衆議院

メインへスキップ



第9号 平成18年3月31日(金曜日)

会議録本文へ
平成十八年三月三十一日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 石田 祝稔君

   理事 今井  宏君 理事 新藤 義孝君

   理事 平田 耕一君 理事 増原 義剛君

   理事 吉川 貴盛君 理事 近藤 洋介君

   理事 達増 拓也君 理事 上田  勇君

      小此木八郎君    岡部 英明君

      片山さつき君    北川 知克君

      近藤三津枝君    佐藤ゆかり君

      清水清一朗君    塩谷  立君

      平  将明君    長崎幸太郎君

      橋本  岳君    早川 忠孝君

      藤井 勇治君    牧原 秀樹君

      松島みどり君    武藤 容治君

      望月 義夫君    森  英介君

      山本 明彦君    大畠 章宏君

      吉良 州司君    北神 圭朗君

      後藤  斎君    佐々木隆博君

      野田 佳彦君    松原  仁君

      三谷 光男君    高木 陽介君

      塩川 鉄也君    武田 良太君

    …………………………………

   経済産業大臣       二階 俊博君

   経済産業副大臣      西野あきら君

   経済産業大臣政務官    片山さつき君

   政府参考人

   (内閣府原子力安全委員会事務局長)        片山正一郎君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   舟橋 和幸君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  島田 泰助君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           深野 弘行君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          肥塚 雅博君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            高原 一郎君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     広瀬 研吉君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           和泉 洋人君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局次長)           平山 芳昭君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 桜井 康好君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  小林  光君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十日

 辞任         補欠選任

  桝屋 敬悟君     上田  勇君

同月三十一日

 理事桝屋敬悟君同月三十日委員辞任につき、その補欠として上田勇君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に上田勇君を指名いたします。

     ――――◇―――――

石田委員長 内閣提出、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府原子力安全委員会事務局長片山正一郎君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長舟橋和幸君、林野庁森林整備部長島田泰助君、経済産業省大臣官房審議官深野弘行君、経済産業省産業技術環境局長肥塚雅博君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長高原一郎君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長広瀬研吉君、国土交通省大臣官房審議官和泉洋人君、国土交通省総合政策局次長平山芳昭君、環境省大臣官房審議官桜井康好君及び環境省地球環境局長小林光君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤斎君。

後藤(斎)委員 今委員長からお話がございました法案の審議に入る前に幾つか確認をしておきたい点がございます。きょう公取からもおいでいただいております。

 まず冒頭に、この一カ月弱で、いわゆる新聞の特殊指定の廃止問題についてこれくらいの切り抜きがございます。一センチと言ったらオーバーなんですが、大変今、ある意味では、国会だけではなく、都道府県や業界の方はもちろんですが、いろいろな方が関心を持ってこの問題を見守っております。

 そもそも、いろいろな御指摘がある中でこの議論が出てきたということは承知しております。特に平成十四年に行った新聞業における景品類の提供の申し出等の実態調査というものを拝見させていただきますと、公取がいろいろな形で御指摘をされているように、その前の平成十二年度調査よりも、景品類や無代紙の提供ということで、その比率が増加を、勧誘時にされているという実態が確かにございます。

 ただ、昭和三十年代ということですから、もうかれこれ五十年近くなると、この新聞の特殊指定が、まず、いろいろな御議論がある中でなぜ今見直しを行うのかという、その理由や今後のあり方というのが明確に国民の前に明らかにされなければいけないということも踏まえまして、なぜ昭和三十年代当時、特殊指定を新聞がされ、そして今なぜ見直しを行っているのか。今後の見通しも含めて、簡潔にお答えをいただければというふうに思います。

舟橋政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、新聞の特殊指定の制定の趣旨でございますけれども、これは昭和二十年代、新聞の販売業界におきまして、過大な景品提供を中心として販売競争が非常に過熱をしていた、そういった事情を踏まえまして、こういった景品提供行為などを抑止するために、昭和三十年十二月でございましたけれども、制定をされております。その後、この特殊指定の規定のうち、景品提供に関する部分、これは景品表示法の方の規制に昭和三十九年、移行をしておりまして、その部分は削除されております。削除されてはおりますけれども、その残りの、新聞の多様な価格設定や値引き、これを禁止する規定につきましては、平成十一年に若干の見直しは行っておりますけれども、基本的にそのままの形で現在まで、委員御指摘のとおり、五十一年の期間というのが経ておりますし、実際、この規定につきましては、制定直後の昭和三十二年に発動した事例が一件ございますけれども、それ以降は適用例もないということでございます。

 特殊指定の見直しを行っている理由を次に申し上げたいと思いますけれども、私ども公取、最近になりまして、ここ一、二年でございますけれども、新しい特殊指定を二つつくっております。一つが、平成十六年、これは物流の特殊指定ということで、荷主と物流業者の関係を規定しているものでございます。それから、昨年、平成十七年には今度大規模小売業の特殊指定、これはスーパー等の大規模小売業と納入業者の関係を規定するものでございますが、こういう新しい特殊指定を二つつくっております。

 他方、古い特殊指定ということで五本のものがございました。これは、制定後、大体昭和三十年前後の制定でございまして、長期間を経ている、それから近年運用実績もないということでございまして、この五つの特殊指定につきましては、制定当時の背景とか事情が今もあるかどうか。仮にあるとして、特殊指定とは別に一般指定というものがございますので、その一般指定で対応できるかどうか、できないかどうか。それから、仮にその特殊指定が必要だとしても、現在の特殊指定が過剰な規制になっているかどうか。こういった観点から見直しを行ってきておりまして、五本あると申し上げましたけれども、五本のうち一本は既に廃止いたしておりまして、それから三本につきましては現在パブリックコメントを受け付けている最中、残り一本が現在検討中ということでございまして、この検討中のものが御指摘の新聞の特殊指定というものでございます。

 これについての考え方を次に申し上げたいと思いますけれども、この新聞の特殊指定につきましては、発行本社の多様な価格設定とか販売店による定価の値引き行為、割引行為、これを独禁法違反行為である不公正な取引方法だということで、発行本社につきましてはそういう行為を原則的に禁止、販売店については全面的に禁止をしておるというものでございまして、こういった多様な価格設定とか値引き行為、これはまさに競争の重要な手段である、そういう競争の重要な手段というのを独禁法違反行為、反競争的なものであるというふうに規定しておる、その基本的なあり方というのが問題ではないかというのが第一でございます。

 そういう基本的な問題のあり方に加えまして、この特殊指定が今あるために、長期購読者向けの割引、雑誌等では一年とか二年購読すれば安くなる、これは結構見られるところでありますし、それから口座振替割引とか一括前払い割引、これはNHKの受信料でも一年あれすれば一カ月安くなるとかそういうのはございますけれども、こういったものが新聞のあれについては今見られていない。それから、学生や高齢者とか年金生活者向け割引とか、そういった各種の割引制度の導入も図られていない。それから、中には、夕刊は要らない、朝刊だけでもいいという朝刊のみ定価という設定、これも消費者が求めているところが結構あると思いますけれども、その設定についても現在の特殊指定があるためにできないようになっておるということで、今のこの特殊指定の存在が消費者利益の向上を阻害しているのではないかなというふうに考えておるところでございます。

 先ほど申し上げたように、五つの特殊指定全般について見直しを行ってきておるところでございますけれども、この新聞の特殊指定については現在も新聞業界の意見をいろいろ聞いております。それをさらに続けまして、ことしの六月ごろまでには何らかの結論を得たい、そういうふうに考えております。

後藤(斎)委員 今公取がお話をされた部分については理解できる部分が確かにあります。しかし一方で、この特殊指定が廃止をされると、ある意味でさらに現状以上に価格競争が激化をして、世界に数少ないと言われております、だれでもがどこの地域でも同一価格でといういわゆる新聞の宅配制度が崩壊をされてしまうという疑念の念もございます。

 この点については、端的で結構ですが、公取はどのようにお考えでしょうか。

舟橋政府参考人 お答え申し上げます。

 特殊指定を廃止すると販売店による割引販売が常態化する、それによって再販が崩壊する、再販が崩壊すると、世界に冠たる、今九四%ぐらいいっていますけれども、戸別配達制度が崩れてしまう、そういう御議論があるわけでございますけれども、私どもは、そういう混乱が生じるということはない、そういうふうに考えております。

 まず、理由でございますけれども、定価販売、同一紙同一価格で売るということは、特殊指定が仮に廃止されましても、現在、再販制度というものが独禁法の適用除外というきちっとした形で認められておるということでございまして、発行本社サイドが必要と考えるのであれば、この再販制度の中で発行本社みずからが責任を持って対応するということが可能なわけでございまして、現在、新聞社と販売店の力関係を見ますると、販売店が新聞社、発行本社の意向を無視してこういう割引販売をやる、それが常態化するということは到底考えられないということが第一に挙げられるわけでございます。

 それから、新聞の宅配制度というものが成り立ってきているという背景を考えますと、それは一つには、購読者サイドの方として、家庭にいながらにして毎日配達してくれるというメリットが非常にある、国民の強いニーズがそこにあるということが一つございますし、それから、販売店サイドにいたしましても、毎月確実な販売が見込める、見込めるがゆえに、チラシを入れてチラシの収入とか、そういうコスト合理性というのがこの販売においてあるという、購読者サイド、それから販売店サイドの政策的なもの、こういったものから成り立っておるというふうに考えておりまして、特殊指定が廃止されたからといって戸別の宅配制度がなくなるということはないというふうに考えております。

 それから、先ほど申し上げましたとおり、再販制度のもとで定価販売ということが可能ということでございますけれども、仮にということで、特殊指定を廃止して割引販売が結構行われる、そういった場合でも、現実に今、世の中を見ますと、実質的な割引というふうに考えられる無代紙の提供、一年とってくれれば二カ月とか三カ月ただにするよ、これを無代紙と呼んでおりますけれども、実質十二分の二とか十二分の三の割引になるわけでございます。これは特殊指定違反なんですけれども、そういった無代紙が横行している地域がございます。そういった場所でも戸別配達というのはきちんと維持されておるということですので、特殊指定がなくなるからといって宅配サービスがなくなる、そういう因果関係といいますか論理関係はないと。

 先ほど申し上げましたとおり、長期にわたって存在している宅配、特殊指定というのは戦後の制度ですけれども、宅配はもう戦前からもっと長い期間あるわけでございまして、そういうことからいっても、特殊指定が廃止されるからといって価格競争が激化する、それで宅配サービスがなくなる、そういうことはないというふうに考えております。

後藤(斎)委員 もう一点、昨年の七月に施行された文字・活字文化振興法という中で、すべての国民が、ひとしく豊かな文字文化、活字文化の恵沢を享受できる環境整備をその基本に掲げて、その施策の実施を国、地方公共団体に義務づけるという中で、新聞はその活字文化を担う大きな役割を担っているという中で、特殊指定を見直されるとこの活字文化が破壊をされるという指摘がありますが、この点については公取はどのようにお考えになっておりますか。

舟橋政府参考人 お答え申し上げます。

 特殊指定を廃止するということで、宅配がなくなる、それから新聞の質も低下する、そういったことで活字文化に悪影響が生じるんじゃないか、こういう御指摘があるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、新聞の宅配サービスというものは、国民サイドの強いニーズがもうずっと昔からある、そして事業者の販売政策上も重要である、この双方が相まってこの制度を支えているということでございまして、今後ともそういうサービスがなくなるということは考えられないことでございます。

 また、国民が質の高い新聞を求めておる、それから新聞社も新聞の質、これを高く維持したいということをみずからの責務と位置づけておるというふうに理解しておりまして、特殊指定が廃止されたからといって新聞の質が低下する、活字文化に悪影響が出る、そういったことはないというふうに考えております。

後藤(斎)委員 先ほど公取からお答えがありましたように、無代紙の提供であるとか景品、実際、洗剤を勧誘時にもらうとか、そういうのは確かにこの部分で独禁法違反だというお話でありました。逆に言えば、この特殊指定そのものの実態が、そういう問題があればきちっともちろんチェックをして指導はしていると思うんですが、それがないままこの特殊指定の問題だけが先行するのは若干いかがなものかなというふうな気持ちもあります。

 そして、独禁法の七十一条の部分で、この特殊指定の制定の場合は、公聴会を開いてということが義務づけられております。ただ一方で、廃止の規定がないということでございます。ですから、この特殊指定の見直しというのは、先ほど業界の方ともお話をされているというふうな御指摘がございましたが、今後はどんな形で手続が進められていくんでしょうか。先ほどお話をした、まず特殊指定の実態をきちっとチェックすることから始めるべきだという考えもあるんですが、その点も含めてお答えをいただきたいと思います。

舟橋政府参考人 お答え申し上げます。

 特殊指定の見直しにつきまして、これまで新聞発行本社とか販売店の方々でプロジェクトチームというのをおつくりいただいています。そのプロジェクトチームとこれまでも何度か意見交換を行ってきておりまして、今後も引き続きそのPTとの意見交換などを進めていきたい、そして六月ごろまでに一定の結論を出したいと考えておるところでございまして、結論に至った場合には、これまでの四本の特殊指定と同様、パブリックコメント等を行っていくということを考えておるわけでございまして、委員御指摘の景品につきましては、今回の特殊指定とはちょっと別の、景品表示法の方の問題ではないかなというふうに考えております。

後藤(斎)委員 大臣、大臣が直接、独立機関である公取にどうこうという意見はなかなか申し上げにくい部分があるかもしれないですが、ただ、大臣、やはり、確かに宅配制度の問題と特殊指定の問題は若干別な次元のものかもしれません。ただ、各界、また国会の中だけではなくて、都道府県の方々も含めていろんな疑念があるということは事実であります。

 ただ一方で、やはりこれが、新聞が単なる商品であるかということもいろんな意味で議論をされます。ある意味では、この五年間の小泉政治の中で、市場原理だけで線を引けばいいじゃないかというふうなことも確かにあったのかもしれませんが、そういうふうな風潮の中で、大臣が、経済産業大臣としてでも、政治家二階氏として、これからやはりこの問題についていろんな形で御意見は、発言を既になさっておるようでもありますし、今の御議論を聞きながらどんな御感想を持たれたのか、端的にお答えをいただければというふうに思います。

二階国務大臣 ただいま後藤議員と公取の舟橋取引部長との御議論を伺っておりまして、だんだんとこの議論は狭まってきておるというか、一層公取と関係業界との間で話し合いを詰めていくことが大事だということを先ほどから伺っておって、率直な感想であります。

 去る三月二十七日の参議院予算委員会におきましても、総理は御答弁の中で、この問題につきまして、業者とよく話し合われることを期待しているという答弁でありましたが、私どもは、公取と新聞業界がしっかりとした話し合いを行っていただくこと、これを望むものであります。しかし、今、政治家としてどうだという御意見または御質問であります。

 私の自由民主党の中において所属する政策グループ、新しい波というグループにおきまして、先般、「公正取引委員会はこの六月を目途に、新聞業等にかかわる「特定の不公正な取引方法(特殊指定)」の見直し作業を進めている。 新聞は活字文化の一つとして全国あまねく網羅された個別配達制度を通じて、国民の文化的生活を豊かにするとともに、政治や社会のあらゆる分野において国民が主体的な判断を行うに必要な情報を提供するなど、重要な社会的役割を果たしている。再販維持制度と特殊指定制度は両者一体のものとして新聞がその社会的役割を果たすことを支えているのであり、どちらが欠けても十分その役割を果たすことはできない。 我々は国民の文化的生活の向上、民主主義の健全な発展を目指す立場から新聞業に関わる再販維持の制度とともに特殊指定制度の継続を強く求めるものである。」これが新しい波のグループの決議でありまして、既に公取あるいはまた我が党のそれぞれの幹部のところにもこの決議を届けているところであります。

 そこで、先ほど既に申し上げましたが、委員の御指摘等、十分私自身も理解できるところであり、この点におきましては、公取に対しましても、私どもは関係業界と十分話し合いをされることを期待しておるということを、もう一度重ねて申し上げておきたいと思います。

後藤(斎)委員 大臣、お時間のようですから、どうぞ御退席ください。

 続きまして、先週金沢地裁で、北陸電力の志賀原子力発電所二号機の運転差しとめ判決が出ました。当時、緊急で、予想外ということもあったのかもしれませんが、経済産業省、原子力安全・保安院のコメントが一枚紙で簡潔に出ております。この中で、確かに民事ということでありますが、本判決を十分に検討しておりませんので具体的にコメントする段階にはありませんということのコメントが出ています。

 ただ、それ以降のいろいろな議論をお聞きしておると、やはりこれは、ある意味では単なる北陸電力の志賀二号機の問題ではないかなということもございます。それは後ほど触れさせていただきますが、三月二十四日以降、民事訴訟でありますが、判決、いろいろな形で御議論をされていると思いますが、まず、この運転差しとめ命令にどんな形でそれ以降御議論をされて、現在どんな御見解を持っておられるのか、保安院の方にお尋ねをしたいと思います。

