衆議院

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第13号 平成16年4月28日(水曜日)

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平成十六年四月二十八日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 根本  匠君

   理事 今井  宏君 理事 江渡 聡徳君

   理事 櫻田 義孝君 理事 塩谷  立君

   理事 鈴木 康友君 理事 田中 慶秋君

   理事 吉田  治君 理事 井上 義久君

      今村 雅弘君    宇野  治君

      遠藤 利明君    小野 晋也君

      上川 陽子君    川崎 二郎君

      小杉  隆君    佐藤 信二君

      菅  義偉君    谷  公一君

      西銘恒三郎君    平井 卓也君

      藤井 孝男君    松島みどり君

      宮路 和明君    梶原 康弘君

      菊田まきこ君    近藤 洋介君

      高山 智司君    樽井 良和君

      辻   惠君    中津川博郷君

      中山 義活君    計屋 圭宏君

      村井 宗明君    村越 祐民君

      渡辺  周君    江田 康幸君

      河上 覃雄君    塩川 鉄也君

      坂本 哲志君

    …………………………………

   経済産業大臣       中川 昭一君

   経済産業副大臣      坂本 剛二君

   経済産業副大臣      泉  信也君

   経済産業大臣政務官    江田 康幸君

   経済産業大臣政務官    菅  義偉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  小島 康壽君

   政府参考人

   (知的財産戦略本部事務局長)           荒井 寿光君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           丸山 剛司君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          豊田 正和君

   政府参考人

   (特許庁長官)      今井 康夫君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    迎  陽一君

   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十八日

 辞任         補欠選任

  小島 敏男君     宇野  治君

  松島みどり君     上川 陽子君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     小島 敏男君

  上川 陽子君     松島みどり君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)


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     ――――◇―――――

根本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官小島康壽君、知的財産戦略本部事務局長荒井寿光君、法務省刑事局長樋渡利秋君、文部科学省大臣官房審議官小田公彦君、文部科学省大臣官房審議官丸山剛司君、経済産業省商務情報政策局長豊田正和君、特許庁長官今井康夫君及び特許庁総務部長迎陽一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

根本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田治君。

吉田(治)委員 民主党・無所属クラブの吉田治でございます。

 まずは冒頭、今、国会で年金の議論が審議をされ、国民生活にも多大な影響を及ぼしてくる。まさに生活にかかわってきて、日本の経済の六割を占めますのが個人消費でありまして、個人消費を、ありていに言えば、財布のひもを緩くするためには、将来の安心感を持っていくということが非常に重要であります。

 そういう中で、今回、年金の議論の中でさまざま明らかになってきた、また官房長官を初めとする記者会見で明らかになってきたのが、国民年金、四割の方が入られていない。であるならば、内閣はどうなのかといった中で、この委員会を所轄します経済産業大臣、国民年金に未加入であった。一九八三年から約二十一年間。この辺の状況というのは、大臣、いかがなのか。それから、各副大臣、政務官、それぞれ、立法府ではありますけれども、議員ではありますけれども、今行政の一員として、やはり内閣法としての年金法を出された一員としての責任はあると思います。また、その責任の中には、国民に対して明らかに、自分たちはどうなのかという説明をする責任もあると思います。

 まずは大臣から、自分の未加入の状況等についてのお話と、それから、副大臣、政務官それぞれは、この国民年金といったもの、どういう状況になっているのかということ。

 御承知のとおり、議員年金がよく言われておりますが、普通、世の中で言いますと、厚生年金、共済年金という部分で言いますと、国民年金は基礎年金で入っております。しかし、私たちの議員年金は、国民年金は自分たちで加入をしていくという状況もあるという中、それぞれ、大臣、副大臣、政務官、御自身の加入状況等、御説明をいただきたいと思います。

中川国務大臣 おはようございます。

 今、吉田委員から御指摘のように、先週厚生労働委員会でも申し上げましたことを若干手短に繰り返させていただきますが、私は、昭和五十八年の二月まである企業の厚生年金に加入をしておりまして、全部企業が、国民年金それから二階建て厚生年金を給与天引きで払っていたわけでございます。その後、父親の急逝によりまして、会社をやめて選挙に出る準備をいたしまして、その間、私の友人の企業で雇われる形で健康保険と厚生年金に入っておりました。

 五十八年の十二月に衆議院に当選をさせていただいたわけでございますが、国会議員の国民年金に対する考え方というのは、昭和五十五年それから六十一年と制度変更がなされていたわけでございます。そういう中で、私は、五十八年十二月に当選して、国会議員互助年金というものがあるということで、これがいわゆる我々の納めるべき、また将来受け取るべき年金のすべてなんだろうと、初めて歳費をいただいたときにそう思ったわけでございます。

 そして、二週間半ほど前の週刊誌の問い合わせに私の秘書が、プライバシーにかかわるということで、お答えを差し控えた形の答えをしたところでございますが、ちょっと私も確認のために調べたところが、丸々国民年金に五十八年十二月以降未加入、今吉田委員おっしゃるとおり、未加入の状態が続いていたわけでございます。それで、制度も調べまして、さっき申し上げたような状況ということで、これはまずいということで、四月の十四日、今月の十四日付で国民年金に加入をし、制度上許されます過去二年分の未納年金分と、それから平成十六年度分、来年の三月までの分を前払いという形で、合計三カ年分を支払いをしたところでございます。

 この件に関しましては、私も、国民年金あるいは年金というのは、現役世代が年金を受け取る世代を支えるという賦課方式が大原則であるということは承知しておりますので、その二十年ちょっとの間、そしてまた、二年分は戻しましたけれども、十数年間にわたってそういう支える立場として未納であった、未加入であったということについては自分自身の無知ということで、大変国民の皆様に御迷惑をおかけしたと深く反省をしておるところでございます。

坂本副大臣 プライバシーにかかわる話でございますので、答弁は差し控えさせていただきます。(発言する者あり)

泉副大臣 せっかくのお尋ねでございますが、個人的なことにかかわることでございますので、お答えを差し控えさせていただきます。(発言する者あり)

菅大臣政務官 両副大臣と同様でございますので、控えさせていただきます。(発言する者あり)

江田大臣政務官 両副大臣、政務官と一緒でございますので、控えさせていただきます。(発言する者あり)

吉田(治)委員 今の答弁じゃ満足できません。ちょっと、理事、行ってください。ちょっと、速記とめさせてください。それはおかしい。(発言する者あり)

根本委員長 では、ちょっと速記とめて。

    〔速記中止〕

根本委員長 速記を起こしてください。

 理事会を開かせていただきます。

 暫時休憩いたします。

    午前九時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午前九時三十六分開議

根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。吉田治君。

吉田(治)委員 今理事会の方で、またこの問題について引き続きという中で、私は、議事録に残りますので申し上げますと、副大臣、政務官については、やはり閣法を、特許法という法律を出されている。内閣における連帯責任というものからかんがみたときに、大臣が自主的に自分の未加入について発言をしたからそれでよしと。プライバシーということを言われましたけれども、公人として、やはり国民の義務を果たしているのかどうか。しかも、国民の生活に多大な影響を及ぼす法案というものを出しているのでありますから、そこの部分は、与党がとか政府がということではなく、まさに大臣がなされたように、個人という部分をしっかりとお答えを出していただく、私はそのことが大前提になるのではないかなと思っております。

 そういう中で、大臣に立ち入ったことをお聞きいたしますけれども、これは、国民年金を二十一年間未加入であった、大臣の個人的な意見として、今は、昭和五十五年、六十一年に制度変更もあったという御発言がございました。この年金制度が随分ややこしい、そういう中でうっかりミスをしてしまった、そこまで至らなかった、年金と名がつけば自動的に国民年金も入っていたんではないか、そういうふうにお感じになられたというのはあったんでしょうか。いかがでしょうか。

中川国務大臣 ですから、先ほど申し上げたように、初めて歳費をいただいて、大変個人的な話で恐縮ですが、父親の仏前にそれを報告して、初めてそのときに詳細を見て、そのときに国会議員互助年金が幾ら引かれている、ああ、こういう年金があるんだと思ったことは、正直なところ事実でございます。

 私が先ほど申し上げたのは、六十一年に、国会議員は、それとは別に国民年金に強制加入ですよという法律改正があったときに、私は与党の議員でございますからそれに賛成をした立場なわけでございます。当然、それがあるにもかかわらず、引き続き自分の無知が継続して今日に至ったということを反省しているということもあえてつけ加えたということでございまして、あくまでも私自身の誤解というか無知というか、正直言って、関心の低さと言われれば私からは否定するのも、もうこれ以上弁解の余地がないわけでございます。

吉田(治)委員 要するに、それだけややこしい年金制度だと。うっかり勘違いをしてしまう、その法案に賛成をしてもということが私は言えるのではないかなと思うんですね。

 年金の議論は厚生労働委員会の担当ですので深くは申し上げませんが、その中で大臣、一つ、よりお聞きしたいのは、今回の年金の未加入の問題が出たときに、例えば五年前に大きな年金法の改正がございましたね。二十一年間議員をやられていて、今、五十五年、六十一年の話もされました。絶えずこういう年金の見直しがある中で、御自身の年金がどうなっているかということを御自身で考えられたり、またチェックをされたりということがあったのかなかったのか。とりわけ、国民年金に入られなかった女優さんの問題が出たときに、ああ、おれはどうだったろうかというふうな思いに至らなかったんですか。その辺はいかがなんですか。

中川国務大臣 何年か前に、厚生委員会か厚生労働委員会か忘れましたけれども、たしか、これは一たん強行採決をやって、やり直しをして採決をしたというような年金改革法の審議を、私はその委員会に所属しておりませんでしたけれども、記憶しております。

 そんなようなことがあり、また年金というものが、今後、少子高齢社会の中で非常に大きな問題になってくるということは、国会議員として漠然とは認識をしておりましたけれども、まことに申しわけないことでございますけれども、私自身については、そういう互助年金というものでカバーされているものだと。六十一年のことも含めまして、先ほど申し上げましたけれども、自分自身の問題として、無知のままつい先日まで来てしまったということでございます。

吉田(治)委員 私たち議員は、全員、確定申告を三月にいたします。大臣は、確定申告はどういうふうな形でなさっているんですか。

中川国務大臣 確定申告を毎年やっております。

 私も、確定申告の中に保険料控除というのがございまして、それも今回確認をいたしました。生命保険等の控除の申請はしました。

 これもまた大変申しわけないことでありますけれども、税理士さんに全部お任せをしておりまして、こういう報告でありますと。昔からの大変つき合いの長い税理士さんでございますので、すべてをお任せし、そして改めて確認をしたところ、国民年金は払っておりませんので、それについての控除の申請もしていなかったということが今回わかったわけで、これも、私自身の問題としてきちっとした確定申告の書類を精査していれば、国民年金に加入していなかったということがもっと早い段階でわかったというのが正直なところでございます。

吉田(治)委員 ということは、反対言うと、税理士さんからも指摘はなかったということですね。議員、こういうふうな年金に入っていませんねと。そういうことでよろしいんですか。

中川国務大臣 もちろん今までもございませんでしたし、今回確認をしたところ、ああ、そういえば国民年金のところが空欄になっていましたねということで、税理士さんから過去のことも含めてそういう報告を受けて、私自身、まことに申しわけないことだと思っております。

吉田(治)委員 大臣、私はこんなこと言うのは大変失礼かもしれないけれども、私たち議員というのは、歳費という形で国民の税金をいただいているわけでありまして、それをまた私たちは納税者として確定申告する。

 私個人のことを言っていかがかと思いますが、私は、もうその時期になると、全部領収書であるとかさまざまなものを集めて、自分であらあら書いて、税理士さんのところへ行っていかがですかとやる。そのときに、必ず保険料控除のところは税理士さんから言われるんですね。例えば私ですと、国民年金の銀行の一括引き落とし、一括引き落としされましたという通知書を持っていく。

 やはり大臣、今後の課題として、もう少し大臣としてというか、議員としてというんですか、国民の代表として、納税意識というもの、自分はどれだけ納めているんだと。まあ、私と大臣とはもう全然環境が違いますので、私のように、もうお金一円でもというのと、やはりその辺の部分、大臣との違いがあるのかもしれませんけれども、その辺についてどうこれからなされるのか、どうお考えになられるのか、ちょっと御答弁いただきたいと思います。

中川国務大臣 もちろん、確定申告の時期になりますと、私の手元にあるもの、あるいは事務所や家族が持っているもの等々の帳票を添えて税理士さんにお渡しをして、申告の手続をやっていただくわけでございまして、国民年金は払っておりませんでしたから、当然その部分について記載がなかったわけでございました。これはもう御指摘されるまでもなく、私自身の確定申告ですから、最終的な問題は私自身の責任ということになります。

 過去のことについては、もうこれ以上何を申し上げるつもりもございません。ただひたすら、私自身の無知と自分自身の国民年金に対する関心の低さといいましょうか、私ももちろん、まだ小さい子供もおりますし、扶養している母親もおりますし、できるだけ一円もおろそかにしてはいけないという気持ちは持っておるつもりでございます。

 今後のことにつきましては、これを大いなる反省材料として、自分自身の自己管理をより厳密にしていかなければならないというふうに思っております。

吉田(治)委員 まさにそこから先、確定申告というのは個人の話になりますので、私たちがとやかく言うことではないと思います。ただ、大臣におかれては、今お話しさせていただきましたように、例えば確定申告の中身、どういう控除があって、どういうものがあって、国民一人一人どういう生活をしているのかということを、やはり、税金の確定申告というのは、一番私たちは勉強できると思うんです。

 私は、年に一度の確定申告というのは、自分自身にとって、税金を考えること、そして国民生活を考えるもの、大事なものである。ですから、大臣は全部お任せしてと言いますけれども、私はあらあら数字まで出すんですね、自分で電卓たたいて。そして、最後の最後の間違いがないかというチェックだけを税理士さんにしていただくという形をとらせていただいています。ぜひとも、大臣におかれましても、大変公務がお忙しい中ですけれども、一年に一度ぐらいは私はそうすべきだと思うんです。

 そして、税理士さんもそう言われていました。やはり、税に携わっていて、そこの部分をしっかりと議員の先生方が自分でしてもらう、自分たちに任されたら何でもするけれども、何でもというか、ちゃんと確定申告の書類はつくるけれどもと。やはり、ぜひともそういう形を私は大臣に、過去の話は結構です、今後、ぜひともとっていただきたい。そして、こういうことを大臣が率先してやられることによって、ほかの方々が二度と起こらないような、はっきり言って、こういう質問というのはお互い嫌なものですから、個人のことだと言われたら、そうかなという部分もなきにしもあらずですので、その辺、お願いをしたいと思います。

 そして、もう一点、今大変大きな問題になっております日本歯科医師政治連盟からの献金問題につきまして、それぞれ大臣、副大臣、政務官、献金があるのかないのか。あれば、どういう状況なのかというのを簡潔にお答えいただければと思います。

中川国務大臣 日本歯科医師政治連盟から政治献金、それから関係者の皆さんとの会食等々は一切ございません。

 これも私からあえて申し上げますけれども、パーティー券につきましては、私は年に一回東京でパーティーをやっておりますが、二十万以上については収支報告をするということになっておりますが、それはございません。二十万以下についてあるかないかと言われれば、率直なところ、私はないと思っておりますけれども、ないということを証明するものがないわけでございまして、大変申しわけございませんが、そういう状況でございます。

坂本副大臣 日歯連からの献金その他、パーティー等は一切ございません。

泉副大臣 日歯連からのお力添えは全くございません。

菅大臣政務官 平成十年度に、後援会に対して五十万円供与いただいています。

江田大臣政務官 日歯連からの政治献金等、一切ございません。

吉田(治)委員 この問題を深く追及するつもりはございませんが、では、日歯連は、これは東京の本部と、それぞれの先生方の御地元の歯科医師会の政治連盟の方からの献金の中身、今お答えどおりでよろしいんですか。それぞれ大臣、副大臣、政務官。

中川国務大臣 私は、日歯連とのことについて御質問があったので、日歯連とは一切おつき合いがないということでございます。

坂本副大臣 地元はございます。

 県連から、平成十二年の選挙のときに二十万円陣中見舞い、それから、この間の選挙のときに三十万円陣中見舞い。いずれも政治資金規正法で適正な処理をさせていただいています。

泉副大臣 地元を含めてございません。

菅大臣政務官 十二年に、県の歯科医師政治連盟からも五十万供与いただいています。

江田大臣政務官 地元含めてございません。

吉田(治)委員 大臣、日歯連からということで、地元のことは答えられない、そういうことで御理解していいんですか。

中川国務大臣 想定問答というか、事前にいただいた御質問は、日歯連についてということだったので、地元北海道等については調べておりませんので、今早急に調べさせて、きょうじゅうにお答えをさせていただければというふうに思います。

吉田(治)委員 では、後、同僚議員の質問の中で御質問させていただければと思っております。(中川国務大臣「わかりました」と呼ぶ)はい、どうぞ。

中川国務大臣 平成十二年に北海道歯科医師政治連盟から五十万円、それから、十五年も北海道歯科医師政治連盟から同じく五十万円の政治献金をいただいております。

吉田(治)委員 わかりました。この問題はこれぐらいにしまして、特許法の問題に入っていきたいと思います。

 特許法の今回の法案の大きな問題は、審査を迅速化するということと、それから、いわゆる「職務発明」という部分、三十五条という部分でございますので、その辺含めて御質問させていただきたいと思います。

 まず、特許法三十五条の法改正において、「契約、勤務規則」という言葉が出てまいります。このことについて、長官の方から、どの部分まで含められるのか、どういうふうなものが具体的に出てくるのか。

 このことについては、私はぜひとも発言しておきたいのは、最終的にはこれは裁判でかかってまいりますね。裁判官が、この国会で、この委員会でこんな審議がなされた、また附帯決議が例えば出たことというものは、多分ほとんど一顧だにされないと思うんですね。結果として裁判官は、出てきた法の条文と、それぞれ原告、被告側の弁護士さんの発言で判決を書かれるということになりますと、今回この特許法三十五条の「職務発明」についての議論は、法文として非常に大事だ、そして、それと同時に、法文が変えられないという場合であるならば、では、そこの部分、いわゆる指導、通達というふうなものが行政から出てまいります、またガイドラインという公の文書が出てまいります、これは非常に裁判にとっても大きな意味を持つと私は法曹関係の方にお聞きをしております。

 その部分について、まず契約、勤務規則等についてどういうふうにお考えになられているのか、お願いをしたいと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、特許法三十五条、先生御指摘のように、「契約、勤務規則その他の定」によって、職務発明について、企業が研究者からのその権利の承継を認めているところでございますが、この「契約、勤務規則その他の定」、これは改正法でも同じ規定でございますけれども、その内容といたしましては、例えば、発明ごとに個別に取り交わされている契約、労働契約、労働協約、それから就業規則、それから、就業規則ではありませんけれども、企業が定めております報償規程とか職務発明規程、こういうものが広く含まれるということが通説でございます。

吉田(治)委員 今、労働協約という言葉等を言われましたけれども、では、そういう具体的な中身については、今後、この法案が成立を見たときに、特許庁として、どういうふうに広く公布をし、例えば指導を出すのか通達を出すのか、どういう形を考えていらっしゃいますか。

今井政府参考人 今般の法改正におきまして、後ほど御議論があろうかと思いますけれども、三十五条の改正で、何が合理的な手続なのか不合理な手続なのかということで、私どもは、審議会からの御指摘もありましたし、事例集という、言ってみれば解釈通達といいますか、そういう事例集というものをつくっていくことにしております。

 その中で、今申し上げました労働協約、こういうものの位置づけ、これは今後、今回の法改正というのが手続をしっかりしていこうということでございますので、労働協約というのが一つの大きな有力な手段になるということだと思いますけれども、そういうものをその事例集の中で、それ以外にもいろんなやり方がありますと、そういうことの中の一つの大きな例として位置づけていきたい、それをまた広報ないし一般的に御説明をしていきたいというふうに思っております。

吉田(治)委員 では、しっかりとした文書として、通達という形で出すということでよろしいですね。

今井政府参考人 これは恐らく、審議会の議も経まして、御相談申し上げまして、文書の形できちっとして出させていただきたいと思っております。

吉田(治)委員 細かいことなんですけれども、本当につまらないことなんですけれども、三十五条の三項の「その他の定め」を「め」という言葉を入れたのは、何か特別に意味があるんですか。もともとの法文では「その他の定」と、「定」という字で終わりなんですけれども、改正案では「め」という平仮名を入れているんですね。これは何なんですか。

今井政府参考人 法律、個々に改正をするときに、新しい仮名遣いということで直している部分がございます。今回も、この「め」というのは、新しい仮名遣いということで御理解いただきたいと思います。

吉田(治)委員 わかりました。それだったら結構です。何か特別な意味が含まれていたら、てにをは一点で随分法文というのは変わる、まさに裁判官が見たときに何なんだということになっては困りますので、確認をさせていただいた次第であります。

 それで、その次の新四項の中で、「対価を支払うことが不合理と認められるものであつてはならない。」と規定されているんですけれども、読んでいてすっとわからないんですね。論理構成そのものがわかりませんし、場合によったら、裁判においてこれは従業員の側が不合理性を立証しなければならないことになるのか。この辺、先ほどの話にありましたように、事例集であるとか解釈通達というふうな中でどういうふうにこの部分は押さえられるのか、どういうふうに解釈をしていくのか。いかがですか、特許庁長官。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法律改正の趣旨は、企業の経営環境だとか経営戦略だとか社風だとか、それぞれの企業が違いますし、それぞれの製品も違います。そういう中で、職務発明についてどういうふうに決めていったらいいかといいますと、それを一番よく知っている発明者と企業とがきちっと議論をして決めていく、そういうものでやっていきたいということでございます。

 その場合に、その決め方が、やはり企業と発明者の間では情報量でありますとか力というものに格差がございますので、そこを是正していかなきゃならないということで、それが不合理、特に手続的に不合理なものについては、最終的には裁判所でそれを不合理の場合には決め直すということが今回の趣旨でございます。

 その場合に、確かに、不合理ということにつきましては発明者の方が立証していただくことになりますが、これは言ってみれば手続でございますので、その手続が非常に自分はないがしろにされたとかいう意味で、ある意味ではその立証の難しさというのはそれほどでもないかもしれない。それから、具体的な裁判におきましては、裁判長の釈明権ということで、実際の証明の負担は企業が負っているのが通常だと思っております。

 また、先生御指摘の事例集におきましても、その不合理で、こういうものはだめなんだ、これはだめなんだということにつきましては、事例集でもなるべく明確にしていきたいというふうに思っております。

吉田(治)委員 確認ですけれども、では、不合理の立証責任というものは発明者側、まあ大体裁判を起こす方は発明者側ですよね。裁判を起こす方がする、企業側はそれを被告として受けとめて対応方をしていく、そういう理解でいいわけですか。

今井政府参考人 そういうふうに考えております。

吉田(治)委員 それであるなら、立証責任というのは本当は使用者側にあるべきものではないんですか。先ほど長官言われましたよね、情報量にしても力にしても圧倒的に企業側が強い。強い企業側に立証責任がなくて、弱い方の発明者の方に立証責任を持たせる、これは矛盾しているじゃないですか、言っていることが。どうなんですか。

今井政府参考人 証明責任につきましては、今の法律でいいますと、やはり不合理であるということを立証するのは研究者サイドになりますけれども、この場合に、研究者のサイドといたしましては、対価を決定するための基準の策定に際して、協議をどのように受けたのか、どういうことであったのか、それから開示されているのかどうか、こういう自分が経験した手続を挙げて不合理性を主張して立証するということでございますので、私どもは、それほど難しいことではないというふうに思います。

