衆議院

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第17号 平成26年5月14日(水曜日)

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平成二十六年五月十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 道孝君

      池田 佳隆君    小此木八郎君

      大野敬太郎君    鬼木  誠君

      勝沼 栄明君    神山 佐市君

      菅野さちこ君    木内  均君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      小林 茂樹君    桜井  宏君

      新開 裕司君    冨岡  勉君

      中村 裕之君    永岡 桂子君

      野中  厚君    馳   浩君

      比嘉奈津美君    星野 剛士君

      宮内 秀樹君    宮川 典子君

      菊田真紀子君    細野 豪志君

      吉田  泉君    遠藤  敬君

      椎木  保君    中田  宏君

      三木 圭恵君    三宅  博君

      中野 洋昌君    柏倉 祐司君

      井出 庸生君    宮本 岳志君

      青木  愛君    吉川  元君

      山口  壯君

    …………………………………

   議員           吉田  泉君

   議員           笠  浩史君

   議員           鈴木  望君

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  門山 泰明君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          前川 喜平君

   参考人

   (京都市長)       門川 大作君

   参考人

   (常葉大学教職大学院教授)            小松 郁夫君

   参考人

   (大津市長)       越  直美君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十四日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     大野敬太郎君

  桜井  宏君     勝沼 栄明君

  野中  厚君     池田 道孝君

  宮内 秀樹君     星野 剛士君

  遠藤  敬君     三木 圭恵君

  椎木  保君     中田  宏君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     野中  厚君

  大野敬太郎君     神山 佐市君

  勝沼 栄明君     鬼木  誠君

  星野 剛士君     中村 裕之君

  中田  宏君     椎木  保君

  三木 圭恵君     遠藤  敬君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     桜井  宏君

  中村 裕之君     宮内 秀樹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)

 地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(笠浩史君外三名提出、衆法第一六号)


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び笠浩史君外三名提出、地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、京都市長門川大作君、常葉大学教職大学院教授小松郁夫君及び大津市長越直美君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。両案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位から一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御了承ください。

 それでは、まず門川参考人にお願いいたします。

門川参考人 おはようございます。京都市長の門川大作です。このような貴重な機会をいただき、ありがとうございます。

 私は、京都市の教育長等を経て、今市長を務めさせていただいています。四十年にわたって教育行政にかかわってきました。

 京都は、かつて、厳しいイデオロギー対立が学校にも持ち込まれる困難な時代がございました。しかし、政治的中立を大切にするレーマンコントロールのもとでの教育委員会が大きな役割を果たしてきました。

 そして、学校現場、地域、PTA、教育委員会が懸命になって取り組み、この二十数年、学校教育が大きく改善され、公教育再生のモデルとの評価もいただいております。

 これは、一人一人の子供を徹底的に大切にする、開かれた学校づくり、保護者、地域の参画を得る、行動するPTA、PTA活動の活性化、さらに、大学から経済界まで子供のために参画いただく、何よりも、学校現場の校長先生初め教職員のモチベーションを高めていく、そのための条件づくり、これを教育行政として尽くしてきた、この成果であると考えております。

 なお、これまでの本委員会で、制度論についての議論は深まっているようにお聞きしております。したがいまして、私から、まず京都市の学校改革、レーマンコントロールのもとでの教育委員会が果たしてきた役割、これらについて述べ、今回の政府案、私はいい案だと思います、それについて御意見を申し上げたいと思っています。

 まず、かまど金の精神であります。

 悠久の歴史を誇る京都にとりまして、明治維新は大変な危機でございました。人口は三分の二に減る。都の地位を失う。その中で、先人たちは、町づくりは人づくりから、子供さえしっかりと育てれば京都の未来は明るいと考え、行動されました。番組と呼ばれる自治組織ごとに、日本で最初の六十四の地域制の小学校を地域住民がつくり上げられました。明治四年に文部省ができ、明治五年に学校制度が発足しました。それに先立つ明治二年のことであります。

 子供のいる家も、おられない家も、かまどのある家はみんなお金を出す、あるいは、かまどの数ごとに出し合った。そして、学校をつくり、学校を運営する。そんな精神であります。自分の子供だけいい学校に入れよう、そんな考えではございません。地域の子供を地域で育てる、そのために、ともに汗をかいて行動する、知恵も出し合う、こういう考えであります。

 これは、明治維新の当時、京都だけではなかったと思います。日本じゅうが子供を育てるために総がかりで努力した、そして今の日本がある、このように思います。

 このかまど金の精神を徹底的に呼び戻そう。京都市では、家庭、地域に開かれた学校づくりを、この間、徹底して進めてまいりました。その象徴的なものが、学校運営協議会、コミュニティースクール、それから地域、保護者、子供も含めた学校評価制度の充実、公開であります。

 まず、学校運営協議会につきましては、京都方式と呼ばれておりますけれども、単なる学校への御意見番だけでなしに、ともに汗して子供のために行動していただくボランティア団体でもあります。例えば、安全部会、文化芸術部会、国際交流部会など幾つもの部会が設けられ、活動します。ある学校では、百四十人の委員が六つ、七つの部会で行動する、そういうことが行われています。

 現在、全国で千五百余りの学校に学校運営協議会が設置されておりますが、そのうちの二百強が京都であります。来年度中に全ての小学校に設置します。

 また、学校評価につきましても、みずからを振り返り、相手を評価し、ともに高め合う、こういう評価であります。子供は、予習、復習していますか、同時に、先生の授業がわかりますか、親は、朝御飯を食べさせていますか、参観日に行っていますか、子供は学校に喜んで行っていますか。みずからを振り返り、子供のためにともに高め合う、こういうことが大事だというふうに考えて行っております。

 また、学校統合のことについても触れておきたいと思います。

 先ほど申しましたように、地域が学校をつくった。したがって、京都の学校統合は困難をきわめるだろうと言われていました。私どもは、徹底して、小規模校のよいところも問題点も説明する、解決策は子供のために地域が考えていただく、ボトムアップの学校統合ということでやってきました。おかげさまで、七十九の校園が二十に統合する、画期的な統合が進んでおります。これらも、地域を信頼し、教育行政が説明責任を果たす、そして、市民参加の成果であると思います。

 そこで、私は、通学区域の自由化は断固として京都では行わない。自分の子供をちょっとでもいい学校に入れよう、そういう発想ではありません。自分たちの地元の学校をみんなでよくしていく、こういう取り組みをしなければならない。そのことによって、地域のきずな、コミュニティーの活性化にもつながり、安心、安全の地域づくりにもつながります。

 また、教育委員会の権限を可能な限り学校に、校長に移譲してきました。校長裁量権を拡大する、そして積極的な地域、保護者の参画を得る。そのことによって現場のモチベーションが高まります。

 さらに、学力テストについても触れておきたいと思います。

 今、学力テストの結果を学校ごとに公表する、こんなことが議論されています。私は反対であります。今の日本社会で、家庭の経済力、地域の経済力と学力は、残念ながら連動しております。それを結果だけ公表しても余り意味がありません。

 京都市では、小学校三年生から中学校三年生まで、四教科、五教科、毎年、全生徒の学力テストをやっています。その結果は、全ての子供にしっかりと、どこが課題であるかわかるように返しています。復習教材も返します。そういうことを積み重ねる、そして教育委員会が学校ごとの課題を把握する、そして対策を講じる、こうしたことを粛々とやっていくことが大事であると思います。

 高等学校教育、あるいは、障害のある子供の教育。

 例えば、障害のある子供の教育。高等部に職業学科をつくりました。そして、三年間に三十週間、企業等で学びます。おかげさまで、この十年間、障害のある子供の就職率が九割を大きく超えています。これは、学校だけの力ではない。親も意識が変わる、同時に企業が協力していただく、総がかりでやればそういうことができます。毎年一つずつ授産施設をつくっていく、それでどんどん就職していける。こういう地域力、企業の力でやっています。

 そうしたことを考えたときに、私は、教育委員会を独立した執行機関として維持していく、そして、政治的な対立を持ち込まない、その時々の為政者、市長、知事が学校運営の中身まで関与はしない、こうした制度が大事であります。

 同時に、総合教育会議で中長期のビジョンを、市長の責任において、教育委員会の意見を聞いてつくる。地方自治体は二元代表制ですので、京都市では議会の議決も得ております。

 同時に、いじめ等、危機管理の体制についても、今回の政府案では、しっかりとした体制がよりとれるようになっていると思います。

 結びに、お願いであります。

 そうした改革を、地方が、教育委員会と現場と首長によって進めていかなきゃならない。そのときに、今、格差の問題が大変であります。家庭の経済力、さらに、地域、地方自治体の経済力、この格差が非常に深刻であります。

 そんな中で、義務教育は国の責務であります。同時に、成長戦略ということが言われていますが、最大の成長戦略は、私は、子供を育てること、このことだと思います。

 ぜひとも、地方自治体がいよいよしっかりとした教育を充実させていけるように、また、いじめ等のないしっかりとした体制ができるように、地方も頑張ります、国においても、予算等の体制についてより一層の御尽力を賜りたいと思います。

 どうぞよろしくお願いします。(拍手)

小渕委員長 ありがとうございました。

 次に、小松参考人にお願いいたします。

小松参考人 おはようございます。常葉大学教職大学院教授の小松と申します。

 時間が限られておりますので、用意したペーパーをもとにして、かいつまんで私の考えを申し上げたいと思っています。

 私は、論点として六つ整理をいたしました。

 一つ目は、教育行政の政治的中立性ということについてであります。

 第一回目の参考人として出ました大森先生、それから二回目の中嶋先生、私も日本教育行政学会という学会で昨年の秋に今回の法改正等についての議論もいたしましたけれども、学会の中でもいろいろな意見があるんだということを御理解いただければというふうに思っております。

 この政治的中立性については、たびたび、首長さんが教育や教育行政についてアンタッチャブルでなきゃいけないというふうな形で語られるということが少なくありませんけれども、私は、何も語らないという意味での中立性であってはいけない、むしろ、少なくとも、民意で選ばれた首長が教育や教育行政について積極的に施政方針の中で明確にして、実施すべき行政を指導する責任と権限があるというふうに考えておりますし、また、中立性が、足して二で割るような中立性であってはいけない。重要なのは、議論の透明性を高め、情報を開示し、また、住民が適切に判断できるよう、できるだけたくさんの判断材料を常に用意して、わかりやすく提供することであるというふうに思っております。

 二つ目は、合議制という問題であります。

 合議制は、確かに、多様な民意を幅広く集めて衆知を働かせるという点では大変すぐれた長所がありますけれども、今日のように社会の変化などに柔軟にかつ迅速に対応していかなきゃいけないときにおいては、時間がかかり過ぎまして、必要な改革を強力に推進できないという弱点があるというふうに私は思っております。意思決定の責任の所在、施策の実行に伴うリーダーシップの曖昧性という欠点もあるのではないか。

 そういう点でいうと、このたびの教育長の権限強化案は、私は、求められる教育改革を積極的に推進する上では有効な改正案ではないかというふうに評価しております。

 三つ目は、新教育長職の創設についてであります。

 私も、東京のある区で四年間、教育委員をしておりましたけれども、その区では、四年間、教育長以外の四人の委員が必ず一回は教育委員長になるという慣例がありましたけれども、私は当時大学の教師をしておりましたので、議会に何日も出るということが不可能だということを申し上げて、結局、二回委員長職務代理はしましたけれども、教育委員長はしませんでした。

 そこで、教育長職、教育委員長職というものを改めて見ていて、どうも制度上の権限が実態に合っていないのではないか、これは早急に改革をする必要があるというふうに認識をしております。

 そういう面でいうと、今回の一緒にするというのは、私は評価していいのではないかと思いますが、全ての教育委員会にすぐれた人材を用意することが本当にできるだろうかというふうなことを心配しております。

 そういう面では、既に文科省からの答弁もあったように聞いておりますが、新教育長職について、具体的な職務内容を明確化する、研修システムを整備する、さらには、教育長を支える指導主事の事務局体制の整備と充実が急務であるというふうに思っております。

 昨年度末に、私は、文科省から研究費をいただいて、指導主事の任用や研修に関する実態調査をさせていただきました。調べてみますと、自治体によって指導主事の状況はばらばらでありまして、任用の方法、研修の内容、求められる資質能力について、多くの課題があるというふうに思っております。

 現在私が勤めております教職大学院、私は二校目なんですけれども、どちらでも、スクールリーダー養成という点で、将来の指導主事になる人たちの養成をしておりますけれども、まだまだ教職大学院の数も足りませんし、教職大学院自身の中にも幾つか改革をしていかなきゃいけない課題があるというふうに思っております。

 また、日本は、諸外国と比べて、こうしたスクールリーダーたちの処遇が極めて悪くて、指導主事のなり手がないというふうな、忙しいばかりで給料が下がったりというようなことになりますので、私は、むしろ、こういうスクールリーダーになるべき人たちの処遇の改善をしていかないことには、すぐれた人材が確保できないのではないかというふうに思っております。

 四つ目は、総合教育会議ということについてであります。

 私は、教育行政の分野が、そのほかの行政分野と分離されて施策の企画や実施がなされるべきではなく、むしろ、予算も含めて、総合的な行政施策として強力に推進されるべきものだというふうに思っております。

 また、教育行政も、いわゆる経営学のPDCAのマネジメントサイクルを意識した施策を行うべきであって、基本的には、全ての地方公共団体で中長期的な教育振興計画あるいは教育ビジョンを明示して、行政の説明責任を果たしていくべきであると思います。

 そういう面では、総合教育会議というものをきちっと設置して、財源を握っている、あるいはその町のリーダーである首長さんと教育委員会が積極的に議論をする場が設定されるという点では、むしろ教育委員会にとっては、首長さんと自分たちの考えを議論する非常にいい機会ではないかなというふうに思っています。

 一般的に、教育行政は、どちらかというと、お金のことについての議論は差しおいてという議論が多くて、私が教育委員のときも、学校を訪問するときに、教育長さんから、小松先生、学校に行ってもいいけれども、お金の話はしないでくださいというふうなことを、くぎを刺されたようなこともありました。

 私は、文部科学省も含めまして、もう少し積極的に教育予算、教育費についての議論をすべきであり、その総合教育会議も、そういう場として利用すべきだというふうに思っております。

 五つ目には、野党案の教育監査委員会であります。

 私は、長いこと、イギリスの教育改革を比較研究してまいりました。と同時に、一九八〇年代から注目されております新公共経営論についての考え方に注目をして、今後は、行政は、事前規制から、事後チェックあるいは評価、監査機能を重視した改革を進めるべきではないかというふうに考えております。

 その点で、野党案の教育監査委員会的な組織や機能を新たに採用することは、今後の教育行政改革の中で十分に検討に値するものというふうに思っております。

 私は、文部科学省が出しました学校評価ガイドラインの策定にもかかわりましたけれども、残念ながら、この学校評価が教育改革、学校改革に十分に活用できるところまでまだブラッシュアップできておりません。今後は、このシステムをより精緻なものにし、大事なことは教育委員会に報告することになっておりますので、教育委員会の側も、各学校から上がってきた学校評価をしっかりと活用して、学校と一緒になってその地域の教育の質の向上ということを、上げていく必要があるというふうに思っています。

 最後、六点目として、教育委員会の規模の問題であります。

 都道府県においても市町村においても、人口規模等、学校数等において余りにも差があり過ぎます。ぜひ、今回の改正の中でも、規模等に応じた改革案を考えていくべきではないかなというふうに私は思っております。

 以上六点が、私の今回の法改正についての考えであります。

 最後に、もう少し大きなことで三点ほど申し上げたいと思っております。

 一つ目は、教育行政改革についての情報公開の積極的な推進ということであります。

 最近、教育委員会のホームページ等で施策の情報公開が非常に積極的に進んでおりまして、私も、授業等で学生たちに、そういうものをきちっと見るようにというふうに伝えておりますけれども、まずこの部分をしっかり充実させていくことによって、皆さんが議論しやすいデータを提供することが大事であるというふうに思っております。

 そういう面でいうと、文部科学省も含めて、教育に関するデータの開示がまだ十分とは言えないというふうに思っておりますし、全国学力・学習状況調査につきましても、私は早くから実施すべきだというふうに申し上げてきたものですけれども、まだまだこの調査結果の活用が十分になされておらず、単に調査結果の数値だけで一喜一憂するような状況がまだ見られておりますので、むしろ、これは調査でありますので、そこから教育改革、学校改革のものとしていくべきではないかというふうに思っております。

 二つ目は、私は現在、杉並区、横浜市、そして京都市の五つの学校運営協議会やコミュニティースクールにかかわっておりまして、門川市長の地元の京都にも年に何回か会議の出席のために行っておりますけれども、まだまだこの数が十分にふえておりません。

 何が問題かということについて、三点整理いたしました。

 一つ目は、設置者が実はまだまだ消極的である。京都市のような例は極めて例外であって、教育委員会自身が保護者や住民から意見を聞くことにどうも消極的ではないかというふうに思います。

 二つ目は、学校の教職員自身が、このコミュニティースクールに対する理解が残念ながら進んでいないということであります。

 それから三つ目には、住民の側でも、学校が教育の施設であると同時に公の施設であるということについての理解、それをどういうふうに地域の中で活用していくかということについて十分な理解が進んでいない。しかし、私がかかわっているところでは、いろいろな形で新しい教育が展開されておりますので、今後、十分に発展させていく必要性はあるというふうに思っております。

 最後に、教育行政について、大事なキーワードとして、私は、選択と多様性ということを考えております。

 昨年出されました第二期の教育振興計画の中では多様性というキーワードが採用されておりますけれども、多様性をしっかりしたものにするためには、国民の側でそれを選択する能力が育っていないといけないというふうに私は思っております。

 これからは、行政のあり方として、供給者サイドの教育行政ではなく、需要者サイドの教育のマネジメントの発想が大事ではないかというふうに考えております。

 教育そのものも、私は、これからは、授けられる授業ではなくして、子供が受ける受業の時代に移っていくべきものというふうに考えております。

 急いで申し上げましたけれども、以上が私の今回の法改正についての考えでございます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

小渕委員長 ありがとうございました。

 次に、越参考人にお願いいたします。

越参考人 本日は、このような場でお話をする機会を与えていただき、ありがとうございます。

 本来、内々に大津市の御遺族にもお声がけをいただいておりましたが、御遺族から、私の方で御遺族の声を代弁してほしいということで、本日、私がここに伺わせていただきました。

 きょうは、御遺族も傍聴席に来られて、私が意見を述べるのを聞いていただいております。

 御遺族と私は、異なる立場ではありますけれども、大津市の事件、そして大津市の教育委員会の問題にともに携わってきた者として、また戦ってきた者として、同じ見解を有しております。すなわち、現在の教育委員会を廃止して、首長を教育行政の執行機関にするべきだと考えております。

 本日は、御遺族からお手紙や意見書をお預かりしてきました。

 意見書については、御遺族は全ての国会議員の方に既にお送りになられていますので、またぜひごらんいただければと思います。

 お手紙については、今回、この委員会に提出することが認められませんでしたので、私の方で幾つか読ませていただきたい、代読をさせていただきたいと思います。

 今回、私と意見を同じくする大津市の越市長に代読をお願いいたします。

 大津いじめ事件は、単なる人の問題ではありません。制度の問題です。つまり、教育委員会制度の制度的な問題、構造的な欠陥が引き起こした事件だということです。大津で教育長が暴走し、いじめの実態を隠蔽したのみならず、遺族に責任を押しつけたのも、制度がそれを許したからです。教育長の暴走が許され、しかも保護者に責任転嫁もできる、そんな教育委員会制度に、欠陥がない、システムに異常がないとどうして言えるのでしょうか。学校や教育委員会を外部からチェックできる機能が今の制度にはないことが問題です。学校や教育委員会が可視化される制度をつくらなければ、独善的な教育行政をしていても、それを知るゆえは保護者にはないのです。

 大津いじめ事件では、息子が亡くなった後、真相究明をするために、学校、教育委員会に対して、いじめの認識はなかったのか、もっと調査を継続してほしいと訴えましたが、聞き入れられず、滋賀県警の強制捜査に入るまで、それら学校内部で起きていた事実を明らかにする手だてはありませんでした。そして、教育委員会に対して首長が第三者調査委員会の調査を入れることで、やっと暴走にブレーキをかけることができました。

 全国各地で問題となっている教育委員会の隠蔽体質を改めさせるためには、首長に十分な指導監督権限を与え、そして、不都合な真実を教育委員会がひた隠しにすることができないようにすることが必要なのです。可視化させる制度改正が必要なのです。

 御遺族はこのように述べられています。

 私と御遺族は同じ考えでおります。

 今回、私から資料を配らせていただいておりますので、一枚のパワーポイントの資料に従って、御遺族の御見解、お気持ちも踏まえて、私の方から、今の制度の何が問題なのかということをお話しできればと思います。

 まず、今の教育委員会制度において、問題だと考えられることが大きく二つあります。

 一つは、責任と権限の所在がばらばらであること、そしてもう一つが、民意の反映、市民の意見が十分に教育行政に反映されない制度になっていることがあります。

 そのため、教育委員会をなくして、選挙で選ばれた首長が、市民の意見を反映して、市民目線での教育行政を行っていくべきだと考えています。

 まず、責任と権限がばらばらだということについては、特に大津市のような中核市では三つございます。

 まず一つは、教育委員会の中で教育長と教育委員長がいるということ。そして二点目が、これが一番問題ですけれども、首長、市長と教育委員会の間で権限と責任がばらばらである。そして三点目が、県の教育委員会、市の教育委員会の間でも責任と権限がばらばらになっている。この三点がございます。

 まず、一点目の、教育委員会の中で責任と権限がばらばらになっている、これは、このたびの政府案の制度改正でも改正されるところであります。

 しかし、現状は、教育委員会の中でも、非常勤の教育委員長ではなくて、常勤の教育長が教育委員会をコントロールしているというのが実態であります。したがって、これは現状追認にすぎないと言えます。

 しかし、一番の問題は、政府案では、責任を明確化するということが目的であるにもかかわらず、一番大事な首長と教育委員会の責任の分配、ここに手がつけられていないということであります。

 私は、平成二十三年十月十一日に大津市立の中学校二年生がみずから命を絶たれて、そして、その次の平成二十四年一月に市長になりました。

 そして、二月に御遺族が訴訟を提起され、七月に、大きなニュースとなり、県警の捜査が学校や教育委員会に入りました。そして、私は、県警が押収した段ボール箱十何箱という資料を、県警からコピーをもらいました。

 そして、それを市長部局で検討したところ、いじめの問題というのは、それまで教育委員会の問題ですけれども、訴訟が起こされれば、教育委員会を被告にすることはできない、市長が被告になります。そういった意味で、最終的に権限を負うのは市長です。その市長に対して、教育委員会はほとんど、県警で押収されたその資料というものを市長にも提出していませんでした。もちろん、御遺族にも開示をしていませんでした。

 そこで、私は、教育委員会ではなくて、市長のもとでもう一度調査をやり直す必要があるだろうということで、第三者調査委員会を立ち上げて調査を行いました。そして、それまで明らかになっていなかった事実が明らかになりました。

 このように、教育委員会は、最終的に、今、責任をとらないという体制になっています。そしてまた、世論また市民の意見というのも、選挙で選ばれる首長とは違って、教育委員会には届きにくい体制になっています。これが、私は、大津市の教育委員会が批判された隠蔽体質を生んでいる、無責任体制を生んでいる制度的な要因だと思っています。

 もちろん、大津市の教育委員会は当然悪いです。これは大津市教育委員会の問題でもあります。しかし、いじめの法律が成立した後も、全国いろいろなところで同じ問題が起こっています。アンケートを開示しない、調査をしない、また、第三者調査委員会を立ち上げても公平な人選がなされない。

 御遺族は今、このことについて、ほかの自治体でもさまざまな活動をされています。こういった実態は、大津市だけではなくてほかの自治体でも続いている。これはもはや大津市だけの問題ではなくて制度の問題である、そのように考えています。

 また、市の教育委員会、県の教育委員会、これは今回論点が少し違いますけれども、処分権限、人事権が県の教育委員会にあるということがございます。

 これも私の経験に沿って申し上げますと、私は、この大津のいじめの事件で大変多くの御批判を私自身受けました。そういった中で、秘書課に寄せられた電話だけでも百三十七件ほど、私に対して、市長に対して、当該中学校の校長を処分すべきだ、担任を処分すべきだ、また、教育長を処分すべきだ、そういう意見が電話だけでも百三十七件寄せられました。

 しかし、まず、教育長を処分する権限もありません。また、教育委員会事務局を処分する権限もありません。そして、校長やまた担任を処分する権限もありません。

 特に、校長や担任は、大津市の教育委員会でもなく、滋賀県の教育委員会が処分することになります。しかし、市民の皆さんの意識としては、大津市立の中学校なんだから市長が校長を処分するだろう、市長が何とかするべきだろう、そういう御批判また御期待が選挙で選ばれた私に寄せられていたと感じております。

 最後に、民意の反映ということについて少し述べさせていただきます。

 こちらについては、いじめの事件を離れても、私は、もっと市民の意見をその地方自治体の教育行政に反映すべきだ、そして、市民の意見を聞くのは選挙であると考えています。地方で問題になっている、大津市でも実際に問題になっている、学校選択制をするのか、また中学校で給食をするのか、そういった問題について、しっかりと市民の意見を選挙で選ばれた首長を通じて反映していくべきだと考えております。

 そういった中で、政治的中立性ということが言われます。しかし、国との関係において、私は、これは矛盾がある、おかしいと思っています。国においては、今も下村大臣という立派な大臣、そして政治家が大臣をやっていらっしゃいます。なぜ地方だけ政治家が教育行政にかかわることができないのか。

 さらに申し上げると、地方の教育、特に小中学校の教育は、指導要領で何を教えるかということが決められています。もし政治的中立性が求められるとすれば、何を教えるか、それが一番大事です。しかし、それは国で政治家が決めています。一方で、地方で、大津市で勝手に、大津市はもう国語しか教えません、そういうことはできません。教える内容は決まっている範囲で、市民の意見をもっともっと地方の教育行政に反映していくべきだと考えております。

 また、こういった政治的中立性、それを担保するための手段として、例えば教科書選定については地方でも独立の委員会を設ける、また地方にある教育振興基本計画等で継続性を担保する、そのような手段もあると考えております。

 したがいまして、教育委員会制度については廃止をして、首長が地方の教育行政を行うべきだ、これが私の意見であり、また大津市のいじめ事件の御遺族の意見であります。

 以上でございます。(拍手)

小渕委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本ともひろ君。

山本(と)委員 皆様、おはようございます。

 本日は、門川参考人、小松参考人、越参考人と、三名の参考人の皆様、当委員会の地行法改正の審議に御参加をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は自由民主党の山本ともひろと申します。本日はどうぞよろしくお願いをいたします。

 早速ですが、私は今、選挙区、神奈川四区というところでございまして、横浜市栄区、鎌倉市、逗子市、葉山町が私の選挙区で、そこが地元で日々活動をしているんですが、実は私は、そこが地元ですが出身地ではございませんで、私の出身地は京都でありまして、生まれ育ちは京都なんです。きょうは参考人で門川京都市長にお越しいただいて、よもや国会で私と門川市長がこのような審議をするとは私も夢にも思っておりませんで、大変光栄なんです。

 きょうは三人の参考人に来ていただいているんですが、そういった御縁もございますので、まずは門川参考人にお聞きをしたいと思います。

 どういうことかといいますと、私は、今申し上げたとおり、京都生まれで京都育ちです。私の小学校は京都市立明徳小学校、中学は京都市立洛北中学校と、ずっと京都市の市立の、公立の教育を受けて育ってまいりました。

 御案内かもしれませんが、京都というのは、イデオロギー対立といいますか、そういった側面が随分強くあった時代もありますし、私は昭和五十年生まれでございますが、私の小学生時代、中学生時代を振り返ってみましても、その当時、私も小学生、中学生、子供でしたけれども、そんな私でも、あれっと思うようなことが実はよくありました。

 例えば、学芸会。本来であれば、いろいろな劇をみんなで楽しくつくって、それをみんなに披露する、そういった楽しい場でありますが、どうも、原爆の問題であったりとか戦争の問題であったりとか、そういった劇がなぜかやたら多く演じられたり、そういったこともございましたし、そういう意味合いでは、イデオロギー対立がある、そういった地域性。

 もちろん、京都は別に他の市町と特段変わりもありませんので、当然、他の地域でいじめがあれば、京都にもいじめ問題はございます。京都特有のそういったイデオロギー対立、あるいは、これは全国どこでも起こり得る、また起きているいじめの問題、そういう問題も抱えている京都で、今回、地行法の改正の中で、今までのいろいろなことを踏まえて、よりいい制度にしていこうと、みんなで議論をしているわけでございます。

 そういった中でも、その京都の特殊性、そういったところも踏まえて、イデオロギー対立、いじめの問題等々で、京都というところは、教育委員会と首長と、どういった役割をお互いに行って問題を解決してきたのか、処理をしてきたのか、対応をしてきたのか、お聞かせいただければ大変ありがたいです。

門川参考人 山本議員の御質問にお答えします。

 ボーイスカウト等も活発にされておりまして、こうした場で私も答えさせていただくのを光栄に思います。

 冒頭にも説明しましたように、京都は非常にイデオロギー対立が厳しかった。同時に、これは私はいいことだと思うんですけれども、今も議会は極めて審議が活性化しております。大都市で初めて通年議会になりました。地方自治体は二元代表です。そして、すばらしい政治家が活発な活動をされます。これは民主主義が機能している町だな、このように思いますし、私もいい意味での緊張感を持って仕事に尽くしております。

 もちろん、今、市民に選ばれた市長として、もちろん教育長時代も、議会の承認を得て任命された教育長として、議会に対しても市民に対しても責任を負うのは当然であります。

 ただ、私は、選挙で選ばれるということは非常に大事なことでありますけれども、選挙というのは五十一対四十九で選ばれる。選ばれた者が全ての民意を代表しているわけでもない。そして、四年ごとに選挙が行われる。学校運営というのは、安定性、継続性があり、政治的中立というのは非常にわかりにくい言葉でありますけれども、その時々の為政者が教育内容まで、子供の大事な学校運営にまで介入を余りしない。一定の距離を置いて、首長が議会の承認のもとに任命した教育委員が、教育長が責任を持つ。

 そして、私は思うんですけれども、現行制度のもとでも、首長がしっかりと覚悟して、あらゆる法律を遵守して、その町の教育を理想に近づけられると思います。ないのは予算だけであります。予算は国でよろしくお願いしたいと思っています。条例制定の提案権も、予算権も、教育委員等の任命権もあります。

 時によって、他の府県なんかを見ますと、教育委員が充て職のようになっている、こういうことで、首長がほんまに責任を持って議会に提案しているのか、こういうことこそ改めていくべきだ、このように思います。

 そして、現場のPTAや地域、PTAでも、いろいろな政党に所属している人もおられます。首長派とアンチ首長派、対立を持ち込まない、こういう配慮が現場のモチベーションを高めるんやないか、現場の学校運営への参画を広げるんやないかな。

 小松先生がおっしゃいました、コミュニティースクールがなかなか広まらない。京都でも当初そういうことがありました。今以上に地域の顔色を見て、地域の有力者の意向に沿った、親の意向に沿った学校運営をしなければならないんですか、こんなことがありました。そうではない、それを超えよう、こんな関係をつくろう、こういうことでやってきました。

 ちょっと話が長くなってよろしいですか。例えば、参観日。

 京都市では全ての学校で自由参観というのをやっています。月曜日のおはようの時間から金曜日の終わりの時間まで、一週間ずっと参観です。

 私の知人である教員が、えらいことを始めてくれたな、ふらふらになったと。おっちゃん、おばちゃん、お父さん、お母さん、ずっと、全部一週間授業を見はった、ふらふらだ。ところが、これを二回、三回やっていると平気になった。その次にどうなったか。先生、大変やな、わしらで手伝えること、ないやろか。

 ここまでの学校運営にいったときに、学校の隠蔽体質なんてなくなります。教育委員会の隠蔽体質なんてなくなります。現場から、私は変えていくべきだと思います。

 そして、いじめ問題です。

 京都市では、二十年前、平成五年、六年に全国的にいじめ問題が大きくなりました。全ての学校で、いじめ問題対策委員会を設置しました。校長を中心に、常設の機関として、いじめ問題対策委員会をつくる。そして、担任が抱え込まない。情報を共有する。そして、見逃しのない観察、手おくれのない対応、心の通った指導ということで、何度も何度も、校長研修、教員研修をやってきました。さらに、PTAや地域の課題としました。

 さらにもう一つ、子供です。

 子供を見張るような感じになってはいけない。子供の感性を、子供の正義感を育てよう。それぞれの生徒会活動を活性化する。そして、生徒会ですばらしい活動をしたところを、全市中学生会議というのを開催して、そして中学生が宣言をする、アピールを出す。大人に向かってアピールもする、子供に向かってもアピールする、そういう取り組みが今着々と進んできました。

 ことしの夏には京都市議会の議場を借りて中学生会議をやって、さまざまな各学校の生徒会の取り組みを持ち寄って、そして、いじめは許されない、同時に、どこの学校でもいじめは起こる、そういう生徒の主体性を尊重した取り組み、生徒の意欲を盛り上げる取り組みを、今、教育委員会、またPTAや、京都には人づくり二十一世紀委員会という、百を超えるあらゆる団体が参画した、子供をともに育もうという、これは条例もありますけれども、そういうことをやっています。

 今、国で的確な法律をつくっていただきました。それに基づく条例をつくることで、この委員会をつくって、開かれた場で議論し、そして、九月ごろになると思いますけれども、条例をつくりたいと思います。そのときも、京都ならではの親の力、子供の力、地域の力を生かして、いじめを未然に防ぐ、同時に、いじめにきちっとした対応をする、そんな体制をつくっていきたい、このように思っています。

 京都でも、いつ何が起こるかわかりません。現にいろいろなことが起こっていると思います。そうしたこと、隣の大津市の事例もしっかりと参考にさせていただきながら、取り組んでまいりたいと思います。

山本(と)委員 門川参考人、ありがとうございました。

 まさしく今おっしゃられたとおり、今、京都でも、そういったいろいろな試みで、開かれた学校運営、学校の現場をつくっておられる。

 まさしく冒頭お話をされた、かまど金の精神。かまど金と申し上げてもなかなか、京都以外の人たちには、何だろうというお話になるかもしれませんが、かまど別拠出金といいまして、かまどを持っている家は、その地域の寺子屋のような学校、そういった場所にお金を出して、そして知恵も出して、みんなで、地域で、その学校を運営していこうという、そういった、まさしくかまど金の精神。

 今、かまど別に拠出金を出してくれというのは相当難しい話になると思いますが、人を出す、知恵を出す、労力を提供するということは、その地域全体で可能だと思います。こういういい精神は、京都だけに限らず、いろいろなところで、そういった精神が広く普及して、みんなで地域の子供を育てていく、それで、公的機関もそれに協力をしていく、そういった制度が望ましいんだろうと、私も本当に心の底からそう思っております。

 今回の地行法改正の審議におきまして、この委員会でも、首長が暴走したらどうするんですか、あるいは教育委員会が暴走したらどうするんですかと。恐らくですけれども、どういった制度をつくっても、その制度を運用するのは人でありますので、暴走する人は暴走するでしょうし、それを、制度によってその人間の動きを縛るということは、本当は、本来不可能だと思うんです。

