衆議院

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第9号 平成16年4月9日(金曜日)

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平成十六年四月九日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 根本  匠君

   理事 今井  宏君 理事 江渡 聡徳君

   理事 櫻田 義孝君 理事 塩谷  立君

   理事 鈴木 康友君 理事 田中 慶秋君

   理事 吉田  治君 理事 井上 義久君

      今村 雅弘君    遠藤 利明君

      小野 晋也君    小島 敏男君

      小杉  隆君    佐藤 信二君

      菅  義偉君    西銘恒三郎君

      平井 卓也君    藤井 孝男君

      増原 義剛君    松島みどり君

      宮路 和明君    稲見 哲男君

      梶原 康弘君    菊田まきこ君

      近藤 洋介君    神風 英男君

      鈴木 克昌君    高山 智司君

      樽井 良和君    辻   惠君

      中津川博郷君    中山 義活君

      計屋 圭宏君    村井 宗明君

      村越 祐民君    渡辺  周君

      江田 康幸君    河上 覃雄君

      塩川 鉄也君    坂本 哲志君

    …………………………………

   経済産業大臣       中川 昭一君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   経済産業副大臣      坂本 剛二君

   経済産業大臣政務官    江田 康幸君

   経済産業大臣政務官    菅  義偉君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 田口 義明君

   政府参考人

   (内閣府国民生活局長)  永谷 安賢君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 高原 寿一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)  徳永  保君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)  田中 孝文君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       青木 宏道君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)  桑田  始君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)  杉山 秀二君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)  田中 伸男君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局消費経済部長)  小川 秀樹君

   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月八日

 辞任         補欠選任

  渡辺 博道君     竹下  亘君

同月九日

 辞任         補欠選任

  竹下  亘君     西銘恒三郎君

  辻   惠君     神風 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  神風 英男君     稲見 哲男君

同日

 辞任         補欠選任

  稲見 哲男君     鈴木 克昌君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 克昌君     辻   惠君

    ―――――――――――――

四月九日

 容器包装リサイクル法の改正に関する請願(大村秀章君紹介)(第一五五六号)

 同(永田寿康君紹介)(第一六二〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 商品取引所法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一六号)

 特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一七号)

 不正競争防止法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一八号)


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     ――――◇―――――

根本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、商品取引所法の一部を改正する法律案、特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案並びに不正競争防止法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官田口義明君、内閣府国民生活局長永谷安賢君、法務省民事局長房村精一君、法務省刑事局長樋渡利秋君、外務省大臣官房参事官高原寿一君、文部科学省大臣官房審議官徳永保君、農林水産省大臣官房審議官田中孝文君、経済産業省大臣官房商務流通審議官青木宏道君、経済産業省大臣官房審議官桑田始君、経済産業省経済産業政策局長杉山秀二君、経済産業省通商政策局通商機構部長田中伸男君及び経済産業省商務情報政策局消費経済部長小川秀樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

根本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村井宗明君。

村井(宗)委員 民主党の村井宗明です。よろしくお願いします。

 私は、今回議題となっています商品取引所法の一部を改正する法律案、この問題について質問させていただきます。

 今回のこの法律案で、分離保管義務、取引所外での決算を可能とする清算機関、市場横断的な包括許可、そういった先物の市場をさらに発展させるためのいい法律ができたと思っています。しかし、この法律、まだ問題点があります。それは、先物市場で困っている消費者とも言っていいべき一般委託者が非常に多いことなんです。そして、今、日本弁護士連合会の方から、こういった先物被害白書という白書が出ています。非常にたくさんの素人と言ってもいいべき一般委託者が、たくさん取引をしながらどんどん損失を出している。私は、この問題に特化をして質問をさせていただきたい、そのように思っています。

 商品先物取引にかかわる事件、事故、トラブルなどにつきましては、新聞報道に見られますとおり、依然として悲惨なケースが後を絶たない状況なんです。特に、全くの初心者や高齢者が多額の損害をこうむったり、商品先物取引を原因とする公金横領事件すら発生したりしております。また、委託者と商品先物会社との訴訟も多数見られます。この弁護士会が出した先物被害白書の中にも、たくさんの裁判が起こっていて、そして、大体、自分自身の過失もあるということで、結局、被害額の二割から三割ぐらいしか戻ってこない、そういったケースが非常に多いんです。

 普通、新しい投資の証券で商売をするといえば、五百万円投資をした場合、勝てば五百三十万、負ければ四百七十万、これが通常です。しかし、商品先物は違います。勝てば二倍になるものの、負ければゼロになる。もしくは、五百万円投資したところで、さらに百万、二百万追加しなければならないということすらあります。そういった実態の中で、やはり私たちは、そういった一般委託者が先物の被害に遭うこと、ここをしっかりと食いとめなければならないと思っています。

 今回、この法改正を審議するに当たっては、この商品先物取引の現状、特に、保護する必要のある弱い立場の一般委託者の被害やトラブルの実態をしっかりと把握する必要があると思います。

 そこで、まず、商品先物取引の監督官庁にお伺いします。

 商品先物取引に関する強引な勧誘、そして悪質な取引によると思われる被害の実態について、経済産業省、農林水産省はどのように調査、把握しておられますでしょうか。具体的な数字、損益、典型的な事例などを含め、御答弁お願いいたします。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 近年、我が国の商品先物市場は、石油市場を中心に非常に拡大をいたしております。残念ながら、これに伴いまして委託者トラブル件数も増加傾向が見られます。

 私ども経済産業省において受け付けておりますいわゆる苦情相談件数でございますけれども、平成十五年度、まだ速報値ではございますけれども、六百七十件でございます。これは、前年の四百二十二件から比べますと相当の増加でございますけれども、実は、本年一月に許可を取り消しました。三十年ぶりでございますけれども、大手商品取引、これに関します返還遅延の苦情といったようなものも一因ではございます。

 村井委員から、典型的なトラブル事例という御指摘ございましたけれども、例えば、私どもが把握しています中には、商品取引員が商品先物の経験のない主婦に大変執拗な勧誘を行った、その結果、商品先物の仕組みや危険性について十分認識しないまま取引を開始した、あるいは、委託手数料稼ぎのために頻繁な売買を繰り返させ損失を増大させたというような事件もございました。

 もう少し網羅的な数字で申し上げますと、自主規制団体でございます日本商品先物取引協会、日商協というのがございます。昨年の事例で申し上げますと、全苦情の約半数が、先ほどの許可の取り消しをされました企業のこともございまして、返還遅延が最も多く、約過半を占めているところでございます。そのほか、無断売買、仕切り拒否等々ございますが、今回、抜本的に私ども強化をしております例えば不当勧誘の関係、これは約一二%でございます。説明の義務を怠っているというのが約一四%でございます。

 それから、損益の関係でございますが、これは私どもが商品取引員に行いましたアンケート調査でございますけれども、昨年の例で申し上げますと、一般委託者につきましては、利益方が二七%、これに対しまして損方、損失の方が七三%でございます。

田中(孝)政府参考人 農水省の件についてお答え申し上げます。

 農林水産省におきましては、本省の総合食料局商品取引監理官及び各地方にあります農政局において商品先物取引に関する苦情や相談を受け付けております。その件数でございますが、十三年度三百五十九、十四年度五百六十六、十五年度は速報値でございますが、百八十九となっております。十四年度の数値は、十四年末に経営が破綻した取引員がございまして、これに関します返還遅延に対する苦情がふえたためでございます。

 これらに関しまして、会社別にその苦情あるいは相談の内容等について簡単な分類、整理を行ってございます。そうしたものから見ますと、もうかりますと言って断定的判断の提供が疑われるような勧誘という、いわゆる不当勧誘に当たるもの、あるいは、証拠金の返還請求に対して四日以内というルールがあるんですけれども、これが必ずしも守られていないといった御主張の苦情、それから、いわゆる手じまいをおくらせるという仕切りの遅延という苦情がかなり多くなってございます。

 以上でございます。

村井(宗)委員 お答えありがとうございます。

 また、来週の経済産業委員会の中では、さらに細かい数字、特に、一般委託者がどのぐらいの割合で取引をしているのか、さらに、どのぐらいの一般委託者、大口じゃない小口の投資家の方々が損をしたり得をしたりしているのか、具体的な数字を我が民主党の方からさらにお聞きすることになると思いますので、きょうは一たんここまでとしますが、さらに準備の方、よろしくお願いいたします。

 この商品先物取引については、俗に、先物取引に手を出すとか、先物取引に引っかかるとか言われますように、業界全体がかなり古い体質の、しかも、相場師的なイメージといいますか、何となく前近代的な感じがつきまとっています。他の金融や証券の分野がIT化し国際化していく中で、この日本の商品先物取引だけは体質改善がおくれてしまったのは、単に業界のみならず、行政にも責任の一端はあるかもしれません。相変わらず後を絶たない商品先物取引をめぐるトラブルや古い体質の続く業界について、とりわけその指導についてどのようにお考えでしょうか、お伺いいたします。

江田大臣政務官 先生御指摘の無理な勧誘、そして取引に当たっての委託者保護に欠けるような行為に関するトラブル、こういうことに関しまして、農林水産省とも密接な連携のもとにこの指導監督を行うとともに、法令違反をした場合においては厳正な行政処分を行っているところでございます。

 具体的に申しますと、まず、商品取引員から財務状況を、また委託者資産の分離保管状況、それから委託者とのトラブルの状況等につきまして定期的に報告をさせております。財務、業務についての不断の監視、指導を行っているところでございます。また、年間、全取引員といえば九十七社あるんですが、その三分の一程度に当たる三十社前後の商品取引員に対して立入検査を実施して、財務、業務の内容について詳細な調査を行っているところでございます。

 これらの監視、調査によりまして法令違反を確認した場合には行政処分ということになりますが、具体的には、平成十年から最近六年間で三十件の業務改善命令、業務停止命令等の処分を実施したところでございます。

 また、先ほど審議官の方からもありましたけれども、自主規制機関である日本商品先物取引協会、日商協におきましては、次のような業務を実施しているところでございまして、一つは、商品取引員が法令や自主規制規則に違反した場合には、過怠金の賦課による制裁を行う。過怠金に関しては数千万レベルもあるということでございます。それから二点目に、外務員の登録制度を運用しまして、研修を行うとともに、違反した場合には職務停止させる。さらには三点目に、トラブルを解決するために、紛争に至った場合には、無償で専門の弁護士等によるあっせん、調停も行う。

 これらによりまして、経産省と農林水産省と連携しまして、商品取引員の業務の適正確保に取り組んでいるところでございます。

村井(宗)委員 ありがとうございます。

 いろいろな被害のケース、トラブルの実例などをお聞きしますと、まず第一に、素人がねらわれています。無差別に、しかもしつこく行われている電話勧誘、そして、先物取引の仕組みや危険性についての十分な説明がなされていない場合があること。第二に、絶対にもうかるからといった断定的な判断の提供が行われていること。第三に、個人の能力や資金力を度外視した過剰な反復取引などが委託者の意向に反して行われていることなどが挙げられていると思います。素人の委託者、商品先物取引の知識や経験のない一般消費者を保護する観点は、決して見落としてはならないものと思います。

 その意味から、内閣府所管の国民生活センターにお聞きします。

 国民生活センターには、商品先物取引に関してどのような苦情や相談が寄せられていますか。典型的な事例、具体的な事例も含めて、最近の傾向を示していただきたいと思います。

田口政府参考人 お答えいたします。

 国民生活センター及び全国の消費生活センターに寄せられます消費生活相談情報の中で商品取引に関する苦情相談の状況を見ますと、商品取引自体の増加もございまして、苦情相談件数は、近年、増加傾向にございます。平成十四年度では全体で八千三百五十件ということで、平成十年度当時に比べまして約二・六倍というふうになっております。

 また、主な苦情相談の事例といたしましては、勧誘に関するものあるいは取引内容に関するものが多く見受けられるところでございます。勧誘に関するものといたしましては、例えば、何回断ってもしつこく勧誘を受けるといったようなもの、あるいは、絶対にもうかると言われて契約をしたものの多額の損失を受けてしまったといったような事例が見られます。また、取引内容に関するものといたしましては、例えば、ある商品の先物取引を行っていたが、業者が勝手に別の先物取引を行ってしまった、あるいは、解約をしようとしてもなかなか解約に応じてくれないといったような事例が見られます。

村井(宗)委員 ありがとうございます。

 今おっしゃられたように、勧誘などについて非常にたくさんのトラブル、問題が起こっているわけです。そこで、勧誘方法の問題に入りたいと思います。一般の素人が商品先物取引にかかわる入り口、きっかけのところの問題です。

 本人からの積極的希望はないにもかかわらず、言葉巧みな繰り返しかかってくる電話勧誘によって引きずり込まれてしまう問題です。自宅や勤務先に無差別に繰り返しかかってくる電話による勧誘が、新規委託者のほとんどすべての人の入り口、きっかけになってしまっています。特に指摘しなければならないのは、ひとり暮らしのお年寄りや家庭の主婦など、明らかに知識と経験を持たないと思われる素人に対して執拗な電話勧誘が行われているということなんです。

 そして、さらに悪質だと言わなければならないことは、商品先物取引の危険性をよく説明しないことです。例えば、今国民生活センターの方がおっしゃられたように、絶対もうかりますとしか言わない場合もあります。もっとひどいケースになると、商品先物であるとすら言わない場合もあります。この部分に関しては、今回の法律の改正案にも入ってきたので、ある程度対応できたと思うんですが、このような事例は、商品取引員の体質というよりも、ある意味、モラルの問題であると思います。いつまでたっても同じような電話勧誘が行われ、毎年毎年新たな被害者が発生している現状を自主的には改善できないのであれば、規制していくしかないと思います。

 ここで、この一般消費者への不招請勧誘の規制についてお尋ねしなければなりません。

 個人からの依頼もしていないのにかかってくる電話勧誘は、法律で禁止するしかないのではないでしょうか。また、一般の家庭に無差別に行われてくるような勧誘、これも不招請勧誘ですから、法律で何らかの規制をすべきではないでしょうか。経済産業省にお尋ねします。

青木政府参考人 顧客が望む場合を除く電話等によります勧誘を一律に禁止いたします、いわゆる不招請勧誘の一律禁止につきましては、やはり営業の自由といったような大変重大な問題とも関連をしてまいると考えております。また、この問題は、商品先物だけにとどまらず、他の金融商品など投資的取引全般との関係も幅広く慎重に議論する必要があるのではないか、このように考えるところでございます。

 他方、村井先生今御指摘のように、商品先物取引において、個人が望まない勧誘によってトラブルが発生をする、こういうのも事実でございます。このため、今回の改正案におきましては、このトラブル防止のための勧誘規制を強化したところでございます。

 まず、具体的には、望まない勧誘を断る機会を確保し、断った後に再び勧誘されることがないよう、例えば、次のような措置を講ずることとしております。

 まず第一に、勧誘に先立ちまして商品先物取引の勧誘である旨を告げること、これを義務づけることでございます。また、一度断った者に対する再勧誘を禁止する、あるいは、これも村井先生先ほど出てまいりました、勧誘に際しましては、商品先物の仕組みあるいはリスクというものを冒頭に説明する、これを義務づけたいと思っております。

 ここで言います仕組みあるいはリスクとは、仕組みとは、少額の証拠金、いわゆる担保金でございますけれども、先生も御指摘になられましたように、少額で大変多額の取引をする、いわばてこの原理が相当働くということでございますし、リスクはまさにその裏腹でございまして、この取引により損失が生ずるおそれがあり、かつ、損失の額が証拠金を上回るおそれがあるということをしっかり説明させるということであろうかと思います。そしてその段階で、やはりハイリスクの取引はもう勧誘を断りたいということで断ります、そこで引き続きあるいはまた再度勧誘をする、こういうことになりますと、これも再勧誘の禁止に該当するということでございます。

 私どもの法的措置、いろいろ講じておりますけれども、何よりも実効が大変重要であろうと思っております。本法案成立後、できるだけ速やかに、関係者の意見も聞きながら、具体的なガイドライン、これを策定いたしまして国民に公表をしていきたい、このように考えておるところでございます。

村井(宗)委員 この不招請勧誘、特に電話による一般家庭への無差別的な営業がトラブルや被害の温床になっていると思います。いわゆる説明義務の違反や断定的判断の提供といった問題も、すべての出発はこの不招請勧誘にあるのではないでしょうか。このような勧誘方法を野放しにしていることが、日本の商品先物市場の国際化をおくらせており、また、当業者や機関投資家からの信頼を確立できない一因になっているのではありませんか。

 少なくとも、商品取引員の登録された外務員、商品先物会社の営業マンであれば、営業をかける相手の人物が、適合性原則から見て、知識、経験、財産などの状況から適当かどうかは判断できるはずだと思います。また、その適合性をしっかりと確認した上で、かつ、十分な説明責任を果たした上で営業していくべきではないでしょうか。

 もし万一、相手方の適合性が不適格だと認識していながら、逆にこの知識と経験のなさにつけ込むような手口がはびこっているとしたら、もうこれは法律で明確に規制していくしかないと思います。そうしないと、被害やトラブルは根絶できないと思います。少なくとも、相手構わず無差別に行われている個人の自宅への電話勧誘や訪問勧誘は、法律による歯どめが必要な状況になってきていると思います。

 そこで、大臣にお尋ねします。

 確かに、今回の改正案、二百十四条の条文においても、顧客に対して前もって商品先物会社であることを名乗らなければならない、ここになりました。そして、一度勧誘を受けて断った相手に再度勧誘することは禁止されることになりました。この辺は一歩前進しました。

 しかし、ここで強く申し上げたいことは、この文言からは読めない、商品先物取引の話や具体的な勧誘につながる説明に入る前に、相手に勧誘の話を聞く意思があるかどうかをまず確認することが必要だということなんです。具体的な話に入る前に、あらかじめ相手の勧誘の話を聞く気があるかどうかを確認するように、何らかの法律で歯どめが必要だと思いますが、どのようにお考えでありますでしょうか。

坂本副大臣 私からお答えを申し上げます。

 本当に、一般の個人の方が、望まない電話とか訪問によって、しかも、商品取引の仕組みやリスクもわからないまま取引に入っていってしまう、そしてトラブル発生、これはいっぱいあるんですね。これは厳に絶対なくさなきゃならぬ、こう私たちも思っております。

 今回の法改正では、勧誘目的を明示することをまず義務づけておりますね。さらに、断った顧客にさらに勧誘することを禁止もいたしております。商品取引の仕組みやリスクの説明も義務づけています。法案にこんなことを盛り込んでおりますが、重要なことは、確実にトラブル発生に歯どめをかけるという先生今おっしゃったことだと思うんです。

 このため、ガイドラインを策定して公表をし、事業者に遵守を徹底するとともに、違反した事業者に対しては、業務の改善それから業務の停止等、等というのは、これは取り消しもあるわけですね。業務停止等の行政処分を厳正に実施して、その実効を確保することといたしております。

村井(宗)委員 副大臣、済みません。今、質問した内容と答えが違うものだったので、再質問させていただきます。

 今おっしゃられたように、初めに商品先物会社であることを名乗ることになります。これは、まずは今、法律に反映されました。そして再勧誘も禁止されました。

 今お聞きしましたのは、勧誘に入る前に、相手に勧誘の話を聞く意思があるかどうかをまず確認することが必要だということなんです。具体的な話に入る前に相手の意思確認をすることに、法律でそのための何らかの歯どめをする必要があると思いますが、どうでしょうか、副大臣。

青木政府参考人 法の運用でございますので事務方の方から御報告をさせていただきます。

 再勧誘の禁止の運用のガイドラインでございますけれども、顧客に対するアプローチから勧誘の段階の進展に応じて具体的に……(発言する者あり)

根本委員長 ちょっとお待ちください。言っていただいた後でまたお答えをさせます。

青木政府参考人 遵守すべき事項を明らかにしたいと思っております。

 今、村井委員御指摘ございましたけれども、私ども、この内容については今後検討してまいりたいと思いますけれども、まず、勧誘に先立って商品先物の勧誘であることを告げ、勧誘を行うことについて顧客の意向を尋ねなければらない、これに対して断った者に引き続きまたは再度勧誘をするということになりますと、再勧誘の禁止に当たる、このように考えております。

中川国務大臣 今、確かに、大臣に問うということで副大臣が答弁をしましたし、その後、事務方からの答弁でございました。内容は今申し上げたとおりでございます。

 いずれにしても、委員御指摘のとおり、冒頭からおっしゃっているとおり、個人の被害、素人の被害ということに対して、できるだけそういうことが起こらないように、これは幾ら制度をつくっても、やはり、個人の方も投資のためにやるわけですから、投資にはリスクが伴うんだ、あるいは、こういうことを言っていいのかどうかわかりませんけれども、おいしい話には何かあるんじゃないかというぐらいの警戒心を持ちながら投資をする、あるいはまた楽しむというために、どういうふうに、また、もちろんその前に商品先物市場そのものの経済的な意味というものもあるわけでございますけれども、個人ということに絞っての御質問だということでございますから、そういう意味で、個人の方の、相手はプロですから、プロが素人との関係において、本当に被害をこうむらないようにするために全力を尽くす、法律それからガイドライン等々でできるだけの対策をとりたいということで、今御審議をいただいているところでございます。

村井(宗)委員 御答弁ありがとうございました。

 今大臣のおっしゃられたような決意を持って、特に、相手の勧誘の話を聞く意思があるかどうかを最初に確認するようにガイドラインで徹底していただきたい、そのように思います。

 さて、次の質問に移ります。

 個人の顧客からの要請を受けて新しい取引が始まる場合を考えてみたいと思います。機関投資家でもなく当業者でもない、純粋な個人が委託者として商品先物市場に参入する場合です。

 この一般個人の委託者の新規参入が日本の商品先物取引市場にとって望ましいか否かという議論も存在します。将来的な取り組みは別といたしましても、現状の日本の商品先物市場の流動性の大きな部分を個人投資家が占めていること、そして、毎年数万人の新規参入者が存在しているという現状を見るとき、この新たに取引を始める人たちの保護も考えなければならないと思います。

 商品先物取引の知識や経験に乏しい初心者が、危険性についての十分な説明がないままに、最初から大きな取引や無意味な反復取引に引きずり込まれてしまう被害が生じています。この新規委託者の保護については、平成十年の法改正に当たって規制緩和の名のもとに従前の自主規制が緩和されてしまったため、結果として、未経験の新規委託者は業界の言いなりになってしまい、被害やトラブルにつながってしまっているのではないでしょうか。

 この新規委託者については、商品取引員に対して何らかの保護措置を義務づける必要があると考えますが、いかがでしょうか。例えば、最初の三カ月間の取引数量や金額に上限を設定するということはいかがでしょうか。お伺いいたします。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 村井先生おっしゃいましたように、新たに委託者になる、こういう場合、そもそも、真に商品先物のリスク等を理解して主体的な判断が行える、こういう方に参加をいただくというのが極めて重要でございます。

 そこで、まず冒頭、適合性原則でございますけれども、私ども、従来、この適合性原則といいますのは行政処分の事由でございましたけれども、今回、そもそも法律上の義務といたしました。これによりまして、法的効果といたしましては、業務改善に加えまして、六月以内の業務停止、あるいは、最終的には許可の取り消しといった大変厳しい措置も可能となったところでございます。

 その実効の担保でございますけれども、これも、今後、その運用ガイドライン、できるだけ詳細なものをつくって公表していきたいと思いますが、まず申し上げたいのは、当初の勧誘でございます。これは、年齢等に関係をするところでございます。それから二点目、今委員御指摘ございましたように、取引開始後にも適合性原則は当然適用されるわけでございます。したがいまして、例えば習熟期間、これは、全く未経験の委託者の場合、取引後一定期間、例えば原則として取引量を一定基準以下とする、その例外はできるだけ具体的に定めて、かつ、それを認めるかどうかというのは厳正な社内審査手続のもとに限って認める、こういったことをやりたいと思います。

 ポイントは二点あると私は思っております。一点は、できるだけ明確な要件を定めるということでございます。二点目は、社内の審査手続をかますということでございまして、万一にもこれによりまして法令違反が発生した場合には、これは一外務員の問題ではなく、むしろ会社としての問題としてその責任を追及する、そういう体制をきちんと構築していきたい、かように考えております。

村井(宗)委員 ありがとうございます。

 今おっしゃられたような明確な要件、これを定めたいということですが、その内容もオープンに今後していただきたいと思います。

 次に移ります。やはり一般委託者の取引上の保護に関する問題です。

 大臣は、客殺し商法という言葉を御存じでしょうか。商品先物業者が言葉巧みに一般個人を先物取引に誘い込み、何度も取引を繰り返させ、多額のお金を次から次へとつぎ込ませては、取引量を瞬く間に拡大させてしまい、あげくの果てには、取引上の損失だけではなく多額の手数料までむしり取ってしまうというものです。

 この客殺しという言葉は、民事裁判の判決でも認定されています。具体的には、両建て、転がし、向かい玉などがあります。先物取引の裁判では、これらの取引の違法性が数多く認定されており、業者側に損害賠償を命ずる判決も数多くあります。

 最初に両建てです。現在、両建てについては、商品取引所法施行規則で、同一限月かつ同一枚数の両建て勧誘のみが禁止されています。しかし、これでは、月が違えばいいということになってしまいます。あるいは、同じ月であっても、数量が少しでも異なればいいということになってしまいます。言ってみれば、業者側に脱法的とも言えるお墨つきを与えてしまっているのではないかと考えられます。まさに国民生活センターの指摘の言葉にあるように、両建ては委託者を泥沼に引きずり込む常套手段なのです。

 次に、向かい玉です。これも客殺しの手法の一つと言われています。商品取引員が委託者から受託した取引と対当させて、売りには買いを、買いには売りを、同じ量を建てるか、またはその差額分だけの反対の取引を建てる場合があります。これも、民事訴訟では、客殺しが可能と認められている判決が出ています。

