衆議院

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第14号 平成21年6月10日(水曜日)

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平成二十一年六月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 岩屋  毅君

   理事 木村  勉君 理事 佐藤  錬君

   理事 馳   浩君 理事 原田 令嗣君

   理事 茂木 敏充君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      井澤 京子君    井脇ノブ子君

      飯島 夕雁君    猪口 邦子君

      浮島 敏男君    小川 友一君

      小里 泰弘君    小野 次郎君

      岡下 信子君    加藤 勝信君

      亀岡 偉民君    谷垣 禎一君

      西本 勝子君    萩生田光一君

      橋本  岳君    平口  洋君

      福田 峰之君    松浪 健太君

      松本 洋平君   山本ともひろ君

      田島 一成君    高井 美穂君

      土肥 隆一君    藤村  修君

      松本 大輔君    山口  壯君

      笠  浩史君    和田 隆志君

      富田 茂之君    西  博義君

      石井 郁子君    日森 文尋君

    …………………………………

   文部科学大臣       塩谷  立君

   文部科学大臣政務官    萩生田光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 古谷 一之君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   真砂  靖君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         河村 潤子君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           杉浦 信平君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           大槻 勝啓君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    木倉 敬之君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     橋本  岳君

  藤田 幹雄君     猪口 邦子君

同日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     小里 泰弘君

  橋本  岳君     小野 次郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小里 泰弘君     藤田 幹雄君

  小野 次郎君     阿部 俊子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

岩屋委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官中島明彦君、大臣官房審議官石川和秀君、財務省大臣官房審議官古谷一之君、主計局次長真砂靖君、文部科学省大臣官房長森口泰孝君、大臣官房文教施設企画部長布村幸彦君、生涯学習政策局長清水潔君、初等中等教育局長金森越哉君、高等教育局長徳永保君、高等教育局私学部長河村潤子君、文化庁次長高塩至君、厚生労働省大臣官房審議官杉浦信平君、職業安定局次長大槻勝啓君及び社会・援護局障害保健福祉部長木倉敬之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岩屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳です。よろしくお願いします。

 まず最初に、大臣にお伺いします。きょうのこの私のファッションを見て、どう思いますか。

塩谷国務大臣 大変すばらしいお召し物で、馳さんによく似合っていると思います。大いにファッションでもリードしていただいて、頑張っていただきたいと思います。

馳委員 人は見た目も中身も大事だなということを言いたいのと、こういう格好でもし私がこれにサングラスでもしていたら、町で出会ったら、余りそばに近づいて友達になりたいなとは思わないかもしれませんが、ちょっと宣伝の意味もあって、きょう実は着てきたんですよ。

 このワイシャツなんですけれども、実はこれは和服の生地なんです。石川県に伝統工芸品で能登上布という生地がございまして、能登半島の能登に上質の布というふうに書いて能登上布といいます。ところが、伝統工芸品でありまして、和服の生地としてはなかなか売れません。そこで、現代的なデザインも加えて、これはワイシャツに仕立てました。非常に肌ざわりもよく、この季節、非常に風通しもよくて、涼しくてよいんです。実はこういう宣伝もしたかったということであります。(発言する者あり)ちなみにこれはちょっとお高くて、三万円ほどして、やはりよいものにはそれなりの値段がかかるという意味もあります。今、茂木先生から幾らするのと言われたら、どうしても値段を聞いて消費マインドがどうなるかというのも、皆さんの今の反応で私もわかりました。

 ただ、よりよいものは少しずつ万人にも受け入れられていくものだな、そういうことを思えば、昔ながらの伝統と文化でこういった商品もございます。これはやはり、現代に合わせながら販路を拡大していくということも、経済論理からいって必要なことではないかなと。私はきょうモデルになって、能登上布の生地、こういうふうに洋装にも合いますということをちょっと宣伝をさせていただきました。

 そして、ファッションの話でありますけれども、私のファッションセンスがよくないことはうちの女房の折り紙つきでありますが、ただ、形を整えて、同時に人間というのは内面も磨き上げていかなければいけない、この両方のことも言いたかったわけでありまして、冒頭から大臣にちょっと失礼な質問で、申しわけありませんでした。

 そこで、きょうは、教育基本法そしてその教育の内容について、ここに入っていきたいと思います。

 教育基本法の改正と教科書検定についてまず伺います。

 平成十八年に教育基本法が全面改正をされました。憲法に先立って、占領下につくられた法制から脱却したものとして評価できると思いますが、大臣の見解をまず伺います。

塩谷国務大臣 教育基本法につきましては、平成十八年に改正をされたわけでございます。教育について以前からいろいろな議論があって、やはり改正をしなければならないという、我が党としても、自民党、あるいは与党、あるいは各政党の議論があって今回改正されたわけですが、時代の変化、例えば情報化とか高齢化社会とか少子化問題、さらには価値観の多様化、あるいは地域の連帯性の欠如、そういったことが社会的な大きな問題になり、そして、かつては、言わなくても、あるいは法律で書かれなくても、ある程度自然と行われてきたような家庭あるいは地域の教育力、こういったものがあえて必要だということを明言することが必要だったし、また、かつての教育基本法についてはどちらかというと義務教育を中心とした内容でありましたので、教育全般についてもう一度改めて、二十一世紀の新しい時代に向かってたくましく、また、心豊かな日本人の育成を目指すためには教育基本法の改正が必要だということで、今回改正されたわけです。

 そういう点では、新しい日本の教育ということで私は大変共感をして、これに基づいてしっかりと教育の実行をしていかなきゃならぬと思っているところでございます。

馳委員 改正教育基本法の第二条では、知徳体、公共の精神、職業倫理、自然や生命や環境を大切にする、伝統と文化を尊重し、我が国と郷土を愛するなど、教育目標が明記されました。この目標に従って教育の内容も教科書の内容も大きく変わる必要があると思いますが、文部科学省としては、改善すべき最大のポイントは何だと考えていますか。

清水政府参考人 御指摘の改正教育基本法第二条では、第一条の教育の目的を実現するために、教育の目標として重要と考えられる具体的な事柄が、委員御指摘のように規定されているわけでございます。

 この教育の目標については、初等中等教育のみならず、高等教育など学校教育、あるいは社会教育、家庭教育と、あらゆる教育活動を通じて実現を目指すべきものであるというふうに解されております。

 とりわけ小中高等学校におきましては、基本法改正で明確になった教育の理念を踏まえ、学習指導要領が改正され、本年度から小学校で一部先行実施されているところでございます。

 さらに、教育振興基本計画の着実な実施を図るため、「新しい日本の教育 今こそ実行のとき! 〜元気あふれる教育によって日本の底力を回復する〜」として、生きる基本の徹底など、重点的に取り組むべき七つの事項、さらには、「「心を育む」ための五つの提案 〜日本の良さを見直そう!〜」ということで、去る二月、大臣より明らかにしたところでございます。

 文部科学省としては、これらを通じて改正基本法の理念の実現に努めてまいりたいと考えております。

馳委員 文部科学省は、平成二十年度に中学校の教科書の検定を受け付けました。教科書会社各社は、改正された教育基本法を生かした教科書を検定に提出しましたか。

金森政府参考人 平成二十年度は、現行の学習指導要領のもとで平成二十二年度から使用される中学校の教科書の検定を受け付けましたが、改正教育基本法を踏まえた新しい学習指導要領に基づく教科書検定が中学校では平成二十二年度に行われる予定でございますことから、多くの教科書出版社は、この新しい学習指導要領に基づく教科書の作成に力を注いでいたものと思われ、実際に平成二十年度に申請がございましたのは、社会、歴史的分野についての一社のみでございました。

馳委員 せっかく教育の根本理念を指し示す法律が変わったのに、教科書会社が教科書をつくり直すことに慎重であることは、社会的な責任を負っている教科書会社として無責任であると思います。

 文部科学省は教科書会社に、新たなる教育基本法に基づいた教科書を検定に提出するようにと指導しなかったのでしょうか。

金森政府参考人 平成二十年度の教科書検定は、平成十年に告示をされました現行の学習指導要領に基づく教科書の検定でございまして、それに対して新たな教科書を作成して検定の申請をするかどうかは、発行者の判断によるところでございます。

 改正教育基本法を踏まえた新しい学習指導要領に基づく教育が、小学校では平成二十三年度から、中学校では平成二十四年度から完全実施をされますことから、その際使用される教科書の検定は、小学校では平成二十一年度、中学校では平成二十二年度に行われる予定でございます。

 各教科書出版社は、それに向けて新たな教科書の著作、編集を現在行っているところでございます。

馳委員 理屈はわかりましたが、私が主張しているところは、平成十八年に教育基本法が全面改正をされた、それに従って教育振興の基本計画がつくられ、学習指導要領の見直しに入っていったこの流れを、文部科学省も、全省的にやはり教科書会社にも協力を求めながら取り組むべき姿勢が必要ではないかという指摘であります。

 さて、唯一検定に申請した自由社の「新編新しい歴史教科書」については、改正教育基本法の理念が反映されているとお考えでしょうか。塩谷大臣には、先週、市販されているこの教科書をお渡しをしてあります。お答えください。

塩谷国務大臣 馳委員から自由社の教科書をいただきまして、目を通させていただきました。

 いずれにしましても、二十年度の検定、この一社ということで、それなりに教育基本法の改正を踏まえて取り組んでいただいたと思っております。

 いずれにしましても、採択に向けてまた各教育委員会の調査等ありますので、個別の教科書がどうのこうのということのコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、今回の教育基本法の改正に伴って、教育の目的とか方針に基づいて今回の教科書が作成されたということだと思っておりまして、教科書検定審議会の審査を経て実施されたものでございますので、教科書としては採択に値するものだと思っておりますし、特に、市販本ですから、特別寄稿の寛仁親王の文章とかほかのいろいろな方々の文章がああやって一緒に中に入っているということは、市販本としても非常に興味深く読ませていただきました。

馳委員 ちなみに、まだお読みのない委員の皆さん方もいらっしゃるので一言つけ加えると、冒頭に、特別寄稿で「天皇と日本」、寛仁親王の特別寄稿があるんですね。皇族の方としては極めて異例な寄稿文、文章ではないかな。私も、こういう公的な場でありますからそれ以上の言及は避けたいと思いますが、読み物としてぜひ御一読をいただきたいということだけ申し上げます。

 さて、ことし四月九日、自由社の歴史教科書が検定に合格した際に、韓国政府が抗議声明を発表したと日本国内で報道されています。文部科学省の検定合格発表は四月九日であり、その内容を韓国政府がどのようにして知ったのかは不思議な話であります。日本政府が事前に伝え、お伺いを立てたのでしょうか。お答えください。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、四月の九日に、韓国政府は外交通商部のスポークスマンの声明というのを発表してございます。日本と韓国との関係は非常に緊密でございますので、一応いろいろな連携をしております。緊密に連絡をとり合っております。逐一についてはここでは差し控えさせていただきます。

 事実関係で申し上げますと、文部科学省が検定合格発表をされたのが四月九日の午前中ということでございまして、韓国のこのスポークスマン声明というのは、同日の午後ということになってございます。

馳委員 報道によりますと、韓国外交通商省は、日本の青年がねじ曲げられた一部の歴史教科書を通じ誤った歴史観を持つ可能性を深く憂慮するとし、新しい歴史教科書をつくる会が主導した自由社の中学歴史教科書が検定に合格したことに強く抗議し、検定の抜本的な修正を求める報道官声明を発表したとのことであります。この報道が事実であるとすれば、明らかな内政干渉だと思います。

 韓国政府から我が国の外務省あるいは文部科学省に対して、その後、具体的にどのような働きかけがありましたか。お伝えください。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、四月九日に今の御指摘のスポークスマンの声明が発表され、委員御紹介のような内容のことが記述をされておりました。それからまた、同様に、同じ日でございますけれども、外交ルートを通じまして同じような内容の申し入れが韓国政府からあったというのが事実関係でございます。

金森政府参考人 御指摘の韓国政府の声明につきましては、私ども、外務省を通じて承知したところでございますが、文部科学省に対して直接の働きかけはございませんでした。

馳委員 そのような働きかけに対して、外務省あるいは文部科学省はどのような対応をしましたか。具体的にお伝えください。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、外交ルートを通じましてそのような申し入れがありました。その際の日本側からの応答ぶりを御紹介をいたします。

 「我が国の教科書検定は、文部科学省によって、民間が著作、編集した図書について、学習指導要領や検定基準に基づき、教科書検定審議会の学術的、専門的な審議を経て、厳正に実施されるものであり、平成二十年度の検定においても慎重な審査が行われたと承知しております。」こういう受け答えを主にしております。

 いずれにしましても、こういういろいろな形で外交ルート等を含め申し入れがございますけれども、今の申し上げたような立場を累次にわたり韓国側には返答しておりますけれども、今後ともそういう努力を続けていきたい、このように思っております。

金森政府参考人 御指摘の件につきましては、韓国政府から文部科学省に対して直接働きかけはございませんでしたので、私どもとして直接特段の対応はいたしておりません。

馳委員 韓国外交通商省からこのような声明が出される背景には、宮沢官房長官時代の近隣諸国条項が影響を与えていると思いますが、大臣の見解を伺います。

塩谷国務大臣 御指摘の規定につきましては、我が国と近隣アジア諸国との相互理解、そして相互協調を進める上で、教科書の記述が適切となるよう、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされるということとなっております。

 教科書検定につきましては、この規定も含めた検定基準全体を審査の基準として専門的、学術的な審査が行われてきたところでありまして、今回の規定が韓国に影響ということは、私の立場からは申し上げる立場にありません。

馳委員 麻生内閣としては、近隣諸国条項を見直すつもりはありませんか。

塩谷国務大臣 学校教育におきましては、国を愛する心や我が国の歴史に対する理解を育てるとともに、国際理解あるいは国際協調の精神を養うことが重要でありまして、例えば、中学校の学習指導要領の社会科、歴史分野においては、我が国と諸外国との歴史や文化が深くかかわっていることを考えさせることとともに、国際協調の精神を養うこととされております。

 また、教科書検定におきましても、昭和五十七年に近隣諸国条項ということで、教科書の記述がより適切になるように、近隣諸国との国際理解、協調の見地に配慮する旨の新たな検定基準を設けているわけでございまして、文部科学省としては、今後とも、学習指導要領や検定基準に基づいて適切に教科書検定を行ってまいりたいと考えております。

馳委員 適切にというのは、近隣諸国にとって適切なのか我が国の国民にとって適切なのか明確ではありませんので、もう一度お答えをいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 我が国の学校教育におきましても、先ほど申し上げましたように、当然ながら、国を愛する心あるいは我が国の歴史に対する理解を育てるとともに、やはり国際理解と国際協調の精神を養うことが重要であると考えておりまして、そういう観点から適切にということでございます。

馳委員 もう一点、教科書の内容に関係の深いものとして、河野官房長官が出した、いわゆる従軍慰安婦に関する河野談話があります。

 当時の石原官房副長官の証言、これは、一九九七年、文芸春秋における櫻井よしこ氏のインタビューを引用しますが、これにより、この談話は政治的な談話であると指摘されています。

 日本政府として、河野談話をそのままにしておくおつもりでしょうか。大臣の見解を伺います。

塩谷国務大臣 大臣の立場としてその問題にお答えする立場にありませんが、政府の基本的な立場としては、この平成五年の河野官房長官談話を継承するものであると考えております。

 総理も国会答弁においてそのように答弁しておりますので、今の段階では、そのまま継承していくということであると理解しております。

馳委員 後で大臣には文芸春秋のこのインタビュー記事をお届けしますので、改めてよくお読みいただきたいと思います。

 さて、ことしは中学校の教科書の採択が行われ、各地の教育委員会が選定資料を策定しています。この選定資料は、教科書の評価に値し、教育委員会の採択の基礎資料となります。

 この選定資料の作成に当たっては、四年前の資料をそのまま流用することのないようにすべきと考えます。なぜならば、新しい教育基本法が制定された以上は、その理念を踏まえた評価の尺度が必要であるからです。大臣の見解を伺います。

塩谷国務大臣 教科書の採択につきましては、各採択権者の判断と責任で適切に行うべきものと考えております。

 教科書の内容については十分な調査研究が必要であるわけでございまして、本年度の採択対象となるのは、平成二十二年度使用中学校用教科書の「社会」は九点であり、そのうち、新たな検定を経たものは先ほどお話しのあった一点であるわけでございまして、この「社会」につきましては、各採択権者の責任により、採択手続を簡略化することなく、教科書の内容について調査研究を行うよう指導しているところでございます。

馳委員 新たに選定資料をつくる際に、四年前の資料に自由社の評価をつけ加えるというやり方は不公平だと思いませんか。

金森政府参考人 教科書の採択に当たりましては、それぞれの地域の児童生徒にとって最も適した教科書を採択することに資するよう適切な選定資料を作成するなど、採択権者である教育委員会などが綿密に調査研究を行う必要があると考えております。

 平成二十二年度より使用される本年度の中学校社会、歴史的分野の教科書採択に当たりましても、採択対象となる九点の教科書の内容について適切に調査研究を行うことが必要と考えております。

馳委員 もう一度お尋ねします。

 改正教育基本法の教育の目標に基づき、どの教科書がふさわしいかという評価のあり方が必要だとは思いませんか。大臣の見解をお尋ねします。

塩谷国務大臣 教科書の改善につきましては、昨年十二月の教科書検定審議会報告におきまして、教育基本法等で示す目標等を踏まえた教科書の提供や検定基準の改善など、教科書改善に当たっての基本的方向性が示されたわけでございまして、教科書の採択に当たっては、このような基本的方向性を参考にして十分な調査研究が行われ、適切な採択が行われることが必要だと考えております。

 こういった観点から、適切な採択が行われるよう、各委員会に対しても指導してまいりたいと考えております。

馳委員 多くの市町村をあわせた共同採択制度については、単位教育委員会の意向が無視されるという問題点があります。かといって、小さな市町村で単独で採択資料をつくるには限度があります。

 こういう点も含めて、採択制度にどういう問題点があると認識をしておられますか。

金森政府参考人 教科書の共同採択制度につきましては、採択権限を有する市町村教育委員会の意向が適切に反映されにくいなどの課題が指摘されているところでございますが、一方で、教科書採択について、小規模自治体では十分な調査研究が困難であるとの指摘もございます。

 文部科学省といたしましては、これまでも各都道府県教育委員会に対しまして、各市町村教育委員会の意向などを的確に踏まえた採択地区の適正規模化に努めること、また、市町村教育委員会に対する指導助言のために都道府県教育委員会が作成する選定資料の一層の工夫、充実に努めること、各採択地区において採択手続を明確にしておくとともに、市町村教育委員会間の協議が調わない場合には都道府県教育委員会が適切な指導助言を行うことなどを、通知により指導しているところでございます。

 今後とも、各採択権者の権限と責任のもと、公正かつ適切な採択がなされるよう指導してまいりたいと存じます。

馳委員 次に、教育公務員特例法第十八条に規定する、公立学校の教育公務員の政治的行為の制限について質問をいたします。

 まず、昭和二十九年の改正当時、衆議院の修正によって、第一項に「当分の間」が入りました。その趣旨は何でしょうか。

金森政府参考人 教育公務員特例法第十八条第一項におきましては、公立学校の教育公務員の政治的行為の制限について、当分の間、国家公務員の例によることとされております。

 この「当分の間」につきましては、昭和二十九年に行われた、公立学校の教員の政治的行為の制限を国立学校の教育公務員と同様の取り扱いとすることを内容とする教育公務員特例法の改正案の国会審議の過程で、衆議院において追加された文言でございます。

 その際、修正案を提案した委員からは、その趣旨として、教育公務員の政治的行為の制限を国立学校の教育公務員と同様にする法案の賛否について世論が分かれていることから、世論の動向も考慮して、暫定的な規定である趣旨を明らかにしたものという説明が行われていると承知いたしております。

馳委員 十八条に違反した者の処罰についても、参議院、当時、緑風会が中心でありましたが、その修正によって刑罰規定の適用がなくなりました。

 直近十年間の違反状況、懲戒処分も含めてこれはどうなっているのでしょうか。一般職の国家公務員、地方公務員と比較していかがでしょうか。お知らせください。

金森政府参考人 政治的行為の制限違反により懲戒処分を受けた教育公務員の人数は、平成十年度から平成十九年度までの過去十年間で二十一名でございます。

 また、総務省や人事院によりますと、同じ期間に政治的行為の制限違反により懲戒処分を受けた人数は、地方公務員二十名、国家公務員九名であると承知をいたしております。

馳委員 あれ、地方公務員の中に地方教育公務員は入っているんですか、入っていないんですか。

金森政府参考人 ただいま申し上げました人数につきましては、総務省や人事院の発表資料に基づいてお答え申し上げたところでございまして、その内訳につきましては、必ずしもはっきりしないところでございます。

馳委員 ちょっとおかしいんですよね。というのは、教育公務員は地方公務員じゃないんですか。これが二十一人なんですよ。そして、それ以外の地方公務員、以外なのか含むのかというのは大きい意味があるんですね。総務省が把握しているのは二十名なんです。

 いいですか、教育公務員の分母は何十万人ですか。七十万人ですね。地方公務員の分母は何万人ぐらいですか。二百七十万人ぐらいかな。そんなものか。分母からして三倍ぐらいの教育公務員の多さだというのは、これは数字的にはわかるんですが、総務省が出しているこの地方公務員の中に、教育公務員、学校の先生、教職員は含まれているんですか、いないんですか。

 そもそも、この懲戒処分の数字のとり方が文部科学省と総務省で連携がとれていないことの証明です。もう一度お答えください。

金森政府参考人 御指摘のように、公立学校に勤務いたします教育公務員は地方公務員に含まれるわけでございますけれども、政治的行為の制限違反により懲戒処分を受けた人数につきましては、その内訳が御指摘のような問題があると。私どもの方も、このような数字に双方がなっているのがどうしてなのかなというようなところは思っているところでございます。

馳委員 どうしてなのかなというのは、私が聞きたいんですよ。

 今、この場で数字のやりとりをしようとは思いませんが、ここはやはり明確に総務省とも数字の突き合わせをすべきだということを私は申し上げます。つまり、地方公務員の中に当然教育公務員も含まれているという中で、やはりこれは統計のとり方になると思いますから、総務省と内訳も含めて数字を明確にするように、これは大臣からもお伝えいただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 人事院規則一四―七第八項に、「違反行為の防止又は矯正のために適切な措置をとらなければならない。」とあります。確かにこれは教育公務員には適用されませんが、その趣旨は生かされるべきであります。

 これまでどのような「適切な措置」をとってきたのか。お答えください。

金森政府参考人 文部科学省におきましては、衆議院や参議院の選挙、また統一地方選挙の前に、全国の教育委員会に対しまして、教職員などの選挙運動の禁止等に係る通知を送付いたしまして、政治的中立性の観点から、服務規律の確保を図るよう指導をいたしているところでございます。この通知におきましては、教職員の十分な理解に資するよう、政治的行為の制限に係る違反行為の具体例を約三十項目にわたって列挙をいたしているところでございます。

 また、教員の服務規律の確保を図る観点から、都道府県や指定都市の教育委員会に対しまして、会議の場や情報交換などの機会を通じて逐次指導を重ねてきたところでございますが、今後とも、服務規律の確保が図られるよう、こうした指導の徹底に努めてまいりたいと考えております。

馳委員 学校現場で教職員が、ほかの教職員、非常勤も含めてですが、これに投票依頼をしたり政策討議資料を配ったり、支持者カードに署名を要請することは許されるのでしょうか。

金森政府参考人 教育公務員が、公選による公職の選挙において、特定の候補者を支持する目的あるいは特定の政党その他の政治団体を支持する目的を持って選挙の投票において投票するように勧誘運動を行う行為は、人事院規則により禁止されており、人事院規則の運用方針において、この規定における勧誘活動とは、組織的、計画的または継続的に勧誘をすることとされております。

 また、同様の目的を持って特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように勧誘運動をする行為、また、政治的目的のために署名運動を企画し、主宰しまたは指導しその他これに積極的に参与する行為は、人事院規則により禁止をされております。

 個々の事案がこれらの行為に該当するか否かは、具体的な事実関係に基づいて任命権者が判断すべきことだと考えております。

馳委員 では、教員が保護者や同窓生に投票依頼をしたり紹介者カードに署名を要請するのはよいのでしょうか。

金森政府参考人 教員が保護者や同窓生に投票依頼をしたり紹介者カードに署名を要請することにつきましては、先ほど、教員が他の教職員に投票依頼などをすることについて申し上げたような制限がございますのに加えて、公職選挙法におきまして、「教育者は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して選挙運動をすることができない。」とされておりまして、教員が児童生徒に対する教育者としての地位を利用して特定候補者に投票するよう保護者に依頼する行為は、違法行為となると考えております。

