衆議院

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第6号 平成25年5月17日(金曜日)

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平成二十五年五月十七日(金曜日)

    午前九時四十一分開議

 出席委員

   委員長 松野 博一君

   理事 木原  稔君 理事 中根 一幸君

   理事 永岡 桂子君 理事 萩生田光一君

   理事 山本ともひろ君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 浮島 智子君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      小此木八郎君    神山 佐市君

      菅野さちこ君    木内  均君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      小林 茂樹君    桜井  宏君

      新開 裕司君    丹羽 秀樹君

      野中  厚君    馳   浩君

      比嘉奈津美君    船橋 利実君

      宮内 秀樹君    宮川 典子君

      義家 弘介君    小川 淳也君

      郡  和子君    中川 正春君

      松本 剛明君    今村 洋史君

      岩永 裕貴君    遠藤  敬君

      椎木  保君    中野 洋昌君

      青柳陽一郎君    井出 庸生君

      宮本 岳志君    青木  愛君

      吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学副大臣      福井  照君

   文部科学大臣政務官    丹羽 秀樹君

   文部科学大臣政務官    義家 弘介君

   経済産業大臣政務官    平  将明君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            戸谷 一夫君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    富田 健介君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役副社長)       内藤 義博君

   文部科学委員会専門員   久留 正敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  桜井  宏君     船橋 利実君

  遠藤  敬君     岩永 裕貴君

  田沼 隆志君     今村 洋史君

同日

 辞任         補欠選任

  船橋 利実君     桜井  宏君

  今村 洋史君     田沼 隆志君

  岩永 裕貴君     遠藤  敬君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 東日本大震災に係る原子力損害賠償紛争についての原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る時効の中断の特例に関する法律案(内閣提出第六八号)


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     ――――◇―――――

松野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、東日本大震災に係る原子力損害賠償紛争についての原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る時効の中断の特例に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として東京電力株式会社代表執行役副社長内藤義博君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として文部科学省研究開発局長戸谷一夫君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長糟谷敏秀君及び中小企業庁次長富田健介君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅野さちこ君。

菅野委員 おはようございます。福島県選出、自由民主党の菅野さちこでございます。

 本年四月十五日に、予算委員会の第四分科会で紛争解決センターについてお伺いをいたしました。本法律案によりまして、紛争解決センターを利用する被害者の方々が、もはや時効の心配をすることなく安心して東京電力との和解交渉に臨めるようになったこと、和解仲介制度の活用を促進されることにつながるこの法律案を評価している一人でございます。本日は、被災地福島県選出の議員として質疑をさせていただきます。

 紛争解決センターが、平成二十三年八月に原子力損害賠償紛争審査会の機関として発足し、成果を上げ、活用されるようになってきている中、本法律案では、被害者の方々の時効に対する懸念を払拭し、より安心して紛争解決センターの手続を御利用いただけるようにすることで和解の仲介の利用を促進する、つまりは紛争解決センターのさらなる活用を図るとされています。

 本法律案によって、緊急の措置として、和解仲介手続中に時効期限が過ぎてしまった場合の懸念がなくなることは、被災者救済のための大きな前進だと思います。本法律案では、和解の仲介が打ち切られ、その通知を受けた日から一カ月以内に裁判を起こした場合には、時効が中断されるとされています。しかし、裁判を起こすのは、被害者の方々にとってはやはり重い負担と考えられますので、せっかくの本法律案でありますが、和解の仲介は打ち切られることなく成立した方が望ましいと思うのです。

 そこで、お尋ねいたします。

 紛争解決センターのこれまで蓄積された和解の仲介の経験を踏まえて、紛争解決センターを利用される方が、東京電力との直接交渉よりも和解仲介の申し立てを選択される理由と、和解が打ち切りとなった事例の原因はどのようなものであるかについて、端的にお答えください。

戸谷政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力損害賠償紛争解決センターにおきましては、今般の原子力事故に係る損害賠償の紛争の和解を仲介するということを目的としているということでございます。

 基本的には、東京電力と被害者の方々が直接賠償交渉したものの、東京電力からの回答が不十分だということでセンターの方にお申し立てをいただくということでございますが、このほか、東京電力が公表いたしております賠償基準に対しまして、やはり不十分であるということから、必ずしも東京電力と直接交渉をしなくて、センターの方に申し立てをされる方々もいらっしゃるというのが実情でございます。

 そういったことで、センターへの申し立てにつきましては、基本的には、東京電力から提示された賠償額を上回る賠償の実現を期待してセンターに対してお申し立てをいただいているということで認識をいたしております。

 今先生御指摘の打ち切りとなるような事例ということでございますけれども、東京電力におきましては基本的にセンターの和解案を尊重するということでございまして、これまで基本的に東京電力は和解案を受諾しておりまして、打ち切りとなる事例につきましては、残念ながら、申し立てた方がセンターの和解案につきましてやはり納得できないケースもまだあるということでございまして、そういったものが打ち切りとなるということがございます。

 それとあと、残念ながら、相当因果関係という点につきまして、やはりなかなか難しい点もございます。そういったことにつきましては打ち切りとなることもあるということでございます。

菅野委員 御答弁どうもありがとうございます。ぜひ引き続きよろしくお願いいたします。

 次に、今般の原子力事故の被害の特徴として、被害が広範にわたり、被害者も多数に上っています。多くの被災者の方々が、今後の見通しも立たないまま、不自由な生活を余儀なくされていること、また、放射線被曝による、長い潜伏期間を経て症状があらわれる健康被害が生じる可能性が否定できないことなどが指摘されています。

 この状況を反映し、避難しているか否かを初めとして、家族構成や職業など個々の状況ごとにさまざまな被害が混在している上に、晩発性すなわち長い潜伏期間を経て症状があらわれる健康被害のように、現時点で顕在化していない損害も考えられます。このように、被害が広範かつ深刻で複雑化している中、本法律案では、全ての被害者、全ての損害をカバーすることはできません。

 本法律案の対象となるには、前提として和解の仲介を申し立てていなければなりませんが、紛争解決センターの和解仲介手続を利用されない被害者の方々もいらっしゃるはずです。また、和解の仲介を申し立てた損害項目しか本法律案の対象とならない点も問題と考えています。

 また、放射線被曝による、長い潜伏期間を経て症状があらわれる健康被害は、いわゆる除斥期間とされる二十年を過ぎた後に発生する可能性があり、原発事故当時に被曝されてしまった方や、事故によって線量が上がってしまった地域にお住まいの方々が、将来、健康被害が発生したときに賠償を受けられないのではないかと御不満をお持ちです。その御不満は、本法律案ではカバーできない課題だと思います。

 つきましては、下村文部科学大臣の強いリーダーシップのもと、被災者一人一人に最後まで寄り添った賠償を行っていただくため、さらなる措置をお願いしたいと思います。

 また、時効や除斥期間は、法制度全般にかかわるものであり、原子力損害賠償制度のみにかかわる問題ではないため、対応策は十分議論しなければならないと思いますが、被害者の方々の御不安を解消するため、政府としてこの問題に取り組まれるという大臣の御決意をお願いしたいと思います。

 あわせて、本原発事故の賠償責任を負う東京電力への適切な指導監督もお願いしたいと思いますが、経済産業省の御所見をお願いいたします。

下村国務大臣 原子力損害賠償債権の消滅時効に関しては、被害者の方々が時効到来によって適切な賠償請求ができなくなることがないように、適切に対応していくことが必要と考えております。

 今回御審議いただく原賠ADR時効中断特例法案は、被害者が和解仲介中に時効期間が経過することを懸念して原子力損害賠償紛争解決センターの利用をちゅうちょすることがないよう、緊急に必要な措置として、和解の仲介の手続の利用に係る時効の中断の特例について定めたものでございます。

 また、文科省としては、和解仲介の申し立てを行っていない方々を含む被害者の方々に関して、東京電力に対し、損害賠償請求権の消滅時効について、被害者の方々の実情を踏まえた柔軟な対応を行うとともに、損害賠償請求をされていない被害者に対して請求を呼びかけるなどの丁寧な対応を行うように求めているところでもございます。

 今後、まずは国の要請に対する東京電力の取り組みと、まだ請求されていない被害者の方々の実情をよく見きわめた上で、関係省庁とも連携し、必要な対応を検討し、被害者の方々の消滅時効に関する不安の解消にしっかり努めてまいりたいと思います。

平大臣政務官 経済産業省でございます。

 議員御指摘のとおり、福島第一原子力発電所の事故による原子力損害については、広範かつ長期間に及ぶことから、さまざまな事情を持つ被害者が適切に賠償されることが重要と認識をしております。

 まず、時効についてでございますが、ことしの二月、茂木大臣から、ことしの三月には震災から二年、来年には三年を迎えるに当たって、被害者の方々から損害賠償請求は近く時効にかかってしまうのではとの不安の声が上がっていると聞く、事故から三年たったら時効で賠償が終わりなどということがないように、被害者の方々に不安を与えない対応をお願いしたいという旨、東京電力に対して要請をしております。

 これを受けまして、東京電力社長が次のようにコメントをしております。「時効の取り扱いにつきましては、当社は「事故から三年たったら時効で賠償が終わり」などということは、もとより全く考えておりません。 被害を受けられた方々が、時効をもって適切な賠償を受けられなくなってしまうことは絶対に避けなければならないと考えており、こうした私どもの時効に対する考え方については、総合特別事業計画にも新たに記載しております。」とコメントをしております。

 時効につきましては、このように一律に断ることのないように柔軟な対応を求めてまいりたいと思います。

 あわせて、本賠償未請求の方々に対しても、戸別訪問など丁寧な情報発信を行うこと、また、東京電力が把握できていない被害者の方々がなお存在する場合に備え、請求のサポートに万全を尽くす等、被害者の方々が不利益を受けないように、さまざまな事情を踏まえて真摯に対応をするよう求めてまいります。

菅野委員 下村文部科学大臣の心強い御答弁、ありがとうございます。また、平経済産業大臣政務官、監督指導をよろしくお願いいたします。

 次に、生活の再建に向けた政府全体の取り組みについてお伺いいたします。

 原発事故から二年がたちます。賠償の基本的な考え方について見直す時期に来ていると思います。原発事故当初の損害賠償は、被害者の生活保障としての面が強く、当座必要な資金の供給という側面がありました。しかし、将来を見据えたときには、一時の損害賠償という視点のみならず、生活の基盤を失ってしまった方々の生活の再建という考え方に政府全体として取り組むことを検討していく時期に来ているのではないかと思います。

 紛争審査会の指針などでは、避難指示区域のレベルに合わせて、例えば、帰還困難区域では、五年分を一括で、財物賠償については不動産の価格に係数を掛けてといったやり方で、ある程度まとまった金額の賠償を行い、被害者の生活再建を促しています。

 しかし、被害者が受けた損害は賠償しました、あとは自力で生活再建をということで終わらせていいのでしょうか。この原子力損害賠償の問題は、被害者の最後の一人まで完全に賠償するだけではなく、全ての被害者の生活が再建できるまでは終わったとは言えないのではないでしょうか。それは、文部科学省が担当している原子力損害賠償の枠組みを超えた、被災者の心に寄り添った政府全体としての取り組みが必要だと思いますが、御所見をお願いいたします。

下村国務大臣 被災者の方々の生活再建のためには、原子力損害賠償のみならず、避難者の方々が安心して生活を営めるようにするためのさまざまな課題が必要であると、御指摘のように認識をしております。

 また、昨年十二月の内閣発足時には、安倍総理から、全閣僚に対して、閣僚全員が復興大臣であるとの意識を共有し、被災者の心に寄り添い、従来の発想にとらわれることなく、スピード感を持ってみずからの持ち場で被災地再生のために全力を尽くすとの指示もございました。

 これに従い、文科省としても、関係府省と一体となって、被災者の方々の生活再建のために取り組んでまいります。

菅野委員 ありがとうございます。ぜひ引き続きよろしくお願いいたします。

 最後になりましたが、紛争審査会の指針見直しの今後の見通しについてお伺いいたします。

 去る五月十二日、原子力損害賠償紛争審査会は、福島県及び市町村からの御要望を踏まえて、避難指示の対象となった市町村の現地調査を行っており、能見会長は、家屋を中心とした財物賠償の上乗せなど、指針の見直しをする考えを示されたと報道されております。

 原発事故から二年以上がたった現在においても、例えば不動産などの財物については、東京電力が受け付けを開始したばかりで、賠償が本格化しているとは言えない状況にあります。原子力損害賠償紛争審査会が策定する指針の見直しについての今後の見通しをお願いいたします。

