衆議院

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第7号 平成24年6月20日(水曜日)

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平成二十四年六月二十日(水曜日)

    午前十時三十分開議

 出席委員

   委員長 石毛えい子君

   理事 金森  正君 理事 田島 一成君

   理事 永江 孝子君 理事 松本 大輔君

   理事 村上 史好君 理事 馳   浩君

   理事 松野 博一君 理事 池坊 保子君

      石井登志郎君    石原洋三郎君

      大山 昌宏君    岡本 英子君

      奥村 展三君    川口  浩君

      城井  崇君    笹木 竜三君

      瑞慶覧長敏君    杉本かずみ君

      高井 美穂君    高野  守君

      高橋 昭一君    高橋 英行君

      中屋 大介君    室井 秀子君

      本村賢太郎君    山岡 達丸君

      笠  浩史君    和嶋 未希君

      あべ 俊子君    甘利  明君

      遠藤 利明君    河村 建夫君

      下村 博文君   田野瀬良太郎君

      高木  毅君    永岡 桂子君

      長島 忠美君    古屋 圭司君

      富田 茂之君    宮本 岳志君

      三輪 信昭君    土肥 隆一君

    …………………………………

   参議院文教科学委員長   野上浩太郎君

   参議院議員        鈴木  寛君

   文部科学大臣       平野 博文君

   文部科学副大臣      奥村 展三君

   文部科学副大臣      高井 美穂君

   文部科学大臣政務官    城井  崇君

   政府参考人

   (文化庁次長)      河村 潤子君

   文部科学委員会専門員   佐々木 努君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十日

 辞任         補欠選任

  笠  浩史君     高橋 英行君

  遠藤 利明君     長島 忠美君

同日

 辞任         補欠選任

  高橋 英行君     笠  浩史君

  長島 忠美君     高木  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  毅君     遠藤 利明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 劇場、音楽堂等の活性化に関する法律案(参議院提出、参法第二一号)


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     ――――◇―――――

石毛委員長 これより会議を開きます。

 参議院提出、劇場、音楽堂等の活性化に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。参議院文教科学委員長野上浩太郎さん。

    ―――――――――――――

 劇場、音楽堂等の活性化に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

野上参議院議員 ただいま議題となりました劇場、音楽堂等の活性化に関する法律案につきまして、その提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。

 我が国においては、劇場、音楽堂等を初めとする文化的基盤につきましては、古典の時代から今日に至るまで、それぞれの時代の変化により変遷を遂げながらも、国民のたゆまぬ努力により、地域の特性に応じて整備が進められてまいりました。

 劇場、音楽堂等は、文化芸術を継承し、創造し、及び発信する場であり、人々が集い、人々に感動と希望をもたらし、人々の創造性を育み、人々がともに生きるきずなを形成するための地域の文化拠点であり、さらに現代社会におきましては、人々の共感と参加を得ることにより、新しい広場として、地域コミュニティーの創造と再生を通じて、地域の発展を支える機能も期待されております。

 このように、劇場、音楽堂等は、国民の生活においていわば公共財ともいうべき存在であり、ここでつくられ、伝えられてきた実演芸術は、無形の文化遺産でもあり、これを守り、育て、つくり続けていくことは、今を生きる世代の責務とも言えます。

 我が国の劇場、音楽堂等については、これまで主に、施設の整備が先行して進められてまいりましたが、今後は、そこにおいて行われる実演芸術に関する活動や、劇場、音楽堂等の事業を行うために必要な人材の養成等を強化していく必要があります。また、実演芸術に関する活動を行う団体の活動拠点が大都市圏に集中しており、地方においては、多彩な実演芸術に触れる機会が相対的に少ない状況が固定化している現状も改善していかなければなりません。

 こうした劇場、音楽堂等をめぐる課題を克服するためには、とりわけ、個人を含め社会全体が文化芸術の担い手であることについて国民に認識されるように、劇場、音楽堂等を設置し、または運営する者、実演芸術に関する活動を行う団体及び芸術家、国及び地方公共団体、教育機関等が相互に連携協力して取り組む必要があり、国及び地方公共団体が劇場、音楽堂等に関する施策を講ずるに当たっては、短期的な経済効率性を一律に求めるのではなく、長期的かつ継続的に行うよう配慮する必要があります。

 以下、本法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、前文において、この法律は、文化芸術振興基本法の基本理念にのっとり、劇場、音楽堂等の役割を明らかにし、将来にわたって、劇場、音楽堂等がその役割を果たすための施策を総合的に推進し、心豊かな国民生活及び活力ある地域社会の実現並びに国際社会の調和ある発展を期するものであることを明らかにしております。

 第二に、総則において、劇場、音楽堂等の関係者並びに国及び地方公共団体の役割を明らかにし、これらの関係者等は、相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとするとともに、国及び地方公共団体は、必要な助言、情報の提供、財政上、金融上及び税制上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとすることとしております。

 第三に、基本的施策として、国際的に高い水準の実演芸術の振興等、国際的な交流の促進、地域における実演芸術の振興、人材の養成及び確保等、国民の関心と理解の増進並びに学校教育との連携について必要な施策を講ずるものとすることとしております。

 第四に、文部科学大臣は、劇場、音楽堂等を設置し、または運営する者が行う劇場、音楽堂等の事業の活性化のための取り組みに関する指針を定めることができることとしております。

 以上が本法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

石毛委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

石毛委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文化庁次長河村潤子さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石毛委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石毛委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。本村賢太郎委員。

本村委員 民主党の本村賢太郎でございます。

 ただいま野上参議院文教科学委員会委員長から提案理由の説明がございました劇場、音楽堂等の活性化に関する法律案について、質疑を行わせていただきます。

 このお話は、各会派そして超党派の議連でも、長年、委員長そして鈴木先生を初め超党派で取り組んできた、今日まで大きく積み重ねてきた歴史ある法律案だと私は思っておりまして、通称劇場法案と呼ばれているということも伺っております。

 まず初めに、先ほど提案理由の説明がございましたが、こうした長年にわたる議論の上、このたび成案となりました本案の趣旨について、提出者にお伺いいたします。

鈴木(寛)参議院議員 お答えを申し上げます。

 劇場、音楽堂等の多くは、これまで文化会館等の文化施設として位置づけられてまいりました。現状では貸し館公演などが中心となっております。これまで、主にいわゆる施設、箱物の整備が先行してまいりました。

 しかしながら、実は地方の文化予算というのは、平成五年度がピークでございまして、九千億を超えておりますが、現状は今やその三分の一の三千億円程度というふうになっております。

 本来、ハード整備が一巡したところで、ハード中心から、ソフトあるいはヒューマンにシフトがなされるべきだったわけでありますが、そのことがないままに、現状、先ほどのような地方などの予算の縮小、そういうことも受けまして、二〇〇〇年以降は、例えば演劇であるとか、あるいは文楽とか歌舞伎のような伝統芸能も含めて、日本全体の公演回数も減っている、こういうような現状がございます。

 したがいまして、今回の法制定を機に、やはり劇場というのは、まさに舞台芸術の創造の場である、あるいは発信の場である、あるいは継承の場である、あるいは舞台芸術を通じた人々の交流や参加の場である、そうしたことを明確にして、そうしたことに対する支援、あるいは、それを行うのは全て人材でありますから、人材育成の強化ということをやっていくということが非常に重要であるということがまず第一点でございます。

 それから、こうした文化芸術団体の活動拠点が残念ながら大都市圏に集中をしております。大都市圏においてもさらに強化をしていかなければいけませんが、地方ではさらに多彩な実演芸術に触れる機会が少ないという現状も改善をしなければいけませんので、そうした点も大事な課題であります。

