衆議院

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第2号 平成21年3月13日(金曜日)

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平成二十一年三月十三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 岩屋  毅君

   理事 木村  勉君 理事 佐藤  錬君

   理事 馳   浩君 理事 原田 令嗣君

   理事 茂木 敏充君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      阿部 俊子君    井澤 京子君

      井脇ノブ子君    浮島 敏男君

      小川 友一君    小野 次郎君

      大塚 高司君    岡下 信子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      鍵田忠兵衛君    亀岡 偉民君

      関  芳弘君    土井 真樹君

      中森ふくよ君    西本 勝子君

      萩生田光一君    平口  洋君

      福田 峰之君    藤田 幹雄君

      盛山 正仁君   山本ともひろ君

      若宮 健嗣君    田島 一成君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      藤村  修君    松本 大輔君

      山口  壯君    笠  浩史君

      和田 隆志君    富田 茂之君

      西  博義君    石井 郁子君

      日森 文尋君

    …………………………………

   文部科学大臣       塩谷  立君

   文部科学副大臣      松野 博一君

   文部科学大臣政務官    萩生田光一君

   文部科学大臣政務官    浮島とも子君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 西村 泰彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         河村 潤子君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       泉 紳一郎君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            磯田 文雄君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        山中 伸一君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 木曽  功君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高井 康行君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    木倉 敬之君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十三日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     若宮 健嗣君

  亀岡 偉民君     大塚 高司君

  谷垣 禎一君     盛山 正仁君

  西本 勝子君     関  芳弘君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     亀岡 偉民君

  関  芳弘君     西本 勝子君

  盛山 正仁君     土井 真樹君

  若宮 健嗣君     小野 次郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     飯島 夕雁君

  土井 真樹君     谷垣 禎一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人に係る改革を推進するための文部科学省関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第一八号)

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

岩屋委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官西村泰彦君、文部科学省大臣官房長森口泰孝君、大臣官房文教施設企画部長布村幸彦君、生涯学習政策局長清水潔君、初等中等教育局長金森越哉君、高等教育局長徳永保君、高等教育局私学部長河村潤子君、科学技術・学術政策局長泉紳一郎君、研究振興局長磯田文雄君、スポーツ・青少年局長山中伸一君、国際統括官木曽功君、文化庁次長高塩至君、厚生労働省大臣官房審議官中尾昭弘君、医薬食品局長高井康行君及び社会・援護局障害保健福祉部長木倉敬之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岩屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井澤京子君。

井澤委員 おはようございます。自由民主党の井澤京子でございます。

 きょうは大臣所信に対しての質問ということで、やはり朝一番の質問でもございますし、きょうは、明るい話題から夢のあるテーマまで、三十分、限られた時間ですが、御質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まずは、明るい話題、ニュースから始めたいと思います。

 先日、米国アカデミー賞外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎監督の「おくりびと」を、ごらんになった方もいらっしゃるかと思います。私も時間を見つけて見に行ってまいりました。ロケ地の山形県庄内地方の美しい自然を背景に、死という重いテーマを正面から取り上げて、日本人の繊細なもてなしの心、人の死というもの、重いテーマにもかかわらず、そのとうとさ、厳かなものであるということを、何かいやされるような映画であったと感じました。大臣所信の中でも、日本文化の水準の高さを示すもので、誇らしく思うと述べられていらっしゃいます。

 今は景気が悪化して消費が伸びない中で、今回の受賞には幾つもの経済効果があったと聞いております。

 まず、受賞直後の二月二十三日の東京株式市場では、「おくりびと」が受賞したということで、配給元の松竹の映画の株が急騰して、その後も、二月二十八日と三月一日のたった二日間で観客の動員数が三十万人に及ぶ、公開から累計で三百三十四万人もの人が見ているという結果が出ております。また、興行収入が三十五億円以上にもなり、若い方からお年寄りの方までこの映画を見に行って、私も見に行ったときには、その窓口でシニアパスを使っている方が多くいるなというのを感じた次第で、こういう層にも行き渡って、行かない方も今回は行くような消費にもなっているのかなと思っております。

 また、ロケ地でもあります山形県庄内地方では、ロケ地を訪れるツアーも組まれて、観光客も急増しているということでございます。

 そして、私がこの映画を見て何よりも感じたのが、特に、キャリア教育、職業観のエッセンスが凝縮されているのではないかなと感じました。

 先日の読売新聞の教育面にも、ある大学の先生が、投稿で「おくりびと」についてこんなことを書かれていました。この映画は仕事の教科書である。主人公がチェリストになる夢が破れて故郷に帰り、納棺師の仕事と出会い、成長していく姿、わからないまま、仕事の奥深さや死に対してもいろいろとわかっていく、徐々に仕事が好きになっていくというその主人公の気持ちの移り変わりが、美しい映像を通して観客の皆様にも伝わったと思います。こんなせりふがありました。人の幸せというものは、いい仕事とめぐり会うことだということでした。

 また、今まで知られることがなかった、亡くなった人をひつぎにおさめる納棺師という黒子の職業が改めて世界で知られることになったこと。聞きますと、最近では、葬祭関連コースを設置している専門学校への問い合わせが急増さえしているそうです。職業としても注目を集めています。

 そこで、質問させていただきます。

 やはり、国としてキャリア教育、職業教育に率先して取り組む必要があると思います。早目に取り組めば、将来はどんな仕事につきたいという目標も早目にでき、職業意識にも目覚めて、ニート、フリーターの対策になるのではないかと思います。

 そこで、大臣の先日の所信の中にもありました。キャリア教育、職業教育のあり方について取り組んでいかれると述べられていらっしゃいますが、大臣のお考えをお聞かせください。

 そしてもう一つだけ、映画をごらんになっていればその感想なり、もしごらんになっていなければ、一昨日、文化庁長官賞の表彰も行われたようですが、このアカデミー賞外国語映画賞の受賞についての御感想をお聞かせください。

塩谷国務大臣 おはようございます。よろしくお願いします。

 大変明るい話題から始めていただいて、本当にありがたく思います。私も、大臣に就任してから、昨年はノーベル賞受賞者が四人も、今回はアカデミー賞受賞作品が二つという、最近暗いニュースが多い中で私も大変運がいいなという気持ちでいっぱいでございまして、こういったすばらしい賞を一つのきっかけとして、いろいろまた文部科学行政に反映をしてまいりたいと思っているところでございます。

 まず、あの「おくりびと」につきましては、私は残念ながら見ていなかったんです。早速実は、DVDがおととい届いたので、時間がなくてちらっと最初だけ見て、それだけでも、非常に何かすばらしいという感じを受けました。もちろん、最初のところが非常にエッセンスが詰まっているということで。

 いずれにしましても、大変テーマ自体ユニークな設定であることも含めて、日本の文化を紹介したということ、それから、死に直面する厳粛な場でさまざまな人間模様が描かれたということ、非常に興味深い作品だと思っております。きょうもかばんの中にDVDを入れておりますので、時間があったら見たいと思っております。

 やはり、こういったすばらしい評価をいただいたということは、我が国の文化芸術に大変弾みがつくと思いますし、今お話にありましたように、いろいろな波及効果があって経済的にも大変プラスになりますし、やはり文化あるいは芸術ということも、どちらかというと今まで我が国は余り重要視してこなかったわけでございますが、私どもの国には大変すばらしい伝統あるいは文化芸術がありますので、これから、そういった点をしっかり見直しながら、我々、文化芸術立国を目指してまた努力をしていかなきゃならぬと思っております。

 それにしましても、この映画をごらんになって、委員の、一番大事な点は職業教育といった点も大変すばらしい指摘だと思っておりまして、私は、今回、教育基本法が改正されて、そして学習指導要領も改訂されて新しい日本の教育が始まる段階において、生きる基本ということを改めてしっかりと強調して教育に浸透をさせていきたいと思っている中で、四つ生きる基本というのがあって、道徳、それから基礎学力、さらには体力、そして職業観、勤労観というもの、これは、生きていく上でいかに働くことが大事だということをやはり我々は教育の中で学ぶ必要があるということで、基本ということに位置づけております。

 そういった点から、最近はニートとかフリーターとか、残念ながらそういう感覚を持ち合わせない若者が多くなってきたということ、それから、今、社会が多様化、高度化されている中で、やはりキャリア教育、職業教育がより一層大事な時代になってきておりますので、教育の中でのその位置づけをどうするかということが大分いろいろな方面から指摘があって、昨年末には、中央教育審議会にキャリア教育、職業教育のあり方について諮問をしたところでございまして、現在、この熱心な審議をしていただいておりまして、特に、特別部会という形で総会直属の部会を設けて審議をしていただいておりますので、今改めて作業部会もスタートするという段階でございますので、今後、しっかり審議をしていただいて、できるだけ早いうちに一つの結論を出してもらいたいと考えております。

井澤委員 ありがとうございます。ぜひ早く見ていただきたいと思っています。

 次に入らせていただきます。

 次は、ことしの一月の終わりに、私の地元の宇治の方に新聞がありまして、奨学金貸与額が過去最高額の一千二百二十六万円で、その利用件数が三十六件となり、最近の過去十年間で一番になるというようなニュースがありました。宇治市の予算も、年度途中に急遽追加をして補正予算を組み対応せざるを得ないという状況で、比較的保護者負担の多い私立大学の在学者が多いようで、返済期間も従来より長期化傾向にあるという衝撃的な記事でした。

 大学以外に高校にも目を向けますと、二月に入り、リストラで親の収入がゼロになり、学費を生活費に回さざるを得ない。この不況からの影響が授業料の滞納にも影響を及ぼしているようでございます。私立高校の生徒は、昨年十二月末時点で二万四千五百人にも上ると、滞納している生徒数が先日公表をされました。通常、滞納者というのは年度末になると減るというのが今までの大体の傾向だったようですが、滞納者は従来よりふえ、七千八百二十七人で、三倍以上にふえているそうです。

 この結果を受けて文部科学省も、かなりふえているという印象で深刻に受けとめている、授業料の減免制度もあるので活用してほしいというコメントを出されていらっしゃいます。経済や雇用の深刻な悪化が、子供たちの修学や進路の保障、公教育環境、また、貧困と教育格差の拡大というものが子供の教育を直撃しているようでございます。

 それにつきましても、ちょうど三月といえば卒業、また四月には進級や入学式の時期もあり、夢を膨らませている子供たちが進学ができないのではないか、修学援助の申し込みがふえるとも予想をされております。私のもとには、毎年、私学助成に関して私学の保護者の方々からいろいろと御要望を伺う中、やはり国庫補助や地方交付税の公的援助を充実させなければ、今の経済状況から見ても、より一層保護者の授業料負担が重くなるという声を聞いております。

 今お話しした件につきまして、昨年秋からの不況の影響で滞納者がどれぐらいふえて、経済的理由で高校を中退した生徒はどれぐらいいるのか、そして、授業料の減免制度の利用者数と、国や各都道府県による授業料減免の補助事業に対してどのような措置があるのか、具体的にお聞かせください。

河村政府参考人 それではまず、私立高校の授業料の滞納状況についてお答え申し上げます。

 先日、日本私立中学高等学校連合会が調査を行いまして、その結果を取りまとめました。その調査では、平成二十年十二月末の時点で滞納者数が二万四千四百九十人、全生徒数に占める割合は二・七%ということでございます。昨年度末である二十年三月末の時点では滞納者数が七千八百二十七人、全生徒数に占める割合が〇・九%です。これは、調査時点が年末、年度末というふうに異なりますので、単純な比較はできないかもしれません。また、年度末に向けて変動があり得るというふうには考えますものの、滞納者数は大きくふえているということでございます。

 この調査では、滞納の理由は実は聞いておりませんでしたが、連合会によりますと、授業料の延納や奨学金の相談というものが前年度より増加している学校が多いということですので、ふえている滞納者の多くの方々は経済的理由によるものと考えております。

金森政府参考人 経済的理由によって私立高校を中途退学した者の数でございますけれども、私どもが毎年度実施しております児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査によりますと、平成十九年度、私立高校を経済的理由によって中途退学した者の数は千二百八十七人でございまして、私立高校の中途退学者に占める割合は五・八%となっているところでございます。

河村政府参考人 これらの状況を受けましての施策でございますけれども、現在、すべての都道府県において、経済的理由により修学困難な私立高校生の授業料減免措置に対する補助を行いますとともに、奨学金事業を実施しております。

 文部科学省としては、都道府県による授業料減免補助の対象となった私立の高校生の数を把握しておりまして、その数は、昨年度、平成十九年度でおよそ十七万一千人、全生徒数の一五・五%でございます。

 都道府県による授業料減免補助については、文部科学省が私学助成の一環といたしましてその一部を補助いたしますとともに、平成二十年度、今年度の第二次補正予算に計上されました地域活性化・生活対策臨時交付金を財源として一部の県では活用されるというふうに承知をいたしております。

 さらに、来年度の予算案でございますけれども、先ほど申し上げました国庫補助の予算額を増額いたしますとともに、都道府県の授業料減免補助に関しては、新たな地方交付税措置が盛り込まれております。

 また、奨学金事業の方でございますけれども、日本学生支援機構が実施してきました高校奨学金事業が、平成十七年度の入学者から今順次都道府県に移管されてきております。従来から各都道府県で実施している事業ともあわせまして、全都道府県で奨学金事業を実施している状況です。

 この都道府県への学生支援機構からの移管に当たりましては、それぞれの都道府県が高校奨学金事業を円滑に実施できるように、奨学金の原資として総額二千億円を、一定期間にわたってでございますが、交付することとしております。

 文部科学省といたしましては、これらの奨学金や授業料減免の支援策について、困っている生徒さんや保護者に周知するようにということで、各都道府県に対し、昨年十二月、さらにことしの二月に通知をいたしました。

 文部科学省としましては、こうした取り組みを通じまして、今後とも、学ぶ意欲のある子供たちが経済的理由によって修学を断念することがないように応援してまいりたいと存じます。

井澤委員 今お話がありましたように、実態数をしっかりと把握されて、子供たちが不安がないように修学できるように支援をしていただきたいと思います。

 次に入ります。携帯電話の利用についてでございます。

 この問題につきましては、私も実は青少年の問題に関する特別委員会に所属をしておりまして、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案が昨年の六月に成立いたしました。その後、携帯電話の事業会社や民間の第三者機関を設けて、有害情報を遮断する携帯のフィルタリング機能の義務化に向けた取り組みが今も進められています。

 文部科学省では、先日初めて、小中高生の携帯電話に関する実態調査の結果を発表されました。それは、小学校では二五%が、中学生では四六%が、高校生の約九割が携帯電話を持っており、中学二年生の約二割が一日五十通以上のメールの送受信を行い、百通以上やりとりする小学生さえもいるそうです。食事中はもちろんのこと、入浴中も授業中でさえも携帯を手放せない子供の携帯依存症が今進んでいるということが浮き彫りになりました。

 子供をめぐる携帯電話の問題は、いじめや犯罪との関連で語られることが多くあると思います。先日、大臣の所信でも、携帯電話は子供たちに与える影響が大きく、子供たちをネット上のいじめや有害情報による犯罪から守っていかなければならない。そのためには、学校における情報モラル教育や家庭における取り組み、小中学校における携帯電話の持ち込みを原則禁止すべきであると方針を打ち出されました。この件に関しましては、きょう御一緒していただいております萩生田大臣政務官がずっと取り組んでいらっしゃいます。

 今お話ししましたように、今後どのような取り組みでまたいかれていくのか、この問題を早期に未然に防いで解決していくにはどうしたらいいか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

萩生田大臣政務官 先生御指摘のとおり、携帯電話にかかわる子供たちの生活環境の問題は、非常に大きな問題だというふうに認識をしております。

 ネット上のいじめですとか、また、犯罪に巻き込まれる深刻な事態も起こっておりますので、携帯電話につきましては、家庭と学校そして地域が連携をした取り組みが重要であり、文部科学省としましては、学校における情報モラル指導モデルカリキュラムや教員向けのガイドブックの作成、配付等、情報モラル教育の推進を進めるとともに、保護者と子供向けの啓発リーフレットや、先生にもお渡ししましたけれども、DVDを作成しまして、教育委員会やPTA団体等を通じて配付、取り組みをしているところでございます。

 また、今は御質問にもありましたように、一月三十日付で原則小中学校では持ち込みを禁止にしたところでございまして、さらに、先生にも御努力いただいた法律がいよいよ四月から施行されます。青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律が施行されるとともに、このフィルタリングの普及促進にも取り組みをしてまいりたいというふうに思っております。

 文科省としましては、引き続き、学校、家庭、地域に加えて、お話がありましたように、携帯電話を取り巻くキャリアメーカー等にもやはり企業モラルを発揮していただかなくてはいけないと思っておりまして、実は先月、公立学校の合格発表の校門の外で大手キャリアメーカーが高校生向けのこういうパンフレットを配っていらっしゃった。合格発表というのは、合格した人もいれば合格できなかった人もいるわけですから、そういうところの外でおめでとうございますという営業活動が果たして企業モラルとしてどうなのかということを、昨日、文科省に経営者を呼びまして厳重に注意をしたところでございます。

 こういった企業の協力も求めながら、関係省庁とも連携を図り、青少年の携帯電話をめぐる問題に一層の取り組みをしてまいりたい、こう考えております。

井澤委員 この問題は、引き続き国としても、子供たちの実態、子供たちの方がはるかに携帯についてはよく知っています。実態を常に把握しながら、それに対応できるように、柔軟に国の方でもいろいろと施策など考えていっていただきたいと思います。

 では、もう時間が限られております。地元京都にまつわる話題について二つお伺いいたします。

 まずは日本漢字能力検定協会についてです。この問題につきましては、皆様方も新聞等で把握をしていらっしゃると思います。公益法人でありながら、巨額な利益を上げ、本来認められない検定事業などで過去五年間に何と約二十億円の利益を得ていたことが問題になっております。漢字検定の受検者は、当初は十二万人だったところ、この検定ブームに乗り、二〇〇七年度には二十倍以上、二百七十万人に増大をしております。そして二〇〇九年度は、この漢字検定の取得を評価基準にしている大学や短大が全国四百九十もある。そして、皆さん御存じかと思いますが、一年の世相を漢字であらわす「今年の漢字」というのがあります。昨年は「変」という字で、清水寺で森貫主が必ずその一文字を書かれる。これの主催も日本漢字検定でございます。

 このような形で、公益法人がいろいろとまたあってはならないような事業を行っていたということが今明るみになっております。

 そこで質問に入らせていただきます。

 公益法人の指導監督基準では、公益事業で必要額以上の利益を生じないとするとされておりますが、政府参考人、この漢字検定ができた一九九二年から今回の問題発覚までに至り、なぜこのように放置をされたのか。そして、先日の立入検査でどのような実態が把握されたのか。お答えいただくとともに、大臣の方に、この問題について今後どう取り組まれるかお答えをいただきたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 なぜ公益法人であるあの漢字検定協会が多額の利益を生じてきたのかという問題と、それから、それについての指導、その他の漢字検定をめぐる問題についての事実と指導というお尋ねでございました。

 この多額の利益の問題については、漢字能力検定協会自体は平成四年度には設立されたものでございまして、当初は、スタート十二万人、赤字というふうなあれでスタートし、志願者数が百万人を超えるというのが九年度で、このときは一億八千万円の利益を生じ、十三年度には四億九千万と利益が急激に増加してきたということがある。十三年度の決算の結果を踏まえて十五年度に私ども実地検査を行い、公益事業を適正なものとするよう指導を行い、それ以降も、十六年、十七年、十九年度に、その状況が改善されないということで、その都度、検定料の引き下げについて指導してきたという経緯がございます。

 この間、法人においては、十八年度における公益事業の拡大、あるいは十九年度に受検料引き下げということを行ってきたわけで、一定の改善は見られたものの、結果としてなお多額の利益が生じる、十九年度六億六千万というふうな実態になっているということでございます。

 したがいまして、この問題については、一つは、指導監督に対する一定の法人側による対応措置がとられていたということもあり、私どもとして法人の自主的な改善努力に期待していたという面、そして、受検者数はこれでピークで、あとはと言いつつも、そういう意味で計画を立てつつ、結果としてはさらに増ということで、要は、具体的十分な指導、チェックというのがなされていなかったということでございますので、不十分な指導監督であったということでございます。

 事実関係の問題、そのほかに、例えば法人の取引等々がございますけれども、それにつきましてもきちんと指導していきたいというふうに思っております。

塩谷国務大臣 今回の漢検の問題については、公益法人としてのあり方が問われる事態となったことは大変遺憾に思っているところでございます。

 今、政府参考人から答弁ありましたように、指導も継続してしてきたわけですが、残念ながら十分ではなかった。ある点で私どもの指導監督がまずかったことも認識しているところでございます。

 そういう中で、先月、調査をし、また、それに基づいて三月九日に先方に指導監督通知、改善に向けて指示をしたわけでございます。この内容につきましては、今回の法人担当者に対して、理事長の責任の所在、まずはこの点、それから理事会、評議員会の構成の見直し、法人の管理運営、チェック体制の抜本的な改善を図るように指導したところでございます。

 この法人の対応結果に伴って、十分な改善がなされているかどうかを厳格に見定めた上で厳格な指導監督を行うこととして、万一、また十分な改善がなされない場合には改善命令を発出し、それでも改善が見られない場合には、解散命令を発出することも視野に入れて指導監督に努めてまいりたいと思っております。

井澤委員 済みません、ありがとうございました。

 最後に、どうしても夢のある話を一問だけ簡単にさせていただきたいと思います。

 お手元にもう既に資料を配らせていただいております。先日も大臣の所信の中で、宇宙、昨日も若田光一さんのスペースシャトルが延期になりましたけれども、もう一つ、科学の分野で夢のある世界、iPS細胞についてでございます。

 このiPS細胞、多く文部科学省の方からも支援をいただいておりますが、実は、このペーパーを後でお読みいただきたいんですが、山中教授御本人から国に対しての強い要望がございました。今後、運営をしていくには、国からの支援のほかに、人件費や光熱費なども含めた運営費が必要になるということでございます。今後、このiPS分野について、世界に向けて日本が研究をしていくにはどのような支援がまたさらに運営費も含めて必要なのか。最後、一言御答弁いただきたいと思います。

岩屋委員長 塩谷大臣、時間が来ておりますので、簡潔に願います。

塩谷国務大臣 このiPSの山中教授の研究に対して私どもも最大限の支援をしてまいりたいと思っているところでございますが、平成二十年度の一次補正予算についても、研究を加速するための十五億円の措置をしました。二十一年度についても、再生医療の実現化に向けて、病気の原因に向けた研究の支援、研究機関における知財管理・活用体制強化に向けた措置として、全体で約四十五億円を計上しているところであります。

 この山中教授の文書の中で、特に今お話しあった人件費、運営経費をしっかりとまた私どもの方として最大限支援していくつもりでございます。アメリカ等のES細胞に対する解禁の問題もあったり、いろいろと、今後国際社会の中で競争にたえ得る、また勝ち抜いていくような支援をしてまいりたいと思います。

井澤委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

岩屋委員長 次に、阿部俊子君。

阿部(俊)委員 おはようございます。自由民主党の阿部俊子でございます。

 本日はこのような貴重なお時間をいただきまして、まずこのことに感謝を申し上げまして、文部科学行政の基本的なところで三十分間質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、学校の耐震化計画についてお伺いいたします。

 先日、大臣の所信表明の中でも、子供たちの安全、安心な教育環境のいわゆる整備の必要性について御意見がございました。子供たちの安全、安心、学校は子供たちの日中の生活の場であるだけでなく、地域にあっては災害時の避難場所でもございまして、学校の安全を守ることは地域を守ることにもつながるわけであります。

 そうした中で、昨年五月の中国四川省の大地震の中では多くの小中学校が倒壊いたしまして、子供たちが生き埋めとなり犠牲となったわけでございますが、その翌月、我が国で発生いたしました岩手・宮城内陸地震におきましても、二百を超える学校に被害が出たところでございます。

 こうした事態を目の当たりにするにつけ、学校の耐震化は緊急かつ切実な問題となっていますが、こういう状況の中、二〇〇八年度補正予算、これにおきまして、大地震で倒壊する危険性の高い全国の公立小中学校約一万棟の耐震化の費用として一千百三十九億円が盛り込まれ、全国の市町村に耐震化計画を積極的に前倒しして実施するよう、昨年十月に大臣からも要請が行われたところでございます。

 また、今回の大臣の所信表明におきましても、学校の耐震化対策といたしまして、平成二十三年度までの耐震化を目指すなど、学校の耐震化の加速に取り組むという力強いお言葉をいただいたわけでございます。

 一方で、平成二十年六月の公立学校施設の耐震改修状況調査の結果について見てみますと、耐震化率は小中学校で六二・三%、平成十九年四月一日時点と比較いたしますと三・七%の伸びが見られたところであります。

 また、耐震診断の実施率も全国平均九三・八%となっていますが、これは平成十九年四月一日時点の八九・四から着実に上昇はしていますが、まだ一部で完了していないところでございます。

 私の地元岡山県でも、小中学校の耐震診断の実施率は九八・二%と全国平均を上回っているところでありますが、ところが、改修の実施につきましては、全国平均を下回りまして五〇%以下である。全国的に、進んでいる県とおくれている県の格差が拡大しているところでもあります。

 全国の小中高等学校での耐震改修の現状及び今後の具体的な計画の実現に向けて、政府としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、学校の施設は、子供たちが一日の大半を過ごす教育活動の場でございますし、また、非常災害時には住民の方々の応急避難場所として役割を果たすことから、その安全性の確保は極めて重要なことと思っております。

 先生お触れいただきましたけれども、昨年六月の地震防災対策特別措置法の改正によりまして、地震による倒壊の危険性の高い公立小中学校施設の地震補強事業につきまして、国庫補助率の引き上げとともに、地方財政措置の拡充が行われたところでございます。

 その上で、平成二十年度第一次補正予算、第二次補正予算、そして現在御審議いただいております二十一年度予算案につきまして、耐震化の必要な額として合わせて二千八百億円という、当初予算の倍以上の規模の関係予算を積算、計上させていただいているところでございます。

 また、昨年十月には、Is値〇・三未満の施設につきまして、二十年度から二十四年度までの五年間で耐震化するという政府方針を一年前倒しし二十三年度までの完了を目指すということを、塩谷大臣名で全国の市町村にお願いをしたところでございます。

 文部科学省といたしましては、公立学校施設の耐震化を早期に図れるよう、今後とも引き続き、予算の確保と地方公共団体の支援にしっかりと努めてまいりたいと考えております。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 各都道府県の財政がとても厳しい状況にありまして、裏負担がなかなか厳しい状況でありますが、しかしながら、子供たちや学校の安全を先送りすることがあってはならない。この情報開示、しっかりと透明性を持ってやっていき、確実に二十三年までに行っていただきたいと思いますし、予算措置を含めて耐震化支援の加速、ぜひともお願いしたいところであります。

