衆議院

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第13号 平成23年5月27日(金曜日)

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平成二十三年五月二十七日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 糸川 正晃君 理事 高井 美穂君

   理事 野木  実君 理事 松崎 哲久君

   理事 松宮  勲君 理事 下村 博文君

   理事 馳   浩君 理事 池坊 保子君

      石井登志郎君    打越あかし君

      大山 昌宏君    奥村 展三君

      金森  正君    川口  浩君

      木村たけつか君    城井  崇君

      菊池長右ェ門君    熊谷 貞俊君

      笹木 竜三君    瑞慶覧長敏君

      高野  守君    中屋 大介君

      平山 泰朗君    村上 史好君

      室井 秀子君    本村賢太郎君

      山田 良司君    笠  浩史君

      和嶋 未希君    あべ 俊子君

      遠藤 利明君    河村 建夫君

      塩谷  立君   田野瀬良太郎君

      永岡 桂子君    古屋 圭司君

      松野 博一君    富田 茂之君

      宮本 岳志君    城内  実君

      土肥 隆一君

    …………………………………

   文部科学副大臣      笹木 竜三君

   文部科学大臣政務官    笠  浩史君

   参考人

   (総合型地域スポーツクラブ全国協議会幹事長)   小倉 弐郎君

   参考人

   (公益財団法人日本オリンピック委員会理事)    河野 一郎君

   参考人

   (学校法人了徳寺大学理事長)

   (学校法人了徳寺学園理事長)           了徳寺健二君

   参考人

   (学校法人タイケン学園スーパーバイザー)     佐伯年詩雄君

   文部科学委員会専門員   佐々木 努君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  熊谷 貞俊君     菊池長右ェ門君

  瑞慶覧長敏君     打越あかし君

同日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     瑞慶覧長敏君

  菊池長右ェ門君    熊谷 貞俊君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、総合型地域スポーツクラブ全国協議会幹事長小倉弐郎君、公益財団法人日本オリンピック委員会理事河野一郎君、学校法人了徳寺大学理事長・学校法人了徳寺学園理事長了徳寺健二君及び学校法人タイケン学園スーパーバイザー佐伯年詩雄君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたく存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知ください。

 それでは、まず小倉参考人にお願いいたします。

小倉参考人 最初に、皆様方に、きょうはこのような席にお招きいただきまして、大変ありがとうございます。

 きょう出席しましたのは、私個人という立場ではなくて、総合型地域スポーツクラブが全国に活躍をしております、その方々の思いがついにこの場所に実現できたんだということで、厚く御礼を申し上げたいというふうに思っております。ありがとうございます。

 それでは、総合型地域スポーツクラブが今全国で活躍しておるその経緯を少し御紹介をしたいと思います。

 何分に、私は民間人でございまして、このような場所がふなれでございますので、いろいろな面で失言だとか不適切な発言もあろうかと思いますが、御容赦をいただきたいというふうに思います。

 まず、総合型地域スポーツクラブが全国に展開をしてきたという根拠は、やはり何といいましても、国が定めたスポーツ振興法にございます。これに基づいて、日本体育協会等々が委託事業としながらこれを進めてきたわけでございます。

 皆さんのお手元に資料を配付させていただきましたが、その内容については今ここで一つ一つ申し上げることもありませんが、今現在、クラブの育成状況というのは、昨年の七月現在で、全国に、準備中も含めまして三千百十四のクラブが設立または設立する予定でございます。そして、それぞれの市区町村におけるクラブの設置率、これは七一・四%になってまいりました。おかげさまで、会員数も約百三十四万人という数字になってまいりました。まだまだパーセンテージ的には非常に低いところでございます。

 しかしながら、スポーツ実施率という面におきましては、平成十六年度の三八・五%に比較しますと、二十一年度においては四五%になってきておりまして、それぞれの目標施策に対してかなりの域に達してきているというふうに感じております。

 日本体育協会においては、平成十六年に文部科学省から委託事業として委嘱されました。それ以後、いろいろな施策を展開しながら進めてまいっております。クラブ育成アドバイザーを配置したりとか、非常に、それぞれのクラブにおいて、中間支援組織としてその立場を明らかに、明確にしております。

 そういった中で、二十一年度にちょうど二千数百のクラブを数えるに至って、クラブの間からいろいろな声が出てくるようになってまいりました。それはどういうことかといいますと、やはり、自主自立でクラブを運営していけと言われるものの、それまで官が、行政がやっていただいていた内容を譲り受けたものの、大変難しい。民間で自主自立でやっていると、なかなか難しい。皆さんの発言を聞いておりますと、いろいろな課題を抱えながら、かなり共有する部分があるというふうになってまいりました。

 そこで、全国に育成されたクラブが、さらにこれから自分たちで強固に定着をさせていくためにはどうあるべきだろうかということを議論する場を持つために、全国協議会というものをスタートしたわけでございます。

 今現在、三千百十四のうち、二千三百四十四のクラブが全国協議会の中に加入をしてくれております。四十四の都道府県においても各県連絡協議会が設立済みでございます。

 そして、クラブができた成果と課題というものを少し拾っています。これは、やはりやってはみたものの、どういう成果があったんだろうかということを自己評価していく中においても大変重要な部分であるだろうということで、文部科学省においても実態調査をしていただいております。

 私どもは、現場においてそういった資料をさらに詳しく分析をしながら、自分たちのクラブにとってはどうなんだろうということをいつも考えております。

 ここの三枚目に記しております「成果」というのは、設問の中から出てきておる内容でございますが、さらに、現場の立場に立って申し上げますと、非常に大きな成果として明らかに感じておるのが、国民の皆様、そして地域住民の皆様方に受益者負担の気持ちがかなり芽生えてきたなということが言えます。

 私もクラブを設立いたしましたが、平成十三年ごろは、スポーツをするのに、お金を出して何で自分たちがやらなきゃいけないんだ、役場がやってくれるじゃないかというような意見が圧倒的でございました。しかしながら、今現在では、そういったムードもほぼ聞こえてこなくなったというのも現実でございます。

 さらに言えるのは、教育現場において学校等々の接点が、少年団とかそういった団体を見ましても、意外とあるようでないのが現実でございます。

 総合型クラブというのは、地域の資源を最大限に活用していくためにどうあるべきかということも現場は常に考えております。したがって、クラブの代表者が校長室へ訪問をしたりとか、学校の先生方とお話し合いをしたりとかして、学校の補完できる部分はありませんかというような形で先生方と常に協議をしながら、学校の現場にも接点を持てるようになってきております。これは、全国的なクラブを眺めてみても、そういったことがうかがえます。

 特に、中学校の部活動に対しては、かなりの接点がふえてまいりました。これについては、私は大変大きな成果ではないかなというふうに思っておりますし、学校側も、地域に溶け込んでくるいいチャンスになった、きっかけになったということがお互いに言えるそういう場がふえてきておるように感じております。

 さらに、課題としましては、やはり自分たちで運営をしていかなければいけないので、何といっても会費でございます。会費といいますと、やはり会員の拡大、会員をふやしていかなければならないということが私どもにとっては大変大きな課題になっておるわけでございます。

 その次の財源の確保というのは、その部分とかぶってくるものもございますが、しかしながら、会員というのは、出したお金よりもさらに大きなメリット、見返りを求めているのでございます。したがって、クラブでは、何ができるのかな、地域の皆さんが求めていらっしゃるものにどうこたえていくべきなのかなということを常々考えながら、サポーター制度を利用したりとか、いろいろな施策をクラブの中で考えながら取り組んでいるのが現状でございます。

 私は現場の人間でございますので、そういったことをもろもろ、後ほどまたいろいろな形でお答えができればうれしいなというふうに思っております。

 そういったことを踏まえまして、こういったことをお願いしていいのかどうかよくわかりませんが、最後に要望事項としてまとめさせていただきました。

 地域におけるスポーツ活動を一層推進するために、その中核として、新しい公共の考え方を実践し、住民が主体的に運営する地域スポーツクラブとはまさしく総合型地域スポーツクラブと私どもはとらえています。総合型クラブが抱えるもろもろの課題を解決し、クラブの活動の充実と継続を担保するために、以下の二つについて要望を申し上げる次第であります。

 一つは、住民が主体的に運営する総合型地域スポーツクラブの育成について、ぜひ基本法に明記をお願いしたいというふうに考えております。

 地方の行政現場においては、先生方がお話をしていただいている以上に、まだまだ向こうではわかっていない、理解されていないというものを強く感じる場合がございます。

 二つ目に、その上で、国の重要施策として、総合型地域スポーツクラブの育成を明確に位置づけていただきたいということなのです。

 地方の行政においては、このクラブができたことによって、自分たちがやっていたそれまでのスポーツ行政の事業をクラブが肩がわりをしているケースはたくさんございます。今では、行政サイドがやっているというものがほとんどないところも出てきております。そんな形で動いておるクラブでございますので、ぜひそういう位置づけを盛っていただきたいなというふうに思っております。

 また、具体的な一つの例で申し上げますと、今、スポーツ振興くじの助成を受けて運営をしておるクラブも多数ございます。大変ありがとうございます。この自立支援事業が五年間となっておるわけですが、これを十年、もしくはそれ以上継続をしていただければ、ますます自分たちの自立したクラブに育っていくのではないのかなというふうにも考えております。

 そして、クラブというのは、今までは総合型ということが前面に打ち出されてまいりましたが、地域スポーツクラブというのはさまざまな形がございます。それらも含めて、いろいろな形で育っていけるような皆様方の応援をお願い申し上げまして、私からの説明とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、河野参考人にお願いいたします。

河野参考人 おはようございます。河野でございます。

 私は、いろいろこれまでかかわらせていただいた中で、百年、あるいは五十年、そして十年という節目に今いるように思っております。そういった意味で、その順で触れさせていただきたいと思います。

 お手元に資料があるかと存じますけれども、百年前、つまり、我々は今、百年の節目にあると認識しております。その一つは、ことしは、オリンピックあるいは日本体育協会が誕生して百周年に当たります。そのときに、百周年も大変重要だと思っておりますけれども、何よりも今我々が、あるいはスポーツ人が振り返る必要があるのは、嘉納治五郎先生がそのときにお話しされた趣意書の中身かと思っております。

 お手元にございますけれども、嘉納先生は趣意書の中で、実は、この大日本体育協会をつくるのは、ストックホルムに送るに当たって送り元がないからというのが一番の大きな理由ではございましたが、しかし、それだけではなくて、視点として、国のことを考えろ、それから二つ目は、やはり、体のことだけではなくて、心と体と、そして知恵と意志、つまり、オリンピズムというのはスポーツを通した青少年の教育活動であるということを念頭に置いてこの趣意書を書かれております。

 さらに、今見ても新しく思いますのは、百年前にもう既に世界という視点をお持ちになっておられたということのように思います。

 嘉納治五郎先生が常々おっしゃっておられた精力善用、自他共栄、これは決して柔道だけのものではないと思っております。

 今まさしく、百年前に嘉納先生が言われ、百年前にスポーツをスタートし、百年前から学校体育を日本の中に根づかせた嘉納先生の百年前のこの視点、これを今、我々としてはしっかり見据える必要があろうかというふうに思っております。

 次のページになりますから、百年から一挙に五十年に飛びますが、この間には嘉納先生も大変御苦労されて、先週のこの会で宮本先生がるる御質問されておられましたけれども、いろいろなことがあったと思います。しかしながら、五十という数字は、いろいろな経緯を踏まえてスポーツ振興法ができた、一九六一年にできてから五十年ということになります。

 もちろん、一九六四年の東京オリンピック開催、これはいろいろな意味で日本にインパクトを与えたと思います。もう一九六四年の東京オリンピックを知らない世代がふえてはおりますが、今でもこのことは語り伝えられておると思いますし、そこに示しましたこの写真は、恐らく、その当時の日本の国民は、この東京オリンピックというものに対して、相当同じベクトルで見ていたのではないかなと思います。

 歴史をひもときますと、もちろん、一九六四年の東京オリンピックの前に反対運動があったこと等々は知っておりますけれども、しかし、何といっても、六四年の東京オリンピックが日本に与えた影響、特にスポーツ界に与えた影響は大きいと思っております。

 しかし、オリンピック自体のイメージが、ややもすると、私の偏見かもしれませんが、このときの東京オリンピックのイメージが少し日本国内に強過ぎるために、やや誤解を受けているような部分があるのではないかなと思っております。

