衆議院

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第2号 平成26年10月17日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十六年十月十七日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 西川 京子君

   理事 櫻田 義孝君 理事 冨岡  勉君

   理事 萩生田光一君 理事 福井  照君

   理事 義家 弘介君 理事 中川 正春君

   理事 鈴木  望君 理事 浮島 智子君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      石原 宏高君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    菅野さちこ君

      木内  均君    木原  稔君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      小島 敏文君    小林 茂樹君

      桜井  宏君    新開 裕司君

      新谷 正義君    末吉 光徳君

      根本 幸典君    野中  厚君

      馳   浩君    ふくだ峰之君

      堀内 詔子君    三ッ林裕巳君

      宮内 秀樹君    宮川 典子君

      山本ともひろ君    菊田真紀子君

      松本 剛明君    笠  浩史君

      遠藤  敬君    椎木  保君

      中野 洋昌君    田沼 隆志君

      中山 成彬君    柏倉 祐司君

      山内 康一君    宮本 岳志君

      青木  愛君    吉川  元君

      山口  壯君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学副大臣      丹羽 秀樹君

   文部科学大臣政務官   山本ともひろ君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤山 雄治君

   政府参考人

   (内閣官房地域活性化統合事務局長代理)      富屋誠一郎君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   日原 洋文君

   政府参考人

   (総務省情報通信国際戦略局長)          鈴木 茂樹君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      関  靖直君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          河村 潤子君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          小松親次郎君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       川上 伸昭君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (文化庁次長)      有松 育子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           福本 浩樹君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          富田 健介君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            木村 陽一君

   政府参考人

   (気象庁地震火山部長)  関田 康雄君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   鎌形 浩史君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十七日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     菅家 一郎君

  木原  稔君     ふくだ峰之君

  小林 茂樹君     新谷 正義君

  新開 裕司君     末吉 光徳君

  比嘉奈津美君     三ッ林裕巳君

  宮川 典子君     根本 幸典君

  柏倉 祐司君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     青山 周平君

  新谷 正義君     小林 茂樹君

  末吉 光徳君     新開 裕司君

  根本 幸典君     宮川 典子君

  ふくだ峰之君     木原  稔君

  三ッ林裕巳君     小島 敏文君

  山内 康一君     柏倉 祐司君

同日

 辞任         補欠選任

  小島 敏文君     堀内 詔子君

同日

 辞任         補欠選任

  堀内 詔子君     比嘉奈津美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

西川委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、内閣官房内閣審議官藤山雄治君、内閣官房地域活性化統合事務局長代理富屋誠一郎君、内閣府政策統括官日原洋文君、総務省情報通信国際戦略局長鈴木茂樹君、文部科学省大臣官房文教施設企画部長関靖直君、生涯学習政策局長河村潤子君、初等中等教育局長小松親次郎君、高等教育局長吉田大輔君、科学技術・学術政策局長川上伸昭君、スポーツ・青少年局長久保公人君、文化庁次長有松育子君、厚生労働省大臣官房審議官福本浩樹君、経済産業省商務情報政策局長富田健介君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長木村陽一君、気象庁地震火山部長関田康雄君及び環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長鎌形浩史君、以上の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。義家弘介君。

義家委員 自由民主党の義家弘介です。

 臨時国会、一般質疑第一回目、しっかりと、大切な教育再生についての各課題について具体的に質問させていただきます。大臣、どうぞよろしくお願いします。

 さて、まず一点目、文部科学省は、下村大臣の強いリーダーシップのもとで、特に社会科の教科書に見られた多くの偏向した記述あるいは一面的な記述を改める、及び、領土教育の充実等を図るために、中学校学習指導要領解説及び高等学校学習指導要領解説において、領土について、また、災害における警察、自衛隊などの諸機関の連携について記述する改訂を行い、さらに、二十六年一月十七日、社会科について、義務教育諸学校教科用図書検定基準、高等学校教科用図書検定基準の見直しを行いました。これは画期的なことであろうと思います。

 詳細については述べませんけれども、例えば、特定の事柄を強調し過ぎない、あるいは、近代史において、通説的な数字がない事象については、その旨を明示するとともに、児童生徒が誤解するおそれのある表現をしない等々の改訂が行われております。

 今年度は、現在、平成二十八年度から使用される中学校の教科書検定が省内で行われ、来年度は、平成二十九年度から使用される高等学校の教科書が行われますが、例えば、いわゆる従軍慰安婦についての記述は、現在、中学校の教科書からは消えております。以前はほとんどが載っておりましたが消えておりますが、一方、高等学校の日本史においては、十五教科書中十三点、今も記述が残っている。これが実情であります。朝日新聞、発端を虚偽の報道であったと認めましたけれども、現在でもそれが残っている。

 例えばある教科書の記述、読み上げますが、多数の女性が日本軍兵士の性の相手として慰安婦にされ、中国、フィリピン、インドネシアなどの前線や沖縄などに連行された。慰安婦にした、連行したの主語こそありませんが、まさに、軍による強制連行を想起する記述が行われているのが現状であります。

 さて、ここで大臣にまず御質問します。

 今後は、このような記述においては、教科書会社が自粛する、あるいは、具体的な記述が出てきた場合にはしっかりと意見がつけられるようになると思いますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

下村国務大臣 おはようございます。

 御指摘のように、教科書は、子供たちの教育にとって極めて重要な役割を果たしている主たる教材であり、子供たちによりよい教科書が提供されるよう教科書検定や採択等の制度や運営の改善を図っていくことは、最も重要な政策課題の一つであるというふうに考えます。

 ときに、歴史については光と影の部分があり、影の部分だけを強調するのではなく、光の部分も含めてバランスよく教えることは、子供たちが我が国の歴史について誇りと自信を持つことが必要であります。

 そのような観点から、御指摘をいただいたように、昨年十一月に、今後の教科書改革に向けた総合的な政策パッケージとしての教科書改革実行プランを発表して、本年一月には教科書検定基準を改正したところでありまして、具体的なことについて御指摘をいただきましたが、特定の事柄を強調し過ぎていたりすることがない、これは未確定な時事的事象について記述する場合でありますが、また、近現代の歴史的事象のうち、通説的な見解がない数字などの事項について記述する場合には、通説的な見解がないことが明示され、児童生徒が誤解しないようにすること、また、閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解や確定した判例がある場合には、それらに基づいた記述がされる、こういう内容を盛り込んだところでございまして、今後の申請図書については、このような新しい検定基準に基づき、教科用図書検定調査審議会において適切に教科書検定が行われるというふうに考えております。

 さらなるまた新しい事実の判明や新しい政府見解が出された場合には、そういう状況も踏まえて検定が行われることになります。

義家委員 ありがとうございます。

 教科書問題というと、とかく社会科の教科書のみが語られる現状でありますが、私も現在も教鞭をとっておりますが、これはさまざまな教科においても言えることであろうというふうに思います。

 ここで一つ例示をいたします。

 平成十年度から十四年度まで実際に高等学校において使用されていた検定教科書、筑摩書房の国語1の中で、ある単元が取り上げられておりました。それは、芥川賞作家の池沢夏樹氏が一九九二年に刊行した「母なる自然のおっぱい」という本におさめられている「狩猟民の心」という文章を扱った単元であります。アイヌの心性と、そして日本の心性を比較するというような単元でありますけれども、内容についての説明は省きますけれども、その文章の一部を読み上げさせていただきます。

 日本人の心性を最もよく表現している物語は何か。僕はそれは「桃太郎」だと思う。あれは一方的な征伐の話だ。鬼は最初から鬼と規定されているのであって、桃太郎一族に害をなしたわけではない。しかも、桃太郎と一緒に行くのは、友人でも同志でもなくて、きびだんごという怪しげな給料で雇われた傭兵なのだ。さらに言えば、彼らは全て、士官である桃太郎よりも劣る、人間以下の兵卒として、動物という限定的身分を与えられている。彼らは、鬼ケ島を攻撃し、征服し、略奪して戻る。この話には侵略戦争以外のものはない。

 これが、検定を通り、高校の教科書で載っていた単元であります。

 今、お隣の国では、日本の報道機関の人物が出国されずに、あるいは起訴されるというような状況にもなっていますが、我が国は表現の自由が保障されている国です。法律にさえのっとっていれば、作家がその思想を自由に開陳できる。この作家がそのような考え方や思考を持っていること、これは日本国民は誰もが否定しないでしょう。

 しかしながら、この一面的な思想に基づいた文章が公教育で使われる、教科書に載る、すなわち文部科学省の検定に通るということが私には不思議でなりません。

 そもそも、我々がおとぎ話として聞いた「桃太郎」は、桃から生まれた桃太郎がおじいさんとしば刈りに行って山に入っていったら、お母さんたちが小さな子供を抱えて震えている、どうしてそんなところに隠れているんですかと言ったら、鬼が村にやってきて子供たちをさらっていくんです、じゃ鬼ケ島だ、そして、日本人の心性の特徴として、犬もキジも猿も、みんな言葉を通じる同志として一緒に歩んでいこうという日本の伝統的な物語が、何と、侵略戦争以外の何物でもないと。

 この文章で、ある偏向した思想の教師がテストをつくったらどうなるかといえば、四月十六日の質問のときに、八王子で起こった政治経済の学年末テスト、ある新聞の靖国参拝の一面の記事をもって感想を書きなさいといったもの、これは大臣は非常に問題だ、こんなことがいまだに行われているのかとなりましたが、今度は単元なんです。この単元でテストをつくったら、日本人の心性とは何だと作者は指摘しているのか、漢字四字で書きなさい、侵略思想となるおそれのある文章なわけですね。

 教育基本法が改定され、社会科についての基準は見直されましたが、現行の国語の検定基準で、このようなものが出てきたとき意見がつけられるのかつけられないのか、文部科学省、答えてください。

小松政府参考人 お答えをいたします。

 現在の検定制度につきましては、十分御承知のことでございますけれども、民間で著作されたものにつきまして、専門的、学術的な観点からの審議によって検定が行われているということでございます。

 したがいまして、個別の事案について、それが通るか通らないかはちょっとここで申し上げられないということでございます。その中で、発達段階等を見てやっていく必要があるというふうに考えます。

義家委員 つらい質問をして済みませんでした。

 しかし、私はこれは意見がつけられるという認識であります。なぜなら、この教科書の検定が通った後に新しい教育基本法ができているんですね。

 教育基本法では、伝統や文化あるいは郷土というものを大切にする。日本人が歴史を超えて語り継いできたものに関して、一面的な自身の思想や思いで行うこと、これは間違いであろうと思いますし、我々はいま一度、改正教育基本法の原点に立ち返った上でさまざまな教科を見詰めていく必要があろうというふうに思っております。

 さて、続いて質問でありますけれども、教科書だけではなく、問題は、実際に使われている副教材等にも非常に大きな問題がある。これはこの八年間私はずっと指摘してきたことでありますが、文部科学省にお尋ねいたします。

 副教材についても、教育基本法及び学習指導要領に準拠したものが使われなければならない、当然のことだと考えますけれども、まず文部科学省、そうなのかそうじゃないのか、一言でお答えください。

小松政府参考人 簡潔にお答えさせていただきます。

 副教材の使用に当たっては、教育基本法、学校教育法、学習指導要領等の趣旨にのっとっていること、そして、先ほど言及いたしましたが、児童生徒の発達段階に即したものであること、政治、宗教について不公正なものや立場でないことということが担保される必要があるという考え方で制度ができております。

義家委員 というふうにいつも答えてくれるわけですけれども、私のもとに次から次へとおかしな副教材が届けられるんです。こういうものが教育現場で使われています。

 そこで、改めて文部科学省。実際に教育現場で現在使われている副教材について文部科学省は把握しているのか否か、お答えください。

小松政府参考人 それぞれの学校で使われている副教材について全て把握しているという状況にはございません。

義家委員 把握する必要性は感じておりませんか。

小松政府参考人 きちっとした、制度にのっとった副教材が使われる必要があるということはそのとおりでございますが、他方で、極めて膨大なものが使われておりますので、それを常に全部チェックするような形になるということもなかなか難しいなというところでございます。

 これを踏まえましてきちっとした指導をむしろ徹底していくということが、今のところ行っている状況でございます。

義家委員 私は、この際、きちっとした副教材を学校長及び教育委員会がやはり責任を持ってチェックし、不適切なものについては、これはよく考えるようにと。

 実は、以前の教育現場ではこういうものは上がってこなかったんですね。しかし、今、さまざまおかしいという声が保護者からも私に届きますし、そして、実際生徒も保護者に、これはおかしいんじゃないかと言う。そういう意味では教育の正常化というのは進んできている。昔は、先生が言ったことは全て正しいというものでしたけれども、やはりこれはおかしいんじゃないかという声が上がりつつある。

 そういう意味では、文部科学省が、適正な副教材を使うという指導はしっかりと行っていくべきだと思っています。

 まず、ことし八月五日朝日新聞、昭和五十七年にスクープとして報道した、戦時中動員部長だったと自称する吉田清治氏の講演内容として、済州島で二百人の若い女性を狩り出した、いわゆる慰安婦狩りが報道されました。以後十六回にわたって報道してきた証言を虚偽として取り消しました。吉田氏自身は平成八年にフィクションだったと認めているわけですけれども、それについて、ことし、ようやく虚偽であったと認めた。

 しかし、この報道の大きさははかり知れないものでありまして、例えば、朝日新聞、平成三年、植村隆元記者のスクープ記事として、戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられていた朝鮮人慰安婦のうち一人がソウル市内に生存していることがわかったなどのスクープ記事も含めて、さまざまこの報道を重ねてきたわけです。

 このいわゆる慰安婦問題は、河野談話、村山談話、そして国連人権委員会で、今一部の変更を求めているクマラスワミ報告が採択され、米国の下院では対日批判決議がされ、韓国との不幸な関係だけではなく、性奴隷、慰安婦強制連行というのが世界じゅうに拡散してしまっている状況であります。

 官邸、政府も、来年度、国際広報予算をさらにふやして正しい情報発信に努めていくという議論が行われているようですが、当然、世界に対してはしっかりと発信しなければなりません。

 しかし、国内、とりわけ教育現場で早急に正さねばならないものがあります。その一部の副教材並びに子供たち必須の辞書における記述について質問いたします。

 資料一をごらんになってください。

 この本は、去年の三月、明石書店から出版された、広島県教職員組合、これはさまざまな問題のあった教職員組合で、歴代文部科学省も行って、正常化に向けた努力をしてきているところであります。そして、この広島県の高等学校の組合の教師と韓国の全国教職員労働組合大邱支部の教師たちが共同で作成した歴史の副教材であります。

 この前書きには、国家と民族を背負わず、事実をもとに客観的な歴史を記述することを原則としてつくられたものであるというふうに前書きにも書かれておりますが、この中で慰安婦の問題も取り上げているので、抜粋して読み上げます。

 日本軍は、朝鮮の女性たちを日本軍慰安婦として戦場に連れていき、性奴隷としての生活を強要しました。中略。皇軍慰安婦、皇軍将兵への贈り物として望ましいのは朝鮮女で、しかも若いほどよい(十五歳以下が望ましい)という軍医の報告により、朝鮮人女性が軍事物資として犠牲になったのです。慰安婦の証言によれば、役人や警察、軍人が暴力的に拉致していく場合もあったそうです。その対象になったのは、ほとんどが十代の若い女性たちで、中には十一歳の女性もいました。

 これが、日本の先生方と韓国の先生方とが共同研究を繰り返して出された副教材なんです。後書きにも書いてありますが、多くの先生に読んでもらい、多くの生徒たちにも学んでもらう。これは、慰安婦の問題だけではなく、さまざまな大変な記述が書かれている副教材であります。

 こういったものが学校に持ち込まれ、そして子供たちが犠牲になっていると私は思います。

 未来は、日本の子供たちと韓国の子供たちが真に信頼関係に結ばれて、友好関係に結ばれてアジアの発展をともにつくっていかなければならないのに、一部の偏向したイデオロギーを持つ者がこのようなものをつくり、子供たちに持ち込み、その未来をも壊してしまうようなこういうイデオロギー活動をしていることが、私は許せない思いでいっぱいであります。これも、具体的に広島から私に届けられてきた声であります。

 同じく、子供たちと学生に欠かせない辞書について、社会科の教科書だけで論じているとここまでなかなか議論がいかないわけですが、大変重要な問題です。

 国会図書館に依頼しまして、最新の国語辞典における慰安婦及び従軍慰安婦についての記述について調べました。幾つか抜粋して報告します。

 日本国語大辞典第二版、小学館。慰安婦、第二次世界大戦中、戦地で将兵の慰安を目的に売春させられた女性。強制的に連れていかれた者が多かった。従軍慰安婦、日中戦争、太平洋戦争中、戦地で将兵の性的欲求に応ずることに従事した女性。

 世界では、慰安婦は、第二次世界大戦中に慰安を目的として売春していた者と言われています。従軍慰安婦というのは日本だけの言葉であります。もともと従軍看護師とか従軍医師とか従軍記者がありましたが、従軍慰安婦というものはないんですね。これは戦後つくられた造語でありまして、従軍慰安婦を引けば、これは日本だけがヒットする。これが辞書の実態であります。つまり、コンフォートウーマンとセックススレーブの違いになっているわけです。これは国内の辞書の問題です。

 さらに、大辞林第三版、三省堂。慰安婦、日中戦争や太平洋戦争中、朝鮮などアジアから集められ、戦地で日本軍将兵の相手になることを強要された女性たち。従軍慰安婦。

 続いて、辞林21、三省堂。従軍慰安婦、日中戦争や太平洋戦争中、日本軍によって強制的に連行され、日本軍人を相手に売春行為を強いられた女性。大半は朝鮮人女性であるが、そのほか、中国、日本、台湾、フィリピン、インドからも動員された。

 さらに、朝日とともに、戦後、進歩的文化人なる者にもてはやされた、辞書といえば広辞苑。岩波書店広辞苑の第六版。従軍慰安婦、日中戦争、太平洋戦争期、日本軍によって将兵の性の対象となることを強いられた女性。日本軍により強制連行されたというのが広辞苑に、今最新版に書いてあるわけですよ。

 ちなみに、この広辞苑の六十年の慰安婦、従軍慰安婦の記述の歴史をひもとくと、朝日新聞の記述がいかに関係があったのかということが非常にわかりやすく見えます。

 広辞苑の第一版が出たのが昭和三十年五月二十五日でありますけれども、第一版では、慰安という索引で慰安婦があります。元戦地の部隊に随行、将兵を慰安した女、のみが書いてあります。

 続いて、昭和四十四年に第二版が改訂されています。記述は同じです。

 続いて、昭和五十一年、第二版の補訂版が提出されています。以前は、将兵を慰安した女という表現でしたが、補訂版では、将兵の慰安をする女性に変わりました。

 そして、昭和五十七年、まさに朝日新聞の慰安婦狩り報道があったわけですけれども、第三版についても変わりませんでした。

 しかし、この間、次から次へと従軍慰安婦、強制連行の報道がなされていった結果、第四版、平成三年十一月五日に初めて従軍という言葉と従軍慰安婦という言葉が広辞苑に登場いたしました。日中戦争、太平洋戦争期、日本軍によって将兵の性の対象となることを強いられた女性。多くは強制連行された朝鮮人女性。

 このような動きの中で、平成三年十二月十日、韓国が日本政府に対し真相究明を求め、河野談話、村山談話、そして国連の決議等々へと続いていったわけです。

 広辞苑の第五版、平成十年も同様の記述です。

 ちなみに、平成十九年、第一次安倍内閣によって、政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を示すような記述も見当たらなかったという答弁書が閣議決定されておりますけれども、その閣議決定された後の広辞苑第六版、平成二十年一月十一日版。従軍慰安婦、日中戦争、太平洋戦争期、日本軍によって将兵の性の対象になることを強いられた女性。軍による強制連行ということが辞書の索引の中に出ています。

 辞典、辞書は子供たちの学習にとって必須の学習教材でありまして、仮に、日本の子供たちだけではなくて、ようやく平仮名を覚えた外国人が日本を調べるためにも必須の教材であります。対外的な発信だけではなく、このような子供たちが必ず使う教材においての間違った記述というのも我々は目を配っていかなければなりません。特定の、先ほど言ったような教職員組合の人たちが、政府はそんなことを言う、朝日新聞はそんなことを言うけれども、おまえ辞書を引いてみろ、ほら辞書に載っているだろうなんということになってしまっては、これはまさに本末転倒であります。

 ですから、こういう副教材に対して、より文部科学省が目を向けて、実態がどうなっているのか。例えば私が言ったこのようなのは、そこまで調べ切れないと言うかもしれない、教室で配ったプリントだけでは調べ切れないと言うかもしれません。しかし、少なくとも辞書、これは全ての子供が使うものですから、こういうものに対しての記述についてのしっかりとした目配り、そして出版各社の努力、これを求めたいと思います。

 それでは最後に、朝日新聞にかかわる教育について指摘したいと思います。

 資料二をごらんください。

 ことし六月、憲法改正の国民投票を定めた法改正が成立しました。ついては、国民投票の投票権年齢が満十八歳となりました。高校三年生です。

 このことを契機として、ことし七月十八日、総務省から文部科学省に、各学校が、例えば、選挙管理委員会と連携し、模擬投票あるいは出前授業など多様な参加・体験型学習をするなど、憲法や政治に関する教育の一層の充実を図ってくださいという通知が届いたはずです。そしてそれを受けて、文部科学省より全国の教育委員会、そして私立学校、国立大学法人等々に、政治的中立を保ちながら、しっかりとこういった授業をしていってくださいという通知が出されました。

 それを受けてかどうかは知る由もありませんけれども、この虚偽報道の渦中にあった八月、朝日新聞西部本社によって、九州県下の高等学校の校長、進路指導部長に案内が出されています。

 案内内容は大まかに分けて三つでありますけれども、まず、学習指導要領において高校でも新聞が学びの対象として位置づけられた、いわゆるNIEというものですね。だから朝日新聞は、「知る沖縄戦」、「知る原爆」を発行しました、御希望があれば無料でお届けします、この教材を読んでください。

 これ、中身を見たら、まさに朝日新聞という報道機関の自分たちの主張がいろいろな人のインタビューとともにまとめられているわけですけれども、本来、学習指導要領は何を定めているのかというと、一面的な見解だけではなく、いろいろな新聞、いろいろな言論を比較して子供たちにその内容を知っていただこうというのが新聞授業の趣旨であったわけです。しかし、これをとにかく無料で届けますからと。

 それから二つ目、朝日新聞社社員による出前授業を無料で行います、テーマは、新聞の読み方、活用術と平和授業、ここまでなら百歩譲って許せます。この後、一こま目は何をするか。朝日新聞朝刊を活用し、基本的な新聞の読み方や情報の取得、活用法について学びます。

 本来、繰り返しますが、NIEというのは、アメリカで一九三〇年代、ニューヨーク・タイムズ紙が提唱して始まったもので、一部の新聞の切り抜きや一部の報道を使用する、新聞を用いた授業と一線を画して、新聞を一面から最終面まで記事や写真、広告まで読み解く、あるいは、複数の新聞を読み比べて新聞のうそや偏向報道を見抜く力を養う、メディアリテラシーですね、さらには、読み比べた結果についてディベートするというものがこのNIEの趣旨なんですけれども、朝日新聞の出前授業は朝日新聞を活用してなんですよ。ここに、対比する読売新聞はないし、毎日新聞はないし、産経新聞はないんですよ。朝日新聞のみを活用して平和についての出前授業をする。

 二こま目、朝日新聞の記事を紹介しつつ、憲法改憲や集団的自衛権等をテーマに世界平和を希求することの大切さを学びます。これも、間違いなく一方的な方向性の授業なわけですね。

 次、三つ目、英字紙朝日ウイークリー。大学入試における英語対策の副教材として多くの高校生が購読している朝日ウイークリーを図書館に置いてください、購読料月九百九十八円、文部科学省が予算をつけていますという通知が全学校に送られていったわけですね。

 文科省が新聞をしっかりと位置づける、これは私も賛成です。いろいろな新聞を読み比べて、自分の考え、一つの事象においてもいろいろな表現がありますから。しかし、一つの新聞のみをもって子供たちに行う、これが一方的に全学校に届けられている。

 この状況について、大臣、ちょっと御感想をお願いします。

下村国務大臣 たまたまですけれども、今月号の月刊文芸春秋で、朝日新聞的なるものに対する、私は、厳しい、個人的な意見でありますが、述べたところでありまして、識者の中には朝日新聞をもう廃刊にしろという話も出ておりますが、私は、廃刊を問う前に、朝日新聞が、昔の左翼用語ですけれども、自己総括をする必要があるというふうに思っておりますが、しかし、これは朝日新聞だけの問題ではなく、日韓共同歴史教材制作チームがつくったこの副読本も含めて、あるいは辞書もそうですが、いわゆる朝日新聞的なるものが戦後の中で現在もある。

 それはそれで表現の自由ですから、それぞれの主張についてそれぞれの立場はあるかもしれませんが、しかし、教育の現場でそのまま導入するということについては大変問題があるというふうに考えます。

西川委員長 義家弘介君、時間が来ておりますのでよろしくお願いします。

義家委員 はい。

 確認ですけれども、学習指導要領では、「様々な資料を活用して歴史的事象を多面的・多角的に考察し公正に判断するとともに適切に表現する能力と態度を育てる。」公民分野では、「様々な資料を適切に収集、選択して多面的・多角的に考察し、事実を正確にとらえ、公正に判断するとともに適切に表現する能力と態度を育てる。」

 つまり、ある新聞を用いるならば、その同じ事象について、ほかの新聞も含めてしっかりと見比べた上で新聞を活用した授業をこれからも進めていくべきでありますし、このような一面的なものについては非常に問題があるというふうに私は思っております。

 そのことを指摘して、私の質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。

西川委員長 次に、浮島智子君。

浮島委員 公明党の浮島智子でございます。

 本日は質問をさせていただく時間をいただき、感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。

 また、質問に入らせていただく前に、このたびの広島の土砂災害、そして御嶽山の噴火、台風の災害などでお亡くなりになられた方々に心から御冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された皆様方に心よりお見舞いを申し上げます。

 また、昨日まで捜索活動を懸命に続けてきてくださった自衛隊、そして消防、警察の皆様方に敬意を表するとともに、心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。

 それでは質問に入らせていただきたいと思います。

 まず初めに、伝統文化、そして文化の体験活動についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックも決定をいたしました。今回の東京のオリンピック・パラリンピックは、スポーツだけではなくて、スポーツとアートでやろうということで大臣も発言をされていると思いますけれども、私は、IT社会がどんどん進んでいく中で、子供たちが携帯電話とかゲームを持つのもいいとは思いますけれども、生のものを見る、そして心で感動する、それを学んでいく、これが、車の両輪と同じで、IT化が進めば進むほど、同じに進めていかなければならない授業だと考えているところでもございます。

 また、それぞれが、地域に伝わる伝統芸能を学んで、先人たちの知恵を知ることを、自分の知識の中、ふだん生きている中でつないでいくということがとても重要でありますけれども、残念ながら、そういう機会がとても少ないように思われるのが今の現状でございます。

 そんな中、子供たちにこの日本のすばらしい伝統文化を学んでもらいたい、また、その日本のすばらしい伝統文化を海外の人にも伝えていきたいと私は思っております。

 私もアメリカ・ニューヨークに住んでいたときに、たくさんの日本の方々がブロードウェーにミュージカルを見に来られます。でも英語がわかりません。でも、ブロードウェーのミュージカルを見て、涙を流しながら、感動したと帰っていくんです。私はその姿を見ていつも悔しかったのは、なぜ日本でこういうことができないのだろうと。日本にもすばらしい伝統、いろいろなお話がございます。例えばかぐや姫とかも、そういうのをミュージカル化してもいいと思うんですけれども、なかなかそういうチャンスがないと思っているところでございます。

 そんな観点からも、まず重要なのが、子供たちが小さいときから本物に、見て、聞いて、触れる、この体制を拡充、充実していくことが必要だと思っております。

 今、文化庁の方でも学校公演等々を進めてきてはくださっておりますけれども、私が常々訴えてきたのは、義務教育の中の九年間で、最低年に一回は本物の文化芸術に触れられるようにということでいつもお願いをさせてきていただいたところでございますけれども、約一・九とか二とか、まだまだそのぐらいまでしかいっていないというのが現状のところだと思います。

 また、子供たちが、地域の方々とのつながり、これが今だんだん崩れてきてしまっておりますけれども、地域の方々とのつながりもしっかりときずなをつくっていかなければいけないという観点から、地域に伝わる伝統文化、生活文化を体験できる伝統文化親子教室というのも我々公明党も拡充をさせていただいてきたところでもございますけれども、まだまだこれも足りておりません。