福井副大臣 ありがとうございます。

 今菅野先生御指摘の指針でございますが、原子力損害賠償紛争審査会が策定をいたしております。これは、類型化が可能で、一律に賠償すべき損害の範囲を示しておりますが、これまでも、損害の発生状況に応じまして、随時策定してきたところでございます。

 今先生おっしゃったように、今月十二日、審査会は、委員の先生方みずからが、直接、避難区域見直し後の現地の被害の実態を把握するために、福島の被災地の現地調査を実施されていらっしゃいます。六月にも、第二回目の現地調査及び審査会の現地開催が予定をされていると承知をいたしております。

 指針につきましては、可能な限り被害の実態を踏まえたものであることが重要でございます。審査会におきましては、この現地調査も踏まえまして、例えば、今後、管理不能となった住宅など財物の賠償等につきまして、被害の実態に応じて、指針に追加的に反映されるべき事項についての検討がなされるものと承知をいたしているところでございます。

菅野委員 ありがとうございます。福島県民は、皆、今の政府を信頼して、対応を心待ちにしておりますので、ぜひ心ある対応をよろしくお願いいたします。

 時間が参りましたので、本日の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

松野委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 兵庫第八区、尼崎市選出の新人でございます。どうかよろしくお願いいたします。

 さて、早速質問をさせていただきます。

 本法律案によりまして、紛争解決センターで和解仲介を行っている最中に三年間がたって時効が来てしまうんじゃないか、だから紛争解決センターを使うのはやはりやめた方がいいんじゃないか、こう思われている方の御懸念が解消されるわけでございます。被害者の利益のためにも、ぜひとも早期に成立を図る必要があると考えております。

 しかし、他方で、原子力損害賠償についての時効の考え方そのもの、あるいは補償の中身、こういうものについて、さまざま被害者の方に御懸念があることも事実でございます。

 例えば、東京電力が現在被害者という形で把握をしている、ダイレクトメールを送付した、これが債務の承認という行為になりまして、ここから三年間が時効なのではないか。これが三年間、もし反応がなかった場合はどうなるのか。あるいは、東京電力が現在まだ把握をされていない方がいる、時効の起算点から三年以上経過した後にこういう方を把握した場合は一体どうするのか。あるいは、事故から三年以上が経過した後に例えば放射能による健康被害が新たに顕在化した、こういう場合はどうするのか。こうしたケースについて、東京電力が時効によって損害賠償請求権の消滅を主張してくるのではないか。こういう御懸念をされている方もいらっしゃる、これも事実でございます。

 通常の損害賠償と異なりまして、事故からもう二年以上が経過をいたしました。しかし、まだ多くの皆様が避難生活を送られております。他方で、山林でありますとか田畑でありますとか、まだ財物賠償の方針が決まっていない、こういうものもある。こうしたことを鑑みると、私は、少なくとも当面の間は、先ほど説明させていただいたような場合においても、東京電力にしっかりと賠償の対応をさせる、請求権の時効による消滅を主張させない、このように国がしっかりと指導監督をする必要があるというふうに考えますけれども、御見解を伺います。

糟谷政府参考人 お答え申し上げます。

 民法の百四十六条におきまして、「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。」というふうにされ、なおかつ時効が三年間とされておることから、被害者の方々に多大な御負担をおかけしているというふうに認識をしております。

 この点につきましては、御質問いただきましたように、国としてもしっかりと指導をするということで、去る二月に、総合特別事業計画の一部変更の際に、茂木大臣から東京電力広瀬社長に対しまして、事故から三年たったら時効で賠償が終わりなどということがないように、被害者に不安を与えない対応を行うようにということを求めたところでございます。

 これに対しまして、広瀬社長からは、事故から三年たったら時効で賠償が終わりなどということはもとより全く考えておりません、被害を受けられた方々が時効をもって適切な賠償を受けられなくなってしまうことは絶対に避けなければならないと考えており、こうした考え方については特別事業計画にも記載しているという旨の回答があったところでございます。

 先ほど幾つか事例を挙げていただきました。まずダイレクトメールでありますが、これは、仮払い請求をし、仮払いを行った方々に対しまして、定期的に請求書をお送りしております。一回お送りして終わりということじゃなくて、近くは去年の暮れからことしの三月ぐらいまでにかけて、十六万人の方々に一通りお送りをしております。これをもって債務の承認をしたということで、時効の中断でございます。反応があろうがなかろうが、そこで時効は中断しておるということがまず第一点であります。

 それから、東電が現在被害者として把握をしていないけれども、今後、時効成立後に把握をした場合につきましても、先ほどの大臣からの要請、それから広瀬社長のコメントのとおり、時効の完成をもって一律に賠償請求を断ることがないというような対応がしっかりなされるように指導をしてまいりたいと考えております。

 それから、放射能による健康被害などで、後で新たに損害が発覚した場合、この点につきましては、民法上、七百二十四条で、損害を知ったときから三年間行使しないときはということになっておりますので、時効を三年以上経過した後に新たに損害が発覚した場合でも、新たに損害が発覚した、すなわち、そこで損害を知ったというときから時効の起算点が開始をされるということであります。

 五年という一律のことでもなかなかうまくいかないと思いますので、しゃくし定規に対応するということではなくて、賠償をしっかりと申し上げるものについてはきっちりと賠償がなされますように、今後とも引き続きしっかりと指導をしてまいりたいと考えております。

中野委員 御丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 私が先ほど申し上げた三点の例ということで一つ一つ回答をしていただきましたけれども、やはりこういう御懸念の声があるということは事実でございますので、しっかりと対応していく、またこれを周知していっていただきたい、このように考えますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、補償の内容について御質問させていただきます。

 土地や建物などの財物の賠償、これについては手続がまさに開始をされたところという状況であります。しかし、被害者の方からは、通常の賠償であれば、本当にそれをもって生活再建ができるのか、こういう御不安の声を大変多くいただいているところでございます。今回の財物の賠償の指針につきまして、こういった声をどのように反映させていったのか、御見解を伺いたいと思います。

糟谷政府参考人 賠償は、損害を補填するというその性格上、被災者の生活再建にとって十分ではない、そういう御批判をいただいているものだというふうに承知をしております。

 財物の賠償基準の算定に当たりましては、賠償金が被害者の方々の今後の生活再建に少しでも多く資することになるように、これまで国も住民説明会等を通じて直接被害者の皆様から声をお伺いし、関係自治体とも密接に協議を行ってまいりました。

 その中で、損害を補填するという賠償の性格の中でどういうことができるかということをいろいろ工夫いたしました。具体的には、建物につきまして、建物の事故発生前の価値を算定するに当たりましては、例えば、公共用地の収用時と同程度の長い期間の耐用年数、これは木造住宅で四十八年でありますが、それを設定いたしております。

 それからまた、減価償却ということをやりますと、どんどんどんどん、最終的には四十八年でゼロになってしまうわけでありますが、建物の価値の二割よりさらに下には下がらないようにするということで、残存価値に二〇%、二割の下限を設けるというふうな対応をいたしております。

 それから、固定資産税の評価額が低い建物、特に木造住宅でございます。これにつきましては、住宅着工統計の平均新築単価を用いまして、福島県の平均的な値を用いるということで、例えば築年数が四十八年以上経過した古い建物でありましても、最低の賠償単価が平米当たり四・三万円を下回らない形になるようにということにいたしております。

 それからまた、住宅によりましては、増改築を行われて特に手がかかっている、または特定の高額の設備が置かれている、こういうものについては個別に価値を加算するということですとか、さらに契約、つまり建物を建てたときの契約金額に基づく算定ができるようにするとか、さらには、一つ一つ現地調査を行って現地評価を行って算定を行う、こういういろいろな手法を用意しまして、これを被害者の方がお選びいただけるように、そういう工夫をいたしているところでございます。

中野委員 ありがとうございます。

 財物賠償につきましては、まさに手続が始まったところでございますので、またさまざまな御意見を受けてしっかりと対応していただくように、こちらも御要望いたします。

 次に、営業補償について御質問をいたします。

 通常の営業補償については三年間で補償が切れる、このようになっておりますけれども、例えば帰還困難区域で事業を行われていた皆様にお話を伺いますと、いまだに帰還のめどが立っていない、事故から二年を経過したけれども、めどが立たない、事業再開に実際になかなか踏み切れない、こういうお話をいただくわけでございます。営業補償の期間の設定については、どのような考え方で設定をされたのか、これを伺いたいと思います。

 また、当初想定していたよりも避難の期間というものは長期化しているのではないか、三年間の営業補償といいながら、三年たってもなかなか再開のめどが立たない、そんな現状になっているわけでございます。こうした現状に対応できるように、例えば補償期間を延長するですとか、柔軟な措置を講じることが考えられると思いますけれども、どのように対応されるのか、御見解をあわせて伺いたいと思います。

糟谷政府参考人 営業損害の賠償につきましては、農林業では事故発生から約六年分、つまり平成二十八年末まででございます。その他の業種については、事故発生から平成二十七年二月までの四年分をお支払いするということにしているところでございます。

 これは、公共用地の取得に伴う損失補償基準というものがございまして、これでは農業の営業損害が三年、それ以外の営業損害が二年とされております。今般の原子力事故に伴います営業損害の賠償期間は、この公共用地の取得に伴う基準、すなわち農業で三年、それ以外は二年というものよりも長期の設定とするということで、去年の七月に取りまとめたものでございます。農林業では約六年、その他の業種では四年分ということで取りまとめをしております。これが、営業損害の賠償について一律にお支払いをする期間として一つの区切りということに考えておるところでございます。

 他方で、原子力事故の影響は非常に多様また特殊でございます。それから、広範な影響がございます。こうした一律にお支払いする期間の後におきましても、個々の営業環境の実情などを踏まえまして、適切に対応していくことが必要だというふうに考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 一律に支払いをする期間としてはそうだけれども、個々の事情に応じて対応していく、こういうお話をいただきました。しっかりと対応していっていただきたい。やはり御不安を持たれている方が多いわけでございますので、そういった情報提供もしっかりしながら対応していっていただきたい、こう考えるものでございます。

 最後に、長期に避難をされている方々の事業再生に向けた支援について質問をさせていただきたいと思います。

 先般、福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律が成立をいたしまして、長期避難者の方のために生活拠点、いわゆる町外コミュニティー、こういったものを形成する支援が位置づけられたというわけでございます。

 しかし、他方、こうした長期避難をされている方々が町外コミュニティーで新たに生活をする。そこで例えばグループ補助金のような支援をもらって一旦事業再開をする。そうすると、仮に、その後またすぐに帰還ができるようになった、では帰還をしてもう一回事業再開をしよう、こういうことをすると、一回補助金を受けるといざ帰還する際に再度補助金の申請ができないんじゃないか、こういう御懸念の声も上がっているところでございます。

 こうした、今帰還困難区域の方が将来的な帰還も視野に入れながら一旦事業を再開しようとする、こういう方々についてどのように対応していくのか、国の御見解を伺いたいと思います。

富田政府参考人 お答え申し上げます。

 福島県の帰還困難区域等の事業者の方々が一旦町外で仮に事業再開をなさろうという場合に、私どもといたしましてこれまでさまざまな御支援をさせていただいてきているところでございます。

 まず、仮設施設整備事業というものがございます。

 この制度は、被災中小企業、小規模事業者が事業を早期に再開していただく、このために中小企業基盤整備機構が市町村の要請を受けまして仮設工場、店舗等を整備して無償で貸与する、そういう制度でございます。これまで福島県で四十八カ所完成をいたしております。

 もう一つが、中小企業等グループ補助金でございます。この制度で被災事業者の施設設備の復旧整備を御支援させていただいたところでございまして、福島県におきましては、これまで百八十八グループ、二千七百五十一社に対しまして、国費、県費を合わせて約八百億円の御支援をさせていただいております。

 この中には、将来的な帰還も視野に入れながら、一旦町外で仮設施設を活用していただいて、事業を再開するときの設備のみを補助対象とした事例がございます。こうした事例につきましては、今後、区域が解除され、もとの場所に戻って施設を復旧されるという場合につきましては、当該施設をグループ補助金の対象とするということは可能という措置をいたしております。

 さらに、資金繰り支援として、福島県と共同でやっておりますけれども、特定地域中小企業特別資金という制度もございます。これは県内の移転先で事業を継続、再開する中小企業に対する資金制度でございます。