 それから、実際の訴訟実務におきましては、現行法におきましても、相当の対価の支払いを要求するのは研究者のサイドでございますが、実際の訴訟実務を見ておりますと、幾らが相当の対価であるのかというのを立証しているのは、むしろ、裁判所の訴訟指揮によりまして企業側が負担をしているというのが現実でございます。

吉田(治)委員 ここの不合理性という文言が非常にわかりづらいんですよね。「不合理と認められるものであつてはならない。」と。なぜこんな文言になったのか。審議会等があったという、立証責任の部分ですっきりするのであれば、ここの立証責任を企業側に明確化するとか。何でこんな文章になったんですか、法作成の段階で。

今井政府参考人 それは、先ほど申しましたように、今回の趣旨というのは、可能な限り、双方が自主的に取り決めていくものを尊重しようと。それに対して行政とか法的に余り介入をするべきではないというのが基本的な審議会における議論でもございましたので、そういうものを踏まえて、このように、不合理なものについてはそれをもう一度裁判所が再チェックをする。基本的には、当事者、発明者サイド、従業者サイド、組合サイドといいますか、そういうサイドと企業との間のきちっとした議論で決めていただくのが一番いい、それを逸脱するようなときに裁判所がこれに介入をするというのがいいというのが今回の考え方でございます。

吉田(治)委員 やはり、もうちょっとそれは、長官の一番最初の答弁にあったように、情報と力が弱い方に対して立証責任を緩めるということは私は必要じゃないかなと非常に強く感じるんですね。だから、合理的な場合であると認められる場合を除き無効にするとか、合理性の責任というものがやはり企業側にも必要になってくるんじゃないかなということを私は強く感じるということで、この問題についての議論は後ほどにさせてもらいたいと思うんです。

 そして、今長官の方で、相当な対価という言葉が出てまいりました。これは非常に、極めて日本的な文章ですよね。パーセンテージも出てこなければ、何をどうするのかと。今、長官のお答えの中においては、要求されて、裁判所の方で、どちらかというと企業側をと。相当な対価というのは、だれがどういうふうに、なぜ判断をするのか。よく言われているように、職務発明というのは、発明が終わって、何年かたって、会社の御縁も切れて、どうも考えたら、おれがやったものは大もうけしておるみたいやないか、それを、おれもえらい目に遭うたんやから少しよこせというふうに思うという一面もあると聞いておりますし、相当な対価の立証責任というのが、ここはちょっと非常に不明確というんですか、どこを相当なと言うのか。

 本当は大臣に質問したいぐらいなんですけれども、日本というのはこれから海外から投資を呼ぶんですよね、国内経済厳しい中で。海外から投資をしてもらうということは、海外のお客さんは何を考えているのかと。私は、この三十五条というふうなものは、単に国内問題、いわゆる味の素であるとか発光ダイオードであるとか、固有名詞出していかがですけれども、そういう問題が起こって慌てて国内企業のためにしたということよりも、どちらかというと、この法文については、英語に直したときに、海外の企業が日本をどう見るか、私は非常にこれがあると思うんですよ、中途半端なままでいくと。

 まず一点目は、この相当な対価というのは、もう一度長官、どう考えて、だれがどう立証するのか。二点目、英語に直したらどう直すんですか、ここの文章のところは。英訳するわけでしょう。外国の企業が日本へ投資をするといったとき、研究開発型企業を日本へ出してくる。日本人、優秀だ、いい人たちもいっぱいいてる、研究者もいてる、反対言ったらこれはリスクになりますね、職務発明というのは、海外投資からすると。

 だから、リスクというものを考えたときに、読むのは英文ですよね。私たちは、相当な対価というと、何となしに、ぼやっと、ああ、こんなものかなと。出てきた法文、高いな、安いな、ぎょうさんもうけはってええなということになりますけれども、そこのところは物すごく大事だと思うんです。ここはいかがですか。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、これまで相当な対価ということで法律が書かれておりますので、それが幾らなのかというのがなかなか事前にわからない。したがいまして、裁判におきまして最終的に決まるということになりますと、企業は法的安定性がない。それから、一方、研究者のサイドからしましても、自分の発明が幾らに評価されるのか、どの程度企業にとってポジティブな評価を受けるのかということも、相当な対価ということではわからないということでございました。

 したがいまして、今般の改正は、企業と発明者の間で議論を尽くして、その対価の決め方をルールを決めるということになりますと、それを裁判所が尊重するということにいたしておりますので、その意味では透明性は格段と上がった。

 企業が、その中で、今まででありますと、オリンパス判決というのがございましたけれども、企業が幾ら中で企業内ルールをつくりましても、それを最終的に裁判所でこれでは足りないということになってしまっておったのが現実でございます。今度の場合は、両方の当事者が議論を尽くしてルールを決めた場合は、そのルールに従うということが大原則になります。恐らく、ほとんどのケースはそれに当たると思います。その決め方が非常に不合理であるとかいう場合に、裁判所はもう一遍原点に戻って、幾らが適切なのかということを決めることになりますので、その意味では、海外から見た場合の日本の法の、本件三十五条の問題というものの透明性は格段に上がったというふうに私どもは理解しております。

吉田(治)委員 それは本当に上がるんですかね。そういうふうな形で透明性というものがはっと理解できるんでしょうかね。その、事前のルールだと、でも、裁判によってしかこれは変わらないわけでしょう、最終的には。今、そういうふうに幾ら長官が言われても、不合理性だ、相当な対価だというふうな部分というのは、事前のルールだといっても、リスクがそこにあるわけですよね、海外から例えば日本へ進出している場合に。今の日本の企業の中にも、そこの部分というのはリスクが出てくる。

 私は、相当な対価というものを否定する立場では決してありません。それは、研究者の側からすれば、やった部分はやはり成果は欲しいなという部分はあると思います。その部分というのが非常にわかりづらいし、皆言いづらい。その辺、いかがなんですか。もう一度。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法律改正というのは、何度も繰り返しますけれども、発明者サイドと企業のサイドが意を尽くして、どういうルールで発明があって利益が上がった場合に分配するといいますか、そういう報償を与える、対価を与えるかということをきちっと決めるわけでございます。

 これまでの法律でありますとか裁判所の判断でいいますと、それは幾ら企業がそういう努力をしても、最終的に裁判所が、そうではないんだ、客観的にはこれが相当な対価なんだということを言ってしまいますと、それで全部覆るということがございます。今度は、その意味で、きちっとした手続を踏んでもらって、それが開示されれば、それが裁判所が相当な対価と認定するわけでございますので、その意味で、相当な対価というものの法律上の概念が変わったというふうに思っておりまして、むしろ、それがこれから主流になってくる。

 そうすると、手続をきちっとして事前に発明についての規程をつくっていただく、これがこれからの企業の課題でもございますし、企業がその意味で、先生おっしゃった、発明者と向き合って努力をして、一生懸命、発明者の意向も酌みながら、それから企業の置かれている状況も説明しながら決めていったルールというものが、新しく日本における発明における企業と発明者の関係になるわけでございますから、これは、私どもは、こういう新しい考え方で発明の奨励を進めていくことがよかろうということで、今回法律をお願いしたところでございます。

吉田(治)委員 英語に直すと、では、前の相当な対価と今度の相当な対価は、言葉が変わるんですか。

今井政府参考人 英語につきましては、アディクワットということでこれまで翻訳をしてきたそうでございます。

 今般は、その意味で、先生おっしゃったように、四項で手続がきちっとして決まってくる相当な対価と、それから五項で、その手続が不合理なんで、最終的には従来どおり裁判所が決める相当な対価という二本立てになってくるわけでございますので、ちょっとそこのところ、やはり日本へ入ってこられる企業に対してこの三十五条についても大いにPRしなきゃならないと思いますので、翻訳等について十分考えさせていただきます。

吉田(治)委員 アディクワットという言葉を言われました。本当に、言葉一つで語感が、日本人も言葉は、同じ意味でも発音とか中身で違うんですから、ぜひとも守っていただきたいのと、先ほど言った解釈通達についても、これも英訳を出すということでよろしいんですか。

今井政府参考人 ぜひとも、そうさせていただきたい。きょうの御議論を聞かせていただきますと、私ども、努力したいと思います。

吉田(治)委員 その中であと一つ、こうして今議論されたこの法案が通った後に、法の遡及という問題、これは非常に難しい問題でして、これはこの条文の最後の方に出てまいりますけれども、要するに、この法律ができてから後の発明についてこの法律が適用される、それまでの発明については従前の、今までの法律が適用されていくんだ、そういうふうに解釈してよろしいですか。

今井政府参考人 先生のおっしゃるとおりでございます。

吉田(治)委員 それなら、法律ができても、極端なことを言ったら、十年、二十年は新しい法律は適用されないということと同じことになりますよね。つまり、先ほど申し上げたとおり、今の職務発明の裁判というのはほとんど、勤められた方がやめられる、もしくは定年退職を迎えられる、そして、なおかつ、その発明したものが商品化をされてよく売れたと。それには、やはり発明から販売まで、そしてその販売実績が積まれるまでというのは、十年、二十年かかるわけですね。

 だから、きょうこの法案がこの国会で通過をしたとしても、今から十年、二十年、長官はお幾つになられるか、私が幾つになるか申し上げませんけれども、その年まで、私たちとしては、法案はつくったけれども日の目を見ない。裁判所の方は、この法案、いつの発明やということでいうと、ようやく十年か二十年したら、あの法案がと。そのころになったら、この法案は実はもう古いものになってしまっているということは、なり得る可能性があるんじゃないですか。それがどういうふうに裁判というものの中で担保をしていくのか、どういうふうに働きかけをしていくのか。

 例えば、これには大きく日弁連、弁護士さんの世界もかかわってくるでしょうし、司法と行政と立法という三権分立という非常に日本にとって大切な統治機構がありますけれども、そこに対してどう働きかけていくのか。これは遡及法でできない。遡及法でやったのは、残念なことに、わけのわからぬ東京裁判だけだったというのが今日本で現実にあるんですけれども、それができないのであるならば、どう行政として、これからこの部分、遡及という部分で担保していくのか。

今井政府参考人 先生御指摘のように、私が先ほど申しましたように、遡及させて新しいルールを既に発生している請求権に対して適用するということは、法的に非常に困難であると思います。それが附則で書いた趣旨、確認的に書いたものでございます。

 ただ、本件については、研究者と企業が協議を尽くして一つのルールを決めて、今であったならばこういう対価が好ましいということをみんなで決めるわけでございます。そういうものを司法の場において、新しい法律ができたこと、それから、新しい法律に基づいて発明者と企業が議論を尽くしてルールを決めて、これでいこうということを決められた、そういうものを、今後は、何か裁判が出てきた場合に、そういうものが参酌されるんではないかということを私どもは期待するわけでございます。

 また、この法律改正の趣旨、国会審議の趣旨については、私どもは、対外的にはきちっと広報していきたいというふうに思っております。

 また、もう一つ、これは参考人意見陳述のときにも、竹田先生、昔の高裁の判事さんでございますけれども、お話がありましたが、もし両当事者が既に過去のものについて、既に過去のものというのは一応請求権が発生しているわけでございますけれども、新しいルールでそれを仕切る、新しいルールで解決していきましょうというような新しい契約を結んだ場合に、その契約の有効性ということについては、議論が最終的には裁判所の問題でございまして、民事法の問題になろうかと思いますので、私どもが申し上げることができないわけでございますが、一つ、そういう意味で、新しいルールに基づいて契約をし直す、個別の契約をし直すとしたときにそれが生きてくる可能性があるというのは、私どもとしてはそういう期待は持っているわけでございます。

吉田(治)委員 期待だけじゃなくて具体的に、例えばいわゆる経済界、私は、大きい意味で言ったら、この問題は、大企業はもうよく見ているんです。中小企業の経営者が一番これは、ぴんときているのかどうかは別にして、町工場から発明によって大きくなった会社もたくさんあります、中小企業に向けてこのことをどういうふうに広報していくのか。期待じゃだめだと思うんです。

 もう一つは、やはり司法の実務、裁判所がということになると、裁判所に対して訴訟を起こしていくのは弁護士ですから、例えば日本弁護士連合会であるとか各地の弁護士会とか、実際、実務に携わるこの二つの部分、これに対してどういうふうに特許庁として、これから、この法案の中身、またこれが決まった後の中身とか、附帯決議がついたら附帯決議の中身とか、広げていく予定であり、つもりじゃなくて、予定はどういうふうに考えていらっしゃるのか。

今井政府参考人 今回の法律は大変重い法律でございますので、法律ができましたとき、従来からも、地方について、地方で中小企業の方も集まっていただいて、説明会を随分やってまいりました。これを十分にやっていきたいというふうに思います。

 それから、弁護士会の方につきましては、従来より、この法律の成立過程の段階において御相談を申し上げているところでございますし、この法律については基本的に御賛同をちょうだいしておりますが、国会審議の内容も含めて、議論を紹介させていただきたいというふうに思います。

吉田(治)委員 できるだけ、インターネット等も使っていただいて、多分、これはいつも、大臣、皆さんに話をするときに、広報をどうするかというと旧来型なんですね。要するに、地方の商工会議所だとか商工会だとか、今、新しい会社で、いわゆるベンチャーを含めて、これから頑張るというのはほとんどそういうところに入らないんですね。先日も法改正があったように、まさにそういう企業は、自分らそういうところは関係ないと。こんなこと言ったらよくないですけれども、そんなおっさんの集まりなんか行っても商売にならぬというふうな部分が広がっているということは、反対言うとやりづらい部分はあると思うんです。広くあまねく知ってもらうということに私はもっと傾注してもらうと同時に、間間で、この大事な法案が終わった後に、特許庁から、こういうふうにやってと説明をぜひともいただきたい。その辺いかがなんですか。

今井政府参考人 私ども、前国会のときの御議論もありまして、中小企業の出願人の会社、約四万社でございますが、これにつきまして、全部それをコンピューターから打ち出しまして、中小企業に対する諸施策、知的財産、それから早期審査でございますとか特許の審査料の減免制度でございますとか、そういうものについてパンフレットをつくりまして、全社にお配りいたしました。これは出願をしている企業でございます。

 こういうことについても、今後、この法律につきましての趣旨、それから注意事項、先ほどの事例集、こういうものも含めて対応していきたいというふうに思います。

吉田(治)委員 時間もなくなってきましたので、三十五条については、また同僚議員の方が詳しく質問するかと思いますので、私の方はあと、特許法を含めた知的財産について、まず一点目は、侵害訴訟代理業務試験というものが行われました。弁理士の先生方も、弁護士の先生方と一緒に共同受任ができるようになったということですけれども、この業務試験について、その以前の講習というんですか、そういうことを含めて、どういう状況になっているんでしょうか、どういう結果だったんでしょうか。

今井政府参考人 御指摘のいわゆる付記弁理士の研修及び試験でございますけれども、研修につきましては、経済産業大臣が承認した研修実施計画に基づきまして、弁理士会が実施しているところでございます。

 この研修実施計画は、弁護士の先生、判事さん、それから裁判所の事務官、大学教授、産業界の方々に委員として参加いただきまして、その実施計画の内容を定めたものでございます。具体的には、実務手続、それから特定侵害訴訟に関する法令等、約四カ月間、延べ四十五時間の研修をしているところでございます。

 また、試験につきましては、これは工業所有権審議会が実施しておりますけれども、委員の方々はほとんど弁護士の方々に参加してもらっておりまして、試験をしていただいております。

 そして、昨年の十月二十六日に試験を実施いたしまして、研修をお受けになられた弁理士さん八百四十名、八百四名が受験しまして五百五十三名が合格されたということで、合格率は六八・八%でございました。

吉田(治)委員 極めて高率ですよね、合格率。いいとか悪いとか申しません。ただ、共同受任だからこれだけの合格率になったということはいかがなんですか。もしもこれが、単独で受任をするというふうな試験であったならば、ならばの話ですよ、どういうふうに、単独な場合だったら、長官、試験を全般見られる担当長官として、共同だからこの数なのか、単独でもこういうふうになるのか、その辺はいかがお考えになられますか。

今井政府参考人 試験につきましては、事前に、今申しましたけれども、弁護士の方々がほとんどであります工業所有権審議会のその試験の部会の方で御協力を得て実施したところでございます。

 試験の内容につきましては、事例問題を二題出すんだそうでございますけれども、これで民法、民事訴訟の論点についての知見を問うということでございます。

 そして、合格基準につきましては、その委員会の中で事前に、こういう採点基準にしてこれを合格ラインにするということをお決めいただいているところでございますので、先生おっしゃったように、これだからこれだ、付記だからこうだとか、そういうことではなくて、やはり訴訟をやるのにたえられるかどうかということを判断基準にしているというふうに考えております。

吉田(治)委員 ということは、大前提として、共同受任の試験だ、そういうことですね。だから、訴状を書くような試験じゃなくて、とにかく弁護士さんと一緒でしかできない試験をしたということでいいですね。

今井政府参考人 現在のいわゆる付記弁理士制度はそういう制度でございますので、今先生おっしゃったような能力を、試験をして厳正に対応しているところでございます。

吉田(治)委員 弁護士の先生方にしたらそうでしょうね。商売がたきに一生懸命教えてやって試験を通らせてということにもなりかねませんわね、考えたら。それだけ献身的な先生方が多いのかなということも感じたりするんですけれども。

 そういう中で、きょうは知財戦略本部の事務局長さんがおいでで、元特許庁の長官で、法案審議もなされた中で、今回の特許法三十五条の改正について、まずはどういうふうな御意見を持たれているのかというのが一点。もう一点は、もっと質問したいんですけれども、私、法務委員会で事務局長をお呼びしていますので、そこで詳しく質問させていただきたいと思いますけれども、日本の知財戦略というふうなものについて、どういう観点で事務局として対応方をされているのか、大くくりな話。最後、ちょっと大臣に質問をしたいものですから、簡単で結構でございます。長いことお待たせしましたけれども、御答弁お願いします。

荒井政府参考人 お答え申し上げます。

 特許法の三十五条の改正につきましては、特許庁が中心になりまして、いろいろな方の御意見を聞いて、時間をかけて、政府全体として閣議決定をして提案されたということで、現時点において各方面の皆さん方の意見をまとめたものだというふうに承知しております。

 それから、知的財産戦略をどのような気持ちでどう進めているかということでございますが、これは、日本人の持っている発明をする能力、創作する能力、このすばらしい能力をどんどん発揮してもらって、世界に誇れるような立派な国になろうという考え方のもとに、知的財産本部というものをつくって、そしてそのもとに専門調査会とか、それからパブリックコメントでいつも御意見をお伺いして、いろいろな方の御意見を聞いて、日本じゅうの人たちが誇れるような知財の国になる、これによって世界の文化、そして文明に貢献する、こんな気持ちでやっております。

吉田(治)委員 時間がないので、議論できないんですけれども、産業スパイ事件というのがありましたよね、理化学研究所の。あの問題なんかを見てみますと、やはり日本人というのはまじめだと思うんですよ。一生懸命やって、やり過ぎると、今事務局長が言われたように、がんがんやっていって、私ら学生時代は日本の基礎研究の特許数というのは物すごく少なかったんです、アメリカに比べて。今アメリカを超していますよね。そうすると、アメリカからすると、また日本のやつらは、知財やいうて教えたらこんなことを始めてと、一発かまさなという言い方はよくないかもしれませんけれども、どんとしとかなあかんなということが私は起こるんだと思うんですね。私は、そのことはちょっと、また別の議論をさせていただきたいと思います。

 そして、最後、大臣に。こうして知財の話をしていて、私はこのごろ、ふと思うんですけれども、CD、これは著作権ですから委員会が違いますけれども、日本で売っているCDが逆輸入されて安い、それが困るから法改正してくれと、同じ知財という部分でいったら、そこへ出てきます。

 知的財産、知的財産といって守るのは、私は結構だと思うんです。大切なことだと思います、知財戦略というものは。しかし、結果としてそのことが、先ほど長官にも御質問しましたように、中小企業にとって大変使いづらいものになったり、またもう一点は、これは、この観点というのをどう大臣お考えになられているか、最後お聞きしたいんですけれども、消費者にとって、知財というものを守れば守るほど、結果として消費者は高いものを買うのかなと。

 今申し上げましたように、別の委員会ではありますけれども、CDの逆輸入、今まで安いものを買っていたけれども、それがだめよと。あれはどうも、聞きますと、世界じゅうで日本しかああいう法律をつくらないという話も聞いているんですけれども、では反対言ったら、その値段でもうかっているのに日本じゃ高い値段で売って、よりたくさんもうけている、だから逆輸入をやめるかわりに国内の価格を下げようとか、そんな話じゃ全然ないですよね。

 だから、知財をすることによって、今ふとこのごろ思うのは、やればやるほど、知財というものを活用できる、知財をうまく利用できる人たちだけが富んでいき、それ以外の人たちは知財という名前によって、搾取という言葉は古い言い方かもしれませんけれども、より高いものを買わされる可能性も出てくるんじゃないかな。私はそういうふうに危惧の念を持つんですけれども、私は、これから知財政策を進める中で、中小企業の問題と消費者、とりわけカスタマー、消費者について、大臣としてどういうふうに、これは大臣、多分答弁は、いや、やったらええもんがぎょうさん入るんやということになるかもしれませんけれども、ちょっとその視点をお聞かせいただければと思うと同時に、今たまたま確定申告書がやってまいりましたので、また、大臣、こういうふうなことを国民は毎年毎年書いているんだと。お渡ししますので、よく見て、来年からは御自身でされるようにお願いしたいと思います。

中川国務大臣 先ほどから吉田委員と特許庁長官の話を聞いておりまして、率直に申し上げて、相当の対価とか不合理でないことというのはどうなんだということを、私もにわか勉強でございましたので、随分と教えてもらったというか、議論をしたというのが率直な打ち明け話でございます。

 明治十八年ですか、特許に関する法制度が日本でできまして、随分と変わってきているわけですね。そして、この法律は昭和三十四年に制定された。その後もずうっと変わってきている。これは、ある意味では、しようがないという言い方は不適切かもしれませんけれども、先端の、今までやったことのないことに対しての対応の制度ですから、やはり最後は裁判によってということも含めて法的安定性というものが確立されるという中で、順次、おくれて行ってはいけませんので、まあ、前に行ってもいけないでしょう、何といいましょうか、さっきの委員のように十年、二十年たたないとこの法律の効果が出ないということがあってはならないんだろうと思います。

 そういう観点で、この迅速化の問題とか、実用新案の問題も含めて御議論をいただいているわけでございますけれども、この三十五条に関しては、私は、まず、特許を保護する、これは大事だと思うんです。大事だというのは、やはりそのインセンティブ、あるいはまた、それによって当然利益を受けるという観点、それから、さっきちょっとお話がありましたけれども、やはり海外とのこれからの知財競争というものに対して、外国から見て日本がわからないと言われることもこれは避けなければなりませんけれども、日本できちっとした知財の法制度をつくって、逆に外国に大事な知財が盗まれていくことを防ぐということも大きな観点だと思います。

 それから、直接の御質問でありますけれども、中小企業の皆さんに対しては、既に去年からですか、手数料等、特許料申請あるいは特許の保護のための費用についても割引というか軽減しているわけでございまして、中小企業はやりにくいということに対して、我々は、中小企業からベンチャーを育て、今の世界に冠たる日本の企業ももともとは町工場、中小零細企業であって、そこからああいうふうに成長していき、これから第二、第三の、あるいは第十、第百のそういう企業をつくっていかなければいけない、インセンティブにしなければならない。と同時に、消費者との関係、コストとの関係をどうするかということも大事な視点だろうと思います。