 そもそも、ではなぜこういうことになっているのかということの一つの理由に、博物館や美術館や図書館にはそれぞれ博物館法であるとか図書館法というのがございましたが、劇場や音楽堂には根拠法がこれまでございませんでした。そして、我が国の法令を見ますと、劇場というのは、建築基準法であるとか消防法であるとか、そうした法律には位置づけがあるわけでありますけれども、まさに文化芸術活動に着目した根拠法というものがなかったということ、このことも改善をしていかなければなりません。

 したがいまして、文化芸術振興基本法の理念にのっとりまして、劇場、音楽堂等を活性化し、実演芸術の振興を図ることによって、心豊かな国民生活や活力ある地域社会、あるいは新しい市民の広場としての劇場、あるいは世界への窓としての劇場、こうしたことを実現するためにこの法案を提出させていただいたところでございます。

本村委員 ただいま、趣旨の詳しい御説明をいただきました。図書館法や博物館法と違って根拠法が劇場にはないということでありますが、ただ、この劇場法には、人材を育てる機関という新しい位置づけがなされているのではないかと思いまして、そこは高く評価をしてまいりたいと思います。ソフトやヒューマンという、時代の変化とともにハードからの移り変わりということでありますので、その点にも着目されているところには大きく期待をしていきたいと思っております。

 そこで、劇場、音楽堂等においては、すぐれた芸術が創造され、国民の芸術鑑賞の機会が充実し、人々の集う地域の拠点となり、さらには国際文化交流の基盤となるような機能を発揮していくことが重要だと考えております。

 そこで、文部科学省にお聞きしたいと思うんですが、劇場、音楽堂等の現状と課題について、また、これからこれらが果たすべき役割について、どのように認識されているのか、お伺いいたします。

河村政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法律案で言う劇場、音楽堂等の大半は地方公共団体が設置する文化施設でございますが、これらは、スポーツや各種の行事を含む多様な目的に利用される施設として置かれている場合が大変多いという実情でございます。また、そこで営まれている文化芸術活動も、今のところ貸し館公演が中心でございます。

 こうした状況のもとでは、課題として、舞台芸術の創造活動の実施や鑑賞機会の提供といった劇場、音楽堂等の本来の機能が十分発揮されていないとか、文化芸術団体の活動拠点が大都市に集中し、地方では文化芸術に触れる機会が相対的に大変少ないですとか、中核となるべき専門スタッフが質的にも量的にも不足している、こういった事柄が生じている。こういうことについての現状認識あるいは現場での課題についての認識は、提出者からの御説明や御質問の議員の認識と同じくするものでございます。

 このような全国の劇場、音楽堂等を音楽、舞踊、演劇、伝統芸能、演芸その他の芸術、芸能の創造発信の拠点、鑑賞の拠点、さらには地域住民が集う拠点に実質的に変えていくということが今後の重要な政策課題だと認識している次第でございます。

本村委員 今回の劇場法で新たな文化芸術立国の実現というキーワードもあるのではないかと考えておりますが、そうした中で、施設を初めとしたハードの整備は整ってまいりましたが、やはり文化芸術を支えるのは人材だと考えております。

 そこで、専門人材の養成の確保は非常に大事な事柄だと考えておりまして、芸術監督や音響、照明等の技術者、公演を企画する、運営する担当者の専門人材がそろって初めて聴衆を楽しませる舞台が整うんじゃないかと考えております。

 関係団体が行ったアンケートも、みずから自主公演をできない理由として、実施をしたいが企画制作できる人材がいないとか、それから、自主公演するには、チケット収入や協賛金、助成金収入を除いて年間で平均約九百四十八万円かかるという施設負担の大きな話もございます。

 こうした中で、今、芸術監督や音楽監督の配置状況というのは約五%ということも伺っていますし、舞台監督に関しては一二%ぐらいということも伺っておりまして、専門人材の配置は非常に少ないと言わざるを得ないと思います。

 確かに、地方財政も厳しい中、なかなか潤沢な財政措置をとるわけにはいかない部分もあるのかもしれませんが、つくった箱に魂を込めるには、やはり人を育成していく、育てていく、このことが非常に大事だということを私は考えております。

 こうした人材育成について、鈴木先生もお話しされておりますが、大学との連携をさらに強固にしていくべきだと考えておるわけでありますが、今後、劇場、音楽堂等の活性化に向け、大学を活用した専門人材の育成のあり方について、どのようにお考えであるのか、お伺いいたします。

鈴木(寛)参議院議員 今、本村議員がおっしゃっていただいたとおりでございまして、やはり創造型の劇場にしていくためにはまさに人材が必要でございます。残念ながら、芸術監督あるいは音楽監督というのは今も御指摘ありましたように五%、舞台監督でも一二%、こういうことであります。

 まさに、すぐれた芸術監督や専門のプロデューサーがいれば、地域の劇場であっても世界レベルの作品を発信していくことは十分可能でありますし、現に、静岡県、兵庫県、新潟市など、そういったことを実証してくれているというふうに思っております。

 それから、そうしたプロデューサー系の人材とともに重要なのは、まさに技術系の人材であります。そうした人材は実演家を養成することと等しく重要でありまして、そこをどうしていくのかということで、私どもは、大学と劇場、音楽堂等がさらなる連携を強化することが大事だというふうに思っております。

 今回の法案の第十三条に、もちろん、一番重要なのは国及び地方公共団体が必要な専門能力を有する者を養成、確保するということが大事であるということを位置づけた上で、劇場、音楽堂等の職員の資質向上を図るために、劇場、音楽堂等と大学等との連携協力推進、研修の実施その他必要な施策を講ずるものとするということの規定を盛り込みました。

 このことによりまして、大学の人材育成機能、そしていろいろな知能集積機能と、それから、やはりこうした人材というのは、実践の場がなければ育ちません。

 例えば、アートマネジメント専攻の学生が劇場現場で企画制作業務を経験する、いわゆるインターンシップでありますとか、あるいは劇場主催の講座の講師を地元の大学の教員が担当するであるとか、あるいは劇場、音楽堂等のスタッフが大学で授業を行うとか、あるいは逆に学生を現場実習、要するに劇場で現場実習させるといったことを授業科目に入れて、そして、そういった劇場との密接な連携、あるいは劇場を教育現場そのものにした、そうしたカリキュラムというものを大学のカリキュラムの中にきちっと入れていただく。

 そうしたことを経て、学士号なり修士号、さらには博士号というものを付与していくということになれば、専門人材の養成ということに資するとともに、そこで学位を取りますから、人材の流動性、あるいは、さらには海外に行ってさらに自分を磨いていくといったようなことが、好循環が始まるのではないかなというふうに思っております。

 既に頑張っていただいている大学等ありますが、これをさらに、こうした十三条を規定することでしっかりと位置づけて、そして応援をしていくということをやってまいりたいというふうに考えているところでございます。

本村委員 ぜひ、人材育成、これは雇用にもつながるわけでありまして、イギリス等では、劇場に関する雇用を大きく使われて人材育成をなされているわけでありますので、ぜひ、大学との連携の強化も進めていただきたいと思います。

 また、この立法の中の特徴の一つとして、文部科学大臣がこの活性化のための取り組みに関する指針を定めているところも大きな特徴だと思うんですが、文部科学省にお伺いいたしますが、本法律案が成立した場合、第十六条に規定されております指針はどのような枠組みにするお考えなのか。成立前でございますが、イメージをお聞きしたいと思います。

河村政府参考人 本法律案が成立いたしました場合に、この第十六条に基づいて定める指針についてのイメージということでございますけれども、この指針については、劇場、音楽堂等の運営にかかわる地方公共団体や民間事業者が抱える諸課題を解決して、劇場、音楽堂等を取り巻く環境の改善を図るために、劇場、音楽堂等の設置者に対して、その事業の活性化に向けて促進すべき取り組みについての一定の考え方を示すということが考えられるものと存じます。

 この指針は、性格として、最低基準を設定して規制をするという性格のものではなくて、目指すべきよりよい方向性を示して、それに向けて積極的な取り組みが促進されるような性格のものとするということを現在考えております。