 だからといって、では、暴走する人は暴走するんだから仕方がないじゃないかというわけにはまいりません。きちっと我々でいい制度をつくって、地域の子供たちを、よりよい大人になってもらうように、よき公民になっていただけるように、みんなで支えていく。今回はそのための地行法の改正案が政府から出てきたと思っております。

 きょうは、三人の参考人の皆様に来ていただいて、いろいろな立場からまた御意見をいただくわけでございますが、その御意見も我々はしっかりと受けとめて、いい制度を、ともに皆さんで協議をしてつくってまいりたいと思います。

 まだ、小松参考人と越参考人に、私、御質問をたくさん用意してまいったんですが、残念ながら時間が参りましたので、質問をこれで終わりにさせていただきたいと思います。

 きょうは、まことにありがとうございました。

小渕委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 きょうは、三人の参考人の方々から、それぞれの立場から非常に有益なお話をいただいたと思います。冒頭、心より感謝を申し上げます。

 特に、越参考人には、御遺族の方の手紙を代弁する形で御発言をいただきました。私も、越市長にももちろんお伺いしたいことがありますが、御遺族の方に聞くような気持ちで質問させていただきますので、まず、よろしくお願い申し上げます。

 御意見をいただいて、非常に明確な方針を持っておられるということを感じました。ぜひ、大津でのあのいじめ事件のときのことを少し、当時は市長ではおられなかったわけでありますが、その後の経緯も含めて一番御存じなのが越市長でありますので、お答えをいただきたいと思います。

 仮に、教育長の暴走というものがこれからも起き得るとした場合に、今度、教育委員長と一元化をされるわけですから、さらに強大な権限を持つ教育の責任者が誕生するわけですね。今回の法律で政府案から出てきている総合教育会議というもので、首長と新しい教育長、教育委員長が協議をすることによって、暴走を確実にとめることができるというふうに市長はお考えになるでしょうか。

越参考人 教育長の暴走に対して、今回の総合教育会議で暴走を完全にとめることができるかということですけれども、私は、それはできないと思っています。

 それは、総合教育会議については、緊急事態に対応する、協議をするということはあります。しかし、その中で、首長が権限として教育長にこうしろ、ああしろと指示することは認められていないと理解をしております。ですので、その場合、協議をしても暴走をとめることはできないと考えています。

 例えば、これに対して、今回は、緊急事態の場合、お子さんが亡くなられた場合など、そういった場合に国からの指示権を明確にするということが政府案で述べられていると思います。これに対して、一方、首長には指示権がありません。やはりこのような指示権がなければ、現場の実態に即した、そのときの状況に応じた暴走をとめるということはできないと思います。

 大津市の当時の実態に即して申し上げますと、本来、今の制度上は、教育長の暴走を誰がとめるかということは、それは教育委員会である。他の教育委員さんが教育長を監督するというのが現行法のたてつけであります。これに対して、第三者調査委員会の報告書で、教育委員さんは月一、二回しか集まっていなかった、そういった中で、教育委員さんに対して事務局から重要な情報が上げられていなかった、だから暴走をとめることができなかったというようなことが述べられています。

 これについて、実際、どこの教育委員会でも、今大津市は教育委員会をたくさんやっていますけれども、通常、月一回や二回というのは大変多いと思っています。そういった中で、やはり非常勤の教育委員会の限界というものがあります。非常勤の教育委員さんに対しては十分情報が上がらないし、また、十分判断するだけの日々の教育委員会事務局との接触というのもありません。そういった中で、非常勤の教育委員さんが教育長の暴走をとめられなかったというのが今回の大津の事件であります。

 総合教育会議の中のメンバーとしては、教育委員さんとまた首長がいます。そして、その暴走をとめられるのはやはり常勤の首長であり、そこに指揮権を与えなければ、総合教育会議だけで暴走をとめられないと思っています。

 以上です。

細野委員 非常に明確に御答弁いただきまして、ありがとうございました。

 次に、今、大津市は、訴訟を抱えておられて、市長がその被告の代表になっているわけですね。教育委員長はその訴訟の対象になっていません。

 例えば、生活保護の問題などで何らかの事故が生じて訴訟になった場合は、首長がその責任者であるので、当然訴訟の対象になるわけですけれども、直接、最終的には、指示する権限が首長にあったわけですから、現場の福祉事務所で起こったことについても首長が責任を問われるのは、これは半ば当然なわけですね。

 一方で、教育委員会の場合には、首長にはその権限が与えられていないにもかかわらず、首長が訴訟対象者になっていて、教育委員長はその対象にならない。その矛盾を先ほど、心情も含めて吐露されたというふうに思います。このたてつけは、基本的に政府案でも、これからも変わりません。

 弁護士でもあられるので、その点についてどうお考えになりますか。

越参考人 今御指摘の点、訴訟の対象になるのは、最終的に責任をとるのは首長である、しかし、一方で、責任をとる前に指示する権限がないということは、やはりこれが一番、現行制度、そしてここに変更がない政府案の問題点であると私は思っています。

 これは、やはり教育委員会として、訴訟になっても、市長に対して必要な資料を提出していなかった。そして、その前の対応を振り返っても、やはり最終的に責任をとるという覚悟がなければ、責任を踏まえた対応はできません。教育委員会は、責任を問われなくてもいい、無答責になっている、だから、無責任な運営になっている。これが一番の原因だと思っています。そして、このような体制は、市民の皆さんから見ても、非常にわかりにくいです。

 御遺族は今回、大津市を訴えられました。しかし、最初、御遺族は、学校と教育委員会を訴訟の対象にしようと考えていらっしゃいました。しかし、それができないとわかって、市長を対象にしなければならないとわかったわけですけれども、市民の側、遺族の側から見ても、誰に責任を問えばいいのか全然わからない制度になっています。その結果として、市民の監視が教育委員会に行かないことになります。例えば大津市でも、今、市長の名前を知っている人は多いけれども、誰が教育委員か知っている人は、全員知っている人はほとんどいないと思います。

 そういう中で、教育長という役職は知っているけれども、市民の皆さん、実は教育委員長という役職があることも御存じないです。そういう方に対して市民が監視をしていく、そして責任ある対応を求めていくというのは非常に難しくて、結果として教育委員会が無責任になっていると考えています。

細野委員 越参考人に対しては最後に。

 先ほど、御遺族の方のお手紙の中で、教育行政の可視化が必要だという御主張がございました。これはもう本当にそのとおりだと思います。

 そこでお伺いしたいのが、これから市長がかかわることになる総合教育会議ですが、ここは、それこそ教育に対する責任者がまさに腹を割って議論できる場所として、大変重要な役割を担う可能性があります。ここの議事録の作成が努力義務にとどまっています。これは可視化の観点から問題があるというふうにお考えになるかどうか、御答弁いただきたいと思います。簡潔にお願いします。

越参考人 総合教育会議の議事録については、これは公開を義務づけるべきだと考えます。

 やはり、今の教育委員会の一番の問題点が、大津市において隠蔽体質だと言われたことで、しっかりと市民の皆さんに情報を公開していく、何が首長と教育委員会の間で議論されているかを知らせていくことは非常に重要ですので、議事録は義務的に公開すべきだと考えます。

細野委員 ありがとうございました。

 次に、小松参考人にお伺いします。

 総合教育会議について前向きな御評価がございました。一方で、小松参考人は、さまざまな発信の中で、権限と責任の明確化が必要であり、今の教育委員会制度はそれが不明確である、そういうことも書いておられます。

 今回の教育委員会の改革で、確かに総合教育会議というのができたわけでありますけれども、教育の責任者は教育委員会というのは変わらないわけですね。首長に、そこについて何か新しい権限が与えられているわけではありません。意見を言って調整をすることができるということができただけですね。

 これで本当に、小松参考人が言ってこられた権限と責任の明確化というのが果たされたというふうにお考えになるかどうか、そこを少し具体的にお伺いしたいというふうに思います。

小松参考人 私の意見は、現状を踏まえて、実態に合わせてどう改革したらいいかということで申し上げたわけでありまして、今、私も教育委員をしていて、かなり責任はあるのに権限がなかなか行使できないというふうなこととか、責任の所在がどこにあるかが現行制度の中では不明確なので、そういう面でいうと、今回の政府案の中では、漸進的な改革案になっているだろうと。

 ただ、これまでのここでの議論を私はインターネット等で拝見しておりますけれども、かなり深刻なぎりぎりの問題になってきたときには、細野議員のおっしゃるように、幾つか、もう少し整理をしなきゃいけない問題があるというふうには考えております。

 基本的には、最終的には、私は、やはり設置者としての最終的な責任の首長さんのところにきっちりと行くべきではないだろうかと。しかし、首長さんはいろいろな形の仕事がたくさん幅広くありますので、日常的な問題については、教育委員会の中で今までどおり、ある程度の責任、権限を持った上で、新たに設けられる総合教育会議の中で首長さんと積極的に議論をする場ができたことを私は評価したいというふうに申し上げます。

細野委員 最後に、門川参考人にお伺いします。

 京都の事例を非常に丁寧に御説明いただきました。

 私も、京都の旦那衆の心意気というんでしょうか、それこそ、かまど金を集めて番組学校をつくった、その伝統が、今のコミュニティースクールの運営にも、それこそ百数十年たっているけれども、大いに生きているのではないかというふうに私は感じています。そういう取り組みを、これから、より、どう地域に発展をさせていくかという観点からお伺いしたいんですね。

 先ほど、例えば地域の安全などについては、このコミュニティースクールの運営が非常に役立っているんだという御趣旨の発言がありました。さらにそれを少し拡大して考えるならば、例えばお年寄りのいろいろな介護もしくは見守りのような問題、さらには、例えば障害を持っている子供たちを、もしくは成人の方もそうですが、地域全体でどうサポートしていくか。

 いろいろな形で、このコミュニティースクールが核になることによって、共同体が再生をして、地域が強くなるということにつながるのではないかというふうに思うんですが、何かその点で、京都で具体的な事例があれば、ぜひお伺いしたいと思います。

門川参考人 学校運営、子供の教育に地域が、保護者が参画する、このことはコミュニティーの活性化にもなりますし、今、京都市では、より、もっときめ細かく、避難所運営、地域ごとにマニュアルを四百十八カ所でつくっていただく、そして訓練する。

 さらには、地域ごとに要支援者の、これはプライバシーがあるんですけれども、同意のもとに、要支援者のいざというときの名簿を管理しよう、誓約書をとって同意を得て管理する。あるいは、お年寄りの見守り隊、子供の見守り隊からお年寄りの見守り隊に発展する。

 こういうことが、地域にはいろいろな、京都も政治活動が活発ですので、いろいろな政治的な主張のある方があるけれども、学校のため、子供の教育のためなら、それを超えてやれる、そのことがコミュニティーの活性化になる、こういう事例がたくさんできてきていますので、これを大事にしていきたいと思っています。

 もう一点、権限と責任でございますけれども、京都市も、例えば市立芸術大学とか市立病院を運営しています。そこで事故が起こります。そうすると、市長が訴えられます。しかし、市立病院の個々の運営に、市長は決定権を持ちません。

 こういうように、権限と責任は時として変わる、こういうことがございますので、そうしたことと、どう市長が責任をとるか、そういう体制をつくるか、こういうことが大事だなと思っています。

細野委員 門川市長の方から京都の事例を非常にわかりやすく教えていただきまして、ありがとうございました。

 最後に一言だけ感想を申し上げると、教育の本質は、教育委員会の制度があるんですけれども、私はそれよりも、地域でどうこれを活性化していくか、こっちの方がより本質的だと思うんですね。今回やや残念なのは、政府案について、それについて非常に前向きに進めていくんだという何らかの、例えば条文に書かれているとか方向性が示されるとか、それがなかったことは非常に残念だという思いがございます。

 地域の事例をしっかり我々も見ながら、国としてもサポートしていきたいというふうに思っておりますので、ぜひ京都で先進事例をつくっていただきたいというふうに思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、中田宏君。

中田委員 日本維新の会の中田宏でございます。

 きょうは、参考人の三人の皆さんには、私も心から御礼を申し上げたいと思います。御多忙中、ありがとうございます。

 極めて重要な審議でありますし、戦後初めてと言えるような教育委員会を含む地教行法の改正議論でありますから、どうぞ参考人の皆さんにも引き続き、この議論に資する御意見を賜りたいとお願いを申し上げます。

 門川大作市長とも大変親しくさせていただいておりますし、私は尊敬をする市長の一人でございます。志も、何度か肝胆相照らして、同じくしているところもありますし、教育に関しても同じように情熱を持って、お互い市長としてもやってまいりました。そういう意味では門川市長にもお聞きをしたいところなんですけれども、きょうは越直美市長を中心にお伺いさせていただくことをお許しください。

 その前に門川市長にも触れますと、門川市長は、いわば政府案の方が望ましいという立場だともお伺いしていますし、門川市長の京都における教育行政のあり方というのは本当にすばらしいものがあると私は思います。一言で言えば、制度というのは人間が運用するんだということであって、その運用する人間次第によって制度は生きるか死ぬかが決まるんです。現行の教育委員会のあり方についても、そういう意味では、門川市長のようにやればやれるじゃないかというのは、そのとおりです。

 かくいう私も、自民党の理事であります義家代議士とも一緒に、横浜市の教育行政の改革をやりました。そして、しっかりと気脈を通じながら、志ある人たちが教育委員になってやっていけば、それはできることを私はわかっています。

 ですから、門川市長がやっておられることにも敬意を表し、それができることをわかった上で、越直美市長にきょうはお伺いをします。

 なぜならば、越市長のおっしゃることは本当に傾聴に値します。それはどういうことかというと、制度というのは、いざというときにどういうふうに機能するか、そしてまた、制度というのは、より多くの人、もっと言えば、でき得る限り、それが望ましいですが、万人がきちっと運営できる制度になっていることが重要であるという観点なのであって、人次第で何とかなる制度ではないものにしておくべきだというのが越さんの御発言だというふうに私は先ほどもお伺いしました。そういう意味では、ここが私は肝要だと思っているからであります。

 まず、今回の法改正においては、大津におけるいじめ事件そして自殺事件、この件が発端になっていることは、これはここにいらっしゃる委員の皆さんは皆おわかりだと思います。大臣もそのことを認めておられます。

 そういう意味においては、いじめ事件、自殺事件、これを振り返りたいと思いますけれども、あのいじめ自殺事件というのは、いわば学校や教育委員会の対応が遅いということもありますが、それ以上に問題なのは教育委員会の隠蔽体質だ、このことが最大の問題だというふうに思います。

 この点について、教育委員会がいかに隠蔽をしていたのかということについて、まず、越市長に、御自身の意見をつけ加えてお伺いをしたいというふうに思います。

越参考人 御質問いただきました、教育委員会がいかに隠蔽をしていたかということです。こちらは第三者調査委員会の報告書にも数々述べられています。世間の教育委員会に対する批判は、遅いということではなくて、隠蔽体質という一点であったと。

 具体的には、まず、私も市長として訴訟を、市を代表してやっていながら、滋賀県警が押収したような多くの資料があるということを全く知らず、市長部局には提出がされていませんでした。その中には、学校の先生がいじめを認識していたということを示すメモなど、非常に多くの重要な証拠がありました。しかし、それを教育委員会は私にも開示をせず、市長部局にも開示をせず、もちろん御遺族にもお知らせしていませんでした。

 そして、それだけではなくて、例えば、これは全国ほかでも起こっていますけれども、アンケート、学校が、中学生が亡くなられた後アンケートをとりました。そのアンケートについて、御遺族に、黒塗りをしたり、また確約書を書かせたりということを行っていました。これについては、私が市長になる前でしたけれども、御遺族が訴訟を提起され、また市でもそれを認め、裁判所でも、大津市のやった行為、大津市教育委員会の行った行為は違法であったということが認定をされています。

 こういった、アンケートを出さない、証拠を出さない、そういったことが大津市の教育委員会では行われていました。

 以上でございます。

中田委員 私は、あの事件の当時、越市長が涙ながらに会見を行っているのをテレビで見て、本当に違和感を覚えました。市長をやってきた者として、情報は知らされていない、日ごろは口を挟むなと言われて、いじめがあり自殺が起きたときだけマスメディアにつるし上げのような状態になっている。おかしいですよ。そして、訴訟対象は市長である、しかし、情報は市長にない。今、越市長がおっしゃったとおりであります。

 何でもかんでも市長がやるべきだなどという発言は、私ども対案を出している野党議員は一言も言っていません。総体として、市長が民意で選ばれて、まさにレーマンコントロールがしっかりと働いている中で責任を持てるようにしようと言っているだけです。それはほかの行政だって全部そうですよ。市長は責任は持っているけれども、道路をこうしろとか公園をどうしろとか、一つ一つに全部口を挟むほど暇はありません。やってられません。そうではなくて、総体として責任を持てるようにすべきだ、こう言っているわけであります。

 今国会においてこの議論が始まるときに、何度も私は予算委員会等でも、総理に、また文部科学大臣の下村さんにも確認をしたように、この法改正で一番重要なのは、責任者をはっきりさせることですよ。責任者をはっきりさせることですよ。人物をはっきりさせることですよ。

 これは、今政府案で、人物、責任者がはっきりしていると越市長は思われますか。

越参考人 私は、今回の政府案で責任者ははっきりしていないと思っています。これは、政府案には責任の明確化と掲げられていますけれども、変わったのは教育長と教育委員長を一緒にしたというだけで、最終的に訴訟で責任をとる首長と、また、それまで教育行政を行う教育委員会、この地教行法上の責任分担、これは全く変わっていません。

 そういった意味で、責任の所在は全くわからない。訴訟になるまでは市長は口を出せないし、訴訟になれば、市長が、それまでやっていないけれども、責任をとらなければいけない。市長の立場からすれば、責任をとるのであれば、最初から、そういったいじめで子供が亡くなるという事態が起こらないように、体制づくりからやっていきたいというのが正直な気持ちであります。

 今おっしゃっていただいたとおり、やはり、これだけ大津市のような大きな事件が起これば、それは、おっしゃっていただいた、マスコミが市長出てこいということで、市長が会見をすることになります。実際、大津市では市長が会見しました。また、教育長も会見しました。しかし、こういった事件のさなかに教育委員長が会見するということはありませんでした。

 私は、市民の皆さんに説明をするということが嫌だと申し上げているわけではないです。マスコミが市長出てこいと言う背景には、市民の皆さんが、やはり最終的には、こういうことがあっても、自分たちが選挙で選んだ市長が責任をとってくれるだろうと思っている。

 先ほど、市長に、教員だとかまた教育長を解任しろという電話が百三十件、百四十件あったと申し上げましたけれども、実際、それ以外に、市長に対する批判、教育委員会をどうするという批判は千件以上、電話だけでもありました。やはりそれは、市民の皆さんが、責任を市長にとってほしい、そして、責任の前に権限を市長に行使してほしいということのあらわれだと考えています。

中田委員 門川市長の件です。冒頭申し上げたように、確かに制度というのは、人物が魂を込めてやれば、ある意味では、多少問題がある制度でも、それなりの運用をすることは、門川市長を見ればわかるように、できます。私も、立派なことを言うつもりはありませんが、私も義家さんと力を合わせて、そういうことをやってきたつもりであります。

 しかし、制度というのは、申し上げたように、より多くの人が運用できるようになっていなければいけない。

 今回の政府案を見てみます。教育長は首長が直接任命できるようにします。これはいいことだと思います。そして、教育総合会議なるものをつくって、やや屋上屋的なところはあるけれども、しかし、教育委員と首長がしっかりとコミュニケーションをとれるようにする。これもいいことだと思います。

 こういうことによって、何度も大臣が答弁をしているように、あるいは自民党の先生方が本気でそう思っておられるように、私もそこは同調しますけれども、確かに、それだけコミュニケーションをよくしていけば、これまでのような間違いは減ります。それは私は認めます。減るんです。それは、首長が任命した人がそんなに簡単にそっぽを向くとは思いませんよ。

 そしてまた、日ごろ総合教育会議を招集したら、最低人数は教育長と首長ですから、それはコミュニケーションがとれますよ。非常勤の人たちは来なくても結構という体制を含めて、それは機動的に動けるようになりますよということは、私は全面的に認めます。

 それでも、制度というものは、もしもという場合にどうするのかを議論するのが、これは私たち国会議員の役割であり、ましてや、最終的な責任者はだれなのかということをはっきりしないままの唯一の行政として、これから先もこの地方教育行政を残すということは、これは禍根を残しますよ。そう思いませんか。

 このことを私たちは何度も言ってきたわけでありまして、では、いざ教育長と首長が意見が分かれた場合、どうするんですか。あるいは、首長の暴走を言う人は山ほどいるし、そういう政党もあるけれども、教育長の暴走は誰が抑えるんですか。首長は選挙なんです。ばかなことができると思いますか。首長を経験した人、どうですか。

 教育長の暴走は誰が抑えるんですか。やりたい放題の暴走、サボタージュの暴走、隠蔽の暴走、これは誰が抑えるんですか。三年間絶対かえられない、こんな状態でいいと思いますか。

 こういうことを私たちは言っているわけであって、こういう野党の意見に対して真摯に耳を傾けるべきだと私は思います。

 越市長、罷免できないということで、市長は今後も責任を問われることになりますが、この件、いかが思われますか。

越参考人 今回の政府案では、首長が教育長を、議会の同意を得て選任する、ただし、罷免の場合は、現在と同じ、心身の故障や職務上の義務違反に限定をされ、議会の同意が必要だということであります。

 しかし、私は、現場の実態に鑑みれば、やはりこれは、そういった要件を限定すべきではない、首長がいつでも罷免できるようにするべきだと思っています。

 これは、二つ理由があります。

 一つは、やはり大津市のような場合です。

 教育長が隠蔽をする、そして首長の方針と異なるような対応をする、そういった緊急事態において子供の命を守る場合、そして、その後の調査を真摯にやっていく場合においても資料を出さない、こういった場合に、やはり罷免とすべきだと考えています。

 首長は教育長に対して資料を出せと指示することはできませんので、そういった場合は職務上の義務違反にならないというふうに思います。ですので、これで罷免できなければ、大津市の事件のように、しっかりとした、大津市でもやはり県警の捜査がなければ資料が出てこなかったんです。なので、そういったことをやらない教育長は罷免しなければいけないと思います。

 そしてもう一つは、教育長の任期であります。

 新しい政府案では三年という任期だと理解をしています。首長の任期は四年です。首長が教育行政について選挙で問われることもたくさんあります。選挙で掲げることもたくさんあります。例えば、中学校の給食をやろうということを選挙で首長が掲げて当選をした。しかし、教育長が反対をしている。その場合、なかなか実際は、常勤の教育長が反対していると物事は進みません。そうすると、罷免できなければ、任期がほとんど三年残っていれば、新しい人にかえた時点では、首長の任期は一年しか残っていません。そうすると、選挙でお約束をしたような中学校給食はできなくなってしまいます。

 こういったこと、二つの問題があるので、罷免の要件、いつでも首長が罷免できるようにすべきだと考えます。

中田委員 時間が来ましたので、最後に一言だけ申し上げて終了させていただきたいと思います。

 今、越市長がおっしゃったように、罷免というのは大変なことでありまして、そう簡単にこの伝家の宝刀を抜くということはあり得ません。そのことは前提です。だけれども、教育長の暴走はどうとめますか、皆さん。暴走というのは、やりたい放題だけを指しているのではありません。サボタージュ、隠蔽体質、仲間内の教育村の中でのそうしたことに対して、誰がとめるんですか。三年間やめさせられないんですよ、今の政府案は。このことを私たちは言っているわけであります。

 ちなみに、他の部局、例えば道路部だとか道路局だとか、福祉部だとか福祉局だとか、これだって、罷免というよりは配置転換ですよね。こういうことをできるからマネジメントができるわけでしょう。教育長だってそうじゃありませんか。

 罷免と聞くと大ごとです。だから、そんなにできる話ではありません。でも、いざというときにそういうことができなかったら、意見の対立だけではなくて、それができないんだったら、誰が責任を持つ行政なんだ、このことは相変わらず残るということを与党そして政府の皆さんにはよくよくお考えいただいて、これから先、残り短い時間の議論になると思いますけれども、ぜひ私どもの意見に耳を傾けていただくことを心からお願いして、参考人の皆さんに心から御礼を申し上げて、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 きょうは、三人の参考人の皆さんに意見陳述、そして、今こうして質疑をいただいておりますけれども、大変御多忙のところお越しいただきましたことを、まずもって心から厚くお礼を申し上げる次第でございます。ありがとうございました。

 それで、与えられた時間が十五分ということで短うございますので、できる限り端的に質問をし、また御答弁いただければと思っていますが、まず、それぞれ三人の参考人の皆さんに順次お伺いします。同じ質問でございますけれども、三名でございますので、できる限り簡潔にお答えいただければと思います。

 それは、首長の教育行政へのかかわり方ということ、このことは、教育行政に関して首長のかかわり方を強化拡充していくというテーマが一つあり、もう一方で、教育委員会のあり方はどうなのか、こうしたこととあわせて、教育の中立性、安定性、継続性をどう確保していくのか。

 これは非常に難しい問題ですけれども、このことについてどういうようなお考えか。先ほど、意見陳述の中でもある程度お話しいただきました。したがいまして、改めての確認の話になりますけれども、簡潔にお答えいただければと思います。よろしくお願いします。

門川参考人 どの地方自治体にとっても、教育というのは最も大切な政策であります。したがって、首長が、中長期のビジョンを明確にし、また、学校現場等が生き生きとした教育活動ができるための条件整備をする、これは極めて大事であります。

 同時に、首長が議会の同意を得て任命した今度の新しい教育長が、責任を持って日々の学校運営等については行っていく、レーマンコントロールとしての教育委員を機能させる、こういうことが大事であろうかと思います。そういう意味で、今回の制度設計はうまくできている、このように思います。

 そして、気をつけなければならないのは、首長というのは任期が四年でございますので、学力とかいろいろなことを、教育というのは非常に奥が深うございます、見える学力、見えない学力、後伸びする力、四年間で結果が出ない、こういうことも非常に大事にしなければならない。そういうときに、ともすれば首長というのが、これは私自身戒めていることですけれども、パフォーマンスに走ったり、有権者向けの政策に走るということは自重しなければならない。

 したがって、中長期のビジョンをしっかりとし、しっかりとした教育長、教育委員を議会の同意のもとに任命し、そして、日々のことについてはそこで責任を負う、同時に、危機管理については万全を期する、こうした制度が大事だと思いますし、この新しい制度を生かしていきたい、このように思います。

小松参考人 二つの点から申し上げたいと思います。

 私は、今の教育改革、教育行政改革は、単独でできない形のものがかなり多くなってきていると思います。例えば、教育と福祉の融合みたいなものがすごく大事であります。

 私は、京都市の北の方にあります大原というところの京都大原学院のコミュニティースクールの委員を実はしているんですけれども、そこでは、空き教室を使って就学前の子供たちを預かるというふうな、ある種の福祉的な活動をやっております。

 それなんかも、多分、門川市長の御理解があってだと思いますけれども、教育委員会がそういうことを許可してくださって、まさに町づくりとして、特に子育てに活用されていますので、私は、教育行政がますます総合行政の中でしっかりと位置づけていかなきゃいけないものになってきているので、そういう点でいうと、積極的にかかわっていくべきであるというふうに思っています。

 二つ目には、一方で、専門性をどう高めるのか、あるいは安定性と言われているようなものをどう高めるかということであります。

 これも、いろいろな知恵が今入ってきているわけで、教育はいわゆる教育界だけでやる話ではないので、そういう点でいうと、むしろ、地域の人たちとか何かの方が長いことその地域での子育てにかかわってきておりますので、教育はますます全体的な町づくりの中に位置づけていくべきものというふうに考えて、そういう面でいうと、教育が、あるいは教育行政が孤立的であってはいけないというふうに考えてきています。

 私が調べてきましたイギリスでも、そういう面でいうと、むしろ、教育行政が、それまでどちらかというと独立王国のようなものだったのが、かなり総合的な町づくりあるいは人づくりとして行われてきていることに対しては、私は大変評価をしてきております。

 以上です。

越参考人 政治的中立性の問題ですけれども、まず、そもそも、政治的中立性とは何かということです。

 私は、教育委員さんが当然政治的な考えを持っていないということではなくて、法律上も、教育委員であっても政党に属することも認められています。そういった中で、多くの方が心配をされている政治的中立性というのは、教育において、一人の価値観ではなくて多様な意見を反映していかなければいけないということであったり、また、子供たちに継続的に同じことを教えていかなければいけないという継続性であるというふうに思っています。

 そして、これは先ほど申しましたけれども、私は、国との制度の比較において、おかしいんじゃないか。国は、文部科学大臣が教育行政をやっています。政治家がやっています。それでも今うまくいっていると思っています。なぜ地方にだけそれができないのか、この点について十分な説明はなされていないと思います。

 そして、地方において、今申し上げたような多様な意見の反映、また継続性をしっかりと担保する手だてはあります。

 実際、地方において、皆さんは首長がかわれば教育行政がすぐ変わると思っていらっしゃるかもしれませんけれども、実際は、できることは本当に少ないです。まず、先ほども申し上げた指導要領、国の指導要領があります。これによって、一定期間、教えることも決まっているし、勝手に国語ばかりずっと教えるというようなことはできません。そして、実際に、地方でも多くのところでは、大津市でも教育振興基本計画を立てています。大津市は五年です。十年のところもあります。そういったところで大きな継続的な市の方針を定めることができます。

 また、地方において、多様な意見を反映しようということについて問題になることも実際は少ないです。例えば、私は、給食だとか、そういったことは選挙でしっかりと市民の意見、多数決で決めればいいと思います。しかし、地方においても、教科書選定という問題があります。これについてはやはりいろいろな意見を聞くべきだと思いますし、こういったものについては、国の中教審のように、一定の独立した委員会を設ければ、そういった点での多様な意見の反映は十分に担保できるものと考えています。

稲津委員 ありがとうございました。

 次に、これは門川参考人にお伺いしたいと思いますけれども、参考人は、中教審のメンバーとして、その会議の中でもさまざまな御意見を出されていると承知をしております。私も拝見させていただきました。

 資料をずっと見ておりますと、その中で、これは本委員会でも一番大事なテーマとして議論されてきた、教育行政の最終責任者は誰なのか、どこなのかということでございます。

 参考人は、中教審の中でも、教育長が教育行政の最高責任者だ、最終的責任者であろうということを御主張されているというふうに伺っておりますが、その点について少しお話をいただきたいなと思っています。また、そのことに対する根拠的なお話もあわせて伺いたいと思います。よろしくお願いします。

門川参考人 私は、中教審でも、御指摘のとおり、教育委員会を首長の部下にしてはならない、教育委員会を独立した執行機関として維持する、これは近代政治の知恵であろう。権限と責任が一致する、これも大事なことのように思いますけれども、やはり教育という人格形成にかかわる問題について、それを担う日々の学校運営については、その時々の為政者から少し距離を置いて、安定性、継続性、そうしたことをしっかりと、現行制度のいいところを維持する。

 同時に、総合教育会議とか、今回、危機管理のための体制とか、こうしたことについては評価しております。そして、首長は、その学校教育が、また生涯学習が十分にできるように、条件整備について全力を挙げていく、そうした制度設計がいいことだと思います。

 近代政治で、一人の人にあらゆる権限を集中しない、つかさつかさで責任を持つ、そうしたことが大きな役割を果たしていく、もちろん危機管理はしっかりと体制をつくる、そうしたことが大事だと思って、教育委員会の独立性を主張してきました。

稲津委員 ありがとうございました。

 そこで、今、総合教育会議についても少し触れていただきましたので、重ねてお伺いしたいと思うんです。

 この総合教育会議の中で協議、調整、しかし、整わない場合もある。そこのところなんですけれども、当然、これは総合教育会議に限らず、首長とそれから教育長並びに教育委員との意見が合わない場合というのは当然あると思います。

 そこをいかにして、では、どう協議を進めていくのかということは非常に大きなテーマだと思うんですけれども、この点について、どうしていけば最も効果的というか一番いい方向になるのかということについても、これは門川参考人にあわせて伺いたいと思います。

門川参考人 首長と教育委員会が、教育長がとことん合わない、それには必ず背景があると思います。だから、条件整備ができていないから実行できないとか、そういうときは徹底してすり合わせをすべきだと思います。

 しかし、それでも合わないというときは、それぞれの権限に基づいて、首長の基本的な権限に属することは首長が、教育内容等、教育委員会の権限に属することは教育委員会という原則は守っていくべきだと思います。

 同時に、徹底して一致するような努力が双方に求められると思います。

稲津委員 ありがとうございました。

 それともう一つ、政府案では、新教育長というのはやはり相当権限が強化されるということで、この新教育長に対するいわば監視機能というかチェック機能のこともいろいろと議論をされてまいりました。私もそのことは非常に大事だと思っています。

 これは、教育委員の選出、あるいはその資質等についても大きなテーマがあると思うんですけれども、一つは、例えば、総合教育会議の中に入っていく方は、首長、教育委員、それからそのほかにもこれは参加可能になるということなんですけれども、その中で、私もこれまで何回か主張させていただいたのは、いわゆるコミュニティースクールに関係している方々についても機会があれば参加をしていただいて、より民意を反映することによって、さらに、ある意味、首長やそれから新教育長に対するチェック機能も、議会のチェック機能とあわせてできるだろう、民意の反映というのがこれは非常に大事なチェック機能になっていくだろう、こういうことを私もこれまで申してまいりました。

 そこで、小松参考人はこのコミュニティースクールの推進についても大変取り組まれてきたということで、これは小松参考人にお伺いしたいと思うんです。

 住民の意思を酌み取れる教育行政をつくるべき、こういうことを参考人も主張されているというのも私も伺いました。このことを踏まえて、いろいろ私も考えたら、先ほど申し上げましたように、この総合教育会議の中にそうしたコミュニティースクールの関係者も入っていくことは非常に大事かなと思うんですけれども、その点について、民意を反映するということも含めて、お伺いしたいと思います。

小松参考人 私は、イギリスを調べたりしていて、民意を反映した公立学校の新しいあり方に大変興味を持ち、かつ日本でも、当時はとても無理だろうなというふうに思っておりましたんですけれども、あれよあれよという間にふえてまいりました。

 民意を反映するということは、同時に、私は、読売新聞の取材を受けて書いたことがあるんですけれども、納税者として公立学校のあり方について積極的に発言をするということが極めて大事な姿勢であって、と同時に、しかも、注文や文句を言うのではなくして、みずからもそれを担えるとか担っていくべきだというふうな形で新しい公立学校をつくっていくべきだというふうに思っております。

 一つだけ例を申し上げます。

 おととい、私が会長をしております杉並区のある小学校で、学校運営協議会がありました。夜六時から二時間あったんですけれども、間もなく小学校三年生を連れて地域探検に行くという話がありました。ところが、今まで学校は、そのことを地域の自治会長さんとか商店会の方に何の連絡もしていなかったんですね。

 委員の中に自治会長さんがお二人いらっしゃいまして、何で今までそういうことを言わなかったんだ、来れば、ここの町はこんな建物とかこんな歴史があってというようなことをしっかりと説明もできるし、子供たちの校外学習の安全もお手伝いできる、そういう面でいうと、私たちにも、今後、ぜひ、学校がやろうとしていることを積極的に話をしてほしいという御注文がありました。

