衆議院

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第14号 平成16年5月7日(金曜日)

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平成十六年五月七日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 根本  匠君

   理事 今井  宏君 理事 江渡 聡徳君

   理事 櫻田 義孝君 理事 塩谷  立君

   理事 鈴木 康友君 理事 田中 慶秋君

   理事 吉田  治君 理事 井上 義久君

      今村 雅弘君    遠藤 利明君

      小野 晋也君    川崎 二郎君

      小島 敏男君    小杉  隆君

      河野 太郎君    佐藤 信二君

      菅  義偉君    田中 英夫君

      谷  公一君    平井 卓也君

      藤井 孝男君    松島みどり君

      宮路 和明君    市村浩一郎君

      梶原 康弘君    菊田まきこ君

      近藤 洋介君    高山 智司君

      樽井 良和君    辻   惠君

      中津川博郷君    中山 義活君

      計屋 圭宏君    三日月大造君

      村井 宗明君    村越 祐民君

      渡辺  周君    江田 康幸君

      河上 覃雄君    塩川 鉄也君

      坂本 哲志君

    …………………………………

   経済産業大臣       中川 昭一君

   文部科学副大臣      稲葉 大和君

   経済産業副大臣      坂本 剛二君

   経済産業大臣政務官    江田 康幸君

   経済産業大臣政務官    菅  義偉君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)         山崎  潮君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           丸山 剛司君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       有本 建男君

   政府参考人

   (文化庁次長)      素川 富司君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          豊田 正和君

   政府参考人

   (特許庁長官)      今井 康夫君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    迎  陽一君

   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月七日

 辞任         補欠選任

  西銘恒三郎君     田中 英夫君

  中山 義活君     市村浩一郎君

  渡辺  周君     三日月大造君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 英夫君     西銘恒三郎君

  市村浩一郎君     中山 義活君

  三日月大造君     渡辺  周君

    ―――――――――――――

五月七日

 独立行政法人産業技術総合研究所の公的研究の継続等に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一七九三号)

 同(田中慶秋君紹介)(第一八五八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一九〇四号)

 容器包装リサイクル法の改正に関する請願(井上和雄君紹介)(第一八二三号)

 同(古川元久君紹介)(第一八二四号)

 同(小野晋也君紹介)(第一九〇三号)

 同(水野賢一君紹介)(第二〇二〇号)

は本委員会に付託された。

五月七日

 原子力発電等に関する請願(第一一五号)は「細田博之君紹介」を「竹下亘君紹介」に訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)


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     ――――◇―――――

根本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、文部科学省大臣官房審議官丸山剛司君、文部科学省科学技術・学術政策局長有本建男君、文化庁次長素川富司君、経済産業省商務情報政策局長豊田正和君、特許庁長官今井康夫君及び特許庁総務部長迎陽一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

根本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山義活君。

中山(義)委員 おはようございます。

 ここにいる皆さんには大変さわやかな朝を迎えたと思うんですが、いろいろ私どもも思うところがありまして、今回、年金の問題や何かで大変、大臣を初め、御苦労されたと思うんですが、ぜひ、私どもにはっきり開示するものは開示して、正々堂々とわかりやすく議論をしていきたい、このように思っております。

 それでは、知的財産の問題が出てくれば、これはなぜかといえば、産業の活力や産業の再生力や競争力をつけるためには、知的財産というのは、イノベーションのある意味では道具でもあり、インフラなんですね。そういう意味では、戦略を持って立ち向かっていかないと何にもならないわけですね。

 ちょっと、この十年、二十年前を考えてみますと、日本の企業というのは非常に物まねがうまかったわけですよ。外国のトランジスタラジオでも、先に分解しまして、もっといいものをつくってしまう。ぼんぼん世界にトランジスタラジオを売っていく。日本の総理大臣はトランジスタラジオのセールスマンだ、こんなふうに言われた時期があるくらい、外国との競争力について、技術がよかったから勝っていた。しかも、人件費が安い、しかも通貨も安かった、こういうことですね。だんだんそれが、一九八〇年代になって、このままじゃ日本もまずいよということで、いろいろな提言がアメリカからされてきた。つまり、日本は輸出しているんですが、一番の大きなマーケットはアメリカだったんですね。だから、アメリカから、日米構造協議だとか日米包括協議とか、こういうもので非常に外圧がかかってきた。

 その中の一つに、やはり特許というもの、つまり知的財産というものは、勝手に人のものを使ったらばこれは訴訟を起こしますよ。それも、日本で今まで起きた訴訟なんというのは、五百万とか一千万程度だった。それが、外国から訴訟されるととんでもない金額だ。その訴訟された金額によって会社がおかしくなる、こういうケースまで出てきたわけですね。

 ですから、私たちは、本当に、戦略を持って特許というものをどう考えているのか、これをしっかり示していただきたいと思う。

 例えば相手を中国と考えた場合、中国に対して、やはりアメリカが日本にとったような戦略というものも必要なんじゃないでしょうかね。例えば、特許というものを重要視していくプロパテント政策というものを、日本の新しい通商政策の中で大変大きな根幹を占めているものだ、こういう形で中国に対して向かっていかないと、今現在行われているようなことが、例えばブランドを勝手につけてしまうとか、意匠登録、デザインなんか勝手にまねられるとか、日本の特許というものを勝手に使っているというようなケースもあるかもしれないわけですね。そういうものをやはり強く取り締まっていくということでありますが、中国と日本の関係、なるべく友好的にやっていかなきゃいけない。そうなれば、アメリカと一緒になって、プロパテント政策、例えばWTOや何かに中国が加盟したんですから、どうやってこのプロパテント政策、日本の特許政策、特許戦略、こういうものを生かしていくのか、その戦略がないうちにいろいろなことをやっても失敗すると思うんですね。そういう戦略をまず御説明いただきたいと思います。

中川国務大臣 おはようございます。

 今の中山議員の御指摘は、基本論として非常に大事なことだろうと思います。

 つまり、特許というのは、特許を発明した、あるいはそのほかにも意匠権だとかいろいろな、そういうその人が頑張ってつくったり発明したり発見したりしたものをどうやって守っていくか、守っていくことがそれに対しての次のインセンティブに結んでいくし、守られるということが一生懸命努力をするということにもつながってまいりますし、また、特許権を保護されることによって、また同じような苦労をせずに、その特許使用料を払うことによって有効に活用できるといういろいろなメリットがあるんだろうと思います。

 今、中国というお話がありましたが、中国に限らず、まあ代表的には中国だろうと思いますけれども、そういうところに対して、日本なりアメリカなりいわゆる技術の先進国が、そういう技術をつくり、そして守り、そしてみんなで活用していく。そこは、今委員御指摘のように、WTOとかいろいろな条約で保護されながらまた利用をしていくということが大事だろうと思いますので、ぜひともその辺のことを、特に中国に関しては、大きな国、大国でありますし、またWTO加盟国でもありますし、市場あるいはまた生産工場としても大きなところですから、しっかりとルールを守ってやってもらいたい。そして、その上で、日本やアメリカやEUがそういうところで物事を生産していくということが大事だろうというふうに思います。

 いずれにしても、先進技術がうまく活用できるようにしていくために、利用しやすい、そしてまた保護される、両面からこの特許制度の確立というものが世界的に必要になってくるんだろうということが基本だろうというふうに考えております。

中山(義)委員 中国なんかも、日本の市場とアメリカの市場、同じような形で考えていると思うんですね。どちらもやはり市場として大きいわけですね。中国だって、一番大きく輸出できる相手といえばすぐわかるわけですから、その国とどうやって協調していくかということが大事だと思うんですね。そういう面で、日本は、そういう中国が世界にグローバルスタンダードでいこうというところをうまく引き込んで、やはり世界の同じような特許を守っていくという姿勢をつくっていかなければいけないと思うんですね。これは、日本だけじゃできないし、さらにEUも引き入れてやっていくという、本当は大変大きな運動だと思うんですよ。

 その意味で私は、ヤングさんなんかがヤング・レポート、これは、例えば日本の企業というのが、土地を持ってさえすればどんどん金を貸した、また、株をどんどん、自社株を発行すれば、それも銀行が金を貸してどんどん消化できた、だから、お金がどんどんあるから、そのお金で外国までどんどん出て行って相当大きな活動を一九八〇年代にはしていたわけですね。ところが、やはり構造協議や包括協議で、BIS規制だとか、ビッグバンだ、何だかんだとすごい外圧が来て、日本もそんなに自由にお金をじゃんじゃん使えるような状況じゃなくなってきて、そういうような中で、ヤング・レポートという中に、特に知的財産というものが含まれていた。この知的財産によって相当、外国との訴訟や何かで日本もやられているわけですね。

 ですから、我々は、この際、一つの戦略として、今言ったような話は大体総論的にはわかりましたけれども、知的戦略本部というのをつくったんですから、もっと具体的にこういうことをすると。

 例えば、今まで、ヤング・レポートの中にも、スペシャル三〇一条を活用したり、アメリカはいろいろな手を打ってきているわけです。ウルグアイ・ラウンドにおいても、知的財産のルールをどんどん進めていくとか、知的財産の保護については国際的な戦略を持ってかなり日本にやってきたと思うんですね。ところが、どうも中国に対してそういうような戦略も読めないし、今後アメリカに対しても、何か大きな戦略として、骨太の、具体的な絵をかいたものを出さなければいけないんじゃないかと思うんですね。

 いつも同じところでぶつかってくるわけですが、その辺、いかがでしょうか。

中川国務大臣 ヤング・レポートというのは、中山委員も御承知のことだと思いますけれども、例えば自動車とか家電とかでアメリカが競争力がなくなってきた、主に日本に対して、これは大変なことになったぞということで、ヒューレット・パッカードのCEOだったヤングさんという方が委員長になって、アメリカ産業競争力委員会、これはレーガン大統領のもとでやって、アメリカは過去これだけ、ナンバーワンの競争力があったのに、どんどんその競争力が失われていって、残っているのはたしか航空機と農産物ぐらいしかないんだ、これじゃ大変だということで、そこに対して人材育成資金投入、研究開発等々をやった。それで、それをレーガン大統領に報告したのがヤング・レポートでありまして、今委員御指摘のように、実は我々としても、経済産業省として、あるいはまた政府として、産業創造力、産業創造のための新戦略というものを今勉強しておりますが、ヤング・レポートというものを我々ある意味ではもう一度勉強し直しております。私も何回も読み直しをいたしました。

 日本にとって大事なものは何なんだろうということを、ただナノテクとかITとかバイオとか、これはもう世界の共通の競争事項でありますけれども、でも、それだけではだめなんじゃないか。例えば、日本の伝統的な技術、よく私はからくり人形とか発光技術とか、そういうものを例に出すんですけれども、これはもう日本が世界に誇る技術であり、今からあの精巧なからくり人形を今の日本でつくれといってもなかなか難しいぐらいに、もう今から二百年も三百年も前にそういうものができているわけでありますから、日本発の技術、技能、そして先端技術、これを融合した形で新産業創造戦略というものをつくっていきたいというふうに考えて、今勉強している最中でございます。

 そういうことを生かして、これは中国だけではなくて、アメリカであろうがヨーロッパであろうがどこの国であろうが、単にまねすらできないぞ、簡単にはまねなんかできっこないぞというぐらいのものをつくっていく。あるいは、まねしたときにはきちっと知的財産権で守るんだぞというような形で、これから、新しい知的財産をベースとした、シーズとした物づくり、そしてそのための人材をこれから大いに育成していく必要があるという危機感と期待を持っているというのが私の認識でございます。

中山(義)委員 今、からくり人形なんて言いましたけれども、こういう知的なものは、例えばコンテンツなんかも同じようなものだと思うんですね。日本でアニメーションなんか相当、どんどん進んでいる。しかし、一枚の絵をかくのに工賃が三百円しかもらえない。そうすると、日本じゃ十枚かいても一日三千円だ。これじゃ食っていけないわけですね。では、これは中国に任せた方がいいだろう、韓国に任せた方がいいだろうと。

 要するに、工賃の安いところというのは、だんだんそうやって工業的に今強いわけですね、日本より。そういうところがそういうものをどんどん吸収していっちゃう可能性があるわけですよ。例えばレコードやCDでも、外国でつくった方が安いわけです。工業製品として安いわけです。コンテンツが含まれない形でいえば、全然向こうがつくった方が安いわけですね。そうすると、しっかりとした規制というものがない限りにおいては、必ず工業品を安くつくれるところからこっちへ還流してくるわけですね。だから、日本の技術というものが自然に向こうに定着して、それが還流してくる、こういうことになるわけです。

 だから、日本も同じことをアメリカにある程度やっていたんですよ、一九七〇年から一九八〇年代ぐらいには。ところが、それが許されない時代になってきたということを、果たしてアジアの方もそれをしっかり認識しているかどうかというところにいろいろ問題があると思うんです。

 日本はアメリカによって、相当な外圧で、私らが見ただけでも、CAFC、特許高等裁判所を設立したりバイ・ドール法ができたり、スペシャル三〇一条、これなんかはもう、知的財産保護の不十分な国は徹底的に監視していくというような法律案だし、それから、一九九五年にクリントン大統領は、中国政府について、模倣品対策としても相当集中的に交渉して、米中合意に基づき偽造のCD等の生産拠点を閉鎖させたとか、やはりアメリカはかなりそういう戦略的な気持ちで、これからはこういうものが大きいぞと。

 特に、コンテンツ産業なんかだって日本が、簡単に計算しても、十兆円とかと言われていますね。今、日本のアニメ、すごい外国に行っていますよね、アニメーション。だから、そういうようなことも含めて見ると、やはりそういう戦略的なものが必要なんじゃないかと思うんですが、現在、中国なんかとは本当にちゃんと交渉して、アメリカも仲間に入れてちゃんとやっているんですかね。もうこの一、二年のうちにやらなかったら、これはどんどん、世の中のサイクルが今早くなっていますから、その辺を大臣にお聞きしたいと思ってさっきから質問しているんですよ。こういうこととこういうこととこういうことをやっているということを、できるだけ具体的に話をしてもらいたいということを言っているんです。

