衆議院

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第6号 平成14年11月13日(水曜日)

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平成十四年十一月十三日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 村田 吉隆君
   理事 阪上 善秀君 理事 下地 幹郎君
   理事 竹本 直一君 理事 谷畑  孝君
   理事 鈴木 康友君 理事 田中 慶秋君
   理事 河上 覃雄君 理事 土田 龍司君
      小此木八郎君    梶山 弘志君
      小泉 龍司君    佐藤 剛男君
      桜田 義孝君    中山 成彬君
      西川 公也君    林 省之介君
      林  義郎君    平井 卓也君
      増原 義剛君    松島みどり君
      森  英介君    山本 明彦君
      渡辺 博道君    生方 幸夫君
      小沢 鋭仁君    大出  彰君
      川端 達夫君    北橋 健治君
      桑原  豊君    後藤 茂之君
      中津川博郷君    中山 義活君
      山田 敏雅君    山花 郁夫君
      山村  健君    漆原 良夫君
      斉藤 鉄夫君    福島  豊君
      山田 正彦君    小沢 和秋君
      大森  猛君    塩川 鉄也君
      大島 令子君    井上 喜一君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  平井 敏文君
   政府参考人
   (司法制度改革推進本部事務局次長)        松川 忠晴君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   楢崎 憲安君
   政府参考人
   (法務省大臣官房審議官) 原田 晃治君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長)            工藤 智規君
   政府参考人
   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       山元 孝二君
   政府参考人
   (文部科学省研究振興局長)            石川  明君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房地域経済産業審議官)     鈴木 隆史君
   政府参考人
   (経済産業省産業技術環境局長)          中村  薫君
   政府参考人
   (特許庁長官)      太田信一郎君
   政府参考人
   (中小企業庁長官)    杉山 秀二君
   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月十三日
 辞任         補欠選任
  増原 義剛君     林 省之介君
  生方 幸夫君     桑原  豊君
  小沢 鋭仁君     山花 郁夫君
  松原  仁君     大出  彰君
  漆原 良夫君     斉藤 鉄夫君
  工藤堅太郎君     山田 正彦君
  大森  猛君     小沢 和秋君
同日
 辞任         補欠選任
  林 省之介君     増原 義剛君
  大出  彰君     中津川博郷君
  桑原  豊君     生方 幸夫君
  山花 郁夫君     小沢 鋭仁君
  斉藤 鉄夫君     漆原 良夫君
  山田 正彦君     工藤堅太郎君
  小沢 和秋君     大森  猛君
同日
 辞任         補欠選任
  中津川博郷君     松原  仁君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 知的財産基本法案(内閣提出第一号)
 電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七〇号)
 独立行政法人原子力安全基盤機構法案(内閣提出第七一号)

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     ――――◇―――――
村田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、知的財産基本法案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として経済産業省大臣官房地域経済産業審議官鈴木隆史君、経済産業省産業技術環境局長中村薫君、特許庁長官太田信一郎君、中小企業庁長官杉山秀二君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長楢崎憲安君、内閣官房内閣審議官平井敏文君、司法制度改革推進本部事務局次長松川忠晴君、法務省大臣官房審議官原田晃治君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、文部科学省高等教育局長工藤智規君、文部科学省科学技術・学術政策局長山元孝二君、文部科学省研究振興局長石川明君及び文化庁次長銭谷眞美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
村田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平井卓也君。
平井委員 おはようございます。自由民主党の平井卓也であります。
 きょうは、知的財産基本法案についていろいろと質問をさせていただきたいと考えておりますが、昨日の当委員会におきます参考人の意見陳述、また、いろいろと業界の方々が心配されて私のところにも相談に来たり、また、関係団体の方々もいろいろ意見があるように思います。何せ、この知的財産基本法というのは、非常に関心が高いということと、やはりインパクトがあるんだなということを改めて感じました。一刻も早い成立と、この知的財産への積極的な取り組みとその体制というものが一刻も早く望まれると思っております。
 そこで、これは、司法、行政、立法にまたがる諸問題とか、人材育成であるとか、産官学の連携であるとか、国民の意識の問題とか、国家戦略として非常に多岐にわたるものを考えていかなきゃいけないと思うんです。
 そこで、プロパテント政策を国家戦略、国益にのっとって進めている国がアメリカ。アメリカに学ぶものは大変あると思いますが、しかし、横文字ばかりで恐縮なんですが、余りにもアメリカナイゼーションしてしまうのはどうかな、ハーモナイゼーションを考えながら、ここは日本独自のジャパナイゼーションみたいなものも必要ではないかというふうに思っています。それが、我々がアメリカに追随するのではなくて、独自の日本流の知財の取り扱い、もっとデリケートに扱っていくという方向が見えるのではないかというふうに思っています。
 まず最初にお聞きしたいのは、産業活力再生特別措置法、つまり日本版バイ・ドール法であります。日本の場合は、本当に多くの技術が存在する大学において、アメリカのように産官学の連携が円滑に進展しているとは必ずしも言えないと思います。その一つにこのバイ・ドール法の適用、運用みたいなものがあると思うんですが、これは各省庁の対応も結構ばらばらであります。その辺について、今後どのような取り組みをお考えになっているのか、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 御指摘のように、産業活力再生特別措置法第三十条に基づきまして、平成十一年十月より、率先して経済産業省では日本版バイ・ドールの適用に取り組んできているところでございます。
 一方、御指摘がございましたけれども、一部省庁においては取り組みがおくれていたことから、知的財産戦略大綱等を踏まえまして、主要関係省庁から成る日本版バイ・ドール各省庁連絡会を経済産業省が主催をいたしまして、各省庁にも日本版バイ・ドールの適用を依頼するとともに、各省庁の取り組み状況について調査、取りまとめを行ってきているところであります。
 本調査によりますと、昨年度におきましては、日本版バイ・ドールの適用状況は全体の約六〇%に相なってきています。今年度においては、これが約八割になる、このように想定されておりまして、かなり進捗状況もいい状況になってきております。
 各省庁とも、政府の委託研究開発予算について、可能な限り日本版バイ・ドールを適用することとしておりまして、経済産業省としては、引き続き各省庁との情報交換を進めまして、御指摘のように、やはり日本の土壌に合った、そういう形の日本版バイ・ドールの適用を推進していかなければならない、このように思っています。
平井委員 これも昨日、いろいろ参考人の意見陳述と質疑の中で取り上げられていた問題でありますが、特許審査の迅速性の確保と審査官の人員確保の問題であります。
 この問題に関しては、行政改革というか、人員をふやすというのは今非常に難しい時期ではありますが、この分野においては、明らかに審査官数の増加が必要ではないかと私自身は思っております。定員の確保をどのような形で進めていかれるのか、取り組まれるのか、特許庁長官の御所見を伺いたいと思います。
太田政府参考人 お答えいたします。
 知的財産立国の実現が国の目標になっているわけでございますが、まさにそのためには、すぐれた技術を事業化のタイミングを逃さずに権利化して、これを保護、活用するプロパテント政策が不可欠であります。このため、法案第十四条におきましても、「所要の手続の迅速かつ的確な実施を可能とする審査体制の整備その他必要な施策を講ずるもの」と規定されております。
 今後、審査請求期間の短縮に伴う審査請求件数の急増が予想されます。そういう中で、審査期間も長期化が懸念されております。このような状況に対処するために、特に審査請求件数が増加すると予測されます二〇〇三年度から二〇〇五年度にわたる特許戦略計画を今年度中に策定しまして、より一層の効率化を図りつつ、必要な審査官の確保、アウトソーシング、さらには私どものOB等を審査補助職員として活用する等々、審査体制の整備に全力を挙げていきたいと考えております。
 さらに、二〇〇六年度以降につきましても、さらなる効率化を図りつつ、引き続き審査体制の整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。
平井委員 太田長官、せっかく朝から来ていただいていますので、もう一問ちょっとお聞きしたいと思うんですが、前の職場で、私も一緒に頑張っておりましたe―Japanでありますとか電子政府とか、そういう流れの中で、今、ITは次の段階に入ってきた。要するに、基盤整備の段階から、いかに使いこなすかという段階に入ったということは、共通の認識だと思うんです。
 そこにいろいろな民間のプレーヤーがいて、それが日本の新しい産業を引っ張るというようなことは、前一緒にやっておりましたけれども、今度、長官のお立場になって、今民間のプレーヤーを考えた場合、例えばIPDLの問題で、既に民間事業者が何年も前から取り組んでおられまして、ある意味では、それは一つのビジネスモデルであったように思います。
 そういうときに、今、特許庁の方も積極的にデジタル化の運用ということを進められておるわけですが、この知的財産基本法をよく読みますと、二十条で「国は、知的財産に関する内外の動向の調査及び分析を行い、必要な統計その他の資料の作成を行うとともに、知的財産に関するデータベースの整備を図り、」そのようにはなっておりますが、基本的に、このデータベースの整備を図るということ、ここをどのようにとらえられているかということと、私、思うんですけれども、これからITの中でいろいろなプレーヤーが出てくるというときに、やはり民業の圧迫というのは一つ問題があるのかなというふうに思います。
 これは、特許庁に限らず、求人情報であったり、あと気象情報であったり、あとニュースの配信であったり、ネットの決済の問題であったり、いろいろ線引きがこれから非常に難しくなってくると思うんです。これは経済産業大臣にもぜひ目配りをいただきながら、民間も育てていただきたいというふうに思うんですが、まず太田長官にお聞きしたいのは、そのあたりのところの役割分担というのが明確に今後できるのかどうか、そのことについて御所見をお伺いしたいと思います。
太田政府参考人 お答えいたします。
 平井先生御指摘のように、法案の二十条で、情報提供ということで、国が知的財産に関するデータベースの整備を図って、ITネットワークの利用を通じて迅速に情報を提供できるような施策を講ずるということになっております。
 また、ことし七月に知的財産戦略大綱が取りまとめられましたが、その中で、「特許情報調査に関する国民の多種多様なニーズに応えるとともに、高付加価値なサービスが提供されるよう、二〇〇二年度以降、特許庁は、民間特許情報提供業者に対し、特許庁の保有するデータについて、順次、より利用しやすい形で提供する。また、特許庁は、特許電子図書館」IPDLでございますが、「について、その機器の更新にあわせて、一般公衆の標準的な利用を基本として、アクセスの改善を図る。」となっております。
 私どもは、まさに一般公衆の標準的な利用を基本とするところが国の役割だと思っております。平井先生言われたとおり、民間事業者も付加価値の高い情報提供をされておると承知しております。この辺はきちんと役割分担をしながら、いずれにしても、国と民間事業者が合わさって、ユーザーに的確に情報を提供することが必要だというふうに考えております。
平井委員 では、ぜひそのようにお願いをしたいと思っております。
 もう一つ、最近私、いろいろな、私も子供が三人おりますが、CDを余り買わなくなっちゃった。音楽産業というのは今非常な危機にあるのかなというふうに思います。産業規模がどのぐらい縮小したかということを僕も調べてみたんですけれども、明らかに三分の一はなくなっちゃった。そういう意味で、レコードの生産額、録音使用料とも三年連続で減少をしています。
 そこで、著作権といえば、作曲家、作詞家、歌手などの著作権が注目されがちでありますけれども、もう一つ、レコード会社などに付与している著作隣接権も、産業や経済との関係から考えると極めて重要だと私は思っています。
 近年、アジアを中心とする海外での海賊版もさることながら、国内でも無断複製の問題が非常に顕著になってきていると思います。記録媒体や機器のデジタル化は容易で、しかも劣化しないというのがある意味では制作物の複製を容易にしているということもありまして、この分野はここ数年CDの販売枚数の低下が続いているんですが、その原因の一つは、明らかに、パソコンでのCD―Rなどのデジタル媒体に音楽ソフトをコピーする、いわゆるクローンCDというものであることはもう間違いないと思います。
 知的財産立国を標榜するからには、国内での著作権保護強化や、知的財産に対する国民の認識というものの向上も不可欠だと思うんですが、この問題はやはり何となくまかり通っている問題でもありますので、どのように国民にそのあたりを認識していただくのがいいのか、このことについては文化庁の銭谷次長に御所見をお伺いします。
銭谷政府参考人 ただいま御指摘がございましたように、国内で、デジタル機器の普及、インターネットの利用の拡大などによりまして、音楽や映像ソフト等の無断複製の問題が指摘をされているわけでございます。このような問題に対応いたしまして、著作権の保護、強化を図るためには、違法なコピーを取り締まれるような法制度の整備を行うこと、コピープロテクションなどのセキュリティー技術を活用した安全なコンテンツ流通システムの構築を推進すること、違法なコピーに対して損害賠償などを行いやすくすること、加えて、ただいま御指摘のありました著作権思想というものをきちんと普及していくこと、こういうことが必要なことと思っております。
 例えば、法制度の整備につきましては、我が国では、世界に先駆けて著作権法を改正いたしまして、インターネットでの無断送信を差しとめる権利というものを法定いたしております。また、情報技術の活用による違法行為の防止を推進するため、これもまた著作権法を改正いたしまして、コピーや送信をできないようにかぎをかける技術でございますコピープロテクションや、侵害の発見、立証を容易にするための権利者名簿を隠しネームのように埋め込む技術でございます電子透かし、こういったものの回避、改ざん等の禁止を法定いたしております。こういったことの活用が今日図られつつあるということも事実かと存じます。
 また、先ほど来申し上げております国民一般に対する知識の普及啓発ということにつきましては、これまでも文化庁として努力をしてまいったわけでございますが、平成十四年度からは、著作権に関する総合的な教育事業の展開ということを今行っております。また、ことしから実施をされております新しい学習指導要領におきましても、学校教育において著作権教育の充実を図っているところでございます。
 このたびの知財基本法を受けまして、我が省としては、これらの施策をさらに総合的に推進し、著作権の適切な保護と著作権に対する国民の意識の向上に努めてまいりたいと考えております。
平井委員 今のは主に国内の事例として、ぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思ったわけですが、海外の方であります。模造、模倣品、海賊版、育成者権侵害品といった知的財産を侵害する製品については、我が国企業や権利者の被害がますます大きくなっています。
 これに対し、国際ルールに基づく知的財産侵害国に対する交渉の強化、業種横断的な被害企業の連携促進などの総合的な対策を講ずることは当然のことであり、問題解決に向けた政府の一層の努力が必要だと思います。大臣の御決意を伺いたいと思います。
高市副大臣 確かに、模倣品、海賊版による被害はとんでもない状況になっておりまして、特許庁の調査でも、模倣品被害の年間被害総額十億円を超える企業が二十二社もあるというデータが出ております。特に、その製造国として一番多いのが中国、それから続いて韓国、台湾の順で、中国に至っては全体の三割以上ということでございます。
 それで、被害分野もあらゆる産業分野に及び始めているということで、平井先生おっしゃいましたように、もうあらゆる、例えば通商交渉の場などでこれを申し上げていく必要がありますし、あとは、WTOのTRIPs、これの対中国レビューといったものを活用いたしまして既に我が国から申し上げているところでございます。
 ちなみに、先月私はAPECの閣僚会合に行ったのですけれども、そのときにも、APEC全体で、万が一そういうことがあった場合、例えば日本のビジネスマンが海外に行ってそういう事例を発見したときに、駆け込み寺となるようなセンターの設置など、全体の取り組みを日本側から提案したのですが、悔しいことに中国の抵抗によりまして全体的な合意は得られなかったのですが、それでも二十一エコノミー参加のうち二十エコノミーまでが賛同していただきまして、何となく、国際社会全体としてやはりこの問題をとらえて解決していこうという機運は高まりつつありますので、今後もあらゆる場で申し入れをしていきたいと思います。
 国内においても、国境措置、これは二〇〇四年末までに必要な措置をとるということになっておりますので、努力を続けます。
平井委員 ぜひよろしくお願いします。私も中国に行ってゲームソフトを売っている現場を見ましたけれども、発売日もほとんど一緒ですし、中身も全く一緒なんで、これはやはり幾ら何でもという気がしました。これまたぜひ、民間からのヒアリングをして、本当に現場がどうなっているかということをぜひやっていただきたいというふうに思っています。
 もう時間が余りなくなってまいりましたので、最後に、この知的財産基本法、推進本部設置ということについて大臣の所見を伺いたいと思うんですが、仏つくって魂を入れないのではだめで、やはり強力な推進体制のためには強力な事務局も必要でありますし、スタッフも必要だろうと思います。これは、息切れしないように常にエンジンも必要だと思うわけですが、その辺の御決意を最後にお伺いさせていただいて、質問を終わりたいと思います。
平沼国務大臣 平井先生御指摘の点は、非常に重要なことだと思っております。
 我が国産業の国際競争力の強化に向けて、政府一体となって知的財産政策を実施するため、すべての閣僚とすぐれた識見を有する民間有識者から構成される知的財産戦略本部を設置することにいたしております。
 ただし、知的財産政策を集中的かつ計画的に推進していくためには、平井先生御指摘のとおり、本部を設置するだけでは十分だとは言えません。本部をやはりしっかりとサポートして、そして強力に推進できる体制を整備することは必要なことだと思っております。
 そのために、内閣官房に所要の人員を具備したしっかりとした事務局体制をつくることにいたしておりまして、十分に実効性を保ちながら知的財産戦略に取り組んでいかなければならない、このように思っております。
平井委員 よろしくお願いいたします。
 以上で終わります。
村田委員長 斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。
 今回の知的財産基本法の基本的施策の中に三つ柱がございまして、知的財産の創造、保護、活用ということでございますけれども、私は、この知的財産の創造という柱についてまず質問をさせていただきたいと思います。
 知的財産を保護し活用するためには、まずそのそもそものもとである知的財産そのものがなくてはならないわけです。この知的財産を生み出すところ、これはいろいろございますけれども、やはり知の殿堂、大学の役割は非常に大きい、このように思います。
 その大学ですが、よく日米比較がされますけれども、例えば大学発の特許だけを見ましても、日米で百倍の差がある、これは絶対量にしましても、一大学当たりにしましても、一研究者当たりにしましても、大きな差があると言われております。その理由には多分二つあるんだと思います。一つは、そういう研究開発活動そのものが、アメリカに比べておくれているのではないか、活発化していないのではないかという面と、それから、そういう研究活動の結果を財産化していく、知的財産化していく、その制度が整っていないのではないか、援助するシステムが整っていないのではないか、そういう二面があるかと思いますが、まず、知財そのものを生み出していく研究活動を活発化していくことが私は必要だと思います。
 今の日本社会、改革が進んでいると言われておりますが、その改革が最もおくれているのが大学だという声も聞こえます。この大学の研究活動そのものをアメリカに負けないように活発化していくということが非常に重要になってくると思いますけれども、その大学改革ということについて、文部科学省から決意を聞きたいと思います。
工藤政府参考人 まさに先生のおっしゃるとおりでございまして、大学は、知の創造と継承の大きな役割を担っているわけでございまして、今おっしゃいましたような観点は大変重要なことと存ずるところでございます。
 このため、ここ十年ほどいろいろな大学改革を進めてまいりまして、かつ、諸制度の改善も行ってまいりました。例えば、大学教員について、任期制や公募制の活用等による流動化の促進でございますとか、競争的資金で、間接経費の導入を含めまして、より使い勝手のいい研究費の仕組みでございますとか、それから若手研究者の自立支援のためのリサーチアシスタントやポスドク等の支援でございますとか、さらには兼職・兼業の弾力化を含めまして多様な産学連携の推進、さらには、研究論文だけに偏ることがなくて、特許等の知的財産の創出について研究者の適切な評価に含めるような体制の整備などを進めてきたわけでございますが、まだまだ進めなければいけないことがございます。
 このため、私ども、国立大学につきましては法人化を予定しているわけでございますが、それを契機に、各大学の自立性をより一層拡大いたしまして、より戦略的かつ活発な教育研究活動が展開される仕組みを予定してございます。
 今後とも、そういう面で各大学のそれぞれの個性を生かしながら、教育面でも研究面でも、活力に富み、国際競争力のある大学づくりを私どもも支援してまいりたいと思っております。
斉藤(鉄)委員 国立大学等の改革は随分進んで、研究の現場は活性化されてきているという声を聞きます。残されたのは大学。大学は、しかし、あくまでも学問の場ですから、国が強制的にああしろ、こうしろということは言えませんけれども、しかしながら、若手研究者が本当にその能力を伸ばしてすばらしい研究ができるような、そういう活性化をお願いしたいと思います。そのための大学改革、来年から始まるということでございますので、期待をしております。
 それから次に、生み出した知的財産をどう活用していくかというところでございますが、その柱ですけれども、来年度の概算要求に大学知的財産本部整備事業、各大学に知的財産本部を置くその整備事業が盛られております。知財に対してこれまでほとんど関心を払ってこなかったと言われている大学、その大学に知財の意識を埋め込むというために大変画期的な事業であると評価をしておりますけれども、具体的にどのような事業をやるのか。現存のTLO、テクノロジー・リエゾン・オフィス等との関係がどうなるのかということがいま一つ見えませんけれども、この大学の知的財産本部整備事業、これについてどういう計画なのか、教えていただきたいと思います。
石川政府参考人 大学における知的財産本部整備事業についてのお尋ねでございますけれども、この事業は、大学における知的財産の原則個人帰属から機関帰属への転換というような方向転換を踏まえまして、大学が組織として知的財産の有効かつ効率的な管理、活用を図る、これを促進するための機能を持つことを支援する事業でございまして、例えば、大学ごとに最も効率的、効果的に知的財産を保護、活用するための機能を整えていただくようなものでございます。
 もう少し具体的に申し上げますと、例えば、担当副学長のもとに全学的なマネジメント体制をまず整備していただきまして、その上で、知的財産に関する専門的な知識を有する、例えば企業の知財部の経験者等、このような方々を外部から登用いたしまして、そして学内の方々とともに知的財産に関する基本的な方針や管理、活用のルールづくりなどを行っていただきまして、これにより迅速かつ効率的な知的財産の管理、活用を図るようにするというような形の事業でございます。
 ただいま先生からTLOの関係についてもお尋ねがございました。
 TLOにつきましては、現状におきましても、TLOを持つ大学、あるいはTLOを持たない大学、それからTLOが学内の組織になっている大学、さまざまな形態がございますので、一律にその関係を決めるというようなことではなくて、要は、知的財産の効率的、効果的な管理、活用という観点から、各大学におきまして、知的財産本部、この事業とTLOあるいは共同研究センター等の組織の連携関係などについて、それぞれの状況に応じて御検討、御工夫をいただくことが重要だろう、こんなふうに考えているところでございます。
斉藤(鉄)委員 これから大学評価という時代に入ってきますけれども、各大学が自分のところの研究者が生み出した知的財産をどう活用しているか、大学がどこまで努力しているかということもぜひ大学評価の重要な項目になるように御努力をいただきたいと思います。
 先ほどの石川局長の御答弁の中に、この整備事業については、これまでは研究者個人に帰属していた知的財産権を、これから基本的には大学に帰属する、機関帰属にしていく、そういう方向性を出すんだという答弁でした。
 私は、基本的には、生み出された知的財産をシステマチックに、有効に活用していくにはそういう方向性が望ましい、このように思っておりますが、逆に、個人帰属があるから一生懸命、研究者というのはそんなものじゃないかもしれませんが、個人帰属があるから一生懸命、知的財産という観点からも頑張ってきたという研究者もいようかと思います。どっちみち大学の帰属になるのだったら、特許化ということは考えないで研究しようとか、また研究そのもののインセンティブも薄れてくるというふうな指摘もありますけれども、機関帰属、大学に帰属するんだということについての、さっき言ったような懸念についてはどのようにお答えになりますでしょうか。
石川政府参考人 特許の帰属等についてのお尋ねでございますけれども、大学における知的財産の帰属につきましては、昨年三月の第二期の科学技術基本計画、あるいはことし七月の知的財産戦略大綱におきましても、知的財産の有効活用のための機関帰属が適切というふうなことが言われております。また、このほど、私どもの文部科学省の方の知的財産ワーキング・グループにおきましても同様の方向が確認されたところでございます。
 知的財産を原則機関帰属といたしますということにつきまして、そして組織的に取り扱うということにいたします点につきましては、いろいろな意味合いといいますか意義があるわけでございまして、例えば、大学のさまざまな知的財産の一元的な管理、活用といったようなものが図られるとか、あるいは企業等との交渉の一元化、円滑化、こういったものが図られるとか、こういった事柄によりまして、これまで個人帰属のもとでややもすれば死蔵されてきたような知的財産が有効に活用される、そして大学の研究成果の産業界への移転が一層促進されるというふうに私ども考えてございます。
 また、先ほど先生が御懸念の、研究者個人の、どちらかといいましょうか、インセンティブのような、こういった面につきましても、その成果あるいはその利益の還元というようなことは、それぞれこういった仕組みの中でも維持できるものと考えておりますし、機関帰属にするようなことに伴いまして、大学が組織として扱うということになりますと、それに伴いまして研究者個人のさまざまな負担も軽減されるというふうに考えておりまして、こういった方向がむしろ研究者個人の研究活動にも大いにプラスになるのではないか、こんなふうに考えているところでございます。
斉藤(鉄)委員 例の日亜化学の中村さんの例、これは企業ですから大学の今の場合と直接比較できませんけれども、ああいう例もございました。
 機関帰属、しかし、それによってもし利益が得られたとしたら、その利益の配分等についてはまた別途考えるという御答弁でしたのでよくわかりましたけれども、研究者個人のインセンティブを殺さない形での運用をぜひお願いしたいと思います。
 それから、次に、知財に関する教育や人材育成について、文科省と法務省にちょっとお聞きしたいと思います。
 米国では、弁理士さんそれから知財に非常に強い弁護士さん等、特に訴訟が多い国柄ということもあって大変知財に強いローヤーがたくさんいる。それに対して日本は、知財に関する法曹、弁理士さんにしても弁護士さんにしても非常に少ない、こういうことが言われているわけでございますけれども、非常にこれから重要になってくると思います。国際競争という面でも重要になってくると思います。
 今回、きのう衆議院を法科大学院の法律が通りましたけれども、この法科大学院での知財教育をどのように考えているのか。また、この法科大学院の設置認可それから大学評価、設置認可は文科省がやり、大学評価は第三者がやるわけですから、この大学評価について文科省に答えてくださいというのもちょっと無理な質問かもしれませんけれども、こういう設置認可や大学評価の際の基準に、知財に関する教育ということも非常に重要なものとして置くべきではないか、このように考えますけれども、いかがでしょうか。
 また、法務省の方には、新しい司法試験、新司法試験の選択科目にこの知財を入れるべきだ、このようにも考えるわけですけれども、いかがでしょうか。
 それから、文科省にもう一つ。法科大学院という専門職大学院ができたわけですけれども、将来的にはこの知財に特化した知財専門職大学院等については構想があるのかどうか、そういうことについてもお伺いします。
工藤政府参考人 御審議賜りまして、昨日本会議で可決いただきました学校教育法改正を初めとするロースクール関係の法案がございます。
 私どもは、今回の制度改正によりまして、高度の専門職業人を大学院レベルで養成できるように、専門職大学院という制度化を予定しているわけでございますが、これは、いろいろな分野の活用が考えられるところでございます。今、最後の方に御指摘ございましたように、知財に特化した専門職大学院というのも当然可能な制度設計になってございますし、各大学の意欲的な取り組みを期待するところでございます。
 その中でも、法科大学院につきましては、昨年末のアンケート結果によりますと、法科大学院を開設予定して検討している大学の中で、そのほとんどの大学で知財に関する科目を開設する予定と承知してございます。法科大学院そのものは、司法行政のために基本的な科目の教育が必要でございますけれども、あわせてそれぞれの大学院が特色のある人材養成ができる仕組みになってございまして、そういう意味で、知財に強い法曹の養成というのが大いに期待されるところでございます。
 私どもも、各大学の自主的な判断によるところでございますけれども、それぞれの大学の積極的な取り組みを期待しながら、その支援に努めてまいりたいと思っております。
 そういう中で、設置認可や大学評価の際に、そういうのをチェックし、鼓舞してはどうかという御指摘でございます。
 大学の設置認可は、およそ大学として必要最小限の基準に合致しているかどうかというのを見る審査の仕組みでございますけれども、そのために、知財というのを押しなべてすべての大学にチェック項目として定めるのがいいかどうかというのは若干問題もあるのかなと思ってございますが、第三者評価によります大学評価につきましては、それぞれの第三者評価機関が自主的に評価項目をお決めになって、それぞれの大学を教育研究の向上のためにバックアップしていくという仕組みでございます。
 そのため、努めて大学や大学評価機関御自身の見識と御努力あるいは御判断によるところでございますけれども、世のこういう知財に対する重要性の高まりを受けまして、それぞれの関係者が適切に判断されることを、私どもも機会を見つけて促してまいりたいと思っております。
寺田政府参考人 司法試験についてお答え申し上げます。
 新しい司法試験は、今文部科学省の方からも御説明がありましたとおり、法科大学院の教育、それから司法試験、司法研修所の修習というものを一体として法曹養成するという構想ででき上がっているものでございます。
 したがいまして、司法試験の科目は、論文式の試験の中には選択科目というのを設けることになっておりますが、この科目は、実際に社会にどういうニーズがあるかということのほかに、法科大学院で現にどういう科目が教えられているかということを考慮して新しい試験委員会において定める、これは省令で定めるということになりますが、そういうことに制度上なってございます。
 ただ、私どもが今まで拝見しているところでは、法科大学院を設置されるという予定のかなり多くの大学において、現在の世界情勢等を考慮されまして、この知的財産権の科目を講座として設けようというふうに予定されているようでございますので、当然のことながら、そういう動向がこの新司法試験の科目の決定において考慮されるというふうに考えております。
斉藤(鉄)委員 ぜひ前向きにお願いしたいと思います。
 それでは、最後に経済産業省にお聞きしますけれども、アメリカあたりは非常にこの知財に対しての戦略があって、こんなものが特許になるのか、例えばビジネスのやり方とかそういうものまで特許にして、アメリカンスタンダードでそれを世界に押しつけてくるということが行われているわけですが、日本もある意味で、これからの知財の国際的なルールづくり、その中心になっていくべきではないか。アメリカばかりに任せておかないで、日本も国際的なルールづくりの中心になっていくのも非常に重要な戦略かと思います。
 そういう意味では、まだこの知財の法制化が進んでいない途上国への協力といいましょうか、途上国との今後の知財に関しての協力が非常に重要になってくる、日本戦略を世界戦略に広げていくという意味でも非常に重要になってくるかと思いますが、これに対しての経済産業省の戦略をお聞きします。
平沼国務大臣 御指摘のとおり、非常に大切なことだと思っております。
 特に、我が国と緊密な経済関係を有するアジア太平洋地域の途上国におきます知的財産権分野の人材育成協力につきましては、経済産業省といたしまして、従来から積極的に問題意識を持って取り組んでいるところでございます。特に平成八年度以降におきましては、WTO・TRIPs協定の着実な履行を支援する観点から、やはりレベルアップをしていかなければいけませんので、私どもとしては、延べ一千四百人以上の行政官、法律家等を受け入れまして、そして、主に知的財産法制でございますとか特許等の審査能力向上、こういったことに対する研修等を積極的に行ってきたところでございます。
 また、先ほど来御指摘がございますように、近年、模倣品被害、こういったことが拡大をし、これが深刻化をいたしておりますので、途上国において実効的な模倣品の取り締まりが行われるように、各国の特許庁だけではなくて、警察でございますとか、あるいは税関、あるいは裁判所などの取り締まり関係機関の人材育成協力にも重点的に取り組んでおります。
 具体的に、簡単に申し上げますと、世界知的所有権機関のジャパン・ファンドというのがございますので、これを活用しまして、平成十一年度には途上国の取り締まり職員を対象とした研修コースを開始しておりますほか、来年二月にはタイにおいて、取り締まり職員の能力向上を目的とするエンフォースメント・ワークショップを開催することといたしております。こういったことに加えて、さらに中国が非常に大きな問題になっておりますので、中国あるいはシンガポールにおいて、中国、ASEAN諸国の取り締まり職員に対するセミナーを開催する、こういったことで途上国対策はしっかりとやっていこう、このように思っております。
斉藤(鉄)委員 終わります。ありがとうございました。
村田委員長 井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 私は、最初に平沼大臣にお聞きをしたいと思うのです。
 最近、日本の産業の空洞化ということが言われておりますし、とりわけ製造業につきましてそれが大変顕著に出てきていると言われております。一説には、製造業の四〇%ぐらいが既に外国へ出ているというようなことですね。あるいは、企業の設備投資にいたしましても、もう海外で投資をする方が日本国内の投資より多くなっているというようなことが言われているわけですね。ある意味では、賃金の格差でありますとか、あるいは発展途上国が産業を発展させる場合に、付加価値の低い分野から取り組んでいくということはこれまた当然のことだと思いますし、先進国もそれに対応していかないといけないと思うんですね。
 ところが、先進国におきましては、それとともに新しい製品をつくっていく、新しい産業を起こしていく、こういうことが必要だと思うのです。そのためにはいわゆる研究開発というのが本当に重要になってくると思うんですね。この法律でいいますと、知的財産をつくり出していく、あるいは新しい産業をつくり出して国際競争力をさらに強化していくということじゃないかと思うのでありますけれども、その研究開発すら最近、空洞化が起こっているということが言われているわけです。
 私、財務省の主税局と話をいたしましたら、税の面からでありますけれども、ITなんかはやはりかなりの投資があるようでありますけれども、例えばバイオでありますとかナノテクノロジーだとか環境という、これから日本が力を入れていくべき分野の研究開発投資というのは余りないらしいんですね。非常に問題だというような話でありますけれども。
 私は、この際、やはり研究開発の空洞化を防ぐために抜本的な対策を講じないといけないのじゃないかと思うのですね。そのためにこの基本法をつくったんだと言われればそれまでかもわかりませんけれども、もう少し具体的に、どうしていくのか。
 きのうの参考人のお話なんかを伺いますと、知的財産権をつくり上げるためにはいろいろな努力が必要なんだけれども、ある部分アウトソーシングをすると言うんですね。例えば特許権の調査なんかもそうでありましょうし、ある部分の研究なんかも外部へ委託する、こういうことはあると思うのでありますけれども、日本の場合はアウトソーシングする先が整備をされていない、この整備が必要じゃないかという意見を言っておられたのですが、そんな点も含めまして、これから抜本的にどういうぐあいにこの空洞化を防いでいくのか、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 御指摘のように、確かに今、日本の特に生産拠点の空洞化率というのが高まっていることは事実でございまして、一九九〇年に六%台だったものが、二〇〇〇年にはそれが一五%を超える、こういうような高い水準に相なっております。それにつれて、やはり研究開発の分野も空洞化の兆しが出てきているわけであります。
 日本といたしましては、やはり物づくりということが日本の活力の源泉でございますので、井上先生御承知のように、重点四分野というものに絞り込みをさせていただいて、一つは、御指摘のバイオ、これは将来、百兆、二百兆の市場が期待できる。さらには、一とんざをしているとはいえ、第二ステージに向かうITですとか情報通信、さらには、おっしゃったナノテクノロジーですとか材料、それからエネルギー・環境、こういう四つの分野の研究開発を一層促進していかなければならない。
 現下の厳しい経済情勢の中でも、民間の研究開発投資を促進する研究開発税制の抜本的な強化をしていかなければいけないと私は思っております。例えば、試験研究費総額の一〇%程度を思い切って削除する、こういう形でインセンティブを与えるというようなことも、思い切ったことをしなければいけないと私は思っております。
 また、重点分野に対する研究開発資金の集中的な投入をしていかなければいけない。ですから、今言った四分野、こういったところに特化をして、重点的に資金の投入をする、そのためには国も適切な役割を果たしていく、こういう施策によりまして、我が国の研究開発の拠点としての環境の整備をいたしまして研究開発の空洞化を防いでいかなければならないと思っております。
 アウトソーシングというようなこともおっしゃいましたけれども、今、例えば地域なんかでは、地域の産業クラスターの中で産学官の連携も非常に顕著になってきました。そういう中で、大学も二百以上参画し、企業も四千社、そこから新しい一つの研究開発が生まれてきています。そういう有機的な結びつきの中で、アウトソーシング、そういうものも慫慂して効率を期していく、こういう総合的なアプローチで我々はやっていかなければいけない、このように思っています。