 その具体的な内容でございますけれども、今後の検討が必要ではありますが、劇場、音楽堂等の運営において目指すべき方向性、専門人材の養成、劇場、音楽堂相互の連携、設置者がさらに取り組むべき事項、また、指定管理者制度により運営する場合の留意事項、こういったものが想定されると考えております。

 今後、なお十分に精査をした上で作成してまいりたいと存じます。法律案成立の後に、速やかに作業に入れればと考えている次第です。

本村委員 本法律案の実効性を確保する大きな鍵が今御答弁いただいた指針だと思いますので、ぜひとも、この指針に対しましても、また引き続き皆さんの英知を結集しながら、いい形をつくってまいりたいと思います。

 次の質問でありますが、やはり、先ほど提案理由の説明にもございましたが、地域格差やそれから学校教育との連携等々も非常に大事な視点ではないかと思います。

 海外での受賞例を挙げますと、個人のレベルでは国際レベルに通用している。例えば、菅井円加さん、国際バレエコンクール、ローザンヌ賞をことしの二月四日に受賞されておりますし、盲目のピアニストである辻井伸行さん、二〇〇九年、バン・クライバーン国際ピアノコンクールにて日本で初めて二十で優勝したということもございまして、個人的なレベルはかなり向上しておるんです。

 逆に、歌舞伎界、世界無形遺産として二〇〇九年に登録をされたわけでありまして、最近では市川中車さんですか、九代目を俳優の香川照之さんが襲名されたわけでありまして、こういったことも期待をしてまいりたいと思いますし、五代目である中村勘九郎さんの平成中村座、これも世界に通用する歌舞伎だと思うんですが、ただ、実演芸術という形では、なかなかまだまだ世界に発信が足りない部分もあるんじゃないかという危惧があるんです。

 ぜひ、そこで、地方に住んでいてもすばらしい芸術を体感できる、見ることができる、そして継承できる、発信できる、学べる、さまざまな視点から、大都市圏と地方の格差がないように取り組まなきゃならないし、また、学校教育の現場で、やはり小さいときから文化芸術に親しむという視点も非常に大事な点ではないかと思いますが、この学校教育や地方の格差がないような取り組みについてどうお考えなのか、お伺いいたします。

鈴木(寛)参議院議員 おっしゃるとおりで、特に実演芸術というのは、感性豊かな子供の時代にどれだけ本物に触れられるのかということ、あるいは、みずからも参加してそうしたことに触れていく、まさにそのことが豊かな感性、創造性、コミュニケーション能力を育む、また、芸術を通じて仲間とのきずなをつくるということに非常に重要であります。子供のときでしかできないことというのはたくさんございます。そういう意味で、今の議員の御指摘というのは非常に重要であるというふうに考えております。

 この法案では、第十五条におきまして学校教育との連携について明記をさせていただきまして、「国及び地方公共団体は、学校教育において、実演芸術を鑑賞し、又はこれに参加することができるよう、これらの機会の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。」というふうに定めております。

 現状におきましても、小学校、中学校への巡回公演だとかあるいは芸術家派遣の取り組みは大変意義深いものでありまして、また、関係者で大変御努力をいただいて行われておりますけれども、やはりこうしたことをさらに強化充実していかなければいけません。

 あるいは、私も副大臣のときにコミュニケーション教育推進会議というのをつくりまして、平田オリザさんに座長になっていただきましたが、約三百の小学校、中学校で演劇教育がもう既に、公立でありますけれども、行われております。もちろん自主的に取り組んでいる私立は多数ございますけれども、やはりそうした実践なども、今回の法律制定を機にさらに強化をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

本村委員 時間が来ましたので、これで質問を終わりにします。ありがとうございました。

石毛委員長 次に、河村建夫委員。

河村委員 自由民主党・無所属の会の河村建夫でございます。

 今回、劇場、音楽堂等の活性化に関する法律案、参議院先議をされまして、議決を得て参議院からこちらへ参りまして、今、審議をする段階になりました。

 ここに至るまでにいろいろな経緯もあるわけでございますが、特に、きょう答弁に立っておられます鈴木寛先生には、音議連の中心として、この法案の取りまとめに大変な御努力をいただきました。私もその一員ではございますが、鈴木先生を初め関係者の皆さんに心から敬意を表したいというふうに思います。

 今、本村さんの質疑の中に私が申し上げたいこともかなり含まれておりますが、改めてお聞きしたいということもございます。

 特に、この法案につきましては、十年前に、もう十一年になりますか、文化芸術振興基本法を制定する、これも音楽議連が中心になって提案をし、成立したものでございます。この段階で、いわゆる実演芸術というものをどういうふうに考えていくかというのがかなり議論になりまして、日本芸能実演家団体協議会、いわゆる芸団協の皆さんからも、この実演芸術という言葉をきちっと法律的にも担保してもらいたいという話がございました。その結果、あの文化芸術振興基本法の二十五条にそこが入ってきたわけでございます。

 それで、これをいわゆる個別法としてということが既にそのときに提議をされておったわけでございまして、先ほど鈴木さんの答弁にもありましたように、図書館あるいは博物館、それぞれ個別法がある。しかし、いわゆる劇場、音楽堂等に対するものがなかったということ。全国にホール、音楽堂が随分できましたが、定義といいますか、そういうものが極めて曖昧なままに進んできて、場合によっては、単なる貸しホールみたいになっているところもある。やはりこういうものを充実させる必要があろうということで、おくればせながら今日ここまで、法案として出させていただいたわけでございます。

 先ほどの説明で、本法案の趣旨については、私どもとまさに共感、同じ思いで来ているわけでございますが、特に、提案者の鈴木先生には、この法案を取りまとめる中で、最も趣旨としても力を入れられたという点はどの点におありでしょうか。

鈴木(寛)参議院議員 まず、河村先生におかれましては、音議連におきましてもまさに中心的な幹部でいらっしゃいまして、文化芸術振興基本法の制定以来、劇場法制定の先頭に立って御尽力をいただき、また、我々御指導いただきましたことに心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 私も、平成十三年以来、やっと十年越しにこれができまして、本当にこれは河村先生の御指導なくしてはできなかったと大変感慨深く思っております。

 先ほども申し上げました繰り返しになりますけれども、やはり劇場というのは、そこでまさに実演芸術が創造されて、それを支える人によって、いろいろな人に支えられて、そしてそれを地域の方々あるいは広く多くの国民の皆さんが鑑賞していく、こういった、生き物である。そして、それを担っていくのは人材であるということであるわけでありますけれども、残念ながら、法律もございませんでしたし、定義もございませんでした。

 これは結局、閣法にいたしますと、劇場の前例というのを引きますと、建築基準法とか消防法とかいうことになってしまいます。ここはやはり、議員立法でやる大きな意義、意味でもあったかと思いますが、我々はそうした前例にとらわれず、我が国の法体系の中に劇場というものを本来の劇場の趣旨の観点からきちっと定義をするということが今回の法案でできた、あるいはできるということは、大変、我が国の法制史上も大事なことだと思っています。

 第二条で、施設について明記することは当然なんですが、劇場、音楽堂等というのは、文化芸術のための施設及びその施設の運営に係る人的体制によって構成される、さらに、その有する創意と知見をもって実演芸術の公演を企画し、または行うこと等により、これを一般に鑑賞させることを目的とするものということで、人が大事だということと、そして、そこにある創意と知見というものが大事で、それをもってまさに創造していくんだ、そして鑑賞していくんだといったことをきちっと明記できたことというのは非常に画期的なことだと思っております。

 そして、そのことをベースに、前文にも書かせていただいておりますけれども、これまでハード中心の整備であったものを、ソフト、ヒューマンというものにこの法案の制定を機に大きくシフトしていくということ、そして、大都市圏のみならず、地域においても広く拠点をつくっていくことといったことが、今回の法律の制定、定義の定め、そして、第三条でも今のようなことをきちっと劇場、音楽堂等の事業ということで明記できたということは非常に大事なことではないかなというふうに考えているところでございます。