馳委員 赤信号みんなで渡れば怖くない的に放置しておくのはよくありません。

 文部科学省として「教職員等の選挙運動の禁止等について」の通知を出しておりますが、具体的な違反事項を示したパンフレットなどを作成して、現場の教職員に行き渡るように配付すべきではありませんか。

 また、罰則規定が削除された、これは参議院の修正で当時なされたわけではありますが、この罰則規定がないということが、現場の教職員団体、教職員にとって極めて大きな影響を持っていると、私は現状を見て考えさせられております。

 その点も踏まえて答弁を求めて、私の質問を終わります。

金森政府参考人 私どもでは、先ほど御答弁申し上げましたように、衆参両議院の選挙や統一地方選挙の前に、全国の教育委員会に対して教育委員、教職員などの選挙運動の禁止等に係る通知を送付し、政治的中立性の観点から、服務規律の確保を図るよう指導しているところでございますが、今後とも、各教職員にこうした通知の趣旨が徹底されるよう工夫を行ってまいりたいと考えております。

馳委員 終わります。

岩屋委員長 以上で馳君の質疑は終了いたしました。

 次に、木村勉君。

木村(勉)委員 私は自由民主党の木村勉でございます。

 一身の独立なくして一国の独立はなしと福沢諭吉は言いました。国民一人一人に自主独立の精神があって、初めて一国の独立はなし得るんだということを言ったわけであります。百五十年前にそう言って近代日本を導いてきたんですけれども、この百五十年の間、世界は、日本も目まぐるしく発展し、経済も社会も発展して、グローバル化が進んできたわけでございます。

 こういう時代に、資源のない日本は人材こそが資源でありまして、国民一人一人が独立自尊の精神を持ち、それぞれの分野で専門的な知識や技能を磨き、世界に通用する言語を身につけ、世界から引っ張りだこになる人材を育成していくことがとても大切であります。どうすれば国民一人一人が自立し、独立自尊の精神を培うことができるのか。教育の果たす役割は絶大であります。

 しかし、百五十年たった今、我が国はまだまだ国民一人一人の自立心が成就されているとは言えません。まだ道半ばだなと。下手をすると逆行しているんじゃないかという危惧さえ持つわけであります。

 社会の風潮として、国が、社会保障が、福祉がということが先行して主張される方がいるんですけれども、やはり原点は、人間は、生まれたら、自立して、自分で働き、自分で税金を納めて、それで国が成り立つわけですから、その原点を忘れている部分が大変大きいし、また、政治で、ある一部の政党はそれをあおり立てるような政党もなくはないわけでございます。

 そしてこれは、日本が豊かになってきたために親が子どもを甘やかしている部分もあるし、また、教育が至らなくて、しっかりとした心の教育が行き届かなくてそういう国民、子供をつくっているという部分もあるだろうと私は思っているわけであります。

 それで、私は大臣に、こうして独立自尊の精神をいかに教育の場で実現していくのかということをしっかりと御質問させていただきたいので、どうぞ行ってらっしゃい。

 ですから、自立して、働いて、稼いで税金を払うということが国民の第一義的な一番の義務なのですから、それをないがしろにして、何でも行政や国が、福祉が面倒を見るのは当たり前だという風潮が蔓延していることは、やはり日本のこれからの存立、世界に冠たる日本をつくり得ない、そういう心配があるわけでして、これを直すのはやはり家庭であり教育の場だと思います。

 基本法ではちゃんと言ってあるわけですけれども、そういう抽象的なものじゃなくて、教育の場では、どこの部分でどういう時代に、どういう年代のときにどういう教育をすることが必要なんだと、また、家庭においては、具体的にどういうことをやることが一人一人の子供の自立心を培うことができるんだということを私はきょう質問したいんです。

 教育基本法には、「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。」こう書かれておりますけれども、これをもっと具体的に、家庭では、学校では、それぞれの分野でどういう具体的な手だてが必要で、今までちょっとそれは足りなかったということで、この独立自尊の精神が国民一人一人に行き渡らない。これは一つの永遠の課題ですけれども、それをより多くの国民に自立心を持たせるということを私はきょうは文科省の皆さんにお聞きしたいな、こう思っているわけでございます。

 それで、まずそこに入る前に、若者が自立しない一つのグループとしてフリーターとかニートとかおりまして、これは、フリーターでも、就職氷河期に遭遇しちゃって正規の職業につけなかったという方々もおりますし、そういう人たちには、しっかりと職業訓練をしながら国が正規の職にやっていくという手だてをしなくちゃなりません。また、ニートにしても、心身に障害があってそういう気力も力もないという人もおりますけれども、それはしっかりと社会が、福祉が面倒を見ていく、国が面倒を見ていくということはしなくちゃだめなんですけれども、しかし、甘えによってニートとかフリーターになっていて、親が豊かなんだから、少し援助するから、そんなに一つの会社で拘束されなくてもいいよというようなところは、日本が豊かになったために、精神が、自立心がなくなってきているということもあるわけでございます。

 そういうことに関してまず厚労省の方から、フリーターの実態またニートの実態等を報告していただいて、それに対してどういう施策をしているのか、そして、できればそのフリーターの背景、ニートが出てきたその背景についても一つ御説明いただければありがたいなと、こう思っております。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 フリーター関係につきまして、私の方から説明をさせていただきます。

 フリーターの数でございますけれども、平成二十年で百七十万人と推計されております。平成十五年の二百十七万人をピークといたしまして、五年連続で減少しているところでございます。

 また、十五歳から三十四歳の労働力人口に占めるフリーターの割合を計算いたしますと、八・六%ということでございます。この数値につきましても減少傾向が続いております。

 ただ、就職活動の時期が新卒採用の特に厳しい時期、いわゆる就職氷河期に当たって正社員等になれなかった者、こういった若者がそろそろ三十代半ばを迎えるという状況もあるわけでございまして、フリーター層の中でも特に年長の層、または三十代後半に至った層、こういった層に対する対策が重要だと考えております。

 厚生労働省といたしましては、フリーター層の就職支援のために、例えば、ハローワークにおける就職から職場定着までの一貫した支援を行う、また、ジョブカフェという施設がございますけれども、ジョブカフェにおける若者のためのワンストップサービスによる支援、また、トライアル雇用でありますとか積極的に正規雇用をしようという事業主に対する助成措置もございます。こういったものを活用していく。また、ジョブカード制度によりまして若者の能力開発の機会を提供していく。こういったことを通じまして、特に年長フリーター層などに重点を置きまして、フリーター等正規雇用化プランといったものを推進しているところでございます。

 こういった施策を通じまして、二十年度の数字でございますけれども、約二十六万八千人のフリーターの方の常用雇用を実現したところであります。

 今後とも、こうした取り組みを通じまして、若者が安定した就職ができますように努めてまいりたいと考えております。

 また、フリーターの出てきた背景ということでございますけれども、これについてなかなか一義的に申し上げることは難しいかと思っております。さまざまな要因もあると考えられるところでございまして、例えば、それぞれの夢を実現するためにみずからそういう状態を選択されている方もおられるでありましょうし、先ほど申し上げた就職氷河期に当たりまして正社員として就職できなかった、その後も不安定な雇用を繰り返している方もおられるわけでございまして、なかなか一義的に背景を述べるのは難しいかと。さまざまな要因があるというふうに考えているところでございます。

杉浦政府参考人 ニートの数につきましてお答えをいたします。

 ニートといいますものは、労働力調査における十五歳から三十四歳までの非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者というのを若年無業者というふうに定義をしておるところでございますが、この人数をいわゆるニートとして把握をしておりまして、平成二十年は約六十四万人ということでございます。

 したがいまして、統計上はニートの数というのは労働力人口には含まれておりませんけれども、あえて十五歳から三十四歳までの労働力人口に対する比率を計算いたしますと、約三・二%ということでございます。

 厚生労働省といたしましては、こういったニートの方々に対する施策といたしまして、地域の若者自立支援にかかわる専門機関のネットワークを構築いたしまして、こうした若者に対しまして、キャリアコンサルティングですとか職業体験等の多様な支援プログラムを提供する地域若者サポートステーション事業といったものを展開しております。また、特に、生活面の基礎形成ですとか働く自信、意欲の回復が求められる若者に対しましては、三カ月または六カ月の合宿形式による若者自立塾事業を全国三十カ所で実施をしているところでございます。

 この若者自立塾事業では、生活訓練それから労働体験等を通じまして、職業人、社会人として必要な基本的能力の獲得ですとか、勤労観の醸成を図るプログラムを提供しているところでございます。この事業を創設しました平成十七年度から平成二十年度末までに約二千人の若者がこの自立塾を卒塾いたしまして、卒塾後約六カ月の時点で六二%の者が就労に結びついているという状況でございます。

 厚生労働省といたしまして、これらの事業の積極的推進を通じまして、ニート等の若者の職業的自立支援の強化に努めてまいりたいと考えております。

木村(勉)委員 今の若者の自立塾ですか、これは、合宿で若者を集めて、勤労観や意欲を持たせて職業についてもらうということで、創設してから二千人送り出したということですけれども、これはなかなかいい対応だなと思いますので、ちょっと二千人というのは年にすると少し数が少ないわけで、もっと一年間に二千人ぐらい卒業できるようにひとつやっていただきたいなと、こう思っています。

 また、フリーターの方ですけれども、フリーターは、正規でないというために日本の活力、労働力をどのぐらい減じていると考えているのか。わかればお答えいただきたいなと。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども数値につきまして申し上げたところでございますけれども、十五歳から三十四歳の労働力人口に占める百七十万人という先ほどの数字、これは八・六%に達しておるわけでございます。

 そういった意味で、こういった方が安定した職業につかれるということが非常に重要だと考えておりまして、先ほどのような対策を推進いたしておるところでございます。

木村(勉)委員 では、厚労省の皆さん、これで結構ですから、どうも御足労ありがとうございました。

 それで、文科省の方で、自主自立の精神を培うために学校ではどういう取り組みをしているのか。これはとても大事な部門なんですけれども、抽象的じゃなくて、具体的にどういう時期にどういうことをすることが大事だと考えているのか、ひとつお答えいただきたい。

金森政府参考人 学校における取り組みでございますが、小学校や中学校などの義務教育諸学校におきましては、自立の観点から、児童生徒に勤労観、職業観や職業に関する知識、技能を身につけさせ、主体的に進路を選択する能力や態度を培うことが極めて重要でございます。

 学校教育法におきましても、義務教育の目標といたしまして、「学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。」また、「職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。」を定めております。

 また、小学校の学習指導要領におきましては、「児童が学習課題や活動を選択したり、自らの将来について考えたりする機会を設けるなど工夫すること。」中学校の学習指導要領におきましては、「生徒が自らの生き方を考え主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、計画的、組織的な進路指導を行うこと。」と定められているところでございます。

 こうした取り組みを進める上では、家庭や地域の人々の協力を得るなど、家庭や地域社会との連携を深めることも重要でございます。

 私どもといたしましては、こうした取り組みを通じて、児童生徒の勤労観、職業観を育成するキャリア教育を推進し、家庭、地域と連携の上、子供の自立に向けた学校教育の充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。

木村(勉)委員 私は、そういう指導要綱や教育基本法にこういう目標を持ってこうやっているというのはわかるわけですよ、書いてあるんだからね。それをもっと具体的に、現場の教育で、どこの部分がどういう時期に何が大事なのかということを聞きたいんですけれども。お答えいただきたい。

金森政府参考人 ただいまの点につきまして、もう少し学年に即して具体的に申し上げたいと存じますが、例えば小学校でございますと、指導計画をつくるような際には、各教科の指導に当たって、児童が学習課題や活動を選択したり、みずからの将来について考えたりする機会を設けるなどの工夫をすることといたしております。

 また、総合的な学習の時間というのが設けられておりますが、総合的な学習の時間では、自然体験や職場体験活動、ボランティア活動などの社会体験、あるいは、物づくり、生産活動などの体験活動、観察・実験、見学や調査、発表や討論、こうした学習活動を積極的に取り入れることといたしております。

 それから、特別活動といたしまして学級活動や学校行事などがございますけれども、学級活動では、学級や学校における生活上の諸問題の解決、学級内の組織づくりや仕事の分担処理などを行うことといたしておりますし、学校行事として勤労生産、奉仕的行事というのがございますが、その中では、勤労のとうとさや生産の喜びを体得するとともに、ボランティア活動などの社会奉仕の精神を涵養する体験が得られるような活動を行うことといたしております。

 小学校の全体の指導計画、あるいは総合的な学習の時間、特別活動でこういったような取り組みが行われているという例でございます。

木村(勉)委員 そういう共同で野外で作業していくというようなことはすごく有効だし、人のつき合いができないというのは、引きこもりの人や何かをやはり教育の場でしっかり拾い上げて、仲間に加わってもらうような施策が大事なんですよ。

 そういった意味で、先ほど厚労省の方から、ニート対策として若者自立塾というものをやっていると。私は数がまだ少ないじゃないかと言いましたけれども、あれは一つのいい方法だなと思っているので、学校教育で、学校ですから名前は塾じゃなくてもいいんです、小学校、中学校、高等学校でそういう若者の自立するようなものをもっと具体的に研究していくべきじゃなかろうかなと、こう思っています。

 よく、今の若者はちょっとたるんでいる、徴兵制で自衛隊でも入れて少し訓練したらどうかという意見も聞きますけれども、今はそういう時代じゃございません。しかし、私は地元の消防団の団長をやっています。そういう若者を消防団の団に入れて、社会奉仕なり地域活動とか礼儀作法、気をつけとか、そういうことを訓練することもとても大事な自立への道だし、責任感を考えていく方法だと思いますので、先ほどの若者自立塾みたいなものをもっと具体的に学校教育の中で、小学校の部分、中学校の部分、高校の部分で取り入れることを考えたらいかがかなと思っておりますので、お答えできれば答えていただきたい。

金森政府参考人 私どもでは、先ほど御答弁申し上げましたような学校でのさまざまな取り組みを支援いたしますために、平成十七年度から、中学校を中心とした五日間以上の職場体験をキャリア・スタート・ウイークとして実施いたしておりまして、地域協力体制の構築を図ってきたところでございます。

 またさらに、平成二十一年度からは、小中学校の発達段階に応じた組織的、体系的なキャリア教育プログラムの開発を推進いたしますほか、小学校教員を対象としたキャリア教育の指導資料を作成、配付することといたしております。

 こうした取り組みも、先生御指摘のございましたようなことにつながっていくものというふうに考えているところでございます。

木村(勉)委員 それで今度は、学校の方と両立する、また第一義的な責めも担っている保護者、家庭での子供のしつけ、対応、教育、これによって自立支援が損なわれている部分があるわけなので、やはり豊かになって甘やかしている部分があるので、家庭教育でどこが足りないのか、どういう具体的な教育を子供にすることが家庭に求められているのかを聞きたい。それとまた、それを文科省として支援する体制はどうなっているのか。

清水政府参考人 まさに先生御指摘いただきましたように、家庭は教育の原点であります。職業観、勤労観、あるいは自立心といった、生きる基本を子供に身につけさせる上で重要な場であります。御案内のように改正基本法では、父母その他の保護者が子供の教育に対して第一義的責任を有し、生活習慣、自立心の育成に努めるものとするという旨が明記されたわけでございます。

 要は、今先生が御指摘いただきましたように、家庭と学校の役割というものを明らかにしながら、次代を担う子供たちをどう育てるかという社会全体の課題に立ち向かっていく、そういう仕組み、そういう姿勢、そういう意味での連携というものができ上がっていくことだろうというふうに思っております。

 例えば具体的な例で申し上げさせていただきますならば、これは山口県山陽小野田市でございますけれども、家庭と学校の役割、家庭では、テレビやゲームやインターネットの時間を制限したり、早寝早起き朝ごはんの生活習慣の確立を、学校では、読み書き計算の基礎基本の徹底反復を中心としたモジュール授業を導入するなどして、そういう土台づくりを共同でやろうやというようなことをやっております。

 私どもは、そういう意味でまさにそういう動きというものをどう支援していくかということで、例えば具体的に申し上げますならば、「早寝早起き朝ごはん」運動、とにかく、子供の自立心の土台となる基本的な生活習慣づくりを推進する上で、家庭と学校の役割分担、両者の連携による生活習慣の確立、学習意欲を高めるための取り組みというものを支援しております。

 それから、では具体的に家庭で何をするのということについて、実はそのことについては、当たり前のことではありますけれども、私ども、家庭教育に対するヒントとして、子供の責任感、自立心を育てることの大切さ、あるいは、それを具体的にどう見たらいいかというような家庭教育手帳を作成し、それを各家庭への情報提供あるいは学習機会での活用を促すことでありますとか、あるいは、孤立しがちな家庭というのもございます。そういう中で、家庭や企業を訪問して、こういう子育てというものをどうやったらいいかということについての情報、学習機会の提供、相談体制を行うなど、そういうきめ細かな支援を行う体制整備というものを支援いたしております。

 そして、私ども、また企業としても、そういうものにいろいろな形でそういう役割というものを、まさに自覚と責任のもとに、例えば企業の方々が中学校に出前講座、出前授業という形、まさに自分の働き方、生き方、そういうものを講義するというようなことを設けていただいたり、あるいは、従業員の子弟を、まさに親の背中が見えない、職業も見えないというようなことで、親の職場を積極的に子弟に開くというような、さまざまな各方面での取り組みがなされている、こういうふうに思っております。

 私どもは、そういう意味で、まさに家庭というなかなか行政として立ち入りにくいあれではありますけれども、市町村の、あるいは各地域でのそういう取り組みというものをできるだけいろいろな形で支援していきたい、このように思っております。

木村(勉)委員 なかなかいい取り組みをしているなと思います。それをもっと徹底してやっていただきたい。

 私が言いたいのは、学校の先生にもそういう意識をもっと持ってもらうと同時に、一番大事なのは、やはり両親、親がそういう姿勢を持って子供に向けさせなきゃ、親が子供をそんなことは一切関係ないというような形で放任して甘やかしていれば、そういう施策があったって、そこには参加できないんだ。ですから、そういう指導、なかなかこれ、親を指導は文科省ではできませんけれども、やはり社会全体が指導をしていくことだなと、こう思っているわけでございます。

 それで話は少しずれますけれども、お母さん方の勤労、就労を促進するという意味からも、保育園や何かの待機児童がなかなか解消をされないという実態があるわけでございまして、このような時代に、子供を預けたい、預ければ働けるのにといっても、そういう受け入れ体制ができないというのはやはり行政の怠慢なので、文科省と厚労省の方で認定こども園というものをつくって、保育所のいいところと幼稚園のいいところを取り出して認定こども園を今つくろうということで促進を図っているようです。

 ちょっとその進捗状況が思ったより進んでいないけれども、現状はどうなのか、ひとつお知らせいただきたい。

金森政府参考人 認定こども園でございますが、認定こども園は、保護者や地域の多様なニーズに柔軟かつ適切に対応するため、平成十八年十月より、この認定こども園制度を創設したところでございます。

 この認定こども園は、御指摘ございましたように、小学校就学前の子供に教育や保育のサービスを総合的に提供する施設であるとともに、保護者の就労の有無にかかわらず利用できる施設であるという点において、大きな意義を有するものと考えております。

 ただ、この認定こども園がどの程度設置されているかということにつきましては、平成二十年四月現在、二百二十九件ということになっておりまして、実際に認定こども園を設置した施設や保護者からは評価が高いのでございますけれども、その普及につきましては、まだ十分に進んでいないというのが実情でございます。(木村(勉)委員「何が進んでいないの」と呼ぶ)普及が十分に進んでいないというのが実情でございます。

木村(勉)委員 それは保護者と施設の管理者は評価しているというわけでしょう。それで普及していないというのはおかしいので、もっと文科省は厚労省と一緒に促進に努めるべきだし、両親と施設と、それで子供のメリットというのはどういうメリットがあるのか、ちょっとそれを説明してください。

金森政府参考人 認定こども園につきましては、先ほど申しましたような、小学校就学前の子供に教育、保育のサービスを総合的に提供する施設でございますが、例えば保護者には、幼稚園、保育所を通じて家庭ではできない集団教育としての幼児教育への要望が高いのでございます。また一方では、共稼ぎ世帯の増加などにより、子供を預かってほしいという保育のニーズも存在しているところでございます。

 こうしたニーズに認定こども園というのはこたえるものであるというふうに考えているところでございます。

木村(勉)委員 それでは話題が、スクール・ニューディールの問題。

 学校の耐震化やエコ化、太陽光等をやったりしていくわけですけれども、今年度の予算はできたけれども、来年度からの見通しといいますか、三年ぐらいで全部全国的にやっていこうということなんですけれども、その見通しはどうなんでしょうか。

布村政府参考人 スクール・ニューディール構想についてお答え申し上げます。

 先生お尋ねのスクール・ニューディール構想でございますけれども、二十一世紀の学校にふさわしい教育環境の抜本的な充実を図るため、学校施設におきまして、学校の耐震化の早期推進、太陽光パネルを初めとしたエコ改修、そしてICT環境の整備というものを一体的に実施していくことが、学校環境の整備として重要であると受けとめております。先般成立させていただきました二十一年度補正予算におきまして、これらの一体的な推進を図るスクール・ニューディール構想を盛り込んでいただいたところでございます。

 具体的に耐震化につきましては、Is値〇・三未満の公立小中学校施設につきまして予算措置を完結させていただいておりますし、また、Is値〇・三から〇・五の施設を中心に、また、〇・五以上の施設も含めた耐震化を推進できる予算になってございます。

 また、エコ化につきましては、公立小中学校施設の太陽光パネルの設置につきまして、現在、小中学校で千二百校でございますが、その十倍を目指そうということで、一万二千校への太陽光発電の設置を目指すという取り組みを進めることができ、あわせまして、省エネ改修、校庭の芝生化ということにも取り組んでまいりたいと考えております。

 三点目のICT化につきましては、デジタルテレビへの転換、電子黒板、教育用コンピューター、校務用コンピューター、また校内LANの整備をそれぞれ推進していきたいという状況でございます。

 また、市町村で推進いただくに当たりまして、今回の補正予算では、地方向けの臨時交付金の活用ができるという予算をつけていただいておりますので、市町村の負担の軽減になっておりますので、市町村の加速化にもつながるものと受けとめております。

 さらに、来週には、六月十六日に、文部科学大臣、経済産業大臣、環境大臣の三大臣から、全国に向けまして、スクール・ニューディール推進会議というものを開催させていただく予定でございまして、それらも通じまして、地方公共団体の取り組みの支援に努力をしていきたいというふうに考えております。

 また、今後の見通しでございますけれども、学校施設の耐震化につきましては、先ほど申し上げましたように、〇・三以上の耐震化が、まだまだ二万棟を超え三万棟に近い数字の耐震化が必要になってきております。

 また、太陽光発電につきましては、当面は一万二千校を目指してございますけれども、すべての学校の設置という課題もございますので、それに向けた引き続きの取り組みを重ねてまいりたいと思っておりますので、また先生方の引き続きの御支援をお願い申し上げたいと思っておるところでございます。

木村(勉)委員 塩谷大臣が参議院から戻りまして、福沢諭吉の精神、独立自尊の精神を国民一人一人にしっかり植えつけるといいますか、培ってもらうためには、学校教育が果たすべき役割がとても大きいので、どうしたらこの独立自尊の精神を、子供たちから始まって日本人一人一人に自立の精神を培うことができるための教育はどうしたらいいのかということを、塩谷大臣から一つお聞きしたいなと。できたら、具体的な施策も入れてお聞きしたいと思います。

塩谷国務大臣 大変根本的な大事なテーマでございまして、福沢諭吉翁のお話を冒頭から委員にはしていただき、同窓のよしみで、大変私どもその点については同感でございまして、いずれにしましても、自主自律、独立自尊ということ、これは教育の大きな目的でありますし、学校教育だけに限らず、家庭あるいは社会教育の中でも、やはりそういった、子供たちが自主的に、あるいは、自律してみずからの目的を持って行動できるような子供たちを育てることが教育の大きな目的だと思っているわけでございます。

 残念ながら、昨今は、なかなか自立できないとか、あるいは自主的にいろいろな考え方が言えないとか、またコミュニケーション能力が欠けるとか、あるいは、引きこもりがちになって社会に対する公共性とかそういったものが薄れているということが顕著にあらわれておりますので、特に教育基本法でもそういった点を重視して、公共性とか道徳性、そういったことと、やはり日本の伝統文化ということをしっかり新たに明記して、今、学校教育の中でもそういったことを実行していくべく準備をしているところでございます。