井上(喜)委員 税の問題につきましては、後で時間がありましたらまたお尋ねいたしたいと思います。
 次は、模倣品被害についてお伺いしたいのでありますが、模倣品の被害というのは大変大きくなってきているということをこれまたつとに言われているところでありますが、どだい、模倣品を売るというのは商業道徳自身としても問題だと思うのでありますけれども、今やそれにとどまらず、日本の貿易なり日本の産業競争力にまで影響が出るほどに模倣品の被害が広まってきている、こういうことが言われておりまして、これはやはり日本政府も企業も大変頭を痛めておられるところだと思うんです。
 それなりの対策を講じられてきたと思うのでありますけれども、こういった対策についてのこれまでの政府と民間企業の取り組みについてお伺いをいたします。
太田政府参考人 お答えいたします。
 模倣品に対する日本政府それから民間企業の取り組みについての御質問でございますが、まず、政府としては、これまで、WTOあるいは二国間協議等各種通商協議等の機会を利用しまして、中国を初めとする侵害国政府に対し権利保護強化の働きかけ等を行ってまいりました。
 具体的に申しますと、九月のWTOのレビューの場におきまして、中国の知的財産制度及び運用の問題点を指摘するとともに、先月には、中国の石広生対外貿易経済合作部長の来日の際に、知的財産権保護強化を平沼大臣から要請させていただきました。
 また、民間企業におきましても、例えばヤマハ、これはオートバイの関係でございますが、商標権の侵害訴訟等を初めとして個別企業でもしっかり取り組んでおります。それから、日本自動車工業会あるいは日本ベアリング工業会のミッションを派遣して、業界団体レベルでも取り組みを行ってまいりました。
 さらに、ことし四月、模倣品対策のための業種横断的な組織として国際知的財産保護フォーラムが設立されました。民間企業と政府との主要なパイプ役として活動を実施しておりまして、九月には、WTOにおける中国、台湾のレビューに先立ちまして要請書を提出されました。こういう要請書も踏まえて、私ども、中国等に対してきちんと物を言ってきておるところでございます。
 今後とも、官民一体となった取り組みを進めていきたいと考えておるところでございます。
井上(喜)委員 私、ちょうど一年ぐらい前に北京に参りまして、日本の中国進出の主要企業、二十二、三社だったと思うんですが、話をしたのですね。やはりこの模倣品の被害の問題が出まして、これを現場を押さえて摘発する、そういう話になったのでありますけれども、なかなか難しいと言うんですね、非常に難しいと。こういうことで、民間だけではこれはなかなか手に負えないということで、その場合は、やはり大使館とか、それから政府だとかその他、あるいはジェトロですね、そういうような機関が中心になってやってもらわないと、なかなか摘発というのは難しいんだというような話を聞いたのでありますが、私もやはりそうだろうと思うんですよね。中国のような国はなおさらそうだと思います。
 そういったことで、私も、政府がこれを積極的に支援をするといいますか、後押しをしていく、そういう体制が必要じゃないかと思うんですが、これについての見解をお伺いいたしたいということ。
 これはきょうは御答弁を要求しませんが、その際、こういうことを言っておりました。北京には日本商工会議所がありまして、商工関係の団体は一つしか認めないらしいんですよ。それで、大手の企業で集まって、例えばこの模倣品対策なんかを相談するというようなことが難しいと。だから、団体でもできれば、その団体の会合ということで集まることができるんだけれども、今、こそこそ集まっていると、それ自身が問題にされるというような状況のようでありまして、ですから、単に一つの団体だけじゃなしに、幾つかの団体を必要がある場合には認めるような、そんなお話も中国政府にもしていただきたいな、こんなふうに思います。
 まず、前の方の御答弁をお願いいたします。
太田政府参考人 お尋ねは、侵害国の現地でどういう取り組みが可能かということかと思います。
 日本の企業におきましては、中国の場合ですと、中国現地の調査会社あるいは弁護士事務所等を活用して摘発活動を実施しております。また、農薬等の分野では、ヨーロッパやアメリカの企業と共同の組織も活用して侵害品の摘発を行っていると承知しております。
 このような民間の取り組みを支援するため、現地の大使館を通じて相手国政府に対する取り締まり強化の要請を行うとともに、お話にもありました現地ジェトロ事務所に知的財産の専門家を常駐させております。現地日系企業に対して情報提供あるいは相談の受け付け、さらには、企業と協力した模倣品の摘発などを行っているところでございます。
 さらに、北京及び上海におきましては、現地ジェトロ事務所が中心となりまして、日系企業間で知的財産権問題の研究グループを組織しまして、お互いに模倣品対策に関してノウハウを交換、共有しようという試みを行っております。
 いずれにしても、今後、我が国企業におきましては、侵害国政府に対する模倣品の取り締まり要請あるいは海外での訴訟提起などの対策をより一層強化していくことが見込まれます。
 ということで、井上先生御指摘のとおり、こうした現地における支援体制をさらに政府あるいはジェトロ等も応援していくということが必要かというふうに考えております。
井上(喜)委員 模倣品問題の解決、今のお話のように、中国自身もこれは努力をしないといけないと思うのでありますけれども、模倣品被害というのは、日本だけではなしに、アメリカとかヨーロッパの企業も同じような状況下に今あると思うんですね。
 そういったことで、中国自身に自主的な取り組みを要請する、これはもちろん必要でありますが、あわせて、先進国が協力をいたしまして中国の模倣品問題に対処していくということも絶対必要だと思うのでありまして、この点について、もっと日本が、恐らく被害は日本が一番大きいんじゃないかと思うんですよね、主導権を発揮して取り組むべきではないかと思うんですが、御見解を伺います。
西川副大臣 井上先生から二つお尋ねがあったというふうに理解をいたしますが、まず一番目は、中国を中心とする侵害国の政府が自助努力をして、特に中国はWTOにも加盟し、今後、自社ブランド、自国ブランドも自分の国の模倣品製造者によって侵害されるなんということすら考えられるわけでございますから、中国政府も真剣にこの取り締まりをしていただかなければいけない。
 こういうことで、先ほど大臣がお答えを申し上げましたWIPOの日本ファンドを中心とした研修生制度とか、これはもう七年間で千四百人も中国初めいろいろな国をやっておりますので、これをさらに徹底する。それから行政機関に対しても、私ども、民間企業に対してセミナーを開いてもらうように、これも努力をする。それから専門家を派遣して、これは短期、長期いろいろございますけれども、指導していく。いずれにしても、そういう努力をしていきたいということが一点ございます。
 それからもう一つ、これはQBPCという、クオリティー・ブランド・プロテクション・コミッティー、こういうのでありますが、例えばアメリカのジョンソン・アンド・ジョンソンとかマイクロソフトとかP&Gとか、こういう著名な企業、それから日本の松下、こういう全部で七十七の会社が、中国政府の下部機関としていわゆるQBPCという組織をつくって、そこで模倣品の摘発などを、中国政府も、これをあれいたしますと、経済警察、公安も非常に熱心にやってくれる、こういうこともございますので、これらを活用して、欧米諸国と一緒に私どもは取り組んでいきたい。
 特に、先ほども大臣からも御答弁をしていただきましたが、通商協議等の場において、日本政府からも厳重に侵害国、主に中国、こういうところに対して取り締まりを強化することを依頼していく、こういうことも当然でございますが、私どもも先進国同士で協議をして対応してまいりたい、このように考えております。
井上(喜)委員 模倣品の被害に関連をいたしまして、来月、官民合同の日本のミッションが中国に派遣をされるようでありますけれども、これは恐らく初めてじゃないかと思うんですね。やはり、中国のような国でありますから、上の方からきちっと言って下の方に徹底させていくということが必要だと思うのでありまして、大変意義のあることであると思いますが、平沼大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。
平沼国務大臣 官民合同ミッションについてのお尋ねであります。
 予定は既に確定しておりまして、十二月一日から七日の予定で、民間の反模倣品団体である国際知的財産保護フォーラムが、中国中央政府及び日本企業の被害の大きい地方の政府、例えば浙江省でございますとか広東省、ここにミッションを派遣することに相なっております。模倣品問題の解決に向けた制度面及び運用上の改善を要請する予定でございます。
 また、これと並行しまして、中国政府と協力をしながら、当省の関係機関が、地方の模倣品取り締まり機関の職員や消費者を対象として、模倣品対策に関するセミナーも開催する、こういう予定であるわけであります。
 本ミッションには、フォーラムの座長でございます森下洋一松下電器産業代表取締役会長を初めとして、例えば、模倣品で大変被害を受けている本田技研工業でございますとか資生堂、マイクロソフトなどの幅広い業種の役員も参加をすることになっております。
 これは非常に重要でございますので、経済産業省といたしましても、このミッションに、国会の御承認がいただければ、副大臣クラスを派遣させていただきまして、模倣品問題解決に向けて、政府、業界一体となった断固たる体制を組んで私どもとしては毅然とやっていきたい、このように思っております。
井上(喜)委員 最後に、また一番最初の問題に戻るのでありますけれども、昨日の参考人の意見陳述を聞いておりますと、最近の日本の企業経営というのは、ますます長期の問題に取り組むことができなくなってきていると言うんですね。特に研究開発のような時間を要するものについてはそうだと言うんですね。半期ごとに決算を出してもう全部チェックされる、そして経営者が責任を追及されるというような時代になりますと、目先のことですぐに効果が上がるようなことはやっても、なかなかじっくりと腰を落ちつけてやるような問題には取り組みにくいと言うんですね。私は、これは困ったことで、何とかこういう風土は直していかないといけないと思うんですね。この点については、昔の方がやはりよかったんじゃないかというふうに思いますが。
 それはそれとしまして、それとの関連で申し上げるのですが、税につきまして、平沼大臣、研究開発費の例えば一〇%を税額控除するというようなお話がありましたが、それも必要だと思うんです。そういう特定の政策に的を絞って減税をしていく、これは必要だと思うのでありますけれども、今の日本の風土から考えますと、どだい研究開発に取り組むこと自身が非常にリスクがあるわけです、成功するかどうかわからないんですからね。失敗したら責任を問われる、こういうようではなかなか取り組めないわけですね。したがって、私は、研究開発なんかをする企業というのは、本当に業績がいい企業に限られてくるんじゃないかと思うんですね。
 そこで、私は、そういう政策減税も大事だけれども、法人税一般を、法人税そのものをやはり減税していくというのも、研究開発を進める上で大変大事じゃないかと思うんですが、何か所見があればお伺いしたいと思うんです。
平沼国務大臣 非常に重要なポイントだと思います。これは、経済財政諮問会議の中でも政府税調の中でもこの辺は議論されたところでございます。
 経済産業省といたしましては、チャレンジする企業の莫大な研究開発投資リスクを軽減するために、研究開発税制を抜本的に強化することが必要だ、私どもはこういうふうに考えているところでございます。
 それで、もちろん、委員御指摘の法人税率そのものの引き下げについても、競争力強化の観点から検討すべき重要な課題だ、私どもはこのように認識しております。中長期的な観点を含めて、研究開発の活性化のためには、繰り返しになりますけれども、民間企業の研究開発に対する直接的なインセンティブを与えることが最も効果的な政策である、こういうふうに考えております。
 仮ですけれども、波及効果についての試算をいたしますと、一定の仮定のもとに経済波及効果について計算をしてみますと、減税一単位当たり、研究開発税制でございますと二・〇五から三・一六、こういう効果がある。法人税率の引き下げは〇・九五である。それから公共事業が一・三七、これはよく出ている数字でございます。
 また、日本経済団体連合会によると、一定の仮定のもとに研究開発投資の誘発効果について試算をしたところ、以下のようなデータが出ているところでございまして、仮に減税規模を五千七百億円、こういうふうに仮定をしますと、研究開発税制で出てくるのが約七千四百億、それから法人税率引き下げでは五百億、これは一つの仮定でございますけれども、そういったデータもあります。
 確かに、私は、中長期的に見て、法人税率の引き下げということは非常に必要なことだと思いますが、今こういう厳しい経済情勢の中で、短期的に経済効果を高めていくということは、やはり政策減税の研究開発投資減税がいいのではないか、このように思っているところでございます。
井上(喜)委員 終わります。
村田委員長 川端達夫君。
川端委員 よろしくお願いします。
 知財がこれからの国を支える大変重要なもとである、まさに財産であるということは申すまでもないと思いますが、その部分を支えるバックグラウンドとしての、全部ではありませんが、大きなものとしていわゆる科学技術というのがあることは当然のことだと思います。
 それで、本論の法律の議論に入る前に、先般、お二人がノーベル賞を受賞されたということで、ちょっとこれを先に、少しだけ大臣のお考えをお聞きしたいと思うのです。
 総理も、今国会の所信の中で、日本人から三年連続、初めて二人の同時受賞、科学技術の振興に大きな弾みとなります、世代も活躍の場も異なるお二人の受賞は、我が国の研究水準の高さや層の厚さを世界に示した、我々に元気を与えてくれる、すばらしいことですと絶賛をされたわけですけれども、ノーベル賞受賞に対して、大臣の所感を少しお伺いしたいのですが。
平沼国務大臣 今回受賞されましたお二人、私も、立場上、親しくお目にかかることができました。
 お二人の感想というのは、やはり非常に特徴的だと思っています。小柴先生は、たとえそれが直接的に利益を生まなくても、基礎研究の分野というものはやはり国として非常に大切にしていくべきだ、そういうことで、そのことは十分考えてほしい、こういうような趣旨の御意見がありました。
 また田中さんは、自分は研究者としてやってきたけれども、日本の場合には、非常にチームワークで自分の賞はとれたのではないか。ですから、チームワークというものが非常に自分の受賞の背景にあって、自分としては、そういう人たちの協力があってできたことと、それから、それができた技術というものをやはりちゃんと評価をしてもらう、そういう方法があったんだと、お二人はこういう特徴的な話をされていました。
 総理が絶賛をされたように、お二人がノーベル賞を受賞されたということは、我が国の科学技術の水準は高い、私はそういうことを示すことだと思っております。
 私どもの国を考えますと、明治維新以来、技術力を向上させ、産業競争力をつけるという形で技術導入というものを重視してきた結果、ある意味では、独創よりも、何といいますか、利用、調和というものを重んじる、そういう風土がありましたので、最近は連続三年で四人、そういう実績が出てきましたけれども、今まで振り返ってみますと、欧米に比べてノーベル賞の受賞者を生み出さなかった、そういうことがあったのじゃないかと思っています。
 ですから、そういう中で、我々としては、ノーベル賞が出るような環境をつくることがやはり非常に重要だと思いまして、そういう意味では、小柴先生が言われたそういう基礎研究の分野も、あるいは田中さんのような応用の分野も、やはりしっかりとできる、そしてそれが正当に評価される、そういった体制をつくっていくことが非常に必要なんじゃないかな、私はこういうふうに思っております。
川端委員 私も、大変これはすばらしいことであるということと、その中でも、とりわけ経済産業に非常に関心を持つ者としては、この二つの受賞の背景に、それぞれ、島津製作所あるいは浜松ホトニクス、こういう、決して大企業とまで言えないけれども、非常に技術を大事にする、いわゆる物づくりをするという企業が支えてきたということが背景にあるというのは、本当に日本の、大臣も言われたように、総合的な科学力、技術力というもののシンボルとして、私は、こういう企業、物づくりというものがあるというのは本当に誇らしいことだというふうに思っています。
 ただ、いろいろな問題を、今もお二人のお話を引用されながらされましたけれども、実は大変大きな今の現代社会への問題を提起されているのではないか。例えば、一つはやはり教育研究の環境。今もし小柴先生が十三歳、四歳、今の時代に中学生としておられたら、五、六十年後に、小柴少年は小柴博士になり、ノーベル賞を受賞するような道を歩むことができるんだろうか。
 いろいろな、御本人のお話とかを引用してお友達のお話をしますと、例えば、中学生であったといったときに、友達が言っているんですね。彼は悪餓鬼でした、夜間に町を歩き回ったり、外食したり、校則違反の常習犯だった、何かあると、また小柴かということがよくあった、こう書いてあるんですね。という少年が、果たしていい内申書をつけてもらえるんだろうか。内申書が悪ければ、もう今はちゃんとした高校というか、内申書で全部分けられてしまうというときに、こういう行動をしている、もう本当に元気はつらつの少年は、どういう進学コースを歩めるのか、今の教育制度では。
 そして、何か御本人も、大学では決して物すごく勉強ができたというわけではなかったと、東京大学の物理の中でとおっしゃっていましたけれども、その彼が留学をしたいと言われたときに、その当時の留学を審査する先生だったんでしょう、朝永振一郎、これもノーベル賞をもらわれた博士が、米国ロチェスター大学留学の推薦状は、成績はよくないけれども、それほどばかじゃないと自分で書いて、にやにや笑う博士の署名をもらったということで留学させていただいた。
 しかし、今大学から留学するときに、教授に推薦状を書いてくださいと言ったら、こういう余裕があるんだろうか。そして、先生が留学を終えて戻ってこられたときに、先生御自身が言っておられましたけれども、そういう学生を母校東京大学は教師として迎え入れてくれた、今東京大学は迎えてくれるんだろうか、何年か後に、今の小柴少年がなったときに。
 そして、ニュートリノって何なのとよく、大臣も恐らく聞かれたと思うんです、何の役に立つのと、今おっしゃった基礎研究の部分で。成果やまさに目的のはっきりしない、何かよくわからないような基礎研究に、大学は、あるいは文科省は本当に予算をつけてくれるんだろうか。
 私は、この予算をつけられた文科省、当時の文部省の背景は、やはりバブルのときであったなと思うんですよ、ぶっちゃけたことを言えば。ということでいうと、今の教育環境、子供からの部分で、それから大学あるいは文科省を含めて、今小柴少年がいたら、そういう人材は育つんだろうかということは、私は大変厳しい状況にあるんじゃないかと。
 もう一つは、田中耕一さん、民間企業でもらわれた。私も大学の民間企業の研究所におりましたので、ちょっとしまったかなと思っているんですけれども。実は、例がないんですね、日本で。そして、大臣、お会いにもなられたと思うんですけれども、これからまた民間企業から日本でノーベル賞の受賞者が出てくるんだろうか。私は物すごい難しいと思います。
 これは、一つは、このノーベル賞は学会論文をベースにしているんですね。そして、学会の論文というのは、特にこういう科学技術の分野でいえば、この物質とこの物質を、これぐらいの量で、こういう条件でこういうふうにしたらこういうことになりましたというのを発表するわけですね。要するに、ほかの人がそのままトレースしてもきちっと検証できることでないと学会として価値がない。
 特許も出しておられるんです。特許は、できるだけ一般化して書くんです。私も田中さんの特許を手に入れてみました。要するに、例えば、本当は具体的な、この物質とこの物質をこういう条件でというときに、この物質はこういうところに属していてこうなんだというので、こういうものとこういうものを、こんな条件にしたらこういうことができるから、こんな役に立つという書き方が特許請求の範囲になるんです。ですから、トレースのしようがない。なぜならば、余りわかればノウハウも全部ばらすということなんですね。
 ですから、私は、よくぞ島津製作所は彼に学会発表を許したという企業風土はやはりすごいことであると同時に、これは田中さんも言っておられるんですよ、後で述べますけれども。
 だから、ノーベル賞が目的じゃないですけれども、企業というのは、特許は出させる、ぼやっとしたものをできるだけ押さえていってということだけれども、学会発表なんというのはほとんどやらないという世界を持ってしまっている。だからノーベル賞なんて多分……。そうしたら、今までにノーベル賞に匹敵するものがなかったのかというと、私、そうではないと思うんですね。
 さて、そういう非常にすごいことだけれどもというときに、井上先生も言われていましたけれども、今の経済状況の中で、企業は研究投資をするのにどれだけの余裕があるのか、体力が物すごく落ちている。そして、研究テーマがあっても、開発という部分でいうと、例えば、一年以内にこういう目標でこれだけの予算でやれ、できなかったらやめておこうというふうなもので、本当にショートレンジで、目標の決まったものを開発して、あしたもうけなければいかぬということにどんどん絞られてきているという状況の中で、失敗も許されないし、余裕もない。そういうのが現実だと思うんですね。
 田中さんが取材のところで答えておられるのをちょっと見てみました。そうしたら、私は、特許や利益に余り貢献していませんねと。会社も会社で、商売が下手なのでしょう、特許をいっぱい出して技術を独占するような考え方がないんです。ただし、研究者をもっと評価する仕組みはあっていいと思います。すぐには利益に貢献しなくても、長い目で企業のためになる研究をどう評価するか。まだ売れないけれども、頑張ったというエンジニアをエンカレッジする仕組みが欲しい。そうすれば、日本のエンジニアはよく頑張るから、企業のあしたの飯はきちんとつくられるとか、企業研究者としては非難されるかもしれないが、今でも私は特許をとることに対して積極的ではない。特許をとるよりも仕事がおもしろいかどうかが重要で、おもしろい研究が続けられていることに満足をしていると。
 自分はかなり企業人としては珍しいということを言っておるわけですね。そして、企業がこういう人を許しているというのは、許していると言ったら変ですね、認めているという企業であることがすごい。
 企業研究者からノーベル賞受賞者を輩出するにはどうすればいいでしょうかという問いに対して、製薬会社の場合、新しい成果が出ても長い間マル秘扱いで対外に発表できない。この点を改善できれば日本の研究が先進的なことを示せるだろう。製薬会社の研究者が、自分の成果を後から研究した別の研究者に発表され、非常に歯がゆい思いをしたという話を聞いたことがあると。
 要するに、企業は、その部分では、きょうの法案の議論でもありますけれども、いわゆる権利化ということさえ、企業の中で、ブラックボックスに入れて独占しようというものが働いている社会の中で、しかし、そういうことをやっていると、要するに、知的財産権で守りましょうとか言っても、そういうこともしないというのが実態の中で、ノーベル賞が全部いいとは思いませんが、果たしてどういうふうにして日本の財産の知財を生み出していくのかということに、私は大変大きな問題を提起していただいているのではないかというふうに思っております。
 そういう意味で、喜ばしいことは間違いがないんですが、現実ということも含めて、私は、かなり深刻な問題が提起をされている、我々もその部分を受けとめなければいけないと思っているんですが、こういう状況を見て、大臣はいかがな御所感か。
 それで、最後にまとめ的に、これもある報道で載っていたんですけれども、田中氏のノーベル賞受賞は日本の企業内研究開発力の潜在力の高さを示した。企業内研究や研究者を正当に評価し、処遇する仕組みが日本では欠けている。技術マネジメント力を高めることが日本の企業の将来の成長力につながる。だから、日本の企業はやはり潜在的には非常に高いレベルで力を持っているし、そういう部分をうまくやれば日本の企業は本当にもっともっと強くなれるということを示唆していると同時に、しかし、現実にはそういうベクトルと逆に今全部置かれているという、教育環境も含めてあるという指摘だと思うし、その部分の御認識を当然お持ちだと思いますので、ぜひとも強く意識して取り組んでいただきたいということなんですが、御所見を賜りたいと思います。
平沼国務大臣 川端先生から大変含蓄のあるお話を承りました。
 田中さんの話でありますけれども、研究が好きだ、そういうことで、課長職にという話があったときに、自分は課長になると余り好きな研究ができないからと、こういうことで辞退されたというようなエピソードもあるようでありますし、また、お話を伺ったときに、非常に謙遜されて言っていたのかもしれませんが、日本にはまだまだ私以上の、そういうノーベル賞ものの技術者はたくさんいる、こういう認識も示されていました。
 ですから、この田中さんの受賞を機に、私どもはやはり、今までのそういう体制のあり方というものも見直すべき時期になっているんじゃないか。今回のこれを契機として、私は非常に大きな形で目に見えないインパクトがあったと思うんですね、企業サイドにも、それから研究者サイドにも、それから我々政治家サイドにも、学界サイドにもあったと思います。
 ですから、これはせっかくのいい一つの、出来事と言うとおかしいですけれども、非常にこれはエポックメーキングなことだと私は思いますので、みんながそういう意識を持って、今先生御指摘のように、日本にはそういうポテンシャリティーがあるんですから、それをやはり啓発するようなシステムづくり、体制づくり、こういうことをこれを契機にやっていかなければいかぬのではないか、そんなような私は気持ちがしております。
川端委員 ありがとうございます。
 そういう部分を含めて今度の基本法について若干御質問したいんですが、まさに今までは、日本は、資源がほとんどないわけですから、いわゆるよいものをたくさんつくって安く外国に売って国力を蓄えるという、まさに貿易立国でやってきたわけです。しかし今、安くできなくなった。ですから、たくさんつくる能力はあるけれども、たくさんつくっても輸出ができない。ぎりぎりよいものはつくれるのではないか。これは、今話のありましたような、要するに研究開発、技術力、そして物づくり、これが支えてきて、よいものというのはまだできる。
 しかし、研究開発にしても、大臣もお触れになりましたけれども、やや応用開発技術にシフトしていた。ところが、今は安くできない、だから売れない、企業は体力が落ちてくる。そういう中で、企業もへとへとになり、そして何よりも、貿易立国を支えてきた優秀で勤勉な勤労者が逆に路頭に迷うという事態を招いてしまった。このままだと、肝心の技術、研究力、技術力、そして技能さえなくなってしまうのではないかという危機的状況に来ているのではないかというふうに私は思うんです。
 そういう中で、今回こういう知的財産基本法ということで、これからの日本の生きる道はまさに、別に製造業だけではないですけれども、著作権も含めていろいろなことでの、要するに知的な財産をベースにしてすべてを考えていこうという位置づけで私はこの法案を、長年のいろいろな議論の部分を、本来、来年の常会かと私たちは予想していたんですが、前倒しでも出されたということは、私は高く評価をさせていただきたいと思います。
 そこで、この法律の体制としては、本部長は内閣総理大臣である、そして副にというか、大臣が並んでおられるんですが、パラレルといえばパラレルなんですが、ここは、国会の整理といえば整理ですけれども、平沼経済産業大臣が提案理由を説明され、当委員会で質疑をしているということ自体、私は、実質上のこの一番の中心におられる大臣、一番の責任の大きい大臣としては平沼大臣がその任にあるんだろうというふうに思いますが、簡単にその自覚と決意をお述べいただきたい。余り時間がないので、もう一言で結構です。
平沼国務大臣 本年十月十八日、本法案決定の閣議の場で、総理大臣から私に、国会対応については責任を持って行え、こういうことがございました。いずれこの法律が成立後にいろいろな役割が正式に決定される、こういうふうに思っておりますけれども、私は、やはりこの知的財産戦略の重要性は十分に認識しておりますので、私は、その認識のもとに、経済産業大臣として責務を全うして、そして責任を負ってやっていきたい、このように思っております。
川端委員 ぜひともよろしくお願いします。
 この日本が危機的な状況にあるとき、要するに救国チームをつくって、監督は総理大臣、しかし、平沼大臣は四番でエースでキャプテン、こういうことだと思いますので、頑張っていただきたい。
 そういう中で、この中の仕組みとして、これから細部とかはいろいろ、体制としては、メンバーは大体法律で書かれておりますけれども、というときに、実際に行政の中で、この法案の中の一番大きな柱である部分で、審査、審判、そして国際関係で一番コミットしている役所が特許庁だと私は思うんです。特許庁は、特に高度に専門的ないわゆる政策を担っておられる。ですから、当然ながら、実施部隊であることも事実なんですね。だから、現場密着型で、実施官庁としては当然なんですが、私は、政策官庁としての機能、権限を非常に大きく持っているという位置づけをされて当然だと思うんです。
 ですから、四番でエースでキャプテンが大臣であれば、私は、特許庁はキャッチャーで五番を、表に出ないですけれども実際はキャッチャーで五番で、実務だからといってブルペンで、プロ野球でいうと壁というのがありますよね、受けるだけという、決してそういう仕事でないと思うんです。だから、特許庁は非常に重要だと思うんですが、この位置づけは、私が申し上げたような大きな権限、機能を有しておられるということでよろしいんでしょうか。
平沼国務大臣 特許庁というのは、特許審査の迅速化でございますとか審判制度等の改革に向けた取り組みを積極的に推進し、知的財産権の保護の中核を担う組織でございます。
 こうした観点から、特許庁には、知的創造サイクルの確立と、我が国におけるプロパテント政策の推進を図る上で中心的な役割を担っていくことが求められている、このように思っておりまして、私も、知的財産基本法の成立と同時に、そういう自覚のもとに、特許庁がやはり国民の期待にこたえる役割を果たしていく、こういうことが必要だ、このように思っております。
川端委員 実施官庁だけではなくて、政策官庁として大きな責務を果たしていただきたいと心から期待をしております。
 それで、そういう中で、報道でも時々、日本の企業と外国の企業が特許の係争をやりというか、後で訴えられて莫大な賠償金を取られるという報道が間々あります。私は、企業が、ある種の悪意みたいなもので、インチキしてでも何とかばれなきゃということは本当にないと思うんですね。絶対特許には抵触しない、正当なものとしてやっていって、結果として訴えられて、係争して負けて何十億、何百億取られる。
 これは、これからの知的財産の中の非常に大きないわゆる訴訟という部分において、その力、訴訟力という、これは、事前の審査の部分での、係争が起こり得るときに関する備えと、実際に起こったときの訴訟力、これが実は非常に大きな生命線を担っているんじゃないかというふうに思うんです。
 そういう中で、訴訟全般ということですと、弁理士法の改正がことしこの委員会でありました。それは、いわゆる訴訟代理権というものが、一つは弁護士が受任した事件に限定をされている。それから、先ほど中村先生のお話がありましたけれども、訴訟代理権は、著作権とか発明者の権利には関係がないんだというふうになっております。だから実際は、そういう部分では、今までずっと過去にあった弁理士による訴訟補佐の制度とそんなに実態は変わらないのではないかという指摘もあります。
 そして、国際的なGATSなんかでいうのが、いわゆる相互の資格を認定し合おうという資格相互承認なんかでいうと、余りにもアンバランスになっている。アメリカのパテントアートニーとは合わないということになっていて、数も全く違う。こういう部分でいうと、訴訟の大事さというバックグラウンドとしての専門職の役割というものはもっと大きく踏み込むべきではないか。
 同時に、前回の弁理士法の改正のいわゆる訴訟代理権の問題は、日本全体の司法制度改革の中で論じられてきた背景があるわけです。これは、弁護士が業務をするというときに、弁護士のあり方というものの枠内において、その弁護士と隣接の法律専門職との関係というものにおいて論じられ、弁理士はこういう部分を代理権として持つべきだという議論で一定の結論が得られた。
 しかし、今議論しているのは、日本を支える根幹として、知的財産をつくっていくと同時に守っていこう、もっとふやしていこうと同時に守っていこうというときに、この部分の訴訟、紛争とかに対する備えと、それから交渉力、訴訟力というものをいかに強化するかというときに、弁理士の能力をどう活用するかというのは私は違う次元だと思うのですね。もっと大きな話だ。だから、そういう観点で、一度これはこの法律を機に見直すべきである。
 これは、いや、司法制度改革だから法務省がメーンになって、弁護士さんが中心というのではなくて、申し上げているように、経済産業大臣が、これをやる限りは、ほかの、それぞれ本部におられるわけですが、この部分で一度ちょっと整理をし直そうということをやられるべきだと私は思います。
 同時に、この件に関しては、前国会でもこれは附帯決議もされております。そういう部分でこれは非常に大きな問題で、知財の部分で権利をふやそうとか育成しようとかいうときにやっていたら全部ぼろ負けしていくと言ったんだけれども、言えばアウトの話なんですよね。そういう部分で、このことは非常に大きな、いわゆる限定解除に取り組むということは大事だと思いますが、姿勢と方向をお聞かせいただきたいと思います。
太田政府参考人 お答えいたします。
 本年の弁理士法改正では、弁理士に信頼性の高い能力担保措置を講じた上で特許権等の侵害訴訟代理権を付与することといたしました。
 現在のその後の状況を御説明しますと、この規定に基づきまして、日本弁理士会は能力担保研修を平成十五年五月に開始し、来年の九月中には終了する見込みでございます。その後、国が侵害訴訟代理業務試験を行いまして、この試験に合格した弁理士は、特許権等侵害訴訟代理業務を行うことができることとなります。
 川端先生御指摘のように、附帯決議で、「弁理士の単独受任と弁護士法との関係等を含めて、広範な論議を進めること。」という決議をいただいております。当省といたしましては、本附帯決議の趣旨も十分踏まえまして、平成十六年以降、具体的に訴訟代理権の業務が始まります。その業務の中で弁理士が侵害訴訟への関与をいろいろしていくと思いますが、その実績を見きわめつつ、訴訟をめぐる環境及び利用者からの要請等も勘案し、必要に応じまして、関係省庁とともに制度のあり方をぜひとも検討していきたいというふうに考えておるところでございます。
川端委員 日本を救う知的財産チームのキャッチャーがそんなことではだめですよ。それではピッチャーの球を全く受けられない、そういうことをやっていたら。
 今、だから申し上げたでしょう。司法制度改革の中で弁理士に訴訟代理権を付与しよう、しかし限定があるという部分をというときに、そういう中で弁理士の皆さんは、みずから研修をし、レベルを上げようというので今一生懸命たくさんの人がやっている。そういう姿勢、そういう意欲があり、能力を上げようという努力をしているというのが実績なんですよ、既に。
 だから、それを受けて、しかも、訴訟の弁護士さんを中心とした部分でどうあろうかという枠よりもっと大きな枠、これも大きくないとは言いませんよ、日本の社会の中で法律がどう国民のために生きていくのかということは大事なことだけれども、もう一度、国力を確保しふやしていくという部分に関しての訴訟、私がるる申し上げた部分に関してどう対応するかというのを、二年間、動き出してから、しばらくそれがどう動くかを見てからなんという話は、だから、エースで四番のピッチャーが投げたボールを全部ストライクでも逃がしてしまう。もっと決意を込めてやってもらわぬと困る。
 大臣、いかがですかと決意をお伺いして、終わりにしたいと思います。
平沼国務大臣 それは非常に大切なポイントでございまして、これからますます国際条理でそういった問題が激化していく中で、私どもは、できるだけ早くそういった整合性を求めてぴしっとやっていかなければいかぬと思っています。
川端委員 終わります。ありがとうございました。
村田委員長 小沢鋭仁君。
小沢(鋭)委員 民主党の小沢鋭仁でございます。
 法案のベースになりました知的財産戦略大綱を読ませていただきました。なかなかよくできているな、こう思って実は読ませていただいた。だれが書いたのかな、こう思いながら読みました。私が書けばもうちょっといいかなと思ったけれども、私の次くらいにすばらしいかな、こう思って読ませてもらったんですが、その中にありますけれども、何がいいかというと、いわゆる今の現状からまさにひもといているわけでありまして、その中に、いわゆる創造戦略、こういう言葉もあるんですね。
 実は、ちょっと手前みそで恐縮ですけれども、私は、戦後の日本の経済を考えたときに幾つかのステージがあったんだろう、こう思っている中で、例えば、戦後直後というのは焼け跡経済時代、こういうふうに思っておりますし、そしてその後はいわゆる高度成長経済時代があった。そして今は、ある意味でいうと、合理化経済の時代とでもいうのかな、もうみんな必死にリストラをしてと、こういうような時代で、ここを抜けてその次というのは創造経済時代だという話を実は何年か前からずっとしてきているんですね。
 まさに我が国の競争力を回復して、そして持続的な成長を遂げて、国民生活の豊かさを維持していくためには、やはり創造性といいますか、そういったものをしっかりやらなければいけない、まさにそういう経済を組み立てていくのが日本の次なるビジョンにならなければいけない、こうずっと思い、訴えてもまいりました。そういった意味で、この戦略大綱もすばらしいと思ったし、この法案の意義もそこに感じているところであります。
 そういう中で一つだけ、ちょっと横道にそれますが、ここの中にもあるのですけれども、産業競争力ということを考えたときに、まさに私が今言うような、創造性を持って、付加価値をつくって、そして競争力を持つ、これがまさに先進国型の、当たり前ではありますけれども、基本的なスタンスでなければいけない、こう思っています。
 例えば、昨今、円安政策というのがありますね。これは輸出入に関係しますから若干触れると、私は、日本というのは、これからアジアと中長期的にどうやっていったらいいのかというのが最大の、いい関係をつくっていくというのが最大の戦略でなければいけない。そのときに、世界第二位の経済大国で、なおかつ、今は依然として黒字国です。その黒字国が、政府が例えば円安誘導とか、政治家が少なくとも自国の通貨を円安に持っていくとか、アジアの人たちのことも考え、また自分たちの役割を考えれば、それはあってはいけない、こう思っています。
 そういった意味では、そういった形での競争力の回復というのはよくない、邪道だ。競争力の回復は、ここにあるように、創造性を持って、まさにそこでやっていくのが王道だ、こう思っていて、ぜひそうした意識で経産省も頑張っていただきたいと改めて思うところであります。
 そうはいったって、なかなか先端的なことは難しいよと言うかもしれませんが、しかし、考えてみれば、金を稼ぐ産業というのはすべてでなくていいわけでありまして、そういった意味では、現在の経済もそうですけれども、それぞれの経済には今最先端で動いているそれぞれの現実があるわけですから、そこのところの最先端で動いている現実のところをさらに半歩、一歩進めていく施策を政治がしっかり打っていけば、日本人の勤勉さと優秀性を考えれば、そう簡単に負けるはずはない、そう大変なことでもないというふうに思っているという所感を一言冒頭申し上げさせていただきました。それも、大綱が割と刺激的だったので、そんなことを思いました。
 質問に入らせていただきます。
 法案の中で、産学連携、こういう話が重要になってきます。私自身、その産学連携といったことで関係者に何人か話を聞きました。そして、いろいろ聞いてみますと、どうも産学連携が、企業の側が大手中心主義になっているのではないかという話をいわゆるベンチャー・中小の皆さんから聞きました。
 そこで、まず最初、質問なんですが、基本的なところですが、大学の企業に対する特許ライセンス、私の手元には、一九九四年以降、米国は約一万五千件、日本が二百二十三件、残念ながらこれは少ないなとつくづく思いながら見ていたのですが、きょうの質問の趣旨はその内訳ですね。
 この特許ラインセンスが、大手といわゆるベンチャー・中小と、どんな内訳になっているか、データがありましたら教えていただきたいと思います。
西川大臣政務官 今、大手と中小の問い合わせがありました。確かに数字の上では、今先生が御指摘になりましたように、アメリカは一九九四年から一九九九年まで累積一万五千四百八十件あります。日本は残念ながら、九八年から始まっておりますので、おくれて始まりましたので、それにしても数字が少なくて二百二十三件。なぜなんだということを私も皆さんに尋ねてみましたら、やはり始まったばかりというのが一つあるし、前に新聞でも報道されましたけれども、学者の皆さんが論文を出せば満足されておる、こういうことも影響しているのではないか、こう私どもは分析をいたしました。
 それで、その数字は先生が今御指摘のとおりで、日本のTLO、技術移転活動は、実施許諾件数は二百二十三件、十三年九月時点であります。
 以上です。
小沢(鋭)委員 政務官、その内訳はおっしゃっていただけましたか、大手と中小、大と小の。
西川大臣政務官 私どもも調べてみましたら、大企業と中小企業、件数でいきますと、大企業は三三%になりまして、中小企業は六七%、こういう数字になっています。