 次に、障害児教育についてお伺いをいたします。

 大臣の所信表明の中で、教育の機会を確保するため、発達障害を含めて障害のある子供たちに対する支援を進めるということが述べられました。二〇〇六年六月に学校教育法の一部が改正されまして、二〇〇七年四月から特別支援教育が開始されたところであります。これまで、障害を持つ子供の教育は、盲、聾、養護学校の特殊学校、あるいは小学校に設置された特殊学級で教育が行われてきましたが、特殊学級に入学することではないけれども、普通学級では不適応を起こすLD、学習障害や、ADHD、注意欠陥多動性障害、高機能自閉症などの問題を抱える子供の存在が顕在化してまいりました。

 文部科学省が二〇〇二年に実施した調査におきましても、普通学級において特別な支援を必要とする児童生徒数は約六・三%いると言われているところであります。発達障害は病気であることが周りの方々になかなか理解してもらえず、これまで余りに支援の対象から取り残されておりましたので、これらの子供たちを含め、従来の特殊教育に限定せず、特別支援教育といたしまして総合的な支援体制を整えることになったことは私は高く評価しておりますが、まだ開始されたばかりの制度でございまして、特別支援教育の充実は今後の課題であると思いますが、まず、現時点において全国での実施状況についてお聞かせいただければと思います。

金森政府参考人 御指摘ございましたように、学校教育法の改正によりまして、小中学校等におきましても、発達障害を含む障害のある児童生徒等に対して適切な教育を行うことが規定されたことにより、校内委員会の設置など、学校における特別支援教育の体制整備が重要となってございます。

 文部科学省が実施をいたしました平成十九年度特別支援教育体制整備状況調査によりますと、校内委員会や個別の指導計画、個別の教育支援計画などのすべての項目で公立の幼、小、中、高等学校とも平成十八年度の実績を上回っておりまして、全体として体制整備が進んでいるものと考えております。

 ただ、学校種別ごとに見ますと、小中学校では学校の基礎的な体制がほぼ整備がされておりますが、個別の教育支援計画の策定などの実施率の向上など、個別のニーズに応じた支援の充実が課題となっております。また、幼稚園、高等学校につきましては、校内委員会の設置など、学校の体制整備が課題となっているところでございます。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 地元で発達障害の子供を抱えるお母様方とお話をさせていただきますとよく御意見をお聞きするのが、中学校の義務教育を終えた後、どういう進路を選択するかということであります。中学卒業後の進路の一つに高等学校がありますが、高等学校につきまして小中学校と比較いたしますと、全体として特別支援教育の体制整備がおくれている傾向がございます。特に、入学前の段階から進学を選択できるための入試の体制整備にかかわる配慮が不足しているところであります。

 例えば、学習障害、LDの一つであるディスレクシア、いわゆる識字障害に関しましては、認識能力が低いことから文字を読んでも意味が理解できない病気ですけれども、いわゆる学習障害、LDの中で、ある特定の能力だけが低いことから、全般的な能力の低下は見られません。そのために、ディスレクシアの子供は、ペーパーテストはできないけれども、知的能力や一般的な学習能力には問題がありません。問題用紙の代読や口頭試験を行うことで、よい成績をとることができます。

 米国では、識字障害の中でも医学教育を受けている、また、有名な俳優がこの識字障害があって、テープレコーダーを使った形でせりふを全部暗記しているということも言われているところでございますが、このような学習障害児童の高校受験に対して、代読、代筆、時間の延長の配慮を行うことで、多くの障害児が普通高校の進学の機会を得ることができます。

 この点につきまして、現在の対応状況と政府としてのお考えをお聞かせください。

金森政府参考人 文部科学省におきましては、高等学校の入学試験などにおきまして、LD、学習障害を含め障害のある生徒に対して必要な配慮を行うよう、各都道府県教育委員会等に通知をしているところでございます。

 具体的にどのような配慮が高等学校の入学試験で行われているかにつきましては、昨年五月、都道府県教育委員会で把握している範囲での調査を行いましたところ、高等学校によりましては、LD、学習障害の生徒に対し、試験時間の延長や問題用紙の拡大、問題文の読み上げなどの配慮を行った例があるとの報告を受けているところでございます。

 文部科学省といたしましては、今年度の高等学校の入学試験における状況をよりきめ細かく把握いたしました上で、各都道府県の取り組みを促進するという観点から取り組んでまいりたいと存じます。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 進学後の支援とあわせて、進学前の支援体制の整備の充実をぜひともよろしくお願いいたします。

 次に、障害を持つ児童への支援に関連して、障害者自立支援法についてお伺いいたしたいと思います。

 今回、その障害者自立支援法の改正案が検討されているところでありますが、二〇〇六年に施行されました自立支援法は、法のいわゆる施行後、多くの問題点が指摘され、政府・与党を中心にさまざまな緊急対策が行われてまいりましたが、今回は、二月十二日の与党障害者自立支援法に関するプロジェクトチームの取りまとめを受けまして、三年後、初めて抜本的な見直しが行われることになるわけであります。

 特に、当事者から批判の強かった利用料に基づく応益負担が、すべての障害福祉サービスにおいて所得に応じた応能負担とされる予定のほか、対象者の範囲として、先ほど質問させていただきました発達障害、高次脳機能障害が対象として明記をされることになった。

 これは本当に障害者の方々にとっては福音であるわけでありますが、障害者自立支援法につきまして早期の抜本的な見直しを望む声が高く、本改正案の早期成立に向けて、政府としての意気込みを聞かせてください。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、障害者自立支援法につきましては、法の附則で施行後三年を目途とする見直しということが規定をされております。

 これを踏まえまして、昨年は、社会保障審議会の障害者部会で、当事者の方々、あるいは、それを支援する団体の方々、地方自治体の方々もお入りいただきまして大変精力的な御審議をいただきまして、今御指摘のように、障害児の支援をどのように充実させていくのか、あるいは、発達障害というものが法の対象になっていることをもっと明確にすべきこと、あるいは利用者負担の規定のあり方についての議論、あるいは相談支援体制を充実することの議論等々、制度全般にわたりまして見直しの指摘を受けたところでございます。

 また、これを踏まえまして、与党におかれましても、障害者自立支援法のプロジェクトチーム、今御指摘のような基本方針をお出しをいただきまして、これに沿いまして整備を進めるようにという御指示も受けておるところでございます。

 これを踏まえまして、現在、法文化の作業、最終段階にありますが、そういう調整を急ぎまして、早期に御審議をいただき、より障害児、障害者の方々の支援策を充実してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 昨年、障害者の就労施設に国からの受注の機会を確保する、国による障害者就労施設からの物品調達推進に関する法案、いわゆるハート購入法というのが与党の議員立法で出されました。障害者は、普通のところに就職ができないときには作業所に行くわけでございますが、中学校が終わった後、高校が終わった後に作業所で賃金が倍増しない。これはやはり官公庁が責任を持って仕事を出すという法案でございますが、この審議が今国会で行われていません。障害者の方々のことを考えれば、必要な政策は党派を超えて速やかに出していくことが私は国会議員の倫理観として必要なことであると思いますので、ぜひとも、引き続き政府としてもお力添えをいただきたいと思うところであります。

 次に、看護教育制度の充実に関してお伺いいたします。

 現在、少子高齢化の流れを受けまして、高等学校卒業後の進路選択時に大学進学を希望する高校生は増加し、大学進学率は五割に届こうとしています。特に女子におきましては、高校卒業後の進学状況といたしまして、昭和三十年代には大学進学者数は約二万人でございましたが、平成十九年には十倍の二十二万人が大学へ進学するという時代になりました。今後この傾向は一層強まることが考えられ、大学全入時代も視野に入れながら、高等学校卒業後の進路のあり方について早急に考えていく時期になったというふうに思います。

 この傾向は看護学校、看護大学においてもございまして、看護大学系の設置が急速に進みまして大学進学者がふえる一方で、旧来の看護学校、看護専門学校におきましては、多くの学生がいわゆる大学の滑りどめとして専門学校を受験する例が増加しているところであります。そのために専門学校は、一定の入学倍率は維持されているものの、優秀な学生が大学に流れ、定員割れを起こす学校も出ていると聞いています。

 こういう背景から、今後十年、二十年後といった将来の展望を考えたときに、看護職の質、量の確保の観点から、現在の専門学校を中心とした教育ではなく、大学教育という流れに進んでいくように思いますが、その動向及び現状認識についてお聞かせいただきたいと思います。

徳永政府参考人 看護系の大学といったことにつきましては、御指摘のように、平成三年に、各地域の看護師需要にこたえまして公立の看護系大学、学部を整備する、そういう仕組みが整った。あるいはまた、平成十五年以前の収容定員の増員を抑制するという方針のもとでも看護師につきましては例外とされたということもございまして、大学も急激に増加しております。

 入学者数につきましても、平成十二年には六千二百九十七名であったものが二十年には一万三千九百八十三名と、倍増しているわけでございます。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 一方で、専門学校を中心としました看護職の養成の大半を担っている厚生労働省におきましても、昨年末、舛添厚生労働大臣のもとに看護の質の向上と確保に関する検討会が立ち上げられ、看護基礎教育のあり方について本格的な議論が開始されたと聞いているところでありますが、現在の議論の状況についてお聞かせいただけたらと思います。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 看護職員の質の向上と量の確保の観点から、総合的な検討を行うために、厚生労働大臣主宰の看護の質の向上と確保に関する検討会を昨年十一月より開催し、今月六日には、中間取りまとめ案について御議論をいただいたところでございます。

 その中で、看護教育のあり方につきましては、国民が良質な医療を受けられるよう看護基礎教育について充実を図る必要があることから、現在の教育年限を必ずしも前提とせずに、教育内容と方法の検討に早急に着手し、さらなる充実を図るべき、また、保健師、助産師教育につきまして、今後より高い専門性が求められることから、その教育内容の充実が必要であり、文部科学省と厚生労働省は協力してそのあり方について結論を出すべきであるというふうに示されております。

 今後は、文部科学省と連携して、こうした課題について具体的な検討の場を設け、議論を進めてまいりたいと考えております。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 高齢化社会を迎え、看護職員の質と量の確保は、医師やほかの医療従事者と同様に非常に重要な問題でございますので、看護の質の確保と向上に向けまして、ぜひ、文部科学省と厚生労働省の連携をとっていただきながら取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に、高専の今後のあり方についてお伺いをしたいと思います。

 今回の大臣の所信表明で、「高等教育改革の推進」としまして、高等専門学校教育、いわゆる高専の「一層の推進を図ります。」とお言葉がございました。これまで大学などでくくられたところを文言を一つ大臣がしっかりと出してくだすったことは、高専の方々にとっても大きな励ましであると思います。この振興につきまして昨年の文部科学委員会でも質問させていただいたところでございますが、私の地元の岡山県津山にも津山高専という学校がございます。かねてより、この高専を何とか充実させたい。過疎が進む中でこの高専が非常に重要な役割がある中でございましたが、本当に今回の大臣の所信表明、大変心強いものでございました。

 このような中で非常にうれしいお話が今回ございました。高専のいわゆる振興策とあわせて、御紹介と一点質問をさせていただきたいと思います。

 私の地元の津山市の端の方の旧阿波村というところに、進行性筋ジストロフィー、進行性の難病の中学生がいます。彼は現在車いすで、自力で体を支えることも困難で、通学や日常生活はもちろん、手の上げおろしも介助を必要とする状態であります。しかしながら、知的障害は全くございませんでして、手に職をつけたい、勉強したいという強い意欲のもと、高専を受験することを決めました。

 津山高専では、彼のようないわゆる非常な学生を受け入れることは初めてのことでございまして、全国で五十五校ある高専の中でも、介助者の必要な状態で通学している例はほとんどないと聞いています。小学校、中学校ではスクールヘルパーが利用できたこと、学校内もある程度バリアフリーの整った状況にあり、介助を受けながら通学ができていました。しかしながら、津山高専にはそのようなサービスが整っていません。全国でも、小中学校と比較して高等学校の支援員は非常に少なく、国公立など、わずかに支援員が配置されているところはございますが、多くは自治体の持ち出しとなっているところであります。

 現在、どのようにして彼の学生生活をサポートしていくか、これが大きな課題となって、私も大変心配し、今後を見守っていきたいと思っているところでありますが、しかしながら、重要なのは、人的体制の整備でございます。障害を持つ子供たちの支援員に関しましては、総務省の地方財政措置におきましても、平成二十一年には幼稚園に対して一部認められましたが、高等学校は、ニーズが少ないということで要求が認められなかったと伺っています。

 すなわち、そのような介護員が必要な場合、高校においては予算措置がないということでもございまして、現在、進行性筋ジストロフィーのような難病を抱えながら、しかしながら知的障害が全くない、その能力のある子供たちが高等学校で受け入れられている、一般の高等学校にそのような筋ジスのような子たちが進学したケースがどのぐらいあるのか。現在の対応状況についてお伺いしたいというふうに思います。

金森政府参考人 大変恐縮でございますが、今、進学の状況につきましてデータを持ち合わせてございませんので、後刻御報告を申し上げたいと存じます。

阿部(俊)委員 彼の今の存在は、難病や高い障害で高校の進学をあきらめざるを得ない障害を持つ子供たちにとって希望の光であると私は思っています。障害があっても勉強ができる、高校まで進学できる環境をつくっていくことは文部科学行政のいわゆる責務であると思いますし、ぜひともその支援の充実にお力添えをよろしくお願いしたいというふうに思います。

塩谷国務大臣 高専につきましては、技術者養成等の機関としても、また、日本の産業の発展に対して大変御貢献をいただいておりまして、これからもしっかりと高専に期待をして支援をしてまいりたいと思っておりますし、今お話しの障害者に対しては高校に対しての予算措置ができなかったという点、私もちょっとしっかり調べて、もう一度、そういった障害を持った人も勉学に励んでいただくよう努力をしてまいりたいと思います。

阿部(俊)委員 ありがとうございます。

 戦後の中堅技術者の養成を目的としてつくられたのが高専でございまして、日本の高度経済成長を支えてきた、技術立国としての物づくり日本を本当に支えてきたところでございまして、平成二十年、中教審の方から高等専門学校の充実についての答申が出されたところでありますが、地域のニーズを踏まえた専攻科の整備、充実の必要性、質の高い入学志願者の確保、今後、生き残りをかけて目指すべき方向について提言がなされたことは非常に評価しているところでございますし、また、昨年十二月には、社会人、職業人として自立した人材を育成し、学校から社会、職業への円滑な移行を図るという観点から、キャリア教育、職業訓練のあり方、大臣から中教審の方に諮問がなされまして、今後、議論がもっともっと進められていると聞いておりますので、ぜひとも、これからも政府として中長期的な展望を、もし政府としてありましたら、お聞かせいただけたらというふうに思います。

徳永政府参考人 委員からただいま御指摘ございましたように、昨年から、高等学校、あるいは高等専門学校、あるいは大学を通じましたキャリア教育、そして技術教育のあり方について議論しているところでございます。

 そういったところにつきましては、産業の高度化あるいは新しい科学技術の進展、さらにはまた各地域におけるさまざまな需要、そしてまた生徒、学生等の多様化、こういった問題を踏まえながら、私どもとしてもぜひ積極的に検討していきたいと思っております。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。時間となりましたので、これで終わらせていただきます。

岩屋委員長 次に、福田峰之君。

福田(峰)委員 おはようございます。よろしくお願いします。

 きょうは、私は、特別支援学校について幾つか質問させていただきたいと思います。

 近年、特別支援学校、特別支援学級の在籍者数あるいは通級指導対象者数は、いずれも増加をしています。少子化社会に向かっている一方で障害児がふえているということを、私たちは見過ごしてはいけないと思っています。また、日本国内の障害者の数は欧米諸国に比べて著しく少ないということを考えますと、障害者として把握されていないで、支援を受けられていない人がたくさんいるのではないかということが想像できます。

 こうした中で、教育の分野におきましても、児童生徒等の障害の重複化に対応した適切な教育を行うため、盲、聾、養護学校から、障害者種別を超えた特別支援学校への改革が行われて、種別ごとの教員免許も合わせて特別支援学校の免許となりました。

 こうした中で、平成十九年四月に学校教育法等の一部を改正する法律が施行し、特別支援学校の位置づけが明確になりましたが、まず、この二年間に教育行政の担い手にどんな変化があったのか、教えていただきたいと思います。

金森政府参考人 平成十九年度より施行されました特別支援教育は、障害のある幼児、児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援するという視点に立ち、幼児、児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善または克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うことを目的としてございます。

 制度の改正から約二年が経過いたしまして、小学校や中学校におきましては、校内委員会や特別支援教育コーディネーターなど、学校の基礎的な体制がほぼ整備され、個別の教育支援計画の作成、活用など、個別のニーズに応じた支援の充実に向けた取り組みを推進しているところでございます。また、幼稚園や高等学校につきましては、校内委員会の設置など学校の体制整備とともに、個別の教育支援計画の作成、活用を進めているところでございます。

 さらに、特別支援学校制度につきましても、制度改正を受けて、学校の名称を特別支援学校などに変更し、複数の障害種に対応する学校への転換を図るなどの取り組み、また地域の小中学校等に対するセンター的機能の発揮等の取り組みが進められているところでございます。

 各学校における特別支援教育の推進のため、引き続き施策の充実に努めてまいりたいと考えております。

福田(峰)委員 特別支援学校の理念には、障害のある子供の自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援する視点に立ち、一人一人の教育的ニーズを把握し、適切な指導及び必要な支援を行うということが書かれているんですが、こうした中で、まさしくオリジナルな支援をきめ細かく行っていくということだと思います。

 体制の整備には、今局長の答弁にございましたように、コーディネーターの充実や、巡回相談、専門家チームの養成、あるいは研修の充実といろいろなものがあると思うんですけれども、やはり私は、こうした中で、個別指導計画あるいは個別の教育支援計画が極めて重要ではないかなと思っています。

 この中で、個別の指導計画、個別の教育支援計画の作成の取り組みはどうなっているのか、教えていただきたいと思います。

金森政府参考人 御指摘ございましたように、特別支援教育の推進に当たりましては、一人一人の教育的ニーズに対応して、指導目標や指導内容、方法等を盛り込んだ個別の指導計画、また、福祉、医療、労働等の関係機関との連携を図りつつ、乳幼児期から学校卒業後までの一貫して的確な教育的支援を行うための個別の教育支援計画の作成などを進めていくことが重要なことだと考えております。

 文部科学省が実施をいたしました平成十九年度特別支援教育体制整備状況調査の結果によりますと、個別の指導計画の作成率は、幼稚園で二二・一%、小学校で六六・八%、中学校で五二・一%、高等学校で四・二%となっております。また、個別の教育支援計画の作成率は、幼稚園で一六・一%、小学校で三七・〇%、中学校で三〇・四%、高等学校で三・六%となっておりまして、小中学校を中心に取り組みは進みつつありますものの、まだまだ十分とは言えないという状況でございます。

福田(峰)委員 今、十九年度の数値をお示しいただきましたが、例えば障害の種別が同じであったとしても、障害児はそれぞれ特徴を持っていまして、その上できめ細かな支援を行うことによって、将来、社会の中で自立して生活していくことができるのではないかなと思うんですね。残念ながら、今御指摘ありましたように、指導計画であったりとか支援計画、やはり両方ともまだまだ十分な状態とは言えないのではないかなというふうに私も思っています。

 この支援計画は、幼いころから積み上げがまた必要であると私は思うんですが、残念ですけれども、今のお示しをいただいたデータによりますと、幼稚園期の計画というのは小学校や中学校に比べてもやはり数字が低いんですね。こうした中で、個別の教育支援計画は、幼稚園や小学校あるいは中学、高校と、残念だけれども達成率に差が出ていると思うんですね。

 何でこうした差が現況として起こっていると考えられているのか、教えていただきたいと思います。

金森政府参考人 個別の教育支援計画につきまして、小学校、中学校と幼稚園、高等学校の間に取り組みの状況に差が生じているのはなぜかということでございますが、小学校や中学校では従来から、特殊学級、現在は特別支援学級と称しておりますが、特別支援学級や通級による指導など、障害のある児童生徒に対する特別な指導を実施してきましたことから、小学校、中学校と幼稚園、高等学校との間に取り組みの差が生じているものと考えております。

 私どもといたしましては、幼稚園や高等学校も含めまして、新しい学習指導要領などに個別の教育支援計画の作成を規定したところでございます。引き続き、一人一人の教育的ニーズに応じた支援が行われるよう努めてまいりたいと存じます。

福田(峰)委員 個別の教育支援計画は、障害者のライフサイクルを考えますと、やはり各段階で積み上げられて初めて大きな効果をもたらすと思うんですね。ということは、こうした支援計画が、例えば幼稚園から小学校、そして小学校から中学校とスムーズに、こうしたある意味でのデータがつながっていくということが極めて重要ではないかなと思います。そうでないと、各段階でまたゼロから障害のある子供の特性を掌握するというところから始めますと、個別の支援というものを充実させるのに時間ばかりとられてしまうのではないかなというふうに思うんですね。

 こうした中で、この個別の教育支援計画が、幼稚園、小学校、中学校、高等学校と情報が共有化を今現況されているのか、あるいはこれからどういうふうな方向で進んでいくのか伺いたいと思います。

金森政府参考人 個別の教育支援計画につきましては、幼稚園、小学校、中学校、高等学校の間で情報を共有することが大変重要でございます。また、学校間だけではなく、福祉、労働、医療などの関係機関が情報を共有し、乳幼児期から成人期までの一貫した支援を行うことが重要だと考えております。

 このため、私どもでは、平成十九年に、特別支援教育制度施行の際の通知におきまして、障害のある児童生徒等に対し継続的な支援が実施できるよう、入学時や卒業時に学校間で連絡会を持つなど、学校間の連絡の強化を図るよう求めますとともに、各都道府県にグランドモデル地域を設定いたしまして、相談支援ファイルなど保護者を通して学校間、関係機関間で情報を共有化する取り組みを推進しているところでございます。

 今後とも、障害のある子供に対する一貫した支援の充実に向けて、関係者が情報を共有化するための取り組みを進めてまいりたいと存じます。

福田(峰)委員 この障害児の問題は、多分、子供が生まれて障害だと親が認識をしたところから始まると思うんですが、そこから、小学校、中学校、高校と、最終的には必ず社会に出ることになると思うんですね。この社会に出るというところが、出口の部分がはっきりしていないと、私は、この支援計画をずっと積み重ねていく意味というものが薄れてしまうのではないかなというふうに思うんです。

 こうした視点から特別支援学校の高等部の卒業生の進路の状況を見てみるとどうかといいますと、例えば、企業への就職者は、平成元年、卒業生のうちの三五・七%、平成十八年では二三・一%、就職率は下がっています。一方で、社会福祉施設や医療機関への入所者は、元年で一九・五%から平成十八年で五七・八%と増加をしているんですね。

 確かに、例えば重度の障害者がふえてきたり、あるいは重複の障害者の方がふえているということもありますから一概には言えないと思うんですが、それでも就職者の比率が減っているということは事実だと私は思うんですね。この原因は果たして何なんだろうと考えますと、例えば、障害者でありますから個人情報保護を意識し過ぎてしまって、結局、例えば企業サイドに必要な、どういう特性があるかという障害児の情報が伝わっていないから、なかなか就職するサイドも、就職を迎えたいんだけれども一歩前に踏み出せないということも私は現実として起こっているのではないかなと思っているんですね。

 こうした中で、支援学校の高等部卒業で就労を望む障害児の情報を現況ではどのような形で企業に伝えているのか、伺いたいと思います。

金森政府参考人 特別支援学校の高等部におきましては、就職を希望する障害のある生徒の就労を推進いたしますために現場実習に積極的に取り組んでおりまして、個人情報保護に留意しつつ、生徒に関する情報を必要に応じて企業等に提供して、生徒の興味、関心や適性などを踏まえた現場実習に努めているところでございます。

 また、平成十九年度から、厚生労働省と協力して、職業自立を推進するための実践研究事業を実施しておりまして、企業関係者を特別支援学校に派遣し、企業のニーズに応じた職業教育の改善や、特別支援学校とハローワークとが連携した新たな職域の拡大など、学校と労働関係機関や企業等との緊密な連携体制の構築に向けた研究を進めているところでございます。

 今後とも、厚生労働省との連携を密にしながら、障害のある生徒の就労が一層促進されるよう努めてまいりたいと存じます。

福田(峰)委員 私も、この実践研究の事例の資料をいただきまして、いろいろ見させていただきましたし、実際に支援学校の高等部の方からも話も聞かせていただきました。

 ただ、ここで私は、現実問題として、例えば、要は、学校側が伝えるいろいろな情報と企業が必要と考えている情報、やはりこの間に食い違いがあるんじゃないかなというふうに思っています。それで、この食い違いが生じているかどうかということは常に相当意識をしていないと、そこがずれてしまうと、就労に向かってのせっかくの努力がつながっていかないのはやはりもったいないわけですから、私は、まだまだそこの意識のギャップというのが残っているような気がしてなりません。

 確かに、企業というのは社会的な公器でありますから、私は、まずは最低限、法定雇用を守っていくということも含めて社会的な公器としての役回りというものを企業が果たすべきだと思うんですが、一方で、企業は利益を出さないと存続していかないわけですね。ですから、これは障害児あるいは障害児者が個別の企業に対して戦力にならなくてはいけないわけであって、しようがないから雇っているということでは前に進めませんので、ということは、その障害のある子供たちの特性をしっかりと掌握をして、そこから先に進んでいくことが大切だと思うんですね。

 ということは、企業の中の業務システムを見直して、その障害者にある特性に応じたものを、カテゴリーを切ってでも、例えば業務を分けてでもつくっていくという、そうした積極的な姿勢を企業に求めたいと思っているんですが、そのための大前提というのは、やはり情報がしっかりと、必要性のあるものが共有化をできるということが私は大前提だと思っています。

 こうした中で、個別支援計画やあるいは支援の情報を、今おっしゃったように教育や医療、福祉、企業で共有する仕組み、これを、障害児支援情報共有システム構築事業ということで厚生労働省が構築をしようとしているようですが、この仕組みはどんな仕組みなのか、厚労省に伺わせていただきたいと思います。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、障害保健福祉部の方では、この障害児の方々の支援のあり方につきまして、当事者の方々や支援を行っている団体の方々、あるいは文部科学省の方々にも御参加をいただきまして、昨年、その支援のあり方の検討会を行いました。その中で、先生御指摘のように、子供さんのライフステージを通じた一貫した支援ということについての検討が深められまして、その中では幾つかの先進自治体の事例として、障害児につきまして個別の支援計画、支援の情報を、私どもの保健、医療、就労というところと教育というところと、きちんと皆さんが関係機関で共有していって支援を続けていくこと、それを促すことが必要であるという御指摘をいただきました。

 具体的な取り組み事例といたしまして、そういうふうな就労関係を進めていく部局と教育等を含めまして、支援情報をファイル化したものを所有し更新していくような仕組みを取り組んでいらっしゃる自治体、あるいは、会議形態で常に情報交換をされている自治体の取り組み事例も伺ったところでございます。

