衆議院

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第16号 平成17年5月18日(水曜日)

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平成十七年五月十八日(水曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 河上 覃雄君

   理事 河村 建夫君 理事 櫻田 義孝君

   理事 平井 卓也君 理事 松島みどり君

   理事 鈴木 康友君 理事 細野 豪志君

   理事 吉田  治君 理事 高木 陽介君

      遠藤 利明君    北川 知克君

      小杉  隆君    佐藤  錬君

      坂本 哲志君    菅  義偉君

      鈴木 淳司君    武田 良太君

      谷畑  孝君    中山 泰秀君

      西銘恒三郎君    野田  毅君

      馳   浩君    平田 耕一君

      三原 朝彦君    望月 義夫君

      森  英介君    山口 泰明君

      山本 明彦君    大畠 章宏君

      奥田  建君    海江田万里君

      吉良 州司君    菊田まきこ君

      近藤 洋介君    佐藤 公治君

      高山 智司君    中山 義活君

      計屋 圭宏君    村井 宗明君

      渡辺  周君    江田 康幸君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       中川 昭一君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   政府参考人

   (内閣官房知的財産戦略推進事務局長)       荒井 寿光君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中村 吉夫君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            鈴木 勝康君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     江嵜 正邦君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 青山 幸恭君

   政府参考人

   (文化庁次長)      加茂川幸夫君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           舟木  隆君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           岩田 悟志君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          北畑 隆生君

   政府参考人

   (特許庁長官)      小川  洋君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    澁谷  隆君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    望月 晴文君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  谷口 博昭君

   参考人

   (日本道路公団副総裁)  内田 道雄君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  嘉数 知賢君     佐藤  錬君

  佐藤 信二君     三原 朝彦君

  坂本 剛二君     馳   浩君

  梶原 康弘君     吉良 州司君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  錬君     鈴木 淳司君

  馳   浩君     中山 泰秀君

  三原 朝彦君     佐藤 信二君

  吉良 州司君     梶原 康弘君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 淳司君     坂本 哲志君

  中山 泰秀君     坂本 剛二君

同日

 辞任         補欠選任

  坂本 哲志君     嘉数 知賢君

    ―――――――――――――

五月十七日

 容器包装リサイクル法改正に関する請願(大畠章宏君紹介)(第一二〇五号)

 同(河村建夫君紹介)(第一二五〇号)

 容器包装リサイクル法の改正に関する請願(土井たか子君紹介)(第一二〇六号)

 原発震災を防ぐことに関する請願(稲見哲男君紹介)(第一二五一号)

同月十八日

 中小業者への経営支援に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一三七九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 不正競争防止法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)


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     ――――◇―――――

河上委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、不正競争防止法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本道路公団副総裁内田道雄君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房知的財産戦略推進事務局長荒井寿光君、内閣府大臣官房審議官中村吉夫君、金融庁総務企画局審議官鈴木勝康君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長江嵜正邦君、財務省大臣官房審議官青山幸恭君、文化庁次長加茂川幸夫君、経済産業省大臣官房審議官舟木隆君、経済産業省大臣官房審議官岩田悟志君、経済産業省経済産業政策局長北畑隆生君、特許庁長官小川洋君、特許庁総務部長澁谷隆君、中小企業庁長官望月晴文君及び国土交通省道路局長谷口博昭君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河上委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司です。

 今回のこの不正競争防止法の改正ということで、今まで、特許ですとか、そういう形できちんとあるものは保護はされていたけれども、これからは、営業秘密であるとかノウハウといったことまで、転職者に対する処罰をもってしてまで保護していこう、こういう法案で、こういう必要性は認めますということですが、ちょっと質疑通告していた順番だけ変えまして、内容はそれほど変わりませんけれども、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、これは大臣にちょっと伺いたいんですけれども、何というのでしょうか、以前私は経産省のインサイダー疑惑のときにも少し伺いましたけれども、経産省でも、一般企業でいえば営業秘密に相当するようないろいろなノウハウですとか、そういったものというのはあると思うんですけれども、これが、職員の方が退職されたり、また別の業界に行ったときに、当然そういうノウハウ、またはいろいろ人的関係ですとか、こういうのを欲しくて受け入れる側も、受け入れる場合もあるだろうと思うんですけれども、この場合、これは不競法で保護しなきゃいけない営業秘密なんかが持ち出されているような場合ですけれども、経産省としては、これをどういうふうに対処しようというふうに考えておりますか。

中川国務大臣 おはようございます。

 まず、高山委員の御質問でございますけれども、経済産業省に限らず、まず国家公務員法の広いといいましょうか厳しい枠がはめられているわけでございまして、当然その法律の範囲内で、きちっとした職務に邁進しなければいけないことは言うまでもないことでございます。

 経済産業省に関しましては、できるだけ民間の厳しい水準に準拠するように、とりわけ情報管理でありますとか文書の管理でありますとか、あるいは個人情報等につきまして、各種の規定を定めまして、徹底に努めているところでございます。

 私も、折に触れて、口を酸っぱくして省内に言っているところでございまして、とりわけ最近は、コンピューター関連のいろいろな、外から入るとか、あるいはまた、のぞき込むとか改ざんするということが往々にして多いわけでございますので、こういうものについても特にきちっとした管理をするようにということで、これはイタチごっこになる部分もあるのかもしれませんけれども、できるだけ厳しく管理をしていかなければいけないということで、日々努力をしているところでございます。

高山委員 それでは、経産省本庁だけでなくて、例えば旧石油公団ですとか、あるいはその外郭にある特殊法人、今独立行政法人となったんですけれども、そういうところに関しましては、こういう営業秘密に相当する情報に関しましての管理体制といいますか、こういうのは一体どういうふうになっているんでしょうか。細かい話ですので、もし事務方がいらっしゃれば、それで結構です。

北畑政府参考人 個別の不祥事その他について詳細は承知しておりませんが、それぞれの機関で、公務員について定められたものと同様のもの、準ずるものの規定があるものと承知をしております。

高山委員 ただいま経産省に伺いましたけれども、けさの朝日新聞に、道路公団の幹部が特許を連名で出願していると。そして、これを読みますと、道路公団が道路を補修したりなんだりする際に、これこれこういう仕様で資材を発注したい、発注側が、こういう仕様でやってほしい、こういうのを開発してほしいということを相談しながら、資材会社と一緒に共同で特許出願をしている。つまり、将来的にこういう仕様で出すということをわかっているわけですから、当然、その会社がもし特許などを持てば、独占販売権を得ることになるだろう。しかも、その会社がただ利益を得るだけではなくて、発注者側にいたこの技術担当の方、お名前も出ている新聞も一部ありますけれども、が共同出願人となって特許を出している。

 これは随分問題じゃないかなというふうに思うんですけれども、この件に関しまして、まず道路公団に、この事件、どのように今調べているか、それをお答えください。

内田参考人 お答えします。

 現在、この件に関しましては、道路公団で内部調査を行っておる最中でございます。

高山委員 この問題、新聞に出たのはきょうですけれども、参議院の方でも委員会でも質問されたり、あるいは、ぽろぽろと報道は出ていたんですけれども、調査中というだけでこれはよろしいんですか。もうちょっと踏み込んで教えていただけませんか、何を今どういうふうに調査しているのか。また、内部調査で終わっている話なのか。その辺をお答えください。

内田参考人 状況をちょっと御説明しますと、いろいろ取りざたされた段階から道路公団として内部調査を行っておりまして、公団の内部調査としてなし得る調査はほぼ一段落ついて総裁に報告しておりまして、この調査の妥当性等について、現在第三者の方に検証していただいているところでございます。

高山委員 公団内部で調査は終わられて、今第三者に調査をゆだねられているということでございますので、公団内で今調査は終えられたということですから、これは一体どういう処分をなされたか、まず教えてください。

内田参考人 現在、この調査の結果について第三者で検証を行っているところでありますので、この内部調査に基づいて処分というような形はまだとっておりません。第三者の検証を交えて……(発言する者あり)はい、失礼しました。第三者の見解も入れた後で、処分を行うことも必要であれば検討していきたいと思います。

高山委員 いや、これは内部調査が終わられたということですよね。それで第三者に、例えば弁護士さんなり外の人物に頼んで、刑事告発なりなんなり民事告発なり、そういう法的手段をとるというのももちろんだ、当然これはそのぐらい重い話だと思いますけれども、内部で、この担当の方、どういう処分をされましたか。全くおとがめなしですか、これだけのことをやって。

内田参考人 きょうの報道にありましたような、届け出が遅かったとかいうような事実については、既に確認されております。ただ、全体の調査が完了しておりませんので、調査が完了次第、どのように対処するか検討していきたいと思っております。

高山委員 先ほど、調査いたしましたかというふうに伺いましたら、道路公団での内部調査はもう行いました、それが終わって今度は第三者による調査を今しておりますということでしたよね。ですから、法的措置などをとる前に、内部でこの人に対する何らかの処分、必要じゃないですか。

 では、この人に対する内部的な何らかの処分が必要だというふうに今考えているかどうかだけ、まず伺います。実際にしているかどうかは別として。

内田参考人 本日の報道にありましたように、長期にわたって届け出がなされていなかったこと、現実的に損害が発生していないものの、公団の出願以前に特許登録されたものが存在したこと、調査の結果、こういった事実が判明しております。

 当人は技術に関する主導的な立場にあった者であることから、当該職員には工業所有権取扱規程に対する職務上の義務違反があったと私どもも認めております。当人の処分につきましては、内規に照らし、調査完了をもって検討してまいりたいと思っております。

高山委員 今、副総裁、何か全然損害が生じていない、実害がなかったというような御答弁いただきましたけれども、では伺いますけれども、これは無断で出された特許で、この出された技官の方に特許としてのロイヤリティーが幾ばくか入っていますか、それとも入っていませんか。

内田参考人 特許権の発生したものについては、当人にロイヤリティーが渡っております。

高山委員 だから、そこが問題なんじゃないんですか、副総裁。だって、職務上、本来であればまだ道路公団に帰属すべきような特許が、これを勝手に出しちゃったことでその人に特許料がどんどんどんどん入ってきちゃうじゃないですか。こういうのを何で処分しないんですか。

 ちょっともう一回伺いますけれども、ロイヤリティーが入ってきておりますということで、それでそのままにしちゃってよろしいんですか、副総裁に伺いますけれども。

内田参考人 現在の特許に関しまして今ロイヤリティーが入っておると申しました件に関しましては、日本道路公団が共同出願者となっておりまして、その特許にかかわる特許料については道路公団に納められております。それに対する報酬として、当人にロイヤリティーが渡っているということでございます。

高山委員 では、今度国交省にも伺いますけれども、報道によれば、この幹部が抜け駆けして特許を一緒に出したこの会社、この会社の発注量というのが、国土交通省では全体の一一%だけれども道路公団では五〇%近くシェアを占めているということですけれども、国土交通省の方に伺いたいんですが、これはまず事実ですか、この報道にこう書かれていることは。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 今手元に具体的な数字を持っておりませんが、以前にも国会の場で答弁させていただきましたが、国交省の比率は、今委員が御指摘のような数字に近かったと記憶をしております。

高山委員 では、もう一回副総裁と国交省にも伺いますけれども、これはこの幹部がその会社と共同出願してやっている話ですけれども、この共同出願した会社そのものは一応資材会社ということになっていますけれども、実際には、製造設備やら何やらほとんど持っていない。丸々下請に出している部分がどうも多いようですね。

 そうしますと、会社の名前は出ているところもありますけれどもA社としますと、このA社がダミーに使われて、その道路公団の幹部の方が将来の蓄財といいますか何かのためにこれを使ったんじゃないかという疑いも出ていますけれども、特許を出したということだけではなくて、その後実際にその会社に発注したときのこの新技術の発注の仕様なんかを決めていた人というのはだれになるんですか。

内田参考人 仕様と申しますか技術基準、当該工法にかかわる技術基準につきましては、日本道路公団の本社の技術部というところで定めております。

高山委員 これは副総裁に確認したいんですけれども、報道によれば、道路公団が橋の工事に関しての技術仕様を検討する有識者の会議というのを開いておりますけれども、この会議でまとめ役をなさった方というのはだれですか。

内田参考人 委員会方式で行っておりますが、今、突然の話なんで正確にちょっと申し上げることはできませんけれども、大学の先生に委員長になっていただいて検討が進められていっております。

高山委員 では、私がきょう問題にしています道路公団の幹部の方、この人がこの会議の事務局なりあるいは委員なりで入っていますか。

内田参考人 当該の者は、日本道路公団側の委員として参加しております。

高山委員 これはとんでもない自作自演じゃないですか。自分で仕様発注をする側の検討委員会に入っていながら、それで、しかも発注するだけならいざ知らず、発注先がその技術を持っていれば、確実にどんどんどんどんシェアが拡大することがわかるわけですよね。その状態で今度さらに共同で特許の出願までしているというのは、これはとんでもないお手盛りだと思うんです。

 もう一回ちょっと副総裁に伺いたいと思うんですけれども、今私が言ったこと、これは事実かどうかというのを調べた上で出てまいりましたか。こういうお手盛りがなされていたということが道路公団の内部調査で出てきたかどうか、お願いします。

