衆議院

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第18号 平成18年5月23日(火曜日)

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平成十八年五月二十三日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 石田 祝稔君

   理事 今井  宏君 理事 新藤 義孝君

   理事 平田 耕一君 理事 増原 義剛君

   理事 吉川 貴盛君 理事 近藤 洋介君

   理事 達増 拓也君 理事 桝屋 敬悟君

      小此木八郎君    岡部 英明君

      片山さつき君    北川 知克君

      近藤三津枝君    佐藤ゆかり君

      清水清一朗君    塩谷  立君

      平  将明君    長崎幸太郎君

      橋本  岳君    早川 忠孝君

      藤井 勇治君    牧原 秀樹君

      武藤 容治君    望月 義夫君

      森  英介君    山本 明彦君

      大畠 章宏君    川端 達夫君

      吉良 州司君    北神 圭朗君

      佐々木隆博君    野田 佳彦君

      松原  仁君    三谷 光男君

      高木 陽介君    塩川 鉄也君

      武田 良太君

    …………………………………

   経済産業大臣政務官    片山さつき君

   参考人

   (佐賀県玄海町長)    寺田  司君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長)            鈴木 篤之君

   参考人

   (電気事業連合会会長)  勝俣 恒久君

   参考人

   (日本原子力研究開発労働組合中央執行委員会委員長)            鈴木 政浩君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件(エネルギー問題)


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件、特にエネルギー問題について調査を進めます。

 本日は、参考人として、佐賀県玄海町長寺田司君、原子力安全委員会委員長鈴木篤之君、電気事業連合会会長勝俣恒久君、日本原子力研究開発労働組合中央執行委員会委員長鈴木政浩君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず寺田参考人にお願いいたします。

寺田参考人 おはようございます。佐賀県玄海町長の寺田でございます。

 衆議院経済産業委員会に参考人として意見を述べさせていただく機会を与えていただきましたこと、石田委員長ほか関係者の皆様に感謝をいたします。

 さて、資源エネルギー及び原子力安全・保安に関するエネルギー問題に関する意見を述べさせていただく前に、佐賀県玄海町の原子力とのかかわり、今日までについて少しだけ紹介させていただきます。

 佐賀県玄海町は、佐賀県の西北部、東松浦半島に位置し、人口約六千七百人、面積三十六平方キロメートルの、農業、漁業の第一次産業を基幹産業とした小さな町でございます。

 以前は、佐賀県のチベットと言われるくらい季節風が強く、道路が狭く、そして水に恵まれない、農業を営むには厳しい条件のところでございました。また、昭和三十一年の合併、町制施行当時は炭鉱労働者も多かったのですが、石炭から石油へエネルギーの転換が進むにつれ、人口も減少してまいりました。

 昭和四十年春、町勢の発展を願って、先人たちが原子力発電所の誘致を決議いたしました。その後、昭和五十年十月、玄海原子力発電所一号機、五十五万九千キロワットが運転開始、その後、昭和五十六年に二号機、平成六年に三号機、平成九年に四号機が運転開始いたしました。現在では、四基、三百四十七万八千キロワットの設備を有し、平成十七年度には約二百五十九億八万キロワットを発電し、九州の発電電力量の約三五%を占めるまでになっております。

 その過程では、昭和五十七年、玄海原子力三号機、四号機の増設の際には、玄海町郷土の自然を守る会が町長の解職請求を求め、署名運動を展開いたしました。解職請求はもう一歩のところで不発に終わりましたけれども、誘致から現在まで、原子力に反対するいろんな出来事とも歩んでまいりました。

 おかげさまで、昭和五十年度から平成十年度まで二十四年間にわたって総額約百二十億円の電源三法交付金が交付され、道路、簡易水道、福祉、消防、産業、学校教育、文化・スポーツ施設等、公共施設の整備が進んでまいりました。

 また、今回は、九州電力から、平成十六年五月二十八日、玄海原子力発電所三号機においてプルサーマルを実施する原子炉の設置変更許可申請が提出され、原子力安全・保安院の一次審査、原子力安全委員会、原子力委員会の二次審査とは別に、事業者主催の公開討論会、国のシンポジウム、県の安全性に関する討論会等の各種理解活動が実施されました。

 町におきましても、独自に大学の専門家の教授等を講師として招いて、執行部と議会の原子力対策特別委員会が一緒になって学習会を開催したり、フランスなどの海外の状況についても学んでまいりました。

 本年三月二十六日には、二階俊博経済産業大臣が経済産業省幹部を伴って本町に出向いていただき、古川康佐賀県知事、原口義己県議会議長、岩下孝嗣町議会議長、そして隣接の坂井俊之唐津市長、そして私等と会談をしていただき、国が責任を持って安全確保の徹底や地域振興に取り組むことを約束していただきました。

 この会談の後、古川佐賀県知事と協議をいたしまして、九州電力玄海原子力発電所三号機でのプルサーマルについて、事前了解をいたしたところでございます。

 私たち玄海町の議会と執行部は、我が国のエネルギー政策の中で重要な位置づけがされております原子力発電、核燃料サイクル計画など、国の原子力政策を理解し、協力しながら、プルサーマルについていろいろと調査研究を重ねてまいりました。

 そうして、今回プルサーマルの事前了解をすることとなった経緯を私なりに考えてみますと、いろいろたくさんの要素がある中で、重要なものが三つ考えられるところであります。

 一つには、電気事業者の努力であります。

 原子力発電所立地及び周辺市町村等地域住民に対する理解促進活動を電気事業者が積極的に進めることは当然のことでございますが、地元社員や傘下企業の従業員等による連絡相談員の設置や、地区懇談会、グループごとの説明会の開催など入念な理解促進活動が展開されたこと、また、営業運転開始以来三十年間に及ぶ原子力発電所の安全、安定運転と地元との共生、共存共栄の信頼関係の醸成に努めていただいたことであります。

 二つには、県知事、県議会議長、地元首長、地元議会議長の連携と厚い信頼関係であります。

 国のエネルギー政策に理解を示しながら、県と町とが同じ土俵に立って、緊密な信頼関係の中でプルサーマルの必要性、安全性、安心感の醸成等について調査研究を行うことができたこと、そうして、本年二月七日、国の厳しい規制、監督と九州電力株式会社の適正な安全管理が果たされることを前提として、安全性は確保されるという古川知事からの公表をしていただいたこと等であります。

 三つには、国の積極的な推進体制でございます。

 私たちは、プルサーマルを国が国策として進めるならば、国が前面に立って説明責任を果たしてほしいと常に要請をしてまいりましたが、それを進めていただいた、それを果たしていただいたと思っております。

 以上三つのことがうまく連携し、協働の関係があったればこそ事前了解が着実に進んだというふうに確信をいたしております。

 次に、国策に協力しやすい環境づくりについて申し上げます。

 資源が乏しい我が国において、エネルギー安全保障は国家的重要戦略であり、特に、近年における発展途上国の需要急増や原油価格の急騰、さらには地球温暖化問題などから原子力に対する期待はますます大きく、国におかれても積極的な原子力政策の推進への取り組みがなされていると思います。

 過去、現在を問わず、原子力政策は順風満帆とは言えない厳しい状況の中にあって、原子力が我が国の基幹電源と位置づけられるまでに至ったことは、関係各位の御尽力のたまものでありますが、一方、原子力立地市町村における懸命の努力があったことも忘れてはならないと考えます。

 我が国における原子力の研究、開発及び利用は、平成十七年十月十一日、原子力委員会において決定され、十四日に閣議決定されました原子力政策大綱において、今後、数十年にわたる我が国における原子力の研究、開発及び利用に関する国内外の情勢を展望して、情勢変化が激しい時代を迎えている我が国社会においては、短期、中期、長期の取り組みを合理的に組み合わせて推進することが重要との認識に基づき、今後十年程度の期間を一つの目安とした新たな計画を策定することとされました。この原子力政策大綱において原子力は立地あっての政策とうたわれましたことは、立地市町村として大変心強く、この大綱を国の計画として閣議決定された姿勢を高く高く評価いたすところでございます。

 原子力立地市町村は、原子力政策の意義と重要性を十分に認識し、地域住民の理解と信頼を基本に真剣に取り組んでおりますが、特有の環境下にある原子力を円滑に推進するに当たっては、誇りと自信を持って原子力に取り組める環境づくりを図ることが重要であり、原子力を含むエネルギー政策全般の教育をもっと早い段階から取り組むことも国の重要な責務であると考える次第であります。

 次に、安全確保についてでございます。

 その第一が安全の確保であり、原子力政策推進の最大の原動力でもあります。

 しかし、遺憾ながら、原子力メーカーによるデータ改ざんや制御棒の破損、主要配管のひび割れ等々、いまだ不安を抱かせる不祥事や事故が発生しており、安全規制の実効性が厳しく問われているのが現状であります。まだ記憶に新しい美浜三号機事故は、発電現場における安全管理がいかに大切なものであるか思い知らされたところであり、現場の安全の実現に直結する万全で厳格な安全規制を早急に確立する必要があると考える次第であります。

 さらに、安全確保の原点は住民を守ることであることから、地域住民の身近において専門家集団として直接的に現場の安全を守る原子力安全基盤機構の存在は重要であると認識しており、一定の資質を備えた検査官の増員をするなど、一層の拡充が必要であると考えます。

 また、各地で頻発する地震により原子力発電所の耐震安全性に対する不安が高まっている中、最新の知見や技術を取り入れた耐震設計指針の改定案がまとめられています。この新指針をもとに、早急に既設炉の耐震安全性を確認するとともに、新たな考えを含め、立地地域の安全と安心が得られるよう積極的な対応を望むものであります。

 また、電気事業者は、電力自由化、コスト低減の中で、安全性の確保に一層投資できる環境を醸成することが大変重要なことと考えます。

 次に、既設炉の活用方策についてであります。

 今後の原子力利用につきましても、電力自由化の波や新規立地が進まない中、コストの低減により体力の増強を図る企業活動として、また既設炉の有効活用方策として定期検査の柔軟化や長期間運転等、従来とは異なる方針が示され、議論がなされております。

 これらの方針は、我々が立地の基本として受けとめてきた説明内容とは大きく異なり、戸惑いを禁じ得ないところであり、これまでの多くの事故、事象等に直面してきた立地自治体として、無条件に受容できるものではございません。

 さらに、最も危惧されることは、効率優先による安全への影響であります。

 原子力を強力に推し進める余り、二度と国民の信頼を失墜することのないよう、国及び事業者は、原子力の大局を見据え、安全なくして政策はなく、安全軽視は政策推進の障害となることを肝に銘じ、国民、立地地域住民に対する説明責任を十分に果たし、理解を得ることが肝要であると考える次第であります。

 次に、地域振興についてであります。

 地域振興については、原子力発電所が地域と共存共栄し、原子力があってよかったと言える原子力政策の推進には地域振興は極めて重要な要素であり、交付金制度の拡充等、地域振興策に鋭意御尽力をいただいていることは大変ありがたく、感謝をいたしております。

 しかしながら、昨今は、立地に限らず市町村の状況は大変厳しく、地方分権による改革が求められて久しくなりますが、市町村固有の税である固定資産税については、これまで立地市町村が要望してきた原子力発電所に係る償却年限について、商業原子炉が運転開始して三十五年を経過しようとしている今日でも、当初十五年と定められたままであります。当然、実態に即した見直しが必要と考えます。

 また、新交付金制度、電源特会の一般会計への直入や、国際競争力の強化を目的に大規模償却資産の残存価格をなくそうとする議論も行われていますが、これまで立地市町村が要望してきたこととは逆行するものであります。長年築いてきた国と立地地域との信頼関係を損なうばかりでなく、新たな立地促進に支障を来しかねない制度がつくられつつあるのはまことに残念なことであると考えます。

 特に、期限を設定したトップランナー方式という発想でエネルギーの確保という重要国策を進めようとすることは理解しがたく、地域の特性を考慮しない制度と言わざるを得ません。閣議決定された大綱の趣旨を十分尊重し、立地地域に軸足を置いた制度となるよう改善を求める次第であります。