 そこで、我々公明党は、文化芸術振興会議といたしまして、五月に、官房長官の方に芸術の政策の申し入れをさせていただいております。その中でも、子供の実演芸術の鑑賞、体験機会の充実、これを盛り込ませていただいているところでございますけれども、学校公演、そして伝統文化親子教室、この拡充について大臣の決意をお伺いさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 おっしゃるとおりに、私も群馬の山の中の小学校、もう廃校になりましたが、その学校で六年間で一番記憶に残っているのは、本当に、どこかの劇団が実演に来た、そのときのことがやはりすごく鮮烈に残っておりまして、ふだんのもっとたくさんの平常授業よりは一回の公演がいかに子供にとってはインパクトがあるのかということを、今でもはっきり申し上げることができるぐらい、教育成果、効果というのはあるんじゃないかなというふうに思います。

 文科省では、平成十五年度から、子供たちが伝統文化を体験する取り組みを支援するため、伝統文化こども教室事業を実施して、平成二十一年度には五千二百三十二教室に対して支援をしてまいりましたが、残念ながら、民主党政権下で平成二十一年度に行われた事業仕分けの結果等を踏まえて、平成二十二年度限りで廃止になりました。

 平成二十三年度から、地域活性化の観点等から、文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業の中で、伝統文化の体験事業として、年間約二千教室に対して支援を行いました。

 さらに平成二十六年度には、地方公共団体等からの要望を踏まえ、子供たちが親とともに伝統文化を体験、修得する事業として新たに伝統文化親子教室事業を創設し、初年度は三千三百十七教室を採択したところでありまして、平成二十七年度概算要求においても、これを拡充できるよう要求をしているところでございます。

 また、子供たちに一流の文化芸術団体や芸術家による質の高い、さまざまな文化芸術を鑑賞、体験する機会を提供するため、平成十四年度から実施している文化芸術による子供の育成事業におきまして、平成二十五年度は四千二百四十七件の公演実績があり、着実に効果を上げてきているというふうに思います。

 平成二十七年度概算要求においても引き続き所要の経費の要求をしているところでございまして、今後とも、このような事業の実施等を通じまして、子供たちに、伝統文化体験学習等をしながら、子供たちの情操を育むような環境整備に取り組んでまいりたいと思います。

浮島委員 ありがとうございます。

 子供たちの心を育む教育、この予算を削ることはあってはならないと私は思っているところでございますので、どうか、全力で取り組んでいただけるようにお願いをさせていただきたいと思います。

 また、今大臣がおっしゃった、学校で見たことが忘れられないとおっしゃいましたけれども、私も、これはいじめにもすごくいいのではないかと思うんですね。いじめ対策にもいいと思います。

 というのは、実は、私の友人で車椅子ダンスをしている方がいらっしゃいます。彼は鈴木君という方なんですけれども、世界ランクが七位、八位で、日本ではチャンピオンです。その彼が、やはり小さいときにいろいろいじめに遭った等々、また仲間たちも、いろいろいじめに遭った等々で、みずから命を絶とうとした方も中にはいらっしゃいます。そして車椅子になってしまった。だけれども、自分たちの人生をもう一回見直したいということで、ダンスをやったことはないけれどもダンスに取り組んで、今、車椅子ダンスでそうやって日本でチャンピオンにもなられている方なんです。

 私は、こういう方が学校に行って、直接子供たちの前で演技を見せて、そして、その後に子供たちにいろいろなお話をしてくださるんですね。自分は何でこういうふうになったか、こういうことがあったからだということをお話をされます。それで学校公演を今していただいているところでもございますけれども、そこでの反響、その声が、すごいものが私のところにも感想文が届いておりますけれども、見た子供たちが、正直、いじめをしていた、だけれども、いじめをしてはいけないということが目で見てわかった、心で感じ取ることができたという感想文もたくさんいただいているところでもございますので、どうか、体験する文化芸術の体験授業、これは、大臣筆頭で本当に進めていただきたいということを再度お願いをさせていただきたいと思います。

 また、日本の「夕鶴」が世界各国で今は脚光を浴びています。私もいろいろなお話を聞くと、日本でオリンピック・パラリンピックが決まって、日本に行ったときはその日本のすばらしい作品が見られるんだよねという声もいただいておりますけれども、残念ながら、日本の作品というのは数多くはございません。

 そんな中で、演芸の芸術分野を初め、日本の文化、歴史を背景とした新たな作品、これを創設し、日本内外問わずに広げていくことが重要だと考えております。

 日本固有の演芸、芸術作品の創作を促進することが重要であると思いますけれども、大臣の御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 ことし三月に公表した文化芸術立国中期プランにおきまして、御指摘がありましたように、二〇二〇年、単なる五輪開催の年という位置づけだけでなく、これを契機に、新しい日本を創造するためのスタートとなる位置づけを掲げて行っていきたい。

 そのために、我が国の芸術文化の向上を図り、すぐれた芸術作品を創造していくとともに、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた魅力ある文化プログラムを展開することが必要であり、芸術家、芸術団体等が、日本の独自性を生かした自由な発想に基づく創造活動が活発に行われることが重要であるというふうに考えております。

 世界経済フォーラムでも、二〇一六年にリオでオリンピック・パラリンピックが開かれますが、その夏の直後のもう秋から、できたら日本で文化スポーツダボス会議を開催して、世界じゅうからトップレベルのアーティストやアスリートあるいは文化、芸術、スポーツに関係する方々に集まってもらう、日本からそれを発信したらどうかということを提案を受けておりまして、ぜひそうできればというふうに思っております。

 文科省としても、我が国の芸術水準の向上の直接的な牽引力となることが期待される、芸術性の高い、すぐれた芸術創造活動を支援するトップレベルの舞台芸術創造事業、また、国が芸術文化の振興における課題を示し、それを解決するための取り組みを広く公募して実施する戦略的芸術文化創造事業等を引き続き実施することとしております。さらに、平成二十七年度要求におきまして、文化プログラムの展開に向けた事業を実施するための経費を要求しているところでございます。

 先日は横浜市の市長が来られまして、もう来年から、オリンピック・パラリンピックに向けてプレのような形で、横浜でダンス・ダンス・ダンスという、ダンス関係のあらゆる団体に横浜に来てもらって行うようなことをやりたいという話がありました。

 ぜひ、今から、全国津々浦々でそういうふうな環境が整うようなバックアップを国としても応援をしてまいりたいと思います。

浮島委員 ありがとうございます。

 まだ六年あるじゃなくて、もう六年しかないと思いますので、ぜひ、全力で取り組んでいただけるようにお願いをさせていただきます。

 また、文化芸術というと、日本ですと何かちょっと敷居が高くて、チケットも高くて、行くのに何日か前とか何カ月前かのチケットを買って行くということが多いんですけれども、きのうもいろいろな方とお話ししたら、海外に住んでいるときは、ちょっときょう時間があいたから行こうということで、さっとチケットが、また、安く四十ドル五十ドルから買える、だから気軽に見に行けるんだということもありました。私も本当にこの文化芸術というのは、衣食住と同じに、空気と同じに、自分の近くにあるべきものだと思っているところでございます。

 私もずっと主張をさせていただきまして、国立の博物館、美術館、常設展におきましては、高校生までフリースクールを含んで入場料無料にしていただいたところでもございますけれども、一点、きょうは御提案をさせていただきたいのは、日本はまだまだチケットが高いということで、なかなか親子で見に行く、例えば一万円してしまうチケットを三人で行くというと三万、そして交通費を使ってお食事としたら、もうそんなに年じゅう行かれるというか、一年に一回行けるか行けないかだと私は思っているところでございます。

 そこで、どこか突破口を開いていかなければ皆さんに見ていただくことはできないと思っておりますので、これも前々から訴え続けさせていただいていることでございますけれども、ぜひともチケットの税控除、こういうことも視野に入れてこれから文科省としても戦っていただきたいということを、まずお願いをきょうは一点させていただきたいと思います。

 次に、本日は文化芸術に特化して体験授業を質問させていただきましたけれども、子供たちは、本当に一人一人はかり知れない想像力やいろいろなものを持っております。なので、文化芸術に限らず、自然体験、キャンプ、そしてスポーツ等々、こちらも全力で推進をしていただけますようにお願いをさせていただきたいと思います。

 次に、夜間中学について質問をさせていただきたいと思っております。

 この夜間中学は、何らかの事情で義務教育を修了できなかった人、今は約七十万人あるいは百数十万人と言われている方がいらっしゃるというふうにお伺いをしているところでございます。そうした中で、日本全国にこの夜間中学を開設してほしいという声が高まっているのが今の現状でございます。この公立の夜間中学校は、現在では八都府県に三十一校、北海道、東北、中部、四国、九州には一つもないということを言われているところでございます。

 また、不登校などで学校に行けなくなってしまって、私もこれを聞いて驚いたんですけれども、義務教育修了の卒業証書を受け取ってしまうと、後で学びたい、夜間中学に入りたいと言っても入ることができないということも伺いました。

 そんな観点から、私もかねてこの夜間中学ということには、政治的にはしっかりと国政の場で位置づけていかなくてはならないということで、池坊前衆議院議員から引き継ぎまして、ずっとこのことに関心を持ってまいりました。

 そして、平成二十四年八月に国会内で、義務教育学習機会充実に関する議員立法成立に向けた超党派参加・国会院内シンポジウムというのを、代表呼びかけ人として各会派の先生方にお一人お一人にお願いをさせていただき、シンポジウム第一回目、開催をさせていただきました。その後、いろいろな先生方の御尽力によりまして、ことしもまたそのシンポジウムが開かれたということで、私も参加をさせていただき、そこの皆様方の体験談を聞いてとても感動をさせていただきました。また、今回、議連もできたということでさらに大きな動きにつながっているところでございますが、いじめで学校に行けなかった子たちが夜間中学に通うなど、今さまざまな、多様なニーズの教育、これが求められていると思います。

 そこで、教育再生実行会議がことしの七月三日に行った第五次提言にも、「義務教育未修了者の就学機会の確保に重要な役割を果たしているいわゆる夜間中学について、その設置を促進する。」と明記がなされたところでございます。

 こうした動きを受けまして、文科省といたしましても、来年度の予算の概算要求にも、中学校夜間学級充実、改善への取り組み事業として四千四百万が盛り込まれたと伺っているところでございます。夜間中学校の学級の振興をしっかりと図っていくということが明記をされているところでございますけれども、大臣も所信の中で、「フリースクールなど多様な場で自信を持って学べる環境を整えます。」と述べられておられました。

 また、今後のこの夜間中学の拡充にどう取り組んでいくのか、そして、全都道府県に一校以上の義務教育の未修了者が学べる場として、公立の夜間中学校の開設、これを早急に実現をするべきだと思いますけれども、大臣の御見解を伺いたいのと同時に、大臣が触れられていたフリースクール、これも充実していかなければいけないと思いますけれども、あわせて御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 教育再生実行会議では、特に公明党の富田先生から提案を受け、ほかの再生会議のメンバーも全員が同意をする中でこの夜間中学について入れ込んだところでありますし、政府としてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。

 少なくとも各都道府県に一つは夜間中学が設置されるよう、その設置を促進していきたいと考えておりまして、御指摘がありましたように、平成二十七年度概算要求におきまして、各県における夜間中学設置に係る検討に必要な経費等を要求しているところでもございまして、引き続き、あらゆる機会を捉えて義務教育未修了者の学習機会の提供に取り組んでまいりたいと思います。

 また、フリースクールでありますが、不登校等になったとしても、それぞれの子供の能力が生かせるよう全ての子供たちにチャンスを提供することが求められており、このため、多様な子供たちに対応できる教育のあり方を検討することが必要であるというふうに考えております。

 七月に取りまとめられた教育再生実行会議第五次提言を踏まえ、フリースクール等で学ぶ子供たちの支援策を検討するため、丹羽副大臣を主査とした省内検討チームを設置し、フリースクール等の関係者を集めたフォーラムを十一月下旬に開催する、これは、調べて国内全てのフリースクール関係者に呼びかけていきたいと考えております。

 また、省内検討チーム及びフォーラムの結果を踏まえて、フリースクール等に関する有識者会議を十二月に立ち上げて、一定の方向性を検討してもらう予定であります。来年五月から六月までには有識者会議の中間まとめ、来年度末までには最終まとめができるよう、関係者からの意見を広く聴取し、民間での取り組みの成果も活用しつつ、スピーディーに検討を進めてまいりたいと考えております。

浮島委員 ありがとうございます。

 ぜひとも拡充をしていただけるよう、また、夜間中学につきましては、一県一校を実現できるようによろしくお願い申し上げます。

 次に、アレルギーの疾患対策についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今、ぜんそくやアトピー性皮膚炎、食物アレルギーといったアレルギーの病気の子供たちがふえているのが現状でございます。中でも、近年では食物のアレルギー、これの増加が指摘されているところでもございます。食物アレルギーで怖いところは、急速に悪化をしてしまうということで、アナフィラキシーショックと言われるショック状態に陥ってしまって、ときには亡くなってしまうという事態があることも事実でございます。こうした状態で、症状が出始めてから三十分以内に医療措置を講じないと生死を分けると言われているのが今の現状でございます。

 記憶にも新しいところでございますけれども、一昨年の十二月、東京の調布市の小学五年生の女の子が給食の誤食が原因となって食物アレルギーの重い症状、アナフィラキシーショックで亡くなるという残念な事故が起きてしまったのも事実でございます。

 そこでお伺いをさせていただきたいのが、この調布市での事故に際しまして公明党が強く要請をさせていただき、文部科学省は緊急に有識者の会議を設置してくださいました。そこでまとめられた報告書に基づいて、今年の三月に全国に通知を出されていることと思います。

 でも、この通知を出しただけで取り組みが進むとは到底思えないことを私が今指摘をさせていただきたいんですけれども、全国で、この通知を出しただけではなくて、この通知を出したプラスどう今後取り組んでいくのかというその方策を伺わせていただきたいということと、あと、今年度も引き続きまして、ガイドラインの要約版、研修用のDVD、給食関係者に向けての指針、この作成、学校の対応についての検討が進められていると伺っているところでございますけれども、余り難しいものだと、多忙な学校の教職員の先生方が見るその時間を割かなければならないということも出てきてしまうので、内容的にわかりやすくしていただきたいということをお願いをさせていただきたいと思います。

 また、食物アレルギーにつきましては、誤って触れなければ食べないという反面もあります。誤って食べてしまったときに急速に悪化した短時間のうちに亡くなる可能性があるということから、学校安全のリスクマネジメントの課題として位置づけをしっかりとして取り組んでいくことが私は必要ではないかと考えているところでもございます。

 また、その点について欠かせないことは、医療事故として同様に、ヒヤリ・ハット事例ということ、インシデント、アクシデントの事例を集積をしっかりと集めて、どういうところで間違って食べてしまう事故が起きているのかということをしっかりと分析して学校現場にきちんとフィードバックする、この体制を構築することが必要であると考えております。

 こうした体制の構築に向けて、しっかりと構築をして子供たちが安心して学校に通えるようにしてあげたいと思いますけれども、大臣の御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 食物アレルギーによる死亡事故のような重大事故が二度と繰り返されることのないよう、事故の事例を収集、分析し、再発防止に生かしていくことは極めて重要であるというふうに考えます。

 このため、本年度中に作成予定の学校給食関係者向け指針の検討に当たって、全国の給食関係者から、事故や、今御指摘がありました事故未遂、いわゆるヒヤリ・ハットの具体的な事例を集めまして、その情報を指針づくりに反映させるようにしたいと思います。

 また、本年度から新たに有識者会議を設置しまして、学校事故対応に関する調査研究を実施しているところでありまして、調査研究の結果を踏まえ、食物アレルギーを含めた学校事故に係る情報収集や共有のあり方等について、来年度、指針を取りまとめる予定でございます。

 今後とも、これらの取り組みを進めることによりまして、事故事例が適切に活用されるよう努めてまいりたいと思います。

浮島委員 ぜひとも子供たちが安心して学校に通えるように、体制の構築をよろしくお願い申し上げます。

 次に、がん教育についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 がん教育、私は、命というのは、まず自分の命は自分が守るということをしっかりと教えていかなければならないと思っているところでございます。今、日本で、二人に一人ががんにかかり、三人に一人が亡くなっているというふうに言われておりますけれども、私は、早期発見、これがとても重要な鍵になってくると思っているところでございます。

 平成二十四年から二十八年の五カ年の間に、新たながん対策推進基本計画の中にも、がん患者を含む国民が、がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会を目指すとしているところでございます。

 また一方で、早期発見に欠かせないのが、がん検診、これを受けるという意識が私は重要だと思います。どこかが悪くなって検査を受けに行くのではなくて、検診を受けに行く、そういう教育をしていかなければならない。それをしっかりとできるのが初中段階からの教育にあると私は思っているところでもございます。

 がんあるいはがん患者に対する理解を深める観点を強めるのが必要ではないか。そして、新たながん対策推進基本計画では、学校での教育のあり方を含め、健康教育全体の中でがん教育をどのように検討し、検討結果に基づく教育活動の実施を目標とすることが示されております。

 がんに関する教育がすごく今指摘をされているところでございますけれども、このがん教育に関する今年度そして来年度以降の取り組みについて拡充をしていただきたいと思いますけれども、お伺いをさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 がんは、生涯のうち二人に一人がかかると推計される中、国民の生命と健康にとって重大な課題となっておりまして、学校における健康教育においてがん教育を推進することは重要であるというふうに認識しております。

 このため、文科省では、平成二十六年度から新たに実施している、がんの教育総合支援事業におけるモデル事業、七十校でありますが、これを通じて、がん教育の指導内容や指導方法、教材開発等について調査研究を進めているところでございます。

 今後、これらの成果を踏まえつつ、有識者で構成される会議においてがん教育のあり方について検討し、今年度中をめどに、学校における取り組みの基本方針を示したいと考えております。

浮島委員 また、がん教育に加えまして、防災教育、これも重要だと私は考えております。

 今回の御嶽山の噴火の件もそうですけれども、活火山の防災教育も含めて、防災の知識を普及させていく、子供たちに教えていかなければならないと思っております。

 防災教育の今の現状と、そして、これからどのように普及をさせていくのかということをお伺いさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 我が国は、地震、津波災害のほかにも、台風、大雨による風水害や火山災害等、さまざまな災害が数多く発生しておりまして、各学校において地域の実情を踏まえた防災教育を実施することは、子供たちの命や安全を守るためにも重要であります。

 文科省では、東日本大震災を受けての防災教育に関する取り組みに加え、平成二十五年度から、新たに研究開発学校を指定し、防災を中心とした安全教育のあり方について研究を進めているところであります。

 また、二十六年度には、中央教育審議会のもとに学校安全部会を設けまして、防災教育の充実の方策を含めた、今後の学校安全の基本的な施策のあり方について専門的な審議を行っており、年内に取りまとめを行う予定であります。

 今後、これらの取り組みの成果を踏まえ、各学校における防災教育の一層の充実に取り組んでまいりたいと思います。

浮島委員 とても重要な教育だと思いますので、子供たちが、学び、そして実践できるようによろしくお願い申し上げます。

 最後に、給付型の奨学金についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 各奨学金の制度は、大学などで勉学をされる機会のとても大きな役に立っていると思います。

 政府では、昨年六月に成立をしました子ども貧困対策推進法に基づきまして、ことしの八月に、深刻化する子供の貧困への方策を総合的に推進するための子供の貧困対策に関する大綱を決定されているところでございます。政府を挙げて対策を講じるとしているところでございますけれども、政府は、大綱に基づきまして、奨学金の利用者の負担軽減のため、月に返すお金を卒業後の所得に連動する制度の導入、また無利子奨学金制度、柔軟な活用、これを検討するとされているところでございます。

 公明党は、党の青年委員会がこの八月に安倍総理宛てに行った青年アクションプランの提言の中に、返済が不要な給付型奨学金の導入、あるいは無利子の奨学金の拡充を提案させていただいているところでございます。

 この無利子の奨学金の拡充をどう進めていくのか、また、あわせて大学生への給付型奨学金の導入について、大臣の御決意をお伺いさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 平成二十七年度概算要求におきまして、奨学金の有利子から無利子への流れを加速し、貸与基準を満たす希望者全員への貸与を実現するため、無利子奨学金の貸与人員を新たに三万人増員する要求を行っているところであります。加えて、卒業後の奨学金返還の不安を軽減するため、より柔軟な所得連動返還型奨学金の導入に向けた対応の加速や、授業料減免等の教育費負担の軽減のさらなる充実を盛り込んでいるところでございます。

 給付型奨学金については、将来的な導入を目指し検討を進めているところであります。高校ではことしからスタートすることができましたが、大学においてもできるだけ早く導入したいと思いますが、まずは、施策の充実、有利子から無利子、連動型等をすることによって、家庭の教育費の負担軽減に努めてまいりたいと考えております。

浮島委員 ありがとうございました。

 生まれ育った環境に左右されることのない、環境の機会均一を図っていただきたいと思いますので、今後ともどうかよろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

西川委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 おはようございます。民主党の中川正春です。

 私からも、火山の噴火あるいは台風、また、東日本の震災から立ち直る、その過程の中での復興への努力、関係の皆さんに、心から追悼の意と、それからもう一つは、頑張っていただく皆さんに感謝を申し上げたいというふうに思います。

 それで大臣、申しわけない、事前に通告をしていない課題なんですけれども、一般的な話として聞いていただいて、また、その対応をぜひ考えていただければありがたいと思います。

 防災関係なんですが、予知ですね。

 火山にしても、あるいは地震にしても、その研究を束ねている特に基礎研究で、それが将来は予知に結びついていくという形が一番いいんでしょうけれども、そういうことを目指して頑張っている専門家あるいは学者の皆さんを束ねておっていただくのは文部科学大臣なんですが、そんな中で、私も専門家の皆さんに、最終的には予知をしてもらわないと、幾ら後づけで、これはこういうプレートの構造で、ここが地すべりしてここから地震が起こったんだと起こってから説明してもらっても、一つの防災の対策としては具体的なところでは役に立たないんだ、だから、それを目指してくれ、予知を目指してくれ、こういう話をしたことがございました。

 基本的には東海のトラフの地震については予知ができるということを前提に法律がつくられている、これは御存じのことだと思うんですが、一般の南海トラフはそこまで行っていないんですね。火山についても、本来は予知まで行っているんだ、予知の体制を前提にして、地震計や何かを置きながら研究を続けている。霧島だとか阿蘇の方、あちらの方は特にそういう体制がつくられているということなんです。

 もう一つ、学者の皆さんが予知まではなかなかできないんだという理由の一つに、リスクがあるんですよね。予知して当たったらいいけれども、それはよくやってくれたという話になるけれども、当たらなかったときに、予知されたことによって経済的な損失、あるいは社会全体がそういう態勢になって準備を進めていくわけですから、その後、いや、当たらなかった、よかったねというだけではおさまらない部分があって、例えばイタリアあたりでは、そのことについて訴訟が起こって、それを予知した学者が大変なことになったというような、そんな例もある。

 そういうことから考えていくと、これからまだいろいろなことが起こってくると思うんです。今、エボラ熱の話がありますけれども、あれも、いわゆるパンデミックでああいう毒性の高いものが日本に入ってくるときに、社会の体制を動かしなさいよということについて誰が指示するんだと。これは、指示する人間というのはやはり専門家であるんだろうし、その専門家の考え方をしっかり押さえた上で、政治家が社会全体を動かすということになるんだろうと思います。

 そういう構造があるだけに、専門家が予知を目指していく過程の中での免責ですよね、当たらなかったときの。これを法律的にやはり準備していくべきだろうというふうに思っているんです。私、そういう問題意識を持ってやはり整備しなきゃいけないというふうに考えているんですけれども、大臣、そこはどういうふうに捉えられますか。

下村国務大臣 それは画期的なお話でありまして、予知が外れたとき、免責を法律で考えるというのは今まで私のイメージではなかったことでありますので、ぜひ中川先生を中心に議員立法等で検討されれば、学者の方々も思い切ったいろいろなこともチャレンジできるのではないかというふうに思います。

 予知ではありませんが、予測として、ことし、非常に台風等災害が多かったという印象を私自身は持っているんですが、そのとき、例年以上に避難勧告がかなり出ていたと思うんですね。そのことによって、結果的には大きな台風が続けてきたときも予想以上に被害が少なく済んでいる部分もあるのではないか、つまり、事前に避難勧告等をすることによってですね。

 これは予知ではなくて予測の中でできることでありますが、ましてや地震とか火山は、これはなかなか予測できないことでありまして、まさに予知ですから、実際に、当たっても困るし、当たらなかったら、訴訟になるようなことがあると学者等も責任を回避したいということの中で、しかし準備をするということは非常に重要なことだと思いますので、今の提言というのは貴重な提言だというふうに私は受けとめました。

中川(正)委員 一度その関係者を集めていただいて、システムについて、どういうふうなものをつくっていくのかというのを文科省サイドでも検討してください。予知というのは、この日に起こるよというような話じゃなくて、恐らく、アラートみたいな形で、アラート一、二、三と段階的に持っていくような、そういう形だというふうに思うんですね。

 そのことを前提にして、誰が責任を持ってそれをやって、それの権威というのをどういう形で国民に知らしめていくのか。その権威から外れた人たちというのは、いろいろな形で予知しているんですよ。首都直下がもう四年後に起こるとかいうようなことで、勝手にどんどん言っているんですよ。この人たちは責任を問われないから勝手に言っている。

 だけれども、権威として、国が定めたそうした組織の中で責任を持ってやってもらうという人は必ずいるわけですから、その人に対しての周辺の整備、これをぜひ考えていただきたいと思うし、私もそんな取り組みもやっていきたいというふうに思っています。そういう意味でよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 それで、これは通告とちょっと、逆さまの順番で持っていきたいんですけれども、大臣は、靖国の参拝についてはどういう考えをお持ちであるのか。もし大臣としても行くべきだということであるとすれば、それは行くつもりなのかどうなのか、そこのところをまず聞かせてください。

下村国務大臣 文部科学大臣として行くつもりはありません。

 しかし、個人の思想信条として、行く行かないについては、こういうところで申し上げるべき事案ではないというふうに、信条の問題でございますので思っておりますが、この秋の例大祭に行く予定はありません。

中川(正)委員 大臣としては行かないというような見識だというふうに思います。

 私自身も、個人としてはさまざまな機会にお参りをするということでもありますし、それが、恐らく韓国や中国の皆さんに、そのこと自体がおかしい、いや、歴史認識をゆがめているということを問われるということではないんだということも理解をしています。

 その上で、なぜ彼らが、どこをもって靖国参拝に対して批判をするのか。基本的には、A級戦犯が合祀されている、A級戦犯に対して国がお参りをするということは、これまでの体制というか、友好条約なり平和条約なり、これからの国の基盤になる、国と国との約束事がちゃぶ台をひっくり返すみたいにひっくり返されるから、それは違うでしょう、日本の基本的なこれまでの、積み上げてきた戦後の歴史というのをひっくり返していくものでしょうという、そこをこだわるんだと思うんですね。

 そういうことを私たちも理解していかなきゃいけないし、逆に、私たちが考えていること、そんな、もう一回軍国主義を復活させるためにやるんだとか、あるいは過去の歴史を全て肯定するためにやるんだとか、そういうようなことじゃないよということを、やはり彼らにも理解してもらう機会というのをつくっていくということ、お互いがどういう価値観でどういう歴史認識を持ちながら今アジアをつくろうとしているのかというふうなことを考えていく、あるいは理解をしていく努力というのは、非常に、私は今こそ必要なんだろうというふうに思うんです。

 どうも、どっちかというと、それは自分の主張を一方的に投げかけているだけで、会話になっていないというか、そういうところがヨーロッパと違う、アジアの一つの問題点であるんだろうというふうに私は認識をしているんです。

 その上で、実は、ヨーロッパに行ったときに、このアジアの問題、非常に心配しているんですね。中国はもちろん正常でないということを彼らは言いますけれども、日本もおかしくなってきているんじゃないかというふうな指摘がさまざまにあって、彼らに聞かされたのは、ひとつ参考にしたらどうだと言って、エリゼ条約ですね、フランスとドイツの間で一九六三年に、二つの国を和解させていく、そのプロセスを条約化して、実現をしていこうということ。和解のプロセスというのはここから始まったと言われているんです、エリゼ条約。その四十年後に、若い人たちが集まって、そのエリゼ条約をベースにして共通の教科書をつくっていこうということで取り組んで、それが二〇〇六年にでき上がりまして、高等学校レベルで、これなんですが、ドイツとフランスで共通して、だからフランス語とドイツ語で同じ教科書、同じ中身の歴史教科書というのができ上がっています。今これを現場で使っているんですね。

