衆議院

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第15号 平成27年6月5日(金曜日)

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平成二十七年六月五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 福井  照君

   理事 池田 佳隆君 理事 石原 宏高君

   理事 冨岡  勉君 理事 萩生田光一君

   理事 義家 弘介君 理事 郡  和子君

   理事 牧  義夫君 理事 浮島 智子君

      青山 周平君    安藤  裕君

      池田 道孝君    尾身 朝子君

      大西 英男君    大見  正君

      門山 宏哲君    神山 佐市君

      木村 弥生君    工藤 彰三君

      熊田 裕通君    小林 史明君

      櫻田 義孝君    瀬戸 隆一君

      田畑 裕明君    谷川 とむ君

      馳   浩君    鳩山 邦夫君

      船田  元君    古川  康君

      古田 圭一君    前田 一男君

      宮川 典子君    宗清 皇一君

      山本ともひろ君    菊田真紀子君

      中川 正春君    平野 博文君

      松本 剛明君    笠  浩史君

      坂本祐之輔君    鈴木 義弘君

      初鹿 明博君    中野 洋昌君

      吉田 宣弘君    大平 喜信君

      畑野 君枝君    吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学大臣政務官   山本ともひろ君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      関  靖直君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       川上 伸昭君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            田中 正朗君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       土屋 喜久君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       北島 智子君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房審議官)          大村 哲臣君

   参考人

   (国立研究開発法人日本原子力研究開発機構理事)  大山 真未君

   参考人

   (国立研究開発法人放射線医学総合研究所理事)   黒木 慎一君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月五日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     熊田 裕通君

  神山 佐市君     池田 道孝君

  工藤 彰三君     瀬戸 隆一君

  谷川 とむ君     宗清 皇一君

  船田  元君     大西 英男君

  宮川 典子君     木村 弥生君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     神山 佐市君

  大西 英男君     船田  元君

  木村 弥生君     田畑 裕明君

  熊田 裕通君     青山 周平君

  瀬戸 隆一君     工藤 彰三君

  宗清 皇一君     谷川 とむ君

同日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     宮川 典子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)


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     ――――◇―――――

福井委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として国立研究開発法人日本原子力研究開発機構理事大山真未君及び国立研究開発法人放射線医学総合研究所理事黒木慎一君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として文部科学省大臣官房文教施設企画部長関靖直君、科学技術・学術政策局長川上伸昭君、研究振興局長常盤豊君、研究開発局長田中正朗君、厚生労働省大臣官房審議官吉田学君、厚生労働省労働基準局安全衛生部長土屋喜久君、環境省総合環境政策局環境保健部長北島智子君及び原子力規制庁長官官房審議官大村哲臣君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

福井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

福井委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本剛明君。

松本(剛)委員 委員の松本剛明でございます。

 本日は、議題となりました国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案の審議ということで質疑をさせていただきたいと思っておりますが、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構から仕事を、放医研と呼ぶんでしょうか、に持ってくるというのがこの法案の内容だというふうに理解をいたしております。

 日本原子力研究開発機構、この審議では原子力機構とでも呼ばせていただこうと思っていますが、こちらが改革が必要だということは理解をしているので、法案の概要を御説明いただいたときは、まあこういうことかなと思いながら聞かせていただいたんですが、一つ一つ聞いていくと、少しずつ、疑問符であったり、すっきりしないというところが幾つか残りますので、ぜひそういったところを質疑をさせていただきたいと思っておりますし、また、大臣にも、質疑全体を俯瞰いただいて、やはりリーダーシップを発揮していただいて、動かしていただくべきところは、ぜひ、この質疑を通して御理解をいただいたところはそのようにしていただけたらとお願いを申し上げて、質疑に入りたいと思っております。

 私の方からも今申し上げましたが、この組織の改編に至る経緯を全部話をするとあっという間に時間がなくなると思いますが、原子力機構の改革から始まったものだ、こういう理解でよろしいでしょうか。

下村国務大臣 おはようございます。

 量子科学技術に関しまして、近年、加速器の高エネルギー化、レーザーの高出力化やナノテクノロジーの進展等によりまして、医療、エレクトロニクス、素材などの広範な産業への利用を含めて、イノベーションを支える基盤としての重要性が急速に高まっているところであります。

 放射線医学総合研究所は、重粒子によりますがん治療等に取り組み、世界トップの治療実績を積み上げてきたところでありますが、放射線医学の分野では、近年、量子ビームの人体への作用に関するメカニズムの解明の推進等、新たな量子科学技術に関する知見の追求が不可欠というふうになっております。

 原子力機構改革については、私が本部長を務める日本原子力研究開発機構改革本部におきまして平成二十五年八月に改革の基本的方向を取りまとめ、その中で、量子ビーム研究それから核融合研究開発に係る業務については、切り離しを含め検討すべきとの方向性を示しているところであります。

 これらの観点から文科省において検討を進め、量子ビーム研究それから核融合研究開発に係る業務を放医研に集約することで、放医研が行う研究が加速されるとともに、量子科学技術に係る研究開発の推進に資することが期待されることから、原子力機構改革を一つの契機として法改正を行うこととしたものであります。

松本(剛)委員 私どもも今大臣が述べられたような文章に基づいて説明を受けて、そうかなと思いながら私もいろいろ調べてみたんです。それが、先ほど少しすっきりしないところが幾つかあると申し上げたところです。

 一つ確認を、というか、お願いをした方がいいのかもしれませんが、通常、政府系の団体、法人の組織の改編ということになると、やはり行政改革ということが主眼になるケースが多いわけですが、今の話にもありましたし、原子力機構の改革という課題もあったので、今回改編することによって直接的に施設が減るとか役職者が減るとか職員を減らすとか、そういうような行政改革の報告は聞いていないんですが、やはり法人組織として、まず、成果を上げるために効果的でなければいけませんし、コンプライアンスは当然のこととして適正でなければいけませんし、そして、税金が入るので効率的でなければいけない、そういう形はぜひ推進をしていただきたいと思いますので、決意をお伺いした方がいいかもしれませんが。

下村国務大臣 おっしゃるとおり、今回の法律案は、法人の整理、統廃合などの行政改革を主たる目的としたものではなく、原子力機構の業務のうち、量子ビームと核融合の研究開発に係る業務を放医研に移管することにより、量子科学技術の水準を向上させ、研究開発活動のより効果的な推進を図ることを目的としたものではあります。

 統合の対象となるそれぞれの業務は、統合の前後においても継続しており、統合後直ちに削減を行うことは困難ではありますが、業務の効率化に向けた取り組みの重要性は御指摘のとおりだと考えておりまして、新法人の運営に当たっては、統合後、合理化計画を策定し、計画的に経費の削減を進めていくこととしております。

 具体的には、人件費を除いた管理費については、おおむね三年間で一〇%程度の効率化、金額にして七千万円程度の効率化をぜひあわせてしてまいりたいと思います。

松本(剛)委員 先ほど申し上げたとおりで、効率的にやっていただきたいということはそのとおりであります。

 ただ、私が申し上げるまでもなく、大臣はよく御理解だと思いますが、国立研究開発法人というのは、やはり、大事なところは資源をつぎ込んで伸ばしていこうということも必要だということでこういう法人形態を設けたというふうに理解をしておりますので、私も、ただただ減らせ、削減をしろと申し上げているわけではありません。ただ、やはり、効率化も含めたガバナンスは大事だということだけはぜひお進めをいただきたいと思います。

 それでは少し各論に入らせていただきたいと思いますが、この原子力機構から新しい量子科学技術研究開発機構に移す、どれを移すのかというのは、どこで、どの基準でお決めになったのかということをお聞きしたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力機構の改革に当たりましては、「もんじゅ」の保守管理不備等を受けまして、安全を最優先とした組織体制のあり方を抜本的に見直すために、先ほど文部科学大臣からも申し上げましたように、文部科学大臣を本部長とする日本原子力研究開発機構改革本部を設置いたしまして、平成二十五年八月に改革の基本的方向をお示ししたところでございます。

 この改革の基本的方向におきましては、原子力機構が我が国における原子力に関する唯一の総合的研究開発機関として果たすべき役割を念頭に置きまして、廃炉研究や環境回復等の福島第一原子力発電所事故への対応を初め、原子力安全への貢献、基礎研究や核燃料サイクルに関する事業等に重点化を図るということとされております。

 一方、原子力分野のみならず、ライフイノベーション、グリーンイノベーションへの貢献等の観点から、他の研究機関との連携強化によりさらなる発展が期待される業務については、国内の他の研究機関への移管も含め、検討することとなりました。

 これらの業務につきましては、改革の基本的方向や原子力機構の一年間の集中改革の成果を踏まえまして、研究上の親和性、発展性の観点から、文部科学省において移管事業として決定したものでございます。

松本(剛)委員 与党の皆さんにも聞いておいていただけたらと思っておりますが、今の御説明ですけれども、いろいろお話があったんですけれども、量子科学技術についてある程度まとめて、また、あと核融合について切り離せ、そういう報告も改革の中であったので、そういう方向へ持っていこう。

 今皆さんのお手元にも資料を配らせていただきました。「原子力機構の事業の概要」というのが一枚目にあるんですが、原子力機構がいろいろなことやっている。ここに書いてあります。ぱっと見ると、この黒で囲った箱が四つありますが、左側のものは残して、右側の核融合と量子関係を移すんだ、そういうお話なんだろうと思います。

 そうすると、この右側の「量子ビーム技術開発及び応用研究」のところで、世界最大強度のビームを発生させる強度陽子加速施設、J―PARC等を用いた、幅広い分野における基盤から産業応用に向けた研究を推進という、このJ―PARCは今回移管されないんですよね。なぜ入らないんですか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の、大強度陽子加速器施設、J―PARCでございますが、これは、日本原子力研究開発機構が所管する世界最高レベルのビーム出力を有する陽子加速器施設でございまして、茨城県東海村の原子力機構の原子力科学研究所の中に設置されてございます。

 J―PARCは、原子力機構が重点化して実施することとしております業務との関連が強いこと、また、安全な施設の管理運営の観点から、引き続き原子力機構が所有することが適当であると考えたところでございます。

 具体的には、平成二十六年四月に閣議決定されましたエネルギー基本計画におきまして、加速器を用いた核種変換等の技術開発等の推進が明記されたことを踏まえまして、J―PARCに放射性廃棄物の減容化、有害度低減に関する施設を整備し、研究開発を進めることを検討しているところでございます。

 また、J―PARCは世界最高レベルのビーム強度を有する陽子線加速器でございますので、厳しい安全対策、管理が必要でございまして、法令上求められる放射性廃棄物の処理や緊急時の対応を含めた運営管理の観点から、原子力機構の原子力科学研究所と一体的に運用することが適切であると考えております。

 これらを踏まえまして、J―PARCにつきましては、引き続き原子力機構が所有、管理することが適当と考えているところでございます。

松本(剛)委員 今の話からしたら、このJ―PARCはやはり危険が大変多いからそれは移さない、あとのものは大丈夫だから移すというふうにも聞こえてしまいますし、前向きに、本当に量子ビームを含めた量子科学技術を発展させようと言うのであれば、この概要を見てもわかるように、世界最大強度といって一番の売り物にするものを持っていかない。そこでいろいろなほかのこともやっているからだというのと、危険性が極めて高いからだ、こういうお話なんだろうというふうに思いますが、何となくすっきりしないんですよね。本当に量子科学技術を発展させようと言うのであれば、やはり、前向きにそういうものをどうやって統合していくのかということになるんではないかと思います。

 ちょっとそれでは、この機会ですから、いわば左側の部分というんでしょうか、原子力機構はこれからどう改革をしていかれるつもりなのかということを伺っておきたいというふうに思います。

 これは、文科省、それから、機構にもおいでをいただいておりますので機構の方からも、その決意というんでしょうか、所信をお伺いしたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力機構では、「もんじゅ」の保守管理不備等を受けまして、平成二十五年十月から一年間の集中改革に取り組んできたところでございます。

 平成二十六年十月には、原子力機構が取りまとめました集中改革の報告書におきまして、理事長によるトップマネジメントを支援するための機能強化等の組織再編及び業務運営の見直し、東京電力福島第一原子力発電所事故への対応等の重要分野への重点化など、業務の合理化などに取り組んできたことがまとめられてございます。

 ただし、「もんじゅ」につきましては、原子力規制委員会からの措置命令の対応を含め、さらに取り組むべき課題が残っておりまして、平成二十七年三月の第二期中期目標期間の終了まで、集中改革期間を半年延長して取り組んできたところでございます。

 平成二十七年四月からは、民間から児玉敏雄理事長を迎えまして、改革の取り組みを踏まえた新たな中長期目標を設定いたしまして、そのもとで、集中改革の成果の定着、さらに、改善という新たな改革の段階にあると認識してございます。

 文科省といたしましては、原子力機構が、改革の取り組みを踏まえて、我が国における原子力に関する唯一の総合的研究開発機関として安全性を最優先とした運営を行い、国民の信頼を早期に回復できるように、引き続き、前面に立って指導してまいりたいと考えてございます。

大山参考人 原子力機構におきましては、平成二十五年九月に、原子力機構改革計画を取りまとめ、同年十月からの一年間を集中改革期間として設定いたしました。

 この間、機構改革の契機となりました「もんじゅ」及びJ―PARCに係る改革はもとより、運営管理組織や研究開発部門の体制整備、また、安全文化醸成などの意識改革の促進などに取り組んできたところでございます。

 この結果、平成二十六年九月に、外部有識者で構成されます原子力機構改革検証委員会におきまして、機構の取り組みは実質的に全て実施し得たと認められ、効果についても確認または確認の見通しが得られたものであり、集中改革期間を終了して、自律的に改善、改革を進めていくフェーズに移行することは妥当という御評価をいただいております。

 集中改革期間終了後も、機構改革に盛り込まれました組織、業務改革への取り組みの着実な定着に取り組んでいるところでございます。

 原子力機構といたしましては、今後とも、安全を最優先といたしまして業務運営に取り組み、社会や立地地域の信頼の確保などに取り組んでまいる所存でございます。

松本(剛)委員 大臣には後でまとめてお伺いをしようと思っております。

 現場現場はそれなりに御努力はいただいているのだろうと思いますが、今の研究開発局長のお話も、大体文章が長くなるときというのは、すぱっと言い切れる理由がないから、いろいろ足し合わせて合わせわざで何とか届くようにというような話が多いわけで、私がすっきりしないというのもそこにあります。

 原子力の技術は私も大事な技術だと思いますので、これがきちっと引くように、ある意味では大局的方向転換とか意識転換というのは、時には、下からではなくて上からやらなければいけないときもある、そのように思っておりますし、もう一つは、今回の改編も、確かに、一つの節目をつけるために多分組織の改編という話が、切り離すべきものは切り離すという話が出てきたような気がしますが、少なくとも、改革のきっかけになった不祥事の問題というのは、組織の問題というよりは、やはり、運用とかガバナンスの問題ではないかと思うんです。

 改革という話が出てきたときに、どうしても、本当の原因とは違って何かしようという形で出てくるものというのが時々やはりあって、これも若干やはり私から見ると、何かしようということがもともとの発端なのかな、何となくそういう感じが今でもすっきりしないで残っているということであります。

 しかし、我が国が誇る量子科学技術であり、原子力の技術であり、放射線医学だ。これを生かしていくということは大事だというふうに思いますので、では、この組織の改編をどう前向きに捉えていくのかということが大事なことだと思うんですが、そういう視点から捉えていくと、この放医研と原子力機構だけじゃなくて、例えば理化学研究所にも同じような仕事というのはたくさんあるんですね。

 例えばこれをめくっていただくと、四ページ目だったかな、放医研の仕事の一つに、資料三と書いてあるところですね、左から二番目に分子イメージング研究センターというのがありますが、理化学研究所でも、もちろん、いろいろな段階があるので全く一緒とは言いませんけれども、かなり近い仕事をされておられることがあります。

 また、原子力機構は、関西に光科学の研究所を持って、木津川と播磨にあるんですけれども、理化学研究所も放射光科学総合研究センターというのを播磨に持っております。もともと原子力機構の前身というか一部であった原子力研究所と理化学研究所の共管であったSpring8もあるわけで、理化学研究所と原子力研究開発機構もかなり仕事の重なっている部分がある。また、放医研と理化学研究所の重なっているところもある。もちろん、放医研と原子力機構の接点もあるんだというのがここまでの御説明だったわけですけれども。

 こういう改編をするときに、前を向いて、どの組み合わせでどういうものをつくるのが一番日本の未来にプラスになるのかという視点で御検討いただいた結果が、この、原子力機構から一部切り出して放医研とつけるということなんでしょうか。理研とくっつけるべきものはくっつけるとか、全体の見通しとか、そういうものは検討されなかったのか。あわせてお聞きをしたいと思います。