 また、転がしと言われている特定売買は、両建て以外にも数種類あるようですが、平成十年の法改正の前までは当時の通産省と農水省の業務監督基準があったにもかかわらず、平成十一年四月一日に廃止されてしまったのです。事前規制から事後規制へ、または規制緩和という大義名分はあったのかもしれませんが、結果として業界の体質改善にはつながらなかったのではないかと言わざるを得ません。そして、客殺しの被害が続くことになってしまったのではありませんか。

 そこで、お伺いいたします。

 今申し上げました両建ての勧誘を法律で禁止することを検討すべきではないでしょうか、お伺いいたします。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、両建て、これは同一の商品に売りと買いの双方の建て玉をするわけでございまして、その結果、価格変動リスクを限定する売買手法の一つではございます。

 ただ、同一商品に全く同量の反対玉を建てるということになりますと、これは、本来手じまうべき取引を商品取引員が両建てに誘導して、そこで手数料稼ぎに悪用する、こういったおそれがございます。そうしたこともございまして、私ども、現在、これを省令で禁止しているわけでございます。

 今委員御指摘いただいたように、例えば、それでは一枚でもといったわずかな差があるときには、これは同一ではございませんので、そういう場合も脱法として使われるのではないか、こういう御指摘がございました。これを、法律はもとより、省令で規定するというのはなかなか難しゅうございます。

 御案内のとおり、今回の法律改正におきまして、実は業務改善命令の発動対象を、従来は限定列挙をいたしてございました。これを今回、委託者の保護に欠ける場合には発動できるというふうに、非常に広範な命令措置を講じることを御提案しております。また、その違反につきましては、従来、行政罰としてわずか五十万円でございましたけれども、今回は刑罰を適用するということで、一年の懲役あるいは三百万円の罰金と、大変思い切った刑罰を用意しております。

 私どもといたしましては、こうした悪用がなされないように、よく市場を注意して、業務改善命令をちゅうちょなく発動し、その取り締まりに厳正に当たってまいりたいと思っております。

村井(宗)委員 商品取引員が自社の投機目的で向かい玉を建てるような、明らかに不適切な向かい玉は規制を強化すべきと考えますが、いかがでしょうか。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる向かい玉でございますけれども、商品取引員が顧客の売買取引を操縦できるような、すなわち非常に顧客が商品取引員に依存をしているような場合、この顧客を犠牲にして自己の利益を追求するおそれがございますので、現在、省令においてこれを禁止しているところでございます。これを専ら過大ということで禁止しているわけでございますけれども、これもどういう場合に本当に禁止すべきか、これはなかなか定量的に規定するのは難しいところがございます。

 そういう意味で、現在、省令で規定をしているわけでございますけれども、今後、先ほど申し上げましたような業務改善命令、これを活用いたしまして、その実態を踏まえて厳正に対処してまいりたいと思っております。

村井(宗)委員 次は大臣に対しての質問なんですけれども、今ちょっと席を外されたようなので、一たん、通告の順番とは逆になりますが、先に別の質問をしてから、いまもう一度、両建てそして向かい玉の話に戻りたいと思います。

 今回の改正の目的にもありますが、日本の商品先物市場を国際的に通用する信頼の高いものにしていくためには、ルール違反に対する厳しい制裁が必要だと考えます。規制緩和とか、事前規制から事後規制へとか、自主規制の尊重といった理念が通用するのは、それと並行して、あるいは比例して、みずから厳格な遵法精神と高いモラルが要求されてくるのではないでしょうか。

 そこでお聞きいたしますが、委託者は、民法的には、違法行為に基づいた取引は取り消すことができるようにする、加えて、商品取引員は損害賠償義務を負うことを明記することを検討すべきではありませんでしょうか、お伺いいたします。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、取り消しでございますけれども、先生御案内のとおり、この民法の意思表示の特則といたしまして、現在、幾つかそういったものが認められているケースがございます。

 これを要約しますと、第一に、違反行為が明確であるということ、かつ、その違反行為の結果、顧客が契約の重要事項について、いわば必ず誤認をするといったような因果関係がそこに存在する、これを定型的に推認できるといったような場合に限って、被害者の救済を円滑化する上で必要と認められているものでございます。

 違法行為に基づいた取引については、確かにそれは違法でございますけれども、ただ、違法行為一般が直ちに顧客が契約の重要事項について誤認をするという因果関係が存在するほど定型的に推認する、これはなかなか難しいところでございまして、違法行為に基づくことのみをもって取り消しを認めるというのは難しいと思っております。

 また、同様のことで、損害賠償責任についてもお尋ねがございました。これも民法の不法行為の特例を定めるものでございまして、一定の事実がある場合に、他の条件とはかかわらず直ちに不法行為の成立を認めるという大変重大な一般則の例外でございます。現在認められる場合には、通常、法律上一定の行為が違法であるとして具体的かつ明確に定めることができるということが一つ、二つ目は、その違法行為が損害と因果関係があるということが定型的に推定できるといったような要件がございます。行為者の不法行為による損害賠償責任を無過失に認めることによりまして、そういう場合に限って被害者の救済が図られるというものでございます。

 なお、今回、実は説明義務違反につきましては、私ども無過失損害賠償責任を導入いたしております。この理由は、その説明義務というものの内容が大変明らかであるということと、説明義務違反と損害との因果関係がかなりはっきりしている。現に、裁判例を見ましてもかなりそれが認められておりまして、裁判法令上もかなり定着をしているということで、私ども、今回その導入に踏み切ったところでございます。

村井(宗)委員 大臣が戻ってこられましたので、話があっちゃこっちゃ行ってしまいますが、もう一度、向かい玉と両建て勧誘の部分の話に戻らせていただきたいと思います。

 さて、先ほど青木さんがおっしゃられたように、現在、省令においては両建ての勧誘が禁止されています。しかし、省令である以上、やはり売り十枚に対して買い九枚だとか、売り九十九枚に対して買い百枚とか、ほとんど限りなく同一数量に近い取引が違反ではないとして多用されているのが実態でございます。やはり、法律で明確に規制した上で、実際上の取引の指導監督に当たっては、ほとんど限りなく同一限月、同一数量に近いと推定される取引を法律の形で規制していかなければならないと考えますが、大臣は、まずこの両建て勧誘についてはどのようにお考えでしょうか。

 また、実際、法律できちんと規制されていない以上、やりたい放題になっている向かい玉についても、今後この法律の中で、できればこの商品取引所法の二百十四条の不当な勧誘の禁止の中に盛り込んで、しっかりと法律で両建て勧誘、向かい玉について規制すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

中川国務大臣 どうも失礼しました。

 今の委員の、客殺しですかの三形態、正直申し上げて初めて教えていただきまして、ありがとうございます。

 実は、私の地元は、経済産業省所管ではなくて、農林省の所管の方の商品取引が非常に盛んでございまして、生産地でございますから、よくそういう話、商品相場をやっている話は伺うんですけれども、一般論として、こういう商品先物にはトラブルが非常に多い、冒頭、両省からも答弁がございましたけれども。そういう中で、今委員御質問の前提は、あくまでもそういう、個人をだまして損害を与えるための客殺しという前提での御質問だろうと思います。

 委員御指摘のように、そういうものは省令で規制をするということになっておりますけれども、裁判になる、裁判になって勝てばいいということではなくて、裁判というのは物すごい労力もかかるし、エネルギーも時間もかかるわけですから、裁判に行く前に、そういう仮にもだますような行為があった場合には、防がなければいけないというのがやはり趣旨だろうというふうに思います。

 そういう意味で、一つ一つ、両建てとか先送りですか、先延ばしとか、三つ御指摘になった件については、法律としてももちろんでありますけれども、その前に監督官庁であります経済産業省が、私も実は厳密にやるべきであるということを、この法案の審議に当たる前に担当の責任者以下には、説明に来るたびに、とにかく厳密にやるべきであると。私自身も、冒頭申し上げたように、そういう商品先物にかかわる一般の人たちのことを地元で身近に知っておりますので、厳密にやるべきであるということを常に申し上げているところでございます。

 いずれにしても、省令において厳密に、そして単なる適合性だけではなくて、説明責任も含めて厳密にやるべきだというふうに考えております。

村井(宗)委員 大臣、答弁ありがとうございました。

 ただ、今質問したように、厳密にという部分は非常に、大臣がお答えいただいた部分、本当にそのとおりだと思います。確かに、厳密に両建て勧誘、向かい玉を規制強化しなければならないと……

中川国務大臣 厳密にじゃなくて、厳正にですね。厳正にに訂正させていただきます。

村井(宗)委員 厳正に両建て勧誘そして向かい玉を規制強化されるというふうにおっしゃっていただいたこと、これは非常にいいと思いますが、今、行政指導でやるとおっしゃいました。法律にあえて規定しないまま行政指導でと言ったのは、どうしてなんでしょうか。法律に修正していくというおつもりはないんでしょうか。大臣、どうでしょう。

青木政府参考人 確かに現在、省令で規定をしております。特に省令で規定しております理由は、法律からしっかりと委任を受けておりますので、私ども、法的効果としては何ら変わりのないものというふうに考えておりますし、また、非常に微妙な取引の内容でございますので、その時期に応じて弾力的に規定をすることもできる、そういった趣旨でございます。

 また、その執行に当たりましては、確かにそれ自体に違反をするという場合が一つ、それから、その規定そのものではなくても、非常に微妙に関係をしているという場合には、先ほど申し上げましたように、今般、業務改善命令の範囲を相当拡大しておりますので、その規定を使って厳正に対処してまいりたいと考えております。

村井(宗)委員 もう一度、大臣、行政指導でやるべきだと考えますか。大臣がせっかく、厳正にやるべきだ、両建て勧誘も向かい玉も厳正になくすべきだとおっしゃられました。しかし、省令等、また法律のないまま厳正に行政指導でやられるのか、それとも、やはりきちんと、あいまいな行政指導ではなく、法律に入れていくべきだと思いますか。私たち民主党は、やはりちゃんとそこは法律に明記する方がいいんじゃないかと考えますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

中川国務大臣 お気持ちはよくわかります。

 一般論として、これはまずマーケットである。いろいろなマーケットがあって、株式市場から為替のマーケットからいろいろなマーケットがあって、そして普通の一般紙を見ても、いわゆる商品取引の市況なんてのがばあっとあって、どんどんふえていますね。コーヒー豆がどうしたとか、ジャガイモがどうしたとか、こう新聞なんかにも書いてあって、非常に広がっていっているわけですが、あくまでもこれはマーケットであるということでございますので、この商品相場が余りにもトラブルが多くて、そして、特に個人の、素人の人たちが、自己責任という部分も私は否定しませんけれども、しかし大変な損害をこうむっているという中で、そういうことを、相手が悪意である以上は厳密かつ厳正に適用し、必要によっては処罰をしなければならないということ、それは私も同じ気持ちであります。

 ただ、いろいろなマーケットの中での、ある意味では法的なバランスといいましょうか、形式的なバランスとして、余りにもこの商品相場だけが突出して法的にがりがりに厳しくなるというのは、ある意味では一ついびつな、逆の意味でいびつな感じを持たれかねないことでございますので、現時点においては法律に基づいて、我が省の責任において厳密、厳正に、この市場が健全に運営できるように我が省がきちっとオペレーションをしていきたいという決意でございます。

村井(宗)委員 大臣が今おっしゃられた中でありました、商品先物以外のほかの先物取引の中にも、両建てや向かい玉を勧誘することはまずあり得ません。したがって、商品先物だけをいびつにするわけではなく、商品先物もほかの先物と同じように両建てや向かい玉を規制しようという話なんです。

 そして、また言っているのは、諸外国の中でもこれだけ両建てや向かい玉、そもそも諸外国の場合、一般委託者が参入するということはほとんどあり得ないわけですが、諸外国でもほかの取引でもあり得ない話、それが今の実態なんです。そのように合わせようという話をしているわけでして、法律をここだけ厳しくしようというわけではないんです。

 そこで、もう一度お尋ねします。

 やはり、あいまいなまま行政指導でやるべきだと考えますか。それとも、大臣が厳正にとせっかくおっしゃってくださったので、きちんと法律に盛り込むべきだと考えますか。どのようにお考えでしょうか。

中川国務大臣 あいまいということではなくて、あくまでも、法律があって、法律に基づいて政令、省令、こういうふうになっていくわけでございますから、私が申し上げました意味は、法律に基づいて政令、省令があって、そしてその中で我々としての判断というものがあるわけでありますから、むしろその判断に何らかの自由度があるとするならば、最大限厳しく適用をしていきたい、すべきであるということで、私は、この法案が成立させていただいたときには、改めて我が省としての厳正な対応、そして場合によっては厳正な処罰ということにしていきたい。

 あくまでも、きちっとした法律に基づいた手続にのっとっての措置として、そういうふうにすべきであるというふうに考えているということでございます。

村井(宗)委員 ありがとうございます。

 今、大臣の方から、法律に基づいた形でやるというふうにお答えいただいたこと、非常にうれしく思います。そのような修正をしっかりと求めていきたいと民主党の方は思っております。

 さて、この問題の検討をしている産業構造審議会商品取引所分科会の委員の、一般個人の委託者の立場にある委員を増員すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 今、業界団体そして一般個人委託者、この委員を比較してみると、一般個人の委託者は一名だけ、残りは業界ばかり。私は、業界の人はもちろん入るべきだと思うんです。しかし、それをバランスよくしなければならないと考えますが、いかがでしょうか。

青木政府参考人 昨年の夏以来、年末まで、今回の改正に当たりまして、産業構造審議会商品取引所分科会に大変精力的に御審議をいただきました。また、委員も先ほど来御指摘をいただいておりますように、実は今回の改正は大変広範なテーマにわたっておりまして、そういう意味で、広く商品先物市場に関係する団体、企業あるいは学識経験者、そういう方々から各界の考え方をできるだけ広範に反映できる、かつ、余り大人数になりますと意見がどうしても漫然となるといったような観点から、今回は、一般の委託者の立場を代表する委員として、日弁連の消費者問題対策委員長に御審議に加わっていただいたところでございます。

 今後、同分科会を開催するに当たりまして、具体的なテーマがどういうことになるのかということにもよりますけれども、御指摘のように、必要がございましたら、個人委託者、こういった立場を反映できる委員の増員を含めまして、いずれにいたしましても、適切な委員の構成とするということにつきましては、従来と同様、しっかりと意を用いてまいりたいと思います。

村井(宗)委員 それでは、最後の質問そして提案に入らせていただきたいと思います。

 私たち民主党は、今やはり、この法案をもっとしっかりと、本当に一般委託者の被害が少なくなるようにしていかなければならないと考えています。今、大臣に何度もおっしゃっていただきました、やはりしっかりと向かい玉を禁止すること、そしてもう一つ、両建て勧誘を禁止すること、そしてさらに不招請勧誘、つまり、望みもしない勧誘をしっかりと規制していかなければならない、そういうようにこの法律をつくっていかなければならないのではないか、民主党は強く求めていきたいと考えています。

 その中で、やはり今言っておられます二百十四条、特にこの商品取引員の禁止事項をしっかりと明記する、そして安心できる制度にしていかなければならない、そのように考えています。

 今回の法律、百歩進まなければならないうち、ほかの部分に関してはかなりいいできだと思います。分離保管義務、取引所外での決済の清算機関、そういった部分は一生懸命やっていただきました。しかし、一般委託者の保護という部分に関して言えば、弁護士会などがおっしゃっておられるように、百歩進まなければならないうち、十歩ぐらいしか進んでいないんです。

 しかし、そこでやはりしっかりと法律を変えて、私たちはどんどんどんどん起こっている、この先物被害白書にも取り上げられているような一般委託者の被害、国民生活センターにも大量の相談が参ってきています。そこをやはりしっかりと法律で規制しなければならない。特に言っています、勧誘をする前に、あなたは勧誘を受ける意思があるかどうかをしっかりと聞くんだ、そういうように法律に明記していかなければならないんじゃないのか。

 不招請勧誘は、アメリカなどほかの国ではあり得ません。ほかの海外で、一般の家庭に、特に素人と思われるような人たちに、先物取引しませんかなどと勧誘することはあり得ないんです。日本の商品先物取引だけがプロだけじゃなくて一般消費者が大量に入ってきてやっているという実態、この部分をやはりしっかりと規制するんだ。

 そして、ただ、確かに、おっしゃられたように、営業の自由があるんです。営業の自由があるので、相手に商品先物の勧誘を受ける気がありますかどうかを聞いて、その上で、受けます、商品先物に関心がありますと言った方だけ勧誘を続けるという形を法律にしっかりと明記していきたい。そのように民主党は訴えますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

中川国務大臣 諸外国、アメリカなんかにも、例えばジャンクボンドを集めて、そして一般の人に売って、ジャンクボンドというのは、要するにほとんど信用度のないようなくず債ですね、そんなような例もいっぱいあるやに聞いておりますけれども、いずれにしても、こういうマーケットが必要である、そういう前提は委員も私も同じだろうと思います。

 そういう中で、投資家が外から入ってくる、その投資家の中の個人の比率がこの商品先物市場においては非常に高い、個人という中にはいわゆる素人の方が非常に多い、したがってトラブルといいましょうか被害をこうむる、それをなくしていかなければマーケット自体が健全になっていかない、私も全く同感でございます。したがって、そのためにいかにそれを担保していくかと同時に、マーケット全体を発展させていくかというのが趣旨でございまして、これも共有できるのではないかと思っております。

 そういう意味で、御提案いたしましたこの法律が、ベストかどうかは別にして、ベターなものであろうということで御審議をいただいておるところでございますので、民主党の修正の御提案というものも重々拝見をしたいと思いますけれども、ぜひとも、私の立場としては、この法案について御審議をいただき、御理解をいただきたいというふうに思うわけでございます。

村井(宗)委員 どうもありがとうございました。

 大臣も、方向性そして考え方は一緒だということがわかりました。今大臣がおっしゃられたような考え、それをしっかりと法案の中に入れていこう、それが民主党の考え方です。

 まず、何度も繰り返しますが、向かい玉をしっかりと規制する、そして、両建てをやってもいいけれども、両建てを勧誘すること、これを禁止する、そして一般素人に対しての不招請勧誘、これをしっかりと規制する、私たち民主党はしっかりとそれを訴えさせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

根本委員長 次に、梶原康弘君。

梶原委員 民主党の梶原康弘です。

 特定商取引法の改正案を中心に質問をいたします。

 特定商取引法は、昭和五十一年に訪問販売法として制定されて以来、既に六回改正をされました。特に平成八年、十一年、十二年、十四年と、ほぼ毎年のように改正をされていって、それも次から次へと新たな商取引の形態が発生して、それに対応するという形で法改正がなされてきたわけであります。これをイタチごっこと言うんだと思うんですが、今イタチのしっぽの方がどんどん大きくなって、法改正が追いついていけない、こういう状況にあるのではないかな。

 国民生活センターに寄せられた特定商取引に絡む苦情相談案件でありますが、平成五年が十万件、十一年には二十八万件、十四年には五十七万件と、これは倍々のような感じというか、十一年から十四年にかけてはまさしく倍増。物すごい勢いでふえているわけでありまして、いろいろ法改正がなされるけれども、増加に全く歯どめがかかっていないという状況だと思います。

 こうした状況を経産省としてどうごらんになっておられるのか、お伺いをしたいと思います。

江田大臣政務官 特定商取引法におきましては、先生今御指摘のように、新手の悪質商法の出現に的確に対応すべく、平成十一年、十二年、十四年と、過去五年間で三度の改正を行いまして、例えばエステ、語学教室への特定継続的役務提供とか、さらには内職・モニター商法などの業務提供誘引販売取引、及び迷惑メールに関する規制を追加してまいったところでございます。

 この結果、これで一定の改善は見られているというところなんですが、今先生御指摘のとおり、最近の消費者トラブルの現状は次のような状況にあると考えております。

 まず、苦情相談者の年齢別の割合を見ますと、この十年間で、六十歳以上の苦情相談者の占める割合が一二%から一九%と大幅に増加していること、また、二十歳代以下の若年者層からの苦情相談が全体の三割を占める、引き続きこの割合が増加しているところでございます。

 苦情相談のその内容を見ても、例えば、虚偽の説明、重要事項をわざと言わない、こういうような不当勧誘によるもの、さらには虚偽、誇大な広告、勧誘に関するもの、こういうものがあって、対策を強化すべきと考えられます。

 最近の急増しているものとして、特に悪質なものとしては、一つは点検商法がございます。これはもう、建物、水道点検をやると言って偽って家に上がり込んで、住宅のリフォームとか、そして浄水器を売り込む、こういうような商法でございますが、こういう点検商法があるところでございます。

 また、大学生を対象としたマルチ商法の苦情相談も最近急増しておりますので、以上を踏まえまして、今回の法改正では、特に、所要の行政規制の強化と民事ルールの整備を行うこととして対応しようとしているところでございます。

梶原委員 今おっしゃっていただいたとおりだと思うんですが、増加の背景というものを考えてみると、私も悪徳商法の相談の実例というか、そういったものを見てみると、本当にひどいんですよね。弱みにつけ込むというか、ちょっとしたすきに入り込んで巧妙にだましていく。私もちょっと、読んだ後、人を信ずる気がしなくなりまして、それぐらいひどいものだろうと思います。

 同じような事件が報じられているにもかかわらず、また、いとも簡単にひっかかっちゃう。被害者は多分、自分だけは大丈夫だな、ひょっとしたら、うまくいったらこれは金もうけになるなとか、そういう本当にだれの心のすきにもあるような、そんなところをつかれて入り込んでいってしまう、そういう本当に巧みな、人間の弱さとか心のすきをついてくるんだろうということだろうと思います。

 それからもう一つ、社会情勢の変化というのか、景気の低迷であるとか、簡単に金もうけをしたいというような、そういった世相もあるんだろうと思いますし、また、先ほどもお話ありましたけれども、被害者を見ると、社会的に見ると、お年寄りといっても独居老人の家が多くなったんだろうなとか、人間関係の希薄さというのか、社会とか家庭が崩壊と言っていいかどうかわかりませんけれども、人間関係が希薄になって、家庭にいても相談することもない、こういった状況もあるかもしれませんし、メル友に象徴されるような若者の世相というものもあるんだろうというふうに思います。

 また、悪徳業者というのも大変たくましい人たちなんだろうなというふうに思うんですけれども、次から次と新しい商売なり商品というのを考え出してくる。そういう意味では、本当にますます悪徳業者がはびこってくる、そういう社会的な環境みたいなものが年々増しつつある、それが形として、数字として出てきているのではないかなという気がするんですよね。

 もちろん、そういった点検商法について、どういう形こういう形ということで規制をしていくということも、入り口と出口とあるとしたらば、出口の部分でどうも対応されているのではないのかなというふうに思うんです。もうこれだけ数がふえてきているわけでありますから、確かに今回の法改正も前進であることはもう間違いがないと思うんですけれども、根本的な解決にはまだまだ遠いなというふうな印象を持っておりまして、これだけ苦情が激増してくる中で、後追いの対策ということでなくて、抜本的な改革の改正のためにどうしたらいいのかというような議論というのがなされているのかどうか、どんなお考えを持っておられるのか、大臣にお伺いをしたいと思います。

中川国務大臣 訪問販売が一般論として全部悪かどうかというのは、私、子供のころ、よく何か、化粧品だったか何ですかね、家に物を売りに来る親しいおじさんなんというのがいましたけれども、これも訪問販売ですが、それはだんだん、もう今おっしゃられるように、本当にひどい、新しいというか新手の手口のものがどんどん出てきちゃって、後追いではないかとか、入り口ではなく出口で抑えようとしておるのではないかというのは、結果的にそういう御指摘がされても仕方がない部分があるんだろうと思います。

 では、入り口ですべて訪問販売全部だめにするかというと、これまた善意の訪問販売の方もいらっしゃるわけですから、なかなかそこは難しいわけでございますが、その難しいところを、多分同じお考えだと思いますけれども、すきをついてさっきの点検商法とか何か、新聞を見ると新たな悪徳商法が出てくるので、本当に彼らは、彼らというか、やつらといいましょうか、そういう悪知恵の限りを尽くしてやってくることに対して、規制をするということは、ある意味では、特に罰則つきということになると刑罰を伴うわけですから、それはそれで法として慎重性も必要になってくるということがあって、なかなか難しい。特に、専門的な事務方から見ると難しいということになるんだろうと思いますけれども、御趣旨としては、新たな悪徳商法を何とか退治したいという気持ちは全く私も同感でございます。

梶原委員 具体的に、点検商法であるとかが出てきているんですが、これも大変ふえておりまして、今回、規制強化の中で、販売目的の明示というのがありまして、当然のことだと思うんです。これはもう評価はしているんですが、ただ現実に、例えば、言ったとか言わないという話になってくる。それが果たしてきちっと、例えば仮に裁判になったときに立証できるのかどうかという問題は、これはあると思うのですね。

 さらに、アポイントメントセールスというのがあって、これもよくわからないのですが、どうも見ていますと、これは商取引の契約書だったら多分失格だろうなと思うようなあれなんですが、公衆の出入りしない個室等の規定がある。これはどういうことかな。公衆の出入りしない個室というのは、考えてみると、その該当の業者の営業所というものもあるでしょうし、よくキャッチセールスというのがあって、喫茶店に呼び込むというのがあるのですね。喫茶店がその公衆の出入りしない個室に当たるのかどうかというのもよくわからない。ちょっと具体的に、どこがよくてどこが悪いかということが、現実問題、はっきりしないんだろうというふうに思います。

 あと、契約の締結を要する事情というのが、これもよくわからないので、話を聞いてみると、お客さんが契約しなくてはいけないような状況に追い込まれる、そういう説得の仕方をされて契約に至る、こういうことなんですが、どうも、それも現実的にどういうことなのかというのがよくわからない。すべて、いいと言えばいいし、悪いと言えば悪いと言えるようなことではないかなと私は思います。

 先ほどもお話があったように、このところの被害者は、これは平成十四年の数字ですけれども、二十九歳以下が二八・八、六十歳以上が一八・六で、人生経験の浅い人であるとか高齢者の方が被害に遭っている。その率がますます上がってきているわけですね。