内田参考人 そういった委員会でいろいろ検討され、当人が委員として参加していることとか、そういったことに関してどのような内容が審議されたか、そういったことも事実としては把握しております。

高山委員 副総裁、そうしますと、今、発注して、しかも、特許を持っているこの御当人が出ている委員会でその技術を採用するということを採択したということですか、これは。

内田参考人 この委員会というのは、該当する開発しようとしている技術が、学識経験者等の目から見て、使用に耐え得るものであるかどうか、現場に実際に当てはめてみたときに問題があるのかないのか、そういったものをいろいろな各方面からの経験、知恵、御意見を参考にしながら審議していく性格のものでございます。

高山委員 全然それは質問に答えていないですよ。

 ですから、まず確認で伺いたい。これは同じような内容を違う角度から聞いているんですけれども、副総裁に伺いたいのは、要するに、この特許を共同出願したこの御本人が、その技術が公団として採用されるべきものかどうか、いい技術かどうかと検討する委員会のまず委員に入っていた、こういうことですね。これはちょっと確認なんですけれども。

内田参考人 それを採用するかどうかの決定権を委員会が持っているわけではございません。そういった技術がいろいろな目から見て妥当な技術であるかどうかの検討を行った委員会でございます。

 そういったものの技術を採用するかどうかは、あくまでも道路公団の担当部署で決めるところでございます。

高山委員 その委員会は決定権は持っていなかったと。その後、いろいろ検討して、道路公団の担当者が出すということですけれども、当該問題になっているこの特許を出した幹部ですけれども、これは指示を出す側の、こういう仕様で全国の道路の補強をやりなさいという指示を出すポジションにはいた方ですか、それとも、いなかったのですか。

内田参考人 当人は、そういった基準を、指示を出す立場におったのは事実でございます。そういう立場におりました。

高山委員 これは大問題じゃないですか。本人が、自分が特許を出したところに物を発注しているわけですよね。

 それで、一番初めに副総裁に伺いましたら、その特許の出願が何かちょっとおくれていたような話をしていましたけれども、これはどのぐらいの期間、御当人が報告するのを忘れていて期間が長くなっちゃったんですか。

内田参考人 正確なところはちょっと把握できておりませんけれども、発明がなされてからおおむね二年近く出願までかかっていると思います。

高山委員 これは出願してから二年近くかかっているということですけれども、その二年間の間にどれだけたくさん発注が行われて、どういうふうにお金が動いたのかということを考えると、また、あと、報道によればですけれども、サボっていたというか、わざとでしょうか、わかりませんけれども、出願をおくらせた期間が短いもので一年で、長いものでは五年間もおくれているものがあるということです。

 これは国交省にもちょっと伺いたいんですけれども、こういった道路公団の一部不正といいましょうか、が行われている中で、国交省といたしましてはどのような処分をいたしましたか。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 今副総裁の方から答弁ございましたように、現在道路公団で内部調査を進めているということでございまして、国交省としましてはこの調査を見守るというのが基本姿勢でございます。

 道路公団の今の当該職員の処分につきましては、道路公団総裁の権限であり、我々としてとやかく言う、コメントする立場ではございません。

高山委員 この当該職員の処分にまで国土交通省の方で口を出さないとしても、これは道路公団でほんの一例かもしれませんよね。ほかにもこういう共同出願で不正をしているところがあるかもしれないし、国交省の方でこういう調査をなされましたか。まず調査をしたかどうか、この事件を受けて。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 国交省として、この件につきまして公団の調査を見守っておるという段階でございます。

高山委員 ちょっと今のお答えですとはっきりわからないんですけれども、そうしますと、こういったいろいろな委員会、参議院でもいろいろ指摘があったようですけれども、そういうような指摘を受けたり、あるいはこういう報道を見て、調査は一切していないんですか、国土交通省としては。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 国交省として特別の調査をしておるということはございません。

高山委員 すごい無責任じゃないですか。これは極めて、道路の工事にかかわる部分で、ここの高速道路だけじゃなくて、同じような高架式なりなんなり、道路であればどんどんどんどん汎用性のある技術ですよね。これに関して、こういう不正が行われているかどうか怪しいという指摘があって、全然調査していないんですか。

 では、今後これを調査するおつもりはありますか、今、国交省の方として。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 先ほど答弁させていただきましたこの件につきまして、直轄の発注工事においてどういう率でやるかというようなことはお答えさせていただきました。そういう意味の調査はさせていただいておりますが、この新聞で報道されている件の調査について特段のことをしておらないということを答弁させていただいておるわけでございます。

高山委員 では、この新聞、きょうのこの報道、これを読めばわかりますけれども、見て、ああ、これは国土交通省としても問題だな、こういうことが道路公団で行われていたのでは調査しなきゃいけないなということで、これから調査するおつもりはありますか。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 道路公団としての調査結果を受けて、必要なことがありましたら、必要な措置をとらさせていきたいと思っております。

高山委員 道路公団の調査結果を受けてということでしたが、先ほど副総裁の方からも御答弁いただきましたように、これは全然処分していませんよ、何にも。今、答弁を聞いて、これは全然処分も何もなされていない。ただ、こういう報道があったり委員会で質問されたのを、あらしが過ぎ去るのをじっと待って、また今までと同じことが続いていくということにこれはなりそうなんですけれども、それでもこれをまだ調査するつもりはないですか、国交省に伺いたいんですけれども。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 中間的な報告というものは道路公団の方からなされているわけでございますが、調査が完了したわけではないということでございまして、考え方としましては、現在調査中というような答弁をさせていただいているということでございます。

高山委員 そうしますと、今、ここの委員会などで明らかになったということではなくて、国交省として道路公団からこの事件に関しまして何か報告なり、中間報告なり、それは受けましたか。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 中間的な報告というのは受けております。

高山委員 ちょっと、これは随分前から問題になっている割に、またずっとマスコミが一時的に騒いでいるから、まあいいや、時間が過ぎ去るのを待てばいいんだ、何かそういう気がいたしますね。

 これはちょっと大臣にも伺いたいんですけれども、これは公団ということで民間なのかどうだかわかりませんけれども、今小泉改革で、去年だかおととしの目玉のこの道路公団ということがこうなっていますよね。これでまた郵政民営化も今度入ろうということですけれども、こういうふうに不正なりなんなりが起きた場合はやはりきちんと監督しなければいけないんじゃないんですか。ただ、民営化でやったことで、向こうのことだからわかりません、あるいは職員の処分に関しても、当省としては権限がないのでできません、こういうような形でこの民営化というのがどんどん進んでいくことに関して、ちょっと中川大臣に伺いたいんですけれども、経産省としても、周りのいろいろな団体がどんどんどんどん独法化していったりなんだりしていく。また、そういう特殊なところというのは、特殊な業界に物を発注したり、あるいは非常に限られた仕事をしているわけですよね。だから、その中で、特許とまではいかなくても、いろいろな営業のノウハウだとか、また、そういったものが仕様の段階から随分発注者側に漏れるというか、相談しながらやるということはあると思うんですけれども、こういうような不正常な関係があった場合に、監督官庁としては、経産省であればどう対応されるかということを伺いたいと思います。

中川国務大臣 道路公団のことは私の所管外でございますので、高山委員からも、経産省の場合にはという一般論としてでございますけれども、独立行政法人化あるいは民営化をしたときの所管官庁とその法人との関係、あるいはまた、その法人自体のアカウンタビリティーといいましょうか、社会的責任というものがより高まっていくんだろうというふうに考えておりますので、この新聞、私もけさ読んだばかりで知識がございませんけれども、やはり、こういう国会の場で御議論があれば、きちっとした報告を国会にするというのが一般的なやり方ではないかというふうに考えております。

高山委員 それでは、もう時間もなくなってまいりましたので、私が聞きたかった不正競争防止法の話をちょっと一問だけ聞かせていただきたいと思います。

 海賊版対策で、よくインターネット等で買うと国際郵便でにせものが送られてきてしまうというようなやり方の今販売が非常にふえている、こういうことでございますけれども、これに関して、まず、もう時間がないと思うので、現状ですけれども、インターネット上で銀行口座だとか出ている場合がありますよね、それを金融庁として、まず、預金名義人の住所、氏名等々を開示するように今考えているかどうか。

 あと、総務省の方に、プロバイダー責任といいますか、にせものを売っているサイトの接続者の名前を開示することを考えているかどうか。それは刑事事件にならなくても、民間から民間に訴えるときに、やはりそういう捜査の、捜査というか訴える端緒として、相手方がだれかわかっていなきゃいけないので、それがまず現状はどうなっているか。

 そして、私としては、なるべくこれは、要するに個人情報の保護ということもあるかもしれないけれども、TRIPs協定上も、権利者に対しては情報をどんどん開示しなければいけないという約束もあるようですからやっていただきたいということですが、この現状だけ、まず金融庁と総務省、教えてください。

鈴木政府参考人 顧客に関する情報、これでございますが、この適切な管理というのは金融機関の業務の基礎をなすものである、金融機関にとって極めて重要であるということは委員も御承知であろうと思います。

 要するに、御指摘のような被害者の方などが、当該取引の振り込み口座となっている金融機関にそういったようなお問い合わせをなさる、原則としてこれは、口座名義人の承諾がない場合には、口座名義人等の住所等を開示することはないと承知しております。

 ただ一方で、金融機関において、弁護士法に基づく照会ですとか裁判所からの調査嘱託、これに対しましては、その個々の事案ごとに金融機関に課せられた守秘義務をも勘案しながら、それぞれの制度の趣旨を踏まえて適切な対応を図っていると承知しておるところでございます。

江嵜政府参考人 お答えいたします。

 プロバイダー責任制限法という法律がございまして、そこでは、インターネットのウエブページなんかにおきまして、情報の流通によって自分の権利が侵害されたという場合には、権利が侵害されたことが明らかであるとき、それから、損害賠償の請求行使というような正当な理由があるとき、こういうときには、発信者情報、つまりオークションにアップした人の情報の開示を請求することができるということになっております。

 したがいまして、先生おっしゃいましたネットオークションでにせものを載せたというケースの場合でございますけれども、そのにせものを載せたことによって財産権が侵害されているという場合、かつ損害賠償請求をするということで正当な理由があるという場合で、かつ、実は、インターネットオークションサイトにおける情報の流通というもの、これはこの法律が民法の特別法であるという位置づけから……(高山委員「今やれているんですか、やれていないんですか」と呼ぶ)

 これにつきましては、そういう申し出がまだあるという話は聞いておりません。ただ、インターネットオークションではなくて、この法律について請求というのが起きているのは事実でございます。

高山委員 ちょっと大臣に再度伺いたいんですけれども、今のように、現行法では、そういう例えばインターネットでの模造品の販売なんかに関して、きっかけとなる銀行口座や、あるいはだれがこのアドレスを取得したのかとか、こういう情報がなかなか開示されない場合が多いわけですよ。というかほとんど開示されていないんですよ、刑事事件にならない限り。

 それで、大臣として、ちょっと伺いたいんですけれども、これではちょっと模造品販売が野放しになっちゃうんじゃないのかな、せっかくこういういい法案を出していただいても、他省との連携がちょっとうまくいっていないんじゃないかというふうに私は思うんです。大臣といたしましても、これは強力に働きかけていただきたいなという要望をしたいんですけれども、それに関して一言お願いして質問を終わります。

中川国務大臣 こういう時代ですから、インターネット販売、しかもそれを悪用するということがよく報道等でも紹介されているわけで、実は、この法案を審議するときも、専門家の皆さんの間で随分と意見が分かれたといいましょうか、考え方に違いがあったものですから、今回はできるところからやっていこうということでございますけれども、安易に予測しちゃいけないんでしょうけれども、今後ますますこういうことが起こり得る可能性が十分予測されますので、至急検討して、必要な、要するに損害をできるだけ起こさないという観点から、この法の目的がそういう目的でございますから、そういう対応を踏まえて、引き続き検討ということにさせていただきたいと思います。

高山委員 終わります。

河上委員長 次に、平井卓也君。

平井委員 自由民主党の平井卓也です。

 きょうは、不正競争防止法に関連して、まず最初に、模倣品、海賊版について、そしてその次に、営業秘密、顧客名簿と個人情報の関連についてという流れで質問をさせていただきたいと考えています。

 それではまず、模倣品・海賊版対策についてですが、現在、模倣品、海賊版といった知的財産を侵害する製品については、我が国の企業の権利者、企業もそうですし、権利者の被害がますます大きくなっています。特に、模倣品製造工場とも言われる中国などでの日本企業が受ける模倣品、海賊版の被害は甚大であって、中国などにおける模倣品、海賊版の撲滅は我が国にとって喫緊の課題であろうかと思います。

