衆議院

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第5号 平成13年3月28日(水曜日)

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平成十三年三月二十八日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 山本 有二君

   理事 青山  丘君 理事 岸田 文雄君

   理事 新藤 義孝君 理事 馳   浩君

   理事 田中 慶秋君 理事 中山 義活君

   理事 久保 哲司君 理事 達増 拓也君

      伊藤 達也君    石原 伸晃君

      小此木八郎君    梶山 弘志君

      田中 和徳君    高木  毅君

      竹本 直一君    谷田 武彦君

      中馬 弘毅君    中野  清君

      林  義郎君    松野 博一君

      松宮  勲君    茂木 敏充君

      保岡 興治君    山口 泰明君

      北橋 健治君    後藤 茂之君

      後藤  斎君    鈴木 康友君

      中津川博郷君    肥田美代子君

      松本  龍君    山内  功君

      山田 敏雅君    石井 啓一君

      上田  勇君    土田 龍司君

      大森  猛君    塩川 鉄也君

      藤木 洋子君    大島 令子君

      西川太一郎君    宇田川芳雄君

    …………………………………

   経済産業大臣       平沼 赳夫君

   経済産業副大臣      中山 成彬君

   経済産業副大臣      松田 岩夫君

   経済産業大臣政務官    竹本 直一君

   経済産業大臣政務官    西川太一郎君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   小林 勇造君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官

   )            浦西 友義君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長

   )            岡本  巖君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    中村 利雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十八日

 辞任         補欠選任

  保岡 興治君     田中 和徳君

  山口 泰明君     谷田 武彦君

  赤羽 一嘉君     上田  勇君

  大森  猛君     藤木 洋子君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 和徳君     保岡 興治君

  谷田 武彦君     山口 泰明君

  上田  勇君     赤羽 一嘉君

  藤木 洋子君     大森  猛君

    ―――――――――――――

三月二十八日

 基盤技術研究円滑化法の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 伝統的工芸品産業の振興に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

 基盤技術研究円滑化法の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)




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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、伝統的工芸品産業の振興に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として経済産業省製造産業局長岡本巖君、中小企業庁長官中村利雄君、内閣府政策統括官小林勇造君及び金融庁総務企画局参事官浦西友義君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中津川博郷君。

中津川委員 民主党の中津川博郷でございます。よろしくお願いいたします。

 具体的な質問に入る前に、景気の現況、そして今後の見通しを内閣府と経済産業大臣にお聞きしたいと思います。特に、本日大臣も出席されておりますので、その景気の現状認識を踏まえて、経済産業大臣としての今後の取り組み方、姿勢を一緒にお聞きしたいと思います。

平沼国務大臣 景気の現状の認識と今後の取り組み、こういうことでございますけれども、日本の景気というのは、バブル崩壊後、いろいろな努力によってプラスに転じてきたやさきでございました。企業の収益でありますとか設備投資というのが堅調になってまいりまして、経済の成長率というのもようやくプラスになってきたわけでございますけれども、一つは、GDPの六〇%を占めている個人消費に火がつかない。それは、先行きがどうも不透明だということ、一方においては、金融資産というのが千四百兆近くあるんですけれども、やはり国民の皆様方がそういう先行き不透明感というのを持っていて、財布の方が非常にかたく締まってしまっている。

 そういうことで、個人消費に火がつかないというようなことで停滞をしていたところに、御承知のように、アメリカのいわゆる九〇年代ずっと続いていた好景気というのに大変ブレーキがかかった。それが、輸出立国の我が国にやはり輸出減という形ではね返ってきて、さらにそれが生産減。こういうことで、昨今の株価の下落に見られるように、ようやく回復の基調が見えてきた経済に、今言ったような形でブレーキがかかって、やはり踊り場に立ち入った。

 それからもう一方、消費者物価というのが、これも戦後、先進国の中では初めてのケースでありますけれども、二年連続マイナスになった。ですから、さきの月例経済報告の中でも、政府の認識として、これはやはり緩やかなデフレのような状況である、こういうことに相なりました。

 そういう中で、今の日本の景気というのは、やはり十分警戒をしていかなきゃいけない。ですから、このまま放置しておくと大変厳しい状況になるんじゃないか、このような認識を私は持っております。

 一方、私は、日本のやはりポテンシャリティーというのは非常に高いものがあると思っています。今、数字で申し上げましたように、例えば個人金融資産というのは千三百九十兆もありますし、また貿易立国の日本として非常に心強いことは、いわゆる外貨の準備高というのも圧倒的に大きい。そういう力、技術、ポテンシャル等いろいろ考えてみると、やはり非常にポテンシャリティーはあるわけですから、適切な対策、経済対策、そういうものを講じていけば、私は、必ず日本の経済を持続的に安定軌道に乗せることができる。

 そういうことで、昨年七月から始まりましたけれども、産業新生会議、これは先生も御承知のように、経済界のそれぞれの分野の代表の方や有識者にも入っていただいて、かんかんがくがく議論をしながら基本的な行動計画がまとまりました。

 その中で、やはりどうしてもやっていかなければならないことは、この国の経済構造改革をやらなきゃいけない。そういう形で、二百六十項目、それをリストアップいたしまして、そして、今ドッグイヤーと言われているような、非常に時のたつのが早い。そういう中で、リストアップするだけではだめだから早くこれを達成しようということで、タイムを区切りまして、二百六十のうちの百三十は三年以内に達成する、そしてその百三十のうちの百は、これはことしじゅうにとにかくめどをつけよう、こういうことで、今具体的にもう行動が始まっています。

 また、さらに言わせていただくと、やはりアメリカの九〇年代の繁栄というのは、ITを中心とした情報通信の分野が非常にアメリカという国の経済にインセンティブを与えて、新産業の創出でありますとか、あるいは雇用の拡大ですとか、全体の経済が膨らむ、そういう原動力になっておりましたので、やはり日本も、昨年のこれも七月からでございましたけれども、IT戦略本部、IT戦略会議というのを立ち上げまして、基本方針をつくりまして、この一月からe―Japan構想、こういう形でITというものをこの国にしっかりと根づかせて、それによって経済的な発展を図る、こういうことで構想もできてまいりました。

 二〇〇五年までには、ある意味では気宇壮大な一つの計画かもしれませんけれども、IT先進国のアメリカをキャッチアップして、それに追いついて追い越そう、こういうことで、これもきめ細かな、時間を区切った、そういう一つの方針を出させていただいて、法整備でありますとかあるいは規制の緩和でありますとか、そういうことも今着実に進めつつあるわけであります。

 もう一つ、これは先生もよく御承知だと思いますけれども、やはり日本の経済を安定化させていくに当たってどうしても一つの大きな障害になっているのは、不良債権の問題でございます。

 こういう不良債権の問題も、我が経済産業省は、やはり中小企業を抱えておりますから、ソフトランディングということを一つ大きな受け皿にしなければならないと思っています。そういう中で、不良債権というものを、あくまでも民間主導でやらなきゃいけませんけれども、政府としてそれをいかに円滑に手助けしていくか。そういう対策を講じて、ネックになっている不良債権の処理の問題もあわせて進めていく。

 そういうことを総合的にやっていけば、今、冒頭申し上げたように厳しい経済状況でありますけれども、しかし日本はポテンシャリティーがありますから、必ず安定的な、そういう持続的な回復基調に乗せることができる、私はこういうふうに思っておりまして、全力で取り組んでいるところでございます。

中津川委員 今、中小企業というお言葉が出ましたが、実は私、民主党の中の中小企業活性化ワーキングチームで事務局長をやっておりまして、さまざまな職種、それから規模の大小を問わず、たくさんの中小企業の経営者の方たちに国会に来ていただいて、国会議員が現場の生の声を聞くという機会をたくさん設けてまいりました。

 それを中小企業対策の政策づくりに生かしていきたい、こういうふうに思っておるんですが、私自身も中小企業の経営者の一人でありまして、国会議員の中では経営者の方たちと接触する機会は多いというふうに思っておるんですが、先日、こんなファクスをいただいたんですよ。いろいろファクスでやりとりしたり、電話もたくさんいただいたりしている中でこんなファクスをいただいた、ちょっと読ませていただきます。

  拝復 突然失礼なFAXでの書状に対し、とても国政でお忙しい中ご丁寧なご返事をいただきただただ恐縮しております。日本の国に自信を持ち、国を愛してくださっている若手の議員さんが沢山おられると云うことを知り、ほっとしています。本当に有り難うございました。

これからなんですが、

  特に今年に入ってからは、取引先や友人が不渡りをつかまされたり、当社も大きな不渡りを食らいました。一方不渡りを出さなければならなくなったから、弁護士を紹介してくれと云うような話が多くなり、厳しさがどっと押し寄せてくる様な感じです。小さな会社でも民事再生法を申請するのに四、五百万円ぐらいかかり、破産するのにも二、三百万円とのこと、もう家も取られ住むところもなくなるし、どうしたらいいものかと自嘲気味に云われると、同じ経営者として人ごとでないと心が痛みます。

  私どものような中小企業は誰も助けてくれませんので、自分で自分の会社を守らなければなりません。四月からの新年度に入るに当たって、社員に対し、

以降、黒字で太く書いてあるんですが、

 景気の回復を絶対に期待してはいけない、今のような状況が当たり前であると思え。物価はまだまだ下がり、中途半端な企業は潰れ、失業は更に増える、そして人件費も下がるだろう。極論すると、「日本人の人件費が二分の一の水準になり、一ドルが二百円に」ならないと、国際競争に勝てないから、そこまでは下降が続くつもりで、お金を大事にし、耐えられるように生活習慣を変えるべきだと思う。と話そうと思っています。

  株価が下がった、銀行が含み資産がなくなって大変だと云われますが、株をほとんどやらない我々にとっては、株価が上がろうが下がろうが別段痛くも痒くもありません。むしろ、汗水たらして働いて一生懸命コストダウンをはかって、僅かな利益しか得られない我々からすると、ただお金のやり取りだけで儲けている人が、今度は大損をしたというのは当たり前ではないかとさえ思えます。銀行は株価が下がって自己資本比率が落ち、BISの基準を割ると心配していますが、昔から日本の経営は借金経営で自己資本比率が低いのが当たり前、なまじ日本たたきでBIS規制などと言う欧米が勝手にルールを変更したのに従う必要があるのかなと素人考えですが疑問を感じます。景気が悪いと云っても日本の貿易収支はズーッと黒字で、貸付金がいっぱいある日本には日本のやり方が有るのだと云うくらいに開き直って良いのではないかと、大変無責任ですが云いたくなります。つい調子に乗って勝手なことを申しました。どうぞお忙しいでしょうからご返事などは無視して結構です。ぜひこの恵まれた日本を守って下さるよう心から御願いいたします。

  平成十三年三月十五日

こういうファクスをいただいたんですが、大臣の感想をいただきたいと思います。

平沼国務大臣 私のところにもメールやファクスが入ってまいりまして、やはり同様の御意見を私の地元からもいただいております。

 日本には企業の数が五百万社以上あるわけでありますけれども、そのうちの九九・七%が中小企業でありまして、日本の経済のまさに屋台骨を担っていただいている中小企業というものが、今の状況の中で非常に厳しい、そういう立場に置かれているということは私もよく承知をいたしております。

 そういう中で、経済産業省といたしましては、議員の皆様方のお力をいただいて、そういう貸し渋りに対しては、最初は二十兆でスタートしたんですけれども、三十兆にふやしまして、特別保証制度をやらせていただいて、それが百六十万件を超す御利用をいただき、保証総額も二十七兆五千億、こういう形になりまして、そういう意味では一生懸命対策も講じてまいりました。

 そういう中で、先ほど私が触れました、いわゆる産業サイドが抱えている不良債権を処理するに当たっては、やはりある意味では痛みが伴います。そういう痛みが伴うことを最小限にしなければならないためのセーフティーネット、こういうものを着実に私どもは実行することによって、中小企業でまじめにやっておられる方々のやはり力になってさしあげなければならない、こう思っています。

 今メールをお読みいただきましたけれども、私も中小企業を実際に経営されている方々のそういう状況というのはわかっております。ただ、そういうことを解決していくためには、やはりいろいろな手だてをして全体の経済というものをよくしていかなければならない。そういう意味では、先ほどのお答えで申し上げましたように、やはり日本の経済というのはポテンシャリティーがありますから、適切な対策を講じながら、この国の景気をでき得べくんば、なかなか難しいと思いますけれども、しかし三%ぐらいの成長率を達成できるような状況をつくっていくということがやはり大局的に見たら私は一番いい方法じゃないか、こんなふうに思っております。

中津川委員 実は、昨年十一月十七日の商工委員会で中小企業の融資問題について質問させていただきまして、当時、堺屋経済企画庁長官が、来年は本格的に景気がよくなると。この本格的という言葉がいまだに頭にこびりついているんですが、すぐおやめになっちゃったので、よくならないのかなと当時思ったんですが、今結果として、堺屋長官のこの考えがちょっと外れているという状況にあるかと思うんです。とにかく経済指標はことごとく悪いし、自殺の数も四十代、五十代が多いんですよね。みんなローン返済をそれで埋め合わす、非常に多いということを、資料を取り寄せて、今深刻に私も思っておるんです。

 そこで、大臣に私が同じその商工委員会で、中小企業対策について、特に融資の問題で、担保至上主義から脱却して、経営者の人物、人柄、そして事業計画等を考慮してこれから融資していくべきではないかというようなことを質問しましたら、平沼大臣も、全くそのとおりだとおっしゃって、たしか住友銀行の頭取のお話をとうとうと述べられて、私も大変感銘を受けました、さすがだなと。この間、ちょっとビデオでまたひっくり返して見たんですが、さすが、後日、次期首相候補とマスコミでも取り上げるぐらいです。

 日本の担保至上主義、アメリカと比べて五十年おくれております。特に日本は、借りる方が一〇〇%責任で、貸す方は大して責任じゃないんですが、アメリカの方は、貸す方だってフィフティー・フィフティーだというような法整備がしっかりされているわけです。今我々の党もそんな法律もつくっているんですが、現実は、今ファクスを読み上げましたけれども、そういう経営者の話を聞きますと、どうも貸し渋り、貸しはがしが進んでいる。これは特例のことではなく、ただいま例を申し上げた人も、立派な経営者で、リーダー的な方で、中小企業庁の方で紹介された経営者なんですよ。

 ですから、ここで私はお聞きしたいんです。大臣は昨年、政府系金融機関の中で、大臣の答弁に対してどのように取り組まれたのか、これが第一点です。それから、この一月、二月、信組、信金に対する調査が中小企業の融資に悪影響を及ぼしているんじゃないかというようなことを言われているんですが、大臣はそこのところをどう考えているのか。また、民間の金融機関、銀行ですね、これもちょっとひどいというような現場の声を非常に聞くんですが、これは金融庁になるんですか、どのような指導監督をしているのか。三つ質問をさせていただきます。

平沼国務大臣 まず、私が昨年の十一月の先生の御質問に対して答弁をさせていただいて、住友銀行の小倉正恒さんの話を出させていただいた、そのことを覚えていていただいて大変ありがたいと思っておるんですけれども、御指摘のとおり、あのときも答弁で言わせていただきました。

 我が国の金融機関というのは、土地等の物的担保を重視する傾向が非常に強いわけでありまして、中小企業者の有する新規性の高い技術力でありますとか、あるいはその企業の将来性、さらに信用リスク等の的確な評価に基づく融資等が十分に行われてこなかったわけです。そして、中小零細企業というのは、言うまでもなく、担保となる資産というのを十分に有していないわけでありまして、それゆえにバブル崩壊後、担保価値がさなきだに一貫して下落している現状の中で大変厳しい状況に置かれて、資金繰りにもそれがもろに影響を与えている、私はそのとおりだと思っています。

 そこで、そうした実情というものは、特に平成十年に貸し渋りというのは物すごい状況になったわけでありまして、そういう中で、先ほど言った特別保証制度の創設をさせていただきましたけれども、少なくとも政府系金融機関においては、多様な中小企業の資金調達ニーズにおこたえをするために、担保に乏しくとも高い技術力等を有しており成長が見込まれる中小企業、そういうものに対して、新株引受権つき社債、ワラント債など資金供給の円滑化を図るための施策を充実してまいりました。これは成長新事業育成特別融資、中小公庫でございますけれども、実績としては、今、八十三件、六十一億九千二百万でございまして、このうち、今申したワラント債、そういった新株引受権つき社債、これに関しては十二件、五億八千百万、こういうような実績が出ております。

 また、経済的、社会的環境の変化により事業活動に支障を生じる中小企業に対しては、担保提供が困難な場合も少なくない、このように考えられることから、政府系金融機関においては、一時的な業況悪化あるいは自然災害、取引先金融機関の取引状況の悪化や関連企業の倒産といった非常時においても、貸付額の一定割合については担保を免除する、こういう貸付制度を、先般、秋の経済対策で整備をさせていただきました。

 もちろん、これらの融資制度以外においても、政府系金融機関においては、中小企業の事業内容に着目した融資を行うべきことはもちろんでありまして、昨年の秋以来、実際の出先にはそういう形をとって、そして親身になって御相談に乗る、こういうことを私は督励しているわけでございます。

 それから、二つ目の御質問でございますけれども、これは委員御承知のとおり、ことしの一月十九日から三月二日まで三十七都道府県におきまして、現状、そういう貸し渋りを含めてどういう状況になっているか、こういうことで中小企業庁の幹部を今申しました三十七都道府県に派遣いたしまして、そして各地域の、これは都銀から始まって地銀、第二地銀、それから信用金庫、信用組合、それから政府系金融機関、こういったところで実際にヒアリングを行って金融情勢の把握をいたしました。

 これによりまして明らかになったことは、中小企業の資金需要というのは、こういう状況の中で概して弱いということがわかりました。設備投資は、企業の自己資金の範囲内で行われる。結局、ある意味では萎縮してしまっているという事実がありまして、範囲内で行われている状況にある。それに対して、民間金融機関は、業績の比較的よい中小企業には積極的にお金を貸しましょう、こういう融資姿勢に転じている、しかし一方においては、芳しくない企業についてはより条件を厳しくする、こういうようなことで二極化になっている、こういう傾向がはっきりいたしました。

 また、信用金庫、信用組合を初めとして、今御指摘の、非常に遺憾なことでありますけれども、金融検査の取り扱いが中小企業向け融資に及ぼす影響、検査が厳しいからなかなか応じてくれない、そういう現場の声も強くなってくる、そういう懸念の声が上がっているということもこの調査の実態で明らかになりまして、私どもとしては、残念なことだと思っております。やはり政府系金融機関というのは、そういうためにもお役に立っていかなければいけない、このように思っております。

浦西政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の点、二点でございますが、一つ、信用組合等に対する検査の問題、それから第二点は、金融機関の担保主義についての御質問だと思いますので、お答えさせていただきます。

 まず、信用組合等に対します検査でございますが、信用組合につきましては、御承知のように、昨年の四月から都道府県の検査から金融庁、財務局の検査に移ったわけでございます。いわゆる金融検査マニュアルに基づいて検査を行っているわけでございますが、検査を受けられました信用組合から、検査が従来の都道府県の検査に比べて非常に厳しいという御指摘もいただいております。

 ただ、大手行と違いまして、信用組合の融資されている先は、例えば帳簿等も必ずしも十分に整っていないということもございますので、金融庁といたしましても、形式的な、帳簿等の中身から判断するだけではなくて、実態に即した検査を行うようにということで検査官を指導しておりまして、また、その検査官をさらに指導するために、指導官を派遣いたしまして、実態に即した検査になるように努めてきたところでございます。

 それから第二点目の、担保主義の問題でございますが、金融機関も、いわゆる担保至上主義というのは大変問題だという認識をしておりまして、いわゆるキャッシュフローに基づきました信用の判定ということで努力しております。例えば、中小企業の信用リスクを点数化するシステムを開発いたしまして、無担保で、短時間のうちに審査して融資を実行する、そういうこともしておりますし、それから、金融機関もリテール志向ということで、中小企業向け金融あるいは消費者向け金融に力を入れていこうということで、今努力をしているところでございます。