 国におかれましては、原子力政策の現場である立地地域の実情を十分お酌み取りいただき、エネルギー、原子力を国家戦略とし、確固たる方針のもと、安全確保や地域振興など、立地市町村が原子力に取り組みやすい環境づくりに御尽力いただくとともに、原子力所在市町村に対し深い御理解と絶大な御支援を賜りますよう心からお願い申し上げまして、参考人としての意見とさせていただきます。

 本日は、どうもありがとうございました。(拍手)

石田委員長 どうもありがとうございました。

 次に、鈴木篤之参考人にお願いいたします。

鈴木(篤)参考人 御紹介いただきました原子力安全委員会の鈴木でございます。

 原子力安全に関する取り組みにつきましてお話しさせていただきますこのような機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございました。委員長初め委員の先生方に厚く御礼申し上げます。

 本日は、原子力安全への取り組み、特に核燃料サイクルの安全確保に向けた取り組みを中心にお話しさせていただきたく存じます。なお、一部私見を交えましてお話しさせていただくことをお許しいただきたいと思います。

 青森県の六ケ所村では、再処理工場が、現在、実際の使用済み燃料を用いたアクティブ試験に入っております。この三月末から試験が開始され、現在までのところ順調に進んでいると仄聞しております。試験が計画どおり進めば、来年中には本格的操業に入る予定になっております。同工場の主工程は、安全操業の実績を積んでいるフランスからの技術導入で、設計・建設段階での安全に係る審査は基本的にほとんど終了しております。その点から、ここで、技術的に見て何か特に問題があるとは考えておりません。

 しかしながら、再処理の安全確保については、設計や建設段階ばかりでなく、運転段階における取り組みが重要であり、そのことはフランス等における先例に明らかであります。

 最初に、再処理事業の特殊性に関する私のやや個人的見方をお話しさせていただいた上、再処理施設の運転段階での安全への今後の取り組みについてコメントさせていただきたいと存じます。

 六ケ所村の再処理工場の安全操業については、世界じゅうの人々、原子力関係者が注目しております。原子力発電で一度使った核燃料は、再処理してリサイクルすべきか、そのまま廃棄物として処分すべきか、世界的に長年議論されてきているところでございますが、石油価格の急激な高騰などを反映して、最近では、後者、すなわちそのまま廃棄物として処分することを基本方針としている米国においても、再処理してリサイクルすることの可能性をもっと真剣に追求すべきではないかとの動きが出てきております。そんな中で、我が国の再処理計画が順調に進むかどうかを世界の原子力界は注視しております。

 再処理技術については、これまで主としていわゆる核兵器国において開発されてまいりました。それは、再処理が核不拡散の観点から極めて機微な技術であるからであります。初期のころ、非核兵器国であるドイツやベルギーでもパイロットプラントが建てられ開発されていましたが、種々の理由からそれらの国々の計画は断念され、非核兵器国で本格的な再処理事業を進めているのは日本だけという状況でございます。世界じゅうの原子力関係者が日本の計画に注目している理由の一つは、非核兵器国であっても、技術的かつ経済的な能力を有し、核不拡散への国際的責任を十分に果たすことにより、本格的な再処理事業国になり得るかどうかに関心があるからと考えられます。

 日本の再処理事業は民営ですが、その特殊性からも明らかなように、民間における通常の事業とはかなり違ったところがございます。事業目的は、再処理リサイクルが、エネルギーセキュリティーなど、長い目で見て日本の国益にかなっているからという公益性、公共性に深くかかわっております。公共性の高い事業を民間が進めていく場合には、その事業の重要性について多くの国民の理解が得られていることが必要だと思います。なぜなら、そのような国民の負託があってこそ、事業者は、非核兵器国として初めての本格的再処理事業に意欲的に取り組むことができるからであります。核兵器国と違って非核兵器国では、その国策としての位置づけについて国民の一層の理解が欠かせません。

 実は、非核兵器国である日本は、再処理のような核不拡散上機微な技術について、明らかなハンディキャップを負っております。核兵器国であれば、核技術としての再処理技術をもとに技術開発ができ、技術者を育成していくことが可能ですが、日本では、平和利用に徹する中で、事業を進めながらそれと同じようなことをしなければならない宿命にございます。これは安全規制についても同様で、核兵器国では核開発分野からの技術と人材が原子力産業での安全規制分野で重要な役割を担っていますが、日本ではそのような方法はとれません。またとるべきでないと考えます。しかし、例えば私と同じような立場にある米国原子力規制委員会のディアズ委員長は、核開発分野での豊富な経験を持っています。

 そんなハンディキャップにもかかわらず、日本の再処理事業者及び規制行政庁は、その事業の安全な遂行に愚直に、懸命に取り組んでいるというのが私の率直な印象でございます。

 事業者について言えば、旧JNC、現日本原子力研究開発機構の東海再処理施設での経験を活用しつつ、フランスからの導入技術の習得に努めております。フランスからも多くの技術者が応援に来ており、日仏協力も円滑に進められております。しかしながら、専門的に見ますと、主工程ばかりでなく、再処理工程のすべてについて一定期間のうちにアクティブ試験を実施するなど、フランスでも経験していないことがあり、そのため、安全委員会としては、試験運転の段階から安全確保上の留意点を指摘しているところでございます。

 規制行政庁について言えば、発電用原子炉の規制に関する限り十分な経験と実績を有している一方、再処理に関しては、東海村での経験はあるものの、規制資源の面でさらに充実化を図る必要があると思われ、安全委員会としては、規制行政庁に対し、アクティブ試験を通じてその点の具体化を進めることの重要性を指摘いたしました。

 要すれば、再処理の安全確保を進めていくに当たっては、試験運転段階から得られる経験知を蓄積していくことが重要であり、その知識を将来世代に引き継ぐ上で、さらに形式知として知識基盤化していくことが課題であると考えております。安全委員会はそのためにできるだけのことをしていく所存ですが、同時に、事業者及び規制行政庁が限られた資源の中でその方向で必死になって取り組んでいることを温かい目で見守っていただければとお願いするものでございます。

 再処理事業とともに核燃料サイクルの確立にとって重要なのが、いわゆるプルサーマル計画と高レベル放射性廃棄物の処分事業でございます。

 プルサーマル計画につきましては、ただいま佐賀県玄海町長の寺田様からもお話がございましたが、安全委員会としては、原子炉プラントごとに、計画の申請があれば、その都度規制行政庁からの諮問を受けて安全審査を行ってきております。

 これまでのところ、高浜三、四号炉、福島第一の三号炉、柏崎刈羽三号炉、玄海三号炉、伊方三号炉の五件について平成十年より順次審査を行ってきており、さらに、現在、電源開発株式会社の大間についても審査中であります。また、浜岡四号炉については、現在、安全委員会審査に先立つ一次行政庁審査が原子力安全・保安院において行われている最中と聞いております。審査に当たっては、ウランとプルトニウムの混合物であるMOX燃料の使用条件に関して、安全委員会において事前に検討した範囲内であるか否か、また、安全解析に使用されている計算コードが信頼の置けるものであるかどうかを専門的見地から慎重に行っております。

 プルサーマル計画に関しては、諸外国の状況を見ますと、フランスとドイツを中心に、今では相当の実績がございます。基本的にはその安全性は実証済みと考えております。その上で、個別申請ごとに慎重に審査することが、地元の方々を初め国民の皆さんの御理解を得ることにつながるものと考えております。

 一方、高レベル放射性廃棄物の処分につきましては、諸外国においても実際に処分事業を行っているところはまだございません。それだけ国民の理解を得るのに時間がかかるためと考えております。高レベル放射性廃棄物とは、その中に放射能の極めて高い物質が含まれており、その物質が原子炉の中で生成することから、原子力は安全が第一と言われるほどでございます。したがって、その安全確保には慎重の上にも慎重を期す必要がある、また、そのことに関して国民の皆さんの御理解を得るために十分に時間をかけて努力しなければならないと考えております。

 そのような事情は国際的に共通のものでございますが、安全委員会としては、国際的動向も参考にしつつ、その安全確保策の検討に必要な議論は着実に進めていくことが肝要と考えております。このため、立地に至るプロセスの最初である概要調査地区の選定に当たって考慮すべき環境要件について既に見解を示しましたが、現在、さらに次の段階である精密調査地区の選定に当たって考慮すべき技術的事項の検討とともに、安全規制の観点からの法整備に当たって必要と考えられる技術的項目の検討を始めているところでございます。

 以上、再処理及びそれと大いに関連するプルサーマル計画、高レベル放射性廃棄物処分の安全確保に向けての安全委員会の取り組み状況について簡単に御説明申し上げましたが、それらに共通することの一つは、国民の皆様の御理解をいかに得るか、国民の皆様の御懸念をいかに軽減していくかではないかと考えております。

 その点に関連して、安全委員会の方では、ここ数年、幾つかの試みを進めてきております。

 第一は、透明性の確保であります。

 安全委員会での審議は原則的にすべて公開であり、資料も原則的にすべて公開し、興味のある人はすべて入手できるようになっております。審議の結果だけではなく、そこに至ったプロセスがわかるようにすることが透明性の本来の趣旨と理解しており、事務局は頭を抱えておりますが、審議の過程で根拠とした資料やデータは、できるだけそれを明示することを安全委員会の方針といたしました。

 第二は、国民の皆様との対話であります。

 安全審査案件のうち、原子炉の新設など地元の方々の御意見を聞く必要が特にあると判断される場合には、経済産業省の第一次公開ヒアリングに加えて、安全委員会主催の第二次公開ヒアリングを地元で開催するとともに、安全審査案件とは別に、広く国民との対話を図る観点から、原子力安全シンポジウムと称する催しを年に何回か開くことをここ数年恒例としてきております。

 このような取り組みは今後とも続けていくつもりでございますが、安全委員会そのものが信頼される存在になることがやはり国民の御理解を得る上では基本であると考えており、安全委員みずからはもとより、事務局もそのためにさらに努力する必要があると考えております。その努力として最も重要なことは専門性を磨くことではないかと最近特に感じております。それには、我々一人一人がより高い専門性を身につけることと、外部の専門家の意見によく耳を傾けることにより安全委員会としての意見や見解の専門性を高めることの二通りがあるように思います。

 安全に携わる者の心得として、報告する、正しく行動する、固定観念にとらわれない、学習する、常に問いかける心を持つこと、このようなことが安全文化に関する教科書に書かれております。個々の人間が高い専門性を有し、それに裏づけされた自信と誇りを持ってこそ、そのような心得、精神的勇気を持ち得るように思います。日本では、時として個々人の専門性よりも組織としての協調性の方が重視されることがあるようでございますが、安全委員会としては、組織としての協調性に加えて、個々人の専門性にもっと光を当てていこうと考えております。

 しかし、個々人の専門分野にはおのずと限界がございます。例えば安全審査は、最新の科学的知見に基づき、いろいろな専門的視点から精査する必要がございます。そのような場合には、やはり外部の専門家で、それぞれの分野の最先端にいらっしゃる方々の御意見を尊重することが肝心だと考えております。実際、原子力安全委員会にはそのために安全専門審査会と称する組織があり、その仕組みを今後とも生かしていくことが重要と考えております。

 外部の専門的意見に基づく審議について、安全委員会がここのところ最も重要な課題と位置づけてきたのが、耐震設計審査指針の改定であります。平成七年一月十七日の兵庫県南部地震以降、原子力施設の耐震性に関して国民の皆様の関心は非常に高いものがあり、それに適切にこたえていくことが安全委員会の重要な使命の一つと考えておりました。

 そのため、まず、兵庫県南部地震発生直後に、委員会のもとに検討会を設け、運転中の原子炉の耐震安全に関し評価するとともに、現指針の妥当性についても検討していただきました。その結果は、約半年後の同年九月に示され、現審査指針の妥当性は損なわれるものではないが、耐震設計においては常に最新の知見を反映する等、その信頼性を一層向上させるための努力が引き続き必要であるとのことでございました。

 それを受け、平成八年から十二年までの間、国内外の関連状況について予備的調査を行った上、平成十三年以降、安全委員会内の専門部会のもとに耐震指針検討分科会を設け、御専門の委員の先生方に精力的に議論していただきました。たまたま、きのう開かれました定例の原子力安全委員会において部会長から御報告いただきましたが、ようやく部会としての結論を出していただきました。