 そこでお伺いいたしますが、今まで、このような海賊版問題に対して、日本はどのような処置を講じてきたか、お尋ねいたします。

小此木副大臣 おはようございます。

 平井委員のおっしゃるとおりでありまして、被害は甚大なものになっております。数字で申し上げると、例えば最大の被害が出ている中国においては、特許庁の試算で約九兆円、中国国務院の調査でもこれは約三兆円という、模倣品や海賊版の被害が日本に対して出ているということでありまして、政府として、昨年の八月に、この模倣品、海賊版の対策総合窓口をまず設置いたしました。そして、ことしの四月でございますが、民間企業や団体の申し立てに基づいて、政府がきちんと被害調査を行って、必要があれば相手国と二国間協議等を行うというような申し立て窓口も設置いたしたところであります。

 特に中国政府に対しては、二国間での協議をするということと、官民合同のミッションの派遣をすることによる適切な法整備とその執行を、中国に対してさまざまなルートで要請をしてまいりました。

 今後とも、こういった問題にはしっかりと対処してまいりたいと思っております。

平井委員 こうした状況の中、今回、不正競争防止法の改正が行われるわけですが、模倣品・海賊版対策として、著名な表示を用いた商品やコピー商品を製造、販売することを罰則の対象とするということでありますが、今回の改正によって、中国国内での模倣品を取り締まることができるのか、また、こうした中国における模倣品、海賊版による被害は食いとめられるとお考えなのかどうか。これは政府参考人にお聞きしたいと思います。

北畑政府参考人 お答え申し上げます。

 中国など外国における模倣品、海賊版の取り締まり、製造の取り締まりそのものにつきましては、我が国の法律で取り締まるということは不可能でございまして、それぞれの国で手当てをしていただくということかと思います。

 ただ、被害を食いとめることができるかという点につきましては、今回の法案改正によりまして、我が国に商品が輸入された場合、それから販売された場合には、これは刑事罰の対象にするということになります。したがいまして、中国で製造された模倣品、海賊版を日本国内で輸入、販売する行為については取り締まりが行われるようになる、間接的に中国にも影響が及ぶものと考えております。

 また、別途、今国会で関税定率法の改正をお願いいたしまして、成立をいたしております。これが施行されますと、税関におきまして、水際におきまして、御指摘の模倣品、海賊版について輸入差しとめ措置が可能となります。

 この二つの措置によりまして、中国から大市場である日本への輸出なり販売ということについて大きなブレーキがきくというふうになると思いますので、御指摘のような被害の拡大に大きな効果があるものと考えております。

平井委員 こうした中国における模倣品、海賊版の問題は、単に法律を改正するだけでなく、国際ルールに基づく知的財産侵害国に対する交渉の強化とか、業種横断的な被害企業の連携促進など、総合的な対策が必要だと思います。問題解決に向けた政府の一層の努力が必要だと思いますが、ついては、大臣の模倣品、海賊版撲滅に向けた御決意を伺いたいと思います。

中川国務大臣 模倣品、海賊版の横行といいましょうかはんらんは、これは目に余るものがあって、何も日本だけじゃございませんで、アメリカやあるいはEUの担当者と話しても、これはもう一国でやってもだめだ、各国共同でやっていかなければならないということをいつも話し合いますし、また、中国政府当局にも強く申し入れをしているところであります。中国としては、自分自身も困っているので、今この問題には取り組んでいるんだということを言っておりますけれども、なかなかその実効性が上がっていない。

 したがいまして、経済産業省におきましても、昨年の八月に模倣品、海賊品対策室というものを設けまして、さらに、その体制も強化してやっておりますけれども、御承知のように、九兆円とか、中国の統計ですら三兆円という被害が現にあるわけでございます。こういう広い意味の知的財産権を盗用する、悪用するということは、つくる側にとっても非常にインセンティブが失われ、産業の競争力を柱とする日本経済にも大きな影響を与えることになりますので、WTOに加盟した中国でございますから、きちっとした対策をとってもらわなければいけないというふうに思っております。

 そういう意味で、まだまだこの法律は、先ほどの高山委員の御質問にもございましたし、中国で模倣品をつくって海外にやる場合には、これはもうどうしようもないわけでございますので、まだまだ不十分ではございますけれども、これが大きな一歩になるということで実効性を上げていきたいと考えております。

平井委員 続いて、営業秘密の保護強化についてお尋ねしたいと思います。

 平成十四年に知的財産基本法が成立して以降、我が国も立法、行政、司法が一体となって国家戦略として知財戦略を推進しています。知的財産関連の法律についても、かなりの数の法律が改正されておりますし、営業秘密侵害についても、平成十五年にようやく刑事罰が導入されるようになりました。このような状況の中で、今回、不正競争防止法を改正し、改めて営業秘密の保護を強化する必要について大臣の御所見をお尋ねしたいと思います。

中川国務大臣 先ほども申し上げた重なる部分は省略させていただきますけれども、やはり知的財産立国として日本がこれから生きていかなければならないという中で、一歩前進をする法案の審議を、知的財産等の整備のための法案を審議していただいているわけでございます。そしてまた、これは日本だけではだめで、先ほど申し上げたような各国、あるいは中国その他東南アジアの国々とも連携をとりながらやっていくということが大事でございまして、刑事罰、あるいはまた海外といった問題も含めて本制度が整備されれば、先ほど申し上げたように、知的財産の保護とそれからきちっとした知的財産の活用によって各国にとってもプラスになっていくという意味で、ぜひともこの法案の実効性が上がるように、これは法律ができた後の執行面、税関も含めた執行面が大事でございますので、全力を挙げて目的達成に努力をしていきたいと考えております。

平井委員 次に、最近、情報技術の発展といいますか、我々を取り巻く環境はIT技術によってすごく変わってきていると思います。そこで、今回の不正競争防止法に関連して、営業秘密に顧客名簿が含まれるか否かという問題意識を持ちつつ、最近の個人情報漏えい事件、例えば十五年六月のローソン、八月のファミリーマート、十六年二月のソフトバンク、三月のジャパネットたかた、四月のコスモ石油、六月のホンダ、八月の日能研、そして昨年十二月のオリエンタルランド、ことしに入ってはドコモの顧客名簿が漏えいしたわけであります。こういうふうに考えていくと、今回の不正競争防止法における企業秘密と解釈できるかできないかあいまいな顧客名簿との関連とか、そういう問題意識は常に持っているわけであります。

 そこで、まずこれは政府参考人の方にお聞きしたいんですが、この四月に個人情報保護法が全面的に改正、施行されて、民間企業に対して、個人情報の安全管理義務や目的外利用の禁止義務が課せられるようになっています。民間企業は今大変なんですよね。システムを見直したり、記憶メディアを持たないような端末を置いたり、また、情報漏えい保険なんというのは今物すごくいい商売になっています。また、プライバシーマークとかISMSなんというのは、これは長蛇の列ができてなかなか審査も受け付けてもらえないというような状況です。プライバシーポリシーをつくったりいろいろして、その漏えいを防ごうというふうにしているのではありますが、不正競争防止法の中で考えている秘密管理性とか有用性とか非公知性の三つの要件を満たさない顧客名簿みたいなものが漏えいした場合、つまり、このような委託業者や従業者がこうした個人情報をほかの業種に販売するというケースも見受けられるわけであります。今回の不正競争防止法によってどのような抑止効果があるか、また処罰の対象があるかということについて少しお聞きしたいんですが。

舟木政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の顧客名簿でございますが、先生からも今お話ございましたが、営業秘密には定義がございまして、三要件でございます。秘密として管理されていること、それから事業活動に有用なこと、それから公に知られていない情報であること、非公知と言っておりますが、この三つの要件がございます。不正競争防止法の保護の対象となるためにはこの三要件を満たす必要がございまして、この三要件を満たしていない顧客名簿につきましては、不正競争防止法の対象外ということでございます。

 これに加えまして、仮にこの三つの要件に該当した場合におきましても、不正競争防止法の営業秘密の侵害罪に該当するためには、その使用、開示が不正の競争の目的を持ってなされることが必要になってまいります。

 これはどういうことかと申しますと、例えば、商売と関係なく、恐喝の目的や、それから愉快犯的に漏えいさせるといったことは不正競争防止法の対象ではございません。こういうものは、恐喝であれば刑法の恐喝罪でございますし、また、物そのものを物として盗んでいる場合は窃盗罪ですとか、そういうような刑罰が考えられるところでございますが、不正競争防止法の対象となるためには今のような要件が必要となるということでございます。

平井委員 今お話をお聞きしたとおり、つまり、一連の現在起きている個人情報漏えい事件というものは、今回の不正競争防止法の改正によって防ぐことはできない、また処罰することはできないということでよろしいんですね。

 そう考えていきますと、やはり法律は、いろいろな、トータルな体系で個人情報とかそういう企業の情報の漏えいを防いでいかなきゃいけない。今回の不正競争防止法の改正というのも、非常にある面では実効性のあるものだと思います。

 企業の情報の漏えいというものに関していくと、先ほどお話がありましたとおり、不正アクセス禁止法であるとか、あと、刑法の窃盗罪とか横領罪とかいろいろあります。また、個人情報保護法でもある程度カバーをできるとは思うんですが、何せ、先ほどもあったとおり、情報が紙やフロッピー等の財物に記録されていれば窃盗になるが、そのデータ自体は刑法二百三十五条の「窃盗」で言う財物とはみなされていないわけです。これは、意外と一般の方々は理解をしていないと思うんですが、つまり、自己所有媒体にダウンロードして持ち出した場合には、これは窃盗にならないということなんです。

 そういう状況の中で、私自身は、個人情報を保護するという面、また企業のそういうような情報の漏えいを防ぐというような面で、法律の中に今ちょっとすき間があるのではないかな、トータルで、パッケージとして考えて明らかにすき間があるのではないかなというふうに思うんです。個人情報の保護というものの実効性を上げるためにも、私は、個人情報の、営業秘密としての不正競争防止法による保護に加えて、個人情報保護法を改正して、情報を持ち出した従業員、今全くこれは処罰がないわけでありますから、処罰する規定を設けるべきではないかという問題意識をかねて持っております。

 先ほど私自身が法律のすき間があるというお話をさせていただきましたが、そういうようにアクセス権限のある人間が、自己所有媒体にダウンロード等々して持ち出した場合、こういうことが今たくさん起きているわけです。事件が発覚するケースというのは、架空請求もしくは恐喝というところでそういうものが表に出てきていますが、実態は物すごく起きているはずなんです。そういうものに対して、現在の個人情報保護法で個人情報漏えいの事件に十分に対応できるかどうかについて、これは内閣府の御所見をお伺いしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の個人情報保護法におきましては、事業者は、従業者あるいは委託先を監督する義務を初めとして、さまざまな義務が課せられております。また、事業者が主務大臣の命令に違反した場合には罰則を科すということになっておりますけれども、悪意を持って個人情報を持ち出した従業者を直接罰に付すというような仕組みにはなってございません。

 このため、先ほど来先生御指摘がございますように、個人情報を持ち出した従業者に対する処罰化につきまして、関連する法律での手当てを求める声がございます。その場合、個人情報保護法の実効性を高めるという観点からは、御指摘がございましたように、個人情報保護法の改正を行うということも有力な方法であるというふうに考えております。

平井委員 大臣、これは質問する予定ではなかったんですが、今お話ししたとおり、やはり個人情報、顧客名簿、そういうものは、全体、いろいろな法律ですき間を埋めていかなきゃいけない。幾ら法改正をしても、それでも今の世の中というのは、抜け道なりすき間ができるんです。そういう意味で、産業界からの声もありますし、また、一般消費者から、個人情報に対する非常に不安に思う声もあります。そういう意味で、この法体系全体を、今度はIT関連の企業を所管する大臣として、全体をどのようにこれから整備していかれるおつもりなのか。また、先ほど私が内閣府にお聞きしたように、個人情報保護法の改正というもの、ここは所轄する法律ではありませんが、産業側から見て、そういう必要性をお感じになるかどうか、少し御所見をお聞きしたいと思います。

中川国務大臣 個人情報を守っていかなければならない。他方、IT化のメリットもあるわけでございますけれども、今内閣府の答弁がありましたように、悪意を持ってでも、個人情報を持ち出すこと自体は法の対象にならない。つまり、法に不備があるんだろうというふうに思います。

 そういう意味で、個人情報とIT化と営業秘密、重なり合っている部分が多々あるんだろうと思いますし、先ほども申し上げましたように、特にIT、コンピューターの世界というのは日進月歩でございますから、イタチごっこにならざるを得ないというのが現状だと思いますけれども、今平井委員御指摘のように、個人情報はきちっと保護されなければならない、そしてまた、営業秘密もきちっと守らなければならない。そして、悪意の人を野放しにしておくということも、これはまたいかがなものかというふうに、私自身も今、御質問を聞いて感じたところでございます。

平井委員 そのように、こういうものに関しては、やはりこれから、法律がすぐ施行したからといって、世の中の情勢が変わった場合には、その法律の見直しということにちゅうちょしてはいけないんだな、私はそのように思いました。

 まだ少し時間がありますので、それはどうなのかなと思っている点をちょっとお聞きしたいと思うんです。

 今回の不正競争防止法で、営業秘密とかそういうものがありますが、頭の中に入れているもの、これに関しては、物すごく頭がよかった人がいて、ほぼコンピューターと同じ程度にそういうものを記憶している人がいて、それをそのままよそに持ち出すというケースはいかがなものでしょうか。