中津川委員 銀行が特にひどいんですよ、金融庁。銀行に対して、今お答えになったようなことが本当に円滑に行われているか、本当にここ一、二年がやはり中小企業は正念場ですから、これからも今の答弁を本当に現場の中で徹底してもらいたい、指導監督をお願いしておきます。

 昨年末の信用保険法改正で、一般無担保保証が拡充されて五千万円から八千万円に膨れて、それから第三者保証人の徴求免除範囲も二千五百万から五千万になった。こういうふうに、見た目は、大変中小企業の立場に立った融資の制度になっている。また、条件変更も、運転五年、設備七年というような一般的な考えがありますが、そういう返済の条件とかいろいろなことも弾力的に応じるというガイドラインも策定されているというように聞いているんですが、この実績は実際上がっているのか。そして、先ほど大臣からもお話がありました特別保証制度と比べて、実態は、厳しく締めつけてはいけないと思うんですよ。いかがですか。

中山副大臣 お答えいたします。

 特別保証制度の期限が本年三月に到来するということで、昨年末に中小企業信用保険法の改正を施行いたしまして、今先生から話がありましたように、無担保保証の限度額を引き上げるとか、あるいはセーフティーネットの保証の拡充等の措置を講じたところでございます。

 こういったことで、今新しい対策の効果も徐々に上がっている、このように考えているところでございまして、例えば、一般無担保保証五千万超の利用者というのは、二月末現在で八十五業者、約五十億円、さらにまた、セーフティーネット保証利用実績というのも、東海豪雨関係で三千百四十八件、四百九億円、あるいは京都二信金関係で二百七十二件、九十二億、あるいは小川信金関係で百六十七件、約五億といったような実績が上がっているところでございます。

 なおまた、今後、この特別保証制度が終わりました後、ネガティブリスト方式がかわるわけでございますが、例えば欠損が生じても早期に業況回復とかあるいは利益計上が見込まれる、こういったことにつきまして弾力的に取り組めるようにということで、今いろいろなことを講じておるところでございます。

中津川委員 先ほどもお話がありましたように、日本は九九・七%が中小企業でありますし、そこで八割が雇用されている。中小企業も、景気のいいときは税金をたくさん払っているわけですよ。所得税、住民税、それから事業所税、何か七つぐらいあるそうでありますね、会社を持っていれば固定資産税と。ところが、一たんだめになると、貸し渋り、貸しはがしに遭ったり、また、貸しはがしが全部自分の体までされて、もうだめになっちゃったらほうり投げられるというような日本の現状でして、とにかく中小企業、これにポイントを当てることが僕は景気回復の一番大きなポイントだと思いますので、今まで御答弁いただいたことをひとつ実行してもらいたいということをお願い申し上げて、次に、伝産法、伝統的工芸品産業の振興に関する法律についての質問をさせていただきます。

 時間の関係もありますので、少しまとめて質問したいと思うんです。

 実はこれは四十九年に議員立法で成立して、それで長いことやってきたわけでありますが、今回法律が改正されるということであります。今まで組合中心だったのが、今度、個人を中心に枠が広がるというようなことも聞いております。

 そこで、私、地元で調べてみました。私のところは東京の江戸川区、下町でありまして、江戸川区伝統工芸会というのがあるんですね。そこで、江戸刺しゅうとか江戸風鈴、指物、陶芸、和紙工芸、伝統的な技術を持った約二十五名の方が会員でおられるわけであります。そして、江戸川区で今回の伝産品に該当する職種というのが七つあるんですが、これに該当しないものもたくさんあるわけですね。

 そこで、そこの会長であります、この人はよくテレビなんかにも出てきて、東京ではただ一人の江戸風鈴屋さんという篠原儀治さんから、会を代表して私のところにメッセージが届いておりますので、ちょっと読み上げさせていただきます。

 「伝統工芸は現代日本の最先端の技術の根本である」「現在の不況が構造不況であると言われるなら、伝統工芸はその最たる典型的な部分に入る」「技術というものは絶えてしまうと復元するのはほとんど不可能になってしまう」、また「江戸風鈴のように製造している所が少なくとも日本の文化を象徴している職人たちは伝統工芸士、無形文化財として評価してほしい」、最後に「低価格の作品でも何んとか附加価値をつけて現在がある、然し現況としては販売が行詰まり継続不可能となるかも知れない実状である」というようなメッセージをいただいたんですが、これは伝統工芸の職人さんたちの切実な訴えだと僕は思うんです。

 そこで、伝統工芸品として五つの条件があるというふうに聞いているんですが、これはもっと枠を広げるという意味で緩和できないのかという点が一点、それから、その指定を受けられない人たちへ、この機会にどのような支援を考えているのか、お聞きしたいと思います。

岡本政府参考人 お答え申し上げます。

 伝産法の指定に当たりまして、一定の地域に集積する伝統的工芸品の製造事業について、将来とも存続していける基盤があるということを前提にしてその産業の振興を図るというのが法律の大きな目的かと存じます。

 具体的には、指定に当たりまして、産業と呼ぶにふさわしいある程度の集積規模があるということを要件とされておりまして、この点は、立法当初の国会における御審議の過程でも、原則として十企業以上、あるいは従事者の数で三十人以上というのが産業としての集積の一つのメルクマールという御答弁が先生方の間でもあったというふうに私ども承知しておりますが、こういったものをしんしゃくしながら、今の指定の基準というのを定めているところでございます。

 こうした基準に達しない小規模な産地とか、あるいは極端な場合には一事業者しかいらっしゃらないというような場合には、この法律による施策の対象にすることについては制約があるという点について、御理解をいただきたいと思います。

 なお、今回の法律改正で、いわゆる産地の組合が組織していないような場合の指定の申し出についても要件を緩和する、そういう改善は試みているところでございまして、そういうことによって対象の範囲を広げるということもあろうかと思いますし、さらには、この法律に基づく直接の施策ではございませんけれども、業界の取り組みでありますとか中小企業施策というようなところで、そういった方々についても応援をしていくという道、あるいは工夫の余地はあろうかと思います。

中津川委員 今回のこの伝産法改正というのは、かなりの前進だと思うんですね。それは大変評価するんです。評価するんですが、今、御答弁にもありましたように、地場産業を育成するという観点、そういう点からはなるほどと思うんですが、組合組織じゃない個人、この個人でも、たしか三十人ぐらいだというふうに私、聞いておるんです。

 ふと思ったんですが、沖縄にヤンバルクイナという鳥がいるんですが、例えばこれが三十羽以上いれば天然記念物で、トキは今一羽しか日本にいない、だからこれは天然記念物じゃないというような、例えが適当かどうかわからないですけれども、ちょっとそんなことを思いました。これは文化的な側面もありますので、文化庁との兼ね合いも当然あるでしょうけれども、この機会に、やはりそういう守られて、伝統工芸に携わる職人さんたちを、少ないから逆にまた意味があるということもありますので、篠原さんの風鈴屋さんのように、というようなことを感じておりますので、ぜひその辺の枠も、ひとついろいろな形で広げて対応してもらいたいと思います。

 実際に、伝統工芸品を製造している人たちというのは、とにかく職人さんですので、自分たちに一体どういう助成があるのかとか、どういう地域の中で広がりを持って、どういう組合に入るかというのも余りわからない人もたくさんおりますので、この機会にひとつ国及び地方公共団体の政策のPR、これも国と地方の行政が連携していくということも必要だと思いますので、私の意見だけを述べさせていただきたいと思うんです。

 それと、もう一つなんですが、この篠原さんから聞いたんです。今まで、浅草なんかの植木市でつるして、風鈴は全部自分のところでやっていたけれども、やはり最近は中国から製造されたものが入ってきているということで、海外からの輸入増加というものも伝統工芸品にかかわる需要低迷の一因にもなっているのかなと思ったんです。この問題についてどう考えているのか、そしてまた、こんなような例があるのか。これからまた出てくると思うんですが、お聞きしたいと思うんです。

平沼国務大臣 伝統工芸品にもなっている陶磁器等の生活用品については、一般的に、国内景気の低迷の中で、一般家庭用、業務用とも生産、販売が減少するとともに、特に数量ベースではここ数年、今御指摘の風鈴に限らず、そういったものがお隣の中国から低価格で入ってきて、その輸入が大変増大をしているわけであります。

 そういう中で、輸入品のこうした増加への対処としては、やはり安易に輸入制限的な措置に訴えるのではなくて、まずもって伝統工芸品の価値を消費者にしっかりと認識してもらうことが必要だと私は思いますし、製品の差別化への取り組みを強化する。そういう江戸風鈴なら江戸風鈴で、非常に伝統に根づいて、そしてその独特な風合い、そしてまた独特の美しさ、そういうものを持ったものを、これはやはりずっと続いてきたものだ、こういうことでしっかりとPRをしながら、国もそういう形で誘導しながら取り組みを強化するということが、私は伝統工芸品の需要の拡大を図る、そういうことにつながっていく、こういうふうに思っております。

 政府といたしましては、今般の法律改正及び関連予算の活用によって業界のこうした前向きな努力を強力に支援していきたい、こういうふうに思っておりまして、大変今それぞれの伝統工芸品が厳しい状況に置かれている、このことは十分認識しておりますので、一生懸命に努力をさせていただきたいと思っております。

中津川委員 今回、伝産法にかかわる予算が五億から十億に増額されたということ、これは大変評価すべきだと思うんですね。それは、伝統工芸品とその職人さんたちを国を挙げて育成するという経済的な側面が一つあります。もちろん大きな側面ですけれども、一方で、日本の文化、伝統を日本人がここで再確認する、それともう一つ、次代を背負う青少年への教育的な観点から見ても非常に重要な意味合いを持つものだと思うんですよ。

 そういう意味で、この予算が一人一人の職人さんのところに、具体的に懐の中に入っていくようにひとつ現実的に助成されること、つまり、途中でいろいろなイベントとかなんとかわからないところに使われないようにそれが助成されることを、そしてこの十億円が本当に生かされることを切望しまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 松本龍君。

松本(龍)委員 おはようございます。民主党の松本龍であります。

 この伝産法ができた昭和四十九年、振り返ってみますと、大臣は当時三十半ばだと思いますけれども、前年の秋にまさに石油危機、オイルショックがありまして、暗い昭和四十九年幕あけだったというふうに思っております。日本では田中内閣が崩壊をし、アメリカではニクソン大統領が失墜をしたのもこの年でありました。また、ちなみに、ミスタージャイアンツ、長島茂雄さんが引退をされたのもこの年でありました。

 つまり、何かと暗い状況の中でこの伝産法が春に議員立法で成立をした。このことは、伝統産業に携わる人あるいは手にすばらしい技能を持った人たちに対して一筋の光明を与えたというふうに思っております。事実、これから五年の間ぐらいは元気がありました。

 ところが、昭和五十四年からは従業者が減少し始め、昭和五十八年をピークに、生産額も企業数も減少をし始めました。今、当時と比べますと、企業数あるいは生産額で半分になっておりますし、従業者数も三分の一近くになってきております。そういう意味では、名前こそ伝統的工芸品産業の振興というふうに書かれておりますけれども、現下の状況は、振興どころか存続あるいは保護の危機にあるのではないか、そういう危機感さえ覚えております。

 そういう認識を私は持っておりますけれども、経済産業省はどういう認識か、お尋ねをしたいと思います。

中山副大臣 ただいま法律制定時のころからの話がございましたけれども、御指摘のように、バブル崩壊後の十年にも及ぶ経済的不況の中で、生活様式の変化等さまざまな要因から、伝統工芸品産業を取り巻く環境は極めて厳しいものがございます。

 今、松本委員から御指摘がありましたように、例えば売上高は、昭和五十八年をピークにこの十五年間でほぼ半減しております。また、企業数も、三万四千社、昭和五十四年でございますがありましたけれども、一万八千社に落ち込んでおります。従業者数につきましても、昭和五十四年には二十九万人であったものが、今や十一万人に縮小している、後継者の確保も深刻化しているというような状況でございます。

 こうした厳しい情勢の一方で、伝統的工芸品産業にとって追い風ともいうべき以下のような明るい兆しも見えております。例えば、最近の傾向といたしまして、国民のニーズが生活の量的充足から質的充足へと変化しまして、生活にゆとりと潤いを求める動きがあらわれてきている中で、生活用品についても、これを満たす質の高い製品が求められるようになってきているということ。あるいはまた、近年、グローバリゼーションが進み洋風化が進む中で、一方では和風の生活様式に対する関心が高まってきているというふうな動向もあるわけでございます。

 こうした動きが直ちに伝統的工芸品の需要拡大に直結するとまでは言い切れないものがありますけれども、しかし、少なくとも、伝統的工芸品の価値に対する関心の高まり、あるいは伝統的工芸品産業の意義に対する再評価に結びつく明るい材料である、このように考えております。

 さらに、伝統的工芸品の産地の側におきましても、個々の事業者やグループが産業の活性化のために意欲的な取り組みを実施する例や、産地間連携により新たなライフスタイルを消費者に提案する創造的な取り組みを実施する例など、意欲的な取り組みを行う製造事業者の出現といった新しい事態も見られるわけでございます。

 私どもといたしましては、こうした新しい動きに期待しながら、本法改正に基づく諸施策を積極的に推進いたしまして、伝統的工芸品産業の維持発展に精いっぱい努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

松本(龍)委員 明るい兆しが見えておりますと、月例経済報告のようなそういう言い方は、私はもうやめた方がいい、厳しいところをやはり見ていかなければならないとあえて申し上げておきたいと思います。

 この法律は、私は二つの側面があると思うんです。一つは、法律の名前のように産業振興政策、地域の振興政策、国と地域が一体となって伝統産業を育てようという経済の活性化を目指した、ある意味では経済的な側面。もう一つは、すばらしい技能を持った人たち、そのわざをどう継承して残していくか、厳しい環境の中でどうやって物をつくり続けていくのかといった、ある意味では文化的な側面。

 つまり、経済的な側面と文化的な側面がこの法律にはあると思うんですけれども、あえて言わせてもらえれば、今までは後段の部分、つまり文化的な側面が弱かったような気がいたしております。先ほど参考人からお話がありましたけれども、技術というのは、私はある意味ではコンピューターに置きかえられると思います。ところが、技能、手が覚えたわざというのはコンピューターには置きかえられない、つまり後に続いていかない。そういう意味ではこの側面にもっと重きを置く必要があるんだろうというふうに思っておりますけれども、こういう二つの側面があるということの御認識はありますか。

岡本政府参考人 先生御案内のように、この伝産法は、伝統工芸品の製造の事業というのを産業として振興するというのが大きな目的かと存じますが、そういった伝統的工芸品産業を振興するに当たって、まさに先生今おっしゃった、技術、技能、そういったものを継承していくということも重要な課題でございます。したがって、それを支援するということも法律の中ににらんでいるというのは先生御案内のとおりでございます。

 他方で、やはりこの法律の大きな目的ということからいえば産業の振興ということでございますので、逆に裏返して、技術、技能は存するものの、産業として一つの集積を持って一定の基盤を持っているという実態を伴わない場合に、この法律による直接の施策の対象とするというところにはおのずから制約があるという点については、御理解を賜りたいと存じます。

松本(龍)委員 対象にしてほしいとかそういうことは私は言っておりません。この法律がそういう二つの側面があるということをさっき申し上げました。

 現在、全国で百九十四品目が指定をされています。先ほど中津川さんが言われましたけれども、法律の二条一項で指定要件があって、五つほど挙げられています。その中で、「一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。」とあります。なかなか難しい日本語ですけれども、運用で、少なくない数とは十以上の事業者または三十名以上の従業者のことを意味するとあります。

 まず、お尋ねしたいんですけれども、途中で人間が少なくなってきてこの要件が満たされなくなっていく、そういったときに指定を外されることもあるわけですか。

岡本政府参考人 論理的には、今先生が御指摘のようなケースというのは、指定を見直すということはあり得ると考えますけれども、私どもも産地の実態というのを踏まえながら法律の運用に当たらせていただいているところでございまして、これまでそういったケースはございません。

松本(龍)委員 さっき申し上げましたように、技能の継承という点から、法律では指定を外すという書き込みがあるのです。ところが、今まではそれがない。ということは、やはり少なくなってきてもこの産業を育てていこうというみんなの合意というものがそこにあって、そういうことが行われていないというふうに私は思っております。

 ですから、この指定要件の運用ですけれども、技能の継承とか後継者の育成とかいった点から見て、ヤンバルクイナとトキの話じゃありませんけれども、もっと弾力的に見直す必要があるんだろうというふうに思います。もう一度御答弁をお願いいたします。

岡本政府参考人 先生御案内のように、今の十企業あるいは三十人以上の従事者というのは、立法当初の御議論の経緯というものを私どもも勘案させていただきながら、今の指定の要件として定めているところなのです。

 先生の御指摘に関連して、一つ、私どもも大変悩ましいところだと思っているんですけれども、今百九十四の産地を指定させていただいております。それで、十以上の企業がある、あるいは三十人以上の従事者の方々がいらっしゃるという外形的な基準を満たしてなお指定に至っていない、そういう意味で、予備軍とも言える産地の数が百九十四に相当する数を上回るぐらい実は控えていらっしゃっていて、そういう次に控えていらっしゃる方々、中には、今回の要件の緩和というようなこともあって指定に向けての準備をされるかと思うんですけれども、そういうところを逐次この法律の施策の対象にしていくというところが、一つ、課題としてこれから勉強させていただかなければならぬかと私ども思っております。

 そういうものとあわせて、今おっしゃった基準を大きく下回るようなところをどうするかという点について、なお大変難しい問題でございますので、引き続き勉強させていただきたいと思っております。

松本(龍)委員 当時の振興とかいうところともう時代が変わってきているという認識だけは持っていただいて、さっき言った文化的な側面も、もっときめの細かい作業をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 なぜこういうことを言うかといいますと、私の町に、博多曲げ物という伝統産業がありまして、秋田大館の曲げわっぱみたいな感じで、木を高熱で曲げて、おぜんや飯びつ、三方あるいは折り箱や茶道具等々をつくっている産業なんですけれども、実にこの産業は、博多の町では、柴田さんという方ただ一人しか今やっておられません。この人を指定しろというわけじゃありません、それはもう無理な話ですけれども。

 この技能を持っておられる方と私は一時間ぐらい話したのです。昭和四十九年の段階でもう既にこの要件を満たしておりませんでしたから、指定の申請もされなかった、こういう状況で今まで続いてまいりました。

 先ほど局長が言われたように、産業振興、地域振興だから、一人産地みたいな方々になかなか手が届かないということは百も承知をいたしております。ただ、二十年前から半減あるいは三分の一という状況をかんがみて、やはりそこに手をこまねいているわけにはいかない、もっと何らかの方策が必要だろうということを申し上げておきたいと思います。

 大臣にお尋ねをいたします。

 福岡県や市では、逆に、十名以下の伝産法の外にある人たちをバックアップするシステムがあります。ある銀行では、そういった伝産法の外にある一人産地、一人職人みたいな方々をバックアップする、メセナといいますか、フィランソロピーといいますか、そういったことを支援していることもやっておられます。

 そういう意味で、先ほど言った博多曲げ物の柴田さん、私、大体十五分ぐらいで帰ろうかなと思っていたら、一時間ぐらい話し込んでしまいまして、この人が言った言葉で大変印象深い言葉がありました。というのは、私はお金をもらっても何の足しにもならぬ、足しにはなるんでしょうけれども、そういう言い方をされました。職人の誇りとして、自分が一番つらいのは後を継ぐ者がいないことだ、後継者がいないことが一番つらい、まさに日本の伝統をどう残すかというのを政治家の皆さん、考えていただきたいということを、もう七十過ぎの方ですけれども、言われました。お金は要らないけれども、後継者、後継ぎが欲しいという彼の思いは非常に胸に迫りました。