小沢(鋭)委員 私が予想していたより意外と中小企業のパーセンテージは多いなということで、それはそれで、私の思いからすればよかったなと思うのですが。
 やはり企業の皆さんの話を聞いていますと、いろいろな大学、あるいはまた、経産省は、産総研というのですか、そういう関係のシンクタンクをお持ちですが、そういったところの研究者も、当たり前でありますけれども、例えば企業化していくときは、ある意味では名前が通っていて大きな企業にどうしても行きがちになる。
 しかし、これからの日本のことを考えると、生きのいい、元気のいい、まさにベンチャーとかそういったところにどんどん道を開いていくような話が、まさに知的財産みたいな話をベースにしてそういったところを開いていくというのが大事になるのじゃないかと思うのですが、そういった施策をお考えになっているでしょうか。
西川大臣政務官 経済産業省は、平沼プラン、こういうことで今目標を設定して提唱しています。
 大学発ベンチャーは、三年間で一千社にする、こういう話でありますが、これを十四年、十五年、十六年と三カ年でやる。それで本当に一千社できるか、こういう話になりますが、現在までに四百三十四できておりまして、あと五百六十六をこの三年間で頑張る、千社をつくっていく、こういうことを計画目標にしています。
小沢(鋭)委員 ぜひ、その中の具体的な話をこの知的財産権に関係する話に結びつけていただけるような施策を、今後、この基本法ができましたらとっていただきたい、こう要請を申し上げておきます。
 それから今度は、ちょっと視点を変えて特許の話なんですが、特許の出願件数というのは世界でトップで、何か、四十四万件だ、こういうふうに聞いているんですね。しかし、いわゆるそれだけ世界トップの出願がどうも生かされていないんじゃないか、せっかくそれだけ特許があっても生かされていないんじゃないかという気がしますが、そこはどんなふうにお考えですか。
高市副大臣 小沢先生おっしゃいましたとおり、出願件数、平成十三年で四十四万件、アメリカが二十九万件という形でございます。
 今の特許の保有件数で申し上げますと、これは平成十一年のWIPOの統計なんですけれども、アメリカが百二十四万件、日本は約百万件でございます。この中で三十四万件は実施されていると。そうすると、残る六十六万件のうち約三十二万件は、他社にライセンスを行う意思がない、いわゆる防衛特許でございますから、六十六万件から三十二万件を引いて、その残る三十四万件ですね、これは開放特許でございます。だから、利用されていない開放特許ということになりますので、経済産業省の方では、この開放特許の流通を通じて技術移転とか新規事業の創出を促進しなければいけないということで、特許流通促進事業というものを展開しております。
 具体的には、独立行政法人の工業所有権総合情報館というところが主体で特許の提供や導入の仲介を行う特許流通アドバイザーの派遣、これは、地方自治体とかそれからTLOに派遣をいたしております。それから、特許流通データベースの整備、こういった事業を行っております。今後とも努力をしてまいりたいと思います。
小沢(鋭)委員 今の特許流通促進事業ですか、それも大いに結構かと思いますが、これまたいろいろな皆さんの話を聞くと、要するに、事業化するのに金がないという話になるんですね。ですから、せっかく特許としてあるものも、それを企業化していくのに生かせない、ここがやはり一つのネックになっているわけですね。
 それで、米国というのは、御承知のように、直接金融と間接金融、直接金融のマーケットが大変大きくて、そういったものを応援するファンドがもう山のようにあるわけですね。日本は、そういった直接金融が極めて弱い、そしてまさに間接金融は、ある意味では今大変危機的な状況にある、こういうことですから、そういった意味では、せっかくのいいものを持っているところもなかなかだめなんです。
 それで、さらにもっと言うと、いろいろな制度があっても、これはまた中小企業金融の話になっちゃいますが、一つ一つの枠はあるんですけれども、一つ一つの枠の中には足りて、プロジェクト金融的にはうまくいっていても、トータルで見ると、その規模に対してこの企業はえらく与信額が大きいねという話で、信用保証ができないとかいう話になってしまう。だから、一つのすごく生きのいい企業が、こっちのA事業、B事業、両方やりたい、こう言っても、合わせるとえらく融資額が多くなっちゃって、ちょっとなかなか融資できませんねみたいな話でとまっちゃっている例が幾つかあるんですね。
 ですから、元気がない、倒れそうな企業を起こすのも大事なんだけれども、本当に元気で、やろうとしている企業にちょっと手を差し伸べれば、まだ幾らでもやれる部分が残っていると思うんですけれども、そういったことをぜひこの基本法案をベースに考えてもらいたい、そういうファイナンス機能をですね。ファイナンス、財政上の措置というのが一行あるだけなんですね、この法案は。金目の話が基本法に入るわけじゃありませんから、別にそれで文句を言うわけじゃありませんが、一文字あるだけなんです。そこをもうちょっと考えて、現実的な話にしてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
西川大臣政務官 確かに、御指摘のように、今までのように、土地を担保にお金を貸す、こういうことであれば今でも大丈夫な企業はたくさんあると思うんですね。今どうかといったら、確かになかなか金が借りられない、こういう状況の中でどうするか、こういうことになるわけでありますけれども、政府系の中小企業の金融機関でやっているということでありますが、先生からいえば額が小さい、こういうことになるんだと思うんです。
 その中で、一つだけ、中小企業金融公庫がやっております問題で、土地担保を徴求せずにやろう、こういうことで十二年に制度が発足した、こういうことになっているわけです。それで、どういう仕組みだと。今、保証をつけてくれといっても、なかなか乗る人はおりませんが、この中小企業の問題については、本人の保証はとるけれども第三者はとらない、こういうことでありますから、この額がしっかり使えるようになればある程度応援をできる、こういうことになるんだろうと思うんです。
 それから、リスクのあるベンチャーに投資する人はなかなかいません。それは事実だと思います。投資をするときも、投資組合をつくってやるわけですけれども、有限であれば出してくれる人もいるんですけれども、今までのように無限責任だ、こういうことになったらだれも怖くて出さない、こういうことになると思うんです。
 そこで、この間衆議院では成立しましたけれども、挑戦支援法の中で有限でいこう、こういう話になってきましたので、これらも使っていきたい、こう思っておりまして、まだまだ制度上は十分でないところもあるかと思いますが、私ども、そういうことで取り組んでいきたい、こう思っています。
小沢(鋭)委員 ぜひ、今の方向を本当に肉づけしていただいてお願いしたいと思います。
 繰り返しになりますが、米国は御承知のようにそういうのがもう山のようにあるわけでありまして、なかなかそれを日本が制度金融だけで全部補うというのは無理だとは思いますけれども、少なくともそういう方向をしっかりと政府が示すことによって、民間の方もそういう意識が出てまいる、こう思うものですから。実態的にはもう本当に、恐らくその金額がけた違いに違うはずですから、この知的財産を生かして企業化していくという話に関しては。どうか、そのベースをできるだけ膨らませる、そのとき、特に資金力が不足している中小のところにも目を向けて、そういったところを育てるんだ、こういう話でお願いをしたいと思います。
 それから、では視点を変えまして、対外関係、一点御質問をさせていただきます。
 この知的財産戦略大綱の中にもあるんですが、高橋是清さんが米国へ行って、知的財産を大事にしていることに感銘したとか、いろいろな、また先輩の皆さん方の話の中にも、どうも米国がすごく知的財産先進国的なイメージで話をされているやに私受けとめたんですが、いろいろ何か調べてみますと、どうもそれは、確かにそういう部分もあるけれども、例えば特許は先発明主義で、一国だけですよね。これも、ハーモナイゼーションということで考えれば、何とかしてもらわなきゃいかぬのじゃないか、こう思う。
 それから著作権の方も、インターネットを含めて、そういったものの保護というのはどうも薄い。だから、知的財産を大事にするというよりも、自分たちの国にとって都合のいい話は一生懸命しているというふうに何か私は受けとめるんです。
 だから、そういうことに対して、経産省として、あるいは著作権の方は文科省でしょうか、逆に言うべきことはしっかりと言うという話が必要だと思うんですが、その対応はちゃんとできているんでしょうか。
高市副大臣 確かに、アメリカだけが先発明主義で、ほかの国は先願主義、要は、出願した順番ですね、それが早い方が権利者となるということですので、結局、アメリカの先発明主義のもとでは、特許権者として事業を行う場合でも、後で真の権利者が存在したということで権利が逆転してしまって、結果、高額なライセンス料を払わなければいけないとか、それから、安定的に事業活動ができないといった弊害が出てきております。
 このハーモナイゼーションに向けての動きですけれども、現在、世界全体の枠組みとしては、WIPOの特許法常設委員会で、特許制度のハーモナイゼーションということを実現するための条約策定が検討されております。ところが、これはまだあと数年かかると見込まれております。
 日米二国間で、例えば日米フレームワーク協議ですとか日米規制緩和対話などの場を通じて、これは一貫して先願主義への移行を訴え続けております。
 アメリカは、もうお亡くなりになってしまいましたけれども、ブラウン商務長官が、一九九四年の一月の時点では、とにかく先発明主義を堅持するというようなことをおっしゃって、WIPOの中での話し合いについても応じない、この動きがとまっておりましたけれども、最近はちょっと改善されてきたのかなと。
 二〇〇二年六月二十五日の日米規制イニシアチブ、日米両首脳への第一回報告書というものの中では、アメリカ政府は、先願主義への移行という日本政府の要望を引き続き検討するということで、少しやわらかくなってきたかなという感じはいたしております。
銭谷政府参考人 米国の著作権制度についてのお尋ねでございました。
 先生御指摘のとおり、米国の著作権法は、保護水準の高い日本やEU諸国と比較をいたしますと、実演家の権利を含む著作隣接権の保護が不十分であって、一部には、著作権関係条約上の義務を果たしているのかということについても疑問があるとの指摘もあるわけでございます。
 ちょっと具体的に申し上げますと、米国の著作権法は、インターネットへの対応あるいは実演家の権利、著作人格権など、必ずしも保護が十分でない点があると私ども認識をいたしておりまして、我が国は米国と、日米規制改革・競争政策イニシアチブの枠組みのもとで二国間経済協議が行われているわけでございますけれども、この中で米国に対してこのような点を提起しているというところでございます。
 我が国としては、このような二国間の協議あるいは国際条約の審議の中で、途上国、先進国における著作権制度の国際的なハーモナイゼーションに努めてまいりたいと考えております。
小沢(鋭)委員 米国は最大の友好国ではありますけれども、ぜひ言うべきことは言っていただかないと、日本のまさに国益が守れない、こういうことでありますので。そういう意味ではかなりしたたかにこういった点では向こうはやってくるわけですから、そこは本当に我が国としてもしっかり対応して、そしてフェアな土俵で闘うという話にぜひ努めていただきたいと御要望を申し上げます。
 最後に、研究開発環境の整備という観点でお尋ねをしたいと思います。
 ちょっとこれも話の視点を変えて、ことしの夏、たまたま私アイルランドに行かせてもらう機会がありまして、アイルランドに行きましたところ、いわゆる日本からの研究開発のための会社が何社か、数多く出ておりました。製薬会社の方が多かったように思いますが、いわゆるバイオの研究なんでしょうか。
 アイルランドという国は、イギリスの西の方にあって地味な国でありますが、金融に関しては、金融特区を設けて、いわゆるロンドンの金融センターの一部を肩がわりするというような話だとか、今回、そこの、ある意味では研究開発型の町づくり、地域づくりというのはどこまでかというのは、そんなに詳しく見られたわけではないんですけれども、例えばそういう話をしているだとか、なかなかユニークで、発展をここ十年遂げている国であります。
 また、生活環境も、緑に覆われていてすばらしい環境で、特にゴルフはリンクスがあって、これまた大変すばらしい、こういうことですね。
 それで、要は何を言いたいかというと、研究開発環境といったときに、いろいろなことがあるんでしょうが、経産省として、今の日本の経済を考えたときに、少しダイナミックな構想を持ってもらいたい。それはどういうことかというと、やはり研究拠点、ハブとかそういった形でいわゆる大きな地域開発、それを少し打ち出したらどうか。
 このデフレの時代であります。先ほどのお話のように、空洞化の時代であります。みんな外へ出ていく、こういう話ばかり心配している。そうではなくて、アイルランドというあの小さな国でも、そういった、ある意味では知恵を使って呼び込んでいるんですね。金融セクターを呼び込んでいる。そういう研究開発型の企業を呼び込んでいる。そこには、やはり特許という話もかなり大きい。知的財産がベースにあるから、そこに行って常日ごろからそういう環境をつくっていないとやれないからということでやっている。
 ですから、知的財産というのは、ただ単に我が国の経済をよくするだけではなくて、外から呼び込む機能もあるんだ、こういう観点に立てば、まさに拠点、ハブというような発想で、世の中をぱっと明るくするようなビジョンを描くべきだ、私はこう思っているんですね。
 アメリカなんかも、例えば医療をベースにして、メディカルコンプレックスという話が、ある意味ではそういう大きな都市をつくっていますよ。ですから、やはりそういう観点でぜひ取り組んだらどうか、こう御提案申し上げますが、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 私、そのとおりだと思っております。
 一つは、今、小泉内閣のもとで、経済特区というのも、それは一つのそういう方向を目指したものだと思っておりまして、経済産業省といたしましては、ここは、地方や民間企業から出てきたものに対する規制の緩和については、私どもは満額回答で対応する、こういう基本姿勢を持っています。
 それから、委員も御承知のように、一九九八年に制定されました新事業創出促進法に基づきまして、私どもは、高度研究機能集積地区、こういうものを設けて、これは地域振興整備公団によってインキュベーター整備等の幅広い施策が展開をしております。
 また、これはもう小沢先生もよく御承知のとおり、地域産業クラスター計画というのも、そういう意味では一種のコンプレックス、クラスターですから、そういう意味で、これは全国十九拠点の中で二百以上の大学、四千社の企業、そういうものの固まりができてきております。
 ですから、おっしゃるとおり、空洞化ということばかり言わないで、やはりそういうものをぴしっと整備して、呼び込んで、そして産業競争力、いわゆる活性化をやっていくことは、日本が避けて通れない大切な課題だと思っておりますので、私どもとしても、力いっぱい取り組んでいきたい、こういうふうに思っています。
小沢(鋭)委員 ぜひ今の方針で、同時に、具体的に絵もかきながらやっていくと元気が出るんですね。
 やはり、デフレの時代というのは、倒産と失業と自殺の時代で、暗い時代ですよ。本当に恐慌一歩手前だ、私はこう思っているんだけれども、ここを切り開いていくのに、昔は、アメリカのルーズベルトがニューディール政策をやりましたよね。日本が今、日本版ニューディール政策をやるんだったらば何を使ってやるのかという発想ですね。まさに、こういう知的財産権みたいなものを使って、そして、需要を起こし、土地を動かし、そして海外からも、特にアジアから人を呼び込むというビジョンをぜひつくっていただきたい。
 私のところには資料がいっぱいありますから、もし必要でしたら幾らでも御提供申し上げますので、御要望して、終わらせていただきます。ありがとうございました。
村田委員長 後藤茂之君。
後藤(茂)委員 後藤茂之です。
 それでは、経済金融政策が最近迷走しているように私は思いますので、まず経済政策について伺いたいというふうに思います。
 不良債権の処理、資産査定の厳格化というのは、これはもう重要なことは言うまでもありません。これをしていかないと金融の仲介機能を回復するということはできませんし、また、資本が過少になったり、体質の悪い金融機関は、例えば追い貸しをしたり、いろいろな適切な対応ができないとかいう意味で、リスクをやはり管理できない。そういう意味では、資産査定の厳格化ということは、これは推進すべきだと思います。
 しかし、私は思うんですが、金融機関の資本の健全性確保の問題と、金融機関と取引先との間の負債権、不良債権の償却の問題を、もしこれを同時に解決を強行すると、そうして不良債権の直接償却を強制的に追い込んでいくというような金融政策をとったならば、私は、日本の経済というのは死んでしまうというふうに思っております。
 特に、不良債権の内容を考えてみると、六割は中小企業の債権でありますから、そういう債権というのは、大企業のように再生をしたりリストラをしたりというようなわけにはなかなかいかないものでありまして、そういう意味では、税効果会計の縮減の問題とか、最近少しビーンボールが過ぎるのではないかというふうに私は思うわけであります。
 もちろん、最終的に資本の健全性確保の問題はありますけれども、しかし、今どういう事態であるのか。それから、例えばその過程で、アメリカと単純に比較して、一〇%の資産に対する制限がついているかついていないかとか、そういうことではなくて、例えば無税償却がどのぐらい認められているのかとか、あるいは実際にそうやって償却を認めるときに回収可能性の認定がどうなっているのかとか、期間がどうなっているのかとか、そういうことをやはりトータルに、丁寧に議論していかないと非常に危険だというふうに思います。
 そして、何といってもやはり投資と消費を回復させるということが大事であって、そのためには、構造改革というのはやはり進めていかなければいけないというふうに思います。しかし、デフレ経済のもとで投資と消費を回復させるということは、これは非常に難しいです。例えば今一%ぐらいのデフレですけれども、十年であれば一〇%になります。そうなると、資産デフレ効果を考えても、例えば十年後までの売り上げの予測や収益の予測を見ても、消費や投資が出てくるような元気は出てこない。ですから、そういう意味では、デフレ対策と構造改革政策をあわせてやらなければいけない。
 失われた十年の経済政策のいろいろな失敗や反省もあるわけですけれども、はっきり言って、財政政策や金融政策は従来型の政策がきかない状況になっています、流動性のわなというか。しかし、そういうときに、では、どうやってデフレ対策をやるかということですが、私は、通常のときであればそういうことは好ましくないと思われるような政策であっても、例えば資産市場にアプローチするようなそういう政策をやはり今ある程度とらなければいけないのではないか。
 それで、これまで一年間ぐらい、例えば日銀のETFの購入だとか不動産への資金の供与だとか株式取得だとか、あるいは政府系金融機関についても、二年とか三年期限を限って、政治決断である程度焦げつきを認めるというようなそういう対応をとる。この心は、要は、無審査無担保で金を貸し続けるというような特別保証というのはやはりよくない、ある程度きちんとしたスクリーニングをかけながら、しかしリスクのあるところにもう少し、中小企業に対して応分の負担をしてもらいながら金を供給していくためには、この短い期間にそもそも論の理論を言っていたのではだめなのではないかというふうに申し上げてきた。
 例えば、円安・ドル高に向けてやはり誘導すべきだというときに、構造的に円がオーバーバリューになることの一つの理由として、公的部門に集まった金が国内にとどまる。日本の国債の購入に当たっている分を、為替変動リスクとかいろいろ言うけれども、やはりそこは、外債の購入だとか、もう少し積極的な円安誘導政策をやるべきではないか、そんなようなことをこれまでに申し上げてきたわけですけれども、ここへ来て、その必要性はますます私は高まってきているというふうに思います。
 済みません、私、ちょっと長い演説になりました。
 それで、大臣に伺いたいと思うのですが、私は、構造政策とともに、金融の正常化とともに、デフレ対策のパッケージはやはりどうしても必要だと思います。今私が最後に言った奇手奇策はちょっと忘れていただくとしても、デフレ対策が重要である。そのデフレ対策について、経済産業大臣として、これからもっと大きな声を出して発言すべきではないかというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 お耳に達したかどうかはともかくとして、私も随分主張をさせていただいたところであります。
 私も先生と同じように、不良債権というものはやはり処理をしていかなければならない、これは、やはり処理をすることは必要なことだと思っております。しかし、やはり車の両輪でございまして、不良債権の処理だけでは、さなきだに今デフレ、こういう状況ですけれども、それをさらに加圧することになるわけであります。
 そういう中で、一つのいわゆる不良債権処理問題が出たときに、私は、経済財政諮問会議の場ですとか関係閣僚会議の場ですとか、あるいは一部の閣僚が集まった場等で発言をさせていただいたのは、御指摘のとおりのことを発言させていただきました。
 例えば税効果会計に関しましても、これを、例えばアメリカの会計基準や税制を、全く整合性を持たないで一律一〇%以下なんというようなことを導入したときに、これは我が省の試算でも四十七兆ぐらいの貸しはがしが起こる可能性がある。そうなるとこれは大変なことになるんじゃないか。そういうことで、今皆様方の目に触れるような、ある意味ではちょっと穏便な形に相なっています。
 そこで、デフレ対策というのは当然必要なことでございまして、私は、一つは、やはりセーフティーネットをしっかり構築することだと思っています。そういう意味では、特に中小企業は非常に今厳しい状況にありますから、この不良債権処理に伴って環境的には中小企業はますます厳しい状況に置かれますので、これに対してはしっかりとした、しかし、御指摘のように、異例特例の措置でやった特別保証制度というのは、おっしゃるとおり、私は、そのあり方を変えて、しかしやるべきときには手厚くやる、そういう形でやっていかなければいけない、このことは私は声を大にして主張をさせていただき、そして今回の対策の中にも、セーフティーネット対策というのは十分やる、こういう形で盛り込まれたところであります。
 それからまた、従来型の公共事業とかそういうことではなくて、同時に、ある意味ではマクロ的な政策も、車の両輪ですからやはりやっていかなければいけません。その中で、私が今回の緊急の対応策の中でも我が省として主張して盛り込んできたところは、効果が上がる政策減税、そういったものを思い切って、そしてある程度の規模でやるべきだ、そういうことによって、逆にそういう企業の投資意欲だとか研究開発意欲だとかを高めていく。
 それと同時に、御指摘のように、今資産デフレでございますから、土地だとか株が下がっておりますから、これを、土地を流動化して、さらに株も、株が上がるような、そういうインセンティブを与える税制もあわせて、やはりマクロ的な観点でやっていかなければいけない。
 ですから、おっしゃるとおり、私は、そういう考え方を今までも相当声を大にして主張してまいりまして、これからもっとお耳に届くような形で頑張っていきたい、このように思っております。
後藤(茂)委員 今、大変心強い御発言でありまして、そのことについては安心しましたが。
 ということは、私も、セーフティーネット政策はどんどんやらなければいかぬと思いますし、それから新産業創出の関係のいろいろな政策もどんどん打っていくべきだと思いますし、税制の問題もあると思いますし、それからいろいろな、都市再開発の問題だとか、非常に効果的な政策もあると思います。
 ということは、やはり補正は早くやった方がいいのではないか。そして、その規模としても、いろいろ、三十兆円の国債枠というのは、もちろん、ばらまき型のいわゆる従来型の景気対策がきかないということを国民にアピールするという意味ではこれまで効果的だったかもしれませんが、ここへ来て、今おっしゃったようなさまざまな政策について、やはり補正を早くやるべきではないか、私はそういうふうに思っております。
 私は一つ提言しますが、総理は割合に要求ベース、希望ベースの話をどんどんされます。ですからこの際、経済産業大臣も要求ベース、希望ベースの発言をどんどんしていただいた方がいいのではないかというふうに思っておりますけれども、補正予算を早く実現すべきではないかということに対して、大臣の御発言をいただきたいと思います。
平沼国務大臣 改革を加速させるための総合対応策、これを取りまとめました。当面は、これの実現に向けて全力を挙げていくことだと思っています。
 小泉総理御自身は、今開かれております臨時国会の中では補正予算は組まないということを明言されておりまして、閣内にいる私としては、その方針に従って全力を挙げていくことだ、このように思っています。
 ただ、やはり事態は非常に緊迫の度を加えておるわけでございまして、ある意味では政治家としての発言として、通常国会、一月に召集されますけれども、その冒頭にやはり思い切ったそういう補正予算を組むべきではないか、こういうことを記者会見等でも私は実は発言をさせていただいています。
 そういう中で、小泉総理も、状況を見て柔軟かつ大胆に対応する、こういうことを明言されておりますので、今、後藤先生御指摘のような、そういう状況の中でそういう局面が出てくるのではないか、そういう基本的な考えを私は持っている、こういうことでございます。
後藤(茂)委員 ますます声を大にして、それではよろしくお願いします。
 本当に、中小企業が年度末を越える、あるいは日本の経済が何とかつつがなく年度末を越えていくためには早い弾込めが必要だ、そういうふうな事態に今急速に、最近になってやはり陥ってきているというふうに私は思っております。
 さて、知的財産基本法についてでありますけれども、御承知のように、基本法は理念や基本的枠組みを定めるものでありますから、具体的な法制度改革は通常国会以降やっていくということになるわけでありますけれども、法改正やいろいろな制度見直しをともかくなるべく早くに、そして広範に実現していく必要があるだろうというふうに思っております。
 まず第一に、国際競争力の強化の観点からひとつ伺いたいと思います。
 我が国の競争力を確保していくためには、技術力を向上させること、そして製品やサービスの付加価値を高めていくということが必要で、特に先端技術の産業分野では、アメリカやヨーロッパその他との異常に激しい競争をやっています。
 一方、技術が成熟した産業や、あるいはそういう時代になってくると、例えばブランドだとかデザインだとか、そういう無形の資産の価値を高めて、そこから収益をきっちり確保していくということも大切になると思います。それで、企業のあらゆる活動の中で、技術にしても、ブランドにしても、デザインにしても、ノウハウにしても、そういうありとあらゆる無形の価値を収益の源泉として保護する、そして我が国の競争力を確保していくということは、国家的な戦略の基盤になっているというふうに思います。
 前、特許法の改正のときに、通常国会のときにも大分お話をさせていただきましたけれども、米国では、一九七〇年代の終わりから八〇年代にかけて、産業競争力強化政策としてのプロパテント政策というのを強力に推進しました。それには三つの流れがあって、メダー委員会を出発点とするCAFCの設立や、特許の保護の範囲の拡大とかという司法省や裁判所の動きと、カーター大統領のときの産業技術革新政策に関する教書を初めとした特許法の関係、特許庁を中心としたいろいろな動きと、それからヤング・レポートを出発点とする知的財産政策と通商政策のリンケージを図るというUSTRの動きとか、さまざまあったと思います。
 私は、こういうアメリカにおけるプロパテント政策というのは、非常に国家戦略性を持って機動的に推進されてきて、これは非常に参考になるというふうに思っているわけであります。日本も、基本法をつくって、そういう考えに従って進もうということで今始まっているわけでありますけれども、今後、具体的に本当に個別制度についてどうしていくのか、法改正についてどういうふうにしていくのかということは、これは非常に重要な問題になります。
 そういう意味では、大臣に、今後の個別制度の見直しや法改正に対してどういう覚悟と決意で臨んでいかれるのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
平沼国務大臣 大変重要な御指摘だと思います。
 本法案は、我が国における知的財産の創造、そして保護及びその活用に関する基本理念等を明らかにするとともに、内閣に知的財産戦略本部を設置いたしまして、本部が知的財産政策に関する推進計画を定めることを規定しているわけであります。
 ただ、知的財産立国の実現を図るためには、この基本法を制定するだけでは当然のことながら十分ではございませんで、個別制度、これは議員御指摘のとおり、個別の制度の見直しというのは不可欠なことだ、このように思っています。
 そのために、今後、本部は、具体的な目標や達成時期を付した上で、関係府省の知的財産関連施策から成る推進計画を作成することにいたしております。その中で、個別制度の見直しを含めまして、関係府省が集中的かつ計画的に取り組む事項をしっかりと盛り込んでいかなければいけない。
 また、個別法の改正についてでございますけれども、これは、次期通常国会に、特許法、当然でありますけれども、著作権法、さらには不正競争防止法、民事訴訟法などの改正を行って、今そのための準備を鋭意取り進めている、こういうことでございます。
後藤(茂)委員 そういう意味で、しっかりとした工程管理をしていただいて推進をしていく必要があるというふうに思います。
 知的財産権に関連して、ちょっと一般的な話になりますけれども、私は、常日ごろ大変思っていることがあるので伺いたいと思うんですが、物づくりの競争力の確保という観点からいうと、現在企業がとっている経営戦略には非常に大きな問題があるというふうに私は思っています。
 例えば、具体的にちょっと挙げると、短期的な視点から、例えばコア技術を中国に持っていってどんどん流出させるというか、ぶちまけてきてしまう。本来だったら、技術供与戦略というのをきちっと確立するべきだ、それがなされていなかったりする。
 あるいは、今こういう非常に競争の激しい時代、それも国際競争の激しい時代になったときに、競争力のある分野で企業というのはもっとたくさんしっかりもうけて、そのもうけた利益を新しい技術開発や新しい産業の展開に使っていく必要があるわけですけれども、どうも日本の場合は、不効率部門や不採算部門を放置して、それですべての日本の企業がそこへ、仕事をいろいろなところでやっているわけで、例えばリードタイムでもうかるようなそういう分野にもみんなで寄ってたかって入っていって、まず収益のパイを小さくする。収益のパイを小さくした後、その小さくなった収益を、今度は自分の会社へ持ってくると、不効率部門や不採算部門で使っている、こういうことでは、本当にしっかりとした競争ができるんだろうか。
 私は、総合電機メーカーが、じゃ日本以外の先進工業国の一体どこにあるだろうか。昔はあったんです。しかし今、日本にしか恐らく総合電機メーカーというカテゴリーはなくなってしまったのではないかと思います。私は、別に電機業界がサボっているとかと言っているんじゃありません。一番中国との間で厳しい目に遭って、一番企業努力をしている、そういう業界だとは思いますけれども、しかし、それでもそういう状況です。
 あるいは、模倣品製造企業へのいろいろな対応のおくれとか、私は、そういう意味では、大変経営戦略というものをもっと持っていかなきゃいけない。知的財産を核とした企業戦略の確立ということをやっていかないと、国際化の中で十分な競争ができないというふうに思います。
 それで、大臣に、これは政治家としての大臣に伺うわけですけれども、一般的に言って、日本の経営の企業戦略性はどうして弱いんだろうか、そのことについてちょっとお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 我が国の企業におきましては、一九八〇年代までのいわゆる右肩上がりでどんどん経済が成長した、そういう成長期におきまして、製造業を初めとして、売り上げ規模を最も重視する量的拡大志向型の経営が満遍なく行き渡りまして、利益率は相対的に軽視されてきたという側面があります。
 しかし、九〇年代に入って、国内市場の期待成長率が頭打ちとなる一方、グローバルな競争が激化するなど、御指摘のように、企業を取り巻く環境は大きく変化をしてきました。
 したがいまして、今申し上げたようなそういう土壌の中でそういうことがあったと思っておりまして、例えば、いわゆるITというものが非常に、日本の中でも一とんざをした。その中でも半導体というものが、そういうIT産業自体も水平的に、具体的に挙げますと、NECにしてもあるいは富士通にしても、半導体から最終製品まで一貫してやる、そういう中で分散をしてしまって、気がついたら、半導体を集中的につくる韓国のメーカーやアメリカのメーカーにおくれをとってしまった。
 ですから、やはりこれからは選択と集中をしなければいかぬ、こういう発想の転換を、政府もしましたし、企業自体もしてまいりまして、一つの例では、半導体に関しては、やはり製品化にとって、次世代の半導体で、もう各社がそれぞれやるんじゃなくて、そういういいものをつくるためには、四つひとつ合わせてその部分を集中してやる、そのためには、国もそれに対してはしっかりと支援をしていく、こういう選択と集中ということをやっていかなければならないわけでございまして、今申し上げたように、そういう戦後の右肩上がりの体質の中で、そして日本はその中にどっぷりとつかってしまって、そして選択と集中というものに対しておくれをとった、こういう背景があったんじゃないか。だから、その反省の上に立って、これから選択と集中というものをしっかりとやってそれぞれ競争力をつけていく。
 私は、まだまだポテンシャリティーがありますから、ここをしっかりやっていけば、必ず日本は、また二十一世紀、この世紀も持続的な経済発展を遂げることは可能だ、それをやはり実現していかなければいけない、このように思っています。
後藤(茂)委員 私も日本の復活は信じておりますし、そういう意味で、選択と集中というのを一体どうやって実際の企業経営やあるいはそういう発想としてまとめていくかということは、これは大きな現下の産業政策でもあり、国家戦略だというふうに思います。そういう意味では、資本の論理を復活させるということが非常に大事だというふうに思っております。
 せっかく来ていただいたので、大学機能の強化の問題についてちょっと伺いたいと思います。
 私は、例えば知的財産戦略の問題にしても、このことについてはきょうは伺いませんが、あるいは地域クラスターの問題にしても、大学の機能の問題というのは非常に重要だというふうに思っております。大学の経営のあり方や意識改革が私は非常に強く望まれていると思います。
 また、特に今回の知的財産との関係においても、大学においてはTLOの制度も構築されているわけですけれども、知的財産の出願件数というのは米国と比較しても圧倒的に少なくて、民間に対する技術移転も十分に行われていないというふうに私は思っております。
 こういう問題に対応するためには、大学と企業の共有特許制度を見直す、契約による弾力化だとか、論文をベースとした特許出願の容易化とか、グレースピリオドの延長、これはアメリカが一年なのに対して日本は六カ月ですね、それを延長するとか、大学における知的財産の機関帰属の問題、そういった問題をきっちりやっていく必要があるだろうというふうに思っております。
 知的財産の分野における大学の戦略性確保のために知財制度で何が必要と考えているのか、文部科学省に伺いたいと思います。
石川政府参考人 大学におきます知的財産戦略といいましょうか、これに関するお尋ねでございますけれども、我が国の知的財産戦略を考える上では、やはり知の源泉たる大学におきまして、研究者個人の取り組みはもとよりでございますけれども、各大学がその重要性を十分認識して、大学として組織的な取り組みによって知的財産の管理、活用を行っていくということがまず大変必要であろうと私ども考えております。
 このため、今後予定されております国立大学の法人化を契機といたしまして、知的財産の取り扱いを、原則個人帰属から機関帰属へと大きく転換することによりまして、大学の研究成果の適切な管理及び事業者への円滑な移転など、知的財産の有効活用を一層推進したい、このように考えております。
 また、このような考え方のもとに、平成十五年度概算要求におきましても、全国数十の国公私立大学を対象といたしまして、大学における知的財産の管理、活用を戦略的に行うような組織体制の整備、機能を強化するというようなことを目的といたしまして、外部人材の活用等も含めました大学の知的財産本部整備事業といったようなものなどを積極的に盛り込んでいるところでございます。
 文部科学省といたしましては、今後とも、大学において知的財産が戦略的に管理、活用されて、社会への還元が適切に行われますように積極的に取り組んでいきたい、このように考えております。
後藤(茂)委員 ぜひ積極的に取り組んでもらいたいと本当に思います。
 さて、時間がないので次へ行きますが、知財の問題というのは、ネットワーク社会における課題という点からも非常に大きな重要な問題だというふうに思っています。特に、知的財産制度については、ネットワーク上流通するコンテンツの創作を促すという点や、それからネットワーク上での事業活動の信用性をきちんと保護するという点からも非常に重要です。
 ネットワークというのは、御承知のように、これは国境を容易に越えて事業が行われる社会ということになりますけれども、そういうネットワーク社会において、我が国の知的財産権の侵害行為の全部あるいは一部が海外で行われる、そして我が国の知的財産権が国内で侵害が生じている、そういうような場合というのも今後どんどん発生してくるだろうというふうに思っておりますし、現に発生しております。そもそも、こうしたときに、日本の法律上こういう行為というのは違法と評価されるのか、あるいは裁判管轄は一体どうなっているのか、その執行の問題は一体どうなっているのか、これは非常に大きな問題だというふうに思っております。
 我が国として、この問題に具体的にどういうふうに対応していくつもりなのか、その対応方針と、それから、具体的には国際的協調がないとこの問題は解決できないと思いますけれども、どのような国際的協調に向けての貢献を、我が国としてイニシアチブをとってやっていこうというお考えなのか、その点について大臣に伺いたいと思います。
平沼国務大臣 御指摘のような事例を一つ具体的に申し上げますと、例えば、海外に設置されましたサーバーに我が国の特許権侵害に当たるソフトウエアが登載をされまして、そして日本の消費者がそのソフトウエアをダウンロードすることによりまして権利者の製品が売れないなどの損害が生じた場合、こういった具体的ケースがあると思います。これは、我が国知的財産権の侵害に当たると私どもは考えております。
 この場合、我が国裁判所が管轄を有するためには、一般的には、被告の居所や不法行為地が国内に存在することが要件となるわけですけれども、不法行為地に当たるのが、侵害情報をサーバーに向けて送信した地なのか、あるいはアップロードされたサーバーの所在地なのか、あるいはダウンロードされ侵害が発生した地なのか、その判断基準というのはまだ確立をしていないわけであります。
 さらに、我が国の法律を準拠法として我が国裁判所が管轄を持つ場合には、その判決を国外において執行することが可能か否か、これについても国際条約等の統一的なルールがないのが現状でございます。その執行を求められる国によりその可否、要件に相違が見られることも事実なわけであります。
 いずれにいたしましても、インターネット上の知的財産権侵害に係る準拠法の決定、裁判管轄の決定及び判決の承認、執行については、国により相違が生じる可能性があることから、ネットワークを利用した事業活動の法的安定性を確保するためにも、これらについて国際的なルールを策定することが重要である、このような認識を持っています。
 現在は、ヘーグ国際私法会議あるいは世界知的所有権機構、これはWIPOでございますけれども、そういったところの国際議論の場において、国際ルール策定に向けた議論が今鋭意進められているところでございます。
 我が国としては、今後もこうした国際的な動きに対応して、我が国の知的財産権が十分保護されるようなルールづくりに積極的に参画をしなければならないと思っています。
 いずれにいたしましても、ルール策定に当たっては、ユーザーのニーズを踏まえまして、日本の裁判所の管轄が不当に制約されることのないように私どもはやっていかなければならない、こんなふうに思っているところでございます。
後藤(茂)委員 問題点はそういうふうに認識しておりますし、今、いろいろ進行しているわけですけれども、やはりe―Japan計画とかいろいろ今日本としては旗を掲げているわけで、こういうときに国際的なイニシアチブを発揮していくということも非常に重要だというふうに思っております。
 最後に、法案十四条にもあるとおり、今、特許審査の迅速化というのは非常に重要、最大の課題だというふうに思いますが、そのためには、審査官の確保とか先行技術調査の充実とか、あるいは審査補助職員の積極的な活用など、人的体制の整備が必要だというふうに考えております。そういう意味で、ぜひそういった問題にしっかりと取り組んでいただくように御意見を申し上げまして、時間となりましたので、質問を終わらせていただきたいと思います。
村田委員長 鈴木康友君。
鈴木(康)委員 民主党の鈴木康友です。よろしくお願いします。
 今、後藤議員の方から最後に特許の審査の問題が提起をされました。今、日本の特許審査の時間が非常に長いということが指摘をされておりまして、これから日本が知財立国を目指すとするならば、こういうところを改善していかなければいけないという問題があるわけであります。