坂本副大臣 先生おっしゃるとおりに、今、日本もそういう面で大変苦労をしておるわけでございますが、WTOとかそういう多国間協議で、あるいは二国間協議などで、模倣品を製造する相手国政府に対して取り締まりの強化、罰則の強化をするよう働きかけておりますし、来週、民間組織であります国際知的財産保護フォーラムと政府が合同で中国にミッションを派遣します。そして、模倣品、海賊版取り締まりの一層の強化などを中国政府に申し入れるわけでございますが、これは、北京に言ったからといって、すぐ各省や各市がそのとおり動くかというとそうでもないので、それを細かく、各大都市や各省政府に当たるという、そんな作業もやるようでございます。

 しかし、中国を初めアジア諸国での模倣品の問題は大変深刻化しておりまして、日本の企業の事業活動では、約七百社ほど影響を受けているというわけでございます。そこで、経済産業省としましては、今後、欧米諸国との連携も図りながら、官民挙げてこの対策強化のために頑張る、こういう状況でございます。

中山(義)委員 つまり、私が言いたいのは、それだけ特許というものが大きな存在になってきているということを言いたいんですね。発明とかよその国のできないものが、やはり知的財産をとったことによって大変大きな力になる。逆に、外国にとられた場合には、それは大変な脅威になるわけですよ。ですから、特許というものが、どれだけ大きく大臣がそういう存在を見ているかということを先ほどから質問しているわけです。

 ですから、職務発明やなんかの問題、三十五条の問題なんかも、そういう視点から物を見なきゃならないわけですね。やはり、ある会社で研究者が特許を生み出すということは、大変大きなことなんですね、その会社にとって。この辺の認識が欠けていると、三十五条の文言だけ幾ら変えてもだめだと思うんですよ。やはり社長が研究者のところへ時々は行って、よう、頑張っているかとか、たまには自分のうちへ呼んで一緒に食事するとか、評価というものがすごく大事だと思うんですね。国が知的財産を大変に思うように、企業も同じことを思わなきゃいけないというのがこの法律の趣旨だと私は思うんですよ。

 結局、イノベーションというのは、やはり特許、発明だよ、新しいものをつくるんだよということがわからないと、この三十五条は、ただ文言変えただけでも意味がないんです。それと、三十五条をつくったことによって研究者から訴訟されることが抑制される、こんなけちな考えでこの法律を変えたら困るんです。私は、この法律を論議するときに、どれだけ企業にとって発明、発見が大きいか、特許をとることが大きな手段になるか、こういうことが問われているんだと思うんですね。

 だからこそ、すごいものができれば、それで会社がもうけられる。だけれども、その評価というものを、単純に、裁判で訴えられたじゃなくて、その前に使用者と従業者がうまく折り合っていくというのは、やはり使っている側に、いかに特許が大切か、いかに特許で、イノベーションとしてよその企業に勝てる力をつけるんだ、こういうことが確認をされなきゃいけないわけでしょう。

 だから、私は、この職務の問題、規定の問題がいろいろありますが、やはりこれは、各企業に指導するためには、大臣、あなたたちが、ある会社でイノベーションをするときに特許というものはすごく大きい、こういうことに対してもっと社長はしっかり評価をしなきゃいかぬとか、そういうようなやはりインセンティブが必要なんじゃないでしょうか。

 だから、むしろ大臣だって、大臣賞を出したっていいじゃないですか、すばらしい発明には。知的財産戦略本部長というのは総理大臣なんですから、本当にいい発明したら、総理大臣が官邸に呼んで表彰したっていいくらいですよ。日本の企業がそうやって新しいイノベーションをつくるには、特許を主体にしていくんだというのがプロパテント政策でしょう。そのくらいもし経済産業省が思うのであれば、もっと発明者に対する評価というものを、お金だけじゃなくて、やはり国がそういうものを評価しなきゃだめだと思うんですね。

 私たちだって、昔、電気はだれが発明したかとか何だとか、そういういろいろなものを読むのが大好きだったですよ。飛行機はライト兄弟が、その物語を随分読みましたよ。発明に対する工夫、そういうものに敬意を持っているんですよ。そういう敬意を持たないと、やはりそういう人たちが一生懸命新しいものをつくろうという気持ちにならないと思うんですね。私はそこが大事だと思うんですが、この法律案に関して、大臣、どうですか。

中川国務大臣 今回御審議をお願いしているこの特許法の改正、特に三十五条に今、中山委員は言及されましたけれども、要は、私は、今回の条文だけではちょっと不十分だろうと思うんですけれども、委員と同じような実は認識を持っておりまして、小さい子供が、将来は第二のエジソンになるんだとか、第二の平賀源内になってみたいものだというインセンティブを持てるような、法律じゃなくて、そういう環境づくりにひとつ役立てるようなものにしていきたいなというふうに思っているわけでございます。

 他方、この三十五条に限って申し上げますと、いわゆる職務発明でございますから、企業と発明者との関係ということで、これはなかなか難しいんだろうと私は思うんですね。いろいろな最近の判例等を見ていますと、二百億円とかあるいは他方は二万円とか、これはわかりませんけれども、ルールを厳密化する方向に行っているということの流れは、この法律によって読めるんだろうと思います。

 例えば企業でいうと、企業にも経営の予測可能性とか、あるいはまた発明者の納得感とか満足感とか、その満足感が、知的財産本部の賞であったり、あるいはまた会社における昇進であったり、あるいは会社における報酬であったりと、これはなかなか難しいんだろうと思うんですけれども、いずれにしても、これははっきり申し上げると、企業における発明なり発見なり新たな技術開発が、企業のみならず日本にとってプラスになっていくんだというためのインセンティブにこの法律を何としても活用していきたいということは、多分、中山先生と私と共有できているんだろうと思います。

 そういう意味で、三十五条についても、私も、実際やってみなきゃわからないというのは、条文を読んでいても、こんなことを言っちゃいけないんでしょうけれども、省内でも議論をしていて、企業との間できちっと話をするんだ、できなかったときには裁判に行くんだというんですけれども、要は、最終的には判決が決めるんだということで、それはそれで仕方がない。最後は話し合いがつかなければそうなるんですけれども、その前提をもう少しきちっと固めましょうという意味では、意味が大いにあるんだろうと思っております。

 いずれにしても、日本の技術、日本は技術立国でなければならない、そして、そのためのインセンティブとして今度の特許法の改正があり、そして、それがきちっと発明者、あるいはまた企業であろうが大学であろうが研究所であろうが、それに対して役に立てるような体制づくりのために大いにこの法律の改正が役立っていくべきであるというふうに考えて、御審議をいただいているところでございます。

中山(義)委員 これは先ほどからずうっと論議をしているんですが、要するに、発明者は発明の意欲を持って、知的財産というものが企業にとってすごく大切だ、それからもう一つは、国にとっても非常に大切な問題だという認識を共有するために、先ほどから、知的財産本部というのは骨太のそういう戦略を持っているのか、この知的財産をとったことによって国のイノベーションが進むんだという一つの見解、もう一つは、企業としても、発明者が意欲を持って取り組むためにはこの三十五条をどう活用したらいいかという考え方を私は聞いているのです。

 特許庁長官、ちょっとぜひ意見を聞きたいんですが、要するに、発明者がもっと意欲を持って、しかも、社会的にも知的財産というものはすごく大きなものだという評価を、例えば企業の中だったら企業の中で、うちのこういう研究員がこんな発明をしたということを表にもっと宣伝するとか、何かそういう、やはりやった人の満足感とか新しいものを生み出したということに対する評価が低いので裁判になったりなんかすると思うんですよ。相当な対価というのは、ある企業がもうかったから、そのもうけの何分の一が知的財産をつくった人間に行くという、そんなけちなものじゃないと思うんですね、会社全体でつくるわけですから。だから、その辺の見識をちょっと説明してもらいたいと思うんです。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 この三十五条の改正をする前にアンケートをとりましたところ、報酬について、やはり納得感が少ないというのもかなりございました。そして、報酬規程について参画をするということによって、この納得感が高まるということについての発明者の御回答が約半分ほどございました。

 そういうようなことを踏まえて今回の法律改正を御提案申し上げましたけれども、先生がおっしゃいますように、それのみならず、この二十六日には発明協会百周年記念ということで、これは天皇陛下から恩賜の発明表彰がございます。その上に、通産大臣表彰、また特許庁長官表彰などもあわせて行うことになっておりますけれども、そのような国家的な表彰、こういうものをもっと拡大していくでありますとか、それから、先ほど申しましたけれども、納得感でいいますと、やはり会社の社業がこれで非常に順調にいったとか、そういうことも発明の意欲をかき立てるものでございますので、そういうものを企業がくみ上げてエンカレッジするようなことというのを、私どももいろいろ工夫をしていきたいというふうに思います。

中山(義)委員 今お話が具体的にありましたけれども、本当にやってくださいね。やはり物を発明した人の話というのは、ノーベル賞をとってからお二人がいろいろテレビに出てきて、我々も興味を持って聞いているじゃないですか。だから、物を発明するとか発見するとか、やはり新しいものをつくっていくというのはすごく大きいものだと思うんですね。

 だから、学校教育の中にも、そういう知的財産というものが本当にこれからの世界を動かす大きなものだという認識を持たせるように努力をしなければいけないと思うんですよ。それがないから何か裁判みたくなってみたり、知的財産というものを簡単に侵害する人が出てきたり、そういうことがないように、やはり知的財産というのをどうやって日本の国の産業に位置づけていくかということをもっと表に打ち出さなきゃいけない。そういう知的な国だということを日本はもっと表に出していいと思う。

 それをお願いしたいんだけれども、日本人の特に悪いところで、そういうことが下手なんじゃないかと思うんですが、総理大臣なんかはもっと出てきてやらなきゃだめだと思うんですね。だって、物が発明されなきゃだめですよ、今の日本は。物をつくるのは、手が器用だからどんどん量をつくっているんじゃなくて、オンリーワンの世界にやはり会社がなっていかなきゃいけない、うちの会社しかつくれない。

 そういう意味で、研究者に対しては、やはりもっと違った方式でそれなりの評価を与えていく。だから、対価というよりも、対価というとお金みたいなんだけれども、やはり評価をもっと考えなきゃいけないんじゃないかと思うんですね。

 大臣、本当に、大臣賞とかなんとかもっと掲げて、いい発明をした会社とか、会社も研究者も同時に、日本の国に貢献したというか、そういうことをやはりやるべきだと思うんですね。子供たちにも、こんな発明があるんだということをもっとやるべきじゃないですかね。その辺、いかがですか。大臣がもっとぶち上げてもらって、この知的財産というものを表に出してもらいたいと思うんですね。

中川国務大臣 すばらしい知的財産、知的財産というのはある意味では非常に幅が広いものですから、例えば音楽であるとかデザインであるとか、いろいろな分野になりますけれども、さっき言ったように、世界に冠たるものを日本が、日本人があるいは日本の組織、パワーがそういうものをつくったということに対して大いにインセンティブを与えてあげるということは、中山委員おっしゃるとおりであります。

 その場合に、中川賞というのは余りちょっとぴんとこない、何か力が抜けちゃうのでありますけれども、例えば、ドイツでいうとマイスター制度、フランスでいうとMOFというんだそうですけれども、先日フランスへ行って勉強してまいりましたが、フランス語はわかりませんが、ベスト・クラフトマンシップ・オブ・フランス、MOFという制度があって、非常にこれは権威が高い。

 ですから、これは、総理大臣であるか、もっと権威の高い方であるか、あるいは国権の最高機関たる国会であるかは別にして、子供たち、若い人たち、あるいは功成り遂げた人間国宝含めて大いにやりたいと実は私自身思っておりまして、中川賞なんてつくったって、逆に、何だ中川か、年金払っていない者からもらってもしようがないじゃないかなんと、これじゃ困るわけですから、きちっとした権威のあるものでもってやるように、今実は皆さんとともにお知恵を絞りたいというふうに考えているところでございます。

中山(義)委員 いや、僕は、全体の今までのプロパテント政策をずっと、政府の戦略本部だ何だといっても、何かまだひとつ表に出てきていないような気がするし、中国との関係だって、中国に対する日本が、輸出、輸入も相当大きな市場になってきているわけですよ。だから、多くの方たちが、コンテンツの問題やなんかでアジアの市場というものに対して今非常にいろいろな心配をしたり目を向けているわけですね。

 だから、私たちは、知的財産というものはどういうものなのか、もう一度確認の意味でも、しっかりした具体的な案をしっかり政府が出すのがいいんだろう、こう思うんですね。さっき言ったように、総理大臣に握手されて頑張ってくれというのは、やはり相当な対価じゃなくて、相当な評価をされたというところがあると思うんです。

 ですから、私が言いたいのは、おれも発明してやろう、おれも日本の国のために何かやってやろう、末は博士か大臣か、大臣の方は年金払わないからそれはあれなんですが、せめて博士の方になりたいという気持ちをやはりみんなが持つような、そういう社会をつくらなきゃいけない。私はそういうことを言っているので、この点すごく大きなことだと思いますので、ひとつ具体的に何か考えてやってくださいよ。我々の委員会に示してくださいよ。我々は知的財産をこれだけ大切にやっているので、これだけ具体的に表彰規定を設けたとかね。

 これは三十五条にも関係するんですよ。会社だけがやってもだめなんだ。やはり国民全体が、そういう国の力をつくり上げてきた人たちに対する評価というのをしっかりしなきゃいけない、私はそう思うんです。ぜひ具体的なものをつくっていただいて、表彰規定やなんかもはっきりお示しをいただきたいと思います。

 それから、やはりサイクルが早いので、発明をしても出願をしなきゃいけないわけですね。特許をとるためにはそういう手続が要るわけですね、日本の場合には。発明主義じゃありませんし、出願されて、それから特許をとるまでの時間がかかり過ぎるというのが大きな問題でありまして、今までどうやってやってきたか。

 私たちも、弁理士法改正からずっとやってきたんですが、この話の中にも余り弁理士さんの役目というのが出てこないんですが、すべて特許にかかわっている人たちが、どのようにかかわって、どのようにやったら一番早くなっていくかということを考えてはいると思うんですが、弁理士という話が余り出てこないんです。