 その間、分科会の議論に約五年もの年月を要したことに対して御批判もいただきました。そのような御批判は、それを謙虚に受けとめなければならないと考えております。特に耐震安全性は、もし問題があるとすればその対策をできるだけ早期に講ずる必要があり、その点での国民への説明責任を果たす努力が求められていることをよく認識しなければならないと感じております。しかしながら、約五年間で計四十三回の開催に及んだ分科会の審議はすべて公開で行われており、毎回百名以上の人が傍聴してくれたことからも明らかなように、結論に至る過程の透明性の観点から、審議そのものは極めて有益だったと認識しております。

 いずれにいたしましても、本指針改定案がパブリックコメントを受けた上成案となった段階で、安全委員会決定を速やかに行い、既存炉についても、改定指針に基づくいわゆるバックチェックを規制行政庁と事業者に求めるつもりでございます。規制行政庁及び事業者は既にそのための準備に入っていると聞いております。国民への説明責任は、安全委員会、規制行政庁、事業者がそれぞれに果たすことが重要であり、その好個の例に本耐震審査指針の改定に係る案件がなればと念じております。

 以上をもちまして、私の参考人としての意見陳述とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

石田委員長 どうもありがとうございました。

 次に、勝俣参考人にお願いいたします。

勝俣参考人 電気事業連合会会長の勝俣でございます。

 先生方には、平素から電気事業に対しまして格別の御理解と御指導を賜り、厚く御礼申し上げます。また、本日このような機会をいただき、重ねて御礼申し上げます。

 御案内のとおり、昨今、石油を初めとする化石燃料価格が高騰しております。こうした中で、安定供給の確保と環境維持の両方の観点からすぐれたエネルギーである原子力の推進は、エネルギー資源に乏しい我が国にとって、今日ますますその重要性を増しつつあると考えております。

 こうした情勢のもと、私ども電気事業者といたしましては、安全確保を最優先に、原子力の推進、原子燃料サイクルの確立に慎重、着実に取り組んでいるところでございます。

 それでは、お手元にお配りしております資料の二ページをごらんください。

 一九七〇年代に我が国経済は、高度経済成長に伴いエネルギー、電力需要が高い伸びを示す中で、二度のオイルショックにより大変な打撃を受けました。表にございますように、七〇年代は石油火力が主力であり、電力においても石油の入手不安、そして電気料金の高騰によりまことに消費者に御迷惑をおかけしたところでございます。

 この苦い経験を踏まえ、エネルギー資源に乏しい我が国のエネルギー政策において、エネルギーのベストミックスと省エネルギーはその基本となっているところであります。

 特に、資料の左側で、GDP当たりの最終エネルギー消費について、オイルショック以降の推移と各国の比較を示しております。この図でごらんいただけるとおり、省エネルギーの取り組みは大変な成果を上げてきております。産業界の努力とメーカーの技術開発等により世界一の省エネ国家を実現してきたと言っても過言ではないと思います。

 私ども電気事業者も、火力発電所の熱効率の改善など、省エネルギーの推進に取り組むとともに、バランスのとれた電源構成の実現に取り組んでまいりました。中でも、原子力については基幹電源として開発に取り組んでまいりました。その結果、資料の右下、四角の囲みの中にごらんいただけますように、現在、十七地点、五十五基、四千九百五十八万キロワットが運転中であり、電力供給全体の三割を担っており、世界の中でも第三位の地位を占めております。

 それでは、原子力の特性を供給安定性、環境性、経済性の三点から御説明させていただきます。

 三ページをごらんください。

 まず、供給安定性について御説明させていただきます。

 御承知のとおり、我が国はエネルギー資源に乏しいのみならず、島国であることから、陸続きの欧米諸国のように国家間でエネルギー融通を行うことも困難であります。こうした条件のもと、原子力を含まないエネルギー自給率は、先進国の中でも著しく低い四%にとどまっております。四%の内訳は図のとおりではありますが、水力は、既に日本の国内における開発は限界と考えております。原子力は、準国産エネルギーと位置づけられており、原子力によってエネルギー自給率を一九%まで向上させることができている意義は大変重要なものと考えておる次第でございます。

 四ページをごらんください。

 環境面について御説明させていただきます。

 京都議定書によるCO2の削減目標など、今日、環境問題は国家レベルの大きな課題であります。原子力は発電時に、NOx、SOxは無論のこと、CO2も排出しないというすぐれた環境特性を持っております。

 グラフの上段は、一キロワットアワー当たり発電する際に排出するCO2の量を各国と比較したものであります。また、下段は、それぞれの国における発電電力量に占める原子力と水力の比率を示したものでございます。

 資料にありますとおり、原子力や水力の比率が高い国において発電電力量当たりのCO2排出量、すなわち原単位は低水準であるという傾向が見られます。特に、国内資源を持たないフランスは、原子力比率を高めることによりCO2の排出量を低いレベルに抑制しております。

 我が国は、国内資源が乏しいにもかかわらず、先進国の中でも低い水準のCO2排出原単位を実現しており、今日、大規模な水力の開発が難しいことを考えれば、今後のCO2影響を左右するのは原子力であると言っても過言ではありません。

 五ページをごらんください。

 経済性について御説明させていただきます。

 原子力発電には、今述べました安定供給面や環境面での特性に加え、電力自由化という環境下において特に重要な要素として経済性という特性もあります。

 資料のグラフは、赤い線が原油価格の推移であります。また、青い線が火力と原子力を合計した発電電力量当たりの燃料費の推移を示しております。ごらんのとおり、二〇〇一年度と二〇〇五年度を比較いたしますと、原油価格が二倍以上に高騰する中にあって、発電電力量当たりの燃料費は一・四倍にとどまっております。

 原子力は、発電コストが他の電源と比べても遜色がないことはもちろん、昨今の原油高の中でも燃料価格の変動を受けにくく、燃料費全体の安定化、ひいては電気料金の安定化に貢献いたしております。

 今後、中国やインドなどアジア地域を中心に世界的にエネルギー需要が増大し、地球環境にも影響を及ぼすことが予想されます。したがいまして、エネルギー安定供給と地球環境問題の同時解決のため、省エネルギーにあわせて原子力の重要性は一層高まるものと考えております。

 六ページをごらんください。

 こうした現状認識を踏まえ、我が国の今後の原子力開発については、原子力政策大綱における政策目標として、「二〇三〇年以後も総発電電力量の三〇―四〇%程度という現在の水準程度か、それ以上の供給割合を原子力発電が担うことを目指すことが適切である。」とされております。

 事業者といたしましても、この目標に対し、安全確保を大前提に、現在稼働している発電所の最大限の活用を図るとともに、電力需要動向をにらみつつ、新増設に着実に取り組み、目標達成に向け、最大限努力する所存でございます。

 七ページをごらんください。

 原子力のウラン調達、燃料体への加工、発電、使用済み燃料の再処理、MOX燃料の加工などのプロセスを原子燃料サイクルと呼んでおります。

 日本原燃株式会社が建設中の六ケ所再処理工場は、原子燃料サイクル実現のかなめであります。最初の申し入れから既に二十年を超える長い期間がたっており、これまで地元の温かい御理解も賜りながら進めてまいりました。今日では、ようやく実際の使用済み燃料を用いたアクティブ試験を実施しているところであります。

 これまで、試薬漏えい等のトラブルが発生しているものの、各建屋での試験はほぼ順調に進捗しております。この試運転の期間において、できる限り多くのふぐあい箇所を見つけ出し、修正や再調整などの対応を行い、将来の操業が安定して行えるよう準備していくことが重要と考えておるところでございます。

 次のページをごらんください。

 日本原燃は、同じ青森県六ケ所村のサイトで、再処理工場に隣接して、我が国初の商業用のMOX燃料工場の建設を計画中であります。

 MOX燃料というのは、ミックスドオキサイドフュエルということで、混合酸化物燃料の略称でございます。プルトニウムが五%、残り九五%のウラン酸化物の燃料であります。

 施設の規模は、最大加工能力が年間百三十トンであり、二〇一二年度の操業開始に向けて、昨年四月事業許可申請を行い、現在安全審査を受けているところでございます。再処理で回収したプルトニウムは、この工場でMOX燃料に加工することとなります。

 九ページをごらんください。

 使用済み燃料を再処理して回収したプルトニウムを用いてMOX燃料をつくり、これを商業用の軽水炉でリサイクル利用することをプルサーマルと呼んでおります。

 再処理の推進とあわせて、プルサーマル導入は、私ども電気事業者にとって全社共通の課題であり、二〇一〇年度までに十六ないし十八基でのプルサーマルが実施できるよう、その実現に向けて全力を挙げて取り組んでいるところであります。ここに示しましたように、各地で着実な進展が見られております。

 プルトニウムの利用に当たっては、地元の御理解はもちろんのこと、国内外からの信頼の確保が重要であると認識しております。本年一月には、全事業者は、プルトニウム利用計画を公表し、その透明性を確保するべく取り組んでいるところであります。

 十ページは原子力の安全性の仕組みについて解説しておりますが、飛ばしまして、十一ページをごらんください。

 安全の確保のためには、設備の設計とともに、人間による運転管理、保守管理が大切であります。安全と品質マネジメントの徹底が、結果として安定運転につながると考えております。そして、安定運転の実績の積み重ねが、地元の皆様からの信頼の獲得につながるものと信じているところであります。私どもは、過去にさまざまな失敗を経験しておりますが、その失敗を厳しく反省し、各社のトップがみずから先頭に立ち、安全確保と品質マネジメントの徹底に努力しているところでございます。

 今後は、高経年化と耐震安全性の向上が重要な課題であると考えます。二〇一〇年ごろには二十基が運転開始後三十年を超えることとなり、高経年化対策として、三十年を超える前に安全機能を有する機器をすべて評価し、その後十年間の長期保全計画を策定し、十年ごとに見直しを行ってまいります。

 また、現在、耐震設計審査指針の改定が行われております。原子力施設は、立地する際に入念な地質調査を行い、想定される地震力に対して十分な余裕、裕度を持って耐震設計を行っております。また、適宜最新の知見に照らして確認しておりますので、耐震安全性は十分に確保されていると考えます。耐震設計審査指針の改定は、今後の新設プラントの安全審査に適用するものでありますが、私どもは、既設プラントについても、耐震安全性の再評価を行う所存であります。このいわゆるバックチェックは、地質調査から始める場合など、長期間を要することも予想されますので、各社それぞれ、耐震裕度向上のための対策を自主的に前倒しで実施していく予定であります。

 十二ページに入らせていただきます。

 原子力発電、原子燃料サイクルの事業を進めていくためには、立地地域の方々の御理解が大前提であり、そのためには、先ほど申し上げた安全、安定運転の実績と品質マネジメントの徹底とともに、地元の方々と事業者とがともに考える地域振興が重要なかぎであると考えております。

 そこで、私ども事業者は、ホームページなどを活用した原子力に関する情報公開の推進や、地域の方々と意見交換する会議を定期的に開くなど、さまざまな取り組みを展開しております。

 国も、ここにいらっしゃる鈴木委員長の原子力安全委員会を初め、原子力委員会、経済産業省の資源エネルギー庁、原子力安全・保安院などが、いずれも立地地域とのコミュニケーション活動や理解活動の強化に努めているところでございます。

 特に安全性は、地元にとって国から説明を聞けることが極めて重要であります。国には、これまでにも増して、原子力施設の立地地域に対する支援と強いリーダーシップを期待しております。

 十三ページをごらんください。

 まとめさせていただきます。

 原子力発電は、他電源に比べて供給安定性にすぐれ、エネルギー資源に乏しい我が国にとってはなくてはならないものと考えております。環境制約のますますの強化が予想される中、発電時点で大気汚染物質や炭酸ガスを出さない原子力発電は大きな価値を持つものであります。

 欧米でも原子力見直しの動きが目立っており、アジアにおいても、中国、インドなど、新規建設の動きが加速化しております。

 私ども電気事業者は、原子力発電をベース負荷供給電源と位置づけ、フル活用してまいります。また、六ケ所再処理工場を中心に、商業規模での原子燃料サイクルの輪の完成を目指します。