 レコードにつきまして、今、これは著作権法の御審議だと思いますけれども、日本の著作物を海外でつくると安くできちゃって、それが日本に入ってくるときにどういうふうにするかというのは、率直に言ってなかなか難しい問題だろうと思います。

 つまり、無体財産権をどういうふうに評価するかということと、物財費とか人件費が向こうでつくれば当然安いという問題があるわけでございますから、その辺は、例えば個人輸入についてだけ認めますよとか、いろいろな配慮も必要だと思いますけれども、やはり守ることによってさらに技術や新しい特許がどんどんと発展をしていく、そして、それがまたみんなに有効活用していただくということで、白か黒かとか、どっちのためだけの問題だとか、そういうことではなく、うまくバランスをとりながら、海外との関係、中小企業に対する配慮、そして消費者も十分視野に入れた形で、安定性のある総合的な知的財産権の保護と有効活用、有効利用という観点からこの問題に取り組んでいく大事な御議論が続いてきょう御審議をいただいているというふうに思っております。

吉田(治)委員 もう時間で終わりますけれども、CDについては逆輸入です。日本でつくって持っていったのが返ってくるものですから。向こうでつくるものの輸入じゃなかったと思います。だからおかしいと言うのです、そこの値段がそれだけ違うのは。ということだけ指摘させていただきまして、終わらせていただきます。

 以上でございます。

根本委員長 次に、中津川博郷君。

中津川委員 民主党の中津川博郷でございます。

 経済産業委員会でございますので、質疑に入る前に、きょうは実は、大臣、大変な記念日というかすごい日ということなんです。通告していなかったものですが、別に記念日といったってサラダ記念日じゃなくて、これは実は、昨年の本日、四月二十八日、バブル以降の株価が最安値、七千六百七円、そして東証一部の時価総額二百二十九兆円、もう株がゼロになっちゃうんじゃないかというような恐怖の日だったんですね。

 きょう、あれから一年たったわけでありますが、昨日が一万二千四十四円、時価総額三百六十二兆円ということで、確かに経済のファンダメンタルズはよくなっているというような論調が今国内主流ですが、しかし、考えてみると、政府の、小泉さんの緊縮財政、それから実質増税政策、それから経済無策というか何もやってこなかった、こういうことで、民間が頑張らなきゃいけないということで頑張ってきた部分というのはあるわけでありますが、何か今非常に楽観論が強いというふうに私は思っておりますが、私は大変厳しく見ているんですよ。

 というのは、デフレ脱却、難しいのじゃないか。きょう、ちょうど各新聞で、大手銀行の特別検査の結果が出ましたね。厳しく査定しろ、そうすると当然引当金を積まなきゃいけない、こういうようなことで、多分参議院選が終わったら、もう小泉さんは怖いものないわけですから、がむしゃらに、急速に、今までどおりわけもわからず不良債権処理を進めていって、私は、その意味では、この一万一千、二千円、このあたりでちょろちょろして、本当に回復まではまだまだ時間がかかると思っておるんです。

 その辺の中川大臣の認識をひとつお聞きしたいと思います。

中川国務大臣 きょうが株価最低から一年というお話は初めて聞いて、大変勉強になりました。

 政府としては、回復基調にあるとか兆しが見えるという言い方をしておりますが、これを楽観論と仮に言うとするならば、私も、率直に言って経済産業大臣という立場からは、悲観ではございませんけれども、まだまだ油断ができない状況が続いているというのが私の認識でございます。

 よりミクロで見た場合に、地域の格差が一段と大きくなっている。具体的には、例えば東海とか、あるいは東京を中心とした関東といった地域と、私の地元でございますけれども北海道とか、南九州、沖縄といった地域とか、あるいはまた業種、あるいはまた企業別で依然として、二極化と言う方もおられますけれども、いいところと悪いところがはっきりしている。それから、雇用の問題、失業率、特に若年失業率の問題が、依然として五%、あるいは若年は一〇%前後ということ。

 それから、最近特に私どもが注視しておりますのは、原材料価格が非常に上がってきている。これは、中国ということがよく言われますけれども、アメリカもヨーロッパも日本も含めて、中国自身も大変困っているというか関心を持っておるようでありますけれども、日本は輸入して輸出する国ですから、そういうものの値段が高くなることでどこかにしわ寄せがいく可能性があってはならないということで、注意深く見守っているわけでございます。

 私自身、最悪の状況は脱したとは思いますけれども、個別に見て、今後もまだまだ予断を許すことができないというふうに思っておりますのが私の経済認識でございます。

中津川委員 私、その問題を、ここ四年間ずっと私のテーマで取り上げてきたんですが、とにかく中小企業の経営者の人たちの犠牲と、それから、大手がよくなったといったって、これはリストラとか、あるいは給料を抑えている、下げているということが、それだけじゃないですが、それが主要因なんだということだと思うんですね。

 とにかく、私が心配しているのは、実質増税、余りマスコミには多く出ませんけれども、この四月からでも介護保険料ふえているんですね、四十代―六十代。それから、年金もたしか〇・三%ぐらい手取りがこの四月から減っているんじゃないですか。それから、あと年金の受給年齢も六十歳から六十二歳になっている。

 最初私が申し上げたように、増税、本当にみみっちく少しずつでも取ろうという、そういう小泉総理の財務省的なやり方で、僕は、だからこれは第二の橋本内閣に、経済失速したような、あんなふうに、ぜひ二の舞を踏まないようにということで、楽観論の中で、いろいろ評論家でも悲観論の人が急に今楽観論に多くの人がなっていますけれども、私はまだ非常に厳しく見ております。

 そういうことで、大臣、ひとつもっと厳しく見ていただいて、日本は中小企業九九・七%で成り立っていますから、やはり中小企業を、今の小泉・竹中路線、これはやはり一番やり方が間違っていると僕は思うので、竹中さんがやめたら景気がさらによくなるというふうに私は前から言って、まあ冗談で言っているんですけれども、そう思っている自民党の方も結構いらして、大変、今の経済政策、僕は十分ではないというふうなことをちょっと冒頭に申し上げておきたいと思います。

 国民年金なんですが、先ほどいろいろやられましたが、要するに、中川大臣は二十一年間払っていなかった、これは未加入。大臣、弁解の余地なしとおっしゃいました。麻生大臣と石破長官は未加入じゃなくて未納ということがわかりました。しかし、お二人は弁解していた。その意味では、中川大臣、潔い。褒めているんじゃないですよ。

 福田官房長官も記者会見で、本来個人情報だから守られるべきだとか言ったり、坂口厚生労働大臣はくるくる言っていることを変えて、制度上問題があったとか弁明しました。びっくりしたね。要するに、年金法案提出者としての責任を感じていない。国民は、ここ一日二日、テレビでもばんばんやっていますので、怒り心頭、あきれ返っていますよ。

 それで、先ほど、坂本、泉、菅、江田両政務官も含めて、年金を払っているのかと聞いたら、答えられないということで、理事会やられて、何か十二時半に答えるというようなことをちらっと今聞いたんですが、ちょっと確認したいんですが。

根本委員長 それはどなたに聞いているんですか。

中津川委員 副大臣で。

根本委員長 それは理事会協議になっていますから、副大臣答えられないと思います。理事会協議になっていますから、また十二時半から理事会を再開します。

中津川委員 先ほど日歯連の問題では、坂本副大臣もぱぱっとはっきり言って、わかりやすいし、歯切れよかった。それで泉さんもぱぱっ。菅さんは、ちょっとこうやって、五十万って、これも言う。これはやはり言わないと、何か悪いことをやっているんじゃないかとみんな思う。

 民主党が出せば出すなんて、民主党のネクストキャビネットなんて、イギリスと違って予算出ていないんだから、こんなときだけネクストキャビネットなんて言っちゃだめだよ。だから、それは出すの当然、こんなのは。まず、この法案提出者である与党の大臣、副大臣、政務官、これは出すべきですよ。後、十二時半からまた理事会ということで、ぜひオープンにした方がいい、中川大臣みたいに。あとは、判断するのは国民なんだから。

 それで、日歯の問題なんですが、これについても、パーティー券だとか寄附だとかの質問をする予定でありましたが、先にあの人がやっちゃいましたので。その中で、坂本副大臣、泉副大臣はなし、菅政務官が五十万、五十万というようなことが出ておりましたが、この問題、私、ずっと予算委員会で取り上げてまいりました。

 それで、二月のその委員会の質問の際にも申し上げましたが、日歯というのは自民党の大スポンサーですよ。二〇〇二年の政治資金収支報告書によれば、自民党の政治資金団体で国民政治協会へ四億六千万円、断トツ、献金額ですね。次が日本医師連盟の二億三千三百五十万円ですから、もう倍。

 七月に迫った参議院選挙でも、自民党の支援団体として、歯医者さんの会費や票を取りまとめて動かれているんだと思うんですけれども、今回、世間の目が見ていますから、ひとつ注意してやってもらいたいと思うと同時に、今一生懸命やっている歯医者さんが気の毒。何で、歯医者をオープンするときに自民党の応援団にならなきゃいけないんだ、金まで取られて、みんなそう思っていますよ。歯医者さんは、まじめな歯医者さん、今多いんですよ。それで、昔みたいにそんなもうかる仕事じゃないというのも聞いている。本当に大変ですよ。それと、やはり国民に対して申しわけないです、申しわけない。

 そこで、日歯絡みの質問なんですが、経済産業省、イメラボと通常言われています、これはルートがいっぱいあるんですよ、こうやってね。たくさんあるルートの中で、この委員会に関係した質問をさせていただきます。

 それで、二〇〇一年度と二〇〇二年度の情報基盤整備事業、つまりIT関連の委託事業を吉田前議員と極めて関係の深い二社が受託して、日歯もその事業に一枚絡んでいたということなんですが、一社目のJTSという会社は、タイミングよく、経済産業省がこの事業を始める直前の二〇〇一年四月に設立されている。これだけでも怪しい。同社の代表取締役は、吉田前議員の資金管理団体である幸進会の事務担当者だったんですね。さらに、その人物は、吉田議員が代表者である自民党支部の会計責任者でもあった。もう真っ黒の、ずぶずぶの関係ですよ。

 一方のオー・アール・シーというのも、こちらも一九九〇年二月に吉田前議員を代表取締役として設立して、公設秘書だった奥さん、父親が役員について、経済産業省からの事業を受注したということですね。それで、二〇〇二年の十月には、世間の目を気にしたのか、本人は監査役に身を引いて、弟を代表取締役に就任させた。これはファミリー企業です、純然たる。

 この二社が日歯絡みの経済産業省の補助事業を受託したわけですね。ここから捜査が入っていったんだよ、最初。切り口はここなんですね。ここでいろんなのがわかってきたわけです。

 ですから、吉田前議員と日歯のかかわりの深さから考えても、これは普通じゃないんですが、吉田前議員は日歯の内田常務理事と経済産業省の担当課長に会ったということが、私の予算委員会での質問で明らかになりました。

 この内田常務理事というのが、これは大変なつわもので、日歯及び日歯連の金庫番で、この五千万円、今またキックバックしたというのがつい最近報道されましたが、こういう政治献金還流疑惑についても、彼が吉田前議員に現金で手渡して、そしてまた吉田前議員からバックしてもらったというようなことがつい最近報道されたわけであります。私が質問したり、いろいろ判明したわけなんですが、しかし、非常に不満の残る質問、十分すべてがわかったわけじゃない。

 それで、二月に質問したときには、二〇〇〇年七月から八月ごろ、歯科医療分野のIT化がおくれていたことを憂慮した日歯が、この予算獲得を画策して、吉田前議員と相談した上で、数回にわたって前議員とともに経済産業省に行って、上記事業の予算獲得の陳情を行った、こういう報道があります、これは事実なんですかと聞いたら、経済産業省の局長さんだったか何だか何回も出てきて、肝心のことを答えてくれなかった。

 これはもう一度ちょっと聞きたいんですが、いいですか、吉田前議員と日歯の内田常務理事と経済産業省が、担当者が会った日付、それから対応した人物、そして例の補助事業についての話があったのかなかったのか。あれから大分時間はたっていますよ。これは局長ですか、結構でございますから答えていただいて、余りいいかげんだったら、これは大臣に答えてもらいますよ。

豊田政府参考人 お答え申し上げます。

 吉田前議員にお会いしたタイミング、そのときの議論、内容についてのお尋ねでございますけれども、二月のときにも御答弁申し上げましたように、省内の関係者から聞き取り調査を行いました。

 その結果、平成十三年の春、二〇〇一年でございますが、二〇〇一年の春から初夏にかけまして、吉田前議員とは担当の課長が数回程度面会をし、お話をさせていただいたと聞いております。

 お話の内容についてでございますけれども、十三年の春のときは、吉田前議員の求めに応じまして、当時の担当課長でございますサービス政策課長が、当省が考えております医療の情報化の必要性、そしてその効果、また当省が行ってきておりますこれまでの取り組みについて、一般的な意見交換といたしまして御説明をさせていただいたと聞いております。

 より具体的に申し上げますと、カルテ、そしてレセプトでございますが、すべてがその当時まだ紙ベースで行われていたという医療分野における情報化の立ちおくれの状況を御説明いたしました。さらに、これを電子化することによって医療経営が効率的になるということ、そして患者へのサービスも向上していくということの可能性について御説明を申し上げたというふうに聞いております。

 そして夏にかけて、初夏にかけましてですが、カルテ、レセプトの電子化を進める場合の課題について一般的な御説明を申し上げたというふうに把握しております。第一に、カルテ、レセプトに用いられる用語の標準化、用語がそれぞれの先生方によって異なっているということもございましたので、その必要性、第二に、電子化された情報をオンラインで送信する場合の秘密保持の問題でございます、プライバシーの技術の重要性について御説明をしたということでございます。

 吉田前議員からは、歯科業界におけるレセプトコンピューターの普及状況について御自身のお考え、そして歯科用語の標準化の状況についての御専門家としてのお考えについてお話をいただいたというふうに聞いております。

 具体的日付についてでございますけれども、どうも、調べておりますけれども、記憶が明確ではございません。そして、その一回につきましては、吉田前議員から日本歯科医師会の常務理事の御紹介を受けたというふうに聞いております。

中津川委員 日にちを言えないなんというのはおかしいの。だって、まず役人が来て、日にち、時間、場所、書くでしょう、最初に。きょう私がレクする、来ていただいて、きょうは四月二十八日何時と書くでしょう。春とか夏とか、そんなの書かないんだから。そういうところで、局長の表情はまじめそうなんだけれども、腹黒いんじゃないかと思っちゃうんだよ。(発言する者あり)おかしい、それは。

 もう一回聞きますよ。経済産業省は本当に吉田前議員関連のJTSとオー・アール・シーの存在を知らなかったんですか。これが一点。それから、もう一つついでに聞きます。吉田前議員の行動と実際のこの二件の補助事業、今きれいなことを言いましたが、この委託の流れというのは、これは利益誘導だと思われても仕方ない部分があるんではないか。いかがですか。

豊田政府参考人 当省の方で把握できておりますことは、当省からの本事業の委託先でございますイメージ情報科学研究所が、平成十三年度におきましては日本歯科医師会、そして平成十四年度におきましては日本歯科医師会及び株式会社モリタと請負契約を結んだことまででございます。これは届け出により承知をすることができたということでございますが、そこから先の請負先企業の選定につきましては、当省への届け出の義務はございません。吉田前議員関連の会社が関与していたかどうかについても知らない状況でございました。

 一方、当省といたしましては、本事業の件を契機といたしまして、IT関連委託事業の執行の適正性、効率性の確保のための具体的なあり方につきまして専門的かつ中立的な見地から検討していただくため、外部の専門家から成るIT関連委託事業の執行のあり方調査検討委員会というのを設立いたしました。

 本委員会で、これまで三回にわたって議論をしていただいております。第一回目が三月の十一日、第二回目が三月の三十一日、三回目が四月の九日でございました。この委員会の場において、下請事業者の業務分担、事業組成過程における各事業者の参加の経緯などにつきましても、さらに詳細な調査が必要であるとの御指摘をいただいております。

 現在、こうした委員の指摘も踏まえまして調査を続けているところでございます。具体的な改善策も含めて、可能な限り早いタイミングで取りまとめるように努力をしているところでございます。

中津川委員 今、改善策ということを言われましたけれども、もう時間もかなりたっているんですよ、そんなの。遅いし、本当にやる気があるのか。この後、中医協汚職が出たわけでしょう。私が質問したときなかった。何か矛先が向こうに行っちゃって安心しているところない。いかがですか。日にち、いつまでにやるか。

中川国務大臣 予算委員会で、たしか中津川委員初め何人かの皆さん方からこの経済産業省関連のいわゆるイメラボについて御質疑がありまして、その間、私の方から、専門的な委員会をつくってできるだけ早く国会に御報告をいたしますというふうにお約束をしたところでございます。

 今、豊田局長の方から御答弁申し上げましたが、率直に申し上げまして、この検討委員会の使命は、過去におけるイメラボの事実関係の調査、あるいは、今後、IT委託事業について経済産業省としてどうしたらいいか。省内でも、もちろん鋭意その検討、検証をしておるわけでございますけれども、いわゆる第三者的な、弁護士さんとか弁理士さんとか専門家の方々に外の目で厳正に見ていただいた方がいいということで、この二つの方向、過去のことと今後のあり方についてということでやっております。

 率直に申し上げまして、一つは、今局長からもお話ございましたが、捜査当局が既に入っている状況で、我々としての必要な資料等も若干不十分でございます。それから、中途半端な形で国会に御報告をするということは、当委員会あるいは国会全体に御迷惑をおかけするということで、私もできるだけ早くということを局長初め言っておるわけでございますが、そういう状況の中で委員会の皆様方に今鋭意やっていただいておるということをぜひとも御理解いただきたいと思います。

中津川委員 法務省もお越しいただいておりますので、お聞きいたしますが、日歯連のこの疑惑捜査、今言ったように次から次へと枝葉が出てくる。この経済産業省絡みの補助金と吉田前議員の関係企業の件というのは立件されないんじゃないか、日歯連の件だけが取り上げられることになるんじゃないかというような空気を少し感じているんですが、もしそんな情報が、空気が政府内とか日歯の方に流れていたら、これはもうとんでもないことだと思うんですが、この問題に関して、法務省の見解をひとつお聞きしたいと思います。

樋渡政府参考人 お尋ねは捜査機関の活動内容にかかわる事柄でございますことから、法務当局としてはお答えをいたしかねるということをどうか御理解願いたいと思います。

中津川委員 思ったとおりの答えでありましたが、とにかく中川大臣、ひとつこの問題、みずから大臣のときではなかったんでありますけれども、やはりこういう疑惑の問題というのは解明していかないと、また次から次へと混乱が生まれる、そういうものをつくったら、これはもう政治じゃないです。ぜひひとつスピード、局長もいつも同じ表情で同じことを言っているんだけれども、もうそんなんじゃなくて、ちゃんと正直に、正確に、それでやはり刷新してもらいたい。

 特許法の改正案について何点かお伺いいたしますが、大分時間がたってしまいました。

 先週も参考人の方々から意見をお聞きしまして、私も特許の重要性についてはもう論をまたないわけであります。とにかく、我が国は狭いし資源もない、唯一の財産は人。戦後、あの廃墟の中からこれだけ今日の繁栄を築けたのは、これは教育の力なんですよ。ほかに何にもないんです。私も三十年間教育の現場にいましたものですから、人を育てること、これが我が国の生き延びていくたった一つの方法である、これは、今政治家になっても、その信念はより強くなってきております。

 そこで、いわば国の宝である人材がその能力を発揮してこの世に生み出した新たな価値、ぎゅっと結晶のようになったのが、特許などの知的財産、ここで今議論しています知財ですよね。ですから、これらを保護していく、それで積極的に活用していくということは、我が国の国策の根本である。そういう意味で、最近の知財立国という言葉、大分耳なれてきましたけれども、私は大いにこれは結構なことだと思うんです。

 ですから、そういった観点から見て、今回の特許法の改正というのは、今申し上げた方向に沿うものであるとして非常に賛同する点は多いわけでありますが、中身のところで、いま一つわからないところがあるというか、はっきりしないところがありますので、お尋ねしたいと思うんです。

 私、レクを聞いて勉強して、大きく分けて、今回の法案というのは、特許審査の迅速化と職務発明制度の見直し、この二つがポイントだというふうに理解したわけでありますが、迅速化については、全く異論はありません。むしろ遅きに失したということで、何で今までこんなものに手をつけなかったのかなと思うぐらいでありまして、そういう意味で、それは問題ないんですが、この職務発明制度の見直しという点に関してお伺いしたいと思うんです。

 そこで、この法案改正のきっかけになったというか、一つの事件といいますか、最近の訴訟、例の青色発光ダイオードでありますが、ことし一月三十日に東京地裁で、被告の日亜化学工業は原告の中村修二さんに発明の対価として二百億円払えという判決が出た。これはびっくりしましたよね。けたが二つ違う数字でしょう。もう大騒ぎで、日本国じゅうに激震が走った。

 私、これは私なりに、会社の主張、それから中村さんの主張、そして裁判所の判断、これを比べて調べてみたんですが、何かどれもおかしいんじゃないかと思う部分がある。

 まず、日亜化学工業ですが、当初中村さんに払った発明の対価がたった二万円ですよね。これは常識で考えられない、小学生のお年玉じゃないんですから。社員が汗水垂らして研究して非常に重要な大発明をした、その対価が二万円では、もうばかにするのもほどほどにしてくれ、何なんだろう、この会社はというのがまず思いましたね。

 では、中村さんの主張はどうかといいますと、これも首をひねっちゃうんです。詳しい経緯はわかりませんよ、だけれども、中村さんの提訴額が変化しているんですよ。当初は二十億円だったのが百億円になって、それから最後に二百億円でしょう。二百億円ですよ、これは。ちょっと想像できない額ですね。これを自分の勤務先、お世話になった会社に請求するという感覚、これもちょっとわからない。

 日亜化学工業という会社は、調べてみましたら、二〇〇二年度の売り上げが一千百六十億円ですね。売り上げの二割ですよ、これは。利益といったら本当に、利益までちょっと調べなかったんですけれども、これは到底払えないですよ。

 中村さんは、ですから、社員であるから、この会社の設備を存分に使って、新しい装置だとか研究環境、そういうセッティングの中で、個人じゃ何にもできない、会社の設備投資で研究ができたというのは、これは会社あってのことで研究成果があったということを忘れちゃいけないというのが僕は大前提だと思うんですね。

 だから、先ほど私は人材こそが日本の財産だと言いましたが、それに法人だって入るわけで、トヨタやソニーだけじゃなくて、世界に冠たる会社、私もずっと中小企業を回って、本当にしもた屋風のところで世界で先端を行く部品をつくっている会社とか、たくさんあるわけですね。そういった会社こそが日本の産業の底辺を支えている、そういうことを何度も言ってきたんですが、だから、会社が一方的にそれこそ何百億円という巨額の支払いを社員に訴えられて払わなきゃならないという事態が、今までの日本では考えられなかったことなんですよ、これは。