 これを踏まえまして、先般の補正予算におきまして、障害者自立支援対策臨時特例交付金、これは都道府県に基金を積むものでございますが、六百五十億円の予算をお認めいただきまして、これによりまして障害児を育てる地域の支援体制の整備、この事業の一つといたしまして障害児の皆さんの支援情報を共有していくシステムを構築していくというところを設けたところでございます。

 この障害児の方々の保護者の方々は、その一貫した支援を望んでいらっしゃるので、そのときに、個人情報に配慮しつつでございますけれども、個別の計画、支援情報を共有していく。そういう中では、今申し上げましたような就労関係の方々、企業のニーズも含めて情報をきちんと共有し、一貫した支援に取り組んでいくことを促してまいりたいというふうに思っている次第でございます。

福田(峰)委員 まさしく、新たな取り組みが始まろうとしています。

 個人情報保護は、本来、社会生活を向上させるためにあるものであって、それが障壁をつくるためにあるわけではないんだと思うんですね。また、その情報の取り扱いに対して、例えば保護者の理解が必要だということは、この障害の問題についてはよくわかるんですが、しかし、逆にいうと、それが障壁となってしまって、障害児がきめ細かな支援ができないという話になってしまうと、これまた本末転倒な話になってしまうのではないかなというふうに私は思うんですね。

 この中で、文部科学省が中心に進めますグランドモデル地域における相談支援ファイルの活用は、今厚労省がおっしゃっていました、障害児の支援情報共有システムの構築事業とどういう関係の中での位置づけになるのか、伺いたいと思います。

金森政府参考人 文部科学省で実施しております発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業において指定されたグランドモデル地域におきましては、障害のある幼児、児童生徒の教育や医療、保健、福祉、労働等に関する情報を集約した相談支援ファイル、名称は各地域によって異なることがございますが、相談支援ファイルを作成いたしまして、その活用方法などについて、教育委員会を中心に、関係機関等と検討していただいているところでございます。

 厚生労働省が来年度から実施をされます障害児支援情報共有システム構築事業は、都道府県や市町村の福祉部局を中心に、障害のある子供の支援情報を関係機関で共有するための制度を構築するためにかかる経費を助成する事業だと承っております。

 文部科学省といたしましては、事業の実施に当たって、各地域の実情に応じて、教育委員会と福祉部局とが連携して、柔軟な対応が可能となるよう、引き続き厚生労働省と緊密に連携してまいりたいと考えているところでございます。

福田(峰)委員 年齢期によって、あるいはまた障害の状態によって、例えば、行政的には文部科学省が管轄しますとか、あるいは厚生労働省の管轄ですとか、あるいは強いて言えば、厚生労働省の中でも旧厚生省の管轄です、あるいは旧労働省の管轄ですと、これは、障害者あるいは障害児者がまだまだ分かれて対応されてしまっているのではないかなと私は懸念をしています。

 行政の管轄が違うかどうかというのは、別に障害児の人とか保護者あるいは支援団体にとっては全く関係のない話でありまして、そこで俗に言う縦割り行政がはびこってしまうと、せっかくいいことをやろうと思っても、実は使う側にとっては使い勝手が悪いということになってしまうと、私は、これはせっかく進めようとしていることが意味がなくなってしまうのではないかなというふうに思うんですね。

 そこで、例えば厚生労働省は、子供のライフステージに応じた一貫した支援、文部科学省は、乳幼児期から成人期に至るまでの一貫した支援。両者とも目指す方向は同じでありますし、今の局長の答弁でも、例えば情報の共有をするのも、すなわち学校が中心となってやる、あるいは、厚生労働省は福祉が中心になってやる。別に私にとってはどっちが中心だっていいと思うんですが、そうした形で、両者がばらばらに走ってしまっても、これはせっかくやることがいい方向に向かっていかないんじゃないかと私は思うんですね。

 そこで、先ほど言いましたように、目指す方向が同じである厚生労働省と文部科学省が、障害児政策で垣根のない対応をするためにどんな連携が図られているのか。いろいろな資料を見ますと、いいことなんですよ、最近は例えば、こうした文科省の資料を見ても、厚生労働省と連携協力というのはどこにも必ず入っているんです。それはよくわかるんですが、どんな連携が図られているのか、これは厚生労働省、文部科学省両者に、それぞれ伺いたいと思います。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、この連携につきましては、先ほど申し上げました昨年の障害児支援の見直しに関する検討会でも、福祉と就労あるいは教育の連携の必要性を強く指摘を受けたところでございます。

 この中でも、国レベルでも、厚生労働省と文部科学省の連絡の場、これを常に開催をしていけ、その連携を強化していけということの指摘、あるいは、地域の現場レベルにおきましても、今でも私どもの方は、地域の保健医療関係者だけではなくて就労関係者、教育関係者とともどもに地域自立支援協議会のような仕組みをつくって取り組みを総合的に進めてくれということを進めておりますが、こういうシステムの構築、あるいは、先ほどのような個別の支援計画づくりに共同して参画するような支援会議の開催というようなものの取り組みを指摘を受けたところでございます。

 こうしたことを踏まえまして、国のレベルでも、文部科学省との間で常に、それぞれの会議、研究会等には相互に出席をし合って、ともに取り組んでいくということを進めておりますところでもございます。また、現場レベルでの具体的な取り組みとしましては、例えば発達障害についての支援体制を構築する場合におきましても、私どもの方の発達障害者の支援体制整備事業という中でも、福祉と就労、それと教育というようなものの連携に取り組む連絡協議会を必ず置いて取り組んでほしいというふうなこともお願いをしておりますが、その中で圏域レベル、県全体だけではなくて地域でも圏域レベルでチームを組んでいただきたいということをお願いしておるところでございます。

 また、先ほどの御指摘にありましたような特別支援学校等の教育活動の中で現場実習ということの取り組みをいただいておりますけれども、それが就労に移行していきます際には、私どもの福祉サービスにおきます就労移行を支援する、訓練するような場がございますが、短期間でもそういうところを体験していただいて適性をよく見ていただくようなこと、そういうことにつきましても支援を共同して実施いたしまして、卒業と同時に適切な就労等につながっていくようにということについても連携の強化を進めておるところでございます。

 今後とも、より総合的に取り組みを進めてまいりたいと思っております。

金森政府参考人 発達障害を含め、障害のある子供への支援につきましては、教育、福祉、労働、医療などの関係機関が連携することが必要でございまして、そのためにも文部科学省と厚生労働省の両省庁が連携することが必要であるというのは、御指摘のとおりでございます。

 具体的な連携の取り組みにつきましてはただいま厚生労働省から御答弁申し上げたとおりでございまして、今後とも、厚生労働省と連携を密にし、障害のある子供への一貫した支援の充実に努めてまいりたいと存じます。

福田(峰)委員 連携して話し合いをしながら前に進めていくということは当然非常に大切だと思うんですが、例えば、先ほど言いましたように、障害者の情報を共有するということについても、学校を中心とした教育を中心として情報を掌握する、あるいは福祉を中心として情報を掌握するということだけでももっと一体化する形の中で対応できるようなことも、まだまだ工夫ができるのではないかなというふうに私は思っておりますので、始まったばかりですから、急に今から、あしたからどうだという話ではないですが、やはりそこは問題点の指摘を十分踏まえて本当に協力し合ってやってもらいたいというふうに思います。

 そこで、文部科学大臣にぜひお伺いしたいんですが、この障害児の問題は残念ですけれども所信表明の中には余り詳しく書かれておりませんでしたものですから、今の議論を聞いて、障害児のライフサイクルに応じたきめ細かな対応、文部科学大臣はどこまでこれを追い求めていくべきなのか、所見をお願いしたいと思います。

塩谷国務大臣 障害のある幼児、児童生徒について、障害の状態に応じた、その可能性を最大限に伸ばして、自立し社会参加するために必要な力を養うことが大変必要であると思っておりまして、先ほど来答弁にありますように、関係機関が相互に連携した支援体制を整備して、乳幼児期から就労まで、ライフサイクルに応じた一貫した支援を行うことが必要だと思っております。

 そのために、長期的な視点で、学校卒業後まで一貫した支援を行うための個別教育支援計画を小中高等学校の新しい学習指導要領に位置づけるとともに、学校、幼稚園、保育所、そして保健、医療、福祉等関係機関と連携体制の整備を図るための事業を行っており、その実施に当たっては厚生労働省と十分に連携して図ってまいりたい。障害のある子供のライフサイクルに応じたきめ細やかな支援の充実に努めてまいりたいと考えております。

福田(峰)委員 そうした連携した取り組みを大臣がリーダーシップを発揮して、ぜひこれから前に進めていただきたいというふうに思います。

 そして最後に、これは自民党の特別支援教育小委員会から特別支援学校の施設整備に関する緊急提言で、こうしたことをやるにも施設整備も十分でないとできないわけですから、二千教室程度不足をしているのではないかという指摘がなされています。この特別支援学校の教室の不足に対して、国庫補助による教室の不足解消を推進すべきと私も思っているんですが、こうした施設整備の面について、最後に大臣の所見をお伺いしたいと思います。

塩谷国務大臣 近年、知的障害のある児童生徒を受け入れている特別支援学校、あるいは特に高等部において児童生徒等の増加に伴い教室不足が生じているということで、昨日も党の支援をしている皆さんでこの件についての要望がありました。私ども、平成二十年度の調査をして、つい先日この統計をまとめているところでございますが、現在のところ、四十二都道府県から回答をいただいておりまして、全国で約二千教室程度の不足が生じているということでございます。

 これに対して、応急的な対応として仮設教室や普通教室を間仕切りした等により対応をしているところでありますが、設置者である地方公共団体においては、こうした教室不足の早急な解消のため、廃校や余裕教室を活用した分校、分教室での対応や新増築による施設整備等により必要な施設の確保を進める必要があると思っております。

 文部科学省としては、教室不足の早急な解消に向けて、設置者である地方公共団体に対して必要な教室の確保を要請するとともに、施設整備に対する国庫補助等必要な支援に努めてまいりたいと思っております。

福田(峰)委員 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で福田君の質疑は終わりました。

 次に、池坊保子君。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 私は、先日の塩谷大臣の所信を伺い、その中から、二つのテーマできょうは質問をしたいと思っております。

 塩谷大臣が先月提言されました「心を育む」ための五つの提案、私も大賛成でございます。教育の基本並びに日常生活の基本は、当たり前のことをしっかりと守っていくことではないかと思います。学力調査にも見られますように、日常生活に規律ある子供は学力も高いと言われております。しかしながら、この当たり前のことをいかにして子供たちに守らせるかというのはこれからの教育の課題でもある、工夫が必要なのではないかと思っております。

 特に、教育の基本は読み書き計算だと私は思っておりますので、私は党の子ども読書運動プロジェクトチームの座長として、幼児のときから本に親しむことを奨励してまいりました。これによって、三つのこと、朝の十分間読書運動の実施校は今全国で小中高合わせて二万六千五十七校、これは三月六日現在の調査でございます。また、ブックスタートを実施している市区町村自治体の数は六百八十七となっておりますし、また、親や子供の情愛を深めるための読み聞かせというのを私はいたしております。

 今、子供たちが抱えている問題の多くは、すぐに感情に走るとか切れるとか突発的な行動をするとか言われておりますけれども、それは、抑制力とともに想像力とか予測の能力が欠如しているのではないかと思うんです。私は、読書によってそうした予測の能力、想像力を養うことができる。例えば、世界各国には貧困、飢餓にあえいでいる子供たちもいる、あるいは、ちょっと隣には言論の自由を抑圧されている人々もいる。そういうことに思いをはせるというのは、私は想像力だと思います。

 この想像力の欠如、それから知識のなさが、相撲界でもこの間起こってまいりましたが、今大学生たちが汚染されております大麻、これによって、本当に前途ある子供たちがあっという間に人生を狂わされてしまう。私は、このことに対して非常に胸を痛めております。このことについて、きょうはちょっと質問していきたいと思います。

 きょうは警察庁の方にも来ていただきました。大麻の汚染の状況というのはどうなっているんでしょうか。昨年、二〇〇八年に大麻所持などで摘発された人は何人でしょうか。また、そのうち中高大学生というのは何人いるんでしょうか。

西村政府参考人 昨年の大麻事犯の検挙件数は三千八百三十二件、検挙人員は二千七百七十八人で、過去最高を記録いたしました。このうち、二十歳未満の少年の検挙人員は二百二十人であります。うち、中学生は二人で前年比一人の増、高校生は四十九人で前年比七五%の増であります。また、大学生の検挙人員は八九人で、これは前年比三%減少しております。

池坊委員 大臣、今のこの数字をお聞きになって、どんなふうに率直に思われましたか。

塩谷国務大臣 大麻の問題につきましては、近年、特に学生に関係する検挙数が多いというような印象もありまして、今の数字も、残念ながら全体的にはふえて、また学生に関係するところも減ってはいないし、我々としては大変憂慮すべき事態と思っておりまして、文部科学省としましても、小学校、中学校、高校及び大学を通じて、発達段階に応じた薬物乱用防止に関する指導が行われるよう努めてまいりたいと考えております。

池坊委員 私が住んでおります近畿では、四大学の学長たちが、再発防止への啓発の取り組みを強化する声明というのを発表いたしました。大学がスクラムを組んで有効策を考えなければキャンパスでの再発は防げないという、深刻かつ苦渋の決断なんですね。四大学で薬物乱用防止連絡会を設置して、教職員向けの研修を共催したり、学生の薬物に対する意識調査を共同で実施したりしております。

 若い世代には、大麻はたばこより害が少なく依存性も低いといった間違った認識から手を染める、深みにはまっていくというケースが多いそうです。大麻の所持容疑で二月に京都大学の学生が、こうした誤った情報のはんらんから大麻を吸ってしまった。インターネットで流れている情報の扱い方を含む新入生ガイダンスを実施しなければ、こうした誤った知識から子供たちを守ることはできない、そういう思いの中から、事件前からポスターの掲示などで注意を呼びかけていたんですけれども、一方的な対策にすぎず、認識が甘かったという判断のもとで、教員が総がかりで、約二万三千人の学生一人一人に面談や電話で危険性を伝えるローラー作戦を展開しております。

 学生らが大麻の所持容疑などで逮捕された芦屋大学では、運動クラブや同好会で新入生の指導役となるリーダーたちを集めた研修を開催したりもしております。

 近畿大学は、新年度からキャンパスの大型ビジョンで、薬物依存症に陥った女性のインタビュー映像などを流す予定で、担当者は薬物の怖さを訴えたいと話しているんですね。

 それぞれの学校が啓発教育に重点を置いておりますが、薬物をファッションの一部として軽い気持ちで近づく傾向が目立って、学生の危機感というのは教職員が思っている以上に薄く、事件を防ぐ決め手を見つけるのはなかなか難しいと言われております。図書館で吸っていたり、あるいは空き教室で吸っていたりということがあるんだそうです。

 このような事情を踏まえて、キャンパスでの薬物汚染に対して、文部科学省はどのような手を打っていらっしゃるんでしょうか。私は、これは学生の自覚、それから大学の自助努力ということも必要だとは思いますが、やはり文部科学省がこのことに対してもっと本格的に取り組むことが必要であるのではないかと思っております。

 先ほど段階的にとおっしゃいましたけれども、小学校、中学校、高校ではどのように大麻や覚せい剤の危険性を教えているのでしょうか。

塩谷国務大臣 大学における事件等が多く発覚しておりますし、今お話しの、それに対して近畿大学において実際に危機感を持って行動していただいていること、私どもとしては大変注目をしているところでございます。

 発達段階にということで、現在、小中高等学校における大麻の防止につきましては、授業を通じた薬物乱用の指導、そして小学校五年生、中学校一年、高校一年の各段階で、すべての児童生徒に行き渡るよう、薬物乱用危険性等を解説したパンフレットを作成して配布をしております。また、すべての中学校、高校において、薬物乱用防止教室を開催するよう指導しております。

 学校において、体育科及び保健体育科を中心に薬物乱用防止に関する指導が行われているところでございまして、小学校では薬物乱用についてシンナーなどの有機溶剤を取り上げ、心身の健康に深刻な影響を及ぼすことを理解するように指導しております。また、中学校においては、覚せい剤や大麻を取り上げて、さまざまな障害が起こることを理解できるようにすること、また高等学校においては、麻薬、覚せい剤、大麻など薬物乱用が心身の健康や社会に及ぼす影響について理解できるようにすることなどを指導しておりまして、また大学については、今まで配布物等はなかったわけですが、来年度の予算で大学用の薬物乱用防止啓発資料を作成するための経費を計上しているところでございます。

池坊委員 これはスポーツ・青少年局に伺いたいと思います。薬物乱用防止教室というのは年一回程度開くことというふうに言われておりますけれども、今、全校ですべて行っていますか。

山中政府参考人 委員御指摘の薬物乱用防止教室でございますけれども、文部科学省としては、全国の中学校、高等学校、これは年一回は開いていただきたいということで、薬物乱用防止教室というのは外部の警察官の方とかそういう方も来ていただきまして、それで薬物乱用防止をするという指導を行ってもらうということなんですけれども、平成十九年度でございますと、中学校では五千九百七十一校ということで五六%、高校では三千三十九校ということで六一%という程度の実施状況という状況になっております。

池坊委員 これは、二〇〇六年度よりもそれぞれ二ポイント、三ポイント減っておりますね。つまり全校の、中学校は五六%しかこれを行っていない、そして高校は六一%しかしていないということです。

 これは、どういう科目の中でどれぐらいの時間数でやっているんでしょうか。

山中政府参考人 薬物乱用の教育は、保健体育とか体育の時間あるいは特別活動の中で行われましたり、それぞれの学校によって取り組みのやり方は違うという状況であろうかと思いますけれども、学校によっては体育、保健体育の中で、座学と申しますか、いろいろな薬物乱用防止に関する教育もやっているということもあって、そこで、特別に外部の方、専門家の方を招いたりしての教室というところが開かれない学校もあるのではないかというふうに考えております。

池坊委員 先ほども申し上げましたように、優秀な大学生たちが平気で大麻を吸うというのは、その知識を知らないんですね。私は、これは小さいときからしっかりと時間数をとってやるべきというふうに考えておりますけれども、大臣、今のこの五六%しかやっていない、高校でも六一%なんだ、それもいろいろな、ちゃんとしてというより、保健体育でやったりあそこでやったりという感じだと思います。このことに対してどうお思いですか。

塩谷国務大臣 大変重要な防止教室だと我々位置づけておりますので、今、統計的に、中学校の五六%、高校の六一%というのは残念ながら低い数字だと思っておりますので、今後、一〇〇%実施できるように、また強力に指導をしてまいりたいと思います。

池坊委員 これは未来を担う子供たちにとって大きな問題だと思いますので、大臣、今このように御答弁していただきましたから、ぜひ四月からはきっちりとしたカリキュラムでやっていただきたいと私は切に希望いたします。大学がそれぞれ大変なんだという危機意識を持ってこれに取り組んでいるにもかかわらず、文部科学省が後手に回ってはならないというふうに私は思っております。

 浮島政務官に伺いたいんですけれども、私、ずっとこの麻薬というのをやってまいりまして、前は「ストップ・ザ・薬物」というのがございました。これは、自分を大事にしようねと、小学生からで、喫煙、飲酒、薬物防止教育パンフレットなんですね。私、これはすごくいいと思うんです。何度も何度も言うようですが、肌で怖いんだ、いけないんだということを教えるべきなんですね。

 ところが、これが今なくなってしまったと思います。小学生には「わたしの健康」というこれが出ております。これを見ましたら、私は、もっといけないことはいけないとしっかりと書くべきだと思うんですよね。病気になるとどうなるか、生活習慣から起こる病気、病気って何。小学生というのは、今、知識があるんですよ。インターネットなんかもすごくよく見ております。これは余りにもぴりっとしなさ過ぎと私は思いますけれども、いかがですか。

 今申し上げましたのは、文部科学省が出しているんですね。だから、もっと文部科学省は毅然とした態度を示すべきと思います。

浮島大臣政務官 委員御指摘のとおりに、本当に薬物乱用防止教育というのはしっかりと取り組んでいかなければならない問題だと私も思っておるところでございます。

 今御指摘のとおりに、特化したパンフレットをまたつくった方がいいのではないかという御質問だと思いますけれども、平成十六年から、今見せていただきました「ストップ・ザ・薬物」という、薬物乱用防止、エイズそして喫煙防止のそれぞれの課題に応じた中学生、高校生のパンフレットを作成していたところでございますけれども、それぞれの問題の関連性も考慮しながら、児童生徒にそれぞれの及ぼす害などがより明確に伝わるようということで、平成十七年度から、小学校五年生、中学校一年生そして高校一年生用の薬物乱用防止を含む健康問題を総合的に解説した教材を作成しているところでございます。

 しかしながら、今委員から御指摘ございました御意見をしっかりと受けとめさせていただきまして、薬物乱用防止教育に特化したパンフレットの作成についても今後しっかりと検討してまいりたいと思っております。

池坊委員 ぜひ、これは大切な問題ですから、やっていただきたいと思います。

 それから、警察庁の方にお伺いしたいんですが、今、大麻を種から育てている違法栽培というのが目立っております。私なんかも見ておりますと、自分の家で、部屋の中で栽培している。この摘発の状況、また増加の割合を教えていただきたいと思います。

西村政府参考人 昨年の大麻栽培事犯の検挙件数は二百七十四件で、前年比九十件の増加です。検挙人員は二百十人で、前年比八十三人の増加です。

 なお、この栽培事犯は、大麻取締法違反全体の検挙件数の約七・二%を占めております。また、栽培の形態でありますが、屋内の居室やあるいは押し入れ等において植木鉢やプランターを使用して栽培しているほか、山中や畑などでの栽培もあります。

池坊委員 私が調べたところによりますと、インターネット上で種が、鳥のえさとか、食用、観賞用として公然と販売されている。十粒で一万円とか二万円とかそういう高価な価格にもなっているというふうに聞いておりますが、こういう人たちは、栽培をしているのは、どこからこの種を入れているんでしょうか。これは厚生労働省でしょうか。

高井政府参考人 厚生労働省といたしましては、大麻の不正栽培を行う場合の種の入手経路をいろいろ把握しておりますけれども、一つには、インターネットで海外の業者から直接国際郵便で入手するのが一つございます。二つ目には、海外から種を取り寄せた国内の者に対しまして、直接インターネットとか宅配便で入手するというのが二つ目。三つ目には、巧妙な手口で携帯品に隠匿して海外から持って直接国内に持ち込む、こういうような形態を把握して、多く検挙されているところでございます。

池坊委員 これを厚生労働省で、大麻の種の売買というのは公然にしていいようになっているんですか。私が何か伺ったところによると、しめ縄か何かつくるときに大麻の種を使うからというお話を伺いましたが、どういうときに許可されるんでしょうか。

高井政府参考人 御指摘の大麻の種でございますけれども、七味唐辛子や鳥のえさで使われております。

 そういうことで、国民の生活に深い関係がございまして、大麻取締法上、種の所持とか売買については許可は必要ないということになっておりますけれども、法律におきまして、種については、情を知って不正栽培に当たる行為に要する種を提供したりとか運搬した者については処罰対象ということになっておりますので、そういう規制をいたしているところでございます。

池坊委員 私は、やはりこれをきちんとしなければいけないと思うんですね。入ることは入る、だけれども、不正に使っちゃいけない、だけれども、ある部分で観賞用として使う、食料として使う分はいいというと、どうしても子供たちは、子供だけじゃないと思いますけれども、これを自分で栽培したりすると思うんですね。今、こういう法律改正が必要ですということはここでは申し上げませんけれども、これはちょっと検討する余地があると私は考えておりますので、厚労省もこれについてもっと厳しく考えていただきたいと思います。

高井政府参考人 御指摘の種についてでございますけれども、先ほど申しました大麻取締法におきまして、種をまく前であっても予備行為として処罰が可能であるという予備罪を設けておりますし、それから種を譲り渡す側につきましても、不正栽培の幇助罪でありますとか提供罪とかいう罰則も設けているところでございます。最近でも、インターネットを通じて観賞用と称して種子を販売していた者を不正栽培の幇助罪ということで摘発しているというようなこともございますので、今後ともこの現行法を、関係機関と十分連携をとりつつ、最大限活用して取り締まっていきたいというふうに考えております。

池坊委員 やはり入り口でちゃんと予防するということが必要だと思いますので、これはぜひ連携をとっていただきたいと思います。

 それから、私は、ブラジル人学校についてちょっと塩谷大臣に伺いたいと思います。

 先日の所信演説の中で、「昨今、日本に居住するブラジル人等の雇用が不安定になっていることを背景として、定住外国人の子供たちに対する緊急支援策を取りまとめ、日本語指導や就学支援に取り組んでいるところです。」と述べられました。具体的にどのように取り組んでいらっしゃるかというのを、私は実は伺いたいんですね。

 先日、塩谷大臣の選挙区である浜松のブラジル人学校に行ってまいりました。浜松は自動車産業によってブラジル人とかペルー人などの外国人が多く、私はハローワークにも行ってきたんですけれども、ムンド・デ・アレグリア校というのに行ってまいりました。

 日本に外国人学校というのは幾つあるんでしょうか。そして、その学校形態はどうなっているのか、これは事務方だと思います。

木曽政府参考人 失礼いたします。

 現在、各種学校の認可を受けている外国人学校の数でございますが、平成二十年五月時点で、全国で百二十一校ございます。その百二十一校の内訳でございますけれども、朝鮮学校が七十七校、インターナショナルスクールが二十七校、欧米系、いわゆるドイツ人学校等でございますけれども、五校、先生御指摘のブラジル人学校等の南米系が五校、中華学校が五校、韓国学校が二校となっております。

池坊委員 今、外国人学校だけでなく、高校生が授業料を払えない、あるいは教材が買えないというのは十年前の二倍になっております。これは、私は内閣委員会で鳩山総務大臣に、経済対策の活性化の中でこれを使っていただきたいというふうにお願いして、そうできるようになって、今、九県十億担保されているようでございますけれども、今もろに、親たちが失職するので子供たちも学校に行けないという状態になっております。

 私、提案なんですけれども、さっきも特殊学校、特別支援学校の話が出ておりました。一番いい方法は、やはり同じ学校の中で空き教室とかが出ておりますね。そこでブラジル人などにポルトガル語とかスペイン語を教えるとともに、日本語の教育もして、全部が一緒にやることはできませんから、給食だとかあるいは運動会とか、特別支援学級の子供はそうやって一緒の部分をしているんですね、そういうことが考えられないのかなというふうに思っているんです。

 なぜかといいますと、特別支援学級があるクラスの子供たちというのは優しいんですね。人に対する思いやりを持つ。それから、人というのはいろいろな人がいるんだということも小さいときから認識することができるんです。今みたいな縦割りのブラジル人学校なんだと、準各種学校になっているんですけれども、なっていないところも多い。これを、何か空き教室を利用したことができないかなというふうに思っているんですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