 私どもとしましては、委員御指摘をいただきましたように、引き続き、事業者の方々が将来的に帰還をなさるということを十分に念頭に置いた上で、地元の御要望を踏まえながらしっかりときめ細かい対応を進めてまいりたい、このように考えているところでございます。

中野委員 以上で終わります。ありがとうございます。

松野委員長 次に、郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子です。

 本法案は、原子力損害賠償紛争解決センターで和解が不調に終わった場合に、打ち切り通知を受け取ってから一カ月以内であれば、時効にかかわらず賠償訴訟を起こすことができるというもので、最短で来年の三月には時効を迎えるということを考えますと、一日も早く成立をさせる必要がある、そういうふうに思っています。

 しかし、あくまでADR促進法という位置づけでございまして、おとといの東京新聞の一面でも問題点が指摘をされておりました。また、先ほどは、中野委員からの御指摘もあって、いろいろ議論があったところです。

 私は、本法案の運用に係る幾つかの点について確認をさせていただき、そしてまた、多くの被災者が適切な損害賠償を受けられるように、今後につなげられるような質問をしてまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 まず、皆様方にもお配りをいたしましたけれども、和解仲介の打ち切りというのは、文科省の資料でいいますと、わずか四百二十六件になっています。

 この和解仲介手続においては、双方の主張に隔たりが大きくて被害者自身がやむなく取り下げた場合の取り下げ、また、請求項目のうちの一部についてだけ東電が支払いに応じたために、争いが決着したことを意味する清算条項をつけない形での、いわゆる一部和解というのもあって、これは事前に説明を受けたときには未済件数に入っているということでございましたけれども、今の、取り下げですとか、いわゆる一部和解について、打ち切りという類型に入るかどうか、イエス、ノーでお答えいただきたいと思います。

戸谷政府参考人 打ち切りの方に入るというふうに承知いたしております。

郡委員 今、打ち切りという類型に入るというお答えでしたか。確認です。

戸谷政府参考人 はい、さようでございます。

郡委員 事前の説明では、この打ち切りというのに入らないというふうに聞かせていただきました。私は、この打ち切りという文言を広げるべきだということを申し上げたいというふうに思っています。

 実は、この法案は、打ち切りになった場合のみが対象になっているんですね。今のような、取り下げという場合はこれに含まれない。

 実は、今おっしゃっているのは、取り下げたということで、一旦もう取り下げてしまったらば、これは打ち切りにはならないんですよ。もうちょっと、ちゃんと説明してくださいよ。なぜなら、この取り下げの人たちは、もう一遍申し立てをしなくちゃならない。そうじゃなきゃ、打ち切りにならないじゃないですか。何を答弁されているんですか。

戸谷政府参考人 失礼いたしました。ちょっと混乱いたしまして。

 取り下げにつきましては、先ほど来お話のあるように、これは時効中断効が付与されないということで、この運用については十分注意しないといけないというふうに考えております。

 一部の和解のものにつきましては、合意された部分以外の請求項目につきましては引き続き和解仲介手続が実施され、これが最終的に打ち切られた場合には時効中断効が付与されることになる、そういう整理でございます。

郡委員 ですから、一部和解の部分で、途中で打ち切りになれば、それはこの法律のくくりになりますよというお話でした。

 しかし、取り下げ、この表にあります五百二十件です。これは、再申し立てをしない限り、この時効の延長にはかからないということになります。そういう理解でいいんだと思いますけれども、しっかり再申し立てできるように支援をなさるんですか。どうなんですか。

 私は、今の御答弁がありましたけれども、この取り下げを範囲に入れないということであるならば、いかにも救済を少なくしたいというふうに言っているようにしか思えないんですね。

 次に、東電が被害者に損害賠償を支払いますよと約束をしていること、これを債務の承認というふうに言うわけでして、これで、債務の承認ができたということによって、時効期間が一旦リセットされるんです。

 これについても、実は大きな問題があるというふうに認識しております。なぜなら、東電は、仮払い補償金を支払った方にしか債務の承認というのをしていないのですね。

 具体的には、四月八日の福島県の公開質問状に対する同月二十二日の東電の回答によれば、債務の承認による時効の中断については、「仮払補償金をお支払いした方々(本件事故発生当時、避難等対象区域に居住し、又は同地域で事業を行っていた方々)の損害賠償債務のうち、当該請求書等に記載された範囲で適用されるものと考えております。」とあります。

 きょうは、東電の内藤副社長においでいただきました。これは、つまり、仮払い補償金を払っていない被害者については債務の承認による時効の中断は生じないと回答しているのと同義と理解しますが、それでよろしいですか。

内藤参考人 御紹介いただきました、東京電力の副社長の内藤でございます。

 本日、本委員会で初めて東京電力として答弁をさせていただきます。

 冒頭に、まず、おわびを申し上げたいと思います。

 震災から既に二年二カ月を経過しております。まだまだ数多くの方が避難生活をされている。大変不自由な生活をされている。それ以外にも、漁業関係者の皆さん、農業関係者の皆さん、風評被害等々、さまざまな面で御不安あるいは御心配を抱えているかと思っております。このことに関しまして、まず心からおわびを申し上げたいと思います。

 お答えをいたします前に、私どものこの時効に関する基本的な考え方を、まずお話しさせていただきたいと思います。

 被害者の方が時効によりまして適切な賠償を受けられなくなるというようなことがあっては絶対にならないと考えております。そうしたことから、可能な限り柔軟な対応をとって賠償を進めていきたいと思っております。

 それで、今御質問のありました債務の承認に関する件でございますけれども、債務の承認の効果が発生しますのは、当社が、本件事故に伴いまして、原子力損害賠償の債務について、その存在を認識していることが大前提になるかと思っています。したがいまして、仮払いの請求をされ、私どもが仮払いの補償金をお支払いした皆様につきましては、この債務の承認の効果が発生すると考えております。

 ただ、今先生御指摘のありました、これに該当しない方々につきましても、あるいは、請求書等に記載されていない損害項目、こういったことにつきましても、時効の完成をもって一律に賠償を打ち切るというようなことは一切考えておりません。時効完成後も御請求者の皆様のお話を個別に丁寧にお伺いして賠償業務に当たっていきたいと考えております。

 以上でございます。

郡委員 今、内藤副社長から、そういうことはないのだ、ほかのことについても時効ということを当てないというような方向性を口頭でお話しになられたわけですけれども、しかし、公開質問状に対する回答には、「当該請求書等に記載された範囲で適用されるものと考えております。」と、しっかり文書にされているんです。

 次は、文科省に伺います。

 避難指示区域等の被害者の多くの方々が、仮払い補償金も受け取って、ダイレクトメールが届いている被害者であっても、請求書に書かれている範囲の項目についてしか時効が中断しないということでありますから、やはり、法的には時効によって債権の一部が消滅してしまう可能性があるというふうに理解しますけれども、いかがでしょうか。

福井副大臣 先生御指摘の懸念はございます。

 したがって、御懸念の点につきましては、請求書やダイレクトメールの記載によって時効の中断が生じない損害があり得るということから、文部科学省といたしましては、当該請求書等の項目と、その記入のガイダンスにつきまして、引き続き注視をしてまいります。

 被害者の方々が時効到来によって適切な賠償請求ができなくなるということが絶対にないように、関係省庁とも連携をいたします。

 そして、東京電力に対しまして請求書等の記載内容の改善を求めるなど、必要に応じて適切に対応してまいります。

郡委員 被害者の方々のうち、少なくとも和解仲介申し立てを行ったり訴訟を起こしたり、そういうことをせず、また、東京電力から仮払い補償金も受け取っていない方々、東電から請求書もダイレクトメールも送られてきていない被害者の方々、そういう方々については、時効期間の開始時点によって若干のずれは出てくるのでしょうけれども、いずれにせよ、来年の三月からそう遠くない時期に時効を迎える、法的には損害賠償債権が消滅時効にかかってしまうというふうに私は思います。

 法的にそういう位置づけではないかというふうに思うわけですけれども、文科省、いかがでしょうか。

戸谷政府参考人 法律上の厳密な解釈といたしましては、先生の今御指摘のような懸念も確かにあるわけでございます。

 そういったことから、文部科学省といたしましては、仮払い補償金や請求書を受け取っていない方々に対しましても迅速かつ適正な賠償を行うために、東京電力あるいは我々も一緒になりまして、そういった方々が果たしてどういう事情で御請求なさっていないのか、あるいはどの程度そういった方々がいらっしゃるのか、これから精力的にそういった方面についての掘り起こしをやっていくということを今考えている次第でございます。

郡委員 もう一枚、資料を皆様方にお配りいたしました。

 これは、原子力損害賠償紛争審査会が「中間指針追補における対象区域」ということでお出しいただいたものなんですけれども、実は、この黄色いところが仮払い補償金が支払われている地域であります。青いところと一部白いところ、赤マジックで囲ってありますけれども、これは一部賠償等はなされているんですけれども、先ほど私が申しました、東電が債務承認の対象と言っている仮払い補償金は支払われていない地域なんです。そしてまた、この赤でくくった外ですね、白いところ、ここは完全に請求書も送っていない地域で、全ての債権について消滅時効が生じるという問題があるわけです。

 被災している方々というのは、本当に多くおいでであります。実際に裁判に打って出た方、あるいはまたこのADRに入ってそれぞれ調整を行っている方は、ごくごくわずかであります。そういう中で、今のお話、懸念というふうにお話しになられましたけれども、これはそういう言葉で言っている場合ではないんじゃないかと私自身は認識をしております。

 仮払い地区の浪江町でも、例えば御高齢だとか障害をお持ちになっているとかで、要するに成年後見人をつけなければ対応できない方々が千人近くおいでです。それからまた、この対象外のところの方々は、幾ら東電に請求書を送ってくれとお願いしてもいまだに送ってこないというふうなことをおっしゃる方もおいでだと伺いました。

 東京電力は、二月四日付の「原子力損害賠償債権の消滅時効に関する弊社の考え方について」という文書ですけれども、ここで確かに、法的には時効になってしまう被災者についても誠意を持って被害者それぞれの個別事情に応じて柔軟に対応するというふうにおっしゃってくださっています。しかし、この個別柔軟に対応するというふうなことは、一見大変誠実そうに見えますけれども、決して私は被災者に寄り添ったものというふうには思えません。

 被害者は、いざとなったらば東電の方が消滅時効を主張してくるかもしれない、そういう不安の中で生活をしなくちゃいけない。立場は大変弱いんです。法的には東電の意思次第で損害賠償請求権は消滅してしまうかもしれない状況にあるけれども、しかし、加害者である東電の善意、誠意に期待をしなさいという、これはどうなんでしょうか。大変無理があるんじゃないだろうかと思います。

 先日、復興特別委員会で、福島の大熊町の商工会の会長さん、蜂須賀さんが参考人としておいでになって、その折にいろいろお話しくださったんですけれども、その中のことをちょっと御紹介させていただきますね。「私たちは被害者です。被害者がなぜ加害者の顔色をうかがいながら請求書を出さなければならないんでしょうか。」どうでしょうか。

 大臣、伺います。

 時効完成後の被害者の個別事情に応じた個別柔軟な対応では不十分であって、まずは、一律に全ての被害者に対して、相当の期間にわたって消滅時効の問題が発生しないようにしなくちゃならないと考えるわけですけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。

下村国務大臣 文部科学省が消滅時効に関して柔軟な対応を行うよう要請してきたことを受けまして、東京電力は、総合特別事業計画を改定し、時効完成後も請求者の個別の事情を踏まえ消滅時効に関して柔軟に対応することを表明しているわけでございます。

 文科省としては、さらに、まだ損害賠償請求をされていない被害者について、きめ細かく把握することに努めるなどの丁寧な対応をするよう要請しているところでもございまして、これは東京電力任せということでなく、国もしっかりとフォローするということでもございます。

 今後、まずは、国の要請に対する東京電力の取り組みと、まだ請求をされていない被害者の方々の実情をよく見きわめていきたいというふうに考えております。

 その上で、御指摘のような法的な消滅時効に関する対応を行うことについて、適切な賠償の迅速かつ円滑な実施の観点からのメリットももちろんございますが、一方でデメリットもあることも予想されますので、慎重に勘案しつつ、関係省庁とも連携して、必要な対応について国としてもしっかり検討してまいりたいと思います。

郡委員 被災者の方々、被害者の方々を不安にさせないためにも、政府ももっと強力に、東電に対しても包括的な債務の承認をするよう指導監督をすべきだというふうに思っています。