 これなんかは、今まで学校だけでカリキュラムの中にある地域を知ろうみたいなことをやろうとしているときに、まさにそこで生活をして歴史を知っている地元の方たちが、子供たちが見に来たときに一緒になって話をするということは、先生ではなかなかできないことでありますので、そういう面でいうと、私は、地域の声を入れたコミュニティースクールというのは、まさに新しい公立学校のあり方として大変参考になるというふうに思います。

 先ほどちょっと言いました、京都の私がかかわっている大原というところでは、まさに大変な歴史があるところでありますので、地元のお寺さんに宿泊をして、実は、子供たちは初めて地元の有名なお寺の中に入ってお泊まりをするという体験をしたりしているわけですけれども、これなんかもお寺の協力があってできている話なので、私は、新しい公立学校教育の新天地を開いていくのに大変いいことであるというふうに思って、積極的にコミュニティースクールを広げていくべきだというふうにして、応援もしているところであります。

稲津委員 終わります。

小渕委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。

 きょうは、公務でお忙しい中、わざわざ当委員会までお越しいただきまして、まことにありがとうございます。

 きょうは、この教育制度改革、教育委員会改革の問題、そしてそれに係る問題に関しまして、本質論等々をお三方に聞いてまいりたいと思います。

 まず、門川参考人にお伺いしたいんですが、先ほど、学力テストのことに関してお話がありました。その成績を公表する、しないに関しては、これはいろいろな行政の判断があってしかるべきだと思います。

 それはそれで尊重するとして、やはり、必ず結果が出る、そして、この子供さんはどういうところを改善すべきなのか、どういう方法で改善すべきなのかというような、テストから還元されるもの、これを親御さんや子供さんにわかりやすく伝える、これが私は大切であるというふうなことを、今国会でも質問させていただきました。

 そういった取り組みをもう実践されているということでございます。どのように、親御さん、子供さんにその改善点、問題点をわかりやすくお伝えになっているのか、具体例も含めましてお聞かせ願えればと思います。

門川参考人 小学校三年から六年までは、四教科であったと思います。中学校は、英語も含めて五教科。

 そして、私、六年余り教育委員会から離れていますので、細かいところはちょっと違ったら恐縮なんですけれども、例えばジョイントプロジェクトというような形で、校長会、それから各教科の研究会と教育委員会のスタッフが一緒に問題をつくります。でも、仕組みは全部できないから、民間会社を募集して、民間会社の仕組みも生かします。

 そして、例えば、高校入試前に、中学校だったら三回やっていたと思います。京都市の中学生、三年生、学年ごとに大体一万人です。そして、試験にこういう範囲を出しますということを、あらかじめ子供に周知しておきます。予習をします。そして、試験をやる。この問題は何%とれたかということを全部返します。そして、弱いところについては、こういう復習教材があるということを返します。

 これは、学校だけではできません。正直言いまして、こういうことを塾がやっています。塾に行ける子供はそういうことになれています。塾に行けない子供がいっぱいいます。でも、塾を私は否定するものではない。しかし、公の学校できちっとした、基本的な学力を保障していく、そのための仕組みとして、そういうことをやっています。

 そうすると、こんなことがありました。一万人のうちの九九%が解けているのに、あなただけ解けていない。実質的な一万人の生徒の中のランクがわかるんですね。そのことは子供にとってかわいそうやないか。しかし、心配しましたけれども、そういうことは杞憂でした。自分が学力がないのを一番わかっているのは子供でした。

 そのことをしっかりと子供も自覚して、親も自覚して、その次のフォローをしていく。そういう一つ一つの取り組みが大事であって、この地域の学校はランキングがどうやということを、地域の人が学校に誇りを持てないというようなことをすべきでない。それよりも、その地域の学校の学力を上げられる一つ一つの手だてをやっていくべきだ。

 こういうことで、今、現場の力と教育委員会の力と、民間の力も生かしてやっております。

柏倉委員 ありがとうございます。

 民間も含めて、御父兄の方とも、学校ともしっかり協調していくということだと思います。

 私も、いたずらに成績をどんと公表して得るものがどれぐらいあるのかというのは常々疑問視をしております。ただ、試験を受ける子供さんたちの労苦が報われるような、やはり、分析、そして、先ほど復習教材も呈するということでございました、トラブルシューティング、こういったものもしっかりと首長さんが勘案していただけるというのは非常にすばらしいことだと思います。全身全霊をもって今後も進めていただければと思います。よろしくお願いします。

 次に、小松参考人にお伺いしたいと思います。

 コミュニティースクールの運営等に随分と御尽力されているということでございます。これは個人的な事案で恐縮なんですが、私、栃木県が地元なんですが、栃木県は実は一つもコミュニティースクールがございません。私としては、いろいろな形の教育があってしかるべきだというふうに思っています。地域地域で特性がある、これはわかります。ただ、栃木県の中で一つもコミュニティースクールがない、これはやはり何とか一つでも二つでもキックオフしたいという気持ちでいっぱいでございます。

 これは漠とした質問で恐縮なんですが、どういったところからまず始めていけばいいのか、御経験も踏まえてサジェスチョンをしていただければと思います。

小松参考人 ありがとうございます。

 栃木県は、だからといって、保護者、地域の方が公立学校の教育活動に理解がないとか、協力していないということではなくて、むしろ、例えば、私は実は宇都宮市の教育委員会に時々お邪魔をして話をしたりしています。まず、宇都宮市は小中一貫教育をかなり精力的にやっております。昨年、また呼ばれまして、小中一貫教育は義務教育ですので、九年間を地域ともうちょっと一緒になってやっていこうということで、実はかなり精力的にやっています。

 ただ、国が規定したような学校運営協議会という形ではない、宇都宮版とでもいいますか、栃木版とでもいいますか、かなり成果のある教育活動を実は展開しておりますので、委員の、栃木県で学校に対して保護者、地域が協力的ではないというよりか、むしろ、かなり、多分昔から安定的にやっていて、改めてコミュニティースクールなんてことにならなくてもいいのではないかというふうな形でやってこられたんだと思います。

 さすがに、宇都宮市は、小中一貫をもうちょっとやっていこうという点でいうと、中学校区を単位として九年間の義務教育をしっかりやるためには、もう少し地域と連携してやっていかなきゃいけないというふうな形でやっておりますので、私は、十分土壌はできている、機は熟していると思いますので、できることなら、国が法制度化した学校運営協議会というものをぜひ栃木県でも積極的に設置し、栃木版の学校運営協議会やコミュニティースクールをつくっていっていただければいいかなというふうに思っております。

柏倉委員 後押しをしていただいて、どうもありがとうございます。

 私も宇都宮のごく一部は選挙区なのでございまして、実は、それ以外も、鹿沼ですとか日光ですとか、さくら、そういったところも選挙区なんですが、その選挙区でも、やはりそういった御希望のある御父兄の方がいらっしゃるんですね。ただ、どうやってそれを具現化していくのか、どこに陳情したらいいのか、首長にしたらいいのか、議員にしたらいいのか、いろいろなところの政治的なプロセスに関しても相談を受けることがあります。

 これは、宇都宮でそういった土壌があるということであれば、全県下で、コミュニティースクール的なもの、疑似のオープンスクールでも結構です、そういったところをぜひ一度でもやっていただけるとまた親御さんの意識も違うのかなと思います。これは勝手なお願いで恐縮なんですが、ぜひよろしくお願いいたします。

 それでは、越市長にお伺いしたいと思います。

 越さんの資料等々を事前に読ませていただきました。いじめの問題では非常に御労苦が絶えなかったところだと思います。しかしながら、やはりその果たされた役割はかなり大きくて、我々国会議員にも、何が問題なのかというところをしっかりと提示していただいたと思います。

 その中で、まず一つ、政治的中立性、継続性、安定性というもの、これは、私も本委員会で、教育委員会がなければ政治的中立性、継続性、安定性は担保できないのかという質問を何回かさせていただきました。否定はしないが肯定もしないというところが返答でございます。

 ただ、私は、これは志木市長の穂坂参考人という方もお見えになって、伺ったんですが、これはできるはずだと。政治的中立性も継続性も安定性も、首長部局として、教育委員会ではなくて、首長が責任と一体化して完全に教育行政をつかさどる、それでもその工夫はできる、制度的にもつくることができるんだということをおっしゃっていました。

 もし首長部局ということになりますと、やはりこの政治的中立性、継続性、安定性をどうやって越市長が担保するのかという問題が出てくるかと思います。もし現状での考えがございましたら、敷衍、説明していただければと思います。

越参考人 首長が教育行政を執行するとした場合の政治的中立性を確保するための手段ですけれども、こちら、先ほどもお答えしたとおり、現状でも十分担保できていると思っています。

 一つは、国の指導要領です。特に、大津市立中学校、小学校、勝手に授業内容を変えることができません。ですので、何を継続的に子供たちに教えていくべきか、それは国で決まっています。ですので、その点についてはもう現在でも十分担保できていると思っています。

 そして、大津市はさらに、現在も第一期の教育振興基本計画がございます、そして、今、これから新しい教育振興基本計画をつくっていきます。五年なり十年なりの計画で、ここで大津市なりの一定の方向性というのは十分に示され、それが継続して担保されるということになります。

 そして、私が、もし新しい制度、つまり、もしも首長が教育行政の執行機関になった場合に設けようと思うのが、教科書の選定の独立した委員会であります。

 これがやはり、多様な意見の反映といいますけれども、地方で本当に問題になっていることというのは、学校選択制であり、また中学校の給食であり、また、生涯学習もやっていますので、公民館はどうしますかとか、そういう問題です。それは、むしろ市民の方の意見をじっくり聞いて決めていくべきことだ。常に市民の方の意見を聞きますし、特にそれができるのはやはり首長であって、そして、選挙を通じて市民の皆さんの意見が示されます。

 ただし、私は、それは多数決であると思っていますので、多数決になじまないものとして、教科書の選定があると思います。こちらは単なる多数決ではなくて、有識者の方、いろいろな意見を聞くべきですので、これについては、独立した委員会を設ければ、しっかりとした多様な意見の反映ができると思います。

柏倉委員 ありがとうございます。

 最後に、越市長に一つだけ質問させていただきたいと思います。

 今回の法案、与党、野党案、両方出てきております。我々みんなの党としては、教育委員会の制度、これを、必置規制を外して、選べるようにするというのも一つの現実的な選択肢ではないかという提案を与党案にさせていただいております。そしてその中で、落としどころとして、構造特区というものにおいて、教育特区として必置規制を外す、そういった制度も、もし構造特区であり得るのであれば、推進してほしいという言い方をして、下村大臣にお願いをしております。

 これは、もしという議論で申しわけないんですが、もし、そういった教育委員会の必置規制を外してもいいという構造特区ができた場合は、手を挙げられますか。それとも保留しますか。そこだけ、最後、聞かせてください。

越参考人 構造特区ができた場合には、ぜひ手を挙げさせていただきたいと思います。

 そういった中で、私は、首長が教育行政の執行機関になっても十分に、心配されているような継続性ですとか、多様な意見を反映して、より市民の皆さんの意見を反映して、また、いじめの場合など、責任のある対応ができると思っていますので、そういった点を構造特区でできれば、それは非常によいことだと思います。

 以上でございます。

柏倉委員 きょうは、三人の方、どうもありがとうございました。これからの議論に大いに資する議論だったと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野県の出身の井出庸生と申します。

 三名の参考人の皆様、本日はまことにありがとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 初めに、越参考人にお伺いをしたいんですが、私は、やはり大津の事件が今回の議論の、間違いなくきっかけの一つだと思っております。ただ、しかしながら、かねてより言われてきた教育委員会の形骸化ですとか、お子さんが命を落としてしまうような緊急の、本当にもう非常事態と、また、平時の体制というものの議論をやってきた中で、少し議論が難しくなってきている部分もあるのかなと思っておるんですが。

 きょう、冒頭のお話の中で、可視化をというお話がありました。私は、本当に、いじめ、重大な事案があったときに、可視化、客観的な目で現場の対応を調べたり、再発防止を考えていくというのは、可視化というのはまさに緊急時に最も大切なことだと思っておるんです。

 きょう、お話の中で出て、伺いたいのは、越さんが二十四年の最初に市長になられた、一月だったかと思うんですけれども、その後、二月に訴訟が提起されて、七月に警察が動いた。事件自体は二十三年に起こっている。

 そのときに、教育長の暴走とおっしゃいましたけれども、教育長との、情報が上がってこないというのは、例えばコミュニケーションの問題なのか、制度の問題なのか、また、ちょうど選挙があったかと思うんですけれども、そういう、首長と教育長が、首長がかわれば教育長もかわるというところがないというところが問題なのか。そのところをもう少し具体的に聞かせていただければと思います。

越参考人 なぜ教育委員会からいじめの情報が来なかったかということであります。

 まず、経過を申し上げますと、平成二十三年十月十一日にお子さんが亡くなられて、そして、その後、教育委員会と学校は調査をしました。後からそれは全く不十分な調査だとわかったわけですけれども、私が市長になる前に、学校と教育委員会は調査を終えていました。ですので、私が市長になった時点では、もうそれは調査は終わった事件だ、解決した事件だということで、まず、市長になった時点では、全く報告がされていませんでした。

 そして、二月に御遺族から訴訟が提起をされました。そして、当然、訴訟が提起をされたので、これは対応していかなければならないということで、その時点で、過去の調査結果というのは、当然、市長部局に出されましたけれども、そこには全くの資料の不足があったというのが実際のところです。それがわかったのが、七月に県警の捜査が入って、段ボール箱十何箱という資料が押収されて、そこで押収されたようなものは、全く訴訟になってからも提出されていなかった。

 したがって、やはり、タイミングの問題もありましたし、私が市長になった時点で、教育委員会が既に調査を終えて解決した問題だということにしていたので、報告がなかったということがあります。

 しかし、一方で、もし私がそのとき、市長であったときに、権限として、教育委員会にもっと調査をしろという権限があったかというと、法律上、そのような権限はなかったのだろうというふうには思います。

 以上でございます。

井出委員 もう一つ伺いたいのですが、今、政府案の方は、これから、教育長の任期は三年だと。首長の任期は四年ですので、首長がかわっても教育長が残っていることもありますし、その任期を三年とすることで、ある程度、教育長の独立性というかそういうものを担っていくと。野党案の方は、もうそこは一緒だ、もっと言えば、任命も罷免も首長がやっていくんだ。今そういう差があって、一つ論点になっているんです。

 そこは、市長をされていて、また、大津の事件を振り返ったときに、首長と教育長の関係というのはどちらが望ましいとお考えなのかを聞かせていただきたいんですが。

越参考人 今の御質問は、首長と教育長の関係の中で、任期の問題、さらに、罷免できるかということともかかわってくると思っています。

 任期は、私は二年でも三年でも四年でもあり得るとは思いますけれども、一番重要なのは、罷免をどのような場合にできるか。罷免が今の法律上の要件と同じであれば、これは、実際、現実問題としてほとんど罷免できないということになりますので、まず、罷免の要件を緩和すべきだと思っています。

 ですので、仮に四年であっても、首長がかわったときに、教育長とは方針が違うので罷免できるということができれば、任期の問題というのは生じません。ただ、そのときに罷免できないということになれば、首長は、全く方針の違う教育長と、残っている任期の分、二年なり三年なり四年なりをやっていかなければならないということになると思います。

 したがって、特に条件のない罷免権が認められるのであれば任期は四年でも構わないかもしれないけれども、もしもその罷免権がないのであれば、任期はできるだけ短い方がいい、二年なり短い方がいいと考えています。

 以上です。

井出委員 ありがとうございます。

 次に、小松参考人にお伺いをいたします。

 野党案の教育監査委員会のことに冒頭触れられていたかと思うんですが、そのときに、教育行政も事前の規制よりも事後のチェックだ、事後のチェックが大事だというような御趣旨の発言があったかと思うんです。

 ここもすごく論点になっておりまして、事後チェックだけで足りるのかという議論があるんですけれども、事前の規制より事後のチェックが大事だというところを、もう少し具体的にお考えをいただきたいんです。

小松参考人 私は、突然事後チェックがじゃなくして、もう百四、五十年の日本の公教育の歴史の中で、諸外国と比べると日本は、一億を超す人口の中で、ある意味では飛び抜けて中央集権で全国画一的にやってきて、その成果は私は確かに十分上がってきている。二十一世紀のこの時代においては、地方分権とか学校の創意工夫とか、そういうのをもう少し幅広く認めて、それぞれ地域や学校に合った教育活動ができることがもうそろそろ認められてもいいんじゃないか。

 仮に、ある程度の、事前規制を緩和して、事後チェックの方に力点が移ったとしても、もう既に日本ではかなりの程度、諸外国と比べると、法律もそうですし、何よりも学習指導要領、それから検定教科書というものがあって、中央での、かなり教育水準の維持向上ということが出てきていますし、学習指導要領ももう何度も改訂してきていまして、大体これぐらいのところ、まあまあ、日本じゅうで何年生でどんな勉強をしたらいいかということで、細かく見るといろいろな議論があるんですけれども、そういうふうな認識の上に立って、もう一段、日本の公教育の質を上げるためには、そろそろ地域や学校の創意工夫をむしろ奨励して、終わった段階で、学力調査も含めまして、学校評価を中心として監査をしていくということが大事かなと思っています。

 ただ、これも諸外国と比べると、例えばアメリカのように、どちらかというとアクレディテーション、学校として認証するという機能としての監査もありますし、イギリスのように、インスペクションとして、学校が一体どれぐらいの成果を上げているのかというようなことをやる制度もありますので、それを野党案として、教育監査委員会の監査は、例えば英語ではどっちの言葉を使っていらっしゃるのかも含めてやっています。

 イギリスでは、最初に、一九九二年に、御存じだと思いますけれども、OFSTEDをつくって、いわゆる第三者評価が、初期のときにはかなり厳しくやりました。しかし、今では、これがかなり緩やかになって、成果が上がっている学校に対してはそんなにしょっちゅう行かないでお任せをするというふうな形ですし、かなりコンサルティング的なといいますか支援型の、プレッシャーとサポートをうまく使い分けて教育の質の向上ということをやっておりますので、そういう時代に来たのではないかというふうな認識を踏まえて申し上げたことであります。

井出委員 ありがとうございます。

 次に、門川参考人にお伺いをします。

 今、小松参考人からも、地域や学校の創意工夫、そういった方向性に教育をというお話があって、門川参考人も徹底した現場主義と学校の裁量の拡大ということを掲げておられます。私もそこは同じ考えなんですが、今回の政府の改革案、私は、教育委員長はいなくなりますけれども、教育長に一本化をして教育委員会が残る、だから、現状から移行しやすい制度だなとは思うんですけれども、移行しやすい分、改革という意味でどうなのかなと。

 徹底した現場主義、地域や学校の裁量の拡大という観点から見て、政府案に対する評価をいただきたいんですが。

門川参考人 教育委員長と教育長を一元化する。非常にわかりやすいし、責任も明確になったと思います。

 教育委員の人選において、これは文部科学省等も示しておられたと思うんですけれども、コミュニティースクール等の代表が参画する、学校や地域の、親のモチベーションを高めるような教育行政の参画のあり方というのをもっと推進すべきだな、このように思います。

 ただ、コミュニティースクールも、京都市は一生懸命やっておりますし、その評価もしているわけですけれども、なかなか手間暇がかかります。事務的な負担が学校現場に物すごくふえることも事実であります。子供の教育に、授業に専念するべき先生が、いろいろな手続に時間がかかるということも事実であります。

 したがって、そういうことをできる条件整備。やれ、やれと言うことも大事ですけれども、同時に、そういうことをどんどんやっていこうという、インセンティブという言い方は余り好ましくないかもしれませんけれども、コミュニティースクールができるような、コミュニティースクールをするところには、例えば三年間、五年間、教師を増員するとか、そういうことをやらなければ、なかなか、やれ、やれと、今以上に忙しくなるという感がありますので、そういう支援をやっていただきたいな、このように思います。

井出委員 今回の議論は、戦後、六十年近い中での大改革で、平時の教育の政治的中立性、責任の役割分担もそうですし、また、最初に申し上げた大津の事件ですね、ああいったことがあったときに、何としても徹底した検証ですとか再発防止、やはり毎年三百人前後の小中学生がみずから命を絶っているというような数字もあると聞いておりますので、そこは何としても今回の議論で少しでもクリアしていきたいなと思っております。

 きょうは大津の御遺族の方もいらしているということで、昨年のいじめ法案もそうですが、さまざまな御助言をいただいたことに感謝を申し上げ、また参考人の皆様にも感謝を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 私からも三人の参考人の皆様に心からお礼を申し上げたいと思います。

 せっかくの、きょうは大津市長、越参考人がお見えでありますので、越市長に中心的にお尋ねをしたいと思います。

 まず、二十三年十月のあの痛ましい事件、私たちはあそこから本当に教訓を学び取って、二度とあのような事件を繰り返してはならない、そういう決意は本当に政治に携わる者皆が固めなければならないと思っております。

 そこで、まず、事実をお伺いするんですけれども、二十三年十月の事件当時でありますけれども、大津市の教育委員会においては、教育長に対する事務委任等に関する規則というものがもちろんございまして、さまざまなことが教育長に事務委任されておりました。

 規則を入手しましたけれども、地教行法二十六条第二項に掲げる人事などの法的に委任できない要件、あるいは教科書の採択等々、ずらっと委任しないことが書いてあるんですが、これ以外のいじめ対応を含む日常的な事務は教育長に委任されておった、こういうことでよろしいですか。

越参考人 今の点については、申しわけないんですけれども、私も、事件当時市長ではなかったので、事件当時の規則について、詳細まで確認できておりません。

 以上でございます。

宮本委員 私どもで確認した範囲では、いじめ対応も含む日常的な事務は委任をされる、一般的な姿でありますけれども、そういうことであったと思います。

 そこで、私も改めて第三者調査委員会の調査報告書を読ませていただきました。どういう事態が教育委員会で進行していたか。もちろん、この報告書は、教育委員会の委員の問題についても書いております。

 「本件事案を見る限り、十月三十一日の委員会開催まで、市教育委員会事務局や学校から委員に対し詳しい情報の提供はなく、近隣のうわさや新聞記事による情報をたよりに委員同士、個人的に情報交換していたという状況であった。また、市教育委員会、学校は、平成二十三年十月二十四日の弁護士の意見を踏まえて、本件がいじめであることを認めたが、委員には一切の連絡もなく、十月三十一日に開催された委員会で初めて知らされた。」

 委員たちはらち外に置かれていたということを市長も先ほども述べられたということなんですね。ですから、教育長以下、事務局の暴走、独走ということがここでは厳しく指摘をされております。

 しかし、その責任は、事務委任をされていたまさに教育長の責任というものは明瞭だったのではないでしょうか。

越参考人 今おっしゃったとおり、第三者調査委員会で、今読み上げていただいたような指摘がなされています。

 ですので、大津市の事件で何が悪かったかというところについては、やはりそこでも述べられているとおり、教育長以下の事務局が、教育委員会には報告をせず、調査を勝手に打ち切ってしまったという点、そして、それについて監視を、本来、法律上予定がされているのは、教育委員会、ほかの委員さん、教育長、教育委員長を含む教育委員会で正確な情報に基づいて議論をする機会が与えられなかったということだと思っています。

 以上でございます。

宮本委員 そのとおりなんですね。そのとおり、この調査報告書には出てまいります。

 調査報告書は、それに続けて、それでは教育委員会の「存在意義がないのかと言う問いには否と答えなければならない。」「今重要なことは、教育長以下の事務局の独走をチェックすることであり、その一翼を担う存在として教育委員の存在は決して小さいものではないはずである。」これがこの第三者調査委員会の報告書の結論なんですね。

 ところが、市長は、教育委員会を廃止して首長に一本化するということをおっしゃっています。ちょっとこの調査報告書と違うんですけれども、この点について、市長はどうお考えですか。

越参考人 調査報告書は、現行の制度も踏まえながら、最も教育委員会を有効に機能させることについて提示をいただいていると思っています。

 実際、調査委員会の委員の方にもいろいろな意見を持っている方がいらっしゃって、その委員の中には、大津市の事件を踏まえて、やはり教育委員会制度を廃止すべきだとおっしゃっている方もいらっしゃいます。

 そして、私も、この第三者調査委員会の報告書を大変重く受けとめまして、現行制度のもとでは、今の教育委員会を最も有効に機能させるということを行っています。これはまさに、新しい、第三者調査委員会の委員であった方などに教育委員会に入っていただいて、今の大津市の教育委員さんは、月に八回から十回ぐらい来られています。そういったことは、運用の問題として、しっかり第三者調査委員会の指摘を受けとめさせていただいています。

 一方で、制度の問題としては、私は、大津市の事件の対応に実際に当たった者として、やはり非常勤の教育委員の限界がある中で、制度を抜本的に改正すべきだという考えを持っております。

 以上でございます。

宮本委員 実は、この調査委員会というものは、条例を定め、そして、改めて第三者委員会の規則というものも定めて進められてきました。私は、この第三者調査委員会の規則というものもつぶさに見せていただきました。

 この九条の五では、「市長は、本件報告書を公表したときは、市長の権限の範囲内において、本件報告書の内容を踏まえ、本件提言を実現するために必要な措置を講じるよう努める」

 もちろん、現行法の枠内でそういうふうに努めておられると今お話がありましたけれども、しかし、この報告書の結論は、教育委員会の果たす役割は決して小さくはない、こう述べているわけですよ。ですから、この報告書に沿って市長は御努力いただくことが何よりも大事だし、それがこの委員会規則の趣旨だと思うんですが、しかし、政治家たる市長はお考えが違うというところが出てくる。もちろん出てくる。出てきたときに、そういうふうに今御主張されているわけですね。

 ある意味では、ここに、とにかく、首長が一本化してやったら危険な面がある。これは恐らく、市長、有識者、教育関係者、相当人選をされて立ち上げられた委員会、そこがそう述べたにもかかわらず、政治家としての市長はそういうふうにおっしゃる。要するに、廃止ということをおっしゃる。私は、ここにやはり教育委員会の独立というか教育の独立というものを首長が侵してはならないことの一つの理由があるとむしろ思うんですが、いかがですか。

越参考人 私が先ほど申し上げましたとおり、私は、現行法下において、第三者調査委員会の提言を最大限実行しているというふうに思っています。これは、現在の教育委員さんとまさに連携を深め、教育委員会も改善をした、市長としても新しい教育委員を入れた、そしてその中で、今、二週間に一回、教育委員と市長が連携をする機会も設けています。これはまさに、第三者調査委員会の提言、教育委員会の教育委員さんの役割を、しっかり監視の役割をしていくべきだという提言を受けてのことであります。

 しかし、第三者調査委員会の報告書というのは、改正案についてどうこうと述べたものではありませんので、そこは第三者調査委員会の提言の枠外であるというふうに考えております。

 以上でございます。

宮本委員 それで、きょうは遺族の方も傍聴されているということをお伺いいたしました。

 遺族の方からの意見書も、私ももちろん真剣に読ませていただきました。遺族の方は、もちろん、責任の所在の明確化を求めておられます。しかし、同時に、「附言」というものをつけておられまして、その中では、「一方で奈良県橿原市や鹿児島県出水市のように、首長が教育委員会の隠蔽体質にメスを入れるどころか、両者が一体化してしまう事例も目の当たりにしました。」とおっしゃっておりまして、実は、この鹿児島県出水市の事例などは私も目の当たりにいたしました。

 市長、では、ここで御遺族が懸念されているような、一本化して、市長も教育長と一緒に隠蔽に回るといった場合に、どのように歯どめがかかりますか。

越参考人 まず、御遺族が述べられているケースとして、今おっしゃったケースもありますし、それ以外にもいろいろな、出水市、橿原市、尾道市、天童市といった自治体で被害者、遺族が苦しめられている。そして、やはり、それがまずどこから出ているかというのは、教育委員会の隠蔽だということを、アンケートを開示しない、調査をしない、第三者調査委員会を勝手に設置するといったところから発しているというふうにおっしゃっています。

 そして、次に、その中の幾つかのケースで、今おっしゃったような二つぐらいのケースでは首長も機能しなかったということをおっしゃっているということであります。

 しかし、まずは、教育委員会が機能しなかったけれども、首長が機能したケースというのもあります。御遺族は、やはりそれで、大津市の事件というのを、市長が第三者調査委員会を立ち上げたということを評価していただいていると思っています。

 では、さらに、今、教育委員会もだめだし、首長も隠蔽に加担したときにどうなるかということですけれども、その場合には、私は、単に教育委員会が隠蔽に加担するよりも市民の監視の目というのはより厳しく及ぶと考えています。

 これは、首長に対して、まず議会、議会に対して二元代表制のもとで、非常に厳しい監視の目が寄せられる。そして、制度上も、議会による不信任、さらにリコール、そしてさらには選挙があります。なので、首長に対する監視の目というのは教育委員会よりも非常に大きく、やはりこれを抑止していく効果はありますので、その点は首長と教育委員会では違うと考えています。

 以上でございます。

宮本委員 ありがとうございました。

 それでは、越市長が先ほど冒頭にもお話しになった裁判の問題ですね。国賠法で訴訟を提起されたときに首長が代表者になる。これは実は地方自治法上当たり前のことでありまして、これは、同じ首長である門川市長にお尋ねしたいんですが、市政の全般にわたって首長たる市長が訴訟の受け皿になる、これはそういうたてつけになっている。当たり前のことだと私は思うんですが、御意見をお聞かせいただけますか。

門川参考人 国家賠償法というのは、被害者救済の立場に立ち切った法律であり、制度であろうと思います。したがって、賠償する能力がある人を訴えるという制度だと思います。

 したがって、市長が実質的に権限の及ばないところ、先ほど少し申し上げましたけれども、公立の大学、市立大学、市立病院、そこで医療事故が起こる。当然に市長が訴えられます。しかし、市長は何ら決定権はございません。そういう制度設計で、それは、もし変えるとしたら、国家賠償法なり賠償制度の方を直していかなければならない。私は今の制度で別に問題はないと思いますけれども。

 そういうことで権限と責任が一致するというのは非常にわかりやすい議論でありますけれども、それでは、訴えられる人間が全て決定するという仕組みにしたら、それぞれ現場が本来の目的を達成できない、このようなことがあると思いますので、留意しなければならないと思います。

宮本委員 時間が来て、なかなか全員の参考人にお伺いできなかったのは残念です。

 先日も、実は、当委員会で、裁判、訴訟の問題が議論になりました。それで、市長が、国の制度はうまくいっているとおっしゃいましたが、国の制度でも、裁判になれば、それを受けて立つのは法務大臣ということでありまして、たとえ文科省にかかわる裁判でも法務大臣が受けて立つたてつけになっている、何の問題もないと下村文部科学大臣も答弁をされておりました。しかし、もちろん、具体的な、法廷で対決するのは、それぞれの業務をしていた、例えば教育でいうと教育委員会になる、こういうことであります。

 ですから、本来の制度、本来の原則に立ってどうしていくか、きょうの参考人の皆さんのお話もしっかり受けとめて、私も引き続き審議を進めたいと思っております。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木と申します。

 きょうは、三名の参考人から大変貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 まずお伺いしたいのは、閣法におけるチェック機能についてお伺いをしたいと思います。

 新教育長の権限がかなり強化をされるという中で、やはり住民目線での、第三者的立場からのチェック、評価というものが必要だというふうに考えております。

 今回、教育委員会を執行機関として残しましたことによって、議会のチェックとともに、さらなる何かチェック機能を持たせることが必要ではないかという問題意識を持っておりまして、先ほど小松参考人からは、先ほどの議論でもございましたが、教育監査委員会、事後チェックをむしろ評価しているということでございました。こういったことも含めて、ぜひ門川参考人そして小松参考人にその点についてお伺いをさせていただきたい。

 越参考人にもあわせてお伺いをしたいんですが、越参考人がおっしゃっている、責任を問われるのであれば、むしろ首長が体制づくりからかかわるべきだというそのお考え、それももっともだというふうに思うんですが、教育にはどうしても政治的な中立性というものはやはり担保しなければならないなというふうに私は考えておりまして、一般に言われている戦前の経験の反省あるいはイデオロギーの対立、こうしたものを教育には持ち込むべきではないという考えに私もおります。

 やはり首長の権限を強化すべきだというふうには思いながらも、教育委員会というものを、全国のさまざまな現場の声ですとか、これまでの参考人の皆様の声も伺う中で、総合的に考えて、なかなか、教育委員会を今なくすということは現実的にはちょっと考えられないなというのが今の私のこの審議を経ての考えなのでございます。

 その上で、越市長にお伺いをさせていただきたいのは、今回の閣法で、総合教育会議というものを新設して、首長がそれを主宰して教育行政全般について議論ができるようになる、そこでリーダーシップも発揮できるような、そういう機会が設けられたということと、また、教育委員会そして総合教育会議での会議録を、努力ではありますが、そこも今議論の中にありますけれども、努力義務を課すということになったということ。

 越市長さんが先ほどから、地方教育行政に対して外部のチェック、可視化させる制度改正が必要だということをおっしゃられているんですが、総合教育会議の新設、またその会議録の開示等々、この制度についての越市長の問題意識からの評価についてお伺いをさせていただきたいと思います。

門川参考人 ぜひとも我々がお願いしたいし、かつ留意しなければならないのは、現場を大切にする、現場が生き生きと子供中心に回っていく。したがって、私は校長先生方に言うてるんですけれども、教育委員会に報告する書類ばかり書かんならぬ、文部科学省に出さんならぬ報告ばかり書かんならぬ、議会に提出する報告ばかり出さんならぬ、こういうことでは現場の教育というのは非常に厳しいことになります。

 したがいまして、徹底的に現場視点で、そして現場を励ましながら、いじめにしっかりと現場が対応できる、そしてチェックもできる。そういう意味では、新たな監査の委員会をつくって、そこに事務局を置いて、そしてそこにまた報告をしていかんならぬというよりも、皆地方は二元代表制ですので、議会がしっかりとした役割を果たす。

 それから、京都市は、行政評価条例というのを十年近く前につくりました。全国で初めてだったと思います。そして、学校評価も含めてしっかりと評価して、それを毎年議会に報告します。そうしたこと。あるいは、コミュニティースクール、これも評価委員会をつくっております。委員長は小松先生にやってもらっています。そういう一つ一つの事業を現場レベルで評価し、そしてオープンにしていく、そういうことをしていけば、新しい仕組みというのは屋上屋になるんじゃないかな、こういうように感じます。監査委員会もございます。

 そうした今ある制度を使いながら、現場視点に立った評価と、その評価は現場の改善につながる評価に、そういうことをしていきたいと思います。

小松参考人 事後チェックが有効に機能するためには、まず、私は、公立学校といえども、その学校の状況についてしっかりと公表していくことが大事だというふうに思っています。

 これまでは、学校と教育委員会の関係で、例えば教育課程届のようなものがもともとありましたけれども、これはプロ同士のやり方であって、保護者やこれから学校に入ろうとする方たちのために、私の学校はこういう教育方針で、こういうカリキュラムで、こんな教育活動をやっています、さらに言えば、給食の指導はこんなことまでやっていますみたいな形で、学校のまずPRといいますか、そういう点で、今全国で、校長先生がみずからの学校経営方針のようなものをきちっと出しなさいというふうに決めている教育委員会がふえてまいりました。

