衆議院

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第18号 平成23年8月26日(金曜日)

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平成二十三年八月二十六日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 糸川 正晃君 理事 金森  正君

   理事 高井 美穂君 理事 野木  実君

   理事 松崎 哲久君 理事 下村 博文君

   理事 馳   浩君 理事 池坊 保子君

      相原 史乃君    井戸まさえ君

      小原  舞君    緒方林太郎君

      大山 昌宏君    奥村 展三君

      川口  浩君   木村たけつか君

      熊谷 貞俊君    笹木 竜三君

      瑞慶覧長敏君    高野  守君

      中屋 大介君    平山 泰朗君

      松宮  勲君    村上 史好君

      室井 秀子君    本村賢太郎君

      山田 良司君    笠  浩史君

      和嶋 未希君    渡辺 義彦君

      あべ 俊子君    稲田 朋美君

      遠藤 利明君    河村 建夫君

      塩谷  立君   田野瀬良太郎君

      徳田  毅君    古屋 圭司君

      松野 博一君    富田 茂之君

      宮本 岳志君    城内  実君

      土肥 隆一君

    …………………………………

   参議院議員        橋本 聖子君

   参議院議員        義家 弘介君

   文部科学大臣       高木 義明君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   文部科学副大臣      笹木 竜三君

   文部科学大臣政務官    笠  浩史君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      辰野 裕一君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          板東久美子君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          山中 伸一君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            磯田 文雄君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         河村 潤子君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       合田 隆史君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            藤木 完治君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房技術総括審議官)       西本 淳哉君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官)   黒木 慎一君

   文部科学委員会専門員   佐々木 努君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月二十六日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     緒方林太郎君

  城井  崇君     井戸まさえ君

  熊谷 貞俊君     相原 史乃君

  永岡 桂子君     徳田  毅君

  松野 博一君     稲田 朋美君

同日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     熊谷 貞俊君

  井戸まさえ君     小原  舞君

  緒方林太郎君     渡辺 義彦君

  稲田 朋美君     松野 博一君

  徳田  毅君     永岡 桂子君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     城井  崇君

  渡辺 義彦君     石井登志郎君

    ―――――――――――――

八月二十六日

 東日本大震災に対処するための私立の学校等の用に供される建物等の災害復旧等に関する特別の助成措置等に関する法律案(参議院提出、参法第二一号)

同月二十五日

 私立幼稚園教育の充実・発展に関する請願(宮本岳志君紹介)(第二六九六号)

 教育格差をなくし、子どもたちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(永岡桂子君紹介)(第二六九七号)

 同(西村智奈美君紹介)(第二六九八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 東日本大震災に対処するための私立の学校等の用に供される建物等の災害復旧等に関する特別の助成措置等に関する法律案(参議院提出、参法第二一号)

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 科学技術の研究開発に関する実情調査のため、去る二十四日に、十九名の委員が参加し、日本原燃株式会社及び独立行政法人日本原子力研究開発機構青森研究開発センター、国際核融合エネルギー研究センターの視察を行いました。

 この際、参加委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。

 まず、青森県上北郡六ケ所村の日本原燃株式会社では、川井社長から同社における核燃料サイクル事業の進捗状況についての説明を聴取し、再処理工場、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、ウラン濃縮工場などを視察の後、高レベル放射性廃棄物の処分問題解決に向けて、処分場の確保だけではなく、科学技術研究を行う必要性、高レベル放射性廃棄物のガラス固化技術の課題と再処理工場完成の見通し、使用済み核燃料の再処理事業に対する福島第一原子力発電所事故の影響、核燃料サイクル事業の採算性及び資金調達方法などについての質疑応答を行いました。

 なお、先方からは、エネルギー自給率の低い我が国にとって、エネルギー確保のためには核燃料サイクル事業を堅持しておく必要性が高いとの意見が述べられました。

 次に、同じく六ケ所村の独立行政法人日本原子力研究開発機構青森研究開発センター、国際核融合エネルギー研究センターでは、鈴木理事長から、国際核融合エネルギー研究の概要、ITER計画を支援する日本と欧州による幅広いアプローチ活動の状況などについての説明を聴取の後、原型炉研究開発棟、計算機・遠隔実験棟など研究施設を視察し、核融合エネルギー実現の見込みとスケジュール、ITER計画及び幅広いアプローチ活動における国際協力の意義、研究センターに設置する加速器、スーパーコンピューターの利活用方法などについての質疑応答を行いました。

 今回の視察に当たりましては、御協力いただきました方々に深く御礼を申し上げ、視察の御報告といたします。

    ―――――――――――――

田中委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房文教施設企画部長辰野裕一君、生涯学習政策局長板東久美子君、初等中等教育局長山中伸一君、高等教育局長磯田文雄君、高等教育局私学部長河村潤子君、科学技術・学術政策局長合田隆史君、研究開発局長藤木完治君、経済産業省大臣官房技術総括審議官西本淳哉君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長糟谷敏秀君及び原子力安全・保安院審議官黒木慎一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下村博文君。

下村委員 おはようございます。自民党の下村博文です。

 委員長から一昨日の視察の報告がございましたので、高木文科大臣に、事前通告ございませんが、この視察に関係して最初に一問お聞きしたいと思います。

 核燃料サイクルの視察に行きまして、これについて来年度の概算要求でどうするかということについて、大臣の今のお考えをお聞きしたいと思うんです。

 我々も、視察に行きまして、現地の方々から、資源がない我が国において安定供給をする立場から、これはぜひ引き続き継続して対応してほしいという強い要請が、社長以下ございました。

 ただ、脱原発というのは、程度の問題はあっても、やはり福島第一原発を受けて、これについては、脱原発の方向でかじを切るということは、これは私は当然のことだというふうに思います。

 ただ、菅総理のように、国民に対する要らぬ不信、不安をあおるような、特に産業界から、このことによって結果的にこの一年以内に原発が全部とまってしまうことによって、エネルギーが三〇%カットされてしまうのではないか、さらに産業の空洞化が国内で進むことについて加速させるというような悪政を行っていくようなことは、これはあってはならないことでありまして、しかし、今後新規に原発をつくるということは、やはり難しいことだと私は思っております。

 そうすると、耐用年数からして、いずれ三十年、四十年後には原発をとめるという中、トータル的なエネルギーの供給量を減らさないで少しずつ再生可能エネルギーに変えていくかということが、これから我が国の国策として問われているのではないかと思います。

 ただ、この核燃料サイクルの周辺には風力発電がありまして、日本で一番発電機が六十基、七十基近くある場所だということを私も初めて聞きましたが、我々の視察の最中、風が吹いていなくて、全くこれはとまったままだったんです。ですから、太陽光もそうですが、原子力のように二十四時間稼働できるわけではありませんので、自然エネルギー、代替エネルギーについても、十分な技術開発とともに相当条件整備をしていかないと、簡単にエネルギー政策を転換することもそれだけ難しいというのを、視察の中で改めて感じた部分があります。

 いずれにしても、脱原発を、急にとめるか、それとも四十年後にゼロにするかということはあっても、この核燃料サイクルについては、このままさらに継続していいのかどうかという議論をここでしておかないと、既に今までも十八回ぐらいいろいろな事故があって中断をして中断をして、そしていまだに再稼働のめどが十二分に立っていない。現場では、すぐにでもガラス固化体等対応できるというふうな話がありましたが、しかし、全部で六つの施設をトータル的に考えていますけれども、一つ一つのどの施設が本当にこれから必要なのか、どの施設については改めて見直すべきなのかということをトータル的に考えて、そして一つ一つに対して予算配分を計上しながら、結果的に核燃料サイクルについてどんな政策を打ち出すかということが来年度の概算要求の中でも問われてくるのではないか。

 だから、一律に一〇%削減するとかいうことではなくて、一つ一つを見直した中で核燃料サイクルについて戦略的にどう考えるかということを今着手しないと、そのままいったら、結果的にはさらに膨大な、無駄な税金の投入になる可能性もあるわけですから、一方で、加速的に税金を投入することによって早めなければいけない部分もあるから、すべてがすべて核燃料サイクルにおいて否定的ということではもちろんないわけですが、しかし、一つ一つを慎重にチェックしながら、来年度概算要求で、どれについてどう削減するか、ふやすかということを実証的にきちっと対応していく必要があるのではないか、こんなふうに感じましたが、高木文科大臣として、この核燃料サイクルの概算要求について、個々の見直しを含めてどんな意見をお持ちなのか、お聞きしたいと思います。

高木国務大臣 下村委員にお答えをいたします。

 まず初めに、田中委員長を初め、先ほど御報告がございました青森県の六ケ所村の視察のお話がありました。大変な多忙な中で現地を視察していただく、本当に敬意を表したいと思っております。

 この核燃料サイクルにつきましては、今回の福島原子力発電所の事故を踏まえて、これまでとは違う国民の意識、それから安全性に対する見方、大きく変わったと思っております。

 そういう中で、私たちとしては、この事故の原因の究明、検証、これは今既に始めておりますけれども、これを踏まえて、一体、これから我が国の長期的なエネルギーの確保をどうしていくのかというのは、これを一つのベースにしていかなきゃならぬと思っております。

 一方、脱原発という議論がありました。これは、できることならば、リスクのないエネルギーを求めて、私たちとしては、その技術の確立をそれぞれの分野で今やられておりますけれども、しかし、やはり現実に国民の経済、暮らしを考えてみると、電力エネルギーというのは、一日たりとも欠かせません。

 したがって、一定の期間は私は必要だと思っておりまして、当面は、私どもとしましては、この核燃料サイクルを含めて、今後のエネルギー政策はもとより、原子力政策、これを今見直すことにしておりまして、既に政府においても、エネルギー・環境会議という、これは国家戦略担当大臣が中心になって運営しておきますけれども、ここでしっかりとした議論をすることが重要であろうと思っております。

 特に、概算要求の話もございました。この概算要求につきましては、先日、財務大臣から、平成二十四年度の概算要求に係る作業についての方向が示されましたが、現在、その基準というのが新たに決まったものではありませんで、今後、これは通常ならば八月末がその一つのめどでありましたが、今回は、こういう政治情勢の中でありますので、九月末の概算要求提出時まで、「もんじゅ」も含めた今御指摘の核燃料サイクルにかかわる予算措置をどうしていくのかということについては、十分検討する必要があろうかと思っております。

 現時点ではその方向はまだ固まっておりませんけれども、早急に、九月までを目指して、当然にして検討していかなきゃならぬと思っております。

 同時に、これは脱原発とか廃炉とかいう話が飛び交っておりますけれども、当面、私たちとしては、原子力発電所の稼働もあり、また、今日のエネルギーの需給状況を考えると、やはり原子力の発電ということについては、これまで以上に安全対策、これを徹底しなきゃいかぬ。そういう取り組みを進める必要があろうかと思っておりますし、同時に、原子力にかかわれる技術者、人材の育成は、これからも、先ほどは三十年、四十年という話がございましたけれども、そういうところに向けても、こういうところの人材というのはきちっと確保していかなきゃならぬと思っております。

 特に、若い人についても、そういうノウハウをきちっと持った技術者、科学者、こういった方々を、私たちとしては、特に文部科学省としては育てていかなきゃならぬのではないか、このように思っております。

下村委員 一律的なマイナスシーリングは、トータル的には来年度の概算要求でも政府としてはかけるということになるかもしれませんが、個々については、先ほど申し上げましたように、一つ一つを検証しながら、どれをどのように戦略的に対応するかということについて、核燃料サイクルについてもしっかり考えていただきたいと思います。

 そして、我々が視察に行ったとき、例えばここは、基地がといいますか空港が近いということもありまして、航空機がここにぶつかったときにどう対応できるかということについて、屋家についての設計等も頑丈な対応をしておりました。このストレステスト、ある意味では、核燃料サイクルも独自にしている、ほかの原子力発電所に比べてもかなり強固なものをつくっている、そういう説明を受けましたが、この核燃料サイクルについて、まずストレステストが当てはまるのか。

 それというのも、「別途実施を検討する。」ということなんですが、ほかの原子力発電所と違って、では、どう検討するのか、そして、ほかの場所もすべて十二月までに二次評価をするということになっていますが、今からやって、検討して間に合うのかどうかということもこの核燃料サイクルについては言えるのではないかと思いますが、その辺についてのストレステストのあり方についてお聞きしたいと思います。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 核燃料サイクル関連施設、委員御指摘のように、私ども、原子力発電所とは別途実施を検討するという状況でございます。

 この検討につきましては、海外の動向、例えばフランス、個々ではコジェマのラ・アーグの再処理工場などのチェックを行っているところでございますけれども、こういう状況なども参考にし、どのような対象について実施を行うべきなのか、どういう方法でそのストレステスト実施を行うのか、そういう方針について現在検討を行っているという状況でございます。

下村委員 全然具体的でなくて全くわからないんですけれども、しかし一方で、その程度しか答えられないと思うんですよ。つまり、ストレステストというのを聞けば聞くほど、どんな意味があるのかというのが余計わからなくなるんですね。

 これは、菅総理が七月七日に、ストレステストも含め基準を設け、それをチェックすることで国民の皆さんに理解をいただけるというふうに言っていましたから、新たな基準をつくって、そして、今までももちろん基準があったわけですけれども、さらにハードルを高めたストレステストによって、そして再稼働できるのかどうかということをチェックするのかなというふうに思っていたんですが、どうもそうでもない。あるいは、そういう基準はつくらないとしか思えないんです。