 ここまでヨーロッパの和解の努力というのが来ているんですけれども、これをごらんになって、これは日本語訳版なんですが、こうしたヨーロッパの歩みをごらんになって、今私たちの現状、これをどのようにまず考え、あるいは理解をしておられますか。

下村国務大臣 ヨーロッパと東アジア近隣諸国との共同歴史教科書等は、単純に比較することはできないと思うんですね。やはり歴史的な経緯等が異なります。

 まず、我が国においては、先ほど義家委員からも質問が出ておりましたが、まず、我が国の教科書検定そのものを私は見直す必要があるというふうに思っておりますので、その上で、新たな教科書検定、見直した中での採択がされた教科書がどのようなものかということも問われてくるでしょうし、そういう意味で、必ずしも共同研究すればより相互の理解が得られるものができるかというと、まず、それぞれの国のスタンスについて明確にしていく必要があるのではないかと思います。

 そういう中では、まだまだ近現代史については、共同の教科書を書くところまで成熟していないのではないかというふうに思いますが、教科書はともかくとして、歴史における共同研究をするということは、これはかつても、今までしてきたことであります。実際、相当昔の話ですけれども、白村江の時代、それについては共通認識が得られたという部分もありました。

 私が今度、十一月の二十九、三十ですね、日中韓文化大臣会合が横浜で開かれる予定でありまして、そのときに、韓国あるいは中国にも提案をしようかなと思っている一つとして、元寇の役のころ、これはモンゴルが日本に対して、いまだに元寇の役のときに沈んだ船が福岡沖にあるんですね、これを共同発掘してほしいという話があったので、今のモンゴルだけの話じゃありませんから、当時の元は中国やあるいは朝鮮半島まで影響力があったわけですから、一緒にこういう共同発掘等をしながら、あの時代の例えば歴史共同研究をするということはできるのではないかというふうに思いますが、それぞれ、お互いに理解、成熟する中で、少しずつその時代に合った共同研究、歴史においても段階を持ってやるということが今現実的ではないかなというふうに思います。

中川(正)委員 二十四日、二十五日と、日韓議連で、私たちの仲間が韓国に参ります。ちょっと報道で出ているんですが、額賀会長以下、朴槿恵大統領と面談ができるようなそういう形に徐々に今なってきているということで、非常に大事な時期でもあるんだと思うんですね。そのときに、前向きにお互い理解し合おうよという積極的な一つのメッセージというのは、非常に有効だと思うんです。

 先ほど言われたように、確かに、共同研究をやって一緒のものができるという環境じゃない。ここは、そういう成熟度はまだないというのは私もわかります。だけれども、少なくとも、日本の教科書の中で歴史がどのように記述されているかということ、それから、韓国の教科書の中で同じ事象がどのように記述されているかということ、これは、複眼的にお互いが理解した上で、ひとつこれからの未来志向という形で歴史の本質を共同で研究していきましょう、あるいは、共同の教科書をつくっていきましょうというふうな意向につなげていくというメッセージというのは、これは非常に有効だというふうに思うんです。

 具体的に言えば、まずは、そうしたそれぞれの今使っている教科書のそれぞれの事象を並列的に叙述するような副読本的なもの、こんなものを一遍つくったらどうかということを、これは、一番いいのは国のイニシアチブなんです。国がイニシアチブをとって、パッケージ化して、そうしたもの、さっきの元寇の役のころの遺産をもう一回発掘しようじゃないかというふうなことも含めて、パッケージ化して、文科省の方から向こうの文科省に提案をしてもらうというふうなことも一つの大きなメッセージになるんだと思うんですね。

 そういう意味で、ひとつ、こうした取り組みというのも積極的に考えていただきたいというふうに思います。

下村国務大臣 中川先生あるいは民主党が望むのであれば考えたいと思いますが、相当これは問題になるだろうというふうに私は思うんですね。

 つまり、我が国は、歴史教科書、これは検定教科書ですから、既にたくさんの教科書会社が参入しておりますが、それぞれの教科書記述も相当違うわけですね、我が国において。それをほとんど国の基準的な形で一本化できるのかどうかということがやはり問われると思います。つまり、歴史の見方によって、先ほどから議論されている光と影の部分も含めて、見方によって解釈も相当異なってきますから、我が国における歴史観を一本化できるのかどうか。

 それが、昔の事実関係という認識でいえばこれはできるかもしれませんけれども、特に明治以降の近現代史については、人の見方によっては相当角度が異なりますから、これを、日本としてはこういう歴史観だということをまず一本化すること自体が相当難しい話だし、これは、マスコミを含め、野党や国民的な批判も、もし国が定めるとしたら出てくるようなことでもあるというふうに思いますから、いつまでをという、差しさわりがないような相当古代とか縄文時代とか、それだったらまず統一できるでしょうけれども、いつぐらいから本当にできるのかどうか。封建時代であっても、見方によって、必ずしも私は統一見解とか統一解釈は成り立たないのではないかというふうな思いがありますので、その辺、まず国内的なコンセンサスづくりをしていくということが問われるのではないかと思います。

中川(正)委員 そういう形で統一する必要はないと思うんですよ。ありのままでいいと思う。いろいろあっていいと思う、副読本ですから。だから、そういう意味で、もちろん、向こうへ持っていくのは韓国語に直して持っていくわけで、向こうからも日本語に直したものを入れて、それを教育現場で使うということ、これが大事だと思うんですよね。

 そういう意味合いで私は申し上げているので、日本にあるさまざまな教科書記述を国で統一化しろというのは、私の思いからいえば、真逆な話。そんなことはしなくていい。ありのままでいい。ありのままを複眼的に見たらいい。それをどういうふうに有効にやるかというのは、もっと工夫がさまざまに要るだろうけれども、そのことからまずスタートしましょうという意思表示をしていくというのは、非常に大きなインパクトになっていくというふうに思います。

 次に、オリンピックなんですが、これは予算委員会でも取り上げられて、さまざまに問題提起されて、警察の方に話を持っていくんだということで、考え方を今ちょっと保留されているというふうに聞いているんですけれども、一つは、設計段階でとんでもない数字が出てきて、それを相当縮めなければならなかったということ、それから、今、解体に関しての入札でさまざまな疑惑が出てきているということ。

 これは、一連的に考えていくと、マネジメントで大きな欠陥があるんだと。今やっているようなマネジメントがさらに続けば、これはなかなか収拾できないねということだと思うんです、一言で言えば。そのことについて、やはり文科省も責任をしっかり自覚してもらわなきゃいけないというふうに思うんです。

 トータルで、これからどうしようとしていくのか。警察に入ってもらったということだけでは済まない話なんですね。これを具体的に、大臣の考え方を聞かせてください。

下村国務大臣 独立行政法人日本スポーツ振興センター、JSC、これが行った国立競技場の取り壊し工事の調達過程において、JSCが入札参加者から談合があったのではないかと疑われる発言を聞いたため、JSCの規程にのっとり、調査部会を設けて調査を行った。その結果、談合があったとする事実は確認されなかったとの報告を受けております。

 その際、JSCは、談合疑義に関する情報及び調査内容について、公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針に基づいて、公正取引委員会に通知をいたしました。さらに、JSCは、同指針に基づき、入札及び契約に関する不正行為の排除のための捜査機関等との連携を確保するため、連絡がありましたので、文部科学省から警察庁に通知したということであります。

 談合の有無に関する調査については、現在、警察等の関係機関において適切に対応するものと考えておりますが、今御指摘がありましたように、確かに、このままJSCがガバナンス、マネジメント能力を持って、間違いなく、予定どおり国立競技場の建てかえを二〇一九年ラグビーワールドカップまでに間に合うようにするためには、足らない部分があるのではないかと考えまして、今後、JSCが行うさまざまな改築関係業務が適正に執行されるよう、文部科学省から、改めて、調達業務に精通した職員を派遣する等の必要なサポートをすることを決定いたしました。

 新しい国立競技場、二〇一九年春の竣工というのは、これは絶対間に合わせなければならないことでありますので、それに間に合うように、文科省として、JSCに対して適切な指導と、また、増員の派遣等をしながら、きちっと対応していく予定でございます。

中川(正)委員 これは、そうやって職員を派遣する程度の話ではないと思うんですよ。中身を見ていると官製談合、体質そのものが全くなってない、そこまで、どうも組織が腐っているのではないかなということだと思うんです。

 それは、この談合の話だけじゃないんですよね。一番最初、設計を、コンペをやったときも、上限の金額なしでやって、それから、いや、金が出せないという話で、どんどんどんどん下げていって中身が変わってきて、そんなことを何回も何回も繰り返すようなそういう組織というのは、一体何なのかということだと思うんですね。

 だから、そうした意味で、これは文科大臣、徹底的に、大体のところが決着できるところまで責任を持ってやってもらわなきゃいけないということだと思います。

 同時に、トータルな設計がまだできていないんですね。いわゆる、どの競技をどの競技場でやって、トータルでどう動かすのか。にもかかわらず、今回上がってくる法案の中には、もう個別にこの競技場で国有地を使いたいので、そのように法律で直してくれというふうな話が出てきたり、あるいは、ましてや、大臣だとかその組織の改編をやっていきたいんだということで、組織改編のことと、それから、大臣ポストを新しくつくりたいというふうな法案が出てきているんですけれども、我々も、これは見きわめをつけて、その上でこうした新しい組織と全体像をつかんで、その上で個々の法律をしっかり見ていくというような議論をしないと、こんなどさくさの中で、個別のものだけ認めろ、認めろというふうな話にはならないというふうに思います。

 だから、そこのところの決着をつけるということ、それはやはり文科大臣の責任でもって確実に整理をするということ、そこまで私たちはしっかりと見詰めていきたいというふうに思います。そのことをお話ししておきたいというふうに思うんですが、どうですか、どういうふうにこれは最終的には決着をつけるつもりですか。

下村国務大臣 国の競技場関係は、これは国立競技場だけであります。

 今回、問題になっているのは、東京都等が見直しをしているということがまだ明確でないということでありますが、この二〇二〇年大会の競技会場は、平成二十五年一月に東京都及び招致委員会が国際オリンピック委員会に提出した立候補ファイルに記載されており、提出当時は、民主党文部科学部会会議においても、招致委員会から会場計画について報告をしているというふうに承知をしております。

 本年六月以降、改めて、東京都及び大会組織委員会において、コスト面、レガシー、利用等の観点から会場計画の再検討が行われており、私が出席をしている東京オリンピック・パラリンピック調整会議においても適宜報告がされておりますが、現時点で検討中であるため、つまり、主体は東京都と組織委員会ですので、国の関係の部分は国できちっとやっていますが、今検討中のところはそちらの方の場で、直接国が関与する場所ではありませんので、具体的な結論について今検討中でありますし、詳細はまだ聞いておりません。

 ただし、先ほどお話がありました、当該の立候補ファイルにおいて、今回の、これから臨時国会で特別措置法案提出を、お願いを、準備している部分については、国有財産部分に限定した部分でありまして、これについては、一つは、陸上自衛隊の朝霞訓練場、ここは射撃で使う予定になっております。また、皇居外苑、これは自転車ロードレースで使う予定になっています。また、日本武道館、これは柔道で使う予定になっていますが、その所在する北の丸公園が競技会場として使用される予定になっているため、国として大会運営を支援する観点から、過去のオリンピックと同様、特別措置法において国有財産の無償使用に関する規定を整備するよう検討中、それが法案に入っているということで、国有の限定したものでございます。

中川(正)委員 だから、我々は、それを判断していくのに、トータルな計画の中で国有地が本当にふさわしいのかどうか、もっといいほかの地があるのではないかというふうな話であるとか、本当にここを使わなきゃ競技ができないのかどうかというのは、そういう判断なんだと思うんですね。それをやっていこうと思ったら、トータルな計画というのはやはり必須だというふうに思います。

 そこのところがまだ出てきていないということについては非常に遺憾でありますし、ずるずるとこういう形でなし崩し的な計画になっていくというのが、最終的にはいろいろな矛盾になって出てくる可能性があるということを私は懸念します。そのことを指摘しておきたいというふうに思います。

 次に、大学改革なんですが、いろいろ目標が今出てきています。その中に、大学の世界ランキングがあって、ここで日本の大学が、なかなか上位に入っていく数が少ない、あるいはまた、東大でさえ三十位台とかいうふうな、そういう形になっている。

 それを分析していくと、国際化に向けての努力が足りないということがわかってきたのでというようなこともあるんだろうと思うんですが、そういう背景の中で、大学を国際化していくということ、これが一つの目玉になっているというふうに、今の流れを私は理解しています。

 その上でお尋ねをしたいんですけれども、まず、この世界大学ランキングというのは、日本のそうした大学改革の指針になっている。百位以内に十校ですか、そういう目標をつくって、それで大学改革に結びつけていこうということなんですが、そういう基準というのをこの世界の大学ランキングで。

 ということは、これはタイムズなんですよね、ロンドンの。タイムズがつくった規範というか基準で、その基準に日本の大学も合わせて、その百番以内に入っていこうということを素直にやっていいものかどうか。そこなんですよ。そこに対する問いかけが文科省の中でなかったのかどうか。それについて、どういう議論をしたんですか。

下村国務大臣 世界の大学ランキングは、複数の外国の民間企業等がそれぞれ独自に設定する評価指針に基づき作成しているものでありますが、教育面、研究面、国際面など、大学をさまざまな観点から捉えた国際的な評価の一つとして参考になるものと考えております。

 このため、昨年閣議決定した日本再興戦略におきまして、我が国の大学の国際競争力を一層強化する観点から、今後十年間で世界大学ランキングトップ百に我が国の大学が十校以上入ることを目指すとの目標を掲げております。

 日本のランキングの考え方と、それから、海外の民間の企業のそれにわざわざ乗る必要はないのではないかというような御質問のようにとれましたが、それはそれでお考えとしてはありますが、しかし、特に教育の部分、研究の部分は、もう国境を越えたグローバル社会ですから、やはり世界で共通の、民間会社であっても指針、目安があるのであれば、それにのっとって、我が国も、大学が世界の中でどのような位置づけかという目安として参考にするということは、これはおかしくないことであるというふうに思います。

中川(正)委員 私、大臣に気がついてもらいたいのは、日本の国内で、日本の大学も含めて世界の大学をこうした形でランキングしている、あるいは日本の国内の大学だけでもいいですよ、ランキングしている。そこにどうして注目しないんですか。

下村国務大臣 済みません、今、質問の趣旨がよくわからなかったので、もう一度詳しく、ちょっとお話ししていただけますか。

中川(正)委員 海外のタイムズの価値基準の中で引っ張ってくるということがある前に、日本のそれぞれの民間でやっているさまざまな切り口の大学の評価、これに対して、どうして注目しなかったんですか。

下村国務大臣 今、議論になっているのは世界大学ランキングの話ですから、やはり、世界レベルから見てどうなのかということについて、別にタイムズだけではありません。民間会社がいろいろといろいろな指標で、しかし、結果的にはそれほど異なったランキングになっているわけではありませんが、複数実際にあるわけであります。

 国内は国内で、文部科学省が今後の大学のあり方を考えたときに、もっとよりきめ細かな、多様な、そして、それはなかなか一律でランキングができるものではないと思います。相当、学部とか学科とか、よって立つところによって、それから、そもそも大学の、私学大学であれば建学の精神、国立大学においても、大学のそれぞれの役目というのはみんな一律ではありませんから、そういうグローバルな中でこれからどう対応するかという大学もあれば、地域の中でどう貢献するかという大学もあるわけでありまして、それを、一律というよりは、国内であればいろいろな物差しの中で考えるということは必要ですけれども、国内の中でランキングをつくるという考えは、文部科学省としてはありません。

中川(正)委員 それでは困るんですよ。

 実は、国内の中に、こうしたさまざまな切り口で、しかも私は、タイムズが基準にしているそれぞれの項目というのは、高等教育にとって非常に大切ないわゆるクオリティー、質を保証するものになっていると思うんです。そういう意味で本当に私も評価をしたいんですが、同じようなものが日本の国内であってもいいでしょうということです。そうすると、日本の国内にないんですよ、そういうものは。

 どちらかというと、偏差値によって、難易度がこの大学はこれぐらいだ、あれぐらいだというような、そういうようなものを物差しにして、実は子供たちは、その情報で導かれてそれぞれ進路を選んでいくというふうなことであるとか、ましてや、海外へ向いて出ていこうという子供たちについてのガイドブックというのは、日本の国内ではつくられていることがないんですよ。そういう意味で必要なんじゃないですか。

 日本の国内からそんな議論が沸き起こってきて、いろいろな切り口で世界の教育を論じていく。その中に日本の基本的な教育のあり方というのを考えていく。日本が、もし教育という分野で世界のハブ、いわゆるいろいろな人たちが集まってくるような大学をつくりたいということがあるんだとすれば、そういう視点を持たないと、あっちこっちから出てきている海外のものに振り回されて、ああだこうだというような議論をして、海外の人たちがそれを見て、日本の大学はタイムズの基準に合わせてつくっているのかというような話になるということではないでしょう。そこのところを言っているんですよ。

 私は、実は、そういうことを例えば日本経済新聞でやってみたらどうだと。朝日は、国内のものはやっているんですよね。あるいは、教育研究所あたりでやってみたらどうだと。

 そういうことは、実は海外では、やり始めているんです。中国も上海の大学を中心にそんなことをやり始めていますし、シンガポールもやり始めている。みんな、そういう意味では、学生が外に出ていく国際化の基準と、学生を国の中に呼び込むための一つの基準というようなものを使いながら大学の改革を刺激していこうというような、そういうことだと思うんです。そんな観点を持ってほしいという意味で、実はこの質問をしているんです。

 あらゆる分野で、あらゆるもので、実は日本の議論というのは、国の意思を決めていくのが大事だと片方で言っておきながら、もう片方で、こうしたアングロサクソン系の価値基準で物をつくろうとしていくということが往々にしてあるということ、そのことに気づいてもらいたいということです。

下村国務大臣 ちょっと感覚が異なります。

 まず、国がランキングをつくるということが、私は適切だと思いません。ただ、おっしゃったとおり、民間企業がつくるということについては、それはあってもおかしくないと思います。

 ただ、少なくとも、大学入学試験の受験偏差値ランキングのようなものはこれから変えたいと思っています。それは、学力だけの入学試験ではなくて、本当に二十一世紀社会で通用する、あるべき人材は何なのかということが、多様性の中で、そしてもっといろいろな価値を盛り込んだ教育の中で入学試験が行われる。

 そのためには、これは高大接続にも関係しますから、高校以下の学習指導要領もどう変えるのかということもあるし、また、大学においても、十八歳がゴールではなくて、それ以降、出口を含めた大学教育をどうして、そのことによって社会にどんな人材を送り出すかというアドミッションポリシーなり大学教育についても、きちっと各大学が社会に対して、国民に対して明示をしてもらう必要があるというふうに思いますし、大学が、そういう意味では、それぞれの存在理由の中できちっとした発信ができるかどうかということが問われているのではないかというふうに思います。

 その中で、ちなみに、ちょっと今度は、国が掲げたものとして、スーパーグローバルユニバーシティーというのがございます。これは、先月、三十七大学指定をいたしました。そのうちの十三大学はトップ型で、つまり、十年後に、先ほど御批判がありましたが、世界大学ランキングベスト百のうち十位に入ってもらいたいという大学です。

 そして、それはそれほど難しい話ではない。各大学が十年後に、例えば、大学の教授の占める割合を外国人あるいは外国で単位、学士を取得した、そういう人を五〇%以上にするとか、授業を三分の一以上は英語にするとか、あるいは、入学試験でTOEFL、TOEIC等、民間の試験を活用して入学試験をやるとか、そういうようなことが、日本で、ほかの大学に比べて国際的でないというところからランキングが低いということもありますから、そういうものを改善するだけでも相当世界で評価され、つまり、国境を越えて優秀な人材が日本の大学にどんどん入ってくるような、そういう受け皿、研究者も含めてですけれども、していくことも必要だと思います。

中川(正)委員 議論がすれ違っていますけれども、私は、国がつくれと言っているんじゃないんですよ。いろいろな評価を民間が醸し出してくるような環境をつくりなさいと。

 これは、もう一つ言えば、情報なんですよね、情報の集め方。情報開示を各大学はやっていかなきゃいけないということ、それから、海外の情報をとらなきゃいけない。そのベースを国がつくることはできる。だけれども、評価は国がやっちゃだめだ、それは当然ですよ。そういう意味合いで、ひとつ頑張ってもらいたいというふうに思います。海外の基準で、こういう形で政策ができてくるとすれば、これは本当に格好が悪い。

 もう一つ言えば、グローバル30がこれまであったでしょう。これは、私は、この事業の総括をまずやるべきだと思うんです、スーパーグローバルに行く前に。

 私は、ここで感じたことは、英語の授業で最初から最後まで完結します、だから、海外から留学生が来たときには、日本語でなくて英語で授業ができますよ、それを、いわゆる海外の留学生を誘致するインセンティブにしていこうというふうな、そんな思想があったと思うんですが、私は、これは基本的にやっていることが逆さまだと思うんですね。やはり、海外から来た人たちは、英語でやったら、最初はアメリカやヨーロッパに行きたかった人たちが行けなかった、だけれども、日本で英語があるのでやってきました、そんなふうになるんじゃないですかということを、海外でそういうふうに指摘されました。

 同時に、日本で学ぶというのは、日本語の中にあるそれぞれのアジアの価値観、あるいは私たちの持っている、これまで積み上げてきたアカデミックな基盤というのを日本語でやるということに意味があるというか意義がある。だから、海外から入ってきた人たちは、まず日本語を学習できるという体系がそれぞれの大学の中にどこまで整っているかということに注目しなきゃいけないんです。

 逆に、さっきの話は正しいと思うんですが、日本人にとっては英語、これは基礎ですけれども、第二外国語、第三外国語まで徹底的に訓練をして、大学を卒業するときにはそれなりの力を持っていくというようなものをつくり上げる。そのめり張りをしっかりつけないと、どっちがどっちかわからなくなっているというのがグローバル30だったんだというふうに評価していいんじゃないかと思います。

 ちなみに、学生たちに聞いたら、日本で勉強した後どこへ行くんだといったら、アメリカへ行きますよ、あるいはヨーロッパへ行きますよというふうな学生が多いと聞いています。というようなことも参考にしてもらって、これからシステムを組み立てていってもらいたいというふうに思います。

 さらに時間が詰まってきましたので、次の課題に行きます。

 これは文化なんですが、いろいろ文化庁の努力もあって、電子アーカイブについての著作権の整理ができました。その議論の中で、いろいろな議連もできているんですが、この電子化ということを将来考えていくと、それぞれ、我々の持っている文化財、これは書物とか、物に書かれたものはもちろんですけれども、例えばキトラ古墳なんかを立体映像化していくことによって、その中に入っていって、実際は入っていけないんだけれども入っていって、それぞれが観察できるのと同じような形のものが実感できる、体感できるというような、そういう新しいテクノロジーの工夫でさまざまに電子化することによって、文化財が生きる可能性が出てきているんですね。

 そういうものを電子化した上でアーカイブ化していくということ、これが、世界に対しても日本の文化を発信していく一つの基本になっていくんだろうと思うし、世界じゅうでそういうことが始まっているということなんです。

 そういうことからいくと、基本的な、いわゆる電子アーカイブ化に対する国家戦略としての位置づけというのは、これはぜひ必要なんだというふうに思うんですね。(発言する者あり)そこのところをぜひ大臣にももう一回検証してもらって、それがいかに大事かというのを馳さんからしっかり聞いていただいて、ひとつ文科省としての戦略として取り組んでいただきたいというふうに思うんです。どうですか。

下村国務大臣 このことについては、中川先生の提案は一〇〇%共感をいたします。私も東京芸大に視察に行ったとき、先ほどのキトラ古墳のような事例について体験をして、そういう形できちっと情報を取り入れるということは大変重要なことだということを思いました。

 歴史的、文化的価値のある文化関係資料のアーカイブを構築することは、文化の次世代への確実な継承を図るとともに、新たな文化の創造の基盤となるものであり、推進していきたいと思います。

 アーカイブ構築に当たっては、美術館、博物館、大学等との関係各機関と十分に協力連携を図りながら、分野を横断する共通のプラットホームを提供することが必要であります。

 こうした考えのもと、文部科学省では、文化財に関する情報をインターネット上で収集、保存し、公開するポータルサイト、文化遺産オンラインの整備を進めるとともに、我が国のさまざまな文化関係資料について、有識者等の参加も得て、各分野のデータベースの整備や保存、活用等のあり方についての調査研究を進めているところでございます。

 来年度、二十七年度概算要求においても、これらの事業の充実を図る観点から所要の経費を要求しているところでありまして、我が国の貴重な文化関係資料のアーカイブ構築に向け、必要な取り組みを進めてまいりたいと考えます。

中川(正)委員 恐らく、国がやらなきゃいけないところはアーカイブ化、電子化なんですよね。そこの基本をしっかり予算化するということと同時に、それを管理する機構というのをそれぞれでつくっていくという、その整理をぜひやってもらいたい。

 それを活用していくというのは、それは民間であり、さまざまな組織であり、機構でありというので、その活用とアーカイブ化ということは、ちょっと別にしながら整理をしないと混乱するんじゃないか。いわゆる研究しただけで終わってしまうということになってしまうということを一つ申し上げておきたいと思います。

 その上で、もう一つ具体的にあるのは、書籍関係については国立国会図書館なんですよね。これが、予算は補正で三年前に、もっと前かな、百二十七億つけてやったんだけれども、まだ四分の一なんです、電子化しているのが。それをやっていくのと同時に、孤児、いわゆる作者不明というもの、これがまだたくさんあって、なかなか著作権の整理が追っついていかないという、そんな問題がある。

 しかし、このアーカイブというのは、これは非常に価値のあるもので、グーグルあたりもこれを狙って、自分のところで買いたいというような話が過去にあったというふうなことですから、そこのところに注目をしていただいて、これは特別の予算で、積み上げの予算じゃなくて、特別の予算でやらなくちゃいけない。それを、しっかりと文科省の方からもバックアップをしてやっていただきたいということが一つ。

 それから、もう一つは、言葉を超えていくということだと思うんですね。それをアーカイブ化して、外からアクセスしても、日本語であればそこまでなんです。日本語をやっている人は、今、世界で四百万人いますけれども、そこまででとまってしまうんです。

 ところが、日本の戦略として、これをそれぞれ各国語に、英語やフランス語や何かはもちろんですけれども、ベトナム語、インドネシア語、さまざまな言葉へ向けて翻訳をして、その上で電子化して載せていくという、これが国家戦略としてあっていいと思うんです。これが欠けていたので、なかなか日本の国内にあるコンテンツというのが外に出ていかないということなんですよ。村上春樹さんがノーベル賞を期待されていますけれども、恐らく、この事業を国家戦略としてやったら、それはノーベル賞というのはもっともっと大きく広がってくる。そういうコンテンツを私たちは持っているんだと思うんですよ。

 その戦略について、ぜひ文科省でも、一つのキーになるコンセプトとして、国際翻訳機構ですね、ベースを国家のもとで戦略的につくっていく。これは、映像や何かは、フィルムや何かは韓国がそれをやっていますけれども、フィルムの世界でも結構、あるいは書籍の世界でも結構、さまざまなところでこの翻訳機構を生かしていくということを一つ意識として持っていただきたいというふうに思うんです。

下村国務大臣 まず、御指摘のように、文化関係資料のうち、出版物のデジタルアーカイブ化については、図書及びその他の図書館資料の収集を任務とする国立国会図書館が中心となって取り組みが進められているものと承知をしております。

 文科省としては、国立国会図書館を初めとする関係機関とも十分に協力連携を図りながら、我が国の貴重な文化関係資料のアーカイブの構築に向け、必要な取り組みを進めてまいりたいと思います。

 それから、もう一点御質問がありました、我が国のすぐれた文学等出版物を外国語に翻訳し海外へ紹介することは、日本の文化や日本人の考え方などについての理解を深めるとともに、我が国の文化水準の一層の向上を図る上で極めて有意義であるというふうに思います。

 このため、文科省では、平成十四年度から、我が国のすぐれた現代文学等の作品を翻訳し、海外で出版するとともに、内外のすぐれた翻訳者を発掘、育成するためのコンクールを開催する事業を実施してまいりました。

 しかし、本事業のうち翻訳事業につきましては、平成二十四年六月の行政事業レビューの評価結果を踏まえ、平成二十七年度までに事業を終えることとしております。

 今後は、我が国の文学等に理解のある翻訳者を発掘、育成する観点から、引き続き、コンクールを実施し、入賞者を積極的に内外の出版社等へ紹介するなど、翻訳者の育成のための方策の充実に努めてまいりたいと考えております。