川上政府参考人 お答え申し上げます。

 理研も含めましていろいろな機関との統合というのは、慎重に検討したところでございます。

 今、松本委員の御指摘いただきましたものは、総じて、大きな施設を使って研究をする、こういう性格がございます。放医研や原子力機構の施設以外にも、理化学研究所、御指摘のSPring8を初めとしまして、量子科学技術に関連したさまざまな大型の研究施設というのはあるわけでございます。

 これらの研究施設でございますけれども、各施設を利用する研究の目的、手法、分野特性、それから中核となる研究者層など、そういったことを的確に踏まえた中長期計画のもとに、それぞれの組織、機関として、一体的な研究マネジメントによりまして、各施設の特徴を生かした研究体制が構築されているところでございます。

 またさらに、先ほど、J―PARCのところで研究開発局長からも御説明いたしましたが、例えば放射線を利用する研究施設では、それぞれの事業所や拠点におきまして、関係機関や自治体等との密な共同のもとで、放射線安全管理まで含めた施設の運営管理体制が一体として構築をされており、こうした的確かつ適切な施設マネジメントのもとでこれまで着実に成果を上げてきているところでございます。

 このため、これらの量子科学技術関連業務の実施体制を現在ある研究組織から切り離して変更するということは、現時点においては有効であるというふうには考えておらないところでございます。

 したがいまして、現時点においては、そういったものを切り離して統合するという考えは持っていないというところでございます。

松本(剛)委員 局長、先ほど、長いときはすっきりしないと申し上げたわけですけれども、では、私は文科系ですけれども、量子科学も含めて、特にこの最先端の分野というのはいろいろな意味でつながっているところというのはあると思うので、どこで線を引いて、どこで組み合わせるかというのはあると思います。

 ただ、我々がお話だけ聞いていると、それぞれ特性があって別々だけれども、連携するところは連携してやっていけばいいんだ。ところが、今回、この原子力機構の一部と放医研をつけるときは、別々より一緒になった方がはるかに効果が上がるんだ。その時々で、なぜこっちは一緒になった方が効果が上がって、こっちは別々でも大丈夫なのかというのも、結局、そのときそのときの説明のように聞こえるんです。

 ですから、もちろん、最初に申し上げたように、私から見ればですが、原子力機構は不祥事もあった、改革をしなければいけない、報告書が出た、一部の組織は切り出せと言われた、さあどこへつけようかということを思ったときに、幾つか候補があった、理研も検討対象ではあったというふうにお聞きをしましたけれども、こういう見方はしたくないんですけれども、量子ビーム技術の看板のJ―PARC、理研、残念ですけれども、共通のキーワードは不祥事なんですよ。

 不祥事が絡むところはちょっととりあえず置いておいて、切り出せと言うんだから不祥事のないところへとりあえずつけようか、まさかそんな安直な理由だけだと思いませんが、全部並べてみて今の長い説明を聞いてみると、本当に未来に向かって日本の技術をどうしようかという視点からこの答えが出てきたのかどうか、まだすっきりしないなというのが正直なところであります。

 先ほど、理研にあったり原子力研究所に残ったりするものは、比較的大きい施設であったり、かなり放射線レベルの高いものが多いんだということでありました。

 まだ途上ですけれども、核融合の技術というのは、やはり大変大きくてレベルの高いものになってこないんですか。これは今度放射線医学総合研究所に持っていこうという話になっていますけれども、いかがですか。どちらでも。

川上政府参考人 核融合も含めまして、先ほど私が安全管理上のことを申し上げましたのは、安全管理というのは拠点もしくは事業所単位で行われておりますので、核融合につきましては、茨城県の那珂、それから青森県の六ケ所村、それぞれの拠点を持ってやっておりますので、そこにおいて十分な安全管理が移管後も行われるということで検討したわけでございます。

松本(剛)委員 核融合のITER計画も大事な計画でありますので、この機会にそれについても少しお伺いをしようと思っておりましたが、時間に限りがありますので、割愛をして先へ行きたいと思います。

 大臣、お聞きをいただいたというふうに思います。大臣のお立場で、とりあえずくっつけたと思いますともちろんおっしゃらないと思いますし、いろいろお考えになったと思いますが、やはり、大事なこの量子科学技術をこれから伸ばしていくということを考えたときに、理化学研究所のガバナンスも今課題にもなっております。お手元にも、理化学研究所の事業一覧をちょっとつけさせていただきました。確かに非常に多岐にわたっておりますし、これを一元的にガバナンスするというのは、恐らく、思想も哲学も違うような分野がかなり入っていることもあろうかというふうに思いますので、相当大変ではないかというふうに思います。

 そういうことを考えると、もちろん全部つながりもあるわけですけれども、日本の誇るべき、また、これから先、誇り得る科学、技術をどう伸ばすのかということを考えたときに、今持っている財産、そしてぜひ大臣のリーダーシップで、文科省の守備範囲内にとどまらず、例えばこの量子ビームとかそういったことになると、正式な名前はちょっと思い出せませんでしたけれども、といったような研究所も幾つかそういうこともしていると思います。やはり、前向きの話をきちっとやっていただきたい。

 正直なところ、今回のは、いろいろ説明を聞いても、まあとりあえずの、後ろ向きに、少し前向きの要素を何とかつかないかなと思ってされている改編なのかなという印象を拭い切れません。やめろと言うほどのものではないので党として反対をするということにはならないと思いますが、さらに前へ向いた形をぜひやっていただきたいと思いますが、質疑を聞いた御所見だけ伺って、次へ行きたいと思います。

下村国務大臣 松本委員がおっしゃることはそのとおりだというふうに思います。

 私、五月の連休にトルコに行ったときにトルコの文化観光大臣が、聞きようによってはちょっと頭にくるような言い方をされたんですね。それはトルコ人と日本人の比較で、トルコ人は一人一人は優秀だ、しかし、二人以上になるとなかなか相乗効果が上がらない、日本人はトルコ人に比べると一人一人は落ちるかもしれないけれども、しかし、組み合わせるとトルコ以上の成果、効果が上がるというのを自分は思っているという言い方をされまして、全部外れているとは言いませんけれども、組み合わせの部分では確かにそういうところは、別にトルコ人じゃなくて、ほかの国に比べても特性としてあるのではないか。それは個人だけじゃなくて、やはり組織も、ばらばらのようであっても、うまくスキームとして組み合わせすることによって相乗効果が上がることはあり得るというふうに思うんです。

 その組み合わせを全部一本化するか、それともある程度分けながら、しかしばらばらじゃなくて、うまく連携をとってやっていくかということの中で、そのときそのときの最大効果というのは考えていく必要があると思いますから、全て一本化することが、行革的な視点からはコスト削減につながる部分があるかもしれませんけれども、一方でそれが科学技術、研究開発の硬直化につながるという部分もあるというふうに思います。

 ですから、今回についても、安易な、とりあえず一緒にできるところからするということではなくて、今後の我が国の科学技術水準のさらなる向上という視点から、そして、我が国の研究開発リソースを最大限に活用可能な体制を構築するという視点から今回のような法案をお願いしていることであります。

 その最適化を図ることで最大の成果、効果を上げてまいりたいと思いますが、やっている中で松本委員が御指摘のようなさらなる課題が出てくるようであれば、またその時点でより柔軟に、我が国の最先端の科学技術に資するような制度設計はどうなのかということについては、将来、検討することも出てくると思います。

松本(剛)委員 ぜひ大臣にはリーダーシップを発揮していただきたいと思うんですが、先ほど、トルコの話がありました。私も外務省の政務のときは救援その他で大変お世話になった親日的な国でありますが、彼らに言われるまでもなく、我が国の誇るべき一つはチーム力ではないかと思いますし、これを生かした国づくりであり社会でありというのが望ましいと私も思っています。

 ただ一つ、チーム型で物事を進めるときの気をつけなければいけない点と私が思っているのは、チームでやる場合、やはりリーダーはいますが、リーダーもリーダーでないスタッフなり平のメンバーも、ある種、チームになると対等になる。そうすると、大局的に上の人がこっちでなきゃいけないんじゃないかというのを、現場が今までここまでやってきたんだからこれでいこうというのに引きずられやすい。これが、チーム型のときの一つの気をつけなければいけない点だというふうに私は思っております。

 今あえて大臣にリーダーシップを発揮していただいて、日本の科学、技術をどうするのかというときに、絵を描いていただいて、一つにしろと言っているわけではありません、ただ、理化学研究所、原子力研究開発機構、そして放射線医学にとどまらず、さまざまな分野でいろいろなことが多岐にわたっているのが、重複しているものもあれば、一緒にこの分野はやった方がいい、実際に研究開発そのものでは一緒にやっているものはたくさんあると思いますが、それを、組織をどう合わせたらいいのかということを、現場は、今の組織でうまくいっていますと、聞いたら必ず言います。でも、そこをどうするかということを時には大局的にしていただくのがお願いだということで、お願いだけさせていただいて、放射線医学総合研究所の方の話にさせていただきたいと思います。

 特に、いろいろな分野が重なりがあるし、確かにつながりがありますが、私は、医学というのはやはり人に対する部分があって、ある意味では少し性格の違うものではないかというふうに思います。この医学のところに今回工学のものを持っていこうという部分がある程度あると思いますが、放医研として今回の改編のメリットというのをどう考えているのか。文科省と放医研さんにお伺いをしたいと思います。

川上政府参考人 お答えいたします。

 今回、原子力機構から量子ビーム研究及び核融合研究開発に係る業務を移管し、放射線医学研究所に集約することで、双方の研究開発において高い相乗効果が発揮されるということでやっているわけでございます。

 とりわけ重粒子線がん治療の研究につきましては、核融合研究開発で培われました超電導技術を活用することで、重粒子線がん治療装置のさらなる小型化、低コスト化が可能となり、これによって、今後、重粒子線がん治療の普及、展開が進むという統合効果が期待されるわけでございます。

 また、そのほかにも、将来的には相乗効果が期待されるというものとして具体的に申し上げますと、例えば、原子力機構の持つ量子ビーム技術を活用した、標的アイソトープ治療に用いる新規放射性薬剤の開発であるとか、生体組織に対する放射線影響の評価技術の高度化といったようなことが挙げられるというふうに考えてございます。

黒木参考人 お答えいたします。

 放医研といたしましては、従来、放医研の現在の法律では実施できなかったような研究開発、また、原研機構から移管される施設それから人材、これらと共同いたしまして従来の研究開発を加速することができるということがメリットであるというふうに考えております。

 先ほど、局長から例えばということで具体的な例示が、お話がございましたが、私どもといたしましても、局長からお話があったような研究開発、これはぜひ進めていきたいというふうに考えております。

松本(剛)委員 放医研さんに二つあわせてお聞きをしたいと思っています。

 一つは、法人の名前から今度医学が消えます。研究所としては医学は残りますけれども、法人の名前から医学が消えます。やはり医学というのは、人に対する部分で、倫理であるとか思想、哲学が少し工学とは違うところもあると思います。やはりお医者さんにも優秀な、ドクターと言うと博士も入るので、ドクターと言うよりはお医者さんと言った方がいいのかもしれませんが、優秀な医師にもたくさん来てもらわなきゃいけない、そういうこともあろうかというふうに思いますが、医学というものが外れるということはやはり残念なことだと思われませんか。

黒木参考人 お答えいたします。

 放医研といたしましては、法人名称に医学という言葉を残してほしいという気持ちは正直あったところでございます。

 しかしながら、新法人全体として業務が拡充したことを踏まえて現在の法案の名称になったというふうに理解しておりまして、先生御指摘のように、放医研としては、新法人のもとに、現在の千葉市にある放医研、これの放射線医学総合研究所の名称は残していきたいというふうに考えておりますし、また、我々放医研のこの業務、福島第一事故が起きた状況等を踏まえて、今後も、現在の放医研の使命や業務、これは重要になってくるというふうに考えておりますので、そういうことを明確に理事長の方から職員にお話しをいたしまして、所内の医療関係者、この士気が落ちることがないようにしっかりと配慮していきたいというふうに考えております。

松本(剛)委員 大事な仕事をしていただいています。質問の項目にも入れさせていただいておりましたが、お配りをした資料でも、福島の支援だけでもいろいろなプロジェクトをやっていただいております。長期低線量被ばく影響プロジェクトを初めとして、健康調査、そして環境動態調査など、いろいろやっていただいている。やはり福島のためにも、そして科学の面からも、これはぜひやっていただかなければいけないと思っております。

 頑張っておられる放医研さんをここで詰める気はありませんが、皆さんもお聞きをいただいて、本当はやはり医学を残したかったという気持ちを感じ取られたのではないかというふうに思いますし、医学というのは、やはりその意味では非常に重要なキーワードだと私は思っておりまして、後ほど、ぜひやはり医学を入れるべきではないかということを提案をさせていただきたいというふうに思っております。

 最初から申し上げてまいりましたけれども、そもそも原子力研究開発機構の改革から始まって、やはり分けろと言われてこれを切り出す。この切り出すという字も私はちょっとまだ疑問符が残っているんですが。これをでは今度どこへつけようかといったときに、先ほど申し上げたように、いろいろな仕事の種類からしたら理化学研究所と重なっている部分が随分あるんだけれども、こっちは不祥事があって今ガバナンス改革の真っ最中だから、ここにまた新しいものをつけると言われたら何を言われるかわからない。だったら、そういえば放射線医学総合研究所も似たようなところがあるかなということで、つけてみようか。

 私は気の毒だと思っているんですよ。それでとりあえずこれを引き受けろと言われたら、医学の名前も消されちゃった。どっちかというと気の毒だなと思っておりまして。この放医研という、ある種のブランドになっていると思いますし、これを組織としては残す、こういう話でありました。

 私、この話を聞いたときに、どこかで聞いたことがあるなと思ったのは、業務の種類が全く違いますけれども、国際協力銀行、小泉政権のときに、とにかく政策金融公庫に一緒にするんだといって金融部門を一緒にして、JBICの名前は相当通じている名前なんだけれども本当に一緒にしちゃうんですかという声がある中でさんざんあれして一緒にしましたけれども、今や、やはり別の方がいいねということで別になったわけで、放医研も、やはり放医研の名前は残した方がいいよねということに先々なるのではないかという気がしてならないので、今ここで申し上げておきたいと思います。

 これも、もう一つの件と含めて大臣にあわせて御所見だけ伺いたいと思います。

 もう一つ、先ほど何度も出てきている重粒子線治療について随分研究をしてきていただいていると思いますが、これは今、医療としてどういう段階に来ているという位置づけになっているのか。厚労省の方から、これまでの経緯、現状を御説明いただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 重粒子線治療は、現在、保険外の併用療養制度の先進医療として、限局性固形がんに対して実施が可能になってございます。

 これまでの経緯あるいは実績ということでございますけれども、この重粒子線治療は、平成十五年十一月より先進医療として行うことを認められておりまして、平成二十七年五月一日現在、全国四施設において実施しておられます。

 また、実績報告により、この重粒子線治療の実施件数を過去五年間で見てみますと、平成二十二年度は七百二十九件であったところ、毎年増加しておりまして、平成二十六年度では千六百三十九件になっているという御報告を受けております。

松本(剛)委員 先進医療というのはやはり保険適用の方向へということだと思います。診療報酬改定のときに、これが先進医療でいくのか保険適用でいくのか、それとも先進医療としては一つ区切りをつけるのか、こういうことが見直しをされると思いますが、この重粒子線治療、これまでも、とりあえずと言うと言葉は悪いですけれども、先進医療でもうちょっと様子を見ましょうかということで来たと思うんです。

 今、そろそろそういう見きわめも近づいているのではないかと思いますが、その段階と、それから、指摘をされている課題は何なのかということをお示しをいただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 重粒子線治療の保険適用の可否につきましては、累次の診療報酬改定において先進医療会議で議論をされております。有効性等についての評価にたえるデータの解析がまだ不十分ではないかという御評価もあり、先進医療として継続することとされたというのがこれまでの経緯でございます。

 さらに、直近、前回の平成二十六年度の診療報酬改定時には、既存の治療との比較を踏まえたデータ解析などいまだまだ行われていないということも御指摘ありまして、現在、次期改定に向けて、関係学会にもかかわっていただいて、臓器あるいは組織型ごとにデータ解析の取り組みを進めていただいているというふうに承知をしております。

 今後も、データやエビデンスに基づいて先進医療会議で評価をいただいて、その上で中央社会保険医療協議会、中医協において保険適用について検討するということになろうかと思います。

松本(剛)委員 今度、診療報酬改定が来ますよね。来年、診療報酬改定が来ますが、そのときぐらいまでには答えを出せと言われているように私は理解をしていますが、いかがですか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 前回の改定時の検討において、先ほど申し上げたような課題を関係者の方々に先進医療会議としてお示しをしてございまして、それを今御検討いただいている、あるいは整理をいただいているというふうに承知をしておりますので、それを踏まえて次の機会に、また、その結果に基づいて評価をいただくということかと思います。

松本(剛)委員 委員各位もお聞きをいただいたと思いますが、件数はそこそこ積み上がってきていると思います、まだまだやらなければいけないことがあると思いますが。むしろ、解析が必要だというふうに指摘をされている。