 この辺で、どんな意味があるのかということについて、改めて確認をしたいと思うんです。

 七月の統一見解でこういうふうに言っているんですね。稼働中の発電所は現行法令下で適切に運転が行われており、定期検査中の発電所についても現行法令により安全性の確認が行われている。さらに、緊急安全対策などの実施について原子力安全・保安院による確認がなされており、従来以上に慎重に安全性の確認が行われているのであれば、行われているんですね。ですから、新たにストレステストを行うという意義というのは一体何なのかということで確認をしたいんです。

 今度は一般論です。ストレステストというのは、原発の運転再開の可否、継続、中止、そういう新たな判断基準ということでよろしいんですか。判断基準を設ける、それがストレステストだということでよろしいんですか。

黒木政府参考人 お答え申し上げます。

 その判断基準の関係でございますが、原子力発電所の安全性につきましては、国民、住民の方々に十分な理解が得られているとは言いがたい状況であるということから、政府において、原子力発電所のさらなる安全性の向上、国民、住民の方々の安心、信頼の確保のため、いわゆる欧州諸国で導入されているストレステストを参考に、新たな手続、ルールに基づく安全評価を実施するということにしたところでございます。

 この中で、お話にございましたように、一次評価で、定期検査で停止中の原子力発電所について運転再開の可否について判断をし、二次評価により、運転中の原子力発電所、これの運転を継続していいかどうかということを判断する、そういう枠組みになっているところでございます。

下村委員 いや、だから、直接お答えになっていないんですよ。

 そうすると、新たな判断基準を設けて、そして判断基準をクリアしているか、していないかで可否をするということでよろしいんですか。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 ストレステストの安全評価におきましては、その設計上の想定を超える事象に対してどういう安全裕度があるのか、それから、脆弱性の分析の結果、その克服の対策、こういうものが明らかになるということでございます。

 ただし、その場合、どれだけ安全裕度があればいいのか等々の一律の基準を設けて、運転再開や運転継続の可否を一律に判断するというようなものとは考えていないということでございます。

下村委員 いや、だから、判断基準があるのかどうかと聞いているんですよ。端的に答えてください。

黒木政府参考人 判断基準でございますが、安全裕度があるかどうかということ、これを踏まえて運転の再開、継続については、総理を含めた四大臣が判断するということでございます。

下村委員 いや、だから、全然答えていないんですよ。

 総理を含め四大臣が判断するときに、このことについてはそもそも素人集団なわけですから、だから、ゴーなのかノーなのかということについての判断基準がなかったら判断できないわけですよ。その判断基準はあるんですかと聞いているんです。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 評価につきましては、保安院及び、その保安院の評価を原子力安全委員会が確認するということでございます。

 その確認した結果、これは技術的、科学的な視点から客観的なデータというのが出てくるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、それの安全裕度がどれだけあるかという一律な基準で判断を行うということではなく、その結果を踏まえまして四大臣が、その技術的な内容と、国民、住民の方々の安心、信頼が確保されるかどうかを見きわめて判断されるというふうに理解してございます。

下村委員 保安院の立場でそんな答弁をしていていいのかと自分でじくじたるものがあるでしょう。これは、政府というか菅総理が決めたことだからそうせざるを得ないのかもしれませんけれども、そもそも、では、今の原発についても核燃料サイクルについても大丈夫なのかということを言った場合、既に大丈夫だと言っているわけですよ。

 稼働中の発電所は現行法令下で適切に運営が行われている。現行法令にのっとり安全の確認も行われているし、緊急安全対策などの実施において、原子力安全・保安院、あなたのところで確認されているんだ、従来以上に慎重に安全性の確認はされているんだということなんですよ。

 その上でストレステストはどういうふうにするんですかと。それは安全裕度だと。

 今までだって、いろいろな建築物がぎりぎりの安全の中で許可しているわけじゃないわけです、当然。もっと余裕を持って許可しているはずですよ。

 さらにもっと究極的に大地震、津波があって、壊れてしまうかもしれないというぎりぎりのところはどうなのかということを調べるというのがストレステストなんでしょうけれども、しかしそれにしても、基準があって、この強度まで耐えられる、あるいは、例えば福島と同じような大地震が起きたときに、ほかの部分については耐えられるのか耐えられないのか、そういう一つの目安がなければ、その場所の原発については続行を認めるか認めないかということについて、素人集団がわかるはずがないんですよ。

 まずはそれを原子力安全・保安院が調べる、それが、一つの新たな基準をつくることによってストレステストをした、その結果がこうですよ、その結果を踏まえて総理含めて四大臣が、では、一つ一つの原子力発電所について続行を認めるか認めないかを判断する、そういうことなわけでしょう。

 ですから、保安院としては、何らかの、つまり、総理含め四大臣が判断できるような基準を提示しなければ、そもそもストレステストじゃないじゃないですか。どうですか、それは。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 御質問の中にありましたように、ストレステスト、例えば地震につきましては、どのくらいの揺れが来ればそれは耐え得るのか、それに対してどれだけさらに安全裕度があるのかということを評価するわけでございますので、これは一次評価と二次評価で評価の手法は違いますが、例えば一次評価でございますと、どれだけの揺れが来るのかということ、これは、今までは設計用の基準地震動ということで評価してきたわけでございますが、それに対して、設計が今までの規制で使っている許容値を用いてもつかどうかというぎりぎりのところをまず明らかにし、その上でさらに、どれくらいのそれを上回る地震が来た場合耐え得ることができるのかということを明らかにするというのが、私どもの評価の技術的な内容でございます。

 その結果を踏まえて、その安全裕度がどれだけあるのかということを踏まえて、四大臣が最終的に、運転を再開していいのか、運転を継続していいのかということを判断するということでございます。

下村委員 全く判断できませんよね。

 今、一次評価、二次評価という話もありました。ことしの十二月までに、評価対象となるすべての発電用原子炉に対して二次評価を実施する予定になっていますよね。

 そもそもこれは、菅総理が、何かヨーロッパがストレステストをやることになったようだ、急遽、では我が国でもやろうというのを急に思いつきで決めたようですけれども、それはそれでいいんですよ、やるのは。ただ、やるんだったら明確な基準が必要だし、それから、ヨーロッパでは、そもそも評価について一次、二次もないんですよ。日本が独自に一次評価と二次評価というのを決めてやるようになったということですから、一次評価と二次評価の評価基準というのを明確にする必要があると思うんです。

 それは明確になっていませんね。どうですか。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 一次評価と二次評価の違いでございますが、私ども、一次評価については、考え得る、例えば地震動や津波に対してどれだけもつかということを、今まで我々が規制で使っております許容値との比較で判断をするということにしてございます。

 一方、二次評価では、許容値を超えたからといってすぐ物が壊れるわけではございませんので、究極的な耐力を基準として用いて評価を行うということで考えているところでございます。

下村委員 これ、今の答弁をわかる人はだれもいないと思いますよ。

 結果的には、評価基準が設けられないから、総理初め四大臣で、そのときの政治判断で決めるということなんですよ。だって、そうでなかったら、北海道のように、ストレステストをしなくても、継続していい、原発を推進するということを言っている知事だっているわけですから。本来だったら、ストレステストするまで、チェックするまで、そこまで発言できないはずなんですよ。それはそれで進めている。ですからばらばらなんです。

 つまり、基準がないから、結果的にはばらばらであっても結果論としては進むんですけれども、単なる国民に対する、きょうやめる総理のことをもうぐずぐず言ってもしようがありませんけれども、パフォーマンスだったというふうにしか言いようがありません。

 時間がありませんので、この問題についてはちょっと後でまたほかの方に譲りますが、きょう、急遽、民主党の方で理解をしていただいて、私学災害復旧助成法案についてつるしをおろしていただき、当委員会で趣旨説明をしていただくということになりました。

 それについては感謝申し上げますが、もともと我々は、地震によって私立に通っている子それから公立に通っている子において格差が出ることは、これは避けるべきだというふうに主張しておりました。

 政府の方は、第一次補正予算で、いや、そもそも私立学校に対する教育研究活動復旧費補助があるから、事実上は公立学校並みの三分の二の補助を行っているというふうに今まで答弁しておりましたが、しかし、実際に災害復旧費として建物については使用できないんです。ですから、公立学校は三分の二、しかし裏負担がありますから、事実上は九八%国によって災害復旧で建物を建て直すことができるわけですけれども、私立学校においては実際は二分の一の補助しか得られないということで、このことによって二重ローン等の問題も、個人の問題、一般企業の問題だけでなく、私立学校においてもこのような該当をする学校もあって、結果的に、このことによって新たに建物の復旧ができないために、廃校せざるを得ない。特にこれは幼稚園関係が多いんですけれども、対象が今わかっているだけでも二百六十校ぐらいあります。

 こういうことにならないように、今回についての災害については公立学校並みに私立学校に対しても対応してほしいということで、本来、民主党の方でも部門会議で了承されたというふうに聞いております。しかし、民主党の国対の方が衆議院において審議をすることについてストップをかけたということで、参議院の方に先議してもらって、参議院の方で可決して、そしてきょう、この委員会で付託されるということでございます。

 ただ、今までの経緯がございますので、我々としては、公私間格差をこういう災害のときにさらに拡大させることがあってはならないと思っておりますので、ぜひこれは、民主党においてもこの法案については賛同していただきたいというふうに思っておりますが、きょう採決しても党内状況において賛同できる状況ではないということでございますので、国対間を通じて、次期の臨時国会冒頭でぜひ民主党の賛同も得るように引き続き努力をお願いしたいし、また、我々もそういう努力をしていきたいと思います。

 そういう前提で高木文科大臣にお聞きしたいと思いますが、臨時国会の冒頭でぜひこれは可決できるように、国会としても、野党は全党が賛成していますけれども、民主党が賛成していただければ衆議院でも可決できるわけでございまして、できたら、即対応できるように文科省として今から準備を十二分にしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

高木国務大臣 非常に重要なテーマでございます。児童生徒、学生にとって、公立であろうが私立であろうが、勉強することには変わりありませんで、その格差をできるだけなくしていく、これは非常に重要なことだろうと思っております。

 今の助成制度についても、既に述べてまいりましたけれども、私どもとしても、何とかならぬものかと、そのようなことをずっと考えておりましたが、現時点においては、例えば阪神・淡路でも、当時の政府・与党で大変御苦労された中でもこれを超えることができなかった。あるいは憲法のこともありましょうし、他のいわゆる公共施設、病院とか福祉施設との関連での災害法制、こういったことも現実には一つの課題としてある。私たちとしては、この課題について何とかならぬか、そういう意味では、なお検討することが必要じゃないかと思っております。

 国会において今回趣旨説明もあるようでございますので、これは私の立場で次の臨時国会のことについてどうのこうのということは言うものではありませんけれども、これからも、子供たちのために、学生生徒のために、この件についてはしっかり検討していかなきゃならぬと思っております。

 委員御指摘の趣旨については私も痛いほどわかっておりまして、特にこういう災害ですから、緊急事態ですから、何とかならぬものかと思ってはおりますけれども、現時点においては、政府としてはそういう立場であるということについては御理解をいただきたい。

下村委員 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、遠藤利明君。

遠藤(利)委員 自民党の遠藤利明です。

 きょうは、教員養成、とりわけ教職大学院のことについてお尋ねをする予定なんですが、ちょっと順番を逆にしまして、地元で今、学校の統合の問題が大変話題になっておりますので、先に事実だけ確認をさせていただきたいと思います。

 地元に学校法人東北芸術工科大学という学校がありますが、これは公設民営、建設資金等を全部県と市が出して、そして民間の皆さんに運営をお願いしているというふうなことなんですが、最近になって、京都の瓜生山学園という学校法人と統合合併するという話が出てまいりました。

 まず最初に、この芸術工科大学、どんな学校という認識でいらっしゃるのか、これは河村部長にお尋ねをいたします。

河村政府参考人 お答え申し上げます。

 学校法人東北芸術工科大学が大学としての東北芸術工科大学を設置しているわけでございますけれども、平成四年に大学が開学をしております。その設立時に、地元から、山形県、山形市それぞれでございますけれども、財政的な支援がされている、そういう大学であり学校法人であると存じます。

遠藤(利)委員 建設費用等を含めて二百億円、それを県が百億円、市が百億円、そんな形で補助金として出したというような認識でおります。

 今回、統合の話が出てまいりましたが、まず、統合の認可申請をいつどのような形で提出されたのか、お伺いいたします。

河村政府参考人 学校法人東北芸術工科大学と学校法人瓜生山学園の合併認可申請書が、八月九日付で両法人の理事長から文部科学大臣あてに郵送で提出をされております。

遠藤(利)委員 八月九日に提出をされたということでありますが、この合併、統合合併ですが、合併には新設合併と吸収合併というふうな形になるんだと思いますが、この法人は新設合併なのか、それとも吸収合併なのか。もし吸収合併だとすれば、その存続法人はどこになって、そして本部はどこになるのか、お伺いいたします。

河村政府参考人 遠藤先生お話しのように、一般的に学校法人が合併する場合、その種類として、一つは、複数の学校法人が解散をして新たな学校法人を新設する新設合併と、もう一つ、一つの学校法人がほかの学校法人を吸収して存続し、吸収された学校法人が解散をするといういわゆる吸収合併の方式がございます。

 今回の合併は後者、いわゆる吸収合併でございます。両法人の計画によりますと、存続する法人は学校法人瓜生山学園であり、法人の本部は、両法人の計画を見ますと、京都府京都市左京区に置くこととされております。