 もう一つ、裁判所なんですが、これが私は何か問題があるんじゃないかと思っています。聞いてびっくりしちゃったんですが、裁判所は今回の発明について、その対価を六百四億円と認定したんでしょう。さっき二百億円で常識外と申し上げたんですが、この三倍ですよね。びっくりしましたね。売り上げの半分でしょう。これは、会社はつぶれなさい、逆に言うと、これは払えませんよというような、そういう逆説も成り立つんですよ。今、日本の会社で六百億円以上の利益を上げている会社は全部の法人を入れてどのくらいあるかということを、答えなくてもいいんですが、少ないと思いますよ。

 だから、裁判所というのは世間の一般常識があるのかと思うんですね。財務金融委員会でいろいろな問題をやったんですけれども、どうもわからない。これは、何かこの問題というのは、裁判制度に対する不信感も与えたような気がするんです。だから、最近の裁判はおかしな判決が多過ぎるなと思いまして、裁判官というのは、頭はいいんでしょうけれども、社会常識とか現場とかがわからないんじゃないか。そういう人が、今回の法案でも最後は裁判で決めるんでしょう。私、国会に来て、おかしいなというふうなことを日ごとに思って、この件でも特にそれを感じたんです。

 今これは、裁判、控訴中ですから、何が正しくて何が悪いという、断定的に言うことはできないですけれども、何か私は、今、私たち日本人の先輩たちが築き上げてきたよき価値観や伝統が崩壊しているな、日本が壊れてきているなという面も私は少し感じたんですね。何か国民と全く離れているところで行われてきている。

 そこで、まず、長くなりましたけれども、一般的に会社が与える社員の発明対価はどれくらいなのか、それと、職務発明の対価をめぐる訴訟において原告が主張する対価というのは一般的にどのくらいなのか、お答えください。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 裁判につきましては、現在九件、私ども把握しておるのは、九件係属中でございます。

 その原告側の提訴額は、数千万円から数億円、今先生がおっしゃいました青色発光ダイオード事件では二百億円、味の素事件では二十億円、日立製作所事件で十億円、オリンパス事件で二億円等々となっております。そして、昨日高裁で判決がございました日立事件の提訴額は約九千万円でございます。一方、それほど大きくないものもありまして、四千万円とか四百万円とかいうものもございます。

 一方、企業でございますけれども、会社によりましてそれぞれ発明規程が違っております。基本的には、出願をしたときに幾ら払う、それから登録特許になったときに幾ら払うということがベースにございまして、アンケート調査によりますと、出願の段階で九千円、それから特許になりますと、平均でございますが、二万三千円、そして今度は実績補償というのがありまして、その後利益が出てまいりますと、その利益に応じて企業が発明者に対して支払うというのが通例でございます。

 ただ、実績補償につきましては、業種ごと、それから企業ごとに随分違いがございます。そして、企業の戦略それから社風、その他いろいろな要素がございますので、企業によってそれぞればらつきがございます。

 非常にラフに申し上げますと、非常に研究開発リスクが高いところ、要するに、一つの発明をするのに大変研究費がかかるようなところというのはリスクが高い、例えば製薬業界でございますけれども、これは、もし、もうかった場合でもライセンス収入の〇・一%から一%程度の補償金を払うというのが今のやり方でございます。一方、それほど一つの発明にリスクがかかっていないといいますか、お金がかかっていないような自動車とか電機でいいますと、ライセンス収入の一%から一〇%ぐらい払っているケースもございます。

 以上でございます。

中津川委員 今お聞きして、みんなそれぞればらばらというところで、業種によっても違うし、会社の規模によっても違うというところで、だから、この法律ができてどの程度実効性が上がるのかな。一歩、二歩前進ですよ。一歩、二歩前進だけれども、最後の決定は裁判でやるということで、裁判官が、大学を出て、実社会で現場を知らない人たちですから、そういうので、その人たちが最後を決めてしまうというところに、本当にそういうルールというものができるのかどうかというようなのを、率直な、私、今疑問を持っているんですが、お答えにならなくて結構でございます。

 そこで、附則第二条、もう一つ、確認しながら私見を述べさせてもらいたいと思うんですが、改正法は、施行後の特許を受ける権利または特許権の承継等に係る対価について適用されるというふうに規定されている。施行前の特許を受ける権利などの承継の対価については、今後二十年間、今の法律が適用されるんですね。だから、今施行しても、現在の特許については適用されないというわけですよね。

 新しく特許申請が行われた場合は新法の対象となるんですが、問題が表面化してくるのは特許が実業界で大いに活用されてきてからということで、十年以上、通常かかるのかなという話もあるんですが、これでは、せっかく改正しても、実際にその効果を発揮するのが十年後、しかも、旧法の縛りのかかった案件が今後二十年残るという結果になってしまうということで、私は、この改正が早期に本当に実効あらしめるためには、例えば、当事者間の合意があるということであれば、現行法の案件であっても新法の枠組みで対応できるような方策を検討してもいいんじゃないかなと思ったんですが、経済産業省のお考えをお聞きします。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 改正法を改正法前の案件に直接及ぼすということは、やはり難しいというふうに思います。

 ただ、きょうの御議論のように、立法府、それから行政府もそうでございますが、強いメッセージとして、やはりこの問題を新しいルールに基づいて対応していく、それは、発明者と企業との間の徹底した議論の中でルールをつくって、それを尊重していく、そのルールができた場合は裁判所はそれを尊重するというのが今回の法律の仕組みでございますので、その意味で、この立法過程におきます強いメッセージが出ますと、既存の案件の裁判にもそれが参酌されるということを私どもは期待しているところでございます。

 また、これは、先ほどもちょっとお話し申し上げましたけれども、最終的には裁判所の判断になりますけれども、例えば、きのう特許になったような案件というのは、確かに、先生おっしゃるように、二十年近く権利が続くわけでございます。その間、幾ら実際に利益が上がるかわからないわけでございます。しかし、そのものについて、これまで観念的に発生している権利について、今度の新しいルールに従って支払いを受けますという個別の契約をもし結びますと、それは、それを裁判所が無効にするかどうか、私どもは、それは有効になるんではないかという期待をしているところでございます。

中津川委員 質問を終わります。ありがとうございました。

根本委員長 次に、辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 私は、今回の特許審査迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案のうち、これは、特許審査の迅速化を図るとともに、職務発明の対価に係る規定を整備するものであるというふうに提案理由の説明にありますが、特許審査の迅速化という点に絞ってお伺いしたいというふうに思います。

 まず、この特許審査の迅速化ということには、前の国会においても議論がなされ、これは継続的な課題であったというふうに思います。知的財産権の重要性、プロパテント政策をきちっと展開していくに当たって、すぐれた発明を事業化することによって経済を活性化させていく、このことが日本にとって非常に必要であるという観点で、特許審査がやはり迅速になされないと活用できる発明も活用できなくなる、このようなことが問題なわけであります。

 数年にわたってなお特許審査の迅速化の必要性を掲げなければならないその現状について、大臣としてはどのようにお考えなんでしょうか。

中川国務大臣 先ほどもお話ありましたように、技術立国としてこれから日本はやっていかなければならないという中で、特許出願をめぐる状況というのは、もう委員も御承知かと思いますけれども、年間四十万件から五十万件あって、しかも平均、その決着がつくまで二十六カ月という状況、しかも、これが、ますます技術競争、開発競争が進んでいって、このままいくと八十万件、四十七、八カ月ですか、もう四年ぐらいたたないと決着がつかないということになりますと、これだけスピードと情報化の中で、しかも技術立国、知財立国として生きていこうというときに、大変な国益あるいはまたその開発者にとって不利益が生じるということになりますので、マクロ的に見れば国家的損失、あるいはまた、特許を出願する方あるいは企業その他にとっても大変な不利益が生ずるということで、緊急的に、十六年度予算におきましても、例の任期つきの審査官を、五年間で大体五百人を要望ということで、今回、百人弱認められましたけれども、喫緊の課題だというふうに認識をしております。

辻委員 特許審査の迅速化について前国会でも議論がなされ、しかるべき措置が一部講じられている。今国会においても提案がある。しかし、これだけで本当に十全に特許審査の迅速化が図れるかどうか。これは当然、担当者の方、各部局、努力されるわけでありますけれども、本当にそれで事足れりかわからない。つまり、継続的にこの問題を問題意識を持ってきちっとやっていかなければいけない。それは、知財立国という以上は非常に重大な問題である、このように考えます。

 中川大臣もそのような趣旨で今御答弁いただいたと思うんですが、まず特許審査の現状について、客観的な現状、こういう事態が起こっていて、これを何とかしなければこういう問題が生じるんだ、その現状についてどのように認識されているのか、これについて御説明いただきたいと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 現状におきまして、審査の順番待ち件数、いわゆる滞貨でございますけれども、五十万件を超えております。そして、審査順番待ち期間は二十六カ月になってございます。平成十三年に、審査請求期間を七年から三年に短縮いたしました。これはこれでまた理由があって、なるべく早く決着をするという理由でございますけれども、これによりまして、その重なりの部分がございますので、今後、この未処理、審査順番待ち案件が約八十万件に達する可能性があるということでございます。今大臣からお話がありましたように、そのまま放置しますと、順番待ち期間、現在二十六カ月が四十五カ月ぐらいになってしまう可能性がございます。

 一方、諸外国と比較というのはよろしいかどうかございますけれども、アメリカは現在十八カ月ぐらい、そして、物すごい勢いでこれを巻き返して、少なくとも十四カ月台にしたいということで今の政府は取り組んでおられます。非常に日本とよく似た、アウトソーシングを考えたり料金を考えたりして、この取り組みを進めているところでございます。

 ヨーロッパは二十三カ月要していますが、実は、出願から十八カ月後に審査報告書というのをつくります。最終審査ではないんですけれども、出願から十八カ月後にその調査レポートを出しますので、大体それで特許になるかならないか見えるということでございます。その意味では、十八カ月がヨーロッパにおける審査の一段階というふうに考えますと、日本は二十六カ月、それが残念ながら今おくれつつあるということでございますので、今般、この法律も含めてお願いをしているところでございます。

辻委員 前国会以降、審査体制の整備ということで、審査官の増員とか審査請求料の値上げとか、政策を行ってこられておりますが、問題は、まず中長期的に見て、審査請求の件数と審査請求の処理件数が均衡を保つような状態にしなければいけない。それから、今おっしゃったような、五十万件がいわばたまっている、滞貨となっている、これについて処理をしていかなければいけない。そのために、前国会以降の手だてではなかなかまだ不十分であるという理解であろうと思いますが、それを具体的に、どれぐらいのめどで、どういうふうにしていこうというふうにお考えになって、どういう方策を今検討されているのか、その点について伺わせていただきたいと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 前国会では、審査請求料につきましてこれを値上げし、特許料についてそれを下げるということで、審査請求の段階で少し考えてもらって、いいものを審査請求してもらう、登録になりますと全体が割引になるわけでございますけれども、そういう意味で、審査請求料を約倍にさせていただいたわけでございます。

 これによりまして、先生がおっしゃった審査のイン、審査請求の方でございますインとアウト、私どもが審査をするものでございますが、それとがおおむねバランスがとれてきた。ただ、今ございます五十万件の案件と、それから、これから生まれてくるかもしれない三十万件、八十万件について、これを何とか処理をしなきゃいけないということでございます。

 そのために、今般、今大臣からお話がありましたように、任期つき審査官ということで、国会で、定員が非常に難しい状況の中で御支援をちょうだいしまして任期つきの審査官をふやさせていただいたということ、それから、今般の法律でも、調査機関の拡大、サーチ機関の拡大、それから実用新案制度の魅力の向上等々、できるものはすべてやって対応していきたいというのが私どもの考え方でございます。

 それから、特許の場合はなかなか、一たん未処理案件、審査待ち案件がたまりますと、これを片づけて済ませていく、処理期間を短くするというのは大変時間がかかるわけでございます。私ども、先生がおっしゃったように、継続的な志でやらなきゃならないというふうに思いますが、その具体的な、最終的なゴールは審査待ち期間ゼロでございますが、それまでになるべく早くいわゆるアメリカ並み、国際的に一番速いレベルにする、そういうことを努力しますが、やはりこれは十年計画という大きな息の長い計画になりますので、こういうものは目標を明確にして対応していかなきゃならないというふうに思っております。

辻委員 今回の提案理由等々を見たところ、概略五点について方策を提言されているように思います。

 一つは、任期つき審査官の採用を大量に行う、五年間で五百名ということを考えておられるようであります。また、審査支援体制の整備ということで、従来技術調査について外注をしているようでありますが、それに民間を参入させる。そしてまた、審査請求時の従来技術調査にインセンティブを与えて、むしろ出願側に従来技術の調査をやらせて、その分の特許出願料を割り引くというようなインセンティブを与えることを提案されている。そしてまた、実用新案権の魅力向上ということをおっしゃっている。それから、独立法人工業所有権総合情報館の機能強化ということで、人材育成、情報提供サービスということを考えておられるというふうに一応提言等は読めるわけなんですけれども、これらが本当に有効に活用されることになるのかという点について、少しお伺いしてみたいというふうに思います。

 まず、任期つき審査官ということなんですけれども、確かに、毎年百人ずつ、五年間で五百人ということでありますが、これは大臣の側でも、五年間、五百人ふやしていくということで方針は確定しているものなんですか。

中川国務大臣 ですから、我々としては、ほうっておけば八十万件、四年近くになるという待ち時間を何としても挽回したいということの一つの方策として、任期つき審査官を五年で一応五百人ということで、去年の予算折衝の中で九十八人を認めていただきました。引き続き、五百人ということに任期つきでやっていきたいというふうに思っております。

辻委員 そのように提言されている以上、大臣がもしかわられても、不退転の決意で経済産業省としてはこの点を実現していっていただきたいと思います。

 任期つき審査官といったときに、これは長官に伺いたいんですが、どのような人材が集まり、質がきちっと確保できるのか、そして、五年間で五百人集まったらその後どうするんだ、これは一時しのぎにすぎないのではないか、このようなことも考えるんですが、これらの点についてはいかがですか。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣からお話ししましたように、予算で九十八名の任期つき審査官をちょうだいいたしました。そして、五月一日に正式採用になるわけでございます、予算が通りましたので。

 それまで募集をしておりました。九十八名に対して、一千名を超す応募がございました。多くの方はポスドクの方で、例えば、博士号を持っている方が二十四人、それから第一線の研究者とか弁理士さんだとか、企業の研究部門の出身者などで、この世界でかなり経験のあられる方が受験をしていただきました。それで、相当厳しい筆記試験と面接を何度も繰り返しまして、千名の方を九十八名に絞り込んでおります。大変立派な人が入ってこられるというふうに思っております。

 また、特許庁審査官としても、外で経験をされた方が相当な数で入ってこられますので、非常に刺激を受けるというふうに思っております。

 一方、最終的に五百名を目標にして、審査待ち時間ゼロを目標にして頑張りたいと思いますが、一応、審査官を七年いたしますと弁理士資格というものが得られます。したがいまして、任期つき審査官をやっていただいた方々は一つの資格を得て出ていかれることになると思いますし、日本は今、大変知財人材が必要とされておりますので、この人たちが、弁理士さんになられるかもしれませんし、また会社に入られる、研究所に戻られる、そしていろいろな知的財産についての経験を生かして活躍していただけるのではないかというふうに思っております。

辻委員 審査官の質の確保なり研修の問題をどうするのかということは、やはり課題としてあるのかなというふうに思います。

 弁理士会の方に聞いたところでは、審査官、大変なこともあるんだろうけれども、結構、従来技術調査の方に委託して、それを調査官が十分に検討しないで、ある意味では、それをそのまま右から左に報告として出願者の方に出してくるというような例も、例外的なものかもしれませんけれども、あるというようなことも聞いておりますので、やはり審査官の質の確保、研修、これはある意味では、人的に弁理士とも一元化して物事を考えていくような方向性も必要なのではないかなというふうに思ったりするところであります。

 次に、従来技術調査ということで、従来IPCCに外注していたわけでありますが、IPCC以外に外注先を拡充するということで、愛知地域とか大阪地域とか、または有機化合物の専門だという、特定の分野、特定の地域の外注先にも拡充するということで計画されておられるようでありますが、まず、調査ノウハウの蓄積というのはそういうところにあるのかどうなのか。そして、そのような外注先は、いわば独立行政法人として特許庁のしがらみに侵されているようなところであっては困るんですが、その辺の透明性、中立性についてはどうなのか。その二点について、いかがですか。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今、前国会でも大変議論がございまして、特許庁が行っておりますサーチの外注につきまして、アウトソーシングにつきまして、一つ、今IPCCというのがございます、先生おっしゃったように。そこだけではいけないのではないか、もっとそれを拡大すべきではないか、これから民間活力を使うべきではないかということでございますので、私ども、今度の法律改正では登録制ということで、裾野を広げるということでございます。

 おっしゃいましたように、近畿それから中部で具体的な機運がございます。もしそういうところで動きがありましたらぜひとも応援をしていきたいと思いますし、今後、任期つき審査官がふえてまいりますと、その事前サーチもお願いをしたいと思いますので、そういうところで可能性があれば私どもとしては大変期待するところでございます。

 また、そのための、サーチを外注する先の人たちでございますけれども、やはり相当な能力がないと特許庁の審査を左右することになりますので、それにつきましては、私どもが具体的には研修をしまして、間違いなくそういうサーチ能力があるということになりましたらその人たちにお願いをする、こういうことを考えてございます。

 従来も相当、その意味では、一対一といいますか、特許庁の審査官の本当のニーズに合うぐらいのきちっとしたサーチができるような人たちを育成してきたということでございます。

辻委員 その外注先は、これは純粋の民間会社ということですか。特許庁の審査官の方が構成員として結構いらっしゃるとか、そういうことなんでしょうか。その点はいかがでしょうか。

今井政府参考人 これまでの法律では、公益法人という要件をかぶせておりました。それを今般取り外しまして、民間企業、株式会社も参入することができることにいたしました。

 ただ、その場合に、審査能力、サーチ能力というのが必要でございますので、そのサーチ能力を備えた会社につきましては、これは民間会社、株式会社でも結構でございますが、そういう能力のあるところは登録してもらって、そこを特許庁が使わせてもらうということでございます。

辻委員 特許庁が外注することもあるだろうし、これは次にお伺いしますが、出願者の側がインセンティブを与えられて、そういうところで従来技術の調査をすることもあると思いますが、特許庁とは、例えば外注する先が審査官の卒業生ばかりであると、非常に独立性というか第三者性ということが、出願者の側からすればやはり不透明になるわけですから、その辺については十分配慮され、資格を付与するに当たってはやはりその点はチェックする、そういう仕組みになっているんでしょうか。この点はいかがですか。

今井政府参考人 審査の外注先でございますけれども、やはりこれは、天下りとかそういうことではなくて、審査をする場合にどういうサーチの内容であればいいのか、どの程度の深さが必要なのか、どの程度まで絞っていただいたらいいのかというようなことになると、審査官でなければわからない仕事が相当ございます。したがいまして、特許庁のOBの方が、そこの、今でいいますとIPCCというところにおられることは事実でございます。これが、具体的に、この人たちも一緒になってサーチをしたり、それから企業から来ておられる方などの人材を育成していることでございます。

 また、今後、新しい企業ができた場合には、今IPCCというものがございますので、そこで大分人材が育ってきておりますから、その人たちがまたそこに行って活躍をしてもらってもよろしゅうございますし、特許庁としては最大限アウトソーシング先を育成するという形で協力をしていきたいというふうに思っておりますが、それはひとえに審査の質を高める、サーチの内容を高めるということで私どもはやっているつもりでございます。

 それは、従来から国会のこの場でも随分御議論をいただきましたが、私どもは、その点で、いかに審査を促進させるのかという観点から対応しているというふうに考えていただければありがたいと思います。

辻委員 適正な運用で、きちっとした組織として育つことを期待したいというふうに思います。

 次に、従来技術調査にインセンティブを付与するということをお考えになっておられるようですが、具体的には、どのような手順で、どういう効果を期待して、どういうことを提言されようとしているんでしょうか。

迎政府参考人 今先生がおっしゃった、従来技術調査にインセンティブを付与というのは、ただいま御議論がありましたように、特許庁が従来技術調査を外注するという形で今まで審査の効率化を図ってきたわけでございますけれども、そうした従来技術調査を有効に実証することができる機関ができてまいりますと、ここに直接出願者の方が、審査請求をする前にここの機関に従来技術の調査をしてもらおうというふうな、頼みたいというふうな方も出てくるわけでございます。

 その結果を審査請求の際につけてきていただければ、特許庁といたしましては、それがきちっとしたレポートであれば、改めて審査の段階で自分たちで発注をするということが必要なくなるわけでございますので、それに見合ったような費用というのを審査請求料から差っ引くというふうなことが可能ではないかというふうに思っております。

 それから、さらにもう一つそれには効果を期待しておるわけでございまして、実際、出願者の方が、審査請求をする前にそういった従来技術の調査をみずから発注してその結果を手にするということになりますれば、その結果を見て、従来技術ぴたりのものがあるようなものについては、その審査請求を控えようとかいうふうなインセンティブも働いてくるわけでございます。その場合は、レポートをつけた場合のインセンティブのみならず、そもそも審査請求をやめればもともとすべて費用が必要なくなるわけでございますので、そうした効果も、言うなれば、審査請求がいいものに集中をされるというふうな効果も期待しておるわけでございます。

辻委員 年間の出願件数がたしか四十万件ぐらいだというふうに承っておるんですが、審査請求をする割合というのは、七年が三年に短縮された以降、割合は高まっているということなんでしょうか。今のお話は、審査請求する場合のインセンティブとして有効性云々という話ですから、審査請求する割合、件数がどのような件数なのかによってやはりその辺の評価も影響を受けてくるのかなと思いますので、その点、いかがですか。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 目下のところ、審査請求制度が変更して後も、審査請求率は、平成十五年が五四%、その前、五四%、その前、平成十三年が五三%でございますから、おおむね新しい制度になっても同じような率で審査請求がされるというふうに、目下のところはそういうデータが出ております。

辻委員 では次に、四番目に、実用新案制度の魅力を向上させるんだ、このことによって特許出願審査請求滞貨一掃につながるんだという、その辺の具体的な根拠と見通しということについて教えていただきたいと思いますが、いかがでしょう。

今井政府参考人 実用新案制度につきましては、平成五年に制度を変えまして、ライフサイクルが短い技術ということで早期の権利保護を図るということで、無審査制度にしました。その結果、直ちに登録されて権利化されるわけでございますが、そのときに、権利期間を従来の十年から六年にいたしたわけでございます。

 その結果といいますか、従来、それまでに実用新案出願が年間八万件ほどございましたのですが、現在は八千件ほどに下がってきておるわけでございます。その間、特許出願は三十五万件から四十二万件にふえておりまして、これが丸々全部向こうに行ったという検証はしておりませんけれども、無審査の結果、むしろ特許出願の方に移ってしまったんではないかということでございます。

 それをもう一度、無審査制度の特徴を生かしながら、一方で、やはり模倣品対策等を考えますと、無審査で早く権利化するということも一つ大事なポイントでございます。そして、そういうことを視野に入れまして、権利期間を六年から十年に延長するということでこの実用新案の魅力を回復するということを考えております。

 それによりまして、従来特許出願に移っていってしまっていたものが、また実用新案に戻って、本来の実用新案の保護を受けられるようになるということを私どもは期待しているわけでございます。

辻委員 私も弁理士の登録もしておりまして、実用新案の出願についての相談も受けたりして、連名で出願をしたりしたこともありますけれども、実用新案制度の存続期間を六年を十年にしたからといって、魅力が何か回復するというふうにも思えないんですよね。今おっしゃった八万件が八千件に減った、それに因果関係というか即応関係はわからないですけれども、特許出願の件数が三十五万件が四十二万件にふえたと。