 私は、弁理士法を改正したときに、弁理士さんがもっとふえれば、もっと特許の審査なんかもどんどん早くなっていくのか、こう思ったんですけれども、何かそういうような役割分担がしっかりされていないんじゃないかと思うんです。今回も新しい形で、委任審査官ですか、審査をする人に何か十年ぐらい委任してやっていくとかといういろいろなアイデアはわかるんです。だけれども、一本筋が通って、絶対に早くなるという役割分担みたいなものが見えないんですよね。その辺はいかがでしょうか。

今井政府参考人 今般の法律には直接関係いたしませんけれども、先生がおっしゃいました任期つき審査官を増員する、これは国会の方での御審議のフォローアップといいますか、新しい施策でございますか、それに加えまして、弁理士につきましても御協力いただくということでございます。

 審議会の作業部会におきまして、弁理士会の代表の方にも委員になっていただきまして、迅速、的確な特許審査に向けた弁理士の役割、貢献について議論をしていただきました。

 そして、弁理士会の方からも御協力を賜りまして、現在、適切な出願書類の作成、明確な明細書、そういうものについて弁理士会の方で徹底していただく。それから、中小企業の方が、出願人の方が最適な弁理士さんを選ぶための弁理士情報の公開、これも弁理士会の方からお願いしております。

 また、特許の場合は複数の弁理士の方が出願に関係をされます。そして、今、審査の促進といいますか審査の適正化という観点から、一人の弁理士さんを決めてもらいまして、その人と直接相対で議論をさせてもらう、技術内容についての把握をさせてもらうということで、担当弁理士ということで、これも弁理士会にお願いして決めていただきまして、丸をつけていただきまして、その人と特許庁の審査官が議論をするという形でございます。

 このように、弁理士会の方にも御協力をいただきまして、徹底をしてお願いして分担をさせていただいておるところでございます。

中山(義)委員 いろいろ、今も言った人たちがふえていくというのはわかるんですが、やはり熟練を要する仕事ですわね。それで、十年間で期限を切っているということで、せっかく熟練性が出てきたところでもうおしまいというのじゃ、やはり熟練をどうやって重ねていくかということが大事だと思うんですよ。

 それで、私は、この特許審査順番待ち期間ゼロ、これはどこかに打ち出すんですか、大々的に。何かこういう看板を出したら、やはり本当にそうならなきゃいけないわけですよ。これをやはり大臣の一番の目玉として、特許審査、待機はゼロだ、こういうことを本当に具体的に出してくださいよ。どこかにこれは見えなきゃ、こんなところに書いたってね。どうなんですか。

今井政府参考人 先ほどの任期つき審査官につきましては、今回、今度の予算、十六年度の予算で九十八名、これは経済産業省としては恐らく例外、初めてだと思いますが、大臣折衝で、ある意味で格別の配慮をしていただいてつけてもらったものでございます。新しく増員費等を認められたものでございます。そして、そういうものの上に立って、今国会の総理所信表明では、審査待ち期間ゼロということを宣言されました。

 そして、知財基本法に推進計画というのがございます。これは知財そのものの一番大事な法律で、推進計画そのものに、審査待ち期間ゼロ、それから、これからどういう過程を通ってそこに行く、どういう施策を講ずるのかということを書き込んでいきたいというふうに思っております。

中山(義)委員 これはちゃんと根拠のある看板をつくれるということですね。間違いないわけですね。

 ちょっともう一回、何年間で、何年たったらできるのか、はっきりしてもらえませんかね。

今井政府参考人 特許というのは、一度未処理案件、審査待ち案件がたまりますと、この処理に非常に大きな期間がかかります。現に、八十万件という巨大な審査待ち案件がたまる可能性が高いわけでございます。そして、現在の私どもの審査処理能力というのは二十二万件でございますので、相当大きな数字でございます。

 したがいまして、非常に持続的に対応していかなきゃならないわけでございますが、十年ぐらいのスパンでこれに対応していって、十年で世界一の水準になる。そして、任期つきの審査官が、私どもこれから百人ずつ五年間採用して、そうすると、十四年ぐらいたつとこの任期つき審査官がいなくなるわけでございますが、その段階では審査待ち期間はゼロになるということで、非常に長い期間を要しますが、一刻も早くそれに邁進をしていきたいというふうに思っております。

中山(義)委員 弁理士さんはどうかかわってくるんですか、外部的に、アウトソーシングも含めて。今の審査官だけじゃなくて、いろいろ、そういう発明者と一緒になって、それぞれ分担してやるわけですが、弁理士さんはそこにどうかかわってくるんですか。

今井政府参考人 審査処理全般に弁理士さんには協力していただこうということで、先ほど申しましたように、担当弁理士というのを明確にしてもらって、その人と直接接触できるような形にしてもらいたいでありますとか、明細書につきましても、私どもと相談をしながら書き方について明確化を図っていただいて、処理の促進に役立つようにお願いしたいということで、それぞれについて、テーマについて弁理士会の方と相談をして、一体となって未処理案件の処理を進めていきたいというふうに考えております。

中山(義)委員 先ほどから質問していて、特許がやはり国の戦略として一番根幹に据えるものだ、イノベーションの手段であるということはわかりましたので、もっと特許戦略についても、具体的にはっきり政府の方でもやってもらいたいと思うんですね。

 それから、先ほどの、企業はやはり特許が大事だ、特許がないと企業はなえていっちゃう。だから、やはり企業の中にどうしても特許を、すばらしいものをつくろうとか新しい発明をしようという意欲は三十五条の中にもっとしっかり盛り込んで、または大臣なり総理が、表彰規定や何かでそういう発明した人をもっと表に出して、すばらしい発明だ、日本のためにこれだけ大きな力を発揮した、こういうことをやってもらいたいというのが第二点です。

 それから第三点については、やはり迅速化の問題なんですね。迅速化にはいろいろな方法があるけれども、これは、十年たつと世界一になるというのは本当なんですね。世界一になるんですね。今は世界第何位なんですか。銅メダルぐらいですか。

今井政府参考人 現在、ファーストアクションということで、出願をして、審査請求をしていただいて後、審査に着手するまで、審査順番待ち期間でございますが、これは二十六カ月でございます。

 アメリカは今十七カ月。アメリカも大変で、これを五年ほどかけて十四カ月に戻そうということで、最大限努力されております。ヨーロッパは二十三カ月。これは、実は、ヨーロッパの場合、十八カ月でサーチレポートということでレポートが出ますので、十八カ月たつと大体特許がなるかならないかというのが、イメージがわかるということでございますので、その意味からすると十八カ月で一年半、ヨーロッパの場合一年半で一つの区切りが来る。アメリカは十七カ月、日本は二十六カ月。

 そして、それがこれから非常に長くなる可能性がありますので、今般の措置等によりまして、何とか世界一の水準、その後は審査待ち期間ゼロという、世界最高のというか世界で未踏のことをやるということで努力しているところでございます。

中山(義)委員 大臣、これはここではっきりしてもらいたいんですが、十年たったら世界一、約束してくださいよ。約束してください。審査の順番待ち期間ゼロ、これは絶対なくすということを言ってください。

 私は、やはり知的財産の問題というのはよほど意欲を持って、相当表にぼんと押し出すようなことは、この委員会でやってくださいよ、この委員会で。我々は、三十五条の問題も、あくまでも、会社に勤めた人が発明の意欲を持って取り組んでいくんだ、それから、一番初めに言ったのは、世界的な戦略を持ってこの知的財産権を使っていこう、これも確認しましたからね。三番目は、いかに早く特許が世に出るかということだと思うんですね。いい特許が世に出るか。だから、十年たったら世界一、絶対私がやると言ってください。

 私は、これは、経済産業省が最近ちょっと影が薄いような気がするの、これをばんと打ち出してくださいよ。

中川国務大臣 今特許庁長官からも答弁しましたけれども、四十数万件、約五十万件、二十六カ月、もう約二年以上待っている。その間にいろいろな、知恵ですから、待っている間に大変なロスがあるんだろうと思います。

 これを、待機待ちゼロというのは、厳密に言いますと、何か申請するとすぐ特許が出てくるんじゃないかみたいな感じになりますけれども、そうじゃないことは中山委員も御認識のとおりだと思いますが、いずれにしても、任期つき審査官を五年で五百人、約五百人を充実することによって、いわゆる通知から決裁までがゼロという感じでしたか、ちょっと後で、細かい、何がゼロかということをきちっとここで委員の皆さん方に御説明した方がと思いますが、いずれにしてもゼロ。

 待機待ちも、ただひたすら黙って待っているのがゼロということを、十年かけて、へたすると八十万件になっちゃうものをゼロにしようというんだったら、これはすごいことでありまして、すごいと言っているだけじゃだめなので、やらなきゃいけないわけでございまして、これをぜひやっていく。やっていくということに対して、経済産業省、特許庁が全力を挙げて取り組んでいる、この意気込みがまさに知的財産立国の一つの大きな柱であるという意識を、私ども経済産業省、特許庁の人間は持っているわけでありますから、万が一できなかったらおまえどうするんだと言われると非常に困りますけれども、待機待ちゼロを目指して全力を挙げてやっていくということだけはこの場でお誓いをして、努力をしていきたいと思っております。

中山(義)委員 済みません、時間終わったんですが、今大臣から長官の方に御指名があったので、これからお答えすることは我々との約束ですから、本当に十年たったら待機者がゼロになる、そして早く世に知的財産が出ていく、しかもすばらしい企業のイノベーションになる、日本の産業の活力がつく、競争力がつく、こういうことなんですから、私は重く受けとめますから、待機者ゼロとここではっきり、最後、宣言して、もう一度、どういうことなのかも皆さんに説明して、約束をしてください。

今井政府参考人 今大臣がお話しになりましたように、手続的に、出願があって、審査請求をして、物理的にというか、最低必要な期間が例えば一月とか、そういうのはかかります。それで、審査官の手元に案件が参ります。その審査官の手元に行ったらもうほとんどゼロというかゼロで、待ち時間ゼロで進んでいくというのが私どもの理想でございます。

 そのために、任期つき審査官五百人をこれから五年間にわたって積んでいきますので、ふやしていきますので、その意味で、最終的なおしりは十四、五年、十四年ぐらいかかりますけれども、その段階では審査待ち期間ゼロ。その途中の段階でアメリカを追い抜いて、世界最高の審査にしていきたいというふうに思っております。

中山(義)委員 オリンピックが近いんですから、目指すは金メダルですよ。何としても世界一になろうという意欲が経済産業省にみなぎっていなきゃだめだと思いますので、その辺をお願いいたしまして、質問を終わります。

根本委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 私は、特許審査の迅速化のための特許法改正について質問いたしますが、透明性と信頼性の確保という観点に立って、特許制度、そしてそれを支える政治と行政の姿勢について御議論させていただきたいと思っております。

 まず最初に、これは大臣、突然入ってきたニュースでございますが、先ほど福田官房長官が、年金未納問題の責任をとられて辞意を表明されたという話が伝わってまいりました。通告をさせていただいておりませんが、内閣のかなめである福田官房長官の進退の問題でございますので、同じく閣僚のお一人として、そして、あえて申し上げます、同じようにこのたび年金未納問題で御公表されました中川大臣、今回の福田長官の出処進退の件についてどのようにお考えか。そして、内閣の一員としてどのようにお受けとめか、また個人としてもどのようにお受けとめか、御所見を伺いたいと思います。

中川国務大臣 私も、さっきメモが入りまして、記者会見で福田官房長官が、年金問題の福田官房長官の御事情によって辞意を表明されたというメモが入ってまいりました。

 それで、私は、四月の十三日に私自身が未加入だということがわかって、十四日にとりあえず二年分プラス本年度分を納めたわけでございますけれども、いずれにしても未納であったことは事実でございまして、国会の正式の場、つまり厚生労働委員会の場でも経緯を申し上げましたし、記者会見でも、公の場で申し上げたところでございます。

 私は、厚生労働委員会におきまして、おまえはやめるのか、やめる気はないのかという民主党のたしか枝野議員の質問に対しまして、私は、任命権者である内閣総理大臣の任命権、罷免権にゆだねるということを当時申し上げたわけでございまして、それと今の気持ちは全く変わっておりません。

近藤(洋)委員 年金の未納問題については、今国民が最大のある意味で言えば関心事になっておるわけでございます。さらには、これは年金制度の信頼、あえて言えばやはり政治の信頼の問題でございます。

 福田長官の判断というのは、これはそうすると、大臣、あえてもう一回伺いたいんですが、総理から言われて解任されたわけではなくて、御自身からおやめになるというふうに報道で伝えられているんですけれども、任命権者である云々という判断ではなくて、福田国務大臣は御自身の判断でおやめになった、その事実についてどうかということなんでございますけれども、もう一度お答えいただけませんでしょうか。

中川国務大臣 私、福田官房長官の事情は、正直言って細かいことはよくわかりませんが、辞意を表されて、これは総理が了承されたということなんでしょうか。よくわからないので、人様、人様というか官房長官のことはよくわかりませんが、私については、この問題が非常に大きな問題であるということは私自身承知しているつもりでございますけれども、総理からこの問題で君は辞職をしてもらいたいと言われたら、当然、任命権者である総理の御判断でございますから従いますけれども、私は二十三日の厚生労働委員会で申し上げたことがございまして、私自身としては総理の御判断に今ゆだねているという状況でございます。

近藤(洋)委員 本件については、閣僚の方々だけでなくて国会議員も、それぞれの議員が問われていると思っておるところでございます。きちんと対応しなければならない、全員が重く受けとめるべきだと思うわけでありますが、とりわけ内閣の一員である閣僚はその責務が重いということを御指摘させていただきたいと思っております。

 きのう、三菱自動車グループの三菱ふそうトラック・バス会社の前会長ら幹部が逮捕されました。自社の製品の欠陥を隠して虚偽報告したという疑いでございますけれども、会社ぐるみの隠ぺい体質が引き起こした今回の不祥事と考えますが、あってはならないことであると思うわけです。大臣、この三菱ふそうトラック・バスの件について、どのようにお受けとめですか。お伺いしたいと思います。

