衆議院

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第16号 平成26年5月9日(金曜日)

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平成二十六年五月九日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      石川 昭政君    小此木八郎君

      神山 佐市君    菅野さちこ君

      木内  均君    黄川田仁志君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      小林 茂樹君    桜井  宏君

      新開 裕司君    冨岡  勉君

      永岡 桂子君    野中  厚君

      馳   浩君    比嘉奈津美君

      宮内 秀樹君    宮川 典子君

      宮崎 謙介君    菊田真紀子君

      細野 豪志君    吉田  泉君

      遠藤  敬君    椎木  保君

      田沼 隆志君    三宅  博君

      中野 洋昌君    柏倉 祐司君

      井出 庸生君    宮本 岳志君

      青木  愛君    吉川  元君

    …………………………………

   議員           吉田  泉君

   議員           笠  浩史君

   議員           鈴木  望君

   議員           中田  宏君

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学副大臣      西川 京子君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            伊原 純一君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          前川 喜平君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鈴木 俊彦君

   文部科学委員会専門員   久留 正敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月九日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     石川 昭政君

  宮川 典子君     宮崎 謙介君

  三宅  博君     田沼 隆志君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     神山 佐市君

  宮崎 謙介君     黄川田仁志君

  田沼 隆志君     三宅  博君

同日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     宮川 典子君

    ―――――――――――――

五月九日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(第七八八号)は「三日月大造君紹介」を「泉健太君紹介」に訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)

 地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(笠浩史君外三名提出、衆法第一六号)


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び笠浩史君外三名提出、地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として外務省アジア大洋州局長伊原純一君、文部科学省初等中等教育局長前川喜平君及び厚生労働省大臣官房審議官鈴木俊彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮内秀樹君。

宮内委員 おはようございます。

 当選させていただきまして、文部科学委員会に所属させていただきまして一年四カ月になりますが、初めて質問させていただきます。新鮮な気持ちで、気合いを入れていきますので、大臣、ひとつよろしくお願いいたします。

 地方教育行政における責任を明確化して、そして危機管理体制をしっかりと構築していこうという今回の改正の取り組みは、ぜひとももう速やかに結論を出すべきときが来ているんじゃないかというふうに思っております。その意味におきまして、これから精力的に残された審議をしていく必要があるんじゃないかというふうに思っております。

 そこで、今回の改正において最も皆様方が注目されている点、これはまさに、教育における責任の明確化と政治的中立のバランスをどういうふうにとっていくかということの問題であるというふうに思っております。

 選挙で選ばれて、首長がしっかりと責任を持って教育行政をリードするということは大変重要であります。しかしながら、それを執行するに当たりまして、特に現場においての政治的中立を図っていくということは大切であるということを、参考人の方々からも数多くいただいたと思います。

 その政治的中立を担保するという点についてでございますけれども、そもそも教育における政治的中立は必要であるのかどうか、そもそも論、それから、そうであるのはなぜなのか、あるいは、特にどういう内容が政治的中立でなければいけないのかという点につきまして、政府それから野党案の、お二方からお話をいただきたいと思います。

下村国務大臣 おはようございます。

 教育の政治的中立性とは、教育基本法第十四条第二項が「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」と規定をしているなど、多数の者に対して強い影響力を持ち得る教育に、一党一派に偏した政治的主義主張が持ち込まれてはならないことを意味するものであるというふうに理解をしております。

 教育は、人格形成の途上にある児童生徒に対して重大な影響を与えるものでありますので、誤った教育が行われるということになると、取り返しがつかないことになるわけであります。とりわけ教育においては、政治的中立性がそのことから求められるというふうに認識をしております。

吉田議員 お尋ねの、教育の中立性についてでございますが、今大臣答弁にあったように、教育基本法の十四条二項に基本的な定めがございます。したがって、学校が一党一派に偏した立場に利用される、あるいは学校の教育活動自体が一党一派に偏する、そういうことがあってはいけないというのは当然であるというふうに考えております。

 その理由ですが、我々のこの民主主義社会においては、多様な価値観の存在というのが基本的な前提であります。したがって、教育内容に一党一派の政治的な主義主張が持ち込まれたり、また、学校が政治的活動の舞台となるというようなことは、ぜひとも避けなければならないと考えております。

宮内委員 ありがとうございます。

 それでは、野党案について御質問をさせていただきたいと思います。

 今のお話のように、教育においては政治的中立を図らなければいけないということでございますけれども、野党案におきます、この事務を処理する教育監査委員会のメンバーの選定についてであります。これは議会が提案し決定するということになっておるようでありますけれども、この議会の政治的バランスがそのまま直接反映してしまうのではないか、これはまさに政治的中立が図れなくなるのではないかという心配がありますが、この点についていかがでございますか。

吉田議員 教育とともに、政治的中立性が求められるという特別職に選挙管理委員会の委員というのがございます。この選管の委員については、議会において選挙で選ばれるという仕組みになっておりまして、今回のその教育監査委員会の委員についても、これと同じ方式がよかろうということで、そうしたところでございます。

 御指摘の、議会の政治的バランスの反映によって中立性が危惧されるという御指摘は、今のような理由で、特に御心配、御懸念は当たらないというふうに考えております。

 また、教育監査委員会の委員についてですが、その過半数が同一の政党その他の政治団体に属しないということも条件としてつけているところでございます。

宮内委員 引き続き、野党案に御質問をさせていただきたいと思います。

 今度は教育長の任期についてのことでございますが、第七条にあります教育長の任期についてであります。「任期中においてもこれを解職することができる。」ということになっておりますけれども、よほどのことがない限り、教育長を解職させるということは教育現場に混乱が起きるのではないか、あるいは、まさに政治的中立を損なってしまうのではないかという心配の声がありますけれども、この点についてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。

吉田議員 この民主、維新案は、地方教育行政の最終責任者は首長である、そして教育長は首長の補助機関である、こういう位置づけをしております。したがって、教育長は、首長の意向に沿って一定の成果を出すということが期待されているわけであります。

 ですから、成果が出ない、もしくは教育長が何か恣意的な事務執行をしている、あるいはサボタージュをしているというときには、この責任を負う首長がそのような教育長を解職できるという仕組みにしたのは、この法律案の趣旨に合致したものというふうに考えております。

 そして、おっしゃるように、首長が教育長を解職するというのは恐らく大変まれな事態ではあると思いますが、選挙で選ばれた首長を教育行政の最終責任者とする我々の法律案においては、教育長を解職しないと首長がその職責を果たせないというようないわばぎりぎりの場面においては解職もやむを得ない、こういうふうに考えております。

宮内委員 次は大臣の方に御質問したいと思いますが、一方、政府案においては、この第七条に、教育長は、職務上の義務違反や非行があると認める場合以外は、首長と考え方が違うからといってやめさせることができないということになっておりますが、これは、地方教育行政における責任の明確化とか、首長との連携の強化を図るという観点からは、結果的にこの辺が曖昧になってしまうのではないかというそういう御懸念もあると思いますけれども、その辺についての政府案の御見解をお願いをしたいと思います。

前川政府参考人 地方公共団体に置かれておりますさまざまな行政委員会の委員の罷免要件につきましては、首長から独立した委員会が設置されているという趣旨に鑑みまして、身分保障という観点から、要件が限定されているわけでございます。

 教育委員会もその委員会の一つでございますので、この教育委員会の構成員として新教育長が位置づけられているわけでございますので、その罷免の要件につきましても、現行の教育委員会の委員あるいは他の行政委員会と同様に、心身の故障の場合あるいは職務上の義務違反その他教育長たるにふさわしくない非行がある場合、こういった場合に限定するということにしております。

 このような形で、首長が自由に教育長を罷免できるということにはしていないわけでございますけれども、任期を三年としたことによりまして、従来よりは一年早く、みずから教育長を任命できるということでございまして、首長がその任期中に必ずみずからの人選による教育長の任命ができるという形にはなっているわけでございます。

宮内委員 今のように、政治的中立をどのようなバランスでとるのかということがやはり肝になると思うわけでありますけれども、システムの中でその政治的中立というのは、ある種、別の立場が責任とそれから執行とという形に整理された方がやはり政治的中立が保たれるんじゃないかというそういう立場でありますけれども、まさに教育の政治的中立性とは、教育を政治利用させないということが最も重要なことであるというふうに思っております。

 そのためには、先ほど申し上げましたように、教育の執行機関を独立させなければ、やはりどうしても、教育の内容とか人事においても政治的な運用がされやすくなってしまうのではないかという懸念であります。

 そこで、野党案についてお聞きしたいのですけれども、首長が執行機関であるということと教育監査委員会が事後的なチェック機関になっていくということについて、それらの政治的中立性を踏み越えてしまうのではないかというこの心配について、もう一度御質問したいと思います。

吉田議員 この民主、維新案の肝は、地方教育行政における権限と責任の所在を首長に一本化するというところでございます。

 ただし、首長が恣意的に権限を行使するとか、独善的なやり方で教育現場を混乱させるということがあってはいけませんので、新たな機関として教育監査委員会を設置して、議会とともに首長の権限行使を監視するというシステムになっております。

 まず、首長に対する事前のチェックとして、首長が教育の振興に関する総合的な施策の方針というものを策定して、これをあらかじめ、これは毎年になりますが、議会の議決を経なければならないということが一つございます。

 それから、事後的なチェックとして、首長から独立した専門的な機関である教育監査委員会が、首長が処理する学校教育等に関する事務の実施状況に関して必要な評価と監視を行い、その結果に基づいて、事務改善のための勧告もする、そしてこの勧告は、議会にも報告され、公表もされるという仕組みになっております。

 いわば、これらの幾つかの制度が相まって、首長に対するチェックが重層的に行われる仕組みとしたところであります。

宮内委員 それでは次に、総合教育会議と教育振興基本計画の問題について、政府案に対して御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、責任の所在という観点から、総合教育会議で策定されますいわゆる大綱というのは、誰が責任者でつくるのか、そしてまた、それを実行していくのは誰が責任でやるのかということについてお答えをお願いしたいと思います。

前川政府参考人 大綱は、当該地方公共団体の教育の振興に関する総合的な施策につきまして、総合教育会議における教育委員会との協議を経て首長が策定するというものでございます。

 大綱に記載された事項につきましては、改正後の地方教育行政法第二十一条に規定いたします教育に関する事務の管理、執行につきましては教育委員会が、また、教育に関する予算の編成、執行等につきましては首長が、それぞれの権限に基づいて執行することになるわけでございます。

宮内委員 まさに、今回の改正のここが肝であるというふうに私は思っております。

 基本的に、選挙で選ばれた首長さんが自分の公約も含めて教育政策について大きくコミットをしていくということ、そしてそれを実行するのは、教育委員会という独立した立場がしっかりとその責任を負っていくという、こういう役割分担が今回の改正の肝であり、このことが大切なことである、政治的中立を担保するということになるというふうに私も思っております。

 そこで教育振興基本計画でございますけれども、教育振興計画は長期的な展望に立ってそれぞれの市町村において策定されるわけでありますけれども、一旦でき上がりました教育振興基本計画に対しまして、その後、新しい首長さんが選ばれた、その新しい首長さんが、その首長の意見を反映する形で総合教育会議で方向性の異なる大綱を出したという場合、ここで現場の中に教育の一貫性とか整合性を失ってしまうのじゃないかというような懸念がありますけれども、これらの問題についてはどのように対処するというふうにお考えなのか、もう一回教育振興基本計画をつくり直すのか、そこら辺について、整理した形の御説明をお願いをしたいと思います。

下村国務大臣 新たな首長が就任をし、新たな大綱を定めた場合、その内容が既存の教育振興基本計画と大きく異なる場合に、新たな大綱の内容が優先するということになりますが、新たな大綱に即して当該教育振興基本計画を変更することが望ましいと思います。

 これは、一貫性といっても、やはり首長がかわったわけですから、当然首長の意向に沿って大綱がつくられるわけでありまして、当然、その大綱と旧来の教育振興基本計画が異なっているというのは、首長が誰がなるかによってはあり得る話だと思いますので、それは、新たな体制のもとで新たな振興基本計画もつくり直すということが望ましい方向性であるというふうに思います。

宮内委員 ありがとうございます。

 それではもう一点、教育委員の立場のことの御質問でございます。政府案に対して御質問をさせていただきたいと思います。

 政府案におきましては、教育長の権限が実質的に大きくなるということになるわけでありますけれども、そのことが、相対的に教育委員の立場が中途半端になるんじゃないかというような印象や御意見が、地元の私の選挙区の中でもそういう話を心配される方がいらっしゃいます。

 そこで、十四条では教育委員から教育委員会会議の招集を求めることができるということになっておりますが、現制度と比べまして、今回の新しい制度になったときの教育委員の役割はどのように変わっていくのか、あるいは変わらないのか。どのようなイメージを持っていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。

前川政府参考人 今回の改正案におきましても、教育委員会は合議制の執行機関として残っております。また、教育委員会の職務権限も変更されておりません。

 したがって、現行どおり、その教育委員会における意思決定は教育委員会の合議でしっかりと議論して決めていただくということになるわけでございまして、その意味での教育委員の役割は、変わらず重要であるというふうに考えております。

 また、今回の改正におきましては、新教育長が今までよりも大きな権限を持つことになるわけでございますが、これに対しまして、教育委員には、この新教育長に対するチェック機能をより強く果たしていただくということが期待されるわけでございます。

 そのため、新たに、教育委員による会議の招集の請求に関する規定でありますとか、教育長に委任した事務についての報告を求める規定、こういったものを盛り込んでいるところでございます。

宮内委員 最後にもう一つ、教育委員の関係でございますけれども、これも、地元の方で私なんかに問いかけられる疑問の中で、特に教育委員の数の問題でございますけれども、人口の多い市町村では五名という教育委員は数が少ないのではないかと。この前の参考人のお話もありましたけれども、多方面の方々の多様な意見が反映する形が望ましいのではないかというお話もありました。

 その点について、教育委員会、例えば百万人の都市に五人で本当にいいのかというようなそういう御指摘、御疑問に対して、政府案の御答弁をお願いしたいと思います。

前川政府参考人 教育委員会の構成員につきましては原則五人とされているわけでございますけれども、これは、現行制度におきましても、条例によりまして六人以上とすることが可能でございます。地域の多様な民意を反映するために、必要な数の教育委員定数を柔軟に定めることが適切であるというふうに考えておりまして、現に八人という例もございます。

 なお、教育委員会における審議を活性化するためには、保護者や地域の関係者を教育委員として任命したり、教育に関する高度な知見を有する者も含めることも有効な方策であると考えております。

 今後、これらの観点から、教育委員の定数の適切な設定でありますとか、教育委員の人選の工夫を一層進めるように促してまいりたいと考えております。

宮内委員 どうもありがとうございました。

小渕委員長 次に、比嘉奈津美君。

比嘉委員 自由民主党の比嘉奈津美でございます。

 私も宮内先生同様、本委員会におきましては初めての質疑となります。よろしくお願い申し上げます。

 連休も明けまして、会期も残すところ一カ月余りとなり、重要法案の審議は大詰めとなってまいりました。本委員会でも、地方教育行政のあり方を問う政府案、加えて民主、維新の提出法案が、それぞれの観点から活発な議論が積み重ねられてきたと承知しております。

 近年、児童生徒の悲鳴、また現場教師の悩みが、悲惨な事案を通して、あるいは私たちが保護者の真情の吐露を受けたときに、豊かな将来性を持ち、この国を担うであろう子供たちのために、改革は待ったなしであるという思いを切実に感じながら、本法案に係る論議も出尽くした感があるかなと思いますが、教育というものは、真っ白な子供たちにあらゆる知識や意識を提供し、それぞれの才能を開花させるものであって、絶対に失敗が許されないものだという思いで、何点か質問させていただきたいと思います。

 まず第一点に、地方における教育行政は首長から独立した教育委員会が行うということとされておりますが、首長は、選挙で政策を訴え、重点分野を公約といたします。教育問題に関して、例えば、地域特性を生かすであるとか民活導入であるとか教育環境整備から、一歩踏み込んだ教育施策を訴えることも多々あります。そして、民意を得て選出された首長、議長に社会運営上の決定、施行を委ねることが民主主義の根幹をなすわけでございますが、野方図な考え方で走ることは許されず、幾重にもあるチェック・アンド・バランスの仕組みが肝要であります。

 一方、残念なことに、あらゆる事案が起きるたびに、首長は苦渋に満ちた表情で会見に臨まなければなりません。そのときの表情に、首長自身が判断していればという悔悟の表情を酌み取れることもございます。市民の負託を得た立場からすれば、時には決断と実行が必要ではございますが、同時に、独断専行は許されず、自重自戒が必要でございます。

 我々政治家が心すべきことは多々ありますが、首長が教育に関してはどの程度関与すべきか、これまで曖昧だったのではないかと感じております。

 そこで、改めて、現行制度において首長はどのように教育に関与できるとされているのか、また、今回の改正によってどのように変わるのかをお尋ねさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 まず、現行制度におきましては、首長は、私立学校や大学等の事務を所管するとともに、予算の編成、執行や条例案の提出、教育委員の任命等を通じて教育行政に大きな役割を担っておりますが、首長と教育委員会の意思疎通が十分でないため、地域の教育の課題やあるべき姿を共有できていないという問題点、また、現行の教育長は、首長が議会の同意を得て教育委員として任命した後に教育委員会が任命することになっておりまして、任命責任が曖昧となっている、そういう課題が指摘をされております。

 改正案におきましては、地域の民意を代表する首長が教育行政に連帯して責任を果たせるような体制を構築するため、一つは、首長が、現行の教育長と教育委員長を一本化した新教育長を、今度は直接、任命、罷免する、また二つ目に、首長が招集する総合教育会議を設置し、首長と教育委員会が協議、調整を行う、三つ目に、首長による大綱の策定を義務化することなどとしているところであります。

 これらによりまして、首長と教育委員会が相互の連携を図りつつ、より一層民意を反映した教育行政を推進していくことを期待しております。

比嘉委員 野党案の方では首長の関与が強過ぎるのではないかという懸念がございますが、それに関してはどのような歯どめが担保されているのか、お伺いさせていただきたいと思います。

中田議員 お答え申し上げます。

 我々の出している法律案でありますけれども、地方教育行政における権限と責任の所在というのをとにかくはっきりさせようじゃないかということであります。そして、これに対するチェック機能として責任体制を確立、それもしなければいけませんから、そういう意味では、これまで分散していた教育に関する権限、これは首長に一元化をして、その首長の指揮監督のもとで教育長が教育に関する事務をつかさどる、まずそうしております。

 その上で、もっともなことでありますけれども、思いのままに首長が権限を行使したり独善的なやり方で教育現場を混乱させるというようなことがあってはなりません。その意味では、この法律案においては、首長を監視する新たな機関として教育監査委員会を設置して、しっかりとチェックをしていこうというふうにしているわけであります。

 そして、この教育監査委員会でありますけれども、首長が処理する学校教育等に関する事務の実施状況に関して必要な評価及び監視を行うということにしておりまして、その結果に基づいて、首長に対して、事務の改善のための必要な勧告を行うというふうになります。

 また、この勧告は議会にも報告をされるということになりますから、我々の新法下においては、首長が暴走するということがないように、教育監査委員会と議会によって適切な監視が行えるというようにしています。

 また、首長によって策定をされる教育の振興に関する総合的な施策の方針でありますけれども、これは、必要に応じて専門家等のさまざまな人の意見を聞く、原則的には毎年度議会の議決を経て策定する、原則的には毎年度進捗状況を議会に報告する、こういった運用をすることを私たちは想定していますから、これらの制度が相まって、首長に対するチェックというものは重層的に行われるというふうに考えております。

比嘉委員 次に、責任の明確化についてお尋ねいたします。

 政府案は、教育委員長と教育長を一本化することによってそれを図るということでございますが、非常勤の教育委員長が執行機関である教育委員会の代表であるという現行制度について、現行の教育委員長はどのように受けとめておられるのか、また、今回の改正についてどのようにそのことを受けとめておるのか、見解をお伺いしたいと思います。

前川政府参考人 教育委員会制度改革に関する審議を行っていただきました中央教育審議会の答申の中におきましては、「教育委員の中には、事務局が行う行政事務や所管の学校等の状況について、」「どのような事項について、どこまで強く意見を言ってよいものかという戸惑いがある一方で、重要な決定については教育長と同様に行っていることへの違和感があるという声が少なくない。」というような記述がございます。

 また、その上で、教育委員長の役割について、常勤の教育長と非常勤の教育委員長とでは情報の質、量に差があることから、非常勤の教育委員長が責任者であるとしても、余り細かいことまで問われると違和感を感じざるを得ないとの教育委員の意見を紹介しているわけでございます。

 改革案についての受けとめはさまざまであると考えられますけれども、現行の教育長と教育委員長とを一本化した新教育長を置くことにつきましては、実態に即して教育行政の責任を明確化するものとして、大方の理解が得られるものと考えております。

比嘉委員 今回の改正により責任の所在がはっきりすると、あらゆる案件に非常に有効だと思いますので、慎重に、よい結果になるような導きをしていただきたいと思います。

 次に、教育行政というのは中長期的な観点と一貫性が必要だということは明確でございますが、現行の教育委員会制度を検証した上で、改めて、継続性、一貫に関しましての評価をお願いしたいと思います。

前川政府参考人 教育は、それぞれの児童生徒に関しまして一度きりのことでございます。そういった観点から、間違いが起きないようにするということが非常に大事であるということでございますが、一方で、変えるべきものは変えていかなければならない。

 その不易と流行との関係が大事であるということは古くから言われていることでございますが、教育行政に関しましては、政治的な中立性とともに、継続して系統的な教育を行うという観点から継続性、安定性が必要であると言われているところでございまして、合議制教育委員会が学校の管理責任を負うことによりましてその継続性、安定性がこれまで担保されているところでございまして、今回の改正案におきましても、この点につきましては変更が加えられてはいないわけでございます。

比嘉委員 ただいま、政府案のポイントを的確に語っていただいたものだと思います。

 一方、野党提出法案では、選ばれた首長に権限を集中することがすなわち民主的な問題の解決であるという考え方が基本であり、首長の指揮下に置く中で、教育行政の継続性、安定性を十分確保する仕組みがあるのか、その点をお伺いしたいと思います。

中田議員 継続性、安定性という御質問でありますけれども、まず、今、比嘉議員がおっしゃっていただいたとおりそのままお言葉を申し上げれば、首長に権限が集中するということでありましたけれども、権限が集中をするというよりも、首長が総体的にきちっと責任を持つという仕組みにしているわけです。

 というのは、首長というのは、私も経験者でありますけれども、教育のことだけをやっていられません。あらゆることをやらなければいけない中においては、その責任者を当然任命しなければいけない、それが教育長ということになります。ほかの部局とこれは同じであります。

 しかし、教育長が進める教育の施策、さまざまなことについて、首長は当然、市の全体の責任者として責任を負うというふうにいたしているわけでありまして、このことは、首長の権限ということと継続性、安定性ということがつながって、一方ではまた損なわれるということではないわけであります。

 いわば、教育というのが、これまでは村社会的な中で隠蔽体質があったり、それそこ先ほど比嘉議員おっしゃったように絶対に失敗は許されないにもかかわらず、失敗してもそのまま逃げまくるというようなことが可能だったこの仕組みというものに対して、責任者をはっきりしようではないかというのが私たちの案ということになっているわけでありまして、当然のことながら、教育に対する継続性、安定性ということについては、先ほど御説明をしたようにチェック機関等もしっかり設けているわけでありまして、そうした運営の中において当然守られていくべきものだというふうに考えております。

比嘉委員 ありがとうございます。

 次に、今回の改正が学校現場にどのような影響を及ぼすのか、非常に重要な点だと思います。児童生徒はもちろん、教員にとってもですが、これも頻発する事案の対応を急ぐことありきではなく、教育活動の本質的なものだと考えます。

 教育界をめぐる流れとさまざまな事案を見るにつけ、子供たちも、みずからを守り、多くの事柄への理解力を高めることが必要になってきているとは思いますが、発達段階にあるということを踏まえて、どのように指導をしていくのか、各学校の教育水準をどのように高めていくのかを考えたときに、専門性の高い職員からの学校現場への指導こそが求められているものと考えております。

 そこで、若い指導主事が学校現場に対して恐れず職責を全うするための毅然とした指導ができていないという指摘がございますが、文部省の見解をお伺いしたいと思います。

 そしてまた、野党提出法案では、指導行政という曖昧なことはしないという方針の下に、指導主事ではなく、学校教育主事を置くということにしておりますが、法案に示された学校教育主事の役割は現行制度の指導主事と同じでしょうか。これは単に名前を変えただけなのでしょうか。学校教育主事は学校現場への指導はしないのか。明確な解釈をお示しいただきたいと思います。

前川政府参考人 教育行政におきましては、学校現場の自主性を生かしつつ、専門的な観点から支援するということが大変重要でございますが、各学校の中では十分な専門的知見が得られないという場合もございます。教育委員会には、教育課程、学習指導等の専門性を有する指導主事を配置いたしまして学校の指導に従事させるということが、こういった観点から必要になってくるということでございます。

 指導主事は、学校の設置者であり管理者である教育委員会を代表いたしまして、教育長の指示のもとで校長等に対してしっかりとした指導をするということが必要でございまして、そのような運用が行われるよう今後とも各教育委員会を指導してまいりたいと思いますし、また、指導主事にふさわしい力量のある者を登用するように指導してまいりたいと考えております。

中田議員 御指摘のとおり、学校教育主事ということについてと、そして、現行制度の教育に関する指導主事の職務内容というものは、法文上においては同じです。

 ただ、我々の法律案においては、地方教育行政の責任の所在というものをはっきりさせているわけです。先ほど御説明したとおりであります。その意味においては、学校教育主事というのは、首長の明確な責任のもとに、教育の専門家、こういう立場でその事務に従事をするということになりますから、現在の曖昧な責任体制のもとで職務を行う指導主事とは、これは職務の行使の態様というものが大きく異なってくるというふうに思います。

 すなわち、学校現場における学校教育主事の職務の行使というのは、責任の所在が不明確な指導ではない。今まではどこで誰が決めたという言い方をするとやや言い過ぎかもしれませんけれども、教育委員会という、この中で決まったものに対して指導しなさいという形のものではなくて、地方教育行政における首長の事務の執行の一環という形で行われるということになるわけであります。

比嘉委員 学校現場への指導が教育の原点だと思います。何をおいても主体的に行っていただきたいものだと思います。

 最後に、本委員会で野党案も含めての論議を大臣がどのように受けとめ、本法律案の成立を期していくのか、伏して大臣の教育に対する信念をお伺いさせてください。

下村国務大臣 本委員会のこれまでの御審議においては、教育行政の責任の明確化を図り、迅速な危機管理体制を構築し、地域の民意を代表する首長が教育行政に連帯して責任を果たせるような体制を構築するという点については、おおむね賛同する御意見をいただいているというふうに認識をしております。

 一方、民主、維新案におきまして、執行機関としての教育委員会を廃止し、教育行政の執行権限を首長に一元化するということでありますが、やはり、教育の政治的中立性、継続性、安定性の確保という観点から、懸念があると考えられます。

 このため、教育の政治的中立性、継続性、安定性を確保しつつ、首長が教育行政に連帯して責任を果たすという、両者のバランスをとった政府案がベストな案だと考えておりまして、引き続き本委員会において審議を深めていただきたいと考えております。

 そもそも教育とは、子供たちが、夢、志を実現する意思を持って自分たちの道を歩んでいけるよう手助けするための営みであり、全国どの地域でも、教育再生をなし遂げるということにおいて、責任ある教育行政制度を構築しなければならないというふうに思います。