 そうした中で、産業構造審議会の方で、特許にかかわる料金を改定して、審査の流れを変えていこう、こういうような方向性があるやに聞いております。今ある出願料あるいは特許料を値下げして、審査手数料を値上げするという方針が出ているようでありますが、これによって不必要な審査請求を入り口でシャットアウトして審査の迅速化を図るということのようですが、私は、これは、入り口でいろいろな要求というものをシャットアウトする、プロパテントというよりもむしろアンチパテントの政策のような気がしてならないんですね。
 特に、大手さんはいいとしても、中小企業とかあるいは個人とか、そうした人たちにとって、審査手数料が大幅に値上げされるというのは非常に大きなことでありまして、私は、むしろ特許申請に対して大きなハードルをつくるような気がしてなりません。今進めようとしているこのプロパテント政策に逆行することだろうと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
太田政府参考人 お答え申し上げます。
 知的財産立国の実現のためには、すぐれた技術を事業化のタイミングを逃さずに権利化して、これを保護、活用するプロパテント政策が不可欠だと私ども思っております。法案第十四条でもそういう趣旨が規定されているところでございます。
 また、本年七月に取りまとめられた知的財産戦略大綱においても示されているように、特許審査の迅速化等のための具体的な行動計画として、必要な審査官の確保、アウトソーシングの積極的な活用等による審査体制の整備、企業啓発等による我が国の出願・審査請求構造の改革、また早期審査制度の活用等の総合的な施策を講ずることとされておるところでございます。
 これらを踏まえまして、先ほど鈴木先生がおっしゃられましたように、経済産業省といたしましては、迅速かつ的確な特許審査の実現に向けた取り組みとして、これらの諸施策につきまして、この九月から産業構造審議会知的財産政策部会に特許制度小委員会を設けまして、総合的な視点に立って鋭意検討を進めているところでございます。特許関連料金の見直し、それから審査請求制度のあり方につきましても、我が国の出願・審査請求構造の改革のための施策の一環として議論をしていただいているところでございます。
 今後、我が国の知的財産の創造、保護及び活用をさらに推進するという、我々はまさにプロパテント政策を進めていかなければいかぬと思っております。その観点に立ちまして、必要な施策を講ずるべく、十分な議論を行いまして、できるだけ早く、早期に結論を得たいと考えております。
 なお、料金の見直しをした場合に、中小企業等についての影響、こういうことも十分考慮に入れながら議論を進めたいというふうに考えているところでございます。
鈴木(康)委員 今、審査時間の短縮に向けての幾つか諸施策のお話もございました。私は、やはりキーポイントとしては、審査官の大幅な増員にあると思うんですね。
 ここでいただいた資料を見ても、審査官一人当たりの処理件数が、今、日本が百八十八件、アメリカが八十六件、そして欧州が五十九件となっていますから、これは圧倒的に審査官の数が足りないということだろうと思うのです。ですから、私は、まずもってやるべきは審査官の大幅な増員である。
 先ほど大臣も選択と集中とおっしゃられましたけれども、今、確かにこういう時代の流れの中で人員をふやすというのはきついことかもしれませんけれども、私は、必要なところには集中的に人員を増員するということは必要なことだろうと思うんですね。それともう一つは、やはりアウトソーシングも大胆に行っていくということであります。
 あるいは、弁理士協会の方から提案をされている調査前置制度というのもあるんですね。審査の手数料の一部を先行技術調査に充当して、調査請求が所定期間内にない場合は出願取り消しとみなす。つまり、前段階できちっとそういうプレ審査をする、前さばきを行う、こういう案もあるわけでありますから、むしろ料金の問題よりもこうした諸施策をきちっと検討していただくということが必要だろうと思うのですけれども、御意見をお伺いしたいと思います。
太田政府参考人 先ほど申しましたように、総合的な施策を講じていかなければいかぬ、あらゆる施策を動員することが必要だと思っております。
 審査官の増員につきましても、二〇〇三年度四十二名と、経済産業省全体の定員が減っている中で特許庁の審査官はふえている状況でございます。またアウトソーシングも、予算も大幅にふやしているところでございます。そういう中で、審査請求構造の改革ということで、私ども、先ほど申しましたように、料金体系の見直しということを議論いただいているところでございます。
 その中で、今、審査の前の調査というお話がございました。特許庁の対応がそれによって可能かどうか。逆にむしろ、調査と審査を両方やらなければいかぬということに伴う滞貨がたまっていくという可能性も十分あります。私どもはここは慎重に検討しなければいかぬと思いますが、いずれにしても、産構審で現在検討しておりますので、議論を尽くしまして、できる限り早く結論を出したいというふうに思っているところでございます。
鈴木(康)委員 確かに今度、増員を四十二名という、それなりの数を出していただいていますが、これではまだ本当に少ないんですね。やはり選択と集中ですから、大幅増員というものをぜひやっていただきたいと思います。
 さて、続いて、先ほどちょっと小沢議員が御質問したことに関連をしてですが、ハーモナイゼーションの問題であります。
 私は、これは非常に重要なことであろうと思うんですね。やはり特許は、今はもう本当に国内だけの問題ではなくて、むしろ海外との関係が非常に重要であろうと思うんです。
 その中で、よく言われる日米欧の協調ということであります。日米欧というこの三極、やはり核となって国際的なルールもつくっていかなきゃいけないと思うんですが、その中で、やはりどうしてもひっかかるのがアメリカであります。日本と欧州は同じ先願主義で、特許の公開制というものも取り入れていますが、アメリカだけが独特の特許体質を持っているわけですね、先発明主義をいまだに堅持しているし、サブマリン特許みたいなものもございますし。ですから、アメリカのこの体質をどう変えていくかということが、私はやはりこの日米欧のきちっとした協調体制をつくるかぎだと思うんですね。
 先ほど、WIPOの場であるいは日米間の協議でということがありましたが、私は、日本と欧州がちゃんと連動して、そしてアメリカに対して物を申していくということが必要だろうと思うんですが、その点、大臣の御所見をお願いします。
平沼国務大臣 先ほど、この件についても議論がございました。我が国といたしましては、やはり二国間協議というものは強力にやっていかなければいけない。そういう意味では、日米規制緩和対話とそれから日米規制イニシアチブ、こういう場で、これまでもやっていますけれども、さらに強化していかなければいかぬと私は思っています。
 また、御指摘のように、日本とEUの協力はぜひ必要だと思います。アメリカも従来に比べては、先ほどの御議論の中でも出ておりましたけれども、少しずつ変わってきている、こういうふうに思っておりますので、日米のそういう対話の場でやることも必要ですけれども、やはり国際的なそういう大きな場に持ち込んで、そしてその中で特異なアメリカのその体制を変えていく、そういう努力は私どもは一生懸命やっていかなければいけない、そのことで努力をしていきたい、このように思います。
鈴木(康)委員 大臣のお人柄と交渉能力に期待をしておりますので、ぜひよろしくお願いします。
 さて、続いて、産学官の連携について御質問したいと思います。
 今、いろいろな時代の流れの中で、産学連携の必要というものが言われていることは皆様御承知のとおりだろうと思うんですね。今回のこの基本法の中でも、大学の研究開発の促進でありますとか、大学から事業者への知的財産の移転の円滑化等が指摘をされています。よく引き合いに出されるのが、いわゆるアメリカの産学連携の成功であります。アメリカが、これは国家的戦略として産学連携を行って競争力を強化したことによって、シリコンバレーのようなものが生まれ、アメリカの産業が立ち直ったということであります。
 よくよく考えてみますと、では、日本が今までそれをやってこなかったのかというと、決してそんなことはないんですね。ちょうど同じ一九八〇年代の前半に、日本でもテクノポリス構想というのがありました。私も大学を出てしばらくのころなのでよく記憶をしておりますが、産業と官とそれから学が三位一体となって、そして新産業をつくっていくんだという、非常にいい理念だなと思ったのを覚えています。それによって、各地にテクノポリスがつくられて、産学官の連携による新産業創造というものが活動として行われたわけでありますが、残念ながら、日本にはシリコンバレーもできませんでしたし、テクノポリスが画期的に成功したということも聞いておりません。
 ですから、今まで、では、日本がなぜこの産学官の連携がうまくいかなかったのか、あるいはテクノポリスがなぜ失敗をしたのか、その点の総括をお願いしたいと思います。
桜田大臣政務官 地域の企業が技術開発を行い、新事業分野へ展開していくためには、地域の大学等との産学官連携を進めることが効果的、効率的であると考えております。そのため、経済産業省では、昭和五十八年に制定されたテクノポリス法に基づいて、地方自治体による地域技術の高度化を支援するための施策を初め、地域の産学官連携の促進に取り組んできたところでございます。
 しかしながら、地域における産学官連携につきましては、十分とは言えないかもしれませんが、地域企業の大宗は、大企業との下請関係があり、安定的な取引がある中では、大学との連携により新事業を積極的に展開していくという必要性が相対的に低かったのではないだろうかと考えておるところであります。
 また、それに加え、テクノポリス等の施策が地方自治体の区域の範囲内で行われたため、大学のシーズと企業のニーズがマッチしにくい点があったということであります。そのような原因が認められるわけであります。
 しかし、近年では、地域においては大企業との系列関係が崩壊しつつあります。多くの地域企業にとっては、従来からの取引関係にとらわれず、かつ、地方自治体の区域を超えて広域的に大学や他企業との連携を進めて新事業を展開する必要性が格段に増していると考えているところであります。
鈴木(康)委員 産学官の連携がうまくいかなかった理由はまだほかにもあるとは思うんですけれども、その点はまた後ほど触れさせていただくといたしまして、そういう中で、今度、経済産業省が、産業クラスター計画というものを今進められているわけですね。これは地域における産学官の新しい連携の仕組みだと私は思うんですけれども、これについて、この中身あるいは目的についてまずお伺いをしたいと思います。
桜田大臣政務官 我が国経済が当面の不況から脱し、中長期的に発展していくためには、地域経済の再生が喫緊の課題となっているところでございます。地域経済の再生に当たっては、地域の中堅・中小企業が、技術開発などを通じて、世界に通用する新事業を次々と展開していく必要がございます。
 他方、今後、新事業の創出が期待できるような成長産業は、斬新なアイデアに基づく新商品、新サービス、新技術の開発が不可欠なハイリスク・ハイリターン分野が中心になります。地域の産業、企業が、一社独力で必要な技術、人材、資金等を集め、このようなリスクの高い分野に事業展開していくことは極めて困難な側面があります。したがって、産学官の広域的な人的ネットワークを形成することにより、産学官の間で流通する情報の質、量を格段に高め、このネットワークを活用して、技術、経営情報、販路等の経営資源を補完していくことが重要だと考えているところであります。
 さらに、地域における新事業の創出のためには、こうした産学官の広域的な人的ネットワークの中で、地域の特性を生かした中堅・中小企業の実用化技術開発と、これによる新事業の創出を支援するための施策を強力に展開する必要があると考えておるところであります。
 このため、経済産業省では、地域経済を支え、世界に通用する新事業が次々と展開される産業集積、いわゆる産業クラスターの形成を目指して産業クラスター計画を推進しているところであります。
 具体的には、地域経済産業局みずからが結節点となり、産学官の広域的な人的ネットワークを構築し、経営資源が相互に補完される環境を形成するとともに、このネットワークの中で、企業等のニーズを踏まえた最適な地域関連施策を提供して、技術開発などの取り組みを積極的に、効果的に支援していくよう考えております。
 また、経済産業省といたしましては、今後とも、産業クラスター計画を強力に推進し、地域における新事業の創出を通じた地域経済の再生に全力で取り組む覚悟でございます。
鈴木(康)委員 今、丁寧な御説明がございました。一言で言えば、産学官の広域ネットワークを利用して新しい技術を創造し、新しい産業をつくっていく、こういうことであると思います。これが地域の活性化あるいは地域経済の活性化、そして日本の経済の再生につながる、こういうことであって、それを経済産業省が強力に後押しをしていこうということだと思いますが、一方で、今文部科学省が知的クラスター計画を推進されております。
 そこで、今度、文科省の方に、この知的クラスター計画の目的あるいは内容についてお伺いをしたいと思います。
山元政府参考人 御説明いたします。
 先生御指摘の知的クラスター創成事業でございますが、今年度からスタートさせていただきました。
 これにつきましても、最終的な目的は、もちろん、各地域におきます新事業、新産業の創出を目指しておるわけでございますが、それを、私どもは、制度といたしましては大学、こういうものを核といたしまして、特定の非常にレベルの高い技術分野、そういうものに着目いたしまして、一つの研究開発の拠点、知的なクラスター、こういうものをつくっていこうということでスタートさせていただいておるところでございます。
 したがいまして、その際、私どもは、やはり単なる大学に対してお金を出すということじゃだめだと思ってございまして、地方自治体の方に主体的に計画をつくっていただくということにいたしました。
 そして、昨年度、競争的な形で選ぼうということで、三十の県あるいは市、そういうところにフィージビリティースタディーをやっていただきました。その中から、ことし、十のクラスター、地域といたしましては十二ございますけれども、それを厳選させていただいたわけでございます。そして、この七月から事業を開始しておるところでございます。
 以上でございます。
鈴木(康)委員 今御説明がございましたけれども、もう一度ちょっと、産業クラスターとの端的な違いはどこにあるのかお伺いをしたいと思います。いや、文科省の方に。
山元政府参考人 御説明いたします。
 経済産業省の方につきましては、地域の経済産業局を通じてやっておられますが、基本的には企業を中心とした実用化技術開発、ここにポイントがあろうかと思ってございますが、私どもは、各大学におきます技術的なシーズ、そこを中核として、そして発展させていくというふうに思っておるところでございます。
鈴木(康)委員 今、大学に注目をしてということでありますが、産業クラスターも、産学官の連携の中で、これは企業の技術というよりも、やはり学が生み出した新しい技術を産業に結びつけていくというところが大きな目的だと思うんですね。そうしますと、結局のところ、ねらっているねらいは、大きな意味では産業クラスターも知的クラスターも同じだと思います。
 そうした中で、かなりそこが重複をしているのではないかという指摘もされる中で、小泉総理もこの点を、連携をちゃんとしなさいよということで、重複部分を解消していく。あるいは今度、年末までに複数地域に地域クラスター推進協議会というものができるというふうに聞いておりますが、これの役割は何なのか、何をする、どういう調整をするところなのか、お伺いをしたいと思います。
桜田大臣政務官 経済産業省と文部科学省は、それぞれ産業クラスター計画と知的クラスター事業を進めておりますけれども、両省は、総合科学技術会議など内閣の要請も踏まえて、関係自治体と経済産業省、文部科学省の両方が参加する地域クラスター推進協議会を地域ごとに設置しているところであります。
 その中で、経済産業省では、企業を中心とした実用化技術開発などを中心とした産学官連携を進めており、文部科学省では、大学等公的研究機関を中心とした基礎的研究分野における産学官提携を進めておる、いわゆる新技術シーズの創出を図るということになっております。
 そして、地域クラスター協議会を地域ごとに設置することによって、両省の事業の成果に関する合同成果発表会を年一回程度開催したり、関係事業の参加者の間で情報交換を行うなどして、重複を避けるような体制をとっているところでございます。
 このような提携体制の構築により、知的クラスターからの新技術シーズの提供、産業クラスターからの市場ニーズのフィードバックが行われるということでございまして、具体的な提携が図られ、むだや重複を避けることができるというふうに考えております。
鈴木(康)委員 平たく言えば、経済産業省はどちらかといえば企業の技術に注目をし、文科省の方が大学の技術に注目をしてということだろうと思いますが、私のおります浜松の地域は光技術の知的クラスターの指定地域になっていますね。実は、この光技術の中心的な技術的役割をしているのは、この前ノーベル賞で有名になりました浜松ホトニクスというれっきとした民間企業であります。そこの技術開発をむしろ大学が補完していくというのが浜松の知的クラスターでありますね。そうすると、全く逆で、むしろこれは産業クラスターの範疇になるわけですね。
 ですから、私は、別に揚げ足をとるつもりはありませんが、要は、このクラスター構想というのは、産学官がきちっと連携をとって、大学だろうが企業だろうがいいわけですよ、そういう新しい技術を育てて、日本に産業を新しく起こそうというのが国家的戦略としてあるべき姿だと私は思うのですね。今見ていると、どうもこれが、国家的戦略ではなくて、各省の戦略になっているような気がしてならない。そうしますと、私は、またぞろテクノポリスと同じような失敗をするのではないかという気がしてならないんです。
 先ほど大臣も選択と集中と申されましたけれども、私は、アメリカが成功したのは、やはり国家戦略として産学連携を強力に進めてきたことだと思うのですね。それがアメリカが成功した最大の理由だと思うのですが、今のままですと、どうもまだ各省の戦略でしかないような気がしてならないんですが、その点について御意見をお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 私どもは、御指摘の点も踏まえて、そうあってはならないという形で進めていかなければならない、こういう基本的な認識を持っています。
 知的クラスター創成事業が対象とする大学や地域は、産業クラスター計画が対象とする広域的な地域の中に含まれる、私はこういうふうに思います。ですから、知的クラスターで生み出された大学の技術シーズについて、産業クラスター計画の広域的なネットワークのもとでその事業化を行って、そして中堅・中小企業を的確にマッチングさせて新事業につなげていけばいい、こういうふうに思っておりまして、いずれにいたしましても、御指摘の点があってはならない。
 また、総理大臣からもそういう御指摘がありますので、地域クラスター推進協議会をしっかりとして、そしてこれがいわゆる省庁間のそういう障壁の中で、また何が何だかわからなくなるようなことがないように、私どもとしては、そこはしっかりとやっていかなければいけない、こう思っております。
鈴木(康)委員 この問題は各委員とも大変に関心があるものですから、大分質疑時間が押しておりまして、私の時間がなくなってしまいました。もう少し質問したかったんですが、最後に一言だけ。
 今大臣からお話がございましたけれども、私は、地域における推進協議会ではまだ弱いと思うのですね。これは、やはり国が、政府がしっかりと音頭取りをして調整を図っていくべきものである。私は、やはり大臣の役割は大きいなと思うわけです。
 それと、もう一つ指摘をしておきたいのは、この産業クラスターも、今指定地域が十九あると聞いています。これが地方の経済局と同じような間隔、地域にばらまかれているということでありまして、やはり僕は数が多いなと思うんですね。テクノポリスも、乱立をしていたということで特徴が出せなかったというのが私は失敗の最大の原因だと思うので、先ほど来何度も繰り返してしつこいようですが、大臣がおっしゃるように選択と集中。
 私は、今回の特区の問題もそうですけれども、やはり特定地域にきちっと選択と集中であらゆる資源を投下して、今、日本に成功事例をつくることが大事だと思うんですね。横並びでばらばら資源をばらまいても、やはり前のテクノポリスと同じような結果になるような懸念をしてならないので、非常に私はこの計画に期待をしておりますので、ぜひそのリーダーシップを発揮していただきまして、これをぜひとも成功させていただきますことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 では、大臣に最後に一言、決意をお願いしたいと思います。
平沼国務大臣 御指摘の点が一つあると思いますけれども、全国、非常に御希望があります。そして、十九の今の拠点、多過ぎるというお話ですけれども、しかし、おかげさまで二百を超える大学がそこに参画をし、そして四千を超える企業がそこに参画をして、そこから新しいベンチャー企業も生まれてきておりますし、新しい技術がどんどん育ってきておりますし、また特許もできてきております。
 したがって、私どもは、育ちつつあるこの十九を、御指摘の点を踏まえながらしっかりと育てていく、このことに全力を尽くしたいと思いますし、今九つある経済産業局も、総勢で五百人の人員をここに張りつけて、そして国としてしっかりと担保をしてやっていこう、こういうことでございますので、引き続きいろいろな面で御支援をお願いしたい、このように思っております。
鈴木(康)委員 どうもありがとうございました。
村田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
村田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。山田敏雅君。
山田(敏)委員 山田敏雅でございます。
 質問に先立ちまして、ちょっと、緊急で重要な問題があると思います。大臣の御意見をお聞きしたいと思います。
 今、不良債権処理で中小企業のセーフティーネットをやっていただいているんですが、先般より個人保証の問題をずっと取り上げさせていただきました。
 御存じのように、三万三千人を超える方がみずから命を絶たれた。今、経済的な理由で一万五千人程度と言われておりますけれども、これも統計上の数字で、もっと多くの中小企業の経営者の方が命を絶たれているということを、去年からずっと私やっております。この議論は、破産法の改正ということで、ぜひ大臣に、閣議あるいはいろいろな場で、経済産業省として、これは重要な問題であると言っていただきたいということでやってまいりました。
 ここに破産法の中間試案というのができまして、早速これを読んだのですが、大変残念なことに、私たちが従来、大臣も賛成していただいたと思うんですが、中小企業の方が金融機関からお金を借りるときには、無理やりに個人保証、連帯保証をつけられるわけですね。やらないと貸してくれない。そして、何か事故が起こった場合には倒産する。そのときには身ぐるみはがされて、次の日から生活できない。家族も生活できません。そして、みずから命を絶たれて、生命保険で家族の生活費を出す、こういうケースを私も実際に何件か見たんですけれども。
 これを救う――この法律というのは非常に残酷なやり方で、ドイツでもこういうことはやっていない。アメリカでも、自由財産を四百万円残して、必ずその方が再起できるように、こういうことになっているんですね。日本では、御存じのように、もうほとんど身ぐるみはがされる。それでは、自由財産をふやせばこういう多くの方の命が救われるわけですね。
 この議論をぜひ破産法部会の方でやってほしいということを言って、やったんですけれども、結果的に、この中間試案の中を見ますと、自由財産は二十一万円、これでは家族が生きていくことはできないですね。その見直しをしようというのがあるんですが、これは実は二十五年前にできた制度なんですね、二十一万円というのは。ですから物価調整をしようと。その結果、二十一万が二十五万円から三十万円になる、こういう議論を行っているんですね。これでは問題の本質を全く理解されていない。
 それで、破産法の中に、その破産をした理由が、普通の個人の場合と中小企業の事業者の場合、全く違うわけですね。個人の場合は、自分で十万、二十万借りて破産したという方ですね。中小企業の場合は、会社のために、あるいは銀行に強要されて自分が個人保証をやって破産したと。ですから、これを分けないと、今破産法でやっている議論が、二十五万円が三十万円になりますから改革しました、こういうことになっては、せっかく大臣の意向が、この件は質問通告しておりませんので、ちょっと今……。
 それで、最終報告を、去年は来年の三月と言っていたんですが、これももっと早くやりなさいと言ったんですが、その反対に、今度は来年の夏にしますということでおくれちゃった。
 こういうことで、せっかく中小企業の活力を、あるいは、新しい企業を起こしたいという人が、周りにこういうふうに、事業を起こして失敗すると身ぐるみはがされてしまうのでは、もうやる意欲がなくなってしまう。アメリカと反対なんですね。アメリカの場合は、破産して、そのうちの半分の人がまた成功して立派になったという統計もございます。日本の場合は、もうほとんどない。
 これは、ちょっと質問に先立ちまして、ぜひ大臣、やはり経済産業省として、中小企業、あるいは人道的な問題も大きいことなんですが、ぜひ閣議でしっかり議論していただいて、法務省の議論は、法務省の破産法だけの議論になってしまっていますから、中小企業対策というまた別の視点と、それから大臣がいつもおっしゃっている、新しい企業をどんどんつくろうというのは、それは人間の意欲の問題ですから、意欲が出ないような制度をぜひ改める、これをぜひお願いしたいんですけれども、最初にお願いします。
平沼国務大臣 山田先生御指摘のとおり、中小企業の倒産に伴い破産に追い込まれた経営者が再チャレンジをする環境をつくるということは、非常に私は大切だと思っています。
 今アメリカの例も御指摘になられましたけれども、日本の統計でも、実は、全く新しく起業をする人と、それから再チャレンジで新しく業を起こす人と、じゃ、企業の存続率はどうかというと、再チャレンジの人たちの成功率が高いという事例もあります。今の日本は個人保証というのが非常に過重になっておりまして、自殺者の例もお示しになられました。したがって、そういう意味では、経済産業省としましては、いわゆる自由財産の範囲を拡大しろ、こういうことで主張しています。
 中間報告においては、一応、議論の過程の中で、二十一万円を物価スライド、こういうふうなことで出ているようでございまして、これは中間報告でございまして、その審議会の中にもいわゆる中小企業の代表の方々も出ておられます。
 そういった形で、私どもとしては、この自由財産の範囲の拡大については、やはり中小企業をお預かりする役所の立場からその辺はよく主張をしていきたいと思っておりますし、また、そういった閣議の場等を通じて、私、機会があったらそういったことはアピールをしていきたい、こういうふうに思っております。
山田(敏)委員 今、この部会の場に中小企業の代表が出ていらっしゃるとおっしゃったのですが、実は中小企業団体の事務局の人が出ているということで、中小企業の経営者らが、本当に血を流してやった経験のある人がもっとしっかり意見を言われればまた変わると思いますので、その辺をちょっとひとつ気にとめていただければと思います。
 さて、デフレ対策、景気対策なんですけれども、これは、不良債権の処理をどんどん進めるという竹中さんのアイデアで、非常にますます萎縮をしている。そこで、今のところ緊縮予算というので、予算を余り、補正予算も立てないということでございますので、これは、経済の経験的な法則からいくと、景気が悪いときに緊縮をして、さらに不良債権処理をやるというと、一気に景気が悪くなると思うのですけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。
平沼国務大臣 今、緊縮経済政策、こういうことですけれども、私は、一般論として申し上げれば、経済が非常に縮小しているときにそういった面で緊縮的な経済政策をとれば、それはますます加速をする、こういうふうに思っています。
 ただ、小泉総理は、常に主張されていることはよく御存じだと思いますが、税収が非常に厳しい中で三十兆もの国債を発行しているんだから、自分の認識としては決して緊縮財政じゃないし、また、めり張りをつけてそれぞれの予算というものを、経済がアップするような形で努力をしている、こういうこともございます。しかし、御指摘のように、一般論として言えばそういうことだと私は思っています。
山田(敏)委員 そこで、今度小泉内閣も、改造内閣で不良債権処理を一気に力強くやろうということなんですね。これは社会的にも株価にも大きな影響を与えたわけですけれども、一体全体、不良債権を処理する目的というのは何だろうかということをちょっと簡単に。
平沼国務大臣 午前中の御議論の中でもございました。不良債権問題には、デフレの悪影響でその処理が進まない一方、資金が経済の隅々まで行き渡る上での障害となりまして、景気低迷を長期化させ、デフレをさらに悪化させるなどの側面があるわけでございます。その抜本解決が不可欠だと思っています。
 不良債権の抜本処理によって、金融機関の収益力の改善とか貸出先企業の経営資源の有効利用などを通じて、設備資金も含めた新たな成長分野への資金、あるいは資源の移動を促進することも、この不良債権処理をすることによって期待できると私は思っています。
 しかし、冒頭申し上げたように、やはり不良債権処理というのは、がん細胞に例えますと、ここのところにがんができていて、やはりこれをきれいにしないと本体が回復しない、そういう意味では、非常に厳しい中ですけれども、不良債権は処理していかなければいかぬ、こういうことだと思います。
山田(敏)委員 一般的にはそういう理屈だと思うんですが、実は、非常に長期間にわたってデフレがずっと進行してまいりましたので、今おっしゃったことを一言で言えば、不良債権処理を進める、それは何のためにやるか、景気を回復させるためにやる。景気回復というのは、主なものは個人消費と企業の設備投資。今のように不良債権が多いと設備投資が進まない。これは、景気対策を目的でやっている、不良債権処理をやるためにやっているんじゃなくて、景気対策をやるために進めるわけですね。
 では、その不良債権処理をやれば今おっしゃったように企業が設備投資をするのか、そこにつながっているというのが今までの一般論的な理論なんですが、ちょっとお手元に今配りましたこのデータは、財務省の資料よりあるエコノミストがつくられたんですが、非常にデフレが長期にわたって進んでくると、企業のビヘービアは、借りた資金はできるだけ返すようにしよう、できるだけ企業の貯蓄に回していこうという、これは大企業だけじゃなくて中小企業も含めたものですね。そして、この表を見ていただくと、二〇〇二年にいきますと、営業のキャッシュフローが設備投資をはるかに上回る。その結果、貯蓄超過が非常に起こってきているんですね。これが非常に長きにわたってデフレが進行してきた日本経済の特徴なんですね。
 したがいまして、不良債権処理をどんどんどんどんやったから、では、銀行からお金を借りて設備投資をするという傾向がつながらなくなってきちゃったんですね。もし設備投資をやる場合、貯蓄、自分の中からつくってやれば、もうお金を借りてやる理由もない、もちろん設備投資自体の需要も少ないんですけれどもね。
 ですから、ここで私が一言申し上げたかったのは、不良債権処理に全力を挙げて、公的資金を大量に使って、三兆円も五兆円も使ってやることの本当の意味は何かということをもう一回ちょっとよく考えていただいて、余り不良債権処理に国の資金を投入することは景気対策につながらないということも、今、日本の長期にわたるデフレ経済の異様な状況が続いているということを認識していただきたいと思って申し上げました。
 さて、知的財産基本法についてただします。
 実は私、自分で実用新案を申請したことがございます。ビリヤードピンポンですけれども、表がビリヤードで、裏へ返すとピンポンができる、折り畳みができて、ダイニングテーブルに使える、こういう実用新案をやりました。私の特許庁のもとの同僚の方、弁理士ですかにお願いして、たしか十万か二十万払ってやりました。
 これはヒットいたしまして、したんですが、台湾の工場でつくっていただいたんですけれども、ところが、これはどういうことが起こったかといいますと、すぐに台湾のメーカーがまねしてヨーロッパに持っていったんですね、あるいはアメリカにも持っていったんですね、私が実用新案した商品を。そうするとヨーロッパやアメリカでヒットしまして、私はもちろん日本で実用新案をやったわけですから、それに対して法的な手段というか、何も対抗措置を持っていないわけですね。
 そこで、その弁理士の方に聞いたら、ではアメリカで僕は実用新案で特許をやりたい、それで幾らかかりますかと。大臣、余りよく御存じないと思うんですが、とりあえず七十万ぐらい要るんですよね、アメリカで申請をとると。その後、いろいろな審査の過程でちょっと修正をするから幾ら要りますと。一件やると百五十万円かかります。ところが、一件だけ出す特許とか実用新案というのは余りございませんよね。そのアイデアなり技術を守ろうとすると、大体十件ぐらい出さなきゃいけない。そうすると、アメリカに出すだけで一千五百万円キャッシュを持っていないとできない。
 それで、もちろんヨーロッパでやろうと思ったら、あるいは台湾に、あるいは中国にというと、よく見ると、ああ、そうか、これは大企業でないとこういうことはできない。個人だとか中小企業の人たちは、この特許を守ろうという意欲はもともとないんだなと。もうできないですね、一千万とか二千万という、特許だけの費用で。
 また、先日、岡山大学の医学部の先生が糖尿病の治療の技術を開発されました。これは非常に多くの方の命を救えるので私も一生懸命やったんですけれども、アメリカに特許を出そうとしたときに同じことが起こりました。個人で一千五百万出してそれを守るということは、もう本当に事実上不可能ですね。意欲はもうなくなってくるわけですよね。糖尿病というのは世界じゅうで一億五千万人の方が適用されますから、日本だけのマーケットだと、あと技術開発ができないわけですね。これはよく言われていることなんですが。
 そこで、これはどうしたらいいかということについて、何か考えていらっしゃることがありましたらお答えいただきたいんですけれども。
太田政府参考人 今、山田先生がおっしゃられたように、外国において特許を取得する際には、出願料等の外国特許庁に対する費用に加えまして、各国において、弁護士等の代理人に要する費用、それから各国語への翻訳料が必要となるということで、国内のみへの出願に比して高額な費用がかかる場合が多いということは承知しております。
 外国出願を行う企業に対する支援でございますが、現在、ジェトロの海外事務所の活動の一環といたしまして、ニューヨーク、デュッセルドルフ、それからアジアの三カ所ぐらいの各地に工業所有権制度専門の担当者を配置しております。日系企業に対して、もちろんこちらから、中小企業とかなんとかから問い合わせがあればそういうのに答えるということで、現地の工業所有権行政・制度に関する情報提供、それから権利を取得する際のアドバイス、相談に当たるとともに、これらの海外事務所を通じて取得した情報を国内においても提供しているところでございます。
 我が国企業の活動のグローバル化に伴って、海外における知的財産権の取得はますます重要になってくると思います。今後とも、ジェトロの海外事務所等の活用も含めて環境整備に努めていきたいというふうに考えているところでございます。
山田(敏)委員 今の御答弁は、ジェトロで情報提供したり便宜を図っているということなんですね。そんなものは何の役にも、へにもならない。僕が言っているのは、今お金がたくさんかかりますと、それに対して、情報を上げますからと言われても、もらったって何にもならない。
 アメリカは、今議論がありましたように、スモールエンティティー、すなわち中小企業の方や個人の方には出願料を半額にします、こういう制度がありますね。日本にはないわけですけれども。それでやっても、今の御答弁にありましたように、百五十万円の費用のうちの十数万円が政府に対する費用ですね。残りが、数十万円が翻訳の費用、それからアメリカの弁理士の費用、四十万とか五十万とか非常にかかるわけですね。これを合わせて百五十万、こういうことなんですね。
 ですから、私は、今度、あしたまたジェトロの行政改革の議論をいたしますけれども、貿易振興協会という名前が今から四十年前にできて、日本の貿易を振興しようと。ところが、十何年たたないうちにこの貿易振興という役目はほぼ終わっちゃって、今さら輸出を振興するとか輸入を振興するとか、もうなくなったわけですね。しかし、世界じゅうにジェトロの事務所はたくさんあるんですね。この間ウィーンに行ってきましたが、ウィーンにもありました。ウィーンの貿易をどういうふうに振興するのかちょっとよくわからなかったんですが。
 せっかくジェトロの資源がございますので、私は、知的財産センターというものを世界じゅうにつくって集約をすればいいと思うんですね。一件一件頼むと高い。しかし、そのセンターで、中小企業の方あるいは個人の方が一緒になって共同でやると経費もそんなに高い経費を払わなくて済むし、あるいは日本人の方でアメリカで弁理士の資格を取っている人がいるかもしれない、そういう人を専任で雇うとか、大幅に経費を削減する方法があるんじゃないかということをちょっと検討していただきたいんですが、大臣、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 今の御意見というのは傾聴に値する御意見だと思っておりまして、やはり時々刻々いろいろ状況が変化する中で、そういったことも検討事項の一つとして検討に十分値する、私はこういうふうに思います。
山田(敏)委員 もう一つの考え方は、出世払いという考え方があるんですね。今言いましたように、せっかくいい発明をして、世界じゅうのマーケットがないとこれはできないというときに、一千万とか二千万、お金がない場合は、成功したときに払ってくださいという助成制度、これはある意味で出世払いですね、こういう考え方もあります。
 しかし、私が最初に指摘したとおり、非常に今の高額な費用というのは大きな障害になっております。これはアンケートをとられたらわかると思いますが、実際にそういう発明をして、本当にマーケットで実用化しようという場合には、最初にそんな多額のお金を持っている人はいませんので、ぜひ今の出世払い、すなわち政府が、ジェトロの費用を転用してもいいんですが、ある程度いいと認められた場合には、出世したとき、成功したときに返してくださいと、こういう制度もできるんじゃないかと思うんですが、ちょっと検討していただけませんか。
太田政府参考人 今先生がおっしゃられた出世払いというのは、なかなか今すぐ前向きな御返事もできないと思いますが、別途、先生御案内だと思いますが、PCT、特許協力条約で、国際出願については、まとめて出しますと、四カ国とか五カ国になると非常に安くなる制度がもうスタートしております。最近、非常にその活用も広がっております。
 そういうことも含めて、やはり日本の発明者が世界に向かって知的所有権を取得していく方向で、いろいろな形で支援はしていきたいと思っております。
山田(敏)委員 今おっしゃった制度はもう広く知られておりまして、私も知ってやったんですけれども、その費用のことを言っているんですね、それも含めて百五十万ぐらいかかるということでございます。
 WTOの中にGATSという協定がありますよね。資格相互承認ということで、WTOの中で、できるだけ高額な負担を和らげようという、相互に承認し合う制度ですね。この制度がございますけれども、政府としてもぜひこれを強力に進めていただきたいと思いますけれども、大臣いかがですか。
平沼国務大臣 こういう非常に競争が激化している国際場裏の中で、各国が共通の問題として意識しているそういう事項に関しては、やはりWTO、そういった場で各国が整合性を持って議論をして、そして一つの解決策を見出していくということは必要ですから、そのGATSの場でも我々は各国と協力をしてそういった体制を構築するように努力をしていかなければならない、このように思っています。
山田(敏)委員 私の問題提起をやはり真剣に取り組んでいただいて、ちまたの方々、ほとんどの方が中小企業あるいは個人の方、その方たちが、特許、実用新案をあきらめていらっしゃるということが日本には非常に多いと思います。ぜひ前向きにお願いいたします。
 私の質問は以上です。終わります。
村田委員長 中山義活君。
中山(義)委員 中山でございます。
 大臣、「はばたけ 知的冒険者たち」これ、御存じですか。これは、民主党で民主党版ヤング・レポートとしてつくり上げたわけですが、前も大臣にお話をしたと思うんです。
 十五年ぐらい前に、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた時代がありましたね。しかし今は、ある意味ではジャパン・アズ・オンリーワンの時代だと思うんですね。商売をやっている方たちも、実は、よそのうちとうちはどこか違うという、そのオンリーワンの世界が極めて大事だと思うんですね。つまり時代が、そういう、今までのものはなかなか売れないよ、お金を持っていてもまたそういう買いたいというニーズが起きないような商品が多いわけですよ。そのためには、何か違うとか、どこかよそのものと違うという発想が大事なわけですね。
 ですから、オンリーワンという考え方は、一つ新しいものをつくるだけじゃなくて、今までの技術を磨いた人がこれをつくるとどこか違うとか、大臣のところにも手ぬぐいで宮本武蔵のをお送りしたと思うんですが、これは、こういう技術があるよということでお送りしたのでございまして、実は、浅草の手ぬぐい屋さんが、ふじ屋さんというところなんですが、お父さんがちゃんと自分で絵をかいて、一つ一つつくっていくんです。そういうやはり技術を継承していくことは極めて大事なんですね。ところが、一代で終わったらそれでおしまいなんです。だから、こういう技術を長く継続させていく、またはよそと違うところをお客さんに表現する、こういうところが極めて大事な考え方だと思うんですね。