塩谷国務大臣 いろいろと外国人の子供の教育についても大変御支援をいただきまして、地元まで行っていただいて、ありがとうございます。

 今のお話でございますが、特に空き教室については、現在も、地域における日本語教育の実施等、有効活用することについて、文化庁等で、これは特に文化庁がやるのは大人の日本語教室でございますが、日本語教育事業に対して学校施設を活用した事例もありますし、具体的に、いろいろな空き教室をこれから、外国人あるいは特別支援教室等も含めて有効に利用していくことが大事だなと思っております。

 今、文部科学省としては、そういった施設の利用に対してもっと柔軟に、また有効に使うことが必要だなという感じは受けておりますので、現状、大変厳しい状況の中で、そういう要請があることも承知をしておりますので、できるだけ柔軟に対応してまいりたいと考えております。

池坊委員 これはぜひ柔軟に子供たちを受け入れる、これこそが異文化共生ではないかと私は思うんですね。外需のためにブラジル人、ペルー人を経済優先で入れた。今度は、もう不況になったから帰りなさいとか、あるいは、もう授業ができない、授業料が払えない子供たちがいるというのは、これは日本の方針としては、もうちょっとしっかりとした方針を出して外国人を受け入れるべきだったというふうに私は考えております。今やるべきことというのは、これからもし新たな経済対策が打ち出されるようでしたら、これもぜひ念頭に入れていただきたいと私は思っております。

 それから、助成のあり方なんですが、例えば浜松でもモデル事業をやっているんですね。浜松の大学でモデル事業を文部科学省が委託する、そして浜松市からいろいろな学校に行くのですが、この学校に行きます場合に、一つの学校にだけ学校として助成される。

 それからまた、今、親たちの日本語教育というのが必要なんですよ。七年間日本にいる、だけれども自動車の部品をつくっていた、だから言葉はしゃべれないんだと。今、介護なんかでは人が要ると言われても、日本語ができない人たちですから、それからやっていかないと求職もないんですね。そういうこともやっているんですが、同じところばかり助成されるんですね。

 私は、これはすべての助成のあり方なんだと思いますが、オール・オア・ナッシングで、やるところはすごく助成する、やらないところは全然ないというので、額が少なくても多くの人が支援を受けられるように、もうちょっと広くやるべきというふうに私は思っているんですね。

 浜松で調べましたら、もう一つの学校は大変助成を受けている、でもこっち方は受けていないというので、これはちょっと不公平かなというふうに思います。この助成のあり方についていかがお考えでしょうか。

岩屋委員長 塩谷大臣、時間が来ておりますので、簡潔に願います。

塩谷国務大臣 浜松へ行っていただいてそういう状況を把握していただいていることを本当にありがたく思います。

 先ほどのムンド・デ・アレグリアは認可学校でありまして、特にモデル事業等にまずはいろいろ支援しようという形で、我が省としてもそういう助成の仕方をやっているわけでございますが、それと同時に、やはり広く全般的にやる必要もありますので、これは、財政の状況と、来年度に向けて今の実態をしっかり受けとめて、できるだけ幅広く助成できるようにまた検討してまいりたいと思っております。

池坊委員 終わりますが、地震に耐えられないようなぼろ校舎の中で子供たちは学んでおりました。あれは地震があったら絶対に崩壊するな、つぶれると思いましたので、その辺もお考えいただきたいということをお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で池坊保子君の質疑は終わりました。

 次に、小宮山洋子君。

小宮山(洋)委員 民主党で今、文部科学の責任者をさせていただいております小宮山でございます。

 塩谷大臣とは、一年間、与野党の筆頭でいろいろお話をさせていただいた仲でございますし、やはり、主に大臣とこれからの教育のあり方などについてお話をさせていただきたいと思っています。

 まず、これからの教育、特に義務教育の小学校、中学校で目指すべきものは何なのか、いま一度問い直さなければいけない時期に来ているのではないかというふうに思っているんです。大臣は、何が今の小中学校の教育に欠けている、何が必要だと思われるでしょうか。

塩谷国務大臣 現在の教育といいますか戦後の教育といいますか、知識偏重的な状況で、それはそれで大変な成果も得て我が国の発展に大きく寄与したことは、これは評価するべきだと思っておりますが、一方で、やはり心の教育といいますか、そういったところが欠けていたということで、特に、教育基本法が改正されて、道徳心とか公共の精神とか、あるいは伝統文化を重んじるとか、そういったところが今回明記されまして、その部分で、新しく学習指導要領を改訂した中で具体的に今進めていこうと思っております。

 やはり、心の教育あるいは道徳とか、生きる基本ということで私は位置づけておりますが、その部分をまずはしっかりとこの学校教育の中で位置づけて教育をしていくことが大事だと思っております。

小宮山(洋)委員 今、生きる力とおっしゃいましたけれども、最近、PISAの調査で日本の成績が下がった、こうしたことなどから、ゆとり教育がいけなかったんじゃないかというように見直して、授業数をふやすというようなことになっています。

 二〇〇六年のPISAの調査、それから二〇〇三年、二〇〇〇年、三年ごとに行われているんですけれども、五十七カ国が今回参加し、約六千人の高校一年生が日本からは受けたわけですけれども、読解力が、最初の二〇〇〇年八位だったものが二〇〇三年は十四位、そして今回二〇〇六年が十五位になった。そして、数学的リテラシーは一位、六位、十位、科学的リテラシーが二位、二位、六位と下がっているということなんです。

 このPISAの調査で最も成績がよいフィンランドでは、科学的リテラシーが一位、読解力と数学的リテラシーは二位。そのフィンランドで何しているかというと、集団の中での問題解決能力を重視して、そのために必要な力、コミュニケーション能力をつけることに大変力を入れているということなんです。

 最近の事例で私もそうだなと思うのは、あの年越しの派遣村で相談に乗っていた弁護士さんから、そこにいる、特にほとんどの若者がコミュニケーションができないと言うんですよ。それから大臣、こういう言葉、婚活とお聞きになったことありますか。首をかしげていらっしゃいますが、就活というのは就職のための活動をいいますね。婚活というのは、結婚のために活動することなんですよ。最近、そういうビジネスが発達しているそうなんですけれども、その婚活ビジネスをやっている方からも伺ったら、出会いの場をつくっても、目を見てコミュニケーションできない若者が七割だと言うんですよ。

 だから、そういう意味では、生きる力とおっしゃいましたが、人として社会で生きていくためには、コミュニケーション能力、人間は言葉で会話ができるということがほかの動物と違うわけですから、そこのところの、授業でどうやるか難しいとは思いますけれども、そこが欠けているんじゃないかと私はこのところずっと思っているんです。大臣はどのようにお考えですか。

塩谷国務大臣 御指摘のコミュニケーション能力については、特に子供たちのいじめ等あるいはいろいろな事件の中で、やはりコミュニケーション能力が欠けて、結局、何かが起こったときに相談もできない、する人もいない、そういうことで行き詰まってしまうような状況が多々あるわけでありまして、今お話しありました若者も、そういう場をつくっても全くコミュニケーションができないというのは、大変問題であると思っております。

 したがって、これをどう学校教育の中で指導していくかというのは、一口にコミュニケーションと言っても、どういうやり方があるかというのはなかなか難しいと思いますが、全般的に、やはり学校教育の中で常に会話をしてコミュニケーションを図っていくということも必要だし、私は、演劇でしたか、そういうことも大変いいなという感じもしますし、私自身は、野外活動とかそういう体験教育ですね、どうしても協力し合わなきゃならない場面で、みんなで一緒にどうしようこうしようというそういう場をつくるということが必要だし、やはりコミュニケーションについては、いろいろなそのための場面をつくっていかなければならないと思っております。

 新しい学習指導要領の中でも、その点について、例えば国語科において、小学校ですが、物語を演じたりすることが新たに明示されたり、中学校の音楽科では、演劇など他の芸術と関連づけた鑑賞の充実とか、そういった新しい取り組みを推進するための内容を入れたところでございまして、こういう点を、特に実際の現場で、当然先生方にも理解してもらって、みずからそういう機会をつくっていただくことが大事でありますので、今後、全般的に、人間が生きていくための必要なコミュニケーション能力だという位置づけをして推進してまいりたいと思っております。

小宮山(洋)委員 今申し上げたように、フィンランドでは、そのコミュニケーション能力をつけるために演劇を取り入れているんですが、欧米の多くの国で演劇専門の教師が、日本でやっている音楽や美術の教員と同じように、初等中等教育の学校に配置をされているということなんです。

 私のことを申し上げて恐縮ですけれども、私の母校の成城学園でも、初等学校で、小学校ですね、三年生から六年生まで劇の時間というのがあったんですよ。それで、学期ごとに自分たちでつくった劇を発表するんです。それだから、発表する方はもちろん力を入れてやりますし、見ている方も大変それで勉強になるということがあるんです。それがとても楽しみだったことを、大分前ですけれども、私も記憶をしております。

 それでこのように私がコミュニケーション能力がついておしゃべりになったかどうかはわかりませんけれども、そのことによって、やはりその初等学校で一緒だった人たちは生涯の友人に今でもなっている人が結構いるということと、社会に出てほかの人とコミュニケーションがとれるということがいかに大事かということは、非常に少人数教育ですから卒業生はそんな多くないんですけれども、各界でこれまで結構活躍している人が出ているんです。そのことは、私自身が学んだ経験と、私の周囲を見たところからも実感として持っています。

 それで、先日、現在初等学校で劇を担当している先生に伺ったんですけれども、先ほど、学習指導要領で今度物語を演じるようにしたということなんですが、それはできている物語を演じるわけですよね。私たちの場合は自分たちで劇をつくるんですよ。そうなると、毎日これまでの何年間かの子供たちの人生の中で経験したすごくうれしかったこととか嫌なこととか、いろいろなことを意見として出し合ってつくっていくわけですから、当然相手の言うことをよく聞かなきゃいけないし、自分の言いたいことが相手にきちんと伝わらなきゃいけない。それで会話の仕方というか、コミュニケーション能力が身についていく大きな力になっていると思うんです。しかも、その劇を演じるときに、ふだん自分たちが使って話しているような生き生きとした言葉を使わないと今度は劇でうまく表現できないから、設定した人物としてどういう表現方法をすれば伝わるか、そういうことも考える。

 そういうさまざまな意味で、コミュニケーション能力をつけるために劇が果たす役割、それで、自分たちで特に創作しながらつくるということがとても力になっていると私は実感しているんですが、どうでしょうか、今お聞きになってどうお思いになりますか。

塩谷国務大臣 小学校のころ演劇の先生がいたら、私も先生のように魅力的な政治家になっていたか、あるいはどこかで劇を演じていたかもしれません。

 いずれにしても、そういう子供たちの能力というか人の能力というのは、やはりそういう場をつくっていくと、今まで見えなかった能力とかそういうのが出てきますので、私は、演劇というのは、非常にさまざまな能力を発見する場だと思いますし、また、お互いにコミュニケーションを図るためにも大変すばらしい一つの場になるんだという感じは受けておりますので、どういうふうにそれを学校教育の中で入れていけばいいかというのは今後また検討してまいりたいと思っておりますし、そういった指導者がやはり必要だと思いますので、現在はそういった科目はないわけですから、やはり外部の指導者とかそういう人たちの協力も得て、劇を一緒にやるというのは非常に楽しく思いますので、ぜひ何らかの形で取り入れることを進めていきたい、検討してまいりたいと思っております。

小宮山(洋)委員 まさしく今おっしゃったとおりで、先ほどからおっしゃっているように、やはり、教えられる先生がいないといけない、また、先生がそれを理解しないとなかなか授業として取り組めないということだと思うので、今ちょうど大臣がおっしゃったように、現在はそういう科目というのは教員養成課程で定められてはいないわけなんですね。

 全国、では何をやっているかというのを調べたところ、多少試みている学校はあるんです。どういうことをしているかというと、例えば北海道教育大学では、「教師のためのコミュニケーションスキル」という授業がございまして、ここでは、児童生徒や保護者とのコミュニケーションのための各種のスキル、それを学んで実際にトレーニングをしているということがあります。

 それから東京学芸大学では、「教育相談の理論と方法」という科目で、相談の態勢という中で対応可能な実践的な能力をつける言葉、その話し方という授業をしている。

 また、今ここで申し上げていることに一番近いと思うのは、玉川大学で「話し言葉による表現法」という科目があるんです。ここで、日本語の言葉による音声表現について、パブリックスピーキング、これは、私がNHKでアナウンサーをしていたころもパブリックスピーキングということがちょうどそのころ言われ始めたんですが、これは何かというと、ほかの人に目的を持って伝達する話し方の視点から、今、日本には書き言葉と話し言葉しかないわけですけれども、パブリックスピーキングというのは、その話し言葉ともまた違う、ふだんおしゃべりしている言葉とも違う、公にその目的を伝達するために話し方があるのではないか。お役所言葉のようなものでもなくて、それを公に伝えるための言葉というところから考えて実践をしているというんです。ちなみに、この玉川大学というのは、成城学園から分かれた玉川学園の大学なんですけれども。

 だから、探しても、こういうごく一部のところしか今の教員課程の中では定められていないので、工夫してやっているところがない。全国調べましても、このほかにあと二校ぐらい、全部で五本の指、五校ぐらいしか見当たりませんでした。

 さっきおっしゃったように、やはりこういうことにもっと力を入れていただいていいのではないかと思いますが、いかがでしょう。

塩谷国務大臣 今お話しのように、全国的に余り多い講座というか、大学でも指導していないということでございますので、今後、例えば教員研修の中で、ことしから免許更新制も始まる、昨年もその試験的な講座の内容等も行われる中で、かなりコミュニケーション能力を向上させるような内容の講座も出てきたわけでございまして、私どもとしては、教員の資質向上の中で、教員養成あるいは教員研修、さらには、今申し上げました免許更新制の講習の中でそういった内容を少しずつでもふやしていくことが大事だと思っております。

 コミュニケーション能力、あるいは、例えばこの前も、ちょっと話は変わりますが、映画とか、そういったところの大学の講座が欧米ではかなりあるんですが、演劇とかそういうところの専門的なところがごく少ないということもありまして、これは、文化的なことも含めてやはりコミュニケーション能力というのは非常に重要な能力だと思っておりますので、今後どう教育の中で展開できるか、検討してまいりたいと思います。

小宮山(洋)委員 ぜひお願いしたいんです。私、このことを再三この文部科学委員になってから申し上げているんですが、歴代の大臣が割と短い期間でおかわりになってしまうので実践なされないのかもしれませんけれども、大事ですね、大事ですねとはおっしゃるんですけれども、何も変わっていかない。ぜひ塩谷大臣には、在任期間に何かのこの糸口だけでもつくっていただくように心からお願いをしたいと思います。

 また、先ほど、外部の指導者というお話もありましたけれども、いきなり養成して各学校というのはなかなか難しいと思いますので、学校の外から専門家に来てもらって授業をするということの工夫ももっとしていただきたいと思うんです。そのコミュニケーション能力をつけるというためにはぜひ必要だとお認めいただいているので、最近、少しは外の人が入れるようになりましたけれども、学校の中の安全の問題とかでまた校門を閉ざすようなことと、ちょっとそこのところのバランスが難しいかとは思うんですけれども、演劇の教育、コミュニケーション能力の教育に限らず、環境教育とか消費者教育とか、やはり専門家に来てもらって授業をしてもらった方が子供たちに役立つということがあると思うので、今のその決められた、まだまだいろいろな縛りがありますよね、そこをもっと緩和をして、特にこの面で試みていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。

    〔委員長退席、牧委員長代理着席〕

塩谷国務大臣 専門家の方に来ていただいて指導をしていただくということは大変重要だと思っておりまして、文部科学省としてもそういった対応を進めているところでございますが、おっしゃるとおり、閉鎖的な状況は私は感じておりますし、そこら辺をどうオープンにするかということは、一つ教育委員会の問題についても、あるいは学校そのものの指導の問題についても、非常に大きな課題だと思っております。

 したがって、あらゆる面で学校教育がオープンに、そして、地域の指導者あるいは専門家、そういった人たちができるだけ多くこの教育に携われるような環境をつくってまいることが大事だと思っておりますので、そういった点で、また今後の予算も必要でしょうし、また、体制整備も進めてまいりたいと思っておりますので、ぜひまたいろいろな御指摘をいただければありがたいと思います。

小宮山(洋)委員 ぜひやはりお願いしたいと思っています。

 今、予算のお話もございましたけれども、これはもう党派を超えて教育予算をふやすべきだということは、前回もせっかく振興計画をつくるのにOECD並みの五%と言ったのが、相変わらず三・五%。これはもちろん政治家が頑張らなければいけませんけれども、先ほど、別のことで覇気がないというお話がありましたが、文部科学省にももっと子供たちのために体を張ってやってもらわなきゃいけない。私はもうこの一年以上それを言い続けているのに、本当に歯がゆいという思いがしておりますので、これはぜひ一緒に取り組ませていただきたいので、ぜひお約束どおり何かを始めていただきたいということを強くお願いを申し上げます。

 それで、二つ目の話題もこれは大臣とやりとりをさせていただきたいと思うんですが、理科教育につきまして、学習指導要領、教科書検定との関係についてちょっと私のところに材料というかいろいろな話が集まりましたので、伺っていきたいというふうに思うんです。

 大臣所信の中でも、理科教育を充実させる、あるいは教科書の質、量両面での充実など、理科教育に力を入れると述べられていらっしゃいます。

 これは、子供たちの理科離れということが言われて久しいわけですけれども、ところが、先ほど取り上げましたPISA調査の項目が幾つかあって、その授業の中身について選択をしていくという答え方のところがあるんですけれども、日本の子供たちは理科教育について、対話を重視した理科の授業や、モデルの使用や応用を重視した理科の教育など、いわゆる興味を持っておもしろがってできるような授業というのは行われていないと言っているんです。それで、基礎的な技能や知識ばかり教えているということがこの選択の中からわかっているんです。

 どこに問題があるんだろうかと考えていたところ、教科書検定にも大きな問題があるのではないかというお話が私のところに寄せられました。

 それで、そういうような今の理科の教育のあり方について大臣はどのようにお考えになっているかを、まず、ちょっと区切って伺いたいと思います。

    〔牧委員長代理退席、委員長着席〕

塩谷国務大臣 理科教育については、今お話しございましたように、PISAの調査等で、我が国の生徒について、科学への興味とか関心、また楽しさを感じている生徒の割合が低いという結果が出ておりますので、この理科教育の必要性を強く感じておるわけでございまして、これをいかに充実させるかということで、学習指導要領等を含めて今後の対応を今実際に行おうとしているところでございます。

 一つは、授業数が十分でなかったという、これは、特に観察や実験など、子供たちがみずから体験を通じて学ぶような活動が足りなかったと思いますし、また、学習内容と実生活や職業とを関連づけた指導が必ずしも十分ではなかったと思っております。

 こういった点を改めて、新しい学習指導要領においては、小中学校において算数・数学、理科の授業時数を増加させるとともに、小中高等学校を通じて、観察、実験あるいは自然体験、科学的な体験の一層の充実を図り、また、日常生活や社会との関連を重視する内容の充実を図ろうということでこの理数教育にしっかりと対応して、PISAの調査でまたしっかりとした結果を出してまいりたいと考えております。

小宮山(洋)委員 どこに問題があるのか考えていたところ、先ほど申し上げたように、教科書検定にも大きな問題があるということがわかったんです。

 教科書検定はよく歴史教科書のことで言われますけれども、そうではない。理科の教科書にもある。特に、生物の検定で、私が伺ったところ、まるで金縛りにでも遭ったように学習指導要領に縛られた内容しか認められていないで、おもしろいとか興味を持たせるような表現ができないようになっているというようなんです。

 学習指導要領というのは、そもそも教える最低限のことを決めているという答弁が再三国会でもなされているはずなんですね。最近では、昨年三月の文部科学委員会で、共産党の石井委員が渡海大臣に対して質問をされたことに対して大臣が、指導要領というのは、ある意味、最低のガイドラインということで、いろいろな工夫が現場でなされていると承知していると答弁をされまして、さらに、最低基準というふうに理解してよいかという問いに対して、それで結構ですと答えられているんです。

 学習指導要領についてはそれでよろしいんですよね。塩谷大臣に改めて確認をさせていただきたいと思います。

塩谷国務大臣 学習指導要領につきましては、すべての子供に共通に指導をしなければならない内容を定めたものでございまして、学校や児童生徒の実態に応じて、内容を加えて指導することも可能であるということでございます。

小宮山(洋)委員 ところが、ここから先は、聞いていただいて大臣も委員の皆さんも多分驚かれるような現実が高校の生物の教科書にあるんです。

 高校の生物1の教科書、1と2があるんですけれども、2は今選択で一割ぐらいの生徒しかとっていないために、生物の1で基本的に必要とされることは知らなきゃいけないはずなんですけれども、現在の生物1の教科書に進化についての記述がないというのは御存じでしょうか。これは、このときの学習指導要領に入れ忘れたのか、入っていない。だから進化が書けないというんですよ。

 今度の改訂で戻すことになったそうですけれども、こういう事実を大臣は御存じでしたか。それで、どうお感じになりますか。

塩谷国務大臣 知っていたかということについては、知りませんでした。

 今お話しのあった進化については、平成十四年の教科書検定基準の改正によって、学習指導要領の趣旨を逸脱しないことなど一定の条件のもとで、いわゆる発展的な学習内容として教科書に記述できるようになっているということでありまして、御指摘の進化に関する記述については、現在使用されている高等学校生物1の教科書においては、十四点中一点において発展的な学習の内容の記述として掲載されているということでございます。

 今月三月九日に、新しい高等学校の学習指導要領については、「生物基礎」において、進化について、「生物が共通性を保ちながら進化し多様化してきたこと」として扱うことになっておりまして、今後、新しい学習指導要領に対応した教科書において進化について取り上げるような状況になると考えております。

小宮山(洋)委員 この例をお話しすると皆さんまたもっと驚かれると思うんですけれども、「生物学を学ぶ皆さんへ」、生物に興味を持ってもらおうと思って書かれた、たったこれぐらいの文章、後ろも見えますね、教科書の一ページ分の文章の中に検定の意見というのが十カ所以上ついているんですよ。どういうところについているか、ちょっと読みますね。それで、どういう理由が書かれているかを、皆さん、大臣は特にお聞きいただきたいんです。

 「生物学を学ぶ皆さんへ」、「私たちは生物です。だから、自分自身のことを理解するには、生物学を勉強する必要があります。 私たちの身の周りにも、いろいろな生物がいます。」ここまではないんです。

 その次、「毎日の食べものも、みな生物がつくったものです。家の材料である木もセメントも、また、石油や石炭も生物の提供してくれるものです。」というところにはこれは意見がついて、「不正確である。」だからカットせよ。

 それから次は、ないところなんですけれども、「私たちは、他の生物がいなければ生きていけません。だから周りの生物についても理解する必要があり、生物学はとても大切な科目なのです。」ここはオーケーなんです。

 その次、「生物の体は複雑です。複雑な体をもっているからこそ、とんだりはねたり考えたりと、複雑なことができるのです。」何の不思議もないと思うんですけれども、ここも、「不正確である。」からだめだと言うんですよ。どこが不正確なのかと思いますけれども。

 それから次、ここは全部だめなんですね。「生物は多様で、何百万という種類が存在します。」これもだめだ。これはなぜかというと、「「種類」について定義づけがなく、不正確である。」

 それからその次、「多様性があるからこそ、世界はとても変化に富み、おもしろく、そして豊かなものになっているのです。」そうでしょう。それなのに、これもだめだと。ここの理由は、「多様性と豊かさとの関係について、説明がなく理解し難い表現である。」皆さん、理解できませんか。普通ならできるんですよ。おかしなことばかりで、ここは全部だめだと。

 それから、次の四行もだめだと。ここは、「生物は多様性があり、複雑なのですが、科学は複雑で多様に見えるものの背後にある共通性を見つけだします。あ、こんなふうに考えれば、違って見えるものも、同じようにすっきりと理解できてしまうのか!という発見の喜びが、生物学にはあふれています。」これに対しては、「共通性を見つけだして生物を理解するのが生物学であると誤解するおそれのある表現である。」からだめだと言うんですよ。委員会の中も笑いに包まれていますが、失笑ですよね。

 「とはいっても、」というここの何文字かだけはオーケーで、その次がまただめ。「もともと複雑で多様な分だけ、生物は覚えることが多い科目です。」これは、「「生物」が暗記科目であると誤解するおそれのある表現」だからだめだ。「でも、憂鬱にならないで下さい。」ここだけオーケー。

 ところが、次がまただめなんですよ。「こんなに多様な生物がいるっていうことは、地球がとても豊かだということを反映している」、私はいい表現だと思いますが、これも、「多様性と豊かさとの関係について、説明がなく理解し難い表現である。」からだめだと。

 それで、「いるのだし、」の「のだし、」だけがなぜかよくて、その先がまただめで、「こんなに複雑なのは、私たちがものすごく高機能で高級な体をもっている証拠なのです。」これは「不正確である。」からだめ。

 それからその次、「覚えるのが大変」というところは、これは、「「生物」が暗記科目であると誤解するおそれのある表現」だから「覚えるのが大変」というのはだめですと。「なほど豊かな地球と、」というところはオーケーで、その次がまただめで、「覚えることのできる、この複雑な脳に感謝!」、これがだめだと言うんですよ。これは「不正確である。」

 それで、最後の「さあ、生物1を勉強していきましょう。」だけいいと言うんです。

 もう本当に皆さん、あきれ返られると思うんですよ。議事録をお読みになった方はおわかりにならないと思いますけれども、この委員室の中は皆さん失笑していらっしゃるという状況なんです。

 この結果、今申し上げたように、結局、中身が何にもなくなっちゃうので、このページは削除をされたというんです。

 大臣、いかがですか。

塩谷国務大臣 初めてそういう具体的なものを見させていただきましたが、大変問題意識は感じておりまして、ただ、いずれにしましても、教科書検定については、学習指導要領や検定基準に基づいて教科書検定審議会の専門的な審議を経て行われるものであり、その時点における……(小宮山(洋)委員「大臣、答弁書を読まないでお答えくださいよ」と呼ぶ)いやいや、とりあえず。その時点における学習指導要領や検定基準に照らして適切に実施されるというふうになっておりますので、これから、新しい学習指導要領、今後新しい内容で検定が行われるようになると思いますので、基本的には、やはり学習指導要領等の内容を私どもがしっかりとそれを位置づけるということが大事かなと思っておりまして、それをいかにまた教科書会社あるいは教科書検定の審議会に理解していただいて反映していただくかということだと思いますので、そういう点で、また国民に支持をされるような教科書づくりを努力してまいりたいと思っております。

小宮山(洋)委員 国民に支持されるとおっしゃいましたけれども、国民はこういうことでつくられているということを知らないんですよ。そんなのを、文部科学官僚が書いた答弁書を読まれるのは全然大臣らしくありません。これはやはり、政治家が党派を超えてこういうのは変えていかなきゃ、子供たちのためにならないんですよ。

