衆議院

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第12号 平成27年5月27日(水曜日)

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平成二十七年五月二十七日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 福井  照君

   理事 池田 佳隆君 理事 石原 宏高君

   理事 冨岡  勉君 理事 萩生田光一君

   理事 義家 弘介君 理事 郡  和子君

   理事 牧  義夫君 理事 浮島 智子君

      青山 周平君    安藤  裕君

      岩田 和親君    尾身 朝子君

      大隈 和英君    大見  正君

      門山 宏哲君    金子万寿夫君

      神山 佐市君    工藤 彰三君

      櫻田 義孝君    鈴木 憲和君

      鈴木 隼人君    谷川 とむ君

      馳   浩君    鳩山 邦夫君

      比嘉奈津美君    船田  元君

      古田 圭一君    前田 一男君

      山本ともひろ君    菊田真紀子君

      中川 正春君    平野 博文君

      松本 剛明君    笠  浩史君

      坂本祐之輔君    初鹿 明博君

      中野 洋昌君    吉田 宣弘君

      大平 喜信君    畑野 君枝君

      吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣政務官   山本ともひろ君

   参考人

   (千葉大学教育学部教授) 天笠  茂君

   参考人

   (三条市長)       國定 勇人君

   参考人

   (和光大学現代人間学部心理教育学科教授)     山本 由美君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  小林 史明君     鈴木 隼人君

  古川  康君     大隈 和英君

  宮川 典子君     鈴木 憲和君

同日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     金子万寿夫君

  鈴木 憲和君     比嘉奈津美君

  鈴木 隼人君     小林 史明君

同日

 辞任         補欠選任

  金子万寿夫君     岩田 和親君

  比嘉奈津美君     宮川 典子君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     古川  康君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)


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     ――――◇―――――

福井委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、千葉大学教育学部教授天笠茂君、三条市長國定勇人君及び和光大学現代人間学部心理教育学科教授山本由美君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席賜りまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位から一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御了承ください。

 それでは、まず天笠参考人にお願いいたします。

天笠参考人 失礼いたします。参考人の天笠と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、このような発言の機会をいただいたことにつきまして、心から関係の皆様方にお礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございます。

 まず私の方からは、お手元に資料を配付させていただきましたけれども、それに沿いながら、提案されました法案につきまして、基本的に賛成の立場から意見を申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 おおむね申し上げたい点というのが五つあります。

 それで、まず一点目でありますけれども、今回のこの義務教育学校の設置にかかわっての取り組みでありますけれども、設置に至る小中一貫教育の試みは、研究開発学校あるいは教育課程特例校など、教育現場におけるパイロット的な実践的研究の積み重ねにより具体的な取り組みが図られ、そして整えられてきた取り組みとして捉えることができるのではないかというふうに思っております。

 この間、私は、例えば広島県呉市の取り組みですとか、お手元の資料の一枚目にありますけれども、幾つかの、かかわりを持たせてもらった学校、あるいは調査研究等々に入らせてもらった地域、機関等々についてそこにリストアップさせていただきましたけれども、これらの取り組みを通してということが、このたびの発言の一つの根拠でもあるわけでありますけれども、これらの取り組み等々ということを捉えた場合に、教育実践家を中心としました多くの学校関係者による一連の取り組みでありまして、それらを捉えてみると、このたびのこの設置の取り組みというのは、教育現場からの教育改革と称することができるのではないかというふうに思っております。

 言うならば、それぞれの現場における実践の取り組みの集積というのでしょうか、そういうことがこのたびの一つでありまして、私は、この動きを高く評価するとともに、そのエネルギーというのを今後とも大切にしていきたいということでありまして、今回のこの設置の動きというのは、そういうものについての一つの象徴的な、あるいは、取り組みの一つのまとめ、結節点になる動きというふうに評価をさせていただきたいと思っております。それがまず一つ目であります。

 続いて二つ目でありますけれども、このたびの義務教育学校の設置は、現代の子供たちの成長、発達と学校制度とのすり合わせを図る取り組みではないかというふうに捉えております。言うならば、今日の成長する子供たちの姿に学校制度を寄り添わせる試みとして捉えることができるのではないかと思っております。

 すなわち、小中一貫教育は、子供の成長、発達にきめ細かく寄り添い、小学校、中学校の教職員がこれまでの役割分担を見直し、すなわち、これまでは小学校と中学校というそれぞれ守備範囲を定めて、そして取り組んできたわけでありますけれども、小中の教師が協働して子供の成長に当たる、そういう試みがこのたびの提案ではないかというふうに思っております。

 そういうことによりまして、この小中一貫教育の導入によりまして、とりわけ小学校五年生、六年生、そして中学校一年生の授業のあり方、あるいは指導体制というものを、より今日の子供の成長する姿に寄り添わせる、そういう試みとして取り組みが期待できるのではないかという、これが二つ目の点であります。

 それから三つ目でありますけれども、義務教育学校の設置は、九年間を通した新たな創意ある教育活動を生み出す契機を教育現場にもたらしまして、小学校と中学校に現状として分離して、そして硬直化した制度や組織の活性化が期待できるのではないか、こんなふうに捉えております。

 言うならば、先ほど申し上げましたけれども、小学校とそれから中学校がそれぞれがそれぞれとして取り組んできた、そのことはそれなりに評価しなければいけないというふうに思っておりますけれども、現状を踏まえた場合には、それぞれがそれぞれとしてというところをもう一段見直しを図り、より、小学校と中学校の持っている資源を共有し合う、あるいは協働し合う、そういうふうな形の取り組みというのが今求められているのではないかというふうに思っております。

 すなわち、現在、チーム学校、こういうことが多くの関心を集めておりますけれども、職員室を核に、学校を取り巻く課題に教職員を初めとする相互のコミュニケーションが挙げられるのではないか。言うならば、協働を生み出すことを通して学校を組織として機能させることが問われているように思います。

 この場合の協働という場合に、小学校とそれから中学校の協働ということも今日的なテーマとしては挙がるのではないかというふうに考えております。

 そういう意味で、義務教育学校の設置は、小中学校間の教職員はもとより、新たな学区としての中学校区を成り立たせるなど、その人と人とのコミュニケーションを生み出す新たな組織文化の誕生を期待できるのではないかというふうに考えております。

 そういう観点からしたときに、例えば、九年間を通してのキャリア教育ですとか、あるいは、地域により深い理解と愛着を育てていく郷土教育等の取り組み等々が期待できる。あるいは、九年間を通して学年の区分に工夫を凝らして、例えば多くの取り組みであるように、四・三・二カリキュラムの実現、こういうことですとか、あるいは、学校行事の創造や創意ある異年齢交流ということを通してコミュニケーション能力の育成ですとか、とりわけ、中学生を中心とした大きな課題としての自尊感情の回復、こういったことが期待できるのではないかというふうに思っております。

 何よりも、小学校の教職員とそれから中学校の教職員が授業を通しての交流を生み出す、あるいは授業の改善ということがその課題の核になると私は思っておりますけれども、これらのことが、義務教育学校の設置というのは、大きな環境を整えたりですとか手だてを整える、そういうことにつながってくるのではないかというふうに考えております。

 以上が三点目でありまして、続いて四点目でありますけれども、この義務教育学校の設置というのは、それぞれの小学校、中学校での取り組みが期待されるところでありますけれども、当然、その小中学校のもとになります各自治体、市町村教育委員会の存在ということに注目せざるを得ません。義務教育学校の設置は、市町村教育委員会における地域教育経営の活性化にもつながるのではないかというふうに考えております。

 義務教育学校の設置は、設置者の判断のもとに、カリキュラム区分の弾力化、例えば四・三・二ですとか五・四、四・五ですとか、そういった柔軟な教育課程編成を可能にするなど、教育課程のマネジメントについて市町村教育委員会に対して多様な取り組みの選択肢を提供することになるのではないかというふうに思います。これらの裁量幅の拡大を生かして、市町村教育委員会による、地域の実態を踏まえた特色ある地域教育経営の展開が期待できるのではないかというふうに考えております。

 ただ、市町村教育委員会は、御承知のとおり、大変大きな自治体から小規模な自治体までさまざまにあります。そういう点では、それぞれの特色を生かすという取り組みの期待ということと、それを支えていく制度的な担保、あるいは条件整備的な取り組みというのも一方において大切なのではないかと。

 そういう点において義務教育学校の制度化というのは、そういった意味でそれぞれの市町村教育委員会の取り組みを制度的に支えていく、条件整備的にそれを担保していく、そういう取り組みにもつながっていくということが期待されるのではないかというふうに思っております。

 最後になりますけれども、第五点目ということになりますけれども、このたびの義務教育学校の設置というのが、全体として、義務教育の全体的な質の向上につながっていくのではないかというふうに捉えたいと思っております。

 我が国の幼稚園から大学に至る学校制度について今日的な状況等々を踏まえたときには、全体として活力を維持していくという観点から今問われているのが、幼小、それから小中、そして中高、そして高大といった、学校種間の連携、接続ということが大きなテーマということになっておりまして、それぞれの学校種間の連携、接続というのがさまざまな形で論議されているのは御承知のとおりでありますけれども、これらの取り組みの積み重ねの一環として、このたびの小中学校間の一貫教育、あるいは小中学校間の連携あるいは一貫という、そういう取り組みの実現を図っていくこの義務教育学校の設置というのは、これらについて大いに貢献するものになっていくのではないかというふうに思っております。

 そういう点で、それは、教育の主体、あるいは教育活動、あるいはマネジメントの一貫性、これの確保ということがそれらを支えていくことになるかと思いますし、あるいは、制度的なものの取り組みということもそういう取り組みを支えていくことにつながっていくのではないかという意味合いも込めまして、この義務教育学校の設置というのは、義務教育全体の質を支えていく、あるいは質的改善につながっていく、そういう取り組みとして、私は、この取り組みが進められることを基本的に支持をさせていただきたいというふうに思います。

 私からの発言は以上ということにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

福井委員長 ありがとうございました。

 次に、國定参考人にお願いいたします。

國定参考人 皆さんこんにちは、三条市長の國定と申します。

 本日は、文部科学委員会にお招きをいただき、私どもの小中一貫教育の取り組みを通じて小中一貫教育制度の優位性についてお話をさせていただく機会を頂戴しましたことに対しまして、委員各位に心から感謝を申し上げたいと思います。

 私は、今回の学校教育法等の一部を改正する法律案、小中一貫教育学校等の制度化につきまして賛成の立場で意見陳述をさせていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 皆様方のお手元に「三条市における小中一貫教育の取組」という資料が配付されているかと思います。これに沿いまして話を進めさせていただきたいなというふうに思っております。

 まず、一枚おめくりいただきまして一ページでございます。

 もともと、小中一貫教育を三条市の中で導入をしていこうという一つの大きなきっかけになりましたのは、何かが、あるタイミングで事象が発生したということではなく、戦後の我が国の社会情勢の大きな変化の中で、教育行政もその社会情勢の変化に合わせていかなければならないのではないかというのがそもそもの動機でございました。

 ここにも記載のとおり、私どもの地域も含めまして、核家族化がもう本当に進展をしております。どころか、私自身もそうでありますけれども、核家族化が成立してから二世代、三世代という形でもう既にそれが定着をしてしまっている。私自身も核家族で育ちましたし、そして、私自身もまた、自分の子供を核家族の中で育てなければいけないという状況。

 そしてまた、地域コミュニティー、これが私たち地方都市の中でもやはり脆弱化をしている。そうした中で、昔であれば、隣近所のおじさんやおばさんからいわば叱られながら育つことができた世の中の環境が、今では、こうした地域コミュニティーの脆弱化によりまして、ほかの人から声をかけられると、それはもう悪い人なんだというふうな教育を施さざるを得ないというような状況の中で、かつての、つまり、大家族であり、あるいは地域そのものがみんなで子供を支えていくというような、もともと戦後教育の背景、基盤となっていた事象が、特にここ近年は大きく変貌を遂げている。これに対してどういうふうに教育環境を変化させていかなければいけないのか。これが一番の私どもの問題意識でございました。

 今ほど申し上げましたように、核家族化の進展あるいは地域コミュニティーの脆弱化、こうしたことによって、子供が本来成長をしていく中で獲得していかなければいけないさまざまな刺激やあるいは摩擦というものが、ここにもありますように、なかなか機会として得ることができない。

 異世代間のコミュニケーション機会の喪失であったり、あるいは、近所の子供の顔がわかる関係の希薄化であり、あるいは、子供自身が他人と接する機会そのものが減少しているという中で、どこが最終的にそうした子供たちにしっかりとした生きる力を育ませるよりどころになるのかということになりますと、これはもうもはや教育現場しか残されていないという中で、せめて学校現場の中では、小学校一年生から中学校三年生の義務教育課程九年間にもわたる、他世代、異世代と子供の社会の中では言ってもいいぐらいの子供の社会というものを改めて再構築をする中で、子供たちの生きる力、これをしっかりと得てもらうようなそうした教育をしていかなければいけないということで、二ページのところにも書いてございますとおり、小中一貫教育というものを私どもとして選択をしたということでございます。

 狙いは、ここに書いてございますとおり、私どもはこの小中一貫教育の導入の狙いというのは学力の向上というところに求めているのではなく、生きる力そのものについて醸成を図っていくことができるような基盤として現時点では最善、最良の方策が小中一貫教育なのではなかろうか。つまり、ここにも記載のとおり、たくましく、健やかに生きる力を育成していく、あるいは、心身の発達を考慮した見通しのある連続性の確保をしていく、そして、中学校区で一体となった教育環境づくり、こうしたことによって、下に書いてございますとおり、総体として、生きる力を育成する基盤を施していくということでございます。

 こうした理念の中で、私どもは、平成二十年に小中一貫教育の基本方針を定めさせていただき、平成二十三年度からはモデル地区における試行的取り組み、そして、平成二十五年度から全市一斉の小中一貫教育のスタートということで歩みを進めてきたところでございます。

 もちろん、小中一貫教育の本質は、カリキュラムを初めとするソフト面そのものにもあるわけでございますけれども、それに加えまして、やはりハード面でも環境整備をしていくことが大切でございます。

 次のページにお進みいただければというふうに思っておりますが、教育環境の校舎の整備ということでは、市内の中学校区のうち、二つの中学校区で一体校を実現させております。それ以外は連携型の教育ということで進めているわけでありますけれども、そのうち大崎中学校区におきましては、平成二十九年四月の開校を目指し、一体校としての整備を今進めているところでございます。

 そして、先ほども申し上げましたが、基盤そのものとしてのよりどころとなります教育カリキュラム、これにつきましても、小中一貫教育全体を見通したカリキュラムを策定し、その中で小中乗り入れ授業やあるいは合同授業等々の、小中一貫教育ならではの取り組みをこれまでも展開をしてきたところでございます。

 こうした私どもの取り組みの中で、ようやく少しずつではありますけれども、成果が見え始めているのではなかろうかというふうに考えてございます。

 次のページをごらんいただければと思いますが、不登校の子供たちの数を見ましても、実際、小中一貫教育の取り組みを始めてから、ごらんのとおり、基本的には減少傾向にございます。もちろん、小中一貫教育を始めたからすぐに効果があらわれるのかというと、これは、やはりもう少し長い目で見ていかなければいけないということではありますけれども、それでもこの短期間の間で、形として、数字としてあらわれるような状況になってきているところでございます。