 この重粒子線治療については、おおむね半分は放医研さんでいわば扱うというんでしょうか、の件数で、残りの三施設がその余について取り扱っているという形になっているわけで、国立研究開発法人ですし実績もあるわけですから、放医研さんがリーダーシップをとっていただいて、今のような要請にしっかり答えをやはり出していただかなければいけない。先進医療でありますし、当然、データ解析があって、他の治療との比較の解析が必要だ。厚労省さんの診療報酬の審議の過程で指摘をされるまでもなく、科学でやるべきことだ。

 放医研さん、ここまでもっと頑張っていただかなきゃいけないんじゃないか。そして、大局的にもそういう部分についてもしっかりやっていただかなければいけないと思いますが、これは文科省さんでしょうか放医研さんでしょうか、お答えいただけますか。

黒木参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のような認識を持っておりまして、先ほど、厚生省審議官が御説明があったように、我々としては、重粒子線治療の有効性、安全性に関する、複数施設でのデータをもとにした客観的で再現性のあるエビデンスの蓄積、解析が十分でないという認識がございます。

 これを担保するため、他の重粒子線施設を初め、複数施設の協力によって、過去の臨床データに基づく研究、それから、今後得ていく臨床データに基づく研究が不可欠であるというふうに考えているところでございます。

 このため、私ども放医研といたしましては、千葉大学病院、それから重粒子施設の他施設にも参加をいただき、多施設共同臨床研究を開始したところでございます。

 具体的には、重粒子線による治療成績が圧倒的に高い骨軟部や頭頸部がんについては、保険収載を目指して複数の施設から過去の症例データの収集を進め、整理するとともに、治療ガイダンス作成を鋭意進めていきたいというふうに考えております。

 また、患者数の多い肝臓がん、肺がんなどについても、複数の施設から過去の症例データを収集し整理するためのみならず、今後得ていく臨床データをもとに研究を進め、どのような病態のがんであれば保険収載が可能か、検討中であるところでございます。

 いずれにいたしましても、厚生労働省の指導を仰ぎつつ、放医研として全力を挙げてこの課題に取り組んでまいる所存でございます。

松本(剛)委員 少しきつい言い方をすれば、大臣が冒頭でなぜ改編をするのかと説明をした中でも、期待される分野として重粒子線治療が出てまいりました。先ほどの政府説明の中でも何度も出てまいりました。

 実は、放医研以外の三施設のうちの一つは兵庫県の播磨にありますので、私も、これが将来本当に人の役に立つ治療になるはずだという夢を持って頑張っている研究者の方々とも接してきていますので、ぜひこれをやはりいいものにしていただきたいと思っているんですが、診療報酬改定、何度かいわば先進医療でとりあえず継続になってきているんですが、恐らく指摘はそんなに変わっていないというか、だんだん厳しく多分なっているだろうと思うんです。

 ぜひもっともっと文科省も指導いただいて、他施設との連携も強めていただいて、きちっと答えを出していただいて前へ行くようにしていただきたいと思いますが、文科省の現場から何かありますか。なければ、もう大臣に御所見を伺いたいと思います。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 重粒子線がん治療につきましては、放医研においてこれまで臨床研究を実施いたしまして、より有効で安全な照射方法などの治療方法の開発ということを進めてきたところでございます。

 一方、保険適用につきましては、今お話しございましたように、がんの種類や臓器ごとに科学的根拠に基づき客観的に評価を行い、治療効果を明確に示すということが課題であるというふうに認識をしてございます。

 このようなことから、近年、複数の重粒子線がん治療施設や装置が設置されてきたことを踏まえまして、放医研を中心に、これらの施設等とも連携協力をいたしまして臨床データの整理や研究を進めているところと承知をしておりますので、文部科学省といたしましても、厚生労働省とも連携をいたしまして、こうした取り組みをしっかりと進められるように支援をしてまいりたいというふうに考えております。

松本(剛)委員 しっかりとに力を入れていただきましたので、しっかりとよろしくお願いをしたいと思います。

 時間もあれでございますので、大臣に最後に、改めて私どもからは、放射線医学という名前を残したらどうかという提案を後ほどさせていただきたいと思っておりますので、その点についてと、それから、先ほどの重粒子線治療、現状、結構分かれ道のところまで来ているんです。せっかく将来に期待の持てるものを国としてちゃんと応援をしていくためにも、そして、今もお話しあったように、診療報酬改定が一つの区切りということになると、改定そのものは来年ですけれども、そういったデータ解析も含めて、実質ことしが勝負だと思いますので、厳しく、そして強く指導をしていただいて、前へ進めるようにしていただきたい。

 最後に大臣の御所見を伺って、終わりたいと思います。

下村国務大臣 まず名称についてでありますが、先ほど答弁がありましたが、放射線医学総合研究所、その名称が国内外において広く認知されていることを踏まえ、新法人を構成する研究拠点の一つとして、千葉において放射線医療総合研究所という名称を引き続き用いる予定としたいと考えます。

 それから保険適用でございますが、この重粒子線がん治療は、これはもう世界の中では日本が最先端、トップであるというふうに思います。この治療によって極めて成果、効果が上がっているということは事実であります。

 ただ、御指摘のように、保険適用がないことによって個人負担が三百万円を超えるということで、限られた患者さんしか利用できないということの中で、御指摘のように、保険適用を早く検討項目に入れるべきではないかという御指摘だというふうに思います。

 先ほど局長からも答弁がありましたが、がんの種類それから臓器ごとに、科学的根拠に基づき客観的な評価を行い、治療効果を明確に示すことが課題であるということもありますので、しっかり放医研等の応援をしながら、保険適用等ができるだけ早く行われるような、文科省も、厚労省と連携して進めていくように努力をしてまいりたいと思います。

松本(剛)委員 非常にこれも大事なところでありますし、大臣がかなり答弁書に目を落とさなければいけないほど少し長い説明にならざるを得なくなっているということそのものが一つの課題だと思いますので、申し上げた点を改めて踏まえていただくように強くお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

福井委員長 次に、冨岡勉君。

冨岡委員 自由民主党の冨岡勉でございます。

 今の松本委員に引き続き、統合問題についてお尋ねしたいと思います。

 大臣、政務官を初め誰もおられないので、現場の川上局長にお尋ねすることになるかと思います。時間が限られているので、最初はちょっと読ませていただきます。

 さて、一昨日の文科委員会で、本委員会の中で、科学技術に関する質問が少ないとの平野委員のお話がございました。実は私もそう感じていた一人であります。

 そこで、本委員会に、今国会、百八十九回になりますけれども、衆参文部科学委員会での基本施策に関する質問総数を調べました。九百十問ありまして、科学技術に関係する質問はどれくらいだと思いますか。わずか五十一問、五・六%でありました。科学技術・イノベーション推進特別委員会が設置されているとはいえ、いかにも低い数値ではないかと私も思ったところであります。

 さて、放医研は、各種のがんや肉腫に対する粒子線、重粒子線を含む治療成績に大変すばらしいものがあるのは、今の質問でも出てきたところであります。特に、膵がんや肉腫に対しての術前術後、外科的切除術後に抗がん剤投与を行ったものの、例えば膵がんでは、五年生存率は五〇%にも達しようとする治療成績を上げられているのは、この分野での多くの内科医、外科医にとってはまさに驚異的な数値で、五年生存率は大体一〇%ぐらいというのが今までの常識でございました。

 さて、我が国は今、円安傾向を受け、急峻な経済の立ち直りを見せており、これからは貿易収支の改善を図る必要に迫られているのは委員御存じのとおりでございます。そこで、よく出てくるのが、七千億にも迫る医療機器の貿易赤字に対して何らかの対策を練る必要があるのではないかということであります。

 そこで、お手元の表を見てください。これはバルーンマップと申します。御存じの方、見られた方も多数おられるかと思いますが、売上高を縦軸に、横軸は世界における製品の市場占有率を示したものであります。

 ある意味、市場占有率が高く売上高も伸びていっている企業であれば、表二をごらんください、に示すような産業別分野の企業を支援していけば日本の将来は明るくなるということであり、高校や大学での進路や就職指導においては、これらの企業群への就職を勧めることにもつながっていくのではないかと思います。

 さて、また戻ってください。講義調になってまいりましたけれども、表一の中では、赤で示している左右の小さな二個が医療機器のものであります。左下の一つは生化学分析装置で、右の小さな一つは内視鏡を示すものであります。小さく書いているのが売上高になります。

 この中に、今課題にしている重粒子線を含む粒子線治療施設の我が国のメーカー別、メーカーは一緒にしてもいいんですが、世界における売上高及び市場占有率は幾らでありましょうか。第一の質問をさせていただきます。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 粒子線治療に関する装置の状況でございますけれども、粒子線治療に関する代表的な国際会議でございます国際粒子線治療共同グループの調査というものがございますが、その中で、本年五月現在の数字でございますけれども、世界において、陽子線がん治療装置が四十五台、重粒子線がん治療装置が四台、陽子線と重粒子線の両方によるがん治療装置が四台でございます。

 企業関係者からの聞き取りでございますけれども、そのうち、およそ四分の一程度が日本のメーカーが供給しているものというふうに承知をしてございます。

冨岡委員 これはドイツのシーメンスなんかがあるんですけれども、アメリカでは、これを兵器に使おうとした歴史的な経過がどうもあるようで、これを平和目的にした日本がこの分野ではほぼトップを走っている、そういうことだろうと思います。大変うれしく思っています。これからの戦略的な輸出型医療機器の一つとして、これまで以上の取り組みを必要とするのではないかと改めて感じるところでございます。

 参考までにちょっと、この小さな表の三をごらんになってください。

 今、日本で貿易赤字額が一番大きい医療機器は何でしょうかと尋ねられたときに、多分ほとんどの人は答えられないと思います。今、大体、貿易赤字の医療機器が五千億から六千億になろうとしています。その中に、表の三の左下に示すように、ソフトコンタクトレンズの一千四百十五億円というのが最大の赤字になっているわけであります。

 したがいまして、これから文部科学行政としては、こういう表やバルーンマップ、あるいは企業別項目、あるいは、もうこれは調べておりますけれども、メーカー別のものが出ております。したがいまして、ある意味でそれらを目ききと言われる方たちが目ききされて、例えばソフトコンタクトレンズであれば、一つのパテントになっているのが、ガラスとか、あるいはプラスチック、ナイロン等、いかに酸素が通り栄養素が通るか、たったそれだけで世界制覇、一兆円にも上るというソフトコンタクトレンズのシェアを独占することができる。そういう状態になっていることを我々は知って、それをこの文科でひとつ押すような、推進するような施策をする必要があるか、そういう意味で、きょうは表を三つ出させていただきました。

 さて、原点に戻ります。

 次にお尋ねしたいのは、今回の組織統合改革で、量子ビームを放医研に移す、移管することとなり、研究上の知見やノウハウとの相乗効果、シナジー効果が期待されるとしておりますが、先ほどの松本委員の中でも少しお答えになっておられたようですが、具体的に、どういう結果としてシナジー効果があるのか、お示しいただければと思います。

川上政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、大変いい成果を上げております放射線医学研究所、ここに、原子力研究開発機構から量子ビーム研究及び核融合研究開発、この二つにかかわる業務を移管し、相乗効果を発揮していこうというのが今回の統合であるわけでございます。

 先ほど、研究振興局長から、粒子線のがん治療装置の世界占有率四分の一ということを御説明したわけでございますが、重粒子線に限って言いますと、さらに日本のシェアというのは高いわけでございまして、過半を占めているわけでございます。そういった重粒子線がん治療装置なのでございますが、これから世界に打って出ていくためには小型化をしなければいけない、こういう課題があるわけでございます。

 放射線医学研究所は、これまで、HIMACという大きな重粒子線がん治療装置をつくって臨床試験を実施して、既に九千人を超える治療をやったということで、非常に大きな実績が上がっているわけでございますが、これのサイズを小さくするというためには、原子力機構が持っております超電導技術を活用して、それで超電導化をして縮小していくということが必要なわけでございまして、例えばそういったことに大きな相乗効果があらわれるというふうに考えているところでございます。

冨岡委員 何か、聞いていて余りよくわからなかったんですけれども、まあ、期待しますよ。期待します。

 では具体的に、例えば、いろいろな診断用の試薬をつくる、あるいは、中性子線というかBNCT等、すぐにわかるような部分もあるんですが、患者さんにとっては治ることが最大のものになる。それも、保険収載されて、低価というんでしょうか、費用が少ない。

 そこで、具体的に示してください。

 重粒子線について言えば、設計費用でいえば、第一世代、今、放医研にあるのが、サッカー場ぐらい、百五十メートルぐらいでしょうか、三百億円。第二世代は、五十メートルから七十メートルで百五十億円。今、第三世代というのをつくっていると聞いておりますが、それはどれくらいの大きさで、どれくらいの費用で、なおかついつごろできるか、それを教えていただきたいと思います。

常盤政府参考人 放射線医学総合研究所におきましては、これまで、小型化という方向での研究開発を進めてまいりました。

 具体的に、放医研の重粒子がん治療施設HIMACに比較をいたしまして、群馬大学の施設でございますと、建屋サイズ及びコストで三分の一を実現してございます。

 また、今般、原子力機構から核融合の研究開発にかかわる業務が移管されることで、核融合の研究開発で培われた超電導技術等を活用することによりまして、これは今後の研究ということになりますので、時期ということは今の段階では控えさせていただきたいと思いますが、建屋サイズでは、群馬大学のさらに五分の一程度となることを目指しております。コストにつきましても、施設規模の小型化に伴いまして、大幅な削減につながるということを期待しているところでございます。

冨岡委員 一つのがんの治療、骨肉腫とか、取れない部分の腫瘍に対して非常に効果が高いということは知られているわけですけれども、でも、三百万というのは、いかにも治療としては高過ぎると思います。

 したがいまして、これから我々が取り組んでいかなくてはいけないのは、こういった合併、統合によって、材質的なものあるいは機能的なものをもう少し国民に還元できるような、そういう施策を推進する。それが見えないと、先ほど松本委員の質問にもありました、やはり、何のためにするのかなということがぴんとこない。

 ましてや、放医研、放射線医学総合研究所という名前は、量子機構の名前に比べてはるかに有名であり、国民に知られております。したがいまして、私自身も、この名前は残していただきたいし、むしろ、こちらの名前の方を使っていただきたいなと思う一人であります。

 いずれにしましても、この統合を契機として、放医研あるいは量子機構が、国民のためになる研究あるいは治療実績等を上げられることを祈念して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

福井委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 先ほど来、さまざま議論に出ている部分と一部重複をする部分もございますけれども、私の方からも、国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案につきまして、通告のとおり質問をさせていただきたいと思います。

 まず、本法案は、現在の放射線医学総合研究所、放医研に、原子力機構の量子ビームの部門あるいは核融合の部門を統合する、そして量子科学技術研究開発機構、こういう新しい法人をつくる、こういうことを内容としております。この新しい法人のガバナンス体制についてまずはお伺いをしたいというふうに思っております。

 新しい法人というのがどういう形になるのかというのを私も拝見させていただいたんですけれども、いろいろな研究所が全国各地にあって、それを束ねていく、こういう形になる、このように承知をしております。

 しかし、研究所をそれぞれ見ますと、青森に核融合を研究する研究所があり、そして千葉には放医研があり、そして茨城にも核融合の研究、あるいは群馬の方でイオンビームの研究、そして放射光などを研究する関西の研究所、全国さまざまな場所にそれぞれ研究所があるわけでございます。

 私の印象では、それぞれの研究所というのは、やはりそれぞれがかなり独立をしているようなものがまずは一つの法人の傘の下にぶら下がるアンブレラ型の組織になる、こういうことを伺いましたけれども、新しい法人をつくるに当たって、いろいろな研究所群があるわけですけれども、これをしっかりとガバナンスをきかせるというのは、私はこれは結構難しい課題になってくるのではないかというふうに感じておりまして、例えば、では新法人の本部の体制をどうするのか、こういうことも問題になると思いますし、あるいは、新しい法人の理事長を誰にするのか、では放医研の方がそのまま理事長になるのか、あるいは全体を統合する方を選ぶのか。

 いろいろな課題をこれから検討していかないといけないと思うんですけれども、まずは新法人のガバナンスをどうやってきかせていくのか、これについて、まず冒頭、お伺いをしたいというふうに思います。

川上政府参考人 委員御指摘のとおり、この新しい法人は、複数の異なった専門領域を持つ複数の研究開発拠点から構成されるわけでございます。この法人をしっかり経営していこうというときに、確かに、一つ一つが独立であると同時に、異なった専門性を有する研究者を、拠点を超えて連携を密にいたしまして、そして量子科学技術の推進に取り組むということで効果を発揮していくということが大切になるわけでございます。