 大変わかりにくいこういった規定で、果たして現実に運用されるのかなという疑問を持っております。その辺のところ、今具体的に、訪問販売の明示あるいは公衆の出入りしない個室とか云々と申し上げたのですが、それについて、簡単で結構ですのでお話しいただきたいと思います。

青木政府参考人 大変法律用語が難解であるということ、私も個人的には同感でございます。ただ、法律である以上どうしても、いろいろな事象をまとめて、できるだけ抜けがないように規定をしなきゃいかぬ、こういったこともございまして、なかなか抽象的になっているというのはそのとおりでございます。

 まず、販売目的の明示ということでございますけれども、これは委員も御指摘のように、例えば、水道の点検に来たと言って、うその口実でとにかく住宅の中に上がり込んでしまう。特に、核家族化した高齢者のところにそういう悪徳業者が来ますと、当初の段階で拒否をするのはなかなか難しいということもございます。こうした観点から、私ども、勧誘に先立って販売目的の明示をするというのを規定したところでございます。

 これは時点的に言いますと、基本的には、住居を訪問し、戸口で消費者と会った最初の時点でということでございますし、それから販売目的の明示というのは、どのような商品を販売に来たんだということを訪れた消費者に十分認識をしてもらうという程度に説明をするということでございます。

 それから、アポイントメントセールスにおきます公衆の出入りしない個室ということでございますが、これは例えば、海外旅行の懸賞に当たった、そういったうそを言って、本来は商品販売の勧誘目的であることを告げずに、そういうところに、いわば消費者が契約から離脱をしにくいような場所に引き込んで、その上で勧誘をするという趣旨でございます。

 したがいまして、公衆の出入りをするという点につきましては、当然これは、当初の段階で消費者が拒絶をするという重要な機会をまず奪ってしまうというのが第一点でございます。第二点は、勧誘を受けることについて心の準備がない消費者、これが冷静に判断することが非常に難しくなるというのがこの個室の特色の一つでございます。第三点目は、これも同じようなことでございますが、その場から逃げようとしても、自発的に立ち去ることが現実にはなかなか困難だといったようなことも特色でございます。

 したがいまして、どういうところが公衆が出入りする場所以外の場所なのかといった点については、以上のような趣旨から判断されるべきだろうと思います。

 具体的には、事業者がそもそも管理する場所なのかどうか。やはり管理する場所ですと、非常に巧みなトークをするための準備工作がいろいろできやすいわけでございまして、それが一点でございます。それから第二に、現実に不特定多数の者が出入りをしているのかどうかといった点も判断基準になろうかと思います。

 いずれにいたしましても、先ほど、たまたま喫茶店というお話が出ました。通常、これは入らないと思いますけれども、御指摘のように、若者あるいはお年寄りの方が非常にねらわれる商法である、こういうこともございますので、本法案が成立いたしましたならば、できるだけ早急に、詳細な通達あるいはコンメンタール、そういうもので明確化したいと思いますし、例えば成人式、あるいは高等学校の学習指導要領、あるいは敬老会といったようなところでこうした被害者の層に重点的に普及啓発を図っていきたいというふうに考えております。

 それから、少し長くなりましたが、最後に、契約の締結を必要とする事情ということでございます。

 これは、通常、いろいろな法律で重要事項と言う場合に、契約の内容そのものを指しているケースがございます。それについて虚偽の説明があったとか、あるいは重要なことについてわざと言わないといったような点が議論されるわけでございます。

 私どもの特定商取引法では、さらに範囲を広げて、契約そのものの内容ではなくて、契約に至るための事情、先ほど言いました点検商法で、床下が腐ってもいないのに腐っているといったような点についても、虚偽の説明をした場合にはこれを罰則の対象としようという趣旨でございます。

梶原委員 第百五十国会で、当時の平沼通産大臣が訪問販売法について、「消費者トラブルを未然に防止するために、」これはちょっと中略なんでわからないのですが、「悪質業者を取り締まるための行政上のルールを定める」、消費者トラブルを未然に防止するために行政上のルールを定める、ちょっと文章がおかしいなと思うのですが、こういったことをおっしゃっておられるのです。私は、やはり未然に防止するという目的があるのですね、まずここを強調したいと思います。

 やはり、どんな形であれ、こうかつな悪徳業者と無防備な、未熟な消費者とやったら、どう見ても業者に主導権が行っちゃうわけですね。そこを未然にどう防止するかというところを考えなきゃいけないということだろうと僕は思います。

 そういう点で、今回の改正がどうなっているのか、もう一度ちょっとお伺いをしたいと思います。

青木政府参考人 委員御指摘のとおり、この特定商取引法は、消費者トラブルが非常に発生しやすい特定の行為類型、現在六つでございますけれども、これを対象といたしまして、事業者の不公正な勧誘行為によるトラブルを防止する、そして取引の公正確保を図るということを法益としておるわけです。

 今御指摘のございました平成十二年秋の第百五十国会におきましては、いわゆる内職・モニター商法というのが非常にはびこってございました。このトラブルが急増したために、六つ目の類型といたしまして、業務提供誘引販売取引というものを追加させていただきました。おかげさまで、改正前は、大変急激な勢いでございましたし、数千人の訴訟といったようなこともございましたが、とりあえず一定の歯どめがかかったというふうに考えてございます。

 今回の改正案でございますけれども、最近、やはり核家族化した高齢者が大変ふえつつあるといったようなこと、それから、大学生でベンチャーブームに乗って、ベンチャーの勝ち組になろう、そういうような風潮もないわけではございません。そうした点検商法、あるいは若者の層をねらったマルチ商法、こうしたことが特に最近増大しているということで、今回、行政規制の強化、それから民事ルールの整備というものを御提案させていただいているところでございます。これによりまして、まず行政規制を強化する。そのために、また刑罰も付すということ。

 それから、私ども今回、法執行手続、これについても非常に充実したものを御提案させていただいております。そうしたことによりまして、事業者の悪質行為を一層抑制する効果があるというふうに考えておるところでございます。

 それから、第二点目は、行政規制の強化と並びまして、今般、民事ルールの整備充実というところについても、私ども大変意を用いたところでございます。これは確かに、実際に被害に遭った消費者の救済をより容易にするといったような点もございますけれども、実はそういうことが進むにつれ、そもそも悪質なビジネス、悪質な事業者のビジネスが成り立たないようにする、そういったような効果があろうかと思います。

 いずれにいたしましても、今回の改正法案、消費者トラブルの未然防止のために一層有効なものになるというふうに考えてございます。

梶原委員 どうも余り答えになっていないような気がするんですが、点検商法について言えば、平成八年から十四年で六・四倍になっているんですね。アポイントメントセールスについては二倍というようなことで、物すごい勢いでふえているわけですけれども、国民生活センターの資料では、六割が訪問販売であるとか不招請の勧誘によるものだというふうな資料があります。

 先ほども同僚議員から話があったんですけれども、私は、未然に防ぐということであれば、不招請の勧誘を、営業行為を禁止する。どこまで禁止するかというのはあるかと思うんですが、例えば、先ほどの同僚議員でも、電話による勧誘だったわけですが、EUでも去年から大量無差別の勧誘メールというのは全面的に禁止しております。アメリカでも、電話セールス撃退作戦というのがあって、あるところに登録するとその電話にかけてはいけない、かけると日本円で百六十四万かな、それだけの罰金を科せられるということで、去年から始まりましたら、開始直後はネット上で毎秒千件の登録があったというんですよ。いかにそういった需要というか思いが強いかということだと思うんですけれども、ここでは電話に限っていいと思うんですが、不招請勧誘についていかがお考えでしょうか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 電話勧誘につきましての不招請勧誘を何か規制できないかという趣旨の御質問で、アメリカの制度も引用いただいたわけでございます。

 電話勧誘販売でございますけれども、我が国では特定商取引法で規制をしておりまして、具体的な規制内容といたしまして、勧誘目的の明示の事前の義務づけもございますし、書面交付の義務づけ、それから不当な勧誘行為の基準もございますし、それから大きな制度としまして、八日間のクーリングオフという制度もあるわけでございます。

 一方、アメリカの制度の御紹介がございましたけれども、昨年の十月から電話勧誘拒否登録制度という制度が施行をされておるわけでございますけれども、一つの背景といたしましては、アメリカでは、我が国でもいろいろトラブルが多いわけでございますけれども、アメリカの場合、特に、自動ダイヤル装置といいますか、自動電話装置による無差別大量の電話勧誘というのが非常に大きい社会問題になっておったというのも一つの背景でございます。

 いずれにせよ、そういう制度が導入されたわけでございますけれども、やはり言論の自由といいますか通信手段の自由といいますか、そういうこととの関係の問題がございまして、実際、そういう電話での営業をしている企業のグループから訴訟が起きておりまして、地裁で違憲判決が出て、高裁で合憲判決が出ましたけれども、現在まだ訴訟が継続中、そういう事情にあるわけでございます。

 アメリカにおきましては、先ほども申し上げましたようなクーリングオフの制度もないということもございまして、いずれにせよ、我が国で導入するかどうかについては慎重に検討すべきである、そういうふうに考えております。

梶原委員 またちょっと具体的なことについて伺いたいと思うんですが、重要事項の故意の不告知であるとか不実告知、それについては書面交付義務というようなことで裏づけされているようなニュアンスもあるんですけれども、実際の現場において、特に若者とか高齢者が対象であるということを考えると、口頭で行われて、書面は仮にあっても、書面を見てなんということはほとんど考えられないんじゃないかなというふうな気もするんですよ。むしろ、後で業者の口実にされてしまうんじゃないかな、そんなことも考えたりもいたします。

 違法の業者に対して正当化するようなことにもなりかねないんじゃないかな、そんなこともちょっと聞いてみたいんですが、お願いします。

青木政府参考人 特定商取引法におきましては、消費者が契約の内容をきちんと確認できるということが重要である、そういった趣旨から、契約内容を記載した書面の交付を事業者に義務づけております。例えば、書面に記載すべき事項としては、商品の価格ですとか代金の支払い方法等々でございます。この書面交付義務に違反しました事業者については、今後とも厳正に対処してまいりたいと考えております。

 実は、今回の改正案でございますけれども、これはむしろ、契約書面といいますのは契約するときの書面でございますが、契約に至るまでの段階で、先ほど言いましたように、例えば、床下が腐っていないにもかかわらず腐っているんだといったようなうそを言って例えば御老人に高額の商品を売りつける、商品そのものは、価格あるいは代金といったものは別に間違っていないといったような事態がございます。こういった事態に、重要事項についてのうその説明を行ったり、あるいは重要事項についてわざと説明をしない、これによって消費者が誤認をして契約した場合にはこれを取り消しすることができるといったような制度でございます。

 御指摘のように、書面交付が悪質業者の違法営業に言い逃れを与えるといったようなことにはならないというふうに考えております。

梶原委員 あと、消費者と業者の関係が不明確だということもお伺いしようと思ったんですが、同じような答えしか返ってこないので、要するに、今デート商法で、どこまでが業者で恋人なのかわからない、そういうことというのはもう、これで被害が多いんですよ。

 デート商法で、本当に僕は男の子の気持ちになるとかわいそうだなと思いますけれども、大丈夫ですか。いや、電話がかかってきて、初めはメールからですね。出会って、実は自分は宝石の商売をしているんだ、見に来ないかというような形で、何百万の契約をさせられる。契約してしまったら一切会わない。もう気持ちが離れたというので、そういった人も多いようです。気をつけてください。

 それについてはもういいんですが、やはり、ずっと聞いていくと、不招請勧誘というのが問題になることはもう明らかだと思うんですよ。今の形も、メールという形でうまく入っていく。電話とかそういったことを使うことが多いわけですけれども、私は、特定商取引というのは、取引の形態はそれぞれ違いますけれども、共通するところは、消費者が弱い立場にあって、一方で業者がいろいろ巧妙に仕掛けをつくっているということ、それが成り立つということだと思います。そういった業者は、もう基本的な商道徳なんか守るようなことがないわけでありまして、そこに経済活動の自由なんということが果たして認められるものかどうかと私は思います。むしろ、消費者の信頼をかち得ることの方が経済の発展に貢献するのではないか、経済活動の自由よりも消費者の信頼が優先されるべきだと私は思います。

 もう一つ、入り口が大切だと思いますのは、アメリカのように訴訟社会ではないわけでありまして、仮にトラブルがあって国民生活センターに行っても、平成十四年で五十七万件の苦情がある。にもかかわらず、では、どれぐらい裁判になったのか私は知りませんけれども、極めて少ないのではないかなというふうに思います。結局は泣き寝入りをしてしまうというのが現状ではないか。ぜひ、その泣き寝入りをやめさすためにも、水際でとめるというか、そういう不招請の勧誘というものをきちっと制限をしていかなければいけないと私は思います。ぜひ、そういったことを考えていただきたいと思います。

 もう時間が過ぎておりますので、次に、指定商品の問題に移りたいと思います。

 特定商取引における指定商品、指定権利、指定役務の規定、私は、この表を見て、よくもこれだけ商品が挙がっているなというふうに思ったんですが、対象の商品があると、対象に挙がっていない商品というのは何があるのかなと、あれこれ探すわけです。新しい商品であるとか権利であるとか役務というのがどんどん出てきている時代に、もっと包括的にくくった方がいいのではないかというふうに思います。

 この法律で規定されているルールが除外されるような商品とかあるいは役務とか権利というのがあるんでしょうか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 指定商品の対象外となるものという御質問でございますけれども、まず、指定商品制度でございますけれども、政令で対象となる商品、役務、権利を指定するということで、例えば商品でございますと、「国民の日常生活に係る取引において販売される物品であつて政令で定めるもの」というような規定で指定をしておるわけでございます。御指摘いただきましたように、非常に多くの商品、役務、権利を指定する結果になっておるわけでございます。

 御質問の、対象外となるものということでございますけれども、まず、国民の日常生活で取引される商品、サービスということでございますので、それ以外のものは対象外でございますけれども、それ以外のものといたしまして、他の分野の個別の、特有の個別立法で規制されている商品、例えば金融商品でありますとか旅行でありますとか不動産でありますとか、そういったものはそれぞれ書面交付の内容とか違いますので、そこで扱っておるということで指定をしておらない、そういうようなことになっております。

梶原委員 個別の法律で規定されているものはそれを除外するという形で、一言で済むんじゃなかろうかと私は思いますけれども。

 海外でも同じような法律、特定商取引の法律というのがあると思うんですが、同じようなケースがあると思うんですけれども、どういう形で制限しているんでしょうか。

小川政府参考人 欧米諸国でも、我が国と実質的な考え方は同様でございまして、先ほど挙げましたような内容がやはり対象外になっておるわけでございます。

 例えば、EUでは、EU全体で申しますと、訪問販売に関するディレクティブという指令があるわけでございますけれども、そこで不動産関連の契約でありますとか保険、証券、それから食品、飲料とか、そういったものもEUの場合は適用除外になっております。それから英国においては、不動産関連契約、保険等の金融サービス、やはり食品、飲料が適用除外。米国においても、不動産、金融関連、そういったものが適用除外されているわけでございます。

梶原委員 それは別の法律で定められているということでしょう。そうだと思います。ですから、それ以外の、指定商品というような形では、海外でこんなことをやっておるところはないんじゃないかというふうな認識を私はしております。もっと包括的にやらないと、次から次と新しい商品が出てきたときにどうしてもおくれる。仮に裁判しても負けてしまうということになってしまうんじゃないか。これはどう見ても消費者保護とは言えないなというふうに思います。

 どうも、聞いていますと、経産省の考え方、疑わしきはシロみたいな、そんなような気がしてならないんですけれども、指定商品のことで、平成十五年二月七日の消費経済審議会の特定商取引部会、ちょっと文章がありまして、読み上げますと、「全国の消費者センター等の相談員は、実際のトラブルに対応するとき、指定商品に読み込めるかどうかという判断に非常に苦労する。事業者は規制対象から外れたもので商売しようとするし、次々に新しい商品・役務に係るトラブルが出て来るわけで、やはり、消費者相談の現場がこの制度によって非常に苦労しているのは紛れもない事実である。」これは先ほど申し上げた審議会の文章であります。

 その基本的な考え方というのは、やはり消費者に支持される経産省というような形でやっていただいた方がいいのではないかなというふうに思っております。私も商売をしておりまして、やはり顧客に支持される会社が伸びていくのは間違いない。お客さんに支持されなかったら絶対伸びていかないんですよね。ここは、お客さんであるところの消費者にやはり支持される経産省であっていただきたいというふうに思いますが、指定商品の考え方について、いかがでありましょうか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 指定商品制につきまして今御紹介のありました御指摘、実は私も審議会に出席をしておりまして、記憶をいたしております。昭和五十一年に訪問販売法が制定されたわけでございますけれども、そのときからこの制度をとっておりますけれども、従来からそういうような御指摘があったということは私も把握しておるわけでございます。

 やや言いわけがましくなるかもしれませんけれども、その背景といたしましては、実は、五十一年に制定以来、平成十一年に至るまで、二十数年間で指定商品の追加が二度だけだったということが一つあるわけでございます。実は、平成十一年以降、ここ五年ほどで三度の追加をいたしております。今回、法改正をいたしましたら、もう一度トラブルを洗い直して追加をするというような作業をやりたいと思っております。

 いずれにせよ、指定商品、役務の見直しは頻繁にこのところやっておりまして、その際には、御指摘ありましたような国民生活センター、それから地方自治体の消費生活センター、消費者団体等から御意見を伺うと同時に、国民生活センターのトラブルを洗い出しまして、十五年のときもそうだったと思いますけれども、数十件でもトラブルがあるものは指定するという方針で、とにかく漏れ落ちがないようにという努力をいたしてきております。

 あわせて、今後の問題といたしまして、可能な限り指定ぶりも包括的にするという工夫で、疑いというんですか、トラブルがあるものは必ず対象にしていくという方針で臨みたいと思っております。

梶原委員 御努力いただいているとは思うんですけれども、それが後追いだということではないかというふうに思います。

 今度は、マルチ商法についてお伺いしたいと思うんです。

 今、大変急激に増加しておりまして、就職難ということもあるんだろうと思いますし、友達同士でどんどんどんどん広がっていく。もう大変大きな被害になっているわけであります。マルチ商法が怖いのは、被害者が同時に加害者になって、今の時代ですから、もうそういった加害者がどんどんどんどんふえていくんじゃないかなという恐ろしいものを私は感じるわけですけれども、それについてどういう対策をとっておられるのか、大臣からお伺いしたいと思います。

坂本副大臣 マルチ商法、個人を販売員としまして、個人をたくさんふやしていく、組織を大きくしていって、上に行けば行くほど利益が上がる、そういう仕組みでございますが、そのために、虚偽説明等の無理な販売の勧誘とか下位の販売員の過剰在庫等によるトラブルが発生しやすい取引形態と言われております。

 特に大学生を中心に、近年、大変トラブルが急増している。平成十四年度に、首都圏四都県では倍増した、全国でも大体四割増しのトラブルが発生していると聞いています。

 今回の改正案では、行政規制の強化に加えまして、民事ルールの整備として二つの措置を講じております。まず第一に、会員が未使用の商品を適正な条件で返品できるルールを、諸外国の立法例も踏まえて整備をいたしております。第二は、事業者の虚偽説明や重要事項をわざと言わない説明により、個人が誤認して締結した契約を取り消せるようにしております。この民事ルールは、悪質なマルチ商法が成り立たないようにするために大きな効果がある、こんなふうに考えております。

梶原委員 ぜひ強化していただきたいというふうに思います。

 訪問販売であるとか電話勧誘販売であるとか、そして今のマルチにしても、特定のノウハウを持った人たちが、商品をかえたり地域をかえてやっていくというケースが大変多いというふうに聞いております。そういった悪質業者を処分していかないといけないというふうに思いますが、経産省が実施しておられる悪質業者に対する改善指示であるとか業務停止の実態がどうなっているのかというところを具体的に教えていただきたいと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもにおきましては、特定商取引法に違反する事業者の取り締まりにつきましては、近年、都道府県あるいは警察とも連携をとって、その法の執行の強化に最大限努めているところでございます。

 平成十三年に、私ども、中央省庁の再編に伴いまして大機構改革がございました。その際、私どもの法執行担当部局も強化をいたしまして、それ以降、また警察出身者の派遣も受け入れておりまして、担当職員の増員、強化、質の内容、そういったところに非常に意を用いているところでございます。

 御質問の処分でございますけれども、平成元年から見てまいりますと、平成七年までは行政処分の実績はございません。八年から十二年の五年間、これは年平均七件でございます。平成十三年度以降で見ますと、毎年二十件以上の行政処分を実施しておりまして、私ども、それなりに一生懸命頑張っているところでございます。

 また、行政刑罰が付与されておりますので、警察においても、毎年、事件数で約百件、検挙人員数で二百人から三百人程度を特定商取法違反の事案として検挙していただいているところでございます。その過程で警察の方から私どもにいろいろ情報照会がございますけれども、その点につきましては最大限の協力をしているというところでございます。

梶原委員 平成十四年で苦情が五十七万件と言うんですよね。それに対して、行政処分二十件程度。それから、これは刑事告発したものなんでしょうか、百件から三百人。本当に氷山の一角というか、きちっと実態をとらえられていないんじゃないかなという気もするわけです。

 業者に甘いんではないかなというふうに思うわけですが、先ほども申し上げたように、日本はお客さんである消費者を大切にできていないんじゃないかなということを思います。悪質業者もそうであるように、どうも行政も業界に対して甘くて、消費者をないがしろにしているのではないか、そういう中では決して経済の健全な発展というのはないんじゃないかなというふうに思います。消費者を大切にすることによって成熟した消費社会をつくっていく、その中で健全な企業が生まれていく、それが本当の力の強い経済をつくっていくことになるんだろうというふうに思っておりまして、ぜひ悪質業者をしっかりと摘発していただきたい。

 今、行政処分のところだったんですが、例えばどの程度のところで処分をしているのか。いろいろな苦情が消費生活センターあるいは国民生活センターに寄せられてくると思うんですけれども、どういう条件というか、どういう段階で処分をしていくのか、その辺のところをお伺いしたいと思います。

青木政府参考人 委員の方から、年間数十万件の苦情がある中で、行政処分が二十数件あるいは警察の検挙が百件というのはまだまだ少ないんじゃないか、そういう御指摘をいただいております。私どもも、決して業者に甘いということは毛頭ございません。違反が見つかれば厳正に処分をしていきたいというふうに思っております。

 ただ、なかなか、やはり処分ということになりますと、私ども、最終的には事業者の名前を公表したり、あるいは営業停止をする、大変重いペナルティーを科すわけでございます。それゆえに、非常に慎重になることもあるということでございます。

 特に、最近、商品、サービスの効能、効果、そういった点について誇大な広告をするといったようなことがございます。例えば、最近処分をしました例でございますと、誇大な痩身効果をうたってジェル状のクリーム、これは通信販売事業者でございますけれども、これは、行政処分をいたしまして、対外公表をいたしました。その間、本当に痩身効果があるのかどうかというのは、残念ながら、現在のところ、行政庁にすべての立証責任が課せられております。これに非常に難儀をしているところでございます。

 そうしたこともございまして、今回の法改正案におきましては、合理的な根拠がある資料について提出の命令ができるといったような規定を盛り込んでございまして、業者である以上、当然、広告あるいは勧誘のトーク、そういったものの裏づけとなる資料があるわけでございまして、そういうものを提出させる、提出がない場合には逆に誇大なものであるとみなす、こういったような規定を置いておりまして、違反事例あるいはその疑いがある場合には、こうした新しい法執行手続を最大限活用して、迅速的確な、厳正な法の運用に努めてまいりたいと思います。

梶原委員 あと、そうした業者についての公表なんですけれども、消費者とのトラブルが多い事業者は当然公表していくべきであろう。その営業の云々というところとひっかかってくるんだろうと思いますが、やはり未然に防ぐというところと、また、おかしなことをしたら公表される、それが企業倫理を高めていくということにもなろうかと思いますので、そういった公表というのはぜひ積極的に考えていかなければいけないんじゃないか。

 そういった、現在公表されているとしたら、どういう形でやっておられるのか、あるいはその公表についてどういうお考えを持っておられるのか、お伺いをしたいと思います。

江田大臣政務官 まず、特定商取引法に基づきまして業務停止命令を行った場合には、従来からこの事業者名を公表させていただいております。これに加えまして、平成十四年二月以降には、業務の改善について指示処分をした場合におきましても違反事業者名をすべからく公表する、このようにさせていただいてきたわけでございます。

 これは、委員も御指摘のように、こういうような悪質な業者がふえている状況を踏まえまして、違反事業者名を広く国民の皆さんにお知らせすることということで、この未然防止につながる、また、同様の手口を用いた悪質商法の予防を図る観点から行ったものでございます。

 委員、一括してこの事業者名をすべからく公表せよということかと思いますが、この事業者名の公表につきましては、事実上、営業を続けることが不可能になるということが当然多いわけでございます。社会的に極めて大きな効果があるのがこの公表でございますが、このために、消費者から苦情相談の件数が多いことだけをもって、違反行為について法執行に当たる行政機関が十分な事実関係の調査、確認を行わないままに事業者名を公表するとなると、事業者の正当な利益を害するおそれも一方ではあるということで、一律に公表を行うというようなことはできない、そのように考えております。

梶原委員 私は、ぜひ、できるだけ未然に防ぐということで、また企業倫理を高めるという意味でそういった取り組みをしていただきたいというふうに思っております。

 今度、消費者行政という点なんですけれども、今大変な相談件数を抱えているわけでありますが、やはり行革の流れの中で、ここ五年間で国民生活センター、都道府県の消費生活センターの職員は五・七%削減されておりまして、職員一人当たり人口は、都道府県によって違いますけれども、十万人抱えている、人口十万人を一人で見ている、こういうことだそうであります。一方で、大変な相談件数もある、手口も広範囲になってくる。こういう中で、再三繰り返しますけれども、未然防止と、あとはそういった、経産省がどう取り組んでいくかというところに大きくよるんではないかなというふうに思っておりますけれども、経産省とそういった消費生活センター等の連携をどう図っていくのか、その辺についてお伺いしたいと思います。