広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 三月二十四日に金沢地方裁判所で、志賀原子力発電所二号機の運転差しとめ訴訟におきまして、被告の北陸電力側敗訴の判決が言い渡されました。判決の主な理由といたしまして、志賀原子力発電所二号機の耐震設計において、最新の知見、すなわち直下地震、マグニチュード六・五の設定に関すること、地震調査研究推進本部による周辺活断層の評価、地震動を想定する方法である大崎の手法に関することなどが考慮されていないことが挙げられております。

 しかしながら、国は、従前から、原子力発電所の耐震安全性を含む安全性の確保に当たりましては、常に最新の知見を踏まえて安全性を確認することが重要であると考えて取り組んできております。これまで、安全審査に当たりましては、耐震指針への適合性はもとより、最新の知見を踏まえて安全審査を行っており、運転開始後も、適宜その時点で得られた最新の知見を踏まえた安全確認を行っているところでございます。このように、志賀二号機を含め、我が国の原子力発電所の耐震安全性に問題はないと考えております。

 志賀二号機を初め、原子力発電所の最新の知見を踏まえた耐震安全性の確保の状況は、地元の皆様に御理解をいただくことが大事であります。地元の皆様が無用の不安を持たないよう、各地域で耐震安全性の確保についてよく知っていただくための事業者の努力を徹底させるようにいたします。

 また、経済産業省としては、今後とも、厳格な安全規制を行うとともに、耐震安全性の確保の状況について、地元の皆様を初め、国民の皆様に十分に説明してまいる考えでございます。

後藤(斎)委員 今お答えをいただいたように、確かに、今までの部分が私もきちっと対応がされているというふうに認識はしておりますが、こういう司法での判断が一義的にも出たということは、やはりある意味では重く受けとめなければいけない部分もあると思います。

 そして、今の、少なくとも耐震の問題についても、設置許可という中で、まず経済産業省原子力安全・保安院が一次審査をする、その上で原子力安全委員会が経産省とは異なる視点の中から再審査をするという、ダブルチェックの体制がされているのももちろん地裁の判断の中に入っているというふうには思っています。ただ、やはり、このダブルチェックがきちっと機能したのかどうかというところにも、疑念というよりも指摘を投げかけられているというふうな、いろいろな御意見もございます。

 私もやはり、ここまできちっとしている部分にああいう形で、新しい原発に対して運転差しとめという、ある意味では衝撃的なことが判決で下ったということは重く受けとめなければいけないと思うのですが、このダブルチェックの体制にある意味では疑問符がついたという指摘もあるんですが、その点についてはどんな御見解でおられるのか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力発電所の耐震設計の安全審査につきましては、原子力安全委員会の定めた耐震設計審査指針への適合性はもとよりのこと、その時点の最新の知見を踏まえて厳正に実施をいたしております。

 耐震設計の安全審査について具体的に申し上げれば、敷地内外の地質調査などが詳細に行われ、過去の地震、活断層による地震、直下地震などを考慮した基準地震動が適切に想定されていることを確認しております。そして、この基準地震動に基づいて耐震設計が適切になされることなどを確認いたしております。このように、志賀原子力発電所二号機の安全審査は適切になされていると考えております。

 志賀原子力発電所二号機に係る裁判では、原告側から、原子力安全委員会の審査には担当行政庁が影響を与え得る仕組みであり、ダブルチェックが機能していないことなどから、安全審査の存在を無視して原子力発電所の危険性を審理することが必要である旨の主張がなされていました。しかし、裁判所の判決では、かかる主張を採用できないとの判断となっていると承知をいたしております。このため、判決でダブルチェック体制について疑問が呈されているとは考えておりません。

 今後とも、耐震安全性の確保には万全を期し、国民の皆様の信頼を得られるよう努めてまいる考えでございます。

後藤(斎)委員 確かに、ダブルチェック自体に疑問がということは、そうかもしれません。ただ、やはり、今の国の審査のあり方自体に疑問符がということは、ある意味ではかなりパーセンテージは低いのかもしれませんけれども、事実の部分もあるのかもしれないので、これは原子力安全委員会の方にお尋ねをしたいんです。

 二〇〇一年から、先ほど原子力安全・保安院の院長の方からもお答えをいただいたように、安全性の原則というのはきちっと対応して、耐震についても非常に慎重に対応しておると。ある意味では、安全確保という大前提の部分では当然のことだと思うのですが、要すれば、二〇〇一年から原子力委員会自体で原発の耐震設計審査指針の見直しを行っているというお話をお伺いしております。

 五年たつ中で、いろいろな御議論が紛糾をして、なかなか専門的な部分で、工学的な見地、地震学的見地でまとまらないというお話もお伺いをしていますが、この指針を、この地裁の判決を踏まえてということではありませんが、やはり地震工学もかなりこの五年間で進んだということも踏まえながら、一方で、中部電力では、東海地震の予想の中で、国が定めた耐震基準をかなり上回った形で耐震補強をしているという事実もございます。

 現在の原子力安全委員会での原発の耐震設計審査指針の見直しの、内容はお答えいただけたらぜひお答えいただきたいのと、今後いつまでくらいにまとめるのか、これは、これからの国民や住民の皆さんへの安心、安全という部分でも大変大きな要素だと思うんですが、その点についてお答えをいただきたいと思います。

片山政府参考人 御説明を申し上げます。

 原子力安全委員会におきましては、耐震指針検討分科会を設けまして、最新の地震学あるいは地震工学の科学的知見を反映させて、原子炉施設の耐震安全性に対する信頼性を一層向上させるということを目的に、委員御指摘のとおり、平成十三年七月以来、耐震設計審査指針の改定に向けた議論を精力的に進めておるところでございます。この分科会におきましては、最新の知見を反映すべく、指針の具体的な改定案について議論をしているところでございます。

 例えば、最新の地震学あるいは工学的知見を踏まえた基準地震動、こういうものをどういうふうに高度化していくのかという点、あるいは施設に要求する耐震設計の方針はどうあるべきかというようなこと、あるいは確率論の安全規制体系への本格的導入に向けた課題への対応はどうすべきか、このような点について検討が行われてきたところでございます。これまでの知見の蓄積、あるいは関連する技術開発の成果の取り入れについて、多くの分野の専門家から、意見を調整する過程でさまざまな認識が示されてきたところでございます。

 そのような状況でありますが、現在、議論は大詰めの段階でございます。原子炉施設の耐震安全性については国民の皆様からの関心も高いということを十分認識しており、専門家間での意見が集約され、ぜひ極めて早期に改定指針の取りまとめが行われるよう、全力を挙げて努めてまいる所存でございます。

後藤(斎)委員 大臣がいらっしゃいませんから、副大臣、この原子力の問題は、これから法案の問題に入りますが、やはりこの京都議定書の目標達成の計画の中でも非常に大きなウエートで明記がされております。あわせて、原子力政策大綱の中でも、原子力の二〇三〇年での総発電量の占める割合というのは、この間の委員会でも御答弁がありましたが、三〇から四〇と、現在の水準か、それ以上という役割を担うことになっています。さらには、地球温暖化という中では、この目標計画にも当然あるように、非常にクリーンであるという視点もございます。

 先ほど来のいろいろなお話の中でもございますが、やはり安全確保というのはもちろん大々前提ではありますが、原子力政策の促進という観点のバランスをどうとるかということも踏まえて、経済産業省としてどんな形で今後対応していくのか、簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。

西野副大臣 お答えいたします。

 後藤先生御指摘のとおりでございまして、原子力の燃料でありますウランは、例えばオーストラリア、カナダ等々、油と比較いたしますと、その入手先は決して偏在をしておるわけではありません。むしろ安定をしておる、このように見ておるところでございまして、当然ながら、それに伴う発電は、原子力は安全な供給体制にある、このようにも思われるわけでございます。

 加えて、委員も御指摘をされましたとおり、CO2の排出はない、こういう意味でもまことにもって地球に優しい、こういうふうにも当然ながら考えられるわけでありますだけに、原子力発電が今後一層推進をされますように取り組んでいくべきだというふうにも思っておるところでございますし、将来にわたってのシェアも三〇、四〇%という御指摘をされまして、あるいはそれ以上にも向かって取り組んでいくべきかな、私はそのように思っております。

 ただ、御指摘のとおり、我が国は核兵器によります唯一の被爆国でもあります。そんなことから、この原子力につきましては、安全確保ということが何よりも最重要であるわけでございまして、それが前提となるわけでございます。したがいまして、これらにつきまして、とりわけ耐震の安全性という問題、これの確保にどう努めるか、厳しい安全規制というものにも取り組んできておるところであります。今後も一層これを確かなものにしなければなりません。

 そういう意味で、実は、来月でございますが、四月から経産省の所管の中にも新たに耐震安全審査室を設置いたします。そして、従来に増します耐震安全性の確保に注力してまいりますし、そしてあわせて、目下審議会で御検討いただいておるところでございますけれども、この検査の内容、手法等々につきましても、さらに充実をいたしながら強化をしていきたいというふうに思っておるところでございます。

 そうした役所側の取り組みに合わせまして、当然ながら、地元はもとよりのこと、広く国民の皆さんの原子力発電に対する理解を深めていくために説明も十分していかなきゃならぬというふうに思っておるところでございまして、今申し上げましたとおり、すばらしい原子力発電の供給安定というものと、一方で、国民に対する不安の払拭、そして安全、こういうものに全力を挙げて万全を期しつつ取り組んでまいる、そのように考えております。

後藤(斎)委員 ありがとうございました。

 ぜひ安全性の確保という大前提も踏まえて、積極的な御推進をお願いしたいと思います。

 続きまして、本論に入りたいと思います。

 この京都メカニズムの問題は、温室効果ガスの排出量の削減という部分では、前回の委員会でも御論議がございましたが、いわゆる国内排出量の削減という、まず六・五%分を最大限対応する、さらには森林吸収源の三・九%もきちっと対応する、それを踏まえた補足性の原則という中で、京都メカニズムが目標達成に不足する差分について必要だというふうな制度になっております。

 原子力委員会さんたち、どうぞ。

 まず、環境省にお尋ねをしたいんですが、この六・五%、ここがなかなか厄介だと。民間事業者の方も含めたたくさんの方々が主体になって対応しなければいけないということも含めて、この六・五というのはなかなか現状も含めて難しいよというお話も何度もお伺いしていますが、環境省として、中心的手段だというこのマイナス六・五の温室効果ガスの排出削減の現状も含めた可能性と今後の見通しについて、まずお尋ねをしたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 この京都議定書の目標達成のための三本柱の一番の柱、国内の削減、こういうことでございます。

 昨年四月に閣議決定をされました京都議定書の目標達成計画、ここにおきましては、今御指摘のとおり、六・五%の削減、これを国内削減で果たしていくということでございます。そのための方法といたしまして、いろいろな対策技術、省エネ、そしてもう一つは、今御議論ありました原子力あるいは新エネのようなエネルギー供給側の対策、そして国民の運動、こういったもので、二酸化炭素といたしましては、九〇年比プラス〇・三%の排出量にしていくということにすることになってございます。さらに、代替フロン、メタン、一酸化二窒素等々の対策、これで一%弱の削減を果たす、こうなっておりますが、後者の方、最後に申し上げた方は順調に進んでおりますけれども、前者の方については、現在、大変厳しい状況ということになってございます。

 先ほど申し上げましたように、プラス〇・三までの水準を達成するというところが現状では七%強の排出量、こういうふうになってございます。そういうことでございますので、今後、この七%を埋めるべく精いっぱいの対策をしていくということで、私ども努力をしている状況でございます。

後藤(斎)委員 現状では大変厳しいが、なお引き続き努力をということでございました。

 その次の、森林吸収の三・九という目標も大変厳しいというお話を聞いております。平成十七年度の当初予算のベースで推移すると、なかなか予算的にも必要な森林整備ができないというふうなお話も聞いています。

 この森林吸収の三・九の目標について、現状、予算ベースというのも当然前提になりますが、どのような見通し、そして、もし必要な部分であれば、財政的なコストが対応できれば、その三・九をどんな形で手当てすれば対応ができるのかということも含めて、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

島田政府参考人 京都議定書において義務づけられております温室効果ガス削減目標のうちの、六%のうち三・九%分を森林吸収量で確保することとしたことを受けまして、林野庁におきましては、地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策を策定しまして、健全な森林の整備保全等の総合的な取り組みを進めているところでございます。

 しかしながら、森林の整備状況を見ますと、平成十七年度におきましては、例えば、間伐は年間三十五万ヘクタール程度の実行が見込まれておりまして、必要な年間平均事業量の七割程度にとどまっている現状でございます。このような水準で推移した場合につきましては、この三・九%の吸収目標を大幅に下回るような見込みとなっているところでございます。

 こうした三・九%の目標の達成につきましては、これを達成するためには追加的な事業費が必要になるというふうに考えているところでございます。昨年の環境税の要望に当たりまして、必要となる今後の森林整備量と平成十七年度時点の整備水準との差から、事業費ベースで年間約二千二百億程度の予算が必要であるというふうに推計したところでございます。

 このためには、私どもの方としても、一般財源はもとより、安定的な財源の確保ということが必要だというふうに考えているところでございまして、こうした森林吸収源対策の意義等につきまして、国民各層の皆さんの御理解をいただくように努めていくとともに、関係省庁とも連携を図りながら、引き続き必要な対応について検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

後藤(斎)委員 地球温暖化対策の全体の取りまとめは環境省さんがやられているわけなんですが、今のように年間二千二百億という財源がすぐどこか、左から右に出てくるわけでも当然ありませんけれども、やはり必要なものであればという意識は環境省さんにもあると思うんです。地球温暖化対策全体を取りまとめておられる環境省として、今のような財源が年間追加約二千二百億必要であるということも踏まえて、三・九の森林吸収の達成に向けてどんな御努力をされていくのか、財源手当ても含めてお答えをいただきたいと思います。

小林政府参考人 吸収源対策も含めまして、環境省の方で全体の管理ということをしているわけでございます。そのうち、吸収源対策についてどういうふうに取り組んでいくか、こういうことでございますが、私ども、林野庁との協力も含め、これから二つの方向で対処をしていきたいというふうに考えてございます。

 一つは、日本の森林、CO2をたくさん吸収しているわけでありますけれども、これがすべて国際的に吸収量として認められるわけではございません。森林経営をしているということで、これを国際的に証明していく、こういうことが大事でございます。国際的な説明、証明、こういったようなことにまずしっかり当たっていくということが必要だろうというふうに考えてございます。この点でも協力をしていきたい。

 その上で、さらに、財源確保対策を進めるということが必要になってくるわけでございますが、これにつきましも、林野庁とも連携をとりまして、昨年来、例えば環境税の提案等々をさせていただいておりますけれども、この点についても財源確保の工夫ということをしてまいりたいというふうに考えてございます。

 その二点で対応をとっていきたいというふうに存じております。

後藤(斎)委員 まず、基本であります六・五%の国内排出量の削減と森林吸収の三・九の大前提の部分をぜひ着実に対応していただくようにお願いを申し上げます。

 それでは、細かな点に入らせていただきます。

 京都メカニズムは、大きく三つの制度で成立がされております。いわゆる、NEDOが直接今回メーンでかかわるクリーン開発メカニズムのCDMの部分、京都議定書の十二条の根拠であります。共同実施のJIの部分、京都議定書六条の部分。さらには、国際排出量取引という京都議定書の十七条の部分。

 ただ、この三つ制度がございますが、最後に御指摘をしたいわゆる国際排出量取引という十七条の部分は、ややもすれば、実際の地球全体で見れば排出量の削減にはつながらないという部分もございます。この部分を形式的に、無理無理数字を合わせるということは、税の使い道、国民の理解を得られるということも含めて、やはり厳に慎むべきだというふうに私は考えます。

 いわゆるホットエアと称する余剰の排出枠の部分は、政府として、この制度が十七条の規定にあるわけですけれども、これは、これから政府が対応なさる部分、そしてNEDOに委託を行わせてクレジットを購入する、そういう部分の対象にすべきでないということを明確にしていくべきだと思うんですが、まず、その点についてお尋ねをしたいと思います。

肥塚政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生のお話のとおりでございまして、政府が、他国における温室効果ガスの排出量削減、いわゆるクレジットを取得するに際しては、二つの観点が大事だというふうに思っております。

 一つは、我が国の財政負担の程度に配慮しつつ、必要な量のクレジットを確実に取得すること、それからもう一つが、地球規模での温暖化防止や途上国の持続可能な開発への支援といった意義というこの二点でございます。また、あわせて、この分野に関心を持つ我が国企業の海外展開に資するということもあろうかというふうに思います。

 こういう趣旨、観点から考えますと、具体的なクレジットの取得に際しましては、途上国や中東欧諸国などで実際に排出削減事業が行われる、その結果生じた削減分をクレジットとして取得するというCDMでございますとかJI、それから二つ目に、具体的な環境対策と関連づけされた排出量取引の仕組み、グリーン投資スキーム、GISと言っておりますけれども、この両者を活用して、必要な量の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。