 やはりその肝になりますのは理事長という御指摘でございまして、この理事長につきましては、発足のときに文部科学大臣が選任をするということになるわけでございますけれども、強いリーダーシップを発揮し、放射線医学から核融合の多岐にわたる法人の業務運営を的確に遂行するという能力を有している方を、外部有識者の意見を聴取するなど、透明性の確保を図りながら選任するということとしているところでございます。

 また、先ほど、研究分野が多岐にわたるということを申し上げたところでございますが、今回、原子力研究開発機構から移管するのに伴いまして、原子力研究開発機構の理事の数を一減をし、新法人におきましては一増をするということで、理事を一名動かすことで、専門的な分野に関するガバナンスの強化にも努めていくということとしているところでございます。

中野委員 ありがとうございます。

 続きまして、これも先ほど来質問に出ておりますけれども、新しい法人をつくることに伴うシナジー効果について私もお伺いをしたいというふうに思います。

 せっかく新法人をつくりますので、その効果が最大限に発揮されないといけない。私が伺ったところによりますと、重粒子線のがん治療、先ほど来お話が出ておりますけれども、これについても研究が進んでいく、こういうことが期待をされると伺っております。

 松本委員の方からもお話がございましたけれども、私も兵庫県の選出の議員でございまして、兵庫県には、重粒子線、陽子線いずれも使用できるがんの治療施設が、たつの市にございます兵庫県立粒子線医療センターというものもございますし、現在、神戸市も、医療産業都市を目指すということで、ポートアイランドで研究機関等を集積するということでもございます。特に、ことしの十月からは、小児がん治療に重点を置いた粒子線の治療施設、これの建設を開始する予定だ、こういうことも伺っております。

 他方で、先ほど来御指摘ございましたように、重粒子線による治療、施設も大きい、コストもかかる、いろいろな課題がございます。この新法人ができることによってがん治療分野においてどのような研究成果が期待できるのかということを、改めてお伺いしたいと思います。

川上政府参考人 がん治療の分野におけるこの新法人の期待でございますが、委員御指摘のとおり、それから、先ほどからお答え申し上げておりますように、まずは、日本独自でつくり上げました重粒子線によるがん治療、これを世界に普及していくという観点から、小型化、低コスト化、これを大きく進めていくということがまずございます。先ほど来御説明を申し上げておりますが、核融合の技術開発で培った超電導技術、これを適用することによりましてそれを可能とするということを考えているところでございます。

 またさらに、原子力機構が持ちます量子ビーム技術を活用したアイソトープを使うというこの技術を適用いたしまして、標的アイソトープ治療という新たながん治療の方法、こういったことも新規に開発をしていけないかというふうに考えているところでございます。

中野委員 ありがとうございます。重粒子線の治療の施設の小型化というところも先ほどお話に出たかと思います。

 やはり、これも議論に出ておりましたけれども、現在、粒子線による治療というのは先進医療という形で今やっておりますけれども、さまざまな関連施設というのが今兵庫県にある、またこれからつくっていこう、こういうこともございまして、粒子線によるがん治療の保険適用、これについては私も、しっかり検討を進めていっていただきたいな、こういうことを思っておりますし、また、その要望も今までもさせていただいておりましたけれども、私の方からも少し、厚生労働省に本日来ていただいておりますので、この点についてもお伺いをしたいというふうに思います。

 例えば、こうした粒子線による治療、私が伺っている限りでは、がん細胞に対して、よりピンポイントに照射をできるというふうにも伺っておりますし、例えば小児がん、これも神戸市の方でさまざまな関連施設というものをつくろうとしておりますけれども、こういうものに対しても大変に有効なのではないか、こういうお話も伺っております。ぜひ保険適用してほしい、こういう声も大変強く伺っております。

 他方、これも松本委員の質疑の中でも大変に詳細なお話もありましたが、今、先進医療という扱いになっている。これはどういう状況かといいますと、有効性や効率性も含めて保険適用について検討を行う、そういう状況なんだ、こういうことを承知しております。しかし、やはりなかなかこれが前に進んでいっていないんじゃないか、こういう現状でございます。

 例えば、今までの議論の中でも、私が伺っておりますのは、全てのがんだけではなくて、効率、非常に有効なものもあるし、いろいろなものがある、こういう指摘を聞いたこともございます。例えば、全てのがんではなくて、まずは小児がんに絞るとか、治療対象を絞っていくということもあり得るのではないか、こういうことも思っておりますけれども、保険適用に向けての検討の状況、どのように前に進んでいくのか、これを改めて厚生労働省にお伺いしたいというふうに思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 先生がおっしゃっていただきましたように、陽子線治療あるいは重粒子線治療といった粒子線治療全体につきまして、現在、保険外併用療養制度の先進医療として限局性の固形がんに対しての実施が可能という仕組みになってございます。

 これらの技術の保険適用の可否につきましては、これまで累次の診療報酬改定において先進医療会議で議論していただいておりますけれども、今、先生も御指摘ありましたように、これまでの議論の中では、有効性等について評価にたえるデータの解析が不十分という評価もありまして、先進医療として継続するという経緯がございます。

 さらに、前回、平成二十六年度の診療報酬改定時には、既存治療との比較を踏まえたデータ解析等がいまだ行われていないという御指摘もありまして、現在、次期改定に向けて、関係学会にもかかわっていただきながら、今御指摘もありましたように、臓器とか、あるいは組織型ごとにデータ解析等の取り組みを進めていただいているというふうに承知をしております。

 今後も、データあるいはエビデンスに基づいて先進医療会議で御評価をいただく、それを踏まえ、中央社会保険医療協議会において保険適用について検討してまいりたいと考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 私は、今回、放医研の一部を改正する、新しい法人をつくるということで、大変に期待をしている分野の一つでもございます。先ほど厚生労働省の方からもお話がございましたけれども、やはり新しい法人が中心となってこの分野についての研究というものをしっかりと進めていくということを、私の方からも改めて御要望させていただきたいと思います。

 では、続きまして、これも私の地元の兵庫県にある放射光の関係の施設について質問させていただきます。

 それは、SPring8という施設とSACLA。これは兵庫県の佐用町というところにございまして、世界最高性能の大型放射光施設でありますSPring8、そして、これに隣接をするエックス線自由レーザー施設SACLA、これが今非常にさまざまな研究成果を生んでいる、このように伺っております。

 SPring8というのは、ビームラインが六十二本ありまして、延べ人数でいいますと毎年一万三千人以上の方が利用されている、このように伺っておりますし、大変な研究成果も数多く出ている。SACLAというものも、SPring8の十億倍の明るさのエックス線レーザーを発生させることができる、こういう装置だというふうに伺っております。この二つの施設は、私は、世界でも最高性能と言っても過言ではないと。

 こういう量子ビームの関連施設が二つ併設をしている、これが兵庫県の播磨科学公園都市でございますけれども、今回、新法人ができるに当たりまして、これらの施設を、ぜひさらなる活用をしていただいて、より多くの研究成果を出していっていただきたい、このように考えております。

 これについてどのような御見解をお持ちか、文部科学省に伺いたいというふうに思います。

川上政府参考人 お答え申し上げます。

 SPring8及びSACLAは委員御指摘のとおりの施設であるわけでございます。

 今回の業務統合によりまして、これまで原子力機構がSPring8において蓄積してまいりました知識や技術、それから、新法人が所有することとなる専用ビームラインの活用、こういったことを通じまして新法人がSPring8及びSACLAの中核的ユーザーの一角となり、その結果、放射線医学の研究においてSPring8及びSACLAの活用機会が高まるということで、SPring8及びSACLAの施設を利用した研究の幅がさらに広がるものというふうに考えているところでございます。

中野委員 ありがとうございます。

 これはぜひ、非常に世界でも最高水準の施設ということでございますので、しっかりと活用していただきたい、このようにお願いを申し上げます。

 もう一問準備をしておったんですけれども、時間が参ったようですので、以上で質問を終わらせていただきますけれども、いずれにいたしましても、新しくできる新法人が本当にシナジー効果を発揮してさまざまな成果を出していく、これが何よりも期待をされていることだと思いますので、これをぜひ御要望申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

福井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時二十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

福井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。牧義夫君。

牧委員 午前中に引き続き、放射線医学総合研究所法の改正案について質問したいと思います。

 午前中の質疑の中にもお話が出てまいりましたけれども、これまでの放医研の活動、一つは、先ほど話にあったように、放射線の医学的利用に関する研究開発、特に重粒子線のがん治療というのが、先進医療として実績がもう既に高い評価を得ているということでございました。もう一つは、放射線による人体への障害、予防、診断及び治療に関する研究開発が、これまでのもう一つの大きな柱だったと思います。

 この役割を、特にあの三・一一後の福島においてどのように発揮をしてきたのか。福島のことですので、その地元の福島県の取り組み、あるいは県立医大の取り組みですとか、あるいは環境省、さまざまな役割分担があったと思いますけれども、その中で、どんな立ち位置でどんな役割を果たしてきたのか。まずお聞かせをいただきたいと思います。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 放医研は、原子力災害時における指定公共機関といたしまして、関係機関に対し専門家の派遣や技術的支援を行うとともに、被曝された方に対し、関係者と協力し、除染や専門的治療を実施するという役割を担っております。

 福島第一原子力発電所事故の際には、被曝医療の専門家を現地に派遣をいたしまして住民の汚染検査等を実施いたしますとともに、被曝した作業員十一名を受け入れまして、診察、線量評価、除染を実施をいたしました。さらに、国民に対しわかりやすく情報提供を行うという観点から、放射線被曝の健康相談窓口であるとか緊急被ばく医療ダイヤルというものを実施をしてきたところでございます。

 また、これまでの放射線の環境及び健康への影響に関する研究実績をもとにいたしまして、放医研におきましては、福島第一原子力発電所事故に伴い、復旧作業に従事をした作業員等を対象とした放射線被曝と健康状態に関する追跡調査の実施、あるいは、福島県が実施をしております県民健康調査につきまして、専門的な見地から外部被曝線量の評価への協力、これらの貢献を行ってきたところでございます。

 こうした役割につきましては、統合後も引き続き実施してまいりたいというふうに考えてございます。

牧委員 やはり、長期的に調査研究というのは必要だと思います。

 ちょっとこれは通告にはないんですけれども、これからも引き続いてというお話ですが、大体どの程度のことを考えていらっしゃるんでしょうか。これから向こう何百年もかかる話なのか、その辺の間隔をお知らせいただきたいと思います。

常盤政府参考人 これからの長期的な見通しということについて、今この時点でどのぐらいのレンジでということをお答えする材料をちょっと持ち合わせてございませんけれども、今、私の方から御説明させていただきましたように、福島県の地元の県民の方々の健康調査への協力とか、あるいは、各省庁が実施しているさまざまな調査等について放医研としての専門的な知見を提供するということでございますので、そういう行政的なニーズへの私どもとしてのサポートといいましょうか、そういうことについては積極的に引き続き行っていくということになろうかと思っております。

牧委員 ありがとうございます。

 私が何を言いたかったかというと、まだまだこの先、道のりは遠いわけでございます。まだ福島は収束をしておりませんからまだまだこれから遠い道のりだと思いますけれども、ぜひ鋭意取り組んでいただけますように、そんな意味を込めてあえて質問をさせていただきました。

 さて、今回の法改正で、これも先ほども若干質問にも出てまいりましたけれども、日本原子力研究開発機構から一部の業務が移管をされるということでございます。量子科学技術に関する基礎研究及び量子に関する基盤的研究開発を、研究上の親和性の観点から放医研に移管するというように理解をいたしております。

 そういう話になりますとどうしても、なぜこういう質問をするかというと、新しい法人が立ち上がるということで、どうしてもその新法人に目が行きがちなんですけれども、それでは、この残された原研の方は一体これからどういう役割を果たしていくのか、このままでいいのか、ただ業務の一部を移管しただけで、これまでの残された業務はこのままでいいのかどうなのか、その辺のお考えをお聞かせをいただきたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力機構は、「もんじゅ」の保守管理不備等に端を発した原子力機構改革を踏まえまして、我が国唯一の原子力に関する総合的研究開発機関として実施すべき業務に重点化するということをしたところでございます。

 原子力機構に残される業務の重点化として、具体的には、第一に、安全かつ確実な廃炉等に貢献するために、国内外の英知を結集した研究開発など、東京電力福島第一原子力発電所事故への対応、第二に、安全を大前提とした原子力利用を支えるための原子力の安全性向上に向けた研究開発、第三に、原子力の基盤を分野横断的に支えるための基礎基盤研究の推進と人材育成、第四に、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度低減等を目指した「もんじゅ」を中心とした核燃料サイクルの研究開発、第五に、我が国のみならず世界共通の課題でございます放射性廃棄物の処理処分技術の研究開発、こういったところに重点的に取り組むこととしているところでございまして、文部科学省といたしましては、この原子力機構が、安全を最優先とするとともに、我が国唯一の原子力に関する総合的な研究開発機関として研究開発成果の最大化を図ることができるように、引き続き前面に立って指導してまいりたいと考えております。

牧委員 今のお話にあったように、放射性廃棄物の問題があろうかと思います。これの最終的なソリューションというのは、せんだって平野先生の質問にもありましたけれども、まだ最終的なソリューションの道のりが見えてきていないという中で、減容化というお話もありましたけれども、結局は、放射性廃棄物の今後の処理の問題をめぐって、どうしてもその高速増殖炉にこだわり続けなければならないという、そういう意図はよくわかるんですけれども、ただ、この核燃サイクルに一体本当にどこまで固執をしなければならないのか、そういう観点から私はきょう質問をさせていただきたいと思っております。

 もうここであえて言うまでもなく、この「もんじゅ」に関しては、一九九五年にナトリウム漏れの火災事故を起こして、さらにそれがいっとき隠蔽されたことから、物議を醸したという経緯もございます。

 二〇一〇年には本格運転を目指して運転を再開したんですけれども、炉内の中継装置落下事故によって再び稼働ができなくなった、こういういきさつもございます。

 さらには二〇一二年、保安規定に基づく機器の点検漏れが九千六百七十九個あったというふうに原子力規制委員会が公表いたしております。

 翌一三年には、原子力規制委員会の立ち入り、保安検査によって、非常用発電機などの重要機器で十三の点検漏れ、虚偽報告が発覚をいたしております。

 そして同年、二〇一三年、原子力規制委員会が日本原子力研究開発機構に対して、原子炉等規制法に基づき、「もんじゅ」の無期限の運転禁止を命じた。

 そして一五年、ことしですけれども、運転禁止の命令解除に向けた報告書に誤りが見つかって、未点検機器の数が四百点ふえて六千八百九十一点に増加した。

 こういう一連の時系列的な事象を追っていくと、この「もんじゅ」というのは、もう本当に満身創痍というか、これでまだ諦めないのかというのが私の率直な印象です。

 これまでにどれだけの国民の税金がここにつぎ込まれたのか、ちょっとそれは質問通告していませんでしたのであえてここでは聞きませんけれども、さらにこの先、そういった無駄を続けるのか。それが無駄でないと言うのであれば、無駄でない理由をぜひともおっしゃっていただきたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 「もんじゅ」につきましては、先生今御指摘いただきましたように、これまでさまざまなトラブルなどがあった状況を真摯に受けとめまして、直面する課題を一つ一つ解決していく必要があるとは考えてございます。

 ただ一方、高速炉につきましては、ウラン資源、これは百年程度で枯渇するのではないかと言われておりますが、そういったウラン資源を三千年以上にわたって活用可能になるというような点、それから、高レベル放射性廃棄物の大幅な減容化、あるいは有害度低減が可能になるといったような特徴がございますので、「もんじゅ」につきましては、これらの特徴を有する高速炉の技術実証を行う役割を担っていると我々は認識してございます。

 これにつきましては、エネルギー基本計画にもございますように、「もんじゅ研究計画に示された研究の成果を取りまとめる」ということを今後目指しまして、まずは、「もんじゅ」に対する、今原子力規制委員会から受けております保安措置命令が可能な限り早期に解除されるように、引き続き、原子力機構を厳しく指導してまいりたいと考えているところでございます。

牧委員 そういう理屈はわかるんですけれども、ただ、世界の高速増殖炉を取り巻く現況というものを見ておりますと、アメリカ初め英独仏、どんどんこの事業から撤退をしている中でなぜ日本だけがこれを続けなきゃいけないのかという感があるんですけれども、その辺はいかがでしょうか。

 まさに日本にこの研究だけが押しつけられて、国民の税金がたくさん集まるからいいんじゃないか、日本に研究が押しつけられて、いいところだけまた持っていかれちゃうようなそんなことも私は、ちょっと被害妄想かもしれませんけれども、思わざるを得ない。それぐらい、アメリカ初め先進諸国は撤退をしているわけですよ。その状況には間違いないと思いますけれども、いかがでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 世界の高速炉の研究開発の状況でございます。

 特に、今後、エネルギー需要が急増していくと言われておりますような国、例えばロシア、中国、インドといったような国につきましては、高速炉の研究開発に現在強力に取り組んでいるというふうに我々は承知してございます。