青木政府参考人 お答えを申し上げます。

 消費生活センター、あるいはそれを最終的にPIO―NETという形で集約しております国民生活センター、所管は内閣府でございますけれども、私ども、先ほど消費経済部長の方から申し上げましたように、法案の企画立案するに当たってのいろいろなデータの提供ですとか、行政処分するに当たっての内偵の段階でいろいろな情報の提供といったような点については、大変お世話になっているところでございます。

 最近、消費生活センター、全体としては数がふえておりますけれども、一部の都道府県で縮小する動きもございまして、政府、特に中心となります内閣府におきまして、その充実について引き続き働きかけを行っているところでございます。

 また、私ども経済産業省といたしましても、都道府県は特定商取引法の法執行に当たります大変重要なパートナーでございまして、例えば、私どもの職員を研修する機会には地方公共団体の方々にも参加をいただきまして、ともに同じようなカリキュラムで、同じかまの飯を食いながら研修をするといったようなこともございます。

 そういう意味で、地方におきます消費者行政の充実強化につきましても、私どもとしても、できるだけ引き続き支援に努めてまいりたいと思います。

梶原委員 時間がなくなってまいりましたので、最後に、商品取引所の方についてちょっとお伺いをしたいと思います。先ほど同僚議員が質問したんですけれども、ちょっと観点を変えてお伺いをしたいと思います。

 先物取引市場の活性化というのがユーザー業者のリスクヘッジになるとか、あるいは、公正な価格形成というのは確かに大きな効果があるんだろうというふうに思っておりますが、先物市場というのがすごく大きくなってくる、大きくなればいいのかなとは思うんですが、別の意味で心配になってくるのが、実際に商品が動くわけではない、いわゆるデリバティブという、金融派生商品ということになるんだろうと思います。そういう意味では、経産省の方を前にして大変恐縮なんですが、金融庁なのかなという思いもするわけですが、いずれにしても、リスクヘッジのはずの相場が投機的な資金で混乱をするということが本当にないのかなという心配をしております。

 前、ヘッジファンドなるものが、本当に通貨危機を起こしたかどうかわかりませんけれども、そういった大きなお金がどかんと入ってくることによってそういった市場の混乱というのはないのかなというふうに思うんですけれども、その辺についてお伺いしたいと思います。

青木政府参考人 今回の法改正案におきましては、国際的な市場間競争、これは従来欧米のみでございましたけれども、最近、中国を中心とするアジアからも競争を受けているわけでございまして、私ども、内外から信頼できる、また利便性の高い市場整備を図る必要があると思っております。そうした観点から、今回、例えばクリアリングハウスの導入といったような点について御提案を申し上げているところでございます。

 また、今梶原先生からお話ございましたように、海外からの機関投資家もある意味でリスクテーカーでございまして、この市場は、当業者を中心とするリスクヘッジャーと投資家を中心とするリスクテーカー、こういうものがお互いの違った考え方をぶつけ合うことによって、できるだけ公正な価格を形成するというのが本来の趣旨でございます。

 したがいまして、商品取引所におきまして、公正な価格形成機能というのは大変重要でございます。例えば、商品市場におきます市場操作、相場操縦、こういったものは禁止をしておりまして、各取引所におきまして市場監視委員会というのがございまして、これが日ごろから、取引状況あるいは価格動向について監視を行っているというところでございます。

 また、同じように、取引所におきましては、委託者、通常こういう方々は委託者の形で入ってくるわけでございますけれども、委託者の取引可能な取引枚数を制限しておりまして、日本はどちらかといいますとやや制限をし過ぎているんではないか、こういったような批判もございますけれども、市場支配や価格支配の排除のルール化をしております。

 そういう意味で、海外からの受託会員を通じての大量の投機注文が行われる場合には、これまでの取り組みの実績を勘案して、その海外注文の内容について精査を行うなど、監視をしっかりと行ってまいりたいと思っております。

梶原委員 同様のことで恐縮なんですけれども、最後に、そういった危険性がないのかどうかということで、平成十一年から石油が対象商品になりました。十四年の実績を見ると、年間の取引百兆円ということなんですね。GDPの五分の一に相当するお金が、売ったり買ったりですから、実際、物が動いているわけじゃないんだけれども、百兆円のお金が石油の売ったり買ったりで使われているわけです。

 石油というのは、本当に日本経済、これがとまったら息の根とまっちゃうわけで、荒唐無稽なことを言うわけじゃないですけれども、今例えば、中東があるだけに石油というのはすごく大変な問題だと思うんですが、いろいろな情報、例えばテロリストだとか戦争だとかいろいろな中で、そことヘッジファンドと言われる人たちが組んで市場を動かそうなんということは、僕は可能じゃないかなというふうに思うんですよ。何かテロが起こるかもしれないよ、どうかなるかもしれないよ、それでヘッジファンドがそこに組んで来るというようなことで、聞くと、証拠金というのを一億積めば十億の取引ができるということですから、大変大きな利益。これは、実際に石油がとまらなくとも、そこで大きな利益というのがテロリストに渡るなんということがあるんではないかな、そんなことも心配をするわけです。そんなことがないのかどうか、それを確認して質問を終わりたいと思います。

中川国務大臣 石油に限らず、先ほども申し上げましたが、いろいろな商品の市場があるわけでありまして、それは、経済的に必要だからということが大前提ですけれども、そこに、梶原委員御指摘のように、今いわゆる投機的な、あるいはまた先ほどのような個人の投資家みたいな者が入ってくるというのがマーケットになっているわけであります。

 石油について言うと、御指摘のとおり、我が国にとってはもう極めて戦略的なエネルギー物資、エネルギーだけじゃございませんが、物資でございますから、石油について万が一にもそういうことがあったらという御懸念というのは、やはり国を考える上で非常に大事な視点だろうと思います。

 現実には、今の証拠金の制度もございますし、それから、石油にあえて限定して言えば、備蓄という問題もございますし、いわゆる世界的なスペキュレーターが日本のある商品に向かってどおんと来て、得るメリットは一体何なんだろうかということも向こうも相当考えてやってくるんでしょうけれども、石油に関してはそういうことがないように、備蓄の問題も含めて総合的に、いろいろな、ある意味では監視というか注意深く見守っていくという観点は私は必要だと思いますし、またそういうふうにしていっているというふうに考えております。

梶原委員 ありがとうございました。

根本委員長 次に、村越祐民君。

村越委員 民主党の村越祐民でございます。

 冒頭、昨日イラクにて誘拐された日本人三人の無事をお祈り申し上げるとともに、この三方の身の安全の確保のために政府が責任ある対応をしていただくことを強くお願い申し上げまして、不正競争防止法の改正に関する法律案について専ら質疑をさせていただきたいと思います。

 近年、ウェストファリア以来の国民国家体制が動揺し、国境の垣根というものが低くなってきているわけですけれども、経済のグローバル化が急激に進展していく中で、インターネットの普及または商取引の電子化といったことも手伝いまして、我が国における国際商取引の担い手は、従来、大手の大企業ばかりだったわけですけれども、それが今や中小企業や個人の方に至るまですそ野が広がって、多様化をしてきているんだと私は考えています。また、二〇〇一年の中国のWTOへの加盟に象徴されますように、国際商取引の場そのものだけではなくて、そのような取引の場への参加国も同様に多様化をしてきています。

 そういった情勢にありまして、世界有数の貿易大国であり、また世界経済を牽引していく、いわばリーディングプレーヤー的な立場にある我が国は、国際商取引の場において、我が国の国益だけではなくて、常に公正な商取引が行われていくような配慮、努力をしていくことが急務でありまして、不公正な競争の防止については、国内法の整備を他国に率先して行っていくべきだと私も考えています。

 また、そのような我が国の担うべき責務から、公正な商取引が行われるための国際的枠組みの構築に向けた積極的な努力を行うべきでありまして、同時に、このような枠組みにできるだけ多くの国が参加するように働きかけるような、そういったリーダーシップをとる必要もあるんだと考えます。

 本法案で問題となる国外における贈賄は、公正な競争を阻害することが明らかな行動であることから、それを取り締まるための罰則規定を伴う法整備がこのたび必要になっているということは言うまでもないわけですけれども、一般的に言えば、正義に反すると考えられる行為であったとしても、刑法による規定が個人の自由な行動を制限するという性格、つまり、刑法の持っている消極的な人権の保障機能や謙抑主義というものにかんがみれば、先ほど申し上げたとおり、罰則を設ける必要があったとしても、十分慎重に検討した上で議論していかなくてはいけないのではないかと考えます。

 したがいまして、あくまで本法案は、不公正な競争を防止しなくてはいけないという不正競争防止法本来の目的の上で議論がなされるべきであり、私は、本改正案によってその目的がどのように達成し得るのか、そういう観点において、以下、質疑を行っていきたいと思います。

 それでは、まず、中川経済産業大臣にお伺いしたいと思います。この法律を改正する法案を提出するに至った背景及びその経緯について御説明をいただければと思います。

坂本副大臣 国際商取引の拡大に伴いまして、外国公務員贈賄防止条約が平成十年に合意されたわけであります。

 ただ、現行の規定では、国内犯のみを処罰の対象としております。条約批准国のほとんどが、三十一カ国でございますが、自国民の国外犯処罰を導入していること、さらに、我が国の公務員に対する刑法の贈賄罪については、国民の国外犯を処罰の対象とする法案が今次通常国会に提出されております。そんなことから、今回、日本国民が海外で贈賄を行った場合も新たに処罰の対象とするための法改正を行うものであります。

村越委員 私がいただいた資料を勉強させていただいたところによりますと、平成十年にまず不正競争防止法が改正され、外国公務員贈賄罪が導入されているわけです。そして、その後、また平成十三年にも改正を行っているわけですけれども、その際に、今回改正されるであろう項目、すなわち、今おっしゃられた国民の国外犯処罰を盛り込まなかったことに特段の理由があったとすれば、お答えいただきたいと思います。

桑田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から御指摘いただきましたこの不正競争防止法でございますけれども、平成九年にOECDの外国公務員贈賄防止条約が制定をされまして、それを国内法で受ける形で、不正競争防止法で外国公務員贈賄罪を導入いたしました。平成十三年にも不正競争防止法を改正しておりますけれども、その際、我が国の刑法におきます一般原則、特に贈賄罪につきましては国内だけに適用するということになっておりましたので、その際には改正を見送ることとしておりました。

 今回法案でお願いしております、日本国内のみならず国外におきます日本国民の国外犯処罰の導入をお願いしておりますのは、刑法の贈賄罪につきまして国外犯処罰が導入されるというふうな法案が国会に提出されていることを踏まえながら、対応してお願いをしている最中でございます。

村越委員 それでは、本日、法務省の方にもお越しいただいているようですから、法務省の方にお伺いしたいと思います。

 今御説明がありましたように、今国会で日本の公務員に対する贈賄罪の国外犯処罰に関しての刑法の改正案が提出されている、そういうことですが、今回の法改正で刑法三条が言うところの属人主義が適用されるということは、日本の会社員が、海外の駐在員が外国の公務員にわいろを行うという行為、犯罪が非常に重大なものであるという認識がなされているんだと私は考えますが、そのような重大であろう犯罪が現在まで放置されていた、または許容されていたと言ってもいいのかもしれませんが、こういったことに関して何か理由があったのだとすれば、御説明いただきたいと思います。

樋渡政府参考人 贈賄罪につきましては、国外犯処罰規定が設けられなかった理由は必ずしも明確ではございませんものの、現行刑法が制定されました際の政府の提案理由説明によりますれば、刑法第二条は、いわゆる保護主義の考え方に基づいて、同条に列挙されている犯罪が我が国の安寧秩序を害する程度が甚大であるとして処罰することとしたもの、第三条は、いわゆる属人主義の考え方に基づいて、国民が国外において犯した生命、身体、自由、財産、名誉または信用に関する一定の重い罪について、我が国の秩序維持上に害があるものとして処罰することとしたもの、第四条は、第三条同様、属人主義の考え方に基づいて、国外で職務に関する犯罪を犯した公務員を処罰することとしたものとされております。贈賄罪は、これらのいずれにも該当しないことから、国外犯処罰規定を設けられなかったものと考えられております。

村越委員 その点についてもうちょっとお伺いしたいんですが、要するに、今おっしゃられたところの一定に重い罪だという認識があるからこそ、今回あえて刑法の改正が行われるというふうに私は理解しているんですけれども、先ほど私が申し上げた、刑法の原則である謙抑主義の観点に照らし合わせますとどのようになるのか、御意見を賜りたいと思います。

樋渡政府参考人 確かに、委員の御指摘のように、刑法というのは謙抑主義的であることが一つの要請でございますが、交通が発達しまして国際的な人の移動が日常化した今日、国外における国民による贈賄行為の処罰の必要性は高まっていると考えられまして、また、収賄罪の国外犯処罰が可能であることとの均衡を考慮する必要があることや、贈賄罪につき国民の国外犯処罰規定を設けることは条約における腐敗の犯罪化の趣旨にも沿うものであることから、贈賄罪について国民の国外犯を処罰することとしたものでございます。

村越委員 いただいた資料によりますと、現時点で、国内の企業から外国の駐在員に対して、わいろを贈れという指令が出された場合は処罰可能だというふうに御案内いただいているんですが、そういった規定に基づいて刑罰が科された事例は今のところ一件もないというふうに御案内いただいていますが、それでもなお、こういった刑罰を設けることに特段の意味があるとお考えなのでしょうか、御意見を承りたいと思います。

樋渡政府参考人 確かに、今までの例がないということでございますが、この交通の発達した、一つの言い方で言えば狭くなったような世界の中で、いろいろな犯罪が起こり得ることを想定すれば、我が国にも他の国と同様な犯罪の処罰規定があることが必要だろうというふうに考えるわけであります。

村越委員 この改正のタイミングに関してちょっとお伺いしたいんですけれども、まず刑法が先にありきということでしょうから、これも法務省の方にお伺いするのがいいのかと思いますが、本法改正が、去年でもなくて来年でもなくて、ことしにするんだということですから、今やらなければいけない理由が特段にあるのであれば、御説明いただきたいと思います。

樋渡政府参考人 国際組織犯罪防止条約の締結に伴う法整備がございまして、その一環として国内の法整備をしたものでございます。

村越委員 ちょっとよくわからないんですが……(発言する者あり)理事からの御指導を賜りましたので、あえてもう一回納得のいくお答えをちょうだいしたいと思います。どうしてこの時期なんでしょうか。

 冒頭申し上げたとおり、罰則を新たに設けるということはやはり非常に重大なことだと私は考えていますので、今の時期の点に関してもう一度お答えいただきたいと思います。

樋渡政府参考人 要は、先ほども申し上げましたが、近年における犯罪の国際化等々の多くなっていることにかんがみまして、この際、国内法の整備をすべきだと考えたわけであります。

村越委員 ちょっとこのことに関して後でまたやりたいと思いますので、先に進みたいと思います。

 冒頭申し上げたとおり、私は、国際商取引において我が国が非常に重要なポジションにある、その責務から考えまして、公正な競争の実現に向けて率先して自主的に取り組んでいかなくてはいけない、外国がやっているからどうだとかじゃなくて、やはり自分たちでそういった透明な市場を担保するための努力を常々リーディングプレーヤーとしてしていかなくてはいけないというふうに考えているんですけれども、もう一回、ではちょっと角度を変えてお伺いしますが、今回法改正に踏み切ったそもそもの直接の動機というのがどこにあるのかということをお伺いしたいと思います。

 例えば、急激に貿易額が伸びている、ふえているとか、外国政府調達案件の我が国企業の受注が非常に伸びているとか、はたまた現地駐在員の贈賄行為が横行しているという事実があるんだとか、そういう客観的な事実による必要性が生じたのかどうか。はっきり言って、外国からの圧力によって改正するに至ったのか。その辺のところに関してお伺いしたいと思います。

桑田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、不正競争防止法を改正いたしますけれども、これは、先ほど来御説明申し上げておりますように、平成九年にOECDの先進国の間で、外国公務員に対する贈賄につきまして、みんなで歩調を合わせながらそれを防止していくための条約ができたわけでございまして、それを実施するということでございます。

 また、我が国の企業につきましても、先ほど御答弁ございましたけれども、事業活動のグローバル化が着実に進展をしてきております。最近の海外事業活動基本調査で日本企業の海外進出の状況を見てみましても、平成十四年度末では約一万三千社が海外に展開をしているということになっております。また、先生が先ほど御指摘ありました我が国の輸出額につきましても、ここ十年ぐらいで三五%というふうに伸びております。

 このような事業活動のグローバル化、さらには、先進国が協調しながら、歩調を合わせながら外国公務員の贈賄防止に努めていくということにつきまして、私どもといたしましても、できるだけその趣旨に沿いながら率先してやっていきたいということでございます。

村越委員 今までの答弁を承って私はこう考えるんですけれども、この法案、改正案の提案理由に「最近における外国公務員に対する贈賄の処罰に関する国際的な動向等を踏まえ、」というふうにあるわけで、先ほど来答弁いただいていますけれども、結局のところ、諸外国からの圧力に耐えられなくなって法改正せざるを得なくなったのではないかと思うわけです。

 そして、不正競争防止法の改正をするに当たって、それに先んじる刑法を変えなくてはいけないわけになってしまって、そのタイミングで刑法をも改正するに至ったのではないか。これが事実だとすれば、二点問題があると私は思うわけです。

 まずもって一般法と特別法の関係でいえば、一般法である刑法が先にあるべきなのに、いわば本末を転倒した改正になっているのではないか。もう一点は、その理由が、我が国が率先して行うべき法改正であるべきなのに、先ほど来申し上げているように、外圧によって改正するに至ったのではないかと私は思うわけですが、その点につきましてどうお考えなのか、ちょっとコメントをいただきたいと思います。

杉山政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法改正、どういう考え方でやったのかということだと思いますが、私ども、幾つかの点について、いろいろ判断をしながら御提案いたしました。

 一つは、先ほど来先生がお触れになっている商取引のグローバライゼーション、これの進展というのが一つございます。

 それからもう一つは、このOECDの条約におきましては、各国の刑事法制がそれぞれ異なっているわけですから、具体的な国内の取り決めをする、ルールをつくるという場合には、それぞれの国の刑事法制というものを踏まえ、照らしながら判断をするということになっているわけでございますが、先ほど来ございましたように、我が国の場合、刑法のいわゆる贈賄罪につきまして、今回、国外犯を処罰の対象にするというような法改正の提案がなされるということとの関係がございます。

 それからもう一つは、それぞれの各国の状況を見てみますと、これも副大臣の御答弁にありましたが、三十五カ国中三十一カ国の国が、現在、そういった国外犯処罰を導入いたしております。こういった海外の動向にやはり我が国も対応していくというようなことも必要だと思っております。

 以上申し上げましたような三点ぐらいを総合的に判断して、今回御提案をさせていただいたということでございます。

村越委員 先ほど来私が申し上げているように、経済大国たる日本が、国際商取引の場において、やはり非常にリーダーシップを発揮するべきところであるのにもかかわらず、非常に後手後手になっている、私はそのような印象を持っておりますので、しつこくお聞きをした次第であります。

 今後も、こういった国際的なルールをつくっていく場において、くどいようですけれども、日本が強いリーダーシップを発揮していくためにはいろいろと努力を率先していかなくてはいけない、そのための努力を政府にも強くしていただきたいということをお願い申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 おおよそ、罰則規定を設けるということであれば、それによって守られるべき利益というものがあるはずであります。つまり、刑法で言うところの保護法益というものがあるんだと思いますが、この改正案によって新たに設けられるであろう保護法益というものが一体どういった性質のものであるのか、お答えいただきたいと思います。

桑田政府参考人 お答え申し上げます。

 本改正法案におきましても、不正競争防止法の保護法益は、国際商取引におきます事業者間の公正な競争を確保するということが保護法益でございまして、その保護法益を確保するための手段として、今回、日本人の海外におきます国外犯処罰を導入させていただきたいということでございます。

村越委員 あわせて、確認の上でお伺いをしたいと思うんですが、刑法における贈賄罪の保護法益というものはどういうものなのでしょうか、お答えください。

樋渡政府参考人 刑法の贈賄罪は、公務員の職務の公正と、これに対する社会一般の信頼を保護法益とするものでございます。

村越委員 なぜ今のことをお伺いしたかと申しますと、私自身勉強不足だということもあるんですが、二点ほどありまして、まずやはり、この法案の改正の本当の目的が何なのかということですね。これは後ほどの議論の前提にもなりますので、再度、確認の意味を込めて伺った次第であります。

 もう一つは、本法案で議論しているところの、外国公務員に対する贈賄罪を不正競争防止法という法律において規定していくことがそもそも本当に妥当なのかどうかということに関して、若干の疑問があるからであります。

 つまり、不正競争防止法は、その第二条において不正競争の定義を行っており、ここの定義に列挙されている項目というのは、例えば、著作物ですとかレコードですとか、データベース、論文、数値、図形その他の情報の集合物、録音、録画、複製、印刷、写真、上映著作物等々、いろいろ列挙されているわけですけれども、そういったように、いわゆる知的財産に関することばかりであるわけであります。けれども、その中で、十一条の一項に突然「不正の利益の供与等」、つまり、贈賄の条文が出てくるわけです。

 この贈賄に関する条文が不正競争防止法に入っていること自体に対して、今申し上げた二条の知的財産という流れで考えると、私個人的には何か若干違和感を覚えるわけでありまして、諸外国を見渡してみますと、同様の犯罪を刑法で規定しているとも聞いております。ですから、いま一度、外国公務員に対する贈賄が刑法ではなくてあくまで不正競争防止法で取り締まることが妥当だとする根拠を、先ほどお答えいただいた保護法益というものを踏まえて御答弁いただきたいと思います。

桑田政府参考人 お答え申し上げます。

 刑法における保護法益は、先ほど法務省の方から御答弁がございましたけれども、公務員の職務の公正さと、これに対する国民の信頼の確保とされております。これに対しまして、外国公務員贈賄罪の保護法益は、国際商取引における事業者間の公正な競争を確保するということでございます。

 このように、刑法の贈賄罪と外国公務員贈賄との間に、保護法益に相違がございます。このため、平成十年に外国公務員贈賄罪を創設するに当たりまして、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施の確保を法目的とする不正競争防止法の改正により対応することが適切というふうに判断をされたものと考えております。

村越委員 それでは、そのような目的の上でこの法律がどのように機能していくかという議論を後ほどさせていただくとして、一たん次の質問に移らせていただきたいと思います。

 条約のお話をさせていただきたいんですが、不正競争防止法の外国公務員に対する贈賄罪は、OECD加盟国を中心としたいわゆる外国公務員贈賄防止条約の締結に伴い、それを国内において実施するために制定されたものであると承知しております。

 ただし、本法案の目的である公正な競争秩序を担保するためには、国際商取引の場において、そこに参加するそれぞれの参加者が同様に、公正な競争が行われるための努力をする必要があるわけです、先ほど来申し上げておりますが。

 もちろん、諸外国の法制度に我が国がしゃしゃり出ていって、直接口出しをする筋合いはないかと思いますが、条約を締結していない諸外国に対してどのような感想をお持ちになっているのか、大臣の御所見を伺いたいと思います。

 特に、国際経済の中で現在非常に大きなプレゼンスを示している中国とかあるいはインドとかロシアといった大国がこの条約に入っていないという枠組みの中で、果たして本当に公正な競争が担保されるのかどうか、その点に関しても御意見をいただきたいと思います。

中川国務大臣 これはいわゆるOECDの条約ということでやっておりますけれども、世界百九十何カ国あるんでしょうか、基本的に、やはり不正な取引、特に公務員に対する働きかけ、今御審議いただいているような内容というものはあってはならないということで、もちろん御審議をいただき成立をさせていただきたいということでございまして、多くの国々はその条約に加盟をしていない。

 特に、今御指摘のような、世界的に見ても大きな国、国連の常任理事国であったり、また人口的に言っても、また経済的に言っても非常に大きな国が入っていないということは、やはり世界全体の貿易あるいはまた公正な取引にとって決してプラスにならないというふうに思いますので、今回、既に我が国が入っております三十数カ国以外の国々に対しても、加盟するように積極的に働きかけていきたいというふうに思っております。

村越委員 おっしゃるとおりだと私も思うんですが、非常にお答えしにくいことかもしれませんが、具体的にどういう働きかけを行っていかれるのか、何か方策があればお聞かせいただきたいと思います。

 というのは、大臣おっしゃられたとおり、我々先進国が不正な競争の防止に向けて幾ら努力をしても、やはり、そういった努力をしない国々が市場に参加してきてどんどんわいろを贈ったりなんとかということをされると、我々が努力をしても余り意味のあることではなくなってしまう可能性があるわけですね。ですから、やはりリーディングプレーヤーとしての日本が具体的な努力をする必要があると思うわけでして、何か具体的な手段があればお答えいただきたいと思います。

中川国務大臣 それはいろいろあると思います。例えばバイの、二国間の交渉をやるときに、不正防止ということについては、私自身も相手の国に対して、いろいろなお互いの交渉の要求項目の一つとして、日本側から、私からも何回も相手国に言った経験もございますし、またマルチの場でも、不公正な貿易をやめようというようなことを話し合ったこともございますので、それはやってきたつもりでございますし、今後もやっていきたいというふうに思っております。

村越委員 次のトピックに移りたいと思うんですが、もう一つ条約なんですが、昨年の十二月に、二年がかりの交渉の末に署名された国連腐敗防止条約が、先ほど来私が申し上げている、また中川大臣が非常に懸念されていることに対する一つの解決策として大いに期待し得るわけですけれども、これに関して外務省にお尋ねをしたいと思います。