 なお、合併と同時に、法人の名称を学校法人芸術学舎という名称に改称するという計画でございます。

遠藤(利)委員 名称は変えるにしても、吸収合併、そして瓜生山学園のある場所に本部が移るということですよね。

 これは、二百億円、山形県でいいますと、二年にわたり五十億円、五十億円と出しているんですが、当時の税収、多分一千億円ぐらいだと思います。それで、単年度五十億円というと、五%。例えば今の日本という国が税収四十兆円だと、二兆円をつぎ込んだ、これは大変ですよ。そして学校が運営をされてきた。

 その芸工大の理事長は、最初は県知事、その後、前市長が理事長をされて、そして県からも市からも理事が出ておったんだが、最近は県も市も理事がいなくなってしまった、そして今回こういうふうに合併の申請がなされたということですよね。

 そうすると、これは経営内容が悪いんですか。

河村政府参考人 現時点での経営内容が特に問題があるというふうには私どもは判断しておりません。

遠藤(利)委員 いただいた資料を見ますと、平成二十一年度でも四千二百万円の黒字である。黒字なのに何で吸収合併かなという感じがいたします。

 きょうは、ちょっと私も急だったので資料等は余り用意しておりませんから、当然、これから県議会、市議会といろいろ議論されると思いますが、これだけの、山形県にとって、大学が少ない、学ぶ機会をぜひつくりたいということで、まさに清水の舞台から飛びおりるような気持ちで県民の貴重な税金を投入してつくったその学校が、いつの間にか理事も、県も市もいなくなって、そして今回、吸収合併される。

 普通だったら、これはいろいろな議論があっていいんだと思いますが、これは県民のやはり了解とか同意が私は必要なのかなと思うんですよね。民間の法人と民間の法人ですから、法律的にはもちろん問題ないのかと思いますが、どう考えても、県民の同意、了解がなければおかしいかなと。

 そこで、この合併について、山形県あるいは山形市に対してこの法人はどういう対応をされて、県や市はどういう判断をされていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

河村政府参考人 今回の合併に向けて、東北芸術工科大学がどのような山形県や山形市に対しての対応をしているのかというお尋ねでございます。

 学校法人東北芸術工科大学に聞きましたところによりますと、法人から山形県知事に対して六月二日に合併計画について説明をし、法人としては了承を得たと考えたということでございました。その後、山形県の副知事に対しても合併計画や統合のメリットなどについて説明をしたとのことでございました。

 また、山形県議会に対しては、同じく法人の説明によりますと、六月十六日にすべての議員に対して合併協議に入ることについての資料を配り、また、両法人の理事会で合併を決定した後の七月二十六日に、すべての議員に対して両法人の合併の決定についての資料を配付したということでありました。

 一方、山形市に対しましては、やはり法人の説明によりますと、市長に対して五月二十五日に合併計画を説明し、法人としては了承を得たというふうに考えているということとともに、すべての市議会議員に対して、六月十六日に合併協議に入ることについての資料をお配りし、また、七月二十六日に両法人の理事会における合併についての資料の配付を行ったとのことでございました。

遠藤(利)委員 ちょっと確認したいんですが、きのう事前に河村部長にお伺いしたときに、六月二日に山形県知事から了承をいただいたというふうにお伺いしています。そういう解釈でいいんですね。

河村政府参考人 学校法人東北芸術工科大学の御説明によりますと、法人としてはそのように了承を得たというふうに考えているということでございました。

遠藤(利)委員 これは芸術工科大学から了承したというよりも、申請は当然、吸収合併でしょうから、瓜生山学園が中心になってなされたと思うんですが、芸工大から聞いたんですか、それとも瓜生山学園のその申請者から聞いたんですか。

河村政府参考人 申請は両法人連名でございます。事情をお聞きしましたのは学校法人東北芸術工科大学からでございます。

遠藤(利)委員 きょうはそこは時間もありませんから余り詰めませんが、少なくとも、東北芸術工科大学の法人から確認をしたところ、六月二日には山形県知事から了承をいただいた、そして五月二十五日、山形市長から了承をいただいた、そして、県議会それから市議会議員には資料だけ配付をしたというふうな状況だということでよろしいですね。

河村政府参考人 法人からはそのように考えているという報告、説明をちょうだいしております。

遠藤(利)委員 河村さんにちょっとお伺いしたいんですが、これは私法人ですから、吸収合併してしまうと、当然、法人というのは、都合によっては学校を廃止したり、あるいは校舎や土地を売却したりすることも可能ですよね。物理的にはできるということですよね。どうですか。

河村政府参考人 制度的には、さまざまな手続は必要でございますし、学校の廃止ということになりますと認可などがかかりますけれども、制度的にはそういう選択肢が将来的にはあるということでございます。

遠藤(利)委員 そうすると、県と市が建設費用を全部出してつくった大学が、いつの間にか吸収合併されて、そして、場合によっては廃校されようが土地建物が売られようが、何ら関与できないという形になってしまいますよね。それを県知事は六月二日に了承しちゃった、市長は五月二十五日に了承しちゃった、しかし議会にはただ資料を配っただけ。

 ちょっと私、これはおかしくないのかなという気はするんです。まだ実は、さっき言った八月九日で、若干お盆の前後ですからみんな余り関心を持っていなくて、最近になってようやく地元で、おかしい、言葉で言うと悪いですけれども、乗っ取られたんじゃないか、そんな声さえも聞かれて、いろいろ運動が出ているようでありますが、これは当然これから県内でいろいろな議論をされるんだと思います。

 もう一点だけお伺いしますが、文部省に対して県や市から、こういう状況だから何とかこういうふうにしてほしいとか、そういうふうな要望とか何かはありますか。

河村政府参考人 先日、八月二十三日でございますけれども、文部科学省の事務の担当者から山形県の担当者に対しまして考え方を確認いたしましたところ、山形県の担当者からは、統合の必要性などについて、法人に対して引き続き説明を求めていくこととしているという説明があったという状況でございます。

遠藤(利)委員 説明を求めると言っても、知事は了承しちゃったんでしょう。それで、今さら説明というのも、それは法人の話ですから確認しているのはわかりますよ。でも、法人はそう言って申請したわけでしょう。

河村政府参考人 先生御指摘のとおり、法人の認識としては、山形県知事あるいは市長に御説明をして了承を得られたのではないかというふうに考えているということでございます。

遠藤(利)委員 ちょっと何か急に歯切れが悪くなって、きのうは、了承したと河村さんはおっしゃっていて、何かいろいろあるのかもしれませんが、少なくとも、きのう、それからこの前お伺いしたときには、はっきり、了承されたとおっしゃっていたので、私はそういうことだと思うんです、という認識をしていると。

 そこで、これは我々にとりましても大変不安があるといいますか、せっかく県でこれだけの思い切った投資といいますか補助金を出してやったのに、吸収合併されちゃって、その後どうなるかわからないと。確かに、立派な運営をされ、大変いい評価の大学になってきています。そして、その瓜生山学園というのも、いろいろな経営努力をされて、そして評価を上げてきた、これも理解はできるんです。ただ、それにしても、全く県や市の手を離れちゃって、さあ、これからどうなるんですか、何ら関与できませんとなったときに、県民としてやはり何か納得できない、割り切れない思いがあるんですよね。

 これは多分、これから九月議会、山形県議会、山形市議会等でかなり議論されると思いますから、きょうはここで議論はそんなに申し上げないと思いますが、大臣、今の話を聞かれていて、少なくとも、建設費用を県と市で全部出しちゃった、まさに公設ですよ。

 運営は確かに頑張ってくれました。しかし、それが吸収合併される、それで、ああ、そうですか、やむを得ませんということで、やはり県民としては割り切れないんですが、少なくとも、県あるいは県議会含めて山形県の同意、了承を得る。私は、法律的には決して、私法人同士ですから問題ないんだと思いますよ。ただ、こうした経緯を考えたときに、やはり私はこれは必要だと思うんですが、いかがですか。

高木国務大臣 遠藤委員にお答えをいたします。

 今議論になっておりますこの二つの法人の合併について、学校法人東北芸術工科大学のある先生の地元の山形において異論が出ていることは聞いておりまして、特に、公設民営というお話もございました。そういうことからしても、非常に、納得のいかないというか、そういう感情が高まっておるのではないかと思っております。

 既に御承知と思いますけれども、学校法人の合併を定めた私立学校法においては、合併に当たって地元の議会などの了解を得ることは、認可に当たっての要件とはされておりません。が、私立大学や学校法人の設立、そしてその運営については、やはり地元関係者の理解や協力を得ることは、これは極めて重要であろうと考えております。

 特にこの東北芸術工科大学については、委員も御指摘にありましたように、山形県と山形市が、二百億という、かなりの財政的支援を受けて設立された経過を踏まえますと、議会を初め地元関係者の理解を得ることは、これはもう極めて重要なことでございます。

 今後、私どもとしましては、この両学校法人に対しまして、地元関係者に対して丁寧な説明を行って理解を得るように求めてまいりたいと思っております。

遠藤(利)委員 普通の私立大学なら丁寧な理解でいいんだと思いますけれども、建設費を全部出していたんですから。これだけのものがそう簡単に、丁寧な理解だけで済むのかなと。

 私の感覚からいえば、少なくとも県民の皆さんに説明して、県議会なり市議会で同意を得る、このぐらいのことがなければ、かえって後々、例えば、将来計画で子供さんたちが減ってきますよ、だったら今のうちから、まだ黒字ですが、いい大学をつくるために統合して、そしてさらにレベルアップを図りましょうと。そういう気持ちがあるならなおさらのこと、地元の皆さんにしっかり、理解だけではなくて、県知事と市長が同意しちゃったんですから、これは何で同意しちゃったかわかりませんが、しかし、お金を出した、県議会、市議会の最低同意ぐらい必要かと思いますが、大臣どうですか。

高木国務大臣 今の法制上からいって、こちらから、とにかくしなさい、あるいは議会の同意を得よということには現時点ではなりませんけれども、委員の御趣旨は私も十分理解できますので、この点についてはしっかり説明をするように、法人に対して求めていきたいと思います。

遠藤(利)委員 大臣としてはなかなかそれ以上のことは申し上げられないと思いますが、大臣じゃなくて政治家として、いかがですか。

高木国務大臣 という私も政治家でございます。気持ちとしては非常にわかるところがございます。その辺はそういうことで御理解いただきたいと思います。(発言する者あり)

遠藤(利)委員 今、留任してとかですね、ぜひ頑張っていただきたいと思いますが、この問題についてはこれからまた県内でいろいろ議論されるかと思いますから、きょうはこの辺にとどめさせていただきます。

 ただ、どちらにしても、逆に言うと、乗っ取りと言われないなら、そのためになおさらのこと、やはり県民の皆さんからしっかり同意をしてもらう、そのためには、最低限度、県知事、市長、説明がないうちにもう了承しちゃったというのも変な話ですが、県議会、市議会からしっかり同意を得る、最低このぐらい必要だと私は思いますので、ぜひこれからもしっかり見守っていただきたいと思います。

 時間が余りなくなりましたので、ちょっときょうは教職大学院のことを質問するんですが、簡単に、もう十分ですから、質問させていただきます。

 実は、きょうここに河村元大臣等おられますが、学校教育というのは、施設もありますね、それから教科内容もありますね、しかし、何だかんだ言ってもやはり学校の先生ですね。いろいろな組織を見ても、そのトップがしっかりしていれば組織は成り立ちますし、例えば高校野球などを見ても、やはり指導者ですよね。まさに学校の先生がしっかりしていれば、少々施設が足りなくても、あるいは指導要領がどうあれ、いい授業、いい教育はできると私は思っているんです。

 そこで、河村先生などと一緒に、今、四年制で免許を取って先生になっていますが、例えばフィンランドなどに行きますと、六年間しっかりやって、そしてその上で先生になっています、現場実習もしっかりやっています、そういうような形で教職大学院はどうですか、そんな話を我々いろいろ議論をして、そして平成二十年度からスタートして、二年間、修了したといいますか卒業したといいますか、出てきました。

 ただ、毎年、学校の先生というのは、免許は十一万人ぐらい取るんですが、先生になるのは臨時等も含めて三万人ぐらいですね。ところが、教職大学院をつくったんですが、なかなかふえなくて、平成二十年度は十九校できたんですが、二十一年度に五校ふえて二十四校、二十二年度に一校ふえて二十五校。定数も八百三十人。そのうち、ストレートマスター、ストレートマスターといって直接大学から入る人は、たかだか三百五十六人。そうすると、三万人のうち三百五十六人しか教職大学院に行っていないんですね。

 実はそのときの議論で、四年制で免許を出すのか、それとも六年制で免許を出すのか、いろいろ議論がありました。そして、私なんかは、お医者さん、それから歯医者さん、あるいは獣医師さん、今は薬剤師さんもそうですが、そうやって専門的な知識を持って六年で免許を取るのだったら、学校の先生というのはそのぐらいの、社会に評価される、今でも評価されていると思いますけれども、なお一層尊敬される先生となるには、やっぱり六年間で免許を取れるというぐらいのことは必要じゃないですか、そんな思いもあって我々は進めてきたところもあるんです。