 いずれにしましても、まずは生きる基本ということ、これについては、基礎的な学力とか体力、さらには道徳心、そして職業観ということを私は訴えているわけでございまして、それを基礎として、やはり好奇心、チャレンジ精神旺盛な子供たちをつくる、そして、みずから目的を持ってということを考えますと、やはり多くの体験教育が必要だと私は考えておりまして、どちらかというと、今、ICT化された社会の中ではバーチャルの体験で済ませてしまう。そういったことではなくて、やはり実際に人と会う、実際に体験する、こういったことの中で、人との触れ合い、あるいは感動を持って精神的な成長があると思っておりますので、大いに体験教育ということを考え、やはりいろいろな野外活動や農業体験やあるいは海外体験、こういったことを強く訴えております。

 一言で言うと、外に出ろということを言って、福沢諭吉の時代、まさに、あのときに西洋のいろいろな状況をつぶさに体験してきたことが今日の日本の大きな発展につながっていると私は思っておりますので、改めて、今我が国がもっともっと世界へ出る、外へ出るということが必要だし、特に、最近は若い人たちが海外へ行く数が明らかに少なくなっております。

 したがって、これは大変ゆゆしき問題だと思いますので、ただ外へ出ろと言っても、小さいころからそういった好奇心やチャレンジ精神を養っていかないとなかなか難しいだろうと思っておりますので、子供のころからのトータル的なそういった教育をしていくこと、体験教育をしていくことが重要だと思って、それを実行に移してまいりたいと考えております。

木村(勉)委員 文科大臣のすばらしいお話を聞いて、大変心強く思いました。

 私も、慶応大学の三年のときに慶応大学アフリカ調査隊というものを組織しまして、一九六〇年に国連にアフリカが全部独立して参加したんですね、その次の年、各大学がアフリカ調査隊を編成して、私は慶応の代表としてブラックアフリカを中心にしてアフリカへ行って、その帰りは今度は一人で世界一周したんです。それは二十一のときだったですが、それが貴重なやはり私の政治への関心の原点であったなと、こう思っております。

 私の質問を終わります。ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で木村勉君の質疑は終了いたしました。

 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 初めに、新型インフルエンザの対策について、一項目だけ御質問申し上げたいと思います。

 最近、特に関西方面を中心に、修学旅行の中止によって多額のキャンセル料を請求されるケースが相次いでいるということを受けまして、新型インフルエンザの影響で旅行を中止した小中学校と高校のキャンセル料については地域活性化・経済危機対策臨時交付金で公費負担をするという方針が文科省の方から示されております。

 これにつきましては私学の修学旅行等のキャンセル料も対象になるというふうに理解できると思っておりますが、余りその点について周知されていないのか、私の事務所にも電話がかかってきたりしております。このことについて改めて説明をしていただきたい。また、文科省には、総務省と連携をとって、自治体や学校関係者などにぜひとも周知徹底をされるようにお願いをしたいと思います。この点について御質問を申し上げます。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

河村政府参考人 新型インフルエンザの流行に伴う修学旅行の取り扱いについては、まず、ことし五月二十八日付で、各都道府県等に対しまして、修学旅行の実施を取りやめる場合も、中止ではなくてできるだけ延期扱いなどとすることを含めました配慮を求める連絡を行っております。

 こうした中で、私立学校の修学旅行の中止に伴うキャンセル料が発生をし、これを何らかの形で地方公共団体が支援するということにした場合には、平成二十一年度補正予算に計上された地域活性化・経済危機対策臨時交付金を活用することが可能とされております。政府部内でそのようにされております。

 このことについて、都道府県からの照会には、その旨、その都度お答えをしてまいりましたけれども、改めて、昨日でございますが、平成二十一年六月九日付ということで、各都道府県の私立学校主管課長あてに周知をさせていただきました。

西委員 公立と私学とでは、教育委員会を通じてなのか、ちょっとルートが違うおそれもあると思うんですが、その点については、私学の場合はどういう手続をどこにしたらいいのかということについて再度お答え願いたいと思います。

河村政府参考人 御指摘をいただきましたように、私立学校に関しては、教育委員会ではなく、都道府県首長部局の方に担当の部局がございますので、私どもからの連絡もそちらに直接行っているところでございます。

西委員 はい、結構でございます。

 それでは、しばらく高等専門学校の充実のことについて御質問させていただきたいと思います。私、高専の教師を二十年ほどやっておりましたが、この件の質問が初めてなんですが、少しお許しをいただきたいと思います。

 昨年十二月に、「高等専門学校教育の充実について ―ものづくり技術力の継承・発展とイノベーションの創出を目指して―」、こういう答申が出されました。高専につきましては、ほとんどの高専が昭和三十年代後半から四十年代前半に設置をされて、これが大きく日本の工業の技術者の養成という意味では大変価値があった文部科学政策だというふうに私は思っておりますが、それ以降、施設設備の老朽化が著しい、同じ時期に建てておりますから、そういう問題がございます。

 教育研究環境としての施設設備は、学校開設以来更新していない実習工場、これが一つ具体的な問題として上がっております。また、校舎等の施設について見てみますと、建築後二十五年以上を経た建物が全建物面積の七五%というふうになっているなど、極めて厳しい状態がございます。

 答申では、今後五年間程度の体系的かつ集中的な取り組みの計画を策定するということを提言しておりますが、高専教育の充実のため、集中的な投資をしていただくように要望したいと思いますが、文部科学大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

塩谷国務大臣 今委員御指摘のとおり、中教審の答申において高専の重要性が示され、また充実について答申があったわけでございますが、この点から、二十一年度の運営費交付金につきましても必要額の確保に努めてまいりまして、国立大学と同水準の削減率、本当はプラスにしたい気持ちがあるんですが、同水準の削減率にとどめて、約六百七十億円を措置したわけでございます。

 さらに、補正予算については、今お話にございましたような高専の老朽化した設備の更新や高度化を進めるために約五十億、そして、施設の耐震化を進めるために約十一億を措置したところでございまして、文部科学省としましても、今後とも、国立高専の教育活動を支える予算を確保して、高専のさらなる充実に努めてまいりたいと考えております。

西委員 大臣、大学並みにとどめてというふうにおっしゃいましたけれども、さらなる充実をぜひとも今後ともお願い申し上げます。

 次に、文部科学省は、複数の大学が教員や施設を共同で活用しながら共同で学部や大学院の研究科をつくれるように、大学設置基準の改正を検討しておりました。しかしながら、ことし三月に施行された大学設置基準の改正では、共同の教育課程の編成というレベルにとどまってしまっております。

 私は、このことについては、今後の大学の教育において多様な選択肢が得られるという意味では大変重要な議論であったというふうに思っておりまして、そういう意味では、少し小ぶりな形で決着したということに残念な思いを持っております。連名で学位を授与するということから、それぞれの大学の関与をある程度担保したため、少し柔軟性を欠くという形で決着したというふうに理解をしております。

 将来は合同で学部や大学院の研究科も設置できるよう、引き続き検討をお願いしたい、こう思います。また、その際、高専も他の大学と連携して共同の教育課程や共同学部などをつくれるように検討していくことも要望させていただきたいと思います。

 同時に、大学施設の共同利用についても、高専も、特に地方では、施設関係というよりも、大学そのものが少ないということもあって、大学並びに短大、高専、そういうところも含めて対象にしていただけるように検討をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

徳永政府参考人 御指摘ございました、複数の大学による教育課程の共同実施ということでございます。これは、御紹介がございましたように、平成二十年度に創設をしたわけでございます。

 ただ一方、先生の方から御要望という形で御指摘ございましたが、複数の大学がいわば組織を一体となって共同で設置をするということにつきましては、さまざま、教育課程の共同実施の過程でも技術的な検討をしたわけでございますが、やはり、複数の大学により設置される共同学部による意思決定のあり方については、全く新しい制度的な仕組みが必要であるというようなこともございましたし、あるいはまた、共同学部に所属する教員の身分関係、そういったものをどうするか、とりわけ、国公私立大学の設置者ごとに異なる制度全般をどういうふうな形で整理するのか、こういった点について、かなり詳細な技術的検討をしなければいけないということでございます。なかなか難しい課題でございます。十分時間をかけて、これからもそういったことについては検討していきたいと考えているわけでございます。

 一方で、大学と高等専門学校の間でいわば共同教育課程を実施するということにつきましては、これはいわば学校教育法上で、大学と高等専門学校は全く性格の異なる、趣旨、目的等、異なる機関として設定をされております。そういった点については、いわば大学間で行っているような意味での共同教育課程を編成するということはなかなか難しい点があろうかと思っております。一方では、相互に単位を認定するという意味での、いわばソフトな形での連携は現行制度でも可能でございます。こういった点をむしろ支援していきたいと思っております。

 また、最後に先生の方から触れられました共同利用拠点、これは既に、学術研究分野におきましては共同研究・共同利用拠点というのが制度化をされておりまして、現在、これのアナロジーとして、教育・学生支援分野についても同じような形で、限られた資源を有効に活用するという観点から、大学制度の中に教育・学生支援分野の共同利用拠点というものを設けるという方向で、中央教育審議会で検討が進んでいるわけでございますが、そういった場合については、大学外の利用、高等専門学校等が利用するということも当然可能なような方向で制度設計を考えていきたいと思っております。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

西委員 これからの大学は、もちろん、管理する側、それから人事面、いろいろな意味で、そういう設置者の立場から物事を考えるということは大事ですけれども、もう一方で、学生の立場、学生が何を学びたいかということに最大限こたえられるような柔軟な組織をできるだけつくっていくということが学生の意欲を高めるためにはぜひとも必要なことではないか、そういう思いから、いろいろな形の学部だとか大学院だとかいうものができることがこれからの学生のためにも必要だという観点から申し上げましたので、さらなる検討をぜひともお願いしたい、こう思います。

 それから次は、給付型奨学金の支給についてのことです。

 財務省は、大学の国際的な競争力を高めることを課題としている。もちろん、これは文科省も当然のことでございます。日本の大学にそれを要求するならば、国としても競争できる環境を整えなければならない、こう思います。

 特に学生のことですが、アメリカとの圧倒的な違いというのは、各大学における資金力だと思います。この資金力を背景としてこそ優秀な学生や教員が集まるということは自明のことでございます。その一つの前例として、沖縄科学大学院大学という新しいタイプの大学ができてきたといいますか、今審議中だということも、だれもが知っていることでございます。

 そこで、財務省は奨学金について、貸与制ではなくて、アメリカでは主な大学では主流となっている給付制度にするように検討を進め、結論を出していくべきだ、こう思っております。学費や生活費を工面するためにバイトをしている学生も多いわけですが、こうした学生が学業に専念でき、海外の優秀な学生の目が日本に向けられるような環境を整えるべきである、こう思います。

 先ほど文科大臣も、優秀な学生が海外に雄飛するということについて促進をしていきたいと、現実は減っているわけですが、そういうお話もございましたが、日本の大学の活性化のためには、逆に、外国の優秀な学生が日本に入ってくる、先生が日本で教えていただく、こういうことがぜひとも必要だという一つの環境づくりのためにも、この給付つきの奨学金のことについて積極的に取り組んでいただきたいということで、財務省の御答弁をお願いしたいと思います。

真砂政府参考人 お答えさせていただきます。

 先生御案内のように、現在、奨学金につきましては、日本学生支援機構を通じまして、貸与制の奨学金を措置しているところでございます。

 この背景としましては、一つは、やはり限られた財源の中で、奨学金を希望するより多くの学生さんを対象にすることができるという点と、それから、大学へ進学することによりまして、将来の収入が高まるということが見込まれるわけでございますので、それを次の世代に還元していただくということがこの貸与制の背景にあるというふうに私ども承知しているところでございます。

 親の所得によって大学への進学が妨げられるというようなことがないようにするというのは、最も重要なことだと考えております。我が国は、こうした背景から、そのために奨学金を貸与制にしているというところでございます。

 先生の方から、給付制にするとの御指摘でございますけれども、国民各層、いろいろな学歴の方がおられます中からいただく税金を大学生に幅広く給付するということに国民の理解が得られるかというような問題もこれあると思いますので、慎重に検討をする必要があるというふうに考えているところでございます。

西委員 まあ、慎重に検討をするということは、しないという結論だと思うんですが、私が申し上げているのは、全学生を給付制にしろ、こういう意味ではありません。特に、海外からの留学生、具体的に言いますと中国の留学生は大体、給付制でまずアメリカをねらう、だめならヨーロッパをねらう、最後に日本をねらうというのが今の相場だと思います。それは何かというと、生活費がやりくりができないということだと思うんですね。海外の留学生も日本で安心して生活して学業に専念できる、その環境をつくるためにも、そういうものはぜひとも必要なものだというふうに思っております。

 もちろん、それは国民全般のお考えもあろうかと思いますけれども、いろいろなオプションがあっていいんだと。数はともかくとして、そういうことに取り組むという姿勢が日本の教育を国際化していく上ではぜひとも必要な考え方ではないか、こう思うから申し上げたということでございます。さらに、慎重ということではなくて、積極的な取り組みをお願いしたいと思います。

 それから、アメリカでは、今度は特に大学の運営のことですが、寄附の伝統、これはもちろん大学には限りません、いろいろな団体に対する寄附がございますが、あるということだけではなくて、社会システムの中に寄附の仕組みをつくる努力が常に行われている。例えば、プランドギビング、計画的寄附、またはディファードギビング、据え置き寄附というものがあるというふうに言われております。

 子供がないお年寄りは、自分が亡くなったときに生命保険がおりるけれども、今はそれほど多額の寄附をする余裕はない、現金も残しておきたい、こういう場合、その生命保険の受取人をNPOにするということができる。生前に寄附すると確約した段階で、税制上寄附をしたということになって、その保険の掛金が免税対象になるというふうに言われております。

 不動産の寄附については、例えば日本だったら、認定NPO法人に家を寄附するというような場合、普通は寄附するという段階でその家から出ることになってしまいますが、アメリカでは、生きている間はその家に住んで、亡くなったらNPOにその家が手渡される。寄附の約束をしたら、寄附者は生きている間に寄附者として扱われて、その資産価値を推定して、その分を自分の課税所得から控除できる。不動産関係の税金、例えばキャピタルゲインにかかる税金もかからない。さらに、銀行口座や株、退職金用口座からも非常に数多くの個人資産が寄附できる制度がある。現金などのフローの収入が少ない人でも、うちの寄附ができる。

 このように、アメリカでは、プランドギビングを使って高齢者が持つ資産を有効にそれぞれの組織が利用することができる。こんなように寄附を促進する仕組みは、寄附税制が整っているということが前提になっているわけでございます。

 もちろん、大学法人も、これはいろいろな意味で寄附を募ったり、また授業料のことについても心を配ったりという自助努力は当然必要ですが、その一つとして、大学の国際競争力の向上のためにこうした寄附を促進する制度をつくるなど支援をしていかなければ、削減削減だけでは立ち行かないというのは、今の現状を見ると、そのとおりだと思っております。

 早急に検討を進めて結論を出していただきたいと思いますが、この点についても財務省にお伺いしたいと思います。

古谷政府参考人 お答えをいたします。

 寄附税制につきましては、近年、経済社会の中で、民間による公益活動の果たす役割が高まっていることを踏まえまして、公益活動に対する寄附を促進するという観点から、例年の税制改正におきまして、寄附金控除の控除限度額の引き上げなどの拡充を行ってきたところでございます。この結果、税制上の控除割合自体を見ますと、全体として、アメリカと比較しても遜色のない内容になってきているのではないかというふうに考えております。

 議員から御指摘のございましたプランドギビングですとかディファードギビングという仕組みにつきまして、私ども、まだ制度の詳細を十分承知はしておりませんけれども、アメリカでは主として信託等のスキームを用いて慈善団体に将来寄附をすることを約束された上で、早い段階で寄附金控除の恩典が受けられるといったような税制上の仕組みがあるというふうに思っております。

 大学への寄附を促進するための具体的な方策ということで、社会システムの中に寄附の仕組みをつくる努力をすべきだというふうに御指摘がございましたけれども、おっしゃるとおりだと私どもも考えております。

 寄附をする側にどういうインセンティブを設けるか、あるいは寄附を受ける側でどういう体制をつくっていただくか、まず政策官庁において検討していただきたいと考えておりますけれども、私どもといたしましても、寄附金税制のあり方については、御指摘のアメリカの仕組みも含めまして十分に勉強させていただきたいというふうに考えております。

西委員 今、財務省の方から、関係官庁の方で十分議論をしてというお話がございました。この点について文科省はどうお考えなのか、できればお答えいただきたい。

徳永政府参考人 私どもも、大学に対して、いわば寄附等によりまして自己の裁量による財源を確保していくことは大切な課題だと思っております。そのために、これまでも学校法人に対する寄附税制等の改善については毎年のように要望を行い、所得税、法人税等の税制改正が認められてきたわけでございます。

 二十一年度税制改正要望におきましても、一定の相続財産等についての制度改正要望を行いましたけれども、残念ながら、この要望等は、私どものさまざまな準備不足等もございまして、なかなか認めていただくということではなかったわけでございますが、ぜひ、先生に先ほど御紹介いただきましたプランドギブというようなことにつきましても、十分私どもの方も勉強させていただきまして、今後そういったことも総合的に勘案をしながら必要な税制改正の要望を行っていきたいと思っております。

西委員 ぜひ積極的にお願いしたいと思います。

 高齢者の方で、例えば、身寄りがなくて、しかも、どこそこの大学を出たという愛校心を持っておられる方とか、いろいろな事情の方がいらっしゃると思うんですね。自分の老後を安心して暮らせて、そして亡くなった後にきちっとした、安心した形で寄附が行えるというシステムを、今一例として挙げましたけれども、文科省の方でも財務省に、受け入れる用意はあるように聞こえましたので、積極的に提案をしていくべきだ、このように思っております。

 では、次に参ります。

 財務大臣の諮問機関、財政制度審議会で、六月三日に、予算編成の方向を示す建議が取りまとめられました。日本の大学の質を高めるためどうするかという問題意識を持っているというふうに思っております。その中で、建議では、世界トップレベルの研究成果を上げる仕組みを構築する必要がある、これは遠山プランも基本的には同じ形で、文科省としても同じ方向性だというふうに思います。そして、研究は競争的な資金で賄うことを目指すべきではないか、こういうふうに結論づけております。

 一方、大学の運営交付金の削減は、これはある意味では兵糧攻めに近いような形で、少しずつではございますが、削減がされております。このことによって、かえって大学の競争力を奪っているのではないか。実は、一%という数字は、すべてにわたって平等に一%がきいているわけではなくて、確実に上がらざるを得ない部分もありながら、全体として一%を削減するということで、局所に、例えば研究費だとかいう面に著しくきいてくる、そういう事情があることを忘れないでいただきたいと思います。

 ところで、日本企業は、長期的視点に立った経営がその強さと言われ、世界からも注目されておりました。その日本企業が、目先の利益に走った時代もあり、一時的に利益を上げることもできるが、結果的には厳しい状況に追い込まれることになりました。大学経営についても、短期的な成果を求めるだけではなくて、長期的な視点に立つということも大変重要だというふうに思っております。重要な基礎研究の開花それから最先端の技術の開発には時間がかかるというのは、これは当然のことでございます。

 同時に、リスクも大いにあるという前提で進んでいかなければなりません。研究は競争的資金で賄うという発想にのみ立つことは、私は大変これからの大学教育に危機的な状況をもたらすことではないかというふうに思いますが、財務省の見解をお聞きしたいと思います。

真砂政府参考人 今先生から財政制度審議会の答申に御言及をいただきました。よりすぐれた研究を選定しましてそれに重点的に資金を配分するというのは、限られた財源の中で我が国の成長力あるいは国際競争力を高めていくために極めて重要だというふうに考えておりまして、今回、先生今御指摘になられた財政制度審議会の建議も基本的にはこうした考え方に沿ったものだと私ども認識をいたしております。

 平成十六年度以降の大学法人化以降、一律機械的に配分されております運営費交付金は、今申し上げた考え方に沿って削減はさせていただいておりますけれども、一方、競争的資金は増額をいたしておりますし、それに加えまして、各大学が自己収入増を図るという努力をしていただいた結果、国立大学全体で見ますと、総収入は平成十九年度までに約千九百億円増加しているというところでございます。

 また、十九年度決算で国立大学法人全体の収入の内訳を見ますと、全体で約二・七兆円の中でございますが、今先生御指摘になった競争的資金を初めとする補助金収入というのは千七百億円ということで、一割にも満たない規模でございます。したがって、今回の建議も、必ずしもすべての研究を競争的資金で賄うんだというところまで想定しているものではないと私どもも認識しているところでございます。

 また、先生の御指摘になりました基礎研究あるいは最先端の研究開発というのは、ある程度時間もかかるという話でございます。私どもも、競争的資金の配分に当たっては、それぞれの研究の成果をある程度見ることができるように、原則として三年から五年継続をさせるということで、研究分野ごとの性格に応じたきめ細かな対応を行っているというところでございます。

西委員 全体として、やはりバランスが大事だというふうに思うんですね。すべてが競争的資金に移っているということではないことは私も認識しているんですが、競争的資金に吸い上げるために一般の運営費交付金がどんどん削られていっている、その運営費交付金のきき方が一部の人件費などを外しますと研究費そのものに大きく削減がしわ寄せをしてきているという認識が問題だというふうに思っておりまして、今後とも十分御配慮をいただきたいと思いますが、文科省、何かございましたらお願いします。

徳永政府参考人 私ども、大学というものが安定的に教育研究を行っていくということのためにはやはり基盤的な経費が必要であろうと考えております。もちろん、大学そのものの教育研究を活性化するという意味で競争的な資金というものは大きな有効な手段であろうと思っておりますが、一方では、今度のノーベル賞の受賞の内容を見ましても、その研究が実際には三十年前、四十年前、五十年前に行われた研究であるというようなこともございます。あるいはまた、さまざまな財界あるいは企業活動のトップの方と懇談をする機会がございましても、ぜひ大学にはロングスパンで物を考えていただきたいというような御指摘もございます。

 そういった意味で、私どもといたしましても、一方では運営費交付金など必要な基盤的経費をきちんと確保する、その上で競争的資金ということと十分バランスをとっていくということが必要だと思っておりますし、また、この点につきましては、私どもの立場といたしますれば、世界の主な国々と比較して、我が国の国力という中で高等教育に対する財政支出そのものの規模ということをきちんと議論していかなければいけないのではないかと思っております。

西委員 時間が終わりましたが、世界トップレベルの研究成果を上げる仕組みをつくるという大前提、これは国としても、もちろん財務省、文科省としても共通の認識だと思います。限られた予算の中でどこを繰ってどうするという議論の中ではなかなか解決しがたい問題がある、その一つとして寄附ということも工夫したらどうかという提言を先ほどいたしましたけれども、その共通した目標に向かって我々一丸となって、予算の面も当然大きなことでございましょうし、また教員の質の向上も大変大きな課題に今後なってくるであろう、留学生の問題も、これは刺激を与えるという意味では、もっと優秀な学生が日本に留学してくる、そういうインセンティブを与えることが必要である、私はこんな観点から申し上げました。今後、高等教育の充実のためにどうぞまた御活躍をいただきますようにお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で西君の質疑は終了いたしました。

 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 三十分お時間をいただきましたので、一般質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 私の方からは、まず私立高等学校、中等教育学校後期課程の授業料滞納等に関する調査結果と対応策について、何点か御質問をしたいというふうに思います。

 予算委員会の方で、自民党の小野寺先生とか共産党の石井先生からも授業料滞納等に対してどういうふうに取り組んでいくんだという御質問がありました。私からも総理また文科大臣にも質問させていただきました。そのときに話題になっていましたのが、日本私立中学高等学校連合会が二月に私立高等学校における授業料滞納状況を取りまとめ、公表しておりました。これは十九年度末と二十年の十二月三十一日時点を比較しておりまして、授業料の滞納率が三倍に増加したというような報告があって、ちょっとびっくりしていたんです。

 今回、文科省の方で、十九年度末と二十年度末を対比して、きちんと調査をされて結果が出てきたということで、この結果では、日本私立中学高等学校連合会の調査ほどはひどくなかったというふうにペーパーをいただいておりますが、この結果について、日本私立中学高等学校連合会の調査結果との比較も含めて、どのように文科省として評価されているのか、まずお尋ねしたいというふうに思います。

河村政府参考人 先生お話しの日本私立中学高等学校連合会が二月に行った調査は、平成十九年度末の三月三十一日、二十年の三月三十一日時点と、平成二十年十二月末時点の状況の調査でございました。ですから、申し上げましたように、調査時点が異なっていることから単純比較はできませんものの、授業料滞納者が大きくふえていたという結果でございました。一方、今回の文部科学省の調査では、同じ年度末、三月三十一日時点における授業料滞納者数を調査いたしました。結果として、平成十九年度末に比べて二十年度末では滞納者数は〇・一%という増加でございます。