 本条約によって、今議論となっております外国公務員に対する贈賄問題が解決され、国際商取引の場において公正な競争秩序が保たれることが本当に期待できるのでしょうか。また、先ほど私が例として挙げました中国やインドやロシアといった国々は署名をしているのでしょうか、お答えいただきたいと思います。

高原政府参考人 お答え申し上げます。

 国連腐敗防止条約でございますけれども、国連腐敗防止条約は二〇〇二年一月から国連総会のもとで設置されましたアドホック委員会で交渉が開始されまして、昨年十月、国連総会において正式に採択されました。また昨年十二月、署名のための会合が開催されて、我が国も署名したところでございます。

 国連腐敗防止条約は、公務員の贈収賄などを含む腐敗の防止のために国連のもとで策定されました初めての多数国間条約でございまして、贈収賄等の行為の犯罪化及び国際協力を含む腐敗対策の包括的な枠組みを定めるものでございます。

 署名国につきましては、先ほど御指摘ございましたロシア、中国などは署名済みでございます。インドにつきましてはいまだ署名していないと承知しております。

村越委員 今御説明をいただいたように、現在この条約は日本を含めた各国がまだ署名をしたレベルでとどまっているわけですけれども、先ほど来くどいように申し上げてきましたように、我が国が率先して公正な競争の担保に向けて努力をすべきだと考えています。

 それで、今後、我が国は、この条約の本格的な締結、批准に向けてどのように動いていく予定なのでしょうか。これも具体的なプランがあればお示しいただきたいと思います。また、そもそも政府として、この条約の締結に対して本当に積極的なのかどうか、そういったスタンスも含めてお答えいただきたいと思います。

高原政府参考人 国連腐敗防止条約の締結につきましては、現在、条約の解釈等につきまして締結に向けた検討を行っているところでございます。

 現時点におきましては、締結の具体的な時期を特定することは困難な状況でございます。

村越委員 ちょっと関連してお伺いしたいんですが、私も何分、きのうの夜、この国連腐敗防止条約に関する資料をいただいて、ちゃんと読み込んでいないものですからよくわからないんですが、国連腐敗防止条約と刑法の贈賄罪の改正ないしは不正競争防止法の改正案との絡みに関してちょっとお伺いしたいんです。

 いわゆる条約の国内法適用云々という議論があると思うんですが、腐敗防止条約と関連の国内の法律との絡みで何か問題が生じ得る局面があり得るんでしょうか。そういった問題点が現時点で浮き彫りになっているのであれば、お答えいただきたいと思います。

高原政府参考人 まず、国連腐敗防止条約と外国公務員贈賄防止条約との関係ということから御説明させていただきますと、国連腐敗防止条約は、外国公務員に限らず、公務員の贈収賄等の腐敗の防止のための包括的な対策を定めております。その中で、外国公務員に対する贈賄の処罰も定められております。

 次に、国連腐敗防止条約を締結する場合の国内法上の手当ての問題でございますけれども、先ほど御説明申し上げましたとおり、国連腐敗防止条約におきましても外国公務員等に対する贈賄罪の処罰が規定されておりますので、ただいま御審議いただいております法の改正というものは、このような国連腐敗防止条約の要請にも合致するものでございます。

 他方、国連腐敗防止条約につきましては、それ以外にも種々検討すべき問題点がございまして、例えばこの条約の第五十七条でございますけれども、締約国に対して、自国内にある犯罪収益に係る財産につき、外国から没収、返還要請がなされ、それに基づいて当該外国における没収判決に基づき当該財産を没収した場合は、これを当該外国に返還することを義務づけているものでございます。この規定を我が国において実施するに当たって、国内法整備をどのようにしていくか、また、それに先立って、個々の用語を含めまして条約をどのように解釈していくか、そういった問題もございます。

 先ほども御説明申し上げましたとおり、国連腐敗防止条約自体は非常に広範な規定を含んでおりますので、昨年署名されたばかりの条約でございますので、現在鋭意検討しているところでございます。

村越委員 これも同様の議論になりますが、この条約も、我が国一国が頑張って批准をしたところで意味がないわけでありますから、各国に対して、外務省として、今後どのようにこの批准、そしてこの条約の理念が達成されることに向けてどのような具体的な働きかけをしていかれるのか、プランがあればお答えいただきたいと思います。

高原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御説明申し上げましたとおり、国連腐敗防止条約につきましては、現在我が国は、この条約の我が国自身による締結に向けた検討を行っているところでございますので、その作業がまずは優先されるべきかと考えております。

 関連いたしまして、先ほどございました外国公務員贈賄防止条約でございますけれども、趣旨として重なるところがございます。

 外国公務員贈賄防止条約につきましては、例えば、OECDとアジア開発銀行が共催で、例年、これをアジア太平洋の国に対して周知させる、啓発するというための対策会議を開催しております。先生御指摘のとおり、我が国としてもしかるべき貢献をすべきであるという観点から、平成十三年にはこの会議を我が国に招致いたしまして、また開催経費を我が国が拠出いたしまして、アジア太平洋二十カ国強の参加を得ましてこのような会合を開催している、そういうような取り組みを行っております。

村越委員 ありがとうございます。

 次に、WTOに関して若干お伺いをしたいと思います。

 今の一連のお話は、国連の枠組みの中でどのように解決ができるかという議論もあったわけですが、WTOという枠組みの中で外国公務員に対する贈賄の処罰という不正競争防止策について議論がされ得るのでしょうか。今、FTAに関しては盛んに議論がなされているように思うんですが、余りWTOの話を聞かないものですから、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

中川国務大臣 WTOは、もちろんジュネーブで各分野いろいろと交渉をしております。余り大きなことがニュースとして報道されていないということでございますけれども、ずっとやっているわけでございます。いろんな分野についてやっているという状況でございます。

村越委員 それで、競争政策や政府調達透明性といったこの法案の趣旨に深くかかわるテーマが、いわゆるシンガポール・イシュー、これは四つあるらしいんですけれども、シンガポール・イシューと呼ばれているものの中に入っているわけですけれども、今後、このシンガポール・イシューがWTOの中でどのように扱われていくのか、それが発展していく可能性はあるのでしょうか。そういう見通しに関して御所見があれば、お伺いしたいと思います。

中川国務大臣 まず、今行われているのは、いわゆるドーハ開発アジェンダと言われるもの、二〇〇一年の十一月ですかからスタートしたわけでございますけれども、いろんな分野があるわけでありますが、今、村越委員御指摘のいわゆるシンガポール・イシュー、政府調達、投資、競争、貿易円滑化、この四分野、実はこれは途中から議題に入ってきた分野でございますけれども、今これが非常にある意味では難しい状況というか、大きな議論の一つになってきてしまいました。

 私も、ずっとこれをやっていたものですから多少の知識があるわけでありますけれども、極端に言うと、途上国対先進国のある意味では対立の象徴みたいになってしまって、去年の九月のカンクンでの閣僚会合、これで今行われているラウンドを大いに前進させようと思っていたわけでありますけれども、ほかにもいっぱい問題があったと思いますけれども、直接的には、このシンガポール・イシューの議論が決裂の直接的な引き金になるぐらいに実は今大きな問題、しかもそれは、途上国対先進国という構図の中で大きな問題になっているというふうに認識をしております。

村越委員 私も、非常に浅はかな勉強で恐縮なんですけれども、ほかの問題に関してはチェアパーソンズ、これは議長というのか理事というのかわかりませんが、そういうのが決まっているのにもかかわらず、この競争政策と政府調達透明性に関しては議長が決定されなかったと承っているんですが、この件に関してどのようにお考えなのか。やはり、WTOはこの二つの問題に関して消極的であると見るべきなのかどうか、そしてそういった問題に関して我が国としてどういった対応を今後されていくのか、方針に関して若干お伺いできればと思います。

田中(伸)政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、大臣も御答弁されましたけれども、このシンガポール・イシュー、なかなか難しい問題がございます。ことしの二月十一日にジュネーブの一般理事会、WTOの会合で、各交渉グループについての議長が決まったわけでございますが、御指摘のとおり、シンガポール・イシューにつきましては議長が決まりませんでした。しかしながら、当面は、この一般理事会の議長また事務局の次長、これらの議事のもとにシンガポール・イシューは議論を続けられるということでございます。

 それから、先生御指摘のように、WTOは非常に消極的なのかということでございますけれども、大臣の御答弁にもございましたように、途上国と先進国がまさにこれをめぐって対決をしているというイシューでございます。かつ、百四十八カ国という大変なメンバーの数でございます。こういった国の間でコンセンサスをとることは大変難しい中で、私ども、このシンガポール・イシューは、新しいルールをWTOにつくる、グローバリゼーションにこたえていくにはどうしても必要だということで、日本は最も積極的にこれを推進してきたところでございまして、これからも、四つのイシューございますけれども、コンセンサスがとれていったところについてはできるだけ早く交渉化を進めるということで、柔軟に対応をしていきたい、このように考えております。

村越委員 ありがとうございます。

 次に移ります。若干、この改正案の適用範囲に関して何点か、確認の意味でお伺いをしたいと思います。

 この法案で「刑法第三条の例に従う。」というふうにあるわけですけれども、これはすなわち、日本国民の国外犯処罰ということでよろしいのでしょうか。また、ここで言う「日本国民」とは、日本国籍を有する人ということで理解してよろしいんでしょうか。

桑田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から御指摘いただきましたように、日本国籍を有する日本人ということでございます。

村越委員 そうだとしますと、これも確認ですけれども、外国籍の者については、それが日本の法人に所属する者であったとしても、国外犯については処罰しないということになるんでしょうか、お答えください。

桑田政府参考人 お答え申し上げます。

 贈賄を犯した外国籍の外国人の方が日本の国内の本社と共謀や準備行為というような共謀があった場合には、共謀共同正犯として、本社の職員に加えて外国人が処罰されることはありますけれども、それ以外の場合には、日本国内との間に共謀とか一切しない場合には処罰されることはないというふうに考えております。

村越委員 今の後段部分ですけれども、また確認したいんです。つまり、外国籍の日本法人社員が勝手にやった場合、それは処罰されないんだという趣旨なのでしょうか。

桑田政府参考人 はい。先生からの御指摘のとおりでございまして、日本の本社と共謀とかということがなくて、独自に海外におきまして外国の方がやった場合には適用の対象になりません。

村越委員 先ほどお答えいただいたとおり、この法案の目的というか保護法益というものは公正な競争の担保というところにあるわけですけれども、この保護法益の観点から見たとしても、外国人の日本法人社員、現地社員がいわば勝手に独自の判断で国外において行った贈賄行為は、それが日本の法人に不正に利益を誘導する目的で行われたものであったとしても、我が国の法において処罰すべきではないというふうに解してよろしいんでしょうか。

桑田政府参考人 お答え申し上げます。

 外国公務員贈賄におきましては、外国人の方が海外におきまして独自に単独でなさった場合にはこれは現地国の刑法のもとで処罰をされますし、また、その贈賄を行いました外国人の方がもともと国籍を有されている国の外国公務員贈賄防止法等におきます属人主義をとられておりましたら、それの適用対象になるということになろうかと思います。

村越委員 ちょっと法学的な観点を離れて、あくまで政治的な意味で確認をさせていただいているんです。

 それでは、不正競争防止法の第十四条一項において違反行為の行為者に対する罰則が規定されていて、同法第十五条において違反行為の行為者が所属する法人等の罰則について規定がなされているわけですけれども、これによりますと、日本国民が国外において外国公務員に対して贈賄を行った場合、その者が所属する法人は贈賄行為について全く承知していなかったとしても罰せられるという解釈でよろしいんでしょうか。

桑田政府参考人 海外にある日本の子会社に属する日本人の方が贈賄を行いまして、それに対しまして法人への処罰を科すかどうかということにつきましては、これは不正競争法固有の問題だけではなくて、刑事法制全体で法人重課をとっております問題でございます。

 法務省とも十分調整を行ってまいりたいと思いますけれども、あくまでも、不正競争防止法の要件に該当するか否かということは、贈賄者が通常行っている業務への本社の関与の度合いといいますか、それから贈賄を行った日本人に対する本社の選任、監督の状況といった点を個別に判断されるものでありまして、一概に判断できるものではないというふうに承知しております。

村越委員 同様の条件で外国人が国外において外国公務員に対して贈賄を行った場合に、その行為者が本法案で罰せられないとともに、その者が所属する法人も罰せられないという解釈でよろしいんでしょうか。

桑田政府参考人 お答え申し上げます。

 法律におきましては、外国人が日本国外で外国公務員贈賄を行ったとしましても日本法では処罰をされない以上、外国人が所属をしております法人につき処罰をされたり監督責任が法的に問われたりするということはございません。

村越委員 これはあくまで私見なんですが、そうだとすると、本法案の目的である公正な競争が同じ度合いで害され、また、従業員を監督する責任のある法人が同じ度合いで監督責任を行ったにもかかわらず、従業員が日本国民か外国人かの違いによって法人に対する処罰が百八十度異なることに純粋に違和感を感じるんですけれども、そうだとしたら、この法案によって本当に公正な競争秩序が担保できるのかどうか、お答えいただきたいと思います。

桑田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来御答弁させていただいておりますけれども、法人重課につきましては、これは刑事法制全般にかかわります問題でございますから、法務省と十分調整をいたしまして行ってまいりました。

 その点にかんがみましても、一般論的に申し上げますと、贈賄行為を行った当該日本人が形式的に海外子会社に所属することのみをもって日本の本社が全く処罰されないということにはなりませんけれども、あくまで自然人をベースにして、さらに、法人重課につきましては、その中での監督責任等につきまして処罰されるというふうに承知しております。

村越委員 今ちょっとお話ありましたが、法人のコンプライアンス強化に関して、もう余り時間がないんでできるかわかりませんが、後で伺うつもりでいたんですけれども、法人は、本法改正の趣旨と事実を十分に理解して、その従業員に対して、違反行為について十分な教育をしていく義務が出てくるんだと思いますが、極論すれば、日本人従業員に対しては重々徹底的に教育をする必要があるんだろうけれども、外国人従業員に関しては、ともすると余り教育をしなくてもいいということになりかねないんじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。

杉山政府参考人 お答え申し上げます。

 商取引の公正性を確保するというのは、今先生おっしゃいますように、これは従業員が外国人であるかあるいは日本人であるか、それを問わずにそういった面での要請はあると思います。

 問題は、それを日本の刑事法制という法律的な枠組みの中でどこまでそれが対応するのが刑事的な法制として適当なのかという問題だと思います。したがいまして、例えば経営上の責任とかあるいは道義上の問題というのは免れることはないと思います。

 したがいまして、そういう意味では、社内のいろいろなコンプライアンス教育に当たりまして、それは外国人であろうが日本人であろうが、それはそういった商取引の公正性を確保するという重要な観点にかんがみて、社内でのそういった教育、研修というのは外国人であろうと日本人であろうと行われるというのが大事なことだと思っております。

村越委員 よくわかりました。ありがとうございます。

 別の面から、本法案の解釈に関してもう一点お伺いしたいんですが、いわゆるファシリテーションペイメンツ、手続の円滑化のみを目的とした少額の支払いに関しては、本法案の引き金となっております外国公務員贈賄防止条約においては認められているというふうに御案内いただいているんですが、このファシリテーションペイメンツについて、我が国の本法案の中でどのように解釈をされるのか。具体的に、どの程度の金額がファシリテーションペイメンツとして許容されて、どこからが不正な利益の供与として可罰性があるのか、その点、お答えいただきたいと思います。

桑田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から御指摘ありましたファシリテーションペイメントでございますけれども、途上国におきましては、ビザの取得とか公共サービスを受ける際に、それを円滑化する、あくまでも、不正な利益を受けるということでなくて円滑化するという観点で公務員が少額の支払いを求めるという実情があると承知しております。そうした観点から、外国公務員贈賄防止条約におきましても、手続を円滑化するための少額の支払いについては犯罪とはされておりません。このため、条約の趣旨にかんがみまして、このような少額の円滑化の支払いにつきましては不正競争防止法における処罰の対象とはみなされておりません。

 ただ、このような支払いの取り扱いにおきましては、各国におきます現状等々いろいろ情報を集めながら、本法案成立後直ちに策定、公表予定の外国公務員贈賄防止指針の中で可能な限りいろいろな情報を提供していきたいというふうに思っております。

村越委員 ちょっと最後にお伺いしたいんですが、企業のコンプライアンスに関して、これが今後政府が取り組んでいかれることに関して非常に重要なことだと考えているんですけれども、先ほど申し上げたように、本法が本来の趣旨に沿って機能していくためには、監督責任のある法人に対して罰則を十分に規定していくとともに、法人のコンプライアンスを強化すべく指導していく必要があるわけですが、これに関して政府はどのように取り組んでいかれるのか。

 また、本法制定後、法人、特に中小企業や、場合によっては個人に対して本法の周知、普及徹底に政府は先ほど申し上げているとおり努力をすべきだと思いますが、これに関して具体的な方策があれば、特に中小企業に対して普及の方策があればお答えいただきたいと思います。

菅大臣政務官 これを普及させて予防的な対策を講じることは極めて大事なことであると思っておりますので、この法律が成立をした後、速やかに、法律の内容や企業のコンプライアンスのあり方などを盛り込んだ外国公務員贈賄防止指針を策定する予定でありまして、その上でさらに、日本経済団体連合会、日本商工会議所、さらには日本貿易会などの団体において説明会を行う、そしてまた、外務省の協力を得て海外の事業者、従業員に対しても十分な周知徹底が行われるように努めていきたいと思っています。

村越委員 繰り返しになりますけれども、この改正案の趣旨である公正で透明な国際商取引市場を担保するためには、我が国のみならず、未加盟の国だったり法律を守る意識が希薄な国に対しても問いかけをしていって、各国が足並みをそろえてルールを守ることが非常に重要だと考えるわけです。

 政府には……

根本委員長 村越君、申し合わせの時間を経過しておりますので、御協力願います。

村越委員 はい、もう終わります。

 そのために、各国に対する努力を十分してもらうことはもとより、我が国が各国に対してお手本となるように率先して取り組んでもらうことを強くお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

根本委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時三十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時九分開議

根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 先ほど本会議が行われたわけでありますが、その場でも、各党の議員の方々がイラクの憂慮すべき事態について言及をされました。私も国会議員の一人として、政府はもちろんでありますが、それぞれの議員も、このたびの事態に対して覚悟が求められているのかなと感じておるところであります。そして、緊張感を持って事に当たらなければならないと感じておるところであります。

 本委員会についても、案件は全く異なるわけでありますが、いずれにしろ、そういった時間を過ごしているという緊張感を持って質問をさせていただきたいと思っております。

 私は、商品取引所法の改正案について、この点について絞って話を伺っていきたいと思っております。

 イラクで有事が起きているわけでありますが、まさに原油の価格がこのところずっと、トレンドで見ると上がっているということで、そういう意味では、中東情勢が大変不安定となっているという今の状況を考えてみても、商品市場、とりわけ先物市場というものの機能というのは極めてこれからも大切になってくるという認識を私は持っております。

 そういう中で、今回の改正案、大改正ということでありますが、私自身、先物市場の問題点、指摘をされてきていますが、先物市場そのものについては、商品先物というものの必要性、日本がきちっとした市場をつくらなければいけないということの意義は十二分に感じておりますし、すべきであると思っておるところであります。

 しかし、きょう午前中、同僚議員から、現在の日本の先物市場の問題点、そして前近代性について数々指摘がされてまいりました。まさに、客殺しという業界用語でありますが、ひどい言葉であります。十数年前に証券業界で損失補てんが問題になったころ、一般の投資家の方々のことをごみという形で言った。大変問題になったというのを私記憶しているわけでありますけれども、証券界ではもうさすがに、あれから数々の改革が行われて、そういった言葉は死語になった。ところが、今、商品先物市場ではお客様を殺しているという言葉が使われているということ自体、全くもってこれは信じられない事態だと感じておるわけです。

 先物市場はまさにリスクを回避する手段として考えられた知恵なわけですから、この機能を発揮するためにどうしたらよいのか。現在は、個人投資家にとってまさに危険の総合デパートのような大変リスクの高いものになってしまった。

 本来、商品先物というのは、大臣も午前中何度かおっしゃいましたけれども、やはりある程度認識のある方、これは私流に言えば、やはりプロの世界のマーケットだと思っております。ところが、日本は、まさにその商品によって、八割以上の方が個人委託者であって、十一万人のお客さんのうち、一、二年で、一説には七割以上の方々が退出される、入れかわるという、この特異性というのはやはり世界にこれまた類を見ないことだと思うわけです。

 まず、大臣、この個人が中心の市場構造というのについてどうお考えなのか、そして、今回の法改正の趣旨というのは、やはり個人ではなくて、個人、法人という言い方が的確かどうかは別にして、プロ中心の世界をつくるということなのかどうか、この御所見をまずお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 近藤委員は長く、金融とかマーケットについて大変深い造詣を持たれていたわけでございまして、そういう前提で、マーケットのメリットと恐ろしさ、あるいはまた、そこに参加をする人のメリットとデメリットというか恐ろしさを多分十分御存じの上での御質問だろうと思います。

 午前中もちょっと申し上げましたが、私の地元は農産物の生産地域でございまして、したがって、農産物の商品取引について非常にかかわっている、生産者としてかかわっている人もいますし、またそこに投資として参加している人も結構いるんですけれども、今御質問の、八割が個人で七割が入れかわる、これはやはりマーケットとしてはかなり激しいマーケットだなというふうに思います。

 したがいまして、プロということは、要するにリスクを伴うんだという認識がまず必要なんだろうと思うわけでありまして、そこに、個人が必ずしも全員が素人とは言いませんけれども、素人の人たちが参加をするときには、リスクが伴いますよという認識が当然なければいけないんだろうと思います。

 しかし一方、マーケットそのものが、信頼性といいましょうか、先ほど十年前の株式市場のいろいろな証券関係のことを御指摘になりましたけれども、マーケットやそこに参加する人たちに対する信頼性というものがなければマーケットというのは成り立たないことは、もう近藤委員の方がよく御存じのことだろうと思います。

 そういう意味で、健全なマーケットを育成し、そして特に、投資として参加する人は、いい目にも会うかもしれないし、損失もしますよと。しかも、これは預託金制度、レバレッジが働くマーケットでございますから、プラスも大きいけれどもマイナスも大きいよというところを十分認識をして、そして、プロだけとは言いませんけれども、アマチュアの方も十分そういうリスク、あるいはまたいろいろな、相手はプロですから、プロの中に飛び込んでいくんだよという認識、そしてその前提としてのマーケットの信頼性というものを十分確保しなければならない。

 そういう意味で、過去においては、委員御指摘のように、いずれも不十分であったと私自身も思っております。したがいまして、委員御指摘のような大規模な改正をいたしまして御提案をし、御審議をいただいているということでございます。

近藤(洋)委員 大臣も十分商品先物市場について御理解されていると思っております。

 大臣御自身は商品先物をやられたかどうか、御経験あるかどうかですが、私も実はございませんで、何度か、サラリーマン時代に勧誘の電話を受けたことがございました。しばらく浪人をしておりましたから、また電話もなかったのですが、きのう、質問するということで、各社に電話をしてみました、自分の方で。どういう勧誘をされるのかなということでやってみました。

 まさに、電話したところ、自営業者、三十八歳ということでやったわけでありますけれども、石油の商品をまず勧められました、やはりこういう中東の情勢だからと。必ずもうかりますよ、間違いなくもうかりますよと、怒濤のごとくの勧誘のお話で、リスクはどうですかと聞くと、いや、リスクは、預かり金が半分になると、追い証、要するに追加の出資といいますか、追加の取引をすればすぐそこはカバーできますから大丈夫ですよというお話で、実はその中には上場企業もございます。六社ほどかけましたが、ほとんど、リスクに対して明確な説明をされたのは一社しかなかったということをあえて指摘をしたいと思っておるわけであります。

 勧誘の問題につきましては、午前中、同僚議員がきちっとした話をたださせていただきました。私は、それはそれで同時に大切なポイントだと思っているわけですが、別の問題を伺っていきたいと思っているわけです。

 それは、まさにプロの世界をする、認識を持った方々が参加するという観点に立ちますと、一般の個人が簡単に取引できない水準に初期の水準を引き上げる。一枚当たり、何枚、十万円とか六万円とか、商品によってそれぞれですが、この水準を引き上げるということが、そして一枚当たり引き上げることが本来は、まさにこれだけ大きな商品なんだと、百万円投じても一千万円の取引になるわけですけれども、認識するまず一歩なんだと思うわけですけれども、ところが、農林水産省は昨年五月に、これはよくわからぬのですが、ほとんどすべての商品について委託証拠金を引き下げられました、昨年五月。これは大臣告示で決められるということで、伺ったところ、ほとんどすべての商品について委託証拠金の水準を引き下げられた。

 これは、なぜ、どういった意図があって引き下げられたのか、まず、この意図についてお伺いしたいと思っております。御答弁を。

田中(孝)政府参考人 お答えいたします。

 昨年、御指摘の時期に、ほとんどの商品について約四分の一ほど委託証拠金を引き下げてございます。委託証拠金につきましては、大まかに言って次のような考え方でその証拠金の水準を決定しております。

 これは、一つは値幅。価格の変動がどれぐらいであるかということを、過去の数値から値幅制限額というのを決めます。

 もう一つは、いわゆる呼称と言われている単位と実際の取引一枚という単位が違いますので、その倍率を掛けるという操作をしております。

 もう一つ、今回の引き下げに当たりましたのは、取引等々、値洗いがあった日から決済までの期日というものに、まずそこのところでリスクを見込んで、今までは、今申し上げました値幅の、変動幅の何倍かということで、二倍の値を掛けたものを大臣告示額、これを委託金額の最低値にしておったのでございますが、昨年の六月から、その決済期日を、取引日から二日目の正午までというのを一日目の、翌日の正午までということに短縮いたしました。