中川国務大臣 日本の主要な産業である自動車の日本を代表するメーカーであり、しかも、グループとして、三菱という名前は、世界的な、ある意味ではジャパン・ブランドのトップブランドだろうと思います。そこが、トラックを中心にして、過去数年間の間にこういうことがあったということで逮捕をされた。

 もちろん、法律的な問題は司法当局の御判断として粛々とやられていくと思いますけれども、本当に日本の主要産業である自動車がこういうことがあったということは、法律とか制度とかいう以前に、大変国民そして世界に対して、もちろんユーザー、亡くなられた方のお母さんですか、きょう新聞で出ておりましたけれども、本当にお気の毒なことだと思いますので、我々としても、極めて重大かつ神経質な関心を持っております。

近藤(洋)委員 まさに大臣がおっしゃったように、重大かつ神経質にといいますか、三菱自動車工業につきましては、経営再建途中でもありますし、今回の対応が大変大きな影響を与えるのではないか。きっちり所管官庁として見るべきだろうと思いますし、同時に、今回の事案というのは、隠ぺいなんですね。その場しのぎということが問題になっている。公開することが正しいという社会、それは企業だけではありません、社会全体が、隠ぺいする、そして、隠す、その場しのぎをするということをやめようじゃないかという世の中をつくらなきゃいけない、産業社会をつくらなきゃいけないということだと思うわけであります。

 その意味で、やはり、それは政治家も同じだと思うんですね。やはり、隠ぺいをすることはやめようという国会をつくらなきゃいけない、国会議員みずからそうしなければいけないと思うわけであります。

 大臣、三菱グループの話をしますと、三菱も、最初のころは大変すばらしい企業理念で企業を起こしてきたわけです。岩崎翁が起こしてきたわけですけれども、その精神が今や、残念ながら悲しい状況になったということですけれども、明治の政治家といいますと、明治、大正、昭和と活躍した政治家で、高橋是清がおります。御存じかと思いますけれども、中川大臣は、高橋是清翁をどのように評価されていますでしょうか。

中川国務大臣 高橋是清という方は、在野の、何というんですか、いわゆるエリート的な方ではない中で、たしか、アメリカに行ったりして、自分で才能をつくって信用を得て、そして、明治十八年四月十八日ですかに特許制度を確立したということで、特許の日ということになった。ある意味では、日本の特許制度、これは欧米の制度を導入して特許というものを確立した人であり、そして、我々よく知るところでありますけれども、昭和のデフレのときに非常に大なたを振って、経済を立て直そう、金融制度を立て直そうとして、相当な御高齢の中で、非業の最期を遂げられた。

 要するに、あの方はどこでしたか、岩手藩かどこかあっちの方、ちょっと正確にわかりませんけれども、いわゆるエリートとして育っていった方ではないにもかかわらず、日本の政府の中で大変な大きな役割を果たした方だ。デフレに対応した、敢然と戦っていった人間として、私は、今のデフレを脱却するためにも、彼の行ってきたことは、ある意味では、ここのところ本も何冊か読ませていただいておりますけれども、非常にお手本になる在野の信念の人だと思っております。

近藤(洋)委員 そうなんですね。デフレファイターとして、大臣御存じのとおり、大変見事な高橋財政を、昭和の金融恐慌の後に高橋財政を切り盛りされた。元祖ケインジアンでもありますし、積極財政論者でもあり、宮澤喜一元総理大臣が第二の高橋是清を目指しましたが、見事にこけた、失敗をしたということでありますが、大変立派な財政家でもあり、政治家でもあった。

 大臣みずから手本にすべき点も多いとおっしゃったわけでありますが、その特許の生みの親の高橋是清翁が、自伝等でこういうことを書いているんですね。まさに在野の人ということでありましたが、こう書いています。

  私の半生は、すでに人の知る通りであって、多くは自分の不明から、いたずらに無用の波瀾をかさねてきたわけであるが、しかしその間、ただわずかに誇りうるものがあるとすれば、それは、いかなる場合に処しても、絶対に自己本位に行動しなかったという一事である。

  子どもの時から今まで、一貫して、どんなにつまらない仕事をあてがわれた時にも、その仕事を本位として決して自分に重きを置かなかった。だから世間に対し、人に対し、あるいは仕事に対しても、いまだに一度も不平を抱いたことがない。

こういうことを書いております。

 まさに今、この言葉、自己本位をしなかったというこの言葉は、すべての政治家に警鐘を鳴らしていると私は思います。

 年金問題についてです。

 年金未納問題について、福田官房長官は、最初、プライバシーの問題だからと言って最後まで公表を渋った。そして、追い込まれる形で発表をし、今回自分で職を辞されたわけですけれども、それは、やはり自己本位のことをやってきた、多少の自責の念に駆られたんでしょう。

 中川大臣、僕は、中川大臣がみずから御自身のことを公表されたということは大変立派なことだと思います。そのやったこと云々はともかく、公表されたということは、これは大変、大変といいますか、ある意味で当たり前のことでありますが、みずから公表されたということは、最低限のことをされたんだろうと思うわけであります。

 だとすると、大臣、先ほども、職務については内閣総理大臣の御意向だという話でございましたけれども、だとすれば、副大臣、政務官それぞれ、さらに言えば、もっと国会議員全員が今回、自己本位ではなくて、プライバシーなどというのではなくて、公表すべきだと思うわけであります。我が民主党は、全議員が来週明けにも公表いたします。

 大臣は、今回の問題で、ある意味で、みずから公表され、そしてみずからの非を謝罪されたお一人として、閣内のお一人として、やはり、自民党の元幹部としましても、全議員公表すべきだという働きかけをする責任があると思いますが、どのようにお考えでしょうか。

中川国務大臣 私が前にもここでお話ししたと思いますし、厚生労働委員会でもお話ししたと思いますが、四月の十二日でしたか、あの週刊誌のアンケートのときに、率直に申し上げると、議員互助年金があるんだから問題はないと思うけれども調べてごらんと言って、地元の帯広の社会保険事務所に確認をしたところが、丸々二十年間未納であった、未加入であった。これはもうとんでもないことである。

 なぜとんでもないかというと、別に払っていないから自分がもらえないよということじゃなくて、近藤委員も御承知のとおり、今我々が負担をすることによって今の受給者の皆さんを支えているという制度が、賦課方式という制度が前提である以上は、今の皆さん方に対して大変申しわけないことをしているということで、やれることはできるだけやって、できるだけ早く、本当はもっと早く発表したかったんですけれども、いろいろありましたが、できるだけ早く発表した。

 これは私の、厚生労働委員会でも申し上げましたが、閣僚である前に、議員である前に、一人の成人として責任ある、女房もいます、子供もいます、そういう一人の人間としての責任として、私はこれは、公表したから、近藤委員は褒めているつもりはないとは言いましたけれども、多少何か評価をしていただいていることは大変ありがたいことでありますけれども、そんなことで喜ぶほどのことではないので、大変申しわけないことをしたことはいささかも発表したから変わるものではありませんけれども、私の判断でやったわけでございます。

 ほかの、副大臣であろうが、政務官であろうが、議員であろうが、これは一国一城のあるじでございますから、御本人が大きな責任と期待を持って判断をされることであって、任命権者である内閣総理大臣なり、あるいはそういうところがどうこうしろということであれば別でありますけれども、私からは、私自身がだれから言われたわけでもなく判断をしたわけでありますから、逆に、だれからも言われなくても御判断は御自身の判断であろうというふうに思っております。

近藤(洋)委員 その自身の判断に任せれば自己本位になるからおかしいんじゃないかと言っているわけです。

 そしてさらに、三菱ふそうの問題での隠ぺい体質も、すべてそういうことも含めてちゃんと国会議員が公開するという世の中をつくらないと、三菱ふそうのことを言えないということなんです。だから、通産大臣としてもやるべきだし、それは個人として公開したと大臣おっしゃいましたけれども、そうではなくて、その職にとどまるのであれば公開すべきだということを言うのが責任ではないかなという指摘をさせていただいたわけであります。

 高橋是清の銅像が特許庁にあるそうでありますけれども、私も見てまいりましたが、高橋是清の銅像も泣いていると思いますよ。今の政治の状況を見たら、何をやっているんだ、今このいろいろな状況を見たら、何でこれを公開しないんだと。不良債権の問題でも何でも隠ぺい、隠ぺい、隠ぺいで、政治が一番隠ぺいしていると思っているわけですから、大臣がもしその職にとどまるのであれば、そのことを先陣切って言わなければ中川大臣がその職にとどまる意味はないと思うわけであります、それができないのであれば。できないのであれば、やはり責任をとられて、福田官房長官と同じ道を歩むしかないのではないかということを御指摘申し上げたいと思います。

 特許の話に移ります。

 特許制度の意義について、高橋是清がつくった特許制度でありますが、大臣、何度かこの意義についてこの委員会でも同僚議員の質問に対してお答えいただいておりますけれども、特許制度というのは、まさに発明を創作した者の権利を守るという観点と同時に、特許にかかわる権利の関係を素早く公開、確定することで、新しい研究開発の力を注ぐ、不効率をやめる、権利を守ると同時にその力を、知力を効率よく配分するという目的があるのではないか。知財インフラを整えるという観点が極めて重要だと思いますけれども、大臣、まず、その意義について、簡単で結構でございます、改めてお答えください。

中川国務大臣 今、近藤委員が御指摘のように、明治十八年の特許制度制定の目的というのは、発明の保護、育成、これは多分欧米に追いつき追い越せの時代の一つの大事な国家的な使命であったんだろうと思います。特許以外にも、実用新案とか意匠権とか商標権とか著作権とか育成者権とかいろいろ、不正競争防止法の問題はあるんですけれども、特許法については、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの。

 つまり、先ほども中山委員にも申し上げましたが、知恵のある人はその知恵によって対価を得る、その対価は必ずしもお金ではない。名誉かもしれないし、前回の委員会でも申し上げましたが、お母さんに褒められるとか、お子さんに、パパ、立派なことをやったよねみたいなこと、何でもいいんだと思います。それが納得感ということになるんだろうと思いますが、そういうことをきちっとやっていく。その中の一つとして例の特許法三十五条の問題が出てくるんだろうと思いますけれども、いずれにしても、人と違うすばらしいことをやった。

 私、田中耕一さんというノーベル賞の博士とお会いをして、すばらしい方だなと思って本当に感動しましたけれども、もったいないからノーベル賞が出たとか、あるいはまた、レントゲンであろうが何であろうが、ちょっと間違えちゃったところから世界的な発明、発見が出た、そこを後押しするような、直観力といいましょうか、直観力や自然力を後押しする。そして、さっきも申し上げたように、発明ではありませんけれども、マイスターだとかMOFとかいったものも含めて、広い意味で日本の技術、技能、発明、発見、すばらしい研究がきちっと評価できるような体制にしていくことが大事だ。

 私は、あくまでもこの特許法三十五条なり待機時間ゼロなんというのは一つの部分であって、根本的に言うと、もっともっと広い意味で、頑張った人にはそれなりの、納得感という言葉を役所としては使っておりますけれども、納得感を与えると同時に、それをみんなが権利として守りながら利用をして、またさらに前に進めるような、そういうためのインセンティブに今回の法律改正がお役に立てるようにぜひしていきたいと思っているところでございます。

近藤(洋)委員 先ほど同僚議員の中山議員の質問にもありましたけれども、世界最高レベルの迅速な、的確な特許審査の実現、今回の法改正の目的なわけですが、ただ、やはり法律そのものに具体的な目標規定が今回盛り込まれていないというのは、気になるところであります。

 昨年、二〇〇三年七月に施行された裁判の迅速化に関する法律では、二条の一項に、第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間に、省略いたしますけれども、終局させることを目標としと。一般の裁判ですら二年以内というのを法律に盛り込んでいるんですね、法律そのものに。努力目標とはいえ、法律そのものに書き込んでいる。公職選挙法に至っては百日裁判ということでありまして、要するに、森羅万象のいろいろな事案を調べなきゃいけない、普通の裁判ですら二年以内という目標値を今回盛り込みました。

 ところが、今回、特許審査の迅速化に関する特許法の改正については、先ほど来、十年以内に世界最速とか、非常にぼわっとした、待ち時間ゼロということは、答弁ではおっしゃいましたけれども、法律に書いていないというのは、一般の裁判のことを規定した法律で二年以内というのを書いている、この比較において、やはりやや問題だと思う、問題とは言いません、課題ではないかと思うわけでありますが、この点についていかがお考えでしょうか。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 裁判の迅速化法には二年ということで規定がございます。知的財産につきましては、知財基本法という、特許法とかいろいろな諸制度の言ってみれば上に立つ基本法ということで、その基本法には、まさに特許の迅速化を進めるという条文までございます。そのために、そのための計画、それから実施施策、知財推進計画、これもこの知財基本法に定めるものでございますけれども、ここに定めるというふうに書いてございます。

 言ってみますと、裁判迅速化法というものの兄弟といいますか、知財の世界でいうと基本法という大変立派な門構えの法律があって、その中で明確に迅速化を定め、それを推進計画という形で明らかにするということになってございますので、今般、この法律を御承認いただきましたら、いろいろな施策が取りそろえられますので、この推進計画にそれを明示していきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 やはり数値目標というのは大事だと思うんですね。それをやはりきちっとした形で公表し、そして、それを達成しなければ何も責任を問うというわけではないわけで、問題はどこにあったのかというのをレビューして行動するということはどんな事業でも当たり前のことだと思うわけですから、ぜひ早目の計画設定をすべきだということを御指摘したいと思います。

 さらに、今回、世界最速スピードということを言っておりますが、いわゆる特許制度におきましては、審査請求をして登録するまでの、その間の期間を二十六カ月間あるものを短くしようというお話でございますけれども、そもそも、特許に出願する立場から見ると、出願をしてから三年間ほど期間があって、そして、出願者からチェック依頼である審査請求を行って、初めて審査が始まる。この間が二十六カ月間ということですから、最初の三年間は、場合によってはずっと冷蔵庫に置かれたままなんですね。特許は登録をされてから二十年間ですから、ですから、最初の三年間、出願をして三年間そのままにしておけば、権利はそのまま何もされないわけであります。