 だから、要するに滞貨を一掃するためにどのようにするのかというときに、毎年毎年四十万の出願があって、審査請求が二十万件強だとして、滞貨が五十万件ある。それを削っていくためには、審査をする能力は年間何万件というふうに考えるのか、そして審査請求の件数をどれだけ減らすのか、処理能力をどれだけ高めるのか、これのバランスの問題だと思うんですが、審査請求の件数を減らすために実用新案の魅力を向上させるんだ、そういう脈絡になっておりますけれども、実用新案の魅力が六年を十年にしたからというので回復して、今の八千件がまた五万件、六万件に上がるというふうには到底思えないんですけれども、この点はどういうふうに見通しを立てておられるんでしょうか。

迎政府参考人 実用新案の魅力向上につきましては、期間を六年から十年にするということのみならず、実用新案を出しまして以降三年以内であれば、場合によってこれは特許にしておいた方がいいというふうなものであれば、特許出願に出願日を維持したまま変えるというふうなこと、あるいは、その訂正のやり方についても、従来の許容度を少し広げるというふうなことで、各種の魅力の向上というのを考えておるわけでございます。

 それから、では、定量的にどういうふうな効果があるのかというのはなかなか申し上げにくいわけでございまして、根本的な改正をやって八万件が八千件に減ったというふうなものが、今回の改正でこれがその八万件に戻るとかあるいは五万件になるとか、そういうふうなことは、ちょっと確かにそんな大きな効果は見込みがたいんだろうと思いますけれども、例えば、今の八千件が毎年一万件ふえるというふうなことになりますれば、十年間でその十万件が特許から実用新案に移るというふうなことになりますれば、これはその審査の負担あるいは審査の迅速化という意味では大変大きな効果を生むというふうなことであろうと思っております。

辻委員 特許審査迅速化のため、まず審査請求の件数と処理件数を均衡を持つようにする。先ほどの御答弁等では、特許の出願料を減額したことによって、ある程度それは均衡するまでに至っているんだというお話がありました。そうすると、毎年毎年の均衡は一応成り立っている。では、五十万の滞貨を例えば五年間でどのように減らしていくのか。結局、細かなことはそれはやってみなきゃわからないということではありますが、やはり、ある程度数量的に、何とかいきそうだなという大枠の計画を立てておられるんじゃないかなというふうに思うんですよね。

 そうすると、五年間で五十万件の滞貨をなくしていくといったら、一年間に十万件なくするわけだから、二十万件の今の審査請求を、例えば五万件減らせば、そして処理能力を五万件上げれば、それだけ、滞貨の十万件を毎年毎年処理できるわけであるから、そういう意味で、五年後には滞貨一掃できるんだ、そのようなお考えなのかなと一応想像するんですよね。

 それは、必ずしもそのとおりにならないだろうというふうには思いますけれども、今、順番に伺ってきました、任期つき審査官の増員によって処理能力がどれだけ高まるのか。一方の、従来技術の調査、外注先の拡充が、その入りと出においてどのような意味を持って、どのような効果を持つのか。従来技術調査のインセンティブを付与することによって、審査請求がどのように減り、また審査官の処理能力のアップにつながるのか。そして、実用新案の魅力を向上することによって審査請求の件数がどれぐらい減るんだろうかと、ある程度、やはり概括的な見通しなりを持っておられて今回提案されているのかなというふうに思いますので、概略で結構ですから、その辺について見解を教えていただきたいと思います。

今井政府参考人 なかなか予測が難しい世界でございます。それから、一度未処理案件がふえますと、なかなかこれを処理するのは大変なことでございます。

 あらあら申し上げますと、私どもとしては、先ほど大臣からお話ありましたように、五百人の任期つき審査官、これは今まで特許庁としてはできなかったことでございます。こういうものがもし達成できることになりますと、それで、先ほども八十万件ということを申し上げましたが、非常にあらあら申し上げまして、五十万とか六十万件の処理を新しい任期つき審査官がこなす。それから、残りの……(辻委員「一年間で」と呼ぶ)いやいや、これから十年間の任期つき、これは非常に息の長い話でございまして、通常のように一年、二年で決着することではないものでございますので、任期つき審査官というのは十年間働いてもらって、巨大な山でございますけれども、これを崩していくということになります。

 そういたしますと、八十万件ぐらい私どもたまってしまうというわけで、そのうち、任期つき審査官に期待するのが五十万とか六十万件のオーダーで期待をしております。残りの二十万件、三十万件というのは、きょう御議論していただいたもの、いろいろな施策を合わせわざでやっていきたいということ。

 それから、個々の企業に対しても、前国会でも随分議論がございましたけれども、戻し拒絶といって、特許庁の審査官がこれはこういう理由でだめですという通知をした場合に何の応答もない、要するに、そのままもうおしまいになってしまう。それは非常にむだではないか、ある意味で審査のむだになってしまいますので、それが二四%ぐらいございます。それを例えば大企業、大きな企業には精選をしてもらって、そういうような戻し拒絶になるようなものは審査請求しないでもらって、我々の負担を減らしてもらうということにいたしまして、今の残りのものを何とか処理を進めていって、それでも、十年計画でありますと十年の任期つき審査官を必要とするわけでございますので、息の長い仕事でございますが、何しろ、一刻も早く、最終的には待ち時間ゼロというゴールを目指してやっていくということでございます。

辻委員 特許審査の迅速化という、特許庁の体制を中心に今までちょっとお伺いしてきましたけれども、やはり一方で、特許を扱って、具体的にセレクトして出願される弁理士なり弁理士会の役割ということも、この点においてもやはり重要なんじゃないかなというふうに私は思うわけです。

 従来技術調査でインセンティブを付与するというのは、まさにそのような審査請求をされる弁理士の側がそれなりの見識ときちっとした資質を持っていなければ、そのインセンティブをインセンティブとしてきちっと受けとめて行動するということはなかなか難しいわけであります。

 そういう意味では、むだな審査を抑制し、適切な審査請求、また出願においても適切な出願をできるように、やはり弁理士の質を高めるということは、この問題に非常につながってくる重要な問題ではないかというふうに私は思います。

 そういう意味において、知的財産専門職大学院というような問題があると思いますが、これについて、特許庁としても注目し、支援するという必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。

迎政府参考人 まさに、特許の迅速化を図っていく上におきまして、出願手続に携わる、代理をする弁理士というのも重要な位置づけを占めているというふうに考えております。

 したがいまして、まさにこの方々の資質といいますか、実力が向上するということが非常に重要であると思っておりますし、それによって、むだな出願はしないとか、あるいは、その出願をするものについても、適切な出願があって審査がスムーズにいくというふうなことが求められているんだと思います。

 この点につきましては、今、大学院というふうなお話もありましたけれども、そういったものにも幾つか動きがあるというふうに聞いておりますし、またそれから、私どもも、従来、私どもの研修所におきまして、庁内の人間とそれから弁理士の方と一緒に研修を受けるというふうなこともいたしておるわけでございまして、こういったことも今後やっていくということで、人材の育成という点についてはいろいろ取り組んでまいりたいと思っております。

辻委員 知的財産専門職大学院の創設に限らず、弁理士会に協力、支援するということは、やはり特許庁としてもきちっと姿勢として打ち出していただきたい、このように思います。

 それから、今答弁で出ましたけれども、審査官の研修については、これは弁理士研修とやはり共同で研修するというようなことももっと具体的に実践されていいんじゃないかと思いますが、この点はいかがでしょう。

今井政府参考人 これまでも、それほど数は多くありませんが、そういう機会を持っております。

 今度、今回の法律でお願いしておりますが、情報館を情報・研修館ということにいたしまして、人材育成機能というのを強化したいというふうに思っておりまして、新しく拡大します独立行政法人の役割の一つとして、そういう特許庁の中向けの研修だけではなくて、外に向かった人材育成ということについても心を用いていきたいと思っていまして、その意味で、先生おっしゃったように、一体となっていろいろな研修に参加していただく。その場合、実費をちょうだいするしないというのはまたあると思いますけれども、そういうことは考えていきたいというふうに思っております。

辻委員 冒頭で大臣にも確認させていただきました。特許審査の迅速化というのは、前国会でもそうだし、今国会でも論議されている。これは、やはり日本を知財立国にしていくためには非常に重要な、基礎的な問題でありますから、それについて継続的に問題意識を持って御尽力いただくという御答弁をいただきました。

 それを確認させていただいた上で、最後に、今井長官に一言お願いしたいと思います。

 今井長官と私は、大学時代同級で、忘れましたが、たしかフロムの「自由からの逃走」か何かの読書会をやったような記憶がありますが、通常、長官は一年間が在任期間だと思いますけれども、今回、ある意味で、百人の任期つき審査官について先鞭をつけられたということで、やはりこれを次の長官、そして特許庁の次に次にとつなげていく、そのような姿勢に変わりがないんだ、断固としてこの道を推し進めていくんだということについて、どのような決意を持っておられるのか、一言いただければと思いますが、いかがでしょう。

今井政府参考人 過分のお言葉でございますが、私ども、大臣が先ほど御答弁されましたように、本件は、非常に息の長い、継続した意志が必要な問題でございますので、体制というよりも、組織の最大の目的として特許庁としては取り組んでまいります。

 それから、それが全体、経産省の大きな政策として今位置づけられておりますし、この後はまた、大臣は新創造戦略というのをおつくりになりまして、その中でも位置づけていただいておりますので、その意味では、この特許の迅速化というのはきちっとした政策体系として行くのではないかというふうに思っております。

辻委員 終わります。ありがとうございました。

根本委員長 次に、樽井良和君。

樽井委員 民主党の樽井良和です。

 けさ方より同僚議員からいろいろ指摘があったと思うんですが、年金の支払いに関してはプライバシーだからというような発言もありましたけれども、議員というのは、そもそも、国民一人一人を株主として選ばれた一つの株式会社みたいなものであります。そういったことにおいては資産公開等もきちんとやっていますので、年金の方を払ったかどうか、これぐらいのことはきちんと国民に説明する義務があると私は思っております。

 まして、大臣が二十一年忘れたというようなことでありますと、うっかり八兵衛じゃないんですから、二十一年忘れていましたというような発言をしますと、国民の方は、だったら私たちも払わないよというような、そういうことを言われかねない、そういった立場にいるんだということ、こういったことを強く認識して、今後とも、きちんとそういったものを重く感じ取って、きちんと身なりを正してから行政をしていただきたい、こういうことを強く要望したいと思います。

 そして、きょうちょっと時間が思っていたより短くなっておりますので、あらかじめ言っております質問よりちょっと削りましたり、あるいは順序を前後いたしますけれども、きょうは、特許法第三十五条の改正案について主に質問させていただきます。

 まず、ちょっと冒頭、順序が変わりますけれども、青色発光ダイオードの判決、これが出ました。これについての感想を、大臣、お聞かせください。

中川国務大臣 先ほど中津川委員からお話がありましたが、これは、三権分立、議院内閣制のもとでの司法機関の判断であり、また三審制という制度もあるわけでございます。ただ、中津川委員も御指摘ありましたように、職務発明というのはどういうものなんだろうということが、国民の間でも、またもちろん関係者の皆さんの間でも非常に議論を呼び起こした、私自身も、この法案の勉強前のことでございましたけれども、非常に興味深く今後の成り行きを見守っているということでございます。

樽井委員 二百億円という本当にすごい額が払われるようになるという、ああいう判決が出て、かなり研究員、そしていろいろな企業もびっくりした、あるいは衝撃的であったと思います。

 これも、そういった事実を踏まえて、今度の改正案を出される上にも参考になってきているんだ、あるいは、こういった改正案をする必要をそういったところからも感じ取っている方がたくさんいらっしゃると思うんですが、この改正案を出すに当たっての過程なんですが、この改正案を出すに当たって参考にしているであろう産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会、この委員の名簿をちょっと見ますと、研究者の立場、研究者の代表というのが極端に少ないわけであります。研究者の意見を企業あるいは官僚が封じ込めながらこの法案をつくっているような気がしてなりません。

 実際、研究者のアンケート結果といろいろ見比べてみますと、最終的なこの法案の内容と研究者の気持ちというのが全然違っている。この不整合から、研究者の意見をきちんととったのかどうなのかということ、それと、この改正案の作成過程についてちょっと御説明ください。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 審議会には、研究者ないし労働界から委員に参加をしていただいておりまして、連合の須賀委員、それから理化学研究所の丸山委員、それから東大先端研の渡部委員に御参加をいただいて、意見をちょうだいしたところでございます。

 また、この審議会の検討に先立ちまして、過去十年間の全国の発明表彰受賞者約九十人にアンケートをお願いしました。また、二〇〇〇年の出願から抽出いたしました発明者、これは七千人にアンケート調査をいたしました。有効回答は、全国発明表彰受賞者で五十名、それから発明者で約二千四百名でございます。これをアンケート調査して、審議会の参考に付したわけでございます。

 また、この改正案が、最終的に審議会が答申をまとめるに当たって、有力な発明者の御意見もちょうだいをしているところでございます。

樽井委員 アンケートの方はいろいろとられているようですけれども、要するに、アンケートの結果がこの法案にきちんと反映されなければ、もうとる意味も何もないわけであります。そういったところからきちんととって、研究者の立場というものもちゃんと考えた法律改正、これをしていかなければならない、そういうふうに思っておりますが、きちんとその辺はとられておりますでしょうか。

今井政府参考人 アンケートによりまして、発明の報酬、対価につきましては、今回の法案の一番の骨子は、研究者と企業がきちっと向き合って相談をして決めていく、その手続をしっかり見ていこうというのが今回の法案でございますけれども、私どものこのアンケートに際しましては、発明報酬について使用者と従業者が決めていく、自由に合意をして決められるようにすべきだという意見が全体の四〇%近くございます。それから、ある一定の条件、まさに今度法案にしたような合理的な手続をきちっとやる、不合理でないようなきちっとした協議が行われなきゃならないとか、開示をしなきゃならない、そういう条件があれば当事者間でそういうものを決めていっていいんじゃないかという、条件つき賛成というのが一〇%。

 それから、反対という人が一〇%程度おられましたが、これは逆に、発明者は弱い立場にあるとか、そういうことでございますので、今度私どもが御提案申し上げました法案では、弱い立場というか、このアンケートではそういうことをおっしゃっていますが、それを是正するような手続をいたしておりますので、これもカバーできるかなと。

 そうしますと、どちらとも言えないというのが二八%、わからないというのも一〇%ぐらいおられますけれども、おおむね研究者の生の声というのはこういうことであろうかなということで、これを法案に反映させた、審議会でもそれを踏まえて御議論があったというふうに思っております。

樽井委員 その内容なんですけれども、結局、研究者も発明者もこうしたらいいじゃないかということに決まったというんですが、それは立場がどっちも違うわけですけれども、発明者の方は、この法案でより自分たちの発明や努力が評価されるようになると賛成の人は考えているわけです。そして、企業側で賛成の人は、より発明の訴訟の危険性が少なくなるんだ、こういうふうに考えているわけであります。この相反する立場の人が同じように同意していくという中に、研究者側と企業側と、賛成している人たちというのが、同じ文言の中で何か全く違ったビジョンとかイメージを持っているんじゃないかというふうに思われるわけであります。

 この法律が例えば通っても、そういう何かあやふやな文章ですので、このようなことでは、まだ今後ともずっとぶつかっていくのではないかと思うんですが、その点についてどうお考えですか。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 研究者サイドからいたしますと、これまでは発明報償、職務発明につきまして、言葉はちょっとあれでございますが、企業が一方的に決めてもいいルールであったわけでございます。したがいまして、参画することができなかったわけでございます。今度の法律によりまして、そういう手続に参画して自分の意見も述べ、恐らく企業はそれを十分踏まえて発明規程をつけることになると思いますので、その意味で、研究者のプライドといいますか納得感といいますか、満足感というのは拡大するということは先生おっしゃるとおりでございます。

 一方、企業の方からいたしましても、今のように、先ほど来議論がありますように、何年かたって裁判になって、それが昔払ったのが足りなかったというふうになりますと、非常に安定性が崩れますので、研究にも腰が入らないということになってしまうわけでございます。今度の法案では、きちっと研究者と向き合って協議を尽くして、議論を尽くして決めていく、その過程がきっちりしておれば後々それを裁判所が評価することになりますので、それはそれで企業のサイドとしても予見可能性が高まるということでございます。

 そこは、先生おっしゃったように二律背反ではなくて、むしろ両方が、自分の企業のことでもございますから一生懸命考えてまとめていくことによって、それが双方に利益があるというふうに私どもは考えて提案させていただいているわけでございます。

樽井委員 話し合いでだんだん企業と発明者の方が決めていくということなんですけれども、裁判所が評価する話し合い、そもそもこの法案では、企業と発明者の話し合いの過程を重視すること、これを大事にしておりますが、そんな、話し合いができている場合ですとこんな訴訟とか起こらないわけであります。結局は、そういった話し合いがきちんと今までできていなかったからこそ、こういった争い事、いわゆる裁判ざたになってきたわけであります。

 それで、研究者というのは社員なんですが、もともと、そういった会社の例えば勤務規則、こんなものを一たん読んでからその会社に入っているのかどうか、こんなところも非常に疑わしいところでありますし、研究者というのはもともと立場の弱い、従業員の中でもどちらかといえば少人数である、こういった立場であります。今後、こういった企業の技術者であるとか研究者、弱い立場でしかも人数が少ないですから、百戦錬磨の企業と交渉して、その交渉力あるいは勤務規則に対しての対応の仕方というのは、この差は歴然としていると思うわけでありますけれども、この辺についてどういうふうにお考えでしょうか。

江田大臣政務官 今般の改正案は、企業と研究者の間に情報や交渉力などの格差があることを踏まえまして、職務発明の対価を取り決めるに当たりましては、当事者間の自由な取り決めにすべてをゆだねるだけではなくて、取り決めたところにより支払うことが不合理であってはならないとしているところでございます。そして、不合理でなければ、その取り決められた対価が相当の対価として裁判所にも尊重されてまいります。

 具体的に不合理か否かということにつきましては、企業と研究者の間に情報や交渉力などの点で立場の格差が埋められるように、対価を決定するための取り決めを策定するに際しまして協議が行われたか、対価の算定について研究者の意見が聞かれたかといった手続面を重視して判断することとしているところでございます。

 私も、私的なところではございますが、民間研究機関でバイオ医薬品の研究開発に十九年以上努めてまいりましたので、特許も九件ほどは持っておりますが、これまでは、やはり企業が定めた発明報償などの報酬規程によって対価が支払われておりまして、研究者においては意見を言う機会が少なかったというのは現状であるかと思います。七十六万人、日本に研究者がいらっしゃると聞いておりますが、ほんの一部の人しか退職後にこうやって裁判で訴訟を起こすことはできないというようなのが状況であったかと思います。

 しかし、今般のこの改正案によりますれば、従業者にとっては、みずからの意見を反映する機会が与えられるということは非常に期待されますので、私も実感としてそのように思いますので、研究者の満足感は大いに増すものと考えております。ですから、研究者の立場においても十分配慮したものである、今般の改正案についてはそう思っております。

樽井委員 例えば、規程自体が不合理であるかどうか、これ自体がまたはっきりしないあやふやな部分でありまして、そもそも発明であるとか研究する段階において、一体だれがどれだけの貢献度があるんだとか、どれほどこれが利益をもたらすか、これ自体が漠然としたものであり、さらには、業種によっても、この場合は会社の力がかなりのものを占めているだろうというものもあれば、その発明者がかなりの力を持っていて会社の方は余りやっていないということもあると思います。

 「プロジェクトX」なんかを見ておりますと、会社の方からは隅の方に追いやられた社員とかが奮起してやる、そういうパターンも多くて、就業規則、そういったものが全く当てはまらないというケースが多々あるんですが、実際に、じゃ、具体的にこの法律を適用するという段階になると、今回の場合、具体的にやらずに事例集ばかりで行政が進んでいくんですが、例えば、一つの発明。研究員、プロジェクトリーダーみたいなのを一人つくって、それを映画でいうならば映画監督みたいな位置づけにして、発明がちゃんとできた場合は企業の利益の何%をそこに譲りますよというきちんとした立場を設ける。それで、その監督責任のあるプロジェクトリーダーがその中の社員にそれを、山分けすると言ってはなんですけれども、きちんと配分するのは労働者側がきちんと取り決めるとかいったような具体的なことをしないと、そもそも会社の方にいたしましても、今の法律でも今度改正されても余り変わらないと思うんです。

 株主なんかにしてもそうだと思うんです。実際にその会社に投資しておいて、何か画期的な発明ができました、万歳とは言えないじゃないか、結局は一体その利益の幾らを研究員が取っていくんだという、これがはっきりしないと、どれぐらい取っていくんだということがわからないと投資もできない。

 こういうことが投資家あるいは会社の立場としてもあるわけですから、具体的にやっていかないといけないんですが、それを事例集だけで行政が進めていく、こういうことについてはどういうふうにお考えでしょうか。

坂本副大臣 先ほどから話が出ておりますように、今度の法改正では、職務発明の対価は、企業と研究者との契約、自由な契約を尊重する、こうなっていますが、審議会の議論も、実は、社風などの諸事情が千差万別だ、したがって手続を法律で厳格に定めることは避けるべきだ、こんな意見が、これも研究者側からも企業側からも出ているんですね。そこで、今般の改正案では、法律に厳格に手続を規定することはしなかったわけでございます。

 ところが、中小企業など、職務発明制度に関する諸手続の準備や社内体制の整備が困難な場合もあるわけでございまして、そういうために、各企業において具体的な手続を行う際に参考としていただけるようなものとして、事例集を作成したということでございます。

樽井委員 ちょっと事例にもないようなことなんですが、例えば外国における特許、これがそういった事例集にあるのかどうか。

 それで、グローバルな企業にとってはこれは本当に大事な問題なんですけれども、これから絶対こういう問題が起こると思うんです。日本の研究者が外国で発明した場合とか、あるいは外国の研究者が日本で発明した場合、あるいは日米研究員が共同で開発した場合、もちろん会社は中国にあったりアメリカにあったりするわけです。

 こういった中で、例えば、日本の企業がそういった研究を進めていっても、例えばその中に中国人であるとかアメリカ人であるとかの研究員もいて、そういった方々、当然愛国心の旺盛な方がいれば、ココム的なそういった技術漏れというような意味合いではありませんが、そういった研究した成果というものをとっていかれるとか、そういったことも十分考え得ることだと思うんですが、そういった外国における特許の問題、こういったものについてお考えでしょうか。

迎政府参考人 特許法三十五条の対価請求権につきまして、外国特許によって得た利益についてはどうなるのかということにつきましては、今般の改正案を検討いたしました審議会においても大変活発な議論を行ったところでございます。ただ、この点につきましては、現行三十五条が外国特許による利益について適用されるか否かについては、判例、学説とも二つに分かれておる状況でございまして、仮に我が国の特許法に、外国特許に基づく対価請求権も認めるというふうな規定を置いたとしても、それが国際的な法律の何を適用するかというふうなときに、日本法が適用されるというふうな保証もないというふうなこともございまして、今般は、その点については改正を見送るという結論を出したわけでございます。

 ただ、最近の判例におきまして、日立製作所の東京高裁の二審の判決あるいは味の素事件の東京地裁の判決、この二つはいずれも、特許法三十五条の対価についての規律は外国特許による利益にも及ぶというふうな考え方に沿った判決を出されておるわけでございます。