 その中で、今後、例えば、うちの学校ではいじめ対策はどうするんだとか、家庭学習についてはこういうふうに考えていますとか、読書についてはこういうふうにしていますみたいなことと同時に、私はやはり、いろいろな学力調査の結果とその分析、さらにはその対策も含めてしっかりと公表していくべきものだというふうに思っています。

 今、門川参考人の話がありましたが、私は実は、京都市の学校運営協議会と学校評価の第三者委員会の委員長を昨年度からやっていまして、京都市の小学校、中学校、昨年の場合は幼稚園も訪問いたしました。

 真っ先に聞いたのは、あなたの学校は子供が安心して学校に通えるような体制をとっていますか、仮にいじめが起きたらどうしているんですかというふうなことをヒアリングして、その結果をしっかりと教育委員会に報告し、私の立場からすると、必要な支援も教育委員会にぜひ、例えば、いろいろな財政事情で残念ながら施設設備等でまだ行き届かないということに関しては、市長がいらっしゃるので申し上げにくいんですけれども、教育予算をもうちょっとふやすべきではないかということも含めましてやっております。

 と同時に、一方で、独自の学級定数について、京都市は大変すばらしいことをやっております。中学校三年生を少人数にしたりというような、全国の中でも大変珍しい施策をやっています。そういうことはもちろん評価をしようというふうな形でやっています。

 同じように、東京都教育委員会が都立学校に対して学校経営診断というのをやっておりまして、私もずっと最初からやっております。これは、東京都教育委員会が都立学校に対して進学指導重点校とかチャレンジスクールとかという形でいろいろなミッションを与えておりますので、それがそのとおりに行われているかどうかということについて第三者的に私は毎年何校か学校訪問して、その結果については各学校のホームページで発表するようになり、かつ、それに沿った指導あるいは支援を都教委にやっていただくというようなことを私たちは提案していくというふうな形になっています。

 ですから、まずは、私の学校はこういう学校で、こんな教育をやりますということを校長先生を中心としてしっかりと議論したものを発表して、保護者、地域、さらには全国にといいますか、これはイギリスの場合にはその辺がかなりしっかりしておりますので、そこまでいかなくても、少なくとも、公立学校であっても、やはりそれぞれの特色があるでしょうから、その教育方針、経営方針をしっかりと出していった上で、それについてしっかりと評価をしてもらう。

 ただ、まだまだ評価のスタッフとか手法とかが十分に成熟しておりません。いろいろな課題があると思いますけれども、私は、今後それをもう少し充実させていくのがより質の高い公立学校教育をつくっていくことになるのではないかというふうに考えております。

越参考人 まず、一点目のチェック機能です。

 やはり、新教育長の権限が大きくなる分、大津市で起こったような教育長の独走をどうやってとめていくかというチェック機能が非常に重要になると考えています。これは、政府案を前提とすれば、私は二点あると思っています。

 一点目は、首長による罷免を認める。罷免の要件を限定せずに、いつでも罷免することを認めることです。このことによって、実際に教育長が独走したときに罷免もできるし、また、首長がそういった権限を有することであらかじめ教育長にブレーキがかかるということもあると考えています。

 そして二点目は、こういった緊急の場合の対応について、首長の教育長に対する指示権を認めることだと思っています。

 こちらは、現在の政府案によりますと、こういった子供の生命や身体に危害が生じる場合に、国からの指示権ということが明確化されることになっています。しかし、国からの指示権というのを認めるのは理念的にも地方分権に反しますし、また、実際の問題として、本当に現場で何が起こっているか、子供に何が起こっているかというのを見て判断できるのは現場にいる者です。ですので、現場の対応をしっかり見て、そして教育長にブレーキをかけるために、教育長に対する首長の指示権を認めるべきだと考えています。

 次に、二点目の総合教育会議に対する評価であります。

 こちらは、私は、現在の教育委員会制度に問題があると考えている理由として、責任と権限の所在に加えて、民意の反映ということを考えています。そして、民意の反映という観点からすれば、総合教育会議というのは、首長が教育委員さんと一緒に協議をして、選挙で得た民意をより教育行政に反映できる、こういった意味では望ましいと思います。

 しかし、一方で、これによって責任と権限の分配が明らかになったかというと、そういう観点から見ると、現在の首長と教育委員会の責任の分配は変わりませんので、こういった責任の明確化という観点からは、総合教育会議というのは、特にこれによって変わるものではないと考えます。

 また、会議録について、これは公開すべきだというのは当然ですけれども、努力義務では不十分なので、やはり公開を義務づけるのが可視化に資すると考えています。

 以上でございます。

青木委員 それぞれの参考人から大変明快な、参考になる御答弁をいただいたと思います。あと残りの質疑の中でぜひ参考にさせていただきます。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 きょうは大変貴重な御意見、三人の方、ありがとうございます。

 私の方からも何点か、最後になりますけれども、御質問させていただきたいと思います。

 まず初めに、三人の参考人、それぞれの皆さんにお伺いをしたいんですけれども、いわゆる事務局の問題についてです。

 今回の閣法についても、直接の見直しの対象にはなっていないものの、これまで、参考人の質疑あるいは地方公聴会も含めまして、事務局の問題に言及されることがたくさんございました。

 文科省を頂点として、縦系列の中央集権的な教育行政の中核を担っているというのが教育委員会事務局ではないかというような指摘もございました。また、教育の分権に取り組んでおられる福岡の春日市の教育委員会改革でまず最初に取り組んだのは、事務局の職員の意識改革、事務局のあり方を見直すということからスタートをしていったというような指摘もございます。また、きょう大津市長もいらっしゃいますけれども、いじめ事案の問題でいいましても、先ほども少し議論がありましたが、いわゆる教育委員というのは、結果的に言うと、らち外、蚊帳の外に置かれていて、事務局がある意味でいうと隠蔽をしていたということもあろうかというふうにも思います。

 そういう面でいいますと、第三者委員会の報告なんかでは、事務局をチェックするための監査機関、これはもう首長からは完全に独立をした第三者機関を設けるべきではないかというような提言も含まれていたと思いますけれども、教育委員会の事務局のあり方について、それぞれ、三人の方、どのようにお考えかをお聞かせください。

門川参考人 教育委員会力というふうに私は言うてますけれども、教育委員会、教育行政、現場を激励し、いじめの対応も含めてですけれども、それは、教育委員の見識と経験、同時に教育委員会事務局の専門性の高いスタッフ、これは教育職と行政職、これをしっかりと系統的に育てていくことが大事だと思っています。同時に、外部の専門家の知見を生かす。

 京都市では、これも八年前ですかね、学校問題解決支援チームというものをつくりました。いじめ、あるいは、大変な保護者の、執拗に学校に抗議されるという方もおられます。そのときに、弁護士、臨床心理士、お医者さん、専門家集団をつくって、常設の学校問題解決支援チームをつくって、校長先生がそこに訴えてもらう、あるいは親が訴えてもらう。そして、そこの学校がきちっと診断して、そして解決のためのカリキュラムをつくっていく。そういう、専門家による、学校を支援するそうした事務局機能、それプラス、それを指揮監督する教育委員の経験、見識、こうしたことを組織的につくっていかなければならない、これが一番大事じゃないか。

 そういうことで、現場の優秀な教員を、京都市の場合でしたら百人ぐらい、独自予算で、教育委員会に来られて、教育委員会の中で経験した人がまた現場に戻っていく、こういう仕組みをつくっています。その一人が今、大津で教育委員をされていますけれども、そういう教育委員のスタッフを育てるということも大事だと思います。

小松参考人 最初に申し上げましたように、私は、今度の法改正の中で、新教育長あるいは総合教育会議が本当に機能するためには、やはりそれを支える特に指導主事の能力が大変重要だろうというふうに思っていますし、日ごろからそのための情報をきちっと収集、整理していくことが必要だと思いますけれども、自治体によっては、指導主事のなり手がなくて、競争率といいますか、試験の倍率が一倍を切るというような、手を挙げれば指導主事になれるみたいなところがあったりします。

 しかし、一方で、私が、昨年度、文科省からの調査でやった、全国的に学力が高いと言われている、私の地元でありますけれども、秋田県とか、それから、私が今、学力向上のアドバイザーをしています福井県のようなところでは、かなりしっかりとした方が指導主事として登用され、しかも、その養成がかなり丁寧になっていて、一番若い指導主事さんに聞いても、大変だけれども指導主事になることが自分の教師としてのキャリアアップとして役立つんだというようなことをおっしゃっていました。

 そういう面でいうと、やはり指導主事職の処遇あるいは職務内容、それを経験することが教師としての一段の職能成長としていいんだというふうな形のものをしっかりと描いていかないといけないと思うんです。

 私は、仕事柄、いろいろな校長先生とお会いしますけれども、教育委員会で指導主事の仕事なんかをしたことがある校長と、学校しか知らない校長とでは、正直言うと、かなりマネジメント能力で違いがあります。やはり行政で何年間かいて、少し幅広い視点で自治体のいろいろな行政と一緒になって経験した方、特に、予算等についても、ああ、公立学校というのはこういうふうにして動いていくんだなということをある意味で肌で感じた方が校長や副校長、教頭になっていきますと、これはかなり学校経営が違ってきます。

 そういう面でいうと、私は、事務局機能をしっかりと充実して、ここに入る人たちがやりがいがあるようなシステム、そのためのまた成長できる研修が大事かなと思っています。

 私が、平成五年から十五年、文科省の国立教育政策研究所にいたときの私のメーンの仕事は、学校改善研究プロジェクトという仕事でした。そこでは、指導主事の養成を国としてもお手伝いしようということで、都道府県の教育委員会とタイアップして、一回は、都道府県に出かけていって国と一緒になって教育改革をやるということと、もう一回は、東京に来ていただいて、全国から八十人、百人ぐらいの指導主事、これは旅費を全部国が負担をして、指導主事の研修を実施するということを十年やりました。

 大変手前みそですけれども、評判がよかったというふうに私は自覚しておりますけれども、十年の限定の事業ということで、ばちっと予算を切られて、その後、研究所で、このことについてしっかりとしたサポートをすることがなかなかできないことがありました。でも、今でもかなりしっかりとした調査をやっておりますので、そういうものも活用していただければいいかなというふうに思っております。

越参考人 教育委員会事務局の問題ですけれども、やはり大津市の事件では、教育長をトップとする教育委員会事務局が暴走したというのが一つの大きな問題でした。

 その中で、ちょうどお話の中でも、中央集権的だというお言葉がありました。そこは大津市の場合にもまさに当てはまる問題です。それが、京都市のような政令指定都市以外の都市では、現場の教員の人事権を県の教育委員会が持っています。

 そして、大津市の場合には、私に対して、今までも申し上げましたとおり、市民の方から、大津市立の中学校なんだから学校の教員、校長を処分すべきだという御意見がたくさん寄せられました。しかし、それを処分するのは県の教育委員会で、実際に県の教育委員会が行った処分は非常に軽い処分でした。私はこんな処分は軽いと思っていますけれども、それを市が改めて処分することはできません。

 ですので、これが現状であって、こういったことがあると、現場の教員が誰を向いているかというと、それは市の教育委員会じゃなくて、また市長じゃなくて、また市民でもなくて、どうしても県の教育委員会を向いてしまうということはあります。やはり人事権を持っている県の教育委員会を向いてしまう、市民から遠くなってしまう、大津市立の中学校として、大津市としての一体的な運営ができない、非常に大きな問題があると思っています。

 そしてまた、それとは別に、やはり事務局をどうやってコントロールするか、どうやって監視をしっかりしていくかということが独走をとめるために一番重要なことですけれども、これは、やはり大津市の事件では、非常勤の教育委員さんでは限界があった。情報は上がってこない、また、情報を把握しに行くことも非常勤では難しいということで、やはり常勤の首長がやるべきだ、現場を知っている首長がやるべきだという見解を持っていますけれども、政府案を前提とした場合にも、首長の教育長に対する指示権や罷免権を認めることで監視をより強めるべきだというふうに考えています。

 以上でございます。

吉川(元)委員 次に、門川参考人にお伺いしたいと思います。

 参考人が取り組んでこられました教育改革、教育モデルの特徴の一つに、学校現場の裁量拡大があろうかと思います。私も大変重要な視点だというふうに考えております。

 徹底した現場主義ということで、人事における校長の裁量の拡大、あるいは、予算項目の枠にとらわれずに学校運営予算の権限を各学校に移譲する取り組みも行ってきたとも承知をしておりますが、そういった取り組みを行われてきたその理由はどういったところにあるのかということと、また、今後さらに学校現場や校長の裁量を拡大していくとすれば、現行制度のもとで十分なのか、あるいは制度的な改正が必要なのか、まずこの点について伺います。

門川参考人 現場に神宿る、私は実感しています。そして、今、コミュニティースクールも含めまして、保護者、地域、あるいは経済界、大学、どんどんと参画していただく。そのときに、モチベーションを高めるのは、その人たちの創意が生かせる、こういうことだと思います。ボランティアで一生懸命頑張っていただける、そのときに、京都市の教育委員会が画一的な指導をしない、可能な限り現場に委ねる。

 例えば、ことし、三人の先生が退職して、三人の先生が異動しはる。六人の新しい先生、これを、コミュニティーの代表と校長先生、教頭先生が面接して、何で私の学校に来たいんですか、こういうことを言う。それで、ああ、この人いいなということになれば、教育委員会に内申して、そして問題がなければそれを確認して発令する。まあ、相互調整の機能はありますけれども。そうすれば、行った先生も、自分が望んで来たんだ、こういうモチベーションが高まる、こういうことをやってきました。

 まだまだできることは努力していきたいと思っています。ただ、今あるものを最大限有効に使おうという取り組みでして、やはり、こういう取り組みをするときに、もう少しパイを広げる。これは、小松先生が言いはったように、もう少し教育予算をふやせということを言われています。

 本当に地方財政が厳しい中で、我々も努力しなんと思いますけれども、国において、そうした挑戦的な取り組みをしているところに、モデルとなる、新しい、一定のリスクのあるもとでやっていることに支援していただけるような制度があれば、こういう制度が大きく全国に広がるんやないかな、このように思います。

吉川(元)委員 ありがとうございました。

 教育予算の拡充ということについては、恐らく、ここにいる委員全て同じ思いだと思いますので、応えられるようにまた頑張っていきたいと思います。

 続きまして、越参考人にお聞きしたいと思います。

 これも陳述人の方等々から伺ったんですが、結局、今回の大津の事案に関して言いますと、やはり隠蔽体質ということが大きな問題だということはもうずっと御指摘されていることだろうと思います。

 この隠蔽体質を変えていくということでいえば、確かに、首長に権限を与えるというのも一つ方策としてはあるのかなというふうには思いますが、一方で、先ほど少し事例が報告されておりましたが、首長も一緒になって隠蔽してしまうというようなことも、またこれも起こり得る。そうなった場合に、やはり学校そのものが開かれた学校になっているということが何よりも隠蔽をさせない大きな力になっていくのではないかというふうにも思います。

 そういう観点からいいますと、コミュニティースクールのお話等々もありましたし、保護者あるいは地域の住民の方が学校教育にしっかり参加をしていけるような、そういう形での民意の反映ということも必要なのではないかというふうに考えますが、このあたり、そのコミュニティースクールの評価も含めてお聞きしたいと思います。

越参考人 私は、今おっしゃった開かれた学校づくり、そのためのコミュニティースクールというのは非常に重要だと思っています。

 これは、大津市の教育委員会が今議論をしていて、学校支援本部というものからどんどんコミュニティースクールにしていこうということで、実際、取り組みをしています。

 ですので、まずは現場で開かれた学校づくりをしっかりしていく、市民の皆さんにしっかり説明もしていく、これは大変重要なことであって、常にやっていかなければいけないことだと思っています。

 そして、まず、現場がしっかりしていること、しかし、教育委員会事務局の問題は、現場の問題とはまた別にあるというふうに考えています。ですので、学校は、自律をして、自由に市民の皆様に開かれた学校づくりを進める。しかし、一方で、教育委員会の事務局の体制がそのままでは隠蔽が起こり得るというふうに考えています。

 ですので、申し上げているとおり、事務局の側の暴走、隠蔽をとめるためにも、やはり首長に権限を与えるべきだと考えています。

 以上でございます。

吉川(元)委員 時間が来ましたので、終わります。

 本日はありがとうございました。

小渕委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び笠浩史君外三名提出、地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局長門山泰明君及び文部科学省初等中等教育局長前川喜平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野中厚君。

野中委員 自由民主党の野中厚でございます。

 本委員会において初めての質問の機会をいただいたことに感謝を申し上げ、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、教育組織、今まででありますけれども、我々にとって非常にわかりづらい部分が多々ございました。

 私は初め、議員になる前は、やはり教育のトップは教育長であろうというふうに思っておりました。市や町や村のおさは市長、町長、村長、そして部、局、課においては部長、局長、課長ということ、こういった観点からいけば、やはり教育のトップは教育長であろうというふうに思っておりましたけれども、事務方のトップである、そして合議制の中の教育委員会においては教育委員会委員長がいるという、非常にわかりづらい構図でありました。

 私は、この前、地方議員をやらせていただいておりましたけれども、教育長の人事案件というのは厳密にはございません。この方が恐らく教育長になろうかというのは、報道でも、そして議会内でもわかっておりましたが、教育委員として人事が上がってきた。今回のこの新しい法案によって、教育長は首長が直接任命を行える、また、教育長と教育委員会委員長、これらが一本化する新教育長が誕生することによって責任の所在が明確になるものであるというふうに思っております。

 まず初めに、教育委員について御質問させていただきますが、全国の教育委員会における教育委員の職種及び教職経験者の割合、これを都道府県また市町村別ごとにお聞かせいただきたいと思います。

前川政府参考人 教育長を除く教育委員の職業でございますが、平成二十三年五月一日現在で、割合が大きい順に申し上げますと、都道府県におきましては、会社役員等、これが四四・八%、医師、大学教員等四〇・九%、商店経営等〇・九%、農林漁業等〇・四%、その他が〇・九%、無職一二・一%となっております。

 市町村におきましては、医師、大学教員等が二三・六%、会社役員等が一八・九%、農林漁業等が九・六%、商店経営等が六・九%、その他が五・六%を占め、無職が三五・三%となっております。

 また、教職経験者の割合は、都道府県の教育委員会で二二・四%、市町村において二八・三%となっております。

野中委員 次に、教育長についてもお聞かせいただきたいと思います。

 教育委員会における教育長の経歴、これも、先ほどと一緒に、都道府県別、市町村別にお答えいただきたいと思います。これについては、教職経験者と教育行政経験者、これを中心にお聞かせいただきたいと思います。

前川政府参考人 同じく平成二十三年五月一日現在の数字でございますが、教育長の直前の職でございます。

 これにつきましては、割合が大きい順に、都道府県におきましては、地方公務員が五三・二%、この地方公務員と申しますのは、教育長や教職員、あるいは教育委員会関係職員以外の一般の地方公務員のことでございます。教育委員会関係職員が一七・〇%、教育委員会で地方教育行政に携わった者でございます、これが一七・〇%。教職員、これが一二・八%、国家公務員が四・三%、その他が一二・八%となっております。

 市町村におきましては、教職員が三八・四%、地方公務員が二三・一%、教育委員会関係職員が一九・五%、国家公務員が〇・五%、他の教育委員会の教育長だったというものが三・二%、その他が一五・四%となっております。

 また、教職経験者及び教育行政経験者の割合でございますけれども、都道府県におきましては、教職経験者の割合は三四・〇%、教育行政経験者の割合が七六・六%でございます。市町村におきましては、教職経験者の割合が六九・八%、教育行政経験者の割合が七八・七%となっております。

野中委員 この、その他についても関心はあるんですが、ちょっと時間の関係で、きょうは質問は控えたいというふうに思っております。

 今回の法案ができることによって、まず、教育委員についても改めて考える必要があるというふうに思っております。

 地区によっては置物のような存在の教育委員の方も実際いるというのは事実でございますけれども、今度の法案の中の一つに、教育委員が新教育長に対して会議を招集することができると、非常に権限が今より強まっているわけでありますので、さらに、レーマンコントロールの視点からも、やはり民間の外部有識者を、より市町村、各自治体の努力で教育委員にしていくということが、まず一点、私は大切であるというふうに思っております。

 次に、教育長であります。

 これも権限が非常に強くなったということでありまして、これは政党に属していない、また政治活動を行っていないというのは当然の大前提でありますけれども、学校との距離の近い市町村においては、やはり現場のプロである教職経験者の方がやるべきだと私は思っておりますし、また、都道府県においても、最低限、教育畑を歩んできた行政マンがやるべきである、そういった役割をしっかりと、この法案によって改めて考える必要があると思っておりますけれども、政府の御見解をお伺いいたしたいと思います。

前川政府参考人 まず、教育委員についてでございますが、教育委員は、教育委員会における審議を活性化し、教育長及び事務局のチェックを行うという重要な役割を果たすことが求められるわけでございます。

 この点、昨年十二月の中央教育審議会答申におきましても、「現場の情報や専門的知識を有する教育長及び事務局に対しても臆することなく発言できるよう、専門家を含めて任命することも審議を活性化するために有効と考えられる。」との提言があるところでございます。

 今回の改正案におきましては、教育委員の資格要件そのものは変更していないわけでございますけれども、こうした趣旨を踏まえまして、単に一般的な識見があるというだけではなく、例えば、コミュニティースクール等の関係者を選任したり、教育に関する高度な知見を有する者を含めるなど、適任者の確保に向けて、各自治体における教育委員の人選の工夫を一層進めるように促してまいりたいと考えております。

 また、教育長でございますが、新教育長は、教育行政に大きな権限と責任を有することになります。そのため、適任者の確保は極めて重要でありますことから、教育行政に識見がある者という要件を規定したところでございます。

 この場合におきまして、教育行政に識見がある者とは、教育委員会事務局や教職員の出身者はもとよりでございますが、これらも含めまして、教育行政を行うに当たり必要な資質を備えているという人が幅広く該当するものと考えております。首長が、議会による丁寧なチェックを経た上で、適切な者を任命すべきであると考えているところでございます。

 あわせまして、教育長の教育行政におけるリーダーとしての資質や能力を高めるということが必要でございます。その方策といたしまして、現在、国や大学において市町村の教育長を対象とした研修会を実施しているところでございますけれども、今後、国、都道府県、大学等による研修のプログラムにつきましても充実を図ってまいりたいと考えております。

野中委員 本法案によって、形骸化された部分が活性化されることを期待しております。

 次の質問に入らせていただきます。

 教育委員そして教育長が参加する事務の一つに教科書採択がございます。教科書の採択地区が全国で五百八十五、そのうちの約五四%、三百十六地区が共同採択地区でありまして、この共同採択地区においては協議会を開くということであります。この協議会においては、全三千八百八名中、教育委員が八百八十名。二三・一%が、教育長を除く教育委員が参加をして協議をしているということであります。

 教科書採択につきましては私も思うところがございまして、やはり教育行政というのは変化を嫌うというか、怖がる節がございます。あの竹富町の問題も、協議会において採択された教科書に従わなかったということでありますが、その事の発端というのは、教科書が今までのものから別の教科書に採択されたというのが事の始まりでございました。

 私も、三年前、県議会だったときに、埼玉県において教科書の採択において一カ所変更があった学校があったんですが、すぐ新聞は大きく大々的に取り上げた記憶がございます。

 その一方の変化とは別の地方の声がありまして、四年に一回、採択の勉強会なり協議会を開いているにもかかわらず、何で同じ教科書が使われているんだとか、また、この記述されている内容はどうも史実に基づいていないじゃないか、一体どこの文献を参考にしているんだという地方の声が多くございました。

 ただ、これは、地方議会で質問をしても、やはり協議会で同一歩調で決まったことだと協議会においては言われますし、何より、教科書においては、これは検定で通った教科書なので、国の検定で通ったんだ、ですから問題ないんだよということが、今まで地方議会の一人として本当にじくじたる思いがございました。

 その中で、検定においては、下村文部大臣の本当に強いリーダーシップのもとで検定基準の改正を行っていただいた。これは本当に、検定において大きな教育の前進であるというふうに思っております。

 一方、検定において進んだ中ですが、採択において、教育委員長と教育長、これを足した新教育長が誕生することによって、今まで三千八百人中八百八十人が参加していた教育委員、この参加の人数が減少しないか、また発言力が、教育委員長がいなくなることで低下しないかと私は懸念をしているところがございます。

 また、先ほど申し上げましたとおり、協議会というのはどうしても、右向け右の要素が今まで強い部分が事実あったというふうに思っておりますけれども、今回の法改正によって、この協議会がより形骸化してしまう、そういった懸念を私は持っております。

 大臣の御所見を伺えればと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、公立学校の教科書の採択については、当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会の権限と責任においてしっかりと行うべきものであるというふうに思います。

 先般成立した教科書無償措置法の改正においては、共同採択地区内の市町村教育委員会は、規約を定めて採択地区協議会を設け、その協議の結果に基づいて採択を行わなければならないこととされたところであります。

 採択地区協議会における具体的な委員の選任の方法等については、地区内の市町村教育委員会が協議して、規約において決定するということになりますが、各教育委員会の権限と責任が十分に果たされるよう、あらかじめ各教育委員会において教育長と教育委員の間で十分な議論を行った上で決めていただく必要があると考えております。

 また、先般成立した教科書無償措置法の改正により、義務教育諸学校の教科書の採択権者は採択結果及び理由等の公表に努めなければならないとされたところでありまして、この法律の趣旨の徹底に努め、教育委員会等による責任ある採択を促してまいりたいというふうに思います。

 いずれにしても、今回の教育委員会制度改革法案をもし成立させていただければ、これは今まで以上に首長の権限も強化されますが、同時に、教育委員会は執行機関として残るわけでありますが、教育委員会の役割というのも今まで以上に注目をされることになりますし、新教育長の権限も明確化されますが、やはり教育委員がどんなスタンスできちっと職務を全うするかどうかということも、住民の方々から見れば、これは大いなる注目になってくると思いますので、主体性を持った教育委員をそれぞれの自治体でも選んでいただきたいと思いますし、また、教育委員の方々もそのように対応していただきたいと思います。

野中委員 確かに、今まで教育委員とか教育委員長などに余り注目が集まったことがないと思うんです。ですので、今回の法案によって、その方々にもより責任を持ってもらって、そして新教育長のリーダーシップのもと、何より、今度の中学校の教科書採択から教科書検定の改正が始まる、そういった、それぞれの立場において、やはり子供たちにとって、本当にこの国のことがよくわかる教科書が採択されることを私も御期待申し上げております。

 次の質問に入らせていただきますが、次は、国民投票法、先週、衆議院で通過をいたしました。この国民投票法が改正されたことによって、今まで二十以上であった年齢基準が十八歳以上に下げられたということであります。これに伴って、選挙権についても十八歳以上にしたらどうかという議論が始まっております。

 ただ、私は、いろいろ考えますが、実は二年前の数値を調べてまいりました。衆院選、私も当選させていただいた衆院選では、投票率五九・三二%、そして昨年の参議院選挙では、投票率五二・六一%。これは当然二十以上、十八歳以上ではなくて二十以上の投票率であります。実際、そこまで高くない数値でもありますし、何より、各自治体の選挙とかにおいては、本当に戦前からある程度勝負ありというイメージの強い選挙はさらに投票率が低い、また、都市部においてはさらに低くなる、こういった事例もあります。

 その中で、各選挙管理委員会が啓発活動をしたり、また、各地方議会では、コンビニ投票をしたらどうかとか、または駅の近く、通勤前にしたらどうかという議論がありますが、私は、そもそもの根本が間違っていると。まずやらなきゃいけないのは、私は、選挙権というのは国民の権利である、やはりそれを醸成させていくのは何より教育であるというふうに考えております。

 まず最初にお伺いしたいんですが、現状の選挙権や議会の仕組み、これは国、地方、それぞれありますけれども、これについての教科書への掲載状況についてお聞かせいただければと思います。

前川政府参考人 選挙権や議会の仕組み、投票に関する教科書の記述につきましては、学習指導要領に基づきまして、小中学校の社会科、高等学校の現代社会、政治経済の全ての教科書で記述されておるところでございます。

 具体的に申し上げますと、選挙権につきましては、例えば小学校で、二十以上の国民は選挙権を持っていること、あるいは選挙の方法の改善、例えば不在者投票でありますとか期日前投票などについて記述が行われております。また、議会の仕組みにつきましては、例えば中学校で、国会の主な仕事や地方議会の役割について記述がございます。投票につきましては、例えば高等学校の現代社会で、選挙制度とその課題、例えば選挙区制でありますとか一票の格差の問題などについて取り上げられているところでございます。

野中委員 ありがとうございます。

 私の記憶だと、やはり選挙権は、二十歳のところにマーカーを引いて、いわゆる試験前の勉強で覚える程度ぐらいしか、私は当時、まあ自分が勉強していなかったことが原因かもしれませんが、そういった記憶しかなかったものですから、質問をさせていただきました。

 やはり投票の権利ということを醸成させるというのも一つですし、何しろ選挙がそれぞれあります、地方議会とか、首長選、国政選挙。いわゆる投票をすることによって、この一票がどう反映されるかということを自覚を持たせていくべきだ。特に、今、二十歳から十八歳に下げようじゃないかという議論になっている中で、やはりそういったことを教育の中で細かく教えていく必要があると私は考えております。

 教科書にさらにそういったことを、政治的なことを教育に取り入れるべきだと私は考えておりますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

下村国務大臣 私も、幾つかの大学や高校で、選挙年齢を十八歳に引き下げるということは、これはすばらしい権利であるというふうに話したことがありますが、実際のところ、義務で、要らないと思っている高校生、大学生の方が実は圧倒的に多くて、十八歳選挙年齢引き下げはぜひ賛成するというのは二、三割しかいないという現実が、どこの高校、大学でも、私が話したところでは一般的だったんですね。

 しかし、民主主義というのは国民一人一人によってつくられるものでありますから、主体性をどう持たせるかということについては、教育においてきちっとしていく必要があると思います。

 自民党においても、政治参加を初めとして、主体的に社会生活を営む上で具体的に必要な知識や実践力、態度を身につけるため、高校において新科目公共を設置することについての提案もいただいております。

 文科省として、国家社会の責任ある形成者として必要な資質を身につけるための教育の一層の充実に向けて、しっかり学校の中において主権者教育がさらに充実されるような対応をしてまいりたいと思います。

野中委員 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 通告に従いまして、質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 地教行法の審議、私も、今回質問に立つのが三回目になります。参考人の質疑もきょうで三回となりました。地方公聴会も二回やってまいりました。さまざまな議論がなされまして、非常に議論も深まってきたなというふうに思いますけれども、私、一貫して大きなテーマとしてやはりございますのが、責任の所在がどこにあるかというものが大きなテーマとして取り上げられているなというふうに感じます。

 きょうの午前中も議論になりましたけれども、大津のいじめの問題、非常に大きな議論になりまして、いじめ対策をやらないといけないということでやってまいりました。きょうは大津市長も来られまして、御意見を述べておられましたけれども、いじめの問題で教育委員会の隠蔽体質があるんじゃないか、こういうことを御主張される方というのはいらっしゃいます。

 私も、事例を見ていくと、やはりそういう部分があるな、ここは何とか解決していかないといけないな、こういう思いはもちろんございます。ただ、どうやって解決をしていくのか、さまざまな御意見があるなというのが、今までの国会での議論を聞いてきて思ったところでございます。

 制度的な問題なんだとおっしゃる方もいらっしゃいますし、いや、制度の問題だけではなくて、やはり人の問題がある、運用の問題がある、こういう方もいらっしゃいました。また、責任の所在をはっきりさせればいいんだ、こういう御意見の方もいらっしゃいましたし、あるいは、こうした問題は重層的な大きな組織であれば非常に起こり得ることであって、責任者がどういう形であっても、これは注意していかないといけない、こういう御意見の方もいらっしゃったりですとか、いろいろな意見があるなというのが私の思いでございます。その中で、総合的に見て、何が一番いい制度なのかというところを決めていかないといけないということだと思います。

 いじめ問題というのは、私は、非常に根深い問題だというふうに思いますし、これに対して、学校現場がどう対応するかということも含めて、総合的な不断の取り組みをしていかないといけない、こういう思いで取り組んで、今も取り組んでおります。

 まず冒頭、大臣にお尋ねをしたいんですけれども、大津のいじめ事件など、教育委員会が隠蔽体質なのではないか、こういう批判がされてまいりました。

 こうした議論に対して、私も、初当選して以来、文部科学委員会で、いじめ防止対策の推進法も含めて取り組んでまいりましたし、我々、昨年以来、いろいろな制度改正をしてまいりました。そして、今回もまた教育委員会の制度を改正する。いろいろな総合的ないじめに対する取り組みというのをやってきたわけでございます。

 こうした、教育委員会が隠蔽体質じゃないか、いじめのような事態にしっかり対応していかないといけないじゃないか、こういう批判に対して、これら一連の我々が今までやってきたような対策、こういうものも含めて、制度的な改善という意味ではどのように図られてきたのか、また今回どのように図られていくのか、これについて大臣の御所見を伺いたいというふうに思います。

下村国務大臣 いじめ問題について、まず、昨年、議員立法で成立をしていただいたいじめ防止対策推進法において、いじめにより児童生徒等の生命身体または財産に重大な被害が生じた疑いがあると認める場合などの重大事態が発生した場合、学校は、重大事態が発生した旨を教育委員会を通じて首長に報告をする。また、教育委員会または学校は、組織を設けて調査を行い、調査結果を、いじめを受けた児童等及びその保護者に説明するとともに、首長に報告をする。さらに、報告を受けた首長は、必要があると認めるときは、組織を設けて再調査を行うことができる。こういう法律改正案をつくっていただいたわけでございます。

 これに関して、昨年決定した文部科学省の、国の基本の方針におきまして、公平性、中立性の観点から、調査組織に弁護士や精神科医等、学識経験を有する第三者の参加を求めることや、各教育委員会や学校、首長は、いじめを受けた児童生徒及びその保護者に対して、重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供することを定めております。

 また、今回の地教行法の改正によれば、もし成立をすればですね、教育長が教育委員会の主宰者となるということになりますので、迅速に教育委員会を招集して、いじめ事案等に対処することが可能ということになります。

 さらに、首長が総合教育会議を招集して、いじめ事案等の緊急の場合に講ずべき措置について協議することによりまして、首長と教育委員会の連携による効果的な対応が可能となります。

 加えて、学校や教育委員会の対応についての事後検証や再発防止策の検討、立案について、総合教育会議で議論することも考えられるわけであります。

 教育委員会及び総合教育会議は原則公開とされており、その議事録についても作成、公表が努力義務とされていることから、いじめ事案等への対応状況について可視化が進むことによりまして、いわゆる隠蔽体質の改善が確実に図られるというふうに期待できるところであるというふうに考えております。

中野委員 大臣から大変御丁寧に御答弁をいただきました。

 やはり、昨年来、重層的な対策を、いろいろな各場面でしっかり透明化をしていく、あるいは第三者の目を入れていくということでやってきたわけであります。しっかりとこれを進めていけば対応ができる問題なのではないか、私はこのように思っております。