 そういう意味で、後継者問題も含めて、これからの伝統産業に対する大臣の見解をお聞きしたいと思います。

平沼国務大臣 今の御地元の博多曲げ物の柴田さんのお話を伺いまして、長年、博多の地で培ってきたそういう伝統工芸の技術というものの後継者がいないということで、これをこの代限りでなくしていくことは非常に日本にとっても大きな損失だな、そういう感じで聞かせていただいたわけであります。

 したがいまして、今メセナのお話もありました。地域の皆様方がそういう形で伝統工芸を守ろう、そういう動きというのは非常に貴重なことだと思っております。今この法律では、産業振興という一つのコンセプトの中でやっております。ですから、政府といたしましても、こういう状況ということは、発想をかえて、新たな観点で対策を講じていかなければいけない、そういう中では、文化庁とも連携をとりながら、こういう危殆に瀕している大切な伝統工芸技術、そういう伝統というものを守っていくために、本当に遅きに失した感がありますけれども、しかし、今からそういう方向で取り組んでいかなければならない、私は、お話を伺ってつくづくそういうふうに思わせていただきました。

松本(龍)委員 前向きの御答弁、本当にありがとうございました。きめの細かい作業をこれからも、我々もやらなければなりませんけれども、大臣、お願いをしたいというふうに思います。

 産地プロデューサーの追加が今度入っておりますけれども、具体的にちょっとお話を聞かせていただきたいと思います。

岡本政府参考人 産地プロデューサー、今度の法律改正とあわせて新たに予算措置を講じて進めていきたいと考えております。

 産地の事業者の方々と一緒になって、どういうものを開発してどういうチャネルでそういうものを売っていくか、それから、どういうものを開発するかという場合に、単に単品だけじゃございませんで、例えばテーブルのコーディネーターでありますとか、インテリアのコーディネーターでありますとか、そういった方々のアドバイスなんかもいただきながら、産地の伝統工芸品を使って新しいものを開発する、新しい顧客層を開いていく、販路を開拓していく、そういうことに向けての総合的な戦略づくりというのを産地ごとにやっていこう、そういうものでございます。

 プロデューサーの方々に期待しております具体的な事業としては、マーケティングリサーチのようなものとか、それからどういう価格戦略でやっていったらいいだとか、あるいはそのための人材の養成というのをその産地ではどういうところに力を入れながらやっていったらいいかとか、そういう多面的な処方せんづくりというものをやっていただく。

 そういうものとして、私ども、来年度予算でこれを重点的に進めていきたいというふうに考えている次第でございます。

松本(龍)委員 私もこの伝産法の関係でいろいろな方々にモニターをしてきたんですけれども、産地プロデューサーのシステムは非常にみんな喜んでおられました。今までちょっと文句を言いましたけれども、このツールは使い勝手があるというふうに言われております。

 ただ、登録システムとかいろいろこれからあるわけですけれども、速やかに、早く情報を流してほしいという要望がありましたので、それを伝えておきたいというふうに思います。

 それと、産地プロデューサーですけれども、まさにこういうマッチングをさせる、見合いをさせることは、さっき言ったような伝産法の外にある人たちにもどうか周知をして、こういう方法がありますよ、こういう人たちがいますよというのもやった方がいいと思うんです。

 ですから、三、四人しかいない、あるいは一人しかいない人たちにも、こういう産地プロデューサーのシステムをマッチングさせるということも必要だと思いますけれども、そういうきめの細かい作業もされるおつもりはありますか。

岡本政府参考人 法律に基づく直接の施策ということでは、先ほど申し上げましたような制約があるわけですけれども、それを離れて伝産協会でやっていくような事業、それに対して私どもは補助をするということで、今度の産地プロデューサーもそうでございますけれども、そういったものについて、できるだけ伝統工芸品の事業に携わっている方を幅広くお手伝い申し上げるという方向に向けて、先生の御指摘につきまして早速に勉強させていただきたいと思います。

松本(龍)委員 私のところは、博多人形やさっきの曲げ物があるんですけれども、自分たちは物つくりしか知らぬ、これしか知らぬ、だからそういういろいろなコーディネートをしたりほかの知恵が欲しい、価格設定もよくわからぬという人たちが多いわけですから、そういったものが本当に動き出すと、大きな効果があると私は思いますけれども、鋭意頑張っていただきたいと思います。

 この間、博多人形の組合に行きましたら、博多人形四百年祭という絵はがきがありまして、これは郵政省とタイアップをして絵はがきをつくって、こういう何枚かの博多人形の写真を撮った絵はがきなんですけれども、これが非常に好評だったというふうに聞きました。

 こういういろいろな方法があると思うんです、国を挙げてこういうものを振興していこうということであれば。あるいは、在外公館なんかにも、海外にある日本の施設なんかにも、かえって日本よりも海外で今注目されているものがある、手工芸とかそういったものがあるので、どんどんそういった海外に知らせるシステムをつくってほしいという要望があったんですけれども、需要の拡大等々についてどう思われているか、お尋ねをしたいと思います。

岡本政府参考人 日本の和の文化ということについて、海外でも大変近年関心が高まっておりまして、そういう地合いの中で、日本のすぐれた伝統工芸品というのを海外に積極的にPRして、さらには輸出という形で外に出していくという方向は、私どもとしてもこれから志向すべき一つの方向だと思っております。

 そこに向けて、伝産協会の中で、各地の伝統工芸品というのを全部、つくっている現場とか、それから物自体のいろいろな情報というのをまずデジタルカメラで写真を撮って、いろいろな沿革とかそういうものを一緒に、情報をインターネットを通じて容易に提供できるような準備というのができております。

 そういった素材を使いながら、今先生がおっしゃった大使館もあるかもしれませんが、その前に、ジェトロという私どもの、まさに一生懸命汗をかいていただけるような機関というのもございますので、そういった方々の御協力もいただきながら、海外に向けての積極的な攻めのPRというか、そういったものについては鋭意頑張っていきたいと考えております。

松本(龍)委員 二週間ほど前でしたか、NHKのテレビで、東大阪あたりの中小企業の工場地帯のテレビがありまして、「下請けではあきまへん」という話がありました。

 彼らは同じ工場同士で横請をしたり、これもそういう似たようなスキームがあるんですけれども、横請とかいろいろな方法がとられるだろう。しかも、今までには固定した取引先しかなかったけれども、今度はインターネットを通じて新たな取引先あるいは販路の拡大をしていこうという工場のおっちゃんたちが頑張っている姿がありましたけれども、私はデジタルデバイドの一人ですけれども、ITを活用したさまざまなやり方もこれからやっていただきたいなというふうに思います。

 テレビでは、パソコンを、本当に節くれ立ったというか、工場で傷めた手で押さえている姿がありましたけれども、そういう実態もありますから、どうか、伝産協会というくらいですから、ITを活用していただいて、頑張っていただきたいというふうに思っております。

 大臣にお尋ねをいたします。

 博多人形の組合に行ったときに、今体験教室とかそういったものはいろいろなところである、けれども、やはりこれを本格的にちょっとやりたいなという人たちに対してなかなかその受け皿がないということを言われました。

 例えば唐津とか有田とか伊万里とかというのは、産地そのものが、いわゆる陶器が売りでありますから、そういったところで定住型の学ぶところができないかという話がありました。つまり、安い家賃、安い授業料でしばらく実習をしていく。つまり、体験学習とかそういったものではなくて、ちょっと長い時間そこで学習をしていきながら、学びながら、手になじませながら本格的にやっていこうというふうに育てるのも一つの方法ではないかという御示唆もいただきました。

 もう一つは、福岡市では、博多人形入門講座というのがこの四月から始まりますけれども、これも今まで、サークル的な教え方ではなくて、本格的な人形師を育成しようという教室がこれから始まろうとしています。

 そういう意味では、いろいろな知恵を地方公共団体等々、産地等々が出しておりますけれども、この伝産法、昭和四十九年からこの法律があったから、息絶え絶えでも頑張ってこられたんだなという評価はいたしておりますけれども、これからまた違うステージに入っていきながら、さっき言いましたように、技能をどうやって残していくか、後継者をどう育てていくかという大きな問題がありますので、この法律に対して大臣の決意をお伺いしたいというふうに思います。

平沼国務大臣 お答えをする前に、私も今先生がお話しになられたテレビの番組を非常に感銘を持って見ました。たまたま、いわゆるパソコンを中心的にやっている人の名前がたしか平沼という人でありまして、そういう意味でも非常に興味を持って見たわけです。そういう横の連携から、道路に線を引く機械をみんなで試行錯誤してつくっていった、そういう姿もやはり一つ新しいあり方だな、そういうふうに思いまして、同じような感慨で見させていただきました。

 今回の法改正につきましては、今まで、先生も御指摘になられましたように、伝統的工芸品産業というのは、我が国の伝統的な技術や文化を今に伝える我が国の貴重な財産だと私は思っています。その振興を最大限図っていかなければならないということは、本当にそのとおり。私どもはそういう意識でやらなきゃいかぬと思っております。

 このため、今回、事業者にとり利用しやすい支援体制、これを整えるべく、一部法律改正をお願いいたしたところであります。また、この法改正とあわせまして、まだまだ私の実感では少ないと思いますけれども、しかし予算の面でも大幅に、倍増させていただいた、こういうことにさせていただきました。

 これらの施策というものが、産地自身の主体的な取り組みと相まって伝統的工芸品産業の発展につながるように、各委員からいろいろ御指摘をいただいておりますけれども、そういうことを踏まえて、私も全力で取り組んでまいりたい、このように思っております。

松本(龍)委員 ありがとうございます。

 京都の選出で、竹村幸雄さんという代議士がおられました。三年前の十一月に残念ながら亡くなられましたけれども、私はこの竹村先生に、実は自分の修学旅行で京都にお伺いをしたときに、自由時間に京都を案内してもらいました。そのときに竹村先生はどこに連れていったかというと、焼き物の工場に連れていって、私を土に触れさせてくださいました。恐らく京焼か清水焼か何かだと思います。

 この竹村幸雄先生が、実は昭和四十九年の伝産法の起案者となって、本当に汗をかきながら頑張って頑張ってこの法律を、自民党、社会党の議員立法で最終的には全会一致で制定をされましたけれども、亡くなられて、きょうのこの委員会を天国で見詰められていると思います。私のつたない質問でありましたけれども、この質問を竹村幸雄先生にささげて終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

山本委員長 後藤茂之君。

後藤(茂)委員 民主党の後藤茂之でございます。

 伝産法の問題に入ります前に、一つ御質問をさせていただきたいと思います。

 今、経済の現状は非常に厳しいものがあります。政府としてもデフレの状態を認めているわけであります。ITを初めとして先端産業等でそれなりに元気が感ぜられるところもありますけれども、地域経済というものを見てみますと、恐らく、去年の十月の下旬ぐらいからぐっと体感温度が落ちてきた、そんな感じを皆さん持っておられるのではないかというふうに思います。

 そんな中で、最近の大変な株の低迷とかあるいはデフレ状況に対応しまして、今また財政出動という動きも出ているようであります。しかし、私は一つここで注意を喚起しておきたいと思いますけれども、恐らく、ばらまき型の景気対策だけでは経済はよくならないということは、国民が一番よくわかっているのではないかというふうに思います。ばらまき型の景気対策と申しますのは、簡単に言いますとこういうことであります。

 まず、国は財源がありませんから、国債を発行いたします。国債を発行してつくった財源を政府の支出として、窓口から金が出てまいります。そして、それが世の中を回っていく。その世の中を回っていく間は、確かに経済効果はあるわけであります。そして、個人のところへもしその金がたまっていきますと、今は貯蓄になって、消費にならない。そして企業というふうになりますと、これが投資できずに、内部留保のできる企業のところにはまた金がたまる。

 金がたまるということは、金融機関に金が集まっているということであります。本来は金融機関は資金需要に応じて金を貸すべきでありますけれども、全体としては資金需要が非常に乏しい。そして、一部、中小企業のようなところにつきましては、資金需要があっても今度は金融機関側の例えばリストラ、不良債権処理問題などで貸し渋りあるいは貸しはがしと言われるような事態も生じて、トータルとしては金融機関からも金が出ていかない。そして、この出ていかない、資金運用先に困っている金で、さっきの話の一番先頭に戻って、金融機関は国債を買っているということになるわけですね。

 ですから、そういう意味では、確かに数カ月間のカンフル剤としての効果はあるでしょう。しかし、個人や企業が、本当に将来自分たちの生活設計がちゃんとできるだろうか、あるいは企業の経営がちゃんとできるだろうか、そういう構造的な見通しや自信を持てない限り、単なるばらまき型の景気対策だけではもうどうにもならないところまで来ているのではないか、そういう認識を持ち続けることが必要なのではないかと思っています。

 そうなると、構造改革をやるということであります。もちろんこのことはこれまでも十分に議論をされてきているところでありますけれども、構造改革、先送りをしていて、なかなか進んでいないというのが実感だと思います。

 構造改革の内容を一々細かく申し上げませんけれども、少なくとも、規制緩和や競争促進策を徹底的に図ることによって新規産業を創出することがぜひ必要でしょうし、それから、年金だとかあるいはさまざまな社会保障制度等で個人が将来に対して十分な自信を持てるような制度設計、例えば、目先、少し痛みの伴う改革案であっても、国民にしっかり将来の姿を見せていくことが必要なのではないかというふうに思っておりますし、税制など各種の制度の見直しが必要だと思います。そしてもう一つは、中小企業等にとっては耳の痛いことではありますけれども、不良債権の処理の問題も決してないがしろにできない。こうした構造改革について、ぜひとも進めていかなければならないと思います。

 そして、そのためには、雇用政策によるセーフティーネットとか、あるいは就業構造の変化に対応した雇用政策をきちんとやるということも必要でありましょうし、中小企業金融についてきっちりとした配慮をしていく必要もあるだろうというふうに思っておりますけれども、構造改革を進めるということにつきまして、経済産業大臣の御決意を改めて伺いたいと思います。

平沼国務大臣 今の先生の分析というのは、私はそのとおりだと思って聞かせていただいております。経済構造改革、これはやはり今先生がおっしゃったように積極的に進めていかなければならない、むしろ遅きに失したという御批判も一部ありますけれども、それはある意味では甘んじて受けなければならないことだ、そういうふうに感じています。

 そこで、我々政府といたしましても、ここが御指摘のように一番大きな問題である、こういうことで、昨年の七月に、日本新生、そして産業を新生させる、こういうことで、これは各経済界、中小企業の代表の方も含めて参画をしていただき、また学識経験者にも入っていただき、政府も関係閣僚が全部そこに出まして、そして多角的にいろいろな面から議論をさせていただいて、先生御承知のように、一つの行動計画というものが昨年末にまとまったわけであります。

 ただ、これをまとめただけではまさに仏つくって魂入れずでございますから、具体的にタイムをちゃんと設定して、そして目標を設定し、これを速やかに実行していく、こういうことで、これは繰り返しになると思いますし、よく御承知のことだと思いますけれども、二百六十項目、そのうち半分の百三十は三年以内に達成しよう、百三十のうちの百は一年で結論を出そうということで、今具体的に動いています。

 そして、御指摘のように、これはやはりインセンティブを与えるために、規制の緩和でございますとか、そしてそれに必要な法整備でありますとか、あるいはお触れになりました税制の問題、それからまた企業が活力を持つような、そういった一つの新しい、いわゆる企業が創造できるような受け皿づくり、こういうことも含めて今強力に推進をしているところでございます。

 それから、お触れになりましたいわゆる不良債権処理の問題、これも私は御指摘のとおりだと思っています。

 そういう意味で、今お話を伺っていて、例えば英国は、英国病というようなことで非常に経済的な苦難に呻吟をしていた時期があります。そのときに、アイアンレディーと言われている、サッチャーという女性の大変な政治家が登場して、そして非常に大きな構造改革をし、そのときに、今言われましたように、多少こういう痛みは出るけれども、しかし、これを突破したらこういう未来が開ける、こういうことを英国民に明示をして、そしてそのコンセンサスを得ながら、国民がみんなそういう形で、それぞれの分野で、同じ意識を持ちながら、あれだけの奇跡の英国病からの脱却というのが私はできたと思います。

 ですから、そういう意味でも、私は、冒頭の質疑の中でも言わせていただきましたけれども、日本というのは、まだまだそういう意味ではポテンシャリティーがあるわけですから、そういうあらゆる問題に関して適宜適切な政策を打ち、そして皆さん方のお力をいただければ、私は必ず経済を持続的な安定軌道に乗せることができる。

 それから、今お触れになりましたけれども、やはり中小企業というのに日本の経済の基盤を支えていただいておりますから、雇用の問題も含めて、これは我が省と厚生労働省とやりながら、失業者を吸収するようなシステムをつくる。場合によっては、もう既に実施していますけれども、そういう万やむを得ない形で失業になった方々には、やはり国から補助を出しても、再雇用していただいた企業には補助金を与える、そういうような形をして総合的にやっていく。

 我々は中小企業を抱えている役所ですから、そういうことにも留意をしながら、私は、今先生がおっしゃった御意見はそのとおりだと思っておりますので、力いっぱい頑張っていきたい、このように思っております。

後藤(茂)委員 今大臣の方からも、昨年の新行動計画、閣議決定のお話がありました。その中に、いろいろないい項目がたくさん含まれております。本当に時間を限って、こうやって項目にしてあるわけですから、規制緩和計画のようにずるずると延びないように、しっかりとやっていただきたいというふうに思うわけであります。

 今、新しいベンチャー企業をやっている若い経営者などと話していますと、結構、ストックオプションの制度をきちんと整備してほしいとか、あるいは株式分割における純資産規制の見直し、そういったことをきちんとやってもらいたい、そういう声が非常に強いわけであります。

 今お話のありました新行動計画の中にも、今秋には商法、企業法制の法案の提出をというような内容が入っているわけでありますけれども、これを予定どおり提出することが可能であるのかどうか、経済産業省の見通しを伺いたいと思います。

中山副大臣 先ほどから後藤委員が御指摘のように、国民の金融資産をいかに民間の方々に使ってもらうかということ、そういう視点が非常に大事だろう、こう考えているわけでございまして、当省といたしましても、ベンチャー企業育成の観点から、商法上の課題について、昨年十一月に専門の有識者による研究会の報告書を取りまとめるなど、従来から関係行政機関への働きかけを行ってきたところでございます。

 その中におきましても、委員御指摘のストックオプション制度の見直しと株式の分割を行いやすくするための純資産額規制の見直しは、特に重要な課題と位置づけたところでございます。その結果、昨年十二月一日に閣議決定されました経済構造の変革と創造のための行動計画におきまして、商法改正に関する、政府としての今後のアクションプランが盛り込まれたところでございます。

 法改正の時期についてのお尋ねでございますけれども、この行動計画の中で、ストックオプションの付与の対象者や、あるいは付与の上限の規制の見直しにつきましては、平成十四年の株主総会で利用することができるように制度の整備を行うということにされております。また、株式分割を行いやすくするための純資産額規制の見直しにつきましても、平成十四年の通常国会までに遅滞なく法改正を行うこととされております。なお、この見直しを前倒しで実施すべきではないかという議論が行われていると承知しているところでございます。

 当省といたしましては、これらの改正が着実に行われ、できるだけ早く制度の利用が可能となりますように関係行政機関に働きかけるなど、引き続きベンチャー企業の育成に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

後藤(茂)委員 しっかりやっていただきたいというふうに思います。

 それでは、ちょっと時間をとってしまいましたが、伝産品の関係について質問をさせていただきたいと思います。

 木曽を御存じかどうか、木曽川沿いの谷合いに昔からの宿場町が点々と連なっている山の中の地域でありますが、そこに六百年ほど前から漆器産業が生まれておりまして、木曽の山の良材を使いまして生活雑貨をつくり始めた。それが今、楢川村を中心に、木曽漆器として、伝統的工芸品の指定を受けているわけであります。