後藤(斎)委員 ぜひ、そんな観点からの取り組みをお願いしたいと思います。

 さらに、ちょっと細かくなりますが、これからこの法案が成立した以降、NEDOが、プロジェクトを選定したり、価格を決めたり、量を決めたりという、国連との関係も含めての実施主体になります。そんな中、今、NEDOが十七年末現在で二百九十七のプロジェクトを抱えているというふうにお聞きをしております。

 その中で、もちろん、ホスト国、途上国も含めて、いろいろな国から直接オファーがある部分もあるのかもしれませんが、やはり、NEDOがどんな基本的な考え方に立ってクレジットの優先順位をつけていくのかということが、先ほど局長から御答弁をいただいたように、財政という観点、そして途上国のこれからの持続的な経済発展という観点も含めて大変重要だと思うんですが、購入対象という部分を選んで決めるときの基準、選定の基準というものはどんな形でお考えになっているのか、お答えをいただければと思います。

肥塚政府参考人 先ほど申し上げましたように、対象としては、CDM、JI、それからグリーン投資スキームというようなものを考えております。

 具体的に取得していきます際に、クレジット取引については、予定した排出量が達成できるのか、これは事業が確実に行われるかあるいは相手国の制度運用が適切かといったようなリスクがあろうかと思います。したがいまして、NEDOでは、排出削減事業の成否それから相手方の財務能力、あるいは、もちろん提案されたクレジットの価格についての評価が必要だろうというふうに思っております。

 その際、今のような評価の上で、排出削減事業の種類とか事業が実施される国を分散させて契約をするという、クレジット取引全体としてのリスクを低減させる。個別事業については先ほど申し上げた評価と同時に、クレジット取引全体としてのリスク低減ということが必要であろうというふうに考えておりまして、こういう取り組みで、リスクに対応しながら確実でかつ費用対効果を考えたクレジット取得を図る必要があるというふうに考えております。

後藤(斎)委員 今局長がお答えいただいた一部の部分で、確かにリスクというのは、プロジェクトリスクもカントリーリスクもあるというのは承知しておりますし、NEDOがこの唯一の実施主体に選定というか選ばれたのもその部分の専門的な知見があるからだということは十分承知をしています。

 ただ、カントリーリスクやプロジェクトリスクがある部分はこのクレジットの実質の部分ではなくて、例えば、ODAの部分を上手に活用しながら、その全体の、限られた予算ですから、後で予算の話はしますが、やはり並行というか、実際のクレジットの部分とODAを活用した部分というのはある意味では並行的に考えて、そのプロジェクトリスク、カントリーリスクの部分も低減させるということも考えながらいかなければ、なかなか、クレジットの優先順位を実際つけたり国を分散させるといっても、大体幾つかというのはあるんだと思いますけれども、その選定というのがうまくいかない部分もあると思うんですが、ODAの活用も含めての御見解をお伺いしたいんです。

肥塚政府参考人 京都議定書の枠組みにおきましては、その実施を決めました二〇〇一年のいわゆるマラケシュ合意で、CDMプロジェクトへの公的資金援助がODAの流用であってはならないという実は決め事がございます。しかしながら、どういう場合にODAの流用になるかということにつきましては、国際的に必ずしも確立した解釈が存在するわけでもございません。

 我が国としては、京都議定書目標達成計画で、国際的なルールに従いながら被援助国の同意を前提としてODAの有効な活用を進めるということとしておりまして、このため、引き続いて、国際的なルールの範囲の中で、先生がおっしゃいますように、ODA事業を有効に活用してそれをクレジットの取得につなげていくというような努力をできるだけしなきゃいかぬというふうに考えております。

後藤(斎)委員 マラケシュ合意の流用というのは、ちょっと流用というあれが余りいい表現でもないような感じがするんですが、それはともかくおいておいて、実際、NEDOが調達を行うとき、じゃ、価格の問題に入らせていただきます。

 今回の予算の国庫債務負担行為の百二十二億ないし、実際NEDOにクレジット取得ないし管理業務で五十四億円の予算を計上しておりますが、そのときの単価はトン当たり六ドルだというふうに承知をしております。この六ドルがどうかというのは、現在、多分一番近い国際的な価格だというふうに思いますが、これからいろいろな形で変動するはずだと思うんです。国によってもプロジェクトによっても違う。

 ただ、ある程度の幅が、経産省さん、環境省さんがNEDOに全面委託を、調達の最終段までを含めて委託をするというときに、やはり適正価格というのが何らか、これが最低価格、最高価格なのか予定価格なのかというのはよくわかりませんが、安ければ安いほどいいということであれば最低価格とは言えないのかもしれませんが、何らかの適正価格というものがないと、調達手続が仮に進んで、じゃ、経産省さんや環境省さんが事後評価を例えば年度ごとにしますよというときに、やはり、何でこんな高かったんだ、安かったんだということになると思うんですよね。

 ですから、何らかの適正価格というものがないと、なかなかNEDOもゴーサインというか契約行為までまず至らないというふうに思うんですが、その適正価格というものについてどのようにお考えなのか、御見解をお伺いします。

肥塚政府参考人 まず、取得に際しましては、制度の透明性を確保するために原則を公募にする、そういう意味での透明性の確保を図りたいと思っております。

 公募は、繰り返しでございますけれども、ただその際、価格だけで評価するというのはリスクの関係がありますので、当然リスクが高ければクレジット価格は安い、逆であればクレジット価格は高いという関係だろうと思いますので、費用対効果を考えて確実にクレジットを取得するためには、価格とリスクを総合的に評価する。それから、先ほど申し上げましたようなリスクの分散というようなことも必要だろうというふうに考えております。

 それで、価格の妥当性でございますけれども、価格の妥当性については、今世界で取引されているクレジットのデータベース、もちろん全部の情報が公開されているわけではございませんけれども、ある程度データベースのようなものも整ってきております。そういうものも活用して、応募されたそれぞれの案件について類似のリスクを持つ既存案件と比較をする、まさにそこが今までの知識を生かしながらこれから発展させていかなきゃいけないところではあるんですけれども、それと比較することでこれを評価するのが適切じゃないかというふうに考えております。

 現在のところは、クレジット購入に当たって、リスクと価格の総合評価、あるいはリスクの分散の観点からの評価、それから今申し上げました類似案件との妥当性の評価といったようなことを考えております。

 今先生が御指摘の、予定価格、最低価格あるいは最高価格ということを設定することの、そういう特段の価格設定ということの是非については、今後ちょっと検討してまいりたいというふうに思っております。

後藤(斎)委員 今局長が、先ほどもお答えをいただいたように、確かに価格は難しい面もあります。

 ただ、やはり対象地域、国、例えば、タイであればタイ、中国であれば中国、フィリピンであればフィリピンといろいろな国がホスト国で散らばります。確かに、NEDOがこれからの予算的な手当て、追加的な予算手当て、クレジットの取得で大体十二人の人数を確保する、その前のフィージビリティースタディーやいろいろな改革によってそのチェックをする機能は大体既存のお仕事をされている方で十二、三人程度、ですから、二十四、五人程度で全体のプロジェクトを運営していくということになるというお話を聞いています。

 ただ、そのときに、やはり先ほどマラケシュ合意の中で、ODAの流用ではいけないというような、実際の規定はないけれども、そういうふうな緩やかな認識があるというお話だったと思うんですが、やはりそうであれば、JICAやジェトロやいろいろな機関とも連携をしていく必要はどうしてもあると思うんですね。

 どこで、例えばタイだったらタイという国に幾つか案件があって、その案件が、非常にプロジェクトリスクが高いものについてはやはりODAだという優先順位をつけながら、できるだけホスト国である例えばタイに理解をいただく中で、全体の供給量もふやす、価格もできるだけ低廉にするという努力は当然やらなければいけないことだと思うんです。

 ですから、NEDOの十二人プラスする体制と、その方たちが専門的な方だということは予見はできますが、NEDOの体制の部分と、ぜひ、JICAやジェトロとまた外務省も含めて連携をしなければいけない部分もたくさん出てくると思いますが、そういうふうな政府関係機関との連携の部分についてもお答えをいただければというふうに思います。

肥塚政府参考人 今お話しのとおり、NEDOは、これまで事業を通じて、京都メカニズムの制度でございますとか、それから新エネルギー・省エネルギー事業に関する専門的な知見を有する人材が育成されてきているというふうに考えておりますけれども、先ほど申し上げましたように、クレジット取得事業を行うに当たりましては、こういう人材に加えて、財務面を含めてプロジェクト審査の専門家を補強する、そして万全の体制にしなきゃいかぬというふうに考えております。

 それから、人数につきましては、今先生のお話のとおり、二十名程度ということを考えておりますけれども、まずNEDOの中で、これまで構築されてきたNEDOの海外ネットワークを活用するということに加えまして、先生のお話にございましたように、関連機関と密接に連携して、効率的な体制で事業を進めるようにしたいというふうに考えております。

後藤(斎)委員 もう一つ気になるのが、今、JIの部分も含めると、政府が承認されたプロジェクトが四十四あるというふうにお聞きをし、資料もいただいております。

 ただ、これを見ると、ある意味ではやむを得ない部分があるのかもしれませんが、ほとんどが大手企業さんだけが実施主体になっているものであります。例えばエネルギーの問題を議論するときには、風力とか水力とかいうのもありますが、なかなか中小企業という観点が出てこない。

 ある意味では、中小の小規模CDMの提言の見直しをこれからされながら、それをまとめて、小さいプロジェクトもCDMの部分で対応をされていく、提言の見直しも含めてされていくという話もお聞きをしておりますが、やはり勇気というよりも意欲のある中小企業の方が、例えば小さいプロジェクトであっても、タイや中国に行ってCDMの事業の主体になりたいというときに、少し政府でサポート、NEDOがサポートするのか、そういうふうな仕組みも鋭意つくっていく必要があると思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

肥塚政府参考人 御指摘のとおり、中小企業の中には、すぐれた省エネルギー技術あるいは新エネルギー技術を有する企業があるというふうに思っております。CDMの活用というのは、これら中小企業にとっても新たな海外展開のチャンスになるというふうに考えます。

 まず、NEDOによるCDM、JIの実施支援事業、これは事前手続とか設備に対して補助を出すという制度でございますけれども、こういう制度を活用して、人的、経済的支援が乏しい中小企業によるCDMの活用を支援していきたいというふうに考えております。

 それから、今先生がお話しの、国連の場でいわゆる小規模CDMのルール改善というのをリードしてきておりますので、こういう制度改善を通じて、中小企業にとっても参加しやすい小規模CDMの形成が促進されるということを強く期待しております。

後藤(斎)委員 続きまして、これは先ほども御指摘をさせていただいて、NEDOが実際にクレジットを調達するときの単価と量の部分にもかかわる部分であります。

 いろいろな資料の中で見させていただくと、現在のクレジットの世界の需給関係は、これは正確なものかどうかは別としても、ある機関が出しているもので、総体の供給量が約八億六千万CO2トン、これからの需要を日本とかオランダとか含めて見込まれる分が六億九千万トン、この差分がとりあえず一億六千万トンほどあるというふうなことも承知をしております。

 ただ、これが今、並行的にまだ国際機関の中で議論をされている、二つ、世界のクレジットの供給量をふやすということが、調達のしやすさとか、価格がより低廉になるとかいうことにももちろんつながると思うんですが、この平成十八年の末までにCOP/moP2の最終的な議論を今しているという、いわゆるこれは方法論の部分でありますが、炭素回収や貯留のプロジェクトをCDMにするということに定義が変わっていくと、CO2の削減量が世界で約二兆トンある、それはCO2の削減可能性の世界の総排出量の約百年分に相当する。

 仮に、この部分が達成をできると、クレジットの総枠というのは一挙に膨れるというふうな見込みもありますし、さらには、先ほども冒頭局長の方から御答弁をいただいた、いわゆるホットエアの部分について、仮に、ホットエアの枠を持っている国が規制の数量がなかなか達成できないというときには、いわゆる投げ売りをして価格が下がるという意見もありますし、いやいや、これから二〇一二年に向けて、かなりタイトになって値段は上がるんだと。

 いろいろな部分がありますが、いずれにしても、そのすそ野を広げるということが大変重要だと思うんですが、炭素回収・貯留のCDMプロジェクトにすることについての検討の部分も含めて、供給量をふやすという観点について御答弁をお願いしたいと思います。

肥塚政府参考人 需給の見通しにつきましては、先生のおっしゃったとおりでございます。

 ただ、その差分であります六億九千万トンの需要と供給サイドの八億五千五百万トン、一見あるように見えますけれども、こういうプロジェクトの中で、操業状況で実際発行されるクレジットの量が予定より少なくなったり、それから、登録中のプロジェクトの中で実際に登録されない案件というようなリスクがありまして、先生がおっしゃるように、供給の拡大についての努力というのが非常に重要だというふうに考えています。

 もちろん、我が国として、フィージビリティースタディーとかいろいろな案件発掘をやっていくのでございますけれども、ルールの問題は非常に重要だというふうに考えております。

 その中で、先般の締約国会議で、炭素隔離・貯留のプロジェクトをCDMにするための具体的な検討プロセスを進めるということで合意されておりまして、これは先生がおっしゃるように非常に大きなポテンシャルがございますし、我が国企業が競争力を持っている分野もございます。

 したがいまして、これが実際のCDMになって、つながり、供給が拡大していくという経路を、私どもとしても、その議論が早く進んでいくということを強く期待をしております。

後藤(斎)委員 局長、あわせて、先ほど触れさせていただいた原子力発電の部分がこのCDMに、これもマラケシュ合意だというふうにお聞きをしておりますが、入っておりません。

 これもいろいろな御議論を今して、何とか日本国政府としては、原子力発電のCDMの部分を適用内にしていくというふうな御努力をされているというふうなお話を聞いていますが、この点についても、かなり潜在的な、例えば、中国は今、これからの経済成長を見込んで、これから二十基原子力発電を新設、増設するという計画があるというふうにも承知をしています。例えば一基百万キロワットということであれば、一年間で例えば約五百万CO2トンということであれば、それはそれで、日本の年間一億トンも五年で割ると二千万トンでありますが、かなり大きく寄与するということもありますけれども、その点の原子力のCDMの今の現状と、これからの国際機関での議論のあり方について、簡単で結構ですから、御見解をお願いします。

肥塚政府参考人 今御指摘のとおり、マラケシュ合意で、原子力発電のCDMから得られるクレジットについては、京都議定書の目標達成に使用することを差し控えるということになっておりますので、原子力CDMからクレジットを取得することは、当面、取得の対象にできないということでございます。

 ただ、原子力の推進は、今おっしゃいましたように、エネルギーの安全保障あるいは温室効果ガスの削減に貢献するというものでございますので、昨年五月のIEA理事会でも、原子力の評価については共通の認識は得られておりますし、昨年七月のG8サミットでも、原子力の技術開発に努めるということが合意をされていると承知しております。

 したがいまして、今後とも、国際的な検討の場において問題提起を行い、あるいは、将来の枠組みの議論も念頭に置いて、原子力の安全の確保と核不拡散の遵守を前提に、原子力発電プロジェクトから生ずるクレジットを目標達成に使用できるように、いろいろな場で幅広く検討されるように努力していきたいというふうに考えております。

後藤(斎)委員 そのクレジットを実際取得する際に、財源というものがないとこれもまたできません。

 先ほど、日本国としたら、できるだけ安くて、量もきちっと確保できるのが望ましいのは当然だと思いますが、やはりこれからこの財源の主体になる石特会計も見直しになります。一億トンというクレジットをこの五年間で取得する、やはり財源というものもきちっと確保していく必要があると思うんですが、もちろん幾らというのは先般の委員会では大体の幅が出ていますが、人を確保するということだけ大前提だと思うので、その点について御確認をしたいと思います。

肥塚政府参考人 先ほどから先生御指摘がありましたように、財政負担に配慮しながら必要なクレジット量を確実に確保する、取得していくというためには、供給を拡大させるためのいろいろな努力と取り組みというのが重要だというふうに認識をしております。

 一方で、財源でございますけれども、石特会計の見直しが行われることになっておりますけれども、今後とも、クレジットの需給状況や毎年の財政状況等を踏まえて適切に対応したいというふうに考えております。

後藤(斎)委員 大臣がお戻りになられたので、最後に。

 やはり、二〇一二年までの京都議定書、確実に履行ができるようにしなければいけないのはもちろんであります。ただ一方で、よく指摘をされているように、今大体、京都議定書を批准している国の温室効果ガスの排出量は三割くらいしかない。それが、二〇一二年になると多分二割くらいに減っていく。今批准をしていないアメリカにしても、中国を含め途上国、中国が今途上国と言われるかどうかは別としても、やはりもっと幅広くやっていかなければいけないということもあります。

 先般、環境省が英国の環境・食糧・地方開発省と二〇五〇年までに一九九〇年比でCO2などの温暖化ガスを半減するのに必要な政策を研究する共同プロジェクトを始めて、二〇〇七年までにまとめるというふうな動きも出ております。