 御指摘の、出版物を多言語で翻訳するための仕組みについてでありますが、翻訳を行っても、十分なプロモーションがなければ海外では売れないなど、出版各社の御意見、また、各国で出版業界の状況が異なるといった課題がありまして、さらなる議論を踏まえる必要があるというふうに考えます。

中川(正)委員 だから国が出ていかなきゃいけないんですよ。これまで、それぞれの出版社は、それなりに努力しているところもあるんです。ところが、いろいろなそうした障壁があって、なかなか、いわゆる紙の本にしていくリスクが高かったから、みんな壁に突き当たってきた、こういうことなんです。

 さっきの、文科省でも予算をつけていると言っていたけれども、翻訳するための予算、補助金もつけていて、途中でとまっちゃったんですよ、やめちゃったんです。何でかといったら、やはり戦略性がないから、やったふりだけしかしていないから、だから詰まってくるんです。戦略性を持って、そこのベースを、国が基盤をつくる。

 だから、翻訳者の人材バンクと、それを翻訳した上で、電子書籍を使えるわけですから、この電子書籍をいかに使っていくか。その中で、目ききをそれぞれの国でどうつくっていくかというのを、この機構の中で戦略性を持ってやるというのは、ちょっとさっきの、文科省の方から、恐らく事務方から出してきたイメージとは違う次元の話なんです、これは。(発言する者あり)そのとおりです。国家戦略の次元の話なんです。これをやらないと、日本の言語を超えることができない、ユニバーサル化することができないんです。

 だから、そういう意味で受け取っていただいて、ちょっと役所の人間は、議論の中では、どうしても小さく小さくなっていく、積み重ねられた予算の上でしか話ができない形ですから。これはぜひ文科省から、文科省だけじゃなくて、オールジャパンにこの話を持ち上げていただいて、国家戦略として、それこそクールジャパンなんですよ、これは。そういうところまで引き上げていただいて、議論をぜひ重ねていただきたいというふうに思います。

 時間が来たようでありますので、以上です。

西川委員長 午後一時から委員会を再開することといたしまして、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

西川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。遠藤敬君。

遠藤(敬)委員 きょうは、「私たちの道徳」の副教材について御質問をさせていただきたいと思います。

 通常国会の青少年特別委員会でも御質問を申し上げましたけれども、平成二十六年度に六億円の予算で全国の小中学校に配付をした「私たちの道徳」について、現行の道徳の時間の教材として適切に活用なされているのか。聞くところによると、学校に配付されていないところ、授業で使用されていないところ、家に持ち帰られていないところ等、かなり実態としてございます。

 今の状況について下村文部科学大臣に御質問したいと思います。

下村国務大臣 「私たちの道徳」は、学校のみならず、家庭や地域においても活用していただきたいということを狙いとするものでありまして、文科省では、これまで三度にわたり教育委員会等に通知を発出し、その効果的な活用を呼びかけてまいりました。つまり、それだけなかなか使用されていないという現状がありました。

 あわせて、公立小中学校における本教材の活用状況について調査を行い、その結果を十月十四日、公表いたしました。

 その結果によれば、ほぼ全ての小中学校において「私たちの道徳」が使用されている状況である、小学校で九九・五%、中学校で九八・四%であるということであります。

 また、本教材を家庭に持ち帰るように全ての学級で指導している割合については、小学校で八〇・九%、中学校で七二・七%ということでございます。

 持ち帰られていない理由として、忘れ物や紛失を防ぐためということが挙げられていたりしておりますが、こうした数値にあらわれていない課題についても、さらなる改善に努めていく必要があるというふうに思います。

 実際にこれだけ本当に活用されているのかどうかということで、改めてPTAの関係の方々に、個人的ですが、全国いろいろと聞いてみましたが、例えば小学校で九九・五%使われているといっても、実際は一学期に一回しか使われていないというような事例もかなりあるということでありまして、一度でも使えば教育委員会としては使ったということはこれは事実ではありますので、そういう形で、文部科学省の調査によれば相当高い数字でありますが、実態的にはかなり乖離している部分があるのではないかというのは、私が個人的にいろいろなPTAの関係の方々に聞いた実感ではあります。

 今後、この調査結果も踏まえ、「私たちの道徳」の一層の活用を図るため、本教材の学校の授業での活用事例や家庭や地域での活用事例を盛り込んだ教師用の指導資料を本年度中に作成し、全国の小中学校に配付することといたしました。

 あわせて、PTA等の関係団体の協力も得ながら、学校、家庭、地域の連携により、「私たちの道徳」の効果的な活用の促進をさらに図ってまいりたいと考えております。

遠藤(敬)委員 下村大臣の今本当に不安に思っている、また本当なのかということも、私自身も市町村議会またはPTA等々でも聞き取りをいたしました。九九・五ということは〇・五%が使われていないということなんですけれども、聞けば聞くほど、使われていないところが多い、また、見たこともない、学校に置いてある等々の話があるんですけれども、この〇・五%を探す方が難しいんじゃないかなと思うぐらい、すぐに使っていない学校が見つかりましたし、クラスでも見つかりました。

 それと、学校全体で使っていないところと学年で使っていないところ、クラスで使っていないところ、いろいろなパターンがございました。

 その一つは、もともとカリキュラムには入っていないということで使っていない、そのような学校もございますし、地方議会の質問の中の内容を見てみますと、圧倒的に、カリキュラムに組み込まれていないであったり、この副教材に対する、先生が使い勝手が悪い、指導しにくい、そういった話をお聞きします。

 改善方法としてはどうなのかということで地方議会の方でも御質問していただきましたら、できるだけ使うようにします、下村大臣がおっしゃるように、一回でも使ったら使っただというような状況になっています。

 カリキュラムに組み込まれていないから使えない、この実態については、国費を投じて一人一人の子供たちに配るという大前提があるわけなんですけれども、配られていないというの自体がどうなのかなということで、本当にこれからの道徳教育の特別の教科化に向けた流れが厳しいんじゃないかなというふうにも思っております。

 下村大臣、学校ごと、クラスごと、例えば〇・五%を見つけるのは難しいけれども、九九・五%、もう本当にこれは逆じゃないかなというぐらいの状況になっていると本当に思うんです。逆だと思うんですけれども、教育委員会が調査すれば九九・五%、我々が調査したら全く違う肌感でもって違うわけなんです。これはどこにこういうそごが生じているのか、下村大臣の見解としてどうお考えでしょう。

下村国務大臣 よく言えば地方自治だと。教科書でないものを国がとやかく指図して、それをそのまますんなり使うということについて抵抗があるということだと思うんです。

 しかし、地方自治体が、それにかわる、よりすぐれた副読本、副教材を使用しているのであればそれは一つの見識かもしれませんが、しかし、実際のところはそれも余り活用されていないということで、やはり道徳に対しては、戦後教育体制の中で拒否反応というのがあって、それがいまだに尾を引いている部分があるのではないかと。

 実際、遠藤委員もごらんになっていただいて質問していただいているというふうに思いますが、この「私たちの道徳」が、本当に戦前回帰のような、国家主義的な、あるいは軍国主義を増長させるようなそういう偏向の中身かというと、全くそういうことではなくて、人が人として生きていくためのルール、規範意識、そもそも子供たちに夢とか志を持って頑張ることがいかに大切かということを、偉人や現在活躍している有名人やいろいろな方々のエピソードがたくさん入ることによって、読むことによって、自分も人生前向きに頑張ってみようと思うようなそういう教材のつくり方をしているというふうに思っておりますので、活用していただければ、これは子供たちにとっては必ずプラス効果が出てくる、そういう有益なものであるというふうに思います。

 残念ながら、道徳ということに対して現場が必要以上のそういう精神的な拒否反応の部分がいまだにあって、それが教育委員会そのものが持っているところもあるし、おっしゃったように、学校長が持っているところもあるし、あるいは場合によっては担任が持っているところがある。逆に言えば、その学校で、ある学年の一クラスだけ使っていれば学校全体として使用しているというのがそのアンケート調査に出ている。

 ですから、この文部科学省の調査というのは、教育委員会はうそをついているわけではないけれども、しかし、実質的な使用のパーセントとは相当乖離があるということでありまして、これを改善をしていかなければならないというふうに思っています。

遠藤(敬)委員 まさに、強制力がないということも先般の青少年特別委員会でも御回答いただきました。まさにそうだと思うんですけれども、特別の教科、道徳の強化がこれから進むに当たって、このような副教材ですら使用してもらえない。私は、この使っていただけないということよりも、せめて、国費を投じた一冊一冊、子供たちが持って帰っていただけるぐらいのことはしていただきたいなというふうに思っています。どこにあるかというと、学校の倉庫に積み上がっている。たくさんあるんですよ。

 それで、市議会、町議会の中でも御質問していただいて、後で教育委員会がこそっと調査したところもありまして、そのお話によると、これから使いますから、なので余り公に議会で聞かないでほしいというところまでございました。それをこれから考慮をしていかに進めていくか。

 また、使い勝手のいいという、中身を見れば保護者の皆さんも、こんなにいい教科書を何でうちの学校は使ってくれていないんだろう、クラスでも使ってくれていないんだろう、保護者が学校現場に、うちの子供はこんなものはもらっていないんだけれどもということでおっしゃっていただけるようなところまでございます。

 それをより加速した形で、強制力のないにしても、学校現場にぜひとも文科省からも御指導をいただけたらなというふうにも思っております。

 この「私たちの道徳」ですけれども、市販をされているということであります。今の現在、販売状況について、どれほど本屋さんで、店頭で販売されたか、お聞かせいただきたいと思います。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省が作成いたしました「私たちの道徳」につきましては、本年の六月二十七日、六月末から市販を開始したところでございます。九月末までおおむね三カ月間で、各出版社に確認させていただきましたところ、小学校一、二年生用が千九百冊、小学校三、四年生用が千五百冊、五、六年用が二千冊、中学校用が二千九百冊、百でまとめた概数でございますけれども、そういう販売状況だそうでございます。

遠藤(敬)委員 非常に残念な数字だと思いますし、文科省が販促をするというのもなかなか難しいかわかりませんけれども、余りにも少ないんじゃないかなというふうにも思っております。

 もう一つですけれども、私、これは最近手元にいただいたんですけれども、民放とタイアップして、「HERO」のチラシです。十日ほど前ですか、頂戴しました。裏には下村大臣のメッセージも記載されていまして、道徳の本についても記載されております。

 このチラシなんですけれども、私が見たときに、保護者の皆さんも、有名な俳優さん、女優さんが出ておられますので注視されるんじゃないかなと。裏を見たら、ああ、道徳の教材とミックスして道徳の教材を素直に受け取っていただける、いいチラシだなと思いました。

 これは民放さんがつくられているので文科省さんが直接配っているのかどうかわかりませんけれども、このチラシなんですけれども、どこに配られて、子供さんに何枚配られたのか。誰一人としてこのチラシを見た保護者さんは当たりませんでした。これはポスターもあるらしいんですけれども、私の調査だけですけれども、ポスターも学校には一枚もない。そのような状況なんですが、誰に、学校に配られたのかどこに配られたのか、少し教えていただきたいと思います。

小松政府参考人 ただいまお話しのございましたものは、「HERO」というテレビドラマとタイアップをいたしましてつくったポスターないしチラシでございます。

 チラシにつきましては、「私たちの道徳」とタイアップの趣旨の説明をした内容で、約八十万部をつくらせていただきました。それから、ポスターにつきましては、同内容でございますが、これらを学校等へ配らせていただきまして、全国の小中高校あるいは特別支援学校とか、そういうところへ配らせていただいております。

遠藤(敬)委員 ちなみにポスターの数は。

小松政府参考人 ポスターの作成は、四万校に配付させていただいております。

 ちなみに今の予算でございますけれども、これは、タイアップを申し出てくださいましたテレビ局の方でポスターやチラシの作成、配付等に関する経費を全て負担をして、企画、作成してくださいました。

遠藤(敬)委員 委員の先生方、見たことがあられる先生、おられますか。(発言する者あり)

 この「HERO」というのは、民放でこのたびのは視聴率は一位だったそうですね。これの相乗効果で「私たちの道徳」を織り込むというちょうどいいチャンスだったんじゃないかなと。これは一枚も学校に多分張られていないんじゃないかなと思うんです。

 そういうことも踏まえて、これから戦略的に保護者の皆様方にも御理解をいただける即効性のあるものだと思うので、いい取り組みだったと思うので、これが功を奏していないといいますか、実際に本を使っていただいていない状況でポスターを張ってくれるかといえばとんでもない話だと思うんですけれども、それが逆に学校現場では否定的に扱われているのかもわかりませんし、教科書自体も積み上げられている、チラシも積み上げられているということじゃないかと思うんですけれども、大臣、この見解をどう思われますか。

下村国務大臣 おっしゃるとおり、ポスターが四万枚、それからそのチラシが八十万枚、これは大変な効果だと思うんです。

 ちなみに、文部科学省でも、ホームページの特設ページで閲覧数が開設から二カ月で約七万件ということで関心はあるんですが、これは文部科学省も調査しておりませんでしたが、このチラシを見た人が、今、遠藤委員のお話ですと親はゼロだということで、本当に配っているのかどうか。

 これは、先ほど申し上げたように、文科省の国費としては投入しているわけではありませんから税金は一切使われておりませんが、それにしても、民放テレビ局にしても無駄なコストになってしまうということになってしまうわけでありまして、もともとなぜここと連携したのかというのは、人としてどうあるべきか、自分はどう生きるべきか、「HERO」というのはそういう道徳教育の根源的なテーマに共通するものだということでタイアップを決めたということもありまして、もっともっと学校現場も柔軟に対応していただきたいというふうに思います。

遠藤(敬)委員 きょうの委員の先生方、教育に造詣の深い先生方でさえ知らないということですから、保護者の手に届くことはまずないんだろうなというふうにも思いますし、今後の特別の教科、道徳についてこれからどう進めていくかというところで、こういうところでつまずいていくとなかなか議論が深まらないんじゃないかなという懸念もしております。

 それで、中教審において去る九月三十日に、現在の道徳の時間を教育課程上、特別の教科、道徳、仮称ですけれども、位置づけられる旨の答申が示されました。文部科学省においては、近くなされる答申を受け、平成二十七年度から一部先行実施の後、平成三十年度にも正式な教科とするとの報道もあります。

 現在の道徳の時間と特別の教科、道徳との違いは何か、特別の教科とする上で教育上の利点は何なのか、具体的に下村大臣のお答えをいただきたいと思います。

下村国務大臣 今までも議論がありましたように、この道徳の時間は、本来、学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育のかなめとなるべき重要なものでありますが、その実態は、各教科等に比べて軽視しがちであり、または有効に機能していない、こういう指摘があるし、きょうのアンケートの結果等も同様のことが言えるというふうに思います。

 道徳の時間については、学習指導要領に示された内容を体系的に学ぶという教科と共通する側面がある一方、道徳教育全体のかなめとなって、人格全体にかかわる道徳性を育成するものであり、原則として学級担任が担当することが望ましいこと、また、数値などによる評価はなじまないことなど、他の教科とは異なる側面があるというふうに考えられます。

 このことを踏まえ、中央教育審議会の答申案におきまして、道徳の時間を従来の教科とは異なる特別の教科として新たに位置づけ、その目標や内容等を見直すとともに、これをかなめとして効果的な指導をより確実に展開することができるよう、教育課程を改善することが示されているところであります。さらに、特別の教科、道徳に検定教科書を導入することや、評価を充実することについても答申案に盛り込まれております。

 今後、答申をいただいた後、文部科学省において、学習指導要領の一部改訂等の必要な制度改正を行いまして、道徳の時間を特別の教科、道徳として位置づけることによりまして、教科書も使用しながら、つまり、今まではこれは教材ですから、「私たちの道徳」については使う使わないについての義務化はなかったわけですが、今度は、教科書になれば必ずこれは道徳の時間に使用してもらうということになるわけでございます。

 教科書として使用してもらいながら、より体系的で効果的な指導を実現し、学校の道徳教育全体の真のかなめとして機能するものにしていきたいと考えております。

遠藤(敬)委員 平成二十七年度からの一部先行実施とありますけれども、この一部先行実施というのはどういう道徳の科目なのか。これはせっかくなので、丹羽副大臣に御質問させていただきます。

丹羽副大臣 失礼いたします。

 今、遠藤先生から御質問の、道徳の一部先行実施でございますが、平成二十七年度から、地域によりまして道徳教育に対する一部先行して実施して、その調査を図ってまた今後にフィードバックしていくという内容でございます。

遠藤(敬)委員 丹羽副大臣、急に、通告していなかったので、恐れ入りました。

 それでは、日本国憲法に関する学校教育について話をかえさせていただきまして、質問させていただきたいと思います。

 本年六月、憲法改正国民投票法の一部改正法が成立した。論点の一つであった選挙権年齢等の十八歳への引き下げについて必要な法制上の措置を講ずるものとされたが、同一部改正法施行後四年を経過するまでの間、二十歳とすることとされました。

 今後における選挙権年齢等の十八歳への引き下げを見据え、文科省として、高等学校はもとより、小中学校においても、日本国憲法に関する学校教育を充実させ、民主政治と政治参加に関する意識の向上を図ることが重要と考えておりますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

丹羽副大臣 現在、学校教育においては、民主主義と政治参加に関する意識を高め、社会参画の力を育むことは非常に重要であると考えております。

 このため、学習指導要領に基づきまして、小中高等学校の各段階において、日本国憲法の基本的な考え方や、我が国の国民の民主主義や議会に対する仕組み、政治参加の重要性や選挙の意義について指導しているところでもございます。

 また、現在、文部科学省におきましては、さきの国会で、日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律が成立したことに伴いまして、学校教育における憲法に関する教育等の充実について、教育委員会等に対して通知を発出しているところでもございます。

 今後とも、学習指導要領に基づきまして、憲法や政治に関する教育がしっかりと行われるように指導するとともに、次期学習指導要領の改正の議論についても、高等学校に新科目「公共」を設置することも含め、さらなる指導の充実を検討していきたいと思っております。

遠藤(敬)委員 恐縮でございますけれども、下村大臣からもこの件について御意見をいただきたいと思います。

下村国務大臣 残念ながら、二十代、投票率が低いということがあります。これはやはり学校教育にも問題があったのではないかと。

 民主主義というのは、国民参加型の中で政治ができるわけで、朝日新聞的に言うと、国家というのは、権力というのは国民と対峙するものだ、そういう批判から始まっている部分がありますが、そうではなくて、国民が政治を形成している主体たる存在としてあるわけですから、ぜひ教育の中で、いかに投票に行くことは大切なのかということを教えていくことをより高めていく必要があると思いますし、また、今、丹羽副大臣が、「公共」という新たな教科についてこれから議論をするという話がありましたが、もっと直接的に自分たちが参加することによって政治も日本も社会もよくなるのだということを教育の中で子供たちにしっかりと教えていく、そういう教育をしていく必要があると思います。

遠藤(敬)委員 もう時間もございませんけれども、先般の文科委員会で問題を提起させてもらいました、教員選挙による学校人事についてであります。そのときに萩生田先生からそんなのは大阪だけと違うんかと言われましたけれども、これは調査を文科省としてもしていただけるということでございましたけれども、調査結果について御報告いただきたいと思います。

下村国務大臣 学校教育法に基づき、校内人事は校長がみずからの権限と責任において決めるべきものであり、教員の選挙等により校内人事を決めることは、法令に違反し、極めて不適切であると考えます。

 文科省としては、全国の公立学校の規定や慣行を把握するため、ことし六月、各教育委員会において点検、調査を要請するとともに、不適切な規定や慣行があれば、速やかに是正するよう指導しているところでございます。

 現在、それぞれの規定や慣行が法令等に違反するものかどうかも精査しつつ調査結果を集計しているところであり、調査結果がまとまり次第速やかに公表したいと考えておりますが、今現在、事務方から上がってきている報告では、大阪、それから大阪周辺の市が幾つか、教員の選挙等により校内人事を決めているというのは聞いておりますが、それ以外については調査中でございます。

遠藤(敬)委員 大阪以外でも近畿圏が特に多いのかもわかりませんけれども、またこの調査は引き続き行っていただきたいなというふうに思っています。

 この質問をさせていただいたときに、偶然かわかりませんけれども、なぜか運動会に僕は呼ばれなくなりました。これが偶然なのかどうなのかわかりませんけれども、これが実態かなというふうにも感じております。

 この教員の人事なんですけれども、実際、今回の「私たちの道徳」の問題もそうですけれども、やはり、教育村という一つのキーワードが全てじゃないかなというふうに考えております。この中で、学校現場、教育委員会、そして文科省からの指導も含めながらうまく総合的にやっていかなくては、この教育村を打破するのは非常に難しいんじゃないかなというふうにも思っております。

 ぜひ引き続き、道徳の教科化に向けた取り組みとして我々も全面的に頑張っていきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

西川委員長 次に、鈴木望君。

鈴木(望)委員 それでは、同僚の遠藤議員に引き続きまして、私も通告しておりますけれども、遠藤議員が通告した部分とも若干かぶる部分があるかと思いますけれども、質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、質問に入る前に、国立霞ケ丘競技場の建てかえの問題について、御答弁は結構ですけれども、一言発言をさせていただきたいなというふうに思います。

 二〇二〇年の東京オリンピック、これは午前中の浮島委員の質問に大臣はお答えして、新しい日本をつくっていくチャンス、スタートにしたいと。私もそういうふうに思いますし、いい方向に向けて社会を変える大きな起爆剤にもなり得るんじゃないのかな。そういう意味では、全国民が開催を待ち望んでいる、成功させなければいけない、党派を超えてそういう大会にしたいものだなというふうに思っております。

 その中心をなす国立霞ケ丘競技場の建てかえの建設費につきましては、当初千三百億円というものだったものが、三千億円というような数字が出てまいりまして問題となって、私が去年の十二月に質問したときには、千八百億円ぐらいでおさまるだろうということでございました。その後、再査定の後に千六百二十五億円となった経緯がございます。

 ここに来て、また建設費について一部の建築家グループから疑問の声が上がってきているというのがマスコミに出ております。理由は、世間一般の建築費の高騰、もう一つが、これはちょっと問題じゃないのかなと思うんですけれども、大規模で複雑な構造が建築費のアップを必然的に招くんだというような指摘があったかと思います。さらに、与党の内部、これは自民党の無駄撲滅プロジェクトチームからも異論の声が上がっているというふうにマスコミ報道等で私ども聞いているところであります。

 もちろん、無駄撲滅プロジェクトチームというようなことは、ぜひ与野党問わず国会としてやっていかなきゃならないことだと思いますので、そのことは問題だと言っているわけではなくて、建築費の問題、建設費の問題がいろいろなところから指摘をされて、数字が今のところころころころころ変わっていって、建築がずれ込むおそれもあるんじゃないのかというような指摘さえも出ている。そのこと自身が、私は、非常にオリンピックの成功を願う者としては問題だなというふうに思います。

 この際、見直すべきはきちんと見直して、決着をきちんとつけて早く前に進んでいただきたいということをまずはお願いをさせていただきたいなと思います。

 この問題は、オリンピック・パラリンピック特別措置法案の審議の際にも改めて議論はさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、学校の公設民営について質問をさせていただきたいと思います。

 これは同僚の遠藤議員からも質問通告があった分でありますけれども、この学校の公設民営につきましては、国家戦略特別区域法の中で議論をされることと区分をされておりまして、そこの委員会で、文科委員会以外のところで議論をきっちりとするというふうに認識はしております。

 しかしながら、事柄としましては、学校の公設民営ということは文科省の所管そのものの話でございますので、少し議論をさせていただければというふうに思います。

 学校の公設民営につきましては、今までもさまざまな議論がなされてまいりました。

 その中で、メリットとしましては、民間の教育資源やノウハウの活用、創意工夫の取り組みができる。例えば国際バカロレア認定校の運営をしてもらう等々、多様なニーズに応じた特色ある教育がこの学校の公設民営という仕組みを取り込むことで可能になってくる、また、既存の公立学校に対する刺激を大いに与えて、全体として公教育の向上に大きく寄与するのではないか、また、保護者の選択自由の幅も広がってくるんじゃないのかというようなメリットとして指摘もなされております。

 また、デメリットとして、民間事業者の都合で学校が閉鎖されるおそれがあるじゃないか、また、どこに責任があるのかという意味で責任の所在が不明確になる、また、丸ごと民営にするんだったら、もう既に日本には立派な教育をしている私立学校があるわけだから私立学校ですればいいじゃないかというような、デメリットの各点が挙げられているということも事実であります。

 実は、公設民営は学校以外ではもう既に行われておりまして、例えば、プール、図書館、博物館等の自治体の施設では指定管理者制度が取り入れられておりまして、私もちょうど首長をしているときにこの指定管理者制度が導入をされまして、そのときに、責任が曖昧になっちゃうんじゃないかとか、また、受託した会社が途中で潰れたらどうなるんだという議論が盛んになされました。しかしながら、実施をしてみたら、ほとんどそういう問題は全国的にいっても起こっていないというふうに認識をしています。杞憂であったというふうにその点については認識をしているところであります。

 また、私立学校との関係ですけれども、公設民営の学校は、公費によって無償または低廉な学校教育サービスを提供するという意義がありまして、そういった意味での、公立学校のよさと民営の創意工夫といったものをうまくミックスさせたという意味で、私立の学校にはないよさが発揮できるのではないかなというふうに認識もしているところであります。

 もちろん、公立の学校が公設民営に全てなればいいとかそういう極論を言っているわけではございません。選択肢の一つとしてそういうものもあったらどうかという意味であります。

 そういう意味で、文科大臣にはぜひこの制度を推進していただきたいと思っておりますし、また、実際上、ここまで制度が具体化してきたのは大臣の御努力、御尽力があったからというふうに認識をしているところでございます。

 引き続きリーダーシップの発揮をお願いをしたいと思いますけれども、その点に関しまして文科大臣に、学校の公設民営についての大臣の御認識と、仮にこれが制度化された場合には、区域といったものについてどのようなお考えを、どこの区域を指定するのかというようなことについて、もしお考えがありましたらお答えをいただければというふうに思います。

下村国務大臣 グローバル人材の育成など、国家戦略特区で行われる特色ある教育を実現するためには、外国人を含めて、高い能力や経験を有する人材を積極的に活用する必要があります。

 しかしながら、一律の給与体系、また任用形態、人事管理が適用される現行の地方公務員法におきましては、公立学校においては、こうした人材の活用が非常に困難な状況がございます。

 したがいまして、こうした人材を非公務員として民間人のまま雇用することを可能とするため、教育水準の維持向上及び公共性の確保を前提として、学校の管理を民間に行わせることを可能とする特例を設けようとするものでございます。

 現在、関西圏国家戦略特別区域に属する大阪市より、公設民営学校について提案がなされております。国家戦略特別区域法が改正され、公設民営学校の特例が設けられた際には、区域計画を変更し、大阪市が設置者として公設民営学校を設置することになると想定をされます。

 なお、国家戦略特別区域内の都道府県または指定都市が公設民営学校の設置を希望した場合には、区域計画において定めることにより、大阪市以外でも当該特別措置を活用することは可能でございます。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 それでは次の、全国学力テスト問題について進んでいきたいと思います。

 全国学力テストに今さまざまな課題やいろいろなものがまだまだ問題もあろうかとは思うんですけれども、今回、私は、地方教育行政のあり方を問うという観点から質問をしていきたいと思います。

 まず最初に、お配りした資料を見ていただければというふうに思います。これは地元の中日新聞の記事でありまして、学力テストの公表をめぐりまして、地元の川勝静岡県知事が、下村文科大臣がいわゆる違法、脱法だと指摘したことに知事は、ルール違反とは笑止千万、逆に文科省側に謝罪してもらいたいというふうに言ったという記事であります。

 この記事だけ見ますと、経緯を知らない方にはよくわからないと思いますので、ごく簡単に経緯を紹介させていただきますと、昨年の全国学力テスト、小学六年の国語Aの成績が、実は、私の地元である静岡県が全国最下位であったわけであります。このことを受けまして、静岡県知事は、成績下位百校の学校の校長先生の氏名を公表するというふうに表明をしました。理由は、生徒の学力が低いのは先生の責任であるということであります。

 当然のことですけれども、こういった表明に対して各方面から批判が出まして、方針を転換しまして、それでは、成績下位の学校の校長先生の名前ではなくて、成績上位の、全国平均点以上の学校の校長先生の氏名を公表するということで、八十六校の学校の校長先生の氏名を公表したわけであります。