 現在、不況による売り上げ減等で非常に苦しんでおることは、全国の伝統産品と共通していることでありますし、後継者の問題、それから原料の確保の問題、あるいは消費者ニーズに対応した新商品をどうやって開発していくか、古くからの伝統にはぐくまれてきた産地が、非常に大きな課題を抱えて苦悩をしているわけであります。

 そんな中で、若い職人や工芸士が集まりまして、いろいろな積極的な活動をやっております。これは、伝統を重んじる組合とは別に、例えば、新しい研磨仕上げの技術だとか、あるいは加飾仕上げの技術なんかを取り入れまして、モダンな造形を持った新商品の開発をみんなでやっていこうということで、研究をしたり、一緒に製造したりしております。そして、若い人たちが集まって個展の開催などを試みております。非常におもしろい花入れとか棚とか置物とか、そういう新しい挑戦がなされているわけです。

 彼らのねらいとしているのは、モダンな部屋の中に和の美しさを持った伝統的な産品の装飾品だとか日常品などとかというものをなるべく皆さんに見てもらうことによって、新しい市場を若い人たちの感覚で開拓していこうということ。それから二番目には、これまで伝統産品の場合はなかなか個人の名前というものが出てこなかった。つまり、問屋さんの屋号で商売がなされたりしていまして、工芸士やらあるいは一人一人の職人さんの名前が出てくるということがない世界であったわけです。そこに作者の名前をなるべく出していく、そういうことによって、商品の差別化を図ったり、あるいは付加価値を高めていこうという運動を若い人たちが今進めているわけです。

 こうしたグループの活動によりまして、例えば、長野オリンピックの金メダル、あれは漆のメダルでありましたが、金属の上に漆を置いていってつくるわけでありまして、そういう技法を共同開発をして、それを提言して、晴れて名誉なことにオリンピックのメダルに採用されたというような活動も実を言うと行われております。若い職人や工芸士たちが、従来の枠を離れて新しい挑戦をしているわけであります。

 今回の改正によりまして、活性化計画、随分対象が拡大されたり、運用がしやすくなっておりますけれども、改めまして、こういう事業が今回の活性化計画の法律の対象となるのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

中山副大臣 今回新設いたします活性化計画では、個々の事業者やその少数グループが、新商品の開発とか製造あるいは需要の開拓、従事者の研修、消費者への適正な情報の提供等の事業であっても、産地全体の活性化に資するものについて計画を作成し、認定を受けると、国及び地方公共団体から補助を受けることができることとなっております。

 ただいま後藤委員から、地元の若い方々のアイデアあるいは意欲についてのお話がございましたけれども、このような新商品の開発とか個展の開催等の活動につきましても、原則として活性化計画の対象となるわけでございます。

後藤(茂)委員 その新たな需要喚起とか市場に対するいろいろなアピールという観点から、インテリア雑誌とか女性誌などに、商品そのものとして見せるというだけではなくて、全体としてのインテリアコーディネーションというか、ライフスタイルを提案するような形の広報活動をやりたいということで、今試みが始まっております。

 和の心だとかゆとりのある生活というものを写真にして、ライフスタイルの提案として見せよう、そのことによって、これまで、例えばホテルだとか旅館だとかデパートだとか、限られた大口の消費者を相手に問屋的な関係で取引をしていたものから、流通を拡大して、例えばインターネットの取引なんかも含めて、すそ野の広い、国民からの需要を起こしていこうという試みなわけです。

 考えてみますと、こうした事業というのは、他の伝統産品の事業者と一緒にやったり、あるいは同種の伝統産品の他の産地の事業者と連携をしてやっていくということになりますと、その効果はますます期待ができるわけであります。

 今回の法律改正では、活性化計画の対象事業の拡大を図られますとともに、連携活性化計画が法律上明記されるようになっているわけであります。そうした中で、こうした非常に効果の期待できる産地間連携を幅広く展開していくという観点から、法律の運用に当たっては、こうした趣旨を十分に生かして柔軟、適切な対応をするべきだと考えておりますけれども、お考えはいかがでございましょうか。

中山副大臣 後藤委員の御指摘のとおり、産地間の連携によりまして、例えば消費者等に新たなライフスタイルを提案するような共同展示会の実施、あるいはブランドの形成等、これまでの一産地内での活動の枠を超えた新たな発想による需要の開拓、あるいは新商品の開発等を行っていくということが大変必要である、このように考えております。

 このため、今回の法改正におきましては、伝統的工芸品を製造する事業者や組合等が他の産地の事業者やあるいは組合等と連携して伝統的工芸品産業の活性化に資する取り組みを行う際の支援制度として、連携活性化計画を創設するものであります。

 この制度を幅広く利用いたしまして産地間連携を円滑に実施していただけるように、制度の運用に当たりましては最大限の努力をしてまいりたい、このように考えております。

後藤(茂)委員 実を言うと、木曽にはもう一つ、伝統工芸品の指定を受けております南木曽ろくろ細工というのもあるわけですが、いろいろな全国の伝統産品の産地で起きていることだと思うので、ちょっと一言申し上げます。

 ろくろ工芸については、昭和三十年代、プラスチックが台頭してまいりまして、転業が続出いたしました。当時何十軒もありました業者が数軒を残すほどになるほど落ち込んだわけであります。プラスチックの出た当初は、プラスチックのおわんやお皿の方が木曽の良材でつくりましたおわんやお皿よりも高い時期がありました。そんなこともあったわけです。その間、日雇いに出たりいたしまして、産地を非常に苦労して守ってきた。それが、昭和四十五年から四十八年ごろ、木の見直し、そういう風潮が生活の豊かさに伴いまして出てきまして、やっと今の産地が回復してきたということがあるわけであります。

 そういう意味で、日雇いに出てまで産地を守った先人の努力に大変敬意を表するところでありますけれども、しかし、今また、産地の中には、非常に低廉な外国からの輸入品で苦しんでいるところもあるわけであります。価格競争力という点では、これは労賃の問題やら為替の問題やらいろいろなことがありますけれども、国内産品というのは、価格的にはやはり到底太刀打ちができないというのが正直なところであります。

 もちろん、各消費者にとっては、安価な輸入品を選択できる、そういう余地がありますことは、決して悪いことではありません。しかし、産地の、製造者の売り場においてさえ、輸入品としてはっきり明示されずに売られているという例もあるわけであります。伝統産品を愛して使おうと思う国民のニーズや気持ちを考えますと、高くても上質な国内産品を志向する方も非常に多くおられるだろうと思います。また、伝統産品は、もとをただせば産地があってこその伝統産品ということであります。

 そういうことから、産地の正しい発展を守っていく、あるいは不適切な流通を排除するという観点から、原産地の表示あるいは国内産品としての表示を検討すべきだという声が産地から、特に一生懸命つくろうと思っている熱心な若い工芸士たちから強く上がってきております。

 当局として、例えば景表法による公正競争規約による表示、あるいは組合の自発的な表示などについてどのような見解を持っておられるか、伺いたいと思います。

中山副大臣 現在、安価な輸入品が産地を直撃しているという事態が起こっているわけでございます。当省に対しましてもセーフガードの発動等の要請が来ているということは、御承知のとおりだと思っているわけでございます。

 伝産品につきましても、原産地表示に関しまして、輸入品についてのみこれを義務づけるということは、輸入品に国産品と同等程度の待遇を求めておりますWTO協定に違反するものと考えられますけれども、他方、国内において、業界が自主的に表示を行うことは問題はないと考えております。

 業界が自主的に国産品である旨を表示するという場合には、当然のことながら、コストや手間の問題もあり、参加する事業者等の間において合意の形成が可能なものでなければなりませんが、そうしたルールを業界みずからの創意工夫によって設けていくことができるということであれば、そういった取り組みは、産地の振興という観点からも評価すべきであると考えております。

 なお、委員御指摘の景表法に基づく公正競争規約に基づく原産地の表示も一つの選択肢であると考えられますが、これも違反者への罰則を規定することはできるものの、あくまで参加、脱退は自由というルールであります。さらに、一般消費者の利益を保護するという観点から、業界として締結しようとする場合には、規約の内容が不当な顧客の誘引を防止し、公正な競争を確保するために適切なものであることや、不当に差別的でないことなどの厳格な要件を満たしていることにつきまして、公正取引委員会の認定を受けるということが必要となっております。

 また、伝統的工芸品につきましては、現在も、消費者が他の国内産品や輸入品と区別し、伝統的工芸品であることを一目で見分けることができるよう、全国統一の伝統マークを付することを推進しているところでございます。今後も、こうした表示につきましてより一層の普及を図ることにより、消費者への情報提供やPRに努めてまいりたい、このように考えております。

後藤(茂)委員 先ほども話が出たのでダブるかと思いましたけれども、一言申し上げます。

 伝産品については、例えば文化の観点から文部科学省、文化庁との連携を図るとか、あるいは物づくりという観点から教育等の中でどういうふうに取り組んでいくかとか、公的建造物、そうしたものに取り組みができないかとか、あるいは林業政策などにつきましても地域政策としてやっていくという形に今流れが出てきております。そうした意味での連携を深めるとか、こういう伝統産業、技術を何とか守って、そしてそれが産業として地域の中でやっていけるように、政府として一体の対策をとっていくべきだというふうに思っております。

 伝統産品と申しますのは、一人一人の工芸士さんや職人さんが丹精して真心を込めてつくる、そういう心のぬくもりのこもったものであります。また、歴史的、文化的価値を有する貴重な財産でありまして、生活文化そのものを形成しておりますし、例えば紙とかセラミックとかいうようなものは、それが先端技術のブレークスルーになることも実を言うとあるわけであります。

 今、大量生産とか輸入品とかいうことで非常に厳しい状況でありますけれども、時代が変わりまして、本物志向だとか、質的に高いものをとか、あるいはものづくりだとか、職人志向の高まりとかいうようなことが時代の流れとして出てきております。そういう意味で、伝統産品についてしっかりとこれから国としても温かい目で見ていただくように、伝統産品についての大臣の決意を伺わせていただきまして、質問を終わらせていただきます。

平沼国務大臣 伝統産業を支えている技術というもの、それからそれまで培われたいろいろな文化的な価値、こういうものは、やはりある意味では国の宝だと私は思っております。

 ですから、そういう意味で、先ほどの御答弁でも申し上げましたけれども、私は、経済産業省としてやるべきことはきちっとやっていく。そして、今御指摘のあったように、やはりこれは国が宝として守り育てていかなければならない非常に大切なものでございますから、文化庁を初めそれぞれと政府で連携をとって、そしてこの大切な伝統産業のために我々は努力をしていかなければならない、私も一生懸命頑張っていきたい、このように思っています。

後藤(茂)委員 終わります。

山本委員長 山内功君。

山内(功)委員 民主党の山内功でございます。

 伝統的工芸品をつくる作者の中には、常滑焼、友禅、首里織、読谷山花織のそれぞれの著名な作者が国の重要無形文化財に指定されておられますが、文化財、文化遺産のような側面があります。私の地元鳥取県でも、弓浜絣は県の無形文化財に指定されています。文化財なら、保護の対象としてのさまざまな措置が検討されなければならないと思います。

 一方、伝統的工芸品は産業でもありますので、産業ならば事業者の自発的なやる気と自立が求められ、行政はあくまで側面的支援を行う。伝産法はあくまで伝統的工芸品を産業の一つとしてとらえ、側面的支援をしようというスキームですが、伝統的工芸品が文化財的な側面を持ち、産業と文化財の境目付近のところに位置するだけに、側面的支援にしても相当思い切った支援が必要ではないか。

 昨年十一月の伝統的工芸品産業審議会の答申において、「伝統的工芸品産業は、二十一世紀はもとより末代まで大切に継承していくべき我が国の貴重な財産である」と位置づけておられます。

 文化財的側面を持つ伝統工芸品の振興のあり方についてどのような認識をお持ちでしょうか、大臣に所見を伺いたいと思います。

平沼国務大臣 私の地元にも、備前焼という非常に千年の歴史を持っている伝統的な焼き物がございます。伝産法に基づく伝統的工芸品に対する支援というのは、今委員が御指摘のとおり、基本的には産業政策の観点から経済産業省としては行うものでございまして、産業としていかに自立的に発展していくことができるかを主眼として進められるべきものだ、このように認識をいたしております。

 他方、今備前焼は千年だと申しましたけれども、百年を超える歴史を有する伝統的工芸品産業は、我が国の文化の、言うまでもなく重要な構成要素にもなっているわけであります。したがって、その振興は我が国の伝統文化の維持発展、それにも大きく貢献し得るものであります。そうした観点も踏まえて、国としても最大限の努力を傾注して支援をしていかなければならない、このような基本認識を持っております。

山内(功)委員 平成十三年度予算案で、産地補助金が一億九千万円、一方、伝産協会への補助金はその四倍の八億円となっております。協会なりに一生懸命仕事をされているのは確かにわかっておりますが、産地の窮状を見ますと、極端に言えば補助金の額を逆にするぐらいの、つまり産地に比重を置いた支援が求められているのではないでしょうか。国の補助がふえれば地方公共団体の補助も同額ふえるので、財政難の地方公共団体には確かに大変だという話もわかるのですが、この点、何か工夫はないのでしょうか。

中山副大臣 お答えいたします。

 いわゆる産地補助金が一億九千万、そして協会補助金が八億、逆にすべきじゃないか、こういうふうなお話でございますけれども、いわゆる産地補助金につきましては、今先生がおっしゃいましたように、地方公共団体側の厳しい財政事情等を踏まえますと、現時点ではこれを大幅に増額することは困難である、このように考えておるところでございます。

 しかしながら、いわゆる協会補助金につきましても、協会の人件費あるいは管理費に充てられるものはその一部の必要最小限のものでございまして、ほとんどの部分は伝統的工芸品産業の振興のために必要な事業を実施するための補助金であります。

 今後も、産地に対する支援を後退させることなく、産地に比重を置いた支援をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。

山内(功)委員 ただいま産地の窮状について少し触れましたけれども、私も鳥取県の伝産品の産地を訪ね、事業者や組合から現状についてお話をお聞きしました。

 因州和紙の産地では、東京のプリズムホールで展示会があっても、家内手工業みたいな感じでやっているので工場をとめて東京に出向かなければならない、あるいは、デザイナーを派遣してもらったことがありますが、デザイナーに和紙のすき方をこちらが教えただけで、反対に何も返ってこなかった、能力がないんじゃないか、あるいは、百貨店が共同振興計画作成の主体に入っても、百貨店は売り上げの数字が落ちるともう声もかけてくれなくなるので心配です、そういうような、ややもすると発想が後ろ向きになるほど追い詰められているなと感じたんです。

 フリーでいろいろなお話を聞いたんですけれども、率直に、こういうような感想を聞いてどう思われるでしょうか。

平沼国務大臣 今回の法改正に当たりまして、経済産業省といたしましては、百九十四ある、そういうところに極力出向くという前提で作業をしましたけれども、人的な制約もあって一部には行けていない、それが実情であります。したがいまして、今先生から実際の現場の生の声、そういう実情があったことは事実だったと私は思っています。

 ですから、そういう意味では、もっともっときめ細かく、今一生懸命に伝産品をやってくださっているそういう業者の方々、そういう組合、そういったところともっと意思疎通をして実情というものを把握していくということは非常に重要なことだと私は思っておりまして、そういう方向で努力をさせていただきたい、このように思っています。

山内(功)委員 もう一つ有名な産地として、弓浜絣の産地が鳥取県にはございます。私、後継者というのは実子ではなくて趣味の会の人とかあるいは意欲のある他人に託す、そういう人材の確保もこれから必要になるんじゃないかと思っています。

 農業でいう直接所得補償のような制度は随分大変な余地もあろうかとは思いますが、例えば人件費をストレートに補助する制度が必要だと考えていますとか、技術を教えられる側に助成をしてほしい、そうしないと制度そのものが根づかないんじゃないんでしょうかなどという声もお聞きいたしました。

 今大臣がおっしゃいましたが、百九十四の産地を一つずつ歩いてこういう実態を把握されることはなかなか大変なことだとは思いますけれども、少なくとも今回の改正に当たりまして、省あるいは伝産協会の方々が百九十四の産地をもう少し小まめに歩いて、どういう法律が必要なのか、どういう施策が産地を保護することになるのか、もう少し小まめに聞いていただきたかったなという印象を持ちました。ちょっとその点、もしどなたかありましたら。

岡本政府参考人 私ども、施策の見直しに当たって、先生御指摘のように、産地に出向いて直接お話をお伺いしながら、抱えていらっしゃる問題、取り組んでいらっしゃる方向について、どういうお手伝いをしたらいいか一緒に考えるという姿勢でやってまいっているところでございます。

 そういう中で、実際に職員が局のスタッフを含めまして全部を回るというところまでは必ずしもできませんが、一方で、実は今回の法律改正につながりました審議会の答申、それに先立ちます研究会というのを昨年の二月からスタートして、いろいろな産地の方々、伝統工芸品に携わっている流通でありますとかデザインでありますとか、あるいはインテリア等のコーディネーターの方々、そういった方々のお話をできるだけきめ細かく伺う中で今こういう方向での行政としての取り組みが求められているということで、私ども、事務局として審議会の答申の取りまとめに協力を申し上げ、今回の法律改正に至っているような次第でございます。

 引き続き、御指摘の産地の実情に生に触れてこれからの課題を一緒に考えるという姿勢については、私どももまさにそのとおりだと思いますので、これからの運用に当たりましてもそういった姿勢で臨んでまいりたいと考えております。

山内(功)委員 今回、新たな支援策としまして、共同振興計画の作成主体に百貨店など販売事業者の追加、あるいは個別事業者でも作成できる活性化計画、さらに支援計画の対象に産地プロデューサー事業の追加などが挙げられています。

 この中で、産地プロデューサーは、市場ニーズの把握と需要開拓、それに基づく商品設計・製造、流通販売戦略などに携わる重要な仕事だろうと思います。伝産協会の方でも、産地プロデューサー登録・マッチング事業を開始することになる、産地としては相当の期待を持っております。

 産地プロデューサーは、相当の能力を持った方だろうと思っておりますけれども、問題は、そういう産地プロデューサーの人材の発掘あるいは育成確保ではなかろうかと思います。実際になかなか人材難だと聞いているのですが、人材確保についてどのような考え方を持っておられるでしょうか。

中山副大臣 産地プロデューサーについての御質問でございますが、産地プロデューサーにつきましては、昨年十一月の伝統的工芸品産業審議会答申において言及されておるところでございます。答申におきましては、産地プロデューサーになり得る人材について、例えば消費地において伝統的工芸品の流通に携わる中で産地と密接な関係を持つに至った人など、産地と消費地の双方に知見、経験を有することが望ましいとされております。

 また同時に、答申では、産地側につきまして、みずから発展の方向性とそれを実現するための方策についてのビジョンを持って、産地プロデューサーの活用を図ることが重要であるとしております。

 これを踏まえまして、当省では、来年度から新たに産地プロデューサー事業を始めることとしたわけでございますが、その際、委員御指摘のように、人材の確保が何より肝要であるという観点から、伝統的工芸品産業振興協会におきまして、産地プロデューサー登録・マッチング事業をあわせて実施することといたしました。

 すなわち、伝産協会におきまして、産地プロデューサーになることを希望する者を募って、リストアップいたしまして、これを産地プロデューサーの派遣を希望する産地に紹介いたしまして、マッチング、いわゆるお見合いでございますが、これを実施いたします。

 また、産地プロデューサー同士の資質向上を図るため、交流型啓発会議を開催いたします。これによりまして、産地のニーズに適合した産地プロデューサーが確保されるもの、このように考えておるところでございます。

山内(功)委員 今回、新たな活性化計画は、事業者やグループが計画を策定し、大臣の認定を受けると、国、地方から補助金が出る仕組みになっています。協同組合以外に創意工夫とチャレンジの道が開かれたということで、評価したいと考えています。