 この最後の掛ける値のところというのは、決済が延びるということでの間のリスクをカバーするということでありますので、一方、そうした期日はできるだけ短い方がリスクが少ないということで短くすることが求められてきたわけでございますが、昨年六月からこれが実施されるということになりましたので、これにあわせて、先ほどの算式に基づきましてその証拠金の水準を引き下げたものでございます。

近藤(洋)委員 余りよくわからないですね。

 二日を一日に下げたから、まあ引き下げたと。そもそも二日間もあること自体おかしいわけで、それが短くなることが下げの理由にはまずならないというのが一点。値幅という御指摘でしたが、値幅というよりも、商品先物は大きく値が動く危険な商品だという観点から、引き下げるのはどうかということを伺ったわけであります。まあ、いいでしょう。これは法案がまだ、この法案が通るかどうかわかりませんけれども、この法案の前ですから、やられたとしても。

 問題は、大臣、この法案が通ったときに、まさに先ほど大臣がおっしゃったような趣旨の、プロの世界をきちっとつくるという新しい制度ができたときに、法案が通ってできたとすれば、委託証拠金の額をやはり引き上げる運用をすべきではないかということなんです。もう釈迦に説法ですから、言いません。

 今の単位が六万円とか十万円とかという単位であれば、おじいちゃん、おばあちゃんは簡単に入るわけであります、やはり。これが五百万円とか一千万円であれば、そう簡単に入れないということであります。実際の被害は、国民生活センターの被害届等の資料によると、損をしている方の平均値は一人当たり七百万円だそうですよ。被害額七百万円。車やマンションなんかと同じだけの被害を受けているんですね。それが、七十万とかそういうお金でそれだけの被害を受けているという商品なんですから、当然、委託証拠金のレベルを引き上げる、これは大臣告示でできる、新法では大臣の認可ということだそうでありますけれども、この法の改正の趣旨に従って引き上げる必要があると思いますけれども、いかがですか。

江田大臣政務官 今、先生御指摘のところでございますが、取引証拠金の金額を上げて、そして個人投資家を参加できないようにそうやって保護すべきではないかという御質問であるかと思いますが、まず、この証拠金額の大幅な引き上げは取引コストを増大させることになります。本当に価格変動のリスクヘッジニーズを有している当業者とか、そして主体的な投資判断を行ういわばプロの投資家からすれば、この取引に参加する機会を奪ってしまうというような可能性がございます。したがって、慎重に検討する必要があると考えておるところでございます。

 他方、先生が御指摘のこの委託者保護、これは非常に重要なことと我々も思っておりまして、この先物取引のトラブルの中には、一般個人が望まない形で、先ほども申されているように、いろいろな、リスクの大きい、こういう問題に引き込まれていく、そして大きな損失をこうむるといった事例が多く見られます。したがって、入り口段階での勧誘規制を強化するということの方が特に重要ではないか、そのように考えております。

 このような観点から、今回の法律でも、まずは適合性原則をしっかりと強化していくべきである、すなわち、顧客の知識、経験、財産の状況に照らしまして不適当と認められるような勧誘を行ってはならない、これを法制化したわけでございます。したがって、主婦の方、高齢者の方というのはこれによって保護されることになります。またもう一つは、説明義務、説明をしっかりとしなければならないという、これを法定化させていただいたところでございます。さらには、再勧誘を禁止する、これも法定化させていただいております。

 こういう三つの大きな入り口段階での規制を設けることによって、抜本的にこのような事例が少なくなるようにしていこうとしているところでございます。

 今後、その運用ガイドラインというものも策定、公表しまして、それに基づいて厳正な執行を行っていく、そういう覚悟でございます。

近藤(洋)委員 政務官、政務官は奥さんがいるかどうか知りませんが、奥さんがいらっしゃると思いますが、もし奥様が先物をやったらお勧めになりますかね。僕は反対ですね。

 国民生活センターに昨日行ってまいりました。消費者相談の責任者の方にお話を伺ってまいりました。その方は「論座」という雑誌にも書かれていますから、お調べいただければいいんですが、商品先物市場、苦情の現場に立っている方ですよ。政府の関係機関の方が、商品先物市場、その責任者の部長さんに一般の方々がやるべき商品ですかと純粋に聞いたら、決してやるべき商品ではないと思います、私はと。中立の相談の現場にいる方が今の状況のことを言っている。このことを頭に入れていただきたい。入り口の議論と言いましたけれども、これも入り口の議論ですよ。入り口の議論です。

 私は一般の投資家を排除しろと言っているのではありません。意欲のある一般投資家ならどんどんやられたらいい。委託証拠金が一千万円積める、お医者さん、弁護士、それぞれの方がいらっしゃるわけです。そういう意欲があって、本当にそれだけの覚悟を持った方がやるならば、堂々とやったらいいと思うんです。そういう環境をつくるべきだという視点を申し上げているので、お答えに残念ながらなっていないと思っております。

 そこで、大臣にお伺いしたいんです。

 そもそも、今回の法改正の、どうも見え隠れするというか感じるのは、この法改正、経済産業省はどこを向いているんだろうということなんですね。(発言する者あり)そのとおりなんです。いい御指摘をありがとうございます。業者のためなのかということなんですよ。取引業者の方を育成する産業政策としてこの法改正を考えていらっしゃるのか、それとも、きちっとした市場をつくるということの、どこに軸足を置いているのか。産業政策が業者を育成する、九十七社ある企業さんを何とか昔の産業政策的に伸ばすという観点の法改正か、それとも、マーケットをつくる、市場をつくるという観点の、この目的だけ、簡単で結構です、どちらが目的かだけ端的にお答えくださいませ。

坂本副大臣 本法案は、委託者の保護を強化し、公正で信頼性の高い市場制度を整備することを目的としたものであります。あわせて、前述の委託者制度の強化とか市場の信頼性、利便性向上のための制度整備によって、当業者や機関投資家の積極的な市場参加への環境が整って、より健全な市場構造の実現に寄与するものであると思っております。

近藤(洋)委員 簡単にはお答えいただきましたが、基本的に、私の解釈は、市場をつくるということが目的であると解釈させていただきます。現在とはかじを切った。まさに証券取引、証取法のほとんどコピーのような法律ですね、今回の法律は。証取法のコピーですよ。ですから、証券市場のようなものを、コピーと言うと大変つくられた方に申しわけない、大変それをモデルにされた法律ですね。ですから、そういったものを目指すんだというふうに認識したい。

 そこで、大事なのは、プレーヤーというか、やはり取引業者、会社の質の問題なんですね。この質の問題についてぜひお伺いしたい。そして、それを担保するのが検査監督体制ということですから、そこに絞ってこれから話を伺っていきたいと思っておるんです。幾ら立派な設計図をつくって、立派な法案ができても、そこに住む住人が、これはもう極悪人、質が悪ければ、失礼いたしました、削除してください。質が悪ければ、壊れてしまうわけであります。

 そこで、ことしの一月に、大手の商品先物会社、東京ゼネラルが破綻いたしました。顧客から預かった資産のうち、百十億円のうち五十億円が不足していると伝えられておりますが、顧客の資産の弁済状況はどのようになっているのか、見通しについて、まず現状をお伺いしたいと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 本年一月の六日に私ども許可を取り消しました東京ゼネラルの資産の問題でございますが、私どもの帳簿では、委託者が約四千名いらっしゃいます。

 お尋ねの委託者資産の返還手続でございますけれども、東京ゼネラルが取引所に預託をしておりました受託業務保証金につきましては、本年二月に、主務大臣による配当手続に移行する旨の公告を行ったところでございます。現在、各委託者から債権の申し出、一応五月二十日を期限としておりますけれども、を受けまして、その後、各取引所が債権の確定を個々に行います。その上で主務大臣配当計画が提出をされ、これに基づき委託者に返還されることになります。

 あわせて、これと並行いたしまして、現行制度では、社団法人商品取引受託債務補償基金協会というのが弁済保証をしておりまして、この補償基金によるところの、まず同社が分離保管をしている財産、それから同基金協会の基金の弁済限度額、三十億円でございますけれども、この合計を限度として支払いが行われることになります。

 この手続によりまして、委託者資産の相当部分は返還される見込みであると思っておりますが、具体的に申し上げますと、現在、帳簿上の委託者債権額が百九億円でございます。支払い財源といたしましては、各取引所に預託をされておりました受託業務保証金二十六億円、補償基金協会の弁済限度額約三十億円、そのほか、同社の分離保管財産等が約三十億円見込まれております。

 今後の状況でございますけれども、先ほど申し上げましたように、五月の二十日までに委託者の方に債権の申し出を受けまして、その確定作業がかなりの時間かかると思いますけれども、同時に、支払い財源につきましては、最近の株価の上昇によりまして、受託業務保証金のうち株券で預託されている部分については、今後増加する可能性もございます。

 また、最終的には、これは民事上の債権債務の処理を行った上で債権者への支払いが確定いたしますので、現段階では、委託者への返還額について正確に予測をするというのは難しい状況にございます。

近藤(洋)委員 恐らくこれは損をするんですね。株価値上がりするかもしれないという期待値ですから、これは株価で期待してもらっても困るわけでありまして、現時点では、穴があくということですね。受託債務補償基金の上限は三十億と決まっているわけですし、穴があいている。この策定作業は時間がかかると言いますが、早急にやるべきでありましょうし、かつ、少なくとも穴があくことは、非常な確率で高いと言わざるを得ないわけです。

 そこで、この破綻に至るまで、当局が一体どんな検査をしてきたのかということなんですね。この破綻劇には大変理解しがたいいろんな点があるんですけれども、最大の問題は、当局が許可を取り消しするまでの期間の長さです。(発言する者あり)そうなんです。

 経済産業省と農水省は、平成十四年四月に、二年前の四月に最初の検査に入りました。最初の検査に入っている。経緯を簡単に申しますと、帳簿上の虚偽記載で、その四月の時点で、わずか三日間の業務停止を受けています。ほかの部分でも十数日間と受けていますけれども、基本的には、基本業務はわずか三日間。先ほど、政府の方々は、我々は六カ月以上の業務停止権限を持っていますというふうに、殊大きく言いましたけれども、三日とか十七日とか、信じられないような短期間の業務停止しかしていないんですね。

 そして、さらに、翌年の一月、要するに昨年の一月に、一回目の小切手の不渡り手形をこの会社は出しています。本来ならその時点で検査に入ればいいものを、五月にやっと経産省、農水省の検査が入りました、五月。そして、検査の後、またこの検査期間も、異様に長い期間ですね。四カ月後の九月にやっと、顧客の資産を分離していないということで、十七日間の業務停止です。九月に十七日間の業務停止。そして、さらにその業務停止命令を延長し、やっと免許取り消しはことしの一月六日です。これだけの時間がかかっている。

 何でこんなに時間がかかったんですか。大臣、副大臣でも結構です、当局、お答えください。

青木政府参考人 まず、過去の立入検査でございますが、私ども経済産業省、十三年の九月から十月にかけて、東京ゼネラルに対して立入検査を行いました。

 御案内のとおり、立入検査の一つの眼目は分離保管状況のチェックでございますけれども、通常行いますのは、銀行残高証明、この提出を求めます。この証拠書類で確認されます銀行預託の金額と、それから商品取引員に備えつけられております法定帳簿、これに基づいて確認されます銀行預託額及び委託者資産額を照合させることによって、分離保管義務の有無を確認いたしております。

 東京ゼネラルでございますけれども、十三年の秋に私どもが立入検査をしましたときには、当時、立入検査時には、実は、分離保管状況を隠ぺいするために改ざんした帳簿を提出し、また、その裏づけとなります銀行通帳あるいは残高証明、そうしたものも偽造をするなど、大変巧妙な隠ぺい工作を行っていたところでございます。このため、十三年の秋の立入検査におきましては、遺憾ですけれども、分離保管義務違反を発見することができなかったというのが十三年秋の状況でございます。

近藤(洋)委員 虚偽報告を見抜けないというのは、これは理由にならないんです。検査というのは、それを見抜くのが検査です。顧客の資産がどのように管理されているか、これは銀行に聞けばわかる話ですよ。金融当局を通じてでも結構ですよ、銀行に確かめればすぐわかることであります。

 さらに、この会社は、もっと言うと、九九年三月期から、この会社の年次報告書をごまかしていたんですね、東京ゼネラルは。これも御存じだと思いますけれども。この東京ゼネラルは九九年三月期から年次報告書をごまかして記載していた、粉飾決算をしていた。このことは、業界団体の日本商品先物取引協会が指摘をしている。指摘をしていた。それで、二〇〇〇年八月の時点で、ようやく二千万円の課徴金か何かを徴収しているんですけれども、その前にも指摘をしているんですね。粉飾帳簿をつくっているというのを業界団体も指摘をし、そして、免許も取り消しをしていない。これは考えられません。

 なぜですか。なぜ取り消さなかったんですか。九九年から四年間も粉飾決算を知りながら、ないしは指摘を受けながら、この状況が続いていた。なぜだったんですか、明確にお答えください。

青木政府参考人 私の承知しておりますところでは、日商協に対します帳簿について疑念があったというのは事実でございますけれども、日商協に対する提出の帳簿の問題であるということで、当局としては直接立入検査をしなかった、こういう経緯にあるというふうに聞いております。

近藤(洋)委員 日商協の専務も幹部も経済産業省から来られているんですよ。

 先ほど、業界中立団体が自主規制するとか、自主規制団体がやるからという話をこの法改正でも言っているわけです。その日商協に対しての話だから、私たちは知り得るような立場になかったというのは、これはどう見ても納得できませんね。大臣、どう思いますか。この点、やはりおかしいと思いませんか。きちっとお答えください。あと、わからなかったというのは理由にならないですね、日商協の報告を受けていたのに。

 もっと言いましょう。いいですか。東京ゼネラルには、返済遅延、先ほどから言葉が出ていますね、要するに委託金を払わぬということです。これは銀行によったら、要するに預けた預金が戻らないということですよね、銀行でいけば。この返済遅延の苦情が寄せられていた。

 先ほどから、私、審議を聞いていて不思議だなと思ったのは、返済遅延が何か当たり前のことのように言われているんですけれども、そういう苦情もありますなんて。この苦情は、まさに、これだけで本来ならば業務改善命令の対象になるんです、苦情が寄せられていたことによって。苦情も寄せられていた、粉飾決算もあったのを何となく感じていた。何で業務停止命令しなかったんですか、お答えください。大臣でも結構です。副大臣でも結構です。政務官でもいいですよ。お答えください。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十四年の八月に日商協が処分をいたしましたけれども、十四年の三月、日商協が、東ゼネの監査法人から、みずから監査したものと、それから東ゼネがインターネットで公表しているものと違うのではないか、そういうような連絡を受けたやに聞いております。

 四月に、私どもは、同協会からその報告を受け、日商協に対して、事実関係を調査の上、自主規制規則に従って必要な措置をとるように指示をしたということでございます。

 それを受けまして日商協の方で調査を行い、同年八月に過怠金二千万円の制裁処分を行った、そういうふうに報告を受けております。

近藤(洋)委員 これでは、先ほどから申し上げているとおり、決算報告というのは、それは投資家の方々は非常にこれを見るんですよ。それが、記載が虚偽記載。それも、一億二億じゃないですね、四十数億円、その資産の部分が間違っているという指摘を受けている。大変大きな額を間違っています。粉飾決算をしていたんですね。

 この事実を知りながら、なぜ、これはやはり行政として、大臣、おわかりいただけると思います。これは金融の常識として、虚偽報告があり、そして返済遅延もあり、検査もあり、これで、そもそもその初動の、いいですか、十七日しか業務停止命令をしていない。全く納得いきませんね。

 どうでしょうか。おかしいと、この事実、済みません、こういうことを言いますよということはちゃんときちっと申し上げているから、早目に答えてください。きっちり責任ある答えをお願いいたします。

青木政府参考人 日商協からの報告及び指示については以上のとおりでございます。

 同時に、私どもは十三年の秋に立入検査を行っていたところでございますが、そこで、一任勘定、あるいは架空口座を使って自己取引をやっていた。それに伴います虚偽帳簿の作成の法令違反があったということもございまして、十四年の四月に行政処分を行うとともに、業務運営上の改善事項を指示いたしまして、五月に改善計画を求めたところでございます。

 その後、業務運営の改善努力を注視していたところでございます。(発言する者あり)

根本委員長 では、もう一度きちんと答弁してください。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 十四年、初めの三月の日商協につきましては、先ほど申し上げましたように、監査法人からの指摘があったという報告を受けましたので、私どもとしては主務官庁として、日商協に、事実関係を調査の上、自主規制に沿って必要な対応をとるよう指示したところでございます。

 その結果、日商協におきまして、同年八月に、同社に対して過怠金の二千万の制裁処分を行う旨の報告を受けたところでございます。その中身につきましては、実は、短期貸し付けを長期貸し付けに、長期貸し付けを短期貸し付けに振りかえる、そういう意味の虚偽の報告があったということでございます。

 これを私どもの監督上の事項に直してみますと、ほとんど、流動性比率についてほぼ行政処分をするに足りる基準ではなかったものですから、その点については特に是正を求めなかったところでございます。

 他方、先ほど申し上げましたが、十三年秋に立入検査をいたしましたけれども、それに関しましては、虚偽帳簿の作成の違反等々、法令違反がございましたので、ほぼ日商協と時期を合わせまして、十四年四月に行政処分を行った、こういう経緯にございます。

近藤(洋)委員 その処分が三日間の業務停止ということだったわけですね。これだけのことをやって三日間の業務停止、余りではないでしょうか。そして、こういう形で不渡りを出した後にも検査も来なかったという、数々の不作為が行われていますね。

 ですから、先ほど大臣に伺ったんです。市場なんですか、業者なんですかということは、だからお伺いしたんです。これは、今回の法案は非常に執行体制に問題ありという指摘をせざるを得ませんね、この状況では。

 東京ゼネラルは業界最大手です。業界最大手の破綻を先延ばし先延ばしして、その不安を恐れたのか。いずれにしろ、後ろには、一般の投資家がいるんですから、顧客がいるんですから。そのことに対しての責任をどうとるのかということなわけであります。

 もっとひどい問題があります。同じような問題が、きょう、農林副大臣も来ていただいていますが、農林省所管の先物業者に対する支援でも同じようなことが行われているわけであります。

 お手元に資料を配らさせていただいております。農林水産省総合食料局が出された資料でありますが、その資料に沿いながら、アイコムという会社、平成十四年十二月に、二年前の十二月に破綻した中堅の商品先物取引会社アイコムについてお伺いします。

 この会社は、東京穀物取引所の企業会員でありましたけれども、二十億円余りの負債を抱えて自己破産しております。この会社の経営難が伝えられたのは、かねてからずっと経営難は繰り返し伝えられていました。伝えられておりますけれども、いよいよ差し迫った年の平成十四年の九月、同業の企業七社が総額二億四千五百万円の資金を援助しております。委託金を払っています。この手引きをしたのが、この指導をしたのが、東京穀物取引所の幹部、事務局がこの支援にかかわってきたということであります。

 この会社も、まさにずっと同じような形で返還遅延の苦情が前から寄せられていました。にもかかわらず、行政指導で延命措置をして、結果として同じ年に破綻をいたしました。まあ、奉加帳方式というのは懐かしい言葉であります。もはや、これまた日本の企業の中ではなくなったと信じたい言葉でありますが、この奉加帳方式による延命、破綻のてんまつについて、農林水産省はどのように受けとめていらっしゃいますでしょうか。副大臣、お答えください。

金田副大臣 アイコムの問題でございますか、アイコムを支援する手法といたしまして、仲間内というべき先物取引会社が先物取引を委託するという方法は慣行的に行われてきたものでございますけれども、関係会社に、東穀の役員、東京穀物取引所の役員らが依頼を受けて支援要請した事実はありました。しかし、これに関して農林省が指導したというような事実はございません。

近藤(洋)委員 農林水産省が支援をしたという事実はないということでありますが、副大臣、ただし、この事態を招いたことについては、そうすると農林水産省は関係ないということでよろしいんですね。

金田副大臣 東京穀物商品取引所の役員が、アイコムに対する支援の要請を行った、取引所の一会員のために、その支援のために、不透明な、奉加帳方式というような、そういったものを主導したというふうにこの役員が思われかねない、そういった誤解を招きかねないもので、まことに慎重を欠いた対応であったというふうに考えております。

近藤(洋)委員 そこで、この件について、農林水産省がみずからを検証した資料が、農林水産省総合食料局「商品取引員アイコムの破綻に関する調査結果について」という、お手元に出させていただいた紙であります。

 事務方の総括ですけれども、この報告書、大変率直に書いていますね。こういった報告書を出すという姿勢は、この課長、どの担当課長か知りませんが、自責の念にかられたのかどうかは知りません、しかし、こういった報告書を出したという姿勢は大変すばらしいことだと思っています。

 ただ、この報告書を読みますと、ちょっと副大臣の御答弁に、私、やや問題があるのではないかと思うんですけれども、この報告書自体に、アイコムの問題について、こう総括しています。

 最後から二ページ目のIII、四枚目のIIIで「アイコムへの対応に関する問題点」という形で、この報告書はこう総括しているんですね。四行目ですね。「行政をはじめ関係者が同社を延命させようとした結果、破綻処理のコストの増加を招いたことは問題と言わざるを得ない。」「行政をはじめ関係者が」と。ですから、先ほど確認しましたが、関係ない、どうですかということは、誤解されたのかもしれませんので、もう一度お答えください。

金田副大臣 アイコムの問題につきましては、本来、行政が立入検査を行って、アイコムの資産だとか経営の実態を把握いたしまして、これに基づく適切な処理をするべきだった、そういうことをすれば、そういった同社の破綻処理のコストがもっと低く済んでおったのではないかというようなことは問題であったというふうに考えてはおります。

近藤(洋)委員 副大臣、この報告書では、延命をさせようとした意図があったと総括しているんですね。

 この事務局の総括を受けて、副大臣、もう先輩の政治家に対して大変失礼ですけれども、やはりここは政治の御判断で、政治家としての御見識をぜひお伺いしたいと思っているわけであります。ですから、副大臣、お忙しいところ来ていただきました。行政の、やはりこれは総括、事務局が、事務方が総括しているんです。

金田副大臣 問題だというふうに考えておりますので、今、それに対して対策を講じさせていただいているところでございます。

 こういった立入検査のルールの確立、透明性の強化、あるいは検査員の強化、あるいはこういった検査のための研修を今強化しておりますし、また、検査マニュアルなんかもなかったわけでございますので、そういった問題業者に対する検査マニュアル等々も今つくっておりまして、そういった透明性を持った対応をすべきだという考え方で、その確立のために、一生懸命、今現在努力しているところでございます。

近藤(洋)委員 まず、このアイコムの、副大臣もこの穀物取引所の役員の行動は、この報告書でも、問題であった、誤解を招く行動であったということをお認めになっていると思うんですけれども、だとすると、この商品先物取引所のこの役員に対しての処分はどのように行ったんでしょうか。また、行う御計画はあるんでしょうか。

金田副大臣 この東穀の役員はもう既に退任しておりますけれども、そういった、彼のやったことというのは不適切であった、まことに誤解を与えるような行動であったということではございますけれども、それが違法なものであったかどうかということについては若干疑念がございまして、処分はしておりません。

近藤(洋)委員 七取引所の理事長さんは、農林水産省、経済産業省のOBですね。このことを指摘させていただきたいと思います。本件については、また同僚議員が別の機会にこの審議についてただしていくということでございますので、この事実を指摘させていただきたいと思っておるわけであります。

 いいですか。極めて甘いと言わざるを得ないのは、この報告書は、さらに、農林水産省の対応についても、このように総括をしているんですね。(1)です。(1)の二行目を見てください。「アイコムに関して顧客からの苦情があったにもかかわらず、」まさに前から苦情があったにもかかわらず、「立入検査を行わなかったため、関係者の経営改善努力を見守るという対応に終始した。立入検査を行い資産・経営の実態を把握できなかったため、適切な処置を講ずることができなかった。」このことで監査の必要性を認めているんですね。やってなかったと。

 加えて伺います。いいですか、それに加えて、この報告書は、いいですか、三行目です。「業務管理の基本的な考え方」、括弧は省略します、「が確立していないこと、業務執行を担当する職員の資質等に問題の根源があると考えられる。」職員の資質に問題の根源があると考えられるとこの報告書は総括しているんです。

 副大臣は、検査マニュアルとかとおっしゃいました。これは、そもそも職員の資質に、体制に問題の根源ありとみずから書いているんです。これについてどうお考えですか。

金田副大臣 こういう私と私の取引の関係、取引所の関係でございますけれども、こういったところに立入検査をすることがどういった社会的な反響を呼ぶかということについて、取引に対する信用、商品取引に対する信頼が低下する、あるいは、その取引員の信用が……(発言する者あり)答えていますよ。取引員の信用が相当低下して、これからの債権者に対する動揺というものがどういうふうな影響、相当の強い影響があるだろうというようなことで、極めてそういった状況についての、何というかな、積極的な対応というのがなかなかできないという状況にあったことは事実だろうというふうに思います。

 こういったことについて、個々の検査員の判断に任すのではなくて、こういった場合にはちゃんと立入検査をするんだよというような客観的な透明性のあるマニュアルというものが必要だろうということで、今そのマニュアルづくりを一生懸命にやっているところでございます。

近藤(洋)委員 こういった報告書を勇気を持ってつくられた事務方は、僕は評価したいと思うんですよ、大臣。こういったまさに反省があって、そして新しいものをつくるということをしなければ、事は改善しませんからね。

 ただ、先ほど、大臣、あえて言います、その体制をつくるところとおっしゃいましたけれども、その体制についてお伺いしますけれども、農林水産省の体制、今の検査の人数、一名も増員されていませんね、来年四月から。この事件が行われてから、一名かな、きのう調べて、若干一名増員された。けれども、全体で二十数名のうちの一名ということでありますから、まあ何をかいわんやと。これだけの総括をしておきながら、新しい法律を通したいとおっしゃっている、新しい法律を通して市場をつくるとおっしゃっているのに、ほとんど増員もされていない。経済産業省に至っても、わずか数名の増員に限られている。