 今後とも積極的に原子力を推進し、非軍事、平和利用の実証を世界に示すことが、非核兵器国の中で唯一プルトニウム抽出を認められた我が国の重要な役割と考えております。

 私ども電気事業者は、日本原燃ともども、安全の確保を最優先に、情報の公開に努め、地元の皆様の御理解を得て、原子燃料サイクルの確立に向け努力してまいる所存でございます。どうぞ御支援方、よろしくお願い申し上げます。

 これをもちまして、私の御説明は終わりといたします。どうもありがとうございました。(拍手)

石田委員長 どうもありがとうございました。

 次に、鈴木政浩参考人にお願いいたします。

鈴木(政)参考人 ただいま御紹介いただきました日本原子力研究開発労働組合の鈴木でございます。本日は、どうぞよろしくお願いします。

 今回、このような委員会の場で発言させていただき、大変感謝申し上げております。原子力の研究開発の現場の声ということでお話の方をさせていただきます。

 私の話としましては、主に三点お話をしたいと思います。資料の方を御参考にしていただければと思います。

 まず第一点目でございますが、すべてはやはり現場からであるという点でございます。二点目が、原子力政策の実現に必要なものは何であるかという点でございます。三点目は、技術はだれがつくるのかという点でお話の方をさせてほしいと思っています。

 まず初めに、私ども、働く立場の者が考えている使命と責任という点に関して、若干御紹介させていただきます。

 先ほどのお話にありましたように、日本はまさしく少資源の国でございます。エネルギーの安全保障、環境保全という観点で、国内の原子力技術をもって問題を解決するという使命を我々は持っております。

 燃料サイクル技術、これは、非常に少量の資源、少量の廃棄物というもので大きなエネルギーが生産できるというリサイクル型のエネルギーシステムでございます。我々、この技術というものをやはり確立したい、そういう夢を持っております。また、その研究開発に取り組むことに誇りを持ってやっております。当然、現場の中では、安全確保、いかに安全を担保するかということが大事でございますので、やはり安全を何よりも優先させながらやっていくというのが我々の使命でありますし、責任であります。

 次に、このようなサイクル技術というものを開発する上での課題でございます。

 昨年十月ですか、原子力政策大綱が閣議決定されまして、我々も、今までの中から新しい一つの夢が描けたというふうに思っております。二〇五〇年に諸条件を整えた上で商業ベースを目指すという話がございました。また、その過程において、二〇一五年までに高速炉サイクルの実用化像とそれに至る研究開発というものの計画を示すというステップがございます。さらに、本年三月におきましては、総合科学技術会議において、この技術が国家基幹技術というのに選ばれております。

 ここで非常に大事なことは、我々、実際に技術をやっていく立場といたしまして、いかに実用化に持っていくかという点でございまして、その技術を実証する上では幾つかのステップがございます。段階的に多くの開発課題を解決していく必要があると思っております。

 その際、非常に大事な点というのは、まさしく原子力の政策あるいは現場の状態、予算であるとか人材であるとか技術継承であるとか、あるいは国全体の体制というものが、実際の現場との整合が合っているかという点であるかというふうに思っております。

 実際、政策がどういう方向に向かっているのか、あるいは、実際、現場において人や予算が適切にあるのか、あるいはプロジェクトが実用化あるいは産業化に行くステップとして技術継承が十分に図ってあるかという点であるとか、さらに、産学官の連携、連帯というものが十分に機能されているかという点を、現場の観点から見ながらやっていきたい、そういう点を我々は非常に問題認識を持っております。

 我々の考え、三点の話をしましたが、一点目でございます。やはりすべては現場であるというふうに思っております。

 当然、研究開発から実用化あるいは産業化と進む段階において、安全かつ着実に進めていくということが大事でございます。やはり国や原子力産業あるいは機構の者あるいは実際現場に立つ我々働く者というものが、同じ方向を向きながら同じ目標に対して共有感を持っているという点がまず大事だと思っております。

 さらに、研究開発の成果というものを創出する、成果を出す場であるとか安全確保を徹底する場というのはすべて現場でありますし、その現場で働く人であります。そういう実際の現場というものをぜひ重視してほしいと思っております。国として、あるいは先生方、原子力政策の立案あるいはそれを評価する際、やはり現場の声というものをぜひ反映してほしいと思っています。

 実際に現場に来ていただき、我々の働く姿、どんな人間が実際に物を扱ってやっているかというところをぜひ見てほしいと思っていますし、実際、原子力というものを肌身に感じてほしい。その上で、政策の立案あるいは天下国家、将来のビジョンというものをぜひつくってほしいというのがまず一点目でございます。

 二点目でございますが、政策の実現に必要なものは何かという点でございます。

 やはり研究開発から実用化あるいは産業化というものを当然見通した中で政策の方をぜひつくってほしいという点と、それを実際に実効的に機能できる、そういう国全体の体制というものをぜひつくってほしいと思います。

 先ほど、政策大綱の方が出されておりますが、私ども機構の方といたしましては、中期目標、中期計画というのが設定されております。やはり政策大綱の目指すところと、そのプロセスの目標、各五年ごとの評価をしておりますが、やはり評価の方が大綱の目指すところに対してどうなのか。つまり、非常に長期的な観点を要するものでございますので、そういう観点での評価というものをぜひ考えてほしいというふうに思っております。

 次に、政策と実際に整合されているのかどうか。つまり、これは経営資源の配分というふうに表現しておりますが、やはり政策大綱に沿って実際にやっていくという中では、実際の資金と申しますか、予算と人というところが非常に大事だと思いますが、そういう部分が適切なと申しますか、実際の配分があるかという点がございます。

 OHPの下の方にもございますが、我々、統合いたしまして、独法化になって一律の削減ということがございます。一律の削減というよりも、やはり必要なものに対しては必要な対応をするという点が非常に大事だというふうにも思っておりますので、その点もぜひ政策の中での検討ということで考えてほしいと思っております。現場におきましては、年々削減されてきておりまして、非常に限界に来ているというのが現場の生の声でございます。

 最後に、三点目でございます。技術はだれがつくるのかということでございます。

 技術を実際に完成していく、あるいは仕上げていく、商品にする、製品にするという中におきまして、図面とか文章のみならず、やはり現場での経験、現場での成果、実際の実験を通しての成果と申しますか、それがやはり大事であるというふうに思っています。その部分というのはやはり、実際そこに携わる人、人間だと思っております。今日まで来た日本の技術を振り返りますと、やはりいろいろな科学技術の進歩がございます。それに携わった人間が熱い思いで取り組んで、その成果として、ある困難を乗り越えて成果を出している、結果を出しているということがございますので、やはりそういう人間というものの人材の確保あるいは育成というものが非常に大事だというふうに思っております。

 別添の方に、ちょっと我々の予算、人員、あるいは組合員の人数比を出しております、別紙二ですから一番最後のページですが。やはり七年前と今の十八年度と見ますと、我々組合員の構成の人数のバランスが非常に変化している。つまり、実際これから技術をやっていく三十代、二十代の方がかなり減っているという状況になっております。今のままですと、五年後、この二十三年の予想図にありますように、さらに二十代、三十代が減ってくるということがございますので、ぜひこういう現状を御理解いただきたいと思っております。

 次でございますが、やはり我々労働者の立場でございます。働く人々が誇りを維持しながらさらに進んでいくというためには、やはり労働条件等の維持、改善というものも当然大事な点でございます。ぜひその点も考慮してほしいと思います。

 最後に、技術の点で、先ほどもお話ししましたが、やはり人が非常に大事だという点と、人がつくり、あるいは人が構成する組織が、その集団が物事をつくっていくということが非常に大事だと思っています。当然、我々は会社の中におきましては、経営側、労働者側、そういう立場でございます。労使関係というのも非常に大事だと思っています。健全な労使関係というものを築きながらやっていく。信頼を持って進むと同時に、労働者の立場でいろいろなものを改善する、要求する。つまり、職場環境、労働環境というものを改善していく。そこにはやはり、活気に満ちた職場あるいは夢のある職場あるいは愛情のある、そういう職場というものをつくっていくことが大事だというふうにも思っております。

 まとめになります。やはり、ぜひ現場の声をということで、こういう場を与えていただきまして非常に感謝しておりますし、ぜひ現場をごらんになっていただきながら、現場で働く者がどういう生きがいで、どういう気持ちでやっているか、そういうものをぜひ感じてほしいと思いますし、当然、現場で働く者、我々は、安全かつ着実に進めていく気持ちでおります。やはり職場の将来が見えるというものをぜひつくってほしいと思っております。

 最後に三点。もう一度繰り返しになりますが、やはり現場の声というものをぜひ政策に反映してほしいという点。原子力政策というものと整合した資源の配分という点です。最後に、労働の職場、労働の環境条件を含めた改善、あるいは労使関係のさらなる構築というところをぜひ御理解してほしいという点が私の意見でございます。

 本日はどうもありがとうございました。(拍手)

石田委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長崎幸太郎君。

長崎委員 自由民主党の長崎幸太郎でございます。

 本日は、大変貴重なお話を承りまして、まことにありがとうございました。

 私は、特に、国のエネルギーインフラとして、原子力発電の位置づけをもう少し掘り下げてお伺いできればと思っております。したがいまして、基本的には電気事業連合会の勝俣会長にお伺いしたいと思います。

 まず、先ほどもお話ありましたとおり、世界のエネルギー需要、二一〇〇年には現在の三倍以上になる、こういう予想もあるやに耳にしております。また、石油に対する需要におきましても、今後世界的にふえ続け、現在、足元を見ましても価格が七十ドルと大変高騰している状況にあるものと承知しております。

 こういう中で、現状、原子力発電は我が国の電力発電の中で約三〇%程度ということでございますが、このような国際的なエネルギーの逼迫需要を踏まえまして、あるいは原子力の特性、特に価格安定性という特性を踏まえまして、今後、電力会社さんとしてどのような方向への対応を考えていらっしゃるのか、詳しくお聞かせいただければと思います。

勝俣参考人 お答えします。

 基本的には、エネルギー源、電源の多様化、いわゆる原子力を中心とする電源ベストミックスと経営効率化努力により対応しております。

 オイルショックを契機に、原子力発電やLNGあるいは石炭火力の導入など電源多様化に努めてきました結果、十電力会社の総発電電力量に占める石油火力の比率は、一九七三年度の七一%から、二〇〇四年度には約八%にまで低下しております。これによりまして、一番高い原油価格の高騰の影響というのは小さくなっております。また、石炭火力あるいはLNG火力も石油価格ほどは上昇していない、こうしたことでございますので、そうした多様化を図るということで考えておるところですが、中でも原子力発電は燃料費が非常に安定しているということから、主力として考えているところでございます。

 今後も、この方針で進めてまいる所存であります。

長崎委員 今のお話で、原子力発電というものを活用することにより、原油価格が上昇しても安定した価格で電力が供給できるということだと理解いたしました。

 電力は、言うまでもなく、生活あるいは産業全般にわたる基盤的なエネルギーということで、価格の安定というのは極めて重要な要素であると理解しております。こういう観点から、原子力発電の推進は極めて有効であり、進むべきものであると私も考えます。

 しかしながら、今日、エネルギー問題を考えるに当たりましてもう一つ重要な要素は、地球環境問題でございます。この点については皆様御異論ないことかと思います。

 水力発電が今後開発が難しいとしたとしましても、天然ガスによる火力発電、これは、石炭あるいは普通の石油による火力発電に比べまして環境面において有効である、二酸化炭素排出量が少ないのではないかという話を耳にいたしますが、二酸化炭素、CO2の削減効果、天然ガスによる火力発電はいかほどなのでしょうか。またさらに、これを原子力発電と比較してどうなのか、その関係を御教示いただければと思います。勝俣会長にお伺いいたします。

勝俣参考人 お答えいたします。

 確かに、天然ガスは化石燃料の中では発電電力量当たりのCO2排出量は少ない状況にあります。天然ガスでもコンバインドサイクルという非常に効率のいいところと、あと石炭火力、石油火力と比べると、十、七、五。つまり、石炭火力が十のときに石油火力が七ぐらい、そしてLNG火力ですと五ぐらいというような発生比率になります。