 ただ、他方で、大変残念なことに、いじめ防止対策推進法の施行後におきましても、いじめのような事案、こういう緊急事態というか、こういう事案がありまして、その後の対応について、教育委員会の対応が十分ではないのではないか、こういう事案もニュース等で散見をされるところであります。やはり、決めた枠組みのルールでしっかり徹底をしていかないといけない、しっかりと政策を推進していかないといけない。新しい制度でございますので、これをやっていかないといけない、こういう思いであります。

 地方自治体、各学校で、恐らく、国が防止対策の基本方針を決めまして、その後、各現場現場においてこういった方針を策定するなど推進法の施行の事務を行っていく、これが今現場ではやられているというふうに思うんですけれども、現在の推進状況についてはどういう状況か、文部科学省にお伺いをしたいというふうに思います。

前川政府参考人 文部科学省におきましては、法律や国が定めたいじめ防止基本方針を周知徹底するために、学校関係者や教育委員会等を集めた説明会を実施いたしまして、法律が昨年九月から施行されていることを踏まえ、できる限り早く法に基づく対応を実施するように求めてきたところでございます。

 また、いじめ防止基本方針では、国は、都道府県、政令市における地域基本方針について策定状況を確認することとされておりまして、都道府県、政令市の取り組み状況につきまして、本年四月一日現在の状況を調査したところでございます。

 その結果、地方いじめ防止基本方針の策定状況につきましては、六十七県市のうち四十五が策定済みである。また、教育委員会に置く附属機関の設置状況に関しましては、二十五地域が設置済みという回答を得ているところでございます。

 また、政令指定都市以外の市町村及び学校は都道府県の対応状況を見ながらの対応となることも考えられるわけでございますが、文部科学省としても、その取り組み状況を把握するため、本年二月に発出いたしました児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査などの中で、基本方針の策定方針や学校に置く組織の設置状況の調査を現在実施しているところでございます。

 文部科学省といたしましては、引き続き、いじめ防止対策推進法を踏まえた必要な対応が各地で適切に実施されるよう、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

中野委員 先ほどのお話を伺うと、やはり方針ができていないところであるとかあるいは組織ができていないところ、まだまだ施行が今途中だというところもあるというふうに承知をいたしました。

 これは、やはり制度をつくっても、現場の運用を迅速にやっていかないといけない、こういうことだと思います。しっかりと国の方からも状況をまた把握していただいて、一刻も早く、この議員立法のときにいろいろな思いがあって制度をつくっておりますので、現場にそれがしっかりと浸透していくように働きかけていっていただきたいというふうに思います。

 続きまして、大綱の策定について質問をさせていただきます。

 これも私も、もう何回も質問をしてまいりました。概要であるとか、教育振興基本計画が既にある場合はどうするんだですとか、そういったことを質問させていただきましたけれども、今回質問させていただきたいのは、教育基本法の十七条二項で定めることができるとされている基本計画、これは、「基本的な計画を定めるよう努めなければならない。」ということで努力義務という形になっておりますけれども、今回の地教行法の中では、大綱の策定は、「定めるものとする。」ということで、必ず定めるという形になっております。

 教育振興基本計画は努力義務で大綱策定が義務となっている、この関係性についてどうなっているのか、御説明をしていただきたいというふうに思います。

前川政府参考人 教育基本法第十七条第一項におきましては、政府は、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について基本的な計画を定めるということとされております。第二項におきましては、地方公共団体は、国の計画を参酌し、その実情に応じ、地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定める努力義務が規定されているわけでございます。

 今回の改正案の大綱につきましては、国の教育振興基本計画の基本的な方針を参酌して、施策の目標や施策の根本となる方針についての策定を義務づけるものでございます。したがって、詳細な施策の策定までを義務づけるものではないということでございます。

 地方公共団体におきまして教育振興基本計画を定める場合には、その中の施策の目標や施策の根本となる方針の部分が大綱に該当すると位置づけることができるものでございまして、首長が、総合教育会議において教育委員会と協議し、当該計画をもって大綱にかえることと判断した場合には、別途大綱を策定する必要はないと考えております。

中野委員 教育振興基本計画にはより詳細な目標というか、そういう部分もあって、大綱の部分というのはより概要的な大きな部分である、簡単に言えば、そういう御説明であったというふうに思います。

 前回の参考人の質疑で、大綱の策定についてどういう運用をしていくべきなのかという質問を、私もさせていただきました。

 梶田参考人からは、御自身の教育振興基本計画の策定に携わられた御経験も踏まえてお話をされておられまして、例えばこういう御発言がありました。大綱というのは、たとえ首長が交代をすることになっても、これだけはきっちりやっていかないといけない、そうやってみんなが納得できるような点をやるんだ、首長がかわったときに大きく方針を変えるような、そういうものではなくて、みんなが納得するようなものをつくっていくんだ、そういう御発言がございました。そういう点に絞ってやはりつくるべきじゃないか、こういうことだというふうに思います。

 ただ、大綱はそういう長期間の目標あるいは大きな目標を決める、こういうイメージはお話はしていただいているんですけれども、では制度的にそれを何か担保できるのかという問題があるというふうに思います。

 梶田参考人がおっしゃっておられたのは、例えば、多様な民意が反映される意思決定の仕組みをつくればいいんじゃないか、学識経験者であるとかいろいろな人が大綱策定のところでいろいろな意見を言うという中で、みんなが納得するような部分が合意形成されていく、こういうお話だったというふうに思います。

 実際、私の地元の兵庫県の教育振興基本計画の策定の検討委員会、これを見ますと、やはり、いろいろな学識の方であるとか、いろいろな各界の代表の方、行政の代表、学校関係者、公募で選ばれた人とか、確かにいろいろな人がメンバーに入っておられました。

 大綱策定の総合教育会議におけるこうした意思決定の仕組みで、多様な意見をどうやって反映させるかという点についてどうお考えか、文部科学省のお話を伺いたいというふうに思います。

前川政府参考人 大綱とは、当該地方公共団体の教育の振興に関する総合的な施策につきまして、その目標や施策の根本となる方針を定めるものでございまして、網羅的に詳細な施策まで定めるものではないと考えております。

 また、大綱の策定に当たりましては、首長のみの判断で定めるわけではございませんでして、総合教育会議において、教育委員会と協議、調整を行うとともに、必要と認める場合には関係者または学識経験を有する者から意見を聞くことができるという条文を盛り込んでいるところでございます。これは、改正法案の第一条の四第五項でございます。

 したがいまして、この規定を活用いたしまして、さまざまな関係者の意見を十分に踏まえ、多様な意見が反映される形で大綱を策定することが望ましいと考えております。

中野委員 多様な意見が反映されるような形で策定されることが望ましいという話でございます。こういう形で現場の運用もしっかりそうなっていくように、また周知していただければというふうに思います。

 あと、時間がだんだんなくなってまいりましたけれども、教育長に対するチェック機能、これも前回も質問をさせていただきましたけれども、少し詳細に、また質問をさせていただきます。

 午前中にも意見というか議論がございましたけれども、教育長の権限が非常に強くなる、これは一体誰がチェックをするのかというようなお話もございました。

 私は、この視点、確かに重要だというふうに思っておりまして、教育委員会というのは合議制でございますので、やはり教育委員との合議になる。ただし、今回、教育長がかなり権限が強い教育長になりますので、本当にこの合議制のチェックが働くのか、こういう視点で質問をさせていただきました。

 例えば、チェック機能の強化という意味では、教育委員の三分の一以上の委員から会議の招集があったときには応じないといけないですとか、あるいは、教育長が委員会から委任された事務について、管理をする、報告を受ける、こういうお話がございました。

 この事務の委任について、もう少し細かくお伺いをしたいんです。

 この事務の委任、単純に委任をしてしまえばそれまでという形だとなかなかチェックができないということで、やはり、委任に当たって大きな方針を合議体の委員会で決めたりですとか、あるいは、場合によっては途中で状況をチェックして、この委任を途中で解除したりですとか是正をしたりですとか、合議体としてのチェック機能というのが働きやすいような運用というのを目指すべきではないかというふうに思いますけれども、いかがお考えでございましょうか。

前川政府参考人 教育委員会は、教育委員会規則の制定でありますとか学校の設置、廃止など、改正法案の第二十五条第二項におきまして教育長に委任できないものと規定されている事項を除き、その権限に属する事務の一部を、教育委員会規則で定めるところにより教育長に委任することができるということになっております。

 今回の改正案におきましては、教育長の権限が大きくなることを踏まえまして、教育委員会によるチェック機能を強化する必要があると考えておりますが、そのために、教育長に委任する事項についての方針を必要に応じ定めるとともに、教育長からの報告を求め、教育委員会で議論し、必要に応じて事務の執行を是正しまたは委任を解除することができることとなっているわけでございます。

 このことにつきましては、法案が成立した場合には、改正法の施行通知や説明会等を通じまして、適切な運用が行われるよう周知してまいりたいと考えております。

中野委員 運用のあり方について御説明をいただきました。

 この委任事務について、合議体にどのように報告をしていくかという話もあるというふうに思います。執行の状況を報告しないといけない、こういう規定は置かれていると承知をしておりますけれども、これが、教育長が何をやっているかというのを委員の方に報告がなかなかないという状況だと、チェックをするといっても非常に難しいのではないかというふうに思います。

 この報告のあり方について、どのような運用を考えておられるのか、お伺いをしたいというふうに思います。

前川政府参考人 御指摘のとおり、今回の改正案におきましては、教育長は、教育委員会規則で定めるところにより、教育委員会から委任された事務の管理、執行状況について報告をしなければならないこととする規定を設けているわけでございます。

 どのような形で報告を求めるかにつきましては、各教育委員会の実情に応じまして、教育委員会自身が教育委員会規則で定めることになるわけでございますが、その教育委員会が合議制の執行機関として教育長への委任についてチェック機能を果たすことができるように、教育委員会においてしっかりと議論いただきまして、適切に定めていただきたいと考えているところでございます。

 法案が成立した場合には、改正法の施行通知や説明会等を通じまして、適切な運用が行われるよう周知してまいりたいと考えております。

中野委員 以上で終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 地教行法の改正案も、審議もかなり終盤に差しかかってまいりまして、私も三回目の質問ということでございます。

 かなり論点も詰まってきたかなという感じもいたしますが、改めて、この法案が審議されるに至った原点がどこにあるかというあたりについて、まず少し話をさせていただきたいと思います。

 午前中、参考人の方が三人来られまして、その中の一人に大津市長さんがいらっしゃいました。私にとって、この教育委員会の議論をする一つのきっかけというのは、やはり平成二十三年のあの大津でのいじめ事件、自殺というものがあったというふうに私は感じております。

 まず、そこを大臣と共通認識を持てるかどうか確認をしたいんですが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 御指摘のとおりだと思っています。

 今回の改正のきっかけ、これは大津におけるいじめ事件でありまして、生徒の生命にかかわる重大かつ緊急の事態にもかかわらず、会議が速やかに招集されないなど、教育委員会による責任ある迅速で的確な対応がなされなかったことが問題であるというふうに考えております。

 しかしながら、これは大津市の教育委員会だけの問題ではなくて、現行の教育委員会制度について、教育委員長と教育長のどちらが責任者かわかりにくい、また、いじめ等の問題に対して必ずしも迅速に対応できていない、地域の民意が十分に反映されていない、地方教育行政に問題がある場合に国が最終的に責任を果たせるようにする必要があるといった課題が構造的にあるというふうに考えております。

 そこで、昭和三十一年の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の制定以来抱えてきたこれらの課題を解消するため、今回、抜本的な改革を行うものとしたものであります。

細野委員 そこの認識は全く大臣と一致をいたします。

 つまり、大津でのあのいじめの事件において、教育委員会、特に教育長の暴走というのをとめることができなかった。それがきっかけとなって、いろいろ委員の方からは、人が問題なんだという話が出てきていますけれども、当然、それは人の問題はあります。現状でもうまくいっているところはある。しかし、どういう人が担当したとしても、おかしなことをした場合にはしっかりとそれをとめることができるような、制度を変えようというのがこの議論ですから、その重要性というものが大津のあの事件で確認をされて、ここに至ったということだと思います。

 大臣、ちょっと一つお聞きしたいんですが、大津のいじめ事件の、あの事故の被害者の遺族の方とお会いになりましたか。

下村国務大臣 お会いしていませんが、手紙はいただいて読ませていただいていますし、また、教育委員会に対する提言等も読ませていただいております。

細野委員 私、数日前にお会いをしました。

 私も、いろいろお書きになったものなんかはその前も読んでおりましたし、大津のあの件についてはいろいろな資料が出ていますから、それはもうかなり読んでいますので、事前にわかっておったつもりだったんですが、改めて、お会いをして、やはり、そういう方々の気持ちを本当に受けとめないかぬし、そういうことが二度と起こらないような決意を持たなきゃならないというふうに思うようになったんですね。

 念のために確認をいたしましたが、御本人に確認をいたしますと、お会いになりたいという希望を持っておられるようであります。実は、ことしの二月に、大津市長と一緒にアポをとろうということで文科省の方に申し出をされたようなんですが、お断りになったという経緯もあるようです。大臣がそれを把握しておられるかどうかわかりませんが。

 大臣、衆議院の審議は出口がそろそろどうなのかという議論になるんでしょうけれども、参議院もありますので、一度お会いになったらどうでしょうか。というのは、普通の大臣なら、私はこれは申し上げないんですが、大臣は児童養護施設の問題なんかでも現地に行って、いろいろ自分で確認をして、いろいろなことをやってこられる、そういう現場を大事にしてこられた方でもありますので、お会いになることをぜひお勧めしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 これは大津の遺族の方だけでなく、いじめ等によって亡くなった、ほかにも遺族の方はたくさんいらっしゃって、そういう方々には何度もお会いしたことがございます。

 ですから、特定の方にお会いする、お会いしないということではありませんが、機会があれば、排除するつもりは全くありません。

細野委員 ぜひお会いをいただきたいと思います。

 そこで、具体的な論点に入っていきたいと思うんですが、いずれも、私、今、大津の事件について申し上げましたので、そこを起点として大臣と議論をしていきたいと思います。

 まず、私も二回の質疑の中でさんざん議論してきていることなんですが、今回の制度改正の大きな目玉は、総合教育会議というのができて、そこで首長が意見を言うことができるという、ここにあるわけですね。ここの会議がうまく機能することによって、いじめの事故についてのさまざまな対応などが迅速に、的確になされるのであれば、これはもう、確かに大津の教訓が生かされたということになるわけですが、そうなっているかどうかというのが、これが非常に議論になってきた。

 午前中、越大津市長の方に、私、このことを質問いたしました。つまり、大津の事件では教育長が暴走しました。この教育長の暴走、今度は教育委員長も兼ねる形になって、より権限が強くなるわけですが、総合教育会議が設置されることによって、この暴走がとめられるかということを確認したわけですね。大津の市長さんのそれに対するお答えというのは、総合教育会議というものは協議、調整の場であり、首長には指示する権限がないため、暴走をとめることはできない、こういう答弁がありました。

 これは、大臣、極めて重大な参考人の意見だと思うんですね。つまり、当事者である、この法案を審議するきっかけとなった大津の市長さん、その後の経緯もずっと見てこられて、訴訟の当事者にもなっておられる方が、この制度ではとめることができない。これにどう答えますか、大臣。

下村国務大臣 午前中どんな議論があったかということは承知しておりませんが、まず、文部科学省として、この大津市の教育委員会の問題点について、認識についてちょっと申し上げておきたいと思うんです。

 この大津市の事案を調査するために市長が設置した、大津市立中学校におけるいじめに関する第三者調査委員会、その調査報告書におきまして、自殺事案が生じた後の事後対応について、市教育委員会に本件に対する緊急対策チームが設置されず、職員の役割分担や指示命令系統も曖昧なままで推移し、その結果、本件中学校への明確な支援体制がとれなかった。また、市教育委員会は、調査をするか否かの検討をすることなく、学校に全てを委ねていた、いわゆる丸投げしていた。また、さらに、県教委への報告がおくれ、その内容もずさんであった。教育委員においては、教育委員各自が重要な意思決定においてらち外に置かれていた。市教育委員会が、事実調査より法的対応を意識した対応をとっていた。つまり、事実調査よりも、裁判でできるだけ、もしなった場合に責任がないような、そういうことしか考えていなかった。

 これが第三者調査委員会の報告書でありますので、この報告書によれば、必ずしも教育長の暴走ということだけに限定される要因ではないというふうに思いますが、その中で、今回、総合教育会議を設けたことによって、このいじめ問題についても、首長が主宰して総合教育会議を開くわけでございます。この中で教育長とも調整、協議を行うわけでありますから、その結果にもかかわらず暴走するとかいうことは、基本的には、こういう緊急事態においてあり得ないことではないかというふうに思います。

細野委員 今大臣が指摘された問題点、私も報告書を読んでおりますから、基本的には承知をしておりますけれども、全て教育委員会及び教育委員会の事務局、教育長も含めて、そちらの問題ですよね、指摘されたのは。

 つまり、教育委員会という、市当局、さらには市長から独立したところで起こっていたことを、全体としてブレーキをかけられなかったことが問題だと明確に指摘をしているわけですね。そこの構図は一緒なんです。ですから、私が先ほど申し上げた教育長の暴走の話と、今大臣が個別に指摘された問題は同根なんです。

 問題は、そういう教育委員会のさまざまな問題点を、総合教育会議ができることによってきちっと改められるかということにおいて、大臣は基本的にはとおっしゃったけれども、むしろ、大津の市長さんは例外があり得るということを言っているんですね。

 ここは極めて重要なんですよ。最終的に、危機的な状況においては、最後、指示権があれば、首長も逃げられませんし、決断をするでしょうから、その権限を行使することができる。実際に行使をする場面というのはまれだと思うし、行使しない方がいいと思いますよ。しかし、それがあるとないとで違うというのを、この事故を最もよくわかっている大津市長が答えたということについての重みをどう考えるか。

 そこについての不備があるという指摘を、我々はもうさんざん、この委員会の中でしてきましたが、大臣はないと言ってこられた。それについて、お考えは変わりませんかということを聞いているんです。

下村国務大臣 それは、制度上の問題であるし、また、属人的な問題に起因することもあるというふうに思います。

 ただ、今回の制度改正で総合教育会議が設置をされて、いじめのような緊急事態については一緒に総合教育会議で議論するわけでありますから、当然、首長の思いも、それから教育長を初め教育委員の方々の思いも、共通認識として、場の設定によって議論、これは調整、協議という言葉ですけれども、これによって位置づけられるわけでありますから、当然、そのようなコンセンサスは十分得られるということであるというふうに思います。

細野委員 つまり、大臣はこうおっしゃりたいわけですか。現場をよくよくわかっている大津市長の判断よりも、現場から遠いところにおられる大臣の方が判断としては正しい、大津市長のおっしゃっていることは違うということをおっしゃっているわけですね。

下村国務大臣 いや、そんなことは一言も言っておりません。

 法案が通れば、制度設計において、総合教育会議という新たな制度設計になることによって、今までのような、この大津におけるいじめの第三者調査委員会の調査報告書のようなことは、これはクリアできるのではないかというふうに考えているというふうに申し上げたわけであります。

細野委員 私は、大津市長に対しても、新しい制度ができた場合はどうかというのを、これまでの経緯に照らして聞いていますから、そこは決して私の言っていることが別に論理がおかしいということではなくて、まさに、市長の言っていることは間違っていて、大臣は自分は正しいというふうにおっしゃっているわけですね。

 もう一つ確認をしたいんですが、私は、平時においてはしっかり責任を持って教育長さんなり、私どもが設定をしている形も含めて、本当にそこは首長が関与しない形でやるのが一番いいと思います。ただ、いざというときは、本当に危機的な状況においては、それこそ、子供の命を最も責任を持って守るのはやはり政治家の仕事ですから、政治家が指示をできる余地を残した方がいいとずっと考えてまいりました。

 そういうやりとりは前回もしておりまして、大臣はそれに対して、なぜ教育長の判断が優先するのかということについて、理由をこう述べておられる。特にいじめ等において学校現場の状況とかそういういろいろな経緯について一番掌握をしている、あるいはしなければならない、その部署が教育長だというふうに思います、こう答弁をされている。

 つまり、教育長の方が現場を知っているので指示権は首長に持たす必要はないんだ、この認識も変わりませんか。

下村国務大臣 これは、もちろん変わるわけではありません。

 地教行法第二十一条に、教育に関する事務について教育委員会の権限がある、教育に関する予算の編成、執行権については首長に権限があるということを前回も申し上げました。そういうそれぞれの権限にのっとって、それぞれの責任者が最終的には判断すべきことであると思いますし、そういう意味で、教育においては、教育委員会の権限において、執行機関であるその責任者たる教育長が判断するということが法律上最も適切なことであるというふうに思います。

細野委員 では、もう一度確認しますが、いじめのような危機的な状況においても、首長の判断能力よりも、現場に近いところにいる教育長の判断の方がまさっている、したがって、首長には指示権は与えるべきではない、これが大臣のお考えですね。

下村国務大臣 先ほどのお話もそうですけれども、私の答弁を恣意的に別の言葉にかえないでいただきたいと思うんですね。私の言葉をそのまま言われるんだったらいいですけれども、そういう言い方は、先ほどの越市長の言葉云々も、一言もそういうふうには言っていません。ですから、私の答弁を繰り返されるのならそのとおりに言っていただいて、自分で勝手に解釈してつくりかえないでいただきたいというふうに思うんです。

 私が申し上げているのは、教育における事務については教育委員会の権限である、教育委員会の責任者である教育長が執行機関の長として判断することが適切である、そういうふうに申し上げているわけであって、首長の判断よりも教育長の判断が正しいか正しくないかということについては、そういう言い方をしているのではなくて、法律上そういうふうになっている、ですから、法律上にのっとって判断することが、これが法律上適切である、そういうふうに申し上げているわけです。

細野委員 いや、大臣の答弁を質問者として確認するのは、当然、質疑のやりとりの中ですることですから、それをそのままオウム返しするなら意味ないじゃないですか。それはしっかりと私はこう解釈していますということを申し上げております。

 では、少なくとも、大臣がおっしゃっていることは、私なりに解釈しますよ、指示権を首長が持たないのは、現場に近いので、この間もそう答弁されていますよね、教育長の方が現場をわかっているからそちらの判断が尊重されるべきだ、そう言われているわけでしょう。この解釈は正しいんですよね。これが違うということになると議論が成立しないですよ。

下村国務大臣 だから、その言葉自体が正確ではないんですよ。

 近いということもありますけれども、近いというふうに言っている権限というのは、先ほどから申し上げているように、教育に関する事務については教育委員会の権限である。ですから、当然、いじめの問題を含めて、設置主体である教育委員会、そして教育長に対して情報が入ってくるということは、これは制度設計上も当たり前の話だと思うんですね。より詳細な、あるいは的確な情報が入るところがより適切な判断がしやすい部署であることは間違いないことでありますし。

 ただ、先ほどから申し上げていますように、今回、総合教育会議ができるということによって、首長がらち外に置かれるような状況ではなくて、首長の判断で総合教育会議を開催して、そしていじめ問題について対応ができるわけでありますから、当然、首長として、教育長を通じて、例えばそういういじめ等の事例があったとしたら、その状況を総合教育会議等で情報を共有して、その中で協議、調整するということが当然出てくるわけでありますから、首長がいじめ問題について全くらち外であるということはないわけでありまして、総合教育会議ができることによって一緒に対応することになる、それが今度の制度設計であります。

細野委員 その総合教育会議の権限というのは十分なのか十分でないかというのを議論しているわけですね。我々の主張というのは、危機的な状況については首長がきっちり対応できるようにしておくべきだ、そういう主張なんです。

 そうしましたら、もう一つ、これと関連してお伺いをします。

 四十八条には文部科学大臣の権限が書かれていて、教育委員会に対して指導助言をすることができる、こういう権限が定められています。これはもともとありました。

 これに加えて、改正された五十条というものがございまして、そこでは、「身体に現に被害が生じ、又はまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれ、その被害の拡大又は発生を防止するため、」ここが新たに加わっているんです。いじめで亡くなってしまったような本当に不幸なケースが発生をした場合もこれに含めるという意図でしょう。その場合に、文部科学大臣には指示権が与えられているわけです。

 大臣、ちょっとここは整理して御答弁いただきたいんですが、一番現場に近いところにいるのは、今の三者でいえば教育長でしょう。次に近いところにいて、そして住民の負託も受けているのは首長ですね。首長にはこの指導助言の権限もないし、話し合いはできるんですよ、話し合いはできるんだけれども、指導助言の権限もないし、ましてや指示権がないんですよね。

 私は、大臣が最終的にこの権限を持つことは悪いことじゃないと思います。だから、これをなくせとは言いません。大臣が持つのは、これはもう最終的に、最終的な判断で、今まで行使したことはありませんから、最後のものとして持っておくことは悪くないけれども、大臣という、現場から一番遠くて、なかなか的確に判断できるかどうかわからない人にこの権限を渡すのであれば、より現場に近くて、危機的な状況について必然的に対応しなければならない首長にも、少なくとも同様の権限を与えるべきじゃないですか。

 四十八条も含めてですが、この五十条、大臣が持っている権限の大きさと、首長が持っている、特に現場に近い市町村長が持たされていないこの権限のバランスは明らかに均衡を逸していると思いますが、大臣、いかがですか。

下村国務大臣 まず、今回の改正法五十条の大臣の指示権でありますけれども、現行の指示に関する規定は、いじめによる自殺等の事案において教育委員会の対応が不適切な場合に、文部科学大臣が教育委員会に対して是正の指示ができるよう、御指摘がありましたが、平成十九年改正において設けられた規定であります。

 今回の改正により、例えば、いじめにより児童生徒が自殺してしまった後においても、他の生徒児童へのいじめの拡大を防止する必要があるにもかかわらず、教育委員会が必要な措置を講じていない場合などでありまして、この指示以外の措置によっては是正が困難である場合において、文部科学大臣が教育委員会に対して是正の指示が行えるということを明確にしたものであります。

 この五十条の指示権は、教育に関する事務は自治事務であることを前提としつつ、国と地方の適切な役割分担を踏まえ、地方公共団体の内部において問題が解決できない場合に、児童生徒等の生命身体を保護するため、国が最終的な責任を果たせるように設けるものであります。

 一方、地方公共団体においては、地方自治法上、首長と教育委員会は執行機関としては対等であり、いじめ等の緊急事態への対応の責任者は教育委員会であります。首長から独立した行政委員会を設けた趣旨に鑑み、首長から教育委員会に対する指示権を設けることは適切でないという法律上の問題であります。

 しかし、首長は、広く住民の生命、安全の保護を図るべき立場であることから、いじめによる自殺事案が生じた場合など緊急の必要がある場合には、総合教育会議を開催して、講ずべき措置を協議、調整し、教育委員会と連携して効果的な対応を行うことが期待されるところであります。

 つまり、直接的に、首長は、いじめ等の問題があったときには、総合教育会議の主宰者でありますから、首長の判断によって総合教育会議を開いて、緊急にそのいじめについて対応を協議、調整するということができるわけであります。

 そういうような総合教育会議等を経ても改善されない、つまり、教育委員会も、それから首長も含め、そこの自治体が何らかの改善も果たせない、そのことによって児童生徒等の生命身体を保護することについて拡大して危険があるというような最悪の状況において、もしあり得るのであれば、文部科学大臣が最終的な責任を果たせるようにするということを法律上設けたわけであります。

 今回の総合教育会議を設置することによって、首長とともに、教育委員会において適切な対応がなされるということは期待できるところであるというふうに考えます。

細野委員 今大臣が言われた、いじめの事案が発生をして、ほかの生徒とか児童とかに被害が及ぶ可能性があるかどうかというのを、大臣がそんなのを本当に判断できるんですか。そういう判断こそ、本当に危機的な状況にあるのであれば、現場に近いところ、そして、例えば教育長がやれないのであれば、そこは指示権を持ってもらって首長が判断すべきだと思いますよ。

 今の説明は、そこは一体で、教育長と首長は一緒にやるので、そこは一つの主体としてしっかり判断してもらってというような趣旨の答弁をされましたけれども、それはやはり首長に権限を持たせないことの言いわけにはならないと私は思います。

 最後に、もう一つだけ。

 大臣、総合教育会議なんですけれども、これはかなり期待されると思うんですね、現実には。そのときに、議事録は、これは努力義務ではなくて、必ず残すということにするべきじゃありませんか。

 きょう、午前中も被害者の方の手紙を読まれたんですけれども、やはり物すごく根強い、被害者の皆さんからすると、先ほども質疑の中で出ていましたけれども、教育委員会の隠蔽体質とか、可視化すべきだという声があるわけですよ。

 総合教育会議というのは最高意思決定機関になりますよね、教育の中で。場合によっては、教育長と首長だけがやる、二人でやる可能性もある。そこはしっかり議事録をとって公開すると義務化すべきですよ。

 ここも、あれですか、なぜできないのかというと、事務的に大変だから、そういう話なんですか。どうですか。

下村国務大臣 まず、先ほどの答弁について、必ずしも理解をされていないようですので、もう一度ちょっと確認で申し上げたいと思うんですけれども、総合教育会議ができるということによって、事実上はこの五十条は伝家の宝刀になるということをこれは期待したいと思うんですね。

 つまり、総合教育会議でも対応しない、首長も教育委員会も対処しないというような自治体があった場合の最終的なストップ事項としての五十条ということでありますから、基本的には首長もかかわるわけですから、当然、いじめに対する緊急対応はそれぞれの自治体で適切に対応できるであろう、そういう制度設計になっているということでございます。

 それから、議事録については今までも議論がございました。

 これについては、これは立法府でありますから、最終的には国会の方でも判断していただきたいと思いますが、我々の方では、この法案が成立をした後、文部科学省の基本的な考え方については、これは施行通知や説明会等の機会を活用して、可能な限り議事録を作成し公表するように、しっかりと文部科学省として指導してまいりたいと思います。

細野委員 大臣、首長が対応しない場合とおっしゃいましたね。

 総合教育会議では、首長は指示権がないわけだから、教育長がやらなかった場合に対応できない仕組みになっているじゃないですか。協議はできますよ、実質的な要請はできるかもしれないけれども、それで十分な対応をしなかった場合に、やれと言えない。対応しなかった場合と言っているけれども、対応する権限を与えていないんですよ。そのことを問題にしているんです。

 最後の議事録の答弁は、前向きなものと受けとめたいと思います。

 すなわち、この委員会の中で、議会としてしっかりとつくるべしという判断をできれば、行政としては対応するという答弁だというふうに私は解釈しておりますので、ここは与党の皆さんにもしっかり考えていただいて、大津の事故を含めて、この悲劇を絶対に繰り返さないために、しっかりと透明性を高めていく努力を議会としてすべきだ、そのことを最後に申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、菊田真紀子君。

菊田委員 民主党の菊田真紀子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 冒頭、地教行法の改正についての前に、教科書検定について質問させていただきたいと思います。

 五月の二十六日から申請の受け付けが始まる中学社会科の教科書検定で、文部科学省が今回異例の通知を出したということで報道がございました。それは、教科書会社が文科省に検定を申請した後でも記述の追加や変更を認める、こういう報道であります。

 まず確認しておきたいんですけれども、平成十七年四月五日付、当時の中山成彬文部科学大臣談話の二におきまして、「歴史教科書の検定は、国が特定の歴史認識や歴史事実等を確定するという立場に立って行うものではない。教科書検定はあくまでも、検定基準に則り、申請図書の具体の記述について、その時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして、欠陥を指摘することを基本として実施」する旨述べられております。

 去る二月二十一日、当委員会におきまして、私がこの方針は変更されたのかと質問させていただきましたところ、下村大臣は、「当然、変更しておりません。」と明確に答弁をされました。

 平成十三年の福田官房長官のコメントによれば、「我が国の教科書検定制度は、民間の著作・編集者の創意工夫を活かした多様な教科書が発行されるとの基本理念に立つものであり、国が特定の歴史認識や歴史観を確定するという性格のものではなく、検定決定したことをもって、その教科書の歴史認識や歴史観が政府の考え方と一致するものと解されるべきものではない。」と述べております。

 そこで、確認ですが、現政権においても同じ認識でしょうか。

下村国務大臣 これは前回も答弁させていただきましたが、現在においても変わるものではありません。

菊田委員 であるとすれば、政府の統一的見解とは異なる記述をどのように扱うんでしょうか。

下村国務大臣 今回の文科省の改定においても、政府の統一的な見解を教科書の記述で書いてほしいということについては、教科書会社に対して要請はしておりません。もし違う内容を書くのであれば、政府の統一的見解についても記述をすることによってバランスをとるべきだということを申し上げているわけであって、一方的に政府の統一的見解だけを書けということを指導しているわけでは全くありません。

菊田委員 それでは伺いますけれども、民間の著作、編集者の創意工夫を生かした多様な教科書が発行されるとの基本理念は、領土問題については変更したということでしょうか。

下村国務大臣 いや、先ほどから申し上げているように、変更はしていません。

 ただ、先ほどから申し上げていますが、創意工夫の中で政府の統一見解以外のことを記述するのであれば、政府の統一見解についても記述をしてほしいということであります。

菊田委員 下村大臣は、村山談話、河野談話についても教科書に記述すべき政府の統一的見解に該当する旨、さきの委員会で御答弁されていますけれども、今般、追加、変更を求める対象としましたでしょうか。

下村国務大臣 これは前回訂正させていただきましたが、まず村山談話については、閣議決定をされているということで、これは認識が間違っていたということで、これは対象になる。

 河野官房長官談話は、閣議決定ではありませんので、そのこと自体が対象ではありませんが、それに付随した質問書についての答弁については、それに関係した答弁をしているということでの閣議決定はされておりますから、基本的な趣旨については、それは現在においても継承するべきものであるというふうに考えております。

菊田委員 それで、私の質問は、今般、追加、変更を求める対象としたかどうかです。

下村国務大臣 しておりません。

菊田委員 なぜ、しなかったんでしょうか。

前川政府参考人 今般の通知についてのお尋ねでございますので、お答え申し上げます。

 本年一月に、我が国の領土や自然災害における関係機関等の役割等につきまして、中学校学習指導要領解説社会編の一部を改訂したわけでございます。これを受けまして、各教科書発行者におきまして、今回の解説の改訂内容を十分参照の上、教科書の著作、編集に当たっていただく期間を十分確保する必要があると判断したわけでございます。

 今年度検定の中学校社会科の申請図書の受理期間、これが五月の二十六日から二十九日でございますけれども、これ以降におきましても各発行者の判断に基づいて申請図書の変更申請を受けるという旨を、この四月二十二日付の通知によりまして各教科書発行者に通知したわけでございます。

 この通知につきましては、各教科書発行者から特に要望があったということではありませんけれども、今回の通知は、先ほど申し上げました学習指導要領解説、領土や自然災害についての記述を変更いたしましたこの解説の改訂内容を十分参照の上、教科書の著作、編集に当たる期間を確保するということを目的として発出したものでございます。

菊田委員 ですから、今般の異例の通知というのは、領土それから自然災害に限定したものだけをやった、こういうことでありますね。

 それで、これは前にも私は文科省に聞いたことがあるんですけれども、教科書における村山談話、河野談話の記述状況はどうですか。

前川政府参考人 村山談話につきましては、中学校社会科の公民的分野におきまして、七点中一点で記述がございます。高等学校の日本史Aでは七点中三点で、また日本史Bでは八点中三点で記述があり、現代社会では十二点中一点、政治・経済では八点中一点で記述がございます。