河村委員 ありがとうございました。

 きょうは大臣にも御足労いただきましたが、先ほどの本村さんの質疑の中にもございましたが、私も、やはり今回この法案を議員立法で出して、そして実演芸術の振興にもっと力を入れたいという我々の思い、これを受けて、これから、文科省、文化庁を中心にどのように具体的にこれを具現化していただくか、すべからくそこにかかってきているというふうに思います。

 そういう意味で、やはり第十六条の指針というのは非常に大事だと思うんです。

 基本法の場合ですと、基本計画を立てていくというふうになっておりますが、これは基本法はもとの法律があるわけでございますが、しかし、やはり、これから指針を立てるとしては、スケジュール観が大事だと思うんですね。できるだけ早く方針を立てていただいて、それで、これを地方との連携、あるいは芸能団体、芸術団体等との連携の中で進めていただく、そしてこれをできるだけ早く発表していただいていく必要があろうと思いますが、その辺のスケジュール観とあわせて方針をお伺いできたらと思います。

平野(博)国務大臣 今、河村先生の方から、十六条を含めて、指針の具体的な中身並びにスケジュール観、こういうことでの御質問でございます。

 今御議論いただいている最中でございますから、その議論を踏まえて、こういう立場になりますけれども、この法律案を成立させていただく、こういうことを前提にして、これは私、大臣として考えておりますことは、早ければ年末までにその方向性を出したい、かように考えております。

 また、この指針の内容については、私はやはり、劇場、音楽堂等の設置者に対して、その事業の活性化に向けて促進をする、こういう取り組みについての一定の方向性を示してまいりたい、こういうふうに思いますし、方向性をしっかり示すことが、先ほど来、今回の法律案に対する基本的なスタンスとして理解をいたしておりますのは、地域格差の解消、いわゆる都市部に一極集中しているんだ、こういう背景、あるいは、地域の特色ある文化芸術活動の保存、継承、こういうこと、ハード面からソフト面に変えていくんだ、こういうところ等々を踏まえて、そういう方向性を導いていきたいというふうに思います。

 具体的な内容におきましては、劇場、音楽堂の運営についての目指すべき方向性、専門人材の育成、あるいは劇場、音楽堂相互の連携等々、設置者が取り組むべき事項、また、指定管理者制度により運営する場合の留意点について等々が想定されますが、今後、十分にその点についても精査をして取り組んでまいりたい、こういうことで考えておるところでございます。

河村委員 ありがとうございました。ぜひ具体的な方針をできるだけ早く提示いただいて、地方にとっても、芸術振興、実演芸術、進展するように御努力をいただきたいというふうに思います。

 先ほど来お話しのように、やはりこれまで、ハード面については、全国二千近い公立のホール等々、できてまいりました。これを動かすには、やはり人が必要になってくるということでございます。そういう意味でいえば、人材の育成というのは誰が考えてみても大事なことになってまいります。

 この中で、わざわざ法律の中で、十三条ですか、大学等との連携ということがございました。これは、大学がやはりそこで、きちっとしたアートマネジメントまでできる人材を出していく必要があろうと私も思うのでありますが、具体的にどういうふうに進めていくか。

 いろいろな、芸術界にはそういうあれは少ないのでありますが、そういうものを専門的にやれる、例えば資格を付与するとか、大学院でそういうことをやらせるとか、何かそういうことまで含めて考えておられるのか。あえて大学という名前を法律に入れたということ、これについてどのようにお考えでしょうか。

鈴木(寛)参議院議員 ありがとうございます。

 先ほども申し上げましたように、三条でも、劇場、音楽堂等の事業の中に、必要な人材の養成に関することというのを入れました。あるいは、さらには、地域社会のきずなの維持や強化、共生社会の実現ということを入れて、それをさらに受ける形で、御指摘のように十三条、そしてまた、そこに大学というのを明記した、その心は何であるかという御質問だと思います。

 よく、資格制度をつくったらどうか、こういう御議論がございます。これについては、やはり国が資格というところは、やや、いろいろな両面から考える点がある。それは、一つは、もう既に民間の資格があるということと、そもそも、文化芸術、実演芸術も当然それに含まれるわけでありますが、国が出るところと出るべきでないところ、やはりここをきちっと峻別していかなければいけないというふうに思っております。

 そういう中で、大学というのは、その教育内容あるいは研究内容については、当然大学の自治というものがございます。そして、それは、実演芸術のいわゆる表現活動の自由というところとも相通ずるところがあると思います。

 そういったそれぞれの自主性あるいは自治というものを大事にしながら、劇場と大学というものがもっと組むことによって、大学が劇場と独自につくったカリキュラム、あるいは、そこで出す学士号だとか、修士号だとか、博士号だとか、あるいはディプロマだとか、あるいは大学と劇場が共同で主催するいろいろな講座の修了証とか、そうしたことをやっていって、それが世の中で深く理解されて、そのことが共有されていくということが、国からのある適切な距離というものを置きつつも、しかし、実質として実演芸術を振興していくということに資する。

 この双方の観点から、こうした十三条というものを盛り込みました。

 現に、例えば教職大学院などでは、これは福井の例でありますけれども、月、火、水は大学に来ないで、現地の中学校に朝から晩までいて、木曜は大学に帰ってきてそれを振り返り、金曜日は少し学術的なことをやるということを一年間やるようなプログラムがありますけれども、こうしたことがもう大学教育の中で現実化しております。

 こうしたことを応用すれば、ほぼ教育の活動の拠点を劇場にしながらも学位等々を取っていくということが可能でありまして、こうしたことに手を挙げてくださる大学と劇場の連合チームがどんどんふえていけばいいなと思いますし、そうしたことについてのグッドプラクティス、プログラム開発については、国が精力的に応援をしていくということを想定しているところでございます。

河村委員 確かに、国がどう出るかというのは考え方はいろいろあろうと思います。芸団協の御意向等も踏まえて、どうあったらいいか。国家資格、例えば臨床心理士を早く国家資格にという動きがございますが、こういうものとまたちょっと性格は違うとは思いますが、やはり、それが専門家として資格を持って、一つの仕事として生きていけるような社会というのは理想の社会ではないか、このようにも思います。

 そこで、あと、時間が限定されてまいりまして、最後の質問になると思いますが、これから具体的に、議員立法ではございますが、日本の文化政策に大きな影響を及ぼすものでございます。これをいかに具現化するか。

 このためにいろいろな観点があろうと思いますが、一つは、どうしてもこれは劇場、音楽堂の活動を振興するために、具体的な政策というのがやはり大事でありまして、地方にはあれだけの立派なホール、劇場、音楽堂ができてまいりました。これには相当ばらつきもあるわけでございます。地方は、この法律によって、どのように具体的に動かす方法、手だてが生まれるかということも期待をしておるわけでございます。そういう多面的な政策をとっていただきたい。ただ上意下達、方針を出して、地方へ通達しただけでは済まない問題がここにあろうというふうに思います。

 もう一つは、やはりさっきからお話しの地域文化芸術振興のための実演芸術団体との連携ですね。地方自治体との関係、そうした芸団協等々の実演団体との連携、それから活動活性化を促していく、そうした政策が必要だと思います。

 そのためにはどうしてもその予算措置等も必要になってくるわけで、今から予算のことを言うのは少し早いかもわかりませんが、やはり、相当な覚悟を持って予算編成にも取り組んでもらわなきゃならぬと思います。

 そういう意味で、これからの実演芸術というものが永続性を持って、そして日本の実演芸術というものが世界に向かって発信できるような、そのようなものに育て上げていくというのは、やはり文化政策としても大事なことだろうと思います。