 そしてまた、生きる力そのものをはかるハイパーQUテストというものがあるわけでありますけれども、この社会性育成能力につきましても、徐々にではありますけれども、向上の兆しが見え始めているということでございます。

 そして、こうした子供たちの心の安定、生きる力の育みというものが、結果として学力の向上にも資しているということが下のグラフからも見てとれるかというふうに思っております。

 そこで、この委員会で御審議いただいておりますこの学校教育法の一部改正によります小中一貫教育の制度化についてのメリットを最後にお話しをさせていただき、意見陳述とさせていただこうというふうに思っておりますが、最後のページをごらんいただきたいと思います。

 私は、今回の小中一貫教育の制度化によりまして、大きく分けて二つのメリットがあるものというふうに認識をしております。

 一つ目は、統治機構の明確化でございます。

 これは、一体校でも生ずることでありますし、連携型であればもっと生ずることであるわけですけれども、御案内のとおり、私どもは今まで、制度化しない状態の中で小中一貫教育の取り組みをしてまいりましたが、どうしても現行法制上の中での運用ということになりますので、例えば一つの中学校区に二つの小学校があるということを想定したときには、三人の校長先生がいらっしゃいます。それぞれの学校にはそれぞれの学校の授業計画がございます。

 小中一貫教育を実現していくためには、この三校の授業計画のすり合わせが求められるわけでありますけれども、現行法制上、この三人の校長の立場は全くイコールでございます、対等の関係でございますので、仮にこの三人の校長の間で対立的な状況に陥ったときには、調整を図ることができずに、結果として、望ましい小中一貫教育のカリキュラム、運用を施すことができないわけでございますが、今回の制度化によりまして、小中一貫教育学校であれば校長は一人になることができます。

 そして、小中一貫教育学校を準用する形での小中一貫教育型小中学校におきましても、中教審の答申によれば、この中学校の校長先生、小学校二人の校長先生の中で、例えば最終的に調整権を誰か一人に与える、それによって、意見が対立したときにも、最終的にはその最終調整権の発動をする中で望ましい小中一貫教育の運用を確保することができるということで、これは本当に、制度化なくしては実現することのできない最大のメリットだというふうに捉えているところでございます。

 そして、何よりももう一つ大切なことは、制度に対する信頼感がこれによって醸成されるということでございます。

 先ほど、天笠先生からも御紹介いただきましたとおり、この小中一貫教育は、それぞれの地域がそれぞれの思いの中で自発的に取り組んできたところから出発をしております。ただし、ほかの地域に比べますと、小中一貫教育という特色立った取り組みをするわけでありますので、どうしても親御さんの中には、地域の皆さんの中には、本当に小中一貫教育で大丈夫なのかというふうに不安を持たれる方が必ずいらっしゃいます。

 私ごとで大変恐縮でございますけれども、私自身、今は三期目でありますが、二期目の市長選挙のときには、この小中一貫教育が最大の争点となりました。

 このように、実際に私たちが私たちの信念で進めていくとしても、やはり、法制上のバックアップがある、これは、地域が小中一貫教育を自発的に取り組んでいくという意味においても非常に力強い援軍になるというふうに感じているところでございます。

 ですので、ぜひとも法制化を実現化していただきたいというふうに思っておりますし、小中一貫教育に実際に取り組み始めて一番思いますのは、これもまた天笠先生からも御指摘いただきましたとおり、基本的には、子供たちの生きる力を醸成するというその一点のみをもって小中一貫教育の取り組みを私どもは進めてきたわけでありますが、結果としては、小学校の教員の小学校の教員だけが持っている独特の文化、そして、中学校の教員の中学校の教員のみが持ち得る独特の文化というものが現実的には存在している中で、小中一貫教育を進めていく中で、この両者の文化が明らかに異なっている教師群がそれぞれまじり合い、お互いのよさをお互いのよさとして認め合う、こうした形が、関係が今構築されようとしております。

 今、この状態になって初めて先生方から口々に発せられるのは、実は小中一貫教育を始める前までは、中学校の先生からすると小学校の先生はふがいない、小学校の先生からしてみると、何で中学校の先生はあんなにドライなんだ、あるいは中学校でいじめが起こったときに、中学校の先生はそれを自分ごととして捉えずに、小学校のときにこの子をしっかりと教育しなかったからこうなってしまったんだというふうに言う一方で、小学校の先生は、自分たちは一生懸命育てて送り出したつもりなのに中学校の先生は何をやっているんだという基本的な不信感、これが根強く存在しているわけでありますけれども、これが本当の意味で氷解できたんだということを最近私にも市内の小中学校の先生方、かなりの皆さんが異口同音におっしゃっていただくようになりました。

 こうした、本当に小学校と中学校の先生が互いに信頼感を持ち合いながら同じ子供を見ていく、これが小中一貫教育導入のもう一つの副次的な効果だということを最後に申し添え、意見陳述とさせていただきたいと思います。

 御清聴いただきまして、まことにありがとうございました。(拍手)

福井委員長 ありがとうございました。

 次に、山本参考人にお願いいたします。

山本参考人 初めまして、和光大学の山本由美と申します。本日はこのような場にお招きいただき、どうもありがとうございました。

 私は、教育行政学と教育制度論を専攻としています。二〇〇九年ごろから、各地で小中一貫校による学校統廃合に反対する地域の市民集会に呼ばれることがふえ、現在、約四十以上の自治体に伺っています。また、二〇一二年から、心理学研究者と共同で科研費で全国の小中一貫教育の調査を行っていまして、それを踏まえて、本日は反対の立場で意見を述べさせていただきたいと思います。

 お手元に資料があると思いますが、一枚めくっていただきますとグラフなどがたくさんございますので、それをごらんになってみてください。

 義務教育学校、小中一貫教育の最大の問題は、一貫校と非一貫校を同一条件で比較した調査研究がほとんどなく、その教育的効果とデメリットが検証されていないという点だと思います。それで制度化に踏み切るということに非常に危惧を覚えております。

 まず、予想されるデメリットについて幾つか述べていきます。

 まず最初に、奪われる小五、小六期。

 初等教育と中等教育を一体化させた学校は国際的に見てもかなり例外なもので、なぜならば、児童期と思春期の発達段階に対応した学校制度は性格が異なるからです。

 二〇一一年に私どもが主催した学校統廃合と小中一貫教育を考える全国集会におきまして、この奪われる小五、小六期というテーマが浮上いたしました。従来であれば、小学校の最高学年、リーダーとして活躍して大きく成長する高学年期が、その役割を発揮できない、自信が持てず有能感が育たないといった問題が指摘されました。また、中学校文化の小学校への前倒しによって、早くから競争的、管理的な、中学校のような学校生活を強いられるといった点も指摘され、子供へのダメージが懸念されました。

 お手元にあります資料一、これは二〇一三年に朝日新聞が全国で行った調査で、全国の施設一体型小中一貫校の校長先生が多分答えていると思う調査です。成果は上がりましたかという質問、資料一では、九四%が成果があったとお答えになっています。しかし、その理由は記述がばらばらです。中には、教員の成果は感じるが、子供の成果ははっきりしないといった正直な回答もありました。

 それに対して、資料二、課題あり、こちらも八六%が課題ありと答えていました。こちらは記載が六、七年生、七年生とは中一のことですが、この接続部の問題に集中していました。七年生の対応に教職員、児童も戸惑い、六、七年生が一番の課題、七年生の充実、七年生が中学生としての自覚を持つ工夫を、成長の切れ目の小中の切れ目がうまく機能しない、卒業式にそれぞれの思いで合同卒業式に難しさといった、この接続部、そして小学校高学年期にどうやら制度的な問題があるのではないかということが示されています。

 次に、この制度の導入理由といたしまして、中一ギャップの解消と発達の早期化が挙げられています。

 お手元の資料三、四のページをあけていただければと思います。

 この中一ギャップの解消と発達の早期化は、必ずしも、教育学、心理学などで共有化され検証された概念ではございません。

 資料三にありますが、資料三は、小学校六年生から中学校一年の児童生徒を対象にいたしました、発達心理学の都筑学氏の研究ですが、小六のときに中学校に期待があった、不安があったというそれぞれの生徒が中学に行ってからどう変化したかという、縦断的な心理学の大量アンケート調査でございます。

 これを見ますと、小学校六年のときに中学に対して期待があって不安があったという層が、中学に入ってから最も変化した。熱中していることがある、将来に願いがあるというふうに、不安がある層が逆に中学に進学してから成長している。中学に対する不安は決してネガティブなものではなく、一つの段階から次の段階へジャンプさせ、子供の成長を促す機能を果たしている。これは、中一ギャップの解消という提起とは逆の意味を持っています。

 実際に中学校で不登校やいじめが起きるのは、中学の競争的、管理的な性格が問題で、段差に問題があるわけではないというふうに考えていますし、それは実証されていません。

 また、資料四に見るように、子供の自己肯定感というのは、一般的に小学校から中学校にかけて下がっていくのが正常な発達の姿であり、思春期でだんだん社会が見えてきて、自己肯定感が中学で下がって高校で上がるというのが正常な発達であって、必ずしも、自己肯定感が下がっていくことはまずいという問題でもございません。

 最初の小中一貫校、二〇〇〇年の呉市では、子供の自尊感情が五年生から落ちるということで四・三・二制のカリキュラムが考案され、それを現在の小中一貫校の七〇%が採用しております。しかし、この五年生からの下降というデータ自体、学問的に共通理解のあるものではないです。

 しかし、それ以上に今回の法制化は、根拠となる発達に基づいたカリキュラムさえ提示されず、六年が前期課程、三年が後期課程と、あえて一貫校にしなければならない根拠すら消えてしまいました。例えば小中教員の連携などはよくなると思いますが、それは、一貫校にならなくても実現可能なことだというふうに思っています。

 さらに、発達の早期化についても、現代の子供たちは、例えば性的な早熟化は指摘されています。しかし、体力や社会性についてはむしろ発達がおくれているといったような実態があり、トータルな早期化ということはあり得ないと、共同研究者の、障害児教育を専門としている研究者は指摘しています。

 それでは、一貫校と非一貫校を比較対照した調査はあるのかと申しますと、国立教育政策研究所が一度だけ行っておりますが、そこでは有意差は出ていませんでした。

 そういった意味で、資料五から紹介させていただきます。私どもの研究チームが文科省の科研費で行いました、全国の一貫校と非一貫校を比較した大規模なアンケート調査は、大変貴重な意味を持っているというふうに思います。

 まだ一回目の調査しか行っておらず、これから縦断的な調査になる予定で、最初のものだけなんですけれども、全国の約八千人の児童生徒、小中一貫校が約千三百名の児童生徒、普通の小学校、中学校が約七千名に聞いた、心理学としては大変大きな調査でございます。

 資料五を見ていただきますと、四年生、五年生、六年生の子供の自信、全体的に子供の精神的健康とか適応感について質問しているんですけれども、小学校のところで、子供の自信の数値が一貫校で低い結果が出ております。普通の小学校、中学校よりも子供の自信が低く出る。

 さらに資料六では、子供の運動能力へのコンピテンス、これは、私は運動ができるという感情、そして自分は自己価値があるという、これも、小学校段階で一貫校の方が非一貫校よりも低い結果が出ております。

 さらに資料七、子供の総合的適応感覚、自分には居場所がある、それから疲労、これも、一貫校の方が普通の小学校、中学校よりもネガティブな結果が出ています。

 このようなはっきりとした結果が出ることは、予期してはいないところもあったんですけれども、私ども研究チームとしましては、五、六年生が最上級生として扱われることによる自信、責任感、教師からの期待などが欠けているのではないか、身近に自分よりも大きな中学生がいることによる、有能感覚の獲得の機会がないのではないか、さらには、一貫校は統廃合が行われている場合が多いので、統廃合の影響があるのではないかと推測されていますが、これから縦断調査で、一人の子供の成長が年を追ってどう変わっていくのかが、追加して確認していきたいと思いますが、いずれにせよ、法制化の前の検証が緊急課題だと思っています。

 また、資料八と九は、今回、義務教育学校法制化の根拠として挙げられました、学力テストが上がった、不登校率が下がったというデータの反証をさせていただいております。

 資料八では、小中一貫教育を全市導入している京都市で学力テストが上がったということが根拠になっていますが、左側の京都府の学力テスト結果と比較いたしますと、京都府は一回も下がらず、高い。京都府は、方針的に小中一貫校は入れないという、統廃合をやっても一貫校にしないという自治体なんですけれども、京都市は、一貫校にして一回下がって、上がっている。

 この下がったという理由については、平成二十一年ごろ、研究会に呼ばれたときに、学テ対策のやり過ぎで中学校が荒れてしまったという答えを聞いたことがあるので、もしかしたら別の影響があるのかもしれません。

 ちなみに、京都は、小学校は全国四位という非常に優秀な成績でいらっしゃいます。

 資料九、品川区の小中一貫導入後の不登校率の変化ということで、文科省の資料では、小中一貫が入ってから不登校率が微妙に下がったという資料が出ておりましたが、長いスパンで見ますと、品川区は、東京二十三区の中で、小中一貫校が導入された二〇〇六年以降、不登校率の上昇度が二十三区の中で、小学校で第二位、中学校では第九位と、むしろ、小中一貫になった二〇〇六年度から不登校は上昇している。微妙に上がったり下がったりしているところだけを使われているわけなんですけれども、長いスパンで見ると、よくない結果が出ているのではないか。

 では、このようにまだ検証が不十分なのに、なぜ小中一貫校が急がれるのか。それは、何といいましても、学校統廃合を促進するために非常に有効なことだというふうに思っています。

 一月、文科省が五十八年ぶりに学校統廃合の手引を改正され、単学級以下の速やかな統廃合、スクールバス利用おおむね一時間以内の通学条件など、全国で今後統廃合が急増することが予想されます。小中一貫校はその方途として極めて有効です。資料十、朝日新聞調査をごらんになりましても、小中一貫校の導入理由、栄光の一位は、学校統廃合の中で計画されたというものです。

 また、今年度から教育委員会の首長権限の強化により学校統廃合を行いやすい条件ができて、自治体では、早速、大綱の筆頭に学校統廃合の実施を書いたところも出ております。

 2といたしまして、公教育制度の複線化、序列化を進めることができる。誰にでも平等な公教育を提供するのが六・三・三制学校体系の理念、教育の機会均等原則を制度化したものでした。それを、小学校から異なるタイプの学校を準備して、学校体系全体に重点的に予算をかけたエリート校と安上がりな非エリート校に序列化していくことが目指されます。

 グローバル社会のエリート人材に重点的にお金を配分していくことこそが平成の学制大改革の全体像で、この義務教育学校はその一つのパーツ、ただ、多分、主に統廃合をやるのがメーンな目的で、エリート校づくりはほんの少しになるのではないかというふうに思われていますが、そのような教育の複線化を進めるためにこの義務教育学校の法制化が利用されかねない。

 もう一点は、この複線化により、接続は非常に複雑になってくる。都市部の小中一貫校の接続では、多くが私立や国立に抜けてしまうために、そのまま中学に進む層は五割を切り、例えば品川区などでは、四〇%台しか一貫校でも上に進まない。