 これはどう考えても非常識な措置であるというふうに私も考えますし、県教委も、もとより何とかやめさせようと努力をしたということが新聞記事でうかがわれます。文科省も、その当時、実施要領に反するとコメントを出しております。私も、去年の十一月六日に質問をしまして、大臣から明快な御答弁をいただいたところであります。

 そもそも、特に小学校の国語の学力ということになりますと、当然のことですけれども、児童生徒の学力に先生の力が大きいというのは当たり前でありますが、それだけではなくて、例えば保護者の配慮とか熱意、努力、それに、学校を取り巻く地域社会のあり方が大きく当然影響しているわけであります。例えば、保護者が子供に読書を励行するであるとか、学校を取り巻く地域社会が文武両道を奨励している、その地域にある子供の特に国語の学力といったようなものが上がってくるのは当然のことだろう、影響を受けるのは当然のことだろうと思うんです。

 それを、学力の低いのは先生の責任と一刀両断して、先生の代表である校長の氏名を公表するというのは、これはどういろいろと言を弄しようとも、明らかに間違っているというふうに言わざるを得ないと思うわけであります。

 ちなみに、十一月六日に私は質問をさせていただきまして、そのときに下村文科大臣がこういうふうに答えておられます。

 「静岡県知事の今回の校長名公表に関する対応は、本年度の実施要項の趣旨から逸脱するものであります。また、このような公表を行うことによる教育上の効果について、これは疑義があると思います。関係者に不安や混乱をもたらしているということに対しても危惧を感じますし、このことによってどんな教育的な成果、効果を期待していて、またそれが実際にあらわれたということについては、鈴木委員のおっしゃるとおりだというふうに思います。」というふうにお答えをしているわけでして、これは当然静岡県知事も静岡県の教育委員会も認識をしているというふうに思って、そういうことはもう行われないだろうというふうに思っていたところが、ことしもまた昨年と同じように、全国学力テストの成績上位の、全国の平均点以上の学校のことを言っているわけですけれども、学校の校長先生の名前を公表しました。あわせて、市町別平均正答率を市町の同意なく公表をした。

 これらの措置に対して地元の県の教育長は、残念な結果である、市町の教育委員会に申しわけない、これは新聞記事をそのまま引用しておりますけれども、そういうことを述べて、下村文科大臣も、違法、脱法行為だと批判をしていたわけであります。

 地元におりますと、知事の権力はその地域では絶大なものがありまして、県庁の職員はもとより、地元マスコミを含めて、おかしいものはおかしいと率直に言えない雰囲気があるわけであります。結果、知事は裸の王様になりやすい。静岡県知事はこの問題では明らかに裸の王様になっているというふうに私は思います。

 また、どうしてそこまで文科省に知事が盾突くのかなというふうに考えてみると、何か個人的な遺恨でもあるのかなとさえ思ってしまうわけであります。しかし、問題は児童の学力に関する教育行政のあり方の問題でありまして、個人的な問題で済ませるわけにはいかない。静岡県知事という公的な機関としての行為であります。大臣は、静岡県知事の一連の行為に対してどう考えておられますでしょうか。

 それと、時間がなくなってきましたので、あわせて、九月五日の記者会見で、本年度以降のテストで違反した自治体には、その翌年度の成績提供を制限することを含めた再発防止策を検討する考えもあるというそこまでおっしゃっておられますが、そのことについても一緒に御答弁をよろしくお願いします。

下村国務大臣 個人的には静岡県知事と別に人間関係が悪いような関係は過去ありませんし、文科省ともないと思いますし、川勝知事は七年前の教育再生会議のときのメンバーでもありましたから、どちらかというとよく存じ上げている方であります。

 「文科省側は謝罪を」というこの記事は初めて見ましたが、一言で言って、知事のパフォーマンスとしか思えません。こういうことを表明することが県民に受けるということを考えてやっているとしか思えないわけでありまして、つまり、これは知事が権限を持っているわけではないわけですね。権限を持っていない人がこういうことをするということが法から逸脱している、脱法行為だという、法治国家としての事実関係を申し上げているだけであります。

 全国学力・学習状況調査は、保護者や地域住民の関心の高い学校教育の改善のために実施しておりまして、保護者や地域住民に対して国、教育委員会、学校がそれぞれ説明責任を果たすということが大切だと思います。

 そのため、本年度の調査においては、教育委員会がより積極的に説明責任を果たすことができるよう公表に関する取り扱いを変更したわけでございますが、市町村教育委員会が学校の設置管理者であり、かつ本調査の参加主体であることと、それから、都道府県教育委員会が市町村や学校の結果を公表することについては、市町村教育委員会に慎重の意見が多いことなどを踏まえまして、市町村教育委員会の同意を要件とするなどの配慮事項を定めたところであります。

 したがって、こうした背景をもとに作成されている実施要領を遵守していただきたいというのは当然の話ですが、今回の静岡県における調査結果の公表は、明らかにこの実施要領に違反していると考えております。文科省としては、県教育委員会が改善に向けた適切な対応を速やかに講じる、県教委の明確な責任もあるというふうに思います。

 知事にあやふやに、お願いします、しなかったみたいな、それが一任のようにとられたかどうかという、これは当事者じゃないのでわかりませんが、知事からすると全部自分が一任を受けたというふうにとったというような報道もありますが、そもそもそういうものではないわけでございまして、県教委もしっかりしてもらいたい。

 いずれにしても、知事との間で十分な意思疎通を図り、再び教育現場に混乱が生じないよう、強く静岡県に対しては期待をしたいというふうに思います。

 そして、この実施要領、本調査を適切に実施するために定めているものでありますが、この実施要領の実効性を担保する観点から、実施要領に反する取り扱いを抑止するための方策が必要であるというふうに考えます。そのため、改善指導を行うことを前提としつつ、明らかな違反行為については、あらかじめ明示して、抑止行為を高めるようにしたいと思います。

 その上で、実施要領に違反した取り扱いがされた場合あるいは改善がなされない場合には、その後の抑止力となる方策を検討しているところであります。

 その際、学校における教育指導の改善に影響を与えないようにするということと、一方で抑止力としての効果を持つものにすることなど、本来の調査目的が達成できるような方策にする必要があると考えておりまして、現在、平成二十七年度調査の実施要領について検討を行っており、その中で具体化を図ってまいりたいと考えているところでございます。

鈴木(望)委員 静岡県知事、多分パフォーマンスでそういうことをやっているんじゃないのかという御発言がありましたし、私も一部でそうかなとも思うんですけれども、事は教育に関する事柄でありまして、多くにその発言を聞いている父兄の方々等もおられるわけですので、ここは、何が正しくて、何が数字でどうすべきであるというようなことはきちんとけじめをつけるべきじゃないのかなというふうに私は思っているところであります。

 特に、来年四月から地教行法が改正されまして、教育委員会の役割と首長の関係、首長の役割が大きく変わってまいります。首長の権限が強くなる。そうなると、首長の独走をどうやって防ぐのか。私ども維新と民主党で出した改革案では、例えば、教育監査委員会を設けて独走を防ぐ等々の仕組みを入れさせていただきましたが、ともかく、改正教育委員会というものが出発をして首長の権限が強くなる、独走をどうやってとめるのか、そういう観点から考えますと、私は、文科省、文科大臣の適正な指導なり是正措置という意味での役割というのは重要だなというふうに考えるわけであります。

 ぜひそういった意味からも、おかしいものはおかしいよと、単に教育委員会に任せておくということではなくて、明らかに今回のような首長の独走のようなものに対してはきちんとおかしいということを言うべきではないのかなというふうに思うわけであります。

 その点についてもう一回、文科大臣の御所見をお願いいたします。

下村国務大臣 今回、静岡県教育委員会、これは指導しています。

 全国学力・学習状況調査は、改正地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十一条、これは、改正は来年四月からですので、現在は施行前であるため第二十三条になりますが、これの第十七号、「教育に係る調査及び基幹統計その他の統計に関すること」、この規定に基づきまして教育委員会が行う職務であり、必要がある場合は、法第四十八条に基づき指導助言等を行うこととなります。

 文科省としては、今回の事案については、この規定に基づきまして、静岡県の教育委員会に対し、改善に向けた適切な対応を速やかに講じるとともに、知事との間で十分な意思疎通を図り、再び教育現場に混乱が生じないようにすることを求めているところでありまして、直接文科省から知事に対して指導助言が法律上できるわけではございませんので、教育委員会に対してそのようにしているところでございます。

鈴木(望)委員 ありがとうございます。

 次の質問も、時間がなくなってしまったのでちょっとはしょってさせていただきたいと思います。

 今回、ノーベル賞に日本人の学者が三人受賞されて、まことにおめでたいことだな、まずはお祝い申し上げたいと思います。

 その中の一人の天野浩さん、名古屋大学の大学院の教授ですけれども、浜松の出身でありまして、地元紙では、浜松からノーベル賞というような題で、みんな大喜びということであります。

 この三人の学歴を見てみますと、この三人はいずれも東大の卒業ではないわけです。ノーベル賞の受賞者も、今回を含めもう二十二人となりました。そろそろその傾向も分析できるのかな、私もまだ確たる確信を持っているわけじゃありませんけれども、そういうような状況になってきたのかなと。

 そこで、自然科学系の受賞者十九名の学歴を見てみますと、学問の世界でございますので学歴との関係を当然見るわけですけれども、京都大学や名古屋大学の関係者が多いわけであります。偏差値で見たら一番能力のある若者が東大に進んでいるはずなのに、なぜだろうか、なぜ、東大ではなく京都大学や名古屋大学からノーベル賞の受賞者が多く出ているのか。これは、東大が悪いとかそういうことを言っているわけじゃありません。その原因を分析して、そろそろ考えてみてもいい時期に来たのかな。それが仮に東大の研究システムに何か問題があるということであれば、東大のためにもなるという意味で。

 もう時間もないので、二つほどお尋ねして質問をやめたいと思いますが、東大に本当に優秀な学生が入学しているんだろうか。偏差値ランキングというようなことが言われておりますが、偏差値を中心とする選抜システム、高大接続のところに何か問題があるんじゃないのかなと。今のやり方は、五教科満遍なくできる子供が東大に入っているというような選抜システムですけれども、それでいいのかどうかということと、もう一つは、優秀な学生は東大に入っている、入っているんだけれども、その後の研究育成システムや研究体制に欠陥があるんじゃないのかな、そのどちらかじゃないのかなというふうに思います。

 これは、やはりこういうおめでたい、いい機会ですので、これからももっともっと多くノーベル賞をとるような方が輩出してほしいという観点から、みずからを省みるという観点で、どこが悪いとかと言っているわけじゃもちろんございませんが、その二つについてどういう課題があるのか、これからどういうふうにしていきたいのかということについて文科の事務当局の担当の方から御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。

西川委員長 吉田高等教育局長。

 なお、申し合わせの時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 まず、大学入試の問題があろうかと思います。これまでの大学入学者選抜におきましては、知識、技能等に関しまして、受験生の一時期の限られた能力の評価にとどまっております。そのような大学入試では、これからの、変化が激しく、将来の予測も困難な時代に求められる能力を育成、評価するものとはなっていないというふうに考えております。

 そこで、今現在の知識偏重、暗記中心の一点刻みで選抜をしている入試制度を改めまして、主体性や多様性、協働性、そういったものを含んだ確かな学力を評価する、そういった選抜方法に変えていかなければいけないだろうと思っております。

 昨年十月の教育再生実行会議第四次提言を受けまして、現在、中教審におきまして、高大接続特別部会で、高校教育、大学教育、それからそれをつなぐ大学入試、これを一体的な改革をするべく、今審議を進めていただいております。

 私どもとしては、先ほど申し上げましたような問題意識を踏まえながら、この中教審の答申を踏まえて高大接続の改革に取り組んでまいりたいと思っております。

 また、若手の研究者の問題につきましても、確かに、今現在、若手の研究者の置かれている環境は非常に厳しいものがございます。自立して研究に専念できる立場、環境といったものが必ずしも整備されていないということがございます。

 そのため、文科省の方では、公正に選抜された若手研究者が自立した研究者として経験を積むためのテニュアトラック制の導入などシステム改革の推進に努めておりますけれども、引き続き、若手研究者の環境整備について意を用いてまいりたいと思っております。

鈴木(望)委員 終わります。

西川委員長 次に、田沼隆志君。

田沼委員 次世代の党の田沼隆志でございます。

 大臣、今回もよろしくお願いします。内閣改造されて、大臣が留任されて、大変うれしく思っております。また胸をおかりして、いろいろ質問させていただきたいと思います。

 私、次世代の党は、自立、新保守、次世代ということを理念としておりまして、その中で、正しい国家観と歴史観を持つ賢く強い日本人を育てる教育、また、独立自尊の精神を養い、愛国心を育む教育ということを明確にうたっておりますので、より保守の理念を明確に持ちながら頑張ってまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、朝日新聞の誤報問題を受けた教科書記述の問題についてお尋ねいたしたいと思います。

 先ほど義家委員も御質問されていましたけれども、政府が閣議決定を十四日にされたということで、「国際社会において、客観的事実に基づく正しい歴史認識が形成され、日本の基本的立場や取組に対して正当な評価を受けるべく、これまで以上に対外発信を強化していく。」という答弁書を決定ということでございます。大変よいことかと思います。

 あと、我が党の平沼党首が十月一日の代表質問で総理に、この同じテーマで御質問させていただきました。その中でも、現在使われている学校教科書の慰安婦記述の見直しはどうなっていくのかということを御質問させていただきました。

 ここからがちょっとわからないのは、総理の答弁が、まず、河野談話見直しは考えていないという後に、記述に関しては、既に検定に合格した現行の教科書における慰安婦に関する記述の訂正を発行者に求めることまでは考えておりませんが、今後の申請図書については、先般改正した新しい検定基準に基づき、適切に教科書検定が行われるべきと考えますという御答弁だったんですが、これは、つまり、検定基準が変わるから次回はやりますということなんですけれども、もう今すぐやった方がいいんじゃないでしょうか。

 これは、明らかに慰安婦強制連行という説は崩れたわけでありまして、この内容が明らかに変わった場合は、これは教科書検定の規則がございますが、その第十四条で、検定を経た図書についても、誤った事実の記載が発見されたときは、発行者は必要な訂正を行わなければならない。あるいは、十四条の四項では、文部科学大臣は、そのようなことがあるときは、発行者に対してその訂正の申請を勧告することができるというわけで、決して、別に次の検定基準を待つ必要はないのではないかと思います。

 先ほど私がお配りした、皆さんのお手元に行っておると思いますが、資料、先ほど義家委員も触れられていましたけれども、特に高校の記述は、皆さんのお手元だと3のところですね、二枚目の方です。これの右側ですね。従軍慰安婦関連の記述ということで、まず一番上が、東京書籍、日本史Aとありますけれども、例えば右上の慰安婦関連の記述ですと、日本の植民地や占領地では、朝鮮人や中国人、フィリピン人、ベトナム人、オランダ人など多数の女性が慰安婦に駆り出された、慰安所は、中国、香港、シンガポール、オランダ領東インドから日本の沖縄諸島、北海道、樺太にまで及んだと。これは三角になっていますけれども、完全に慰安婦になっていますよね、ずばり内容は。

 これが本当に根拠があるのか。いや、ないということがはっきりしたわけですから、私は、もう今、即刻改めるべきじゃないかと考えますけれども、大臣に御見解をお尋ねします。

下村国務大臣 まず、エールを冒頭送っていただきまして、ありがとうございます。

 さて、先般の、朝日新聞において慰安婦に関する記事についての訂正がなされたところでありますが、現行の教科書には、済州島での強制連行、いわゆる吉田証言に直接触れている記述はございません。また、女子挺身隊と慰安婦を混合して記述している図書はありません。

 今御指摘の、この資料の、「多数の女性が「慰安婦」にかりだされた。」この言葉自体は、従軍慰安婦と書けば、これは抵触しますが、慰安婦だけであれば、これは現段階においては抵触はいたしません。

 教科書における慰安婦や強制連行の記述について、検定時点における客観的、学問的成果や資料等に照らして、専門的、学術的な審議により検定が行われているところでございます。そういう意味で、ほかの教科書記述も、確かに、相当すれすれだなと私が見ても思うことはありますが、しかし、現行の教科書記述の訂正を発行者に求めるほどの極端な逸脱はないというのが、文部科学省の判断でございます。

 一方、今後の申請図書については、先般改正した新しい検定基準に基づき、教科用図書検定調査審議会において適切に教科書検定が行われるものと考えます。また、さらなる新しい事実の判明や新しい政府見解が出されたりした場合には、そうした現状も踏まえて検定が行われることになります。

 ただ、今の、中学校以下はなくなったわけですが、高校の教科書でそれぞれの教科書会社が独自に訂正をされるということについては、何ら排除するものではありません。

田沼委員 実際、教科書会社によってはそういう動きもあるやにも聞いていますけれども、新しい検定基準ということで、今回の検定基準の改革によって、バランスをとっていくですとか、政府の見解をちゃんと踏まえた表現にしてもらうということだと思うんですけれども、一方で、今後の検定基準で対応するならば、やはり私は今すぐにでもやるべきだと思います。

 バランスを崩してはいけないということは、別に、検定基準が変わる前の今であっても当然守るべきことだと思いますし、だから、実際に、教科書会社さんで少し独自に修正をしようという動きが起きているんだと思いますので、ぜひ御検討いただきたいと思う。

 それで、もう一つの理由も、お配りしたこの資料の中で、大臣、今すれすれだと言われましたけれども、いわゆる従軍慰安婦と書いちゃっている本もありますね。ここに、山川さんの日本史Aですか、上から四行目は、「いわゆる従軍慰安婦」と書いちゃっていますね。その下もその下も、あと、実教出版さんもありますね。やはりこれは、すれすれというか、もうアウトだと思います。

 これは大臣、どうなんでしょう。私はやはり、アウトと言っても差し支えない状況に今大きく変わってきているわけですから、何らかの対応をとることが、今、国際的に誤解を晴らしていくというふうに総理も言っているわけですから、国内的にもやはり即刻動くということも大事なことだと思うんですけれども、もう一回御答弁いただければ。

下村国務大臣 直接的に吉田証言に触れていることによる記述はまずないということについては申し上げたいと思います。そして、政府のこれまでの見解においても、直接吉田証言に影響されていない中で、やはり、例えば河野官房長官談話の中においても、「強制的な状況の下での痛ましいもの」云々というふうに、政府のそれまでの文書の中にも書かれている部分が実際のところはあります。

 ですから、先ほど申し上げましたように、新しい政府の見解が出されたりした場合には、これは訂正をしてもらうということになるわけでありますが、今時点でさらなる新しい事実の判明、それから新しい政府の見解が出されていないということの中で、文部科学省として、これまでの検定基準に合格している教科書についてここで現段階における訂正を求めるということは、これは法的にはできないことであります。

田沼委員 政府の見解を新しく出してほしいとも思っていますけれども、河野談話を見直すとか、安倍談話とかを期待したいところでもありますが、ただ、大臣のお言葉で、吉田証言に直接触れていないということでしたけれども、それはないと思います。ただ、従軍慰安婦というものの根拠は吉田証言以外にないわけでありまして、そもそも根拠がなかったものでありますから、吉田証言に触れていようがいまいが、従軍慰安婦自体がなかったものだという前提で、やはり高校の教科書も見直すべきだと私は思います。

 ちょっと、これを押し問答してもあれなので、その関連で、地方議会でも同じような動きが起こっておりまして、大阪市議会ですとか北九州市議会とか鹿児島県議会などで、この朝日による慰安婦報道の取り消しを契機にして、やはりこの河野談話の見直しですとか、また教科書記述を見直すということを求める意見書などが出てきております。私の地元の千葉市でも、千葉市議会でそのような陳情採択があったりしました。やはりこういった動向があるというのも一つの動きと思います。

 まず、このことに関して、こういった地方からの声が上がっていることに関しての大臣の御見解もお聞きできればと思います。

下村国務大臣 地方自治法第九十九条に基づく意見書につきまして、文科省にはまだ届いてはおりませんが、都道府県では山口県議会、鹿児島県議会において、政令指定都市では大阪市議会、北九州市議会において、慰安婦問題に関する適切な対応を求める意見書が可決されているということについては承知をしております。

 教科書に関する要望内容としては、例えば、改正基本法等を踏まえて教科書の記述内容を正していく取り組みを急ぐとともに、厳正なる検定を実施することなどが要望されております。

 文科省としては、今後の申請図書については、先般改正した新しい検定基準に基づき、教科用図書検定審議会において専門的、学術的な見地から適切に教科書検定が行われるべきものと考えております。

田沼委員 地方議会もさまざまな動きがありますし、また広がってほしいとも思いますけれども、ぜひ政府としても、大臣としても、教科書記述の見直しに踏み込んでいただきたいという要望はお伝えさせていただきたいと思います。

 関連して、これも義家委員も触れられていましたが、副教材にもおかしな記述が残っているものもあります。

 先日も産経で報道されておりましたけれども、福岡市で、小学六年生の道徳の副教材に朝鮮人強制連行という記述が残っていて、一九三九年から強制連行が始まりましたということを言われておったりしました。それがおかしいのは、もう福岡では解決はしたんですけれども、私も昨年の六月に、この副教材の問題は実は一度大臣に御質問させていただきました、決算委員会でしたけれども。副教材は結構目が届いていない。

 先ほど義家委員が局長に御質問されておられましたけれども、局長の答弁でも、なかなか難しいと。なかなか難しいと言ったら、内容がわからないものがそのまま残っちゃうということになりますから、なかなか難しいというのは答えになっていませんよ。というか、責任をとっていることにならないと思います。

 この福岡市のような副教材が、たまたま気づきましたよ。水城議員さんというんですか、議員さんが質問されてたまたま表に出ましたけれども、表に出なかったらどうだったんだと。これは十年放置されていたそうですよ。だから、副教材をちゃんとチェックしないとまずいですよ。

 場所によっては、千葉市でも、ずっと私の先輩議員が追及してきて、とんでもない、思想的に偏向したものもあったりしたんですよ。しかも、保護者負担が発生しちゃうわけでしょう、義務教育の課程の中なのに。

 ですので、副教材に対するチェックというのは、先ほどの局長答弁ですと、全てなかなか難しいという答弁でしたけれども、それはやはり、それだけで終わりじゃだめだと思いますよ。せめてもう一回通知を出すとか、たしか、四十九年に一度出されている。学習指導要領の趣旨に従い、特定の政党、宗派に偏った思想、題材によっているなど不公正な立場でないものになるよう十分留意することという通知はありますね。

 ですけれども、まず教育基本法にちゃんと沿っているかどうかですよ、第二条の目標に。これに沿っていないものが副教材だから許されるというのは、あってはならないことじゃないでしょうか。ちょっとお答えいただければ。

小松政府参考人 教育基本法、学校教育法等にきちっとのっとった副教材が使われるべきであるということだと思いますし、制度もそうなっております。

 昭和四十九年に指導の通知を出しておりまして、今も、それにもかかわらず不適切と思われるような事例が出てくるということは、私どもとしても大変残念に思っております。

 通知というような文書で考えるような手段も含めまして、改めて指導をきちっとするということについて取り組んでまいりたいというふうに考えます。

田沼委員 必ずお願いします、この問題は。

 だって、朝鮮人強制連行ということ自体もおかしいのですし、ずっと長年これは問題になってきたわけですから、地方に任せるというのは、それが抜け穴になっちゃったら、学習指導要領で一生懸命、教科書検定をして一生懸命ちゃんとした内容にしようとしていても無駄になっちゃうじゃないですか、そこの抜け道ができちゃうから。これは必ずお願いします。(発言する者あり)ですよね。そう思いますので、ぜひ御期待申し上げたいと思います。

 あと、ちょっと大臣の話に戻って、やはり従軍慰安婦というものは、そもそも存在が否定されたと私は捉えておりますので、新しい政府見解が出たらという言葉でありましたけれども、私はもう既にやっても構わないんじゃないかと思うということだけはお伝えさせていただいて、次に行きたいと思います。

 次に、通告でいいますと、採択ですね。

 私は、千葉市議会のころからもこの採択に本当にとことん戦ってきた人間であり、教科書の田沼とも言われておりましたけれども、自分で言ったのかもしれませんけれども、それぐらい、やはり自虐史観脱却のためには採択改善が大事です。

 これは、ことしの三月二十六日の文科委員会で大臣に質問させていただいたのが絞り込みの問題ですね。絞り込みは絶対やめさせなくちゃだめです、そう思いませんか大臣というふうに御質問をさせていただきました。それに対して大臣のお答えは、小学校二百八十、中学校百三十一の教科書全てを教育委員が読み込むのは大変かもしれないし、だから、その絞り込みを完全禁止というのはなかなか難しいと思いますが、しかし、教科書採択権者が、これは委員さんですね、責任を持って選んでもらいたいということは当然のことだというふうに思いますということで、御答弁いただきました。そのとおりと思います。

 だから、全教科書を委員さんが一人で全部読んでそれを採択させていくというシステム自体にも問題があるのかもしれませんけれども、ただ、今は、この七社のうちの三社がいいです、そのうち特に一社がいいですというように、もうずばりバイネームで来ているわけです、会社の名前が。それはさすがにやり過ぎだろう。七社あるなら、例えば、教育基本法の、家族の心に対しては五点満点で三点だけれども、自然に関しては一点だとか、ふるさとを思う心は七点だとか、そういう、結論としての教科書会社を薦めるんじゃなくて、もうちょっと公平に、定量的に、教育委員さんが選びやすいような資料を報告するという形にせめてした方がいい。

 とにかく、ずばりの会社名を挙げるというのはやめるべきじゃないかと私は思ってやまないんですけれども、これは大臣か局長かわかりませんが、御答弁いただければと思います。

下村国務大臣 公立の義務教育諸学校における教科書の採択は、当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会の権限と責任において行われるべきものであります。

 教育委員会が、教科書採択に当たって、教科書を調査研究させる調査員や選定委員会等を置いて、これらによる調査研究の結果を参考にしているということがほとんどでありまして、今の田沼委員の危惧については、どんな人をこの調査員にするか、どんな人に選定委員会に入ってもらうか、人選にもよるのではないかというふうに思います。それは、そこの教育委員会の見識が問われるのではないかと思います。

 そして、その場合、調査員等からどのような形で報告を求め、また、それをどのように受けとめるか、調査員の人選も含め、それは教育委員会の責任で判断すべきというふうには考えますが、文科省としては、調査研究の結果も踏まえ、採択権者である教育委員会が責任を持って教科書採択を行うよう、採択手続の適正化については指導してまいりたいと思います。

田沼委員 原則論はそのとおりと思うんですけれども、実態的には、人選次第と大臣は言われますが、ほとんど現場の教職員の先生方が専門調査をしてきて、その後、教育委員会事務局で、もうその絞り込みが終わったものが来ているわけじゃないですか、実態的にはですよ。実態的にはそうなので、これは実態を見ると、バイネームでの教科書会社を推薦する、絞り込んでくるというのは、やはりそれは文科省としては本意でないということぐらいは指導するなり、通知じゃないかもしれませんけれども、していかないと改まらないと思います。

 やはりいろいろな会社がある、それぞれの内容がいろいろ違うというときに、ちょっときょう持ってきていませんが、前回の三月の質疑でも、もう七社全くほぼ同じような表現で評価してくる報告書もあった、ちょっと御記憶かわかりませんけれども、そういう教育委員会事務局、選定委員会などの報告書というのもあったりするんですよ。

 なので、実態を見ると、人選の問題と大臣は言われますが、やはりもうちょっとその報告のあり方、資料のあり方についても指導をしていかないと、見識次第と言われますが、ちょっと厳しいんじゃないかなと思います。今までどおりのものが続いてしまうことに対して私は大変危惧を持っているものですから、御理解いただければと思うんですね。

 もう一つ関連して、採択の理由の公表についても、これは三月の質疑で大変こだわらせていただきました。採択の理由が全然公表されていない自治体が多い。そもそも議事録を公開していないという自治体もいっぱいあるということで、三月には報告させていただきましたけれども、そのときも、大臣とのやりとりですと、私が、やはり採択理由の公表というのがしっかりないと検証できません、PDCAもできない、だから改善もしていかないと思いますということで、義務化するべきじゃないかというふうに御質問したんですけれども、大臣の方は、採択結果、理由の公表については、特に公立の小中学校については強く公表を促していきたいというお言葉をいただきました。

