衆議院

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第20号 平成18年5月31日(水曜日)

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平成十八年五月三十一日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 石田 祝稔君

   理事 今井  宏君 理事 新藤 義孝君

   理事 平田 耕一君 理事 増原 義剛君

   理事 吉川 貴盛君 理事 近藤 洋介君

   理事 達増 拓也君 理事 桝屋 敬悟君

      あかま二郎君    小此木八郎君

      岡部 英明君    片山さつき君

      北川 知克君    近藤三津枝君

      佐藤ゆかり君    坂井  学君

      清水清一朗君    塩谷  立君

      平  将明君    永岡 桂子君

      長崎幸太郎君    橋本  岳君

      早川 忠孝君    福岡 資麿君

      藤井 勇治君    牧原 秀樹君

      松島みどり君    武藤 容治君

      望月 義夫君    森  英介君

      山本 明彦君    大畠 章宏君

      川端 達夫君    吉良 州司君

      北神 圭朗君    佐々木隆博君

      野田 佳彦君    松原  仁君

      三谷 光男君    山口  壯君

      高木 陽介君    塩川 鉄也君

      武田 良太君

    …………………………………

   経済産業大臣       二階 俊博君

   経済産業副大臣      西野あきら君

   文部科学大臣政務官    吉野 正芳君

   経済産業大臣政務官    片山さつき君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (文化庁長官官房審議官) 辰野 裕一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           大辻 義弘君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           深野 弘行君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           江嵜 正邦君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           平工 奉文君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          豊田 正和君

   政府参考人

   (特許庁長官)      中嶋  誠君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    野澤 隆寛君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  平  将明君     坂井  学君

  野田  毅君     福岡 資麿君

  橋本  岳君     永岡 桂子君

  川端 達夫君     山口  壯君

同日

 辞任         補欠選任

  坂井  学君     平  将明君

  永岡 桂子君     あかま二郎君

  福岡 資麿君     野田  毅君

  山口  壯君     川端 達夫君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     橋本  岳君

    ―――――――――――――

五月二十九日

 新聞の特殊指定堅持に関する請願(漆原良夫君紹介)(第二三九〇号)

 同(金子善次郎君紹介)(第二三九一号)

 同(鈴木俊一君紹介)(第二三九二号)

 同(平将明君紹介)(第二三九三号)

 同(根本匠君紹介)(第二三九四号)

 同(羽田孜君紹介)(第二三九五号)

 同(秋葉賢也君紹介)(第二四六四号)

 同(大島敦君紹介)(第二四六五号)

 同(鴨下一郎君紹介)(第二四六六号)

 同(島村宜伸君紹介)(第二四六七号)

 同(田中和徳君紹介)(第二四六八号)

 同(新井悦二君紹介)(第二五二三号)

 同(井上信治君紹介)(第二五二四号)

 同(飯島夕雁君紹介)(第二五二五号)

 同(小野寺五典君紹介)(第二五二六号)

 同(小杉隆君紹介)(第二五二七号)

 同(坂井学君紹介)(第二五二八号)

 同(玉沢徳一郎君紹介)(第二五二九号)

 同(土屋品子君紹介)(第二五三〇号)

 同(土井亨君紹介)(第二五三一号)

 同(吉川貴盛君紹介)(第二五三二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 意匠法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六九号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、意匠法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文化庁長官官房審議官辰野裕一君、経済産業省大臣官房審議官大辻義弘君、経済産業省大臣官房審議官深野弘行君、経済産業省大臣官房審議官江嵜正邦君、経済産業省製造産業局次長平工奉文君、経済産業省商務情報政策局長豊田正和君、特許庁長官中嶋誠君及び特許庁総務部長野澤隆寛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 おはようございます。民主党の近藤でございます。

 本日は、意匠法、特許法等の一部改正案の質疑でございますが、私は、この法案の内容とあわせて、知的財産戦略、主にコンテンツ産業について御質問してまいりたいと思います。

 まず、意匠法等の改正案ですが、本日の慎重審議を経て採決の運びでございますけれども、私個人の思い、結論を先に申し上げれば、この改正の趣旨等については、時宜にかなったものであり、賛同したいという思いでございます。その立場に立ちながら、問題は、この法改正を実施する体制といいますか、特許庁の体制がどのようになるか、これが極めて大事だろう、こう認識しておるところでございます。

 そこで、冒頭お伺いしたいわけでございますが、同僚議員からもこの法案の質疑で幾つか指摘がされてまいりましたが、人員、人材の点でございます。

 特許庁は、審査体制を強化する、何といっても審査の体制をしっかりつくることが土台になるわけでございますが、審査体制を強化するために、任期つき審査官を五年間で五百人増員するということを現在実施中であります。特許の審査期間を七年から三年に短縮するという政府の方針に基づくものでありますけれども、その現場を見ますと、人員数ではまだまだ、米国と比べれば三分の一程度という状況にある。また他方、行政改革の流れもあるわけですから、総定員等のことも考えれば、米国並みに、はい、します、しろと言うことも、それは簡単に言いにくい事情もよくわかるわけであります。

 そこでなんですけれども、特許、意匠、商標の審査というのは、法律も含めて専門知識が必要ですし、促成栽培できるわけでもない。そこで一つ提案なんですけれども、この現状、状況を打破する一つの方策として、専門家である集団がおる、いわゆる弁理士の方々であります。この弁理士の方々を審査、審判の担い手として特許庁の部門に登用する。任期つき審査官は七年間勤務すれば弁理士の資格が取れる、こういうことでありますけれども、既に弁理士の資格を取っている人材が全国に今でも七千人近くおるわけですから、この方々をどんどん使うという仕組みを真剣に検討すべきではないかと思うわけですが、長官、いかがでございますでしょうか。

中嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございましたように、日進月歩の技術動向に対応して的確な特許審査を行っていくためには、まず何よりも、各分野ごとの専門の技術的知識が不可欠でございます。そういう観点で、任期つきの審査官の採用試験におきましても、国家公務員のいわゆるI種の技術系の試験と同等の専門技術などに関する試験を行った上で、つまり、機械とか化学とか薬品とか建築、土木とか、それぞれの技術分野ごとの試験を行った上で、最終的には面接試験をして任期つきの審査官を採用しているわけでございます。

 現在までのところ、こういう採用プロセスを経て、合計で二千五百名の応募者の中から約三百名を採用しておりますけれども、その中には、弁理士資格を既に有していらっしゃる方も十名含まれているのが現状でございます。

 他方で、弁理士の場合の弁理士試験でございますけれども、これは、弁理士として特許庁に対して出願人の代理として申請の手続を行うといったような業務でございますので、工業所有権法令の知識を問う内容の試験内容が中心でございます。技術に関する科目というのは選択科目として存在しているという状況でございます。

 したがって、弁理士資格を有する者であっても、審査官としての採用に当たってはやはり専門の技術に関する試験を行っていることが必要でございまして、弁理士であることをもってそのまま直ちに審査官として採用するということは困難だと思います。

 ただ、弁理士資格を有する方が任期つき審査官試験を受けるに当たりましては、例えば教養試験は免除するとか、あるいは、採用後、審査官となるための特許庁内での研修に際しましても、工業所有権法令に係るものは免除するとか、そういう形で弁理士としての資格を有していることを評価する仕組みは採用してございます。

 いずれにしても、弁理士の方と連携をとって、そもそも出願の内容ができるだけ厳選をされて効率的な審査ができるように、そういう意味におきましては、今後ともよく連携をとってやっていきたいと思っております。

近藤(洋)委員 すべてを弁理士の方、そう言うつもりは毛頭ないのですね。既に十人採っているということでございますけれども、もっと有効に活用すべきではないか。

 分野は違いますけれども、金融の分野でも、例えば金融庁の職員を増強しなきゃいけない、だけれどもそう簡単にふやせない。そうなれば、やはり民間のさまざまな、公認会計士の資格を持っている方を積極的に金融庁は使うべきだろうし、弁護士資格を持っている方も使うべきだろうし、こういう観点から、特許行政については、弁理士という専門家集団がおるわけですから、ぜひ、長官、ここは検討してもらいたいと思いますし、要望しておきたいと思うわけであります。

 体制についてもう一点伺います。

 私も先日、特許庁視察に参加させていただきました。

 特許庁という役所は他の省庁と違う点が、中を回って、一点あるわけであります。発見いたしました。何かといえば、中嶋長官のお名前があちこちに張ってある。ある議員の先生が、これは選挙にでも出馬するのですか、こういうふうに聞いたぐらい、あちこちに中嶋長官のお名前が張ってあるのですね、ぺたぺたぺたぺたと。

 これは、事務局の御説明によると、申請書類の名前を間違わないようにということであちこちに張ってあるのですね。このことは、裏を返しますと、それだけころころ長官がかわる、こういうことなんですね。かわるから間違えないように、こういうことで張ってある、こういうことでございます。そういう状況なんですね。

 特許庁という組織は、特許庁採用の方々が、二千人を超える方々がいますけれども、大半がプロパーの方で、特許庁採用の方であります。長官のほか、制度をつくる企画総務部門及び人事部局の課長さん、部長さんないしは総括補佐さん、そういうところは経済産業省から来られてまた戻る、こういうことでありますが、知的財産の中核を担う組織、極めて戦略的な思考が必要な部局ですから、私は、少なくともトップの長官は三年ぐらい、四年ぐらいは勤務すべきだと思うんですね。

 経済産業省の人事のローテーションの中でやるのはわかるんですが、やはり資源エネルギー庁そして特許庁というのは戦略的な部門であります。そういう意味では、下の方々を五年、六年、経済産業省から、ずっといなさい、私は本当はそれも言いたいんですが、そこはともかく、せめて長官だけでも四年程度やるべきではないか。

 実際、特許庁長官を経験された方にお話を伺うと、正直言うと、やはり三、四年やるべきでした、そうでないとなかなかできませんということを告白する方が、一人ではありません、複数いらっしゃるわけであります。

 ここで本当は人事権者の大臣にお伺いしたいところでございますが、あえてここは長官に伺います。

 経済産業省の人事の全体の話でありますから、経済産業省の幹部として、経産省の首脳のお一人として、役所の人事のあり方を、特許庁長官の人事のあり方を少し考えてみたらどうだということを、長官、内部で御提言、御発言するお考えはございませんか、どうですか。

中嶋政府参考人 近藤先生には、この間特許庁を御視察いただきまして、本当に厚く御礼申し上げます。大変御支援をいただいておりまして、改めて感謝を申し上げたいと存じます。

 その上ででございますけれども、まず、長官の任期の問題は、これはその時々の特許行政といいますか産業財産権制度を取り巻く情勢、その他いろいろな事情を総合的に勘案して適切に決めていただけるものであるというふうに思っております。個々の長官としては、その中で日々精励に努めるべきものであるというふうに思っております。

 それから、私も諸先輩の話を聞きましたけれども、歴代長官、例えばアメリカの特許庁長官あるいは欧州特許庁の長官と十分、対等もしくはそれ以上に伍して仕事をしてきているものと思っております。

 なお、先生が御指摘いただきましたいわば中期的な戦略の重要性、それはおっしゃるとおりでございますけれども、実はこの点につきましては、昨年末に、大臣を本部長といたしまして、私自身も副本部長となっております経済産業省としての特許審査迅速化・効率化推進本部というのを設けまして、一月に具体的な中期的な迅速化の数値的な目標も設定した上で、世界最高水準の迅速かつ的確な特許審査の実現を目指して、総合的なあるいは積極的な取り組みを行っております。

 そういう意味で、経済産業省挙げて、あるいは特許庁自身は当然でございますけれども、全体の組織として世界の中で力が十分発揮できるようにしていきたいと思っております。

近藤(洋)委員 長官のお立場としてはそのようにしかお答えできないというのはよくわかった上で聞いておるんですけれども、ここはやはり、くどいようですが、特許庁という仕事は、ある意味で、事業官庁ではないですけれども、特許審査という現業も持っておる、かつ極めて戦略性を求められるところでもございます。二年でころころという今までの体制を続けるのではもう限界が来ているのではないかということを重ねて指摘したいと思います。

 大臣、国会も終わるやに報道されておりますけれども、ぜひおとめいただいて、やはり役所の人事というのはそろそろあり方というものを変える時期ではないかと思っております。残念ながら、小泉内閣は一内閣一閣僚ということでありましたが、結局その方針も、末期の五年目を迎えて、どうも、最初の方針からずっと内閣にいるのは竹中さんだけという状況でもございます。

 ぜひ、役所の人事というもののあり方、大臣は重要閣僚でもございますからお気にとめていただきたいと思いますし、民主党が政権をとったら、特許庁、資源エネルギー庁のトップ人事のあり方は変わるということだけは申し上げておきたいと思うわけでございます。

 続いての題に戻ります。

 インターネット、本法案にも示されている模倣品・海賊版の対策についてお伺いをしたいと思います。

 いわゆるにせブランドの問題、本法案でも罰則等を引き上げて対策が講じられておるわけでございますが、近年、インターネットオークション、いわゆるインターネット上の売買をするサイトでにせブランド商品が非常にふえている。トラブルの発生件数もふえておりまして、二〇〇五年の警察への相談件数は一万七千件となっている。インターネットオークションでのにせものが大変ふえている、これがいわゆる暴力団であるとかそういった部分の資金源にもなっているのではないかということも言われておるわけでございます。

 ネットオークションによる模倣品取引に歯どめをかける対策が急務かと思いますが、経済産業省の対策等をお答えいただきたいと思います。

西野副大臣 今先生お示しのネットによります模倣品あるいは海賊版と称する販売が非常に多発をしておりまして、その被害という問題も今大きな話題といいますか課題になっておるところでございます。

 こういう点から考えて、知的財産権の侵害の可能性がありますネット販売取引について、例えば、経産省としては、その事例集を策定して公表いたしたり、あるいは、知的財産権を所有しておりますいわゆる権利者から申告がありました場合にはその出品情報を削除するというふうな自主的な規制を要請いたしたりしております。要は、ネットオークションの出品者が特定商取引法の販売業者に該当する場合は連絡先等を明確にすること、それを表示してもらうこと、そういう義務を負うこと等が大きな判断基準となるわけでございますので、そういうことも明確にしたいなというふうに思っておるところでございます。

 とりわけネットオークションによります事業者に対して、模倣品とかそういう出品情報を削除するために自主的な取り組みを行っていただくように強く要請をいたしながら、今後とも、経産省としても、積極的にこれらの防止について取り組みをいたしたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 副大臣はネットオークションを使われたことはございますか。済みません、ちょっと通告がなくてあれですけれども。

西野副大臣 残念ながら、経産省の中のネットでは、それを無駄に、必要外に使用して時間的なあれがあってはいかぬので、恐らく閉鎖されておると思います。ですから、みずからのものでないと出ないわけでございますが、私は、あるということはわかっておりますけれども、一切それにかかわったことはありません。

近藤(洋)委員 いや、利用者としてみますとなかなか便利なものでありまして、私も余り使わないんですけれども、個人的な話ですが、うちの家内がかなり重宝がって使っております。チケットをとるとか、映画のチケット、オークションじゃないですけれども、例えば席がとれない観劇、例えば宝塚とかそういったもののチケットをとるのにも、オークションでとったりするんですね。非常に高いんですけれども、いろいろなものが安く売れたりとか買えたりするので、随分家庭の主婦も使っておるものであります。

 ちなみに申し上げると、最大手のヤフー、楽天とかヤフーとか、そういう企業がオークションの市場を提供しているわけですけれども、その取扱高は、何とヤフーは六千億円、大手百貨店並みなんですね。大変大きな市場になっています。

 ここでにせもの、まがいものがどんどんどんどん出ているということはやはり看過できない問題だと思いますので、どうぞ法的な措置も含めて、必要あらば、すべて規制しろと言うつもりはございませんが、ぜひ経済産業省としてごらんいただきたいと思うわけでございます。

 もう一点、インターネット関係の問題でお伺いしたいと思いますが、いわゆるドメインと呼ばれるもの、ネット上の住所録をドメインというふうに言うそうであります。さまざまなホームページのアドレス名、これをドメインと言うわけです。

 これを使って、いわゆるフィッシング詐欺というわけですが、そのドメイン、一つの例を申し上げれば、ある金融機関の名前、例えば東京三菱UFJ銀行というのがあるとしますと、その東京三菱UFJという名前のドメインを使いながら、実は東京三菱UFJeと、小さくeをつけてしまって、似たような名前をつけたサイトをつくる。これを見た人は、東京三菱銀行のホームページかと思って自分の個人情報を書き込む、ついでに自分の暗証番号も書き込んでしまう、そして全部情報が流れてしまう。こういういわゆるフィッシング詐欺と呼ばれている犯罪でございますが、出ております。

 よく、昔、にせブランドといいますと、プーマというサッカー用品の名前をピューマとか書いたにせブランドとか、一文字だけ変えて、アディダスという名前をアディドスとか、私も子供のころ、安いからと思って間違って買ってしまったことがあるんですけれども、今は、ホームページ上でそういう一文字違いのドメイン問題というのが出て、かつ個人情報をそこでとられてしまって被害が起きているということが出ております。

 こういった問題への対応策、経済産業省としての対応策をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

江嵜政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のように、フィッシング詐欺につきましては、カード会社やネットショッピング会社を偽装したもの、こういうものが確かに確認されておりますし、生じております。