 例えば、二〇一二年の、七年生のいじめ自殺事件が起きた品川区の伊藤学園では、小学校から中学校への進学率は四四%で、周辺の中学受験に失敗した児童が進学してきて、非常に七年生の指導が難しくなっているという事態が生じています。

 何で進めるか。三点目といたしまして、教育課程の弾力化により、教育内容に財界や政府の望む内容が容易に導入できる。小学校の英語というのもこのような形で拡大してまいりましたが、子供の生活やニーズから必ずしも出発した内容ではなくて、トップダウンでマニュアル化された教育内容が学校現場におりてくることが多々あります。例えば品川区の市民科といった新しい教科などは、その典型的なものと言えるのではないでしょうか。

 最後に、国際的な動向について少しだけ触れさせていただきたいと思います。

 最後の資料十二、十三になりますが、日本が教育改革を後追いしておりますアメリカにおいては、学力テスト体制のもと、学校統廃合が速やかに進められておりますが、その中でも、最も大きな統廃合が行われましたデトロイト市のデータが資料十二に掲げられております。

 デトロイト市は、二〇〇三年に二百六十六校あった公立学校が、二〇一三年には三分の一の九十七校にまで減らされています。中学校は三十校から一校に、小学校は百二十五校から十六校に減らされていますが、それは、小中一貫校をつくることによって、このような公立学校数の劇的な減少をもたらしています。

 このように、義務教育学校は学校統廃合に非常に有効に機能するわけですが、その制度的な課題についてはまだ検証が不十分だと思いますので、そのような点を十分検証されてから法制化に踏み切っていただければと思います。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

福井委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

福井委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大見正君。

大見委員 自由民主党の大見正でございます。

 きょうは、参考人の皆さん方にはそれぞれお忙しい中お出かけをいただき、貴重な御発言をいただきました。本当にありがとうございました。私からも御礼を申し上げたいと思います。

 義務教育学校の設置というのは、制度としてこういうものを設置できるということで、基本的には、設置者の気持ちというか、そういったもので選ぶことができるというように私は理解をしておりますので、どういうところに着目をして設置をするかしないかというところ、これが非常に大事になってくるのではないかなというふうに思います。

 それで、今お話をるる伺いまして、それぞれメリットがあるというところは、國定市長さんの方からは、小学校、中学校それぞれの先生方の文化があって、それが相互に融合することでまた新しいものが生まれるというお話もいただきましたし、また、天笠先生の方からは、九年間を通したカリキュラム、こうしたものを通じて小中学校の子供たち、児童生徒の理解が教育の面で深まってくるというようなお話もいただきました。また、山本先生からは、逆のところもあるんじゃないかというところも御指摘をいただいたわけであります。

 私自身は、この四月から新しい教育委員会制度というのが実はスタートをしておりまして、そういう意味では、首長の教育行政に関する権限というのが相当強まってきているというふうに理解をしております。それは、教育大綱のようなものを定めることができるであるとか、あるいは、総合教育会議の中でいろいろな市の行政の基本方針を定めていくことができるとか、従来にちょっとなかった形がこの四月一日から実はスタートをしている。

 そのスタートをしている制度にのっとった形というのは実はまだできていないということだというふうに思いますけれども、ただ、その新しい教育委員会制度で何ができるのかなということも少し思いながらお話を聞かさせていただいておりますと、例えば、教員の相互に行き来をすることであるとか、あるいは九年間のカリキュラムを、中一ギャップの解消等々も含めてもう少し総合的に見直そうとか、そうしたものも、かなり首長の意向というものも反映しながら、同じ市の中であるいは行政区の中でできてくる部分もあるのではないかなというふうに思います。

 その意味で、どうしてもそれを超えて、義務教育学校を設置してやらなければできない部分というのと、今の新しい教育委員会制度のもとでできる部分というのもきっとできてくるんだろうというふうに思いますけれども、そこの境目についてはどんなことを今、この四月からでありますけれども、お考えになっているのか。それぞれ三人の先生方からの知見を少しお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 初めに天笠先生の方からお願いします。

天笠参考人 失礼いたします。

 今御指摘された教育委員会制度の改革というのは、何といっても、もうおわかりのとおり、このたびのは、首長の存在、意向、影響力が教育行政全体に浸透するというふうな、そういうことがその一つだと思います。

 その上で、そのことは何を意味するか。知事部局、首長部局の企画プランということと、教育委員会における企画プラン、これの融合、一体化、創造、そういうことが起こってくるということが今後考えられるかと思います。

 そういうことは、地域における子供の成長、発達、育て方というのが、これまでは比較的教育委員会の方が企画、立案、実行ということをとっていたのが、首長部局と一体となって取り上げるということが、より可能性を広げたというふうな捉え方もできるんじゃないか。

 ということは、いろいろな自治体でも動きが既にありますけれども、ゼロ歳から十五歳、こういうことで子供の育て方ということが、これまではどちらかというと二元的、あるいはそれぞれの場所で進められようとしていたのが、より一体化、構造化していくということがより可能になってきたんじゃないかというふうに思います。

 そういう中に、小中一貫、連携というのが一つの背骨のような形になるということが大切になってくるんじゃないかというふうに私は捉えたいと思いますので、ですから、そういう意味からすると、小中一貫というのが、より、それぞれの自治体における子供を育てる大きな背骨としての役割を、存在感を持って果たしていくということ、そういうことを期待を持って、御質問に対してのお答えというふうにさせていただきたいと思います。

 失礼しました。

國定参考人 今回の教育委員会制度改革との関係ということでありますが、率直に申し上げますと、私ども人口十万二千人の都市であるわけですけれども、少なくともそこぐらいの自治体になりますと、条例提案権も教育に係る予算編成権も、これは首長にもともとありますので、教育委員会制度が今の形で改革されなくても、そもそも、私がうんと言わない限りは議会に提案することもできないわけですので、教育委員会とはもう意思疎通せざるを得ないような状況になっている。

 加えて申し上げますと、教育委員さんも、私自身が指名をして議会の同意をいただくという時点で、もともと一蓮託生の関係になっているということであります。

 したがいまして、今回の教育委員会制度の改革によって何が変わるのかと言われると、端的に申し上げると、余り変わらないのではないかということであります。

 ただし、今回の総合教育会議が設置されることによって、これまでは、教育関係については、議会を初めとして、公の席でもなかなか市町村長が前面に出てはっきりと物を申し上げることができにくい状況だったわけでありますけれども、総合教育会議が設置されることによって、いよいよ市町村長も公の場で発言をしなければいけない。逆に言うと、それだけ強い、重い責任を市町村長もまた負わなければいけないという意味では、小中一貫教育学校に踏み切るのか踏み切らないのかということも含めて、これまで以上に市町村長に覚悟と責任がより求められてくる。

 そういう意味では、今回の教育委員会制度の改革というのは、プラスの方向にも資するのではなかろうかというふうに思っております。

山本参考人 教育委員会制度の改革によって首長権限が強化されたということにより、首長が思い切った教育改革を実行するということが可能になると思います。

 もちろん、経済的な目的で教育をこういうふうに変えていきたいというようなこともあると思いますけれども、例えばシカゴ市では、教育委員会の首長権限を強化するのと同時に、学校参加も強化するという改革が行われました。

 今回、教育再生実行会議第六次提言でコミュニティースクールの全校配置が提案されましたが、首長権限が強化されて、こういうような教育制度、教育改革をやっていきたいという首長の権限も実現できるけれども、それをやる際に、トップダウンではなくて、学校参加も充実させていってほしい。コミュニティースクールをつくられるとしたら、最初に、保護者の意向を反映して、義務教育学校にするとかしないとか、そういうことも地域の意向を十分反映させてやっていっていただきたいというふうに思っています。

 以上です。

大見委員 それぞれありがとうございました。

 私は、義務教育学校の選択肢もふえるという意味では、國定市長さんが二期目の公約で戦いをして、市民の皆さんに理解をいただいたというそういう強い思い入れよりは、こういう制度もあるから選択ができるという意味では、首長さんの選択肢が若干広がった。思い入れとか熱意だとか理念だとか意気込みだとかいうよりも、そういう選択肢が広がったという点ではいいのかなというふうに思っておりますが、ただ、そういう意味では、今の制度の中でもやれる部分が相当出てくるというのも一方で事実だろうというふうに正直思います。義務教育学校を設置しなければやれない部分というところも少し考えていかなければいけないのかなというふうに思います。

 それは、例えば、きょうは午前中、港区にありますお台場学園という小中一貫の取り組みの学校を拝見させていただきました。

 そこでお話を伺いましたときには、中学校から小学校へは授業のヘルプで相当行くということを伺いましたけれども、では、小学校から中学校の教室へはどうだということも伺いました。

 そのときには、一つには免許の制度、これを厳格にやっているからそれはやっていない、できないということでありました。これが義務教育学校等々の設置によりますと、免許併有ということもありますので、これができるようになるというのは一つメリットだろうというふうに思いますが、ただ一方で、小学校はクラス担任制でありますので、中学校へ出かけていったときの穴を埋める手だてがないということも伺っておりますので、これは、制度は変わったとしても課題として残ってくることだろうと。

 そうすると、中学校から小学校へ出向く先生の一方通行の方がきっと多いのかな。そういう意味では中学校の先生の方に過大な負担がかかるというところも出てくるのではないかな。その辺をどういうふうに整理をしていくのかというのが一つ首長さんの判断としてあるのかなというふうに感じました。

 また、もう一つは、中一ギャップのお話も随分ありますけれども、では、小学校低学年にとって、あるいは中学校三年生にとって何かいいことがあるのか。そういうところもやはり判断をしていかなくてはいけないかなというふうに思いますので、先生の負担と、それから、中一ギャップ対象学年、小学校五、六、中一以外の学年のメリットについてどんなふうにお考えなのか。

 これは、天笠先生と山本先生にお伺いをさせていただきたいと思います。

天笠参考人 今議員御指摘された幾つかの課題、例えば、中学から小学校への行きはあるけれども、片や小学校から中学校のが、人的なスタッフの整備等も含めて難しいですとかということと、ある意味でそういう課題がより明瞭になったということが、制度化という道を開くことの必要性というのを一つ出してきたという言い方もできるのではないかというふうに思っております。だから制度化して、そういう課題をできるだけ埋めていく、改善していく。そのために必要なのではないかということ。

 それからもう一つは、例えば小学校三年生云々というお話ですけれども、よく言われるのは、中学生で難しい状態に至った子供というのは、実はさかのぼってみると、小学校の二年、三年、そのあたりのところに、いろいろな指導上の行き違い等々も含めて第一回目の課題があったというふうな話を現職の先生からよく伺うことがあるわけですけれども、今日的な体制からいくと、そういった場合の課題対応に当たって、現状では、小学校と中学校の先生は一緒になって検討するというのは現実にはほとんどないわけでありますけれども、実は、そのときにも、小学校と中学校の先生がその子供の成長、発達に向けて協議を重ねるとかさまざまな手当てを検討するとか、こういうこと等も、義務教育のこの学校の設置ということによって一つのシステムが開かれるというふうなこともまた捉えていいんじゃないかなというふうに思っております。

 以上です。

山本参考人 先ほどの御質問に対しましては、義務教育学校でなければできないということは私はないと思うんですけれども、いろいろなアンケートを見ると、改善点として、小中教員の連携がよくなったというのはどんなアンケートをやっても必ず出てくるので、そういうメリットはあるんだというふうに思っています。ただ、それは校舎を一つにする必要はないとは思うんですけれども。

 先ほど、すごくいい御質問で、乗り入れ授業のことを聞いてくださったんですけれども、例えば、全部施設分離型で小中一貫校を入れております東京都三鷹市におきましては、一度、教職員に小中一貫校についてのアンケート調査をしたことがございまして、ちょっと古いんですが、二〇〇九年にアンケートをとって、回収率三七%、四割ぐらいなんですが、八割の方が非常に負担を感じているという中の最大の理由が、その乗り入れ授業。

 特に一番、教職員の多忙化の中でも、小中お互いの距離が離れた乗り入れ授業のために、クラスの授業が担任不在になってしまうとか、打ち合わせに非常に時間がかかるというような、そういうデメリットが挙げられています。

 二番目に多かったデメリットも、忙しいために子供にしわ寄せが行くということで、ここでも乗り入れ授業の問題が非常に出ております。特に、中学校の先生が小学校に行くときに後補充という非常勤の先生をつけることになって、そのためにその授業が学級崩壊してしまうとか荒れてしまうとか、本末転倒のような事態がこのときのアンケートでは紹介されています。

 いずれにしろ、先生方の非常な努力の中で分離型の小中一貫教育というのは行われているというふうに思っています。

 小学校低学年に対する影響ということでは、私どもは、主に小五、小六に非常に困難があらわれるというふうにいろいろ研究結果などから考えておりまして、それ以下の学年については余り考えたことがないわけなんですけれども、やはり、学校行事などでの出番の問題ですとか位置づけの問題でいろいろな変化は生じていると思いますので、今後、そういうような視点も考えていきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

大見委員 ありがとうございました。まだまださまざまな課題があるということだというふうに思います。

 その課題の一つでありますけれども、私なんかは、中学校に入ると、これは課外授業でありますけれども、部活、これにやはり一生懸命打ち込んでいくというのが一つ中学生の象徴的な行為だろうというふうに思います。小中一貫校を実施されているところが多いというのは、先ほどのお話の中にもありましたとおり、学校の統廃合、これは、少子化であったり人口減少であったり、あるいは過疎化というのもあると思いますけれども、非常に学校の規模が小さいというのがあるのかなというふうに思います。

 午前中見てまいりましたお台場学園でも、中学校の部分、学年はクラスが一クラスでありますので、それも二十人、三十人ということでありますので、特に競技スポーツ、団体スポーツ、こうしたことに取り組むことが実際できないというふうに思っております。

 そういう意味では、学校規模をどういうふうにしていくのかということも、設置者がその選択をする意味では非常に大事な要素になってくるだろうというふうに思います。

 児童生徒が少なくて統廃合せざるを得ないようなところであればこれは仕方ないかもしれませんけれども、選択ができるというところでは、何を基準にやっていくんだというところでは、やはり児童生徒、特に中学校であれば、部活も含めて学校の規模をどういうふうに維持をしていくのか。

 これは、団体スポーツ、野球であったりサッカーであったり、あるいは、柔道、剣道のような個人スポーツであっても団体の部分というのもありますので、どこまで見ていくのかということもあろうかと思いますけれども、聞いております課題の中には、教育面の課題というのは非常に多かったんですけれども、競技スポーツであったり団体で心を養っていくというところの研究発表もなければ、今までの文献の中にも余り触れられておるところがないということもあります。

 それから、学校の施設の面でも、例えばお台場学園では、小学校の体育館と中学校の体育館と二つあって、バスケットボールの高さはそれぞれ違うということでありますし、プールも床が可動式になって、非常にすばらしい設備の中でやっておられるということであります。

 連携型の小学校、中学校であれば二つの施設があるわけですけれども、一体型にするときには、設備を一つ整えるにしても相当難しい面が出てくるのではないかというふうに思いますので、その設備面とかあるいは部活の面、これをどういうふうに捉えていけばいいのかということ、もう時間がございませんので、お三方から短く一言ずついただければというふうに思います。

 よろしくお願いします。

天笠参考人 小中一貫とそれから部活の面というのは、御指摘のように、よりこれから考えていかなくちゃいけない課題性を持っているのではないかというふうに思っております。