 私学の関係者にお聞きいたしますと、一般に、年度途中までは一時的に授業料滞納者数はふえるものの、年度末までには授業料が納入されるということが多く、滞納者数は減るということでございます。したがって、文部科学省の年度末の調査結果では、例年のように年明けから年度末までに授業料が納入された結果が反映されているということが一つあると思います。また、各学校において、今回の経済雇用情勢を受けまして、生徒への経済的支援に御努力いただいた成果も出ているのではないかと考えております。

 しかしながら、いずれにしても、文部科学省の調査結果においても授業料滞納者数がふえているということは事実でございます。私どもとしては、今後とも、都道府県が行う授業料減免事業への補助など、経済的に困難な方々への支援を実施していきたいという気持ちでございます。

富田委員 文科省の方でもいろいろ情報提供等をしていただいて、経済的支援を行った結果、高等学校連合会の調査とは違ったような形になってきたのかなというふうにも思うんです。

 文科省の方からいただいたペーパーによりますと、文科省における経済的支援等の取り組みとして、大きく三つ挙げられていました。

 経済的理由により高等学校等の生徒が修学機会を奪われることがないように、生徒らの状況に応じて各高等学校等におけるきめ細かな対応を要請、これは要請文が二度出ております。また、文科省等が講じている授業料減免や奨学金の修学支援策について、高等学校や大学等への進学を希望する学生生徒や保護者に対する情報提供を充実する。三番目として、経済的理由により修学が困難な高等学校等の生徒のため、各都道府県が行う授業料減免事業や奨学金事業への支援を充実というふうに聞いております。

 最後の点は、二十一年度の補正予算で四百八十六億を決めていただきましたので、これは後で聞きたいと思うんです。

 今回の調査結果の中で、いろいろな回答をちょっと見たんですが、授業料減免や奨学金等の経済的支援に関する生徒相談件数の状況という欄がありましたが、これはかなりの数で増加している。平成二十年度末において九百五十一校、約七二%の学校が十九年度に比べて経済的支援に関する生徒からの相談件数が増加しているというふうに回答している。その中でも、授業料の延納とか奨学金制度についての申請、あるいは授業料減免制度の利用方法等について、かなりの生徒さんが尋ねてきているというような報告がありました。

 こういう結果があるのに、もう一つ、生徒への経済的支援に関する情報提供という質問に対して、九百四十八校、七二%の学校が情報提供を実施している、百九十一校、一四%の学校が検討中と回答しているんですが、ここはいいと思うんですが、実施する予定はないというのが百八十三校、一三・八%もあるんです。

 では、ここに通っている生徒さんはどういうふうにこういう経済的支援について知ることができるんだ。もう少し、幾ら何でもこれはないんじゃないかなと思うんですが、この点は文科省としてはどういうふうに考えているんですか。

河村政府参考人 調査結果によりますと、回答を得た私立高校等千三百二十三校中の一三・八%に当たる百八十三校が、先生御指摘のように、生徒への経済的支援に関する情報提供実施予定が今のところないという回答になっておりました。

 この情報提供を実施しない理由というものを私ども逐一承知しているわけではございませんけれども、やはり、現在の経済雇用情勢のもとにあっては、学ぶ意欲のある生徒が経済的理由で修学を断念することがないように、各学校において支援策に関する積極的な情報提供や生徒たちからの相談へのきめ細かい対応をお願いしたいと考えております。

 このため、文部科学省では、これまでもホームページなどでの呼びかけを行ってまいりましたが、改めてこの六月八日、今月八日付で、各都道府県に対して、各学校を通じて生徒や保護者、担任の教員等に周知するように通知を行いました。今後とも、会議などさまざまな機会をとらえ、またさらに日本私立中学高等学校連合会とも協力をして、都道府県及び各学校に対する施策の周知、相談体制などの徹底についての周知も進めたいと思います。こうした取り組みへの支援を行いまして、意欲のある高校生が修学断念ということにならないように努めてまいりたいと存じます。

富田委員 改めて通知していただいたということで、それは了としますけれども、この通知の仕方等を見ていると、例えば局長とか部長からの通知というのは知事とか教育長に行きますよね。課長さんレベルの通知は所管の課長に行く。私立高校の現場にどうやって行っているのかというところがやはり問題なんじゃないかなと思うんですね。そこをもう少し、やはりきめ細やかにやっていただいて、一割以上の学校が実施しませんよというようなことがないように、ぜひ御配慮をいただきたいというふうに思います。

 もう一つ、この調査の回答の中で気になったのは、生徒の経済的支援措置ニーズへの対応というところで、二百八十五校、二一・五%が十分にこたえられていない。ここに行っている学校の生徒さんたちは結果的にどうなっちゃったのかなという、細かなことが出ていませんので断定的には言えませんが、学校自体が十分にこたえられていないと考えているそういう学校、あるいはそこに通う生徒さんたちへ、文科省としてどういうバックアップが今後できるのか、どんなふうに考えていらっしゃるのか、ちょっと教えていただきたいというふうに思います。

河村政府参考人 学校が生徒の経済的支援に対するニーズにこたえられていない、こういうケースがあるということでございますけれども、例えば、各学校が生徒の経済事情に応じて授業料を減免しようとしても、学校法人自身が厳しい経営状況にあって十分に措置を講じられないという場合があるものと考えております。ですから、まず私どもとしては、各学校法人の経営が十分に成り立っていくように、都道府県や国による経常費に対する補助などの支援を継続、充実することが重要と考えております。

 また、経済的理由により修学困難な生徒のニーズへの直接の対応、緊急の対応が図られるように、高校奨学金事業や各学校による授業料減免措置への補助を行っている都道府県に対し、平成二十一年度、このたびの補正予算におきまして、国からの新たな交付金、これは高等学校授業料減免事業等支援臨時特例交付金という名称を付しておりますけれども、まさに高校生への経済的支援のための交付金によりまして、各県に高校生修学支援の基金を設置していただくという形で支援を行うことといたしました。

富田委員 今部長お答えのように、そういう意味では、今回の二十一年度の補正予算はぴったりした政策だと思うんですが、この補正予算の中の高校生の授業料減免等に対する緊急支援についてですが、昨日お伺いしましたら、六月八日付で交付要綱を通知したということで、今後、この予算の執行の手続はどんなふうに流れていくのか、ちょっと教えていただけますか。

河村政府参考人 お話がございましたように、今週初めの六月八日に都道府県に対して高等学校授業料減免事業等支援臨時特例交付金の交付要綱の通知をいたしました。

 この交付金については、各都道府県でこれらの事業、つまり奨学金や授業料減免等の事業の対象になった昨年度及び今年度の実績人数に応じた案分を行うことにより、今年度中に二回に分けて都道府県に対して交付をすることを予定しております。

 都道府県では基金設置のための条例を制定していただきまして、これを受けて、秋以降に第一回目の交付、年度末に第二回目の交付を行う予定といたしております。

富田委員 都道府県の条例制定が必要だということですので、当然、都道府県の担当者にそのあたりの説明会とかをやっていくようになると思うんですが、その際にもきちんと情報提供をするような働きかけをしていただきたいというふうに思います。

 この各対象事業への充当額の算定方法なんですけれども、前回、決算行政監視委員会の分科会でちょっとお尋ねしましたが、まだ細かく決まっていないというような御回答でした。どんなふうになったのか、大まかな部分だけでも結構ですので、御説明いただけますか。

河村政府参考人 まず、この交付金について十分な説明会なども行ってという御要請がございましたが、来週にも説明会を予定しております。

 次に、各対象事業への充当額でございますけれども、都道府県に設置した基金から高校奨学金事業及び私立高校生の授業料減免措置への補助に充当できる額の算定方法は、平成二十年度に比べて増加するそれぞれの事業の対象人数に係る所要額を基本といたしております。

 そのうち、私立高校生の授業料減免措置への援助については、都道府県によって補助対象となる年収などの要件や補助単価の水準がさまざまでありますことから、それぞれ全国標準までを算定対象といたします。

 ただし、生活保護や家計急変、市町村民税非課税などのいわば厳しい世帯については、補助単価が全国標準を上回っていても、実績に基づいた算定をいたしますとともに、都道府県が制度を拡充する場合についても、その一部を算定対象とするなど、特に経済的に支援を必要とする層により手厚い措置となるようにいたします。

 また、都道府県の判断により、実質的に授業料と同等とみなせる納付金の減免、補助についても、充当額の算定対象とすることができることといたしております。

 以上でございます。

富田委員 予算委員会で大臣の方から、授業料だけじゃないんだ、いろいろほかにもかかる、そういった点も面倒を見なきゃいけないというような御答弁がありましたけれども、今の中で、特に私立高校では、授業料だけじゃなくていろいろな納付金というのがあります。そこも対象にしていただけるということで学校をやめなくて済む生徒さんがふえるんじゃないかと思いますので、このあたりは本当に柔軟な対応をよろしくお願いいたします。

 この授業料減免との絡みで、先ほど西委員の方から給付型の奨学金の話がありましたけれども、きのうの日経新聞と毎日新聞がたまたまこの奨学金のことを大きく取り上げておりました。

 日経新聞の方では「緊急奨学金 学生が渇望」という大きな見出しで記事がありまして、こういうような指摘がありました。「経済危機を受け昨年末から今年二月初旬にかけて、奨学金の貸与者を緊急募集したところ、利子つきの条件にもかかわらず九千人超が応募。約五十六億円を貸し出すことになった。当初、応募は四千人程度と予想していた」と。倍近い学生さんが応募してきたということであります。それだけやはり現場は家計急変の影響を受けているんだなというふうに思います。

 そこで、私の事務所に相談があったんですが、奨学金の応募をしましたら、大学の学部の方からこういう書類が必要ですよというペーパーをいただいたと。その中に、例えば第二種奨学金(有利子)と書いてあって、貸与条件という欄があるんですね。貸与条件の学力要件のところに、一年生、出身高校の評定平均値が三・二以上の者というふうにいただいたペーパーに明確に書いてあります。これは実は、九九年、もう十年前にきぼう21プランをつくる前に、まだ我々公明党は野党でしたけれども、自民党の先生方と協議した際に、この学力要件は事実上撤廃しよう、勉学の意欲のあるお子さんはだれでも応募対象になるんだというふうに決めたはずなんですが、十年たった今もこんなものが現場では残っている。

 文部科学省の方にお願いしまして、学生支援機構の方を通して、この学部には指導していただいてこの要件は最終的には撤廃していただいたんですが、何でこんなことが起きているのかなと。十年前に決めたことがいまだに、十年以上前のペーパーをそのまま使っているんじゃないかなというふうに思えるんですが、学力要件というのはもう事実上撤廃したんだということは、どんなふうに現場に徹底されているんでしょうか。教えていただきたいというふうに思います。

徳永政府参考人 今先生から御指摘いただきました、ある大学におきまする奨学金説明会においてそのような誤った説明をしたということでございます。私ども、そういった経緯、そしてまた、大学においてきちっと訂正文を学内に提示をし、全学生に対して周知をしたということにつきましても報告を受けているわけでございます。

 私どもからすれば、日本学生支援機構の方から全学校に対しまして、本年五月十一日に、有利子奨学金の貸与基準における学校独自の学力基準を設けないよう通知をしたところでございまして、日本学生支援機構から、現在はすべての学校において成績要件は撤廃されたということで認識をし、引き続き制度の周知徹底に努めたいという報告を受けております。

 基本的には、私ども、そういった形で、これまでも学生支援機構を通じ、各大学等に制度の周知をしてきたわけでございますが、やはり全体として、一人一人の学生さんあるいは保護者等に対し、奨学金の説明が十分ではなかったのではないかということも反省をしております。

 そういった中で、今回の二十一年度補正予算におきましては、例えば返還猶予制度があるというようなことも含めた形で、きちっとしたリーフレットを作成する、こういった経費につきましても補正予算の中で計上させていただいております。そういったことも含めて、今後とも、制度の周知、PRそしてまたきちんとした理解といったことに努めていきたいと思っております。

富田委員 ぜひ、また同じような問題が起きてこないように、文科省の方からもきちんと指導をしていただきたいというふうに思います。

 先ほど西委員がグラントの話をされていましたが、私もその点について、何点か大臣のお考えをお聞きしたいというふうに思います。

 実は、我が党の文部科学部会で、池坊部会長が中心になって、東京大学の小林雅之先生に来ていただきまして、教育機会と教育費負担のあり方という勉強会をやりました。なかなか、奨学金とか授業料減免等について、各国のデータをもとに御自分の考え方をまとめられていたのですばらしいなと思いまして、ちょっと調べてみましたら、実はちくま新書から「進学格差 深刻化する教育費負担」という本を小林先生は出されていました。帯に「親の無理はいつまでもつか?」と書いてあるんですね。

 やはり日本の国というのは、子供にできるだけいい教育を受けさせたい、特に自分が大学に行けなかったら、子供さんは自分より上の大学に行かせたい、そういう思いで今まで続いてきたんじゃないかなと。自分自身に当てはめても、やはり父親がそういうふうにしてくれたので何とか大学に行けたというような思いもありますけれども、小林先生に言わせるとそれはちょっともう限界なんじゃないかと。

 先ほど財務省の真砂主計局次長が、税金で奨学金を出すので、無利子、給与型の奨学金というのは国民の理解を得られないんじゃないかというような御答弁をされていましたけれども、もうそういう考え方を転換する時期に来ているのではないか。高等教育をきちんとだれもが受けられる機会を与えるという意味では、今までのような考え方で授業料減免とか奨学金を扱っていたのでは、ちょっともう無理なのではないかなということを、小林先生のお話を聞いていて本当に思いました。

 やはり奨学金の返還の負担を考えて、大学に行きたいけれども、高校三年生のときに、奨学金を受けても、授業料減免を受けても、将来その奨学金を返さなきゃならないということで、あきらめる生徒さんが本当に多くなっている。そういったことを含めると、高校のときにファイナンシャルプラン、大学に入ったときにどれだけお金がかかって、そのお金を自分の人生の中でどうやって返していくんだということがわかるようなシステムを国として用意してあげないと本当の意味で教育の機会均等にならないのではないかということを、小林先生はこの本でもおっしゃっていますし、我々の党の部会での講演でもそういうお話をしていただきました。本当にそのとおりだなと思います。

 また、各国のいろいろな奨学金制度等の調査結果も教えていただきまして、オーストラリアでは大学を卒業した後に授業料を払う。働いている中から大学のときにかかった授業料を払っていくというシステムになっている。日本ではこれはそのままとれませんけれども、国税等と連携していないとできないと思うんですが、そういったことも参考にすべきだろうし、アメリカ等は、授業料が物すごい高いけれども、それに見合う奨学金がどんと出ている。それぞれ、資力要件に従ってきちんと学ぶことができるんだというような御指摘を小林先生はされていました。

 財務省の方は、政策官庁の方できちんと税の問題とかも提言してほしいというふうに言われていましたので、ぜひ文科省の方から財務省に対して、税制の面も含めて提言していくべきだと思うのですが、小林先生の結論としては、大きく二点提言いただきまして、まず、日本学生支援機構の予約奨学制度を拡大するのが大事なんじゃないかというような御指摘がありました。予約奨学制度は進路選択に効果があるというふうに考えられると。先ほど話しました、入学後のファイナンシャルプランを立てられるといった意味で、子供さんやまたその親御さんたちもどういうふうにお金がかかってくるのだろうかということがわかる。そういった意味で、進学機会の保障のためには予約奨学制度の拡大の方がメリットが多いのではないかというふうに小林先生はおっしゃっていました。

 アメリカでは、大学が合格通知を出すときに、自分の大学ではどういう奨学金があってどういう授業料減免制度があってと、そういったことを全部一緒に通知するというんですね。高校生の方は、いろいろな大学を受けて、自分のファイナンシャルプランに一番合う大学を選んでいく、有名だとかそういうことではなくて、ファイナンシャルプランという形で大学選択をしていくというふうにも御指摘されていました。そういった意味で、学生支援機構の予約奨学制度を拡大していくという指摘をまず言っていただいた。

 もう一つ、所得連動型ローンあるいは公的給付奨学金、教育減税が必要なんじゃないかというような御提言がありました。

 公的な奨学金は、先ほど西委員の方が言われていましたが、所得連動型ローンというか、所得の低い場合には奨学金の返還免除、あるいはそういったものがきちんとくっついてくる。外国では三百万円以下の所得の場合には奨学金は返さなくていいというような制度をとっている国もあるようですので、そういった意味で、所得連動型ローンという形での対応、奨学金にしていくというのも、やはり一つ安心して奨学金を借りられるというような体制になるのではないかと思うんですね。

 こういった予約奨学制度の拡大とか所得連動型ローン、あるいは先ほど西委員が言っていた公的給付奨学金等について、文部科学省として今後どういうふうな方向性で考えていかれるか、最後に大臣の御意見を伺って、終わりたいと思います。

塩谷国務大臣 今お話しいただいた教育費負担の問題でございますが、小林先生のさまざまな資料に基づいた提言、私どももしっかりとこれから研究、また検討していかなければならないと思っているところでございます。

 一つは、ファイナンシャルプランを立てるということにつきましては、高校生がやはり大学へ入って安心して行けるように、このプランを立てていくことが必要だと思っておりますので、そのための予約採用制度につきましては大変重要な制度だと思っておりまして、その拡充については年々進めているところでございまして、平成二十年度の新規採用者のうち、半数以上が予約採用制からの採用となっております。

 そして、最近の厳しい経済状況において、もともと予約採用につきましては、前年度の、進学する前の年の八月までということでございましたが、本年から新たに、保護者の家計の急変等に対応できるように、有利子の奨学金に限ってでございますが、実質的に三月まで申し込みを延長する応急予約採用制度を実施しているところでございます。

 したがって、この予約採用制度につきましては、さらなる拡充、充実を図ってまいりたいと思っております。

 また、今お話ございました所得連動型ローンあるいは給付奨学金等、それぞれいろいろな諸外国での取り組みがあるわけでございますが、私ども、いわゆる教育費の負担についてどうあるべきかということについて、先月から教育安心社会の実現に関する懇談会を設置して、今検討しておりますが、いずれにしましても、財政等の状況を踏まえていかなければならない。例えば給付奨学金についても、先ほど財務省の方から答弁ありましたように、我が国において、財源の確保、あるいは大学に進学しない者との不公平さとか、そういったことが今まで問われてきたわけでございまして、しかしながら、今委員おっしゃったように、もうそういう段階ではないだろうという御指摘もあって、こういったことを一つの基準に基づいて家計負担をどう軽減できるかということは、今後検討していかなければならないと思っております。

 具体的にどういう案があるかということは、まだ今その段階ではないですが、いずれにしても、方向としては、教育費負担の軽減についてこれからしっかりと検討して、実現に向けて努力をしてまいりたいと考えております。

富田委員 ありがとうございました。終わります。

岩屋委員長 以上で富田君の質疑は終了いたしました。

 次に、土肥隆一君。

土肥委員 民主党の土肥隆一です。

 三十分しか時間がございませんから、私の最近思う教育と福祉と医療というようなテーマで最近考えておりますようなことを申し上げて、私の質問の義務を果たしたいと思っております。

 何と申しましても、特別支援教育というのが始まったということですね。これは、二〇〇七年、平成十九年でございますけれども、教育界においては、特に障害児教育においては画期的な制度変更だというふうに思いまして、その当時、文科委員会におりませんでしたので直接の議論にはかかわっておりませんけれども、資料を取り出して読むにつけ、これは大変な制度変更だと思います。

 一九四七年、昭和二十二年以来、長年、障害児教育は特殊教育と言われてきたんです。それが六十年間続いたんです。それが、さまざまな問題が指摘されて現行の特別支援教育に変わった。これは戦後の障害児教育の大転換だと思います。しかし、大転換したからうまくいっているかというと、これはもう綿密に追っかけていかなければならない、このように思っております。

 福祉の現場では、既に障害児、障害者は障害者自立支援法という法律によって制度変更が大幅に行われて、各民間福祉施設は大騒動です。あと二年しますと移行措置が終わらなきゃいけない。障害者が作業所に通ってくる。これは日額制なんです。一日通ってきたら、その分の支援費がおりてくるということです。

 福祉の世界では、長い間、措置施設としての福祉をやってきたわけです。子供の施設ではまだ措置が十分残っておりますけれども、それはやはり、措置と同時に契約の時代に移って、子供が契約の当事者になかなかなれない場合は措置でやらざるを得ないわけでございまして、それはそれとしましても、措置の時代が終わって契約の時代。そして障害者自立支援法というのは、最終的には、障害者も働きなさい、就労をしなさいと。ですから、通常の社会福祉施設を運営している人たちは、この子たちをどうしたら就労させることができるのかということで頭を悩ませているわけであります。

 ようやく教育が特殊教育から特別支援教育に変わったということでございまして、これは法律や政省令の中身も当然吟味しなきゃいけませんし、刻一刻追っかけていって、理想的な、理想というか、この特別支援教育が求めているところのゴールに向かってどれだけ達成しているのかということをしっかりと押さえていかなきゃならないと思っております。

 この特別支援教育でございますけれども、あらゆる分野にわたっております。私は社会福祉関連の仕事をもう三十五年ぐらいやっておりますけれども、障害児は、障害児として生まれてきて、そして就学前のさまざまな福祉教育、サービスを受けて、学校に入ります。学校を出ると今度は、その卒業生はまずは就労をしなきゃいけない。あるいはどこかの通所施設に預ける。この子供の一生、障害児の一生を見ていくときに、輪切りにされているんですね。

 障害を持った赤ちゃんとして生まれて、就学前はさまざまな療育サービスを受けます。後で厚生労働省に、どんなことをやっているか、メニューだけでも挙げてもらいたいと思いますけれども。そして学校に入ります。これは学校が一番問題なんです。何しろ長いんです。六・三制の九年間、高等養護まで入れると十二年間、学校に子供を預けます、障害児を預けます。

 それで、学校は一体何をやってきたんだろうというのが、大人の施設を運営している者にとっては率直な意見なんですね。

 例えば、全く言語を奪われている子供に対して、最近でこそ言語聴覚士なんというのがあって、訓練をしているわけですけれども、痛いともかゆいとも苦しいとも何事もしゃべれない、一言もしゃべれない障害者がいて、そしてその人にどんな質のサービスができるか。やはり、ここが痛いとか苦しいとか言ってもらわないとわからないわけです。言語聴覚士というのは、子供のときからやらなきゃいけないんですね。

 あるいは、今はOTとかPTとか出てまいりますけれども、これは特殊なリハビリテーションの分野でございます。やはり小さいときから追っかけて訓練をしませんと、どうしてこんな硬直した身体になってしまったの、手は曲がっているし、振り向きもできなきゃ何事もできないような状況、もう少しこのOT、PTが入って小さいときからリハビリをやったらどうなのと、こう思うわけです。

 今度は、学校を卒業しまして、そして施設に預けられるわけです。十七、八歳で施設に行きます。そのときにはもう症状が固定化されておりますから、ほとんど不可能です。もちろん、全く不可能とは言いません。パソコンを扱ったり、いろいろななかなか特殊な技術を持っている子もいますけれども。

 そして、やがて親が先に死にますね。そうしたら、その障害者は親亡き後どうするのかということは全くプログラム化されていないんです。厚生労働省あたりは特養に入れたらいいと言うんですけれども、大体四十五歳から五十歳ぐらいで急速に年をとってまいりますから、特養に入る年齢に入りませんし、一〇〇%身体介護が必要なお年寄りをそう簡単に特養は預かってくれません。

 つまり、何が私は言いたいかというと、障害者の一生が分断されて、分断された範疇でのサービスを受けているんですね。そして、一生、自分は一体何なんだろう、自分の生涯は何だったんだろうということを顧みるいとまもなく高齢化していく。これでいいのかということです。

 私はちょっと極端なことを言いますけれども、教育の現場で病気の治療という領域に入ってきたんじゃないか。発達障害を今度の特別支援の教育の中に入れますけれども、そのほか、小児てんかんを持っていたり、あるいは、極端に言えば小児精神病であったり、普通に見える障害のみならず、あらゆる心的な治療を必要とする子供がいっぱいいるわけです。

 今度の特別支援教育は、なるべく現場に障害者あるいは発達障害児も入れて、そして教室の中で適切な指導や教育が行われる、そのことによってその教室の学力が向上するとか心の安らぎが与えられるとか書いてあるんですけれども、そこまでいっているのということは、始まったばかりですから言いませんけれども、いずれにしても、この特殊教育六十年という物すごいハンディキャップを抱えて、これから学校が何をしていくのかということであります。

 そういうことから考えて、私はやはり学校教育に非常に問題を感じております。とにかく長い。そして、さまざまな子供がいるわけですから、理想的なというようなものは追い求めませんけれども、もう少し学校の現場が、先ほど言ったように、治療的な側面も含めるような子供理解、人間理解がないと、教育は始まらないというふうに思うわけであります。