 そういう面では、この日本の社会の中でも、中小企業に対しても、これからいろいろな指導をする機関があります。恐らく区とか都の方でもいわゆる商業相談みたいなところがあるんですね。そういうところで、どういう差別化をするか、どこがよそのうちと自分のところが違うのか、こういうところに目を向けていくことがお金を使わせる一つの方法論だと思うんです。このオンリーワンの思想をひとつやはり大臣からアピールをしていただきたいと思うんですね。アナウンスをしてもらいたいんです。
 この間からお話ししているように、どうも小泉さんの、景気回復をしっかりやってから不良債権の処理をする、こういうのならわかるんですが、初めから不良債権の処理をする、そういうこと一点でいけば、国民は、あっ、これは景気はよくならないんだなと思っちゃうんですよね。
 だから、今ここで知財法のことをしっかり戦略をつくってやっていくということはどういうことなのか、要するにオンリーワンの世界をつくっていく、こういうことだと思うんですが、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 やはり、伝統工芸ですとか伝統的な技術、そういうものをしっかり守っていくということは、知財というものに対してしっかりとしたそういう体制を構築することだと思っています。
 したがって、先ほどのお話の中にもありましたけれども、今、どの家庭を見てもテレビの二、三台はあるし、車も行き渡っているし、魅力的な商品がない。しかし、その中で、いいものであれば、やはり個人の資産というのはたくさんあるわけですから、そういうものはどんどん売れているということもあります。
 ですから、そういう観点からも、いわゆる知的財産というものをしっかりと保護し、さらに創造させて、保護して、それを活用する、こういうことがますます必要な世の中になってくる、そういう観点からこの基本法もまずお願いをしているところでございます。
中山(義)委員 思い返せば、一九七〇年代は、アメリカのある基礎特許みたいなものを日本は買って、それを大量生産して、そして売っていった。さらに、そういうことばかりやったので、中には、勝手にうまく使ってしまおうという業者も出てきて、例えばキルビー特許みたいに、集積回路で日本も相当な賠償金を払ったりなんかしているんですね。まだまだ日本の場合は何千万ですけれども、外国ではもう約五十倍から百倍ぐらいの賠償金を払っていますね。こういうような実情を日本人もよく知らなければいけないわけですね。
 よく池田勇人総理大臣はトランジスタラジオの営業マンだと言われたくらい、諸外国へいろいろな新しい商品を持っていったと。その時代は終わってしまった。というのは、やはりヤング・レポートに大きな原因があったと思うんですね。一九八五年、これはプラザ合意のときとも一緒ですよ。それから保護貿易と、新しい知財を徹底的に利用したそのヤング・レポートによってアメリカの景気は立ち直ったわけですね。日本もある意味では、さあ大変だというところだと思うんですが、この三年ぐらい見ていますと、流れが、弁理士法の改正にしても何にしても、まだまだ全然進んでいないというふうに感じるんですね。
 今回の知財戦略本部、これは本部長はわかりましたけれども、やはり大事なのは、このくらいの予算をつけたよという裏づけだと思うんですよ。私が見た限りにおいては、何か、予算のない、また相変わらず文言を羅列して、いわゆる何とかレポートといっても予算のないレポートだから、単なる何とかペーパーと言った方がいいと思うんですね。そういう面でこれ、私ども、予算をつけて、どのくらいお金が実際使われるのかというところが見えないわけです。
 例えば審査官を百人ふやしたら、これは幾らぐらいなんですか。特許を審査する審査官を例えば百人ふやしたら幾らぐらいなんですか。ちょっとそういう具体的な話をしないと、ちっともわかっていただけないと思うので。
太田政府参考人 特許庁の特会は大体一千億というふうに、収入、支出ですね、人件費が大体一割、別に審査官だけじゃなくて事務職の者もおりますので、そういうふうに御理解いただければと思います。今、全体で二千五百人おります。
中山(義)委員 私、いろいろこの知財に関係するものを読んでみまして、やはりこれはマンパワーですよ、最終的には。速く審査をしたり、それからいろいろな指導をしたり、または水際作戦をやるにしても、侵害されているものを訴えに外国へ行くにしても、これ、人だと思うんですね。
 やはり人件費をどう考えていくかということがすごく大事だと思うんですが、行政改革というのは、人をやめさせることじゃないと私は思うんですね。いかに国民のニーズにこたえるかということが行政改革の一番大事なところで、どこに人が要るのか、要らないところには当然人は必要ないわけですから、その人をこちらに持ってくる、それが本当の行政改革だと思うんですね。
 私は、前に公取のときも言ったんですが、よく公正取引委員会も、私たちが、何だ、終わってから来たんじゃ遅いだろう、こう言うと、いや、人が少ないものですからと。これじゃ、あと言いようがないですよ。
 だから、私どもは、必要なところには人はふやすべきだ、こう思っているんですが、やはりこの一つの戦略計画にはマンパワーのことが書いていないんですね。人をどう活用していくか、その辺はいかがでしょうか。
西川副大臣 知的財産立国を実現するためには、すぐれたアイデアや技術に対して、タイミングを外さずに、独占的な権利である特許権を付与する、こういうことが大事でございまして、そのために、私ども、このプロパテント政策が不可欠であると。
 そこで、今先生御指摘のように、これを審査するマンパワーが減っていくようではしようがない、増員もできないようではしようがない、こういう御意見でございます。私どもといたしましては、二〇一〇年度までに、御案内のとおり、国家公務員の定数を二五%計画的に削減するという大方針が政府としてあるわけでございますが、こういう環境のもとで、ただいまの御指摘のようなことは極めて重要でございますので、特許審査官の増員に努めなければいけないということは十分承知をいたしております。
 そのために、いわゆる先行技術調査というのがあるんですね、特許を付与する前の調査段階、こういう審査関連業務には民間の技術者を活用させていただく、または特許庁のOBを使わせていただく、こういうようなこともしなければいけないわけであります。
 今後とも、国際的に見て遜色のない、しかも、ただいまお話にありますように、タイミングをずらさないように迅速かつ的確に特許審査ができるようにしてまいるためには、全体の定員というものの状況もしっかり踏まえ、関係府省とも相談しながら、必要な特許審査官の確保に努めるということを総合的に努力してまいりたいと思っております。
中山(義)委員 今話しているのはまず量の点ですが、やはりマンパワーというか、そこが一番大事だということは御認識があるようでございますので、その人数をふやすというのは、さっきお話がありましたとおり、行政改革という名のもとに、少ない人数で効率よくやる、これは確かに大事なことですけれども、やはり必要なところに人を持っていくということも大切なことでございます。
 どの程度人をふやせば外国と同じくらいの、一番大切なのは、今ちょうど目標であるアメリカと比べて日本がどの程度の認識なのか、今アメリカと比べて遜色ないのか、またはアメリカより上なのか下なのか、ちょっとこの辺、まず御答弁ください。
太田政府参考人 アメリカと比べてという御質問でございますが、いわゆる審査待ち期間は、日本の場合、現在二十二カ月、アメリカが十四カ月ないし十五カ月ということで、やや日本の場合は劣っている。審査官の数は、アメリカの場合は三千名近くおります。日本の場合が、特許、実用新案関係で一千百人ということでございます。
 そういう中で、我々の審査官は、一人当たり年間百八十八件、アメリカ、ヨーロッパに比べて二倍から三倍の審査の件数をこなしているところでございます。
中山(義)委員 これは確かに人数だけの問題でもないんでしょうけれども、やはり基本的にはマンパワーが少ないから時間的にも大変だと考えるのがまず一つですね。
 もう一つは、やはりその審査をしたりまたは裁判をしたりいろいろなときに、一元的に、本当は、こういう資格を持った人を使えばすぐできるというんじゃなくて、今言った調査の方は委託するとかアウトソーシングしちゃうとかいろいろやったり、それから裁判になれば弁理士さんも一緒に来てもらわなきゃいけないとか、非常に一元的じゃないと思うんですよ。そういう面で、もっと何でもかんでも一元的に、単純に物は考えられないのかどうか、その辺はどうですか。
太田政府参考人 おっしゃられるとおりだと思っております。
 アウトソーシングの徹底的な活用を進めまして、いわゆる先行事例調査というのを、我々、予算をかなりふやしてやっております。
 それから、審査補助職員ということで、OBあるいはポストドクター等の方にも手伝っていただいておる。もちろん、訴訟になった場合に、御案内のように、ことしの弁理士法改正で、弁理士の方々も弁護士と一緒に活躍できる場ができた。
 要すれば、知財の保護について、本当に国を挙げて取り組んでいく体制ができつつあると思いますが、まだまだ不十分なところはこれから努力して補っていかなくてはいかぬというふうに考えているところでございます。
中山(義)委員 そこで、審査官なんですが、先ほど西川副大臣のお話のように、公務員法であるとかまたはそういう目標であるとかいろいろなものに制約を受けますね。しかし、逆に考えてみると、審査官を七年やっていると自然に弁理士さんの免許が取れるというのは、だとすれば、弁理士さんは審査官より上だと考えることもできるわけですよ。だったら弁理士さんを、何も公務員としてじゃなくて、活用する方法はないんですか。
太田政府参考人 上、下というふうに考えているつもりは全くありません。それぞれ役割分担があると思います。
 やはり弁理士の方々、当然、代理業務ということで御活躍されておられますけれども、例えば、審査請求に当たっていろいろ調査をして、審査請求の適正化なんかについてもいろいろな形で御活躍いただけるという余地は十分あるかと思っておりますし、そういう努力もされているというふうに承知しているところでございます。
中山(義)委員 とにかく時間がかかり過ぎるということですから、我々、この戦略本部を設けてやるということは、外国と比べても遜色ないということが大事だと思うんですね。それは質も量も両方だと思うんですね。今のお話ですと、考えてみますとかなんとかじゃなくて、ここではっきり、もうあしたのこととしてとらえなければいけないと僕は思うんですよ、本当に。これは大変大事なことですから、私は、約束してもらいたいと思うんですよ。
 ですから、きょうは大臣にちょっと、知的戦略の意味から、やはりここは、公務員だけじゃなくても、弁理士さんを使っても、もっと審査の迅速化といいますか、これだけは少し約束をしてもらいたいと思うんですね。
 今二十二カ月かかると言われましたけれども、これは何とかアメリカ並みになりませんかね。それじゃなきゃやった意味ないんじゃないですかね。はっきり、よし、おれはあなたの言うとおりアメリカ並みには必ずする、あと二年たったらアメリカの倍ぐらい速くやるとか、こういう約束をしてもらわないと、ここで質問に立っていても、何かペーパーでお互いに言い合っているだけの話で何の意味もないと思うんですよ。
平沼国務大臣 知的財産というものの重要性は、日本の場合にはちょっと遅きに失した感がございますけれども、ここを一番大切にしなければならないということで、御承知のように、ことしの三月に立ち上げまして、そして七月に大綱がまとまり、その中で、基本法を早急に整備すべきだということでお願いをしています。私もこの戦略会議の中の議論にも参画をさせていただき、その迅速化、あるいは人員の増、こういったことも強くその戦略会議の中で出たことは承知をしておりまして、ですから、その戦略会議としても非常に大きな問題意識を持っております。
 これからいよいよこの戦略本部が立ち上がり、総理大臣の主導のもとにこれから事務局もしっかり整備してやっていくわけでありまして、その中で、私は、そういう人的パワーの面あるいは審査期間の短縮の面、そういったことを第一義的に取り上げて、ここのところの競争力をつけていく、このことは重要だと思いますので、これから私も、そのメンバーの一員でございますから、そういったことはしっかりと主張をしていき、また、なるべく早い時期にその実現を目指すように努力したい、こう思っております。
中山(義)委員 それでは、この問題については、やるというふうに私は考えてよろしいわけですか。いや、これは本当に大事な問題で、ここをやらない限り、マンパワーの問題なんです。もうほかにないんですよ。審査を少しでも速くする、もうこれしかないわけですから、もう一度ちょっと。
平沼国務大臣 今御答弁でも申し上げましたけれども、私もその重要性は認識をしておりますので、これからいよいよ本格的に立ち上がりますから、その中で最大限努力をさせていただきたい、このように思います。
中山(義)委員 私は田中筆頭理事からも、はっきりと、数と、いつまでにやるということをちゃんと聞けと先ほど命令されまして、大分とっちめられたものですから、ぜひ、今言ったことは、速くやる、または人数もふやす、こういうふうにとらえておりますので、ひとつよろしくお願いいたしたいと思います。
 もう一つ、先ほど料金の問題がありましたね。山田君が質問しておりました。この料金の問題。例えば、審査手数料なんかも何か今度は上がるやに聞いているんですよ。私は、知財、いわゆるプロパテント政策をとっていくのに、ここで審査の手数料を上げるというのはアンチパテントじゃないですか。こういうものはやはり金額ではっきりわかりますから、何だ、あんなこと言ったってちっともやらないじゃないかと。だから、先ほど言ったように、予算が全然ついていないんじゃありませんかと。
 やはりこういうものには、先ほど山田さんが言ったように、中小企業はなかなか大変な思いをしている。だったらもっと安くしようじゃないかというのが政策だと私は思いますよ。プロパテント政策というのはそういうところから始まらないと、いや、パテントを取るには相当金がかかるという先入観じゃまずいと思うんですよ。それはもう大臣が、パテントを取ることはこの国の勢いをつけるためだ、国の競争力をつけるためだ、お国のためだから安くしましょう、こういう発想にならないといけないわけで、その辺、いかがでしょうか。
太田政府参考人 迅速的確な審査を本当にやらなければいかぬことは、私どもの使命でございます。知的財産戦略大綱でも、総合的な対策をきちんと検討しろという宿題をいただいております。
 先ほども御答弁いたしましたが、そういうことで、ことしの九月から、アウトソーシングの徹底、必要な審査官の確保、あるいは審査基準の見直し等々を検討しているところです。その一環として、審査請求構造の改革ということで、料金体系の見直しをしております。今、出願料、審査請求料、特許料という形で私ども収入を得ておりますが、この料金体系について、審査請求料を値上げして、むしろ特許料と出願料を下げるべきじゃないかということで、我々、委員会のところで議論をしております。
 私どもとしては、プロパテント政策というのは最も重要で、いい特許はどんどん出していただきたいというふうに思いますが、今、二十万件の審査請求のうち、実はその二割、四万件については、私どもの審査官が審査して、先行事例があるとか、あるいは、先行事例がなくても、進歩性が全くないということで拒絶の通知を出させていただきますと全く応答がないという状況がございます。これは、審査官にとっては同じ手間暇がかかるわけでございます。こういうことを続けている限り、やはり滞貨がたまってしまう。これは企業の方の協力もいただかなければいかぬわけですが、やはり料金体系を見直していく必要もある。
 料金体系の方のコストでございますが、今、審査請求料というのは大体十万円ぐらいが平均でございますが、実際、私ども、監査法人で調べさせたところ、二十五万円ぐらいかかっている。そういうことで、審査請求をされる方の間の不公平もあるんじゃないかということで、全体、プロパテントの方向に向かって、より適正な審査請求をされる方の負担が軽くなる方向で考えていきたい、特許料と出願料はむしろ下げていくということで議論をしているところでございます。
中山(義)委員 だから、わかるんですが、審査の手数料が高くなると、当然、さっきちょっと言ったように、ちょっと出すのやめようかなんて思う人が出てくると、特許を出す人が少なくなるから審査が楽になるなんて、まさかそんなふうには思っていないですよね。その辺、あったら大変ですよ。どんどんやはり審査をしてもらって、パテントを早く取りたいという熱意が伝わってくるようじゃないと困るわけですよ。それを、いや、ちょっとちゅうちょしようかな、その方が審査官が楽だななんて、こんなふうに思っていないでしょうね。その辺、ちょっとはっきりしてくださいね。
太田政府参考人 出願料はむしろ下げていきたいと思います。出願はどんどん出していただく。審査請求制度というのは、昭和四十六年に、これが特許となり得るかどうかということを一度立ちどまって考えていただいて、審査請求をしていただくシステムでございます。我々は、特許となり得る可能性の高いものについてどんどん出していただくというのは、全く大歓迎でございます。
 ただ、先ほど申しましたような形で、約四万件のものがそういうことになっているとすれば、それは、審査システム、これはまさに公的なインフラだと私ども思っております。その効率的な使用という意味でもやや問題があるんじゃないかという問題意識は持っているわけでございます。
中山(義)委員 では、もう一つ。調査請求前置制度というのをつくると、それはどうなりますか。
太田政府参考人 審査請求の前に調査を私どもにしてくれと言われて、審査官あるいはアウトソーシングをしているところの団体を使ってやった場合に、そこで調査をする手間暇がかかって、かつ、その上で審査請求が出てくるとすれば、これは厳密に分析しなければわかりませんが、恐らくさらに滞貨がたまっていく可能性が強いと思っております。
 いずれにしても、そこも含めて議論をしていきたいと思っております。
中山(義)委員 私が聞いた話では、その調査前置というものは、先ほどアウトソーシングしたり何かすると言っていましたね。調査というのは大事だと思うんですよ。いろいろな形で特許の審査というのは行われますが、その前にやはり、過去にこういう発明だとか、または、あなたの発明は、これ、やっても結果的にはもう古いものですよとか、いや、これは商品になりにくいとか、いろいろあると思うんですよ。だけれども、これをやった方がかえって審査は楽なんじゃないですか。ちょっとその辺議論が分かれるんですが、どうですか。
太田政府参考人 お答えいたします。
 恐らく、調査前置ということで、特許庁の方にこれが先行事例があるかないかとかということで請求された場合に、私どもの審査官か、あるいはそのアウトソーシングをやっている工業所有権協力センターのところにお願いすることになるかと思います。そうした場合に、当然その負担がかかって、今まさに審査官とアウトソーシングをしている工業所有権協力センターが、もう本当に火の車で審査をしている部分について、さらに負担が生ずる可能性が強いというふうに思っております。
中山(義)委員 話しているうちにわかりましたけれども、やはり人間的なマンパワーが少ないんですよ、もともとが。だからこういう、今、何だかんだ、やはり時間がかかるとか結果的にはたまってしまうとかいろいろな話になるんですが、だから審査官をやはりふやす必要がある、私はこのように思うんですが、大臣、どのくらい審査官をふやしたらうまく正常に回るというふうにお考えでしょうか。その辺はもう戦略的なものですから、アメリカに伍して負けない、こういう大きなもくろみで今回のことをやっているわけですから、どのくらいふやせばいいと思いますか。
平沼国務大臣 先ほど特許庁長官からもお答えをいたしましたけれども、人数的にはアメリカは三倍近い人数でございまして、そして日本はその三分の一程度の人数、千人ぐらいの人数でやっておりまして、さらに一人当たり一・八倍ぐらいのものをこなしている、こういうことでございます。
 そういうところから想定しますと、私は相当程度ふやさなければならない、そういうふうに思うわけであります。
中山(義)委員 具体的に何人ということを、いや、これ、アメリカと伍してやって頑張っていこうというやはり勢いが見えないんですよ。そういうアナウンスが伝わってこないので、ここは、アメリカ並みに人数をふやすとか、アメリカに絶対負けない審査機関でやるとか、この辺は言っていただかないと、何のための本部かわからないですよ。だって総理大臣が本部長をやろうというんですからね。いや、僕は平沼大臣が総理大臣になった方がいいと思いますよ。
 だけれども、ここではっきり言ってくださいよ。何人とはっきり言ってくれないと、さっきから言っているように、この戦略本部はやはりうまく機能しないと思いますよ。私は意気込みを示してもらいたいと言っているので、はっきり、せめてアメリカと同じくらいの人数はふやしますと言ってくださいよ。それは、後で人数は出てくるんですか。
平沼国務大臣 それはいろいろ手段、方法はあると思います。今コンピューターの時代でございますからこれを駆使する、そういう方法もあると思いますし、また、アウトソーシングですとかOBを活用する、これは今一生懸命やっています。
 そういったことも含めまして、今アメリカが十四カ月であり、日本が二十カ月を超えている、こういうことですから、私どもは、少なくともアメリカ並みになる、こういう形で努力をしていきたい、こう思います。
中山(義)委員 これは、アメリカはどのくらいの人数でやっているかは当然おわかりで御答弁されたんでしょうから、その人数は必ず埋めてもらいたいと要求いたします。
 それから、もう一つは、最近の経済会議を見ていますと、中国が主導権をとっていますよ。そうはいっても、やはり中国はまだまだ日本の物まねが多いです。うっかりすれば、九割まで全部日本のパテントのはずだ。それを物まねしているという事例だってあるわけですね。しかしながら、やはり中国が主導権をとっている。
 しかしここは、日本がアジアのいわゆる特許庁だ、弁理士さんもうんと抱えて、アジアからいろいろな人たちが来て、この日本の特許庁がアジアの特許庁だ、そういうような形で、日本に申請をしてきて出願してきてそれを審査する、そのくらいのことは考えませんか。戦略本部ですからね。そのくらい考えていただかないと、いつまでたっても中国に主導権をとられて、どんな経済会議だって日本が主導権をとれませんよ。その辺はいかがでしょうか。
平沼国務大臣 私も、立場上いろいろ国際会議に出させていただいておりますけれども、必ずしも中国が主導権をとっているということは言えないと思います。最近は、例えばAPECの中で、そのAPECとの自由貿易協定、地域連携協定を十年以内に結ぶ、こんなことを日本より先駆けて言ったことは事実です。しかし、この知的財産の件に関しては、やはり日本が、これは中国の模倣品だとか海賊版を見てもわかるとおり、日本の方が体制がしっかり整備しています。
 そういう意味では、そういう原点に立って私どもは、やはりアジアの中心としてこの知的財産のこの問題に関しては日本がイニシアチブをとる、こういう形で努力をしていかなければいかぬと思っておりますし、その一環として、午前中の答弁でも申し上げましたように、既に、人的ないわゆるトレーニング、こういった形で日本がイニシアチブをとって共通の基盤に立つためのセミナーをやったり、あるいは人的な交流で日本に来ていただいて研修をする、こういった形で我々も努力をしておりますから、さらにそういったところを高めて、今御指摘の点、やはりしっかりやっていかなければいかぬと思っております。
中山(義)委員 とにかく、アジアで日本が、特許に関してはお伺い立てなきゃ何もできないよというぐらいの権威を持ってやっていかなきゃいけないと思うんですよ。
 知的財産権庁と我々よく言うんですが、そういうものをつくってもらって、せめて省に格上げをして、せっかくですから、アジアでやはり日本が……(発言する者あり)庁じゃなくて省に、特許庁が省になってもらいたいということを私は言っているので、西川先生、その辺ちょっとおわかりいただきたいと思うんですが、格上げをして、やはりアジアで、確固たる、省ぐらいの権限を持ってやらないとこの戦略はうまくいかないと思いますよ。
 先ほど来、数字の面やそれからスピードアップの面や、または法律改正の面もお話ししました。ぜひ前向きの姿勢でやっていただきたいと思いますので、先ほどの数字や何か、それからまた、弁理士さんも毎年五百人も最近は国家試験に受かっていくというんだったらば、アウトソーシング的なものを、審査なんかも何かそういうことをうまく利用しながら、公務員法だけじゃなくて、それにとらわれない方法をつくって、とにかく一年ぐらいでやってくださいよ、一年ぐらいで。そのくらいじゃなきゃ、絶対、世界に冠たる知的財産を大事にしている国家、プロパテント国家にはなれない、こう思いますので、頑張っていただきたいと思います。もちろん、この法律には賛成でございますが。よろしくお願いします。
村田委員長 生方幸夫君。
生方委員 どうも御苦労さまでございます。
 まず最初に、質問通告にはなかったことなんですけれども、きょうの新聞にも書いてございますように、産業再生戦略本部が発足をした。大臣ももちろん御出席なさって議論が始まったということなんですけれども、産業再生機構というのができて、RCCと産業再生機構ができて、基本的には、産業再生機構に回ったものは再生させる、RCCに回った方は整理をするという区分けというのが一つ大きな原則としてございますよね。
 もう一つの大きな原則としては、産業再生機構に買い取らせる債権の方は、基本的には、メーンがあってサブがあるという銀行の貸付先があるというところですから、常識的に考えれば大企業ということになりますので、そうしますと、中小企業の再生というのはどこが中心になってやっていくんだろうかというのが私非常に心配で、産業再生機構が大企業だけを対象にすると、中小企業がみんなRCCに回されたのではたまらないなというふうに思うので、中小企業の再生は、これはどういうふうに産業再生機構の中で位置づけられるのか、質問通告にはないんですけれども、ちょっとお聞かせをいただけたらと思います。
平沼国務大臣 これは、機構を発足させて、そしてこれからその基準づくり等の作業を今鋭意しております。
 一つ、RCCに行く中でも、私は再生のチャンスはやはり吟味をして、そして再生のチャンスがあるものはある、そういうふうに私は認識をしているところでございます。
 それから、中小企業に関しては、大企業だけじゃないかということですけれども、これはやはり中小企業でも当然再生すべきところはさせていかなければいけない、こういうふうに思っておりますから、これから我々も入りながら議論をしていくところでございますが、経済産業省としては、その基準づくりというものを今作業しております。
 ですから、いずれにしても、大企業そして中小企業というのも、その基準の中でどういうふうに当てはめていくかという問題になると思いまして、私は、一部大臣の発言なんかは、まず大企業だというような、そういう御発言もあったように聞いておりますけれども、これからの議論の進め方の中で、中小企業も当然含まれていかなければいけない問題だ、こういうふうに思います。
生方委員 大臣の言っていることはよくわかるんですけれども、今、産業再生機構が具体的に発足をしてしまいますと、メーンのは買わないんだ、サブのを買っていわば債権を集中するんだということになりますと、中小企業の貸し手というのは、私もよく知りませんけれども、そう何社にもわたっているということはないはずなんで、RCCに送られちゃうと、今現在で言えば、ごく普通の人が考えれば、あそこはもうRCCへ送られちゃったんだからもうだめなんだというふうに、大臣はそうじゃないというふうにおっしゃっても、世間一般がそういうふうに認めてしまっても困りますので、産業再生機構の中に、中小企業担当の産業再生というんですか、中小企業再生という部門を、部門と言うのがいいのか何がいいのかわかりませんけれども、やはりきちんとつくっていただいた方が私はわかりやすいと思うんですよね。
 RCCは基本的には処理なんだ、産業再生に回った方は再生なんだというふうにこれだけ大きく出ていると、やはりRCCに回されちゃったということは非常にイメージも悪くなると思うので、ぜひとも大臣の御発言で、産業再生機構の中に中小企業の再生というのをどういうふうに盛り込むかは非常に難しい面はあると思うんですけれども、何とか中小企業の皆さん方にも安心していただくように、不良債権の処理イコール中小企業の切り捨てではないんだということを政府の姿勢として示す意味でも、それを、大臣の御発言でもいいですが、とにかく発言をしていただいて、産業再生機構の中に中小企業の再生というのを位置づけていただけたらと思うんですが、いかがでございましょうか。
平沼国務大臣 先ほど御答弁で申し上げましたように、今我が省が主体となってそういう基準づくりをしております。そういう過程の中で、私どもとしては、そういう対策もしっかりと踏まえて原案をつくっていきたい。これを素案として出させていただいて、また議論させていただきますから、その中でも私は今の御意見をしっかり踏まえていきたい、こういうふうに思います。
生方委員 ぜひとも、中小企業がやはり日本の力の源泉でございますので、ここが力が弱くなったのでは、大企業だけ幾ら再生したって、そのふもとが全然なくなったのでは頂だけが高さを保っていられるわけないわけでございまして、ぜひともその辺は頑張っていただいて、お願いを申し上げます。
 それでは、質問に入らせていただきますが、きょうの新聞を見ておりましたら、世界競争力ランキングで、日本が意外に健闘して十三位になった。私は下がったということを質問しようと思っていたんですけれども、ここで、躍進十三位というふうになっております。こういう新聞記事が出ております。
 一般的には、IMDで調査をしているところによれば、九六年から急激に日本の国際競争力というのが低下をしている。これは、私も不勉強で申しわけないんですが、どういう基準で、どういうふうに調査をしているのかよくわからないんですけれども、これほどまでに競争力が下がっている、そうしたら何でこんなに貿易黒字が多いのかというような気もするんですけれども、いずれにせよ、ある程度の客観的な基準がある中で、日本の国際競争力というのが急激に九六年から低下した。それまでは一位、二位とかというところにいたわけですから、何でこんな急激に低下をしてしまったのか。大臣はその原因をどのように分析をなさっていますでしょうか。
平沼国務大臣 我が国の産業を個々に見ますと、依然として高い競争力を有するものもあることは、これはもう事実でございます。総体として見れば、欧米に比しておくれをとっている、こういう見方もありますけれども、私はまだまだポテンシャリティーは持っていると思います。
 いろいろな調査機関がありますけれども、IMDでは依然として二〇〇二年は三十位というようなことで低迷しております。たしか四十九カ国のうち三十位というようなこと。今委員がお示しいただいたものはWEFのデータで、昨年は二十一位であったものが十三位になった、こういうことでございます。
 私は、競争力低下の原因としては、技術革新ですとか事業革新が活発に生み出せていない、そのことが一つ大きいと思います。公的セクターによるさまざまな規制でございますとか、あるいは高コスト構造によりまして我が国の潜在的な活力が十分引き出されていない、そのことに要因があると思います。それはやはり反省しなければなりませんけれども、本当に、先ほど小沢先生でしたか、焼け跡経済というようなそういう表現を使わせていただいて、その中から日本は不死鳥のように立ち上がったときには、非常にそういう意味では技術革新をしっかりし、そして物づくりにいそしんできて競争力をつけてきました。
 しかし、私は、バブルに象徴されているように、それまでずうっとやってきたそういう、ある意味では思い上がりがあって、そしてそこで小休止をしてしまったんじゃないか。その結果、従来やっていた技術革新ですとかそれから事業革新、これがやはり鈍化をしてしまった。そこへもってきて非常に資産が集積をしました。
 そういう意味で、努力を怠って高コスト構造、こういう中に私はあると思っておりまして、我が国の潜在的な活力が十分引き出されていない、こういうところに要因があるのではないか、こんなふうに思っております。
生方委員 戦後、日本経済がここまで大きく伸びてきた一つに、改良技術を磨きに磨いて、やはりお客さんを大事にして、品質のいいものをつくってきたということがあると思うんですね。それはそれなりの非常に厚い蓄積があるはずで、わずかこの十年でトップレベルにあったものが四十九カ国中の三十位というふうにまで下がるものではないと思うんですね。
 こんなに厚さがあったものが急にというのは、何かよほど大きな原因でもない限り、日本の産業が破綻したというならこれはいいんですけれども、依然として非常に強い競争力はあるんですよね。強い競争力がないとこれだけの貿易黒字にはないわけですから。
 この数字だけ見ると我々も非常にがっかりしてしまうんですけれども、客観的に見て、何でこんなに下がっちゃうのか。いや、私は、このIMDというのはどういう調査をしているか知らないで申し上げているので申しわけないんですけれども、この数値だけ見ると、こういう数値が出ると、やっぱりだめかというふうに思っちゃう。国民が非常にマイナスのイメージをとっちゃいますよね。
 それこそ、技能オリンピックなんというのを昔やっていたころは、日本はずっとトップでいて、やはりそれが誇りになって、物づくりに一生懸命頑張ろうというふうになったんですけれども、こういう数値が出ると、やっぱりだめか、そういうところに行くのをやめようかというふうにもなってしまいますので、もちろん客観的な評価に基づいているんでしょうけれども、本当に意図的に、日本の競争力が非常にないんだという、私は、どう見てもここに出ている国々よりも日本の競争力、国際競争力がないとは思えないんですが。
 これはもちろん客観的な基準があるんでしょうから、ここで論議をしてもしようがないんですけれどもね。もう少し、どういうような調査をしているのかも含めて、高めるような努力がもしできるのであれば、高めて自信をつけるということも必要じゃないかというふうに思うんです。
平沼国務大臣 例えばIMDの四十九カ国中三十位という、それは私も詳細には全部承知をしておりませんけれども、例えば、国債の発行高でございますとか金融システムがどうなっているか、そういったことが加味されているわけですね、その総合判断。ですから、個々幾つかある中では、例えば技術開発力というのは日本は相変わらず上位ランクにあると。総合的に判断して三十位だと。
 その比重の中で、金融システムで御承知のように不良債権をたくさん抱えている、それから七百兆を超える国の借金があるとか、そういったことが相当影響しておりまして、先生がおっしゃるように、例えば経済の潜在力とかそういうことを加味していけば、私はそう日本は下ではないと思っております。
 例えば、日本の借金が七百兆だ、こういうようなことで、これが非常に喧伝されて、確かにこれは日本の財政の足を引っ張っていることは事実ですけれども、しかし同時に、先進七カ国で、もう一つの計数で比較すると、企業でも資産の部と負債の部があって、確かに日本は負債は七百兆あるけれども、資産は、例えば外貨準備高一つとってもこれは世界で圧倒的で四千百億ドルを超えるものを持っていますし、ではアメリカの国債を一番買っているのはどこで、それを資産として持っているのはどこだといったら、これは私もちょっと調べてもらいましたら、三千九百億ドルぐらい実は持っている。これを資産の上に加味して、それで比率を出しますと、実は先進七カ国の中で日本はそういう意味ではアメリカに次いで二番目にいい数字で、ほかはみんなそういう率では日本から下なんですね。
 ですから、前にムーディーズの評価のときに、我が財務省は今までそのことを言わなかったのですけれども、ムーディーズに抗議の文書を出したときには、実は財務省はその比率を使って、日本はそんなに悪くないぞ、こういうことを出した事実もあるわけでありますから、確かに先生御指摘のとおり、そういう、自信を喪失するようなそんな数字ばかり我々は羅列をしないで、いいところはこれだけあるんだ、そういうことも強調をして、やはり自信を回復しなければいかぬ、私はこのように思っております。
生方委員 今大臣もおっしゃいましたように、格付がボツワナより低いとかという失礼な話で、どう間違えたってそんな低いわけもないですし、競争力だって、この数値だけ見て本当に、我々はよく知っているからこんなはずはないだろうと。
 大臣もよく、今おっしゃいましたように、技術革新力が一番だなんというのがわかっていればいいんですけれども、一般の国民は、これが新聞に出れば、日本はもうだめなんだ、韓国よりも低いし、もう何よりも低いんだという、国債の格付ももうこんな低くなっちゃったんだ、もう日本はだめなんだという、みんな日本人全体が自信を失っちゃうようになりますので、それを報道するなと言うことはできないわけですけれども、そういう報道が出た場合、いや、そうじゃない、こういうプラスの数字もあるんだというのを瞬時に経済産業省がぱっと出すというようなことも必要だ。
 ぜひ、自信をなくす必要はないわけで、厚い蓄積があるのは間違いないわけで、さっき申し上げましたように、日本の貿易黒字を見れば、国際競争力が弱い国が何で、普通で言えば貿易赤字になるのに決まっているのに、これだけ世界一の貿易黒字を抱えているのかということを見たって、客観的な評価かどうかというのは疑わしいというふうに思わざるを得ないので、その辺はお願いをいたしておきます。
 それでは、知的所有権の問題についてお伺いしますが、職務発明についてお伺いしたいと思います。
 これはアメリカとかドイツとか、ここに書いてございますように、職務発明は原始的に従業員に所属をさせる、日本も基本的にはこの立場に立っているということでございますが、これは、訴訟が起こったり、ノーベル賞をとった方が一万円でいいというふうに言ったり、なかなか、個人の社内に置かれた立場とか個人の考え方とか、それから会社の方針とか雇用契約にどう書き込まれているのかということで、いろいろ職務発明について位置づけが違ってきてしまうと思うんですね。これは、気の強い人、気の弱い人、それから、自分が置かれている経済環境等を含めて、主張しづらい人、主張しやすい人、いろいろあると思うので、私は、やはりある程度の客観的な指針というのを国が示す方がいいんじゃないかと。
 特許法三十五条の規定は、もう随分前に規定されたものでございますから、どういうやり方がいいのかわかりませんが、例えばドイツでは従業員発明法というのをつくって詳細に決められているということなので、そこまで詳細に決めるのがいいかどうかわかりませんけれども、ある程度の客観的な基準を、特許法三十五条だけではなくて、もう示す時期に来ているのではないかなというふうに思うんですが、大臣、いかがでございましょうか。
太田政府参考人 お答えいたします。
 現行特許法三十五条の職務発明規定ですが、今先生言われたとおり、発明は発明者の財産であるという原則のもと、発明者を保護し、発明意欲を刺激する、エンカレッジする。同時に、その給与その他の資金的援助をなした使用者との間の利益を調整するための規定というふうに我々は理解しております。
 昨年五月にいわゆるオリンパス光学事件の高裁判決が出ました。使用者が支払った対価が相当額に満たない場合は、従業者は事後的に相当な対価を請求し得るという判決でございます。これをきっかけに産業界からは、一度定めた対価の額の安定性を損なう可能性があるということで見直しの議論が提起されました。一方で、現行の規定を改定いたしますと、発明者である従業者に不利に働くという議論ももちろんございます。
 それで、今先生言われたドイツの従業者発明法につきましては、法律に基づいて補償金の具体的算定基準のガイドラインが定められております。相当な対価の額の予見可能性が高められているという積極的な意見がある一方で、このガイドラインが算定の手続をかなり詳細に規定しているために、かえって手続が煩雑になって管理のためのコストが増大しているとの指摘もございます。実際にドイツでは、補償金の算定結果をめぐる紛争も少なくないと聞いております。
 私ども経済産業省といたしましては、二〇〇二年度中に、企業における実態、従業者の意識、それから、ドイツとかアメリカを初めとする各国の制度、実態等の調査を行います。その結果を踏まえて、産業構造審議会の小委員会において、三十五条の職務発明規定の改正の是非、それを改正する場合は、その方向性について検討を行いまして、二〇〇三年度中に結論を出したいというふうに考えているところでございます。
生方委員 これは、やはり研究者のやる気というのもございますので、大体どうなんだろうという目安がないとなかなか難しい問題があると思いますので、二〇〇三年ということであれば、そう遠い時期でもないので、ぜひとも、ある程度の方がわかるような形で出していただければありがたいなというふうに思っております。
 これに関連して、日本は研究者の位置づけが余り高くはないのではないかと。実は、私の義理の弟が大学を出て、その後大学院に行って博士号まで取って、その後就職するわけですね。おまえは随分いい給料をもらっているんじゃないかというふうに言ったら、要するに六年間余計にやった分、六年勤めていた人と給料はかわらないんだよということになると、その六年間、親はきっとすごいお金をかけて大学院まで出して給料が全くかわらないということになると、なかなか普通の大学院まで出すというふうにはいかなくなっちゃって、もちろんこれは企業の問題なんですけれども、やはりそれなりのインセンティブというのも与えてあげないと、大学院に行く数が日本人は少ないと思うんですね。
 これはちょっと観点が違っちゃいますけれども、若年の労働者の失業率が非常に高いということを考えても、やはりもっと大学院教育というのを充実させる。ロースクールなんかもその一つなんでしょうけれども、充実させるという意味からも研究者の処遇というのを、政府がバックアップするわけにはいかぬでしょうけれども、その処遇を高めるような方策というのを何かやはり考えるべきだというふうに私は思うんですが、いかがでございましょうか。
