地域紹介のパンフレットなどを作成いたしました。

 この成功をきっかけにして、後世に名を残す劇作家とか俳優とか多数の芸術家が生まれただけでなくて、第二次大戦後は、今までは芸術の中心はパリと言われておりましたけれども、それがニューヨークに移り、ブロードウェーのミュージカルが確立され、西海岸ではハリウッドという巨大映画産業に成長していったんですね。それまでは映画産業というのは余りなかったのに、これによって興った。現代で言うならば、ITと今言われておりますから、IT産業がいろいろと駆使されて、そういうものも興ってくるのではないかというふうに考えているんです。

 まず、これをどのように評価なさるかを、ちょっと大臣のお考えを伺いたいと思います。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

塩谷国務大臣 文部科学委員会が大変レベルが高いというお話、また、そういう委員会の皆さん方に御指導を賜りたい、よろしくお願い申し上げる次第でございます。

 ニューディール政策のお話は、先日、池坊委員が私のところへ陳情に来られた中での一番大事な政策だなということで承ったわけでございますが、きょうも詳しくそのお話を聞いて、日本だったらなかなかこういう考え方は出てこないのかなというふうに思いました。

 しかしながら、このニューディール政策で行われた、特にいわゆる芸術関係の雇用対策であると思いますが、そういったことが後世に大変な、アメリカのいわゆる文化政策が花を開いて、ハリウッド、ニューヨークというようなすばらしい巨大産業を生み出したということで、今後私どもも、こういうことを勉強しながら、特に経済政策としての文化芸術の振興に取り組んでまいらなきゃならぬ。我が国の文化芸術に対する政策の実施の効果が、やはりかなり大きく効果がある、二倍以上のいわゆる生産誘導があるという調査結果もありますので、そういったことを考えると、今後、特にこういう厳しい経済状況の中でも、ニューディール政策の、過去の例から学んだ政策をまた実施していくことも当然必要だなという考えを持っております。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

池坊委員 ルーズベルト大統領の有名な一節の中に、我々が恐れなければならない唯一のものは恐れるということそのものだというのがあるんですね。これを受けまして、オバマさんも、恐れではなく、希望の選択というふうに言ったんだと思うんです。今私たちの日本並びに世界を覆っているのは、大恐慌なんだ、経済の大不況なんだというこの恐れなんだと思うんですね。希望がないから、私たちは、景気を浮揚と言っても景気の浮揚がないのではないかというふうに思っております。

 「美しき青きドナウ」、これは私の大好きな曲でございますが、これはヨハン・シュトラウス二世によって一八六七年に作曲されましたけれども、この曲は、一八六六年の普墺戦争でウィーンの人たちが心が疲弊してしまって希望を失った、その中で、人々に希望を与えるためにとこの曲をつくったんです。この曲によって国民が感動するとともに、経済成長も遂げることができたわけです。

 今、確かに、大きな経済不況を迎えてはおります。ことし十月の完全失業率は四・八%、完全失業者数は二百七十一万人、そしてまた十月の企業倒産件数は前年同月比一三・四%増の千四百二十九件というふうに伺っております。でも、同時に、確かに株なんかはどんどん安くなっているんですが、個人の金融資産というのは一千四百兆あるんですよ。一千四百兆、これは預貯金ですね。だから、株だとか不動産とか、そういうのは入っていないわけです。景気浮揚、浮揚と言いますときに、でも一方で、これから将来は不安なんだというと、だれもそれは、何かにお金を使おうという気にはならない。

 きょうは財務省の方にもおいでいただいているので、経済対策というのは、複眼的にいろいろな視点から経済対策をしていかなければ、本当の意味の経済対策はできませんよということを私は申し上げたいんですね。その中で文部科学省が果たす役割は大きいのではないかと思っておりますので、塩谷大臣は閣僚のお一人でいらっしゃるので、ぜひそのことを言っていただきたいという思いをして、きょうは質問に立ちました。

 先日、京都のデパートで生け花展をいたしました。六日間で三万人来たんですね。主催者はもちろん生け花の普及、発展のためにするわけですけれども、デパート側はそうではなくて、来た人たちが、隣でバーゲンをしていたら物を買うんじゃないか、あるいはお友達と一緒にお昼を食べる、あるいは帰りに地下街で食料品を買う、そういう経済効果というのが大きいんですよ。

 例えば、浅草と大阪の天神橋では、今非常に伝統芸をてこに活性化を図っているんです。歌舞伎を浅草ではしておりまして、平成中村座というものをつくって公演をしております。浅草というと、雷おこしとかいろいろ有名ですが、一筋道を隔てると、やはり人の往来がないんですね。ところが、この歌舞伎によって町を元気にすることができて、人の往来も多くなった。浅草全体を江戸のテーマパークにしたいと言っているそうなんですが、地域との連携が生まれただけでなくて、たくさんの人が来るようになった。

 それから、大阪の天神橋筋商店街では、地元の人が二億円集めて寄附をして、関西唯一の落語の常設寄席、天満天神繁昌亭というのを開場したんですね。これは、連日立ち見の盛況なんです。この天神橋筋というのは大阪の中心地なんですけれども、アーケードの屋根が破れたり、空き店舗が多かった商店街、それが今や経済効果を呼びまして、開場後一年間の経済効果というのは百十六億に達したんだそうです。一日二万人だった歩行者が二倍にふえて、若者たちも来るようになった。そして、人間同士のつき合いも生まれて、ほんわかとした人情もわいてくるようになった。

 これは今、上方落語の革命の地にしたいといって頑張っているんですけれども、東京・銀座で落語祭を開いた春風亭小朝さんも、地元商店街と結んで、観光動員五万人というのを目標にしたイベントを今成長させているんです。

 非日常、晴れの場、縁日、そういうものを生み出すことによって地域社会に活性化をもたらす、それから、伝統芸能も知ることができるというようなことがあるんですね。経済の活性化というのは、やはり、地域社会に生きている方々と手をとり合うことなくしては真の経済の活性化はあり得ないというふうに私は考えております。

 この辺で財務省も発想を変えて、文部科学省の経済政策というのを、私たち、文部科学省はいつも、文化は希望を与えるんだ、感性を豊かにするんだ、経済的な効用とはまた別の次元で言っていると思うんですね。私は、そうではないんだと。経済効果もあるんですよ、それでいて非日常の感動も与えているんですよ、その連携というのが私は大変大切だというふうに考えております。二十一世紀というのは付加価値の時代ですから、付加価値のあるものにしか景気も浮揚していかないと思うんですね。

 その辺、もう一度、大臣はどのようにお考えでいらっしゃいましょうか。

塩谷国務大臣 大変重要な指摘だと思っております。特に、我が国、単に経済的な豊かさというものが本当に人々の豊かさにつながるかということも我々考えたときに、やはり付加価値が大事、特に文化芸術の分野はそういったところで大変重要な視点だと思っております。

 特に最近は、日本文化が、アニメーションとかそういったことが、コンテンツ文化ですか、こういったところが世界的に認められておりますので、そういうことも含めて経済的に大きな効果があるんだろうと思っておりますので、そういう点で、今後、文部科学省としても大いに文化芸術あるいは付加価値を念頭に置いて政策を実行してまいりたいと思っております。

池坊委員 安心、安全のための経済政策の中に文化芸術の部分が入っていなかったのを、ちょっと今ごろになって私は大変に惜しいなと思っておりますので、次のときには本当にこういう複眼的な視点を持つということを絶対にしていただきたいと思います。

 文化芸術に関して、ちょっと具体的な質問の幾つかをさせていただきたいと思います。

 一点は、芸術家への公共施設の提供についての質問なんです。

 日本にも優秀な若手芸術家、新進芸術家、たくさんいらっしゃいます。だけれども、表現をする場所がない、それから練習場所がない、事務所がない。国が直接雇用して働く場所を与えたり練習場を確保することは、もう時代の流れによってできないわけですね。限界がございます。それならば、いろいろな工夫をしたらいい。文化庁のやり方としても、今までの、従来の支援とはまた別のいろいろな形での知恵を出した支援というのが私は必要になってくるのではないかと思っております。

 東京都では、公園とか広場とかの公共空間を、若者たちがダンスの披露とか音楽演奏などパフォーマンス広場として活用できるようになったということを前に聞きました。

 自治体の中には、公共の施設を低額で文化芸術団体や新進芸術家に貸し出し、成功をおさめているところもございます。例えば、私が住んでおります、京都芸術センターは、京都市烏丸交差点裏の明倫小学校という、これは一九九三年に廃校になりましたが、それを文化施設として再生して、創作活動のための制作室、講堂、カフェ、フリースペースなどとして活用しているんですね。

 また、京都市と京都精華大学の共同運営でマンガミュージアムというのがございます。ぜひ大臣にもお出ましいただいたらと思っておりますけれども、三十万点に及ぶ漫画の収集、保管、展示、調査研究を行っている京都国際マンガミュージアム、これは、明治二年に番組小学校というのが京都にできました。それの一つで昭和四年にできました校舎を活用いたしまして、今、本当にお年寄りも若い方々もたくさんの方が来ていらっしゃるんですね。漫画がそんなに人気があるのかというのを、私も行って初めて知ったんですけれども。

 あるいは、大阪のミナミの繁華街にある旧精華小学校というのは、その体育館が一九二〇年代築の洋風建築であるということで、精華小劇場として再生して、行政、地域、演劇関係者による共同運営で自主事業を運営しているんですね。

 ですから、国が直接支援などはできなくても、廃校だとかさまざまな施設を民間の人たちと連携をしながら活用するということは、地域のためにも、また人々の、若者たちにとってもお年寄りにとっても大変いいことだと思っておりますけれども、文化庁としては、このような取り組みに対してはどのようなことをしているんでしょうか。

高塩政府参考人 今、先生の方から御質問ございましたいわゆる地域の公共施設、特に学校でございますけれども、廃校等を今文化施設に転用してそれぞれ地域の芸術家の活動の場にしている例が多々見られるところでございます。

 文化庁といたしましては、そういう中で、例えば先生から京都芸術センターのお話がございましたけれども、京都芸術センターにつきましては、文化庁の芸術拠点形成事業の中で一部事業に対する援助をしております。また、同じく、京都市に立誠小学校というのがございますけれども、そこの校舎を利用しました地域交流、文化の拠点形成の取り組みに対しまして、文化庁によります「文化芸術による創造のまち」支援事業というのがございまして、その中で支援を行っているところでございます。

 今後とも、文化庁といたしましては、各地域における文化芸術の振興のための取り組みに力を尽くしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。

池坊委員 ホームページとか文化庁は持っていらっしゃるわけですから、もっと広くいろいろな人たちが、ああそうか、こういう取り組みがあるのか、では、うちはうちの規模の中で、小さい小学校だけれどもこの部分をそういうことに使おうとか、いろいろな工夫をすると思うんですね。ただ、それの情報提供がないと、みんな知りませんので、そのことはどうか大臣、積極的にしていただきたいと思いますが、いかがでございますか。

塩谷国務大臣 文化庁としましても、そういった取り組みをできるだけ知らせて、また、いろいろな地域と連携をとって活用できるものを活用していくということが大事だと思っておりますので、大いにいろいろな広報手段を通じて発信をしてまいりたいと考えております。

池坊委員 これは大臣、ぜひ力を注いで、文化芸術にも強い、教育や科学技術、スポーツだけではなくて、文化芸術にも強い塩谷大臣を印象づけていただきたいと思います。

 きょうは財務省の方にも来ていただいたので、ちょっと寄附控除のお話を伺いたいんです。

 アメリカでは寄附金控除制度というのができ上がりましたのは、さっき申し上げたニューディール政策のもとでこれができたんですね。一九三六年より実施されて、現在アメリカでは年間二十兆円を超す寄附がなされております。これは主として個人の寄附が多いわけです。

 寄附金に関する日米の状況でございますが、二〇〇二年のデータでは、寄附金総額で日本は個人で二千百八十九億円、法人で五千九十二億円、合計七千二百八十一億円です。これに対して、アメリカは個人で二十二兆九千九百二十億円、法人で一兆五千二百五十五億円、合計二十四兆五千百七十四億円なんですね。もちろん人口も十倍ですから、それにしたところで、これはやはりアメリカの寄附というのが非常に大きいと思います。家計ごとの一年間の平均的な寄附金の合計では、日本は二千五百七十五円、アメリカは千六百二十ドルですから、十六万ということです。

 私は、この寄附に関しては、二つの阻む要素があるのではないかと思います。一つは、寄附文化というのが日本には根づいていない。だけれども、このごろそれが根づいてきつつある。だから、寄附、特に個人の寄附というのも上がってきて、大変喜ばしいことだというふうに思っておりますが、一つ阻んでおりますのは、控除の問題ではないかと思います。

 いつもいつも教育関係、文化芸術、この寄附控除を上げてほしいということを言い続けておりまして、頭のかたい財務省も、私から見たら教育、文化に余り熱意がないんじゃないかと思っております財務省も、平成十九年度の税制改正において、個人からの大口の寄附を促進しましょうという私どもの希望を聞いてくれて、所得の三〇%までとされておりました控除の上限を所得の四〇%まで引き上げることになって、それは大変に感謝の思いですが、これはやはりアメリカ並みの五〇%にはしてほしいなというふうに私は思っているんです。

 そもそも日本では、寄附金控除は税の優遇と言われておりますが、これが根本的に考え方が違うんですよね。寄附やボランティアは、アメリカにおいては公共財への心の投票だと言われているんです。ですから、寄附への財務省の認識が、アメリカと日本ではちょっと違うのではないかというふうに思っております。

 民間部門が公共財に資金を拠出しないから政府が税として金銭を強制的に徴収してそれを分配する、それが典型的な税の理論であるのかと思います。そもそも、民間部門がみずから寄附をする、個人がみずから寄附をするというのですから、そこに課税するのはどういうことなのかなというふうに私は思っておりますが、この理論の違いは延々と長く議論していくと時間がかかりますので、この寄附金控除の五〇%というのを来年に向けて努力していただきたいと思いますけれども、ちょっと財務省の見解を伺いたいと思います。

田中政府参考人 寄附金税制についての御質問でございます。

 先生御指摘のように、複眼的な視点からさまざまな議論があろうと思いますし、また御案内のように、税は与党の税制調査会でも相当にいろいろな議論がなされておりまして、今お話がございましたように、まさに近年、民間による民間活動、公益活動への果たす役割というのも随分高まっているということを踏まえて、十七年、十九年と連続で、今御指摘のありました所得税の寄附金控除の控除の限度額を、二五%であったものを三〇、四〇と引き上げてきております。その意味において、先生の方から御指摘のあった、文化芸術等への視点の考え方が随分取り入れられてきているのだろうと思います。

 今後さらにこれを引き上げるという御議論でございますけれども、私どもの税の理屈みたいな世界についてちょっとお話をさせていただきますと、要は個人所得税、所得税をかけるものですから、その場合に個人の所得の処分、いろいろなところに個人はお金を使うわけですけれども、その個人の任意の所得の処分をどこまで費用として認めるかといいますか、控除として認めるかということが論点でございます。

 それで、先ほど申し上げましたように、三〇、四〇というふうに限度額が上がってきておりますけれども、これをさらに引き上げるということについて、今後また与党でも御議論があると思います。その中で、控除の限度額がどのくらい、御指摘のようなアッパーリミットになって、天井になってぶつかっているのかというような実態も踏まえまして、そういう意味で、近年の税制改正がどのくらい効果があったのかどうかということも見きわめた上で検討を行っていくことが重要ではないかと考えておりまして、そういう意味で、今後また与党の御議論を見ながら、私どもも御指導を受けてまいりたいと考えております。

池坊委員 今ここにはデータを持ってきておりませんけれども、三〇%から四〇%にしたことによって、個人寄附というのはふえております。それはもう御存じのことだと思います。それをもし五〇%にしたならば、さらにふえる。特に今、核家族になっておりますから、子供に渡さないで、何か社会のためにと思っていらっしゃる方も多いので、その辺も考慮して、社会構造も変わってきたということも考慮していただけたらと思います。