 大変割り切った数値で申し上げますと、二〇〇四年度の天然ガス発電によるCO2排出抑制効果は、石油・石炭火力に比べて年間八千万トンCO2が抑制されます。同じく、原子力の場合には年間二億トン節減できます。原子力を大変大ざっぱに申し上げれば、天然ガスに比べ約三倍程度のCO2発生量節減効果がある、こういうことでございます。原子力発電のCO2削減量は、二〇〇三年度の我が国全体のCO2排出量十三億トンの約二割弱に相当するということになります。非常に有効な削減策と考えております。

長崎委員 これまでのお話の中で、電力の安定した価格での供給、あるいは地球温暖化への対応を考えたときに、原子力発電は極めて大きな役割を示すということが理解できた気がいたします。

 もう一点、今度は新エネルギーとの関係でございます。

 太陽光発電あるいは風力発電などの新エネルギーはまさにCO2を排出しないエネルギーであると理解しておりますが、こういうようなエネルギーをむしろ原子力よりは優先すべきではないか、こういう議論もあり得るのではないかと思いますが、この点、電気事業者さんといたしまして、原発と太陽光あるいは風力発電との関係を今後どのように整理して電源開発を進めていくのか、御教示いただければと思います。勝俣会長にお伺いいたします。

勝俣参考人 お答えいたします。

 確かに、新エネルギーと申しますか、再生可能エネルギーにつきましては、CO2排出量が小さいということでございます。ただ、安定的、量的確保が非常に難しいエネルギーでございまして、現時点で、いわば電気事業者の新エネ供給量というのは五十億キロワットアワーぐらいでございまして、原子力の場合にはざっと三千億キロワットぐらい。スケールが違うものでございます。

 今、国からの義務づけで、販売電力量当たりの再生可能エネルギー量というのを電気事業者は義務づけられております。二〇一〇年で販売電力量の一・三五%ということで、百二十二億キロワットアワーの義務づけがございます。しかし、私どもとしまして、この量を確保する、例えば太陽光、風力あるいはバイオ等々で確保するのにいわば必死になってそれを集める、こういったところでございまして、我々も、確かに環境負荷が小さいので最大限の努力をいたしますが、量的にこれで安定供給を確保というのは非常に難しいということで考えておるところでございます。

 以上でございます。

長崎委員 済みません、もう一点お伺いいたしますが、コスト的には、風力発電あるいは太陽光発電と比較すると原子力発電はどういう関係になるんでしょうか。

 ちょっと考えますと、風で単に回っているだけですから風力発電は安くなるのではないかと思いますが、他方、風が吹かなければ発電量は落ちるわけで、必要な電力を稼ごうと思うとある程度の基数をそろえないといけないんじゃないかとも思いますが、実際、風力発電を活用しようと思いますと、コスト的にはどういう関係になるのか、教えていただければと思います。勝俣会長、よろしいでしょうか。

勝俣参考人 太陽光発電等々もコスト削減が非常に行われてきましてかなり安くなってきておりますが、それでも、例えば住宅用の平均値でキロワットアワー当たり六十六円、風力でいきますと、大規模で十ないし十四円、中小規模で十八円から二十四円ということで、原子力等に比べればまだまだ大変高いエネルギーということでございます。

 したがいまして、国の補助とか、あるいは電力会社も太陽光発電等々につきましては購入電力量を販売電力価格と同等のお値段で購入するというような促進策を講じているところでございます。

長崎委員 これまでのお話をいろいろ振り返りますと、エネルギーの安全保障あるいは低廉な価格での電力の供給、それから地球環境、温暖化の防止あるいは安定した経済成長、こういう面から見て、原子力発電の開発の推進というのは極めて現実的な道ではないかと思われます。

 その点で、先ほどもお話の中で、民間企業の電力会社さんとして、今後も原子力開発というものを引き続き進めていかれるというお話でございましたが、片や、電力の自由化という環境の中で、これは原子力開発に何らか影響を及ぼすのではないかと思われますが、電力事業者さんとしてどのように今後取り組んでいかれるのか、お知らせいただければと思います。

勝俣参考人 お答えいたします。

 経済的には、特に現在の化石燃料価格の高騰の中では、原子力バックエンド費用も含めまして、他電源と遜色のないどころか、状況によっては有利な水準になってきつつあると考えております。ただし、自由化による競争という環境条件のもと、あるいは日本経済の成長そのものが大変鈍化し、電力需要の伸びも低い、そういった中で、大型で長期にわたる投資回収を要する原子力というのはかなり慎重な経営判断の事項になると考えております。

 そんな中で、我々としては、経済性メリットも含め、どうやって原子力開発をしっかりと進めていくか、電力間の共同開発等々も含めまして、種々の知恵を考えながら、原子力政策大綱で固まっております三〇ないし四〇%の原子力比率ということは実現するよう最大限の努力を図っていきたいと考えておる次第でございます。

 以上でございます。

長崎委員 大型で長期の投資になるという中でさらに留意しないといけないと思われる点は、先ほど寺田町長さんもおっしゃっておりましたし、あるいは鈴木委員長さんもおっしゃっていたことですが、安全に対する投資です。大型で長期の投資の中で、安全に対する投資というものがおろそかになるおそれはないのか、私もこの点は大変心配ですし、立地の皆様、あるいは実際働いていらっしゃる皆様も御心配になっていることだと思いますが、自由化環境の中においても安全投資は怠らないという御決意があれば、ぜひお聞かせいただければと思います。

勝俣参考人 私ども事業者、これまで数々の苦い経験を経ております。そうした中で、やはり安全と品質管理を徹底すること、これがやはり安全、安定運転につながり、ひいては地元の信頼、信用にもつながっていくという好循環に入るものと考えております。

 したがいまして、これは各社共通かと思いますが、電力トップがまさに陣頭に立って、発電所で働く社員のみならず、メーカーさん、協力企業さん等々も含めて、全員一体となってコミュニケーションよく現場管理を徹底して安全を確保していく、これが私どもの原子力を進める上で最も大事なことということで考えて、安全をゆめおろそかにすることは決してございません。

 以上でございます。

長崎委員 本日は、いろいろ貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。私どもも経済産業委員として、原子力開発の推進、かつ、その中で安全性の最大の確保、そして、立地されている地元の方々の安心と経済的な振興に向けて、私も微力ながら努力してまいりたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

 これで質問を終わります。

石田委員長 次に、三谷光男君。

三谷委員 民主党の三谷光男でございます。

 きょうは、参考人の皆様方には、当委員会にお越しいただきまして、また貴重な御意見をいただき、本当にありがとうございます。また、二十分という大変限られた時間でもございますので、早速質問に移らせていただきます。

 まず、高速増殖炉、FBRサイクルの実用化に向けて、技術の現状、実用化の見通し、可能性について、これは鈴木篤之参考人、そして鈴木政浩参考人、お二人にお尋ねをさせていただきます。

 この高速増殖炉、FBRサイクルの実用化は、先ほど鈴木政浩参考人のお話の中にも少しございました、ウラン資源の飛躍的とも言える有効活用、また環境負荷の圧倒的な低減という意味では、まさにたどり着かなければいけない目標だというふうに思っています。

 しかし、第三期科学技術基本計画におきまして国家基幹技術に位置づけられてはおりますけれども、原子力政策大綱においては二〇五〇年ごろまでの商業ベースでの導入とされ、一方で、「もんじゅ」改造工事を除く高速増殖炉サイクル開発費は大幅な削減ということになっています。原子力政策の経営資源の配分という意味では、当面のこのプルサーマル、もちろん大事なんですけれども、このFBRサイクル、隅に追いやられているような感がしてなりません。大綱の中でも具体的な段階的な計画は示されず、これは実用化の見通しがまだ立たない、まさに夢の次元に位置づけられている、そういう感がございます。

 高速増殖炉サイクルの実用化は現時点では技術的にはまだ見通しのつかない話なのでしょうか、それとも、取り組みの仕方いかんによっては、二〇五〇年とは言わず、もっと早く、一〇年、一五年では無理でしょうけれども、三〇年、四〇年では実用化が可能な話なのでしょうか。可能ならば、どういう道筋ができれば、予算のことも含めて、実用化は可能になるか。もちろん膨大なコストがかかることはよくわかっております。できればコストがどのぐらいかかるかというお話も含めて、鈴木篤之参考人には、原子力安全委員会委員長というお立場よりも、むしろ我が国原子力工学の第一人者として、また、鈴木政浩参考人には、研究開発に直接携わる現場の研究者の代表として、この高速増殖炉サイクル実用化の見通しについて率直な御意見を伺わせていただきたいと思います。お願いいたします。

鈴木(篤)参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、私は安全委員会におりますので、安全委員会の立場としてコメントさせていただくのは、ちょっと今の論点についてはちゅうちょするところがございまして、大変申しわけありません。長年、原子力に携わってまいりました者の一人として私見を申し述べさせていただきたいと思います。

 日本のみならず、世界の原子力の発電というものが将来に向かって目指していく先というのは、やはり高速炉といいますか高速増殖炉といいますか、ウランをできるだけ効率的に利用する、資源を大事にするということは間違いない、こういうふうに理解しております。ただ、もちろん、いろいろなことはございますので、単純に資源の効率だけがいろいろな計画を決めていく上でファクターとなっているわけではございませんで、経済性はもとより、いろいろなことが絡んでくるんだと思っております。

 そういう中で、我が国は原子力開発の初期のころからFBRの開発を進めてきているわけでございますけれども、一つは、諸外国におけるFBR開発のテンポが随分変わってきたということがあろうかと思います。つまり、初期のころ、七〇年代の前半ぐらいまでは、特に原子力先進国において、いわば競ってFBRの開発を進めたわけでございますが、種々の理由から、一番大きかったのは、多分、ウランの将来のマーケットの予測が、当時心配していたほど逼迫するものではなさそうだ、したがって、いわゆる軽水炉の時代が長く続くんだろう、そういう見通しが主流になりまして、そういう中で、FBRの開発については、各国それぞれがそれぞれの考え方に基づいて進めるということに変わってきたように私は理解しております。

 日本は最も資源に恵まれない国ですので、最も着実にそれを進めてきたわけでございますが、残念ながら、九五年の「もんじゅ」の事故によって、これは事故には違いないんですが、いわゆる放射能に関連するところはございませんので、そういう意味で、私どもが安全委員会として取り組んでいる安全問題とはやや趣を異にしておりますが、しかし、いわゆる安心と申しましょうか、世の中の方々に安全問題について説明するという観点から、私どもから見ましても必ずしも適切でなかった。そういうことから、そのことが大きな社会的な出来事になりまして、その後、今日まで、いわば失われた十年といいますか、FBRの開発においては大変残念な期間だったような気がいたします。

 しかしながら、技術的に見ますと、私は、これは全く個人的意見でございますけれども、いろいろな可能性がある中で、ナトリウムで冷却して、混合酸化物を燃料とするこういう「もんじゅ」のコンセプト、考え方、これがやはり依然として高速増殖炉、FBRの主流だというふうに感じております。そういう意味で、日本においては、やはり粘り強くこの「もんじゅ」のプロジェクトを今後とも続け、その中から世界に誇れるような技術を開発することではないかという気がいたします。

 つまり、FBRの将来は、確かにいろいろな意味で不透明な部分もございますし、決して近い将来という予測は立っておりませんけれども、しかし、いずれそういう時代が来るといたしますと、いわば日本のFBRの技術がなければ世界のFBRは成り立たないというぐらいの意気込みを持って関係者が取り組んでくれたらありがたい、こんなふうに考えております。

 そのような技術が使われる時期が比較的近い将来予想され、また世界じゅうが競ってそのようなことに取り組んでいるという状況のもとでは、関係者はごく自然にそのような意欲を持って取り組むんだと思いますが、残念ながら、客観的に見ても、FBRを取り巻く状況はそんなに甘いものではないというふうに感じております。そういう中で、しかし、やはり資源小国として、あるいは、私、参考人意見の中で申し上げましたが、非核兵器国として原子力安全の先頭を切って進めていくという立場からすれば、このことはぜひ国民の皆様の御理解を得て粘り強く取り組んでもらえればありがたい、そんなふうに感じております。

 ありがとうございました。

鈴木(政)参考人 御質問ありがとうございます。

 私たち働く立場の観点から申しますと、実用化は可能であるというふうに考えております。ただし、やはり技術的課題がございますので、それを段階的に実証していくというステップが当然大事でございますし、今、我が機構においてもFBR実用化調査研究というものを実施しておりまして、それで、二〇一五年を目途にしながら、実用化像とそれに至るまでの研究開発計画を提示するということになっております。