 この観点からも、本委員会で審議を深めていただき、速やかに御可決いただきたいと考えているところであります。

比嘉委員 ありがとうございます。質問を終わらせていただきます。

小渕委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 これまでこの地教行法の改正について議論を重ねてまいりました。きょうは特に、これまでの議論を踏まえて、それから参考人の方々の提案、またその質疑、加えて、先般行いました地方公聴会でのそれぞれの御意見も踏まえた上で、少し論点を絞って、政府案について順次伺ってまいりたいというふうに思っております。

 まず最初は、教育委員の研修についてということで伺います。これもこれまでも議論をしてまいりました。特に、教育委員のスキルアップのための研修はどういう状況にあるのかというところからまず伺っておきたいと思うんです。

 今回のこの地教行法の改正は、もちろん、教育委員会の組織、制度を改革していこうということでございますが、その必要性とともにもう一つ大事なことは、やはり、今回の議論を積み重ねてきた中で、教育委員の資質についても非常に重要であるということが明確になってきたというふうに思っております。その意味で、もちろんこれは人選というのが一番肝要だと思います。

 あわせて、教育委員に任命されて四年間という任期を考えていくと、この四年間の間で例えば必要な知識、情報を取得していくということ、そのための研修を受けていくということ、そういうことを通して教育委員のスキルアップを図っていくべきだろうというふうに考えておりますが、まず、教育委員の研修の機会はどのような状況にあるのか、この点について現状をお伺いしたいと思います。

前川政府参考人 教育委員の資質向上のためには、現在、国、都道府県、市町村の各段階におきましてさまざまな研修が実施されております。

 文部科学省におきましては、毎年、都道府県、指定都市の新任教育委員に対し研修を行っていることに加えまして、文部科学省と都道府県教育委員会の共催によりまして、市町村教育委員会委員等を対象とした研修会を実施しております。

 また、都道府県におきましては、平成二十三年度の調査によりますと、全市町村の教育委員を対象とした研修を年平均で一・二回行っているほか、みずからの教育委員に対する研修を年平均で六・七回行っているというデータがございます。

 市町村におきましても、みずからの教育委員に対する研修を年平均四・六回行っているというデータがあるところでございます。

稲津委員 今、回数についての御報告がありましたけれども、ぜひ、研修の中身等も含めて、さらにこの機会に研修を取り進めていくということを文科省の方にはお願いしておきたいと思います。

 それで、もう一方で、教育長の方はどうかということなんですけれども、今回、教育委員長と教育長、両方の機能を持つ新教育長というのは、やはり権限それから責任というのが大変増大するということでございますし、そういう意味では、新教育長、この制度になったときに、これまで以上に教育長の研修ということも非常に大事だと思っています。

 いただいている今までのいろいろな情報によりますと、現行制度の中でも教育長の研修の機会というのはある程度確保されている、このように承知をしておりますが、私は、要するに、この制度が確立して施行される中で、今後は、より積極的でそして体系的な教育長の研修というのは必要だろうと思っています。

 そのことは、先般の、福岡県で行われました第一班の地方公聴会の折に、このとき意見陳述をしていただきました元兼教授からもこのことは指摘がなされたところでございます。そういう意味で、特に元兼教授からは、自己研さんをしっかり図っていくべきだ、それはもう当然であると同時に、むしろこれは努力義務を課すべきだ、こういうような御発言もありました。

 こうしたことを踏まえて、教育長の研さんについてどう考えるのか、このことについてお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 おっしゃるとおり、特に今回、新教育長、これは教育行政に大きな権限と責任を有するということになりますので、その資質の向上は極めて重要であるというふうに思います。

 昨年十二月十三日の中央教育審議会答申におきまして、「教育長には、強い使命感を持ち常に自己研鑽に励む人材が求められ、「学び続ける教育長」の育成を担保するため、国、都道府県、大学等が主体となって、現職の教育長の研修を積極的に実施することが必要である。」その際、「教育の専門的知識だけではなく、福祉、雇用、産業、環境等様々な分野に関する知識の習得が求められる。」というふうにされております。

 教育長のリーダーとしての資質や能力を高めるための方策としては、現在、国や大学におきまして市町村の教育長を対象とした研修会を実施しており、今後、国、都道府県、大学等による研修のプログラムについて充実を図ってまいりたいと思います。

 先日も、私のところに兵庫教育大学の学長以下幹部が来られまして、平成二十八年度から、現職教育長や教育委員会職員等を対象とした、新たに大学院教育長養成コースを設置したいので、ぜひ国の協力をお願いしたいということがありました。

 非常に、まさに、今回の教育委員会制度改革の法が成立した後、そのニーズが、的確に対応するということについて先んじて兵庫教育大学が既に考えていただいている。これはこの単独大学だけでなく、全国でもいろいろなキャンパスを設けて行いたいということでありますので、こういう大学が大学院をつくって教育長を養成するということについては、国も積極的に支援をしていくことによって、活力ある教育長養成、システム的にもフォローしていきたいと思います。

稲津委員 今大臣から大変重要な御発言をいただいたと思っております。これは、いわば極めて根本的な課題であると思っていますので、ぜひ今御答弁いただいた対応を進めていただくようお願いを申し上げる次第です。

 次に、今度は町村の教育委員会と町村の事務局のあり方についてということで伺っていきたいと思っていますが、この課題も本委員会でも何回か議論されました。地方公聴会でもこのことについて私も陳述人の方に質問をしたところでございますけれども、きょうは重ねての質問になりますが、少しこの点を明らかにしていきたいと思っています。

 先ほども、教育委員の人数、構成の問題が議論になりました。教育委員会の構成の中で非常に課題であると思っているのは、通常五名のところである状況ですが、特に町村には幾つかありますけれども、三名の委員会構成というのがあります。

 これを考えていきますと、今後、一名の新教育長と二名の非常勤の教育委員という構成では、果たしてこれからどうなのかという一つの課題が見えていると思うんですが、いわゆる三名の教育委員体制について、現状、どのようになっているのか、この点についてお伺いしたいと思います。

前川政府参考人 平成二十三年度地方教育行政調査によりますと、現行制度において、委員の定数が三人の町村の数が二十五となっております。

 町村につきましては、例外的に、教育長を含め三人以上で構成することができるとされているものでございますが、原則は五人でございます。地域の多様な民意を反映するとともに、新教育長をチェックする機能を果たすという観点からも、教育委員会がなるべく五人以上で構成されることが望ましいと考えております。

 そのため、各自治体におきましてもそうした運用を目指して努力していただくように指導してまいりたいと考えております。

稲津委員 新教育長という体制で施行されていくとしたら、やはりここは新教育長の権限、機能が強化されるわけですから、そういう意味で、三名体制というのはこれから、今答弁ありましたけれども、さまざまな観点からアドバイスしていただいて、それ以上の体制にできるところは進めていただくということを申し上げておきたいと思います。

 それからもう一点は、町村事務局の人員の配置の現状と課題をどう認識しているかということについてお伺いしておきたいと思います。

 教育委員会の改革ということがテーマで議論していますが、これは当然として、もう一つ課題になっているのは、事務局の体制はどうなっているのか、こういうこともあると思うんです。

 県、あるいはある一定程度の人口規模のある市等については、事務局の人員の確保を含めて、ある程度体制整備していける。しかし、人口規模の少ない町村の事務局体制についてはなかなか大変なんだろうと思っておりますけれども、とはいえ、そういう中で、プロパーの育成ですとか、あるいは業務対応を柔軟に図っていくですとか、いろいろな意味で課題は多いと思っておりますが、町村の教育委員会事務局の現状と課題について文科省はどう把握しているのか、この点について伺います。

前川政府参考人 平成二十三年度地方教育行政調査によりますと、平成二十三年五月一日時点で、教育委員会事務局の職員数が十人以下の市町村が四百九十三ございます。また、指導主事が置かれていない市町村の数でございますが、減少傾向にあるとはいうものの、なお六百二十五あるということでございます。このような自治体におきましては、事務体制が脆弱であるために、学校指導など十分に行き届いていないということが課題になっているというふうに認識しております。

 そうした中、今年度の地方財政措置におきましては、都道府県教育委員会における指導主事の地方交付税措置につきまして、十五名から二十一名への六名分の増員を図るということとなっております。

 こういった措置も通じまして、都道府県教育委員会による市町村教育委員会に対する支援の強化ということを通じまして、市町村教育委員会の学校指導体制の充実を図るということも一つの方策であるというふうに考えておりますし、引き続き、市町村における指導主事の配置につきましても指導を強めてまいりたいと考えているところでございます。

稲津委員 そこで、さらに伺います。

 今後、町村の教育委員会事務局の人材の確保等についてどうするかということなんですけれども、今、少し、予算措置について一部答弁がありました。その上でなんですけれども、やはり小規模自治体でどうやって人材を確保していくのかということは最大の課題でもあると思っています。

 予算の規模の問題もありますから一筋縄ではいかないと思うんですけれども、今後、町村の教育委員会事務局の人材の確保と、それから、プラスその中でどう事務局の職員としてスキルアップしていくのかという研修の問題について、これをどう図っていこうと考えておられるのか、この点についてお伺いします。

下村国務大臣 教育長や教育委員を支える事務局職員の資質の向上に向けて、教育委員会においては、教員出身者のみならず、教育行政の専門性を有する行政職員の計画的な育成が大変重要であり、一般行政部局との人事交流も含め、適切な人材育成が行われる工夫が必要であるというふうに考えております。

 文科省としては、市町村教育委員会に対する必要な助言や情報提供等を通じまして、小規模な市町村において適切な人材確保や研修が行われるよう、都道府県教育委員会を通じて指導するとともに、国としても研修体制の充実を図ってまいりたいと考えております。

稲津委員 ぜひよろしくお願いしたいと思っています。

 それで、次の質問ですけれども、これも本委員会で重ねての議論がありました、いわゆる新教育長に対しての教育委員会による監視機能はどう図っていけるかという課題でございます。

 まず、もう一回整理して考えてみますと、当然適切なチェック機能の強化というのは必要だと思っておりますけれども、一つ今回の中で議論されたのは、教育委員から教育長に対して会議の要請をされた場合には遅滞なく会議を招集しなければいけない、このように法案にございます。それを含めた上で、このほかに教育委員会による教育長への監視機能をどのように考えているのか、この点についてお示しいただきたいと思います。

前川政府参考人 今回の改正案では、教育長の権限が他の委員と比較して強いものとなることから、議会やあるいは教育委員のチェック機能を強化するという観点から、教育長の任期を教育委員よりも一年短い三年としているわけでございます。

 また、そのほか、教育委員による教育長のチェック機能を強化するという観点から、御指摘のございました、教育委員の三分の一以上の委員から会議の招集を請求された場合には教育長が遅滞なく会議を招集しなければならないという規定、また、教育長が教育委員会から委任された事務の管理、執行状況につきまして報告をしなければならないという規定、こういった規定が設けられているところでございます。

 また、教育委員会会議の透明性を図り、住民によるチェック機能を強化するという観点からは、教育委員会会議の議事録を作成し、公表するよう努めなければならないという旨の規定が設けられているところでございます。

稲津委員 今、教育委員会の監視機能ということを伺いましたけれども、もう一つ重要な監視機能を持っているのは、議会のチェック機関としての役割であるということは言うまでもありません。例えば、教育委員、教育長に対する任命の同意、これは議会の権限でございますし、それから、あわせて、当然議会の中での質問というのもあります。

 ただ、その上で、新たな体制になった状況の中で考えていきますと、議会の果たすべき役割はある意味これまで以上に大きい、このように思っておりますが、新教育長へのチェック機関としての議会の役割についてどう考えるのか、この点についてもお示しをいただきたいと思います。

前川政府参考人 今回の改正案におきましては、現行の教育委員長と教育長を一本化した新教育長を任命するに当たりまして議会同意を必要としているほか、任期につきましては教育委員より一年短縮し三年としているということでございまして、これによりまして、議会において、従来以上に職責が重くなる新教育長の資質能力をより丁寧にチェックすることができると考えております。

 また、既に現行法におきましても、教育委員の任命における議会同意でありますとか、教育委員会みずからが行う事務の管理及び執行状況に関する点検・評価報告書の議会への提出、これが規定されているわけでございまして、これを通じたチェックということも可能であるというふうに考えております。

 さらに、議会の本会議や委員会等におきまして、教育委員会の事務執行についての質疑が行われているわけでございまして、これらの機会を通じまして、議会が教育委員会をチェックし、または教育長の仕事ぶりをチェックするということによりまして、教育行政に住民の意向を反映させていくことが大事であるというふうに考えております。

稲津委員 もう一問質問をと思っておりましたが、時間が参りましたので終わらせていただきたいと思いますが、最後に意見だけお話ししておきたいと思います。

 チェック機能を強化する意味では、教育委員会の会議の議事録の作成、これも議論になってまいりました。これはいわゆる努力義務規定になっておりますけれども、住民、市民、町民に対する説明責任というのは、これはある意味一つのチェック機能になっていくと思っています。したがいまして、やはりこれの作成、公表を今後できるだけしていくということをぜひ望んで、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 おはようございます。民主党の笠浩史でございます。

 きょうは、この間、本当に多くの参考人の皆さん方等々からもいろいろな指摘があったわけでございますけれども、まず、幾つか確認の質疑をしたいと思うんです。

 大臣、今回の案は、私は前にも申し上げたんですけれども、いわゆる中教審のA案があって、首長のもとに我々のように権限を一元化していこうというところと、やはりそうじゃない方向性の方がいいんじゃないかというような、与党内あるいは自民党内いろいろな中で、ある意味では、非常に積み上げられた、知恵を出しながらまとめられた案なんだろうなというふうには思っております。

 それがゆえに、例えば、教育委員会の、指摘されていた形骸化だとか迅速性に欠けるとかというところは、教育長と教育委員長というものを一本化して、これは相当な権限を持った新しい教育長ができるということで、ある意味、執行機関としての教育委員会というものは迅速な対応ができるんじゃないかというふうに思うんです。

 ただ、問題は、首長と教育委員会との連携強化のための総合教育会議なるものができたために、今度、では、首長の権限というのは何なんだろうかと。最終的な責任は、新教育長、教育委員会の方にまだ執行機関としてある。しかし、一方で大臣自身も、首長のリーダーシップも発揮してもらいたいという思いは持たれているんじゃないかというふうに思うんですけれども、まずその点をお伺いをしたいと思います。

 首長のリーダーシップというものは、今回の制度改正の中でやはりそれは望まれているのかどうか、その点を一問お伺いしたいと思います。

下村国務大臣 首長は選挙によって選出されるわけでありますが、そのとき、選挙公約の中にこの教育に関係することも多々入れている、そういう候補者もいるわけでありまして、当然、当選をされた後、それをどう実行していくかということは、市民に対してやはり問われるわけでありますから、これから首長がその自治体における教育についてどんなことをやりたいかということについて、今まで以上にできる仕組みとして、御指摘のように、総合教育会議というのを設けたわけでございます。

 執行機関として教育委員会は残りますけれども、この総合教育会議を主宰するのは首長である、そして、予算等の権限についてはこれは首長が持っているわけでありますし、両方の執行機関、教育長とそれから首長が一体となって総合教育会議を開いて協議、調整を行うということでありますから、なおかつ、新教育長は直接首長が今度は任命するということでありますので、今まで以上に首長の教育行政における主張等が実現しやすい、そういう仕組みになってきているということは間違いない方向性であるというふうに思います。

笠委員 今は、いろいろな自治体、首長の選挙という中で、随分昔とは変わって、これは国政においてもそうですけれども、やはり選挙の中で教育というものに対する考え方というのは、それぞれ候補者がより具体的にしっかりと事前に示していくというような、もうこれは当たり前の時代になっているんだというふうに思っております。それぐらい、やはり今から人材育成というものが大事だということが改めて認識をされている。

 こうした中でどうしてもわからないことが、今回、教育の振興に関する施策の大綱というものを、これは首長が策定をするということで義務づけているわけです。この大綱については、総合教育会議で協議をして首長が策定することになっているわけですけれども、ちょっとここはまず事務方に確認なんですが、教育委員会と首長との調整が残念ながら整わない点、こういう対立した事項については記載はできるのかできないのか、改めて確認をしたいと思います。

前川政府参考人 大綱は首長が策定するということでございまして、首長にその策定の職務権限が与えられているということでございます。ただ、その際には、教育委員会と十分に協議し調整を尽くすということが前提であるということでございますので、その協議、調整を尽くすということが肝要であるということでございます。

 仮に首長が教育委員会と調整がつかない事項を大綱に記載したといたしましても、権限を持つ教育委員会が執行しない事柄を記載するということは意味をなさないということになりますので、したがって、こうしたことがないように、やはり十分な協議、調整をすることが必要であるというふうに考えております。

笠委員 ちょっともう一度確認なんですけれども、当然ながら、これは首長の権限で記載はできますよと、仮に調整がつかなくても。しかしながら、今おっしゃったように、それが執行権を持つ教育委員会の方で執行されない可能性が高いから余り意味はないということですか。

前川政府参考人 おっしゃるとおり、大綱の策定権限は首長にございますので、首長の判断で記載するということは、これは法律上は可能でございます。

笠委員 これは本当に最大の矛盾なんですよ。ですから、例えば私どもは首長に全ての権限を教育委員会から執行機関としても移していくということにしていますけれども、この大綱について協議をする、調整をする機関である総合教育会議は首長がこれを主宰するわけですよね。しかも、この大綱の策定権というのも首長が持っているわけですよね。であるならば、この大綱についての最終的な責任は、その実行まで含めて、執行まで含めてやはり首長に持たせるということが私は一番わかりやすいやり方だと思うし、そうすれば矛盾が解消されると思うんですが、その点、大臣いかがでしょうか。

下村国務大臣 総合教育会議は首長が主宰をする、その総合教育会議のもとで大綱を作成する、大綱を作成するに当たっては、教育長を初め教育委員会と、あるいは有識者が入る場合もありますが、協議、調整を行うということでありますから、一般的に言って、大綱で盛り込まれたことは、当然それは実行すべきこととして盛り込まれているわけでありまして、これは、教育委員会も執行機関としては存続しますから、人事とか教科書採択とか権限としては残りますけれども、しかし、今まで以上に、総合教育会議が設けられたということで、当然、首長と、それから、そもそも教育長もこれは首長が直接任命するわけですから、当然、コミュニケーションがとれた人事の中での教育長の任命ということでありますから、一般的に言って、この総合教育会議で出された大綱は、それはきちっとなされるというのは当然のことであって、それがなされないということはまずあり得ない話だと思いますが、法律的に言うと、執行機関が二つですから法律上あり得るということですが、一般的には、大綱に記されたことは実行に移されるというのは当然のことだと思います。

笠委員 大臣、それはやはり矛盾しているんですよ。

 先ほど局長が言ったじゃないですか、記載することはできると。わかりますよね。だから、どういう大綱であれ、大綱を策定するその権限は首長が持っているわけですよ。しかしながら、対立した事項について、全部じゃないですよ、やはり一部対立するということはこれはあります、まれかもしれないけれども、出てくる可能性としてはあると思うんです。しかし、そのときに、記載はできるけれども、執行権は教育委員会、教育長が持っているわけだから、対立した場合、それは恐らく実行されないでしょうと。それだったらもう意味がないじゃないですか。

 であるなら、では、例えば総合教育会議の中でまとまらなかった、調整がつかなかった事項についてはまだ記載しないということを、それはいい悪いは別として、法的にきちっと明記しているのであれば一つの話としてわかるけれども、記載することはできるけれども実行できないと言ったら、それは市民に対して、大綱ですよ、大綱を義務づけたわけじゃないですか、今回国として策定を。しかしながら、その中身について最終的にきちっとやはり首長に実行の責任まで持たせないと、書くことはできるけれども実行されるかどうかはわからないケースがあるというのは、私は極めて無責任だと思うし、それは逆に首長がかわいそうですよ。

 やはり、そこが最終的な責任をどうするかという一番のポイントだと私は思うんですけれども、そこは首長に持たせたらどうですか。いかがですか。

下村国務大臣 これは笠さん、具体的に何かその事例があれば、ぜひ具体的な事例で議論した方がわかりやすいのではないかというふうに思いますが、基本的に、大綱に定めるということは、教育長と、あるいは教育委員会のメンバーも含めた総合教育会議の中で協議、調整した結果を大綱にするということであるわけですから、これは、協議、調整した結果、調整できなかったことを大綱に盛り込むということは基本的にはあり得ない話だと思うんです。

 それでも大綱に盛り込むということになれば、それは首長としての強い意思でもあるわけです。強い意思にのっとって、教育長が執行機関であっても、教育長は首長から任命を受けた首長でもあるわけでありますから、当然、一つの地方自治体の中でこれは一体となった行政としてあるわけですから、結果的に、整合性をとった結論と執行がなされるというふうに思います。

笠委員 今の大臣のお話でいくんだったら、例えば、首長が議会の同意を得て任命をする教育長だから、それはもちろんうまくいくケースの方が圧倒的に多いとは思います。ただ、最悪、自分が任命をしたものの、本当にちょっと対立点があって大変な状況になったときに、では、首長が教育長を罷免することができる権限を持つんだったら、その首長が大綱をしっかりと実行できることをある意味担保できると思うんですよ。しかし、それもできないわけですよね。

 ですから、私はやはりここがどうしても最大の矛盾だと思うし、大綱のその記載事項のほとんどは、恐らくほとんどのことは教育委員会が事務執行の権限を持つわけで、首長は執行権を持っておりませんから、そこに盛り込まれるほとんど大半については。ですから、もしこのままであるならば、この現行法のままであるならば、やはり、執行権のない首長に大綱の策定をする権限を与えているということ自体の矛盾というものはどうしても解消できない、そのように思うんですけれども、いかがでしょう。

下村国務大臣 今回の教育委員会制度改革の中で与野党を問わず一致点ということは、現行の教育委員会制度を変えて、権限をより明確化する、その中でさらに、首長が権限についてより明確な位置づけとして重たい責任を負うという、それが現行教育委員会制度と変わる点で、与野党の中での共通点としてはそれはあるというふうに思うんです。

 その上で、政府案としては教育委員会を執行機関として残しましたが、しかし、教育委員会を代表する教育長と首長との意見調整、協議の中での場として総合教育会議を設けるわけです。総合教育会議を設けて、なおかつ首長がその総合教育会議の主宰をするということであって、なおかつそこで大綱を決めるということでありますから、当然、決められた大綱については首長が最終的に責任を持つわけですから、それについては、教育長は従うというのは当たり前の話であるというふうに思います。

 ですから、法律上は、それは教育長と首長が意見が異なるということはあるかもしれません。しかし、それを協議、調整した中で大綱をつくるわけです。協議、調整をできなかった、にもかかわらず首長が大綱を作成するということは、それは首長の強い意思ですから、首長はその大綱を実現させたいために大綱を作成するわけですから、その意思を持って作成するということについては、これは、任命された教育長はおのずとそういう立場の中で判断もするというふうに思います。

笠委員 ですから大臣、だから別に、常にそういうことが起こるということじゃなくて、やはり対立する可能性があるんだから、そういったときにはその教育長をやめさせることもできるという一つのきちっとしたその手段というものも首長に与えておかないと、私は、今大臣がおっしゃったような形にはならないんだと思うんです。

 今、総合教育会議というものができて、大臣が具体的なケースでと、もちろん、これからそれは幾つも想定はできるでしょう。ただ、今後そういうことが起こってからでは遅いということで、やはり責任を明確にしておくということが、だから、そこまでおっしゃるのに、なぜ首長にきちんと執行権を持たせるというような答えにならなかったのか、結論にならなかったのか。もちろん、安定性だとか継続性だとかおっしゃるんでしょうけれども、やはりそこは私どもと最も考え方が異なる点だと思いますので、改めてそこは今後の質疑の中でもまた議論をさせていただきたいと思いますが、そこを何らかの形でやはり首長が自信を持ってきちっと最終的にしっかりと話し合いする、もちろん、首長が言っていることが常に正しいかどうかということは、それは首長も謙虚じゃないといけない点もあるでしょう。しかしながら、最終的にはこの大綱についてはその実行まで含めて首長が責任を負うんだ、それを何らかの形で担保できるようなことをぜひ知恵を出していただきたい、考えていただきたい。そのことはまた改めて次回、大臣とお話をさせていただきたいというふうに思います。

 それで一点、次に、教育の政治的な中立性ということが、当然ながら、我々も含めてこれは与野党関係なく大事だということは、もうみんな認識していると思います。ただ、そもそも教育の中立性あるいは教育行政の中立性というものが何なのか。特に地方教育行政においてはそこあたりが、例えばイデオロギー的な対立、あるいは教科書の採択の問題であったりとか、あるいは教職員組合の過去の事例とかいろいろなことが、取り上げる人によってそれぞれこの中立性というものの概念は違っているような気がするんです。

 文科省の方にお伺いをしたいんですが、これまで、教育活動の中立性が具体的に侵害されたというような例をちょっと幾つか挙げていただきたいんですけれども、よろしくお願いします。

前川政府参考人 教育の政治的中立性といたしましては、具体的には、教育の内容に関する政治的中立性、また、教育に携わる教職員の人事における政治的中立性、さらに、日々の教育活動に関する政治的中立性、こういったものが求められていると考えております。

 過去の事例といたしましては、平成十二年、十三年当時でございますけれども、東京都の国立市の教育委員会の国旗・国歌に係る指導に関しまして、市長、与党の市議が連名で教育委員会に要望書を提出し、一部の学校の卒業式、入学式において混乱が生じたというような事例がございます。

 また、昭和五十八年当時でございますが、福岡県知事が、当選後初の記者会見におきまして、学校の管理職の昇任試験の廃止や教員ストの処分についての方針の転換、スト処分を受けた教職員の給与の回復、これを県の予算で対応するという方針を掲げたということがございます。これに対して当時の県教育委員会の教育長は、教育の正常化の方針を継続し、管理職昇任試験の継続、教員ストに対する厳正な処分を継続することを表明した、このようなことがございます。

 こういったことが御指摘の例に当たる、あるいは近いものではないかというふうに考えております。

笠委員 前川さんにお伺いしたいんですけれども、教育の中立性ということについて、首長さんにかかわるような話が今二件あったわけですかね。例えば、首長が何らかのリーダーシップを発揮していくあるいは何らかの判断を下していくということと、あとは、まさに学校現場における教育の内容に関してのやはり中立性というもの、私は、そこは分けて考えないといけないというふうに思っているんですよ。

 その点の見解というものをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

前川政府参考人 日々の教育活動の中での教育内容の政治的中立性、これは非常に大事なことであるというふうに考えております。そのために、公立学校の管理機関として合議体の教育委員会が置かれているということでございまして、この点につきましては、政府の改正案におきましては継承しているということでございます。

 教育行政という観点で、全体の行政の中で首長がその行政の方針というものを持つということは、これはまた当然のことであるというふうに考えておりますので、日々の教育における政治的中立性と首長が持つ教育行政についての方針といったものは、矛盾なく調和していくことができるというふうに考えております。

笠委員 本当に、ちょっと今のは私は違うと思うんですけれども。

 では前川局長、例えば首長が、こういう教科書を使うのが望ましい、検定教科書ですよ、副読本とかじゃなくて教科書の話、というような発言をもししたとすれば、権限は首長にないんですよ、しかしながら、首長は、自分は教育を預かる身として、例えば教科書採択において、ルールは決まっています、それぞれの教育委員会で定めていますけれども、例えば、聞かれたことについてこういう教科書を使うべきではないかというような発言をすることは、これは教育の政治的中立性を侵すことになるんですか。