 ただ、なかなか四年制の今の免許を取る仕組みを変えられなくて、四年で免許を取って、さらに二年間は、これは単なる研修しかないんですね、免許がふえるわけじゃありませんから。そうすると、入った生徒にとっては、別にそこで免許の資格が変わるわけでもない、それから評価が変わるわけでもない。もちろん、現場に行けば、ああ、この人は教職大学院を出て、いい授業ができますねというのはあるかもしれませんが、何かインセンティブがないんだと思うんですね。

 そうした現状について、どのように考えていらっしゃるのか。これは、局長、どうぞお答えください。

磯田政府参考人 御指摘のとおり、制度当初に導入を目指しました各大学による開設は一通り終えまして、その後の新たな開設がないという事実でございます。その理由としては、大学側にとりましては、実務家教員を初めとした教員の確保、少人数指導体制の対応等の負担が大きいということが言われております。

 また、御指摘の教育内容につきましては、理論と実践が融合した質の高いカリキュラムを提供しているわけでございますが、教員採用数が拡大している中で、受験生にその趣旨がなかなか理解しづらいということで、志願者がふえていないということで伺っております。

遠藤(利)委員 なかなか思ったように進んでいないなという感じがいたします。

 これは、我々も責任がありますから、一緒にこれから議論をしていきますが、ただ、今のままでいいのかなというと、三万人のうちの一%ですね、ストレートマスターは。そうすると、このままでは、もうちょっと何とかしないとねという気はするんです。

 もちろん、現職の教員から入ってきた人たちはそれらしく評価をされて、これはもう教育委員会から派遣されてきたりしていますから、将来の学校のリーダーになっていく、あるいはその地域のリーダーになっていく、それはそれでいいんだと思います。ただ、ストレートマスターについては、もう一工夫といいますか、何かしないと、ちょっと今は中途半端な位置づけになっているのかなと。

 実は、私は最近、前にフィンランドの話をしましたが、フィンランドなんかに行きますと、六年間ですから、一年間はインターンをやるんですね、現場で。ですから、例えば、教育学部を四年間卒業しましたよと、そうしたら、その後現場に一年行ったらどうだろうと。

 だから、ここで仮免許を与えて、四年間で仮免許を与えて、そして一年間現場でインターンをする。そうすると、当然、指導教諭みたいな、主幹とか主任の人が指導教諭になると思いますが、それできっちり一年間鍛えられる。同時に、これは習熟学習も一緒にやれるんですよね。インターンの人がそういう人たちにも教えられる。そうすると、初任者研修も一緒にやっているみたいなものですよ。

 これは、今は初任者研修制度が三位一体改革で国からの補助金がなくなったんですが、平成十五年まではおよそ百八十億円ぐらい。実際に、これは二分の一補助ですから、三百八十億ぐらい初任者研修で使っているわけですね。そうすると、端的に言うと、三万人の人に、百二十五万円あげますからあなたはインターンをやってくださいと。これでも物理的には可能ですね。そういうふうな仕組みも改めてもう一回考えていく必要があるのかなと。そうしないと、せっかくつくったその制度が生きていない、ふえていかない。そして、たかだかといいますか、これでは現場に行ったときに評価されようもない。

 ですから、そういう思い切った制度設計、つくってすぐ変えるというのは、これはなかなか難しいのはよくわかります。ただ、やはりだめなのを、だめとは言いません、なかなか難しいのをそのままにしておくんだったら、もっとインセンティブがあって、そして、なおかつ、仮免許で一年間やっているうちに、これで大体九割の人がここで合格できるというふうにしちゃって、専門職大学院、法科大学院みたいに二〇%や二五%じゃなくて、もう四年からインターンに行くときに九割方先生になれますよと、ここで絞っちゃう。

 そして、一年間現場で、半分は学校で、こうやって繰り返しながら研修も指導の実績になっていく。そうすると、指導教官が見れば、この人はできる、できない、わかりますよね。そういうふうな形でやる方法もあるのかなと。

 時間がありませんから、最後に、これからそういう教員養成についてどういうふうな形で展開していくのか、教職大学院も含めてお伺いしたいと思います。これは大臣かな、どっちでもいいんです。

 では、局長。

田中委員長 高木大臣じゃなくていいんですか。最後のチャンスです。

遠藤(利)委員 では、最後はやはり大臣に、せっかくですから、お願いいたします。

高木国務大臣 委員御指摘の御提案も含めて、これは非常に重要な課題でございます。

 これからも、各専門の立場、特に中教審でも一つの大事な議題にしておりまして、私たちとしては、とにかく指導者、いわゆる教職員の重要性については本当に御指摘のとおりだと思っておりますので、今の御提案も含めて、中教審でもしっかり議論をしていただいて、それを踏まえて対応してまいりたいと思っております。

遠藤(利)委員 どうもありがとうございました。

田中委員長 次に、稲田朋美さん。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美でございます。

 きょうは、「もんじゅ」のことについて主にお伺いをいたしたいと思っておりますけれども、その前に、質問通告はいたしておりませんが、冒頭、教科書の問題について大臣の見解をお伺いいたします。

 今回の教科書採択は、戦後レジームからの脱却を目指す安倍政権下で教育基本法が改正をされまして初めての教科書の採択であります。

 私、先日、鬱陵島視察のために韓国に赴きましたところ、入国を拒否されたということがございました。韓国にとって、あの竹島は、単なる領土問題だけではなくて、歴史認識の問題であり、民族の自尊心の問題であると。日本人からしたら少し理解ができないかなというところもあるんですが、しかし、やはりこの領土問題というのは、歴史認識の問題であり、民族の自尊心の問題であるというのが私は正しい認識であって、そういう気持ちを私たち日本人が取り戻すことが戦後レジームからの脱却の一歩なんじゃないかなという思いをいたしました。

 ところが、今の教科書はそうはなっていない。私は、例えば、竹島であれ、尖閣であれ、北方領土であれ、我が国固有の領土であるということを、歴史上も、そして国際法上も、その根拠を持ってきちんと教えるべきだと思っております。

 まず、笠政務官、その点についてどのようにお考えでしょうか。

笠大臣政務官 私も、今、稲田委員が御指摘のとおり、領土をしっかりと教えていくということは、これは国の基本であり、当然のことであるというふうに考えております。

稲田委員 大臣、ところが、今の教科書が必ずしもそうはなっていないという現状についてどのようにお考えか。

 また、やはりすべての教科書に、北方領土であれ、竹島であれ、尖閣であれ、歴史上も国際法上も我が国固有の領土であって、例えば、竹島は韓国が不法に占拠しているということもきちんと教科書で教えるべきだと私は思うんですけれども、その点について大臣の御見解をお伺いいたします。

高木国務大臣 今、笠政務官も答えておりましたけれども、将来を担う我が国の子供たちに、我が国の領土問題について正しく理解をしていただく、させるということは極めて重要な課題であると思っておりまして、新しい教科書においてもしっかり指導がされるものと期待をしております。

 二十四年度から使用される中学校社会の教科書では、地理、公民でほとんどすべての教科書において竹島を扱っておることは御承知かと思っておりますが、これからもしっかり指導をしていきたい、このように思います。

稲田委員 ただ、高校生の二%しか国境についてわかっていない。そして、韓国では、竹島が韓国領だということを教科書の一ページの三分の二ぐらいを使って国定教科書で教えている。我が国の教科書ではその根拠をきちんと教えていない、これは私は改善すべきだと思っておりますし、そうなっていない今の教科書は問題だと思いますが、大臣の見解をお伺いいたします。

高木国務大臣 今は、学習指導要領に基づいて、教科書の発行会社がそれぞれ工夫をして記載をしておる、このように考えております。

 私たちとしては、教えるべきものについては、たくさんあるとおりでございますけれども、今はそれで適切に、そのスペースはそれが最善だということで書かれておる、このように認識をしております。

稲田委員 全然物足りないですね。本当に、触れている教科書もあれば、触れていない教科書もある。私はきちんと根拠も教えるべきだと思いますし、今、いろいろな教科書があるとおっしゃいましたけれども、私は、民主党がマニフェストでおっしゃった中で、いいこともある。いいこともあると言うと失礼ですけれども、例えば政治主導、私はやはりやられるべきだと思います。

 ただ、その政治主導というのが、政治家みずから電卓をたたくこととか、例えば菅さんがやっているように、権限も民主主義の手続も飛ばして浜岡をとめたり、そういう思いつきでやることが政治主導ではなくて、私は、やはり、権限のあることを政治家が勇気を持ってやるということが政治主導だと思っております。

 そういう意味からは、この学習指導要領は大臣の告示ですから、学習指導要領の中に、領土についてきちんと根拠も含めて教えることと書き込めば、すべての教科書がそうなるわけですから、学習指導要領の中にそういう記載をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

高木国務大臣 政治主導につきましては、私も、やはり責任を持って、我が国の政治全般、行政全般、こういったものに責任を持つべきだと思っております。

 今の、学習指導要領についてのお尋ねでありますけれども、新しい中学校の学習指導要領の解説においては、新たに竹島について記述をしておりますし、北方領土同様に理解を深めさせることにしております。また、高等学校の学習指導要領の解説においては、我が国の領土問題について、中学校における学習を踏まえて、我が国が正当に主張している立場に基づいて的確に扱っており、領土問題についての理解を深めさせることが必要であるという記述をしております。

 私どもとしましては、竹島を含めた領土問題については、理解を深めさせるための指導がきちっと行われるものと考えております。

稲田委員 今の教科書の中に、竹島が、北方領土それから尖閣が我が国固有の領土であるということを、歴史上もまた国際法上もきちんと根拠をつけて記載されていないので私は質問いたしているわけですけれども、我が党の反省も含めて、政治主導ということは、まさしく権限のあることを、例えば文部科学大臣であれば、勇気を持って学習指導要領の中にきちんと書き込めば、すべての教科書に根拠が載るということを指摘させていただきます。

 それでは、「もんじゅ」についてお伺いをいたしますが、各種報道によりますと、八月十九日閣議決定された第四期科学技術基本計画から「もんじゅ」の推進が削除され、原子力の推進が大幅に後退をしたと報道をされております。

 この報道が事実かどうか。また、この基本計画における高速増殖炉の研究開発の位置づけについて説明をいただけますか。大臣。

笹木副大臣 まず私の方からお答えしますが、この文章を比較していただければ、二十三年の八月十九日、ここに書いてある文章というのは、高速増殖炉サイクル等の原子力に関する技術の研究開発については、我が国のエネルギー政策や原子力政策の方向性を見据えつつ実施する、こういう表現になったわけです。

 これはどういう意味かというと、福島の原発事故を受けて、今政府のエネルギー・環境会議の場で、「もんじゅ」の前に実際に稼働していた軽水炉の安全性のさらなる確認をする、検証をする、そして、軽水炉の安全確認についてもここで検討をしていく、結論を出していく。

 それと同時に、軽水炉と核燃料サイクルは非常に関係が強いわけですから、そうしたものと同時に、「もんじゅ」の安全性のさらなる検証、確認と、そして「もんじゅ」のあり方をエネルギー・環境会議の場で十二月をめどに結論を出す、こういう位置づけに今なっているわけであります。

 ですから、その結論を受けて最終的に「もんじゅ」のあり方については決定をし、そのことによって実施をするということになるということです。

稲田委員 笹木副大臣も私も地元ですので、地元の県民の皆さん方の気持ちはすごくよくわかると思うんです。要するに、早く方向性を決めていただきたいと。

 そして、政府の言っていることが、何だかもうころころ変わっているように思えてしようがないんです。不信感が募っているんです。例えば、枝野長官は八月十一日に予算委員会で、「もんじゅ」をゼロベースで検討すべきである、そして総理も、廃炉を含めて検討すべきであるという答弁をされているわけであります。

 大臣、その枝野長官そして総理の、廃炉を含めて検討するというのでよろしいんでしょうか。

高木国務大臣 特に稲田委員におかれては、地元福井県の関心も大変深く、これまでも地元の理解と協力の中で「もんじゅ」の存在があるわけでございます。

 そういうことで、今、総理とか官房長官の記者会見等の発言でございますが、私としては、政府の一員でありますから、政府としては、この「もんじゅ」については、今回の原子力発電所の事故を踏まえること、これがまず第一。

 その原因あるいは検証をしながら、いわゆる我が国のエネルギー事情を十分考察して、しかも同時に、再生可能エネルギーということがよく言われておりますし、これからもこれをかなり拡充していくことは重要な話でございますが、これがどの程度普及していくのかという実態、また、諸外国の取り組み等もございますから、こういうものを見て、そして我が国としてはしっかり、原子力政策をどうしていくのか、これはそう簡単な話ではありませんで、やはり重みを持った熱い議論をしていかなきゃならぬと私は思っています。

 それは、具体的には、今政府においてはエネルギー・環境会議というのが国家戦略大臣を主体としてやられておりますので、そういう場を通じて、しっかりこれからのこと、そしてこれまでのこと、私は、技術立国の日本として一体どうしていくのかと十分検討しなきゃならぬと思っております。そのことによって、次にどうしていくのかということが出てくるものだと思います。

稲田委員 なぜあえて大臣に、今の枝野長官それから菅総理の、廃炉も含めて検討するというのと同じ見解ですかということを質問したかと申しますと、大臣は七月に、「もんじゅ」の開発中止を含めて検討すると朝日新聞に報道されて、その後訂正の記者会見をされているんですよ。そういう真意ではなかったということをおっしゃっておりますので、私は、今、総理が廃炉を含めて検討するということについて、大臣はやや違う考えをお持ちなんじゃないかなと思ってお伺いをいたしております。