 それと恐らく学校の規模というのは非常にかかわってくるのではないかと思うんですけれども、これまでの小中一貫の場合には、先ほどの御指摘にもありましたけれども、一定の規模を確保する、そちらの方での小中一貫、こういう動きは比較的ケース等々もあるわけでありますけれども、都市部における小中一貫という場合には、どのぐらいの規模をもってよしとするかどうかというのはまだまだ研究面も足りないというふうなのが、これは私の認識でありますけれども、課題ということで、ですから、それぞれどのぐらいの規模をもって言うならば義務教育学校の適正規模というふうに考えるかどうか、こういうことというのも、今後の検討事項として深めていく必要があるんではないかというふうに思っております。

 いずれにしましても、そういう条件整備的な面というのは、先ほども申し上げましたけれども、義務教育学校の設置ということが、そういうことをより話を詰めていくとか、そういうことをより整備を進めていくようなそういうきっかけ、呼び水になっていくんじゃないかというふうに私は思っておりますので、ぜひそこら辺のところをさらに検討を深めていきたいな、いければというふうに思っております。

 以上です。

國定参考人 まず、小中一貫教育における部活動との関係でありますけれども、これは私どもの教育委員の中からも全く同じような御指摘をいただいておりまして、正直なところ、まだ未着手でございます。これは今後の検討課題だというふうに思っております。

 それから、二点目の施設整備の関係でございますけれども、私は、小中一貫教育の理想的な環境は、やはり一体校だというふうに思っております。

 ただし、これを実現させていくためには多額の費用がやはりかかるわけでありまして、現行法制では、やはり小中一体校についてはなかなか国庫補助をいただけないという状況でもございますので、ここは逆に先生方からも、文科省において新たな小中一貫教育学校の整備促進に向けた予算化、ぜひとも実現していただければなというふうに思っております。よろしくお願い申し上げます。

山本参考人 小中一貫校と部活の問題と申しますと、都市部などで、放課後、一貫校の校庭が部活動で占有されてしまうために小学校の子供が遊べないというような、そういう問題はいろいろ浮上しているわけなんですけれども、それだけではなくて、例えば、小学校単位で行われている少年野球とか少年サッカーとか、小学校区をベースにした地域スポーツが一貫校になるとなかなか実施できない、そういうものが廃れてしまう、そういうような懸念もあるわけなんですけれども、そういうことについては、今後、コミュニティーレベルで協議していっていただければと思います。

 小規模校で競技スポーツができないという問題につきましては、地方などに参りますと、複数の学校をまたぎました混成チームで部活動に参加するとか、さまざまな取り組みが既に進んでおりますし、指導者なども地域人材を生かした取り組みなどが進められていて、そのような面では、もう少しその地域全体で小規模校を支えていくような体制が組まれていくことを望んでいます。

 以上です。

大見委員 ありがとうございました。

 時間になりましたのでこれで終わりますけれども、さまざま、義務教育学校を選択していく上では、例えば、総合型地域スポーツクラブが設置されているか設置していないか、あるいは、学校選択制もどうかということもあわせて判断をするんだろう。そういう基準というか、判断基準というものをもう少し明確化していく必要があるのかなということを感じさせていただきました。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

福井委員長 次に、郡和子君。

郡委員 こんにちは、民主党の郡和子です。

 三人の参考人の皆様方には、お忙しい中をこの委員会においでいただきまして、それぞれのお立場から御意見を開陳いただきました。大変参考になる御意見をいただきましたこと、改めて、私からも御礼を申し上げたいと思います。

 特に、実践する立場の首長さんとして、三条市の國定市長のお話、こういう御苦労もありながらされていて、こういう成果に胸を張っておられるのだなということを聞かせていただいたわけですけれども、三条市では平成二十五年から全ての中学校区において小中一貫教育に取り組まれたということですが、その以前の準備段階がやはり重要であったんだろうというふうに思います。教育委員会、また、地域の皆様方も巻き込んでの検討の結果が今日に結びついているのだろうなというふうに聞かせていただいたところでございます。

 この制度をさらに大きく育てていくことが重要であるというふうなことを市長はおっしゃられたというふうに認識いたしますけれども、なぜこの小中一貫教育が期待をされているのか。そして、それをなぜ推進していくのか。子供たちの成長、それからまた、教職員の方々のスキルアップにも役立つというお話があったわけですけれども、もうしばらく、詳しくお尋ねをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 中学校区の枠組みの中で、教職員の方々が目指す子供の像、育っていくべき子供の像というのをどういうふうに共有なさっているのか。そして、その目標を達成するために、それぞれどういうふうな連携、取り組みをなさっているのか。そして、目標が達成できたなという評価のあり方ですか、これはどういうふうになっているのか。その点、ちょっと詳しくお話しいただけないでしょうか。

國定参考人 まず、小中学校の先生方の連携ということだと思っておりますけれども、今は、校長、教頭、そして教員等、それぞれのレベルごとで意思疎通を図っているということであります。

 ただし、実はここがすごく難しいところでございまして、小学校の先生、中学校の先生、それぞれ自分の仕事を持っているという中で、お互い小中一貫教育の推進のために意識合わせをしていく、その会議の場をつくることそのものが実はなかなか難しいというのが現状でございまして、月に一回ないし二回、先生方同士が意識合わせをする場ができる、これを実現させること自体が実はすごく難しいというのが、正直なところ、現状でございます。

 そして、評価をどういうふうに考えているのかということでありますが、一義的には、やはり数字として見ていくことが、市民の皆様方あるいは保護者の皆様方に対してもしっかりと評価をお示しすることができるということにもなります。

 先ほどお配りをさせていただきました資料の中で、「社会性育成能力の向上」というのがございます。これは、ハイパーQUテストというテストがあるわけですが、これを全学年に毎年毎年課すことによって経年変化をはかっていく、ここが私は小中一貫教育の評価が一番あらわれてくるところだというふうに思っているところでございます。

郡委員 ありがとうございます。

 三条市の場合、先ほどの御説明では、施設一体型の学校が二つで、七つは連携型、つまり、敷地も場所も違うところにある小学校と中学校が一貫教育、連携をしているというお話でした。

 文科省が、天笠先生も御協力をいただいた小中一貫教育等についての実態調査というのをやられて、この結果がありますのですけれども、この中で、実に施設分離型というんでしょうか連携型、このところに対しての、いろいろな連携のとりにくさについて御回答がございました。

 すなわち、学校間の距離があることによって、打ち合わせするのも大変であるとか、子供たちの移動の時間にもいろいろと影響があるですとか、それから、相互の乗り入れについても、時間が読めないところもあって、やはりこれが問題として挙げられているということでしたけれども、この調整に苦労する実態、これは、二十七年度には新しく一体型がもう一校ふえるということでしたけれども、今後の方針としてどういうふうにお考えなのか。それと、今ある地域連携の、一体型ではない学校の中でも、より綿密な連携を図っていくためにどういうことが必要であるとお考えになっているのか、お尋ねしたいと思います。

國定参考人 先ほど、小学校と中学校の先生の連携がなかなか難しいと申し上げたのは、今ほど委員さん御指摘のとおり、一体校の方はさほど難しいわけではございません。やはり連携型が一番難しいところでございまして、ここをどういうふうにしていくことが一番スムーズな小中一貫教育の実現に資するかということになるわけですけれども、そのためには、やはり中学校と小学校の時間割りをある程度しっかりと、そろえるべき時間帯についてはそろえていく、あるいは、学校の先生方の中で、この曜日のこの時間はお互い連携、意思確認をする場としてちゃんと割きましょうという、組織人としてのしっかりとしたタイムスケジュールというものを調整していかなければいけないわけでございます。これは、今回の法改正で制度化が実現すれば、非常にそこはスムーズに進んでいくものというふうに思っております。

 やはり学校の校務をつかさどるのは校長先生でございますので、例えば、二つの小学校、一つの中学校をもって構成している連携型の小中一貫教育の場合、三人の校長先生が出現するわけでありますけれども、これが仮に小中一貫教育学校に進んだ場合には校長先生が一人で済む。そうすると、そこの教職員の皆様方には、校長の、校務をつかさどるという権限をもって調整を図ることができる。

 あるいは、それを準用する形での小中一貫教育型小中学校におきましても、私どもの今の考えております基本方針では、三人の校長先生の権限のうち、調整権限を誰か一人に付すことによって、疑似的な、一人校長と同じような環境をつくっていく。これを制度化された暁には、私どもとして、精力的に制度整備、教育委員会規則の改正という形で整えてまいりたいというふうに考えております。

郡委員 ありがとうございました。

 ぜひ、教員の皆さんたちの多忙化というのがさらに進んで、子供たちと向き合う時間が少なくなるようなことにならないような、そういう配慮というのが必要なんだと思いますし、お取り組みをいただきたいというふうに思うところです。

 今の点につきまして、天笠先生、いかがでしょうか。

天笠参考人 今の御質問、連携校における一貫性というんでしょうか、それをどういうふうに担保するのか、あるいは、それを実現するためにはどういう人的な資源というものについての整えをするのか、そういうふうに捉えたときに、私は、一つの自治体の教育委員会のこのことについての基本的な姿勢、指針、方針、それが重要なんじゃないかというふうに思っております。

 要するに、小中一貫の姿を、その管下の教育委員会は、どういうことをもってその教育委員会の姿とするのかどうなのかというその共通するところと、それから、それぞれの具体のところというんでしょうか、個別のところで、要するに、どういうことかと申し上げますと、隣の学校まで行く物理的な距離によって連携の姿、形態は、ある意味、十人十色だというふうな、そういうのを前提にしながら、それぞれの学校間の連携とか一貫というのを具体的にそれぞれつくり出していくということが基本的に大切なんだということだと思います。

 もちろん、全部を全部一貫校にしてしまうというふうな話だと、今申し上げたこととちょっとまた話が違ってきますけれども、現実にはいろいろな財政的な面等々で難しいという現実があって、当面は今の施設を前提にしてというところになるかと思いますので、ですから、例えば道一本で隣の学校に行ったり来たりできるような、そういうところの小中の先生方の行ったり来たりの姿と、一定の、それこそ自動車等々を利用しないと隣の学校まで行くのにかなり難しいというような場合では、全然行ったり来たりの姿が違ってくるというふうに捉えるべきだと。

 例えば、非常に日常的に行ったり来たりが担保するのが難しいというならば、例えば集中的にとか、あるいは夏季休業に一緒に研修をする場を設けるとか、日常はそれぞれの現状を前提にしながらの形態とかということ等で、そういうことをそれぞれ工夫してもらって生み出していくことが大切であって、何がそのときに今回の制度化でポイントになってくるかというと、二校なら二校、三校なら三校の校長間の相互の関係ということについて、どなたが中心的なメンバーになるのか、あるいはどなたが調整役に回っていただくかとか、それを整えるということが、今申し上げたことを形骸化させない、具体化させるための一つの手だてということになるんじゃないかなというふうに思います。

 以上です。

郡委員 先ほどお話が出ましたけれども、きょう午前中は港区のお台場学園に、また民主党といたしましても、文部科学部門でつくば市の春日学園に参らせていただきました。

 この春日学園は千二百人規模の学校で、施設が一体になっていて、本当にびっくりするような教育で大変人気が高く、この学校に入りたいがために近くに引っ越されてくる方々もおいでになっているということを聞いてまたびっくりいたしましたのですけれども、今、天笠先生もおっしゃられたように、それぞれの地域によって、たとえ小中一貫校をやろうとしても状況は違ってまいりましょうし、いろいろなアイデアをやはり地域で出していかなくちゃいけないということなんだろうなというふうに思います。

 ところで、小学校、中学校の一貫教育を行うに当たって、教職員の免許の併有のことについて触れさせていただきたいと思うのですけれども、今、小学校の教員が中学校の免許をどれぐらい持っているかというと、全国平均で五九・九%だそうです。きょう、三条市長がおいでですけれども、新潟県は七一・三%。一方、中学校の教員に占める小学校免許の併有者数は、全国平均で三割ほどでしかありません。新潟県は二五・六%。ですから、教科担任が小学校で、小学生にもよりよい指導をするというふうなことをやりたくてもなかなかできないという状況も、ここに横たわっているんだろうというふうに思います。

 ぜひ、この点について、もちろん、免許を併有していただくこと、これを促進することも重要だろうと思いますけれども、これについての考え方を、それぞれ一言ずつで結構でございますので、お願いをいたします。

天笠参考人 実は私は、この小中一貫の検討委員会のメンバーでもあったわけなんですけれども、そのときは、今の御質問に対して個人的な立場から、こういうことですから、もっといわゆる義務教育免許状にまで踏み込んだらどうかというふうな、そういうことを個人的な立場からは申し上げさせていただきました。

 ただ、現実的な実情からしますと、というところが、今お話しいただいたような一つの現状対応ということになったときにはということで、それが義務教育免許状になった場合には、それこそ、所有率とかそういうことになると賄い切れないところが現実のところであって、今の状況を何とかするとというふうな話の中で、ようやく今回の、とりあえずの成案ができたんだというふうな、そういう受けとめ方を私はしております。

 要するに、やろうとしていることは、いわゆる認定講習等々をより広げたりですとかで対応して、免許状を所有していない先生方はできるだけ取得していただくというふうな、それを基本的に打ち出して、そしてというのが今の状況であって、そのときには、義務教育学校ですとか、そういうところの勤務年数等々をより勘案する、こういうスタンスをとってきたわけであります。

 ですから、当面、そういうところからすると、ある意味でいうと、ベターな対応の仕方だということだと思っておりまして、そういう点では、できるだけ免許を取っていない先生は取っていただくような環境の整備というんでしょうか、条件の整備ということをできるだけ進めていただきたい、そういう申し方になるかというふうに思います。

國定参考人 天笠先生がおっしゃられるとおりでございまして、それこそ、小中一貫教育の特別部会の中でもここは結構大きなテーマでございました。

 結論から申し上げますと、これは免許の併有取得を促進する以外道はないというふうに思っているわけですが、実際、私どもの教育委員会事務局もそこはかなり頭を悩ませているところでございまして、実際に併有取得をしようとするためには、三条市の市内では、その認定講習を受けることができないわけですね。新潟大学まで行かなければいけないというようなことを考えますと、一つの教員免許を持っていて、実際に、ある程度の経験年数を経ている先生方については、もっと柔軟に他校種の教員免許が取れるような体制づくり、これは、今後の課題として国の方からもぜひとも後押しをしていただきたいなというふうに考えております。

山本参考人 私どもの大学では、現在、小学校教員免許と中高教員免許を取れるようになっているんですけれども、今、これから文科省の方で、小学校免許と中学校免許の両方が取得できるような弾力化を、制度化を進めておられるということで、私どものような私立大学の側はこれからどうなっていくのかというと、大学の教職免許の生き残りというか、教員免許を出す方の生き残りをかけて非常に切実な問題ではあるんです。

 実際には、働いていらっしゃる先生方で片方の免許しかお持ちになっていない方は多いと思うんですが、特に懸念されるのは小学校英語。英語の先生が小中両方教えられるということは、今は非常に求められてはいるんですけれども、小学校英語ができる教員というのが非常に払拭しているというか、代役でも小学校英語を教えられる教職の先生というのは足りなくて、今、奪い合いのような状態になっているんですけれども、今後、もし義務教育学校が法制化されていく場合、特に小中一貫の英語教育などをやっていくような人的条件などがかなり厳しくて、これから緊急の課題として整備していかなければいけないのではないかというふうに思っています。