前川政府参考人 首長が発言をするという限りで、それが直ちに教育の政治的中立性を侵すということにはならないというふうに考えております。

笠委員 私もそうだと思うんですよ。

 もし、例えばそういう教科書の中身に問題があるとすれば、それは国の検定を通さなければいい話で、少なくとも検定をきちっと通った教科書というもの、検定が済まされている、合格した教科書というのは、ある意味ではどれを使ったとしてもそれはいいわけで、ただ、そういう中でも、各社が工夫していたりいろいろな違いがありますので、それをきちっとした透明な形でいろいろと採択していくという、それは首長が何でもかんでも勝手に決めていいという話にはなりませんけれども、しかし、そこあたりまで含めてやはりこの中立性という議論は、例えば、我々が今、首長のリーダーシップ、最終的な責任を首長にきちっと持っていこうという中で、必ずこの中立性に対しての懸念があるんです。

 しかし、そういう中で我々が最も注意をしなければいけないことは、首長が政治的にリーダーシップを発揮することが悪いことではなくて、教育の現場に、まさに一党一派に偏ったとか、いわゆる教育基本法に抵触するようなことが現場で起こったときには、これはしっかりとした、国も含めて、今でいうと教育委員会も含めて、そこはきちっと是正をしていかなければならないということが私は一番重要だと思うんです。

 先ほど局長がおっしゃった中で、教育委員会がと言ったでしょう、そういうところをチェックすると。教育委員会ですか、教育委員会ができますか。どうですか、局長。

前川政府参考人 教育委員会は、合議制の執行機関として学校の管理責任を負うわけでございますので、その責任はしっかりと果たしていただく必要があるというふうに考えております。

笠委員 教育委員会が今その最終的な責任を執行機関として負っているということは、そのとおりです。

 しかし、学校の現場で今何が行われているのかを一番わかっているのは、これはやはりその学校に子供を通わせている保護者であったり、ですから私がコミュニティースクールを進めないといけないと言うのは、やはり地域に学校を開いていかないといけないんです。多くの教員の人たちは頑張っておられますよ。きちんとした指導もしている。しかし、時に、まさにこの中立性に欠けるような教師がいるとすれば、それはしっかり処分しないといけない。しかし、何が起こっているのかということをやはりチェックできるのは、保護者であり、地域の代表の人たちだと私は思う。もちろん、校長が対処することだってあるでしょう。

 ですから、そういうようなことをしっかりとこの際やはり考えていくためにも、そういう本当の意味での中立性というものをきちっと守っていくためには、何か最終的な権限を首長に持っていくからそこがということではなくて、やはり、地域住民の意向というものを反映できるシステムというものをもう少しさらに進めていく必要があるんじゃないか。あるいは、我々は、そういったことが、教育委員会よりも首長のもとにきちっと声が届いていくようなシステムを確立することによって、やはり、リーダーシップを発揮していくことができるというようなことも含めて対応していきたいというふうに考えております。

 そういう中で、こういった中立性の問題も含めてですけれども、これから教育委員会が、政府案で言うと新教育長が物すごい力を持つことになるわけですが、執行機関として残る教育委員会がそういった責任を果たしていくためにこれからどういう課題があるのか、あるいは何に期待するのかという点を、もし大臣の方でその所見があれば、お聞かせをいただきたいと思います。

下村国務大臣 その前に、笠委員が言われたコミュニティースクールの促進は、私もそのとおりだと思います。できるだけ学校が閉鎖性、密閉性的な教育ではなくて、地域に開放されたといいますか、地域の人たちが一緒に子供たちを育むような教育環境としてのコミュニティースクールをさらに促進していかなければならないと思いますし、その割には進んでいないというのは、やはり問題があるのではないかというふうに思います。

 それはぜひ進めていきたいと思いますが、その問題と、教育委員会制度あるいは首長に対する権限は別次元の問題であるというふうに思うんです。

 首長に権限を移譲するということは、これまでも何回も答弁でも述べておりますが、加速度的にその地域における教育改革が進むというプラス面は確かにあるというふうに思いますが、一方でやはりリスクはあるわけです。つまり、政治的中立性、公平性とか継続性とかいう部分で、先ほど前川局長が答弁をいたしました、例えば国立のような事例があったとき、ストップできないという問題がやはりあるわけです。

 ですから、政治的中立性や継続性、安定性をどこが担保するかという部分はやはり課題があるわけで、それを、政府案では教育委員会に残すことによってやはり担保する。一方で、誰が教育長だけでなく首長になっても教育実態が全然変わらなかったら意味がありませんから、それを、今まで以上に首長や教育長に対して権限をより明確化することによって、めり張りがついた教育改革が同時に進められる、それが新たな教育委員会制度改革案だというふうに考えております。

笠委員 先ほどもちょっと関連するような質問がありましたけれども、教育長の質、あるいは新教育長というものをチェックしていく体制というものを、これを教育委員会にやれと言っても、その一員ですから、やはりなかなか難しい。

 そういう状況の中、私は、首長がそういう権限というものもやはり持って当たれるようにしなければ、ある意味での、本当の意味での緊張感とか、あるいは、何か本当に重大事案が発生したときに誰が最終的に判断するのかというのは、やはり選挙で選ばれる首長にということで、きょうは時間が参りましたのであれですけれども、大綱の策定であるとか、あるいは、総合教育会議の中で取り扱わないといけないようなテーマ、緊急事態における対応であるとか、やはりこの点については、少なくとも首長が全責任を持って、最終的な責任を持って対応できるような、ぜひそのことをお考えいただきたいということを最後に申し上げて、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、吉田泉君。

吉田委員 民主党、吉田泉です。

 私からも、地方教育行政法の改正案に関連して質問をさせていただきます。大分審議も進んできたわけですが、常に問題の原点を忘れないという姿勢できょうは質問をしたいと思います。

 せんだって参考人で来られた新藤宗幸教授によると、教育委員会制度の見直しという議論は、二〇〇〇年の第一次地方分権改革のころから始まったとされます。つまり、地方が自立する時代だ、そういうときに、教育委員会の必置という規制がこれからも必要なのかという問題意識からこの見直し論が出てきたということであります。

 そして二〇〇一年、全国市長会の提言、さらに二〇〇五年、地方制度調査会の答申、そして二〇〇六年、骨太の方針、こういったところで教育委員会制度の見直し論が提起され、今回の教育再生会議、さらには中教審の答申、こういう流れで来ていると思います。結局、もう十年以上、教育委員会をどうするかという議論が続いていることになります。

 そんな中でこの問題に大きく火をつけたのは、やはり、二〇一一年、大津市のいじめの自殺事件ということでありました。今回の法案の提案理由の中でも、この事件がまず第一に取り上げられているということであります。

 この事件に関連する基本文献としては、大津市長が設置した第三者委員会による報告書、さらには遺族の方の手紙、そして大津市長による文科大臣宛て意見書等、市長はいろいろなところで発言されていますが、その辺が基本的な文献だろうというふうに思います。それらを踏まえて、そして、今までの参考人の方の御意見も踏まえながら質問をしたいと思います。

 まず、大津市の第三者委員会の調査報告書によると、今回の事件における教育委員会への市民からの非難というのは、その隠蔽体質、この一点にあったんだという記述があります。さらには、大津市長も、市の教育委員会が非難されたのは、迅速性という問題ではないんだ、この隠蔽体質なんだという発言を市長もしておられます。

 まず、今回の事件における、隠蔽体質が最大の問題なんだという認識について、政府としてもこれは共有しているものかどうか、お伺いします。

前川政府参考人 大津市におけるいじめ自殺事件におきましては、大津市教育委員会の問題点に関しまして、大津市の事件を調査するために市長が設置いたしました第三者調査委員会の調査報告書があるわけでございますが、その中でさまざまな問題点が指摘されております。

 市教育委員会に緊急対策チームが設置されないなど危機管理体制整備の欠如でありますとか、また、調査を早期のうちに断念しており、調査が十分に実施されていなかったということ、事実の調査よりも法的対応を意識した対応をとったこと、この中に隠蔽体質というようなことについての指摘もあるわけでございますが、また、県教委への報告がおくれ、その内容もずさんであった、教育委員が重要な意思決定においてらち外に置かれていた、これらのさまざまな指摘があったわけでございまして、これらは、今回の教育行政制度の改革につきましても念頭に置いた事柄でございます。

 ただ、今回の改革は、大津市の事件が一つの契機となっているわけでございますけれども、それだけではなく、現行の教育委員会制度につきまして、教育委員長と教育長のどちらが責任者かわかりにくいでありますとか、また、地域の民意が十分に反映されていない、そういった課題もあることから、今回、抜本的な改革を行うこととしたことでございます。

    〔委員長退席、丹羽(秀)委員長代理着席〕

吉田委員 政府としてその報告書を真摯に受けとめているというようなことは間違いないと思うんですが、次にお伺いしたいのは、その隠蔽体質というものが人の問題だと言う方もいます。それから、制度の問題だと言う方もおられます。

 例えば、あの全国市町村教育委員会連合会の会長さんは、この大津の問題というのは結局人の問題なんだ、制度の問題ではない、制度を変えれば問題が解決するか、二度と悲劇が起きないように意識を高める方が重要なんだ、なぜ、このいじめ問題と直接関係のない教育委員会制度という問題を取り上げて見直しを進めないといけないのかわからない、大津の事例は特例だ、こう言い切っておられます。

 それから、先日参考人として来られた梶田先生も、この大津の問題は、どちらかといえば人の問題ではなかろうか、そういう趣旨の発言があったと思います。

 ただ、一方で政府は、この事件ではないという今のお話ですが、この事件を非常に大きなきっかけとして制度改正を検討してきたということであります。ということは、大津の教育委員会の問題というのは、単に人の問題ではなくて、制度の問題でもあるからこそ今制度改革をしようとしているんだというふうに推測しますが、確認をさせていただきます。

前川政府参考人 大津におけるいじめ自殺事件におきましては、生徒の生命に係る重大かつ緊急の事態であるにもかかわらず、教育委員会の会議が速やかには招集されなかったというような問題もございます。教育委員会による責任ある、迅速で的確な対応というものが見られなかったという問題が大きな社会的批判を浴びた一つの点であるというふうに考えておりまして、このことにつきましては、単に人の問題ではなく、制度の問題でもあるというふうに認識しているところでございます。

 このため、改正案におきましては、教育委員長と教育長を一本化した責任者として新教育長を置くなどのことによりまして、責任体制を明確化し、かかる事態が生じたときにも、迅速に教育委員会が会議を開くことができるようにしようということでございます。

 また、総合教育会議の設置等によりまして、より一層、民意を反映した教育行政の推進を図るということにしております。

 緊急時におきましては、改正後は新教育長が迅速に対応して、また、教育委員への適切な情報提供や会議の迅速な招集などを行う、その責任も負わされるわけでございまして、必要に応じまして総合教育会議を開催して、首長と対応を協議するということになるというふうに考えております。

吉田委員 我々の今回の審議の原点というのは、やはり、大津における隠蔽体質、それを制度的に何とか改善していこう、この辺にあるのではないかというふうに思っているところでございます。

 大津市長さんは、この事件の後に市長に就任したわけですが、遺族から大津市に対して訴訟が提起されました。ということは、当然、市のトップとして法廷に立ったわけです。

 教育行政に従来は直接権限のなかった首長が、結局は責任をとって法廷に立たざるを得ない、ここに私は大きな矛盾を感じるんですが、この点は今回の法改正では改善されるんでしょうか。

下村国務大臣 損害賠償訴訟においては、財務の統一的な処理等の観点から、原則として首長が当該地方公共団体を代表するものであり、今回の制度改正において、この点に変更はありません。

 ですから、首長ということになりますが、しかし、実際は法廷に首長みずからが立つということはあり得ない話なわけで、また、地方自治体における行政対応についても、その訴訟に応じたそれぞれのつかさつかさが実際は現場で対応するわけですけれども、象徴としての首長は、訴訟のときには、名前は当然責任者として出ますが、対応はそれぞれのつかさつかさで対応するということであります。

吉田委員 実際には首長の代理としてつかさつかさの方が、担当者が法廷に立つということが多いんでしょうけれども、訴状の宛名は首長なんですよ。最終責任はこれは首長だと。それで、この点が特に今回の改正によっても変わらないということだと思います。

 これを解消するというためには、やはり、教育委員会を廃止して首長に権限を集中していくということしかないと思っておるんですが、それがなかなか進まないということであります。そして、その理由が、一言で言うと、政治的中立性の問題だと。きょうも議論がこの問題に随分集中しているということであります。

 大津市長の発言ですが、国では、政治家である文科大臣が教育政策を決めている。なぜ、地方だけ政治的中立性ということが強く指摘されるんでしょうか。おかしいんじゃないでしょうか。多様な意見の反映や継続性というのが必要なのは、学校で何を教えるのかということですけれども、これは実は国の学習指導要領でもう決まっている。市町村はほとんど介入する余地はない。という意味では、むしろ国の方こそこの政治的中立性が求められるはずではなかろうかというのが市長の言い分でございます。

 また、参考人の新藤教授も、日本の国の教育行政の頂点にあるのは、閣僚であり、かつその内閣統括下の行政機関である。という意味では、現行制度のどこが中立なんでしょうか。首長に権限を寄せると中立性が侵されるということが一般的に言われますけれども、いささかこれはピンぼけではなかろうかということを新藤先生が言っておられますが、この点の認識をお伺いしたいと思います。

    〔丹羽(秀)委員長代理退席、委員長着席〕

前川政府参考人 教育行政におきましては、国と地方の間で基本的な役割の違いがあるわけでございます。

 地方公共団体は、学校の設置者として学校の設置管理の責任を負いまして、児童生徒に対する教育の内容でありますとか、教育職員の人事を直接行う、こういった役割を負っているわけでございますが、国は、学校教育法等の制度の枠組みでありますとか、また、学習指導要領といった全国的な基準を定める、あるいは教員給与等の財政的な負担を行う、こういった役割が基本でございます。

 こういう役割が違うということから、直接学校の管理責任を負う公立学校の設置者である教育委員会につきましては、合議制の執行機関という形をとっている。一方で、国の教育行政につきましては、独立した委員会ではなく、文部科学大臣が責任を負って教育行政を行っている。このように区別されているものというふうに理解しております。

吉田委員 ちょっと確認ですけれども、要するに、国においては、教育行政の政治的中立性の問題というのは、もうはなからないということですか。大津市長の言い方は、地方よりも国の方に政治的中立性の問題というのはあるのではなかろうかという問題意識なんですが、そこはいかがですか。

前川政府参考人 教育の政治的中立性を確保するという要請、これは、国、地方を通じた教育行政全体を通じる要請でございます。

 ただ、国と地方の基本的な役割の違いと申しますのは、直接学校を管理する責任を負わされているか否かということでございまして、直接学校を管理する、したがって、学校の教育内容に直接関与する、また、人事について直接それを行う、こういう責任、権限を負っている地方におきましては、合議体の教育委員会がそれをつかさどることがふさわしいという考え方でございます。

吉田委員 それでは、関連して大臣にお願いします。

 これも大津市長の発言ですが、教育委員会を地方に必置する理由として、いわゆる政治的中立性、それから地域住民の意向の反映、こういう必要性が挙げられているわけですが、一方で、国においては教育行政で別に行政委員会方式というのがとられていないわけです。そして、これらの中立性等の要請については、審議会の活用、こういう方式で対応をされているということだと思います。国においては教育行政に関し行政委員会制度をとっていないが、これらの中立性の要請が地方の教育行政に特有なものであるとは考えにくいと言っております。

 そこで、改めて、なぜ地方だけが教育委員会方式なのかということに対する御見解を伺います。

下村国務大臣 教育行政における国と地方の役割には明確な違いがあります。国は、学校教育法等の制度の枠組みや学習指導要領といった全国的な基準を定める、あるいは、教員給与等の財政負担を行うこと等を役割としております。学校の設置管理者として児童生徒に直接教育を実施したり教職員人事を行うといった立場にはないわけであります。このため、内閣から独立した委員会を設けず、文部科学大臣が教育行政を行っているわけであります。

 また、国と地方の統治機構の違いという面から申し上げれば、国が議院内閣制をとっているということに対して、地方は二元代表制をとっているわけであります。首長は、住民による直接選挙で選出されるなど、議会との関係では極めて強力な権限を持っているわけであります。

 このため、首長一人の判断によって教育内容等が大きく左右されることがないよう、教育委員会制度を含む各種委員会制度が設けられてきたわけであります。

 こうしたことから、今回の改正では、教育の政治的中立性、安定性、継続性を確保する観点から、首長から独立した行政委員会としての教育委員会を引き続き執行機関として残しつつ、地域の民意を代表する首長が教育行政に連帯して責任を果たせる体制を構築するために、総合教育会議の設置等をすることとしたものであります。

吉田委員 引き続いてこの教育委員会制度の件ですけれども、先日の参考人として来ていただいた穂坂邦夫前志木市長の発言として、首長を教育の総括責任者として明確に位置づけた上で、現行の教育委員会にかえて、中教審的な立場の地方教育審議会とでもいうべきものを新設して、ここに二十五、六人程度の市民に参加してもらう。それでこのレーマンコントロールを実現し、首長や教育長の独断を監視する機関として位置づけたい。そうすれば、現状の、指摘されている閉鎖体質かつ隠蔽体質の教育行政から、もっと能動的、透明性のある、開かれた教育行政へと変えていくことができるのではなかろうかという前市長の発言がございます。

 いわば、今回の野党案の教育監査委員会に類似した発想だと思いますが、私は、このあたりが多くの方が納得いただけるような御提案ではなかろうかと思います。

 今回の大津事件の最大の課題である隠蔽体質からどうやって脱却するかという意味でも、この志木市長の提案というのは有効ではなかろうかとこう思うわけですが、政府としての見解を伺います。

下村国務大臣 行政機関とそれから審議会との違いでありますけれども、これは地方自治法の第百三十八条の二に、ちょっと簡略して申し上げれば、執行機関は、「自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う。」という機関であります。

 一方、第二百二条の三に附属機関についての位置づけがございますが、附属機関は、「その担任する事項について調停、審査、審議又は調査等を行う機関とする。」というふうに地方自治法の中で位置づけられております。

 それで、御指摘の地方教育審議会を設けるということになりますと、この地方教育審議会は、今申し上げたように、地方自治法によりまして、これは意思決定機関ではありませんので、最終的に教育の政治的中立性を担保することができないということになるわけであります。

 今回の改正案は、教育の政治的中立性、継続性、安定性の確保に留意しつつ、教育委員会を引き続き執行機関としつつ、総合教育会議の設置や大綱の策定を通じて、首長が教育行政に連帯して責任を負う体制を構築する、そういう政府案の仕組みでございますので、教育委員会制度を廃止して地方教育審議会を設けるということは、これは適切でないというふうに考えます。

吉田委員 結局、教育委員会が執行機関として残るわけですので、なかなか穂坂市長の提案と相入れないということだと思います。ということは、なかなかこの隠蔽体質という問題も改善が期待されないのではなかろうかというふうに感じざるを得ません。

 一問飛ばしまして、配慮規定ということでちょっと伺いたいと思います。

 野党案ですと、首長、教育長という縦のラインに権限と責任を一元化するわけですが、さらに、緊急時に備えて、これは六十三条ですけれども、配慮規定というのを置いてあります。

 つまり、通常は学校が主体的に管理運営をするわけですけれども、児童生徒等の生命身体または教育を受ける権利を保護する必要がある緊急の事態というときには、適切に対処することができるよう首長が配慮する、こういう規定が置かれております。

 一方、政府案ですと、緊急時には総合教育会議を開いて協議、調整をするということになっておりますが、そのときの権限と責任が不明確ではないのかという危惧があるわけです。

 それで、政府案にもこの野党案のような配慮規定ということを盛り込むことは考えられないんでしょうか。

前川政府参考人 野党御提出の法律案の中に御指摘の条文があるということは承知しておるわけでございますが、この規定の具体的な趣旨、内容については、十分承知しているわけではございません。

 一般に、学校現場の自主性を高めるということは重要であるというふうに考えておりますので、そのためのさまざまな施策は推進しているところでございますが、緊急時において行政が学校を支援すべきということは、これは当然でございます。

 設置者におきましては、今回の改正案によりまして、児童生徒等の身体または生命に係る緊急の場合には、まず教育長が責任を持って迅速に対応する。また、その上で、必要に応じ、総合教育会議におきまして首長が教育委員会と対応方針を協議するということとなるわけでございまして、これによりまして適切な配慮がなされるものというふうに考えております。

吉田委員 問題は、その総合教育会議というのが緊急時にどのぐらい適切に機能するかということだと思います。

 もう時間も大分迫ってきましたので最後の方になりますが、根本的な問題ということでちょっと触れたいと思います。

 穂坂前市長が言っておられるのは、日本の教育問題の根本には中央集権システムがあるというわけです。義務教育の実施主体は、これは法律的には市町村ですが、お金も人事も、これは国や県が権限を持っている。したがって、実施主体である市町村がなかなか上に盾突けない。結果的に、国、県、市町村という上意下達という仕組みができ上がっている。そして、事件が起きても国や県の責任は問われないわけです。そうしますと、このシステムですと、やはり責任の所在というのが大変曖昧になってしまう。その結果、教育委員会、さらには学校も、自己判断と自己責任の伴わない受動的な体質になっているのではないかという発言があります。

 それから新藤教授も、日本の教育行政の特徴は縦の行政系列だ、文部官僚と都道府県の教育長協議会、ここが極めて密接な関係を保っている、そして、この縦のラインの中で、首長から相対的に独立した教育委員会が置かれて、縦の行政系列、事務局支配というのができ上がっているという発言があります。

 この点に関する認識を伺います。

西川副大臣 吉田委員にお答えさせていただきます。

 今回、この教育委員会制度改正、これはまさに今の委員の御懸念にかなり応えるための改正ではなかったのかなという思いがいたしておりますけれども。

 教育基本法の第十六条には、「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。」こういうふうにうたっております。

 その中で、国の役割は、当然、基本的な制度の枠組みの策定、そして全国的な基準の制定、そして財政的支援、財源保障、これが国の役割である一方、やはり地方公共団体の方は、実際に地域の実情に合わせて学校を設置管理する、あるいは、国と地方の適切な役割分担、相互の協力のもとで、実際の地域に合わせた教育行政を行うというのが地方の役割でございますので、いわば上意下達というよりも、国と地方との役割分担を非常にうまく機能させているという思いはあります。

 その中で、やはり首長さんの教育に対する思い、その辺が、実は、地域の住民から選ばれた首長さんということは民意の反映の発露でありますから、そういう意味で、今回の、首長による教育長の任免や大綱の策定、総合教育会議の設置、このことによって、各地方公共団体そして各市町村の首長さんたちの思いが教育行政に反映される改正になった、そういうふうに思っております。

吉田委員 縦の系列の問題については、ちょっと見解の相違があるように思います。

 もう最後にしますけれども、「国民の教育」を著した渡部昇一教授はこう言っておられます。

 教育改革を考える上で最も大事なのは、公教育の時代は既に終わったという認識である。もう小手先の改革ではどうにもならないところまで来ているんじゃなかろうか。今後は、今と違って、私立の学校や私立の塾、そこを主役にして、そこで足りないところを公教育が補うという形にすべきときである。そうやって国民の選択肢をふやす、教育の幅を広げるということが最善の解決策であるというふうにおっしゃっておられます。

 そして、この本が出たのは平成十三年のことですが、そのときのお話として、私立の小中学校の設置基準がない、もしくは高等学校並みに非常に高いハードルの基準しかないんだということを嘆いておられます。

 もう時間が随分それ以降たっておりますけれども、小中学校の設置基準の現状を伺います。

前川政府参考人 小中学校の設置基準でございますが、これは平成十三年度に制定されたわけでございまして、それ以前は、小中学校の設置のための国としての基準が明確ではなく、このことが私立の小中学校の新設を妨げる要因の一つではないかとの指摘がなされておりました。

 こうしたことを踏まえまして、文部科学省におきましては、私立学校を含め多様な学校の設置を促進する観点から、設置に必要な最低基準を明確化するとともに、地域の実態に応じて適切な対応が可能となるよう、この、新たな省令による設置基準を大綱的、弾力的な基準として制定いたしました。

 この基準の制定後、私立の小中学校は着実に増加しておりまして、文部科学省としては、私立学校を含め、各学校の理念や自治体の実情に応じた多様な学校の設置がさらに進むことを期待しているところでございます。

吉田委員 終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、椎木保君。

椎木委員 日本維新の会の椎木保でございます。

 下村大臣、私が前回質問をさせていただきました四月十六日からきょうで二十三日が経過しました。この間、毎日毎晩、下村大臣の夢を見させていただきました。

 私はこれまで、質問の機会をいただくたびに、下村大臣に対してのその教育観、教育理念、これには本当に敬意を表し、感銘し、大臣を与野党の枠を超えてお支えしていきたいということを何度も申し上げてきました。しかし、今回の政府案につきましては、下村大臣のその肝要な部分が除去されている、どうしてもそういうふうにしか私も思えないんですね。多分そういう思いからだと思います、毎日毎晩、下村大臣が夢の中で出てきまして。

 昨夜も当然大臣の夢を見させていただいたんですけれども、昨夜は民主、維新案に対して下村大臣が大変明確に肯定いただける御答弁をいただけましたので、きょうはそういう意味で正夢になると確信を持って質問させていただきたいと思います。私もきょうは不退転の決意で質問させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。

 まず初めに、これは前回も質問させていただきましたが、会議録の作成と公開の義務について。

 これについて私が前回質問させていただいたときに、大臣の方からは、おっしゃるとおりですという答弁の前置きがありまして、問題はその後なんですよ。しかしとか、これは原則として公開することは当然でありますとまた言いながら、特に、事務局の人数が少ない市町村においては過大な事務負担だとか、職員そのものが非常に枯渇化しているとか、事務的な処理能力が伴っていないとかというような御答弁になってまいりまして、結論的に、俺の答弁におっしゃるとおりだと言ってくれているのと、もう一つは、公開すべきだという認識だとおっしゃっているにもかかわらず、何か最後の部分になると努力義務を課すというところでとどめてしまう。

 これは、市民に開かれた情報開示という意味では、通常、当たり前の良識として、やはり開示すべきなんですよ。私もちょっと地方行政をやっていましたけれども、地方行政で情報公開条例に基づいて公開できない事務文書なんかほとんどありませんから。

 私は、そういう視点で、小渕委員長を団長にした四月二十三日の地方公聴会、福岡に行かせてもらいました。このときに、与党側が推薦した福岡県の小郡市長、平安市長にいわゆる情報公開、要するに会議録を開示すべきか否かということを最後に質問させていただきました。そうしたら平安市長は、公開することは私はいいことだと思っている、教育委員会の中でさまざまなことが話し合われて、そしてそれが機能しているということは、市民の皆様もわからない状況を改善できる、私は公開していくべきだと思うとはっきり答弁いただいたんですよね。

 与党側が推薦した意見陳述人、首長ですらそういう認識であるにもかかわらず、努力義務のまま、見直す、修正をするお気持ちが全くないのか。あるいは、おっしゃるとおりですと言ってくれているんですから、公開するように、義務化するようにというお考えなのか。ちょっと改めて、そこの答弁をお願いしたいと思います。