 具体的に申し上げますと、まずロシアでございますけれども、ロシアは一九八〇年より原型炉の運転を行っておりまして、昨年六月には、電気出力八十八万キロワットのBN800という実証炉が臨界を達成しておりまして、本年中には発電を開始されるというふうに聞いております。

 また、お隣の中国でございますが、中国は二〇一〇年より電気出力二・三万キロワットの実験炉の運転を行っておりまして、さらに二〇二五年ごろの実証炉の運転開始を計画しておりまして、現在、概念設計を実施中であると聞いております。

 それからインドでございますが、インドは一九八五年より実験炉の運転を行っておりますけれども、本年中には電気出力五十万キロワットの原型炉の臨界を目指して現在開発を実施している、このような状況であると承知しております。

 また一方、先進国でございますけれども、フランス及びアメリカは、現在稼働中の高速炉は持っておりませんけれども、過去に高速炉の運転経験を持ってございます。

 特にフランスが一番進んでおりますけれども、フランスにつきましては、電気出力百二十四万キロワットの実証炉であるスーパーフェニックスを一九八五年から一九九八年に運転した経験がございます。その上で、放射性廃棄物の有害度低減に特化した実証炉でありますASTRIDの開発を現在計画しておりまして、これについては二〇二五年ごろの運転開始を目指しております。

 この計画を進めるために、日仏両国で昨年五月には、「もんじゅ」の活用も含めた、我が国との高速炉協力に関する取り決めを締結しているところでございます。

牧委員 ロシアとかインドの話はわかりました。ただ、私は、アメリカが撤退した中で日本が研究を押しつけられているんじゃないかなというような問題意識をちょっと申し上げたというふうに御理解をいただきたいと思います。

 最後に、MOX燃料の管理も含めて、これは、安全対策というのは非常に重要であろうかと思います。特にこのテロ対策ですよね。

 昨年九月、規制庁の立ち入りの際に、監視カメラの百八十基のうち五十基ぐらいが何か故障していたということが判明していたそうですけれども、本当にその辺の危機管理というのは大丈夫なんでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のただいまの監視カメラにつきましては、これはもともと、「もんじゅ」がナトリウム漏えい事故を起こした後、二次系のナトリウム等を監視するために追加でつけたテレビカメラでございまして、それの一部が故障状態にあった。これは我々も大変遺憾でございまして、全数を取りかえるようにやっているところでございます。

 それから、もともと、委員御質問にございましたテロ対策などの核セキュリティー対策でございますけれども、これは、原子炉等規制法の核物質防護規定にのっとりましてさまざまな規定がございまして、それにのっとって進めているところでございます。

 例えば一般論で申し上げますと、具体的には、フェンスの二重化や、人や車の出入りを監視するためのカメラやセンサー等の多重化、巡視や監視、出入り管理などの対策を実施しているところでございます。

牧委員 きょうは時間がないのでここでやめますけれども、しっかり取り組んでいただきたいということと、この「もんじゅ」の必要性については、今後も議論があろうかと思います。その辺の問題意識を申し述べさせていただいて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

福井委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 維新の党の初鹿明博です。

 本日は、放射線医学総合研究所法の改正案の質疑でありますけれども、法案の質疑の前に、ちょっと最近気になることがありましたので、その点について先に質問をさせていただきます。

 都内の幾つかの市の方から今年度の学校施設環境改善交付金について、公立学校の大規模改造の工事で申請しているものがほとんど不採択になっている、そういう相談というか報告を受けたんです。調べていくと、耐震化工事事業については大体採択はされているんですけれども、こちらの大規模改造とか学校環境の改善の方の事業が非常に採択率が低くなっております。

 前年度までと比較をしてもかなり不採択の率が高いと思うんですけれども、東京だけじゃなくてほかの道府県もそうなのか、実態がどうなっているのかを、去年までの比較とあわせてちょっとお答えいただけないでしょうか。

関政府参考人 公立学校施設整備につきましては、厳しい財政状況のもと、平成二十七年度までに耐震化を完了させることを目指して取り組んできているところでございます。

 このような中、近年は、耐震化事業に加えまして、耐震化が完了した地方公共団体を中心に、耐震化以外のさまざまな事業の要望も相当出てきておりますが、昨年度までは、地方公共団体の要望した事業についておおむね採択できたところでございます。

 しかしながら、平成二十七年度の公立学校施設整備事業につきましては、耐震化事業以外の事業計画が大きくふえてきていることなどを背景に、地方公共団体の要望が予算を大きく上回る状況となっておりまして、そのような中で、子供たちの安全、安心を確保するための耐震化事業を中心に、緊急性の高い事業を優先する必要がございます。

 この結果、御指摘のように、地方公共団体から要望がありました事業でも、耐震化以外の老朽化対策や空調の設置等の事業につきましては、採択が困難なものが生じる見込みでございます。

初鹿委員 済みません、もう一回確認なんですけれども、昨年までは自治体から上がってきたものはほぼ採択をしていて、今年度は、そういう耐震化がだんだん終わってきたから自治体から耐震化以外の事業がどんどんふえてきていて、それで予算が間に合わないから採択できないものが多くなった、そういうお答えだったんですけれども、そもそもの予算自体は昨年と比べてふえているのか減っているのか、その額がどれぐらいなのかというのをお答えいただきたいんですけれども。

関政府参考人 予算の額についてでございますけれども、耐震化事業以外の事業につきましては一般会計で措置をしております。一般会計につきましては、平成二十七年度当初の予算額が六百四十五億円。これにつきましては、対前年度同額でございます。

 補正予算につきまして、二十六年度の補正が四百八億円となっておりますが、これは、二十七年度に計画していたものについても前倒しで二十六年度に行っております。

 この四百八億円と六百四十五億円を合わせまして約一千億円、これで地方公共団体からの要望に対応しているということでございます。

初鹿委員 つまり、前年度までのことを考えると、補正の四百八億円が乗っかって、それで全部対応できたということでありますから、その補正分がないと今年度も要望に応えられないという状況だ、そういう理解でいいわけですよね。

 そのことを考えると、やはり今の段階では補正を組めるかどうかというのは直ちに言えないと思いますけれども、私は非常に必要なのではないかなというのを感じるんです。

 今回、この件について幾つかの市の方とお話をしたときにこういうお話があったんですよ。

 ある市の関係者から言われたのは、耐震化の方の、非構造部材の耐震化工事等の方が交付金がおりて、同じ学校でも大規模改造の方が不採択になっている、そういう学校があるそうなんです。市としては、自治体としては、非構造部材の耐震化の工事と大規模改造を一緒にやってしまえば、発注も一回で済んで経費の節減にもなるし、先に耐震化をやってしまって、すぐに大規模改造が必要な場合に、一年後に大規模改造をやるとなると、一回耐震化をやったところを、ちょっとそこを取り外して大規模改造をやるような形になる場合もあるので、できれば同時にやりたい。それなのに、非構造部材の方の耐震化だけが採択をされて、よりお金のかかる方の大規模改造が不採択で、困ったなと。

 確かに、自治体で全部持ち出しをして独自の事業としてやれば、それは同時にやることは可能なんですけれども、言うまでもなく、今、自治体の財政を考えると、なかなか全額を持ち出しでやるというような余裕もないわけでありますし、同時にやった場合の方がはるかに経費が削減できるということを考えたら、これは非構造部材の耐震化をやるべきなのか否かで非常に悩んでいると。自治体によっては、もう大規模改造をやらないということを決めたところもあるそうなんです。

 そう考えると、両方申請が出ているなら、やはりできるだけあわせてやれるように採択した方が、結果として国の経費もかからなくなるんじゃないかと思うんです。

 そしてまた、東京はいつ首都直下型地震が起こるかわからないと言われているような状態なわけで、学校の施設というのは、そのときに避難所として使われるわけですよ。確かに、耐震化はしていかなければならないし、それは必要だけれども、避難所として使った場合に、老朽化していて汚いところであったり、古かったり、また、空調設備が不十分であったりするところに、真夏に何百人もの人が避難をしていって本当に快適に過ごせるのかというと、それはかなり厳しいと思いますので、やはり大規模改造というのも、こういう、地震もあるかもしれないというようなことが言われているときですから、きちんと予算をつけてやる必要があるんだと思います。

 最初に言いましたけれども、この段階で大臣が補正予算を組みますということを言える段階ではないのはわかりますけれども、まずは、これから来年度予算の概算要求があると思いますけれども、要望があるものにそこでしっかりと応えられるような予算を確保することをまず財務省にも要求をするのと同時に、やはり、補正予算が組まれるときには、自治体から上がっている要望をしっかり採択ができる金額を確保するように努めていただきたいと思いますが、御見解をお伺いいたします。

下村国務大臣 まず、初鹿委員がおっしゃっていたように、今の段階で、ちょっと補正予算については触れる段階ではないというふうに思います。

 来年度の概算要求につきましては、これは東京だけではありませんが、全国どこでも日本は地震が起きる可能性がある、大災害が起きる可能性がある。その中で学校施設というのは、避難所になる、そして、場合によっては地域の方々がそこでしばらく生活しなければならないというような拠点にもなり得るところでありますから、耐震対策だけでなく、あらゆる施設整備については、できるだけ優先して組んでいく必要はおっしゃるとおりであるというふうに思います。

 特に、大体の耐震対策の見通しがついたということで、実は東京だけでなく、全国いろいろなところから私のところにも、文部科学省、いろいろなところに、直接、間接的に含めたこの予算についての要望が各自治体から寄せられておりまして、なかなか、限られた予算の中で十分な対応ができていないというのが今の状況でありますが、できるだけ施設整備については上乗せをして、それぞれの自治体が対処できるような努力をしてまいりたいと思います。

初鹿委員 全体的に何となく教育予算に対して財務省は厳しい見方をしているときでありますが、これは教育予算ではありますけれども、やはり、先ほども申し上げているとおり、地震があったときに避難所としても活用されるような場でもあるわけですから、ぜひこれは財務省にしっかりその趣旨を説明して予算獲得に頑張っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは本題の方に入りますが、今回のこの法律は、日本原子力研究開発機構の業務の一部を放射線医学総合研究所に集約をして法人の名称を量子科学技術研究開発機構にする、そういう内容であります。

 先ほども松本議員からもお話がありましたが、量子というのが突然頭についてくるのが何となく唐突な感じもしているんです。福島事故があって放射線や原子力というのが余りいいイメージじゃないから、それをなるべくつけるのをやめたのかななんてうがった見方をしたくもなるんですけれども、そういうことではないと思いますが、放射線医学総合研究所というのはそれなりに認知度が高い団体であったと思うんですが、そこの名前を使わずに、この量子というのを頭に持ってきたその理由というのはいかがなんでしょうか。

川上政府参考人 お答えいたします。

 新法人が行う業務といたしましては、重粒子加速器である重粒子がん治療装置の開発や医療研究への利用など放医研が行う研究開発、それから、原子力機構から移管されることとなった量子ビーム研究、それから三つ目が、超電導技術による、プラズマ状態を維持し核融合反応を起こす核融合研究開発といったところがあるわけでございます。

 これらはいずれも、量子の振る舞いなどの科学や、それを社会に応用していく技術、これに立脚するものであるということ、それからもう一つは、量子科学技術というのが、今後さまざまな分野で成果が上がり、展開をされていくという、非常に裾野の広い科学技術として期待をされているということから、今回、新法人の名称を量子科学技術研究開発機構とすることとさせていただいたところでございます。

初鹿委員 そういうことなんだとは思うんですけれども、そうはいっても私としては、先ほどの松本議員の質問でも出ましたけれども、やはり放射線医学総合研究所がこれまで行ってきた業務を考えると、福島の事故があって、そのときに緊急被曝医療に従事をしたり、先ほども説明がありましたが、十一人の作業員の方の医療をやって、これから事故があったときにこれがかなり期待をされているところでもありますよね。また、放射線の健康に与える影響についての知見も日本で一番持っている。この放射線医学総合研究所というのはそういうところで今本当に注目を浴びてきていたし、非常に認知度も高まっていたわけでありますから、この名前を全く使わなくなるというのは、残念だなという気がするんです。

 先ほど大臣の答弁だと、法人の名前は変えるけれども、この放射線医学総合研究所という研究所としての名前は残す、そういうお答えだったと思うんですが、そういうことだと、例えば、稲毛にあるあの重粒子医科学センター病院だとこうなるんですか。国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所重粒子医科学センターというふうになるんですかね。何か舌をかみそうな感じもするんですが、そういうことでよろしいんでしょうか。

川上政府参考人 御指摘のとおり、法人の名称は国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構ということになります。大臣が先ほど御答弁申し上げましたとおり、放射線医学総合研究所というのは、その中の拠点の名前として残していく方向で検討しているわけでございます。そのもとで重粒子による治療のセンターの名称をどうするかというのはこれからの課題でございますが、もしこれを残すということになりますと、御指摘のとおりの名称になろうかというふうに思います。

初鹿委員 長くて舌をかんじゃうと思うんですけれども、それだったら、法人の名前に放射線医学というのを残した方が私は何か合理的なような気がするんですけれども、いかがですか。本当にちゃんと考えた方がいいんじゃないかと思います。看板だけでももう何行にもなっていて、一体どうやって略したらいいのかわかんないよということになりかねないと思いますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 それでは、ちょっと具体的な中身に入らせていただきます。

 放医研のホームページを拝見しますと、そこに健康影響調査プロジェクトというものが出てきます。福島の事故で被曝をした方に対するそういう研究をしているということで、そこに書いてあるところを見ると、作業員の健康を見守る研究が行われているということで、ホームページによりますと、長期にわたる安全で効率的な情報管理をするためのデータベースシステム構築、緊急・復旧作業に伴って受けた内部被曝及び外部被曝線量の評価、そして、低線量放射線被曝が健康に与える影響の解析、それが「主な研究内容」となっているということなんです。

 そこに文章が書いてあって、「ご協力者の方々が緊急・復旧作業等に従事された時の被曝線量等の記録、および毎年受診された健康診断の記録を各職場から御提供いただいております。また、調査開始時とその後数年間毎に質問票をお配りして生活習慣や既往歴等の情報をいただいており、将来的には公的データを用いて疾病の発生状況などを確認する予定です。収集されたこれらの情報については新たに開発したデータベースシステムを用いて安全に管理し、放射線被ばくと健康との関係を注意深く分析してまいります。」こういうふうにホームページに書いてあるんですよ。

 そして、今年度の予算でも、放射線安全研究の強化ということで四億三千三百万円が運営費交付金の中に含まれているようでありまして、この復旧作業にかかわった方々の健康追跡調査の実施に一億円の予算がつけられているんです。

 ところが、きのう担当の方とお話をしたら、直接的な健康調査というのは放医研でやっているわけではない、そういう御回答がありましたし、データについても放医研に集まっているわけじゃない、そういうお話だったんですけれども、現在、この調査の事業というのはどういう状況で、何をやって、どこまでいっているのかというのを具体的にお答えいただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

常盤政府参考人 お答えいたします。

 放射線の健康影響等に対する不安に応えまして、個々人の被曝の低減や健康不安対策をきめ細かく講じていくということは重要なことであるというふうに認識をしております。

 放射線医学総合研究所におきましては、先ほども申し上げましたとおり、放射線の人体への影響に関する研究や、あるいは、福島第一原子力発電所事故における緊急被曝医療活動などに取り組んでまいりました。

 その中で、今お話しございましたように、放医研におきましては、福島第一原子力発電所事故に伴いまして復旧作業に従事した作業員等を対象といたしました、放射線被曝と健康状態に関する追跡調査の実施ということをしてございます。

 そして、二十七年度の予算、今お話しございましたように、一億円ということで積算をされているわけでございますけれども、その中で、復旧作業員の健康管理へ反映するとともに、放射線被曝と健康にかかわる社会の安心確保や安全基準策定などに知見を提供するということで、データの集計、分析、あるいは健康管理支援というようなことを進めているという状況でございます。

初鹿委員 ちょっと確認ですけれども、追跡調査しているということですけれども、放医研で作業員の健康調査をやられているということなんですか、健康診断をやられているということなんですか。それで、データの分析をやっていると言っていますけれども、その健康診断の結果が放医研に集まってきて、放医研でデータの分析をしているということなんですか。

常盤政府参考人 実際のプロジェクトの進め方ということでございますけれども、プロジェクトにつきましては、具体的には、放射線医学総合研究所の中のこのプロジェクトにおいて健康と放射線にかかわるアンケート調査というものを実施して、進めているという状況でございます。

初鹿委員 つまり、作業員に一年に一回アンケートを送って回答してもらっているということですよね。

 では、回答率というのはどれぐらいなんですか。もう二〇一一年の夏の段階で、この福島の第一原発で働いた作業員が所在不明になっているという報道がされているんですよ。それで、そういう人たちの健康診断は行われていないだろうということが言われておるわけでありまして、本当にきちんと健康診断を毎年繰り返していかないと、二十年後、三十年後になって、私はあのとき原発で働いたんだけれども、今がんになりました、これはもしかして被曝の影響じゃないですか、そういう訴えとかが出てくる可能性もあるわけですよ。