 この前、神戸で、阪神・淡路震災後十五年がたちまして、まだ震災教育というのをやっております。その日は学校を開放しまして、父兄のみならず、私どもものぞきに行くわけです。震災教育をやっているんですけれども、型どおりの震災教育をやっているわけです。テキストがあるわけです。ところが、ちょっと見たらその教室に、普通の車いすじゃなくて、もたれかからなきゃならないバギータイプの車いすの女の子がいまして、その子もその教室にいるわけです。それで震災がどうだこうだというような話をしているんですけれども、私が教師だったら、もしここでどおんと地震が起きたときに、この障害者の女の子をどう助けるということを訴えたいくらいですね。大体みんな、机の下に逃れましょうとか急いで運動場に出ましょうとかいうような話なんですけれども、では、その子はだれが運ぶんですか。格好の震災教育であるし、教育の現場としては、まさに特別支援教育じゃないかと思いながら見てきたわけでございます。

 それで、少し論旨を進めます。これは二〇〇七年がスタートになりましたから急いで結論を求めるわけじゃございませんけれども、このレポートとかあるいはさまざまな資料を読んでおりますと、これはもう特別支援教師というのは、プロでないとならないということですね。プロフェッショナルな人間でないとこの障害児教育に当たることはできない。教師に期待される、あるいは特別支援学校にしても普通の学級にしても、求められているさまざまな仕事を見てみましても、プロしかできない。逆に、本当にプロを育ててほしい。しかも、相当の数でプロを育ててほしい。

 そういうことからいうと、カリキュラムなんかを見せてもらいましたけれども、随分たくさんあるんですけれども、ずっと削って削って、このうちから三単位とか、これだけは基礎的にやりなさいというようなことでこの特別支援教育の免許を取ることになるわけでありますけれども、そこまではきょうは入りませんが、いずれにしても、まずお尋ねしますけれども、この非常に難しい時代、複雑化、重複化などが言われている中で発達障害児も迎え入れる。そうすると、この統計を見てみますと、いわゆる障害児とは言いませんでも、そういう特別なケアが必要な人が子供の二〇%に及ぶというような数字も出ておりましたが、今、この特別支援教育教員の養成及び現場でどうなっているか、簡潔に説明してください。

金森政府参考人 特別支援教育にかかわる教員が特別支援学校教諭免許状を取得することなどによって必要な専門性を身につけることが重要であることは、御指摘のとおりでございます。

 特別支援学校教諭免許状の取得のためには、幼稚園、小学校、中学校または高等学校の教諭の普通免許状を有すること、及び、特別支援学校教諭の教職課程として認定を受けている大学の課程等において、特別支援教育に関する科目を修得することが必要でございます。

 特別支援学校教諭の教職課程等を履修し、特別支援学校教諭免許状を取得した者の数は、平成十九年度卒業者で約三千二百人となっております。また、現職の特別支援学校の教員の数は、平成二十年五月一日現在で約五万七千百人でございまして、そのうち、対応する障害種の特別支援学校教諭免許状を取得している者は約三万九千五百人、七〇%でございます。

 文部科学省といたしましては、現職教員の特別支援学校教諭免許状の保有率を向上させることが必要であると考えておりまして、障害者基本計画に基づく重点施策実施五カ年計画において特別支援学校教諭の免許保有率の向上を目標として掲げましたほか、特別支援学校教員専門性向上事業において、大学に委託して、免許法認定講習の講座を開設しております。また、都道府県や政令市の教育委員会が免許法認定講習を実施するよう、各種会議を通じて働きかけているところでございます。

 こうした取り組みを通じ、今後とも、教員の特別支援学校教諭免許状の保有率の向上を促してまいりたいと考えているところでございます。

土肥委員 その数で足りているのか足りていないのかは、詳細な検討をしなきゃならないと思います。

 要するに、仕事量が膨大にふえて、そして多種多様な障害児に対する対応をしなきゃならない。文科省が発行しているいろいろなポンチ絵などを見ましても、地域活動から、それから、子供たちの置かれている家族との出会いだとか家族指導でありますとか、あるいはだんだん大きくなっていきますと、就労支援をするためのハローワークとのつき合いだとか、あるいは医療機関や福祉施設のつき合いも必要ですし、学校でじっと教えているというわけにいかないわけですね。そういう社会的に広がりを持った教員がたくさんいて、そして、その子その子に合う人生設計をしていく。

 今度の、皆さんの出した特別支援教育のさまざまな分野の中で一番特徴的なのは、一対一で、つまり個別支援計画を立てて、それをずっと追っかけていって、そして、その障害児がどういう生活歴あるいはどういう経過をたどってきたかというのを見なさいということになっておりまして、これも大変大事なことですね。

 先ほど言いましたように、日本の障害者対策というのは分断化されておりますから、学校で九年間あるいは十二年間きちっとやっていただいても大変重要な記録ですけれども、その前に、就学前のその子供はどうだったんだろう、卒業してこの子は一体どういう方向に行くんだろう、どうしたらいいんだろうというようなことから考えますと、とても平成十九年で三千二百人ぐらいの養成では追いつかないというふうに思います。

 私は子供の障害者の療育事業もやっておりますけれども、今、就学前の福祉サービスといいましょうか、子供への支援というのはどうなっているのか。厚生労働省に来ていただいておりますから、お示しいただきたいと思います。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、障害をお持ちの子供さん、早くに気づき、発見をし、早くにその支援を行う、対応を行うということは大変大事なことだと思います。それを乳幼児期から就学前、それから学齢期、それからさらには就労、成人期につなげていく、この支援の体系をきちんとつなげていくことが大事だというふうに思っています。

 それで、今御指摘のような就学前でございますけれども、まずもって早くに気づいていただく、あるいはその周りが気づくということでございまして、例えば、乳幼児健診、一歳半健診、三歳児健診等における気づき、あるいは発達障害のお子さんでありますと、保育所等の中でちょっと気づきが始まる、少し心配だなということで始まるということをよく伺います。

 そういうところの気づきを早くつなげていくということでございまして、障害をお持ちということがわかった場合には、例えば、肢体不自由等は育成医療等でその障害の除去、軽減を図っていく。それから、在宅のお子さんに対しまして、専門的な機関であります障害児の療育指導を行う通園施設で、先生やっていただいていますけれども、そういう施設での療育指導支援をしていただく。あるいは、児童デイサービスというようなことで、親御さんのいらっしゃらない時間帯においてもきちんとお預かりをし、専門的な支援を行う。それから、在宅のお子さんに対しまして居宅の介護等も行っていくというふうなことのメニューでやっております。

 これらを総合的に届けるということで、私どもの方でも、昨年も専門家の皆様、当事者の皆様にお集まりいただきまして検討会を持ちましたが、こういうものをきちんとみんなが共有をしていこうということで、例えば自治体等では、その共有情報をファイル、コンピューター等で共有をしていってつなげていく、こういう努力も始まっていますが、このようなものも応援をしていきたいというふうに考えているところでございます。

土肥委員 そこで、学校教育が始まるわけです。何か連携はとっていらっしゃいますか。申し送りだとかデータの伝達だとか個人情報、これは教育内での話ですけれども、そういういわば学校教育に移していく、移っていく、その視点がどういうふうになっているのか。つまり私が言いたいのは、厚生労働省と文科省は、教育問題にすれば一つなんですね。木倉さん、その辺のお考えはどうでしょうか。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの補充になりますけれども、就学前に皆さんが気づかれて、相談をされて支援体系を組み立てた方、これを学齢期等にもつなげていく。その切れ目がどうしても生じてしまうおそれがありますので、そこは非常に大事だというふうに思っております。検討会でもその点の重要性が指摘されたところでございます。

 具体的なやり方としまして、例えば、昨年度補正予算で措置をしていただきました事業の中で、それまでの福祉関係者、医療関係者、教育関係者等が、保育所の関係者、幼稚園の関係者等も含めて就労前に個別の支援計画をつくった。そういうものについての一つのファイル、そういうものを次に引き継いでいく。そういうものを支援していこうということで、具体的にもう市町村等でも、コンピューター上で、親御さんが管理される場合もありますが、教育部局あるいは福祉部局の方で、個人情報に配慮しながら、その情報をだんだんと更新していくファイルをつくり始めているところがあります。それから、紙のファイルで親御さんがきっちり責任を持ってそういうファイルを更新されるところがありますが、そういう情報の共有化というものを応援するような予算措置もしていただきました。

 こういうものを促していく、それから、それを学齢期においてもつなげていくという努力を続けていきたいというふうに思っているところでございます。

土肥委員 現物を見てみないと何とも言えませんけれども、大変結構だと思いますが、学校の側はそれでどう受けとめるんでしょうか。

金森政府参考人 障害のある幼児や児童生徒の教育につきましては、障害の状態に応じてその可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加するために必要な力を培うことが重要でございます。

 私どもでは、長期的な視点で学校卒業後まで一貫した支援を行うための個別の教育支援計画の作成を、小学校や中学校、高等学校の新しい学習指導に位置づけたところでございます。

 また、あわせて、厚生労働省との緊密な連携のもと、学校や幼稚園などと保健、医療、福祉、労働などの関係機関との連携による一貫した教育支援を行うための事業を行っているところでございまして、こうした事業を通じて、厚生労働省などの関係機関との連携をより一層強めてまいりたいと考えているところでございます。

土肥委員 最後になりますけれども、就労支援についてお聞きしたいと思います。

 学校制度の一番悪いところは、一定の教育期間が終わると一丁上がりと。必ず外へ行ってくれるわけですから、目の前からその子供はいなくなるわけですね。それをまた受け入れる民間福祉事業者は大変なわけでございます。いろいろな問題がありますけれども、そもそも私が今まで経験している中では、学校からそういう一対一の養育記録、教育記録というのは見たことがございません。

 したがって、今後は、特別支援学校のスタッフの皆さんともっと綿密なおつき合いをしなきゃならないというふうに思うわけでありますけれども、就労というのは、よほどの力を入れてやらない限り難しい話です。それが特別支援学校でどういうふうに行われているんだろうか。民間福祉事業者も就労支援事業というのをやりますけれども、そういう中で学校における就労支援はどうなっているのか、ちょっと端的にお示しください。

金森政府参考人 障害者がその能力と適性に応じ自立した日常生活または社会生活を営むことができるようにすることは、大変重要なことでございます。

 特別支援学校におきましては、小学校や中学校、高等学校における教育内容に準じ、児童生徒の障害の状態や発達の段階などを踏まえ、学校卒業後の社会参加や自立を目指し、さまざまな支援を行っているところでございます。

 この点につきまして少し具体的に申し上げますと、特に特別支援学校の高等部におきましては、学習指導要領に基づき、例えば、第三次産業に対応した専門科目、流通サービスの履修でございますとかコンピューターや情報通信ネットワークの活用、また、産業界との連携を図った就業体験の機会の拡充など、社会のニーズや生徒の障害の状態に応じた職業教育の充実を図っているところでございます。

 さらに、ことし三月に告示をいたしました新しい学習指導要領におきましては、知的障害に対応した特別支援学校の専門教科といたしまして、福祉を新設するなどの改善を図ったところでございます。

 引き続き、厚生労働省などとも連携いたしまして、障害のある子供たちの職業的自立及び就労を促進するための施策の充実に努めてまいりたいと考えております。

土肥委員 もう最後にします。

 私は、特別支援教育というのは、すべては就労、仕事に向かうと。算数や理科だなんというのも勉強しなきゃいけませんけれども、能力のある子は勉強したらいいんですけれども、すべては仕事に向かう。そうでないと自立できませんよ、いつまでも福祉サービスの中におるわけにはいきませんから。そういう意味では、職業教育、職業訓練というのは、繰り返し繰り返し、できる限りたくさんの単元をとって訓練すべきだと。

 そういう意味では、木工でありますとか、あるいは機械工、機械の作業でありますとか、サービス産業だけじゃなくて、何か物づくりの能力もあるかもしれないし、あらゆる能力を開発する意味で、すべては就労に、すべては職業にとつなげるような特別支援教育であってほしいと思います。

 以上をもって終わります。ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で土肥君の質疑は終了しました。

 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時五十分開議

岩屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。笠浩史君。

笠委員 きょうはまた質問の機会をいただき、ありがとうございます。民主党の笠浩史でございます。

 きょうは、幾つかちょっと確認と、またおさらい、そして今後の問題も含めて大臣と議論を交わさせていただきたいと思います。

 まず最初に、いわゆる漢検ですね、財団法人、これが、前の理事長と副理事長が逮捕されて、この方々がこれまでどうやってきたかというのは司直の手に今ゆだねられているところですので、私は、今後の、漢検が新体制で再出発をしたということですけれども、実は、ああいう運営がとんでもない形で行われていたということについては本当にどうしようもないことだと思っています。ただ、ある意味では、この漢字文化、いわゆる漢字ブームというものをいろいろな形でやってきた、このやっていた中身自体、内容自体については、やはり私は評価してもいいと思っているんですね。

 それで、新体制で出発をした上で、今後どういうふうな形で、信頼回復を含めて、文科省として引き続き指導をしていくのか、その点についてまず大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

塩谷国務大臣 漢検の問題につきましては、改めて理事長、副理事長が逮捕という事態になっているわけでございまして、この問題が発生して、この根本的な改善をということで、私どもとしてもその具体的な項目を挙げて指導をしてきたわけでございます。

 四月に新しい鬼追理事長が就任して、私どもとしても四月の二十四日に局長通知で文部科学省の指導を行ったわけですが、一つは説明責任を果たすということ、これは機会あるごとにできるだけ記者会見を実施してしっかりと世間に話をするべきということ、また、理事、監事、評議員の人事を含めた体制の刷新、さらには、関係企業との取引解消、損害賠償請求等の検討、こういった問題を法人を新しくするために改善すべきだということで指導したところでございまして、こういった状況が、まずは百日でということが新しい理事長のもとで今改善が行われて、ちょうど先日、五十日たった中でも中間報告がありまして、随時その報告を受けながら指導を行っているわけです。

 今、笠委員がおっしゃったように、やってきたこと、協会としての仕事としては大変有意義な仕事をしてきているし、今後も漢検として信頼ある活動をまた続けていくことが大事だと思っておりますので、私どもとしても引き続き指導を行って、信頼を回復されて、そしてこの事業が国民のために改めて十分に活動できるような体制を整えられると思っておりますので、引き続き指導を続けてまいりたいと思っております。

笠委員 そこはしっかりとこれからも指導していただきたいと思います。

 それで、今大臣の方からもあった新生漢検百日プロジェクトですか、新しい理事長のもとでこれが今実施をされているということで、その中で、本当に一番大事な信頼回復に関して、緊急の検討課題として今の検定料をしっかりと引き下げていこうということで、六月から七月にかけて新生漢検として検定が行われていると承知をしておりますけれども、少し受検者の方も当然ながら減っていると。

 ただ、学校単位でこれを活用しているところもありますし、財団法人としての目的を達するためにも引き続き検定料というものを、今五百円とか、少しとりあえず引き下げられておるようですけれども、やはりこれをしっかりもう少し安くして、その引き下げを図って、多くの人たちに活用していただけるような環境を整えていくということが大事だと思いますけれども、その点について文科省としての考えをお伺いしたいと思います。

清水政府参考人 御指摘の検定料の引き下げにつきましては、去る四月十五日に、一級から二級は五百円を引き下げ、準二級から七級、これが小中高校生が一番多いわけでございますけれども二百円引き下げ、八級から十級までは百円引き下げるということとされたところであります。

 文科省としては、四月二十四日付局長通知において、当面の対応としての引き下げとしては適当と考えるけれども、関連企業との取引解消などを踏まえた法人の資産や今後の受検者数の推移等の状況を踏まえながら、さらなる引き下げについて引き続き検討するよう指導したところでございます。

 四月三十日付で漢検協会から出された報告によりますと、関連四社との取引の解消、特定資産支出計画の見直し等を行って、当該法人の漢字検定の受益者である受検者の視点に立って、検定料のさらなる引き下げについて引き続き検討していくということとされております。

 本年六月実施の第一回検定より当面の引き下げは行われたわけでありますけれども、大臣御答弁申し上げましたように、関係企業との取引解消など法人運営の抜本的な改革に向けた取り組みが進められているところであり、文科省としては、公益事業における利益について、法人の健全な運営に必要な額以上の利益を生じないという観点に立って、さらなる引き下げについて引き続き厳正に指導監督してまいりたいと考えております。

笠委員 その点もしっかり、特に、今ありましたように高校在学から小学校四年生ですか、一番、八〇%の志願者の方がこの年齢で、今は検定料というのは二千円ぐらいになっているわけですけれども、これも含めて引き続きの検討をお願いいたしたいと思います。

 そして、今回の一つの教訓として、これは漢検だけではなくて、やはり文科省が多くの財団法人等々を所管されております。そういう中で、今までもこの漢検の問題についてもいろいろと指導はしてきた。しかし私は、この理事長、副理事長の問題が報じられて初めて厳しい形での指導に入ったような気がしてなりません。漢検だけではなくて同じような法人がひょっとしたらあるかもしれない。ですから、そこあたりの所管するさまざまな財団法人等々に対する指導監督というものを、今後こうした事態が絶対に起こらないように、再発防止を含めて、広い意味でどのようにこれから対応されていくのかを大臣にお伺いいたしたいと思います。

塩谷国務大臣 今回の漢検の事例をもとに、今後の公益法人のあり方等、いろいろ正さなければならない点が多々あると思っておりますが、特に今回問題になったのは、収支相償になっていない、いわゆる過剰な利益を生んでいるということ、それから利益相反取引を行っているということ、また法人の管理運営、チェック体制が不十分であるということで、こういった点をしっかりと改めて、各公益法人等のチェックをする段階でもう一度この例に倣ってやらなければならないと思っております。

 文部科学省としましては、法令や公益法人の設立許可及び指導監督基準等を踏まえて法人に対する実地検査を行う際の要領を定めております。これに基づいて法人の状況をチェックしているわけでございますが、今回こういう問題が起きたということは、現在のチェックは必ずしも十分ではないということでございますので、こういう点、今後、実地調査等のあり方、こういったことも検討しなければならないと思っておりますし、また今後、新しい公益法人法のもとで、内閣府のもとで新制度がスタートするわけでございまして、そういったことも踏まえて、将来にわたって、また具体的に何が必要かということを検討しつつ、しっかりと指導していく体制を整えていかなければならないと考えております。

笠委員 その点については本当にこの教訓を生かして、もちろん公益法人のあり方、今度は内閣府の協力もいただかなきゃいけませんけれども、これは政府を挙げて、私どもも含めて、国会のチェックも含めてやっていかなければならないと思っております。

 次に、この百年に一度と言われるような経済危機、先般三月のときにも、補正予算を組むというような方針を控えた中で大臣と議論させていただきました。この経済危機、親の経済力によって子供たちの学ぶ機会というもの、そのスタートラインの時点で差がつくようなことは絶対にあってはならないというようなことで、幾つか議論させていただきました。

 ちょっと確認をさせていただきたいんですが、そのときに、私、高等学校の中退者数、現在約七万三千人というのが新しい数値として、ただ、経済的な理由というのが二千六百人、三・六%だけれども、恐らく進路変更とか家庭の事情、特に一番多いのは進路変更ですよね、その中には就職するという人も含まれている、その就職をするというふうに変更するに至った中では、恐らく経済的な理由からやむを得ずということで、そういう形で学校を中退せざるを得ないというような生徒さんがいるんではないかということを指摘させていただきました。

 やはりその実態把握をもっとしっかりと文科省としてやるべきであるということを指摘させていただきましたけれども、その後、そうした点についての検討をいただいたのかどうか、その点をお答えいただきたいと思います。

金森政府参考人 私どもが毎年度実施をいたしております児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査におきましては、経済的理由による高校生の中途退学者数について調査をいたしております。

 この調査における経済的理由につきましては、これまで保護者の事情等により家計が困難になり退学した者を各学校が回答することといたしておりましたが、昨今の経済雇用情勢の悪化を踏まえ、中途退学者の状況をきめ細かく把握いたしますため、平成二十年度の調査から、経済的理由の内訳といたしまして、授業料減免を受けていた者、奨学金の貸与を受けていた者、授業料の滞納があった者といった区分を設け、調査することとしたところでございます。

笠委員 それをこれからも進めていただきたいんですけれども、では一つ具体的にお伺いしたいんですが、私立高等学校、今は九七%ぐらいの方が、ほとんどの皆さんが高等学校に進学をされ、高等学校になると約三割の方が私学に通われるということで、親の負担というのは非常に大きいものがあるわけですね、私学に通っておられるお子さんは。

 この私立高等学校の授業料の滞納等の状況、二十一年三月三十一日時点という調査の概要をいただいておりますけれども、この中で、平成二十年度末で授業料の滞納者数というものが、九千六十七人ぐらいの生徒さんが授業料を滞納されている、平成十九年度末においても八千二百七十六人、ふえているわけですね。恐らく二十一年度末になればまたさらにふえているんじゃないかと私は思うんですが、この授業料滞納をされている生徒さんたちがちゃんと卒業できているのかどうか、あるいは中退をすることにつながっているのか、その点はどのように把握をされているのかをお答えいただきたいと思います。

金森政府参考人 平成二十年度末における授業料の滞納状況の調査につきましては、御紹介ございましたように、私立高等学校などの状況に関しましては、既に調査を行っております。また、公立高校の状況につきましては、現在調査をいたしている最中でございます。一方で、先ほど申し上げましたように、児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査におきましては、高校生の中途退学の状況に関する調査の中で、これは平成二十年度調査からでございますが、経済的理由による中途退学者の内訳のうち、授業料の滞納があった者について調査を行うこととしたところでございますので、この二つの調査を分析することによって、平成二十年度において授業料を滞納した者がどの程度中途退学につながったのかを把握することができると考えているところでございます。

笠委員 いや、今把握されているんでしょう。まだ把握されていないんですか。それだけお答えください。

金森政府参考人 まだ把握をいたしておりません。これからこの二つの調査結果をもとに分析し、把握をしてまいりたいと考えております。

笠委員 私、そこあたりが本当に危機感が足りないと思っているんですよ。

 いろいろな形で調査をするんだけれども、問題は、授業料を、普通は、まず滞納がある、そこでさまざまな、いろいろな例えば奨学金であったり、あるいは学校が独自に支援をしているところもあるでしょう。そういう中で救われているお子さんたちはいいんですよ。けれども、中にはそうじゃない、中退をせざるを得ないというような生徒さんが出てくる可能性があるわけですね。それは絶対に、少なくとも、我々民主党としては、先般も議論させていただきましたけれども、高等学校は事実上無償化すべきであるという立場に立っているんですが、ほとんどの皆さんが今高校までは必ず行かれるというような時代ですから、たとえそれが公立であったとしても私立であったとしても、セーフティーネットだけはしっかりとしなければならない、そういうきめの細かい対応というものを文科省がしていくべきだと私は思っているんです。その点について、改めてお答えをいただきたいと思います。

金森政府参考人 こうした経済状況が厳しい中で、学ぶ意欲や能力がありながら経済的理由によって生徒が学業を断念せざるを得なくなることは憂慮すべき問題だと考えております。私どもといたしましては、できるだけきめ細かな調査を迅速に行うことによってその実態を十分把握してまいりたいと考えているところでございます。

笠委員 本当に、これは来年からとかそういう話じゃありません。今も、本年度に入ってからもそういう生徒さんたちが全国におられると私は思います。ですから、これはすぐにやっていただき、今後さらに、単に都道府県に対してきめ細かくやれということじゃなくて、文科省自身がその責任を果たしていただきたいと思います。

 そして、ちょっとこれに関連して確認をさせていただきたいんですが、私、昨日、これは毎日新聞で拝見をしたところですけれども、今、日本学生支援機構から都道府県に移管をされた高校生の奨学金事業で、二十四の都道府県が公益法人や民間団体の貸与型の奨学金と併用して受けることができない、もらえない。なかなか学生支援機構の奨学金だけでは大変なんですね。特に私学に通われている方なんかは相当な負担がある。授業料以外にもさまざまお金がかかるわけですよ。そういう中で、こういう都道府県によってかなりばらつきが出てきているという点について、まずこうした実態を文科省としては把握されているのか、そして今後どのようにそこを、対策を考えていくのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

金森政府参考人 経済的な理由により修学困難な高校生に対する奨学金事業につきましては、日本学生支援機構、旧日本育英会が実施をしてまいりました高校奨学金事業が平成十七年度の入学者から順次都道府県に移管され、従来から各都道府県で実施している事業もあわせて、全都道府県において奨学金事業が実施されているところでございます。