下村国務大臣 まず、毎晩私の夢を見ているのが、悪夢でなくて、きょうから夢に出ないようなことを祈りたいと思います。

 そして、御質問でありますが、今、地方公共団体の執行機関、教育委員会以外、公安委員会、人事委員会、それから労働委員会、こういうところにおいては、法律上そもそも議事録の作成、公表に関する規定は設けられておりません。

 その中で、教育委員会において今回新たに議事録の作成、公表の努力義務を規定することは、ほかの執行機関から比べると大きな前進であるというふうに思います。

 ただ、努力義務にとどめているというのは、今まで議事録の公開について約半数の市町村教育委員会が公開していないということで、全ての教育委員会に対して議事録の作成、公表を義務づけることは、前回も答弁をいたしましたし今もお話ありましたが、特に、事務局の人数が少ない市町村教育委員会において過大な事務負担になるのではないかという文部科学省の配慮であるわけであります。

 しかしながら、前回も申し上げましたけれども、住民への説明責任を果たし、その理解と協力のもとに教育行政を行うことは重要であるという観点から、この法律案が成立した場合におきましては、施行通知や説明会等の機会を利用して、可能な限り議事録を作成し、公表するよう、文部科学省としてはしっかり指導してまいりたいと思います。

椎木委員 だから、大臣、そこが弱腰なんですよ、残念ながら。

 私はきのう、大津のいじめ自殺の御遺族の方とお会いしました。言っていましたよ、事件があったときに学校も教育委員会も全く情報を開示してもらえなかったと。最後、なぜああいう実態がわかったか。これは警察の強制捜査ですよ。強制捜査が入ったから、ああいう事実が確認できたんです。

 親というのは、昼間働きながらも、常に、ふとした瞬間、きょうは子供は学校で何をやっているだろうと。勉強をしっかりやっているかじゃないんですよ。友達と仲よく生活しているかな、いじめに遭っていないかな、親というのはそういう感覚なんですよ。

 ですから、この議事録だって、私も実際、教育委員会を十三年やって、教育委員会の会議録もとっていましたよ。これは録音もとりますし、その録音を聞いて会議録を起こすというのは、時間にして一時間ですよ、私程度でも。何でこれが過負担なのか、開示できないのか。これがもう本当に、だって、市民に開かれた教育行政にしていくんでしょう、我々は、政府・与党と。

 そういう視点で、何でありのままの会議録を市民に、保護者に開示しよう、そういう努力をされないんですか。もう一度お聞きします。

下村国務大臣 言われていることはそのとおりでありまして、そういう大津の問題等、情報開示をできるだけ遺族の方々に対しても、ほかのところでもそうですが、そういう要求が出た場合に、それぞれの自治体は誠意を持って対応するというのは当然の話であります。それに対して開示するなということを言っているわけではなくて、あくまでも事務局の人員の問題等で過大な事務負担となるのではないかという配慮でありますが、しかし、先ほど申し上げましたように、可能な限り、これは議事録を作成、公表することを文部科学省としては指導していきたいということを申し上げているわけでございます。

 それから、これは政府案ですから、政府案ということについて、これは大臣としての主張は終始当然の主張でありまして、あとは、丁寧に申し上げれば、与野党の理事会等で協議をしていただけるように、国会の中で柔軟な対応については考えるべきことであると思いますが、政府としては、努力義務ではありますが、最大限公表するように指導していきたいということであります。

椎木委員 余りここで時間を使いたくないんですけれども、最大限と義務化するというのはどう違うんでしょうか、これは。

 前回、最後、前川局長がやはり答弁されたんですよね、努力義務にするということは、これは議事録の作成、公開が望ましいということでございますと。それでいいんですよ。ところが、大臣と同じなんですよ、私どもとしましては、極力公開するよう指導してまいりますと。だったら公開するように義務づけたらいいでしょうと私は言っているんですよ。どこが違うんですか、これは。(発言する者あり)そういうのは一部非開示にすればいいんですよ。

 極力指導していきます、公開していきますというのと、義務化しますというのと何が違うんですか、これは。もう一度お願いします。

下村国務大臣 法律として努力義務にとどめているということでありますが、先ほど申し上げましたように、これは公表するように指導するということを文部科学省としては各自治体に対して働きかけていきたいと言っているわけでございます。

 文言修正等があるのであれば、それは国会の中で議論していただきたいと思いますが、政府としては、この法案にのっとって議論をしていただきたいということでございます。

椎木委員 いや、まあ本当にがっかりですね。もう本当に、これは前回に引き続いて三度目です、私、こんなにがっかりしたのは。

 いいですか、もう一度言いますよ。保護者は、市民の皆様は、どういう教育行政が行われているかというものを知りたいわけですよ。大臣の今の答弁だと、今後、開示されないところについては指導していく。その指導の段階で大津のようなああいう悲惨な事件がまた起きて、保護者の皆様が、我が子がいじめられた、自殺した、情報を開示してくれ、開示できない。何のために我々は今法案を出してやっているんですか、これは。簡単じゃないですか。ありのままに公開するだけじゃないですか。くどいようですけれども、もう一度お願いします。

下村国務大臣 率直に申しまして、椎木委員、ここは立法府なんですよ。我々は行政府として法案を出しました。あとは立法府として判断をしていただければそれで結構です。

 ですから、与野党で合意されれば、そういう判断をされるということに対して我々は何ら抵抗するつもりは全くありません。

椎木委員 私は、文部行政のトップに立つ大臣の決意をお聞きしたいんですよ。

 そう簡単にやすやすとこの努力義務が義務化されるなんて思っていませんよ。ですけれども、大津のきのうの御遺族の方も、やはりここはどうしても譲れないところなんですよ。ですから、先に光は欲しいんですよ、光は。ただ、全く光も見えないじゃないですか。例えば、何年間この努力義務を課して、その状況を踏まえて見直すとか。光がないじゃないですか。(発言する者あり)私は義家先生と質問をやっているわけじゃないので、次に移らせていただきます。

 次の質問をさせていただきます。

 今回の政府案、先ほど民主党の笠先生も同じような質問だったと思うんですけれども、首長と教育委員会の協議が調わない場合、総合教育会議の内容ですけれども、私は、やはりこの規定そのものが欠如していると思うんです、はっきり申し上げまして。

 今回の改正における最重要課題は、これは御承知のとおりですけれども、権限と責任の所在を明確にすることなんですよ。首長と教育委員会の協議が調わなかった事態を想定して、我が党の共同代表である橋下徹代表の大阪市では、条例で、首長の権限を優先して、教育振興基本計画を議会に提出する提出権を認めてもらっているんです。これはやはり調わないことを想定しているんですよ。これは明らかに、最後は首長というふうにはっきり明確に、権限も責任も、市民に対してもはっきりするわけですよね。

 ところが、今回の政府案の第一条の三第一項で首長が大綱を定めると規定しているけれども、総合教育会議における調整がなされなかった場合は単独で首長が策定してよいのかということについては、どうもはっきりしない。

 さっきの笠先生への答弁でも、首長がやる気になればできますよ、ただし、執行するのは教育委員会、教育長ですよ、一方で、大綱を策定するということは当然協議が調ったという前提ですよとお話しですけれども、我々が聞いているのは、調わなかったときの責任者はどちらが上位なんですかということを聞いているんです。答弁をお願いします。

下村国務大臣 まず、努力義務ですけれども、先ほどから私は相当丁寧に答えているつもりでありますが、理事会協議というところまで大臣が言うなんということはあり得ないんですよ、これは。

 ですから、これはもう立法府の判断だということを先ほどから申し上げているわけで、何らこの法案を一文言たりとも修正はすべきでないということを一言も申し上げているわけではない、あとは皆さんの判断ですよということを申し上げているわけで、それはぜひ理解をしていただきたいと思います。否定しているわけでは全くない。

 しかし、仕組み上、途中で政府がまた法案を修正して出し直すということは、これはあり得ません。これは立法府で判断していただければいいということでありますから、あとは与野党協議で議論してくださいというところまで国会で答弁することは余りないわけでありまして、それはぜひ理解をしていただきたいと思うんですね。

 それから、そもそも総合教育会議における位置づけでありますけれども、これは主宰は首長なわけであります。ですから、総合教育会議における大綱については、これは首長が最終的には判断をするわけでありますが、しかし、大綱をつくるに当たっては、教育長と協議、調整を行うということであります。

 先ほど笠委員のときにも答弁のときに申し上げましたが、今回は、新教育長は首長が任命をするわけでありますから、当然首長の意向に沿った人が新教育長に任命されるであろうということでありますので、協議、調整する中で意見が対立して調整できないということは基本的にはあり得ないのではないかというふうに思いますが、しかし、具体的に何かあれば、具体事例で出して質問していただきたいということをそのときも申し上げました。

 それぞれ執行機関ですから、執行機関の判断の中で、執行機関であるそこの責任者が最終的には判断するということになりますが、しかし、トータル的には、この大綱については首長の判断の中でつくるということでありまして、それに対しては当然教育長も尊重されるであろうというふうに思いますが、しっかりと協議、調整をしていただきたいと思います。

椎木委員 私が言っているのは、協議が調わなかったときにどちらが上位なんですか、それしか聞いていないんですよ。

 首長が教育長を任命する、だから、首長の意向のとおり、教育長はその首長の意向を酌み取ってやると。そんな操り人形じゃないんですよ。首長は、教育行政を担うに総合的に判断して、大臣のふだんの答弁の言葉をかりますと、トータル的に考えてふさわしい人を任命するだけなんですよ。決して自分がやることに対してイエスマンの人を任命するわけではないんですよ。ですから、当然、首長と教育長の意見がぶつかり合って対立することだってあるんですよ。そのときの最終的な責任者はどっちなんですかということだけ聞いているんですよ。もう一度お願いします。

下村国務大臣 それは先ほど答弁を申し上げました。それぞれが、首長も執行機関、教育長も執行機関です。

 首長における執行機関というのは予算編成等における責任者であって、そして、教育長は実際の政治的中立性や安定性や継続性の中における人事権の問題とか教科書採択の問題と、今までも何回か答弁をしておりますが、その三つの教育的な中立性における分野における執行機関としての責任者ですから、その部分については教育長が責任を持つということであります。

椎木委員 結局、今までと全く変わっていないんですよ、それでは。今までの地教行法のたてつけと全く変わっていないんですよ、教育長部局と首長部局でそれぞれ分かれて。何ら変わっていないんですよ。

 そういう問題をある意味一元化するように政府案だってまとめてきたわけでしょう。そこで調わなかったときの最終責任者、責任の所在を明らかにしたいというのは、政府案も我々民主、維新案も一緒なわけですよ。そこで、我々は首長と、政府案は総合教育会議なんだと。では、その最終的な責任者は二人なんですか。一人なんでしょう。それがどっちなんですかと聞いているんです。

下村国務大臣 それは、先ほどから申し上げているように、それぞれの執行機関の権限においてそれぞれ違います。ですから、それぞれ最終的には一人です。一人です。(発言する者あり)先ほど申し上げているでしょう。首長は、予算編成においては最終決定者だ。教育長は、実際の教育行政における人事や教科書採択については最終決定者である。重複しているわけではありません。

椎木委員 では、本当にコンパクトに。大綱の責任者はどっちなんですか。お答えください。

下村国務大臣 何をもって最高ということはわかりませんが、地方自治体における責任者としては、首長だと思います。

椎木委員 だから、執行機関は教育委員会だ、教育長だと言いながら、最終的な責任者は首長だと。だったら、責任と権限を一元化して首長に委ねたらいいじゃないですか。

 これはさっき吉田先生からまた質問がありましたけれども、大津も、あのいじめ自殺があって、保護者の方、御遺族の方は教育委員会を訴えましたよ。訴えましたけれども、現行の国家賠償法、法のたてつけでは、結局、訴訟にならないんですよ。それで、何で私が訴えられなきゃいけないんですかということで、大津市長が訴えられるわけですよ。

 ですから、きのうの御遺族の、余り御遺族の話は正直したくないんですよね。本当に何度も何度も心が折れて、この新たな法律改正に本当に一つの希望を持っている、そういうものが物すごく伝わってきました。ただ、御遺族の方は言っていました、今のまま、どちらの責任者が上位なのか、最終責任者なのか曖昧なままであれば、大臣の答弁を私なりに整理すると、執行機関は教育委員会、教育長なんですから、教育行政での責任者は教育長であるということは、国家賠償法等で訴訟を起こされたときも教育長が本来責任をとるべきじゃないですか。教育委員会で起こったことが、何で教育委員会が訴えられないんですか。であれば、今回の地教行法の改正で、教育委員会や教育長が訴訟主体となるような改正を何でやらないんですか、今度は。

 要は、今までと変わらないでしょうということなんですよ、私が言いたいのは。だから、責任者はどちらなんですかとさっきから聞いているんですよ。

 だから、大臣の答弁だと、問題が起きたら首長で、問題が起きるまでは教育長なんですよ。これでは責任の所在が曖昧なまま何も変わっていないでしょうということなんですよ。私の質問の趣旨が理解していただけないですかね。

下村国務大臣 十分理解した上で答弁をしているわけであります。

 そもそも、法律のたてつけとして、例えば損害賠償請求等が起きたときの受け皿は、それは首長というのが法律のたてつけなんですね。同じように、国においては、実際は、例えば文部行政上そういう訴訟問題が起きたとしても、法律上のたてつけとしては、これは一括して全て法務大臣です。法務大臣がたてつけの責任者になりますが、実際の訴訟で、例えば、先ほどから出ていましたが、裁判でもし出るとしたら、それは首長が出るわけじゃなくて、それぞれの部局部局、つかさつかさの責任ある人たちが対応するわけであります。

 ですから、今回においても、法律上のたてつけとしては首長に対してありますけれども、しかし、実際は教育長が責任と権限を持って行うということでありまして、そういう裁判における訴訟のたてつけとそれから法的責任が、それが安易だとかあやふやだということでは全くないわけであります。

椎木委員 では、まとめさせてもらいます。大綱の調整がつかなかったときは、最終責任者は首長ということで、そういう認識でよろしいんでしょうか。確認させてください。

下村国務大臣 調整がつかなかったときに、予算編成については首長がそれは責任がある。先ほどから申し上げているように、教育委員会は執行機関ですから、その範囲内においては、それは教育長が責任があるということであります。

椎木委員 要するに、責任者がどちらなんですかというのが私の質問なんですよ。答弁は二人なんですよ。どっちが責任者かということだけ答えてください。

小渕委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

小渕委員長 速記を起こしてください。

 それでは、質疑者につきましては、きちんと整理をしていただいて、もう一度質問をお願いしたいと思います。椎木保君。

椎木委員 では、例えば、教育振興会議とか、英語教育を導入するとか、首長が、どうしてもやりたい、これを大綱に盛り込みたいと。教育長はだめだと。ただ、首長の権限で、責任で大綱に盛り込んだ。それが実行されない場合だって当然あるわけですね。ということは、教育委員会は執行機関ですから、教育委員会がだめだと言ったらだめなわけですね。そういうときはどっちが責任者になるんですか。これで答えてください。

下村国務大臣 先ほどから申し上げていますように、教育行政における具体的なことについては、これは教育長が責任者です。

 ただ、大綱の中に盛り込むということについては、当然これは総合教育会議の中で協議、調整をするわけですから、協議、調整する中で、これは今まで以上に、総合教育会議ができたことによって、首長と教育長とのコンセンサスを得る場がそこでできたわけですから、それは当然、調整、協議が調うだろうという前提なわけでありますが、その中で、大綱にしかし盛り込んだという場合については、それは教育長が責任です。

 ただ、そのとき、それでも納得できないという場合には、それは首長が教育長に対して、それは任命責任もあるわけですから、それはそれなりの、首長が判断することだと思います。(発言する者あり)

椎木委員 では、職務命令に従わなければ罷免なんですね、お答えください。

下村国務大臣 何をもって罷免するかどうかということについては、これは、義務違反の程度が罷免に相当する程度のものであるという必要がありますので、義務違反の様態やその程度等、諸般の状況を総合的に勘案して判断するということですから、一概に即罷免できるかどうかということについては、それは個別具体的な事例によると思います。

椎木委員 いや、もうますますわからなくなってきましたね。

 要するに、協議が調わなかったときにどっちが責任者ですかというのが、予算は首長、それ以外の事務執行は教育委員会と。その中で、さらにどちらが最終責任者なんですかと私はお尋ねしているんですけれども、どこまでいっても二つの部局の責任者なんですよね。

 さらに、では、大綱は首長がやろうと思えばできるんだ、ただし、それを執行できるかできないかについては権限は教育委員会なんだと。だったら罷免しろなんて自民党の席から随分出てきますけれども、罷免すらできる答弁になっていない。

 さっきの義務違反の話を具体的に申し上げますと、では、首長が大綱をやる、策定した、それを教育長がだめだと。これは罷免対象になるんですか。これは義務違反になるでしょう。職務命令違反でしょう、これは。答弁をお願いします。

下村国務大臣 それは先ほど申し上げていますように、義務違反の程度、罷免になるかどうかというのはその程度、中身によりますから、一概にそれだけで即罷免になるかどうかということは、それは言えないと思います。

椎木委員 罷免ができない、ということは、責任者は教育長だということじゃないですか。

 要するに、私が言っているのは、教育委員会の執行機関の教育長の責任者の話じゃないですよ、総合教育会議全体の中のトータル的な責任者がどっちなんですかと聞いているんですよ。

 主宰して、調わなかったときはそれぞれだという答弁と、やる気になればできるんだよ、ただ、執行するかしないかは教育委員会なんだよと。だから、答弁がどっちなのかわからないんですよ。もう一回お願いします。

下村国務大臣 さっきから答弁は明確に申し上げております。

 総合教育会議の主宰は首長です。協議は、基本的には調うことが前提で総合教育会議の場が前提としてあると思いますが、仮の場合、調わなかった場合という話を質問されているわけであります。その場合は、首長が権限を持つ部分と教育長が権限を持つ部分については、先ほど申し上げたとおりであります。

椎木委員 我々は、首長に責任と権限を一元化して、責任ある教育行政を担ってもらいたい。そういう中で、これまで自民党さんの方は、結局、どんな人が首長になるかわからない、そういうことも想定すると、法律的には、中立性だ、継続性だ、安定性だですよね。私もそういう視点なんですよ。調わなかったときの責任者をはっきりしてくれと言っているだけなんですよ。それぞれじゃなくて、トータル的な責任者なんですよ。トータル的な責任者が、どっちが上位で、どっちが最高責任者なんですかということなんですよ。よろしくお願いします。

下村国務大臣 今回の法律案のたてつけとして、総合的な責任者ということは置いてありません。総合教育会議における主宰は首長ですけれども、執行機関が二つですから、それぞれの執行機関の中で責任を持つということがこの法律のたてつけです。

椎木委員 私はきょう冒頭申し上げましたけれども、大津の御遺族の方ときのうもお会いして、本当に御遺族の声を代弁するつもりでいますよ。御遺族の今のお気持ち、当時の苦しかったときのお気持ち、それも確認して、私の考えと何一つずれがない、そういう前提で私はお聞きしているんですね。御遺族も、何を期待しているか、言いたいか。誰が責任者なんですか、そこなんですよ。総合教育会議の中で決めるんでしょう、だって。だから、その決める責任者が、それぞれじゃなくて、不測の事態が起きたときにどちらなんですか、これを明らかにしてほしいんです。

 ただ、今の大臣の答弁ですと、執行機関は今までと全く変わらないんですから、ということは、国家賠償法等々は、今までどおり教育委員会は訴えられないわけですよ。責任がとれない、損害賠償に応じられない人がどうやって教育行政を担うんですか。そういうのを改善する、改めるための今回の法案なんでしょう。だから、御遺族からしたらわからないんですよ、非常に。今までと何も変わっていないですというのが一言ですから。

 だから、変わったんだというところを明確にしてくださいよ、首長なんですと。よろしくお願いします。

下村国務大臣 これは立法府ですから、ですから、今委員が御指摘については、だから野党案をのめという話ということなんでしょうけれども、政府案は政府案、政府・与党案として出しているわけでありまして、政府・与党案については、先ほど申し上げたように、教育委員会は執行機関として残すということであります。ですから、教育長が責任を持つ部分については責任を持たせるということであります。

 しかし、それが大津のいじめ問題を解決する根本的な改善策にならないというふうには全く思いません。これは、今までのような形骸化、形式化した無責任な体制を改めるという意味での制度設計でありますから、同じような事件を二度と起こさないような制度設計にしているということであります。

 それから、損害賠償訴訟等々、これは先ほど申し上げましたように、国においても一括してのその受け皿は法務大臣、同じ仕組みですから、ですから、地方自治体においても受け皿としては首長になっていますけれども、実際の訴訟にもしなったとしたら、それぞれのつかさつかさが対応する、教育委員会が対応するということになるわけで、それを一本化する云々ということになると、学校教育法の改正だけの話ではなくて、我が国の法体系そのものを全部変えろという話になってくるわけであります。今回は教育委員会制度改革の話でありますから、法体系全部については、また別の場でぜひ議論していただきたいと思います。

椎木委員 まあ、これを最後にします。

 私が大津の御遺族の話をあえて出しているのは、あの事件のきっかけとなった隠蔽体質、責任の所在の不明確さ、これに特化して私は質問しているんですよ。法治国家全体の話をしているんじゃないですよ。それに特化して、隠蔽がなくなるように、会議録は開示するよう義務づけてくださいよ、何か不測の事態があったときに迅速に対応して、責任者を明らかに、首長なら首長ということを市民にわかりやすくしてくださいよ、そういう声を受けてきょうは御質問させてもらったんです。

 この答弁を聞いて御遺族の方がどのような思いかは私は想像もしたくありませんけれども、私は私の中で、冒頭申し上げましたけれども、本当に、大臣には敬意を表して、私もきょうは不退転の決意で質問させていただきました。ただ、私の質問は大津の御遺族の声ということだけは、忘れないでいただきたいと思います。

 次の質問者がいますので、私の方はこれで終わります。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、田沼隆志君。

田沼委員 続きまして、日本維新の会田沼隆志でございます。引き続き、大臣、お願いいたします。

 今の椎木委員の質問でも、やはり、はっきりわからない部分が非常に多くございました。私も尊敬申し上げる大臣ですけれども、この問題だけはやはりどうしても譲れない思いであります。この問題をやるために私も衆議院議員になりましたので、戦後の教育行政を抜本的に改革するこの法案が非常に有効なものであってほしいという切なる願いから、そしてまた、きのう私も大津の御遺族の方にお会いしましたけれども、もちろん、与党の皆さんも多くの御苦労の上で出されているのは存じておりますが、しかし、やはり、事実としては、御遺族は非常にがっかりされていました。

 要は、隠蔽体質が直せない、直せるか直せないか、ここがとにかく御遺族は今でも非常に心を痛めておられるわけです。

 大臣の先ほどの御答弁ですと、今回の政府・与党案で隠蔽体質は直せるというふうにお考えのようですけれども、そこが全く私たちとは見解が異なります。ですので、ぜひお聞きしたいと思います。

 早速続きの議論になりますけれども、先ほど大臣、総合教育会議で首長と教育長で協議が調わない場合に、首長から教育長に職務上の義務違反を問うことができると一言言われましたけれども、もちろん、そのときに、程度によるとかいろいろ言われておりましたけれども、ただ、これははっきりさせたいと思います。

 首長は教育長に対して、総合教育会議の中での協議が調わないときに、職務上の義務違反に問えるのかどうか。もう一度お答えをお願いします。

下村国務大臣 先ほど答弁したとおりでありますが、調整の整った大綱を全く無視した場合は、これは職務上の義務違反になることもあり得るというふうに思います。

 しかし、調整が整っていないことを大綱で書いた。これを、教育委員会の権限としては、地方教育行政法第二十一条に規定する教育に関する事務の管理、執行について、これは先ほどから何度も明確に答弁をしておりますが、教育長が最終責任者であります。この分野については、大綱に書いてあったとしても、協議が調っていなければ、それを守る必要はありません。

田沼委員 ちょっと確認をもう一度しますけれども、そもそも大綱の策定権限は首長にあるということだと思います。その策定された大綱に書いてあることは、違反したら当然義務違反に問えるということなんだと思いますけれども、今の大臣の御答弁ですとそれじゃないケースを言われているようなんですけれども、もう一度お答えいただけますか。

下村国務大臣 今の御質問の内容が誤解をされておりまして、総合教育会議の主宰者は首長です。首長が主宰して総合教育会議を開催する。メーンは首長と教育長です。その中にほかの教育委員が入る、あるいは有識者が入る、そういう総合教育会議も当然あり得るわけであります。

 その中で、主に首長と教育長との間で調整、協議を行う。調整、協議を行った内容を大綱で書けば、それは、教育長は、調整の整った大綱ですから、職務上全く無視した場合には義務違反になることもあり得るということでありますが、そもそも、教育長の権限の範囲内のことについて調整が整わなくて、にもかかわらず首長が大綱に書いても、それは、守るか守らないかについては、義務を教育長は負っていないということです。

田沼委員 では、大綱は策定されたら必ず守るものではないということですか。では、何のために大綱をつくるんでしょう。尊重義務はあるんですよね、これは。ちょっとそれでは今までの御答弁と矛盾するように聞こえます。

 大綱というのは協議、調整がついたものが書かれるというふうに、大臣、何度も言われていましたよね。だけれども、今のお話ですと、協議が調わないまま大綱に書いてしまうこともあり得るし、それを守らなくても教育長は義務違反に問われないということです。これは大事なところなので、はっきりお願いします。

下村国務大臣 先ほどから終始明確に答弁をしているつもりでありますが、改めて、もう一度整理して、わかるように申し上げたいと思います。

 大綱は首長が定めるものとされておりますが、教育委員会と十分に協議し、調整を尽くした上で策定されることが想定をされており、首長と教育委員会とが協議し、調整を経たものは尊重義務が生じることとされているため、教育委員会には、大綱に沿った教育行政運営が期待をされておる。しかし、逆に、調整が整わなかった事項については、尊重義務が生じるものではない。

 しかしながら、大綱は、法令や条例とは異なり、教育委員会に対して従うべき法的義務を課したものではないため、結果として、そのとおり事務が執行されなかったとしても、教育長や教育委員が職務上の義務違反に当たらず、罷免事由に当たるものではありません。

 しかし、そうであるからこそ、総合教育会議の中でよく調整、協議をして、そして、それに基づいて大綱を書く必要があるというふうに思います。

田沼委員 ちょっと答弁がやはり変わっているように、明確かもしれませんが、内容は変わっているように聞こえるんですね。

 大綱の策定において、首長と教育長の意見が調わない場合に、そのまま書くこともできる。かつ、それを教育長は、教育委員会と執行する中で、守らなくても義務違反には当たらないということですかね。そうすると、大綱は何なんだという話になりますよね。

 大綱は、もちろんそれはもめない方が、調った方がいいですね、うまくいく方がいいですが、そうならないことも可能性としては当然あるわけです。それが、そのときには守らなくていい。教育長、教育委員会は、一応尊重というか、今の御答弁だと尊重義務は違うというお話ですね。となると、これは余り変わらないんじゃないですか、現状と。

 責任と権限を明確化するということで、教育長と教育委員長を統合するというのはわかりますけれども、首長と教育委員会との権限も今までどおりだし、責任も、大綱を通してでも調わない場合だったら問われないわけですし、そうすると、何が変わるのかが大してわからない。大綱とは何だ。それは、願望として調うことはいいことですね、そうあってほしい。でも、そうじゃないケースが大津であったわけですよね。それでこの法案をやろうという発端になったんじゃなかったでしょうか。だから、御遺族もがっかりされているんじゃないかと思うんですけれども。