 したがいまして、こういった案件、いずれ上告等されるというふうなことにもなろうかと思いますけれども、最高裁判所がどういうふうな判断をされるか、あるいはこういったラインで判例が定着していくのか、この辺については今後注視してまいりたいと思っております。

樽井委員 こういった問題、見送ったとしても、本当に起こったときにはやはり対処しなければいけないわけですから、きちんとほかの国ともそういった意識合わせするなりして、国際的なそういったルールもつくらなければ、今後、そのグローバルな会社からはどんどんそういった問題が出てくる。こういったことにぜひ対処するような基準あるいは取り決めなどもきちんとつくっていただきたい、そういうことを強く要請しておきたいと思います。

 それと、実際、この法改正が起こったとして、旧法時代、要するに前の法律で通った特許、これでいつまでも訴訟が起こるんだったら、企業の予測不可能性はなくならないと思うんですが、この点についてはどうお考えでしょうか。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法のもとで発生している請求権につきまして新法を適用するというのは、法理屈的には、法改正をしてもそこまで及ぼすべきことではないと思っておりますので、附則では確認的に、この改正法は新しい特許出願に適用するというふうに書いてございます。

 ただ、立法府におかれます議論、こういう議論が、メッセージが司法にも伝わっていって、裁判にこの今の改正法の考え方、これはやはり相当な対価そのものではない、新しいルールでございますけれども、そういう考え方で発明者と企業が合意をした、どういうものが合意されているのかというものを裁判所がしんしゃくしていただく。裁判所にしんしゃくしていただくということは我々は期待するところでございますし、また、先ほどお話し申し上げましたけれども、新しい改正法のルールに従った取り決めを、過去のものについてそれぞれの企業の研究者と企業との間で新たに契約で結び直すということになった場合に、これは先日の参考人で竹田元高裁総括判事がお話をされておりますが、これは裁判所でもそれを尊重することがあり得るんではないかということでございますので、そういう手段を企業としてはおとりになるということもあろうかというふうに思います。

樽井委員 企業、研究者双方とも、本当にこういった問題については深刻な問題でありますので、今後とも、そういったことについての対応をぜひ力を入れてやっていただきたいと思います。

 そして、やはりこの国は技術立国という部分が非常に高い、そういうふうに私は認識しております。時間がないので最後の御質問にさせていただきますけれども、これは研究者が、結局、今回の青色発光ダイオードでちょっと夢を見れたと思うんですね。大学で理数系目指そうか、そういった方が、どんと大きな発明をすれば何か大成するかもしれないという夢が見れたと思うんです。それを例えばつぶしたりすると、どんどんとまた理系離れ、最近進んでおりますけれども、これは深刻な問題だと思っております。

 私も、実は物理学、化学というのがすごく得意だったんですけれども、何でこっちの方に、文系に途中で、高校まで理数系だったのに移ったかといいますと、やはり白衣を着て、まるで地下に潜ったように研究して、余り目立たない。私は目立ちたがり屋ですから政治家の道を選んだわけでありますけれども、そういった、何かちょっと虐げられたといったらむちゃくちゃ失礼な話ですけれども、一生懸命やっているのに何か日の目を見ないところがあったり、こんなにすごい貢献をしているのにこんなに給料少ないんだろうか、そういう思いがあったりしたら、今後、ちょっと理数系で自分の人生のビジョンを描いていこうというような思いが、だんだん日本に少なくなってくると思うんです。

 こういった中で、どんどんと技術立国あるいは未来の技術を開発させるために、やる気のある理数系に進んでくる学生を確保するためにも、またそういった理数系離れに対して、経済産業省としては何か策があるのか、この辺についてお聞かせください。

中川国務大臣 私は中学に入ったときに、物理と化学がもうとても難しくてわからなくて、嫌になっちゃって、仕方がなく文科系に行って、白衣を着ている研究者というのは物すごくあこがれるわけでございます。

 そういう中で、もちろん、先ほどから弱い立場とかいろいろ、それも大きな理由だと思いますが、やはりきちっと特許が認められて、そしてきちっとした対価があるということは、一つの達成感であり、満足感、それが金銭的に評価されるということだろうと思います。

 それ以外にも、きっといろんな満足感、極端なことを言うと、お父さん、お母さんから褒められるとか、家族からはよかったねとか、子供からよかったねということも、ひょっとしたら、ささやかかつ大きなことかもしれませんが、この三十五条職務発明というものは、そういうものをきちっと、達成感と同時に、さらに前へ進んでいこうということにもインセンティブを与えると思います。

 そういう意味で、理科系に限らずだと思います、もっと一般的な話をして恐縮でございますけれども、自分がやりたいと思っていることに思う存分その能力と意欲が発揮できるような体制、御質問は理数系というお話でございますけれども、特に物づくりあるいは技術立国、知財立国を目指す日本としては、この特許法改正がさらにそういう分野で優秀な人材がすばらしい成果を与えて、そしてまた産業としても発展をしていく、国際競争としても優位に立っていける、国際的な貢献もできるというふうに資すればということで、この特に三十五条あるいはまた迅速化もそうですけれども、この法の改正の趣旨があるということをぜひとも御理解いただきたいと思います。

樽井委員 アメリカなんかではバスケットの選手とか、あるいはヨーロッパではF1のドライバーとかでも、何十億ももらっているわけであります。だから研究員でも当然、スターのようなそういった研究員、こういう研究員が出てくればこそ、よっしゃ、あれを目指そうと思うような青少年も出てくると思いますので、そういった夢のある、ジャパニーズドリーム、こういったものも大事にしていただけたらということを強くお願いしまして、時間が来ましたので、質問を終わらせていただきます。

根本委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。江渡聡徳君。

江渡委員 自由民主党の江渡聡徳でございます。

 時間の関係もございますので、早速質問に入らせていただきたいと思うわけでございますけれども、今回の法改正、私は二つのポイントがあると思っているわけでございます。

 第一点は、現在の企業経営にはスピードが求められている時代でありますものですから、特許審査の迅速化というのは本当に必要でありますし、しかも、審査の質を確保し、適正な審査を行う体制を構築させていかなければいけない、このことが第一点でありまして、そして、第二点目におきましては、職務発明におけます不合理性を排除して、企業と研究者のバランスに配慮することだ、そのように私自身は認識しているところであります。

 そこでまず、審査の迅速化についてお伺いしたいと思うわけでございますけれども、この審査の迅速化につきましては、政府が任期つきの特許審査官の増員を行うということを本法案で打ち出したということは、大いに評価したいと私自身は思っております。

 しかし、この迅速で的確な審査体制を構築するということは、私は簡単なことではないと思っております。今回の施策がある意味単なるかけ声で終わってしまったということでは、これは決していい形じゃないと思うわけでございます。やはり継続的に施策に取り組んでいくということが必要である、そう思っております。

 ですから、そういう意味合いの中におきまして、政府として、これからいつまでに何をしっかりとやるのか、そういうことの目標というものを国民にきちんと示していただきまして、そして、ある意味、政府がみずから縛っていくんだ、そのぐらいの気概を持って、態度を持っていただいて、しっかりやっていただく必要があるのではないのかな、そう思っているところですけれども、この法案をいろいろ見ていきましても、このような目標というものがきちんと書かれてありません。

 審査の迅速化というものを実現する上においては、この辺のところというのは私は非常に大事なところじゃないのかなと思いますので、明確な目標というものをお聞かせいただければありがたいなと思っております。

坂本副大臣 知財立国の実現に向けまして、特許審査の迅速化に政府としては全力を今挙げているところであります。

 特許審査迅速化の目標については、小泉総理が本年一月の施政方針演説において言明したとおり、審査順番待ち期間ゼロを実現することとし、その過程における中期、長期の目標を、知財基本法に基づく知的財産推進計画において明確にしていきたいと考えております。

江渡委員 今のお答えだけですとちょっと弱いなと思うわけでございますけれども、それでも、今副大臣がきちんと明確に打ち出していくということですので、そのことを信じたいと思っております。

 ただ、この法案あるいは午前中からのいろいろな審議の中におきまして、ある意味、アウトソーシングの拡充もやっていく、民間活力も利用していくというような話をしています。

 しかし、企業というのは、特許というものを考えた場合には、できるだけ秘密にしていきたい、余りいろいろなところで情報が漏れるようなことをしてほしくないと願うというのも事実だと思うわけでございます。ですからこそ、基本的な部分ということになりますと、やはり国としてしっかりと審査官をふやしていく、この辺のところが私は大事な部分もあるのではないのかなと思っていますけれども、その点のことに対していかがお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

坂本副大臣 前国会の附帯決議におきまして御指摘いただいたとおり、特許審査の迅速化を実現するためには、基本は特許庁の審査能力の強化でございます。特に、特許審査官の大幅増員が必要不可欠であると認識いたしております。

 特許庁では、約千百名強の特許審査官が現在審査業務に従事しております。また、外部には一千二百名を超える従来技術調査人材が、特許審査に必要な従来技術調査のアウトソーシングを行っております。このアウトソーシングは、我が国の特許審査官が欧米に比べ高い審査効率を維持していく上で必要不可欠であります。

 今般、特許庁としては、今後五年間、毎年百名、合計五百名に上る任期つき審査官の増員を図ることを目指しておりまして、本年は九十八名の増員の計上をさせていただいております。

 これら任期つき審査官が通常の審査官と同様高い審査効率を維持するためには、アウトソーシングの拡充が必要でございます。今後も、審査官の着実な増員による審査体制の整備及びアウトソーシングの拡充を図ることによって、審査効率のさらなる向上を進めてまいりたいと考えております。

江渡委員 できるだけそこの点はしっかりとやっていただきたいと思いますし、また、企業側の論理というか考え方、その思いというものも踏まえながら、審査体制の構築をきちんと進めていただければありがたいなと思っております。

 次に、職務発明についてお伺いしたいと思うわけでございますけれども、青色発光ダイオード事件で随分この点が有名になったわけでございまして、また、この職務発明をめぐる訴訟というものがかなり頻発している感があるわけでございます。

 ただ、この職務発明制度というのは、特許法の中において三十五条というたった一条の条文で規定されている制度なわけでございますけれども、我が国がこれから知財立国あるいは科学技術立国というものをきちんと目指す上においては、私は、やはり大変重要な制度ではないのかな、そのように認識しているわけでございまして、ですからこそ、今般のこの法改正におきましては、本当に慎重な審議というのは尽くさなければいけないなというふうにも考えているところでございます。

 また、我が国の特許出願の大部分というのは企業からのものでありまして、そして、そのほとんどが職務発明でもあるわけであります。そして、その発明というものを知的財産として活用するということが、ある意味、これからの日本にとっては本当に重要だと私は考えております。それゆえに、企業と研究者がしっかりと協力し合えるような、そんな環境整備、すなわち、両者のバランスに配慮した職務発明制度の構築ということこそが、これからの日本にとりまして産業競争力強化に向けた大事なことだと考えているところでございます。

 そこで、今般の改正案の趣旨についてお伺いさせていただきたいわけでございます。改正案というものは企業と研究者が協力し合えるような環境を整備することを目的としていると思うわけでございますけれども、企業と研究者の間で十分な意見交換ができるような環境というものがしっかりと整った場合におきまして、両者の意見が反映された契約が結ばれている場合には、この契約内容というものが司法の判断においても尊重されるべきではないかなと私は考えているんですけれども、いかがお考えでしょうか。

江田大臣政務官 先生御指摘のとおり、今般の改正案は、企業につきましては、対価の予測可能性を増すことによってその経営の安定化を図る、また、研究者におかれましては、自分たちの意見を述べる機会を通じて発明評価に対する満足感を増すように、すなわち、両者のバランスのとれた環境整備を図るものでございます。

 具体的には、各企業の置かれた状況とか経営環境、経営戦略、社風については、その企業が一番熟知しているわけでございまして、この企業の経営者と研究者が十分な話し合いを行った結果として契約が成立している場合には、その契約の内容が司法の判断においても尊重されるようにするものでございます。

江渡委員 今回のこの改正案というもの、研究者と企業のバランスに配慮したというふうな改正案だと私自身は思っていますし、今のお答えでもそのようなものだなというふうに受け取ったわけでございます。

 しかし、特許の権利というのは、出願後二十年間あるわけでございます。また、時効期間というものを考慮すると、さらにその期間を加算した期間、現行法が適用され続けていくということになるわけでございます。とするならば、現行法と改正法との異なった法判断基準によって、二重に機能し続けていくという事態を招いてくるわけでございます。また、現行法の第三十五条三項、四項というのが強行規定であるということを理由に、下級審の判例は企業にとって大変厳しいものになっているというのも現実なわけでございます。

 それらの点すべてを勘案した上で、あるいは法の不遡及という原則もあるわけでございますけれども、そのことによって難しいということは十分理解しておりますけれども、やはり今言ったようなダブルスタンダードというのをなくしていかなきゃいけないだろう。それゆえに、過去の発明についての対価に対しても今回の改正案の考え方というのをできるだけ適用するべきじゃないかな、私はそのように考えておりますけれども、いかがお考えでしょうか。

江田大臣政務官 現行法、特許法の三十五条三項に規定されております相当の対価の請求権は、研究者が企業にその発明を継承した時点で発生しておるわけでございます。本改正案を既に継承された発明に遡及して適用することによって、この既に発生している対価請求権の権利内容を変更するというのは、先ほどからも、これは困難なことであるわけでございます。

 しかし、あえて申し上げれば、先生御指摘のとおり、新法で、研究者と企業が協議を尽くして対価を決定するための取り決めが策定された場合には、現行法のもとで既に発生している権利に関する裁判につきましても、その取り決めに至った背景などの諸事情が考慮されることを期待しておるわけでございます。

江渡委員 この辺の部分というのはどうしても、司法の判断の部分があるわけですから、厳しい部分はあるかもしれませんけれども、できるだけ、今政務官の方からお話があったような形のものとして集約されていくならば、非常によりよい企業と研究者の関係ができるのじゃないのかな、そう思っているわけでございます。

 また、もう一点、新しい改正法の三十五条の四項についてですけれども、特に企業の社員に対しての説明責任を果たすようにというふうに求めているわけですけれども、しかし、実際の企業運営ということを考えた場合に、私は、すべての発明を対象として、一つ一つ発明の対価について事前に説明するということは難しいんじゃないのかな、そう思っています。

 ですからこそ、あらかじめすべての算定について意見を聞いていなくても、まず、企業が算定した額をしっかりと支払っておきまして、そして、これに異議がある場合、きちんと研究者の意見を言えるというような、そういう仕組みをきちんと整えておく。そうやって実質的に研究者が意見を言えるような状況があれば許容されるんじゃないかな、具体的にどうやって研究者の意見を聞くかとか、その辺のところはもう少し各企業の事情を勘案すべきではないのかなと私自身は思っていますけれども、いかがお考えでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 個々の対価の算定につきまして研究者の意見を聞くという最適な手続につきましても、やはり業界ごと、企業ごとに異なっているものと思います。

 大企業の場合は、九千人とか一万人とか研究者がおられますので、このそれぞれについて、多数の発明について、一つ一つ対価を事前に相談をして決めていくということはできないと思いますので、例えば、毎年毎年の支払いについては、まず計算式をつけた上で払っておいて、それに対して異議があるような場合には、社内のきちっとした手続で、不服申し立てと申しますか、そういうような形で異議を申し出てもらって、それに誠実に対応するような仕組みをつくる、こういうことであれば今回の物の考え方に沿うものであるというふうに思っております。

江渡委員 ありがとうございました。

 最後にですけれども、政府としてこれにどのように取り組まれるのかなということをお聞かせいただきたいんですけれども、私は、知的財産立国を進めていこうとした場合に、やはり基本は人ではないのかな、そういうふうに思っております。政府においても、知財推進計画の五つの柱の中においては、しっかりと人材育成というものを位置づけているわけでございまして、かなり積極的に取り組んでいるのではないのかなと思っております。

 しかし、やはり問題というのは、中小企業の人材育成じゃないのかな、そう考えております。日本の雇用の大宗を占めているのはやはり中小企業でありますからこそ、戦略的に知的財産を活用していくというのは本当に大切なことだと思っています。ですからこそ、中小企業のスタッフの方々がそれを活用していくというのは十分わかるんですけれども、それ以上に、やはり経営者側がしっかりとした知的財産についての知見を持つということが大事じゃないのかなと思っています。

 特許庁さんも、独立行政法人を活用しながら、知財人材の育成に積極的に取り組むというふうに言っておりますけれども、本法案を見ていきますと、審査の迅速化に対しての専門家を育成しようとか、その辺のところに重点を置かれているように思うんですけれども、必ずしも中小企業の人材育成には、どうも重点が置かれていないんじゃないのかな、そんな受けとめ方もできるわけでございます。この辺のところについて、しっかりとした政府の取り組みと、そしてまた、ある意味、特許庁が持っている豊富な知見というものを活用して、中小企業の人材育成に強力に支援をしていくんだ、そういう姿勢を示していただければありがたいなと思っていますけれども、最後にお聞かせいただきたいと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、これまでも特許庁なりに、各地で中小企業者をお呼びしてセミナー等を開催してまいりました。ただ、今般、独立行政法人に人材の育成機能を移行しまして、内向きだけではなくて外向けにも特許庁の能力を大いに使っていきたいということで頑張っているところでございます。

 また、中小企業施策と特許、知財施策を組み合わせて、中小企業の方にもいろいろな施策がございます、それをダブルでうまく使うことによりまして効率的なことができると思いますので、中小企業庁とも連携しながら進めてまいりたいというふうに思います。

江渡委員 やはり日本の経済の下支えをしっかりとしているのは中小企業でありますからこそ、今の長官の方からの御説明のとおりに、しっかりとその辺のところを取り組んでいただければありがたいと思います。

 時間が来ましたので、終わります。

根本委員長 次に、小野晋也君。

小野委員 きょうは、限られた時間でございますから、要点を絞っての質問とさせていただきたいと思います。

 実は少し前に、きょうも弁理士会から森政治連盟の会長もお見えになっておられますけれども、お邪魔したときにお話を申し上げたことがあったのは、地方の目から見ると、弁理士の皆さん方はどうもラストサムライだという気がする、こういうお話だったわけです。

 ラストサムライだからといって、別に武士道精神を守っているなんということを申し上げようというわけじゃなくて、士(さむらい)業というのはいろいろと日本の国の中にありまして、例えば公認会計士、税理士もそうでしょうし、弁護士もそうでしょうし、土地家屋調査士、いろいろな何とか士(し)というのが、士(さむらい)という字を書く業がありますけれども、それらの中で弁理士という方々が一番、地方でじっと待ち焦がれていてもなかなかやってこない、恐らく一番最後にやってきていただけるのが弁理士だろうという意味で、ラストサムライ、こういうふうに名づけさせていただいたわけであります。

 データ、いただいたものを見てみましても、今、弁理士の先生方が全国で五千五百五十四名おられるということでありますけれども、そのうち、東京におられるのが三千四百四十一名、そして大阪が八百四十名でございますか、とにかく、関東甲信越と近畿、両方合わせるだけで九〇%を超える弁理士がそのエリアの中におられるんですね。

 ちなみに、私の今おります四国の場合、どうなんだろう。御存じのとおり、四国の人口というのは四百万余りおりまして、全国の人口比でいくと約四%と言われる地域ですが、そこにおられる弁理士の割合というのは、全国比で〇・二八%しかいない。本当に数えるばかりしかいないんですね。

 しかしながら、一方で、政府が打ち出すいろいろな長期計画等を見ますと、これからの時代は知の時代がやってくるだろう、知恵を生かしながら地域開発をやっていかねばならない、こういうふうな話が出る一方において、この知恵を権利化する、ないしは財産化する役職でございますところの弁理士の人たちがほとんど地方には存在しない、こういう姿が非常に、全国的な政策との不整合を生み出しておるところがあるような気がしてならないわけであります。

 これを私どももずっと訴えてくる中で、小池さんという元弁理士会の会長をされました方が、おまえの言うことはよく理解ができるから、では、ひとつ実験的にサテライトオフィスを四国につくってやろうということで、昨年の六月に、小池晃国際特許事務所四国サテライトという名前になるのでありますが、この事務所を新居浜の町につくっていただきました。

 最初、小池さんも、この事務所を開くに当たっては疑心暗鬼だったらしいですね。大体、こういう仕事というのは東京や大阪や名古屋のような大きな工業が背景にあるところでなければ恐らく成り立たないだろう、こういうふうに思っていたところが、いざ開いてみたら、大変驚かれた。というのも、まだ一年足らずの期間にしかなりませんけれども、既に、地域の中で御相談を受けて特許申請を出したのが五十件に余るんですね。意匠だとか商標だとか、こういうものを入れるとまた百件弱の申請がその事務所から出されているということで、これだけの件数があればもう独立した一つの事務所だと言えるぐらい、地方には、特に工業地帯と言われる地域であるからかもしれませんけれども、特許等の知的財産権の申請のニーズというものが強いものがあるということに小池さんも気づかれたし、私たちも、そういう問題の重要性に気づいたということであります。

 なお、その事務所ができて申請が容易になったというだけでなくて、非常に精力的に、地域には工業高等専門学校もございますが、そういう場所で学生に対して講演をいただいたり、また地域のいろいろな産業の支援センターがございますが、こういうところが主催する講演会でお話をいただいたり、また地域の銀行が取引先の人たちを集めて行ういろいろなセミナーがありますけれども、そういうところで話をしていただくというようなことを通して、この一年、たった一年間でございますけれども、一気に地域の中でのこの分野の重要性が広く認識されるようになってきたという現実もございます。

 そういう体験をいたしました中で、やはり私は、これから日本全体、物づくりを中心にして新しい時代対応が求められる。特に、知恵の付加価値をつけた産業を育成していかねばならないということが主張される中で、この弁理士事務所というものを地域に広く展開するということが基本政策として必要ではなかろうか。

 これはもちろん、国の政策のみならず、弁理士さん個々の判断ないしは弁理士会の皆さんのこれからの取り組みということが必要であろうと思うわけでありますが、この点、十分に研究をしていただきまして、地方では特許ビジネスは成り立たないんだというこの先入観を打ち砕いていく必要があるなと。ですから、地方において特許ビジネスを行うということが十分に成り立つのであるということについてのビジネスモデルを示すというようなことを、政府の立場、特許庁の立場で取り組んでいただければと思うわけでありますが、この点、御所見をお伺いしたいと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、約五千七百名の弁理士が登録されておられます。御指摘のように、その多くが東京、大阪などの都市部に集中をしているわけでございます。

 このような実情を踏まえまして、平成十一年に、通産大臣の諮問機関でございます工業所有権審議会におきまして、地域企業の支援の観点からも、弁理士の数の拡大が必要というような答申をちょうだいしまして、これを踏まえまして弁理士制度の改革が行われ、現在、弁理士試験の合格者数は、平成十年が百四十六名、十五年度は五百五十名というふうに増加をしておるわけでございます。

 加えまして、御指摘のように、弁理士会の方でも地方展開、地域展開を随分進めていただきまして、現在、弁理士が一人もいない都道府県はなくなっております。また、弁理士会としても、地域に支所が設けられるような制度改正をして対応してきていただいているところでございます。

 先生の新居浜の件でございますけれども、大変知財政策としては関心の高いところでございますので、ビジネスモデルと申しますか、一つのモデルケースとして私ども勉強させていただきまして、そういうモデルとして活用させていただきたいというふうに思います。