 報道にございましたように、都道府県で実施をいたしております高校奨学金事業につきまして、例えば、より多くの者を奨学金の対象とすることや、返済負担が過大になることを防止するという理由で、他の制度との併用を禁止している都道府県があることは承知をいたしております。この高校奨学金事業の具体的な内容につきましては各都道府県において定められているところでございまして、他の奨学金との併用の可否につきましても各都道府県の判断によるところでございます。

 私どもといたしましては、今後とも、各都道府県の状況を把握いたしますとともに、情報提供などを行い、学ぶ意欲のある高校生が経済的理由によって修学を断念することがないようにするため、各都道府県において適切な奨学金事業が実施されるよう、必要に応じて促してまいりたいと考えているところでございます。

笠委員 そういうことではなくて、要するに、これは〇四年までですか、国としてやっていたときには併用を認めていましたね。しかし、それが都道府県に移管をされて、そうすると、どこの都道府県、どこに住んでいるかによって、そのセーフティーネットに差が出てくるわけですよ。だから、やはりこれは高校ぐらいまではしっかりと、都道府県は都道府県でいろいろな判断があると思います。果たしてその貸し過ぎが、今後それを回収していかなきゃなりませんから、返済してもらわなきゃいけないから、それはどこまでのラインで線を引くのかというようなことは、私はそれぞれあってもいい。

 しかしながら、最終的なセーフティーネットというものを、移管するに当たって、国として、こうしたことが起こり得るんだということを想定されて、そういうときの対応をどうするかということについては、今も一切検討がなされていないんでしょうか。

金森政府参考人 高校奨学金事業の制度につきましては各都道府県において定められているところでございますので、併用の可否につきましても各都道府県が判断するところでございます。

 その理由といたしましては、より多くの者を奨学金の対象とすることや返済負担が過大になることを防止することを理由にいたしているところでございますが、私どもといたしましては、例えば、都道府県による私立高校が行う授業料減免措置への補助に対して、私学助成としてその一部を補助しているところでございますけれども、平成二十一年度の補正予算におきましては、この高等学校の奨学金事業への補助について、国からの新たな交付金によって都道府県に基金を設置するという形で緊急支援を行うこととしたところでございます。

 こうしたことを通じて、私どもといたしましては、各都道府県において適切な奨学金事業が実施されるよう努めてまいりたいと考えているところでございます。

笠委員 大臣、ちょっとお伺いしたいんですけれども、都道府県の判断とか、それはそれでいいですよ。しかし、そのセーフティーネットからこぼれていく子供たちの学ぶ機会というものを、やはりしっかりと私はこれは国の責任でもってそういうことがないように努めるべきだと思うんですよ。その点について、ぜひ大臣の御決意と、今後やはり文科省として取り組んでいくんだということをお話しいただければと思います。

塩谷国務大臣 この奨学金事業において、都道府県の対応についていろいろ報道がされたわけでございますが、やはりおっしゃるように、一つの奨学金ではなかなか難しい点もあり、当然併用でやっていくことも必要な状況もあると思っておりますので、これはしっかりと我々は受けとめて、今後、まずは修学機会を失われることのないように努力をしていかなきゃならないと思っております。

 いずれにしましても、この厳しい経済状況で、私ども、緊急対応ですべき点、これは授業料減免とか奨学金事業の拡大、私立に対しての支援等々を今現在行っておりますので、それを実態調査を踏まえてしっかりと拡充すると同時に、将来的にどうあるべきかということもあわせて検討していく必要があると思っておりますので、私ども文部科学省においても、教育安心社会の実現ということで、教育費の問題、家計負担の問題、これを取り上げて今検討しているところでございますので、緊急対応とあわせて今後の方向性も見出していきたいと考えております。

笠委員 これは、これまで、同僚を含め、当委員会であれ、常に議論になるところですけれども、今大臣もおっしゃったように、家計における負担、あるいは公的財政支出というものが極めて比率が低い。ですから、やはり教育にはもっともっと予算を使ってでもお金をかけて、しっかりとその機会というものが、本当に今、親の経済力が非常に厳しい、そういうところのお子さんたちが、またその負の連鎖が続いていくことだけは何としても政治としてそこに歯どめをかけていくということは最も重要なことだと思いますので、そこは協力をしながらぜひ取り組んでいきたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 次に、そうした中で、先般、私どもは反対をいたしましたけれども、この緊急経済対策を盛り込んだ、そのための補正予算というものが成立をいたしました。非常に残念であるわけでございますけれども、中には、この文部科学省の中でも、耐震化、あるいは今おっしゃったような修学支援等々、それは評価できる点もございます。

 しかし、改めて私は、ちょっと一つだけきょう議論しておかなきゃいけないことは、私はむしろ大臣の決断を求めたいと思っておりますけれども、いわゆる国立メディア芸術総合センターですね。何か自民党の中からも、補正予算に賛成をした人たちの中からも中止しろというような声を上げておるという報道を見て、私は正直驚きました。でも大臣、これはアニメの殿堂どころか無駄遣いの殿堂と今言われているんです、本当に。これは、大臣がしっかりとこの予算の執行を停止する、あるいは大幅に見直す、そういう決断をされるときだと思いますよ。大臣、いかがですか。まず、率直にお伺いをしたい。

塩谷国務大臣 この国立メディア芸術総合センターにつきまして、国会での議論も踏まえて、予算としては成立したわけでございますが、いずれにしましても、この内容が具体的に余り伝わっていなかったということ、そういうことで、私どもとしては、改めてまたしっかりと国民に伝える必要があると思っております。

 このことにつきましては、やはりこの厳しい経済状況の中で、日本が将来に向けての成長戦略として、今一番、今までのいわゆる物づくり等々の日本の強みとあわせて、今後、新たに産業としてしっかりと成長すべき分野として、アニメあるいは漫画等を含めたメディアアート等の産業を確立していくことが必要だということ、これは安倍政権のもとでの閣議決定、さらには福田政権の中で、それを具体的にどういうことにするかという研究会も設置して今日まで検討してきたわけでございまして、今回は、そういう経済状況を踏まえて、今後の成長戦略としての、緊急対策としての一つの方向性として総理が決断したわけでございます。

 これについては、やはり、アニメとか漫画とか映画も含めて、我が国が世界の中で評価を得ている、しかしながら一方で、産業としてどれだけ確立されているかというと、なかなか産業としては難しい状況があって、クリエーター等が十分な収入があって今後これを続けられていくかというと、なかなかそういう環境もない。一方で、映画祭なんかは、アジアにおいて、韓国の方が大変大きな映画祭をやっている。しかし、いわゆるアカデミー賞の受賞は日本の方がしっかりとその作品が認められているような点も含めて、いろいろとその状況をしっかりとこれから踏まえて、さまざまな作品の展示とかあるいは保存も含め、また新しい人材の育成、そういったことを総合的にやる拠点が必要だということで今回のメディア芸術センターということになったわけでございまして、そういうところの説明が足りなかったことは私ども反省しなければならないわけですが、将来に向けての産業としての発展、そして世界に向けての文化的な発信も含めて、この必要性はしっかりとまた国民に向けて御理解をいただくよう努力をしてまいりたいと思っておりますし、そのためのセンターであるということで、早急に具体的な検討というか内容を確立させて、実施に向けて努力をしていきたいと思っております。

笠委員 今、大臣が今後と言ったでしょう。百十七億円。私、将来的に日本の経済がもっと元気になって、そういう目的を持ってやっていくということまで否定しませんよ。なぜ今なのか。しかも、何の中身もないわけですよ。

 ちょっと具体的にお伺いしますけれども、これは、きのうですか、私がお伺いしたところ、基本計画の決定をこれから七月にする、そして、それから企画提案の公募を行う、それで、九月には設計者、建設地、コンセプト等の決定、土地の取得。工事着工はいつになるんですか。

 そして今、この基本計画は第三者委員会が検討するということになっていますけれども、この第三者委員会の人選は終わっているんですか。いつこの基本計画の決定をするのか、その点を端的にお答えください。

高塩政府参考人 私どもといたしましては、先月末の補正予算の成立を受けまして、先週、六月五日に文化庁内に設立準備室を設置したところでございます。

 現時点における予定につきましては、今、笠先生の方からお話ございましたけれども、有識者会議で構成いたします設立準備のための委員会というものを設置いたしまして、七月を目途にセンターの設置に関する基本的な事項を取りまとめました基本計画を策定いたしたいと思っております。その後に、設計者、建設地、コンセプト等につきまして企画提案を公募いたしまして、これを審査の上、九月を目途に決定いたしたいというふうに考えておるわけでございます。

 この有識者の会議につきましては、既に四月に、基本構想につきまして、メディア芸術の国際的な拠点の整備に関する検討会のメンバーがございますので、これらのメンバーをベースに、各メディア芸術の分野の専門家や建築の専門家などを加えまして、早急に立ち上げたいというふうに思っております。

 そうした作業を進めまして、できるだけ早く、年度内には建設着工までにこぎつけたいというふうに今頑張っているところでございます。

笠委員 私、お伺いしたんです、最近こうした例があるのかと言うと、文化庁の方が、ちょうど、二〇〇七年、二年前に完成した国立新美術館、それと同じような手続でいくんだということをおっしゃっていました。そのときの国立新美術館がどういうふうにして完成に至るのかということをちょっと調べさせていただきました。

 国立新美術館は、平成八年十二月に、これからつくる基本計画の検討協力者会議が設置されたんです。そして、基本計画が決定されたのは平成十一年の三月なんですよ。そして、基本計画ができたのを受けて、平成十二年度の予算からお金がついていくんです、予算措置が。

 そんなもの、二カ月ぐらいでまずこの基本計画ができるんですか。そして、基本計画ができてから予算措置をすればいいじゃないですか。そして、百十七億円も使うんだったら、先ほど申し上げたように、本当に今経済的な理由から高校を中退しなきゃいけないような子供たちとか、いろいろなことに使うことができるんですよ、救っていくことができるんですよ。

 なぜ、この百十七億という積算根拠もない数字が、本年度の補正予算案の中で予算を措置しなければならなかったのかをお答えいただきたいと思います。

高塩政府参考人 今回のセンターの設置につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げたように、平成十九年二月の閣議決定、文化芸術の振興に関する基本的な方針などを踏まえまして、具体的な内容につきましては、昨年の七月以来、メディア芸術の各分野の有識者から成る検討会で議論され、取りまとめられたものでございます。

 ことしの四月になりまして、いわゆる大型補正という形で、その中に緊急経済対策とともに成長戦略という項目を挙げられたことを受けまして、文化庁といたしまして、その審議の取りまとめを急ぎまして、今回の補正予算に盛り込んだところでございます。

 今先生からお話がございました国立新美術館につきましては、先生御指摘のような形で、基本構想、基本計画、さらには基本設計、実施設計を行いまして、建設が竣工したものでございます。大きな年度がかかった理由につきましては、やはり予算的な問題というのが一番大きな問題でございまして、必ずしも議論にそう長い年月を費やしたのではないというふうに思っております。

 国立新美術館につきましては先生が今おっしゃられたとおりでございますけれども、過去に補正予算で措置された施設におきましては、補正予算におきまして施設整備に係る予算が措置されまして、その後、基本構想が策定されたものもあると承知いたしておりまして、これらの例に照らせば、今回の国立メディア芸術総合センターの予算措置につきましては問題はないものというふうに考えております。

塩谷国務大臣 確かに、例えば今例に出された国立新美術館等、いろいろな検討をして、時間をかけてやる、これも当然のことでありますが、今回は、特に最近の我が国のメディア芸術あるいはアニメ、漫画等の普及に照らして、先ほど来お話ししておりますが、何としても必要だということが検討されてきたわけでございまして、ある程度、緊急事態といいますか、これだけの経済危機のときに今までと同じようなことをやっていてもしようがない部分もある、やはり新しい産業の発展とか成長戦略も考えていかなければならない、そういう面では今までになかったやり方だと思います。

 例えば、今回、予算で基金をつくって、多年度の予算も新しく考えてやっているわけですが、やはり、そういうことも、今回、百年に一度の経済危機の中で、内閣として決定をしたわけでございまして、この分野においてはそれだけの可能性もあるということで私ども決断して、内容的には、確かに、いろいろな、今まで検討してきたものもありますし、さらには、特にメディア芸術大賞ということをここ十年やっておりまして、そういう蓄積もあったりして、私どもとしてはかなりいろいろな必要性を感じつつ、その準備も進めてきたところでございますので、それをもとに、しっかりとこの数カ月で計画を立て、そして実行に移したいと考えております。

笠委員 私は全く、大臣は将来的に、私だって、アニメだってあるいは映画であったって漫画であったって、ソフトパワーの時代ですからそれは必要ですよ。しかし、お台場にこんな建物を建てて、そして今回のこの百十七億円の積算というのは、建物の建設費が約七十億、土地購入費が約三十億。しかし、まだ、あの美術館のときには東京大学の跡地利用というものもあって、あの場所がいいだろうというのがあった。しかし、だったら、私はまず人材育成、むしろ、いろいろな投資をするのであれば、そういう人に対する投資をした方が、それだったらいいですよ、まだ先で。けれども、どういう箱をつくるかというのは後の話ですよ。

 例えば、今大臣おっしゃったけれども、今回のこの拠点の整備に関する検討会の中でも出ていますけれども、一つのモデルケースとして、オーストリアのリンツ市のアルス・エレクトロニカ・センター、二〇〇九年にヨーロッパの文化都市として文化首都にも認められている、私は行ったことはないんですけれども、すばらしい都市であると伺っています。人口が約十九万人、オーストリアでウィーン、グラーツに次いで第三の都市です。ここではやはりそういう映画祭なり芸術祭なりをやって積み上げてきて、まさに都市を挙げてそういう構想を持っていったわけですよ。

 今回、でもこれは大臣、ごらんになっていると思うけれども、この整備についてという中では、「観光の振興」で今申し上げたような例があるけれども、ではなぜ最初からお台場なんだ、そうしたら、人がいるからだと。そうじゃないでしょう。もしそういう投資をするんだったら、どこか地方の中核都市で、ここを本当に日本の発信できる町にしようよとか、そういう大きなビジョンがあるんだったらいいですよ。何の理念もないじゃないですか。何でお台場にそんなものをつくる必要があるのか。

 私、少なくとも、今度の、今からつくる計画の中で、そういう場所も含めてゼロからやはり検討するべきだと思いますよ。何でお台場がいいのか。海外から人を呼ぶような都市をつくらないといけないんですよ。人がいるところにつくればある程度来てくれるだろうなんという発想をやっていたら、それは将来につながらないですよ。その点について、大臣、お答えいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 場所について、お台場が決定しているわけではありませんで、今回、箱物といいますか、土地と建設地を算定する中で、一つの例としてそれを引いたわけでして、例えばある構想では、これは全くの一つのアイデアですけれども、秋葉原全体をそういうセンターにしたらどうかとか、そういう考え方もあったり、今いろいろな考え方が出てきていますので、決してお台場ありきでやっているわけではございませんので、今お話があったような、その土地の特性あるいは必然性も含めた、そういうところをやはり選定していく必要があり、今いろいろな案も出始めておりますので、具体的な内容はここ数カ月の中でしっかり検討して決めて、実行に移したいと思っております。

笠委員 ですから、大臣、本当はそういうことを議論して、まず、例えばどこにどういう形でこうしたものを、拠点を設けていくのか。あるいは、それによって予算だって変わってくるわけです。やはり地方自治体の中には、せっかくだから自分のところの町をその発信源としてつくっていきたいというようなところだってあるかもしれませんよ。そういう声だって聞いていいじゃないですか。それからでしょう、どれだけの予算がかかって、どれだけのお金を使ってそういう拠点をつくっていくのかというのは。

 ですから、何でこんなものが、百十七億円というものが出て、そしてそれを、もう予算措置したんだから数カ月の間に急いで決めなきゃいけない、そんなことをやっていたら、結果としてまた、五年後、十年後、何であんなものをつくったんだろうと。私のしごと館になるんですよ。では、私のしごと館でやればいいじゃないですか。あるものを活用すればいいじゃないですか、もしどうしても箱が必要だというんだったら。もっと大きな構想でしょう、大臣もお考えなのは。

 それは、そこ何カ月かの議論だけでできる話じゃないですよ。今、中途半端なものをつくる余裕は我が国にはありません。本当にやるんだったら私は予算を使ってもいいと思う。しっかり将来につながっていくようなことをきちっと議論していきましょうよ。いかがですか、大臣。

塩谷国務大臣 もちろんしっかり議論をしていくわけですが、今までも、先ほど来申し上げましたように、安倍政権での閣議決定を踏まえて今日まで検討もしておりますし、いわゆる基本的な考え方等は固まっているわけですから、それを実行するために、できるだけ短期間で、しかも、先ほど申し上げましたように、やはりこれで五年、十年かけてやる話ではないと思っております。

 それだけ今、日本のメディア芸術等が非常に注目をされていることも事実でありますから、やはりそういった機会をとらえてやることも必要だと思っておりますので、そういう面では、緊急的に今回決めたという印象があるかもしれませんが、今までの議論をしっかり実現する時期だと判断して今回実行に移したわけでございまして、ぜひその点も御理解いただいて、内容的にもしっかり検討してまいりたいと考えております。

笠委員 まだ何にも固まっていないんですよ。だから、例えば今回の補正予算の中で、では従来あるような例えば調査研究、基本計画策定へ向けての調査費、そういうものをまず計上しようというのだったら、それは私はわかりますよ。しかし、まだ固まっていない、場所も決まったわけじゃない、しかし百十七億。私は、これは絶対年内に着工なんかできないと思っていますよ。少なくとも、我々が政権交代したら、これは中止しますよ、間違いなく。

 もっと人に対して使えばいいじゃないですか、クリエーターに。貧しい中で、将来一流のアニメをつくりたい、映画をつくりたい、あるいは漫画家になりたい、夢を持って頑張っているたくさんの人たちがいるんです、若い人たちが。まずは、そういう人たちに対していろいろな支援をしていく方が先じゃないですか。箱で、こんなもの、本当にハードパワーですよ。ソフトパワーでも何でもないですよ、今の計画は。

 ですから、大臣、やはりこれは本当にしっかりと御決断いただいて、今大臣がおっしゃったような目的をしっかり果たしていけるように、もっとしっかり基本計画から議論していきましょうよ。まだないんだから、そのベースが。そうでしょう。場所も決まっていない、どういうふうな形で多角的に展開をしていくのかも決まっていない。ただ、とにかくつくっておけば何となく発信できる、そんな甘いものじゃないですよ。

 だから、これは大いにこの委員会でもこれから議論していきましょうよ、一年、二年かけてでも。そして、まずその前にできることをやりましょう。まず、せめて人材育成のための支援に予算を充ててください。どうですか、大臣。

塩谷国務大臣 しっかり議論するということは、我々もしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

 人材育成の面で、私ども、文化庁の計画も実行しておりますが、やはり、より確実な産業として確立をするために、こういったものが大きな影響を与えることになると思います。ただ単に育成だけの支援策というのは、どの職業にということも考えると、なかなかまたこれも現実的には難しい。

 したがって、やはり国として一つの方向性を持ってこういうセンターをつくって育成するんだということも、これは一つの大きな起爆剤になると思っておりますし、そういう意味でのセンターでありますから、やはりこれをもとにしっかり育成し、また産業として発展をさせていくということは、十分に日本のアニメなり漫画なりあるいは映画なり、能力的に認められていることも事実でありますから、もうその時期だろうと私は思っておりますので、私ども、議論は大いにしていきたいと思っておりますし、内容的にも公表しながら、いろいろな意見をできるだけ取り入れながらと思っておりますので、ぜひその点は議論の中でまたいろいろと御指導いただければと思っております。

岩屋委員長 笠君、時間が参っております。

笠委員 時間が来ましたので、きょうはここで終えたいと思いますけれども、私は、予算はもう成立したから仕方がないではなくて、この問題をしっかりと、この実施計画、どういうふうに計画がつくられていくのかも含めて、これからまたこの委員会でも随時議論させていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

岩屋委員長 以上で笠君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 本日は、子どもの権利条約と、それに対する文科省の対応について質問をいたします。

 この条約は、一九八九年の十一月に国連で採択、ことしは二十周年です。日本政府が批准、発効してから十五年目に当たります。子供は特別な保護と援助を受ける権利を持つとした世界人権宣言を受けて、一連の関係文書を踏まえて、子供の権利についての包括的な条約が成立したわけでございます。

 私は、二十世紀の終わりに、世界が、子供たちは平和や尊厳、寛容、自由などの精神で育てられなければならないと合意をしたこと、国連と各国がこの条約の実施を促進することになったということに大変感銘を覚えています。

 条約では、締約国に報告の義務を課しています。初回は二年以内、その後は五年ごとにということになっています。条約で認められる権利の実現のためにとった措置、権利の享受についてどんな進歩がもたらされたか、これは四十四条の(b)項にありますけれども、それに沿って提出をするわけであります。

 国連では、子どもの権利委員会が審査をいたしまして、過去二回、一九九八年と二〇〇四年、審査がございました。昨年四月、日本政府は三回目の報告文書を国連に送りました。こういう文書なんですけれども、ことしの終わりから来年にかけて国連の審査が行われるだろうと聞いております。

 私は、この二回目と今回の報告を見まして、重要な論点で、政府報告も、そして国連からの勧告も、ほとんど同じことの繰り返しになっているんですね。変化がないということに驚いています。このまま推移していいのか、条約は絵にかいたもちにならないかと深く危惧しております。そういう点から、きょうは幾つか質問をいたします。

 条約の取りまとめは外務省でございますので、まず外務省にお聞きしますが、政府報告の作成に当たって、どのような取り組みをされたのかということなんですね。

 というのは、この権利委員会で審査のために、これは大変な条約ですから、ガイドラインというのを設けているわけです。それを見ますと、このようにあるんですね。レポートの準備の過程は、国民の参加及び国民による政府の施策に対する審査を奨励し、かつ促進するものでなければならないというふうにあるんですね。こういう点から、どのような作成過程だったのか、お聞かせください。

中島政府参考人 今委員御指摘のありました政府報告でございますが、条約において認められる権利の実現のためにとった措置あるいは権利の享受についてもたらされた進歩に関しまして、締約国政府の責任において作成、提出するものでございます。委員が今御紹介いただきましたとおり、作成過程において市民社会で対話を行うことが児童の権利委員会からも奨励されているところでございます。

 政府といたしましても、児童をめぐります問題に高い関心をお持ちの現場の方々の声を報告に反映させるといったことの重要性を認識いたしまして、政府報告の作成に当たりましては意見交換の場を設けてきているところでございます。

 今回の第三回政府報告の作成に当たりましては、市民の方々の幅広い声を参考とするという観点から、当省のホームページにおきまして意見交換希望者を公募しております。その一般の参加者あるいは児童の権利条約に関心をお持ちの団体と、合計四回の意見交換を開催しているところでございます。また、各会合の終了時には概要を当省のホームページに掲載してきておるところでございます。

 以上でございます。

石井(郁)委員 言われているのは、やはり権利が守られるべきなのは国民、子供でありまして、この条約への認識を深めるという点からも、報告を国民の関与のもとで作成するということが非常に大事だということなんですよね。

 今、NGOとの意見交換会を四回行われているというふうに言われましたけれども、私も外務省のホームページで見ましたけれども、非常に何かやはり形どおりの交換に終わっている。これは当事者からもお聞きしました。非常に突っ込みがない、突っ込めないんだということで、こういう交換会は一回限りじゃなくて、ある団体にとっては一回であったりするわけですから、やはり数回丁寧に持ってほしいという声が強くあります。

 それから私は、この条約の性質上やはり国会の関与ということも、まず今までなかったんですよね。本来国会に報告されてしかるべきものではないのかというような点も含めて、もっと国民に開かれた形でこの政府報告というのはつくるべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。

 もう外務省、結構です。

 さて、それで内容的なことに入りますけれども、四十五条から成る包括的な条約でございまして、そこで具体的に子供の権利について書かれているわけですけれども、特に第三条では、子供に関するすべての措置をとるに当たっては、公的もしくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局または立法機関のいずれによって行われるものであっても、子供の最善の利益が考慮されるものとするというふうにありまして、子供の最善の利益というのがキー概念になっているかと思います。

 審査に当たっても幾つかグルーピングするんですけれども、この権利条約全体の中でやはり大きな柱となるもの、一般原則と言われているものはどういうものというふうに政府の方では認識していらっしゃるでしょうか。これは大臣にお尋ねします。

塩谷国務大臣 国連の児童の権利条約委員会では条約の解釈について見解をまとめておりまして、いわゆる本条約の一般原則としているのは、一つは第二条の差別の禁止、それから第三条の児童の最善の利益、さらには六条の生命、生存及び発達に対する権利、そして十二条の児童の意見の尊重ということでございます。