 だから、世界最速というものの、そこはちょっとやや表現に、果たして本当に世界最速なのか。アメリカの場合は出願をしてすぐ審査ですから、三カ月間、半年ということはあるわけですけれども、日本の場合は最初の三年間がある。審査請求制度と言われているようでありますけれども、昭和四十六年から行われているようですが、なぜ四十六年にこの請求制度というのが導入されたのか疑問に思うところでございますが、御説明いただきたい。

迎政府参考人 審査請求制度と申しますのは、まず、日本の特許制度では先願主義というのを採用しております。同じ発明でも先に出願をしたものが権利をとれるというふうなことでございますので、ある発明があったときに、これについて特許をとるべきかどうかとか、とれるかどうかとか、こういったことを判断していると、その間にほかの人が出願をしてしまえば権利が得られなくなる。したがって、一刻も早く出願をするということになるわけでございます。

 ただ、一刻も早く出願いたしますと、後でよくよく調べてみると、これは権利を確保する必要がないのではないかというふうなものも出てくるわけでございますし、そういったものまですべて審査をしていくというふうなことになりますと、審査の負担も非常に大きい。あるいは、出願者の立場にとりましても、必要のないものについてまでお金をかけて審査をしてもらうというふうなことになります。

 そういったことを考慮いたしまして、昭和四十六年に審査請求の制度というふうなものを導入したわけでございます。この制度の導入によって、特許庁としては、すべての出願について審査をする必要がなくなった、真に必要な出願について注力ができるというふうなことで、一種の審査処理の促進にもつながったというふうに考えております。

近藤(洋)委員 四十六年の経緯はよくわかりました。ただ、問題は、現在において果たしてそれが必要なのかということだと思うわけであります。出願主義、発明主義、それぞれの考え方はそれはあるんでしょう。アメリカはそうだと私もわかっておりますが、問題は、この審査請求制度によって、特許庁は、とにかく手が足りないから、大変だから、まず待っていてくださいよということ。出願者の方から見ると、まずは権利の先取りだ、先抑えという効用もあるわけですね。両方ともハッピーということなんでしょうけれども。

 ただ、問題は、それ以外の第三者、例えば大手企業から見ると、まずはとにかく出願しておけと、だあっと一気呵成に領分を抑える。だから、大したことない、寝かしていてもいいよと思うかもしれませんけれども、ベンチャー企業の立場に立ちますと、生死を、それこそ小さな会社にとってみると、本当に乾坤一てきの技術だというのが、先取り、陣取り合戦によって抑えられてしまうということが起こり得るわけですね。ですから、ここの審査請求制度というのが今の時点において本当に必要なのかということなのであります。

 さらに言えば、人手が足りない、手間もかかるというんですけれども、だから、人を五百人ふやすんじゃないですか。だから、五百人、人をふやされるわけですよね、予算もかけて。だから、人もふやすんですから、果たして、新しい新時代の特許制度において三年間の冷蔵庫期間が本当に必要なんだろうか、陣取り合戦をさせる必要があるんだろうか、ベンチャー企業にその余地を残す必要があるのではないかということなのでありますが、いかがでしょうか、審査請求制度の是非について。

菅大臣政務官 今委員がおっしゃいましたように、審査請求制度にはやはりメリットとデメリットがあるというふうに思っています。

 ただ、今、私どもは、一番大事なことは、とにかく現状の審査の迅速化、これが一番強く求められているというふうに思っておりますので、まず、このことを解決するために今お願いしておるところでありまして、それからの点につきましては、さまざまな観点から考える必要があるというふうに考えております。

近藤(洋)委員 俗な言葉で、行列ができる役所というのは、役所にとってみると大変幸せなことなのかもしれませんけれども、しかし、ラーメン屋じゃありませんから、殊さらに行列をつくる必要はないわけでありまして、むしろ、本当に必要な特許を、技術を選んで出していただくというのが本来の趣旨であって、やはりそういう誘導というのも必要ではないかと思うわけであります。

 そして、三年間のこの期間、冷蔵庫期間というのが本当に必要なのか。七年だったものを三年に縮めた。これだけ技術開発の早い時間で、一年とか一年半とか短くするということもあり得るのではないかと思うわけであります。この点は、もう時間も少なくなりますので、御指摘だけを申し上げたいと思います。

 そこで、審査業務の効率化について御質問をさせていただきたいと思います。

 今回、五年間で任期つき審査官を五百名採用することが予定されているようでありますけれども、ここの教育、五百人、毎年百人も入ってくると本当に大丈夫なんだろうかと。千百名の現状の職員の方で、そして、百人、百人、百人、教育等々、やや心配になる部分もあるわけであります。

 そして、ある程度、業務の効率化というのは、忙しいというのはよくわかりますし、私も特許庁を見させていただきました、大変一生懸命やられている姿もわかりますが、しかし、実際に、まだまだ効率化する余地というのはあるのではないかと思うわけでありますけれども、この点、特許庁、いかがでございましょうか。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 特許審査の迅速化につきましては、前通常国会におきまして特許法改正をするときに、特許料金の見直し、それから審査官定員の着実な増員、それから業務のアウトソーシング等の総合政策で対応して、今後、審査請求件数と審査処理件数を長期的に大体均衡するようなことになってきたということでございます。そして、現在、御指摘のように、五百名の任期つき審査官を投入して審査待ち期間をゼロにしようということで努力しているわけでございます。

 ただ、これだけではなくて、御指摘のように、特許庁の業務、先般、二十四人の先生方に見ていただきましたけれども、IT化投資を非常に進めまして、特許庁の場合は、現在、電子出願が九六%。ヨーロッパが一二%、アメリカが二、三%でございますから、その意味でもIT化が非常に進みまして、審査そのものにもIT化の投資の効果が出てきているわけでございます。

 また、アウトソーシングにつきましても、これを進めておりますので、審査官一人当たりで処理件数を見ますと、制度も必ずしも一致はしませんけれども、日本が二百四件、アメリカが七十九件、ヨーロッパが六十三件ということで、相当インテンシブに頑張っているということでございます。その意味で、御指摘のように、これまでの業務システムをさらに見直すということは不断にやっていかなきゃならないと思いますが、そちらの方の努力も怠らないように進めてまいりたいというふうに思います。

 また、審査官の育成の問題でございます。やはり百名単位の新しい審査官が入ってまいりますと、なかなか難しい、中で対応するのは難しいことでございますので、今般、独立行政法人工業所有権総合情報館に特許庁が持っております研修機能を移管いたしまして、少しここでは、予算だとか定員だとかに弾力性が出てきますので、いろいろな措置を、弾力的な運用を確保しながら新しい体制をつくっていきたい、このように思っております。

近藤(洋)委員 これまで、迅速化の観点から質問させていただきましたけれども、最後に、職務発明の点について、大臣の御見解を伺いたいと思います。

 この件については、同僚議員も数々質問がございました。はっきりしているのは、交通事故とはやはり違うんだということだと思うんですね。企業側の立場から見れば、ちょっと例えがどうかは別にしましても、要するに、交通事故で亡くなった方の損害賠償は、将来、生きて、こういうふうに、こうやって計算すると。要するに、損害賠償について、例えばお子さんを亡くしてしまった、そのお子さんの民事の損害賠償は、将来、この子供が生きていたらどれぐらいになるんだろうという形で、一億円とか五千万円ということを判断するケースは裁判でありますね。

 だけれども、やはり特許にかかわるものを、将来、これぐらい、相当な対価というものを裁判所で果たして決め得るものだろうか。これは、裁判所というよりは、やはりその契約の中で明確にするということの方が、企業にとっての、企業というと言葉があれですが、産業育成という立場からとっても、職務発明でありますから、大臣が先ほどからおっしゃっておりますが、職務発明という分野においては契約ということが本筋ではないかと私は思うわけであります。

 そして、その中で、大臣も、これは第七回知的財産戦略本部の会議、四月十四日の官邸の大会議室で、おやめになった福田官房長官も含めて、皆さんお出になって、会議がございましたが、この中で、知財戦略について、中川大臣は率直におっしゃっていると思うんですね。「特許法三十五条の職務発明につきましても、特に経済界、大学を含めて改正をしながら、これも皆さんの御意見をもう少し聞いてやっていかなければいけないと、そういうことを考えております。」と。

 これは四月十四日の会議でございますから、法案はもうでき上がっているわけでありまして、この知財戦略本部、最も政府で重要な知財戦略を練る会議の席上で、大臣御自身が率直に、三十五条についてもいろいろ意見を聞いてやっていかなければならないという話をされておりました。条文だけでは片づかない話があるんじゃないかという話も先ほどございました。

 やはりこの三十五条については見直す必要が、運用されてみて、また随時、考え方をやはり見直す必要があるのではないかと思うわけでありますが、大臣、最後に、この三十五条問題の今後の考え方について御所見をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 現行三十五条が、非常にある意味ではあいまいであって、トラブルがここのところ裁判に持ち込まれて、いろいろ社会的にも注目されているわけでございます。

 先ほどから申し上げているように、発明権者、そもそもこの特許法というのは発明した人に発明権が帰属するという前提に成り立っているわけでありますけれども、職務発明ということになりますと、企業という一つの組織の中で、それがうまく、どういうふうに成功していくか。

 企業ですから、当然、それが企業としての利益といいましょうか、発展につながっていくかというところの中で、企業と発明権者との関係をどういうふうにしていったらいいかというところが今回の三十五条の改正につながっていっているわけでございます。そういう意味で、できるだけ発明にかかわった方々と企業との間でまず話し合いをしましょう、できるだけの話し合いをしましょうと。

 ただ、私も、率直に言って、それで全部解決できるかというと、何しろ、今までにないことをつくったり、発見したり、発明したりするわけですから、これでもってすべてがうまく片づくとは、私自身も、正直素人ですけれども、わからない部分があるんだろうというふうに思います。

 ただ、そのときには、もう詰めるだけ詰めておいて、最終的に納得いかないときには裁判という最終的な手続に入りますと。そのときには、その裁判の中でも、企業と発明者との間で話し合われたことが一つの判断の基準になりますよということによって、今までよりもはるかに、日本人だからと言っちゃいけないのでしょうけれども、お互いにこういうことはできるだけやらないまま、社員としてあるいはまた発明者としてうまくスムーズにいった方がいいのではないかという前提に立って、それでもできないものについての裁判という手続に移行するときのための必要性というものも重要ですねと。

 あくまでも、きちっと企業と発明者、つまり従業員の方との間のぎりぎりまでの話し合いをして、そしてそれができない場合にはそういう方々との話し合いが前提になって裁判に移行しますねという意味で申し上げますと、この三十五条の改正というのは、今までに比べますとはるかに両者にとって、委員もよく御承知だと思いますけれども、企業にとってみると予測可能性の問題でありますとか、あるいはまた発明にかかわった皆様方にとってみますといろいろな、納得感という言葉、これもよく我々政府側が使っている言葉でありますけれども、それによっていろいろな広い意味の対価が担保されるといいましょうか、約束されるという意味で、お互いにとってトラブルが起きないようにしていく。それで、トラブルが起きない、起こさせないのではなくて起きないようにするけれども、起きたときにはこういう手続に入っていきますよ、その前提として、発明者と企業側との間で十分な話し合いが事前にあったということが一つの前提、参考になりますよというのが今回の法律改正の趣旨だというふうに私は理解をしております。

近藤(洋)委員 スピードが命の知的財産の世界だと思うんです。三十五条も含めてやはり発展途上の部分がまだあると思っておりますので、随時、必要に応じて、政府からは言いにくいでしょうけれども、やはり改正も含めて考えていく法案ではないかということを御指摘しまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

根本委員長 次に、田中慶秋君。

田中(慶)委員 民主党の田中でございます。

 きょうは、ある面では、今回の法案は内閣提出の法案であり、先ほどビッグニュースで内閣官房長官が御辞任をされるということを聞きました。内閣官房長官がおやめになるその最大の理由はどの辺にあるのか、本人でなければわかりませんけれども、しかし、今一連の年金関連にあることではないかな、こんなふうに思っております。

 関連して、私は、先ほども近藤議員が大臣に対する考え方をお聞きしたようでありますが、そういう中で、総理から言われなければ自分の身の処し方は決めない、こういう意味でなかったかと思いますが、政治家というのは絶えず責任があり、また、それらについて身の処し方というのはみずからが決めることである、このように思っております。まして今回の法案、少なくとも内閣提出のかなめである官房長官がおやめになるということは、大変国政にとっても重要な課題であり、あるいはまた、これからの年金問題だけではなく、残されている法案の審議についても大きく影響することであろう、このように思っております。

 特に、今回の特許法の問題等は単なる特許法じゃありません。国際的にこの問題が国家戦略としてどうあるべきかという議論になってくるわけでありますから、そのときの国際政治のあり方として、日本の政治というものが、やはり責任問題というものはこれから絶えずついて回ることではないかな、このように思っております。

 その点について、中川大臣はやはり他の閣僚と若干違う部分がある。それは、あなたが先日ここで釈明をされているように、気づかなかったロングランのこの期間の問題もあったと思いますが、そういう一連のことを含めながら、一方においては、総理に言われる前にみずからの決断で官房長官はおやめになる、やはりそのことぐらいの政治責任というものは当然あるのではないかなと思いますけれども、この件について大臣の考え方をお伺いします。

中川国務大臣 改めまして、私が全く国民年金に未加入のまま二十年間を経過したということは、本当に一国民として、閣僚である以前に、議員である以前に、社会的な義務を果たしていなかった、これは私の無知が原因であるわけでございますけれども、いずれにしても、そういうことについての……(発言する者あり)閣僚である以前に、私は議員であり、社会人として、もちろん閣僚として責任を感じていますが、それ以前に、もっと大きな社会人としての責任を果たしていなかったということは、厚生労働委員会でも申し上げたところでございます。

 福田長官の行動につきましては、私も時々メモは入ってまいりますけれども、正確なところはわかりませんので、官房長官のことについて余り私から申し上げることは差し控えさせていただきますが、福田長官が御判断をされて辞任されたということのようでございます。