 次のページになりますが、オリンピック自体は、一九六四年以来、変貌を遂げてまいりました。そこにありますように、幾つかのサバイバルを遂げて今の状況になっております。

 一つはテロからのサバイバル、ミュンヘンのオリンピックでございます。政治的なサバイバル、これも先週質問の中で触れられたと思いますけれども、モスクワ・オリンピックのことです。一つはモントリオール・オリンピックの経済的なサバイバル、スキャンダル、ドーピング等々あります。

 しかし、例えば政治的なものに関しては、今、国連よりもはるかに多い国、二百五の国がオリンピックに参加するような状況になっておりまして、少なくとも、世界じゅうが、やはりオリンピックというものに関してはポジティブにとらえる時代になっております。

 経済的なものもモントリオールで確かにありました。しかし、同じ国のカナダがバンクーバー・オリンピックを招致しよう、開催しよう。開催をして、ああよかったなと。これでカナダの国民は、国のアイデンティティーを自分たちは持つことができたと。このようにオリンピックは変貌を遂げております。

 オリンピックあるいはトップスポーツにかかわる者としては、こういったものを見ますと、ではどういうふうに変わったかなと。今、一言で整理をしますと、芸術もしくは科学と同じように、人間の究極の限界に挑む、これが多分、トップスポーツあるいはオリンピックの姿として、多くの国、多くの方が感動をし、あるいはやりたいと思っていることだろうと思います。

 トップスポーツの今は、それがあるために、いろいろな側面でしばしば、スポーツには力がある、スポーツには人を動かす力がある、社会を動かす力がある、国を動かす力があるというふうに言われます。

 しかし、もちろん光と影がございますので、次のページをごらんいただきたいと思いますけれども、今、スポーツの取り上げ方が、一九六一年のときはスポーツの推進、振興だけでよかったと思いますけれども、今のようにトップスポーツも変貌を遂げた今、ここに挙げさせていただいたのは、スポーツを通して何ができるかということに非常な関心が集まっております。

 したがって、国連も、あるいはIOC、国際オリンピック委員会もそうですが、例えばそこに、少しコピーが暗くて見づらいかもしれませんけれども、難民キャンプにおけるスポーツの役割は何かと。難民キャンプ、非常に価値観の違う部族が集まったところに、子供たちにスポーツを渡す。例えばサッカーを渡す。最初は自分の部族だけにしかボールを回さない。しかし、スポーツをしていると、スポーツを成功あるいは成立させるためには、敵の部族にも渡さなきゃいけない。

 スポーツをやってみると、なるほどということで、子供がまず最初にスポーツを通じて垣根が取り払われ、そして、それを見ている大人がというようなことがあるものですから、最近では、ディベロップメント・スルー・スポーツということに大変力が入った取り組みを国連もしておりますし、さらに、そのときにおけるトップスポーツ、トップアスリートの役割、スポーツ立国戦略で述べていただいたように、好循環が始まっているというふうに思っております。

 その次は、映画の話で恐縮ですけれども、マンデラ大統領がラグビーというスポーツを通じて国をまとめた話が「インビクタス」という映画で、しばらく前に放映をされました。実は、私も一九九五年に現地におりまして、アパルトヘイト直後の南アフリカで、まさにこの映画のそのとおりだなと思いました。残念ながら、私の行ったチームの方は大敗をしましたけれども、しかし、その大敗から学ぶ、負けることを学ぶのが、競技スポーツのいいことかというふうに思っております。

 さて、五十年の間にはいろいろなことがあって、スポーツが変貌をしてまいりました。私は、オリンピックということと同時に、アンチドーピングの世界に身を置いておりますけれども、アンチドーピングという、ドーピング防止ですね、この視点から、この十年というのは極めて大きな意義があったかというふうに思っております。

 十年というのは、世界の動きをいち早く日本が受けて日本アンチ・ドーピング機構が成立した年でございますけれども、実は、それまではドーピングということに関して、スポーツ界はスポーツ界だけ、政府は政府だけというような取り組みがなされてまいりました。

 そこにありますへんてこな器械は、アテネ・オリンピックで、室伏選手のライバルと言っていいのかどうかわかりませんけれども、金メダルをとって失格になった選手が使っていた器具でございます。一々説明するのはちょっと省きますが、ここまでしてやるかと。

 つまり、スポーツには光と影がある、そのことをスポーツ界があるいは政府がよくよく認識をしたために、次のページに行きたいと思いますけれども、私の目からは極めて理想的なことが起こっております。

 というのは、ドーピングというのは、医科学者だとかIOCとか、好きな人間だけが扱っているものだろうという声が十年前までありました。しかし、十年前に綱引きが起こりまして、世界アンチ・ドーピング機構ができるときに、成立の経緯で、パワーバランスをとる綱引きがいろいろありました。

 一つは、スポーツ界と政府サイド、イニシアチブをどっちがとるのか。最初は、抜け駆け的にスポーツ界がアンチ・ドーピング機構を設立し、政府サイドがまとまろうと言いましたが、最終的にはハイブリッドな構造としての世界アンチ・ドーピング機構ができて、多分、国際的な統括組織で、政府サイドと国際スポーツサイドが同じテーブルに座っている組織はこれだけだろうと思います。

 さらに、これはスポーツ界に身を置く者として、その成立の過程の中で大変御苦労をいただいた政府関係者、もちろん、文部科学省を初めとして感謝を申し上げるところでございますけれども、私の目からは、なるほど、日本もこういうことをやるのかと。つまり、ヨーロッパ対ヨーロッパ以外という構図がそのとき起きましたけれども、さいころを振っていただいて、カナダ・オーストラリア連合に日本は入りました。その中で日本はプレゼンスを示しております。

 今、日本の少なくともスポーツ界の中で、日本国政府はこの世界アンチ・ドーピング機構の常任理事を務めていただいております。その場所にはIOCの幹部がすべて来ております。国際連盟の幹部がすべて来ております。そこでの発言はすぐに世界じゅうに伝わります。

 したがって、今回の大震災の状況、科学的な根拠をもって、これは違うぞと、実は、しばらく前の世界アンチ・ドーピング機構のところで日本側から提示をさせていただきました。これはもうすぐ、翌日と言いません、数時間後にはIOCのヘッドクオーターに行き、日本で国際大会を開催しようと思っていた国際連盟のヘッドクオーターに届きました。

 今、そのようなところに日本がいる、まさにプレゼンスを置いていただいているということに大変感謝を申し上げたいと思いますし、比較的このことが余り知られておりませんので、この席にもこの常任理事を務めていただいた先生がおられますし、もちろん現文部科学省の中にもおられるわけですけれども、ぜひぜひ御記憶にとどめていただいて、このすばらしい活動にぜひ力を入れていただきたいと思います。

 最後に、私の立ち位置から感じていることを申し上げたいと思います。

 実は、きょうの出席を正式に受けたのは、国外におるときでございました。そこで、ちょっと準備が不十分ということはお許し願いたいと思いますが、実はダブリンというところにおりまして、そこで、ある競技の政府保証を取りつける作業をネゴシエーションしてまいりました。

 その話はおいておきまして、そのことを含めて、オリンピックあるいはスポーツを通じて今何を一番考える必要があるかなと思うのは、この世界地図でございます。

 残念ながら、日本は真ん中にございません。この地図自体は、しばらく前、大分古くなりますけれども、サミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」というときに用いられた地図でございまして、つまり、日本だけが一つの文明圏であって、確かに、国際的なところへ行ってネゴシエーションをすると、残念ながら、日本語では交渉ができないんです。ほかの国は、英語、フランス語、中国語、スペイン語、少なくとも一カ国以上しゃべれます。このことをやはり意識をしていかないと、先ほど申し上げた日本のプレゼンスを示していくことは難しいかなと、こう思っております。

 そのためには、やはり、ある意味でいえば知恵が必要かなと。これまで、百年前に動き出したときは、確かにスポーツは、もしかしたら好きな人間だけがやっていたものかもしれない。しかし、オリンピックが変貌したように、スポーツが変貌したように、少なくともアスリートだけではできない。アスリートが一番重要である、プレーヤーズファーストであるが、しかし、国でなければできないこともある。ほかの国はそれをしていると思います。そういった意味で、国内、国外、コーディネーション機能が必要ではないかなと考えております。

 そういった意味で、少し偉そうになりますけれども、国の視点でぜひぜひそういう人材を育成すること、それで情報を、一元化をするという表現が適切かどうかわかりませんけれども、少なくとも共有をしていく。情報というものをどのように扱っていくかということに関しては、議論をしていただければというふうに今思っております。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、了徳寺参考人にお願いいたします。

了徳寺参考人 本日は、このように発言の機会を賜ったことに関しまして深く感謝申し上げます。と同時に、手短に話しますので、委員の先生方には、どうぞ御安心くださいますようにお願いいたします。

 さて、私は今、この胸の中に一枚の特急券を持っております。この特急券は、今から四十五年前、私が、本土の最南端、亜熱帯の、本当にジャングルみたいな田舎から徒手空拳で連絡線を乗り継ぎ、三十時間かけて東京駅におり立ったときの切符でございます。この切符は、同時に、私の十八歳の誕生日の切符でもありました。

 東京駅から今でいうJRの大森駅でおりるときに、改札の方にこの特急券を記念に欲しいんだがと言いましたら、いいよとお許しいただいて、それからずっと四十五年の間、肌身離さず持ってまいりました。それは、そのときの決意を忘れないために持ち続けたものであるわけでありまして、だから、この特急券は、私の別れの悲しい涙や、また感激した涙、あるいは、選手たちが勝利したときの感激の涙をみんな知っているわけでございます。

 私がなぜ今柔道に力を入れ、そしてトップアスリートたちを支え続けているかということを話していきたいと思います。

 私は、この東京駅におり立ってから十年後、つまり二十八歳のときに、もとの川崎製鉄千葉製鉄所で柔道の監督をやっておりました。草柔道チームで、市民大会でも勝てないチームでしたけれども、熱意ある指導で生まれ変わり、全日本実業団で優勝する選手が続出して、そしてまた、オリンピック候補選手まで育てられるようになってきました。

 そのときに、当時の川崎製鉄の方に、柔道のオリンピック選手を育てたいというお願いをしました。しかしながら、経済活動が優先されて、私たちの願いはむなしいものになりました。

 そこで私は、それならば自分でオリンピック選手を育てる、金メダリストを育てる体制をつくろうと決意して、二十八のときに、当時の川崎製鉄の役員の皆様方の温かい御支援を受けて夜学に五年通わせていただいて、そして、三十三のときに独立させていただきました。それから、医療法人を設立して整形外科のチェーン店化に成功しまして、さらに西暦二〇〇〇年に、両国の地に学校法人了徳寺学園を設立できたわけであります。

 そのときに、東京都の総務局に、この専修学校にオリンピック選手を育てるチームをつくりたいのだがよろしいでしょうかとお伺いを立てましたら、構わないというお答えをいただきました。

 そこで私たちは、世界の舞台で日の丸を上げて国民に勇気と誇りを回帰させるという大きな志を立て、また同時に、世界の舞台で、武士道の精神を受け継ぐ柔道の礼節を重んじ、正々堂々とした試合態度を貫くことによって、日本のみならず、世界の青少年に夢と感動を与えたいとつくったチームであります。

 この柔道部の特徴は、端的に申し上げますと、私たちの柔道部に入った選手十人のうち七人は日本代表に成長するという、たぐいまれなチームでございます。今年度も、フランスで行われます世界選手権に、単独チームとしては異例の、六名の選手を輩出することになりました。また、昨年の世界選手権では、金メダリスト二人、銀メダリスト一人、また銅メダリスト一人を出すことができました。

 このようなチームがなぜ誕生したかということを、私のこの特急券ではありませんが、この涙シリーズの一つを先生方に披瀝して、ああ、そういう体制があるからこそ選手がはぐくまれるということをお話ししたいと思います。

 実は、昨年の九月に五十年ぶりに東京で開催されました世界柔道選手権、ここには私たちのチームから五名選ばれました。二人の金メダリストが誕生し、また、銀メダリスト一人、銅メダリスト一人でございました。しかしながら、一名、無冠に終わることになりました。

 彼は、世界選手権まで連戦連勝し、大会前は世界ランク一位、押しも押されぬ優勝候補で、だれもが金メダルを期待しておりました。本人にも相当な重圧があったことは事実であります。そして大会当日、三回戦まで進出し、文字どおりの決勝戦となりました。三回戦は優勝したギリシャの選手と戦い、残念ながら惜敗することになってしまいました。