 というのは、ちょっと一つだけ確認としてもしたいのが、教育長は暴走しないんですかね。教育委員会は、特に教育長は暴走することがあるんじゃないでしょうか。特に野党案の反対派の方は首長が暴走するということをよく言われますけれども、それはちょっと失礼な話だと私も思います、民意で選ばれていますから。ただ、教育長は暴走しないという前提になっているように聞こえてしようがないですね。これはちょっと大臣に御見解をいただければ。

下村国務大臣 ちょっとごっちゃにされているんじゃないかと思います。

 まず、大津の事件は、これは大綱がないわけですね。そのときの話です。総合教育会議もないときですね。ですから、それぞればらばらだった。

 今回、こういう例えばいじめ問題等が、危機といいますか、緊急の事態が生じたときにおいては、首長が総合教育会議を主宰して危機対応をすることができるというところが今までと大きな違いだというふうに思うんですね。そのことによって、教育長と一緒になって危機対応ができるというところが、制度上仕組みとしてできたというところでございます。

 それから、教育長が暴走するのかしないのかという話がありましたが、それは制度の問題というよりはやはり人の問題だというふうに思うんですね。同じように、首長においても、それは民意で選ばれたとしても、結果的には、後で考えれば、暴走したという事例がやはりあったわけであります。

 ですから、首長が、あるいは教育長が同様に暴走するかしないかということについては、これは人の問題であって、制度上、それが暴走するしないということを仕組みとしてつくるということではありませんが、ただ、今回の与党案と野党案の違い、政府案と野党案の違いというのは、首長に一元的に権限を移譲することによって、結果的に暴走したときにそれを阻止できないのではないかという部分から、教育委員会を存続させて、そして教育委員会を執行機関として存続することによって政治的中立性、安定性、継続性を担保するという仕組みを残しているというところが、野党案との違いであるというふうに思います。

田沼委員 そのとおりと思います、違いはね。

 教育長の暴走ということを制度でなく人の問題と言われましたけれども、人の問題でも起き得るわけですよね。

 実際に、大津では、越市長は、全然情報がなかったのに裁判でも問われるし、対策も打ちたくても何をすればいいかわからなかったということになったわけですね。これは暴走じゃないですか、教育委員会の。情報を渡していないんですから。隠蔽ができちゃうわけです。隠蔽は暴走じゃないんですか。

 この隠蔽を何としてもなくす、そのために今回この法案があると私は理解していますが、隠蔽、つまり暴走している教育長をとめることが制度上ない。大臣の御答弁ですと、制度ではなく人の問題だと。でも、そういう人が出たらどうするんですか。対応策がやはり見当たらないとしか思えないんですけれども、御意見をいただければと思います。

下村国務大臣 それは、今回の改正案で相当制度設計をしているというふうに思います。

 まず一つは、今までと違うのは、先ほどから議論になっています総合教育会議を設けたということですね。これは首長が主宰するわけです。ですから、もし自分の自治体においてそういういじめ問題等が起きて、それが隠蔽とか密閉とか暴走だとかいうような判断がもしあるとしたら、首長がすぐ総合教育会議を開いて、首長と協議、調整を行って対処することができるという点であります。

 それから、教育委員会の制度そのものも、今まで、教育委員会の中において互選で教育長を選び、それから教育委員長を選ぶという形をとっていたわけでありますけれども、これを直接、首長が教育長を任命する。なおかつ、教育委員長と教育長を一本化して、権限を明確化するということですね。

 一方、今御指摘のように、もし教育長が暴走するということであれば、総合教育会議だけでなく、教育委員会の中において緊急の委員会を、三分の一以上の要求によって教育長に対して求めて開くこともできるということでありまして、その辺の、情報開示を含めた制度設計をすることによって、今までのような隠蔽、密室体制、暴走、暴走と言うことが適切かどうかわかりませんが、そういうことが抑止できる、そういう制度設計に改善されているというふうに考えております。

田沼委員 いや、私はそう思いませんね。

 暴走のときにすぐまず総合教育会議を開けるという御答弁でしたけれども、先ほどの議論であったように、協議が調わない場合がある。協議が調わなかった場合、首長に権限のないことは、教育長が責任と権限を持っているという御答弁でしたから、是正はできません。

 それから、教育委員会を開けるという話でしたけれども、教育委員さんはふだんは非常勤であって、その形骸化を正すために今回も法改正があるわけですけれども、また今回、教育長と教育委員さんが集ったところで、教育長の暴走をとめられるだけの情報を教育委員さんが持っているとは思えません。

 これは、だから、二点大臣は今御答弁いただきましたけれども、制度上はそうなっています、でも、その有効性に対して極めて疑義があります。それで本当に教育長の暴走を防げるだけの制度的に担保になっているか。

 やはり罷免規定ですよ。罷免できるかどうか。これが制度上ないと絶対、絶対というのは個人の見解ですけれども、私は絶対に変わらないと思う。

 これは、個人の見解、あるいは教育長、教育委員会の暴走に対する危機感がどれだけ御認識があるかの違いかもしれませんが、私は遺族の声を代弁して言っているんです。御遺族は、この政府・与党案では教育長の暴走はとめられない、はっきり言っているんです、そういうふうに。きのう確認させていただきました。これが通ってしまうというのは何としても認められないわけです。

 せめてここだけでも、先ほど椎木議員のときに、与野党協議を、理事間協議をしてくれというふうに大臣も言われましたけれども、だから大臣よりも与党の皆さんに言うべきなのかもしれませんが、罷免規定をきちんとさせるということはどうしても必要だと思うんです。

 先ほど野党案をのんでほしいということかというふうに大臣言われましたけれども、我々、野党案全部すっぽりということは難しいかもしれません。でも、この罷免規定だけはどうしても入れないと、暴走を防げませんよ。今の大臣の二つの、総合教育会議、教育委員会を開ける、これで防げるとはとても思えないです。

 なので、改めて、まず罷免規定をもう一度確認したいんですけれども、与党の中でのいろいろな議論もあったとこの間の委員会の質問の中でも大臣の御答弁ありましたけれども、行政委員会として同じ扱いでいいのかという御議論ありましたけれども、大臣として、この教育長の罷免規定、与党の中でいろいろな議論があったというふうに事実をお述べいただきましたけれども、大臣御自身の御見解はどうなのか、お尋ねしたいと思います。

下村国務大臣 まず、大津の教育長の、その定義が暴走と言えるのかどうかということについては、これはいろいろな議論があると思います。その密閉体質とか、無責任体制とか、そういう部分についてはこれは言えると思うんですね。制度設計上の問題。ですからこそ、今回、教育委員会制度改革をするわけでありまして、教育長の暴走云々ということだけの問題と言い切れるのか、そもそも暴走と言えるのかどうかということについては、これは議論があるのではないかと思います。

 それから、教育長に対する罷免規定を設けるかどうかということでありますが、政府案としては、これは文部科学大臣の立場から国会に、今まで与党とも協議した中で、現段階におけるベストな法案を出しているというふうに考えて国会審議をお願いしているところでございますので、あとは与野党で協議をしていただきたいと思います。

田沼委員 協議していただきたいということですけれども、ぜひ、これは、そういう意味では与党の皆さんに対してかもしれませんが、とにかく御遺族の声を私たちは何としても無駄にしたくないというそれだけなんですね。そう考えると、この暴走をとめられない仕組みになってしまっているところを何とか直したいというその思いできょうは御質問させていただいていますので、ぜひ心ある与党の皆さんと協議させていただきたいなと思います。

 それで、もう一度その点なんですけれども、行政委員会として同じ位置づけになっていますけれども、ほかの、例えば農業委員会とか選挙管理委員会とも明らかに違うわけですし、今回、教育委員長と教育長が統合されて非常に強大な権限を教育長は持つわけですけれども、構造も変わるわけですけれども、それで同じような、罷免がなかなかされにくい規定のままで本当にいいんでしょうか。強大化するわけです。

 実態としても、例えば私は千葉市ですけれども、何千人も職員がいるんですよ、千葉市教育委員会は。首長部局と同じぐらいの人数がいるんですね。大変な力なんですけれども、これは、大体の自治体も教育委員会は相当大きいと思いますが、それがほかの行政委員会と同じという扱いがそもそも無理があると感じますし、今回、そのことに関して与党の中でも議論があったとお聞きしておりますけれども、これは、権限も教育長は強大化するわけですから、それなりの厳しい罷免規定を設ける必要が、やはりどうしてもたてつけとして必要と考えます。

 そのことに関して御意見をいただければと思います。

下村国務大臣 地方公共団体に置かれているさまざまな行政委員会の委員の罷免要件については、首長から独立した委員会を設置した趣旨に鑑み、身分保障という観点から、要件が限定をされております。このため、教育委員会の構成員となった新教育長の罷免要件についても、現行の教育委員やほかの行政委員会と同様に、心身の故障の場合や職務上の義務違反その他教育長たるにふさわしくない非行がある場合に限定するものであります。

 また、今回の改正案では、教育長の権限が御指摘のように強くなるということから、首長や議会のチェック機能を強化するという観点から、教育長の任期を首長よりも一年短い三年としたところでもあります。

田沼委員 時間ですので終わりにしますけれども、私も議員でしたので、市議会の例えば同意人事などでのチェックをすると総理も答弁されていましたけれども、それで本当にチェックが十分できるとは思えません。それから、先ほどの、暴走を防ぐための制度的な担保として総合教育会議、教育委員会と言われましたけれども、それもちょっと実態と余りに離れていると思います。

 全くもって残念ながら賛同できないんですが、何とか引き続き、機会を改めて、教育長の罷免規定の問題、それから前半に話しました、首長と教育長、特に大綱、総合教育会議の中でどちらが責任者なんだという問題、また改めて議論させていただきたいと思います。とにかく、御遺族の声をぜひお受けとめいただきたいなと思います。

 以上で終わりにします。ありがとうございます。

小渕委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十二分開議

小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いいたします。

 まず最初、我が党の主張でございます教育委員会制度の選択制について、大臣の御所見も含めて質問をさせていただきたいと思います。

 先日の参考人質疑でも、元志木市長の穂坂参考人、いろいろと我が党の考えに共鳴をしていただける、現役といいますか、やはり元首長さんでもいらっしゃるのだなということで改めて確認をさせていただいたと自負しております。

 教育委員会の廃止論、選択論というのは、もともとは構造特区というものの流れの中で、現実的にやれるか、やれないかというようなことが制度的に検討され始めてきたわけでございます。ただ、政治的中立性が保てないという理由でこれは認められなかったというふうに認識しております。

 現行の野党案、政府案に関しましても、首長の判断が現行制度よりも尊重されるということでは同じだというふうに思います。どの程度強く反映されるのか、どのように反映されるのが望ましいのかということは全くの未知数でありまして、さらには、いじめ等の問題で責任の所在を明確化させる場合、実務責任と訴訟対象の乖離というものも予想されるわけでございます。必ずしも一対一対応ができていないという状況の中で、そうした状況が望ましいのか、それとも一対一対応が望ましいのか等々の議論も、やはり制度的試行錯誤の中から生まれ出るべきものだというふうに我々は考えております。

 とすれば、ある一定の類型があって、その中から望ましいと思われる制度を取捨選択するという発想が、その余地がまだ残されてしかるべきであるというふうに思うわけでございます。何タイプかの首長権限強化の教育制度、つまり、サブタイプを用意して、地域特性を加味して最適化していくプロセス、これがやはり六十年に一度の大改革にはまだ必要なのではないかというふうに思います。この適正化プロセスを前提に、柔軟な制度設計が可能となる余地を残すべく、議論と法のたてつけが今求められているというふうに確信をしております。

 具体的な声としても、先日の宮城の地方公聴会で仙台市長の奥山恵美子参考人からございました。地域の実情に合わせた運用が必要である、特に仙台市のような政令指定都市では、教職員の人事権を有しているし、事務局の体制も充実しておる、しかし、小規模な市町村では総合教育会議の構成人員の確保にも厳しいのが現実だという声も上がっております。

 また、先ほども申しました元志木市長の穂坂参考人にも我が党の考えを求めたところ、幾つかの案を提示して、各自治体に手を挙げさせるという方法も現実的である、いいと思うという賛同もいただいております。首長部局として教育部局を設けて、さらには、政治的中立性を保つ工夫をすることで十分対応可能であるという御意見でありました。

 今回の政府案は、約千八百に及ぶ地方自治体の教育委員会制度を変えるものですが、少なくとも、一定期間後には教育委員会の必置規制を外し、地方自治体が地域の実情に合わせた制度を選択できる、そのようにするのが合理的であり、地方分権の趣旨にも合うというふうに考えております。教育委員会を残す、残さないの議論が本質ではなくて、教育行政の効率化、透明性の確保及び責任の所在の明確化に合わせた合理的な制度設計にするべきでございます。

 私どもとしては、現政府案に、数年の後、地域の実情に即した柔軟な教育制度設計が加味され得る余地が残れば、賛否においても前向きに検討していきたいというふうに考えております。

 そこでまずお伺いしますが、教育委員会の任意設置、つまり、廃止も含めた選択制、平成十五年から実施された構造改革特区制度において、志木市、千代田区から申請がされておるわけでございます。しかし、認められることはなかった。その認められなかった理由を説明していただきたいと思います。

前川政府参考人 御指摘のとおり、過去に千代田区や志木市から、構造改革特区の提案といたしまして、教育委員会の廃止や設置の弾力化を提案いただいたという経緯がございますが、これらの提案につきましては、特区として対応不可との判断を行ったところでございます。

 その理由といたしましては、学校教育におきましては、政治的中立性、継続性、安定性の確保が重要であるところ、代替措置として提案されている審議会は諮問機関にすぎず、執行権限がないため、教育行政の中立性等を確保することが困難であるというものでございまして、特区においても変わるところがないということでございました。

柏倉委員 次に、今政府から答弁いただきました中立性、安定性、継続性。安定性、継続性というものに関しては、学習指導要領もあります。継続性に関しては、ある程度、大きな問題もなければ担保できるんじゃないかというふうに思います。

 やはり問題なのが中立性だというふうに思っておるんですけれども、この政治的中立性という問題は何かということに関してまた改めてお伺いしたいと思うんですが、私は、これは宗教的、政治的な教化、インドクトリネーションというものの禁止だというふうに認識しております。これを担保するのに必ずしも任命制の教育委員が必要なのかというところ、少し疑問もあります。

 言いかえれば、教育委員の任命という行政組織の内部構造がもたらす間接的なバランス効果というものに期待するよりも、保護者の目によるチェック機構や、穂坂参考人がおっしゃる地方の工夫、例えば中央教育審議会的なるもの、こういったレーマンコントロールをきかせ得る工夫も、つくろうと思えばつくれる、担保できるのではないかというふうに思います。逆に、教育委員、これがあっても、やはり地域地域で政治的中立性の問題は常に出ておるわけです。

 そこでお伺いしたいんですが、政治的中立性、この定義と、この中立性を担保する決定的な要因は何であるのか。これは政府の考えを聞かせていただきたいと思います。

前川政府参考人 教育の政治的中立性とは、多数の者に対して強い影響力を持ち得る教育に、一党一派に偏した政治的主義主張が持ち込まれてはならないということを意味するものでございます。

 現行制度におきましては、公立の教育機関を管理する執行機関を、首長からの独立した地位、権限を有する行政委員会としているわけでございますが、これに加えまして、同一政党所属委員が委員会の二分の一以上を構成しないようにすること、服務等の規定の中で政治的行為が制限されていること、罷免要件を限定し身分保障を講じていること、教育委員が毎年一、二名ずつ交代し、委員が一斉に交代しない仕組みとしていることなどによりまして、教育の政治的中立性、継続性、安定性の確保をしているところでございます。

柏倉委員 今のその定義で、教育委員会が絶対に要るというのは、一年に一人教育委員がかわっていくという、そういったシステム上の保守管理のところでレーマンコントロールをよりきかせられるということでしたけれども、それは必ずしも教育委員会があってもなくても、例えば穂坂さんがこの間おっしゃっていた地方審議会的なるもの、それをつくっても十分できるんだと私は思うんです。この政治的中立性に必ずしも教育委員会が必要であるというふうな、私としては思いません。

 ただ、政治的中立性というのはやはりしっかり担保していかなきゃいけない。そのための工夫というのは、たとえ教育委員会がなくなっても、首長が首長部局として独立させても、しっかりと担保できるだけの工夫を地域地域でされ得ると私は思うんです。そのされ得る可能性を考えて、やはり構造特区でも、そういった教育委員会の規制の必置規定、これを撤廃してもいいというような構造特区の試みをぜひやっていただきたいと思うんです。

 先般、四月十六日の審議で大臣から御答弁をいただいたときに、選択制の可能性についても御答弁をいただいております。責任ある地方教育行政を推進する立場から全国一律の制度改革が望ましいとおっしゃられる一方で、構造改革特区での選択制実施、これも否定はされておられなかったと思います。

 私も同意見でして、その構造改革特区から約十年経過し、現在は国家戦略特区制度が実施されております。大胆な地方分権は急には進まなくても、特区という形での部分的な規制緩和は定着しつつあるのではないかなというふうに思うわけです。とすれば、ここはやはり、この必置規制を撤廃してもいいよというような特区を、ぜひこれはどこかでやっていただきたいというふうに思うわけです。

 前回、いろいろな構造改革特区、そこの担当大臣もいらっしゃって、いろいろな議論が闘わされたということも存じております。やはりそこには、本質的に教育議論ではなくて、セクショナリズムというものもなかったのかどうか。

 とすれば、私は下村大臣に、今は文部科学大臣というお立場ですが、省庁横断的なこれはもう教育大臣としてやはり先頭に立っていただいて、しっかりとこの構造改革特区で、教育委員会必置規制を外すことも含む教育特区構想を今後ぜひ進めていただきたいとも思うわけです。下村大臣であればやっていただけるというふうに期待もしておるわけでございます。省庁横断的に、しっかりと教育というものに哲学を持ったトップが引っ張っていけば、内閣府との兼ね合い、ほかの省庁との兼ね合い、これもやはり取っ払うことができると思うんです。

 下村大臣、そういう突破力もお持ちだと思いますので、ぜひ、この構造改革特区を含む今後の意気込み、今の御見解を伺わせていただければと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、この構造改革特区というのは私はすばらしい試みだと思っておりまして、これを突破口に、いい内容については全国についてもそれを広げるという意味で、まずは例外的に、申請のあるそこの自治体、その場所だけ、構造改革特区についての例外規定を設けるということによって教育改革を進めていくという発想は、現実的に進めていく一歩一歩の着実な処方箋になってくるというふうに思います。そのために私自身も「学校を変える!「教育特区」」という本を著したことがあるぐらいでございまして、これはぜひ進めていくべきだというふうに思います。

 ただ、御指摘の教育委員会選択制を特区を活用してということになりますと、これは、どの地域においても責任ある地方教育行政を構築するという観点と、それから、先ほど局長から答弁がありました、教育における政治的な中立性、継続性、安定性をではどこで担保するのかということについて受け皿がないと、教育委員会を廃止したとき、そういうリスクに対してどう対応するかというやはり問題があるわけでございまして、そういうことから、受け皿がないと、教育委員会を選択制によって特区によってでも廃止するというのはそのリスクが伴うという部分から、なかなか簡単にこれはできる話では一方ではないのではないかというふうに思います。

 ただ、かつてイギリスに視察に行ったときに、教育委員会そのものを例えばNPOとか第三者に全部委託してしまって、そこがその地方の教育行政について責任を持って行うというような取り組みをしているという自治体がイギリスにもありました。

 ですから、教育委員会を廃止するということではなくて、その工夫の仕方というのはこれからいろいろ考えられるのではないかというふうには思いますが、基本的に今回の改正案も、そういう趣旨にのっとって、選択制とせず、全ての地方公共団体において責任ある地方教育行政の仕組みをつくるというところから改正案を出させていただいているところでもございます。

柏倉委員 ありがとうございます。

 今、大臣おっしゃられました、教育委員会を特区だからといってすぐなくしてしまっても、今までの果たしてきた教育委員会の役割がいきなりなくなって、では、そこでマイナスの部分が大きくなったらどうするんだというお話だったと思います。至極当然な発想だと思います。

 そこのところをやはり徐々に徐々に段階的にも、やり方というのはいろいろ知恵を絞れば出てくるんだと思います。だから、教育委員会をだんだん小さくしていくというやり方で、最終的にはほとんどなくなる、そういった漸減的なやり方も一つあるのではないかなというふうにも思いました。ただ、せいては事をし損じるという発想も、私十分理解をしております。

 ただ最後に、我が党としては、そういった中で試験的にでもやはりそういった教育委員会の必置規制をどこかで縮小して、地域の独自性を持ってどれだけ運営できるのか、当然、子供の教育レベル、そしてさまざまな諸問題に対する対応、これは担保しなければいけないんですが、そこのところを担保できるという前提で、その必置規制の見直しの部分、我が党としてはぜひ要望させていただきたい。それがもしも今回の政府案に反映していただけるのであれば、これは賛成も我々考えているということだけ最後に言わせていただきたいと思います。

 それでは、次に質問させていただきます。

 次は、全国学力・学習状況調査について、これも、教育委員会、首長というもののシステムが変わっていけば、参加する、しない、そして成績公表に関しても大きくその姿勢が変わっていく問題だと思いますので、質問させていただきます。

 四月二十二日に、小学校六年生、中学校三年生を対象とした、文科省の学力・学習状況調査が行われました。二百二十四万人が参加したということです。

 これまで、検査結果は発表しない、市町村教育委員会による学校別成績の公表をしないということだったんですが、これは八月に結果が出るらしいんですが、今回から、学校別成績について、平均正答率を一覧表にすることや順位づけは認めないけれども、結果を分析して改善策を示す場合は公表できる、そして都道府県教育委員会も市町村教育委員会も、同意があれば市町村別や学校別の成績も公表できるといった形で、条件つきで認めているということです。

 これは、関係者の間ではさまざまな議論があります。学校の序列化や過度な競争を引き起こすとの根強い批判もあるわけですけれども、今回、条件つきで成績公表を認めた理由は何でしょうか。

前川政府参考人 全国学力・学習状況調査は、学校教育の改善のために国で実施しているわけでございますが、これは、教職員などの学校関係者のみならず、保護者や地域住民の高い関心事項でございます。したがいまして、保護者や地域住民に対してきちんとした説明責任を果たすということは重要であると考えているところでございます。

 一方、序列化や過度な競争による弊害が生じないようにするなど、教育上の効果や影響等に十分配慮することも重要であると考えております。

 昨年度までの実施要領では、この弊害の防止という点を重視いたしまして、市町村は学校名を明らかにした公表は行わない、また、都道府県は市町村名、学校名を明らかにした公表を行わないという前提で実施していたわけでございますが、今年度の実施要領におきましては、この点を見直しまして、説明責任についての観点も考慮した上で、調査結果の公表の取り扱いについて見直しを行ったわけでございます。

 具体的には、市町村教育委員会は、それぞれの判断で学校の結果の公表を行うことができる、また、都道府県教育委員会は、市町村教育委員会の同意を得た上で、市町村や学校の結果の公表を行うことができるとしたものでございます。

 これは、学校の設置管理者であり、かつ、調査への参加を決定する主体である市町村教育委員会、また、その市町村教育委員会は学校の結果に最終的な責任と域内の教育の状況に関する説明責任も有している、そういうことから、この市町村教育委員会に公表、不公表の責任を負っていただく、結果の公表につきましては、その市町村教育委員会が基本的に判断することが適当であると考えたものでございます。

 また、序列化や過度な競争を招くことなく、結果の公表が教育の施策や教育指導の改善につながるものとなるように、御指摘がありましたように、公表に当たりましての配慮事項といたしまして、分析結果や改善方策を公表することなどを定めたわけでございます。

 文部科学省といたしましては、各教育委員会におきまして、教育上の効果や影響等を踏まえ、地域の実情に応じて、適切に説明責任を果たす方法を判断していただきたいと考えているところでございます。

柏倉委員 ありがとうございます。

 今、お話しありました。地域で考えてもらうということですけれども、今までは教育委員会が判断をしていたし、今回も、国は市町村、都道府県の教育委員会の判断に委ねるということでした。

 一方で、先般の参考人質疑の際に中嶋参考人がいらっしゃいまして、前の犬山市教育委員だった方です。中嶋参考人が教育委員だったときは、全国学力調査への不参加を教育委員会と住民との話し合いで決めた。ところが、新しい首長になったと同時に、それまでの不参加、いわゆる教育委員会と住民とのコンセンサスがひっくり返ってしまった。全国学力調査への参加が独断で決められた。これは政治の教育への介入だという発言もありました。

 この是非はともかく、首長の権限が強化されると、学力調査に係る諸問題、参加する、しない、成績を公表する、しない、こういった判断が首長の権限、責任のもとでさらにダイナミックに裁可される可能性があると思われます。この件に関しての下村大臣の御見解を伺いたいと思います。

下村国務大臣 全国学力・学習状況調査の結果の公表については、予算等の首長の権限に係らない事項でありますので、総合教育会議における調整の対象とはなりませんが、しかし、自由な意見交換をする協議の対象とすることは、これは当然あり得る話だというふうに思います。

 しかし、あくまでも最終的な判断権限は教育委員会に留保されているものでありまして、結果の公表、不公表について、これは首長に権限を与えるものではありませんので、先ほどの答弁のように、新しい教育委員会制度改革案が通った後であっても、これは教育委員会が判断するというものでございます。

 ただ、もちろん首長が独断で判断するということはあり得ない話でありますが、首長が主宰する総合教育会議の中でテーマとして協議をして、その結果、教育委員会、教育長も同意すれば、それは首長の判断がそのときそのときに反映されるということは当然あり得る話だと思います。

柏倉委員 ありがとうございます。

 プロセスとしてちゃんと踏んでおれば、判断が変わるのも当然のことだと思います、人がかわれば判断が変わりますので。プロセスとしてはしっかりこの犬山教育委員会のときも踏んでおるようですので、私もそう大きな問題はないかと思うんですが、さらに独断専行色が強まるような首長権限の集中というのも、やはりこの学力調査に関しては、私、個人的にも、今はもう全入時代になってきていますので成績によるコンペティションという競争も大事だとは思うんですけれども、余りハレーションが起きないように配慮するというのも、一つ時代に即したやり方なのかなというふうにも思います。今の大臣の答弁を聞いて安心をいたしました。

 次、私の地元の栃木県のことについてちょっとお話しさせていただきたいんです。

 二十二日の全国学力テストの当日、児童生徒の学力向上を目的に、県版の学力テスト、栃木県初の、全員参加方式による二〇一四年のとちぎっ子学習状況調査を行いました。県内全域の小中学校、五万三千人が参加しました。県では、これは六月末に結果を児童生徒や各学校に伝えるということでございます。さらに、県教育委員会は、テストの結果を受けて、各学校を訪問して助言する学習向上アドバイザーを十人も配置する、三年かけて県内全学校を回る計画も立てておるということです。

 栃木県の教育委員会担当者に確認したところ、県では、各学校の成績の公表はしないということでありました。理由としては、やはり、田舎に行きますと五人しかいない学校というのも現実にはありますので、そういったところもバランスを考えて、難しいという判断でした。

 成績公表の判断は、こういったいろいろな状況がございます。県に任せるにしても、大切なのは、これはやはり、学力テストをどうやって本当に生かしていくのかということだと思うんです。もちろん子供のために生かすわけです。