 このため、経済産業省といたしましては、フィッシングのいわゆる攻撃対象となります例えばカード会社ですとかネットオークションの関係の団体、会社というようなものをメンバーといたしまして、総務省などの関係府省庁のオブザーバー参加を得て連絡会議を設置したところでございます。そして、そこではフィッシング対策協議会の設立というものを取りまとめまして、昨年四月にこのフィッシング対策協議会が、民間団体、業界を中心に設立されたところでございます。

 同協議会におきましては、フィッシングに関しまして、情報をより早く集める、それから、どういう動向で今動いているかというのを迅速に把握するということをしておりまして、それを、ホームページやパンフレットを通じまして、一般消費者への注意喚起というような活動をしているところでございます。

 また、これは経済産業省だけじゃございませんけれども、内閣官房におきましても、IT安心会議、いわゆるインターネット上におきます違法・有害情報に関します連絡会議がございますけれども、そこでフィッシング対策を含む府省庁横断的な連携体制というのも構築されております。

 実は、昨日もフィッシングの詐取事件の容疑者が逮捕されたということを私ども承知しておりますけれども、こういうようなことに関しまして、一般消費者に対しまして、フィッシングの手口というようなことをできるだけ迅速に、かつ十分に注意喚起を進めることが重要というふうに考えております。

 私どもといたしましては、今後とも、関係府省庁と連絡をとりながらフィッシング対策を推進してまいりたいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 インターネットの世界、こういったにせブランド商品、さらにはにせドメインという問題が出ております。インターネットの世界というのはどんどんどんどん伸びている世界ですし、産業としても伸ばしたいというわけですが、しかし野方図であってはいけないと思っておりますので、ぜひ経済産業省、またこれは政府において、警察も含めてしかるべき対策をとってもらいたいと思うわけであります。

 もう一点、模倣品に関連して伺いたいと思います。

 模倣品・海賊版を防ぐ手段、規制を強める、刑罰を上げる等々というのもありますが、もう一つ、残念なことに、模倣品・海賊版の供給国、物の供給国はアジア各国であります。ここに対しての水際対策等々は重要でありますけれども、もう一つの施策として、アジア各国で特許なり意匠の制度がきちんと働くようにすること、これが極めて大事ではないかと思います。これが、遠回りなようで、実は一番近道な方策ではないかと思うわけであります。

 その意味でも、我が国の特許庁の仕組み、システム等について積極的にアジア各国に広めるという取り組みが大事かなと。これは、我が国にとってもプラスですし、産業を育てようとするアジア各国にとってもプラスで、いわゆるウイン・ウインの関係になるだろうと思うわけでありますけれども、経済産業省、この点についての取り組みを積極的に進めるべきかと思いますが、いかがですか。

中嶋政府参考人 御質問ございました途上国の知財制度につきましてですが、これは、加盟国に対しまして一定の保護水準を定める国際的な取り決めとして、WTOのいわゆるTRIPs協定というのがございます。これの履行義務が原則として二〇〇〇年に途上国に対しても発生しておりますので、現時点で、多くの途上国においては既に最低限度の法整備はされつつあるというふうに認識しております。

 ただ、しかしながら、現実の問題として、途上国では、特許庁を初めとする行政機関の執行体制が脆弱である国が多いのは御指摘のとおりでございます。そのため、途上国におきます知的財産保護の環境を整備して、模倣品を防ぐ観点からも途上国に対して積極的に支援を行うということが重要でございまして、特許庁としても、多様な支援策を講じております。

 例えば人材育成協力、よくキャパシティービルディングというようなことも申しますけれども、例えば、法律、審査実務あるいは情報化、いわゆるいろいろな執行面、こういった面での能力構築の支援のために、アジア太平洋地域の四十二カ国一地域から、官民合わせて毎年二百名程度の研修生を受け入れております。結果として、この十年間、つまり一九九六年から二〇〇五年度にかけまして、累計で二千二百八十七名を受け入れております。

 また、特許庁職員を含む我が国の知財の専門家を途上国に派遣いたしまして、審査実務、情報化についても現地で指導を行っております。実際派遣した知財専門家は、この十年間、累計で三百三名に及んでおります。直近では、これはまさに先週でございますけれども、特許庁の審査官を中国に派遣いたしまして、約七十名の中国の特許庁の審査官を対象に、医療分野について突っ込んだ特許に関する我が国の審査基準や裁判例について講義を行って、専門的見地から中国における問題解決のための指導助言を行ってまいりました。

 さらに、知財保護に関します現地セミナー、これも大変多数開催しておりまして、本年一―三月月にも、ジェトロや日本の産業界とも連携いたしまして、中国の五つの都市、武漢、成都、上海、広州、杭州におきまして、模倣品取締官を対象にした真贋判定セミナーといったようなものを開催いたしております。

 それから、途上国の近代化のための情報化協力でございますけれども、これも、主にASEAN諸国に対しまして、やはり日本から専門家を派遣いたしまして、特許庁における出願事務の処理システム、検索システム、あるいは情報提供システムの構築についての支援も行っております。

 それから、日本政府全体といたしましては、経済産業省のみならず他省庁、例えば財務省とか警察庁におきましても我が国への研修生受け入れといったようなことをしておりまして、こういった意味で、他省庁とも連携をして、今後とも、こういった取り組みを進めることによって途上国における知的財産保護の強化を支援していきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 ぜひ、その方向で今後もどんどん進めていただきたいと思います。

 続いて、知的財産戦略、中でもコンテンツ産業について伺ってまいります。

 コンテンツと言うとまだぴんとこないわけでございますが、要は、映画、映像、音楽、アニメーション、ゲーム、出版、新聞、こういった分野を総称する産業群なわけでありますけれども、この分野、大臣がおまとめになられた新経済成長戦略の中でも若干触れられておりますけれども、我が国の市場規模が十三兆六千億円、雇用で百八十五万人ある、二〇一五年にはさらにどんどんふえるという予測もここのところで分析をされております。

 私は、この分野、この十三兆六千億円という金額でははかれない非常に波及効果のある重要分野だと認識しておりますけれども、大臣は、このコンテンツ産業、コンテンツ分野、産業としてどのように位置づけてお考えになっているか、まず大臣の御見解を伺います。

二階国務大臣 ただいま近藤議員から、コンテンツ産業について、大変御熱意のある、推進策等について言及をいただきましたが、私どもとしましても、今後、我が国経済、産業界の発展の分野として高く評価をし、また注目をしておるところであります。

 アニメやゲームなどの我が国のコンテンツ産業は、御承知のとおり、世界的にも非常に高い評価を受けております。

 前にも、私、欧州の方へ、国際会議等に出席の際にパリにトランジットで立ち寄ることがあるわけでありますが、その際、ジェトロの所長等にフランスの事情を聞きますと、やはりフランスで日本の製品の中で一番注目を浴びているのはアニメだ、そしてフランスの子供たちはほとんど日本のアニメで遊んでおる、こういう話を聞いたことがあるわけであります。

 この間、初めて、OECDですから、フランスに出張しました。部屋へ着いてテレビをひねりましたら、ぱっと出てきたのは、当然フランス語でアニメをやっておるわけでありますが、画面から出てくるのは明らかにこれは日本の製品だということ。つまり、駅のプラットホームが出てくると、駅の名前は日本語のままなんです。いろいろなお名前、固有名詞はほとんど日本の字をそのまま使っておるわけですが、出てくる子供たちや動物はみんなフランス語でしゃべるわけです。日本文化というのはこんな形でフランスにも浸透しているんだな、こういう思いをしたわけでございます。

 我が国のコンテンツ産業の海外進出につきまして、外国における日本文化の紹介という意味では大変重要な意味があると思うんです。鎖国のようにして閉じこもっておる日本から、これをさらにコンテンツ産業というものを媒体にして国際展開していくということは、経済産業省としては大変重要な役割だと思っております。

 そこで、今議員からお示しをいただきましたように、新経済成長戦略におきましてもコンテンツ産業を最重要分野の一つとして位置づけはしておりますが、私は、もっと野心的にといいますか、もっと積極的な対応をする必要があるのではないかと思っております。

 先般、経済財政諮問会議でコンテンツの問題について論じられましたので、我が国では、御承知のとおり、映画の場合には東京映画祭、過去十八回やっておりまして、ことしは十九回目でありますが、国際的にも相当評価を得ておる映画祭でありますが、これをなお一段と発展的に伸ばしていくという意味で、国際コンテンツカーニバルをやったらどうだということを経済財政諮問会議で私は提案をしておきました。関係者は賛意を表されておりますし、総理も非常に積極的でありました。

 私は、これから、東京映画祭を参考にしながら、広い分野、今近藤議員がお示しになりましたようなたくさんの分野があるわけですから、それをすべて集めて、一カ所でやるとは限りませんが、いろいろな分野で総合して国際的なカーニバルをやる。

 今、御承知のとおり、我が国の産業としても大変注目すべきボリュームを持っておるわけであります。二〇一五年には十九兆円台になっていくであろうということでありますが、国際的に見てこれはまだほとんど初歩の段階であるものも相当あるわけですから、これは頑張りようによっては二十兆をはるかに超えていくような産業に成長する可能性がある。大化けする可能性がある。ですから、ここに経済産業省としてうんと力を入れていくということは議員御指摘のとおりでありまして、私も大賛成であります。

近藤(洋)委員 大臣の大変なその思い、よくわかりました。全く同感で、アニメーションは日本が強いんです。問題は映画の世界で、これはもう韓国なんですよね。映像、映画は今や、アジアでは圧倒的に韓国であります。「冬のソナタ」、これはもう日本じゅうで大変なブームになったわけですが、日本だけでなく、中国に行きますと、今、韓国の映画がどんどん出ています。

 映画、映像というのは大変大きな効果があります。文化の発祥ということ、大臣の御答弁がございました。かつて、ジェームズ・ディーンの映画を見てリーバイスを買って、コカコーラを飲んで、車を買ってと、まさにアメリカの生活が日本にどうっと入っていく。映画は最大の広告であるというのはアメリカの産業戦略でありました。だからハリウッドがあそこまで大きくなったわけであります。

 そういう意味では、海外戦略、文化の共通理解ということと、もう一つ、やはり日本の生活、日本へのあこがれ等々、産業政策上、これは金額ではかれない大変大きな道具であるということで、この認識は大臣も御一緒だということですので、ぜひこの方向で頑張っていただきたいと思います。

 もう一点、視点を申し上げると、これは地域おこしにもなります。映画産業は、映画のロケ地になったところは大観光地になります。「冬のソナタ」で、あの場面に、日本からどんどん、あのロケ地に行きたいということで、女性たちが韓国に行かれました。国内で見ても、尾道という市がありますが、尾道は映画のロケ地で有名であります。皆、特に女性を中心にですけれども、映画を見て、あの尾道に行こうということで、今尾道がにぎわっている。私の地元でもある映画を、「スウィングガールズ」というジャズの映画でありますが、やって、大変地域もやる気になって、エキストラで参加したとか、これは大変な町おこし産業であり、観光産業にもつながるということ。大臣は観光行政は大変お詳しいですから、御一緒かなと思うわけであります。

 その割には、大臣、これは指摘だけしておきます。金額がすべてとは言いませんが、経済産業省のコンテンツ予算、年間十五億円なんですね。これは随分少ないなという気がしますし、お金で全部言うつもりはないんですが、この程度。

 吉野文部科学政務官にも来ていただいています。経済産業省と文部科学省、文化庁が共管なんですが、文部省は、予算は、昨年度が二十四億円で平成十八年度は約二十二億円と、「日本映画・映像」振興プランが減額されているんですね。意気込みとは別に、減額というのはちょっとどういうことかなという気もするんですけれども、文部科学省、どうですか、人材等の育成も含めて。経済産業省はやるという宣言がございました。文部科学省はやる気があるんですか、映画産業の振興というかこの分野。いかがでしょうか。

吉野大臣政務官 近藤委員御指摘のとおり、日本の文化を世界に知らしめるという意味では、映画を初めとする映像芸術の振興というのは本当に大事でございます。そして、文部省では、平成十六年から「日本映画・映像」振興プランを推進しております。昨年度は、御指摘のとおり二十二億円でございます。

 でも、これは、前から比べると金額はかなり大幅に上がっております。例えば、平成十四年では十三億円でございます。それから比べるとかなり、十六年、十七年、十八年、二十五億、二十四億、二十二億という形で、大幅に予算をふやしているところでございます。

 そして、その使い道ですけれども、日本映画・映像に関する創造、いわゆる映画制作、と同時に、流通、人材育成、映画フィルムの保存等を総合的に推進しているところでございます。

 このことにより、我が国の映画・映像分野の芸術については格段の充実を図ってきたところではございますが、文化審議会の部会の審議のまとめにおいても、「映画やメディア芸術の振興を一層図っていく必要がある。」とされているところでございますので、なお一層振興に努力をしていくつもりでございます。

近藤(洋)委員 お金を使えばいいという単純な議論をするつもりはありません。ただ一方で、ちなみに韓国は、映像・映画産業に年間八百億円投じています。我が国は両省合わせて四十億円、二十分の一なんですね。これはやはり厳然たる事実として、ふえたといっても、やはり韓国は国家戦略としている。韓国のまねをしろとは言いませんが、やはりそういう観点も重要だということ、ぜひその指摘をしておきたいと思います。

 お金がなければ知恵を出さなければいけません。そういう意味では、コンテンツ分野、お金がなくても制度を見直すことで変えることができる。

 そこで、コンテンツ分野、映像ではございませんが、音楽分野の制度についてこれからお伺いしたいと思うわけですが、いわゆる音楽CDの再販売価格制度について伺っていきたいと思います。

 委員長のお許しを得て資料を配付させていただいております。再販売価格制度についてはこの場で説明を繰り返す必要はないと思いますが、この二枚目を見ていただきますと、各国で再販制度というのが認められております。書籍、雑誌、新聞、音楽CD等ということでありますが、この中で、主要国では、この表にもあるとおり、音楽用CD等の等にはレコード、テープが入っているわけでありますけれども、音楽CDについて認めているのは我が国だけであります。

 その上で、一枚目に戻っていただきたいんですけれども、この一枚目の上段の「(提言3)」という文章は、政府の知的財産戦略本部のコンテンツ専門調査会の二月にまとめた報告書であります。(2)を見ていただきたいんですが、「(提言3)ユーザーが豊かなコンテンツを楽しめるようにする」というところの(2)に「音楽用CDにおける再販売価格維持制度の見直し」というのが書かれております。最後の段に波線を引いております。「音楽用CDについては再販売価格維持制度の対象から除外することを検討する。」これが二月の報告書でありました。

 そして、次の下の方に出ているのが知的財産推進計画二〇〇六(案)でございます。政府は、総理を本部長とする知的財産戦略本部で毎年毎年知的財産推進計画をつくっておりますが、これが六月に改定されます。ことしの分は六月に改定する。その六月の原案であります。

 そこには専門調査会のいわゆる素案を受けての最終案が出ておりますが、これが下の2であります。音楽用CDにおける再販売価格維持制度について、「見直し」から「検証する」に変わりました。そして、その下の波線を見ていただければと思うんですが、「運用実態と効果を検証し、必要に応じてより効果的な方途を検討し対応する。」と、随分後退した感があります。厳しい言い方をすれば、いわゆる骨抜きというのはこの文章のことを言うわけでありまして、「除外することを検討」から「必要に応じてより効果的な方途を検討」する。「除外」も消えました。

 これは、この事の是非はこれから伺ってまいりますが、政府の事務局案で「除外」だったものが変わったわけであります。そうすると、三つの担当役所が書いてあります、公取、文科省、経済産業省、どこかの役所が強烈に反対をしたからこういった文言になったと類推がされるわけであります。

 そこで、公正取引委員会の竹島委員長にお伺いします。

 公正取引委員会は、平成十三年の時点で、原則として再販制度の廃止という立場をとられています。ただ、国民的な納得、合意がまだとられていないということから、存置するということでの見解をまとめておりますが、原則の立場は廃止という立場であったかと思います。本日は音楽用CDに限定して議論を進めていきたいと思いますので、御答弁もその点に絞ってと思います。

 音楽用CDの再販について、竹島委員長は維持する必要があるとお考えですか。

竹島政府特別補佐人 今近藤委員がおっしゃってくださいましたように、公正取引委員会は、著作物の再販制度は競争政策上望ましくない、廃止すべきものであるという考え方は一貫してとっております。

 ただ、かつて、平成三年ごろから十年ぐらい、著作物の再販制度の廃止をめぐって議論が行われた結果、各政党を含め国民的な合意が得られないということで、平成十三年に当分存置するということにさせていただいて今日に至っているということでございまして、今の音楽用のCDも同じでございます。

 そもそも再販制度は、これは強制再販じゃございませんので、関係者がこれをやめたいと言えば、やめていただいて構わないものでございます。

 したがって、いろいろな業界の中で利害が対立といいますか、意見が一致していないというふうに見ておりますけれども、やりたい方はおやりになれる制度でございまして、再販をやめたら法律違反、そういうものではない。本来原則禁止になっている再販制度は著作物についてはやってもよろしいということであって、やりたくなければおやめになっていただけば結構だ。私どもとしては、政策上廃止すべきものですから、世の中の御意見がそういうふうになってくれば、当然喜んで廃止をさせていただく。