 彼の勝ちたいという意欲、あるいはまた一族の強い希望、あるいは組織の全体の期待、そういったものむなしく敗れ去った彼の胸中を思うと、私も、いても立ってもいられない心境でございました。彼にどのような言葉を与え、あるいは励ますかということに十日も悶々とした日が過ぎまして、あるとき忽然と私の中に、無に返れという声が響きました。ああそうだった、なればそのあかしとして、髪をそり、そして彼にそれを示そうと決意しました。そして、私どもの監督にもその旨を伝えて、私は床屋さんに向かい、このように剃髪したわけでございます。

 この委員の先生方にも、以前お目にかかった先生方、御指導いただいた先生方が何人もいらっしゃいますけれども、あれ、いつの間に了徳寺は得度したのか、出家したのかと思われたかもしれませんが、実はそういう経緯があるわけでございます。

 その夜、伝え聞いた選手から電話がありました。電話の向こうで男泣きしているのがわかりました。私のことを先生と呼んでくれますが、先生、そこまでしてくれるんですかと彼は言いました。私は、当たり前のことだ、おれたちは親子と一緒だろうということを申し上げました。彼は、負けてからだれにもこの心中を吐露できなかった、苦しみ抜いてきました、吹っ切れました、死ぬ気でもう一回やりますと言ってくれました。彼はその後も、満身創痍の中にも頑張って、再び世界選手権の切符を手にしたわけでございます。

 私たちの柔道部では、他の人よりすぐれている人をすぐれているとは言いません。私たちのチームでは、きのうの自分よりきょう、きょうの自分よりあすというふうに、自分を乗り越える人をすぐれている人と呼びます。こういう人こそ教育の現場にふさわしい、こういう人こそ、いつの日か他を凌駕してすぐれた人になると私は思っております。

 私たちはこのような選手たちをずっと支え続けてきました。それは、このようなすばらしい柔道精神を持つ青年たちを教育の現場に送り込みたいとずっと考え続けてきました。そのために、ほとんどの選手は大学院に進学させ、支え続けてきました。あるいは、医療資格を取らせて、独立できるような支援をし続けてきております。

 しかしながら、国におかれては、このような選手を何とか支援する制度をぜひおつくりいただきたいと願うわけでございます。

 例えば、国際大会あるいは国内大会で勝った、あるいは成績でもって点数制をつくって、ある点数を超えた選手たちは優先的に教育の現場に入れるような体制をぜひおつくりいただきたいと願うわけでございます。

 私たちの大学も学園も、小さい小さい大学、学園です。今度の大会でも、例えば男子の代表選手のほとんどは、ほとんどといいますか、実業団の中で選手を輩出したのは私どものチームだけです。新日鉄や旭化成や、マンモス企業のチームからは残念ながら今回は選手は出ていないわけでございまして、いかに私たちの選手を支える体制が成功しつつあるかというあかしではないかと私たちは考えているわけでございます。

 今後とも、どうぞ高いところから私たちを御支援いただいて、世界の舞台で日の丸を上げて、国民に勇気と誇りを回帰させるチームづくりに邁進してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、佐伯参考人にお願いいたします。

佐伯参考人 こんにちは、佐伯でございます。

 多分、日本におりますスポーツ研究者の立場を代表する、そんな形でお話しすることになると思いますので、よろしくお願いいたします。ちょっとアカデミックな話になりますが、お許しいただきたいと思います。

 お手元に資料が配付されると思いますが、一つは小冊子になっております。これは数年前に出したものです。これは、日本のスポーツが今どういう課題を抱えているか、その解決のために何がなされなければいけないかということについて簡単にまとめたものでございまして、「日本スポーツイノベーション」というタイトルをつけております。また時間があるときにぜひごらんいただきたいと思います。

 この中に、スポーツ法・制度の整備ということを一つうたっております。

 今、私どもが非常に強く歓迎しながら、また同時に問題点があると思って考えておりますのは、御承知かと思いますが、スポーツ基本法を制定するという動きでございます。積極的な政治のスポーツ支援、多分、こういう方向については多くのスポーツ人はもろ手を挙げて賛成する、そういう姿勢があると思います。

 ただ、そこで幾つかの問題点がございまして、私は、きょうのお話を、そのスポーツ基本法をめぐる基本的な問題ということで、三点に絞ってお話ししようというふうに思っております。

 一点は、スポーツとは何かということをめぐる問題、それから二点目は、スポーツ団体の自治、自立の問題、三点目は、国際的な潮流、ごく簡単に申し上げますと、二十世紀のスポーツはネーションステートのフレームの中で成長しました。それはまさに、オリンピックや国際競技大会に象徴されるようにですね。二十一世紀のスポーツは、この国民国家のフレームをどうやって超えてグローバルな世界に貢献できるかという課題に今目を向けつつあるという状況にあります。

 そういう大きな歴史的な転換点に立って日本という国はスポーツに関する基本的な法律をつくろうとしている、そういう位置づけをぜひ御理解いただいた上で御検討いただければと思います。

 まず、スポーツをめぐる問題、スポーツとは何かをめぐる問題です。

 御承知のように、一九六一年に、東京オリンピックを三年後に控えて、日本は初めてスポーツに関する法律をつくりました。現行のスポーツ振興法という法律でございます。

 その法律がつくられた経緯は、いろいろあるわけですけれども、一つは、それまで、スポーツに関する支援策を含めて国の関係というのは、社会教育法という教育に関する法律のフレームの中で行われていたわけです。簡単に申し上げますと、社会教育法のフレームでは、本格的なスポーツでありますオリンピックを実施する上で、国が支援策を具体的に展開する上で支障がある、スポーツに関する独自の法律が必要だということでスポーツ振興法という法律がつくられたというふうに考えていいと思います。

 そのときに、この法律で言うスポーツとはという定義がございます。第二条でございます。この法律で言うスポーツとは、あれこれありますが、心身の健全な発達のために行うものであるという定義があるわけです。これを私たちは、体育的定義と言います。

 皆さん方もスポーツを楽しまれると思いますが、多くの人のスポーツの最初の最も重要なものは何かといったら、運動することの楽しさですね。それをこの法律は全く評価していないということなんです。むしろ、心身の健全な発達、つまり、教育的な価値や意義を持つものがスポーツだというふうに定義している。この定義のもとにずっと五十年、日本のスポーツ振興は実は行われてきているわけです。

 その間、スポーツも変わりましたし、国民の生活も大きく変わりました。世界の情勢も変わりました。そういうことも含めて、新しい法律が日本ではスポーツについて必要であるということは、多くの方々がもう随分前から主張してきているわけです。

 その一番大きな理由が何かといったら、この体育的定義からいかに飛躍するかということなんです。この体育的定義、何々のために行うのがスポーツだという言い方ですね。ここからいかに飛躍できるか。

 例えば、一九六四年の東京オリンピックの開催に際して、IOCはオリンピック記念スポーツ科学会議というのを開催します。それは東京オリンピックだけじゃなくて、すべてのオリンピックに際してです。オリンピックは、御承知のように芸術部門も持っておりますし、それから、こういう知的な部分も持っているわけです。そのトータルな意味で、人間的な成長、成熟に向けた国際的な連帯の営みだというふうに考えていいわけです。

 そのオリンピック・スポーツ科学会議、一九六四年の東京のときです。このときに、世界で初めて、スポーツとは何かという定義を共通理解しようという動きがありました。そして、四年後の一九六八年のメキシコ・オリンピックまでの四年間にわたって、この東京の科学会議で出された提言を持ち回りで四年間審議して、そして、四年後のメキシコ・オリンピックのオリンピック科学会議で採択したものがあります。

 そこにおけるスポーツの定義が、第一条件が、スポーツはプレーの性格を持っている、つまり、遊びの性格を持っているという定義です。そして、人または自然の障害に挑戦する活発な身体活動である。このスポーツが競争として行われるときは、スポーツマンシップとフェアプレーが重要である。それのないところに真のスポーツはない。こういう見事な定義ですね。この定義は約五十年前に行われて、つまりこれが、スポーツとは何かということを考えるときの国際標準だということなんです。

 このことはいろいろな形で問題になるところがあるわけですが、多くの先進国が、ある意味でいいますと、スポーツに関する直接的な法律というものは余り持っておりません。それは、今申し上げたように、スポーツの第一条件はプレーであるという、それはまた、行うこと自身に目的があるということなんです。ですから、こういうスポーツの一種の私事性というもの、これを尊重するために、なかなかそれを直接的な法律で取り扱うことをしてこなかったわけです。

 しかし、最近は、御承知のようにスポーツの公益性が非常に高くなっておりますので、それを推進しようという動きはいろいろなところで出てきておりますが、基本的には、スポーツは今お話ししたような遊びの一種であって、それは私ごとである。政治がそれに関与する場合には、そのスポーツの文化的な特性を最も尊重する形で関与しなければならない。そういうスタンスです。

 私が拝見しておりますスポーツ議員連盟の方々のスポーツ基本法の試案、一番最初に前文で、「スポーツは、世界共通の人類の文化である。」こううたっております。そしてその次に、スポーツは、心身の健全な発達、あるいは人格の養成、あるいは精神的な涵養のために行う個人または集団の運動である、身体活動であるというふうに定義しているわけです。ここに大きな矛盾があるということになります。

 世界共通の人類の文化であるということは、世界標準を満たすスポーツを意味しているわけです。これは、スポーツというのは、運動の楽しみあるいは喜びを基調にする、世界共通の人類の文化だと。このスポーツの文化的な特性を本当に尊重するときに、初めて、スポーツが持っているさまざまな可能性が花開くんだ。スポーツをやらされて、強制されて、本当に健康のためになるだろうか、あるいは心が豊かになるだろうか、あるいは本当の人格形成に寄与できるだろうか。ここに非常に大きなギャップがあります。

 簡単に言えば、欧米の国々では、スポーツがまずそういう文化だという土俵が共通理解にあって、それを尊重して、初めて、スポーツが有しているさまざまな可能性が現実化するという見方があります。

 ところが、残念ながら、私が今までに見聞きしております今回のスポーツ基本法の最初の前文の、つまり、この法律を定めることの意義、法律の存在理由になりますけれども、その非常に重要なところでこうした考え方がまだとられていない。スポーツは何々のために行われるものである、目線の形でいえば行わせる側の目線、行う側の目線ではありません。

 皆さんも、スポーツをなさるときにあれこれ言われて何かのためにやれということでは、恐らくそうエンジョイできないと思います。そこに一つ大きな問題点があるということですね。

 文化としてスポーツを尊重するということは、そのスポーツが持っている内在的価値といいます、行うこと自身の持っている価値、これを尊重することだと。

 例えば皆さんは、ベートーベンの音楽がすばらしいというのは、それが耳の役に立つからすばらしいというわけではない。その音楽がつくり出す世界そのものがすばらしいというふうに理解していると思います。あるいはピカソの絵がすばらしいというのは、ピカソの絵を見ていると近眼が治ったり視力がよくなったり、だからすばらしいというふうにはだれも解釈しませんね。文化として芸術が尊重されるのは、実は、そのこと自体の中に、喜びや感動や、そういうものを生み出す基本的な価値があるということであります。

 スポーツの一つの悲願は、スポーツが、芸術や学問、つまり、それが文化として尊重されるからこそその自由を大事にしなきゃいけない、そういうスポーツの文化的な地位についての社会的な確立なんですね。

 今回のスポーツ基本法を定めるということは、スポーツの価値を非常に高く評価していただいているので、その点については私も全く同感でございますが、ただ、その位置づけについて、今お話ししたような基本的な問題がある。

 皆さんが、子供が勇敢で雄々しく育つ、あるいは、人々がそれを通じて心を割って交流し合える、そういうスポーツが持っている豊かな可能性を本当に現実化しようと思うのであれば、その前提として、スポーツはまず自発的に運動を楽しむ、そういう文化であるということを認めていただきたいというふうに思うわけです。

 二番目のスポーツ団体の自立、これは、簡単に申し上げれば、今申し上げたスポーツの自由というのをどこが担保するか。これは国が担保するものでもないし、これは、要するにスポーツ愛好者相互のサポート体制、これで担保する。これがスポーツの伝統であります。ですから、非常に早くスポーツは国際組織をつくっております。

 多分、国際赤十字に次いで世界で最も強く、また、二番目に大きな力を持っている、NGOの代表的なものだというふうに思います。当時、まだNGOという言葉はありませんけれども、IOCを初め、FIFA、こういうものが政府を超えていかに国際連帯をしているか、そういう視点で見れば、これは本当に、国際赤十字と並ぶ、いわばNGOの最たるものであるというふうに考えていいわけです。これは同時に、スポーツの自由を守るための組織でもあるわけです。

