衆議院

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第10号 平成19年5月9日(水曜日)

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平成十九年五月九日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 上田  勇君

   理事 金子善次郎君 理事 河井 克行君

   理事 新藤 義孝君 理事 中山 泰秀君

   理事 宮腰 光寛君 理事 後藤  斎君

   理事 近藤 洋介君 理事 赤羽 一嘉君

      小此木八郎君    近江屋信広君

      岡部 英明君    川条 志嘉君

      近藤三津枝君    清水清一朗君

      篠田 陽介君    平  将明君

      武田 良太君    谷川 弥一君

      土井 真樹君    丹羽 秀樹君

      西本 勝子君    野田  毅君

      橋本  岳君    平口  洋君

      藤井 勇治君    牧原 秀樹君

      増原 義剛君    武藤 容治君

      森  英介君    山本 明彦君

      吉川 貴盛君    大畠 章宏君

      太田 和美君    川内 博史君

      川端 達夫君    北神 圭朗君

      田名部匡代君    細野 豪志君

      三谷 光男君    柚木 道義君

      吉田  泉君    鷲尾英一郎君

      高木美智代君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       甘利  明君

   経済産業副大臣      渡辺 博道君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   文部科学大臣政務官    水落 敏栄君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           合田 隆史君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           村田 貴司君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局次長)      袴着  実君

   政府参考人

   (文化庁長官官房審議官) 吉田 大輔君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          奥田 久美君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       松井 英生君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           伊藤  元君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            細野 哲弘君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           内山 俊一君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          肥塚 雅博君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 望月 晴文君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      舟木  隆君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     広瀬 研吉君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官)   薦田 康久君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  榊  正剛君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            石橋 幹夫君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            竹本 和彦君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  山崎信之郎君

   参考人

   (原子力委員会委員長)  近藤 駿介君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月九日

 辞任         補欠選任

  片山さつき君     平口  洋君

  佐藤ゆかり君     近江屋信広君

  川端 達夫君     吉田  泉君

  三谷 光男君     田名部匡代君

  柚木 道義君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  近江屋信広君     西本 勝子君

  平口  洋君     篠田 陽介君

  川内 博史君     柚木 道義君

  田名部匡代君     三谷 光男君

  吉田  泉君     川端 達夫君

同日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     片山さつき君

  西本 勝子君     佐藤ゆかり君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件

 映画の盗撮の防止に関する法律案起草の件

 映画の盗撮の防止に関する件


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     ――――◇―――――

上田委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官合田隆史君、文化庁長官官房審議官吉田大輔君、厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、厚生労働省職業能力開発局長奥田久美君、経済産業省大臣官房商務流通審議官松井英生君、経済産業省大臣官房審議官伊藤元君、経済産業省製造産業局次長内山俊一君、経済産業省商務情報政策局長肥塚雅博君、資源エネルギー庁長官望月晴文君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長広瀬研吉君、国土交通省住宅局長榊正剛君及び環境省水・大気環境局長竹本和彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川条志嘉君。

川条委員 自由民主党の川条志嘉でございます。

 本日は、ものづくりを中心とした経済産業施策について質問させていただきます。

 昨年、経済産業省が主導で打ち出されました新経済成長戦略、改革の向こうには明るい未来が見えるというコンセプトで打ち出されました新経済成長戦略も軌道に乗り始め、中小企業対策、商業と地域の活性化策、そして知的財産権への取り組み、ジャパン・ブランドの確立等、経済産業省主導でしかなし得なかったと思えるような、幅広い他省庁との連携策を推進、実行されていて、これは、行政の政策推進の姿勢としては、行革の名に資するものであり、ダイナミックですばらしいことだと思っております。

 本日は、このような連携を基本とする施策について幾つか質問させていただきたいと思っております。お伺いしたいことがいっぱいございますので、時間の関係で、きのう打ち合わせました質問レクとは順序をかえさせていただきたいと思います。

 まず初めに、ものづくりの重要性が再認識される一方で、一部の悪質な業者による住宅地内での工場騒音というのがなおざりにされがちな現状があります。景気の好転と大企業のコスト削減により請負仕事がふえた結果、これまで大企業の工場で行われていた仕事が、請負制になって、中小企業に丸投げされているという現状があります。

 町中の工場においては、初めは操業規模が小さくても、そのうちに規模が大きくなって、騒音も拡大していくわけです。塗料によるにおいや、グラインダー使用による九十ホン、百ホンにもなる騒音、そして鉄粉の飛散等、周辺住民に耐えがたい苦痛を与えているところもあります。さらに、荷物の運び込みに四十トンから五十トンものトレーラーを使い、住居前でアイドリングしたり、三トン以上走行不可の道路にも進入したりする。けれども、中小企業の場合、近所づき合いというのがあるため、周辺住民は苦情の声を上げにくい。そして、そういう周辺住民の好意に甘えて、何の対策も公害に対して講じていない悪質な企業というのも見受けられるわけです。

 ものづくりの重要性が再認識される中で、このような騒音というのは昨今軽視されがちであります。しかしながら、騒音公害というのと心地よい町のにぎわいというのは全く別のものではないでしょうか。

 また、コンパクトシティーとかゾーニングというまちづくりを進める上でも、住宅地域内での工場の操業については規制し、工業団地への移転を進める必要があるのではないでしょうか。ものづくりの重要性が再認識される今だからこそ、環境立国日本の名に資するためにも、製造者側のモラルが問われ、周辺住民に配慮した騒音、悪臭、振動等への規制は必要だと思います。

 ものづくりに伴う公害への規制について、緩和されたのか、そうでないのか、現状と御認識をお伺いしたいと思います。

竹本政府参考人 ただいま委員の方から御指摘のございました近隣の騒音等の公害事象の関係でございます。

 一般に、騒音とか大気汚染といいましたいわゆる公害事象につきましては、住民の健康保護とか生活環境の保全、そういった観点から、公害の原因となる施設を特定いたしまして、そうした施設を有する事業者を届け出とか規制基準の遵守など規制の対象とする、そういう法律の体系を組んでおります。

 ただいま御指摘のありました騒音の関係につきましても同様の仕組みとなっておりまして、著しい騒音を発生させるような施設を特定施設といたしまして、特定施設を有する事業者に対して規制を実施しているところでございます。

 先ほど御指摘がありました中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律が今後施行されることになると思うわけでございますが、施行後も、先ほど申し上げました騒音等を含む公害規制法体系に特段変更をすることはございません。したがいまして、現在の公害規制は引き続き適用されるということとなるところでございます。

榊政府参考人 建築物の立地規制といいますものは、建築基準法に基づいて行われております。具体的には、公共団体が都市計画で用途地域を決めますと、その用途地域に応じまして、建築基準法の別表によりまして、こういう建物は建てちゃいけないというようなことで、先生御指摘の騒音なり住環境を守るといったようなことをやっておるところでございます。したがいまして、この法律自体は、ほかの法律ができたからといって改正されるとか緩和される、こういう性格のものではなく、別個のものでございますので、これは粛々とやっていきたいというふうに思っております。

 ただ、一つ申し上げると、工場と住居が混在しているような地域、これは準工業地域というふうに私どもは用途地域で呼んでいるんですが、そういうところには実は住宅も工場も建てられる、こういうようになっているところがございます。そういうところにつきましては、地区計画とか特別用途地域というのがございまして、そういった制度を活用することによりまして、例えば、そういう工場はきちっとしたような防音構造でないと建てられませんよとか、そういう規制をかけることが可能でございますので、そういった制度を活用することによって、住工の調和のとれたまちづくりが推進されるというふうに考えているところでございます。

川条委員 ありがとうございます。

 別表というのは昨日お伺いした、多分、第二種住居地域では五十平米以下の工場、町工場しか建てられないという別表だと思いますし、これまでどおり、公害に対する規制が緩和されることなく、環境立国の枠組みの中でものづくりを発展させていただけるとのことでお伺いしましたので、非常に心強いことでございます。

 では、次の質問に。話は全くかわりますが、ものづくりの人材育成についてお伺いしていきたいと思います。

 川条が質問をすると選挙区の話が出ると言われかねないので恐縮なんですが、私の選挙区の大阪市平野区では、ものづくりをより身近に感じることができるように、平野産業会と周辺の小学校、中学校、高校が連携して、本当におもしろい企画に取り組んでいます。総合学習やファミリー向けの大工教室などはもちろんのこと、こんな企画があるんです。児童生徒にペン立ての絵をかいてもらって、その絵に基づいて実際のペン立てを木工とかあるいは金属で製作して産業フェアで展示し、そして表彰するというものです。東急ハンズなどへの展示も考えておられるとのことで、ものづくりの先に見えるデザインあるいは販売といった異業種間の連携を子供たちに体験してもらって、ものづくりの世界へのあこがれを養っていくことができるすばらしい企画だと私は思っております。

 このように、企業とかNPOなど、子供たちへのものづくりの教育については取り組むところがふえたとはいえ、まだまだ拡大する余地があるように思います。企業などが中心となってものづくり教育育成カリキュラムを作成しているところもあるように見受けられます。もっと有効に進めるためには、学校内で、総合学習だけではなく、広くカリキュラムの中に位置づけて、例えば理科ですとか数学ですとか算数ですとか、そんな中に位置づけて取り組んでいく必要があると思います。また、このような民間の力を活用した取り組みを広く普及させるためにも、経産省と文科省の協力は不可欠だと思います。それぞれの御認識をお伺いしたいと思います。

渡辺(博)副大臣 お答えをいたします。

 我が国のものづくりを支える人材の育成ということは、小学校、中学校の早期の段階から、ものづくりのおもしろみを伝える、また関心を高める教育や、就業に近い段階での実践的教育が重要であることは間違いございません。

 そういった観点に立ちまして、経済産業省におきましては、小学校、中学校、高等学校において、ものづくり等の働くことのおもしろさを体系的に体験、理解できるように、地域自律・民間活用型キャリア教育プロジェクトを推進しているところであります。このプロジェクトにつきましては、平成十七年から三カ年の事業として予定をしております。具体的には、ものづくりでいうならば、愛知県の瀬戸市の例でいうならば、地域の伝統産業の職人の技を学び、ものづくりや販売を体験するなどの取り組みを行っている、こういった事例がございます。

 このモデル事業としての特徴でございますが、民間のコーディネーターを中核といたしまして、民間の経験、アイデアを活用すること、次に、子供、学校、企業、自治体などの地域関係者とのネットワーク化を進めて、積極的に参加できる環境をつくること、ものづくりをする地域産業のおもしろさ、これを体系的に理解させるようなこと、そしてまた自律化の絵姿が明確である、こういった四つの条件を備えたものについてモデル事業として採択をしています。

 平成十八年度は、全国二十九のプロジェクト、約三百校、三万五千人の生徒を対象として産学連携によるキャリア教育が展開され、支援を行っているところであります。ものづくりを含めた多様な職業観の醸成につながっていると考えているわけであります。先ほど委員の例がありましたけれども、大阪府においては、大阪市と堺市がこのプロジェクトに採択をされております。

 また、今年度より、地域の産業界や教育委員会等の協力のもと、文部科学省と連携いたしまして工業高校にものづくり人材を育成するための実践的教育を導入する事業を立ち上げております。今年度の予算として二・九億円でございます。

 経済産業省といたしまして、今後とも、関係省庁と引き続き連携を図りつつ、ものづくりに関する教育を推進してまいりたいと思っております。

小渕大臣政務官 お答えをいたします。

 委員が御指摘のように、企業やまたNPOと連携をして実践的なものづくり教育というものを充実させていくことは大変重要なことであると認識しております。現在、児童生徒の発達段階やまた地域の創意工夫を生かした取り組みがさまざまな教科で行われているところであります。

 ちょっと例を申し上げさせていただきますと、例えば小学校におきましては、社会科の中で、町工場とか自動車工場とか、そうしたところの見学を行っているほか、また、総合的な学習の時間を使いまして、地域の伝統工芸の専門家を招き、こうした伝統的な工芸というものを後世に残していくにはどうしたらいいのか、そうしたことを考えさせる取り組みなどを進めております。

 また、中学校におきましては、技術・家庭において技術とものづくりという内容をすべての生徒に履修させているほか、キャリア教育を推進する観点から、公立中学において五日以上のものづくりなど職場体験を行うキャリア・スタート・ウイークを推進しているところであります。

 また、高校段階におきましては、ただいま副大臣からも御紹介がありましたけれども、経済産業省と共同いたしまして新たな事業を十九年度開始したところでありまして、文部科学省といたしましては三億七千万を計上したところでございます。

 今後とも、各学校の段階や地域の特色を生かした実践的なものづくり教育が行われますように、各省庁と連携をしながら推進をしてまいりたいと考えております。

川条委員 ありがとうございました。これまでも積極的に取り組まれているとのことで、ありがとうございます。ぜひこれからも積極的に取り組んでいただけるようにお願いしたいと思います。

 次に、企業の技能継承問題というのを中心にして、二〇〇七年問題とも言われ、ことしから、七百万人とも言われていますが、一九四七年から一九四九年生まれの団塊の世代が大量退職していくという時代を迎えています。

 日本の製造業については、労働需給構造という面で非常に大きな課題があります。一方、老齢厚生年金の受給開始年齢が、二〇〇七年から二〇〇九年の団塊の世代の退職者というのは六十三歳になるとのことで、この点も踏まえて、退職後生活していくためにも、六十歳の定年後に六十三歳の厚生年金の受給開始のときまで働き続ける必要があるという生活面からの側面もあるわけです。

 技能継承のための社内あるいは地域における人材の教育はもちろんのこと、先ほどの学校におけるものづくり、そういった教育などにおいても団塊の世代にもっと積極的に働いていただく必要があると思います。

 例えば、東大阪の地域提案型雇用促進事業など、全国三十カ所で商工会議所や地域主導の高齢者の再雇用事業があって、これが拡大すればと望まれているところです。また、学校や地域、企業の中で、この世代の教育者としての再出発を応援する取り組みについても、モデルケースが存在し、拡大が望まれているところです。

 拡大のためにも、省庁間の連携というものがまさに必要だと思います。各省の御見解と今後の展望、そして御決意のほどをお伺いしたいと思います。

高木大臣政務官 それでは、まず、経済産業省の取り組みにつきましてお答えをさせていただきます。

 今御指摘ありましたとおり、定年退職された方々がこれまでの経験の中で培ってこられた技術やノウハウは、我が国にとっても貴重な財産でございます。その技術やノウハウを中小企業や地域で活用できるように受け皿をつくることが、経済の活性化、またこうした方々の生きがいという観点からも重要であると認識をしております。

 こうしたことから、経済産業省では、平成十五年より五年間事業といたしまして、商工会議所等を活用し、技能や経験が豊富な企業OBの方と、またそれらの方たちをアドバイザーとして活用したいという中小企業との橋渡しを支援する事業を実施しております。平成十九年三月末時点で約七千人の企業OBの方たちに御登録いただきまして、そのうち約三千件の紹介実績を上げております。ただ、この事業は今年度に終了することもあり、また、今後さらに、今御指摘ありましたとおり、団塊の世代の退職が本格化すると見込まれることから、こうした取り組みをさらに強化していくことが必要と考えております。

 そうしたことも含め、四月二十日に行われました経済財政諮問会議におきまして、甘利大臣より、新現役チャレンジプラン、仮称でございますが、この創設につきまして提案をさせていただいたところでございます。大企業から中小企業へ、また大都市から地方へ、また海外から国内へという、こうした人材の流れをつくってまいりたいと思っております。今後、その具体化に向けまして検討を進めてまいる所存でございます。

岡崎政府参考人 団塊の世代の退職の問題につきましては、働く方それから企業の両方の面からいろいろ大きな問題だろうというふうに考えております。

 働く方の立場から見た場合には、高齢者雇用安定法を改正いたしまして各企業に高齢者雇用確保措置をお願いしている。要するに、定年制が六十歳であっても、それ以降、現在六十三歳が年金の支給開始年齢でございますので、六十三歳まではいろいろ継続雇用等を含めまして高齢者の雇用確保をお願いするというようなこともやっております。

 一方で、企業の方の、ものづくりのための継承という観点から、先ほど先生からもございました東大阪市の事例、これなんかも地域全体の問題として取り組んでいただいておりまして、地域におきます企業が連携いたしまして、ものづくり企業の人材育成のためのいろいろな事業を行っていただいている。

 この事業そのものにつきましては、現在基金に基づく事業としてやっておりますが、新たに、地域雇用開発促進法を改正しまして、法律に基づく措置として行いたいと思っております。現在、法律を参議院で御審議いただいておりますが、その中では産業政策との連携ということも法律上位置づけておりまして、経済産業省等とも連携しながら、ものづくり人材の確保、育成にも努めてまいりたい、こういうふうに考えております。

小渕大臣政務官 お答えいたします。

 企業等を退職したものづくりの技術者など地域のすぐれた人材を学校現場において活用していくことは、学校にとっても大変有意義なことであるというふうに考えております。

 文部科学省といたしましては、教員免許状を持たない地域の人材や多様な専門分野の社会人を学校現場に迎え入れるために、特別免許状制度や特別非常勤講師制度を設けておりまして、学校の判断によって企業等を退職したものづくりの技術者を採用することは可能ということになっております。例えば、平成十七年度には、製造現場体験、伝統工芸分野の特別非常勤講師として八百六十四件の活用が行われているところであります。

 今後とも、こうしたすぐれた人材が有効かつ適切に活用され、ものづくりに関する教育の充実が図られていくように、教育委員会やまた学校の積極的な取り組みを促してまいりたいと考えております。

川条委員 ありがとうございます。本当に各省庁連携して取り組んでいただいているさまがうかがわれ、非常にこれが進んでいけばと私も心から願っております。

 さて、社員教育についてお伺いしたいと思います。

 これまで、就社と言われて、終身雇用制の時代は、正社員についてはキャリアアップ教育や人間観、職業観などの社員教育が企業内で行われてきたものでした。しかし、昨今、非正規社員の数がふえ、転職も一般的なものになって、キャリアアップ教育はもちろんのこと、人間観とか職業観などを含めた倫理教育の重要性というものは軽視されがちです。自己責任、自助努力と言われてほったらかしにされているという現状もあります。一方で、ジョブカフェなどで取り組みを始めておられるということも伺っておりますが、これまでにも増して、さらなる拡大を望むところでございます。

 キャリアアップ教育についての現状と展望はいかがでしょうか。

 また、学校における倫理教育については、今、教育再生会議でその是非が議論されているところではありますが、既に社会人になっている世代については、道徳が学校教育の中で行われていた戦前の世代以来、私たちの世代も含めて、行われていないというのが現状です。そして、終身雇用制の時代では社員教育の中で道徳教育、倫理教育も行われていたんですが、コスト削減、非正規の増加でそういった教育もなおざりにされがちです。

 民間では、モラル向上とか伝統の継承という観点から、経営者を対象に異業種交流や倫理の勉強会を開いておられる団体もありますが、これからもっと積極的に社員教育が担っていた部分というものに取り組んでいく必要があると思います。

 各省の御見解、そして今後の展望をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 大変広範にわたる御質問であったので、足りないところがありましたらまた御指摘をいただきたいと思います。

 まず、社員教育あるいはスキルアップについて、私の所管する分野についてお答えをさせていただきます。

 企業の、国際競争力の中で、従業員の能力アップをどう図っていくか、雇用した後、スキルアップを図っていくかというのは極めて大事な課題であるんですが、かつて、外部労働市場からその能力を携えた人を選択して持ってくればいいという考え方がありまして、一時的に社内の人材の能力アップに対する投資がおくれた時期がありました。しかし、例えば外部労働市場が発達をしていると言われているアメリカですら、従業員のスキルアップに係る投資というのはかなり大きいものを使っているということがわかりまして、そして人材投資に関する税の措置等を図ったわけであります。

 それから、正規、非正規について、どうしても、非正規社員に対するスキルアップの機会が少ない、あるいは非正規から正規への意思があるにもかかわらずその道が閉ざされている等々の問題がありましたので、私は経団連や日商に対して要請も行ったわけでありますが、それは、正規への登用の道を開いてほしいということと、それから非正規といえどもスキルアップのための企業努力をしてほしいということの一連の要請をしていったわけであります。