 今御指摘のことにつきましても、確かに表現はトーンダウンしておりますが、これからの議論によってどういうふうになっていくか。私どもは廃止に前向きでございます。

近藤(洋)委員 まず、音楽用CDに絞って本日議論していきたいんですが、これは音楽用CDですね、これはDVDというもので、見た目は同じ円盤なんですけれども。今なぜ音楽用CDを議論するかというと、音楽用CDで、例えばこれが大体三千円だとします。売られているのが三千円。ところが、このDVDをつけて販売されると二千五百円になるんですね。不思議なことなんですね。同じCDですよ。同じCDが、これにDVDがくっつきました、二枚セットで二千五百円で売られています。CDは三千円。こういうケースが今非常にふえているんですね。わかりやすく言うと、この本がある、この本は三千円だけれども、写真集がついて二千五百円になっている、こういうことなんですね。

 こういう実態を踏まえて文部科学省にお伺いしたいんですが、既にこういった実態になっているのに再販売制度を維持する合理的な理由は何なのでしょうか、教えてください。

吉野大臣政務官 再販制度ですけれども、再販制度は、まず返品が可能なんです。そして、多様な品ぞろえを田舎のお店でもできることができます、返品ができるということで。そういう意味で、文化政策上本当に重要な役割を再販制度は担っている、このように私どもは考えております。

 特に音楽用CDについては、ネット上での音楽配信が普及する一方で、地域や私のような高齢者などのデジタルデバイド、私はDVDもやったことないしCDもやったことないし、いわゆる疎いものですから、そういうことを考えてみますれば、現時点で、再販期間を時限的に運用する時限再販制度の採用が適切だと思います。これは、六カ月間は再販を維持し、六カ月を過ぎると自由に販売できるという時限再販制度というのがございますので、これを適切に運用していくというのが適切であるというふうに思います。

 現在、各事業所により、この時限再販、また、今委員おっしゃいましたCDとDVDをセットで販売すると非再販商品になり得るわけでありまして、安く売られるわけでありますので、こういう販売等により価格の低下と多様化が進んでいるところでございます。

 文部科学省といたしましては、今後とも、音楽関係者等の意見を十分踏まえ、再販制度の運用の実態と効果の検証がなされることを期待しております。

近藤(洋)委員 政務官、CDが使えれば絶対DVDも使えるんですよ。LPレコードというか古いレコードしか使えないというのであればそれはわかるんですけれども、大体、今はほとんどCDしか売られていないんです。ですから、音楽を楽しもうとする人はこれを両方使えるという大前提。田舎のじいちゃん、ばあちゃん関係ありません。僕も田舎の代議士です。田舎の代議士ですから本当に郡部を回っていますけれども、みんな使っています。ですから、田舎の方々に文化が供給できないという理由は、もはや今や技術的にその理屈は成り立たないということは指摘したいと思います。

 そこで、経済産業大臣、私は、要はこの再販の議論というのはきっちり議論するべきだと思うんです。ですから、あえて、音楽CDについて、コンテンツ産業の振興という観点からお伺いします。

 こういう現状だから、再販制度があるから日本の音楽業界は現状に安住して、今インターネットで音楽がとれるとか、そういったものへの対応がおくれているんですね。かつ、CD自体の売り上げもがんがん落ちているんですね。日本のCD輸出は二十五億円、輸入は二百五十二億円。音楽産業はどうかというと、これまた日本の音楽産業の力は弱くなっているんですね。結果として、コンテンツがいいような演奏者なり著作権を持っている人たちが恵まれているならいざ知らず、こういった制度があることが、一つは産業の振興を妨げているという側面があるんだということなんでございます。

 ここについて、どうでしょう、経済産業大臣、コンテンツ産業が重要だという先ほどの御見地からすれば、私は、そろそろこのCD再販については見直す時期、当初案のとおり除外検討というのは、除外するとは書いてないんです。除外検討です。その検討を始めるということぐらいは堂々とおっしゃっていいんではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

片山大臣政務官 御指摘のとおり、音楽CDの再販制度につきましては、幾つかの論点と同時に今まさに議論になっているところでございまして、確かにDVD、CD、同じように、日本全国どんなところでも、いろいろな年齢層の方が幅広く使っているというふうに私も思います。

 ただ、再販制度、今委員長がお答えになったように、一義的には公取の方で適切に御判断されるという問題ではございますが、この再販制度の方は、独禁法上の制度でございまして、それから、文化の多様性の確保等の観点ということで、伝統的に例外として維持されてきたという性格がございます。

 そして、レコード会社の方でどのような取り組みをしているかということを申し上げますと、再販価格が維持される期間が以前は二年だったんですね。二年というのは、今委員が御指摘になったように、確かに産業上、それから輸入が非常にふえて、海外で安く買ってこられるということも考えるといかがなのかなということもあるわけでございますが、だんだんだんだん短くなって、今は維持期間は六カ月というところまでなっているわけでございます。六カ月ということになると、日本全国のいろいろな店舗で六カ月切れのものは若干価格変動しておりますから、現行制度下においても運用の弾力化が事実上大分進展しているのかなという感じは経済産業省としていたしております。

 いずれにいたしましても、これからいろいろとそういった輸出入の状況、インターネットからのダウンロードの状況が変わってまいりますので、そういった点も踏まえて、弾力化の進展がどのようになるかということも踏まえて、適切なあり方を検討していくことが必要だというふうに私どもの役所では考えております。

近藤(洋)委員 経済産業省は時代をリードする役所ですから、もう一歩踏み込むべきだと思うんですね。

 そもそもこの再販の問題がいろいろと議論される、迷走する根底にあるのは、再販の著作物について何を示すのかというのが法律で示されていなくて、公正取引委員会の見解による、私は、ここに実は一つの原因があるような気がしているんですね。この分野が公取委員長の見解で歴史的に決まってきた。ほかの部分は産業政策上適用除外で別法でなっていたのに、この著作物については公取委員長の見解で行われてきた。

 そこで、公取委員長にお伺いしたいんですけれども、やはりそういうお立場に立つのであれば、ここはきちんと、この知財戦略二〇〇六でちょろっと書かせるんじゃなくて、書かせたとは言いませんけれども、書くのではなくて、公正取引委員会として、今、独占禁止法の議論が内閣において議論されておりますから、この独占禁止法の論点として、再販制度をどうするんだ、この規定について法的にどうするのだというのを整理すべきだと私は思うんです。

 あえて付言すれば、新聞の特殊指定について竹島委員長は大変御苦労されていることが新聞に報じられています。御苦労と言うと語弊がありますが、公正取引委員会の考え方に対して与野党ともに意見が出ています。

 私は、この問題も含めて、要は、きちんとこの再販制度の本丸について堂々ともう一回議論する。そこをちゃんと踏まえないで、なぜか、特殊指定のところだけ取り上げるとさまざまな議論が出てきたのかなという印象を持つものですから、ここはぜひ、法改正の論点として、再販制度をどうするんだ、国民的な議論をそれこそ広めるべきだ、行うべきだ、CD再販の除外についてきっちり議論すべきだ、その他についても、公正取引委員会がそう考えるのであれば国民の前で堂々と議論をされたらいい、国会の場で議論をさせてもらいたいと思うわけでございますが、公正取引委員会委員長、いかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 近藤委員のような御意見は、国会の中では近藤先生以外には伺ったことがありません。

 私は、再販制度を含め、新聞の特殊指定、まさに今、新聞業界と鋭意議論をしている最中でございますけれども、これは法律以前の、公正取引委員会の告示で新聞の特殊指定もその他の特殊指定も決まっている。それから、おっしゃるように、著作物とは何ぞやというのは、当時、二十八年の独禁法の改正のときに入ってきたときに、そのときに既に定価販売をやっていたものがそのまま居座った、こういうことなわけでございますね。

 したがって、六つの商品だけですよという解釈がそのまま定着して今に至っているということなんですが、こちらの方は、やはりかつての議論がございまして、これをやめたり対象商品を変えたりする場合には法律が必要ではないのか、法律改正が必要になるんではないかという議論が国会で行われたことがございまして、時の公取委員長も法制局の第一部長も、法律改正が必要であるという見解を述べておられます。

 したがって、音楽用CDを仮にやめる、本来の独禁法の適用にする、適用除外の対象から外すということをする場合には法律改正が必要だということに従来の経緯からいうとなるわけでございます。

 したがって、今先生いろいろなことをおっしゃいましたが、再販制度を含めて全体を見直すべきだという御議論、これはぜひ国会の中でやっていただきたい。我々はもうさんざんやらせていただいたあげく、残念ながら国民の支持が得られたとは理解できないので、当分存置するということで来ているわけでございまして、公正取引委員会の考え方はもうはっきりしているわけでございます。後は、まさに国会において、それが正しい、各政党においてそういう政策はやめるべきだということになれば、私どもは喜んでそれに従うつもりでございます。

近藤(洋)委員 時間も迫ってまいりました。これは重要な問題だと思うんですね。私が申し上げたいのは、ですから、技術進歩によって時代に合わなくなった象徴例として音楽CDがある。そして、それを外すのであればやはりしっかり法律の議論をする。ここも公取委員長と認識は一緒なわけであります。だとするなら、やはり独占禁止法改正の議論の中の論点として再販制度というものをどうするんだということを、やはりそこの議論を逃げずに、独禁法改正の論点の中に入れるということも必要ではないかということであります。その論点をしないで特殊指定のところに着手されたから大変なハレーションを起こされたのではないかと思うわけです。

 新聞、書籍についての議論についてはまた別の機会にと思います。私も新聞人でありました。それについての考えはありますし、これはまさに、国民的議論の中で、国会も含めて議論させていただきたいと思うわけであります。

 最後に一点。ほかにもいろいろ、下請法の運用等々についてもお伺いしたいことがありましたが、一点に絞ってお伺いしたいと思います。

 このコンテンツ産業の分野というのは、時代のスピードが大変速いわけであります。政府というか経済産業省は、特許法、意匠法、商標法、これについては毎年毎年の改正の中で進められてこられました。私は、法制度が毎年変わるのはいかがなものかという議論がある一方で、やはり時代に合わせてどんどん改正していくということは、この分野については極めて大事だと思っているわけです。

 その一方で、あえて指摘したいのは著作権法の話であります。著作権法、これは所管は文部科学省でありますが、例えば音楽関係でいえば私的録音補償金制度の問題。きょうは時間がないのではしょりますが、この問題についてはかねてから議論がされてまいりました。さらに、昨日発表されましたIPマルチキャストの問題、ブロードバンドを使った著作権の取り扱いの問題、これについても、きのう方向性が出ましたが、法改正は近々やられるんでしょう。ただ、これについても、本格的にこの時代に対応した改正かというと、まだ全面的なところまで踏み込んでいないという気がしております。

 そういう中で、最後に大臣に、済みません、経済産業省に質問通告したんですが、時間があれなので恐縮でございますが、この分野、著作権法の世界も含めて、時代に合わせてどんどん変えていく、その先導役を、独占禁止法も含めてであります、やはり経済産業省という役所はその旗を振るために存在すると僕は思っていますから、ぜひその旗振り役を内閣においてやられたい。

 二階大臣は知的財産戦略本部の副本部長であられます。この著作権なりコンテンツの話というのは多省庁にまたがります、総務省、文部省それぞれ。だけれども、二階大臣は、経済産業相は副本部長ですから、やはり積極的に、果敢に、他の省庁の領域といえども、時代に合わせて攻めていくんだということも必要かと思います。最後にそれだけお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

二階国務大臣 大変力強い激励をいただきまして、感謝を申し上げます。

 もう申すまでもなく、時代の変遷とともに、特にコンテンツに類する各種の問題、テーマごとにもっとスピード感を持って、著作権者やユーザーともに利益を得るという点で対応すべきだというふうに思っております。

 なお、先ほど、映画の問題等について、予算の問題も絡めて激励をいただきましたが、映画の問題で一つ御報告をしておきたいのは、地方の映画を多くの人たちに見ていただくために、先ほど近藤議員の地元の方のお話もありましたが、例えば、東京のどこかでそういうものを上映する場所、場面がないかどうかというのは、各地方で今、相当そういう場所を手探りで探しておる状況なんですね。これをやはり経済産業省がリードしてやっていく。

 例えば、ある映画館を三日間ぐらい借り切って、夜も昼も連続して、全国から手を挙げてきたそういう上映希望の人たちに上映をしていただく。見ていただく人は、夜でも昼でも手のあいている人はみんな行ってそれを鑑賞し、また激励するということも大事だと思うんです。

 私は、この間、カンヌ映画祭へ地方の映画を上映してくれないかということを申し入れましたところ、向こうの政府の方でもいろいろお骨折りをいただきまして、カンヌ映画祭に上映させていただくことになりました。しかし、これは世界各国から三万本ぐらい集まってくるようであります。そこで、地方の映画が紛れ込んで入ってきたんじゃないかというようなことになってもいかぬからと思って、私も、半分は希望を持ち、半分はどういう結果になるだろうかなと思っておりましたら、カンヌ映画祭の委員長を十年務めておりますジャコブさんという人から、日本の地方がカンヌ映画祭に上映を希望してわざわざ出展をしてこられたというこの熱意、これに敬意をあらわすということで、特別感謝状をちょうだいした、こういうことがあるわけであります。

 私は、そういうことにヒントを得て、国際的なコンテンツのカーニバルをやろうというのはそういうことでありますし、今の映画の問題でも、省内に帰りまして相談しますと、予算がどうだとか、やれ過去がどうだとか制度がどうだとかと言うんですが、こんなものは、やろうと思ったら、予算ばかりに頼らなくたって、やる気になったらやれるわけです。

 各党の協力を得ながら、そういうことについても積極的に対応できるようにして、一歩一歩コンテンツ産業の前進のために努力をしてまいりたいと思いますが、御質問の趣旨に関しては、我々は積極的に対応していくことをここでお約束しておきます。

近藤(洋)委員 終わります。

石田委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 先週の金曜日に引き続きまして、知的財産権の質問をさせていただきたいと思います。

 前回は、産業戦略全体の中で知的財産権の戦略というものを考えるべきだ、そのためには審査体制というものを充実していく、さらには、企業分野に応じて審査体制というものを重点配分するとか、あるいはそういった案件について迅速な審査というものを進めていくべきではないかという議論をさせていただきましたが、本日は、まず、そもそも、我が国の特許に関して言えば、その特許の審査の対象となるものが限定され過ぎているのではないかというお話をさせていただきたいと思います。

 具体的に、御存じのように、特許の審査となるものは発明に限られる。この発明とは何ぞやというふうに申しますと、特許法の第二条に「「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」というふうにあります。これでは、特許の対象概念というものが、言ってみれば、高度な技術的創作に限られてしまうということになってしまいます。そういうことでいえば、例えば、さほど高度な技術を使っていなくても、いろいろな既存の技術、手法を組み合わせてつくった商品とか、あるいは農業の方法とか、あるいはビジネスモデルとか、さらには医療技術、こういったものがそもそもその審査の対象にならないという部分があるというふうに思います。

 例えば、私も、たまたま先週末、地元京都の方でいろいろ歩いていますと、中小企業の社長さんで、床の間をコンパクトにしてマンションにも設置できるような、そういった商品を開発されている方がいるんですね。これは北山杉を使ってやるんですが、別に特別な技術を使っていると思わないんですよ。木があって、北山杉の柱がありまして、それに畳をちょっとくっつけて、多少ねじのつけぐあいが何か特殊な技術を使うみたいなんですが。これも今出願しているらしいんですが、まだ特許請求はしていないみたいですが、こういったものも、場合によっては、私も素人なのでわからないんですが、高度な技術を使っていないということで、そもそも窓口で却下されてしまうおそれもあるのではないかというふうに思います。

 他方、アメリカの方では、御存じのように、全く限定されていないんですね。発明でもいいし発見でもいいし、いろいろなものが対象になっている。もちろん、ヨーロッパの方では日本に近い制度だということも承知しておりますが、日本も知財というものを戦略的に優位に進めていくのであれば、できるだけ間口を広げて、裁量の余地があった方がいいのではないか。つまり、最終的に特許として認めるかどうかは別にして、入り口の間口というものを広くして、知的財産権の審査対象を広範なものにした方がいいのではないかというふうに思うのですが、長官、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、桝屋委員長代理着席〕

中嶋政府参考人 今御質問いただきました特許の保護対象の範囲の問題でございますけれども、まず、いわゆるビジネス方法の保護の現状についてお答え申し上げます。

 確かに、御指摘ございましたように、アメリカでは、いわゆる純粋ビジネス方法とよく言うんですけれども、自然法則を利用していないような発明であっても、特許の対象になる可能性はございます。ただ、ちなみに、アメリカという国はやや特異な国でございまして、これはビジネス方法とは言えないと思いますけれども、ブランコのこぎ方とかあるいはゴルフのパターの仕方とか、そういうのも場合によって特許になっている例があるようでございまして、そういう意味では、先進国の中でもやや特異な例がございます。

 話をもとに戻しますと、日本では、いわゆる純粋ビジネス方法というのは特許の対象にはなってございません。ただ、日本でも、ビジネスの方法につきましてソフトウエアによる情報処理が具体的に実現されているような場合には、これは特許として保護対象となっております。こういった、ビジネスの方法についてある一定の範囲では、つまり、ソフトウエアによる情報処理とか、ある一定の範囲内においては認めていくという扱いにつきましては、ヨーロッパも日本と同様でございます。