 ここにちょっと幾つかのケースが書いてありますが、スポーツと政治についての近代スポーツの最初の大きな事件は、イギリスで起こりました。ピューリタン革命というのを昔高校生か中学生ぐらいのころにお習いになったと思います。清教徒革命と呼ばれていますね。この革命の発端は、ジェームズ一世という王様が、庶民にこういうスポーツを行いなさいという布告を出したことによります。

 つまり、サラセン人が攻めてくると大変だから、おまえたちはこういうスポーツを日曜日に一生懸命やりなさいという布告を出しました、スポーツの書といいますが。この書を出したことによって、当時、敬けんなる清教徒たちが、ピューリタンたちが、日曜日は安息日なのに、王がスポーツをやれと命令する、とんでもないと言って、それで反乱が起きました、スポーツの書を焼いて。これが実はピューリタン革命の発端だったわけです。

 このことがありますから、イギリスは非常にスポーツと政治の関係について慎重であり続けているわけです。ですから、今でもイギリスは、施策はありますが、スポーツに関する法律はありません。

 それは、そういう過去のケースがあって、同時に、さまざまな形でスポーツというのは潜在的な軍事力に結びつく可能性がある。

 幾つかのケースで申し上げれば、日本の場合ももちろんそうですね。あの一時期の不幸な時期には大政翼賛会の一角に名を連ねて、そして、体育やスポーツがすぐさま軍事教練に変わった歴史もあります。

 ここにちょっと書いておりますように、欧米のスポーツ団体が非常に高い社会的な地位を持ち、評価を受けている一つの背景には、第二次世界大戦の対ナチ闘争において非常に重要な働きをしたからです。それが、スポーツの自由ということを欧米の社会が担保する非常に大きな理由でもあります。

 そういうふうに考えていったときに、新しい法律の中においても、このスポーツの自由を担保するのはスポーツ団体である。そのスポーツ団体の自由、自治というのが国際的にそれを尊重することがうたわれていて、それは非常に重要なことだと、その点をぜひ忘れないでいただきたいというふうに思います。

 今回のエジプトの携帯を通じた大きな革命がございました。そのときに非常に大きな働きをしているのは、エジプトのサッカークラブでございます。それから、エジプトのサッカーのスターたちが民衆の先頭に立ってムバラク政権の打倒に動いた。これも非常に大きなことですね。

 また、今回の東日本の大震災に際しても、多くのアスリートが現地を訪問して、励まし、また、逆に励ましを受けたりしてきている。これも非常に大きな出来事ですが、それらはすべて、みずから進んでスポーツというものを持っていっているわけです。だれだれさん、そこへ行ってちょっと元気づけてこいというわけではないですよね。そこにやはりスポーツのすばらしさの原点があって、だから、自発的、自主的にスポーツが求められるとき、初めて、スポーツの持っている最良の部分が具体化するということです。

 これを、何々のために行いなさいという姿勢で法律をつくって、それは権利だよと言われても、実はちっともうれしくない。

 スポーツ基本法をもし制定するのであれば、そのあたりをぜひ御議論いただき、賢明な御判断をいただければ非常にありがたいというふうに思います。

 そして最後ですけれども、先ほどもちょっと申し上げましたが、国際的には、この現代社会のさまざまな状況の中で、スポーツが持っている可能性は非常に高く評価されております。それは、どの国も、文明が進んで先進化すればするほど医療費が並行して上がっていく、そういう時代ですから、もっと健康なライフスタイルをつくるということのために、スポーツは非常に重要だ。

 ただ、そこで非常に大きな違いがあるのは、例えばデンマークの人は、健康のためのスポーツというコンセプトは持っておりません。そうでなくて、あしたゴルフのコンペでいい成績を上げるために、きょうはちょっとワインを控えようか。つまり、スポーツのための健康なんです。

 これが、体育的定義と、スポーツとは一体何かということを本当に文化として尊重する立場からとらえたときの受けとめ方の違いになります。

 日本人は、元気年齢が終わってから死ぬまで、世界で一番長い時間を持っています。確かに平均余命は世界一ですけれども、元気余命が尽きて、それから介護を受けながら十年近い年月を過ごしてしまう。これはやはり、ライフスタイルの問題ですね。

 こういうことを考えたときに、欧米諸国でも、そこに書いてありますように、いわゆるグローバリゼーションの中でいろいろな人がいろいろな地域に入ってきて、そこで共同の生活を送っていく。それを可能にしていく一つのソフトパワーとして、ソーシャルインクルージョン、社会的包摂というふうに訳しておりますが、こういうことのソフトパワーとして非常にスポーツは有効だということも確認されております。ですから、さまざまなスポーツ振興の施策を欧米諸国もどんどんとってきております。

 ただし、その基盤にあるのは、先ほどから申し上げておりますように、スポーツは、みずから楽しみや喜びを求めて行う運動であって、それが本当に尊重されたときに、初めて、スポーツの持っている最良の価値が世の中に実現されるということなんですね。

 そのことをぜひ御記憶いただければ、私はきょうはお話を十分できたというふうに思います。

 ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。本村賢太郎君。

本村委員 民主党の本村賢太郎でございます。参考人の先生方、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、総合型地域スポーツクラブの小倉先生の方に数点質問させていただきます。

 平成十三年、小倉先生を中心にNPO法人のごうどスポーツクラブ設立から始まりまして、この総合型地域スポーツクラブが、自分たちの活動は自分たちでお金を出し合うという受益者負担の原則のもとスタートいたしまして、多世代の皆さんが多種目のスポーツをやるという大変すばらしい考えのもと、きょうお配りの資料からクラブの育成状況も、平成十六年度から見て、クラブ数も三千百十四、そして市町村におけるクラブ設置率も七一・四%、さらには、会員数が二十六万人から百三十四万人へとなっておりまして、スポーツ実施率も四五・三%で、地域から根差した活動が大きく全国に展開している点は、私も尊敬をしている点でございます。

 その中で、都道府県別に見ますと、例えば、秋田、兵庫、富山、長崎、島根、佐賀、大分県といった地域では市町村の設置率が一〇〇%ということでございますが、しかし、宮城県や奈良県といったところが、設置率が四〇%台という、活性化がまだまだこれから伸びなきゃいけない地域でございます。

 まず、この宮城県や奈良県を初めとした、まだ総合型地域スポーツクラブが育成されていない地域に関して、国の支援のあり方について御意見をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、松宮委員長代理着席〕

小倉参考人 御質問ありがとうございます。

 先生おっしゃっていただいたように、確かに格差が出てまいりました。

 今ほどお話がありましたように、四〇%台のところがあるわけでございますけれども、申し上げにくいところもありますが、やはり、理解が県の方においても不足しているのかなという面がございます。

 それと、それぞれの地域の特性もあろうかと思いますが、中山間地等々も含めますと、人口が非常に少ないところにクラブをつくっても維持ができるのかというような問題もたくさん抱えておりまして、そういったこともこういう数字にあらわれてきている面もございます。

 しかし、やはり一番大きな面においては、理解不足に伴う啓発活動、こういったものが滞っておると言った方がいいのかもしれません。

 以上です。よろしいですか。

本村委員 小倉先生が御出身の神戸町は、二万人という人口からスタートいたしまして大変活動も活発ということでありまして、私、人口によるものではなく、地域の認識というか、活動家がやはりいらっしゃるのが大きな原因なのかなと考えておりまして、国としてこうした地域に何か支援の方法とかがございましたら、教えていただきたいと思います。

小倉参考人 大変心強いお言葉をいただいたというふうに私は承っておりますけれども、やはり、教育委員会を初めとした行政サイドのそういった姿勢が一番大事でございます。

 国の方では非常にこの総合型地域スポーツクラブということに御理解を示していただいて、非常に啓発をしていただいておるわけですが、それが末端の方に、末端という言葉がいいのかどうかわかりませんが、地方の方に行くに従ってやはり少ない。薄いといいますか。

 したがって、クラブができますと、クラブの方がやはりいろいろな形で勉強をしてまいります。そうしますと、なぜか行政にとりますと煙たい存在になっていくようなケースも見受けられておりますし、そういったところは、お互いに連携し合えるムードづくりをしていただけるということがやはり重要ではないのかなというふうに思っております。

 余り私どもも行政にプレッシャーをかけるというスタンスはとりたくございませんので、そういう連携ができるムードをつくっていただければいいのではないかなというふうに思っております。

本村委員 この総合型地域スポーツクラブのおかげで、例えば人づくりとか地域の町づくり、先ほど先生からもお話があった学校との連携など、フェース・ツー・フェースで地域の皆さんの顔が見られるという大変大きな特徴があると思っておりますし、私の出身である相模原市も、この総合型地域スポーツクラブで子供たちから先輩方まで生き生きと皆さん地域の活性化に努められている点で、私も、このスポーツクラブをこれからしっかりと先生方とともにまた応援をしていきたいと思っております。

 昨年、私どもがスポーツ立国戦略を打ち出させていただきましたが、これまではトップアスリート中心にトップダウン方式でありましたけれども、私どもが打ち出したスポーツ立国戦略は、ボトムアップ、先生方の地域スポーツクラブを初めとした地域からトップアスリートまで、ボトムアップ型の考え方であります。こういった点も昨年の大変大きな特徴であるのは、地域スポーツクラブが活動してきた実績のおかげでこうした考え方を私たちがとれたのかなということも感じておるわけであります。

 拠点クラブを十年間で三百つくるという目標がございます。今年度は九拠点つくるということでありまして、今年度の予算で一億七千万円、各拠点地域にトップアスリートを配置して拠点づくりをしていくということでありますが、期待と課題とあると思います。国はこれからどういう支援をしていったらよいか、御意見をいただきたいと思います。

小倉参考人 このスポーツ立国戦略というものは、私ども、現場のスポーツそれからこういうクラブを担当しておる者としては、大変画期的な内容であるというふうに私は受けとめております。

 今、地域において総合型地域スポーツクラブがどういう位置づけになってきているかなといいますと、やはり、スポーツもさることながら、地域づくりにも大変大きな貢献ができてきておるというふうにも感じております。今ほどお話がございましたように、学校との連携、こういったことも含めて、先ほど成果の中でも少し申し上げましたが、私ども、クラブをつくって、タブー的なところもかなりあったわけです。このクラブをつくることに対しては、非常な抵抗勢力もたくさんございました。

 ちなみに、ごうどスポーツクラブの名前をお出しいただきましたので申し上げますと、このごうどスポーツクラブをつくる十三年度の前、二年ほどかけてこのクラブに立ち向かったわけですけれども、振り返りますと、年間に七十数回の説明会等々も設けたりして、やはり、地域にそれだけの理解を得ながらつくってまいったわけでございます。

 このスポーツ立国戦略を私どもは本当に画期的ととらえておりますのは、これは私だけじゃなくて、全国の総合型地域スポーツクラブの皆さんも同じように受けとめております。この私どもの位置づけが立国戦略の中では明確にうたっていただいておりますし、大変喜んでおります。

 その意味で、これの実行について強く推進をしていただければ大変ありがたいというふうに思っておりますし、というのは、拠点クラブ構想についても、これからはやはり、量的拡大も当然でございますけれども、質的向上ということになってまいりますと、クラブがクラブを育てるというスタンスが重要になってまいります。

 ある意味では、クラブはできたもののマネジメントができていないというようなクラブもやはりあるわけですから、そこは、クラブがクラブをこれからは育てていこうというお互いの思いでございます。

本村委員 次に、河野先生の方に御質問させていただきます。

 日本オリンピック委員会の理事でありますし、また、スポーツ医学界でも大変活躍をされているということも承知をしております。先生のお力で、プレーヤーズファースト、選手を中心とした考え方のもと、今年度予算も、これまでの予算から一・五倍増の二十二億円のマルチ・サポート事業等々もございまして、先ほど先生からお話があった、アンチ・ドーピング機構の会長もされているということでありまして、大変見識も深く、私ども御指導いただいているわけでございますが、先生にはちょっと、ガバナンスの強化について御質問させていただきたいと思っております。

 本来、スポーツ団体や連盟のガバナンスのあり方に関しては、政治に左右されてはならないというのが私の考え方であるんですが、ただ、今回のように大相撲協会、残念ながら、ドーピングや八百長、暴力団との癒着、野球賭博といった問題が山積している中で、今回も技能審査という形で大相撲が実施されておりますけれども、例えば、国のかかわり方を、こうした大相撲協会のように、期待をされるケースもございます。