 道徳教育その他については他省庁の関係の皆さん方がお答えになると思いますが、従業員に対する能力アップ等々に関してはそういうことでございます。

奥田政府参考人 お答えをいたします。

 幾つか御質問がございましたけれども、まず、若者が就職するに当たって、社会人としてのマナーであるとか心構えが不十分である、そういった御意見がたくさんございます。私どもも、企業が若い人たちを採用するときにどういった能力が必要なのか、また、どういったことならば短期間で習得が可能なのだろうかというようなことを聞きましたところ、今申し上げましたようなビジネスマナーでありますとか責任感でありますとか、そういったようなものがかなり不足している人がいるということでございましたので、まず、こういったことに対しましては、平成十六年度から、YESプログラム、これは、ユース・エンプロイアビリティー・サポートのYESプログラムですが、こういった事業を始めまして、基礎的な能力を身につけるための講座を民間企業にやっていただきまして、それを私どもが認定をしてそれを受けていただく。これをまとめて幾つかの資格を取っていただきますと、厚生労働大臣から認定書を授与するというような事業をしております。最近までに、延べで約六十万人の方がこういったプログラムに参加をしていただいているということがございます。

 それから、今失業している方たちでフリーターをしていた、しかしきっちりと仕事をしたいということでハローワークに求職の申し込みに来られた方に対しましては、日本版デュアルシステムというものを今実施しております。これは、職場に入って、そのときに早く職場に定着をしていただける、職場の仕事になじんでいただけるようにということで、その訓練カリキュラムをかなり工夫しているわけでございますけれども、その中に、やはりそういった仕事に対する心構えでありますとか、職場の中ではどういったことが必要なのか、いわば社会人としての常識といいますか、そんなようなこともきちっと身につけていただくようなカリキュラムを組み込んでやっているということがございます。

 それから、今年度から、非正規の社員の方々で、その方を正社員に転換したいという会社がございました場合には、その会社が非正規労働者の方に訓練をする場合には、キャリア形成促進助成金という助成金制度がございますけれども、その中に新しい助成金の制度を創設いたしましたので、それを使っていただきまして、正社員転換を図っていただきたいというように思っているところでございます。

小渕大臣政務官 学校教育などを中心としまして、そうした適切な勤労観または就業観というものを育成し、明確な目的意識を持って就職できるようにするということは大変重要なことであるというふうに認識をしております。

 先ほども御紹介をさせていただきましたけれども、具体的には、学校現場においてそうしたキャリア教育、職業教育等の推進、また、現在ニートである若者などに対する、専修学校を活用した学び直しの機会の提供などにも取り組んでいるところであります。

 また、昨年末に教育基本法が改正となりましたけれども、その中の第二条第二号におきまして、教育の目標の一つといたしまして、「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養う」ということも規定したところであります。

 そんなことからも、若者の勤労観、職業観、そうしたものの育成に向け、文部科学省としても積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

川条委員 ありがとうございました。

 今、大臣、副大臣、政務官、局長さんを初め、さまざまな先生方から、現状の取り組みと決意のほどをお伺いいたしました。特に、大臣みずから日商あるいは経団連にお出向かれ、非正規の正規社員への雇用と、それからキャリア教育について御要望されたとのことで、ますますこれから新しい人材が育っていく体制ができてきたなと痛感しております。ぜひこれからも、この新経済成長戦略に基づくものづくりを進めていただくこと、そして、ものづくりの人材を新たに育てていただくことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 本当にありがとうございました。

上田委員長 次に、川内博史君。

川内委員 おはようございます。川内でございます。

 本日の委員会で、この後、委員長の御提案によって、映画の盗撮の防止に関する法律案というものが発議をされるというふうにお聞きをしております。私は、この法律案について若干懸念する部分もございますので、幾つかお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、文化庁にお伺いをいたします。

 いただきました映画の盗撮の防止に関する法律案、第四条でございますけれども、本来、著作権法の第三十条において、私的な複製、自分の個人的な利用のためにコピーをすることは、著作権法の権利の適用を除外されているわけでございますが、映画の盗撮の防止に関する法律案の四条において、「映画の盗撮については、著作権法第三十条第一項の規定は、適用せず、」というふうに書いてございます。この規定というのは、私的利用のための複製を認めた現行著作権法第三十条第一項の適用除外を認める初めての立法である、過去に例はなかったということを確認させてください。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘の映画の盗撮に関する法案につきましては、第四条で著作権法第三十条一項の適用除外を定めております。

 ただ、これが初めてかと申しますと、政府提案で著作権法改正を行いましたときには、例えば、現行の三十条一項の中には一号と二号というのがございまして、公衆用自動複製機器を用いた複製でございますとか、あるいは技術的保護手段を回避した上での複製ですとか、そういったものについて適用除外というものを定めておりますが、このような特別法というような立法形式で適用除外を定めるのは、先生御指摘のように初めてでございます。

川内委員 このように、重要な著作権法制の変更、著作権法を改正する場合には、文化審議会著作権分科会の法制問題小委員会等で専門的な知見を有する皆さん方に御議論いただいた上で、関係者間協議を経て改正の運びとなるというのが今までの通常の例であるというふうに思いますが、今回は、これらの手続をすべて飛ばして議員立法という形で、しかも特別法という形で適用除外を認めるということになるわけでございます。

 私は、文化庁の見解として、この問題が、私的複製の適用除外をするという問題について、今、私的複製についてそもそも著作権分科会で議論をされているということもありますし、今後、著作権分科会で議論をされることがあるのかどうかも含めて、今回のこの委員長提案で議員立法されるということについて、文化庁として懸念は持っていないのかということを、どのような御感想をお持ちかということをちょっと御答弁いただきたいと思います。

吉田政府参考人 先生御指摘のように、ただいま私どもの文化審議会著作権分科会におきましては、私的録音録画を中心といたしました私的複製のあり方について、その全般の検討を進めておるところでございます。

 御指摘のように、著作権法の改正に当たりましては、さまざまな利害関係者がかかわる事項が多うございますので、著作権分科会といった審議会の場で十分な議論を経て、政府提案という形で持っていくというのが従来の手法でございます。

 ただ、今回、今準備をされております法案につきましては、海賊版の防止という観点から、映画館における盗撮という特別なケースにつきまして、必要最小限度の私的複製に関する例外を設けるということでございますので、内容としては妥当なものではないかというふうに私ども感じております。

川内委員 内容としては妥当なものではないかとおっしゃるわけで、私は、ちょっと詰める必要がある部分があると思うんですけれども、それはどういうことかというと、本法案の第四条で、映画の盗撮を行った者は、著作権法第百十九条第一項の規定を適用する。すなわち、例えば、高校生が携帯電話のムービー機能でほんの十秒ぐらいスクリーンを撮影しただけで、懲役十年以下もしくは一千万円の罰金という法律の構成になっているわけでございます。

 本来、私権というのは、個人的な利益というのは自分の努力で守らなければならないわけでございますが、これは、特別法にしていきなり罰則をかけられるという法律の構成になっていますから、今後、映画館で携帯電話を出してちょっとでも撮影をしたら、懲役十年、罰金一千万ということになってしまうということでございます。

 しかし、この規定については、著作権法第百二十三条の、告訴がなければ公訴を提起できないという規定が適用される、すなわち親告罪であるという説明を受けましたが、文化庁、御確認をいただきたいと思います。

吉田政府参考人 現在準備されております法案におきましては、著作権法第三十条一項を適用しないとするとともに、同法百十九条に規定される著作権侵害の罪による罰則の対象とする旨が規定されております。

 一方で、法案を見る限りにおきまして、同条の罪を親告罪としている著作権法第百二十三条の規定につきましては特段の例外規定を設けていないものと承知しておりますので、親告罪としての位置づけは変わらないものというふうに理解しております。

川内委員 ただ、現行犯の場合には即座に逮捕できるということですね。

吉田政府参考人 逮捕という局面におきましては、先生御指摘のとおりかと思います。

川内委員 この法律の書き方として、映画の最初から最後まで一本丸々撮った場合にはとか、限定がついていないんですね。録画すること、録音すること、これは著作権法上では連続して物に固定するというふうに書いてあるんです。この連続して物に固定するという言葉が、何秒ぐらい撮れば録音録画することになるのかということは議論になるでしょうけれども、しかし、とにかく大変な法律なわけでございます。

 もう一つ文化庁に確認をさせていただきますが、繰り返し申し上げますけれども、高校生等があるいは中学生等が、軽い気持ちで名場面を、自分が気に入っている場面を携帯電話のムービー機能でぽっと撮りました、そうすると犯罪者にされてしまうという法案でございます。

 著作権は、本来、私権を定めているものであり、映画業界がもし仮に大変な被害をこうむっているのだということをおっしゃるのであれば、その被害の防止のためには、本来、権利者が自主的な努力をまずすべきであって、いきなり警察に通報して逮捕してもらう、何かガードマンがわりに警察を使うというようなことがあってはならないというふうに思いますが、文化庁、いかがでしょうか。

吉田政府参考人 現在準備されております法案におきましては、ただいま先生御指摘の点に関連する条文もございまして、映画の盗撮による被害を防ぐために、まずは盗撮そのものを行わせないようにすることが重要でございますので、関係事業者によって盗撮防止のための自主的な取り組みを行うことが義務づけられているわけでございます。

 今回の法案は、海賊版取り締まりの実効性を高めるために必要最小限の特例を用意するものであるというふうに認識をしておりますけれども、関係業界等におきまして、この法律の趣旨を踏まえまして適切な運用がなされることを期待しておるわけでございます。

川内委員 経済産業省にも同じ質問をさせていただきますが、警察に通報する前に映画関係事業者の相当な自主的な努力が行われなければならないというふうに思いますが、まず事務当局の御見解をお聞かせください。

肥塚政府参考人 先生の御指摘のとおりで、映画業界自身の取り組みということが大事だというふうに思っております。

 これまでも、映画業界では、協議会を設けて、盗撮防止を訴える映像の上映ですとかポスターの掲示というようなことをやってきておりますし、それから、昨年の東京国際映画祭の際にも、映画盗撮の防止をテーマにしたセミナーを開催するというようなことで、対策の強化に取り組んできているものというふうに思っておりますけれども、さらにいろいろなことで努力をすべきだというふうに考えております。

川内委員 定性的な努力というのはされているんでしょうが、今、赤羽先生が、いやいや法律に書いてあるじゃないかとひとり言をおっしゃったんですが、今まで、映画業界を指導する経済産業省は、これらの被害が生じているとするならば、自主的な努力が大事なのだ、例えば、映画館に三脚つきのカメラを持ち込ませない、あるいはスクリーンの両わきにガードマンを配置してみたらどうかとか、あるいはカメラを預かるロッカーをつくってはどうかとか、そういうような具体的な指導は一切しておりません。これはきのうレクで確認しました。

 そういう中において、今まで指導していないのに、いきなり業界からこのような法案の要望が出て、法案をつくりました、後は努力してちょうだいねとただ定性的に言うだけでは、私は、この法律は大変な法律ですから、今御説明したとおり、その運用に当たっては、重々、より具体的な役所の努力というものが必要になると思うんですね。

 「映画の盗撮を防止するための措置を講ずるよう努めなければならない。」というふうに法律に書いてあります。この「映画の盗撮を防止するための措置」というものを具体的に関係各省で業界に対して指導する。

 今私が申し上げたとおり、ビデオカメラ、三脚などは映画館内への持ち込みを禁止する、あるいは持ち込み禁止を入り口に大きくはっきりと表示する、あるいは入り口でビデオカメラを預かる。撮影者がいるかどうか劇場員あるいはガードマンが監視をする、あるいは監視カメラを設置する。撮影者がいたら、劇場員あるいはガードマンが、あなた、捕まりますよ、犯罪ですよと何回も注意する、あるいは外に出てくださいと排除する。

 それでも頑強に抵抗して撮影を続けている場合には警察に通報することができるというような、より具体的な細かい業界との間の運用の基準というものをつくっておかなければ、法律上はいきなり逮捕していいわけですから、逮捕は警察だけができるわけではなくて、現行犯逮捕の場合には劇場員も逮捕できますから、高校生が携帯電話で撮っていました、これは逮捕できるんですよ、劇場員も。

 そのようなことにならないように、きちんとした運用の基準というものをつくるべきであるというふうに私は思いますが、経済産業省、いかがでしょうか。

肥塚政府参考人 この法案が成立しました場合には、円滑に実施されるように、関係省庁と相談して連携協力したいというふうに思っておりますけれども、今先生の御指摘のとおり、盗撮そのものを起こさせないような措置、映画関係者による努力というものが必要だと思っております。

 具体的に、今お話がありましたような、録画録音機器の持ち込み禁止あるいは持ち込みの検査、預かり等といった対策をとる。観客に映画の盗撮の発見、防止のための協力を求める。従業員に対する対応マニュアルをつくる、あるいは法律の内容、マニュアルの徹底指導をする、あるいは実地訓練をする。それから、上映の館内の監視ですとか防犯システムを構築するというような具体的な措置が考えられるというふうに思っております。

川内委員 大臣からもちょっと御見解を聞かせていただけますか。

甘利国務大臣 この法律は委員長提案でありますから、委員長に聞いていただくのが一番いいのかもしれませんが、私も映画関係者といろいろ話した経験があります。与党議員としてはこの法律にかかわっておりますので、そういう点からお答えいたします。

 まず、いきなり携帯電話で十秒撮ったら逮捕されちゃうと。しかし、法律というのは全体で構成要件をなしていますから、この一条の目的を読む限り、委員長が御提案のこの法律を読む限り、一条で、「映画の複製物が作成され、これが多数流通して映画産業に多大な被害が発生していることにかんがみ、」つまり、映画の作品として流れていることにかんがみと。十秒間撮ったものが作品として流れるとは思えない。ですから、全体の法律構成で、それは当然、そんなところで逮捕したら不当逮捕と言われるに決まっているのであります。

 それから、経済産業省は、映画産業といろいろとお話をするときに、当然自主的な取り組み努力はしてくださいと。現実に、映画館に入りますと、作品上映の前に、次回作品のPRとかいろいろ上映にかかわる注意項目が流れますけれども、その中で、映画が盗まれているという、若い女の子が涙を流して涙が黒くなるというのが必ず放映されます。これは大変重大な犯罪行為なんですよということを警告しているわけですね。

 映画関係者と話をしますと、もうとめようがありませんと。堂々とスクリーンの前に三脚を立てて撮影を始める、これは暴力団関係者。とめにも入ります。しかし、おまえは著作権法を知らないのか、これはおれたちが撮って私的に楽しむんだ、だからどこがいけないとやられて、どうにもなりませんというところまであるんですね。

 映画作品というのは、上映期間だけで製作費が回収できればそれはいいんでしょうけれども、DVD等で二次利用をして初めて作品の製作費が回収できる。ロードショーを公開される場内にはほとんど人が入っていなくて、出た途端に上映料金の何分の一かでDVDが売られている。これは実際に中国で現実にあるわけでありまして、しかも、上映が早かった日本で撮ったものが流されている、そういう情報も多数寄せられている。

 上映されますと、よく違法作品には前の観客の頭が映ったりしますけれども、あれは全部、いわば違法に複製をしているわけでありますけれども、それを取り締まれる法律が事実上ない、開き直られてどうにもなりませんというのが現状でありますし、日本発にそういうのが出てきますと、日本で先に上映はできない、信用できないということになるのであります。

 アメリカを初め何カ国かではもう先行してこういう法律上の取り組みがあります。これは著作権法上の権利を極めて限定的に制約するということでありますし、これによって著作権法の概念自身を曲げてしまうというものではないというふうに思っております。

川内委員 今、全然関係のないことを長々と御答弁いただいたんです。大臣、私がお聞きしているのは全然違うことをお聞きしたわけで、業界の言い分を今長々と御答弁いただいたわけで、それはわかりますよ、業界の言い分として。だったらば、みずからの利益を守るために業界はどのくらい努力をしてきたのか、また経済産業省はどのくらい指導してきたのかということについてここまで議論してきましたけれども、指導は今までしてこなかったわけですから、今後、この法律ができるのであれば、しっかりと具体的な指導をしていただきたいと思うがいかがかということを聞いたんです。

 もう時間もないので、手短にお願いしますよ。

甘利国務大臣 ですから、打ち合わせをしているその結果として、ちゃんと上映前にこういう広報が流れるというお話をさせていただいたのでありまして、これからも、間違っても、高校生がちょっと撮ったのをいきなり逮捕するぞというようなことがないように指導はしてまいります。(発言する者あり)

川内委員 いや、それは私的複製だからいいんだ、本当はいいんだよ。(発言する者あり)いやいや、だからたしなみの問題と法律上の問題を一緒にしてはだめですよ、ここは立法府なんだから。(発言する者あり)はい、また後で。

 それでは、具体的に指導してまいりますという大臣の答弁がございましたから、これは、きょう委員長提案で成立をして、参議院に回って、施行が、「公布の日から」「三月を経過した日から施行する。」と書いてございますけれども、大体八月か九月ぐらいということでしょうが、そこまでの間に関係業界としっかり打ち合わせをしていただいた上で、どのような措置を講ずるということを国民の皆さんに、これは一億二千五百万人みんな映画が好きで映画館に行きますから、一億二千五百万人に強制力を持つ法律なので、しっかりと周知もしていただきたいというふうに思いますが、経済産業省、いかがでしょうか。

肥塚政府参考人 具体的な内容を含めまして、今先生の御指摘のように、関係省庁、関係団体を含めまして、今後検討していきたいというふうに思っております。

川内委員 最後に、文化庁にもう一度お伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 今、文化審議会著作権分科会で私的複製について議論がなされている。この映画の盗撮の防止に関する法律案というのは、著作権法三十条の私的複製の適用除外を認める初めての立法になるわけでございますけれども、私的複製という観点から、私は、特別法という形ではなくて、本来著作権法の中で処理をしていくべき課題ではないかというふうに考えております。だからこそ、政府の知的財産推進計画二〇〇六においても、「劇場内で無断撮影された映像の違法流通への対策を推進する」という項目の中で「必要に応じ所要の措置を講ずる。」というふうに書かれているわけでございます。

 今後、文化審議会の中で御議論をいただいた上で、著作権法の中にこれを吸収していくということが必要ではないかというふうに思いますが、文化庁としての御見解をお聞かせください。

吉田政府参考人 先生御指摘のように、ただいま私どもの文化審議会著作権分科会におきましては、私的複製のあり方全般について議論をしているところでございます。

 今回の法案は、その中身といたしまして、先般議論のございました関係者の盗撮防止の努力義務の内容に加えまして、著作権法の例外を定めておりますので、そういった意味では、そのまま著作権法の中にこれを吸収できるかどうかということについては議論があるところだとは思います。しかしながら、今回この法案が成立しました後には、私どもとしては、著作権分科会の方に報告をいたしまして、私的複製に関する規定の中での位置づけについても議論をしてまいりたいというふうに考えております。

川内委員 あと五分ぐらいあるみたいですから、今、業界の自主的な努力義務を定めているのでなかなか難しいかもしれないという御答弁だったわけですが、そもそも著作権というのは私権である、みずからの努力によって守らなければならない権利であるということにかんがみれば、業界の自主的な努力というのは本来当然あってしかるべきものであって、これがあるから著作権法の中に吸収できないという論法は、論理は私はちょっと弱いのではないか、成り立たないのではないかというふうに思います。

 いずれにせよ、文化審議会で議論をされることに、報告をし取り上げられることになるであろうという見通しが示されましたので、議論の行方を見守りたいというふうに思います。

 もうちょっと時間がありますので、大臣にもう一度御見解を賜りたいんですが、何回も念押しをさせていただきたいんですけれども、本法案は、本来権利者たる映画関係事業者の自主的な盗撮防止措置を講ずる根拠を与えるものであって、映画事業者がガードマンを雇うかわりに警察官をみずからの利益のために使うものでもなければ、ましてや映画ファンである著作物の利用者、消費者である国民を犯罪者にするための法案ではないということを、この法案が成立したらば、運用する立場の政府の責任者として、事業者の自主的な盗撮防止措置が徹底して行われることがすべての前提だということを最後にもう一度政府見解として御確認をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 善意の観客を犯罪者に仕立てるような法律では決してありません。

 今までも、映画関係者に話を聞きますと、いろいろ努力はしました、とめもしました、それを振り切って強行するのを、最後それを防止する手だてがありませんということでありました。今までも、持ち込みを禁止するとか、そうしたら、おれの私物を持ち込んじゃいけないとどこの法律に書いてあるとか、いや、劇場を管理する者としてお願いしますとか、さんざんやってきました、しかし、スクリーンの前に三脚を立てられて、堂々と盗撮をされて、最終最後にそれを排除するための法的な後ろ盾がありませんという、いわば悲鳴でありました。

 悪意の行為者に対してそれを食いとめる最終最後の手だてがこの委員長提案でできたということでありまして、それをもって、十秒間携帯で観客が撮影したら逮捕するぞというような法律ではないということは確かでございます。