郡委員 ありがとうございます。

 今、免許の話で、課題についてちょっと触れさせていただいたわけですけれども、先ほど三条市長からは、施設整備に対する国の支援についても少し言及がございました。新しい施設をつくるに当たって、もう少し国の補助が欲しいということのようですけれども、これを、ちょっと短くで結構です、加えて御説明いただければと思います。

國定参考人 今、国の方では、耐震の関係での改築費用、あるいは統廃合の関係での改築費用、ここについては大変手厚い補助をいただいているわけでございますけれども、小中一貫教育そのものを進めていくための一体校整備というふうになりますと、基本的には、現状では単独事業で行わざるを得ないということでございます。

 恐らく、今回の法制化が実現いたしますと、小中一貫教育学校そのものについては負担金制度に乗っかってくるのではなかろうかというふうに推察しておりますけれども、やはり地域事情を考えますと、小中一貫教育型小中学校でも一体型を志向する市町村というのは必ず出てくると思いますので、こうしたところについても国の方からの財政支援措置を頂戴することができれば大変ありがたいなというふうに思っているところでございます。

郡委員 ありがとうございました。

 先ほどちょっと申し上げましたつくばの春日学園は千二百人規模の学校でございましたし、きょう伺ったお台場では、小学生の数と中学生の数が、中学校に上がると随分少なくなっているのに愕然といたしました。また、三十人以下の大変小さな小中一貫学校も、今現存しているわけでございます。

 それぞれの地域事情というのがあろうかとは思いますけれども、やはり学校というのは、子供たちの施設なばかりではなく、地域のコミュニティーの中心でもあるわけでして、統廃合ありきから始まるべきではないということを最後に申し添えて、ただ、きょう伺ったお台場学園では、お母様が、中学校の生徒たちの保護者は初め反対の声が多かったそうですけれども、ここ数年の取り組みで偏差値が一〇ポイント以上上がったということで、みんな賛成に回って大きく発展しているんだということをお話しいただいたということもまた申し述べさせていただいて、私の質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

福井委員長 次に、牧義夫君。

牧委員 参考人の皆様方には、お忙しい中お運びをいただきまして、ありがとうございます。また、お話をお伺いさせていただきました。賛成の立場あるいは反対の立場から、それぞれ示唆に富む発言をいただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。

 まず質問をさせていただきたいと思うんですけれども、今回の法改正、学校経営そのものの話と学習指導あるいは生活指導上の問題とに、ある意味、少し切り分けて考える必要もあろうかと思います。

 先ほど、天笠先生のお話で、発達と接続の部分について、成長、発達と制度とのすり合わせというお話がございました。今回の法改正というのは、その前提になる、これまでの六・三、九年間の義務教育を前期、後期というふうに区分するだけと言ったらちょっとあれなんですけれども、先ほど山本先生のお話だとそういったようなニュアンスがございましたけれども、これをベースにしていることは間違いないと思います。

 そもそもこの九年の仕組みというのが、これが妥当なのかどうなのかということもやはり検証した上で進める方がいいんじゃないかなと私は思います。四・四・四制みたいなお話もございますし、そもそも、この発達と接続のお話、天笠先生と山本先生、学者の御両人にまず御意見をお聞かせいただきたいんですけれども、そもそも論として、どうあるべきかというお考えをお持ちなんでしょうか。

天笠参考人 御質問からするとややずれたことから話を始めるかもしれませんけれども、小学校の高学年の現状をどう捉えるかというふうなことなんです。御承知のようにというか、大変心配されることなんですけれども、学級崩壊ということがよく取り上げられ、話題になったことは議員の皆さんも御承知のとおりだと思うんです。私は、学級崩壊というその現象というのは、小学校高学年の固有の現象というふうな、そういう捉え方をしております。

 もちろん、小一プロブレム、こういう言い方もあって、小学校一年生がなかなか学級になじめない、学校生活になじめないというふうなことも、それも含めて学級崩壊というふうな言われ方をする場合もあるんですけれども、私は、学級崩壊というのは、基本的に小学校高学年の、子供たちと学級担任の先生の人間関係の形成、あるいは学級における相互の関係の秩序のあり方というところの、一つの難しい現象ではないかというふうに、そういうふうに捉えているわけなんです。

 そのことは、何を申し上げたいかというと、小学校五、六年生ぐらいまでに成長した子供と現状の学級担任制という、言うならば、日本の学校が明治以来とってきたシステムというんでしょうか、そのこととのすり合わせというところに一つの、制度の問題とそれから子供の問題というのが、そのところに一つ象徴的に私はあらわれているところじゃないかなという、そんな捉え方、理解の仕方をしているわけで、そういう点からすると、小学校五、六年生のいわゆる学級崩壊というのが、一つの背景として今申し上げたことがあるんじゃないかと。

 ついては、ここのところについてどう手当てしていくのかどうなのかというふうなことが一つと、それから、かねてから言われるように、中学校へ行くと不登校等々の数が増加してくる、ここのところをどういうふうにしていくんだというふうな、そういうことの手当て、対応というところで、もちろん学級担任の先生の指導上の工夫とか学級経営上の配慮とか、こういうことというのは、これまでさまざまに言われてきたわけでありますけれども、今回のこの小中一貫義務教育の設置というのは、ここのところ、こういう申し上げたような現象を、どういうふうに制度等の面とすり合わせていくのかどうなのかというときに出てきた一つの考え方、アイデアというのが小中連携、小中一貫、こういうことにつながっていくんじゃないかというふうに、このたびのを捉えているわけなんです。

 ですから、もともと制度論として、だから義務教育学校なんだということよりも、今のそういう現象の対応を制度との関係ですり合わせて捉えていくとするとというところから出てきた、極めて現場的なある意味での対応というんでしょうか、そのことが小学校と中学校のつながりとか接続ということをもう一段検討していこうという、さらにそれを一歩も二歩も進めたところに、今この場で検討されていく制度論のありようというんでしょうか、そのことにつながっていくんじゃないかなというふうに思っておりまして、まずはそのあたりのところが一つだというふうに思っております。

 そういう点からすると、次のテーマの発展からすると、義務教育のその先をどういうふうにしていくのかどうなのかというふうなことがまた出てくるかと思うんですけれども、そのあたりになってくると、いわゆる六・三・三・四とか四・四・四とか、そういう制度論の話に、そこにつながってくるところがあるかと思うんですけれども、まずは義務教育学校の制度化というところとのかかわりで申し上げると、今申し上げたようなことになるかなというふうに思っております。

山本参考人 小学校と中学校は、それぞれ発達段階の違う子供たちを対象にした、それぞれの固有性、そこでの発達課題というのがあるというふうに、御指摘のように考えています。

 小学校というのは、まだ児童期で、非常に生活も身近な人間関係の中で生きていて、余りまだ客観的な思考ができなくて、地域の中でしっかり育っていくということによって人格のベースをつくる。学習も、できれば、生活概念を豊かに耕すというふうに私ども教育学では言うんですが、生活概念がしっかりと耕されていないと、その後の抽象的な、科学的な思考が入らない。その基礎をつくる時期というふうに考えております。

 ですので、学校も、できれば地域の身近な徒歩圏に小学校はあって、コミュニティーがしっかりと学校を支えていて、そこで生活体験や自然体験が豊かにできて、学級集団で人格形成がきちんとできる、教師が責任を持って担任教師ができるというような、やはり小学校六年は、私はむしろ、教科担任じゃなくて、一人の先生がしっかりと子供の成長を保障していくという方がいいと思っているんです。

 例えば、先ほど、品川の不登校が非常に上がったという話をしましたが、二十三区で第二位だったんですけれども、一位は新宿区、堂々新宿区が一位だったんですけれども、そのとき何で新宿で不登校がこんなに上がったのかということをかなり調べたんですけれども、どうしてかというと、新宿区は選択制の利用率が二十三区で一番高かった。特にブランド小学校のような、地域から離れた学校に集中する傾向があった。地域から遠く離れて過密な大きな学校に学びに行く、そういうような中で、学校と地域と子供の関係が非常に薄くなっていく中で、不登校の問題とか非常に出てきたんじゃないかなというふうに思っていまして、小学校は、やはり地域と強く結びついて、子供をしっかりと身近な生活空間の中で育てていくという課題があると思っています。

 中学は、それに対して、もう少し客観的思考ができ、論理的思考もできるということで、もう少し科学的思考を育てるために、思春期以降の、私は、中高は一貫であることは全く問題ないと思っているんですね。例えば先進国でも、初等教育と中等教育の中高は別個の学校として、中高一貫はあるということについては余り不自然は感じませんし、むしろ職業準備教育として六年というのは結構いいと思っているんですね。

 だけれども、小学校は、やはり発達段階からして固有の価値があるので、特に日本の小学校は、豊かな生活経験とか自然経験とか学級集団づくりとか、一番、非常に価値が、レベルが高いというか、国際的に見ても日本の小学校文化というのは高いものがあるので、それを損なうような改革はしてはいけないというふうには考えています。

 以上です。

牧委員 ありがとうございます。

 私どもは、この法案には一応賛成という立場ですので、もう少しそういう立場を代弁する意味でも、天笠先生にもうちょっと頑張って御発言いただきたいと思う観点から、もう一つ、ちょっと突っ込んでお聞きしたいんです。

 私がさっき聞いたのは、制度として九年間くくるというのはよくわかるんです。ただ、私の勝手な理解では、先ほど視察をさせていただいたお台場学園なんかも、四・三・二というような区分になっているんですね。いわばその真ん中の三というのが、さっき先生がおっしゃったような意味で、ちょうど車でいえばクラッチ板みたいな、そういったすり合わせの部分じゃないかなというふうに勝手に解釈しているんですけれども、今回の法改正ではそういった部分というのが全然出てきていないんですね。

 今までどおりの六・三という区分でくくられているだけですので、これまでどおりの学習指導要領を準用するという形ですので、その中で、さっき先生がおっしゃったような意味で、どんな意味が今回の法改正であるのかということを、もう少しつけ加えていただきたいと思います。

天笠参考人 子供の成長、発達ということは、先生からも御説明いただいたように、小学生には具体的な思考ということ、それから、中学生になっていくと論理的な思考とか抽象的な、科学的な思考、そういうふうな成長の度合いをするということは、私も同様に認識しているわけなんです。

 ただ、小学校高学年になりますと、そういうお子さんも、まさに具体の思考の世界の中で成長を進めているお子さんもいれば、もう少し早く抽象の世界の思考ができるところまでたどり着いている子供等々がいて、ある意味でいうと、小学校高学年になるとかなり、成長の姿等々が個々によってさまざまな姿になっていくというのが現実の実態であって、そういうところが全体で、従来のような制度のところではうまく処遇し切れなくなっている、そういうところが今回のこの取り組みであって、ですから、そういう意味でいうと、四・三・二という学年の区切り方というのは、今申し上げているような子供の成長の対応の仕方からすると、一つのアイデア、考え方、具体的な対応ということになってくるのではないか、そういうことを申し上げさせていただきたいというふうに思うんですね。

 その上で、では九年間、私の個人的な立場、そういう意味でいうと、九年間で柔軟な学年の区分、区切りというのを、それぞれの地域ですとか子供たちの成長の姿に応じながら工夫していく。ですから、義務教育学校の制度化が即四・三・二を導入するんだという、それとはちょっと違って、むしろ、それぞれの地域とか子供の姿の中で、そのあたりの学年の区切り方も柔軟な対応の仕方をしてよろしいんじゃないかというふうなことというのがまず一つです。

 片や、現存している小学校と中学校の連携ということをどういうふうに対応していくのか、その課題対応ということがまたもう一つあって、それとのすり合わせの中で、六年と九年間の課題対応という形で、ですから私は、そういう意味でいうと、この点は中間的な対応の仕方というんでしょうか、処遇の仕方になっているのかなというふうにも受けとめております。

牧委員 ありがとうございます。

 次に、教員免許のことについても天笠先生にお聞きしたいんです。

 今のお話にも絡むんですが、中学の教員免許、小学校の教員免許、これが将来的には一緒になるという前提なんでしょうけれども、先ほどのお話で、四・三・二の仕組みの中で、三の部分がちょうど相互乗り入れというか、すり合わせの部分で、ちょうどいい三年間なのかなと。

 つまりは、何も最終的に義務教育学校の免許というのを統一しなくても、小学校のまま、中学校のままでも、そういった意味で四・三・二であればやっていく余地があるんじゃないか、そういうふうに私は考えるんですけれども、天笠先生はどんなお考え方でしょうか。

天笠参考人 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、特別委員会のときに発言した中で、個人的にはということでちょっと申し上げさせていただきましたけれども、個人的には義務教育免許状というのがこの際大いに検討されていいのではないか、そういうことを主張させていただきました。

 まずはそのことなんですけれども、その意図というのは、やはり九年間の視野を持った教師ということの必要性、大切さというのが私はあるんじゃないかというふうに思っております。

 これまでも、御承知のとおり、中学校の三年間、小学校の六年間、これを守備範囲にして先生方は御指導されているわけでありますけれども、何が足りなくなってきているかというと、中学校の先生にとってはその前の六年間、小学校の先生にとってはその後の三年間、これを視野におさめる、こういうことが必要なんじゃないかということです。

 ですから、そういう点から考えると、教員免許状というのをどう捉えるかどうかということです。その教科の指導をするための専門性の担保というのが免許状、その教科のと言ったらあれかと思うんですけれども、私は、その前提として、その教科の指導を受ける子供の成長、発達についての理解、認識というのがそこにセットされる必要というのがあるというふうに考えております。

 そういうふうに考えると、できたら、九年間を視野におさめたそういう免許のあり方ということが検討されていいのかな、課題ではないかというふうに私は思っていますので、ですから、現行、これまでの小学校と中学校の、先ほど話がありましたけれども、それを併有するというのは私にとりましては過渡期的な扱い、処理だというふうな、そんな理解の仕方をしております。

牧委員 ありがとうございます。

 次に、國定参考人にちょっとお伺いしたいんです。

 先ほど見学してきた学校は東京都の港区立ですから設置者は港区でございますけれども、港区の教育委員会、あるいは学校現場の校長を初めとする皆さんの真摯な取り組みというものを目の当たりにしてきたんですけれども、一方で、教員の採用というのは東京都が行うわけで、東京都の教員の人事配置によって、せっかくやってきた人たちがどこかへまた転勤になったり、そういったそごが生じるわけで、これは本当に、突き詰めれば、我が国の地方教育行政のあるべき姿というのをもう一回みんなで考えなきゃいけないと思うんですけれども、このことについての考え方をお聞かせいただきたいと思います。

國定参考人 私ども三条市も、一年間で約三割の教職員が市外に転出し、その分だけ入ってくるということであります。新潟県内で小中一貫教育にどっぷりと取り組んでいるのは三条市だけですので、ほどほど理解し始めたなというときにはまた市外に行ってしまうということでありまして、今、私どもとしては、教育センターを充実化させて、独自の小中一貫教育の研修制度を持って、転出した後もその先生方にはいつでも来てくださいという形をとっているんですが、やはり限界がございます。