 大臣、やはりこれは、一人一人のもちろん問題でもありますし、それぞれ世界がどう共存して生きていくかという本当に不可欠な部分であります。エネルギーは毎日消費をしますし、食料も水もそうであります。ぜひ、幅広い観点から、二〇一三年以降のいわゆるポスト京都議定書と言われる部分も含めて、もっともっと積極的に取り組むべきだというふうに思いますが、最後に大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

二階国務大臣 ただいま後藤議員がお述べになりました、これからの京都議定書実現のために、さらにその後のポスト京都議定書、それらについてお述べになりましたが、今、後藤議員が御主張なさいましたことは私も全く同感でございまして、御一緒にまさに政党政派を超えてこういう問題に取り組んでまいりたいと思っております。ただいま、また、私は、環境庁長官の臨時代理を承っておりまして、きょうは、この御質問をいただき、大変印象深く思っております。

 また、この主要排出国、米国、中国、インド、いろいろな国際会議で、中国、インドのそれぞれの大国といいますか、言いかえれば巨大国といってもいいくらいのこの国が発展途上国だ、こういう定義がなされるわけですが、私は、発展途上国なんてこの国をつかまえて言うのはいかがかなと思うんですが、先方もやや使い分けをしておるような感じがするわけであります。しかし、これらにつきましては、これは粘り強く交渉を重ねて、やはりアメリカあるいは中国、インド、それぞれ私どもの間ででも、つまり政府間同士でも毎日のように接触の機会があるわけでありますから、政府を挙げて取り組んでいくことが必要だと思っております。

 昨年の十二月でしたかCOP11で、アメリカや主要途上国を含むすべての国が参加する対話、この開始が合意されたということは大変注目すべきことであります。しかし私は、これは楽観はできないと思うわけでありますが、この対話の場を通じて、すべての主要排出国が参加する国際交渉を早期に開始することを目指してまいりたいと思っております。

 なお、現行の京都議定書を補完するために、米国、中国、インドも参加するアジア太平洋パートナーシップ第一回の協議が先般シドニーで開かれまして、西野副大臣に出席を願ったわけでありますが、技術協力を軸とする取り組みも積極的に推進をしてまいりたいと思っております。

後藤(斎)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

石田委員長 次に、松原仁君。

松原委員 地球の環境を守るという問題は、大変に重要な課題であります。その課題に日本が、特にこの先進国の中で最も力を入れて闘っていく姿は、やがて必ず、既に評価もされておられますが、さらに将来は大きく評価をされるものだと思っております。

 個人的に申し上げるならば、私は、やはりこれは、日本における世界に対しての新しいビジネスチャンスの到来というふうにもとらえることができるだろう。これから質疑の中で明らかにしてまいりますが、日本のこの環境・省エネ技術というのは世界の最先端を行っているわけでありまして、このことは大変に我々の強みであります。しかも、京都議定書というものが、日本の京都、千年の歴史のある京都で行われた。そして、京都メカニズムという中において、CO2の排出量がクレジットという形態によって売買がされるという、こういったものの売買ということも恐らく人類史上初めての、物、製品を売るのではなくて、省エネという、物からの排出量を売り買いするという、これ自体も極めて画期的な一つの新しい商品になるだろうというふうに思っております。

 したがって、この分野において、逆に言うならば、アメリカ等が参画をしていない段階において、ある意味で日本は、このいわゆるクレジット市場というものをつくり、そしてその胴元としての実績を上げ、世界の環境のクレジットは日本のマーケットで売り買いされるというふうなことも含め、展望を開いていくべきではないかというふうに思っております。それは新しい日本のビジネスチャンスであり、それに付随するさまざまなチャンスの到来を意味していると思っております。そういった中で、幾つか質問をしてまいりたいと思います。

 まず、最初にお伺いしたい。

 クレジット取引ということが言われております、クリーン・ディベロップメント・メカニズムにおいてクレジット取引と。米国企業が今言ったCDM・JI事業の実施やクレジット取引に参加をするということは、アメリカ自体は京都議定書にサインをしていないわけでありますが、米企業はこれに参画をすることが可能かどうか、このことについてお伺いいたします。

小林政府参考人 環境省でございますけれども、京都議定書全般のお話になりますので、私の方から答弁をさせていただきます。

 米国でございますけれども、京都議定書の非締約国、こういうことになりますから、まず、みずから京都メカニズムを活用して排出枠を取得する、今おっしゃったような削減量クレジットを取得するということ、あるいは売買をするということはできませんし、また、当該国のみで活動する法人、アメリカ法人は京都メカニズムへの参加を認めることもないということでございます。

 ただ、米国のような非締約国の法人でございましても、例えば日本あるいはフランスでも結構でございますが、そういった締約国に現地法人を設立いたす、そして、削減プロジェクトが行われる場所の国において、そういった具体的な削減プロジェクトのプロジェクト参加者として認められるというような場合には、その企業自体についてはクレジットを取得することができるかと思います。

 しかしながら、それは米国が参加するという意味では違うわけでございまして、先生今御指摘のとおり、外国法人としての米国企業が例えば日本に売るためのクレジットを取得するということ、それはあり得るわけでありますけれども、アメリカがクレジット取引に参加できるかという点でございますと、できない、こういうことになろうかと思っております。

松原委員 さらにお伺いをしたいわけでありますが、当然、米企業が、まあいろいろな条件がありますよ、その条件を乗り越えてというか、条件を満たしてクレジット取引に参加することは可能であるというお話を今承ったわけでございます。

 そうすると、その米企業は、クレジットの売買というか、例えば、具体的に、そのための事業、JIを行うとか米企業側の事業を行うとかいうことを含めて、このことに関しては、利益を上げないことは彼らは企業ですからやりませんから、利益を上げるということは、クレジットというか、京都メカニズムに即して利益を上げるということは当然想定されますよね。お伺いします。

小林政府参考人 米国企業が、例えばCDMになるようなプロジェクトを途上国で行って、そしてそのクレジットを例えば日本に売ることで利益を上げるということは当然可能だというふうに考えております。

松原委員 私は、先ほど後藤委員の質問でも二階大臣答えておられましたが、米国はこれに入っていないわけであります。いろいろな理由をつけて入っていない。これ自体、私は、米国が入らないで世界の環境問題が語れるのかと。これはもう極めて不十分だろうというのは前から指摘があったわけでありますが、アメリカというのは、ある意味でそういう、あるダブルスタンダードをとるようなところがあります。

 私が申し上げたいのは、しかしながら、米企業は、このクレジット取引に参加する、具体的に事業を行うこともあるだろうし、単に金融商品としてこれを扱うこともあるでしょう。そのことによって当然、企業ですから、利益があるからやるわけです。利益がその企業に上がれば、その企業から、さまざまな意味において、米国の税収にそれは反映される可能性がある。

 これは当然のことだと思いますが、お答えになる立場ではないかもしれませんが、ちょっと答えてください。

小林政府参考人 今の御指摘のとおりでございますけれども、ただ、先ほど申し上げましたように、締約国にある米系企業がクレジットを取得するということになろうかと思います。ですので、米国の内国法人が米国政府に売って何か商売をする、あるいはそういう内国法人そのものがその利益に関連するということは、経路としてはなかなか難しいかなというふうに考えております。

松原委員 いいんですよ、それはわかっているんですよ。

 私が申し上げたいのは、要するに、京都メカニズムによるクレジットの取引、金融商品としての取引も含めて、そのことによって米政府が利益、利益というか税金、税収を獲得する可能性があるということなんですよ。私はやはり納得できない。なぜ納得できないかといえば、アメリカは京都メカニズムに参加していないんですよ、国として。にもかかわらず、アメリカ政府は、その税収において、京都メカニズムの恩恵に浴する可能性がある。特に金融商品はアメリカで一番盛んなんですよ。

 後で質問しますけれども、日本がどうしても最後にちょっとクレジットが必要になったときに、非常に高値でつかまされて、その利益は、アメリカの企業が利益として持つ、そしてその中から、アメリカにその利益の一部が税収で入る、こういうことがどんどん起こっていったとしたら、何か非常に、資本主義といえばそれはそうだということかもしれぬけれども、私は腑に落ちない。

 ところで、こういった排出権が実際に、既にマーケットとして、私は、この世界最大のマーケットは、日本が胴元でつくるべきだと。我々が一番血を流すのだから、我々が世界で一番技術があるんだから、我々がこれに関しての、将来的な金融商品になろうとなると、それは東京市場か京都市場か大阪市場かわかりませんが、我々がこのマーケットを仕切らなきゃいかぬのだけれども、下手したら、参加していないアメリカのマーケットで金融商品として最も売買される可能性もある。わからないですよ、どういうことになるのか。

 アメリカのシカゴではこれについて取引がされていると言われておりますが、これはどういうふうに運営され、どんなふうになっているのか、お伺いします。

深野政府参考人 お答えいたします。

 今お尋ねのありましたシカゴにおける排出権取引市場でございますけれども、これは、二〇〇三年十二月に取引が開始された、民間企業主導の自主的な排出権取引制度でございます。参加者は、今大体百社程度、あるいはそれ以上と言われておりますけれども、一九九八年から二〇〇一年の四年間のそれぞれの参加者のそれぞれの実績排出量の平均値を基準に、二〇〇三年から二〇〇六年まで毎年一%ずつ削減することを目標とする、そういうコミットメントをいたしまして、これを超過達成した場合にはその分を売却することができるということでございます。

 したがいまして、これはあくまでもそれぞれの参加者が自主的にコミットメントをした、そういうことから出てきます削減量の取引でございます。京都議定書に基づいて、国連による厳格な手続のもとに発行された他国における温室効果ガス排出削減量、いわゆるクレジットの取引とは基本的に異なるものというふうに理解をしております。

松原委員 この質問をさらに続けていきますが、では、京都議定書におけるクレジットについて、これはまたそれぞれ先物市場とかマーケットでいろいろなものを取引しますよ。アメリカで金融商品として取引される可能性というのは、現段階では可能性としてありますか。

深野政府参考人 いわゆる京都議定書の削減クレジットでございますけれども、これにつきましては、このクレジットが発行された後について個々の取引を規制する、そういうものは特段ございません。

 ただ、その取引を行う企業が、締約国が持っております国別登録簿に口座を有しているということが条件になります。したがいまして、実態上はそういう締約国に所在をする、米系企業の子会社というのもあり得るとは思いますけれども、そういうところになろうかと思います。

 それから、こういったクレジットは、具体的に締約国の排出削減の約束達成に用いられる、それによって初めて価値を生むものでございまして、実際、投機的な理由での取引とかいう保有ではなくて、クレジットを必要としている国や事業者の実需に裏打ちされた、そういった取引が多いというふうに考えております。

松原委員 そういった取引が多いのは当たり前であります。当たり前でありますが、では、これはこういう質問をしましょう。シカゴにおいてこういった取引が実際に今行われている。日本においてそういう場所はありますか。

深野政府参考人 日本において公設の市場とかそういうところで取引をするということにはなっておりませんけれども、実態上、日本でも、仲介業者なども含めて、かなり活発に取引が行われる、そういった兆しが出ているというふうに考えております。

松原委員 ちょっと質問通告していませんが、ここで、最後に質問しようと思ったんですが、二階大臣にお伺いしたいんです。

 アメリカのシカゴではそういう取引がある。日本ではない。その傾向はあるけれども、ない。これは、金融商品として最後に引き受けるのは、例えば日本が一・六%分引き受けるとなれば、ほかが目標に達しなければ、一・六%が一・七パー、一・八パーになる可能性もある、これは可能性の問題ですから。そうすると、高くたって買うんですよ、これ。その可能性が一部でもあれば、投機家はうわっと砂糖に群がるアリのように集まってくるわけですよ。

 私が申し上げたいのは、そのマーケットがシカゴにはある。京都メカニズムに参加していないシカゴにある。今それは無関係にあるのかもしれないけれども、稼働し始めて、金がもうかるとなったらアメリカは、自分は関係ないけれども、このマーケットはこれから大きくなりますよ。将来、インドや中国は発展途上国で入っていません、入ると。アメリカも入ると。私は、一大マーケットになると思うんですよ。それが、我々は必死に努力して、京都で会議して、クレジットを買って、がんがんやって、金融商品としてはアメリカががばがばもうけますよと。可能性の問題ですよ。そんな話が納得できるだろうか。

 大臣にお伺いしますが、今、アメリカのシカゴ市場がある、日本ではまだそういったものはない、こういうふうなお話であります。私は、これは、そういったものを日本は仕掛けていかなきゃ、余りにもお人よしになってしまうんじゃないかと思います。

 何としてもこういったマーケットをつくり、少なくともアメリカは、そうはいっても立場的に弱いんですよ、参加していないんだから。アメリカが参加していない今、中国やインドも途上国枠でやっていない今、まず最初に日本において世界最大の環境のこの問題に関しての、CO2以外のほかの取引も出るかもしれない、そういった取引は全部東京でやります、京都でやります、そういったマーケットをきちっと準備して立ち上げるというのは国益にかなうと私は思っておりますが、大臣の御所見をお伺いいたします。

二階国務大臣 シカゴにおける排出権取引の市場につきましてるるお話がございましたが、現在既に、民間企業や地方団体、大学等の業種から、百以上の参加があると聞いております。

 そこで、一九九八年から二〇〇一年の四年間の実績排出量の平均値を基準に、二〇〇三年から二〇〇六年まで、御承知のとおり、毎年一%ずつ削減することを目標とした。超過達成した場合にはその分を売却することができ、逆に、目標に達しない場合には排出権取引、排出権を取得することとされておることは御承知のとおりでありますが、我が国にそうした市場を開設するといいますか、具体化していくということに対してどうだという御質問であります。

 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、いわゆるNEDOが、他国における温室効果ガスの排出削減量等、いわゆるクレジットを取得する際に、透明性確保の観点から、原則公募を行うことが適切と考えておるわけであります。

 ただ、我が国企業は、途上国の持続可能な開発や地球規模での温暖化防止に資するすぐれた省エネルギー技術を有していると認識しております。こうした我が国の企業は、CDM・JIプロジェクトを新たな海外事業展開のチャンスととらえ、積極的にこのプロジェクトに対しての計画、実施、またクレジット取得に積極的に今日も参画をしているところでありますが、すぐれた技術を有する我が国企業がNEDOに対して競争力を持った提案をしていただくことを我々は期待しているわけであります。

 ただいまの御提案の趣旨等は、ちょうど、先ほども申し上げましたように、私は経済産業省と環境省を今担当しておりますので、この機会にしっかり勉強して、またいつか御報告をいたしたいと思っております。

    〔委員長退席、上田委員長代理着席〕

松原委員 実は後の質問の部分のお答えも入っていたのかもしれませんが、今の部分は、きょうの質問の一番の重要なポイントなんですね。

 要するに、日本にマーケットをつくるべきだと。シカゴで行われている、日本ではそういったマーケットまでいっていない。これは行政として、つまり、これはきょうの直接的なテーマではないかもしれない。しかしながら、これにかかわるものとして、クレジット売買のマーケットの正統性を一番主張し得るのは日本だと思うんですよ、京都議定書も含めて。それは、豊臣秀吉が三法師を連れてきて、これを見ろといって織田信長の後継に名乗りを上げたようなものでして。

 私が申し上げたいのは、日本の国がこの取引のマーケットを、アメリカが普通だったらとるんですよ。アメリカは世界最大のマーケット市場だからとるんですが、彼らがとることはやはり正統性に欠けるんですよ、彼らは京都メカニズムに入っていないんだから。日本がこのマーケットを今つくらないと、私がさっき言っていたシカゴ市場は、必ずこういったクレジットの世界マーケットになりますよ、このままいけば。何もしなければシカゴ市場がなるんですよ。しかし、本来であれば、アメリカ国内にあるのはどう考えたっておかしいんですよ、アメリカは入っていないんだから。だから、私は、日本においてそういうマーケットをつくるべきだと。

 ですから、これは、今大臣は環境大臣を事実上兼務しておりますが、金融の問題ですから財務大臣の領域になるんですか、そういった担当の人とも話をしていただいて、特にこれは日本のいわゆる産業の活性化にかなり結びつく案件だと思うので、何としても、国益から考えて、このクレジット取引のための金融市場、マーケットは日本に断固つくる、ぜひともその検討はもちろん進めていただきたいんです。私は、二階大臣だったら、この事の重要性、今がチャンスだということも御理解いただけると思うんで、御決意をお伺いいたしたいと思います。

二階国務大臣 御意見として、十分承っておきます。

松原委員 ぜひ、決意を持って、やはりこれは国益に絡む問題でありますから、頑張っていただきたいと思います。

 次に、NEDOがクレジットを取得するに際し、アメリカ企業を含む他国の企業からも取得を行うということに関して、そのことは可能性としてはあるのか、それからその思いはあるのか、この辺についての御見解をお伺いしたい。

肥塚政府参考人 クレジットの取得に際しましては、透明性確保の観点から、原則公募を行うことが適切だというふうに考えております。したがいまして、先生がおっしゃった可能性というのはあるだろうというふうに考えております。