石井(郁)委員 私どももそのように理解しておりまして、どうもありがとうございます。

 そこで、子供の権利という場合に、子供は保護される対象としてだけではなくて、権利行使の主体だというふうに見るところがこの条約の新しさであり、また特徴だというふうに思うんですね。

 今大臣御答弁のように、その四つの柱の一つに十二条の意見表明権というふうにあるわけで、続いて十三条、表現、情報の自由とか、十四条、思想、良心、宗教の自由とか、十五条、結社、集会の自由、十六条、プライバシー、通信、名誉の自由というふうにあって、これが一連のものとして子供の権利行使の主体としての権利というふうに明確にされているかと思います。

 さて、それで、私がきょう伺いたい一つは、国連の審査では、この一連の権利について日本の政府の報告に厳しい勧告が寄せられているという問題なんですね。

 例えば、このようにあります。家庭、裁判所、行政機関、施設、学校において、また施策の制定及び運用に際して、子供に影響を与えるすべての事柄について子供の意見の尊重及び子供の参加を促進し、また、子供がこの権利を確実に認識できるようにすることというふうに言われているんですよ。

 ところが、今回、これは昨年の四月の政府報告書ですけれども、このパラグラフの二百五を見ますと、このようにあります。「なお、学校においては、校則の制定、カリキュラムの編成等は、児童個人に関する事項とは言えず、第十二条一項でいう意見を表明する権利の対象となる事項ではない。」と言っています。「しかし、児童の発達段階に応じて、校則の見直しにあたり、アンケートの実施や学級会・生徒会での討議の場を設けたり、中学校や高等学校において、生徒の選択を生かしたカリキュラムの編成等の工夫を行うなど、必要に応じて、児童の意見を考慮した政策策定を実施している。」こういう説明になっているんですよ。

 つまり、学校における校則の制定、カリキュラムの編成等は、個人に関する事項とは言えず、十二条一項で言う意見を表明する権利の対象となる事項ではないと。個人に関する事項であって、意見表明というのをこれでは余りにも、非常に曲解している、あるいは狭くとらえていると私は言わざるを得ません。

 そこで大臣に伺いますけれども、校則の制定とかカリキュラムの編成というのは児童に影響を及ぼす事項ではないというのでしょうか。いかがですか。

塩谷国務大臣 校則の制定、カリキュラムの編成について、今、石井委員からも御紹介いただきましたが、意見を表明する権利については、児童も自己の意見を形成し得るようになれば、その児童個人に直接関係する事項について意見を表明する権利を認め、その意見については相応に考慮されるべきであるという理念を規定しているところでありまして、一方、カリキュラムの編成とか校則等については、個人的な、児童個人を直接対象とするものではないわけでございまして、今お話があったように、三回目の報告において「権利の対象となる事項ではない。」ということで報告をしているところでございます。

 ただ、成長に応じて議論をしたり、そしてそれに対して校則を変えたり、カリキュラムについて変えることの議論は当然するべきだということは今お話があったとおりでございますが、いずれにしましても、いわゆるカリキュラム、そして校則等の件につきましては個人の対象ということではないということでございますので、私どももそういう考え方で報告をしたわけでございます。

石井(郁)委員 一貫したそういう文科省のお立場かと思うんですけれども、意見表明権というのは、子供が本人に影響を及ぼすすべてのことについて自由に意見を述べる権利がある、本当にすっきりさせて言えばそういうことなんですね。それは、大人は子供の声に耳を傾けるということが大事だし、その意見を考慮することまでも含んでいるということなんですね。

 ちなみに、ここで意見と言うと、何かいかにもまとまった意見、ある判断に非常に基づいてというふうに聞こえますので、これは翻訳の問題もあるので大変議論されているところなんですが、決してオピニオンじゃないんですよね、原語はビューなんですよ。だから、私たちは、やはり子供は子供なりに考えを持っているし、感じたことがあるし、それをやはり聞いてほしいと思っている部分があるしというふうに受けとめると、これは非常に大事なことを含んでいるというふうに思っているんですね。

 第二回目の子どもの権利委員会の最終所見でも、次のように言っています。教育、余暇、及びその他の活動を子供に提供している学校その他の施設において、方針を決定するための会議、委員会その他の会合に、子供が継続的かつ全面的に参加することを確保すること、ここまで言っているんですよ。だから、方針の策定にも子供たちは意見を述べていいんですよ。それは全面的に継続的に確保しなさいとまで言っている。これをどう理解するかという問題があるというふうに思うんですね。

 そこで伺いますけれども、ヨーロッパ諸国その他でも学校評議会というのがつくられています。そういうシステムを持っています。そこに生徒が代表として参加している国というのはどのぐらいありますか、あるいはどういう国がありますか、ちょっと挙げてください。

金森政府参考人 各国の制度につきまして、必ずしもそのすべてを詳細に把握しているわけではございませんが、例えばフランスやドイツにおきましては、中等教育段階以上に限り生徒代表が学校評議会等に参加しております一方、イギリスにおきましては、児童生徒代表の学校理事会への参加は認められていないと承知をいたしております。

 また、アメリカにつきましては州ごとに教育制度が異なるところではございますが、例えばシカゴ地区では、投票権は有しないものの、生徒代表が学校評議会に参加している例がございます。

石井(郁)委員 文科省は教育改革を口にし指導している省庁ですけれども、やはり国際動向についてもっと丁寧に私は把握していただきたいというふうに思うんです。必ず認めていない国もあるということをわざわざつけ加えるわけですが、認めている国の方が多くなっているんじゃないですか。そこをちゃんと見ていただきたい。

 もうフランスを言われましたので繰り返しませんし、ドイツについてもそうですけれども、ドイツでは、これは州ごともありますけれども、一九七〇年代に教員、生徒、父母の学校参加、ドイツ全土にこれは実現しているということがありますよね。一九九五年には生徒代表制というのを組織されています。学校会議という権限では、予算の利用あるいは校長及び教頭の任用に関する提案、学校内規の規定、こういうところにも生徒が参加して入っている。

 それから、オーストラリアは、学校審議会がもう一九八〇年前後からつくられています。そこでは、校長、教頭、教員代表、父母代表、地域住民代表、生徒代表から成るそういう学校運営の意思決定機関を持っている。

 ニュージーランドも、一九八九年の教育法で学校理事会の設置というのを義務づけられましたけれども、保護者の代表、校長、教職員代表、生徒代表を一名加えることというふうになっているんじゃないですか。各国でそういう生徒が参加してやっている。

 ノルウェーというのはもっと進んでおりまして、これは驚くんですけれども、教育法で、すべての小学校、中学校、高等学校における学校理事会に生徒代表の出席を求めること、小学校段階でそういうことが認められているというか権限が与えられているというふうになっているんですよね。

 私は、そういう動向からしても、生徒の参加というのを認めるときだと思いますが、大臣、この点での御見解はいかがでしょうか。

塩谷国務大臣 学校運営に必要な生徒からの意見というのは、当然我々としても取り入れるべきだとは考えておりますが、今、学校評議会等の諸外国での例について、全く日本と同じような状況かというと、そこら辺もちょっとチェックしなければならない。つまり、日本の場合は、いわゆる人事等も含めて決定するというような位置づけをしておりますので、そこに生徒の代表が入るのがいいのかどうなのかということも検討しなければなりませんし、そこら辺も含めて今後検討していく必要があると思っております。

 当然、生徒の意見等を踏まえて学校運営をするということは、我々はすべて否定しているわけではなくて、必要に応じて、先ほど来、アンケートをとったりやっているわけでして、そういう仕組みも、今後、いわゆる人事等は外した中でやっていくとか、そういうことも考える必要があると思いますが、いずれにしましても、オール・オア・ナッシングではなくて、かなり日本の場合もいろいろな意見も聞いているつもりでございまして、条約のとらえ方といいますか、そういうことも、解釈の仕方とかもあると思いますので、石井委員の御意見を十分踏まえて、今後学校運営に具体的に取り入れることも検討しながら、また現場とのいろいろな意見、それから、今の段階でどれだけ子供たちの意見を入れるべきだということが社会的に要請が高まっているかというと、まだそういう段階ではないのかなという感じもしますし、そういうのも含めて総合的に判断しなければならないと思っております。

石井(郁)委員 日本でも、生徒、保護者、教職員が参加をした三者協議会というような名前で、本当に生徒の参加を保障しているような学校が幾つか生まれてきています。そこでは、学校運営上の決定権は持たないけれども、協議会で合意された事項というのは最大限尊重されるという形で、私はヨーロッパから見ると大変つつましやかだと思うんですけれども、わざわざ決定権を外してしなきゃいけないなんということが言われているんですけれども、それでも、そういう会合を持つだけでも、例えば保護者たちはどう言っているか、生徒たちはこういうことまで考えていたんだ、こんな思いでいたんだということがよくわかったとか、生徒も保護者の方がこんなにいろいろな心配をしていたんだということがわかったりする。

 だから、お互いにそういう、今、日本でも一番欠けていると言われるコミュニケーションというか、まさに対話が生じるという点で、それぞれ三者が成長するのはもちろんですけれども、学校や地域発展に大変大きな基盤をつくっていくということが言われているんです。

 御紹介しますが、よく学力世界一と言うフィンランドの例ですけれども、先ほど来文科省は、校則とかカリキュラムに生徒が参加するのはまだ認めていないという立場なんですよ。それは本当に私はおかしいと思うんですけれども、フィンランドはこう言っていますよね。勉強や他の児童の立場に本質的な影響を及ぼすような決定については、事前に基礎学校の児童の意見を聞かなくてはならない、どの学校も児童によって構成される、全児童が加盟している生徒会がなくてはならない、学校でのコミュニティー活動の取り組みにおいて相互作用することが重要になるからだと。

 だから、きちんと学校で行われることのすべてのことについて、その教育内容というのは最も重要なことでもありますから、やはり子供たちがコミットするという点でいうと、私は本当に日本と随分違っていると言わなくてはならないと思います。日本でも、児童生徒の学校参加ということについて、大臣は、少しずつ行われているようだというようなことがありましたけれども、やはりシステムとしてどういうふうに保障するか、そこが大事なんですよ。それが全然確立されていないという問題を指摘しておきたいというふうに思います。

 私は、教育改革ということをずっと言われてきましたけれども、教育改革としていろいろなメニューを出すということの中になぜこれが入らないのかといつも思ってきたんですね。こういうことこそ教育改革として本当にきちんと取り組むべきだということを強く主張しておきたいというふうに思います。

 さて、そのようにして、今世界では、学校づくりのパートナー、それは子供たちなんだというふうにして、子供とともに共同で学校と未来をつくろうとしているわけですね。

 具体的な問題でもう一つ伺いますけれども、十五条の結社と集会の自由という関係のことでございまして、権利条約の十五条、こうあります。「締約国は、結社の自由及び平和的な集会の自由についての児童の権利を認める。」あと、二項目がありますから、ちょっと紹介しますけれども。

 これに対して、ここでも国連からの最終所見を見ますと、これは第二回目のパラグラフの二十九なんですけれども、このように言っています。本委員会は、というのは子どもの権利委員会ですが、学校に通う子供による学校内外における政治的活動に加えられている制限を懸念する。本委員会は、また、十八歳未満の子供が組織に加入する場合に親の同意が求められることを懸念するというふうに言っています。それから、パラグラフの三十では、本委員会は、締約国が、本条約の十三条、先ほど申しました、十四条及び十五条の全面的な実施の確保を目的として、学校に通う子供の学校内外における活動を規制する法律及び規則、並びに、組織に加入するに当たって親の同意を求めていることを見直すことを勧告する。ここまで言われているんですよ。

 そこで、具体的に伺います。文科省は一九六九年の十月三十一日に「高等学校における政治的教養と政治的活動について」という見解を明らかにしています、見解文書を発表しています。当時は、確かに社会が、ちょっといろいろな状況がございましたけれども。そこでは、高校における政治的教養は必要だと言いつつも、生徒の政治活動は禁止すると区分けしているんですよね。子どもの権利条約を批准して、この見解は成り立たないんじゃありませんか。この見解は撤回したのでしょうか。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

金森政府参考人 高校生は心身ともに発達の過程にあって、政治的教養の基礎を培っている段階でございます。こうした生徒の発達段階を考えますと、政治的活動を行うことはその心身に及ぼす影響も大きく、高校生の政治的活動について一定の規制を求める必要があると考えております。

 御指摘のございました昭和四十四年の初等中等教育局長通知につきましては、教育基本法の規定を踏まえ、高等学校における政治的教養を豊かにする教育の一層の改善充実を図るとともに、高校生の政治的活動について、例えば教科、科目等の授業や生徒会活動の場を政治的活動の手段として利用しないことなど、学校における政治的活動の制限等について指針を示したものでございまして、撤回することは考えておりません。

石井(郁)委員 私は、今の御答弁を聞くと、本当に権利条約をまともに受けとめているのかどうかと大変疑うんですよね。発達段階を持ち出して、要するに一定の規制が必要だという立場でしょう。権利条約にはそういう発達段階を持ち出しての規制などどこにもありませんよ。むしろ、未成年者、子供に市民的自由の権利を保障しているんじゃないですか。表現、結社の自由もそうですけれども、全部保障しているわけでしょう。

 そして、今世界では、学校内外で子供たちがさまざまないろいろな活動をしている、それが市民性を育成する上でも大事だという認識に立っているんじゃないですか。見解の中では、生徒は未成年だ、国家、社会として未成年者が政治的活動を行うことを期待していない、むしろ行わないように要請している、そこまで書いていますよ。未成年者に権利があるということを認めているのが権利条約じゃないんですか。どうなんですか。

金森政府参考人 平成十六年に児童の権利委員会から御指摘のような最終見解が出されているところではございますが、この昭和四十四年の通知は、高等学校における政治的教養を豊かにする教育の一層の改善充実と、高校生の政治的活動について適切な指導を行うための指針を示したものでございまして、高等学校がその教育目的を達成するために必要な合理的範囲内のものであると考えているところでございます。

石井(郁)委員 高等学校の教育について、文科省がそんな事細かな、これをしちゃいけない、あれをしちゃいけないなんという指針を出すことは、私は必要ないと思っているんです。しかも間違った指針ですよ。間違った指針で学校や教職員、子供たちが縛られていくということになるわけです。これは四十年以上前に出された見解ですよ。当時の状況と今の状況と随分違うじゃないですか。

 私は、やはり状況に応じて、しかも権利条約を批准した国としても、見直すのは当然だというふうに思うんですね。本当にかたくなですよ、あなた方の立場は。ということを強く申し上げておきます。これは、国連で第三回の報告書によっての審査がまた行われますから、どういう審査になるかということだろうというふうに思うんですね。

 私は、ちなみに申し上げますけれども、この間、子どもの権利委員会の議長を務めた方々とも直接お会いすることもあったんです。例えば、第二回の政府報告を審査したドゥックさんというオランダの法学者ですけれども、お会いしたときにはこう言っていました。

 子どもの権利条約の中で、その精神のかぎとなるのは十二条の意見表明権です、子供を権利の主体として尊重し意見を聞くことは民主主義の基本ですと。どの国でも、学校の理事会に最低一人は子供たちの代表を入れなさい、こう言っていました。家や学校、地域で子供をしつけ、支配するのではなくて、社会をともにつくるパートナーとして尊重する文化を築いていく、それが大切ではないでしょうかと。やはり、みずからの国でそういうふうにしているからこそ言えると思うんですよね。

 私は、日本もそういう国に本当に変わっていかなければいけないということを強く思いますし、文科省がこんな四十年前の、もう時代おくれの見解にしがみついているなんということは本当にいかがかと思うし、撤回していただきたいということを強く申し上げます。

 重ねて、先ほどフィンランドの例を申し上げましたけれども、フィンランドでもこういう時期があったというんですね。一九三〇年代は、右翼の運動が学校の規範を脅かしていた、一九七〇年代には極左の運動が学校での政治に対して先生たちをしり込みさせた、そういう経験を持っている。しかし、今日の状況というのはいずれも違ってきた。社会は多文化化しているし、社会文化的なアプローチは多視点化している。つまり、さまざまな視点から見なきゃいけない。言論の自由や結社の自由、集会の自由といった市民的自由を、若い人たちが自分とは関係ないと考える理由はない。積極的な市民性というのは、市民社会においてパートナーシップを構築する性質にほかならない。ちょっと翻訳ですから、少しかたい文章なんですけれども、若い人たちが社会に積極的に関与していく、そういう機敏な参加者となっていく、これは今、日本の社会でも求められていることでしょう。

 そういうときに、あなた方がわざわざ高等学校の政治的な教養と政治的活動についてと、こんな区分けをして、あれしちゃだめだこれしちゃだめだなんて言っている状況ではないんですよ。このことを強く申し上げておきたいと思います。

 大臣には最後に総括的に御答弁いただきますので、よろしくお願いします。

 権利条約に関係して、二十八条、いつも問題にしていますけれども中等教育の無償教育の導入ですけれども、国際人権規約の十三条は、中等教育への無償教育の漸進的導入、あるいは高等教育への無償教育の漸進的導入をうたっていますけれども、日本政府はこれも留保しているんですよね。条約は批准しながら、この項目は留保しているということはたびたび問題になってまいりました。しかし、今世界で留保しているのは日本とマダガスカル、二カ国に残りました。私は本当に恥ずかしいと思っているんです。

 今、この日本でも留保をやはり解除すべきときだと思うんですが、先ほど来、教育費の問題で真剣な国民的議論が沸き起こっているときですから、ぜひ大臣の強い決意をお聞かせいただきたいと思います。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

塩谷国務大臣 この二十八条の問題については、最近の経済状況から、家計負担の問題でいろいろと前にも御議論いただいているところでございますが、後期中等教育を受ける機会をどのように国民に保障するかということは、各国においてそれぞれの事情を踏まえた政策判断が行われているわけでございまして、我が国としては現在のところ、負担の公平性や一律の無償化には多額の財政的負担もあることから、公立学校進学者に対して一定程度の負担を求めているわけでございます。

 そのため、我が国としては、国際人権A規約の批准に当たりましては、十三条の2の(b)の、「特に、無償教育の漸進的な導入により、」の規定に拘束されない旨を留保しているところでございます。

 いずれにしましても、経済的理由により修学機会を奪われることのないように、授業料の減免あるいは奨学金事業の拡充に現在努めているところでございまして、今後とも、基本的には、一律の無償化ではなくて、主に低所得者に対する重点的な支援ということで後期中等教育を受ける機会の確保を図れるよう努めてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 私の質問に御答弁になっていないんですけれども、どうなんですか、留保を解く、解除する、その決意はおありですか。

塩谷国務大臣 先ほど申し上げましたように、この規定に拘束されない旨を留保しているということで、今後、将来的に、今いろいろな無償化あるいは家計負担のことを検討しておりますので、そういう中でこの問題も具体的な解決をしていかなければならないと考えております。

石井(郁)委員 私はやはり、文科大臣として、そういう問題でもっとリーダーシップを発揮していただきたいという思いを込めて御決意をお聞きしたわけでございまして、ぜひそのように、一日も早く留保を解いていただきたいというふうに思います。

 きょうはもう一つの文科省の通知を取り上げます。これは、子どもの権利条約発効の二日前、一九九四年、平成六年の五月二十日付で事務次官通知として出されたものなんです。

 その内容は、今日読み返してみても、この時点でなぜこういうものしか出せなかったのかということで、私は本当にけげんに思うんですが、前文、こんな短いものですけれども前文で、この権利条約のいわば趣旨を書いているんですけれども、要約すればこのようにあります。「世界の多くの児童が、今日なお貧困、飢餓などの困難な状況に置かれていることにかんがみ、世界的な視野から児童の人権の尊重、保護の促進を目指したものであります。」権利条約をこういう規定でいいのかということ、これはだれでも思うんじゃないでしょうか。つまり、子供の人権の問題は貧困と飢餓ということに一つは限定されている、それから、権利が保護にとどまっている、こういう問題です。きょうずっと議論してきましたけれども、中心的な権利の意見表明権については全く言及がありません。

 こういう前文は権利条約の本質的な理解から外れているんじゃありませんか。ちょっと御答弁ください。

金森政府参考人 文部科学省では、児童の権利に関する条約の批准に伴いまして、世界的な視野からの児童の人権の尊重や保護の促進を目指したこの条約の趣旨を周知いたしますために、平成六年五月二十日付で、児童の権利に関する条約についての事務次官通知を各都道府県教育委員会等へ発出したところでございます。

 この通知では、この条約が、児童の心身ともに健全な発展のために児童についてのさまざまな権利を規定し、その権利行使の主体となることを明示していることを踏まえ、学校教育において児童生徒の人権に十分配慮し、一人一人を大切にした教育が行われなければならないことは極めて重要なことであり、本条約の発効を契機として、さらに一層、教育の充実が図られていくことが肝要である旨を述べているものでございます。

 今後とも、この条約の趣旨や内容等について、学校教育関係者へ周知してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 ここに述べられたことの説明はありましたけれども、私の質問には答えになっていませんよね。世界的な子供の人権状況について書いたと言うけれども、なぜ貧困と飢餓だけなんですか。

 これは今、世界で百九十カ国が批准していますよ。そういう意味では世界的ですよ。だけれども、そこのすべての国が子供の人権はどうなっているかということを見るためのものですよね、その実施を図っていくためのものです。

 そして、権利について言えば、冒頭確認しましたように、四つの柱があったということだと思うんですけれども、意見表明権は全然触れられていない。ただ人権を尊重すると言っていますよ。尊重するという中身がないですよね。こんなのでは全然だめですよ。権利条約を正しく伝えたことにならない。

 そして、さらにあなたは、この次官通知に沿ってさらに徹底すると言ったのは、私はもっと重大だと思います。こんな通知を徹底されたらどうなるんですか。もう見直し以外にないんですよ、これは。だって、国連からもずっと厳しく言われてきているじゃないですか。

 そして、留意事項に八項目書かれているんですけれども、この中でも、例えば十二条の意見表明権についてもわざわざこのように書いているんですよ。「理念を一般的に定めたものであり、必ず反映されるということまでをも求めているものではない」。何でこういう限定をつける必要があるんですか。なぜこの条約の精神を素直に理解しようとしないんですか。私は、これは非常に問題だというふうに思ったんですね。

 これは、国連の子どもの権利委員会で、初回も第二回審査でもずっと、日本の政府はどうしてこういう立場なのか、こういう見解なのかと議論されてきたじゃないですか。そのときの委員長だったカープ氏は、こう言っています。この通知は、権利についても子供から意見を聞くことについても何も述べていない、極めて限定的なものだ、子供から意見を聞く機会については述べられていても、それを考慮に入れるということは述べていない、子供の意見に耳を傾けるという特別のシステムはまだ発達していない。

 こういう国連の審査というのは文部省はちゃんとごらんになっているんですか。国連からこういう評価を受けているということは知った上でのあなたの先ほどの御答弁ですか。

金森政府参考人 児童の権利に関する委員会第一回最終見解におきまして、児童の意見の尊重について一層の努力が払われなければならないとの見解や、また、同第二回最終見解におきまして、依然として児童の意見の尊重が制限されている懸念などが指摘されていることは承知をいたしております。

 これらに対して、我が国政府といたしましては、これまでの政府報告におきまして、学級活動や生徒会活動等の実施が定められており、各学校において児童生徒が意思決定に参加していることや、校則の見直しに当たりアンケートを実施するなど、必要に応じて児童等の意見を考慮した政策決定を実施している旨などを伝えているところでございます。

石井(郁)委員 先ほど読み上げましたけれども、この理念というのは、意見を表明するということについて一般的に定めたものだ、必ず反映されるということまで求めているものではない、こういう限定をどうして文科省がつけられるんですか。これは見直すというか、こういう限定はもうやめるということを今言うべきじゃないんですか。そういう気はありませんか。

金森政府参考人 御指摘の通知は、条約の趣旨が学校教育関係者等に適切に理解され、教育の一層の充実が図られるよう教育に関する主な留意事項を示したものでございます。

 この通知におきましては、条約で規定する意見を表明する権利に関しまして、「表明された児童の意見がその年齢や成熟の度合いによって相応に考慮されるべきという理念を一般的に定めたものであり、必ず反映されるということまでをも求めているものではないこと。」としつつ、「児童生徒等の発達段階に応じ、児童生徒等の実態を十分把握し、一層きめ細かな適切な教育指導に留意すること。」としているところでございまして、この通知の趣旨については、大切なことであると考えております。

石井(郁)委員 文科省が、私たちはこういう解釈をしていますということは、あなた方の解釈ですよ。でも、国連の解釈は違うんですよ。それを、例えば国民に、あるいは学校関係者に、少なくとも情報としてそれじゃ全部ちゃんと流してください、こういう勧告を受けていますよと。その方がはるかに大事じゃないですか、こんな通知を徹底するよりも。これでは全然、権利条約の本質をゆがめているわけですから、本質的な理解にならないわけですから。ちゃんと国連の審査をもっと国民に広報してください。それをまず強く言います。