 先ほど中野委員とのやりとりでもありましたけれども、包括的な債務の承認をさせるように、ここが重要だと思っているんです。これをぜひ指導すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

糟谷政府参考人 時効の完成をもって一律に賠償請求を断ることがないように柔軟な対応を求めるということは当然のことでございますが、それに加えまして、先ほど大臣からもお話がありましたように、被害者であるにもかかわらず請求を行っていない方について、戸別訪問やさまざまな周知を通じて丁寧な情報提供を行って、債務の請求もしくは承認、そういう形で、民法に基づいても、時効が中断するというような形がしっかりととれるようにやっていくということにさらに努力をしてまいりたいと考えております。

郡委員 それでは、東電の内藤副社長に伺います。

 ぜひ、全ての被災者の方々に対して包括的な債務承認をし続けて、被害者のそれぞれの損害賠償請求権が時効によって消滅しないように対応するべきだというふうに思っているわけですけれども、いかがでしょうか。

内藤参考人 先ほど、大熊町の蜂須賀商工会長のお話が出ました。今のお話を伺っていまして、私どもの取り組みがまだまだ至らないところがあるんだというのを痛切に感じました。

 私は福島第一に勤務したことがありまして、蜂須賀さんとは御挨拶をしたことがございますけれども、今のお言葉は本当に重く受けとめなければいけないと感じた次第でございます。

 それで、今までまだ一度も請求をされていない方たちへの対応、これはもう本当に繰り返しになりますけれども、私ども、事故を起こして信頼を失墜してしまいましたけれども、信じていただいて、とにかく全力を挙げて、こういう方たちに対しましても、個別にお話を伺って誠実に対応していきたいと考えております。

郡委員 信じてくれ、誠実に対応するんだという副社長の御答弁でありましたけれども。

 全ての被災者に対する全ての損害についての債務承認というのが法的に有効なのかどうかというのは、その後、争いになり得るというふうに思っています。しかし、どのような場合にそれが争いになるかといえば、それはやはり、東電自身が消滅時効の主張をすると言い出した場合ですよ。そうですよね。

 つまり、今、だからこそ、包括的な債務承認をしなければいけないんです。今ここでそれをしなければ、将来の消滅時効の主張の可能性を示唆することになるんだと私は思いますが、いかがでしょうか。

内藤参考人 本法案が成立した暁には、監督官庁から御指導もあるでしょうし、私どももこれに従って取り組みを進めてまいりたいと思います。

 また、繰り返しになりますけれども、今まで一度も請求をされていないような被災者の皆様に関しましては、やはり、私ども、御不安を抱かれているということは認識しております。とにかく、さまざまな手段を用いまして、こういう方たちの不安を払拭していくということが第一だと思います。そのことにまずは注力して、後、御請求をいただくような場面が出てまいりましたら、誠実に対応してまいりたいと思います。

 よろしく御理解のほどお願いいたします。

郡委員 これまでのやりとりをお聞きいただいて、大臣に最後に伺わせていただきたいと思うんです。

 この法律は、損害賠償訴訟に至るまでの、ADRを活用する促進法という位置づけであります。ですから、そこに入ってきた人は、ある部分救われる。しかし、今私がお話ししてきたように、多くの皆さんたちはここから漏れてしまうんです。ですから、これはこれとして、一日も早く成立をさせることが必要なんです。重要なんです。しかし、その先にやはり新たな立法措置が必要だろうというふうに思っているんです。

 そのことについて、大臣の御所見も伺いたいというふうに思います。

下村国務大臣 今、東京電力副社長から話があったように、誠実に対応するということでございます。これから、国の要請に対する東京電力の取り組み、そして、まだ請求をされていない被害者の方々の実情、これをよく見きわめることが大切であるというふうに思います。

 その上で、御指摘のように、包括的に損害賠償請求権を行使できる期間を延長する立法について、適切な賠償の迅速かつ円滑な実施の観点から、先ほども申し上げましたが、メリット、デメリット両方あるということも慎重に勘案しつつ、被害者の方々が時効到来によって適切な賠償請求ができなくなることがないよう、必要な対応について関係省庁とも連携して検討してまいりたいと思います。

郡委員 紛争審査会の議事録の中でも、ある委員は、漏れる被害者はいっぱいあるわけでありますので、この特別措置法だけで賄って、あとは民法の一般原則で賄うという事態は、ちょっと私どもとしても看過できないというふうにおっしゃっておられます。ぜひ立法化を目指していただきたいというふうに思っております。

 質問を終わります。

松野委員長 次に、鈴木望君。

鈴木(望)委員 日本維新の会の鈴木望と申します。質問をさせていただきます。

 まず、このたびの三・一一東日本大震災による福島原発事故により、故郷に帰れない、職を失った、従来からの生業に従事することができなくなった、あるいは風評被害で農産物が売れなくなってしまった等々さまざまな被害を受けられた方々に対して、心からお見舞いを申し上げる次第でございます。

 ある意味では、特殊、特別な被害に遭われた方々のために、そのような方々の側に立って政治としても全力で対応が求められている、そのような観点で、この時効の中断の特例に関する法案に関しまして、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。

 まず第一に、東電の損害賠償請求に対する対応の経緯と国の責任、関与のあり方についてでございます。

 そもそも、この法律案が必要となった責任は東電にある。私も浜岡原発の地元の首長をしておりまして、そこは中部電力の管轄でございますが、中電の担当者から、浜岡原発の地震対策について、自信満々の確信に満ちた説明を受けた覚えがございます。にもかかわらず、三・一一の東日本大震災で、浜岡原発と同じタイプの福島原発があのような事故を起こしたわけであります。

 多分、東電さんも同じような確信に満ちた説明をしていたと思います。その意味で、東電さんは、自然の脅威に対してもっともっと謙虚になる必要があるのではないでしょうか。東電は、福島原発の事故の甚大さに鑑み、東電管轄の全ての原発の廃止をしたらどうでしょうか。お答えをお願いいたします。

内藤参考人 お答えいたします。

 今、東京電力のこれまでの取り組みが甘かったのではないかというお話があったかと思います。確かに私ども、今回の福島第一の事故につきまして、津波という自然災害によるものだということで片づけてはいけないという認識を持っております。それもありまして、先般、原子力の改革を進めるためのプランを策定し、公表させていただき、今取り組みを進めているところでございます。この中では、幾つか挙げておりますけれども、やはり安全文化に対する認識が甘かったのではないかというような反省も踏まえ、さまざまな取り組みを開始したところでございます。

 私ども、今回の福島第一の事故に関しましては、とにかく責任を全うするということで今取り組みをしております。これが会社の原点ではないかと思っております。

 きょうのテーマであります賠償に関しまして、これについても、とにかく親身、親切な対応をしていき、賠償を全うしていく。あるいは、福島第一のあの設備の安定化に向けて取り組みをしていくということで、私どもこれに全資源を投入して全力で全うしていきたいと思っております。

 そんな中で、各発電所ごとの今の様子をちょっとお知らせいたしますと、福島第一の一から四号機につきましては、既に御存じのように、中長期のロードマップに基づきまして、廃炉に向けての取り組みを本格的に進めているところでございます。

 さらに、福島第一の五、六号機、あるいは福島第二の一から四号機、これにつきましても津波の被害を少なからず受けております。安定的な冷温停止状態が今続いておりますけれども、さらなる堅牢な設備づくりを進めているところでございます。

 そして、柏崎刈羽についてでございますけれども、これは福島第一の今回の事故の検証をしっかり踏まえまして、より安全な発電所にしていくための安全対策を進めているところでございます。柏崎刈羽につきましては、より安全な発電所にしていこうということで、今、全社一丸となって取り組んでいるところでございます。

 何とぞ御理解を賜りたいと思います。

鈴木(望)委員 この問題につきましては、また別の場所で討論をさせていただければというふうに思います。

 さて、東電は損害賠償に係る請求の処理にどのような体制で取り組んでおられるのか、仮に東電が全力で請求の処理に当たっていればこのような法律改正は必要なかったとも考えられるわけでありますが、その点についてお尋ねをさせていただきたいと思います。処理体制について具体的にお答えをお願いいたします。

内藤参考人 お答えいたします。

 全力を挙げてということでございますけれども、現在、賠償に関しましては、全体で一万人の体制で業務を進めております。このうち、社員は三千四百名、残りは委託の皆さんにお願いをしておりますけれども、この要員で被害を受けられた方たちからの請求あるいは御相談に乗っております。

 地域的に言いますと、福島県内に四カ所の事業所を構え、東北地方は仙台で一括受け付けをさせていただいております。さらには、関東地方にも原則として各県に一カ所ずつ事業所を開設いたしまして、そのほかにもコールセンターあるいは審査をするチームを都内に配置しております。

 今、なかなか賠償が進んでいないのではないかというお話がございましたけれども、私ども、全力を挙げて迅速あるいは公正な賠償に努めていきたいと考えております。

 ちなみに、今現在ですけれども、御請求をいただいてその内容を確認してというステップが最初にあるわけですけれども、これにつきましては、個人の方で十八日、それから、法人、個人事業主の方からの御請求については十二日間で審査を終えております。

 以上でございます。

鈴木(望)委員 今お答えがございましたけれども、東電の責任、事務処理に関連をいたしまして、国の関与、責任についてお伺いいたします。

 原子力損害賠償紛争解決センター、ADRセンターは、申すまでもございません、国の機関でございます。一方で、全力で被害者を救済しなければ、私も当然そういう感情を持っております。その反面、一民間企業である東電が起こした事故の救済にどこまで国が関与をするのか、責任を持つのかについて、これは基本的なことでございますので、改めて下村大臣にお尋ね申し上げます。

下村国務大臣 今回の事故による原子力損害の賠償については、原子力損害賠償法により、一義的には原子力事業者である東京電力が賠償の責任を負うということになっているわけでございます。

 しかしながら、今般の事故は、広範囲にわたりさまざまな被害をもたらすとともに、いまだに大勢の方々が避難しているなど、長期間にわたって被害が継続する、これまでに類を見ないものであり、国が被害者に寄り添った各種の対応をしていくことが必要不可欠のことであるというふうに考えます。

 このため、政府は、原子力損害賠償法第十六条に基づき、原子力損害賠償支援機構を設置し、東京電力が賠償を実施するための資金援助等を行っているほか、文科省においては、多数に上る被害者の方々が、個別の事情に応じて適正な賠償を迅速に受けられるよう、原子力損害賠償紛争審査会における和解の仲介を迅速にするため、ADRセンターを設置したところでもございます。

 今後とも、今般の事故に係る損害賠償については、迅速かつ適切な賠償による被害者救済のため、国として必要な対応を行ってまいりたいと考えております。

鈴木(望)委員 それでは、具体的に、損害賠償請求の処理体制についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 郡委員より既に質問がございました。また、内藤副社長の方からも一部説明がございましたけれども、改めまして、東電に対する請求件数はどのくらいあるのか、その内訳や傾向についてお尋ねをします。

 もうお答えをいただいておりますので、簡潔に、よろしくお願いいたします。

内藤参考人 それでは簡潔にお答えいたします。

 請求件数でございますけれども、五月十日現在ですが、個人様の賠償については約三十九万件の請求を受けておりまして、このうち三十四万件についてお支払いをしております。

 それから、自主的避難等の賠償、これにつきましては数が多うございます。百二十九万件の御請求に対しまして、百二十七万件のお支払いをしております。

 さらに、法人、個人事業主の皆さんからの請求は十八万件、お支払いについては十五万件ということで、なお、支払いの総額は二兆二千六百九十一億円となっております。

鈴木(望)委員 ADRセンターには東電の対応では納得できない方々が仲介を持ち込むということでございますけれども、ADRセンターにはどのようなタイプの請求が持ち込まれるのか、案件はどのくらいの件数なのかについて、お尋ねをさせていただきます。

戸谷政府参考人 ADRセンターに対しまして申し立てがある種類、タイプでございますが、基本的には全ての損害項目について受け付けを行っているわけでございます。ただ、その中で多い順から申し上げますと、精神的損害、避難費用、営業損害、就労不能、それから財物の価値喪失等の順ということになっております。

 それから、申込件数につきましては、五月十六日、昨日の時点までで、六千四百二十二件に上っております。

鈴木(望)委員 わかりました。

 それでは、現状では個々の案件の解決に大体どの程度の日数を要しているのかをお尋ねさせていただきます。

戸谷政府参考人 ADRセンターにつきましては、設置の当初におきましては、標準的な案件につきまして、申し立てから三カ月程度での終結を目指すということを掲げておりました。しかしながら、申し立て件数につきましては、先ほど申し上げましたように相当多数に上るという実情がございまして、平成二十四年までに申し立てがあった件数につきまして、現時点で、平均的に見ますと、終結までに八カ月以上を要しているというのが実情でございます。