 もう一つ、私は、文化芸術家の社会的地位向上ということについて質問させていただきたいと思います。

 このような経済不況の中にあって、中小企業対策というのは、言うまでもなく、貸し渋り、貸しはがし、そして元金の返済を長くしましょうといろいろな対策が練られております。これは大変すばらしいことであると思っておりますが、芸術家というのは地位が不安定ですから、こういう中にも入っていけない。社会保障とか権利の保護などができ上がっていたならば、そういう方々にも手を差し伸べることができるのではないかというふうに思っております。

 言うまでもなく、文化芸術で活躍していらっしゃる方々というのは、私たち社会の発展に大変に寄与していらっしゃる。だけれども、その位置づけがなかなか、個人であって、どういう位置づけになるのかというのが難しいんだと思うんですね。

 浮島政務官は、前にもこのようなことで力を注いでいらしたというふうに思います。これからどんなことが文化庁の中でできるのかということをちょっとお伺いしたいと思います。

浮島大臣政務官 今委員御指摘のとおりに、芸術家が不安定ということは本当にそのとおりでございまして、そのことに関しまして、芸術家の地位向上ということで、芸術家が行う文化芸術活動に対する国民の理解を高めて、そして社会的な認知を高めていくことがとても重要であると考えているところでございます。

 また、文化芸術振興基本法におきましては、「文化芸術の振興に当たっては、文化芸術活動を行う者の創造性が十分に尊重されるとともに、その地位の向上が図られ、その能力が十分に発揮されるよう考慮されなければならない。」と規定がされているところでございまして、文化芸術の地位向上の必要性が法律上にも明確にうたわれているところでございます。

 また、このため、文化庁といたしましては、文化芸術創造プランの推進等による芸術団体への支援、また各地域における文化芸術活動への支援、芸術家や芸術団体に対する顕彰や表彰制度等の実施を今行っているところでございます。

 また、芸術家がその能力を向上させ、十分に発揮ができ、みずからの職業や活動に安心して、そして安全に取り組めるよう、劇場における安全確保の基準の検討などに協力するなど、環境の整備にも今全力で努めているところでございます。

 また、今後とも、現場のお声をたくさんいただきながら、芸術家の地位向上に向けて一層努力をしてまいりたいと思いますので、どうか委員のお力添えの方もよろしくお願いいたします。

池坊委員 今、急に思い出しましたのは、私、十年ほど前に、演芸に携わっている方々の労災を質問いたしまして、ようやっと労災が、これも何かややこしいいろいろな手続があったり、基準があったり、線引き等々がありましたが、それも確立されつつあるということを今思い出して、そういうこと一つをとっても、やはり芸術家の地位というのは大変難しくて、これに対しても私たちは何らかの手だてをしていかなければいけないのではないかと思っております。

 それともう一つは、私は、文化芸術家の登録制度というのを提案したいと思っております。つまり、アーティストバンクなんですね。例えば、学校現場で、オペラがどういうものか子供たちが知らないから一人のオペラ歌手を呼びたい、あるいはバレリーナを呼びたい、またクラシック音楽を聞かせてあげたいと思っても、学校現場や教育委員会は、どういう人がいるのか、どこに電話をしたらいいのか。もしもそういう手だてが簡単にできたならば、総合学習時間だとかあるいは土曜日の放課後子ども事業の中にとか、いろいろなことで、子供たちに音楽、演芸、すべてにおいて親しむ機会を与えることができるのではないかというふうに私は思っております。これは、やはり地域の連携とともに、地域の活性化にもなると思うんですね。

 例えば、大阪市では、オオサカアートファイル見巧者というウエブサイトを運営しておりまして、市民を初め行政、企業、学校等が提供する芸術家等の活動場所、イベントなどの機会、アーティスト向けの助成などの支援に関する情報、また芸術家自身の活動に関する情報を一元的に収集、情報発信を行っているのです。これは大変便利だと、学校現場あるいはいろいろなサークルなどの方々にも言っていただいております。

 また、財団法人名古屋市文化振興事業団は登録アーティスト制度というのを運営しておりまして、主に名古屋地域を活動の拠点としている若手、新進アーティストが登録して、出演を依頼する利用者に適当な人材を紹介しているんですね。これは登録、紹介料ともに無料なんです。

 こういうのがあると、もっと身近に、ちょっと呼びたいわ、オペラを聞きたいわということができるのではないかというふうに思っておりますので、このような各地域でやっておりますのは地域の町おこしにもなっていくと思っておりますので、こういうことを、文化庁はアーティストバンクというのを御存じかどうか、そしてどのように把握していられるかを伺いたいと思います。

塩谷国務大臣 ただいまお話しのアーティストバンクについては、私どもとしても、大阪、名古屋のアーティストバンク、さらには山梨県、あるいはみやざきアーティストバンク等が今現在存在していることを把握しているわけでございます。

 文化庁としても、地方自治体が地域の芸術家を登録し、また学校の文化芸術に関する指導、そして放課後、休日における芸術活動等に地域ぐるみで支援をする取り組みについて、地域人材の活用による文化活動支援事業により支援をしているところでございまして、こういった情報収集、整理、そういったことは地域住民に大変有益だと思っておりますので、今後も推進してまいりたいと考えております。

池坊委員 時間が参りました。

 しつこいようですが、文化芸術というのはさまざまな人々との結びつきの中でさらに大きな輪を広げていくんだということ、そしてそれは、ただ経済とは別個にあるのではなくて、経済との連携の中にもあるんだ、経済にも大きな力を果たしているんだということを、最後にしつこく申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。午前中最後のバッターでございます。よろしくお願いいたします。

 まずは、塩谷大臣、御就任おめでとうございます。思う存分手腕を発揮していただくことを心から御祈念申し上げ、そして本日は大臣所信、ごあいさつに対する質疑ということで時間をちょうだいいたしましたので、よろしく御答弁をお願いしたいと思います。

 また一方では、三ッ矢財務大臣政務官にもわざわざお越しをいただきました。ぜひ政治家としての御答弁を、冒頭期待を申し上げたいと思います。

 さきの通常国会から早いものでもう五カ月以上がたちました。この五カ月間、社会を取り巻くさまざまな環境の変化、そうした時事問題にも注目をしながら質問に入っていきたいと思うわけでありますが、何といっても、このところむごい交通犯罪が多発しております。残虐なひき逃げ事件、それこそ、捕まりたくないから、飲酒運転がばれるのが嫌だから、そんな理由で被害者を引きずって、そして死に至らしめたというような残虐な事件も起こっております。こうした若い命が立て続けに奪われていることに大変残念でなりませんし、亡くなられた方々の御冥福も心からお祈りを申し上げたいと思っております。

 こうしたひき逃げ事件、ルールを守らなければならない、その秩序すら無視されている社会を見るとき、大変残念でならないわけでありますが、こうした事実を、ひき逃げが起こっていることも含めて、社会の乱れをいかにしていくのか、大きな課題がこの文部科学行政にも課せられているのではないかというふうに私は感じるところであります。通告しておりませんけれども、こうした社会のむごい交通犯罪等々の多発を大臣はいかがお考えなのか、まず冒頭、通告しておりませんけれども、よろしければお答えいただけないでしょうか。

塩谷国務大臣 ただいまお話しいただいた、大変残念な事件、事故等が多発しているということ、また、今までには考えられなかった、親が子を殺すとかあるいは子が親を殺すとか、さまざまな事件が起こっておりますので、まことに残念に思う次第でございます。

 こういったことをいかにしてこれからなくしていくか、そういうことを考えると、やはり教育、しかも社会全体でそういったことをないようにしていくためには、我々の教育の範囲、そして地域あるいは社会全体で取り組んでいく必要がある。それを具体的にどうするかということは、私どもが一つ一つの事例をしっかり踏まえて、そして社会の今の現状のいろいろなあり方をしっかり受けとめる中で、やはり教育を、人づくり、あるいはそういう点で努力をしていかなきゃならぬと思っているところでございまして、本当に今残念な状況の事件が続いているということを真摯に受けとめ、今後そういうことができるだけ少なくなるように努力をしてまいりたいと思っているところでございます。

田島(一)委員 振り返りますと、六月十日の衆議院の本会議で、私たち、すべての子供たちに学ぶ機会を保障していこう、そんな趣旨から提案をした教科書バリアフリー法、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律、この教科書バリアフリー法を全会一致で成立させていただきました。今回の大臣所信の中で、すべての子供の学ぶ機会を保障するといった観点についてのごあいさつ、余りお触れになられていなかったので、あえてこの教科書バリアフリー法の施行についてお尋ねをしたいと思っております。

 十一月七日の新聞報道でも明らかになりましたが、平成二十一年度に教科書会社による小中学校の拡大教科書の作成状況、余り芳しくないという報道でありました。法律をつくったらすぐにそれが実現する、なかなかこれも難しいのかもしれませんけれども、もう既に、拡大教科書をつくっていこうという動きはことしの六月から始まったわけではなく、もっと早くから、それこそ歴代の大臣が教科書会社等に要請もかけていただいてきた内容であります。

 その実態を少し御紹介したいと思うんですが、教科書会社、現在十九社ありますが、この十九社ある教科書会社のうち、拡大教科書を作成すると表明しているのは五〇%にも満たないわずか九社であります。では、具体的に、小中学校の検定教科書が四百二十七点あるんですが、そのうちで拡大教科書を発行する予定のある点数は三分の一程度の約百四十五点、しかも、その百四十五点のほとんどが国語や算数といった主要教科でありまして、音楽や技術・家庭といったような教科書はほとんどおくれている、ましてや高校生向けの拡大教科書は取り残されているという報告も、これは文部科学省の方が明らかにされた状況であります。

 障害を持つ児童生徒も同じように学ぶ機会を保障していこう、そんな趣旨で私ども、提出そして提案をしてきたこの教科書バリアフリー法、その趣旨はここにいらっしゃる委員の皆さんも御理解をいただいていることと思いますが、すべての子供に学ぶ機会を保障するというその理念を、大臣はどのような御認識をお持ちなのか、まず冒頭お聞かせをいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 教科書バリアフリーの法案については、私も委員として同じ考え方で成立をさせた一人だと認識しているところでございます。したがって、今回の所信で具体的にはそのことは申し上げなかったんですが、やはり障害のある子供に一人一人の教育的ニーズにこたえた特別支援教育の充実や教科書改善など関連の取り組みの中で、拡大教科書についても当然しっかりと実行してまいりたいという気持ちを含めたところでございまして、この法律の成立に従って、今我が文部科学省としても拡大教科書の作成について努力をしているところでございます。

田島(一)委員 文部科学省が努力をしても、肝心の教科書会社が予定を立ててくれなければ、これは実効性が上がってまいりません。

 実際、先ほどもお示し申し上げたとおり、作成を表明している社は五〇%にも満たない。しかも、発行予定は三分の一程度にとどまっている。当然、発行された教科書を選べばそれでいいんだというふうに短絡的にとらえることができるのかもしれません。しかし、すべての教科書会社が発行してくれなければ、事は結局、仏つくって魂入れずの教科書バリアフリー法になってしまいます。

 実際、作成計画がおくれているというこの現状を踏まえて、文部科学省として、なぜ進まないというふうに認識をされているのか。既に拡大教科書の普及推進会議なるものが省内に設けられて、ワーキンググループでの作業もそこそこ進んでいるように聞いております。しかし、具体的な取り組みであるとか、また、次年度の概算要求等に反映させていこうというお考えがあるのかどうか、具体的な取り組みについてぜひお聞かせをいただきたいと思います。

金森政府参考人 御指摘ございましたように、文部科学省におきましては、平成二十年四月に拡大教科書普及推進会議を設置いたしまして、拡大教科書を普及充実するための具体的方策について、視覚障害教育の専門家や教科書発行者、ボランティア団体、学校などの関係者による検討を進めていただいているところでございます。

 この会議におきましては、拡大教科書標準規格や教科書デジタルデータ提供促進などのワーキンググループを置いて、闊達な議論が行われているところでございまして、小中学校段階におけるこれらの具体的方策については、近く報告をまとめていただくところとなっております。

 今後、この会議の報告を踏まえまして、年内にも標準規格を策定、公表し、教科書発行者などによる拡大教科書の発行をさらに強く促しますとともに、あわせて、教科書デジタルデータをボランティア団体等へ提供する仕組みなどにつきましても早急に整備してまいりたいと考えております。

 また、御質問にございました平成二十一年度概算要求でございますけれども、平成二十一年度概算要求におきましても、拡大教科書等普及推進事業といたしまして、今後必要となる拡大教科書の作成支援やデータ管理、その他拡大教科書の普及啓発のための経費について新規に予算要求をしているところでございます。さらなる拡大教科書の普及充実に努めてまいりたいと存じます。

田島(一)委員 相当プレッシャーをかけていかないと、これはやはり遅々として進んでいかないんじゃないか、そんなふうに私は心配をしておるところであります。

 これまで、ほとんど、約八割はボランティアの手でつくられてきていた、そういう実態も考えれば、それでも進みつつあるという前向きな評価もできるのかもしれません。しかし、まだ高校生向けの拡大教科書の作成という課題も取り残されているわけでありますから、教科書会社等々に対しての強力な働きかけをこれからもぜひ進めていただきたい、そのことを強くお願いをしておきたいと思います。

 今申し上げた概算要求も含めて、二〇〇九年度の予算要求においてどのように教育の現場の声が反映をされているかについて少し検証していきたいというふうに思います。

 昨年おまとめいただいた文部科学省の教職員の勤務実態調査、四十年ぶりの調査であり、非常に全国的かつ大規模な調査として、私もこれまでこの委員会での議論の資料として報告書を扱ってまいりました。この調査の結果を受けて、昨年八月の概算要求の段階では、超勤月平均三十四時間について、約半分を定数改善で解消して、そして残り半分を教職調整額財源で増額するといったような措置を示してこられたところであります。

 しかしながら、来年度の予算要求、引き上げどころか給与引き下げというマイナス要求になっているのが大変残念でなりません。現場の教職員のモラールにも響くのではないかというふうに私は心配もいたしますし、実際に、新学習指導要領への対応を含めた定数改善もとても十分とは言えないような要求になっており、果たして、昨年のあの教職員の勤務実態調査の結果はもう一年こっきりで忘れられてしまったのかな、そんな印象すら持つ要求実態であります。

 この前代未聞のマイナス要求について、それこそどのような御説明をされようとしているのか。現場の教職員も多分怒りを持っているんじゃないかというふうに私は思うのですが、行政の継続性ということも考えて、このマイナス要求についての御説明、大臣、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

塩谷国務大臣 教員給与については、平成十八年七月に閣議決定された基本方針二〇〇六等を踏まえて、人材確保法に基づく優遇措置を縮減するとともに、めり張りある給与体系の推進を図ることとしておるわけでございます。これに従って、昨年度は、今年度の平成二十年度予算について、義務教育費国庫負担金について、人材確保法に基づく優遇措置の縮減として義務教育等教員特別手当の縮減に着手する一方、めり張りある教員給与体系の実現のため、副校長、主幹教諭等の処遇や、部活動手当等の倍増を行ったところでございます。

 そして、二十一年度概算要求につきましては、二十年度に着手した義務教育等教員特別手当の縮減の平年度化分、これが五十六億円なんですが、含まれておるわけでございまして、これが減額になる、これが非常に大きな減額の要因になるわけでございます。しかしながら、部活動手当の改善、あるいはめり張りある教員給与体系の推進、さらに、マイナス分としては、義務教育等教員特別手当のさらなる縮減が加算されて、予算要求額としては昨年より縮減されたということになりまして、私どもとして、いわゆる給与の実態、教員の勤務実態調査を踏まえた給与体系のあり方に決してマイナスで取り組んでいるわけではなくて、この縮減額が今年度大きく来年度予算にかかってくる、そういった仕組みの中での減額になっていることを御理解いただきたいと思っております。

田島(一)委員 縮減をしていって、いい人材が本当に集まっていくという保証があるならば理解もしようかと思います。めり張りのある給与体系というふうにおっしゃいました。もちろん、部活動の手当であるとか管理職手当を上げていく、そのことを否定するつもりはありません。しかし、全体として上がっていくのであるならばまだしも、マイナスになっているということは、これは本当に現場に対する背信行為ではないかとさえ私は思うわけであります。