 大臣のその辺の覚悟をお聞きして、こう思います。

平野(博)国務大臣 きょうはその覚悟を答弁しろ、こういうことでございますが、確かに河村先生から、設置者別文化会館の数ということで、かなりこれは市町村に多うございます。したがって、今回の立法の趣旨を含めて考えますならば、やはり、いかにこの法律の持つ意味を地方公共団体に徹底をしていくか、こういうことが大事なんだろうというふうに思っています。

 そういう中におきまして、予算、こういうことも当然出てくるわけですが、先ほど来の答弁の中にもございましたけれども、企画制作をする、そういう担い手がいない、そういう人材がやはり要るんだ、こういうこと。やはり、実演芸術のおもしろさをより深く理解するための普及事業も必要なんだ、こういうところをしっかりやっていかなきゃならないと思います。

 私も、ちょっと観点は違いますが、実は文科省の講堂で、高校生の演劇部を招いて、約九十分実演をしてもらいました。非常に私、九十分で長いと思いますが、大概の映画は寝るんですが、九十分間必死にその演劇のやっておられる、演じている姿を見て、まさにこれは創造性を高めていくこと、あるいは表現力を高めていくこと、こういうことですから、今回のこの法案の趣旨は、そういう意味で非常に大事な視点だと私は思っております。

 したがいまして、そういう意味で、まず地方公共団体がしっかりと認識をしてもらう、そういうことをより多面的な意味で活動できますような支援の仕組みを考えていきたい。これは、もちろん財政的な、河村さんはもっと踏み込めとおっしゃるかもわかりませんが、この法案を通していただきまして、そういう中でしっかりと踏み込むことによって、この法案の立法の趣旨に沿った普及活動ができるように頑張りたい、かように思っております。

河村委員 ありがとうございました。終わります。

石毛委員長 次に、池坊保子委員。

池坊委員 おはようございます。公明党の池坊保子でございます。

 このたび、劇場、音楽堂等の活性化に関する法律、私は大変すばらしい法律だと思います、これに御尽力なさいました議員の方々に心から敬服いたします。

 私も、日々、日本の伝統文化の一つである生け花と向かい合いながら、文化芸術がこの日本では本当に貧困に近いのではないか。いつも私が申しておりますように、自助努力で今まで文化芸術というのは、やってまいりました。だけれども、やはり世界がグローバル化している中にあって、国がやるべきこと、手を差し伸べなければならないことは多々あるのではないか。そうすることによって、携わっている、あるいは国民全体が、文化に対する関心だとか心の癒やしとか、それが経済に発展していったりしていくというふうに思っておりますから、文化芸術というのは別個のものだと考えてはならない、それは経済の活性化にも強く結びついていくということを私は申し上げたいというふうに思います。

 私は、劇場、音楽堂の役割は大変大事だと感じておりますので、まず大臣にそのことについてお伺いしたいと思います。

 劇場、音楽堂等は、それぞれの地域において、子供から高齢者まで、さまざまな人々の文化芸術の鑑賞、活動、交流の場であり、子供の文化芸術体験や人材育成などの機能も持っており、雇用創出や地域経済の活性化にも貢献しており、文化芸術による地域づくりにも大きな役割を果たしていると考えております。

 東日本大震災においては、劇場などが各地で緊急の避難場所となり、その後、コンサートなど復興イベントが催されるなど、地域住民のケアの場となりました。このように、地域住民の生活の拠点となる役割も担っていると私は思います。

 しかしながら、片方では、実演者から見ると、地方で劇場とか音楽堂、非常にすばらしい建物が建った、にもかかわらず、ハードはいいんだけれどもそれを使い切っていない。ソフトの面で、あいているときが多いとか、あるいは人を経済的に呼べないとか、さまざまな不満が指摘されていることも事実です。

 だからこそ、私は、このような法律をおつくりになった議員の方々、ありがとうございますというふうに国民を代表して申し上げたい気持ちなんです。

 平野大臣にお伺いしたいのは、現在の劇場、音楽堂等の現状や役割についてどのように認識していらっしゃるかをお伺いしたいと思います。

平野(博)国務大臣 池坊先生は、日ごろから、お花を通じての五百五十年の歴史を伝承していただいておることに、心から私は敬意を表したいと思います。

 御質問でございますが、現在の劇場、音楽堂の現状と役割の実態はどうなっているんだ、こういう御質問だと理解をいたします。

 先ほど来から、議員立法でお出しになられた背景の中の部分に発言を、鈴木議員の方からも御発言されておりますが、我が国の劇場、音楽堂の多くは公共施設が中心でございまして、その施設を多目的に利用しておる。そこで営まれる文化芸術活動も、大体は建物を貸すことによって実現をしている。これが中心でございます。

 そういう中にありまして、どういう課題が起こっているか、こういうことでございますが、創造的に発信したり、人々が集う場を提供するという本来の機能が十分に発揮できていない、これが一つ。もう一つは、文化芸術団体の中心が都市部にやはり集中をしておる、こういうことで、地方部においての文化芸術に触れる機会が相対的に少ないんだ、こういうことが二つ目。三つ目は、やはりそれを担ってもらう中核的な専門スタッフが質、量ともに不足をしている、こういうふうに認識をしておるところでございます。

 したがいまして、全国の劇場、音楽堂を、創造的発信の拠点、芸術鑑賞の拠点、地域住民が集う拠点に変えていくことがやはりこれからの政策課題だと私は認識をいたしております。

池坊委員 今、大臣から現状の御説明がございました。そして、都市部に集中しているんだよ、地域ではなかなか、文化、特にコンサートだとかオペラだとかバレエとか、そういう見る機会がないのだよという御指摘がございました。それを是正していくことは必要というふうに思っております。

 本法案提出者にお伺いしたいのですけれども、本法案が成立した場合、劇場、音楽堂等にはどのようなメリットがあると具体的にお考えでしょうか。そして、今後、地域における役割やあり方がどのように変化していくと、イメージを持っていらっしゃると思うのですが、どのようにしていきたいと思っていらっしゃるか、そしてそのためにはどのようにしたらいいとお考えかをお伺いしたいと存じます。

鈴木(寛)参議院議員 いろいろございますけれども、まず、劇場あるいは音楽堂等で行われる実演芸術というものの位置づけが、先ほど来御説明申し上げておりますように、これまで根拠法もございませんでした。

 ちゃんとした根拠法を持った活動であるということが位置づけられますと、今も、地域によっても非常に頑張っておられる地域、あるいは頑張っておられる劇場がございますけれども、そのことが、より広く地域の方々、あるいは国民の皆様、あるいは具体的にさらに申し上げますと、その地方の議会の関係者、あるいは政治の関係者、行政の関係者に、こうした法律でオーソライズされることによって、その意義が、この活動がごく一部の実演芸術を好きな人のための活動ではなくて、これはまさに広く国民、あるいは地域、社会にとって、例えば、今回、前文の中では、「新しい広場」とか、あるいは「世界への窓」ということを書かせていただいたんですけれども、そういうふうな役割を持った活動であるということが、法律がしっかりするということはまず非常に大きなことだと思います。そうした公の目的に向かって頑張っていただく。

 そして、個別には、指針をつくりますので、これまでそれぞれいろいろな事業をやってまいりましたが、その全体をきちっと鳥瞰して、それが好循環になるように、あるいはうまい連携がとれるようにというところが少し弱いところがございました。今回、まさに十六条で定められる指針によりまして、大きなビジョンと方向というものを関係者がみんな共有することによって、よい好循環が生まれていくといったようなことがあると思います。

 それから、随所に、例えば九条を初めといたしまして、「国及び地方公共団体は、この法律の目的を達成するため、必要な助言、情報の提供、財政上、金融上及び税制上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。」ということになりますから、この九条をもとに今のようなさまざまな支援策の充実ということが行われるといったようなことが、今回の法律によっての劇場関係者、実演芸術関係者に対するメリットというふうに考えていただければというふうに思います。