 ビジネス方法について特許対象としてどう扱うかということは、実は平成十三年に産業構造審議会でも、産業界あるいは学者先生初め関係者を集めて議論をかなり徹底的にしました。結論としては、純粋なビジネスの方法につきましてまで特許を与えるということになりますと、ビジネスの仕方についての独占を過度に強めて、自由な競争を阻害するとの懸念も示されまして、今の日本の特許法の発明の定義を直ちに改正すべきだという結論には至りませんでした。

 それからまた、委員が例示で挙げていらっしゃった医療方法の保護の現状についてお答え申し上げますと、日本では、人の生命、身体の保護と密接な関係を有します人間を手術あるいは治療とか診断する方法については、産業上利用することができる発明には該当しないという形で、特許を付与しないという運用を行っております。

 実は、これはまさに御指摘ございましたけれども、ヨーロッパにおいても、日本と同様に、人間それ自身を手術、治療または診断する方法については特許の対象としておりません。他方、アメリカにおきましては、日欧と異なって、こういった方法につきましても特許の対象になる場合があるということは御指摘のとおりでございます。

 この医療方法の特許のあり方につきましても、平成十五年から十六年にかけまして、これは政府の知的財産戦略本部の中で、医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会という場で検討いたしました。結果として、医師に係る技術についてはやはり慎重な配慮が必要であろうということから、特許の対象にすることからは除外されましたけれども、他方で、医療機器とかあるいは医薬に関する技術については、特許の保護の拡大を図るということになったわけでございます。

 日米欧の中でも、特許の保護対象というのはおおむね同じではございますけれども、細かいところを見ますと、やはり御指摘のように違いは確かにございます。したがいまして、特許庁といたしましては、これまでも、いわゆるプログラム特許といったようなものは新たな分野として特許付与の対象にしてきたところでございますけれども、今後も、いろいろ新しく出現する技術を的確に保護の対象に取り入れていくべく、具体的な技術の動向やあるいは国際的な議論の動向なども踏まえて、適切に対処してまいりたいというふうに思っております。

北神委員 アメリカの制度が特異だということとか、あるいは間口を広げても、パターの仕方とか、余り産業振興にはつながらない、そういった部分もあると思うんですが。

 これも、私も本当に不勉強で聞きかじりなんですが、アメリカにカーマーカー特許というのがあって、カーマーカーというのはインドの数学者の名前らしいんですが、要は、冷戦時代にレーガン大統領が、ソ連との対決の中で、SDI、スターウオーズ構想というものを考えていた。つまり、弾道ミサイルを撃たれたときに、宇宙の衛星からレーザーか何かで撃ち落とす。弾道ミサイルが飛んでくる中でレーザーを命中させるというのが、非常に高度な、アルゴリズムとか何かそういう数学の方法を使ってやらなければならない。そして、そのインド人のカーマーカーさんがその法則というか数学のやり方というのを考えついた。こういったものもアメリカでは特許の対象になったらしいんですね。これもまた、SDIの構想だけじゃなくて、こういった数学の方法を産業の部分にも応用されているというふうに聞いているんです。

 ですから、これがもし日本の特許の対象からすぐ、もう窓口から外されちゃう、これは何ら高度な技術を伴うものではなくて、単なる数学の方法論にすぎないということで却下されて、本来だったら、もしかしたら潜在的に産業にも適用される可能性があるものをみすみす逃してしまうのは非常に残念だな、そういった観点から私は申し上げております。ただ一方で、長官おっしゃったような問題点もよくわかっておりますので、法律を改正して発明という定義をさらに広げるとか、あるいはもう無制限にするとか、そこまではいかなくても、長官おっしゃったように、運用上にできるだけ新しい、産業に結びつくようなものはどんどん対象にしていただきたいなというふうに申し上げたいと思います。

 次は、今まで知財戦略の攻めの話ばかりをさせていただきました、あるいは攻めるための体制の整備みたいな話もさせてもらいましたが、一方で、防衛の話も大事だというふうに思います。すなわち、模倣品の話でございます。

 これも、野田委員とか、先週の金曜日に質問があったと思いますが、私も経済産業省の方から伺ったら、中国に対して、平成十七年の六月二十三日に、中国における知的財産権侵害実態調査というものを日本の企業に行っている。いろいろな問題点が浮かび上がった。それについて中国に、こういう問題点があるけれども、政府としてはどうですかというふうに尋ねたところ、返事が来なかった。それを受けて、今度はWTOの、さっきも長官が話されましたが、TRIPs協定、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定に基づいて情報提供要請を行った。これは昨年、平成十七年の十月二十七日に行ったということでございますが、これでアメリカもスイスも同じような請求をしたというふうに伺っております。

 何を申し上げたいかといいますと、単独で日本が中国に模倣品の取り締まりをちゃんと徹底してくれとか、あるいはアメリカが中国に対してやるとかヨーロッパが中国に対してやるとか、単独でやると、無視をされたり回答しなかったり、あるいは、場合によっては、日本がそんなにうるさいことを言うんだったら、もう日本とは取引はしない、むしろアメリカとかヨーロッパと積極的にやりますよとか、そういった外交の戦術でなかなか踏み込むことができないということがあると思いますので、日本とアメリカとヨーロッパが大体同等の、知的財産保護の制度とか意識の水準が同じだというふうに思いますので、やはりこの三極で連携をして中国に申し出るべきだというふうに思うんですね。

 さっきのTRIPs協定の話も、これはアメリカとスイスも日本と同様に中国に情報提供を迫っているみたいなんですが、これは連携してやっているのか、それとも、たまたま偶然個別でやっているのか、その点についてお伺いしたいのと、それに合わせて、三極で連携すべきではないか。この前も特許庁を視察させていただいたときに三極の会談をやっておられましたが、まさにそういったところで事前に連携を深めて、それで、もちろん強硬な姿勢だけではだめだと思うんですが、どのように中国にちゃんと模倣品を取り締まってもらうのか、総合的に検討した方がいいんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

    〔桝屋委員長代理退席、委員長着席〕

西野副大臣 委員がお示しのとおり、中国におけます日本企業にとりましては文字どおり最大の知的財産権侵害の被害が生じておるところでございまして、特許庁の試算によりますと約九兆円、中国の国務院のデータによりますと約三兆円、これだけの被害が及んでおるという甚大なものであります。

 このため、今先生からは二国間、三極間というお話が出ておりますが、我が国としましては、まず二国間の協議につきましては、中国への官民合同のいわゆるミッションの派遣等をこのところ、二〇〇二年にもあるいは二〇〇四年、二〇〇五年。実はこのミッションは今週の末、本年度ミッションを派遣することになっておるところでございまして、そういう中で、中国政府に対しまして、模倣品とかあるいは海賊版と言われるものに対する取り締まり、罰則の強化を図っていきたいというふうに思っております。

 特に、欧米で、具体的におっしゃいましたが、米国とかスイスとも当然ながら連携をしまして、お示しのとおり、WTOにおけます知的所有権関係の協定、そういうものに基づきまして情報提供を要請いたしておるところでございまして、さらに、その理事会の中でも、中国政府に対し取り締まりの強化を実は要請するなどして連携を深めておるところでございまして、今後とも、中国初め欧米との関係も密接に持ちながら、この知的財産の保護強化ということに取り組んでいきたいと思っております。

北神委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 今、西野副大臣のお話によれば、WTOのTRIPs協定に基づいた行動というのは一応連携をしてやったという話だと思いますが、ぜひそういうパターンで続けていった方が効果があるのではないかというふうに思いますので、お願いしたいと思います。

 また、外国における模倣品対策については、国内のそれに応じる体制というものも充実していかなければならない。先日はその審査の体制の充実の話をさせてもらいましたが、特に模倣品の話というのは大変な金額の損失があるわけですよね。今、副大臣からお話があったように、日本の計算でいけば十兆円も被害があるということでございます。中国だけではなくて、ロシアとかほかの国にもこういった問題があるわけでございます。

 これもたまたまなんですが、アメリカの外交問題評議会というシンクタンクのある研究員のアメリカ人のシーガルさん、カモメですけれども、シーガルさんという人とお話をさせてもらったんですが、彼が言うには、アメリカもやはり外国における模倣品対策というのは非常に真剣に取り組んでいると。具体的に、たしかアメリカの商務省の中に専ら国際的なこういった模倣品対策に対応する特別の担当官を設けた、さらには、アメリカの在北京大使館の中にも専ら中国における模倣品対策に専念する担当を設けていると。こういった気合いの入れようなんであります。

 私は日本も、もうこれほど次から次へと日本の企業が中国において痛い目に遭っているわけでございますから、こういった政府の体制整備というものも図らなければならないというふうに思うのでありますが、通告はちょっとないので恐縮なんですけれども、この点についていかがでありましょうか。

中嶋政府参考人 模倣品対策でございますけれども、実は政府全体の知的財産推進計画をここ三年やってくる中で、各省統一的な体制を組もうということで、経済産業省の製造産業局の中に模倣品の対策室というのを設けまして、そこが国内におきましては一元的な窓口になってやっておるわけでございます。

 一元的な窓口というのは、当然そこを中心に外務省とかほかの省庁とも連携をとって当たるということでございますし、それから、海外におきましても、実はアメリカの場合は、やはりアメリカの各国の大使館に担当者を置いているわけでございますけれども、日本の場合も、日本の各国の大使館に担当者を置くと同時に、ジェトロなども活用いたしまして海外でも連携をとって対応していくということで、政府全体として、国の中でも外でも体制を組んでおるところでございます。

二階国務大臣 ただいまの中国の模倣品の問題につきまして、私は先般北京に伺いましたときに商務大臣と直接このことを議題として取り上げて日本側の要請を申し上げたところでありますが、中国側も、これは日本のためにとか国際社会のためにだけではなくて、我が国自身としても、模倣品、つまり知的財産権を守るということに関してのやはり学習が大事で、違反をする人たちに対して全国五十の箇所で取り締まり本部を設置する、こういうお話でありました。

 したがって、私は、先般東京で行われました省エネ・環境フォーラムにおきまして、八百五十名ぐらいの方々がおられる前で、今議員御指摘のミッションを近く派遣するということも正式に申し上げております。

 だんだんと話し合いが軌道に乗ってきたところでありますが、これから我が国として、技術的にどんな面で協力できるかというようなところは、これはもう積極的に乗り出していって協力をする、そういうことで、一歩一歩前へ進めていきたいと思いますが、今回の官民の合同のミッションはそれなりの成果を上げてこられるものと期待をしているところであります。

北神委員 ありがとうございます。

 体制もしっかりされているということと大臣もそういう決意で臨んでいるということを聞いて、引き続きそういう方向で頑張っていただきたいというふうに思います。

 もう一つは、その関連でいえば、中小企業の問題ですね。中小企業に限定すれば、中小企業の方々も中国でいろいろな痛い目に遭っているというふうに伺っております。そういった場合、基本的には訴訟とかで権利侵害行為の差しとめとか逸失利益の回復というものを目指すというのが通常の手段だというふうに思うんですが、残念ながら、御存じのように、中小企業の経営体質の中で、経営体質というよりかは体力の限界の中で、なかなか訴訟を行うというのが厳しい、海外における人的あるいはコスト的にも非常に負担が大きいということで非常に困っているという現場の声も伺っております。

 こういった点について、政府として、今度の法案もいろいろ水際で模倣品をとめるとか輸出輸入の両面において防止をするという話がありますが、こういった中小企業の訴訟に関する救済措置みたいなことは考えられないのかな。そもそもノウハウもないし、中国における人脈もなかなかない。さらに言えば、金銭的な問題もあるというふうに伺っておるんですが、いかがでしょうか。

西野副大臣 海外におけます中小企業の受けます模倣被害というものはこれまた大変でございまして、特許庁が二〇〇四年に実施をいたしました調査によりますと、中小企業の割合は実に二四%に達している、こういうことでございます。そうすると、四社に一社は被害を受けている、こういう単純な計算になるわけでございますが、これは大変なことだというふうに思っております。したがいまして、中小企業が受けます知的財産の被害というものを戦略的に保護する必要があるというふうに思いますし、その仕組みについて整備をすることも重要であるというふうに思っております。

 具体的に申し上げますならば、先生がお示しのように、現地でそういう被害を受けたと。例えば、それを調査するについても、あるいはその他の、裁判をするにしても、中小企業としてはそれだけの資金的な余裕もなかなかない。こういうのが実態であろうかというふうに思いますが、政府といたしましては、例えば、調査をいたします場合、調査会社に委託をいたすわけです、ジェトロを通じてやるんですが、そういうものに対する支援制度を実施いたしております。

 さらにまた、国内において、知的財産に関するいわば駆け込み寺といいますか相談に行く窓口、商工会とか商工会議所にそういう相談窓口を置きまして、そして、そういう相談がありましたときは、会議所が弁理士等しかるべくスムーズに専門家を紹介するとかつなげていくとか、そういう体制を講じておるところでございまして、今後とも引き続いて、これらの知的財産の保護のために、中小企業のために可能な限りの支援は続けていきたいというふうに思っております。

北神委員 ありがとうございます。

 ぜひそういう方向で、あと周知徹底も、そういった制度がいろいろあるということもなかなか知らない方もあるような感じもしますので、周知徹底の方もお願いしたいというふうに思います。

 今、技術流出の話、海外における模倣品の話をさせてもらいましたが、もう一つ、これは野田委員も先週の金曜日に質問されましたが、出願の公開制度についてちょっとお尋ねしたいと思います。

 あのときの質疑の中で、出願をして、それを一年六カ月たったら公開をして、そこで外国人がみんなそれを見て、いろいろな技術を、ある意味では自分たちのものにしていくというような現象がある、そこでいろいろな技術流出が行われているということでございます。あのときのたしか政務官の答えによりますと、重複研究とか重複出願の弊害を避けるためにこの公開制度というものはあるという話であったわけでございます。一方、現実の問題として技術流出というものが行われているのであれば、わざわざ出願の段階ではなくて、例えば、特許が取られた、認められた後に公開する、そういったものだけに限定して公開すると。たしかアメリカなんかはそういう方法で、最近変わったかもしれませんが、やっていると。

 ただ、何も合わせる必要はないと思うんですよ。技術流出というものを重く見るのであれば、何でわざわざ出願の段階で公開をするのかな。重複研究、重複申請というものを避けるのも大事だけれども、自分の価値判断の中では、やはり技術流出の方が重たいのではないか。今後、一方では、審査体制というものを充実すればある程度対応できる話であるわけでございますから、その点について、やはりもう一歩踏み込んで検討していただきたいなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

片山大臣政務官 前回も野田委員の方から類似の御指摘がございまして、まず、技術流出ということにつきましては、まさに非常に重要な問題でございますので、その防止を図るために、企業は、開発した技術を公開が前提となる特許権の取得の対象にするのか、あるいは、ノウハウとして対外的に秘匿するのかを慎重に選択していただくということがまず必要になるわけでございます。

 特許権の取得を選択した場合には、海外でも権利化していただく、そういったことが一番あるわけですが、より戦略を持って取り組んでいただくことが必要でございまして、さらに、ノウハウとして秘匿するということを選択した場合には、営業秘密として徹底した管理を行う。それから、その後他者が特許権を取得したとしても、この間もそのお話が出ましたが、無償で通常の実施権が得られる制度、いわゆる先使用権の制度を活用していただくということがあるわけでございます。

 この先使用権制度につきまして、現在、私どもの特許庁の方で、法曹界ですとか産業界等からいろいろな有識者の参加も得まして、この先使用権の要件や範囲、それから立証手段を明確にするためのガイドラインを作成する、それもできるだけ早く作成するということをやっておりまして、これを早く完成させ、周知させて、委員御指摘のとおりに、まず技術流出を防止するような手だてを企業側がとりやすいようにするということをやってまいりたいと考えております。

 その上で、さらに、出願の公開制度でございますが、やはりこれは、アメリカも含めまして、国際調和ということがございますし、それから、審査請求期間ですとか審査期間が存在することによりまして特許の付与に時間を要するという状況下にありましては、やはり、長期にわたってこの内容が全く公開されないという状況になりまして、その間、無駄な投資とか無駄な出願がどうしてもある。その出願から時間を経た技術が、ある日突然、これが特許ですよということで公開されるということになってしまうわけでございまして、多くの第三者が常に不安定な状況で事業をやっていくということになる、逆から見るとやはりそういう問題がございます。

 ですから、いろいろなことを総合的に勘案すると、やはり、当面、出願公開制度というのは今後ともあった方がいいというのが今のスタンスでございますが、技術流出につきましては、最大限、その防止を図るために、今急いでいるところでございます。

北神委員 もう時間が来ましたので終わりますが、ぜひ、技術流出の点についてもしっかりと取り締まっていただきたいということで、知財戦略というものを産業戦略の中で位置づけて、攻めの部分と守りの部分というものをしっかり対応していただきたいなということを申し添えまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。