 ただ、先ほど大臣が申し上げましたように、我が国企業は、省エネ技術あるいは再生エネルギー、いろいろな技術で競争力を有しているというふうに考えておりますので、既にCDM事業等で、海外展開をチャンスととらえて非常に頑張っているというふうに思っておりますので、そういうすぐれた技術を持つ我が国企業が競争力を持った提案をしていただくということをまず期待しております。

 それから、あわせてでございますけれども、私ども、従来から、我が国企業のCDMあるいはJIプロジェクトを支援するために、先ほど申し上げましたCDM手続の改善、審査の迅速化といった環境整備とともに、フィージビリティースタディーでございますとか、いろいろな支援をやってきております。こういう支援を引き続きやることによりまして、我が国企業の活動あるいは競争力を強めていきたいというふうに考えております。

松原委員 公募ということであります。公募というのは、私は、世界が一つの経済になってきつつあるので当然必要だと思いますが、公募をする場合に、公募の具体的内容というのは、これは具体的な細かい詳細をここで語っていただく必要はありません、どういうふうなのが一つの基準としての考え方にあるかをお伺いしたい。

肥塚政府参考人 公募に際しましては、もちろん価格が一つの要素でございますけれども、CDMあるいはJI事業につきましてはさまざまなリスクがございます。クレジットは実際発行されるのかどうか、あるいは削減事業の成否、それから財務能力等々がございますので、そういうリスクというものと価格というものを総合的に判断することになろうかと思います。

松原委員 私は、公募の金額だとか数だとか、それは金額と数が完全に整合性を持っているとも思わないんですが、やはり日本企業を育成し優先するというスタンスは、公募ということでありますが、必要なんだと思いますが、日本企業に対してのアドバンテージというのは、具体的に可能性としてはあるんですか、ないんですか。

肥塚政府参考人 先ほど申し上げましたように、我が国企業はすぐれた省エネルギー技術等を持っているというふうに考えておりますので、そういう企業がNEDOに対して競争力を持った提案をしていただくということをまず強く期待しております。

 それから、あわせて、NEDOとして、CDMあるいはJIプロジェクトに取り組もうとする企業に対するいろいろな支援を実施していきたいというふうに考えております。

松原委員 結果としては、私は、冒頭申し上げたように、環境産業というのはまさに一つの大きなビジネスになると。地球がこのままの状況で進めば人類は地球と共生できなくなるだろうと言われている中で、私は、日本の環境産業を育成するという観点、先ほども後藤議員の質問にもありましたが、これは大いに取り入れてもらいながら、やはりそういった腹を持って公募というものもお考えいただきたいと思うわけであります。

 次に、この問題をちょっとお伺いしたいわけでありますが、クレジットの価格が高騰する場合、今、どれぐらいに高騰すると思っているのか。こういったクレジット価格の需給についての現状と見通しについてお伺いいたします。

肥塚政府参考人 価格でございますけれども、二〇〇五年の価格についての世界銀行あるいは民間調査機関の調査によれば、約五・六三ドルあるいは約五・九ドルといった数字が示されております。また、将来につきましては、世銀の調査によると、二〇一〇年時点で平均価格が十一・四ドルという予測がございます。

 それから、需給でございますけれども、需要につきましては、これもある民間調査機関の調査によりますれば、二〇一二年までに約六億九千万トン、一方、供給については、国連のCDM理事会へ登録済みあるいは既に登録手続中のプロジェクトから八億五千五百万トンのクレジット発行が見込まれるという調査がございます。

 ただし、これらのプロジェクトの中には、操業状況等で実際に発行されるクレジットの量が予定より少なくなる、あるいは手続中のクレジットの中で実際に登録されない案件が生ずるといったような状況にございます。

 こうした需給状況を踏まえますと、今後、必要なクレジットを確実にかつ費用対効果を考えて取得していくためには、世界全体としてのクレジット供給量の一層の増大を図る必要があるというふうに考えております。先ほども申し上げましたように、このために、私どもとしても、供給拡大に積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。

松原委員 このクレジットが、先ほどからるる言っているように、投機の対象になる可能性、こういったものについての検証とか考察というものはなされておりますでしょうか。

深野政府参考人 先ほどもちょっと申し上げましたように、このクレジットの取引の現状でございますけれども、あくまでもこれは排出削減の約束達成のために用いることによって初めて価値を生む、そういうことがいわば条約の中でつくられたものでございます。

 したがいまして、そういった性格から、今行われております取引は、投機的な理由のものではなく、むしろ実需に裏打ちされたものになっているんではないかと考えておりまして、基本的には、クレジットの性格からそういうことになるんではないかというふうに考えております。

    〔上田委員長代理退席、委員長着席〕

松原委員 実需に裏づけられているということもわかります。ただ、この環境のクレジットというのは物があるわけじゃないんですよね。まず、先物取引で大豆だ小豆だといえば物があるんですよ。これはまさに一つの、具体的なバックボーンがあるイメージの世界の話ですから、CO2が何万トンとか何億トンとかという。非常に、金融商品として国際社会の中で投機対象になるんじゃないかと私は危惧しております。

 また、こういうのを必ず投機対象にする人間が出てくる。最後は引き受け手がいるんですから。どんなに高くたって国のメンツをかけて買わなきゃいけないという人間が出てくると思えば、これほど投機する側からすればメリットのある商品はないと私は思うんですよ。

 私はそのことでお伺いしたいわけでありますが、CDM理事会等がこのクレジットを金融商品で扱わないようにという指導をマーケットに対して、将来、マーケットも今できていませんよ、でも必ずできる、それに対して指導する権限というのはあるんでしょうか。

深野政府参考人 CDM理事会につきましては、CDMプロジェクトの審査、要するにプロジェクトの初期段階からプロジェクトを実施するまでの間、そのプロジェクトが京都議定書あるいはその下の合意に沿ったものかどうかということをチェックする、そういう部分と、実際にそのプロジェクトが立ち上がって操業が始まったときに、今度は削減量が具体的に発生してくるわけでございますが、その削減量のチェックと発行、その削減量の発行までの仕事を担当しております。

 したがいまして、このCDM理事会は、発行されたクレジットのその後の民間事業者間での取引についての関与、そういった機能は持っていないというふうに考えております。

松原委員 私は、これは極めて金融商品として、くどいようでありますが、最後の引き受け手は高くたって買わなきゃいかぬのですよ、国のメンツにかけて。投資家にとってこんなおいしい商品はないと思うんです。

 もちろんそれは、結局、日本がいわゆる京都メカニズム以外の要素で目標値達成まで行きましたということだったら、投機というのはそういうものですから、それはそれで仕方ない。しかし、日本がそこまで目的達成しなかったら一・六パーがもっと行く、そうしたら、かなり高い額で日本政府はこれは買うだろうと。

 私は、そういった意味で、投機をさせないような何か仕組みを本来つくるべきだと思うんですよ。そういうことをしないと、これが金融商品として、とんでもない形で日本の貴重なお金がそこに注がれることになる可能性がある。だから、日本が京都メカニズムの中枢で、京都と名前がついているぐらいですから、私は、これは、一部もちろん金融市場もつくるべきだと思いますが、高値取引され、余り投機の対象にならないような、何か一つそういった基準みたいなものをできればつくるべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

片山大臣政務官 先ほどから委員の御指摘を伺っておりまして、私も金融取引関係の行政が長かったものですから、まことに、そういった御所感をお持ちになるのは理由のあることだなと思ってずっと伺っておりました。

 まさに今般こういった法律をお願いしておりますが、今度の京都メカニズムには期限があるわけですね。さまざまな価格の予測が出ておりますが、当然、その予測の中で、だんだん上がってくるのではないかということを予測しているところが多いわけです。

 でございますので、今般、予算の方にも八年間の国庫債務負担行為という、いまだかつてないような例外措置を財政当局の方にもお認めいただいて、計画的に日本として取得できることによって、投機のようなことが仮にも、そういうことはもちろんあるべきではないと思いますよ。これは善意の目的による国際的な枠組みですからあるべきではないんですが、委員も御承知のように、それは人間のことですから、ないとも言えないので、そういったところで我が国の国益に反するような、納税者のお金をより多く使わなければならないようなことにならないために計画取得ということを考えておるわけでございます。

 委員は金融も大変お詳しいんですが、現在の我が国国内の取引所的な枠組みですと、この商品は今現在ではちょっと乗ってはこないんですね。ただ、そのことと、大所高所の見地から我が国がそういったところに懸念を持って行動するということはもちろん別のことでございますから、御指摘の由は、今回法律を提出させていただく以上は、経産省としてはしっかりと認識してまいりたいと思っております。

松原委員 そうですね、片山さんはもともと財務省でしたね。ですから、では、片山さんにお伺いします。

 先ほど二階さんは検討するということをおっしゃったんですが、思い切って発言して結構だと思うんですよ。そうであれば、このマーケットを日本でつくるべきだと私はさっきから言っています。これについて、今まで長いこと財務省におって、そうだ、これは、日本はここで一つのビジネスチャンスだと。マーケットは、やはりマーケットの胴元が一番もうかるんですよ。日本がそれをやろう、こういうふうな発想で、二階大臣も恐らくそう思っているんですよ。思っているんですが、片山さんがおっしゃれば、よし、やろうか、こういう気になるかもしれない。片山さん、ちょっと御所見をお伺いしたい。

片山大臣政務官 私はあくまでも大臣のもとでの政務官でございますので、個別の所見を申し上げる身分ではないと思いますが、クレジットの取引所への上場というお話については、今の日本の制度にはなかなか乗らないので、これは今の財務省ではなくて、財金分離しておりますので、金融庁の方でまさにそういったことをいつもやっておりますし、商品ということになると、先物の分野等は経済産業省もそのルールづくり等には関与しておるわけでございます。

 委員の御指摘の趣旨は、取引所云々の細かい行政的なルールがどうあれということではなくて、やはり国益に沿った形で、今回の日本発のイニシアチブでもあった京都メカニズムの中でCDMが、約束した分量をきちっと取得できるということであると思いますので、そのことに関しましては、今回の法律の提出とともにやって計画的に取得をしてまいるということで、私どもは何とか適正な価格での取得ができるのではないかというふうに考えておるわけです。

 金融商品としての取引の可能性ということについては、先ほどから御質問のシカゴの排出権取引市場のことがございますが、やはりある程度民間的なイニシアチブで、そういったことをやろうという企業集団があって、大学の学識経験者などもおられて、立ち上げたわけですね。今、日本国内でそういう状況になっているかというと、まだそういう状況にはなっておられないので、大変御見識のある委員もイニシアチブをおとりになって、まず民の力でそういったことが出てくるということもおありになるのかなと考えております。

松原委員 きょうの質疑の中で、そういう人がどこかで見て、ああ、片山さんも前向きな発言をしている、二階大臣も肯定的であった、こういう中でそういう話が生まれてくれば、私は、それは日本にとって大きなメリットになると。くどいようでありますが、それはアメリカに持っていかれる話じゃない。彼らは京都メカニズムに参加していないんですから。くどいようですが、これを申し上げたいわけであります。

 このことで政府参考人にお伺いしますが、一・六%のクレジット取得を目指して平成十八年度までやっていく。これを実際に、その他の項目でどんどんと達成が低くなった場合、それをねらってハゲタカファンドならぬハゲタカ投資家がクレジットを買って、日本に高値で売りつけようと思う可能性があるわけであります。そのときに、逆に言えば、この五十四億円、とりあえず今回五十四億円でありますが、この金を有効に活用して、やはりゆとりを持って、私の師匠である松下幸之助さんはダム経営と言っていましたが、一・六%じゃなくて二%ぐらいを目指すぐらいの努力を、この額をふやすんじゃないですよ。額をふやすといったら、それはなかなか財務省がうんと言わないでしょうから、時期的にもう言えないでしょう。だから、額をふやすんじゃなくて、それでコストパフォーマンスを多くして、一・六パーより上の数値を目指すというのは当然スタイルとしてあり得る話だと思うんですが、どういうふうにこれを戦略的に考えているか、お伺いします。

肥塚政府参考人 できるだけ確実で、費用対効果を考えた取得、あるいは供給量をふやしていくというような努力は最大限やっていきたいというふうに考えております。

 ただ、一・六%については、国内対策を最大限努力しても目標達成に不足すると見込まれる差分として目標達成計画に決められておりますので、この計画に従って、国内対策を確実に実施することによってこの数字が増加することがないように、国内対策を頑張っていきたいというふうに考えております。

松原委員 お役人の答弁ですからそれ以上求めるわけにはいきませんが、だから、国内がどんなに頑張っても足りないから一・六パーなんだから、どんなに頑張ってもというのなら、頑張りが足りなかったらどうするんだ、こういう話でありますので、五十四億で予定の一・六パーよりも取得するようにやるというのは、これはリスクヘッジですよ。

 せっかくお座りになっていますから、西野副大臣、どうですか。リスクヘッジとしてもっと上を目指すというのは当然のことでしょう。

西野副大臣 御案内のとおり、目標達成のそれぞれの分野で取り組むわけであります。そして、国内で、目標に向かって、産業部門、民生等々精いっぱいの努力をした結果、それを実質補足する意味で一・六ということが決められておるわけでございますから、今はそれに向かって、取得できるような仕組みを今回の法律においても取り上げていこう、他国におくれないように、こういう意味合いもあろうかというふうに思っております。

 まず、国内からさまざまな手法で努力をすることが最大の課題であろうというふうに思っております。

松原委員 国内の努力が、リスクヘッジの問題ですから、私は、逆に一・六パーを超えたときに罰せられる話ではないと思うんですよ。予算が多過ぎたと財務省が文句を言ってくる筋合いじゃないと思うんですよ。だから、これはその上を目指すというのは、当然、戦闘的国家であればやりますよ。戦争するという意味じゃないですよ。闘う国家であればやりますよ。

 それで、私が次に申し上げたいのは、この京都議定書の枠組みでは、日本企業などがアメリカなどの非締結国や排出削減目標を課されない中国などに工場を移転すると、つまり我が国全体の排出量が削減することができるんですよ、今の法律というのは。そうですよね。例えば日本のある企業が、日本の国内でやったらCO2を出す。しかしながら、日本国内でそれをやらないで、他の、例えば中国、インド、アメリカ、この京都議定書に関係ない、関係があったって、そのメカニズムと排出量が関係がない、そういうところに企業を持っていけば得なんですよ。だから、口の悪い議員だったら、これから国家戦略として、CO2が出る工場はインドや中国やアメリカに持っていきましょう、こう言いますよ。でも、それは日本人の美風からいうとなじまない。

 私は、そういった意味で、こういう抜け道を他の議定書参加国が仮にやる可能性は、ないとは思うけれども、あった場合もあると、これはやはり京都議定書の欠陥じゃないかと思うんですが、お伺いします。時間がないので、簡単に答えてください。

小林政府参考人 御案内のとおり、温暖化対策のためには温室効果ガスの五〇%以上の削減ということがこれから温暖化防止のために必要だ、こういうことになっております。その第一歩の取り組みが京都議定書ということで、まず地球の大気を汚してきた先進国が重い義務を負った、こういうことでございます。

 過渡的な問題として、世界が全部参加するまでにそういった御指摘のようなことが事実として、可能性としてはあるのではないか、こういう御指摘だと思います。

 これについて、IPCC、世界の科学者等々が研究をされておりますが、現実問題として、そういった環境だけを理由にした国外移転というものはほとんどないだろうということで、私ども炭素リーケージと言っておりますが、先進国で削減すべき炭酸ガスが途上国に行ってしまう、事実の問題でございますけれども、いろいろな分析では、さほどないだろうというふうに考えられております。

 そういうことで、先進国の対策をまずもって進めていこう、こういうのが京都議定書の認識だというふうに理解をしております。

松原委員 私は、日本人というのはやはり性善説過ぎると思うんですよ。性善説、周りの人はいい人だ、そういうことはしないと。しかし、周りの人はいい人ばかりじゃないんですよ。金融商品として想定されていないと言うけれども、必ず金融商品として投機の対象になりますよ、これは間違いなく。必ず彼らはやってきますよ。彼らというのはだれとは言わないけれども、そういう人はいますよ。今回のこれだって、必ずそういったことを思惑で動くようなところも出てきますよ。私は、そういった意味で、性善説に立ちたいけれども、やはり地球環境全体を考えれば、性悪説的な要素も踏まえなければいけない。

 本当は、クレジットの売買の市場に関していえば、将来、アメリカが入ってくる。どこかで入ってくる。例えば、そういう環境問題を熱心にやる政権が入ってくる。昔のゴアさんみたいな人が大統領だったらやるかもしれない。そういうふうになってきたときには、私は、くどいようでありますが、このクレジットの価格が高騰する可能性も当然ある。

 また同時に、私は、このクレジット云々の前に、例えば、一トンの鉄をつくるのにどれだけの地球温暖化の影響を出すのか。日本の場合は、それは先進国ですごい高い数字になっているんですよ。もう時間がないのであえて答弁を求めることはしませんが。