 改めてお聞きしますが、国のガバナンス強化のかかわり方についてどうお考えであるか、御意見をお聞きしたいと思います。

河野参考人 御質問ありがとうございます。

 これまでの話の中にも出てまいりましたけれども、スポーツと政治については、いろいろな考え方があります。一つは、やはり距離を置くべきだという考えがございますが、実際には、関与の仕方の問題についてはいろいろな立ちぶりがございますので、とはいえ、スポーツと政治を切り離すことは僕はできないだろうというふうに思っています。

 今のガバナンスの問題でございますけれども、もちろんスポーツに関しては、先ほどの佐伯先生のお話もありましたけれども、自分から動き出して動いてきたことが多いものですから、時に、そのスポーツが公共財となったということについての認識がややおくれる場合もあります。

 そういった場合には、ある意味でいえば、やはり第三者がそこについては指摘をする、第三者が、何らかの動きが出たときに、物差しでもってここまで来たなということをしっかりと評価するということは、時と場合によってはあり得べしかなというふうに思っております。

 ただ、それは決して無理やり押さえつけるといったようなものではなくて、人間ですので、やはり当事者ではわからない部分というものがどうしても存在する。そうしたヒューマンエラー的なものを正していくためには、知恵を出して、政府に限らず第三者が機能する、これがやはり、ガバナンスを保っていく上では重要ではないかなというふうに考えております。

本村委員 次に、参考人の了徳寺先生に御質問させていただきます。

 先生の参考資料等々を読ませていただいて、鹿児島から出てこられて川鉄の柔道部の監督等々をされているということも承知をしておりますし、また、公私ともに日ごろ大変お世話になっております。

 私も柔道を十数年やってまいりまして、選手としては強くなかったんですが、ただ、私、幼少時代から母子家庭という環境で育ちまして、母から、強い心とたくましいハートをはぐくむために、スポーツを通じて、特に柔道を通じて強くなれ、大きくなれと言って柔道に最初に行かされた経緯があるんです。

 それで、先生の、世界の舞台で日の丸を上げて国民に勇気と誇りを回復させる、日本人として私も大変誇らしいと思いますし、また、こうした考えを国民全体が持っていただきたいなと、先生の考え方に大変共鳴をしているわけでございます。

 先ほど、特急券のお話もございました。すべての子供たちから、そして先輩方が、これから日本の中で夢を持って頑張ってもらいたいと思いますので、そういった意味では、先生のような教育の指導者がどんどん全国各地に配置されることを願っているわけであります。

 先ほど、大変すばらしい戦歴のお話もございましたし、また、世界選手権の一人の無冠の方のお話も大変感銘を受けたわけでありますが、二〇〇八年の北京オリンピックのとき、残念ながら、了徳寺学園の選手がなかなか厳しい結果でありました。その中で先生は大変悔しい思いをされたというわけであります。

 ただ、負けて覚える柔道、先生のお言葉の中に、こういうときこそ、選手を責めるのではなく許してあげるのが教育だという理念、思想があるということも承知をしておりますし、先ほどの世界選手権の、無に返れ、そして、その選手の方がことしのフランス大会ですか、世界選手権の切符を再度持たれたというところは、また頑張っていただきたいなと思っているわけであります。

 先ほど先生が示された、国がこれから教育の現場でこういった選手たちを支援するという方向性も私たちの今後の課題だと強く認識しておりますが、まず先生に、武士道の魂、教育といった点で、これから日本人のスポーツ文化等々で、私たちが子や孫の世代に誇れる日本をつくっていくのに、先生の考え方を原点にしながらでありますけれども、どうした指導方法がこれからスポーツ文化の世界に求められているのか、もう一度お話を聞きたいと思います。

了徳寺参考人 ありがとうございます。

 過分な御評価をいただきましたけれども、先生方も御承知のように、平成二十四年度から中学校における武道の必修化が実施されます。柔道の普及、発展というのは私の使命だと思っておりますけれども、これは、私たちに本当にありがたい展開だというふうにとらえております。

 ただ、現場の声として、私も今、資料にもございますように、人的貢献の中で、千葉県の柔道連盟の会長を拝命しております。中体連、高体連の先生方と親しく意見交換する機会がふえてまいりましたけれども、中学校の現場では、武道の専門家が非常に少ない、困っているという声が本当の声でありまして、こういった選手たちを中学校の教員に多数採用していただいて、柔道精神、国家観にもとらえられるような精力善用、自他共栄というこの精神を広く広めることが、日本の士気を高め、また、世界の平和に貢献できると確信しております。

 よろしくお願いいたします。

本村委員 もう時間ですので、まとめにさせていただきます。

 今、先生からお話しいただいた、二十四年度からの中学校の新学習指導要領の改訂によって武道とダンスも必修化されるわけでありますけれども、その中で、やはり指導者の課題というのは、大変これから大きな問題だと思っています。私も公立の中学、高校の柔道部出身でありますが、指導者がいらっしゃらない関係で、残念ながらもう廃部になりました。

 ですから、先生から今いただいた課題というものは大変大きな課題だと思っておりますので、しっかりととらえて、また先生からの御意見をいただきながら、御指導いただきながら、私どもも、後世の子供たちに誇れる日本を発信すべく頑張ってまいりたいと思います。

 私の質問を終わりにします。

松宮委員長代理 次に、遠藤利明君。

遠藤(利)委員 自由民主党の遠藤利明です。

 きょうは、こうして四名の先生方に、大変急な御案内にもかかわらずおいでいただきました。まずもってお礼を申し上げたいと思います。

 二十分しかありませんので、簡潔に少しずつお伺いしたいと思いますが、まず小倉参考人にお伺いいたします。

 実は、私は、今から四十年近く前、オーストラリアにラグビーの遠征に行きました。まずすごかったのは、体育施設。オーストラリアという国は、広々としていますからそうですが、ちょっとした公園にラグビーやサッカーのコートが、それも芝生で二面か三面ぐらいある。そしてテニスコートがあって、それを、朝、日本みたいに順番をとったりしないで、自由に皆さん方がスポーツを楽しんでいる。そして、メルボルン大学に行きましたら、ラグビー場だけで十二面ありました。

 実は、びっくりして帰ってきたんですが、もう一つ、スポーツクラブというのがしっかりしていたなと。学校スポーツではなくて、学校体育ではなくて、地域のスポーツクラブがしっかりしていた。

 そこでお伺いしたいんですが、私がそのときに大変印象深かったのは、そこで一つのスポーツを一人がするんじゃなくて、子供のうちからいろいろなスポーツをしていって、そして、その中で、あなたはこのスポーツが得意ですねといって、そのクラブの代表になっていく。これがオーストラリアのスポーツで、日本は、野球というと野球、サッカーというとサッカー、これしか子供たちにさせないんですが、そうした多様なスポーツをさせた中からトータルして、その地域の選手になったり、それがまた地域につながっていくのかと思いますが、日本もそういう仕組みでそうした選手づくりをしなきゃならないと思ってきました。

 最近のスポーツクラブを見ていますと、確かに総合型というんですが、それは、一つの選手は一つのスポーツをやっている、それが幾つかの種目があって、何か総合型と言われているような気がするんですが、先生から見て、その総合型というのはどういう概念でおっしゃられるのか。

 それからもう一つは、今、質的向上、クラブがクラブを育てるとありましたが、スポーツクラブの質的向上というのは何だろうか。

 この二点、まずお伺いしたいと思います。

小倉参考人 ありがとうございます。

 まず、やはり地域のスポーツで問題になっているのは、先生がおっしゃったように、先生方にお聞きしますと、早期専門化という言葉があるようでございますけれども、端的に、少年団なんかを眺めてみますと、もう小学校の低学年のうちから一つの種目を選択して、そこにかかわっているということでございます。ここには非常に大きな問題もやはり抱えてきておるのは周知のとおりだというふうに思っております。

 総合型、確かに先生のおっしゃるように、一つ一つの種目の集まりが総合型というような形にもなっておりますが、私どもは、まずスポーツをする環境をつくろうということで、いつでも、どこでも、だれでも、いつまでもというのが一つございます。

 それから、今までのものを横断型に、もっともっと、縦にも横にもしていこうということで、例えば少年団の子供に対しても、異種目体験をしましょうというような日を設けたりとか、そういった活動もしておるクラブもたくさんございます。

 そして、総合型スポーツクラブというのは会費制でございますので、会費プラスそれぞれの教室の参加費を払えば、どなたでもほかの種目も体験できる、受講できるというような、そういう場が常に存在するということでございます。

 そういった意味においては、一つのクラブの例を挙げますと、先ほどの先生のお話のように、非常にスポーツを楽しもうとしていらっしゃる方は、三つも四つも教室に入って活動をしていただけているというようなことでございます。やはり、総合型地域スポーツクラブができたことによってそういう場ができたということがあるというふうに思います。

 それから、質的向上でございますけれども、やはり公共性を担うクラブ、この運営、経営というのは非常に難しい部分がございます。ややもすると、ボランティアというか、日本的な考え方の延長線上でこれにかかわってしまって、利益を上げなければクラブの運営もできないわけでございます。しかし、公共性、公益性という面で考えていきますと、その利益は、次の年のいろいろな事業にそれを使って会員に還元をしていく、それから住民に還元をしていくというスタンスをとらなければなりませんが、こういったマネジメントにまだふなれな部分が非常にございます。

 こういったところをいろいろと皆さんと研究をしながら、さらによりよいものにしていきたいというのが私どもの願いでございます。

遠藤(利)委員 次に、河野参考人にお伺いいたします。

 先ほど来、地域スポーツとそれから競技スポーツ、あるいはコミュニティースポーツとそれからトップスポーツという議論がありました。

 実は、これもこの前のこの委員会でもいろいろ議論をさせていただいたんですが、ややもすると、何か相対立しているような概念をずっとそれぞれ持っていて、トップスポーツという話を出すと、いやいや、地域スポーツが大事だと。そして、まずこういうことをしないと普及しないよ、普及しなければ優秀な選手が出てこないよ、まずここから話が出てきます。

 逆に、地域スポーツと言っていると、いやいや、そう言ってもすそ野を広げるにはなかなか大変だ、まずはこうした強化スポーツをしっかりやって、あこがれを持って、あるいはそうした人たちの真摯な姿を見て取り組んでいこう、そうやってすそ野が広がるんだというふうな、それが何か相対立しているような概念でいつもとらえられておりました。

 それが今回、立国戦略の中でも、実は私、最初に、文部副大臣のときにスポーツ立国という言葉をつくったんですが、その中から、これは対立じゃないですよ、お互いに補完作用があるんですよ、ただ、理想論と現実論があるんですよねと。

 どっちを国の施策として先にまず取り組むか、これは両方大事なんですけれども、どっちと言うとまた競争になりますが、河野先生、普及と強化ということについてどういうふうに考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。

河野参考人 御質問ありがとうございます。

 普及と強化に関しましては、競技団体はいつもそのことを念頭に置きながら活動しております。

 おっしゃられたように、対立するものでは全くないと思います。ただ、今、競技団体の方が多くが考えているのは、やはりすそ野も広くしたい、そして高みも見たいといったときに、効率よくやるためには、我々は活火山型と申し上げていますけれども、やはり高みを高くするという方策の方が時間的に、経費的に早いのではないかというふうに考えて申し上げていることが多いんです。

 特に、我々が理想としているのは、富士山だということが言われます。そしてしばしば、普及のことを強調される方は、富士山のすそ野を見てみろ、あれだけ広がっているから高みがあるんだぞ、こういう話があります。しかし我々は、富士山も昔は活火山でございました、したがって高みがあったので広がりました、こういうことをお答えしているんですが。

 今の御質問にお答えするとすると、やはり対立するものではないことを知恵を働かせていかないと、非常に無駄が多いのではないかなというふうに思っております。

 そういった視点で、今回、文部科学省の中で、企画・体育課と生涯スポーツ課というものを廃して、生涯スポーツ課をスポーツ振興という名前に改められたのは、極めて知恵のあることかなというふうに思っております。

遠藤(利)委員 私も、全く同じ考えと言うと変ですが、理想としては、すそ野がまず広くなって、高みをきわめるのが理想だな。しかし、現実論として、ではまずどうやったらすそ野を広げるかといったら、やはり高みをきわめて、こぼれてこなければならぬ。現実論として国の施策として取り組むときに、まずそうしたあこがれを持ってもらう。そういうことが大事なのかなと今思ったものですから、改めて先生に質問をさせていただきました。