石田委員長 次に、三谷光男君。

三谷委員 民主党の三谷光男でございます。こうしてまた質問をさせていただきます。委員長初め委員の皆様に心から感謝を申し上げます。

 きょうは、意匠法の改正でございますが、本改正案の内容、大変評価できるものでございますので、知財立国への取り組み、あるいは現行制度の課題について質問をさせていただきたいと思っております。

 まず最初に、審査の手続につきましてお尋ねをいたします。

 審査の待ち時間を少なくしていく、そしてまた処理のスピードを上げる、これは、特許庁にとりましては長年の課題でございました。まだマンパワー不足はどうしても否めないところがございますが、審査官一人当たりの処理件数は、欧米と比較いたしまして群を抜いておるところがございます。ペーパーレス化も進みまして、この点につきましては、特許庁の取り組み、本当によくやられているなというふうに評価をしております。

 そして、お尋ねをいたしますのは、審査の請求期間のことでございます。今、七年から三年に短縮をされました。出願人のニーズに合わせた対応が求められている、これは知的財産推進計画二〇〇五にもしっかりと盛り込まれております。早い審査が求められるものにつきましては、これは早期審査制度があります。柔軟な対応が図られております。

 しかし、案件によっては、長い請求期間を求めるものもございます。審査の請求期間の延長の方は認められておりません。請求期間の延長を認める、こういう柔軟な対応はできないものでしょうか。審査請求期間を延長する対応はできるのかできないのか、これをまず、特許庁のお考えをお聞きしたいと思います。

中嶋政府参考人 各国特許の制度というのは、基本的には、できるだけハーモナイズといいますか、同じようになることが産業界、ユーザーにとっても望ましいことだと思っております。

 今御指摘の審査請求に係る話ですけれども、日本の産業界の一部には、その業界で技術標準の規格の策定時期に合わせた審査請求の是非の判断を可能とするために、特許審査を一定期間繰り延べる制度を導入できないかといったような御意見があることは承知をしております。

 ただ、特許制度の中で審査を繰り延べる制度を導入して審査時期をおくらせるということになってまいりますと、例えば、競合他社にとって、他社の権利が特許になるかならないかの帰趨をずっと監視していなければならないということで大変大きな負担にもなりますし、結果的にその技術開発や事業化を阻害するといったようなおそれもございます。

 それから、我が国で審査に着手するということが欧米に比べておくれるというようなことになりますと、日本の特許庁の審査結果を国際的に発信して、できるだけ他国の特許審査に反映させていこうというのが大きな今取り組みの流れでございますけれども、そういうところもうまくいかないのではないかといったようないろいろな問題がございますので、審査請求の時期をおくらせるといったことは適当ではないというふうに思っております。

 ちなみに、日本がどうして、過去、七年以内というような審査請求の期間を三年以内というふうに短縮したかということで補足いたしますと、アメリカでは、これは先生御案内のように、確かに先発明主義というかなり特異な制度のもとではございますけれども、出願されたものは特にさらに審査請求という行為を要せずに全数審査をするということでございますし、欧州の特許庁も、出願後二年以内には審査請求するかどうかを決めるというような形になっております。

 そういう中で、日本の産業界全体の利益としては、やはりできるだけ早く特許にかかわるその権利関係を確定していった方が国際動向にも沿うし、国際競争力にも資するという判断で短縮したわけでございます。

 他方、先生がいろいろ御指摘くださった中で、実は、今回の改正案の中で、特許出願を分割できる時期を緩和する措置を盛り込んでございます。

 ちょっとそれに関連いたしますので、この際、補足させていただきますと、分割出願制度というのは、特許の出願に複数の発明が含まれている場合に、その一部を抜き出して新たな特許出願とすることを認めるものなんですけれども、今の特許法では、審査終了後の特許出願の分割が許容されていないものですから、出願人が審査結果を踏まえて権利化を目指す発明を見直すということができません。

 今回の改正案におきましては、審査終了後であっても、一定期間であれば出願を分割することを可能といたしております。これによって、出願人が審査結果を踏まえて権利化を目指す発明を再度見直すということを可能とする効果がございますので、結果として、発明の多面的、網羅的な保護を図ることの可能性をより高めるということでございます。

 産業界の一部が審査請求期間の柔軟化を求める大きな理由の一つに技術標準との関係というのがあるわけでございますけれども、実は、この分割出願制度を活用することによりまして、結果として、我が国企業にとって技術標準の規格に沿った権利の取得化が従来よりもしやすくなるという効果がございます。あわせて補足させていただきます。

三谷委員 ありがとうございました。

 長官、ただ、今のお話の中にもございました、ハーモナイズが必要であると。そして、アメリカは、確かに先発明主義で請求期間はございません。ヨーロッパは二年です。今御説明のとおりです。だけれども、これは予備調査というものがあるというふうに聞いています。確かに国際標準に合わせるということは必要かもしれませんけれども、これが果たして延長を認めない合理的な理由になるんでしょうか。

 そして、もう一つの理由ですけれども、要するに、競合他社の対応のことがある。早く権利化が明確に見えるか見えないか、それがはっきりしないと他社が対応をとりにくい、こういうお話だろうと思います。その延長が認められない、柔軟な対応がその部分においてできない、これも理由にはなかなか当たらないのじゃないかなというふうに思います。

 実際、出願側の代理業務に当たっておられる弁理士さんたちの御意見でございますけれども、延長を認めない、特許庁の今まさにおっしゃられた理由、これは全くお門違いの話だという御意見を言われております。むしろ請求期間が長い方が、出願側からすると、いつ権利化をするか、比較的それを自由に選べる、出願人にとっては利益に資するありがたい制度なんだ、わざわざ日本はそのありがたい制度を捨てて七年から三年にした、むしろ改悪だという考え方があります。

 今、三年をもう一回七年に直すということは、これは非常に難しい話だとは思いますけれども、むしろ柔軟な対応という意味では、延長を認めるということはあってもいい対応ではないかというふうに思うのですが、もう一度。確かに審査の処理のことを考えますと、圧倒的にマンパワーが不足しているということは、後でもお話をさせていただこうと思いますけれども、これはもう否めないことであります。むしろそれを言い繕うための、この延長を認めない、こういう意見が大変強いと思います。

 もう一度お伺いをいたしますけれども、延長を認めない合理的な理由は本当にあるんでしょうか。

中嶋政府参考人 今御指摘ございました審査請求期間の問題でございますけれども、実は、日本は、出願をして現在三年以内に審査請求するかどうかを決めてくださいという制度でございますから、アメリカのような、出願したらもう有無を言わさず全数審査しますとか、あるいはヨーロッパ、欧州特許庁の、出願後二年以内といったような期間に比べれば、私は、十分日本の出願人にも判断をする時間的余裕、つまり、まずは出願をしてみたけれども、改めて本当に審査請求するに値するような内容かどうかをいろいろな技術動向とか内外の情勢を見きわめた上で判断するという意味で、三年間は十分だと思っております。

 それから、もちろん、そういう意味で国際的な制度のハーモナイズの方向に沿ってということは先ほど申し上げましたけれども、やはり特許制度というのは、出願人の利益と同時に、あるいは特許権者の利益と同時に、他の第三者の利益とのバランスとか全体の利益のバランスを考えた制度だと思います。

 ですから、出願人なり先行の創作者の出願に対しては、審査の上、独占的、排他的な強い権利を与えるかわりに、ある一定のプロセスの中でその出願内容とかを公開していくといったような中で、単に出願人の利益を保護するというか確保することだけではなくて、社会全体が、その技術開発の成果が普及していくように、あるいは無駄な重複投資がないようにとかいったさまざまなバランスの上で成り立っているわけでございます。

 ですから、特許庁のことだけ考えるのであれば、あるいは出願された方が、いや、そんなすぐに急いで審査していただかなくても、どんどん後ろに延期してもいいんだということは、むしろ我々にとっては負担が軽減するのかもしれませんけれども、やはり日本の産業の競争力全体を考えた場合には、ある一定の範囲内で審査請求するかどうかを見きわめて、できるだけ早く権利を国際的にも主張できるような状況に持っていくことが大きな流れであるというふうに思っております。

三谷委員 今長官、三年以内に決める、三年で十分だというお話がございましたけれども、しかし、そうやって出願側の方が、いや、長い方があってもいいという、まさにこれはニーズでございます。そして、知的財産推進計画の中にも、まさに見出しで、「出願人のニーズに応じた柔軟な特許審査を推進する」ということをきちんとうたっておるわけでございますので、これはぜひこれからちょっと前向きな検討、取り組みをお願いしたいというふうに思います。

 質問を続けます。

 同じように、この知的財産推進計画二〇〇五に、「先端技術分野や国際関連出願の審査体制を強化する」ということもあわせて盛り込んでおられます。この先端技術分野、国際関連出願の審査体制、これは十分に強化されているんでしょうか。これは十分でないということはわかっております。しかし、苦労しながら確かに強化されているんです、苦労されながら。申し上げたように、人材不足でありながら、まだまだ足りません、しかし強化されています。どのように強化されたか、まず具体的な説明をお願いしたいと思います。

 そして、審査官の増員は、これまでも質問の中で何度も出てまいりました。私も必要だと思います。もっともっと予算をつけていただいて、特許政策、知財立国を目指す我が国においては、この審査官の増員、マンパワーを是が非でも補充、増員していかなければならない、大変必要な、そして重要なことだと考えています。

 そこで、任期つきの審査官のさらなる拡大。もちろんこれは、今五年で約百人ずつ増員が図られておりますけれども、さらなる拡大が私は必要だというふうに思っております。弁理士さんを活用するということもございますけれども、むしろ、臨機応変な措置として、審査官のOBの再任用あるいは嘱託、こういったものも考えてはどうかと思うんですが、このこともあわせてお答えをいただきたいと思います。

中嶋政府参考人 今御指摘ございましたように、政府の知的財産推進計画二〇〇五で、審査体制の強化あるいは技術動向に応じた重点的な配置ということがうたわれております。実際、特許庁自身といたしましても、現実の出願、審査請求の動向とかあるいは国際出願の動向を見ながら、バランスをとりながら審査官の配置を行っております。

 具体的には、先ほど御指摘がございました例えばバイオ関連の分野、これは、二〇〇五年度から今年度にかけまして、八十八名から百二名とかなり増員いたしておりますし、それからロボットの分野につきましても、昨年度からロボットの分室、一つの室を設けまして、現在十二名体制でやっております。そういうところを含めて、必要な分野については重点的に必要な審査官を投入していくということでございまして、今後ともそういった審査体制を柔軟に見直していきたいと思っております。

 次に、任期つき審査官、十六年度から五年間で五百人程度を目標にして、現在採用を続けているわけでございます。さらに、技術的な知識、あるいは先行技術のサーチの技能、それから特許性の判断等の能力、経験を有しています審査官を、本人の希望に応じて退職後も職員として採用して、長年培った能力かつ経験を活用すべきではないかということでございますけれども、まさにそういう形で、もちろんあくまでも御本人の希望にもよりまして、ある方はむしろ民間で働きたいとか、いろいろな方がございますので、一律にはできませんけれども、御本人の意向を踏まえながら、そういう活用をしております。

 もちろん、こういった体制整備に際しては、単に安易な人員増とか予算増に頼るだけではなくて、御案内のように、先行技術のサーチ自体はできるだけ民間への外注を拡大するとか、あるいは事務処理のペーパーレス化をさらに進めるとか、特許庁全体として業務効率の向上に努めているわけでございます。

 いずれにしても、限られた人員と予算ではございますけれども、最大限活用いたしまして、知財立国の実現に資する適切な審査体制を確立してまいりたいというふうに思っております。

三谷委員 実はこのお話、レクの中でも、審査官のOBの再任用、嘱託、こういう話になりますと、公務員の再雇用、天下りが今批判をされております。きょうも、朝日新聞一面には警察官のOBのお話が出ておりました。こういう話に当たるのでなかなか言い出しづらいんだということがありましたけれども、これは全く当たらない話だというふうに思います。

 特許庁に限りましては、先ほども申し上げましたように、大変大事な重要施策、そして審査官のマンパワー不足、人材不足というのは、これはもう紛れもない事実でございますので、ぜひとも、そういうことはお考えいただくことなく、どんどん拡充の方向に向けて、できることは、申し上げましたOBの再任用の問題も含めて、考えられることは全部取り組んでいただきたいというふうに思います。

 そして、任期つき審査官は別といたしましても、我が国の審査官、これは特にアメリカと比較をされまして、アメリカの場合は、これは米国特許庁の審査官に限りませんけれども、やはり入れかわりが非常に激しく、民間企業、実体経済を経験された方がつかれている。これと比較をいたしまして、日本の審査官は実体経済を知らない、経験していない人がほとんどだという話がよく言われます。

 実体経済の中でどのような知的財産権が必要とされているか、もちろん、有用性を審査官の方々がしっかりと認識をしていただくこと、これは非常に大事な話だと思います。この知財の有用性を見きわめられる人材の育成のために、企業人との交流でありますとかあるいは企業の中に入っての研修でありますとか、こういうことを特許庁として、審査官の方々に対してどのような積極的な取り組みを進められているか、これを説明いただきたいと思います。

片山大臣政務官 まさに民間の実態の体得ということは非常に重要と考えておりまして、ここは、特許庁としても非常に頑張って最近やっております。

 例えば、製造現場やライセンス管理の研修のために、民間企業に派遣するインターンシップというのを、昨年度、十七年度には四十二名、審査官を二カ月間派遣しております。また、委員にも御視察をいただきました独法の情報・研修館では、いろいろな審査官研修を置いておるんですが、その中でも、大手企業での知財担当者等、民間のこの部門の先端の方を積極的に講師に迎えまして、延べ六百三十一名の審査官がこれを熱心に受講しております。

 また、同じく研修の一環といたしまして、私どもの方の百二十七名の審査官が、三十六名の企業側の方、それから民間の弁理士四十八名の方と、討論形式、まさに考え方、権利取得の考え方のすり合いとか違いとか、あるいはどういう議論というか、そういうことがわかるように議論形式の研修まで行っております。

 これに加えまして、先ほどお励ましの言葉をいただきましたように、民間からの任期つき審査官等の採用で、日常の討論、情報交換を通じて、まさに民間の知恵をできるだけ体得して、いい循環が行われるような機会をふやすことをやっておりまして、このようなことが資質の向上につながると私ども考えておりますので、こういう機会を引き続きふやしてまいりたいと考えております。

三谷委員 情報・研修館でのそうした研修が、こうした実体経済、その有用性を知る上でなかなか有意義な研修かどうかというのは、ちょっと私もわからないところがありますけれども、今のお話、よくわかりました。

 ともすれば、役所の方々、バブルのときの接待漬けへの批判から、民間企業の方々との特に飲み食いを伴う人的な交流、どうしてもこれは控えがちにならざるを得ないんですが、これも私は、特許庁の審査官については別だというふうに思っています。余り縮こまらずに、見せていただきましたけれども、ブースのパソコンの前に閉じこもらず、民間企業人からの生の情報、有益性、有用性、勉強会でもあるいは飲み食いを伴ってもいいと思いますが、いろいろな人的交流、どんどん行って生の情報を取り込んでいただきたいというふうに思います。

 時間がなくなりました。もう一つ尋ねさせていただきます。

 知財立国に向けての取り組みでございますが、我が国は、まさに知財立国を標榜しております。これは小泉総理も施政方針演説の中でもきちんと盛り込んでおられます。世界じゅうの知的財産権に係る情報、これ、もちろん収集をされていることはよく存じ上げております。そして、それを分析して、また、今海外で展開する日本企業のさまざまな訴訟も含めて、この知財戦略、しっかりと立てていかなければもう展開そのものが成り立たない、そんな状況にもなっています。

 日本企業の知財戦略、あるいは我が国の知財立国を目指す取り組み、あるいは今回も意匠法の法改正が行われましたが、制度設計に生かすということを特許庁は行っておられるのか、その取り組みについて具体的な説明をお願いしたいと思います。

中嶋政府参考人 御指摘のように、内外の知的財産権に係る制度自体あるいは具体的な出願の動向などを詳細に調査しまして、それを日本の産業界に伝える、あるいは、技術開発とか海外における出願を効率的にあるいは円滑に行えるように支援をするとか、あるいは日本みずからの制度のあり方の検討に反映させるといったことを実際行っております。

 例えば、出願動向の調査といたしましては、毎年度、先端分野のテーマを選んでやっておりまして、昨年度は内視鏡とか有機ELとか人工器官とか、十三ほどのテーマについて調査を行って、これは産業界にも当然フィードバックするし、一般にも公表しております。

 それから、海外の制度につきましては、特に関心が高いのはアジアの国々でございます。これらの国々では、実は模倣品の被害も大きいというわけでございます。

 そこで、アジア諸国の知財制度を調査するために、ジェトロとか、あるいは台湾の場合は財団法人交流協会というのがございますけれども、そこに調査を委託しまして、重点的な国として中国、韓国、タイあるいは台湾にはさらに特許庁職員も派遣をしております。ここで得られた生の情報を、実は、政府みずからはいろいろな交渉事、例えば経済連携協定交渉などにおきましても活用しまして、その国の制度とか運用について改善を求めていくといったところで活用させていただいております。