小野委員 引き続きまして、青年に対する知財教育の観点からの御提案を申し上げたいと思います。

 特に最近、技術系の青少年に対して、科学技術への関心の低下ということが叫ばれております。十年くらい前ですか、若者の科学技術離れというような問題が指摘をされまして、それ以来科学技術創造立国の政策のもとに総合的にこの分野の取り組みを進めてきているわけでありますが、最近の調査によりましても、いまだ若い人たちに科学技術への関心が必ずしも高まっていない、こういうふうなデータが出ているのもまた事実であろうかと思います。

 私は、若者が求めるものは、一つには夢であり、一つには知恵であり、一つには元気である、こういうふうな考え方を持っているものでございます。ですから、若者が夢を抱き、知恵をそこに創造し、そして元気が満ちあふれる、こういうような環境をつくる、ないし、そのもとでその青年たちがそういうものを求めて生きていく、こういう社会が生まれてくるならば、これが技術の分野で実現できますならば、科学技術分野にもっともっと若い人たちの深い関心が集まるはずでありますし、また、その分野で活躍される青年たちが多く出てくるに違いない、こんな思いを持っているわけでございます。

 そこで、これからの検討課題といたしまして、知的財産権をてことしての若者への関心を喚起する作業というようなものを考えてみる必要があるのではないでしょうか。

 考えてみますと、私どもの子供時代には、発明ということに非常なあこがれを持っていたと思うんです。いろいろなものをつくっては、それをもとに何かできないだろうかというようなことを楽しみながら、夢見ながら、ラジオ少年と言われるような時期も私にもございました。そんな時代を振り返ってみたときに、私は、知的財産権というのは非常に有力な道具になる、こんな気持ちがしてならないわけであります。ですから、これから学校現場において、知的財産権の教育ないしは発明教育、こういうものをしっかりと行っていきながら、彼らに新しい夢を与えていくことをぜひ御検討いただきたい。

 ついては、より具体的に申し上げますならば、科学技術を活用して、いろいろな分野でコンテストを設けることが可能だと思うんですね。今でもロボットのコンテストというのは有名でございますけれども、高専の生徒さんたちがやっておられますし、ソフトウエアコンテストといったものも行われております。この科学技術分野において、そういうコンテストを行いつつ、しかもそれが権利化されながら、新しい可能性を人生に与えることができる、こういうことを行う教育というものが非常に効果的な教育になる気がしているわけでありますが、この点の御所見もお伺いをしたいと思う次第であります。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、知財立国を実現させるためには、人的基盤の充実ということが非常に重要でございます。子供のころから知的財産の重要性について教育をするということが大事であることは御指摘のとおりでございまして、先生からは早くより、学生が特許をとる訓練を行うような支援をしたらどうかということもお聞きしておりました。

 特許庁におきましては、小学校の早い段階から発明などの知的財産を尊重するような意識を醸成してもらうということで、小学校から高校までそれぞれの段階に合わせた副読本を配布するというようなことで、努力しているところでございます。

 また、昨年度には、文部科学省と連携しまして、高等学校の生徒、それから高等専門学校、大学の学生を対象といたしまして、学生みずからが特許出願から権利化までを体験するということを通じて知財を実践的に学んでもらうということで、パテントコンテストというものを開始いたしました。

 このパテントコンテストでは、学生などが学校活動や自分の研究成果から発明をいたしまして、これを審査して、審査をクリアした案件、表彰される案件につきましては、出願に必要な費用を国が負担するということにしまして、弁理士会とも共催をいたしまして、学生みずからの手で出願をしてもらう、こういう試みをやっておりまして、現に権利化をしてもらうということで、新しい試みをしているところでございます。

 引き続きまして、学生のころから意識を高めるという意味では、文部科学省と連携してこのような取り組みを進めてまいりたいというふうに思います。

小野委員 最後の質問になろうかと思いますけれども、知恵というものをベースにしながらこれから社会をつくっていこうというのが知価社会の考え方でありますけれども、そうなると、この知的財産権というものをより広い範囲と連携させるという必要性がこれから生まれると考えております。つまり、私も地元で先日農林水産業と知的財産権問題のフォーラムを開催いたしましたら、当初百名の予定で会場を設営したのでありますが、いざ開くと二百二十名集まってきたんですね。だから、いろいろな分野の皆さん方が今知的財産権に深い関心を持っておられる。

 さらに、今も取り組みが進められておりますが、知的財産権そのものを担保にしながらお金を貸す、そのための評価をいかに行うかというようなことも検討されてきているわけでありますが、そうなると、経済活動そのもののベースをなすのがこの知的財産権であるというようなことも言えるだろうと思います。

 こういうことは、語り始めると随分いろいろな例を挙げなきゃいけない問題でありますが、もう時間がありませんからそれだけにとどめますけれども、これから、政府として、知的財産権をより広範な分野と連携させていきながら、総合的な力を発揮させるためにいかなる取り組みを進めていこうとしているのか、この点について御所見をお伺いします。

小島政府参考人 お答え申し上げます。

 先生ただいま御指摘がありましたように、知的財産立国の実現のためには、広範な分野においてさまざまな取り組みをするということが必要でございます。政府の知的財産推進計画においても、特許や著作権などの分野はもとより、大学発ベンチャーや産学連携の推進、あるいは我が国技術の国際標準化への支援、それから知的財産の情報開示の推進、信託制度による知的財産の活用、コンテンツビジネスの振興、人材育成など、知的財産にかかわる幅広い分野を取り上げて、その推進のための制度整備や政策の充実などを知的財産戦略として進めてきました。

 さらに、この知財推進計画につきましては、本年五月末までに見直しを行いまして、先ほど御指摘のありました地域振興との関係とか、あるいは中小企業との関係、あるいは模倣品、海賊版対策など、新たなニーズをできるだけ広く取り上げまして、その取り組みを強力に推進してまいりたいと思います。

小野委員 質問を終わります。

根本委員長 井上義久君。

井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。

 まず初めに、中川大臣に、特許審査の迅速化について基本的なお考えをお伺いしたいと思います。

 現在、審査待ち案件はおよそ五十万件、審査の順番待ち期間も、アメリカの十四カ月あるいは欧州の二十一カ月に比べて、二十六カ月と長期化しております。さらに、審査請求制度、請求期間が七年以内から三年以内に短縮をするということに伴って三十万件程度急増される、このように予測をされておりまして、審査待ち期間もさらに延びることが懸念されているわけです。加えて、国立大学の独立行政法人化によって大学からの特許申請も今後相当にふえる、このように考えられます。

 そこで、科学技術創造立国、知的財産立国を目指して世界最高レベルの迅速、的確な特許審査を実現し、最終的に審査順番待ち期間ゼロ、これを達成するためには相当な取り組みが今後必要になるだろう、このように思うわけでございますけれども、この審査順番待ち期間ゼロを目指して、今後の目標、それから具体的にどういう実施計画を立てていくのか、それを含めてまず大臣の御決意をお伺いしておきたい、こう思います。

中川国務大臣 午前中からいろいろと質疑が行われておりますが、日本が知的財産を一つの大きな柱としてこれから進んでいくためには、いい発明等を行い、そして権利が早急に確定をし保護され、またそれが利用されていくということが目的でございますが、先ほどアメリカあるいはヨーロッパと比較した答弁がございましたけれども、今、井上委員御指摘のような実情でございまして、早く関係者の皆様方のためにも、あるいは国家としても、迅速な特許権の確立といいましょうか、特許事務の迅速化が必要になってくるわけでございます。

 具体的には二十六カ月とか、あるいはまたほうっておくとこれが倍近くになったり、また八十万件が待機待ちになるというますます厳しい状況になりますが、これをあえて審査待ち期間をゼロにしようという、大変、ほっておけばもっともっと長くなるものをゼロにしようという目標でやっていくわけでございまして、中期的に五年を一つの目標に、あるいはまた、長期的には十年を最終的なその実現にしていく考えでございます。

 五年というのは、先ほどから質疑がありますように、任期つき審査官を大体百名ずつ毎年ふやしていきまして、人的な体制を強化していく。それから、特許出願手続におきましては、事前に民間でできるところは民間でやっていく。あるいはまた、特許審査の段階におきましても、調査に関して、一つの機関、公的な機関だけではなくて、民間等も利用して迅速、かつコスト的な面にも配慮をしてやっていくことによって、国としての大きな目標に向けて、一つのこの審査待ち期間ゼロという目標を立てて、五年、十年という中期、長期の目標を立てて何とか実現をすることによって、大きな成果を得たいというふうに考えているところでございます。

井上(義)委員 五年間で五百名の任期つき審査官を採用する、これ自体、私も大変画期的なことだと思いますし、それからまた、相当優秀な人材も集まってきているということをお伺いするわけです。

 ちなみに、アメリカなんかでは二〇〇三年から六年間で三千三百人の審査官を新たに採用するというような計画があるというふうにも聞いておりますし、私は、現状でもアメリカに比べて審査官は極めて優秀な仕事をされておると思いますし、三倍の処理量を抱えてやっていらっしゃるわけでございまして、これで本当に十分なのかな、大丈夫なのかな。五年、十年の計画とおっしゃいましたけれども、ここはもう少し思い切った計画が必要なんじゃないかと思います。

 それから、弁理士さんというのはすぐに弁理士さんになれるわけじゃなくて、相当な養成期間といいますか人材育成というのが必要でありますし、あるいは知的財産専門の弁護士、こういう人たちも、いわゆる知財制度というものを支える。そういう人材の育成というのを総合的にやっていかないととても追いつかないんじゃないかな、こういうふうに思うわけでございまして、この人材育成ということに関してお考えをお伺いしたい、こう思います。

坂本副大臣 特許審査の迅速化を実現するための基本は、特許庁の審査能力の強化でございます。特に審査官の増員が必要不可欠であると認識しております。

 欧米の特許審査と比べて数倍の処理能力を発揮しておりますけれども、これも民間能力、アウトソーシングを活用して、先端的な情報通信技術の戦略的な活用によるものでございます。

 特許庁としては、御指摘のように、五年間で毎年百名、そして五百名に上る任期つき審査官の増員を図ることを目的としておるわけでございますが、通常の審査官の増員も着実に実施したいと考えておるところでございます。ことしは三十名を増員しております。

 また、弁理士や知財専門の弁護士など、知財制度を支える人材の育成についてのお尋ねがございました。

 この点につきましては、本法律案におきまして、特許庁職員の人材育成を担ってきた工業所有権研修所を独立行政法人工業所有権情報・研修館に移管いたしまして、人材育成機能の拡充を図ることといたしております。

 今後、任期つき審査官や従来技術調査人材など、特許審査の迅速化に直結する人材育成に集中的に取り組んでまいります。また、弁理士や知財専門の弁護士など、知財制度を支える人材につきましても、可能な限りその人材育成に注力してまいりたいと考えております。

井上(義)委員 次に、我が国の民間研究費の総額は二〇〇一年で約十一・五兆円に上っております。ただ、我が国の特許審査を研究費との関連で見ますと、研究の約半分が特許に結びついていない。

 例えば二〇〇一年では、審査請求約二十四万件のうち四九%、約十一万件が、審査をした結果、拒絶査定というふうになっておりまして、そのうち約五万件は拒絶理由通知に対して反論もないというのが現状でございます。しかも、拒絶査定された十一万件は、平均で出願の約八年前の従来技術で拒絶されている。研究開始時点で調査可能な従来技術により拒絶されたものも八割もある。

 こういう現状を考えますと、要するに、数年前の古い技術で特許が拒絶されている、これをやはり改善して研究効率を上げなければ、私はこれからの日本の科学技術創造立国というのは非常に厳しいと思うわけでございまして、そのためには、やはり研究開始時点における従来技術の徹底した調査が必要。その調査のためには、知的財産にかかわる情報基盤の整備というのが喫緊の課題だ、私はこのように思うわけでございまして、この点についての見解をまずお伺いしたいと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘のとおりの状況にございます。特許の審査請求のあったものの約半数が拒絶されているという状況でございます。

 私どもは、これまで議論がありましたように、まず、特許審査の迅速化によって特許の結果を早く研究所に戻す、フィードバックするということによりまして、研究所の研究が特許にならない分野に余り深く入り込まないで次の可能性のある分野に移るように、そういうことも考えておるわけでございます。

 それからもう一つ、先生が御指摘のように、やはり従来技術の調査ということがこれから非常に重要でございます。特に、従来、特許庁は、審査請求をする段階で従来技術のチェックをお願いしますというキャンペーンをずっとしてまいりました。しかし、先生が御指摘のように、やはり研究をする前に従来技術をちゃんと引いてチェックをしてもらって、それを見ながら研究に入ってもらうということが非常に大事だというふうに思っております。

 おっしゃるように、今、特許文献が四千九百万件ございます。これを私ども、システムで民間に提供しているわけでございます。企業に提供しているわけでございます。この法律によりまして、独立行政法人工業所有権総合情報館の業務に特許庁が庁として持っております情報提供サービス強化機能を移しますので、一層、その意味で従来技術提供の能力、対外的な力がふえてまいるというふうに思っております。

井上(義)委員 若干アクセスに時間がかかるとか検索が難しいというような声もあるようですから、ぜひその辺は改善の努力をお願いしたい、こう思います。

 それともう一点、先ほど申し上げました、研究費を効率的に投入して特許申請するという観点でいいますと、やはり企業の知的財産戦略、特許戦略というのが私は非常に重要だ、こう思うわけでございます。

 ちなみに、出願レベルで見ますと、上位十社で一九%、三十社で三二%、百社で四七%、五百社で六七%を占めているということですから、やはり日本を代表するトップ企業の知的財産戦略、特許戦略というものがかなり重点的になってこないと、むだな特許をいっぱいとっているというのが現状じゃないか、私はこう思うんです。

 これは、実は国の、いわゆる科学技術創造立国を目指す重点分野をどこに置いて、また、その中でもどういうところに特化していくかというやはり国の戦略とも非常に密接にかかわってくると思うんですね。そういうことを含めて、特許戦略、これを強化していくということが私は非常に大事じゃないかと思うので、もちろん民間は民間の自主的な判断というのはあると思いますけれども、やはり国としてこれについてきちっとした方向性を出していくということは、科学技術創造立国をつくっていく上で非常に重要だ、私はこう思うわけでございます。この辺の経産省の考え方をお伺いしておきたいと思います。

江田大臣政務官 井上先生御指摘のとおり、知的財産立国を目指す我が国にとりまして、企業が知的財産戦略を強化していくということは必須、非常に重要なことであると思います。

 企業の知的財産戦略と一言で言っても、研究開発の際の特許情報の活用とか、戦略的な特許の国内外での確保や特許等の紛争、その対応、広範にわたるわけでございまして、昨今の職務発明もその一つであろう。

 こうした広範な知的財産戦略を企業が強化するためには、まずは企業のトップがその重要性を認識して、リーダーシップを発揮するということが非常に重要かと思われます。今般の職務発明に関する高額判決というのは、これは期せずして、企業の経営トップが知的財産戦略の重要性に気づいたという契機になったのではないかと思われます。

 当省としましては、特許庁長官を筆頭に、各企業の所管部局と連携しながら、出願上位の企業を優先的に、知的財産戦略について経営層との積極的な意見交換を行っております。今、二百五十社ほどの企業の方々とこの意見交換をやっているところでございます。

 具体的な内容としまして、企業の特許率とか、さらには技術分野別の取得状況、そういうことについて競合他社とのデータの比較を示しながら、自社の業界内での位置づけをわかりやすく説明するなど、企業経営者が知的財産戦略の重要性について認識していただけるように努めているところでございます。

 こうした政策を通じて、企業が、先生御指摘のように、事業戦略、研究開発戦略、そして知的財産戦略を三位一体として充実していただければ、最終的に適切な出願、審査請求も実施されるのではないか、そのように考えております。

井上(義)委員 今回の職務発明制度の改革によって、私は、研究者のいわゆる出願に対するインセンティブが非常に高まるだろうと。

 そこにおのずとやはり戦略性がないと、むだな特許をいっぱい出願してますます特許庁の負担がふえる、だけれども知的財産立国は一向に進まない、こういうことにならないように、ぜひ戦略性ということについて、特にこれは、さっき申し上げましたけれども、国のやはり知的財産戦略とも密接にリンクしていることなので、ぜひそういう面での充実をお願いしたい、こう思います。

 それから次に、職務発明制度について、これは先ほどからも議論が出ていますけれども、いわゆる現行法と今回の改正法のダブルスタンダードという問題で、先般、参考人の質疑の中でも弁護士の竹田先生からも、立法府の立法趣旨、これはやはり司法判断に大きな影響を与える、こういう御指摘もございましたので、改めて私からも質問させていただきます。

 今回の改正の趣旨は、現行制度の基本的な枠組みを維持しながら、現行規定の明確化を図るということが趣旨だろうと思います。一方で、改正法の附則第二条一項に法の不遡及が規定してあって、現在の判例解釈が持続されれば、現行法による報償制度と改正法による報償制度が長期間にわたって異なった法判断基準によって二重に機能し続ける、こういう事態になるわけです。

 もちろん、解釈運用は専ら司法権の問題なんですけれども、立法府としては、これは私個人と言わなければいけないかもしれませんけれども、やはり制度の整合性と法的安定性を確保するという観点からは、この現行法と改正法との間のギャップを埋める解釈運用をぜひ司法当局に望みたい、こう思うわけです。このことについて政府はどういうふうに考えているか、これもまた明確にしていただきたい、こう思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、現行特許法三十五条三項の相当の対価請求権は、研究者が企業に発明を承継させた時点でもう既に発生しているわけでございます。したがいまして、現行法下で発生している権利につきまして本改正案を遡及的に適用するということは、困難であろうと考えます。

 ただ、御指摘のように、立法府としてこの法律改正の御趣旨を広く内外に明らかにすることによりまして、今後研究者と企業が協議を尽くして対価を決定するための取り決めが策定された場合には、現行法のもとで、今申しました既に発生している権利について、その裁判におきましても、この新しい取り決めの趣旨とか取り決めに至った背景などの諸事情が考慮されることが期待されるというふうに思います。

井上(義)委員 それと、今回の職務発明規定の改正の趣旨は、いわゆる合理的でないというふうに判断されることがないようにということで、要するに何をもって不合理ではないと認めるかという基準、これについては幅のある規定になっているわけです。

 改正の趣旨を実際の場で実現するためには、特許庁として相当なバックアップが必要だと思いますし、事例集を作成するというような支援策を考えておるというふうに聞いていますけれども、いわゆる研究者の納得感とそれから企業の予測可能性を高めるということですから、この辺については相当難しい対応がこれから研究者、企業、双方に求められると思いますので、これまでの事例も含めて、特許庁としてこのバックアップをどういうふうにしていくのか、確認しておきたいと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業などにおきましては特に、また大企業におかれましても、この新しい制度をつくるということは初めての試みでございます。発明者と企業が相対して、相談をしながら決めていくというのは初めての試みでございますので、なかなか迷うこともあろうかと思います。私ども、その意味で、事例集をつくって、不合理であるから無理だというようなケースなどもなるべく明確にしていきたいというふうに思っております。

 そして、新しい手続は可能な限り透明性のもとで、関係者が集まっていただいてつくっていきたいと思いますが、そのつくりました事例集につきましては、今先生御指摘のように、中小企業にも十分に見ていただけるように、各地で説明会を開催してみたり、各経済産業局に相談窓口を設けるなどして、制度の普及啓発に努めてまいりたい、かように思います。

井上(義)委員 次に、デザイン、意匠、この分野における審査の迅速化ということについてお伺いしたい、こう思います。

 我が国が国際競争力を持つ知的財産としては、デザイン、意匠、これは相当優位にあるだろうというふうに私も思っております。知的財産立国を構築するテーマとして、意匠、デザインに対する施策の拡充が必要だというふうに思います。

 特に意匠審査、平成十年には十八カ月かかったそうですけれども、当局の努力で現在八ヶ月。ただ、デザインというのは、特に今は寿命が非常に短い。例えば、携帯ですと、半年ごとにモデルチェンジしているというような状況を考えますと、さらに迅速化が求められるんじゃないか。

 先般、特許庁にお伺いしましたけれども、担当審査官五十一名で頑張っているということなんですけれども、増員ということも必要だと思いますし、審査のあり方も含めた抜本的な対策が必要なんじゃないかな、このように思うわけでございまして、この点についての考え方をお伺いしたいと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、意匠につきましては、審査順番待ち期間が二十カ月を超えるような状況もあったわけでございますけれども、審査の迅速化に努めまして、現在で約八カ月でございます。

 しかしながら、御指摘のように、ライフサイクルが短い製品が容易に模倣されてしまうというようなことがあってもいけませんので、さらに審査の迅速化が求められている産業分野が存在しているということも事実だと思います。

 このために、産業界の意見に耳を傾けながら、産業界も今随分これを戦略的に使いたいという機運が高まっておりますので、各分野のニーズに的確に応じられるように一層の審査体制の整備を図っていきたい、このように考えております。

井上(義)委員 次に、先ほどの職務発明に関連して、これは参考人質疑でもお伺いしたんですけれども、いわゆる大学における職務発明、これは現行法上、大学における職務発明がどのように扱われているのかということと、それが今回の改正によって影響を受けるのかということについて、お伺いしたいと思います。

迎政府参考人 大学における職務発明につきましては、まず、法人化以前におきましては、文部科学省が定めた規程に従って研究者が対価を受け取るということになっておりました。

 それが、国立大学の独立行政法人化が進むに従いまして、各大学それぞれ、独自の考え方に基づきまして、それぞれの職務発明規程というのを定めるということで、既に多くの大学でこういった整備がなされておるわけでございます。一例では、例えば大学が得た収入の経費を控除して、残りの四〇%を発明した先生にお支払いをするというふうなことを決めている大学もございます。

 ちなみに、今回、特許法三十五条が改正されますと、これは企業のみならず、国、地方公共団体あるいはその他の法人にもひとしく適用になります。したがいまして、大学におきましても、企業と同様に、言うなれば大学の当局が一方的に決めるのではなくて、研究者、要するに発明を生む可能性のある先生方ですとか、こういった人と十分協議をして、そうしたものを踏まえて職務発明を取り決めていくことが求められていくというふうなことになろうかと思います。

 大学関係の方々にもよくこの改正法の趣旨等を知っていただくということが必要だと思いますので、その辺は文部科学省とも連携をしてしっかりやっていきたいというふうに考えております。

井上(義)委員 きょうは文部科学省にも来ていただいておりますけれども、文部科学省にお伺いしたいと思います。

 平成十年にTLO法が施行されまして、いわゆる大学の技術的シーズを移転するという枠組みができたわけでございます。そのこともあって、大学の特許出願数が大きく伸びてきているという現状は、私も認識をしています。

 そこで、今もちょっとお話がございましたけれども、いわゆる独法化によってますます大学の知的財産戦略の重要性が高まってくると思いますし、それぞれ大学で知財本部を設置しているというふうに聞いています。それが現状どうなっているのかということと、それともう一つは、知財本部とTLOとの関係を文部科学省としてはどのように整理をしていらっしゃるのか、まずこれをお伺いしたいと思います。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず初めに、先生御指摘の、国立大学の法人化を契機に、研究成果の普及活用の促進を大学の業務として明確に位置づけたということがございまして、これからは、基本的には特許などの知的財産を機関に帰属させるということにしてございますので、御指摘のように、今後は大学発の特許というものがふえてくるというふうに考えております。

 また、私ども、これまで大学については知的財産についての認識が必ずしも十分でなかったという反省に立ちまして、国立大学の法人化にあわせまして、昨年度から大学知的財産本部整備事業というものを実施しておりまして、現在四十三の大学におきまして知的財産本部の整備を進めております。