 つまり、そういうふうな基準も入れて、やはり京都議定書は一つの、試作段階としてはああいうものがあった。しかし、アメリカも入っていない。先ほど大臣のお話があったように、中国もインドも発展途上国、発展途上国が何で国連の常任理事国なんだという気もしないではありませんけれども、少なくとも発展途上国枠でやっている。私は、そういうことを考えたときに、このメカニズム全体をどこかでもう一回見直しする、それは必要だろうというふうに思っております。

 これについての御所感はお伺いをしないで、最後に、二階大臣にお伺いしたいわけでありますが、それは、先般も……

石田委員長 松原さん、もう時間が過ぎておりますよ。

松原委員 済みません、一言で。

 東シナ海のガス田問題についてでありますが、とにかく国益を損なわないために、閣内の意見を統一してほしいと私は思っております。これについて、現在どのようになっているか、お伺いいたします。

二階国務大臣 お時間の関係もあるようですが、大事なことですから、答弁をさせていただきます。

 まず、先般来、この当委員会におきましても、あるいはまた他の場所でどういう発言をされたかわかりませんが、テレビ等にも御出演なさって、これに類するようは御発言であったんじゃないかと思うんですが、私は通りがかって見ただけで、よく見ておりませんので、これについては詳しいことは申し述べません。

 よく閣僚の発言と閣内不統一ということを言われますが、憲法第六十六条の第三項は「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」と定めておるわけでありますが、ここに「連帯して」と規定しているのは、内閣は国務大臣の全員で組織する合議体でありますから、内閣の姿勢について一体して責任を負うべきであるという当然の趣旨を明らかにしたものである、これが内閣法制局の見解であります。

 仮に、国務大臣の立場において明らかに内閣の一体性を損なうような言動をとった場合には、この規定との関係でいわゆる閣内不統一の問題を生ずるものと考えると言われております。しかしながら、国務大臣が一政治家あるいは政党の一員としての立場から個人的見解を述べたとしても、国務大臣の立場において内閣の方針に従うということである場合には、憲法第六十六条三項との関係でいわゆる閣内不統一の問題を生ずることはない。これは念のために法制局に問い合わせてみました。

 しかし、私は、政治の立場からも、また小泉内閣の閣僚の立場からも、再々議員から言われるこの内閣不統一について、私からできるだけ簡潔に申し上げておきたいと思います。

 先般、中国を訪問して以来、二月二十四日の閣議におきまして、私はその訪中の報告をいたしました。会談をしてきた相手の名前につきましてはもう時間がありませんから省略いたしておきますが、日中両国関係に関しての意見を交換した。また、これから経済貿易関係の拡大のための交流の強化、日中の経済貿易関係発展のための中長期ビジョンの作成について合意をした。また、国家発展改革委員会と商務部長の管轄において、今後お互いに交流を図っていく。次に、五月下旬には日本で日中省エネ・環境総合フォーラムを開催する、その際に大臣の出席を要請し、出席するという約束をいただいたと思っております。

 そこで、トウカセン国務委員との会談の際に、東シナ海の問題におきましては、三月上旬、次回の局長級会議をやろうという提案がありまして、私もそのことに同意し、第四回目の協議を行い、今度は第五回目の協議に向けて、今、外交ルートを通じて、日程等の交渉、今後の進め方等について協議をしておるところであります。

 問題は、温家宝総理との会談でありますが、私は、小泉総理からのごあいさつも伝え、小泉総理に対しても、先方からも、改めて私からもよろしくお伝え願いたいというお話があったわけであります。今後、日中間の幅広い交流の実現、具体的な取り組みについて、私の前に会談をして合意に達していることに対して、改めて総理に確認を求めたわけでありますが、そこで温総理は、それに賛同されると同時に、今後、西部大開発、東北振興、北京オリンピック、上海万博等のプロジェクトへの日本企業の参画を歓迎するとの意が表明をされました。東シナ海の資源開発問題については、係争を棚上げして、協力の海として両国の政府間で協議していくことを期待するという発言があったわけであります。

 そのほかのことについては省略をいたしますが、いずれにしましても、このような協議の結果を閣議で報告し、どの閣僚からもこれに対して異論が差し挟まれたわけではありませんので、閣内不統一ということについては、これはひとつ慎重に今後御発言を願いたいと思うわけであります。

 以上。

松原委員 終わりますが、私も今の二階大臣のお話を承りましたが、これは、きょうは経済産業委員会における質疑でありますから、経済の発展のための質疑であります。しかし、私は、国というものは、経済と精神とある、誇りと経済とある。両方大事なんですよ。どちらが欠けてもいけない。私は、その意味において、この誇りの部分に関してということも、内閣としては極めて重要なものとして取り組んでいただきたいというふうに思います。

二階国務大臣 これは東シナ海の問題等をめぐっての御指摘であろうと思いますが、国益を体して交渉するのは当然のことであって、これは中断しておった交渉の最初の交渉で、これからまだまだ交渉は続くわけであります。その間に、どなたがどういう発言をされたか存じませんが、閣内は、不統一ではなくて、小泉総理のもとに一致して日中問題あるいはその他の外交交渉等を行っているわけでありまして、御心配には及ばないと思います。

松原委員 終わりますが、国益というものは、そういった経済の部分と精神の部分があるということをあわせて申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 民主党の佐々木でございます。

 今、松原委員から、国際的なこの法律に関してお話がございましたが、私は、このことを通して、国内の企業の皆さん方があるいは国内対策としてどうこれを結びつけていくかということも非常に重要なのではないかという視点で、少し論議をさせていただきたいというふうに思っております。

 世界的に人口が増加をする、あるいはまた工業が進展をする、農業が発展をする、こうした人間の活動というものに伴って温室効果ガスというものの濃度が増加をしていっているわけで、結果として地球の温暖化をもたらしているというふうに言われているわけでありますが、地球温暖化問題は、まさに世界規模で取り組まなければならない課題だというふうに思っております。

 地球温暖化問題は、例えば資源やエネルギーを効率よく利用するという努力を片っ方でやる、そして大量生産、大量消費、大量廃棄型社会からの転換、生活様式を見直していくという意味で、今回の、一九九七年ですが、京都議定書の採択というのは、まさにその転換点にあったのではないかというふうに思います。

 政府は、この採択を受けて、九八年には推進大綱を策定して、推進法を制定して、省エネルギー法を改正した、そういう形で地球温暖化対策を進めてきたというふうに承知しております。二〇〇二年に大綱は全面改定、そして、二〇〇四年にその評価と見直し、あわせて、推進法は京都議定書目標達成計画を策定してきたというふうに承知をしているわけであります。

 この京都メカニズムは、この達成計画の補足、いわゆる補足性の原理というふうに言われていますが、補足するものとして他国における取引をするという仕組みなわけですが、それはそれとして、国内対策の目標達成をきちっとやっていかなければ意味がないわけでありまして、達成計画の国内対策の推進についてまずお伺いをいたします。

西野副大臣 委員が今御質問をされました趣旨は、地球温暖化がもたらす影響は、御案内のとおり、海水が上がって、人類を初め生態系に大変な影響を与えるということとか、あるいはまた地球環境の異変が現実に起こりつつあるわけでございまして、さまざまな変化に対応して、この地球温暖化防止という問題は避けて通れない重要な問題であるというふうにも思っておるところでございます。そのためにも、今、年次を時系列的にお示しされましたけれども、昨年の四月、京都議定書目標達成計画を閣議決定いたしたところでございます。それに従って、国内での取り組みに今全力で取り組んでおるところでございます。

 特に、本委員会は経済産業委員会でございますので、産業部門だけを申し上げますと、約三十を超えます業種で取り組みを進めておりまして、その目標の達成は可能である、このように今実は評価をいたしておるところでございます。

 さらに、昨年、お示しがありましたとおり、省エネ法の改正もいたしたところでございまして、これに伴い、運輸部門、民生部門等もさらなる効果を期待いたしておるところでございます。特に、我が省といたしましては、新エネルギー対策、さらには代替フロン対策、もちろん、先ほど来もお話がありましたとおり、安全確保が大前提ではありますけれども、原子力の推進など、しっかりと取り組んでいく必要があるというふうにも思っておるところでございます。

 そういう国内の施策をお示しのとおりしっかり取り組んで、そして、その上で生じる不足分につきまして、先ほど来御指摘のありました京都メカニズムを活用していく、こういう姿勢で対応していく所存であります。

佐々木(隆)委員 ありがとうございます。

 今もお話ありましたが、その達成計画の最も大きな部分が温室効果ガスの削減ということであります。その抑制のために燃料資源をどう有効に利用するか。もう一つには、地球温暖化を防止する。これはある種、矛盾するとは言いませんが、燃料を使いながらしかも地球温暖化を防止していく、こういう双方の要求をどう満たしていくかということが非常に大切なわけで、そのためには、私は、昨年改正されました省エネ法、改正省エネ法、この省エネルギー対策をどう着実に実施していくかということが大切ではないかというふうに思います。

 この四月には、あすですが、施行になるわけでありまして、今日のこの省エネ法の省エネルギー対策の状況についてお伺いいたします。

高原政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国は、石油ショック以降大変な省エネルギーの努力をしてまいりまして、今御指摘のあった省エネルギー法というのも、昭和五十四年に策定をいたしております。まず世界に冠たる省エネ国家にはなっておりますけれども、地球温暖化の対策の重要性が高まる中で、省エネルギーについてもさらに抜本的に対策を講じていくということで、本年の四月からの施行、御指摘のとおりまさにあしたでございます、省エネ法を改正させていただいたわけでございます。

 まず、その簡単な内容でございますけれども、熱、電気を今まで区別して管理を求めておりましたけれども、これを、工場、事業場につきまして一体管理を求めるでございますとか、あるいは国土交通省とも省の枠を超えて協力をさせていただきまして、輸送に関する省エネ措置ということで、一定規模以上の輸送事業者あるいは荷主につきまして、省エネルギーの計画の策定ですとかエネルギーの使用量の報告などを義務づけることといたしております。三点目に、大規模なビルにつきましては新築、増改築時に省エネルギーの措置の届け出を義務づけておりましたけれども、さらに、大規模な住宅に対しましても同様の届け出を求めております。現在、年間で約三千八百件ほど届け出がございますけれども、これは四千件程度増加をすることになると思います。

 重要なのは御指摘のとおり施行でございまして、経済産業省といたしましては、こうした改正法の円滑な施行に向けまして、財団法人でございます省エネルギーセンターと協力いたしながら、制度の概要を説明したパンフレット、これは約十二万部ほど今配ってございます。それからホームページ、さらに説明会の開催といったような形で、あらゆる機会を活用して周知に努めてまいりました。

 今後とも、円滑な法施行に向けまして、さらに関係事業者の方々に不安の残ることのないように十分に万全の措置を尽くしていきたいと思いますし、チェックを十分しながら施行を円滑にやっていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

佐々木(隆)委員 今、幾つかポイント、お話をいただきました。そのポイントのところについて、昨年論議をされた議事録も拝見させていただきましたが、その中でも、特に附帯意見などもついております。そういったところの幾つかのポイントについて、もう少しお伺いをしたいというふうに思います。

 まず、今お話がありました工場等の管理規制として、熱と電気の区分が廃止された、一体化されたということであります。そして、管理士の配置が義務づけられたということであります。

 その管理士について、今まで別々な管理士であった人が一つになる、設置義務もついたということになって、この人材の育成というのが一つ大きなポイントだった、議事録などを拝見しますとそういうふうになっているようであります。あるいはまた、どうやってその拡大をしていくための支援をしていくのか、こんなことについて、現状の見込みをお伺いしたい。

 あわせて、登録調査制度というのが新設をされましたね。この登録調査機関というのはいわゆる民間なわけですよね。民間がある種そういう工場を調査するわけですから、耐震偽装の問題と同じとは言いませんが、そういうことが起こり得る可能性というのはあるわけでありまして、その確認調査をする機関の中立性とか信頼性の担保というものももう一つ大きな課題としてあるのではないかというふうに思うんですが、それらの制度についてお伺いをいたします。

高原政府参考人 お答えを申し上げます。

 省エネ法は従来、工場、事業場におきますエネルギーの管理につきましては、熱と電気を別々に管理をするということで所要のいろいろな届け出等お願いしておりましたけれども、最近は、コジェネとかあるいはヒートポンプといったような、熱と電気との間の相互の代替というのが非常に進展しておりますので、所要の改正を行わせていただいたわけでございます。

 このため、少し内容を細かく申し上げますと、原油換算で三千キロリットル以上の工場、事業場を第一種エネルギー管理指定工場、あるいは千五百キロリットル以上でございますと第二種管理指定工場という形で、第一種エネルギー管理指定工場につきましては新しいエネルギー管理士、そして第二種エネルギー管理指定工場につきましてはエネルギー管理員という形で置かせていただいておるわけでございます。

 そのためのいろいろな、新しいエネルギー管理士の配置が必要となるわけでございますけれども、まずは、昨年八月に省エネ法の改正が行われたわけでございますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたような、ホームページの活用でございますとか、あるいはパンフレット、それから説明会、それから、各業界から御要望があったときに、その御要望に応じて開く説明会といったようなもの、それから広報、あらゆる機会を通じてその周知に努めてきたところでございますし、一万五千工場に対しましてはこちらの方からパンフレットもお送りさせていただいたりしております。

 いずれ、これにつきましてはスムーズに移行が必要でございますので、移行期間は五年間ございますけれども、その間の経過期間におきましては、現行の熱管理士または電気管理士の資格保有者に対しましては、今の知識も生かしていただくような資格試験とか、あるいは特別研修といったようなものを開かせていただきまして、新しいエネルギー管理士資格の取得が円滑にできるような仕組みも講じてございます。

 それから、登録調査機関の御指摘がございました。

 登録調査機関につきましては、民間活力を活用ということの目的でございまして、従来以上に執行体制を強化する、あるいは法律の効果を着実に上げたいということで、確認調査制度というのを創設いたしました。これは、事業者が経済産業大臣の登録を受けた機関による確認調査を受けて、それで省エネの取り組みが十分であると認められた場合に、その年度内に限ってではございますけれども、エネルギー使用量の報告等の義務が免除されるという制度でございます。

 この制度につきましては、確認調査を行う者として、エネルギー管理士を二名以上置くということを求めた上で、確認調査を行う部門に専任の管理者を置くことなど、確認調査の信頼性を確保するための措置を設けております。

 また、登録調査機関につきましては、著しい利害関係を有する事業者が設置している工場については確認調査を行ってはならないとか、あるいは中立性の確保をそういった形で法的に求めることにしております。

 経済産業大臣は、登録調査機関に対しまして、業務でございますとかあるいは経理の状況の報告を求めたり、立入検査も行うことができるようにしておりまして、こういったような措置を通じまして、登録後においても、確認調査の中立性でございますとか信頼性でございますとかを確保するようにしていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

佐々木(隆)委員 大変詳しくお話をいただいたんですが、持ち時間が余りありませんので、よろしくお願いいたします。

 今言われたように、民間活力を私は否定するものではありませんし、それはそれで大いに活用していかなきゃいけないんですが、そのときにやはり、行政がどうやってその基準をきちっとつくるかとか、監視をどうするかということは必要になってくるというふうに思いますので、同じような事件が起きないように、ぜひ御努力をいただきたいというふうに思います。

 先ほどお話しいただいた中に、もう一つ、運輸の部分が新たに加わったというお話がありました。実は、新しく加わったわけですから、その分だけやはり混乱も起きているようでありまして、これは日経ビジネスの三月二十七日号でありますが、「PSE法騒動と構図同じ」というタイトルで、結局、新しく制度の対象になったものですから、エネルギーの計算、排出ガスの計算の方法とか一切伝わってこないと。

 これは国交省がやることだったのか経産省がやることだったのかわかりませんが、いずれにしても、大変混乱が起きているようなんですね。特に荷主の方々にもそういう混乱が起きているのと、あと、小さい荷物をたくさん運ばなければいけない、例えばコンビニに食品を運んでいる方などなど、そういった混乱が起きているようですし、私のところにもそういうお話もいただいているんです。

 ここら辺の周知徹底がどうちゃんとなされているのか、あす施行なんですが、そういうことも含めてお伺いいたします。

平山政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘の日経ビジネスの記事を私も読ませていただきました。必ずしも正確ではない部分もかなりございますが、少なくとも、新しく対象になるということで心配をされている向きがあることは私もよく承知をいたしております。

 そういうことを当然の前提といたしまして、どういう方々に義務がかかるかという範囲をまず決めなきゃいけない。この部分について、まずは、基本的に、業界の方々の御意見を聞きまして、あるいはパブリックコメントなどをいたしまして、慎重に手続をした上で、まず対象範囲を決めさせていただきました。