中村政府参考人 お答えいたします。
 一般的に我が国は、研究者の位置づけは、余り処遇面では恵まれていないということはおっしゃるとおりでございます。また、基本的には、研究者の処遇というのは、各企業とか研究機関がみずからの責任で人材を確保する。だから、一律、博士号を持っているからあれするということではなくて、例えば田中さんのように、博士号がなくても立派な研究はできるわけで、あくまで能力に応じてやるというのが原則であります。ただ、いかんせん、何分にも日本は能力差をつけるのが嫌いですから、いい研究者にも十分な処遇が与えられないから海外に逃げていっているという現状にあろうかと思います。
 他方で、大学等が十分な企業側のニーズというものを反映した大学院生を送り出しているかということについてもやはり再検討の必要があるわけであります。そのような観点から、大学連携による技術経営、まさに研究者でありながら企業の経営のマネジメントができるような人材を送り出してもらう必要があるわけです。
 そういう意味で、産学連携による技術経営人材の育成のためのプログラム開発であるとか、カリキュラム、教材の開発等を支援してきているところでございますが、そういういろいろなあれを通じて、関係省庁とも協力しながら、いわゆる研究者、大学教育と企業のニーズとを合わせるような方向で進んでいきたいというふうに考えております。
生方委員 スタンフォード大学なんかを見ると、スタンフォードがあって企業があるのか、企業の中にスタンフォードが入り込んでいるのかわからないような形で、産学が一体となっていますよね。東京大学を見ると、やはり東京大学は塀で囲まれていて、あそこに、工学部だって中へ入っていかなきゃいかぬですし、なかなか、開かれた大学というふうに言いながらも開かれてないですよね。早稲田なんかは、それこそ門を開いて道のところを通れますが、あそこを通るのは商店街のおじさんぐらいで、普通の企業の方が通るというふうにはなっておりませんのでね。
 だから、ああいう環境というのをやはりつくることが、シリコンバレーの中で非常に新しい企業が出てくるし、それをまた気軽に大学に行って話をしてくるし、大学の中で何かこういう話はどうだろうかというのがまた企業にすぐ結びつくような、こういう雰囲気ができることがシリコンバレーは非常に恵まれていたと私は思うのですね。
 これは、即、塀を取れば済むという話ではもちろんないのですが、大学と民間との関係をやはりもうちょっと深めていくというんですか、言葉だけで深めるのじゃなくて、もっと気軽に大学に入っていって大学から出てくるような、いろいろな規制ももちろんあるんでしょうけれども、そういうものを取っ払っていくということが必要なのじゃないかなと。
 いつかアメリカのユタ大学か何かに行ったときには、大学の中に研究棟じゃない建物を設けていて、そこへ何かアイデアがある人がやってきて、そこへ大学の研究者や大学生も行っていろいろな話をする、それで何かうまくいけばそこで企業を立ち上げてもいいよというような、そういうスペースと建物があったのを見たことがあるんですね。
 だから、こういうものが、まあ建物をつくればそこで何かできるというわけじゃないんでしょうけれども、そこへ自由に両方が出入りできるような空間というか建物をつくるというのも、ある意味では一つ意味があることじゃないかなというふうに思うんですけれども、そういうのは文部科学省の管轄だとかいうようなしゃっちょこばったことを言わずに、これは両方で協力しながらやっていくという必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
中村政府参考人 委員御指摘のように、やはり日本の問題というのは、産業と大学とが離れていたという点に問題があったわけで、ここ数年間、急速に産学の連携を強めようということでやっております。
 現時点においては、一応、大学においても、TLOをつくるときにおいては大学の中につくっていいということになっていますし、そこに経済省もいろいろな形での支援を行っております。
 それから、今般、財務省とも折衝して、大学の中に大学発ベンチャーをつくるときには国有財産の貸し付けなり使用を認めていいよというように告示も直されました。したがいまして、今十七のTLOが国立大学の中にもありますけれども、そういう形での産学連携ということを文部科技省それから経済産業省あわせてやっていきたいというふうに考えております。
 それから、他方、国立の研究所も産学官の連携に努めておりまして、例えば産業総合研究所でも、今十三年度実績で、大学とか民間の研究者が延べ八百七十三名常駐しているわけですね。そういう形で大学においてもやるし、国立研究所においてもやるということで、今一生懸命そういう意味で国際的な技術力をつけようというふうに努力しておるところでございます。
生方委員 もちろん、努力をされていて徐々に開かれつつあるのはわかるんですけれども、もっともっとやはりこれは広めていかなければいけないのではないかなということだけお願いをいたしておきます。
 最後に、今度、知的財産基本法ができるわけですよね。これは、知的財産であるのかどうかという判断というのが非常に難しいのではないか。
 今度の委員会では弁理士さんなんかからたくさん御意見を聞かせていただいて、弁理士という言葉をようやっと我々も知るようになったということで、どうもその弁理士という呼び名が、弁理士の方がいたら申しわけないですけれども、便利屋さんとダブるような、だからこれは何か名称を、変えると言ったらこれは弁理士さんに失礼かもしれないですけれども、聞いてすぐわかるような名称にする。
 例えば、不動産鑑定士なら不動産鑑定士で、不動産を鑑定する方なんだなと。知的財産なら知的財産鑑定士というようなものをつくれば、その人が知的財産については客観的な判断をしてくれるんだなというような形の、名称も含めながら、知的財産を客観的に評価できる人というのを育成していくということも、弁理士さんがそれに相当するのであれば、弁理士という呼び名をある程度変えることによって国民の理解というのもまた違ってくるでしょうから、せっかく基本法をつくるんですからそういうことを含めて少し考えてみたらどうかなというのが私の考えなんですけれども、大臣、いかがでございましょうか。
平沼国務大臣 弁理士という呼称でございますけれども、ある意味では日本の社会で、特許でございますとか知的な財産権に関して専門職として社会的機能を果たすというそのこと自体は定着をしているのではないか、こういうことを私は思っております。御党の菅さんも弁理士として活躍をされた時期があるわけでありまして。
 いずれにいたしましても、三月に会議を立ち上げて七月に大綱がまとまり、そして本部が設置されて、これからさらに中身を充実させていく、こういうことでございますから、やはり知的の財産をいかに創造して、そしてこれを保護して活用するか、この中において、弁理士の皆さん方の活躍の場、こういうものもしっかりと、やはりどんどん働いていただいて協力をしていただく、そういう場をつくっていくことは当然だと思っておりまして、私もその中で、チャーターメンバーの一人でございますから参画をして、そういった問題意識を持ってやらせていただきたい、このように思っています。
生方委員 弁理士さんが、弁理士の免許を取って事務所を開くと特許事務所になるとかというふうになっちゃうので、弁護士は事務所を開けば弁護士事務所になるので、そこら辺がちょっとわかりづらい面があるのかなというような気もいたしますので。名称は、もちろん弁理士さんも長い歴史があるわけですから、すぐ変えろといってそれを変えるようなものでもないかもしれませんが、新たに知的財産の基本法ができるわけですから、そういう客観的な評価ができるようなものができるのであれば、そういう呼び名も考えてもいいのではないかな。
 そういうことを含めて、国民全体に知的財産がいかに大事であるのかというのを広めていただいて、我が国が知的立国になるように努力をしていかなきゃいかぬということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
村田委員長 土田龍司君。
土田委員 今回、知的財産基本法がやっと日の目を見たといいますか、出てきたわけでございますが、深刻な不景気になって十年以上たとうとしている。国内的にもいろいろな分野で景気対策が行われ、あるいは最近は、デフレスパイラルからの脱出をどうするかということで努力をされている。知的財産について、こういった頭脳労働的な国家をつくり上げるということは非常に立派なことだと思いますし、早くしてほしかったなという感じがしているわけでございます。
 そこで、たくさんいろいろな質問が出ましたので重複もあるかもしれませんが、私自身が考えている大事だと思うところを幾つか質問させてもらいたいと思います。
 まず最初は、こういった、国の産業として国を挙げて取り組むという姿勢を示すのはいいんですが、戦略本部の本部長を総理大臣にしたのはいただけないなと私は思っているんです。全閣僚が出席をして、その本部長を総理がやって、実際に今の内閣でこういった議論ができるのかどうか、時間的に可能なのかどうか。そういったパフォーマンス的に感じるようなことはやらないで、例えば経済産業省の副大臣がその本部長に当たるとか、西川副大臣が当たるとか、そういった方がむしろ具体的で、僕は現実的だと思っているんです。
 今のシステムでやりますと、どうしてもまた内閣官房副長官補がこれを所管するわけですね。また役人が全部やるんじゃないか、政治主導じゃなくて、あくまで役人の管理のもとにこれを進めていくというイメージが出てならないんです。実は、自由党の部会でも、この法案について議論したときに、このことが一番時間を割いて議論したところでして、しょせんは役人主導じゃないか、あるいは、もったいつけているんじゃないかというイメージが出てきてしようがないんですが、大臣、この点はどうでしょうか。
平沼国務大臣 本法案によりまして内閣に設置される知的財産戦略本部というのは、御指摘のように、全閣僚と有識者から構成されるわけでございます。全閣僚がなりますのは、知的財産に関する重要な政策課題は、もう御承知のように、全省庁にまたがると言っても過言ではございませんので、知的財産戦略を政府として一体的に推進するためにはそれぞれの大臣が先頭に立って各省を指導していかなければいかぬ、こういう背景があると私は思います。
 総理が本部長の会というのは、御指摘のように幾つもございまして、ITもそうでございますし、総合科学技術会議等もそうです。それは、確かに御指摘のように、役人主導というようなそういう弊害が起こる可能性があるという形で、これに関しては、やはりそれぞれ有識者が入り、分科会等を開きながら、そして総合的に本部の場に持ってくる、こういうシステムがあるわけでございまして、必ずしも、役人が全部それを仕切る、こういうことではございません。
 今回の場は、それぞれの大臣が所管に対して責任を持つ、そういう形になっておりますので、私は、そういうワーキングチームを活用する、その中で専門的な議論を行っていく、そういうことで御懸念の点というものを排除して、そして、しっかりとした成果が出るように運営をしていかなければならない、こういうふうに思っております。
 確かに、御注意の点は、そういうこともあると思いますので、私も、経済産業省というのは知的財産に関しては相当部分を受け持たなければいけない役所でございますので、そういう問題意識を持って、そういう弊害が起きないように私は努力をしていきたい、このように思います。
土田委員 今回の法案の第三条及び第四条に基本的な理念が規定されているわけでございますが、この関連施策の推進によって、いわゆる知的創造サイクルの構築について述べたものと考えられるわけでございますが、この法案の基本的な理念について、改めてお尋ねしたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 我が国産業の国際競争力を強化いたしまして活力ある経済社会を実現するためには、すぐれた発明、あるいはデザイン、さらにはブランド、そしてコンテンツなどの知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出を基軸に据えていかなければならない、このように思っています。
 そのためには、付加価値の高い知的財産を生み出す仕組みを整えまして、国内及び海外において知的財産の迅速かつ適正な保護を図る、そして、その知的財産が流通をして、社会全体で広く活用されることによって、再投資が行われてさらに新たな知的財産を創造する力が生まれてくる、そういう知的創造サイクルを構築することが肝要だと私どもは思っておりまして、その辺が私どもの理念、こういうことに相なっております。
 本法案に基づいて設置をされます戦略本部が中心となって、先ほども御答弁で申し上げましたけれども、関係府省と緊密な連携のもとで、政府一体となって、知的創造サイクルの好循環を一層発展させていかなければならない、このように思っています。
土田委員 この知的財産政策が行われることで、どういった過程を経て我が国産業の国際競争力の強化あるいは持続的な発展が実現されて、その後国民生活の健全な発展や豊かな文化の創造につながっていくのか、この辺の解説をお願いしたいと思うんです。
平沼国務大臣 これは、今の御答弁でも申し上げましたけれども、そういう知的財産をやはり創造しやすくする、そして、その生まれた知的財産というものをしっかりと保護し、そしてその権利を確立して、そしてその活用が万全に行われるようにするということが基本だと思います。
 そういったいわゆる知的創造サイクルが生まれますと、これは、そういう知的な付加価値のついた製品、あるいはデザイン、あるいはコンテンツ、そういったものが、世界の市場の中で一定の権利保護のもとで流通をし、それが経済の活性化につながり、さらに、好循環のもとで、そこからまた新しい知的創造が行われる、これがぐるぐる回ることによって、日本のみならず世界全体の経済というものを活性化する、そしてそういう形で大きなフェーバーがもたらされる、そういうことを私どもはイメージをしているわけであります。
土田委員 きのうの参考人質疑のときに質問したのと同じ質問をさせていただくんですが、知的財産の保護をさらに強化していくということと、この発明が広く国民に使われる、供用されることによってその切磋琢磨が新たなエネルギーを生んでいくと思うんですね。ですから、この保護とそれから供用と、これの兼ね合いといいますかバランスといいますか、これについてはどう考えておられますか。
平沼国務大臣 それは非常に大切な点だと思います。
 その権利を保護するということがやはり経済にインセンティブを与えることにつながるわけでありまして、その効用が出てくるわけであります。ですから、そういう中で、私どもは、知的財産というものをしっかりと守り、そしてこれを活用し、そして好循環のサイクルを起こすということが非常に大事だと思います。
 そして、その権利者に対しては、やはりその権利というものを一定期間保護をするという形によって、その発明者なり創造者というものの権利を守っていく、こういうことが大切でございまして、それが余り乱用になるということもそれは弊害として考えられるわけでありますけれども、それは、私どもとしては、一定の範囲の中でそういう好循環を生んでいく、こういうことでいいと思っております。
土田委員 高い付加価値を持った創造的な技術革新を生み出す環境をつくることが極めて重要であるということでございますけれども、だれもがこういった創造的な発明や技術革新をできるわけじゃないわけですね。つまり、一部の勝ち組と多数の負け組が出てくるんじゃないかということが想像される。勝ち組には高い収入があって、負け組は非常に苦しい立場に置かれることはないのか。あるいはまた、これまでの中小企業、従来の中小企業がそういった技術的なことを持たないために端っこに押しやられてしまうことはないのか。この点についてはどうでしょうか。
高市副大臣 残念ながら、産業構造の大転換期でございますから、現在においても勝ち組、負け組といった分化は起こりつつあると思います。その中で、サービスであれ、そして製造であれ、付加価値を高めることのできない企業というのはやはりしんどいのだろうと思います。
 ただ、この知的財産基本法の成立に伴い、必要な施策が講じられた場合に、一つは、先端技術分野において知的財産が企業に円滑に移転していく、そしてこれが実用化されていくことによって、総体的に我が国の産業の競争力というものはアップしていくだろう。みずから知的財産を新たに創造する活力のある企業が市場において収益を得て発展することによって、やはり経済全体の底上げにつながるだろうと思います。
 ただ、みずから知的財産と呼べるものを創造し得ない企業も、例えば特許の普及、移転といったシステムを利用して新たなビジネスをつくり出すチャンスというものもふえていくはずだと考えております。
土田委員 この政策が推進される中で、いろいろな企業がより高い付加価値をつくるための製品の開発にしのぎを削っていくわけですね。しかし、そうでない業種といいますか会社、特に製品の製造業などがさらに海外へシフトしていくんじゃないか、いわゆる産業空洞化がさらに加速するんじゃないかということが心配されると思うんですが、このことについてはどう考えておられますか。
高市副大臣 残念ながら、コスト競争ということで考えますと、製造業に関してはある程度の海外への移転というものはとめようのない流れであろうと思います。
 ただ、コスト競争だけでなくてクオリティーを高めるための支援を国として行っていこう、その中で知的財産を創造する、保護するという一つの政策があるわけでございますので、私としては、空洞化を進めるのではなくて、むしろ食いとめるために必要な一つの方針を示すものである、このように考えておりますし、また、模倣品対策、海賊版の対策などを打つことによって、我が国の製造業の競争力が不当に侵される、不当に低下することのないような政策については打っていきたい、打っていくべきだと考えております。
土田委員 我が国で生まれた知的財産であっても、その製品化の段階で取り扱いを間違えた場合に、国際競争力を強化するどころか、逆に利用されてしまうということが想定されるわけですね。
 ですから、これは頭脳流出の問題も同じなんですけれども、それぞれの企業や研究者の自由意思に任せるべきであるという考えもあると思うんですが、国家戦略として容認しがたい問題じゃないかと私は思っているんです。政府は、国益にかなった知的財産の保護のあり方についてどう考えておられますか。
高市副大臣 知的財産を戦略的に創造し、活用することで我が国産業の競争力を高めていく、それから持続的な発展を実現していくということが本法案の目的でございますので、それはまさに我が国の国益を実現するものであると考えております。
 それから、産業活動がグローバル化していく中で、世界的に知的財産制度のハーモナイゼーション、国際調和というものが進められております。その中で、この知的財産の保護について無差別に行うということが国際的なルールなんですが、もしもこれに反するようなことをしてしまった場合は、我が国の知的財産制度につきまして国際的な信用を損ねることになりますから、日本の経済発展に悪影響を及ぼすものだと思っておりますので、政府としましては、我が国においてほかの追随を許さない新たな技術や産業が次々に創出されるように必要な施策を講じていくということでございます。
土田委員 この法案の第五条から八条について、いわゆる事業者や大学等に課す責務についてお尋ねしたいと思うんです。
 まず、「地方公共団体は、」「国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。」とされているわけですね。これは、地方自治体と国とどのような役割分担がされるのかということ。また、地方公共団体が策定する区域の特性を生かした施策とありますけれども、どのようにして国の知的財産推進計画との整合性を図るのか。
平井政府参考人 お答え申し上げます。
 国と地方公共団体の役割分担についてでございます。
 国は、この法律に基づきまして、国全体の産業の国際競争力の強化、活力ある経済社会を実現するために、知的財産戦略に関する推進計画を定めます。一方、地方自治体におきましては、住民に密着した観点に立ちまして、個性のある地域の発展を図るために、地域の特性を生かした創意工夫を可能とする知的財産に関する計画をつくるという形でございます。
 要すれば、国は、知的財産立国の実現のための総合的な知的財産戦略を策定し、それを受けて、地方自治体におかれましては、国が策定するその戦略に基づきまして計画を策定するという形をとることとなっておりまして、そういった形で整合性を図るということとしております。
 また、具体的な施策といたしましては、例えば、国は、我が国企業等が有する知的財産保護のための国際交渉でありますとか、あるいは知的財産の特許証等におきます審査、あるいは権利の設定のための施策等々を講じるのに対しまして、自治体におかれましては、恐らく、基本的な啓蒙普及活動でありますとか、小学校、中学校、高校等の教育の実施等々の施策を講ずるということが中心になるかと考えております。
土田委員 地方自治体が財政難で苦しんでいる、ほとんどの自治体がそうだと思うんですが、今回の施策を実施していくに当たって、各自治体に対してさらに財政負担を強いることになるんじゃないかという気がするわけですが、この場合の財政措置といいますか、なるべくその負担を軽減するための措置については何か考えておられますか。
平井政府参考人 お答え申し上げます。
 国から地方自治体への財政的な支援につきましては、一般論ではなかなか御答弁しにくいわけでございますが、基本的には、個々のケースに応じまして検討していくことになるかと考えております。
土田委員 職務発明について先ほど質問があって、長官から御答弁がありましたけれども、来年じゅうぐらいにはその帰属をはっきりさせたいというような話でしたけれども、これまでもいろいろな問題が出ておりました。
 これまで当然議論されてきたと思うんですが、これについては大きな流れといいますか、どこになるのかなという感じが私はするんですけれども、ちょっとこの辺について、どういった議論がされたのかお答えください。
太田政府参考人 特許法三十五条の規定の扱いについて、ことし九月から議論を始めています。もちろんそれ以前から各方面でいろいろな議論がされてきたのを承知しております。一番極端というか、むしろ使用者と従業員との間の自由な契約に任せるべきではないかという議論もございます。アメリカの方式はそういう形でされております。
 それから、特許法三十五条の一項と二項は残しておいて三項、四項を削る、相当な対価を請求する権利を有するという部分について削除して、むしろ勤務規則等で決めることが一つの考え方じゃないかという考えもございます。
 それから、特許法の今の規定はそのまま維持して、維持するだけではなくて、先ほどの御質問にもございましたけれども、ドイツみたいにガイドラインをつくった方がより明確になるのではないかという議論もあります。非常に幅のある議論でございます。
 かたがた、労働、雇用の問題、雇用形態も変わってきているということも頭の中に入れながら、しっかり議論を進めていきたいというふうに思っているところでございます。
土田委員 次に、知的財産の活用についてお尋ねしたいと思うんですが、知的財産を有効活用するためには特許の流通市場、先ほど大臣の方から答弁いただきましたけれども、整備が非常に重要であるということでございますが、現在政府においてどのような取り組みが行われているのか。あるいはまた、休眠特許、この流通が新たに事業展開に結びついた例はあるのかどうか。もしもあるんだったら、その成功例を幾つか述べていただきたいと思うんですが。
太田政府参考人 特許の流通を促進するための政府の取り組みと、あと、具体的にどういう事例があるかという御質問でございますが、御案内のように、特許は今、日本では百万件登録されておる、その中の三分の一ぐらいが休眠特許ではないかと言われておるわけでございます。
 こういう休眠特許、恐らく大企業が多く持っているかと思いますが、そういうものを中小企業が活用して新たなビジネスを起こすことも十分あり得るということで、特許庁としては、特許流通市場の整備を図るため、平成九年度より特許流通促進事業というのを始めています。具体的には、特許流通アドバイザーを全国の都道府県それから大学等に派遣しております。それから、特許流通フェア、要するにマッチングの場をつくるというような取り組みを進めてきました。
 また、平成十三年度以降は、独立行政法人工業所有権総合情報館におきまして、これらの事業を引き続き実施するとともに、特許流通を行う知的財産権取引業者の育成を図るべくさまざまな施策を講じております。
 具体的には、研修会あるいは国際特許流通セミナーを実施しまして、多くの受講者を集めました。本年九月には、東京で開催されました特許流通フェアの会場におきまして、これは試行的な取り組みですけれども、特許入札会というものも開催いたしております。
 いずれにしても、今後一層の活性化に努めてまいりたいと思っておりますが、具体的な成果でございますが、平成九年度から開始した特許流通促進事業、これまでで累計二千八十一件のライセンス等の契約が結ばれております。利用者から高い評価を得ていると考えております。
 実際に事業化に結びついた事例の一つとして、千葉県の中小企業、プレス機の補修等をやっている企業ですが、これがある雑誌を見てヒントを得て、これは自動車会社の大手企業が特許を持っているということがわかりまして、千葉県に来ている特許流通アドバイザーに相談して、そのアドバイザーがその大手企業に声をかけてくれてライセンスを受けることができました。ということで事業化に取り組んで、その技術を活用したプレス機の補修事業を平成十二年五月から開始している例があるというふうに承知しております。
 そのほかいろいろとあるかと思いますが、私、今のところ、こういう事例を紹介させていただきたいと思っております。
土田委員 特許を中心に、知的財産の資産価値、これを客観的に評価する基準が必要ではないかと思うわけですね。
 政府は、先般公表されました経済財政白書において、「特許・著作権やブランドなど知的財産の明示的な評価を試みる「知財会計」や「知財報告書」の導入などを通じて、企業の知的財産の開示を進め、知的財産を軸に経営戦略が展開されるような環境を整備していくことが必要である。」というふうに述べていますね。
 この、知的財産基本法案を踏まえた知的財産の評価基準の作成や企業会計への知財会計の導入について、今後それについて政府はどういうふうに取り組んでいかれるのか。
高市副大臣 企業の価値というものを見る場合に、土地ですとか現金といった有形の資産から、今では、経営陣の能力ですとか従業員の方々の能力、それからその企業が有しております知的財産や顧客、それからブランドといった無形の資産に注目がシフトしてきていると考えております。ですから、現在のところは財務諸表に記載されておりません知的財産につきましても、何らかの方法で開示する必要性というのが高まっているものと理解しています。
 経済産業省といたしましては、企業の知的財産関連活動が市場に正当に評価されて、企業の収益性や価値を高めることができますように、来年度中に知的財産に関する情報開示の指針を作成いたします。このため、まず、今年度中にはパイロットモデルを策定しなければいけないということで、これは企業の秘密管理にも配慮しながら、具体的な情報開示のあり方について検討を進めているところでございます。
 先生は、バランスシート上に載せるというようなことを御想定されての質問なのかなと想像するのですけれども、今の時点では、我が国には知的財産の価値を評価するような市場が存在しませんので、適正な価値評価をするといったら困難が伴いますし、例えば、ある一つの特許を何か事業に使うというときに、その使われる事業の種類によって恐らくその特許を利用してのもうけというのも変わってくると思いますので、これで一定の価値だよというものをあらわすというのは大変難しいことだと思います。
 アメリカにおいても同じような状況のようで、アメリカは、米国会計基準審議会、FASBといいますが、ここも今のところは知的財産の情報開示のあり方というものを検討中だと聞いておりますので、これは、オンバランス化するとかしないとかということになりますと、中長期的な課題になるかなと考えております。
土田委員 次に、産学連携について、幾つかというか、たくさん伺います。
 まず、TLO法の制定や平沼プランによって、我が国においても産学連携の推進が非常に活発化しているというふうに感じているのですが、まず、この産学連携の現状について教えてください。
桜田大臣政務官 大学研究成果の企業への技術移転を行うTLO、技術移転機関の設置促進のために、平成十年にはTLO法を整備し、現在までに二十七のTLOを承認しております。経済産業省から補助金交付等の支援を実施しているところでございます。
 承認TLOの活動実績を見ますと、国内特許出願件数におきましては、平成十一年度までは二百七十三件にとまってしまっておりましたが、平成十二年度は六百十八件、いずれも単年度ベースでございます。平成十三年度は千百四十五件。また、海外出願件数も、平成十一年度までの三十七件が、平成十二年度は七十三件、平成十三年度は二百八件と、大きく伸長しているところでございます。
 また、平成十三年度に承認TLOから生み出された経済効果は、経済産業省の試算では、売り上げベースでは百億円に上るなど、TLOを介した産学連携活動は着実に進展していると認識しているところでございます。
 また、TLOからの技術移転の具体的な例を挙げますと、慶應大学知的資産センターからエチレンガスの吸着剤とかいろいろな、家庭の冷蔵庫に使われているような、そういったものもございますので、御理解いただきたいなと思います。
 また、本法案九条で規定する産学連携強化のための具体的施策でありますが、実用化を目指した産学共同研究に対する支援や、産学官が一堂に会する産学官連携サミットの開催等を想定しているところでございます。
田中(慶)委員 委員長、議事進行。
村田委員長 田中君、何かありますか。
田中(慶)委員 今こういう状態で、定数割れがずっと続いて、午前中も指摘をしました。今後こういう状態で審議するということ自体大変厳しいと思いますから、休憩してください。
村田委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後三時一分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時十一分開議
村田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。土田龍司君。
土田委員 先ほど、産学連携のうまくいった例、成功例を御答弁いただいたようなんですが、ちょっと聞き落としてしまいまして、もう一度答弁をお願いします。
桜田大臣政務官 産学連携のうまくいった点につきまして、数においては先ほど話したとおりでございますが、言いましょうか、数。(土田委員「もう一回言ってください」と呼ぶ)はい、わかりました。
 平成十一年度のころは国内の特許出願数で二百七十三だったんですけれども、平成十二年度では六百十八、平成十三年度では千百四十五件と、単年度ベースでこうやって着実にふえております。また、海外出願数も、平成十一年度では三十七件、平成十二年度では七十三件、十三年度では二百八件と大きく伸長しておるので、十分浸透はしてきているということでございます。
 それで、成功例、うまくいった例はどうかというお話でしたけれども、ここに「やさシート」というのがあるんですけれども、これは冷蔵庫の中に入れて、エチレンガス吸着剤なんですけれども、よく野菜なんかはエチレンガスで何か物が傷んじゃうらしくて、これを入れると野菜がおいしく食べられるということで、これがTLOからの技術移転の具体的な事例でございます。慶應義塾大学の知的資産センターから技術移転がなされて、株式会社プラストというところに移転されて、実際に今スーパーで売っているそうでございます。ちなみに、二枚三百円だそうでございますので。
 以上でございます。
土田委員 そのビニールの袋は私もよく知っておりまして、私の友人が一生懸命売っているものですから。非常にいいそうです。私もただでもらいましたが、使っております。ぜひ活用してほしいと思いますが。
 さて、TLOの多くが財政基盤が弱いというふうに言われているわけですね。厳しい経営状態にあるというふうに聞いているわけですが、これに対してさらなる財政的な支援をすべきであるというふうに考えるんですが、政府はこの点についてはどう考えておられますか。
桜田大臣政務官 委員の御質問のとおりでございまして、おっしゃるとおりだというふうに認識しております。現在、大学の研究成果を活用した事業化の促進を図ることによって新事業の創出、ひいては我が国の経済活性化のために極めて重要であると認識しているところであります。
 このような観点から、経済産業省としては、大学研究成果の技術移転を行うTLO、技術移転機関に対して、TLOの自立支援のための補助というものを行うとともに、NEDOフェローシップ事業において、研究者をTLO等に派遣することにより、技術移転の知識やノウハウを身につけた人材の養成を支援しているところであります。
 また、大学のシーズと産業界のニーズを結びつけることを目的としてTLOが実施するテクノモールの開催や、TLO事業を紹介するパンフレットの作成を支援しているところでございます。
 今後も、TLOのさらなる活動強化のために施策を講じてまいる所存でございます。
土田委員 財政基盤が弱いTLO、これに対して地域の有力企業が人材を派遣している場合もあるんですが、大企業からTLOへの人材派遣に対して、秘密保持ができないんじゃないかとか、いろいろな面で懐疑的な考え方を持っている中小企業もあるようでございます。それならば、企業からの派遣に頼るのでなくて、やはりTLO自身で運営ができるように人材の育成がどうしても必要になってくるというふうに思うわけですが、これについてはどういうふうに考えておられますか。
桜田大臣政務官 検討させていただきます。
土田委員 じゃ、何もしていないということ、今はまだ。何もしていなくて検討するだけだということですか。
桜田大臣政務官 いや、何にもしていないのではなくて、やっておりますので。
 産業技術フェローシップ事業ということで、経済産業省からNEDOを通じて補助金を出しております。研究機関とか産学連携機関、それらの産業技術人材を養成カリキュラムに応じて、プログラムの応募に応じたものに対して、人間を育てる、人材育成のための人的支援をしているということでございますので、今でもやっております。
土田委員 だったらそう答えてくださいよ、先に。
 次に、今度は、職務発明ではなくて大学における研究者の発明、これの帰属の問題ですね。これは現在どうなっているのか。統一的な基準をつくる必要があると思うんですが、これについては政府はどう対応されますか。
桜田大臣政務官 現在、国立大学の研究者が生み出した発明については、各大学に設置されております発明委員会を経て、約八割が研究者に帰属しております。一方、私立大学の研究者が生み出した発明については、各大学の内規により取り扱いが定められておりますが、多くは大学帰属になるということを承知しております。
 また、大学の研究成果の取り扱いについては各所で議論がなされておりますが、経済産業省といたしましては、各大学において研究成果に係る知的財産権の組織的かつ戦略的な取得、管理、運用がなされるためには、研究成果は原則大学帰属とすることが望ましいと考えております。
 大学等に一元化すると研究者のインセンティブをそぐことにならないかという御指摘でございますが、その点については、各大学で発明報償規定等を整備して、研究者個人や研究室への利益還元を図ることによって、インセンティブをそぐことがないように柔軟に対応することが可能であると考えております。
土田委員 インセンティブをそぐんじゃないかという質問は次にしようと思っていたんですが、先に御答弁いただきましてありがとうございました。
 ということは、政府としては、まず、発明の帰属についてはその大学にというのが基本方針であるということですね。インセンティブをそがないように一生懸命やりたいということですね。わかりました。
 それで、学内の知的財産の促進を図るためには、将来予定されている独立行政法人化も考慮をしながら知的財産本部を整備しているということだと思われますけれども、この知的財産本部と既存のTLOとの間の関係及び役割分担、これはどうなっているのか、あるいはまた、両者間で連携関係が構築されていくのか、あるいは、それとも競合関係になっていくのか、この辺についてはどう考えておられますか。
桜田大臣政務官 現在の二十七ある機関のTLOは大学と密接な連携のもとで運営されているものであって、現在までの活動を通じて大学研究成果の技術移転に関する豊富な知識や経験、また実績を有しているというふうに考えておりますし、こうしたTLOを持たない大学なんかでは状況はさまざまですが、やはり役割分担というものが、すみ分けがよくできているというふうに我々は考えております。
 知的財産本部の役割については、最も効率的な知的財産の管理・活用体制が何かを探り、各大学の実態に応じたものであるべきと考えているところであります。
 以上であります。
土田委員 次の質問でございますが、今度は、学生による起業についてどう考えておられるか、あるいはこれに対しての支援体制、支援対策を考えておられるか。
高市副大臣 創業の担い手として期待されるようないいアイデアを持っているんだけれども自己資金や信用力に乏しいといった方、全体、学生ということで、そういう方を想定されているんだと思うんですけれども、会社設立時に何に一番苦労したかということで中小企業庁が調査いたしましたら、六〇%以上の方がやはり資金であったということでございます。
 例えば、学生さんということになりますと、今国会で御審議いただいております中小企業挑戦支援法でございますが、これでしたら、株式会社一千万円、有限会社三百万円という資本金の特例を設けまして、まずは、最初にそんなに多くの立ち上がり資金がなくても会社形態にはできるということでございますし、ほんの少しの自己資金は最低限必要であるんですけれども、例えば、会社を起こして最初の立ち上がりに、電話を引いたり事務所を構えたり、いろいろなことで多少お金が要るわけですけれども、これに関しては、もう既に今御利用いただいております国民生活金融公庫の新創業融資制度がございます。これは五百五十万円まででございますけれども、こういったことが私どもの支援策でございます。
土田委員 やはり産学連携のことは非常に大きなウエートを占めていると思いますし、創業の活性化のために大いに、活用といいましょうか、推進をしてほしいというふうに思うわけですが、私は、前回の質問のときに、新規創業に関連して大臣にお尋ねしたわけでございますけれども、知的財産とは別の次元で、やはりいろいろ創業に対してはクリアしなきゃならない問題があると思うんです。
 一つ参考になるデータがあるんですが、家族が創業することへの賛否、これについての設問を聞きますと、日本の場合はどうしても家族の反対が強いものがあるというふうな感じがするわけです。例えば、我が国では、家族の起業に、創業ですね、これに賛成するとした割合が三二・八%である。それに比べて、アメリカの場合は、賛成する家族が八〇・四%、反対する人はわずかに二・四%。ドイツでは、賛成が六六%、反対が一〇%。こういった数値を見ますと、日本の場合いかに欧米と比べて家族の反対が多いということが言えるかと思うんですね。これについてはどういうふうに考えておられますか。
高市副大臣 確かにそうだと思います。
 国際民間団体の調査でも、起業家が、ビジネスを始める人が社会的に評価されると回答した国民の割合は、アメリカで九一%、カナダで八八%、日本では八%ということでございますので、やはりそれほど評価をされていない、社会的に余り評価を受けないんじゃないかということと、それと、家族の反対ということで、例えば、私が結婚していて、夫が会社を始めると言ったときに、その夫がそれまで安定した、公務員ですとかそれなりにつぶれそうにない会社にいたとしたら、やはり反対をするんじゃないかと思います。
 それは、これから改善点はあると思うんですけれども、残念ながら今はまだ、中小零細企業といいますと、自分の私有財産と会社の財産、混然とした形でございますので、資金繰りに困って、万が一会社が倒産したときに何もかも失ってしまうんじゃないかという心配が、私が反対するとしたら一番多いんだと思いますので、これは法制審議会などでも個人の財産の範囲というものを今見直しの作業に入っておりますので、そのリスクが低くなれば、何もかも失うというリスクが低くなれば、やはり社長夫人ということで私も賛成するんじゃないかと思います。
 経済産業省としてでは何ができるのかという話でございますけれども、一つは、やはり起業家が尊敬されるような社会風土とか、それから、ビジネスを起こすということは割と自分の身近なところでできることなんだよというような起業家教育であると思いますので、アントレプレナー教育ということで起業家教育事業というものを行っております。
土田委員 今話がありましたように、失敗したときのリスクが大きい、あるいはベンチャー企業をやる場合に敗者復活がなかなかできない、敗者復活戦ができるような社会風土になっていないという部分があるかと思うんですね。
 そこで、その背景には、やはり失敗したら身ぐるみはがされるという個人保証の制度があるからじゃないかと思うんですが、これについてはどう考えますか。
高市副大臣 確かにこの個人保証の制度が一番のネックだと思うんですが、経済産業省では、この個人保証に依存しない資金調達手段、これを拡充しようということで、例えば中小企業総合事業団によりますベンチャーファンドへの出資事業、これは直接金融を拡充するということでございます。それから、国民生活金融公庫の、先ほども申し上げましたけれども、これは創業者に対する無担保無保証の新創業融資制度、これを創設いたしました。それから、信用リスクを金利でカバーする。金利でカバーするというために、民間金融慣行普及のための環境整備ということで、中小企業信用リスク情報データベースを整備いたしております。