 私自身は、社会人として、もちろん閣僚として、国会議員としてその責務を果たしていなかったということは、四月二十四日ですか、厚生労働委員会でお話ししたとおりでございますが、私はあくまでも、そこで、正確に言うとその日の朝、記者会見でみずから、自分がこういう経過でこういう未納、未加入の問題がございましたということを記者会見をしたわけでございます。その後、厚生労働委員会でも、正式の場で、国会議員として、閣僚として、委員会の場でお話をしたわけでございます。

 いずれにしても、福田さんがおやめになったということだそうでございますけれども、それは福田官房長官の御判断であり、私は、みずからの判断で今までの未加入問題についてお話をし、そして総理にも御報告をし、そして所属する政党にも御報告をし、そして今、その上で、国民としての義務を果たしていなかったことに対して、できるだけ、今からできることをやりながら、国会議員、閣僚として最大限の責務を全うしていきたいというふうに考えております。

 いずれにしても、任命権者である総理大臣から、もちろん、おまえはやめなさいと言われれば、それはもう任命権者の命でございますから、それに抵抗するつもりは毛頭ございませんけれども、私としては、今、国務大臣、経済産業大臣としてやるべきことを全うしていくということが私が果たすべき役割だというふうに考えているところでございます。

田中(慶)委員 先般、拉致事件の問題、あるいはまたイラクの人質問題、個人責任、自己責任というものが問われておりました。それから、今回の年金の問題についても、やはりこれだけ多くの国民が年金に対する関心があり、そしてなおかつ、立法府である国会議員、そして行政府である総理を初めとする閣僚の皆さん方が、それらについて気がつかなかったということだけでは、責任というものは十分果たし切れないと思います。

 特に、おやめになった福田さんは三年ですよね、そして我が大臣は、中川大臣は約二十年ですか。こういう形で、現実には、おやめになっておられる方と、まだ総理から何の指示もないからということ。しかし、経済を担当する大臣、日本の経済が一刻たりとも猶予を許されない、年金というものとあるいはまた経済というものが、私はある面ではスライドしていると思います。

 国民の年金に対する自己防衛のために全然お金を使わないで貯金に回す、こんな形になってしまう、こういうこともあるでしょうし、そういうことを含めて、年金に対する信頼というものを十分回復する、これは政治家として、我々も含めてすべての政治家が回復のために、信頼を得るために努力をしなきゃいけない、その一つに、大臣はみずから辞するということも私は信頼の一つの方法ではないかな、このように考えているわけですけれども、大臣はそれらについて、改めて、どうお考えになるのか、もう一度聞かせていただきたい。

中川国務大臣 先ほど申し上げましたように、賦課方式において現役世代が今の受給世代を支えているというか、お支払いをして制度が成り立っているという観点で、二十年という長きにわたって全く無知であった。議員互助年金が一階、二階部分もやっているというふうに思い込んで、四月の初めに万が一と思って地元の社会保険事務所に問い合わせをしたところが、丸々抜けていたというのに私自身大変驚き、そして申しわけなく思っているところでございます。

 したがって、私自身として、自己責任の果たすべきところは精いっぱい果たしてきたということでございまして、総理からおまえは職にあたわずということであれば、それは、甘んじて総理の御命令に従う覚悟はできております。

田中(慶)委員 いずれにしても、政治が国民に対する信頼を回復する意味で、大臣のみずからの責任問題もあるでしょうし、それぞれの関係する人たちも含めてすべての人たちが、政治家というのはみずから責任というものを絶えず、もう国会議員になった時点からも含めてその責任問題というのが問われていくことでありますから、そのことを含めて、あなたも立派な国会議員なんですから、衆議院をやめろと言っているわけじゃありませんから、そういうことを含めて、与えられた経済閣僚としての重責をこれからも果たしていただくということは結構ですけれども、しかし、国民との信頼をしっかりと築き上げるためには、やはり一つの方法として、あなた自身がみずから選択を私は強く求めていきたい、このように思っているところであります。

 さて、時間の関係もございますから、いずれにしても、この国会は次から次といろいろなことが起きてくるわけでありますけれども、そういう中で今回の特許法の問題、私は先般、国会からEU議員団の会合に派遣をされて行ってまいりました。たまたま私の担当が経済問題という立場で、日本の現状やあるいはEUの問題も含めて、話し合う場をいただいたわけであります。しかも、四月でしたから、五月一日の二十五カ国の問題、そして六月の新たな憲法の問題が議論されました。そういう中で、EUはやはり知的財産というものに非常に力を入れておりました。

 その一つには、この知的高裁の問題が、現実に、あの二十五カ国の中で二十カ所以上その裁判所がある、あるいはまた設置しようとしております。もう既に、アメリカに次いでEUは、GDPを含めて日本を抜こう、こういうところまで来ている状態であります。そういう中で、この日本の知的裁判というものは東京高裁を一つにしておられるわけでありますけれども、これらについて、私は、少なくとも、今まで、高等裁判所、全国にあるそれぞれの地方高等裁判所を含めて、一カ所ではない七カ所ぐらいの設置をすることが国際的な今の現状に合う状態になっているんじゃないか、そういうふうに感じますけれども、これらについて、知的高裁を、いま一カ所を新たにふやす考えはないのかどうか、そのことについて質問させていただきます。

山崎政府参考人 知的財産高等裁判所の管轄についての御質問でございます。

 これにつきましては、昨年の民事訴訟法改正に従いましてこのような体制ができたということでございます。これは、なぜこういうことをしたかという理由でございますけれども、裁判所の専門的処理体制を有効に利用しようということで、人材を一カ所に集めて速やかに判決をしていこう、こういうもの。それからもう一つは、判断の事実上の早期統一ですね。いろいろなところにばらばらにやっていますと、そこでみんな判断が分かれてしまう、これを早期に統一していこう、こういうような要請から、特許等に関する事件について東京高等裁判所に集中をしたわけでございます。

 このような趣旨を踏まえますと、今度、その東京高等裁判所にあるものを知的財産高等裁判所と、中で独立をさせるわけでございますけれども、これを多数設けるというのは、現在の状況では難しいというふうに考えております。例えば……(田中(慶)委員「難しければ難しいでいいから」と呼ぶ)はい。そういうことでございます。

田中(慶)委員 まずそれが官僚の発想だと思います。今、先ほど申し上げたように、EUは、統一をしながらも二十カ所に設けてスピードを、そして専門職を置いて国際競争に勝とう、こういうことに取り組んでいる。そのこと自体日本はもう既に後進国の、今の発想は私は後進国だと思っております。

 大臣、やはりこういう形で世の中が物すごいスピードで変わっているんですから、あなたは経済担当として、知的財産担当として、今のような発想をどう考えておられるのか、そのことについて答弁いただきたいと思います。

中川国務大臣 田中委員がおっしゃるとおりで、日本は軍事的な強国でもございませんし、資源大国でもありませんし、そういう中でやはり知恵とか技術とかあるいはまたチームワークとか、いろいろなことで生きていくしかない国でありまして、そういう中で知的財産をどんどん進めると同時に、その権利を保護していくということ。ある意味では、お隣の韓国や、あるいはまた、いわゆる最近BRICsという言葉があるそうですけれども、ブラジル、ロシア、インド、チャイナ、こういう国々が、大国であると同時に、どんどん元気が、レベルが上がってきている、そういう中で日本が頑張っていくためには、知的財産を利用した産業づくりと同時に、その知的財産を保護していくということが大事であって、そのためには、簡単にまねができないような技術をつくると同時に、またその権利を保護していくということが大変大事だろうと思います。

 ですから、今、田中委員御指摘のように、日本がその権利義務関係をスピード感を持って確定していくということは極めて大事なことだろうと思っておりまして、そういう意味でこれからますますそのスピード化の中で対応していくことが非常に大事なことだろうというふうに思っておりますので、そういう、あらゆる面からやっていく。

 今回御審議いただいている知財法の改正だけではなく、アメリカにしてもEUにしても、あるいは、種苗法なんかでいうと、インドにしてもブラジルにしても大変厳しい法律がいっぱいあるわけでございます。エクソン・フロリオ法とかそういうアメリカの法律もあるわけでございますから、日本も早く、単に知的財産権を迅速かつ早くやるだけではなくて、万が一のときに、侵害されたときには、これは国家的なある意味では利益を損なわれたんだというぐらいのきちっとした対抗措置が法律的に、はっきり言えば懲罰的な部分も含めてやっていくこともシステムとしてつくっていかないと不十分ではないかとすら私は考えております。

田中(慶)委員 別にEUがどうのこうのじゃなく、向こうは、今まで各国に全部申請したものが今度は一カ所でいいんですよ、それだけスピードが速くなるわけですから。そういうことを含めて物すごいスピードでこれから対応できていく、これが実態であります。

 特に、例えば日本で、発明裁判の問題一つとっても、これから大いに、その議論を今している最中でありますけれども、例えば裁判所一つとっても、我々国会で十分審議をして、あるいは附帯決議をつける、きょうもそういう形になっておりますけれども、しかし、司法当局はこの審議状態や附帯決議には何の影響も持たないということであります。

 それは、やはり決められた法律に、粛々としてそのことについてどうなっているかで対応する、こういう状態でありますから、やはりそういう一連のことも含めながら、国会の審議というものは、今回のこの法案の審議についても、少なくとも時代からすればスピード感もないし、ある面ではおくれているぐらいだ、このように私は思っているわけであります。

 そのことも含めて、ぜひ今の審議を含めて、十分ではない、ですから修正すべきだということを私はさんざん主張してきたんです。合意を得られませんでしたから、修正は百歩譲ったにしても、しかし、今までの審議過程というものは、やはり裁判に十分反映させるためには、附帯決議でもだめで審議状態でもだめである、残されているわずかな支えというものはやはり通達じゃないかな。今までは、通達という言葉は余り使っておりません。はっきり申し上げて、今井さんの答弁によっても、現実問題として通達ではなくして従来の一連のことを積み上げてみたいな考え方でおりますけれども、通達を出すかどうか、このことを十分聞かせていただきたいと思います。

今井政府参考人 これまで、私ども、事例集ということで御説明してまいりました。これは、審議会の答申で、不合理な案件のようなものについて明確にするために、中小企業などもわかるように事例集を作成するべしということでございました。したがいまして、私どもはこの八月をめどに事例集というものを作成する予定でございます。

 しかし、事例集の性格でございますけれども、先生今通達とおっしゃいましたけれども、私どもとしては、改正特許法の三十五条の条文の解釈に関しての通達、行政府として責任を持つ形でこれを出していきたいというふうに考えております。

田中(慶)委員 ぜひ通達を徹底していただきたい。せめてものそれが、司法当局が参考にするということでありますから、ぜひそうしていただきたい。

 特に私は、今回の通達についてもさんざん議論してまいりましたけれども、今度の法案の中には、それぞれ企業における就業規則とかという形、それに準じることになっておりますが、就業規則というのは一方的なものでありますから弱いわけでありまして、そこで、国際的ないろいろなことを含めて見たときに、もう既に、また一部の企業で始まっている労働協約、これは二年、三年ごとの見直しも含めてやるわけでありますから、時代の背景に十分対応し切っているだろう。この労働協約の問題を含めてどう考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 特許法三十五条、現行法におきましても「契約、勤務規則その他の定」ということで規定されておりますが、この中に労働協約が含まれるというのは通説でございます。したがいまして、恐らく労働協約を否定するというような裁判にはならないというふうに思います。

 それから、今般の議論、法律改正の趣旨が、発明者と企業との間で十分話を尽くしてやるということでございますので、その意味で、おっしゃるように、労働協約という一つの手続、きちっとした手続を踏んだものが今後一つの有力な手法になるということを私どもは考えておりまして、これも含めて、先ほどの通達、事例集の方に明示させていただきたいというふうに思っております。

田中(慶)委員 ぜひ労働協約の中に十分反映できるようにしてほしい。ということは、就業規則は労働協約じゃないですから、就業規則イコール労働協約みたいな解釈をされると司法当局は戸惑うと思いますから、そのことを含めてちゃんとしてほしい、このように思っております。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 今、就業規則の問題だというふうに理解いたしますが、おっしゃるように、就業規則というのは、今度の法律は、具体的にそういうものをつくるときに、きちっとした議論が行われたかどうか、協議が行われたかどうかというものをきちっと見ていくわけでございますので、労働法上の就業規則という形をとっていても、きちっとした議論が行われていない、協議が行われていない、開示がされていないということになりますと、改正特許法三十五条では不合理なものというふうに見られる可能性があるわけでございます。

田中(慶)委員 その上においても、私は、労働協約という、何か労働協約ということだけで食わず嫌いになっちゃいけない。はっきり言うと、これは労使における憲法みたいなものでありますから、これは今回のような発明の対価についても十分反映をされていくわけでありますから、そのことをよく認識をされて取り組んでほしい、これを要望しておきます。

 特に私は、今回の特許法改正は十分ではないと申し上げているのは、中小企業についてこの法案が十分生かされるかどうか、非常に疑問に思っているわけでありまして、中小企業の人たちは、この問題によってある面では存続の危機すらあるわけでありますから、そういうことを含めて、中小企業に対する相談やあるいは支援体制を含めて、今回のこれらについて、特許庁を初め、あるいは経済産業省としてどういう取り組みをなさるのか。この辺についての考え方を、最初に今井さんから考え方を、そして経済産業省として大臣に最後を締めていただきたいと思います。

今井政府参考人 御指摘のように、これまで、審議会を始めた後、企業のアンケートをとりました。そのときに、職務発明に関しましてまだ明文の規程を持っていないという回答でございましたのが、中小企業で三分の一ございました。こういう企業にこれからこの新しい改正法というものをきちっと御説明をしていかなきゃならないというふうに私どもとして考えておりまして、特許庁としては全力を挙げて対応してまいりたいというふうに思います。