 また、そういう方々に対して周知徹底をどうするんだというお話でございまして、昨年八月に改正法が成立して以降、例えば、中央とか地方で私たち独自の説明会を数十回開催させていただいておりますし、業界別にもさせていただいております。またパンフレットも、先ほど経済産業省の方からもお話がございましたが、輸送事業者さんに個別に、特性に合ったパンフレットを国土交通省としてもつくりまして、それを数万部、業界団体を通じて配らせていただいている。実は、それは荷主さんと輸送事業者さんがよく相談をしないとなかなか難しいところもございますので、経済産業省さんと連携をとりながら周知に努めてきております。

 ただ、そうはいいながら、必ずしも全員の方々が不安を払拭しているわけではないということも十分承知をしております。特に、初年度であります十八年度に必要となる手続は、実は、輸送事業者さんにとってみますと、自分のところで例えばトラックを何台持っているか、これだけなんですね、まず最初に届け出るのは。これを受けまして業者さんを指定させていただく。その業者さんが、自分のところの燃料消費量をある程度計測しておいていただいて、十九年度にさらにそれを御報告いただくという手続になっております。

 そういう意味で、初年度にお願いしていることはそう大して大きな話ではないんですが、少なくとも、まだ若干時間はございます、その間を含めまして周知徹底に努めまして、経済産業省としっかり連携をとりまして、不安なく実行できるようにしてまいりたいと考えております。

佐々木(隆)委員 ありがとうございます。

 もう一つ、先ほどのお話の中でありました、住宅などを含めた消費者の対策ですね。

 いわゆる店部門のエネルギーの消費というのもこのごろはどんどん伸びてきておりまして、そういった意味では、家庭のエネルギー消費をどう削減するかというのも大きな課題だというふうに思うんです。例えば、家庭だけではなくて、エネルギー供給業者あるいはまた電気製品の販売店なども含めて、電気製品の開発だとか情報の伝達だとか、もう一つは、先ほどお話がありました住宅に関して申し上げれば、お金の関係、税制だとかあるいは住宅の金融などについてどう取り組んでこられたのか。これはそれぞれでお答えいただきたいというふうに思います。

高原政府参考人 まず、家庭における省エネルギーを推進する上で、省エネ効果の高い機器の利用を広めていくということが重要でございます。

 これは、世界に冠たるトップランナー制度というのがございます。これにつきましては、現在、自動車やエアコン、テレビ等十八品目が対象になっておりますけれども、既にその指定をされている品目について深掘りをして、例えばテレビですと、今度は液晶テレビとかプラズマテレビにも対象を広げるとか、あるいはこの十八品目以外にも新たに対象をふやしていくとかいうことをさせていただくことにしております。

 それから、トップランナー基準が国民の皆さん方にわかりやすいように、どのぐらいトップランナーに対して達成できているのかといったようなことをお示しする省エネラベリング制度でございますとか、あるいは、販売店で非常に一生懸命省エネ機器を販売する努力をしておられるところに、認定制度のようなものも設けたりしております。

 いずれにいたしましても、家電問題だけではなく、エネルギー事業者に対しましても、実は、先ほどから議論になっています省エネ法の改正の中に、一般消費者への情報提供というのを積極的に行う旨の規定が盛り込まれておりまして、これに伴いまして、電気事業者等にも、消費者へのいろいろな広報のお願いもしているところでございます。

 以上でございます。

和泉政府参考人 住宅についてお答え申し上げます。

 住宅を初めとする民生部門におけるCO2排出量を削減するために、住宅の省エネ化は極めて重要な課題でございます。

 このため、これまで、先生御指摘のように、住宅金融公庫融資等を活用しまして住宅の省エネの誘導を図ってきたところでございますし、平成十八年度予算におきましては、民間ローンの証券化支援事業において、省エネ性能の高い住宅に対して適用金利を優遇する制度について、予算の大幅な引き上げを図ったところでございます。

 また、地域における住宅政策を総合的に推進するための助成制度でございますところの地域住宅交付金、こういった制度がございます。この活用によりまして公共団体における主体的な取り組みの促進を図っておりまして、住宅の断熱化や太陽光発電設備の設置の推進などについて支援を行っているところでございます。

 さらに加えまして、あすから施行されます改正省エネ法につきましては先ほど経済産業省から御説明があったとおりでございまして、今後とも、これらの施策を着実に講じることによりまして、京都議定書目標達成計画における目標の確実な達成に向けまして、住宅の省エネ化について努力してまいりたいと考えております。

佐々木(隆)委員 ありがとうございます。

 それぞれの個別の対策を今聞いてきたんですが、この成果を上げていくために、私は、国や地方公共団体が先導的な役割をやはり果たしていく必要があるんだというふうに思うんですね。特に初期需要をどう誘導していくかというような点で、公の役割は非常に大きいというふうに思うんです。

 先ほどコジェネの話なんかもありましたし、あるいはヒートポンプだとか、エネルギー施設を共有化するとか、いろいろなそういった先導的な取り組みはあると思うんですが、しかし、中央省庁の電力購入などの例を見ると、必ずしも進んでいるというふうにはなっていないようなんですね。その中には例えば省エネ製品の価格の問題というのもあるようでありまして、例えば、一番安い価格で落札しなさいという会計制度と、省エネ製品だと少し高いけれども、それをどう導入するか、こうした問題なんかもあるようなんですが、その契約の実績と、これからそういったことにどう取り組んでいかれるのかという点についてお伺いしたいというふうに思います。

桜井政府参考人 政府における調達でございますが、京都議定書目標達成計画の達成のためには、環境配慮製品の普及を促進していくということから、先ほども御紹介のございました京都議定書の目標達成計画において、「温室効果ガスの排出削減に資する製品を始めとする環境物品等への需要の転換を促すため、グリーン購入法に基づき、国は環境物品等の率先的調達を行う。」ということにしております。これに基づきまして省エネ製品の調達を現在進めているところでございます。

 例えば平成十六年度のグリーン購入の実績によりますれば、省エネ法でトップランナー基準が定められております低燃費車につきまして、国は、一般公用車に関しては、低燃費車を含みます低公害車を一〇〇%、こういったものから調達をしているということでございまして、市場においても、平成十二年度下期には新規登録台数に占める低公害車の割合は〇・九%でございましたけれども、平成十六年度下期には六七・六%まで拡大しているということでございまして、そういった取り組みをさらに拡大していきたいというふうに考えております。

    〔委員長退席、上田委員長代理着席〕

佐々木(隆)委員 随分実績が上がっているようなんですが、ぜひ積極的な取り組みをお願いしたいというふうに思います。

 その目標達成といいますか、省エネの対策については以上で終わらせていただきたいというふうに思うんです。

 先ほど松原委員からもお話がありましたが、この京都メカニズムがある種金融商品になるのではないかとか、マーケットの話とかがありました。そういうことからしても、必ずしもそうなるかどうかということは別にして、極めて金融性の高いということは、実は、私もこの論議をこの委員会でずっと聞いていて、なぜNEDOでなければならないのかというのがいま一つどうも理解できないんですね。要するに、民間だとか金融だとかということなら、これは全く民間でやってもいいのではないか。いや、これは政府が調達するんだからということになれば、それは政府がやるべきだ。その中間的な機関のNEDOがやるというところの説明がどうもいま一つわからないんです。

 結局、このことに多額の税金が投入されるわけで、それは、政府、NEDO、事業者、相手国ということで、国民にはほとんど見えないところでそういうものが動いていくわけですから、その分、きっちりした基準だとか達成されている今の中身の状況だとか、やはりそういったものがしっかり国民に知らされるようなシステムでなければいけないというふうに思うんですが、その点についてお伺いをいたします。

肥塚政府参考人 まず、NEDOを実施機関とした理由でございますけれども、NEDOは今までも、新エネルギー、省エネルギーの技術開発でございますとか、海外への省エネルギーの協力を行ってきております。

 これらの結果、我が国が承認しましたCDM、JIの事業が今まで四十四件ございますけれども、既にNEDOがやっている省エネモデル事業から三件、あるいは事業化のフィージビリティースタディーのお手伝いをした案件から十件というような承認を得ておりまして、NEDOは、これらの事業を通じて、京都メカニズムの制度でございますとか省エネルギーに関する専門的な知見を有する人材が十分育成されてきている、それから海外ネットワークも備わっているというふうに考えております。

 もちろん、プロジェクト審査についての人員の補強というようなことが必要だと考えておりますけれども、クレジット取得に関しましては、今のような事業の成否に対する技術的な知見でございますとか途上国の体制整備に対する知見、あるいはクレジット量の評価に関する能力というようなことが非常に重要でございますので、そういう意味で、NEDOがこのような知見を有しているというふうに考えている次第であります。

 それからもう一つは、クレジットの取得に際しては、いろいろなリスクを伴うクレジットを全体として継続的に管理する、それぞれ一本一本調達してくるというよりは、継続的にクレジット全体を管理し、確実に必要量を取得するという必要があります。そのためには、長期的に安定した主体が責任を持ってクレジット取得を行う必要があるんじゃないかというふうに考えております。

 こういう理由から、クレジット取得制度を構築するに当たって、専門的知見を有する独立行政法人NEDOにこれを実施させるということにした次第でございます。

 なお、この事業につきましては、エネルギー政策の側面と環境政策の側面、両方ございますけれども、経済産業省と環境省が一体となって取り組むということで、NEDOを実施機関として取り組むということになったという次第でございます。

 それから、わかりやすさ、あるいは体系でございますけれども、この制度の発足自身が京都議定書目標達成計画に沿ってこういう法案を提出させていただいている次第でありますけれども、今後のクレジット取得制度の運用の基本方針については、京都議定書目標達成計画に規定するというふうにまずなっておりまして、そのもとで、NEDOの中期計画あるいは中期目標というようなところに国のクレジット取得に関する具体的な方針を明記する、さらに、それに沿って独立行政法人であるNEDOの評価を実施していくということを考えております。

 ただ、わかりやすさ、あるいは事業者の方にきちっと説明しなきゃいかぬということは、心して運用していかなきゃいかぬというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 わかりやすくするためには、やはり制度の仕組みそのものを国民の前にしっかりとさらすことだと思うんですね。そういったことを含めて、わかりやすい方法をぜひとっていただきたいというふうに思います。

 最後の質問になりますが、この京都メカニズムで必ず出てくるCDMというのがありますが、現在、CDMに登録されているのが、このデータが古くなければ百件というふうに聞いているんですが、そのうち省エネプロジェクトと言われるものはたった五件だというんですね。なぜ省エネのプロジェクトが少ないかというと、ほかのプロジェクトに比べて、省エネの効果、追加性というらしいんですが、その効果というのが非常に見えづらいということで、どうもその取り組みがおくれているというふうなことが言われているわけであります。

 先ほど来ずっと論議をしてきた省エネというものは非常に大切なテーマだというふうに思いますので、これについて、今後どう取り組んでいかれるのかということ。

 もう一つは、今、環境問題というのは、昨年アメリカでのハリケーンだとか、ことしの冬の上越での大雪だとか、昨年は過去百五十年の間に二番目に気温が高かったそうなんでありますけれども、まさにそういった温暖化という状況に向かってきているわけであります。そういった中での地球温暖化の問題というのは、非常に重要な、しかも喫緊な課題だというふうに思うわけであります。

 一つには省エネの対策、もう一つには新エネというふうに言われております再生可能エネルギー、これについての取り組みも非常に大切だというふうに思うわけでありますが、あわせて、今後の取り組みについてお伺いをいたします。

西野副大臣 今、省エネと新エネについての御質問がございました。

 省エネにつきましては、我が国は、御案内のとおり、昭和でいいましたら四十年の終わりでございましたが、いわゆるオイルショック、石油ショックを受けました。このショックがいわば我が国にとってはいい試金石といいますか、このショックを見事にクリアしたという中から、その経験を生かして、省エネに対する世界に先進するさまざまな技術を現実に開発をしていっておるわけでございます。

 ただ、これをさらに進めていくためには、規制する措置も必要でございますし、それに対する財政的な支援も必要でございますし、それをあわせて国民に普及徹底する、こういう活動等、総合的に省エネ対策については取り組んでまいる所存であります。

 もう一方、新エネの問題でございますが、いわゆるクリーンエネルギーと呼ばれておるわけでございますが、これにつきましては、二〇一〇年度におきましては千九百十万キロリットルの導入をするという目標を掲げまして、技術開発を含め、最大限努力をしていく所存でございます。

 こうした取り組みにつきましては、間もなく、五月の末になるだろうと思いますが、発表を予定いたしております新国家エネルギー戦略にもしっかりと盛り込んで取り組んでいきたいというふうに思っております。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

上田委員長代理 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 NEDO法、石特会計法の改正案、京都メカニズムのスキームづくりのことで質問いたします。

 最初に、この京都メカニズムの活用に当たりまして、クレジット購入によってNEDOの果たす役割ということで何点かお聞きしますが、一つは、NEDOがクレジットを購入する場合に、これは何らかの基準とか条件というのが必要なんじゃないかと思うんです。何でも買えるというのではなくて、やはりふさわしい質が問われる、そういうことが求められていると思うんですが、その点どのようになっているのかお聞かせください。

肥塚政府参考人 クレジットの取得制度につきましては、一つは、我が国の財政負担の程度に適切に配慮しつつ必要な量のクレジットを確実に取得するという観点、それから二つ目は、地球規模での温暖化防止、それから途上国の持続可能な発展への貢献というこの二つの点を踏まえることが重要だというふうに考えております。

 したがいまして、目標達成計画において、具体的な取得に当たりましては、第一点は、途上国や中東欧諸国などで実際に排出削減事業が行われて、その結果生じた排出削減分をクレジットとして取得する制度、CDM、JIでございますけれども、これと、それから二つ目に、具体的な環境対策と関連づけされた排出量取引の仕組み、GISを活用するということを考えております。

 さらに、今度、個別でございますけれども、NEDOのクレジット取得業務について、確実にかつ費用対効果を考えて行われるということが必要だということだと思っております。このために、NEDOがクレジット取得契約の相手方を選定するに際しましては、原則公募とし、排出削減事業の成否、相手方の財務能力、提案されたクレジット価格等のリスクについて厳正に審査をするということが必要だろうというふうに考えております。

 こういう考え方でNEDOがクレジット取得を行っていきますように、経済産業大臣と環境大臣が策定するNEDOの中期目標あるいは委託契約において、必要な規定を置かなければいけないというふうに考えております。それからまた、必要に応じましてNEDOから報告を受け、中期目標の終了時には、独立行政法人の評価委員会の評価も踏まえて、両大臣が業務の実施状況を検討し、所要の措置を講ずる、こういう体系になろうかというふうに考えております。

塩川委員 国際的なルールにのっとってクレジットの購入に当たるわけですけれども、その際、何点か細かい点での確認ですけれども、例えば海外の原発ですとかあるいは海外での植林、こういうものは含めるのか含めないのか、その点をお聞かせください。

肥塚政府参考人 まず、原子力の点でございますけれども、いわゆるマラケシュ合意によりまして、原子力発電のCDM事業から得られるいわゆるクレジットにつきましては、京都議定書の目標達成に使用することは差し控えるということとされておりますので、このため、原子力のCDMから生じたクレジットは、当面、取得の対象とはならないというふうに考えております。

 それから、植林のCDMでございますけれども、植林につきましては、植林で森林を整備し二酸化炭素の吸収を促進したとしても、一定期間経過後に伐採や山火事などで吸収した二酸化炭素が大気にまた放出されるおそれがございます。このために、京都議定書の締約国会合決定で、植林CDMから生じたクレジットについては、この第一約束期間の削減約束の達成に使用した場合には、将来、同量のクレジットで補てんするということが実は義務づけられております。

 したがいまして、この京都議定書締約国会合の決定の義務づけによりまして、補てんをするために将来の財政負担が生じるという可能性がございますので、植林CDMのクレジットの取得については慎重に考えることが必要ではないかというふうに考えております。

塩川委員 次に、ホットエアですね。ロシアやウクライナの経済停滞に伴うホットエアについてはどのように対応されるのか、購入するのかしないのか、お聞かせください。

肥塚政府参考人 繰り返しになりますけれども、クレジットを取得するに際しては、先ほど申し上げました二つの観点が重要だというふうに思っておりまして、一つは、我が国の財政負担の程度に適切に配慮しつつ必要な量のクレジットを確実に取得すること、それから二つ目が、地球規模での温暖化防止や途上国の持続可能な開発への支援という二つの観点を踏まえる必要があろうかというふうに思っております。

 したがいまして、具体的なクレジットの取得に際しましては、先ほど申し上げました、実際に排出削減事業が行われてその結果生じた排出削減分をクレジットとして取得する制度、CDMとJI、それから具体的な環境対策と関連づけられた排出量取引の仕組みを活用して、必要な量の確保に努めたいというふうに考えております。

塩川委員 確認ですけれども、ホットエアは買わないということでよろしいんですね。

肥塚政府参考人 いずれにいたしましても、ホットエアの購入を考える前に、CDM、JIあるいはGISに係るクレジットの取得に最大限努力したいというふうに考えております。