 だけれども、大臣の御答弁ですと、いい方向に行くのかなと思ったんですが、その後、九月三日の文科省の通知が出ております。

 この平成二十六年九月三日の、これは無償措置法に関連しての通知が出ているんですが、そこで、この採択理由の公表に関しては、「第三 留意事項」の「(三)教科書を採択したときに公表すべき事項関係」というところがございます。ここでは、余り今までと変わっていないんですね。留意すべき事項で強く採択理由を公表するよう促していきたいと大臣は御答弁されましたが、通知にはそれが反映されているように見えないんです。

 三の(三)で、局長、場所はわかりますかね、「採択地区協議会の」、これは採択地区協議会の話ですけれども、単体も同じだと思うので、「会議の議事録の公表について、個々の委員の賛否を明らかにするかどうかなどの具体的な方法については、静ひつな採択環境を確保する観点も踏まえ、地域の実情に応じ、適切に判断すべきこと。」という表現、これだと、採択理由を公表するということがよくわからないというか、しなくていいとも読めるわけですよ。それではPDCAはできないでしょう。

 これは改善したんですか。教科書改革実行プランは画期的だと私は思っているんですけれども、あれっと思ったものですから、これはどうなっているんでしょうか。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 九月三日付の通知につきましては、若干説明を要するところがございます。

 この通知自体は……(田沼委員「短く、短く」と呼ぶ)はい、短くいたします。施行令、施行規則をこのとき改正したものについての概要等をお知らせするものですので、今、その全体についてカバーをしておりません。

 したがいまして、全体の公開については、御承知のとおり、進めていくことになっておりますので、それは、さまざまな機会で指導をさせていただきたいと思います。

 これは、そういう構造上、そこに焦点を当てていないということでございます。

田沼委員 では、別のがあるということで、そこではぜひ通知を出してくださいね。それで、公表理由をちゃんと出させないと、これは指導として出さないとやりませんから、地方は。私はもうずっと戦ってきて、そう思います。なので、お願いいたしたいと思うんです。

 では、全体の方が別にあるというか、準備されているということなら、そこかもしれませんが、もう一つ、教科書改革実行プランでやはりすばらしいなと思うのが、地区設定を市町村に柔軟化、これも大臣の御意向だと思うんですけれども、されていますね。

 地区設定を、もう少し小さくしていくという設定方法の改善、これもとてもいいことであると思いますが、これも、ずばり、本来だったら、市町村が直接採択をすると書いてしまって、ただし、小さ過ぎたり、例えば、調査研究が大変とかできないんだったら、県教委なり、ちょっと共同採択化するというふうに、一段、そのエスカレーションルールを残しておくという形にして、原則は市町村にするというふうにしないと難しいと思います。

 これは、名前は言いませんけれども、ある小さな市町村の首長さんから話をそういうふうに聞いています。これは、県教委が、やる気があるところだったら細分化してくれるけれども、県教委がそうでもないと変わらないんです、市がそういうふうに要望書を県に上げても、変えてくれないところは変えてくれませんと。そうすると、あとは泣き寝入りなんですよ。

 だから、その細分化を、したいと大臣もお考えだと思いますし、このプラン自体はとてもいいと思うんですが、これでは、ちょっともう一息足りない。

 原則、市町村が採択はするんだ、だけれども、その調査研究など、やはりちょっと人手が必要だとか専門性が必要ということならば共同採択化があってもいいとは思いますが、そういうふうに単独設定化というのを踏み込むべきではないかと私は考えます。

 そのことに関して、これは大臣でしょうか、御見解をいただければと思います。

下村国務大臣 文部科学省は、これまで、各都道府県教育委員会に対し、「市町村教育委員会の意向等を的確に踏まえ、採択地区がより適切なものとなるよう不断の見直しに努めること」について指導してきたところであり、採択地区数におきましては、平成八年度、四百七十八地区から、平成二十五年度、五百八十五地区と増加しておりまして、実態として、採択地区の小規模化が進行しているものと考えております。

 一方で、むやみに採択地区の小規模化を促すということではなく、共同採択制度の趣旨も踏まえた上で適切な採択地区となることが重要である。小さくなればなるほど理想的な教科書採択が本当にできるのかどうかということについては、いろいろなやはり課題があります。

 そういう意味での共同採択地区の趣旨というのもやはり必要ではないかということを考えておりまして、そのような形で、各都道府県の教育委員会に対しては、適切な判断、そしてその指導を努めるように、文科省としてもしてまいりたいと思います。

田沼委員 その四百七十八から五百八十五ということで、徐々にいっているのも存じていますし、その方向自体は大変よろしいと私も高く評価するところでありますけれども、一方で、まだまだ、自分の市町村は単独採択化したいんだけれども、なかなか県教委が細分化してくれなくて困っているという声もあるということは、当然、論理的にはあると思いますし、そういう実際の生の声もあるということは御存じいただきたいと思うんです。

 小さくなるほどいいわけではないかもしれませんが、ただ、三月の質疑でも思いましたけれども、この共同採択制度の意義というところで説明を受けたのが、意義が本当にあるのかなと。調査研究は、確かに共同採択区でないといけませんが、ほかは、採択は別に市町村でも大丈夫と思っていまして、例えば、意義で言っていたのが、転校することによる教科書が変わることの不便が起きないようにとか、あと、共同採択すれば安くできるとか、そういうことを意義として挙げられております。これは、もう何か、今の時代に合うとは思えません。

 ちょっと時間がないので、最後に質問ですけれども……

西川委員長 もう既に時間が超過しておりますので、簡単に。

田沼委員 今でも意義はあるんでしょうか。では、それだけお答えください。(下村国務大臣「もう一度、今聞こえなかった」と呼ぶ)意義があるとお考えになるかどうかですね。今のこの現代においても、転校による不便利が起きないということが必要な制度なんでしょうか。では、これはどちらでも。

西川委員長 下村文部科学大臣、答弁、簡潔にお願いいたします。

下村国務大臣 転校が明確な有力な理由とは必ずしも思いませんが、ただ、ある程度、規模によって、共同採択における調査研究ができる。単独市町村で、単独校、一校しかない学校が、果たして一人の教員が全部できるのか、そういう問題はあると思います。

田沼委員 では、研究だけは共同でやって、採択は別々でもいいんじゃないかということも御提案させていただいて、終わりとしたいと思います。

 ありがとうございます。

西川委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。

 また臨時国会でこのように大臣と議論をさせていただけるということで、非常に身の引き締まる思いでございます。またよろしくお願いいたします。

 いよいよ季節も秋で、スポーツの秋、東京オリンピックに向けて、日本の国が一致団結をして、これは成功に結びつけていくためにまとまっていくんだということで、非常に今回も法案がオリンピック関係で出てくるということで、有意義な議論をしなきゃいけないなというふうに考えているところでございます。

 今、秋というこの季節、もう相撲は終わってしまったんですが、今、野球がクライマックスシリーズがやられております。阪神が二連勝して、阪神ファンの方は非常に喜んでいる、私の周りにも何人かいらっしゃるんですが。私のおやじがすごい阪神ファンで、阪神が勝っていると、テレビ中継が終わってもずっとテレビをつけている、それぐらい好きなものです。うちのおふくろは巨人ファンでして、今、非常に家庭内不和が進行しておりまして、スポーツで白熱するのはいいんですけれども、とにかく、やはり楽しく見なければいけない。スポーツ自体を楽しむ、こういったことも、私、後段で議論をさせていただければと思います。

 ちょっと順番を変えて、まずBSL4についての質問をさせていただきたいと思います。

 バイオセーフティーレベル4の研究施設、特に今、エボラ出血熱が非常に問題になってきている。ついに、これはもう玉突き感染ですけれども、スペイン、ヨーロッパ、そしてもうアメリカにまで波及してきているわけです。

 このエボラ出血熱というのはどれぐらい怖いかといいますと、その変異株によっては致死率九割を超えるぐらい怖いものだということです。それがどれぐらい怖いものか。正直言って、これをテロに使われたらどうするのかと、もう身も震えるぐらい、私は科学者として、内科医として非常に危機感を覚えておるわけでございます。正直言って、一例でも日本に入ってきたら、これはもうパニックになりかねない、そういう不安を今覚えながら、このエボラ出血熱の動向を見守っておるところでございます。

 バイオセーフティーレベル4というのは、もう御案内のとおり、エボラのレベル、天然痘、この辺の一番危険と言われているウイルスを分離、同定する、要は診断するところ、その部屋なわけでございます。当然、もしその疑いがある人が海外から入ってきたら、本来であれば、そこでウイルスを分離、同定する、診断をして厳重に治療に当たるというのがなければいけないわけです。ところが、日本にはそのBSL4、動いているところがないわけですね。

 これは、実は通常国会でも取り上げさせていただいたかとは思います。これは地域住民の反対があって、なかなか稼働できない。武蔵村山市にある国立感染症研究所、あと、つくば市にある理化学研究所にあるのはあるけれども、稼働できていない状況なわけですね。ですから、エボラが入ってきても、国内で、BSL4で診断はできないというのが今の現状なわけでございます。

 そこで、その行政的な、早くやるべきだという話は前段でさせていただきました。今回は、その非常事態に備えて、どれぐらいしっかりビルドアップされた、このBSL4が稼働できないときの緊急避難的な対処方法、エボラを絶対に食いとめる、感染を広がらせることを絶対に阻止する、そのためのシステムづくりがどこまで行っているのかというところを聞かせていただきたいと思います。

 まず、これは仮定で申しわけないですが、もしエボラが疑われるような人が入ってきた、その場合の診断は、今どこで行われることになっているんでしょうか。

福本政府参考人 お答えいたします。

 エボラ出血熱の疑い患者が発生した場合にどこで診断をするか、こういうお話でございますが、エボラ出血熱に感染したかどうかを確定診断するのは、患者の血液等を採取いたしまして、その検体を検査するということで行います。

 日本国内においてそういう事例が発生した場合の具体的な流れとしては、次のようなことを想定しております。

 まず、医療機関で診察を受けられるわけですけれども、その医療機関において、症状とか渡航歴あるいは行動歴からしてエボラ出血熱への感染が疑われる患者さんだということになりました場合には、その医療機関において患者さんの血液等を採取いたしまして、その検体を国立感染症研究所に送付するということにしております。

 国立感染症研究所ですけれども、そこは、その血液検体をもちまして遺伝子検査あるいは抗原検査というものを行いまして、検体中にエボラ出血熱ウイルスが存在するということが確認できれば、それをもって疑いの患者さんがエボラ出血熱に感染しているということの確定診断ということになります。

 先ほど先生がおっしゃいましたBSL4レベルとの関係ですけれども、検体の検査自体は、検体でありますのでBSL4レベルの施設で行うということは必要はありません。それ以下でできます。

 ただ、先生もおっしゃいましたように、ウイルスを取り出して、ウイルスを分離して、ウイルスそのものを用いてさらなるステップに進む。例えば、検査法を改良いたしますとか、治療法とか予防ワクチンの研究開発とかいうようなことになりますと、ウイルスそのものを分離してそれを所持できるところというのは、感染症法上も、一種病原体等所持施設ということで、これは実際にはBSL4レベルの施設ということに限られております。

 現在、そういうことができる施設、一種病原体等所持施設として感染症法上指定したところというのは、いまだないということでございます。

柏倉委員 診断はできるということでよろしいですよね。国立感染症センターで診断はできる。ただ、分離、同定、いわゆる治療研究に資する研究はできないということですね。

 問題なのは、各国各国やはり変異株がありますから、どういった治療が一番適切なのかというのは、やはり各国各国で、ある程度研究をしていかなきゃいけない問題だと思うんです。

 では、日本のウイルスをアメリカに持っていけるかといったら、アメリカでは恐らく受け入れてくれないと思います。それはやはり自国の安全を守るという観点からも、海外でそれをやってもらうことができないというのが一番の問題なわけですね。単に診断をして隔離をするというだけでは感染が防げない。なぜなら、医療スタッフが、現にスペイン、アメリカでは感染をしているわけです。そして、その感染発症までに何十人の人と接触していくわけですね。

 やはり、そういうことを考えますと、しっかりとした治療、そしてその先にある研究、そこまで備えた体制をつくっていかなきゃいけないんだというふうに思います。

 それはもう皆さん認識としては共有しているんだと思いますけれども、エボラが出たら、まず国立感染症センターに検体を送って、ちゃんと診断をして隔離、これはもう対症療法しか原則はないと思うんです。それをするんだというところの周知徹底、これをぜひしていただきたいんですね。

 かいわいの、私の実家も町医者をやっていますけれども、町医者レベルで全部わかっているかというと、それはまだ徹底されていないところもあるのは事実です。これは非常に大事なことですから、一人起こってパニックになる前に、転ばぬ先のつえじゃありませんが、しっかりと周知徹底を厚労省さんの方でしていただきたいと思います。

 疑わしい人がもし入ってきた。では、そういう人を確定診断するのに何日ぐらいかかるんですか。検体を送って、そこでPCRか何かで診断をする。そして、確定診断をつける。それまでに何日ぐらいかかって、その間、その疑わしい人はどういうような形で処置といいますか隔離されるのか。そこのところを教えてください。

福本政府参考人 お答えいたします。

 まず、確定診断ができるために、検体を採取してから、先生おっしゃいましたいわゆるPCR検査とかをやるわけですけれども、それにどれぐらい要するかということでありますが、これは検体の状況によっても違いますけれども、大体一日ぐらいかかるかというふうに承知しております。国立感染症研究所で行う場合であります。

 それで、その間、あるいはその後ということで、どうするかでありますけれども、患者さんが、医療機関に今かかられているということであり、実際、症状が発症している場合でありますけれども、このエボラ出血熱が確定した場合はそうなんですけれども、確定した場合は、特定感染症指定医療機関あるいは第一種感染症指定医療機関、感染症法上、こういう指定類型がございまして、全国に四十四医療施設がございます。ここは、そういう感染力の高い病気に対しても治療が適切にできる、あるいは予防接種ができる医療機関として指定しているところであります。ここに移送するということが、考えられる方策としてあります。

 ただ、それまでの間、検査結果が出るまでの間どうするかですけれども、ここは、現に今かかられている医療機関と、その特定感染症医療機関であるとか、あるいは第一種感染症医療機関との関係にもよりますけれども、これはできれば、そこに移送をして準備をしておくということが望ましいかと考えております。その旨、過日、事務連絡等によって現場の医療機関に周知しているところでございます。

柏倉委員 ありがとうございます。

 できれば隔離をしてということでしたけれども、本人が拒否したらどうするんだ、そういった問題も出てきます。ここは、ある意味、人権の問題も配慮しつつ、リスクマネジメント、ある程度国家の意思をもって強権を発動して、しっかりと隔離をする方向で私はやっていただきたいというふうに思います。

 やはり、一人なり二人なり、この連鎖が起こった後ではもう遅いですから、ましてや、社会不安が助長される、そういった中で、本当に魔女狩りみたいなことにもなりかねませんから、そこはしっかりと、もし一人でも出たら、これは考えていただきたいし、今もう既にそのマニュアル等があるのであれば、先ほども申し上げましたけれども、できるだけ周知徹底をしていただきたいと思います。

 BSL4施設、これをどうやって早期稼働させていくのか。長崎大学を幹事としてコンソーシアム構想が今あります。

 国としてどれぐらい積極的にこれを支援していくのか、これはもう今までと同じレベルで頑張りますというんじゃないと思います。まさにこれはレベルを上げて積極的に支援していただかないといけないとは思うんですが、どのような支援、予算措置、そして地元住民の理解を求めるための努力をするのか、政府の考えをお聞かせ願います。

下村国務大臣 感染症対策や遺伝子組み換えに関する研究などのうち、御指摘がありましたが、エボラウイルスなど感染力の高い病原体を扱う研究などのため、BSL4相当の施設、これが建設され、または検討されているということであります。

 具体的には、厚生労働省国立感染症研究所及び理化学研究所において、BSL4相当の施設として建設されておりますが、残念ながら稼働していない状況にあるというふうに承知をしています。

 長崎大学を初めとしたコンソーシアムにおきまして、BSL4施設を中核とした感染症研究拠点の形成について検討を行うとともに、BSL4施設に関する住民説明会を開催する等の取り組みを行っているというふうに聞いております。

 長崎大学におけるBSL4施設の整備の検討については、施設の継続的な安全管理の検討や、地方自治体との協定締結等の合意形成の状況などを確認しつつ、長崎大学と相談しながら、文部科学省として必要な検討をしてまいりたいと考えております。

柏倉委員 大臣、ありがとうございます。

 先ほども申し上げたとおり、やはり、国々でウイルスの型が違ってくる、そして、そのウイルスにきく治療方法は国々で模索しなければいけない、そういう状況が予想されるわけですね。であれば、やはりこのBSL4というのを、大臣にぜひ先頭に立っていただいて、早期の稼働をぜひ実現させていただきたいというふうに思います。もちろん、冨岡先生が先頭に立ってやられているのは十分にわかっておりますが、やはり、一人出てから慌てるということだけはないように、関係機関にもお願いをしたいと思います。

 この問題に関しては最後なんですが、バイオテロ、冒頭にも触れました。これは、エボラ出血熱を使ったバイオテロというのは、現在までは多分、まあ絶対にないわけですね。一昔前、漫画で私は読んだことがありました。「ゴルゴ13」という漫画で、おもしろいなぐらいでしたけれども、それが実は可能性として出てきてしまっている。これはやはりしっかりと対応していかなければいけないものなわけですね。実際、炭疽菌テロがあったわけですから、このエボラのテロがないとは誰も言えないわけです。G8も、バイオテロシナリオ演習会議というところで、かなり先進国が角を突き合わせてシミュレーションしているというふうに聞いております。

 現在、このバイオテロに対する方策、対策は、国でどう考えて進めているのか。エボラに関して進めている、シミュレーションしているのであれば、ぜひ教えてください。

藤山政府参考人 バイオテロ対策でございますが、テロ対策全般で申しますと、政府において、テロの未然防止に関する行動計画というのを定めまして、さまざまな対策を進めております。

 その中で、御指摘の生物剤を用いたテロでございますけれども、これは、特に大量殺傷型のテロの一つというふうに考えておりまして、政府全体で平素から取り組んでおるということでございますが、具体的には、緊急医療体制の整備ですとか、医療関係者への情報提供、ワクチンの備蓄、医薬品の在庫、流通量の調査などを行っておりますし、警察のNBCテロ対応部隊あるいは陸上自衛隊の化学科部隊等が即応態勢を整えているということでございます。

 それで、万が一、生物テロが発生した場合でございますけれども、これは初動措置が大事だということでありまして、厚生労働省はもとよりでございますけれども、警察、海上保安庁、自衛隊といったような関係機関が連携を密にして、被害者の救助ですとか被害の拡大防止、あるいは犯人の検挙といったことに全力を挙げるとともに、国民に対する時宜を得た情報提供というようなことについても検討を進めているところでございます。

柏倉委員 基本的には極秘に進めるものでしょうから、この国会質疑の場でつまびらかにすることはできないとは思いますが、バイオテロというのはもう対岸の火事ではないんだという認識で関係機関は早急に進めていただきたいと思います。どこまで進んでいるとか、具体的なマニュアル等はなかなか、安全保障の観点上、開示することはできないかもしれませんが、これは気を抜かずに、あした起こっても対応できるんだというところまで、ぜひぜひ危機感を持って詰めていただきたいと思います。

 以上、BSL4に関する質問は終わらせていただきたいと思います。

 次なんですけれども、質問が前後して恐縮ですが、火山研究、火山について質問させていただきたいと思います。

 御嶽山の噴火で非常に多くの方が犠牲になったということで、本当に胸が痛むわけでございます。改めて哀悼の意を表すわけでございます。

 御嶽山、文科省が指定した、基本的な、重点的な研究対象になっていなかったということなんですよね。四十七火山のうち活動度が高い火山、現時点では活動度、爆発力が高い、そういったものを重点対象として十六火山指定しているけれども、御嶽山は指定はしていなかった。これをなぜ指定していなかったのか、済みません、もう一度教えてください。

下村国務大臣 平成二十年に、当時の科学技術・学術審議会の火山部会では、大学を取り巻く環境、これは財政的状況や人材的状況等でありますが、これを踏まえ、今後の重点的な強化すべき火山として、活動度が高い火山や、現時点では活動度が低いものの潜在的爆発力が高い火山など、研究的価値の大きい火山を選定し、その上で防災科学技術研究所が支援することとしておりました。

 御嶽山につきましては、当時、必ずしも活動度が高くなかったため、重点的に強化すべき火山にはならなかったものの、御嶽山を含むそのような火山についても、火山防災対応に支障が出ないよう配慮する旨がうたわれ、大学等による観測は引き続き実施されてきたところであります。

 他方、御嶽山の噴火による災害を踏まえると、災害の軽減を図るための課題が多くあることが改めて認識されたことから、急遽、専門家の検討会を開催し、今後の火山観測研究や人材育成のあり方等について検討を行っていただいているところであります。

 なお、御嶽山については緊急に対応する必要があることから、本日、名古屋大学など全十五機関に対し科学研究費補助金を交付して、水蒸気噴火のメカニズムの解明等を進めることといたしました。

 文科省としては、今後とも、大学や研究機関が一丸となって火山観測研究等の充実強化がなされるよう努めてまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、櫻田委員長代理着席〕

柏倉委員 大臣、御答弁ありがとうございます。

 私も知人から聞いた話なんですけれども、噴火を予測するのは非常に難しいんだ、最先端の学問、知識をもってしてもなかなか予測はできないんだということを言っておりました。実際に、それは重点的なもの、対象としていなかったけれども噴火したということは、やはり如実にそれを物語っているんだと思います。非常に難しいのはわかりますが、噴火はしようがないかもしれないんですが、要するに犠牲者が出ないように、その研究はぜひ積極的に進めていただきたいと思います。

 実は、もう一つ、ちょっときょうは環境省の方にも来ていただいております。

 私の地元で、塩谷町に高原山という風光明媚な山があります。その山に、今度、放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場がつくられる、つくりたいと国が言っているということで、大反対の運動が起きております。

 それで、質問書を国の方に出されているということを聞きました。私も拝見しましたけれども、実際に、この高原山が本当に噴火しないというふうに言えるのかというところも聞いておりますね。

 噴火する、しない、これは予測するのは非常に難しいのが火山学だというふうに私は考えております。これは、ただでさえ、高原山に住んでいらっしゃる方は、微動を毎日感じているという方も多いし、地鳴りも結構ありますということでした。

 これは、この高原山に最終指定廃棄物を持っていくことが本当に適切なのかどうか、噴火という観点からも詳細に詰める必要があると私は思いますが、四十七カ所に常時観測体制が必要な活火山があると言われていますけれども、高原山は含まれているんですか、含まれていないんですか。

関田政府参考人 お答えいたします。

 気象庁で常時観測火山として二十四時間体制で監視しております火山、四十七ございますが、高原山はその中には含まれておりません。

柏倉委員 四十七には含まれていないということなんですね。ただ、活火山ではあるわけですよね、この高原山は。はい。それで結構です、時間の関係で。

 それで、先ほども言いました、住民は地鳴り、微動を感じている。さらに、これは気象庁のホームページに書いてありました。一九七九年、一九八一年から八二年にかけて地震が群発した記載がありますね。

 やはり、これだけ活動性の高いことを疑わせるこの火山、私は、正直言って非常に心配だな、これは絶対に、予測は不可能かもしれませんが、ただ、噴火が起こらないとは言えない、何せ活火山であることは間違いないんですから。百十個ですか、日本で、そのうちの一つですね。

 火山が爆発したらどうするのか。最終処分場は、地下埋設型のコンクリート構造になるわけです。火山がもし爆発して、それでこの埋設型のコンクリート構造最終処分場、これは本当に壊れないのか、安全なのか。軽トラ大の噴石が御嶽山の山から飛んできたということを聞いています。それぐらいの大きさの噴石が直撃しても壊れないんですか。どのようにその辺、強度を考えているのか。環境省、お願いします。

鎌形政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点は、栃木県の塩谷町における、いわゆる指定廃棄物の処理施設に係る詳細調査候補地と高原山との関係というふうに考えてございます。

 この詳細候補地の選定に当たりましては、先ほど出ました四十七火山の火口周辺を対象として、火砕流の予測範囲など、噴火による被害が生じ得るエリアを除外したということで、今回、高原山はこの中に含まれていないために、今回の候補地は除外されていないということでございます。

 一方で、自然災害による処理施設への影響については、地元の方々、御指摘のとおり、御心配されていることは承知してございます。

 今回の施設は、二重のコンクリートで囲われた施設を地下に設置いたしまして、その上をコンクリート製の覆い、また土壌で覆うなど、堅固な施設とすることとしておりまして、管理も含めて、しっかりと対応する予定でございます。

 引き続き、地元の方々の御不安、御懸念にお答えするというために、処理施設の安全性などについて丁寧に説明する努力を行うこととしてございますが、火山噴火についてさらに御懸念があるのであれば、これから詳細調査というものを実施してまいりますが、その中で、火山に関する調査を行うことも含めて検討してまいりたいと考えております。

柏倉委員 地元の方は、とにかく、自分のふるさとが奪われる、そういう思いがあるわけですね。ただ、いろいろ事情がある。一方的に受け付けないという感情がある。しかし、国は進めたい。であれば、もっと時間をかけて、これはこれだけ安全なんだ、やはりそういった実証的な説明も重ねていかないと、その火山の活動、モニターも含めて、これはすぐにつくるということは、かなり無理があると私は思います。しっかりと実証的に、これぐらい頑丈なんだ、やはりこれを住民に御納得いただく、そこからじゃないでしょうか。

 ぜひ、時期尚早なものを焦らずに、しっかりと住民の合意を土台とした最終処分場の建設、これを考えていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

櫻田委員長代理 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 下村大臣は、先日の所信的な挨拶で二〇二〇年のビジョンというものに触れられました。家庭の経済状況や発達の状況などにかかわらず、学ぶ意欲と能力のある全ての子供、若者や社会人が質の高い教育を受けることができる社会の実現、こう語られましたし、その先のビジョンとして、誰もがいつでも希望する質の高い教育を受けられる生涯学習社会の実現、こう述べられました。

 大臣がこの六月に出版された御本「九歳で突然父を亡くし新聞配達少年から文科大臣に 教育を変える挑戦」、この第八章に「教育立国のグランドデザインを描く」という章がありまして、全く同じ表現で二〇二〇年のビジョン、そして二〇三〇年のビジョンというものが出てまいります。

 また、大臣がことし五月十六日の第二十一回教育再生実行会議に提出をした資料「二〇二〇年 教育再生を通じた日本再生の実現に向けて」の中にも二〇二〇年のビジョンというものが出てまいります。

 これは基本的には同じものだと理解してよろしいでしょうか。

下村国務大臣 私の本を読んでいただきましてありがとうございます。

 今の御指摘の点は、私の私案ではありますが、昨年の暮れから、経済学者の方々二十人近く、経済界の方々もいらっしゃいましたが、文部科学省の中で勉強会を積み重ねてきた中でつくったものでございます。

 つくったそのものは私自身がつくったわけですが、勉強会の積み重ねの中でつくったものでございまして、これをさらに深掘りをし、また、より公的なものにするために、現在、教育再生実行会議第三分科会で、教育における公財政支出のあり方等の中でこれをさらに議論をしていただいて、この教育再生実行会議、来年の通常国会が終わるぐらいまでには、正式に教育再生実行会議の提言として、これに沿った取りまとめをしていただきたいというふうに考えているところでございます。

宮本委員 私はかねてから、大学の高学費の問題、それから奨学金制度の問題を取り上げてまいりました。きょうもそのテーマについて大臣と議論したいと思うんです。

 きょうは皆さんに資料でお配りをさせていただきました。我が党は、去る十月七日、「学生が安心して使える奨学金に 奨学金返済への不安と負担を軽減するために」と題した政策提言を発表させていただきました。

 これはおさらいですけれども、今、奨学金の返済に行き詰まって自己破産とか、夫婦で奨学金を返済していてとても子供どころでない、こういう声があって、本来若者の夢と希望を後押しするはずの奨学金が逆に若者の人生を狂わせるという、かつては考えられなかったような事態が生まれているわけです。

 今、奨学金を借りますと、学部平均で三百万円です。大学院、博士課程にまで進学すれば、一千万円もの借金を背負うことになります。一方で、非正規雇用の増大などで卒業後の雇用、収入は極めて不安定で、政府の統計を見ましても、大学、短大などを卒業した三十代から五十代の三分の一以上が年収三百万円以下という賃金で働いている、こういう結果が出ております。その結果、奨学金を借りた既卒者の八人に一人が、滞納あるいは返済猶予という事態が起こっている。

 奨学金の返済は、期日から一日でもおくれますと、昨年までは一〇%でしたけれども、今でも五%の延滞金が上乗せされる。滞納が三カ月以上続けば、金融の個人信用情報機関、いわゆるブラックリストに掲載をされることになる。そのことから、多額の借金を恐れて進学を断念するとか、あるいは、奨学金を借りずに進学した学生が学資の捻出のために長時間のアルバイトに追われるといった事態になっております。