 重ねてちょっと申し上げますけれども、また、例を三つ以上出しちゃいけないと言うんです。なぜなら羅列的になるから。例えば、行動を起こすということはいろいろな要因で行動を起こしますよね。ある教科書に、行動を起こすのは本能、刷り込み、反射によるものと書いたら、一つだけにするようにという意見がつけられたというんです。

 それで、今御紹介した生物1の教科書は、とにかく、生物の厚さでいくと、二百五十カ所意見がつくとそれは検定で通らないということなんだそうです。伺いましたら、百ページに換算して八十カ所以上意見がつくとその教科書は認められない、落とされるので、従わざるを得ないという現状があるという。

 ここはぜひ大臣として個人のお考えを、個人というか、職責にある塩谷大臣として答弁書じゃなくお答えいただきたいんですが、これはもう学習指導要領と教科書の問題が本末転倒でしょう。ですから、ぜひ直していただきたいと思います。

塩谷国務大臣 今おっしゃった三つ以上の例とか、あるいは百ページで八十以上ですか、審議会としては過去のいろいろな例からしてそういう基準をつくっていると思っております。

 ただ、その基準について、私としても、現実に今お示しいただいた内容等を考えますと、やはり問題だなという意識はありますので、そういった基準をどう今後審議会の方で、これは、考えていくのか新たに明確にするとか、ちょっとそこら辺を私自身も勉強して対応していかなきゃならぬと思っております。

 いずれにしても、先ほど申し上げました、学習指導要領をやはりいかに反映していくかということが大事だと思いますので、私どもそれに努力をしてまいりたいと思います。

小宮山(洋)委員 また、日本の生物の教科書は世界一文章が少ないということを御存じですか。これを文章のあるところの面積で計算をした人がいる。文章が各国の大体十分の一しかないそうです。生物だけじゃなくて、ほかの教科書も同じようなものだということなんです。

 なぜなら、日本の教科書は書いてあることを全部教えなきゃいけないと定められているそうです。外国で厚みがあるのは、その中から先生が必要だと思ったものをピックアップして教えればいい。ところが、日本の教科書は全部教えなきゃいけないから、厚くすると全部教えなきゃいけないからだめだと言うんですよ。これは、きのう質問取りに来た教科書課の課長補佐がそう言っていましたから、間違いないと思います。

 それからもう一つの要素は、教科書予算が、これも文部官僚の皆さんがもっと頑張って子供たちのために予算をとらなきゃいけないということもかかわるんですけれども、教科書予算が四百億、教科書会社が利益を上げるためには、印刷コストを下げるためにページ数を減らしているとも言われているんです。これは、教科書会社、検定に当たる人、文部科学省との関係が一体どうなっているのかなと思わざるを得ない事情もあるという話もございます。

 先ほど御紹介したように、所信の中で、理科教科書を質、量の両面で充実させると述べられた大臣はどのようにお考えでしょうか。

 私もアメリカの高校に行ったことがありますけれども、海外のそれは分厚いんですよ。本当に日本の教科書の十倍近くあるかもしれません。それにハードカバーがついていて、これは貸与式なんです。みんながつくって回すから、厚いものが低コストでつくられるというそういう方式もあるかもしれませんけれども、特に私が問題だと思うのは、書いてあることを全部教えなきゃいけないから薄くなるというのは異常だというふうに思いますし、また、教科書会社の利益のために薄くされるというのも我慢できないなと思うんですが、どうぞ、これも大臣が別に答弁書なくてお答えいただければうれしいかなと思います。

塩谷国務大臣 今委員がおっしゃったことは私も強く感じておりまして、今回、質、量とも両面で充実させるということで、今までは、ゆとり教育の中で教科書が、大分その当時薄くして、できるだけ、例えばドリルとか反復練習、そういった大事な、本当に身につけるために必要な作業をする部分も削除したようなことで薄っぺらい教科書になりました。

 我が国の場合は、書いてあることを全部教えなければならないという、これは決まりがあるのかどうかちょっと私は確認しておりませんが、いずれにしても先生方はそういう意識を持って教科書を扱うわけでございますが、諸外国は、本当に関連したいろいろなことを載せて、いわゆる読むための教科書といいますか、そういう考え方でつくっておりまして、その中から先生がどれを教えるかということを選ぶということでありますから。今回、それを大きく転換して、できるだけ関連のことも記述するようにということで、今までの考え方を変えて、ぜひ充実した教科書をつくっていただきたい。

 いろいろな試みがあって、実は、多分御案内だと思いますが、地元ではないですね、世田谷のあの「日本語」という教科の教科書、あれは、大変すばらしい、一生持ってもいい教科書をつくったということで、ですから、教科書づくりも、そういう考え方でこれからいい教科書をつくっていただきたいというふうに思っております。

小宮山(洋)委員 ぜひお願いします。そして、この委員室にいらっしゃる皆さんも、超党派でこういうものは取り組む必要があると思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思っています。

 前に大分時間をとられたので、あと残り時間が六分ほどになってしまいましたが、夜間中学の充実について最後に伺いたいと思います。

 言うまでもなく、義務教育はすべての人が受ける権利があるわけですけれども、二〇〇〇年の国勢調査でも、十五万八千八百九十一人未就学者がいることがわかっています。戦争で受けられなかった日本の中高齢者、もと不登校、引きこもりの若者、障害を持った方、中国帰国者とその家族、国際結婚などをして来日した外国人の家族などさまざまな方がいらっしゃるんですけれども、やはり義務教育、これは、さっきコミュニケーション能力の話もいたしましたが、人として社会で生きていく権利として、義務教育の保障をこうした皆さんが切実に願っていらっしゃいます。

 ところが、国は、小学校に未就学あるいは中学校に未就学がどれだけいるかを現実には把握していらっしゃらない。そして、一九八五年当時の中曽根総理が約七十万人と国会で答弁されていますけれども、現在把握している数はもっと少なくなっている。この実態把握はどうなっているのか。これは政府委員の答弁で結構です。

金森政府参考人 小学校及び中学校の未就学者につきましては、平成十二年の国勢調査によりますと、未就学者数、約十六万人となっているところでございます。

 国勢調査におきまして義務教育未修了者が判明できるようにするためには、その選択肢を、例えば小学校と中学校に分けて細分化することなども考えられるのでございますが、こうした調査項目については、記入に際して国民の抵抗感が大きいとのことでございまして、選択肢の変更により正しい記入を確保することができるかどうか懸念されるため、国勢調査の調査項目において義務教育未修了者が判明できるような形にするのは困難であるという旨、総務省からお伺いしているところでございます。

小宮山(洋)委員 総務省からお伺いしているではなくて、それは、プライバシーはきちんと守るということで、やはり、小学校に行っていない人がどれだけいるか、中学はどれだけかとわからないと対応できないじゃないですか。質問取りに来た人は局長よりもうちょっと進んで、文部科学省がそういう方法もできるように総務省とやる必要がありますねと言っていましたよ。ぜひお願いをしたいと思います。

 次の質問は、ちょっと時間がないので私の方で述べてしまって大臣に伺いたいんですけれども、全国に公立の夜間中学校は八都府県に三十五校しかないんです。やはり全都道府県に最低一校は必要だと思いますし、また、夜間中学というものがあるということをもっとPR、広報される必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょう。

塩谷国務大臣 夜間中学について、今御指摘がありましたように全国で三十五校ということで、大変地域的にも大都市中心というか、そういうことでありますから、今、三十五というと各県に一つぐらいな感覚だと思ったら、これは違うんですね。大阪には十一校、そして東京には八校ということで、したがって、もっと広く全国的にということは今後検討をしていく必要があると思っております。それは、教育の機会均等という観点でも今後検討してまいりたいと思います。

小宮山(洋)委員 それで、公立の夜間中学校がある地方自治体も、財政が苦しいので支援を削減する動きがあります。大阪府では、就学援助のうち通学定期だけは府がやるけれども、あとの学用品費とか給食費などは、今後は市町村が負担するように言っているんです。ところが、市町村が負担しなかったらこれはどうなるのかという心配の声が大変強い。もっと支援を国がするべきだと思いますけれども、どうでしょうか。

金森政府参考人 御指摘ございましたように、大阪府では、夜間中学に通う者に対して市町村が援助を行った場合に、市町村に対して大阪府が補助を行っていると伺っております。

 一方、経済的理由によって就学困難な学齢児童生徒の保護者に対しましては、学校教育法第十九条の規定によって、市町村において就学援助が実施されているところでございまして、国は、市町村が要保護児童生徒に対し行った援助について補助を実施しており、これは夜間中学通学者も対象としているところでございます。

 なお、義務教育を修了しないまま学齢を超過した者に対する支援は、各自治体の判断によるものと承知しております。

小宮山(洋)委員 時間があと一分になってしまいましたので、後ろの方はまとめて最後に大臣に伺いたいと思うんですけれども、あと、自主夜間中学校というのがあるんですね。これも、行政にかわって義務教育未修了者の教育の権利を保障しているので、もっと施設提供や財政補助があっていいのではないか。それから、今ある既存の小中学校や特別支援学校で受け入れる方法とか、各都道府県で、通信教育とか個人教師の派遣とか、可能性をいろいろ考えてほしいと思うんです。

 民主党は、参議院に提出する学校教育環境整備法案に夜間中学や外国人学校の環境整備も入れているんです。こうしたことにぜひ積極的にお取り組みいただきたいことを申し上げて、お答えを聞いて私の質問を終わりたいと思います。

岩屋委員長 塩谷大臣、簡潔に願います。

塩谷国務大臣 夜間中学については、今後、いろいろなニーズも含め、また、地域的な教育のいわゆる充実等々、自主的な夜間中学のお話もございましたが、そういったところをしっかりと支援すべく、我々としては、特に地方公共団体と連携をとって今後検討してまいりたいと思っております。

小宮山(洋)委員 よろしくお願いします。終わります。

岩屋委員長 以上で小宮山君の質疑は終わりました。

 次に、笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 塩谷大臣とは初めて質疑の方、また、教育については、これは我々民主党も私自身もですけれども、本当に党派の対立ということではなくて、やはりしっかりと人づくりを進めていくためには協力できる部分は大いに協力をしなければならないということでまた臨んでまいりたいと思うので、きょうは主に二つの点で大臣と議論をさせていただきたいと思っております。

 最初に、非常に景気が悪化をし、あるいは雇用情勢が極めて深刻な状況になっていく中で、少なくとも、経済的な理由から子供たちの学ぶ機会というものが奪われるようなことがあってはならないし、そこにゆがんだ、チャンスという意味での、機会という意味での格差が生まれることはあってはならない。私は、これはやはり国としての責任のもと、しっかりとこうしたことについては対応していくべきであると思っております。

 それで、昨年の秋以来さまざま、こういう未曾有の危機である、あるいは百年に一度の危機であるというようなことを麻生総理もおっしゃっているわけですけれども、当然ながら、そうした状況を厳しく受けとめていれば、こういう状況の中において、教育の機会というものをどうやって守っていくのか。大臣も、所信の中でも、経済的理由により修学が困難になるなど手厚い支援が必要な子供たちや発達障害を含めて障害のある子供たちに対する支援をしっかり進めていきたいということをおっしゃっていました。

 それで、私、文科省の方に、これは本当にそうはない事態ですから、当然、来年度の、今参議院で審議をされている平成二十一年度予算、あるいは先般の二次補正予算、そしてこれから追加の経済対策をさらに補正予算でやるというような方針も示されておるようですけれども、そういう中で、どういうことが必要なのか、何を備えておかなければいけないのか、そこらあたりをしっかりとまとめているのかということで、先般依頼をさせていただきました。

 お手元にお配りした資料、この1の資料が二枚組でございます、これが文科省から出てきたものでございますが、大臣、これで十分だとお考えでしょうか。まずその認識をお伺いさせていただきたいと思います。

塩谷国務大臣 まず、現状の厳しい経済状況において、例えば授業料が払えないとか、あるいは入学金とか生活費もあるんですが、そういう状況の中で、実際に学校をやめなければならない、そういう事例がふえていることは承知しておりますが、それに対してできるだけの対応ができるように、現在の法的あるいは予算的措置で今最大限の努力をしていると思っておりまして、来年度予算についてもその措置を今計上しているところでございますので、実態がまたこれから進展する、あるいは、どういう状況になるかということをできるだけ細かく把握しながら対応していかなければならないと思っております。

 十分だとはなかなか言い切れないところもありますし、実態も、できるだけ我々把握しているつもりですが、まだまだ明確になっていない点もありますので、そういうところもとらえて、今後柔軟に、また臨機応変に対応していかなきゃならぬと思っております。

笠委員 今大臣がおっしゃったように、やはり実態の把握ということがなければ、当然ながら、何を対策として、政策として講じていけばいいのか、あるいは予算をどの程度確保していかなきゃならないのか、それは当然、その前提としては実態の把握があるわけです。

 私、「主な施策について」ということでいただいたものを見て、確かに、私立高校の授業料の軽減、そして地方交付税をというような新しい措置等々もありますけれども、大体が従来の、この平成二十年度の、本年度の当初予算と比べてもそう金額に変わりもないし、とても危機感を持って対応するんだという意思の感じられる予算ではないなというふうに私は感じるんです。

 だから、まだ次の大型の補正予算というものがもしあるとすれば、まだまだそこでしっかりと盛り込んでいくことをすればいいので、まずはその実態の把握ということ、これが非常に私は甘いんじゃないかということで、幾つかちょっと具体的に指摘をさせていただきたいと思います。

 先般、高等学校の中退者数というのが今約七万三千人、そのうち経済的な理由が原因というのが二千六百人、三・六%というような数値を文科省の方でもまとめておられるようですけれども、これは今後もっとふえていくと私は思うんですね。

 それと同時に、実は、進路変更というのが三三・二%ということで、かなり、中退の理由の三分の一ぐらいを占めているんですね。あるいは、家庭の事情、四・四%。この辺の、合わせて約四割ぐらいの中には、この進路変更というのには就職をするという人も入っていると伺っているんですけれども、実は、金銭的に、財政的になかなか大変だということで、高校で勉強していたけれども働かなきゃいけないというような人も含まれているんじゃないかと思うんですよ。その辺について、お答えをいただければと思います。

金森政府参考人 文部科学省が実施しております児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査におきましては、高等学校中途退学者の理由につきましては、経済的理由のほかに、御指摘ございましたように進路変更、また学業不振などの分類を設けておりまして、同一の退学者について複数の理由がある場合には主たる理由を一つ選ぶことといたしております。

 したがいまして、主たる理由が進路変更である者の中には、従たる理由が経済的理由である者も含まれている可能性はあると考えているところでございます。

笠委員 私は、特に今、景気、経済状況がこういう極めて深刻な事態ですから、その辺はやはりきめ細かくしっかりと、やはり数値として、複数でもいいですよ、別に一〇〇にそろえる必要はないんですよ。主たる理由が進路変更、しかし、その進路変更の中でも本当にやむを得ず今から働かなきゃいけないというような生徒さんを、やはりしっかりと救っていかなきゃいけない。ですから、その辺の把握というものについてはきちっとした形で、これは大臣、ぜひ調べていただきたいと私は思っております。

 そして、これも先般発表された中で、特にこれは私立高校の授業料の滞納者が二万四千四百九十人。これが昨年末、平成二十年十二月三十一日時点ということで、平成十九年度末は七千八百二十七人だったわけですね。約三倍にふえているわけですよ。ということは、ひょっとしたらこれは年度末になるともっと膨らむのか。まあ、授業料なので、もう既に大体年度の始まりで把握している数字でそう変わらないのか、そこはちょっとよくわかりませんけれども。

 こうしたことからも、経済的な理由から中退を余儀なくされたり、あるいは意欲はあっても大学進学をあきらめざるを得ない、そういう生徒さんがふえるんじゃないかというふうに思うんですけれども、その点はどのように認識されているでしょうか。

金森政府参考人 大学進学につきまして、経済的理由により大学進学をあきらめる者がふえるのではないかという御指摘でございます。

 私ども、大学進学を経済的理由によりあきらめた人数がどのくらいあるのかということを把握しているわけではございませんけれども、各高等学校におきましては、こうした経済的理由により大学進学が困難な生徒に対しましては、入学後に授業料減免の制度を活用することも可能であるというような、きめ細かな進路に関する情報を生徒に伝えるように努めているところでございます。

 文部科学省といたしましても、今後、都道府県教育委員会の関係の会議などを通して、こうした制度の活用を学校に対して周知するよう促してまいりたいと考えているところでございます。

笠委員 周知徹底することも大事だと思いますし、現在の制度を確かに知らない、あるいは、それが学校の関係者ぐらいまではわかっていても、すべての保護者の皆さん等々に、あるいは本人、子供たちにそれが徹底されていないという部分は当然やらなきゃいけないんですけれども。

 やはり、これは本当にこういう状況だからこそ、先般、内定者の取り消しだって調査をしていただいた。しかし、もう先手先手を打って、やはり当然、今度二〇〇九年問題というのもあるわけですよね。だから、もっと雇用の状況は悪くなるわけです。そうすると、もう途中、大体が年度の始まりにあわせていろいろなことが計画できればいいんですけれども、突然来るわけですよ。だから、私は、そのためのセーフティーネットというものはしっかりと用意をしていくということが大事ですし、また、例えば大学に行くと七割の方は私立に行っているわけですから、授業料だけじゃなくて、やはり入学しようにも入学金はどうするんだというようなこともあるわけですね。

 だから、本当に時限的な緊急措置だっていいわけですよ。何か今の奨学金のあり方というものを、こうした緊急事態を受けて少し御検討いただいて、そうしたこともやはり具体的にこの予算を含めて、財政的な措置も含めて、私はその対応を前向きに検討していただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 大変緊急的な厳しい経済状況で、さまざまな生徒、学生にかかわる問題が出ております。

 私どもも今までの対策、対応について実は整理をして、けさマスコミ等にもそういったことをぜひまずは周知徹底してほしいと協力を求めたところでございまして、いろいろなところからそれを知らなかったとか、そういうことがありますので、現行の対応策で、かなりそれで対応できるところがあると思っておりますし、また、今後どういう展開になるか、非常に厳しい状況の中でいろいろな予測をしながら対応をしていかなければならないと思っておりますので、来年度の予算が成立した上で、また新たな経済対策等が今検討をされているということでありまして、そういう中でもしっかりと対応をしてまいりたいと思います。

笠委員 これは本当にお願いをしたいと思います。そして、そのためにも、少し想定されるいろいろな事態を文科省の中で、これはもちろん地方の教育委員会を含め、あるいは自治体を含めたところの協力も必要だと思いますけれども、やはり現状の把握と、今後予想される最悪な事態というものもしっかりと頭の中に入れて、文科省としての取り組み、あるいは方針、そういったものを示していただければと私は思っております。それはよろしくお願いいたしたいと思います。

 次に、朝一番の質問の中でもありましたけれども、私は実は何度も取り上げてきているんですが、学校の耐震化の問題について、ちょっと改めて幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 お手元の資料において、二番目の資料にあるように、これはもう何度も何度も、私は去年の予算委員会でも質問させていただいておりますけれども、本当に遅々として進まないんですね。耐震化率、このままのペースでいけば、大体今は四%前後で推移をしておりますから、これは普通に考えれば最低十年ぐらいかかっちゃうんですよ、一〇〇%になるためには。もちろん、特に危険性の高い、倒壊のおそれのあるものについての一万棟ということについては、緊急措置的なものも昨年、全党で協力をして法的な措置が実現したわけですけれども、やはり大臣、これはもっとスピードアップしましょうよ、この一万棟だけじゃなくて。

 まず、そのことについて、具体的なことじゃなくこの耐震化を、全体を前倒しするというようなお気持ちがあるかどうか、その点の大臣の認識をお願いいたしたいと思います。

塩谷国務大臣 耐震化については、今お話があった倒壊の危険性のある一万棟を今早急に整備するべく努力をしておりますが、全体の耐震化についてはもちろん私どももしっかりと対応をしていかなきゃならぬと思っております。

 ただ、全部一遍にということではなくて、やはり危険性の高いものから今随時やっている状況でありますので、当然ながら、その他のものについても、一応一万棟についてのめどがつきつつありますので、それが終わればすぐに新しい目標を持って、全体の耐震化を進めてまいりたいと考えております。

笠委員 ちょっとこの後、またこの一万棟のこともあわせてお伺いをしますけれども、少なくとも、この一万棟に含まれる可能性の高いものがまだ未診断の中にはある可能性は十分にあるのではないかと私は思っているんですね。

 何で診断実施率すらが一〇〇%にならないのか。それはどういう要因だというふうに分析をされておるでしょうか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生の資料にもあるとおり、昨年の四月の段階での耐震化診断実施率が九三・八%という状況でございます。この耐震診断につきましても、二次診断、一次診断と三段階の診断がございまして、市町村におきましては、耐震化の診断をした上で予算を確保して耐震計画を実施していく、そういう見通しが立ったところで耐震診断を実施したいという考えがあったところもあるようでございますけれども、昨年の六月の地震対策防災措置法の改正をいただきまして、耐震診断の実施、またその結果の公表について義務づけをいただいたところでございます。

 この法改正を受けまして、私ども文部科学省におきましては、各市町村に対しまして数次にわたり通知を行いまして、また個別に市町村を訪問して、市町村長さん方あるいは教育委員会に対しまして、公立小中学校施設の耐震診断について速やかな完了を求めているところでございます。

 この二月の段階で、実施状況、耐震診断の完了見込みがあるかどうかという状況を把握しているところでございますけれども、おおむね八割ぐらいの市町村が、近いうちにすべてについて耐震診断を終えることができるという見通しを持っているようでございますけれども、まだ見通しが持てていない市町村に対しましては、早急に完了するよう強く実施を求めてまいりたいと考えております。

笠委員 八割のというのは、恐らく、まだ実施されていない自治体の八割ということでよろしいんでしょうか。ということは、それがすべて終わったとすると、この九三・八%がどれぐらいになるんですか。

布村政府参考人 先ほど八割と申し上げましたのが、市町村のすべての学校について耐震診断が終わっている、これはもちろん昭和五十七年以前に建てられた建物が一つの前提となりますけれども、それが実施いただければ一〇〇%に近い数字になり得ると思っております。

笠委員 義務づけたわけですから、これはやはり本当にやってもらわなきゃ困るんですよね。ただ、中には、耐震化もそうですけれども、診断も一次診断だけでいいのか。あるいは、二次診断となると、これは小さな市町村にとってはかなりの、たしか二、三百万ぐらいかかるんですか、二次診断は平均すると。一次診断は二、三十万ですか、その一割ぐらいで済むんでしょうけれども。本当に今、財政的に自治体も厳しいですよね。だから、そういう中でもやはり最優先でやっていただくためには、何かもう少し考えないといけないのか。これはちょっとこの後、耐震化の話も含めてまたお伺いをさせていただきたいと思います。

 それで、次に、資料の三番の方で配付をさせていただいておりますけれども、先ほど来の一万棟ということで、前倒しをして平成二十三年度までにこれを完了するんだということを大臣もお約束しているわけですが、ちょっとこれは状況をお伺いしたいと思います。

 今、平成二十年の四月一日現在の数値しか出ていないんですが、もう間もなく二十一年の四月一日になるんですけれども、これは予定どおり進んでいるんでしょうか。状況についてお答えください。

布村政府参考人 お答えいたします。

 地震による倒壊の危険性の高いIs値〇・三未満の公立小中学校施設の耐震化について、最優先の課題として取り組んでいるところでございます。

 二十年度の一次補正、二次補正、そして現在参議院で審議いただいております二十一年度本予算の必要な額を合わせまして、二千八百億円という予算の計上をさせていただいているところでございます。それらを通じて、五千百棟という予算の確保につながっておるわけでございます。

 そして、それ以前の十九年度、それから二十年度の予算を加えまして、一万棟のうち七千六百棟についての予算が確保できておりますので、それらを、今市町村で急ぎ耐震化に取り組んでいただいている状況でございます。さらに、二十一年度予算で見込んでおります千五百棟分につきましても、予算が成立し次第、速やかに耐震化に取り組んでいただくという流れでございます。

 そして、二十一年度予算までに予算措置がされておりません棟数が残り千五百棟ほどになりますので、文部科学省としては、これらにつきましても速やかに予算措置を行い、二十三年度までの完了を目指して地方公共団体への支援に努めていきたいというふうに考えております。

笠委員 私が聞いているのは、今現在、今年度末でこの約一万六百がどれぐらいになるんですか、今のところ、見込みで。もうそれはわかっていますよね。

布村政府参考人 一万棟の耐震の実施状況でございますけれども、先ほど、五千百棟分の確保、それから二十一年度予算で千五百棟ということを申し上げましたけれども、現在予算の確保ができております五千百棟分、二千八百億円分につきましても、現在市町村において、耐震診断、耐震設計、そして耐震の工事という流れの中で積極的に取り組んでいただいているところでございます。

 ですから、今、工事の進捗中という状況でございますので、予算の上では、二十一年度予算が成立していただければ、それを執行する。それを前提にすれば、残り千五百棟というのが今の状況でございます。

笠委員 いや、そうではなくて。

 では、今、どれだけの学校がもう工事に着手しているんですか。要するに、これは二十三年度で「一万棟耐震化完了」と書いてあるでしょう。完了するんでしょう。予算措置が完了という意味ですか、これは。

布村政府参考人 十分御説明できなくて恐縮でございますけれども、予算を確保した上で、市町村におきましては、耐震診断、耐震設計、そして耐震の工事という形で、通常二年ぐらいの期間を要するものでございますので、予算が成立したものについては工事に着手していただいておりますので、それが二年以内に終わっていくという流れでございますので、二十一年度予算が成立した後、残り千五百棟につきましても、予算を確保し次第、できるだけ速やかに市町村には取り組んでいただくという流れになります。

笠委員 そうすると、これは表現を変えないといけないですよね。要するに、二十三年度に完了するためには、例えば、平成二十二年度予算、二十三年度予算で最後の千五百棟の予算を確保するわけでしょう。それから二年間かかるわけじゃないですか。そうしたら、これは前倒しじゃないじゃないですか。二十五年度に完了でしょう。そういうことでしょう、今の説明だったら。二十三年度に完了させるんだったら、予算をもっと前倒ししないといけないんじゃないか、二年間。そうでしょう。要するに、我々は、そういう思いでみんないるんだと思いますよ、前倒ししてやろうよと。これじゃ誤解を生みますよね。

 大臣、今のお話だと、二十三年度で仮にこのまま順調にきちっと予算が確保されたとしても、完成はそれから二年間ぐらいかかるということになると、これは二十五年度に完了ということになるわけですから、そこの表現を変えていただくのか、あるいは、私は二十三年度までにやるべきだと思っているんですよ。

 だったら、前倒しすればいいじゃないですか。今度の景気対策でもいいですよ、追加の経済対策でも。前倒しして、これからの、残りの千五百分を次の補正予算でぜひ予算を確保して、二十三年度までに完了させましょうよ。いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 この完了の意味をしっかりと明確にすることは必要だと思っております。