 やはり、究極的には、委員さんも御指摘いただいておりますとおり、今の県費負担教職員制度そのものが本当に今の形のままでいいのだろうかと。全国市長会挙げてお願い申し上げておりますのは、教員の人事権、これはやはり基礎自治体におろすべきだということを申し上げているところでありますけれども、少なくとも小中学校の教員の人事権、これについては最終的には市町村の方におろしていくということが、全ての面でプラスの効果となってあらわれてくるのではなかろうかというふうに考えているところでございます。

牧委員 それでは、時間もございませんので、最後に山本参考人にお聞かせいただきたいと思います。

 山本参考人の御発言をお聞きして、ほとんどデメリットばかりだったんですけれども、ということは、現行の制度のままでよいというお考え方なんでしょうか。

山本参考人 一つメリットは、小中教員の連携がよくなる。一つは絶対メリットがあります。

 それにしても、まだ教育的効果やデメリットが検証されていない。私どもが一回このような大規模調査をやっただけでも、小学校の方でこれだけネガティブな、精神的健康や自信や、コンピテンス、できるというところでデメリットが出てくるので、これは予期せぬほどデメリットが出てきた心理学の調査だったので、このような検証をもうちょっと積み重ねて、もしも、それはこういうことをすれば払拭できるとか何か別の方途があるならば、そのときに考えればいいと思うんですけれども、現段階で制度化をすることは、子供に多大なデメリットというか、悪影響を及ぼすことが懸念されるので、もう少しじっくりと検証してから制度化に踏み切るべきだというふうに考えています。

 だから、やはり、ただの統廃合のために利用されるとか、コスト削減のためにされるというならば、子供を実験台にするようなことはやめてほしいというのが私の考えです。

牧委員 ただの統廃合のためだったら反対というのは、全く私も意見を一つにするものでございますけれども、何とぞ、しっかりと前へ進めていただけますようにお願い申し上げ、参考人の皆様方に感謝を申し上げて、質問を終わりにさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

福井委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 きょうは、天笠参考人、そして國定参考人、山本参考人、大変に貴重な御意見をいただきまして、私も先ほど来いろいろなお話を聞いているだけでも大変に、今回の法案審議に対して本当に参考になる御意見をいただいていると思います。心から感謝を申し上げます。

 私も地元を回っていますと、やはり初等中等教育に対する関心というのは非常に高うございまして、最近よく出てくる声としては、不登校、先ほど来お話が出ております、中学校に入ってから不登校であるとか、いじめのような件数というのが、私の地元ですと県内に比べても少し高いんじゃないかとか、あるいは、最近は中学生だけではなくて小学生も不登校というのが出てきているんじゃないかとか、やはり、地域のあり方、あるいは家族のあり方、また学校現場のあり方も恐らくさまざま変わってくる中で、こうした問題に対応してほしい、こういう御要望はさまざまいただいているところでございます。

 私も、今回の義務教育学校を導入したから全部解決をするような、そういうものではないとは思っておりまして、いろいろなことを講じないといけないんだろうなというふうな思いは持っておるんですけれども、まず冒頭、天笠参考人と山本参考人にお伺いをしたいのが、先ほど来、天笠参考人の方からもお話がございましたいわゆる学制というか、今は六・三でやっておるわけですけれども、地域それぞれでいろいろなあり方があってもいいんじゃないかというお話もございました。

 私も、確かに、学制全体をどうするかという大きな議論も教育再生実行会議を含めてずっとやっておるわけでございますし、一律に急に全国こうだといっても、ハードの問題とかいろいろな課題もございますので、なかなか難しい課題であるとは思っておるんですけれども、とはいえ、ある程度それぞれの地域の中で、こういう方が効果的なんじゃないかという共通的な区切りの仕方というのは、私はいろいろ試行錯誤していく中で出てくるんじゃないかなというふうには思っておりまして、あるべき学制の姿というか、これについて現状をどのようにお考えかというところをまず天笠参考人にお伺いしたいのと、山本参考人には、ちょっと義務教育学校そのものには否定的な立場なのかと思うんですけれども、さりとて、小学校高学年、接続の問題があるというお話は先ほど来もされておられましたので、今の六・三制のあり方というか、この接続の問題を解決するためにどういう学制があり得るのかとか、あるいはほかのやり方があり得るのかとか、どういう問題意識をお持ちかというのを、まずは二人の参考人からお伺いをしたいと思います。

    〔委員長退席、義家委員長代理着席〕

天笠参考人 これまでの六・三・三・四制、今も厳然として存在していますけれども、基本的には、これは戦後日本を支えてきたものであって、私は高くこの学校制度を評価しております。

 ただ、事これに限らず、制度というのは、常にプラスの側面と、また、ある意味でいうと負の側面とを常にどの制度も抱えながら存立、存続するものだ、こういう認識を持っておりまして、六・三・三・四というと、先ほど来申し上げているような、そういう子供の成長する姿とか、そこら辺のところをどういうふうに補正していくのか、修正、改善していくのか、こういう課題をどういうふうに受けとめていかなくちゃいけないのかというふうなこと自体が課題だというふうに思っております。まずそのことが一つ。

 それから、その際に検討すべき事項というのは、私は、かなりそれぞれの地域の実情に応じてというあたりのところを考えていくべきではないかというふうに思っております。

 それは、私は、これまで教育課程とかカリキュラムについて研究したり、あるいは発言させてもらった者の立場からすると、学習指導要領ということも私は基本的には評価する立場なんですけれども、ただ、それも、ある意味でいうと、それぞれの学校とか地域の実情とか実態を踏まえた上での基準の運用ということで、それはコンセンサスができているというふうな、私はそういう理解の仕方をしているんですけれども、そういう意味において、それぞれの学校を地域の実情に応じてということで、そういう中で義務教育学校の、それもそういう筋の中から出てきた、これまでの学校制度のかたくなってきた部分とか、先ほど申し上げているように硬直化してきた部分というのをやわらかく運用していく、あるいは、そういうことを投げかける一つのヒント、発想、働きかけ、こういう理解の仕方をしております。

 そういうところから出てくるとすると、例えば、こういう大変大都市のところでのそれと、それから、どちらかというと人口はかなり減少して、地域的にそういう意味での厳しいところとがいろいろあるとすると、例えば義務教育学校というあたりのところも、高等学校との接続ということなんかも、とりわけ中山間地域においては現実的な課題になっているというふうな、こういうことを考えると、むしろ、六・三・三ということよりも、ある意味では、カリキュラム上ですけれども、学年の区切り方とすると四・四・四という、こういう区切り方もカリキュラム上のアイデアからして出てきても私はおかしくないんじゃないかというふうに思っております。それが一気に学校制度の話というと、当然、まだ議論を詰めなくちゃいけない、たくさんあるかと思いますけれども、私はこんなふうな認識を持っております。

 以上です。

山本参考人 学校体系や六・三制を変えればさまざまな教育問題が解決できるというような考えには立っていない。硬直化しているのは、教育の中身とか指導とか方法とか、教育に関するいろいろな圧力がかかるとか、そういう意味では、そういうことの原因によってさまざまな問題が生じていると思って、制度に起因する問題というのは検証もされていないし、ここの制度を変えればこういう点が改善されるということを今回の義務教育学校は出そうとされているんだと思うんですけれども、その根拠が弱い、まだ検証が不十分だというふうに私は考えているので、もしも、合理的な制度改革の根拠が出されて、デメリットがないというのであれば、学制を変えていくというような発想はあると思います。ただ、もう少し柔軟に、運用とかさまざまな、制度自体をいじらないレベルで改善していくということが優先だと思います。

 何よりも困るのは、やはり教育の機会均等であるとか平等であるとか、本来六・三・三制が持っていた一番根本的な理念が掘り崩されてしまうということを一番懸念して、何か子供のことで改善しようと思いながら、本質的な点を変えてしまうということを懸念しております。

 以上です。

中野委員 ありがとうございました。

 少し話題はかわるんですけれども、國定市長に、市域全体で小中一貫を導入されたということで、大変大きな取り組みをされているなというふうにお話を伺って感じたんですけれども、実際に、例えば私の兵庫県なんですけれども、こうした接続の問題ということで確かにいろいろな取り組みはされておりまして、小中連携ということで、人事交流みたいなことも含めてやっているというふうに伺っております。

 今回、小中一貫で制度としてできたということで、私も、こうした取り組みというのをぜひいろいろなところでやっていっていただきたいなと思っているわけでございますけれども、他方、全面的に導入すると、やはりいろいろな、導入の際に乗り越えるべき課題というか、法案審議の中でも私も取り上げましたのが、小学校と中学校でやはり免許状が、それぞれどっちも持っていればいいんですけれども、必ずしも現状はそうじゃない。一応、今回は、原則は併有ということになっていますけれども、しばらくは経過措置というふうな形にもなっておるという中で、導入の際に、それぞれの免許、恐らく、持っている先生も持っていない先生も、ちょっといろいろあったというふうに思うんです。

 これについて、どのように進めていかれたかというか、どういう取り組みをされたかというのを、ぜひ御参考までにお伺いできればと思います。

國定参考人 免許を片方しか持ち合わせていないという状態からどっちにしてもスタートをしなければいけなかったものですから、そこを抜本的に、では併有を進めていきましょうというところまでは踏み込まずに、小中一貫教育を私どもはスタートさせていただきました。

 ただ、小学校の免許状しか持っていない先生も中学校の免許状しか持っていない先生も、小中一貫教育でまず変わることというのは、今この単元で教えていることが、小学校の先生の場合、これが中学校に行ったときにはどういうふうに役に立つのかということは、それは小学校の教員免許しか持っていなかったとしても、わかるわけですね。

 例えば、数の概念というのは、小学校のときにはマイナスはないわけです。そうすると、普通の小中学校というのは、小学校の場合は、ゼロよりも向こう側の領域、マイナスの領域はかたくなにふたを閉じたままグラフを描こうとするわけですけれども、例えば、マイナスはあえて教えなくても、ゼロのポイントよりも左側にさらに線を延ばしてあげて数の概念を教育すると、子供たちは、よくわからないけれども、多分、ゼロよりも向こう側に何か別の世界があると気づくというふうに小学校の先生方は言うようになったんですね。

 これは、小学校の教員免許と中学校の教員免許を必ずしも併有していなくても、それぞれの先生方がそれぞれの立ち位置の中で九年間を見通すことができるということが一番大きな目的でもございますので、もちろん併有していくことが一番望ましいわけですけれども、現行の段階でも十分克服することはできるのかなというふうに考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 先ほど國定市長のお話の中でも、やはり、小学校と中学校の先生がお互いの立場がわかることによって本当に新しいものが生まれてくるというか、そういう趣旨の御発言もされていたかと思うんですけれども、私も、小学校の先生の文化と中学校の先生の文化は結構違うものがございまして、確かに、これがお互いの立場をわかることによって、この接続という意味で非常にいい効果が生まれてくるのではないかなというふうなことを、ちょっときょうのお話を伺っても、それをまた新たに実感した次第でございます。

 続きまして、今度は天笠参考人と國定参考人のお二人にお伺いをしたいんです。

 実践的に、実際に小中一貫という取り組みをされて、その効果についてもさまざまあるというお話でございましたけれども、山本参考人の御指摘では、やはりデータとして余り定量的でないという指摘も、双方の意見が今出ているわけでございますけれども、実際に取り組んでみて、こうしたところが非常にメリットだ、こういう部分でプラスになっているということがございましたら、改めて、取り組んだ学校ではここの部分で成果が出たとか、そういう点についてもう少し補足をしていただければと思うんですけれども、いかがでございましょうか。

    〔義家委員長代理退席、委員長着席〕

天笠参考人 一つ私が御一緒させてもらったケースを御紹介して、お答えというふうにさせていただきたいと思うんですが、それは、とある小中一貫に取り組んだ学校のケースなんです。

 先ほど来いろいろありますけれども、小学校の先生と中学校の先生が一向に一堂に会さないというんでしょうか、時間だけが経過していくということで、一年間経過して、一年目の最後のころにようやく小中の先生がテーブルに着くというふうな、そういう中に私もアドバイザーという形で、この状況をどういうふうに云々していったらいいかということで御一緒させてもらったというところから始まるんですけれども、当然、二つの学校にはそれぞれの年間のスケジュールがありますから、一堂に会するというふうな、そういう調整までもなかなか現実にできなくて、今申し上げたような状況だったわけですけれども、その二つの組織が葛藤しながら、時に対立したり、時に離反しながら、それが次第に一つに、一体となっていくというんでしょうか、そういう経過。

 私は学校経営の研究者であるんですけれども、そういう一連の経過自体が極めて興味深い経過。二つの組織がどういう形で一つの組織になっていくのかどうなのか。ある意味では、共有するものがそこに生まれてくるかとか、どういう形で対立していくかどうかということなんですけれども、先ほど来ありましたように、小学校の先生方が持っている指導観と中学校の先生が持っているそれというのは、ある意味では一つ一つが対立要因というか要件になるんですけれども、実は、対立というふうに捉えていたのが、次第にそれが実は共存したりですとか、あるいは、時にそれが融合したりとかということを、その中の先生方自身がお一人お一人皆さん気づいていく、そういう組織の過程というのがあって、そして、そういう中でいろいろなアイデアが生まれてくる。

 例えば、不登校対応とか、まさに四・三・二のカリキュラムのあり方がどうかとか、あるいは、小中の先生の授業の交流があるかとか、そういう一連のプロセス自体が、ある意味でいうと新しい組織文化をつくっていったりですとか、あるいは、新しい学校をつくっていったりですとかということで、ですから、今回の制度化ということからするならば、そういう呼び水を、あるいはそういうきっかけを、それぞれの学校ですとか先生方に提供するというか、提起していく。そういうふうな形で、そこの過程において、そういう活力が生まれるとか、創造が生まれるとかという、それ自体が非常に意味のある学校改善であり、教育の改革になるんじゃないかと私は思うんです。

 そういう形で、みずから一緒にかかわらせてもらった中での一つの経験ということで御紹介をさせていただきました。

 以上です。

國定参考人 先ほどの配付資料の中で、具体の効果ということについて少しお示しをさせていただきましたけれども、まだまだ私どもも、小中一貫教育を導入してから日が浅いものですから、もう少し時間をかけながら、客観的評価の積み重ねが必要かとは思っております。

 現段階においても、これ以外にも、例えばいじめについて、全国的には率としてもやや増加傾向にあるわけですけれども、私ども、小中一貫教育を、試行的な取り組みを含めて始めてからは、やや微減の状態でございます。あるいは、ハイパーQUテストの中には、自己有用感に関する問いというものもあるわけですけれども、小学校高学年、中学校、それぞれの段階において、小中一貫教育導入前に比較してポイントが高まっている。そうした客観的な評価というものが少しずつあらわれ始めているのかなというふうに認識をしております。

中野委員 間もなく時間ですので、最後に一問だけ質問させていただきたいと思うんですけれども、これを実際に導入するに当たって、さまざまな事務負担等も含めて、やはり現場の負担感が結構あるんじゃないかというお話も伺ったことがございまして、先ほど山本参考人も、三鷹のアンケートでは、かなり乗り入れ授業の負担が大きいんだというお話もされておられました。

 最後に、いろいろ市内で取り組まれた國定市長から、実際にやられてみて、現場の負担感というか、どんなものか、あるいは、その軽減をするためにどういう工夫ができるのか、こういうところをぜひお伺いできればと思います。