 それから、同時に、模倣品や海賊版対策という観点からは、こういった現地の情報を集めた上で、例えば模倣対策マニュアルとかあるいは知的財産権侵害事例・判例集といったような形で広く日本の産業界に提供いたしまして、具体的な対応に少しでも貢献できるように努めております。特に、個別の侵害事例につきましては、現地においてジェトロなどが法律事務所とも連携をとりながら、先ほど申し上げているような実態調査を踏まえながら、現地の事情に合った形でいろいろなアドバイスをしているわけでございます。

 これからも、御指摘ございましたように、内外の技術出願動向とか制度の運用実態を常に把握しながら、みずからの制度のあり方あるいは産業界の取り組みについて有益になるように努めていきたいと思っております。

三谷委員 時間がなくなってしまいました。

 特に、冒頭おっしゃられました日本の産業界に伝える、これは技術動向調査のお話、特にPDP、プラズマディスプレーパネルの話というのは、これは大手家電メーカーにとっても大変有益な話だったという高い評価もございました。こういうことをしっかりとやっていただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わりとさせていただきます。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、佐藤ゆかり君。

佐藤(ゆ)委員 自由民主党の佐藤ゆかりでございます。

 本日は、意匠法等の一部を改正する法律案につきまして中心にお伺いをしたいと思います。

 経済産業省では、今月に新経済成長戦略の最終案というものを策定したばかりというふうに認識いたしておりますけれども、産業財産権の保護の制度的な拡充は、やはり二十一世紀の我が国の成長戦略上極めて重要な位置づけにあるというふうに認識いたしております。また他方、地域活性化におきましても、地域産業の振興において、一つ、産業財産権を有効に活用するというようなことで振興を図るという前向きな活用例というのも出てきていると認識いたしております。

 例えば、新経済成長戦略では、地域活性化というのが一つの骨子に挙げられておりますけれども、この地域の活性化の観点からも、既に地域団体商標制度というものがことしの四月から施行が始まっているというふうに認識いたしております。代表例で申しますと北海道の夕張メロンとか、これは夕張地域を挙げての農産物の一つというふうに認識しておりますが、地域の名前と商品名を組み合わせるような形で農産物の地域ブランド化を行って、このために地域団体商標というのを有効活用して地域振興につなげていくというような一つの前進が行われているのではないかと思うわけでございます。

 その一方で、新経済成長戦略におきましては、当然ながら、二十一世紀の日本の技術の国際競争力という観点からも、先端技術の融合や産学官の連携等の促進への取り組みというのがうたわれているわけでございますけれども、そうした位置づけの中で、今回の意匠法等の一部改正法律案というのが、やはり技術やデザインにおいての産業財産権の保護の拡充という点で必要性が生じてきているものであろうというふうに理解をしているわけでございます。

 その点で、今回の法律改正案ですが、意匠法、特許法そして商標法等の改正につきまして、特に、先端技術に重点を置きます新経済成長戦略の中で具体的にどのように法律改正が絡んでくるのか、関与の余地があるのか。また、今後、やはり高度な技術あるいはインターネット技術を駆使して模倣品というのもなかなか巧妙に出てくる、そういう時代になっているわけでありますけれども、そうした中で、今後、産業財産権に関する法律改正というのを機動的に、国策として戦略的に行っていく考えがおありになるのかどうか、このあたりを西野副大臣にお伺いしたいと思います。

片山大臣政務官 委員御指摘のとおり、新経済成長戦略の中間取りまとめを行い、私どもの役所の方では、今度、経済成長戦略大綱の与党・政府の取りまとめも今行っているところでございます。

 人口減少社会の中でも明るい未来があるということを示す中で、地域経済の活性化ということと、もう一つの柱としては、生産性の向上ですとかいろいろな制度のインフラの整備、国際競争力の強化といったところが挙がっておりますが、いずれの中でも知財政策というのは盛り込まれております。

 具体的には、特許審査の迅速化、特許情報の有効活用による研究開発効率の向上、それから複数国での円滑な権利取得を実現する世界の特許制度の調和の推進、模倣品や海賊版対策の強化、営業秘密の管理と技術流出防止の強化、それからデザイン、ブランドの確立とコンテンツ流通の促進、それから中小・ベンチャー企業などへの知財利用の支援、それから何よりも知的財産の人材の確保、保護といったことを、人、物、金、わざ、知恵という横断的な政策が今回の新経済成長戦略の一つの柱でございますので、その一つとしてしっかりと位置づけさせていただいているところでございます。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 そうしたお答えをいただきました新経済成長戦略での枠組み、位置づけではございますけれども、それでは、今回の法改正が産業財産権の保護の拡充あるいは権利の取得の容易化に向けて具体的にどのようにされるのか、御説明いただければと思います。手短にお願いいたします。

中嶋政府参考人 今回の法改正の要点でございますけれども、デザインの創作、ブランドの確立あるいは革新的な発明、こういった点におきまして日本の産業の国際競争力を強化する、そのために使い勝手をよくするというのが端的な内容でございます。

 具体的には、例えば意匠権につきましては、存続期間を現行の十五年から二十年に延長する、あるいは情報家電等の操作画面のデザインの保護対象を拡大することとしておりまして、結果として、製品の付加価値を高める魅力的なデザインの保護を強化するということでございます。

 また、小売業等が使用する商標につきましては役務商標としても保護できることにしまして、小売業者等のブランドを実態に即した形で効果的に保護することを可能にする。さらに、例えば団体商標といったような制度につきましても、登録の主体を見直して、広く商工会議所や商工会等の法人格を有する社団につきましてもこれが利用できるようにするとか、さまざまな工夫を凝らしております。

 それから、権利取得の容易化という点でございますけれども、意匠法につきましては、バリエーションをつけました一群のデザインあるいは製品を構成する部分のデザインにつきましてもその出願の期限を延長するなど、中小企業も含めて、よりデザインの保護を受けやすくするといったことでございます。

 さらに、特許についても分割出願等々の点がございますけれども、要するに、全体として、日本の企業が付加価値の高い商品やサービスが生み出されて、提供していく環境をより整備するという点が期待されるわけでございます。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 今お答えいただきました中で、小売業者への役務商標の導入というのが一つあったと思います。まず、その点から少しお伺いさせていただきたいと思います。

 本来、私の地元の岐阜市でも、商店街の活性化というのは今大きな課題として取り上げられているとおりであります。その小売業を中心とした問題ですけれども、これまでは、従来の現行法では、商品の登録商標だけを認める、サービスマークは小売業においては認めないという方向で、それを前提として営業活動を行ってきた事業者が多々おられるわけです。それにつきまして、今回、いきなり法改正がされますと、やはりそういった事業者の方々の事業計画にも支障を来してくるというようなことは当然想定できるかと思います。

 そういう意味で、役務商標の導入までの経過措置につきまして、具体的にどのようなものがあるのか。今の法律案の内容ですと、経過措置期間の間の保護対象がどのように変化するかというのはやや不透明な気がいたすわけでありますけれども、そのあたりがどのように、審査基準やガイドライン等がこれから出される御予定がおありになるのかどうかも含めて御回答いただきたいと思います。

中嶋政府参考人 今回の商標法の改正の中に、新たに小売業者や卸売業者が使用する商標を役務商標として保護することが盛り込まれております。と同時に、この改正案の中で、改正法の円滑な施行のために、改正法の施行前から商標を使用されてきた小売業者の使用の実績に配慮した経過措置も設けてございます。

 例えば、改正法の施行の前から、不正競争の目的ではなくて、小売サービスに係る商標を使用していた場合には、他人の小売サービスに係る商標権が登録されたとしても継続して商標の使用ができる権利、いわゆる継続的使用権というふうに呼んでおりますけれども、これを認めることとしております。

 つまり、やや単純化した例かもしれませんけれども、例えば、大きな百貨店とかスーパーが今度の法律の改正案の中身に従いまして新たに役務商標として登録をしようという場合に、実は、地域、地方の小売業者の方がもともと前から使っていたものとバッティングするといったような場合にも、今申し上げましたように、不正競争の目的でなく、小売サービスに係る商標を使用してきた場合には引き続きその使用が継続してできるというわけでございます。

 それから、今回の法律が成立して施行した場合ですけれども、施行後三カ月間に行われました小売サービスに係る商標の出願が相互に競合、バッティングした場合でございますけれども、この場合におきましても、施行前からの商標の使用実績に配慮して、既に使用されている商標を未使用の商標に優先して登録することとしております。

 今一例を申し上げましたけれども、いずれにしても、これらの点につきましては、重要な審査事項の一部でもございますし、権利を取得しようとする小売業者あるいは卸売業者がこの制度を正確に理解して運用する上でキーポイントになる点でもございます。

 そのため、御指摘がございましたように、特許庁では、新制度の導入に向けて、審査官が的確かつ迅速に審査を行うための明確でわかりやすい審査基準を作成することとしております。

 同時に、出願人となる小売業者を初め関係の方々が改正法を十分理解して活用していただけるように、そういった審査基準について、年内を目途に一般にも公開をして、全国各地でも十分な説明会を開催していくといったようなことを考えております。

佐藤(ゆ)委員 今お答えいただきました十分な説明の機会ということでございますが、今回の小売業者に向けました役務商標の導入について、周知徹底の観点で少し気になるところがございます。やはり従来ですと、法改正ですとか業界規制を導入する際に、例えば所属する業界の協会ですとか組合を通じてその周知徹底が図られるですとか通達が出るというような形での情報伝達というのがあったと思います。

 ただ、昨今、業界によりましては、そういった業界団体から離脱する独立した事業者等も出てきているわけでございますが、そうした中で、特に小売業におきましては地方で零細の事業者の方々というのが多くおられるわけでございますけれども、そうした零細の小売店等を含むすべての全国の小売業者あるいは卸売業者に対して、今回の役務商標の導入について、実際にどのように周知徹底あるいは説明会というのを開いていくのかというのが気になるところであります。

 実際に、ある日突然見知らぬ登録者から、この屋号はもう登録済みだから使わないでほしいというようなことがいきなり来た場合にどう対応していいのか、そういった不安感もやはり中小の小売業者の中にはこれから出てくる可能性もあろうかとは思われるわけですけれども、そのあたりの周知徹底について、もう一度お伺いしたいと思います。

中嶋政府参考人 委員が御指摘されましたように、小売業者などの中には中小の小売店も大変多いということから、今回の新制度の円滑な導入に当たりましては、中小小売店を初めとした各地の小売業者の方あるいは卸売業者の方にきめ細かく周知徹底を図るということが重要だというのはおっしゃるとおりだと思っております。

 実は、法案の策定の過程でも十を超す小売業の団体とは意見交換を行ってきてはおりますけれども、ちなみにその団体というのは、日本商工会議所とか百貨店協会、あるいは全国中小企業団体中央会、あるいはさまざまな小売関係の協会、専門店の協会とかセルフサービスの協会、ボランタリーチェーンとかフランチャイズチェーン、さまざまございます。

 ただ、いわゆる業界団体に頼るだけではなくて、もちろんそういうところも施行の段階でも十分周知徹底のパイプとして活用させていただくことは当然でございますけれども、それだけではなくて、実際の施行までの間に、政府広報を初め特許庁のホームページ、さらには各地での、具体的な現地における説明会、これは、いわゆる制度の説明会のみならず、先ほど申しました審査の運用についての細かい説明会、現在のところ、全国四十九カ所で予定しております。あるいは、パンフレットについて三十万部とかも予定しております。先ほど申しました説明会も、実は、制度説明会十五カ所プラスより詳細な説明会四十九カ所とか、さまざまに今計画をしているところでございます。いずれにしても、十分、この制度が現実に小売業者とか卸売業者の方々にとって使いやすく、喜んでいただけるようにしたいと思っております。

 それからさらに、これは当然ではございますけれども、いわゆる中小企業施策との連携というのがございまして、御案内のように、中小企業の皆様に対して知財駆け込み寺とかいうような制度も、今回、商工会とか商工会議所を初めといたしまして各種の中小企業団体にもできることでございますので、そういったところとの協力も含めまして、あるいはさらに、日本弁理士会との連携、今、弁理士会の方々も地方展開に大変力を入れていらっしゃいますので、そういった弁理士会との連携も含めて、さまざまな形で関係者と協力をしながら周知徹底に努めていきたいというふうに思っております。

佐藤(ゆ)委員 ぜひとも、インターネットですとかそういったものをごらんになれないいわゆる高齢層の中小の小売店業の方々にも周知徹底が届くように御検討いただきたいというふうに思います。

 次に、意匠法の改正について少しお伺いさせていただきたいと思います。

 まず、意匠に関する類似判断を今回明確化したという基準がございますけれども、今回の法改正の一つのポイントとして、意匠法の第二十四条で、意匠の類似の判断基準として、需要者の美感に基づき判断をするというふうに明確化したわけでございます。ただ、その一方で、意匠法の第一条では、そもそも意匠法の目的として、意匠の保護によって意匠の創作を奨励することにあるというふうにも定義をしているわけでございます。ですから、一条では、むしろ創作者の方の保護というのにやや重点が置かれている。その一方で、第二十四条の方では、需要者の美感の判断というのが基準になるというふうに言われているわけであります。

 そういう意味で、出願意匠の新規性の判断において、当然ながら、創作者の例えば自己満足、そういった要素を排除するような意味でも需要者の美感を判断基準に入れるということは大事ではあると思いますけれども、その一方で、創作を奨励するという第一条の観点から考えますと、創作者の観点もどこかに入れるべきではないかとも思われるわけです。このあたりは、法改正の全体像として、どこに担保されるのか、お伺いしたいと思います。

中嶋政府参考人 意匠法についてのお尋ねでございますけれども、まず、二つの意匠が類似しているかどうかという判断につきましては、例えば意匠の登録の可否をする判断の審査を行う際、あるいは、今度は事後的に審査の争いになった場合における意匠権の効力範囲を定める際に必要になる重要な要素でございます。

 まず、この類似の判断について、意匠の登録要件でございます新規性が問題になるわけでございますけれども、これは、意匠の登録出願に係る意匠が国の内外で既に知られた公知の意匠と同一または類似する意匠であるか否かの判断でございます。もちろん、さらに侵害かどうかといった意匠権の効力範囲についても、これは、登録された意匠あるいはこれに類似する意匠の実施について判断されるというわけでございます。

 今回あえて明示的な規定を導入した趣旨でございますけれども、実は、意匠の類似の判断につきまして、最高裁の判例におきまして、一般の需要者の視点から見た美感の類否であるという解釈がなされているわけでございますけれども、依然として実務の一部におきましては、この判断について、つまり意匠の類似の判断それ自体について、デザイナーなどの当業者の視点から評価を行うべきではないかという主張もあって、意匠の類似判断が不明瞭なものになっているのではないかという懸念も示されてきたわけでございます。

 ただ、この点につきましては、既に御説明したかもしれませんけれども、例えば主要諸外国、欧州でも、欧州共同体意匠規則におきまして、その判断の主体は、情報に通じた使用者、要するに実際の需要者、消費者というふうに記載しておりますし、アメリカでも、判例におきまして、この判断の主体は、通常の観察者という表現ではございますけれども、要するに消費者でございます。中国でも同様でございます。

 要するに、こうした国際的な動向も踏まえまして、今回の改正では、意匠の類似の判断は需要者の美感に基づいて行われるということを明確にして、関係者において広く統一性を持った類似判断が可能になるようにということで導入したものでございます。

 それに加えまして、先ほど委員が御指摘いただきましたように、新規性の要件に加えまして、意匠の登録の可否を判断するに当たっては、その出願に係るものが国の内外で既に知られた公知の意匠に基づき容易に創作できたものかを判断するいわゆる創作の非容易性の判断というのが重要な要件になってまいります。この創作非容易性の要件につきましては、意匠の創作者であります当業者、つまりデザイナーなどのプロの視点から判断すべきことが規定されておりまして、デザイナーなどの当業者の視点から見た創作性についても一定の水準を有しているということが意匠の登録の要件になるわけでございます。

 この点につきましても、アメリカにおきまして、意匠の登録要件として、新規性に加えて、我が国の創作非容易性に相当するものとして、公知の意匠との差異点が自明なものであるか否か、アメリカの法律用語では非自明性という言葉なんですけれども、それについて判断を行う。この点については、当業者からの視点で行うということでございます。

 要するに、意匠法におきましては、新規性と創作非容易性、この二つの要件を充足した意匠について登録が認められる、結果として、新規で、かつ創作性を有する意匠の創作が奨励されるというふうに考えております。

佐藤(ゆ)委員 もう一つ意匠についてお伺いしたいんですが、意匠権の存続期間を今回二十年まで延長するというふうな決定をされていると思います。実際に各国を見てみますと、例えば欧州では二十五年の国もありますし、米国では十四年等々ばらばら、まちまちではあると思います。そして、今回の法改正で、実際に日本でもより長期への延長を求める意見というのは確かにあったというふうにはお伺いしておりますが、二十年の延長にとどめた理由についてお答えいただきたいと思います。

中嶋政府参考人 意匠権の存続期間についてのお尋ねですけれども、これは、現状においては国際的に統一されておりません。おっしゃるように、アメリカでは登録から十四年、ヨーロッパ主要国におきましては、最初は出願から五年間、延長の結果最長二十五年間。片や、最低限度の国際的な義務としては、いわゆるTRIPs協定で少なくとも十年間といったような状況でございます。