川内委員 あと二分ぐらい残っておりますけれども、これで終わらせていただきますが、とにかく、この法律がしっかりと、業界の自主的な努力というものが大前提の上に運用をされていくということを私もしっかりとウオッチさせていただきたいというふうに思っております。業界は業界の言い分というものがあるでしょう。しかし、文化の発展というものは、利用と保護のバランスがとれて初めて発展をしていくということを改めて確認させていただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

上田委員長 次に、太田和美君。

太田(和)委員 民主党の太田和美でございます。

 映画盗撮防止法案が作成され、本日にも委員長から提案されると伺っております。ただ、まだ提案されておりませんので、私は、政府に対して、まず、昨今の映画の盗撮をめぐる状況について、またその防止策について何点か質問をさせていただきます。先ほどの川内委員の質問とかなり重複すると思いますが、重要な点ですので、確認の意味も含めまして、改めてお尋ねをさせていただきます。

 まず、立法事実に関してでありますが、盗撮された影像をもとに年間にどのくらいの海賊版映画DVDが生産、販売されているのか、また、これによって我が国の映画産業はどれぐらいの被害を受けているのか、お願いをいたします。

肥塚政府参考人 年間の海賊版DVDの生産ですとか販売枚数については、海賊版という違法行為の性格上、正確に把握できておりませんけれども、海賊版が日本の映画産業に与えた損失につきましては、全米映画協会の調査がございまして、二〇〇五年で年間約八百二十億円というふうに推定されております。ちなみに、全世界では、たしか十八ビリオンぐらいという計算をしていたと記憶しております。

 このうち、盗撮が原因と思われるものの損失は約二百億というふうに推定されております。これは、映画劇場主の損害にDVDその他のものが、百八十億に乗りまして二百億というふうに推定されております。昨年は、「ダ・ヴィンチ・コード」あるいは「硫黄島からの手紙」、「ゲド戦記」、「武士の一分」といった主要な作品について日本の映画館で盗撮が行われた、それで映画業界に大きな被害をもたらしているというふうに聞いております。

太田(和)委員 私の個人的な感じですが、海賊版DVDの中には本物と見まがうような鮮明な画像のものも最近はあるようです。しかし一方で、盗み撮りするわけですから、ピントが合っていなかったり、画面サイズがスクリーンと合っていなかったりするものもあるそうです。また、人のシルエットが映り込んでいたりするものもあるそうです。つまり、ちゃんとした鑑賞にたえられる影像かどうかでまだまだ購入の際にリスクがあるのが海賊版ではないでしょうか。これを、映画館に足を運ぶ映画が好きな人がどの程度買うのでしょうか。さらに、海賊版を見たからもう映画館には足を運ばないという人がどの程度いるのか。一方、映画が好きで、映画は大画面で見るのに限る、家で幾ら四十インチの画面で見てもつまらないという人は、そもそも海賊版には目を向けないでしょう。

 ですから、映画産業の被害というのは、海賊版を買うことによって本来映画館に足を運ぶはずの人が足を運ばなくなる数、そして、海賊版を買うことによって本来正規のDVDを買うはずだったのが買わなくなった数、この合計だと思います。これはなかなか把握できないと思います。しかし、それにしても、先ほど示された被害額には一体どのような算出根拠があるのか、お願いをいたします。

肥塚政府参考人 先ほど申し上げましたように、全米映画協会の調査というもの、そういう数字として私ども承知しておりますけれども、日本の劇場興行主の海賊版による損失額が二〇〇五年で約百八十億円というふうに推定されている、これはほぼ盗撮による被害というふうに考えられております。それからまた、ビデオ、DVDの販売あるいはレンタル等でも大きな被害が出ているということで、約六百四十億というふうに推定されておりまして、この中にも盗撮に由来するものがあるということで、これらを合わせて二百億円以上の損失というふうに推定しています。

 調査内容は、詳細は公表されていないようでありますけれども、アメリカ、イギリス、スペイン、ドイツ、フランスといった二十二カ国で同じような調査が行われているというふうに承知しております。

太田(和)委員 大きな被害が出ているだろうということは想像できるんです。ただ、これは後ほど質問いたしますが、盗撮防止法案は、十年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金またはこれらの併科と、大変重い罰則を科しております。これからは、映画館に入るのに持ち物チェックを受け、暗視カメラをつけた監視員に見張られながら映画を見るということになるかもしれません。映画の愛好者に納得して受け入れていただくためにも、私は、映画産業が受ける被害、法律の立法事実、これはもう少し正確に示す努力が必要だったのではないか、これは指摘だけさせていただきます。

 次に、今申し上げました罰則についてお尋ねをいたします。

 十年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金というのは、一般の国民にとっては大変重いという受けとめ方ではないだろうかと思います。著作権侵害罪を私的複製の適用除外をしないでそのまま適用するからこうなるのだとは思うんですが、国民にとっては余りそういう理屈は関係ないと思います。例えば、殺人罪でも死刑または無期もしくは五年以上の懲役ということですから、場合によっては映画を盗撮する方が殺人より量刑が重いということが出てきます。ほかにも、申し上げませんが、こんな悪事よりも映画盗撮の方が重い罰則なのというような事例は多々あります。

 もちろん、厳罰化することで暴力団やマフィアの資金源を断つという意図に反対するわけではありませんが、しかし、国民だれでも親しんできた映画館で影像を録画するということがそれほど重い罪なのかという素朴な疑問があると思いますので、そこは丁寧な説明が必要なのではないかと思っております。文化庁、政府の御見解をお願いいたします。

吉田政府参考人 映画館での映画の盗撮行為は、海賊版の作成につながる蓋然性の高い行為でございまして、著作権侵害と同等の行為と考えることができるわけでございます。そういった意味で、著作権侵害罪と同等の処罰ということを、今予定されております法案では定められるというふうに聞いております。

 なお、著作権侵害罪につきましては、昨年の臨時国会におきまして、昨今の権利侵害の機会とその規模が増大していること、また、著作権は特許権などと同様に知的財産権のグループを構成いたします一つの要素でございますけれども、特許権や商標権侵害における罰則の水準とのバランスを考慮するというところから、十年以下の懲役または一千万円以下の罰金という形で引き上げをされまして、この七月一日から施行予定という形になっております。

 この罰則の適用につきましては、その行為の違法性あるいは悪質性、そういったものにかんがみまして適切に判断されるものというふうに考えております。

太田(和)委員 先ほども少し触れましたが、映画盗撮防止法案は、著作権法上の私的複製を認める規定を映画の盗撮に限って適用しないこととしております。言うまでもありませんが、私的複製はユーザーの大事な権利であり、国民の文化活動を下支えするものです。それを制限するわけですから、映画の盗撮を防止するためにほかに手段がなかったかどうかが明らかにされなければならないと思います。

 現在でも、海賊版の頒布行為あるいは頒布目的の所持行為は著作権法で取り締まることが可能ですし、映画館側が施設の管理権限に基づいて盗撮をやめさせることは理論的には可能なはずです。その際、盗撮をしている人物がこれは私的目的に使用するための撮影だと開き直った際、反論できないからこういう法案が必要になったのだろうと思いますが、それでも映画館側の施設の管理権限としてやめさせることはできるわけです。あるいは、別の形で盗撮行為を禁止する新規の立法も可能ではないかと思いますが、これらの点について、著作権法上の私的複製を認める規定を適用しないという方法以外に盗撮を防ぐ立法などはなかったのか、政府の御見解をお尋ねいたします。

吉田政府参考人 先生御指摘のように、著作権法では、頒布の目的をもちまして著作権者の許諾なく複製を行うことについては著作権侵害という形になされております。

 しかしながら、映画館での盗撮につきましては、映画館におきまして撮影をされている方が、著作権法第三十条一項の私的使用目的の複製である、こういう主張をされ、そのような主張があった場合にその者を追及することが困難であった、そういった取り締まり上の問題がございました。そういった、ある意味では一つの抜け穴といったものがあったということでございまして、今回の法案は、その抜け穴を防いで取り締まりの実効性を上げるものである、そういった趣旨の法案であるというふうに考えております。

 ほかの手段などもいろいろと検討されたかと思いますけれども、私どもとしては、最も問題になっておりました私的複製という主張の穴を防ぐというのは妥当な方法ではなかったかというふうに思います。

太田(和)委員 また文化庁にちょっとお尋ねをしたいんですが、映画の盗撮という諸外国の立法の状況とその内容はどうなっているのでしょうか。全部著作権法で規制しているのでしょうか。

吉田政府参考人 映画の盗撮防止につきましては、諸外国においても幾つかの法制的な対応がございます。例えばアメリカでは、二〇〇五年にファミリーエンターテインメントと著作権に関する法律というのが成立をしております。その法律では、著作権者の許諾なく映画などを映画館から送信しまたはコピーを作成するために録画機器を故意に使用しもしくは使用を試みることを禁止しております。また、イタリアでは、二〇〇六年に公共安全法が改正されまして、公共娯楽の場での映画の盗撮が禁止をされております。さらに、香港におきましては、二〇〇〇年に知的所有権条例によりまして著作権海賊規制防止法が改正をされまして、映画館など公共娯楽の場での管理人による明示的な同意なしにビデオ録画機器を持ち込むことを禁止しております。

 各国の法制、必ずしも著作権法というふうには限っておりませんけれども、今申し上げましたような前例がございます。

太田(和)委員 今回は映画の盗撮ということですが、今後、音楽のライブコンサートあるいは演劇や落語といったほかのジャンルに規制が広がっていくのではないかという懸念についてはどのような見解でしょうか。

吉田政府参考人 現在準備されております法案は、映画という分野におきます被害の実態ですとかあるいは映画の特質、そういったところにかんがみまして特別な法律をつくるものだというふうに考えております。

 映画と異なりまして、ライブコンサートなどの他の分野におきましては、現在のところ、映画と同様の深刻な被害があるですとかあるいは関係業界からの要望も、私どもは聞いていないところでございます。

 今後、他の分野でも映画と同様の措置が必要になるかどうかということにつきましては、その被害の実態など、いわゆる立法事実の有無があるかどうかといった点を踏まえまして、その状況に応じまして適切な対応を検討していくことになろうかと思います。

太田(和)委員 では、この法案ができたなら海賊版の撲滅に向けて本当に効果が上がるのかどうかをお尋ねします。

 第一に、映画の盗撮が厳罰に処されるということで、本当に私的に使用するつもりだった、恐らくは、本当に家で待っている家族のために撮るつもりだったとか、帰ってもう一度見るつもりだったとかいう人は、絶対に映画館で撮影しなくなるとは思います。しかし、真に取り締まりたいのは、海賊版を製作、頒布する目的で盗撮する人物だろうと思います。これは確信犯ですし、隠し撮りの技術も進歩していますから、恐らく形を変えて巧妙に隠し撮りを続けてくるおそれがあると思います。この点について法案がどのような効果を持つのか、御見解をお伺いします。

 また第二に、映画の盗撮が日本で厳しく規制されても、規制の緩い国がまだまだ多いわけですから、そこで盗撮されて海賊版が日本に流れ込むという事態は容易に想像できます。これらの点にどう対処していくのか、御見解をお尋ねいたします。経済産業省、お願いいたします。

肥塚政府参考人 今までも、海賊版対策については流通、販売の取り締まりということが行われてきたわけでありますけれども、本法案が成立して適切な運用を通じて、海賊版の供給源になるような盗撮行為自体についても取り締まりを適正に進めるということで、この法案が成立して悪質な盗撮に対して抑止効果が期待されるということで、米国でも法案整備の後に大きく盗撮件数が減少したというような報告もございますので、我が国においても有効に機能するのではないかというふうに考えております。

 それからもう一点、規制の緩い国で盗撮された映画が日本に流入するリスクというお話でございます。先ほども文化庁から答弁がございましたように、アメリカ、イタリア、香港では法律が整備されつつありますけれども、それ以外の国を含めまして、水際対策とともに規制の緩い国に対して今後とも、私どもそれ以外の分野でも海賊版対策の徹底ということを求めてきておりますけれども、海外に対してこういう働きかけを強めていくためにも、こういう法案によって日本発の海賊版をなくしていくことが有効だというふうに考えております。

太田(和)委員 最後の質問ですが、映画の盗撮については、甘利大臣は自民党のコンテンツ産業振興議員連盟の会長もされており、法案作成にも関与されているのではないかと思いますが、この法案で、映画の盗撮をもとにつくられた海賊版がなくなるのか、なくしていけるのか、そして映画の観客、ユーザーの側の権利が侵害されることにつながらないのか、また量刑の問題も含めまして、御見解をお願いいたします。

甘利国務大臣 私は自民党のコンテンツ議連の会長をしております。少なからずこの法案に関心を持っておりました。実際の策定作業は、その議連の中心メンバーや各党間でおやりになったものと承知をいたしておりますが、少なからず強い関心を持っておりました。

 確かに、法律がないにしても、海賊版の取り締まりが完璧に行われるのであるならば、それをとめることができると思います。しかし、それが事実上不可能でありまして、その被害は、先ほど初めて数字を、十八ビリオンダラーということですか、ということは二兆円ぐらいにも及ぶ、しかも、日本は先進国では知財立国を宣言しています。そこから発のまがいものが供給されるということは極めて不名誉なことだと思いますし、もとから断つという意味での効果はあるんだと思います。作成をするもとを断つ。

 しかも、これはなぜ映画館かといいますと、一番最初に上映されるのが映画館等でありまして、テレビで放映されたのをみんなが私的録画する、これはある一定期間を過ぎた後、テレビで放映をされるわけであります。つまり、そのときまでに製作費を回収するということが大事なことなのでありまして、映画収入、それから一定期間を過ぎるとDVDを発売してそれで製作費を回収する、そしてそれをもとに次の作品が生まれるということですから。これを放置しますと、善良な愛好家が新しい作品を見るという権利を剥奪される。つまり、赤字で回収できないんですから、次の製作はできません。そうしますと、いい作品を次々見たい、おもしろい作品、楽しい作品を次々見たいと思っている人たちに作品が供給されなくなってしまうわけでありますから、そういう映画愛好家の新しい作品を見る権利を剥奪させるということを防止するという意味でも意義があるのではないかというふうに思っております。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 私もこの法案には賛成でありますが、重要な点ですので、確認の意味も含めまして改めて質問させていただきました。映画の盗撮の問題についての質問は以上でございます。

 きょうは、もう少し時間がありますので、この四月から改正容器包装リサイクル法が施行されておりますが、経済産業委員会ですので、経済産業省が担当する分野について何点かお尋ねしたいと思っております。

 御案内のように、容器包装リサイクル法は、容器包装廃棄物の排出抑制に向けた取り組みを促進するため、昨年、法改正が行われました。これにより、小売業など指定容器包装利用事業者は、容器包装の使用量低減に関する目標を定めた上で、レジ袋の有料化やマイバッグ利用の促進、声かけなど、これを達成するための取り組みを計画的に行うことが義務づけられました。法改正では、憲法で保障された営業の自由の観点からレジ袋の有料化が義務づけられず、使用合理化の一つの例として例示されたにとどまり、この点が一つの論点だったわけですが、家庭ごみのうち、容積で六四%、重量で二四%を占める容器包装をいかに効果的に減らしていけるかが問われているのだと思います。

 そこで、既に一部の先行的な自治体やスーパーなどの取り組みも行われておりましたが、四月から全面的に施行となったわけで、レジ袋の有料化を含む使用合理化の取り組み状況について、経産省ではどのように把握をしているのでしょうか。先進的な事例を含めて、つかんでいる概要をお答えください。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 小売業者は、本年四月一日から施行されました改正容器包装リサイクル法に基づきまして、レジ袋の有料化、ポイント制の導入等によるマイバッグの持参の促進や容器包装の軽量化ということを通じまして、容器包装の使用の合理化の取り組みを行って、廃棄物の排出の抑制を促進しているというふうに承知しております。

 先進的な事例という御質問でございますが、例えばの事例でございますが、イオン株式会社あるいはサミット株式会社等は、それぞれ京都市や杉並区といった地方自治体や地域の市民団体と協定を結んで、地域におけるレジ袋削減運動と連携をしながら、レジ袋の有料化ですとかマイバッグの持参促進ということを効果的に進めてきているというふうに承知をしております。

太田(和)委員 私は、コンビニの声かけ、いわゆるレジ袋が必要ですかという声かけですが、これは四月以降もほとんどやられていないのではないかというのが実感です。

 もともとコンビニについては、マイバッグを持って何々のお買い物に行くといった行動様式で行くパターンは少ない、ついでにぶらっと寄ってみる、マイバッグを持っていかないというパターンが多いですから、コンビニのレジ袋使用の合理化はスーパーなどとは違う難しさがあると思います。しかし、減らすために取り組みはしなければならない。このコンビニ業界の取り組み状況についてお答えください。

伊藤政府参考人 先生御指摘のとおり、スーパーとコンビニエンスの業態の違いということにつきましては、十分認識をしながら対応していきたいと思いますけれども、コンビニエンスストアの業界団体の取り組みといたしましては、日本フランチャイズチェーン協会におきまして、レジ袋削減の目標として、二〇一〇年度までに二〇〇〇年度比で一店舗当たり使用総重量ベースで三五%の削減目標を設定し、五カ年計画で段階的に取り組んでいるというふうに承知しております。

 具体的には、声かけの徹底、適正サイズのレジ袋利用の徹底、協会統一ポスターの掲示、消費者に対する啓蒙活動の強化などを通じて、レジ袋削減に取り組んでいるというふうに承知をしております。実態については、引き続きよく承知をしていきたいと思っております。

 さらに、個別の企業の動きでございますけれども、株式会社ローソンにおきましては、目標を前倒しして、二〇〇八年度までに二〇〇五年度比でレジ袋を使用重量ベースで二〇%削減するという目標を掲げて、コンビニでも使いやすく携帯しやすいマイバッグを配布するなどして、レジ袋の使用量の削減に努めていらっしゃるというふうに承知をしております。

太田(和)委員 一定量以上の容器包装を使用する事業者、いわゆる容器包装多量利用事業者ですが、これは政令で年間五十トン以上と定められました。そして、この多量利用事業者は、毎年度、使用量、使用の合理化の取り組み状況について主務大臣への定期報告が義務づけられました。そうした取り組みが著しく不十分な場合、主務大臣が勧告を行う、勧告に従わなければ公表する、公表後も勧告に従わなければ命令する、命令に従わなければ五十万円以下の罰金という形で、容器包装使用の削減が担保された形になっております。

 一つは、年間五十トン以上使用する事業者という基準ですが、この基準に入る事業者は報道では七百数十社と言われておりますが、経産省として、どの事業者が該当するのか、既に把握しているのでしょうか。それとも、事業者の自主的な報告を待ち、事後的に漏れがないか検証するという形になるのでしょうか。

 もう一点は、定期報告、勧告からの命令、罰金までのスキームに乗ってこない中小零細の事業者、これも一応使用合理化の義務はあるわけですが、担保するものがない、レジ袋は有料ですとか袋は要りませんねと言いにくい中小小売店の取り組み状況をどう把握し、そして使用の合理化に向けどのように助言していくのか。この二点についてお答えください。

伊藤政府参考人 改正容器包装リサイクル法に基づきます新たな定期報告が義務づけられています容器包装多量利用事業者につきましては、同法施行令におきまして、前年度の容器包装の利用量が五十トン以上と定めております。したがいまして、実際に定期報告の義務の対象者がどうなるかということにつきましては、改正容器リサイクル法が施行後初めての年度でございます今年度、十九年度の利用量の実績に基づいて判断することになりますので、個別具体的な対象者ということは来年度に入って判明をしてくるということになっております。

 なお、法律に基づく指定法人であります日本容器包装リサイクル協会は、既に、改正前の法律での再商品化義務量というものが費用負担の前提になっておるわけでございますが、その算定の数字というのを一応持っておりまして、十六年度の実績に基づきまして試算をしてみますと、約七百五十社程度が容器包装多量利用事業者に該当するというふうに判断しております。ちなみに、これらの事業者の利用量で容器包装全体の九〇%以上を占めているというふうに承知しております。

 それから、二点目でございますけれども、容器包装多量利用事業者に該当しない中小事業者に対しましても、パンフレットの配布ですとか各地の商工会議所を通じた広報等によりまして、排出抑制を促進するよう周知をし指導してまいりたいというふうに考えております。

太田(和)委員 リユースやリサイクルも大事ですが、やはり大切なのはリデュース、ごみを出さない、ごみを減らすということだと思っております。

 その意味で、私は、日本の飲料品は、ペットボトルや缶の使用が多過ぎると常々感じております。ヨーロッパなどでは、リターナブル瓶が大半ですし、ペットボトルにしても、三十回も洗って使い回しをする国もあるやに聞いております。ペットボトル三十回というのはさすがに無理としても、日本ではかつてのようにリターナブル瓶の使用を促進するのが現実的だと思いますが、改正容器リサイクル法ではこの点が触れられていないわけです。