 もう一度、答弁、簡潔にお願いいたします。

高木国務大臣 私のいわゆる記者の皆さん方に御質問をされて答えた趣旨と、実際に報道されたものとは私は違っていると思っております。しかし、それは報道の自由ですから、あえて私はどうのこうのは言いません。

 ただ、私たちは、今、先ほど申し上げました、今回の原子力発電所の事故というのは大変な事態ですから、そういうものを踏まえてしっかり議論をする。だから、予断を持ってするんじゃなくて、やはりしっかり議論をするということだろうと思っております。

稲田委員 私も、今回の事故の原因を徹底的に究明するということが最も重要だと思うんです。それをもって安全性に生かしていくということが重要だけれども、それがまだできていない。

 そして、私は、「もんじゅ」に関しては、まず疑問なのは、なぜ浜岡はとめたのに「もんじゅ」は安全だと言えるのかなんです。平成十五年の一月に、名古屋高裁の金沢支部で、「もんじゅ」の安全性に瑕疵があるということで、許可が無効だという判決が出ました。ところが、浜岡については、平成十九年十月二十六日に、地裁で安全性を確認する判決が出ているわけです。にもかかわらず、浜岡はとめて「もんじゅ」は安全だと言うその根拠は何なんですか、そこをお伺いしたいと思います。

笹木副大臣 経緯をお話ししますと、「もんじゅ」については、周辺海域にはプレート境界は存在していない、だから、浜岡で想定されるような大きな津波の可能性はないだろうということで、ああいう判断をしたわけです。しかし、それで本当に十分なのかということで、ストレステスト、その二次評価の対象にも「もんじゅ」をし、さらに厳密な安全性の確認をしている、それが今現時点での状況です。

稲田委員 笹木副大臣も同じ地元なので。やはり浜岡をとめて福井の原発をとめない、その理由は何なのかということが本当に県民の疑問なんです。やはりそれは、私は、浜岡をとめたことが思いつきだったんじゃないかな、そしてそれによって余計に不安をあおっているということになるんじゃないかなと思います。

 先ほど、原子力政策の行方によってこの「もんじゅ」も決まるというのは、そのとおりだと思います。ただ、脱原発、原発をやめるんだと言うんだったら、多分この「もんじゅ」もやらないということになると思うんですけれども、軽水炉はやるんだ、でも「もんじゅ」はやらない、そういう選択肢が果たしてあるのかどうかを大臣にお伺いしたいんです。

 なぜそういう御質問をするかといいますと、文部科学省の出している資料で、ウランだけ燃やしていたらあと百年で枯渇するんだ、プルサーマルでも百三十年だ、高速増殖炉技術をやると三千年持続なんだ、だから、エネルギーの自給率四%の我が国にとって、安全保障としてこの高速増殖炉技術は必要なんだ、そういう資料を配って説明をされております。現状維持で軽水炉は続ける、でも高速増殖炉はやめる、そういう選択肢もあるんでしょうか。大臣にお伺いをいたします。

高木国務大臣 委員も御承知だと思いますが、このいわゆる「もんじゅ」、高速増殖炉サイクル、これは、ウランといっても限られた燃料だ、この限られたウラン燃料をより有効に使う、同時に、廃棄される核燃料廃棄物、これを最小化していく。こういうある意味では夢のような技術ですから、これについて、国際的な連携もとりながら、我が国独自としてもこれまで研究開発に取り組んできた、こういうことでございます。

 したがって、これについては相当な経費もかかっておりますけれども、やはり我が国のエネルギー環境を考えてみると、それも私は重要な政策であったろうと思っております。

 そういう意味で、この件については、これからも安全確認、私も先日、「もんじゅ」を直接視察させていただきましたが、いわゆるストレステストじゃありませんけれども、想定外の津波あるいは災害、こういったことに対してきちっとした安全対策をとれておるのかということを私も指摘しましたところ、今のところきっちり安全確認をしておる、こういうことでございました。

 したがって、さらなる安全点検の強化と、それから同時に、もう言わずもがなでありますけれども、もし万々が一に何か起きたときには、どういう対応ができるんだ、どういう対処をするんだ、こういうこともきっちり詰めておかなきゃならぬ、このように思っている、これが今の私たちの課題ではないかと思います。

稲田委員 そこで、例えば、「もんじゅ」で福島の事故のようなことが起きた場合、すべての電源が喪失するような事故が起きた場合、どういう事態になるのか。また、その場合、福井県やら周辺の県に対する被害はどのようなものと見積もっておられるのか、お伺いをいたします。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 「もんじゅ」において全電源喪失をするというのは、福島の事故の教訓を踏まえまして、これは必ず考えなければいけない、そういう事象でございます。

 そこで、「もんじゅ」におきましては、非常用電源も含めてすべての電源が喪失する場合というのはどういうことに設計されているかということでございますけれども、まず、制御棒が自動で挿入されて原子炉が停止する、そういう設計になっております。全電源が喪失するということでありますから、冷却材であるナトリウム、これが循環するポンプも動かなくなるということが想定されます。

 その場合にも、通常三ループで冷却しておりますけれども、一ループ、二ループと壊れて三ループともだめになる場合も、これも想定する必要があるということで、その場合には、ナトリウム冷却系が、配管の中を動力がなくても、いわゆる自然対流によって循環するということで原子炉の熱が外部に逃がされていく、そういう設計をしておるものでございます。

 このような設計は、諸外国の高速炉では通常とられておる設計でありまして、実際にその実証も世界各国でなされているような設計であると認識しております。

 また、福島の事故によるさまざまな教訓を踏まえまして、安全規制当局からの指示もあって、緊急安全対策、種々実施しておりまして、その確認も安全規制当局から順次されているところでございます。

 その一部として、ストレステストという形で、本当に極限にまで壊れてしまう場合というのは、どういう事象が生じて、それはどこに脆弱な点があるのかというのをこれからしっかりと確認するというプロセスをしっかりストレステストのプロセスでやってまいりたい、そういう段階にあるわけでありまして、そういった考えられるあらゆる安全対策をとりながら、「もんじゅ」の安全性確保に万全を期せるように努力していきたいという状況でございます。

稲田委員 お答えになっていないんですよね。福島のような事故があったらどうなるんですか、そして福井や周辺の都市にどんな被害が起きるんですかということについては、今お答えになっていないんです。

 ストレステストのことをおっしゃいますけれども、ストレステスト、結局は基準がないんですよ。こんなストレステストみたいなものに時間をかけているよりも、徹底的に福島の事故の原因が何であったかという究明を先にやっていただきたいなと私は思います。

 また、この「もんじゅ」については、一次評価はやらずに二次評価をやるんだ、ストレステストの二次評価をやって、再開をするときに、結局は、総理と官房長官、経産大臣、原発担当大臣。何で文部科学大臣がそこに入らないんですか。「もんじゅ」を所管している文部科学大臣も、最終的に、そのストレステスト、私は意味ないと思いますけれども、それを踏まえて決断するときに文部科学大臣が入るべきだと思います。なぜ入らないんですか。

高木国務大臣 何で私が四大臣の中に入らないかということについては、これは政府として、また総理としての判断でそのようになったと思っております。

 ただ、御指摘のとおりに、これは、原子炉等規制法、これを所管する経産大臣が行うことになっておりますので、そういった安全性の判断についてはそういう法令の中でやっていく。しかし、一方で、「もんじゅ」は運転の再開というのがございます。そういう意味で、この運転の再開については、地元の理解、協力というのが不可欠でありまして、私どもとしましては、これまでも経済産業省あるいは文科省とともに地元の自治体と協議会をつくっておりまして、いろいろ協議をしてきております。

 そういう意味では、政策的に判断を行うことがこれからもあろうかと思っておりますので、その点については、私も必ず運転再開の判断についてはかかわることになる、私はそのように考えております。

稲田委員 安全性については経産省だからというのが役所の説明なんですけれども、結局、最終判断するのは総理以下政治家で、それは、安全性を踏まえた上で、国民の信頼だとか安心を見て判断をするわけですから、私は、この「もんじゅ」を所管している文部科学大臣を蚊帳の外に置いて再開の判断をするということは、地元としても絶対に納得をできません。そんな無責任なことはやめていただきたいと思います。

 その上で、事故の原因なんですけれども、私は、長年、高経年化ということがやはり因果関係としてあったんじゃないかなと思います。福島第一でも、一号機は早く炉心が溶解をしております。

 そういう意味から、福井に四十年たっている原子炉が二つありますけれども、この高経年化している原子炉、これは、部品が古くなっているとかさびついているとかそんなんじゃなくて、技術がもう古くなっているわけですから、もし現状維持というのであれば、新しい最新の技術のものに置きかえるということを考えるべきではないかと私は思うんですけれども、その点についての見解をお伺いいたします。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 高速増殖炉「もんじゅ」、確かに、プロジェクトが開始されたのは昭和五十五年でございますので、最初からは既に三十年経過してございますけれども、その安全性等につきましては、平成十八年に改正されました耐震設計審査指針がございますが、これに照らして評価されているということでございます。

 安全委員会、安全規制当局におかれましては、敷地周辺の地震動が発生した場合でも、これにより、この審査指針に照らしても安全性が確保されるということを確認しているというのは、まず根っこでございます。

 その上で、今回、東京電力の福島原子力発電所の事故がございましたので、それに加えて、さまざまな安全規制当局からの指示が出されておりまして、今、それに従って、福島発電所の教訓を踏まえた形での安全性がきちっと確保できるような作業を進めているところということであります。

 確かに、使われている技術は、三十年前に始められたプロジェクトでありますから、その期間、古いと思われるかもしれません。ただ、諸外国の高速増殖炉は高速炉の一種でありますけれども、諸外国におかれましても、ナトリウム冷却型の炉というのは、これは一般的、すべて高速炉はそういう形で諸外国もやっておられるわけでございますから、そういう形で、決して「もんじゅ」の技術が極めて古過ぎるということではないと考えております。(稲田委員「そういうことは聞いていません。もういいですけれども、質問に答えてほしいんです」と呼ぶ)

田中委員長 委員長から稲田議員に申し上げますが、委員長の許可を得てから落ちついて発言してください。

稲田委員 済みません、委員長。余りにも質問していることと違うことをお答えになるので、ややかっときて立ち上がりましたけれども、私が聞いたのは、高速増殖炉のことではなくて、四十年以上たっている福井の原子炉、この問題についてお伺いをいたしました。時間がありませんから、もう答弁は求めません。

 最後に、大臣、福井は、「もんじゅ」それから十四基の原子炉を抱えております。ですから、その安全性ですとか人材の育成とか、そういうものを、遠い東京ではなくて福井の現地でそういう第三者機関をつくることも含め、また人材の育成をすることも含め、検討すべきではないかなと思っているんですが、その点についての御見解をお伺いいたします。

高木国務大臣 原子力行政の中で、これからも、例えば福島の原発はステップ2の中で冷温停止を目指しておりますが、その後、廃炉にするという方向性も出されております。廃炉にしても、安全性の中でそれをきちっとしなきゃならぬし、それから同時に、今の原子力発電所をさらなる安全の向上策を講じなきゃならぬということ。

 それから同時に、もし万が一に事故が起きたら、前の福島はそうでありますけれども、いわゆる除染技術、こういったことも我が国の英知をもってしっかりやっていかなきゃいけない。そういうことも、いろいろな人材の育成は、これからも私は重要になってくると思います。

 それを福井県に、そういうセンター、拠点を持ってこい、こういう御指摘でございますが、これも、それはそれと御意見は承っておきます。

稲田委員 ぜひお願いをいたしたいと思います。

 この事故が起きましてから、我が県からも、原因の分析、そして高経年化していることの因果関係の問題、また、なぜとめたのは浜岡だけなのかということなど、そういう疑問についてきちんとお答えをいただいて、やはり、早く方針を決めて、ぶれずにやっていただきたい。そうしないと不安は募るばかりであるということを申し上げて、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

田中委員長 次に、馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩です。

 まず、私学の災害復旧助成法案についてお伺いをいたします。

 参議院で成立をしましたこの法案で、衆議院でも成立をした場合に必要となる所要の予算は幾らなのかをまずお伺いしたいと思います。

 法案が成立しない場合には二分の一補助、成立した場合には公立並みの三分の二補助、六七%に引き上げられるということで、この差額の部分、法案が成立した場合には三分の二とするということでありますから、その所要額についてまずお伺いをしたいと思います。

河村政府参考人 お答え申し上げます。

 被災した私立学校の再建を図るために、第一次補正予算で、現行の制度に基づく補助率により算定した施設災害復旧費として六百四十三億円を計上しております。

 お話しになりました法案によって補助率が三分の二になった場合、それから、新たに対象となる公立専修学校等も含めますと、第一次補正予算における積算をもとにした試算ですけれども、約二百十八億円程度の追加措置が必要になると見込まれます。

馳委員 財務省からわざわざ来ていただきました五十嵐先生にお伺いしたいと思います。二百十八億のやはり意味の大きさということ、この御理解を求めたいと思うんです。

 民主党の文部科学の部門会議では一たんこの法案についての必要性の理解が得られましたが、国対に持ち込んだところでストップがかかったという事実が、衆議院の文部科学委員会の理事会で明らかになりました。公党間の信義を守れなかった松宮勲筆頭理事は、安住国対委員長に対し抗議の辞任をされました。

 ただ、その本当の理由は、財務省が難色を示したと言われておりますし、実は、けさも我が党のベテラン議員の方から安住さんに直接確認をいたしまして、財務省がねえという返事だったんですよ。