 しかし、事業者が単独でも計画を策定できることから、仮に補助金目当ての安易な企画が通ってしまうようなら、国民や産地でまじめに努力をしている事業者に申しわけが立ちません。一方、審査が厳し過ぎると活性化計画を設けた意味もなくなってしまいます。

 省の資料などをいただきますと、計画に盛り込む事業内容は、振興計画で実施されていないような斬新かつ先進的な取り組みとありますけれども、活性化計画の意義、認定に当たっての考え方並びに補助対象となる経費の範囲などについてお伺いをしたいと思います。

岡本政府参考人 お答えを申し上げます。

 活性化計画は、今先生御指摘のように、現行の活用計画を発展的に解消しまして、少数の事業者あるいはグループで、前向きな、意欲的な取り組みをなさるという場合に、法律に基づく認定を行って支援をしていこうというものでございまして、大きな方向としましては、真摯で前向きな取り組みということであれば、私どもも、幅広く弾力的に応援をしてまいる、認定をしてまいる、そういう姿勢で臨みたいと思います。

 その際に、万々一そういうことは余りないと思いますが、産地全体がばらばらになるとか、そういうようなものは慎重に私どもとしても勉強させていただかなければなりませんが、方向として、前向きな取り組みというものは極力弾力的に応援していきたいと思っています。

 対象の経費でございますが、認定の計画ごとに変わってまいろうかと思いますが、事業に必要な謝金あるいは旅費、会場の借料、展示会の開催費、それから若干の試作を伴います新商品の開発、それに要する経費、そういったものを主たる補助対象の経費として今考えているところでございます。

山内(功)委員 共同振興計画の策定主体に、百貨店など個々の販売事業者が追加されました。消費者により近い立場の販売事業者が加わることにより、効果的な需要の開拓が期待されると思います。

 百貨店業界の反応はどうだったでしょうか。また、三月十三日付の日経流通新聞によりますと、経済産業省は、伝統工芸品の振興協力を百貨店、専門店に要請すると報道されております。ぜひ販売業者の協力を得られるよう、省としても一生懸命努力をしていただきたいんですが、御見解をお伺いしたいと思います。

中山副大臣 共同振興計画につきましては、既に幾つかの百貨店から手続の問い合わせ等がありますなど、百貨店業界の反応は小さくないものと認識しております。

 製造協同組合等が百貨店や商社等の個別の販売事業者と共同することにより、より一層効果的な需要開拓等が見込まれることから、経済産業省といたしましても、可能な限り百貨店や商社等に参画していただけるようにお願いしてまいりたいと考えております。

山内(功)委員 伝産協会の事業のうち、今年度予算で一億二千五百万円の補助金がついている産地の調査・診断事業は大変大事なものだと考えております。全国の産地について専門家による調査分析を行い、産地が自律的発展を目指すための資料を作成するということですが、具体的にどのような調査をするのか、お伺いをしたいと思います。

 また、省の説明によりますと、今年度は二十から三十品目程度を調査するとの説明を受けました。しかし、このペースだと、百九十四品目全部を終わるのに六、七年かかることになります。その間に産地が決定的に衰退してしまっては元も子もありません。もう少し前倒しでできないものかと思うのですが、いかがでしょうか。

岡本政府参考人 お認めいただきました十三年度の予算で、新たに産地の調査・診断事業というのを行うべく計画をいたしているところでございますが、調査の中身としましては、一言で申し上げますと、それぞれの産地の強みなりあるいは弱みについて専門家の方々に総合的に診断をしていただいて、弱いところを直し、強いところを伸ばすために具体的にどういうアクションをとったらいいかというのを個々の産地についてお示しをする、それを目的とした調査でございます。

 数をふやす、前倒しという点なんでございますが、予算との関係がございます。十四年度以降、この事業にどれだけの予算を配分していただけるかというところについて、当然のことながら、今はっきりしたことを申し上げるのは難しいわけでございますが、まずは十三年度の予算の執行に当たりまして、産地百九十四ございますが、それぞれの産地ごとの緊要度、そういったものに応じて、まず急ぐところから二十ないし三十ことしやり、それから予算の方も、ぜひとも先生方の御理解も得ながら、引き続き私ども頑張っていきたいと思いますので、そういう形で、できるだけ早くこの調査が必要なところについては行き渡るように鋭意努力をしてまいりたいと考えております。

山内(功)委員 伝統的工芸品産業は、一九八〇年代をピークに衰退の一途をたどっているのですけれども、私は悲観的な要素ばかりではないと思っています。

 国民のニーズが生活の量的な充足から質的な充足へと変化をし、生活にゆとりとか潤いを求める動きがあらわれてきたと思っています。近年、地域独自の文化を見直そうという風潮があらわれてきていると思っています。古来からの和の暮らしの知恵が見直されてきていると思っています。二十一世紀は循環型経済社会の実現を目指している、このことを指摘していいと思っています。

 調査局の資料をいただきました。環境ホルモンなどに対する国民的な関心が高まる中で、例えば学校給食用食器について伝統的工芸品を用いた食器を試験的に実施した、こういう事例もあります。

 私は、例えば、意外に地域に住む人たちが、自分の近くに伝産品があるということを知らない人も結構おられます。例えば教科書の副読本の中で、地域にもそういう伝産品の産地があるということを、しっかりと地域の人、あるいは二十一世紀の人材である子供たちの教育にもその内容を生かしていただくとか、小さなことかもしれませんけれども、そういうことを通じて伝統的工芸品のあるライフスタイルのよさとか、あるいはそういう心、あるいはたくみを尊重する気持ちを育てる、そういうことが必要ではなかろうかと思っています。経済産業省も、そのことをしっかりと発信していただきたいと思っています。

 最後に大臣の見解を伺って、終わりにしたいと思います。

平沼国務大臣 先生御指摘のように、私は悲観的な暗い部分だけではないと思います。

 それは、やはり量よりも質を求めるという風潮は確実にこの日本の中で起こってきておりまして、先ほどプラスチックの食器の例も出ましたけれども、やはりそういう木のぬくもりですとか、伝産品の、そういう非常に心休まる品物、そういうものに対する評価は非常に高まってきているわけです。

 また、学校などにおいても、従来のプラスチック主体のそういう建材から、木を生かしたそういう教室にしよう、そういう各地域の取り組みもありまして、私はそれも一つのあらわれだと思っています。

 そういう意味で、伝産品のよさと、そしていかにそれを求めている国民の中に定着させるか。そういうことで、経済産業省としても、経済産業省のみにとどまらず、例えば文部科学省と連携をとる、そういうことも必要だと思っておりますし、そういう問題意識を持ちながら、私は山内先生がおっしゃるとおりだと思いますので、そういう方向でも伝産品というものを省として周知徹底、PR、そういう努力もしていきたい、このように思っています。

山内(功)委員 終わります。どうもありがとうございました。

山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。達増拓也君。

達増委員 昨年十一月に開かれました第十七回伝統的工芸品月間国民会議の全国大会、これは岩手県で開催されまして、その報告書が私のところに届いております。全国から千名近い関係者が盛岡に集まりました。また、この盛岡、昭和四十九年に法律ができて、翌五十年に、伝統的工芸品の指定第一号ということで南部鉄器が指定されているのでありますが、その南部鉄器の産地である盛岡に全国から千名近い関係者が出席して、開催されました。この間、盛岡市内の小中学生約五千人が、授業の一環として、展示会やさまざまな行事にも参加をいたしまして、地域を挙げて、伝統的工芸品の産業振興に盛り上がったわけであります。

 この全国大会、大会宣言が出されておりますけれども、第一に、二十一世紀に向け、新しい取り組みを積極的に推進していく、第二に、自然との調和を図りながら、消費者のニーズを的確に把握してやっていく、そして第三に、伝統的工芸品産業振興法、この法律の支援のもと、関係者一同さらなる努力を重ねるという内容でありました。

 そこで、この伝統的工芸品産業振興法、今回久々の改正ということで、委員会の審議であります。このように、関係者は非常に盛り上がりながら、一生懸命取り組みをしているところでありますけれども、一方、伝統的工芸品産業については、その生産額、企業数、そして従業員数、すべて減少傾向にあるわけでありまして、取り巻く環境が厳しい状態にあるという認識が関係者に共有されているわけであります。

 まず最初の質問、この原因について政府としてはどのように見ておられるか、伺いたいと思います。

平沼国務大臣 達増委員御指摘のとおり、非常にあらゆる面で低下傾向にある、これは事実でございます。

 その要因は何か、こういうことでございますけれども、バブル崩壊後の十年にも及ぶ経済的不況の中で、伝統的工芸品産業をめぐるさまざまな要因から、伝統工芸品の売り上げが低迷するとともに、それに伴って経営難や後継者不足が生じている、そのように考えております。

 売り上げが低迷している外的要因といたしましては、以下のものが考えられると思っております。

 一つは、衣食住の各方面においていわゆる洋風化が進展したことによりまして、生活の中でのいわゆる日本の伝統の和、和風、そういう伝統的工芸品が用いられる機会が非常に少なくなったこと。

 また、大量消費社会の中で、生活用品に対する国民の意識が、安価な商品あるいは使い捨てるという方向に傾いてきたために、こうした性格を有していない伝統工芸品に対する国民の関心が薄れてきた、これも一つの要因だと思っています。伝統的工芸品以外の、ある面では良質な生活用品が大量生産方式によって非常に多量に、そして安価に供給されるようになったために、ある意味では、伝統的工芸品というのは手間暇がかかります、それから自然の材料等を使う、そういうことで価格的には比較的高価、そういうものが消費者からは敬遠される傾向にある、こういうことも言えると思います。

 また、もう一つ大きな要因としては、アジア諸国から、特に中国等でありますけれども、伝統的工芸品の類似品や代替品が安い値段で輸入されている、こういうことも挙げられると思います。

 また他方で、売り上げが低迷している内的な要因、これもあると思います。

 一つは、伝統的工芸品のつくり手による、生活者の新たなニーズに適合した商品開発が若干不十分であった。または、産地問屋を初めとする既存の流通経路がその役割、機能を低下させつつある中で、新たな流通経路の開拓というものがおくれたということも要因だと思います。

 また、伝統的工芸品の持つよさとか味わい、そういうことについての、これはある意味では私どもの責任にも入ると思いますけれども、情報がほとんど提供されない、そういう形で、知名度不足や情報提供不足の傾向があった。

 そういうことがそれぞれ要因として絡み合って、非常に残念なことでありますけれども、相対的に現在の数字にはっきり出ております停滞を招いている、こういう認識でございます。

達増委員 市場経済原理に基づいて、消費者がきちんと正しい判断をしたその結果として、伝統的工芸品産業が衰退しているのであれば、それは仕方がないのかもしれませんが、大臣がおっしゃったように、消費者の側も伝統的工芸品に関する知識、情報が十分にないまま物を買っている。こういう状態でありますと、それはやはり市場が正しく機能をしていないわけでありまして、どういう伝統的工芸品があるのか、また、伝統的な生活様式のよさ、自然との調和のすばらしさ、そういったことをすべてわかった上で物を買っていただく、市場での選択をしていただく。そういう意味で、まだまだ政府がやれること、やらなければならないことがたくさんあるんだというふうに思います。

 それはつくり手側についてもそうでありまして、そういう消費者のニーズでありますとか、どういうものが売れるか、またコストのかけ方、流通のあり方等について、やはり今情報がきちんと行き渡っていないことがかなり問題を悪化させているので、そういった点を改めていかなければならないというふうに私も考えます。

 そこで、今回の法改正でありますけれども、まず大きい目玉が、任意団体でも伝統的工芸品の指定を受けられるようになる。従来であれば、製造協同組合をつくらなければ伝統的工芸品の指定も受けられないし、振興計画の作成主体にもなれなかったわけでありますけれども、そこを改めて、任意団体でも伝統的工芸品の指定を受け、さらに振興計画に参画できるようになる。この法改正によって、どのくらいこの指定の品目がふえるというふうに政府では予想していますでしょうか。

岡本政府参考人 先生御指摘のように、今度の法律改正で、指定の申し出の要件、そういったものを任意の団体でもいいということに改めさせていただくべく御提案申し上げているわけですが、直近の年間の新たな指定というのは、大体一件ぐらいのペースでございます。

 それが今度の改正によって指定の申し出の要件が緩和されますので、かなりふえると思いますけれども、それでもやはり準備に相当の時日を要するというところもございますでしょうから、私ども、直近実績一件に対して、多分年間数件程度にはふえていくんじゃないかということで、この分野の従来のトレンドから見ますと大きな前進ではないかと考えている次第でございます。

達増委員 知られざる名品というものが多々あると思いますので、そうしたものがきちんと知られるように、きちんとした運用が必要であると考えます。

 さて、もう一つ、今回の改正の重要なポイントが、活性化計画というものを新設しまして、そこで従来の活用計画を発展的に解消し、新商品の開発等を支援する、そういう体制をつくるわけであります。この新商品の開発ということでありますが、伝統的工芸品の本質から考えますと、はやり廃りに振り回される可能性がある新商品開発に力を入れ過ぎてしまいますと、ともすれば経営が不安定になって、かえって本来の、昔ながらの伝統的工芸品の製造がおろそかになる、あるいはそちらに手が回らなくなる、そういう危険性もあると考えますけれども、この点いかがでしょうか。

平沼国務大臣 全国、今百九十四品目、そういう形で指定されておりますけれども、やはり伝統的工芸品というのは一つの核がありまして、そしてそれは余りはやり廃りに影響されない、そういう原型的なものがあります。私は、これはこれでやはり核として大切に育てていかなければならないと思っています。

 さはさりながら、他方、伝統的工芸品の売り上げが低迷をしている中で、いかに現代の消費者のニーズやライフスタイルに適合した商品を開発するか、もともといいところを持っているわけでございますから、それに適合する、そういう新しいものを開発して、それによって産地の伝統的工芸品産業に携わる企業が産業として存続をし、さらに発展していくか、これも私は重要な課題だ、このように思っておりまして、こうした観点からも、活用計画の制度等を通じて新商品の開発を推進してきました。

 今回お願いをしております法改正によりまして、活性化計画に基づく支援の一つとして新商品の開発を支援することとしておりますけれども、その場合にも、あくまでも伝統的工芸品産業の存続、そして発展を図ることが大目的であって、これに資する取り組みの一環として新商品の開発や製造を支援していく、そして、今先生が御指摘されたことは、私はそのとおりだ、こういうふうに思っておりますので、新商品の開発や製造への偏重によって経営の不安定化等を招くことのないように十分留意をしつつ伝統的工芸品産業の支援を進めてまいりたい、このように思っております。

達増委員 私も地元盛岡の南部鉄器をつくっているところを何軒か見て回ったんですけれども、やはりバランスが重要であるなと思いました。南部鉄器と秀衡塗という漆器を組み合わせた新商品をノベルティーとしてつくる。それである程度収入を得て、その分の余裕を高級品、昔ながらの手づくりのものをじっくり時間をかけてつくっていくことに回しているところがありました。

 そういう、作家として作品をつくっていくというようなことにも余裕が向けられる、そのためであれば、そういう新商品というのは非常に相乗効果があって効果的だと思います。また、観光客向けにお手ごろの価格の普及品をたくさんつくりつつ、やはり昔ながらの、今後の歴史の蓄積にもたえるようなものを同時につくっていく、そういうことでうまくやっているところがありまして、そういうバランスが重要なんだなと思いましたので、運用上もそういったところを留意していただきたいと思います。

 さて、今回の法改正では、振興計画、共同振興計画、そういう製造者側の計画作成主体を拡大したり、また共同振興計画に販売者側からも協同組合以外の、百貨店等が参加できるなど、いろいろ参加主体を拡大しているのでありますけれども、これらに加えて、消費者の参画ということも伝統的工芸品産業振興には非常に重要なのではないかと考えます。

 やはり顧客、買い手の側からのさまざまなアイデア、提言でありますとかそういったことを製造者側に伝える、また改めて品物のよさを消費者側にも理解してもらう、そういった目的のために、例えば特定の伝統的工芸品愛好家の同好会でありますとか、そういった消費者の組織化を支援していくことも非常に重要なのではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。

中山副大臣 伝統的工芸品産業の発展のためには消費者の参画が不可欠であるということは、先生御指摘のとおりだと思っております。

 このような認識のもとで、伝統的工芸品センターの事業の一環といたしまして、伝統的工芸品の愛好家を組織化する友の会というのを設けておるところでございます。また、既に一部の先進的な産地におきましては、産地組合や任意グループが顧客情報管理を行ったり、あるいは個々の企業において愛好家を組織化するなど、消費者情報の把握に取り組んでいるところもございます。

 政府といたしましても、今後、振興計画や今回新設いたします活性化計画に基づいて行われますこのような取り組みを支援してまいりたいと考えております。

達増委員 伝統的工芸品というものが昔、江戸時代であれば封建領主であるとか大商家あるいは豪農、そうした顧客によって育てられてきたというところがあると思います。そうした封建的なパトロンがいなくなった今、いかにしてそういう顧客側を充実させて伝統的工芸品を育てる体制をつくっていくかというのが非常に重要だと考えます。

 そこで、今回の法改正で百貨店も共同振興計画に参加できるようになるわけでありますけれども、実際に聞いた話でありますが、デパートの店員が品物についてよく理解をしていなくて、外国からの輸入物とうまく区別して説明ができないとか、手づくりの品物ゆえの、端が欠けているとか、持つところが少しでこぼこしているとか、それが本当はよさなのに、そこをうまく説明できなくて、そういう文句が製造者のところに来てしまうとか、そういう話を聞きました。したがって、ちゃんと品物をわかって売る人、そういうことが非常に重要なんだなと思いました。

 逆に、これも盛岡で見聞きした例でありますけれども、うまくいっている例としては、地元資本のデパートで、県産品クラフトの店、そういう独立の店舗を出している地元デパートがありまして、そこの店長さんは、県の県産品、伝統的工芸品については、もうすぐにその産地プロデューサーになれるくらいの非常に詳しい知識を持っていまして、実際既に、県内でまだ伝統的工芸品に指定されていないようなものを育てる手伝いをしたりとか、やはりそういうわかった人が活躍することによってつくり手側の方も育てられていくということがあると思います。

 かつて、千利休という人がちゃんと目ききをしてこれは幾らだと価値をつければ、それがもう国一国と同じくらいの価値を持った。したがって、伝統的工芸品、その製品の価値を適切に評価してほかの人たちに伝えることができる、そういう目ききを育てていくことが産業振興のかぎではないかと考えますけれども、デパートの店員さんでありますとかそういった人たちに対して研修をするとか、そういう目ききの育成についても力を入れるべきと考えますが、政府としていかがでしょうか。

中山副大臣 お客さんに直接物を売るといいますか、その接する店員の方々がそのよさをわかるということがまず第一だ、こう思うわけでございまして、そういう意味で、伝統的工芸品の目ききの重要性ということにつきましては、先生御指摘のとおりであると考えております。特に、デパートの店員等の教育は、こうした目ききができる人材を育成するという観点から大変効果的である、このように考えております。

 そのため、今回、共同振興計画を改善いたしまして、デパートの店員等が産地で研修を受けることを同計画に盛り込むことができるようにしたところでございます。

 また、来年度から新たに制度化される産地プロデューサーには、製品の価値を消費者にわかりやすく伝え、産地と消費者の間の溝を埋める等の役割を果たすことが期待されております。

 このような措置を通じまして、より多くの消費者に伝産品の価値が理解されるもの、このように考えております。

達増委員 伝統的工芸品産業振興のために、やはり海外市場も念頭に置いていくべきではないかと思います。

 先ほど、松本委員の同様の質問に対して、ジェトロもそういう努力をしているという答弁がありましたけれども、商品そのものの説明あるいはその背景となっている歴史や文化を説明する、そういう外国語のパンフレットでありますとかあるいはビデオでありますとか、そういうものを地元でつくっていくのはなかなか難しいと思います。そういったものを作成する支援をしたり、あるいは外国人向けの展示会を開催したり、そういう積極的な、また具体的な海外市場向け、外国人向けの戦略を展開していくべきだと考えますけれども、この点いかがでしょうか。