 河野談話に関しましては、この談話そのものについて直接記述している図書はございませんが、平成五年にいわゆる従軍慰安婦問題について政府としておわびと反省の気持ちを示したという内容の記述が、高等学校の日本史Aでは七点中一点で、日本史Bでは八点中一点で、政治・経済では八点中一点で記述がございます。

菊田委員 現状は極めてこの記述が少ないということでございます。

 政府は、閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解や最高裁判所の判例がある場合には、それらに基づいた記述がされていることを定めるということをしているわけでありますけれども、今回、異例の追加、変更を認めるというものは領土と自然災害だけで、そのほかのことは全然やらない、こういうことであります。

 そこで、確認をしておきます。福田官房長官のコメントに言う、教科書検定制度における、民間の著作、編集者の創意工夫を生かした多様な教科書が発行されるとの基本理念が今日においても妥当しているか、改めて大臣に確認をします。

下村国務大臣 改めてちょっと申し上げたいと思うんですが、本年一月十七日に教科書検定基準を改正し、閣議決定その他の方法により示された政府の統一的見解や最高裁判所の判例がある場合には、それらに基づいた記述がされていることを求める旨の規定を盛り込んだところであります。

 これは、ある事柄を教科書に取り上げる場合には、その事柄に関する政府の見解を踏まえた記述がされていることを求めているものであって、政府の見解そのものを記述することまでを求めているものではありません。

 村山談話や河野談話を含め、教科書にどのような事柄を取り上げるかどうかということについては、学習指導要領や教科書検定基準の範囲内で、教科書発行者の判断に委ねられておりまして、文科省としては、改正された教科書検定基準に基づき適切に検定を行ってまいりたいと思いますし、福田官房長官のその当時の趣旨というのも、現在変更しているわけではありません。

菊田委員 私の個人の考えですけれども、我が国の固有の領土について子供たちに適切な認識を持ってもらう、これは教科書に記述していく、しっかり教えていくことが大事だという立場に立っておりますが、しかし、この時期に異例の変更を、しかもある特定のところだけに限って行ったことに対して、これは教科書会社の方からは、何か非常に政治的な介入あるいは圧力、影響を与えようとしているのではないかというような声が聞こえるわけであります。その点についてはどうですか。

下村国務大臣 これは民主党政権のときだけでなく、それ以前の自民党政権のときも私は反省すべきことであったのではないかと思っておりますが、国を形成する三基本要素の中の一つが領土ですから、その領土について、我が国の国土がどこまでかということを子供たちに教えるということは、これは国としては当然のことであって、それ以前にそれをきちっと教えるようなことがなかったということ自体が、私は問題だったのではないかと思っております。

菊田委員 ありがとうございました。

 加えて、歴史認識についても適切に子供たちにしっかりと教えていくということも私は要望したいと思います。

 それでは、教育委員会改革についての議論に入らせていただきます。

 今回の教育委員会改革は六十年ぶりの改革というふうに言われているわけでありますけれども、大津市の男子中学生のいじめ自殺事件、これが大変大きなきっかけになったわけであります。

 きょうは、午前中、現行制度の問題や課題をまさに当事者として身をもって体験をされた越直美大津市長から、大変具体的な、また貴重な御意見を伺ったところでありますけれども、越市長は、今回の政府案では責任者が誰なのか明確にならないということを指摘された上で、教育委員会制度を廃止して、首長が執行機関として教育事務を直接行うこととし、教育長は首長の指揮監督下で教育事務を行うべきだというふうに主張されました。

 また、当委員会でもたびたび議論になってまいりましたが、政治的中立について、越市長は、子供たちに何を教えるかという教育内容が最も重要であり、地方の教育は国の定めた学習指導要領に基づいて行われているので、首長が何でも決められるわけではない、また、一定期間の教育方針を教育振興基本計画において定めることになっているので、教育の一貫性や継続性は担保できるんだ、こういうふうに主張もされているわけであります。

 教育委員会の隠蔽体質や形骸化が世論に厳しく問われた事件にまさに直接携わってきたこの越市長の主張を大臣はどのように受けとめられるのか、まず確認をさせてください。

下村国務大臣 教育は人格形成の途上である児童生徒に対して重大な影響を与えるものでありまして、誤った教育が行われると、取り返しがつかないことになります。とりわけ教育においては、そういう意味で、政治的中立性が求められているというふうに認識をしております。

 地域の民意を代表する首長が教育行政に連帯して責任を果たせる体制にすることは必要であるというふうに考えますが、教育委員会が廃止され、首長の判断により教育事務が執行されるということになりますと、首長の考えによっては、教育内容等が大きく左右されるなど、教育の政治的中立性、継続性、安定性が損なわれるおそれがあると考えます。

 今御質問があった、越市長が言われたというその分野における以外のことについても、政治的中立性や安定性や継続性の問題はあるわけでありまして、そういう危惧に対して、今回の改正案において、教育の政治的中立性や継続性、安定性の確保ということに留意すると、教育委員会は引き続き執行機関として残しつつ、総合教育会議の設置や大綱の策定を通じて首長が教育行政に連帯して責任を負う体制を構築するということが、より安定的な教育の執行ということにつながっていくのではないかというふうに判断した結果での政府・与党案でございます。

菊田委員 同じ質問を、野党案の提出者にも伺います。

笠議員 私も、午前中、参考人質疑で越市長の発言を伺わせていただきました。

 本当に、大津市で起きたいじめが原因の自殺、この問題が、今回の地教行法の改正、教育委員会制度を抜本的に見直していく大きなきっかけになったということで、この大変難しい問題を、まさに現場の市長としていろいろな課題や問題点を経験されたんだと思います。その市長が、私どもと同様のお考え、すなわち、やはり最終的な責任を明確にしていくことが大事なんだ、そのことがとにかく求められているということで、首長に権限を一元化するという考えをきょうこの委員会の場で表明されたということについては、重く受けとめなければならないと思っております。

 越市長の御発言のとおり、子供たちに何を教えていくのかという教育内容については、初等中等教育は国の定める学習指導要領に基づいて行われておることから、首長が何でもかんでも勝手に決めることはできるわけはないわけでございまして、地方教育行政の責任を首長に一元化することとしても、教育の中立性は担保できると考えております。

 我々の法案では、仮に首長が、懸念されるような、暴走して勝手なことをやって中立性を損なう、あるいは教育の安定性というものが失われるのではないか、そういったことにも配慮をする観点から、教育監査委員会を設置して、教育行政に対する評価、監視機能を確保していこうという内容になっております。

 さらには、首長による教育の振興に関する総合的な施策の方針の策定に、これは議会の議決を経なければならないものとしております。

 越市長の発言にもあるとおり、各自治体は、一定期間の教育方針を教育振興基本計画において定めているところが多いわけでございまして、教育の一貫性や継続性も担保することができるというふうに考えているところでございます。

菊田委員 時間が来ましたので、最後に一問だけ野党案に質問いたします。

 教育監査委員会についてでありますが、まず、この運用や制度設計がよくわからないというような御意見、あるいは、これは屋上屋ではないか、議会もある中で、さらに監査委員会というのは何をするのかというような御意見、それから、監査という事後チェックでは意味がないんじゃないか、こういうような御意見が地方公聴会でも参考人の方から出されたと思うんですが、この点について、明確に御答弁をいただき、御説明いただきたいと思います。

笠議員 教育監査委員会が処理をする事務については、今、具体的にということでございましたので、首長が処理する学校教育等に関する事務の実施状況に関し必要な評価及び監視を行うこと、そして、評価または監視の結果に基づいて、首長に対して、学校教育等に関する事務の改善のために必要な勧告を行うこともできる、そして、首長が処理する学校教育等に関する事務に係る苦情の申し出等々についてもあっせんを行うこと等が想定をされるわけでございます。

 今、教育監査委員会の行う事後チェックで本当に大丈夫なのかという御指摘でございますけれども、もちろん、議会による、教育行政によるチェックというものも、これは重要でございます。

 ただ、個別の具体的な施策について、議会が、日々いろいろな問題が起こる可能性のある教育について集中的にチェックを行うというには、それは十分でない点がございますので、私たちは、監査委員が行う行政監査は、行政運営の能率性、妥当性、適法性の確保という観点に主眼が置かれているのに対し、教育監査委員会が行う評価、監視は、学校教育等に関する事務が適切に行われ、望ましい成果をしっかりと上げているのかどうかという観点に主眼を置いてやっていくということを想定していることから、議会の役割と、そして、日常的に、常時、常設機関としてチェックをしていく教育監査委員会が両方の役割をチェック機能として担っていくということで、決して屋上屋を重ねるという御懸念は当たらないものだと考えております。

菊田委員 終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、三木圭恵君。

三木委員 日本維新の会の三木圭恵でございます。

 前回の質問の際は、椎木委員が下村大臣の夢を毎晩見るということであったんですが、さっき聞いたら、もう見ないそうでございます。ですが、私の方は、きょうこの質問をするに当たって、下村大臣のお顔が夜浮かびまして、なかなか寝つけない日々を送っておりました。ぜひ、よい御答弁をいただいて熟睡できるように、よろしくお願いしたいと思います。

 まず一点なんですが、首長の任期と新教育長の任期。

 首長の任期は、普通だったら、解散がなければ四年で、教育長の任期が三年ということなんですが、三年と四年にすることによっていろいろとずれが生じてくると思うんです。

 例えば、地方だったらよくあることなんですが、現職と新人候補が激しい戦いを行って、新人候補が市長として勝った場合、前職の任命した教育長がまだ任期半ばで残っていた場合、非常に公約とかが対照的であると、教育長も、前の市長に、前職に任命されていて、新しい市長が来たから、そちらの市長の公約に、はいそうですというふうにも、なかなかうんと言いづらい部分があると思うんです。

 やはり首長の任期と教育長の任期は合わせて、新市長が誕生したときに合わせて新教育長も誕生するという方がいいんじゃないかなというふうに思うんですが、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 ぜひ、きょうを限りに悪夢に出ないように祈っております。

 首長の任期と教育長の任期が違って、今回の新教育長は三年というのは、これは首長が任期中に教育長を任命することができるということでもあるわけでありますが、今までもずっと、教育における政治的な中立性、継続性、安定性から、一気にかえないで、毎年ごとに教育委員を順番にかえていく、そういう仕組みをとっているわけですね。

 今回について、この政府案がもし国会で可決をして通るということで御理解をいただければ、御指摘のような形については、総合教育会議の中で首長が主宰をして教育大綱を設けるということの中で、首長が教育大綱について、教育長や教育委員、あるいは場合によっては地域の有識者に入ってもらうということがありますが、その中で、その教育長が前の首長の任命の教育長だから、教育長は新しい首長との中で教育大綱について意見が合わない、教育的な政策が合わないということであれば、実際は罷免要件はありませんが、これは、ある意味ではその教育長がみずから判断すべきことでもあるのではないかというふうに思うんですね。

 ただ、首長としては、選挙でもし特に教育について公約をして、そして勝って新しくそこの首長になったということであれば、総合教育会議の中で、ぜひそれについては大綱に盛り込むことの中で、首長が教育長に対する協議、調整を行って、そしてそれにのっとって教育長が教育行政を行えるように首長としてもぜひリーダーシップをとっていただきたいと思います。

三木委員 非常に性善説に基づいて、今、首長と教育長が意見が違えば、教育長も、前職の首長に任命されてそちらの思い入れが強かったら御自身から教育長を辞職されることもあるんじゃないかというような御意見だったと思うんですけれども、それは非常に性善説に基づいた御意見でありまして、そこはやはり一概に、百人の教育長がいらっしゃったら百人そうなるとも言えないと私は思うんです。そういった場合に、先ほど、午前中の質疑にもあったように、どんな場合にでもいいように回る制度というのをやはりつくっていかなきゃいけないんじゃないかなというふうに私は考えております。

 やはり、そこでいろいろごたごたするよりは、私は、前回も申しましたけれども、地方議会の出身なんですね。地方議会というのは本当に全員が全員顔が見えているというか、地方議会議員というのも、私の経験ですと、二十四人とか二十二人とか、そういう中で、議員さんもいらっしゃって、教育長もいて、市長もいて、国会なんかよりはもっと生々しいところでございますので、非常にちっちゃい村、ちっちゃい町とかちっちゃい市になると互いの顔が見える壮絶な選挙になるわけでございまして、そのような場合に教育長が前職の首長の任命ということであると、新人候補、新人首長は非常にやりにくい部分が絶対に出てくるんですね。

 例えば、午前中の質疑にもありました中学校の給食。中学校の給食は、前職の首長は、そんなことはしないでお母さんの手づくりのお弁当がいいんだというお考えの方で、新しい首長は、いや、給食をするんだという考え方で、ここが非常に選挙の争点になっていたような場合、やはり教育長はそこに素直に従える方もいらっしゃればそうじゃない方もいて、せっかく選挙で勝ってもその公約が実現できないというようなこともあるんじゃないかなというふうに私は考えております。

 そういったことが、給食のこととかであればまだ、まだいいと言えばちょっと語弊がありますけれども、例えばこういったことが重大ないじめの問題で何か意見が食い違うというようなことがあったときに、首長が教育長と一体となって問題を解決していくというような場面に遭遇したときには、やはり自分が任命した教育長の方が問題も解決しやすいんじゃないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 まず、やはり政治的な中立性や安定性や継続性は教育の中では担保するということは、これは制度上は必要なことだというふうに思います。

 その上で、例えば、新首長が、教育長というのは前の首長のときに選出された教育長ということで、意見が合わないという場合どうなんだという御質問であるかと思いますが、今まではそういうことというのは多々あったかもしれませんが、そういうことを踏まえて、今度は総合教育会議の中で、これは首長が頻繁に、必要があればしょっちゅう開くことによって、首長の選挙のときの選挙公約の教育における実行等を踏まえて、総合教育会議の中で大綱に盛り込む等をすることによってやっていくということが、より首長の権限、責任の明確化にもなってきているわけでありますから、これは相当首長がリーダーシップを持ってやっていけることだと思うんですね。

 そういう方針にどうしても納得できないということであれば、それは、教育長がみずから判断することは当然あり得る話だと思いますが、普通は、それの趣旨にのっとって、大綱にのっとって、教育委員会の方も適切に対応するということの制度設計として考えているところであります。

三木委員 時間が限られておりますので、水かけ論になってもいけませんので、日本維新の会の考え方は、やはり首長と教育長の任期は合わせるべきではないかということと、もう一つ、それが合わないのであれば、教育長の罷免権をやはり首長に与えるべきじゃないかという意見なんですね。

 今、下村大臣がおっしゃったみたいに、仮に、前職首長が任命した教育長と新人の首長がペアでやり始めたときに、全然合わなかった場合、教育長がそれでもやめない場合は、やはり首長がその権限をもって罷免させることができなければ、首長の思い描く学校というものができにくいんじゃないかというふうに思います。

 教育長を罷免する権限をやはり首長に持たせるべきだと思うんですが、それについてはいかがでしょうか。

下村国務大臣 政府案においては、罷免権は、設けるということにはしておりません。

三木委員 非常に残念なことなんですが、それも多分、ずっとやりとりすると水かけ論になってしまうんだろうなというふうに感じます。ですからこそ、野党案を作成して、提出したということにもなるんだと思うんですけれども。

 きょうはほかにもたくさん聞きたいことがございますので、次の質問に移らせていただきます。

 議事録の作成ですね。前回、椎木委員がおっしゃっていた議事録の作成については、前回もお伺いしましたけれども、努力義務じゃなくて、やはり義務づけて、情報公開請求があったときは開示するべきだというふうに考えますが、大臣、もう一度、お考え、お変わりがないかどうか、ちょっとお伺いしたいんです。

下村国務大臣 教育委員会会議は原則公開することと法定されており、改正後もこの取り扱いに変更はなく、引き続き、公開されることになります。さらに、改正案においては、より一層の教育委員会会議の透明性の向上を図り、住民によるチェック機能を強化する観点から、教育委員会の議事録の作成及び公表を努力義務としております。

 教育委員会の議事録の公開については、平成二十四年度の文部科学省の調査において、約半数の市町村教育委員会しか公開していないということで、全ての教育委員会に対して議事録の作成、公表を義務づけるということは、特に、事務局の人数が少ない市町村教育委員会などにおいて過大な事務負担となる。例えば教育長と事務が一人ずつしかいないというところもあるということで、努力義務にとどめているというところでございます。

 しかしながら、住民への説明責任を果たし、その理解と協力のもとに教育行政を行うことは重要であることから、法案が成立した場合には、施行通知や説明会等の機会を活用して、可能な限り、議事録を作成し、公表するよう指導してまいりたいと思います。

 なお、同様に、地方公共団体の執行機関である公安委員会、労働委員会等において、法律上、議事録の作成、公表に関する規定は設けられてはおりません。教育委員会においては新たに議事録の作成、公表の努力義務を規定すること自体、ほかの行政委員会から比べると大きな前進であるというふうには思っております。

 そういうような、非常に小さな教育委員会に配慮した努力規定ということでありますが、改めて、文科省としては、議事録を作成し、公表するよう、可能な限り指導してまいりたいと考えております。

三木委員 下村大臣の方からは、可能な限りということで、大臣がなし得る御答弁の中で、非常にぎりぎりの答弁をいただいたのかなというふうには感じますけれども、今までの教育委員会の隠蔽体質というものを考えましたときに、やはり誰もがその議事録を見られるような状態にしておかないと、幾ら法律を変えて、制度を少し変えても、そういった体質というものが根本からなくなっていかないんじゃないかと危惧されております。

 それは、午前中に越市長が参考人質疑の中で御説明があったように、保護者の方が、遺族の方が情報開示を請求しても、例えば、部外に漏らさないという確約書にサインをさせられたりとか、あと、情報公開請求をして、出てきたものが、私も見せていただきましたけれども、本当にもう枠だけなんですね。全部黒塗りなんです。一文字も読めない。全部黒塗りのものが出てきているんです。

 そういった状況が今まで大津に限らずあって、それがなぜ明るみに出たかというと、それは、教育委員会の自浄作用でも首長の権限が強かったからでも何でもなくて、警察の手が入ったからなんですよ。だから、それが世間の明るみに出ることになったんですよね。十七箱、そのコピーを全部取り寄せて、見たら、今まで教育委員会が言ってきたことと違うことがいっぱい出てきたじゃないか、何でこうやって隠蔽するんだ、人が一人死んでいるんですよね。

 もし自分の子供がそういった状況に置かれて自殺をしてしまったような場合、その原因を親の方は知りたいと思うのは本当に当たり前で、事件の究明を望むのは当たり前だと思うんですね。そういった、わらにもすがる思いで情報公開請求をしたときに、一文字も読めないような文書が手に入って、それを目にしたときの御遺族の気持ちというのを考えると、私は非常につらい思いになります。それはもう、ここの委員会に所属していらっしゃる委員の皆様はみんな同じだと思うんです。

 だからこそ、議事録の公開というものも義務づけてほしいというふうに考えております。もう一度、下村大臣、お願いいたします。

下村国務大臣 もとより、文部科学省がそのような教育委員会の隠蔽体質を是認するようなことは全く考えておりません。

 今回の、議事録を努力義務としたところは、そのような隠蔽体質の温存を図るようなことに対して文科省が協力をするということではなくて、議事録を作成する場合には、録音やメモをもとに教育委員や教育長のやりとりを詳細に記録する必要があり、特に、先ほど申し上げましたが、小規模な教育委員会においては、事務局職員が教育長のほか一人しかいないというようなところもあるということを配慮したわけでございます。

 このような小規模教育委員会から、通常業務に加え、教育委員会会議のやりとりを一字一句記録し、委員への照会、訂正、さらには個人情報等に係る取り扱いの決定、ホームページへの公表という一連のプロセスを行うのは負担が非常に大きいという、そういうことに配慮したわけであります。

 しかし、今、三木委員から御指摘があったようなことに対して、結果的にそのことによって隠蔽体質になっては、これは元も子もないことだというふうに思いますし、文部科学省としては、そういう人的な問題はあるかもしれませんが、可能な限り、議事録を作成し、公表するよう、しっかり指導してまいりたいと思います。

三木委員 議事録を作成する手間が大変だということであれば、私は録音でもいいと思うんですよね。ボイスレコーダーを回してそのまま置いておけば、別に、そのままパソコンに保存できるわけですから、それでもいいと思いますし、何かのときには、手間だということよりも、やはり子供の命の方が大事ですし、何でそのいじめがあったのかとか、そういったことの方が大事なので、何でも方法はあると思います、会議録を、記録するという方法は何でもあると思うので、ぜひそこは強く要望をいたします。

 これはもうこれ以上の御答弁はお聞かせいただけないでしょうから、次の質問に入らせていただきたいと思います。

 いじめ防止対策推進法というのが去年施行されて、そこの第二十八条というものがあります。「学校の設置者又はその設置する学校は、」云々とあって、「学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。」重大事態への対処という第二十八条がございます。「調査及び前項の規定による情報の提供について必要な指導及び支援を行うものとする。」とその二十八条は締めくくられております。

 質問票の使用とか事実関係を明確にするための調査というものをしなさいということが二十八条に書かれているわけですけれども、これの主体は、学校の設置者またはその設置する学校が主体になっているんですけれども、これがしっかりと行われなかった場合は誰が責任をとるんでしょうか。

 大津市のいじめ事件ではこれはなかったですけれども、例えば、そのようなことがあって、アンケートも開示されなかった、情報も適切に出てこなかった、実は隠蔽されていた事実が後からいっぱい出てきたというような場合は、私は、今後も総合教育会議を設けてもあり得ると思うんですね、今のままだったら。

 では、調査を行ったりとか質問票を作成したりとかということがきっちりとなされなかった場合の責任は誰がとるんでしょうか。

下村国務大臣 まず、このいじめ防止対策推進法二十八条でありますが、学校の設置者及びその設置する学校は、重大事態に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者またはその設置する学校のもとに組織を設け、事実関係を明確にするための調査を行うものとするというふうに書いてあるわけであります。ですから、公立学校の場合の学校の設置者とは、学校を設置管理する教育委員会であるわけであります。

 今回の法律改正は、さらに総合教育会議を設けることによって、教育委員会が適切な対応をしていないということであれば、首長が主宰をして、そして総合教育会議を設けて、そこでこのいじめ対策についての緊急対応を行うということでありまして、これは当然首長も一緒になって議論しながら、しかし、実際のところにおける責任は教育長がきちっと行うということが法律における仕組みであります。

三木委員 今、義家委員の方から御指摘のあった三十条、確かにそうなんです。三十条の方を見てみますと、地方公共団体の長は、「附属機関を設けて調査を行う等の方法により、第二十八条第一項の規定による調査の結果について調査を行うことができる。」となっているんですね。

 つまり、いじめの事案がありました、それに対する、重大事態に対する調査を学校の設置者またはその設置する学校が行います、それに対する調査がおかしいんじゃないかとなったら、地方公共団体の長がそれを調査することができるというこの法律のたてつけなんですけれども、今、下村大臣がおっしゃった総合教育会議の中において、もしも、首長と教育長が協力して、では、これをやりましょう、だけれども、やはり出てこなかったよ、調査が十分じゃなかったよという場合、誰が責任をとるんですか。教育長ですか、首長ですか。

下村国務大臣 この三十条において、調査の結果について調査を、つまり再調査を行うことができる。これは首長ができるということですね。

 この再調査というのは、今回、法律が通れば、まずは、再調査する以前の問題として、首長が権限をもって総合教育会議を開くことができるわけです。その総合教育会議の中で、教育長あるいは教育委員と一緒になって、いじめ対策についての緊急会合を開いて、そこで調査をすべきであるという結論に立って教育長が調査をする。その総合教育会議の調査の結果でも納得できないという場合において、この三十条において、首長がもう教育委員会は納得できないから再調査するという規定になるわけであります。

 その結果、総合教育会議における調査の結果と、それからこの第三十条における首長が再調査をした結果が異なるということがもし出たときに誰が責任をとってどうするかということについては、その結果を踏まえて、もう一度総合教育会議等を開いてもらうことによって、首長から、執行権はやはり教育長が持っていますから、教育長に適切に対応させるということになるわけであります。

三木委員 その三十条の五項に書いてあるんですが、「地方公共団体の長及び教育委員会は、第二項の規定による調査の結果を踏まえ、自らの権限及び責任において、当該調査に係る重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生の防止のために必要な措置を講ずるものとする。」最後は、やはりここも協力してやりなさいなんですよ。

 総合教育会議でも、前回の私の質問で、下村大臣の御答弁では、所管する部分が違うんだ、教育に関しては執行機関が二つあるんだと。では、いじめの問題というのは、首長と教育委員会、どちらの権限の中に入る問題なんでしょうか。

下村国務大臣 これは、第三十条の五項を今読まれましたが、この中で、読まれたとおりでありますけれども、当該調査に係る重大事態への対処または当該重大事態と同種の事態の発生の防止のために必要な措置を講ずるということに対して、地方公共団体の長及び教育委員会がみずからの権限、責任において行うということでありますから、これは、首長の教育における権限は予算の部分でありますし、教育委員会における、つまり教育長における権限、責任の部分については、これは事務的な執行機関でありますから、そういうそれぞれの権限において一緒に協調しながら適切に対応するということであります。

三木委員 提出された法律案で、二十一条、教育委員会の職務権限というところで、ずらずらと書いてあります。十九個書いてあるんですね。

 いじめ問題というのはこの中に入ると考えてよろしいんでしょうか。

前川政府参考人 入ります。

 これは、公立学校の管理に関すること、これが、全般的に、児童生徒の安全も含めまして、その管理というものは教育委員会の職務権限であるとしているわけでございまして、いじめ問題に対する対処というのは、教育委員会の職務権限の中の問題であるということは言えると考えております。

三木委員 今、一つの答えが出たと私は思っております。いじめに対しては教育長が権限と責任を持って対処をするというふうなお答えであったと私は今受けとめました。ですから、いじめ問題に対しては、では、最終的な責任者は教育長ということでよろしいんですね。

 ということは、何か裁判が起こったら、訴える相手は首長ではなくて教育長ということになるという御答弁でよろしかったんでしょうか。

下村国務大臣 それはちょっと違いまして、いじめ問題についての責任者は教育長というのは、そのとおりであります。

 ただ、司法対応のうちにおいて、損害賠償訴訟においては、財務の統一的な処理等の観点から、原則として、首長が当該地方公共団体を代表する形になります。しかし、実態的には、教育委員会の対応について訴訟となっている場合は、教育委員会が、資料の提出、証人としての説明等の実質的な対応を行うものでありまして、その実務上の責任者は教育長ということであります。

三木委員 それがやはり御遺族の方の納得できない点だと思うんですよね。

 やはり、教育長が、教育委員会が責任を持っていじめ問題とかに対応していくんだ、権限と責任はそっちにあるんだということをこの法律案でも示しているわけですよ。だったら、いじめ問題で何かあったとき、資料が出てこなかった、調査が不十分だった、そういったときに、御遺族の方がどこに訴えようかとなったら、首長じゃなくて、やはり教育委員会とか教育長であるべきなんじゃないですか。

 それはわかっています、今の制度ではできないということはわかっています、教育委員会を訴えることはできないということはわかっています。だから、もしもこの法案が通っていくのであれば、その法律のたてつけはやはり変更していかないと責任と権限の所在がはっきりとしない。

 誰が責任をとって、裁判になったときに首長が訴えられるというようなおかしなことが起こってくると私は思いますので、こんなことを言うと非常に悔しい思いでいっぱいなんですけれども、やはり多数決をすればこの法案が通っていくのはもう目に見えていることですので、その点に関してはぜひとも考慮をしていただいて、責任と権限の所在というのははっきりとしていただくように、今後の法改正も含めて御考慮いただきますよう要望をお願い申し上げて、最後、下村大臣の御答弁をお願いいたします。

下村国務大臣 お気持ちはわかりますが、これは地教行法だけの問題ではないんですね。

 前回もこの場で議論があったんですけれども、例えば、国を当事者とする訴訟においても、つまり、国の利害に関係のある訴訟については、これは、法務大臣の権限等に関する法律によりまして、法務大臣が国を代表することとされておりますけれども、実態的には、各関係省庁が、資料の提出、証人としての説明等の実質的な対応をする、損害賠償訴訟という、たてつけはそういうふうになっているわけですね。

 ただ、行政処分の取り消しを求めるような行政事件訴訟においては、これは教育委員会が当該地方公共団体を代表するものでありまして、事実上、教育長が責任を持って対応する。例えば出席停止処分とか、つまり、お金に関係ない部分については教育長が行政事件訴訟の対応になります。

 金銭に関係することについては、教育委員会が予算権も含めて持っているわけではありませんから、法務大臣と同じように、法律上のたてつけとして、これはそこの首長が対象ということになるわけでありますので、これは地教行法だけの問題ではなくて、我が国の法体系そのものの問題ですから、全部を変えるという話になってくるということについては御理解いただきたいと思います。

三木委員 だからこそ、教育委員会を廃止して教育部局にまとめて、最終責任者は首長ということにした方が法体系もすっきりするというのが野党案でございます。

 質疑時間が終了いたしましたので、きょうの私の質疑はここまでで終了させていただきます。

小渕委員長 次に、鈴木望君。

鈴木(望)委員 それでは、質問をさせていただきたいと思います。

 きょうの午前中の参考人の質疑、お三方の参考人に貴重な御意見をいただいたわけでありますけれども、私は、共通していたものは、例えば住民の積極的な参加であるとか透明性の確保、そういったものが教育行政に非常に不可欠、必要であるということだろうというふうに思います。

 門川京都市長は、かまど金というような明治時代の一つの住民の積極的な動きの例を挙げて、そういうことを言われました。また、小松参考人はコミュニティースクール、そして越大津市長は、大津いじめ事件を例にとって、隠蔽体質、これを変えていくための一つのものとしては、透明性を高めるということであると。

 透明性を高めるさまざまな手段が、もう再三議論もされております議事録の作成、公開ということだろう、その中の一つがそういうものであるというふうに私も思います。

 これについては、細野委員も、また今、三木委員も指摘しましたので、これ以上私があれこれ言うまでもありませんけれども、一つだけちょっと確認をさせていただきたいというふうに思います。

 文科省の調査では、市町村の教育委員会の議事録、何と四八・七%が公開をしていないという調査結果が文科省自身の調査で明らかになっておりまして、これは多分、文科省も、議事録をつくってそれを公開しろという指導は、今でも陰に陽にしているんだろうと思うんです。だけれども、義務化じゃないから、半分がつくっていない。半分の中には、大きい市もあるだろうし、もちろん小さい市もあるだろうというふうに思います。

 小さい自治体では議事録ができない、なかなか作成することが困難を伴うという御説明でありましたが、私どもの同僚、教育委員会の勤務経験もある同僚の椎木委員によれば、私もそう思いますけれども、そんなに大変なものじゃないんですよと。もし一人しかいないとなったら二人職員を充てればいいだけの話でありまして、これは、国としての意思が議事録をきちんとつくるんだということであれば、私は全然、問題をクリアすることは難しいことではないというふうに思うわけであります。

 私どもは、再三繰り返して、もうこれ以上言いませんけれども、教育委員会及び総合教育会議の透明性の確保は最低限必要であって、そのための議事録の作成、公開の義務化というのは、当然、最低限の責務だろうというふうに思うわけでありまして、それに対して、大臣は、文言修正等があるのであれば、それは国会の中で議論していただきたい、我々は行政府として法案を出しました、あとは立法府として判断をしていただければ、それで結構です、ですから、与野党で合意されれば、そういう判断をされるということに対して、我々は何ら抵抗するつもりはありませんと。

 これは議事録どおりの表現を、今、私、オウム返しに言わせてもらっているわけですが、そこで、大臣に確認でありますけれども、総合教育会議及び教育委員会の議事録については、作成、公表を義務化することに法案が仮に修正されたとしても何ら反対するものではないということでありますね。確認をさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 それはもう、立法府の判断でございますから、立法府の判断に従います。

鈴木(望)委員 はい。了解させていただきます。

 次に、総合教育会議の協議、調整について質問をさせていただきたいと思います。

 この総合教育会議の性格、中でどういうことをやるのかということについて、議論が相当深まってきたんじゃないのかなというふうに認識をしております。ですので、繰り返しになる点があろうかと思いますが、その点は御容赦をいただきたいと思うわけでありますけれども、まず確認的なことから御質問させていただきたいと思います。

 政府・与党案では、首長は総合教育会議にかけて大綱を策定するということになっておりますが、これまでの議論を私聞いておりますと、大綱というのは何であろうか、そういう疑問がどうしてもむくむくと湧いてきてしまう。

 きょうも、大綱とはどういうものかという御質問が与党の委員からもございました。そのことも当然踏まえて、もう一回聞かせていただきたいと思いますが、まず、大綱とはどのようなものを想定しているのか。それで、一般論、抽象的な文言ではなくて、具体的に、市町村レベルでの大綱はどのようなものを想定しているのか。

前川政府参考人 今回の改正案におきます大綱につきましては、国の教育振興基本計画の基本的な方針を参酌して、施策の目標や施策の根本となる方針についての策定を義務づけるというものでございます。したがいまして、教育振興基本計画に盛り込むような詳細な施策の策定までを義務づけるものではないということでございます。

 その大綱に定める具体的な事項といたしまして、市町村レベルで例にとりますと、例えばでございますけれども、市町村の教育行政において大きな懸案であるような事項、例えば学校の耐震化につきまして、いついつの年度までに全学校の耐震化を完了するというような目標を定めるとか、あるいは、これもまた市町村の教育委員会では大きな懸案でございますけれども、学校の統廃合につきまして、いついつを目途にどのような形で学校の統廃合を推進するというようなこと、あるいは、学校給食の実施につきまして、それをどういう方向性で考えるかというようなことが考えられるところでございます。

 これは、あくまでも、例えばそのようなものが考えられるということでございますけれども、具体的に大綱に盛り込むべき事項につきましては、やはり各地方公共団体がそれぞれに御判断いただくということであって、国として、これは必ず定めなさいというようなものはないということでございます。

 また、地方公共団体におきまして、教育振興基本計画……(鈴木(望)委員「済みません、短く」と呼ぶ)済みません。

 では、以上でございます。

鈴木(望)委員 発言を遮って申しわけありません。何回も答弁されていますので、ある程度、もうほかのところの、議事録に書いてあると思いますので。

 要するに、今もお聞きしました、耐震化から、学校給食をどうするのかというような、いろいろある。それは、こういうふうに私は理解する、理解せざるを得ないと思うんですけれども、大綱とは、首長の自治体運営についての基本方針のうち、教育関係に関するものであるというふうに解するわけであります。

 もちろん、その中には、小さい自治体では、中学校の学校給食をやるのかやらないのか。また、今もう全国的に大きな問題になっております、新潟県のある自治体では、学校給食で牛乳を出すのか出さないのか。牛乳をやめるのはけしからぬと、全国的な、けしからぬだけじゃなくて、やめた方がいいというような、米どころの自治体で、そして、日本食、米飯給食に牛乳というのはどうもそぐわない、そういう理由でやめたいということを言っておられるわけですね。聞いてみると、それも一つの方針だろうというふうに私は思います。