 そうすると、五十嵐さん、我々やはりこの文部科学委員会としても、私学経営者の今置かれている現状と緊急性から考えて、この二百十八億円の重みというものをぜひ御理解をいただいて賛同いただきたいと私は思っているんですが、なぜ難色を示されたのかという理由をまずお聞きしたいと思います。

五十嵐副大臣 お答えいたします。

 馳先生にいつも熱血の質問をいただいて、御意見をいただき、ありがとうございます。

 今の件ですけれども、特に財務省が反対だから反対だということではないと思います。八月十八日のあの委員会審議の際にも文部科学大臣から御答弁があったと思いますが、内閣全体として、この法案については反対という態度を決めさせていただいていると。

 その理由は、私も災害対策の委員長をやりましたけれども、災害対策の補助率というのは、過去の災害の被災者、被災地と比べてどうかとか、あるいは他の施設と比べてどうかというそのバランスの上に立っているものですから、例えば、私立の医療施設、あるいはほかの公益的な団体が経営する施設等もあります、こうした団体とのバランスはどうかというようなことを考えなければなりませんので、私学だけを取り出してというのはなかなか難しい、全体の中で検討をさせていただきたいというのが基本的な立場でございます。

 ただし、私学の重要性を軽視しているわけではございませんので、実際に今回の場合も、第一次補正において、ただいま局長から御答弁がありました六百四十三億円、二分の一分の補助に加えて、教育研究活動の復旧の補助として別途二百十二億円を計上いたしておりますので、大体見合っているかなとも思いますし、趣旨はよくわかりますけれども、いろいろな工夫、検討を加えないと、直ちに御提案をそのまま認める、賛成をするというわけにはいかないということだと思います。

馳委員 丁寧に御答弁、ありがとうございます。

 そこで、この議論を深めなければいけないなというところなんですね。別途二百十二億円を措置されたといいましても、では、それが建物に丸々使えるのかというと、そうではありませんよねということなんです。そこと、私学の緊急性というのを私はあえて今申し上げました。ここは高木大臣も、あらゆる私学団体から窮状を訴えてきておられるのでわかっていると思われます。ここを私は与野党詰める、というか、野党は一致して賛成しておりますので、民主党の皆さんと詰めるところだと思っているんです。

 三月十一日に発災をしまして、私学の施設等も、流されたり、ゆがんだり、全壊、半壊等いろいろございました。職員のことを考えてみますと、雇用保険の支給期限というのがございまして、半年で終わりますよね。そうすると、この年末に当たって職員の雇用をどうするかという問題が出てくるということは、容易にやはり想像はつきますよね。この職員の雇用の問題。

 さらに経営者の立場になって考えてみたいと思いますが、大体今の時期あたりから私学の皆さん方は、来年度の園児、児童、生徒、学生の募集に入るわけです。そうすると、その見込みが立たないといけませんから、ある程度のキャッシュフローとしては持っておかなければいけない。そうすると、では、建物の建てかえ、現地でいいのか、それとも移動してやるのか。そうした場合に土地の取得も入ってきます、事務経費も入ってきますとなったときに、やはり公立並みの三分の二補助を求めたいという気持ち、これは私は高木大臣は理解しておられると思うんです。

 そこをやはり埋め合わせていく議論が必要で、そうすると、病院等のほかの私立にかかわる施設との差別化をどのように理解するかということは、これは、議論をする重要なポイントだと思うんです。

 五十嵐副大臣がおっしゃったように、まるっきり反対とか必要がないと思っているわけではないんです。どのように手当てをするような理屈を考えていけばよいのかということの議論が必要だということの認識を私は持っておりますし、まだあきらめてはいないんです。

 私がまだあきらめていないと言う理由は、第三次の補正に何とかのっけていきたいなという希望と、それから、やはり私学等の経営者の皆さん方の思いを考えると、廃園にしなければいけないというせっぱ詰まった事情もあるわけですよね。

 先般、予算委員会で私は大臣にもお聞きしたように、福島県の消えた幼稚園児、退園したり転園したり、休園中の幼稚園のお子様方が千人を超えておりましたよね。そうすると、現状でさえも私学助成の対象となる子供の数が減っている、現状でもいつ何人戻ってくるかわからないといった中で、経営者の立場を考えると、どうやって建物の再建を果たしたらいいんだろうかという逼迫した心情というもの、これは理解できると思うんです。

 プラス、今までの債務も抱えておられますから、まさしくここは二重ローン対策ともなってくる。こういう窮状の中で判断をしなければいけないと私は思っているんですよ。

 大臣としての見解を求めたいと思います。

高木国務大臣 馳委員にお答えをいたします。

 今、特に私立学校、幼稚園の例も出てまいりました。私も被災地に赴いた折に、本当に、特に私立幼稚園があちらこちらで津波によって被害を受けたことを見ておりまして、今言われておりますように、いつこれが再開できるのか、職員の生活のこともありますでしょうし、あるいは来年度の募集のこともあるでしょうし、しかし、募集をしても集まらなければ経営が成り立たない、園が成り立たない、こういう厳しい受けとめは私も同様であります。

 したがって、何とかできないものかと、我々もその辺は、特に私の文部科学大臣という立場においては、公私の格差をなくして、児童生徒、学生がしっかり勉学に励めるという環境をつくることが私の責めでございます。

 ただ、今お話があったように、これまでの経過や今の法体系等を考えますと、現時点では、それをはねのけ越えていく、これは最終的には国民の理解を得られなきゃなりませんので、そういったある意味では理論武装もこれからも大事でありましょうし、熟慮に熟慮をしておりますが、先般、私が参議院において政府の見解を述べましたものは、むしろあれは閣議決定事項でございまして、政府全体としてああいう結論になったと。

 私としては、結論は結論といたしましても、何とかいい方法はないのか、今なお、頭の中にはそのことがめぐっております。

馳委員 これは五十嵐副大臣も高木大臣も、あきらめているわけではないけれども、政府として統一的な対応をしてきたこれまでの経緯を踏まえれば、現状においては反対せざるを得ないという苦しい立場であるということはよくわかりました。

 実は安住国対委員長の方も、けさ、我が党のベテラン議員に対して、自民党のしかるべき方と調整をして、次期臨時国会の冒頭においてでも、あるいは、できるだけ早い段階においてこの法案は処理した方がよいという見解をお述べになられました。

 我が党においては、当然、担当するのは、文部科学のネクストキャビネットの大臣であります下村さんであります。我々も協力をいたします。今はもう会期末となってしまいましたが、臨時国会も、我々は九月九日に速やかに開催するべきだと主張しております。九月中には開催されると思います。

 協議は継続をし、何とかしてやはりかさ上げできないものかという部分についての埋め合わせ、修正、あるいは予算措置で何らかできないか、特交でできないか、いろいろなアイデアを出しながら、私は、この災害を受けた私学の建物については、やはりかさ上げをする、この方向性を見つけるべきであろうというふうに思いますし、財務省は何が何でも反対しているわけではないということはお聞きしましたので、この件については、引き続き、引き継ぎ案件として次期臨時国会に持ち越していただきたいと思いますし、高井筆頭理事の理解をいただいて、この後、委員会終了後には参議院のこの法案について趣旨説明もされることになっておりますので、誠意ある対応を求めたいというふうに思います。

 それで次の問題に入りたいと思いますが、三党合意による高校無償化の見直し問題であります。

 私がきょう資料として提示をいたしました三党合意の文書、そして、高校無償化に関する高井美穂筆頭理事の発言を皆さんごらんいただきたいと思います。

 三党合意と高井さんの発言と違うじゃないかと追及したいところでありますが、まず最初に、高木大臣、三党合意というものは、ここに署名をしている幹事長の岡田さん、石原さん、井上さんが交代をしたら、この三党合意の趣旨は破棄されるものですか、それとも守られるべきものですか。国会対策や議運対策の長い、ベテランの高木先生にお伺いしたいと思います。公党間で交わしたこの文書の重みについて所見をお述べいただきたいと思います。

高木国務大臣 三党合意ですから、これはもう公党間の協議の結果の約束でございますから、これは真摯に遵守されるべきものだと思います。

馳委員 そうすると、減額を視野に入れての見直しをすると。

 見直しのテーマを、私はあえて高井さんの発言からちょっと引っ張ってきたいと思います。この高井さんの文書の中に明確に出てまいります「公私間格差の問題」、「授業料減免済みの経済困窮家庭には恩恵がないこと」、「高校教育の質の向上」、少なくともこの三点については見直しの論点になると思いますが、その認識でよろしいですか。

笠大臣政務官 まず、今の馳委員の質問、しっかりとやはり政策効果の検証をまず行う、その上で見直す必要があるかどうかということで、そういう意味においては、今の点も含めて、まずきっちりと検証を行わせていただきたいというふうに思います。

馳委員 検証した上で見直しをする。三党合意というのは極めて練り上げられた文書で、御存じのように、我が党においては撤回と言い続けてきましたよ。ところが、ここの文章では「見直し」という文言になっているということを御理解いただきたいとともに、三党合意には減額の方向性も明確に書いてありますよね。そこなんですよ。減額の方向性で見直しをするというのが三党合意なんです。

 そうすると、我が党の下村委員もかねてから指摘をし私も主張してきたように、所得制限という一つの落としどころというのは、現実的な見直しのテーマになってくるんですよ。

 私は今、撤回、撤回という言葉は使っていません。三党合意には、検証した上で見直しという文言があるんです。高井さんの文書には、より拡充しろというふうな雰囲気の言葉もございますけれども、そうではありませんで、減額の方向性での見直しだということの理解を大臣はしておられますか。

高木国務大臣 私は直接に協議に参加をしておりませんし、また、そういう立場でもございません。

 三党合意の結果をしっかり見ていますと、まずは一として、「歳出の見直しについては、以下のとおりとする。」「高校無償化及び農業戸別所得補償の平成二十四年度以降の制度のあり方については、政策効果の検証をもとに、必要な見直しを検討する。」こういうことであろうと思っておりまして、それで、「なお、これらを含めた歳出の見直しについて、平成二十三年度における歳出の削減を前提に、平成二十三年度第三次補正予算ならびに平成二十四年度予算の編成プロセスなどにあたり、誠実に対処することを確認する。」こういうことでございました。

 この解釈については、私は、まさに三党合意はこの文書すべてでございますので、まさにこれから、政策の効果をきっちり検証することに尽きるのではないかと思っております。

馳委員 そういうことを言い続けるから、高井さんのようなこういう文書が表に出てしまうということを指摘しておきたいと思います。

 何度も言います。所得制限という現実的な話をなぜ持ち出すかというと、文科省も数字を出してくださったように、中退者が減ったということ、これは政策の効果として私は認めるべきだと思います。そうすると、経済的な困窮家庭に対する支援ということを現実的に考えることと財政健全化を目指すという政府全体の議論と、やはり重ね合わせて議論をしなければいけないと思っています。

 五十嵐財務副大臣も、財政健全化は政府全体の方針であり、我が国が国際社会から信頼を得るために、財政的な措置について厳しくチェックをして結論を出していかなければいけないということについては、これは異論はないと思います。

 そういった意味での落としどころが所得制限であるということを私は申し上げているということを、改めてこの場で表明をしておきたいと思います。

 その上で、公私間格差であったり、あるいは給付型の奨学金の制度をつくるなどといったきめ細かな配慮、あるいは、高校に通っていない、フリースクールに通っているお子さん方は減額のままでありますから、特定扶養控除がなくなっていますから、こういう子供たちに対する教育的支援をどうするか。これは川端大臣が約束されましたが、いまだに実行されてはおりません。

 こういうきめ細かい対応の上で政策の検証と見直しがなされていくべきだ、このことをまず申し上げて、朝鮮学校の問題に入りたいと思います。

 大臣、昨年度、朝鮮学校は一時停止のままですけれども、あの額は幾らで、平成二十二年度、朝鮮高校に出すはずだったお金は今どこに行ってしまっているんですか。宙に浮いているんですか、今後どう取り扱うんですか。お伺いしたいと思います。

山中政府参考人 委員御質問の高等学校就学支援金でございますけれども、支給対象となる可能性のある私立学校等の生徒全体について計上しておりますので、朝鮮高級学校の予算につきましては、約千八百人でございますので、年間所要額が約二億円というふうに見込んだところでございます。

 これで昨年度の予算につきまして執行されなかった予算につきましては、決算上の不用ということで取り扱われまして、決算剰余金として今年度予算の歳入の方に繰り入れられるということになっているところでございます。

馳委員 平成二十三年度予算にはその二億円は計上されていますか。

山中政府参考人 平成二十三年度予算におきましても、可能性のある私立高校等の生徒全体の数を見込みとして積算しているということでございますので、朝鮮学校を含めた形で見込みとして積算して、計上しているというところでございます。

馳委員 毎年計上し、そして、この一時停止措置が解除されなければ毎年決算剰余金になるという理解でよろしいですよね、大臣。

高木国務大臣 はい、そのように考えております。

馳委員 となると、これは予算委員会で私が指摘いたしましたけれども、超法規的措置なんですよ。そのまま続けていいと私は思いません、法治国家ですから。

 大臣、この一時停止の措置についても、解除することについても、規程ではなくて法律にするのか、せめて省令として明確な方針を示さなければ、まだこれ、朝鮮高校の方から訴訟は起きていないのかなと思いますけれども、どんな基準でどうなるのか。菅総理が超法規的措置で一時停止、高木大臣はそれに従った。では、いつ解除するのか。そのお金は宙に浮いて決算剰余金。このことが続くことは、法治国家である我が国においてはよくないと思いますよね。