 これは、今度は中川大臣にお伺いします。いいですか。これは、こういう総括をされている、まさに経済産業省所轄、農林水産省所轄、それぞれで大変な問題、あえて申し上げます、事を大きくしたくありませんけれども、やはりこれは大問題だと思うんですね。こういった不透明な破綻処理が行われた、立入検査がしっかり行われていない、そして、みずから行政当局もその反省をしている、こういう状況で、苦情処理がこれだけ出ている中で、中川大臣、これでまさに新しい市場をつくるということができない、これではできないと思うんですね。

 ぜひ、大臣、この体制をどうされたらいいとお考えですか。

中川国務大臣 先ほどから、東京ゼネラルの話、近藤委員の話を伺っておりまして、また、率直に言って、事務当局の方の答弁も、多分、委員会の皆さん方には御納得いかないのではないかというふうに思います。

 商品先物取引所の信頼性を確立する、つまりマーケットの信頼性を確立するということが目的である。そのためには、さっき近藤委員がおっしゃったように、一人一人、一つ一つのプレイヤーがやはりきちっとしなければいけないわけでありますし、監督官庁である経済産業省あるいは農林水産省がきちっと監督をしていって、トータルとして初めてやはりマーケットの信頼性が確立されるんだろうと思っております。

 そういう意味で、私も今この農林水産省の報告書を読みましたけれども、私も、率直に言ってなかなかしっかり書いているなと、ただ、書いただけじゃだめなんだろうと思いますけれども。

 我が方の、東京ゼネラルに関しましては、改めて、御質問があれば、きちっとした事実関係をもう一度調べ直さなければいけないのかもしれません。そしてまた、我が省自身が、健全なマーケットを確立するための我々自身の役割というもの、責任というものも一段と大きくしなければいけないと思っております。

 なお、東京ゼネラルにつきましては、現在、司法当局が捜査中ということもございますので、いつまでにということをなかなかお約束できませんけれども、我々自身の問題として、責任としてできるだけの努力をしていかなければ、この法律の目的の達成にならないというふうに思っております。

近藤(洋)委員 ぜひ実地調査をしていきたいと考えておりますので、調査報告を求めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。これは大事な問題でございます。

根本委員長 理事会で協議しますから。

近藤(洋)委員 大臣、ただ、ここまでこういう問題、これはまさに大改正です、この法律。大改正をしようというときに、この足元の状況は、私は、これは本当に一人の議員として純粋に思いますね、これではとてもじゃないですけれども、いいプレイヤーは、チェックすることはできません。

 まさに、プロレスのリングにプロレスラーが上がっているのと子供が上がっているのと、一緒に上げてしまって、もうめちゃくちゃですよね、顧客という意味で言っても。そして、それをレフェリーであれ何であれ、こういった状況できっちり役所がチェックできていないわけですから。それがずっと続いているわけでありますから、私は、これは構造的な問題であって、やはり検査当局を組織再編するしかないんじゃないかと思うんです。

 大臣は農林水産大臣も御経験でございます。両方御担当、両方に見識をお持ちでいらっしゃいます。金融にもお詳しい。私、この事案をちょっと調べてきて、本当に、住専の話だとか昔の金融の話をどっと、全く同じことを懲りずに、さらにもっとどぎつくやっている姿を見て、愕然とするわけです。ゼネラルにしろ、アイコムの処理にしろですね。

 ですから、これは検査体制を、金融庁の一つにするということがいいのかはありますが、やはり効率ということを考えれば、これはやはり金融商品ですから金融というもののくくりで、これは省の省益とかそういう問題、やはり一般の方々も大変困っているし、国益としても、マーケットができなくなっているわけですから、これは思い切って組織改編を考える時期じゃないんだろうか。これは省をある程度いじらなきゃいけないんじゃないのかと問題を提起させていただきますが、大臣、どうお考えですか。

中川国務大臣 プロレスのプロのレスラーと子供と、そして、仮にその中のプロのレスラーが、例えて言うならば、凶器を持って、昔プロレスでありました、何か栓を持ったり、ガラスの何とかを持ったりというようなプロレスがありましたけれども、そんなことになっていて、そして、レフェリーがそれに対して有効な試合運営というかジャッジメントができないということになれば、これはもう全然プロレスにならないわけであります。これは例え話としてはちょっと不謹慎だったかもしれませんけれども、日本の経済産業において大事な商品先物取引市場を健全に発展をさせていこうというこの法の趣旨という観点から、今いろいろ所管の話とかお話がありましたけれども、それ以前に、我々としても、徹底的に過去のことをチェックし、そして、何が足りなかったのか、欠けていたのかを十分検証をしなければいけない、これが当面の最大の我々に与えられた使命であろうというふうに思っております。

近藤(洋)委員 現状では、とても新しい法改正にたえ得る体制ではないということを指摘しておきたいと思います。

 そして、国民生活センター、先ほど行ってまいりましたという話を申し上げましたが、大変少ない人数で苦情の相談をやられていました。びっくりしました。これだけ少ない人数でよくあれだけの苦情をされていたのだなという話を実地で伺ってきたわけですけれども、これだけ、あえて言います、行政の監督能力も欠如しているという状況の中で、頼るべきは、ある意味で、苦情をいかにスピードを上げて対応する、省庁を連携するかというところだと思うんですね。まさに苦情は社会の公共財という側面もあるとも思っております。

 そこで、私たち民主党は、議員立法で消費者保護基本法の提案を今国会で予定しております。もし経産省や農水省が組織改編をしないと言うならば、消費者保護の観点から、新しい八条委員会になるものをつくってやるということも言っておりますし、さらには、国民生活センターの業務拡大も盛り込んでおります。国民生活センター、日々、先物に対する情報が寄せられていますけれども、この法案の意義は当局はお答えにくいでしょうが、我々の出すであろう法案についてのコメントはあえて求めませんけれども、国民生活センターが、今後、やはりもっと積極的な役割を内閣において果たすべきだと考えておりますけれども、きょうは永谷国民生活局長がいらっしゃっていますので、内閣府のお考えを伺いたいと思います。

永谷政府参考人 国民生活センターをきのう御訪問していただいたようであります。どうもありがとうございます。

 それで、もう先ほど来おっしゃっていますように、まさにリアルタイムで起こっているいろいろな消費者の苦情とか相談というのをリアルタイムで集めてくるようなPIO―NETというシステムを持っております。今までも、国センでそうやって上がってきた情報を各省でシェアをするようなことをやってきておりますけれども、これからもっともっと、そういう部分でも積極的に情報を提供していくようなことを考えていこうと思っております。

 これまで、特定商取引法の対象分野、対象となる取引について、関係省庁が集まって、個別個々の事業者についての定期的な情報交換会みたいなことはやってきております。そういうのももっと頻繁に開いていくとか、あるいは、先ほど来御指摘になっております商品先物取引の分野における連携につきましても、これからもっともっと意を尽くして、情報をみんなでシェアをしながら、余り変なことが起こらないようなことを目指して頑張っていきたいと思っておりますので、また、どうぞバックアップをよろしくお願いします。

近藤(洋)委員 商品先物市場というのは本当に大事な市場の知恵だと私は思っていますから、これをやはりプロの世界に変えなければいけない。ロンドン、ニューヨークに負けないものにしなきゃいけない。そのためには、今の体制、今の法運用ではとても追いついていかないということを最後に指摘をさせていただきたいと思います。

 不招請勧誘の禁止を盛り込む修正に加えて、冒頭申し上げました、運用においてバーを引き上げること。要するに、今の一枚数万円ではなくて、百万円以上にする。今の行政の体制はこういう状況ですから、恐らく多くの同僚議員は納得していないと思いますよ。こういう状況ですから、それを改善するならば、市場参加者をもう制限するしかないんだと。これは運用でできますから、大臣の判断一つでできますので、ぜひこの必要性を強く申し上げまして、私の質問を終えます。

 ありがとうございました。

根本委員長 次に、菊田まきこ君。

菊田委員 民主党の菊田まきこでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、特定商取引に関する法律について御質問させていただきたいと思います。

 この法律は、昭和五十一年、訪問販売等に関する法律として制定をされました。その後、昭和五十九年の第一次改正から一昨年の第六次改正まで、ほとんど一年か二年おきに法改正が行われ、そして規制の強化を図ってこられたということです。

 しかし、それでも消費者被害はふえ続けているという実態でございます。消費者取引に関する苦情相談件数の推移を見ますと、国民生活センターのデータによれば、平成十四年度は八十七万件、うち特定商取引にかかわるものは五十七万件となっており、十年前と比べると約四倍にふえています。このまま行けば、やがては百万件時代がやってくるのではないかということでございますが、幾ら法改正を行って規制をしても、これは実効が上がっていないということのあらわれなのか、一体これをどう見ているのか、そして、今度の法改正によってこそ、こうしたたくさんの被害を減らすことができるのか、まずお伺いしたいと思います。

坂本副大臣 新しい消費者取引の形態が次々に出てきているんですね、毎年毎年。さらに、悪質な事業者が規制を逃れる新手の手口をこれまた毎年毎年考え出すという、そんな中で、昭和五十一年の法制定後通算で、おっしゃるように六回、最近の五年間でも三回の法改正を行っております。

 今までのは、規制といっても、包括的かつ実効ある規制を設けようとすれば、通常の事業活動にまで過度な負担や弊害を生ずるおそれがあり、他方、広く浅い規制を設けるにとどまれば、悪質事業者に対して実効ある規制とはならない、新手のトラブルに対処するため、迅速かつ的確な法改正がその都度必要とされたためであった、こうなっております。

 今回の改正は、民事ルールの充実を図ることとしておりまして、その内容は、御承知のように、虚偽説明等の場合は契約を取り消せる、それから、返品できるルールも整備してあります。同時にまた、クーリングオフを妨害した場合には、期間が経過後でもクーリングオフができる。そういうようなことをやることによって、実際に被害に遭った消費者の救済が容易になり、また、悪質商法がビジネスとして成り立たないようにするために大きな効果があります。消費者トラブルの状況の改善に寄与するものと考えております。

菊田委員 結局、非常に中途半端といいますか、とりようによってはどちらでも言い逃れができるような、そんなものであったということによって、こうした被害が減らなかった。ですから、私は、今回の法改正によって、本当に完全なるものを目指して十分な議論を積み重ねていくことが大事だというふうに思っております。

 地元の消費者協会の会長さんにお会いをいたしました。そして、幾つかの御意見を賜りましたけれども、大変印象深かった言葉は、これだけの法整備に守られている実感が全くないということなんですね。やはり生活者の立場で大変な不安を感じているというその実態をしっかりと受けとめていきたいと思っております。

 そしてもう一つ、法規制はもちろん大切なんですが、その一方で、悪質商法にだまされない強い消費者をつくっていく、適切な判断のできる賢い消費者になることが大切だというふうに思っております。

 例えば、訪問販売ですと、突然ピンポンとチャイムが鳴って出ていきます。そうすると、いかにも市役所の職員風の格好をしている男の人が立っている。そして、名前を聞けば、市役所の方から来たというふうに答えるんだそうですね。そうすると、もう何か安心して、まあ方角が市役所ということなんですけれども、非常に業者の方は悪質になっているということです。

 そういう意味で、消費者の方もより適切な判断ができる知恵をつけていかなければならないと思います。特に、高齢者というのはある意味仕方がないのかなという感じがしますけれども、しかし、十代や二十代の若い人がこうした手口に大変だまされているということは、私は大変問題だと思いますが、若年層からの消費者教育というのが行われているのかどうか、消費者教育にどのように取り組んでいるのか、お答えいただきたいと思います。

徳永政府参考人 消費者取引に関する苦情相談のうち、二十歳以下の若年層の相談が四分の一を超える、そういう状況には、文部科学省としても憂慮をしているところでございます。

 大学におきます対応につきましては、つぶさに把握しているところではございませんけれども、各大学におきましては、入学時に配付する学生便覧の中に悪質商法に関する記述を載せる、学生に対する注意喚起を行う、あるいは、各大学には学生相談窓口が設置をされておりますけれども、そこで学生からの相談を受け付けまして、地域の消費者相談窓口への相談を勧める、こういった対応を行っているものと承知をしております。

 また、これに加えまして、特に近年では、悪質商法に関する講演会を開催する、あるいは学生に対する注意喚起のチラシを配布する、ホームページで注意喚起をする、こういう対策を講じていると承知をしております。

 さらに、本年一月には、経済産業省からの要請も踏まえまして、全国すべての国公私立大学、短期大学に対しまして、学内広報を通じた情報提供、あるいは学生に対する啓発の一層の推進、そういったことにより被害を防止する努力をしますよう要請をしたところでございます。

 今後とも、大学に対しまして、関係機関とも連携を図りつつ、学生啓発の推進といったことがしっかり行われるよう指導していきたいと思っております。

 また、特に小中高等学校の教育でございますが、これにつきましては、既に学習指導要領の中でも、例えば、小学校では、身の回りの物や金銭の計画的な使い方を考えて適切に買い物ができるようにすることを取り扱うとか、中学校では、販売方法の特徴や消費者保護について知り、生活に必要な物資、サービスの適切な選択、そういったことを扱うこととしております。

 例えば、具体的に、特に悪質商法につきましては教科書の中にも、中学校の技術・家庭の教科書では、具体的に、通信販売など中学生にかかわり深い販売方法、あるいは悪質な訪問販売、キャッチセールス、アポイントメントセールス、マルチ商法などに関する記述を載せまして、あるいはまたクーリングオフ制度があること、消費者生活センターなど各種相談機関などがあること、そういったところにきちんと相談をすることといったことを教科書の中にも載せておりまして、そういった関係で指導を行っております。

 文部科学省といたしましては、今後ともそういった意味で、消費者教育あるいは大学での適切な対応といったことに努力していきたいと思っております。

菊田委員 国民生活センターの集計では、大学、短大、専門学校生からの相談件数、平成十三年度が八百十五件、十四年度は千百五十六件、そして十五年度も十四年度を大きく上回るだろうというふうに見られているわけですね。

 そして、大学では、大学内で学生同士がこういったことをやっているという、大変問題だと思いますが、その中では、マルチ商法という言葉はもちろん使わないわけです。例えばアルバイトとかネットワークビジネスとか、そういった警戒心を持たせない言葉を選んで使っているということです。そしてまた、ベンチャーで勝ち組になろうとか、年一千万円の収入といった甘い誘い文句でこういった被害を受ける学生が大変多いということです。

 例えば、大学の掲示板に注意を喚起するようなチラシを張ったり、通達を張ったり、手帳を配ったりということはもうやっているわけですよね。しかし、そんなのはだれも読まないんですよ。また、その程度ではこうした被害がなくならないということなんです。ぜひ大学へ行ってみてください。もう既に張っていますよ。

 大学生が、こういった被害がもっともっとふえていくということは、やはりもっと思い切った対策を講じていかなければならないと思います。例えば、大学のキャンパス内での契約は取り消すことができるというぐらいの対策を講じていかなければ、私は、チラシを配ったり掲示板に張ったりする程度ではさほど意味がないというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

徳永政府参考人 さまざまな法的な制度につきましては私どもの所管ではございませんが、私どもといたしましては、この四月に、新たに日本人学生、留学生に対する各種支援施策を総合的に実施するために、独立行政法人として日本学生支援機構というものをつくりまして、そこでは、従来の奨学金事業でございますとか留学生の問題といったことに加えまして、大学生に対するさまざまな相談指導業務といったことも行うこととしております。

 そこで、ぜひこれからは、各大学に対しまして、そういう新しいさまざまな問題点、そういった悪質商法の状況等についての情報を効果的に提供する、そういったことにも努めていきたいと思っております。

菊田委員 ぜひ各学校の問題把握を適時やっていただき、連携をとりながら実効性のある対策を講じていただきたいというふうにお願いしたいと思います。

 それと、今回の法改正の中で、アポイントメントセールスに対する対策が出てまいりました。午前中の質問の中にもありましたけれども、販売目的であることを隠して公衆の出入りしない個室等に消費者を誘い込んで勧誘することを禁止するというふうにございます。梶原議員の質問の中に、例えばレストランや喫茶店というものはこの公衆の出入りしない個室等に該当するのかどうかという御質問がありました。その答えの中では、レストランや喫茶店は該当しないということでございましたけれども、間違いございませんか。

青木政府参考人 午前中の御質問は、人が出入りする喫茶店はいかがですかということでございましたので、それは恐らく該当しないというふうに申し上げたところでございます。

 それで、委員御指摘のように、この公衆の出入りしない個室という点につきましては、実は三点、問題点がございます。

 もともと最初のアプローチの段階で勧誘を拒絶する、そうした重要な機会を消費者から奪うというのが第一点でございます。それから、そういう個室の中で閉じこもりますと、どうしても冷静に判断することが困難になるというのが第二点でございます。第三点目は、そういう場所では、なかなか消費者が自発的に立ち去ることは現実的に困難が伴う、こういう点がございます。そういう意味で大変悪質ということでございます。したがって、この公衆が出入りする場所以外の場所というのがどういう場所かという点については、この趣旨に沿って判断される必要があろうと思います。

 私、少し敷衍して申し上げましたが、第一には、当該事業者がそもそも管理している場所かどうかというのが第一点でございます。なぜならば、当該事業者が管理しておりますと、当然勧誘目的を達成しやすいようにさまざまな準備がなされやすいといったような点もございますし、現実に人の出入りを監視し得る場所でもあるということがございます。

 それから、第二点でございますけれども、しからば、現に不特定多数の方が出入りしている場所かどうかといったような点も重要であろうと思います。例えば、一応店舗という形式はとっていたとしても、マンションの二階等にありまして看板表示なんかもほとんどない、しかも、現実に不特定多数の来客がないといったような場合には、仮に店舗という形式をとっていたとしても、やはり公衆の出入りしない場所ということになろうかと思います。

 いずれにいたしましても、法律ですから、いろいろな要素を抽出いたしまして、最終的に大変抽象的な表現にならざるを得ないわけでございます。本法案が成立しますれば、できるだけ早期に通達あるいはコンメンタール、そういったところで法解釈を明確にしていきたいというふうに思っております。

菊田委員 ぜひ実態をよく把握していただきたいと思うんですけれども、こういったマルチ商法あるいはアポイントメントセールスというのは、いかにも怪しい場所に誘い込んで、そして話を聞かせるというようなケースではなくなってきているんですね。最近は、本当に大勢のお客さんが周りにもいるファミリーレストランとか、大変はやっている喫茶店に誘い出して、そしてそこで、最初は一対一で始まったものが、いつの間にか仲間がふえてきて、三対一とかあるいは五対一という形で説得が始まるということなんです。一見安全なところで、しかも相手が警戒心を持たないようなところでこうした話が進められているという現実があるわけですね。

 ですから、私は、公衆の出入りしない個室等というのは、これはファミリーレストランや喫茶店という大勢の人が出入りするようなところでも今平然と、商談と言ったらおかしいけれども、こういう勧誘が盛んに行われている現実を見れば、このような認識では大変甘いのではないかというふうに言わざるを得ないんですけれども、いかがでしょうか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 公衆の出入りしない場所という要件でございますけれども、今、青木審議官お答えしたとおり、今後内容を具体的に通達等で固めていこうというふうに考えておりますけれども、こういう要件をこの規制に設けましたのは、販売目的を告げないで人を集めて一部販売を行うような、そういうやり方、ケースでも、いろいろ実態上ケースがあります。例えば、各種の販売、展示会などで、展示会だということで、でも一部販売をする、正常に行っているんだけれどもと、そういうような例もございまして、これは直罰、罰則をかけて規制するものであります関係で、やはりこういうことになっておるわけでございます。

 実際の運用上は、行政処分をします際は、消費者の方からの苦情を複数集めまして、そういうところから見ていきますと、大体その意図といいますか、やり方のパターンが出てまいりますので、この要件の運用で十分にそういう悪質業者の規制が可能になってくるのではないか、そういうふうに考えております。

菊田委員 規制が後追いになっていたのでは間に合わないと思うからこそ、私はこういった発言をさせていただきました。

 例えば渋谷なんかに行きますと、今こういう不況の時代ですから、若い人が働く場もなくて、とてもうっせきした、もやもやした気持ちで、何か新しい出会いはないか、あるいは何かいい働き場はないかということで、町にあふれていますね。そういったところで、悪質なセールスが始まっていたり、キャッチセールスが始まっていたりするんです。

 例えば、これは悪質なセールスではないかといって、こちらがとがめたとしても、いえ、もうただ若い女の子に声をかけてナンパしているだけですとか、非常に巧妙な手口で言い逃れをしているという現実があることも、あわせて調査をしていただきたいというふうに思っております。

 それから、訪問販売とかマルチ商法などに残念ながらだまされて被害者となったケースを調べますと、同じ人が何回もいろいろな形で被害に遭っているという傾向があります。過去の契約に関係があるように勧誘したり、あるいは契約や支払いを迫る二次被害というものが大変に多くなっているわけでございますけれども、今回の法改正でこうしたことが十分対応できるのかどうか、私は大変心配をしております。

 例えば迷惑メールというのがございますけれども、二〇〇二年四月の特定商取引法改正で迷惑メールに対する取り締まりが強化されました。しかし、現実には迷惑メールというのは一向になくなっていないわけでございます。そして、携帯のiモードの出会い系サイトにアクセスした人の名簿というのは実は大変高い値段で売られていて、そして何回も同じ人にメールが送られているという現実があるわけです。

 そうしたことから考えたときに、こういう訪問販売やマルチ商法なども、一回ひっかかった人の、ひっかかりやすい人の名簿というのが実はやりとりされているのではないかというふうに思うわけでございます。これをいわゆるカモリストというふうな名前で、カモになるのでカモリストということで、これが出回っているという話も実際にあるわけですね。こういったことにどう対応していくのか、未然に被害を防いでいかなければならないと思うわけですが、いかがでしょうか。

小川政府参考人 御指摘の、何度も被害に遭われる方ということ、確かにと申し上げるとなんですけれども、いろいろな形態もございまして、今挙げられた二次被害の例などは、我々、せんだって行政処分をいたしましたけれども、電話勧誘などで、資格商法で、以前そういう何か、宅建業の試験の講座を途中でおいた人のリストか何かに基づいて電話勧誘をやってまた被害を与える、そういうものに対する処分もしておるところでございます。

 こういう被害ということに対しては、予防ということと、それからやはり被害の救済ということも大切だと思っておりまして、今回は、特商法の中で、極力民事ルールを強化するということを考えております。そういう中で、違法な契約を取り消せるルール、それからクーリングオフ妨害に対してさらにクーリングオフを行えるような措置、そういう民事ルールの強化でもって、そういう被害を救済しようというようなことを考えております。

 あわせて、やはり消費者の方の自衛ということも非常に重要だと思っておりますので、消費者の方々への情報提供、それから普及啓発でございますね、積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

菊田委員 本当にカモリストというのがこうした悪質な業者にやりとりされているとすれば、大変な問題だと思うんですね。幾ら法改正したってそれは届かないわけでございまして、まず、個人情報の保護を徹底することから始めなければならないと思いますが、いかがでしょうか。

小川政府参考人 個人情報の保護につきましてでございますけれども、委員御案内のとおり、昨年、個人情報保護法が成立したところでございまして、来年四月には施行されることになっておるわけでございます。

 そういうことで、その実運用といたしまして、分野分野に応じたいろいろな対応策を、具体的には指針というような形で示していくということを考えておりますので、そういう中で、個人情報保護全般について対策を強化していきたいというふうに考えております。

菊田委員 それから、今回の調査の中でわかったことは、架空請求というものが特にふえてきているということでございます。全く身に覚えのない請求書がはがきやメールで送られてくるということですが、これは本当に実際に被害が生じてからでは遅いわけでございます。この架空請求というのは、今回の法律改正の中で十分に取り締まることができるのでしょうか。

小川政府参考人 架空請求という御質問でございますけれども、一応、特定商取引法の前提といたしまして、実際に、正業としてといいますか、営まれる事業形態を極力健全にやっていただくということで諸規制を置くという前提ででき上がっているわけで、そういう前提のもとに訪問販売等の六つの取引形態を対象に法律がつくられておるということでございます。

 今御指摘の架空請求ということでございますけれども、これは、率直に言いまして、形態としては純粋の詐欺ということになりまして、やはり刑法による取り締まりで、検挙ということで対応をしていかざるを得ないのではないかというふうに考えております。

菊田委員 実際に被害を受けて、本当に泣く思いをして、そして刑法の中でこれをやっていくという方が何割いらっしゃるのかわかりませんけれども、大体の方は多分、架空請求というのは来ないですか、私のところにも来たことがありますけれども。ほとんどの人が今こういった、自分で判断をするから被害には遭っていませんけれども、問題があって、そして、刑事罰に訴えなければ何もならないようなものであってはならないと私は思うんですね。

 これだけ架空請求が問題になっている中で、民法の中でしっかりとこういったものを未然に防いでいくということ、民事においてしっかりと取り締まっていくことを真剣に考えないと、やっぱりもっともっと悪質な手口で被害が大きくなっていくのではないかというふうに思っているわけでございます。

 それから、国民生活センターにいろいろ調査をいたしましたらば、平成十四年度では百四万件の相談件数があったということなんです。いろいろな形で被害をこうむった方がここに相談をするわけですけれども、相談した後は一体どうなるんでしょうか。相談してから救済されるまでどのような経過をとるのか、教えていただきたいと思います。

永谷政府参考人 一般論で申し上げますと、裁判に入る前までの被害者の救済というのがどういうふうになされるのかというのを考えますと、一つは苦情なりを言っていただく、相談していただいて、それに対して助言をするというのが一つのパターンだろうと思います。それから、そういう中で、ある一定の者に対してあっせんをする、つまり、事業者と被害者との間に立ってあっせんをしていくというのが二つ目のパターン。それから三つ目には、あっせんでもうまくいかなかったら調停というところに入っていく。