 ガラス瓶全体に占めるビール瓶や一升瓶、牛乳瓶などのリターナブル瓶の割合は年々減少し、今は五割を切っているとも言われております。日本でも、かつては町の酒屋さんに瓶を持っていけば有料で引き取ってくれましたが、今では瓶の利用自体が減ってしまいました。

 リターナブル瓶が広がるための課題は、消費者の意識改革、回収システム、洗浄コストの問題などいろいろありますが、制度、政策の面から後押しできる面はあるのではないでしょうか。ヨーロッパでは、ペットボトルや瓶などに対して、デポジット制度に基づくリターナブル制度が広く導入されていると聞いております。

 やはり経産省として、リターナブルな瓶や容器の使用を促進する手だてを考えるべきではないかと思うのですが、経済産業省、いかがでしょうか。

伊藤政府参考人 先生御指摘のとおり、現在、リターナブル瓶につきましては、飲食店での利用が中心となっておりまして、一般家庭向けにリターナブル瓶を利用した製品の数は減少しているという状況でございます。

 その背景といたしましては、リターナブル瓶が他の容器包装と比較いたしまして重くて割れやすいということなどがございまして、輸送効率の向上や消費者の利便性などの事情を考慮しまして、事業者が他の容器包装を選択していることが背景にあるというふうに思います。

 ただ、当然のことながら、先生御指摘のとおり、リターナブル瓶の活用というのはリユースの観点からも望ましいことでございます。そのため、経済産業省におきましては、平成十八年度より、リターナブル容器の導入に関するモデル事業、例えば、エコマネーを活用できないかとか、瓶の規格の統一により、より回収が容易にならないかとかいったことを含めまして、新たな利用形態の検証を行っております。今後、こうした検証結果を踏まえまして、事業者にリターナブル瓶の使用を促していきたいというふうに考えております。

太田(和)委員 少し戻りますが、容器包装の多量利用事業者から来年の六月に定期報告書が上がってくるわけです。そして、取り組みが著しく不十分な場合、勧告、公表、命令、罰金となるわけですが、この著しく不十分な場合とは具体的にどのようなケースなのでしょうか。昨年暮れに制定された省令では、目標の設定、容器包装の使用の合理化、情報の提供、体制の整備等々判断基準が示されておりますが、これも、では実際にこういうケースではどうなるのだろうかという点がかなりあります。まず目標の設定や情報の提供、形だけ整えれば、著しく不十分とは判断されないのでしょうか。

 しかし、それだと法案はしり抜けになります。省令を見ますと、「次に掲げる取組」「を行うことにより、容器包装廃棄物の排出の抑制を相当程度促進するものとする。」と書いてあります。ということは、実際の結果も問われるのでしょうか。しかし、それにしても、「排出の抑制を相当程度促進するものとする。」という場合の相当程度とは、どの程度の水準で線を引くのでしょうか。

伊藤政府参考人 改正法におきます判断の問題でございますけれども、まず最初に触れられておりました著しく不十分というところにつきましては、取り組みをほとんど実施しておらず、同業他社に比べて、売上高等と比較した容器包装の使用量が著しく増加している場合等が当たるというふうに考えております。

 それから、相当程度ということについての御質問でございますが、事業者の判断の基準となるべき事項を規定する主務省令におきましては、レジ袋等の容器包装の有償提供や容器包装の軽量化といいました容器包装の使用の合理化のための取り組みを行うことにより、容器包装廃棄物の排出の抑制を相当程度促進するものと規定しております。

 こうした取り組みによる容器包装の削減効果についてでございますけれども、取扱商品の種類ですとか業態によりまして異なるために、一律の評価ということはなかなか難しいわけでございますけれども、例えば、過去のレジ袋対策における実績を見ますと、おおむね一〇%程度ということでございまして、これらの値が一つの目安になるのではないかというふうに考えております。

太田(和)委員 著しく不十分や相当程度というのは、かなり行政の裁量権が大きく、これでは取り組む事業者も混乱するのではないかと思います。

 事業者に対して、適正かつ厳正に勧告、公表、命令がなされるかどうか、決意もあわせて大臣にお尋ねをいたします。

甘利国務大臣 改正容器包装リサイクル法におきましては、新たに、小売事業者に対しまして、容器包装の使用の合理化等を求める措置を講じまして、容器包装廃棄物の排出抑制を一層促進することといたしておるわけであります。

 現在、小売事業者におきましては、主務大臣が定める判断基準を勘案しつつ、取扱商品の種類や業態といった個別の事情に応じた取り組みが進められているところでありますけれども、取り組みが着実に行われるように、実態を十分に把握して適切に指導していくことが必要であります。

 このため、定期報告の内容等を通じまして事業者ごとの取り組み状況を十分に把握しまして、個別に容器包装の削減効果を評価した上で、必要に応じまして、指導、勧告、公表、命令の措置を的確かつ厳正に実施してまいります。

太田(和)委員 ありがとうございました。

 少し早いですが、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。

上田委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 民主党の後藤でございます。

 大臣、連休中は、海外出張、大変お疲れさまでございます。それに関連した質問も幾つかさせていただきたいと思います。

 大臣、まず、今、地球温暖化ということで、五月四日には国連の気候変動に関する政府間パネルの第四次報告書が取りまとめられました。これは、今までにない科学的な見地からこれからの予測や経済的な評価も含めて対応したもので、かなり画期的だというふうにも思っています。

 一方で、報道でもかなりたくさん記載がありまして、そんな中で、例えば、農林業やまた感染症などの医療の分野、あらゆる分野で地球温暖化というものが人間生活に影響していくというふうなことも大きく報道されています。特に食料や水というものが、このままのスピードで二酸化炭素が排出をされていくと、二〇五〇年、二〇三〇年という中期的、また二一〇〇年という百年後くらいの少し先の数字も含めて、ある推定では、例えば日本の稲作も四〇%ぐらい減産をするというふうなことや、今まで日本にはなかったデング熱みたいなものも南の方には発生をするとか、いろいろな話がございます。

 そんな中で、去年のこの委員会の中でも京都議定書のメカニズムに基づいたいろいろな議論をさせていただきましたが、まさにこの第四次報告を踏まえると、ポスト京都議定書というものも視野に入れながら対応しなければいけないと思っていますし、きょうの幾つかの報道でも、六月のドイツのサミットにおいても、日本国政府は二〇五〇年までに二酸化炭素の排出の半減を目指すという提案をなさるというふうな報道もございます。

 大臣、いろいろな食料やまた産業、人間生活の部分にも評価を出したこのIPCCの第四次報告について、大臣としてはどのような御評価をお持ちか、まず冒頭お伺いをしたいというふうに思います。

    〔委員長退席、中山(泰)委員長代理着席〕

甘利国務大臣 IPCCの第四次報告書というのは、過去三年間にわたる検討作業を経て、地球温暖化に関する最新の科学的知見を取りまとめたものというふうに承知をいたしております。

 アメリカのアル・ゴア元副大統領の「不都合な真実」の映画でも、いかに地球温暖化が深刻な影響を与えているか、それは、事実としてそういうことが進みつつあるし、もはやそう時間的な猶予はないということを知らせてくれる映画でありましたし、同種の警告は、NHK等あるいは恐らく各国の取り組みを進めている状況を報告するメディアでも国民がよく知るところであります。

 要するに、地球全体として効果がなければいけないと思います。部分的には有効だけれども、地球全体としては結局効果がなかったというんじゃ、やらないのと一緒だというのが私の思いでありまして、これから二〇一三年以降のいわゆるポスト京都の枠組みをつくるわけでありますけれども、地球全体として必ず効果があるということに資するものでなければならないわけであります。

 ただいまおっしゃいました政府としてのその半減取り組みについては、まだ確定をしているとは承知をしておりません。まあ、いろいろな議論があるんだと思います。いずれ総理がどうされるかを公の場で明らかにされるというふうに思っております。

 いずれにしても、日本は、次なる枠組みは、特定の国の自己満足に終わるようなことでない、地球全体として明確に効果が上がるということを主体的にリードできる提案をすべきだというふうに思っております。

後藤(斎)委員 大臣がおっしゃられたように、多分半減というものがこれから政府の中でいろいろな御議論はされるんでしょうけれども、まさに今の京都議定書のメカニズムを、プログラムを実施するにもいろいろな御意見があるのも事実であります。また、十二分にその目標を達成できていない部分があることも事実であります。

 半減ということになれば、本当にこの経済、社会の、省エネという技術が一方で発達をしたというプラス面はあるものの、今でもまだまだ、先ほどの太田議員のレジ袋の話ではありませんが、なかなか本当に国民全体に周知をされているかどうかということも含めて考えなければいけない問題だと思うんです。

 大臣、二〇〇五年の十月ですか、環境省が環境税というのを発表というか打ち出して、産業界のいろいろな反対の御意見や、特に科学的な見地も含めて十二分な説明を政府全体でもし切れなかったということで、まだ導入見送りということであります。

 裏返して言えば、環境税は炭素税という見方もありますが、京都メカニズムの中では、森林のシンク、吸収源の三・九というものも認められているというか、その仕組みの中にございます。そして、これはもしかしたら古い数字なのかもしれませんが、少なくとも昨年いただいたものでは、今、森林整備をしながら森林吸収源対策として年間二百二十億円ほど追加のコストがかかっていくというふうな試算もございます。

 一方で、先ほどのIPCCの第四次報告の中では、CO2を一トン削減していかなければいけない部分で削減費用が二十ドルから八十米ドル、日本円でいうと大体二千四百円から九千六百円くらいかかるというふうな試算がございます。

 この二千四百円というのは最低限の、ちょうど環境省が二〇〇五年に出した環境税の数字と大体イコールの数字でもあるんですが、産業界のいろいろな反対とかがあったのも十分承知をしておりますが、やはり森林というものも大切にしながら、少なくとも今の現行の京都議定書の合意は確実に実施をする、そして改めてポスト議定書というものを、大臣がおっしゃられたような世界全体、地球全体でも対応していく。二つの、第一ステージ、第二ステージというものがあると思うんです。

 この環境税、特に目的税としての、森林をきちっと育成管理していくということも含めて、その創設については、大臣、どのような御見解をお持ちでしょうか。

甘利国務大臣 経済産業省といたしましては、環境税の導入につきましては、初めに導入ありきということではなくて、地球温暖化対策の中での具体的な位置づけ、効果、国民経済であるとか、御指摘がありましたけれども、産業の国際競争力に与える影響等を十分に考慮し、国民的議論を踏まえて、総合的に検討していくべき課題であるというふうに考えております。

 この問題は、政府税調や自民党税調あるいは与党税調でも議論をされた課題であります。その際には、導入すべしという意見と、いや、慎重に考えるべきである、いろいろな議論が展開されて、結局、いろいろな視点を慎重に検討しながら、総合的にどうすべきかを検討すべきだという結論に至ったわけでございます。

 私見を申し述べれば、経済産業政策的に言いますと、競争力に対して中立な税の方がよりいい。国内に対する税、つまり、外から入ってくる生産物についてはそれがかかっていない、国内の生産物についてはそれがかかっているといいますと、その分だけ日本の生産物はハンディを負う。つまり、産業生産物、ものづくりのもの、日本の国内でつくられたものには税がかかり、輸入されるものにはかかっていないということになると、競争力に対して中立的ではない。

 だとするなら、外から来るものにも同様な賦課がかかって競争が中立になるようにすべきではないかという議論も経済産業大臣的に言えばあるわけでありますが、いずれにしても、政府の見解としては、いろいろなそういう懸念や課題を総合的に判断して、全体的にこれから議論をしていくべき課題だというのが結論であります。

後藤(斎)委員 大臣のおっしゃることは現時点ではよく理解できるんですが、ただ、やはり地球全体で、先ほどのIPCCの報告書によりますと、地球温暖化による経済的被害よりもCO2の削減、要するに、コストをかけて削減していく方がより将来的には地球全体にプラスになるという指摘もあります。その点はやはり新しい切り口になってくるのかなという思いもありますので、ぜひこれは前向きに、これからも検討を経産省としてもお願いしたいというふうに要望しておきたいと思います。

 大臣、これからちょっと大臣の御視察等も含めてお話をさせていただきます。

 大臣はウズベキスタンに行って、ウズベキスタンは世界第二位のウランの埋蔵量がある生産国だというふうにお聞きをしています。ウランもこの四、五年ですか、価格が十倍になってという話、これは実需だけではなくて投機的なお金も入っているというような見方もあるようです。

 いずれにしても、原油にしてもウランにしても、我が国がこれから、大臣がおっしゃったような産業の競争力という観点からいえば、追加していえばレアメタルみたいなものも含めて、今まででいえば、ある意味では企業、民間がどうぞまずおやりになってくださいということから、私も、一昨年アフリカを視察させていただいたときに、チャイニーズ・フラッグが至るところにあってということを指摘させていただいてから、今回、総理や大臣も含めて、いやいや、やはり国も関与をしていかなきゃいけないなという姿勢に変わってきたのではないかなというふうに私は思うんです。

 まず大臣、その点について、サウジアラビアで、これは総理がアブドラ国王と会談をして、サウジ石油を沖縄で備蓄する、要するに共同備蓄構想的なものを御提案になって、今鋭意検討されているという話もあるんです。国がこれから、原油やレアメタルやウラン、本当に、我が国の産業活動だけでなくて、国民生活そのものに関係する資源に国として直接かかわっていく必要が従来以上にあるというふうに思うんですが、全体のお話で結構ですから、大臣、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

甘利国務大臣 エネルギー資源や鉱物資源に関しまして、それがいわゆる日用品と同等に、市場でいつでもどこでも適正な価格で調達できるということが確立をされているとするならば、民間が民間の努力で調達してくればいい話だと思いますが、実は、そうはいかないところに問題があるんだと思います。

 中進国であるとかあるいは後発の途上国に多く存在をしている、しかも、それがかなり相手国の国家管理が進んできているという状況の中で、民間任せでは調達が思うに任せない、安定的な供給ができない。これは産業経済や国民経済に重大な影響を与えるわけでありますから、買ってくるのはもちろん民間でありますけれども、しかし、その後ろ盾として政府がちゃんと存在している。

 出資や融資やあるいは債務保証等々で民間の努力をカバーする。あるいは資源外交的にも、首脳やエネルギー資源担当大臣が相手国との関係強化を図っていく。FTA、EPA交渉の中に資源条項というのを入れていく。そういう国家としての努力はこれからますます大事になってくるというふうに思っておりますし、官民一体で戦略的に取り組んでいかなければならない課題だというふうに思っております。

後藤(斎)委員 大臣、それを考えるときに、ある意味では短期的な備蓄、これは国家備蓄と民間備蓄というのが石油でもございます、あわせて、レアメタルについても今七品目が指定をされ、短期的な需給変動や価格高騰等に備えているというふうになります。

 一方で自主開発、大臣がカザフスタンでやられてきたことは、多分、長期的に安定的なということでおやりになったということだと思いますし、日豪のこれから本格的に議論されるウランについても、ウランと明定をされるかどうかは別としても、資源のより長期的な、安定的な供給の確保みたいなことが盛り込まれていくというふうに思うんです。

 大臣、短期的に考えて、例えばレアメタルの七品目、これはもう一九八〇年代の初頭から、コバルト、タングステン、バナジウム等々が指定をされているというふうに聞いていますが、これは、今見直しの作業もされているというふうにお聞きをしているんです。

 最近特に、液晶のテレビをつくるときには、例えば、この中には入っていないインジウムみたいなレアメタルも大切だというふうに言われています。特にレアメタルは、素材だけでトータルの消費というか額を見ると、川上の部分でいえば二・余兆円。これがいろいろな半導体の材料になり、また最終的にはパソコンや携帯電話やデジタル家電になってということで、セット機器だと百四十一兆円。要するに、七十倍の生産、マーケットに広がっていく。

 レアメタルというのは、特に今の日本が競争力を持つと言われている産業界に本当に必須のものだというふうな認識から、この国家備蓄も含めた、例えばレアメタルの七品目の品目を追加して対応なさっていくというふうなおつもりも含めて、備蓄というものに対する御見解を、簡潔で結構ですからお答えいただけますか。

    〔中山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

甘利国務大臣 御指摘のとおり、昭和五十八年にレアメタルの備蓄制度を創設しまして、ニッケル、クロム、タングステン、コバルト、モリブデン、マンガン、バナジウム、この七鉱種を備蓄対象として運用してきたところであります。

 最近でいいますと、アジア諸国を中心とする金属消費量の拡大があります。それを受けまして、多くのレアメタルにつきまして、国際需給が逼迫をしている、あるいは価格が高騰をしているということを我が国産業界は経験しているわけであります。こういう状況を踏まえまして、レアメタル備蓄制度につきましては、昨年の十月以来、備蓄対象の鉱種、備蓄目標、御指摘の項目についてでありますけれども、これらを初めとする主な制度内容につきまして、総合資源エネルギー調査会レアメタル対策部会におきまして検討を行っているところであります。ことしの夏を目途に結論を得るという考えであります。

 御指摘のように、エネルギー資源だけではなくて鉱物資源、日本の産業界を支える、例えば自動車部品の製造に不可欠である超硬工具、うんとかたいものですね、あるいは液晶パネル、これらはレアメタルを原材料として欠かせないわけであります。この調達を誤ると産業競争力を失してしまうということになる重大な案件でありますから、先生の御指摘をしっかり踏まえて、引き続き機動的運営に努めてまいりたいというふうに考えております。

後藤(斎)委員 先ほど大臣が中東に行かれた成果も踏まえて、昨年五月に新・国家エネルギー戦略の取りまとめをされました。その中で、特に資源開発という部分で、二〇三〇年までに、現在一五%の自主開発原油の比率を四〇%程度にすることを目指すというふうなことが決められております。

 一方で、このレアメタルやウランみたいなものを考える際にも同じように、これは欧米の国がというふうに言われているんですが、積極的にレアメタルの自主探鉱開発ということで、少し中長期的に、やや安定的なレアメタルの確保、ウランの確保ということもやられている国もあるようであります。

 特に、いろいろな資料を見させていただくと、ちょっと備蓄に戻るんですが、例えば韓国や中国では、この備蓄の目標を、経済安全保障備蓄という、経済安全保障という位置づけの中で備蓄目標を掲げています。そういう意味では、備蓄というのが短期的な供給不足、価格安定ということに資するのであれば、やはり自主探鉱開発みたいなものを、原油と同じように自主開発という部分を設けていく必要もあると思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

甘利国務大臣 今回、中央アジアそれから中東を回ってきたわけでありますが、カザフスタンに行きましたときに、カザフからは、石油やあるいはウランだけではなくて、およそありとあらゆる鉱物資源が我が国の地中には眠っているということを、ナザルバエフ大統領から私に表明されたわけであります。

 それも勘案をしまして、資源機構、JOGMEC、これはまさにレアメタルも取り扱うところでありますし、かつてJOGMECになる以前の時代に調査協力もしてきたわけであります。そこで、そのJOGMECの理事長を同道したわけでありまして、そういった点もカザフ側にしっかりと説明をしてきまして、これから協力をしていこうということになったわけであります。

 おっしゃいますように、エネルギー資源だけではなくて、鉱物資源、なかんずくレアアース、レアメタルにつきましては、きちんと戦略的な鉱物資源外交を展開していかなければいけないというふうに思っております。

後藤(斎)委員 大臣、もう一つ追加をさせていただくと、せんだって海洋基本法が制定をされました。その中で、これから政府が海洋に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図る海洋基本計画を定めるというふうなことになっています。そして、その一番初めの、多分これは、基本施策の海洋資源の開発及び利用という中で、海底またはその下に存在する石油、マンガン、コバルト等鉱物資源の開発、利用の促進、そのための体制の整備ということが具体例として盛り込まれていくんだろうというふうに思います。

 大臣、これはまさに我が国の領海の中で対応することですから、ぜひこの点についても、海洋基本法の制定を踏まえて、国としても、また民間の企業としても積極的に対応していただく必要があると思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

甘利国務大臣 本通常国会で二つの法律が成立をいたしました。お話しの海洋基本法と海洋構築物等に係る安全水域の設定等に関する法律であります。

 これによりまして、資源開発施設の周辺に安全水域の設定が可能になるわけでありまして、海洋での資源開発を行う上での安全確保に意義があるというふうに考えているわけであります。