北畑政府参考人 先ほど営業秘密の定義を審議官の方から答弁させていただきましたけれども、営業秘密であるというだけでは、実は法の対象にならなくて、管理をされているということが要件になっております。したがいまして、頭の中にあるものを管理するというのはなかなか難しいのじゃないかと思いますので、基本的には法律の対象外だろうと思います。

 私ども、法律の対象内になる場合に、企業内で営業秘密とか個人が持っている情報についてどういうふうに取り決めをしていくかというのが第一歩だろうと思っておりまして、私ども、営業秘密管理指針という規定を設けて、この中で工夫をしていくということを考えておりますけれども、御質問の点につきましては、頭の中にあるものは基本的には対象外だろうと思います。

平井委員 しかし、世の中には頭の大変いい人もいるわけでして、それがまたすぐ頭からダウンロードできるような時代も来るかもわかりませんので、そのときにはまた法律も見直さなきゃいけないと思うんですが。

 また一つ、ただ趣味で持ち出した場合、要するに営業秘密を。つまり、どこかに悪意を持って打ち出すというんじゃなくて、会社にいた思い出で、そういうものを生きてきたあかしとして持ち出したケースの場合はどのようになるんでしょうか。

北畑政府参考人 全体に、不正競争の目的でという意図が要件に入っておりますので、趣味として会社で知り得たことを例えば自分のアルバムの中に書くとか、そういった行為はこの法律の保護対象外だと考えております。

平井委員 趣味で持ち出したものが、全く違う業種の、例えば名簿業者であったり、競合相手の会社じゃないところにとって有益だった場合、日本全体のマーケットの中では何らかの競争をしているかもわかりませんが、全く業種が違ったケースの場合、そういうところにそれを売ったりプレゼントしたりするようなケースの場合はどのようになるんでしょうか。

北畑政府参考人 これは転々流通の一定の部分でございまして、たとえ正当にあるいは違法でなくて漏れた営業秘密を、それを取得した側が不正競争の目的で使用すれば、これはこの法律の対象になります。その場合には、取得をしてそれを使用した人がこの法律の規制対象になるということでございます。

平井委員 それはつまり、要するに取得した側が、趣味で持っていた人からそれを取得して使った場合に、それは善意の第三者から購入したというケース、それでも罰せられるわけですか。

北畑政府参考人 漏らした側が善意で、取得した側が悪意でこれを使用、開示をした、こういうケースだと思いますが、現行の不正競争防止法では、民事の救済は対象になります。刑事につきましては、これは対象外ということになっております。

平井委員 いろいろなケースを考えれば考えるほど、これからまたいろいろなことが起きるんだと思います。

 個人情報保護ですけれども、結局、基本四情報であったとしても、基本四情報というと、氏名、年齢、住所、性別。だけれども、これだったとしても、例えばそれが特定の何かカテゴリーでくくられた場合に、これは今非常に犯罪に結びつくようなケースがあるんです。そういう意味で、個人情報保護法というのは非常に重要な法律ではありますが、こんな事態を想定していなかった、不正競争防止法もしていなかった、不正アクセス禁止法というものも、これもやはり特別のアクションを起こさない限り法律としては取り締まることができない。

 それと、さっき、基本的にデータというものが財物じゃないから窃盗罪にならないというようなことを考えますと、この情報関連の法律というのは、全体的にもう一度、これはやはり省庁横断で見直していかなければならない時代に来たのではないかなというふうに思います。

 私自身、これは経済産業委員会ですから、個人情報保護法に関して言えば、ここで議論する問題ではないとは思いますが、ぜひこれは民主党の皆様方にも問題意識を持っていただいて、特にIT関係の企業等々は非常にこういうものに関して敏感に反応をいたしますし、そういうところをこれから伸ばしていかなきゃいけないというふうに考えています。

 そういう意味で、省庁横断的に、党派も横断的にこういうものに取り組んでいけたらいいなということに……(発言する者あり)その手に乗っていただきたいなと思いつつ、民主党さんが少しオーバーした時間を私はカットして正常に戻す意味で、きょうの質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

河上委員長 午前十一時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時三十四分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時五十一分開議

河上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。吉田治君。

吉田(治)委員 民主党の吉田でございます。

 もう時間もございません。数点、簡単に質問をさせていただきたいと思います。

 まず一点、きょうの朝刊にも出ておりましたように、アメリカにおいて公聴会が開かれて、中国の偽造品、中国のGDPのまさに八%が偽造品で成り立っている、そういうふうな報道がなされております。

 私は、この報道を見ながら、一点大臣に、その辺の認識というものはいかがなのかということ。そして、中国というものに対しては、きょう昼から副総理に会われるとは聞いておりますけれども、二国間、バイの関係も大事ですけれども、やはり、例えば知的財産、偽造品というものになると、アメリカも甚大な被害を負うておりますので、マルチ、多国間というもの、できる限りアメリカとの連携をしながらこの辺の中国の態度というものを改めていく必要もあるのではないかなと感じておりますけれども、その辺はいかがでしょうか。

中川国務大臣 吉田委員御指摘のとおりでありまして、アメリカ、EU等とこの問題は折に触れて話をしておりますし、また、中国、具体的には薄熙来商工部長、大臣とお会いするたびにこの問題を話し合っております。

 中国としても、信用問題あるいはまたWTOに加盟してTRIPs等の制約もあるわけでございますからきちっとしたいということで、一生懸命努力しているようでありますけれども、現実には大変大きな被害を、中国製品あるいはまた、もちろん海外である日本、EU、アメリカ等で被害を受けておりますので、これをきちっとしてもらうことが日中関係のさらなる進展につながっていくと思いますので、折に触れてこの問題を取り上げ、修正をしてもらうように努力をしていかなければいけないと思っております。

吉田(治)委員 中国の場合は、北京との交渉だけですべてが済むとはだれも聞いておりません。FTAの問題にしても、あれは北京が決めたことであると。その下の省であるとか市レベル、市でも、もう何百万人という人口を抱える市がたくさんあります。地方政府まで、あそこは上手ですよね、うまく、あるときには北京が、あるときには地方がという部分。この辺なぞ、経産省、ジェトロ等も各地に展開しております、その辺を使ってできるだけ現状を把握して対応方していただきたいのと同時に、アメリカ議会で行われたように、政府、議会が一体となって中国のこういう問題に対応していく。こういう委員会の場でなくて別の場でつくっていく、そういう作業部会というか、そういうものをつくる必要があると思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。

中川国務大臣 もうこれは、政府に言って、今努力しておりますというだけでは物事は進んでいないことは現実でございますので、今、吉田委員御指摘のように、地方を含めて、中国の高官は五十万人を動員して今やっているんだという話で、さすが中国、すごい数字だなと思っておりますけれども、でも実効は上がっていないということでございますので、関係国ともよく協議し、またオール・ジャパンでやっていかないと、これは大変な知的財産侵害になるわけでございます。アメリカがWTOに提訴するということは私も新聞で承知しただけでございますけれども、よく連携をとってやっていくことが大事だろうと考えています。

吉田(治)委員 本当に、そのためにこの不競法の改正があるということ。

 そして、その中において、私はこの法改正について何ら異議を唱えるものじゃないですけれども、民主党として、また私個人としても、この法案のくくりの中で弁理士法の改正、しかも大事なADRにかかわるもの、これを一つの法案にしたというのは、私は今でも釈然としません。やはり日本にとって大事な知的財産の問題、そして司法制度改革という問題、そういう中においての弁理士のADRの問題ということは、私は別の法律として委員会がしっかり、この委員会が一度審議をする、そういう場もできるような法案提出をすべきではなかったかと、今でもそれは強く感じております。

 しかしながら、この法案の中に弁理士のADRの問題が出ております。これは、紛争処理という部分でいうならば、もうはっきり申し上げて、弁理士の先生方においては、紛争処理をする手続また業務について、プロである弁護士の先生方から見られると、ちょっとまだまだ、もっと頑張って、研修一回、二回じゃなくて、この法案にも書かれてありますように、実績を積んでいかなければならない。

 私は、プロである弁護士会、弁護士の先生方との連携、その辺の協力方というのもお願いしていかなければならないと思いますけれども、きょうは特許庁長官おいでです、その辺の調整というんですか、その辺はどういうふうにこれから展開されていくんでしょうか。

小川政府参考人 弁理士の裁判外紛争処理手続、いわゆるADRにおける弁護士との連携でございますけれども、今、弁理士会は、弁護士連合会と共同しまして日本知的財産仲裁センターを設置し、弁理士、弁護士それぞれの知識と経験をお互いに生かしながら、知的財産権に関するさまざまな紛争の解決を行ってきてございます。今回の改正は、より一層の連携を深める一つのてこにもなろうかと思ってございます。

吉田(治)委員 そういう部分でいうと、これはお互い大変難しい試験を通られた立派な先生方であります。しかし、いつも私は申し上げているんですけれども、弁護士会は弁護士自治という形で、これはある意味で業界団体ではありません。弁理士会というのは、そういう意味でいったら、行政の補助機関という部分においては、業界団体と言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、そういう一面もある。行政の持つ力の影響力は随分違うと私も認識をしております。

 ただし、お互い先生、先生と言われておりますから、両団体が謙虚にお互いのことを尊重し合うような形に持っていかないと、知的財産という部分での守りというもの、紛争処理の解決というものが、さきの商標法の改正でも議論がありましたように、全国あまねく、しかもアクセスしやすく、できないことになってはいけない、そういうふうに考えております。

 時間の都合もございますので、あと一点。

 今回の法改正の中において、退職者であるとかさまざまな守秘義務というもの、それについての刑罰というものが出てきておりますけれども、大臣、私はこの法律が大事なのはわかるんですけれども、経済産業、余り雇用のことは議論を、雇用はどうも厚生労働委員会という、ちょっとそういうふうな嫌いがあるのかと思うんですけれども、基本に横たわっている部分は、どうも日本的な労働慣行というもの、終身雇用と言われたもの、安易に会社が人の首を切る、リストラという名目で整理をしていく、その人たちが行かざるを得なくなってそういうものを持っていってしまっているという部分もあると思うんです。

 私は、ここの部分は、日本の企業自身も働いている人をもっと大事にしていくということが、法律だけで縛るのではなくして、企業それぞれのあり方、それも大事だと思うんですけれども、大臣の御所見はいかがでしょうか。

中川国務大臣 私もいろいろな企業、先端企業、中小企業へ行って、最後にお聞きするのは、企業の最も重要な宝といいましょうか戦力であります人の問題についてお聞きするんですが、定年はありますけれども、これはこれとしてルールですが、できるだけその後も嘱託とかいろいろな形で、企業としてそういう優秀な人材との関係を維持していきたい。ただ、現実には外からの引きとかいろいろなものがあるわけでございまして、そう簡単ではないことが多いんでしょうけれども、私が視察した多くの企業は、やはりいつまでも何らかの形で一緒にやって、特に後輩に対して優秀な技術を伝授する、伝授というか教えるということも大事でしょうし、そういう意味で、それなりに企業が努力をされているんだなとは思いますけれども、なかなか諸般、それぞれの事情があって、うまくいっているところとうまくいっていないところといろいろあるようでございます。

吉田(治)委員 まさに経済の基本は人であるという部分は、どうも今の経済のあり方が、人を材料と考えてしまう、三要素の一つと考えてしまうという部分に、残念なことにいろいろな、経団連を初めとするさまざまなところからこの法案については要望がありましたけれども、最後は、私なんかがいつも申し上げているのは、では、はっきり言って早期退職だの何とかで何人人をやめさせたんだと。やめさせた人たち、路頭に迷って、迷うかどうかは別にしましても、そういう中でやらざるを得ない。また、人間の感情として、この会社は許されないという気持ちの中で起こした行動もゼロではないということも私はお話をさせていただいておりますけれども、やはりそこの部分が大事ではないかなと思っております。

 時間が少し残っておりますが、後の同僚議員に譲りまして、一応、きょうの質問はこれで終わらせていただきます。

 以上です。

河上委員長 次に、大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 私の方から、今回の不正競争防止法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきますが、この質問に入る前に、前回、質問をさせていただいたときに、大臣に対して申し上げたことがございます。

 最近の日本の企業活動というものを総じて考えると、競争、競争ということで、いわゆる本質ということを忘れて、競争に勝てばいい、とにかく勝ってこい、激しい競争の中で勝てというメッセージが小泉総理から出されていて、とにかく苛烈な競争社会に入っていることは事実ですね。それで、雪印の問題があって、三菱ふそうの問題があって、そしてジェー・シー・オー、関西電力の美浜原子力発電所の事故等々を踏まえて、日本の経済産業大臣として警告を発すべきじゃないかと。要するに、安全だとか人間性というものをないがしろにして走った場合には、その企業そのものの存続が危なくなるというような、やはり経産大臣として警告を発すべきじゃないかという御質問をさせていただきました。