 しからば、今回どう考えたかということでございますけれども、現在十五年と規定しておりますけれども、実態がどうであろうかということで調査をいたしました。その中で、今、最長十五年でございますけれども、実際、満了の年まで持ち続けていらっしゃる比率が約一六%でございまして、これは特許権などと比べてもかなり高い数字になっております。したがって、やはり日本におきまして、デザインが商品価値の長期的な維持にとって大事な要素によりなってきているという認識でございます。したがいまして、まず、この十五年間をより延長しようという方向が決まったわけでございます。

 では、具体的にその期間をどうするかという点につきましては、実は審議会でも大変議論がございました。

 ただ、その際に、実は意匠法では、結果として美感を起こさせるものであれば、機械器具などの物品の機能や技術にかかわる形状についても対象となるわけでございまして、現在、特許権の存続期間が出願日から二十年ということでございますので、これと余り大きく乖離するのは適当ではないのではないかという意見が強うございました。それから、現在の制度、つまり今回の改正前と後で存続期間が一挙に大幅に異なってくるということや、権利者以外の第三者に与える影響も大きいということも考慮する必要があるのではないかというような御意見もございまして、結果としては、新たな存続期間としては、今回、十五年から二十年に延長するというのが適当であろうという判断になったわけでございます。

 さらに、この点について、実際、産業界の意向ということでアンケート調査もしてみたんですけれども、五百八十社からの回答のうち、存続期間の延長が必要だという企業のうちの六八%の方が二十年が適当であると。二十五年まで延長するのが適当だという方は一三%にとどまっていたわけでございます。

 以上を総合的に勘案いたしまして、今回、存続期間の延長の幅につきましては十五年から二十年ということにしたわけでございますけれども、今後とも、内外の実態とか制度の動向を見ながら、常に適切な制度設計になるように心がけていきたいと思っております。

佐藤(ゆ)委員 確かに、国内での意匠権というのは、平均的な年数で見ますと二十年より短いということで、それほど長くないということではあろうかと思います。

 ただ、一点だけ気になりましたのは、むしろ、延長そのものの問題ではありませんで、産業財産権そのものの意義といいますか、例えば登録企業が二十年以内に閉鎖をした場合に、閉鎖企業にそもそも帰属した産業財産というものが、日本国内ではもはや時間の経過とともに技術やデザインとして陳腐化をしている、そのため、企業閉鎖とともに、営業譲渡やあるいは破産手続等でも余り価値が見出せないというふうな状況も確かにあろうかと思いますが、そうした技術やデザインにつきましても、実は海外市場では価値を見出せるものもある場合があるということではないかと思います。

 そうした中で、国内では事業継承者のない、いわば倒産による登録切れの産業財産をどう取り扱っていくか。これは、実は国際競争力の、いわゆる模倣品の対策の観点からも一つ考慮すべき点ではないかと私は個人的に思っております。

 こういった登録切れの事業所、継承者のない産業財産について、何らかの形で識別をして保護、維持しながら、そして海外企業に需要があれば有償でそれを転売していくなどの、やはり民間ベースの仲介役的な、そういうブローカーのようなものが、ある意味でこれは特許でも同じ状況だと思いますが、特許バンクですとか意匠バンクですとか、そういったものを積極的に設立していくというようなことも考え得るのではないかと思います。

 ぜひとも、国際競争力の観点から、こういった使われなくなった、国内では有効性のなくなった産業財産につきましても、海外では場合によっては価値を見出すことができる、そこを、何らかの市場として成立しないかという観点で、戦略的に今後御検討をいただきたいというふうに思います。

 最後になりましたけれども、もう一つ、実は、特許の出願ですが、これは法案と少し離れますけれども、昨今指摘されております大量の特許出願の問題、これについて少しお伺いをしたいと思います。

 近年ですと、特許審査の請求件数の急増というのが目立っておりまして、二〇〇四年度には約四十万件まで急増したということで、一次審査は例年並みの二十四万件でしたが、結局、最終的な特許の登録件数というのは十万件程度というふうに伺いました。約四分の一程度まで減ってしまうというわけでございます。

 その一方で、特許事務所の中には審査請求のためにいわゆる代理で作成をする弁理士の方々がおられるわけですけれども、こうした弁理士の方々が作成される特許明細書、この手数料を実は引き下げて、そのかわりに出願件数をどんどんふやして営業を行っていこうというふうな活動も散見されるというふうに伺っております。結果として、こういった行為の結果、大量出願にもつながっているというような御指摘も耳に入るわけでございます。

 この特許明細書ですけれども、これは実は、開発技術の模倣品に対する対策として極めて重要な位置づけがあるのではないかと思います。

 この特許明細書にエンジニアの資格などを持つ弁理士の方々がきちんとその技術を漏れなく記載して綿密に描くことによって、より模倣品が将来的に出にくいような状況にして申請をする。その作業は極めて価値のある重要な部分ではないかと思われるわけですけれども、こういった作業において、やはり有望な弁理士の方々が、大量出願の問題ですとかあるいは手数料の低下によってなかなか確保しづらいというふうなことが現状として生じてきているようでございます。

 この点ですが、政府の取り組みとして、実は特許出願人の企業そのものに対しては、いわゆる厳選化するということで、行動計画というのを策定しているというふうに伺っております。例えば、企業内に一元的な社内責任者を設置して、出願する特許については厳正に選択をした上で出願するというふうなことを奨励あるいは要請をしているわけですけれども、同じようなことを実は特許事務所側にも、出願の厳選のための何らかの基準あるいは仕組みというものを設ける必要はないのかどうか、最後にお伺いしたいと思います。

中嶋政府参考人 今御指摘いただきましたように、日本の産業界の知的財産戦略をより深める場合に、出願とか審査請求を厳選して、効率的な無駄のない研究開発をする、あるいは権利取得をするということが大変重要でございます。そうでないと、結果として、日本全体で無駄な重複投資が行われたり、あるいは個々の会社にとっても、単に技術情報を流出しているだけだという弊害が見られるわけでございます。

 その際に、おっしゃられましたように、私ども、現在、行動計画に基づきまして、産業界には、出願のあり方の見直しといいますか、より知的財産戦略を深めていただくことの検討をお願いしているわけでございますけれども、同時に弁理士の皆様方に対しても、同様の視点から協力の要請をしているわけでございます。

 つまり、実際に弁理士の方は出願人の代理として出願あるいは審査請求を行うわけでございますから、その際の専門的な助言として、今お話ございましたような、より効率的な適切な出願が行われるように、特に中小企業の場合には、先行技術の調査の仕方とかいろいろふなれな点もございますので、そういう点も含めて、産業界、出願人を適切にサポートしていただけるように弁理士会にも協力を求めているわけでございます。

 それから、あわせまして、出願人が特許出願の際に適切な弁理士を選択することを容易ならしめるために、弁理士の方々の主要な取り扱い分野とか出願手続についての実際の取り扱い状況などについての情報を広く提供していただくようにということで、弁理士会にもいろいろお願いをしているところでございます。

 なお、こういった特許事務所について、特許出願をある意味で自制するための基準のようなものがつくれないかという御指摘もございましたけれども、現実の出願件数とか特許率などは、やはりどうしても出願人それ自体の御意向もいろいろあると思いますし、その辺は業種とかあるいは企業の知的財産戦略によってもかなりばらつきがございますので、一律に抑制するような基準を設けることは困難だと思います。

 ただ、考え方は、いかなる業種であっても企業であっても共通だと思いますので、先ほど述べましたような企業の知的財産戦略を深めていただく、その際に弁理士の方が適切なサポートをしていただけるように、これからも協力してやっていきたいと思っております。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございました。

 各論の制度調整というのも大変大事だとは思いますが、やはり国策としてこの産業財産権の保護に向けて大きな方向性を見出して、その上で国策として推進していただきたい、そのように思います。

 これで私の質問を終わります。ありがとうございました。

石田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうの意匠法等の一部改正案で内閣提出の法案審議は一区切りということになるわけですけれども、残念ながら、環境省と共管でありますが、経済産業省の方で出しました容器包装リサイクル法の審議が当委員会ではございませんでした。十年前、容器リサイクル法ができたときには、商工委員会で議論をし、そこで附帯決議も出して、本来、十年目のこの法案の改正に当たりましては、この委員会でのしっかりした審議が必要だったろうと思っております。

 その関係で、こういう機会ですから、若干の時間で、この容器リサイクル法についてお尋ねをしたいと思っております。

 容器包装ごみの減量と資源の有効利用の確保を図ることを目的としたこの容器包装リサイクル法ですけれども、問題となっているのは、負担の大きさの問題であります。

 役割分担ということで、自治体が行う収集、保管、それと、再商品化、この費用については事業者が負担をする、こういう役割分担で行われているわけですが、この自治体の負担が環境省の試算で三千五十六億円と言われるのに対し、事業者の再商品化費用の負担が四百五十一億円と、極めてアンバランスではないかという指摘が行われてまいりました。

 そういう議論を踏まえて、今回の法改正では、事業者から市町村への資金拠出制度を設けることになったわけですけれども、この資金拠出制度の創設によって自治体に回るお金が幾らぐらいになるのか、その点についての推計の数字を示していただけないでしょうか。

深野政府参考人 お答えをいたします。

 今回導入を検討しております資金拠出の仕組みでございますけれども、これは、いわゆる再商品化に要する費用が当初の想定額を下回った場合に、その低減額の二分の一を事業者から市町村に拠出する、そういうものでございます。

 このため、具体的にどういう金額が事業者から市町村に拠出されるかというのは、実際に再商品化に要する費用が事業者と市町村の努力によりましてどの程度低減されるのか、そういったことによって大きく変わり得るものではございます。

 ただ、仮に平成十七年度の再商品化の単価をベースにいたしまして、再商品化に要する単価を一応そういうふうに置いて、実際に再商品化される単価と量が当初の見込みよりも五ないし一〇%程度減少する、そういった仮定を置きまして、現在の市町村の分別収集計画、これは平成十八年度から二十二年度でございますけれども、これに基づいて単純な推計を行いますと、拠出が開始される初年度に当たる平成二十年度分としては三十億円ないし六十億円程度の資金が配分される、そういう計算になります。

塩川委員 五%の場合については三十億、一〇%であれば六十億円という金額ですけれども、これ自身は実際にやってみないとわからない話でありまして、例えば五%の場合は三十億円といっても、自治体の負担は三千億円ですから、その一%にすぎないわけです。

 一方で、市町村に対しては一層の分別基準の厳格化ということが当然のことながら要求もされてまいります。異物の除去ですとか消費者への適正な分別排出の指導の徹底等による、分別基準適合物の質的向上等の取り組みが求められるわけですけれども、この分別基準の厳格化というのは、当然のことながら、一層の自治体負担の増大につながることになるんじゃないのかと率直に思いますけれども、その点、いかがでしょうか。

深野政府参考人 今回の改正につきましては、いわば市町村と消費者、それから事業者の連携のもとに、できるだけ質の高い、異物などの少ない分別収集を通じて再商品化がより合理的にできる、そういったことを目指すものでございます。そのためには、私ども、やはり消費者による容器包装廃棄物の分別の徹底というのが非常に効果的だというふうに考えております。

 したがいまして、市町村には、住民に対して、住民との接点になっておられますので、異物や汚れたままのものが混入しないように働きかける。例えば、残りかすがあるものはそれを捨てるとか、あるいは簡単に洗って出していただく、こういったことについて周知を図り、働きかけをすることがいわば市町村に期待されていることだと思っております。また、こうした取り組みによります改善の余地というのはいまだかなりあると思っております。

 したがいまして、市町村においては、まず地域の実情を踏まえてこういった普及啓発などをそれぞれの判断で適切に行っていただく、そういうことを期待しております。市町村の負担がこういったことによって大きくふえるということでは必ずしもないのではないかというふうに考えております。

塩川委員 私、住んでおります埼玉の所沢市の清掃センター、クリーンセンターへ行きました。所沢というのは、何年か前にダイオキシン問題で大騒ぎがありまして、このごみの分別の問題については大変市民の関心が高いところで、丁寧な分別作業も行っています。私も、ペットボトルについてもラベルをはがしたりキャップを外して中を洗って出すとかいう作業ですとか、容器包装のプラスチックの区分ですとか、そういう点では、市としての独自の努力と同時に、市民の努力の中でかなり分別の努力というのを行っているわけなんですね。

 その上で、じゃ、ペットボトルについて費用の負担はどうかといいますと、所沢市の、これは平成十六年度、収集、分別、保管の費用が九千百三十万円かかりました。一方で、これに対応する事業者の再商品化の費用が二千八百二十七万円ですから、合わせると、七六%を市町村、市が負担し、残りの二四%を事業者という格好なんです。

 ですから、さらにこの分別を徹底するということになると、もちろん市民の人にお願いをするということをやりながらも、結果とすると、市の清掃センターでの分別の作業に手を入れざるを得ない、そこにやはり人手をかけざるを得ないという点では、より一層の負担増になるということは、これは明らかじゃないでしょうか。

 さらに、廃プラの分別収集の質を高めることも今後要求されるということも出てまいります。中央環境審議会の議論の中でも、廃プラについても、ポリプロピレンですとかポリスチレンですとかポリエチレン、PPとかPEとかPSとか、そんなのについても細かく分けたらどうかとか、あるいは成形品、ペットボトルみたいな形になっているのと、フィルム、ラベルのようなもの、こういうものについて分けて出してもらったらどうかだとか、汚れているものについては分けるとか、そういう作業についてももっと求めていくことが必要なんじゃないかということが議論になっているわけです。

 そこでお聞きしますが、この廃プラの分別収集というのがやはり市町村にさらに大きな負担を強いることになるんじゃないですか。

深野政府参考人 お尋ねの廃プラの排出の件でございますけれども、現在でも実はこれにつきまして、いわゆる容器包装をまとめた、ベールというふうに呼んでおりますけれども、それの品質について評価を行っております。これは、実際に再商品化の関係をやっております日本容器包装リサイクル協会というところで実施をしているわけでございますが、その中でもいろいろな異物が入っているケースもございまして、中には非常に危険なもの、例えばライターですとか刃物とか、そういったものが入っているケースもあるようでございます。

 いずれにしても、こういったものがない状態にすることがいわば再商品化のコスト全体を減らしていくことになりますので、そういったことについて、やはり市民、住民にきちっと働きかけをしていくということが非常に効果があるんじゃないかと思っております。もちろん、事業者の側でもいろいろとできることはやっていかなきゃいかぬというふうに考えておりますけれども、そういったことで、この品質の向上を図って、全体としてのコストを下げていきたい、そのように考えております。

塩川委員 名古屋市なども非常にリサイクルなどについては努力しているところですけれども、そこの数字でも、ごみ処理の費用は一キログラム当たり五十六円なのに、資源化の費用は一キログラム当たり八十六円ということで、一・五倍かかっているんですよ。ですから、リサイクルに努めれば努めるほど金を持ち出さざるを得ない、税金を使わざるを得ないという、リサイクル貧乏と言われる問題というのが重大な課題となっているわけです。

 ですから、今回の新しい拠出制度をつくったとしても、一%とか二%、自治体の負担に当たってはその程度でしかありませんから、この自治体の負担増にとても追いつかないというのが実態だと思うんです。

 そういう点では、実際、その分別の作業を考えますと、マテリアルリサイクルの再商品化事業者のところに行くと、そこでも当然分別をするわけですね。そこで分ける作業をいわば前倒しにして、自治体のレベルでやってもらいたいという話になってくるわけで、再商品化事業者、そういう意味では事業者の責任が市町村や消費者に移しかえられるという形になるという点では、私、本当の意味でリサイクルを促進するものにならない、自治体の負担増、市民の負担増にしかつながらないと率直に思います。

 そういう点でも、今ある役割分担、市町村が収集、分別、保管をする、事業者の方が再商品化の費用を負担する、この役割分担を見直して、踏み込んで、つまり、事業者の方が市町村などが行っている収集、保管の費用を負担する、自治体の分別収集、選別保管コストに対する事業者の負担を導入するということが今求められているんじゃないかと思うんですけれども、その点、どうでしょうか。

深野政府参考人 我が国の場合、容器包装廃棄物につきましては、いわば家庭のごみとして一般廃棄物の収集の中で取り扱ってきているということでございます。

 ただ、その中で、この容器包装に関するものにつきましては、いわゆる再商品化、回収した後のそれをもう一度資源として利用する、その点については事業者に一定の責任を負わせる、そういう形でこの容器包装リサイクル法ができておりまして、その考え方は、基本的に今回もそういうことで対応しておるところでございますけれども、やはり、そういった中で、それぞれの主体が連携をする、連携を強化するということが、これがどうしても再商品化の質を向上していく上で非常に重要である、そういったことで、今回その連携のための仕組みを導入する、そういったことを中心に改正案をまとめさせていただいたということでございます。

塩川委員 連携もするし、それぞれの主体がそれぞれの努力をするという話なんですけれども、例えば、事業者の方がペットボトルの軽量化に努力をしていますという話なんかも出るわけです。何グラム少なくしましたということがあるんですけれども。

 そこでお聞きするんですけれども、ペットボトルにつきまして、生産量と、それから回収をされた量の差が未確認量、これがいわば実質的な廃棄に当たる数字だと思うんですけれども、その量が幾らになっているかというのをお聞きしたいんです。直近ですと平成十六年度の数字があると思うんですけれども、あわせて、お答えできれば、容器包装リサイクル法を施行する前の平成八年度の数字、平成八年度と平成十六年度のペットボトルの未確認量について、数字をお示しいただけますか。