鈴木(望)委員 三カ月という一つの目途に対して、現状では八カ月かかっているということであります。

 紛争日数の短縮化というのは大きな課題であると思いますが、そのためには、類型化とか、そういう今までの知見の集積でもって日数の短縮は相当図られるものというふうにも予測をされるわけでありますけれども、しかしながら、やはりADRセンターでやると言った以上、解決日数の短縮化等に、体制としても全力を挙げて取り組むべき事柄であろうというふうに思うわけであります。

 そのための体制の整備、特に人員増について現状はどうなっているのか、そして、どのくらいの人数がそろうと三カ月という目標が達成できるというふうに考えておられるのか、そこら辺についてお答えをお願いいたします。

戸谷政府参考人 ADRセンターの体制の問題でございますが、設立当初におきましては、仲介委員二十二名、それから調査官十九名、その他事務関係も含めまして、全体として六十三名程度の規模で一昨年の九月に設立をされたわけでございます。

 ただいま委員御指摘のように、やはり処理スピードを上げるということにつきましては、何はさておき体制の強化を図るということも非常に重要な課題だというふうに、私どもといたしましても認識をいたしております。

 その関係で、日弁連等の協力もいただきまして、現在、逐次体制の強化を図りまして、本年の五月現在におきましては、仲介委員二百九名、それから調査官百六十六名、その他事務関係も含めまして、全体として今五百名を上回る規模まで体制の強化を図ってきております。

 ただ、さらに処理の能力を上げるという観点から、特に申立人の方々と直接接する弁護士の調査官の方々の体制強化がさらに必要でございまして、現在百六十六名ということでございますが、さらに拡充をいたしまして二百名程度までは持っていきたいというふうに考えております。

 そのことによりまして、現在、月間処理件数といたしましては、ようやく四百件程度まで上がってきておりますが、それを五百件以上の処理件数、さらには処理期間につきましても、ちょっと三カ月というのは今現在まだなかなか難しゅうございますが、最低五カ月程度を目指して今後とも努力していきたいというふうに考えておる次第でございます。

鈴木(望)委員 国の関与の仕方というところについては、私は若干異論を持っておるところでございますが、やるとなった以上はきっちりやる必要があるだろうというふうに思います。

 そういう意味で、体制の方もきちんと整備をして、目標とする三カ月がいいのかどうかというのはありますが、ぜひ、三カ月以内に全ての案件が片づくというようなことでこれからも御努力をいただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

 あと、ちょっと時間がなくなってきましたが、実は風評被害について一つ御質問をさせてもらいたいなと思っております。

 というのは、被害の対象の中に風評被害が入っているわけでありまして、被害者の側に寄り添って対応するという基本方針はありつつも、どこまで被害として認めればいいのか、またその程度はどこまでかというのは非常に難しい面があるなというふうに、私は静岡が地元ですので、お茶の風評被害が対象になっておりますが、愛知県のお茶は対象になっていないというようなことで、風評被害のあり方が実は消滅時効のあり方にも大きく関係をしてくるわけであります。範囲がどこまでなのか、認識しているのかどうかというのも含めまして。

 例を静岡のお茶にとりましていろいろとお尋ねをさせていただきたいんですが、時間がなくなってまいりましたので、問題意識を私からお伝えさせていただいて、簡単に御答弁いただければというふうに思います。

 静岡は福島原発から当然百キロ以上離れているわけであります。にもかかわらず、福島原発の事故があって、私の地元のお茶の取引価格というのは大きな損失をこうむったわけであります。風評による被害は確実にあるわけですけれども、しかしながら、その確定ということになってきますと、何で茶葉の単価が下がったのかというのは、なかなかよくわからない。

 お茶の単価は、長期低落的になっている状況もございます。嗜好の変化というのもありますし、また、収穫高によって乱高下を繰り返すというようなこともあります。先ほど言いましたように、静岡のお茶は風評被害が認められているけれども、愛知のお茶は認められていない。お茶はブランドによって価格が物すごく違うわけでして、川根茶だとか、そういう静岡の中でもブランドになっているものは高いし、私の地元の磐田茶は余り高くないというようなことで、差もある。

 そういう中で、額を確定していくというのはどういうことなのか。被害者の側に立たなきゃいけないわけですけれども、一方で法的秩序はきちんと守っていって、その中でしかるべき損害賠償をしていかなきゃいけないという課題が一つ。私は、やはり、かわいそうだからどんどんやれというわけでもないだろうというふうに思います。

 そういう観点で、例として静岡のお茶を挙げさせてもらいまして、その例に基づきましてお答えをお願いしたいんですが、静岡のお茶の風評被害額は具体的にどのように算定したのか、また、申し出た事業者のみを現在のところは対象としているのか、今後もずっと賠償をしていくおつもりなのか、まとめてお答えをいただければというふうに思います。

糟谷政府参考人 静岡県産のお茶の風評被害につきましては、原子力損害賠償法に基づいて設置されました原子力損害賠償紛争審査会において決定された中間指針を踏まえて、損害賠償の額を計算しております。

 具体的な算定に当たりましては、三つほどのグループがありまして、まず第一に、逸失利益であります。これは、事故前の販売単価からの下落等により生じたものであります。二番目に、取引先の要求などにより実施を余儀なくされた放射線検査の費用などであります。三番目が、商品の返品費用とか廃棄費用など、必要かつ合理的な範囲の追加的費用。こういう三つのくくりについて、それぞれ損害額を算定して、支払うこととしております。

 ちなみに、愛知県のお話もありましたけれども、対象県につきましては、紛争審査会の中間指針において、調査の上、定められておりまして、ことしの一月に、三次追補で宮城県、東京都が追加をされた。それまでにも、静岡県のほか、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、埼玉県、神奈川県、こういうところが風評被害が認められるということで対象とされていっているところでございます。

 これまでのところ、静岡県のお茶に関係いたしましては、三百八十六・六億円の御請求をいただきまして、三百二十四・七億円の賠償のお支払いをしているところと承知しております。

 それから、申し出た事業者のみが対象になるのかという御質問でございますけれども、現在、静岡県のお茶の関係では、静岡県内のJAを主な構成員とした協議会が設置されておりまして、こちらと東京電力との間で一元的に協議を行っております。この協議会に参加をされておられる事業者の方は、この協議会を通じて賠償請求を行っておられます。また、これ以外に、静岡県の農民連も、協議を団体として行われております。

 もちろん、これ以外の、参加されていない事業者の方、この方々については、直接東京電力に御請求いただくことも可能でありますし、JAとか農民連、この協議会に申し出ていただければ、協議会としても御協力をいただけるというふうになっております。

 それから、今後もずっと賠償していくのかということの賠償の期間であります。

 風評被害に対する賠償の期間につきましては、先ほどの紛争審査会の中間指針におきまして、客観的な統計データ等を参照しつつ、取引数量、価格の状況、具体的な買い控え等の発生状況、当該商品、サービスの特性等を勘案して、個々の事情に応じて合理的に判定することが適当というふうにされております。

 静岡県産のお茶の風評被害に対する賠償期間につきましても、今後、先ほどの協議会などと協議をするということになるわけでありますけれども、この指針を踏まえまして、適切に判断をされるべきものというふうに考えております。

鈴木(望)委員 非常にファジーだなということはよくわかりました。そして、これについては、またいろいろと機会があったら御質問をさせていただきたいと思っておりますけれども、今回の福島原発事故で被害をこうむった方々に対しましては、政治としても、できる限りの支援をしていかなければならないと考えております。

 その意味で、今回の時効の中断の特例に関する法案に賛成するものでございますが、時効中断の特例を措置しなくてもよいような賠償請求の処理体制の構築、さらには、安心、安全なふるさとづくりについて、国はもちろんのこと、東電に対しても強くお願いを申し上げまして、質問を終わります。

松野委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 みんなの党、信州長野の井出庸生です。よろしくお願いをいたします。

 原子力損害賠償紛争審査会とその紛争解決センターの仲介に係って、民法の三年という時効にひっかからないように。これは迅速に進めていかなければいけない、そういう問題意識はまず私も持っております。しかしながら、この法案の枠組みが、一つの懸念として、逆に被害者の賠償の枠を狭めてしまうことになることは絶対にあってはいけない。この二つの問題意識から、何点か質問をさせていただきます。

 最初に、原発事故の賠償において、一体誰が責任を持ってやっていくのか。国が責任を持ってやっていくのか、また東電がやっていくのか、そういった質問をさせていただきたいんですが、この部分は、さきの委員の皆様とのやりとりでもかなり出てきておりますので、簡潔に述べていただければと思います。

 副大臣、お願いします。

福井副大臣 責任論につきまして、若干整理をして、お答えをさせていただきます。

 今回の事故による原子力損害につきましては、原子力損害賠償法に基づきまして、事故との相当因果関係が認められるものは全て東京電力が賠償することになります。

 一方、国におきましても、迅速で公平で適正な賠償が行われますよう、必要な措置を講じてまいりました。これまで、原子力損害賠償法第十六条に基づきまして、東京電力が賠償を行うための資金援助等を実施する原子力損害賠償支援機構を設置いたしました。さらに、原子力損害賠償紛争審査会における原子力損害の範囲の判定等のための指針の策定をいたしました。そして、原子力損害賠償紛争解決センターによる和解の仲介等を行ってきたところでございます。

 今後も、迅速で公平で適正な賠償が実現するための取り組みを政府としても引き続き進めてまいる所存でございます。

井出委員 東京電力がまず全ての責任を負うと。賠償が必要な方と、基本的にはそこの話し合いからまずスタートをすると思うのですが、東京電力という企業は非常に公共性の高い企業だ、単なる一民間企業に対して賠償を申し立てるのとは、そういった被害を抱えている人からすれば、わけが違う。そういったことも考えれば、今御答弁いただいたように、国の方で迅速、公平に、これまでもいろいろな取り組みをしてきているというお話がありましたが、またこの紛争センターについても、そして今回の時効を一旦ストップしていくということも、一定の評価をしております。

 しかしながら、特に弁護士会、また地元の皆さんのお話を伺うと、この枠組み、紛争センターに係っている人たちの時効をストップするだけで本当に救済になるのか。もっと広く、この原発事故の賠償に関しては民法の短期三年の時効をまず取っ払ってほしいと。私、双葉町の方から伺ったんですが、今、被災した人間に欲しいのは、複雑な法律ではなくて、一言、安心につながる、そういった文言でいいんだ、それだけが欲しいということを強く言われました。

 そういう意味で、今回の法案の枠組みで本当に十分なものであるとお考えかどうか、まず副大臣に見解をお伺いします。

福井副大臣 今先生の方からむしろおっしゃっていただきました、国がしっかりと前面に立って、とるべき責任、果たすべき責任を果たしていくということを政府としても常に申し続けなければならないということを、しっかりと受けとめさせていただきます。

 その上で、今般の法律でございますが、被害者が和解の仲介中に時効期間が経過することを懸念して原子力損害賠償紛争解決センターの利用をちゅうちょするということがないように、民法の時効の中断の特例について定めたものでございます。

 今後、まずは、センターに申し立てをしていらっしゃらない皆様も含めて、被害者のきめ細かな把握を行いまして、その実情もよく見きわめた上で、今回の法案に加えた必要な対応も検討してまいりたいというふうに思っている次第でございます。

井出委員 この法律案が通りますと、私は、この紛争センターの役割というものが飛躍的に大きなものになってくる、責任という意味においてかなり大きな役割になってくると考えております。そういった意味では、紛争センターに賠償を申し立てたい人たちがきちんと集約をされるように、これまでの議論でも出ておりますが、被害に遭われた方の把握、掘り起こし、周知といったものが極めて重要になってくると。

 その中で、これまで私も少し勉強させていただく中で、いろいろ、ダイレクトメールを送ったりですとか、東電の方で努力をしてきたとは聞いておりますが、今、その議論を聞いていると、どうしても避難をされている方にだけ目が当てられているのではないかと。

 どういうことかと申しますと、これから一番心配なのは、私は、いろいろな方の体への影響を、これから長い目で見たときに一番心配をしております。何か症状が出たときに、まず一番に取っかかりになってくるのは全国の医療機関である。そういう意味で、こういった賠償の仕組みを、まず、被害に遭われた方だけではなく、医療関係者への周知を必ずやっていかなければいけないと考えておりますが、その取り組み状況またお考えを東京電力に伺います。