田中(慶)委員 大臣にもう一回答弁を求めますけれども、いずれにしても、私は、この特許法の問題等については、国際的な全体の見直しを含めていろいろな国々が行っている、そして、特に我が国の産業構造というのは中小企業が多いわけでありますから、大企業はそれなりに十分、みずからの力で、自己責任においてできると思いますけれども、中小企業の人たちは大変戸惑うわけであります。全体の九〇%以上が中小企業なんですから、そのことに力を入れ、そのことに十分な対応策、支援対策をしていただかないと、仏つくって魂入れず、こういう形になってしまうと思いますので、十分それらについての対応をお聞かせいただきたいと思います。

坂本副大臣 事例集を整備しまして各中小企業に配慮する。それから、説明会を全国各地で開催することはもちろんですが、各経済産業局がございますね、七カ所、そこに特許室を設けて相談を受け付けるなど、中小企業への制度の普及啓発に特に努めてまいる所存でございます。

田中(慶)委員 いつも役所から流れている文章は、はっきり申し上げて、みずからがやったという、そのことを強調する意味でわかりにくい点がいっぱいあるわけであります。

 特許というのはこれからの日本の、経済を初めとする国の産業政策の柱になっていくわけでありますから、大臣、そのことを十分力を入れてやっていかないと、今の例えば融資制度とかいろいろなことを含めて、いろいろなペーパーをつくってありますよ。しかし、全然それは相手の立場で物事をつくっていない、むしろ役所が自分たちの立場で、こういうことをやった、やったというあかしのためにあるようなもので。

 しかし、今回の法律はスピードを持っていろいろなことに対応していかなければいけないわけでありますから、中小企業という日本の産業構造を十分反映して、そのことを、最後にあなたの考え方をお聞かせいただきたいと思います。

中川国務大臣 まず、先ほども申し上げましたように、日本は技術立国として生きていくというか、それしか生きていけないと言っても過言ではないんだろうと思いますが、そのためには周辺整備、人々の知恵やあるいは企業や大学等々の知恵をどうやってうまく産業化していくなり国力につなげていくかということが大事なんだろうという意味で、田中委員が御指摘のとおりだと思います。

 それから、前にも、これは中小企業事業団法等々のときにもパンフレットがわかりにくいじゃないかという御指摘、たしか田中委員からもいただきましたが、やはり間違っていなければいいじゃないかというだけのパンフレットじゃ意味がないわけですから、パンフレットというのはわかってもらわなければ意味がないわけでして、そういう意味で、また田中慶秋先生のいろいろなお知恵をいただきながら、パンフレットはとにかく相手にわかってもらう、極端に言えば、中学生、高校生がとんでもない発明をするための一つの触発になるかもしれないぐらいの意識を持ってパンフレットができるように、また引き続き御指導いただきたいと思います。

田中(慶)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、いずれにしても、これは日本の国策としてやっていかなければいけない問題であります。事例集なんというのは、もうドイツではそれもなくそう、見直しをしてスピードを求めようという、こういう状態で今やろうとしているわけでありますから、そのことを含めて、事例集、事例集なんていったって、これはある面では過去の問題になりつつあるわけでありますから、やはりそれぞれ先取りした政策を十二分にするようにお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

根本委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 最初に、職務発明制度について質問させていただきます。

 日本弁理士会が昨年まとめた見解の中で、「日本の職務発明対価は、現行特許法第三十五条の存在により世界のトップレベルになりつつある。」「三十五条の精神は決して古いものではなく、日本が、そして世界が果たせなかった高邁な理想に向けられたもので極めて近代的なものである。」と指摘をされております。

 この特許法三十五条の意義について、大臣はどのように評価をされておられるのか、その点を最初にお伺いしたいと思います。

坂本副大臣 御指摘のとおり、特許法三十五条を廃し、米国と同様、職務発明の取り扱いをすべて企業と研究者の間の契約にゆだねることとした場合、次のような問題が生ずるわけでございます。

 終身雇用が残っております我が国の雇用関係の状況のもとでは、必ずしも研究者の意思が反映されるとは限らない、研究者にとって不利な契約となるおそれもあると考えております。企業側から見ても、大企業では研究者との間で契約を結ぶことは現実問題として非常に困難であるとも言われております。

 我が国の企業と研究者の関係を前提にする限り、すべてを当事者間に任せるには問題が多いため、今般の改正案では、現行制度の骨格は維持しつつも、その問題点を改善することとしております。

 各企業の経営環境、経営戦略や社風を理解している研究者と経営者が真摯に向き合って議論し、両当事者で納得する形で決定した取り決めであればそれを尊重する、いわば手順を踏むということでしょうか。これによって各企業が研究者の意見をよく聞くなどして対価を決定するよう努力するようになれば、研究者は訴訟に訴えることまでなくしても自分たちの意見を反映させることができるようになり、発明評価に対する満足度が高まるとともに、我が国企業に優秀な研究者を集めるための一助になるものと考えております。

塩川委員 大臣に確認の意味で質問させていただきますが、この特許法三十五条を撤廃するという立場には立つものではない、そのように思いますが、その点はいかがでしょうか。

中川国務大臣 特許法三十五条の、発明権者が特許権を保有する、それを、通常実施権、専用実施権でいろいろ差が出てきますということについてどういうふうに使用料を決めるかということが今回の法の御審議いただいているところでございますけれども、そもそもこの三十五条によって企業と研究者、従業員との関係を円滑にしたいということが趣旨でございますので、それについて根本的な変更をするということについては、考えておりません。

塩川委員 すべて契約に任せるという立場ではないという点で、その範囲でお聞きしたいんですが、やはり企業と従業者の立場というのは対等というふうには現実には言えないだろう。私、従業者がやはり弱い立場に置かれているというのが実態だ、このように思いますけれども、その点はいかがでしょうか。

今井政府参考人 今般の法律改正案は、企業と発明者の間で協議を尽くして、またそれを開示してもらうということでございます。

 これは、それによって手続的にきちっとしたものをつくっていっていただくということでございますけれども、やはりおっしゃるように、企業と発明者の間では格差、立場の格差というのがございます。その格差のあることを前提にしまして、対価を決定するために取り決めを策定するに際しては、今申しましたように、企業と研究者の間で十分な協議が行われたか、そして開示されたかという手続面を重視して対応していきたいというふうに思っております。

 したがいまして、企業は、不合理な手続であったと裁判で判断されるようなリスクを低減するために、いわば優越的な立場を利用して研究者の意見を聞かないで一方的に対価を決めるということは避けて、研究者と真剣に話し合うことによって本件に対応していただけるというふうに考えておるわけでございます。

塩川委員 この点は、今格差があるというお話がありました。この特許法の改正に当たっての日弁連の意見書でも、「使用者と従業者の力関係の中で従業者が弱者の立場にある」「対価決定の手続については、使用者と発明従業者の交渉における力関係の絶対的格差を重視しなければならない。」このように述べています。

 その上でお聞きするわけですが、この日弁連の意見書では、「対価の決定の手続を、使用者等に対し従業者等が一般的に弱い立場にあるにもかかわらず形式的には対等な当事者間での契約や勤務規則等として処理されるのであるから、公平の観点から定められるべき主張・立証責任の分配としては、使用者側にその「合理性」についての主張・立証責任を負担させるのが妥当である。」とありますけれども、この点、改正案ではどうなるんでしょうか。使用者側の負担ということになるんでしょうか。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正案におきましては、職務発明の対価について、基本的にはこれらの、おっしゃる当事者間で自主的に取り決めた対価であれば、その取り決めが不合理でない限りその対価を尊重するということにしております。

 また、取り決めによることが不合理であることの証明責任につきましては、証明されて利益を得る者が証明責任を負担するという民事訴訟法の原則にかんがみますと、この五項の基準に基づいて対価の支払いを求める、五項で裁判所に相当な対価の支払いを求める利益は研究者側にございますので、原則として研究者が負担するというふうになるわけでございます。

 ただ、研究者が、対価を決定する取り決めの策定に際しまして協議を受けた状況とか、対価の算定の段階での意見の聴取の状況など、自分の経験した手続を挙げて、これは不合理ではないのかということを裁判所で主張、立証するというのは、比較的容易なことというふうに考えておるわけでございます。

 また、現実の訴訟実務におきましては、企業と研究者との間で証明能力の格差がある場合には、裁判所が訴訟の運用という形で、研究者が証明責任を負うことになっている事項につきましても、企業の側が事実上の証明の負担を負うことになっているというのが実情でございます。

塩川委員 研究者側の負担になるというお話がありました。

 そうしますと、本法案では、発明者が対価の額について裁判で争う際に、協議状況ですとか開示の状況、今お話もありました、意見聴取の状況などが不合理なものであってはならないという条件を設け、これが不合理と認められる場合に初めて対価の額そのものを争うことができるという段取りになると思うんですが、そういうことでよろしいでしょうか。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 おっしゃることでございます。

 ただ、今申しましたように、現実の実務につきまして考えますと、企業と研究者との間で証明能力の格差がある場合には、裁判所の訴訟運用がなされることによって、研究者が証明責任を負うことになっている事項につきましても、企業の側が事実上の証明の責任を負うことになっている実情があります。したがいまして、証明責任が研究者側にあるとしても、研究者にとって訴訟を提起するということの障害に、それほど大きいことになるというふうに考えておりません。

塩川委員 いや、今までよりもハードルがふえるという形になる。訴訟においてはハードルがふえるという形をとるわけですね、実際には。当然のことながら、対価の額そのものの前に開示の手続、手続面についてのハードルが一つ加わるということになるわけですね。

今井政府参考人 御指摘のとおりでございます。

 ただ、今のハードルと申しますのが手続的なものでございますので、非常にある意味で立証しやすいといいますか、訴訟で、こういう事実があった、これは私は不合理であるということを説明するわけでございますから、その意味では従来の対価の額というものに比べて、もちろんそれが新たに証明責任を負うわけでございますが、それほど大きな負担にならないというふうに私どもとしては考えているわけでございます。

塩川委員 いや、今までよりもハードルがふえるというのがあるわけですから、実際、今度の法改正に当たって、発明者の特許の対価請求権をめぐる訴訟において発明従業者側の挙証負担が大きくなり、事実上訴訟を抑制する効果をもたらすと私は思います。

 その上で、実際、対価の額について争う場合にも大変、現実は厳しいというのも実際だと思うんですね。

 例えば、日本経済新聞に「簡単じゃない 職務発明裁判」という特集記事がありました。ここの中では五つのハードルを例示しております。

 例えば、「特許の書類に名前を連ねているだけでは発明者とみなされない場合がある」、管理者として書いているような場合があるからということが一つ、コスモ石油の裁判の事例を挙げて紹介をしていますし、二つ目には、弁護士を見つけるのも大変だと。「経験豊かな弁護士のほとんどは大企業側についており、大口顧客を敵に回すのを嫌がることも多い。」こういう話も出ておりますし、三つ目に、「次のハードルは時効」ということで、時効についても実際にはなかなか、発明者側にとってみれば大変なものになってくる。四点目では、特許による独占利益の問題もハードルとなっている。五つ目に、発明に対する貢献度を証明する。実際にそれで取り分というのがどの程度になるかといっても、争っている中ではそんな大きなものに現実にはなってこないというように、私、具体的に見ましても、相当な対価の額について争う、今の、現行の状況だけとっても、従業者にとって立証するのが大変難しいと率直に思うわけです。

 私は、そういう意味でも、やるべきことは、本当に研究者の待遇改善にこそ努めるべきだと率直に思います。

 そこで、文部科学省にお尋ねしますけれども、文部科学省がまとめておられます「我が国の研究活動の実態に関する調査報告」、これには、対象者が二千名の調査で、民間企業の方が五〇%、大学等が三〇%、公的研究機関等が一五%、その他機関が五%ということで、大変幅広く調査がなされておられます。

 その中で、研究者の処遇についてこの調査のリポートを見ますと、研究成果に対する特別の報酬とあわせて研究費の額については、不満足であるという意見が多かったというふうにまとめておられます。

 そこでお聞きしますけれども、民間企業だけを取り出した場合に、七つの項目での質問をとっているわけですが、その質問七項目を満足度順に並べていきますと実際どうなるのかということをお示しいただきたいと思っています。

有本政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のとおり、私ども文部科学省におきましては、研究活動、それからそれに関連しまして研究者の意識の実態把握ということで、毎年全国の研究者の二千人の方々を対象といたしましてアンケート調査を実施いたしてございます。

 それで、今御指摘の平成十四年度の調査につきまして、七項目にわたりまして研究者の処遇に関しましてアンケート調査をいたしてございます。給与それから研究成果に対する特別の報酬、研究費の額等々でございますけれども、それを満足度の順番に民間企業の方々の理解度、意識というものを申し上げますと、各種活動の自由度それから給与、これにつきましてはかなりの程度、おおむね満足をされている傾向でございます。それからあと、給与の額、昇進、特許権等の帰属、これにつきましては意見が分かれているところでございますけれども、研究成果に対する特別の報酬それから研究費の額、これにつきましては満足していない状況がうかがわれるわけでございます。

 以上でございます。

塩川委員 今の話にもありますように、いろいろ所属機関の内や外での活動についての自由度、これは結構だと。給与とか昇進についても、まあまあいいかもしれないと。それに対して、やはり研究成果に対する特別の報酬についての満足度が極めて低いというのが、これは公的な機関や大学もそうですけれども、民間企業でもこの辺が顕著にあらわれているわけです。

 私、そういう点でも、この現状の研究者や技術者の人の待遇改善にこそ率直に取り組むべきだ。そういう点で、具体的にアメリカとかヨーロッパとの比較の事例というのは、調査をされたことがあるのか、その点を含めてお聞きしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 ヨーロッパにつきましては、ドイツがやはり日本と同じように職務発明的な規定がございますので、ドイツの状況は把握しております。フランス、イギリスは使用者主義で、もともと発明者に権利が帰属せずに、企業に直接帰属するところでございますが、これも状況は一応把握していることでございます。アメリカにつきましては、これは雇用が非常に流動化しておりますので、日本のように長く、特許期間、例えば十年、二十年にわたって報酬を得るというのではなくて、それぞれの雇用契約で、その雇用契約の条件の中に、いわば給料の中にないしはストックオプションの中にこういう発明の対価が観念的に入っている、こういうふうに考えております。