 それは一つの例ですけれども、そういったことも含めて、自治体の首長が、自治体運営についての基本方針のうち、教育関係に関するものを大綱として定めていくんじゃないのかなというふうに私は思うんですね、角度を変えて言わせていただきますと。だからこそ問題なわけです。

 これは、首長が大綱を定める、決定するというふうに書いてあるわけですけれども、実は、今までの議論を踏まえてみると、その教育関係に関する首長が定めた大綱のうち、教育委員会の権限に属するものと、教育委員会の権限じゃない、予算とか、首長の権限に属するものがまぜこぜになっている。当たり前の話です、教育関係というのはいろいろな要素がありますので。その場合に、教育委員会の権限に関するものは教育委員会が執行権限を持ち、首長の権限に属するものは首長が執行権限を持つという、私は今までの議事録を見てみましたら、そういう答弁でありました。

 そこで聞きたいわけですけれども、仮に首長の自治体運営の基本方針たる大綱について協議、調整が整わなかったときはどうなるのか、もう一回御答弁いただきたいと思います。

前川政府参考人 大綱は首長が定めるものとされているわけでございますけれども、教育委員会と十分に協議し、調整を尽くした上で策定するということが肝要でございます。

 策定権が首長にあるということで、大綱に記載された事項を執行する責任、これはそれぞれの執行機関にあるということでございますので、先生がおっしゃったように、それぞれの権限に基づいて事務の管理、執行を行うということでございます。

 例えば、学校の統合ということでございますと、仮に教育委員会が大綱に記載することに同意しないというような場合、首長はこれを推進すべきというような考え方で大綱に記載するということもあり得ないことではないと考えております。こういった場合には、大綱に記載されたことでさまざまな議論が喚起されるということで、結果として学校の統廃合についてもコンセンサスが形成されていくのではないか、このようなことも考えられるというふうに考えております。

鈴木(望)委員 全くおかしな答弁ですね。

 要するに、私が聞きたいのは、ほとんどそういうことはないかもわからないですけれども、首長と教育委員会の方針が、大綱に書かれたものについて、食い違った場合にどうなるのか。予定調和でうまくいくだろう。大部分はうまくいくのかもわからないが、うまくいかなかった場合にそれはどうなんでしょうか。法律で枠組みをつくる以上は、そういうことまできちんとやっておかなきゃいけない、これは当然の話ですね。

 この点については、以前に民主の笠委員の質問でも、この政府・与党案の最大の矛盾というふうに形容をされておりましたが、今の答弁を聞くと、まさしく最大の矛盾だな、おかしい、こういう矛盾を内包して、それで政府・与党案を強行しようというのは、私はおかしいんじゃないかなというふうに思うわけです。

 今回の改正で、首長は大綱を定めるから、首長の権限が強くなった、教育委員会に対する牽制の力が強くなったというふうに言っておられるわけですけれども、具体的に議論を詰めていくと、それはフィクションだ、私はそう思わざるを得ないわけであります。

 今回の改正案で、権限と責任は従来のまま、協議が調わない場合は教育長は従わなくてもよいというのであれば、首長のリーダーシップは発揮しようがないと思いますけれども、これについて、いかがなものか、大臣にお聞きをしたいと思うわけであります。

 やはり、仮に総合教育会議での協議、調整が不調に終わっても、大綱の最終決定権限は首長が持っている、首長が決定をするということは御答弁いただいているわけでありますから、首長が大綱に書かれたものについては責任を持って執行ができるというふうにすべきではないのかなと思いますが、そういう考えはいかがでしょうか。

下村国務大臣 今回の改正案におきまして、地域の民意を代表する首長が教育行政に連帯して責任を果たせるような体制をさらに構築させるということで、一つは、首長が現行の教育長と教育委員長を一本化した新教育長を直接任命、罷免することができる。また、首長が招集する総合教育会議を設置し、首長と教育委員会が協議、調整を行うことができる。さらに、首長による大綱の策定を義務化するというふうにしたわけでございます。

 これらによりまして、首長と教育委員会が相互の連携を図りつつ、より一層民意を反映した教育行政を推進していくことを期待していきたいというふうに思いますし、一方で、やはり、政治的な教育における中立性、継続性、安定性、こういうところから、教育委員会を執行機関として残したという経緯もあるわけでございます。

 このような新たな制度的な枠組みによって、今まで以上に首長がそこの自治体における教育行政については非常にやりやすい、かなりそういう仕組みになってきているのではないかというふうに考えております。

鈴木(望)委員 政府の改正案を前提にした場合はそういう御答弁だろうというふうに思いますが、それを前提としたらなお、総合教育会議で矛盾は解決されない。それなら、やはりそういった矛盾点を解決する、やたらに首を切っていいとかそういうことではもちろんありませんけれども、ぎりぎりのところで、伝家の宝刀として首長に教育長の罷免権を与えるということがどうしても法的な措置として必要ではないのかなというふうに私は思います。

 時間がありませんのでもうこれ以上言いませんけれども、私は、首長と教育長の意見が分かれるということは結構あるんじゃないのかなというふうに思います。

 どうしてかというと、教育長は、小さな自治体になればなるほど、教育行政に関し識見を有する者ということで、教職経験の方が、立派な方だと思いますけれども、そういう方が選ばれてくる確率が非常に高くなる。そうした場合に、教育村の利害と首長の言っていることが相反する場合、首長はどちらの方の意見をとるか。教育村の一員である教育長は教育村の利害の方を優先する。だから、大津のいじめ事件のようなときに、教育村に影響が波及しないように、隠蔽体質になったわけです。

 やはり、伝家の宝刀としての首長による教育長の罷免権を、もちろん、やたらに使っちゃいけません、使っちゃいけないんですが、与えるということが私は必要じゃないのかなということを言わせていただきまして、質問する時間がなくなりましたので、終わりにいたしたいと思います。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いいたします。

 きょうも参考人に来ていただきまして、やはり、地方の首長の皆様、特にきょうは京都の市長さんと大津の市長さんが来られて、同じ市長さんなんですけれども、かなり目指すところ、理想とするところは違う、かなり多種多様、それは人でも違う、地域でも違う、多様性というのはやはり確実にあるんだなと。

 これは確認なんですけれども、そういった中で、多岐にわたる、六十年前にできた制度、これはやはり地域地域でそれなりに修正をされてきて、あるという現状の中で、一様に、各地域各地域、同じ制度を適用すること、これの難しさもやはり私はかいま見たような気がいたします。

 冒頭、参考人質疑の感想を述べさせていただきました。

 早速質問に入らせていただきます。

 この審議を通じて、教育行政の執行、そして地域住民の参画体制の面から、地域地域でやはりかなり差があるということがよくわかってきたと思います。このことを踏まえ、今後は、より一層地域の実情に合った教育行政のあり方を考えていくことが必要だと考えております。

 今回の法改正では、政治的中立を確保するためにも教育委員会を引き続き執行機関として必置することとしておりますが、これは最後に論じますが、国と地方でそういった必置の要件が違うというところ、行政委員会の必置要件が違うというところにやはり疑問を呈さざるを得ません。

 そこで、まず、今回、地域の裁量でもう既に任せられているものもございます。それに関して質問させていただきたいと思います。

 教育に関する事務の一部をもう既に地方公共団体の長や首長部局に委任することが法律的にできると例外規定でされております。委任の内容は地域の実情に応じてさまざまだとは思いますが、特に、スポーツに関すること、文化に関すること、そして生涯学習、こういったものに関しては、教育委員会から首長部局への事務委任または補助執行を既に行っているということでございます。

 そこで、まず伺いますが、職務権限の特例による首長の事務の管理、執行、教育に関する事務委任の状況はどのようになっていますでしょうか。そして、首長部局がこれらの事務を行っているその主な理由も聞かせてください。

前川政府参考人 教育委員会から首長部局に事務を移すという方法につきましては、地方自治法百八十条の七に基づき委任するというケース、それから地方教育行政法の第二十四条の二に基づきまして、条例の定めるところによって移管する、こういうケースがございます。

 地方自治法百八十条の七に基づきまして委任されているというケースにつきまして、都道府県、指定都市について見ますと、平成二十四年度におきまして、生涯学習について委任しているもの、これが一三・四%ございます。文化について委任しているもの、一九・四%、スポーツについて委任しているものが三・〇%となっております。

 また、地方教育行政法第二十四条の二に基づきまして、スポーツや文化に関する事務について条例の定めるところによって首長が管理、執行しているというケースでございますが、これを都道府県と指定都市について見た場合に、平成二十四年度におきまして、スポーツでは三七・三%、文化では四一・八%となっているところでございます。

 スポーツや文化に関する事務などは、首長が管理、執行する事務であります観光の振興でありますとか地域の活性化など、地域づくりと連携する観点から首長部局が管理、執行する利点もあるものと考えておりまして、地域の実情に応じまして首長部局が事務を行っているというふうに認識しております。

柏倉委員 ありがとうございます。

 言い方は変ですが、差しさわりのない、そういう政争の具にならないような領域は、もう既に首長が音頭をとってやっている領域も随分あるということだと思います。

 私は、これ以外にも、文化、スポーツにこだわらず、やはり首長さんの意見が反映されるような仕組みも徐々につくっていかなきゃいけないのかなという印象もあります。

 スポーツ、文化にとどまらず、今後、事務委任の範囲を広げて首長部局の活用をさらに図っていくというような政府の考えはないんでしょうか。

前川政府参考人 首長と教育委員会が連携を図りつつ、地域の実情に応じた行政事務の管理、執行を進めるということは重要でございまして、今回の法案もそういった考え方に立つものでございます。

 また、平成十九年の地方教育行政法の改正において、スポーツ、文化に関する事務につきまして、教育委員会が管理、執行するという原則を維持しつつ、地域の実情に応じ首長が管理、執行することを選択できるようにしたということも、こういった考え方のもとで行われたものでございます。

 しかし、その一方で、学校の教育課程の編成に関する事務などのように政治的中立性の要請が高い事項につきましては、教育委員会制度を設けた趣旨からも、教育委員会において管理、執行することが適当であると考えているところでございます。

 文部科学省といたしましては、各地方公共団体の判断によりまして、スポーツや文化などについては首長部局で担当することも有効であるというふうに考えておりまして、首長と教育委員会が連携を図り、地域の実情に応じて適切な執行体制を選択するように促してまいりたいと考えております。

柏倉委員 ありがとうございます。

 常に、首長の教育行政への関与を首長部局という形で高めていくという議論になりますと、必ず出てくるのが、政治的中立性を保つために限界があるんだ、スポーツ、文化に関することにどうしても限定してしまうんだというような答弁が出てまいりました。

 そこで、きょうの越直美大津市長もおっしゃっていましたが、そもそも、政治的中立性というのは、厳密な意味で達成するのはなかなか難しい領域で、フィクションに近いものじゃないかというようなことも、ある新聞ではおっしゃっております。それに必ずしも一〇〇%同意はいたしませんけれども、政治的中立性を厳密に保つのは非常に難しい、そういう問題なわけです。

 それで、そもそも、教育委員会が存在するからこそ政治的中立性が保たれてきたのかというところの検証もまだできていないわけですね。それこそ、教育委員会が形骸化しているからこそ、それだからこその今回の改革のはずなんです。

 とはいえ、教育委員会が形骸化していても、ある程度、一定の政治的中立性は現実に保たれてきている。では、なぜ保たれているのか。教育委員会があるからなのか、それとも、ほかの機関ないし政治的工夫によって保たれているのか、理性によって保たれているのか。やはり、いろいろな思考をめぐらせて、現状を分析して政策に反映させるというプロセス、そういった時間的余裕を担保すべきだと私は思います。

 そこで、教育委員会以外でも、政治的中立性、継続性、安定性、そういったものに必ず寄与しているものがあると思うんです。それをどのように分析しているのか、政府の見解を聞かせてください。

前川政府参考人 地方公共団体におきましては、それぞれの機関の目的に応じまして、行政の中立的運営を確保するなどの趣旨から、長から独立した地位、権限を有する委員会等が設置されております。特に、政治的中立性を確保する観点からは、教育委員会のほか、公安委員会でございますとか選挙管理委員会などが設置されているわけでございます。

 特に教育につきましては、学校教育において一党一派に偏した政治的主義主張が持ち込まれることがあってはならないという政治的中立性を確保する必要があるわけでございまして、首長一人の判断によって教育の内容等が大きく左右されるということがないように、合議制の教育委員会制度が設けられたということでございます。

柏倉委員 ありがとうございます。

 質問の意図は、教育委員会以外でも、教育における政治的中立性を保つためにやはり機能しているところ、見えるもの、見えないものがあると思います。一体、教育委員会以外にどんな組織ないし政治的な、主張でも結構です、そういったところの工夫、審議会を設ける等々あると思うんですね。教育委員会以外にどんなものが政治的中立性を担保する上で機能をしているのかというところの現状の分析をお聞かせいただけますでしょうか。もう一度お願いします。

前川政府参考人 学校教育の政治的中立性に関しましては、法律、また法律にのっとって定められております学習指導要領、こういったものに従って教育を行っていただくということで、まず、大枠の中立性が保たれているというふうに考えております。

 また、外部の勢力からの不当な支配ということが起こらないように、これは中確法と言っておりますけれども、中立確保法という法律のもとで外部からの政治的な影響を排除するという措置がとられているということでございます。

 その上で、個々の学校などの教育施設を管理するという責任につきましては、合議制の教育委員会にその責任を委ねることによりまして、一人の意見で大きく教育内容が偏するというようなことがないような手だてをとっているということでございます。

柏倉委員 やはり教育委員会以外にも政治的中立性に寄与しているものはいっぱいあるわけです。そこのところをむしろビルドアップすれば、教育委員会の必置というものに対しては、見直しも考えられるんじゃないかなという印象がございます。

 学習指導要綱ということをおっしゃいました。きょうお越しになった越直美市長も、もし首長部局として教育部局を立てた場合でも、この学習指導要綱がしっかりしていれば、ある程度教育面での政治的中立性は保てるんだというお話がありました。

 今おっしゃったように、教育委員会だけではなくて、ほかにもしっかりと政治的中立性を担保できるメカニズムがもう既に働いているわけですね。やはりこの六十年余の歴史の中で自然と働いてきている部分もある。そこのところの分析、解析をもってして政策に反映させるということが必要なのではないでしょうか。

 そこで、もう一点、ちょっとその政治的中立性に関してお伺いしたいんですが、政府の見解は、教育委員会があるからこそ政治的中立性が保たれているんだということですけれども、ただ、教育委員というのは、きょう越さんもおっしゃっていました、政党に属することを禁止されていないわけですね。とすれば、一党一派に偏っている人も理論上入り得るわけなんですね。なぜ教育委員が特定の政党に属することを禁止していないのか、そこの政府の見解をお願いします。

前川政府参考人 地方教育行政法におきましては、委員は、政党その他の政治団体の役員となり、または積極的に政治活動をしてはならないという規定がございます。また、同一政党所属委員が委員会の二分の一以上を構成しないようにすること、こういう規定も設けられておりまして、合議制の機関である教育委員会において、合議制機関全体として政治的中立性が失われることのないようにしているということでございます。

 個人が特定の政党に属するか否かは各個人の思想、信条の自由に属することでございますので、教育委員会の委員につきましても、基本的人権の尊重の観点からは、政党に所属することまでを禁じるということは困難ではないかと考えております。

柏倉委員 幹部はいけないということなんですけれども、結局、中立の立場の人だけを集めるということではなくて、多種多様な意見を反映させる、それを担保するという意味合いで、この政治的中立性が教育委員会で保たれるということだと思うんですね。

 とすれば、やはり、そういった審議会なり等々、これを首長の下に置いてやるということでも十分対応できるんじゃないかなというふうに思います。

 この政治的中立性を首長に任せちゃうとだめだというところをいろいろと議論しておりますけれども、なかなかクリアカットに教育委員会でなくてはいけないという答えが出てきていないというふうに意見を申し上げたいと思います。

 そこで、これはもう確認の質問になりますけれども、再三これも指摘されていることと思います。国には教育委員会制度がないのはどうしてか。なぜ、地方には必置を義務づけて、国にはないのか。文部科学大臣が前面に出て、諮問機関、当然、有識者会議等々ありますけれども、政治的中立性をどのように国は担保しているのかという疑問を呈している方もやはりいらっしゃいます。

 そこは、地方には義務づけておいて、国には義務はないのか、そういったところと、国はどういったところで政治的中立性、そういったものを担保しているのか、こういった質問はやはりどうしてもさせていただかなきゃいけないと思います。これに関する政府の見解をお聞かせいただければと思います。

下村国務大臣 教育行政における国と地方の役割には違いがあります。国は、学校教育法の制度の枠組みや学習指導要領といった全国的な基準を定める、あるいは教員給与等の財政負担を行うこと等を役割としているわけでありますが、学校の設置管理者として、児童生徒に直接教育を実施したり教職員人事を行うといった立場にはありません。このため、内閣から独立した委員会を設けず、文部科学大臣が教育行政を行っているわけであります。

 国と地方の統治機構の違いという面からすれば、国が議院内閣制をとっているのとは異なり、地方は二元代表制をとっており、首長は住民による直接選挙で選出されるなど、議会との関係では極めて強力な権限を持っております。このため、教育委員会制度を含む各種委員会制度が設けられているわけであります。

 こうしたことから、今回の改正では、教育の政治的中立性、安定性、継続性を確保する観点から、首長から独立した行政委員会としての教育委員会を引き続き執行機関として残しつつ、地域の民意を代表する首長が教育行政に連帯して責任を果たせる体制を構築するため、総合教育会議の設置等をすることとしたものであります。

柏倉委員 大臣、答弁ありがとうございます。

 国の役割と地方の役割は違う、全くおっしゃるとおりだと思います。国は、全国的な統一基準を定める、そして、あとは予算確保、そういったところ、ナショナルミニマムをきっちりと突き詰めていくのは国の役割だと思います。

 私は、今回の制度設計が果たしてナショナルミニマムとイコールなのかといいますと、制度は制度で、全国統一、画一的なものが必要であるというところは意味合いとしてはわかるんですけれども、まだまだ地方の多様性にやはりフィットしていかない部分もかなりあるのかなという印象があります。

 ナショナルミニマムをしっかり、国の役割を果たしていくというのは、大いに私もそのとおりだと思いますが、やはり、地域地域、この多様性にぜひフィットしてもらえるような柔軟な最終的な政府案、こういった形の修正を望んでまいりたいと思います。

 時間が参りましたので、これで終わりにします。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野の井出庸生です。きょうもよろしくお願いをいたします。

 きょうは、午前中、参考人でいらっしゃった、いじめ事件のありました大津の越市長が、越市長のお考えは、野党案を支持する、首長の責任をより明確なものにしてほしい、そういうお考えの発言がきょうあったと思います。ですから、きょうは、民主党、日本維新の会の提出している法案について、一つずつ質問をしてまいります。

 まず、民主、維新案というのは、首長の責任を明確化したときに、その後の具体像がないのではないか。責任を明確化したけれども、首長にお任せして、任される首長の方も、そこを不安に思っている。越市長のように、そういうことはないという方もはっきりいらっしゃるとは思うんですけれども、そういう懸念があって、余り、各報道、市町村長に対するアンケートでも、理解が深まっていないのかなと私は感じているんです。

 この民主、維新案を実行していくときに、国として、例えばガイドラインをつくるですとか、その法律をやっていく上での自治体への支援や指導というものについて、何かお考えがあれば伺いたいと思います。

鈴木(望)議員 提出者の一人としてお答えをさせていただきたいと思います。

 そういった御懸念、理論的にはあり得るのかなとも思いますけれども、実際上はほとんど心配はないのではないのかなと。学校があって、教育委員会、今の現行制度上で教育委員会に相当数の事務職員が働いていて、その間の交流もあるということで。

 ただ、一つは、最終責任を教育委員会という合議体が負うのか、そうじゃなくて首長がきちんと最終責任を負うのかというところに一番の、私どもの民主、維新案と政府・与党案の違いがあるわけでございます。

 私どもは当然、私どもの改正案が施行された場合にスムーズにいくというふうに確信もしているものであります。ただ、当然大きく枠組みが、戦後六十年に一回の大改正ということで変わってくるということを考えますと、私どもの法律案の施行期日は閣法と同様に平成二十七年四月一日としているわけでありまして、当然のことでありますけれども、公布から施行までの間に、文科省を中心とする関係省庁により、ガイドラインづくりや各自治体の関係者を集めた説明会の開催等、自治体への支援、指導等、この法律案施行のための措置や関係法令の整備が迅速になされるものというふうに考えているところでございます。

 また、そもそも現在の地方教育行政につきまして、権限と責任の所在が不明確、地域住民の意向を十分に反映していない、教育委員会の審議等が全く形骸化している、また、いじめ等に対して迅速さ、機動性に著しく欠けるというようなことが指摘をされている現実もございまして、このような指摘がある以上、現行制度に対する疑問を持つ国民、住民は多いのではないのかというふうに考えているところであります。何より、子供の命にかかわる事故事案が繰り返し発生し、制度疲労を放置しておくことは許されない。早く教育委員会の改正を何らかしろという声の方が大きいのではないのかなというふうに考えているところでございます。

 そこで、この法律案では、地方教育行政における権限と責任の所在を明確にするために、これまで分散していた教育に関する権限を首長に一元化して教育行政の最終責任者とする新たな仕組みづくりを提案したところでございます。

 この法律案に基づく新たな仕組みのもとでは、住民による選挙で選ばれた首長が、みずからの責任で民意を酌み取り、地方教育行政を運営していくことにより、現行の地方教育行政よりも民意が反映されたものとなり、地域の主体性があらわれ、抜本的な教育改革が実現されると考えておりまして、具体像が思い描けないという御指摘は当たらないのではないのかなというふうに考えているところでございます。

 以上です。

井出委員 少し極端な伺い方になるんですが、教育委員会が廃止になる、ですが、現状でも、首長部局の、教育部局事務局がやっているしというお話もあったんですが、今のお話ですと、最終責任と権限を首長にするんだ。だから、首長の責任においてということさえきちっと守っていれば、首長が、これまでどおり、自治体から五、六人の、今まで教育委員がやってきたような、そういう教育に対するアドバイザーのような制度を設けて、定期的に相談をかけていくというようなことも、ですから、最終的な責任、権限は首長になるけれども、実態をそんなに変えなくても、変えても、そこも、首長さんの責任においてやればいいのか、どうなのか。

 現状どおりいきたいという方もいると思うんですよね。そこも、首長の責任においてであれば、現状維持でも別に、教育委員会が執行機関としてなくなるからといって、実態までがらっと変える必要はありませんよというようなことも可能なんでしょうか。

鈴木(望)議員 基本的にほとんど実態は変わらないということを申し上げたところでありますが、ただ、私どもの新しい教育行政の枠組みでは、教育委員会を廃止すると同時に、基本的な方針を首長がつくって、それを議会にかける。

 基本的な方針というのは、原則として毎年議会にかけるということを想定しているわけですけれども、基本的方針に住民の方々の意見とか有識者の方々の意見を反映させる仕組みはどうするのか、場合によっては、今の国レベルにおける中教審のような諮問機関を設けるべきではないのかという貴重な御指摘もございました。そういったことも含めて、法施行までにいろいろ準備をしなくちゃいけない。

 また、教育監査委員会、これも新たに首長に権限が一元化される一つのチェック機構としてつくっていかなくちゃいけませんので、法施行までに、教育監査委員会をどういうふうに組織をし機能をさせるのかというようなことについては、これは当然重要なことでありますので、そういう法施行の準備を当然していかなければならない、御指摘のとおりだと思います。

 ただ、私が最初に言わせていただいたのは、教育の中身というか、今現在学校で行われているような教育そのものは、責任がどこにあるのかというところが基本的に変わっていくことであって、中身そのものについて、教育が適正に行われていくべきであるし、いかなきゃいけないという意味では変わらないということを申し上げたことであります。

 以上です。

井出委員 私が今そういう質問をさせていただいたのは、法律が全く変わるのに現行どおりでもいいのかという、ちょっと極端な伺い方をしました。

 これまでの議論、先ほど柏倉委員の方からお話があったんですけれども、やはり地域ごとに事情が違うとか、そういうことがあったときに、野党案の方が幾らか柔軟性があるのかな、そういうことをちょっと考えて、きょう質問させていただいたんです。

 監査委員の部分は、これは法律の肝でもありますから、そこは今、しっかりやっていくというお話であったかと思いますけれども、首長の裁量ということであるので、当然、地域性は出てくると思っておりますが、その地域性の裁量というのは出るというところを一言いただければと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木(望)議員 おっしゃるとおりだと思います。

 首長は、当然のことですけれども、地域の住民によって選ばれている、民意を代表しているということで、その地域の実情でさまざまな差異なり特徴が出てくるというふうに考えるところです。

井出委員 ありがとうございます。

 先ほどのお話の中で、基本方針という話がありまして、教育振興に関する総合的な施策の方針の策定ということをこの法律はやっていくということになっていくと思うんですけれども、野党案で最も指摘されているのは、教育監査委員会が事後のチェックしかしない、いろいろ政策を進めていく上での中立性が保たれないのではないかという声はこれまでもあったところです。

 私は、施策の方針の策定とか、そういったものは、多くの首長さんであれば、教育というのは本当に重要な政策でありますから、市政、町政、村政のほかの重要政策と同じように、オープンな場でやっていくのが首長としては当然ではないかと思っております。当然、パブリックコメントをやるとかそういうこともありますし、オープンな議論でやっていくということもありますし、そこのあたり、政策形成過程においてオープンな議論をしていくということについての仕組み、お考えを伺いたいと思います。

吉田議員 オープンな議論という問題でございます。

 我々野党案は、地方教育行政における責任者が首長ということになりますので、教育委員会のような合議体が執行機関ということではありません。したがって、意思決定のための議論をその段階で公開するということは制度上できないという仕組みではございます。

 しかしながら、最終責任者である首長が自分の施策についての説明責任を果たさなければならないというのは当然ございますので、これは積極的に議会ないし住民に情報開示、説明をするということが求められるものと考えております。

 そして、御指摘がありました総合的な施策の方針というのを毎年つくるわけですが、これが議会の議決を経なければならないということになっていますので、議会で当然ながらオープンな議論がされる。

 また、教科書の選定ということにもお触れになりましたけれども、これは専門家による議論がなされるわけですが、それを公開するなど、積極的な説明責任を果たすことが、これも求められるというふうに考えております。

 また、野党案では事後チェックということに機能が限られるんじゃないかという御指摘もあったと思いますが、確かに、教育監査委員会というのは事後的なチェックをすることにはなっておりますが、これは、ある施策が実行に移された後でないとチェックすることができないということではございません。

 施策を実行に移されるまでの手続の途上で、例えば首長がその施策についての意思を表明したり、実行に移されるまでのいろいろな手続の間に必要な評価、監視をこの監査委員会が行って、不適切ということであれば、実行に移される前に勧告等を行うことができるということでございますし、先ほど申し上げた方針というのも議会による事前チェックがなされる、こういうことによって、教育の中立性、開かれた議論というものが確保されていくものというふうに考えております。

井出委員 ありがとうございます。

 きょうの午前中の参考人質疑でも申し上げたんですが、やはり教育委員会制度改革のきっかけの一つはあの大津の事件だったと思っております。

 お子さんが命を落としてしまうような、本当に深刻で最悪の事態が起こったときの対応について、前回政府案について質問させていただきましたが、改めて野党案に、子供が命を落としてしまった場合に、客観的な検証や再発防止を図っていくことができるのか、隠蔽のない対応ができるのか、そのあたりのお考えを伺います。

鈴木(望)議員 お答えを申し上げたいと思います。

 まさに今、井出委員が指摘をされたところが、私ども、教育委員会のあり方を抜本的に見直して、廃止をするというところに至った原因でございまして、そもそも、大津いじめ事件のポイントは、教育委員会の隠蔽が問題だったわけでございます。そして、その大きな原因は、教育長も含め、教育一家、教育村と言われるところから出てきていて、事が起こった場合にどこを優先するかという、いわゆる犠牲者または被害者のことを優先するのか、それとも、教育村の一員の、学校の校長先生なりそういうところに責任が波及するというようなことを防止するのか、そこのところの利害対立だったんじゃないのかなというふうに考えているわけであります。

 大津のいじめ事件の場合にはそれが典型的にあらわれて、被害者の利益よりも、自分たちの責任追及とかそういうことをされるのを防いで隠蔽が行われた。しかも、教育委員会は責任体制が不明確であった。だからこそ、こういったいじめ事件が現在でも後を絶たないというふうに私ども認識をしているところでございます。

 そういう意味で、教育委員会を廃止して、民意にさらされている、選挙で選ばれた首長に責任を一元化したい。そのことによって、もっともっといじめ事件に対する対応が迅速に行われるように、的確に行われるようになってくるんじゃないのかなというふうに私どもは今認識をしているところでございます。

井出委員 自分たちが責任を追及されることを恐れる。それは、教育委員会でもあると思いますし、その教育委員会と首長がなれ合ってしまっても起こることだと思いますし、あと、もっと言えば、首長さんが最終責任、権限があったときも、自己の責任を追及されるのを恐れることは十分ある。そのときのために教育監査委員を置いているのかなと私は思いますし、そうであるからこそ、教育監査委員というのは、特にいじめの対応については徹底的に首長から独立した立場から監査をしていただきたいと思うんですが、そこだけ、ちょっと最後に一言いただけますか。

吉田議員 おっしゃるように、いじめの対策等も含めて、教育に関する首長の事務が適切に、かつ望ましい成果を上げながら行われているのかということを評価、監視するのが新しい教育監査委員会の役割ということでございます。

 さらに申し上げれば、どういうときにこの委員会が開催されるのかということは法律上は明記されておりませんが、常に首長の事務を監視し、常に適切な評価をするということが想定されているということも申し上げたいと思います。

井出委員 時間なので、引き続き慎重審議を求めて、終わります。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 今回の政府法案の第一の立法趣旨は、法案趣旨説明のとおり、地方教育行政における責任体制の明確化ということであります。大臣は、委員会では、教育委員長と教育長のどちらが責任者かわかりにくいとも述べられました。事の発端は、教育委員会の大津市でのいじめ対応であり、教育委員会の責任体制の問題について、きょうはただしていきたいと思います。

 まず、きょうは総務省から自治行政局長においでいただきました。

 教育委員会も、地方公共団体に設置される行政委員会の一つであります。監査委員はさておき、地方自治法上、独任制の執行機関というものは、選挙で選ばれた首長以外にないと思うんですが、その確認と、また行政委員会は、選挙管理委員会あるいは公安委員会でも、合議制の執行機関であります。

 聞きますけれども、選挙管理委員会や公安委員会の責任者は委員長ということになるのかどうか、お答えいただけますか。

門山政府参考人 お答えいたします。

 地方自治法上、御指摘にございました監査委員を除きますと、独任制の執行機関といいますのは選挙で選ばれる首長だけでございます。

 それから、もう一点ございました、選挙管理委員会ですとか公安委員会、これはまさに合議制の執行機関でございまして、合議によりまして意思決定された事務を執行する責任ということに関しましては、委員長が負うのではなく、合議制の機関であります委員会が責任を負う、こういうことになっております。

宮本委員 委員長が負うのではなく、合議制の執行機関が負うという答弁でありました。

 現行法のもとで、同じく行政委員会たる教育委員会も、教育委員会の権限に関して言えば、会議の主宰、会議を代表する以外に、教育委員長に特別な責任はありませんね、初中局長。

前川政府参考人 教育委員長は、執行機関としての教育委員会が決定した事務について、教育委員の一人として責任を負うことになるわけでございますが、あえて申し上げれば、教育委員会の会議の議事につきまして、出席委員の過半数で決するということになるわけでございますけれども、可否同数のときは教育委員長の決するところと規定されておりますので、その限りで教育委員長に特有の責任があるということは言えると思います。

宮本委員 ちょっと大事なところなので、確認いたしますよ。

 現行の教育委員長は、先ほど自治行政局長が述べたような選挙管理委員長や公安委員長とは違って特別な責任を負っていると今答弁されましたか。

前川政府参考人 私が申し上げましたのは、教育委員会の委員長は、会議を主宰し、教育委員会を代表するという責任のほかに、可否同数のときに委員長の決するところという規定があるということを申し上げたまででございます。

宮本委員 では、執行責任は教育委員長にありますか。

前川政府参考人 あくまでも執行機関は合議体である教育委員会でございますので、執行責任は合議体である教育委員会にあるということでございます。

宮本委員 当たり前なんですよ、行政委員会なんですから。同じように、執行機関たる、合議制たる教育委員会に執行責任があるわけですね。

 教育委員長と教育長、どちらが責任者かという議論は、もともと教育委員長には執行責任というのはないわけですから、単なる誤解、いわば、わかりづらさのレベルでしかないわけですね。

 もちろん、現行法のもとでも教育長には責任が生じます。とりわけ地教行法二十六条に定められた事務委任を受けた場合には、教育長には当然直接的な責任があるわけです。

 きょうは、大津市中学生いじめ自殺事件が問題になった滋賀県大津市教委の事務委任等に関する規則というものを皆さんにお配りいたしました。見ていただきたい。

 先ほどの参考人質疑でも、越市長自身に私は確認いたしましたけれども、この事務委任の規則、これを見ますと、もちろん第一に地教行法第二十六条二項に掲げる事務を初め、十一項目にわたる委任できない事項を書いているのみであって、ここに掲げている、一から十一までに掲げられたもの以外は教育長に事務委任をされていたわけであります。ですから、いじめ対応など日常的な事務は教育長に事務委任されていた。だから、先ほど越市長にも、不明確でも何でもない、教育長の責任は明確ではないかというふうにお伺いしたわけです。

 そこで聞くわけですけれども、これも初中局長です。

 今回の法改正によって、教育委員会の責任体制は一体どう変わるのか。例えば、まずは、一般的に、いじめ対応のように、教育委員会が教育長に事務を委任している場合の責任はどのようになりますか。

前川政府参考人 教育委員会が教育長に委任を行った事務につきましては、その執行の責任は委任を受けた教育長にございます。

 なお、教育長への委任は解除することが可能でございまして、今回の改正案では、教育長は、教育委員会規則の定めるところにより、委任された事務の管理及び執行の状況を教育委員会に報告しなければならないと規定しているところでございます。

宮本委員 今までと変わらず、委任された事務については教育長にその責任があるという御答弁でありました。

 では、同じく改正案で、人事や基本的な方針など教育長に委任してはならない、委任できない事務、これの権限と責任は今後どのようになりますか。

前川政府参考人 教育委員会が教育長に委任できない事務につきまして定めた現行法二十六条第二項は、改正後も変わることはございませんので、教育委員会が教育長に委任していない事務につきましての執行の責任は、執行機関である教育委員会にございます。

宮本委員 現行二十六条二項、法案では二十五条二項に定める委任できないものについては、これは委任できないわけですから、合議体たる教育委員会に執行責任がある、当然のことであります。

 これは大臣、そうなりますと、現行と新しい法案と、責任体制を明確にすると言うけれども、全く同じじゃないですか。どこが違うんですか。

下村国務大臣 それは、先ほど宮本委員がみずからおっしゃっていたように、それのわかりづらさについての整理を行ったということでもあります。

宮本委員 わかりづらいのをわかりやすくしたというだけの話なんですか、この法案は。そうですか。驚くべき答弁でありますけれども。

 公立学校でのいじめの対応、いじめ自殺の対応、これは、現行地教行法二十三条でも、法案の二十一条でも、これはもちろん教育委員会の分担であることは明らかだと思いますね。