松田副大臣 伝統的工芸品につきまして、国内需要のみならず、海外需要を積極的に開拓するための手だてを講じていくべきだ、全く同じ認識を持っております。

 こうした認識のもと、今回の法改正によりまして創設いたしました活性化計画におきましては、産地の事業者等が海外需要の開拓のために、今おっしゃいました、外国語のパンフレットあるいはビデオ等の作成をしたり海外での展示会を開催することも支援の対象としております。

 その他、産地の組合が振興計画等に基づきまして、あるいはまた産地プロデューサーが支援計画に基づいてこれらの取り組みを行うことも支援の対象となっております。

 また、伝統的工芸品産業振興協会におきましても、これまでに伝統的工芸品を紹介する外国語版のビデオやパンフレットを作成いたしまして、先ほどもありましたが、これをジェトロを通じて海外に紹介するなどの事業を既に実施してきておるところでございます。

 今後とも、先生御指摘のとおり、海外における伝統的工芸品の需要の一層の拡大に向けてさらなる努力を積み重ねていきたいと思っております。

達増委員 この法律改正案は予算関連ということですので、若干予算関連の質問もさせていただきます。

 まず、全国伝統的工芸品センターの移転についてであります。

 この移転に伴いまして年額二億円の賃料を払っていくことになるわけであります。伝統的工芸品産業振興の予算全体が約十億円であるうちのその二割をこのセンターの賃料が占めるわけでありますけれども、それに見合う効果があるのかどうか、政府に考えを伺います。

岡本政府参考人 協会は、今現在は南青山にセンターを持っておりますけれども、南青山のセンターにつきましては、駐車場がないために団体での集客を見込むのが難しいという事情がございます。また、公共交通機関のアクセスも必ずしもよくないという面もございまして、いろいろな方面からの集客を見込む上での難しさがございました。それから、何よりもスペースが狭くて、我が国の伝統的工芸品をアピールするに十分な展示内容というのを実現するのが難しい、そういった問題を抱えておりました。

 他方、今回移転を予定しております池袋の東武美術館の跡でございますが、すぐ近所に大型車の駐車スペースがあって、バスを含む団体での集客が十分期待できますし、ターミナル駅に隣接し、今現在美術館はつながっておりませんが、今度は、センターにする場合にはデパートともお客様の、人の流れが自由にできるようにしようと考えております。それからスペースの面でも格段に広くなるということ、以上のようなことをあわせますと、私ども、入場者の数の面、あるいは売り上げの面でも現在に比べて倍増するものということで、賃料に見合う十分な効果はあるのではないかというふうに考えている次第でございます。

達増委員 次に、平成十三年度新規事業として伝統的工芸品産地調査・診断事業というものが盛り込まれています。調査・診断というのですけれども、これは何を調査・診断し、どのようにその産業振興に役立てていくものなんでしょうか。

岡本政府参考人 十三年度の予算で計画しております産地の調査・診断事業でございますが、対象としましては、まず初年度に二十産地程度をめどにしまして、中小企業の診断士でありますとか経営のコンサルタントでありますとか、そういった専門の方々に、それぞれの産地、あるいはそこを構成する各企業の強みとか弱みというものを個別に診断していただいて、産地の新しい製品の開拓とかあるいは販路の開拓というような面でどういうところに重点を置いた取り組みを行ったらいいかということについての処方せんを示していただくということを期待しているものでございます。

 その成果は、当然ながら、産地全体の振興計画、あるいは個々の産地を構成する企業の前を向いた取り組みを具体的に立案するに当たっての貴重なデータとして提供していただけるものというふうに私ども考えている次第でございます。

達増委員 この事業、一億二千五百万円という伝統的工芸品産業振興の中ではやはり大き目の予算がついておりますので、効果的にやっていただきたいと思います。

 もう一つの新規事業、これは日本新生特別枠でもある目玉の事業なんでありましょうけれども、児童・生徒に対する教育事業というものが盛り込まれています。小中学校等に伝統工芸士など職人さんを派遣して、児童生徒に体験をしてもらったりいろいろ説明をしてもらったり、そういう内容なんですけれども、これも一億五千万円というかなり大きな予算であります。

 目的として各産地の後継者の確保ということがうたわれておりますけれども、せっかくこのくらいの予算を割くのであれば、後継者の確保ということを中心にしつつも、さらに町づくりですとか観光振興とか、そういったこととも連携をさせて、広く地域住民全体で伝統的工芸品産業を盛り上げていくような体制づくりにつなげていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。

岡本政府参考人 御指摘の児童・生徒に対する伝統的工芸品教育事業ということで、来年度一億五千万円を予定いたしているところでございます。

 そのそもそもの中心的なねらいは、児童生徒の方々に伝統的工芸品というものを実際に体験しながらよく知ってもらって、後継者の育成というところに主眼はあるわけでございますが、今先生がおっしゃいましたように、あわせて、それぞれの地元での伝統工芸品のよさ、どういう方々がどういう苦労をしながら物をつくってそれの供給をされているか、そういった一連の作業を体験する、つぶさに見るということを通じて、児童生徒の方々にその価値、よさを十分に理解していただく、そういううねりがそれぞれの産地に広まっていくということの意義も非常に大きいものがあると思っておりまして、そういう趣旨もあわせにらみながら、この事業を私どもも精力的に進めていきたいと考えているところでございます。

達増委員 伝統工芸品、その売る場所もあるいはつくる場所も昔からの商店街の中にあるケースがございますので、中心市街地活性化といった町づくりともぜひ関連させてやっていただきたいと思います。

 平成十三年度予算では振興協会予算が倍以上にふえるわけでありまして、三億円から約八億五百万円にふえる。その結果、伝統的工芸品産業振興予算も約五億円から十億円と倍になるわけでありますので、ぜひそれにふさわしい行政、取り組みを期待して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 塩川鉄也君。

塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 今回の伝統的工芸品産業振興法改正に当たりまして、我が党は党内に伝統的工芸品産業振興対策委員会を置きまして、穀田恵二議員を責任者に、私が事務局長で、全国の産地の関係者の方との懇談や調査を行ってまいりました。そういう中身を踏まえて質問をさせていただきます。

 最初に、前回の法改正、九二年の法改正についてですけれども、この九二年の法改正で実施された制度は、残念ながら十分に生かされていなかったのではないかと思うんです。九年間取り組んできて、活用計画が一件、また共同振興計画は六件、こういう状況にとどまり、十分な見るべき成果がなかった状況だと思います。

 なぜこのような失敗に終わったのか、この点についてお伺いしたいと思います。

松田副大臣 平成四年の法改正、なぜその活用が低調であったのか、うまく機能をしなかったのかという御質問でございます。

 平成四年の法改正では、先生今お話しになりましたように、共同振興計画や活用計画等の計画を追加いたしたわけでございますが、これらの計画スキームの利用が非常に低調であった、こういうわけでございます。

 これは、いろいろあるかとも存じますが、平成四年当時に想定しておりました経済環境がその後大きく変化したことによりまして、簡単に申せば、つくっていただいたこの制度と産地の実態が乖離し、産地の事業者にとって必ずしも利用しやすい制度ではなくなってしまったということかと存じます。

 具体的に申しますと、バブル崩壊以降、産地問屋を初めといたします既存の流通経路がその役割、機能を低下させまして、流通構造が大きく変化する中で、産地側で当初共同振興計画が想定しておりました販売協同組合等よりも、むしろ百貨店等の個別の販売事業者と計画を作成、実施するニーズが増加してきていることであります。

 また、長引く経済不況の中で、当初活用計画が、新しく会社をつくったり、あるいはまた新しい研究施設を導入したりといったようなことで、新商品の開発のためにかなりの投資を行うというようなことを想定しておったわけでありますが、そういう事業者が経済不況の変化の中でなかなかできにくくなったといったようなことなどが、これら計画スキームの利用が低調であった理由ではないかと考えております。

塩川(鉄)委員 最初に申し上げておけばよろしかったんですが、質問に当たりましては、細目については政府参考人にお聞きする機会もありますけれども、基本は大臣の方にお答えいただきたいということで、委員長も御配慮のほど、よろしくお願いいたします。

 今のお話にもありましたけれども、法改正そのものがバブルに踊っていたそういう中身だった、この点でも、いわば当時のバブルの状況の中で産地の実情にかみ合わないような方向が出されていた、そういう意味でも、規模が大きく産地の実態に合わなかったところにあると考えます。産地の力を強めるやり方ではなかったということになると思います。

 その際、産地の足腰を強める取り組みが必要で、今回の改正を実施していく上でも、一部の活力ある事業者やグループへの重点的な支援だけではなく、指定産地全体の振興に国が責任を負う、こういう立場を明確にして施策を行うべきだと思いますが、改めて、大臣、いかがでしょうか。

平沼国務大臣 確かにバブルの崩壊等もありました。そういう形で、なかなか日本の経済というものが安定的な回復基調に乗らなかった、こういうことが伝統産品に関しても大変厳しい状況、こういうものを現出していた、このように認識しております。

 そういう意味で、今御指摘のように、伝統工芸品に対しては、それぞれの特色を生かすような形で伸ばすところは伸ばし、そしていろいろな施策を通じて、売り上げ等が伸びるような措置をやはり講じていかなければならないことは言うまでもないことでありまして、御指摘の点に関しましても、私どもとしては、今回の法改正を通じても、そういう環境整備をすることと同時に、総合的にはやはりこの景気を回復させて、そして全体的な経済状況をよくしていくこと、こういうことが必要だと思います。

 そういう意味で、今御承知のように、GDPの六〇%を占めている個人消費というものがなかなか火がつかないような状況であります。そういう中で、やはりマクロで見ますと、経済構造改革を進めたり、あるいはいろいろ、中小企業に対してもIT化、そういうようなことのインセンティブを与えながらやはり景気回復をやっていくということが、この伝統産業に対しても大きな経済的な効果があらわれるし、またそれが伸びていくことにもつながっていく、こういうふうに私は思っておりますので、そういう方面で、御指摘の点も踏まえて一生懸命やっていきたい、このように思っています。

塩川(鉄)委員 運用上の問題点について、幾つかお聞きしたいと思います。

 産地からの声として、振興計画の作成の実務が大きな負担という意見をお聞きしました。埼玉県春日部の桐だんすの産地でも、組合といってもみんな職人だから、計画の書類を作成して出すこと自身が困難だ、専門に携わる事務職員がいないとできないが、計画づくりのために事務職員を置くことは大変だ、このように述べておられますし、埼玉県からの予算編成に対する制度提案要望の中でも、振興計画の作成には膨大な時間と労力が必要であり、振興計画作成の事務手続にそれらを割く余力のない産地組合等では、振興計画を作成できずに、国の伝統的工芸品指定を受けながら国の支援を受けられない現状にあると指摘をしております。

 このような実態に即して改善すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

岡本政府参考人 振興計画の作成に当たって、先生御指摘のように大変膨大な事務量を要するという点があったことは御指摘のとおりでございます。そういった点を改めるために、昨年三月の地方分権一括法制定の機会に思い切った簡素化を図りまして、振興計画の作成に当たりまして、本文は、従前は二十八ページを二十五ページに縮めたぐらいなんですけれども、様式の面で、従来百四ページも要求していたものを十六ページに思い切って簡素化いたしました。それにとどまりませず、今回の法律改正を契機にして、さらなる事務手続の簡素化ということに向けて、私ども、鋭意準備を進めているところでございます。

塩川(鉄)委員 ぜひともそのような簡素化の努力に引き続き努めていただきたいと思います。

 それから、やはり埼玉県からの要望で、産地指定の希望がありながら、産地規模に係る基準を満たせないために伝統的工芸品の指定を受けられず、国からの支援を受けられない産地組合があるということです。この点での規模要件の緩和について、ぜひ図ることができないかお伺いしたいと思います。

岡本政府参考人 現在の産地指定の要件、十企業以上、従事者三十人以上という基準でございますが、これは、立法当初における国会での御議論でも、やはり、地場産業としての集積の最低規模として、十企業なり、あるいは従事者三十人以上というのは一つのメルクマールだろうという御議論があって、そういった経緯も踏まえて、今の指定の基準というのを私ども用意しているところでございます。

 それで、この点は午前中も御説明させていただきましたが、この基準は満たす、しかれどもまだ産地指定の準備が十分できていないということで、百九十四に加えて、予備軍として今待機し、あるいは準備をされているところが二百余にわたってあるという状況でございます。したがって、この今の基準をさらに下げて、伝産法の施策の直接対象ということでそこまで持っていくということは難しい面があるということについて御理解をいただけたらと思います。

 それを下回ります規模の産地について、都道府県でいろいろ施策を講じていらっしゃるというところがあろうかと思いますし、それから、伝産協会がいろいろやっている事業の中で、功労者の褒賞制度でありますとか、あるいは工芸に携わっている方々をいろいろ顕彰する、そういうところでは、実は小規模な産地の方々も同様に対象にして、今私ども事業を進めているところでございます。

塩川(鉄)委員 この法制定時の質疑の中でも、十企業三十人というのは目安であって、機械的に当てはめるものではない、柔軟に対応するというお話がありました。そういう趣旨で、実態に対応して取り組みをされるということでよろしいんでしょうか。一言。

岡本政府参考人 私ども法律の運用に当たります立場で、一つの目安となります指定の要件ということで、ある種定量的な要件というのも必要かと思いますので、先ほど来御答弁申し上げましたような基準を定めている次第でございます。

 実際の指定に当たりましては、大臣の諮問機関の審議会の意見を聞いてやっていくということになっておりまして、審議会にも十分お諮りをしながら、私ども、法律の趣旨を十分に生かせるよう、法律の運用に努めてまいりたいと考えております。

塩川(鉄)委員 兵庫県の調査の中で、丹波立杭焼という伝統的工芸品がございますが、この産地から産地の名称の変更についての要望が出されておりました。指定の名称では丹波立杭焼になっているけれども、関西では知名度はあっても関東へ行くと知名度がない、丹波焼にしたい、このように要望したけれども、次の法改正のときくらいでないとできないというお話を聞いた、何とかしてもらえないか、こういう御意見でした。

 この点は法の運用上の問題でもあるかと思うのですが、それで可能ではないかと思うのですけれども、すぐの対応ができないのか、お伺いしたいと思います。

岡本政府参考人 指定を受けた伝統工芸品の名称の変更については、これまで産地において使われてきました名称や、紛らわしい他の工芸品の存否等をまず勘案し、そして何よりも産地の事業者の方々の総意というものを十分に確認した上で、私ども個別のケースごとにしっかりと判断をさせていただく、そういう姿勢で臨んでまいりたいと思います。一概に変更ができないということを申し上げるわけではありませんが、今言ったような事情を個別のケースに即して見させていただいた上で適切に判断させていただきたいと考えております。

塩川(鉄)委員 運用上の問題で、大臣にぜひ一言お答えいただきたいと思うのですが、特に名称変更の問題については、今の答弁にもありましたように、産地の方の総意があればそれを生かして名称変更も可能だ、そういう方向でぜひ検討いただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。

平沼国務大臣 今局長から御答弁したような前提がありますけれども、産地の皆様方の総意という形で私どもの方にそういう意思が伝わったら、私どもとしては検討させていただく、こういうことに相なると思います。

塩川(鉄)委員 次に、伝統工芸士への支援策ということでお伺いしたいと思います。

 今、全国四千五百人余りの伝統工芸士の方がいらっしゃり、大変な熟練のわざをお持ちで、それを生かしての活動に多くの方が誇りを持って受けとめていらっしゃることだと思います。ただ、せっかく伝統工芸士として認められても、残念ながら名誉職のような形にとどまって、十分なメリットがないという声をお伺いします。群馬県伊勢崎の織物協同組合でもこういう声がございました。

 地元の小学五年生が課外授業の一環で産地の取り組みを教えてほしいとやってくる。全国からの問い合わせも大変多い。後で、こういう形でまとめましたという報告集を送ってくれるところもあり、大変うれしい反面、その対応が結構大変だというお話でした。埼玉の春日部でも、子供たちが見学に来るのはうれしいが、実際にそれに時間もとられるばかりだ、伝統工芸士になってもメリットがないという声があるというふうにお聞きしました。

 さらに、こういうような伝統工芸産業の実情の中で、収入も限られ、暮らしていけない現状もある。そういう生計の成り立つ道を切り開くことも必要だと考えています。

 現状の伝統工芸士にはどのような特典があるのかを確認しておきたいのです。お伺いします。

岡本政府参考人 伝統工芸士は、伝統工芸の事業に携わる人たちの中で長年にわたって経験を持っているということで、工芸士会の判断を経て協会が認定しているわけですけれども、率直に申し上げまして、制度的に、例えば一定の報酬をお支払いするとか、そういうことを含めた特典というのはございませんで、この世界で大変な技能、経験を持っていらっしゃる、そういう高い認知というものを工芸士の資格を与えることによって、その方々に、後継者の育成でありますとか、あるいはそれぞれの産地の工芸品のPRでありますとか、そういう点に御活躍をいただくということを期待しての制度でございます。

塩川(鉄)委員 伝統工芸士の方が、その認定を受けることによって、みずからの技量を認めてもらったということを誇りとしているということは、大変皆さんからのお声としてもお聞きするわけです。それにとどまらず、やはり社会的、経済的にその地位の保障されるような仕組みが必要ではないかということを感じるわけです。

 我が党の金子満広前衆議院議員が、かつて質問の中で取り上げて、この伝統工芸士が五年を期限として更新をしなければいけない、わざは五年で落ちるものじゃないのになぜこんなことなのかということをただして、五年ごとの更新をなくして終身になったといういきさつもあります。それ自身は本当に、わざを尊重するという立場での取り組みだったというふうに思うわけです。この点で、工芸士の方にも大変喜ばれたというふうにお聞きしております。

 しかしながら、現状は伝統工芸士の方の資格が十分に社会的に生かされていないのではないかというふうに思うのです。

 例えば、国指定となっていないある産地でのお話では、うちは重要無形文化財に指定をされているので、いわばその名前の方が使えるので、伝統的工芸品や伝統工芸士は要らない、こういうような声もあるそうです。

 その上で、ほかのいろいろな制度に学ぶことが必要ではないかということでお伺いしたいのですが、例えば重要無形文化財の保持者の方、いわゆる人間国宝の方や、厚生労働大臣による卓越した技能者の表彰制度、いわゆる現代の名工、このような芸術性や巧みな個人の技量を評価する制度があります。

 現代の名工では十万円の褒賞金が授与されるそうですし、重要無形文化財の保持者、いわゆる人間国宝の方には重要無形文化財保存特別助成金として年額二百万円が交付されるそうです。

 その一方、伝統工芸士の方は、先ほどの話のように、そういう形での特典がない。それどころか、伝統工芸士の資格を取る受験の際に受験料も取られますし、登録料などの手数料もかかるわけです。

 現代の名工及び人間国宝の制度に学んで、やはりこの伝統工芸士の方に褒賞金または助成金を支給する、こういう取り組みも必要ではないかと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。

松田副大臣 大変考えさせられる御質問をいただいたのですが、先生御案内のように、この文化財保護法に基づきます重要無形文化財保持者とか、あるいは今お話がありました卓越した技能者、これは全くそれぞれの個人に着目してできている制度でございます。

 御案内のように、この伝統的工芸品産業振興法の体系では、産地として、産業として伝統的工芸品を振興していこうという立て方になっておりまして、そういう意味では非常に間接的なのですけれども、伝統工芸士について、経済産業大臣が認定するというような制度ではなくて、財団法人伝統的工芸品産業振興協会が、伝統的な技術または技法に熟練した従事者ということで認定を与えている、こういう制度にまだ現在なっておるわけでございます。