 今現在、当初の予定より当然前倒しして、予算をつけて、市町村の財政状況も踏まえて今やっておりますので、単に前倒ししたからすぐ進むというのはなかなか、これはもちろん財政的な面とそれから実際に工事を担当する業者の面とあわせて、また学校も結局夏休みぐらいしか実際に工事が集中してできない、そういったものもありますので、今、そういった状況を踏まえて、決して前倒しできていないということじゃなくて、しっかりとそれも含めて前倒しをしております。

 ただ、千五百棟、これは少なくとも今の予定より早く、補正とか、来年度になったらそういうことも出てくるでしょうし、予算自体は二十一年、二十二年では最低限つけていきたいなという気持ちも私はありますし、先ほど来お話ありますように、あとの、Is値〇・三以上の三万八千棟もいち早く手をつけなきゃならないと思っておりますので、完了時期の明確化と、そして、もう一度、それに伴って前倒しをどこまでできるかということをしっかり検討してまいりたいと思います。

笠委員 ですから、大臣、我々も協力しますので、とにかく二十三年度までに、もちろんその中で自治体のいろいろな、私もよく存じ上げています、確かに夏休みの時期を利用したりで、一気にすべて一年間でやるというわけにはいかなくて、幾つかに分けてやらざるを得ないというような、そういう事情はわかるんですよ。ただ、やはり基本的に二十三年度までに完了させるんだと。

 だから、あと三年間あるわけですよ。三年間でしっかりとこの一万棟については完了させるということを前提に予算の確保もし、あるいは自治体の方にもしっかりとその計画を立てさせて、そして協力をして、これは必ず完了させるというような形で取り組むべきだと思うんですよ。そうしないと、これは三年、四年、またさらに結果としては先延ばしになるし、恐らく一〇〇%になりませんよ。

 だから、その決意をぜひ大臣。ぜひ協力してやりましょう。そのことを改めてお伺いしたいと思います。

塩谷国務大臣 この耐震化については早期にやりたいと私も思っておりまして、今回、具体的に前倒し等の予算を措置しているわけでございます。

 改めて、今完了時期の話もございましたし、二十三年度内にやるという決意のもとでしっかりと準備を進めてまいりたいと思っております。今、事務方とも細かい話も一回させていただいて、気持ちの上ではそのつもりで頑張ってやりたいと思っておりますので、またよろしくお願いしたいと思います。

笠委員 これは本当に私は、子供たちの安全を守るだけじゃなくて、追加の経済対策としても、これを一気にやっていこうということになれば、何も大手のゼネコンを使う必要はないんですよ。やはり今地場の中小零細企業が大変困っておられる、そういうところのまた雇用の確保やあるいは景気対策にもなっていくわけですから、そういう意味ではぜひ最優先として、もし大型の補正ということになるのであれば大胆に、これは文科省の皆さんも大臣のリーダーシップで頑張っていただいて、やっていただきたいと思います。

 これは最後にちょっと御指摘したいんですが、もちろんこの一万棟ですべてではございません。今、約千八百七十ぐらいの設置者、市町村があるわけですけれども、耐震化が一〇〇%行われているところはまだ二百強ですよ。そして、五十六年以前の建物、要は耐震化が必要な建物については全く耐震化率〇%、そういう設置者が三百六十を超えるぐらいあるわけです。ですから、この地方の格差というものについてもやはり国が埋めていかなきゃなりませんので、ぜひこの耐震化については大臣のもとで頑張っていただきたいという要請をして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

岩屋委員長 以上で笠君の質疑は終わりました。

 この際、本会議散会後直ちに委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。

    午後零時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四十二分開議

岩屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 本会議に引き続いて開催されるこの文部科学委員会で質問の機会をちょうだいいたしました。本日、政府参考人には御遠慮いただいて、大臣所信に対する質疑ということでございますので、塩谷大臣、どうぞよろしく御答弁をお願い申し上げたいと思います。

 今国会における所信を拝聴いたしまして、重点的に取り組みたい三つの事項ということでお示しをいただきました。生きる基本の徹底、学校体系・学校制度、教育費に関する三つの点、この点については、前向きな姿勢だというふうに私は受けとめさせていただいたところであり、敬意を表したいと思っております。

 ただ、この生きる基本について五つの御提案をなさいました。「読み書きそろばん・外遊び」、随分ごろ合わせがお気に召していらっしゃるのかなというふうに思ったんですけれども、その次に挙がっております「校訓を見つめ直し、実践する。」という点が私どもひっかかりました。「校訓を見つめ直し、実践する。」一体どのような意図でこれを御提案されたのか、冒頭、まずお聞かせいただけませんでしょうか。

塩谷国務大臣 「心を育む」五つの提案ということでお示しさせていただきましたが、その中で、「校訓を見つめ直し、実践する。」ということは、実は、学校もそうですし、例えば各自治体なんかも、こういう人間を育てようとかあいさつしようとかというところから含めて、結構標語をもって市民なり学校に呼びかけていることがたくさんあると思うんです。その一つの象徴的な存在として校訓ということを私は挙げて、校訓、例えば誠実とか勇気とか、いろいろあるんですね。ですから、そういうことを見詰めて、そして、それに基づいて大体学校の目標とかというのを立てておりますので、そこは学校教育の中でもう一度見詰め直して実践をしてもらいたい。

 それで、今申し上げました学校だけじゃなくて、その地域、例えば東京都なんかも、人づくりの七つの提案、石原知事がやっていたり、自治体を調べますと、かなり多くの自治体がそういう目標を掲げて人づくりについて提案をしておりますので、そういったところを見詰め直してそれをみんなで実践しようという思いがあって、ただ、いろいろ言えないものですから、校訓を一つの象徴的な存在としてそういう言い方をさせていただきました。

田島(一)委員 つまり、年度当初に各学校の校長先生を中心に教育目標をお立てになられる、それと一緒だというふうに認識していいのでしょうか。

 実は、校訓とよく似た言葉で、例えば会社でしたら社訓であるとか社是だとか、いわゆるその会社の屋台骨ともいうべき、脈々と歴史の中で連綿と続いてきたものがやはりあるわけでありますが、私、自分自身が学んできた学校に校訓というのがあるんだろうかと改めて今回、大臣のこの御提案を見てから振り返ったんです。ところが、校訓らしきものが見当たらない。しかし、ないにもかかわらず見詰め直せと大臣がそうおっしゃるには、我々国民に知らされていないところで校訓というものがつくられているんだろうか、それとも、ないところにはつくれというふうにお考えなのか、各学校が年度当初にお立てになられる教育目標ではだめなんだろうか、そんなふうに実は疑問を持った次第であります。

 大臣の御出身の静岡高校では、「〓高」<※注>、高きを仰ぐという校訓がありました。私自身、質問する以上勉強しておかないとなと思って調べ上げたんですけれども。歴史の中でやはり脈々と続いてきている校訓というものはそれなりの位置づけで学生たちもわかっていると思うんですが、校風とまた校訓と全然違うわけですね。だれがつくったのかわからないけれども、脈々と歴史の中で培われてきているという、それが校訓だと私は認識をしておりました。

 今までの文部科学省からの提案等々の中に出てこなかった校訓というキーワードがいきなり出てくると、何やら、学校の目標を立てろ、それを現場に、強要とは言いたくないんですけれども、なさるのは余り大臣がすべきことではないんじゃないかな、そんなふうに実は思ったわけであります。

 現場の自主性をやはりとうとびながらも、それでいて、教育方針をしっかりと、地域であるとか、また学校、そして生徒児童も含めてみんなでやはり育てていく、守っていく、目指していく、これが本来の教育目標、おっしゃる校訓ではないのかなというふうに思いますが、この認識は違いますでしょうか。

塩谷国務大臣 もとより、教育については国民総がかりでということを申し上げていまして、私が申し上げた校訓、そこに示した校訓というのは、先ほど申し上げましたように、いろいろな地域でも学校でもそういった目指すところを掲げている、そういうものとして挙げたわけでございまして、必ずしも学校で校訓をどうしろということを直接言ったつもりじゃないんですね。

 ですからそれは、象徴的な存在として、教育の場としての学校に、全部あるかどうかわかりませんけれども、要は、毎年度、例えば目標というのは、多分、校訓というものがあってそこに目標が掲げられる、そういうやり方を大体やっておりますので、ですから、校訓がないところはないところで目標で結構ですし、そういう意味で、目標、校訓、あるいは何とかと全部挙げるわけにもいかなかったからそういう形で示したわけでして、決して文部科学省から国がそういうことをやれということではなくて、校訓についても学校独自でやっているでしょうし、目標もそうでしょうし、それをしっかりもう一度みんなで見詰め直して実践しようじゃないかということですね。そういう意味でございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

田島(一)委員 大臣の発言はやはり重いわけでありますから、それぞれの自治体の教育委員会、また各学校の校長等々は、やはり校訓をつくらなきゃ、絶対そういうふうに思われる方もあると思います。そういう意味では、書かれた割には何か案外軽くお書きになられたのかなというふうにも思ったものですから、そこのところはぜひ慎重に言葉を選んでいただきたい、そんな思いであります。

 教育方針、目標を立てることに何ら私も異論はありませんので、その点を申し上げておいて、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 同じく、所信の中での大きな重点事項の一つに挙がっておる「教育費」の中で、奨学金が挙げられています。この奨学金についてお尋ねしたいんです。教育の機会を確保するため、経済的理由により修学が困難になるなど手厚い支援が必要な子供たちに対する支援を進めてまいりますと「教育費」の冒頭におっしゃられ、内容として、現下の経済状況の悪化に対応できるよう、学生に対する奨学金の貸与人員を拡充することと、各高等学校、大学が実施する授業料等の納付が困難な者に対する減免措置等を引き続き積極的に支援していくというふうにおっしゃられました。

 減免措置等はちょっとおいておきまして、学生に対する奨学金の現在の貸与状況、また、制度自体そのものを大臣はどのような御認識で見詰めていらっしゃるのか。まず、奨学金制度に対する認識についてお示しいただけませんでしょうか。

塩谷国務大臣 我が国の奨学金制度につきましては、国の教育政策の一環として、日本学生支援機構が実施している奨学金制度を中心として、あと、都道府県あるいは公益法人等の奨学事業があるわけでございます。

 このような奨学金事業によって多くの学生が進学して教育の機会均等を実質的に確保することに貢献していると思っておりますので、現状では、毎年その貸与人数等を拡充して、できるだけ多くの方々にこの奨学金制度を利用していただき、そういった経済的に厳しい人たちに対して教育の機会を与えてまいりたいと考えているところであります。

田島(一)委員 今、この奨学金制度、長い歴史の中で修学支援として多くの学生たちに学ぶ機会を与えてきたその功績と実績に対して、私も高く評価をしてきたところであります。しかし、現況をどのように認識すべきかを考えたとき、さまざまな問題点が出てきているのも事実であります。

 とりわけ、借りた人は必ず返さなければならないというこの奨学金のルールがあるわけでありますが、この未返済の額が大変大きく膨れ上がってまいりました。平成十九年度末では六百四十五億円の返済延滞にまで上っておる。奨学金の回収強化策が日本学生支援機構の中で議論を呼んでいるところでもあります。

 大変ゆゆしき事態であり、存続自体も大変厳しくなる。政府から幾ら原資を投入したとしても、将来的にわたってずっと安定的な奨学金制度を維持できるかどうか非常にわからないような状況にまで追いやられているというのは大変問題だというふうにも思っておりますが、こうした延滞額がふえ続けているという事実、この背景を大臣はどのように受けとめていらっしゃり、また、その原因は一体何だというふうに思っていらっしゃるのか、お示しいただけませんでしょうか。

塩谷国務大臣 奨学金の延滞額については年々増加しているわけでございますが、一つは、この原因として、貸与総額全体が増加しているということがあるわけでございます。同時に、最近の経済状況の中で、なかなか返金ができない、返すことができないという人も多分出ていると思います。

 ただ、こういった方々には猶予制度もありますし、いろいろな意味で、私どもとしては、この事業は拡大してまいる中で、当然、継続していくためにはこの返還が必要でありますので、それが原資として次の奨学金ということになりますので、この返還については、民間委託も積極的に利用しながらしっかりと対応していきたいと考えております。

田島(一)委員 今、貸与総額が膨れ上がってきたのが原因だというふうにおっしゃいました。貸与総額が膨れ上がるということは、貸し出しする対象の学生の数自体もやはりふえているというわけであります。

 機構が出しているさまざまな資料をひもといてみますと、この十年間で事業費自体は三・五倍に膨れ上がりました。そして、貸与されている人数も二・四倍に膨れ上がっています。こうした事実、事業費全体を抑えていこうとするのであるならば、貸与人数を落とすか、もしくは一人当たりの貸与額を減らすかという方法でしか、先ほど大臣のおっしゃってくださった原因を解消する方法はありません。

 しかし、今回、大臣所信の中では、「奨学金の貸与人員を拡充する」というふうにおっしゃったわけでありますから、見方を変えれば、事業費を抑えなきゃいけないという問題意識がある一方で、貸与人員をふやせば必然的に一人当たりの貸与額が減っていくのではないかな、そんなふうに心配をするんですけれども、これは私の取り越し苦労でしょうか。その辺、どのようにお考えですか。

塩谷国務大臣 奨学金事業費を抑えるということは私は申し上げていないと思うんですが、これ、毎年貸与人数を拡大して事業自体を拡大していく方向で今やっておりますので、事業費を抑えるということは、そういう考えは今のところありません。

田島(一)委員 つい先日、今週、三月九日月曜日の朝日新聞の特集、「奨学金未返済どう対処」ということで、文部科学省から天下りをされて機構の理事になっていらっしゃる尾山さんの記事が上がっています。その中で、延滞債権額の増加原因は、事業規模の拡大が理由の一つだというふうにおっしゃっていらっしゃいます。事業規模を抑えないと延滞債権額は減らないというふうに裏を返せば読み取れるんですけれども、事業規模を抑えつつも、それでいて貸与人員を拡大するというのはどうも矛盾しているように私は思ったんです。

 そこで、大臣に改めてこのようにしてお伺いをさせていただいたんですが、では、事業規模の拡大は延滞債権額の増加原因ではないというふうにお考えかどうか、その辺をお聞かせいただけないでしょうか。

塩谷国務大臣 私は事業費の増大が延滞額の増大につながっていると思っておりますので、それはやはり、貸与人数それから額がふえれば、それだけ返還が難しい人が比例的にふえていくだろうと思っております。

 ただ、それとは別に、やはり返還努力はしていかなきゃならぬと思っておりますので、民間委託を含めて、今努力を進めていこうと思っております。

田島(一)委員 次、質問を用意していた部分で、どのような対応策を考えられているのかというところで民間委託という案も今お示しをいただいたところでありますが、昨年六月に日本学生支援機構が有識者会議を設けて、その中で意見が出てまいりました。この意見を踏まえて、先ほどの民間委託というお話もありましたけれども、別に、滞納者の情報を銀行系の個人信用情報、いわゆる個信に登録するという制度の導入が検討されているようであります。

 個信への登録、銀行系の個人信用情報に登録をする。これを導入すると、まあ、滞納した人が悪いといえば悪いんでしょうけれども、いろいろな理由があろうかと思います。将来、その人が住宅を購入、自動車を購入するときに、さまざまなローンを組もうとされるんでしょうけれども、そのローン自体がもう組めなくなってしまう。将来の人生設計等にさまざまな制約であるとか影響を及ぼしかねない。そこまでメスを入れるということを御提案されているわけであります。

 この個信への登録制度を導入するという点についても、大臣は当然だというふうにお考えなのかどうか、お考えを聞かせてください。

塩谷国務大臣 個人信用情報機関の活用につきましては、延滞者の情報をその機関に提供することによって、延滞者への各種ローン等の過剰貸し付けを抑制する、あるいは多重債務化への移行を防止する観点からは、有意義だと私ども考えております。

 しかしながら、個人信用情報機関を利用するに当たっては、利用者が学生であることを勘案して、奨学者として採用する際の与信情報は活用しない、あるいは登録する情報は延滞者に限定するなど教育的配慮をしているところでございまして、こういった情報機関を活用することが本当にいいかどうかというのは疑問も残るところでありますが、いろいろな教育的配慮も踏まえて、やはり延滞者に対しては、ある程度いろいろな措置を講じてその返還をしていただきたいという一つの方法だと思っております。

田島(一)委員 貸与制が基本でありますから、返すのは当然のことだと思っております。しかし、こうした、返したくても返せないという何らかの事情がある人たちもおり、そういう人たちに対して機構側もさまざまな猶予策というものも御用意をされているんですが、残念ながら、それが十分に周知徹底されていないという問題も指摘をされています。この点は、もう何があってもやはり学生たちに、無理をするな、それでも返せるときにきちっと返しなさいというような、ありとあらゆる状況、また情報をきちっとお伝えしていただく努力はぜひ重ねていただきたいというふうに思います。

 それとは別に、現在やはり問題になっている、就職内定を取り消された学生に対してどのようにフォローアップをし、また、その中でもとりわけ奨学金を借りていらっしゃる方々が、本当ならば内定していた企業に就職をして、そこでいただいた給料を原資にして返済をしようと考えていたわけでありますけれども、それの返済のめどが立たなくなってきたという状況が今あります。希望する職種に就職をするため、ことし四月の就職をあきらめて、もし来年四月の就職を目指そうとした場合、奨学金の返還というものが猶予されるのかどうか。この点について、文科省として明確に、ぜひ不安に思っている学生たちに向けたメッセージとしてお答えをいただけないでしょうか。

塩谷国務大臣 今お話しあったような内定取り消し等のそういった事態に対しては、返還猶予ということで私どもしっかりとそういう制度で対応したいと思っておりますので、そういうところは、今委員おっしゃったような、我々が周知徹底していないところもあるかもしれませんが、ぜひ相談していただいて、個別にしっかり対応してまいりたいと思います。

田島(一)委員 何としても返済が滞っている方々にきちっと返していただくように促していく努力、そして、猶予もあるんですよということをきちっと伝えていく努力、まだまだやらなければならない課題はたくさんあろうかと思います。

 しかし、この延滞額を少しでも軽くしていくために、とにかく民間に委託をするであるとか、個人情報の登録もやむなしというような、結構、民間の貸金業と変わらないような今方向にこれは進みつつあるのではないかというふうに私は心配をしているところであります。

 そもそも、十年間でこの事業費がどう変わったか先ほど申し上げたところでありますけれども、事業費自体は相当ふえました。しかし、奨学金の種類で、有利子の奨学金と無利子の奨学金、二つあるんですけれども、無利子の奨学金自体はさほどふえていない。ふえているのはほとんど有利子で、約十倍ほどこの十年間で有利子のいわゆる奨学金の枠がふえているわけなんです。

 本来、それこそ、かつて育英会という名でこの奨学金制度を立ち上げた当時というのは、無利子がやはりメーンだったわけであります。額としても十年前でしたら七六%が無利子だったのに、今では七割以上が有利子になってしまっています。そうすると、本来持っているこの奨学金制度自体が十年前とでも相当大きく変わってきているんじゃないか、民間の貸し金をなりわいとされている方々とさほど変わりがないんじゃないか、これが果たして政府として、また支援機構としてやるべき奨学金制度として本当に適切なのかな、私はそんなふうに思うわけであります。

 時代が確かに変わってまいりました。近年のこの金融経済不況で就職ができない、また、親も失業して返済めども立たない、そんなケースも出てきています。親の収入の額によって奨学金が受けられる、受けられないというのが決まっている今の制度自体、私はもうそろそろ見直していかなければならない、制度自体を根本から変えていかなければならない、そんな時期が来ているんじゃないかなというふうに思うんですが、このように行き当たりばったり、民間のまねをする、追随するかのようなこの制度自体を、果たして本当にこれでいいと大臣はお考えなのかどうか。

 私、この大臣所信の中にわざわざそうやって盛り込まれたポイントとして、いわゆる貸与人員を拡充するというだけではなく、もう一歩踏み込んだ奨学金制度自体の改革に着手していただけるんじゃないかなと実は期待をしておったんですけれども、残念ながら、そこまで言及されていなかったのが事実であります。

 大臣の覚悟として、奨学金制度でだれでも安心して教育を受けられる機会を保障するという制度自体の原点にもう一度立ち返るというお考えがあるかないか、聞かせていただけないでしょうか。

塩谷国務大臣 もちろん、奨学金の目的とする、だれでもが教育機会を得られるということで、私どもそのつもりでこの奨学金制度を実施しているわけでございまして、かつての育英会のとき無利子が多かった、しかしながら、返還は育英会のときは大変まだ多くて、それがまだ滞っているところもたくさんあるわけでございまして、そういう意味では、やはり実社会のある程度のルールをしっかりと踏まえることも大事でありますので、現在、貸与人数をできるだけ多くしているということは、やはり社会の状況に対応して私どもこたえているつもりでございまして、もちろん、よりよき制度にするためには努力をしていかなければならないと思っておりますが、それには、また返還の問題もしっかりと取り組んでいかなければならない。

 そういう点では、今、社会のといいますか学生の要望にできるだけこたえているのが現状だと思いますので、また今後とも努力を続けてまいりたいと思います。

田島(一)委員 ぜひ根本的な制度の見直しにまで努力を重ねていただきたい、そのことを心からお願いを申し上げて、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 同じくこの所信の中で、今回、「教育費」という部分で、教育の機会を確保するために、ブラジル人等の雇用が不安定になっていることを背景として、定住外国人の子供たちに対する緊急支援策にまで言及をされました。

 この外国人の教育について、先ほど池坊委員の方も質問をされたところでありますが、ちょっとこれからの時間、ぜひ深掘りをさせていただきたいというふうに思います。

 三月二日に塩谷大臣も、御地元、浜松市内にありますエスコーラ・アレグリア・デ・サベールというブラジル人学校を訪問されたというふうにお伺いをしております。いらっしゃったのは初めてですか。率直な訪問されての感想、また、ブラジル人学校の現況を初めてごらんになられてどのような感想を持たれたのか、また、大臣として、ブラジル人の例としてブラジル人学校の現状をどのように把握されているのか、お示しいただけないでしょうか。

塩谷国務大臣 ブラジル人の子供たちの問題につきましては、私の地元である浜松が、数として一番多く在日のブラジル人の労働者の皆さん方そして子供たちが在住しているということで、前々から、その状況そしていろいろな課題については検討して、また対応してきたつもりでございますが、実際に訪問したのは先日が初めてでございます。

 率直に言いまして、やはり今回の経済状況によって昨年から半数近くまで子供たちが減ったという実態、そういう中で、その来なくなった子供たちがどうしているかということも聞きました。三分の一ぐらいは帰った人もいる、公立へこれから行くような人もいる、そして、まだ決まっていない人もいるということで、昨年たしか四百四十名ぐらいの生徒がいたこのエスコーラ・アレグリア・デ・サベールの学校に通っていた子供たちが、四百四十名ぐらいが二百四十名ぐらいになったといいますから二百名ぐらいですか、したがって、大変な厳しさを改めて実感したわけです。

 そういう人たちに対して国として今できる限りの支援をしようということで、当日、ちょうど別なコミュニティ・キッズ教室というものも、これは、教会が学校へ行けなくなった子供たちを集めて日本語教育やスポーツ活動をやっていまして、私どもの緊急対応で日本語教育をする手段としてそういった教会を使ってやっているということでございまして、そういうところも訪問いたしましたが、やはり、経済状況の厳しさによって子供たちの環境が大変厳しくなっているということが実感としてまた私もわかりましたし、課題としても多くの課題を聞いてまいりました。

 したがって、そういった課題を、多分今我が国の場合は、外国人の集住都市が直接いろいろなことを対応していただいておりまして、むしろ国の方の対応がおくれている。今までは各地域、市町村で対応してきたけれども、もうとても市町村だけじゃ間に合わないということで、国と連携して今実行に移しているところでございますので、国としての対応を充実させていきたいと思っております。

田島(一)委員 そもそも、なぜこれだけ日本にブラジル人学校ができたのかという問題意識を皆さんとぜひ共有をさせていただきたいと思っております。

 ブラジルの外務省の人口統計から拾ったんですけれども、実は二〇〇六年の数字ですが、ブラジル人の約三百三万人が海外に今在住していらっしゃるそうであります。その三百三万人の内訳で一番多いのがアメリカ合衆国で、約百二十五万人、三分の一以上はアメリカに移住をされています。四一%ですね。それで二番目がパラグアイ。そして、三番目に来るのが実は日本なんです。日本にいらっしゃっているのが、これは二〇〇六年の数字ですけれども、アメリカの約四分の一に相当する三十一万人のブラジル人が在住していらっしゃいます。

 つまり、アメリカと日本だけをちょっと比べてみるならば、四倍近い数のブラジル人が日本よりもアメリカにいらっしゃるんだということだけは、ぜひまずおわかりをいただきたいと思うのであります。

 ところが、このブラジル人学校の数を見てみますと、日本には、これは年度によって変わってきますし、今お話にもあったように、この経済不況等々で閉校されたり閉めていらっしゃる学校とかも出てきていますから正確な数字ではないんですけれども、手元にある資料の二〇〇八年の六月時点では、百十校にまでふえておりました。

 先ほど、池坊委員の質問に対して各種学校の数を御答弁されましたけれども、あれはあくまで各種学校として認定された学校でありますから、南米は五校だというふうにおっしゃいましたけれども、各種学校に認定されていないブラジル人学校等々、全体ではこの二〇〇八年の六月時点では百十校にまで膨れ上がっているということであります。

 では、ブラジル人の移住者がこの日本よりも四倍多いアメリカは、一体ブラジル学校というのは何校あるんだろうか。普通、統計的にいえば、四百校以上あって当然だろうなと思うんでありますが、実は、アメリカ合衆国にブラジル人学校というのはわずか一校だけであります。アメリカのフロリダ州にある、ブラジル国内の学校がつくった分校、どちらかというと進学校といいますか教育熱心な学校で、ブラジル人のお子さんの中でも比較的裕福な方々が行っていらっしゃるという学校だというふうに私は仄聞をいたしました。

 四倍ブラジル人がアメリカにいる。にもかかわらず、子供の数はアメリカは少ないのかといったら、そんなことはないと思うんですね。でも、アメリカにはわずか一校しかない。ところが、日本には百校以上ある。このおかしな数字の現象、この百十校のうちブラジル教育省が認可をしている学校というのは約半分の五十一校、この二〇〇八年当時ありました。ブラジル政府まで認可をする学校がアメリカにはわずか一校なのに、なぜ日本にはこんなに多いのか。

 この点、私は疑問がわいてくると思うんですけれども、大臣、これはどうしてだというふうにお考えになられますか。率直な御意見を聞かせてください。

塩谷国務大臣 正確な答えではないかもしれませんが、私の感想というか、多分、アメリカは移民の国でありまして、特に公立学校等が外国人をどんどん受け入れて、そのような教育を公立学校でやっている。アメリカの教育の考え方として、それが国際交流だということを常にアメリカの学校では言っておりますので、いろいろな外国の子供たちはそこでみんな同じように学ぶんだと。多分、そこでは英語教育等が集中して行われているような状況があると思いますし、したがって、アメリカに在住する子供たちは、だれでもがどうぞ、どうぞという形で公立学校に通っている状況だと思っております。