 御質問をされました国民生活センターで何をやっているかということでありますけれども、最初の助言と二つ目のあっせんにかかわる部分を主としてやっているというようなことであります。

 ちょっと具体的に申し上げますと、助言の方でありますけれども、例えば訪問販売でありますとかアポイントメントセールスなどのトラブルに対して、クーリングオフの方法など、こういう制度がありますよというのを助言しますし、それから、いろいろな取り消し等にかかわる民事ルールについて、その助言を行うということであります。

 それから、あっせんの場合でありますけれども、例えば、同一事業者による被害が多発しているような事案でありますとか、高額な被害が生じているような事案でありますとか、事業者側の行為が特に悪質であるような事案、それから高齢者等の社会的な弱者が被害に遭っているような事案については、国民生活センターなりあるいは消費生活センターなりがあっせんを行うということをやっております。

 それから、御参考までに申し上げますと、消費生活センターで解決困難な事案につきましては、各都道府県で条例等に基づきまして、苦情処理委員会、これは場合によっては紛争解決委員会とかいうような呼ばれ方もしておりますけれども、そういうのが設置されておりまして、そこで第三者委員会の形式によるあっせん、調停が行われるというようなことであります。

菊田委員 この消費生活センターというのは、土曜日はなぜかお休みなんですが、平日と日曜日はやっていますよね。やっている時間を見たら、午前十時から午後四時半までということで、では勤めていらっしゃる人はどうしたらいいんだろうかと思いまして、これも非常に不適切といいますか不親切な対応だなというふうに思いましたけれども、では、いろいろ相談をして、実際に、泣き寝入りはしたくない、弁護士を立てて闘っていくんだといって訴訟を起こした人は、平成十四年度の百四万件のうちどのくらいあったんでしょうか。

永谷政府参考人 実際にどれくらい訴訟にいっているかというのは、私ども必ずしもきちっと把握しておりませんけれども、国センとか消費生活センターに持ち込まれた案件のあっせん比率というのは、大体七%程度であるというふうに理解しております。

菊田委員 ですから、本当に被害に遭ってしまった人たちの救済になっていないわけですよね。ほとんどの人が弁護士さんも立てられずに、あるいは訴訟を行うこともできずに、泣き寝入りで終わっているということです。

 ですから、私は、相談して終わるのではなくて、話を聞いて終わるのではなくて、その後もきめ細やかな救済制度というのをしっかりと講じていかなければ、本当の意味での消費者のための法律改正にはならないということを申し上げたいというふうに思っております。

 それから、各市町村の方を調べましたらば、専門性を備えた担当の職員が対応できているというところは非常に少ないんです。ですから、結局、市の職員の庶務係の方が兼務で対応しているというのがこの相談窓口の実態です。

 こういったことであっては、結局、市町村では電話に出ても十分な対応ができないので県のセンターの方に回す、しかし、県のセンターの方は、電話が混み合って出ることもできない、パンク状態だという話を聞いておりますが、専門の職員をきっちり配置していくこと、窓口の充実、人員の確保についてしっかりと取り組んでいただきたいことをお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

永谷政府参考人 身近な市町村での相談をする人でありますけれども、基本的には相談員と称するある資格を持った方がおやりになるというのが普通のパターンでありますけれども、財政状況がこういう状況の中で、各市区町村が非常に手元不如意ということもあって、今おっしゃっているような一般の職員の方が対応されているということも見受けられる状況であろうと思います。

 そういう部分につきましては、これからももっともっと私どもも力を尽くしていかなきゃいけないと思っておりますので、どうか御支援のほどをよろしくお願いします。

菊田委員 質問を終わります。ありがとうございました。

根本委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、商品取引所法一部改正案について質問をさせていただきます。

 「エネルギーフォーラム」という雑誌を見ておりましたら、ちょうど先物取引市場の特集記事をやっておりまして、その中で、経済産業省の商務情報政策局の商務課長さんが寄稿しておられました。

 「わが国の商品先物市場には、上場商品を扱う事業者(当業者)の参加が乏しく、他方で、市場参加者の多くを個人投資家が占め(そのなかには、リスクのある先物取引を行うには必ずしも適格といえない者も多く参加していた)、取引の委託を受ける商品取引員とこれらの投資家との間でトラブルも多く発生し、それがまた当業者の参加を敬遠させたという悪循環の面もあ」る、このように述べております。この指摘は間違っておりますか。その点だけ。

青木政府参考人 正しい指摘だと思います。

塩川委員 経済産業省ですからよく御承知なわけですけれども、先物の初心者をトラブルに巻き込むような現状がある、そのために、本来当業者中心であるべきものがそうなっていない、当業者が参加するのをためらうような悪循環になっているんだ、これが今の現状だという認識であるわけです。

 そこで、日本の先物市場は一般投資家の比重が高いと言われております。どのくらいなのか。逆に、当業者の割合がどのくらいかということでお示しいただいても結構ですけれども、わかるところで教えてください。

青木政府参考人 我が国の商品先物市場に参加しますいわゆる個人投資家の割合についてでございますけれども、必ずしも十分なデータは整備されておりませんが、我が国の代表的な市場であります東京工業品取引所、その中でも非常に取引が活発な石油関係、それから金の関係でございますけれども、これを、一定の推計が多少入りますけれども、試みましたところ、おおむね約五割台から七割台を推定されます。

 ちなみに、金が六三%、ガソリンが七一%、灯油が七七%、原油が五八%、軽油が五六%でございます。

塩川委員 ガソリンの数字はわかりますか。

青木政府参考人 ガソリンは七一%でございます。

塩川委員 当業者の割合が高いと言われている石油製品でも七割ぐらいの数字です。

 アメリカのNYMEXの原油市場の場合で言いますと、石油の業者が三割ぐらい、石油トレーダーが四割ですから、合わせて実需家が七割を占めている。実質的に、個人投資家という方はほとんどその比重がないわけであります。

 日本と大きな違いがあるわけで、日本の先物市場は一般投資家がかなりの割合を占めると言われておりまして、他国にはない異常な状況だと言えると思うんです。そういう意味では、委託者保護が他国にも増して重要だということを示していると思います。

 前回の九八年の改正では、委託者保護の強化がうたわれてきました。九九年度以降、先物取引に関する苦情件数の推移を教えていただきたいと思いますが、お願いします。

青木政府参考人 平成十年の法改正以降の経済産業省において受け付けました苦情相談件数でございます。平成十一年度が二百九十三件、十二年度が二百八十三件、平成十三年度が三百六十四件、十四年度が四百二十二件、平成十五年度が六百七十件でございます。

 また、日商協という自主規制団体がございますけれども、平成十一年度が七千百五十五件、平成十二年度が八千三百六十六件、十三年度が八千六百四十七件、十四年度が七千九百八件、そして昨年度が八千五十九件でございます。

田中(孝)政府参考人 農水省で受け付けました苦情相談の件数についてお答え申し上げます。

 平成十一年度が三百五十三件、十二年度が二百六十八件、十三年度が三百五十九件、十四年度五百六十六件、十五年度は、速報値でございますが百八十九件でございます。

塩川委員 国民生活センターの数字はわかりますか。

青木政府参考人 平成十一年度が三千八百八件、十二年度が四千四百四十一件、十三年度が六千百十七件、十四年度が八千三百五十件、昨年度が七千三百七十二件でございます。

塩川委員 経済産業省の数字を見ても倍以上になっておりますし、国民生活センターも、九九年度から〇二年度にかけて二倍以上になっています。〇三年度が七千三百何十件と言いますが、これはまだ全国のが集計されておりません。最終的な数字が出るのはあと二カ月先ですから、〇二年度の八千件を上回るのは必至であります。

 そういう意味では、被害件数というのがウナギ登りになっているというのが現状で、九八年の法改正以降に被害件数が急増している、これが現状だと言えると思うんです。それで委託者保護が強化されたと言えるのか。大臣、いかがでしょうか。

中川国務大臣 九八年以降急増をしたのが法改正をしたからだというふうには、そう単純には言えないと思います。

塩川委員 九八年の法改正で委託者保護が強化をされたのか、その点、いかがですか。結果として強化されたのか。

青木政府参考人 塩川委員御案内のとおり、平成十年の法改正で各種の保護措置を講じたのは事実でございます。

 特に、日商協におきましては自主規制を策定するといったようなことで、これに違反した場合には過怠金の賦課を行う、あるいは外務員、いわゆる委託者との、第一線に立つ営業員でございますけれども、その登録制度を運用いたしまして、職務停止の制裁を行うといったような点もございます。

 それから、万一トラブルが発生したときには、当然、苦情の対応を商品取引員に求めるといったようなこともございますけれども、なかなか解決に至らないというときには無償の専門の弁護士あっせんの調停を行うといったようなところもございます。

 特に、このあっせん・調停制度につきましては、委託者の方が裁判に行かずにこのあっせん、調停という制度で物事を解決したいという場合には、事業者はそれに従わなきゃならない。それから、調停案が出たときに、委託者がそれを受理するという場合には、同じく商品取引員はそれに従わなければならない。そういう意味で、大変委託者にとって有利な、片務性の高い制度でございます。

 ただ、他方で、御案内のとおり、商品先物市場の拡大に伴いまして、苦情件数が増加傾向にあるというのも事実でございまして、これを解決すべく、今回の各種の御提案を申し上げているところでございます。

塩川委員 要するに、この三年間で倍増しているということに対して、これで委託者保護が強化されているのかということについてお答えがないわけですよ。九八年の法改正がどうだったのか。私は、率直に、現状で見れば、委託者保護が改善されなかったというのがこの教訓じゃないか。

 お手元に資料を配付させていただきました。「商品先物市場の取引金額および苦情相談件数の推移」であります。折れ線グラフが国民生活センターに寄せられた苦情相談件数であります。棒グラフが取引金額であります。ここでごらんいただきたいのは、九九年度以降、石油市場の取引が始まりまして、これが非常にこの間急増しております。いわば、この石油市場の取引金額の急増とあわせて被害相談件数もふえているとも言えるような数字にもなっている。

 私、率直に、委託者保護が改善されていないもとで経済産業省が許可をして、石油を新たな対象品目に加えたことがさらに被害を拡大させたことになったんじゃないのか、経済産業省の責任じゃないのか、この点をお聞きしたい。いかがですか。

青木政府参考人 この苦情件数と石油市場がどういう関係にあるかというのは、必ずしも私どももまだつまびらかにしておりませんけれども、確かに、最近、特に国民生活センターの数字を見ますと、非常にウナギ登りであるというのも事実でございます。

 こうしたことを、私ども、一つの教訓といたしまして、今回の改正案におきましては、特に委託者保護を、委託者債権、委託者資産の保全といったような構造改善の面から抜本的に強化するというのが第一点。

 それからもう一つは、行為規制として、本日も議論されております勧誘規制あるいは適合性原則の導入、あるいは説明義務の導入、これに伴います行政処分の強化、刑事罰の強化といったようなところを御提案申し上げているところでございます。

塩川委員 いわば、この間、九八年の法改正がありながら、結果として委託者保護が改善をされていないのに、石油を新たに加えた政府の責任は極めて重い、このことを指摘するものであります。

 実際、では現場がどうなっているのか。日弁連、弁護士の方などが先物取引被害の全国研究会をつくられて、被害の一一〇番などを行っておられます。そのデータを見ても、取引の未経験の方が大変多いということをうかがわせる内容で、女性や高齢者の方の被害が大変大きいというのが指摘をされております。日弁連の商品先物取引制度改革の意見書でも、「こうした先物被害は、一部の業者だけが引き起こしているのではない。業者の大半に苦情があり、業者に損害賠償責任を認める判決も一部の業者に集中しているというわけではない」、このように厳しく指摘をしているものです。

 そこで紹介をしたいのが、ある商品取引員の会社がつくりました「セールス・マニュアル」、これはこのコピーですけれども、いわば勧誘のマニュアルですね。具体的にこういうふうにして顧客に声をかけるんだ、こういうものが実際に会社の中でつくられて、これによって勧誘が行われているわけであります。

 ここで、今回、二百十四条の不当な勧誘等の禁止についてでも、これまで、絶対もうかりますと言うのは違法だとされていたわけですが、しかし、この実際のマニュアルには、具体的な内容で言いますと、例えば、顧客の方から相場観に対して、不安だ、損するかもしれないというのに対して、「直接撃退法」という項目があって、「とんでもございません。今の状態は一〇〇%とは言えませんが、それに近い確率で値上がりが期待出来る場面です。」こういう言い回しで、現実には、もうかりそうだということを植え込むような、こういう文言を使って勧誘しろということが行われているわけですよ。

 ですから、こういうような、今紹介しました「今の状態は一〇〇%とは言えませんが、それに近い確率で値上がりが期待出来る場面です。」こういう言い方というのも、今回言うような不当な勧誘等の禁止の中での違法だと言えると、私、はっきり答弁していただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。

青木政府参考人 今回は、入り口段階の規制として、先ほども申し上げましたように、その一つとして説明義務を課したところでございます。また、その法的効果といたしましては、これに違反した場合には無過失の損害賠償責任を課すということでございます。

 そこで、この説明義務とは二つございまして、一つは、その仕組みでございます。

 先ほど来御議論をいただいておりますように、少額の証拠金あるいは担保金で大変大きな金額の取引ができるといったような仕組み、その裏腹として、相場の変動によっては担保金をはるかに上回る大きな被害が出るといったようなことをしっかり説明する必要がございます。

 今御指摘のように、一〇〇%とは言えないが値上がりが期待できるといったような表現は、勧誘に当たって先物取引の有利性をいたずらに印象づけようとすることでございまして、そういう説明義務とあわせまして、そういうことを言うというのは、断定的判断の提供と認められる可能性が高いと思っております。

塩川委員 実際、こういう職場では、上司から、絶対にもうかると言うと違法行為になるから、微妙な言い回しをしろと。ですから、絶対もうかるとは言わないけれども、それに近い表現で実際には勧誘される、そういうすり抜けが行われているわけですから、今の指摘のように断定的判断の提供の可能性が高いというよりも、具体的に断定的判断の提供に当たるという立場での対処が必要だと思いますけれども、改めていかがですか。

青木政府参考人 やはり、断定的判断の提供といいますのは、その勧誘される者が経験者であるかどうか、あるいは前後のコンテクストがどうであるかといったようなことを総合的に判断する必要がありますので、個別具体的にやはり判断していく必要性があるというふうに思っております。

塩川委員 いや、ですから個別具体的なんですよ。こういうマニュアルではっきり書いて、これに沿ってやれと言っているんですよ、現場では。

 では、これは違法なんでしょう、個別具体的な事例ですから。いかがですか。

青木政府参考人 実際の場面におきます顧客の属性ですとか取引の経験の有無、あるいは会話の流れ、あるいは前後の文脈、そういうものを総合的に勘案する必要がありますので、それぞれ個別具体に判断する必要があろうと思います。

 ただ他方で、新規に顧客を勧誘するといったようなときに、特に未経験者への説明義務とあわせまして、殊さらに先物取引の有利性を印象づけようというような表現であれば、当然、断定的判断の提供と認められるということでございます。

塩川委員 そういうように、具体的に、実際には未経験者の人に向けてこのマニュアルは使っているんですから、そういう意味での説明義務違反と一体に、こういう形での断定的判断の提供があれば違法だということである、そういうことでいいですね。合わせわざで、説明義務違反と断定的判断の提供の二つが未経験者に向けてやられれば、これは違法だと。

青木政府参考人 そのときの前後の文脈等も含めまして、個別具体に判断する必要があろうと思います。

塩川委員 現場がそうなっていますから、そういう具体的な対応での運用というのが今本当に求められていると思います。

 それから、あと、今回、施行規則に規定していた迷惑勧誘を法律に規定することになりました。そこでお聞きしますが、このマニュアルに、「断りの心理」と、どういうときに相手が断るかということで具体的な想定問答があるわけですよ。

 そこでは、例えば、今忙しいからとか買う予定はないと本人が言っているときにどういうふうにこちらが応対するかというと、今忙しいから、買う予定がないと言う人に対しては、こういう断りに対しては、余り気にせず、よい印象を与えるような努力をしろ、こういうふうに書いてあるわけですよ。あるいは、この忙しいのにアポもとらないでかけてくるなんてとか、何時だと思っているの、こういう人に対しては、以上の断りに対しては、第一印象、態度に気をつけて、感情がおさまる努力に心がけなければならないと。相手がどう言おうと、一歩引きながらも話を持ちかけなさいということを言っているわけですね。

 それとか、うちでは必要ありません、要りませんと言っている人に対しては、こういう断りに対しては、利用価値に興味を持たせろと。要らないと言っているのにさらに勧誘を進めるということがこういうマニュアルで行われているわけですよ。

 電話の場合でもそうですけれども、一度断ったのにまた電話をかけてきたら、これは当然のことながら迷惑勧誘に当たると率直に思いますけれども、その点はいかがですか。

青木政府参考人 今回、再勧誘の禁止を法定化いたしまして、一度断った者について引き続きあるいは再度勧誘を行う、これは再勧誘の違反でございます。

塩川委員 それで、これには「聞き流し法」というのも書いてありまして、取るに足りない断りや反論に対しては笑顔で聞き流してしまうと。つまり、断っているのに聞き流してさらに勧誘を進めると、はっきりと書いてあるわけですよね。これは迷惑勧誘の禁止に当たると思いますけれども、いかがでしょうか。

青木政府参考人 今回、再勧誘の禁止が法定化されることに伴いまして、私ども、具体的な運用ガイドラインを策定し、いわば、顧客に対するアプローチの段階から勧誘の段階の各ステップに応じて、できるだけ具体的なものを策定していきたいというふうに考えております。また、策定いたしましたときには、これを公表したいと思っております。

 その具体的な内容について、今後検討する課題でございますけれども、例えば、現時点では、勧誘に先立ちまして、この勧誘が商品先物の勧誘であることをまず告げるということでございます。その勧誘を行うことについて顧客の意向を尋ねなければならないというのが第一点でございます。そして、これに対して勧誘を断った顧客に対して引き続きまたは再勧誘を行えば、これは再勧誘の禁止に当たる、こういったことを明確にしていきたいと思います。

塩川委員 この場合を聞いているんですけれども、取るに足りない断りや反論に対して笑顔で聞き流してしまう、こういうふうに対応しろというのは再勧誘の禁止に当たるんじゃないんですか。こういう行為は再勧誘の禁止に当たるんじゃないかという点はいかがですか。

 もう少し条件をつければ、資力のない年金生活の未経験者などのお年寄りの方に対してこういうことが行われたら違法じゃないですか、その点はいかがですか。

青木政府参考人 ただいま申し上げましたように、勧誘を断った顧客に対して引き続き勧誘を行えば、これは再勧誘違反でございますので、聞き流して引き続き再勧誘をした、勧誘を続けたということになれば、再勧誘の禁止の違反に該当いたします。

塩川委員 大臣、大臣にぜひお願いなんですけれども、いわばこれはセールスマニュアルというよりも違法行為あっせんマニュアル、そういう内容と言うべきものだ、今のように、具体的に違法行為に当たるようなことをやれと言っているマニュアルなんですから。私は、こういうマニュアルが現にある、これについて、きちんと各事業者に徹底してこういうのは撤回させる、是正措置をきちっととるべきだ、こういうマニュアルはやめさせろと、業界をきちっと監督指導してもらいたい。その点、大臣から御答弁いただきます。

中川国務大臣 そのマニュアルのコピーなるものが真正であるという前提で、今の塩川委員と事務当局とのやりとりを聞いておりますと、今のやりとりの範囲内におきましては、一〇〇%とは言えませんけれども、法律が成立したときには、これはいろいろな義務違反に該当する可能性が高いというふうに思って聞いておりました。

塩川委員 ですから、こういうマニュアルが現にあるわけですから、こういうのはきっちり是正措置をとれと率直に思うわけですよ。少なくとも実態調査をやってもらったらどうですか、それぞれの商品取引員に、どうなっているのか、セールスマニュアルの中で違法行為はないのかと。こういうことをきちっと監督官庁として指導監督する必要があるんじゃないか。その点、いかがですか。

中川国務大臣 ですから、それはマニュアルですから、それにのっとってやっているということによって、例えば苦情なり被害なりなんなりが出てくるということがはっきりしたときには、また次のステップになりますけれども、いきなり普通に営業していると思われる会社に対して全部マニュアルを出せと言うのはちょっと、自由な日本においては余りにも行き過ぎではないかというふうに思います。

塩川委員 これだけ被害がふえているわけですから、現実にこういう問題について是正措置をやるわけでしょう。具体的にこの問題について、法の遵守を当然事業者に求めていくわけですよ。その際に、おたくのところではどうなんだ、ついては、こういうマニュアル、つくっている際に、その中身どうなっているのかということぐらい、チェックするぐらい当然できるんじゃないですか。それもやらないんですか。

中川国務大臣 ですから、新しい法を成立させていただいたときに、そういうものについて、チェックという言葉の意味がちょっとお互いに正確ではないかもしれませんけれども、その権限によって、そのマニュアルをあるなら出せと言うのは、余りにも、ちょっと強権的過ぎるというふうに思います。

塩川委員 率直に言って大変弱腰ではないかというふうに思うんですけれども、現場の実態を考えたら。

 大体、この間の事業者の方、例えば適合性の原則の問題についても、我が党に幾つもの深刻な相談例が寄せられています。

 埼玉県在住の七十九歳の年金生活者の方は、きっかけは新人女性営業社員の熱心な勧誘で、自分の孫と同じぐらいのそういう娘さんから電話をもらって、その若い新人を励ましたいという思いで契約を結んだ、その善意があだになったわけですね。契約後には、その新人社員じゃなくてベテランの社員が出てきて、私は先物取引を十年やっている、決して損をさせたことはない、投資は四、五日我慢すれば戻ってくると、勧められるままにガソリンの先物を計六百三十万円分買った。ところが、一週間もしないうちに事態が大きく変わって、あと三百五十七万円出さないとだめになりますと殺し文句を言われて、追い証を請求されて、気がつけば九十回以上の取引を行って、退職金の一千万円を投入し、返ってきたのは四十万円のみだった。一方、手数料として商取会社に幾ら入ったかというと、三百七十万円ですよ。

 私、こうした一定年齢以上の高齢者や資金的に余裕のない年金生活者への勧誘というのは、そもそも適合性原則違反として禁止すべきだと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。

青木政府参考人 適合性原則は、御案内のとおり、顧客の知識、経験、財産の状況といった個別具体的な事情によって判断されます。したがいまして、一定年齢以上の高齢者を一律に不適格者とすることは適当ではないと思います。

 ただ、今回、適合性原則を法律上の義務と明定したことに伴いまして、その遵守について実効性を確保するため、具体的なガイドラインを策定、公表したいと思います。

 きょうの午前中にもお答えしましたけれども、例えば、一定年齢以上の高齢者、こういう者を例えば原則として勧誘してはならないという原則のもとに、しかしながら、できるだけ具体的な要件のもとにその例外を認める、かつ、その要件に該当するかどうかは厳正な社内審査手続のもとに認めるといったような点で、仮に、万一にも違法なものがございましたら、単に一外務員の問題ではなくて、会社の問題として責任が追及できる、そういったようなメカニズムをつくっていく、こういうことを現在検討しているところでございます。

塩川委員 具体的なガイドラインの問題については、また次回、きちんと聞かせていただきたいと思うんです。

 実際、この間、日弁連などの要求の中でも、両建てとか向かい玉とか、本来禁止すべきだというのに対して、今回入っていない。そういう点で極めて不十分な中身であるわけで、本来のやるべき委託者保護対策が行われていないと、率直に言えると思うんです。

 その背景に、私、資料の二枚目にお配りしたような、商品取引所の歴代理事長ポストに経済産業省と農林水産省からの天下りがある。この問題は大問題だ、この点に癒着のことが問われてくる、このことを指摘したい。

 あわせて、自民党との関係も問われてまいります。業界紙の先物協会ニュースは、〇三年一月号で、これはコピーがありますけれども、「先物取引所得税制 画期的な前進」、自民党税制改正大綱に盛り込まれるというふうに述べて、〇三年七月号の先物協会ニュースには、「私どもの要望がほぼ認められるという大きな成果をあげることが出来ました。」と述べて、税制面での前進があったと。これが結果として、被害急増の背景にもつながるような大きな問題になってきているわけです。

 その商品先物業界の六つの政治団体と商取会社からの政治資金収支報告書を調べてみましたら、自民党への政治献金が、わかる範囲で、二〇〇〇年、二〇〇一年、二〇〇二年の三年間で二億円を超える金額が入っています。私は、そういうところに政官業癒着があって、委託者保護が図られない、こういう問題が起こっている。こういう点をきちっと是正すべきだ。天下りの禁止をする、企業献金問題についても、こういう事業者から受け取らない、こういうことが必要だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

根本委員長 塩川委員、もう時間が経過しておりますので、御協力願います。

 では、副大臣。

坂本副大臣 確かに、経済産業省から商品取引所の役員に五名ほど行っていますが、これは個人としての見識、経験等が評価され、適材適所として配置されたものと思っています。

 商品取引所が中立公平に運営をされることが何よりも重要であると考えておりますから、かりそめにも監督行政の厳正さが損なわれているとの疑念を抱かれるようなことのないような適切な運営に努めてまいりたいと考えておりますし、また、政府、内閣の方で公務員制度改革に今取り組んでおりますから、当省としても、そのルールの確立に協力し、確立されたルールにつきましては、その精神を十分理解して、厳守していくようにしていくつもりであります。

塩川委員 献金問題へのお答えがありませんので、大臣、一言で結構ですから、ぜひお願いします。

中川国務大臣 献金は、小泉総理もよく言っておりますけれども、適法な、法律の範囲内で許されるものについては、きちっとした範囲内で行われるべきものだと考えております。

塩川委員 やはりこういう政官業の癒着を正してこそ、本当の意味での委託者保護と先物取引市場の健全化が図られる、このことを申し上げて、質問を終わります。

根本委員長 次回は、来る十四日水曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十三分散会


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