池坊委員 私、議員立法がいい点というのは、利点は何かと申しますと、やはり机上の空論ではなくて現場に根差しておりますので、現場の人たち一人一人が何を望み、何を願い、どういう方向に行きたいと願っているのか、そういうことをしっかりと捉えて法律をつくり上げていける、それからいっているということではないかと思っております。

 今、提案者がおっしゃいましたように、文化に携わっている人々が活力を持って演技をする、あるいは実演をするということは、大変必要なことであると思います。でも同時に、それだけではなくて、一人一人が劇場や音楽堂を中心としたソフトによって広く結ばれていく。今、きずなということが言われておりますけれども、そのきずなをかたく、性別を超え、そして年齢を超えて結ばれていくということに非常な力を出していかなければいけないというふうに私は考えておりますので、新しい広場、世界への窓、つまり、そこを中心として、それはその地域に生きている人々のコミュニティーなんだよということは、私は深く、よかったなと思う法律でもございます。

 今度はちょっと政府の方に伺いたいんですけれども、文化庁においては、劇場法案を先取りする感じで、平成二十二年度から、優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業がスタートしております。劇場、音楽堂等が中心となり、地域住民や芸術関係者らとともに取り組み、音楽、舞踏、演劇などの舞台芸術の制作、教育普及、人材育成、劇場、音楽堂スタッフの人材交流などを支援していらっしゃいます。

 例えば、平成二十四年度事業では約十五億が計上されて、重点支援劇場・音楽堂には、彩の国さいたま芸術劇場、サントリーホール、神奈川県民ホール、世田谷区パブリックシアターなど十施設、地域の中核劇場・音楽堂には、東京文化会館、水戸芸術館、河口湖ステラシアター、山口情報芸術センターなど五十九施設が対象となっております。

 この事業はどのような基準で選抜し、どのような基準でこの二つの事業を分けているのか。また、このような事業を通じて、地域の劇場、音楽堂等がそれぞれの特徴を生かして活動できる環境を整えるとともに、課題や戦略、情報を共有し、協力し合えるように支援すべきであるのではないかというふうに私は考えております。

 支援をするときに、割と点で支援をなさることが多いんですね。支援というのは、やはり継続をしてやってほしいと思いますことと、これが広くいろいろな人たちの面となっていかなければならないのではないかと思います。このことに対して、大臣並びに文化庁担当者はどういうふうに考えているのか。

 一方、重点支援劇場・音楽堂や、地域の中核劇場・音楽堂として位置づけられない既存の多くの文化施設において、文化芸術予算が結果として減額されてしまうのではないかという気がするんですね。

 私がすごく危惧しておりますことは、支援されたところはいいんですよ、支援された年もいいんですよ。ところが、次になると支援されなくて、そこは何もできなくなってしまう。それから、支援されないところと支援されたところというのは天と地ほどの開きがあるわけですね。こういうことについての細やかな予算配分の配慮というものも必要だと私は思っておりますけれども、そのことについてお伺いしたいと存じます。

平野(博)国務大臣 今、池坊先生、多岐にわたって御指摘をいただきました。

 私は、この法案に示されている部分というのは、やはり、より国民全体がこの問題を共有し、認識をし、文化芸術を高めていこう、こういうことだというのが一つだと思います。そういう意味で、先ほど来出ておりますように、地方においての課題を克服していくということが一つあろうと思っています。

 そういう中で、公演を行っていただく方々に対する支援と、もう一つは、鑑賞する方々に対する支援もやはり入れておかなければならないんだろうというふうに思っております。

 公演をしていただく方への支援というのは、地域の中核となる劇場、音楽堂への支援で、先ほど池坊先生が例示を挙げられたところを中心にやらせていただいている、こういうことでございます。

 また、鑑賞者への支援という部分につきましては、劇場、音楽堂が行う教育普及活動への支援、こういうことと、もう一つは、小学校、中学校、一流の文化芸術団体が巡回公演を行ったり、芸術家を派遣していく、こういうところも含めて文科省としては支援を進めてきたところでございます。

 加えて、先ほど言われたように、重点から漏れたところをどうするんだということでございますが、やはり一番大事なことは、広く国民の皆様方の底上げをしていくんだ、こういうことですから、地域のいろいろな劇場、音楽堂がかかわれるような、そういう支援を多面的にしていただきたいということを公共団体を含めて認識してもらう、こういうことが大事だと私は思っております。

 したがって、文科省としましては、この法案の趣旨に鑑みまして、地域間の格差を是正する、あるいは、全国の劇場、音楽堂の連携を深めることによって、先生御指摘いただいたことのないようにするということ、その結果として、より多くの劇場、音楽堂が活性化するように私どもとしては支援に努めてまいりたい、かように思っております。

池坊委員 次に、劇場、音楽堂等に携わっていらっしゃる方々の人材育成について伺いたいと思います。

 初台にある新国立劇場では、オペラ歌手だとかバレエとか、いろいろな人材を育成していらっしゃると思います。そのことは、大変に優秀な人たちが出てきて、私は将来が楽しみだなと思っておりますが、それのみならず、マネジメントとかいろいろなことが必要なんじゃないかと思っております。

 劇場、音楽堂等の機能を十分に発揮するためには、経営責任者、芸術責任者、技術責任者、さらに、コーディネートや企画立案を担当するアートマネジメント人材などの配置が必要ですけれども、設置目的、施設の規模、人口規模などの設置環境や運営の実態は、極めて、地域によっても違うし、多種多様なのではないかと思います。それぞれの劇場とか音楽堂等の特性に応じた配慮が必要だというふうに思っております。

 初台の運営を見ておりましても、実演者を養成することはできても、マネジメントとかそのような多岐にわたることにおいてはまだまだ不十分だなと思って見ておることがございます。

 文化庁は、これまでもさまざまな団体や劇場、音楽堂等が行う舞台芸術者やアートマネジメント人材などに対する各種の研修、講座などの取り組みを支援しておられますが、引き続き、専門性を持つ人材の育成を充実させていくことが必要であるのではないかと思っております。

 先ほども出ていました、劇場、音楽堂等と大学などの交流が現在どのようにされているのか、また、大学などにおけるアートマネジメント人材育成の状況などについて、担当者あるいは大臣、お答えいただけたらと思います。

平野(博)国務大臣 より詳しく答えるのは文化庁の河村さんの方がいいと思いますが、今先生おっしゃられたように、専門性を持った人を育成していくんだ、こういうことについて、もっとどのようにやっていくんだということと、先ほど来の議論がございましたが、大学との連携をもっと密にする。

 調べますと、大学でも、国公立、私立を含めて、アートマネジメント人材の育成に関する調査報告をとりましたら、かなりの大学がその部分を担っていただいております。また、アートマネジメントを一つの単独科目として取り上げている大学も、実はかなりございます。したがいまして、この知見、専門性を生かす、こういう意味で、今回のこの立法の趣旨に沿っていくためには、必ず大学との連携というのは必須になってこようと私は思っております。

 したがいまして、いろいろな大学でアートマネジメントの教育の専攻、コース、科目が設けられておりますので、芸術文化活動をより広く普及するための企画制作、マネジメントに関する教育を、もっとこの法案の趣旨に沿って対処していく、こういうことが必要だと思っております。

 したがいまして、文科省といたしましては、これらの具体的な取り組みをもっと支援していくということと同時に、全国の大学の潜在的な能力をもう一度再発掘する、こういうことで、文化政策全般の推進に向けて、各大学との、あるいは劇場、音楽堂との連携協力を促進する、こういう考え方で先生の御指摘に対して対処したい、かように思っております。

池坊委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきますが、最後に一言、提出者に決意を述べていただきたいのです。