 大臣、菅総理はこのままおやめになるようです。この問題は、高木大臣の責任としても、やはり明確な基準とか声明とか出しておかないと、同じことを今後とも我々は追及せざるを得ません。そのことについての見解を求めたいと思います。

高木国務大臣 朝鮮学校の審査手続の再開についてであります。

 これについては、手続をしておりましたときに、昨年の十一月二十四日でしたか、いわゆる事件が起こりました。したがって、この北朝鮮の砲撃以前の状況に戻ったと総合的に判断ができる状況になった場合など、状況に応じて判断することになろう、このように思います。これは総理の判断であります。

 また、申請に対する審査につきましては、これは行政手続法などにのっとって行うべきものであると考えておりまして、今回の審査手続の停止及び再開について、法律に規定することは考えておりません。

馳委員 だからそこで、大臣は私や下村さんとの議論の中で、教育問題として判断すると口を酸っぱくしておっしゃってこられたけれども、ある日突然、総理からの御下命で超法規的措置をされ、それに同意をされてしまいました。

 恐らく数日中に辞表を書かれると思います。その前に、この問題についてこのままにしておいてよいのか。教育を担当する文部科学大臣として、せめて声明なりを出す、大臣としての見解を世の中に示しておくことにならないと、朝鮮学校の皆さんの立場も考えてください、同時に、私たちは明確に教育問題として反対をしてまいりました。これ、議論が堂々めぐりのまま、我が国の政府の方針としても極めてよくないと私は思います。大臣には、教育を担当する大臣としての方針は明確に示した上で辞表を書くなら書くべきだ、私はそう思います。この宿題を次の大臣に持ち越すべきではありません。

 もちろん、高木大臣が留任をされれば私はそれでうれしいと思いますけれども、いかがですか大臣。

高木国務大臣 今の質問にお答えする前に、先ほどの答弁で、北朝鮮の砲撃は私は十一月二十四日と述べましたが、二十三日の間違いですから、訂正させていただきます。

 その上で、今の状況を私としては放置をしておくことは考えておりません。何らかの対応をしたいと思います。もちろん、委員が御指摘のとおり、教育担当大臣という立場からの判断になろうかと思っています。

馳委員 万が一辞表を取りまとめられる段階が来ても、この問題についてやはり教育担当大臣としての明確な方針をお示しの上でやめられることが、まさしくこの問題に携わった当事者としての責任であるし、それこそが私は政治主導の意味ではないかと思っております。

 以上申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 私は、先日、東北大学青葉山キャンパスにお伺いをして、大学当局から東日本大震災による被害の状況を聞き取るとともに、大学内を御案内いただいて、現場を視察してまいりました。

 東北大を視察して感銘を受けたのは、大学関係者がみずからも被災しながら、研究教育施設設備に甚大な被害を受けながら復旧もままならない中で、被災者のために、みずからの専門性を生かして復旧復興に大きな力を発揮してくださっているということであります。

 例えば、東北大学総合学術博物館の皆さんは、その専門性を生かして、南三陸町歌津にある魚竜館の多くの魚竜標本の救援を初め、おしかホエールランド、マリンパル女川、岩井崎プロムナードセンターなどで標本の救出活動をしておられます。この救出活動は、文化庁が文化財レスキューの活動を始めるよりも前に独自に開始をしたとお伺いをいたしました。

 東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターの皆さんは、福島市で、専門性を生かした農産物の放射性物質の調査、除染活動に当たっておられます。

 大学病院も、震災直後から、被災患者の受け入れ、他の医療機関への支援などに取り組んできたとお伺いをいたしました。

 みずからが被災しながら、その専門性を生かし、復旧復興に力を尽くしておられる大学関係者に本当に頭が下がる思いでありますけれども、まず、大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

高木国務大臣 宮本委員にお答えをいたします。

 過日の東北大学の視察についてのお話がございました。私も、三月二十七日には福島大学など、そして五月十一日には東北大学を回ってきました。その際も、確かに、被災に遭われながらも、いわゆる被災者、犠牲者の救済あるいは支援活動、こういったものを、先生方が、また学生と協力をして本当にしっかりやっておられることもお伺いしましたし、こういうことについては非常に私も心を打たれたところでございます。

 そういうことで、私のみならず、副大臣あるいは政務官も職員も大学を視察しておりまして、特に、大学においても地域復興センターを立ち上げていただいて、御尽力をいただいております。

 私としても、こういった大学の真摯な活動、姿勢に敬意を表しておりますし、これからも、被災復旧復興については最大限の支援をしていく気持ちは持っております。

宮本委員 このように復旧復興に大きな役割を果たしている大学を支援することは、国の責務だと思うんです。

 しかし、震災から五カ月もたつにもかかわらず、実は、復旧は大きく立ちおくれております。

 東北大学当局の説明によると、学舎の被害は、二十八棟が危険判定で使用不能、要注意判定は四十八棟、危険建物として使用できない建物は約四万平方メートルに上ると。極めて甚大で、施設等の復旧に約四百四十八億円、被害を受けた物品の被害については、約三百五十二億円に上るという説明でありました。

 私は、特に被害の大きかった大学院工学研究科の電子情報システム・応物系の建物や理学部・理学研究科棟などを見て回りましたけれども、これらの学部や大学院では、建物もさることながら、研究室内にあった実験器具や研究機材が、数千万単位のもの、中には数億円もする高価なものもございます、建物に倒壊の危険があるため運び出すこともできない状況で、とりあえず高価な実験器具等を運び出すために、ひとまず倒壊の危険を回避するための応急工事が今行われておりました。

 研究室によっては、実験ができないために研究が滞り、大学院生の修了がおくれるとの話もあり、一刻も早い復旧が必要だと思います。

 復旧のためにかかる経費は第三次補正予算で措置されると聞いておるわけですけれども、既に、大学では多額の出費を強いられております。第二次補正予算の予備費八千億というものがあるわけですけれども、これを取り崩してでも直ちに手当てをする必要があると私は感じましたけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

高木国務大臣 御指摘のとおり、この東日本大震災では、国立大学の施設においても深刻な被害を受けました。もちろん、東北大学はその一つであります。特に、建物そのものもそうですし、中には貴重な研究資材がたくさんありまして、ある意味では高価なものと私は認識しております。

 こういったハード、ソフトを通じて、これは一刻も早い復旧復興はもう当然重要でございまして、そのためには、私たちは第一次補正予算でいち早く計上しておりまして、まずはその執行をしっかりやっていくということです。

 今後といたしましても、現在実施しておる復旧復興のためには、必要な措置、これについては適切に我々としては対応してまいりたい、このように思っています。

宮本委員 現状は持ち出しになっているという話もお伺いしましたので、二次補正でせっかく八千億、これは震災対応ということで予備費を積んだわけですから、そういうものも取り崩して、やはり大学に負担がかからないようにすべきだと思うんです。

 それで、先月の二十七日の私の質問で、震災で被災した私学の二重ローンの解消ということを大臣に問いました。御答弁で気になった点が一つあったので、指摘をしたいと思うんです。

 あのとき大臣は、私学が、一般の事業者と違って、災害復旧費の補助や私学助成があるから、自己資金がなくとも復旧に当たれるかのような答弁をされました。しかし、これはひどい言い分だと言わなければなりません。

 災害復旧費の補助があるのは当然でありまして、一般の事業者と比べるならば、大体、私学というものは、公共的な性格を持ち、営利を目的としているものではありません。私学助成というものは通常時でも受けているわけでありますから、災害復旧の補助や私学助成があるから二重ローンの解消が必要ないかのような答弁は、私は問題だと思うんです。

 私は改めて、震災から私学が復旧、再建を進める障害となっている二重ローンの解消、特にその中でも、私学事業団の既存の債務の解消を行うことが必要だと思うんです。

 民間金融機関の債権をどうするかが今議論をされて、二重ローンの解消ということが議論されていますけれども、他の省庁が所管している独立行政法人の貸し付けも、解消する方向での議論が進んでおります。文部科学省所管の特殊法人である私学事業団だけは何も行わないというのでは、おかしいではありませんか。

 私学事業団の既存の債務の解消は、文部科学省がその気になれば行えることなんですから、すぐに行うよう決断すべきだと私は思いますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

高木国務大臣 今御指摘の日本私立学校振興・共済事業団のこの融資につきましては、現在、債務の返済を猶予する、このこともやっております。また、新たな貸し付けについては、五年間の無利子、そしてその後の低金利の長期融資を実施しておりまして、その融資条件についても、従来より増した、かなり緩和した弾力的な対応をしておる、このように私は認識をしております。

 この私立学校の復旧につきましては、今御指摘の、融資のみに頼らざるを得ない一般の事業者とはこれは異なって、まず第一に、制度上、激甚災害法に基づく施設災害復旧費の補助、また第二に、教育研究活動の復旧のための経常費補助、こういったものを行っておりまして、当面、自己資金がなくても復旧に当たれるように、まずは第一次補正予算で措置をしております。

 なお、どうしても津波によって移転をせざるを得ないほどの甚大な被害を受けた例えば私立幼稚園等については、これはまさに政府の関係府省とも連携をとりまして、いわゆる移転とかあるいは土地再開発とか、そういうことがありますから、これは自治体の意向と学校法人、そういった声を十分に聞きながら、まさに第三次補正予算における対応を含めて努力をしている、こういうことでございます。

宮本委員 よくわからないんですね。今、参議院を通って衆議院に付託された法案、私学の復旧の助成のかさ上げということがやられれば、なるほど、自己資金がなくてもほとんどそれで賄われるということになるでしょうけれども、それは、残念ながらまだ成立するという状況になっていないですよね。ですから、返済猶予という、返済についてはしばらく時間を待ちましょうという話はあるんですけれども、少なくとも、残った額については、私学は自己資金を用意しなければならないわけです。

 しかも、なるほど、猶予という制度があることはわかっておるんですけれども、今、二重ローンの解消で他の分野で議論になっているのは、債務の解消なんですね。つまり、前の債務についてはもう棒引きするという議論が今やられている中で、猶予してもらってもやがては返さなきゃならないという形でずっと残すというのは、他に比べてもバランスを欠くではないかと。文部科学省が決意すればやれることなんですから、その点はしっかりと検討してほしいということを申し上げているわけですよ。

 もちろん、私学の復旧、再建を後押しするためには、国庫補助をかさ上げすることはどうしても必要です。半分は国庫補助があると言っても、残りの半分をみずから調達するということさえ困難な状況があるわけですから、私学の施設復旧の補助をかさ上げする法案、これを当委員会で審議し、成立を期すべきだということを私どもも申し上げておきたいと思います。

 次に、一次補正予算でつくられた被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金、これについて聞きたいと思います。

 特例交付金には、当初はなかったんですけれども、私立の専修学校、各種学校の授業料減免がつけ加わり、行われております。私も、四月六日、この委員会で質問をし、授業料減免を行うべきだと申し上げてきたので、これは大変よかったと思っております。

 しかし、これまで、少なくない都道府県で専修学校、各種学校の授業料減免事業そのものが行われていないわけですから、全国で実施されるのかとの不安の声も寄せられております。

 そこで、これは事務方に聞くんですが、現在の都道府県での実施状況を答えていただきたい。一人でも対象となる専修学校、各種学校の生徒がいればこれは実施するということになるのかどうか、お答えいただけますか。

板東政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問の、一人でもいれば対象になるのかというお話につきましては、そのとおりということでございます。

 そして、現在の状況の方でお話し申し上げますと、被災により家計急変をしたという該当生徒につきましては、今把握しておりますところで、二十九都道府県に、進学している、学んでいるという状況がございます。

 そのうち、既に六月議会におきまして補正予算等で県が事業を対応しているというもの、それを受けて国が交付を決定しているものが二十三県ございまして、そのうち三県は、一人だけでも対象としているという状況でございます。

 残りの県につきましても、秋の議会におきまして必要な対応をされるということで、それを受けて国の方としても交付を決定させていただくということでございます。

宮本委員 ぜひ、一人でも対象者がいれば必ず授業料減免されるように今後も対応していただきたいと思っております。

 この交付金は私立学校などの授業料減免にも活用されておりますけれども、こちらは従来の枠にとどまっているという話を聞いたんですね。

 宮城県の場合、施設設備費の減免までは、既存のものにはないからという理由で、この交付金の対象にはなっておりません。専修学校、各種学校のように、これまでにない対応をしているものがある一方で、私立学校の授業料減免は従来の枠にとどまっている。授業料の減免だけではとてもまだまだ負担が残るということは、高校無償化法案の議論のときに私指摘をいたしました。

 全国私立学校教職員組合連合の調査によりますと、宮城県では、私立学校の授業料は平均で三十二万四千九百四十七円です。たとえこれが修学支援金と合わせて減免されたとしても、それ以外に施設設備費が平均で三十万九千四百円かかり、こちらの方は減免をされません。これでは、泣く泣く学校をやめざるを得ない状況はなくなりません。やはり、この交付金で施設設備費まで減免できるように制度改善をすべきではないか。

 これは大臣にお答えいただきたいと思います。

高木国務大臣 今回の臨時特例交付金については、これまでも議論が出ました。各都道府県の既存の授業料減免制度において授業料のみを対象としている場合は、本事業においても授業料のみが対象となる。入学料または施設整備費等も対象としている場合は、これらも経費の対象となる。