 個々の案件について微妙な政治的な問題等も物によって存在をしますけれども、民間が資源開発を行っていく際の法的な整備がさらに充実したというふうに思っております。

後藤(斎)委員 大臣、もう一つ。今度は電力の方にちょっと入らせていただきます。

 昨年からことしにかけて、四月には大臣の御指示の部分、いろいろな今までの不祥事の総ざらいと言うと変な言い方ですが、総点検をなさってという部分があるんですが、それはそれとして一つの方向性が出たというお話を大臣もされて、二度とそういうふうな、再発が起こらないようにということで、これから対応がもっと具体的になってくると思うんですが、もう一つ、今、小売電力の自由化というものを、また改めて総合資源エネルギー調査会の中で御議論をスタートしたというふうにお聞きをしています。

 ただ、そうはいっても、全面自由化を小売まで、家庭まで含めてやっていくかどうかという中で、いわゆる石油、原油価格が非常にこの数年間で上がったということも含めて、例えばいわゆる新規参入を卸の部分でやった方も実際撤退をなさったりしています。一方で、消費者の観点から見れば、二〇〇〇年の前にあった内外格差というものもかなり縮小し、特に家庭用なんかでは、ヨーロッパのイギリスやイタリアを下回る値段になっているというふうな数字もございます。

 その中で、私はこれから何が問題になってくるかというふうに考えると、消費者の観点からいえば、もちろん安全というものを大前提にして、いつも電気が自由に使えるような環境、これは今我が国は当然そろっているわけですが、ただ、やはり地域独占というものがあって、それがある意味では一連の不祥事というものを起こした一つの要因かなというふうに私は思っています。

 その卸の部分の新規参入した方が撤退をしたりということになると、今全国に公営企業、県や市町村がやっている電気事業、数でいえば百三事業、施設数で四百九十四ある施設、これが一連の公営企業のいろいろな民営化とかそういうものも含めて、民間に譲渡をされていくケースも多分これから出てくるのかなと思います。

 やはり地域独占というものがあると、競争性がなくなるということも含めて、例えば、既存の業者でなく、公営企業が民営化される際には新しい地域の事業者、新規参入をされる方を中心に育成していくという観点、これは、せんだって議論をした地域資源の活性化という点でもそうだと思いますし、あらゆるものが、今地域の活性化、地域の視点ということが必要だ、中小企業というのは育成も必要だということを考えると、やはり公営企業の民営化みたいな中で、地域独占というものを、そうではないという仕組みに少しでもする一助になるように、新規事業者の育成という部分も含めて考えていただきたいと私は思うんですが、大臣、その点について、簡潔で結構ですから御見解をお願いします。

甘利国務大臣 地方公共団体の運営するいわゆるPPSに関しての民営化のお話ですね。

 いわゆる自由化が進んでいく中で、IPPやPPSの事業者が多く参入した。しかし、その後の一次エネルギー価格の高騰で、それに耐え切れないで撤退をしていく、それが逆に地域独占を強くしてしまって競争原理が働かなくなる。地方自治体が持っているPPSを民営化していくことで競争参入する、そういう意義は確かにあるかというふうに思っております。自由化の議論を進めて、かなりの自由化が進んで、電気料金も自由化前と後とでは二割ぐらい下がった、一次資源の価格が高騰している中で下がっているということは、それなりの意義があったと思います。

 これから先をどうするかということについては今検討中でありますけれども、新規参入がちゃんと進んでいく、あるいは長期的な投資がちゃんと続いて安全性が確保される、そういうもろもろの観点から結論がいろいろ出されることというふうに思っております。

後藤(斎)委員 時間が来たので、以上で終わります。ありがとうございました。

上田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうは、先月、経済産業省の方でまとめました発電設備総点検についての報告書に関連して、その中でも原子力発電に関して質問をしたいと思っております。

 北陸電力の臨界事故隠しの件ですけれども、北陸電力の報告書が三月三十日、また四月六日に出されましたけれども、臨界事故隠しの「根本原因分析」というところに、真っ先に「経営層の責任」というのが出てまいります。しかし、そこに書いてあるのが、「臨界事故隠しを防げなかったこと、その後八年間それを見つけ出すことができなかったこと。」これしか書いてありませんでした。臨界事故隠しに当時の所長代理としてかかわった人物が現常務として経営層の一員にいる、このことについては何の指摘もされていないわけであります。

 私、率直に言って自己分析が足りないのではないかなと思っておるんですが、甘利大臣、この北陸電力から出された報告書、事故原因の究明、分析について、このような記述であることを妥当とお考えなのか、お聞かせください。

甘利国務大臣 北陸電力からの三月三十日と四月六日の経済産業省に対する報告書におきましては、平成十一年の当時に、志賀原子力発電所一号機の臨界事故後の対応策の検討が発電所内で行われた際に、発電所長が事故を社外に報告しないことを決断したということ、それからまた、原子炉の運転に関して保安の監督を行うべき原子炉主任技術者、この主任技術者が事故を公表しないことに反対しなかったことが明記されているわけであります。

 北陸電力が事故を公表しないことを決定した責任者は発電所長でありまして、事故当時に発電所長代理であった者、この方は本年の四月二十三日付で常務取締役を辞任しておられますが、このあった者が報告書に明記されていなかったということについては、経済産業省としては、特段問題があるとは考えていない。

 と申しますのは、この報告書の中に、「所長は、社外に報告しないことを決断した。」「なお、次長(炉主任)は、所長に「報告すべき」という意見具申する役割を果たさず、公表しないことに反対しなかった。」つまり、責任者が所長であるということと、それから、炉の主任、技術的なことに関して保安の監督を行うべき人は原子炉主任技術者であります。ですから、その者については報告書に、つまり、所長はこうであった、それから炉の主任者はこうであったということは報告をされておりますから、責任を引き受けるべき者がしなかったという報告はあるわけでありますから、それをもって報告がなされたというふうに理解をしておりまして、どこまでの人間を報告しなければ不十分だったかという議論はあろうかと思いますが、我が方としては、この報告で、だれがどうしたということについての報告は特段問題があったというふうには考えておりません。

塩川委員 当時の事故隠しの経緯というのは記載があると思うんです。私がお聞きしているのは、現在の経営層の責任の問題についての記述の部分なんですよ。現在の「経営層の責任」というところに「臨界事故隠しを防げなかったこと、その後八年間それを見つけ出すことができなかったこと。」としか書いてないんですよ。八年間見つけ出すことができなかったといっても、経営層の一員に知っている人物がいるわけじゃないですか。こういうことについて何の記載もないというのに、自己分析のなさというのを率直に思うわけであります。

 これは先月の十八日、当委員会の参考人質疑で、北陸電力の永原社長が見えて私がお聞きした際にも、書いてないのはどういうことなのかということについてのお答えで、四年前に調査した折も、調査の仕方が甘かったのか、発見できなかったという言い方をされております。

 そういう意味では、九九年のジェー・シー・オーの臨界事故なんかは直後ですし、もちろん二〇〇二年の一連の不祥事に基づく総点検時など、何度も調査の機会があったわけで、私、そういう点でも、永原社長自身が調査が甘かったと言っているわけですが、保安院の調査報告書でも、北陸電力の経営層の責任問題について、この点での言及が一言もないわけです。現経営層が見つけ出すことができなかったという、しかしその中に知っている当事者がいたということについて何の記述もないという点で、自己分析がないんじゃないのか、これは妥当だと言えるのか、その点について改めてお答えいただけますか。

広瀬政府参考人 私ども、四月二十日に、北陸電力志賀一号機の臨界事故に関する報告書と、それからあわせて総点検に関する報告書を出しております。

 志賀一号機の臨界事故に関する報告書は、臨界事故がどのようにして起こったのかという技術的な内容を中心といたしておるものでございます。

 北陸電力に対する私どもの対応につきましては、総点検の報告書の中で、しかるべく行政処分等を盛り込んでおるところでございます。

塩川委員 この問題での経営責任をきちっと問わなくていいのかということをお聞きしたいわけです。

 というのは、体質の問題が出てくるわけですけれども、臨界事故隠しに所長代理としてかかわったとされるこの常務が、昨年の十一月に、下請事業者を集めたトラブル防止の総決起大会であいさつをした、訓示を垂れた。その中で、最近のトラブルの要因はほとんど人的なものだ、もう少し注意していたら防げたはずだと述べて、地元の信頼を失いつつあるが、少しずつ積み上げていくしか信頼回復の道はないとハッパをかけている当事者が、トラブル防止どころかトラブル隠しの張本人だった、こういった隠ぺい体質の経営陣に対して責任を問わなくていいのかということを言っているわけです。

 私、その点で、政府の安全軽視の姿勢というのがこのことを通じてある意味改めて問題となってくるんじゃないかと率直に思いますが、大臣、いかがですか。

甘利国務大臣 保安院長がお答えしましたとおり、まず、事故が今後発生することが決してないように、過去にその種のものがあったらそれを経験としてみんなが共有して、どこに問題があったかを共有する、これがまず第一の目的であります。そして、問題は、現場の重大な事案がトップに報告をされていない、それがきちんと明定をされていないというところに問題があったというふうに考えまして、いわゆる行政命令で、そういう体制をつくれという命令をかけたわけでございます。

 トップがきちんと現場の状況を把握していることということでありますし、その精神に基づけば、委員御指摘のように、当事者が承知していたのに、今の話は、関係事業者を集めたいわゆる安全大会ですか、そこでその種の訓示を垂れるということはいかがなものかという思いは、当然私にもあります。

塩川委員 今回の処分として、保安規定の変更命令がされ、その中に、トップが重大事故について、現場の状況をしっかりと把握するということを整えなさいということを命令するということですけれども、これは当たり前というか当然のことであって、その上に、実際にそういうトラブル隠しに関与した人物が経営層の一員だったという問題についての自己分析がない報告書をそのまま容認していいのかということが問われているんじゃないでしょうか。ですから、それを、特段問題があるとは考えていないということであるとしたら、今度は経済産業省の姿勢の方が問われてくる。そういう意味でも、私、処分のあり方がこれでいいのかということが問われてくると思っております。

 北陸電力の臨界事故については、国に報告をしない、記録を改ざんする、保安規定を遵守しなかった、こういうことで行われたのが、行政処分としての保安規定の変更命令ということでした。

 私は、隠ぺい体質が問われて、当時その事実が明らかになればジェー・シー・オー事故が防げたかもしれない。これは、大臣の記者会見で、そういう思いだということをおっしゃっておられたと思いますけれども、こういう重大な臨界事故隠しについて、保安規定の変更命令のみと。炉規制法におきましても、この保安規定の遵守義務違反というのは、行政処分の対象として、経済産業大臣は、許可の取り消しまたは一年以内の原子炉の運転停止を命ずることができるわけです。

 私、率直に思いますけれども、やはり重大なこういった隠ぺいを行っている事業者に対して、しっかりとした行政処分を行う必要がある。その措置として、原子炉の運転停止命令というのをかける必要があるんじゃないのか、そういう考えはないのか。その点、大臣、お聞かせください。

甘利国務大臣 今回私が総点検を命じましたのは、違反の再発を防止する体制をつくる、保安の体制をつくっていくということが目的で、見せしめをするためにやったわけではないのであります。

 炉規制法が定めていますことは、停止命令をかけるということは、その時点で安全が確保されないから安全を確保せよということで、使えないようにするということなのであります。安全は確保されている、その後の点検でも確認されている。だけれども、とめるということは、これは見せしめのためのとめることにしかならないということで、国民経済上、利益があるとは思えないですし、先ほど来話が出ております地球温暖化問題、これは地球規模での課題に対してもプラスに働かないというふうに思っております。

 でありますから、今回、一部、水力については、技術基準が現時点で合っていないから、だからとめたのであります。ちゃんと合うようにせよと。ですから、それまで発電としての機能をとめたわけでありまして、安全基準を満たしているけれども、見せしめのためにとめるという法の構成にはなっておらないということであります。

塩川委員 それは違うと思いますね。過去、運転停止命令をかけた案件というのは三件あるわけですね。一九八一年の、現在の敦賀の一号機、これが放射能漏れの事故がありました。あと、「もんじゅ」が平成九年に、これは二年前の案件として明らかになったナトリウム漏れの事故がありました。それと、福島の第一・一号機の場合ですね。

 ですから、敦賀の場合というのは、安全を確保するという観点から運転停止命令をかけましたよ。だけれども、福島の1F1についての、あの例の不祥事について、格納容器の漏えい率検査についていえば、安全は担保された上で、しかし、事が重大だということで、かけたんじゃないですか。

広瀬政府参考人 福島の第一原子力発電所一号機の格納容器漏えい検査の妨害がございまして、これに関しまして、平成十四年に運転停止の命令をいたしております。これは、検査の妨害がありましたのは平成三年及び四年でございますが、格納容器の漏えい率が技術基準に適合していることは、その後も確認をされていないわけでございます。また、事業者が国の検査を妨害して、不正な操作によって適合検査を受けていたことについて、みずから国に報告をしていなかったわけでございまして、平成十四年の当時であっても、なお安全が損なわれているおそれがあるというふうに考え、運転停止の処分をしたものでございます。

塩川委員 1F1の件についても、これは当時、運転停止命令をかけた際の東電の最終報告の評価ですけれども、放射性物質の放出など環境への影響があったものではないが、原子炉の安全機能上、極めて重要な部分において意図的な偽装が行われるという前例のないものであり、一年間の原子炉運転停止処分を行ったということで、行政処分のあり方として、やはり意図的な偽装が行われているという姿勢の問題について、隠ぺいの問題について、重大だから行政処分として運転停止命令をかけたというのが、これは実際のところなんじゃないんですか。

 それと同じように、今回の臨界事故隠しについても、運転停止命令みたいな処分をしっかり行うということが、国民から見ても安全を担保する、そういうことにつながると考えますけれども、そういうお考えはありませんか。

甘利国務大臣 あくまで法の構成は、ちゃんと安全を確保するということであります。安全が確保されているかいないかというのが最大の視点でございます。

塩川委員 INESのレベルでも、今回暫定ですけれども、2という評価になっております。商業用の原子炉において、INES評価で2以上というのは、一九九一年の関電美浜の蒸気発生器の電熱管損傷事故、ギロチン破断、これと並ぶ過去最悪のレベルであるわけで、そういう点でも、事の重大さというのは明らかだと思います。

 そういう意味でも、私は、この行政処分という、ペナルティーとしての対応というのが必要だ、このことを改めて強調し、同時に、原子力推進の経産大臣のもとに原子力規制の保安院があるというあり方についても、これはやはりこの機会に見直すべきだということが、地元からも含めて出されているわけです。

 あわせて、もう一点お聞きしたいのが、検査体制における国と事業者のもたれ合いの問題です。

 検査の業務を委託している原子力安全基盤機構、JNESについてですけれども、原子力施設の検査に当たる組織ですが、このJNESのパンフレットにおきましても、中立公正な立場で原子力施設の検査を実施していますというふうに触れてあります。中立公正な立場ということが当然求められてくる機関であります。

 そこの構成ですけれども、当然のことながら、電力会社やプラントメーカーなど事業者から独立をした安全規制機関であるべきですが、このJNESの検査業務部門に、電力会社、プラントメーカー、その出身者が何人いるのか、お答えいただけますか。

広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 本年の四月一日現在でございますが、電力会社からのJNESに対する出向者は十名でございます。また、主要三メーカーからのJNESに対する出向者は四十名でございます。

塩川委員 検査業務部門ということでお聞きしたんですけれども。では、もう一回、検査業務部門について、電力とメーカーからOBとして何人入っているのか、それと、その他というくくりで資料をいただいたんですけれども、民間の事業者ということですけれども、重電メーカーだと承知していますが、その点について確認をさせてもらえますか。

広瀬政府参考人 電力会社からのJNESへの出向者は十名でございますが、検査業務部には一人も籍を置いてございません。また、電力会社からのOBは、JNESに十二名、現在転籍をしておりますが、検査業務部には八名おります。主要三メーカーにつきましては、JNESに対しまして四十名の出向者のうち、検査業務部に籍を置いておる者はおりません。主要三メーカーのOBからJNESに移りました者は六十五名でございますが、検査業務部に現在おります者は二十名でございます。

 なお、その他の内訳でございますが、これも原子力に関係をしております石川島播磨重工業、佐藤工業、川崎重工業等からの出向者またはOBでございます。

塩川委員 検査業務部の所属の過半数が民間事業者の出身であります。独自の人材を育成しないで事業者に依存した検査体制を継続していることが問題で、国と事業者がもたれ合うようなこういった検査体制では国民の安心、安全は確保できないということを申し述べて、質問を終わります。

     ――――◇―――――

上田委員長 引き続き、経済産業の基本施策に関する件について調査を進めます。

 映画の盗撮の防止に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、理事会等において協議してまいったところでありますが、本日、お手元に配付いたしましたとおりの起草案を得ましたので、委員長より、本起草案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 現在、映画の盗撮によって作成された海賊版ソフトが多数流通し、映画産業に多大な被害が発生しております。

 このような現状にかんがみ、映画の盗撮を防止するために必要な事項を定め、もって映画文化の振興及び映画産業の健全な発展への寄与を図る観点から、このたび、映画の盗撮の防止に関する法律案を提案した次第であります。

 次に、本案の要旨を御説明申し上げます。

 本案は、映画の盗撮の定義につき、映画館等において、有料上映中の映画及び無料試写会で上映中の映画について、当該映画の影像の録画または音声の録音をすることをいうものとしております。

 そして、興行主その他映画産業の関係事業者に対し、映画の盗撮を防止するための措置を講ずる努力義務を課すこととしております。

 その上で、映画の盗撮については、著作権法第三十条第一項の私的使用目的による複製を認める規定を適用しないこととしております。

 なお、この措置については、日本国内における最初の有料上映後八月を経過した映画については適用しないものとしております。

 以上が、本案の提案の趣旨及び内容であります。

 よろしく御賛同くださいますようお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

 映画の盗撮の防止に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

上田委員長 お諮りいたします。

 お手元に配付しております映画の盗撮の防止に関する法律案の草案を本委員会の成案と決定し、これを委員会提出の法律案といたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

上田委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とすることに決しました。

 なお、ただいま決定いたしました本案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 この際、金子善次郎君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び日本共産党の四派共同提案による映画の盗撮の防止に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    映画の盗撮の防止に関する件(案)

  政府は、映画文化の振興及び映画産業の健全な発展が将来に向けての我が国文化の振興に不可欠であることにかんがみ、映画の盗撮の防止に関する法律の施行に当たり、次の諸点について留意すべきである。

 一 文化的所産である著作物の公正で円滑な利用がみだりに妨げられることのないよう努めること及び利用者の表現の自由の確保とのバランスに配慮することが重要であることにかんがみ、本法の措置はあくまで特例であって私的使用の複製を認める著作権法第三十条の規定が過度に制限されることのないよう運用面でも十全を期すること。

 二 世界トップクラスのコンテンツ大国の実現に向けて、我が国の重要な文化的・知的資産でもある映画産業の一層の振興に官民挙げて取り組むこと。そのため、関係省庁等は、互いに密接に連携を図りつつ、効果的かつ効率的な支援を行うこと。

  右決議する。

以上であります。

 決議案の内容につきましては、委員会審査及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

上田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

上田委員長 起立総員。よって、本件を本委員会の決議とすることに決しました。

 この際、甘利経済産業大臣からただいまの決議に対し発言を求められておりますので、これを許します。甘利経済産業大臣。

甘利国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を尊重し、映画産業の一層の振興等に努めてまいりたいと考えております。

上田委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議についての議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

上田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として原子力委員会委員長近藤駿介君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、文部科学省大臣官房審議官村田貴司君、文部科学省科学技術・学術政策局次長袴着実君、経済産業省製造産業局長細野哲弘君、資源エネルギー庁長官望月晴文君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長舟木隆君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長広瀬研吉君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官薦田康久君、海上保安庁警備救難部長石橋幹夫君及び防衛省運用企画局長山崎信之郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井真樹君。

土井(真)委員 自由民主党の土井真樹でございます。

 本日は、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律の改正案について質問をさせていただきます。

 まず初めに、先日、当委員会で、私も一緒に東海村の方に行ってまいりまして、原子力発電所並びに日本原子力研究開発機構等を見学してまいりました。実際に発電所並びに研究所を見ると、非常に多くのことが、文字だけではなくて、実感してわかりました。

 例えば、原子力発電所の安全性、それに対する配慮あるいは管理をどのようにやっているか。そしてまた、特に廃棄物について、原子力研究開発機構で行っている具体的な処理の仕方であるとか、処理したものであるとか、あるいはその管理、さらには、それを最後、ガラス固形化してパックにして地層処分するという一連の流れもあわせてその研究機構の方で見学し、説明を受けて、そして実際に手にさわってみて初めて私も、ああ、これなら安心であるとか、これなら大丈夫であるなというようなことを確認して、非常に収穫の多い見学会でありました。