内藤参考人 お答えいたします。

 今、まだまだ多くの方が御不安に思われているという話を伺いました。私どもとしても十分そこは認識しておりますけれども、これまでは、プレスを発表するときに、それが広く皆さんの目に触れる中で、あるいはホームページに掲載したりということで、さまざまな働きかけはしてきております。ただ、それとて十分なことではないと思っております。

 そのほかにも、戸別訪問あるいは説明会、これは全国に出かけていって実施させていただいております。ただ、これも恐らく十分なものではないと認識しております。

 したがいまして、今先生からお話のあった医療関係機関への働きかけでしょうか、これもまだまだ十分できていない面があるかと思います。ぜひ御参考にさせていただいて、取り組みを強化したいと思います。よろしくお願いいたします。

井出委員 済みません、重ねての質問になりますが、医療機関に特化したと申しますか、医療機関への周知をどうしようというような取り組みは、まだ具体的には始まっていないということでよろしいですか。

内藤参考人 はい。組織的に医療機関を重点的に回って、さまざまな未請求の方たちの、言い方は失礼になるかもしれませんけれども、掘り起こしを進めるということでいえば、まだ手がついていないという状況でございます。

井出委員 先ほど御答弁いただきましたように、戸別訪問を含めて、かなりの御努力をされているかと思います。ただ、しかしながら、医療関係、病院関係については、特段そこに焦点を当てて、これからまた取り組みを検討していただければと思います。よろしくお願いをいたします。

 次に、今の医療関係者への周知ということにも重なるのですが、今後、今回の事故で原発周辺にいらっしゃった方々に対してどのような体への影響が出てくるのか。放射線の人体への影響というのは非常に甚大だと言う方もいれば、そんなことはないというようなこともるる言われているところであって、ここをしっかり研究、分析したものを示していく必要があるのではないか。

 文部科学省は、科学技術という分野において、原子力についてこれまでさまざま研究をされてきたということは聞いておりますが、その技術、そちらの分野の研究を進めるからには、当然、そういったリスクに対する研究、分析も文科省の方で担っていかなければいけないと思いますが、副大臣に見解をお伺いします。

福井副大臣 今先生御指摘の、過去の海外における原発事故によって生じました放射線による影響につきまして、チェルノブイリ事故の影響につきまして、放射線医学総合研究所、放医研というのがございますが、国際共同によりその分析を行っているところでございます。

 具体的には、ウクライナにおいて、腫瘍死亡率、白血病死亡率等につきましてウクライナ放射線医科学研究所と共同研究を既に実施しております。チェルノブイリ事故に関する健康影響に関して影響調査等に活用してきたところでございます。

 もう一つございまして、加えて、チェルノブイリ事故の影響につきまして継続的に調査結果を取りまとめている原子放射線の影響に関する国連科学委員会におきましても、我が国の代表として先ほど申し上げました放医研が参画をいたしまして、放射線による晩発性障害等に関する知見の共有を行っているところでございます。

 具体的に言いますと、ウクライナとの共同研究は一九八九年から一九九九年にわたって行われておりまして、最後の一行だけ御紹介しますと、チェルノブイリ原発事故による環境放射能汚染による増加を示す明瞭な証拠はなかったということでございます。

 ちなみに、晩発性障害は、白内障であったり、がんだったり、白血病だったりという分類も同時にされているところでございます。

井出委員 これまでそうした取り組みをされてきている中で、今後、先ほどの医療機関への周知とも重なりますが、こういった症状があったときに原発の事故との関連をお医者さんやそこに来た人たちがふっと頭に浮かぶような状態でなければ、その端緒というものがどうやって出てくるのか。そこはその研究、分析されているものを含めた周知がこれから必要になってくると思いますが、そのあたりの御認識を副大臣にもう一度お願いいたします。

福井副大臣 文部科学省といたしましては、東京電力に対しまして、今まで損害賠償請求をされていない被害者をきめ細かく把握することに努めるなどの丁寧な対応をするように求めてきたところでございます。国として、東京電力にお願いをしてきたところでございます。

 今、井出委員のおっしゃる、まさに、医療関係者、医療現場にウクライナ、国連等の情報を周知徹底しなければならないという御指摘は、重く受けとめさせていただきたいと思います。

井出委員 最後に、大臣にお伺いをしたいんです。

 今回の法案の枠組みではまだ不安だ、これからいろいろな被害が出るかもしれない、不十分だという声もあります。そういった中で、今回、この法案はあくまでセンターにかかわっている人たちの緊急的なものであって、この枠組みが全てではないんだ、そういったところの御認識、大臣の見解をいただきたいのですが。

下村国務大臣 本法案は、今回の事故に関して、和解の仲介の申し立てが多数に上っていること、また、被害者の方々が来年三月十一日に時効が到来することを懸念する可能性があることなどの状況を踏まえまして、被害者が和解の仲介の途中で時効期間が経過することを懸念して原子力損害賠償紛争解決センターの利用をちゅうちょすることのないように、緊急に必要な措置として特例を設けるものでございます。

 本法案に加え、まだ請求をされていない被害者の方のきめ細かな把握を行いまして、その実情もよく見きわめた上で、関係省庁とも連携し、引き続き必要な対応を検討してまいりたいと思います。

井出委員 ぜひ、今お話にあったようにしていただきたい。

 これまでを振り返っても、例えば、公害の問題なんかを見たときに、多くの被害者が、最初の法の救済の枠組みだけではまらずに、後から症状を訴えられる。長い長い裁判に苦しむ。場合によっては裁判の結果を見ることなく亡くなってしまう方も過去にはいらっしゃった。そういったことがこの原発の賠償において決してないように取り組んでいただければと思います。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

松野委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 東京電力福島第一原発事故は、これまで経験したことのない大事故であり、いまだに汚染水の漏えいが続き、この間も停電事故が繰り返されるなど、収束などとはほど遠い状況であります。

 被害は福島県にとどまらず、他県にも依然として放射能被害の影響が広がっております。今なお先の見えない避難を強いられている十五万人もの人々は、生活基盤を根こそぎ奪われ、地域から隔絶された中で、経済的にも精神的にも困難な状況に置かれております。

 まず、大臣に基本認識をお伺いしますけれども、何の落ち度もない事故の被害者に対し、加害者である東京電力に一人残らず全面賠償させることが政府の責任だと考えますけれども、これはよろしいですね、大臣。

下村国務大臣 御指摘のとおりだと思います。

 今回の事故により生じる原子力損害に関しては、事故と相当因果関係が認められるものは全て、原子力損害賠償法に基づき、東京電力より適切な賠償が行われることになっております。

 文科省としては、原子力損害賠償紛争審査会において、賠償すべき損害の範囲や賠償額の算定方法を指針として示し、東京電力の適正かつ迅速な賠償を促すとともに、指針に明記されていない損害についても、指針の趣旨を踏まえ、かつ、当該損害の内容に応じて、東京電力に合理的かつ柔軟な対応を求めているところでもございます。

 また、原子力損害賠償紛争解決センターの報告書において、中間指針に明記されていない損害は支払わないとの声が寄せられていること等を踏まえまして、ことし三月、東京電力に対して、事故の被害を受けた方に対する誠意ある対応を徹底するよう改めて要請したところでもございます。

 文科省としては、引き続き、関係省庁と連携して、迅速かつ公正、適正な賠償を行うよう東京電力に働きかけるとともに、原子力損害賠償紛争解決センターによる和解の仲介などの体制を強化しながら、被害者の方々に対して、迅速、公平、適正な賠償が実現するための取り組みを全力で進めてまいります。

宮本委員 あらかじめ全面的な御答弁をいただきまして。

 実は、私は五月の十三日に福島に参りまして、現地で、被害者の皆さんと文部科学省や東京電力との交渉にも同席をさせていただきました。

 原発事故の前は、福島で子供たちは自然豊かな野山を駆け回り、外で遊んでおりましたけれども、事故から二年以上経過した今も、子供の屋外活動は制限をされております。子供も親も、放射線被曝を心配しながら暮らさざるを得ないという状況であります。

 被害者から共通して出されたのは、今までできていたことが原発事故後はできなくなった、それをきちんと把握して賠償してほしいという声であります。当たり前の願いであります。しかし、福島での東京電力との交渉で感じたことは、東京電力の加害者意識の欠如、上から目線、不誠実な対応であります。

 驚いたことに、交渉の席で東京電力の福島復興本社の担当者は、事故が収束していないことは認めながらも、敷地外には今や放射能も出ておらず、周辺地域は落ちついているかのように主張いたしました。さらには、相当の因果関係がないと賠償できないというのを盾にとって、原発から離れたところで今も屋外活動を制限しているのは、まるで被害者が勝手に怖がり過ぎているだけであるかのようにさえ言い放ったわけであります。こんな態度は話にならないと言わなければなりません。

 東電の広瀬社長は、三月十三日の衆議院予算委員会に出席をして、我が党の高橋議員の質問に答えて、原子力損害賠償紛争解決センター、いわゆるADRセンターに昨年の一月から十二月までに寄せられた声の中で、東電に対する意見、要望、不満の声が三割を占めていることを認めた上で、重く受けとめたい、できる限り親身な対応をしたいと繰り返し答弁をいたしました。

 しかし、副社長、現場は全然違うじゃありませんか。どうなっているんですか。

内藤参考人 お答えいたします。

 五月の十三日に、今お話のございましたように、福島市で、被災者の皆様と私どもの賠償に当たっている人間との説明会があったわけでございます。

 今お話のありましたように、こういうことがあってはならないんですけれども、当日集まられた皆さんの思いとして、東電はいまだに上から目線だ、加害者意識がないというお話があったわけです。これにつきましては、本当に、当日の詳細な発言について把握しておりませんけれども、まずはおわびを申し上げたいと思います。

 やはり、私どもは、常日ごろから、被災者の皆様に寄り添って親切なあるいは誠実な賠償を続けていくということを言い続けてきているわけでして、それがまだまだ徹底されていないという御指摘かと思います。

 ことしの一月一日からは、福島県に復興本社というものを設けました。かなりの数の被災者の皆様が福島にいらっしゃるわけでして、やはり遠過ぎるのではないか、もっと現場に寄り添おうということで、ここに復興本社も設けまして、これからしっかり被災者の皆さんに寄り添った賠償をしていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

宮本委員 その福島復興本社の担当者との交渉ですよ。同席した文部科学省研究開発局の担当官でさえ、そのやりとりを聞いて、遺憾に思う、違和感があると現場で言うほどの上から目線、加害者意識のない対応だったと言わなければなりません。わびるのは当然だと思います。

 しかし、そのような東電の態度の口実に使われているのが、文科省の紛争審査会が決めた中間指針なんです。中間指針に具体的に記載のあるものしか賠償の対象としないかのような口ぶりなんですね。

 そういう状況があるので、ADRセンターのまとめの中でもそれが問題だとされて、そういうことを東電に伝えたという先ほどの話でありますけれども、そういう点では、改めて、精神的な被害、さらには他の賠償項目についてもきちっと東電に損害賠償をさせる、やはり、この点で中間指針をいま一度見直す必要があると私は思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

下村国務大臣 原子力損害賠償紛争審査会は、原子力損害の賠償に関する法律に基づき、当事者による紛争の自主的な解決に資する指針を定めること等を目的として、人格高潔な学識経験者により構成される機関でありまして、この策定において、公正中立性を配慮しながら行われているというふうに思っております。

 この指針の策定に当たっては、可能な限り被害の実態を踏まえたものであることは重要でありまして、審査会において、必要に応じ、被災地を初めとする自治体等からの説明聴取等も行っているところでもございますし、またさらに、本年五月から六月にかけては、審査会委員が避難指示対象となった福島県十二市町村の現地調査も行い、また、六月には審査会の県内開催も予定しているということでございますので、こういう状況を踏まえまして、指針に追加的に反映される事項についても検討がされると思いますが、そういう状況を見ながら判断してまいりたいと思います。

宮本委員 実は、私、四月三日に福島県いわき市で開かれた衆議院予算委員会の地方公聴会に行ってまいりました。

 ここで福島県浪江町の馬場町長が公述をされたわけであります。これは衆議院予算委員会の会議録に残っておりますけれども、「正直な話を申し上げまして、中間指針が決まったのは一昨年の八月ですね。それで、私ども被災地、被災者の方が呼ばれたのかというと、二十一回目にして一回ですよ、呼ばれたのは。」こう語り、中間指針には「私どもの意見というのは全然入っていない」、「もう一度この賠償紛争審査会を開いていただきたい。そして、特に被災を受けた首長の話を聞いて、どんな苦しみなのかわかっていただきたい」、そういうお声も出されました。