國定参考人 まさに、特に導入段階でもございますので、先生方に対するその負担感というのは、確かに増加しているところでございます。

 ただ、一番大きな要因は、学校間の連携を、連携というのは、一貫教育の課程の中でお互い共通認識を図っていかなければいけませんので、その時間調整に物すごく苦労するわけです。これを今回法制化することができれば、ある意味、統一的な組織体の中でお互い連携をすることができる、会議の場をふやすことができる、議論の場を積み重ねることができる、こういうことを考えておりますので、どうか、ぜひとも法制化を実現していただいて、私どもの負担の軽減を図っていただければなというふうに思っております。

 ありがとうございました。

中野委員 以上で終わります。ありがとうございました。

福井委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 天笠茂参考人、國定勇人参考人、山本由美参考人、本日は大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 まず初めに、天笠参考人に伺います。

 天笠参考人は、中央教育審議会にかかわってこられたと伺っております。小中一貫教育の問題について、成果と同時に課題もあると中教審では論じられてきたというふうに思います。

 具体的に伺いたいんですけれども、例えば、小学校と中学校の教職員の打ち合わせの時間の確保の問題や、合同研修の時間の確保の問題、それから教職員の負担軽減、それから、先ほど議論にもなりました小学校の高学年の子の主体性の育成の問題など、議論を重ねてこられたと思うんですが、この点について少し詳しくお伺いできればと思いますので、お願いいたします。

天笠参考人 今の、時間の調整ですとか、あるいは小中の授業の連携とか行き来とか、幾つかあるわけですけれども、例えば時間の調整というのは、ちょっと先ほども申し上げましたけれども、次第にそれぞれ知恵を出し合いながら時間の確保を何とかしていくというんでしょうか、そういうふうなやりくりをしながらということと、片や、小中の間で授業を交流していこうという場合には、もちろん、その小中の間の当事者間の連絡、打ち合わせもありますけれども、やはりそこには、教育委員会のそういう支援というんでしょうか、手当てというのがその話の中に入ってくる場合と入ってこないという場合とがあるわけです。

 例えば、小中で授業の交流をもっと積極的に進めたいということで、ついては、そのときに教育委員会の方がそのための人の手当てをしてというふうな形でそれに入ってくるとかというふうなこと等があるわけで、ある意味でいうと、一定の時間的な経過の中でそれぞれが、一つ一つがそのときの課題解決、課題改善というふうな、そういうふうな形になっていくというんでしょうか、そういう意味でいうと、私は、その取り組みのプロセスにかなり意味があって、そのプロセス自体に、この取り組みをその組織が主体化していくというふうな営みがそこに入っていったときには、次第に、成果と言えるというんでしょうか、成果をその組織のメンバーが共有し合う、認識し合うというふうな姿がそこから生まれてくるんです。

 残念ながら、その主体化というところができずに、どうしても、させられる取り組みだというふうな認識の状態をお一人の先生が持っていますと、言葉としては、やはり負担感という言葉が口をついて出てきたりですとか、現実にそういうことが負担という言葉の中でそれぞれ共有されていくというふうな形で、なかなかそこのところを乗り越えられないというふうなこと。

 ですから、今回のこの取り組みというのも、そういういろいろな課題を、それぞれいろいろな委員会等々の支援も含めて改善を図りながら一つずつ積み上げていってというふうな、そういう軌道に乗せられた、乗せることができたところと、なかなかそこまで立ち行かないで、次第に別の意味で状況が難しくなっていくところで、その先打開するのが非常に困難な状況に直面しちゃうような、そういうケース等々に出会うということがあります。

 そんなところからすると、内部的に改善できるところと、行政的に、ある意味ではそれを手当てしていただくとか支援していただくとか、その組み合わせが大切になってくるという意味では、そういう意味でいうと、学校と教育委員会との連携というふうな言い方ができるかと思うんですけれども、もちろん、これは学校間の連携、一貫のテーマなんですけれども、学校と教育委員会の関係づくりということも、またこのことを進めていくに当たっては一つの大切な点になるのかな、そんなふうに思っております。

畑野委員 ありがとうございました。

 次に、國定参考人に伺います。

 本日お持ちいただきました資料を拝見させていただきました。最後の五ページのところに施設整備の問題を書いてくださいまして、「施設整備に対する国庫負担は二分の一とされているが、補助対象である基準面積、建築単価等が現実的ではなく、地方自治体の負担が多大である」という見直しの必要性を訴えておられるんですけれども、この点、もう少し詳しくお話しいただければと思います。

國定参考人 大変失礼いたしました。実はここについては全くこれまで述べておりませんで、先ほど来申し上げていたのは、そもそも別の次元として、補助制度をもうちょっと拡充してほしいということなんです。

 この点については、基準単価、ここに「基準面積、建築単価」というものがあるわけですけれども、現実的に小学校、中学校あるいは一体校というものを建設しようとするときに、平米当たり幾らというのは大体相場があるわけですけれども、ここよりもはるかに下回った単価設定をされているんです。面積についても、普通の小学校、中学校が普通の形で整備しようと思うよりも、はるかに補助対象となる面積というものは小ぶりになっている。

 その結果、これが補助対象額ですよと言われているよりもはるかにはみ出る金額が積み上がってしまっておりますので、そこは全部私どもが自己負担をしていかなければいけない、こういうような構造になっているということであります。

畑野委員 わかりました。ありがとうございます。御苦労されているということを伺いました。

 次に、山本参考人に伺います。

 資料をお示しいただきましたけれども、時間の関係で詳しくお話をされなかった点があるかと思いますので、その点について伺いたいと思います。特に、アメリカの州の状況について資料も含めてお示しいただきましたけれども、もう少し詳しくお話を聞かせていただきたいと思います。

山本参考人 先ほど、資料十二、十三でデトロイト市とシカゴ市、これは、私はフィールドなので年に何回か行って統廃合調査をしているところでございまして、この話を少しさせていただければと思います。

 資料十二は、デトロイト市の、先ほど申しました、二〇〇三年から二〇一三年にかけて公立の小中校の数が三分の一に削減された。それは、小学校と中学校がほとんど消滅して、小中一貫校がふえた、そういう劇的な学校改革が行われたんですけれども、それによって潰された多くの学校は貧困地域にあり、学力テストの点数が低く、それがペナルティーとして廃校の理由になったりするわけなんですが、実際行ってみると、全て小中校が潰された地域は、ほとんど地域壊滅、日本の限界集落よりもっとひどい、原子爆弾が落ちた後のような状態に、家もほとんど空き家になっているような状況になっていました。

 デトロイトの場合は、財政破綻ということもありまして市全体が切り捨てられるので、そのような状況になることもあるかと思うんですけれども、資料十三、シカゴ市、これは私は何回も行くんですけれども、ここは一応グローバルシティーと称しまして経済も成功している市なので、学校も一応エリート向けの学校を残し、力を注ぎ、そうでない学校を削っていく、そういう学校改革のスタイルをとっています。

 その中で、近隣学校、これはネーバーフッドスクールというんですけれども、学区のある普通の小学校、これが、この間の学校改革で九三%が小中一貫校になって、統廃合しながら一つの学校を大きく過密にして子供を収容するような施設として、ほとんどが貧困地域の学校なんですけれども、小中一貫校でまとめていく、予算はそんなにつけない。

 それに対して、小学校から複線化を図り、一番下から二番目のクラシカルスクールというのは、小学校でありながら入試選抜のあるエリート校、これを裕福な地域に五校ほどつくるわけです。そこは小中一貫にはしない。エリート教育は小学校でじっくりやって、人数も二百人ぐらいに抑えて、プログラムをアカデミックにして、お金をかけて、エリート教育は小学校だけで行って、中学は私立のいいところに行ったり、まあ、公立でもいいところに行くのかな。そういうエリートコースは普通の小学校に残しておいて、どうでもいいところは小中一貫でまとめてコストを削減していく、これがシカゴの、グローバルエリートとそうでないエリートを育てていく、そういう学校制度の多様化といって、いわゆる公設民営学校、今、この法案が通るかもしれないんですけれども、チャータースクールもたくさんつくって、そういうところで子供たちを安く上げるというか、そういうような改革が進められています。

 ですので、シカゴとデトロイトは、アメリカの中でも、首長の、市長の権限を強化して教育委員会の権限を弱めて、公選制でなくした例外的な自治体で、市長がどんどん教育改革を主導していけるような自治体なので、こういうダイナミックなことができるんですけれども、日本も今度教育委員会制度を改革したので、どんどん統廃合もできるかもしれないし、新しい改革を進めていくこともできる。

 例えばサンディエゴなんかは、同じような統廃合計画ができても、公選制教育委員会が生きているので、反対が多くて実現しないので、統廃合はとまるんですね。

 これらはとてもアメリカの中でも教育改革が進んでいる自治体。小中一貫校は、巨大で、収容してちょっと管理をきつくして、貧困地域にある学校というイメージがあります。

畑野委員 今、統廃合の話が出たんですが、山本参考人、四十以上の自治体を回ってこられたということで、住民の方の率直な、日本の声も聞かれていると思うんです。今回の理由の一番に、統廃合という自治体のアンケートがあったという御紹介もありましたけれども、通学時間が一時間とか、ここの委員会でも議論になりましたけれども、そういう子供の負担ですとか保護者からの御不安の声とか、そういう点はいかがなんでしょうか。

山本参考人 二〇一〇年ぐらいから、小中一貫校による統廃合反対の紛争に呼ばれるようになったんですけれども、当時は、保護者には、小中一貫校はすばらしい学校で、エリート校で、英語もできるし、勝ち組に乗れるというような宣伝がよく行き届いていまして、なかなか保護者は反対してくれなくて、地域で集会をやっても、集まるのは限界集落のお年寄りと退職教員だけというような反対集会にたくさん呼ばれたんですけれども、次第次第に、小中一貫校はどういうものなのかとか、ただの統廃合ではないかとか、そういうような学習も進んできて、保護者や地域の方が地域の学校を守るために反対運動をしているケースに呼ばれることが多々あります。

 特に小学校は、コミュニティーの文化センターというか地域の核として、住民にとっても保護者にとっても非常に重要なものであり、小学校が奪われる改革、非常に多いパターンとしては、人口八千人から一万の自治体で、小学校が三校か五校あって中学校が一校あるのを、全部まとめて一貫校にして、片道十六キロとか二十キロをスクールバスで通うというような地方の学校の切り捨てが進む中で、とにかく地域の学校を守るというような戦いが随分繰り広げられてきました。

 たまたま國定市長さんの三条市にも呼んでいただいた、住民の方に呼んでいただいたことがございますが、三条市もとてもすばらしい運動がありまして、私は三条市で感動しましたのは、地域の地場産業の金属加工業の社長さんたちが、地域の子供たちを守るということで巨大な小中一貫校の開設に反対されて、地域の教育を守りたいという運動を繰り広げられていたのが非常に印象的で、僅差で通ることになっていってしまいましたが、日本の歴史上にも残る、地域の学校を守りたいというすばらしい運動だったというふうに思っております。

畑野委員 先ほど天笠参考人にも伺ったんですけれども、課題の問題で、小学校の高学年の主体性の育成の問題ですね。

 この点について、先ほど山本参考人からもお話がございましたけれども、五年生、六年生の課題、あわせて、今、七年生、中学一年生の課題ということが言われておりますけれども、この点について天笠参考人と山本参考人に、もう少し詳しくお話を伺いたいと思います。

天笠参考人 小学校五、六年生の一つの課題というのは、人間的な成長の部分と、片や教科の専門性について、そういう意味でのレベルの一段と高くなった知識というのでしょうか、の習得という、場合によってはこれは非常にアンバランスの状態になったりですとか、片や、知的な発達からするとかなりの成長を遂げている子供たちが向き合う学習の内容ですとか中身というのが、それがうまくそれぞれの子供の成長と向き合うことが整合し切れないときに、幾つかの問題点が、指摘されているようなことが起こっているんじゃないか、そういうことが一つなんですね。

 では、それを、教科の専門性、知識を高めるということを、中学校の教師がそのまま小学校へ来ればいいかというと、話はもう一段、検討しなくちゃいけないところがあるというのはどういうことかというと、例えば英語なんかの場合ですと、それならば、中学校の先生が小学校の高学年の英語の授業を担当していただければそれで話は済むのかというと、実は小学校の英語の場合には、多くは学級担任の先生が一緒に組んでTTをやるケースというのも少なからず存在しているということで、そこには中学校の教科の専門性と小学校の担任としての専門性、それとの融合というんでしょうか、ということが問われるというようなことで、ですから、そういう意味では、学級担任制か教科担任制か、御承知のように、小中というすみ分けというところに、もう一段新しいアイデアということの必要性というのが問われているテーマなんじゃないかというふうに思っているんです。

 義務教育学校の設置というのは、こういうことについてきめ細かく丁寧に対応していく、あるいはアイデアを生み出していくということが、私は非常に大切なテーマになってきているんじゃないか、そんなふうに思っています。

 要するに、指導法とかカリキュラムの中身とか、そういうことを、よりこれまでのを超えていくような、そういうことについての手当て、課題というのを探求していくということが大切なのではないかな、そんなふうにも考えております。

山本参考人 日本の小学校というのは、小学校五、六年が集大成期というふうに今まで特徴、デザインされておりまして、さまざまな文化的行事とか運動会とか卒業式とかも、低学年から積み上げていって、最後の高学年期にリーダーとして全校を引っ張る。そのときの小学校五、六年生というのは、小学校という小さな世界の中で、ちょっと現実からは切り離されて、将来は野球の選手だとか科学者になりたいとか、リアリティーはまだなくても、その時期に夢を見て、自分を大事だと思って人格形成の基礎をつくることが、その後、中学校に行って厳しい現実とか受験にさらされる上での基礎として絶対に必要な時期で、そのときの成長課題をきちんと果たさないと、中学に行って成長していくことはできないというふうに考えています。ですので、この接続によって小学校五、六年期の、エリクソンの有能感というような、それが保障できない、発達が保障されないというのはやはり非常に大きな問題だというふうに思っています。

 そういうちょっと身近な小さな世界の中で自分の基礎をつくった上で、中学校という広い世界に行って、全く環境も違うところにジャンプすることで、いろいろな不安とか緊張感とかを乗り越えて、自分をリセットして次の段階に進んでいく、また、高校で次の段階に進んでいく、それで都会に出ていったりする。そういう人生の節目節目で成長しながら人間は人格形成していくので、そこを簡単にいじってしまっては、発達のことを見ないで簡単にいじってしまってはいけないというふうに考えています。

 以上でございます。

畑野委員 参考人の皆さん、ありがとうございました。

福井委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 三人の参考人の皆様、長時間にわたって本当にありがとうございます。私で最後となりますので、もうしばらくおつき合いをいただければと思います。

 まず、天笠参考人にお聞きをいたします。

 参考人が執筆をされました「カリキュラムを基盤とする学校経営」というものを資料でいただきまして、少し読まさせていただきました。

 この十年間、小中一貫教育をめぐって、研究開発学校を中心にさまざまなカリキュラムがつくられてきたというふうなことが記述をされています。

 他方、その検証という部分を読ませていただきますと、「検証については、様々にデータが取られたものの、なお必要とされているところが多分にある。」ということでありますとか、あるいは、「例えば、四・三・二カリキュラムについても、その多くの取組みは、教育内容の配列の観点から、教育課程や指導計画の開発に置かれ、授業の方法上の工夫・開発については、なお今後の課題とされているところ」が多い、あるいは、「それぞれの段階に見合う授業のコンセプトやイメージづくりについては、さらに今後に待つところが少なくない」というような点も指摘をされておられます。