 さて、そのように見学した原子力発電なんですけれども、我が国の原子力発電、その現状と今後の方向性について、まず最初に御質問させていただきたいと思います。

 環境問題、地球温暖化対策、あるいは昨今の原油の高騰等々の取り組みの必要性から、国際的にも原子力発電の重要性が再評価されて、今まで新規をとめていたアメリカ等でも、さらにまた原子力をスタートさせようという大きな流れが今また始まっているところでございます。

 このような状況にかんがみて、我が国においても今まで以上に原子力発電を一層推進していく必要があると考えておりますが、今現在、我が国の発電量に占める割合が大体三〇%前後でここ数年推移しているわけなんですけれども、今現在の原子力発電の状況を我が国のエネルギー戦略全体の中でどのように位置づけて、また、今現在三〇%ですが、今後これをどのようにしていくか、さらに押し上げていくのか、今のままでいくのか、具体的に目標を持って取り組んでいく予定なのか、その将来的ビジョンをまずお聞かせ願えますでしょうか。お願いします。

甘利国務大臣 御指摘のとおり、原子力発電というのは、エネルギー安全保障、つまり安定供給の確保でありますが、その点と、それから地球環境保全、CO2を運転時には全く出さないという、その二点で極めて有意義なエネルギーであります。我が国はエネルギーの自給率の低い国でありますから、ベースロードとして安定的に電力供給ができる原子力発電というのは、基幹電源としても極めて大事なわけであります。

 先般閣議決定をされましたエネルギー基本計画におきましても、こういうふうに安全保障の面と地球温暖化、これとの一体的な解決を図る上でのかなめ、そういう位置づけがなされているわけであります。

 また、二〇〇五年十月に策定をされました原子力政策大綱におきましても、原子力を基幹電源と位置づけておりまして、現状三〇%程度というお話がありました、二〇三〇年以降につきましても、発電電力量に占める割合が三〇%から四〇%程度以上の供給割合を原子力発電が担うことを目指すということ。それから、この原子力政策大綱には、プルサーマルを含む核燃料サイクルの推進、あるいは高速増殖炉の早期実現化などの目標が設定をされておるわけであります。

 この目標の実現に向けた政策の枠組みと具体的なプランを、原子力立国計画として昨年八月に策定をいたしたわけであります。

 この原子力立国計画には、電力自由化時代の原子力発電所の新増設の実現であるとか、高速増殖炉サイクルの早期実用化に向けた研究開発であるとか、あるいはウラン鉱山開発支援とか、次世代軽水炉の開発や現場技能者の育成支援による技術や人材の厚みの確保であるとか、放射性廃棄物対策などに取り組むということが策定をされているわけであります。

 今後とも、安全の確保ということを大前提に、核燃料サイクルを含む原子力の推進に着実に取り組んでまいります。

土井(真)委員 ありがとうございます。

 原子力を主要なエネルギー源として今後も進めていくというお話がございました。私も、それも正しい方向性だと思っておりますが、やはり、いいことばかりではなくて、原子力発電を進めていけば、その発電に伴って、いろいろな廃棄物、各レベルの放射性廃棄物が必ず発生してくるわけでございます。

 その中でも、特に高レベルの放射性廃棄物の最終処分については、今回、この法律で対処されるわけなんですけれども、この高レベル放射性廃棄物、その最終処分場を着実につくっていかなきゃいけないという状況ではあるんですけれども、今現在、後ほどまた質問しますけれども、その最終処分場について明らかな見通しがまだ示されていないという状況の中で、このような高レベル放射性廃棄物の処分場について、短期的も含めてですけれども、長期的にどのように考えていらっしゃるか。そしてまた、それについては、できるだけ数値的な面も含めて具体的に少し御説明願えますでしょうか。お願いします。

渡辺(博)副大臣 今委員御質問のとおり、最終的に処分場を確保しないと一つのサイクルは終わらないわけであります。

 したがいまして、この最終処分場の計画というのが大変重要なことになっておりますが、計画的かつ確実に実施するために、最終処分法に基づきまして、特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画を経済産業大臣が閣議決定を経て定めることとされております。

 この閣議決定は、平成十七年十月二十八日に閣議決定されておりますが、この計画に基づきましては、経済的な効果が見込まれる処分施設の規模として一施設当たり四万本以上として、最終処分は、平成四十年代後半を目途に開始するというスケジュールを定めております。

 一方、我が国において原子力発電所の運転に伴って発生した使用済み燃料を、高レベル放射性廃棄物に換算してみますと、平成十七年現在でございますが、約一万九千三百本あります。さらに、今後、原子力発電所の運転に伴い、年間約千百本から千五百本ずつ発生することになります。平成三十二年ごろには四万本に達する見込みであります。

 したがいまして、四万本の規模の最終処分施設を建設したと仮定しますと、これから、今後約四十年ごとに一施設が必要になるという計算になります。

土井(真)委員 一施設当たり四万本ということで、四十年ごとにつくっていかなきゃいけないわけですけれども、そういう最終処分場というのは、仮に高レベル放射性廃棄物でなくても、日本じゅうどこでもなかなか最終処分場というのはつくるのが難しいわけでございますけれども、まず、その最終処分場をつくっていくに当たって、処分場がしっかりと安全であるという安全性について次はお聞きしたいというふうに思います。

 今お話にありましたように、最終処分場は原子力発電には必要不可欠なんですけれども、一方、この安全性確保もまた非常に重要でありまして、これがなければ恐らく最終処分場はできていかないというふうに思います。

 その中で、今検討されている、基本的に考えられている処分の方法というのが地層処分ということであります。地層処分、地下三百メートルのところに埋めるということでありますけれども、この地層処分についてなんです。

 我が国、日本というのは非常に地震とか火山も多くて、仮に地中深く埋めたとしても、何かの火山活動とかあるいは地震でそれが壊れて漏れてくるんじゃないか、あるいは噴き出してくるんじゃないかというような心配を一般的にはしてしまうわけなんですけれども、そういう我が国において、この最終処分事業を果たして安全に進めていくことができるのか。そして、そのためにはどのような方法で今お話ししました地層処分をしていくのか。

 特に、半減期というのが非常に長い、この処分は超長期、それこそ千年とか二千年とかいう非常に長い期間を考慮して処分をしていくんだということを説明を受けたわけなんですけれども、そのように超長期にわたって安全な処分方法はどのようにするのかということを改めてお伺いしたい。特に、我が国におけるそういう地層処分地域、安定した地域があるのかどうかも含めてお答え願えますでしょうか。

望月政府参考人 お答えいたします。

 高レベル放射性廃棄物は、御指摘のように、多量の放射性物質を含んで、これらの放射能が低減するのに長期間を要するということから、人間の生活環境から安全に隔離をしておくという必要がございます。

 このため、金属製の容器や緩衝材で構成される人工的なバリア、障壁と、地下深く安定な地層である天然バリア、これを組み合わせた多重バリアシステムによって放射性物質を閉じ込めるということにしております。したがって、国の安全規制のもとで適正に最終処分が行われれば、人間環境への放射能による影響は生じず安全は確保される、そういう思想でつくっていくわけでございます。

 最終処分に適しました安定な地層であるためには、断層や御指摘のように火山活動などによって処分施設が損壊しないことが必要でございます。我が国にもこのような安定した地質構造が存在するということが、日本原子力研究開発機構の報告で示され、これを原子力委員会において妥当と評価をしているところでございます。

 今後、具体的には、概要調査地区、精密調査地区、それから最終処分施設建設地というものの選定を段階的に行うことによりまして、そうした安定な地層を十分選定していけるものと考えているところでございます。

土井(真)委員 そういう安定した処分できる地層があるということでありますが、恐らく具体的にはこれはまだこれからいろいろ検討されると思いますが、それについて、今回のこの改正法案では、そうした安全性の確保のために、地層処分に関する規制を整備しようということですが、場所の選定と同時に、法的に今措置をする具体的な内容、特に超長期の安全をどのように規制によって確認していくかということをお聞かせ願えますでしょうか。

薦田政府参考人 お答えいたします。

 高レベル放射性廃棄物等は、先ほど先生から御指摘ございましたように、人の生活環境から隔離をして処分するということから、地下三百メートルより深く、安定した地層を選定して、まず埋設することを求めているわけでございます。

 そして、国は、この事業許可の際の安全審査におきまして、まずガラス固化体、それからその周りを覆います、ガラス固化体を保護する厚い金属容器、これをオーバーパックと言っておりますが、この障壁、そしてこの周囲をさらに粘土で覆うわけでありますが、この人工的なバリア、そして、今申し上げました埋設する処分地の地層による天然バリアの四種類のバリアにつきまして、長期にわたる放射性物質の深地層への閉じ込め機能等を厳格に審査して確認するということを行うとしているわけでございます。

 さらに、処分場の建設、そして操業段階におきまして、これらが実際の処分場において適切に実現されているかどうかということを確認するために、埋設施設確認であるとか、あるいは廃棄体の確認、それから設計及び工事方法の認可、それから使用前検査、そして閉鎖措置計画の認可、確認等によりまして確認していくことにしておるわけでございます。

 これらの規制によりまして、処分場の長期にわたる安全性を確保したいと考えておるところでございます。

土井(真)委員 今の質問にもう一点だけ追加してお願いしたいんですけれども、それは、今処分をする、埋設するときの確認と同時に、埋設した後は、長い処分ですので、何かその後も確認していくという作業はあるんでしょうか。

薦田政府参考人 当然、長い期間でございますけれども、まず当然その間の検査、定期検査もございますし、それから今後、事業者には定期安全レビューという形で定期的にその施設の状況、あるいは、そのときまたどういう技術が生まれていて、今後この施設は安全にちゃんと閉じ込められるのかというようなことも含めて、我々に提出をさせ、我々として確認をしていきたい、かように考えているところでございます。

土井(真)委員 わかりました。長く定期的にずっと確認していくということで、よくわかりました。

 それでは、ちょっと別の部分について質問させていただきます。

 今回、この改正法案の中で代替取得についての改正部分があるわけなんですけれども、今回の最終処分法に基づく地層処分の対象の追加に関して、代替取得、具体的にはイギリスとの代替取得について説明を受けているんです。その交換方法や妥当性、特に今回、日本が多くの廃棄物を出して、そしてイギリスからは一部、高レベルのものだけを凝縮した形で受け取るという代替取得の説明を受けているんです。

 その代替取得について、出すときは低レベルだけれども来るのは高レベルということで、量は少ないけれども高レベルの廃棄物であって、かえって、我が国にデメリット、危険が大きくなるんじゃないかという心配があるんですけれども、この代替取得について、特に日、そして相手方さんのイギリスについて、双方のメリット並びにデメリットを御説明願えますでしょうか。

舟木政府参考人 お答えします。

 先生御指摘の代替取得でございますが、これは、平成十七年十月に閣議決定をされております原子力政策大綱におきまして提言をされております。それを受けまして、総合資源エネルギー調査会の原子力部会におきまして交換方法についての検討が行われておりまして、その妥当性が確認をされております。

 その交換の方法でございますが、これは基準としまして、仮にそれに含まれている放射性物質が水に溶け出した場合に、これを人間が摂取しても問題ない程度まで希釈するために必要となる水の量を基準としております。これを基準としまして、それぞれの放射線影響の程度を評価し、これが等価、同じということになるような形で交換を行うということになっているところでございます。

 先生御指摘のメリットでございますが、まず、返還されてまいります高レベル放射性廃棄物の物量でございますが、これは、当初返還が予定されておりましたいわゆるTRU廃棄物の物量に比べまして四百分の一に減容化されます。この量が減ることに伴いまして、輸送回数も、大体三十七回程度必要だと思われていたものが一回で済む、一回に削減をされるというメリットがございます。さらに、この代替取得によりまして、廃棄物の輸送、貯蔵管理、それから処分に要します費用が、合計しますと約二千億円程度低減をされるというふうに聞いております。

 このように、代替取得は、輸送に係りますリスクの低減や経済性の面から非常にメリットが大きいものであると考えているところでございます。

 なお、イギリス側のメリットというお話もございましたが、イギリス側に対しましては、この交換に伴います手数料という形で、委託側であります日本の電気事業者から約六百五十億円が支払われるということになると聞いているところでございます。

 以上のようなことを踏まえまして、私どもとしましては、代替取得により返還されます高レベル放射性廃棄物につきまして、最終処分法の対象に追加をしまして、その地層処分を計画的かつ確実に実施するために、今般の法律改正を御提案しているところでございます。

 なお、この代替取得によりまして返還されます高レベル放射性廃棄物でございますが、これは従来、代替取得ではなくて、日本の実用発電用原子炉の使用済み燃料をイギリスで再処理しました結果出てまいります高レベル放射性廃棄物をイギリスから返還するということになっておりまして、今回新たに代替取得で返還されます高レベル放射性廃棄物も、従来から返還が予定されております高レベル放射性廃棄物と同様の仕様でございまして、これらをあわせまして、国内における貯蔵管理や地層処分に当たりましては、安全に実施されるよう万全を期すこととしているところでございます。

土井(真)委員 わかりました。それぞれのメリット、交換するメリットというのがわかりました。

 それでは、今、安全性についてお聞きしましたけれども、もう一回、ちょっと先ほどのに戻りまして、最終処分の処分地、立地の選定の件についてお聞きしたいと思います。

 皆さん御承知のように、先日も大臣からお話ありましたように、例の高知の東洋町の町長選挙がありまして、文献調査の手を挙げているところがだめになってしまったということでございます。

 こういう最終処分場の立地に関しては、現在の公募制度、自治体に手を挙げていただいて決めていくという公募制度でありますと、そもそも、なかなか手を挙げてくれる自治体が少ないとは思いますけれども、仮に今回の東洋町さんのように手を挙げていただいても、強力な地元での反対運動が起こって、リコール運動が起こって首長さんも交代させられてしまうというようなケースが、また次の場所が手を挙げても起こるのではないか。

 特に、今回の町長選挙のように、先日大臣がおっしゃったように、真実でないようなビラまで配って、かなりそういう感情的な形で選挙を展開されると、なかなか冷静な判断ができないまま選挙が行われて、そして最終的には否定されてしまうというような状況が今回起こったわけですけれども、また次も起こるのではないかという心配をするわけなんです。

 現実、今こういう文献調査ができていないわけですから、現在の公募制度を見直すとか、あるいは抜本的な見直しの必要性があるのではないかというふうに少し考えるわけですけれども、その辺についてどのようにお考えか、お聞かせ願えますでしょうか。

甘利国務大臣 もちろん、最終処分地を実際に選定していくその過程において、知事や市町村長の理解、地元の理解を求めるということは前提になっているわけであります。

 そこで、どう探していくかということでありますが、かつて、旧動燃事業団における処分予定地の選定に係る調査というのがありました。昭和五十二年からですか、衛星写真等によりまして、国内各地について処分予定地選定の基礎的な調査を実施した。しかし、これが当時かなりの問題になりまして、情報公開請求が行われて、部分開示があった。それで、地元の意向も聞かずにけしからぬという騒動になったわけですね。そこで、では地元から応募していただいて、概要から精密調査へと手順を踏んでいくという方式に至ったわけなんであります。

 しかし、今回の事態、確かに、町長が一身にその文献調査に応募したことの責めを負うということになって、選挙になってしまったではないかということなんであります。

 地元から理解をいただいて手を挙げていただくというのが一番いいんだと思うんですけれども、ただ、選定手続について、一部、もう文献調査が始まったらそれから足を抜くことはできないんだというようなことが宣伝されたり、大変な事態になるような危険な施設だということが流布されたりとかいうことがありました。その辺の選定手続の仕組みであるとか、あるいは安全性について、やはり地元にちゃんと十分理解をしていただかなきゃいけないし、それが足らなかったというふうには思っておりますし、その辺の取り組みの強化は必要だということを改めて認識しておるわけであります。

 このために、準備が整えば、五月中にも、総合資源エネルギー調査会の原子力部会放射性廃棄物小委員会というのがありますが、これを開きまして、どう取り組みの強化が必要か、検討を開始したいというふうに考えております。

土井(真)委員 わかりました。

 今回の、いろいろ教訓があったと思いますが、そもそも、この高レベル放射性廃棄物という言葉自体で非常に強いマイナスのイメージがございますので、それをカバーするだけの安全性の説明と同時に、単なる交付金を出す、お金を出すというだけでなく、その地域自体を、いろいろな研究機関を立地するとか、あるいは産業振興を行うとか、いろいろなパッケージで大きくその地域を開発するというような大胆な構想も示しながら、最終処分地を決定していかなければならないのではないかなということを、最後、案として申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 本日は、特定放射性廃棄物の最終処分法の改正案について質問をしてまいりますが、具体的な改正案の内容については、これから民主党の同僚議員から鋭い指摘があろうかと思います。私は、高レベル放射性廃棄物の最終処分事業のあり方、政府の姿勢を中心に、伺ってまいりたいと思います。

 原子力発電所を動かせば最終的に高レベルの放射性廃棄物が発生する、核燃料サイクル事業を進めて、その完成形である高速増殖炉を動かしても、実現しても、最終的には高レベルの廃棄物が発生する、こういうわけであります。このことは既に、一九六六年、昭和四十一年、我が国が最初の原子力発電所を動かした時点からわかっていたことでありますし、また現在、あれから四十年たって五十五基の原発が稼働しておる中で、過去に稼働した使用済み燃料も既に累積してたまっているわけであります。

 私は、原子力発電については、今後も一定水準の中で基幹エネルギーの一つとして位置づけるべきだろう、少なくとも当面の間といいますか、今後もそういう形で位置づけるべきだろう、基幹エネルギーだろうという認識に立つものでありますが、この原子力発電所を否定する立場の方、さらには核燃料サイクルを否定的に見る立場の方であれどうであれ、少なくとも、既に発生している使用済み燃料があり、将来の高レベル廃棄物があるわけでありますから、この問題に対して、きちんとした仕組みをつくる、体制を整えるという必要性については、どの立場であれ認識しなければいけない問題だろう、こう思うわけであります。

 そこで、まず大臣にお伺いしたいのですが、先ほども土井委員の方からもお話ございましたが、高知県東洋町における町長選挙の結果について、お伺いしたいと思います。

 最終処分場の立地に関する文献調査の実施を申請した前町長と白紙撤回を求めた新人の候補の選挙が行われ、結果は、投票者数二千六百十九のうち、白紙撤回を主張された方が千八百二十一票、そして前職が七百六十一票、率でいうと七対三で前職が敗れた。大臣、我々選挙を経験している立場でいうと、七対三という数字は、これはもう完敗というか惨敗であります。野球でいえば五回コールド負け、本当に大変な大差で負けた、こういう数字であるわけでありますが、選挙戦で、結果として最終処分の是非を町民に問われてしまった、こういうこともあろうかと思います。

 ただ、いずれにしろ、そういう形になってしまったことも含めて、この結果も含めて、何でこのような結果になってしまったのか、最大の要因は何だったのかと大臣は受けとめていらっしゃいますか。

甘利国務大臣 冒頭先生が御指摘されたとおり、原子力政策に反対の方もいらっしゃいます。では、今ある使用済み燃料をどうするんですかということは、その人たちにも問われている話であります。これから始めるのならともかくとして、もう原発は基幹エネルギーとして動いていて、現実に使用済み燃料が相当程度ある、これはそのまま置いておくんですかという問題と向かい合わなきゃならないということなんですね。

 今回、最終処分に関する法律を提出していただいて、そしてこれが通り、やがて最終処分地ができれば、核燃料サイクルはちゃんと輪がつながって完結するわけでありますけれども、そこの、実は、輪っかをつなげなければならない、極めて大事な部分がつながっていない。

 そのことに対して、原子力政策に極めて高い理解をいただいている町長が、文献調査、実際にどういう地層であるか等々の文献資料、判断材料をそろえるということに対して応募していただいた。極めて理解をいただいている、ありがたいことであります。しかし、その方が結果として、おっしゃるように、選挙でいえば惨敗をしてしまったということは、本当に残念至極であります。

 この原因は何かといえば、有権者の方が、それは原子力政策に対する考え方ももちろんありますけれども、その大前提としての情報が、正確な情報が伝わっていたかどうかという点でいえば、極めて不備があったのではないかというふうに思っているわけであります。

 まさに選定基準で、先ほどもちょっと触れましたけれども、文献に応募したらもう足が抜けないぞ、このまま大変なことの道連れになるんだというような宣伝ビラがまかれ、あるいは最終処分場自体がこの上なく危険な代物だと。手続上の正確な情報、それから処分場自体の安全性の正確な情報が届いていない。そういう中で選挙が行われたということが、この惨敗の結果の、すべてとは言いませんが、一番大きな部分であったのではないかというふうに思っておりまして、的確な情報が十分に地域の方々にお伝えされるということのために、さらなる取り組みの強化が必要であるというふうに考えております。