 それで、文科省のこのような通知にとどまる限り、やはり子供の権利の前進がないわけですよ。批准、発効したということは、これはどう実施されているのか、例えばどんな進歩があったか。これは権利条約に書いているでしょう、四十四条に。どういう進歩があったかが大事なんですよ。そのための条約じゃないですか。その進歩が何も見られない。これでは、今度三回目、今後延々とこのような勧告を受け続けるということになるわけですよ。これは恥ずかしいじゃないですか、世界から見ても。審査にたえられない国だということになっていいんでしょうか。

 例えば評価でいえば、あなた方は学校の教員も評価評価で今締めつけているじゃないですか。だけれども、国連の評価にまず文科省がたえられないじゃないですか。そう言われたらどうしますか。私は大変な事態だと思っているんですよ、これは。

 だから、この前文、こんな通知、大体、発効の二日前にもう出してしまっている。それから初回、二回目、今度三回、少なくとも二回厳しい勧告を受けている。だったら、新たな通知を出すくらいのことがあっていいじゃないですか。何でこれにこだわるんですか。

 やはり、状況を変えていく、新しいものに変えていく、こういうことが施策じゃないんでしょうか、行政じゃないんでしょうか。私は本当に、こんな四十年前の通知が残っていたり、そしてまたこういう発効前のものが残っていたり、こんなことにこだわっているという文科省はちょっと困ります。

 最後に大臣に伺いますけれども、本当に今、世界の取り組みというのはやはり目覚ましいものがあるんですよ。日本は余りにも、ツーレート・ツーリトル、遅いし、わずかなことしかやっていない。特に国際条約に関してはそう言わなきゃいけません。もっと真剣に、真摯に、この権利条約の精神を学び、受けとめるべきだというふうに思います。だから私は、新たな通知もぜひ出していただきたいと思いますし、何よりも、子供たちが二十一世紀の社会をつくるパートナーとして発達、成長することを条約は求めているんだと思うんですね。そういうことをもっときちんと応援してほしい。

 それから、五年ごとの報告、冒頭申し上げましたけれども、きちんと開かれた形で作成してほしい、進捗状況というのを国民に報告してほしい、そして国民とともにつくってほしいと思いますし、学校や教育委員会、まして子供たち、父母たちにも、どういう状況にあるのかということについてきちんと意見を聞いてほしいと思いますが、もう時間になりました。最後に大臣に総括的に御所見を伺いたいと思います。

塩谷国務大臣 今委員いろいろ御指摘いただいた点については、我が国の、先ほどの通知等、なかなか、進歩といいますか、そういうところが見られないような状況は否めないかなという感じがします。

 そういう意味では、こういった報告についても、この権利条約の一つ一つについても、やや我が国の取り組みについては消極的かなという気がしないでもないわけでございまして、また、そういった議論は、国際状況等踏まえて、国内的にどの程度この議論がされているのかということももう一度真剣に考えなければいけないのではないか。

 ふだんの中でこういう問題がなかなか取り上げられないことも事実でございまして、したがって、そういうことも踏まえながら、今後どう対応していくかということを改めてまた検討してまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 大臣から若干前向きな御答弁をいただいたかなというふうに思いますけれども、私の反省も込めて、やはり立法府としても、この当委員会としても、もっとこういう条約の進捗状況、五年ごとにちゃんと報告しているんですから、それはきちんとどんな報告なのかをやはり報告を出してもらって議論をするということもあっていいかなというふうに思っております。

 どうもありがとうございました。終わります。

岩屋委員長 以上で石井郁子君の質疑は終了いたしました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 きょうは、国立大学法人について、大臣初め文科省の御意見をお聞きしたいと思います。

 国立大学法人法案等が成立をした際に、衆議院では十項目の附帯決議が委員会、本会議でつけられました。その第六項目めで、「運営費交付金等の算定に当たっては、公正かつ透明性のある基準に従って行うとともに、法人化前の公費投入額を十分に確保し、必要な運営費交付金等を措置するよう努めること。」というふうにされているわけです。

 しかし、法人化以降、国立大学を運営するための基本的な資金、基盤的な資金なんですが、その運営費交付金は、いろいろあるんですが、一兆二千四百十五億円から一兆一千八百十三億円、六百二億円も減額された。

 この間の新聞報道によりますと、〇四年、これは一兆二千四百十五億なんですが、〇九年でいうと一千六百九十五億円で、七百二十億円減額された。これも報道によりますと、この間、北海道大学と名古屋大学の財政に相当する額が削減をされてきたということになっているわけです。

 これは事実かどうか、もちろん事実なんでしょうけれども、改めてお聞きをしたいということと、そうであるならば、いつも附帯決議がつくと大臣が最後に尊重したいという決意表明を述べられるわけですが、決意表明したにもかかわらず、この附帯決議を無視したということにもなるんだと思います。ぜひこの辺の御見解をお伺いしたいと思います。

 それからもう一点、続けて聞きたいと思いますが、一%ずつこの運営費交付金が削減をされていくということになっているんですが、五%人件費を削るというのは、行革の中、押しなべてやられていることだと、我々は反対なんですが。それはそれで根拠はわかるんですけれども、一%ずつ運営費交付金を削減するというのは、一体どういう根拠に基づいて行われているのか。

 この二点についてお伺いしたいと思います。

徳永政府参考人 事実関係の方は私の方からお答えを申し上げます。

 先生御指摘のように、国立大学の運営費交付金につきましては、平成十六年度一兆二千四百十五億円でございましたが、平成二十一年度には一兆一千六百九十五億円、七百二十億円、五・八%の減となっております。こういった減額は、今おっしゃったように、大体北海道大学と名古屋大学を足したもの、あるいは小さな方の大学で申しますと、二十三大学に相当するものでございます。

 その具体的にはどのような根拠ということでございますが、各年度の国立大学法人運営費交付金の予算額は、政府全体の予算調整過程におきまして、その時々の財政状況等も反映して決定されているものでございます。

 特に、平成十九年度以降の交付金予算額につきましては、平成十八年七月に閣議決定をされました経済財政運営と構造改革に関する基本方針、骨太方針二〇〇六と言われるものでございますが、ここにおきまして、平成二十三年度までの五年間、「各年度の予算額を名目値で対前年度比▲一%(年率)とする。」というふうに閣議決定でされておる。これが運営費交付金総額の削減の根拠となっております。

日森委員 大臣、申しわけない、附帯決議についてはどうお考えでしょうか。あれは無視をしても構わない程度のものだということであってはならないと私は思いますが、ぜひ御感想をお聞かせいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 決して無視しているわけではなくて、法人化前と同水準を確保するということで、その必要額を毎年度措置し、その努力をしているところでございまして、一%削減、これは効率化等のことで予算の毎年の削減をしているわけでございますが、一方で、やはり競争的資金の拡充とか、あるいは、国公私全体を通じた高等教育に対する財政支出の充実に努力をしているところでございますし、また、補正予算等についても設備整備の必要な経費を措置しておりまして、全体を通して附帯決議に向けてしっかりと努力をしているところでございます。

日森委員 にもかかわらず、この運営費交付金が削減をされたという現実は実際あるわけで、七百二十億円、現実があるわけです。これは、教育現場あるいは研究現場にかなり重大な影響を与えているということも言われているわけです。

 OECDの統計によりますと、ちょっと古いんですが、二〇〇三年の段階で我が国の高等教育機関への財政支出の比率というのは、先進主要国の半分程度の状況になっている。さらに、学生一人当たりの高等教育機関への財政支出も、同じく先進主要国中最低、これも半分程度しかないというふうに言われているわけです。

 これに加えて、運営費交付金が削減されたことによりまして、また、教育用資料等について私費を投じて何とかやっているんだ、あるいは学生実験で本来必要な器具が補充できないとか、そういう教育面に障害が起きている。さらに、研究に必要な消耗品が購入できない、専門図書や器材の購入も難しい、こんなことが現実に大学の中で起きているということが言われているわけです。

 大学の教育あるいは研究の場でこういう現実が起きていることについて文科省はきちんと把握をされているのか。であるならば、こうした現状について、改善も含めてどのようなお考えを持っていらっしゃるのかということについてお聞きをしたいと思います。

徳永政府参考人 私ども、各大学の状況等につきましては、日ごろからさまざまな、直接先生方からお話をお伺いする、あるいは事務局からお話をお伺いする、そういった形で状況等の把握等に努めているところでございます。

 御指摘のように、法人化以降、各国立大学におきましては、交付金の減額といったことに対応いたしまして、人件費の削減を初めとする経費削減、あるいは外部資金の獲得など、懸命に努力をしております。

 そういったことで運営費交付金の削減に対応しておりますけれども、大学の方からは、そろそろこのような対応は困難な状況になりつつあるというような声も聞いております。

 このような状況を踏まえまして、先ほど大臣の方からも御答弁申し上げましたが、二十一年度予算の編成に当たりましては、政策の棚卸しというようなことも言われたわけでございますが、そういう中にあっても、文部科学省といたしましては運営費交付金の確保に最大限努力をいたしまして、減額幅を最小限、いわば先ほど御答弁申し上げました、閣議決定で決まっているその最小限の数字にとどめたわけでございます。

 また、平成二十年度の補正予算におきましても二百三十五億円の設備費等の補正を行いましたし、また、今回の二十一年度補正予算におきましても、設備整備のために一千二百五十億円の経費を措置をしているわけでございます。

 また、私ども、先ほど大臣から御答弁いたしましたように、一方では国公私立を通じた大学改革の競争的資金、これも拡充を図る、あるいはまた、科学研究費等の競争的研究資金について間接経費を措置をする、こういったことをさまざましているわけでございます。

 今後とも、その歳出歳入一体改革に向けた政府の方針ということは当然政府の基本方針でございます、このことを踏まえながら、大学に対し一定の効率化の努力を求めつつ、安定的、継続的な教育研究の実施に必要な運営交付金の確保、そしてまた、大学全体に対する公財政支出の拡充といったことに努めていきたいと思っております。

日森委員 補正で対応されるということは、それはそれで必要なことなんでしょうけれども、しかし、教育研究という将来に向けた投資の問題であるわけですから、運営費交付金、本当にこれは復元をちゃんとさせていくような、もう少し突っ込んで言えば、社会保障の分野でもそうなんですが、大臣、骨太方針二〇〇六から決別をしてほしいという思いを私は持っています。

 今、骨太二〇〇九がいろいろ議論されている最中だと聞いていますが、ここの何でもかんでも切ってしまえという話から、そこから決別していかないと、本当に必要なところにお金が回らないということにもなると思いますし、これは、国家にとっても将来的な損失になるんだというぐらいの思いでぜひ対応していただきたいということだけ申し上げておきたいと思います。

 先ほど、大臣からもお話しありました。競争的資金ということが今盛んに言われているわけです。建前上、この運営費交付金には研究費も含まれているというふうに思いますけれども、しかし、実際には大学の基本的な共通経費に充てられていまして、実際に研究費に回っていく余裕というのは余りないんじゃないかという現状があるようです。

 そこで、各大学は競争的資金をどう獲得するかというところでしのぎを削るということになるんですが、どうもなかなか当たらない、採用されないというようなこともあって、非常に貧弱な研究費でかつかつの研究を行わなきゃいけないような大学がたくさん生まれているということも聞いているわけです。

 国立大学の収入に占める競争的経費の割合は、法人化以降どのように推移をしてきたのか。先日出された財政等審議会の資料だと〇・一兆円、約一千億というふうに書いてあったような気がしたんですが、これはどういうふうに推移をしてきたのか。また、文科省としては、国立大学における収入の中で競争的経費をこれからも拡大しようということでお考えになっているのか。先ほど、大臣のお話を聞いているとどうもそういうにおいがしたんですが、その辺についてお聞かせいただきたいと思います。

徳永政府参考人 国立大学法人の収入に占める競争的経費の割合ということにつきましては、大変申しわけないわけでございますが、厳密な意味で財務諸表等からは把握できません。したがって、私どもとしては、厳密な意味での承知をしているわけではないわけでございます。

 それはなぜかと申し上げれば、例えば、代表的な競争的資金であるところの科学研究費補助金というもの、この科学研究費補助金というのは、その直接経費は研究者個人に対する補助金でございますから、大学の収入には入ってこないわけでございます。大学の収入には、いわば間接経費の部分、三〇%の間接経費の部分は入ってまいりますが、これはいわゆる研究上の自己収入というような形で入ってきておりますから、なかなかその捕捉が難しい。

 あるいはまた、別の大型の競争的研究資金の場合は、大学に対する委託経費という格好をとっているものもありますし、補助金という格好をとっているものもございますから、一律にいわば大学会計の中でそれが何%かということについては、非常に難しいということを申し上げたいと思っております。

 そこで、あえて極めて大ざっぱに、ではどのくらいの形でなっているのかということを、これは比較にはなりませんが、あえて比較を申し上げれば、例えば、代表的な競争的資金でございます科学研究費補助金と、それも、その代表研究者が国立大学法人の研究者であるものという仮定を置きまして、さらにまた、国公私立大学を通じた大学教育改革支援経費、例えばグローバルCOE等でございます。これの国立大学への配分額、そういったものを足し合わせたものと運営費交付金、それが何対何になっているのかというような比較をいたしますと、平成十六年段階では、科学研究費補助金のうち、国立大学の研究者が代表研究者であったものが一千百三十四億円、大学改革支援プログラムが二百九十九億円、それに対して運営費交付金が一兆二千四百十五億円でございまして、というので一一・五%となっております。それが平成十九年度になりますと、科学研究費補助金が一千二百五十八億円、大学改革支援プログラムの方が四百三十三億円、そして運営費交付金が一兆二千四十三億円でございますから、一四%ということで、運営費交付金に対する割合としては二・五%上がっている。

 もちろんこのほかにも、先ほど申しましたような、比較的大型の研究資金で大学に配分されているものがほかに六百億円以上あるというふうに私ども推定をしておりますので、では、こういったもの全体を足し合わせるとその比率はもう少し高目になるのかなと思っております。

 ただ、一方で私どもとして、運営費交付金ということにつきましては、各大学が安定的、持続的にその教育研究を行っていくということについては極めて不可欠の経費でございまして、引き続き措置をしていくことが重要であると思っております。

 一方で、競争的資金というものも、国公私立大学が競争的環境の中でそれぞれが個性を発揮して、すぐれた教育研究を伸長していくもの、そういったことから必要なものと思っております。

 私どもからすれば、大学の教育研究の発展充実のためには、基盤的経費と競争的資金、その両方が重要な役割を持っておりますので、このバランスを図りつつ、きちんとした財政支援を行うよう努力をしていきたいと思っております。

日森委員 その競争的資金の比重が極端に高まっていくようなことがあると、やはり、それを獲得するためにきゅうきゅうとするような状態が生まれ、基礎的な研究というのが極めておろそかになってきたり、あるいは大学間の格差が非常に拡大をしてしまうという懸念もあると思いますので、バランスというのはどの程度のバランスのことかまだよくわかりませんけれども、しかし、そこはしっかりと見ていただきたいと思っております。

 次に、国立大学法人評価委員会、これについてお伺いをしたいと思うんです。

 これも報道で大変申しわけないんですが、三月二十六日に公表された国立大学法人評価委員会の評価結果、これに対して不満が大分あったということが報道されておりました。意見申し立てというのがあったようなんですが、どうも、うちは頑張っているのにこんな評価じゃ納得できないという声がかなりあったという話も聞いております。今、文科省が確認をしているというか、その申し立ての中身で特徴的なものについてぜひ御紹介をしていただきたいというふうに思いますし、それから、その評価を受けるためにさまざまな事務的な作業、資料をつくるとかいうことをやらざるを得ない。これが相当な負担になっているという声も個人的にも聞いているわけです。

 そこで、こうしたことについて文科省が現場の声をきちんと把握しておられるのか、仮にそれが事実だとすれば、どういうふうにそれを改善されていくのかということについてお聞かせいただきたいと思います。

徳永政府参考人 先生御指摘のように、国立大学法人評価委員会の評価結果ということについては、私ども、確定に先立ちまして各法人に意見の申し立ての機会を付与しているわけでございますが、そういったことの中で、例えば、業務運営等については二十二法人から、教育研究等につきましては二十六法人から意見申し立てがあったというふうに承知をしております。

 例えばその主な内容とすれば、中期目標の達成状況や学部、研究科の教育研究水準の評定を変更してほしいとか、あるいは、事実誤認等を理由とした評定結果案の文章の変更、あるいは、課題とされた事項の削除などの意見申し立てがございました。

 評価委員会におきましては、提出された意見申し立てにつきましてそれぞれ一つ一つにつきまして事実確認を行い、事実誤認が認められるものなどについては、申し立てを受け入れ、評価結果案の修正を行っております。

 また、評価を受けるための負担の軽減ということにつきましては、各国立大学法人の意見をお聞きしまして、さまざま工夫、改善を行っているところでございます。

 例えば、昨年度におきましても、自己点検評価や認証評価のために整えた根拠データを、いわばこれは、別の形で御自身の自己点検評価とかあるいは認証評価機関に出すためにつくった根拠データ、そのことを法人の判断でこの国立大学法人評価にも活用できるということにいたしましたし、また、これまで既にそういう資料は出しているというものについては、その資料の添付を省略をするということもございました。あるいはまた、十九年度評価と暫定的な中期目標期間評価の実績報告書を一体のものとして、二重手間にならないようにするというようなことの工夫を行っております。

 平成二十年度にも、さまざま進捗状況の記載を簡潔にするなどの軽減、効率化に努めておりまして、現在、国立大学評価委員会の中でのそういった年度評価等のあり方についての具体的な手法等を検討するワーキンググループも置かれておりますので、そういった中で逐次改善を図っていきたいと思っております。

日森委員 事務作業に追われてしまうなどというのは、ぜひ避けていただきたいと思います。

 先ほど西先生からもお話がございましたが、財政審が六月三日に来年度の予算編成の基本的考え方というのを示したわけですが、その中でも大学予算について触れられているわけです。

 一つは、今ちょっと触れましたけれども、大学評価・学位授与機構、これについてですが、評価が客観性に欠ける例があるとか、したがって、評価自体を客観的で定量的なものにする必要があるというようなことが言われていますし、さらに、その委員の中に企業関係者であるとかあるいは評価の専門家を含めるべきではないか、八割ぐらいが大学関係者で占められているというのは非常によくないということなんでしょうが、こんな声が出されているんですが、文科省はこうした財政審が言っていることについてどういう御見解をお持ちなのか、それが一点。

 それからもう一つ、もう時間が余りないので続けて言ってしまいたいと思うんですが、同時に、この財政審の中で、法人化以後、国立大学には毎年度多額の決算剰余金が発生し、ストックベースで約三千億円の積立金が累積していること、いわゆる遊休資産、減損処理を行った資産等々ですが、それが約三百億円あることを考慮すれば、国立大学法人が資金不足に陥っているとは言いがたい状況にあるというふうに財政審は言っているわけです。本当かなというふうに私は思うんですが、この積立金などは、移転のための費用だとか、そういうことで準備をしているという話もあるようです。

 法人化された国立大学は極めて節約をして、例えば、定年退職した職員や教員の穴埋めをしないとか、少ない数できゅうきゅうとして今おやりになっているという話もあるようです。節約して自由に使用する資金を持つことができるようになったんですが、実際にそれを行う大学は資金不足とは言えないということになるんでしょうか。これは財政審が言っているとおりなのでしょうか。私にはとてもそうは思えないという思いがあるものですから、ぜひこの点についても文科省の見解をお聞きしたいと思います。

塩谷国務大臣 先に、大学評価・学位授与機構による評価の客観性に欠けるという指摘については、教育研究の評価は、その特性から、一般的にピアレビュー、これは同僚評価ということでありますが、により行われておりまして、この点についての理解を求めてまいりたいと考えております。

 また、評価を定量的なものにするとの指摘につきましては、やはり教育研究評価の目的は、各法人ごとに定められた中期目標の達成状況や各学部の研究科ごとの目的に照らした教育研究の水準を評価するものでありまして、定量的な評価にはなじまないと考えております。

 また、委員の構成に関する点につきましても、国立大学法人法に、評価のあり方も含め、同法の運用に当たっては、大学の「教育研究の特性に常に配慮しなければならない。」と規定されておりますが、これを踏まえて、大学評価・学位授与機構において大学の教育研究に関する専門家を選任しているものと考えておるわけでございまして、企業の人がというのはやはり無理があるというような、もちろん何人かおりますが、やはり、専門家として選任をされているということでございます。

徳永政府参考人 積立金についてお答え申し上げます。

 財政審で指摘がありましたように、平成十九年度末で、財務諸表上、積立金等が三千一億円計上されてございます。しかし、このうち一千五百五十五億円につきましては、国立大学法人会計基準に従って会計処理を行ったために生じる、いわば形式的、観念的利益であり、実際に法人に現金等が残っているものではございません。

 どういうことかと申しますと、例えば附属病院の再開発、施設設備をもう一回建て直すわけでございますが、こういった場合には財政融資資金を使っております。この償還期間は二十五年でございます。一方で、減価償却期間は、これは企業会計に従いまして三十九年とされております。したがいまして、毎年度毎年度二十五年分で償還をしてまいりますと、その瞬間、減価償却額よりも余分に償還をすることになりますので、結果的にその資産価値が上がってしまう。こういったことがいわば形式的な利益となっているものでございまして、これがもって、いわば何か資金に余裕があるというようなものではございません。

 一方で、それ以外の一千四百四十六億円につきましては、法人が人件費の節減などの自己努力により確保したもので、これにつきましては、毎年度、目的積立金といたしまして財務大臣への協議を経まして文部科学大臣が承認を行っている資金でございまして、年度を超えたプロジェクトなどに充てられるという使途が明確に定まっているものでございます。

 また、減損処理をするといったもの、その減損処理をした土地建物が、資産が二百六十七億円となっておりますが、これは、使用実績や売却価値が相当程度低下した資産を示しているものでございますけれども、将来利用計画のあるものを含んでおり、直ちにそれが、いわば遊休資産として、あるいは、具体的な売却をして手元流動性があるというようなことを示しているものではございません。

 したがって、積立金や減損処理を行った資産があることは、国立大学法人の資金、いわばキャッシュに余裕があることを示しておらず、全体としては、運営費交付金の削減等により国立大学法人の経営は厳しさを増しているというふうに認識しております。

日森委員 最後になりますが、さらに財政審の建議の中では、今後の議論の方向性について、「運営費交付金を機械的・一律に配付するよりも、各大学が自ら質を高める取組を促すため、引き続き運営費交付金の削減を行い、できる限り、教育は授業料、研究は科学研究費補助金等の競争的な資金で賄うことを目指すべきではないか。」というふうに言っています。

 とても納得できないというふうに私は思うんですが、こういう財政審の方向について文科省がどういうふうにお考えになっているのか、お聞きをしたいと思うんです。

 かつて、教育費をOECD並みの五%にしようと、財務省と、バトルまで行ったかどうかはわかりませんが、綱引きがあって、文科省はちょっと分が悪かったのかな、ということがありましたけれども、ここまで言われたら、本当にこの国の国立大学法人の教育研究というのは一体どうなってしまうのかということがあるので、ぜひ財務省と再びバトルをやっていただきたいという思いも込めて、文科省の見解をお聞きしたいと思います。

塩谷国務大臣 今の御指摘の建議につきましては、我々としましては、この運営費交付金の削減等については、当然、人件費や一般管理費は大学の組織を維持するために最低限必要な基盤的経費でありますから、必要額をしっかり確保していかなければならない。今後、中期計画においては、そのあり方を検討していくということで今考えておるわけでございます。

 また、授業料で賄うべきということについて言及がありましたが、教育と研究の会計を分離し、おのおの授業料とか競争的資金で賄うという点については、全くやはり問題があると考えております。特に、教育の成果は、教育を受けた本人のみだけではなくて社会全体にも還元されるものである、また、日常的な研究活動に要する経費は競争的資金の措置ではなじまないということもあり、また、大学の研究活動は一体として行われているということでございまして、この点についてはまことに困難だと考えております。

 また一方で、その際には、大学の再編とか統合、国立大学の数について、大学の自治の観点から私どもとしては一概に統廃合の方針を示すことは困難でありますが、各大学法人の機能分化、あるいは、大学内さらに大学を超えた再編統合を含む組織等の見直しについては今後検討をすることはあり得ると考えておりますので、そういった点は、私どもとしても今後しっかり視野に入れていく必要があると考えております。

日森委員 時間です。ありがとうございました。

岩屋委員長 日森君の質疑をもちまして、本日予定された質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十一分散会


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