深野政府参考人 未確認量のお尋ねでございます。

 これにつきましては、正確な統計ということでは必ずしもございませんけれども、業界団体の方で、実際にそのPET樹脂を幾ら生産したか、それを市町村ルートでどれだけ分別収集したか、そういうことで把握をしておりまして、市町村の方で回収をされなかった分を未確認数量というふうに見ておるわけでございます。

 平成十六年度につきましては、樹脂の生産量が約五十一万四千トンでございます。一方、これは環境省の方のデータでございますけれども、市町村の分別収集量が二十三万八千トンでございまして、この差が約二十七万五千トンということでございます。これが、市町村が分別収集によって回収しなかった分でございます。

 ただ、この中には、いわゆる事業系といいまして、例えば、いろいろな事業所でペットボトルを使った後、そういったものについて独自に回収をしている分がございます。これについても業界でいろいろ調査をしておりまして、これが平成十六年度約八万一千トン程度あるのではないかというふうに推定をしております。したがいまして、この分も回収されたというふうに考えますと、未確認量というのは十九万四千トンでございます。

 一方、平成八年度でございますけれども、平成八年度につきましては、約十六万八千トンが未確認ということでございます。

塩川委員 平成八年度、施行前のときには十六万八千トンの未確認量、平成十六年度におきましては十九万四千トンということで、この容リ法がスタートしてから、いわば廃棄をされる量が実際にふえているわけですよね。ですから、生産量がどんどんふえていますから、リサイクル率、再商品化率が上がっているといっても、実質的には廃棄に回っているのが多いというのが実態で、これが本当にリサイクルと言えるのかということが問われていると思うんです。ペットボトルのごみ量がこの間で三割近くも増加をしたわけです。

 そういう点でも、大臣に最後、この問題でお尋ねしますけれども、自治体の収集、保管の費用と、事業者の再商品化の費用という役割分担について見直して、事業者が収集、保管の費用も一部見るとか、そういう仕組みにする方が、トータルで負担を軽減させることになる、環境負荷を軽減することになるんじゃないのかということを一つお尋ねしたい。

 もう一つが、少なくともその再商品化の費用を負担する、現行の役割分担の事業者の責務である再商品化の費用を負担する際に、複合素材というのがあるわけです、プラスチックとアルミがくっついているようなものとかというのが。これは、リサイクルにも金がかかるわけですから、そういう人に対してはちょっと上乗せの費用負担をしてもらう、こういう点での改善も必要じゃないかと思うんですが、その点についての御見解をお伺いします。

二階国務大臣 まず、複合素材を用いた容器包装は、強度、そして気密性、遮光性などの特性を実現するために広く用いられておることは御承知のとおりであります。このため、食の安全などの要請にこたえながら、容器包装を薄くしたり、シャンプーなどを詰めかえ用の容器で販売するなど、減量化にも役立っております。また、こうした複合素材についても、リサイクル可能な手法もあることから、一概にリサイクル費用を増加させるものではありません。このため、こうした複合素材を他の容器包装と区分し、リサイクル費用を高くするという御提案でございますが、これは必ずしも適切ではないのではないかと考えております。

 経済産業省としては、今後とも合理的かつ効率的なリサイクルの推進に一層努めてまいりたいと思っております。

塩川委員 もう一点の役割分担の見直しのところについて、これはずっと審議会でも議論がありましたし、環境委員会でも議論があったところなんですが、単純に、収集、保管は自治体で、再商品化の費用は事業者でということではなくて、収集、保管の費用が膨大にかかっているわけですから、それについての負担を事業者が持つことによって、結果としてトータルの費用を抑えていくように働きかけることは必要じゃないかと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。

深野政府参考人 先ほどのお答えと若干重複するところがございますが、御容赦いただきたいと思います。

 現行の容器包装リサイクル法におきましては、拡大生産者責任の考え方に基づきまして、既に今、事業者に再商品化の部分の義務を課しておるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、むしろ、事業者と消費者と自治体、この三者の連携をさらに強化させてより適切なリサイクルを進めていくために、さらにその三者間の連携の仕組みをつくる、そういった考え方で、先ほど御説明した資金拠出の仕組みも含めて今回取り組みを強化するということにしているところでございます。

塩川委員 この問題はまた機会がありましたらぜひ議論したいと思いますけれども、やはり拡大生産者責任の立場に立った施策というのが今本当に求められているということを申し上げておくものです。

 それでは、意匠法等の一部改正案についてお聞きしますが、私がお聞きしたいのは、知的財産権侵害に関する刑事罰、懲役刑の上限引き上げの問題なんです。

 これは、知財戦略本部の知的財産推進計画二〇〇五で、「知的財産権侵害に対する抑止効果を高めるため、知的財産権の侵害に係る刑罰(懲役)の上限を十年とすることについて二〇〇五年度から検討し、必要に応じ制度を整備する。」とありました。十年、窃盗罪と同じように知財に対する刑事罰を引き上げようということが知財計画の二〇〇五にあったわけですが、法案をつくるに当たりまして行った産構審の各部会の審議では、半年間の慎重な検討の結果、特許、商標権については現行五年を維持して、意匠、実用新案についてのみ現行の三年を五年に引き上げる旨の報告書をまとめたわけであります。刑事罰の強化に慎重な結論を出したというのがこの審議会の中身だったんじゃないでしょうか。それなのに改正案では、報告書の結論を覆して、懲役刑の上限を意匠、特許、商標とも窃盗罪と同じ十年に引き上げたわけであります。

 これは、日弁連からも意見が出されておりますけれども、手続上問題があったんじゃないのかと率直に思うのですけれども、これについて経済産業省のお考えはいかがですか。

中嶋政府参考人 今の刑事罰に関するお尋ねでございます。

 まず、内容でありますが、これは、当然ながら、知的財産の重要性が高まる中で、知的財産の侵害に対する抑止効果を高めるために刑事罰を厳格化することが必要ではないかという指摘がかねてから行われておって、政府の知的財産推進計画二〇〇五においても、十年の懲役刑の上限引き上げという検討がうたわれております。

 御指摘ございましたように、それを受けまして、産業構造審議会におきまして審議をいただきました。確かに、審議会では、知的財産権の侵害罪を、懲役刑の上限として既に設定しておりましたのは窃盗罪でございますけれども、それと比較した場合の幾つかの指摘がございました。

 例えば、窃盗罪は、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除して、目的物を自己または第三者の占有に移すということであるから、知的財産の侵害の場合には、それに対しては窃盗罪の場合のように直接的に他人の占有を奪取するものではないのじゃないかとか、あるいは、特許につきましては、侵害行為の特定に際して、特許発明の技術的な範囲の認定などが必要になるために商標権などの知的財産権と比較して難しい面もあるのではないかといったような指摘がなされたことはございます。

 その上で、審議会の結論としては、懲役刑の上限を十年に引き上げることについて、慎重に検討を行うことが適当であるというような取りまとめがなされたところでございます。

 その上で、私どもとしてどういう形で改正案の取りまとめに入ったかということでございますけれども、政府全体の知的財産推進計画二〇〇五で、先ほど申しましたように、懲役刑の上限を十年に引き上げるべきではないかという検討をうたっておる背景でございますけれども、やはり、二十一世紀、日本が今後とも産業の国際競争力を向上させていくためには、持続的なイノベーションの成果でございます知的財産の保護の強化が何よりも必要であろう。

 それから、二点目といたしまして、知的財産は権利の情報が広く公開されます。きょうの御審議でもたびたび御質問もいただきましたけれども、特許を初め知的財産については権利の情報が広く公開されることから、第三者による故意の侵害に対しては脆弱な面があるという特性がございます。つまり、かみ砕いて言いますと、例えば、物とか車でございましたら、金庫とか車庫に入れてかぎをかけておくといったようなことができるわけでございますけれども、知的財産は、審査の上、登録されて公開されてしまうということで、ある意味でそれ以上かぎのかけようがないといいますか、故意で侵害する者に対しては脆弱であるという特性もございます。

 加えて、近年、知的財産の価値の向上に伴いまして、現実に起こっております侵害によります損害額が高額化している。例えば、特許ですと数十億円の損害賠償といったようなものもございます。そういう意味で、知的財産を侵害からより適切に保護するためには、やはり刑事罰についても十分考える必要があるのではないか。

 最終的に、刑事罰のあるべき水準を考えるに当たりましては、侵害行為に対します抑止の重要性、あるいは侵害に対する先ほど申し上げたような脆弱性、あるいは被害額の大小のほかに、窃盗罪以外のものも含めて多くの財産犯に係る法定刑との均衡、例えば、窃盗罪は確かに上限は十年でございますけれども、同様に、詐欺罪とか恐喝罪とか業務上横領罪とか、こういったものも上限は懲役十年になっております。そういったさまざまな点を総合的に勘案することが必要ではないかというふうに判断したわけでございます。

 特許庁としては、こうした基本的な考え方に立ちまして、知的財産戦略本部あるいは産業構造審議会の議論も踏まえた上で、関係省庁あるいは与党とも法案の内容について検討、調整を行った結果、最終的には、知的財産権の価値の向上及び侵害の予防の要請に適切に対応するため、知的財産の侵害については、刑事罰の上限を十年に引き上げることとしたものでございます。

塩川委員 そういう議論をもともと審議会の場でなぜ行わなかったかという問題なんですよ。

 ですから、委員として参加をしている日弁連からも意見書が出ているだけではなくて、例えば日本経団連も、知財推進計画二〇〇六の策定に向けてという要望書の中で、刑事罰の強化についても「審議会の報告とは違った形での結果になったことについて、審議会の場で十分説明を行う必要がある。」という点で、そういう意味では、審議会での議論が尽くされていないというのが当事者の皆さんの率直な考えなんじゃないでしょうか。私は、そういう点でも手続的にも問題があったと。

 その上で、内容の問題ですけれども、今いろいろお話ありましたけれども、私は、もともと、報告書の結論として書かれている、窃盗罪との対比で同列に扱うのは問題があるんじゃないのかということについて、これについてのちゃんとした回答になっていないと思いますよ。窃盗罪と並びで刑事罰を引き上げるんだということについての説得的な理由というのは率直に示してないんじゃないですか。いかがですか。

中嶋政府参考人 まず、先ほど御指摘ございました審議会との関係でございますけれども、審議会の結論をいただいた上で、先ほど申し上げたように、最終的に政府部内あるいは与党とのいろいろな調整をしたわけでございます。その結果、今回の改正案としてこういう形になったわけでございますけれども、この法案の国会提出に先立ちまして開催いたしました産業構造審議会の知的財産政策部会に報告をいたしまして、その部会のもとで具体的な御検討をいただきましたそれぞれの関係の小委員会の委員の方々にも御説明をして、一定の御理解を得ているというふうに考えております。

 それから、いろいろな水準、レベルの問題でございますけれども、これは、先ほどから申し上げているように、内外のいろいろな要素を勘案したわけでございますけれども、国によって確かにばらつきはございます。ヨーロッパなどですと四年、五年とかいうのがございますし、あるいは、むしろ商標などにつきましては、アメリカも十年とか、中国とか韓国でも既に七年になっているとか、いろいろなばらつきもございます。

 ただ、一番大事な点は、やはり国内の実態として、産業財産権の保護、知的財産権の保護というのをどういう位置づけにするかという点にあるかと思います。

 それから、もう一つ大事な点は、やはり裁判の手続等の関係で、例えば、これは御案内かもしれませんけれども、裁判所と特許庁とのいろいろな連携をとるような規定もございますので、そういう点も含めていろいろ総合勘案して、産業界の方にも御説明をして、理解を得ることに努めたわけでございます。

塩川委員 配付資料の一番下にもありますように、無効審判で、例えば特許の場合、無効の割合が四四%です。ですから、この報告書の結論が言っているように、ほかの財産権とは異なって、特許権などは、一定の期間のみの保護で、その権利が無効となる可能性を含んだ権利だという、そこと、窃盗罪などというはっきりわかるようなものとは明確に違うというのが前提であるわけですよね。十年に引き上げると言っても、もともと現行法での刑事罰においても、では、上限に張りついているような、そういうのが過去にあるのかというと、そういうのもない。実際に単独刑で、この問題についての、懲役刑についての実刑判決というのは一例もないというのが特許庁の案内ですから、そういう点でも実態にそぐわないものだ、不必要なものだということです。

 時間の関係で、最後に大臣にお伺いしますが、こういった刑事罰、懲役刑の引き上げということを行うことが、かえってそういう企業の経済活動を萎縮させることになるんじゃないのか、そういう点でも……

石田委員長 塩川君、時間が終わっていますから、手短に。

塩川委員 はい。この点について、大臣の率直なお考えをお聞きしたいと思います。

二階国務大臣 先ほどからの委員の御指摘は、窃盗罪と、そして知的財産権の侵害にかかわる刑事事件との件の刑量について特に御意見がありました。産業構造審議会での議論の経過も承知をいたしておりますが、これは、慎重にやれということであって、特にこの十年ということに対して否定的な見解が出されたものではないというふうに思っております。

 また、故意に権利の侵害を行うものでない限り、企業が刑事責任を問われることはないというふうに我々は判断をいたしておりますし、懲役刑の上限の引き上げによって、企業の正当な事業活動を萎縮させるということはあり得ない。逆に、本改正によって悪質な侵害行為に対する抑止効果を高めることにより、正当な事業活動を保護することとなるであろうということを期待いたしております。

 そしてまた、我が国のこうした知的財産権に対する取り組みは、やはり国際社会でも対外的に我が国の取り組みということは御説明をしておるわけでありますが、そうした決意を内外に表明することによって、知的財産権の侵害をできるだけ防止していこうというこの決意のあらわれであるというふうに御理解をお願いしたいと思います。

塩川委員 経団連の先ほどの要望書でも、「知的財産権は無体物であるためにその権利範囲については争いがあるのが常であるから、刑事罰の適用に際しては、慎重な運用を維持すべき」だ、そういう懸念の声もあるんだということも指摘をして、質問を終わります。

石田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、意匠法等の一部を改正する法律案について、反対の討論を行います。

 反対する理由の第一は、知的財産権侵害への対処は、本来的には民事上の損害賠償請求によって行われるべきであるからです。

 知的財産権侵害行為のみで実刑判決が下された事例は皆無に等しく、現行法が定める懲役刑の上限ないしそれに近い刑が適用された事例の報告もない中で、刑事罰を強化する必要性が乏しいことは明らかです。

 知的財産権侵害に対する刑事上の処罰はその補完的な役割であり、侵害事犯の実態からして知的財産権侵害行為を抑止するためだけに重罰化を図ることは認められません。

 反対する理由の第二は、知的財産権侵害の特殊性からして、刑事罰、特に懲役刑が適用されることになるならば、企業の経済活動等を著しく萎縮させ、阻害することが懸念されるからであります。

 質問で指摘したように、特許法など、懲役刑の上限引き上げは現行の五年を維持すべきとの産業構造審議会での意見が考慮されていないことは重大であります。

 特に、一定の期間のみ保護され、また常に権利が無効となる可能性を含んだ権利である知的財産権の性質からして、刑事罰の強化を濫用して、財力の乏しい中小企業者や個人などの知的財産権を抱え込むために圧力をかけることが懸念されます。

 必死に頑張っている中小企業や個人などの知的財産権への挑戦を制約させる事態を招いては、日本経済の損失であります。

 以上、表明して、反対討論を終わります。

石田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、意匠法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、増原義剛君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    意匠法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の諸点に留意すべきである。

 一 我が国産業の国際競争力のさらなる向上に資する観点から、グローバルに活動する企業がより円滑かつ適切に産業財産権の保護を図ることを可能とするよう、今後とも各国との連携を密にしつつ、産業財産権に関する制度及びその運用の国際調和の促進に努めること。その際、内容について利用者への周知徹底に万全を期するとともに、国の産業政策や技術開発戦略の遂行に資するよう、特許等の審査の迅速化に必要な審査官の十分な確保及び弾力的な配置に着実に取り組むこと。

 二 我が国企業の大宗を占める中小企業においては、産業財産権の取得・保持等のノウハウが十分備わらず、組織・資金面で余裕がない企業も多いことから、支援策の一層の充実を図ることとし、いわゆる「知財駆け込み寺」等の相談窓口制度、及び日本弁理士会との連携を強化するなど、地域の現場できめ細やかに支援を受けることが可能となるような仕組みを整えること。

 三 模倣品の早期撲滅の重要性にかんがみ、二国間の協議や「模倣品・海賊版拡散防止条約」(仮称)の締結に向けた協議等を通じ、模倣品の被害が見られる国・地域への多面的な働きかけを一層強化すること。

 四 国内における模倣品の流通防止を図るため、広報活動の強化に努め、模倣品は社会悪であるという国民意識の醸成を図るとともに、近年、模倣品取引の被害が指摘されている個人輸入及びインターネットオークションに関し、早急に対策を講じること。また、インターネット市場の健全な整備を図るため、ドメイン名の取得等をめぐる消費者被害が報告されていることから、早急に実態を把握し、必要な措置を講じること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

石田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石田委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、二階経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。二階経済産業大臣。

二階国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

石田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

石田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十七分散会


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