 もう一つお伺いいたしますが、先ほど来、これは佐伯先生もそうですが、スポーツを通じてという言葉があります。

 そうしたときに、日本という国、国内のスポーツももちろん大きな功績がありますが、国際的に交流をし、あるいは貢献をする。そうすると、もっと人材育成が必要ですねということになるんですが、なかなか、IOC委員もほぼゼロになったり、いろいろな国際レベルのスポーツ団体に日本の、日本人にこだわっていいのかどうか知りませんが、少なくとも日本人のそうした人が参加できていない。

 あるいは、そうしたセカンドキャリアを生かしたい、さっき了徳寺先生のお話がありましたが、では、そういう人たちをどうやってそういうところに参画してもらうか。こうした体制の整備が、あるいは国のシステムがおくれているんだろうなという気がいたします。

 そこで、情報の共有も含めてそうですが、どういうふうにしてこうした国際的な交流あるいは貢献、そのための人材の育成とか情報の共有等ができるか、先生のお考えを教えていただきたいと思います。

河野参考人 ありがとうございます。

 そういった意味で、先ほど私のプレゼンテーションの一番最後に書かせていただきましたけれども、やはり国際的にネットワークに入っていくためには、なかなか個人の力だけで入っていくのは難しい時代に入っているだろうと僕は思います。したがいまして、競技団体だけでも難しい。特に、先ほど佐伯先生のお話、欧米というくくりがありましたけれども、欧米の中でも、やはりアングロサクソン系とケルト系はぶつかっております。

 そういった中で人材を育成していくためには、やはり法的もしくは財政的な裏づけを持って人を外に出していく、そういった仕組みをやはり早く確立していただくことが極めて重要かなと思っております。そのための人材は多分かなりいるんだろうと思っています。

 そういった中で多分重要なことは、どこにどういうチャンスがあるのか、どういう機会があるのかということを、情報の共有をする必要がある。そのためには、今、日本の中にも情報があるんですが、ある場合には競技団体だけにあったり、ある場合には政府だけにあったり、ある場合には一つの競技団体だけにあったりというようなことがありますので、国としてやるべきいわば到達点を明確にした上で、そういったコーディネーション機能を持つような組織が必要なのではないかなというふうに思っております。

遠藤(利)委員 今先生からいろいろお話しいただいたんですけれども、これから日本のスポーツ体制をそういうときにどういうふうにつくっていくか。まさに基本法の中でもしっかりうたっていかなきゃなりませんが、なおまた、そういう意味でも御指導いただきたいと思います。

 ちょっと後ろに飛ばさせていただいて、佐伯先生に、時間もありますのでお伺いいたしますが、実は先ほどのスポーツ基本法を議論しましたときに、幾つか、今でも実は議論をする中ですっきりしないというところがいっぱいあります。

 そこでまず、先ほど、スポーツは楽しみですよ、しかし、国の関与というのは、間合いといいますか、どこまでやるかというふうなことがあるんですよと。

 実は私は、最近の企業スポーツがなかなか低迷をしている、これは経済情勢もありますが。これまでは、個人とか企業がしっかり頑張ってきたから日本のスポーツは割合振興してこられた。残念ながら、なかなかそういう現状じゃないので、まさに国の責務として取り組むべきだ、施策として取り組むべきだというふうな思いをしているんですが、先生のお考えを詳しく聞かせていただきたい。

 もう一点、その中で、スポーツとはといろいろ議論するんですが、先ほど議論もありましたが、大相撲はスポーツなのかどうか。そして、スポーツ基本法とするものの、国の施策の中になじむのかどうか。

 どちらかというと、私の感覚からいえば、楽しみという感覚よりも、もともと興行という形で大相撲というのは出てきた。そういう意味では、まさに日本の伝統の文化なんだと思います。それをどこまでスポーツという形で考えていけるか。これは場合によっては、プロ野球、プロレスにも相通ずるところがあるかもしれませんが、それについてお教えいただきたい。

 第三点は、する、見る、支える、これは全部スポーツですよと我々は今回の基本法の議論の中でしてきたんですが、ベースとして楽しみや喜びだとしたときに、どこまでがスポーツなのか。

 その三点についてお伺いしたいと思います。

佐伯参考人 スポーツは、先ほど申し上げたように、基本的に私事ではあるが、非常に高い公益性を発揮する。例えば企業スポーツは、一面では、歴史的に見れば、企業の広告宣伝として使われてきました。しかし同時に、多くの人がそれを楽しみ、応援し、そういうところがございますよね。その公益性についてはできる限り社会的に支援をしようということは、これはそう難しくない国民的合意になるというふうに思います。

 それから、二番目の御質問ですけれども、ちょっと……(遠藤(利)委員「興行、大相撲」と呼ぶ)大相撲ですね。

 先ほどちょっと先生が、スポーツをどうとらえるかという一つの問題ですけれども、例えば、プロのアスリートは仕事としてやっております。でも、それは何のためかといったら、大勢の観客をエンジョイさせるためですよね。そういう意味で、スポーツが発展すれば、当然文化的な発展は専門家というものを必要とします。でも、その専門家がなぜ必要かといったら、それは、スポーツでいえば、大勢の人にスポーツの楽しみや喜び、感動というものを提供するということであって、だから決して、運動の楽しみを軽視する結果にはならないわけです。

 大相撲について言いますと、これを決めるのは大相撲。儀礼としてやるのか、宗教儀礼のパフォーマンスを興行として見せる、それでやっていくのか。それとも、スポーツとして競技を、フェアプレーに基づく真剣な競技を見せて、そして人々に感動と楽しみを与えるものとするか。これは、基本的には相撲協会が決定しなきゃいけないことですね。

 前者であれば、それはまた違った取り扱いになるし、後者であれば、当然、スポーツというフレームの中でスポーツ団体としてとるべき行動があり、また、文部科学省には、現状ではそれを監督指導する責任があるというふうに考えますが、その決定は、もちろん、相撲協会だって社会がどう見ているかということを無視して決めるわけではありません。

 私は、そういう全般的なことで考えれば、やはり人々はあれを格闘技のスポーツであるというふうに理解していると思いますので、その筋できちんとした整理をすることが協会の責務でもあるし、また、文部科学省の指導方針であろうというふうに思います。

 それから、三つ目もございましたね。(遠藤(利)委員「する、見る、支える、どこまでがスポーツか」と呼ぶ)

 このコンセプトをつくり出したのは実は私なんですけれども、それは、文部科学省の「みるスポーツ」の振興に関する研究会というのがございまして、そこで初めて、見るスポーツ、スポーツというのはすることだけじゃなくて見るスポーツというのもある、それから支えるのもある、もっと広げれば、読むのもありますし、それから表現するのもあります。スポーツ写真もあれば、スポーツの絵画もあります。

 なぜこういうふうに使うようになるかというと、結局、生涯スポーツの時代になってきているわけですね。激しい身体活動そのものを、肉体のエネルギーを燃やして、そしてその喜びを味わうというのがやはり基本的には青少年期に非常に特徴的なものです。

 だけれども、八十を過ぎて、スポーツをエンジョイしよう、そうしたら、自分が経験してきたスポーツの経験を例えば知的なエッセイにまとめてみようとか、あるいは、好きなスポーツの写真を撮ってその感動をまた違う視点から分かち合うとか、こういう形で、スポーツという資源を人生を豊かにするためにいろいろな使い方が可能である。その中核にあるのはスポーツの喜びであり、楽しみである。

 そのフレームでいえば、行うことだけがスポーツだよ、汗をかくことだけがスポーツだよというのではなくて、やはり生涯学習、生涯スポーツの時代に向けて、このスポーツを、社会資源、文化資源として、いかに暮らしを豊かにし、人生を明るくする上で活用するかということだと思います。

 以上です。

遠藤(利)委員 時間もありますので、最後に河野先生にお伺いいたします。

 今、JOCの理事をされていらっしゃいますが、日本のスポーツ強化の課題、まあ、これはそんな数分で答えられるような話じゃないと思いますが、今一番何をしなきゃならないか、お考えがあれば、最後に教えていただきたいと思います。

河野参考人 一番しなければいけないのは、多分、チーム・ジャパンとして総体として取り組むことだろうと思います。

 そのチーム・ジャパンというのは、決してスポーツ競技団体だけではなくて、先ほども御質問がありましたけれども、国も含めて。したがって、コーディネーション機能の中に、国の方にはぜひスポーツ庁をお願いしたい。それが多分、勝っていくためには、シンボリックなものも含めて必要だろうというふうに考えております。

遠藤(利)委員 どうもありがとうございました。これで終わります。

松宮委員長代理 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之です。

 四人の参考人の先生方には、それぞれのお立場から貴重な御意見をいただきまして、本当に勉強になりました。ありがとうございました。

 一番親しくさせていただいております了徳寺先生に先にちょっと御質問したいんですが、先ほど、先生の提言の中でセカンドキャリアのお話とかがありましたけれども、先生の学園では、本来、筑波大とか、大学のレベルでかなりハイレベルの競技者をやっていて、ではその後どこに行くんだと。

 普通でしたら、これはまたいろいろな実業団でやられて、全国レベルあるいは世界レベルの競技者として育っていきますけれども、なかなかそういう場がなくて、先生の学園で職員として引き受けて、そういう中でアスリートとしても活動していってもらうという形をこの十年近くとられてきたんだと思うんです。

 私立大学あるいは私立学園の経営者として、そういうようなことをやっていく中での御苦労とか困難、例えば、文科省がもう少しこういうふうにしてくれたらやりやすいとか、政府からこういう援助があったらいいのにというような点はございますでしょうか。

了徳寺参考人 ありがとうございます。

 今までの選手たちのセカンドキャリアがどういうふうに向いていたかと申し上げますと、ほとんどが高校の教員とかに採用されて、柔道も教えながら保健体育を教えたりとか、そういう選手が一番多いと思います。そのような立場に資するような力を、選手活動をしながら大学院に通わせたりという援助をしてまいりました。現在の選手たちも、ほとんどがそれぞれの大学の大学院、あるいは保健体育学部を出ていない選手たちは、私どもの大学でまた、保健体育の免許を選手活動をしながら取らせているというふうな実情がございます。

 国に対してどのようなという御質問がありましたけれども、私たちは、柔道の精神上、自主自立というのが私たちの基本的な考えでございまして、他にそういうことを今まで一切求めてこず、私たちの力で何とかしていこうよというのが私たちの考えでありました。

 もしお願いできるとすれば、優秀な成績を上げた選手たちを、先ほど申し上げていますように、具体的にまだ提案はできませんけれども、何らかの点数化を図って、そして、そのある一定の点数をとった方々は優先的に公立の中学校、高校の教員に採用されたら、選手たちはまた非常に安心して競技活動が続けられるなというふうに考えます。

富田委員 続けてお尋ねしますけれども、今のような提案を国会の方でも真摯に受けとめてこれから具体的に動いていきたいと思うんですが、先生は大学も運営され、また学園もやられるということで、特に、私は千葉県選出ですので、浦安に大学をつくられて、浦安は新しい大学が幾つか来ました。

 地域との連携ということもかなりやられていて、そういう中で、きょう資料をいただきましたら、大学の道場を子供たちに開放して柔道クラブをやり出したと。これは私も知らなかったんですが、今後の後継者を育てていくという意味でも大事ですし、地域との連携という意味でも、総合型クラブと同じような意義を持ってくると思うんですが、そのあたりについてはどんなお考えで今やられているんでしょうか。

了徳寺参考人 大学の中で、了徳寺キッズ柔道クラブというクラブを運営させていただいております。月ごとの、クラブ費用を幾ら徴収しているか承知しておりませんけれども、例えば夏の合宿の費用とか、そういったときのために会費を集めているようでございます。

 私たちのクラブの特徴としては、やんちゃな子たちがたくさん入ってきますけれども、やめない、どんどんふえ続けているというような状況でございまして、こういったやんちゃな子たちに柔道の精神である礼節の大事さとかそういったことを教えておりまして、父兄方も大変によい理解をいただいております。

 こういった少年クラブとか、あるいは道場を支援して発展させることが柔道の普及発展に非常に大事だというのは認識しておりまして、私ども千葉県では、これからそれをどういうふうに運営、展開していくかということで、今みんなで協議しているところでございます。

 特に、トップアスリートを育てて、彼らがその選手たちにあこがれて、柔道をずっと続けていく。我田引水になりますけれども、柔道の中で、トップアスリートたちが何でトップ選手になり得るかという問題がありますけれども、決して競技だけではなくて、最終的に最高点に達するのに必要なものは、やはり心を練ることだということに思いが至ります。必ず、選手たちが成長して金メダリストに届くためには、競技力、体力とかあるいはわざの研磨だけじゃなくて、一番求められるのは、いかに人間を練るか、練れるかということだと認識しております。