 七月に閣議決定された教育振興基本計画にも、人材確保法に基づく給与の優遇措置を縮減することまで記載をされているわけでありますが、当初、中教審の答申にもありませんでしたよね。昨年末、それこそ三大臣の協議で、財務大臣が残る給与の優遇分の縮減も検討するとさえ発言をしていること等から考えていくと、今後まださらに賃金削減を行っていくのではないか、ひょっとしたら人材確保法そのものを廃止しようとしているのではないか、そんな心配すら出てまいります。

 御承知のように、今経済が非常に厳しい状況になって、民間が採用を絞りつつある中、ひょっとしたらそれを期待して教職員の人材はしっかりと確保できるんだというふうな甘い考え方を持っていらっしゃるとは私は思いたくないんですけれども、人材確保法制定時に比べて教職員の、先ほども馳委員が優秀か云々という質問もありましたけれども、やはり優秀な人材を集めていくということが非常に重要になってくるわけですが、実際に集まっているとたんかを切れるのかどうか。給与を優遇しなくても大丈夫だというような認識に変わったというふうに受けとめざるを得ないんですけれども、その点、どのようにお考えなのか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 教員の採用につきましては、確かに競争率の低下傾向にあるというような実態があるわけでございます。一方で採用の増加もあるということで、当然ながら、ある程度の倍率は確保しているところでございますが、やはり、優秀な教員を養成するためには、人材確保法、これを堅持することが私どもとしても今後必要だと考えておりまして、その精神は今後とも継承しつつ、同時にめり張りのある給与体系ということで今後対応していきたいと思っているところでございます。

 縮減のことにつきましては、私どもとしても、基本方針に基づいて今実施しているところでございますが、今後とも、そういった方向で考えているということではなくて、あくまで人材確保法は堅持する中で、めり張りある給与体系を考えていきたいと思っているところでございます。

田島(一)委員 このところの教員採用実態というものを、数字をぜひ皆さんにお示ししたいと思っているんですけれども、これまでは、古いデータになりますけれども、ちょうど二〇〇〇年度の小学校の教員採用の実績倍率、十二・五倍あったんですね。それが、今年度の小学校の教員採用試験の応募倍率、三倍程度にまで落ち込んでおります。

 これは、いまだに沖縄だとか北海道、東北では十倍、二十倍というような高い倍率を示す自治体もありますけれども、首都圏であるとかまた政令都市においては、もう三倍台にまで低下をしてきているという実態があります。採用数も多くなったからというのも一方ではあるかもしれませんが、しかし、二〇〇〇年と比べてもやはりはるかに希望者が減ってきている、そんな実態があります。もちろん、学校現場のしんどさが社会で認識をされるようになってきた、それを嫌厭する学生たちがふえてきたということもありましょう。

 そういった実態の中で、給与まで下がっていく。これまでは人材確保法のもとでしっかりとした給与手当てがされていたから、教師にあこがれ、子供たちと接しようという崇高な思いで頑張ってこられたにもかかわらず、このような状況になっていると、それこそ、今後は退職者もふえてまいります、果たして本当に優秀な教職員が確保できるのかどうか、私は心配でなりません。

 めり張りというのは、どこかを突出させればどこかがへこむというようなことをめり張りとおっしゃるのであるならば、私は、このような給与体系は、決してめり張りある給与体系ということで賛成するわけにはいかない、そんなふうに思っております。

 現場の勤務実態等々を照らし合わせながら、魅力ある職業として多くの方々に志望していただけるような、そういう形へと持っていくために、どうぞ、これからもこの概算要求のあり方についてもぜひ見直しをしていただきたい、そんなふうに強くお願いをしたいと思います。

 新学習指導要領の内容についてお伺いをしたいところでありましたけれども、時間の関係がありますので、ちょっと今回は割愛をさせていただきます。

 次に、国立大学法人への運営交付金についてお尋ねをしたいと思います。

 もう今まで何度も委員会の中で議論をしてまいりましたが、歴代の大臣は、それこそ、財源が、また骨太方針二〇〇六がと、すべて言いわけで逃れていらっしゃったのがこれまでのあり方でありました。そこで、きょうは、財務大臣政務官にお越しをいただきましたので、財務省としてどのようにお考えなのかをぜひお尋ねしたいと思っております。

 国立大学が法人化されて、早いものでもう四年がたちました。法人化された二〇〇四年度と比べますと、国立大学法人への運営交付金、二〇〇八年度は六百二億円減らされています。そして、業務実施コストも、二〇〇七年度の決算ベースでいくと二千五十五億円の減というふうになっております。どなたか、委員も引用されましたけれども、日本の高等教育への公財政支出、GDP比で見ますと、たったの〇・五%であり、OECDの平均一%を大きく下回っているような状況にあります。

 骨太の方針二〇〇六に基づいて国立大学法人の運営交付金は毎年一%削減の適用を受けて削減され続けており、現場からは、もう限界だというような声を相当いただいております。

 ことし、数多くのノーベル賞受賞者がこの日本から輩出をいたしました。大変喜ばしいことではありましたが、その受賞者の一人であります益川先生が麻生総理を受賞の報告に表敬されたときに記者団に語られた言葉を御披露したいと思います。基礎科学から人々の役に立つ科学となるまで百年かかる、上流をからしたら百年後に未来はなくなる、そう語られたそうであります。それを受けた総理大臣は、とても誇らしかった、国民から見ればやったあっちゅう感じという、大変軽さを感じる、そんな祝意を報道されているのを目の当たりにいたしました。

 総理の軽さはさておいて、今、こうしてノーベル賞でその学問、研究を世界的に評価されたわけでありますが、基礎研究をないがしろにすれば百年後の未来はないとおっしゃるこの益川先生の御意見をそっくりそのまま現在のこの国立大学法人の運営交付金に照らし合わせて見るならば、果たして、百年後に役立つ科学や研究の芽をひょっとして今摘み取りつつあるのではないかと私は考えます。

 教育研究の質の維持向上には基礎的な、基盤的な経費の確保が不可欠であります。その点について財務省としてどのようにお考えか、まずお聞かせをいただきたいと思います。

三ッ矢大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員の御指摘の点、大変重要な点だと我々も認識しております。

 国、特に日本のような資源のない国にとって、この国を支えていくというのはやはり人材だと思うんですね。その人材の育成、確保のために、本当に高等教育、これをきちんと整えていくのが極めて重要なことだというふうに思っております。

 御指摘いただきましたように、私ども、大変厳しい財政状況の中で、二〇一一年度までのプライマリーバランスの黒字化に向けて歳出の見直しを引き続き進める必要があると考えておりまして、国立大学法人の運営費交付金も、御指摘いただきましたように、基本方針二〇〇六においてマイナス一%とされたことから、歳出の見直しの例外とせず、各年度、着実に総額の抑制を行ってきているところでございます。

 運営費交付金につきましては、この中で、例えば新たな研究分野への挑戦など新たな教育研究ニーズに対応した意欲的な取り組みに対しては、重点的な支援を行ってきておるところでございます。

 また、国立大学に対しましては、運営費交付金以外にも、大学間の連携、教育研究の改革の取り組みについて、これは私立も含めてでございますが、全大学共通の補助金を交付しておりまして、今年度で申し上げますと総額七百億円弱でございますけれども、このうち半分以上は国立大学の方に回っている。

 これに加えまして、各大学では教育研究に対する寄附金も精力的に集めていただいておりまして、国立大学の独立行政法人化以降、平成十六年以降でございますが、全体として見ますと、国立大学の総事業費は一割近く増加している状況だと思います。

 いずれにしましても、御指摘の点も含めまして、今後の予算の取り扱いについては、年末に向けて文部科学省と十分に協議して、先生御心配いただいている点も含めて、我々も十分意を用いながら対応してまいりたいというふうに考えております。

田島(一)委員 ひっかかるのは、寄附金集めで頑張っているからというようなお話があったけれども、寄附金が集まる大学と集まらない大学、やはりこれは顕著にあるんですね。

 先日、十一月十七日に、朝日新聞が国立大学の学長にアンケートをされた結果が記事として掲載されていました。ぜひ三ッ矢政務官にももう一度見ていただきたいと思うんですけれども、国の予算配分が問題だというふうに答えている学長が九割に上っています。実際に、寄附金が集められる学部・学科とそうでない学部・学科、これは顕著でありますし、首都圏とまた地方の大学との格差も非常に大きい。寄附金が集められるような状況ばかりではないということも、やはりぜひわかっていただきたいと思うのであります。

 しかし、努力したところはきちっとその成果に配慮をするというふうに文科省も言っているわけでありますが、もう本当に限界に今到達しているという実態をぜひ御理解いただきたい。

 そして、もう一つには、全国的な医師不足に対応するために、国立大学の医学部の定員増というのを打ち出されたわけであります。

 国立大学の中でも、医学部の附属病院の経営状況が極めて厳しい状況、病院収入のノルマを達成するために診療の負担もふえて、教育研究にしわ寄せを来しているというような話も上がっております。附属病院を持っている総合大学の半分以上が、資金が足りず教育研究や学生サービスに悪影響が出ていると先ほど申し上げた朝日新聞のアンケートでも答えていらっしゃいます。

 こうした状況を考えてみますと、中でも、もう一つ例を出しますと、十九年度の決算をひもといてみますと、四十二の大学病院の中で十六の附属病院、率にして三八%の附属病院が実質的な赤字経営に陥っているわけであります。現場の医師や教員というのは、研究教育の時間を犠牲にして医業収入のために診療時間をふやさざるを得ず、養成機能の低下であるとか臨床研究の論文提出数が減少するというような問題も引き起こしているわけであります。

 改めて、本当ならば塩谷大臣にもお伺いしたいところでありますけれども、こうした現状で医学部の定数をふやしただけで、指導者や必要な機材確保といった財政支援がなければよい医者は育たないわけでありまして、本当に本気でやる気があるのかどうか、財政の面倒を見る気があるのかどうか、財務省のお考えをきちっとお聞かせいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

三ッ矢大臣政務官 お答え申し上げます。

 医学部の入学定員につきましては、基本方針二〇〇八において「過去最大程度まで増員する」ということになっておるわけでございまして、来年度に八千四百八十六人まで増員するということになっております。

 先生御指摘いただきました、人間の数はふやしてもそれに対応する教育資機材、設備等への予算措置はどうなのかということでございますが、この定員増に対応するため、特に不足しております解剖実習等の機材等について、必要な予算六十億円を確保しているところでございます。

 また、指導者の確保につきましても、これは文科省の方からも要求をいただいておりますので、私ども、これに支障がないように、今後、文科省とも十分協議しながら対応させていただきたいと考えております。

田島(一)委員 時間が参りました。

 終わりますけれども、本当に、財政が厳しいからということで今ここでないがしろにしてしまえば、百年後に大きな禍根を残すことをぜひ認識いただいて、省へお持ち帰りいただきたい。そのことをお願いしたいと思います。

 大臣とはまた引き続きやりたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

馳委員長代理 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時五十分開議

岩屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。和田隆志君。

和田委員 民主党の和田隆志でございます。

 午前中の質疑に続きまして、塩谷大臣の所信に対する質疑をさせていただければと思います。

 私は、文部科学委員会に所属することになりましてからまだ日が浅いものですから、大先輩の大臣の方にお伺いする内容をいろいろ考えてまいりましたが、先般、私、質疑させていただいたときには渡海大臣で、教育振興基本計画について質疑させていただきました。きょうは、それらの延長線も含めながら、塩谷大臣の所信を直前にもう一度読んでまいりましたが、大臣御所信でお述べになられた、私は、文章として非常に感銘を受けた部分もございました。

 まず、私がいつも子供や学校の先生と日ごろ地元で接しているときに、常に先方からもよく出てくる言葉として、今の教育現場にはないものがある、これをきちっとみんなに与えられるようにすれば、日本の教育はそんなに細かいところまで気にしなくてもよくなるのではないかというふうな声もたくさんお聞きいたしました。

 大臣の所信の中に、教育行政全般に対して、未来に対して夢と希望を与えられるような行政を推進したいという文言がございました。今の教育現場の中に本当に夢と希望が与えられるような施策になっているかどうか、こうした意味からちょっと大臣に御質問させていただければと思います。

 きょうは、その中でも、学校の現場におられる、特に義務教育課程である小学校、中学校の現場におられます先生の、働いていらっしゃる先生の今の環境について、もっともっと、御所信でお述べになられた夢と希望を与えられるよう環境整備を進めるべきではないかという観点から幾つか御質問させていただきます。

 まず第一問目でございますが、もともと通告させていただいた順番とは異なりますが御容赦ください。現在、もう既に法律が施行されておりまして、それに対して、文部科学行政での取り組みが随分おくれているのではないかというふうに関係者からも随分お聞きいたしましたので、これについて大臣の現在の御所見をいただければというふうに思っています。

 これは、全分野で適用になっているわけでございますが、厚生労働省所管の労働安全衛生法という法律がございます。これが数年前に改正されまして、十八年の四月から小さな事業所では、また、本年の四月からは大きな事業所でもすべて適用になっているはずでございますが、この事業所という概念の中に学校も含まれているわけでございます。そして、文部科学省としても、随分問題意識をお持ちのようであり、累次通達等によりまして関係機関に呼びかけていらっしゃるようではございますが、この時点におきましても、まだその取り組み状況が不十分なようにお聞きいたしております。実際に私がお聞きしたことを幾つか御例示申し上げますので、大臣がそういったところをお聞き及びなのかどうか、また、お聞き及びであろうがなかろうが、どのように対処されようとしているのか、そうしたところをお答えいただければと思います。

 まず、この法律改正によりまして、それぞれの事業所におきます使用者側、学校の場合は校長先生に当たるかと思いますが、こういった方が、勤めていらっしゃる方、この場合は学校の先生、教諭になられると思いますが、その方々の勤務時間についてしっかりと管理しなければならない。もっと言いますと、勤務時間が、細かな数字は抜きに申し上げますが、一定を超えた場合に、医師による面接指導も行わなければいけないということでございます。

 その際、まず、学校の現場から聞こえてまいりますのは、前提となります教師それぞれの勤務時間をしっかりと管理できていないのではないかというふうに思われるということでございます。この法の規定上は、どの事業所においても同じことでございますが、雇用している使用者側の方が実際に自分で、言葉としては現認、現実に確認するという意味でございますが、現認することにより、確認して記録をとること、この条件か、もしくは、タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認、記録すること、この二つに一つをとれと原則上は書いてあって、確かに、原則としてという文言もございますので、もしかすると、例外的にこんな措置によって客観的に記録をとっているということなのかもわかりません。

 しかし、まずもって、出だしの議論として申し上げれば、これらの規定があることを教育の関係機関に周知徹底しているかということでございます。過去にいただいた資料によりますと、本当に認識している方々が非常に少ないという実績を文部科学省御自身も御認識なさっているようでございます。

 それからさらに、先ほど申し上げたように、今、勤務時間を管理する手段がおよそ現場においてないのではないかと思える現状でございます。

 例えば、今まで、教師のお一人お一人に、自己申告的に毎月毎月の勤務実態を記した表を、表のフォーマットをお渡しして、それを提出してもらって勤務時間の管理にしていたような時代があったようでございますが、どうも最近、その表そのものがなくなっており、教師一人一人からすれば、どのように自分の勤務時間帯を上の方に知ってもらっているのか、何も材料がない状態であるというふうな声が聞こえてまいります。

 そして、今、それらが管理できていないことが発端となりまして、実際に御自身が、教諭本人が、自分は大分疲れてきている、もしくはノイローゼぎみであるというふうに自覚なさっておられる方々が、校長先生に、私は少し医師の面接指導を受けたいんですがということをお申し出になられたとしても、そのときに、この法規定上は、勤務時間の管理ができていなければ、条件未整備ということで面接指導に至らないというふうな実情があるようでございます。

 現に、個人名は言えませんので控えますが、先生御本人から、自分は校長先生の方に申し出たんだ、自分は少なくとも毎月毎月これぐらい勤務していて明らかに条件に当てはまるんだけれども、どうぞ面接指導を受けさせてくれないだろうかというふうに申告されたにもかかわらず、学校の管理者側の方からは、いや、あなたの勤務時間の記録がない、だから、これは条件に当てはまらないので面接指導を受けさせることには該当しないというふうにお答えいただいたそうでございます。こんな事例が、本当に全国にごく一例であればよろしいのでございますが、実は、私が聞きますところ、既に、この一カ月間聞き回っておりますが、その中でも数十件単位でございます。こういった実情を大臣にどの程度御認識いただいているのかどうか。