 それから、一回失敗しちゃった場合に再チャレンジしやすい環境整備ということですと、先ほどもちょっと触れましたが、破産法において自由財産の範囲、今でしたら一カ月分の生活費ということで二十一万円しか残らないんですけれども、この二十一万円を拡大しなければいけない、もう少し残るようにしようということで、これは去年の三月から法制審で自由財産の範囲の見直しを進めておりますので、これの結論が出ましたら法整備に入っていくことだと承知しております。
土田委員 次に、知的財産の保護の強化についてお尋ねをしたいと思いますけれども、知的財産の戦略的な活用を図るために、知財の保護には非常に神経を使うわけですし、コストあるいはリスクをやはり抑制しながらやっていかなきゃならない。そういったときに、やはり裁判をしないで済むような、回避するような、あるいは予防できるようなシステムをつくることが重要だというふうに思っているわけですね。
 そこで、この法案第十九条第一項を見ると、国は、事業者に参考となるべき経営上の指針の策定を行うものとされています。そこでは具体的にどのような事項を盛り込むことが検討されているのか。あるいは、この経営上の指針には、紛争の予防及び裁判の回避、このための方策についても規定されているのか、この点についてはどうでしょうか。
太田政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘のように、知的財産の保護を強化していきますと、当然のことながら、その裏返しとして、知的財産の侵害者に対する損害賠償の高額化等が予想されます。一つだけ数字を引かさせていただきますと、日本の知財関係訴訟の平均賠償額ですが、一九九〇年から九四年が五千万円弱だったのですが、九八年から二〇〇二年になりますと平均二億円ぐらいになっております。
 ということで、御指摘のように、事業者にとっては、知的財産の係争への対応に加え、そもそも紛争を未然防止するための対策も重要であると考えております。
 このため、経済産業省におきましては、企業を対象に今年度中に策定する予定の知的財産取得・管理指針におきまして、みずからの知的財産の戦略的な取得・管理のみならず、他者の知的財産権の侵害を未然に防止するための留意点についても明確化していきたいと考えております。
 また、同じく今年度中に策定する予定の営業秘密の管理指針におきましても、みずからの営業秘密のみならず、他社から受領した営業秘密の取り扱いに関する留意点についても明確化していきたいと考えております。
 こうした施策を通じまして、御指摘の本法案第十九条第一項にあるような、事業者が知的財産を戦略的に安心して活用できるための環境整備を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
土田委員 きのうの参考人質疑の中で弁護士の先生に同じ質問をしたんですが、余りいい回答が返ってこなかったんですね。何か、わからないみたいな回答をされてしまったんですが、今長官がおっしゃったように、留意点を整理してそれをあらかじめ出すことによって回避できるということだと思うんですが、やはり裁判をしない、行かないということが大事だと思いますので、この点については非常に明確にすると同時に、アメリカで規定されておりますように三倍賠償とか、抑止力といいますか、非常に大きな、やったら損するんだということをやはりやるべきだというふうに私は思っておりますので、ぜひその点もお願いしたいと思います。
 その次に、今度は、個別紛争事案の性質及び当事者の事情に応じた多様な紛争解決方法を整備することが利用者にとって有益であるということでございますから、裁判外紛争処理制度の拡充及び活性化を図ることが必要である。そこで、この法案の第十五条に、裁判外における紛争処理制度の拡充を図るために必要な措置を講ずるとされているわけです。
 裁判外紛争処理制度の利用促進のために、政府としては具体的にどうするか。ということは、さっきの話とも通じるわけでございますが、例えば、企業から大学への委託研究、あるいは企業と大学との共同研究、あるいは大学から企業への技術移転の産学連携を行うに際して紛争が生じた場合には、なるべく円滑に、良好な関係を維持しながら、あるいは短期間にやっていくということが必要であると思うんですけれども、この裁判外紛争処理の利用促進を図ることをどのように考えておられるのか。
平井政府参考人 お答え申し上げます。
 知的財産権をめぐる紛争の適正迅速な処理のためには、産学ともどもでございますが、いわゆるADR、裁判外紛争処理機関における、訴訟手続によらない柔軟な解決がかなり重要な要素を占めてくると考えられます。
 本年三月に閣議決定されました司法制度改革推進計画におきまして、裁判外紛争処理機関全般の拡充、活性化につきまして定められております。その中でも、知的財産権関係事件への対応の強化の一環として、弁理士、弁護士の協力によります日本知的財産仲裁センターでありますとか、あるいは特許庁の判定制度等の拡充、活性化等に言及されております。このような決定の趣旨を十分踏まえまして、関係省庁と連携を図りながら、紛争を扱う裁判外紛争処理機関の活性化に努めてまいります。
土田委員 太田長官にお尋ねするんですが、きのうの参考人質疑のときに聞いておられたと思うんですが、私は質問しなかったんですが、みずから参考人が手を挙げて出てこられまして、特許庁の出願、申請あるいは許可、これをおろすのに、急ぐことばかり言っているけれども急ぐ必要はないんだよという意見があったのは御存じでしょうか。(太田政府参考人「はい」と呼ぶ)そうですね、ありましたですね、そういった話が。全部が全部急ぐんじゃないんだ、急がないものもあるんだよと。これについて長官、どのように考えておられますか。
太田政府参考人 特許制度の本質にかかわる問題でございます。
 日本は先願主義ですから、まず発明をなされたら出願をする、その後三年の審査請求期間がございます。ここで出願と同時に直ちに審査請求される方もおられます。ただ、マーケットの動向とかライバル企業の動向等を見ながら、ぎりぎり三年待たれる方もおられる。そういう意味で、たしか丸島参考人が御発言されたと思いますが、企業によって、かつ業種によってまたいろいろな対応があるかと思います。それは、それぞれのまさに知財戦略、企業が考えておられることだと思っております。
土田委員 この知的財産の人材育成についてお尋ねするんですが、我が国の将来を担う知的財産の人材育成の場合、やはり小学校、中学校から理科の教育とかあるいは知的財産に関する基本的な教育が必要だというふうに考えるわけでございますが、これについて政府はどういうふうに対応されますか。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 知的財産立国の実現には、知的財産の創造、保護、活用とこれらを支える御指摘の人材基盤の充実について戦略的に対応することは肝要である、このように思っております。このためには、小学校の早い段階から独創性でございますとか創作性をはぐくみまして、その後、年齢に応じた知的財産に関する教育を行っていく必要がある、このように思います。
 こうした観点から、経済産業省では、発明等の知的財産を尊重する意識を醸成するために、小学校から高校までそれぞれの段階に合わせた副読本を作成し、希望する学校に無償で配布をしているところでございまして、平成十三年度の実績では百万部を作成しまして配布済みでございます。
 経済産業省といたしましては、こうした措置によりまして、子供たちに、発明の楽しさでございますとか、また技術への関心を育てて知的財産に対する意識が高まることを期待しておりまして、すぐれた知的財産を生み出し活用できる人材を多数輩出できるように、知的財産教育の支援を文部科学省と協力をしながら積極的に行っていきたい、このように思っております。
土田委員 あと一分残しておりますが、余韻を残しながらここで終わります。
村田委員長 塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 知的財産基本法案についてですけれども、この法案は、低下していると言われています日本の産業競争力、この強化を図って活力ある経済社会の実現を目指す、そのためにも知的財産の創造、保護、活用に関する施策を進めるものというふうに思います。
 知的財産戦略大綱の起草委員長でもあります、昨日参考人としてもお越しいただきました中山信弘東大教授も、知的財産戦略は、知的財産を経済活性の手段として有効に用いるための産業政策的な色合いのものと、このように解説をされておられるとおりだと思うんです。
 その点で幾つかお聞きしたいと思うんですが、まず最初に産学連携の問題です。
 大学の研究成果が、産業利用を含めてさまざまに社会還元されることは望ましいことであります。その上で、産業競争力の強化に特化した知的財産政策を進めることで、大学における学術研究を産業技術に直結するものに一層偏らせて、これが調和のとれた健全な研究環境の発展を阻害することになるんじゃないか、この点を危惧するわけですけれども、その点についての御意見を伺いたいと思います。
石川政府参考人 大学の研究と産学連携の関係についてのお尋ねでございますけれども、大学におきましては、研究者の自由な発想に基づきまして、基礎研究から応用研究まで広い分野の研究が行われているわけでございますけれども、産学官連携につきましては、研究成果の有効活用を図る上でもちろん大切なものであると同時に、大学の研究活動の活性化というような観点からも非常に有益であると私ども考えております。
 大学における研究につきましては、もちろん実用化とか応用化研究のみにとらわれるようなことになっては必ずしも好ましいことではないわけでございますけれども、研究者の自由な発想に基づく創造的な基礎研究にしっかりと力点を置きながら、例えば基礎研究と応用研究のバランスのとれた推進を図っていくというようなことが私どもも重要だと考えております。
 文部科学省といたしましては、このような観点に立ちまして、今後とも大学の研究活動の一層の振興に努めてまいりたい、このように考えております。
塩川(鉄)委員 研究活動の活性化という側面も当然あると思います。同時に、やはりいろいろな弊害も生まれてくるのではないか。
 国立大学の産学連携というのはいろいろな形で進んでいますけれども、例えば企業からの受託研究費、国立大学の受託研究費で見ますと、九〇年度が五十一億円だったのが、九五年度に百三十八億円になりました。二〇〇〇年度が四百八十一億円と、九〇年代を通じて約十倍にふえております。また、国立大学の産学共同研究の件数を見ても、九〇年度が七百九十四件が、二〇〇一年度、四千九百四十件。TLOの機関の設立ですけれども、過去五年間で二十七機関誕生しているですとか、大学発ベンチャーも二百六十三というところまで来ているわけですね。
 この点で先輩格のアメリカですけれども、アメリカなど海外では、この産学連携の弊害というのがいろいろな形で問題となっているわけです。特徴的な問題の一つに、例えば、企業が大学の研究に関与することによって、その企業の都合の悪いデータを公表しないように求める、こんなことも起こってくるわけですね。
 「アメリカの産学連携」という、宮田さんという方が書いた御本を紹介していただきましたけれども、この中にも、ブラウン大学附属病院のカーンという研究者の方の事例が一つ紹介されていますが、繊維メーカーのコンサルタントをしていたこのカーン氏は、同社の従業員がナイロンくずを吸って肺を患うケースが多いことを発見した。しかし企業側は、コンサルタント契約にある守秘義務を理由に公表しないように求めた。このカーン氏は結局論文として発表し、そのことによって連邦政府も新しい職業病として認定したわけですが、大学側はこのカーン氏に全く味方をせずに、彼は辞職をすることになった。こういうことなんかも起こってくるわけですね。そういう意味では、良心に基づいて発表したのが、結局、自分自身にとっての不利益となってしまう。
 また、同様のケースはカナダのトロント大学病院でも起きたということが紹介されています。
 企業から資金を受けて小児用の薬の臨床実験をしていたオリビエリという女性の研究者の方が、その薬にはむしろ有害性があることに気づいた。しかし、企業側が守秘義務を理由に公表を控えるように求める。大学側も企業に同調する。結局このオリビエリさんという方は結果を発表したわけですけれども、彼女はこの臨床実験チームから外され、病院での役職の一つも解かれるという形での不利益をこうむるようなことになっているわけです。
 私は、そういう点で、この産学連携というのはいろいろな面での弊害を生み出す、こういうところをしっかりとつかんでいかなくちゃいけないというふうに思うわけですね。こういった問題をどうやって防ぐのか、これにどう対処するのか、政府としては、この点ではいかがでしょうか。
石川政府参考人 産学連携に当たりましては、例えば、今お話にございましたように、特定の企業との関係等につきまして、国民の不信とかあるいは社会の疑惑を招くことがないように、個々の教員や、その倫理意識ですとかあるいは透明性の確保といったような問題は、私どもとしても不可欠であろうかと思っております。
 このような観点から、文部科学省におきましても、国立大学等に対しまして、例えば外部資金の適正な経理の確保ですとか、あるいは兼業の際には正規の手続を経ることなど、これまでも適切な取り扱いを求めてきたところでございます。
 今し方先生からお話のありました点、いわゆる利益相反というような言われ方をしているような問題かと思いますけれども、今申し上げたような点を含めまして、社会の信頼を確保しながら教員等が安心して産学官連携に取り組めるような研究環境が重要であるというような観点から、教員等の個人的な利益と大学における責任が衝突するような、いわゆる今申し上げました利益相反について、基本的な考え方と大学における対応方策等につきまして、今般、科学技術・学術審議会のもとに設置しましたワーキンググループでも検討いたして報告を取りまとめたところでございます。
 この報告におきましては、学内において利益相反ポリシーの策定ですとかあるいは利益相反委員会を設置するなどして、利益相反に適切に対応し、社会に対して大学としての説明責任をきちっと果たせるような体制を整備するということが必要だというふうに指摘をしてございます。
 今後とも、これらの取り組みによりまして、社会的信頼を確保しながら産学官連携を進めてまいりたい、このように考えております。
塩川(鉄)委員 今のお話でも、利益相反の問題について報告を取りまとめたと。その中身では、例えば各大学ごとに利益相反ポリシー、こういうものを持ってもらいたいとか、そういう意味での利益相反委員会のような組織を大学の中でも立ち上げる、こういうことを提案するというお話として聞いているわけですけれども、しかし、これは本当にこれからの話で、今現実にアメリカではたくさんの弊害が問題になっている。その弊害が既に数十年前から現実の問題になっているわけですから、この日本でもしっかりそれに対する手当てをしないといけないわけですね。
 現実に日本でも産学連携に名をかりた癒着事件、例えば名古屋大学の医学部での日高教授事件というのは、製薬会社の社員を研究生として大学に受け入れて指導、研究を行い、その成果を会社に提供するなどすることで、その便宜を図った見返りに二億五千万円を受け取っていた、こんな事件などもあったわけです。こういうものに対してしっかりとした備えが必要である。
 アメリカでは既に、この弊害に対応していろいろなルールをつくってきています。既に九〇年代からこの日本でも産学連携が進んできているわけですから、この日本で大学発ベンチャーの一千社計画なども大いに進めるということであれば、しかるべきルールをきちんと今からつくっておく必要があると思います。
 そこでお聞きしたいんですけれども、大学と企業とは当然その組織の性格が違いますから、連携を行う際にふさわしいルールの確立が必要ですけれども、例えばアメリカでは、教授の企業の取締役兼務を禁止する、こういう大学が多いわけですけれども、日本の場合はどうでしょうか、これは禁じられているんですか。
石川政府参考人 大学の教員と企業の役員との兼業につきましては、これは、全面的にというわけではございませんけれども、産学連携の促進等々の観点から、例えば現在ですと、国立大学の教員につきましては、TLOの役員との兼業、あるいは研究成果の活用をする企業の役員との兼業、株式会社等の監査役との兼業等が人事院の承認などを得た上で認められているというような状況になっております。
塩川(鉄)委員 人事院に役員兼任の申請をし承認された件数が二百件を超えるということを聞いています。
 アメリカでは、例えばオハイオ州では、州立大学の教授が企業で働くと刑事罰が科せられる。そういう点での制約というのを設けてきているわけです。
 日本の場合はどうかといいますと、産業技術力強化法で、国立大学の教授が社長までできるんですよ。社長もやりながら大学の教官なんてどうやってできるのかと思うんですけれども、そこまで自由化されているんですよね、産学連携の名のもとに。こういう形で今事態が進んでいるというのが日本の実情。そういう点でのルールというのがつくられていない。また、アメリカでは、連邦政府のガイドラインで、産学連携にかかわるルールを定めているわけです。
 そういう点で、日本の政府として、こういう産学連携の問題でのガイドラインをきちんと出すという考えはありませんか。
石川政府参考人 今、ルール化というようなお話でございますけれども、これまでもいろいろなケースといいましょうか状況を考えながら、それぞれの対応あるいは措置を講じてきておるわけでございます。
 折しも現在は、平成十六年度からの国立大学の法人化に向けましてさまざまな検討が行われております。各界の御意見をちょうだいしながら、そういった一つの大きな節目でございますので、全体的なあり方についても引き続き考えてまいりたいと思っております。
塩川(鉄)委員 国としてのガイドラインというのを持っていないんですよ。各大学に、こういった、ポリシーという形でのルールづくりをしてくださいねということを言っているんですけれども、そのひな形も別に示しているわけじゃないんです。
 アメリカはそうじゃなくて、いろいろな問題が出ていますから、連邦政府としてガイドラインを九四年に出した。それ以降、各大学が、この連邦政府のガイドラインに沿って各大学のガイドラインをつくってきているんです。持っている大学の九割が、連邦政府のガイドラインを出して以降の話なんですよ。
 そういうのも日本の場合には出さないわけでしょう。九〇年代、ずっと産学連携が進んできて、アメリカのマイナスの事例というのも当然のことながら学んでいるのに、何で日本はそういった対策をとらないのか。私は、その点が大問題だと思うんです。アメリカでの弊害がはっきりしていながら、日本としての政策、政府としての手を打っていない。
 今、産学連携がブームですから、そういう時代の中で、大学がそれこそ企業を招くというときに、そういう意味では企業寄りの競争をしかねない。こういう形で産学連携のゆがみというのは出てくるんじゃないか。そういう際に、きちんとしたルールというのを政府として示すというのが、真の意味で健全な発展を目指すのであれば当然のことじゃないですか。私、そういうのもないというのは、結局のことながら、産学連携、行け行けどんどんで、これはいいものだと決めつけて、それに対して制約になるものはなるべくつくらないでおこうという、そういう思いが透けて見えるというのが率直な印象です。それが実態じゃないかと思うんです。
 この点で、私は、大学に対して求める声というのはいろいろあると思うんです。例えば、先日も新聞の記事で拝見しましたけれども、武田薬品工業の藤野社長が、大学は余り産業化を言う必要はない、大学はもっと幅広い、普遍的な科学研究にもっと力を注ぐべきだ、このようにおっしゃっておられますし、大臣もおっしゃっておられましたが、小柴教授も、基礎研究がしっかりしてこそ産業化も可能にとおっしゃっておられます。
 この法案というのは、実用化に直結をする、実用化に貢献する、そういういわば目先のもうけに走る、これが結局のところ、人材と知恵のプールと言われる大学のそういう資産を枯渇させるものにつながるんじゃないか、かえって研究開発のすそ野を狭くして、日本の産業の発展を制約するものになるんじゃないか、こういうことを私は率直に危惧するんですけれども、大臣としての率直な考えをお聞きしたいと思います。
平沼国務大臣 私は、今塩川先生が御指摘をした、そういう担保をすべきことは大いに検討していかなければいかぬと思っておりますけれども、しかし、この産学連携を進めることが大学における総合的な技術力を低下する、こうは思いません。
 アメリカは、プロパテント政策に代表されるように、産学連携を進めて大変な九〇年代の発展を遂げました。いろいろ今御指摘のような問題点はあったかもしれませんけれども、しかし依然として、アメリカの大学のいわゆる基礎研究を含めて応用研究全般にわたりましての総合力、ポテンシャリティーというのは非常に高いものがあるわけでありまして、私どもは、この産学官連携によって、そういう活力を損なうどころか、逆に、しっかりとやるべきことをぴしっとやれば大いに総合力を高めることになる、私はこのような認識でございます。
塩川(鉄)委員 アメリカで産学連携のきっかけとなったのはバイ・ドール法であります。八〇年代初頭にそういう議論がされました。このバイ・ドール法の議論を行ったアメリカの連邦議会で、これに批判的だった議員の一人に、クリントン政権の副大統領を務めた、当時ゴア下院議員がいたわけですね。ゴア議員は、このバイ・ドール法への懸念ということで、大学の頭脳が一部の企業に占有される、社会全体に貢献できなくなるということを危惧してそういう発言をされておられたそうです。私は、産学連携の先輩格であるアメリカの議会でのこういう発言に耳を傾けるべきだと思うんです。
 文部科学省に来ていただいてお話を聞いても、先ほどの利益相反の問題では、利益相反は悪じゃないんだ、今、日本で利益相反のような事例はないんだということを説明するわけですよ。私は、それでは、日本での産学連携の実態分析なしに物を語っている、現実に目をつぶって、先に悪でないという結論ありきという逆立ちした議論じゃないか、率直にそういうふうに思わざるを得ません。
 そういう点での危惧の思いを一つ訴えたいということと、もう一つ取り上げたいのが、日本の産業競争力の核となっています物づくり中小企業の位置づけの問題、支援の観点がどうかという問題です。
 中小企業への権利侵害への対応というのは、この法案を通じてどのように担保されるんでしょうか。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 本法案の第十六条の規定は、国内及び海外における特許権、著作権、意匠権、商標権などの知的財産権の侵害に対しまして我が国が講ずべき措置を規定したものであります。
 国内における知的財産権の侵害に対しましては、国内で製造、流通、販売されている模倣品等の取り締まり、国境措置としては、権利を侵害する物品の没収などの措置を講じております。
 また、海外における我が国企業等の有する知的財産権の侵害に対しましては、侵害国との二国間協議に加えまして、WTOあるいはAPEC、さらにはWIPOといった多国間の協議の機会を活用させていただいて、関係諸国との協力体制を強化しながら、知的財産に関する国際条約に定める権利の的確な行使などの措置を講じること、こういうふうにさせていただいております。
塩川(鉄)委員 私は、この日本の技術を支える中小企業の権利侵害に根本的にメスを入れ、対応しようとする姿勢が問われていると思うんです。その具体例として、金型業界の問題を紹介したいと思います。
 金型メーカーというのは全国で八千社とか言われ、その八割以上が従業員十人以下の中小零細の企業だということは、大臣、副大臣も当然のことながら御存じのことと思います。
 その金型工業会が行いましたアンケートを拝見しますと、初回の金型だけを日本で生産し、図面とCADのデータをもとにリピート型は海外で生産するという大手メーカーが増加している状況では、日本の金型業界はここ一、二年で埋没してしまうという大変強い懸念、危惧の声を上げておられるわけです。
 そういう中で、経済産業省が出した金型問題でのガイドラインでも、「これまで金型メーカーが蓄積してきた技術やノウハウが必要以上に海外企業に移転され、我が国製造業の基盤である金型産業の国際競争力の脆弱化をもたらす懸念があります。」と指摘しているのは当然のことだと思います。
 この中小企業の英知の結晶である金型図面の海外流出をやっているのはだれなのか、その点をお聞きしたいと思います。
西川副大臣 今塩川先生御指摘のように、端的に申し上げれば、ユーザー、業界団体から意図せざる流出があるというふうに私どもは承知をいたしております。
塩川(鉄)委員 経済産業省がこの金型問題で行政指導を行った業界団体はどこでしょうか。
西川副大臣 今正確に調べておりますが、自動車工業会ではないかと想像いたしております。自動車部品工業会。
塩川(鉄)委員 西川副大臣がおっしゃるとおり、日本自動車工業会と日本自動車部品工業会、それに加えて電子情報技術産業協会、つまり、電機と自動車の大手メーカー、これに対して行政指導を行っている。つまり、こういった日本の大企業が金型業界の貴重な財産である金型の海外流出を行っているというのが実態なわけですね。
 同時に、この金型産業にとって深刻なのは、金型単価の切り下げの問題があります。
 私がもらった発注書の中に、トヨタ車体の二次下請の業者の方からいただいた発注書がありますけれども、そこには大きく「韓国価格」というのが入っているわけです。つまり、単価について金額を記すのではなくて、「韓国価格」というのが発注書にそもそも印字をされている。こういうのがあるわけですね。結局、指し値で、単価の切り下げが強要される。韓国価格というのは日本の半分以下ですから、いわば、この値段でやらないと韓国に仕事を回すぞというおどしというのが、そういった発注書として下請業者に回されてくるというのがあるわけです。韓国価格。今、金型が中国とか韓国に流れていますよね。
 それから、もう一つ紹介しますと、不況打開大田区実行委員会という団体が大田区における業者の工場訪問をこの間行っておりまして、一千社の聞き取り調査を行っているんです。そういうお話をお聞きしましたら、何割ものコストダウンを強いられるですとか発注量が激減しているなんというたくさんの事例が紹介される中で、金型の仕事で、メイド・イン・バングラデシュという刻印をするような発注もあったというんですね。ですから、いわばリピートはバングラデシュで行うということを前提につくれ、だから金型の値段もそれ相応のものだよと。韓国、中国どころかバングラデシュさえ出てくるような、そういった現場の実態というのが今生まれてきているわけです。
 ですから、金型工業会のアンケートでも、最近は、大手メーカーが新製品を出す場合、すべて企画段階から海外展開でないとできない価格を提示してくるので、この姿勢を変えない限り、日本の製造業は生きていけないということを訴えておられるわけです。
 そこで、お聞きしたいんですが、経済産業省のガイドラインにもあるとおり、下請保護をきちっと図るべきだ。業者の皆さんは、ガイドラインを出してもらったのはありがたい、ただ、このガイドラインを確実に実施させる手段が欲しい、このことを訴えておられるわけで、これをどう具体化するのか。
 私は、発注者への指導をきちんと行うとともに、下請二法などを下請業者さんはなかなか御存じないですから、下請業者に向けた講習会を開くことも含めて、この権利をきちんと認識してもらう、こういった活動というのも今きちっと行う必要があるんじゃないか。そういう点での対策を求めたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
西川副大臣 委員御指摘のように、国際競争力にかかわる大変重要な問題でございます。
 時間の関係もございますから簡単に御答弁を申し上げますと、ただいまおっしゃいますように、金型業界の方々に対しまして、知的財産法制セミナーという名称で、このセミナー等を通じて、こうした公正な取引をきちっと担保できる、理論武装をしていただくような、そういう努力もしてまいりたい。
 それから、御案内のとおり、製造産業局長、それから商務情報政策局長名で指針というものを出したわけでございますけれども、これが定期的にきちっと守られているかということを、遵守の状況を点検していきたい、とりあえずこういう二本立てで今の先生の意図されるところを担保していきたい、こう思っております。
塩川(鉄)委員 下請業者向けの講習会なんかもぜひやっていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。
西川副大臣 したがいまして、知的財産法制セミナーの範疇の中で、金型業界の方々にそういう講習会をするように検討を指示してみたいと思っております。
塩川(鉄)委員 金型業界に限らず、広く、大いに取り組んでいただきたい。
 公正取引委員会にもぜひこの点で一言、簡潔で結構ですから。
楢崎政府参考人 今月は、下請取引適正化推進月間でございます。その一環として下請法の講習会というのを全国各地で開催しておりますけれども、特に、下請事業者を対象とした講習会も十県ぐらいで行うというふうなこともやっているところでございます。
 また、毎年、私ども、下請法の調査というのを出しているわけですけれども、これまで七万五千ぐらいの下請事業者に調査票を出していたわけですけれども、平成十三年度に二万件ふやして九万五千社等に対して、下請法上問題がありませんかどうかと、当然下請法の内容も含めて、書面調査を拡充する等の措置を講じているところでございますので、これまで以上に下請法のPRをしていきたいというふうに思っております。
塩川(鉄)委員 下請業者に向けてもぜひそういう努力をお願いしたいと思います。
 最後に、大臣に一問お伺いしたいんですが、今述べたように、日本の金型を初めとする中小企業の技術を盗んで海外に流出させているのも多国籍化した日本の大企業なら、この日本の金型産業の存立を危うくするような事態を引き起こしているのもこの同じ日本の大企業になっているのが現状です。なぜそういった技術を盗むのか。それは、その多国籍化した大企業が自社の利益を追求する、自社の競争力を高めることで生まれてくる問題になっていくわけですね。私、まさに目先のもうけのためにひた走る中でのゆがみだと思うんですが、多国籍化した日本の大企業の競争力というのと、国家、日本の産業競争力というのが一致しなくなっているんじゃないかというのを率直に思うんですが、大臣、どうでしょうか。
平沼国務大臣 今のいろいろな事例、一つの例としてお示しになられました。
 しかし、日本の企業が日本の国益を考えて本来的にやっていることはやはり事実だと私は思っておりまして、そういう中で、一つの事例がすべてである、こういうことではないと思っております。多国籍企業も日本の国益の中で一生懸命頑張っていることはやはり事実だと思いますけれども、そういう事例が現にあるということは、私どもは、下請の防止法ですとかいろいろな形でしっかりと指導していかなければならない問題だ、このように思います。
塩川(鉄)委員 そのことは、十年前の九十二年版の通商白書で指摘をされていることなんですね、当時、渡部恒三通産大臣のときでありましたが。この通商白書では「企業活動の国際展開が進むにつれ、」「企業の利益がその国民の利益と一致する度合いが減少しつつある。」「国家の産業競争力が当該国企業の産業競争力と厳密に一致しなくなっている。」こういうことが言われているわけです。
 金型を盗むということが日本の産業基盤を掘り崩すことにもなっているわけですけれども、今や、多国籍化した日本の大企業の目先の利潤追求を応援するような産業競争力の強化にとどまるのであれば、これはかえって日本の国家の産業競争力の基盤を掘り崩すことになる、そのことを指摘して質問を終わります。
村田委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。
 この法案の最後のバッターです。なぜ基本法が必要なのか、素朴な質問から始めます。
 大体、法律の第一条というのは目的が書いてあります。この基本法の法律の目的を読み上げますと、
  この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、我が国産業の国際競争力の強化を図ることの必要性が増大している状況にかんがみ、新たな知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出を基軸とする活力ある経済社会を実現するため、知的財産の創造、保護及び活用に関し、基本理念及びその実現を図るために基本となる事項を定め、国、地方公共団体、大学等及び事業者の責務を明らかにし、並びに知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画の作成について定めるとともに、知的財産戦略本部を設置することにより、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進することを目的とする。
 この目的を読んでも、今なぜ基本法なのか、なかなかわかりにくいわけなんですね。大臣、どうしてなのか、説明をしていただけないでしょうか。
平沼国務大臣 これは、ことしの三月に戦略会議ができまして、私も参画をしましてその中でかんかんがくがく議論をしました。今の現状を見て、やはりこの知的財産というものの重要性にかんがみて、どうしても基本法をつくるべきだ、これが大綱の中でも第一義的に取りまとめられたところでございます。
 これまでの経緯を考えてみますと、知的財産に関する政策というのは、関係のそれぞれの府省におきまして、発明でございますとか植物品種、それから著作物などのそれぞれの分野における個々の法律に基づいて進められてきました。著作権法でありますとかいろいろな法律、そういうことで進められてきたところであります。
 しかし、現状は、低廉な労働コスト等を背景としましたアジア諸国の急速な追い上げを受けるなど、我が国が厳しい経済情勢にあることにかんがみまして、今後は国家戦略として知的財産というものを重視し、知的財産を戦略的に創造し活用することによって、今沈滞をしているこの国の経済を活力あるものに高まらしめていかなければならない、そういう形で国際競争力の強化を図っていく、このことが喫緊の課題である、こういう認識の中で基本法をつくるべきだ、こういうことになりました。
 本法案は、このような認識に基づきまして、政府が一体となって集中的に知的財産政策に取り組むことができるように策定をされた、そのようなものだと思っております。
 本法案は、知的財産政策に関する基本理念、それから責務、さらには基本的施策及び推進計画などの基本的枠組みを規定しておりまして、また、今御指摘の知的財産戦略の推進機関である知的財産戦略本部の根拠法となるものでございまして、今後、政府が知的財産政策を一体的、集中的に推進するために不可欠のものだ、このように思っているところでございます。
大島(令)委員 今大臣が説明されましたように、知的財産権と一口に言いましても、これらの保護対象となるものは幾つもの関連法令で定められ、構成され、これは具体的な法律として今までずっとあったわけなんですね。
 今までの話を聞いていますと、今回の法律の定義の中に著作権ですとか書いてあるわけなんですが、どうもその産業財産権、特に特許にかかわることが議論されてきました。
 そこで、今からちょっと下手な歌を、メロディーを歌います。ララランララランララランラー ララランララランラララー……。
 この曲、大臣、曲名を御存じだと思うんですが、申し上げます。モーツァルト作曲の交響曲第四十番の一楽章なんです。これはトヨタクラウンを販売するときのテレビコマーシャルに使われていたんですが、これには著作権がかかっていたかどうか、著作権料を払っていたのかどうか、教えていただけないでしょうか。
平井政府参考人 文科省の担当でございますが、内閣がかわりに。
 手元に正確な資料がございませんが、著作権法の観点では、日本の国内でその音楽が流れますと、日本の著作権法では、作者の死後五十年間著作権があります。ただ、一言で著作権といいましても、著作権に絡んで隣接権等々がございます。ただ、そのモーツァルトの著作権という前提で申し上げると、著作権という形では、モーツァルトの死後五十年以上たっていたということで、存在していなかったと推察されます。
大島(令)委員 私も、この特許庁の資料にいろいろ書いてありますので、見ますと、著作権は死後五十年までということなので、まあモーツァルトですから、それで一時期よく車とかテレビのコマーシャルにクラシック音楽が使われていた、これは著作権料を払わなくてもいいからなのかなというぐあいに大ざっぱに考えていたわけなんです。
 音楽のイメージによって、この曲、親しまれている曲ですから、まずそのレコードとかCDも売れますよね、いい曲だと思った方は。そして、クラウンの販売もたくさん業績が上がって売れた。ですから、産業財産権以外の著作権の分野ででも、いろいろな活用の仕方によりまして、先ほど大臣がおっしゃったような、国家戦略として車が、自動車が売れるということは、経済もやはり活性化するわけですから、こういう形で使われてきた経緯があるわけなんです。
 ですから、私は、ここで申し上げたいのは、これからいろいろな形で、戦略本部で会議が開かれたりとか、推進計画とか立てるようでございますけれども、いろいろな大臣が集まるわけですから、知的所有権というのは、発明には特許法、考案は実用新案法、サービスマークは商標法、デザインは意匠、著作権、種苗法とか、いろいろ幅広い分野にわたってありますので、ぜひ今後こういうことを、いろいろな生活の中から考えてこの基本法の活用をお願いしたいと思います。
 次の質問に移りますけれども、最近話題に上ることが多いのが、企業内発明者の権利の問題です。これはいろいろな方々が既に質問いたしましたが、社民党は社民党として質問をさせていただきます。
 我が国では、従業者の発明について、企業などが権利を取得しますと従業者に相当の対価の支払いを受ける権利があると特許法の三十五条で説明されておりますけれども、具体的な基準が明確ではありません。知的財産基本法案では、第八条で事業者の責務を規定しています。ここでは発明者その他の創造的活動を行う者に対する処遇について触れておりますけれども、「事業者は、発明者その他の創造的活動を行う者の職務がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、発明者その他の創造的活動を行う者の適切な処遇の確保に努めるものとする。」とあるだけなんです。
 政府参考人に伺いますけれども、いかに基本法といえども、こうしたあいまいな記述になったのはなぜなのか、説明をしていただきたいと思います。
平井政府参考人 御答弁申し上げます。
 知的財産の創造のためには、いろいろな環境の整備が必要でございます。最終的には創造力豊かな個人の力に負うところが大きい、というところがこの基本法の原点にございます。それを受けまして、国や地方公共団体、大学等各分野におけます知的財産の創造に関する施策を講ずる責務を規定させていただいております。
 この中で、特に、知的財産の創造において、発明者などの個人の処遇ということが重要であるということにかんがみまして、御指摘のとおり、八条の第二項におきまして、事業者の責務として、適切な処遇の確保、特許法三十五条では、相当の対価、対価というある意味では限定した表現でございますが、基本法におきましては、先生御指摘の、あいまいということよりはむしろ広い概念で書いた方がふさわしいということで、適切な処遇の確保に努めるということを規定させていただいております。
 これは、発明者側から見ますと、雇用者である事業者に対して適切な処遇を求めることができるということでもございますので、基本的に、御趣旨は本条に十分含まれているものと考えております。
大島(令)委員 では、この法案の八条は、特許法三十五条よりも、発明者の権利に対して、発明者側に立って踏み込んでいるというふうに解釈してもよろしいんでしょうか。
平井政府参考人 大きな理念としては、踏み込んでいると考えていただいて結構でございます。
大島(令)委員 発明者とか創造的活動をする人は、言ってみれば、知的財産基本法案が目的とする活力ある経済社会を実現するためのいわば先端に立つ人ですね。にもかかわらず、発明したときのこととか発見したときのことは明確に記されたものがありません。
 先ほども申し上げましたけれども、特許法三十五条の三項では、参考人もおっしゃいましたけれども、「相当の対価の支払を受ける権利を有する。」というふうに書いてありまして、四項では、「前項の対価の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。」ということで、やはりこれもあいまいなんです。
 基本法ですから、一条にも書いてありますように基本的な理念なんですが、企業内発明者の権利の保障はどのような形で実現されるべきか。昨日来から、いろいろな特許における近年の裁判、紛争処理の問題もいろいろな形で質問が出てまいりましたので、私は、この特許法三十五条の規定と基本法の八条だけでは、企業内発明者の権利の保障というのはやはり不十分だと思いますので、改めて考え方を伺いたいと思います。
太田政府参考人 お答えいたします。
 基本法案八条の考え方は、先ほど平井審議官が御説明したとおりでございます。
 一方、特許法三十五条でございますが、今大島先生言われましたように、三十五条の三項、四項、どういうふうに考えて、その対価の額をどういうふうに決めるか、これはまさに、オリンパス光学工業事件におきましても、今最高裁でその議論がされております。
 いずれにしても、あいまいなままというわけにはいかないと思っておりまして、この職務発明規定の扱いについては、先ほど来お答えしていますように、ことし九月から産構審の中に小委員会を設けまして、幅広い方の御参加をいただいて、かつ海外の状況、従業者の方の意識、また使用者の方の考え方等も踏まえて、しっかり検討していきたいというふうに考えているところでございます。
大島(令)委員 では、産構審の審議の中では、ぜひ利害が対立する方々の意見を十分酌み取って、先ほど二〇〇三年度中に結論を出すということでございますが、ぜひ具体的な形で出るようにお願いしたいと思います。
 次に、紛争処理について質問をいたします。