 以上です。

富田委員 ありがとうございました。

 次に、河野参考人、河野先生にお尋ねしたいんですが、おととい水曜日、この委員会で鈴木副大臣にちょっと尋ねました。

 実は、去年の十二月、今いなくなっちゃいましたけれども、遠藤先生と一緒にチューリヒに、FIFAの理事会に行きまして、残念ながら、二〇二二年のサッカーワールドカップは落選してしまいました。

 河野先生は二〇一六年のオリンピック招致の事務総長もやられたと思うんですが、FIFAのときも、事前のいろいろな調査なんかで、施設が足りない、政府保証が不十分だ、また国民的なコンセンサスが本当にあるんだろうかというような課題があって、それでもチューリヒに乗り込んで、プレゼンテーションで何とかできないかということでやったんですが、残念ながらだめでした。

 そのときに、おとといもお話ししたんですが、岡野俊一郎先生からいろいろお話を聞いて、やはり大きな大会を招致するための前段階が日本は下手くそだと。小さな大会を全部、ペイしなくてもきちんと引き受ける、地味な理事会なんかもきちんとやっていく、そういったことの積み重ねがないとなかなか大きな大会の招致はできないんだというふうに岡野先生から言われたことを御紹介させていただいたんですが、二〇一六年のオリンピック招致が残念ながら負けたというその敗因は、今先生はどのように分析されているんでしょうか。

 先ほど遠藤先生の質問に対して、オール・ジャパンが大事だ、チーム・ジャパンが大事だと。もうそのとおりだと思うんですが、それを含めて今どんなふうなお考えか、ちょっとお聞かせ願えればと思います。

河野参考人 ありがとうございました。

 二〇一六年の、言えば敗因をどう語るかというのは大変難しいところでございますけれども、招致、レースとあえて言いますが、レースは相手あってのことですので、基本的に前回の場合は、リオデジャネイロがいろいろな意味で、途中のプロセス、紆余曲折ございましたけれども、やはり非常に強い力を持ったコミットを行ったということが一番大きいのかなというふうに思っています。

 ただ、招致をする過程で非常に重要なことは、岡野さんがおっしゃられたように、やはり日ごろの積み重ね。その積み重ねも、どこに積み重ねるかというと二つありまして、一つは、先ほどちょっと申し上げましたけれども、国際的なネットワークにいかにいろいろな角度から入っていくか、これは極めて重要なように思います。やはり最後は、投票をするのは、例えばオリンピックの場合ですと、今は百十名ですか、その中の、言えば半分をとればいいので、その投票をする人間としての方にどういうふうに訴えられるかということが非常に強いと思います。

 その場合に、投票する方も相手を見る必要があります。FIFAの場合も多分そうだと思いますが、これは非常に多様でございますので、一つの価値観だけで訴えてもやはりなかなか難しい。そのためには、総合的に見て、それぞれの投票権を持っておられる方にしっかりと話ができる必要がある。そのためには、こんにちはから入ったのではなくて、もう既に、やあやあから入るような日ごろの構築が必要だろう。

 そのためには、急に名刺を持ってあいさつに行ってもだめで、やはり日ごろ活動をし、その活動の中には、今先生が御指摘になったような、小さな大会であっても引き受ける、それから、国際連盟の中に入って、日本語的に言えばぞうきんがけもしながら、しっかりと国際連盟の仕事をしていく。

 私ごとで恐縮ですけれども、私は今国際連盟の理事をやっておりますが、もうかれこれ十五年以上やっております。したがって、国際連盟の事務局に行けば、おい、ちょっとコピーをとってというのは頼むこともできるし、あるいは、新しく来た人にも頑張れよと言うこともできるし、そういった中で、ラグビーのワールドカップに関しては、二〇一一年はプレゼンテーションをして負けました。今回、二〇一九年をとることができたのは、プレゼンテーションをほとんどしないで勝つことができました。それはやはり、ネットワークの中に入ったからだというふうに思います。

 オリンピックに戻りますけれども、オリンピックの場合もやはりそういうことが必要だと同時に、国内の、今盛り上げの話を最後に触れていただきましたけれども、残念だったのは、国がオリンピックを招致するというときに、どうしても、ワンパターンと言っては申しわけないんですけれども、国威発揚ではないかというような言葉が出てまいりましたが、ある国はそうであるかもしれませんが、日本はもうそういう国ではございません。

 やはりカナダがそうであったように、オリンピック招致、あるいはFIFAの招致というのは、国の品格を上げていく、プレゼンスを上げていくということに非常に近いところがある。そういった意味で、僕は国を挙げてやる価値があるものだろうと。つまり、スポーツだけではない広がりのところに目を向けないと、ほかの国はもう既にそういう総合力を使ってくる。

 少し長くなりますけれども、オリンピックの場合は必ず、レセプションが開かれると、例えば英国の場合には毎日、きょうは財務省、きょうは地域産業、きょうは外交、きょうは文化と、すべてオリンピックを機会にして、大きく総合的にとらえます。前回、もう少し我々が訴えることができたとすれば、ここで勝ったら日本は七年間主役になれるんだぞ、そうすれば観光庁が今目指しているものももっといっただろう、こういった国内のつながりが、あるいはコーディネーションが必要で、ぜひそこに関しては、縦割りでない、横のつながりができればというふうに思っております。

    〔松宮委員長代理退席、委員長着席〕

富田委員 ありがとうございました。オリンピック招致に関しては、先日の委員会で民主党、自民党の先生方から、次のオリンピックを目指すべきだというような質問も出ておりましたので、今の先生の御意見を参考に、国会の方でもしっかり議論していきたいというふうに思います。

 次に、小倉参考人にお尋ねします。

 先ほど、最後の要望ということで、住民が主体的に運営する総合型地域スポーツクラブの育成について、スポーツ基本法に明記願いますというようなお話がございました。

 今、各党で最後の案を練っているんですが、スポーツ基本法の中に、前文でも地域のスポーツということを触れておりますし、第一条「目的」の次に、第二条「基本理念」を幾つか書いているんですが、その中の三番目に、「スポーツは、人々がその居住する地域において、主体的に協働することにより身近に親しむことができるようにするとともに、これを通じて、当該地域における全ての世代の人々の交流が促進され、かつ、地域間の交流の基盤が形成されるものとなるよう推進されなければならない。」と。

 このように一項目置かせていただきまして、第二十一条で、「地域におけるスポーツの振興のための事業への支援等」というふうに題しまして、「国及び地方公共団体は、国民がその興味又は関心に応じて身近にスポーツに親しむことができるよう、住民が主体的に運営するスポーツ団体(以下「地域スポーツクラブ」という。)が行う地域におけるスポーツの振興のための事業への支援、住民が安全かつ効果的にスポーツを行うための指導者等の配置、住民が快適にスポーツを行い相互に交流を深めることができるスポーツ施設の整備その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」というふうに、総合型という言葉は出しませんでしたけれども、これはかなり議論しまして、地域スポーツクラブで読み込めるんじゃないかということで、このように書かせていただこうと思っているんですが、こういう書きぶり等についてはどうでしょうか、御意見をいただければ。

小倉参考人 ありがとうございます。

 私も昨日読ませていただきまして、大変私どもの願いを聞き入れていただけているのかなというふうに思っておりますし、冒頭に申し上げましたように、ここで言う地域スポーツクラブはまさしく総合型地域スポーツクラブだろうというふうに私どもはとらえておりますので、そういった意味において、この文言については大変感謝をしておるところでございます。

 なぜここに明記をしてほしいというふうに私が申し上げたかといいますと、やはりこの基本法の中から、仮に、もしなかったとしたときに、私どもは、地方公共団体の方々の理解、協力が得られるのかなという懸念が非常に強うございました。そういった意味において、ぜひ明記をいただきたいなというふうにお願いをしたわけでございます。

 この苦労は現場においては非常に大きなものがございましたので、切にお願いをしたいところでございます。

富田委員 ありがとうございました。

 最後に、佐伯先生に一点お尋ねしたいと思います。

 アドバイザリーボードでずっとやっていただいて、ちょっと遠藤さんはいなくなっちゃいましたけれども、遠藤先生と本当にまめな打ち合わせをしていただいて、私たちもその成果を遠藤先生から聞いて、法案をつくってまいりました。

 もともと、四年以上前になると思うんですが、遠藤先生がスポーツ基本法を一緒につくろうよと言い出されたときに、私が一番思いましたのは、スポーツ予算、おとといの審議で、スポーツ関連予算は二百二十八億、過去最高ですと高木文科大臣は言われるんですね。ところが、文化芸術の方の予算は千三十一億、これも過去最高と。

 単純に比較はできないんですけれども、やはりちょっとスポーツ関連の財政的な裏づけが弱いんじゃないかということで遠藤先生から呼びかけがあったときに、文化芸術振興基本法のようにきちんとした基本法がないから、なかなか文科省としても財務省、また政府に予算要求できない。この基本法をきちんとつくることだということで、先生とずっとやってまいりました。

 先ほど来、先生がこういう精神をきちんと基本法に入れるべきだというふうに言っていただいたのはそのとおりだと思いますが、今後、このスポーツ基本法が成立した後に、きちんと実効性を持たせるために、財源的な裏づけもそうですけれども、どういうふうな形で法の運用をしていったら実効性あるものになるというふうに先生のお立場からはお考えでしょうか。それを最後、お聞かせ願いたいと思います。

佐伯参考人 確かに、おっしゃるとおり、文化芸術振興関係の予算に比べると、スポーツは少なくなっているわけですね。

 ただ、totoの収益というものが、基本的には両にらみでつくられてきたわけです。totoを法案化して成立する段階で、当初、その収益を非常に大きく見ていました。ところが、思ったより出なくて、そういう関係の中で、相対的に見ると全然伸びないという。しかし、投票くじ法案を通して、それを成立させたということは、もう少しいろいろな工夫の仕方があるというふうに見たことだと思うんです。

 もし、今回、基本法で公益性の高いスポーツについては国がきちっと支援するんだという姿勢であれば、やはり、基本的にはその財源措置を適切に講ずるという条文をしっかり入れて、もちろん財務事情というのはいろいろ変化しますからあれでございますけれども、しかし、国が真剣にそれを考えて支援をしていくということをやはりきちっとうたうべきだというふうに思います。

富田委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので終わりますが、実は、totoの法案のときには、委員長と私は徹底的に反対しまして、この委員会で議論しました。今回、そこの部分を条文化というところは、やはり基本法の精神に合わないんじゃないかということで落とさせていただく方向になりましたけれども、やはり財源的な裏づけが必要だと思いますので、各党もしっかり取り組んでいきたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

田中委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、参考人の先生方から貴重な御意見を伺うことができました。まことにありがとうございます。

 早速質問に入るんですけれども、まず私は、スポーツと地球環境保全との関係をお伺いしたいと思うんです。

 オリンピックやワールドカップなどの国際競技大会は、世界を網羅する規模に達しておりまして、環境への影響、これも非常に大きいものがあります。オリンピック憲章にも、「環境問題に関心を持ち、啓発・実践を通してその責任を果たすとともに、スポーツ界において、特にオリンピック競技大会開催について持続可能な開発を促進すること。」と明記をされております。

 それで、まずこれはJOCの河野一郎参考人にお伺いするんですけれども、JOCでは、「スポーツと環境」ということをホームページでも掲げておられまして、「オリンピックは、地球以外で開催できません。」こう書くとともに、この「IOCスポーツと環境・競技別ガイドブック」、これは、世界の中で初めてJOCが訳本を製作した、こういう非常に熱心な取り組みをされているわけです。

 まず、河野参考人から、このスポーツと地球環境の保全という問題についてどうお考えか、お聞かせいただけますか。

河野参考人 ありがとうございます。

 先ほど私の発表の中に、オリンピックがサバイバルしてきたということをちょっと申し上げました。実は、IOCと言っていいと思いますけれども、IOCも、特に冬の競技で、いわゆる自然を、言えば破壊する形で競技をしたらどうか、あるいは競技をしようという時期がございました。しかし、それではとてもとても国民の、あるいは世界の人々の賛同が得られないというようなところを経過して、今、いたくいたく、IOCを含めて、あるいはスポーツ界を含めて、やはりスポーツは環境をしっかり十分に考えていかなきゃいけないということをみんなが思っております。