 大臣も、そういう認識は一致していますという話でございましたが、残念ながら、JR事故、例の西日本での鉄道事故が起きました。まさにこれも、安全を軽視して、とにかく利益確保に行く。要するに、安全よりも利益、安全よりも効率という、日本の社会全体の社会的な流れの象徴的な事故ではないかと思うんです。

 改めて、大臣、この事故を契機として、日本の経営者といいましょうか、あるいは企業といいますか、あるいはまたその従業員に対しても、心持ちをもう一回、原点を尋ねて、何よりも安全を、そしてまた、やはり人間性というものをきちっと踏まえた上での競争原理に基づく企業活動をやれというようなメッセージを、小泉総理以上に大きなメッセージはなかなか出せないかもしれませんが、やはり、日本の産業界のトップに立つ大臣として、改めてそういうメッセージを出すべきだと私は思うんですが、この件についての大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 もうおっしゃるとおりでございまして、私が就任してからでも、就任した直後にあの苫小牧での石油コンビナートの事故がございましたし、美浜もございましたし、それからJRその他、大きな事故がございました。もちろん、こういう産業競争に勝ち抜いていかなければいけない、その要素の一つにスピードというものが要求される時代なんでしょうけれども、しかし、そのことと、安全性とか社会的責任等を差しおいてやっていいということではない。そう思っている経営者なり会社があるとすれば、それは完全に本末転倒といいましょうか、それはめぐりめぐって、今回、JRでは大変な犠牲者の方が出られたわけですけれども、いずれにしても、その会社の社会的責任、ブランドにかなり致命的な影響になってくるわけでありますから、めぐりめぐってということにはなるんでしょうけれども、しかし、払われた犠牲は余りにも大きいということであります。

 そういう意味で、安全とか、あるいはまた安全文化という言葉が美浜のときにも随分使われましたけれども、先ほど渋沢栄一翁の話が出ましたが、渋沢栄一さんは、企業が金を残すは下、企業を残すは中、人を残すが上なりという有名な言葉がありますけれども、まさに企業文化というのは人から成っていて、人が文字どおり企業の中で働いていく、その企業は社会とともに歩んでいくという認識をもう一度、事故を起こしたからということではなくて、こういう産業事故が続発しておりますので、きちっとした形でもう一度原点というものを見直していかなければならない。私も機会あるごとに、こういう委員会でいろいろ御指導、おしかりを受けながら、関係業界にはいつも申し上げるようにしているところでございます。

大畠委員 今お話がありましたけれども、大臣にぜひお願いしたいことは、小泉政権、何かブレーキの壊れたダンプカーのように、とにかく、どこに行くかわからないけれども、どんどんスピードを上げてある方向に向かっているんですが、どこに行くのと言ったって答えない。とにかくおれは走るんだ、走るんだ、これをとめようとするのは抵抗勢力だとか守旧派だというので、とにかく進んでいるわけですが、やはりブレーキのないダンプカーなんというのはだめなんですよ。

 だから、大臣には、ぜひ小泉政権のブレーキ役というのか、要するに、余りスピードをオーバーすると、脱線したり、大変な事故になりますよと。だから、ぜひ総理も、まあ聞く耳を持っていると言うんですが、どうもそういう耳がないようにしか私は考えられないんですが、大臣には、そういう意味で、このJR西日本の鉄道事故というものを契機として、亡くなられた百七人の方に誓って、やはり日本の経済としては、法定速度を守り、何よりも安全や人間性というものを大事にした企業活動を行うということをぜひ誓っていただきたいと考えております。

 そこで、実は私、いつも、このいただいたある手帳があるんですが、「王道」と書いてある手帳ですが、その中に、この経営者の方は「安全第一 奉仕第二 収益第三」と書いてあるんですね、経営の信条。今の社会は全く逆で、収益第一、奉仕が第二、安全第三、こういう形に成り下がっているんじゃないかと思うんですが、ぜひ私は、日本の、この委員会の質疑を聞いている方にも、やはり安全第一なんだ、人間性というのをもうちょっとベースに置いた形の経営活動の強化をしようということに改めていただきたいと思います。

 そこで、この不正競争防止法の改正案に入りますが、日本の経済の中でもさまざまな状態がありまして、先ほど吉田委員からもお話がありましたように、中国というものが非常に注目をされています。模造品あるいは海賊版というものが横行しているわけですが、この問題は問題としながら、後ほど取り上げたいと思うんですが、最大の不公正な状態というのは、元の問題なんですね。ドルと元が連動していますが、これに対する不満が非常に高まってきていまして、アメリカからも、中国に対する要求といいますか、もう切り上げなさいという要求をしているんですが、私の知人、中国人の知人に言ったら、日本と同じようにするよと。それは何かというと、日本も東京オリンピックの後、為替の変動制に切りかえたじゃないか、中国ももちろんそれは考えているんだという話なんですが、中国のオリンピックは二〇〇八年ですよね、あと三年後。

 そういう意味では、いずれにしても、三年以内なのか三年なのかわかりませんが、元が切り上がるでしょう。そのときに、日本国内への影響ですとか、あるいは、既に中国に行ってしまった製造業関係がどんな影響を受けるのか。あるいはまた、技術レベルの高い分野というものは、戦略的に、本来は国内に置くべきなんですが、日本の企業経営者はどうも人件費が安いからといってこぞって中国に生産拠点を移しているんですが、このところが、元の切り上げがあった場合には逆に大変な状態になるんじゃないか。

 今から、私は、経済産業大臣として、中国に進出している製造業界に対して、そろそろこういう元の切り上げというものを念頭に置いた経営戦略をやるべきじゃないかというメッセージを出す時期に来ているんじゃないかと思いますが、この件についてお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 日本も、あれはいつでしたか、三百六十円から三百八円に一たんして、その後フロートにしたわけですけれども、中国の元問題、これはアメリカ、日本、非常に関心の高いところでございます。

 他方、大変な企業が中国に進出しておりますので、今、大畠委員御指摘のように、要するに、ドルペッグ、つまり人為的な元安誘導をしているというふうに世界の専門家は見ているわけですけれども、これは、日本みたいに余りにも中国との関係が深くなりますと、一長一短になるわけでございまして、中国で活動している企業の現地調達率がもう五〇%を超えているというデータもあるようでございます。ですから、一概に元を上げろとか下げろとかいうのは、これは車の両輪ですので、どっちが得かということは、多分一長一短ということになるんだろうと思います。ただ、人為的なかなり大規模な為替介入というものは、これだけの経済成長をしている国ですから、マーケットに任せていい部分という議論が当然日に日に強まってきているというふうに私も認識をしております。

 ただ、いろいろと中国のことをちょっと調べてみますと、中国の金融制度がまだまだ未整備であるとか、あるいはまた法制度がまだまだ未整備であるとか、そういうこともあるようでございますので、早くきちっとした市場ルール、あるいは投資ルール、経済ルールということが確立されることと、このマーケットが切り上げになるのか、マーケットに任せるのか、その辺は中国政府の御判断だろうと思います。いずれにしても、日本もそうですけれども、とりわけアメリカ、EU、特に繊維協定が廃止になった結果EUなんかも大変な影響を受けているようでございますから、この辺はG8と中国等との率直な話し合いの結果、中国政府が最終的には賢明な判断をされるものというふうに期待をしております。

大畠委員 それは中国政府が適切な判断はされるんでしょうが、日本の国内の企業に対して私はそろそろ警告を発すべきだと思うんですね。

 私自身も製造業で働いていましたから、一ドル三百六十円から二百四十円、百八十円、百七十円、百五十円、もうバンザイだ、輸出してももうからないと。そして、その後、御存じのとおり、七十九円八十五銭まで、七十五銭でしたか、そこまで最大で入りましたね。もう輸出産業はだめだ、そういうあきらめ論に近いところがあったんですが、それから戻って一生懸命努力をして今日あるんですが、それと同じといいますか、中国でもそういうことになりますと、中国国内の製造業で日本に逆輸出するとか、海外に輸出するという企業は大打撃を受けると思うんですね。

 だから、今から日本の企業もそういうものに備えておけよ、そして、特に重要な部品関係は、無節操に中国に持っていくことなく日本国内でつくれと。もちろん、おおよその大手のところはそういう考えにシフトし始めていますが、特に中小企業関係がこぞってやはり中国に生産拠点を持っていっているんですね。ですから、そろそろそういう大激変が来るかもしれないというメッセージは、大臣として、日本の経済産業相として出しておくべきだと私は考えておりますので、ここら辺もぜひ大臣におかれましては適切な御指示を、情報発信をしておいていただきたい。それは要請をしておきます。

 さて、そういう中で、この不正競争防止法、今回この法律案が出されましたが、実は、きのう、おとといと日本・EU議員会議というのが開かれまして、ヨーロッパのメンバーが十数人見えていましたかね。イギリス、ドイツ、フランス、イタリアとか、そういうメンバーが来ていますが、やはり彼らの話も、中国における模倣品あるいは海賊版、この対策に非常に苦慮しているという話で、これは日本とEUで議員関係でも連携して模倣品あるいは海賊版の撲滅のために努力をしていこうということで意見が一致したところでございますけれども、今回の法改正でこの中国における模倣品、海賊版、こういう商品にどこまで対応ができるのか。

 もちろん、これは中国国内の法整備をやっていただかなければならないんですが、ここら辺に対する努力、中国に対する働きかけと同時に、日本国内でこの法の改正によって対応策をとろうとしているんですが、この課題について見解を求めたいと思います。

北畑政府参考人 中国を初め外国における模造品あるいはにせブランド商品、コピー商品、こういうものがまじめに仕事に取り組んでいる企業に打撃を与えているというのは、我が国でも、あるいは先生御指摘の欧米でも、同じ認識であろうと思います。

 今回の法改正では、中国を初めとする外国での製造そのものは日本の法律では規制対象外でございますけれども、日本に輸入されて販売された場合に、不正競争防止法に基づきまして刑事罰の対象にする。それから、今国会で成立しました関税定率法が施行されますと、税関、水際においてこれの輸入差しとめができるようになる。こういうことによりまして、コピー商品、にせブランド商品の大きなマーケットであった日本でその市場が失われるという効果を持つと思います。

 このことを通じて、間接的に中国を初めとする外国でのこういった不正な商品の製造、これにブレーキがかかるものと理解をいたしております。

大畠委員 実は、私も韓国に行ったとき、ある町の中のお店屋さんにガイドの人が連れていってくれたんですが、このお店の商品は全部にせものです、それを承知の上お買いくださいということで、にせものか本物かというのは私なんかはわかりませんね。スカーフだって本物以上に本物らしいスカーフが千円ぐらいで売っていたり、本当にブランド品のバッグとか何かも本物以上に本物に近いというか、本物を超えるような感じの商品が随分並べられていまして、これはどうなのかな、それを購入すること自体も犯罪行為になると思うんですが。

 かつての日本も、実は大体模倣から始まったんですね。海外の製品を買ってきて、ばらして、どんなふうにできているんだろうと。それをいろいろ模倣しながらそれに近づいていって技術力を高めていったという歴史的な事実もあるわけでありますが、ただ、今日のこの中国国内における模倣品のあり方というのは異常とも言えるような感じでありますから、私は、この法律で日本での水際も大事なんですが、中国政府に対してやはり日本としては言うべきものはきちっと言う。これはもう日本だけじゃなくて、アメリカともヨーロッパとも連携をとって、言うべきものはきちっと言わなきゃならないと思うんです。そういう努力はどういう形でされていますか。

北畑政府参考人 さまざまな外交ルートを通じて中国に対してこういった不正なコピー商品、にせブランド商品について取り締まりをするようにということで要請をいたしております。中国側においても、その要請を受けて一部対応をしたというふうに聞いております。

大畠委員 私自身、日本の物づくりというもの、あるいは産業というものを考えても、模倣品をつくり、あるいは海賊版をつくるということは、すなわち日本人のためにもならなかったし、そういうものを考えて、やはり中国政府に対しても、これは中国政府のためにならないんだ、中国の国民のためにならないんだということをかなり国際的に連携をとって、WIPOでしたか、世界知的財産権機構というのを通していろいろアクションをしているんだと思うんですが、かなり強力にやらないと、とにかく、雪崩を打って入ってきています。だから、水際も大事ですが、その製造をしている大もとのところに歯どめをかけるような対策がやはり同時並行的になされなければなりませんので、ぜひその点は日本政府としてもさらに力を入れていただきたいということを申し上げさせていただきます。

 それから、先ほど吉田委員からお話がありましたが、今回の法改正の中で営業秘密というのが規定されております。

 実は私の友人なんかも、私も今五十八歳ですけれども、企業の早期退職制度に基づいて退職された方が、海外の企業に再雇用で行って仕事をしているケースがございます。

 今回、「営業秘密」「役員又は従業者」「不正の競争の目的で、」とか「その営業秘密の管理に係る任務」についてと、いろいろ書いてあって、刑事罰がおりることになっていますが、ここのところは、先ほど吉田委員がお話ししたように、大変重要なところなんですね。