 知的財産権に限らず、我が国の司法制度はさまざまな問題を抱えており、その改革が差し迫って必要ですが、特許権をめぐるねじれ現象は、そもそも裁判所と特許庁で扱われることに私は問題があると思っております。
 一方、日本の訴訟は時間がかかる、現状では情勢に対応できない、しかも、司法の側に知的財産に係る専門知識を持つ人が少ないため、知的財産権についても十分対応できないということは政府の側も十分承知をしていらっしゃると思います。その結果、知的財産基本法の十四条、十五条が盛り込まれたものと思っております。十四条は「権利の付与の迅速化等」ということでございまして、十五条は「訴訟手続の充実及び迅速化等」ということでございます。
 アメリカの例で見ますと、特許権の侵害を争う裁判では、同時に特許権そのものが有効かどうかも審理されています。つまり、一つの訴訟手続で一回の紛争が解決する仕組み、非常に合理的な仕組みになっているわけなんです。しかし、この知的財産基本法では、十四条、十五条と分けているということは、根本的な解決にならないと思うわけなんですね。見解はどうでしょうか。これは政府参考人に伺います。
平井政府参考人 御答弁申し上げます。
 基本法案におきましては、御指摘のとおり、十四条では、特許庁におけます特許等の権利付与や審判の迅速化、十五条で司法関係、訴訟手続で、知的財産訴訟手続の迅速化等々を規定しているところでございますが、いずれにいたしましても、紛争処理の迅速化は、この基本法に基づきます戦略の中で重要な政策目標の一つでございます。
 御指摘の趣旨は、特許庁におけます無効審判と裁判所におけます特許権の侵害訴訟との関係で、いわゆる紛争の一回的解決等々のことと考えております。
 ちょっと細かくなって恐縮でございますが、平成十二年の最高裁の判決、いわゆるキルビー判決によりまして、裁判所におけます侵害訴訟の中で、特許に無効理由が存在することが明らかであるときは、その特許権に基づく差しとめ、損害賠償等の請求は、権利の乱用に当たり許されないという判決がいわゆる平成十二年の最高裁のキルビー判決で、これをきっかけに、侵害訴訟、裁判所においても、特許庁と同じように特許の有効、無効が判断できるではないか、それでは一元的に判断すべきである、そういった意見が出ていることは承知しております。
 そのような意見を前提といたしましても、現在、裁判所が侵害訴訟において行っております特許権の有効、無効性の判断と、特許庁において現在行われております無効審判制度とは、紛争の目的、要件、効果が法律的に異なっておりまして、現在どちらか直ちに一元化することには困難な課題もございます。
 以上のような点を踏まえまして、紛争処理の迅速化のために、具体的方策として、経済産業省におきまして、産業構造審議会での議論を踏まえつつ、侵害訴訟と無効審判の進行調整を密にいたしまして、また、侵害訴訟におけます当事者の主張でありますとか立証を特許庁の無効審判におきましても生かす、そういった工夫について検討してまいりたいというふうに考えております。
 また、侵害訴訟そのものにおけます特許の有効、無効の判断と、特許庁の審判の関係等に関する検討につきまして、現在、司法制度改革推進本部の検討会において引き続き検討されることになってございます。
 以上のような取り組みを通じまして、関係省庁間で連携をとりつつ、そごのない迅速な紛争解決のための環境整備を戦略本部としても目指していきたいと考えております。
大島(令)委員 この基本法案では一元的に解決できないというふうな理解でよろしいわけですね。
 では、ここに、一つの事例として、いわゆるパチスロ判決の問題に対して経産省の見解を求めたいと思います。
 これはもう新聞でも報道されておりましたのでよく御存じだと思います。パチスロ機のメーカー、アルゼが、同業者であるサミーとネットを相手に、特許権の侵害があったとして損害賠償を求めた訴訟の問題です。
 東京地裁は、ことし三月十九日に、アルゼの特許権を侵害したとして、このサミーとネット二社に合計八十四億円の損害賠償を命じる判決を下しました。ところが、この前日、三月十八日、特許庁は、特許の有効の是非に関しまして、対象となったアルゼの特許権が無効だという見解を関係者に通知したわけなんです。
 現在の制度ではこうしたちぐはぐな結論が出てしまうわけです。政府として、こうした事例を見まして、何をどう正すべきと考えるのか。今の政府参考人の答弁ではなかなか私は納得ができませんので、もう一度お願いしたいと思います。
 やはり裁判所と特許庁に連携がないわけなんですね。一審ではそうなんですが、二審の、これは東京地裁ですから、東京高裁では同時に争えるということですが、迅速をモットーにされる特許裁判において、実際に裁判をやっている間も、侵害だと言われていても、それを利用して、例えばパチスロ機ですと営業の利益がどんどん出るわけなんですよね。
 ですから、こういう事例が具体的にあるわけなんですから、私は、現在のやり方は、知的財産基本法の目的にある活力ある経済社会の実現を阻害するものとなっているのではないかという疑問を持っているわけなんです。このパチスロ判決のことを例に、この法案の見解、先ほど私が申し上げました十四条、十五条の問題に対して見解を示していただきたいと思います。
太田政府参考人 今大島先生が言われたパチスロの関係の状況がまさに起きたわけでございます。そういうことも踏まえて、やはり侵害訴訟と無効審判の進行調整、これを密にしなくてはいかぬと。ただ、なかなか難しい問題もあります。私どもの小委員会でも議論していますし、もちろん司法制度改革推進本部の検討会においても議論しておるというところでございます。
 いずれにしても、こういう知財基本法案が、そういう各省にまたがるようなものについて、お互いに意見を調整しながら、知財の速やかな保護、活用が図られることが目的でありますので、私ども、その精神を酌み取りながら、なるべく早く結論を出していきたいというふうに考えているところでございます。
大島(令)委員 この裁判の判決は、本当に特許庁と裁判所のねじれ現象を象徴的に示すものであります。そして、賠償金も八十四億円と、先ほどは、最近は二億円ぐらいが平均だとおっしゃっていましたけれども、非常に高額な判決なんですね。
 四月十日に開かれた政府の知的財産戦略会議でも、弁護士出身の松尾和子委員が、やはり特許侵害訴訟と特許無効手続の抜本的な見直しを求めたということが実際あるわけなんです。ですから、私は、その手続の一元化は、労力が節減できる効果はあるけれども審理期間が長くなる面もある、やはり政策判断ではないかとこの松尾委員は言っているわけですから、やはりこういうこと一つ一つを、法律になる、運用していく段階ではきちっと検証すべきだと思います。
 政策判断ということでございますので、大臣に、このパチスロ裁判のことを申し上げましたので、今後どのようにこのねじれ現象に対して政府として考えていきたいのか、お示しいただけないでしょうか。
平沼国務大臣 先ほど来の御議論の中にもありましたけれども、やはり迅速化というのは非常に必要なことであります。そういう観点から、今審議会等で議論をしていただいております。
 そういう意味で、こういうねじれ現象というものを是正する、そういう方向でやはり政府としても積極的に取り組んでいかなければいかぬ、このように思っています。
大島(令)委員 積極的とか検討するという言葉はどういうふうにでも解釈できますので、答弁者としてはなかなか使いやすい言葉ですね。私はまだ納得できませんけれども、次の質問に移ります。
 知的財産戦略大綱は、東京、大阪両地裁の専門部を実質的に特許裁判所として機能させるために、特許権、実用新案権等に関する訴訟事件について、東京、大阪両地方裁判所への専属管轄化を図るとしております。平成十五年にはこのための法案の提出がされるようでございますけれども、日弁連からはこの動きに反対の要望書が出されているのは御存じかと思います。昨日の日弁連の参考人の方も反対されておりました。
 この反対の理由、その要望書を少し読み上げますけれども、「専属管轄化は、地方在住者の裁判を受ける権利を侵害する虞れが大きい。」二つ目、「裁判所へのアクセス拡充の理念に反する。」次に、「地方から知的財産権関係訴訟を扱える専門家を消滅させることになり、知的財産権の健全な育成や地域産業の振興をも阻害しかねない。」次に、「専門的処理体制の強化とは、別の問題である。」次に、「国際的戦略の必要性も、専属管轄化の理由となるものではない。」ということでございますが、これは、米国やドイツ等多くの先進国では各地方裁判所が知的財産権関係訴訟を取り扱っており、専属管轄化はむしろ例外である、ですから逆行しているわけなんですね。
 そこで、以上のような要望書を踏まえて、政府参考人にお伺いしたいわけなんですが、地方の企業の発展を阻害すること、例えば東京、大阪以外に在住する当事者の負担が大きくなること、地方から知的財産権関係を扱える専門家を消滅させることになる、このような懸念はどのように解消されるのか、御説明いただきたいと思います。
原田政府参考人 委員御指摘のとおり、現在法制審議会におきましては、民事・人事訴訟法部会というのを開催しておりまして、特許権等に関する訴えの管轄を東京または大阪の両地方裁判所の管轄に専属させるということについて検討をしているところでございます。
 これは、特許権の保護を図るためには、特許権が侵害された場合の訴訟が迅速かつ適切に行われる必要がある。しかしながら、特許訴訟というのは、これは非常に特殊なといいますか、専門的な知識を要求される訴訟でございまして、それは裁判所の側における人的、物的な体制の整備が必要であろう。しかし、残念ながら、現在すべての裁判所にそれだけの体制を整備するだけの余裕はございませんし、さらに特許関係の訴訟の数からしても、すべての裁判所にそれだけの体制を整備するということも現実的ではないという実際上の問題点があるわけでございます。
 したがいまして、これを解決するための一つの方策でございますが、特許権に関する訴訟につきまして、これらの訴えを専門的に取り扱う専門部というものを有している裁判所、これは東京、大阪にございます。それから、特許権等に係る専門家として裁判所調査官という制度がございますが、こういう裁判所調査官を多数配置している、これも東京、大阪の裁判所でございます。
 このような、東京、大阪の地方裁判所に特許関係事件を専属させることによって、先ほど委員のお話にもありました実質的に特許裁判所を実現する、それによって適切かつ迅速に特許権を保護していこうというのが今回の検討のねらいであるというところでございます。
 しかしながら、そのために遠隔地の居住者の利益が損なわれるようなことがあってはならないということも、これはもちろん御指摘のとおりでございます。
 したがいまして、現在検討している内容でございますが、東京また大阪の両地方裁判所に専属管轄を認めるという方向で検討をしておりますけれども、一方で、当事者の利益を害するような事情が認められる場合には、東京、大阪の裁判所以外の地方裁判所に事件を移送することもできるようにするということを考えております。
 さらに、現在の民事訴訟の中におきましても、電話会議とかテレビ会議を使って、当事者が法廷に出頭することなく審理を行うという制度がございます。さらに、裁判所が当事者の所在地に出張し、現地で、その対象物を確認しながら、当事者から説明を受けたり、当事者と協議をすることなども認められておりますので、裁判の実務におきましても、このような制度を利用することによって、遠隔地の利用者に御負担をかけないようにされていくということになろうかと思っております。
 法務省といたしましては、委員御指摘のように、遠隔地の居住者の利益にも十分配慮しながら、今後、この訴えの管轄の専属化について検討してまいりたいと考えております。
大島(令)委員 今の答弁では納得できないわけです。御指摘のとおりとおっしゃるわけでしたら、やはりこれは改めていただきたい。移送するのに時間がかかります。そして、弁護士とか弁理士さんにしましても、弁理士さんも訴訟代理権が付与されましたので、専属管轄化がされますと、そういう方々が結局はそこに偏るということが起きます。
 国民というのはすべて裁判所へアクセスする権利もあります。ましてや、この法律というのは、経済の活性化ということがうたわれているわけですから、訴訟に関して本当に特定の地域にだけ集中させるということは、私はいかがなものかと思います。ましてや、代理人となる日弁連が反対しているにもかかわらず、このための法案というのは提案していただきたくないというふうに私は思っておりますが、改めてお考えはどうでしょうか。
原田政府参考人 もちろん、理想的に申し上げれば、全国津々浦々の裁判所にすべてその専門家を配置し、十分な裁判官を配置するということができれば、それは一番理想であろうと思います。ただ、現実の問題としてなかなかそこまではいかない。
 現在、特許権を含む知的財産権の保護が国家的戦略として取り上げられている中、何とかこの保護を迅速に図るということが至上命題になっているわけでございます。その中で、現在の人的、物的な設備の中でいかにしてこれを実現していくかという、非常に苦慮する中での政策的な判断も含まれているものと思います。
 また、委員の御指摘のとおり、これにつきましては、今後法制審議会でさらに検討をしてまいりますが、そこでも、当然、こういう知財関係の訴訟を代理される立場にある弁護士会からも委員を出していただいておりますので、その委員の方々とも十分に意見を交換しながら今後検討を進めていきたい、このように考えております。
大島(令)委員 これは、先ほど来、国家戦略ということでございますから、やはり北海道から沖縄までいろいろな方たちがいるわけですので、そういう視点を忘れない形でお願いしたいと思います。
 次に、特許の出願について質問をいたします。
 我が国の特許出願件数が他国に比べて大変多い理由について説明をしていただきたいと思います。
太田政府参考人 お答えを申し上げます。
 近年、我が国の特許出願件数は、過去五年間の平均で毎年三・二%の割合で増加しておりまして、二〇〇一年の特許出願件数は四十三万九千件となっております。過去最高の水準に達しております。先生言われましたように、世界的に見ても最も多い件数となっております。
 こういう特許出願件数の増加傾向は、我が国のみならず世界的にも共通しておりまして、アメリカにおきましては、二〇〇一年には三十二万六千件、一一%以上の増になっております。また、ヨーロッパ特許庁におきましても十一万件、これも一一%以上の増となっております。
 日本の場合、特許出願件数が欧米諸国に比べ多い理由につきましては、必ずしもはっきりした理由はわかりません。恐らく幾つかの理由が合わさったかと思います。一つは、改良を加えるということで、改良を含めた活発な研究開発活動の一つのあらわれというところが言えるかと思います。もう一つは、実施に至らないまでも、防衛的な意味で特許を出願する数もかなり多いと承知しております。
 さらに、日本の場合の特色は、海外での出願よりは国内での出願が多い。アメリカとかヨーロッパはむしろ国際出願の方が多いということで、国内重視という企業のビヘービアも影響しているのではないか、そういうふうに思っているところでございます。
大島(令)委員 今の報告を聞きまして、大臣に質問いたしますが、特許庁の二〇〇〇年版の特許行政年次白書でも、国内で特許出願を行う目的が、防衛出願というのが四二・七%と非常に多いわけなんです。これは、やはり企業の市場の独占性が推測されるわけなんですが、こういう傾向に対して、大臣としてはどのような所見をお持ちでしょうか。
平沼国務大臣 特許というのは、知的財産権を確保する、こういうことでございますから、やはり利潤を追求する企業として、そういう防衛的な特許、また、個人で出す方々も、自分たちの権利を確保する、そういう意味合いがあると思っておりまして、私としては、これはある意味では当然のことではないか、このように思います。
大島(令)委員 では、長官にお尋ねしますが、防衛出願が多いということと、今回、特許手続の関連費用が上がる、審査料が上がるということなんですが、それとの関係はどうなんでしょうか。
 日本の特許出願、審査請求が非常に多いということを受けまして、特許庁の諮問会議では、先ほどからの質問にもありますように、毎年納付するべき特許料を減額するかわりに審査請求料を増額すると答弁しておりました。実用化の可能性に乏しい防衛的な特許出願及び特許審査請求を抑制して、審査資力投入の効率化を図るという考え方がうかがえるわけなんですね。
 実は、この委員会では、さきに中小企業挑戦支援法が審議して可決されました。これはいわゆる起業を促進する支援法だと思います。そういう法律を一方で提案しながら、特許審査の煩雑さを解消するために、特許手数料の中の審査料を上げるというのは、私は発想として矛盾していると思うわけなんです。これは、ベンチャー支援にも逆行する制度になるのではないかと危惧しております。改めて、このことに対して考え方を聞かせてください。
太田政府参考人 御審議いただいております基本法案の十四条におきましても、それから知財戦略大綱におきましても、迅速的確な審査をいかに実現するかということが私どもの最大の使命というふうに考えております。
 そのために、戦略大綱のことを申し上げましたが、行動計画として、必要な審査官の確保、アウトソーシングの積極的な活用等による審査体制の整備、企業啓発等による我が国の出願・審査請求構造の改革、それから早期審査制度の活用等の総合的な施策を講ずることとされております。
 これらを踏まえまして、私どもといたしましては、今述べました諸施策につきまして、九月から産業構造審議会に特許制度小委員会を設けまして鋭意検討を進めているところでございます。御指摘の特許関連料金の見直しにつきましても、審査請求構造の改革のための施策の一環として議論をしていただいているところでございます。
 料金体系、先ほども御答弁申し上げましたが、出願料、審査請求料、特許料ということで構成されております。私どもとしては、出願料と特許料を下げて、審査請求料を上げさせていただくということによって、出願は奨励する。
 ただ、その審査請求は、この審査請求制度が昭和四十六年にできたときに、まさにそれが目的だったわけですが、適正な請求をしていただくという意味で設けられた制度でございますが、現在、毎年二十万件やっている審査のうち二割、四万件については、その請求の中身を審査いたしますと、先行事例があるとか、あるいは先行事例がなくても、進歩性がないということで拒絶通知をいたしますと応答がないということでございます。
 私どもの審査体制、まさに公的なインフラだと思います。これを効率的に活用していただきたいというまさにプロパテントの思いからこういう提案をさせていただいておりますが、いずれにしても、現在小委員会で議論中でございます。議論を尽くして、なるべく早く結論を出したいというふうに考えているところでございます。
大島(令)委員 では二点、長官の考えを聞かせていただきたいと思います。
 その近年の出願件数が多いということに関しまして、特許庁としては困っているのか、それとも当たり前だと思っているのか。それともう一つ、この審査請求料が値上がることによって弁理士の方たちは仕事がどのようになると考えていらっしゃるのか。この二点、聞かせていただけないでしょうか。
太田政府参考人 先ほど申しましたように、最近の出願件数、四十三万件強となっております。出願というのはまさに先願主義でございます。発明された方が出願をどんどんされるということについて、私ども、困ったということを全く考えておりません。ただ、その審査請求に当たりまして、先ほど申しましたように、二〇%に当たる四万件が全く応答がないというところは、これはいかがかというふうに私ども強く感じているところでございます。
 仮に、料金体系を変えた場合に出願なり審査請求がどうなるかというのはなかなか予測が難しいかと思いますが、私ども、出願料は下げていきたい、それから特許料も下げていきたい、そういう中で、料金体系の改革を通じた請求構造の改革、これは知財戦略大綱でもまさに宿題となっているところでございますので、それを実現したいというふうに考えているところでございます。
大島(令)委員 その審査請求料の値上げと弁理士の方たちの関係というのは、どういう関係にあるんでしょうか。
太田政府参考人 お答えいたします。
 弁理士の方々のお仕事は、主として出願の段階で明細書等を用意するということでお仕事が成り立っているかと思います。その後、審査請求それから補正等の手続等でまた手数料等を収入とされているというふうに承知しているところでございます。
大島(令)委員 といいますと、この審査請求料の値上げというのは、弁理士さんたちにとっては、収入的には減るということでよろしいわけですね。影響を受けるということでよろしいわけですね。
太田政府参考人 審査請求料は値上げをさせていただいて、特許料と出願料を下げたいというふうに思います。それはまさに今議論しているところでございますが、その結果として、どういう出願の数が、どれだけ影響が出てくるかというのは、今の段階では何とも申し上げられません。
 ただ、私どもとしては、まさにその出願されたものの中で、審査請求されるものについて、より適正な請求をしていただきたいということで、これは企業の方々にもお願いをしますし、それから、まさに料金体系を変えることによってそういうインセンティブを与えていきたいと。
 一つ、先ほど御答弁ちょっとし忘れましたが、実際のコストを見ますと、私どもは、審査請求については、平均でございますが、約十万円の料金をいただいております。ただ、この実際のコストを、私ども、監査法人で調査させましたところ、約二十五万円かかっております。
 そういうことも含めて、コストも勘案しながら、かつ先ほども申しましたような請求構造の改革ということを実現するために議論をしていただいているところでございます。
大島(令)委員 では、次の質問に移ります。特許庁での特許の実体審査について伺います。
 審査官は、出願された発明に関し、下調べを外注しておりますけれども、外注先と年間の外注件数、それと外注金額をお示しください。
太田政府参考人 お答えいたします。
 下調べという御質問でございますが、先行技術調査と申しますが、先行技術調査につきましては、工業所有権に関する手続等の特例に関する法律第三十六条に基づく指定調査機関でございます財団法人工業所有権協力センターに外注しております。
 この外注の実績でございますが、平成十二年度で十万件、平成十三年度で十一万四千件となっております。支払い実績でございますが、それぞれ各年度の決算ベースで、五十二・一億円、七十四・七億円でございます。
大島(令)委員 法律に基づいてということでございますけれども、これは絶対的な守秘義務が要求されるということであると思いますが、独占状態としてこのサーチ外注については理解してよろしいでしょうか。
太田政府参考人 現在のところ、指定調査機関としては工業所有権協力センターだけでございます。
 秘密については、きちんと職員に秘密保持義務が法律上かかっております。
大島(令)委員 では、特許庁の外注を目的にこの財団法人はつくられたということでございますけれども、私は役員構成について伺いたいと思います。
 この工業所有権協力センターの常勤役員が現在七名おります。理事長は前職が特許庁長官、副理事長も特許庁の方、専務理事も特許庁、常務理事も特許庁、もう一人の常務理事も通産省、理事としては特許庁、もう一人の理事は特許庁出身。この方たちの年俸の合計が約一億二千四百万ということでございます。
 略してIPCCといいますけれども、先ほど、火の車だというふうに長官は述べておられました。私は、常勤の収入のある役員がほとんど特許庁と旧通産省の方で占められているということに対しまして、どうしてこういうふうな構造になっているのか、御説明していただきたいと思います。
太田政府参考人 お答えいたします。
 工業所有権協力センターは平成二年に指定をされました。これは、先ほど申しましたように、先行技術調査をアウトソーシングという形でやっていただく、その過程において、調査の仕方等々について、これはやはり特許庁の審査官を経験した者等が、まさにいろいろアドバイスをしながらやっていく必要があるということで、先ほど先生が言われたような役員構成になっているものと承知しております。
大島(令)委員 今の役員構成を見ますと、私は、国民が納得できないと思うんです。一たん特許庁なり旧通産省を退官するときに退職金をもらいますね。例えば理事長は年俸二千万円になっています。退職金の規定を見ますと、これを十二カ月で割って、それの百分の二十五掛ける在任月数を掛けるわけなんですね。そうすると、簡単に試算しますと、この理事長さんは、天下って二年理事長をやっていると約一千万退職金が得られるわけなんです。
 こういうあり方に関しまして、大臣、今いろいろ行政改革とか特殊法人改革とか言われておりますけれども、このままでサーチ外注のIPCCはいいんでしょうか。
平沼国務大臣 先ほど特許庁長官が答弁をさせていただきましたように、やはりこういう専門的な知見、そして経験を持った人がその任に当たる、そういう前提でその職についている、こういうふうに思っております。
 ただ、今非常に国民の皆様方の批判も強い、こういうような背景があるわけでございまして、今、行政改革そして特殊法人改革等でいろいろ検討が進んでおります。そういう中で、こういったあり方についても、広く国民の皆様方の御意見を承りながら、正すべきものは正していく、そういう時代の流れになってきている、このように思っております。
大島(令)委員 長官に伺います。
 この工業所有権協力センターの平成十二年度の収支計算書ですとか予算決算対比表を見ますと、「補助金収入」というのがあります。その収支計算書の「支出の部」に、「退職金支出」としまして五千八百万、平成十二年度支払われているわけなんですね。またいろいろその「支出の部」を見ますと、「管理費」の中の「給料手当」というのが約一億五千九百万、そして「事業費」の中の「給料手当」というのが二十七億六千三百万。ここの職員の人数はわかりませんけれども、常勤の天下った官僚の役員だけで年間一億二、三千万の人件費が払われる、そして平成十二年度だけで退職金が五千八百万も支払われている。
 もう一つ、非常に支出が大きいなと思いましたのは「借室料」、これが七億五百万、月六千万。特許庁の近くに分室があって、ビルがあるということでございますけれども、火の車と言いながら、ITの時代でパソコンでいろいろなやりとりができる時代に、こんな高い、月六千万の家賃のところにこの事務所がある、すごく私は疑問に思うわけなんです。これの正当性を説明してください。
太田政府参考人 「借室料」でございますが、本部は錦糸町にございます。分室が霞が関ビルにございます。これは、先行技術調査をします。そうすると、そのIPCCの職員がしたときに、審査官が、ちょうど隣でございますので、行きます。それで対面で、これはちゃんと先行技術があるかないかというものを見てやります。これは物すごい効率的な仕組みだと思っています。
 確かに場所としてはぜいたくな場所かもしれませんが、非常に効率的に仕事を進めていくという意味では、私は必要不可欠ではないかというふうに思っているところでございます。
大島(令)委員 委員長、答弁漏れなんですが。
 常勤の理事の、歳費というんですか手当が、理事長は年間二千万、副理事長一千九百万、専務理事一千八百万、本当にやはり大きいと思うんです。火の車であるならば、まず一般の会社でしたら給与を減額しますよね。この方たちは何をしていらっしゃるんですか、仕事の中身。
太田政府参考人 先ほど火の車と申しましたのは、審査をこなさなくちゃいかぬという意味で、ちょっと言葉遣いとして適切でなかったかもしれませんが、忙しいという意味での火の車ということでございます。
 それから……(発言する者あり)申しわけございません、大車輪でやっているということだと思います。
 その上で、先ほど申しましたように、役員の者は、まさに審査官として知見を有して、職員を指導する。それによって、先ほど申しましたような対面審査も含めて効率的に仕事をしているというふうに私は理解しているところでございます。
大島(令)委員 ホームページでは、IPCCの主幹・主席部員が特許庁の審査官と直接対話し意思疎通を行っていると書いてありまして、理事長が行っているとは書いていないわけなんです。忙しかったならばどこかの支出を少なくして人を採用するとか、そういうバランスをとりますけれども、やはりそういうことも考えるべきじゃないんでしょうか。私は、やはり官というのは、自分たちが汗水垂らして収入があるわけじゃないのでそういう発想だと思います。基本的な考えをやはり変えるべきだと思います。
 では、最後の質問に入ります。
 日本の金融機関は、今や土地担保でも資金提供をしないという状況でございます。外国では、知的財産に対する資金提供が、特にアメリカでは当たり前のようになっております。この基本法案の目的にある「知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出を基軸とする活力ある経済社会を実現するため、」には、金融機関の意識改革も必要だと私は思います。
 今後、この知的財産という無形のものを担保に資金提供が行われ、本当に大臣の言う、法の目的に合った活力ある経済社会をつくっていくためには、知的財産の価値をどのように評価していくのか。こういう目安、基準のようなものをやはり国として定め、金融機関と一体になって、実際金融機関が融資するわけですから、そういう方策を講じることも同時並行として必要ではないかと思っております。これに関して大臣の御答弁をお願いします。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 ベンチャー・中小企業を初め、不動産を担保に融資を期待することが困難な企業にとりまして、特許等が生み出す将来収益に着目をし、そしてそれに融資等を積極的に活用していくことが大変重要なことだと思っております。
 こういった考え方に基づきまして、経済産業省といたしましては、平成七年度より、知的財産権を担保とする融資制度を日本政策投資銀行に設けたところでございまして、平成十四年九月現在で百九十五件、百十四億円の実績を有するに至っております。
 加えて、資金調達手段を多様化する観点から、現在、特許権の証券化につきましてモデル事業の立ち上げを図っておりまして、資金調達手段の多様化を図っているところでございます。
 このように、知的財産権担保融資といった間接金融のみならず、証券化という市場から直接資金を調達する方策について検討することを含めまして、不動産担保によらない資金調達手段の拡充をこの基本法にうたわれているとおり図っていきたい、このように思っております。
大島(令)委員 最後でございます。
 土地担保主義が崩れ、そして昨年は、売掛金債権の法案をこの委員会でも審議しました。ぜひ、これらの新しい制度が本当にベンチャーを目指す末端の方々の使いやすい制度になるようにお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。
村田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
村田委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 私は、日本共産党を代表して、知的財産基本法案に対する反対討論を行います。
 政府は、産業競争力強化のための産学協同促進など経団連の強い要求を背景に、ことし七月、知的財産戦略大綱を策定しました。本法案は、知的財産戦略本部の設置など、この戦略大綱の実施体制を整備するためのものです。
 反対理由の第一は、本法案のように産業競争力強化に特化した知的財産政策を進めれば、大学等における学術研究を目先の市場化、実用化に直結するものに一層偏らせ、広範な学問分野における調和のとれた健全な発展を阻害するものとなるからです。大学等の研究成果が、産業的利用を含めさまざまに社会還元されることは望ましいことです。名大・日高事件、薬害エイズ事件などでも明らかな産学官協同の弊害、癒着の構造を正さなければ、健全な産学官協同の発展はありません。大学の自主的な研究基盤の拡充とともに、真理の探求を目的とし、その成果が人類の共有財産となることを目指す大学と、私的利潤を追求する企業との性格の違いを踏まえた、国民的合意に裏打ちされた公正なルールの確立が必要です。
 第二に、本法案には、産業競争力強化の核となる物づくり基盤技術と知的財産の担い手である中小企業の位置づけ、その支援の観点が欠落しているからです。中小企業での技術開発支援とその成果の保護など中小企業の技術力の存続、発展なしには、日本の産業、特に製造業の再生はありません。金型図面の海外流出事件に見られるような、多国籍大企業による中小企業の権利侵害の実態にメスを入れ、我が国産業競争力の基盤の危機的状況を打開する方策こそが求められています。
 第三に、本法案は、国民財産の大企業への無償譲渡である日本版バイ・ドール制度の適用拡大、研究者の地位を不安定にする大学等における任期制の導入など、戦略大綱を実施するものだからです。これらのアメリカ型産学連携策のつまみ食いでは、我が国産業の競争力強化につながる保証はありません。
 最後に、国民の創造的活動の成果を尊重し、創造者の権利を保護し、真に我が国産業の競争力を強化するためには、以上指摘した問題点を踏まえた、国民的な議論と合意に立った知的財産政策を確立すべきであることを申し述べ、反対討論とします。(拍手)
村田委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
村田委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、知的財産基本法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
村田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
村田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、下地幹郎君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合、保守党、宇田川芳雄君共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。鈴木康友君。
鈴木(康)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    知的財産基本法案に対する附帯決議(案)
  政府は、世界経済のグローバル化が加速度的に進展し、市場競争が激化している中で、我が国産業の空洞化を防ぎ、国際競争力を強化していく上で、知的財産の創造・保護・活用を促進していくことが喫緊の課題であり、早急に国家戦略としての取り組みを必要としていることにかんがみ、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
 一 「知的財産立国」実現に向けた知的財産戦略を具体化する推進計画を早急に策定するとともに、本法により内閣に設置される知的財産戦略本部がその実現に向けた諸施策を政府として一体的かつ集中的に推進できるよう体制整備を行うこと。
   この場合において、知的財産関連産業の健全な発展を図るため、その育成及び振興に努めること。
 二 特許権等の迅速かつ的確な権利付与の必要性については、これまでも本委員会において指摘してきたところであるが、事業活動のタイミングを逃さない権利付与が実現できるよう、なお一層の迅速化に向けて特許審査官等の増員及び外部人材の活用を含めた審査体制の整備強化に最大限努めること。
 三 知的財産の迅速かつ的確な保護が図られるよう、地方裁判所や高等裁判所における知的財産に係る訴訟を専門的に処理するための体制の一層の強化や今後の動向を踏まえての訴訟代理権の更なる拡大の検討を含めた弁理士の積極的活用等訴訟手続きの充実を図るとともに、裁判外紛争処理制度の充実により、地域の利便性にも配慮した迅速かつ的確な知的財産の保護ができる環境の整備に努めること。
 四 海外における知的財産権の侵害によって我が国産業が甚大な損害を被っている現状にかんがみ、政府機関と民間企業等が一体となって、模倣品や海賊版製造国等に対する直接又は、国際機関等を通じた働きかけを行うなど、積極的な取り組みを推進すること。
以上であります。
 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、説明は省略させていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
村田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
村田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、平沼経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。平沼経済産業大臣。
平沼国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。
    ―――――――――――――
村田委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
村田委員長 次に、内閣提出、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案及び独立行政法人原子力安全基盤機構法案の両案を議題といたします。
 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。平沼経済産業大臣。
    ―――――――――――――
 電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案
 独立行政法人原子力安全基盤機構法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
平沼国務大臣 電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案及び独立行政法人原子力安全基盤機構法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 初めに、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 原子力発電所の自主点検作業に係る不正な記載や、原子炉格納容器の定期検査における不正な操作は、これまでの原子力の安全確保に対する国民の信頼を大きく損なうものでありました。
 本法律案は、これらが生じたことへの反省に立ち、原子力の安全確保に万全を期し、国民の信頼が得られるよう、関係の法律におきまして所要の措置を講ずるものであります。
 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
 第一に、電気事業法の一部改正であります。この一部改正におきましては、事業者の自主的な点検を定期自主検査として位置づけた上で、事業者に対し、当該検査を実施すること、必要な場合に設備の健全性についての評価を行うこと、これらの結果を記録し、保存すること及び定期自主検査の実施体制の審査を受けることを義務づけることとしております。また、原子力発電所の保守点検を行った事業者に対する報告徴収または資料の提出の要求を可能とすること、原子力安全規制に関するダブルチェックの実効性を向上させるため、経済産業大臣が、原子力安全委員会に対し規制の実施状況の報告を行うこと、罰金額の引き上げ、懲役刑の付加及び法人重課の導入を行うこと等の措置を講ずることとしております。
 第二に、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正であります。
 この一部改正におきましては、原子力発電所以外の原子力施設についても、原子力施設の保守点検を行った事業者に対する報告徴収を可能とすること、罰則の強化を行うこと、原子力安全規制に関するダブルチェックの実効性を向上させるため、主務大臣が、原子力安全委員会に対し報告を行うこと等の措置を講ずることにより、電気事業法の一部改正と同等の内容を確保することとしております。
 続いて、独立行政法人原子力安全基盤機構法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画において、国と公益法人との関係の適正化を図りつつ、原子力安全規制のさらなる効率的かつ的確な実施を図るため、原子力安全規制の実施を目的とする独立行政法人を設置し、国の原子力安全行政部門の事務の一部及びこれに関連する公益法人への委託実施事務を当該独立行政法人に移管して実施する旨が決定されたところであります。
 また、今般の原子力発電所の自主点検作業に係る不正な記載等が原子力の安全確保に対する国民の信頼を大きく損なうものであったことから、その実施体制を整備し、原子力の安全確保に万全を期し、国民の信頼を回復することが必要であります。
 本法律案は、これらを踏まえ、原子力安全規制の実施を目的とする独立行政法人を設立するため、必要な規定を整備するものであります。
 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
 第一に、独立行政法人原子力安全基盤機構は、エネルギーとしての利用に関する原子力の安全の確保のための基盤の整備を図ることを目的といたします。
 第二に、本機構は原子力施設等に関する検査等を行うとともに、原子力施設等に関する安全性の解析及び評価等の業務を行うことといたします。
 以上が、これらの法律案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
村田委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
村田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 両案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、来る二十日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時二十三分散会

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