 私どもは、自治体ばかりでなく住民の声自身をしっかりと聞く必要があると思うんですけれども、なるほど、これから審査会が被災地で開かれる、こういうことでありますが、しっかりそれを踏まえて見直す方向で検討すると、大臣、もう一度お答えいただけますか。

下村国務大臣 御指摘のように、原子力損害賠償紛争審査会の議論の中においてそのような発言があったということを、私の方も承知しているところでございます。

 そういう意味で、地元の方々の地域での、それぞれ審査会、現地調査もしているところでございますから、そういうことを踏まえて、指針に追加的に反映させるべき事項についてきちっと検討するということは必要なことであると思います。

宮本委員 現場の声、被災自治体の声に耳を傾けるというのであれば、今、実は、オール福島の自治体が参加する、二百八団体、県下全ての自治体が参加する福島県原子力損害対策協議会からも、短期消滅時効そのものを法的措置によって停止してほしい、こういう要望が出ております。

 民法七百二十四条前段に定める短期消滅時効、三年のこの時効をそもそも適用しない法的措置を講じるというのは、日弁連からもそういう意見書が出ているところです。

 大臣、今回、なぜ短期消滅時効そのものを停止することを行わなかったんですか。

下村国務大臣 今回の事故の損害賠償については、適正な賠償が迅速かつ円滑に実施されることが最優先であるというふうに考えております。

 このため、政府としては、今回提出している法案のほか、東京電力に対して、損害賠償請求権の消滅時効に関して柔軟な対応を要請するとともに、被害者のきめ細かな把握等の丁寧な対応を求める等の対応をとってきているところでもございます。

 まずは、国の要請に対する東京電力の取り組みと、まだ請求をされていない被害者の方々の実情をよく見きわめたいというふうに思います。

 その上で、御指摘のような短期消滅時効の適用に特例を設けることについて、適切な賠償の迅速かつ円滑な実施の観点からの、これはメリットもありますが、一方でデメリットも予想されるということでございまして、ともに、そういうことから、慎重に勘案しつつ、関係省庁とも連携して、必要な対応を考えてまいりたいと思います。

宮本委員 来年の三月に迫ってきているこの短期消滅時効に関しては、私は、デメリットなんということはあり得ないと思うんですね。

 三月二十八日の第三十一回原子力紛争審査会の場でも、この法案自体は評価する委員からも、ADRにも出てこない、東電にも直接請求していない、しかし損害はこうむっているという被害者がかなりいるとすると、その人たちについて、時効をどう考えるかというのが、もう一回問題になる可能性があるという指摘がされました。

 先ほど別の委員からも指摘があったように、この特別措置法だけで賄って、あとは民法の一般原則で賄うという事態は、ちょっと私どもとして看過できないという意見も出されました。

 能見会長も、「従来、そういう時効について、特別な立法をしたことがないというのは、あんまり根拠にはならない」とおっしゃり、今までの大気汚染や水俣病や水銀などとは全然違って、今回は、住む場所さえ追い出されてしまっているというような状況、そういうもとでの損害賠償の請求の問題なので、少なくとも従来はないから、今回も同じように考えるべきだというのは、私は余り根拠がないと、はっきり述べておられます。

 そもそも、今回の法案の枠組みでは、和解仲介打ち切り後一カ月以内に提訴することが要件になっておりますけれども、そんな一カ月では実務上も困難だという声も各方面から出されております。だからこそ、能見会長もおっしゃるように、立法措置によって短期消滅時効そのものを停止すれば全て解決するわけです。

 オール福島の声、日弁連、そして原子力紛争審査会の声にもかかわらず、政府がそれに応えないというのであれば、我々国会がその声に応えなければなりません。

 我が党は、他党とも共同して、東日本大震災に係る原子力損害に関して、民法第七百二十四条前段の短期消滅時効の適用を除外する一点での修正案を後ほど提案いたします。ぜひ委員各位の御賛同を呼びかけて、私の質問を終わります。

松野委員長 次に、青木愛君。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

青木委員 生活の党の青木です。

 質問させていただきます。

 今回の事故は、被災者に過失があって生じたのでしょうか。原子力発電は国の方針として推進し、その建設、運営、管理は電力会社が担いました。したがいまして、その責任は、当事者である東京電力と国にあります。

 今回被害を受けた人々は、避難を余儀なくされた方々だけでも十五万人以上おられますが、そのほかに、風評被害あるいは精神的苦痛を受けた方々は何人ぐらいおられると想定されていますでしょうか。そして、その方々に賠償の制度がしっかりと周知徹底されていますでしょうか。

 被害者は、将来に不安を覚え、生活の再建のめども立たない中で、訴訟や弁護士等になじみのない方々が、時効に縛られた賠償手続をするために、面倒な労力を費やさなければならない、そのこと自体が腑に落ちません。原発事故の特殊性に鑑みて、最低限、時効を撤廃する特例措置を講じるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

福井副大臣 今回の深刻な事故の損害賠償につきましては、適正な賠償が迅速、円滑に実施されるということが最優先、まずこのことが最優先であるというふうに考えてございます。

 このため、政府といたしましては、今回提出している法案のほか、東京電力に対しまして、これまでも、損害賠償請求権の消滅時効に関して柔軟な対応を要請してきてございますとともに、被害者のきめ細かな把握などの丁寧な対応を求めるなどの対応をとってきたところでございます。

 したがいまして、国の要請に対する東京電力の取り組みと、まだ請求をされていらっしゃらない被害者の方々の実情、これをよく見きわめなければならないというふうに考えている次第でございます。

 その上で、御指摘のような消滅時効の撤廃を行うことにつきましても、とにかく目的であるのは適切な賠償の迅速かつ円滑な実施ということでございます。その観点から、メリット、デメリットもあることも慎重に勘案しながら、関係省庁と連携して、必要な対応を検討してまいりたいというふうに存じている次第でございます。

青木委員 私は、とても丁寧な対応をされているとは到底思えません。いまだ不安定な生活状況の中で、賠償項目ごとにその都度請求をしなければならなかったり、和解打ち切りから一月以内に訴訟を起こさなければならなかったり、また、証拠や立証資料等をみずから収集しなければならなかったり、このセンターが東京に設置をされていたり、一方的に被害をこうむった立場にある被災者の方々が、時間的制約の中でこうした手間や面倒をかけなければならないという、このこと自体がまた新たな精神的被害を生んでいるのではないかと考えております。

 ぜひ適切な立法措置を行っていただいて、被災者の方々がそれぞれの状況に応じて、落ちついて安心して対応できる環境をまずつくるのが、国としての、また東電としての誠意ではないかというふうに考えます。ぜひもう一度お考えいただきたいというふうに思います。

 次に、今回、全ての被害者に満足のいく賠償を実施した場合、総額は幾らになるとお考えでしょうか。その額を通常の電気料金に含めますと、原子力は決して安い電力とは言えないと考えます。原発は安価なエネルギーであるとの主張は、こうした事故、被害を考え合わせていない発想であったというふうに考えます。

 安倍総理は参議院の予算委員会で、原発に絶対安全はないと答弁をされました。たとえ活断層がなかったとしても、せんだってもネズミ一匹で電気がとまりました。あのようなトラブルがずっと続いております。いまだ緊張状態にあることを決して忘れてはならないと思います。

 この原子力発電は絶対的に安全ではなく、また安価でもないという、これまでの主張が間違っていたということが国民の間にも明らかになりました。国のエネルギー政策を脱原発へと向けるべきだと考えますが、まず政府のお考えをお伺いいたします。

下村国務大臣 御指摘のように、原子力に対するこれまでの安全神話、これはもう脱却しなければならないというふうに思います。

 その上で、エネルギー資源の乏しい我が国におきまして、国民生活や経済活動に支障がないよう、エネルギーの長期安定供給に万全を期すことが重要でございます。そのため、実現可能かつ責任あるエネルギーのベストミックスが必要であり、現在、経産省の総合資源エネルギー調査会総合部会におきまして、エネルギーに関する基本的な政策について議論が行われているところでございます。

 原子力発電のあり方については、この議論を踏まえる必要がございますが、エネルギーの安定供給のため、原子力発電を支える原子力基盤技術の維持や、それらを担う人材の育成、確保、将来の放射性廃棄物の減容化等に向けた研究開発を進めることは、文科省としては必要なことだというふうに考えております。

 今後策定されるエネルギー政策を踏まえながら、引き続き文部科学省として、原子力に関する研究開発や人材育成等に着実に取り組んでまいりたいと思います。

青木委員 東電にも伺わせていただきます。

 オッペンハイマーという人物を御存じかと思います。天才的な物理学者、米国ロスアラモス国立研究所の所長として世界で最初の原爆を開発し、その原爆は広島と長崎に落とされました。その惨状を知った彼は、その後、原爆開発に否定的になり、その結果、アメリカ政府の一切の公職から追放されました。後年は、科学者の良心として、核兵器を開発したことを後悔し、生涯にわたり原子爆弾廃絶を訴え続けました。また、日本への償いとして、湯川秀樹博士を初め、日本の学者がアメリカで研究できるよう尽力したと聞いております。

 引用が適切かはあるかもしれませんけれども、東京電力の関係者の方々、また、これまでこの原子力政策にかかわってきた方々も含めて、このたびの事態の深刻さを身にしみて認識しておれば、そして被害者の苦痛に真摯に向き合うのであれば、被害者への十分な賠償は言うに及ばず、彼がその後、反原爆運動の最前線に立って訴え続けたように、東電自身が脱原発の最前線に立って、エネルギー政策の転換を訴えるべきだと考えます。

 このたび、総理が絶対に安全ではない原発を世界に売り込もうとするときに、東電は率先してそれを食いとめる努力をするべきだと考えます。このことについて御所見を伺います。

内藤参考人 お答えいたします。

 今お話ありましたように、私ども、福島第一原子力発電所事故を起こしたわけですけれども、先ほども申し上げましたが、これはやはり、津波という自然災害のせいだということで整理してしまってはよくないと思っております。

 それもありまして、先般、改革プランというものを策定し、今実行しつつあるわけです。何かもっとできたのではないかという視点に立って、今取り組みをしております。安全文化についても至らなかったところがあるのではないか。そういった取り組みをしている中で、私ども、改革し、新しい東電に変わっていけるんではないかと思っております。

 原子力発電所につきましては、今、柏崎刈羽で福島第一の事故の検証をいたしまして、その反省を踏まえ、安全対策を施しております。

 一方で、この原子力発電所につきましては、安全性の確保というのが大前提ではございますけれども、やはり、将来のエネルギーの安定供給、あるいは地球温暖化の防止、そういった観点から、重要な電源であると私どもは認識しております。

 中長期的な観点からいえば、国のエネルギー政策等々を踏まえなければいけませんけれども、私どもとしては、地域の皆様あっての原子力発電所でございますので、地域の皆様の御意見も踏まえた上で検討してまいりたいと思っております。

    〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕

青木委員 今の御答弁を伺いますと、とてもこのたびの事故の深刻さについて身にしみて認識をされてはおられないのではないかと。もう一度原発へという、今この時点でそういう発想になるというのは、大変理解に苦しみます。

 これから、しっかりとした賠償を、誠意を持って本当にやっていただかなければならないんですが、相当広範で長期にわたると思います。それだけこのたびの事故の被害が甚大であり深刻であるということでありますので、覚悟を持って対応されることを主張し、そして、原発にかわる、原発を超えた新しいエネルギー政策に率先して取り組んでいただくことを心から主張しまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

松野委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 福島第一原発事故により今なお福島県の内外に避難されている被害者の数は、十五万人を超えています。また、最近でも、地下貯水槽から高濃度の汚染水が漏れ出すなど、安倍総理が予算委員会で答弁をしたように、事故はとても収束しているとは言えない状況です。被害者の方々に一刻も早く安心を取り戻すため、万全の補償と生活再建のための支援に取り組んでいかなければならない、そう考えております。