塩川委員 研究者、技術者一般の待遇改善ということを真剣に取り組むときじゃないかなと思うんです。

 そういった意味でも、日経エレクトロニクスの三年前ぐらいの調査というのを特許庁の方から紹介してもらいましたけれども、アメリカに比べても、日本の研究者、技術者の方が満足度が極めて低いということがありました。では、ヨーロッパと比較しているのかといったら、ヨーロッパとの資料はないんだというんですけれども、こういう実態で、本当の意味で現場の改善に努めることができるのか。

 そういう点でも、大臣に率直に、民間の研究者、技術者の方の待遇改善に真剣に取り組むよう企業にも促していただきたい、その点思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

中川国務大臣 もちろん、研究者の皆さん方が研究に専念できるような環境を、企業だけではなく、大学等あるいはまた純粋な研究機関を通じてやっていくことは非常に大事なことでございまして、その点、いろいろな方々から、欧米に比べて日本はこういうところが劣っているよというような話は時々聞くことがございます。

 総論で申しわけございませんけれども、日本の研究者ができるだけ長期的に自由に、思い切ってできるような環境づくりを充実していくことが必要だろうというふうに考えております。

塩川委員 そういう点でも、特許の出願や審査請求、特許取得の企業そのものが日本の特定大企業に集中をしているわけです。

 そこで、特許の迅速化にかかわってお聞きしたいんですが、一月二十八日付の日本経済新聞に、特許庁は特許出願件数が多い企業三百社に対し、先行技術調査を徹底するなどして出願を絞り込むよう要請する、出願件数の多い電機や精密、薬品メーカーなど五十社に対しては、今井長官が経営者を訪問してその企業や業界の拒絶査定率を説明する、こんな記事がありました。

 この間、そういう取り組みを特許庁としてなさっておられると思いますけれども、こういうことをやるきっかけといいますか、なぜこういう、長官を先頭に五十社訪問しようという動機、その点をお聞きしたいと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 先国会で料金値上げをいたしました際にも大変な議論がございまして、中小企業に負担がかかるのではないのか、それから、大企業、数でいえば、率ではありませんが数でいえば、大企業の戻し拒絶と申しますけれども、むだな出願が多いのではないか、こういう議論もございました。

 また、私ども、その後また勉強を続けておりますけれども、やはり日本の研究開発効率を上げていくためには、特許情報を研究開発の段階から大いにお使いいただかなけりゃならない。今までは、審査請求とか出願のときに事前の従来技術調査をしていただいておりましたけれども、やはり研究開発の段階でも技術調査をしてもらいたい。

 こういう話で、それが最終的には出願審査請求構造の改善につながるということでございますので、私、それから各特許技監、各部長、各課長まで、企業、中小企業も含めまして企業にお話に行って、特に、むだな審査請求のないように、戻し拒絶的なものについては事前によくチェックをしていただくようにお願いしているところでございます。

塩川委員 今、長官の話にもありましたように、大企業のむだな出願が多いということで、これは実際の数字で教えていただきたいんですが、拒絶査定件数、要するに特許の審査請求をしてもこれはだめですよとはねられるのがあるわけですよね。その拒絶査定件数の総数に占める上位五十社の占める割合、二〇〇三年の数字がもう出ていると思うんですが、上位五十社がどのぐらいの割合を占めるのか、お示しください。

迎政府参考人 二〇〇三年の特許査定件数上位五十社における戻し拒絶件数全体に占める割合は、約三四%となっております。また、上位五十社における特許査定件数の全体に占める割合は約三九%となっておりますので、上位企業の戻し拒絶の割合というのは、全体の数字に比べれば若干低くなっている、こういうことでございます。

塩川委員 今、戻し拒絶の話がありましたけれども、拒絶査定件数では、私が承知しているのは三七・一%なんですけれども、それはもうそれで。確認だけ、どうですか。

迎政府参考人 失礼しました。二〇〇三年の……(塩川委員「拒絶査定件数」と呼ぶ)戻し拒絶件数の全体に占める割合が三七%ということでございます。

塩川委員 これは事前にお願いしておいたんですが、少し正確な数字が出ていないようですけれども、どちらにしても、今のお話のように、戻し拒絶で三四%という話もありますけれども、要するに上位五十社なんですよ。

 つまり、四十万件の出願があるうち、それは何万という中小企業を含めて企業が出願をされているわけですよね。上位の五十社だけとってもそのうちの三分の一になるということですから、長官がこの間大企業行脚をしているというのは、そういう意味では非常に効率的な話で、具体的にそういう大企業に改善を求めるというのは、ある意味では本当に効果があるんだと思うんです、五十回れば全体の三分の一クリアできるわけですから。そういう点でも、そういう大企業の果たす役割が特許の迅速化に当たっても重要だということだと思うんですね。

 例えば、今言った上位五十社で、審査請求のうち拒絶される割合というのが、私、過去三年間で高まっているんじゃないかなと思うんですけれども、その点わかりますか。

迎政府参考人 上位五十社の過去三年間の拒絶される割合、拒絶査定率でございますけれども、二〇〇一年が四五・五%、二〇〇二年が四九・二%、それから二〇〇三年が四八・七%と、この三年間ちょっとふえて減ったみたいな形になっておりまして、全体の傾向と比べると、特に顕著に五十社について拒絶査定率が最近上がっているというふうなことではないというふうに認識しております。

塩川委員 私、特許査定件数と拒絶件数を足した数字に拒絶査定件数が占める割合で出しましたら、二〇〇一年が四三・五%、二〇〇二年が四七・一%、二〇〇三年が四七・三%という形で、そういう意味で、傾向とすれば、この上位五十社がはねられる割合が高いというのがこの間の傾向だと思うんですね、今の迎部長の話でも二〇〇一年と二〇〇三年をとればふえているわけですから。

 そういう意味でも、日刊工業新聞に発明の日座談会というのがありまして、そこに今井長官が出ておられました。そこでも、約半分が拒絶されるということは、企業のトップの方々にも原因分析をしてもらわなければいけません、こういうふうに述べておられますけれども、この原因分析というのはどうなったんでしょうか。

今井政府参考人 率直に申しまして、企業のトップの方々は非常にびっくりしておられます。それぞれの企業がどの程度の拒絶をされ、それから、いわゆる戻し拒絶という反論のないものについてどの程度のものがあったかにつきまして、数字を社長、会長の方々にお見せしますと、大変驚いておられます。そして、私ども一々詳細を、それをここで聞くというわけではなくて、こういう実態にあるようですから、その改善策を明確にして、また私どもと相談をしてくださいということを申し上げているところでございます。

塩川委員 去年のこの特許法の審議の際に、当時の太田長官が、大企業の選択と集中、リストラも含めて、こういった出願が、戻し拒絶が増加する傾向に拍車をかけていると答弁しておられますから、私、率直にそこに原因があるんじゃないか。企業側のそういう意味では組織再編の中で、ぼろぼろとこぼれるような、光の当てられないような実態というのが生まれているんだと思うんですけれども、その点、いかがですか。

今井政府参考人 前国会で前長官より分析をさせていただきましたが、やはり、あの当時もお話し申し上げましたけれども、第一義的には、先行技術というか、従来技術の調査不足というのが恐らく圧倒的に多いものだというふうに私どもは理解いたします。また、おっしゃるように、企業の事業計画の変更でございますとか、分社化の過程によって重複出願が出てきたということも、当時、副次的ということで平沼大臣から御答弁申し上げましたけれども、そういうことであろうかと思います。そういうものはやはり峠を越していくのではないかというふうに考えます。

 最近の、先ほどの御質問に関連しますけれども、私どもが会話をしておりますと、やはり広くて強い特許をとる、世界戦略ということになりますと、広くて強い特許をとる。従来でいえば、非常に細かい特許まで、異議を申し立てて最後まで、特許をとるまで頑張ったわけですが、それよりももう少し大きな、太い特許をとるというような企業戦略も出ているということをおっしゃっている企業もございます。また、特許庁の審査基準が厳しくなったのではないかということで、これはやってもしようがないなということで戻しになる、まさに反論がないということも企業の方々はおっしゃっておりますが、これもいずれも定性的なことでございまして、何件がそうだということにはなかなか、企業も分析は難しいわけでございますし、私どもも分析は持っていないわけでございます。

塩川委員 最後にお聞きしますけれども、昨年の法改正で審査請求料が二倍に引き上げられました。私どもは、中小企業にとって大きな圧力になるということで反対をしました。これは、趣旨は、安易な審査請求をふるい落として特許の迅速化を促すものとしていましたけれども、今回の法改正で特定登録調査機関制度の導入をするということになり、いわば大企業のサーチ子会社のリポートを添付すれば審査請求料を半額にもできるという話で、二倍に引き上げても半額にもできるということでは、去年の法改正が無になるんじゃないか。

 そういう意味でも、大企業は既に自前のサーチ会社で先行技術調査を行っておりますし、今回のこの制度の導入というのが、むだな審査請求を抑制することを企業に迫った昨年の法改正の立法趣旨をみずから否定するものになるんじゃないのか、特定大企業の負担軽減策にしかならないんじゃないか、そのように思いますが、いかがでしょうか。

迎政府参考人 今回の改正にございます、登録機関のサーチレポートを付した場合には審査請求料を減額するというのは、特許庁の審査の段階において必要なサーチというのを、同じものを事前にやってきていただく。企業の方は当然そのサーチ機関にサーチに必要な費用というのを払っているわけですから、その一部が審査請求料の減免という形で減るということでございますので、審査請求料を引き上げたことの効果が無になるというふうなものではないというふうに考えております。

 それから、大企業、中小企業のお話がございましたけれども、中小企業にとりましても、迅速化というのは、非常に早く事業化、自分の発明を事業化に結びつけるという点でメリットがあるというふうなことだと考えております。一方で、中小企業が審査請求に当たって事前にサーチをするというふうな点について、大企業に比べてなかなかそういうものがやりにくいというふうな事情に配慮いたしまして、今年度から、中小企業の審査請求前の調査について無料で行うというふうな制度もつくっておるわけでございまして、中小企業にとって不利な状況ができるというふうなことがないように、いろいろ総合的な政策で配慮をしているということでございます。

塩川委員 審査請求料の減額が朝令暮改ではないかということを指摘して、質問を終わります。

根本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

根本委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。

 反対理由の第一は、特許法第三十五条の改定は、企業側の利益を優先させ、発明従業者の権利を侵害し、抑制する危険性が極めて大きいものとなっているからです。

 昨年のオリンパス事件最高裁判決を初めとする最近の一連の職務発明に係る特許裁判は、発明従業者に対する正当な評価を示した初の本格的な判決となっており、画期的なものです。本法案は、企業の予測可能性、リスクと従業者の納得感とのバランスをとるとの口実のもと、実際は、企業内において経営側に対して弱い立場にある労働者の状況を無視し、対価請求権を争う訴訟において、契約、就業規則その他の手続が不合理なものであることを労働者側に立証させる新たなハードルを持ち込むものであります。

 発明従業者の正当な評価に光を当て始めた流れを逆行させかねないものであり、容認できません。

 第二は、工業所有権の手続特例法案であります。

 特許審査の迅速化、滞貨一掃を名目に、先行技術調査などに係る公的な指定調査機関制度を登録制度に切りかえ、民間企業を参入させアウトソーシングを促進する本法案は、戻し拒絶などむだな特許申請の累積による審査の長期化を招いている一部大企業の責任を棚上げしたまま、申請大企業が実質支配するサーチ子会社を利用して審査請求料を半額化するものです。これでは、昨年の特許法改正で審査請求料を二倍に引き上げ、玉石混交のむだな審査請求を抑制することを企業側に迫った立法趣旨をみずから否定し、アルバイト審査官の増員や予算の増額など国民的な支援を台なしにしかねないものであります。

 政府がまずやるべきことは、特許申請の圧倒的部分を占める電気、電子、精密機械、自動車など一部大企業に対して、その自覚と社会的責任の遂行を強力に迫ることであります。

 第三は、工業所有権総合情報館法です。

 本来、特許情報の取り扱いは、国が直接責任を持って行うべきであり、研修という特許審査の信頼性と質の向上を図る上で基礎的かつ重要な業務まで独立行政法人に行わせることは問題であります。

 我が国国民の発明、発見など知的資産が、内外の産業の健全な発展、人類の進歩と福祉に貢献するよう、特許制度がその役割を果たす真の改革に向け奮闘することを表明して、討論を終わります。

根本委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

根本委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

根本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

根本委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、櫻田義孝君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及びグループ改革の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。鈴木康友君。

鈴木(康)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、知財立国の推進が我が国の喫緊の課題であることにかんがみ、本法施行に当たって、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 特許の審査待ち期間ゼロを目指し、今後とも任期付き審査官増員など審査体制の整備に努めること。その際、審査待ち期間短縮に関する目標・計画を策定するとともに、これを定期的に評価し、前倒しで実現できるよう努めること。

 二 今回の改正を踏まえ、弁理士の更なる活用を図るとともに、審査処理のアウトソーシングを進め、審査待ち案件を減少させる観点から、多くの民間機関が新たな登録機関として参入するよう積極的に支援すること。

 三 職務発明については、事例集の作成などにより企業における職務発明規定の整備を促進すること。その際、労働協約が職務発明規定を定める有力な方策の一つであることにかんがみ、事例集の策定に当たりこの点を反映すること。

   また、今回の改正の考え方を関係各方面に周知し、既存案件の場合でも円滑な解決が可能となるよう努めること。

 四 特許審査の迅速化を始め知財政策の改革の効果が中小企業にとっても十分活用できるよう、中小企業の人材育成への支援等総合的な支援策の強化に努めること。特に、職務発明規定の整備は中小企業にとっても大きな課題であることから、このための中小企業への相談・支援体制を充実すること。

 五 実用新案制度については、今回の改正による魅力の向上について企業関係者に周知徹底し、同制度が十分利用されるよう努めること。

 六 企業の研究効率の向上に資するよう特許庁の有する特許情報の対外提供サービスの一層の充実を図ること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

根本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

根本委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、中川経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中川経済産業大臣。

中川国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

根本委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

根本委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 経済産業の基本施策に関する件、特に産業再生の進捗状況等について調査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十三分散会


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