 翻って我が国は、外国人に対する対応というのがまことにおくれているといいますか、これはただ単に教育だけじゃなくて、雇用の問題もそうですし、難民から始まって外国人への対応というのは非常におくれているのが現実ですし、そういったことを実は今後どうするかということで、外国人の難民あるいは労働者、社会保障、教育、そういったことに対して、現実として多くの外国人が現在もう日本に在住しておりますので、今後の方向とかを考えるに当たって、麻生総理も官邸にそれに対応する一つの会議を立ち上げたわけですが、そういう中で今回の経済危機ということになったものですから、十分な対応ができていないままこういうことになりまして、したがって、緊急対応的なものと将来の恒久的なもの、この二面性で対応していかなきゃいけないと私は思っております。

 学校については、アメリカが、私が申し上げましたようなそういった公立高校の対応が事実であれば、我が国としてもできるだけ公立高校で受け入れる体制を整えていかなければならないかなと思っておりますが、ただ、言葉の問題というのは非常にやはり大きくて、日本語しかわからない人がいっぱいいますので、そこに、ブラジル人でいけばポルトガル語がわかる人も少ないし、ましてや、そこで中間に入って英語でやるのかということを考えるとなかなか現実は難しいと思いますが、将来的にはやはりそういった対応を考えていかなければならないのではないかなと思っております。

田島(一)委員 考えていくのは、もう将来的というような先送りでは済まされない状況に今あるんですね。先ほどのブラジル人学校、もう今の段階ですと多分百校を切っているんじゃないかというふうに思うんですけれども、現に、今御答弁いただいたように、日本の公教育がしっかりとブラジル人を初め外国の子供さんを受け入れられるだけの体制が整えられていたらば、このブラジル人学校はこんなにふえる必要はなかったんだろうというふうに思います。

 実は、私の地元滋賀県の愛荘町にも、同じように自動車関連の工場がたくさんありますから、コレジオ・サンタナという学校がございます。日本全国の中でブラジル人学校の一番西端にあるのが滋賀県内にあるブラジル人学校でありまして、遠くは大阪からも通っている子供さんがいらっしゃいます。

 このコレジオ・サンタナ、私も昨年の夏に行って、また、つい先日もいろいろと意見を聞かせてもらってきたんですけれども、大臣がいらっしゃった浜松と同様に、昨年十月には七十人いらっしゃったのが、もう今では半分近い四十八人になっていらっしゃって、退学した二十二人のうち三分の一はブラジル本国へ帰られた。残りはみんな日本にいるんだけれども、では公立学校へ行ったのかといったら、だれも行っていない。みんな自宅待機しているんですよ。では、小学生や中学生、高校生の子供たちがおとなしく自宅でじっとしていられるだろうか。あり得ないですよね。ひょっとして、その子たちが町へ出てさまざまな犯罪だとか非行に染まることはないだろうか、そういう心配すら私はわいてきます。将来には検討しましょうではもはや待ったなしの状況が、大臣の御地元浜松市も、私の地元でも起こっているわけであります。

 こうした状況を考えると、今、日本の公教育にきちっとした受け皿をつくってほしい、これは願うところでありますが、実際に退学をした二十二人の三分の二の子供たちが公教育へ入ろうとしない、自宅に待機をしているという現実は、まだこの公教育が受けられるような状況にないという問題が残っていることをぜひ認識しなければならないと思います。

 ここで問題に一つ取り上げたいのが、ブラジルにおける価値観と日本の価値観の違いであります。ブラジルでは個人のアイデンティティーを認めようという思想が随分根強くあるやに、私はいろいろな書物から学びました。ですから、私が訪問したコレジオ・サンタナの小学校二年生や一年生の幼い子供でも、多分日本だったら考えられないでしょうが、耳にピアスの穴をあけたり、また、お化粧をしたり、自己主張をするために大変おしゃれをしています。

 しかし、そういう子供たちが日本の学校へ飛び込んだらどうなるでしょう。先ほど冒頭におっしゃった校訓ではありませんけれども、学校の校訓にのっとった形での校則というものにぶち当たり、校則違反だからあなたはだめです、まずレッテルを張られます。これは私のアイデンティティーだと主張しても、集団生活を重んじるこの日本の学校生活の中では受け入れられないでしょう。自己否定をされたブラジル人の子供たちは、それでも我慢して、ピアスを外し、化粧を落とし、髪を真っすぐに校則どおりにカットして学校へ果たして来るんでしょうか。

 こうしたことも私は、校則を重んじよう、徹底しようと大臣はおっしゃるけれども、彼女たち、彼らたちを日本の学校へ行かせないひょっとしたらきっかけにでもなっているんじゃないかな、そんなふうに心配をするわけであります。

 いえ、校則、校訓がだめだとすべて否定しているわけではありません。しかし、校訓をしっかりと守り徹底させていくために校則というものがあります。その校則を守らせるために、今もそうやっていらっしゃるかわかりませんが、女子高生たちのセーラー服のスカートのひざ上何センチかを必ず先生方がはかって、校則違反だ何だといまだに正門でやったりしていらっしゃるんじゃないんでしょうか。

 私たちは、そういった校則を守ることも大事だと思いますが、そういうことが理由でブラジル人たちのアイデンティティーすら否定してしまっているそんな公教育も問題点としてまだまだあるんじゃないかなということを、私はぜひ大臣にも理解をしていただきたいのであります。

 話がちょっとあっちこっち行ってしまって大変申しわけないんですけれども、このブラジル人学校の現状、先ほど、池坊先生がいらっしゃったムンド・デ・アレグリア、ここは、浜松の中でも唯一各種学校として認可をされた学校であります。他のブラジル人学校とはちょっとタイプが違って、かつてスズキで通訳をされていた女性が校長先生としてついていらっしゃる。日本人の方が校長先生でいらっしゃいますから、スズキの支援も受けられたり、また、各種学校として地域からも応援をしてもらったりと、部品工場だか何かの跡を利用されて、卸問屋か何かを使われての学校だというふうに聞いたんですけれども、それでも先ほど池坊先生は、劣悪な環境だというようなニュアンスのお話をされていました。

 ところが、それ以外の認可を受けていないブラジル人学校の状況というのは、とてもとても目が当てられたものではありません。プレハブ校舎ならまだしも、本当にバラックと言ってもおかしくないような、耐震補強はおろか、台風が来てもいつ倒壊するかわからないようなところを学びやにしているケースもあります。

 私が地元のコレジオ・サンタナへ行ったときは昨年の夏でありました。大変熱いさなかでありましたが、クーラーがあるわけでもない。子供たちは、日陰に入って、それでも元気よく生徒の一人の誕生パーティーをみんなで祝っている、そんなさなかでありました。

 子供たちが学ぶ環境に今ない。しかしながら、学校の校舎等に支援をしようと思うと、今の法律や仕組みではできない。というようなことから、結局自治体も、支援をするとおっしゃいましたけれども、その支援をする根拠法が見当たらないというようなこともあって、非常に手をこまぬいているところがあります。

 地域の方々が大変見るに見かねて、昨今のこの不景気に対応すべく、このコレジオ・サンタナには地元の町内会の皆さんが、米百八十キロと、そして、畑でとれた野菜だとかいろいろなものを持って応援しにいらっしゃったというニュースが地元で流れていました。こうした、地域住民などが何とかして頑張ってよねというような思いで温かい手を差し伸べているんだけれども、肝心の国は何一つ手を差し伸べようとしてこなかった。

 私は、そこに大きな問題があり、将来的にではなく、急いで手を差し伸べてやっていただきたいというふうに思うわけでありますが、その点についてのお考え、ぜひ聞かせていただきたいと思います。

岩屋委員長 塩谷大臣、時間が参っておりますのでお願いします。

塩谷国務大臣 ちょっと先に私がアメリカの公立学校の話をして、日本がこれからという話はしましたが、実は、日本の公立学校も大変な努力を現場ではしていただいて、私の浜松においても何十という学校で何十人という生徒を受け入れて、日本の先生方が、本当に一人一人、きょうは来るのかという電話かけから始めて、大変な努力をしていただいております。

 ただ、私が申し上げる、アメリカのようにだれもが全部そこへ入る状況をつくるのはこれからだということで、今、現実、公立学校でもかなり受け入れをしていただいておりますので、そこは、今、ブラジル人学校へ行けなくなった子供たちはできるだけ公立学校に受け入れていこうということで、ただ、一方でやはり言葉の問題がありますから、行ってもなかなかなじめないという点はこれは出てきて、行かなくなったという点もありますから、なかなか言葉の問題は一朝一夕にはいかないわけでして、日本語教育なり、また、ブラジル人であれば、ポルトガル語がわかる人がそれじゃどれだけいるかというと、なかなかこれも難しいわけでございますので、今、鋭意、その点でブラジル人に対する教師あるいはいろいろな支援員等の配置は努力をしております。

 ブラジル人学校への支援については、確かに大変厳しい状況の中で学校を開いていただいておりますが、現在の法的な状況の中では、なかなか直接に学校への支援ができない。したがって、ブラジル人学校へ通う生徒に対しては、就学支援とかそういったことでとりあえず今努力をしておりますし、また、いわゆる認定に対しての基準の緩和ももう既にしておりますので、それをもう少し徹底していくようにということで、つい先日私が訪れた浜松の学校も、その認可を得るために申請をするということをおっしゃっていましたので、できるだけそういう認可を得て、ある程度認可というのはそれなりの設備がそろっているという証明になりますから、そういった学校をつくっていただいて、そこでまた国が支援するという形がとれればと思っておりますので、よろしくお願いします。

田島(一)委員 時間が参りました。最後に、ブラジル人学校が認可されていないということで、児童生徒は通学で公共交通機関を利用するも、残念なことに通学定期を使うことができません。通勤定期であります。中学生なんかに至っては、それこそ二・八倍の負担の格差が出てまいります。子供たちに何の責任も罪もないにもかかわらず、学校がないということで、それこそ月額八万円、通学に通勤定期代を支払っている、そんな十四歳の子供さんの話も私は聞かせていただきました。

 こうした負担を少しでも軽減させるために、交通機関の各社に対して政府から通学定期の購入を認めさせるような働きかけであるとか、もしくはその差額を助成するであるとか、具体策が取り急ぎできるんだと思うんですけれども、その点、働きかけ等々対応策をやられる予定はありませんか。

岩屋委員長 時間が来ておりますので、これで最後にしてください。塩谷大臣。

塩谷国務大臣 私どももこの問題を懸念しておりますが、基本的に鉄道会社が決定することでありますが、これから話し合いをしてまいりたいと思っております。

田島(一)委員 ありがとうございました。終わります。

岩屋委員長 以上で田島君の質疑は終わりました。

 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 大臣所信で、若手研究者が持てる力を遺憾なく発揮しという一文で触れられましたけれども、若手研究者は極めて厳しい状況に置かれております。本日は、若手研究者の問題でお聞きをしたいと思っています。

 まず、大臣、きょうは基本的に大臣に御質問ですけれども、高学歴難民とか高学歴ワーキングプアという言葉は御存じですか。

塩谷国務大臣 言葉としては存じ上げています。

石井(郁)委員 大学院の博士課程を修了しても安定した研究職というか研究ポストにつくことができない、パートタイムのポストドクター、また非常勤講師、派遣社員として働く、不安定で劣悪な雇用に置かれている人たちなんですね。高学歴難民、高学歴ワーキングプアというふうに呼んでおります。こうした方々が今急増している、社会問題化しているということはいろいろ報道されているとおりです。

 そこで、まず、これは事実としてお聞きしますけれども、博士課程の修了者で、パートタイムのポスドク、また専業非常勤講師、派遣社員として働いている方々の数は、それぞれどれだけになりますか。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、一点目のパートタイムのポストドクターでございますけれども、これにつきましては、文部科学省所管の科学技術政策研究所が、平成十九年の十一月から平成二十年の一月にかけまして、大学、公的研究機関等に所属しますポストドクター等千五百六十四人を対象に行いました調査がございます。これは、ポストドクター等の研究活動及び生活実態に関する分析という報告書になってございますけれども、これによりますと、勤務形態が非常勤であるポストドクター等は、回答がございました千三十五人のうち、四二・三%でございます。

 それから、二点目の非常勤でございますけれども、平成十六年度の学校教員統計調査によりますと、年齢別の人数ということはちょっと把握は困難でございますけれども、大学に勤務いたします非常勤講師のうちで非常勤講師以外に職を持たない者の延べ人数は、六万三千八百十人でございます。これは、大学の総教員数に占める割合といたしましては、一九・六%でございます。

 それから、三点目の派遣会社から派遣されて研究機関で研究に従事している者の数でございますけれども、これにつきましては、研究機関ごとに雇用形態が多種多様でございますので、調査は困難でございます。

石井(郁)委員 最初のパートタイムのポスドクですけれども、私は、トータルの人数をちょっと聞きたいんですよね。ある数の中のパーセンテージというんじゃなくて、今現在、全国的にどれぐらいいらっしゃるか。それはどうですか。それはないんですか。きのう、そこは言っていらしたでしょう。

泉政府参考人 先ほど申し上げました四二・三%というパーセンテージを、ポストドクター等の延べ人数、これは一万六千三百九十四人ということになっていますけれども、これを掛けますと、六千九百人余りということになろうかと思います。

石井(郁)委員 どういう数字を使っての数かというのでやりとりしていてもちょっとあれなんですけれども、かなりの数だということで押さえておきたいんですが、もう一つの大問題は、派遣社員としての数が把握されていないということなんです。民間では調査はあるでしょう。私どものある調査では、派遣会社から、だから派遣社員としていろいろ研究所、研究職に行っていらっしゃる方は五万人を超えているという数字はあるんですよ。

 だから、一つは、今派遣ということは大変重大になっておりまして、こういう博士課程の方々も派遣社員だという事実について、文科省がきちんと調べようとしていないというところはやはり非常に重大だというふうに思うんですね。これはきちんと調査をしていただきたいというふうに思います。

 現在、派遣社員として働いている方々は五万人以上だ、これはある民間の調査です。そして専業非常勤講師、ポスドクの方ということで考えますと、その他いろいろ含めますと、正規雇用についていない博士課程修了者は十万人を超えているということになるんですよね。この二十年間に博士課程を修了した方々は約二十二万人です。その半分がいわば正規雇用についていないという現実があるわけです。

 この問題は、私、昨年十月に質問主意書を出しまして、そのとき、政府の答弁は、文科省としては、「博士課程を修了し、高度な知識及び能力を身に付けた者が、それを生かし、十分活躍できる社会が形成されることは重要である」という御答弁でありました。

 それで、大臣にまず伺うんですが、博士課程を修了して正規職につけていない、いわばもう十万人に及んでいる、こういう方々がいる現実があるわけでして、これが十分に活躍できる社会なのかどうかという御認識をまずお聞かせいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 このポスドクの問題はここ数年間大変重要な課題として取り上げられてきておりますが、残念ながら、なかなかいい働き口がない現状が続いておりまして、私どもとしては、そういった優秀な若い人たちがもっと社会でいろいろな場面で活躍していただきたいし、そのためには、今いろいろな施策も行っているところでございます。

 特に最近は、任期つきでありますが、雇用形態の一つとして、若手研究者がある年限、厳格な審査を経て、准教授等により、より安定な職を得る仕組みを導入して、これはテニュアトラック制という大学がとっている仕組みでありますが、そういった制度を取り入れる、あるいは、産業界等、実社会のニーズに合った研究者の育成に取り組む。

 これは、初めからそういった取り組みをすべきだったということは今さらながら思うわけですが、なかなか現場の大学、あるいは研究者本人もそういった意識もないというのも大分言われておりまして、博士課程へ行く段階での目的といいますか、将来にわたっての職業観というか、そういったこともしっかり教育をしていかなければならない。これは反省も含めて、今実際に今後やっていかなければならないと思っております。

 また、多様な職業選択に対して、そういった機関を設けたりして、そういった選択する活動に対しての支援をしていこうということで、今多くのポスドクがなかなか職につけないという状況を何とか解消しようという努力をしているところでございます。

石井(郁)委員 大学院生がこれほどふえてきた、急増しているということは、政府、文科省自身のとってきた施策によってなんですよね。一九九一年、大学院の量的整備についてという大学審答申を受けて、急増化方針をとってきました。一九八八年には修士課程は五万六千六百人でしたが、二〇〇八年には二十六万二千七百人。だから、四・六倍ですよ。博士課程、一九八八年、二万五千九百人でしたが、二〇〇八年には七万四千二百人、二・九倍、約三倍ですよね。だから、これは政府自身が進めてきた施策です。

 では、そういうふうにして大学院修了者をふやしてくるに当たって、やはり研究に従事するポストというのはどう見込んでいたのか、どう確保するのか、この辺はどうだったんですか。

塩谷国務大臣 博士課程の充実については、今委員のおっしゃったように、大学審議会の答申を踏まえて、他の先進国と比較して大変少ない大学院生の数をふやそうということで、今日までこの数をふやしてきたわけでございます。

 一方で、先ほど申し上げましたように、博士課程へ入る、そういったときに、やはり教育の分野においては、いわゆる職業観ということも踏まえて、いろいろな将来のキャリアについての指導といいますか、そういった点がおろそかであったのではないかということで、その反省も踏まえて、今そういう教育に重点を置いて、そういう機会をつくろうと、産業界とのいろいろな連携、あるいは職業を選択する機会、これはいろいろな個々の対応であったり、あるいはそういう場を設けたり、今さまざまな試みをしております。確かに、我が国でこういった博士課程の拡充をするに当たっては、将来の職についての点が少しといいますか大分おくれていたような状況は否めないと思っておりますので、せっかく大変高度な知識を学んだり経験をしてきた人たちに、より一層活躍できる場をつくることが必要だと思っております。

石井(郁)委員 私は、先ほど来、大臣の御答弁の中で、必要な職につけないという問題について、本人の意識だとか、今おっしゃった職業観だとか、そういうところに持っていかれるのはいかがかというふうに思うんですね。もう博士課程ですよ。研究のテーマを持ち、研究者をしたい、そして社会に貢献をしたいということで研さんをしてこられている方なんですから、やはり問題は、そういう拡充、急増に見合ってポストを用意していない、その整備の問題じゃないんですか。そこが問題だと思うんですね。

 しかも、逆にこの間、国立大学の運営費交付金の一%削減というのは大問題ですけれども、法人化後、六百二億円削りました。これは、一橋大学の十校分が削られたことになるんですね。それから、人件費も五%削減ですから、六百六億円です。私ども、これをちょっと換算をしてみますと、人件費の六百六億円というのは一万三千人分の助手の初任給に当たるんですよ。すごい額だと思うんですね。だから、現在、大学では、この一%削減のために、教員が退職されてもそのポストを埋めることができない、不補充という、あけたままにしておく、こういうところがたくさん出てきているわけですね。そういうことを考えますと、やはり若手の就職先というのは極めて厳しい、狭まっていると言わなければなりません。

 だから、研究職につきたくてもつけない、実に深刻な実態が生まれていますので、私はここでちょっと例を申し上げたいと思うんです。

 これは、Aさんと呼ばせていただきますが、この方は、社会学系の方ですけれども、一九九四年から二〇〇八年にかけて、山形大学、盛岡大学、沖縄国際大学、岐阜経済大学、八十大学に応募されていらっしゃるんです。しかし、採用されないと。

 もう一人、Bさんの場合。この方は手記を書いていただいたんですが、こう言っています。専任の先生から漏れ聞く話だと、常勤の応募をかけると百通以上の応募だと。百倍ですね。その多くが博士号を持った人たちだと伺った。こうなると、学位が授与された大学のプレスティージ、もしくは強い縁故などで差をつけるしかないようになってきているようです。大学院というのは指導教官を選んで探すもので、その教員の所属大学院など関係ないと思っていましたが、現在ではそうでもないようです。私の筑波時代の指導していただいた先生が退官になり、私立の某大学へお移りになったので、その先生を求めて同大学院の門をたたいたんですけれども、東京大学の院でないとだめだというような風評を聞くと、ここでももう選択を誤ったかなと気持ちが揺らぐというふうに書いていらっしゃるんですね。

 だから、安定した研究職の応募に応じてもなかなかない。こうして、やむなく現在、非常勤講師とか派遣社員として働いていらっしゃるということなんですね。この方はもう四十三歳です。

 ですから、このような状態に置いているというのは、これはもう政府の責任ではないですか。その点、いかがですか。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

塩谷国務大臣 先ほどちょっと研究者のいわゆる意識の話がありましたが、もちろんポストがないこともあるんですが、現実問題として、研究者の意識も、そういった点もある程度改善をしていくことも一つあるということでございまして、なかなか研究者の人たちが、それではいろいろな企業へ行ってという、そういった思いが割合薄いというか、もちろん全部じゃないんです、そういう人たちが多い点で、なかなか企業へ入り込んでいかない。逆に、企業から大学へ来て一緒に研究をやろうという人は数は多いんですが、残念ながら、研究者から、いわゆる大学から外へ出ていこうという意識の差はあるということはぜひ御理解いただきたいと思います。

 同時に、ポストがないということについては、今後、大学全体のあり方というか研究体制のあり方というか、例えば、実はこの前、ノーベル賞を受賞した方々、アメリカで受賞された下村さんのお話を直接伺いましたが、大学の研究者というのは本当に自分で開拓していくということで、ある面ではアメリカの方が研究がしやすいということを言われておりますが、本当は厳しいんだ、それは新しい人がどんどん入り込める状況になっている、それは何を意味するかというと、逆に言うと、日本は一回就職するとずっとそれが最後まで、定年まで続くと。そうなってくるとポストもなくなってくるということで、それはどちらがいいかということも、両方、一長一短あると思いますが、いずれにしても、大学の研究体制、ポストの全体的なことを見直すことも必要だと思っておりますし、これから若い人たちが自分の専門の研究を大いにやっていく体制と、外へ出て産学連携、あるいは企業での研究開発をやっていくにしろ、いずれにしても活躍の場を広げていかなければならないということは喫緊の課題だと思いますので、今おっしゃったポストも含めて検討を進めてまいりたいと思います。

石井(郁)委員 企業へ行きたがらないという話をおっしゃいましたけれども、これも実は変なんですよ。(塩谷国務大臣「いや、そんなことはないです」と呼ぶ)いや、もちろんそうですよ、傾向として言われたんだろうと思うんですけれども。

 欧米は、企業とかいわゆる社会的なしかるべきところで博士課程の人を随分採用されるんですね。博士課程の取得者というのは、だって日本は欧米と比べてもまだ半分だと言われているわけですから、決して多くはない。いろいろな分野に進出しているということを言われているんですが、日本の企業は博士課程の人を採らないんですよ。これは私も前に調べたことがあるんですが、たしか三%ぐらいだったと思いますよ。修士までしか採らない。だから、私は、もっと言えば、そういう企業の側も問題があると思うんですね。

 それで、私は政府の責任ではないかと言ったのは、やはり国策的に院生をふやしたんですから、しかし、ちゃんとその処遇する見込みを立てていない、あるいは条件は全く悪くなる一方だ、これは政府の責任じゃないですか、そこをはっきりさせていただきたい、そこを申し上げたわけで、その中で若手研究者が非常な苦境に立っているという問題なんですね。だから、いろいろな支援を考えなきゃいけないというふうに思うんです。

 それで、非常勤講師の問題を次に申し上げたいと思うんです。

 この方々は、若手研究者、もう四十近くなっている方々ですけれども、やはり就職をするためには研究を続けなきゃいけません。しかし、生活もあります。もう当然結婚だって考えなきゃいけない、そういう年齢になるわけですね。だから、それが非常勤講師をしながらやっていくというのは実は大変なことなんですよ。その口もなかなかない。

 先ほど申し上げたAさんですけれども、東京の二つの大学の講師を勤める、週三こまの授業を受け持っている。そのほかに専門学校の集中講義などをしている。年間の収入というのは昨年で百四十六万円だとおっしゃるんです。この間、ほぼ年間百二十万円台で暮らしをしていらっしゃる。これだとまさに生活保護並み、そういう生活を強いられるということですね。

 Bさんの場合もそうなんです。この方も非常勤講師で、月二十万円の生活をしていらっしゃる。この方はこうおっしゃっています。日本語教師として外国人に日本語を教える仕事をしているけれども、非常勤ならば、私の職歴であれば職を探すことは無理ではありません。ただ、非常勤である限り、博士号を持っていても給与には反映されません。学位はひとえに自己満足のためと思うしかない。現在の苦労は、専任の就職を得るための研究業績をさらに積む努力をしなければならないということだと。研究自体はやりがいがある。しかし、研究はただでできるわけではありません。給与の中からやりくりをして、書籍代、調査費用、学会発表参加のための交通費を出さなければならない。いつ決まるかわからない就職のためにモチベーションを保つというのは、大変な苦労、困難がありますと。この方も四十一歳です。今アラフォーという話がありますけれども。

 だから、非常に、時間は講師としてもとられる、しかし給与は低い。研究のためにそういうフィールドワークも続けていかなきゃいけない。交通費も安いチケットで、ユースホステルに泊まるしかないというような、こんな生活になっているわけですね。

 私は例を申し上げましたが、実はこういう方々が本当にたくさんいらっしゃる。そういう声を伺っているわけです。こうした研究者を、やはり安定した職につくように支援もする、あるいは職を、本当にポストを確保するということをもっと大規模にやるということは、やはり今政府が本当に力を入れなきゃいけない仕事ではないのかというふうに思いますが、いかがですか。再度おっしゃっていただきたいと思います。

塩谷国務大臣 先ほど、企業の方の考え方、それも確かにあると私は思います。しかしながら、博士課程を拡大して、その修了者を、博士を多くつくるということと、もちろんそのためのポストをすべて用意するというのはちょっと違うと思うので、企業なり、あるいは社会全体がそういう受け入れる社会にしなければならないという点では国が当然責任があるわけですが、例えば、大学に、その研究者のポストとかといいますと、なかなかそれは、博士課程をつくったからといって全部ポストを最後まで用意するとは、それは国の責任ではなくて社会全体の責任だと思っていますし、当然ながら、高度化された社会にとって、博士課程を拡大していくのは我々としては必要なことだと思っております。

 ただ、現状として、ポスドクの多くの方がなかなか職につけないという現状がありますので、当然、先ほど申し上げました大学研究者のポスト、あるいは企業、そして研究者みずからの意識も含めて、今後、若い優秀なポスドクの皆さん方が活躍できる場をこれからしっかり拡大をしていくよう努力をしてまいりたいと思います。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

石井(郁)委員 どうもなかなか政府の責任ということをお認めにならないようですから、社会全体の責任、問題だとおっしゃるけれども、やはり政府が一義的にこれは責任を果たすべき問題なんですよ。だって、院生をこれほどにふやしてきたんですから。しかも、十万人という数で正規雇用につけない、不安定な職で今優秀な方々がいらっしゃる。これは本当に重大な事態だというふうに思うんですね。

 次に、そういう方々が、今実は借金の返済に迫られているという。先ほど奨学金の問題がありますけれども、その奨学金問題なんですね。研究の継続と生活自身が非常に危ういという問題なんです。