 他方、TLOでございますが、これは大学で生まれた研究成果を特許化し、企業へライセンスをする、こういう業務を行っておりまして、経済産業省とともに、現在三十七のTLOの事業計画を承認しているところでございます。

 大学の知的財産本部とTLOの関係につきましては、いろいろな形態、関係が考えられますけれども、それぞれの機能の特色を生かしながら連携をして、研究成果を社会に展開していく、これが一番重要であるというふうに考えております。

 例えば、東京大学におきましては、大学の知的財産本部が知的財産を管理し、TLOはその特許の活用を担当するというふうに役割分担をいたしまして、特許等の迅速かつ柔軟な取り扱いを目指した対応を行っているところでございます。

井上(義)委員 今、東京大学の例をお示しいただきましたけれども、従来は、特許の取得も含めてTLOが担っていたということもあるわけで、これからそういう意味での整理というのが私は非常に大事だと思います。

 それとあわせて、このTLO、相当特許取得が進んでいますけれども、やはりまだほとんどが不採算という状況で、TLOに対する支援、これは、人材、予算等含めてとか地域経済との連携強化、そういう支援が私は必要だというふうに思いますけれども、このことについてお伺いしておきたいと思います。

丸山政府参考人 TLOにつきましては、経済産業省と連携をしながら支援をしておるところでございますが、文部科学省といたしましては、具体的には、TLOが外国に特許出願する際の経費の支援、それから、TLOが大学のために行う知的財産の管理、活用に関する事業に必要な経費を、大学知的財産本部整備事業を通じまして支援をする、それから、TLOが大学の施設の利用を行う、あるいはTLOと大学との人事交流の促進、こういった施策に取り組んできておるところでございます。

 また、国立大学の法人化に伴いまして、このTLOと大学の連携強化を図るために、国立大学法人から承認TLOに対して出資を行うということも可能としたところでございます。

 それから、先生御指摘の地域経済活性化のために、私ども文部科学省におきましては、知的クラスター創成事業というものも進めておりますが、この中の幾つかの実施地域におきましては、このTLOというものが大きな役割を果たしているというところでございます。

 文部科学省としましては、経済産業省と連携しながらTLOの活動を支援し、大学の研究成果が社会に一層活用されるように取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。

井上(義)委員 質問、これで終わります。ありがとうございました。

根本委員長 次に、坂本哲志君。

坂本(哲)委員 グループ改革の坂本哲志でございます。

 質問に入ります前に、お礼を申し上げたいと思います。

 私たちは、無所属で初めて当選してきました者四人で院内会派をつくっているものでありますけれども、こういった小さな会派にも質問の機会を三十分間与えていただきました。筆頭理事を初め理事の方、そして認めていただきました委員長に、まず御礼を申し上げたいと思います。

 それでは、早速質問に入りたいと思います。

 迅速化あるいは職務発明の条文その他につきましては、先ほどから大所高所からさまざまな御質問がありましたので、私は、中小企業と特許、商標あるいは意匠、地方の大学と特許、そういったものに絞ってお伺いをいたしたいというふうに思います。

 今回の法改正、非常に時宜を得たものであるというふうにも思いますし、大企業にとりましては、非常にやはり、これから訴訟社会に持ち込まれないためのいろいろなネットがかけられているというふうにも思います。そして、大企業そのものは、ノウハウも持っていますし、実績もありますし、海外特許に対するいろいろな経験もございます。しかし、中小企業につきましては、なかなか経験にも恵まれない、そのノウハウもわからない、そして、それを担当する分野も、それから人的資源も持たないというのが実情でございます。そういう中で、せっかく法が施行されましても、同じような形で運用されるならば、企業間の格差はますます大きくなってしまうというふうにも思います。一方、特許出願に対して莫大な費用もかかります。大企業の方はそれほど負担ではないでしょうけれども、中小企業にとっては大きな負担にもなってまいります。

 その中で、まず迅速化についてでございますけれども、中小企業の場合には、やはり、年に一件、あるいは数年に一件か二件の特許出願というのが実情だろうというふうに思います。せっかく出した特許の出願が、二十六カ月、それ以上も待たされる、そして忘れたころに特許の決裁がおりてくるということでは、中小企業に対するその負担、疲労度合い、それは大変なものになるというふうに思います。

 今回の迅速化で、任期つきの審査官九十八人を増員する、そして五年間で五百人程度にする、そして審査をスピードアップさせる。それはそれで非常に評価をしたいというふうに思いますし、実用新案権をもう少し活用して、それに出願をしてください、そっちの方をもっと利用してください、特許の前段階を踏んでくださいというのも、私はいいアイデアであるというふうにも思います。また、民間の調査機関に事前の調査をすれば、出願に当たっては、それに対しての減免措置があるということに対しても、配慮をされたものであるというふうに思います。

 しかし、それでも、中小企業にとりましては非常に負担が多い部分があるというふうに思います。中小企業の審査につきましては、早期審査制度など特別な配慮がなされているというふうにも聞きますけれども、もっともっと、今回の法改正を機に、中小企業に対する特許の出願から裁決までの時間を早める、特に中小企業については別枠をつくる、そういう手法があっていいのではなかろうかなというふうにも思います。

 例えば、中小企業に関しての出願であれば別枠で審査をする、あるいは、任期つき審査官あるいは通常の審査官について、ある一定の割合を中小企業専門の審査に振り向ける、そういうような配慮をすることが、中小企業に対する特許を初めとして、全体の知的財産権の喚起にもつながるのではなかろうかなというふうに思います。

 中小企業に対する迅速化、このことについて、私の同じ選挙区でもございます、同郷でもございます江田政務官は、ちなみに、熊本の優良企業でございます、中小企業ではございませんけれども、中堅企業でございますが、化学及血清療法研究所というところの研究員をされておられまして、みずから特許を九件持っておられるというドクターでございますので、みずからの経験も踏まえて御答弁いただけたらというふうに思います。

江田大臣政務官 先生御指摘のとおり、中小・ベンチャー企業というのは、我が国の産業を支えている、本当に地域経済のまた担い手であるという意味で、非常に大事な存在でございます。この中小・ベンチャー企業が、自分たちの革新的な技術を特許として保護して、そして活用していくということは、地域経済も、我が国の国際競争力も、図る上では非常に重要である、そのように思っておるところでございます。

 この中小企業またベンチャー企業の皆様が特許を核として新規事業を展開されるというためには、とにかく早期に、先生御指摘のように、早く特許を取得して、そして資金を調達して事業化するということが必要不可欠であると思われます。ところが、今御指摘のように、審査順番待ちが二十六カ月にも至っているということは、中小、ベンチャーにとっては死活問題。

 私も、中小ではございませんけれども、熊本の一研究機関におきまして長年バイオ医薬品の開発をずっと続けておりました。そこで、発明者としても、また企業の経営の一員としても経験を積んだわけでございますが、企業における知財戦略の重要性というのは、そのときもそうなんですが、ますます重要になってくる。また、特許の早期取得というのが非常に重要であるということは、身にしみて感じている一人でございます。

 このために、何としても特許の審査を迅速化するために、きょう御審議いただいている今般の改正法で、年間百人、任期つき審査官を雇わせていただいて、審査体制の抜本的な強化を行いながらやるわけでございますが、しかし、何といっても八十万件ございます。それには恐らく十三年間、ゼロになるためにはそのくらいの期間が必要になってくるわけでございまして、その間、中小企業の、またベンチャーの方々がこの成果を実現できないということになれば、非常に厳しいわけでございます。

 そこで、中小・ベンチャー企業にはぜひ早期審査制度を、先生も御指摘でございましたが、現在は早期審査制度がございます。これを利用していただいて、別枠で優先的に審査していただければ、三カ月程度でこの審査が終了することになります。

 また、案件によりましては、審査官と直接に面談していくということで、巡回審査というのが行われております。先生と同郷でございますので九州・熊本のことばかりですが、熊本にも、十五年度に三件審査がなされたところでございます。

 さらには、これも非常に重要なことで、資金面から支援するということで、料金の減免制度を設けて、この対象も拡大していくというふうにさせていただいておるところでございます。さらには、従来技術調査は無料で行うとか、知財戦略づくりを大きく支援するとか、そういう事業についてもスタートさせていく予定でございます。

 今回、先生が御指摘されたように、これらの支援制度のPRが十分でないというのは私も感じます。このために、本年の二月から、全国の中小、ベンチャー四万社に対しましてパンフレットを、こういう諸制度の、中小・ベンチャー支援制度があるということを説明したパンフレットを直接お送りしているところでございます。

 先生御指摘のとおり、中小・ベンチャー企業は、地域経済産業の中核でございます。そういう意味で、今後とも、経済産業省としまして、知財戦略のレベルで中小企業を全力で支援していくつもりでございます。

坂本(哲)委員 ぜひお願いいたしたいと思います。中小企業に対する審査が三カ月、あるいは巡回審査も行うんだ、あるいは特別にいろいろな面談もやるんだというようなことは、もうほとんどの中小企業、まだ御存じでないというふうに思います。その啓蒙活動、啓発活動をすることがやはり知的財産権を喚起することにもなるというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 続きまして、中小企業に対するルールあるいは規程の作成、あるいは、先ほど言いましたような出願に対する助成というものについてお伺いをいたしたいと思いますけれども、今回の青色発光ダイオードの訴訟、裁判、判決にいたしましても、これが大企業であるならば、あるいは東京の方の企業であるならば、これほどのところまではいかなかった。中小企業であるからこそ、いろいろな問題がそこに凝縮されてしまった。原告と被告の感情的な対立も、あるいはそのルールの未整備さ、最終的には、結果として中村さんという優秀な研究員を日本からアメリカにやってしまった。中小企業ゆえに、そして、あるいは地方の問題であるがゆえに起きた課題ではなかろうかなというふうにも思います。

 そういうことを考えますと、今回の法改正でしっかりと研究者と向き合って、社内ルールが充実できる、そういう企業にとりましては大いにこの法律を利活用できるというふうになりますけれども、なかなかそういう余地がない、そういう暇もない、あるいはそういうノウハウもない、先ほどからいろいろ御質問も出ているようですけれども、そういう企業が、あるいはそういう中小企業が大半でございます。しかし、案外、こういう社内ルールなんかにむとんちゃくな企業ほど、そこから大きな発明をする、大きな技術革新をするというところがありがちでございます。そういうことを考えた場合に、もっときめ細かな形でのそういった社内規程、あるいは、いろいろな職務発明に関する社内でのルールの作成に対する、先ほど事例ということも言われましたけれども、もっときめ細かなマニュアルの提示、そういったものが必要ではないだろうかなというふうに思います。

 それから、先ほどもちょっと出しましたけれども、出願費用でございます。この出願費用につきましては、私が聞きましたところ、高度な発明であればあるほど、日本一国だけでは済まない。アメリカに、そしてアジアに、そしてヨーロッパにというようなことで、八カ国から九カ国あるいは十カ国ほど特許の出願をする必要がある。一件の出願に対しまして大体五十万円ほどかかるということでございまして、そして、外国へ特許を出願する場合にはそれに翻訳費用がつくということで、一件当たり大体百万円が外国に特許を出願する場合に必要な経費であるということをお伺いいたしました。

 もしそれを十カ国に出願をしますならば、一千万円を超すということになります。地方の小さな中小企業にとりましては、これほどの莫大な費用というのは大変な負担でありますし、また、本当に大きなリスクでございます。せっかくいいものを発明しても、いい技術的な開発をしても、そのリスクのところでとまってしまったのではどうしようもない。せっかくの発明がどうしようもないというようなのが、これまでもたびたびあったのではなかろうかなというふうに思います。

 そういうことを考えますと、いろいろな形での出願費用に対する助成措置あるいは融資措置、こういったものを経済産業省として、あるいは地方自治体とも連携をしながら、その道を探るべきではないだろうかなというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。お尋ねいたします。

迎政府参考人 まず第一に、職務発明に関する明文の規程ですとか、こういったものを設けているかどうかというのを、今回特許法三十五条改正を検討する過程においてある機関がアンケート調査をやった結果を見ますると、大企業は、三百六十三社のうち、全然規程がないと答えたものは一社しかなかったと。しかしながら、中小企業では、百八十七社にお聞きしたら、三分の一に当たる六十三社がそういったものは設けていないというふうな御回答があったわけでございます。

 今回、法律が改正されますと、こういった事前のルールを整備しておくかどうか、あるいはその整備に当たって必要な手順を尽くしているかということが大変大きな重みを持ってくるわけでございます。したがいまして、私ども、ことしの夏をめどに事例集を作成いたしまして、企業がこういったいろいろな手順を尽くされるということに役に立つような事例というのもつくりたいと思っておるわけでございます。

 中小企業への配慮という点では、いろいろな形で、全国でこういったものを説明し、普及啓発をするというのみならず、各種の相談窓口ですとかそういったところでも個別に御相談に応じられるように、いろいろ支援がとれるようにやっていきたいというふうに考えております。

 それから、国際出願について大変経費がかかるという点は、ただいま先生御指摘のとおりでございます。特に海外の場合ですと、現地の各国の代理人に支払う手数料ですとか、あるいは翻訳に要する費用というのが大変多額なものになるというふうなことでございます。

 この点につきましては、むしろ地方自治体なんかが最近、各地域のニーズに応じまして、補助制度を設けるというふうな動きなんかもあるやに聞いております。それからまた、中小企業関係の法律に基づく研究開発成果の事業化費用についての貸付制度なんかで、こういったものの特別貸付制度の利用などの対象にはこれはなっておるわけでございます。

 特許庁の方では、国内の出願につきましては減免制度の拡充を行っておるわけですけれども、その他、中小企業施策等と連携しながら、中小企業に対する支援策の充実というのは今後とも考えていきたいというふうに思っております。

坂本(哲)委員 今、自治体間で出願に対する助成その他をするところが出てきているというふうに言われました。確かに、日本全国、自治体で、知的財産戦略に対する関心は高まってきております。国の知財戦略本部の設立の効果だろうというふうにも思います。知的財産立県を掲げて政策を次々に打ち出しているというような自治体が、本当に数多く出てくるようになりました。

 最も力を入れておりますのは東京であります。石原知事が陣頭指揮をとりまして、「中小企業の知的財産活用のための東京戦略」というものを平成十五年に作成をいたしました。そして、先ほど質問いたしました、外国出願への助成というのを行ったり、あるいは知的財産総合センターを開設する、また、今回で三回目となります東京国際アニメフェアなども行っているというようなことで、非常にその機運を盛り上げているところであります。

 その他の自治体におきましても、ちょっと調べましたところ、大阪府それから愛知県、北海道、群馬、石川県が知的財産戦略プラン、あるいは知的財産創造プランというのを策定いたしまして、出願への助成、あるいは、発明の日を制定したりしております。石川県では、アメリカの法律事務所と契約をいたしまして、県内の中小企業の相談を無料化しております。アメリカの法律事務所であります。

 変わったところでは、福岡県が、農産物の知的財産戦略を作成いたしまして、新たな品種改良、そういったものを守るために、農産物の知的財産保護のために十九の県と被害者情報ネットワークをつくっているというような例もありますし、市町村におきましても、山口県の宇部市が、産学連携によって生まれた発明に対して国内出願の費用を助成するとか、あるいは、CGアニメその他、コンテンツ振興のためにも助成を実施しているというのが非常にふえてきております。

 こういった自治体の取り組みというのが活性化すればするほど、それは国全体の活性化につながるわけでありますし、知財戦略本部としても大変心強いのではなかろうかなというふうにも思います。そのためにも、もっともっと、こういった地方の知財戦略、地方自治体の知的財産戦略の策定に対して経産省としていろいろと指導をしていく、あるいは、予算的な措置でもいろいろな優遇措置を設ける、そういったものをやっていただければ、さらに、今後、こういった知財戦略を設ける自治体、都道府県はふえてくるだろうというふうに私は思います。

 今回の法改正を機に、各自治体へ、これは市町村から都道府県まで含めて、いろいろな助成の仕方、あるいはアドバイスの仕方、あるいは応援の仕方があると思いますけれども、今考えられる分、お答えいただいたらというふうに思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 特許庁といたしましても、これまで、各通産局に特許室を設置しておりまして、都道府県との連携をとりながら、特許制度に関する相談でございますとか制度の普及等を進めてきたわけでございますし、また、知財の活用のためのセミナーなども局を中心にやってまいったわけでございます。

 また、先生御指摘のように、都道府県がつくっておられます知的所有権センターのようなところに私どもの方から専門家を派遣して、協力体制を組むということも進めてきております。

 今後、地域における知財展開、知財施策展開ということでございますので、今後、これらの今までの施策に加えまして、地域のニーズも踏まえながら、中小企業政策、それから、地域政策との連携もとりながら検討をしていきたいというふうに思っております。

坂本(哲)委員 自治体へのいろいろな施策あるいはいろいろ支援措置というのは、そのまま中小企業の活性化にもつながりますので、ぜひお願いいたしたいところでございます。

 先ほど井上委員もおっしゃいましたけれども、地方の大学について、地方の大学とそれから中小企業、そして、自治体あるいはさまざまな公的研究機関との連携、そういったものについてお伺いをいたしたいというふうに思います。

 本を読みましたところ、日本は基礎特許輸入型でこれまでやってきた。基礎的な特許をアメリカ等から輸入して、それを応用特許に開発して、そしてそれを実用化し、実案化し、そしてそれを企業戦略にしてきた。そのことにアメリカ等が気づき、基礎特許をもう海外へ放出しなくなった、あるいは、パテント料を非常に上げてきた。改めて、これから基礎特許が必要なときであるというようなことを書いてございました。

 基礎特許、基礎研究ということであれば、これは、基礎的な研究を積み上げてきた大学の存在、特に、地域におきましては地方の大学の存在というのが非常に大きくなっているところでございます。そういうことで、先ほど言われましたように、各大学でも、知的財産本部、四十三大学が文部科学省の支援も得て立ち上げているということを、先ほど御報告がございました。

 一方で、ちょうど国立大学、独立行政法人になりますので、これからは自分で食っていかなければならないという時代になる。自分たちで特許を出願し、そして特許を取得し、そしてそれを技術移転する、あるいは事業化するというふうにして、大学独自で賄っていかなければならない部分が数多く出てきました。それにはやはり地域との、中小企業との連携、これが最も大切になってまいります。

 そして、技術移転の問題も出てまいりました。TLOの問題も出てまいりましたけれども、TLOに関しては、非常にくくりが広くて、複数の大学にまたがっている、あるいはいろいろなブロックにまたがっているということもありまして、各中小企業や大学に対してきめ細かな技術移転の指導がなかなかできないというのも実情のようでございます。

 そういうことで、もっともっと地域の中小企業と地方の国立大学、その大学を結びつける自治体あるいは公的機関、そういったものを構築しなければいけない。

 そして、これまでの産学官の連携以上に、もう少し戦略をはっきりして、目標、目的をはっきりして、そして、その中で何をやるか、どういうことをしなければいけないんだというような鮮明な目的のもとに、中小企業、そして自治体、そして国立大学が連携すれば、より地域再生にこれは資するんじゃなかろうかなというふうに思います。そういう事態に燃え上がってきているというふうに思います。

 それともう一つは、大学というのは、先ほども言われましたけれども、お金がありません、資金調達がなかなかできない。資金調達について、大学そのものを担保にするわけにもいきませんので、先ほど言われましたように、知的財産権やあるいは研究テーマや、そういうものを担保にしていろいろと資金調達ができる方法はないものか。これもぜひお考えいただきたいというふうにも思います。

 それから、技術移転を事業化いたしましても、結局、マーケットが大きくならなければ大学への財という形では入ってまいりません。マーケティングの方法につきましても、大学というのはなかなか不得手な部分がございますので、このことについても、これはオールジャパンになるためのいろいろな指導をしていただけないか。いろいろな知恵を大学に、そして自治体にやれないかというふうに思います。

 そういうことが、しっかりと有機的な形で、中小企業、そして各地方の大学、そして公的な自治体、研究機関、そういったものがしっかりとした目標を持って一つの形になれば、これは非常に地域再生として大きな効果を果たして、日本の活性化にもつながるというふうに考えます。また、そうすることが、大学の先生あるいは大学の学生たちの意識改革にもつながる。また、中小企業の技術開発に関する喚起にもつながる。そして、将来は、大学と地方の中小企業の雇用の増大、雇用の緊密化、こういったものにもつながっていくというふうに思います。

 非常に大きなテーマではございますけれども、日本の活性化を下支えする大事な部分であるというふうに考えますので、中川大臣に、学生、大学、中小企業へのメッセージも含めて、御答弁をいただけたらというふうに思います。

中川国務大臣 きょう一日、これまでいろいろと特許法改正を通じて、非常に幅広い質疑が行われて、私自身も大変勉強になったわけでございます。

 坂本委員からは、主に、地方の中小企業という観点から、知的財産立国を支えていく役割というものを中心にしたお話がございました。非常に大事なことだろうと思います。中小企業対策とか地方再生とかいうものは、いわゆる経済政策としても非常に大事でございますけれども、これからの日本のかぎを握る知的財産戦略の中でも、地方の知的財産を活性化してやっていくということは、極めて大事なことだろうと思います。

 そういう中で、産学官の連携でありますとか、特にこれは中小企業ならではの非常に厳しい部分もありますし、また、ある意味では非常に中小企業ならではのといったところもあるのではないかというふうに思っております。

 また、大学という非常に知的な財産の豊富なところ、いわゆる研究機関、教育機関との連携。私は、さらに、大学だけではなくて、地域の、例えば高等専門学校でありますとか工業高校であるとか農業高校であるとか、そういう専門的なところも広いネットワークの中に入れてやっていく必要があるのではないか。

 何をやっていったらいいのか。世界じゅうでこんなことをやっているから、日本じゅうで、熊本であろうが北海道であろうが同じことをやろうというのは、先ほどの井上委員の御質問にもありましたように、ひとつ特化をして集中的にやっていくということも、これは国が交通整理をするわけにはいきませんけれども、ある程度必要になってくるんだろうと思います。

 そういう中で、きょうは特許法という御審議をお願いしておりますけれども、広い意味で、実用新案、あるいはまた商標権、工業意匠権、あるいは著作権その他植物の新品種等々、あらゆる分野を含めて、知的財産戦略の一つの柱としての知的財産の前進と保護、そして、広く利用していくという観点での御質疑があったわけでございます。

 私の地元は北海道でございますから、今、熊本の話を伺いながら、自分のことを、何があるかなと思ったら、やはり自然と寒さというものがほかの地域にないものだから、これを利用して何かできないかななんて改めて今考えながら、坂本さんの話を伺っておりました。

 また、熊本は非常に自然も豊かですし、また優秀な人材もいらっしゃるわけでございますから、それを単に知的財産として権利を保護するだけではなくて、それが産業化し、そして、経済の循環の中に乗って、いわゆる商品化されて発展をしていくというところまでを見据えた形で、地域のいろいろな産学官の連携、あるいはまた人的な交流、そして資金面での開発支援、あるいはまた販売支援、ネットワーク支援等々も含めて、経済産業省あるいはまた政府一体となって、自治体とも連携を深めながら、地方発の特許というものの有効活用。

 地方に眠っている未利用特許権が三十万件ですか、あるという話もあるようでございまして、眠っている財産、あるいは熊本で長い間培われてきた技術、伝統といったものも一つの飛躍材料にしながら、大いに、いい意味で、地方が結集をしながら競争していくことによって、日本の知的財産立国としての真の意味の前進があると思いますので、大いに坂本議員の御意見もまた賜りながら、我々も目的達成のために頑張っていきたいと思います。

坂本(哲)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

根本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五分散会


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