 また、先般、大臣もごらんになったかもわかりませんが、NHKの「クローズアップ現代」でも教育現場が取り上げられておりまして、本当に、今、学校の現場の教師は、そのまま自分で職務を続けるかどうか悩んでいる人まで出ているという現状でございます。

 こういった現状をぜひ皆様方にも御存じになっていただきまして、大臣初め文部科学行政を引っ張っている方々にぜひ緊急に対応策をとっていただきたいというふうに思うんです。以上、申し上げましたが、大臣、御所見いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 ただいまの、特に先生方の勤務時間についてのお話でございますが、これは、私自身はどういうふうに実態把握しているかということをまだしっかりと受けとめておりませんので、それをちょっと確認をさせていただきたいと思っているところでございます。

 そういう中で、私も現場を何回か訪れたことがありますが、相当にやはり忙しい、あるいは長時間勤務になっているということも実態を自分で確かめたところがありますので、そういったことが、やはり当然、労働安全衛生法が改正されてから、長時間労働の方々に対して医師の面接が必要だということが実行されているかどうか。人数的に五十人以上の事業所については、学校等も大分対応しておりますが、それ以下のところはまだ十分ではないという実態調査が今ありますので、そういったところに向けては、より一層この法律に基づいてしっかり実施するように促してまいりたいと考えております。

和田委員 善処を求めたいと思います。

 今、五十人を基準におっしゃられましたけれども、実は、五十人以上の事業所に対して適用になっているのは本年四月からでございます。小さな事業所ほど早くの対応が必要であったと思われたがために、十八年四月から適用になっているわけでございますが、学校現場におきましても、委員の皆様方も常識的に御理解いただけるかと思いますが、小さな学校ほど一人の先生に対する負荷がかかりがちでございます。そういった意味におきまして、数々現場から声が上がってきておりますように、勤務中に亡くなるような痛ましい事件も起きております。こういったことをぜひ関係者の皆様方に深刻に受けとめて、対策を緊急に講じていただきたいというふうに思うわけでございます。

 それでは、次の質問に移ります。

 次の質問は、先般、私、質疑させていただきました、基本計画上、その当時は渡海大臣でございましたが、ぜひ学校の教員数をふやしていきたいと。中期計画、長期計画、いろいろと概念はございましたけれども、とにかく、これから先、教員の数をふやしていきたいというふうにおっしゃられました。私自身は、そのときに申し上げたことでございますが、実態を見ていて、ふやす必要はあるというふうに認識しておりまして、ぜひともそういったことでエールを送らせていただければと思いますが、実際に今まで文部科学省の事務方とやりとりさせていただきましたところでは、どの部分にどういうふうに教師が足りていないのか、そういったものの分析がかなり不十分なように思います。

 今年度から、皆様方も御存じのとおり、主幹教諭なるものの概念を設けて、その方が現場の教員を指導しながら教育も自分でやっていくんだというようなことを主張されて、制度として導入されておられます。

 大臣、ぜひともその現場をもっとたくさん見ていただければと思いますが、私自身、その主幹教諭というものになられた方にもインタビューしてまいりました。また、主幹教諭に教わっているという現場の教諭の方々にもお聞きしてまいりました。しかし、よくあることでございますが、法律で定めるときには、また政省令で定めるときには、確かに、その主幹教諭という方々に対して、現場でも教えつつ、かつ先生方を指導するんだよということにはなってはいるんですけれども、実際に起きていることは、主幹教諭というものになった瞬間、現場の先生方からすると近寄りがたい存在に思え、また、この方御本人の中で、全部ではないと思いますけれども、一部の方々が、何か、自分は昇格したんだ、教諭として授業をやっているのが普通だけれども、自分は一たん昇格したんだから指導に当たるんだということで、指導にほとんど重きを置いているという実態があるように見受けられました。

 事前に、教職員の定数がどの程度ふえているか減っているかの表もいただきました。実際には、恐らく子供の数の減少を反映して微減となっているようでございますが、財務省との間でしっかりやりとりしていただければと思う反面、実際の校長先生から現場の教諭の先生、それから養護の先生、事務の先生いらっしゃいますが、こういった分布を見ておりますと、大臣が同じように所信でお述べになっておられるにもかかわらず、教師が子供と向き合う時間をトータルではより減らすことになっていないかということが私の問題意識でございます。

 つまり、全体で教員の定数を必死にやりくりしながら少しでも伸ばしていきたいという大臣のお考えそのものについては私は賛同するものでございますが、しかし、その中でも、今の現状においてなかなかふやせない中では、管理職の方々の数が多過ぎるのではないかということでございます。

 事前にお問い合わせしましたら、主幹教諭や指導教諭というものについて明確な管理職概念を適用されてはいないようでございましたが、実際に今、現状で私が見てまいりましたのは、子供に向き合っている主幹教諭や指導教諭ということよりも、学校の先生、現場の教諭を指導している主幹教諭や指導教諭の方が多いのではないかというふうに思われたものですから、主幹教諭、指導教諭、現場の教諭、これらの総数を考えてみたときに、全体で微減程度でございますが、実際にそういうふうに教諭の中から主幹教諭や指導教諭に昇格というのでしょうか、一たんグレードを変わられたことによりまして、トータルでは学校の生徒に向き合う教諭の総時間数は減っているのではないかというふうに思われるわけでございます。

 私はこうした問題意識を持ったものですから、もう一度塩谷大臣に、これから先、文部科学省として、どんな職務を行うどんな教員をふやしていこうとされているのか、お伺いしたいと思います。いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 ただいま現場の実態の話をしていただいたわけでございますが、私どももそういった問題意識を持って、それぞれの役割を明確にすることによって、先生方が一人一人の子供に向き合う時間をできるだけ多くしていくことが大事だと思っておるところでございまして、その中で、主幹教諭につきましては当然ながらマネジメントの機能を強化する。

 これはなかなか、法律で決められてすぐそういったものに対応するというのは、これまた、現場、それぞれの能力あるいは人間関係もあると思いますので、そういった主幹教諭がどういうものであるかというのは、これから努力して一つの形をつくっていただく必要があると思っておりますので、ここは今後の機能強化を私どもとしても指導していきたいと思っております。

 そのほか、いわゆる発達障害の子供たちに対する特別支援教育とか、あるいは外国人児童生徒への日本語指導の教諭とか、あるいは栄養教諭とか、それぞれの専門的な分野で指導していただく先生方も今後必要だと思っておりますし、そういう意味では、ある程度教科担任的な考え方、あるいは、今後、習熟度別という形で少人数にしっかりと指導できるような支援教諭とか、そういったことも含めて、いろいろな役割を持った教師の必要性が感じられますので、そういったことを充実することによって、一人一人の先生方が子供たちに向き合う時間を多くするというふうに考えてまいりたいと思っているところであります。

和田委員 今大臣のお述べになったところを否定するわけではございませんが、次の質問に入る前に、私の意見として申し上げておきたいと思います。

 現場で本当に子供と向き合っている、つまり教諭というところの定数をふやすべきだというふうに思います。現在、財務省といろいろ折衝なさっているのでしょうけれども、管理職をある程度減らしてでも現場の教師をふやすことが、今の緊急の教育現場に要請されているところではないかと思います。

 なぜならば、委員の皆様方も各種報道等ごらんになっているかと思いますが、学校現場におきましては、今、教員の定数や待遇が十分でないがために、臨時教員を採用して対応しているのが現状でございます。しかし、先般も報道に出ておりましたが、臨時教員に採用された方御自身が、自分の生活が成り立たないということを前提に、幾つもの学校で臨時採用で働くとか、塾との間を行ったり来たりするとか、こんな事態ではとても一人一人のクラスの子供と向き合うことはできないように思うわけでございます。私は、ここは、どんなに予算的制約があろうとも、きっちりと文部科学省として、現場の正規の職員としての教諭をふやすべきだというふうに考えております。

 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 今度は、日本が置かれた世界的な立場ということについての質問でございます。

 この委員会でも随分御質問はいろいろな方々おありになったかと思います。先般、一年前のことでございましたが、調査としては二年前でございましょうか、昨年の十二月には、有名な学習到達度の調査、PISA調査、もしくは、数学と理科についての能力をはかる調査、TIMSS調査、こういったものが世界的に有名になった次第でございます。

 端的に言って、日本はこの調査の中で、特にPISA調査につきましては順位を下げたわけでございますが、これについて、文部科学大臣としても随分問題意識をお持ちのようでございます。実際に、それがあったからこそいろいろな対応をとってきたとおっしゃることでしょう。

 しかし、私自身、ちょっとこの部分についていろいろな文献に当たってみましたところ、PISA調査の順位を上げようと思えば、今やっていることが本当に役立つんだろうか。私は、PISA調査そのものに対して文部科学省が疑念を抱いていらっしゃるのであればこの質問は申し上げないんですが、今まで事務方とやりとりさせていただいた限りにおきましては、このPISA調査については文部科学省としても意義を認めていらっしゃる。その中で、この順位を上げなければいけないという意識を持っていらっしゃる中で、なぜ文部科学の施策がこのような方向になっているのかに疑問を持ったわけでございます。

 まず第一点目でございますが、PISA調査の中で日本が順位を下げた要因。この場でも御議論になったのかもわかりません。どうも文献をいろいろ当たってみますと、全体で、調査の対象になった生徒の中で高レベルの水準を維持している人たちの割合は、フィンランドが世界一位だと言われたわけですが、特にそれとも変わりはございません。しかし、どちらかというと、全体の対象者の中で最下位グループに属した方々の人数、その割合、これが世界で上位を占めている国々よりもはるかに高い。フィンランドの二倍ぐらいあるということだそうでございます。

 そう考えてみた場合に、このPISA調査なるものに意義を感じ、これの順位を上げて日本が学力を高めていきたいと思われている文部科学省なら、では何をなさらなければいけないのかということでございますが、そういった意味では、この最下位グループにいるような生徒さんたちに、いかに充実した教育をしてレベルを上げていくかということではないかと思います。

 例えば、学習指導要領が改訂されて、もっと盛りだくさんのものを教えなければならないというふうに規定されました。それそのものは、教えることがたくさんになっていて、それが実現できればよいことではございます。しかし、実際にこの最下位グループにいる生徒さんの立場になって考えてみたときに、今までかなり絞り込まれた学習指導要領を、それを学ぶことでさえ十分できていなかったからこの最下位グループの方々がふえているわけでございます。それにさらに分量をふやしてレベルを高めていったときに、この人たちに対してどのようなことが起きるのかということを、文部科学省としてどのように分析していらっしゃるのかということに疑問を持ったわけでございます。

 また、一方では、一番となったフィンランドは有名でございますが、フィンランドでこの十年間ぐらいのマターで見たときに行われていることは、日本でいうと文部科学省でございますが、国である機関から各地域の教育機関に対してグリップをする、管理する分量を減らしているわけでございます。何と、私が読んだところでは、本当にその管理する分量を十分の一ぐらいにしたそうでございますが、現場の教師の裁量の余地をすさまじく大きくされた。それがフィンランドの政府御自身が語っていることとして成功の要因だというふうにおっしゃっているわけでございます。

 こういったことを恐らくもう十分に文部科学省全体として分析なさっていると思うんですけれども、なぜ一位を占めるような国がこういったことをやっているのに、日本ではどちらかというとその逆方向を行っているのかということが私の質問でございます。大臣、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 御指摘のPISA調査の結果につきましては、文部科学省としても重く受けとめて、今後の日本の教育の改善に努めているところでございますし、もちろん、教育基本法の改正やそれに伴う学習指導要領の改訂等で、いわゆる授業時間数それから内容等も含めて、今その実行に移しているところでございます。

 今お話のあった、いわゆる一番最低レベルのところを押し上げるというようなことも含め、当然ながら学習指導要領の内容を検討して決めたわけでございますので、言ってみれば、やはり基礎的な部分というのは当然ながらしっかりと学習していただく。そしてそれが、基礎をもとに次の段階へステップしていくために、教科書の量とかそういうのが、やはりそういった基礎をやるところ、そしてそれ以上のものをやるところということを考えると、当然今までのボリュームよりふやしていくわけでございまして、そういう中で必要なことをしっかりと教えていただくような考え方に立っておるわけでございます。

 それを、今までの例えばゆとり教育等が、いわゆる基礎的な学力を積み重ねる中で、そういった反復練習といいますか、そういうところがなくなった意味で基礎的な学力が低下されたという一つの分析もありますし、いろいろな分析がある中で、我が国としては、今、学習指導要領をさまざまな結果を踏まえて改善して、それを実行に移しているところでございます。

和田委員 時間が参っておりますので短くさせていただきますが、私自身、フィンランドの文献をちょこっとだけ読みましたが、やはり、印象に残った一言としまして、人間というものがやる気を持ってその責任を果たすようになるためには一定部分について任されることが必要であるということがフィンランドの政府の分析の中にございました。

 今の文部科学省のされていることの中で、本当に現場の先生に、この部分は任せるからしっかりやってくださいというようなメッセージ性のあるものをぜひ施策としてつくっていただければというふうに思っております。

 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。

岩屋委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 民主党の市村でございます。

 本日は、この文部科学委員会でお時間をいただきましたことを、まず冒頭に心からの御礼を申し上げます。

 多分今からお手元に配られると思います、後で資料をまたぜひとも参考にしていただきたいと思いますが、出典が外務省になっています資料が一枚あります。その内容を少し冒頭に読み上げさせていただきたいと思いますが、必要な部分だけ読みます。

 さまざまな資料を調べた結果、ティアノ・セイドゥ・ヌロ・ディアン氏は、一九九九年一月十二日に、一九八二年一月四日を生年月日とする最初の身分証を取得した、この生年月日は、当人の戸籍の事実に一致すべきものである、その後、二〇〇三年二月二十四日に、ディアン氏は、明らかに虚偽の出生証明から、一九八六年十月四日を生年月日とする新たな身分証を取得し、この身分証をもとに二〇〇三年二月二十八日付一〇〇八一七七四号のパスポートを作成させることに成功したとありますが、きょうは外務省さんがいらっしゃっていますが、これはどういう文書なのか、御説明いただきたいと思います。

知原政府参考人 本件に関しましては、十月の十七日及び同三十一日付の口上書をもちまして、セネガル外務省より次のような回答がございました。

 当該留学生でございますが、一九九九年に、生年月日を一九八二年一月四日とする身分証を取得しておりました。これは当人の戸籍の事実に一致しておりました。しかし、当該留学生は、二〇〇三年二月二十四日に、虚偽の出生証明から生年月日を一九八六年十月四日とする身分証を再度取得しまして、二〇〇三年二月二十八日付の新たなパスポートを取得したとのことでございます。(発言する者あり)それは下の三十一日付の口上書で訂正しております。訂正をしたものが私が今申し上げたものでございます。

 このように、セネガル外務省の回答は、市村委員より配付がありました資料のとおりでございます。

 以上でございます。

市村委員 この方は日本に入国をしていました。今は日本にいないそうであります。これもちょっとわかりませんが、いないそうであります。これだけだったらば、法務委員会で、これは一つの不法入国の事例だということで終わるわけでありますが、ちょっと議論を進めていく前に、きょう法務省さん、この後、こういう方の場合はどういう対応が行われるんでしょうか。こういう不法入国をした方に対してはどう対応されるんでしょうか。

高宅政府参考人 お答えいたします。

 一般論として申し上げますと、虚偽の申請に基づき発給を受けた旅券、これにより我が国に入国し在留していた外国人が既に出国していて、上陸拒否事由に該当しない、あるいは上陸拒否期間を経過したことにより上陸拒否事由に該当しない場合でありましても、その外国人が査証の発給を受けて新たに上陸申請を行うという場合が考えられます。そのような場合におきましても、そのような過去の事実、要するに、虚偽の申請により旅券を受けたという事実を踏まえまして厳格な上陸審査を行うこととなります。また、虚偽の申請等によりまして本国で刑に処せられている場合、この場合には入管法に定める上陸拒否事由に該当する場合もあります。