 それで、文部省が置いた学生への経済的支援の在り方に関する検討会の最終報告書でもそういう状況が指摘をされておりますけれども、大臣もこの認識は一緒だというふうに理解してよろしいですか。

下村国務大臣 私も、高校、大学と二つの奨学金を借り、当時は、今の学生支援機構ですが、前身日本育英会は半分返せばいいという給付型でしたからまだよかったと思いますが、御指摘のように、今、有利子奨学金になっているということもありますし、また、大学を卒業しても、あるいは高校を卒業しても非正規雇用で働かざるを得ないという人たちにとってはこの奨学金返済が、当時、我々の学生のとき以上に大変大きな重荷になっているというふうに思います。これが格差社会をさらに拡大することにもなりかねない、また、若者たちの未来を潰すことにもなりかねないという思いを持っております。

 文部科学省の学生への経済的支援の在り方に関する検討会の報告書、今御指摘ありましたが、「意欲と能力のある学生等が、学校種の別、設置者の別に関わらず高等教育段階への進学を断念することのないよう、また進学した学生等が学資の捻出のため長時間のアルバイトを強いられることなく、学業に十分に専念できるよう、学生等の学びを社会全体で支えることが極めて重要である。」と指摘があります。

 この指摘についてはしっかり受けとめながら、学生等の経済的負担の軽減にしっかり取り組む、そして奨学金事業の充実、これを図っていかなければならないというのは、文部科学行政においても大変重要な課題であるというふうに認識しております。

宮本委員 ことしの二月に全国大学生活協同組合連合会が発表した第四十九回学生生活実態調査、九千人ほどの学生から回収した調査結果によりますと、アルバイトの就労率は六八・二%、自宅生七五・六%、下宿生六一・八%、一昨年に比べて自宅生が四・二ポイントの増、下宿生も二・七%の増加、こういう状況であります。

 それで、大臣はさきの通常国会の当委員会での質疑でも、時として、我が国の大学は大学生の学習時間がアメリカの学生の二分の一以下である、こういうふうに述べられて、大学のレジャーランド化という指摘についても口にされるわけですけれども、前回も私ちょっと指摘したと思うんですけれども、もちろん私も、今日の大学教育のあり方とか、あるいは学生の勉学意欲に全く問題がない、そうは言いませんよ。

 しかし、同時にこの生協連の調査などを見れば、社会的に学生の学びを支えるという点で奨学金その他弱いものですから、やはり、アルバイトに追われるという現状もこれは見なきゃならないと思うんですが、ここは大臣、いかがですか。

下村国務大臣 学生もいろいろな層がありますから、レジャーランド化している、勉強もしていない、そういう学生もアメリカ等に比べるとかなりいるということはやはり事実だと思います。

 ただ一方、苦学生で、本当に幾つものアルバイトをしなければ学生生活ができないというせっぱ詰まった学生もいるのではないかと思います。

 私自身も、学生時代は三十種類を超えるようなアルバイト等をしまして、それが逆にいい体験になった、プラスになったとは思っていますが、しかし、あすの生活、きょうの生活のためにアルバイトをしなければならないというほど深刻でない中で、もうちょっと余裕があったと思います。

 今の学生のどれぐらいの率かわかりませんが、相当の学生がアルバイトに明け暮れて苦労して、大学に行って勉強することがなかなか難しいという人たちもいるということについては、できるだけ早く奨学金等の充実を図っていかなければならないというふうに思います。

宮本委員 そのとおりだと思うんです。大臣のころと比べて今は、バイトにもブラックバイトと言われるような、一たびシフトに入ると休めない、やめられないというふうな事態が起こっていて、非常に学生を勉学よりも実労働力としてこき使うというようなこともありますから、そういう点では、大臣の時代、私たちの時代とも違った現状がある。

 そういう、バイトもなかなかやめられない一つの原因に、学資を稼がなきゃならないんだ、奨学金を借りたら借金になるから、借りずに頑張るんだという現状があるということも私たちは聞くわけです。

 さて、日本の大学教育にとって奨学金の役割はますます重要になっております。

 奨学金は、一九九八年から二〇一四年の間に、貸与額で四・九倍、貸与人員で三・七倍に急速に拡大をして、今や、学生の二人に一人が何らかの奨学金を借りております。この間、勤労者の所得は平均年収で六十万円も減って、親からの仕送りも、さきの大学生協連の調査によりますと、下宿生の平均では月額十万円から七万円に減った。その一方で大学の学費は上がり続けて、初年度納入金は今日、国立では約八十三万円、私立大学文系百十五万円、理系では百五十万円にもなっているわけです。

 ところが政府は、この奨学金依存度の高まり、奨学金への期待の高まりに、真の奨学金制度の整備ではなくて、専ら有利子奨学金の拡大という、奨学金の教育ローン化で対応してきた。これについては下村大臣も、ことし三月十九日、当委員会で、現状の有利子奨学金は、「奨学金とは名ばかりの学生ローンだと私は思います。ぜひ本来の奨学金制度にできるだけ早く充実、移管をしていく必要がある」、そういう認識を示されました。

 我が党の政策では、新規に貸与する奨学金を無利子にするとともに、在学中の学生の有利子奨学金を無利子奨学金へと借りかえる制度をつくり、国が利子補給を行って全員に無利子化を実現することを提案しております。

 大臣が「本来の奨学金制度にできるだけ早く充実、移管をしていく」とおっしゃるのであれば、こういう方向が当然のことだと私は思うんですが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 宮本委員とはよって立つ思想信条は相当違うところがありますし、連日、宮本委員の所属をされている政党の機関紙には批判をされておりますが、このことについては全く同感であります。

宮本委員 それで、これは文科省に確認しますけれども、大臣がおっしゃるとおり、有利子を無利子に大きく動かす、変更するということになっておりますか。

吉田政府参考人 文科省の奨学金の政策としては、今、有利子から無利子へと、そういう流れを加速するということになっております。

宮本委員 概算要求を見せていただくと、三万人ふやす、こう書いてありました。ぜひその概算要求が認められるべきだと思いますけれども、たとえ全面的に認められたとして、それで第一種無利子奨学金と第二種有利子奨学金の比率は何対何になるか。また、これを一対一、少なくとも半々にするためには、あと何万人を有利子から無利子に変換する必要があるか。お答えいただけますか。

吉田政府参考人 平成二十七年度の概算要求におきましては、無利子奨学金を四十七万一千人、有利子奨学金につきましては九十三万九千人の貸与人員を要求しているところでございまして、その比率は三三・四%対六六・六%という形になっております。

 したがいまして、比率的にはおおよそ一対二ということになりますので、この比率を一対一にするためには、二十三万四千人を有利子から無利子の方に転換をする必要があるということになります。

    〔櫻田委員長代理退席、委員長着席〕

宮本委員 この検討会の報告書でも、昭和五十九年の衆議院文教委員会における日本育英会法案に対する附帯決議を引用して、「奨学金の本旨に立ち返れば、機構の貸与型奨学金は無利子奨学金が根幹となるべきものであって、有利子奨学金はその補完的な役割を担うべきものである。」と述べ、「原則に立ち戻り、無利子奨学金を基本とする姿を目指すべきである。」と指摘しております。先ほど大臣からも、それは当然だ、全く同じ意見だというお話がありました。

 一対二でありますから、三万人を動かしても全然焼け石に水で、二十三・四万人これを動かさなきゃならないわけですけれども、大臣、これは一体いつまでに、では、少なくとも根幹の方が多くなる、そこまで持っていくおつもりなのか。大体のこのグランドデザインをお聞かせいただけますか。

下村国務大臣 例えば、有利子奨学金を無利子奨学金に全額借りかえた場合に必要となる追加財源額、一般会計負担額ですが、これが五兆七千百三十三億円かかるんですね。これは、今の文部科学省の全ての、科学技術を含めた予算よりも超える。ですから、五兆七千億というのは国家財政に占める割合からしても大変な額ですから、これは赤字国債を発行して有利子を無利子にするということは、やはり国民の理解は得られません。

 しかし、できるだけ早く無利子にするということは、これは重要なことでありまして、そのために、相当野心的なことでありますが、二〇二〇年ビジョン、それからその先の二〇三〇年ビジョンの中で考えているわけでありますが、しかし、ここまでの五兆七千億の財源ということは、対財務省だけの問題ではなくて、やはり国民的な理解、賛同も必要ですから、政府としてしっかり取り組みながらシフトしていくということを政府の政策としてやっていくような努力を、文科省だけの問題ではなくて、ぜひ取り組んでいきたいと考えております。

宮本委員 今の有利子奨学金をその原資から含めて全部借りかえると今おっしゃったような、それは莫大な額になると思うんです。

 それで、現状生じている利子分を単純に利子補給するといった場合にはもっと額は小さくなると思います。私がいただいたペーパーでは一千億という額が出ているんですが、これはちょっと通告していないですが、ここを高等教育局長。

吉田政府参考人 今先生が御指摘のありましたことで、今後、有利子奨学金の貸与人員が平成二十六年度予算の九十六万人というベースを維持した上で、かつまた財政投融資資金等の金利が約一%で推移をする、こういった前提を置きましたときの有利子奨学金の利息分が約一千億円ということになります。

宮本委員 ですから、やはり一千億、もちろん小さいとは言いませんけれども、それだけのお金があれば、少なくとも、大臣も全く賛成だ、この在り方検討会も根幹にすべきだ、根幹と言う以上は、半分以上がやはり無利子でないと、半分以上が有利子の状況を今後何年も続けるというのではまずいわけで、基本的にはやはり無利子にきちっと年次を追って転換していく。そのためには、利子補給できちっと手当てすることも含めて検討する必要が私はあると思うんです。

 それで、かねてから指摘をしてまいりましたように、そもそも今日の貸与型奨学金制度というのは、大学に進学する十八歳の若者本人に、担保もとらず、数百万円に上る学資金を貸し付けるという制度なんですよ。

 同じように、日本政策金融公庫の国の教育ローンというのがありますけれども、これは、御承知のとおり、学生本人ではなく、学生を持つ親に対して貸し付けるものでありまして、貸付時には、勤務状況、所得の状況、借り入れ状況、住宅ローンや公共料金の返済、支払い状況などから返済能力をきちっと審査して貸し付けております。

 しかし、支援機構の奨学金は、学生本人が大学入学前に将来の所得を見通して奨学金の借り入れと返済の計画を立てるというようなことは、これは事実上不可能でありまして、奨学金がローン地獄への入り口になるというようなことは早急に解決、緊急に解決しなければならない、そういう立場でこの提言もつくられております。

 そこでまず、私は思うんですが、奨学金を返済中の既卒者全てを対象にした減免制度の創設が必要だと思うんです。

 日本学生支援機構が実施した平成二十四年の奨学金の滞納者に関する属性調査結果によりますと、延滞者の場合、年収二百万から三百万円未満が二〇%、百万から二百万円未満が二五・六%、そして百万円未満も三七・四%で、実は奨学金の滞納、延滞者というのは、実に八三%が年収三百万円未満となっているわけです。

 ところが現状は、延長したとはいえ、十年が上限の返還猶予制度があるのみでありまして、十年たてば年収が大幅にアップする保証はありません。このままでは、猶予期間を延ばしてもらっても、また、この延ばした期間が終了したらそこで自己破産というような事態が続出する危険すらあります。

 支援機構は、平成二十四年度から、本人が卒業後年収三百万円を得るまでの間は何度でも返還を猶予するという所得連動返還型無利子奨学金制度というものを始めておりますけれども、本来これは、無利子に限らず、有利子も含めて、奨学金返還者、返済中の全ての人にやはり適用すべき制度ではないかと私は思うんですが、大臣いかがですか。

下村国務大臣 その前に、先ほどの一千億円の話になりますが、有利子奨学金と無利子奨学金で、その財源として、財政投融資から、先ほど私が申し上げましたが、一般会計負担額にかえる必要がある。無利子の場合ですね。そうすると、やはり五兆七千億ということについては、金利だけで解決できる問題ではない。制度の問題、それはちょっと御指摘をさせていただきたいと思います。

 そして、御指摘のように、意欲と能力のある者が将来の奨学金の返還を懸念する余り奨学金の貸与をちゅうちょしないよう、きめ細やかな対応をすることが重要であるということは、そのとおりであると思います。このために、平成二十四年度から所得連動返還型無利子奨学金制度を導入したところであります。

 現在、所得把握が容易になる社会保障・税番号制度、マイナンバー制度ですね、これの導入を前提に、平成二十九年度進学者からの適用を目指して、返還月額が卒業後の所得に連動するよう、より柔軟な所得連動返還型奨学金制度の導入を目指して具体的な検討を進めているところでございます。

 この制度においては、返還中の者も含め奨学金の返還者全員を対象にすることを想定しておりまして、返還者にとってより利用しやすいものとなるよう、さらに検討を進めてまいります。

宮本委員 時間が随分迫りましたので、ちょっと問いを減らしますけれども、一つは、やはり金融的なやり方で、さっきブラックリストという話もやりましたけれども、とにかく取り立てるというやり方ではなくて、奨学金の趣旨にふさわしく、懇切に窓口で相談に乗るような制度をもっと充実させる。

 先ほどの延滞者に対する属性調査結果を見ても、猶予制度を知らなかったと回答した人が延滞者で五七・一%、無延滞者で五三%、減額返還制度を知らないと回答した人が延滞者で五四・八%ですから、やはり半分以上はそういう制度を、知らせていると言うんでしょうけれども、実際は知らなかったと。だから、三百万以下で本当を言えば猶予されるような人も、猶予手続せずに滞納になってしまっているという面もあるわけです。

 ですから、しっかり相談窓口をつくって、その人に即して、もちろん払える人から払ってもらう、払えない人からは金融商売みたいな形での取り立てというのはやはりこの際見直さなければ、もう奨学金じゃないと大臣がおっしゃるとおり、学生ローンそのものだということになってしまいますから、これはしっかり見直していただきたいというふうに思っております。

 それから、所得連動返済型奨学金をより柔軟なものにする、これは私たちも賛成です。現状のものでよいとは思いません。

 ただ、その際、現状でも年収三百万円以下の層は猶予ということになっているわけですから、柔軟にするといって、今でも猶予されている三百万円以下のところからも無理に取り立てるというような制度設計はおかしいんじゃないかということを思いますから、三百万円以上のところをよりなだらかにするということは賛成でありますけれども、しっかりやはり実態に即したものにしていただきたいというふうに思っております。

 時間がないので最後の問題群に入るんですけれども、何よりも大事なのは、私はやはり給付制奨学金、給付型奨学金だと思います。OECD加盟国で、大学の学費があって、返済不要の給付奨学金がないのは日本だけでありますから。アメリカでは、最高で年間約六十万円、平均約四十万円の連邦ペル給付奨学金を全学生の三分の一以上が受けている。アメリカだって、ちゃんと三分の一は返済の必要がない奨学金を受け取っているわけです。日本では、それがないという状況で来ました。

 二〇一二年度の予算編成の過程で、民主党の政権が一度百四十六億円という学生向けの給付制奨学金の概算要求をしましたけれども、それっきりで、実らずに来ているわけです。先日の文科省の調査でも、経済的理由で中退する学生がふえております。

 きょうは資料の二枚目に、大臣の著書の二百六十九ページに掲げられた図五「二〇二〇年教育再生実現に向けたグランドデザイン」というものをつけておきました。下線を引いたところ、「二〇二〇年のビジョン」では「大学生・専門学校生等の奨学金について、全体の半分を給付型に、半分を無利子に転換」とこうなっております。

 これは、要するに二〇二〇年には給付制が半分ぐらいまでいかないかぬという話になるんですが、大臣、これはどういうふうにお進めになるおつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 この二〇二〇年ビジョンを全て実現をするためには約五兆円の財源が必要であります。そのためには、特定の財源だけではとても確保できない、ありとあらゆるレベルのことが求められます。

 これを一つのたたき台として、ぜひ教育再生実行会議第三分科会で議論をしていただいて、これは私個人の考えということではなくて、教育再生実行会議の考えになるような、たたき台としてこの方向で進めていただきたいと考えております。

宮本委員 二言目には財務省の抵抗ということが出るんですけれども、私ははっきり申し上げて、抵抗の前にそもそも要求すらしていないのではないかと言わざるを得ません。民主党政権は、それでも二〇一二年度、一度きりではありましたけれども、要求はしたわけです。

 では、ちょっとこれは事実関係ですが、文部科学省に聞きますが、自民党政権に戻って下村大臣になってから、学生向けの給付型奨学金を概算要求したことがあったか、今度の平成二十七年度予算概算要求では要求しているか、事実をお答えいただけますか。

吉田政府参考人 概算要求の中には給付型奨学金は含まれておりません。

宮本委員 要求しなければ戦いようがないですから、戦わずして負けている。いやいや、それはそうですよ。要求して、それをかち取るために頑張るというのじゃないとこれは筋が通らない。

 それで、日本の教育の公的な支出がOECDの中で五年連続の最下位だと大臣も繰り返しこの本の中でそう述べられております。そして、政府や財界は、大学の競争力の強化、こうおっしゃるわけですけれども、教育への支出が先進国の最低でどうやって競争力を強化するのか、そういう声が現場からも聞こえてきますよ。

 日本の大学教育はこれまで、家計の重い負担、小林雅之検討会主査の言う無理する家計によって支えられてきましたけれども、もはやそれも限界になっているというのが今の現状です。

 ですから、このビジョンで、二〇三〇年までにOECD平均まで引き上げて新たに十兆円、二〇二〇年までにはその半分の五兆円、こう書かれておりますけれども、これを本気でやるんだと言うのであれば、まさに戦うんだと言うのであれば、私は評価もするし応援もしたいと思いますよ。しかし、二〇二〇年までに四兆とか五兆となれば、毎年八千億から一兆円の予算の増額が必要なんですよ。しかし、来年度平成二十七年度の概算要求を見てもそんな姿になっていないじゃないですか。

 大臣、これで本当にこんなふうに進むんですか。いかがですか。

下村国務大臣 まず、やはり戦略、戦術は必要です。要求をすればそれで済むという話ではないわけで、順番としては、有利子から無利子に、そして給付型と考えております。

 それから、これは私のまだ個人的な見解ですから、私の個人的な見解を文部科学省の概算要求で桁が違って要求するということは、これはまだそのようなことができる状況ではありません。

 ですから、教育再生実行会議等を通じてしっかりとしたグランドデザインをつくって、そして対応していきたいと考えております。

西川委員長 宮本岳志君、既に持ち時間が経過しておりますのでよろしくお願いします。

宮本委員 はい。

 大臣の本は今も書店で平積みで売っているわけですから、これを読んだ国民はさぞかしこういうふうに進むんだろうと思っているわけですから、やはりこのとおりやれば……(発言する者あり)いや、それはやるか、あるいは、やれないんだったらこんな本は本当に恥ずかしくて売っていられない。私ははっきりそう申し上げて、きょうの質問は、時間ですから終わります。

西川委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木愛でございます。今臨時国会におきましてもどうぞよろしくお願いを申し上げます。

 早速質問に入ります。

 まず、危険ドラッグに関しまして御質問させていただきます。

 ここ数年、合法、安全と称して脱法ハーブが日本国内に出回り、さまざまな事件や事故が頻発し、そのたびに成分分析を行い、取り締まりを強化して、違法薬物、危険ドラッグと呼ばれるようになりましたが、指定薬物との成分比較に時間を要している間に、販売業者は、化学構造を変え、乱用者の危険など顧みず販売を続け、当局とのイタチごっこを繰り返してきたというふうに思っています。ここ最近でも、危険ドラッグを吸引後、車の運転をして人身事故を起こしたという報道が後を絶ちません。

 そしてさらに問題なのは、この危険ドラッグの使用の低年齢化だというふうに認識をいたしております。

 指定薬物となっている麻薬あるいは覚醒剤の入手は低年齢層には困難と思われますけれども、違法薬物であるとわかっていながら販売をしている業者がまだまだ全国にあり、インターネットなどでも低年齢層が気軽に買える環境にございます。

 先日、地元の区民祭りに行ってまいりまして、ライオンズクラブの活動に参加をいたしました。危険ドラッグ防止のパンフレットを、多少違和感を感じながら子供たちに配布をしてまいりました。しかし、これが現実であり、この影響が実に小学生にまで及んでいるのではないかという情報まで耳にいたしております。

 このような中、報道にもございましたが、先日、鳥取県議会は県条例の改正を行い、成分が特定されていなくても危険薬物とする、全国初の改正薬物防止条例を可決したと報道がございました。大変喜ばしい対応でありまして、ぜひ全国に波及することを切に願っておりますが、やはり国としても早急に取り組む必要があろうかというふうに考えています。

 この危険ドラッグ使用の低年齢化を受けて、これまでも文科省としてさまざまな取り組みがなされてきたというふうには思いますけれども、民間団体の日本薬物対策協会によります首都圏の小中学校の教員を対象にした意識調査によりますと、この危険ドラッグの有害性について教員の三割が説明できないという結果が報告されておりまして、教育現場に正しい知識が浸透していない、そうした実態も浮き彫りになっております。

 今後、文科省といたしまして、この低年齢化という状況を受けて、さらに具体的な取り組み、どのような考えを持っていらっしゃるか、お伺いをしたいと思います。

久保政府参考人 失礼いたします。

 危険ドラッグを使用した者による交通事故が相次いで発生するなど、極めて遺憾な事情があることもあり、薬物乱用を拒絶する規範意識を向上する上で、引き続き、学校における危険ドラッグに関する啓発活動が大変重要であると認識しております。

 本年七月には、政府一体となって、危険ドラッグの乱用の根絶のための緊急対策を取りまとめたところでございまして、これを受けて文部省といたしましても、七月二十八日付で通知を全国の教育委員会等へ発出いたしまして、危険ドラッグを含む薬物乱用防止教育の充実を図るように求めたところでございます。

 また、事業といたしましても、全国で教職員を対象とした薬物乱用防止教育を推進するためのシンポジウムの開催をいたしておりますし、それから、各地域で薬物乱用防止教室を推進するための講習会を実施して、各学校で教室をやっていただくように資するための事業もさらに進めていきたいと思いますし、さらに、今後、文部科学省におきましては、全ての小学校五年生、中学校一年生、高等学校一年生に対しまして、今も啓発資料教材を配付いたしておりますけれども、この内容を改訂いたしまして、危険ドラッグについてわかりやすく説明した内容を入れた形で更新することといたしているところでございます。

 このようなことも含めまして、引き続き、関係機関と連携しながら、児童生徒に対する薬物乱用防止教育の充実に努めていきたいと考えているところでございます。

青木委員 ありがとうございます。

 今御答弁にありましたとおり、小中高等学校における薬物乱用防止の教室を開催するですとか、またその内容の充実、あるいは教員や指導者に対する研修の機会の充実、こうした必要があることも承知をいたしておりますし、また、兵庫県の兵庫教育大学の大学院教授であります鬼頭英明先生の論文によりますと、インターネット上の違法有害情報を防ぐためのフィルタリングの徹底ですとか、特に休みの期間などは青少年が販売店舗に入店しないようパトロールを行うことの必要性、また、危険ドラッグの危険性についての正しい理解の周知徹底とともに、これらの薬物に手を出さないための規範意識の醸成、意思決定、行動選択ができる、そうした子供を育成することの必要性を問うております。

 この点が大変重要だというふうに考えておりまして、この指摘について、特に意思決定と行動選択ができる子供の育成、ここがやはり教育の果たす重要な役割だというふうに考えるのですが、下村大臣のこの点に関する御所見をお伺いをしたいというふうに思います。

下村国務大臣 御指摘のように、子供を薬物乱用の悪影響から守るため、子供のうちから、危険ドラッグの危険性について正しい理解や薬物に手を出さない規範意識の醸成、正しい意思決定と行動選択ができる能力を育成することは極めて重要であるというふうに認識をしております。

 このため、学校においては、警察職員や学校薬剤師等の専門家の協力を得て実施されている薬物乱用防止教室などの機会を捉え、児童生徒に対する正しい知識の普及、健全な価値観や規範意識の醸成に取り組んでいるところであります。今、小学校で六七%、中学校で八三%、高等学校で八〇%が実施されているということであります。

 今後とも、薬物に関する専門家との連携を図りつつ、危険ドラッグの危険性について正しい理解の周知徹底が図られるよう、薬物乱用防止教育の一層の充実に努めてまいりたいと思います。

青木委員 ありがとうございます。

 ぜひ、学校現場を初めさまざまな機関と連携をしていただいて、情報収集をして、大事に至る前の未然防止に最善を尽くしていただきたいとお願いを申し上げておきたいと思います。

 次の質問に入らせていただきます。

 昨日公表されました平成二十五年度の全国の国公私立の小中学校の不登校の児童生徒数は、十一万九千六百十七人ということであります。高等学校における不登校の生徒数は五万五千六百五十七人と、依然高どまりが続いております。特に小中校においては、前年度に比べて増加をいたしております。

 そのような中、安倍総理がことし九月に、東京北区にありますフリースクール、東京シューレを視察なさいました。視察の狙いについて安倍総理が述べておられたのは、子供がいじめなどにより学校に行けなくなっているという状況から目を背けてはならない、不登校になっている子供たちにとってさまざまな学びの場があって、将来に夢を持って頑張っている子供たちがいるということを伝えていきたい、さまざまな生き方、学び方があるということを受けとめながら、教育再生実行会議の報告書を受けて、学習面、経済面においてどう支援できるか検討するよう文部科学大臣に指示をしたいとその後の記者会見で述べられております。

 不登校は切実な問題となっております。児童生徒本人の将来にも多大な影響を及ぼすばかりではなく、自殺や自殺未遂といった、生命の危険をも脅かす重大な問題であります。このようなときに総理みずからがフリースクールなどを視察されるということは、大変意義のあることと存じております。

 そして、ことし九月から文科省に専門の窓口を開設されました。これからの活動に大変期待をするものでございますが、不登校はいろいろな問題をはらんでおり、複雑な環境下にあるこうした子供たちに救いの手を差し伸べるために、さまざまな観点から支援していくことが求められていくというふうに考えております。

 下村大臣の御所見を伺いたいというふうに思いますが、安倍総理からその後どのような指示があったのか、そして、下村大臣御自身のこの点に関する御所見をぜひお伺いさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 もともと、今回、九月、文科大臣留任のときの指示として、フリースクールについての対応をいただきました。その前提もあって総理御自身がフリースクールの視察に行かれたものであるというふうに思いますし、私も近々に、別の場所ですが、行く予定にしております。

 そのことによって、ぜひ、これから全てのフリースクール関係者と連携をとって、フリースクールあるいは不登校に対する子供たちの対応について、国を挙げてしっかり対応していきたいというふうに思っております。

 この不登校やフリースクールの子供たちの中にあすのエジソンやアインシュタインになる可能性のある子がいるにもかかわらず、今の日本の教育では潰されてしまっているというふうに思っているところがあります。

 そういうふうに、既存の学校教育の中では適応できない子供であっても、特異な能力や才能、個性を持っていて、それに光を当てればその子の将来も見えてくる。それだけでなく、社会や人類に貢献できる。そういう子供たちもその中にたくさんいたとしても、残念ながら今のような状況では、自己肯定感も持てず、社会の中でも埋没してしまって、非常に厳しい現実があるというのが、一般的なフリースクールあるいは不登校の将来を考えた場合、予想できるところもあります。

 ですから、ぜひそれぞれの子供たちの持っている能力が生かせるよう、全ての子供たちにチャンスを提供するという中で、多様な子供たちに対応できるような教育のあり方、これをぜひ進めてまいりたいと考えます。

青木委員 下村大臣御自身の本当に心強い御答弁をいただきまして、ぜひ進めていただきたいというふうに存じます。

 私も、地元のフリースクールの視察に伺いまして理事長先生とさまざまな意見交換をする中でいろいろ具体的な御要望もいただいておりまして、また今後の議論につなげていきたいと思っていますけれども、まずは現況の把握に努めることが大事ではなかろうかというふうに思います。今後、有識者会議などの設置を経て、また論点の整理などもなされるのではないかというふうに思います。

 先ほども御答弁ございましたけれども、実際、今後の方針が方向づけられる時期、国からの支援の手が、その教育現場、フリースクールの現場であったり保護者、子供たちに届くのはいつごろになるのか。まず、全体的な時期、見通しについてお伺いをしておきたいというふうに思いますが。