 そういった中で、日本オリンピック委員会としては、今お示しいただいたような活動に積極的に取り組んでいるところでもございますし、JOCとしては、各競技団体にもぜひこれをしっかりやっていただきたいということで、今般、日本水連が表彰されるところまで参りました。

 というところで、今おっしゃられたように、オリンピック招致にあっても、先般もそうでございましたけれども、環境というのは非常に重要なテーマだと思っておりますし、特に、日本においては環境に関する技術はかなり進んでいると思っておりますので、いい意味で強みとしながら、スポーツ界がさらに取り組んでいく必要があるというふうに思っております。

宮本委員 私どもは、二十一世紀に向けてスポーツ基本法と名前のつく法律をこのたびつくるとすれば、やはり地球環境の保全という問題をしっかりと基本法の中でも位置づけるべきだということを御提案申し上げているわけです。

 二十一世紀のスポーツ政策について造詣の深い佐伯年詩雄参考人に、改めて、スポーツに関して、国際貢献、国際平和などと並んで、やはり地球環境の保全ということが世界での一つの常識になっているというあたりのところをお聞かせいただきたいと思います。

佐伯参考人 IOCが環境問題に最初に取り組まざるを得なくなった一番最初のケースは、札幌オリンピックでございます。

 札幌オリンピックの開催に際して、スキー連盟が定めている滑降の高さと距離がありますが、残念ながら日本には、北海道にはそれを満たす山がありませんでした。それで、少し上積みを、スタート台を上に持っていって何とかカバーしたわけです。そういうことから、森林を伐採したり、万博と同じように、それをちゃんと後で戻しましょうということからスタートしたわけですね。

 確かに、そういう意味では、国際的には、排ガス規制という問題を常に考えながら、環境保全と矛盾しないようにスポーツを享受するというのは、共通のスタンスになっております。

 さらに、環境だけでなくて、サステーナブルディベロップメントするスポーツですね。スポーツを通じて持続可能な発展、成長、これを国際的なスポーツは今目指しているところでございますので、環境だけではなくて、グローバル課題にどういうふうにスポーツが貢献できるかということは、やはり国際的なスポーツ界自身が非常に重要なテーマにしていることでございます。

 それから、もう一つちょっとつけ加えれば、そういう取り組みがまだ上部の組織のレベルでいろいろ議論されたり行われたりしている段階で、必ずしもスポーツを実際に行っている人のところにまできちんとおりていない、こういう問題はどこにでもございます。

 それから、もう一つ非常に重要なのは、コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティー、CSRと特に業界で言われている言葉があります。

 コーポレートというのは、企業だけを意味するんじゃなくて、そのまま一番最も正しい意味は、法人です。つまり、法人と言われるものすべては社会的責任を負っている。それは、企業が今非常に環境、排ガス問題をまじめに取り上げておりますが、その問題は、企業だけじゃなくてすべての法人、国際オリンピック委員会もそうですし、国際サッカー連盟もそうですし、日本体育協会もそうですね。こういうすべての法人が、コーポレートとして果たすべき社会的責任の一部としてグローバル課題の解決に貢献する、とりわけ今差し迫っている環境問題に対してきちっとした対応をするということは、共通のスタンスになっているというふうに考えていいと思います。

宮本委員 ぜひとも、スポーツ基本法の中に地球環境の保全という問題をしっかりと位置づけたいというふうに思っております。

 次に、了徳寺健二参考人にお伺いしたいんです。

 実は、前回の委員会で、私は、高い水準にある選手への支援の問題ということを取り上げました。先ほど参考人からは、今後の課題ということで、セカンドキャリア対策についてもお触れになったと思うんです。

 実は、前回の議論で、高木文科大臣は、まさに高水準のスポーツ選手の育成については、現行法上の位置づけは必ずしも明確ではないんです、こういうふうにお認めになりまして、しっかりこの点での支援策を抜本的に強化する必要があるというふうに私たちは考えております。

 日本共産党としては、高水準のスポーツの健全な発展を目指すための支援として、高水準の競技者が、オリンピック等国際的な競技大会で活躍を目指す活動については、スポーツ団体等の要請に基づき、必要なトレーニング、遠征、派遣、大会への出場などに対し支援が講じられる必要がある。さらには、オリンピックに出場したなどの競技実績は顕彰されるとともに、スポーツの文化的発展の遺産として、指導、研修などを通じて社会に還元される必要がある。さらには、高度な水準を目指す競技者の養成強化は、選手の安全と人権の尊重、心身の健全な発達に即した医科学的なトレーニングの享受、諸民族との相互理解を促進するものとして奨励されなければならないと。

 こういう中身を提案させていただいているわけですけれども、ぜひ、了徳寺参考人の、高水準のスポーツ選手に対する支援策についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

了徳寺参考人 ありがとうございます。

 先ほど来申し上げていますように、今までの私どものチームでは、まだオリンピック選手でメダリストは出ておりませんけれども、この日本の、私は柔道の世界しかよく知りませんけれども、例えば、四月に、第一土日に毎年福岡で行われます全日本選抜柔道大会というのがあります。これはオリンピックや世界選手権の最終選考会になります。これに出場できる選手というのは、各階級八名しかいません。つまり、ベストエイトから、準々決勝からスタートします。

 私は千葉県にずっと住んでおりますけれども、毎年千葉県では高校のチャンピオンが男女十四名ずつ出ますけれども、過去二十年間にこの大会に出た選手はいないというふうに記憶しておりますけれども、それぐらい、選ばれることは大変な名誉であり、難しいことでもあります。したがいまして、このあたりから見ても、そういう選手を支援するということは、非常に価値があるといいますか、それでも少しの選手たちになるというふうに思います。

 したがいまして、オリンピックとなりますと、またさらに少なくなるわけでございまして、何としても、こういうオリンピック出場あるいは世界選手権出場、そしてまた国民に誇りと勇気を回帰させるような活躍をした選手には、国でもって、セカンドキャリア対策として、明確な位置づけ、あるいは方向性をぜひつくっていただきたいというふうに願っております。よろしくお願いいたします。

宮本委員 次に、佐伯参考人にまたお伺いするんですが、私どもも、先生が強調されたように、スポーツの自主性、自立性というのは、これはまさに命だというふうに思っております。

 そこで、私ども、スポーツ基本法の制定プロジェクトチームでも提案をさせていただいて、競技者や指導者、スポーツ団体等の関係者や学識経験者で構成した第三者機関をきちっと設置すべきであるということも提案をさせていただいているんですね。自主性や自立性をしっかり守る上で先生はどういうことが大事だとお考えになるか、お聞かせいただきたいと思います。

佐伯参考人 スポーツのガバナンスは、基本的に民間がやる。それを、国あるいは社会がサポートする。これがやはり望ましい体制だと思います。ガバナンスを国家がやるというのは、基本的には、かつての共産主義の国か、あるいは本当の新興国しかないわけですよ。それでいいのかということなんですね。

 日本がどういう国家かというのは、どんな法律をつくるかということが一つの品格の表現になりますので、そういう意味では、私は、スポーツのガバナンスは民間に任せる。そのかわり、国が適切なサポートをし得るように、おっしゃるような機関を設置する必要があるだろうというふうに思います。

宮本委員 次に、小倉弐郎参考人にお伺いしたいと思います。

 総合型地域スポーツクラブの課題として、財源の確保ということを強調されたと思うんです。

 それで、私たちは、サッカーくじの収益による事業というのでは、各団体への配分がくじの売り上げに左右されるということになりますので、また、これはちょっと、きのうあたり流れたニュースで紹介しますけれども、韓国のKリーグ、韓国のサッカー界ですけれども、サッカーくじの巨額の配当金を得るためにプロのKリーグ選手を買収し八百長をさせたとして、ブローカー二人を逮捕、金を受け取った選手二人が拘束令状を請求された。Kリーグで八百長が判明したのは初めてで、朝鮮日報は、韓国スポーツ界最悪のスキャンダルだ、こう報じているという、非常に問題の多いことであります。

 ですから、くじというよりも、やはりしっかりと国が財源を保障することが必要だと思うんです。

 そういう点では、財源保障ということだと思うんですけれども、このあたりの小倉参考人のお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。

小倉参考人 Kリーグの話は、私も、ちょうどテレビを見ておりまして、それは残念に思っておるところでございます。

 クラブの財源ということでございますけれども、やはりクラブは、基本的には、自主自立のクラブということを念頭に置いております。したがって、財源保障というのは大変ありがたいお言葉でございますけれども、逆に、保障ということになりますと、これは自立性の妨げにもなりかねないリスクもはらんでいるというふうに私は考えているんです。

 クラブがこうしてでき始めて十数年たちまして、先ほども申し上げましたように、やっと国民の中、住民の中に、スポーツにも、やりたい人は自分でお金を出して楽しむんだという姿が醸成されてきた中で、私としては、そういう考え方というのは非常に問題もあるのかなというふうには考えております。

 ただし、クラブが育つまでは、やはりそれなりの保障といいますか支援をお願いしたいなというふうに思っております。ややもすると、保障が妨げになって、会費も集めないままいって、財源の支援が途絶えた途端にクラブがしぼんでしまうというようなケースも見受けられますので、支援のある間にクラブが育つということは重要な課題でありますので、そういった思いを持っているところです。

 ちょっとお話が長くなりますけれども、今回の震災に関して、やはり私は、総合型クラブの底力を見たというふうに思っておるんです。ややもすると、目立つのはアーティストであったりアスリートであったりいたしますけれども、クラブは、いち早くトラックを借りて九州から支援物資を積んで乗り込んだとか、いろいろな話がございますし、総合型地域スポーツクラブ全国協議会というのは全国規模のネットワークでございますので、その中でそういった支援活動も、地味ではありますけれども、今一生懸命やっておるところでございます。

 そういった意味においては、自主自立ができるようなバックアップをぜひお願いしたいなというふうに思っております。

宮本委員 自主自立をしっかり担保することは大賛成でありまして、ただ、お金がなくてやれないという人が出てくることが考えられますから、そういう点での手当てというものはしっかりしないと、スポーツをだれもが楽しむ権利という点では非常に大事な問題だと思うんです。

 それで、時間がなくなったので、最後に二問まとめて佐伯先生にお伺いをいたします。

 一つは、今の予算にもかかわるんですけれども、我が国のスポーツ予算は、イギリスやフランス、韓国などと比較して極めて低い水準にある。この委員会でも、この前、大臣と質疑をやりまして、人口が半分ぐらいの他国が我が国よりも予算が多いんですね。もっともっとしっかり財源を確保していく、この点で先生はどうお考えか。

 もう一つは、先ほど、高い水準の競技選手の話をいたしましたけれども、競技者が持つエンターテインメント性を保障して支援していくということが二十一世紀のスポーツの発展に不可欠だと思うんです。この点で我が国が非常に立ちおくれている、この点についてどうお考えになるか。

 この二点を聞かせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。

佐伯参考人 先ほども申し上げましたように、国がスポーツをサポートするということを法律上きちんとうたうのであれば、そのサポートの内実として、財務的な支援、これをきちっとうたわなきゃいけない、これは当然です。

 ただ、スポーツのサポートというのは、実は非常に複雑な形で、いろいろな形でなされています。ですから、金額だけを見てどうかということも単純にはなかなか言えないところがあります。

 例えば、どの国もいろいろなことがあるんですけれども、スポーツ予算というのはスポーツ庁だけでコントロールしているものじゃない。例えば、日本の場合も、かつてはスポーツに関する出費が一番大きかったのは国土交通省だったわけです。文部科学省は主管省庁でしたけれども、残念ながらそういう意味で一位ではなかったわけです。だから、いろいろな形でサポートはできるわけです。

 ただ、それが政策として一本化されることは非常に重要であって、やはりそういうことを工夫することは当然であり、ですから、先ほど河野さんもおっしゃっていたように、やはり、スポーツについてチーム・ジャパンをつくるためには、チーム・ジャパンにふさわしい、少なくともスポーツ庁ぐらいは設置すべきであろうというふうに思います。

 それから、ちょっと基本法について申し上げますと、私は非常に複雑過ぎると思います。もっと単純にして、個別的に必要に応じて、例えば障害者スポーツ振興法であるとかトップアスリート支援法であるとか、こういうふうな形でつくった方がいいんだろうと思いますね。

 それで、私たちが希望したいのは、全会一致、超党派、これがやはりスポーツが期待することでございますので、ぜひ先生方には御努力いただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

宮本委員 どうも貴重な御意見をありがとうございました。しっかりと先生方の御意見を参考にして、よりよい法案を練り上げていきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

田中委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に対しまして、一言御礼申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十七分散会


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