市村委員 まずはいわゆる不法入国としての話をさせていただきましたが、このディアン氏でありますが、日本の教育界において極めて重要な問題を提起することになるわけであります。

 と申しますのも、この方は、実際の年齢から四年半以上年齢を偽って日本に入ってこられています。これだけでも大きな問題であるわけでありますけれども、この方が実は高校のバスケットボールの試合に出場した、しかも、その出場した学校は全国優勝したというところであります。

 高校のバスケットボール界のルールは、十九歳までを高校生と認めておるということでありまして、この方が日本に入ってきた年は、既にもう二十一歳のときに入国をされております。ということは、既にその段階で高校生の規定は超えているわけであります。ところが、パスポートが四年半、下の、セネガル政府が発行した文書によりますと、明らかに虚偽の出生証明からパスポートを作成することに成功した、つまり故意にパスポートを書きかえて日本に来て、そして年齢を偽ってプレーをする。しかも、その高校が全国優勝を果たす。

 こういうことになったということでありまして、私は極めてゆゆしき問題だというふうに思いますが、大臣、まず大臣のこの問題に対する認識をお聞かせいただきたいと存じます。

塩谷国務大臣 本件については、年齢を偽って大会に出たということ、大変遺憾に思っておりまして、どうしてこういうことが起こって、ずっとわからなかったというのは、もう少し実態調査を進めないとわかりませんが、大変問題だと思っております。

市村委員 今大臣がおっしゃっていたように、なぜこれまでかかったか。実は、私がこのことを委員会で指摘してからも三年かかっています。まず内閣委員会で指摘させていただきました。そして、またその後、文部科学委員会で一度お時間をいただいて、当時、馳委員が副大臣をされていたとき、馳委員も、これはゆゆしき問題ということを副大臣としておっしゃっていただいたということでありまして、そのとき、実は馳委員からも、その選手は故意なのかどうかわからないということでありましたが、今回、私が調査した結果、これは明らかに故意だということをセネガル政府が認めているという状況になってしまいました。本当に残念ながらなってしまったと言うしかありません。

 本来、これはまた議論がちょっとずれるんですけれども、なぜこれだけ時間がかかるか、私は実は問題だというふうに思っておるわけであります。

 この間、何が起こったか。単に高校でこの方が出場されて優勝しただけじゃありません。このことは、実は大学の教育界にも影響を及ぼすことになっています。これは一度、この委員会だったかどうかちょっと忘れましたが、申し上げたんですが、結局、優勝校の選手は推薦でとてもいい評価を受けるわけですね。ということは、大学入試の推薦のときに優勝校のチームだった人間は大変いい評価を受けざるを得ないわけですね。本当はこっちの方が実力があると思っても、こっちの方が優勝校だからということで、客観的事実としてはそっちをとらにゃいかぬということになってしまって、結局この問題は、実は高校だけじゃなく大学スポーツ界にも影響を与えているということを、私は、大学のバスケットボールの現場で指導されている先生からも意見をいただいておるんです。

 ですから、これだけかかったことによりまして、高校だけじゃない、大学まで影響を及ぼしたことになってしまっているということであります。今までは高校名も本人の名前もあえて出さないできましたが、こういう状況になって、きょうはまず本人の名前を出させていただきましたが、これは福岡第一高校という高校であります。

 それで、この件に関しましては、四年も前から、実はいろいろ私も第一高校の方とも話をし、どうなんだということも言ってきているんですね。いろいろ悩みもあったでしょう。しかし、これまで結局、いや、それはパスポートを信じてきたんだということの一点張りだったわけでありますが、今回、このようになってきたということを受けて、結果としては虚偽の年齢に基づいてプレーをしたということが明らかになったわけであります。過去のことはもう笑って済ませろということもあるのかもしれませんが、しかし私は、先ほどから申し上げているように、これは極めて大きな影響を与えてしまった事件であればこそ、笑って済ませるわけにいかぬ、仕方ないねということで済ませるわけにいかない、このように思っています。

 それで、文部科学省としては、今、こういう事実が発覚したということを受けてどういう対応をとられるのかについて具体的に教えていただきたいと思います。これは大臣じゃなくて事務方からでも構いません。

山中政府参考人 委員御指摘のとおり、平成十六年ころからこういう指摘がなされていた、委員の方からも国会でも御質問いただいたわけでございます。全国の高体連等を通じて学校に聞いたり、あるいは文部科学省でもセネガル・バスケットボール協会の方に問い合わせたりということをいろいろしていたんですけれども、これもすべてパスポートの年月日と同じ一九八六年十月四日の生年月日であるというふうな回答が、何度か問い合わせたわけでございますけれども、あったということがございました。何もしなかったといいますか、そういう中でいろいろ問い合わせたんですけれども、そういう回答しか返ってこなかったという状況があったということは、委員の方にも御説明させていただいているとおりでございます。

 今回、セネガル外務省の方から、外務省の方を通じまして、元留学生、当該留学生が年齢を詐称していたという連絡を受けまして、これを元留学生が参加した大会の主催者でございます全国高体連、全国高等学校体育連盟の方にこの事実を伝えまして、高体連の方からその学校に対して調査を今行っているという状況でございます。また、都道府県の教育委員会の担当者会議ですとか、全国高等学校体育連盟の関係会議というものでも、こういうことがあったということが、年齢詐称が、外国人留学生についてそういう事実があったようであるということについての情報提供も行っているというところでございます。

市村委員 これは、もちろん文部科学省さんも動いたというのは事実だと思います。事実です。ただ、結局は、全部パスポートの問題に、途中から問題が矮小化されてしまったということで、ですから、パスポートの問題を徹底的に、私もこの間、外務省さんに御協力いただいてやってきたわけですね。外務省の皆さんに本当に申しわけないぐらいに私もせっつかせてしまったわけであります。しかし、せっつかせてもこれだけの時間がかかってしまったということであります。

 そして、これからの対応についても今お話がありましたけれども、いついつまでにこれを決着つけるのかということをぜひとも、私は、またずるずるだらだらと、今調査しています、また話をしています、これでまた一年、二年ということではないと思っています。

 やはりこれは、不正に基づいて、つまり学校教育の現場というのはフェアネスを教える場ですね、フェア、公正さを。ところが、そういうアンフェアなことが行われて、しかも、それがまかり通ってきちゃったという事例なわけでありますから、これは教育上極めてゆゆしきメッセージを送ってしまったわけですね。問題のあるメッセージを送っているわけです。どうせこの国は、こうやって不正を行ってもとにかくやり得、やった者勝ち、こういう形に教えている。文部科学委員会の皆さんがせっかくいい議論をされても、こんなことがまかり通っているのなら、教育上極めて悪い効果しか与えないという状況になっていると思います。

 まじめに頑張っている選手たちが、やはり不正はいけないんだな、フェアネスが大切なんだなということをしっかりと認識してもらうには、やはりそうしたメッセージを私は送るべきだと思いますし、かつ、そのためには、やはり具体的に、この問題を早く解決するべく、私がここで申し上げるのはなんですが、少なくとも、二〇〇五年の十月に一度、内閣委員会ですけれども、私が初めてこの問題を取り上げています。それ以降の出場の成績については取り消すとか、それぐらいのことはしていただかないと、しっかりとまじめに頑張っている選手たちが浮かばれないと私は思いますが、大臣、いかがでございましょうか。

塩谷国務大臣 確かに、こういった問題を我々が把握した段階では、先ほど申し上げましたように、大変問題であるというふうに思っております。

 まずは一つ、ルールに基づいてどうなるのかということで、高体連が、こういった出場資格ですか、年齢に対して、それを偽称したときにどういう判断をするかということが一つあると思うんですね。

 それにしても、平成十五年からということであれば、こういった事例が過去に、まず余り聞いたことがないので、それに対してきっちりと対応することが必要であって、しかも、事実関係がどこまで把握されているのか、私もちょっと確認をしますが、いずれにしても、今回のセネガルからの回答によって大体明確にされたと思いますので、できるだけ速やかにこれを対処するよう、私どもとしても要請してまいりたいと思っております。

市村委員 大臣、実は、私のところに来ている話は、このディアン氏だけじゃないんですね。ほかの方も年齢詐称の疑いがあるという話も実はあるんです。これは具体的に申し上げません。

 ですから、その後、実は、私が問題を指摘してから、高校バスケットボール界ではセネガル旋風という言葉が生まれるように、セネガルからたくさん選手が来られてプレーをされています。私は、もちろんこれが、今、高校のバスケットボール界がつくったルールにのっとって、十九歳以下の方が来られて、プレーされて活躍していただける、これは問題ないわけであります。また、別の観点でいえば、例えば日本の高校界が、たとえ私が四十代であろうが、高校に入学したらこれはもう高校生である、年齢は関係ないというふうに、ある意味では教育界ではそれの方がフェアなのかもしれませんけれども、それならそれでも、そういうふうに決めておけば問題ないんですが、やはり十九歳と決めていたわけですね。それで、そのルールにのっとってやってきたわけですね。

 ですから、ほかのことも含めて、今現在のことも含めて、実はこれは一バスケットボール界の問題だけじゃない、一高校だけの問題じゃないと思います。ほかの競技でも、年齢については疑わしいということも実は指摘されておるんですね。だから、私は、日本ほど、ほかの国ではなかなか戸籍とかもしっかりしていないということもあるようでありますので、日本教育界における留学生がプレーをされる際には、やはりぜひとも年齢というものをしっかり確かめることをやっていただきたいと思います。

 前の委員会でも申し上げたんですが、例えば、歯から年齢を調べることもできるそうであります。というのも、サッカーの世界、これは教育の世界じゃなくてプロの世界でも、サッカーの世界は例えばアンダー19とかあるわけですね。結局、プロの世界ほど実は年齢詐称というのは厳しいわけですね。年齢を詐称して出ると、それこそ二度とプレーさせないぞというぐらいの厳しい処置をとられるわけです、これは。お金も絡んでいるのかどうかわかりませんが。そういうところで、例えば歯から骨年齢を調べて、そして確かかどうかというのも調べる方法はある。

 これもまだ安定していないというような話もありますが、とにかく日本も、パスポートに書いてあるからそうだということじゃなくて、もっと科学的な方法で年齢を調べて、高校教育界において年齢詐称などというものが二度と起こらないように、そうした環境づくりをしていただきたい、こういうことを思うわけでありますが、ぜひとも大臣、全国のまじめにやっている高校生に向けて、この国では不正を行ったら必ずただされるんだということをわかってもらえるように、大臣から最後に強いお言葉をいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 当然、そういった不正が行われ、また、そういったことが続いてきたり、そういったことが日本の中では許されるべきものではないということを明確にするために、今回のセネガルのバスケットボールの問題、あるいはほかにもあるようなお話でしたが、そういったことも実態をしっかり把握しながら、今まで社会的にどの程度この問題が影響力があったかというのは、私もちょっと不勉強で把握しておりませんので、これは大変なことだなと受けとめておりますので、やはりルールにのっとって、しっかりフェアプレーをやるということが特にスポーツの場合には考えられて、高野連でも年齢制限が明確にされておりますので、そういった点で、きちっと厳正に行ってまいるよう指導してまいりたいと思います。

市村委員 ありがとうございます。終わります。

岩屋委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 民主党の細野豪志でございます。

 文部科学委員会で質問の機会をいただきましたこと、まず、委員長を初め理事の皆さんに感謝を申し上げたいと思います。

 私、ことしの五月に博物館の調達の問題について質問をさせていただきました。その後、ちょっといろいろと私も追加で調査をしたんですが、大臣もかわりましたので、やはりもう一度きちっとやった方がいいだろうと思いまして、きょうはその質問を、十五分という限られた時間でございますけれども、させていただきたいと思います。

 まず、大臣は余り詳しく多分御存じないと思いますので、簡単に、博物館ですから展示品ですね、どういう形で展示品が購入されるかを簡単に説明します。大臣、後で配りました、一つだけ離れている資料七をごらんいただけますでしょうか。

 これは九州博物館の例ですが、九州博物館が陳列品を買う場合には、これはこういう博物館の特殊な性格をまさにあらわしているんですが、まず、持っている方からの売り渡しの申し出があります。一番上に書いてあります。これはほかのものではありません。大体買う側が求めて初めにスタートするわけですから、そういう意味ではこれは特殊。そこから二つ飛ばしまして、買取協議会というのが開かれて、そこでその物を購入するか購入しないかを決めるというプロセスになっています。

 私が問題にしているのは、その二つ下の買い取りの評価、その物を幾らで買うのかというこの評価がどういうふうになされているのかということをこれまで問題にしてまいりました。

 といいますのは、博物館で展示をされるものというのは、とにかく古いもの、何百年前、場合によっては千年前というものを展示するわけですから、それがどれぐらいの価値があるかは非常にわかりにくい。ですから、素人である私なんかに例えばこれが一億円と言ったら、一億かいな、一千万と言われれば一千万かなと言わざるを得ないような、言うならば、素人にはわからない価格の大きな判断の難しさ、ある場合でいうと判断が分かれるケースもあるかもしれない。そういうものなんですね。

 具体的な事例として一つ御紹介をしますので、もう一つの資料をごらんいただけますでしょうか。これはことしの五月の委員会の場所で私が指摘したものなんですが、九州博物館が平成十七年に入手をした飾り布というものです。私の手元にはカラーのものがあるんですが、カラーコピーができませんので、印刷で皆さんの手元には配らせていただいています。一枚目が清朝のもの、二枚目が明朝のもの、両方合わせて、何人かの専門家の方に聞きましたら、高くても一千数百万ではないかという評価を多くの皆さんがされていましたが、結果どうなったか、三枚目をごらんください。評価委員会では五人の方が評価をしていまして、一番高くつけた方が二億二千万円、二番目がBで二億円、三番目も二億円、Dで四番目の方が一億七千万円、そしてEの方が、何と八百万円。

 私はこの八百万円の方から話を聞いて、ほかの方らかも何人か御意見を伺ったんですが、どういうふうに価格を決めているかというと、AとEの方は、これは上と下で離れ過ぎているので切って、残りの三人の方を平均すると一億九千万円になる。これが不思議なんですが、買い取り希望額、一番初めにこれを売りたいと言った方の買い取り希望額、幾らで売りたいという価格が一億八千五百万円なんです。

 ですから、何と、五人でやって、上と下を除いて間三人とったら、この買い取り希望額のわずか五百万円上で価格が決まって、評価額より買い取り希望額の方が低かったものですから、一億八千五百万円で結局九州博物館は買ったということなんですね。

 まず大臣にお伺いしますが、渡海大臣が、この買い取りのやり方、評価員の公表については、これは問題があるので見直しを検討したいという答弁をされました。大臣がかわりましたので初めて聞く話かと思いますが、文部科学省の方から経緯は聞いておられると思いますので、この制度と、あと、できれば評価員を公表した方がいいと私は思っているんですが、それについてどういう御見解か、お伺いしたいと思います。

塩谷国務大臣 私もこの問題については初めて今回接するわけでございまして、それだけの知識の判断でなかなか難しいところがありますが、こういった、古い、大変価値があるものの評価というのは、先ほど細野委員がおっしゃったように、だれかが幾らと言うとそれが値段になっちゃうようなところがあるんだと。評価員はそれなりの人だと思いますので、値段がそれでもこれだけ違うということ、それで結果的に買い取り価格に近いということ、これは偶然なのかどうなのか、ちょっと私もこの件だけを聞いてはっきり判断できませんので。

 ただ、今後、より公平性といいますか公明性も高めるためには、メンバーの公表とかそういうことも場合によっては検討しなければならないかなという印象でございまして、私も、まだ詳しい実態を把握していない中では、何とも今はっきりは申し上げられない状況でございます。

細野委員 ちなみに、この四年間で、九州博物館が一番新しいので一番たくさん品を買っているんですが、四つの博物館で全部で百一件買っておりまして、その中で買い取り希望額を下回ってしまって不調に終わったのは、百一件申し込みがあって、わずか二件なんです。九十九件は成立をしているんです。