小松政府参考人 お答えを申し上げます。

 フリースクール等に関する検討につきましては、教育再生実行会議第五次提言等にございます点を踏まえまして、まずはその実態把握を行いますとともに、作業といたしまして、丹羽副大臣を主査とした省内検討チームを設置して論点を整理し、そして、フリースクール等の関係者を集めたフォーラムを十一月の下旬に開催をいたしまして、その上で、省内検討チーム及びフォーラムの結果を踏まえましてフリースクール等に関する有識者会議を年内に立ち上げて、一定の方向性を検討していただくというふうに進めたいと思っております。

 その御検討の進みぐあいによりますけれども、来年五、六月ごろにはそうした有識者会議の中間まとめはいただきまして、来年度末には最終まとめができますように、関係者からの意見を広くお聞きしながら、あるいは民間での取り組みの成果も活用させていただくような形で検討を進めてまいりたいと考えております。

青木委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 続きまして、全く質問がかわりますが、先般、青色発光ダイオードの研究開発でノーベル物理学賞を受賞しました赤崎勇教授、また天野浩教授、そして中村修二教授の三氏に、心より御祝福と敬意を表したいというふうに存じます。

 この三氏によりまして、世界が熱望していた光の三原色の青をつくり出すことにより、さまざまな分野に画期的な飛躍をもたらし、今後のエネルギー政策にも大きくかかわることと思っております。省エネのLEDは、長く使って低コストであること、生活に直接影響する身近なノーベル賞として評価をされ、発展途上国の多くの人々の生活の質の向上につながると称賛をされています。

 今後のエネルギー政策におきまして、やはり、原発の再稼働ありきではなく、再生可能エネルギーのさらなる推進と徹底した省エネ技術の導入、この双方を強力に推し進めていくことが重要だというふうに考えております。

 そして、この省エネという観点からは、LED照明の導入を学校施設や公共施設などに国として積極的に推進すべきではないかというふうに考えます。

 現在、老朽化した学校建物における効率的なエコ改修の促進に必要な経費の一部について国庫補助三分の一が行われておりまして、その一項目としてLEDなど高効率型照明設備が含まれているということは承知をいたしておりますが、どれだけ普及率が高まっているかという把握がなされておりません。

 今後、エネルギー政策の観点から、また、ノーベル賞受賞の発明を身近に感じながら学習を進めるという意義からも、学校施設等のLED照明の導入は考えられてしかるべきというふうに思うわけでございますが、文科省のお考えを伺いたいと思います。

下村国務大臣 学校施設におけるLED照明の導入については、省エネ技術の導入の観点だけでなく、教材として活用し、児童生徒の環境教育に資する観点からも、重要であるというふうに認識をしております。

 そのため、文科省では、手引、事例集等により、学校施設におけるLED照明等の省エネ施設導入の意義や効果について普及啓発を行っております。

 また、公立学校の施設整備に当たっては、新増設や大規模改修事業にあわせて行う、LED照明等を導入する工事も補助対象としているところであります。

 文科省としては、これらの取り組みを通じ、LED照明の導入を含めた学校施設の省エネ化、推進してまいりたいと考えております。

青木委員 いろいろなタイミングもあろうかと思います、学校の統廃合も進んでおりますので。ぜひそういう時期を捉えて、やはりこれだけエネルギー政策が問題となっているわけでありますので、国としてもしっかりとした指針を指し示していただきたいというふうに思います。

 また、訪れた方も多いかというふうに思いますが、東京京橋にあります、最先端テクノロジーを駆使して建てられました清水建設本社を視察してまいりました。

 建物で使用するエネルギーの六割から七割を占めるのが、空調と照明であります。

 空調については、エアコンは使わずに、熱が温度の高いところから低いところに伝わるという性質を利用して、天井に冷水を供給することで、室内の熱が天井に向かい、室内の温度が調整されるといった空調システムが設備されていました。

 照明については、羽根の角度が太陽の高度に従って自動的に変化をするグラデーションブラインドが設置されていまして、奥まで自然光を導くことができるとともに、照明器具は全てLEDで、さらに、室内の明るさに応じて、その明るさ、照度が自動制御されるように設定もされておりました。

 ほかにも最先端の技術を駆使して、我慢する省エネではなくて、快適なオフィス空間を実現するためにさまざまな工夫と徹底的なエネルギー管理がなされておりました。

 こうした民間の技術そして取り組みについてどのように評価をされていますでしょうか。学校現場の施設自体への導入とともに、今御答弁にありましたけれども、教材としても大変有効ではないかというふうにも思うのですけれども、教育現場へのこうした民間の取り組みの導入ということについてはどのようにお考えでしょうか。

関政府参考人 照明や冷暖房等の設備機器の高効率化や、複層ガラス等の断熱化等の省エネ技術、また、太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギー技術に関する近年の進展、目覚ましいものと認識をしております。

 学校施設におきましても、こうした省エネ設備を導入することによりまして、環境への負荷を低減し、省エネ設備を教材として活用して環境教育にも役立てることが重要でございます。

 このため、文部科学省といたしましては、手引、事例集の作成、配付、各種講習会や研修会の実施によりまして、こうした省エネ設備導入の重要性等に関する普及啓発を行いますとともに、施設整備への国庫補助や、また、関係省庁と連携をいたしまして、エコスクールパイロットモデル事業などに取り組んでいるところでございます。

 今後とも、これらの取り組みを通じまして、学校施設の省エネ化を推進してまいりたいと考えております。

青木委員 ぜひ、積極的な取り組みに期待をしております。

 そしてもう一点、このLEDの導入を今後進めるとなった際に、今、アメリカ、中国、そして韓国でのLEDの生産が安価で進んでおります。国内メーカーと海外メーカーの競合が大変激しくなっているということでございます。

 経済政策の観点からも、やはり内需の拡大が重要であることから、LED照明器具の導入促進に当たっては、ぜひ国内メーカーを優先するといったような配慮も必要になってくるのではないかと考えますが、その点についてはいかがでしょうか。

富田政府参考人 お答えさせていただきます。

 LED照明器具でございますけれども、委員御案内のとおり、大変、在来の照明器具に比べまして省エネ効果が格段に高いということがございまして、私ども経済産業省といたしましても、省エネの促進、それから、あわせて内需の拡大という観点から、省エネ補助金あるいは設備投資促進税制を通じてLED機器の普及を図ってきたところでございます。

 このような中でLEDの国内市場も、二〇一〇年の六百十億円から二〇一三年には三千六百億円、また、照明器具の中におけるLEDのシェアも一三%から六〇%ということで、順調に拡大をしてきているところでございます。

 私どもとして、これらの施策を通じて引き続きLED照明器具の普及を図ってまいりますが、委員から、あわせて国内メーカーの優遇策という御指摘がございました。この点につきましては、日本のLED製造技術は大変高うございまして、その性能、品質においてはどの国にも負けないというものでございます。

 したがいまして、そういった性能が市場の中で正しく評価をされるということになりますれば、その国産品の普及というものもおのずと進んでいくというのが私どもの考え方でございまして、私どもといたしまして、LEDの適切な性能測定方法のJIS化、それから、製品の性能表示に係るJISへの準拠、こういった手だてを講じながら、国産品の普及を後押ししてまいっております。この点についても引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

青木委員 わざわざ御答弁においでいただきましてありがとうございました。

 LED導入を進めるに当たって、やはり国内メーカーを優先するといいますか、内需拡大の視点からも進めることによってより促進されるのではないかというふうにも思いますものですから、ぜひ今後とものお取り組みをお願いしておきたいと思います。

 もう一問用意をしておきましたが、時間が中途半端でありますので、また次回にしたいと思います。

 最後に下村大臣の御決意を伺いたいと思います。

 私、やはり成熟社会を迎えたこの日本といたしましては、旧来型の公共事業ではなくて、新しい価値を生む政策転換を図って、人に、教育に、福祉に、そして研究開発に予算を手厚くするべきだと考えております。

 雑誌東洋経済で下村大臣の「財務省的発想からの脱却を」という記事も読ませていただきました。今後の下村大臣の文部科学行政全般に対します御決意を最後に伺って、質問を終わらせていただきます。

下村国務大臣 ありがとうございます。

 文部科学省は、教育、文化、スポーツ、科学技術、これは日本の未来を決定する政策官庁だというふうに思います。ですから、省内では、名前を未来省、自分たちが未来を決めるんだという誇りとその自覚を持って積極的に政策に取り組む必要があるのではないかと。

 二〇二〇年オリンピック・パラリンピックは、スポーツの祭典だけでなく、そういう分野で幅広くやろうということで、今、中堅、若手が中心となって、自主的に夢ビジョンJAPANというのをつくりました。二〇二〇年までに科学技術をどうしていくか、文化をどうしていくか。

 ぜひ、夢を国民が共有できて、そして、その夢に向かってしっかり頑張れる、そういう文部科学行政、先頭に立って頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。

青木委員 ありがとうございました。

西川委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 本日は、まず初めに、六月に公表されましたOECDの国際教員指導環境調査、通称TALISというふうに呼ばれるそうですが、このTALISの結果について、それの関連で幾つかお聞きをしたいというふうに思います。

 公表されました結果、恐らくこれは新聞でもかなり大々的に取り上げておりましたし、私も正直、非常にショックを受けましたが、日本の中学校の教員の一週間当たりの平均勤務時間は五十三・九時間、対象になった三十四カ国の中で最も長い。しかも、参加国平均が三十八・三時間ということですから約一・四倍、そういう意味でいうと、すさまじい長時間労働が日本の中学校の教育現場で恒常化をしているということが明らかになりました。

 もう一つ驚いたのは、他方で、これだけ長い時間、長時間労働しているにもかかわらず、参加国平均でいうと八五・八%の教員が、生徒に勉強ができると自信を持たせる、そういうことができていると回答しているのに対して、同じ質問に対して日本の教員の方々はわずか一七・六%。また同様に、生徒が学習の価値を見出せるように手助けをできているのかという問いに対して、参加国平均は八割を超える八〇・七%の方が肯定的な回答をしているのですけれども、日本の教員の方々の数字は二六%ということになっております。

 要するに、ある意味で言うと、三十四カ国ですから、世界じゅうで一番とは言えるかどうかわかりませんが、世界で最も長く働いている、一生懸命働いているにもかかわらず、自分の仕事の成果になかなか自信を持ち切れていない、そういう構図がこのTALISの結果から見てとれるのではないかというふうに思います。

 まず、この調査結果、どのように受けとめていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、本年六月に公表されましたTALISでは、我が国の中学校における教員の一週間当たりの勤務時間は約五十四時間と参加国中最長であり、授業以外の諸活動に従事する時間が参加国中平均よりも長いことが明らかになりました。また、我が国の教員は、他国と比べて、みずからの指導について自信が低く、特に、生徒の主体的な学びを引き出すことに対して自信が持てないという結果でありました。

 このような結果の背景としては、近年、学校を取り巻く状況が複雑化、困難化する中で、我が国の教員が諸外国の教員と比べて幅広い業務を行っていることから職務多忙となっており、子供たちと向き合う時間が十分にとれなかったり、研修への参加の妨げとなっている可能性があること、また、TALIS報告書の中でも分析されているように、我が国の教員が、指導において高い水準を目指しているため自己評価が低くなっている可能性や、謙虚な自己評価を下している可能性があるなど考えられる部分もあると思います。

 これらの状況の改善については、今後の重要な課題として認識しておりまして、教員が授業等に専念できるようにするとともに、みずからの能力を研修等を通じて向上させられるよう必要な環境整備を図り、学校教育全体の質の向上に努めていきたいと考え、平成二十七年度からは、チーム学校という形で、学校の教員が生徒と向き合う時間ができるだけとれるような、そういうサポート体制を来年度からしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 まさに今、これは中学校の調査ですが、恐らく小学校も、あるいは高等学校も同じだと思いますけれども、非常に多忙化の問題があるのだろうというふうに思います。

 このTALISの調査を見ていますと、日本の場合、週の労働時間は一番長いんですけれども、指導、授業に使った時間というのは、実は参加国平均よりも短いという、ある意味でいうと、本来、教員が最もやらなければいけない子供たちと向かい合う時間というものが実は長時間労働の割に平均よりも低いという、特異な労働時間になっているというのは非常に大きな問題だろうというふうに思います。

 まさに、今大臣の方からも言われましたけれども、この調査結果を受けて、文科省として当面の取り組みというものをつくられているということで、拝見させていただきました。教員の資質向上の推進、学習指導要領が目指す教育の推進、ICTの活用、そして教職員指導体制の充実、大きく四つ挙げられています。

 学校そして教員の方々の負担が大変今ふえ続けております。授業以外にも、部活動の指導であるとか、あるいは事務作業、それから、まさに複雑化する学校現場、いじめへの対応であるだとか、あるいは保護者への対応、さらには地域活動、こうしたものに加えて、今後も、土曜授業や英語の早期教育の実施など、さらに仕事がふえていきそうな気配であります。

 恐らくこれは、TALISで校長先生にも質問しておりますけれども、その校長先生への質問だと思いますが、日本の場合、資格を持つ教員や有能な教員の不足を訴える回答が実に七九・七%、これは参加国平均でいいますと三八・四%、二倍以上になっております。同時に、支援要員の不足を訴える回答も七二・四%で、参加国中、突出して高い数字になっています。

 これらを考えますと、TALISの調査結果を見て、文部科学省が取り組むべき焦眉の課題というものは、教員の負担を軽減し、長時間労働、多忙化をいかに解消していくかにあると考えますけれども、この点についてどのようにお考えでしょうか。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 学校を取り巻く環境が非常に複雑化、困難化し、教員に求められる役割も拡大をするという中で、御指摘のとおり、教員が授業など子供への指導により専念できるようにするとともに、教育の質の向上のための授業の充実、革新、あるいは、さまざまな教育課題にも対応することができるようにするための計画的な定数の改善を図ることが必要であると考えております。

 そこで、文部科学省といたしましては、子供たちが一方向で知識、技術を注入されるというような形に偏らずに、主体的、協同的に学ぶ課題解決型の授業とか、能動的な学習と言われますが、いわゆるアクティブラーニングへの転換。それから、事務職員の拡充による学校の事務機能の強化。今御指摘のありました、さまざまなところに業務が広がり過ぎている、そういうことに対応した事務機能の強化。それからまた、学校司書など専門的な知見を有するスタッフの配置の充実。大臣からチーム学校の推進という方向が示されましたけれども、そうした点での政策。それからさらに、特別支援教育、いじめ問題といった個別の教育課題への対応。こうしたものを盛り込んで十カ年の教職員定数改善計画を策定いたしまして、来年度、平成二十七年度に向けました概算要求においては、その初年度分を要求するということにいたしました。

 文部科学省といたしましては、この教職員定数改善計画の実施によりまして、計画的な指導体制の整備を図ってまいりたいと考えているところでございます。

吉川(元)委員 この後少し、また質問の中で触れさせていただきたいんですけれども、教育再生の実行に向けた教職員等指導体制の在り方等に関する検討会議の中での資料が出されております。

 その中に、平成十八年度に、実は文科省として、公立小中学校教員勤務実態調査というものを行っております。これを見ますと、七月から十二月まで毎月ごとに残業時間をカウントしておりまして、見ますと、大体四十時間強、四十時間前後。八月は夏休みですから、それを除きますと、四十時間前後の残業時間がずっと続いております。

 また、休憩時間を見て、私、非常に驚いたんですけれども、夏休みは四十四分とれておりますが、それ以外は、例えば七月は九分、九月は十分、十月は七分、十一月も七分、十二月は六分。労働基準法でいいますと、六時間を超える場合は四十五分、八時間を超える場合には一時間の休憩時間を労働時間の中で与えなければならないというふうになっております。全くその休憩がとれていない。

 労働基準法でいいますと、第一条の中で、労働条件というのは「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」というふうに書かれておりますが、そこから見ますと、この平成十八年度の段階で全くそれに値していない、そういう長時間労働が蔓延をしている。

 今回のTALISは、さらにこれよりも労働時間が延びているということですけれども、ちょっと通告はしていないんですけれども、この十八年度の調査を行った後に、これは具体的にどう改善をしていこうと努力され、また、どこら辺が改善を阻む要因となったのか、お聞きします。

小松政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成十八年に教職員の勤務の実態調査を行いまして、御指摘のような数字を得たわけでございます。

 その後の経過をごくかいつまんで申し上げますと、中教審におきまして、こうした事柄との関係で、処遇、給与等のあり方について検討をお願いいたしました。平成十九年の三月に「今後の教員給与の在り方について」ということでおまとめが出ておりますけれども、そのおまとめによりますと、時間外勤務のあり方と、それから、先生という非常に独特の特色を持たれた勤務形態との関係、その評価については簡単に結論が出ないということで、今後さらに専門的、技術的に検討を行っていくということが示唆されたわけでございます。

 その後、概算要求等の過程を通じましてさまざまな試みをいたしましたり、あるいは法制的な検討を並行して行いました。

 教職調整額という形で今見られている部分がございますが、これは個々の教員の特定の職務による勤務負荷を評価して支給される性格のものではないということもあり、職務負荷に応じて支給率に差を設けるというようなやり方がなかなか困難であるという判断に至ったわけでございます。

 こうした経過を経まして、現在に至っているということでございます。

吉川(元)委員 長時間労働、そしてさらに、長く働いているけれどもなかなか自分のやっている仕事に自信を持てないという一つの大きな原因が、ほとんど休みもとれず、平成十八年段階で十分とれていないわけですから、恐らく今も大して変わっていない、あるいはより悪くなっているとしか私には思えないんですけれども、そういうふうに、長時間労働がなかなか是正されない。

 もちろん、いろいろな子供の環境が複雑化、多様化している、その中で対応していかなければいけない、あるいは事務がふえているというようなこともあろうかと思いますが、もう一つ大きな問題、関係しているというのが、いわゆる給特法、昭和でいいますと昭和四十七年の一月に施行されました義務教育教職員の給与特例法が大きく影響しているのではないか、その点について少しお聞きをしたいと思います。

 この給特法、教員の勤務の特殊性から時間外手当の支給はなじまないということで、そのかわりに月額給与四%相当額を教職調整額として支給をする、そういう中身であったというふうに思います。

 この四%の根拠というのは何かといいますと、昭和四十一年、一九六六年、実は私が生まれた年です、今から半世紀前に調べた勤務実態調査をもとにして、当時小学校の教員でいいますと週一時間二十分、それから中学校でいうと二時間三十分、小中合わせて平均で週一時間四十八分の超過勤務が認められている、これを月額給与に直すとやはり四%程度の割り増しが妥当だということで決められたわけです。

 ところが、今回のTALISの調査結果も、あるいは十八年度の調査もそうですけれども、はるかにそれを上回る。例えばTALISでいいますと五十三・九時間ですから、労基法の週四十時間労働を基本とすると、週十三・九時間の超過勤務になります。これは、昭和四十一年、一九六六年の調査に比べると、中学校だけで比較をしますと五・六倍に当たります。

 こうしたことを見ますと、今から半世紀も前の調査に基づいて施行された給特法が実態にそぐわなくなっているのではないか、そう考えざるを得ません。

 給特法、これによって、結局、管理者を含めて、学校設置者も含めて労働時間管理という概念がなくなる、何時間働いても超勤を払わなくていい。普通の企業や、あるいは公務員の一般職の場合は、超勤がふえていくとその分残業代を払わなきゃいけない。そうすると、そこにはコストという意識も当然働きますから、できる限り無駄な仕事は減らそう、労働時間を管理しようというふうな発想が生まれますけれども、この給特法があるおかげで、そうした発想が実は生まれていないのではないか。

 今、労働政策審議会の方でホワイトカラーエグゼンプションの検討が行われておりますけれども、私は、この給特法というのは、結果的にはホワイトカラーエグゼンプションの先取りになっていってしまったのではないか、そのようにも考えてしまいます。

 だとしますと、この給特法を見直すか、あるいは給特法が想定をした、平均で週一時間四十八分の超過勤務、時間内に教員の勤務時間がおさまるような環境整備をする以外に、これを放置しておくことはできないと考えますけれども、この点についていかがでしょうか。

小松政府参考人 公立学校の先生方には時間外勤務手当が支給されないかわりに、職務と勤務態様の特殊性に基づきまして教職調整額が支給されている、そういう仕組みでございます。

 これは、人事院が国会及び内閣に、教育が特に教員の自発性、創造性に基づく勤務に期待する面が非常に大きいこと、あるいは長期休業期間といった特色があること等を考慮いたしますと、その勤務の全てにわたって一般の行政事務に従事する職員と同様な時間的管理を行うことが必ずしも適当でなく、とりわけ超過勤務手当制度はなじまないというふうな申し出を行ったことを踏まえた制度設計になっております。先生方の超過勤務がふえてきているという現状を踏まえながら、どうしてそうした勤務条件を改善していくかということは大事な課題という考え方のもとに、一つの方策としては、私どもとしても、これまでも教職調整額のあり方などについて検討してきたわけでございます。

 これは、先ほどお尋ねがあった点で、ごくかいつまんだところだけ申し上げましたが、先ほど申し上げましたように、結論を得るに至っておりません。

 それは、教職調整額のあり方を含む給特法の見直しということになりますと、単に給与の問題にとどまりませず、先ほど来申し上げました長年の検討の中に見られますように、学校というものの組織運営、あるいは先生方の勤務に合った時間管理、そして先生方の時間外における勤務のあり方などにも非常に大きく影響する問題でございます。そしてそれは、今後の学校のあり方の改善、学校経営といいますか、そういったもののあり方の改善も含めまして、先生方の質の向上を含め進めていく取り組み全体の中でさらに検討していかなければいけない重要な課題だというふうに認識しております。

 もう一点、先ほど来議題に上っておりますが、教員の多忙化の解消ということにつきましては、教職員間の役割分担や連携のあり方を見直す、学校の教育力、組織力を向上させていくことによってその改善を図ることも重要ということになります。

 そうなりますと、先ほど御指摘のありました教職員の定数改善やチーム学校を実現して、そして、その中で多様なスタッフの充実を図るということも、あわせて、急いで取り組んでいかなければいけないと思っているわけでございます。こういう意味で、平成二十七年度概算要求に、そうした面での予算を盛り込んでいるところでございます。

 文部科学省といたしましては、学校にかかわる教職員の方々の校務分担その他を明確にしながら、チームとして学校組織全体の総合力を高めるということとあわせて、先生方が働きやすい環境をつくるための努力をいたしてまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 給特法をつくるときに、勤務の特殊性ということで幾つか挙げられていますけれども、例えば、今、長期休業というお話がありました。ただ、今どき、夏休み、学校の先生が子供たちと同じようにずっと休んでいるという学校なんて存在していません。ずっと勤務しています。せいぜい年休を夏休みの間に消化をすることはあっても、朝きちんと、始業時間から終業時間まで職場に出ております。

 そういう面でいいますと、昭和四十七年に施行されましたこの給特法は、やはり現実と大きく乖離をしているということもありますし、ぜひしっかりと、労働時間を削減するという視点で今後検討していただければというふうにも思います。

 あわせまして、今回、TALIS、二〇〇八年に続いて二回目の調査になっております。今回、日本は初めてこれに参加をしたということでありますけれども、その調査結果というのは極めて深刻に受けとめるべき内容です。

 先ほども少しお話をしましたが、平成十八年、二〇〇六年に文科省は実態調査を実施しておりますが、今回の結果を受けて、文科省としても、公立学校、できれば高校も含めて教員の実態調査というものを実施して、まず実情をしっかりと把握をすべきだと考えますが、この点、ぜひ検討していただきたいのですが、御見解を伺います。

下村国務大臣 今回のTALISの調査結果を踏まえ、教員が授業等に専念できるよう、教育現場の多忙化の解消を図っていくことが必要であるというふうに我々も当然考えております。

 このため、省内に、学校現場の負担軽減に関するプロジェクトチームを設置し、学校現場の負担軽減のための検討を行っており、その一環として、月内にも教職員の業務の実態を把握するための調査を行う予定であります。平成十八年度の調査は教員の勤務時間を調査したものでありますが、今回の調査は、教職員がどのような業務を担い、何が負担となっているのか、どのような手だてが負担軽減に有効なのかなど、業務の実態を把握することを考えております。

 文科省としては、教員が子供と向き合う時間を確保し、みずからの指導力を十分に発揮できるよう業務の負担軽減に必要な環境整備を図り、学校教育全体の質の向上に努めてまいります。

吉川(元)委員 ぜひしっかりと調査をしていただき、的確な対応をお願いしたいというふうに思います。

 関連しまして、先ほど少し触れましたけれども、八月二十八日に、教育再生の実行に向けた教職員等指導体制の在り方等に関する検討会議が提言を発表いたしました。同時に、新たな教職員定数改善計画、案でありますけれども、これが示されております。先ほども御説明があったとおり、初年度分については来年度予算概算要求にも盛り込まれているということであります。

 大臣が昨年八月に策定した教師力・学校力向上七カ年戦略における定数改善、これは非常に残念なのではありますけれども、初年度から財務省に、何というんですか、粉砕されたと言うと言い過ぎかもわかりませんけれども、なかなか思いどおりの形になっていかなかったというのがあろうかと思います。

 定数改善計画ということでいいますと、第七次、これは二〇〇一年度から〇五年度までだったと思いますが、この第七次をもって、それ以降、十年近く定数改善計画が策定されていない、そういう形になっております。定数改善計画が策定されないと、都道府県の教育委員会も新規採用の中期的な計画がなかなか立てづらい。先ほど指摘をいたしました教員の多忙化解消に資するような定数改善計画を早急に策定すべきだと考えております。

 そこで、新たな定数改善十年計画案についてお聞きします。

 この計画では、十年間で三万一千八百人の定数改善を実施することとなっております。自然減は四万七百人で、差し引き八千九百人の減少ということになっておりますが、この三万一千八百人の定数改善の根拠というものはどのようなものなのか。検討会議の提言を見ますと、三万人程度の定数改善によって教員数と児童生徒数の比率がOECD並みになると記述されておりますが、それを目標にしたものとして理解してよろしいのでしょうか。

小松政府参考人 OECD並みということも目標の一つではございます。先生と児童生徒の比率といったものがOECDの平均よりも日本は下回っているというような事態は解消したいというふうに考えていることは事実でございます。

 しかし、そういう一般的な数字ということのみではなくて、先ほどの有識者会議なんかでも御議論いただいたことですけれども、例えば、授業を課題解決型、能動的な、いわゆるアクティブラーニングにしていこうというふうに考えますと、一つの試算としては、小中学校でいえば、一つの中学校区に仮に一人それを中心に進めていただくような方を想定いたしますと、それでもう一万人が必要になる、こういうことでございますので、考え方としては、授業がよりよくなる、革新的になる、このためには少人数教育等も必要になる、こういったことで考えている部分、それから今申し上げましたチーム学校といったような部分、これらを合わせまして、今の三万一千八百人という足し上げになった次第でございます。

吉川(元)委員 関連いたしまして、定数改善に当たって、これはどういうふうにやっていくのかということをお聞きしたいと思います。

 定数改善に当たっては、義務標準法の改定をもって増員を図る基礎定数と、単年度予算の範囲内で特例的に措置する加配定数、二つがあるというふうに思います。予算折衝で数字が変わりやすい加配定数よりも、法律の裏づけをもって着実に増員を図る基礎定数を充実させていくことの方が重要ではないか、そのような認識を持っております。

 今回の概算要求の資料の中にも少しその点が触れられておりますが、今回の定数改善計画案というものは、義務標準法の改正による基礎定数の改善なのか、それとも加配定数によるものなのか、あるいは、全部が全部ということはないでしょうけれども、どの部分がどのぐらいなのかということについて説明をお願いします。

小松政府参考人 基礎定数の改善を図るためには義務標準法の改正が必要となりますけれども、今回の計画の考え方は、改善総数三万一千八百人のうち基礎定数の拡充を二万七百人というふうに考えておりまして、御指摘のとおり、基礎定数の拡大を目指す計画となっております。

 かいつまんで中身の例示だけいたしますと、先ほどの授業の革新、アクティブラーニングの推進、これが一万人ほどでございますが、ほかに、学校事務機能の強化、家庭環境や地域間格差など教育格差の解消分、いじめ等の問題への対応、こういったものが基礎定数、そして、専科指導の充実あるいは学校統合をされるときの支援、こういったものについては加配定数、これらを組み合わせて改善を図るような計画としております。

吉川(元)委員 もう時間が来てしまいました。

 本来であれば、少人数学級やあるいは非正規の職員の問題、教員の問題等々についてもお聞きをしたかったと思いますし、また、戦う文科大臣として、ことしもぜひ財務省と戦っていただいて、去年、七年は一発目でやられましたけれども、この十年計画、先ほどの義務標準法の改正を伴う形での定数改善が実現できるように、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 以上で質問を終わります。

西川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十一分散会


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