 不正を行うという目的を持ってやった場合には罰せられますよというんですが、ここのところが非常にあいまいで、当人としては、企業の中で得た技能、技術、あるいはノウハウといいますか、そういうものを企業秘密だから企業の中に置いていけといったって、先ほど頭の中にあるものはいいんだというお話だったんですが、そこのところが非常にこれからもめてくるんじゃないかと思うんですね。

 頭の中に記憶されているのはこの法律の対象ではありませんというお話がございましたが、再度、そこら辺は明らかにしておかないと、紛争の種になると思うんですね。ここのところを明らかにしながら、かつ、何かガイドブックみたいなのをきちっとつくっておかないと、当人としては、生きるために新しい仕事についた、しかし、それは営業秘密に当たるということで逮捕され、刑事罰になるというと大変混乱しますので、ここら辺はもっと明確にしておくことが必要だと私は思いますが、この件についてもお伺いしたいと思います。

北畑政府参考人 刑事罰の対象にするということでございますので、慎重に、明確に、客観的にという御指摘は、御指摘のとおりであろうと思います。

 二つの点で御説明を申し上げたいと思います。一つは営業秘密というものにそもそも該当するかどうかということ、それからもう一つは退職後の部分についての工夫でございます。

 まず最初の営業秘密でございますけれども、これは、法律上、営業秘密として管理されていること、有用であること、それから公知になっておらない、非公知である、この三要件でございます。最も重要なことは、会社側でこれを営業秘密であるということで管理をしているというところが重要でございます。

 判例では、この管理の要素として、その情報にアクセスすることが制限されておることとか、アクセスできる人間の範囲が客観的に定められていること、こういうことがポイントだというのが判例でございます。

 私どもは、この法律が施行されます前からいろいろ説明をしたいと思っておりますけれども、営業秘密管理指針というのを私ども定めております。さまざまな判例を分析して、この範囲で企業として営業秘密を管理する、管理するときのマニュアルを示しているわけでございまして、こういうことをより明確にすることによりまして今のような御不安にこたえていきたいと思います。

 それから、退職者につきましては、今回の法律でも退職者全体に刑事罰の対象を広げたわけではございません。在職中にみずから相手側の企業に対して営業秘密を漏らすという申し込みをした場合、それから、そういう営業秘密を退職後に漏らすということについて相手側から請託があった場合、この二点に限定をいたしておりまして、そういう意味で、退職者全体に網をかぶせるということではございません。在職中にそういう実行行為の一部を行っておる悪質な退職者に限って刑事罰の対象にする、こういうことでございます。

大畠委員 そうすると、もう一度ちょっと確認させていただきますと、いわゆる技能、金型ですとか旋盤ですとかフライスですとかそういう技能、そういうものはこの対象ではないということが一つですね。そういう体得した技能。それからもう一つは、設計者等では、もちろんコンピューターを駆使して図面をかくわけですが、その図面そのものは営業秘密になるわけですけれども、設計をしていくというノウハウ、ノウハウ等は頭の中に入っているわけですけれども、そういうものはこの法律の対象外であるということで受けとめてよろしいんでしょうか。

北畑政府参考人 それぞれ、個別の退職時における、あるいは在職中の企業とその従業員の方の間での取り決めのいかんだと思います。

 私どもは、欧米と同じように、在職中及び退職時にどこまでが漏らしてはならない営業秘密かということを契約で明確にすべきであるというふうに考えておりますけれども、今、日本の企業の実態の中では、それが必ずしも普及はしておりません。これは、別途そういう契約できっちりすることということを進めてまいりたいと考えております。

 今御質問のありました技能とかノウハウ、これも、会社が特別その従業員の方に訓練をして、会社にとって重要な技術だ、技能だということであれば、その合意によってそれを営業秘密にするということは可能だと思いますが、一般的には営業秘密に該当しないケースが多いのではないかと思います。

大畠委員 この問題、職を失った者にとっては大変重要な、生きる糧なんですね。あれがだめ、これがだめと全部抑えられちゃうと、一体何のためにこの二、三十年、あるいは四十年技能を磨き、技術をやったんだと。やはり再雇用する方は、その技能、技術、ノウハウ、これをもって、例えば経営のノウハウ、ゴーンさんも今度は、フランスの方のルノーでしたか、社長に兼務するという話ですが、あれだって一つの経営のノウハウですよね。

 ですから、私はそこら辺は十分現状を考えて対応すべきだと思いますし、これについては、企業の中に労働組合があれば、当然、一方的に従業員と経営者で、おまえ、ここにサインしろというような強制的なものじゃなく、やはり第三者が入って適切な形でそれが基準化されるべきだと私は思いますが、この辺についてはどう考えておられるでしょうか。

北畑政府参考人 ここは、そういう契約を結んで一定の制限を加えるということと、それからそういうことについての処遇というのがバランスをとって考えられるべきだと思っております。

 私どもは、会社にとって重要な人材については、処遇面も含めて、そういう営業秘密がむやみに漏れないような防止策をやるべきだという指導はしてまいりたいと思っております。そういうのがまず基本であって、それで、極端な悪質なケースについて刑事罰を導入する。それから、現行法でも民事の請求はできることになっていますので、民事の請求ができる場合のガイドラインのようなものを、先ほど申し上げました営業秘密管理指針の中で対応してまいりたいと考えております。

大畠委員 今の取り決めのところはどうなんですか。企業と個人では、やはり企業の方が強いんですよね。ですから、そこのところは、やはり労働組合があるところは労働組合の関与というものが一つの公平化を期するものだと私は思うんですが、ここら辺はどういうふうに考えておられますか。

北畑政府参考人 基本的には事業者と従業員の話し合いの中で相場が決まってくるんだろうと思います。

 私どもとしては、契約を結ぶ際に、極端な不利な契約というのはやはり問題があるだろうということだろうと思いました。これは法律上の問題じゃございません。研究会におきまして、重要なコア人材の対応策ということについて今後検討していくことにしておりまして、その検討会の中でコンセンサスができるような努力をしてまいりたいと思っております。

大畠委員 この問題、優越的な地位の利用では困りますので、そこら辺はぜひ公正かつ公平な観点から、無理やりそういう縛りをかけられるということがないようにこの法律の施行に当たってはしていただきたいと私は考えますが、そこら辺、何かもう一言ございますか。

北畑政府参考人 法律の改正後の営業秘密管理指針の改定の中で対処してまいりたいと考えています。

大畠委員 ぜひ、この件については、労働組合があるような企業の場合には労働組合がある程度その契約の状況について関与できるように、そして、従業員の方が不利益な立場での状況に追い込まれないように配慮していただきたいということを要望しておきます。

 さて、もう一つ、実はお伺いしたいことがございます。

 それは、今、不正競争防止法ということでございますが、特許の取得の問題で、どうしても私はぜひ御検討いただきたいというものがございまして、それは、まず、今特許を申請している内訳、いわゆる大企業、大手企業が出している特許の出願件数と、中小企業あるいは大学等が出している出願件数の比、あるいは数というのはどのくらいなのか。これは質問通告はしておらないんですが、もしもわかりましたら教えていただきたいと思います。

小川政府参考人 正確を期すためには後ほどあれしますけれども、私の記憶では、件数としては中小企業の比率は十数%だと思います。それから、出願者数でいくと約半分ぐらいではないかと思います。

大畠委員 約半分というのは、出願件数では大手企業が半分、それから中小企業が半分ということですか。

小川政府参考人 こういうことでございます。

 国内出願をしております内国人の出願について、まず、出願の人数、出願人でいきますと、大企業、中小企業、約半々でございます。出願人数ベースです。(大畠委員「件数は」と呼ぶ)

 件数でいきますと、大企業はやはり多うございますので、中小企業が十数%ということでございます。

大畠委員 それで、実は前回この法改正がございまして、審査請求のコストが、料金が非常に上がりまして、入り口のところで非常にハードルが高くなったんですが、アメリカの例を見ますと、いろいろアメリカも、国も、問題点もございますが、いいところも両方いろいろあるんですね。その中で、私はすばらしい考え方だなと思うのは、小規模企業、五百名以下の従業員数を有する企業、あるいは非利益団体、大学、研究機関、こういうところは特許の申請料を半額免除するという制度をアメリカは持っているんですね。

 それは何かというと、やはりできるだけフェアな状況をつくろう、小規模企業あるいは大学とか小規模の研究機関、そういうところは出願のコスト、料金についても半額にして、大いにそこで特許を取得して、これから頑張れというような競争ルールをつくっているんですが、日本においても、大手企業の出願というものの費用と小規模企業者の出願に対する料金の負担というのでは非常に違うんですね。だから、この点はアメリカのこういう考え方を導入して、小規模事業者の出願については料金を半額にするという制度を私は導入してもいいのじゃないかという感じがするんですが、この件についての御見解をお伺いします。

小川政府参考人 まず、現在私どもが行っております中小企業に関します特許料金制度について少し御説明させていただきたいと思いますけれども、まず、研究開発型の中小企業につきましては、これは減免の対象にしてございます。それから、資力に乏しい中小企業、個人事業ということで、特にベンチャーの場合は、創立間もない場合、設立間もない場合は赤字でございますので、そういう観点から、ベンチャーを支援するという意味で、資力に乏しい法人についても減免の対象にしてございます。

 それから、中小企業の支援三法、いわゆる三法の認定事業者等につきましても減免の対象にしておるところでございますが、今回新たに、中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律というものを成立させていただきましたので、そこでの対象になります、いわゆる新連携と言われております認定中小企業者も減免の対象にさせていただいているというところでございます。

 それから、アメリカのスモールエンティティー制度について我々もいろいろ勉強させていただいておりますけれども、かつてアメリカが特許料金を全体を上げるとき、四倍ぐらいに上げる計画があったときに、いろいろな国内の議論がありまして、スモールエンティティー、中小企業、個人、そういったものにつきましては上げ幅を半分にするということでございまして、今、日米を比較いたしますと、大ざっぱな比較でございますが、日本の大企業の平均の特許関連の今の料金、それとアメリカのスモールエンティティーの対象になっている分の水準が大体同じぐらいでございます。

 そういう中で、仮にいろいろな制度を、料金をいじるとした場合に、特許特会というのは、利用者からお金を集めさせていただきまして、それを実際の手続に充てる、そういうことでございますので、どこかを下げるとどこかを上げる、そういうバランスの問題が一つございます。

 それから、今四十二、三万件の出願が毎年来ておりますが、これに対する影響、そういったものも考えなきゃいけないと思いますが、今の実態と、それから中小企業の置かれている状況、それから海外の状況を踏まえまして、いろいろ研究させていただきたいと思います。

大畠委員 一つは、大手企業の出願件数と中小企業の出願件数の実態というものをぜひ調べて、当委員会にといいますか、教えていただきたいと思いますが、これは委員長に、ぜひそういう実態を教えていただくように、理事会で諮っていただきたいと思うんですが。

河上委員長 後刻理事会で協議いたします。

大畠委員 それで、私は、今お話がありましたが、どうも今の基準ですと、裁量の余地というのが、要するにあいまいな感じがするんですね。減免措置を講じていますと言うんですが、これは減免の対象なんでしょうか、これはどうなんでしょうかと言う。そうすると、うん、ではあんたの場合は減免してやろう、あんたはだめだよ、そういうあいまいさというのが日本には非常に多いんですよ。

 ですから、例えば従業員、アメリカで言うように、五百人以下の企業だったら減免しますよとか、ベンチャー企業といったって、どこまでがベンチャー企業で、私はベンチャー企業なんでしょうかと一々お伺い立てなきゃならないんで、そこら辺はきちっと整理をして、私は明らかにしておくべきだと思いますが、再度答弁をお願いします。

小川政府参考人 まさに先生の御指摘のとおりでございまして、私ども、今講じております中小企業の料金減免制度につきましても、より一層利用していただきたいと思っております。そのためにも、今一生懸命やろうとしておりますのは、手続面で、中小企業の方が順番にたどっていけば、自分が当たる、当たらないとか、何をやればいいかというのがわかりやすくなるような、そういった手続の見直し、簡素化というものをまず考えたい。

 それから、制度それ自身についてのまた周知度が足りないという面もあろうかと思いますので、いろいろな形で広報、普及というのも図っていきたいと思いますし、いろいろ出願のお手伝いをされます弁理士の方々にもお願いをして、広くこの制度について出願人の関係者の方々にわかっていただく、それから、その手順を簡素化していく、そういう見直しをやっていきたいというふうに考えてございます。

大畠委員 現在、大きな企業がございますね。ホンダですとかトヨタもそうですし、日立製作所もそうでありましょう。最初は本当に小さな企業だったんです。日立もモーターの修理工場から始まりましたから。これはこれとしながら、やはり未来を切り開く企業を育てるということが私は非常に大事だと思うんですね。ですから、小規模企業者に対する、育てようという環境を整えることが私は非常に大事だと思いますので、この特許の件についても、先ほど研究していきたいというお話がございましたが、さらにこれは継続して、どういう形で小規模企業者に対する競争の条件を整えていくかということは、改めてぜひ検討していただきたいと思いますが、その件について最後に質問して、終わりたいと思います。