 最近の学力テストは、私が子供のころと違って、判断力、表現力、応用力、こういったものが随分重視をされて、変わってきたなというふうな素直な感想です。ただ、これで得られる、客観的に評価し得る能力は何なのかなというのもふと疑問に思うわけです。果たして、ここが間違ったからあなたはこういう努力をした方がいいよ、こういう能力に少し磨きをかけた方がいいよというような、テストをやるんですから、これはやはり直接的なその還元、これがなされていないんじゃないかな、現状も。昔もそうでした。現状もされていないなと。しかし、それはしなきゃいけないと思うんです。例えば、新聞を読めだけでもいいと思うんです。九九を覚えろだけでもいいと思います。

 この学力試験から還元されるもの、子供や親にわかりやすく伝えるこの取り組み、文科省は果たしてしているのか。これをやはりしっかり徹底をすること、していないのであれば、どうやってやっていくのか、その政府の見解を尋ねたいと思います。

前川政府参考人 全国学力・学習状況調査につきましては、御指摘のとおり、その結果を学校の教育指導の改善や学力の向上につなげることが肝要でございます。

 この結果につきましては、国や各教育委員会、学校の教育施策や教育指導の改善に現に活用されているところではございますけれども、文部科学省におきましては、児童生徒一人一人に個人票を提供しているところでございます。その中で、保護者や児童生徒がわかりやすいように、それぞれの問題について出題内容の特徴をわかりやすく示すとともに、みずからの結果と全国の状況を比較できるようにしております。

 また、毎年度、集計結果とあわせまして、児童生徒の学習習慣や生活習慣と学力との関係について分析した資料を取りまとめ、成果を広く紹介するため、ホームページに掲載するとともに、マスコミを通じて広く情報提供されるようにしております。

 さらに、教育委員会に対しましては、本調査の結果を活用して成果や課題を分析し、それらを踏まえた改善方策について積極的に保護者等へ情報提供するよう促しているところでございます。

 各教育委員会におきましては、本調査の結果の分析を行いまして、今後の改善方策をリーフレット等に取りまとめて公表する取り組みや、あるいは、保護者の参加も得て、学力向上についてともに考える場の設定などの取り組みも行われているところでございます。また、各学校を通じて、家庭における学習習慣や生活習慣の確立について働きかける取り組みなども行われております。

 文部科学省としては、引き続き、この調査の成果が広く国民に理解されるように努めてまいりたいと考えております。

柏倉委員 ありがとうございます。決してやりっ放しじゃないというのはよく存じております。

 ただ、私が今申し上げたのは、わかりやすく直截的な表現で伝える、そうした方がやはり子供さんも努力しやすいと思うんです。そういった努力をやはり喚起するために、文科省さんも、ただデータをどんとグラフか何かで渡すということだけではなくて、もう少しわかりやすい、子供さんをプッシュアップするようなそういう結果の還元の仕方、これを考えてほしいと思います。

 時間が来ましたのでこれで終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 けさになって与党の委員の皆様から、議論が大詰めですとか議論が出尽くしたというような御発言も出ておりますが、私はまだ議論は尽くされていないと思っております。法案の提出に当たって与党内でかなりの時間議論があったということは承知をしておりますが、ぜひこの委員会、与野党でも慎重な議論を尽くすことを願って、きょうも質問させていただきます。

 きょうは、私もこれまで伺ってきた政府案における重要な新教育長のことについて、きょう提出をさせていただいている資料、日本教育新聞が行った市区町村の教育長に対するアンケート、現場の教育長の声ということで取り上げさせていただきたいと思っております。

 幾つか報道等でこれまで首長に対するこの法案に対するアンケートなども見てまいりましたが、ほかのアンケートを見ると、都道府県の首長ですとか政令指定市の首長ですとか、いささかアンケートとしてどうなのかなというところもありまして、きょうは市区町村から抽出してアンケートをしているというこの日本教育新聞のものを資料として使わせていただこう、そのように思っております。

 まず、この資料の最初のページになるのですが、一番大きな見出しで、「本社調査 半数「有効でない」」という見出しが出ておりまして、中を見ますと、今回の政府案の法改正が有効な法改正かという問いに対して、「有効とは言えない」が一五・六%、そして、「どちらかといえば有効とは言えない」が三五・七%、これを足すと約半数に上っていることをもって半数が有効でないというような報道になっておるんです。

 まず、有効でない、やや有効でないということを考えている教育長が半数に上っていることについて、大臣、どのようにお考えか。また、これはアンケートですので数としての集計だと思うんですが、具体的に何かそういう現場の意見が上がってきているというものを御存じであればお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 日本教育新聞にも記事として出ておりますが、現行の制度上の問題は感じていないというふうに答えている教育長も六割おられるわけですね。ですから、少なくとも六割ぐらいの教育委員会は、いろいろな課題があったとしても今の体制で十分対応できている、そういう認識なんだろうというふうに教育長は判断しているんじゃないかと思うんです。その中でのアンケートですから、なぜ改革をする必要が、改正をする必要があるのかというそもそも論で疑問に思っている方も相当おられるんじゃないかというふうに思うんです。

 それは、いい面でいえば、今の教育委員会制度できちっと処理できているんだから、あえて国会で教育委員会抜本改革案を出す必要がないのではないかと考えている教育長が多いという判断もできるわけですし、一方で、先日私のところに来られた兵庫教育大学の調査によると、今の教育長の基本的なガバナンスのあり方として、現状維持、調整型の教育長が半数なんですね。

 ですから、今の教育制度が問題があって、あるいは教育現場が問題があって、それをどう改革するかということについて問題意識を持っているかというよりは、いかに調整し、維持していくかということで発想を持っている教育長も半分はいるということでもあります。

 だからこそ、今の教育委員会というのは国民意識とずれている部分がやはりあるのではないかというふうに、私は教育長は謙虚に受けとめていただきたいというふうに思うわけでございます。そういう中でのアンケートということであるということを私は受けとめております。

 一方、今回の改正案について、教育長関係団体や首長関係団体に対して、さまざまな機会を捉えて担当局より説明をしているところでありますが、逆に、特段反対という声は聞いておりません。おおむね肯定的に受けとめているというふうに、そういうふうに認識しているところであります。

井出委員 今大臣の方から、現状の教育長が現状維持、調整型の発想の方が約半数いらっしゃる、謙虚に受けとめていただきたいというお話があったんですが、私もそこがすごく問題だなと思うんです。これまでの議論の中でも、例えば都道府県教育長を取り上げましたけれども、みんな役人じゃないか、それで、新しい政府案で機能するのか、教育委員長がいなくなる中で、教育長というのはもっと首長に対して物を言える人間が必要でないかなということをずっと問題提起してきておるんですが、今大臣おっしゃったように、現状維持、調整型の発想の方が多い。

 政府案を実行していくときに、私は、それでは政府案が当初の目的どおりうまく機能しないんじゃないか、そういう不安も持っております。

 また、政府案が実行される段となれば、任期途中の教育長はそのまま任命が認められているわけですよね。ですから、今大臣は謙虚に受けとめてほしいとおっしゃいましたけれども、ここの問題というのは、今の教育長さんの意識というのは、これから政府案をもし実行していく段になれば非常に大きい問題ではないかなと思っております。

 もう一つ、このアンケートで私が気になったところを伺いたいのですが、大臣が先におっしゃいましたが、特段今の制度上の問題を感じていない、その方が六割いらっしゃる。その中で、改正案によって教育行政に対する首長の権限が強まると思っている方が六六・二%、また、私はちょっと次の数字に注目しているんですが、教育委員会の独立性について弱まる可能性がある、これも六〇・二%おりまして、これまでの議論でも、私も、教育委員長がいなくなったり首長と教育長が総合教育会議などを通じて連帯してやっていけば、教育委員会が現状より形骸化してしまうのではないかということも申し上げてきました。

 実際、現場の教育長からそういう声が六割に上っていることについて、大臣の御見解を伺いたいと思います。

下村国務大臣 現行の教育委員会制度についても、肯定的に捉えている教育長が六一・六%おられるわけですね。事実、少なくともこの程度の自治体はうまくいっているんだろうというふうに思います、教育委員会そのものは。そういう中で、しかし大津のような事件もあったわけでありまして、つまり、大津のときも制度なのか人なのかという問題があったわけですが、これを我々は両方に問題があるというふうに捉えて今回改正案をつくっているわけです。

 ですから、今回の制度改革案も、この制度改革案になれば全てが、今までの懸案事項は全部解決するということにはならないわけでありまして、どんな制度をつくったとしても、やはりそこにどんな人が存在するかどうか、どんな教育長がいるかどうか、あるいはどんな首長がいるかどうかによって、そこの自治体における教育行政というのはやはり大きく変わってくる可能性はあるわけであります。

 ただ、制度設計的に、今回の改正案においては、首長が教育行政に連帯して責任を果たせる体制を構築するという一方で、教育の政治的中立性、継続性、安定性の確保の重要性に鑑みて、教育委員会を執行機関として残すということと、それから、教育委員会の職務権限は変更しないということでありまして、確かに、首長の関与は従来よりは強くいたします。それだけ権限を明確化するわけですね。それであっても、教育委員会そのものの独立性が弱まるというふうな懸念は当たらないというふうに考えております。

 今回の制度改正が適切に運用されるよう、つまり、すぐれた首長のもとで同時にすぐれた教育長がどう配置されるかということがやはり重要だというふうに思いますが、この改正の趣旨について、法案が成立した場合には、施行通知や説明会等を通じて、今まで以上に教育長の役割は、教育委員長と一緒になって新教育長というのは一本化されるわけですから、教育委員会の独立性が弱まるということではない、ぜひしっかりと対応してほしいということを含めて、丁寧に周知してまいりたいと思います。

井出委員 今、その制度の問題、制度と人の両方なんだというお話で、野党、民主党と維新の会さんの方で出されている法案は、首長に責任を持たせる、首長の、人次第だろうという議論はかなりあったかと思うんです。

 政府案についても、それは、首長、教育長、それぞれ人の部分が問われると思いますが、私はこのアンケートを見て、ちょっと教育長がこの改革に対して消極的なんじゃないか、弱気なんじゃないか、そういう懸念を、今までも申し上げてきたんですけれどもすごく持っております。特に、法律上、今の教育長が法律施行の段階で最初から入っていく、その方々がこの意識だと、やはり教育委員会の権限というものがどうなのかなというところはいまだもって疑問を感じているところです。

 このアンケートで、今大臣もおっしゃっていましたが、少なくとも六割が現行で十分対応できていると。それは、これまで来ていただいた参考人の皆様、地方公聴会でも、そういう声も確かにあったかと思うんです。ですから、私も、半数以上のところは平時はうまくやっているんだろうなと。

 ただ、今回の議論というのは、そうした中で、大津のいじめ事件のような緊急事態、不測の事態、お子さんが命を落とすというようなことは、教育行政、教育現場にとっては緊急というよりもう最悪の事態だと思うんですが、そのときに、よく、誰が責任をとるか。その責任をとるというのは、責任をとってやめるとか謝るとかそういうことじゃなくて、責任を持って対応をするか。今回の改正議論というのは、まさにその緊急非常事態に責任を持って対応する、そこを明らかにすることが、これまで再三言われてきた責任の所在の明確化だと思うんです。

 私は、平時の体制と緊急時の体制と一緒くたに議論をしてきているから少しそこが曖昧になっているかなと今感じているんですが、大津の事件が提起した問題は、やはり、緊急時にしっかり対応する人を明確にしてほしい、そういうことではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

下村国務大臣 おっしゃるとおり、今回の改正のきっかけそのものは、大津市におけるいじめ事件であります。生徒の生命にかかわる重大かつ緊急の事態にもかかわらず会議が速やかに招集されないなど、教育委員会による責任ある迅速で的確な対応がなされていなかったことが問題であるわけであります。

 しかし、これは大津の教育委員会だけの問題ではなく、現行の教育委員会制度において、教育長、教育委員長、どちらが責任者かがわかりにくいという問題がある。また、いじめ等の問題に対して、必ずしも、どこの教育委員会においても迅速に対応できていないという構造上の問題がある。また、地域の民意が十分に反映されていないという問題がある。さらに、地方教育行政に問題がある場合、国が最終的に責任を果たせるようにする必要があるといった課題が、制度の中で本質的にあるというふうに考えております。

 そこで、昭和三十一年の地教行法制定以来抱えてきたこれらの課題を解消するために、今回抜本的な改革を行うこととしたものであります。

井出委員 私は、緊急のときに、個人的な思いとしては、本当にお子さんが命を落としてしまうような事態になったら、最後はやはりその自治体のトップが責任を持って対処をする、それを、大津の市長は、最後の最後、ずっと報告とかが、情報が上がってこなかった中で、最後、調査に乗り出したのかなとも思っておるんです。

 今大臣がお話をしたように、これまでの地教行法の課題を含めて抜本的に改革をするとのお話だったんですが、私は、まず、その大津の事件が投げかけた、緊急事態に誰が責任を持って対応するのか、そこに絞った議論をしないといけないんじゃないかなとずっと思ってきていて、それで、この一連の議論を聞いてきてその思いを強めているんですが、この緊急事態、緊急対応に絞った議論が私はまず必要だと思っておりますが、そこがどうか。あと、その緊急事態に責任を持って対応する人が誰なのかというところで議論が尽くされていると感じていらっしゃるかどうかをお伺いします。

下村国務大臣 緊急事態対応については、今回の改正案で新たに総合教育会議を設ける、これは首長が主宰をするということですから、対応ができるような制度設計になっていると思います。

 議論が尽くされているかどうかというのは、それはまさに国会で皆さんが議論されることでありますので、積極的な議論をしていただきながら、一方で、ぜひ速やかに可決に向けて進めていただきたいというのが私の方のお願いでございます。

 それから、本当に教育委員会制度が緊急対応だけでいいのかどうかということになれば、先ほど井出委員も質問されておられたように、例えば、構造改革特区というのがなぜ出てくるかというのは、現状の今の地方教育行政、教育委員会を象徴的にする今の制度設計では、それぞれの自治体で、特に首長が思い切った教育改革ができないのではないかということから構造改革特区法案等が出ているわけです。

 これは、新しい政府における提案においても、首長の権限は事実上強化するわけです。そして、総合教育会議の中で首長とそれから教育長が協議、調整をして、そして大綱を設けるということでありまして、その大綱というのはそこの地方自治体における教育改革の振興基本法のようなものです。ですから、さらに意欲ある首長のもとで、その自治体における教育改革が一層進みやすい、そういう制度設計に今までよりははるかになる、そういうことであるわけであります。

 これは、緊急対応だけではなく、平時においても常によりよい、子供たちのための教育改善ということを考えれば、そういう仕組み、設計をするということは、どこの自治体においても必要なことであるというふうに思います。

井出委員 その緊急のときの対応なんですが、私はまだ議論が不十分だと思っております。

 政府案ですと、緊急事態があったときは、最初は学校だったり教育委員会、教育長が対応していく、そこで首長と教育長の協議があったり、必要であれば総合教育会議があるというのがこれまでの答弁だと思うんですけれども、私は、そういう事態になったときに必要なのは、まず、学校とか教育委員会、教育長がその対応、調査をしたときに、それを独立した目、客観的な目で見られるかどうかだと思うんですね。

 私は、今回の政府案というのは、前々から申し上げているんですけれども、平時の体制の改革の議論も相まって、首長と教育委員会の距離が近くなったと感じていまして、それが緊急事態においてはやはり逆の目に出るんじゃないかと。端的に言えば、大津のときに隠蔽があった、それを客観的に、もう一度調査をしろですとか、そういうことの言える体制になっていないんじゃないかというのがいまだもって私の疑問なんですが、そこはどうでしょうか。

下村国務大臣 そういうことを改善する法律案ですから、もしなっていないということの危惧があれば、具体的にどこの、法律のどの部分が問題なのかどうか、一つ一つ指摘をしていただければこれはきちっとお答えできる話なわけです。ですから、ぜひそういう質問をしていただきたいと思います。

 そして、今までと違うのは、首長のところにもいろいろな、例えば、これは別に大津だけじゃありませんが、ほかの自治体全てにおいて言えることですが、いじめ問題とかがあれば、その家族とか周辺からいろいろな苦情とか情報が行ったときに教育委員会任せで十分対応できていなかったということについて、もちろん第一義的には学校現場が対応する話です。学校現場が対応すればすぐ解決することも大半だと思うんですね、実際のところは。学校現場が対応できない部分について教育委員会が対応する。教育委員会で対応することが基本的には当たり前の話ですが、それが十分対応できていないということで、行政上における遅滞によって、結果的に首長まで話が行くぐらい、解決しないままずるずると行ってしまっているということが出てきたときには、緊急に総合教育会議を開いて、そしてそこで緊急対応ができるということでありますし、そもそも総合教育会議を開かなくても、大半のいじめ問題は基本的には学校現場で解決すべき、本来はあるべきことですから、一々一つ一つ総合教育会議にかけるということでは当然ない話だと思います。

井出委員 今、具体的にというお話があったんですけれども、私は、お子さんが命を落とすような事態があったときに、そのときに学校や教育委員会がやった対応を客観的な目で見られるのかどうかというところの問題意識があって、ちょっと繰り返しになるんですが、それを、平時の責任の所在ですとか教育行政をどう役割分担していくかというところの改革議論の中で、総合教育会議をつくったり大綱を策定したりして、私は首長と教育委員会の距離が近くなっていると表現していますが、大臣、政府側の話では、連帯してやっていく、連帯責任を持ってやっていくという表現だと思いますが、平時の制度の改革が、お子さんが命を落としたときの解決になっていないんじゃないか。

 大津の問題というのは、お子さんが命を落とすような、教育現場にとって最悪の事態になったときに誰がきちっと対応するのか、そこをまず解決してくれよという話だったと思うんですけれども、そこの解決に今の政府案は私はなっていないと思うんですよ。違いますか。

下村国務大臣 それは、一つの法律をつくったら全て解決するという法律なんかないわけですね。

 今回は、教育委員会制度の抜本改革案です。いじめ対策はいじめ対策で、昨年の通常国会でいじめ対策のための救済法案を議員立法でつくっていただいたわけですね。それに応じて、例えば、文部科学省においては基本方針をつくれということになっているわけですし、それぞれの自治体においても条例をつくる努力義務を課しているわけですし、学校現場においては、いじめ対策のための組織をつくって、そして、いじめについては加害者にも傍観者にも被害者にもさせないという仕組みをつくるようにしているわけです。

 ですから、教育委員会を改正したら、いじめ問題が、あるいは自殺問題がなくなるかというとそうではなくて、それぞれに対応したいろいろな対処をするということが必要だということであります。

井出委員 制度を変えれば全ての問題が解決するものではないですし、できるだけベターなものを、そのベターなものをもっとよくしていく運用ですとかそういうことを考えるのが、どの法律でも制度でもそうだと思うんです。

 大津の問題は、お子さんが命を落とすようなことがあったときに、きちっと顔の見える人間が対応していくと。そこに応えなければ、平時の教育委員会制度の抜本的改革だと、そこはかなり肯定的に受けとめている方も、教育関係者、関係団体とか特に反対はないという声もあると思うんですけれども、大津の、お子さんが命を落としてしまうような事態にきちっと応えることが今回の一番の目的だったと私は思うんですけれども、違いますか。

下村国務大臣 子供の自殺の問題は大津だけじゃないわけですよ。年間三百数十件、毎年小中学生が自殺しているという問題があるわけで、これは大津だけの問題ではありませんけれども、一つの象徴的なこととして捉えられていることは事実です。

 そのために、今回ほど、これは政府だけじゃありませんが、国会が対応したということはなかったと私は思いますよ。昨年から、超党派の議員立法で、実際、昨年の通常国会で、ぎりぎり、相当無理があったところを、各党がその前の衆議院選挙で選挙公約をしていましたから、いじめ対策のための抜本的な解決法案をつくろうということで、国会で通してもらったわけでしょう。

 そして、先ほど申し上げたようなるるのことを対策しながら、学校のスクールカウンセラーとかソーシャルワーカー等をふやしながらきめ細かな対応をしていくということをしていて、一方で、これはいじめだけの問題ではありませんけれども、戦後の日本における地方教育行政の根本的な問題の一つとしての教育委員会制度改革をしているわけです。でも、きっかけは大津の問題であることはもちろん事実です。

 でも、一つのことをきっかけで、これだけ国会が、政府が二年もかけていろいろなことをやっているなんということはあり得ない話なことぐらい今ドラスチックに対応しているということであって、このことによってもちろんあしたから子供のいじめによる自殺がゼロになるということはあり得ませんけれども、しかし、少しでもなくすための努力をあらゆるレベルでしていこうということで今も議論をしているわけですし、ゼロにはならないかもしれませんが、最大限の努力をしているということは、これは政府だけじゃなく皆さんも、立法もやっているということについてはぜひ自負をしていただきたいと思います。

井出委員 昨年のいじめの議員立法は私も実務者に参加をさせていただきましたし、いじめをなくしていこうという取り組みは、これまで過去になくなされてきているとは思うんです。

 ただ、結局、自殺がゼロにならないとおっしゃって、またあってはほしくないんですけれども、あったときの責任を誰が持ってやっていくかというところの議論は今回の本質だと私は思っていて、まだそこは議論の余地が、十分審議を尽くしていくべきだと思っておりますので、また次回質問をしたいと思います。

 終わります。ありがとうございます。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 今回の教育委員会制度の改変は、政治的多数の圧力で教育内容がゆがむのではないか、とりわけ、近現代史の侵略と植民地支配について基本的事実を知り、平和と民主主義を築く上でも大切な歴史教育の分野で深刻な問題がもたらされないか、多くの国民が心配をいたしております。この問題について引き続き質問をしたいと思うんです。

 先般、村山談話が閣議決定されているにもかかわらず、事実誤認の答弁があり、大臣が訂正をされました。

 村山談話では、「戦後五十周年の節目に当たり、われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないこと」と述べております。

 これは局長に聞きますけれども、村山談話はその来し方の歴史の教訓についてどのように述べておりますか。

前川政府参考人 ただいま先生が読み上げられました部分に引き続きまして、次のように述べられております。

  わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。

以上でございます。

宮本委員 植民地支配と侵略によってアジアの人々に多大な損害と苦痛を与えたことは疑うべくもない歴史の事実だと述べております。そしてそれを、教育を通じて若い世代に語り伝えていかなければならないと思うんです。

 昭和五十七年の歴史教科書についての官房長官談話では、学校教育、教科書の検定についてどのように述べておりますか、局長。

前川政府参考人 昭和五十七年八月二十六日に発表されました宮沢官房長官談話における御指摘の部分は、次のとおりでございます。

 日韓共同コミュニケ、日中共同声明の精神は我が国の学校教育、教科書の検定にあたっても、当然、尊重されるべきものであるが、今日、韓国、中国等より、こうした点に関する我が国教科書の記述について批判が寄せられている。我が国としては、アジアの近隣諸国との友好、親善を進める上でこれらの批判に十分に耳を傾け、政府の責任において是正する。

以上でございます。

宮本委員 この宮沢官房長官談話を受けて、検定基準にいわゆる近隣諸国条項というものが盛り込まれました。この宮沢談話は今日否定をされているか、また、近隣諸国条項は今も生きていると思うんですが、局長の答弁を求めます。

前川政府参考人 この宮沢官房長官談話を受けまして、教科用図書検定調査審議会での審議を経まして、昭和五十七年の十一月に教科書検定基準を改正いたしまして、いわゆる近隣諸国条項を追加したところでございます。その後、この近隣諸国条項は現在まで改正されていないところでございます。

 また、宮沢官房長官談話の発表以降、同談話を否定するようなものは出されていません。

宮本委員 そこで、自民党内で結成された日本の前途と歴史教育を考える議員の会という議員連盟がございます。安倍首相も下村大臣も属しておられました。このいわゆる教科書議連は、南京虐殺、日本軍慰安婦など、旧日本軍の犯罪的な行為を否定する活動を行ってまいりました。

 この議連は南京虐殺についてどう言っているか。平成十九年六月十九日に公表された、議連の南京問題小委員会の調査検証の総括というものを見ますと、「南京攻略戦が通常の戦場以上でも以下でもないとの判断をするに至った。」とまとめてあります。この立場は現在なお変わっておりません。

 当時議連の事務局長であった西川京子副大臣は、昨年四月の予算委員会で、この南京の問題は通常の戦闘行為でも戦闘以下でもなかった、南京事件を教科書に掲載していることは看過できないと述べられました。

 これも文科省に聞くんですけれども、いわゆる南京事件は、通常の戦闘行為しかなかったという結論は正しいのか、検定ではどのようになっているか、お答えいただけますか。

前川政府参考人 教科書検定につきましては、教科用図書検定調査審議会におきまして、検定時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして審議を行っております。

 南京事件に関しましては、事件の実否については、事件自体はあったとするのが通説であると承知しております。また、平成十八年六月に閣議決定された質問主意書の答弁書におきまして、「千九百三十七年の旧日本軍による南京入城後、非戦闘員の殺害又は略奪行為等があったことは否定できないと考えている。」としており、こうした考え方も踏まえた上で検定を行っております。

 また、教科書検定制度のもとでは、学習指導要領等の範囲内で具体的にどのような事項を取り上げ、それをどのように記述するかは教科書発行者に委ねられており、南京事件についても同様の考え方でございます。

宮本委員 現に、ことしの小学校の教科書検定では、南京事件を伝聞扱いした記述が、検定で、市民の殺害があったとして、伝聞扱いをわざわざ修正させているわけです。

 改めて、外務省、きょう来ていただきました。アジア大洋州局長に確認しますが、外務省のホームページの「歴史問題Q&A」では、南京大虐殺についてどう述べておりますか。

伊原政府参考人 今お尋ねの件について、外務省のホームページにおける記載内容は以下のとおりでございます。

 問い「「南京大虐殺」に対して、日本政府はどのように考えていますか。」答え「日本政府としては、日本軍の南京入城後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています。」「しかしながら、被害者の具体的な人数については諸説あり、政府としてどれが正しい数かを認定することは困難であると考えています。」「日本は、過去の一時期、植民地支配と侵略により、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたことを率直に認識し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを常に心に刻みつつ、戦争を二度と繰り返さず、平和国家としての道を歩んでいく決意です。」

 以上でございます。

宮本委員 大臣、今まさか閣内不統一ということはないと思うので、これが政府の公式見解ということでよろしいですね。大臣。

下村国務大臣 もちろんそのとおりであります。

宮本委員 東京裁判で裁かれた旧日本軍の唯一の人道に反する罪が南京事件であります。多くの調査が積み上げられ、裁かれてまいりました。戦争中は、日本国民は報道管制で知らされておりませんでしたが、事件発生とともに世界じゅうが知り、その非道さに国際問題となった事件であります。外務省、軍部中枢は、事件発生を知り、皇軍の一大汚点と事態の打開を図ろうとしたほどでありました。

 日本軍による南京占領のとき南京城内にいたニューヨーク・タイムズ紙のダーディン記者は、南京陥落の四日後には記事を送り、十二月十八日付の同紙には、南京における大虐殺行為と蛮行によって、日本軍は南京の中国人及び外国人から尊敬と信頼を受ける乏しい機会を失ってしまったと掲載をされております。翌年一月九日号の見出しは、南京侵略軍、二万人を処刑、日本軍による集団虐殺、一般市民を含め死者三万三千となっております。虐殺は三月初旬まで続き、その数二十万人とも言われております。