 それで、私は何人かの関係者から話を聞きましたが、この評価員の中には美術商の方がたくさん含まれます。つまり、売りたい人が入っているわけです。ですから、これはもう非常に常識的にこの世界で言われていることのようでありますが、評価員が事前に学芸員の方から、売り渡し希望額は幾らなんです、この辺に入れてくださいと聞いているというんですよ。だから百一件中九十九件が成立をし、そして、こういうぴったりの価格になっているものも少なくないということなんです。

 文化庁に聞いてもそのことは答えないと思うのでちょっと聞きたいんですが、仮に評価員がそういうことをした場合に、責任はだれにあって、その評価員はどういうことになるのか、それは文化庁としてはどういうふうに考えられているんでしょうか。

高塩政府参考人 文化財の評価員につきましては、それぞれ独立して館長から委嘱を受けまして、それぞれの個人の識見に基づきまして価格評価を行いまして、その鑑定結果を館長に報告し、その結果を集計して評価額が決定されるというふうに伺っているところでございます。

 本件につきましても、先生からの御依頼を受けまして九州国立博物館から事情聴取をいたしましたところ、博物館内部でそういった事実はないということでございます。

 仮にですけれども、そういう場合には、博物館の倫理規程がございますので、そういったことがあればという仮の質問というのはお答えしにくいんですけれども、その学芸員については、倫理法上の問題が出るというふうに考えております。

細野委員 今答弁があったように、学芸員についてはそういう何らかの倫理規程で処分される可能性はあるけれども、評価員自体は、それこそそれで処罰をされるということはないわけですよね。

 ところが大臣、今おわかりのように、評価員が価格を決めるんですね。この飾り布であれば、一億八千五百万円という、これは税金ですから、税金で幾らで買うのかということを評価員が全部決められる形になっているわけですよ。この仕組みが果たして本当に適切なのかどうかというのは、相当私は吟味が必要だと思います。

 時間があとちょっとしかなくなりましたので、もう一件、最近九州博物館で……(発言する者あり)これを飾り布と一般的に言っておりまして……(発言する者あり)ああ失礼しました、わかりました。

岩屋委員長 私語は慎んでいただきたいと思います。

細野委員 資料は後ほど訂正をいたします。御指摘ありがとうございます。政治家にとって極めて大事な漢字の読み方の問題でございますので、ありがとうございます。

 大臣、もう一つつけ加えますと、なぜ私が今回九州博物館をもう一回問題にしようと思ったかというと、実は、この九州博物館で十二月の半ばに日中韓の首脳会談をやるということが、これは決まりそうだという話なんですね。なぜ九州博物館でやるかというと、これは、九州がそれこそ韓国であるとか中国と近いということもあるんですが、もう一つは、麻生総理がこの九州博物館を議連をつくって呼び込まれたというのも、これも紛れもない事実でございまして、正直、若干我田引水の感もあるなと思うんですが、そこで行われていることなので、より問題は大きいなと思ってこの事例を挙げさせていただいています。

 もう一点きょう私が問題にしたいのが、もう一枚めくっていただいて四枚目、事前に許可をいただいていませんので、私の手元に写真があるということだけ申し上げておきますが、これはちょっと見てもわかりにくいと思うんですが、矢筒、矢を入れる袋だそうです。これが平成十八年度に同じく九州博物館で買い取りをされておりまして、実は、六枚目で資料でつけておりますが、同じような価格の決め方で、最終的には三千二百万円で購入をされています。

 私は写真を見ているんですが、素人が見ても、どう考えても三千二百万の代物ではない。専門家に言わすと、本物かどうかも怪しいので、せいぜい数百万ではないかという話が一般的であります。ところが評価としては、これも一番高い方は、何と五千万もつけているんですね。では、実際に何を根拠にこういう価格がついたのかというのを九州博物館に文化庁を通じて確認をさせましたが、そうしたら鑑定書が出てまいりました。五枚目をごらんください。

 これは、この矢筒の鑑定をしたスイスの鑑定機関のペーパーなんですが、これをぱっと見たところでは何が書いてあるのかおわかりにならないかもしれませんが、真ん中辺の数字が出ているところの、AD四六四から五〇一とか、AD五二九から六五四とか、この辺が大事でございまして、この年代にできた布であるということを証明する記録になっているんです。これを根拠に、極めて価値があるというふうに判断をしたということでございました。

 私は直接この機関に連絡をとってみました。ようやく連絡がとれまして、どういうふうに評価をしたのかというのを答えていただきました。もう一枚おめくりください。一枚前ですね、失礼しました。

 この写真がその機関から送られてきた資料なんですが、答えはこうでありました。我々が鑑定をしたのはこの一番左の三角の切れ端だ。本体は承知をしていないので価格はわからない。しかも、鑑定を依頼した人はバンコクから依頼をされていて、日本とは全く関係ない人が二〇〇四年に鑑定をしている。この結果をもとにこの価格が決まっているんです。そもそも、果たしてこの切れ端がこの矢筒から出ているものか、これは全くわかりません。こういう評価でこの物の値段が三千数百万円に決まっているんです。

 本来的に、美術品を買う場合は、買う側はきちっと鑑定をします。もしくは、売る側が少なくとも確実な鑑定を持ってきます。ですから、もう時間がないので大臣にお願いをしたいのは、まずは鑑定をもう一回し直してください。いいサンプルです。今、九州博物館がこういうとんでもないものを買ったということで随分話題になっています。本当にこれがこの年代のものなのかを、再検査を少なくとも九州博物館にさせてください。これが一つ。

 もう一つは、果たしてこの評価が適切かどうかという判断をする大きな判断材料は、私は評価員だと思います。評価員はみんな仲間ですから、簡単には口を割りません。そのうちの何人かが今口を開きかけていますが、ほとんどの評価員にとっては、自分のこれからの商売がありますから、そういう意味では、これはなかなかこういう事実があるということを言えないんですね。唯一の解決策は、責任を持って評価をするという意味でも、評価員の名前の公表だと思います。

 これをサンプルにまず再調査と、あとは評価員の公表、これを求めたいと思いますが、大臣、最後に御答弁をいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 大変専門的な話でございまして、今の鑑定の話それから評価員の話等、改めて私自身しっかり自分で把握する中で、必要があればそういうこともしていきたいと思っておりますが、今ここで、今の委員の話だけではっきりお約束することはできませんので、しっかり私自身把握をさせていただきたいと思っています。

細野委員 大臣、繰り返しで恐縮ですが、これは売った側が鑑定を依頼したわけでもないんですね。バンコクに住んでいる外国人の方がした四年前のものを根拠に、これで三千万円で買っているんですよ。おかしいと思いませんか。本物を鑑定したかどうかもわからない、だれが鑑定したものかわからない、それを根拠に三千万以上の税金を出すのはおかしいと思いませんか。おかしいと思うなら調査してください。もう一度答弁を。

岩屋委員長 時間が過ぎておりますので簡潔に、文化庁高塩次長。(細野委員「いや、最後は大臣に」と呼ぶ)では先に。

高塩政府参考人 鑑定というのは必ずしも必要条件ではございませんで、外国作品の場合には鑑定がございますし、先生から御指摘のあったカーボン14による年代測定というのは、資料の一部を採取して炭素化させるという、文化財を壊すものであるということから、私どもとしては、新たなカーボン鑑定というのは難しいというふうに考えております。

塩谷国務大臣 少なくとも、この九州博物館の買い取るルールに基づいて多分やっていると思うんです。ですから、評議員等、かなり専門家が入っていると思いますので、私自身、おかしいと思いませんかといって、おかしいと簡単には答えられないということは御理解いただきたいと思います。

細野委員 終わります。

岩屋委員長 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 きょうは、全国学力テストの公表問題で質問をさせていただきます。塩谷大臣の御所見を伺いたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 平成二十年度の全国学力・学習状況調査に関する実施要領というのがありまして、「調査結果の取扱いに関する配慮事項」及び「調査により得られる調査結果の取扱い」という文章がございますけれども、これはどのような趣旨なのか、この点は文科省からちょっと御説明ください。

金森政府参考人 全国学力・学習状況調査の結果の取り扱いにつきましては、序列化や過度な競争につながらないようにするために、実施要領におきまして、国、都道府県教育委員会は個々の市町村名や学校名を明らかにした公表は行わないこと、市町村教育委員会は学校名を明らかにした公表は行わないこと、各市町村の結果の公表は当該市町村教育委員会の判断に、また、各学校の結果の公表は当該学校の判断にそれぞれゆだねること、国は公表していないデータに関する情報公開請求について開示を行わないこと、教育委員会は国の取り扱いを参考に適切に対応する必要があることなどを定めているところでございます。

石井(郁)委員 ところが、今述べられた実施要領に反して、それからまた、この問題は国会でも議論してきましたところですが、市町村別、学校別は公表しないという国会の答弁にも反して、今、全国学力テストの公表というのが広がろうとしているわけです。

 この間、都道府県レベルで全国学力テストの成績を市町村別開示、公表を行ったところがどこなのか、また、市町村レベルで学校別の開示、公表を行ったところはどこなのか。この点も、文科省が把握している点をお示しいただきたい。

金森政府参考人 都道府県また市町村の公表、開示の状況でございますけれども、都道府県教育委員会において市町村名を明らかにして市町村別の結果を開示した事案といたしましては、大阪府知事が、大阪府教育委員会より提供を受けた調査結果に関し、市町村教育委員会が公表を決定している三十二の市町村の平均正答率などにつきまして、市町村名を明らかにした開示を行ったものがございます。

 また、市町村教育委員会が学校名を明らかにして学校別の調査結果を開示した事案といたしましては、鳥取県南部町教育委員会が、域内の学校別の調査結果を開示したものがあったと承知をいたしております。

石井(郁)委員 今お話しの鳥取県なんですけれども、十月の二日に学校別の成績を開示したんです。児童数が少ない小学校一校分を除いて、小中それぞれ二校、計四校分、学校別の正答率を開示しました。

 大臣に伺いますけれども、冒頭伺いましたように、市町村教育委員会は域内の学校の状況について個々の学校名を明らかにした公表を行わないというふうにしていることからして、この事態はこれに反しているのではありませんか。

塩谷国務大臣 実施要領に基づいてこの学力調査に参加をしていただいておりますので、今回の南部町の教育委員会の対応については、それに反しているという見解でおります。

石井(郁)委員 ちょっと語尾がはっきりしなかったものですから確かめたいんですけれども、これは反しているというお答えでよろしいですね。

 都道府県レベルの問題ですけれども、大阪の名前がありましたけれども、大阪府では市町村別の成績を部分公開しました。二十二日には、秋田県でも県教育委員会が、自治体名を伏せてですが、開示をしているわけです。

 大阪府の場合ですけれども、公表するかどうかで補助金に差をつけなきゃいけない、最初こういう話があったんですね。それで市町村教育委員会に迫ったと。市町村教育委員会は、いろいろ議論したけれども、やはり予算のことなのでというようなことがいろいろあって、公表をしていった。最初公表した二十四市町に加えて、設問正答率しか明らかにしなかった八市の平均正答率も新たに明らかにするということで、今、三十二市町というふうになっているわけです。この点も、しかし一方で、幾つかのところでは、こういう動きには、のめない、一方的な公開は遺憾だという市町村教育委員会ももちろんあるわけでございます。

 ここでも、都道府県教育委員会が域内の市町村及び学校の状況について個々の市町村、学校名を明らかにした公表を行わないという実施要領に照らして、これは明確に反するというふうに思いますが、大臣、御見解はいかがですか。

塩谷国務大臣 先ほど申し上げましたように、実施要領と違った対応をしておりますので、それは実施要領に反していると思っておりますので、適切にこの実施要領に伴って行っていただくよう強く申し入れているところでございます。

石井(郁)委員 こういう事態がどうして起こったかという点でいいますと、これは、今名前を挙げました府県、知事の責任で公表しているという部分があるんですよ。知事が行う。

 実施要領というのは、実施主体は国だ、市町村は参加主体だということから先ほどのような実施要領をお決めになっていると思うんですけれども、十月十六日、大阪の知事は記者会見でこのように言っています。基本的には実施要領に私は縛られておりませんということなんですよ。そして、これは先日、十一月十六日付の毎日新聞にもインタビュー記事が載っておりましたけれども、ここではこのように述べておられます。そもそも実施要領は文部科学省が教育委員会を縛るルールにすぎない、知事の判断まで制限できるとの解釈は全く誤りだというふうに述べているわけです。これは大臣ももちろんお目通しされたと思うんですけれども。

 こうなると、文科省が出している実施要領は、教育委員会を縛るものであっても、知事は対象外だということの解釈がどんどん広がっていくわけでしょう。どうなんでしょう。これでは、実施要領というルールを決めても、そのルールは実はどこかへ飛んでしまうというか、ないがしろになっているという事態だと思うんです。だから、学力テストのルールそのものがこれは壊されていると言わざるを得ないわけですけれども、この点、大臣の明快な御見解をいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 実施要領につきましては、当然、国と当該教育委員会との参加要領として了解のもとに行っておりますので、当然、その教育委員会が所属する県も同じように考えていただいていかなければならないわけでして、府知事の考え方は大変無謀な考え方であって、そうなると、教育委員会だけじゃなくて、いろいろなものが全部知事には影響を及ぼさないような解釈ができちゃうものですから、まことにこの点については遺憾だと思っておりますし、やはり、実施要領に基づいて参加していただくという前提にありますので、それを守っていただくことを強く我々としては指導してまいりたいと思います。

石井(郁)委員 大臣としての明快な御見解をいただいたと思うんですけれども、もう少し広がっている事態について申し上げますと、今回、全国学力テストのデータは文科省が持っている、それを各都道府県に渡されるということだと思うんです。だからそこでとまっているはずなのに、どうして知事にまで行ってしまうのか、これが一つありますよね。なぜ知事に行っちゃうのか。

 そこもあるんですけれども、そのときに知事は記者会見でこう言っていらっしゃるわけでして、この資料は何のために教育委員会から出していただいたかというと、大阪は今、教育非常事態宣言というのを出しているんですよ、その教育非常事態宣言を受けて、緊急プラン、その予算の裏づけをするに当たって、やはり教育委員会から平均正答率と家庭の課題、このデータを見せてもらわないことには、緊急対応ということを教育委員会から出されても、それに予算をどれぐらい必要なのかどうなのかわからないということで資料を出してもらった。だから、府が要するに緊急対応プランをつくっているし、それをやるための予算を決めるのにこのデータが必要だという理屈を出されていらっしゃるわけです。予算の裏づけという口実があるわけです。だから実施要領には拘束されないというふうに言っているんですね。

 こういう理屈自身も大臣としては到底認められないと思うんです。これがまかり通ったら、これはもう全国に波及しますから。もう一度重ねて伺っておきたいと思います。

塩谷国務大臣 橋下知事が予算のためにこのデータをとったということでありますから、予算のために必要な場合に限ってそれを参考にすることは、これはできることだと思いますが、それを公開条例に基づいて出しちゃうということは、全くルール違反だと思います。

石井(郁)委員 ですから、あくまでも資料として見るということはあるかもしれないけれども、公表するということはあってはならないんだということをやはり確認したいというふうに思うんですが、実はもう一点、秋田県で起きていることも大変遺憾な状態だというふうに私は思っておりまして、伺いたいわけでございます。

 これは十月二十五日の新聞記事からなんですが、名前を挙げますが、寺田知事が県庁で行った行財政改革をテーマにした講演、ここで学力テストの結果について触れておられる。横手市内のある中学校の名前の略称を挙げて、ここでは成績ががたっと落ちた、あそこが上がればこの横手市はもっといいんだがというふうに言われた。さらに、国の借金について計算をするくだりで、どこそこの村、これは実名が挙がっているのですけれども、ある村の中学生ならすぐできた、この村は一番なんですと言っている。だから、この村はトップの成績をおさめたんだということはだれにもわかるような講演になっているんです。さらに、県北と県南は一部を除いてAかBだ、県央は低い、何々村はすごくいいとか、何々村はどうだとか、A市はもう少し頑張った方がいいとか、これはみんな名前を挙げて言われている。だから、自治体名を挙げる、学校名を挙げるということで話をされるんです。