近藤(洋)委員 正確な情報がやはり届いていない、こういうお話でございました。私も、この選挙に使われたビラ、本来、きょう配付資料に使おうかなとも悩んだんですが、余りに内容が内容ですので、委員会で配付するのもちょっといかがかと思って自粛をいたしましたが、こういった資料を見ますと、死の灰は要らない等々、どういう表現をするかはさまざまだとは思いますが、大変宣伝にたけた、書き方も含めて、大変な情報戦が行われたんだなということは容易に想像がつくわけであります。

 ただ、大臣、ここで問題にしたいのは、その地域の方々の情報もさることながら、重ねて関連してお伺いしたいのですけれども、この最終処分法が制定されたのは二〇〇〇年、平成十二年であります。平成十二年、二〇〇〇年ですから七年たっておるんですね。七年たってこういう形でやりますよというのは、まあ一、二年の法律で、それに基づいてやっている話ならば、なかなか仕組みが理解されていないというのもわかるのですが、七年たって、この地域でこういった、やや誤解をされかねない形になってしまっている。このことについては、私、大変問題だと思うんですね。

 あわせて、大臣の御認識として、その地域だけでなくて、国民的にこの最終処分というのを、大体どういうもので、どういうコストがかかって、どうなんだという議論が果たして本当に深まっているというふうに思えるかどうか。この結果も踏まえて、国民的な議論は重ねられてきた、深まったと結果として思えるかどうか、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 正確に、手続上の問題や処分場の安全性、あるいは原子力発電政策について、どういう施設が必要で、現状の問題を処理するためにも何が必要かということの情報が届いているかといえば、まだまだ不十分だというふうに思います。

 では、この期間に国はもっと前へ出てどんどんやるべきではなかったか。確かに私もそう思うところはあります。ただ、多分、先ほどちょっと申し上げました、旧動燃が衛星調査等をしたという事実が一部開示されて大騒ぎになったということで、あつものに懲りて何とやらという状態に、半金縛り状態になっていたということも事実なのかなと思います。

 そのこととは別として、それは調査を国が勝手にやりますという話じゃなくて、情報として、こういう施設で、この部分を担う施設で、これがないとどう大変なんでしょうかということとか、それから手続上の問題とか安全性の問題、これは別に国がもうちょっと前へ出ても、それは勝手に調査をして勝手に決めちゃうということとはちょっと違う話でありますから、そこはもっと積極的にやるべきだったなという反省はありますし、また、それが国の責務だとも思いますし、その辺のところは、今後、総合資源エネ調で十分に議論をしてもらいたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 高レベル放射性廃棄物の処理については、今から三十年前の一九七七年に埋め立て方式というものが方向感としては打ち出されているわけです。三十年前に打ち出されているんですよね。今から十三年前の一九九四年の原子力委員会が策定した長期計画で既に、ガラスで今のような形で固めて地下三百メートルに埋める方式、そしてその調査の手順、そして、二〇三〇年後半から二〇四〇年という目標の年度、これはもう十三年前に確定をして、そして法律もできて、こういう形になっているわけですね。

 七年前の法律をつくった時点で、これは大変おくれているということで、当時の委員会の議事録を私、読み直しましたけれども、深谷当時通産大臣が、我が党の横路議員の質問に対して、今まで日本で法律の整備がおくれていた、急がなければならないのである、こういう趣旨の答弁をされているんですね。

 ですから、またもう一回、私は、根本的に何か体制の部分で、信頼感も含めて見直す必要があるのではないか、こう思っているんです。議論は確かに一部では積み重ねてきた。にもかかわらず前に進んでいないというのは、何か問題があるのではないか、こう思うんですね。政府は十分認識していたわけですね。認識していて、おくれているというのも認識していてこの局面に至っている、こういうことだと思うんです。

 そこで私は、その最終処分の具体的な絵姿が国民の目から見てちょっとわかりにくい、不透明な部分があるのではないか、こう思うんです。

 まず最初に確認なんですが、原子力委員会の近藤委員長に御出席いただいておりますけれども、高レベル廃棄物の処分について、廃棄物が放射能を放つ期間を短縮する分離変換技術ですか、専門用語であれですけれども、要するに、放射能を放つ期間を科学的に短縮する技術であるとか、また、宇宙に飛ばすだとか、さまざまなことが今まで研究をされてきた。だけれども、現時点で、少なくとも今世紀を見渡した場合、我が国においては地下への埋設が最も安全でかつ放射能漏れのない現実可能な手段だ、こういう結論だと。

 もちろん、技術の可能性はさまざまありますが、何か科学的に処理をして放射能の出る期間を短くすることができれば、それはそれにこしたことはないと思いますが、それが本当に今世紀中に実現できるかどうか。そうでないとなかなか、研究としてはいいけれども、現実可能な今世紀中の処分としては今の処分が最適だ、こういうふうに断言する形でよろしいんでしょうか。委員長、ちょっとここで確認させていただきたいんです。

近藤参考人 確認ということで、一言でお話し申し上げますと、高レベル放射性廃棄物の処分方法としては、日本がそう決めてからも、ほかの国でも同様の議論を行って、ごく最近ですと、イギリスも同じような意味で、さまざまな方法について公衆の参加も得て議論した結果として、結論は、やはり地層処分が最適な方法であるということを結論しております。したがって、一言で言えば、これが適切であるということは世界の共通の認識というふうに思っております。

 これは、おっしゃるように放射能を減ずるとか、あるいは有意な放射線レベルのある期間を短くするということ、例えば、おっしゃるように核種を分離して消滅するとか、そういう方法についても研究は行われておりますけれども、これはうまくいけば、必要な地層処分の処分場の規模を小さくすることができる、しかし、地層処分という行為そのものをなくすることはできるわけではない。

 そういう意味で、今世紀と言わず、私としては、引き続き原子力を利用していく上においてはこの地層処分という技術は非常に重要な技術であり、かつ正当な技術というふうに思っております。

近藤(洋)委員 フランス、各地でさまざまな研究が過去において行われてきた。そういう中で、現時点での世界の共通認識はこの手法だ、こういうことでございますね。

 そういう中で、まずお伺いしたいんですけれども、この処理場の立地そして運営管理は認可法人の原子力発電環境整備機構が行う、こういうことであります。そこで、この計画によると、最終処分場は、操業期間は大体五十年から六十年程度、その後埋め立てをして、そしてこの機構がモニタリング、監視業務を行う、こうされておりますね。この一連の調査からモニタリングまでの総経費というのは三兆円、こういうふうに見込んでおりますね。

 三兆円見込んでおるわけですけれども、では具体的に、埋め立て後何年間監視業務を行う、こういうことの計画になっているのか、これはエネルギー庁長官で結構でございます。具体的に何年間行うんですか。

望月政府参考人 NUMOでは、処分場の建設、操業、閉鎖段階、すべての期間を通じて環境保全対策、放射線安全対策及び作業安全対策が有効に働いていることをモニタリングによって確認していくということになっておるわけでございます。

 また、今般の原子炉等規制法の改正法案に基づきまして、処分場の安全性が確認された後、NUMOは処分場の閉鎖を行うことになっておりますけれども、その後も必要に応じて地上環境モニタリングやボーリング孔、穴を利用して地下環境モニタリングを行うということにしております。

 閉鎖後のモニタリング期間については、法律の定めはございませんけれども、処分場の閉鎖後三百年間のモニタリングというものを前提に制度を構築しているわけでございます。

近藤(洋)委員 三百年なんですね。最終処分施設は、要するに文献調査から建設期間まで、これは非常に長期間かかる。三十年程度かかる、さらに建設に十年程度かかる。そして操業期間も含めると、要は四百年間、NUMOが管理する、こういうことなんですよね。

 これは徳川時代だって三百年台ですよ。徳川三百年を超えるものが、我が国の歴史をひもといても、そんな超長期の事業を、一つの国家体制がどれだけもつかというのも、少なくとも日本の歴史を見ていくと、三百年、四百年というのは大変長い国家体制だったわけですね。もちろん、この日本国を、我々は国民、政治家である以上、維持していくというのが責務でありますから、それは長く維持していくわけでありますが、予測可能ということからいくと、この原子力発電環境整備機構、これは国でもなく民間でもない、いわゆる中間的な存在ですよね。この中間的な存在に四百年もの超長期の事業を担わせるというこの制度設計に、そもそもちょっと無理があるのではないか。少なくとも、無理を感じてしまうのが常識だと思うんですね。

 ここに、ある意味で、事業の信頼感ということを考えたときに、中間法人が四百年管理します、こういう仕組みが本当に信頼性があるのか、やはりここは国というものが管理する、まずこの構えをつくらないと、明確にしないと、なかなか、まず信頼という点において信憑性が高まらないと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 この事業自身は、原子力発電政策の一つの輪をつなぐものでありますから、民間事業者の事業の一部を担うということになるわけでありまして、そして、発電事業者が関係して中間法人を設立する。これに国が恒久政策等で密接に絡んでいくわけでありますから、言ってみれば間接的に国もその責任を負って、担っていくということになろうかと思います。

 信頼性という点で、国がどこまで前へ出るか。これは議論の余地はあることだと思いますし、私も原子力政策に関しては、今までは、国民理解も含めて、そっちでやってねというところがちょっと強過ぎたというふうに思っておりました。ですから、出るべきところは積極的に出るという思いでおりますが、NUMOの信頼性を国がきちんとバックアップするということで、現状、対処していきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 大臣も問題意識はお持ちだとは思うのであれなんですが、ただ、大臣、今まで我が国でいろいろ、さまざまな事業をやっています。だけれども、四百年近い超長期の事業というのは恐らく今の日本国政府で、ないと思いますよ、具体的な事業として。しかも、技術の粋を集めなければいけない、英知を集めなければいけない放射性廃棄物の管理というものについて、間接的ながらも強くというのでは、私は次元が違うのではないかと。少なくとも、議論の経緯の中で、今まで積み重ねた議論が全部無駄だとは言いませんが、東洋町のこの結果も見て、事ここに至っていかがかと、こういう指摘を申し上げているわけであります。

 同じ点で、原子力委員会の近藤委員長、原子力政策のある意味で責任者でいらっしゃいますが、この現状、国民の意識の現状も踏まえて、やはり私は最も今の時点で重要なのは信頼感だろう、こう思うんですね。官から民への話じゃないと思うんです、この話は。中間法人で効率的にやるという事業じゃないと思うんですね。最も必要なのは信頼感。だとすると、何だかんだ言っても、やはり国というものが事業主体になるという方式。アメリカではそういう形をとっているわけでありますが、こういうことも再考の余地があるんではないかと思うんですが、委員長、いかがですか。

近藤参考人 お答えいたします。

 現在の実施体制が、これは原子力委員会の責任なわけですけれども、原子力委員会がかくなるシステムがよろしいということで御提言したという責任がありますので経緯を申し上げますと、やはり国は廃棄物処分政策を担っている観点で、適切な立法措置を行うなど制度を整備すべしと。実施は民間を主体とした事業体がやるべしと。これに対して、国が法律とか行政によって監督し、安全規制を適切に行っていく。これが一番我が国にとって望ましいシステムであるということは、原子力委員会で長い議論を重ねた上で御提言申し上げたところでございます。

 ただ、その場合に、私ども注文をつけましたのは、長期にわたる事業の安定的遂行、それから長期間にわたる安全性の確保、そして国民及び地元からの信頼性の確保、これを基本要件と申し上げまして、この三つの基本要件を確保できるように制度設計をすべしと申し上げたところでございます。

 現在のシステムは、実施主体を国の関与の強い認可法人として、国が高レベル放射性廃棄物の処分に係る基本方針及び同方針に即した最終処分計画というものを定めて、実施主体がそれを踏まえて、その計画に従った実施計画の作成、そしてそれを国の承認を求める、そういう構造にしていることによってこの基本要件は担保される。つまり、非常に強い国の関与をもって、効率的な事業運営を行う者としての民間の活動を規制していくということがよろしいかというふうにしたわけでございます。

 あわせて、原子力安全委員会は、事業認可申請から安全審査に先立つ各種の調査段階、そしてまた処分施設の操業以降、さらに処分場閉鎖、確認に至る各段階において、安全の確保の観点から適宜適切に関与していくということをお決めいただいているところでありますし、また、原子力委員会といたしましても、既に原子力政策大綱におきまして、特に業務に必要な技術開発を実施することも含めて、十分な技術的能力をこの組織、実施主体は維持、涵養すること、そして、国に対しては、その処分にかかわる基礎、基盤的な研究開発を着実に推進すること、また、これらに関して関係者が連携協力を強めることを求めたところでございます。

 そういう意味で、国、事業者の間で非常に密接な連携と、それから事業運営に関する公正性、適正性の確保に関する強い緊張関係、こういうものを持っていくことによって国民の信頼を確保していく。このシステムは、現在も私どもとしては適切なシステムというふうに考えている次第でございます。

近藤(洋)委員 近藤委員長の御趣旨も、それはそれで、御答弁を聞く限りはわからないではないのです。ただ、実態的にちょっとお伺いしたいのですが、エネルギー庁長官、これは確認ですが、では原子力発電環境整備機構の常勤役職員数は現在何人ですか。

望月政府参考人 現在の役職員数は、常勤理事が六名、評議員が十一名、常勤職員数は六十七名でございます。

近藤(洋)委員 要するに、その評議員の方とかは別にすると、六十数名の実動部隊なんですよね。これは、これだけの事業をやるにしては、僕は人数が多ければいいと言うつもりはありませんが、今近藤委員長がるる御説明したそのスキームの中核の組織として、余りにお寒い陣容ではないかと。

 これは、立地広報を担う方だって二十数名しかおりませんよ。かつ、経済産業省の対策室だって十数名であります。したがって、この大変貴重な事業を担う方々は、せいぜい実動部隊は数十名、こういうことでやっているわけですね。この数十名の陣容で、どうやって国民の理解を得ることができるのか。外見から中身を見ても非常にお寒い状況の中で、形は国が関与する云々言っても、中身が伴っていないと言わざるを得ないんですね。だからスキームを変える必要があるのではないんですか、こういうことを言っておるわけでありまして、七年たってこの状況というのは、この体制が機能していないではないか、こういうことを言いたいわけであります。

 もう一つ、確認ですが、その最終処分施設は、計画では、御答弁のとおり四万本のガラス固化体を受け入れるということになっていますが、そもそも、過去の発生分で、現時点で、ガラス固化体換算で二万本近く既にあるわけですよね。既に二万本近くストックがある。四万本と言っているけれども、もう半分埋まっていると考えた方がいい。そうすると、今四万本規模のものをつくるとおっしゃっているけれども、仮に二〇四〇年に処分地が完成しても、このままの長期エネルギー需給見通しの推計でいくと、政府の見通しで原子力発電所の稼働を換算すると、処分地は一つでは足りなくなるということであると思いますが、今世紀中、足りなくなるんじゃないですか。エネルギー庁長官、いかがでしょうか。

望月政府参考人 お答えいたします。

 今のような体制で原子力発電を続ける限り、当然のことながら、最終処分にしなければいけない量というのがふえていくというか、次々と出てくるということは事実でございます。今の先生のお話のように、平成四十年代後半を目指して、最終処分を開始するということを目指して、私ども今施設をつくろうとしております。

 とりあえず、経済的規模を考えた場合に、四万本以上の規模のものをつくるというのが最適だろうということで、そういうものを計画しているわけでございますけれども、平成四十年代後半の時点では、言ってみれば、まだ少し余裕のある段階でスタートするわけでございますけれども、それが次々に発生してきていっぱいになる。その時点での状況を正確に推計はできませんけれども、大体、今のような諸条件を前提として、その後の発生の見込みを前提とすれば、仮に四万本の処理能力のある最終処分場をつくった場合には、四十年ごとに一つずつぐらいその規模のものが必要になるという計算になることも事実でございます。

 ただ、テンポは、平成四十年代後半にまず一つつくって、そこから、その次のところについての作業に入る。あるいは、四万本規模というものが、別に四万本以上であっても構わないわけなので、それが一カ所になるか二カ所になるか、それは事態次第でございますけれども、そういうテンポでつくっていかなければいけないということは事実でございます。

 だから、一つつくればそれでおしまいということを私ども申し上げているわけではございません。

近藤(洋)委員 今明らかになったように、ですから、もちろん技術開発が極端に進んで量がぐっと減るということになれば別ですが、なかなかそれもそう進まないと仮定をすれば、少なくとも四十年に一カ所ずつ必要になる。高速増殖炉が本格稼働するのは、今のペースでいったって二〇五〇年以降という話です。そうすると、現在の軽水炉で考えても、今世紀ということに限って言えば、もう一カ所さらに必要になるという計算を立てなきゃいけない、こういうことだと思うんですね。

 その全体像をやはり示して、そうだとすると、トータルのコストは三兆円で、さらに三兆円、オンするかどうかは別にして倍規模のものがかかるというのも含めて、そういうものなんだ、だけれども、それは必要なんだというトータルの議論をやはりちゃんとしなければいけない。そうなったときに、では、実施主体として本当にNUMOという中間法人でいいのかという議論も当然出てくると思うんですね。私は、見直しの必要が出てくる、こう思っておりますが、こういうことをやはり明らかにしていかなきゃいけないと思うんです。

 もう一つ、そのイメージ、全体像の問題で、受け入れ自治体への支援措置であります。

 そもそも文献調査という、実地調査を行わないものに対して年間十億円払うということが本当にいいのかどうかという議論は、本当は伺いたいんですが、ここはちょっと別にしておいて、文献調査に二十億円。そして、次の調査でさらに数十億円、ここまでは明らかになっておりますね。だけれども、概要調査まではわかっているけれども、次の精密調査ではどうなるのか。そして、建設期間中はどうなるのか。さらには、稼働した期間はどれだけの交付金が出るのか。こういうことも含めて、きっちり、これは国費がどれだけ払われるかとか、国費というか電源特別会計からの、エネルギー特会からの交付金になるかと思いますが、大体どれぐらいのものになるのか、これもやはり、きちんとそろそろ明示する必要があると思うんですね。

 経済効果が何兆円とかなんとかというのは、そろばんではじくのは、それは勝手な話ですけれども、そもそも国としてどれだけのものを出すんだと。原子力発電所には、大体一基当たり一千億円以上の交付金が、百万キロワット以上で、四十年稼働で払われますね。ですから、そのイメージからして、大体どのくらいのものを国としては、事の重要性にかんがみて、交付金を自治体に支払う覚悟があるのか。

 要するに、公募を自治体に求める以上、そういう全体像もわからずに手を挙げなさいというのも、これまた非常に無責任な話だと私は思うんです。その全体像について、そろそろ示す必要があるかと思いますし、具体的なイメージがあればお答えいただきたいのですが。

望月政府参考人 稼働していく段階での交付金の額については、先生御指摘のとおり、今明白ではございません。原子力発電所の場合には、全体、トータルとして約五百億ぐらいのものが、ある一定の期間に払われるということは事実でございますので、恐らく、当然のことながら、事柄の重大性、施設の重大性を考えれば、それに匹敵するようなことが行われるということは、もちろん私ども考えなければいけないとは思っているところでございます。

 ただ、今、私どもがとりあえず、地点も決まらない段階で、一体どういうイメージのことを地元の皆様方にお伝えして、例えば、まず最初の文献調査に応募していただくかということを考えた場合に、稼働した最後のところまでの交付金を正確に申し上げることが一番適切なのかどうかということについては、先生方の御意見も伺いながら考えていきたいと思っているところでございます。

 まずは、例えばこの事業の大きさというものを考えますと、言ってみれば、ある地方に公共事業が数兆円オーダーで、これは時間はかかるわけでございますけれども、長期間に公共事業が行われるというものを誘致している話なんだということは、ある意味では、一つの大きなイメージとして地元の皆様方には浮かぶのではないかというふうには思っているところでございます。

近藤(洋)委員 長官、私が伺ったのは、公共事業がこれだけ引っ張られるという、そういう誘発効果をイメージさせろと言っているわけじゃないんです。国としての覚悟を示せ、こういうことを言っているわけです。

 政府のこの資料によると、原発ですと大体、最初の十年間で、おっしゃったとおり五百億円程度、その後は毎年稼働すれば二十億円程度、四十年稼働すれば、要するに、三十年間稼働しても、トータルで千数百億円という、こういう数字になるわけですよね。これは、要するに、国としての覚悟という形で出しているわけです。経済効果云々を言っているからおかしいわけで、そうではなくて、国としての覚悟を、覚悟といいますか姿勢を示す。どれだけこの事業が重要なんだと、こういうことなんだと。