 将来の実用化を考えた場合、この五年間、この十年間でどんな研究に取り組むかという点が非常に大事だというふうに我々は思っております。実際、人でありますとか予算でありますとか、その点が非常に大事でございまして、技術を完成させるあるいは開発するステップにおきましては、やはりその分の予算的資源と申しますかというものが大事だというふうに思っています。その結果によって、物になる、製品になる、仕上がるという点が非常に変わってくるというふうにも思っております。

 先人の皆様方が非常に一生懸命やった技術を、我々の世代で実際にそういう目標に向かって持っていくということが我々の意気込みでありますので、そういうことでやっております。よろしくお願いします。

三谷委員 鈴木篤之参考人からは、なかなか甘くないという厳しいお話もございました。また一方で、研究者の立場、鈴木政浩参考人からは、実用化は可能だという力強い言葉もございました。まさに、長期的なエネルギーの安定供給、これがやはり必要だとするならば、先ほど鈴木政浩参考人のお話の中にもありましたように、今のように段階的な計画が、ステップを踏まない、そういう話ではなくて、きちんと五年先、十年先、段階的なステップを、見通しをつけていくということは、私たちもそれをしっかり考えていかないといけないと思いますし、大事なことだと思います。

 続いて、質問に移らせていただきます。

 原子力発電あるいは研究開発の現場に携わる技術者、研究開発者の技術の承継、そして人材の確保につきましてお尋ねをさせていただきます。

 先ほど、勝俣参考人からは、各社共同して、既設炉の最大限の活用を図るとともに、新増設に着実に取り組みというお話がございました。しかし、紛れもなく原子力発電所の新規建設は少なくなっております。熟練技術者も大変高齢化をしています。さらには、原子力研究開発ということでは、まさに予算、人員の削減は、先ほども独法化によって大幅な削減があったということがございました。紛れもなく続いております。

 この技術の承継、人材確保は本当に大丈夫なのか。安全という意味でも、先ほどもお話がありましたように、まさに人が安全を支えている、そういうところもございます。事業者として、勝俣参考人には、この技術の承継、そして人材確保への取り組みについて、どういう取り組みをされているのか、そしてまた本当に今のままで大丈夫なのかということについてお伺いをしたいと思います。

 そして、勝俣参考人にはあわせて、恐縮ではございますが、ちょっと質問時間が迫っておりまして、お話の中でも少しだけお触れになられましたけれども、現在、軽水炉の多くは大変高経年化しております。この置きかえにつきまして、また、次世代炉の開発導入について、今の状況、見通しについてもあわせてお考えを聞かせていただきたいと思います。

 そしてもう一人、鈴木政浩参考人にも、まさに現場に携わる技術者、研究者の代表として、先ほども少しお話の中にはございましたけれども、再度、この技術の承継、人材確保については本当に大丈夫なのか、またどうしなければいけないのか、率直な御意見を伺いたいと思います。

 また、現場の研究開発者としては、まさに研究開発に当たっては、特に原子力の場合、長期の研究開発ということになりますので、モチベーションも維持していく、これも大変大切なことだと思います。このモチベーションを維持していく上で必要な取り組みとしてはどういうことがあるのか、この点についても御意見を伺いたいと思います。

 どうかよろしくお願いいたします。

勝俣参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、原子力発電を活用していくためには、建設、運転、保守を初めとするさまざまな活動を支える優秀な人材を育成、確保していく必要があり、大変重要な問題であると同時に、我々も大変頭の痛い問題ということで考えておる次第でございます。以前と比べまして、原子力発電所の建設機会は減少し、また現場の技術の重点が建設から運転、保守に移っていくという変化が生じております。また、熟練技術者が退職する時期を迎える、こういった状況にあります。

 こうした変化の中で、私ども、まず電気事業者といたしましては、社内の育成プログラムを確立いたしまして、社内にこれまで蓄積されてまいりました技術、技能を的確に次の世代に引き継ぐ取り組みを進めているところでございます。

 また、メーカーで専門的な知識、技能を有している方々を講師として指導していただくとか、協力会社も含めた一体的な保修訓練を実施する、あるいは専門職の大学院に社員を派遣する等、種々人材の育成、確保のプログラムを柔軟に改善しつつ進めているところでございます。

 また、メーカーさんや工事会社を含めた産業界の人材育成に関しても、昨年四月に設立いたしました日本原子力技術協会、あるいは本年四月に設立いたしました日本原子力産業協会、こういった産業界団体のもとで一体となった対応策を検討する体制をつくり、これから逐次、鋭意頑張っていく所存でございます。

 また、高経年化にかかわりまして次世代炉開発はどうか、こういうことでございますが、私ども、ABWR、APWRといったことが今開発の主力になっているわけでございますが、欧米の新しい開発炉等々を勉強しながら、この辺についても今後早急に取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。

 以上でございます。

鈴木(政)参考人 ありがとうございます。

 まさしく先生御指摘のように、その技術継承、人材の確保というのは大変重要な点でございます。実際、先ほども説明しましたように、独法化によって五年間で一〇%の人員削減という点が立てられています。非常にこれは私たちにとって問題だと思っていまして、やはり実際技術継承していく、あるいはそれを実際に行う人の確保というのが非常に大事だと思っていますので、そういう意味で、独法による一〇%削減というのをぜひ見直しを含めて考えてほしいなと思っております。

 技術継承におきましては、我々もいろいろと組合員と話をしながらやっております。やはりノウハウ、ノウホワイ、そういう点をいかに伝えて、現場を通しながら、人と人の信頼関係の中で技術を伝えていくという点が非常に大事だと思っております。

 あともう一点、先生からモチベーションの話がございました。非常にこれは大事な点でございます。やはり我々、目標と目的があって、それに対するきちんとした評価を適切にしてもらうという点がまず大事だと思いますし、やはり上司と部下あるいはその職場の中、経営と労働者の信頼関係、そういうものがきちんとなされているのが前提でありますし、さらに、働く立場の者が、やはり労働条件も含めた改善というところがモチベーションの大事な点だと思っておりますので、ぜひそういうところをよろしくお願いします。

三谷委員 時間が来てまいりました。

 最後に一点だけ、話はまたかわってしまうのですが、鈴木篤之参考人にお伺いをいたします。

 まさに安全確保のお話、またその説明と申しますか、広報の話が先ほどもございました。鈴木篤之参考人、原子力安全委員会委員長御就任の際のインタビューの中で、この安全規制の中長期的な課題として、従来の広報にとどまらず、安全確保を促進するようなセーフティーコミュニケーションという言葉をお使いになられて、セーフティーコミュニケーションを展開すべきだというふうに言われています。鈴木委員長がお考えになられる原子力の安全規制におけるセーフティーコミュニケーション、この具体的な内容はどういうことでしょうか。これを最後の質問にさせていただきたいと思います。

鈴木(篤)参考人 ありがとうございます。お答えを申し上げます。

 よく最近、安全ばかりではなく安心が重要だというふうに言われるかと思いますが、私も、安全に安住することなく安心のレベルまで、特に原子力の安全については考えるべきではないかというふうに感じております。

 しかしながら、安心でございますが、この安心につきましては、安全委員会が勝手に考えるというよりは、やはり国民の皆様がそれぞれに、どういうレベルであればこれに安心を感じるか、そういう次元の問題だというふうに理解しております。

 私自身、こういう問題は安全委員会としてどのように取り組むべきか、いろいろ悩んだり考えたりしているところでございますが、私がこれまで勉強した中で、ドイツの社会学者といいますか哲学者であるユルゲン・ハーバーマスのコミュニケーション的理性に基づくコミュニケーション行為というんでしょうか、人は本来的に対話を通じて共通の理解に至る、人が本来持っている理性といいますか、そういうことをやはりベースにいろいろ考えることが重要だ、こういう思想というんでしょうか、私自身そういうのを勉強したことがあって、なるほど、原子力の安全についても、国民の皆様にやはり直接問いかけて国民の皆様それぞれにお考えいただくということが大事じゃないか、そういうことを一言でセーフティーコミュニケーション、こんなふうに表現しているところでございます。

 具体的にどういうことかということでございますが、最近私、幾つかいい例があるなと思っておるのがありまして、一つは、宮城県沖地震がございまして、この地震のときの観測された地震動が、安全評価等で仮定しております地震動を一部の周期帯で超えたところがございまして、そんなところから、原子炉の方は自動的に停止したわけでございますが、そもそも耐震安全設計が大丈夫なのかということで、その事業者が自主的にこれを評価したことがございます。今でも一部評価が続いていると思いますが。

 その結果あるいは途中経過について、安全委員会の、先ほど申し上げました耐震指針検討分科会の場で御説明いただこうというふうにお願いしたときがございました。そのとき、通常ですと、規制当局である原子力安全・保安院の方で安全委員会の場で説明するというのが通常のやり方なんでありますが、こういう重要なことについては保安院の方でも、これは事業者が分科会の場で、しかも百名以上の方が傍聴されている中で直接その事実関係を説明してもらうことがいいだろうということで、実際にそういうふうに説明してもらったことがございます。

 それから、冒頭陳述で申し上げましたように、六ケ所村の再処理工場においては、これからホット試験、本格的に入ると思いますが、そういたしますと当然、環境中に放射性物質が、一部だと思いますが放出されることになろうかと思います。そういうときに、やはり環境中の放射能濃度がどういう状態なのかというのは、いろいろなことが起きてからこれを公表するのではなくて、毎日の運転の通常の状態においてもできるだけ上流側にさかのぼってその情報を開示し、そういう中で地元の方々の御理解を得ていくというような、そういう活動も重要ではないか。これも安全委員会が規制行政庁及び事業者に対して特にお願いしているところでございます。

 こんなことも現在進められておりまして、少しずつそのような方向に向かっているのじゃないかというふうに感じております。

 ありがとうございました。

三谷委員 ありがとうございました。質問を終わります。

石田委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 四人の参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。

 原子力安全については、私ども公明党の中でも原発そのものに対する意見が相当激しくあるわけでありますが、私自身は、個人としては、原子力発電もそして核燃料サイクルも含めて、これから着実に進めていかなきゃいかぬ、こういうふうに思っている一人であります。そんな立場で質問させていただきますが、ただ、専門家でないものですから、とんちんかんな質問になるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。

 最初に、寺田参考人にお伺いしたいと思います。きょうは本当にありがとうございます。

 先ほど御報告がありましたように、大変な反対があったんだろうと思います。町民挙げてプルサーマルの計画どうぞということでは決してなかったんだろうと思っておりますが、既に県知事さんとともに事前了解をされておられるという話を先ほど伺いました。

 ちょっと角度を変えて伺いますと、町長さんでありますから、二〇〇四年ですか、周辺が全部合併されまして、唐津に八町村が合併をしたと。当初、町長さんのところも入っておられたやに聞いておるんですが、私は、全部合併すればいいとは思っていないんです。特殊な状況があるところはなかなか合併というのは難しいだろうと思っているんです。今日まで進められるに当たって、合併のごたごたの中で余計批判の声もあったのかな、反対の声もあったのかな、こう思ったりするんですが、そんな苦労談をちょこっと簡単にお聞かせいただきたい。

 もう一つ、今後合併はもうしないという方向なのか。さっき言いましたように、私はどちらでもいいと思っておりますが、ただ、一つ申し上げたいのは、非常に歳入がいいところは、いいときはいいんですが、えらい後になって苦労されるというケースがたくさんあるものですから、たとえ立地地域といえども、私は、今日ただいま行革の努力は聖域なく取り組まなきゃならぬと思っている一人であります。そんなことも含めて、ちょっと御見識を伺いたいと思います。

寺田参考人 お答えいたします。

 このたびの九州電力玄海原子力発電所三号機でのプルサーマルの実施、それからその事前了解、これにつきましては、御質問のとおり、地元の皆さんの中にも一部反対の人がございました。これが、六ケ所の再処理施設で使用済み燃料のアクティブ試験が行われる、そういったことを危惧したものではなくて、やはり安全性そのものについてのいろいろな御議論がありまして、そしてやはり、このプルサーマルについては安全は大丈夫なのか、そういう御議論が一番強かった、そういうふうに思っております。