 ここでも、なぜ知事がこういうことができるのかという問題だと思うんです。さすがに会場内の県内の市町村の首長さん、幹部職員が、この知事の発言にはざわめきが起きたというふうにこの新聞記事は書いているわけです。

 こうなりますと、まさに、知事、いわばそういう政治的な立場でこの学力テストをもてあそんでいる、あるいは実質的にはランクづけを発表している。これは、序列化を促進させるようなやり方ではないのかという、その公表そのものにこういう問題がまさに出てきたんじゃないか。そして、この序列化によって、要するに、点数を上げよという学力テストの点数競争をいわば促進するこういうものではないのかと。だから、こういうことが一体許されていいのかという問題なんですが、この点でも大臣の御見解を伺います。

塩谷国務大臣 今回の学力調査、学習状況調査については、過度の競争心をあおることなく、やはり、それぞれの実態を把握するとともに、それを各市町村なり各学校なり個人なりの教育の改善、あるいは個人でいえば、次に向かっての努力をしていただくような一つの資料として学力調査を行っているわけでございまして、したがって、そういってお互いの競争心をあおるようなことは目的としておりませんし、過去においてもそういったことがあったからこの学力調査をやめて、何十年間、久しぶりにこれを行ったわけでございまして、したがって、実施要領には、そういった公表をしないという過去の例からの教訓でやっておりますので、ぜひここのところは十分に御理解いただいて実施をしてまいりたいと思います。

石井(郁)委員 文科省は一応そういうスタンスで来ているとは思いますが、現実は、このように次々と公表という事態になっている。それで市町村名、学校名まで挙がってきているということなんです。

 最新の情報でも、これは十一月の十四日、鳥取県の教育委員会は、来年度以降の学力テストについて、情報公開請求があった場合、学校別まで開示するということを決めているわけです。そういう条例改正案を発表したということが報じられておりました。また、大阪の橋下知事は、来年度はもう全公開だ、今はまだ公開していない市町村があるわけですね、全公開だということを言っております。

 だから、このままいけば、実施要領に反することがさらに起きていくということを考えなきゃいけません。公表がさらに広がっていくというような一部の動きというか勢いがあるわけでございまして、だからこうなりますと、文科省が幾ら実施要領を守ってほしいと言っても、守られない状況になっている。これは、私はやはり、全国学力テストでこういう全国調査をした結果公表に伴う矛盾というか、そういうものを抱えているんだろうというふうに思うんです。

 ですから、こういうルールが守られない事態が起きているという中で幾ら文科省が守れ守れと言っても、守らない。やはりこの学力テストそのものを見直す、あるいはもうやめるというような判断をするときに来ているのではないかというふうに思いますが、この点では、塩谷大臣、いかがでございますか。

塩谷国務大臣 いろいろな情報開示の動きがある中で、私どもも、そういった、例えば今の鳥取県の状況もしっかり確認をしながら、それを受けて来年度の実施要領を改めて今検討しているところでございまして、公表するということになれば、その場合どうするかということも含めて実施要領に書き込んでおくのかどうなのか、あるいは、そういうことであれば例えば参加を断るとか、そういうことも考えられるだろうし、来年度の実施要領については、年内をめどに今検討しているところでございます。

 先ほども申し上げましたが、また石井委員もおっしゃっているように、過度の競争心をあおるということは、大変また逆な悪い影響が出てくることは明らかだと思っておりますので、そういう点をしっかりまた理解していただくと同時に、一方で情報公開というまた違った視点での問題があって、私どもとしては情報公開請求においても公表しないということを前提にやっているわけですが、そこら辺のいわゆる教育的な観点から今回の学力調査の結果の公表というのをしっかりと理解してもらうために、私ども努力をしてまいりたいと思います。

石井(郁)委員 このテストについては、何度も大臣も述べていらっしゃるように、やはり、序列化につながったり過度な競争を生じることがないようにするということが大きな前提で始まったと思うんです。そのために市町村別の名前と学校名は公表しないということだったと思うんですが、そのことを非常に有名無実化しているのは、都道府県別に結果を公表した、ここだと思うんですよ。だから、都道府県別に平均点と都道府県の正答率がわっと出るわけでしょう、それを各メディアも全部書いて、全部ランクがついちゃうわけですよ。

 実は、大阪では二回続けていわば下位のところに来た。これはことしの八月三十日のある新聞ですけれども、新聞はこういうふうに書くわけですよね。そうすると、平均点以下はどこの県、平均点以上はどこの県と一目瞭然に出ちゃう。そうすると、やはり下位のところは、何というのかな、慌てるというか、これでいいのかということを恐れているわけですよ。だから、都道府県別に公表するということ自身が序列化をいわば一歩進めた、踏み出したというふうに私は思うんです。

 現に大阪で知事がどういう発言をしたかといいますと、一回目、一年目は下位だった、去年原因を分析して対策をとったはずなのに、このざまは何なのか、全然現場はなってないじゃないか、こう言っていわば号令をかけるわけでしょう。そして、来年に向けてもっと上げろ上げろというふうにいわば現場を叱咤するわけですけれども、こういうことで結局は、この平均点の上位に行かなきゃいけない、そういうことが自己目的化しているわけですよ。これはやはり、本当にゆがんだ序列化の競争教育を助長しているんじゃないかと思うんです。

 さて、それはちょっと後で言いますけれども、ここで一点確認しておきたいことがあるんです。PISA型学力というのはどういうものかとかいろいろ議論はあるんですけれども、このテストの中には、いわば成績、学力そのものの部分と、生活調査の部分がありますよね。六年生と中学三年生ですから、子供はかなり白紙で出すとかあるようです。それは子供だって、これは書きたくないという子供はいるでしょう。

 そこでですけれども、生徒が回答を書きたくないとかあるいは無回答だというようなことを判断した場合、これは生徒のまさに思想や表現の自由というものであって強制できないと思いますが、この点での文科省の御見解を伺いたいと思います。

塩谷国務大臣 無回答というのがあるということはある程度認識をしておりますが、今、強制するとかそういう点は、どこかでそういうことがあったという認識でございますか、それとも、無回答の評価が何かあったということでおっしゃっておられるのか……(石井(郁)委員「一般的な話として」と呼ぶ)無回答は、それなりに回答した方が、いろいろな思いがあって、実際わからなかったりいろいろな理由があると思うんですが、できれば私どもとしては回答していただきたいということで出題をしておりますので、その無回答の理由というのが何か明確にあれば、またしっかりと調査をしたいと思います。

石井(郁)委員 一般的な話としてなんですが、多少事例も聞いておりますけれども、要するに、それを強制するということはあってはならないだろうという意味なんです。教育的な指導というのはあるかもしれませんけれども、それを強制できないだろうという意味でお尋ねしたんです。

 というのは、これも大阪府の教育力の向上プランで、「今後五年間の具体的取組み」という中の一つに、全国学力テストの無回答率、これをゼロにする、ゼロを目指すということをわざわざ書いているわけですから、こういうことになると、それはもうどんどんと強制していくようなことになりかねないんじゃないかという懸念でありまして、ここはちょっと注意して見ていただきたいなということであります。

 ではもう一つ、今はちょっと大阪のことを伺っていますけれども、本当に非常にいかがかと思う事態なので私は質問するんですけれども、この十一月六日に、校長、管理職を対象にした研修会というのが開かれています。約千人近い規模だということなんですが、聞いてみて驚いたんです。目的のために手段を選ぶなとか、プロだったら順位を上げろ、それから、私の言うとおりやれば順位が上がるんだということを特定の講師の方が講演をされる。いわばその方の教育方法、百升計算、反復練習ということで、これをやって順位を上げろということになる。そのために、任天堂のゲーム機、携帯ゲーム機というのが今現場で使われているようですけれども、これは要するに、点数を上げるための漢字とか計算ドリルなんですよね。それを今はゲーム機でやっているんですよ。これは結構高いものですよね。府としても、二千万をかけて購入するということまで今打ち出しているわけです。

 私は、教育方法というのは多様であっての教育方法だし、そういう創意工夫をうんと促してこそ学校教育というのは活性化すると思うんですが、一つの教育方法をこんな形で押しつけるというのはちょっと前代未聞だというふうに思います。しかも、特定の商品、どうもその人が開発した商品なんですよ、DSのゲーム機というのは。そういうものが上から押しつけられていくということが行われようとしている問題があります。

 そして、そうしたやり方で来年二月には模擬テストをやる。これは四月の実施に向けての模擬テストなんですよ。過去問を繰り返してやる。だから、まさに学力テストの正答率を上げるための、順位上げのための競争をこんな形で今行おうとしているわけです。

 さらに、そのために三十億円の基金を設ける、五十校を重点指定するということで、その取り組みによって市町村で予算の差をつけるということまで行おうとしているわけですね。

 いろいろな問題を今申し上げましたけれども、ここは、私は教育基本法の特別委員会の審議のときにも取り上げたことがございます。テストの結果で、そういう数値目標で学校の予算に差をつけるということがあっていいのかという問題も質問をいたしました。これは学校間の格差を広げる、地域間のまさに格差を広げる、こういう問題につながるわけですから質問いたしましたが、そのときの伊吹大臣の御答弁は、全国学力テストというものは、学校に数値的な差をつけるためにやるのではありませんという答弁だったんです。

 私はこれはまさにそのとおりだというふうに思ったわけですけれども、今、こういう御答弁に反して、予算を誘導してこのテストをどんどん実施し、そして平均点を上げる、正答率を高める、特定の方法を導入するということで、まさに子供たちはテスト競争に本当に追い込まれていくんじゃないかということなんですけれども、そもそも、全国学力テストというのはこういう結果のために文科省はしているんですか。その点を伺っておきたい。

塩谷国務大臣 大阪府での事例がいろいろお話しされたわけですが、大変、我々が趣旨、目的としているところと反するようなことがたくさんありますので、我々も何度も言いますように、序列化や過度の競争心をあおるためにこの調査をやっているわけではありませんし、国として全体的な学力の把握、あるいは市町村、それぞれ県も、その当該県なり市町村の学力の把握、そして、それをもとに今後の教育をどう改善していったらいいかというデータとして必要であり、個々の生徒については、自分がどういう位置にいるのかということも把握していく。私個人的には、そういうことの目的であれば、本当に全学年毎年やって、自分が次にどれぐらいねらえるかぐらいは、自分で挑戦するようなことがあっていいのかなと思っております。

 先ほど来のお話で、例えば、学力調査のいわゆる回答のない無回答のところを回答しろというのは、これは何か、問題に対して挑戦をするという意味では教育としては理解できるかなというような気がいたします。問題を出して回答しないというのは何か理由があるのかというのはちょっとわかりませんけれども、それを強制するわけじゃなくて、やはり回答を出せという指導は私はあってもいいのかなと思っておりますし、ただもうわからないからやめちゃうようなことではなくて、そういう意味においては私はあっていいのかなと思いますが、やはり、ふだんの学習の結果をはかるわけで、そのためのいろいろな取り組みがあってはならないと思っておりますので、これも、この学力調査の目的をさらに理解していただくために私どもとしては努力をしてまいりたいと思います。

石井(郁)委員 テストで自分の学力がどの程度かとか、もっと勉強しようとか、そういう意欲につながったりするということはあり得ることなんですけれども、しかし、私はこれまでの二回の例で質問しましたように、四月に調査しても、返ってくるのは一回目は十月、十一月だった、ことしは八月に早めたわけですけれども、しかし、数カ月後に返ってきて、このテストで自分はどういうところでどう間違ったのかもなかなか見にくいということも言われているんですよ。だから、この結果をもとにして先生方も十分これで指導するとは言えないという問題もあるわけで、きょう申し上げましたように、現場はこれほど混乱を起こし、また矛盾を来しているこうした全国学力一斉テストは、もうやはりやめるべきですよ。そのことを私は強く求めたいと思うんです。

 最後に、ことし、ノーベル賞受賞者で大変話題になりましたけれども、そのお一人の益川先生が大変このテスト優先の教育を批判していらっしゃいましたよね。これは教育汚染だ、考えない子供をつくっている、これでは日本の教育はだめになるという発言があったかと思うんですけれども、私は、本当に日本の教育を立て直すのは、国際調査でこの学力だけの問題じゃなくて、実は、勉強嫌いが多い、それから自己肯定感が低い、学校で勉強したことが生活に役立っていると思わない、こういう子供たちは世界から見てこれまた日本は突出して多いんですよ。こういうところにきちんと目を向けてそこをやはり全体で立て直していくということの方が、私は、日本の教育の明るい未来の展望を開くというふうに思っているんですね。

岩屋委員長 石井君、時間が来ておりますので、簡潔に願います。

石井(郁)委員 そして、今言われていますように、六十億円もこれにかけてやるよりももっと予算のかけ方があるんじゃないかということもありますので、ぜひ文科省のひとつ決断を強く求めまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

岩屋委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森でございます。

 恐縮ですが、引き続き学力テストの問題で御質問をしたいと思います。重複がありますので、そこは全部省いて質問させていただきたいと思います。

 学力テストの目的だとかいうことについては、大臣から明快な御答弁がありました。その上、この学力テストについては、全国一律、悉皆でやるということ以外に、県レベルであるとかあるいは市レベルなどで独自に行われているという話も聞いているわけです。

 一つは、この実施状況などについて文科省は把握をしているのかということ。それから、こうした独自に行われている学力テストで得られたデータというか結果、結論みたいなものと全国学力テストのデータというものが違いがあるのか、そういう独自の学力テストでは得られないデータを全国学力テストで得ようとしているのかということについて、最初にお聞きをしたいと思います。

金森政府参考人 学力テストにつきまして、都道府県や指定都市における実施状況について申し上げますと、平成十九年度におきましては、三十一の都道府県、また十五の指定都市で学力調査を実施しております。対象学年や対象教科、実施方法などは各教育委員会によってさまざまでございますが、これらの調査は、子供たちの学力の向上や学校教育の充実に役立っているものと考えております。

 一方、全国学力・学習状況調査でございますが、これは対象学年の児童生徒全員を対象とした全国的な調査でございますことから、都道府県や市町村独自の調査では得られない、例えば大都市とか中核市とか町村とか、こういった地域の規模などの状況、あるいはすべての都道府県の状況、国公私立等の状況など、全国的な状況に関する資料を得ることができるというのが一つでございます。それから二つ目には、すべての教育委員会、学校などが全国的な状況との関係においてみずからの状況を把握し、教育を改善するための資料が得られるということ。それから三つ目としては、必ずしも都道府県、市町村では提供されていない児童生徒一人一人への個人票を全国学力・学習状況調査では提供いたしておりまして、児童生徒が全国的な状況との関係においてみずからの状況を把握し、学習の改善を図ることができるということなどが、全国学力・学習状況調査ならではのメリットというふうに考えているところでございます。

 なお、出題の問題につきましても、今回の全国学力・学習状況調査におきましては、都道府県や市町村ではほとんど出題されていない記述式の問題や知識、技能を活用する力に関する問題についても出題をいたしておりまして、そういう面でも、児童生徒の学力の状況を幅広く把握することによって指導の改善に生かすことができるように努めているところでございます。

日森委員 二年続けて悉皆調査、この悉皆というのは随分難しい字で、ちょっと調べたら、何か謡曲から出てきた言葉だそうなんですね。まあ、それはどうでもいいんですが。

 これはマスコミの評価なんですが、二年続けて悉皆調査をやったんだけれども、初年度と二年目で学力の課題に大差はないというふうにおっしゃっているマスコミや、都道府県別の成績もほぼ固定化している、少人数や習熟度別の授業に学力向上への効果があることは従来の抽出調査などでもう既にわかっていたことだ、それから、学習時間や読書時間が、さっき勉強が好きか嫌いかと石井先生おっしゃいましたけれども、長い子供ほど正答率が高い、当たり前の話なんですが、結果について予想されたものだった、そういう評価が大勢を占めている。一方では、昨年とことしで設問の難易度が異なって、なかなか比較するのも難しいなという意見もあったようです。

 お聞きしたいのは、この二回の調査で結果に何か変化があって、あっと文科省が驚くようなことがあったのか。まあ、あっと驚かなくても結構ですが、何か変化があったのか。あるいは、二年連続して実施したがゆえに把握できた、これまで明らかにならなかったデータというのはあるのか。あるいは、悉皆調査でなければ把握できないデータというのは、具体的にどういうことを文科省として想定しているのか。これについてお答えいただきたいと思います。