 そこをしっかり把握をして、これから毎年毎年ちゃんと健康診断を受けさせるとかそういうことをやっていかないと、将来、本当に当事者も困るし、また、国も東電も困ることになると思うんですけれども、この辺がどうなっているのかが説明を聞いてもさっぱりわからなかったんですけれども、お答えいただけないでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 私がただいま先生に御説明をさせていただきましたのは、放医研において実施をしております福島第一原子力発電所事故に伴う復旧作業に従事した作業員等を対象とした調査ということで、そこでは、主として警察官等の方々が対象になっております。

 そして、もう一方で厚生労働省さんの方で、労働安全衛生という観点から、東電の第一原発の作業員の長期健康管理等の取り組みということで調査研究を進めていただいているという状況にございますので、よろしければ厚生労働省さんの方から御回答させていただければと思います。

土屋政府参考人 お答え申し上げます。

 東電福島第一原発の緊急作業に従事した方々につきましては、被曝線量が高い方もいらっしゃいますので、私ども、労働安全衛生行政の観点から、放射線の健康影響に関する疫学的研究を適切に実施する必要があるというふうに考えております。

 このため、昨年度より、公益財団法人の放射線影響研究所に厚生労働省から研究費補助金を交付をいたしまして、全ての緊急作業従事者、約二万人でございますが、これらの方々を対象といたしました疫学研究を開始をしているところでございまして、この研究には放医研の先生方にも御協力をいただく形になっておりますが、この研究の適切な実施を今後図ってまいりたいというふうに考えております。

初鹿委員 全ての従事者二万人というお答えですけれども、実際に把握ができているのかどうか、把握できていない人がどれぐらいいるのか、お答えできますか。

土屋政府参考人 お答え申し上げます。

 緊急作業従事者については、手元のデータで一万九千六百七十五人ということでございますが、このうち一万九千三百三十八人の方、九八・三%の方に登録証を発行できているということで、およそ大半の方々の把握ができているところです。

 疫学的研究の方の御本人への依頼は、昨年度後半から始めた事業でございます。これから本格化するということでございます。

初鹿委員 九八・三%ということですが、一・七%はやっていないわけですよね。行方もわからない場合もあるんじゃないか。それこそ、氏名も把握できていない可能性もあるわけですよね。

 これはやはり最初に言いましたとおり、二十年後とかにがんが発生したというので突然あらわれてきて本当に訴訟になる可能性もあるので、できる限りゼロにするようにしていくことが私は望ましいと思います。三年、四年たってしまっておりますので、この所在を確認していくというのはなかなか難しいかもしれませんが、その辺もきちんとやっていただきたいとお願いをさせていただきます。

 今は作業員のお話でしたが、今度は福島県の住民の方について御質問します。

 住民の方に対する健康調査は、これは福島の県立医科大学で県民健康管理調査ということで行っているということですけれども、それでよろしいんですよね。

北島政府参考人 福島県における県民健康調査は、福島県が、国の支援のもと、県民の安全、安心を確保するために実施しているところでございます。

初鹿委員 財政的には国が全額支援をして福島県がやっている、そういうことですけれども、近年、受診率がだんだん下がってきているということを耳にするんです。確かに、福島県の住民の方々の場合、他県に自主避難している人も多くて、一遍に集めてやるというのがなかなか難しいので、受診率が下がっていく傾向にあるのもわからないでもないんですが、特に子供さんの甲状腺がんの検査などは、やはりきちんと毎年やっていくことが重要かなと思います。

 特に、チェルノブイリの事故の例を見れば、四年、五年たってからがんがふえていくわけですよ。つまり、これからふえていく可能性があるわけですから、一年、二年やって、大丈夫だ、もういいやって安心しちゃって受診に来なくなっているような御家族もあるかもしれないので、その辺、これからが本当は大切なんですよということを少し周知徹底をしていって、毎年きちんと受診するようにしていただきたいと思うんです。

 やはり、早期発見すれば、大きな問題にならずに治すこともできるものじゃないですか。それが、受診をしていなかった結果、手おくれになってから病院に行くようになるということになったら、それはやはり国としての責任はどうだったんだということが問われることになると思いますので、これは毎年きちんと受診をさせるように徹底をしていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

北島政府参考人 県民健康調査といたしましては、震災時におおむね十八歳以下であった住民を対象とした、甲状腺がんの発見を目的とした甲状腺検査、そして、全県民を対象とした、事故後四カ月間の行動記録をもとに、県民一人一人の外部被曝線量を推計する基本調査等が実施されております。

 甲状腺検査の結果から被曝の影響を適切に評価するためには、御指摘のとおり、中長期的に検査を実施していく必要があり、今後も受診率を維持向上させる必要があると考えております。

 このため、福島県におきましては、受診者及びその保護者に対して、検査に関するパンフレットの配布や説明会の開催を行うことによりまして理解の促進を図るとともに、県内外の協力医療機関の確保や、大学生を対象とした大学での検査の実施、平日に都合のつかない方のために休日検査を試行するなど、検査を受ける方の利便性の向上に努めているところでございます。

初鹿委員 ちょっと時間がなくなってきたので、この問題について一言だけ言わせていただきますが、住民の調査と原発の作業員の調査と、別々の機関でやっているわけですけれども、やはり、ここで得られたデータというのは一カ所に集約をして、そして二十年、三十年、きちんと分析をしていくようにした方がいいと思うので、それができるのは、恐らく日本だと放医研だと私は思うんですよ。ところが今はそうなっていないので、これからの検討課題として、最終的な放射線被曝の健康への影響のデータの集積、そしてその分析をどこでやるかというのをきちんと決めていただきたいなと思います。これはお答えはいただきません。

 では、最後になりますが、先ほどから話題になっております、放医研がやっている重粒子医科学センターの問題に入らせていただきます。

 この重粒子がん治療は、今は非常に注目をされているし、期待もされているものだと思います。でも、三百万円を超える費用で高額であって、保険収載をするにもまだまだデータの蓄積が不十分であるという、先ほど、そういう答弁でありましたよね。

 これは本当に卵が先か鶏が先かみたいな話になるんですが、保険適用されれば金額も下げられるということになるわけですよ。でも、保険適用を受けるためには多くの人に受けてもらわなければいけない、でも、高いから受けてもらえなくてデータが集まらないということになっているわけですよ。でも、国がお金をかけて、三百億円もかけてつくった施設なわけですから、広く国民に還元をできるように、それはやはり保険収載をして、できる限り多くの患者さんが受けられるようにするべきだと思うんです。

 そう考えると今の三百万円というのは、やはりいささか高いなと思います。保険収載を目指す上でも、少しこの値段を下げて受診者をふやして、いろいろながんのデータをきちんと集めて保険収載につなげていくようにするべきではないかと思うんですけれども、この金額を少しぐらいは下げられないのか、そういうことも含めて、今後、この保険収載に向けてどういう取り組みをしていくのか、お答えをいただきたいと思います。

福井委員長 常盤局長、時間が過ぎておりますので手短に答弁願います。

常盤政府参考人 重粒子線の先進医療として、経費について三百十四万円というお話がございましたが、これは、実際に機器を運転等するための経費を積算してこういうふうな形で組まれているというふうに理解をしてございます。

 また、これからの保険収載に向けましては、これは午前中もお答えいたしましたけれども、近年、複数の重粒子線がん治療施設が設置をされてきたところでございますので、そのことを踏まえて、放医研を中心といたしまして、臨床データの整理や研究をさらに進めてまいりたいというふうに考えてございます。

初鹿委員 時間ですのでやめますけれども、三百億円かけて一回三百万円だから、大体一万人で元が取れるわけですよね。もう今は大体五、六千人ぐらいまで来ているわけですから、もう少し、二百万ぐらいまで下げるとか考えていただきたいなとお願いをして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

福井委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案について質問をいたします。

 今回の法案は、いわゆる放医研を国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構にするというものです。

 まず伺いたいんですけれども、法案提出の理由が、量子科学技術の水準の向上を図るためとありますが、学術会議などの学術界から、量子科学技術の研究開発の強化が必要だ、あるいは量子科学技術の研究所が必要だというような提言があったのかどうか、まず伺いたいと思います。

川上政府参考人 お答えいたします。

 日本学術会議におきまして、学術の大型研究計画に係るマスタープランというのが先ごろ策定をされております。この中には、量子科学技術分野の研究領域に関する計画が複数掲載されているところでございます。

 また、今の御質問が、法人の設置そのものということであるといたしますと、日本学術会議においては具体的な提言を受けているわけではございませんけれども、他方、政府でまとめております第四期の科学技術基本計画においては、領域横断的な科学技術の一つとして量子科学技術を推進するということとされているほか、現在、政府の部内では次期の科学技術基本計画に向けた議論を行っているところでございます。

 文部科学省といたしまして、科学技術・学術審議会に、昨年、総合政策特別委員会というのを設けて第五期の科学技術基本計画に向けた政策議論をしたわけでございますが、その中でも、共通基盤技術に関する研究開発として、量子科学技術の推進ということが掲げられているところでございます。

 このように、量子科学技術の推進ということについては、学術会議で直接ではございませんが、有識者を初めとした方々の中で重要性が認められているというところでございます。

畑野委員 お答えにありましたように、学術会議から、法人について、つくってほしいという提言はないということでございました。

 そもそも量子科学技術とは何なのか。法案の第二条では「「量子科学技術」とは、量子に関する科学技術をいう。」と同義反復のような定義がされておりますが、量子とは何なのか、お答えいただきたいと思います。

川上政府参考人 お答えいたします。

 量子というものは何であるかということは、例えば広辞苑の「量子」という項目のトップには「不連続な値だけを持つ物理量の最小の単位。」というような書き方もございますが、今この法案で取り上げております量子というのは、原子を構成する陽子、中性子、電子等の微細な粒子や光子等、そういったものを包括的に含意するものということで用いているところでございます。

 そして、量子科学技術は、こういった微細な粒子のかかわる科学、それから、そういうものを応用した技術であって、多様な基礎科学への貢献、広範な応用展開が可能な総合科学技術であるというふうに考えてございます。

畑野委員 説明のございました量子の意味を考えますと、量子科学技術というのは、原子、電子、中性子、陽子、光、素粒子などに関する科学技術ということになると思います。原子力、加速器、高エネルギー物理、素粒子物理、光ファイバー、半導体、望遠鏡や顕微鏡などが含まれて、とても広い研究分野を含むものだと思います。

 しかし、法案の説明の要旨を見ますと、写真などにレイアウトされているものを見ますと、実態は量子ビームと核融合というふうになっているわけですね。ですから、量子に関する科学技術といいながら、高エネルギー物理や素粒子物理はおろか、半導体も含まれておらず、核融合が含まれるのに、軽水炉など核分裂は含まれていないということです。ちょっと違和感を感じるわけですね。

 下村文部科学大臣に伺います。

 なぜこの法案が出てきたのか。そもそもの問題、あの「もんじゅ」の一万件点検漏れ事件を契機に、大臣も御苦労されたと思うんですけれども、原子力研究開発機構の改革が検討されて、そこで量子ビームや核融合を原子力機構から切り離すという計画が出てきた、そのことが契機ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 量子科学技術に関しましては、近年、加速器の高エネルギー化、レーザーの高出力化やナノテクノロジーの進展等によりまして、医療、エレクトロニクス、素材などの広範な産業への利用を含めまして、イノベーションを支える基盤としての重要性が急速に高まってきているところであります。

 放医研は、重粒子線によるがん治療等に取り組み、世界トップの治療実績を積み上げてきたところでありますが、放射線医学の分野では、近年、量子ビームの人体への作用に関するメカニズムの解明の推進等、新たな量子科学技術に関する知見の追求が不可欠となってきております。

 原子力機構改革につきましては、私が本部長を務める日本原子力研究開発機構改革本部におきまして、平成二十五年八月に改革の基本的方針を取りまとめ、その中で、量子ビーム研究及び核融合研究開発に係る業務については、切り離しを含め検討すべきとの方向性を既に示していたところでもございます。

 これらの観点から文部科学省において検討を進め、量子ビーム研究及び核融合研究開発に係る業務を放医研に集約することで、放医研が行う研究が加速されるとともに、量子科学技術に係る研究開発の推進に資することが期待をされるということから、原子力機構改革を一つの契機として法改正を行うこととしたものであります。

畑野委員 肝心なことをお答えにならなかったので、では、なぜ改革本部が立ち上がったのか、その経緯を御説明ください。大臣、大臣に質問しているんです。

下村国務大臣 これは御承知のように、原子力機構は二つの組織体を一緒にしたものであります。その中で、ガバナンス改革が十分でないという部分もございまして、今は児玉理事長になっていただいていますが、その前の松浦理事長、二つの組織体が別々のときの責任者であった方でもありますが、ガバナンス改革を、特に「もんじゅ」の問題等でしっかりやってもらう必要がある。

 これは先ほども御質問にも出ていましたが、本来、「もんじゅ」の目指すべき方向は、減容化とか、それからウランを有効活用するという、方向性としては人類の夢の実現に向かうものでありますが、しかし、それ以前の段階として余りにもトラブルが多過ぎる、それから、基礎、基本としての、これは原子力委員会に指摘される以前の問題として、お粗末なことが多過ぎる、これについては徹底していかなければ、とても再稼働以前の問題として国民の信頼は得られない。

 しかし、本質的な「もんじゅ」の研究以前の問題として、そういうレベルでもし廃炉にしたとしたら、これは将来に禍根が残ることであって、まずは周辺整備をきちっとして再稼働できるような状況をとることによって、「もんじゅ」の実際的な実用化に向けたものができるのかどうかというところまで持っていく必要があるのではないかというところから、原子力機構の改革を進めているところであります。

 まだその見通しも立っておりませんが、しかし安全第一で、国民に信頼が得られる形で、慎重に、しかししっかりとした改革をしてまいりたいと思います。

畑野委員 「もんじゅ」についての廃炉という言葉にも触れられたので、その点では意見が一致するんですが、運転再開という点ではこれは不一致だということを申し上げて、しかし、下村大臣がおっしゃったとおり、「もんじゅ」でトラブルが本当に多い。大臣が御苦労されてこられて、何とかしなくちゃいけないというふうに改革に取り組んできた。このことが今回の法案の提出の大きな理由だというふうに私は思うわけなんです。

 それで、その点では、今の「もんじゅ」の現在の状況はどうなっているのか、簡単に御説明をいただきたいんですが、私も実はきのう、急遽、福井県敦賀市の「もんじゅ」を視察させていただきました。簡単に御説明いただけますでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 「もんじゅ」につきまして、これまでの経緯を簡単に申し上げたいと思います。

 平成六年四月に初臨界、平成七年八月に初送電を開始いたしましたけれども、同年十二月にナトリウム漏えい事故が発生いたしました。事故後、ナトリウム漏えい対策の強化を行うとともに、「もんじゅ」の位置づけや必要性に関しまして幅広い国民的議論を行いまして、平成二十二年五月に約十四年半ぶりに運転を再開いたしまして、約二カ月にわたる運転を行ったところでございます。その後、平成二十二年八月に、燃料交換終了後に炉内中継装置を落下させるというトラブルが発生いたしまして、平成二十四年八月にはそのトラブルを回復して、運転可能な状態への復旧作業が完了したという状況でございます。

 一方、平成二十四年十一月には機器の保守管理不備が明らかになりましたので、平成二十五年五月に原子力規制委員会より、運転再開準備の停止を含めた措置命令が発出されたところでございます。これを踏まえて原子力機構では、平成二十五年十月から平成二十七年三月まで、「もんじゅ」の集中改革に取り組んできたところでございます。

 集中改革の成果の一環といたしまして、原子力機構は、保守管理体制及び品質保証体制の再構築を行いまして、平成二十六年十二月末には原子力規制委員会へ保安措置命令に対する報告書を提出したところでございます。

 しかしながら、その後も原子力規制委員会より何度も指摘を受けるなど、保守管理や品質保証の個人意識への浸透や個人能力の向上はまだ途上にあるということでございまして、原子力機構は、集中改革の成果の定着、さらに改善という不断の取り組みを続けていく必要があると認識しております。

 文部科学省といたしましては、「もんじゅ」が安全を最優先とした運用を行い、保安措置命令が可能な限り早期に解除されるように、引き続き厳しく指導していきたいと考えているところでございます。

畑野委員 今回の話の発端の直接のきっかけになった約一万件の点検漏れということも、新しいことでございます。

 それで、高速増殖原型炉「もんじゅ」の保守と維持管理をするために、毎年膨大な経費がかかっているわけです。それを国民が負担しているということになりますが、これまでの「もんじゅ」の事業費は総額幾らになって、そして、あの一万件の点検漏れの問題が起きた以降、毎年事業費がどのように推移しているか、教えていただけますか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 「もんじゅ」の建設当初から現在に至るまでの建設、運転、維持管理にかかわる費用の予算額でございますけれども、昭和五十五年度から平成二十七年度までの総額で、これは予算額の方でございますが、約一兆二百億円となってございます。決算額で申し上げますと、昭和五十五年度から平成二十五年度までの総額で約九千七百億円となってございます。