 Aさんの話、ずっと申し上げておりますけれども、博士課程のときには三百八十一万六千円の奨学金を受けましたと。その後、一九九七年から二〇〇二年まで非常勤講師を務めて、これが教育機関勤務とみなされて返済猶予とされました。二〇〇三年から二〇〇七年まで五年間、経済的返済猶予は認められましたが、その間、両親が一年分返済して、残高は今三百二十六万六千円となっています。二〇〇八年、年間給与が百四十六万円ですから、そのほか十万円の雑収入で、月十三万そこそこの収入だと。だから、こういう状況では返したくても返せないということなんですね。

 それで、返済猶予願を出しました。ところが、学生支援機構の返還促進課というところから、既に一般猶予の制限年数分、五年間を取得済みなので経済的理由による願い出はできません、本年度以降の猶予願い出は、生活保護受給中、傷病の事由のみ受付可となりますと。だから、返還猶予願は受理できないという返事をいただいているんですよ。生活保護受給者か傷病中しか返済猶予を認めないという、今そういう対応なんですね。十三万円そこそこの収入で奨学金返済となれば、大体これは何万かになるんですけれども、研究はもうやめなさい、あるいは生活保護以下の生活をせよということになるわけですね。

 Bさんの場合も、生活上、月二十万円の中から国民健康保険、介護保険、都民税を引かれる。さらに奨学金の返済となると、もう最低限の生活だと。だから、この方は今奨学金返還を延滞していらっしゃるんですよね。この方も、修士、博士課程で大体六百万円の奨学金で、平均月三万円は返さなきゃいけない。大変なものなんですよね。

 だから、こういう不安定な職ですから、そういう低い収入の中でこういう奨学金を返さなきゃいけないんだということで、返せない状況が生まれるということなんですね。私は、その中でも、もう猶予はできない、返せというのは余りにもむごい話だと思うんですね。この点いかがですか。私は、こうしたケースというのは、奨学金返済猶予の対象にすべきだというふうに思いますが、大臣の御見解を伺います。

塩谷国務大臣 確かに、厳しい状況の中、最近の経済状況も踏まえて、奨学金の返済が滞る、延滞が続いておるわけでございますが、今お話しの具体的な例については五年間ということで、原則として五年間猶予ということは、五年間の間にある程度生活ができるようにみずから努力をしてほしいということで五年間という一応の目安を立てているわけでございまして、やはりそういう一つの区切りをつけませんと、なかなか制度的にも成り立たない部分が出てきますので。

 しかしながら、それでもだめな場合は、何か相談して断られたということですが、いろいろな方法があると思っております。返済の金額をもう少し少しずつ返していくような方法とか。ですから、できるだけ私どもとしては、そういったことに相談に乗るように今後指導していきたいと思いますので、決して、もう五年間、一般的な猶予期間が過ぎたからだめだということではなく、相談を個別にして対応していきたいと思っておりますが、五年間という意味は、今申し上げましたように、できれば五年ぐらいでしっかりとした生活基盤をつくってほしいというのはその五年間の趣旨でございますので、その後はぜひ個別に相談を受けさせていただきたいと思います。

石井(郁)委員 先ほど来申し上げていますように、安定したポストがないんですよ。とても五年間ではつけないからもう四十を過ぎていらっしゃるということになっているわけですから。

 私は、若手の研究者がこんな状態に置かれている、これはもうまさに政治災害だと思いますよ。だから、政治の責任でこういう方々の状況を救済する、解決するということにやはり本気で乗り出すべきだというふうに思うんですね。奨学金の強制返済などということはやめる。やはり、今の経済情勢、雇用情勢ですから、返還猶予基準を見直すとか、返還の猶予枠を広げるとか、ここは学生支援機構に投げているんじゃなくて、やはり文科省の責任で、もっときちっとリードしていくということが本当に必要だというふうに思いますので、強く求めておきたいというふうに思います。

 それともう一点、先ほど、個信の同意書の問題がありました。今、支援機構がそういう形で延滞催促というか、延滞を減らそうとしているようなんですけれども、私は、今大事なのは、本当に生活が困難だと。これも、ある民間の調査では、延滞している方々の四五%はやはり生活の困難からだと。決してサボったりとか、何かもういいわと言っていることじゃなくて、本当に生活の困難で、返したくても返せないんだと。だって職がないわけですから、返せないわけですよ。

 そういう中で生まれているわけですから、もっとそれを強制的に取り立てる、民間並みに取り立てるというようなことはやめるべきで、大事なことは、そういう状況の中で、教育基本法にも示された奨学金制度の趣旨を本当に生かして、教育の機会を奪わないようにする、教育の機会を保障するというようなことで考えますと、こんな同意書をつけてやるなんという奨学金制度の根本を揺るがすようなことをやめて、本当にそれは、国会に諮ることなくこんなことを導入していくというのは、私はもってのほかだというふうに思うんですけれども、それをやめて、今大事なのは、生活困窮者に対して返済なしのいわば奨学金の給付制度、こういうものをやはり、すべてとは言いませんよ、私は一部からでも導入すべきだというふうに思うんですが、その点、同意書のことを含めて、大臣のお考えを最後に伺って、質問を終わります。

塩谷国務大臣 延滞の者に対する返還に対しての個信の問題等については、先ほども答弁申し上げましたが、やはりある程度いろいろな手段で返済をしていただかなきゃならぬというのは、過去のいろいろな滞納者、さまざまな人たちがいまして、これに対してやはりある程度いろいろな方法、手段を講じていかなければならないということでありますから、いろいろな本当に厳しい方々、状況が明確な方々についてはできるだけ相談をして対応していくつもりでございますし、また、いろいろな基準も今後見直していかなければいけないと思っておる次第でございます。

 また、給付制の奨学金についても、我が国は給付制ということは行われておりませんが、今後慎重にまた検討して、いろいろな条件を付す中でこういうことも一つの方法だという検討をしてまいりたいと思っておりますが、ただ、全体の財政状況も基本的にはあるわけでございまして、今後慎重に検討してまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 高学歴ワーキングプアということで、きょうはその実態を申し上げましたけれども、そういうことを前にして院生になるのをちゅうちょする、こういう人たちが出てきているわけですよ。これでは、幾ら知識基盤社会をつくるんだといっても、その基盤が崩れていくということにもなりかねませんので、この問題では政府のしっかりとした施策を講じていただくように強く申し上げて、きょうは質問を終わります。

岩屋委員長 以上で石井君の質疑は終わりました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森でございます。

 きょうは、子供の学力と子供の家庭環境あるいは家庭の経済状況について、中心にお伺いをしたいと思います。

 先ほど小宮山委員の方からPISA調査の話が出ました。このOECDの学力到達度調査、これは三回、二〇〇〇年、三年、六年と行われていますが、数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解力、いずれも低下をしているということが小宮山委員からも御紹介がありました。

 この結果を受けて、当然学習指導要領の見直しということになっているんだと思いますが、文科省は、数学について、知識・技能を実際の場面で活用する力に課題がある、それから、科学への興味・関心が低い、読解力の向上は引き続き課題であるということを位置づけをして、算数・数学それから理科、国語の授業時間をふやすということにしたようです。

 日本では、このPISA調査の結果のうち、専ら学力の問題に注目が集まっているわけですが、PISA調査では、学力だけではなくて子供の家庭背景を調査しているというふうに聞いているわけです。具体的にはどういう調査項目でこのPISA調査が行われているのかということと同時に、家庭背景と学力の関係について調査をしているわけですが、それは日本の場合どのような結果になっているのか、これをまず最初にお聞きしたいと思います。

金森政府参考人 PISA調査におきましては、社会経済文化的背景指標と生徒の学力との関係について分析を行っているところでございます。

 この調査におきまして、生徒の社会経済文化的背景に関しましては、家庭の学習リソースとして、勉強机、静かに勉強できる場所、辞書、参考書等の有無、家庭における文化的所有物として、文学作品、詩集、美術品の有無、保護者の教育的背景として両親の最終学歴、家庭の社会経済的背景として両親の職業とその内容について調査を行っているところでございます。

 その結果を見ますと、一般的に家庭の社会経済的背景は生徒の学力と関連しておりますが、我が国における生徒の学力に対する社会経済文化的背景の影響はOECD平均よりも小さく、国際的に見て、その影響は弱いと考えられるところでございます。

日森委員 国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩先生、実際においでいただいてお話を伺ったんですが、これは岩波だったと思いますが、「子どもの貧困」という本を出されているわけです。その中で、子供の家庭環境と学力との関係について具体的な分析をされているわけですが、結論だけ申し上げますと、これは傾向として、親の学歴が高いほど子供の学力が高いという意味での格差が厳然としてある、それから親の学歴では、後期中等、高校それから大学との間、母親の学歴では、小学校、中学校とそれから高校、ここで随分差が開いているということが言われているわけです。

 実際に、傾向は小さいというふうに局長はおっしゃいましたけれども、こういうことは文科省の中では事実として確認はされるんでしょうか。

金森政府参考人 国際学力調査などの結果によりますと、一概には言えませんけれども、子供の経済的、社会的、文化的背景と学力との間には関連が見られるという調査結果もあると承知いたしております。

日森委員 いや、局長、文科省はそういう事実について認識をされておりますかとお聞きをしました。

金森政府参考人 家庭の社会経済的背景は生徒の学力と関連をしておりますけれども、諸外国に比べますと、その影響が諸外国よりも小さいというふうに認識をいたしております。

日森委員 小さいけれども、あるという明快なお答えをいただきました。

 同時に、阿部先生はこうおっしゃっているんです。子供全体ではなくて、習熟度の低い児童の学力低下が著しい、こういう問題を先生は指摘をされているわけですね。

 例えば読解力でいうと、一位の韓国、二位のフィンランド、ここの最下位のランクの得点が四百点ぐらいと言われているんですが、これに対して、十五位の日本、十七位のイギリスの得点は三百二十点程度。つまり、八十点ぐらい差があるということをおっしゃっているわけです。しかし一方で、最高ランクの方を見ると、局長の顔だけ見てしゃべってもしようがないんだけれども、最高ランクで見ると、韓国が六百八十八点、フィンランドが六百七十五点、日本は六百五十四点、イギリスが六百五十三点。二、三十点の差しかないということが統計上出ているわけです。

 こういう傾向を考えると、学力の低い部分で差が生じているんだということが言えるのではないか。したがって、学力の低いグループの学力向上が全体のいわば、三回の調査をやったら随分下がっちゃったけれども、これを引き上げていくということにつながっていくのではないかというふうに考えているわけですが、その辺はいかがでしょうか。

金森政府参考人 PISA調査の読解力の得点につきましては、ただいま御紹介ございましたが、韓国やフィンランドと比較いたしまして、日本や英国は得点の中位層と下位層が多く、上位層が少ないという傾向が見られました。

 こうした結果も踏まえ、私どもが昨年七月に閣議決定をいたしました教育振興基本計画におきましては、「世界トップの学力水準を目指し、国際的な学力調査等において、学力の高い層の割合を増やすとともに、学力の低い層の底上げを図り、その割合を減少させる」ことを目指すべき目標の一つとして掲げたところでございます。

日森委員 文科省が平成十八年度に行った子どもの学習費調査というのがあるようなんですが、これを見ると、世帯収入の額と補助学習費額は大分相関関係があるというふうに言っていいと思うんです。現実、年収で四百万未満の家庭の場合と一千二百万円以上の場合を比較すると、相当な、とりわけ最高八倍ぐらいの差があるということが明らかになっているようです。

 これは文科省が調査をされたので間違いないと思いますが、差があるというのは補助学習費ですね、塾に行ったりとかいろいろなことがあるわけですが。つまり、これだけ補助学習費に所得の多寡によって差があると、ここに学力の差が生まれるというふうに考えるのが自然だと思いますけれども、この辺について御見解はいかがでしょうか。

塩谷国務大臣 学力調査と同時に行われている学習状況調査で、収入との関係、子供たちの経済的、社会的、文化的背景と学力の間にある程度関連が見られる調査結果もあるわけですが、一方では、それがすべてではない。むしろ、諸外国と比べたら、その格差は小さい方だということも言えると思っております。

 いずれにしましても、こういった収入の格差でいわゆる成績が左右されるような状況は問題があると思いますので、習熟度別指導など個別に応じた指導の推進により、また学校等それぞれの取り組みによって、確かな学力が身につくように努力をしていくことが大事だと考えております。

日森委員 確かにそのとおりかもしれません。それから、同時に、指導要領の中で授業時間をふやすということなども必要なことかもしれませんが、しかし、親の経済的な事情で子供の将来が左右されるようなことがあってはならない。それは教育の機会均等という意味からいってもそのとおりだと思いますし、これはむしろ文科省だけの課題ではなくて政府全体の、我々の立場からいうと貧困をなくせという立場であるわけですから、それは文科省だけでできる話じゃありません。

 余談ですけれども、一九七〇年代の中葉ですか、フランスがOECDから貧困率が高いというふうに指摘をされました。当時の大統領はジスカールデスタンという方だったと思いますが、顔から火が出るほど恥ずかしいと。OECDから貧困化が著しいと言われて恥ずかしいと思ったんですよ。直ちにその貧困化を解消するための手だてを加えたわけですね。この国の総理大臣が恥ずかしいと思っているか、OECDから言われているわけですから、恥ずかしいか。大臣じゃないですよ、もうちょっと違う大臣が恥ずかしいと思っているかどうか大変疑問なんですが、これを解消しなきゃいけないということが一つあると思います。思いますが、文科省としてできることでいえば、就学援助の問題だと思います。

 これによって保護者の負担が軽減をされていることは十分知っていますけれども、必ずしも完全ですとか十分ですとかいうことにはなっていないと思うんです。特に、国庫補助が廃止をされて一般財源化になったということの中で、自治体では基準が切り下げられたりしているんじゃないかということもあるわけですが、一つは、こうした問題について、交付額の切り下げなどがないように文科省はきちんと指導すべきではないかということが一点。

 それから、就学援助は学校教育費を全部カバーするということにはなっていないということがありますので、保護者が学校に納付をしなければならないような費用全額を就学援助の対象とすべきではないかということで、今のような格差が生まれる根本的な原因のところに少しでもきちんとした支援をしていくことが大事ではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

金森政府参考人 就学援助につきましては、学校教育法第十九条により、市町村に実施義務が課されているものでございまして、準要保護の認定基準につきましては、従来から各市町村が定めているものでございます。認定基準の内容につきましては、各市町村が地域の実情に応じて判断しているところでございます。

 ただ、現下の経済雇用情勢にかんがみまして、私どもにおきましても、市町村において援助を必要とする者に適切な支援が行われるよう、都道府県に対し、三月十一日、改めて通知をいたしたところでございます。

 なお、就学援助の給付対象品目につきましては、市町村が条例や教育委員会規則等に基づき地域の実情に応じて適切に定めているところでございますが、国は要保護児童生徒について市町村が行う援助に対して補助を実施しておりまして、その品目は、学用品費、体育実技用具費、新入学児童生徒学用品費、通学用品費、通学費、修学旅行費、校外活動費、医療費、学校給食費と多岐にわたっているところでございます。

日森委員 ぜひ、他国から比べて格差は小さいけれども、そういう傾向があるわけですから、工夫していただきたいと思います。

 次に、大変人気の、大臣が御提案になった、「心を育む」ための五つの提案、それから道徳教育について、改めてお伺いをしたいと思います。

 五つの提案をされました。この文書を発表した大臣の本音といいますか意図といいますか、先ほどちょっと御答弁いただいたんですが、それと、文部行政におけるこの五つの提案の位置づけ、それからさらに、これを将来どう具体化していくのかということについてお話しいただけたらと思います。

塩谷国務大臣 五つの提案につきましては、先ほども御答弁申し上げましたが、六十年ぶりに教育基本法が改正されて、それに伴って学習指導要領が改訂されました。また、教育振興基本計画も策定されて、新しい内容でことしから随時移行をしていくわけでございますが、そういう中で、改めて、教育基本法の理念、道徳教育とか、あるいは公共性とか日本の伝統文化とかといったことを実際に学校教育の中でどう生かしていくかということが学習指導要領にある程度記されたわけでございますが、それをやはり社会全体でしっかりと推し進めていく必要がある。

 五つの提案は、言ってみれば、ごく当たり前のことといいますか、あえて私どもが言うことではなかったかもしれませんが、現実的にはなかなか行われていないと思っておりまして、それをもう一度、国民に向けて、社会総がかりでこういった点を推し進めていただきたいというような私の思いの一端でございまして、文部行政の中でどうしていくかということは、まだ具体的にはこれからちょっと検討しようと思っておりますが、できるだけそういった意図を伝えるような努力をしてまいりたい。

 もちろん、いろいろな広報とか、あるいは私が出席する場においてはみずから説明もしていきたいと思いますし、特に家庭の基本ルールをつくろうというようなところでは、ちょっとこれはまだ試案でございますが、親子の対話でルールをつくったような、いろいろ応募をしてみたいなという考えもあります。まだこれは決定しておりませんが。

 そういったことで、広く国民に呼びかけて、ごく当たり前の基本的なことだと思っておりますので、そういった生きる基本というものを共通意識を整えるためにも、私はこういう提言をしたわけでございますので、ぜひまた御理解を賜りたいと思います。

日森委員 さっき、ちょっと軽いという話があって、いや、僕はそんなふうには思っていませんよ。思っていませんが、そういう話もございました。大変短い文書で、リズム感もあって結構覚えやすいのかなという気もするんですが、全体として、これを具体化するというのはなかなか難しいと思うんですよ。

 そうすると、何か精神論的な印象を持たざるを得ないということがあって、さっき触れたように、今本当に子供の教育を取り巻く環境というのは経済社会情勢を見事に反映してしまっているわけで、むしろそこのところできちんと子供の教育を、教育権を守っていくようなことが必要で、何か精神論で教育を語るというのはちょっと古いんじゃないかという気がしますけれども、おっしゃった大臣自身はどうお考えでしょうか。

塩谷国務大臣 私は、むしろ精神論が必要だと思っておりまして、先ほどの、心の教育といいますか、そういった部分が戦後教育の中で欠落をしていたと思っておりますので、そういう意味では、精神論というかどうかわかりませんが、こういった内容のことが今こそ必要だと思っております。

 ただ、先ほどもちょっと申し上げましたが、国として、教育行政として、どこまでこういったことをいわゆる行政として推し進めていくかというのはちょっと考えなければいけないし、反発もあるかもしれないなという危惧はあるんですが、しかし、本当に今大事なことなんだということは国としてもしっかり伝えていきたいなと思っております。

日森委員 その精神論と関連するんですが、「新学習指導要領の円滑な実施に向けた支援策」ということの中に、「道徳教育の充実」というのが盛り込まれております。新規事業として八億円予算がついて、道徳教育用教材活用支援事業、道徳教育用教材、読み物資料に対する新たな支援策を試行するということになっているわけです。

 そういうことで、具体的に、この八億円を使ってどのような教材、どんな中身の教材が支援されることになるのか、そういう基準はあるのか、それとも、この教材について支援してちょうだいと言って手を挙げたら、それぞれ文科省が文句も言わずきちんと支援するのか、これはどうなっているのか、ちょっとここだけ聞いておきたいと思います。

金森政府参考人 平成二十一年度予算案に新規に盛り込みました道徳教育用教材活用支援事業は、道徳の時間において学習指導要領の趣旨を踏まえた適切な教材が十分に活用されるよう、道徳教育用教材に対する新たな財政支援の試行を行うものでございます。

 具体的には、複数の教育委員会を対象に、域内の小学校や中学校で使用する道徳教育用教材の作成や購入に要する経費を支援する取り組みを進めますとともに、取り組みを進めるに当たっての課題を把握することといたしております。

 また、この道徳教育用教材活用支援事業の対象となる教材につきましては、少なくとも学習指導要領の趣旨を踏まえたものである必要があると考えておりますが、具体的な基準につきましては、今後検討してまいりたいと考えております。

日森委員 その具体的な基準について今後検討されるわけですが、ぜひ慎重にやっていただきたいということだけ申し上げておきたいと思います。

 ちょっと、時間が余りなくなりますので、もう二つだけお聞きしたいと思います。

 学力調査の結果開示についてなんですが、この間、文科省の思惑といいますか意図とは違って、各県教育委員会や知事などがどんどん結果を公表したりされている。大臣も非常に心配をされていると思いますが、「平成二十一年度全国学力・学習状況調査の実施方法等の改善について」という文書を、昨年十二月ですか、おまとめになりました。この検討会議で実施要領はどのように改善、変更をされたのか、それが一点と、それから、県あるいは県教育委員会の独自の判断で、あるいは情報公開請求などによって公表しちゃっているという例があるんですが、この実施要領と異なった取り扱いがされる、こういうことが生じないような担保、これは実施要領の中でどのようにされているのかということについて、ちょっとお聞きをしたいと思います。

金森政府参考人 昨年十二月の専門家検討会議におきましては、全国学力・学習状況調査の調査結果の早期提供の継続や、より高度で専門的な分析等による有用な情報の発信、また、各教育委員会や学校等における調査結果の一層の活用の促進、調査結果の活用の位置づけの明確化、情報管理の徹底、調査結果の取り扱いに関する基本的な考え方の維持など、実施要領に関する改善事項等についての提言をいただきました。

 平成二十一年度全国学力・学習状況調査の実施方法等につきましては、この提言も踏まえ、調査の趣旨を達成する観点から、よりよいものとなるよう検討し、昨年十二月二十四日に実施要領を決定したところでございます。

 この平成二十一年度調査の実施要領につきましては、平成二十年度調査の実施要領に比べて、調査の目的を達成するため、教育委員会や学校、文部科学省において調査結果を活用した取り組みに努めることを明確に位置づけますとともに、文部科学省が提供、公表する資料の充実や、調査結果の取り扱いについては、これまでの基本的な考え方を維持しつつ、教育委員会や学校ごとの配慮事項が明確となるよう記述を整理し、また、調査結果等について関係機関等に提供する場合を含め、実施要領に基づいた適切な利用、管理を徹底する等の変更を行ったところでございます。

 平成二十一年度調査の実施要領につきましてはただいま申し上げましたとおりでございまして、御指摘のございました県独自の判断あるいは情報公開請求に基づく実施要領と異なった取り扱い云々の御指摘につきましては、この実施要領の中で、調査結果の取り扱いについては、これまでの基本的な考え方を維持しつつ、教育委員会や学校ごとの配慮事項が明確となるよう記述を整理するとともに、調査結果等について関係機関等に提供する場合を含め、実施要領に基づいた適切な利用、管理を徹底する等の変更を行ったところでございます。

 都道府県や市町村の教育委員会等は、これを前提として全国学力・学習状況調査に参加するものでございまして、実施要領に基づいて調査結果の取り扱いが適切に行われるよう、その周知徹底に努めてまいりたいと考えております。

日森委員 よくわからない答弁でしたが、しかし、要するに、公表しないようにきちんと、傾向をつかんでこれからの教育のあり方の指針にしていくわけだからということだと思うんですよ。去年も僕はこれを言ったんですが、傾向をつかむのであればもう十分でしょう、だから、ことしからもうこれはおやりにならなくていいんじゃないですかと、お金もかかるし。そんなお金があるんだったらもう少し、さっき言ったような、子供の厳しい教育環境に対してそこを援助するふうに回したらどうですかということだけ申し上げておきたいと思います。

 最後の最後になりましたけれども、昨年三月十九日の文科委員会で我が党の保坂議員が、東京都において国旗の掲揚、国歌の斉唱時に起立せず処分を受けている教師の件について取り上げました。東京都がこの教師を分限処分するかもしれない、そういう危惧が現在大変高まっているわけです。みずからの思想、信条に基づいて起立をしないことをもって処分することは極めて不当だというふうに思いますが、大臣、これは御見解をお伺いしたいと思います。

金森政府参考人 教育公務員は、法令や上司の職務上の命令に従い、教育指導を行わなければならない職務上の責務を負うものでございます。このため、校長が国旗・国歌の指導を実施するよう職務命令により教職員に命じた場合、命令を受けた教職員は教育指導を実施すべき責務を当然に負うものでございまして、これに従わなかった場合には、地方公務員法に基づく懲戒処分の対象となり得るものでございます。

 実際に処分を行うか、あるいはどのような処分を行うかは、基本的には任命権者の裁量にゆだねられており、任命権者がその権限と責任に基づき判断するものと考えております。

塩谷国務大臣 基本的には今の答弁のとおりでございますが、いずれにしましても、この起立の問題は、おととしでしたか、神奈川県等の教育委員会、高校でも起こったわけでございまして、やはり起立をするということは、これは国旗・国歌というより国際的にもごく常識的な判断でありますので、そういうことも含めて、やはり教員、教育指導の実施すべき責務だと私どもも考えております。

日森委員 例えば、国旗の掲揚を具体的に妨害するとかいうことではないわけですね。本人の思想、信条に基づいて起立をしないということだけが処分の対象になるのかということでいったら、これは、思想、信条の自由というのが教員には認められませんということになりかねませんよ。(発言する者あり)そうなんです。暴力行為を使ったとかいうことじゃないわけですから。起立をしないというのは、思想、信条の自由に基づいて起立をしないわけで、妨害行為を行ったわけでもないのに、そのことをもって処分をするというのは極めて問題だというふうに……(発言する者あり)立場があるでしょう、処分する側の立場はわかりますよ。処分する側はそういう立場でしょうけれども、それに対して、思想、信条の自由として起立をしないことをもって処分をするというのは、これは納得できない話だと思うんです。

 そのことだけ申し上げて、時間です、終わります。

岩屋委員長 以上で大臣に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

岩屋委員長 次に、内閣提出、独立行政法人に係る改革を推進するための文部科学省関係法律の整備等に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。塩谷文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 独立行政法人に係る改革を推進するための文部科学省関係法律の整備等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩谷国務大臣 このたび、政府から提出いたしました独立行政法人に係る改革を推進するための文部科学省関係法律の整備等に関する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 政府においては、行政改革の一環として独立行政法人に係る改革を推進するため、平成十九年十二月に独立行政法人整理合理化計画を決定したところであります。この法律案は、同計画を踏まえ、文部科学省所管の独立行政法人に係る改革を推進するものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明いたします。

 第一に、独立行政法人防災科学技術研究所を独立行政法人海洋研究開発機構に統合し、その名称を独立行政法人海洋・防災研究開発機構に改める等の措置を講じます。

 第二に、独立行政法人国立高等専門学校機構が設置する高等専門学校のうち、宮城工業高等専門学校等八校を統合して、仙台高等専門学校等四校を新設します。

 第三に、独立行政法人国立大学財務・経営センターを独立行政法人大学評価・学位授与機構に統合し、その名称を独立行政法人大学改革支援・学位授与機構に改める等の措置を講じます。

 第四に、独立行政法人国立国語研究所を解散し、その権利義務を大学共同利用機関法人人間文化研究機構に承継させます。

 第五に、独立行政法人メディア教育開発センターを解散し、その権利義務を放送大学学園に承継させます。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。

岩屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十五分散会

<※注>「仰」のつくり


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