塩川委員 日本政府が承認したCDMプロジェクトの中に、中国で新日鉄、三菱商事が行っていますHCFC22製造工程の副産物のHFC23を分解するためのプロジェクトがありますけれども、これについては、オゾン層破壊物質の扱いについてNGOの団体などからも非常に批判が出されております。

 先進国で今後生産が禁止されるこのオゾン層破壊物質のHCFC22の副産物23、強力な温室効果ガスが出るわけで、途上国の工場でこのガスを回収して削減をして、これを日本に売って日本でその削減相当分をふやすプロジェクトについて、いわば新設工場に適用するとフロン増産を促して地球環境を破壊することになりはしないか、既設工場に適用しても、こういうマッチポンプ的なものはCDMにすべきじゃないという指摘があるわけですが、私もそのとおりだと思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

肥塚政府参考人 一般的にCDM理事会で、通常の経済活動に比べて温室効果ガスの排出が減少しているという場合にはCDMというふうに認められることになっておりまして、フロンの回収・破壊事業につきましては、既に国連のCDM理事会でその排出削減量の計算手法が承認されて、幾つかのプロジェクトも登録を終えております。また、いわゆるクレジットも発行されているという状況にあるというふうに承知しております。

塩川委員 フロンの問題のように、実際に途上国の支援などを通じても、実際にはマッチポンプ的な形で逆に拡大することを促すような、促進するような役割に伴うものについてはやはり購入すべきでないという運用基準などをきちっと定めるべきだと思っております。また、大規模な環境破壊にもつながるような、そういった水力発電などについてもこれに伴うクレジットは購入しないとか、より具体的に日本のふさわしい運用基準、質に当たっての基準というのを設けるべきだ、このことを申し上げておくものです。

 次に、京都メカニズムのいわば量の問題ですけれども、京都議定書目標達成計画による国内排出削減は、九〇年比の六%削減、三・九%は森林吸収で、京都メカニズムが一・六%ですけれども、大臣にこの点をお伺いしますが、やはり補足性の原則と言われますように、国内排出削減努力こそ必要であります。京都メカニズムの活用というのは一・六%という点で、この一・六%を超えることはないということをはっきり宣言もして対応することが求められていると思いますが、いかがでしょうか。

    〔上田委員長代理退席、委員長着席〕

西野副大臣 先ほど来の委員にも御質問がありましたとおり、この京都議定書締結目標達成のために昨年の四月に閣議決定をし目標計画を定めたところでございまして、それに基づいて鋭意今取り組みを各般行っておるところでございます。

 例えば、マイナス六%も、現実には、その後の増加等もございまして、追加対策として実質一二%の削減を行わなければならぬという状況にあるわけでございます。そのために、エネルギー起源、さらには代替フロン、あるいは今お示しのシンク、森林吸収等々、しっかりとこの目標に向かってそれぞれの分野で取り組みを果敢に行っておく必要があるだろうというふうに思っております。

 したがって、先生がお示しのように、それらを講じてもなおかつ不足をいたします部分として一・六%マイナスということを決めておるところでございまして、その取得に対して他国の増嵩等もございまして、これにおくれをとらないように、今般の法律の提案に基づいて、しっかりとクレジットを取得できるような仕組みを我が国としても取り組んでいこう、こういう姿勢であるわけでございます。

 当然ながら、お示しのとおり、省エネルギー、そして、先ほどのお話にもありましたとおり新エネルギー対策、そして、安全に十二分に検討を加えた上で、原子力の推進、こういったものの国内対策を最重点に取り組んでいく所存でございますので、よろしく御理解のほどをお願いします。

塩川委員 大臣に重ねて伺いますが、一・六%を超えることはない、あくまでも国内排出削減努力こそが中心であって、この京都メカニズムの活用は一・六%を超えるものではないという点について、御確認させていただけますか。

二階国務大臣 御指摘のとおり、国内的な努力をするということが本質でありますから、私どもはそれに向けて、ただいま西野副大臣から御答弁申し上げたとおり、省エネ対策、そして新エネルギー対策、そうした問題につきまして、ただ表題に掲げるだけではなくて、具体的に真剣な取り組みを行ってまいりたい。そうした我が国の取り組みが、また、先ほど来御質問にもありましたとおり、インド、中国、アメリカ等の大国に対しましても、私たちのこの真摯な取り組みが、それらの諸外国にも、やはり環境という問題について改めて御理解を得る、そういう努力の効果も私は期待ができるんではないか。

 まずは国内で努力するということにつきまして、今塩川委員の御指摘のとおりであります。

塩川委員 その上で、今、政府承認の四十一件のCDMプロジェクト、これで得られるであろうクレジットの合計が年間三千五百八十万トンぐらい、あと、CDMで国連に正式登録されているものが三千二百八十六万トンという答弁もございました。これは、五年間でいえば、目標の一億トンを超えるような数字です。もちろん、全部日本に入ってくるかどうかというのはありますけれども、一応数字上はそういうトータルの量になるかと思っています。

 その点で、問題は、国内の排出削減努力の中に京都メカニズムの対応部分が振りかえられるおそれがあるんじゃないのかと。国内排出削減対策、省エネ対策などでのこの六・五%の削減の中に民間事業者のこの京都メカニズムによる対応分が含まれるというのは、先ほどの御答弁にもありましたような国内での排出削減努力というのにはそぐわないんじゃないのか、どう考えてもおかしいと率直に思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

肥塚政府参考人 産業界が自主行動計画に沿って、省エネ設備とか生産工程の改善とか、いろいろな努力に取り組んでおります。

 ただ、温室効果ガスの排出量というのは、生産量あるいは技術、生産品目の変化が可能性としてはございますので、自主行動計画の確実な達成のためにはこういう状況変化への対応も不可欠だということで、企業によりましては、万一に備えて京都メカニズムの活用を検討している業界もあるというふうに承知しております。

塩川委員 自主目標達成のために京都メカニズム活用を検討している業種というのが、昨年は六業種だったものが、ことしには十一業種にとふえているわけです。現に、スキームが動き始めますから、これに対応しようという業種がふえているということですけれども、国内での排出削減努力よりも、今言った京都メカニズムを活用しようというのが事業者の間で一つの流れになってきているというのが現状だと思うんですね。

 その点で、民間事業者がクレジットを取得するような場合については、先ほど言ったようなクレジットの質の問題については、やはり民間にも当然同じような基準というのが当てはまることになると思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

肥塚政府参考人 民間事業者も、目標達成のための状況変化に備えての対応は不可欠だということで、万一に備えて京都メカニズムを活用することを検討している業界があるんだというふうに承知しています。

 いずれにいたしましても、今回の政府によるクレジット取得制度の対象というものには入ってこないというふうに考えております。

塩川委員 国内排出削減対策として、京都メカニズムによる対応分は含めないようにすべきだと思います。少なくとも、京都メカニズム活用について、政府の調達分と民間の事業者の調達分を足して一・六%を超えるようなことは決してあってはならないと思いますが、その点はいかがでしょうか。

肥塚政府参考人 政府の調達制度は、一・六%を念頭に置いて構築しようというふうに考えております。

塩川委員 そこに姿勢が問われると思います。

 そういう点でも、民間事業者に、クレジット取得に現状で穴があいてるような状況ですから、それについてかさ上げされて、結果的に、日本は、政府調達分の一・六%に民間事業者を加えた一・六%を超えるような京都メカニズムの活用ということでは、結果として日本自身が骨抜きにするようなことになりかねない、こういう点は厳しく問われているということを指摘しておくものです。

 その点でも、国内でのエネルギー消費構造の見直しこそ必要だと思っております。

 この間、石炭火力発電所が非常に増加をしております。九〇年の石炭消費量が約二千七百万トン、それが、〇二年の数字では六千八百万トンと、約二・五倍に増加をしております。この増加分のCO2排出量は約九千百五十万トンで、九〇年当時のCO2排出量の約一〇%に当たる巨大な量になります。いわば、石炭火力発電所の建設費への投資を省エネの投資に回せば、日本のCO2の排出量は当然のことながら九〇年比で減少しているはずでありますし、また、天然ガスの火力発電所に置きかえていれば約五千万トンCO2は減少していたはずであり、ちょうど九〇年比のCO2増加分に匹敵するようなものが天然ガスに置きかえるだけでも生まれていたというのが実態だと思うんですね。

 そういう点でも、九〇年比でCO2の増加をしているその増加分というのは、石炭火力発電所が要因なんじゃないでしょうか。電力会社の石炭火力発電所、石炭消費量の増加のところにこそメスを入れるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

小林政府参考人 地球温暖化対策、政府を挙げて取り組んでおりますけれども、電源につきましては、原子力、新エネ、そして石炭とか、いろいろな電源の特色がございます。こういうものを最適にミックスして全体として削減をしていこうということでございまして、石炭火力の増加分ものみ込んで、さらに、省エネあるいは新エネの増進、あるいは原子力の活用、こういったようなことをしていく必要があろうかと思っております。

 それから、なおちょっと付言いたしますと、原子力発電所の操業率が低下していることによりますところの電気の消費の増と既存の電源の増加というのもございまして、先ほど御指摘のありました分にはそういったものも入っているのかなというふうに承知をしております。

塩川委員 この間、九〇年代からの自由化ということが強調される中で、コスト優先というのが現場では強く求められている。これについて是正が必要だという声というのも近年出てまいったわけですけれども、しかし、やはりそういったコスト優先という、いわば国策にも準じた方向の中で、結果として、石炭火力発電所が増加をしてCO2増大になっているんじゃないでしょうか。その点での政府の姿勢が問われると思うんですよ。その点、環境省よりも経済産業省の方がお答えいただくことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

深野政府参考人 電力部門の排出量のことでございますけれども、実は、電力部門につきましても、それぞれ産業界でつくっております自主行動計画に基づいて目標を掲げております。電力部門につきましては、発電単位当たりの二酸化炭素排出量を一九九〇年に比べて二〇%削減する、これを二〇一〇年に達成する、そういう目標を掲げて取り組みを進めております。

 この目標につきましては、毎年、私どもの産業構造審議会と総合資源エネルギー調査会で、専門家によりますワーキンググループをつくりまして評価をしておりまして、まだ電力部門は今時点で目標達成には至っておりませんけれども、今後努力をすれば目標達成は可能である、そういったことで、電力全体として、今申し上げた目標を達成する。

 この自主行動計画というのは、今の京都議定書目標達成計画の中で重要な要素として位置づけられておりまして、こういったことを通じて、電力も含めて目標達成に努力をしているところでございます。

塩川委員 電力会社の話で一点お伺いしますが、環境省としての温暖化対策推進法の改正に伴う政令案の内容ですけれども、CO2排出係数に関する部分について、公正取引委員会から、競争政策並びに公正な取引上問題があるとして、この政令案の見直しが環境省に求められておりました。これはどういう内容での見直しだったのか、どういう中身の政令案で、これに対しての公正取引委員会からの指摘がどういうもので、その後、具体的にどういう対応をしたのかお聞かせください。

小林政府参考人 今御指摘の点は、大変重要な、国内における削減対策ということでございます。

 発電に伴います二酸化炭素の排出量、日本の総排出量のおよそ三割を占めているということでございまして、その削減を進めていくということは、電気の供給者側だけでなくて、電気の使用者の方でも電源を選ぶというようなことができますので、重要なことになっているわけでございます。

 今御指摘になりました政令、三月二十四日の政令でございますけれども、これは、電気の使用者が電気の使用に伴う二酸化炭素の排出量を計算するためのやり方を定める政令でございました。環境省では、その政令の中で、できる限り排出の実態に即した算定ができる、そしてまた、電気事業者におきますところの対策の努力も反映できる、こういったような政令のシステムにすることが必要だというふうに考えていたわけでございます。

 経緯についての御質問、こういうことでございますが、実は、平成十一年に既にこれに先立つ政令がございまして、これも同じく排出量の算定をする政令でございましたが、当時は、政府部門だけが率先して排出量を算定する、こういうことでございます。政府の使う電気につきまして、一般電気事業者、十電力、東京電力等々についての、電気を供給する方々のいわば一般的な排出係数、そしてそれ以外の、例えばPPSの事業者さんの排出係数、二本を立てまして、電力消費量にそういった排出係数を掛けて政府の排出量を計算するという政令を出していたわけでございます。

 今回、実は、ことしから民間の事業者さんの排出量の計算にもそういった排出係数を使うということを考えて、そして政令の改正を提案したわけでございます。その民間の事業者に対する政令におきましても、今申し上げました二本立ての、すなわち一般電力事業者用の係数と、そしてそれ以外の方々の係数、二本立ての係数を使って計算をするという簡便な方法でどうだろうかということで最初の提案を行ったものでございます。

 それに対しましてどういった意見があったのか、こういうことでございますが、それは、やはり個別の供給業者ごとに、電力の原単位、例えば石炭を使うあるいは天然ガスを使うということで随分排出実態が違うじゃないか、それに即した係数とすべきじゃないか、そうしないと供給者間の競争といったことを妨げることになるのではないか、こういった御意見をちょうだいしたところでございます。こういった御意見は公正取引委員会以外も、いろいろなところからちょうだいをいたしました。

 そういうことで、環境省の方では、また政府部内で再検討させていただきまして、みずからが消費している電気の排出係数がわかる場合には、それを個別に用いるということが重要だ、それを用いる仕組みにしよう、そして、わからないときに限って一般的に使用できる排出係数を設けようということでございます。これは仕方がないのでありますが、それは電気を供給する業者の区別によらずに一本の値として定めよう、こういうことでございます。そして、先ほど申し上げました個別の電力事業者の係数につきましては、政府におきまして情報を集めまして、その内容を確認した上で、政省令で定める排出係数を下回るものについては公表するということで、今申し上げましたような個別の電力供給者の環境対策の取り組み、電源構成といったことが、消費者の方でもそれを反映されて、そして削減努力がされるという仕組みに変えることといたしたものでございます。

 以上でございます。

塩川委員 実際に排出係数についての扱いなんですけれども、〇・五五五とかと伺いますけれども、その算定の仕方と、その場合に、下回るような事業者についての対応と上回るような事業者についての対応と、それぞれ対応が実際違ってくるんじゃないかと思うんですが、その点についての環境省の考え方をお聞かせください。

小林政府参考人 重ねてのお問い合わせで申しわけございません。

 まず、その〇・五五五という係数でございますけれども、一キロワットアワーを生産するときに排出されるCO2の量、こういうことでございます。

 その御指摘の〇・五五五という数字は、電源構成等がわからない、一般的に使われる排出係数ということにしておりますけれども、現実を申し上げますと、その係数よりも高い状態で配電をされている電気というのは、恐らく日本の配電量の中の約八%とか九%、大変限られた量になろうかと思います。そういうことでございまして、実際に、それ以下の方々につきましては、個別の、先ほど申し上げましたように、排出の係数が使える、こういうことになろうかと思います。それ以外の方々につきまして、大変量は少ないわけでありますが、計算の便宜を図るということが、デフォルト係数と言われております一般的な係数でございますので、そういった方々については、その〇・五五五という数字を使うということになろうかと思います。

 ただ、この発端になりました、一般的な事業者さんよりもきれいな電気で供給しているPPS事業者さんが不利になるのではないかというような、逆転現象と言われたことについては既に解消しておりますので、そういう意味で、私どもの当初の、平成十一年の政令のシステムよりも、今回、排出量については正確に算定できる、逆転現象もないということで、改善された提案になったのではないかというふうに承知をしております。

塩川委員 実態を反映した数字にすべきだということであります。

 最後に、本来、国内対策の強化で京都議定書の目標達成を目指すことを基本にして、京都メカニズムの活用は補足的に限定すべきとされてまいりました。しかしながら、日本経団連は、温暖化対策の環境自主行動計画の中でCO2排出量の削減を目指すとしておりますけれども、そこに、先ほど指摘もしましたような海外進出プロジェクトでのクレジット取得の可能性というのもあるわけです。

 改めて、日本においての確実な排出削減のためには、大口の排出事業者に対する削減計画の策定が具体的に必要なんじゃないのか。実際に、大口の排出事業者の上位二百事業所程度でCO2排出量の五割程度を占めるとお聞きします。政府として、こういう大口排出事業者に対して、削減計画の策定や政府との協定など、達成できなければしかるべく罰則などを求める、こういった総排出量の規制こそ必要だと思いますが、いかがでしょうか。

肥塚政府参考人 日本の産業界は自主行動計画を策定して温暖化対策に積極的に取り組んでいるというふうに考えております。私どもも、毎年度、各業界の目標に向けた進捗状況を確認し、レビューして公表するというようなことをやってきております。

 こうした努力もございまして、エネルギー消費効率では世界最高水準にあるところでございますけれども、今後とも、こういう産業界の進捗を私どもの審議会でも確認し、公表していきたいというふうに考えております。

塩川委員 国内排出努力をあいまいにするような海外でのクレジット取得を認めるようなやり方では、本当の意味でふさわしい、京都議定書の日本の役割を果たすことができないのではないかということを申し上げて、質問を終わります。

石田委員長 次回は、来る四月五日水曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.