 個々の伝統工芸士の技術あるいは技能あるいはわざ、そういったものをさらにどう高めていくかという観点からできている制度ではなくて、産業を振興するという建前に立っておりまして、そういう意味で伝統工芸士という資格制度を設けておるわけでございますけれども、いわゆる今おっしゃった個人の重要無形文化財とか卓越した技能者という制度とはちょっと違っているわけでございます。

 そういう意味で、今おっしゃったように、個人として、こういう重要無形文化財保持者に対するものとか、あるいは今おっしゃった技能者、現代の名工といった方々に比べますと、今褒賞金というお話も出ましたけれども、そういう手だてになっていない。

 しかし、将来の問題として、せっかくの御指摘でございます、今の法律の建前の中で産業としての振興を図っていく、その一環として伝統工芸士という制度が設けられ、この方々によってつくられている財団で認定していく仕組みの中でどこまで対応していけるかというようなことも含めまして、さらに検討してみたいと存じます。

塩川(鉄)委員 産業振興を図る上でも、特に伝統的工芸品をめぐってはまさに人そのものが一番の財産でもありますので、これを激励するような制度として大いに生かしていただきたいというふうに思います。その上で、少なくともこの手数料負担、これの軽減を図ることができないか、一言お伺いしたいと思います。

岡本政府参考人 伝統工芸士の最初の登録に先立って試験をして、その受験料とそれから登録料ということで合わせますと、受験料で七千円、登録料で一万円というのを今いただいているところでございます。従前、再交付というのがありまして、五年で切れて再交付というのを、先ほど先生の御指摘のように今はそれをやめております。

 それで、今の御指摘は、七千円プラス一万円というレベルについての割高感ということかと思いますけれども、類似のこの種の認定なり登録というものの制度における手数料と申しますか、そういうものに比べて伝統工芸士の場合に不当に高いというようなことには現状なっていない。今、いただいた手数料は、工芸士会の方でお互いの啓発をやるというようなことを中心とした事業に充てるということで使われているものでございまして、その辺の趣旨を御理解いただけたらというふうに考えます。

塩川(鉄)委員 先ほどの現代の名工と人間国宝の二つの制度に共通していることは、わざの向上を図る、こういう側面とともに、後継者育成の観点を目的としてうたっております。

 現代の名工では、技能者の地位向上及び技能水準の向上を図るとともに、青少年がその適性に応じ誇りと希望を持って技能労働者となり、その職業に精進する機運を高める、このことを目的としております。

 また、人間国宝の方への年額二百万円の特別助成金というのは、わざの錬磨向上、この側面とともに伝承者の養成、つまり後継者育成を目的として交付されております。

 伝統工芸士については、もちろんわざの向上、この面は当然強調されるわけですが、後継者養成の観点をより明確に位置づけるべきではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。

松田副大臣 先ほどの御質問とも関連するかと思うのでございますが、御案内のように、伝統工芸士は日本伝統工芸士会を構成いたします各産地の伝統工芸士会に所属することとなっておりまして、それぞれの伝統工芸士会では、その会則におきまして、後継者の確保と育成に関する事業を事業としてやっております。

 先ほどおっしゃいました人間国宝とかあるいは現代の名工は、個人としてのそれぞれのわざと申しますか、価値と申しますか、そういうものに着目した制度でございますから、今おっしゃいましたように、まさにそのことずばりその後継ということになっているわけでございます。

 私どもの方は、先ほど来から申しておりますように、産地として、産業としてということでございますから、今申しました後継者の確保とか育成、まことに大事な問題でございますが、産業として、産地としてどう対応するかということで、こうして御審議いただいておりますこの法律の体系の中でも、例えば振興計画に基づく後継者の確保、育成あるいは従事者の研修といったものに対しましても補助をいたしましてそれぞれやっていただいておりますし、また、従来からあります支援計画に基づきまして伝産人材育成センター、幾つかつくられておりますけれども、いわゆる伝産カレッジと申しておりますが、これに対しても助成をしながら後継者育成に当たっていただいております。

 また、今次お願いしております法改正では、新しく変わります活性化計画、連携活性化計画のメニューの中に従事者の研修というものを加えまして、産地独自の後継者育成ということで支援策を拡充しておるところでございます。

 その他ありますけれども、簡単に要約させていただければ、産業として、産地として後継者育成をしっかりやっていくという体制になっておる、そういう中でしっかりやらせていただきたい、こういう考え方に立っておるということでございます。

塩川(鉄)委員 今回のもともとの法の条文の中の、「伝統的な技術又は技法に熟練した従事者の認定を行うこと。」という項目に沿って伝統工芸士が指定をされているわけです。それが協会の仕事だということでげたを預けるのではなくて、やはり政府として、この点がはっきりしているわけですから、この位置づけを鮮明にしていただきたいということなんです。

 ですから、もちろん産業として後継者育成を行うのは当然のことですけれども、伝統工芸士の資格、目的として、わざの向上に努めるということと一体のものであるわけですけれども、後継者の育成、こういう観点をはっきり目的にうたうことが必要じゃないか、このことが私の一番の問題意識でもあります。

 日本伝統工芸士会の会則の中でも、後継者の確保、育成については、幾つもある事業項目の一項目にすぎません。そういう意味でも、伝統工芸士の位置づけとして後継者養成の観点を明確にすべきではないかと思います。産地からの要望としても、技術保存指導者として委嘱をして技術研究費を支給したい、伝統工芸士の方にこのぐらいの対応が必要じゃないかという声も出ているそうです。

 こういう要望にこたえる何らかの施策、後継者養成の観点での伝統工芸士の位置づけについて、検討、研究していただきたいと思うんですが、大臣、一言お願いいたします。

平沼国務大臣 今、松田副大臣からお答えしたのが基本だと私は思っております。やはりこういう伝統的な技能、技術、こういうものを後世に伝えるということは非常に大切なことだと思っております。それはあくまでも産業の中でやっていただくということが建前でございますけれども、地方からもそういう声がある、こういうようなことも今のお話でわかりました。

 ですから、そういう形で、我々としても、あくまでも基本は産業の中で後継者を育成する、こういうことが筋でございますけれども、今の御指摘の点、よく検討させていただきたい、このように思います。

塩川(鉄)委員 次に、地方自治体の支援策ということでお伺いしたいと思っております。

 産地からは、国にぜひ取り組みを強めてもらいたいという要望とあわせて、身近な県や市に何とかしてもらいたい、こういう声が上がっております。

 私の地元の埼玉の、和紙のふるさととして知られる小川町、ここでは町独自で埼玉伝統工芸会館というのを運営しております。建物の建設費には県の助成を受けながらも、運営、管理、ランニングコストはすべて町財政で負担をしているそうです。

 展示コーナーには、もちろん地元の小川の和紙も紹介はされておりますけれども、埼玉県が指定しているすべての伝統的手工芸品が町の施設に展示をされて、それに多くの方が見学にいらっしゃる、また、学校の遠足などでも見学に訪れるということで、地域においても大いに活用されております。また、実演コーナーでは、実際に技術を持った方に来ていただいての講習会などを行っているそうです。地元の手すき和紙の実演ではなくて、手づくりのブラシですとか、こういったものも含めたさまざまな工芸品の実演も行われております。

 こういうような自治体での大いに学ぶべき積極的な取り組みについて、財政的支援など何らかこれを大いに励ますような施策がとれないか、そういう地方自治体の政策を応援する取り組みがないのか、ぜひともお伺いしたいと思います。

平沼国務大臣 伝統的工芸品産業の振興に取り組む例を今お出しになられましたけれども、地方自治体、そういうものを具体的に支援できないかどうか、やるべきではないか、こういうお話だったと思います。

 国といたしましては、伝産法のもとで指定された伝統的工芸品については、産地が作成する計画に基づきまして、地方自治体と共同して産地に対して支援を行ってきたところでございます。今後も、追加指定の申し出があれば、指定要件に照らして逐次産地指定の追加、そういうこともやっていきたいと思っております。

 我々といたしましては、やはりこうした国による施策と各地方自治体によるきめ細かな施策が相まって伝統的工芸品産業の発展につながる、このことが大事だと思っておりまして、それは、地方自治体と密接な連携を持ちまして、国がやるべきことはちゃんとやらせていただき、そして、今お話がございましたように、地方でそういうことで積極的に取り組んでいる、そういうこととタイアップをしながら全体の発展に協力をしていきたい、このように思います。

塩川(鉄)委員 こういう積極的な自治体がある一方で、残念ながら、苦しい財政事情から産地の取り組みに対応できない自治体も生まれているということです。二分の一の都道府県の負担が大きいために、ある東北地方の産地からは、県に補助金の申請をすると、今後も続けるのかと、暗にやめてくれないかという感じで言われるという声も上がっております。

 この点で、国による財政支援をより拡大する、補助率の引き上げなどこの点での積極的な支援の取り組みができないだろうか、その点お伺いしたいと思います。

岡本政府参考人 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、国の施策と自治体の取り組み、相まって伝統的工芸品産業の振興を図っていくというのが基本かと思います。

 それで、補助率の点でございますが、やはりそれぞれの地場産業として大きな位置づけを持っている、同時に、国全体の立場からも、日本の伝統的な技術、技能をベースにした産業ということで私どもやってまいるわけですが、同額を国と地元市町村が折半しながら事業者の方々の取り組みを支援していくという今の基本的な枠組みは、変更するのはなかなか難しいというふうに考えております。

塩川(鉄)委員 少なくとも、こういう積極的な地方自治体の施策に全国の他の自治体が大いに学んでいく、こういう機会を広げていくことも必要だと思うんです。そういう意味でも、伝統的工芸品産業への地方自治体の積極的な取り組みを全国的に普及する活動の強化も図るべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

岡本政府参考人 私どもも、伝統的工芸品の産地あるいは工芸品産業を抱えていらっしゃるそれぞれの自治体で可能な限りの支援なり取り組みが行われることを期待するものでございます。

 したがいまして、今先生御指摘のように、先進的な取り組みの事例があれば、他の自治体あるいは他の伝統的工芸品の産地、そういったところにも紹介を申し上げながら、そういった伝統的工芸品産業を大きく育てていこうという取り組みが、政府はもとよりでございますが、各地方自治体を通じて盛り上がっていくという方向に向けて引き続き努力をしてまいりたいと考えております。

塩川(鉄)委員 輸入の問題ですけれども、少なくない産地で外国からの輸入品により販売が落ち込んでいることが指摘をされております。その点でも、輸入の現状を正確に把握することが必要だと思います。

 例えば、ことしに入ってから、仏壇については、これは木工品の項目の大くくりに入っていたものを、別個、いわゆる枝番という形で仏壇として統計上集約をするということになったそうであります。

 このように、例えば漆器などについても、輸入の影響が大きいというふうに産地の方はおっしゃいますが、輸入の状況が必ずしもリアルにわからない、こういう状況についても、実態に対応した正確な把握をするように努めていただきたいということ、またあわせて、原産地表示を徹底すべきではないか、この問題についてぜひともお伺いしたいと思います。

中山副大臣 輸入統計品目の見直しにつきましては、例年、財務省関税局におきまして、過去三年間の実績が毎年十億円以上のもののうち、定義が明確にできるものを対象として行ってまいります。

 このような中、仏壇につきましては、昨年、当時の通商産業省から大蔵省関税局に輸入統計品目表に追加するよう要望を行い、本年一月からの統計に追加されたところでございます。

 経済産業省といたしましても、今後とも、伝産品に競合する品目も含め、輸入状況の把握の必要なものに関し、業界の要望等も踏まえつつ、品目の追加等を財務省関税局と相談してまいる所存であります。

 また、原産地表示につきまして、これを義務づけることは、御承知のように、WTO協定上、消費者保護等の必要性を考慮しつつも、輸出国の商業、産業にもたらす困難及び不便を必要最小限のものにしなければならないという厳密な要件を満たすことが前提条件となっております。また、WTO協定上、国産品につきましても同等の表示を求めることが前提条件になるということから、国内の事業者に対しても新たな負担が生ずる上、製造事業者だけでなく、卸、小売業も含めた合意形成が求められている、このように考えておるところでございます。

塩川(鉄)委員 このような伝統的工芸品産業の将来をはかる上でも、さまざまな要因はありながらも、今の深刻な消費不況を打開するということが何よりだと思います。どこの産地でも、長引く不況で消費が落ちた。国への一番の要望は、景気をよくすることだ。懐が豊かになって、着物でも買おうかというゆとりができないと物が売れない。これが一番の声だと思うんです。その点でも、今の政府の経済政策の誤りが問われると思います。リストラ支援という形で個人消費を冷え込ませるやり方ではなくて、個人消費の拡大につながる経済政策への転換を図るべきだと思います。

 あわせて、運営に当たりまして、私は大臣を希望しておりましたけれども、何度か副大臣の答弁をいただきました。委員長に、ぜひその点の運営について今後の御配慮をお願いして、質問を終わります。

山本委員長 大島令子君。

大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。

 伝統的工芸品産業の振興に関する法律の一部を改正する法律案について質問を行います。以下、この法律名を伝産法と表現させていただきます。

 まず、平沼大臣に質問をさせていただきます。

 私は、先般、地元の産地組合や事務を行っております瀬戸市の担当者の方に、今改正案について伺ってまいりました。その結果、多くの御意見を拝聴いたしました。私の印象では、改正案の中身、例えばレストランでいえば、メニューは豊富になって非常によい、しかし、なかなか迷ってしまって注文しづらいという印象でございました。メニューは多岐にわたっていてよいが注文することにちゅうちょする、つまり、今回の改正案は全体的に、担当者もよくできている、現場の声を反映しているという印象を受けるということです。

 しかし、一方で、この制度を一〇〇%使い切る自治体や産地は少ないだろうということです。なぜ使えないのか。これを考えれば、補助金事業の仕組みに問題があるからということでございます。法案の内容のよしあし以前に、補助金を得るために自治体の側に予算が必要なところに活性化を阻む原因もあるそうです。この件に関しまして、まず大臣の御見解を伺います。

平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。

 まず、御指摘の、今回の法改正によって支援メニューが多くなって産地はどのメニューを使ってよいかわからないのではないか、こういうような御意見があったということでございます。

 今回の法改正においては、例えば、若手事業者のグループによる意欲的な取り組みへの支援を求めている産地や、産地間連携による取り組みへの支援を求めている産地など、産地ごとに多種多様な実態がある中で、可能な限り多くの意欲的な取り組みを支援の対象とすることができるよう、そういう考え方で必要な支援メニューを整備いたしたところでございます。

 したがいまして、基本的には産地ごとにその実態に応じて、支援メニューの中からその産地によってより効果的なものを選択、そして実施していただくことになるわけでありますけれども、どのメニューを利用していくことが効果的であるかにつき、そういう形で皆さん方がちょっと戸惑っておられる、こういうことで御指摘がございました。そこで、今回新たに創設をいたします産地調査あるいは診断事業等を活用しつつ、適切に産地に対して助言をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

 また、補助金のことについてもお答えをさせていただきたいと思うんですけれども、今回の法改正により創設することといたしております活性化計画や連携活性化計画については、これらの計画に基づく取り組みが十分な効果を発揮するように、一計画当たり約四百万円をめどとしているものの、その具体的な運用につきましては、金額を含めて各計画を実施する組合や事業者にとって最も事業の実施の効果があらわれるように十分に配慮をしていきたい、このように思っております。

大島(令)委員 ありがとうございました。

 それでは、政府参考人の岡本局長に質問をさせていただきます。

 地方分権による権限移譲から見た問題点について、以下質問いたします。

 私の地元の赤津焼は、平成十二年四月から、愛知県から瀬戸市に権限が移譲されました。地方分権の名のもとに権限移譲がなされたのでございますけれども、国から見れば県も市も同じ地方自治体の範疇に入るというお考えでしょうけれども、移譲される市への負担増については全く支援措置がないように私は思います。言いかえれば、今まで例えば二つの地域にまたがっている場合は県、そして一地域だけですと今度市町村にその事務と補助金の裏負担が回ってくるわけでございますけれども、県にとっては負担が減る、しかし末端の地方自治体にとっては新たな事務と財政の負担がふえるわけです。

 例えば、事務量の増加に関しましては、これは瀬戸市が赤津焼工業協同組合の実施する事業の窓口となるため、国への申請事務などさまざまな事務がふえるということになります。先ほど来の御答弁から、百六十何ページあったものが十数ページに簡略されたということでございますが、瀬戸市にとってはこの事務は初めての事務でございます。財政負担の増加、これにつきましても、国が二分の一、地方が二分の一、地方といいましても、財政力のある県や財政力のない市町村、それぞれあります。ですから、この結果、次の問題が生じてまいります。

 地方自治体も行財政改革ということで非常に職員体制、スリム化を進めております。こういう中で事務量がふえる。しかし、移譲された自治体としてはその事務を確実にやりこなさねばならない、対応しなければならないという現実が待っているわけでございます。財政負担については、地方財政が悪化している中で、市は新たな予算措置を迫られます。予算措置が非常に困難な状況の場合は、事業者が望んでも申請ができない場合もあります。特に、法改正の来年度におきましては、地方自治体は三月に平成十三年度の当初予算を組みますので、六月または九月議会に補正予算という形で審議になりますが、議会に対しての説得力が非常に必要になる。そして、年度途中のため実施期間が縮小されます。そうすると、期待されるような十分な内容が実施できるか心配だという声がございます。

 以上の問題点につきまして、この法案が通った後、国は地方自治体に対して、より円滑にこの改正法を執行するため、どのような支援策を講じられるのか伺いたいと思います。

 もう一点は、権限移譲に伴う国と地方自治体、この場合は市町村と申し上げますが、私は、新たな提案として、負担割合に変動制を考えていただけないかということを提案したいと思います。

 この二点について御答弁をお願いいたします。

岡本政府参考人 振興計画の作成に当たっての煩雑さを解消する、緩和するということで、必要な書類なんかを大幅に減らすということは先ほど御答弁申し上げた次第でございます。

 それから、予算の、六月議会あるいは九月議会をにらんで地方公共団体が対応していただくということに関しまして、今回の一連の予算措置、特に産地の方々が希望されているのは、活性化の補助金をお使いになってのいろいろな取り組みを国と地方が一緒になって応援していくというその部分が中心かと思いますが、昨年末に十三年度の政府予算原案が決定されました後速やかに、関係の自治体に対しては、私ども、こういう予算ができましたということで御連絡を申し上げ、それから、今度の法律改正につきましても、審議会の答申なんかももちろん自治体にも回しておりますが、加えまして、閣議で法案を政府として提出することになりましたということで、これまた関係の自治体に御連絡申し上げる、そういう形を通じまして、自治体の方々が国の施策とタイアップして地元の取り組みを応援する、そういった準備を少しでも前倒しでできますように、情報の提供という点では意を用いているところでございます。

 それから、先生御指摘の二番目の、予算の負担割合についての変動制という点は、これは私ども、国と自治体が従来のような形で協力して産地の伝統工芸品産業の振興を応援していく、やはりそれが基本だと思いますので、この負担割合を変更するということについては難しい事情があるということで御理解を賜りたいと存じます。

大島(令)委員 そうしますと、今年度、県から市町村に権限移譲、事務移譲がなされた品目は何品目ございますか。

 それと、変動制が難しいという御答弁でございましたけれども、総務省は先般、日経新聞に載っていました、私も総務省から資料をいただきましたが、自治体の財政力によりまして地方債も弾力的に自治体が発行できるという方針を打ち出しております。

 産業の振興ということであるならば、自治体が窓口になって計画を県に上げるときに、やはり産業振興の面からいえば、もう少し、自治体の状況によって、財政力によって、国がそういう変動的な判断を、実施する中で持ってもよいのではないか、そのくらいの柔軟な対応をしてもよいのではないかと私は思います。いかがでしょうか。

岡本政府参考人 分権法の関係で移譲されましたのは、約二十件程度でございます。

 それから、地方と国との負担割合を変動させるという点でございますが、先生御案内のように、地場産業の振興を含めて、産業振興あるいは中小企業対策の関係で、各自治体は基準財政需要額というものを総務省の方に提出して、そういったものをベースにしながら交付税の配分というのが行われているということが地方自治体の財源全般についてあろうかと思います。