 いずれにいたしましても、被災した児童生徒等に対する就学機会の確保については、今申し上げました観点あるいは国と地方の役割分担、こういったものを考えながら、引き続きこの点についてはしっかり対応していきたいと思っております。

宮本委員 いつもそういう答弁なんですよね。

 それで、あなた方の「被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金」というこの説明の資料を見ますと、「私立学校」のところで、対象事業は「都道府県等において行う授業料等減免事業」となっているわけですよ。つまり、授業料の後に「等」という言葉が入っているわけですね。ですから、この「等」というところにきちっと施設設備費も読み込めば、決して施設設備費を新たに対象に加えることは不可能じゃないはずなんです。

 以前からやっていればいいんだけれども、やっていないところはだめなんだと。そもそも、被災三県では以前とは全然違う経済状況が生まれているわけですから、当然柔軟な扱いにする、拡大することは必要だと指摘を申し上げておきたいと思います。

 これを突っ込んで議論していきますと、そこは既存の高校生修学支援基金を活用して各県においてやってもらいたい、こういうことが出てくるんですよね。そういうことも想定して、この基金が一体どれぐらい使われているか、現状どうなっているかをお聞きしたいと思います。

 これも事務方でいいんですが、今年度の執行見込み額、今年度末の残高の見込みは幾らになっておりますか。

河村政府参考人 高校生修学支援基金は、平成二十一年度に各都道府県に対して総額四百八十六億円が交付され、創設されたものでございます。

 各都道府県に問い合わせをいたしました結果でございますと、平成二十三年度末、今年度末までの執行見込み額が二百八十二億円になりまして、残高の見込み額が二百五億円ということでございます。

宮本委員 この基金については、従来から、我が党だけでなくて、各党からも使い勝手が悪いという指摘がされてまいりました。大阪府も、国への要望の中で、非課税や家計急変等の所得層に限定されている補助単価増分に係る基金取り崩し対象を所得中位層まで拡大するなど、地域の実情に応じて活用できる制度とすること、こう要望書で言っております。

 必要額の二分の一の取り崩しではなくて、全額取り崩し可能にしなければ活用できないということも申し上げてまいりました。事実、活用できないから二百五億円も残る見込みになっているわけですね。

 この基金を活用すべきと言うのならば、まず国が、地方が使いやすいように全額取り崩し可能にするなど、制度を変えてからそう言うべきではないですか。大臣いかがですか。

高木国務大臣 高校生の修学支援基金については、これは、授業料減免事業及び奨学金事業について、各都道府県ごとに、平成二十年度の対象生徒数を超える生徒数について必要な額、これは全額でありますが、充当することを基本としております。

 これに加えまして授業料減免事業については、都道府県が、特に経済的支援を必要とする世帯、生活保護世帯などでありますが、これに対しては、補助制度を拡充する場合も基金から充当できるようになっております。

 この場合、授業料減免事業が地域の実情に応じて都道府県の事業として行われるという国と地方の役割分担の観点から、また、既に手厚い補助を行っておる都道府県との公平性の観点、こういうことからも考えまして、所要額につきましては国と都道府県とで折半をしておるということでございまして、今、このような状況の中で、私たちは必要な高校生に支援をしていきたい、このように思います。

宮本委員 新しい交付金は使えない、既存の基金も結局要件緩和しないというのでは、全然前に進まないわけですよ。ですから、本当にこれは制度を真剣に考えていただいて、子供たちがちゃんと救われるように、二百五億円も残すんじゃなくて、ちゃんと使えるように進めていただきたいと思います。

 さて、去る二十四日に、公立学校施設の耐震改修調査の結果が公表されました。ことし四月一日現在で耐震化率は八〇・三%、前年度比で七・〇ポイント増の過去最大の伸びとなったとお伺いをしました。

 今後、今回の震災もあって、耐震化を進めたいと考える市町村はさらにふえると思うんです。現在、市町村から来年度の事業計画として総額幾らぐらいの要望が上がっているのか、これも事務方でお答えいただけますか。

辰野政府参考人 各地方公共団体において平成二十四年度に実施予定の施設整備事業の計画について現段階で取りまとめたところでは、耐震化や防災関連事業を中心に、国費所要額で約三千三百五十億円となっているところでございます。

宮本委員 きょうは資料をつけておきました。「公立学校施設整備費予算額の推移」というものでありますけれども、今年度の予算では、当初予算で八百五億円、これは白い部分です、これに第一次補正予算で三百四十億円、緑の部分が追加されたんですが、それでも、今年度合わせて千百四十五億円ですよ。三千三百五十億円といえば、右端の斜線のグラフ、既にことしの三倍近い要望が市町村から上がっているわけです。大幅な予算増は必定だと言わなければなりません。

 しかし、先日、財務省が各省に示した来年度予算の概算要求の目安では、やはり、今年度当初予算比で一律一割削減の方針が示されております。つまり、この白い部分は来年度さらに一割減らされるということなんです。

 大体、今年度の予算でさえ二百億円不足して、必要な事業の採択もできなくなっている。前回の委員会で私指摘をいたしました。学校耐震化を含めて三千三百五十億もの要望が出されているのに、一律一割削減などできるわけがないんです。

 昨年も大問題となりましたけれども、一律に削減させて残りをとり合う、こういう予算編成のやり方は、少なくともこの文部科学の分野では全くなじまないことは明らかです。ましてや、足りないのが明らかな公立学校の施設整備の予算を一律に削減するなど、絶対に認められません。

 大臣、来年度予算編成はそんなやり方ではやれないと、これははっきりとおっしゃるべきではないですか。

高木国務大臣 八月二十三日に財務大臣から示されました作業手順、これは、概算要求に向けた実務的作業の速やかな開始を図る観点から、暫定的に、しかも機械的な手順を示したものでありまして、予算の具体的な方向づけにつきましては、新体制のもとで対応されると承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、これまでも各党各会派から、とにかく我が国における教育予算、これは国際的に見てもそんなに褒められたものではないと。したがって私は、まさにこれまでも予算の増額について取り組んできた、そういう自負は持っております。

 また、特に学校施設の耐震化などの整備についても、これはもう児童生徒、学生もそうですけれども、やはり、命、健康を守る重要な場所でございますから、何にかわってもこういったところの整備というのは着実にしなきゃならん、このように考えております。

 こういった意味で、今後とも地方ニーズに合った対応をしていくこと、これが非常に重要であろうと思っています。

宮本委員 時間がなくなりましたので、最後に高校無償化の問題についてお伺いしたい。先ほども議論がされておりました。

 高校無償化法案の趣旨説明で当時の川端大臣は、「今日、高等学校等は、その進学率が約九八%に達し、国民的な教育機関となっており、その教育の効果が広く社会に還元されていることから、高等学校等の教育に係る費用について社会全体で負担していくことが要請されております。」こう述べられました。これは今も変わっていないと思うんです。

 それで、この無償化の実施に当たって文部科学省は、「社会全体であなたの学びを支えます」とするこのチラシ、またポスターを作成し、現在もホームページにこれは掲載をしております。このチラシは、平成二十一年度、平成二十二年度、それぞれ全国で何万枚配付したか、お答えいただけますか。

山中政府参考人 委員御指摘のパンフレット、高校の授業無償化と、それから高等学校等就学支援金制度、このパンフレットでございますけれども、平成二十二年四月のこの制度創設時に、国公私の高校生等の全員それから都道府県、市町村教育委員会、学校関係者等に対して、約四百万枚を配付したところでございます。

 また、平成二十二年度、昨年度でございますけれども、八月には、国公私立の中学三年生それから関係者、それからことしの三月には、国公私立の中学校二年生と関係者に、合わせて約五百万枚を配付したというところでございます。

宮本委員 ポスターもつくって張り出しているんですね。これはまさに「社会全体であなたの学びを支えます」と。これは、国と国民、とりわけ高校生との間の約束になっている。これはそれだけ配って周知したわけですから、そう思うんですね。

 この約束を守ることは、国、文部科学省の当然の責任だと思いますが、これは大臣、よろしいですね。

高木国務大臣 今お尋ねの冒頭の部分に、高校無償化の立法趣旨についてお触れになりました。そして、今お手元のポスターもお示しになりました。私どもとしましては、現在においてもその立法の趣旨については変更はないもの、このように考えております。

宮本委員 「社会全体であなたの学びを支えます」というこの理念、考えに立てば、所得制限を入れるということにならないんです。

 さらに国際的に見れば、アメリカでは一八二七年にマサチューセッツ州で高校無償化が初めて開始され、南北戦争以前には、既に六つの州で高校無償化に踏み出しております。多くの国では、早くから高校無償化をやっているわけです。日本では、ようやく二十一世紀に入ってから始まった。しかも二年目です。

 国際的なおくれが非常に明らかなのは、国際人権規約の漸進的無償化条項を留保しているということにあらわれております。もう今や、マダガスカルと日本というたった二つの国しかこれを留保している国はない。やっと今回のこの無償化に踏み出して、留保撤回をという動きも出てきたわけでありまして、そして、今国会の冒頭、高木大臣も所信表明で、国際人権A規約における漸進的無償化条項の留保撤回も視野に取り組みを進めるということをおっしゃいました。

 さらには、この無償化法案採決時の当委員会の附帯決議では、立法府の意思として、「国際人権A規約における中等教育の漸進的無償化条項の留保撤回を行うこと。」と、これは明確に決議をしたわけです。

 先ほど来、三党確認書なるものによって高校無償化も見直しの対象とすることが明記されたという議論がやられておりました。我が党はこうした合意にくみしておりませんし、そもそも、歳出の見直しを行うのならば、米軍への思いやり予算や大企業減税、政党助成金などこそ見直すべきであって、教育の分野の公的財政支出の少なさは、国際的に見ても本当におくれているということを繰り返し申し上げてきたわけであります。

 我が党は、高校無償化法については、民主党、公明党とともに三派共同修正案を提案いたしました。あのとき附則に加えた三年見直しというものは、質疑の中でも明らかにしたように、公立高校生でも授業料以外の負担があること、留年した場合には徴収されること、私立高校生の就学支援金も額が少なく、公私間格差があること、特定扶養控除の縮減により負担増となる世帯への対応、朝鮮学校を除外していることなど、不十分な点をさらに前進させようという趣旨でありました。

 高校無償化の見直しを言うなら、こうした問題点を改善していくことこそ必要で、先ほどの質疑で出たような所得制限の導入では決してないと思います。

 所得制限は、高校無償化の理念と相入れず、高校生に対して配付してきた「社会全体であなたの学びを支えます」という約束をほごにするものであり、国際的に見て恥ずかしいほど立ちおくれた国際人権規約の漸進的無償化条項の留保撤回にも逆行し、さらには、「国際人権A規約における中等教育の漸進的無償化条項の留保撤回を行うこと。」という当委員会の附帯決議の趣旨にも反するもので、絶対に認められないということを申し上げて、私の質問を終わります。

田中委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時十三分開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 本日付託になりました参議院提出、東日本大震災に対処するための私立の学校等の用に供される建物等の災害復旧等に関する特別の助成措置等に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。参議院議員橋本聖子さん。

    ―――――――――――――

 東日本大震災に対処するための私立の学校等の用に供される建物等の災害復旧等に関する特別の助成措置等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

橋本参議院議員 ただいま議題となりました東日本大震災に対処するための私立の学校等の用に供される建物等の災害復旧等に関する特別の助成措置等に関する法律案につきまして、発議者を代表して、その提案の趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。

 東日本大震災に伴う被害により、被災地域での教育再建が喫緊の課題となっている現状におきましては、教育インフラを早急に整備する必要がございます。現行制度では、災害復旧事業に関し、公立学校と私立学校の間、また、これらの学校と専修学校、各種学校の間にも差が設けられておりますが、未曾有の被害が生じている中で、私立学校や専修学校、各種学校にも、公立学校と同様の支援が必要となっております。

 そこで、本法律案は、東日本大震災に対処するため、私立の学校等の用に供される建物等の災害復旧等に関し、私立の学校等の設置者に対する特別の助成措置、地方公共団体に対する特別の財政援助等について定めようとするものでございます。

 次に、本法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、国は、東日本大震災により被害を受けた私立の学校の用に供される建物等の災害復旧に要する工事費及び事務費について、当該私立の学校の設置者に対し、その三分の二を補助するものとすることとしております。

 第二に、国は、東日本大震災により被害を受けた専修学校または各種学校の用に供される建物等の災害復旧に要する工事費及び事務費について、当該専修学校または各種学校の設置者に対し、予算の範囲内において、その三分の二を補助することができることとしております。

 第三に、国は、私立の学校または専修学校もしくは各種学校の用に供される建物等の東日本大震災に係る災害復旧に係る事業であって、地方公共団体が助成を行うものについて、当該地方公共団体の負担を軽減するため、交付金を交付するものとすることとしております。

 第四に、日本私立学校振興・共済事業団は、東日本大震災により被害を受けた私立の学校または専修学校もしくは各種学校の設置者に対し、通常の条件よりも有利な条件で資金を貸し付け、貸付金に係る元金の償還または利息の支払いを猶予する等、私立学校教育に対する援助に努めるものとすることとしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとするほか、政府は、私立の学校等の用に供される建物等の災害の予防及び災害が発生した場合における復旧に関し、必要な財政上の措置その他の措置に係る制度のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることとしております。

 以上が、この法律案の提案の趣旨及び内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

田中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十七分散会


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