 玄海町の町民の皆さん、これは地元でございますけれども、この町民の皆さん方につきましては、そういった中でも、比較的反対される方は、これは一部にございますけれども、全体的に見ますとそうでもなかったというふうに私は受けとめております。これにはやはり、これまで、先ほども当初申し上げましたけれども、原子力発電所が運開いたしましてから三十年、この間に、地元との共生、共存共栄、こういったことを考えた電力事業者としてのいろいろな取り組みがあった、そういうふうに思っております。国の安全規制、その監督がされている中で、その結果においても唯一九州電力はAランクに評価されている、そういったこともございまして、地元とのそういう信頼関係が高かった、そういうふうに思っておるわけでございます。

 それと、電気事業者としては、この安全確保のためにはやはりそれなりのちゃんとした予算といいますか、そういったものを投資する、そういう姿勢があった、私はそういうふうに受けとめております。早目早目に機器についてのいろいろな、取りかえをしたりあるいは大規模な修理をしたり、こういったものをやって、そして安全が確保されているもの、そういうふうに認識をいたしております。

 それと、市町村合併の問題についてでございますけれども、これにつきましては、おっしゃいますとおり、唐津市を中心といたしまして郡部が九つ、九町村あったわけですけれども、この十市町村によって法定合併協議会が十四年七月に設立されました。その以前の任意合併協議会という時代はかなり長い期間をかけていろいろと協議されてきましたけれども、その中で協議された中で最終的には法定合併協議会が設立されて、その中に加えていただきました。これは、合併するかしないか、そういったものも含めて、合併した場合どうなるのか、しなかった場合どうなるのか、そういったものをやはり町として十分検討すべきだということを前提として法定合併協議会に加えていただいた、そういうふうに思っております。

 したがいまして、約一年間、いろいろと合併の問題について協議をしていただいた中で、私どもとしては、先ほど、今後合併をどう考えるかという御質問でございましたけれども、私といたしましては、十五年の六月に離脱をしたわけでございますけれども、そのときの考え方として、近い将来においては合併は避けて通れない、そういう認識を前提とした形の離脱をいたしました。

 と申しますのは、今先生おっしゃいましたとおり、行政改革そして将来の町のことを考えた場合に、やはり合併をしないでずっと長い間独自のまちづくりができるかということになりますと、それはいろいろなことを考えてまいります。したがいまして、今申し上げましたとおり、将来については合併は避けて通れないと思うけれども、現在においては、町として、ただいま建設を進めている上下水道の整備、これは生活基盤整備でございますけれども、これをちゃんとした形でやり遂げたい。それともう一つは、一年間の予算の約三倍程度の基金を積み立ててやったわけでございますけれども、その積み立てた基金をやはり有効に活用することと、その基金の一部をやはり子孫に残していきたい。それといま一つは、住民の、有権者のアンケートの中で、当分の間は合併する必要はないんじゃないか、そういう御意見が強かった、そういうことでございます。

 したがいまして、そういう理由でもって離脱をいたしましたけれども、そういう離脱の中で、今先生おっしゃるとおり、いろいろな問題もございました。広域圏事業の問題とかいろいろございましたけれども、そういうものを解決して現在に至っております。今回のプルサーマルの事前了解のことにつきましても、近くの唐津市、これは議会の中でもいろいろと議論がございました。もちろん全部が反対というわけではないと思っております。そういう議論の中で、七項目の知事さんに対する要請事項をまとめられまして唐津市として県知事さんの方に上げられましたので、そのことについては、知事さんがちゃんとした形でお聞きいただいて、そしてこれは事前了解につながる形で解決していただくもの、そういうふうに思っている次第でございます。

 反対運動のことにつきましては、やはりこれは全く皆無ではございませんが、この方々については、やはり十分今後意を尽くしてこれをお話ししていく必要がある、そういうふうに思っておる次第でございます。

 大変失礼いたしました。ありがとうございました。

桝屋委員 ありがとうございました。

 それでは、続いて鈴木篤之参考人にお伺いしたいと思います。

 きょうお伺いしようと思った話は全部出ましたので、もう改めて聞くことはいたしません。FBRの問題も含めてお伺いしたかったのですが、お考えはよくわかりました。先ほど、原子力安全委員長のお立場も超えて、個人の科学者としての御見識もお示しをいただきまして、よく理解できました。

 我が国が、非核兵器国の中でプルトニウムを使える唯一の国である、そういう経緯を含めて、世界に誇れる国にしていきたい、こういうお気持ちはよく理解できるんですが、ただ、歴史を振り返りますと、ちょっと前までプルトニウムを使うのはとんでもないとすぐお隣の大きな国が言っていたわけでありますから、仲のいい国が。本当に、先ほど委員長がおっしゃったような、我が国が、プルサーマルからそしてFBRまで含めて核燃料サイクル、これをつくり上げていく。急ぐと思うんですね、私は。どんなに六ケ所村につくりましても容量も足りやしないわけでありますから、着実な足取りで進めていかなきゃいかぬと思います。

 そうした我が国の取り組みに対して国際社会がコンセンサスを与えてくれる状況にあるのかどうか、原子力に対する大きな風向きが変わっているというふうには言われておりますが、その辺のお考えを、総論で結構でございますから、一言でお答えいただきたいと思います。

鈴木(篤)参考人 ありがとうございました。お答え申し上げます。

 私、冒頭の意見表明の中で申し上げましたが、日本の原子力に対する取り組みや、世界じゅうが今、先生がおっしゃったような観点から、非常に注目して見守っているんだと思うんです。

 私は、原子力の、今、再処理であるとかあるいはFBRであるとかプルトニウムに関連した技術について、日本が確実にこれを、もちろん安全であると同時に核不拡散上も問題がない形で進めていくということが、世界の人がそれを認めれば、先生おっしゃったような形で、日本の計画についてはこれを支持するという声が大きくなるんじゃないかというふうに感じております。

 私、安全に携わっているものですから、一言つけ加えさせていただきますと、非核兵器国のハンディキャップの一つはIAEAの保障措置上の義務が非常に大きいということで、ハンディキャップというよりもこれはやむを得ないことであるわけですが、したがって、そういうことに対しても日本の原子力関係者は最大限の努力を払わなきゃいけないことになっております。

 通常はこのことは安全とは別だというふうに理解をされておりますが、私の理解では安全とも関連があるというふうに感じておりまして、先生御存じかどうかわかりませんが、残念ながら、英国の再処理工場においてはプルトニウムが溶液の形で漏れるという事故がございました。その事故があったために、なおいろいろ、今、今後どうすべきか大議論をしているようでございますが、私は、このようなことは日本の原子力の計画においては、安全は当然ですが、同時に、核不拡散上の核物質管理の要請の方でそういうことはあり得ないというふうに感じております。あり得ないというのは、絶対にあり得ないと言うとまたおしかりを受けるかもしれませんが、つまり、今申し上げたイギリスの例のようなことは起きないんじゃないかというふうに感じております。

 そんな意味で、核不拡散の要求が強いといいますか、そういうことにまじめに取り組むことが結果として安全の向上にも役立つということで、私は、こういうことをぜひ今後とも関係者が愚直に取り組んでくれればありがたい、こんなふうに感じております。

 ありがとうございました。

桝屋委員 今おっしゃったことを、我々、国会議員でありますので、グローバルな観点でしっかり我が国の立場というものを我々も訴えていく努力をしていきたいと思っております。

 続きまして、勝俣参考人にお伺いしたいと思うんです。

 先ほどから何度も御発言がありました。過去の苦い経験とか苦しい経験とかいろいろ言われまして、私も、専門家じゃありませんが、原発の今までの経緯を見ておりますと、例えば配管の腐食なんというような問題で長い間行ったり来たりしている、一体あれはどういうことなのかな、そんなことは当然、科学技術立国、我が国で簡単に乗り越えられるんじゃないか、こう思っていたんですが、えらい時間がかかったように、私は素人の目から見て思っている一人であります。

 そうしますと、やはり我々国民、市民の中で、そうはいいながら、電力業界の皆さん方はやはり経済性を第一に考えているんじゃないのというふうに思わず言いたくなるわけでありまして、そういう意味では、再処理工場で実際の使用済み燃料を使用した試験がいよいよ開始されている、こういう状況の中で、美浜発電所の事故も想起されるわけでありますけれども、本当に安全確保面で大丈夫なのか。

 先ほど御決意がありましたけれども、もう時間がありませんから一問だけにしますが、例えば耐震についても、先ほど、バックチェックもやるんだ、新しいのじゃなくて今までのものも全部やるんですよ、こうおっしゃいましたけれども、そこは相当経済効果もあるんだろうと思うんですが、そこは本当にそういうお気持ちなのかどうか。改めて御決意をお伺いして、終わりたいと思います。

勝俣参考人 お答え申し上げます。

 先生御心配のとおり、種々のトラブル等々を起こし、大変申しわけございません。

 さて、安全の問題でございますけれども、六ケ所の再処理工場では多重防護の思想をとっておりまして、異常の発生を防止する、万一の異常が発生しても拡大を防止する、万一の事故にも周辺の影響を緩和する設計ということでできております。そうした中で、さらに、これまでの国内や海外の先行施設のトラブル事例を調査いたしまして、六ケ所再処理工場にはその反映、水平展開を行っているところでございます。

 これはある意味で設備面の対策でございますが、同時に、二〇〇一年から始めております通水作動試験、化学試験、ウラン試験、アクティブ試験では、順次これらの安全機能を確認するということをいたすと同時に、運転員等につきましては、フランスの先行施設に行きまして半年間のそれぞれ運転訓練を行うことなど、マニュアルの整備や運転員の技術力の強化も図ってきているところでございます。

 そして、日本原燃では、やはり安全が何よりも優先するんだということで、経営層から第一線の作業者までこうした意識を浸透させ、コミュニケーションよくトラブル未然防止に万全を期するといったことで、社長をトップとした品質保証体制を確立するとともに、第三者のチェックも入れるなど種々の手を講じまして安全確保の向上に努めているところでございます。

 さて、耐震の問題でございますが、私ども、その安全評価等々これから行うわけですが、地質の調査等々初めいろいろな調査をするし、必要に応じてまた対策を講じるということで裕度の向上を図ってまいる所存ですが、やはり原子力は安全、安定があって初めて存立するということは、我々経営者含めまして本当に肝に銘じているところでございますので、着実に耐震の対策についても講じてまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

桝屋委員 ありがとうございました。

 時間になりました。鈴木政浩参考人にもお伺いしたいことがあるのでありますが、先ほどからおっしゃっておられますように、現場をしっかり、現場が大事だとおっしゃいまして、私どもこの委員会で参考人の現場に行けるように委員長にもお願いして、委員会で行かなかったら我が党だけでも努力をしたいと思っておりますので。きょうは本当にありがとうございました。

 以上で終わります。

石田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。

 最初に、勝俣参考人に何点かお伺いをさせていただきます。

 地元との信頼関係という問題で、福島県のことについてお聞きしようと思うんです。

 福島の第二原発三号機の再循環系配管における全周にわたるひび割れの見落とし問題についてですけれども、これは、定検の際に、東電としては、国の維持基準に基づいて、五年間以上運転を続けても問題ない、配管の交換不要としていましたが、福島県の要望で配管を交換した結果、全周にわたるひび割れを発見しました。

 そこで、お伺いしますが、この福島県の配管交換の要求がなかった場合に、本来交換が必要とされた全周にわたるひび割れを東電として発見することができたのか、いかがでしょうか。

勝俣参考人 お答えします。

 今回の件につきましては、ひびからの信号そのものにつきましては超音波探傷検査で確認はいたしておりました。ただ、溶接中心が不明確だったこと、それから建設時の放射線透過試験による情報の重視、あるいは全周にわたるようなひびは発生しにくいといった検査員の先入観等々から、配管溶接部の形状変化部からの信号であろうということで、誤って判断いたしたものでございます。

 ひびの信号そのもの自体は確認していたことから、超音波探傷検査としてのひびの検知性には問題はなく、今回のような知見をしっかりと超音波探傷検査で積み上げていくことで対応可能なものということで考えておるところでございます。

 我々事業者といたしましても、超音波探傷検査における知見拡充のための取り組みを今後一層行って、検査性、信頼性向上に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