 次に、教科書議連は、同じように、日本軍慰安婦についてどう主張しているか。

 この議連は、二〇〇七年六月二十六日、米国下院での慰安婦謝罪要求決議案の委員会可決を受けて、決議案への反論を米国下院に送付いたしました。

 さきの西川議員の質問では、日本軍慰安婦のことを「いわば単なる売春行為である、」と断定し、「教科書にそういう問題を、まだ明らかに、政治的にも歴史学的にも決着もしていない問題を載せる、こういう問題、非常に問題だと思います。」と述べました。

 これも局長に確認いたしますが、文科省は、日本軍慰安婦は単なる売春行為で、教科書に載せることは許されないという立場でありますか。

前川政府参考人 平成十八年十月に閣議決定されました質問主意書の答弁書では、「いわゆる従軍慰安婦の問題についての政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話を受け継いでいる。」としており、これは、平成二十五年五月に閣議決定された質問主意書の答弁書でも同様の認識でございます。教科書検定におきましても、こうした考え方も踏まえた上で行っているところでございます。

 また、教科書検定制度のもとでは、学習指導要領等の範囲内で具体的にどのような事項を取り上げそれをどのように記述するかは教科書発行者に委ねられており、慰安婦についても同様の考え方でございます。

宮本委員 大臣が先日、教科書検定に当たっては、河野談話を継承するという慰安婦問題についての政府の基本的立場を踏まえて実施すると答弁された、その河野談話は一体何を認定しているか。

 一つ、「長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在した」こと。二つ、「慰安所は、当時の軍当局の要請により設営された」こと。三つ、「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあった」ことが認められたこと。四つ、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」こと。五つ、「戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」ということを認定しております。こういう中身なんです。

 文部科学省に聞くんですけれども、この河野談話は、日本軍慰安婦問題について、歴史研究、歴史教育について一体どのように述べておりますか。

前川政府参考人 御指摘の談話におきましては、「われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。」と述べられております。

宮本委員 大臣、この談話を継承するというのが政府の基本的立場であれば、到底単なる売春行為という主張を認めるわけにいかないと私は思いますけれども、大臣、いかがですか。

下村国務大臣 文部科学大臣として、政府の見解を継承いたします。

宮本委員 今局長が述べた中身も含めて、河野談話をきちっと継承するということでよろしいですね。

下村国務大臣 文部科学大臣として、政府の統一見解を継承いたします。

宮本委員 ところが、そのことに正面から反対している歴史教科書の執筆者がおります。育鵬社歴史教科書編集会議の座長で、教科書の筆頭執筆者でもある伊藤隆氏であります。日本教育再生機構の雑誌「教育再生」昨年五月号を見ますと、日本教育再生機構の八木理事長と対談をして、次のように述べております。

 「南京事件はもう教科書で教えない方がいいですね。安倍首相の国会答弁のとおり「教育基本法が生かされていない」と見るべきです。」「慰安婦の強制連行を」高校教科書検定に「パスさせて、教育基本法に「一致」というのも、もう通りませんよ。」八木氏もこれに意気投合しております。

 要するに、南京事件を教えることも高校教科書で日本軍慰安婦を教えることも改正教育基本法に違反しているからやめるべきだ、こう述べておられるわけですね。

 そこで、文部科学省に確認しますけれども、南京事件や日本軍慰安婦を現在のような形で教科書に記述することは、伊藤氏の言うとおり、教育基本法が生かされていない、教育基本法に一致しない、こういうことになるんですか。

前川政府参考人 現行の教科書は、従前の教科書検定基準に基づいて検定されたものでございますが、教科書検定基準におきましては、本年一月の改正が行われる前から、教育基本法に定める教育の目的や目標との一致を求める規定がなされているところでございます。

 具体的には、第一章の「総則」において、教育基本法に示す教育の目標等を達成するため、これらの目標に基づき、検定基準による審査を行うことを定め、教育基本法第二条の「教育の目標」を全文掲げております。また、第二章の「各教科共通の条件」におきまして、教育基本法第一条の「教育の目的」及び同法第二条に掲げる「教育の目標」に一致していることを「基本的条件」として定めております。

宮本委員 したがって、現在使用されている教科書は、教育基本法が生かされていないとか教育基本法に一致しないというふうなことはないということでよろしいですね。

前川政府参考人 教育基本法に定める教育の目的や目標との一致を求める規定のある検定基準に基づいて検定されているということでございます。

宮本委員 改正教育基本法に照らして検定基準にも合致したものが検定合格させられている、当然のことだと思うんですけれども、そういうことが確認されました。

 ここに、育鵬社教科書の採択を主張する教科書改善の会のパンフレット、「きちんと選ぼう! 子供の教科書 中学歴史・公民教科書採択にむけて」というパンフレットがあります。

 ここでは、ほとんどの歴史教科書は読むと日本の歴史が嫌になりますと言い、それは、ほとんどの教科書は改正された教育基本法の趣旨を反映しているとは思えない内容になっているからだと批判をしております。その一方、改正教育基本法に最もかなっていると評価されている教科書があるんだ、それが育鵬社から出ている教科書だ、そうここには書いてあります。

 文部科学省に聞きますけれども、中学歴史教科書の検定は、教育基本法、とりわけ教育の目的、第一条及び第二条と無関係に行ったことはございますか。

前川政府参考人 現在使われている歴史教科書は、教育基本法第一条の「教育の目的」及び同法第二条に掲げる「教育の目標」に一致していることを定める教科書検定基準に基づき、教科書検定審議会による専門的、学術的な審査を経て検定合格したものでございます。

宮本委員 改正教育基本法の趣旨にのっとってこれは検定合格したものだということが確認をされました。したがって、今ある教科書は教育基本法に合致していないとするこの改善の会の主張は成り立たないことが明らかになったと思います。

 ところが、この誤った主張をしている政治家がおります。それが大臣、あなたですよ。

 あなたはウイルの四月号で、これは大臣としてですよ、大臣になる前でもなければ何でもないですよ、大臣として、「第一次安倍内閣ではこの教育基本法を改正して「日本の伝統と文化を尊重」「愛国心や郷土愛」など、日本の素晴らしさを子供たちに教えられるよう新たに教育の目標を盛り込みました。 ところが、採択された教科書の記述を見ると、改正した教育基本法に則った記述にはなっていない。」と述べておられます。

 文部科学省は、教育基本法に合致している、反映していると今答弁ありましたね。あなたが大臣として教育基本法にのっとった記述として認めて合格させた教科書が、なぜわずか一年後には、あれは教育基本法にのっとった記述になっていない、こんな話になるのか。少なくともこのような発言は撤回すべきではありませんか、大臣。

下村国務大臣 それだけ関心があるということで、宮本委員も、中学校、高等学校の歴史教科書、公民教科書を、学校の教科書ですね、お読みになったのではないかというふうに思います。

 私は、どこの教科書ということではありませんが、やはり一般的に言って、日本の教科書については、一言で言えば光と影が歴史にあるとしたら、影の部分のみが強調され過ぎているのではないかと思うところがあるわけでございまして、もちろんそれは否定するつもりはありません。それはそれで謙虚に受けとめなければならない部分があると思いますが、一方で、光の部分、子供たちがそれを読んで、自分たちの歴史に対して、自分たちの祖先に対して誇りと自信を持てるようなそういう記述もやはり入れるべきだというふうに私は思っておりまして、現行の教科書が教科書検定を通っているわけですからこれは教育基本法の趣旨にはのっとっていますけれども、しかし十分ではないというふうに思っているところがあるわけでありまして、それで教科書改革実行プランを発表したところでございます。

 さらに、そういう趣旨にのっとって、新しい教育基本法にのっとって、より子供たちが自信と誇りも持てるようなそういう教科書記述については、さらに教科書会社が工夫をしていただければというふうに思っております。

宮本委員 大臣は答弁でよく光と影というふうにおっしゃるわけですけれども、結局、教科書議連の主張を見ても、南京事件も日本軍慰安婦も、影自体がうそだ、こういう事実はないんだと主張しているわけです。本当にそういう話は通らないし、やはり影は影としてきちんと、事実は事実として学んでこそ、日本の国に対する真の誇りも生まれてくると言わなければなりません。

 それで、この前も教育勅語をめぐって、至極真っ当なことが書いてあるとあなたがおっしゃったことに対して、全部が真っ当ということになるじゃないかと言ったら、真っ当なことも書いてあると言いかえられて、それならば、少なくともそれは訂正すべきだと私は申し上げたところでありますけれども、今回のこの発言も、今あなたに確認すれば、のっとっていない、つまり外れているとは言っていないんだ、しかし、本当にその趣旨が反映されていないという程度の問題のような答弁をされました。しかし、はっきり、あなたの発言は、「則った記述にはなっていない。」こう述べているわけですから、そうしたら教育基本法にのっとっていないのかという話になるわけですよ、この場合でも。

 これは余りにも不正確で、もし本意が今答弁されたようなことにあるのであれば、この記述は訂正すべきじゃないですか。いかがですか。

下村国務大臣 新しい教育基本法にのっとった十分な記述、具体的にどこがどう記述されていないというような個々の指摘をするつもりは全くありませんが、全体を通じて光と影の部分についての光の部分が足らないのではないか、そういう認識を持っているということであります。

宮本委員 「改正した教育基本法に則った記述にはなっていない。」というあなたのウイルでの発言と、改正した教育基本法に合致しているとしてあなた自身が検定合格させた事実とは、残念ながら相入れないわけですよ。のっとっていなければ検定合格させてはならないし、合格しているんですから、これはのっとっているんですよ。少なくともどちらかが間違っていなければ、この話は通りようがないんです。

 では、端的に逆のことを聞きましょう。

 教育基本法にのっとった記述になっている歴史教科書、これはあるとお考えですか。

下村国務大臣 先ほどから申し上げていますように、今の検定教科書は、いずれも検定教科書ですから、全部のっとっています。

宮本委員 だったら、それこそウイルの発言を訂正しなきゃ。いずれものっとっていると言うんだったら、のっとっていないと書いているようなものは撤回しなければ話が通らないんです。余りにもそれはひどい答弁ですよ。

 私は、あなたの政治家としての本音ははっきりしていると思います。

 二〇一一年五月十日、教科書改善シンポジウムというものに、かつてあなたも安倍総理も、これは大臣になる前ですけれども出席をされました。

 安倍総理はそのとき何と言ったか。「新しい教育基本法の趣旨を最もふまえた教科書は育鵬社であると私は確信している」「六〇%のシェアを超える東京書籍は、とても教育基本法の趣旨を踏まえた教科書とはいえない。」

 あなたはどうか。「党を挙げて健全な教科書採択のために尽力する。」

 みんな一致して、改正教育基本法に沿った教科書は育鵬社しかない、こういう発言をこの場でやっているわけですね。その後大臣になったから、そんなことは言わないと言うのかもしれないけれども。

 結局、あなたの改正教育基本法にのっとった教科書という主張は、我々が平和の道を歩むために長く記憶にとどめるべき南京事件、慰安婦などの歴史を改正教育基本法に基づいて書くべきではないとする育鵬社歴史教科書座長の伊藤隆氏などの主張を、客観的には応援することになっているんじゃないですか、大臣。どうですか。客観的にはそうじゃないですか。

下村国務大臣 それは宮本委員が判断されることでありまして、私は、別に直接伊藤さんの発言を応援したり支援をするということを大臣として表明したことは今まで一度もありません。

宮本委員 では、聞きましょう。

 日本軍慰安婦について、先ほど文科省からは政府の立場である河野談話について紹介がありました。「歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。」そして、そういう歴史教育を進めるという決意ですね。

 この前も一度聞きましたが、大臣からは明確な御答弁がありませんでした。大臣として、旧日本軍による慰安婦問題の過ちを長く記憶にとどめるために歴史教育でどのような対応を講じるつもりか、お答えいただきたいと思います。

下村国務大臣 平成五年八月四日の内閣官房長官談話の趣旨は、慰安婦問題を長く記憶にとどめ、繰り返さないという決意を表明したものであるが、特に具体的な研究や教育を念頭に置いたものではないというふうに承知をしております。

 なお、学校においては、学習指導要領に基づき、児童生徒の発達段階を踏まえ歴史教育を行っているところであります。その中で、第二次世界大戦については、例えば、中学校及び高等学校学習指導要領の解説において、「我が国が多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大な損害を与えたこと」や、「大戦が人類全体に惨禍を及ぼしたこと」について記述しており、これを踏まえた指導が行われるべきものと考えております。

宮本委員 いろいろ言っても、慰安婦一つとってもそうやってまともに向き合おうとしないわけですよ。それはそうだと思います。要するに、愛国心のためには不都合な事実に目をつぶれということなんです、あなたの言いたいことは。

 これは大変偏狭な愛国心だと言わなければなりません。それは改正教育基本法の言う愛国心とも全く別物です。もしそんなゆがんだ愛国心を子供、国民に押しつければ、憲法が保障した国民の思想、良心の自由に違反すると言わなければなりません。文科大臣の教科書への圧力は、みずからの偏狭な愛国心を押しつける目的のために政権が教育内容に不当に介入し支配をするという極めて重大なものだと思います。

 あなた方の目指すものは、日本の戦争を自存自衛の戦争、アジア解放の戦争と美化する育鵬社教科書の採択をさせることだと私は言わざるを得ないと思うんです。その中心的な執筆者は、自分たちは改正教育基本法に沿っている、南京事件は書かない方がいい、慰安婦も書かない方がいい、こういう誤った主張を行い、その応援団は、南京虐殺などなかった、慰安婦もただの買春と言ってはばからない政治家じゃありませんか。

 しかし、歴史を偽れば、そこから生まれる愛国心も偽りですよ。日本の圧倒的多数の教育委員会も、教員や保護者も、そういう歴史を偽る方向にくみしようとはしない。これだけ自民党が力を入れても、育鵬社の採択率はわずか四%にとどまっております。

 それを、教育委員会の独立性を奪い、政治に従属させて採択させようというのがあなた方の狙いであります。そのようなたくらみは国民が断じて許さないだろうということを述べて、私の質問を終わります。

 以上です。終わります。(下村国務大臣「委員長、委員長」と呼ぶ)終わります。終わります。(発言する者あり)終わります。

下村国務大臣 それは相当間違った、私的な見解としか思いません。

 我々は、事実は事実として、それを隠蔽するつもりは全くありません。今言ったことについては、相当、独断と偏見の見解としか思えないということを申し上げておきます。

宮本委員 客観的にはそのようになっていると私は申し上げたわけであります。

 終わります。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木でございます。

 まず、前回の質疑の積み残しから質問をさせていただきます。

 今回の中心的な議論からは若干それるかとは思いますけれども、参考人の皆様の意見を参考にさせていただいてまず質問をさせていただきますが、縦の行政系列の弊害について下村大臣の御見解をお伺いをしたいと思います。

 四月十八日の新藤参考人の陳述の中で、日本の教育行政の特徴を縦の行政系列と呼び、文部科学省、都道府県教育庁、市町村教育委員会事務局、学校長という縦の事務局支配のシステムが制度化されていると。日本の教育行政の一大特徴であるこの縦の行政系列の改革こそが、教育と地域の自治を考える基本に置かれるべきだと考えますと述べられました。

 また、大森参考人は、国と地方の関係にしろ地方自治体と学校の関係にしろ、できるだけ指導助言、これは避けるべきだと思っている。なぜかというと、指導助言というのは曖昧性であって、権力というのは曖昧性に宿るんだという御指摘がありました。曖昧性というのは解釈の裁量なので、だから、ルールとして透明化をして、上から指示すべきことはきちんと指示をする、それ以外は下に任せる、教育に限らず、そういうシステムにしていくべきだと述べられました。

 さらに、貝ノ瀬参考人も、現状で教育委員会と学校との関係の中で指導助言ということはしょっちゅうあるわけで、指導助言については従わないという校長、教員もいるかもしれませんが、今はむしろ上意下達が過ぎて、逆に適応過剰といいますか、主体性を持って、本来自分たちが権限も責任もあるのに、それを行使しないで指示を待つというような風潮があるということはやはり問題だという、三名の参考人からの指摘がございました。

 戦後の地方教育行政については、地方公共団体のみずからの権限と責任のもとに実施されることを基本として、国から都道府県に対して、また都道府県から市町村に対しては、指導助言または援助という非権力的な関与しか行えないこととされてきました。

 しかし、この指導助言というここにまさに曖昧性があり、国から学校に至るまでの上意下達の縦の行政系列の弊害、責任の所在の不明確、国からの権限行使ということが行われている現状だと認識をいたしておりまして、ぜひ、この点に関する下村大臣の御認識と御所見をお伺いをしたいと思います。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

下村国務大臣 教育行政に関しては、国は、学校教育法や地方教育行政制度など、基本的な制度の枠組みの制定や、学習指導要領等の全国的な基準の制定、地方の教育条件整備に対する財源保障という役割と責任を担うべきものである一方、地方公共団体は、地域の実情に応じて学校を設置管理するなど、実際に教育を実施する役割と責任を担うべきものであり、こうした国と地方の適切な役割分担の相互の協力のもと、教育行政を行うことが必要であると考えております。

 先ほど、参考人の中で貝ノ瀬委員は教育再生実行会議のメンバーでもあるわけで、今も三鷹市の教育委員長をされている中で御発言だというふうに思いますが、同じように、縦の行政系列の弊害という共通認識的な、新藤参考人の陳述の例をおっしゃっておりました。

 権限はあるのに、結果的にある意味ではもたれ合いになっている、あるいは、それぞれの責任がどんなところにあるかということを明確に把握していない、逆に言えば責任転嫁しているというところの構造的な、これは法律上の問題ではなくて体制的な問題があるということは、やはりそれぞれのつかさつかさ、あるいはそれぞれの立場立場でもっと意識をしていただかなければならない課題であるというふうに思います。

 今回の改正案におきましては、首長による教育長の任免や大綱の策定のほか、総合教育会議の設置を規定しておりまして、これによりまして、今まで以上に、各地方公共団体において、より一層民意を反映した教育行政の推進が図られるというふうに考えております。

青木委員 ありがとうございます。

 まさに今下村大臣がおっしゃった、指導助言という曖昧性の中、そこに宿る責任のもたれ合い、責任転嫁、こうした現状を解消するためにも、体制的な問題だと今指摘がございましたけれども、さらに踏み込んで、やはり、国と都道府県と市町村の役割分担の明確化が必要だというふうに考えます。

 五月七日の参考人質疑の中で穂坂参考人から、国と都道府県と市町村の役割をどうするべきか、あるいは首長と教育長、教育委員会との関係をどうするべきか、役割分担が不明確でありますと、いつまでたっても実態的には変わらないという御指摘がございました。

 また、梶田参考人からは、国と都道府県、市町村、これらの役割分担をもう少しはっきりさせなきゃいけないだろう。ただ、具体的となると、教員の人事権と給与負担の問題も非常に難しく、先生が町には行きたがるが、なかなか僻地には行きたがらない。こうした問題もあり、原理原則の問題も大分議論をしたが、なかなか現実には進まないという趣旨の御答弁もございました。

 さらに、中嶋参考人からは、国の役割は、富の再配分としての教育が成り立つような条件整備をすることに国の主たる責任があるというふうに述べられました。

 それぞれのお立場、主義主張から御意見を伺って、大変興味深く拝聴いたしました。

 いずれにしても、この役割分担を明確にするという観点においては、この三名の参考人からは一致した御意見というふうに承りました。指導助言という曖昧なものではなくて、むしろそれぞれの役割分担を明確にすることが、地方の主体性また地域に開かれた学校になるための改革の第一歩であるというふうに私も共感をいたします。

 国も、義務教育にしっかりと責任を持って国としての責任をしっかりと果たすという方向性での改革、この点について大臣の御所見をお伺いをしたいと思います。

下村国務大臣 特に義務教育については、国が、全国公正公平な、そして、財源的にもそれから人材的にも、できるだけ責任を持ってバランスよく対応できるような条件整備をまず整えるということが必要であるというふうに思います。学習指導要領等、国で定める基準は定める。しかし、できるだけ現場に近いところに権限を移譲するような形をとっていくということによって現場対応ができるようにするということをしていくことが、学校の活性化につながってくることだというふうに思います。

 そのために、今おっしゃったように、できるだけ例えば教員の人事権も、設置主体、つまり市町村にできるだけ移譲する、県費負担の教員を市町村にするということは、中核都市等が望んでいることでもありますし、政令指定都市は既にそうなっていますが、そのようにしていくという方向性については政府全体としても進めているところでありますが、一方で、自治体によっては、今御指摘があったように、僻地とか島嶼、島を抱えている県等では、そのことによって逆に優秀な先生が都市部だけに集まってしまって、僻地や過疎地に優秀な先生を配置できなくなるから、ぜひそれは県費負担として残してもらいたいということも言われておりまして、なかなかこれは、一律にするということによるマイナス点も出てきますから、それぞれの地域地域に応じながら、しかし、できるだけ学校現場に近い形に裁量権を持たせるような仕組みを考えていくということが、結果的に教育現場の活性化につながっていくというふうに思います。

青木委員 ありがとうございます。

 まさに都市部と地方の教育行政における人材確保の格差ということで、これも仙台市長から公聴会の折に指摘がございました。政令指定都市においては、指導主事を初めとする事務局の体制の充実も図ってきた。基礎自治体の中には、町村など、事務局の体制を堅固なものにするには人員的にも大変厳しい規模の自治体がありますと述べられていました。

 梶田参考人からも、地方がとにかく大変だというお話もございました。

 そして、次回参考人と予定されています小松さんの、NHKの「視点・論点」の御発言の中にも、事務局機能の柱となる教育専門職の指導主事、これを育成できるかどうかが鍵だ。現状では、指導主事の人数が少なく、その能力にばらつきも見られる。首長が主宰する総合教育会議も、議論の基盤となる情報を収集し、円滑な進行を支えるのは、学校現場と、日常的に接している指導主事だという指摘がございます。

 平成二十三年の教育行政調査によりますと、全国で九百十二の市町村教育委員会で指導主事の数がゼロ、つまりいないという結果になっています。約千八百の市町村の中で約半数が指導主事を置いていないということであります。これは、人手不足の地方のまさに象徴的な数字だというふうに考えます。

 教育行政の人材確保という観点から、指導主事等の都市部と地方の格差、これをどのように今後補っていくのか、国としてどのような対応をされていくのか、お伺いをいたします。

    〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕

前川政府参考人 平成二十三年度地方教育行政調査によりますと、平成二十三年五月一日の時点で、教育委員会事務局の職員数が十人以下の市町村が四百九十三、また、指導主事が置かれていない市町村、一部事務組合を除きますと、市町村で数えたときに六百二十五ございます。このような市町村では、事務体制が脆弱であるために、学校指導などが必ずしも十分に行き届いていないということが課題でございます。

 今年度の地方財政措置におきまして、都道府県の教育委員会における指導主事の地方交付税措置につきまして、十五名から二十一名への六名分の増員をすることとしております。これによりまして、都道府県教育委員会による市町村教育委員会に対する支援の強化、これを通じまして、市町村教育委員会の学校指導体制の充実も図ってまいりたいと考えております。

 また、文部科学省といたしましては、市町村の教育委員会における指導主事の配置の促進に努めてまいりまして、地方財政措置の活用や市町村教育委員会に対する必要な助言等を通じまして、小規模な市町村における体制強化を図ってまいりたいと考えております。

青木委員 ありがとうございます。

 もう一点、教育委員会の事務局における専門家である指導主事の育成、研修はどのように行われていて、国としてどのように評価をしているか、お伺いをいたします。

前川政府参考人 各都道府県教育委員会等におきましては、指導主事として必要な専門的知識や指導技術の習得のために、例えば、新任の指導主事を対象とした研修、また、授業改善など都道府県の重点施策にかかわる研修、また、都道府県教育委員会、教育事務所、市町村教育委員会の指導主事を対象とした教科別の研修、こういった研修をそれぞれやっているところでございます。

 また、文部科学省といたしましても、独立行政法人教員研修センターにおきまして指導主事等を対象とした研修を実施するなどの取り組みを行ってきておりまして、今後とも、このような取り組みをさらに進めてまいりたいと考えております。

青木委員 ありがとうございます。

 人材確保の観点からさらにもう一点、お伺いをいたします。

 今国会冒頭の質疑の中で、少人数教育等の推進を掲げた教師力・学校力七カ年戦略の発表がございまして、平成二十六年度の概算要求に盛り込みましたけれども、それが残念ながら組み込まれなかったということで、対前年で初めて教職員の総数がマイナスになりました。加配ではなくて、やはり、これまでの王道であります、中長期的な視野に立っての人材確保が必要だというふうに考えます。毎年、何名の先生が来てくれるかわからない、そうした不安定な環境ではなく、三年、四年、五年先を見越した計画を立てられるということは、まさに地方にとって、先の動きが見えるメリットがあるというふうに考えます。

 来年度、二十七年度の概算には、この教師力・学校力七カ年戦略の趣旨がどのような形で盛り込まれていくのか、今後の対応について、下村大臣にぜひお伺いをさせていただきたいと思います。

前川政府参考人 事務的な経緯について申し上げますが、平成二十六年度概算要求におきましては、教師力・学校力向上七カ年戦略における教職員定数の改善増三万三千五百人の初年度分といたしまして、三千八百人の定数改善の要求を行ったところでございます。

 しかしながら、平成二十六年度予算案におきましては、少人数教育の推進のための定数改善は財務省の理解が得られず、児童生徒の減少に伴う自然減を除く教職員定数につきましては、初めて、十名ではございますけれども純減となったということでございまして、残念な結果でございました。

 ただ、学校統合を支援することで生まれる定数などを活用いたしまして、小学校英語の教科化への対応でありますとか、いじめ、道徳教育への対応、特別支援教育の充実など、個別の教育課題への対応に必要な教職員定数の改善は計上したところでございます。

 文部科学省といたしましては、平成二十七年度に向けましても、教師力・学校力向上七カ年戦略の考え方を踏まえつつ、中長期的な教職員定数の改善計画を進めていく必要があると考えておりまして、義務教育標準法の改正を含め、予算要求に向けて検討してまいりたいと考えております。

青木委員 ありがとうございます。

 まさにこの少人数教育の推進というのは、いじめ対策としても大変重要な施策だというふうに思っておりまして、ぜひ、今後に向けた下村大臣のまた御決意もお伺いできればと思います。

下村国務大臣 二十六年度の概算要求においても文部科学省と財務省で対立した大きなテーマが、この教職員確保の問題であります。

 財務省は、子供の数が減っている、同時に統廃合が進んでいる、だから当然学校の教員の数も減らせという考え方であります。我々の方は、社会が高度化、複雑化し、例えば発達障害等、いろいろな子供たちがかつてに比べて存在をしている。また、非常に教員が多忙感がある。子供と向き合う時間が前よりも少なくなったという話もよく聞きます。そういう意味で、一人一人の教員がより子供たちに向かい合う時間をつくるという意味では、今まで以上に教職員の充実をすることは、我々は非常に必要なことだというふうに思っております。

 それだけでなく、今、局長からお話がありましたが、例えば小学校英語の対応ということでありますが、小学校三年生から英語教育の導入を図っていきたいと思っておりますが、例えばこのことについても、既存の担任教員がそれでは英語を教えられるというような簡単なことではなくて、特に小学生の英語であれば、受験英語的な、文法的な英語を教えればいいということでなく、相当ネーティブな、発音も含めて相当小学校の先生が英語教育については研修をし直すか、あるいは外国人の補助教員を入れるか、英語における相当なシフトをしていく。小学校だけでも全国に二万校あるわけでありますから、一校に一人教員を配置しても、二万人必要なわけであります。