 さて、本法案では、ADRに和解仲介の申し立てをされている案件について、三年間の時効期限の中断を行うというものです。

 そこで、まず大臣にお伺いをしますが、この手続によって、被害に遭われた方々の全てに対し賠償請求の機会を保障したことになるとお考えでしょうか。

下村国務大臣 原賠ADR時効中断特例法案は、被害者が和解仲介中に時効期間が経過することを懸念して原子力損害賠償紛争解決センターの利用をちゅうちょすることがないよう、緊急に必要な措置として、和解の仲介の手続の利用に係る時効の中断の特例について定めたものでございます。

 この法案に加えて、文科省としては、和解仲介の申し立てを行っていない方々を含む被害者の方々に関して、東京電力に対し、損害賠償請求権の消滅時効について柔軟な対応を行うよう要請をしているところでございます。

 これを受け、東京電力は、総合特別事業計画を改定し、事故発生時ではなく、東電が請求受け付けを開始したときから三年間請求を受け付ける、また、被害者が請求書類またはダイレクトメールを受領した時点から三年間請求を受け付ける、こういうことを表明しているというふうに承知をしております。

 さらに、文科省としては、東京電力に対して、損害賠償請求をされていない被害者をきめ細かく把握することに努めるなどの丁寧な対応をするよう求めてきているところでもございます。

 今後、まずは、国の要請に対する東京電力の取り組みと、まだ請求をされていない被害者の方々の実情をよく見きわめた上で、関係省庁とも連携し、必要な対応を検討してまいりたいと思います。

吉川(元)委員 私も、今回の法案だけではこれは十分ではない、そのように思っております。

 最短で、二〇一一年の三月十一日が時効の起算日と解された場合、残す期間はあと十カ月余りです。この期間に賠償請求をしたい人はADRに申し立てをしろ、あるいは、和解仲介が打ち切られたら一カ月以内に訴訟を起こせというのは、被災者の方にとっては余りにも酷な話ではないかというふうにも思っております。

 また、東京電力がダイレクトメールで請求を促す連絡を繰り返していることも承知をしておりますが、事故当時に避難対象区域などに居住、または事業を営んでいた方々に限られております。

 放射能の被害が広範囲に及ぶ中、賠償請求をしてもいいのかわからないような方々にまで期限を区切ってADRに申し立てを促すというのは、やはり無理があるのではないか。さらに、低線量被曝の影響が将来どのような形であらわれるのかわからない中、時効や除斥を適用するということもやはり無理があるのではないかというふうにも思います。

 そこで、きょうは、本日出席をされている東電の内藤参考人にお聞きをいたします。

 二月四日に、東京電力は、先ほども紹介がありましたが、消滅時効に関する考え方を公表されました。起算点を二〇一一年の三月十一日にするのではなく、賠償請求の受け付けを開始したときにする、あるいは、ダイレクトメールを受け取ったら再び時効期間が発生をする、ダイレクトメールで周知されていない被害者に対しても、一律に賠償請求を退けるようなことはしないというふうにしております。

 しかし、時効が進行すること自体は否定はしておらず、賠償請求の打ち切りに対する被害者の不安をなくすことにもつながっていない。

 東電はあくまで、被害に遭われた方々全てに対し、将来にわたって損害賠償を行うことを約束するというふうにここで言えるでしょうか。

内藤参考人 本日、何度かお答えをさせていただいておりますけれども、時効の完成によりまして賠償を打ち切るというような、一律的な処理の仕方をするつもりは全くございません。

 私どもといたしますと、御請求のあった被災者の皆様の内容をしっかり見せていただいて、その上で公正な賠償に努めていきたいと考えております。

吉川(元)委員 今ほど内藤参考人の方からお話がありました。だとするのであれば、確かに民法の百四十六条で時効の利益はあらかじめ放棄できないというようなことはありますが、ただ、時効の完成といった場合に、加害者である東電の側が時効を援用しないというふうに述べれば、宣言をすれば、時効は完成しないわけでありまして、そういう点からいっても、時効の援用はしないということをここでお約束されてはいかがでしょうか。そのことが被害者に対する東電の責任であり、誠意であるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

内藤参考人 繰り返しになりますけれども、時効が完成した時点でも、一律に賠償を打ち切るというようなことはいたさないつもりでございます。

吉川(元)委員 援用しないということはなかなかおっしゃっていただけないということでありますけれども、可能な限り柔軟に対応、あるいは誠実に対応していくというのであれば、やはり、援用しない、これは恐らく福島の方からもそういう要請というのは受けておられると思いますので、引き続きそうした立場で、この問題については対応していただきたいというふうに思っております。

 続きまして、文科省の方に尋ねます。

 福島第一原発事故は、原因も特定できておらず、また、かつて経験したことのない被害をもたらしています。今後も、健康面や、あるいは農業、漁業を含めた環境に対してどのような影響が及んでいくのか、これもまだ今の時点では不明な点が多々あります。

 チェルノブイリにおいては、事故から二十五年が経過してもなお、健康被害が報告をされております。原発事故に対し、短期消滅時効や損害賠償請求の除斥期間を民法の規定どおりに設定すること自体に非常に無理があるというふうに考えます。

 仮に、健康被害など将来の損害に対して、被害が確定をしたら改めて時効の起算日にするなどと説明したところで、原爆の被害や、あるいはさまざまな公害被害を見ても、一斉に被害があらわれるわけではありません。もし、原発事故で、被害がいつもたらされたのかを含め、因果関係の立証を被害者に求めるようなことになれば、被害者にかける負担は想像を絶するものになります。

 これらを考えれば、三年間の短期消滅時効は適用しない、あるいは除斥は設けない、二十年間としない、そうした慎重な検討を行うような措置を別途検討すべきだと考えますが、どのように文科省はお考えでしょうか。

福井副大臣 先生御指摘の、何よりも被災者の皆様方の不安を解消しなければならないということだと思います。

 その上で、ちょっと整理をいたしますと、民法七百二十四条におきまして、損害及び加害者を知ったときから三年の消滅時効期間、不法行為のときから二十年の除斥期間がそれぞれ、不法行為による損害賠償請求権につきまして規定をされてございます。

 そして、仮に今回の原子力事故から相当期間経過後に本件事故に起因する晩発性障害が生じた場合、短期消滅時効の起算点である損害を知ったとき及び除斥期間の起算点である不法行為のときは、当該障害が発生したときと考えられているわけでございます。

 したがいまして、障害が生じた時点で原子力事故から三年ないし二十年が経過していたとしても、それによって直ちに被害者が損害賠償請求をできなくなるわけではないというふうに承知をさせていただいている次第でございます。

 いずれにせよ、今回の事故の損害賠償につきましては、適正な賠償が円滑、迅速になされるということが最優先と考えておりまして、まずは、国の要請に対する東京電力の取り組みと、まだ請求をされていらっしゃらない被害者の方々の実情をよく見きわめなければならないわけでございます。

 その上で、御指摘のような消滅時効の撤廃等を行うことにつきましては、適切な賠償の迅速かつ円滑な実施、これが目的でございます。その目的を実行するという観点からのメリット、デメリットを慎重に比較検討させていただいた上で慎重に勘案し、関係省庁とも連携をして、必要な対応を検討してまいりたいと存じております。

吉川(元)委員 今回の被害ですけれども、特に健康被害、これはまだ、いつ起こるかというのもわかりません。さらに、原爆もそうですし、それから、さまざまな公害の被害において、自分がその健康被害を受けているということを言うことをちゅうちょする場合も十分にありますし、実際に、この間、そうしたことがありました。そういう点も十分配慮していただいて、その上でさまざまな措置というものを講じられることを強く望んでまいりたいというふうに思います。

 もう時間があと少ししかございませんので、最後に一点、大臣の方にお聞きをしたいというふうに思います。

 現行の原子力損害賠償法では、電力会社と国の負担のあり方にとどまらず、融資を行った金融機関や株主などのステークホルダーの負担のあり方、製造物責任法を対象外とすることで原子炉メーカーの責任が問えないなど、福島第一原発事故を経て、不十分な点というのがたくさん浮き彫りになっていると考えます。

 一点だけ大臣のお考えをお聞きしたいのですけれども、原子力損害賠償法の第一条は、被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的とし、被害者保護と原子力事業の発達が同列に置かれております。我が党は、脱原発ということをずっと主張してまいりました。原子力事業の発達というのは、これは受け入れがたいことではありますが、ただ、原発への賛否は別として、原子力の損害賠償のあり方を定める法律で、被害補償と原子力事業の発達を同列に置くことについては、法の趣旨に合わないのではないかというふうにも思っております。

 法の見直しを今後行っていくということでありますけれども、大臣は、この一条の目的規定も見直しの対象に含めるべきだというふうにお考えでしょうか。答弁をお願いいたします。

下村国務大臣 確かに、御指摘のような疑問というのはあり得るかなと私も思いました。しかし、この二つの目的、つまり、「被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的とする」と。この二つの目的のもとで、原子力損害賠償法においては、原子力事業者に無過失責任それから無限責任を負わせる確実な被害者保護を期しているところでもございます。

 今回の原子力損害の賠償については、まずは現行枠組みのもとで被害者の方々に対する適切な賠償支払いを着実に実施していくことを最優先ということでございまして、この「被害者の保護を図り、」というところに重点を置いた対応をしているということでございます。

吉川(元)委員 以上で質問を終わります。

松野委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

松野委員長 この際、本案に対し、宮本岳志君外一名から、日本共産党及び社会民主党・市民連合の二派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。宮本岳志君。

    ―――――――――――――

 東日本大震災に係る原子力損害賠償紛争についての原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る時効の中断の特例に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

宮本委員 私は、日本共産党、社会民主党・市民連合を代表して、東日本大震災に係る原子力損害賠償紛争についての原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る時効の中断の特例に関する法律案に対する修正の動議を提出いたします。

 その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。

 修正案の提案理由を御説明申し上げます。

 政府提出の法律案は、東京電力福島第一原子力発電所事故による原子力損害について、原子力損害賠償紛争審査会に和解仲介を申し立てた者が、和解仲介の打ち切りの通知を受けた日から一カ月以内に裁判所に訴えを提起した場合には、和解仲介の申し立てのときに訴えを提起したこととみなすことによって、和解仲介の途中で時効が経過した場合でも、時効の主張を認めず、裁判で争うことを可能とするものであります。

 しかし、東京電力福島第一原子力発電所事故による原子力損害は、被害が深刻かつ広範であり、継続性があるとともに、事故そのものが収束しておらず、現時点において被害の全容を把握することが不可能な状況です。また、一カ月以内では、実務的にも困難だとの声も出されています。

 全ての被害者に全面賠償を進めるためには、原子力損害全てについて、損害賠償請求権を、民法第七百二十四条前段の三年の消滅時効によって消滅しない特例を設ける必要がありますが、政府提出の法律案は、対象が原子力損害賠償紛争審査会に申し立てられた損害に限定され、短期消滅時効の適用そのものを除外するものとはなっておりません。

 このような観点から、修正案を提案いたします。

 以下、修正案の概要を申し述べます。

 東日本大震災に係る原子力損害に係る損害賠償請求権については、民法第七百二十四条前段の規定は適用しないことに改めるものであります。これにより、全ての損害賠償請求権について短期消滅時効によって消滅しないことにするものであります。また、一カ月以内などという実務的な問題も生じることはありません。

 以上、何とぞ委員各位の御賛同を心からお願い申し上げます。

松野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

松野委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、東日本大震災に係る原子力損害賠償紛争についての原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る時効の中断の特例に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、宮本岳志君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松野委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

松野委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中根一幸君外七名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党、みんなの党、日本共産党、生活の党及び社会民主党・市民連合の八派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。笠浩史君。

笠委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    東日本大震災に係る原子力損害賠償紛争についての原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る時効の中断の特例に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 東京電力福島第一原子力発電所事故の被害の特性に鑑み、東日本大震災に係る原子力損害の賠償請求権については、全ての被害者が十分な期間にわたり賠償請求権の行使が可能となるよう、短期消滅時効及び消滅時効・除斥期間に関して検討を加え、法的措置の検討を含む必要な措置を講じること。

 二 損害賠償請求に至っていない被害者を把握するため、東京電力株式会社が行う損害賠償手続及び原子力損害賠償紛争審査会が行う和解の仲介手続等について一層の周知徹底を図ること。

 三 原子力損害賠償紛争審査会が行う和解の仲介を打ち切るに当たっては、被害者がその後に行う訴えの提起の行使が実務上可能となるよう運用上、特段の配慮を行うこと。

以上でございます。

 何とぞ御賛同くださいますようお願いを申し上げます。(拍手)

松野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松野委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下村文部科学大臣。

下村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

松野委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

松野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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