 その決意は何かと申しますと、このようなすばらしい法律ができて、政府が実行していくわけですけれども、できたけれども、なかなかそのとおりには実行されないことも多いと思いますので、提出者には、これにエネルギーをお使いになって、でも、そのエネルギーを持続なさって、これが実行されるように見守り、そして指導していっていただきたいと思いますので、その点についての御決意をお聞かせいただいて、私の質問を終わらせていただきます。

石毛委員長 時間が参っておりますので、鈴木参議院議員、簡潔に、力強く、よろしくお願いいたします。

 ちょっと、委員長が余分なことを申しました。

鈴木(寛)参議院議員 それでは、簡潔に、力強く決意を述べたいと思います。

 この法案は、まさに超党派の音楽議員連盟が中心となって、そして、この音楽議員連盟は大変歴史もございます、この議員連盟が文化芸術振興基本法もつくらせていただいて、そしてそれを受けて、今回の劇場法の制定ということになりました。

 この議員連盟の活動を中心に、そして、この議員連盟は、芸団協を初めさまざまな実演芸術関係者あるいは劇場関係者の皆さんとも、今回も相当ないろいろな意見交換も重ねてまいりましたし、これからも重ねていきたいと思います。そこでの議論をこの指針づくりにも、政府の方にどんどん提案、提言、情報提供を行ってまいりたい。

 そして何よりも、実演芸術に携わっておられる現場の皆さんとの国会議員ならではの交流、対話を深めていくことで、この法律に魂を入れてまいりたいと思いますので、池坊先生の御指導、御鞭撻をさらにお願い申し上げたいと思います。

 ありがとうございました。

池坊委員 ありがとうございました。終わります。

石毛委員長 次に、宮本岳志委員。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 この法律は、文化芸術振興基本法の議論のときから、劇場、音楽堂、劇団、オーケストラなどの文化芸術団体が議論を重ねて、政府でも検討がされてきたものですね。先ほど議論がありました、超党派の音楽議員連盟がまとめ上げた結果として出されております。私もそのメンバーの一人でありますけれども、音議連幹事長としてその取りまとめの中心になって御苦労いただいた鈴木議員に、心から感謝を申し上げたいと思います。

 この法律案は、文化庁の検討会では、一部に、劇場を、つくる劇場、見る劇場、交流施設など分類、階層化し、つくる劇場に集中投資するといったものにするとの報道もあり、小規模施設が切り捨てられるという反発も強かったんです。しかし、本法律案は、そのような劇場の階層化は盛り込まれておりません。

 私ども日本共産党は、今回の法制化に当たっては、文化芸術の活動の自由をきちんと守りながら国が財政的に下支えをするよう明記することが必要だと考え、この間、音議連の総会などの場で意見も述べさせていただいてまいりました。

 そこで、本法律案では、文化芸術の活動の自由についてはどのように規定されているのか。国、地方公共団体の文化行政との関係はどのように規定されているのか。これは法案提案者にお答えいただきたいと思います。できるだけ簡潔にお願いいたします。

鈴木(寛)参議院議員 おっしゃるとおり、文化芸術活動は、まさに表現活動でありますので、憲法上、非常に重要視されなければいけないというふうに考えております。

 そうしたことを受けて、この法案の中でも、第一条におきまして、文化芸術振興基本法の基本理念にのっとるべきであるということを規定いたしました。

 また、第四条及び第五条におきまして、劇場、音楽堂等を設置し、または運営する者や実演芸術団体等に対しては、それぞれの実情を踏まえつつ、自主的かつ主体的に、実演芸術の水準の向上等に積極的な役割を果たすよう努めるものとするというふうにしております。

 それから、第八条第二項におきましては、国及び地方公共団体が施策を策定し、及び実施するに当たっては、劇場、音楽堂等を設置し、または運営する者や実演芸術団体等の自主性を尊重するものというふうにしているところでございます。

宮本委員 劇場や音楽ホールなどは、創造と鑑賞の両面から、芸術の発展になくてはならない場所となっております。

 ところが、民間施設は大変苦境にあると言われておりまして、地方では、文化予算そのものの削減、公立文化施設も指定管理者制度などによって困難な状況に置かれております。

 特に、私の地元大阪では、行政の側からオーケストラ、文楽への支援を削減することが表明され、関係者から猛反発が起こるなどの動きもございます。ある新聞は、この法律、この劇場、音楽堂法の制定が文楽の衰退を防ぐきっかけになればと願う、こう書かれておりました。

 きょうは、大阪でのことそのものを論じるつもりはないんですが、この法律では、地方公共団体はどのような役割を果たすことが期待されているのか、お答えいただけますか。

鈴木(寛)参議院議員 まさに、なぜ芸術を振興するのか。今回の前文にも入れさせていただきましたけれども、人々がともに生きるきずなを形成するための地域の文化拠点としてこうした劇場、音楽堂等を振興するわけであります。

 七条におきましては、地方公共団体は、今申し上げましたような法律の目的を達成するために、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び当該地方公共団体の区域内の劇場、音楽堂等を積極的に活用しつつ実施する役割を果たすことが期待されているということで、先ほども御議論になりましたけれども、人々の共感と参加を得ることにより、新しい広場としての地域コミュニティーの創造と再生を通じて、地域の発展を支える機能、ここに、地方公共団体も積極的な役割を担っていただきたいというふうに考えております。

宮本委員 地方公共団体も大いに文化芸術への支援を強化してもらいたいわけですけれども、やはり、この間の国の実演芸術に対する支援の姿勢が反映している面もあると思うんですね。

 この間、文化予算全体はふえているんですけれども、実演芸術に対する公的助成はむしろ減少傾向にあります。特に、事業仕分けで短絡的な効率主義や成果主義を文化芸術に持ち込むやり方に、世界の通念からも非常識だと強い憤りと反対の意見が文化人から発せられたことは記憶に新しいところであります。

 やはり、文化芸術への公的支援は、短期的な経済効率性を見るのではなくて、長期的かつ継続的な取り組みが何より大切だと私どもは考えます。この法律案では、国、地方公共団体が行う、劇場、音楽堂等への施策について、どのようにこの観点が規定をされておるか、お答えいただきたい。

鈴木(寛)参議院議員 宮本委員の御指摘は本当にごもっともでございまして、この世界は、なかなか数値化できない、市場化できない価値というものが人々のきずなあるいは地域あるいは我々のアイデンティティーといったことに大変大事な役割を担っているというところが、もっともっと重視されなければいけないというふうに考えて、法制定をしております。

 前文におきましても、国及び地方公共団体が劇場、音楽堂等に関する施策を講ずるに当たっては、短期的な経済効率性を一律に求めるのではなく、長期的かつ継続的に行うよう配慮する旨を明記しているところでございます。この前文は、法制定の理念を示し、解釈の基準となるものでありますので、御指摘の考え方を踏まえてこれから法律が運用されるものと考えておりますし、例えばこの指定団体等々の選定等についても、このような精神が生かされるものということを期待しております。

宮本委員 次に、ちょっと文化庁に確認したいんですが、この間、文化予算の拡充をと、芸団協の皆さんが請願署名に取り組んでこられました。六十三万余筆の署名が国会に提出をされ、これは残念ながら採択とはならなかったわけですけれども、引き続き、今国会にも文化予算の拡充を求める署名が提出をされております。これは各党が力を合わせて、ぜひ今度こそ採択できるようにしなければならないと思うんです。

 そこで、具体的な数字を聞くんですけれども、この間、文化予算全体は辛うじて増額をされておりますけれども、舞台芸術への重点支援、舞台芸術創造力向上・発信プランは減少傾向にあると思います。今年度予算と前年度の比較でどうなっているか、文化庁、お答えいただきたい。

河村政府参考人 先生御指摘の舞台芸術創造力向上・発信プランは、三つの事業、トップレベルの舞台芸術創造事業、優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業及び日本版アーツカウンシルの試行的導入という三つの事業から構成されております。