小川政府参考人 先ほど御答弁しましたように、いろいろな問題、いろいろな課題がございます。そういうのをもろもろ含めて、研究をさせていただきます。

大畠委員 終わります。

河上委員長 次に、計屋圭宏君。

計屋委員 民主党の計屋圭宏でございます。

 それでは、質問させていただきます。よろしくお願いします。

 もう急速にグローバル化、ボーダーレス化が進んで、日本の企業環境というのは音を立てて今変わろうとしているわけでございまして、もう一部は変わっているわけでございます。そういう中で、この一環として、今不正競争防止法の一部を改正する法律案も設けよう、こういうことであると思います。

 そういう中で、やはり私は、日本の社会が原理原則に基づいて判断しない、そういったような部分が見えるわけです。例えば、お百姓さんが収穫します、そうしますと、もう次に何をするかということを考えて、そして田んぼ、畑を耕して、そこに肥料をやって、種をまいて、そして、その手入れをしながら成長を待っていく、あるいは収穫を待っていく。そういったような形で考えていった場合には、やはり日本の社会がそういったような考え方のもとに、この原理原則というものに、宇宙の大原則に基づいて物事を処理していかなきゃいけない、こういうふうに考えるわけでございますけれども、そういう中で、営業秘密漏えいはなぜ起こるのかということを根本的に考えていかなきゃいけないと思うんです。そのところから大臣にお尋ねします。

中川国務大臣 営業秘密の三原則というのを先ほどから答弁しておりますけれども、そういう秘密でそしてまた重要なものであれば、やはりライバル企業とかほかのところから、欲しいあるいはまた知りたいという、これはもちろん不正にやることはよくないことでありますけれども、そういうインセンティブが働くんだろうと思います。

 また、先ほど個人情報の漏えいの話がありましたけれども、社内の、内部からいろいろな原因で外に漏れていくということもあって、大きく分ければこの二つの面がいろいろ複雑に絡まり合って、営業秘密の漏えいというものが現にしょっちゅう世界的に起こっているんだろうというふうに思っております。

計屋委員 こういったような問題が起こらないようにするにはどうすればいいか、整理してひとつお答えいただきたいと思うんです。

中川国務大臣 一つは、人間の倫理ということ、あるいは企業倫理ということでしょうけれども、起こった場合には、今度は刑事罰と民事罰と懲役等で罰則を強化いたしますので、そういうことをやっても割に合わないよというような予見可能性みたいなものを刑罰によって担保していくということだろうと思いますけれども、その営業秘密の価値の大きさによっては、そういうリスクも起こして、今後も起こってはならないことが起こるということも十分考えざるを得ないということも事実かなというふうに思っております。

計屋委員 営業秘密を漏らすということは、やはりそこに、根底に何かある。やはりそれは企業の側にも責任があるんだろうと思うんですけれども、企業の側の問題というのはどういうことか、把握しておりますか。

北畑政府参考人 一つは、会社にとって重要な営業秘密を持っている従業員の処遇の問題があろうかと思います。それからもう一つは、営業秘密について、それは会社にとって重要なものであるということであれば、そこはきっちり管理をすべき部分、明確な形で、合意の上で管理をすべきだと、会社側の対応にもうかつな部分があったかと思います。

 この点について、これから非常にバランスのとれた形で正常化をしていくということでいろいろ検討してまいりたいと思います。

計屋委員 その場合に、先ほどもお話があったわけでございますけれども、営業秘密に当たるということは個々の企業の事情を反映して大変難しい判断であるわけでございますけれども、政府としての基準を明らかにし、その内容を関係者に周知徹底することが必要じゃないか、こういうふうに考えるわけですけれども、この辺はどういったふうに考えますか。

北畑政府参考人 第一には、企業の問題であろうと思います。会社にとって重要な営業秘密が違法な形で流出していくということについては、会社全体、他の従業員にとっても非常に損害をこうむることでございますから、まずは企業がしっかり管理をしなければいけないというのが第一点だろうと思います。

 それから、我が国の将来の産業のことを考えますと、こういう目に見えない営業秘密、広い意味での知的資産というのが日本の企業の強さになるわけでありますから、これは政府としても看過できない。したがいまして、今回、非常に悪質なものについては刑事罰をもってそれを担保する。刑事罰で担保するということは、そういうことが重要だということでございまして、抑止力とか意識の改革という点も含めて日本にとって重要な政策であるということで、いろいろな啓蒙普及活動をあわせて進めていきたいと考えております。

計屋委員 基本的にはこれは企業の問題でありますけれども、こういう中小零細企業にとっては独自でそういったものを確立できないというのがほとんどでございまして、中小企業で従事する人、あるいは中小企業の数ということを考えてまいりますと、やはり国が何らかの基準というのを設けて、そしてそれをひな形としてやっていくということも、一方では必要だ。

 国の役割というのは、やはり弱い部分というものに手をかしてやって、そしてその弱い企業が成長、発展するということにおいて手を離していくというのが私は国の仕事だと思うんですけれども、そういったような考え方はないんですか。

北畑政府参考人 我が国の経済を支える中小企業にとりましても、営業秘密、知的資産というものが重要な財産であるということは、委員御指摘のとおりでございます。

 これを中小企業に対してどうして守ってやるかということでございますけれども、今回、不正競争防止法の対象に刑事罰をかなり拡大して適用するということにいたしましたのは、そういった知的資産、中小企業であれば特許法とか商標法に登録をしないでも、あるいはそういう余裕がなかった場合でも、この法律に該当する場合には刑事罰という形で間接的に中小企業は保護される、こういうことになるわけでございまして、そういった意味でも、不正競争防止法の規制強化は中小企業にとって重要な改正であるというふうに認識されているというふうに考えております。

計屋委員 対処療法的にいろいろと考えているわけですけれども、やはり私は原理原則に立って考えていかなきゃいけないと思っておりますし、昨年の特許法三十五条の改正によって、企業の側から、特許法の改正はしない方がよかったという声も大変大きな声として出ているわけです。

 そういう中で、やはり大臣として、特許法の改正はどのように会社に影響しているのか、そして日本にとってよかったのか悪かったのか、こういったような観点から御答弁いただきたいと思うんです。

中川国務大臣 直接的には、大変新しい技術を開発して、企業と、主たる発明者というんでしょうか、発明した方との間での見解の相違があったということで法律改正の御審議をいただいたんですが、私は、あの特許法三十五条の改正というのは時代に合った、いわゆる知的財産権というものを、主たる発明者というんでしょうか、従業員と企業との間で事前にきっちりルールをつくる必要性というものはやはりあったと思います。そのルール自体が、仮に裁判に行ったときにも一つの判断材料にもなるということだろうということで、それによって報償をいっぱい上げなきゃいけないとか、いやそれでも少ないとか、いろいろあるんだろうとは思いますけれども、一つの方向性をつくっていった、ルールをつくっていったということは意味があることでございますし、また、我々としても一生懸命このことを世の中に知ってもらわなければいけないということで、全国でいろいろな説明会をやり、趣旨を御理解いただくべく努力をしているところでございます。

計屋委員 私も大臣の考え方と賛同するわけでございますけれども、そういった目的で改正したわけでございますけれども、いろいろな不満が出てきているということ、そしてまた、昨年この改正をして一年ということでは判断できないなという、時間をもっと待たなきゃいけないのかな、こういうふうに思います。

 そして、次はライブドアとフジテレビのニッポン放送株をめぐっての係争でございますけれども、やはりライブドアの方は、経営者が能力ないから経営者を入れて利益を上げて、そして株主に配当しよう、そういったような意図を持っているわけですね。ところが、やはり日本の伝統的な利益配分というのが、三分割配分というのがございまして、三分の一が株主、三分の一が従業員、三分の一が内部留保あるいは投資あるいは設備投資、こういったようなことで、利益配分の三分割法というのが古来あるわけですけれども、やはり株主のものだということで、会社の将来というもの、あるいはまた人を大事にしない、そういったような一面が出てくる。

 先ほども同僚議員の方からそういった話もあったわけでございますけれども、やはり、私はこういったようなことを考えて、社会のひずみとしていろいろな問題が起きてきている、そういう中で、人の心を大切にしていかなきゃいかぬ、あるいはまた独立自尊の精神、あるいは利他の心、そういったような企業理念を持って会社というものは経営していかなきゃいけないと思うわけでございますけれども、こういったふうな基本的な考え方というのがやはり足りないのかな、あるいは説明不足なのかな、こういうふうに考えるわけです。こういったふうな営業秘密の漏えいというのはそういうところにやはり起因していくんじゃないかな、こういうふうに思うわけですけれども、その辺はどうですか。

中川国務大臣 ライブドアとフジテレビについては、一件落着したんでしょうか、とにかく、何か記者会見をやって握手しているところが報道されております。あれは、そもそもは時間外取引とか、あるいは公開買い付けをやるときの追加的な価格の設定の仕方とかいろいろ、ちょうど会社法の現代化の議論をやっている最中のことでございましたので、我々も広く関心を持ったところでございます。

 他方、企業はだれのものかという議論は、最近これを契機によくされるわけであります。アメリカというか、外国の一部の企業のように、配当性向一〇〇%なんという企業もあって、ちょっとびっくりしてしまいますけれども、日本の場合には株主利益というものが最近とみに言われるようになってきておりますけれども、やはり実際に経営をしている経営陣、あるいはまた従業員として一生懸命働いている方々、あるいはまたお客さん含めて、だれのものかといって一つ挙げろというのはなかなか難しいんですけれども、みんながそれぞれ機能し合って、同じ目的といいましょうか、その会社に与えられた使命を果たすことによって初めて成り立ち得るものだと思います。最近のいろいろな出来事を奇貨として、我々としても産業政策を進めていくべく、企業価値研究会なんというものも今現在やっておりますけれども、この問題に政府全体としても、また企業の社会的な責任の重要性から、企業面もさらに努力をしていっていただきたいというふうに思っております。

計屋委員 日本の国の伝統的な、人を大切にし、なおかつ企業の存続あるいは発展ということで、従業員ともども人と社会に貢献する、そうして利益の追求、そういった観点から、原理原則に立って考えていくと、やはり日本の今の状況というのは何かおかしいということが言えるわけでございまして、これはやはり洋の東西を問わず、人の心というものを大切にしていかなきゃいけないなというふうに、つくづく最近の動きを見て考えるわけでございます。

 次に進みますけれども、知的財産関連政策の具体的実施に向けた検討が必要であって、今、知的財産戦略本部ということで、日本の国家戦略として今後これを進めていこうとしているわけでございますけれども、そういう中で、現在内閣に設置された知的財産戦略本部の全体のビジョンと取り組みはどのように行っているのか、お聞かせいただきたいと思います。

荒井政府参考人 現在内閣で設置されております知的財産本部におきましては、知的財産を利用して立派な国づくりをしようということに心がけておりますが、具体的に申し上げますと、日本人の持つ発明や創作の能力を十分に発揮するということを基本的な目標といたしまして、日本人のつくり出した発明とか著作物によりまして世界文化や文明の発展に貢献していきたい、こういうことを目指しているわけでございますが、同時にまた、経済的に見れば二十一世紀は技術の競争の時代でございますので、知的財産を核として、立派な技術開発をすることによって日本の経済社会の発展を目指していくということでございます。

 その取り組みにつきましては、二〇〇三年の三月に、小泉総理大臣と全閣僚をメンバーとし、そしてまた民間の方、有識者十人の方に入っていただいた知的財産本部をつくりまして、官民挙げて取り組んでいるということでございますし、具体的な大事な問題については三つの専門調査会を設置して進めているということでございます。

小此木副大臣 経済産業省といたしましても、昨年の五月に新産業創造戦略を取りまとめまして、この中でも知的財産の戦略的意味を明確に認識して、特許審査の迅速化ですとか営業秘密の保護強化、コンテンツ振興等、戦略的な重要な項目としてこういったものを位置づけて各種施策を推進しているところであります。

 基本的な考え方は、今議論されております今回の改正法ですとか、先ほどから言われております営業秘密を守っていく、にせものブランド品、コピー商品、こういったものの罰則強化というものについても議論してきたところでございます。

計屋委員 方向性としては全く賛同し、すばらしいことだと思うんですが、これを具体的にやはり推進しなきゃいけないわけです。

 絵にかいたもちじゃなくて、平成十四年から知的財産戦略会議がスタートして、昨年、知的財産戦略本部を中心として検討、推進しているわけでございますけれども、ただしかし、これに対して、そういったような青写真は描いたよ、ところが、それをどういったふうにして実施していくんだ。例えば、予算の裏づけだとかスピードがどれぐらいで、どれぐらいの規模まで持っていくんだ、あるいはまただれがそれをやるのか、そしてその実施に係る具体的な方法というのは明確になっていないわけでございまして、やはりそういったようなところをもっともっと明確にして具体的に進めていかない限り、これはもう全く無責任ということになっていく。民間が先行してやっている、それに国が便乗しているというふうにしか見えないわけでございます。

 そういったふうな、国家戦略として知財の保護あるいは創造を拡張していく、そういったような発想から考えていったら、やはりそういったものを具体的に進めていかなきゃいけないと思うんですけれども、その辺はどういったふうに行っているのか、御答弁いただきたいと思います。