 いじめ対応が事務委任されている場合、つまり教育長に事務委任されている場合は、その責任は、現行法でも教育長にある、今回の法案でも、先ほど局長が答弁したとおり教育長にある。これはもちろん確かなことですね。大臣もそのとおりですか。

下村国務大臣 そのとおりです。

宮本委員 では、再度、大臣にもこれは確認しますけれども、教育の基本的な方針とか人事というようなものは、現行の二十六条二項、法案では二十五条二項によって、委任してはならないとなっている。あくまで教育委員会の合議で決めなければならない。あるいは、それに加えてなお、教育委員会の規定で、委任していない事項を定めているところもあります。大津の場合などは、教科書の採択などは委任はしておりません。

 新たな法案でも、先ほどの文科省の答弁どおり、この責任、決定権限、執行権限は合議制の教育委員会が持つ、これも大臣、よろしいですね。

下村国務大臣 改正法二十五条二項一号におきまして、教育に関する事務の管理及び執行の基本的な方針に関することについては教育長に委任することができないということの中で、この基本的な方針、大綱ですね、これは、当該地方公共団体の教育の振興に関する総合的な施策について、地域の実情に応じて、その目標や施策の根本となる方針であることから、改正案の第二十五条第二項第一号の基本的な方針に当たるというふうに考えます。

宮本委員 つまり、大綱も、委任できない基本的な方針に当たるという御答弁だったと思います。そして、それは合議制たる教育委員会でなければ決めることはできない、それでいいですね、大臣。

下村国務大臣 そのとおりです。

宮本委員 ところが、何か、教育委員会の責任体制が変わり、新しい教育長が教育委員会の最終責任者になったかのような答弁が、当委員会で大臣の口から何度も出されております。

 五月の九日、日本維新の会の椎木委員の、大綱の協議、調整が整わなかった際に、首長、教育長、どちらが上位なのか、こういう問いを繰り返し椎木委員がされましたけれども、そのときに大臣は、いろいろ答弁した末に、首長は予算編成において最終決定者だ、教育長は実際の教育行政における人事や教科書採択については最終決定者であると答弁されました。

 文科省に確認いたしますけれども、人事、これは教育長に委任することは許されておりますか。

前川政府参考人 地方教育行政法上、例えば採用の選考は教育長が行うというようなことになっておりますけれども、人事に関することにつきましては、現行二十六条二項によりまして、委任できない事項となっております。

宮本委員 委任することは許されておりません。現二十三条、法案二十一条、合議体としての教育委員会が意思決定する以外にないこの人事を、教育長が最終決定者だという答弁は、完全な明らかな間違いだと言わなくてはなりません。

 大臣、答弁を撤回する以外にないと私は思いますが、いかがですか。

下村国務大臣 御指摘の点については、総合教育会議における協議、調整にかかわる責任体制について、責任関係について、首長か教育委員会かという観点から述べれば、人事や教科書採択については教育委員会側に責任があるという趣旨で、その第一義的な代表者としての教育長である趣旨の答弁をしたものであります。

 すなわち、地教行法第二十一条に規定する教育に関する事務の管理、執行については教育委員会が最終責任者であり、第二十二条に規定する教育に関する予算の編成、執行等については首長が最終責任者であると考えますが、合議体としての教育委員会が決定した方針に基づく具体的な事務の執行については教育長が第一義的な責任者でありまして、そういう趣旨で申し上げたわけであります。

宮本委員 ごまかしてはだめなんですね。

 大臣の答弁は、教育長は人事についての最終決定者であるという旨の答弁をしたわけです。言葉としても、最終決定者と、議事録を見てもらったら、そのとおり、椎木先生に対して答えているわけですね。

 人事の決定権限が一体どこにあるか。最終決定権限が教育長にあるのか、合議制の教育委員会にあるのか。これは、教育委員会が合議体として教育長をチェックできるかどうか、与党合意でも大変重視された事柄に直結する大問題であります。最終決定権限が教育長にあるとすれば、教育委員会など完全なお飾りになってしまうと言わなければなりません。これは、大臣自身が提案している法案の条文とも全く違うわけですよ。

 しかも、大臣のそのような答弁はこの一回だけではありません。四月二十五日にも、本委員会で、日本維新の会の田沼委員の大綱の調整についての質問に、教育委員会の代表たる教育長がその執行委員会の責任者として判断すると述べられました。

 大綱というものは教育の基本方針ですから、先ほど御答弁があったとおり、二十五条二項の一によって、教育長に委任をすることはできないわけですね。その大綱の調整について、教育委員会の代表たる教育長が責任者として判断すると。責任ということはもちろんですが、判断を教育長がするのだとしてしまった。これは全く法のたてつけとも違うわけですよ。

 こんな答弁が続いて、これ以上審議を続けることはできない。どう修正されますか。

下村国務大臣 これは、先ほども申し上げましたように、首長か教育委員会という観点から述べれば、人事や教科書採択については教育委員会に執行権限があるということは、これは何度も申し上げていたことであります。その第一義的な代表者としての教育長である趣旨の答弁をしたものでありまして、総合教育会議におきまして、これは首長が主宰をいたしますが、場合によっては首長と教育長だけで開くということもありますし、あるいは教育委員会全員が参加するということもありますし、そこに有識者がさらに参加して総合教育会議を開くということもあるわけでありますが、その場合の教育長というのは、単独で出た場合は教育委員会を代表して出ているわけでありまして、そういう意味での第一義的な代表者という意味であります。

宮本委員 だから、なおのこと問題なんですよ、大問題なんですよ。

 最終決定者であるという答弁、つまり教育長さえ出ていればそれで最終決定者なんだという答弁をしたことになるんですよ。違うでしょう。大綱については基本的な方針なんだから、ちゃんと合議で決めなければならないのは明らかなのに、最終決定者であるという答弁をしたから、撤回しなさい、修正しなさいと言っているんです。撤回しますか。

下村国務大臣 最終決定者というのは第一義的な意味で言っているわけであって、先ほどから申し上げていますが、人事や教科書採択等の事務に関する執行については教育委員会が最終責任者であります。その代表として教育長がというふうに申し上げた。第一義的な責任ということで申し上げました。(宮本委員「そんなこと言っていないですよ。だめです、それは。これは撤回してもらわないと質問を続けられません。全くおかしいじゃないですか」と呼ぶ)

 それは解釈の仕方ですけれども、第一義的な、教育長は第一義的な責任者ということで申し上げているわけであります。それでぜひ御理解いただきたいと思います。

宮本委員 第一義的ななんて言っていないじゃないですか。読みましょうか。

 首長は予算編成において最終決定者だ、これは自治行政局が述べたとおり独任の執行機関ですから、これはいいでしょう。そして、教育長は実際の教育行政における人事や教科書採択については最終決定者である、ちゃんとそう言っているじゃないですか。

下村国務大臣 ですから、先ほどから申し上げていますように、おっしゃるとおり、法律のたてつけは、教育委員会が最終決定をするわけであります。先ほど申し上げているのは、総合教育会議で教育長と首長が協議をするという場合においては教育委員会を代表して教育長が出ているわけでありまして、そういう意味での第一義的な責任として教育長ということを申し上げたわけであります。

宮本委員 到底納得いきません。文言どおり読めば、そんな話になっていない。

 じゃ、間違いですね。この最終決定者というのは正しくない。よろしいですか。

下村国務大臣 教育委員会が最終責任者であります。

宮本委員 教育委員会が最終決定者ですね。

下村国務大臣 教育委員会が最終責任者であるし、最終決定機関であります。

宮本委員 この間の答弁を聞いておりますと、そういうやりとりがずっと続いています。私は、大臣は法の趣旨そのものを理解しておられないんじゃないかと。あたかも新しい教育長がそういう最終決定者になったかのような、そういう御理解でこの審議に臨んでおられるのかと。

 到底、こんな状況で法案を議了するとか、あるいは採決するというようなことは、全く認められません。引き続き徹底審議を求めて、私の質問を終わります。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木でございます。本日も、どうぞよろしくお願いいたします。

 何度も重ねて大変恐縮なんですけれども、本日も、教職員の県費負担制度について質問させていただきますので、どうぞよろしくお願いします。

 今回の地教行政法の中では、この点について、その改正点として特に変更があるわけではないのですけれども、生活の党として大変問題意識を持っている点でありますので、本日も質問を続けさせていただきます。

 公立の小中学校の教職員につきましては、身分は市町村の公務員であるが、給与は都道府県が負担をする県費負担教職員制度となっておりまして、指定都市を除いて、給与負担をする都道府県が人事を行うこととされています。

 午前中の参考人質疑の中で、大津市長の越市長からも、今回のいじめ自殺事件を受けて、市民の皆さんから校長の処分を迫られたんだけれども、そこは権限は県にありまして、市長としてその処分をすることはできなかったという、制度上のそごについての指摘がございました。これまでも、さまざまな論点からこの制度については議論が重ねられているところでございます。

 四月の二十五日に衆議院を通過しました、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案の、文部科学省関係で、市町村立学校職員給与負担法と義務教育国庫負担法のそれぞれの一部改正によりまして、都道府県から指定都市に個人住民税所得割二%の税源移譲が行われることによって、この改正案が参議院で可決、成立すればでございますけれども、政令指定都市については、これまでの任命権とともに、市町村立小中学校に係る県費負担教職員の給与等の負担、そして定数の決定、学級編制基準の決定の権限が都道府県から指定都市に移譲されることになります。

 政令指定都市は全国で二十カ所ということでありますので、これからは人事権とそして給与負担とあわせた形で権限が移譲されるということになります。

 次は、中核市を対象にしたこの議論が続くかというふうに思いますが、中核市は人口三十万人以上の市でございまして、ことしの四月一日に枚方市が中核市となりましたことによって全国で四十三カ所ということでございますが、今後、この中核市について、文科省としてどのような見通しを持っておられるかをぜひお伺いさせていただきたいと思います。

    〔委員長退席、丹羽(秀)委員長代理着席〕

前川政府参考人 公立小中学校の教職員は市町村の職員でございますが、その任命権は都道府県の教育委員会が持っているという異例の制度になっているわけでございます。

 その小中学校教職員の人事権を都道府県から市町村に移譲するということにつきましては、平成十七年十月の中央教育審議会答申、「新しい時代の義務教育を創造する」というタイトルの答申でございますが、その中で提言されて以来、引き続き検討課題になっております。

 その間に、平成十九年には地教行法の改正がございまして、同一市町村内における転任につきましては実質的に市町村の権限とする、また、市町村をまたぐ転任につきましては一定の基準のもとで行う場合に限り都道府県の権限とする、そういう旨の制度改正が行われたわけでございますが、実態としては余り大きく変わってはおりません。

 また、平成二十四年には、大阪府の豊能地区三市二町におきまして、現行制度にございます事務処理特例制度を活用いたしまして、人事権の移譲が行われたところでございます。

 しかしながら、中核市等に対しまして、従来の指定都市と同様に、採用でありますとか懲戒も含む人事権を制度上包括的に移譲するということについては、いまだ実現を見ていないところでございます。

 平成二十五年の三月に、義務づけ、枠づけの第四次見直しの閣議決定がございまして、その中におきましては、中核市への人事権の移譲につきまして、「教育行政の在り方についての検討状況や、」「事務処理特例制度の運用状況を踏まえつつ、広域での人事調整の仕組みにも配慮した上で、中核市に権限を移譲する方向で検討を行い、小規模市町村を含めた関係者の理解を得て、平成二十五年度以降、結論が得られたものから順次実施する。」ということとされております。

 市町村への人事権の移譲につきましては、引き続き、この閣議決定に従いまして検討してまいりたいと考えているところでございます。

青木委員 ありがとうございます。

 指定都市と同様に、人事権を早期に移譲することを求めているというふうに伺っています。特に、教職員の研修を義務づけられている中核市からは、研修した教職員が都道府県の人事異動で市外へ異動させられるという不都合が生じるということから、人事権の移譲を求める声が大きいというふうに伺っておりますが、中核市についても順次検討が進められるという御答弁だったというふうに思います。

 一方で、離島、中山間地域等、管理職の不足などで広域人事が必要となる状況がありまして、町村単独で人事を行うことは困難であるという意見もございます。小規模の自治体で採用試験の業務は困難ではないかという御意見、人事異動は教職員の一番の研修の機会であるために、人事異動はできるだけ広域性が必要であるなどの意見もございます。

 せんだっての教科書の広域採択とリンクできるかどうかはわかりませんけれども、そのような形で、やはり広域的な人事異動ということも、今後、離島あるいは小さな町村では考えていかなければならないのではないかというふうにも思いますけれども、離島、中山間地域、小さな自治体についての取り組みについて、今、現状をどのように把握をされて、今後どのように進めていくお考えか、具体的な方針をぜひお聞かせいただきたいと思います。

前川政府参考人 県費負担教職員の人事権の市町村への移譲につきましては、中央教育審議会における議論におきましても、離島、中山間地域では管理職の不足など広域人事が必要となる状況があり、町村単独で人事を行うことは困難であるという意見、あるいは、小規模の自治体で採用試験の業務は困難ではないかなどの意見があったわけでございます。

 先ほど申し上げました平成二十五年三月の義務づけ、枠づけの見直しにつきましての閣議決定におきましても、広域での人事調整の仕組みにも配慮した上で、中核市に権限を移譲する方向で検討を行い、小規模市町村を含めた関係者の理解を得て順次実施、こういう趣旨になっているわけでございまして、この点につきましてもあわせて検討しなければならないと考えているところでございます。

青木委員 ありがとうございます。

 前回の下村大臣の御答弁で、制度を全国一律にすることのマイナス点も出てきていますから、それぞれの地域地域に応じながら、できるだけ学校現場に近い形に裁量権を持たせるような仕組みに考えていくことが教育現場の活性化につながっていくと思うという趣旨のことをおっしゃっておられまして、私も、教職員の任命権に関しましては、地域の事情に配慮しながら、できる限り現場に近いところに移譲していくことが肝要だというふうに考えております。

 御答弁はいただいているので、次の質問に移らせていただきますが、一方で、教職員の給与のあり方についてでございます。

 前回の質疑でも触れさせていただきましたが、大臣の御答弁の中で、義務教育国庫負担一〇〇%ということについては相当これはハードルが高い、地方分権との考え方との整合性をどうするのか、この整理が必要である、ただ、国の責務として、義務教育ですから国が一〇〇%責任を持つということはあるべき姿としては望ましいと思っている、地方自治法との整合性、ほかの省庁との関係の中で体系的に議論を深めていきたいという御答弁をいただいたところでございます。

 現行の県費負担制度においても国庫負担は三分の一でありますが、残りの三分の二も地方交付税として国から県に交付をいたしております。交付税は地方の自主財源ではありますが、その根拠どおりに予算化をされていれば、実質、国から一〇〇%手当てをしているということだというふうに考えられます。

 前回もこの点についてお伺いをしたのですが、ダイレクトな御答弁をいただいていなかったので、この点について大臣の御所見をいただければと思います。

下村国務大臣 教員にすぐれた人材を確保し、もって教育の機会均等、学校教育の水準の維持向上を図ることは重要であります。

 このため、公立義務教育諸学校の教職員の給与は都道府県の負担とし、その三分の一を国が負担することとされており、三分の二の都道府県負担分については、地方交付税措置が御指摘のようにされているわけであります。

 しかし、厳しい財政状況のもとで教職員給与費が抑制されているため、義務教育費国庫負担金の限度額まで使っていない県も残念ながらございます。

 文科省としては、全国的な教育の機会均等とその水準の維持向上を図るため、引き続き、義務教育費国庫負担金による措置を適切に講じていくこととしておりまして、各地方公共団体には、教育環境の整備について一層の配慮を期待したいと思います。

    〔丹羽(秀)委員長代理退席、委員長着席〕

青木委員 ありがとうございます。

 ちょっと話はずれますけれども、問題を認識する点は共通をしているので引用させていただくんですが、古い記事の中ではございますけれども、学校図書館の充実のために、二〇〇七年度に、国が全国の市町村などに交付税として財政措置した図書購入費約二百億円のうち、実際に自治体が本の購入に予算化したのは七八%にとどまって、二〇%超に当たる約四十四億円がほかの目的に使われていたということが、当時の東京新聞で報じられておりました。

 そして、二〇一三年の学校図書館整備施策の実施状況の悉皆調査というのが行われております。全国一千七百三十九の市区町村教育委員会に調査を行ったところ、回収率が六八・五%ということでございますが、平成二十五年度の、学校図書館図書整備五カ年計画に基づく図書の予算化状況について、学校図書館図書整備五カ年計画による地方財政措置に基づき当初予算化をしたという市区町村が、二一・七%で二百五十九市区町村であります。地方財政措置に関係なく独自に図書費を予算化しているという市区町村が七百七十六ありまして六五・二%。合計して八六・九%が予算化をしたということなんですが、本来であれば、一〇〇%そうあるべきだというふうに私は考えております。

 あわせて、学校の司書、学校司書配置状況についても調査を行っておりますけれども、その配置の予算化をしたところが三百六十八市区町村で三〇・九%、予算化をしていないのが八百一市区町村で、六七・三%が予算措置をしていないということであります。

 二〇一二年度より開始された五カ年計画では、引き続き、総額約一千億円を五年間にわたって計上しているほか、学校図書館への新聞配備にも約十五億円、そして学校司書の配置に百五十億円が財政措置をされております。

 この図書整備費も、地方交付税で措置をされていますので、地方交付税は使途が制限されず、どう使うかは各自治体の裁量に任されておりますので、必ずしも図書費になるとは限らないということでありますけれども、この点について、まず、どう評価をされているか、お伺いをさせていただきたいと思います。

前川政府参考人 文部科学省で行いました調査によりますと、全国の学校図書館図書整備の総額が、これは平成二十四年度でございますが、約百五十三億円でございまして、基準財政需要額が二百億円でございますが、これに対する予算化された割合、措置率が約七七%となっているところでございます。

 この基準財政需要額への算入という措置、いわゆる交付税措置でございますが、これは交付税として財源措置されておりますので、そもそも使途を特定しない一般財源として措置されているというものでございます。したがって、これが実際に図書の購入費に充てられるためには、各市町村でそれぞれに予算化されることが必要であるということでございます。

 文部科学省におきましては、この地方財政措置を通じまして、学校図書館図書整備五カ年計画をつくっているところでございますけれども、これを踏まえて、各市町村において必要な予算が確保されることを期待しているわけでございまして、そのために、パンフレットの配付でありますとか、都道府県の学校図書担当指導主事等を集めた会議での説明等を通じまして、学校図書館に対する理解の増進を図り、各市町村における図書整備あるいは学校司書の配置などにつきまして促しているところでございます。

青木委員 ありがとうございます。

 教職員の給与のあり方に話を戻しますが、平成二十一年の四月の文部科学委員会で、これは馳委員の質問なんですけれども、国庫補助の部分が全部使い切れないで国庫に返納されている、地方負担の三分の二の部分は地方交付税措置になっていて一般財源化されている、この三分の二はどうなっているのか、使われないで国庫に返納されている十六の道府県があるわけですが、そこはどうなっているのかという質問に対して、当時の金森政府参考人が、国庫負担以外の部分については、一般財源でございますので返納はされていないということなんです。

 さらに、馳委員の方から、その実態はおかしいということで、義務教育国庫負担金、これは教員給与一人当たりの、義務標準法等を掛け合わせた上で各都道府県に配っている、これが使われずに国庫補助負担の分が国庫に返納され、残りの三分の二は地方交付税として渡っているにもかかわらず返納もされていないということなんですね、この三分の二の部分というのは何に使われているのかということを聞いたところ、どのように使われているのか必ずしもつまびらかではないところであるという御答弁なんです。

 今現在、この三分の二についてどのように使われているのか、そういう調査というのは行っているのでしょうか。

前川政府参考人 義務教育費国庫負担金は、義務教育諸学校の教職員の給与費という特定の目的に使うために、都道府県に交付しているものでございます。これが、その負担率が三分の一であるということでございます。これを限度まで使っていないという都道府県が、御指摘の数字は平成二十二年度だと思いますけれども、十六県あったということでございます。

 これは、平成十八年度以降、三位一体改革によりまして、負担率が二分の一から三分の一に下がったわけでございますけれども、残りの三分の二が、現在、都道府県の負担になっているということで、その三分の二につきましては、地方交付税の基準財政需要額に盛り込まれているということでございます。

 御指摘のとおり、国庫負担金を限度まで使わなかった場合、それに見合って、地方交付税措置されております三分の二の部分につきましては、財源がいわば余るということになるわけでございますが、この財源が何に使われているかということは、これはそもそも特定できません。これは一般財源でございますので、全ての経費の中に紛れ込んでいるということでございまして、何に使われているかということを、もともとトレースすることが制度上できないというものでございます。

青木委員 何に使われているか特定できないということで、やはりこれは私としても大変問題だなというふうに思うんです。

 前回も取り上げました、平成二十六年度予算案におきましても、少人数教育の推進等のために定数改善を図りたいということでしたけれども、財務省の理解も得られず、初めて教職員定数が減少しているという状況、また、多様な課題を抱える今の学校現場において、効果の上がる教員配置の拡充、この必要性は大臣もおっしゃっている部分であります。

 やはり、文科省としては、これは、自主財源とはいえ、義務教育にかかわることで、ましてや教師の人件費でありまして、義務教育の根幹でありますので、これが何に使われているのかというのはやはり調査をし、チェックをして、しっかりと地方に義務教育の予算化にしてもらう、これが義務教育に対して責任を持つ国の役割ではないかというふうに思うわけでございます。

 言葉のイメージは悪いんですけれども、いわゆるひもつき的な、これは教育に使うんだということの、これは教育費でありますので、ぜひこれは、義務教育国庫負担を一〇〇%に引き上げていくということが、やはり方向性として大事ではないかというふうに考えました。

 生活の党といたしましては、今申し上げたとおり、教職員の任命権については、地域の事情に配慮しつつ、できる限り現場に近いところに移していく、その一方で、教職員の給与負担、身分保障は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るために国が責任を持つという考えのもとで、地教行法の県費負担教職員制度について今後検討が図られるように主張させていただきまして、時間でありますので、質問を終了させていただきます。

 どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社民党の吉川元です。

 まず、質問に入る前に、先ほどの宮本委員の質問に対する大臣の答弁なんですけれども、ちょっとやはり納得がいきかねるところがありますので、後ほど、ぜひ理事会の場で協議をしていただければというふうに思います。

小渕委員長 理事会で協議いたします。

吉川(元)委員 それでは、質問に入らせていただきます。

 本日は、最初に、少し閣法の条文に関して確認したい点を何点かお聞きいたします。

 まず、教育委員会における議事の議決に関してです。

 政府案の第十四条の四項では、教育委員会の会議の議事は、基本的に出席者の過半数で決し、可否同数のときは、教育長の賛否によって決められる旨が規定をされております。

 そこで確認なんですけれども、教育委員会は、基本的に教育長及び教育委員四人なので、この五人で構成されている、場合によってはもう少し少ない場合もありますけれども、それを例にいたしますが、賛否が、教育長と教育委員一人、つまり教育長を含めて二人と、残りの教育委員三人で分かれてしまった場合、この場合には、教育委員三人の賛否が過半数を超えているということで、当然、そちらの賛否で議決をされるという理解でよろしいのでしょうか。

前川政府参考人 御指摘のとおりでございます。

吉川(元)委員 続きまして、四月二十五日の本委員会で、大綱の策定を含め、総合教育会議のあり方について前川局長に具体的なケースを取り上げて質問させていただきました。改めまして若干伺いたい点がありますので、よろしくお願いいたします。

 まず、総合教育会議における協議あるいは調整の議題、つまり協議題ですが、四月二十五日の委員会で、前川局長は、教科書採択や個別の教職員人事など、特に政治的中立性の要請が高い事項については、そもそも協議題として取り上げるべきではないという考えを答弁されました。

 そこでお聞きしますけれども、例えば、特定の政党の政策、あるいは極めて偏った憲法観など、政治的中立性を侵すと想定されるような教育内容に関する事項は協議題として取り上げるべきではない、こう考えてよろしいでしょうか。

前川政府参考人 教育の政治的中立性、これは、教育基本法第十四条第二項が「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」と規定しているなど、多数の者に対して強い影響力を持ち得る教育に、一党一派に偏した政治的主張、主義主張が持ち込まれてはならないということを意味するものであります。

 したがいまして、こうした偏った主義主張に基づく教育の推進につきまして、総合教育会議の協議題として取り上げるということは、これは政治的中立性の観点からは不適切であるというふうに考えております。

吉川(元)委員 次に、総合教育会議において事務の調整が行われた事項についてお聞きします。

 政府案の第一条の四の八項におきまして、総合教育会議の構成員は事務の調整が行われた事項について尊重義務を負うという規定がございます。

 総合教育会議の位置づけは、首長と教育委員会という二つの執行機関同士の話し合いの場ということになりますから、事務の調整を図る際にも、あくまで二つの執行機関の間の合意によって調整が行われることになると推察をいたします。総合教育会議の構成員による多数決をもって議決し調整が図られる、そういう性質のものではないと考えますが、それでよろしいでしょうか。

前川政府参考人 御指摘のとおりでございます。

吉川(元)委員 次に、首長に策定権がある大綱についてお聞きをいたします。

 大綱は、教育振興基本計画を参酌し、地域の実情に応じた教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策を示すものと理解しております。大綱策定は首長の義務ですが、前回の委員会で、下村大臣も、大綱は、法令や条例とは異なり、教育委員会に対し従うべき法的拘束力はないと答弁をされております。

 そうしますと、大綱の拘束力というのは、いわゆる、まさに書かれているとおり、尊重義務によって、二つの執行機関同士が合意した内容については、その実現に向けて努力する必要がある、そういうふうな理解でよろしいんでしょうか。

前川政府参考人 大綱は、総合教育会議におきまして首長と教育委員会とが十分に協議し、調整を尽くした上で、首長が策定することが想定されているものでございますが、協議、調整を経たものは尊重義務が生じるということとされておりますために、教育委員会には大綱に沿った教育行政運営が期待されるわけでございます。

 しかしながら、大綱は、法令や条例とは異なり、御指摘のとおり、教育委員会に対して従うべき法的義務を課したものではないということでございます。

吉川(元)委員 次に、総合教育会議で事務の調整が図られた場合ですけれども、これは、先ほど取り上げた政府案の第一条の四の八項によって、会議の構成員に対して尊重義務が課されるということになります。

 この調整の結果に基づき教育委員会は努力をするということになると思いますけれども、結果的には期待どおりの成果が上がらない場合も当然出てくるだろう。調整が求める事務を執行できなかった場合、構成員に対してどのような措置がとられるのでしょうか。

 先般の委員会では、これは大綱についてですけれども、今ほどもお話がございましたが、法的義務を課したものではないということでありましたが、結果として事務が執行できなかったとしても、教育長や教育委員が職務上の義務違反に当たらず、罷免事由には当たらないと答弁をされております。この答弁は、大綱にとどまらず、調整が図られた事項と置きかえてもよろしいのでしょうか、お答えください。

下村国務大臣 御指摘のように、大綱は、首長と教育委員会とが協議し、調整を経たものは尊重義務が生じることとされているため、教育委員会及び教育長には大綱に沿った教育行政運営が期待をされております。

 一方、大綱は、法令や条例とは異なり、教育委員会に対して従うべき法的義務を課したものということではありませんので、結果としてそのとおりに事務が執行されなかったとしても、これを尊重して職務に当たっていれば、教育長や教育委員の職務上の義務違反には当たらず、罷免事由に当たるというものではありません。

吉川(元)委員 それでは次に、事務局のあり方について少しお聞きをしたいというふうに思いますが、時間の都合もありますので、少し質問の順番を変えまして、まず衆法の方からお聞きをしたいというふうに思います。

 衆法におきましては、教育監査委員会に事務局を置くという規定になっておりますが、教育行政の事務の処理については特段の規定が設けられていないというふうに思います。恐らく、教育行政の事務処理に当たっては首長の一部局が担い、そのトップが教育長ということになるのかなというふうにも思いますが。

 そこでお聞きしますが、教育行政の事務の処理を担う行政部局とはどのような体制なのか、また、現行の教育委員会事務局と異なる点があるのかどうか、御説明をください。

鈴木(望)議員 お答えを申し上げたいと思いますが、既に吉川委員が、こうなるだろうというふうに思われるがということで、基本的にはそういう格好になっていくんじゃないのかなというふうに思います。

 この法律案では、教育行政の事務を処理する事務局について規定を置いておらず、教育長のもとで教育に関する事務を処理する部局については、他の首長部局と同様になるということでございます。そして、現行の教育委員会事務局とは、首長の指揮監督のもとにあるか否かという点では異なっておりますけれども、地方教育行政における事務処理を適切に行う役割に変わりはございません。

 その体制につきましては、各地方公共団体の実情に応じてそれぞれの判断に委ねられますが、今まで教育委員会事務局が担ってきた仕事を含む教育に関する事務の処理に支障が生じないような運用がされるべきものと考えておりまして、部局の役割を十分に果たすことができる体制が整備されるものというふうに考えているところでございます。

吉川(元)委員 それでは、閣法の方について尋ねたいんですが、その前に、実は前回の委員会で、十三条二項、教育長が欠けた場合の対応ということで質問をいたしました。

 その際に、新しい教育長というのは非常にいろいろな責任等々も含めてありますので、いわゆる非常勤の人ができるのかといったときに、前川局長の方から、非常勤の職務代理者がみずから事務局を指揮監督して事務執行を行うことが困難な場合には、その事務を事務局職員にさらに委任することが可能であるというふうに答弁をされております。

 ちょっと事前に通告していないんですけれども、この点に関して少しお聞きしたいと思います。

 まず、ここで言う事務局職員にさらに委任することが可能であるとする法的な根拠といいますか、例えば二十五条の第四のところには事務局に委任をするというようなことも少し出ておりますけれども、それでよろしいのかどうか、答弁をよろしくお願いいたします。

前川政府参考人 御指摘の点でございますけれども、新教育長が、これは現行の委員長と現行の教育長と両方の仕事をするわけでございますけれども、その新教育長につきまして、その代理は非常勤の委員の中から選任するということでございますが、その際、非常勤の職務代理者が現行の委員長の仕事をするのと同時に現行の教育長の仕事もしなければならないというふうになるわけでございますけれども、現行の教育長の仕事の部分につきましては、職務代理者がみずから事務局を指揮監督して事務執行を行うというのは困難な場合もあるだろうということでございまして、その場合には、その事務を、例えば教育次長というような職にある者、その事務を事務局職員に委任するということが可能である、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。

 その根拠の規定といたしましては、改正法の二十五条第四項でございます、この委任の規定があるということでございます。

吉川(元)委員 その二十五条の四項を見ますと、事務の一部を委任できるというふうに規定をされております。一方、十三条の第一項においては、「教育長は、教育委員会の会務を総理し、教育委員会を代表する。」というふうになっております。

 ちょっとこれは読み方を教えていただかなければいけないんですが、この「会務を総理し、」ということは、恐らくこれは旧教育長の仕事を担うのかなというふうにも思いますが、これが全て事務局員に委任をされるということでよろしいんでしょうか。

前川政府参考人 改正法で新教育長の職務として会務を総理すると規定しておりますのは、これは、現行の委員長の仕事と教育長の仕事をあわせ読む、そういう規定でございまして、教育委員会のもとで現行教育長が行っております事務の執行を含める、そういう趣旨でございます。

 したがいまして、その会務を総理する事務全部を事務局の職員に委任するというわけではありませんでして、現行の教育長が行っている、事務局を統括し事務を執行する部分、その部分につきまして教育次長以下の者に委任することができる、そういうことでございます。

吉川(元)委員 そうしますと、概要によりますと、教育委員長と教育長を一本化した新たな責任者、新教育長を置くとありますが、欠けた場合については、新教育長の中の旧教育長の一部を委任するという理解でよろしいんでしょうか。

前川政府参考人 先生御理解のとおりでよろしいと思います。

吉川(元)委員 その際に、そうしますと、新教育長というのは、いわゆる第十三条二項であらかじめ指名する委員というもの、これが、新教育長といいますか、改正案に基づく教育長だということでよろしいんでしょうか。

前川政府参考人 あくまでも教育長の職務代理者ということで教育長の職務を行うということでございます。委員会の会議の席上におきましては、現行の委員長と同等の職務を行うということでございます。

吉川(元)委員 そうしますと、もう一点確認したいんですけれども、第十一条「服務等」ということがございます。これは、主語は全て教育長ということで、全部で八項、服務等について書かれております。その後の第十二条の方では、いわゆる教育委員については、第一項から第三項までと、第六項及び第八項の規定は準用する。

 つまり、第四、「教育長は、常勤とする。」常勤の問題、それから、第五の、注意力の全てを用いてなすべき責を有する職務にのみ従事をするであるだとか、あるいは、いわゆる会社の役員あるいはみずから営利を目的とする私企業を営むことはできないといったような中身、これについては今の段階では教育委員については当たらないわけですけれども、今ほど言いましたとおり、教育長が欠けた場合の、十三条二項であらかじめ指名された委員というのは、これはどのような扱いになるんでしょうか。

前川政府参考人 教育委員はあくまでも非常勤の特別職でございまして、教育長の職務代理者となった場合におきましても非常勤であることに変わりはございません。

 したがいまして、服務につきましても、十二条に規定されている範囲において、職務代理者となった教育委員に対して適用がされるということでございます。

吉川(元)委員 常勤か非常勤かということについては非常勤ということなんですけれども、例えば、第十一条の第五項では、「その勤務時間及び職務上の注意力の全てをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。」ということは、では、代行する場合にはこれは当たらないというふうになるんでしょうか。

前川政府参考人 この第十一条第五項に書かれております教育長の服務は、やはり、これは常勤の職であるということによって書かれているものでございますので、非常勤の委員にはこれは適用されないということでございます。(発言する者あり)

吉川(元)委員 今出ていますけれども、新しい教育長というのは、そういう意味でいうと非常に大きな権限を持っているわけでありまして、そういう形で、そういう方が、たとえ代行とはいえ注意義務に当たらないだとかいうことになると、果たして代行ができるのかというような疑問も感じます。

 もう時間がありませんので、なぜこういう問題が発生をするかというと、簡単に言うと、教育委員長と教育長を一本化して新たな新教育長というものを無理やりつくってしまったというところにあるのではないかと思います。

 例えば、現行法でいいますと、教育委員長がいなくなった場合には教育委員の中から選ぶ。教育委員長はもともと非常勤ですから、その方にかわって別の教育委員の方がなるということは当然あり得ます。それから、教育長がいなくなったとき、これは現行法では第二十条の二項に書かれておりますが、事務局がそのかわりをするということも書かれています。

 これを無理やりひっつけたがために、新教育長がいなくなった段階でこれをどういうふうに扱うのかというのは、非常にあやふや、曖昧なところが多々残っているのではないかというふうに思います。

 もう時間が来ましたので終わりますが、そこら辺も含めて、まだまだ審議、確認しなければならないことはたくさんあると思いますので、今出口のお話も一部出ておりますが、そういう状況にはないということを申し上げて、私の質問とさせていただきます。

 以上です。

小渕委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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