 一万点の点検漏れが起きた後、原子力規制委員会からの指摘事項を踏まえて、保守点検を強化してございます。その結果、現在、平成二十七年度の予算で申し上げますと、「もんじゅ」にかかわっている予算は百九十七億円となっているところでございます。

畑野委員 私も資料を出していただきましたけれども、人件費を除いても一兆円を超えております。毎年二百億円前後、税金が使われているということです。

 きのう伺いまして、大変丁寧に御説明をいただきました。そこでは、「もんじゅ」ではプルトニウムの増殖ということも行われる、そういう施設だということも伺いました。

 説明をいただいたセンターのところでは、「もんじゅ」の配管が非常に細かく曲がりくねっている、ナトリウムがその中に流れるんですというお話も伺いました。東日本大震災のような地震の際には、こういう配管というのは破壊しやすいのではないか、そして、配管からナトリウムが漏れて空気に触れれば、大変な火災が起きるのではないかというふうに言われております。

 軽水炉原発と違って、「もんじゅ」の場合は、ナトリウムがなくなると核燃料の温度は加速度的に上がって、原子炉の破壊は東京電力福島第一原発の事故どころではないスピードで事態が進行するのではないかというふうに思いますけれども、どうなのでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、そもそも、東日本大震災で福島第一原発の場合は全電源喪失という事態が生じまして、外部電源が喪失した後、さらに非常用電源も通じないという段階を経て、炉心を冷却する機能が失われたということでございます。

 そういう観点で見ますと、まず、「もんじゅ」につきましては、全電源が喪失しても、ナトリウムは自然循環によって炉心を安定的に冷却できる、そういう安全性の機能を持っているというのがまず第一点でございます。

 その上で、先生もおっしゃっていましたような、仮に例えば配管の破断といったような状態でございますけれども、「もんじゅ」では冷却材にナトリウムを使ってございます。ナトリウムは、水と違いまして沸点が非常に高いという状況でございます。実際には沸点は八百八十二度でございます。沸点が高いということは、逆に言いますと、配管内の圧力が非常に低い状態で流動しています。実際には、大気圧と同じ一気圧で流動してございます。そういうために、配管が仮に破断しても、冷却材が急速に失われることはないというふうに考えております。

 また、一次系の配管が破断したとしましても、原子炉格納容器を覆っておりますガードベッセルというのがございまして、その中に冷却材がとどまる設計となっておりまして、炉心から冷却材が抜けてしまうという喪失が防げるような構造にそもそもなってございます。

 さらに、冷却材につきましては、独立した三つのループで構成されておりまして、仮に一つの配管が破断しても、破断を生じていない他のループによる冷却が可能であるというような理由によりまして、そもそも冷却材のナトリウムが全て喪失する事態は想定しがたい設計をしているということでございます。

畑野委員 想定しがたいと言いながら起きたのが東日本大震災でした。東京電力福島第一原発の事故では、電源がなくなり、原子炉を冷やせなくなり、冷却水も失われて、メルトダウンをいたしました。

 「もんじゅ」で冷却材のナトリウムが失われたらどうするのか。なくならないような対策というのは今ので大丈夫なんですか。

田中政府参考人 今申し上げましたように、ナトリウムの冷却材が喪失されないように、多重にわたる防護措置というものを講じているところでございまして、容易にはナトリウムの冷却材が喪失するような事態にはならないというふうに考えているところでございます。

畑野委員 ガードベッセルの話もありましたけれども、容易にはいかない、しかし、やはり最大の過酷の事故の対応をしなければならないと思うんですね。

 それで伺いますが、「もんじゅ」の場合は、冷却材のナトリウムが失われますと、核分裂がとまらなくなるのでしょうか。

田中政府参考人 仮定の話としてではございますけれども、仮に、運転中に冷却材であるナトリウムの喪失が生じた場合でございますと、一次系のナトリウムの喪失を検知して制御棒が挿入される仕組みとなっておりますので、原子炉は停止するというふうに考えてございます。

畑野委員 しかし、その速度も大変速いということも言われているわけですね。ですから、大丈夫だ、大丈夫だ、大丈夫だとお答えになって、本当に大丈夫かなと逆に思うわけなんです。ですから、東京電力福島第一原発事故を受けて、これは本当に抜本的に見直す、本当に甘い考えはもう許されないということは明らかだと思います。

 ですから、この「もんじゅ」、今までいろいろな研究者が、技術者が頑張ってきたでしょう、国の政策だということでやってきたでしょう。ですけれども、ここで本当にもう一回立ちどまって、危険でもある、そして運転再開の見通しもなかなかつかない、こういう計画は、私はもうやめるべきだというふうに思うんです。

 それで、ここはこれまでの原発事故と違うのは、プルトニウム循環方式、核燃料サイクルなんですよ。プルトニウムを使うということですよ。増殖するということですよ。ですから、こういうやり方も撤退をすべきだ。外国の例も言われているけれども、高速増殖炉ということでこんなにやっているのは、これは日本だけじゃないでしょうか。

 それで、私は研究者、技術者の方にもお会いしましたけれども、優秀な方たちだと思います。こういう方たちが、あの福島の事故を経て、もっと国民のために頑張りたい、これが本当にやる気になると思うんですね。

 ですから、下村大臣もおっしゃった、これからの日本全国の原発をどうするか、廃炉の問題もやっていかなくちゃいけない、こういう研究などで大いに頑張っていただく、そういうことも、ぜひ政府として、文部科学省としても考えていただきたいというふうに思います。

 最初に学術会議のことを私お聞きしましたのは、第五期科学技術基本計画のあり方に関する提言というのをことし二月二十七日に出されまして、こういう指摘をしているんです。

 「極端な重点化が逆に総合的な研究力を削ぎかねない懸念もある。政府は、第四期科学技術基本計画によって「競争的資金の一層の充実」を図ってきた。しかし、運営費交付金や科研費を削り、基礎研究が担保されない状態で大型プロジェクトの競争的資金を偏重するのは、成功する見込みのある研究に研究者が拘泥し、萌芽的研究の芽を摘むことにつながる危険がある。」というふうに言われているわけです。

 私もそうだと思うんですね。運営費交付金など基盤的経費の拡充をしていくということを含めて、こういう学術界の皆さんの意見にしっかり応えていくことが科学技術の発展のためにも大きく求められているということを私は申し上げて、この法案についての質問とさせていただきたいと思うんです。

 最後に伺いたいのは、義務教育予算についてでございます。

 この間、この委員会でも、皆さんの、各委員の議論がございました。財務省が五月十一日に財政制度等審議会財政制度分科会で示した試算、二〇二四年度までに約四万二千人の教職員の合理化が可能であるという機械的な試算を行ったことについて、与野党を問わず、これでいいのか、文部科学省、頑張ってほしい、一緒に頑張ろう、こういう討論が続いてきたわけです。

 下村大臣も、何度も答弁されているように、今、教育現場は非常に複雑困難だ、世界で一番日本の教職員は多忙化だ、こういう実態を述べられて、安易な教職員の定数削減にならないような、現場に対応した教職員定数になるように対応していきたいとお答えになってこられたわけですね。

 そこで、下村文部科学大臣に二つ伺いたいんです。

 まず、財政制度等審議会が六月一日に、教職員定数に関して、少人数指導などの加配定数を、標準学級当たりの加配定数なるものを持ち出して、二〇二四年度までに基礎定数の自然減三万七千七百人に加えて加配定数についても四千二百十四人が合理化可能だ、こういうとんでもない試算を示したんですね。

 改めて伺いますが、加配定数というのは、子供の数の減少と合わせてそんなふうに減少させていいものなんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

下村国務大臣 これは、問題意識は全く同じだと思いますが、前から比べると、今、学校現場は大変に複雑化、そして困難化しております。また、時代の変化に対応した新しい教育にも取り組まなければならない、そういう状況があります。ですから、加配教員というのは充実させることこそが求められるというふうに思います。

 文部科学省として、具体的に、いじめへの対応、特別支援教育など、学校が対応しなければならない、そういうところに対する加配。それから、今、外国人の子供もふえております。個々のニーズに応じた対応ということでは、やはり加配教員の果たす役割が大きいと思います。

 また、あわせて、グローバル社会に対応する主体的、協働的な学びであるアクティブラーニング、これは、一クラス三十五人、四十人ではなかなか効果が上がらない。少なくともその半分程度の人数で行うということになりますと、アクティブラーニングにおいて倍の教員が必要だということにもなってくるわけでありますが、そういうふうな指導体制の充実がこれから求められるところであります。

 そういう意味で、機械的な削減ということではなく、加配定数について、それから、全体的な教員定数そのものについて、戦略的な充実という視点で考えていくことが必要なことだと思いますし、ぜひそれを財務省の方にも主張してまいりたいと思います。

畑野委員 大臣がおっしゃられたように、加配が必要だということと、根本的には、教職員、ここを本当にしっかりと定数を改善していく、この二つが大事だというふうにおっしゃったと思うんです。

 加配というのは、養護教諭とか事務職員の複数配置とか、あるいは少人数学級などに活用されているわけですね。同時に、本来、基礎定数を改善するということで対応するのが、私、必要な定数だというふうに思うんです。

 それで、私、この間も申し上げましたが、二月二十三日の予算委員会で、三十五人学級の推進を国として決断していただきたいということを下村文部科学大臣にも申し上げ、また安倍総理大臣にも質問をいたしまして、安倍総理からは、全会一致という重さをかみしめながら、さらに三十五人学級の実現に向けて鋭意努力をしていきたいという答弁をいただいたところでございます。

 それから、三月二十七日に、この委員会で下村大臣に、三十五人学級を前に進めるために、この夏に作成する二〇一六年度概算要求にきちっと要求してほしいということも申し上げて、大臣から、前向きに検討を進めてまいりたいというお答えもいただいたところなんです。

 それで、さらに前回のこの委員会では、すばらしいことに決議が上がりまして、本当に各理事の皆さんを先頭にまとめてくださいまして、「教職員定数の計画的な改善に当たっては、義務標準法を改正し、小学校二年生以上においても、学級編制の標準を三十五人に引き下げるなど、平成二十三年に改正された義務標準法の附則第二項の趣旨の実現を期すべきこと。」ということなど、決議を全会一致で上げたわけでございます。

 こういう点で、ぜひ下村文部科学大臣におかれましては、三十五人学級を法改正によって拡大させていく、前進させていく。この委員会初め全員でバックアップするという決議を上げて、もう機は熟していると思うんですね。ぜひ、来年度予算、二〇一六年度概算要求に向けて、そういう立場で取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 前回も、衆議院の文部科学委員会で、その前日には参議院の文教科学委員会で同じ決議をしていただいて、背中を押していただいていることを本当に感謝申し上げたいと思います。

 現在、三十五人以下学級については、小学校一年生についてのみ法律上、そして二年生については加配措置によって実現しているわけであります。

 三十五人以下学級は、よりきめ細やかな指導が可能となることから、学校現場などから要望も多く、少人数学級の推進は望ましいことは当然であります。一方で、厳しい財政状況のもとで、授業の質の向上に向けた多様な取り組みや自治体の創意工夫を踏まえつつ、柔軟で効果的な定数改善を早急に進めていくことも必要であります。

 文科省としては、引き続き、きめ細やかで質の高い指導体制の構築に向けて、御指摘がありました義務標準法の改正も含めたさまざまな方策について、しっかり検討してまいりたいと思います。(畑野委員「来年度予算、どうですか。概算要求」と呼ぶ)

福井委員長 では、概算要求について。

下村国務大臣 今年度の概算要求に入れることも含めまして、さまざまな方策、義務教育法の改正も含めて検討してまいりたいと思います。

畑野委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

福井委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 最後の質問で、どうしてもほかの先生方とかぶることはありますが、ぜひ答弁をよろしくお願いいたします。

 本日は、規制委員会の田中委員長にもおいでをいただきました。ちょっと事前に通告していないんですけれども、伊方原発のことについて若干お聞きしたいことがございますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 先月の二十日に規制委員会は、伊方原発三号機が新基準に適合しているとの審査書案を了承いたしました。私は全くこれは容認できないんですが、この件に関してであります。

 今、国会の中では、ちょうどこの時間もやられているかと思いますが、集団的自衛権を含む戦争法案が国会で審議されております。その中で、存立危機事態という言葉、これは総理いわく、国民生活に死活的な影響が生じるということだそうですけれども、そういう言葉が飛び交っております。

 しかし、政府が例として挙げておりますホルムズ海峡、ここに機雷がまかれたからといって、国民生活に死活的な影響が出るというような事態に私自身は到底思えません。それよりも、原発事故こそが、国民の生命、自由及び幸福追求の権利を根底から覆す明白な危機、危険だというふうに思っております。

 まさに福島原発事故では、これは最悪の場合ということでありますけれども、東日本が誰も住めないような土地になってしまう、その可能性もあったというようなことも言われております。まさに原発は日本の存立を脅かす最も大きな脅威だ、私はそのように思っております。

 それに対して、世界最高水準とはとても呼べないような水準を持ち出して、新基準を使って再稼働のお墨つきを与えている規制委員会というのは、私は大いに問題があると言わざるを得ません。

 ちょっと確認なんですけれども、規制委員会というものは、避難計画の有効性については何らかの規制をする立場にあるんでしょうか。その点をまず確認させてください。

田中政府特別補佐人 規制委員会は、避難、防災計画の指針をつくるという役回りを持っておりますけれども、避難計画自体は各自治体が中心になって作成しまして、それについて、国の方でいいますと内閣防災の方が、その有効性等も含めていろいろ助言をし、お手伝いをするという形になっておりますので、私どもがそのことについて評価する立場にはありません。

吉川(元)委員 まさにそうだというふうに思います。

 ところが、先月二十日の後の記者会見の場で、恐らく記者から質問が出たんだと思います、住民避難の難しさ、伊方原発について。私も地元が大分で、時々、ここ、佐田岬の方から入っていくことがあります。車で移動する場合もあります。非常に険しい道で、大きな地震が起これば寸断される可能性が非情に高い、そういう地域であります。そういうことについて、田中委員長の方が、そんなに簡単に崩れる岩盤ではないという評価もしている、そう心配されることではないというふうにも答えられております。

 また、原発の西側、佐田岬の先の方ですけれども、こちらに大体五千人ぐらいの方が住んでおられますが、逃げるとなると、当然、東側には原発がありますから、西にしか逃げることができません。岬ですから、当然、その先は海です。フェリーを使ったり、船を使ったり、あるいはヘリコプターを使ったりで逃げるという話をしておられますけれども、簡単にはこれは運べない。仮に地震が起こったり、大きな災害が起こったときに、どういう状況になるのか、これは不明であります。

 そういう点に関して質問が出た際に、正確かどうかわかりませんが、慌てて避難することは福島原発事故の経験からもよくない、屋内退避で様子を見るべき、こういうことを、私から言わせると非常にとんちんかんな答弁をされております。

 逃げる道があるけれども今は危険だから逃げないんだ、屋内退避をするんだということと、逃げる方法がないから屋内退避をしておくんだというのは、これは全く意味が違う。それを同列に語るということは、私は言語道断だというふうに思っております。

 そもそも、規制の対象ではない避難計画の有効性にかかわるような問題について、そんなに心配しなくても大丈夫ですよとか、あるいは屋内退避をしていればいいんですよ、こういうことを言うこと自体、私は大きな問題だと思いますけれども、この点についてはいかがですか。

田中政府特別補佐人 先ほど申し上げましたように、私どもが防災、避難計画のもとになります指針を作成する際には、福島の経験を踏まえております。

 まず、PAZ、これは半径五キロメートルになりますが、その範囲については、そういった重大事故、放射能が出ているかどうかということとはかかわりはありませんけれども、そういう事態が起こったときには速やかにその範囲から避難する。

 それから、五キロより遠くの方については、基本的には屋内退避をしていただいて、それで、仮に放射能が出た場合に、当初に最も被曝するおそれが多いのは、プルームと言われる、いわゆる希ガスとか沃素とか、そういったものでございます。ですから、そういったものについては、それを避けるのには、しかるべき準備と同時に、建物等については、屋内退避をしていただくような施設の整備も進めていただくよう予算的な措置もお願いして、それでそこにとどまって、その後、放射線のレベル、放射能の濃度等を評価しながら、順次、避難が必要であれば避難をしていただく、そういうふうに指針に書かせていただいておりますし、そういった方向で検討していただいております。

 ですから、今回の規制基準は、福島の事故を踏まえてかなり厳しい指針になっておりますので、先生がおっしゃるように、福島の事故のようなことは二度と起こさないというのが我々の基本的考えで、そこに安全目標というようなものも設定しまして、そういうことで十分過剰な被曝は防げるというふうに我々としても評価しております。