荒井政府参考人 ただいま御指摘がありましたとおり、絵にかいたもちにしてはいけないということでございまして、知的財産推進計画を、先ほどお話しいたしましたが、総理大臣のもとでの知的財産戦略本部で民間の方にも入っていただいて計画をつくっているわけでございますが、そこにおきましては関係省庁、どこの役所が担当するか明記してございますし、いつやるか年度もはっきり書いてあるということでございます。それを受けて関係省庁がしっかりと責任を持って予算を確保して実現していく、そういう取り組みをしているわけでございますし、御指摘ございましたスピードが大事じゃないかということにつきましても、この推進計画において時期を逸することなく迅速に改革を行っていこう、そういう心は持っております。

 さらに、それをはっきり言うために本田宗一郎さんの言葉も引用しておりまして、今から五十年前の本田宗一郎さんの「私は、かなり現実に拘泥せずに世界を見つめていたつもりであるが、やはり日本の現状に心をとらわれ過ぎていた。今や世界はものすごいスピードで進歩している。」、こういうこともあえて書きまして、関係省庁しっかり、御指摘ありましたとおり、絵にかいたもちに終わらすことなく、またスピードが民間の動きに対しておくれることなく、あるいは大学とかいろいろなところでも進んでおりますので、御指摘のとおりのことをよく心がけてやっていきたいと思っております。

計屋委員 そのことに絡んで、中小企業の位置づけというのはどういうふうになっているのか、御答弁いただきたいと思います。

望月政府参考人 お答えいたします。

 中小企業がすぐれた技術力を糧といたしまして事業展開を図っていく上で、知的財産を適切に管理し、経営に生かしていくということは大変重要なことだと思います。

 しかしながら、現状を見ますと、中小企業は、知的財産管理への取り組みに関しまして、経営戦略への位置づけあるいは専任従業員の配置あるいは社内規程の整備などの面で、大企業に比べますとまだまだ十分に普及、浸透していないものというふうに私どもとしては認識しております。今後、取り組みの強化が必要であるということでございます。

 私どもといたしましては、中小企業によるこういった知的財産管理を促進するためにさまざまな施策を、都道府県の支援センターやあるいは中小機構による知的財産の専門家の派遣事業などなど努力しているところでございますけれども、現状はそのようなところでございます。

計屋委員 やはり、中小企業というのは大企業に比べて資源が乏しい、人もいい人材がいないというハンディを背負っている。そういう中で、やはり大企業から無効審判や裁判を立て続けに起こされた場合、負担が多過ぎ、泣き寝入りするしかないとの声が、中小企業、ベンチャー企業の四社に一社が知的財産権を侵害されると調査では答弁しているわけです。ですから、こういったふうにして、中小企業が伸びようとすると大企業がその芽を摘んでいく、そういったような状況が多いわけです。ですから、中小企業対策というものに対しても、やはり徹底的に、日本全体としての国家戦略の中の中小企業の知財というものをしっかりと対策をとっていっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。

 どうぞひとつ、これは要望であるわけでございますけれども、絵にかいたもちに終わらせないためにも、弱い基盤の中小企業というものに力を入れていく。民間の大企業の場合ですとこれは独自でできますから、やはり国が支援していくのは中小企業だよ、こういうふうに思いますので、先ほどの具体的な対策ということでこれを実施に持っていかないと、プランだけではこれは日本が知財立国というふうにはなり得ない、こういうふうに考えますので、よろしくお願いしたいと思います。

 次は、やはり知的財産創造に向けての地域のネットワークの整備の必要性でございます。

 特許庁があって、そして経産省のあるところでこの知財というものはやっておる、そしてまた地域も、それぞれ都道府県あるいは市町村が知財の必要さというものを重要視して取り組んでいる都道府県、市町村もあるわけでございますけれども、やはりそれとのネットワークなんですよね。

 このネットワークをしっかりやっていかない限り、日本が大きな加工国から、流れの中で転換して、そして景気を回復させていく。景気を回復させていくことによっていろいろな問題が解決されると思いますので、やはり二十一世紀の今後の日本の生きる道というのは、国家戦略としてこの知財に力を入れていかなきゃいけない、こういうふうに考えておりますけれども、この件について、ネットワークの問題、どういったふうにして青写真を描いているのか、お聞かせいただきたいと思います。

小川政府参考人 私どもといたしましても、知的財産を活用して地域の中小企業あるいは地域の経済の活性化、重要な課題だと思っております。

 先ほど来、官房の荒井事務局長の方から政府が今取り組んでおります状況について御答弁がありましたけれども、そういった政府の施策が各地域で十分に活用されるためには、知的財産関連組織あるいは人材等によるネットワーク、その形成が非常に効果的であると私どもも思っております。

 このため、今年度からでございますけれども、私ども経済産業省の地方にあります各経済産業局ごとに、地域の官民関係者から成ります地域知的財産本部というものを新たに設置しまして、地域の特性、創意工夫を生かしていただいた形で推進計画をつくる、その計画に基づいて関連施策を一体的、計画的に実施していこう。

 その際、本部活動の一環としまして、御指摘のありましたような産業クラスター、TLO、それから大学知財本部、それから地方自治体、特に知的所有権センターでありますとか中小企業支援センター、そういった関連の機関の連携強化というのをまず図っていきたいと思いますし、これらの組織と弁理士さんを初めとします関係人材のネットワーク化というものをこの本部活動の一環として進めたいというふうに考えてございます。

 それらを通じまして、地域中小企業の知的財産に対する意識をまず高めていただきたいということと、我々がいろいろ展開しております各種施策をより一層活用していただきたい、そういうふうに考えてございます。

計屋委員 国がやはりイニシアチブをとって、地域とのネットワーク、そして中小企業のネットワーク、こういったようなことでこれを実施して、そのプランをしっかり立ててもらいたいと思うんですよ。

 これが絵にかいたもちで、国としては、総理を本部長としてやっていますよという、そういったようなことだけじゃなくて、寄せ集めという形じゃなくて、やはりだれが推進して、責任をだれがとるんだということが明確になってこないわけですよ。単なるキャッチフレーズということで、キャッチフレーズだけ言っておけばいいというものじゃない。やはりこれをしっかりとして、日本が今後生きていく道として推進していかなきゃいけない。これはやはり、本当にそこに本腰を入れて、単なる口先だけじゃなくて実行しなきゃいけない、そういうことが大切だと思うんですけれども、これは大丈夫ですか。

 そういったようなことをやらないと、日本の国が、もう十五年、十六年たって景気を回復できない。これは民間に任せて、民間の景気が踊り場に来ている、そういったふうなことだけでは、やはりこれは済まされない。予算というものがついていくわけだから、この予算というものをどういったふうにして配分していくかということが大切なので、そしてまた、その計画がきちっとできて、それに向かって努力しなきゃいけないわけですけれども、だれがやるんですか、これは。

中川国務大臣 知財本部は、御承知のとおり、小泉総理大臣が本部長として大変熱心に取り組んでいるわけで、私ども関係閣僚がそこに参画をしているわけでございます。

 最近、政府の作業としては、よく言われますプラン・ドゥー・チェック・アクションということで、歳出も、ただ予算を幾らつけたからじゃなくて、成果をきちっと把握するということで、大変厳しく取捨選択をしながら作業を進めているところでございます。特に、計屋委員強調されている中小企業の技術支援については、御審議いただいた新連携とか、さきの特許料の軽減であるとか、いろいろな優遇措置あるいはまた支援措置をできるだけ活用しながら、まだまだ知恵の足りない部分については、どんどんそういうところにも改正をしていって、中小企業もといいましょうか、中小企業がより知的財産あるいは技術立国としての中核が担えて、先ほどの大畠委員のように、第二の自動車会社、第二の世界的電機メーカーというものがどんどん出ていけるようにしていくことが我々のねらいでございます。

計屋委員 大臣、今言ったことは、実際推進して、ちゃんとできますか。もう一回、ひとつ、ここで決意を話していただきたい。

中川国務大臣 これはもう小泉総理が大変強い決意でやっておりますので、一度、知的財産本部と経済産業省とで三時間ほどお時間をいただいてたっぷり御説明をさせていただければ、今まで、少なくとも私が内閣に入って以来のやってきたこと、あるいはまたこれからやろうとしていることの一端を御理解いただけると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

計屋委員 中川大臣がそういう決意でございますので、それを信じて、きょうはこの知財関係については終わります。

 次は、最後の質問になりましたけれども、弁理士関係の質問に入らせていただきたいと思います。

 知的財産に関して弁理士が十分な専門サービスを国民に提供するには、現在弁理士が有している特許等の回避や、有効、無効を争う審決取り消し訴訟代理権のほかに、完全な形の侵害訴訟代理権が必要だと考えておりますが、その点はどのように考えておられるか、御説明いただきたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘は、現在弁理士法で認められている共同受任、共同出廷の侵害訴訟代理についての御質問というふうに理解をいたします。

 この制度につきましては、知財訴訟の中身の充実、迅速化ということを目標に、工業所有権審議会の中でもかねてから議論になっていたところでございますが、平成十二年から十三年にかけまして、折しも司法制度改革審議会の議論も行われておりましたので、この問題は、弁護士法七十二条との関係で、そちらに検討をゆだねるという経緯がございました。その結果、平成十三年六月十二日にまとめられました司法制度改革審議会の意見書の中では、知財関係訴訟の充実、迅速化に向け、弁護士が訴訟代理人となっている事件に限り、「弁理士の特許権等の侵害訴訟代理権については、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、これを付与すべきである。」という提言がなされたわけでございます。

 これを受けまして、特許庁といたしましては、具体的な研修、試験のあり方について詳細設計をいたしまして、平成十四年の弁理士法改正の中で生かされたわけでございます。何分、この制度発足間もなくの時期でございまして、具体的には、特定侵害訴訟代理のための研修につきましては平成十五年五月から、また、特定侵害訴訟代理業務試験につきましては同年の十月から実施され、平成十六年初めに付記弁理士が初めて誕生したところでございます。

 本問題につきましては、今後の付記弁理士の活躍の状況、それから世の中のニーズ、関係者の意見等々を広範に受け入れながら、さらに検討を進めてまいりたいと思いますけれども、現在のところは、当初計画いたしました制度の定着をきっちりと図り、その効果を見きわめていく、そういう時期ではないかと考えております。

計屋委員 それでは、この特定侵害訴訟代理の特定とはどういう意味なのか、説明いただきたいと思うんです。

澁谷政府参考人 特定の中身でございますが、すべての訴訟ではなくて特許権等の侵害訴訟の中身でございますけれども、特許、実用新案、意匠、商標、回路配置に関する権利の侵害または特定不正競争による営業上の利益に関する侵害訴訟というところで、弁理士の特許権の範囲に関する専門知識がより生かせる、こういう分野に限ってこの権利を認めております。

計屋委員 出願から特許登録までの経緯と対象の内容を知っている弁護士の訴訟代理権の範囲にすべきではないのか。

 ちなみに、訴訟補佐についてはどう考えておりますか。

澁谷政府参考人 先ほど申し上げたような経緯の中で、最終的な目的は紛争解決の中身の充実、迅速化というところでございます。したがいまして、弁護士の知見、それから弁理士の専門的な知見、これがお互いに有機的につながってそういうような結果に至るというのが、私どもの期待しているところでございます。したがいまして、何もかも弁護士と同様にするということはこの目的に向かって進むべき手段ではないというのが基本的な考え方でございます。

 なお、最後、御質問のありました特定侵害訴訟の代理人と補佐人の関係でございますけれども、主たる相違点は二つになろうかと思います。

 一つは、特定侵害訴訟代理人は、期日外の訴訟行為が可能であるということが第一点。それから、補佐人は、法律上及び事実上すべての陳述について、当事者または訴訟代理人に取り消しまたは更正され得る。自分の発言について、当事者または訴訟代理人がそうではないという発言をすればみずからの発言が取り消されてしまうということに対しまして、特定侵害訴訟代理人につきましては、法律上の発言ではなくて事実上の陳述のみ、しかも訴訟代理人ではなくて当事者のみによって取り消しまたは更正され得るというところが違いでございます。

計屋委員 時間が参りましたので、要望だけして終わりたいと思いますけれども、青色発光ダイオード、中村教授が日亜化学を訴えた。当初は二百億と地裁が言っていたわけでございますけれども、今度は、高裁では六億円支払いなさいという、これは大きなぶれがあったわけでございまして、やはりこれは弁護士だけじゃなくて、弁理士の専門的な立場からこれに携わっていたら、こういったような大きなぶれはなかった、こういうふうに思います。

 そういったような観点から、やはり特に発明評価と弁論主義との関係のあり方や弁理士の専門的見地を活用していたら、もっと収れんを、いい結果を見たと思いますけれども、特定に限定しない訴訟代理権が望ましい。これは著作権が弁護士の業務範囲に入っていることも含めて見直す必要があるんじゃないかというふうに思いますので、検討をしていただくように要望しまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河上委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時二十二分散会


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