 こういうようなことと、それから、先ほどちょっといじめ問題が出ておりましたが、こういうふうな対応も必要だと思いますし、そうすると、既存の教員でサポートできない部分の新たなそういう部分を入れながら、同時に、この義務教育定数改善を図るということを考えると相当な学校の先生の数が必要になってきますので、トータル的に、戦略的に、学校現場において一番必要な教員補強はどういう形かということを考えながら、しかし、子供を第一義的に考えながら、より成果、効果の上がる教員配置の拡充についてぜひ考えていきたいと思っております。

青木委員 ありがとうございます。ぜひ、次回のまた下村大臣の御尽力を心からお願いを申し上げておきたいと存じます。

 最後の質問になるかと思いますが、またちょっと質問を残しますけれども、行政の縦系列のこの指導助言による曖昧性、これに根差したその弊害、その解消が根本改革であるという認識から、国の役割、地方の役割、これを明確にする必要があるというふうに考えます。

 さらに、人材確保の観点から、中でも都市部と地方に大きな格差があるというその問題意識から、生活の党としまして、やはり義務教育の最終責任は国にあるという考え方の方向性として、教育は人であり教員であるという考えから、国は教員の身分保障をする、そして教育の水準を維持する、これを国の役割として、教育の機会均等と教育水準の維持向上のために、全国的な見地からその人材が確保されるよう、教師の身分保障は国が行い、義務教育国庫負担のさらなる充実を図っていくべきだというふうに考えます。

 現行の県費負担制度においても国庫負担が今三分の一でありますが、残りも交付税として国から県に交付をいたしております。交付税は地方の自主財源ではありますけれども、その根拠どおりの趣旨とすれば、実質国から一〇〇%手当てしているとも言えなくもないというふうに考えます。

 前回の質疑の中での下村大臣の御答弁の中で、義務教育については国が責任を持つ、責任を持つという究極のあらわれとして一〇〇%国庫負担にすべきではないか、財源的には、国がもっときちっと責任を担保することによって、過疎地や離島、そういうところについても十分な人材確保が行われるようなことを国が考えるべきではないか、根底の考えとしてはそのとおりだと思うという御趣旨の御答弁をいただきました。下村大臣とその点についての認識を共有でき、大変心強く感じております。

 一方で、地方分権の流れの中での行財政改革の観点からは、また、国立の小中学校ではないのに教員だけ国家公務員という、形態的に整合性が合わないという点の指摘もあわせてございました。

 現在、教職員の人事権者と給与負担者を一致をさせるということで、まず政令指定都市から進められており、これから中核市にも進められる、その検討が行われている状況にはありますけれども、まさに下村大臣が認められているような、教員の身分保障そして教育の地方分権、これを両立するには、法制度上乗り越えなければならない側面があろうかとは思いますけれども、ぜひ、生活の党といたしましては、教員の身分保障そして教育の地方分権のそれぞれの推進こそが、今後の教育行政改革の方向性であるというふうに考えております。

 今後のことでありますけれども、また、本改正案の関連施策の立案に当たって、次の点に留意をしながら、その達成に向けて取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 一点目は、今申し上げた、国が義務教育に従事する教員の人件費全額負担をして学校の教員の身分を尊重するということでございます。

 二点目として、国は、義務教育に関し、地方公共団体が行う自主的かつ主体的な施策に配慮し、地方公共団体は、義務教育に関し、国との適切な役割分担を踏まえつつ、地域の特殊性に応じた施策を講じる。

 三点目として、全ての教育の原点である家庭教育を行う父母その他、保護者を社会全体で支えるため、それらの者に対する支援を積極的に行う。

 四点目として、家庭及び地域社会が緊密に連携し、地域社会における教育を推進する。

 五点目として、学校は体験活動等の機会を提供し、家庭及び地域社会はこれに積極的に参加するよう努める。

 以上のような基本的な施策を具体化しながら、その達成に向けて取り組んでまいりたいというふうに考えておりますが、最後に下村大臣の御所見、御見解をぜひお伺いをさせていただきまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

下村国務大臣 今おっしゃったその五点の方向性は、認識を共通するものでありまして、ぜひそういう方向性に進むべきだというふうに思いますが、しかし、一番目の義務教育国庫負担一〇〇%ということについては、相当これはハードルが高い話でございまして、平成十八年の三位一体改革の中でこの義務教育費国庫負担制度については、国庫負担を二分の一から三分の一にすることによって、地方分権の一環から、義務教育についても地方自治体が責任を負うという形をとったという経緯がございます。

 もちろん、地方自治体が設置主体ですから、責任ある体制をとるような方向性ということについては、その方向性については理念を共有するものでありますけれども、一方で、義務教育国庫負担を一〇〇%にするというときに、その地方分権との考え方との整合性をどうするのか、その辺の整理はあるかというふうに思いますが、ただ、国の責務として、義務教育ですから、憲法でも書いてあることですので、国が財源については責任を持つ。

 財源を責任を持つという意味では、義務教育国庫負担も国が一〇〇%責任を持つというようなことが私はあるべき形としては望ましいのではないかというふうに思いますし、その考え方と地方自治法との整合性をこれからどうするかということについては、これは文科省だけのことではありません、かなりいろいろな省庁にまたがる話でもありますが、体系的な中、ぜひ議論を深めてまいりたいと思います。

青木委員 質問を終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 教育委員会制度の見直しについて、法案の質疑に加えまして、二回の参考人質疑と地方公聴会が行われました。

 私も福岡での地方公聴会に出席をさせていただきましたが、教育委員会が主体的に関係者のニーズを把握しながら教育行政を進めており、現行の教育委員会制度でも十分機能しているというような御意見など、三人の陳述人いずれも、現行制度の維持に肯定的であったのではないかというふうにも思っております。また、参考人質疑では、現行の教育委員会制度に否定的な御意見を持つ参考人からも、首長が全て民意を反映するものではないというお話もありました。

 私は、教育行政は、首長や議会から独立し、政治的な中立性を維持することが大変大事だというふうにも考えております。一方、現行制度にも全く問題がないというわけではなく、地域単位、学校単位で民意を酌み取り、教育内容や学校運営に直接反映をさせていく仕組みや改革が必要なのではないか。参考人質疑や地方公聴会を通じて、率直にそのような印象を抱きました。

 こうした参考人質疑や地方公聴会での貴重な御指摘を踏まえながら、本日は質問をさせていただきます。

 まず最初に文部科学省の方に尋ねますが、教育委員会というのは合議制の行政委員会だということでありますけれども、昨年十二月に取りまとめられました中教審答申、制度見直しに向けた「検討の視点」において、基本的に非常勤の委員の合議体である教育委員会が常勤の専門家である教育長と一体の責任を負うことにより、教育長とは異なる教育委員の役割が不明確になっていると指摘されています。結果、審議が形骸化したり、危機管理能力が不足している事態を招いている、だから、教育長及び教育委員会の権限と責任を明確化するための見直しが必要だ、そういう組み立てになっていたかと思います。

 これだけを見ますと、合議制というシステムそのものが責任の欠如や審議の形骸化を招いているとも読み取れなくはないのかなというふうにも思います。

 ただ、合議制の行政委員会というのは、これは教育委員会に限られたものではありません。都道府県あるいは市町村で若干異なりますけれども、それ以外にも多数存在をしております。選挙管理委員会、公安委員会、労働委員会、さらには農業委員会もございます。これら行政委員会の最大の特色は、首長から独立して職権を行使し、政治的中立性や民意の反映を確保するということにあるというふうに考えます。

 今回、教育委員会という合議制の機関のあり方が、責任の所在を不明確にし、形骸化や危機管理能力の欠如を招いているとするのであれば、これは、教育委員会に限らず、他の合議制の行政委員会全て共通する問題になってしまうのではないかというような疑問も湧いてまいります。

 そこで、この合議制ということについてどのような議論が行われたのかについて尋ねます。

下村国務大臣 それは御指摘のとおりだと思います。現在の教育委員会制度、合議制そのものが問題ではありません。事務局が行う行政事務や所管の学校等の状況について十分な情報を持つ教育長ではなくて、非常勤の教育委員長が代表者であり会議の主宰者であることによって、責任の所在の不明確さ、そして審議の形骸化といった問題が生じているというふうに考えております。

 今回の改正案は、合議制を維持しつつ、教育委員長と教育長を一本化した新教育長を置き、教育委員会の代表者とすることにより、責任の所在の明確化を図るものであります。また、常勤の教育長が教育委員会の主宰者となることによって、教育委員への情報提供や教育委員会の招集が迅速かつ適切に行われ、審議が活性化するものと考えております。

吉川(元)委員 本委員会でも再三指摘をされてきましたけれども、大津市でのいじめ問題で教育委員会の対応に大きな問題があったこと、これは事実です。しかし、深刻ないじめ事案への対応につきましては、先ほどの質疑の中でもありましたけれども、いじめ防止対策推進法において新たな仕組みがつくられたように、重大かつ緊急性を伴う事案には、別個の仕組みを検討することで対応が可能なのではないかというふうにも考えます。

 政府案では、教育委員会に教育行政の執行権が残されたものの、教育委員会を代表する教育長を通じて首長の権限が強化される。しかし、教育委員会も、他の行政委員会と同様に、首長から独立した公正中立な立場での行政執行、民主的かつ慎重な意思決定という合議制機関の特徴やこれまでの伝統を維持した上での改革が必要なのではないかということを指摘しておきたいというふうに思います。

 さて、一回目の参考人質疑、四月十八日だったと思いますが、その際に、三鷹市の教育委員長を務められていらっしゃる貝ノ瀬参考人が、首長が教育について自分の考えが通りにくいという不満を抱いているかもしれないが、教育長や教育委員の側も首長に対する不満はあるのだと述べていらっしゃいました。恐らく御自身の経験を踏まえてのお話だったのではないかと思います。

 例えば、交付税で図書費が措置されても道路の費用に化けてしまう、あるいは、教育委員会が教育論の立場に立って話をしても、首長はどうしても財政論から物事を進める、こんなことが指摘されておりました。貝ノ瀬参考人は、だから総合教育会議での話し合いが大事だということをおっしゃっておられます。

 しかし、前回の委員会で総合教育会議の協議や調整について細かく質問させていただきましたが、形式的には首長と教育委員会が対等の会議ではありますけれども、会議を主宰するのは首長であり、その首長の立場が優位にある、そういう懸念は払拭できませんでした。

 教育委員は首長によって任命されます。条例案や予算案を作成し議会に提出する権限も持っていません。もともと、首長に対しては強い立場にはこれまでもなかったと言わざるを得ません。

 この状況で教育行政への首長の関与が強まれば、貝ノ瀬参考人が指摘していたような、財政論、財政力を重視した教育行政というものが展開をされる、ひいては教育委員会の形骸化が進むことになりかねないと思いますけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

前川政府参考人 四月十八日の参考人質疑におきまして貝ノ瀬参考人から、例えば、交付税措置で措置されている図書費が実際には他の費用に使われているというような発言があったことは承知しております。

 今回の改正におきましては、首長と教育委員会が総合教育会議という公開の場において十分に協議し調整を行うことによりまして、教育政策に関しまして首長の理解がより一層進むことが期待され、参考人から御指摘があったような事例につきましても、むしろ十分な予算措置につながっていくのではないかと考えているところでございます。

吉川(元)委員 ぜひそうあってほしいというふうには思いますが、なかなかそうはいいましても、首長の権限といいますか影響力というのは、やはりこれまで以上に強まるのではないかというような危惧を持たざるを得ません。

 次に、福岡の地方公聴会で九州大学大学院教授の元兼陳述人が指摘した点を紹介しながら質問をさせていただきます。

 元兼陳述人は、全国で千八百七十八ある教育委員会のうち約半数が、九百三十三ですけれども、町村の教育委員会であり、人口が少ない町村では、県やあるいは政令市の教育委員会と違って、事務局のスタッフをそろえるのにさえ大変苦労されているというようなお話がされました。自治体の規模などを勘案せず、一律に教育委員会を論ずるのはどうなのかというような貴重な指摘ではなかったかというふうに思います。

 いずれ、スタッフの乏しい町村の教育委員会では、重要事項を審議する地方教育委員会連絡協議会には必ず教育委員長と教育長が出席するなど、教育委員長の役割というのは、小さければ小さいほど、非常に重要な、大切な役割を果たしているというような指摘もされております。

 元兼陳述人は、この折に教育委員長と教育長を兼任させ、言ってしまえば教育委員長というポストを一つなくしてしまうということは、新教育長に過大な責任を負わせるとともに、教育委員会のキーパーソンを喪失することになるのではないかというような懸念もおっしゃられておられました。政府としてはこの懸念にどのように答えられますか。

前川政府参考人 今回の改正案では、教育委員長と教育長を一本化いたしまして新教育長を置くこととしておりますが、教育委員会は引き続き合議制の執行機関として残しておりまして、教育委員会は、教育長と教育委員の合議体として意思決定を行うこととなるわけでございます。

 したがいまして、教育委員の幅広い知識経験を生かした大所高所からの知見の活用は、引き続き強く期待されるところでございます。

 また、教育委員会の協議会あるいは連合会といった各種会議への対応等につきましては、例えば、新教育長に加えて教育委員も参加するということなどをすることによりまして、教育委員にも一定の役割を分担していただくということも可能でございますので、引き続き、教育委員の重要性は認識しているところでございます。

吉川(元)委員 関連しまして、衆法の提出者にもお聞きをしたいというふうに思います。

 福岡の地方公聴会の元兼陳述人は、衆法については、政府案による教育委員長の喪失にとどまらず、教育委員会制度の廃止によって、教育行政にかかわる教育委員をも喪失するということの問題の指摘が行われました。

 非常勤の教育委員とはいえ、定例会議への出席にとどまらず、これは小さいところも特にそうだというお話を聞きますけれども、学校行事や公開授業、公民館行事や青少年育成活動などさまざまな場面に携わると同時に、町村の教育委員は、これらの活動を通じて、地域の声なき声、サイレントステークホルダーと言えばいいんでしょうか、そういう方の意見も拾い集めてこられております。

 この教育委員をなくしてしまえば、地域から民意を直接反映していくルートというのが途絶えてしまうのではないかという指摘ではありますけれども、この点について提出者はどのようにお考えでしょうか。

笠議員 私も、地方公聴会、福岡に行かせていただきましたので、元兼陳述人の御意見を承りました。

 私どもの案では、首長を教育行政の最終的な責任者としております。現行の教育委員会制度の中では、教育行政のこの最終責任者が責任体制が非常に不明確であるというと、民意を反映し、時代に応じた教育行政を行うことが不十分であったというふうに考えております。

 一方、本法案のもとでは、住民による選挙で選ばれた首長がみずからの責任で民意を酌み取り、そして教育行政を運営していくことが期待されるものであり、現行の教育行政よりも民意が反映されたものになるというふうに考えております。

 そしてまた、御指摘があったような、教育委員は、学校の儀礼的な行事であったり公開授業、運動会や文化祭等の教育行政上の諸活動に出席し地域の声を拾っていたが、教育委員会が廃止をされると教育委員は存在しなくなるため、民意を反映するルートが喪失されるのではないかという御意見があったというふうに承知をしておりますが、これについては、学校行事等の教育行政上の諸活動には、首長、そして教育長、教育部局の職員等が参加することが予定をされ、それらの者によって民意を十分に酌み上げることは可能であると考えられるため、民意を反映するツールを喪失することになるという御懸念は当たらないというふうに考えております。

吉川(元)委員 首長が民意を反映しているということだろうと思いますけれども、ただ、選挙で勝てば何でも白紙委任ということではありませんし、さらには、首長によってはいろいろな考え方を持っておられる方がいらっしゃるということも、当委員会の中で何度か指摘をされたというふうに思います。

 首長が教育の全体的な統括をすべきというふうに述べられた参考人であっても、そういうふうに何でも白紙委任をしているわけではないんだということも言われておりますし、また、いろいろな行事にもちろん教育長も首長も出られるんだろう、あるいは事務局の方も出られるんだろうと思いますけれども、今、教育委員の方が来られたときに、ああ、この方は教育委員なんだということでその立場でお話を聞くことと、首長に直接言う方もいらっしゃるかもわかりませんけれども、恐らくそういうことでいうと、私自身は、これまでのルートというものが一つ大きく途絶えてしまうのではないかというような危惧も持っております。

 いずれにしても、これは、次回以降また機会があれば質問させていただきたいというふうに思います。

 次に、政府案について文科省の方に尋ねます。

 現行制度では、教育長は、教育委員会が教育委員の中から任命をする、そして、教育委員会の指揮下のもとで全ての事務をつかさどるということになっております。したがって、これは十分か不十分かということは別にしても、制度上は教育長は教育行政の事務の責任者であるものの、教育委員会によって常にチェックをされる仕組みというふうになっているんだろうと思います。

 ところが、政府案では、教育長は首長が任命し、教育委員会を代表する。そうしますと、これまでの教育長よりもさらに大きな権限を持った新教育長が生まれるわけですけれども、これに対するチェック機能というのは現行制度以上に求められることになるというふうに考えますが、政府案ではこれはどのように応えていることになるんでしょう。

前川政府参考人 改正後の制度におきましても教育委員会は合議制の執行機関でございまして、執行機関としての意思決定はその合議によって教育委員会が定めるわけでございまして、教育長は、その教育委員会の意思のもとで仕事をするということになるわけでございます。

 ただし、今回の改正案では、教育長の権限は強いものとなるわけでございますので、首長や議会のチェック機能を強化するという観点から教育長の任期を首長よりも一年短い三年としているほか、総合教育会議という公開の場で首長が民意を反映した方向性を示すことによりまして、教育長の歯どめともなると考えております。

 また、教育委員による教育長のチェック機能を強化するという観点からは、教育委員の三分の一以上の委員から会議の招集を請求された場合には、教育長が遅滞なく会議を招集しなければならないこと、さらに、教育長が教育委員会から委任された事務の管理、執行状況について報告をしなければならないことなどを規定しております。

 さらに、教育委員会会議の透明性の向上を図り、住民によるチェック機能を強化するという観点から、教育委員会会議の議事録を作成し、公表するよう努めなければならないとの規定をしておるところでございます。

吉川(元)委員 一義的にはやはり、教育長が進める教育行政については教育委員がチェックをしていかなければならないというふうに思いますし、その意味では、教育委員の役割というのは今まで以上に重要になっていくんだろうと思います。

 この教育委員、レーマンコントロールという趣旨に沿って、専門性を有していない一般の方々が選ばれるということになっております。市民目線で教育長の事務をチェックし、市民目線から地域の民意を教育行政に反映する観点から、レーマンコントロールというのは大変大切な考え方だと思います。

 一方、専門性を持った教育のプロフェッショナルとしての新教育長、しかも大きな権限を持つ新教育長、これは事務局も含めてですけれども、果たして市民目線の教育委員だけで十分に対応できるのかという問題も当然出てくるのではないかというふうに思います。

 事務局が出してきた資料やそういうものを見たときに、いや、これは違うのではないかという、その専門性も生かしつつ、そうしたチェックができるような、レーマンコントロールの趣旨を生かしつつではありますが、そういう委員の選出をする規定も必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

前川政府参考人 御指摘のとおり、教育委員会における審議を活性化し、教育長及び事務局に対するチェックを行うという重要な役割を果たすためには、教育委員に、教育に関する高度な知見を有する者を選任することも有効な方策であると考えております。

 この点、昨年十二月の中央教育審議会の答申におきましても、「現場の情報や専門的知識を有する教育長及び事務局に対しても臆することなく発言できるよう、専門家を含めて任命することも審議を活性化するために有効と考えられる。」と提言されております。

 今回の改正案ではその資格要件は変更しておりませんけれども、このような趣旨を踏まえまして、今後、教育委員の人選でありますとか、また、人数、これは条例で五人を超える数にすることもできるわけでございます。その人数の工夫を一層進めるよう促してまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 私もその人数については、今、教育長も含めて五人で、小さいところでは三人以上の委員選出ということになっておりますが、やはり、今の現行の定数だけでは少し不足をするのではないかというようなことも感じております。

 少し時間の関係がありますので質問の順番を変えさせていただいて、衆法提出者に尋ねたいというふうに思います。

 衆法提出者に伺います。衆法における教育長というのは、政府案とは異なって、法案の第十条において、「地方公共団体の長の指揮監督の下に、当該地方公共団体における教育に関する事務をつかさどる。」と規定をされております。地方行政機関では、これに比較的似ているということでいうと、副知事やあるいは副市長などがこれに似ているといえば似ているのかなというふうにも思います。

 ただ、その場合も、その職務の重要性や住民生活との深いかかわりから、議会の同意を得て選任することが適当とされております。

 しかし、衆法においては、その任命に当たって議会の同意を必要としていないというふうに承知をしておりますが、その理由をお聞かせください。

鈴木(望)議員 お答え申し上げます。

 教育長は、我が方の案では、その職を地方公務員法上の特別職となるものと整理をしておりますので、他の首長部局の長とは取り扱いが異なる部分はあるものの、基本的には、数ある首長部局の長のうちの一人という位置づけでございます。

 したがいまして、首長が教育長を任命するに当たりまして、議会の同意を要することはしていないところでございます。

吉川(元)委員 ちょっとそれに関連して、閣法の方でもお聞きしたいと思います。

 教育長という名前が同じでも、もちろん、それぞれ役割は衆法と閣法では異なっておりますから単純に比較をすることは余り意味がないかもしれませんが、あえて質問させていただきます。

 政府案においては、議会の同意を得て首長から任命される教育長は、特別職公務員という理解でよろしいんでしょうか。また、その理由もお聞かせください。

前川政府参考人 地方公務員法第三条第三項におきまして、就任に当たり議会の同意によることを必要とする職は特別職とされているところでございます。

 改正案における教育長は、首長が議会の同意を得て直接教育長として任命することとされていることから、当然、特別職に該当することとなるということでございます。

吉川(元)委員 それでは、また再び衆法の提出者にお聞きいたします。

 先ほど取り上げました副知事や副市長は、最高の補助機関であり、首長との信頼関係が必要との観点から、任期の期間中であっても一方的に解職をできるということになっております。ただし、その役割の重要性から、任命に際しては議会の同意を必要としております。

 衆法における教育行政を代表する首長が、個別の教科書選択や個別の教育人事に関してゼロから一〇〇まで全てかかわるというふうには思えませんから、事務をつかさどる教育長ではありますけれども、非常に重要な大きな役割を担うものと推察をいたします。

 そこでお聞きをしたいのですけれども、先ほども少し御答弁ありましたが、教育長の法的な位置づけで身分はどのようなものなのか、それから、議会の同意を得ずして首長が任命でき、自由に解職ができるようなそういうものは、地方の行政機関においてほかにどのような存在があるのか、お聞かせください。

鈴木(望)議員 お答えさせていただきたいと思います。

 民主、維新の法律案では、教育長は、先ほども申し上げましたように、首長の補助機関であり、首長の指揮監督のもとで教育に関する事務をつかさどるものであり、首長が任命することとしておるところでございます。そして、教育という行政分野の特殊性に鑑み、教育長の職を、地方公務員法上の特別職となるものと整理をしております。

 そこで、任期を四年とする。二番目に、資質要件について、人格が高潔で、教育に関し専門的知識及び経験並びに高い識見を有することを法定をしている。三番目に、教育基本法及び学校教育法に規定する教育の目的や目標が十分に達成されるよう、その職務に従事することを法定していること。

 三点ほど申し上げましたけれども、この三点について、他の首長部局の長とは異なる取り扱いとしているところでございます。もっとも、教育長を特別職と整理したことにより、他の首長部局の長と取り扱いが異なる部分は確かにございますけれども、基本的には、数ある首長部局の長のうちの一人という位置づけでございます。

 また、お尋ねの、特別職であって、首長が任命、解職するに当たり議会の同意を要しないものの一例といたしましては、地方公営企業の管理者及び企業団の企業長があるところでございます。

 以上です。

吉川(元)委員 新しい教育長というのは非常に大きな権限を実際上持つということでありますし、その点からいうと、議会の同意なし、他の部局長と同じだというお話ですけれども、やはり議会の同意というのは必要なのではないかというふうにも思いますし、また、恐らく服務規定や守秘義務については地方公務員法の規定が準用されることになるんだろうというふうに思いますけれども、任期中に自由に解職されてしまうということで、身分の不安定性、これも若干気になるところであります。

 また次回以降、少しこの点についてはお聞きをしたいというふうに思います。

 次に、政府案の方についてお聞きをしたいと思います。考え方の問題ということではなくて、少し法案のたてつけについてひっかかる点があったので、お聞きいたします。

 具体的には政府案の第十三条二項ですけれども、教育長に事故があるとき、または教育長が欠けた場合について、「あらかじめその指名する委員がその職務を行う。」とされております。教育長は、教育委員会を代表する、専門性を備えたプロフェッショナルです。しかも常勤ということになっております。ところが、事故などで教育長が欠けた際には、必ずしも専門性を有していない、しかも非常勤の委員からかわりを選出するということになっている。

 これは、今まで以上に専門性を備えたプロフェッショナルな資質が求められる教育長ということで、果たしてこれでいけるのかという点について若干矛盾を感じるわけですけれども、この点についてどのように考えておられるのか、説明を求めます。

前川政府参考人 現行制度におきましては、教育長の代理は教育委員会が指定する事務局の職員が行うものとされているわけでございますが、今回の改正案では、教育長の代理は教育長の指名する教育委員が行うものとしております。

 これは、新教育長につきましては、教育委員会の現行の委員長の役割も果たし、教育委員会の代表者となることから、その代理は委員の中から選任することとしたということでございます。

 その際、非常勤の職務代理者がみずから事務局を指揮監督して事務執行を行うことが困難な場合には、その事務を事務局職員にさらに委任することが可能であるということでございます。

吉川(元)委員 今、さらに委任するということですけれども、果たしてそれがいいことなのかというのは、私は非常に疑問を感じざるを得ません。

 次に、教育長の資格要件についてお聞きをいたします。

 政府案では四条一項において、人格が高潔で、教育行政に関して識見を有するものを、議会の同意を得て首長が任命するということになっております。教育委員会を代表して教育行政を執行する教育長ですから、その資質や専門性を担保することは重要になります。実際、中教審の十二月の答申でも、教育長の資格要件の明確化の必要性が盛り込まれております。また、参考人質疑や地方公聴会でも、専門職基準あるいは任用基準の必要性が指摘されております。

 そこで伺いますが、中教審答申でも盛り込まれた資格要件がなぜ法案に反映されなかったのか、また、資格要件についてどのような認識をお持ちなのか、お答えください。

下村国務大臣 現行法においては、教育長の資格要件については、教育、学術、文化に関し識見を有するものという教育委員としての要件のみが法定されており、一般職としての教育長の要件は定められてはおりません。

 昨年十二月十三日の中教審答申においては、「教育長を、公立学校の管理等の教育行政の責任者とすることに伴い、今までにもまして、教育長の資質や専門性の担保が重要となることを踏まえ、教育長の資格要件を明確化することが必要である。」とされております。

 この提言を受けまして、改正案においては、教育長の資格要件について教育委員とは別の条文を設けることとしておりましたが、教育委員会事務局や教職員の出身者だけでなく、教育行政を行うに当たり必要な資質を備えていれば幅広く該当するよう、「教育行政に識見を有するもの」という規定にとどめるということにしたものであります。

吉川(元)委員 時間が来ましたので、以上で質問を終わります。

    ―――――――――――――

小渕委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、来る十四日水曜日午前九時、参考人として京都市長門川大作君、常葉大学教職大学院教授小松郁夫君及び大津市長越直美君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十二分散会


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