金森政府参考人 平成二十年度の全国学力・学習状況調査を実施することによりまして、私どもといたしましては、小学校第六学年と中学校第三学年の二カ年の学力、学習状況に関する大変貴重な調査結果が得られたと考えております。

 少し具体的に申し上げますと、本年度の調査では、教科に関する調査におきまして、例えば昨年度調査と比べて、これまでの調査において課題の見られた内容の問題などを多く出題いたしましたことから、知識につきましても一部課題が見られることなどが明らかになっております。

 また、質問紙調査におきましては、例えば学習に関する関心や意欲、態度に関する項目など、新たに追加した新規質問項目に対する調査結果のデータが得られました。

 さらに、二カ年続けて実施したことによりまして、児童生徒の学力、学習状況に関する経年的なデータが蓄積されますとともに、平成十九年度調査で得られた分析結果の再確認、例えば、活用する力に課題があるというようなことや地域間に大きな差が見られないということ、また学力と相関が見られた質問項目、こういった項目については分析結果の再確認なども可能になったと考えているところでございます。

 文部科学省といたしましては、この全国学力・学習状況調査の目的やねらいを達成いたしますために、毎年実施いたします悉皆調査の調査結果データをより一層活用いたしまして、国や教育委員会、学校現場に有用な情報が提供できるよう、引き続き分析の充実にも努めてまいりたいと考えております。

日森委員 十一月十日に全国学力・学習状況調査の分析・活用の推進に関する専門家検討会議という長い戒名の会議が開かれましたが、そこで、全国連合小学校長会長というのがあるそうなんですが、その池田氏がこうおっしゃっていました。

 これまで六十億円かけて悉皆で調査してきた、しかし、調査統計学上、調査の目的の実現にとって悉皆調査というのは本当に必要なんだろうかという疑問を呈しておりまして、教育課程実施状況調査、こういう調査があるそうなんですが、これは全国の児童生徒の八%で実施をしてきた、これで統計上の信頼度は確保できているのではないか、一般に九五%の信頼度で一〇%以内の誤差で推定したいときは、サンプル数は全体の七・〇六%でよいというふうに何か統計学上はされているんだというお話をされたようです。

 そういう意味からいうと、これからもずっとおやりになるという決意表明をされたんですが、実際にこの目的に照らした場合に、これは国が全児童生徒を対象として調査をする必要はないんじゃないかという趣旨のことをおっしゃっているんですが、こうした御意見についてどのような御見解をお持ちでしょうか。

金森政府参考人 私どもでは、十一月十日に、御指摘ございました全国学力・学習状況調査の分析・活用の推進に関する専門家検討会議を開催いたしまして、関係者のヒアリングを行いました。

 その席上、全国連合小学校長会長からもヒアリングをいたしたわけでございますが、その趣旨につきまして少し正確に申し上げますと、全国連合小学校長会の会長からは、単に学習到達度や平均正答率を把握するだけであれば、調査統計学上、悉皆調査である必要はない、子供一人一人の学習の状況を見て指導に生かすことや、学校、教育委員会、国が調査結果を分析し、指導や支援のあり方の改善に生かすのであれば意義がある、学力調査の意義、目的を教員や児童生徒、保護者等に対して明確に示していくことが重要であるという御趣旨の御指摘をいただいたところでございます。

 この全国連合小学校長会の会長の御指摘のように、全国学力・学習状況調査の目的やねらいは、国が子供の学力、学習状況を把握することだけではなく、全国的な状況との関係において各学校や教育委員会がみずからの状況を把握し、指導や施策の改善に取り組むこと、また、各学校において子供一人一人への指導や学習状況の改善に役立てることに大きな意義を有すると考えておりまして、このような目的やねらいにつきましては、引き続き周知を図ってまいりたいと考えております。

日森委員 子供一人一人の学力の問題であれば、先ほど最初にお聞きをしました、各自治体などや、あるいは県で独自におやりになっている学力調査でも十分だろうと思います。全国の傾向を把握されるんだったら、これは悉皆調査をやる必要はなくて、まさに七・〇六%の抽出調査でもよろしいんじゃないかということになるのではないかというふうに思います。

 いずれにしても、先ほど大臣の方から、実施要領について来年度、いろいろあるので、その見直しといいますか、実施方法について検討してもらっているんだというふうなことであったと思うんですが、これは具体的にどういう格好で御検討されているのかは今おっしゃれますでしょうか。

金森政府参考人 平成二十一年度、来年度に実施いたします全国学力・学習状況調査でございますけれども、この調査の趣旨がより生きる、この調査の趣旨をより生かそうという観点から、二年間の調査の実施状況も踏まえまして、結果の早期提供の継続、また、より高度で専門的な分析、活用による有用な情報の発信、学校や教育委員会における調査結果の一層の活用促進などについて改善を検討することに加えまして、調査の実施方法等につきましても、専門家などの御意見を伺いながら、よりよいものになるよう検討をいたしているところでございます。

 その結果を平成二十一年度の学力・学習状況調査にも反映させることといたしておりまして、そのために、現在、関係団体からのヒアリングなども行っているということでございます。

日森委員 それで、先ほどの公表の関係、私は大阪の話はいたしませんが、大臣から明快な決意、決意といいますか、お聞きをして、やや安心をしたところもあるんですが、文科省は結果の開示と公表というのを区別されているんでしょうか。どうもそういう区別をして、各市町村あるいは学校が自主的に結果を公表することは文科省としては差し支えない、こういうふうにしているんじゃないかというふうに思います。

 そうすると、仮にすべての市町村、学校が、もちろんやらないよというところもあるんでしょうが、結果を公表するということになれば、これは実施要領で幾ら言って、大臣が決意をされても、これは全部しり抜けになっちゃうんじゃないか。いずれにしても、市町村や学校別の順位表がつくられるような結果を招くんじゃないかという心配があるわけですが、文科省としてはそれでもいいよということなんでしょうか。

金森政府参考人 市町村別の調査結果の公表につきましては、実施要領におきまして各市町村教育委員会の判断にゆだねているところでございます。したがいまして、それぞれの市町村教育委員会の判断によって、結果として多くの市町村の調査結果が公表されるということも考えられるわけでございます。

 この点に関しまして、実施要領におきましては、公表に当たっては単純に平均正答率などの数値のみを示すのではなく、この調査により測定できるのは学力の特定の一部分であることや、学校の教育活動の状況や今後の改善方策などをあわせて示すことなど、序列化や過度な競争につながらないよう配慮するよう定めておりまして、私どもも含めた関係者において、序列化等につながらないよう努力と良識が求められているものと考えているところでございます。

 このような序列化につながらない配慮を含めた調査結果の公表の示し方につきましては、従来から教育委員会や学校等に広く周知をしてきたところでございますが、引き続きその徹底を図ってまいりたいと考えているところでございます。

日森委員 しかし、心配しているのは、先ほど来出ているように、各市町村あるいは教育委員会が独自に、文科省の思いを超えていろいろ公表したり開示をし始めているわけですよ。

 先ほど大臣は、大阪の例などについてゆゆしき、ゆゆしきと言ったかどうかちょっと記憶がないんですが、実施要領と違うことから問題であるというふうにおっしゃったんですが、実際にはそういう事態が進んでいて、序列化を生み出すことは学校教育に弊害をもたらすというふうに実施要領の中で言いながら、遺憾であるとか、いや、それは問題だと言いながら、実はまだ、そうした公表あるいは開示について、これを防止する手だてというのは具体的にないわけじゃないですか。各市町村が独自にどんどん公表し始めていることについて、文科省が具体的にどうそれを抑止というか防止をする手だてを打っていくのかということがない以上、これは進んでいくという心配が大変あるわけですよ。

 本当に個々の子供たちの学力を、毎年毎年一斉学力テストで調査をしていくということを続けていけば、これはもっと広がっていく可能性があるという意味を考えると、これは学力テスト自体をもうやめるべきじゃないか。抽出調査で、本当に傾向だけつかんでいくのはできるはずだし、もっと教育は例えば市町村とかいうところにしっかりゆだねる、実際に学力テストをやっているわけですから、そういうことにしていったらどうかというふうに思いますが、いい答えはもらえないと思いますが、いかがですか。

塩谷国務大臣 実施要領と違った、そういう対応がされていくことはまことに遺憾でございます。しかしながら、この学力調査、学習状況調査の結果は、先ほど局長からお話がありましたように、今までになかったいい結果も出ておりますので、そういったことが今後も教育の改善あるいは個人の努力を促すためにも、私ども期待をしておりますので、当面はこの学力調査を続けてまいりたいと考えておるわけでございます。

 いろいろな御意見があることは承知しておりますので、実施要領等の改善もまた考えなければならない場合もあるかもしれませんし、その方法等は、今後続けていく中でまたいろいろな御意見を伺いながら、検討もしてまいりたいということだと思っております。

日森委員 当面続けていくという御答弁でしたが、来年からぜひやめていただきたいということを申し上げて、ちょっと時間がなくなりましたけれども、次の質問に移りたいと思います。

 教員免許更新制度についてお伺いをしたいと思いますが、ことしの七月から八月、ちょうど夏休み中ということなんでしょうけれども、全国で教員免許更新制試行を行ったというふうに聞いております。この目的だとか概要、結果、これは文科省はどういうふうに評価されているのか、まずお聞きをしたいと思います。

塩谷国務大臣 ことし、来年から実施する免許更新制の円滑な実施に向けて試行的に行ったわけでございますが、この更新の講習の実施に伴ういろいろな課題とかあるいはこの実施に伴った成果とかそういう点を、実施に向けて実施主体とする大学に普及をさせるために今回は試行的に行ったわけでございます。

 その結果としては、講習の広報体制、あるいは講習の内容、方法などの質の確保の方策、そして修了認定のあり方等、試行を踏まえた課題が明確となり、その解決の方策が報告されたわけでございまして、これをもとに、来年度の実施に向けて、しっかりこれから準備をしてまいりたいと考えております。

日森委員 実際、この試行に参加した教員の人たちから、いろいろな不安だとか不満も出ているようです。

 いろいろな受けとめ方はあるんだと思いますが、先着順でなくて、希望する者が希望した講座を受講できるようにしてもらえないかという声があったり、あるいは、定員オーバーで受講できなかった、免許失効するんじゃないかと本気で心配しちゃったという方もいらっしゃるぐらい、プレッシャーが大きいわけですよね。試行でこういうことになるわけです。しかも、年間十万人に上る教職員が免許更新というのを行うわけですから、これはもう大変な状態になるんだと思います。

 かなり多かったのは、講義が現場とかけ離れているという声がかなりあったようなんですよ。こうした声にしっかりこたえていくことが必要ですし、教育現場のニーズに合った講座というのを開設するために、結果についてはさっきおっしゃらなかったのであれなんですが、どういうふうに担保していくのか。現場のニーズに全然そぐわない講義を聞いても、それで評価されちゃうのかという不満もあるわけですから。また、希望する講座を受講できるような、そういうシステムというのはどういうふうに確立をしていくのかということなども課題だと思うんですが、現段階でお考えになっていることをお聞かせいただきたいと思います。

金森政府参考人 教育現場のニーズに合った講習の開設、また希望する講習を受講できるシステムについてのお尋ねでございますが、免許状更新講習の開設に際しましては、文部科学省令におきまして、大学などの開設者に対し、講習の実施前に免許状更新講習の内容などに関する受講者の意向を把握し、当該意向を適切に反映するよう努めなければならないこと、また、講習の実施後、受講者による講習内容についての評価を行い、その結果を文部科学大臣に報告するとともに、その結果に基づき、講習の改善を図るために必要な措置を講じなければならないことを文部科学省令において規定しているところでございます。

 文部科学省におきましても、各開設者からの報告に基づき、受講者による各講習の評価結果を公表することといたしておりまして、これらの取り組みを通して、教育現場のニーズを視野に入れた講習が確保されていくものと考えております。

 また、文部科学省におきまして免許状更新講習として認定した講習につきましては、すべての講習を文部科学省のホームページに掲載いたしますとともに、各教育委員会などを通して情報提供することにより、受講者がみずからの希望する講習を選択し、各講習開設者に申し込みを行うこととする予定でございます。

日森委員 ぜひこの試行の結果を、むしろ教師側に立ってしっかりと受けとめて、改善といいますか、来年度からやっていただきたい。いや、来年度から本当はやっていただきたくないんですが、やるのであればそうしていただきたいと思います。

 それから、費用の関係なんですよ。これは附帯決議なんかでも出されていましたけれども、手弁当で行くんですが、中には物すごい負担がかかっちゃう人がいる。

 衆議院の文科委員会での附帯決議でも、御記憶だと思いますが、免許状更新講習の受講負担を軽減するため、講習受講の費用負担も含めて国による支援策を検討するとともに、特に僻地の問題とかということにも、ちゃんと受講できるように保障しなさいというような附帯決議をやりました。これについては、現在どんな検討が行われているんでしょうか。

金森政府参考人 更新講習の受講費用の負担軽減の取り組みでございますけれども、免許状更新講習の受講料は、教員免許が個人の資格でございますことから、教員個人の負担をもって充てるとの考えがございます一方、教員免許更新制が国あるいは教育上の要請から導入されるものであることにかんがみ、一定の配慮が必要との考えもございます。

 御指摘ございました国会の附帯決議にもかんがみ、文部科学省では、平成二十一年度概算要求におきまして、大学などが更新講習を開設する場合の補助に係る経費を要求しております。これらの支援により大学などが円滑に講習を開設することにより、結果的に受講者の負担の軽減も図られるものと考えているところでございます。

日森委員 実際、負担があるわけですから、これは積極的に支援策を、もちろん我々も附帯決議をした責任もあるわけですから、しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 それから、もうちょっと時間がないので、これは最後の質問になっちゃうと思うんですが、修了認定の方法、それから認定基準について伺っておきたいと思うんです。

 法律では、修了認定については試験を実施するというふうになっているんですが、試験といっても、講師によっていろいろばらつきがあるようなんです。記述式の試験をやる人、マル・バツ式、選択式、本を見てもいいぞ、あるいはだめだぞとか、いろいろな中身があるようで、こういう相違があると、全国的に何か不安が広がっちゃうんじゃないか。うちはマル・バツ式で本を見てもいいから何でもできたよというような話が出てきたり、そうじゃないところもある。

 これはやはりどういうふうにしていくのか、本当に教師の不安というか、いわば格差を含めてですが、それをなくしていくようなことできちんとやっていけるのかどうなのかということについて、最後にお聞きをしたいと思います。

金森政府参考人 免許状更新講習におきましては、客観的かつ公正な修了認定を行いますため、各講習開設者が修了認定試験を行うことといたしております。

 免許状更新講習の修了認定の基準につきましては、文部科学省の告示におきまして、必修、選択の「各事項毎の項目及び内容について基礎的な知識技能を有すること」と一般的に規定をいたしております。

 また、より具体的には、私どもにおきまして、本年度行われました免許状更新講習プログラム開発委託事業の結果を踏まえまして、この修了認定の方法について、例えば、一般的な感想や単に記憶力を問う試験は不適当であること、また、事前のオリエンテーションなどで修了認定の基準や試験の形式などについて説明しておくことが効果的であることなど、具体的な改善方策を大学などに示しているところでございます。

 各講習開設者におきましては、これらに基づき、各講習の内容等を踏まえて修了認定基準を設定し、認定を行うことといたしておりまして、それぞれの講習における修了認定におきましては、これらの諸基準を踏まえ、各開設者において適切な諸基準が確保されるものと考えているところでございます。

日森委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 もう時間がなくなりましたが、お医者さん、弁護士さんは免許の更新はありません。教師だけやるわけで、これはまだ合理的な理由がなかなか見つからない、なかなか納得できないという声もあるようですし、それから、試行の中でいろいろな問題点が明らかになって、それがきちんと改善をされる、解決されるという段階で少なくとも実施をするということで、拙速な、ともかく免許更新講習はもう決まったからやればいいんだという立場じゃないということで進めていただきたいということをお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で予定された質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十三分散会


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