吉川(元)委員 福島の事故を教訓にしてこういう指針をつくられるというのは結構なんですが、記者会見の場で、逃げられない場合、逃げられない方がたくさんいらっしゃいますけれどもどうしますかという類いの質問に対して、いやいや、福島の経験では屋内退避でいいんですよという、これは明らかに、別の話をごちゃごちゃにしてお話しされているとしか私には思えません。

 これについては、もうこれ以上やると法案の方の話に入っていけませんので、また次回やっていきたいと思いますが、今、パブコメを受けているということでありますので、しっかり丁寧に一つ一つの疑問に対して答えていただきたいというふうに思います。

 それでは、法案に関連してお聞きをしたいと思います。

 原子力研究開発機構、原子力機構と呼ばさせていただきますけれども、機構の業務の一つである高速増殖炉「もんじゅ」に関して質問させていただきます。

 田中委員長は、五月十三日に開かれた第七回規制委員会におきまして、昨年度第四・四半期の保安検査の実施状況が議題となっている中で発言をされております。

 「もんじゅ」については、安全上最も重要なクラス1に該当する配管の腐食、減肉の進行状況に対し適切な判断基準が定められていないなど、保安規定に違反すると指摘されています。二〇一三年五月に機器の点検放置問題で原子力規制委員会が運転再開準備の禁止命令を行って以来、八回の検査で六回目の保安規定違反になります。報告した規制管理官は、昨年十二月に原子力機構が提出した報告書について、保全計画の見直しが不十分で、報告書の信頼性に疑問を抱かせるものともしております。

 議事録を読ませていただきますと、規制委員会の方々からも原子力機構の姿勢に対して大変厳しい指摘がされておられますし、田中委員長に至っては、「「もんじゅ」については、もうここで話をするのも嫌になるぐらい、いろいろな問題が起こって、毎回、毎回、こういった事態が起こっている」と、半ばあきれていらっしゃる様子もうかがえます。

 そこで、改めて田中委員長にお聞きいたしますが、「もんじゅ」の保安検査の結果をどのように受けとめていらっしゃるんでしょうか。

田中政府特別補佐人 「もんじゅ」については、平成二十四年十二月の保守管理不備問題が発覚して以来、保安検査等により、保安措置命令への対応を確認してきたところでございます。

 昨年度第四・四半期の保安検査においても、ただいま御指摘のように、重要度の高い機器の点検不備などの違反があるなど、保安措置命令への対応が未完了であるというふうに認識しております。

 規制委員会としては、「もんじゅ」を初めとした、たびたび繰り返される保安規定違反や品質保証等の問題については、強い危機意識を有しております。

 このため、五月二十六日、つい先日ですけれども、臨時の規制委員会を開催して、原子力機構の児玉理事長においでいただき、当方から、「もんじゅ」の保安規定違反、老朽化施設の保全に係る不備、それから、東海再処理工場の高レベル廃液やプルトニウム溶液といった高リスクの速やかな措置などについての安全対策を優先的に取り組むよう求めたところでございます。

 原子力規制委員会としては、引き続き、原子力機構の取り組み状況を厳格に確認してまいる所存であります。

吉川(元)委員 それ以外にも、田中委員長、大変厳しいお言葉で、別の場なのかその場なのかわかりませんが、そんな姿勢を改めることができなければ原子力事業をやっていく資格がないというようなことまでおっしゃられております。今の段階では運転再開のめどが立っていないという認識でよろしいんでしょうか。その点について伺います。

大村政府参考人 お答え申し上げます。

 今後の「もんじゅ」の見通しについてお尋ねだと思います。

 原子力機構におきましては、まず、これまでの保安検査等での指摘を踏まえまして、原子力規制委員会からの命令、これは先ほどお話もありましたように、保安措置命令それから保安規定の変更命令、二つございますけれども、こうした命令に対しまして、適切に対応し改善をしていくということが大前提であろうというふうに考えております。

 今回の、平成二十六年度、第四回の保安検査で種々の指摘はしたわけでございますけれども、原子力機構の今後の対応等を今後とも保安検査等を通じまして確認をしていくという必要がございますので、今後の見通し等について、現状はちょっとまだ申し上げられる状況にはないというふうには考えております。

吉川(元)委員 次に、大臣に伺います。

 保安規定違反という厳しい指摘も受けておりますし、今のところ再開のめどはなかなか立たないという中で、機構は改革計画を二〇一三年の九月に取りまとめておりますけれども、これを着実に履行してきたというふうにお考えでしょうか。

下村国務大臣 「もんじゅ」での保守管理不備等を受けまして、安全を最優先とした組織体制のあり方を検討する、抜本的に見直す、そういう視点から、私を本部長として日本原子力研究開発機構改革本部を設置し、平成二十五年八月に改革の基本的方向を示す等、改革を主導してきたところであります。

 これを受けて、原子力機構におきまして、同年九月から、みずからの改革計画を策定し、翌十月から集中改革に取り組んできております。文科省としても、松浦前理事長から報告を受けつつ、原子力機構を指導して改革を進めてまいりました。

 原子力機構改革そのものについては、松浦前理事長が先頭に立って改革を指導し、一定の成果を上げたことは評価しております。

 具体的には、理事長によるトップマネジメントを支援するための機能強化等の組織再編、それから、業務運営の見直し、東京電力福島第一原子力発電所事故への対応等の重要分野への重点化などの業務の合理化等については取り組んできているというふうに思います。

 また、改革の発端となった「もんじゅ」についても、理事長直轄で運転及び保守に専念する組織に再編するなど体制の改革等を実施するほか、理事長みずから週一回のペースで現地の福井県に出向き、改革を直接指導したというふうに承知をしております。

 しかしながら、「もんじゅ」については、原子力規制委員会からの措置命令への対応も含め、さらに取り組むべき課題が残っているということは極めて遺憾であります。

 ことしの四月からは、民間から児玉敏雄新理事長を迎え、原子力機構改革を踏まえた新たな中長期目標のもと、業務に取り組んでおりまして、集中改革の成果の定着、さらに改善という新たな改革の段階に進んでいるところでありますが、ぜひ、「もんじゅ」がもっと緊張感を持って、そして、原子力規制委員会で指摘されたことに対して一つ一つ、トラブル等があった状況を真摯に受けとめて、直面する問題について解決をしていく必要があると思います。

 まずは、「もんじゅ」に対する保安措置命令が可能な限り早期に解除されるべきという危機感を持って「もんじゅ」、原子力機構は取り組んでもらいたいと思いますし、文部科学省も、前面に立って厳しく原子力機構に対して指導してまいりたいと思います。

吉川(元)委員 率直に言わせていただいて、やはり「もんじゅ」というのは、私は無理があるんだろうと思います。原子力機構がいろいろ問題がある、機構そのもののガバナンス等々含めて問題があるということもあろうかと思いますが、それ以上に「もんじゅ」というこの高速増殖炉、これを続けることの意味を今は問わなければいけないのではないかというふうにも思います。

 機構の業務については、福島第一原発事故への対応と、それから原発の廃炉の研究を中心的な業務に据える、私はそれが一番の機構改革だというふうにも思います。

 九五年のナトリウム漏えい事故以後、十四年半にわたって運転が停止。二〇一〇年には、ようやく試運転を再開したと思えば、炉内中継装置の落下トラブル。それを何とか復旧したと思うと、今度は一万点の保守管理の不備の発覚。これだけトラブルが続くというのは、そもそもこの技術そのものが、高速増殖炉というものが、やはり無理なんだということだろうというふうに思います。

 実際、他の先進国、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、全て開発から撤退をしております。それでもなお多額の予算、今年度予算を見ますと、「もんじゅ」維持に百九十七億円、一日当たり五千四百万円もの税金が投入をされておりますが、これをやっていく必要がどこにあるんだろう。これだけのお金があるのであれば、先般、理研の話もさせていただきましたけれども、各研究機関や大学に対して運営費交付金、これをもう少し厚く配分することもできるのではないかというふうにも思います。

 これでもなお高速増殖炉計画を継続する理由、私は理解できないんですが、どのあたりにあるんでしょうか。

下村国務大臣 高速炉は、もともとは夢のような計画実現、それは、百年程度で枯渇すると言われるウランを三千年以上にわたって活用可能になる、それから、高レベル放射性廃棄物の大幅な減容化、体積を約七分の一に減らすことができる、また、有害度の低減、この期間が十万年ぐらいのものを三百年程度に可能になる、こういう特徴のもとで、「もんじゅ」は、これらの特徴を有する高速炉の技術実証を行う役割ということでつくられたわけでございます。

 今後、エネルギー基本計画にあるとおり、もんじゅ研究計画に示された研究の成果を取りまとめることを目指し、まずは「もんじゅ」に対する保安措置命令が可能な限り早期に解除され、そして、本来の趣旨にのっとったものができるような環境整備をしていくということが必要だと思います。

 その中で、再稼働をする中でいろいろなさらなる課題等が出てくることはあり得るというふうに思いますが、今の段階では、もう一兆円近く実際に経費を投入し、また、例えば「もんじゅ」はもう使わないといっても、廃炉等を考えれば、それはそれでまた相当な費用もかかるわけでございまして、今の段階では、プラスの面を捉えて、そして、先ほど申し上げたような減容化とか有害度低減、そういう視点から再稼働を目指し、まずは安全確認が第一優先でありますが、そういうスタンスで政府としては取り組んでまいりたいと思います。

吉川(元)委員 恐らく、これは議論しても平行線のままだというふうに思いますが、実際に、つくってからほとんどまともに動いていない、トラブル続き、ほかの国もどんどん撤退をしている。これは無理だということで他の国も撤退をしているんだろうと思います。

 この高速増殖炉計画の断念、それから「もんじゅ」の、お金がかかるといっても、いずれは廃炉にしなきゃいけないわけですから、もうここで決断をして「もんじゅ」を廃炉にし、そういうことをきちんと原子力機構がやっていくというふうなことが、私は、先ほども述べましたけれども、機構改革ではないかということを再度指摘させていただいて、次の質問に移ります。

 先ほども少し出ておりましたが、この四月に原子力機構の新しい理事長として児玉敏雄さんが就任をされました。児玉理事長は、直前の三月まで三菱重工業の取締役で、副社長執行役員をされておられました。

 申し上げるまでもなく、三菱重工業は大手原子力プラントメーカーの一つであります。研究機関とはいえ、原子力事業者の一つである原子力機構のトップに原子力プラントメーカーの元役員が就任する。果たして適切なのかどうか、どのような経緯、またどのような期待感を持って新理事長に任命されたのか、お聞かせください。

下村国務大臣 ことしの四月から新たな中長期目標期間に入り、民間から児玉敏雄新理事長を迎え、新体制下でスタートを切ったところであります。

 児玉理事長は、三菱重工株式会社におきまして原子力プラントの研究開発に従事するなど、原子力技術に造詣が深いということだけでなく、現場における安全管理や品質保証など厳しい姿勢で取り組んでいるという実績、また、幅広い技術部門の統括責任者を務められ、技術、経営能力に秀でているものというふうに承知をしております。

 理事長就任以降、安全を最優先としつつ、第三者的立場で安全の観点から助言を行う原子力安全シニアアドバイザーの新設や、利益相反の防止、その他業務運営に係る社会的信頼を確保するため、外部有識者と監事で構成する経営監視委員会を設置するなど、精力的に取り組んでおられますし、また、そういうバランスをとって取り組んでいただいているところであります。

 私としては、児玉理事長の高い見識と指導力、マネジメントのもと、民間で鍛えられた厳しい視点から、安全を最優先とした改革を先頭に立って進めていただくことによって、原子力機構が国民の信頼、負託に応える、そういう組織となることを期待しているところであります。

吉川(元)委員 児玉さんという方は多分立派な方だろうというふうに思います。

 ただ、先日、この質問のために原子力機構のホームページを見ておりますと、機構の業務の取引先が出ておりました。ざっと眺めただけですので全て網羅しているというふうには思いませんが、新理事長の出身先である三菱重工業との契約、物品役務の件数ですけれども、この一年半で、随契が二十七件、金額で三十五億六千万、競争入札三十四件で金額は十四億七千万円です。最大のものは、昨年の七月三十一日に随意契約した原子炉格納容器等設備点検一式で、受注額は二十五億五千七百四十四万円と大変大きな契約が行われております。

 そういう面からいって、直前まで現役の役員だった方が理事長に任命されるということについては、これはやはり透明性の確保の観点からも問題があろうかというふうに思います。その点については、これからもしっかり見ていただきたいというふうに思います。

 それで、もう時間が残されておりませんので、少し質問を飛ばしてさせていただきます。

 先ほど少しお話が出ましたけれども、保安点検漏れの事態を受けて、一三年六月に大臣を本部長とする機構改革本部が設置をされ、同年八月には改革の基本的方向が取りまとめられました。これを見ておりますと、文科省の課題として、「原子力機構の業務の重点化や法人としての新たな名称を含め、原子力機構を抜本的に改革するための法案を検討する。」とされております。

 この抜本的な改革法案、これは今まさに議論されているこの法案なのでしょうか。それとも、これから後に原子力機構の抜本改革の法案が提出される予定なんでしょうか。この点はいかがでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学大臣を本部長といたしました日本原子力研究開発機構改革本部において平成二十五年八月にお出ししました「日本原子力研究開発機構の改革の基本的方向」でございますが、その中で、今先生御指摘の、原子力機構の業務の重点化など、原子力機構を抜本的に改革するための法案について検討することとなってございます。

 今回の法案改正、放医研法の改正案でございますが、これにつきましては、こうした原子力機構改革も一つの背景としまして、原子力機構から量子科学技術に関する業務は新法人に移管することとしておりまして、報告書における原子力機構改革に関する法案でございます。

吉川(元)委員 いや、聞きたかったのは、これでおしまいなんですかということなんですけれども、この後も何か考えられているんですかということを聞きたいんです。

田中政府参考人 当面、この法案以外に、原子力機構を直接改正するような法案を考える予定はございません。

吉川(元)委員 もう時間が来ましたので終わりますけれども、その基本的方向の中で「抜本的に改革するための法案を検討」となっていて、それがこれだとすれば、羊頭狗肉のそしりは逃れられないんじゃないかというふうにも私は思います。

 時間が来ましたので、以上で終わります。

福井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

福井委員長 この際、本案に対し、松本剛明君外二名から、民主党・無所属クラブ及び維新の党の二派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。牧義夫君。

    ―――――――――――――

 国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

牧委員 ただいま議題となりました国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、民主党・無所属クラブ及び維新の党を代表し、その提案理由及びその主な内容について御説明いたします。

 これまで我が国の放射線医学において、国立研究開発法人放射線医学総合研究所が中心的な役割を果たしてきたことに鑑み、量子科学技術に関する業務が追加された後も、第一の目的が放射線に係る医学に関する科学技術の水準の向上を図ることであること等を明確にするため、法律の題名及び法人の名称中の「量子科学技術」の前に「放射線医学」を追加すること等を内容とする本修正案を提出するものであります。

 次に、修正案の内容について御説明申し上げます。

 第一に、改正される法律の題名を国立研究開発法人放射線医学・量子科学技術研究開発機構法に改めるとともに、法人の名称を国立研究開発法人放射線医学・量子科学技術研究開発機構と改めることとしております。

 第二に、その他所要の規定を整備することとしております。

 以上が、修正案の提案理由及びその内容でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

福井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

福井委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。大平喜信君。

大平委員 私は、日本共産党を代表して、国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。

 本法案は、日本原子力研究開発機構から量子ビーム、核融合部門を切り離し、放医研に移管、統合し、放医研の名称を改め、業務を追加する一方で、原子力機構の業務を核燃料サイクルの研究開発に特化した組織に改めるものです。高速増殖原型炉「もんじゅ」で一万件に及ぶ点検漏れが発覚し、社会的信用が失墜した原子力機構の機構改革として検討されてきたものです。

 反対する第一の理由は、原子力機構から一部業務を切り離し、核燃料サイクルの研究開発に特化させ、あくまで高速増殖原型炉「もんじゅ」を維持していこうとするものだからです。技術的困難さや危険性、経済性の問題から撤退している国もあるプルトニウム循環方式、核燃料サイクルにあくまで固執し、原発推進の一環を担うものであり、認められません。

 反対する第二の理由は、放射線医学総合研究所の目的、業務に量子ビーム、核融合部門を追加し、名称も量子科学技術研究開発機構と変更することで、組織の性格を放射線医療から量子科学技術の研究開発中心に変えるものだからです。新機構においては、加速器技術などのイノベーション、最先端がん治療開発システムの開発などを推進し、市場重視で実用化できる研究開発が優先されかねません。

 なお、民主党、維新の党提案の修正案については、法律、法人の名称に放射線医学を残すにとどまっており、賛同できないことを申し上げ、討論を終わります。

福井委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

福井委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、松本剛明君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

福井委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

福井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

福井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

福井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十九分散会


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