 したがいまして、各自治体の財政事情が近年特に厳しいということについては私どももよく存じ上げているところでございますが、国とてもやはり似たような状況にございますので、苦しい中にあっても、こういった大事な伝統的産業を振興していこうということに向けて国と自治体が相手を携えて、こもごも応分の負担をしながらやっていくということで今の補助の割合というのが設定されている次第でございまして、このスキームのもとに、とにかく一刻も早くそれぞれの地元の産業の再生、立ち上がりというものについて支援の手を差し伸べていくというのが何よりも肝要と思いますので、負担割合の変更の点については、困難な事情をぜひ御理解賜りたいと存じます。

大島(令)委員 私がしつこく変動制を導入してほしいと言いますのは、産地の協同組合がこういう事業をやりたいと申し出ましても、自治体の補助金、こういう裏負担がないとこの事業ができない、やはりそういう縛りがあるから申し上げるわけでございますので、ぜひその辺の趣旨は御理解いただきたいと思います。

 次の質問項目に入ります。全国伝統的工芸品センター事業について伺います。これは政府参考人の岡本局長でございます。

 先ほど達増委員も質問されましたが、現在、南青山で伝統工芸品の展示、普及、情報、資料収集事業を実施しているとのことでございますが、本年夏に、池袋にある東武美術館の一、二階を展示場、三階を事務所として移転する予定と聞いております。集客力のあるこの地への移転は望ましいと私の地元の瀬戸の陶磁器関係者もおっしゃっていました。しかし、スペースの賃貸料が約年間二億円となっております。費用対効果について絶えず検討すべきと私は考えます。先般、この地域にしてはこの賃料は、大島さん、そんなに高くないよという御意見も聞きましたが、しかし、全体の予算が十億円の中で二億円、割合からすると非常に多いわけなんですね。

 そういう意味から、まず、新しいセンターの人員体制がどのくらいになっているのか、そして、だれがどのように費用対効果を検討し、責任をとっていくのか、この辺を聞かせてください。

岡本政府参考人 池袋のセンターは、二億円の予算を予定しております。賃借料二億円ということで、月当たりの坪単価で申し上げますと約二万五千円ということになります。

 一方、今回比較対照しました他の物件の場合には月当たりの坪単価でおおむね四万円ということでございまして、その意味からかんがみまして、池袋のあの地でまとまった、それもデパートと連接したスペースということでかんがみました場合に、私ども、妥当な価格ではないかと考えております。この点はもちろん、役所が選ぶということじゃなくて、協会の方々が懸命に都内のいろいろなところを当たって、随分断られまして、やっと見つかったのが池袋というふうに報告を聞いております。

 それから、この賃料の関係が、伝産関係予算十億の中の二割を占めるという点は、先生御指摘のように、大変ウエートが高いのは事実でございます。

 他方で、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたが、今の青山が駐車場がないとか足回りが少し悪いということもあって、今度池袋に引っ越ししました場合には、集客数でもあるいは売り上げでも今の倍以上のものが見込めるというふうに協会の方々自身予測をしている次第でございます。

 それから、協会の運営でございますが、事務局は、専任事務局を抱えておりますが、十一人ということで、かなりスリムな組織でございます。協会の実際の運営に当たりましては、全国の主要な産地からそれぞれ人を出していただいて、案件ごとに委員会をつくって、いわばタスクフォースのような形で事業を取り進めるという部分が結構多うございまして、そういう形と事務局による作業と、そういうものをあわせて、協会の事業というものに遺漏なきを期してまいりたいと考えております。

大島(令)委員 答弁漏れだと思いますが、運営に関しまして、だれがどのように費用対効果を検討していくのか、責任体制についてお願いいたします。

岡本政府参考人 失礼いたしました。

 費用対効果という点につきましては、これは協会の中で、この引っ越しの件というのは、会長以下関係者がそれこそ英知を集めて、それから一生懸命足で都内のいろいろな物件を当たって選んだ次第でございまして、その上で、協会の中の主要なメンバー及び事務局が一緒になって作業した結果でございます。

大島(令)委員 事務局が十一人、面積が約六百六十坪の展示スペースの中で、事務局が三階にございまして、すごくスリムで、中身の実際の運営は産地、業界の方といいますと産地の方になると思うんですが、今そうでなくても組合の方々は本当に人手不足とか売り上げ不振とかで困っている中で、そんなに行政が関与、お手伝いしないで、独立独歩でいけというような印象を受けるわけなんですが、それでこういう事業が新たな場所に引っ越した中でやっていけるものなのか、その辺の見解を聞かせてください。

岡本政府参考人 協会の実際の事業運営に当たって、専任の事務局のスタッフのほかに、全国の主要な産地から案件ごとに人を集めて委員会方式でやっているということを申しましたが、業界の中の実際の作業としては、そういう形で、主要な事業については企画をし、あるいは実施のフォローをするという形で取り進めているところでございます。

 もちろん、伝産法に位置づけられている協会でございますので、私ども経済産業省の事務方としましても、協会の仕事については日々連絡をとり相談に乗るという形で、協会の事業運営の円滑化ということに懸命に支援をしてまいっているところでございます。

 今後とも、そういう姿勢で臨んでまいりたいと考えております。

大島(令)委員 それでは、本年度のイベントの企画は、昨年に比べて、新しいところでどのような計画がございますか。

岡本政府参考人 池袋の新しいフロアは夏にオープンをするということになっておりまして、協会として、国の予算を前提にしてやっております一連の後継者育成でありますとかあるいは工芸士の認定の事業でありますとか、そういったものは計画を立てております。八月ということで、そう先ではないんですけれども、そこを使って、イベント、それからそれとあわせての工芸品の即売というものが中心になっていこうかと思いますが、そういったものの具体的な計画は、これは二倍以上にフロアが広がるということもあって、今協会の方で準備の山場というか大詰めに差しかかっているところでございます。

大島(令)委員 では、次の質問でございます。これも岡本局長にお伺いいたします。

 まず、補助金に対する課税のあり方について提案いたします。

 補助金の性格からしまして、現行制度は事業所得となっております。事業所得ですから、総収入から必要経費を差し引いて残りが課税対象となります。全部帳簿上必要だと認められている経費になれば、補助金の収入イコール全部経費として支出されて、不用額がないわけですから、課税ということにはならないと思います。

 しかし、私は、本法案の改正理由は、苦境に立っている伝統産業の一層の振興を目的としているのであるならば、負担軽減のための例えば特別控除を設定するとか、もう最初から難しい会計帳簿をつけなくてもいいように、計画がしっかりしていれば極端な話、免税措置を講ずる、そういう大胆な発想も必要ではないかと考えております。

 例えば、先般衆議院で、水田農業経営確立助成補助金という法律が、衆議院では二月九日、参議院では二月十四日、そして二月二十日に公布、施行されました。これは、十二月の税調で、水田から畑に転作するときの補助金に関して、税調、税務当局が認めていただけないということで、議員立法として財務金融委員会の委員長提案ということで、緊急提案されました。確定申告に間に合うようになっているわけなんですが、これは一時所得なんですね。毎年出されるものが一時所得として計上されるということを、私は非常に疑問に思ったわけなんです。

 しかし、補助金であるならば、一時所得と見るのか、それとも事業所得と見るのか、もう全く免税にしてしまうのか、いろいろなかけ方があると思います。

 しかし、この法律の性格からして、毎年同じ組合がいろいろな計画を持って例えば補助金を申請していれば、一時所得ではないわけですから、事業所得として経費を引いたものに課税する。しかし、金額が、何千万という金額ではなく、例えば私が話を聞いた瀬戸染付焼の組合は、国と県からそれぞれ二十六万ずつ補助金をいただき、後継者の育成の事業をしている。わずか五十二万の補助金のために協同組合の方が経理事務をする。これを非常に疑問に思ったわけなんですね。金額が少ないということでこういう疑問を私は持ったわけなんです。

 今の私の提案に対して、局長はどのような考えをお持ちでしょうか。

岡本政府参考人 先生御案内のように、補助金を受け取った場合に、法人の場合であれば税法上益金として処理されるということになるわけですが、他方で、補助金を事業のために使うということで、先ほどの先生のお話ですと後継者の育成のために使うということで、そのために、例えば講師の謝金でありますとか、それからテキストのようなものを買うでありますとか、そういった費用の支出がありました場合には、これは当然損金ということで立つことになりますでしょうから、益金と損金が相殺されて課税の対象になる所得は残らない、あるいは残ったとしてもごくわずかであるというのが、多くの補助事業の実態ではないかと思います。

 そういう中で、一つのまとまった償却資産のようなもの、あるいは固定資産のようなものを取得するという場合に課税の問題というのがあろうかと思いますが、伝産品の産地の方々がおやりになっている事業というのは、先ほどの先生のお話にもありましたように、数十万とかあるいは百万、二百万といった、そういう規模の事業をおやりになっているケースが非常に多うございまして、少額の償却資産の場合には一括損金算入という税法上の制度もございます。

 したがいまして、実際のところ、課税の心配をしなきゃならないというケースはそう多くはないんじゃないかというふうに私は考えているところでございます。

大島(令)委員 そういう御答弁であるならば、補助金に対して課税するということではなく、免税措置を講じてもいいのではないかと私は思います。どうでしょうか。

岡本政府参考人 税のお話でございまして、この場で、私の立場で明確な答弁を申し上げるのは大変難しゅうございまして、委員会における先生の御指摘でございますので、機会を得まして、政府の中でも関係の方面にもお伝えをし、勉強をさせていただきたいと思います。

大島(令)委員 では、共同振興計画実施に当たっての問題点について、同じく岡本局長に質問をいたします。

 改正案は、需要開拓のための共同振興計画の販売者側の作成主体に今度は販売事業者を追加し、これに商社、百貨店も主体として位置づけられるようになります。これは中抜きをするということになります。産地の事業者には直接販売するノウハウはないようですし、中間の流通業者もほとんど市内の業者のため、そこをつぶすことになってしまうのではないかと懸念されます。実際は、制度に対して役所が提案し、活用を促すというところが多いのが現状ということでございます。

 そこで、疑問があります。共同相手が商社や百貨店になると、共同振興計画を作成し、事業実施をしていく中で、産地の協同組合は、一般的に、伝産法に関係なく中小企業支援策を受けることができます。しかし、補助金に関しては中小企業対策費が財源の補助金であるため、商社や百貨店のような大企業が共同相手となった場合に、支障や制約が生じないでしょうか。これについてはどのように対応されるのでしょうか。

岡本政府参考人 今回、共同振興計画の相手方として、百貨店でありますとか商社とか、そういった流通業者の方々を追加しますのは、この共同振興計画のパートナーとして従前位置づけられておりました産地の問屋さん、販売業者の組合のようなもの、これをスキップするということではございませんで、産地の方々がパートナーとして選ぶ場合の選択肢として商社なり百貨店のような方々も追加するというのが、今回の改正の趣旨でございます。

 その上で、産地の方々が、相手方として、百貨店なり商社、往々にして大企業が多い、そういう流通業者の方々をパートナーとして選んだ場合に、私どもは、あくまでも産地の、伝統工芸品をつくっている方々の需要の開拓という面で今度の改正を御提案申し上げているところでございまして、組むパートナーが大企業であったとしても、それによって産地の、中小の伝統工芸品をおつくりになっている方々の需要が伸びていくということであれば、これは振興計画の補助金の対象として支援をしてしかるべしというふうに考えております。支援してまいる考えでございます。

大島(令)委員 もう一点、岡本局長に質問をさせていただきます。

 振興計画の補助金を受ける協同組合は、新しい活性化計画の補助金を受けることができるんでしょうか。

岡本政府参考人 活性化計画は、産地の組合全員が主体になった取り組みでなくても、少数の、あるいは二、三社という非常に数の少ない方々のグループで、前向きな取り組みをする、新商品の開発でありますとか共同展示、その他の販路開拓事業をやるとか、そういう場合も幅広く支援の対象としていくという制度でございます。

 したがいまして、共同振興計画という形で需要の開拓をおやりになるケースもありますでしょうし、それに入った方々が、今度は活性化計画を利用して、別途のアプローチでもって、新商品の開発であったり、あるいは販路開拓をやるという場合に、これを支援の対象にするということは十分可能でございまして、制度の上でそういった形の取り組みを排除するものではございません。

大島(令)委員 では、具体的に聞きますけれども、赤津焼工業協同組合は、事業内容が振興計画とした場合に、この活性化計画の補助制度を使えるんですか。

岡本政府参考人 赤津焼の場合には、まず産地の指定という手続を踏む必要があろうかと思います。

 そのことに関連して、今回の法律改正は、いわゆる組合法上の組合でなくても任意の団体でもいいということで、要件の緩和を御提案させていただいておりますが、赤津焼の場合に、まずもってこの点が、多分、産地での指定に向けての意見集約というか、過半の方々が、今任意の組合があると聞いておりますので、そういう形で指定に向けての手続を進めていくということが従前に比べて大変しやすくなってくるのではないかと思います。

 その上で、活性化計画の実際の支援ということについては、法律上の認定と同時に、地元の自治体の方の応援の姿勢というもの、先ほど来先生御指摘のように、予算面でのおつき合いをいただくというところがございますので、その辺の事情も私どもも見きわめながら、具体的な計画の固まりぐあいに応じて、地元の方々と緊密に御相談をしながら進めていきたいと考えております。

大島(令)委員 少し整理しにくいのですが、結論……

岡本政府参考人 訂正させていただきます。

 赤津焼は指定されているということでございますので、大変失礼いたしました。ちょっとほかのケースと勘違いしておりました。

 したがって、指定の件はもう必要ございませんので、活性化計画の実際の内容固め、それに向けての地元の自治体の予算の準備の状況、そういったものを見ながら、私ども、地元と十分な御相談をしながら進めていきたいと考えております。

大島(令)委員 ということは、国の方の補助金は出せるけれども、結局地元瀬戸市が問題を持っている。もう振興計画で補助金を二分の一出してしまった、だから、同じ協同組合にもう一度、違う目的の計画で瀬戸市がゴーサインを出せばできる、国の方は問題ないというふうに理解してよろしいんでしょうか。

岡本政府参考人 活性化計画全体の予算の制約もございますので、今この場で私どもの立場として、御指摘の具体的なケースについて予算をコミットするということは難しいのですけれども、どれぐらいの規模の事業を実際にお考えになるかということによっても、私どもが十三年度の予算でもって対象にすることが可能かどうかというのも違ってまいりますでしょうから、そういう意味で、計画の中身というのをまずもって拝見させていただきたいと思っております。

 と同時に、国の側で、御指摘のケースについて予算を実際に充当していくということに踏み切るに当たりましては、地元の自治体の、私どもと一緒に来年度の予算でやっていただくという意向を確認するということも当然にさせていただかなければならぬ作業だと思っておりまして、そういう意味も含めまして、地元と十分に連絡をとらせていただきながら検討を進めていきたいというふうに考えているものでございます。

大島(令)委員 では、最後に大臣に質問させていただきます。

 私は、新しい補助制度の提案をさせていただきます。

 産地の方の話でございますが、現行の補助制度では、伝統的工芸品産業が今後とも維持発展していけるか疑問である、販売促進にはならないのではないかという御意見でございました。今後とも必要な産業であるならば、一定の競争も必要であり、やる気を起こして活路を見出すことが大切だとその方はおっしゃっていました。

 現状は、例えば千円で販売される商品は売り値の二割か二割五分しか生産者の手元に入らないため、経営は非常に苦しい。これが産地問屋、消費地問屋を通して、最終的に千円で売られるということでございます。

 職人さんは産業である以上商品をつくりたい、しかし片方で消費者は安い方がいい、であるならば、一千万円を協同組合に補助してほしい、そうすると、組合員の製品を全部組合が一千万円で買い上げて、そして意を酌んでくれる有能なプロの営業マンに全部販売していただく、その利潤で後継者を育成できる。

 というのは、例えば一万円のものならば生産者には二千五百円しか入らない、ところが、ここは問屋を通さないわけで、営業マンが全部買い切っているわけですから、別に二千五百円で出荷したものを五千円で売ってもいいわけなんです。そうすると、例えば一千万円補助金をもらった場合に一千万円の利潤が出る。そうすると、二人の営業のプロの経費が当然出ます。そして、確実に売れるということで後継者の育成にもなるということでございます。では、それを三倍の値段で売ればまた一千万利潤が出る、それでもっともっと産業の振興に取り組むことができるということでございます。

 この方も、昼間は職人としてこういう商品をつくり、夜は余った時間でろくろを回し、染付焼をして、その作家としてつくっているわけなんです。実際にお話しした方は、この愛知の伝統工芸品の中にある瀬戸染付焼、このつぼなんですが、実はこれは五万円ということなんです。ちょっと私、五万円だと買えないけれども、今のような方法で、二万円とか三万円だったら買ってみたいなという気になりました。ですから、この提案にすごく興味を持ったわけでございます。

 ですから、結局は、生産者にとって最も大切なことは、伝産品をつくって食べていけるということであり、食べていけるということが後継者の育成にもつながる、こういう仕組みを整備していただきたいというのが、やはり現場の方の御意見でした。

 私、きょう十時から今までずっと皆様の御意見を聞いてまいりました。最後、まとめの質問ということですが、法の第何条がどうだとか、こういう法でこういうふうに活性化するとか、新しい制度ができたとか、そういう細かいことじゃなく、現場の人は、伝産品がこれからも日常生活の中のものとして使われ、伝統的な技術や技法によって製造され、そういうものが残り、そしてこの産地が産業として生き残るためには、食べていけること、そして後継者につながる、これが産業ではないか、これが経済産業省の仕事ではないかということでございます。

 最後に、現場の人の声を踏まえた私の提案に対する大臣の御見解をぜひ聞かせてください。

平沼国務大臣 大島先生御指摘のような補助制度についてでございますけれども、伝統的工芸品産業施策の基本というのが、産業の自立的な発展を促して、国や地方公共団体はこれを側面的に支援することにある、こういうことを踏まえますと、今おっしゃったように、産地組合が一元的に製品を買い上げるという先生の御指摘の補助制度というのは、一つは事業者の自助努力への意欲を減退させる、こういうことにもつながりますし、また、いわば言ってみれば非競争的な取引を生み出して、今後の産業の発展、活性化にとっても決して望ましいものではない、このように私は判断をいたしまして、最後、結論を言わせていただきますと、実施することは非常に困難だ、このように思っております。

大島(令)委員 どうもありがとうございました。

山本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、伝統的工芸品産業の振興に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

山本委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、基盤技術研究円滑化法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。平沼経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 基盤技術研究円滑化法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

平沼国務大臣 基盤技術研究円滑化法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 近年、国際競争がますます激化する中で、我が国産業の国際競争力を支える産業技術力の低下が懸念されております。このため、我が国における産業技術力強化のための基盤技術研究の必要性は一層増大しており、また、研究開発の大宗を占める民間活力の効率的な活用が引き続き極めて重要であります。かかる観点から、民間において行われる基盤技術に関する試験研究を戦略的かつ効率的に促進するため、今回、基盤技術研究円滑化法の一部を改正する法律案を提案した次第であります。

 次に、この法律案の要旨について御説明いたします。

 第一に、総務大臣及び経済産業大臣は、民間において行われる基盤技術に関する試験研究の促進に関する基本方針を定めるものとするとともに、通信・放送機構及び新エネルギー・産業技術総合開発機構に、民間において行われる基盤技術に関する試験研究を促進するため、当該試験研究を政府等以外の者に委託する等の業務を行わせることとしております。

 第二に、公布の日から二年以内で政令で定める日において基盤技術研究促進センターを解散し、その一切の権利及び義務を、通信・放送機構または新エネルギー・産業技術総合開発機構が承継する等の所要の措置を講ずることとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。

山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る三十日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十八分散会




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