塩川委員 配管などにひび割れがあった場合に、今後におきましても、福島県から、配管などのひび割れについて、交換の求めがあった場合にはこれに応じていくとお考えでしょうか。

勝俣参考人 それはケース・バイ・ケースということになろうかと思います。

塩川委員 今回のように福島県が求めた場合については応じたわけですけれども、同様な場合については、今後についても応じていくというふうにお考えですか。

勝俣参考人 まさにケース・バイ・ケースということで考えております。

塩川委員 続きまして、勝俣参考人の資料の中で、九ページのところの「原子燃料サイクルの推進」の「プルトニウムの利用」についてですけれども、ここにも、一番下のところに「本年はじめ、電気事業者は透明性向上のために、それぞれ各社のプルトニウム利用計画を公表」とあります。

 そこで、お尋ねしますけれども、これは各社がそれぞれ計画を公表するという形になって、電事連としてはこれを取りまとめて公表するという形だと思います。電事連の方で取りまとめていただいたこの六ケ所再処理工場回収プルトニウム利用計画について、これは四月三日付の、四月に入ってからの方で見ているんですけれども、ここに、「所有量」のところで「予想割当プルトニウム量」と書かれているんですが、この「予想割当プルトニウム量」というのはどういうものなんでしょうか。「割当」と言われる意味なんですけれども。

勝俣参考人 再処理で回収いたしましたプルトニウムは、その後、半減期が短いプルトニウム241、これは半減期が十四年でございまして、時間とともに減衰するものでございます。したがって、会社間で再処理の実施時期の違いに起因する回収物質量の不公平が発生することのないよう、どこの会社の使用済み燃料を再処理したかには関係なく、全社に回収プルトニウムを割り当てております。

 割り当ての比率というのは、各社が再処理工場に運び込んで貯蔵されている使用済み燃料に含まれる核分裂性プルトニウムの量に比例させているところでございます。このため、当該年度に再処理を行わない電力にもプルトニウムが割り当てられるということになります。最終的には、各社が再処理を委託した使用済み燃料中に含まれるプルトニウムに対応したプルトニウムがそれぞれ各社に割り当てられることになります。

 以上でございます。

塩川委員 この「割当」というのは、だれが割り当てるかという主語があるものなんだと思うんですが、原燃が割り当てるとか、そういう趣旨なんでしょうか。

勝俣参考人 再処理事業者でございます日本原燃が割り当ていたします。

塩川委員 例えば、ある会社が、地元の了解が得られていないので我が社のプルトニウム利用開始時期をおくらせたい、ついては必要になるまで我が社の使用済み燃料は再処理をしませんということは各事業者の判断で可能ということなんでしょうか。

勝俣参考人 それぞれがそれぞれの会社のプルトニウム計画を地元との御理解等々を得ながら進めていくということでございますけれども、既に使用済み燃料を持ち込んできておりますので、割り当ては割り当てとしてあるということであります。

塩川委員 その中で東電が最大の割り当ての量になっておるわけですけれども、それなのに、現時点での「利用目的」におきまして、「利用場所」について、他の電力会社の場合には個別の発電所の名称もあるわけですが、東京電力については、「立地地域の皆さまからの信頼回復に努めることを基本に、東京電力の原子力発電所の三―四基」という記述で、利用場所を特定しておりません。

 その東電が最大のプルトニウムの割り当て量を持っているわけで、利用場所も示せていないのに、しかし、実態とすれば具体的には原子力発電所の立地場所ははっきりしておりますから、最大の割り当て量を持っているということがかえって立地自治体との信頼関係を損なうことにならないだろうかと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

勝俣参考人 御指摘のとおり、私どもは発電所の何号機とかいったようなことを明確には入れてございませんけれども、これも地元の御意見等々も踏まえながらということで、私どもの意思として、プルトニウム、プルサーマルを行いますということを表明したものが入っているところでございます。

 私どもといたしましては、不祥事の後、いわばプルサーマルについては白紙撤回、こういう状況になっているわけでございますので、まず何よりも、原子力発電所の運転を初めといたしました地域の信用、信頼を回復するということが最大の課題だと考えております。そうしたことで、今鋭意、安全、品質向上等々の種々の改善策に努めているところでございます。そこをスタートにいたしまして今後種々の展開を図りたいと私どもとしては考えておるところでございまして、そういった表現になっておる次第でございます。

塩川委員 最後に、海外のプルトニウムのことなんですけれども、海外のプルトニウム所有量が七・一トンということです。これの利用計画というのはどのように東電としてはお考えなのか、お聞かせいただけますか。

勝俣参考人 海外のプルトニウムにつきましては、二〇一〇年で十六ないし十八基のプラントでプルサーマルを行うということ、その中の一環として海外のプルトニウム利用も入るということになろうかと考えております。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、鈴木政浩参考人にお伺いいたします。

 原子力基本法の基本方針にもうたわれております自主、民主、公開の原則についてのお考えをお聞かせいただければと思うんです。

 原子力の研究開発の現場におきましてこの自主、民主、公開の原則が大変重要だと思っておるんですけれども、それについて現場の研究者の方としてどのように受けとめておられるのか。それと、それとの関係で、プルトニウムの利用の問題につきまして、やはり軍事転用の懸念の生まれるプルトニウム利用というのが自主、民主、公開の原則と矛盾する側面が出てくるのではないかというのを率直に感じるんですけれども、この点でのお考えをお聞かせいただけますか。

鈴木(政)参考人 今御質問の件でございますが、自主、民主、公開、我々現場で働く者はまさしくそういう精神でやっております。当然、我々労働組合といたしましても、その点に関しては、会社側にもそういう対応をしてほしいなということでやっていますし、現場においても実際そういったことでやっておりますので、当然いろいろな機微情報というのはありますけれども、あくまでも我々、自主、民主、公開という原則に立って対応しておるというのが現状でございます。

 あと、プルトニウム利用の件ですが、やはり現場におきましてプルの管理というのは非常に大事な点でございまして、いろいろな、IAEAの査察を含めて、保障措置も含めてきちんとした対応をやっているという意味で、軍事転用というのは全くないということでございます。あくまでも、我々、プルの平和利用という点に関してやっておりますので、その辺は御理解ください。

塩川委員 次に、鈴木篤之参考人に伺います。

 今の点とも関連しまして、やはりプルトニウムの軍事転用の問題というのは当然大きな懸念でもあります。そういう中での必要な機密保護の対策が求められるのは当然だと思います。しかしながら、もともと、自主、民主、公開の原則で、平和利用ということで行われてきた日本の原子力についての安全性というのは、やはり公開、その内容について多くの方が理解をされることによって、ある意味では国民の監視のもとに安心、安全というのが担保されてくる、そういう経過があったと思うんですけれども、今の現状というのが、残念ながら公開の原則を損なうようなことというのが現時点で生まれているんじゃないのか。実際にいろいろ、原子力施設の公開などについても、ここで制限をするような話というのが出てまいりました。

 そういう点での、プルトニウムの推進という問題と公開の原則の矛盾というのが現時点で生まれていると率直に思うんですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

鈴木(篤)参考人 ありがとうございます。お答え申し上げます。

 確かに、先生おっしゃるように、特に九月十一日のテロ以来、国際社会において、原子力施設、とりわけプルトニウム等を扱っているところにおいては、いわゆるセキュリティーといいますか、そういう観点から、ホームページ等でその状況を無制限にといいますか広く公開することはできるだけ控えるようにというようなことになっていると聞いております。このことが、先生御心配のいわゆる公開の原則からしてどうなのかという御質問かと思います。

 私の理解は、プルトニウムにつきましては、まず第一に、国際原子力機関の査察が適切に行われることだと思っていまして、その点では、先生御存じだと思いますが、国際原子力機関では、査察員を施設に常駐で派遣する、つまり、必ずそこに査察員がいるということを日本の施設に対しては行うというふうに聞いております。こういうことが行われることによって、少なくとも国際的に、日本のプルトニウムは非平和利用には転用されていないということについて確認してもらえるんじゃないか。

 あわせて、国際機関あるいは日本政府を通して、日本のプルトニウムがどのような状態で、どのくらいの量、どのように存在しているのかということについても、これは適時に公開してもらうことが必要だ。日本では、残念ながら、私の理解では、事業者が今後、例えば六ケ所村再処理工場でどのような操業をするかによるわけですが、それによってプルトニウムがどのような状態でどのように存在するかということについて、いわばネットワークといいますか、それを情報としてデータベース化して公表することは国際的にできないと思いますけれども、しかし、必要ならば、日本国政府が、いつ、どういう状態でもその状態を把握していて、国際的な責務を果たすということについてもう一段と努力していただいた方がいいのではないか、そんなふうに感じております。

塩川委員 ありがとうございます。

 それでは、寺田参考人と鈴木篤之参考人に同じ趣旨での質問をさせていただきます。

 この間、例えば関電の美浜の事故などの際に、私も現地に行きまして地元の例えば大飯町長さんのお話なども伺ったわけですが、そういった際に、コスト優先、営利優先の問題とこの安全の問題との関係について、大変厳しい御指摘もございました。一方で、原発が老朽化をしていくのに定検期間をどんどん短縮しているじゃないか、これは逆行しているという声も、おかしいという声で、コストと安全の矛盾というのが出されているわけです。

 このコストと安全の矛盾の問題についてどのようにお考えか、お二方からそれぞれお聞かせいただきたいと思っております。

寺田参考人 お答えいたします。

 私が当初御意見申し上げたときに、私どもの玄海原子力発電所を運転している九州電力については、その会社自体が、考え方として、安全のことについては、それについて投資をする、そういう状態がこれまで続いてきた、そういうふうに申し上げたかと思っておりますが、やはりこれにつきましては、実際の発電所の定期点検それから品質管理、今後その規制基準、安全基準、こういったものが改善されるということになれば、それについては、やはりその時点できちんとした形の安全が保障される、そういうシステムといいますか、そういう安全基準に基づいた安全規制管理をやっていただきたいというのが私の意見でございます。

 電気事業者としては、そういう中で、やはり何と申しましても、原子力発電所については安全の確保が第一前提でございますので、そのことについては、やはり会社自体として積極的にそういった部分の機運、そういったものを醸成していただいて、地元との信頼関係をちゃんとした形でつくっていただきたい、そういうふうに考える次第でございます。

鈴木(篤)参考人 ありがとうございます。お答え申し上げます。

 私も、原子力安全について、その安全をけちるといいますか、コスト削減のために安全について気を抜くということは許されないこと、安全委員会においては、そういうことが感じられた場合には、そういうことがないように事業者及び規制行政庁に必要な助言等をしていくべきだ、こういうふうに考えております。こういうことは常に心配しなきゃいけないといいますか、我々としては気にしておかなきゃいけない問題だ、こういうふうに感じております。

 他方、電気事業といいますか、これは当然、消費者に電気を供給する立場にあって、適切なレベルで安い電気を供給する責任を負っているということも理解しております。

 そういう意味では、私が参考になるのではないかと思っておりますのは、アメリカの原子力産業の最近の状況であります。

 原子力発電がここのところアメリカでは大変好調でありまして、高い稼働率を達成し、コスト的にも非常に安くなっているというふうに聞いております。それは、安全をけちっているからというよりは、むしろ安全優先の結果そうなったというふうに、私、アメリカの規制当局とそういうことを議論していて感じております。

 と申しますのは、スリーマイル島の事故以降、アメリカの規制当局もいろいろな試みをした結果、やはり、原子力発電所が抱えているリスクというものをできるだけ定量的に把握して、相対的に潜在的危険性、つまりリスクが高いものからそれが顕在化しないようにしていく、そういう考え方を導入してから、私の理解では、コスト意識を事業者ばかりでなく規制行政庁も持つことによって、規制行政庁と事業者がいわば健全な緊張関係で今安全を確保している、そういうことが高稼働率につながっているのじゃないかというふうに理解しております。

 そういうことにつきましては先生も同じようなお考えだと思いますが、規制行政庁と事業者の関係が透明になっていることが重要でありまして、安全委員会といたしましても、そういうことについて、必要であれば必要な意見を述べていきたい、こういうふうに感じております。

 ありがとうございます。

塩川委員 ありがとうございました。

石田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十一分散会


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