 舞台芸術への支援策はこのプラン以外にもあるのではございますけれども、今申し上げた三事業を合計したプランの額で申しますと、今年度予算は約四十七億でございます。前年度は約五十五億でございましたので、八億の減額でございます。

宮本委員 舞台芸術に対する支援は毎年のように名前が変わっておりまして、簡単に比較しにくいんですけれども、実演芸術を担う団体への支援はこの間減少傾向にあると今お答えがあったとおりです。

 今国会に芸団協の皆さんが提出された請願署名には、「芸術組織が、その専門性を発揮し、持続的に発展していける助成制度をさらに充実してください。」この請願項目がございます。文化予算の拡充、とりわけ劇場、音楽堂、実演芸術への支援をこの法律の制定を機に拡充へと転じることは当然だし、さらに、芸術団体や劇場、音楽堂にとって実際に役立つ新たな支援策もつくり出し、予算で目に見える形にすることが重要だと思います。

 これは大臣の御決意をお聞かせいただきたい。

平野(博)国務大臣 先ほど河村次長の方から、三つの観点から、減額になっているということです。これは極めて残念なことでございますが、昨年の場合には、特に震災、こういうこともございまして、残念ながら結果としては減額、こういうことでございます。

 この法律の持つ趣旨を十分踏まえて文科省としても対応したい、かように思います。

宮本委員 ぜひしっかり予算の裏づけをとっていただきたいと思うんですね。

 劇場、音楽堂といっても、やはり実演芸術の創造、普及には人が大事であります。しかし、実際には、劇場、音楽堂にも大小さまざまなものがありまして、市町村では専門職員を配置することは困難だという意見もございます。この専門家の配置について、この法律の制定を機に国がやはり大いに支援をすべきだと私は思うんですけれども、これは文化庁、どのようにお考えになりますか。

河村政府参考人 劇場、音楽堂等におきまして、企画制作、舞台技術、あるいは資金調達も含めました専門的な人材を確保することが重要であるというふうに考えております。

 文部科学省としては、現在でも、企画制作の担い手となる専門的な人材の育成策として、アートマネジメントですとか技術の面に携わる職員の方々の研修会の実施を行っておりましたり、劇場、音楽堂等自身が行われます人材養成の取り組みに対する支援を行ったり、また、技術者等への国内外の実践経験、研修の機会の提供などを行っております。今後とも、これらの施策の充実に努めてまいりたいと存じます。

 また、これとともに、先ほど来御議論になっております法律案第十六条の規定に基づく文部科学大臣の指針というものが予定されておりますけれども、この指針におきまして、専門的な人材の配置を促進するように、関係者の取り組みが進むような、こういったことも盛り込むことを検討いたしたいと存じます。

宮本委員 ぜひ、やはり人材という点でも国の支援を強めていただきたいと思うんですね。

 それで、劇場、音楽堂には、先ほどのような専門家の方々のほかに、舞台を支える技術者の皆さんもいらっしゃいます。

 音楽議員連盟の総会の場で、真野純公共劇場舞台技術者連絡会会長からも話を聞いたんですけれども、地方自治体では劇場に指定管理者制度が導入され、さまざまな問題が指摘されているが、技術者の人材育成の面でも問題が指摘をされているわけです。

 文化庁の検討会でも、日本舞台音響家協会理事長からは、いつ契約が切られるかわからない指定管理者制度による委託とか一括契約のスタッフでは、人材育成とか技術の継承はできませんという声が出され、また、日本照明家協会名誉会長からは、指定管理者制度が施行されてから大きな危機感を持っている、警備会社とか清掃会社が指定管理者に手を挙げる例というのが出てきている、一定の技術を持った技術者を雇用するとは限らないと訴えが出ております。

 私どもは、そもそも指定管理者制度そのものが劇場や音楽堂などの文化施設にはなじまないというふうに考えるわけですけれども、指定管理者であっても技術者の人材確保、育成がきちんとされることが何よりも大事だと考えますけれども、この点、文化庁、どうお考えになりますか。

河村政府参考人 指定管理者制度は、一般には、民間のノウハウによって公の施設のサービスの向上を図ろうとするものでございます。

 この制度を活用した劇場、音楽堂等の活発な取り組みも一部に見られる、多くの例はございますけれども、しかし一方、指定期間が短くて事業の継続性が重視されないとか、専門的な人材の養成、配置が十分にできていない、こういう指摘もございます。

 この指定管理者制度については、地域の実情を踏まえつつ、制度本来の狙いが実現されるような運用の工夫が必要であると考えておりまして、先ほどの十六条の規定に基づきます文部科学大臣が作成する指針につきましては、専門的な人材の位置づけも含めまして、地方公共団体や指定管理者等のよい取り組みが進むように検討してまいりたいと思います。

宮本委員 専門家や技術者の配置、養成、指定管理者制度のあり方等々、劇場、音楽堂にどのような支援をしていくのかという中身については、この法律にある指針に盛り込まれる内容になってくると思うんですね。ぜひ、関係者の意見を広く聞いていただいて、しっかりそれが生かされるようにお願いを申し上げたいと思っております。

 そこで、劇場、音楽堂を中心に実演芸術を振興させるというこの法律の具体化としての指針の策定に関してですけれども、指針の策定に当たっては、劇場、音楽堂等の関係者、それから芸術文化団体の意見を聞くのはもちろんのことでありますけれども、これは音議連の場でも出されていたことでありますけれども、見る側、鑑賞者の意見もぜひ聞くようにすべきだという声が出されておりました。

 この点について、これは法案の提案者そして大臣、両方にお答えをいただきたいと思います。

鈴木(寛)参議院議員 まさにおっしゃるとおりでございまして、いい実演芸術というのは、まさに劇場の設置運営者、そして芸術のつくり手、演じ手、そして鑑賞者あるいは支援者、この両者がというか全者が本当に相まって初めて、よい実演芸術というものはできるものであります。

 したがいまして、当然、この指針を策定するに当たってはこうした声も聞いていただきたいというふうに思いますし、また、その地域でいかによき鑑賞者、よき支援者を育てていくのかということで、やはり、そうした鑑賞者を育成する教育者といった人たちの声も指針に反映されるべきだというふうに考えておりますので、そのことを受けて文部科学省におかれては御対応いただきたいと、我々提案者としては思っているところでございます。

平野(博)国務大臣 具体的な意見聴取、こういうことですが、鑑賞者は含まれていないということでございますけれども、幅広くいろいろな方々の意見を聞くということが大事であろうというふうに思っています。

 したがって、聞き方の方法論はいろいろあろうかと思いますが、今いただきました鑑賞者側の意見聴取に対する御意見も踏まえて、この法案が成立し次第速やかに、どういう聞き方がいいのかということについては検討してまいりたい、かように思います。

宮本委員 やはり、こういう法律をつくるというのは、歴史に一つの画期をなす出来事だと思うんですね。その機会に、ぜひとも関係者の意見をしっかり聞いていただいて、また鑑賞者の意見も取り入れていただいて、本当に法律が目指す目的が達せられるように全力を挙げていただきたいと思います。

 こういう機会ですから、やはり、長年、文化予算を増額してほしいと頑張ってこられた方々の声も実らせる必要があると思います。

 もう会期末ということが言われておりますが、当委員会には、芸団協提出の、「国は、文化芸術の力を生かした震災復興と地域社会の活力を生み出す文化芸術政策を充実し、国の基本政策に据えてください」との趣旨の請願署名も付託されているわけでありますし、この中には、「フランスは国家予算の〇・八六%、韓国は〇・七九%を文化予算に充てていますが、日本は〇・一一%にしか過ぎません。」こういう事実も突きつけられているわけでありますから、ぜひとも今国会、今度こそ、この請願を各派の協力で採択することを心から呼びかけて、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

石毛委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

石毛委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 参議院提出、劇場、音楽堂等の活性化に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の委員の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石毛委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石毛委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

石毛委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十八分散会


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