 こうやって考えますと、小中一貫においては、最も重要な要素の一つは、やはり九年間のカリキュラムのあり方だというふうに思うんですけれども、実はまだまだ検討、検証すべき点がたくさん残っているというふうに私自身も思っておりますけれども、具体的にはどういった点を今後検証していくべきなのかということについて、お考えをお聞かせください。

天笠参考人 カリキュラムの開発ということが、私はやはり、この小中一貫、義務教育学校をスタートする最初の契機だというふうに思っております。

 それで、いろいろなことを検討しながらまた戻ってくるところがカリキュラムの研究ということなのかなというふうに、そんなふうに私は捉えているわけでありまして、ですから、ある意味でいうと、完成型というよりも、むしろ、循環したような形で常にカリキュラムの検討、開発、またその次へというような、循環するようなそういう検討のあり方、実践のあり方、検討のあり方というふうな、こんな流れが生まれるといいかなというふうに思っております。

 その上で、このカリキュラムの研究といった場合に、小中一貫の取り組みといった場合に、私は、形から入るというそういう入り方と、どちらかというと中身的な授業改善ですとかカリキュラムの改善から入るというこういうこととか、整理して捉えてみますと、小中一貫の取り組みというのはどうしても形から入っていくというんでしょうか、というふうなことに、見ていますとなっていくのかなというふうに思っております。

 そういうところからすると、そこに授業の改善ですとかカリキュラムの改善という、そういう手当てとか発想とか取り組みというのがそこにうまくかみ合っていく、絡んでいくといいかなというふうに思っているんですけれども、小中一貫の取り組みはどうしても、形を導入する、それを学校、現場が受けとめるというそこまでは行くんですけれども、なかなか先生方が成果の実感を伴えないとか取り組みがというのは、授業の改善とか授業の取り組みとうまく脈絡がつけられない、あるいは、うまくその取り組みが授業の改善に取り組んでいけないというところに課題の一つがあるんじゃないか。

 このところをうまく取り上げていくということが一つの課題であって、そこのところを越えていくとすると、先ほど読み上げていただいたあの御指摘の点についてなんですけれども、そこを越えられる姿になってくるのかな、あるいは成果ということが出てくるのかなというふうに、そんなふうに考えております。

 以上です。

吉川(元)委員 引き続いて、天笠参考人にもう一点お聞きしたいと思います。

 今まさに、カリキュラムというのが一番重要なところで、何度も何度もそこに戻っていかなきゃいけないということでありますけれども、大変大きな負担も一方で学校の方にはかかってくる。

 きょう、午前中にお台場学園の方を見させていただきましたけれども、小学校は四十五分、中学校は五十分、チャイムをちょっと注意しながら聞いていると、どうも小学校のときに鳴らしている感じで、中学校は鳴らしていないような感じを受け取ったんです、ちょっと僕が聞き落としたのかもわかりませんが。

 そういう問題であるだとか、あるいは、先ほども少し指摘がされておられましたけれども、小学校は早い時間に終わって、遊ぼうと思うと部活をやっているというようなことで、そういう一つ一つの問題、本当に小さな問題なんですけれども、実際に実行していこうといったときには、本当に解決していかなければいけない、クリアしていかなければいけない問題がたくさん出てくるんだろうというふうに思います。

 こういう問題、あるいはカリキュラム、教育課程の編成等々について、これを学校に丸ごとやってくださいというふうに言われても、なかなか学校側としては対応ができないんではないか。

 その際、先ほども少し触れられておられましたけれども、教育委員会というのは、この点についてどういうことをやっていけばよいのか、どういう役割を果たすべきなのかについてお聞かせください。

天笠参考人 私は、カリキュラムマネジメント、こういう言葉を使うことがあるんですけれども、先ほど来申し上げた授業の改善ですとかカリキュラムの中身とかというのは、まさにカリキュラムの中身とか方法なんですけれども、そういう中身とか方法をいい意味で改善していくには、やはり条件的な整備の部分というのが欠かせない。

 それが言うならばマネジメントという部分だと思うんですけれども、時間の手当てをしていくとかあるいは人の手当てをしていくとか、ある意味でいうとさりげないところかもしれませんけれども、一つ一つが、御指摘のようなところは、実は動かしていくのにも大変大切なポイントなんだと思うので、そういうところに人、物、金等々の資源がどううまく手当てしていけているのかどうなのか。

 それは、学校の中でやれることと、学校の中ではもうやり切れない、外の支援、中心は教育委員会ということになると思うんですけれども、そこら辺のところがうまくかみ合っているのかどうなのか、あるいはつなげようとしているのかどうなのか。

 そういう意味で、カリキュラムマネジメントという発想とか具体的な手法というのがこれからより大切になってくるんじゃないかなというふうに思っております。

 ですから、授業の改善ということを契機とするカリキュラムの開発というのは、言うならば、条件整備とうまくセットされていくというふうな、そういうことを推進していくリーダーと、それから、それを支えていくチームというのをどうつくり出していくかどうかということで、そういう意味では、テーマは、チーム学校ということ等々と、きょうここでテーマになっています、そういう意味で一貫型の学校の姿というのも、改めて、チーム学校というあり方でその姿、組織のあり方等々をしっかりと検証していくということもテーマになるのではないかなというふうに思います。

 以上です。

吉川(元)委員 次に、國定参考人にお聞きをしたいというふうに思います。

 三条市では、平成二十五年度から全中学校、全小学校区で一貫教育が導入が行われたというふうに承知をしております。

 その際に、やはり保護者や地域の理解というのは大変重要な点だというふうに思いますし、私もこの委員会の中で文科省の方にもそれは必要なんじゃないかということをただした際には、施行通知等々でこの点への留意を図りたいというような旨の答弁がありました。

 三条市においては、その導入に当たって合意形成というのをどのように図ってこられたのか、また、留意すべき点があるとすればどういう点なのかについてお聞かせください。

國定参考人 まず、中学校区全体として各中学校区ごとに小中一貫教育の推進協議会、これは、保護者の代表の方、地域の代表の方、そして学校の教職員代表の方という三者で構成される協議会を立ち上げ、あるいは、一つの中学校に複数の小学校がある場合には、それぞれの小学校込み込みで各層にわたってその検討組織、協議組織を立ち上げて、それこそ、二カ月に一遍以上の頻度で検討をしてきたということでございます。

 そうした中でほぼ理解を積み重ねてきているところでありますけれども、先ほども少しお話しさせていただきましたとおり、そもそも、最終的には私自身の二期目の市長選がその小中一貫教育の導入の是非そのものになったわけでございますので、結果としては、私は、その選挙戦を通じて小中一貫教育そのものの内容、中身が市民の皆様方に十分浸透し切ることができたなというふうに思っておりますし、民意の結果として再び私が市政をつかさどらせていただくということで、推進することができた。

 これも、ある意味、その意識醸成の最大の推進力にもつながったのかなというふうに考えているところであります。

吉川(元)委員 続いて、山本参考人にお聞きしたいと思います。

 最初の説明、またレジュメ等々の中でも少し触れられていますが、私自身も、義務教育の課程で、いわゆる現行の小学校、中学校というのと小中一貫の義務教育学校が複線的に存在するというのが果たしてどうなのかという問題意識は共有をしております。

 義務教育学校というのは就学指定されるということで、先日も委員会の場で聞いたときには、それはもちろん入学選抜は行われませんよというふうに答弁を文科省の方はされています。

 ただ、先に導入をされた中高一貫校に関して言いますと、これは法案とは少し違いますけれども、この場合には、就学指定されていないということなので、学校教育法の施行規則の中において、「入学者の選抜は行わない」という文言が入っております。

 ところが、実態はどうなっているかというと、非常に難関な、難しい一貫校、エリート校的なものができてきて、結果的には十六倍ぐらいの競争率になって、適性検査という名前で、実質的なこれは入学者の選抜だと私は思いますけれども、しかも、小学校で勉強したぐらいではとても間に合わないといいますか、わからないような問題が出る。そういうことが実際に起こっております。

 先ほど少しシカゴの例で、一貫校はどちらかというとエリート校ではない方になっているというふうにおっしゃられましたけれども、この中高一貫校のような形に小中一貫校がなっていくのではないかというような危惧も私は持っておりまして、この点についてはどのようにお考えなのか、お聞かせください。

山本参考人 品川区などで施設一体型小中一貫校に何十億円とか予算をかけて立派な施設をつくり、予算もつけて、それで一般の小学校、中学校は、連携型なんですけれども、そちらは老朽化したままで放置しておくというような、現時点の小中一貫教育を導入している中でも、学校の差異化というか、そういうものは既に起きているわけで、受験に特化したようなカリキュラムの弾力化、つまり、早目に基本課程は済ませて受験対応するというような、そういうことがもし進むようであれば、小中一貫校はエリート校として、都市部では大阪とか、大阪とかは既に全市から選択できるような公立小中一貫校がつくられていますけれども、市内全域からそこを希望して入れるとか、予算やプログラムを拡充するとか、そういう形でしていくことはできると思いますし、可能性はあるとは思います。

 しかし、おっしゃったように、中高一貫の方がエリートコースの主流というか、現存の中高一貫校は、おっしゃるとおり、当初は受験校にしないと言いながら、実際は、そんなに裕福でないおうちがエリートコースに行く学校になっているところもあれば、ちょっとその下のランクのところもあるわけなんです。

 そういうように制度が変えられたという、そういうこともありますが、どちらかというと中高一貫校の方がメーンで、小中一貫校は途中から抜けてそれに接続していくような、それも認めたがゆえに、今回、四・三・二にしないで六・三を残したというのは、公立や私立中高一貫校との接続をかなり考えている配慮があるのではないかなというふうには私などは思っているんですけれども、でも、同一地域の中で小中一貫校に資源を重点的に配分していけば、エリート校とそうでない学校ができるという可能性はあるというふうに思っています。

吉川(元)委員 きょう、朝のお台場学園でも、実際に中学校に上がっていかれる方は四割ちょっとで、残りの半分の方は、やはり中学校の受験をされて出ていかれる人、残りの半分の方は、やはり環境を少し変えたい、固定された人間関係ではないということで環境を変えたいということで出ていかれるというようなお話もありました。

 それで、今少しお話が出たんですけれども、この小中一貫校、単体だけではなくて、ほかの教育制度はいろいろ変化しておりまして、例えば、今お話しのあった学校選択制というのがもう一方である。今、導入割合は小中とも一六%ぐらいに達しているというふうに聞いておりますし、一方、学力テストがあって、これは公開も可能であるというふうになって、この三つがそろってしまった場合に、非常に学校の序列化が進みますし、小中一貫校で成績が悪いというのは、これは何だという話にも当然なってくるのではないか。

 そういう面でいうと、三つがそろった場合にどういう影響が出てくるのかということについてもしお考えがあれば、山本参考人にお聞きしたいと思います。

山本参考人 今進められている、私たちは新自由主義教育改革と言っている、エリートとそうでない人を早くから分けてお金を重点的に資源配分する改革は、もともと選択制と学力テストはセットで考えていて、学力テストの結果がいい学校が選択されて、最終的には残っていく、そういうことをやりながら平等な公教育制度を壊してエリート校をつくり、それ以外の学校もつくっていくというふうな改革の中で進められているというふうに思っていますが、その中に、小中一貫校が例えば品川などで位置づいてくると、要するに、テスト成績を上げなければいけない、私たちはフラッグ校であるからそれの成果を上げなければいけないとか、あるいは呉のあの中央学園なども、学力テストで非常に高い成果を上げて、選択されるように位置づけられている。

 条件も施設も設備もそのように最初から設定されているために、非常にそういう目的に特化していくような、学力テストでいい成績を上げていかなきゃいけないというような、最初からそういう目的の中に位置づけられていくということで、非常に子供たちに負担がかかっていく、そういうような懸念はされると思っていますし、学力テストと学校選択制という保護者の選択行動を使いながら学校制度を序列的に再編していくというのが、二〇〇六年や七年ぐらいの、今の改革のその前の段階で進められていたイメージだとすると、今はもう少しダイレクトに、こういう人材養成するために学制改革に着手していくというような、選択を待つというよりは、そのままもう直接学校制度を変えて、エリート校向けとそうでない学校というふうに再編していく、そういう段階にもう入っているというふうに思っているんですけれども、それでもやはり学力テスト結果公表とか選択制というのは、それを正当化するために使われる制度だというふうに思っているので、これらの制度はセットで考えていくべきだというふうに考えています。

吉川(元)委員 あともう一点だけ、山本参考人の方にお聞きしたいと思います。

 きょうの朝のお台場の方でお話を聞いた際にも、あそこは特例を使ってやっているということですけれども、いわゆる少し早目に勉強する、本来であれば中学校でやるところを少し早目にやるだとかということをやられているというお話を伺いました。

 ただ、その際に非常に悩まれていると。転出入との関係で、特例をどこで使うかというのは非常に苦労されて、結局、お話の中では、算数の負の数というところだけ少し早目に予習的にやるということでやられていますけれども、もし仮にこうなった場合に、何らかの線引きをしないと、先ほど言ったとおり、転入、転出の際に、入ってくる方もそうですし、出る場合もそうですけれども、非常に子供たちに負担がかかるのではないかと思いますけれども、この点はどういうふうにお考えでしょう。

山本参考人 確かに港区のケースは非常に象徴的なケースで、小中一貫校だけカリキュラムが特例化できるので、前倒しで、要するに六年生でやる漢字を四年生まででやってしまうとか、同じ自治体の中で一部の学校だけ前倒しがあって、そのほかの学校ではそうでないという結構典型的なケースだと思うんですけれども、ほかの自治体を見ると、例えば品川区などでは、施設一体型一貫校も普通の分離型一貫校も、カリキュラムは区として小中一貫カリキュラムでそろえて、合わせて前倒しにしていますので、一応、転入出でも対応できるように工夫されているわけですよね。

 私は、前半の港区のようなケースは今後そんなに出てこなくて、今いろいろな自治体で、法制化に便乗して全市導入とか、そういう自治体を幾つか見るにつけ、全市で小中一貫カリキュラムを導入して、一部だけ一体校にして、あとは併設型でそのままキープして、形式的にカリキュラムはその自治体で一つ、だけれども全市導入したというスタイルにする自治体が多いのではないかと。

 だから、港区のようなケースを避けるために、形式的には小中一貫カリキュラムを全市導入する、だけれども、統廃合のために少しだけ一体校をつくる、その後は結構カリキュラムが形骸化して、連携校とはいいながらも、そんなに実質は伴わないようになっているような自治体も多いので、そんなようなことで進めていくのではないかなと。

 だから、同じ自治体の中に義務教育学校と普通の小学校、中学校が残っていくケースは割と少ないんじゃないかなというふうに、だから、全市導入のケースが多いのではないかというふうに思っています。

吉川(元)委員 時間が来ましたので終わります。本当にありがとうございました。

福井委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、本当にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、来る二十九日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十分散会


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