 私は、これは原発一基分には比較にならないぐらい重要な施設だと思いますよ、正直申し上げて。単純な比較になりませんけれども、極めて重要な施設だ。そうだとすると、そういう全体像も含めて、大臣、審議会へ回されるというのであれば、そういうことも含めて審議会で議論されるんですか。示されるということでしょうか、大臣。

甘利国務大臣 小委員会では、文献調査への理解のあり方、そこに国がどう関与するかということが中心になろうかと思います。

 ただ、おっしゃいますように、四十年に一つの施設が必要だとすれば、それは、すべての原子炉を正常に稼働させていくために引き受けるわけでありますから、一つの原子炉が四十年間ぐらい動くとすると、国内のすべての原子炉の四十年稼働分を一つの施設で引き受けるわけでありますから、原子力施設一施設どころの重要性ではないというのは確かに御指摘のとおりでありまして、いかに理解と信頼性を高めていくかは、これからもさらに前向きに議論をしていきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 関連して、大臣、文献調査で。ですから私は、その全体のことを示さないで、ただ最初の入り口のところだけ幾ら積み増しても、これはだめだと思うんですね。むしろ逆なことを言えば、私は、全体を示して、文献調査応募はゼロでもいいと思うぐらいなんです、逆な考え方をすれば。全体としてはこうなります、文献調査はゼロですと。それは、だって実地調査しないわけですから、文献を見ればいいわけですから、コストもかからないわけですから。

 逆に、文献調査を十億という、十億ぐらいのこの辺の微妙な額が、地方の自治、私も田舎の代議士ですからわかるんですが、人口一万未満の小さな町にしてみれば、これは大変な額ですよ。そういう額ではなくて、応募はゼロでもいい、むしろ、そのお金があるぐらいなら、それこそ理解を深めるための広報宣伝にもっと注力してみるとか、そういう形にしてみる。そして、実地調査になったらきちっと支払う。全体像もある程度示すという形に切りかえていく。こういう交付金のあり方を含めて、見直す必要があるんじゃないかと思うんです。

 私は、今回、最初二億円弱だったものを十億円に引き上げてみて、何とか応募してくださいとやった政府の本当に苦肉の策の思いもわからないではないですが、今回やはりそれは、言葉は適切かどうかは別にして、札びら云々という表現も使われてしまったわけですね。その辺も踏まえて、もう一回、最終処分についてお金の使い方をちょっと整理してみる、トータルのお金も含めて議論する必要があると思うんですが、大臣、重ねていかがでしょうか。

甘利国務大臣 現状では、市町村長が文献の応募をするということについても、政治的には今回の選挙が示すようなリスクがあるわけでありまして、地域の理解とともに歩んでいくということで、文献の時点から、いわば交付金といいますか、それを出すという仕組みになっているわけであります。

 ただ、先生御指摘のとおり、この施設が国家のエネルギー政策にとって欠くべからざる極めて大切な施設であり、そして安全を大前提にやる、そういう前提がありますが、そこでその施設ができるとこういう地域の絵図になりますと、公共事業効果云々なんというのは別として、交付金等、原子力発電所ができるとこういう効果があると同時に、この最終処分施設についても、全体像はこうですというのは、確かに地域が全体像としてとらえていかなければならないことだという主張は私はよく理解ができますし、これからどういう全体像のあり方が一番いいかというのはよく検討していきたいと思っております。

近藤(洋)委員 大臣、この法案を出すに当たっての総合エネルギー調査会の小委員会の報告書では、最終処分場の確保について、定めたスケジュールを維持するためには今後一年間が正念場、こういうふうに書いているんですね。一、二年が正念場だというふうに政府は認識しているわけですね。その一方で、残念ながら今回、現在のような状況になってしまっている。そうだとすると、やはり私は、今回の東洋町の事例でも明らかなように、この大変難しい問題について世界各国が悩んでいるわけですね。その問題について自治体の長に政治的なリスクを負わせるというこの制度は、もう僕は無理があると思います。

 その上で、繰り返しますけれども、三百年、四百年を超える超長期の事業をだれがどういう形で担って体制を組むのかということも含めて、そして、全体像の交付金はどうなるんだ、こうなれば、これは国の予算の話ですから、極めて大事な話でもあるわけです。まさにこれは政治の話だと思うんですよね。国会の話だと思うんです。

 残念ながら、これまでこの法案を審議する、この法案が制定されたとき、七年前は、調べたら、十六時間の審議時間で、二〇〇〇年の選挙の直前の審議。大変慎重審議が行われたと思いますが、この問題は、法案審議とかそういった問題で、限られた制約で議論する話ではないと僕は思うんです。

 何を言いたいかというと、やはりこの問題は、フランスでもさまざまな形式で議論していますけれども、私は、例えば一つの考え方として、政府の審議会云々というのは、国会としても、政府に任せるというのではなくて、例えば常設の調査会をつくるのか、経済産業委員会に小委員会をつくるのかどうかして、本当にこの一、二年が正念場だ、そしてきちんとしなければいけないという認識に立つのであれば、そういう形での議論の場を設定しないとなかなか動かないんじゃないか、そういう形での議論がどうしても今必要なんじゃないか、こう思うんです。

 大臣、これは政治家としてお伺いします。見識のある政治家のお立場として、この問題を、この一、二年が正念場だ、そして何とか形をつけなきゃいけない、こういう認識に立ったときに、審議会の小委員会へ回して小手先で直すとかこういう話ではなくて、少なくとも議員たる者、国会議員たる者全員の共通認識で国会の場で議論をするという枠組みも必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 この問題は、政府もそうでありますが、国全体の問題で、申し上げたように、これから原発が始まるのではなくて、既にもう始まっていて、使用済み燃料が既にあって、これは避けて通れない。そういう意味では、国民を代表するすべてがやはり責任を負わなきゃならない、避けて通れない課題であります。そういう認識は私も国会議員として持っております。

 ただ、今、行政府の人間でありますから、国会の決定されることについて行政府の人間がとやかく、こう差し挟むということは控えたいというふうに思っておりますが、いずれにしても、私どもは、私どもが果たし得る責任を精いっぱい果たしていきたいというふうに思っておりますし、国会の中での議論はぜひ議論として、国会でどう取り扱うかについてはお話をしていただければというふうに思っております。

近藤(洋)委員 大臣、やはりもうこれは、四十年前からわかっていた問題なわけですね。ですから、ちょっと言いにくい言葉ですけれども、これは、このままでいくと究極の先送りと言われかねないんですよ。

 私は、国会議員として議席を預かる者として、この問題をこのまま放置していくということは、少なくとも次の世代に顔向けができませんね。このままの状況では、少なくとも一、二年が正念場だとすると、やはりそういう枠組みでもつくらない限り進まないんじゃないかという危機感を非常に持っているということを指摘したいと思います。

 そして、最後の質問でありますが、その処分について、私は、エネルギーの安全保障上も、そして被爆国の責任からも、日本が、自分の発電所の廃棄物は自国の責任で処分をするんだ、こういうことが大原則だ、基本だ、こういうふうな立場に立っております。ただ、同時に、世界じゅうでこれだけ原子力発電所がふえてくると、自分の国で処分ができない、最終処分を確保できない、どう捨てるかわからない、こういう部分も出てくるかと思うんです。

 そこで、甘利大臣に、日本としては、自分の発電所から出てきた廃棄物については自分で処理をする、自国で処理をする、責任を持って処理をする、これは基軸だという立場に立ちながらも、一方で、そういった世界的な状況も踏まえながら、補完的な役割としても国際的な共同管理の枠組みというものを検討すべきかどうか、さらには、補完的なものができなければ、国際協調、協力というようなものも含めて検討することも、これだけ原子力発電所がふえてくると、そういう時期になってくるのではないかと思うのですが、大臣に最後にその点をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 日本だけでなく、国際的にも、自国の廃棄物については自国できちんと管理をせよというのが大原則であります。

 今、最終処分場についての法案を審議しているところでありますし、国際管理云々という議論になりますと、まず、では、うちのところでつくろうという話はさらに進めづらくなるのではないかと思っておりまして、国際的にいろいろな問題提起がなされてくるという場面はあるかもしれませんが、現状では、自国民が享受したものは自国内でという原則に従って推進をさせていただきたいと思っております。

近藤(洋)委員 まだまだ伺いたいことはたくさんございますが、時間ですので終わります。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 近藤委員に引き続きまして、最終処分の問題について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 甘利大臣も中央アジアの方に行っていらして、お忙しいゴールデンウイークを過ごされたというふうに聞いておりますが、実は私は、ゴールデンウイークにフランスに行ってまいりまして、エネルギー問題についていろいろなところを見てまいりました。この法律に合わせて行ったわけではなくて、もう随分前から計画していて、たまたまタイミングが合ったんですが、貴重な、再処理の問題も含めて施設を見てくることができましたし、関係者と意見交換できたのは非常によかったというふうに思っています。

 常に聞かれたのが東洋町のことでした。あれはどうでしたかということをあちこちで聞かれまして、説明をこちらもしなければならなかったんですが。はっきりしたことは、最終処分の問題というのは、フランスも含めて、フランスは、使用済み核燃料を他国からも受け入れているぐらいの、言うなら原子力大国と言われる国ですが、あの国でも最終処分の問題は困っているし、国際機関の方でも大変頭を悩ませている問題だということが私もはっきり認識できました。

 先日、私、質疑の中で、国際的な枠組み、日本はなかなか向かないのではないかという趣旨の発言もしましたが、行ってまいりまして、我が国としてきちっとそれを一たん検討すべきだということについては納得をして帰ってまいりましたので、その点については、そういう前提できょうは質問をしたいと思います。

 ただ、一つだけちょっと先に申し上げますと、大臣、先ほど、国会できちっとそういう議論の枠組みをつくってもらうのは大変望ましいけれども、行政府として介入しにくいという話をされました。それはそれでごもっともなんですが、フランスへ行ってまいりまして、私がこれはなるほどなと思ったことが一つありまして、それは何かというと、EPRという新しい原発、第三世代の原発を今フランスでは原子力政策で進めているんですが、それを導入するときに、国民討論と題して、数カ月にわたって政府の担当者があちこちに行って、かなりまめに説明会をやっているんですね。

 どれぐらいの人が集まったのか、これはよく私は数は確認をしていませんが、それが相当EPRの理解につながったんだろうという話を、政府の関係者、ほとんどの人間がしていました。一般の方からも少し聞きましたけれども、そういうことはやっていたねという認識はしていました。それだけでも随分違うと思うんですね。

 ですので、最終処分の問題、一つ大きなきっかけにはなると思いますので、いろいろ枠組みはこれから検討されるんでしょうから、それを国民にきちっと呼びかける国民討論の機会、議論の機会をつくられることをぜひ私もお勧めしたいと思います。

 通告してありませんが、まず、そのことについての御見解はいかがでしょうか。

甘利国務大臣 原子力関連施設の広報広聴に関しては、今までもやってきているつもりではありますけれども、しかし、今回の案件を見ても、まだまだ不十分だという気がいたします。

 私の思いとしては、おっしゃるように、国民の理解を高めるためにしっかり前へ出てやりたいというふうに思っております。

細野委員 ありがとうございました。期待をしたいと思います。

 その上で、法案に関しては基本的には私どもは賛成の立場ということであるわけですが、若干批判的な検証も含めて、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、廃棄物のいわゆる交換をしてきた話なんですが、きょうは外務省にも来ていただいていますのでまずお伺いしたいんですが、放射性廃棄物の交換について、国際的な枠組みの中で、今回の日本のやっていることというかイギリスとの間でやったことというのは、何かルールに基づく規制なりとか対象になり得るものなのか、そこをクリアしているものなのかどうか、まずそれについてお答えをいただきたいと思います。

中根政府参考人 お答え申し上げます。

 放射性廃棄物の交換に関しましての国際協定でございますけれども、こういうものが存在するとは承知しておりません。

細野委員 ひっかからないということですね。ここの国際的なルールはそもそも存在をしないということなんですか。確認をもう一度。

中根政府参考人 放射性廃棄物の交換に関しましては、そうした国際協定が存在するとは承知しておりません。

細野委員 これはこれで、きょうはちょっと議論しませんが、日本とイギリスがやる分には、ある種これはきちっと協定をつくってやるわけですからいいんだと思うんですが、こういう交換が国際的に簡単に行われて、ルールに基づかないでもできるというのも、これも私、個人的にはいかがなものかなというふうに思います。ただ、ここでは、大臣、外務大臣ではありませんので、ちょっとおきたいと思います。

 それでは、これはルールに基づいて大丈夫だということを前提でお伺いしたいんですが、今回、等価性に基づいて廃棄物を交換してきたということでコストが安くなったと先ほど御説明をいただきましたけれども、私が気になるのは、やはりこの廃棄物の半減期の問題ですね。低レベルの廃棄物を置いてきて高レベルの廃棄物を戻してきた。これは、半減期からいうとどうなんでしょうか、どれぐらい延びたのか。そのことについてわかっていることをお答えいただきたいと思います。

舟木政府参考人 お答え申し上げます。

 交換しましたのは、いわゆる持って帰ろうとしておりましたTRU廃棄物というもの、トランスウラニウムと言っておりますが、それと交換をして、高レベル放射性廃棄物を持って帰るというものでございます。

 半減期に関して申し上げますと、TRU廃棄物も半減期は非常に長い廃棄物でございます。高レベル放射性廃棄物の中には、放射能のレベルは高いんですが、半減期が割と短いものもございますし、長いものもございます。TRUというのは、むしろ、高レベル放射性廃棄物の中に入っている半減期が短いものよりは半減期がずっと長いものが多いということでございまして、半減期だけの比較で申し上げますと、どちらが短いとか長いとかいうことではなくて、どちらも非常に、トータルとしては放射能の減衰が超長期にわたってかかる、そういう意味では、トータルで見ると、同じような超長期の管理をしなければいけないということになるかと思います。

細野委員 ちょっと確認をしたいんですが、TRU廃棄物というのは、今回の法律の中で高レベル廃棄物に区分をされているものですね。TRU廃棄物というのは、今回の法律の中で高レベル廃棄物の中に含まれたわけですね。

 とすると、この法律の枠組みでいうと、高レベル廃棄物と高レベル廃棄物を交換してきたのであって、いわゆる六ケ所で処理できる低レベル廃棄物を置いてきたのではない、それは全くないということでよろしいんですか。

舟木政府参考人 法律上どういうふうに規定をしているかといいますと、いわゆる高レベル廃棄物を今回は第一種特定放射性廃棄物として定義をさせていただいております。いわゆるTRU廃棄物で、これは地層処分が必要なTRU廃棄物、これは放射能レベルが割と高いTRU廃棄物でございますが、これを第二種特定放射性廃棄物として定義をしております。この第一種特定放射性廃棄物と第二種特定放射性廃棄物は、ともに三百メートルを超える地層への処分が必要だということでございます。

 それで、放射能レベルがそれよりも低いTRU廃棄物につきましては、先生おっしゃいましたように、浅い地中に最終処分できるものもございますし、また、余裕深度と言っておりますが、五十メートル、百メートルぐらいの地層に処分するといったような方法も、現在、原子力安全委員会で御検討いただいているところでございます。

 交換という趣旨でいきますと、イギリスから返ってくる予定でありましたTRU廃棄物には、今申し上げました、いわゆる深い地層に最終処分をすることが必要な第二種特定放射性廃棄物に該当するものと、それから、それよりも放射能レベルの低いTRU廃棄物が混在しているということでございます。

細野委員 今の御答弁だと、要するに、いわゆる六ケ所で処分できるような低レベル廃棄物も交換してきたものの中に含まれる、そういうことですね。

 大臣、フランスでもこのことを議論してきたんですが、フランスからも同じ提案が恐らくあるんですよね。高レベル廃棄物を持って帰ってもらって低レベルを受け取るというスワップの話は、フランス側も間違いなくしてきます。アレバ社とも随分議論してきましたので、間違いなくしてくるんですね。

 そのときに、これは事業者の協定ということになりますので、ぜひこれは国の政策としてきちっとフォローしていただきたいと思うのは、イギリスの場合ですと、量的にどれぐらいあるのかというところまで通告していないのできょうは聞きませんが、ある程度高レベルのものを置いてきたということでありますが、一部六ケ所に埋められるものを置いてきてあるわけですね。ただ、高レベル廃棄物だけの量を見ても、御答弁を聞く限り、恐らく容量としては減っているというふうに理解をしますが、そこはフランスも苦労しています、イギリスもそうですが、要するに、高レベル廃棄物の処理場は決まっていないわけです。処分場は決まっていないわけですね。低レベルの方はやっているということで、そっちを持って帰ってもらえば大変ありがたいという話は口頭レベルでは聞こえてくるわけですよ。

 そういうことはないように、しっかり我が国の、処分場はつくらなきゃならないにしても、できていないわけですから、処分できるものを置いてきて、処分できないものを持って帰るというようなことがないように、そこはしっかり政府としてモニタリングしていただいた方がいいというふうに思いますので、その点を簡潔に御答弁いただきたいと思います。

甘利国務大臣 その辺のところは、プラス、マイナス、どういうメリット、デメリット、しっかり調査した上で方向性を出したいと思っております。

細野委員 ありがとうございました。

 法律について、スキームについても、少し最終処分場について聞こうと思っていたんですが、そこは近藤委員の方からかなり具体的な、大枠、全体についての御質問がありましたので、私の方は質問を省かせていただいて、ここから、核燃サイクル全体についての枠組みについて少し質問をしていきたいというふうに思います。

 資料をお配りしました。これはエネ庁の方で出していただいた資料です。非常にわかりやすく日本の核燃サイクルの現状について書いていただいていますので、参考資料としていいかなと思いまして、配らせていただきました。大臣、お手元にございますでしょうか。

 大臣は御専門ですので、釈迦に説法なので具体的に一々説明をいたしませんが、最終処分ができれば輪がつながって完結をするという趣旨の御答弁が先ほどありましたが、日本の状況は必ずしもそういう状況ではない。大臣は、厳密に言うとそうではないというのをおわかりいただいた上で答弁をされたと思うんですが。

 これは番号が打ってあるので、番号別に見ていきますと、日本が完全にできているのは一のいわゆる軽水炉の発電ですね。

 その前の六の燃料成形加工については、これは国内で完結をしています。

 二番のウラン鉱山がないのは、これはしようがない。

 三番の転換についても、これもウラン鉱山に大体付随するものですから、これがある程度海外でやられているのも、やってもいいんですが、しようがない部分が若干あります。

 四番、五番は、これはフロントエンドで非常に重要な施設ですが、日本は現状、濃縮過程は一割ですね。これが三割にふやされる。再転換も四割。

 再処理がまだ、六ケ所でこれからつくる、七番。

 九番の軽水炉も、六ケ所で二〇一二年操業予定、これもまだできていない。

 仮に七番、九番がそろったとしても、七番の再処理が終わった後には、ここには書いてありませんが、今問題になっている最終処分の問題がありますね。

 加えて、マイナーな問題で余り注目をされませんが、回収ウランが出てきますから、これを海外に行ってもう一回再処理をしてこなければ、濃縮をしてこなければ、核燃料に使えません。ということは、三番は日本でやっていないわけですから、再処理が完結をしてウラン濃縮を仮に完璧にやれても、核燃サイクルは完結をしないんですね、厳密に言うと。こういう現状だというのをきちっと踏まえて核の議論をしていった方がいいだろうというふうに私は思うんですね。

 そこで、大臣、これは私の個人的な見解なんですが、日本の場合は原子力を準国産エネルギーというふうによく言いますね。準国産エネルギーというと、これは素人目に見ると、ウランをとってきさえすれば後は国内で完結をするんですよというふうに聞こえるわけです。ところが、現実にはそうではなくて、さまざまな部分で海外に依存しなければならないし、輸送も発生をするというのが原子力発電の、核燃サイクルが完成をしたときにでもこうなる姿なんですね。

 二〇五〇年以降、高速増殖炉ができればもう少し単純にはなりますが、私は、基本的には原子力の位置づけというのはそういうものであるというのはこれからも変わらないだろうというふうに思うんですね。準国産エネルギーという言葉がともすればこの問題を国内の問題に押し込めてしまって、原子力というのは国際的に国益の引っ張り合いをしていましてもう外交問題になっているんだが、そのことを少し覆い隠している部分があるんじゃないかというふうに思っています。

 この個別のプロセスをどう上げていくかという議論よりは、せっかくきょうは全体の話をしていますので、そういった外交問題としてきちっとエネルギーを位置づけていった方がいいだろうという私の考えについて、大臣、どのようにお考えでしょうか。

甘利国務大臣 おっしゃるように、この輪っかは、七番から、量は少ないのでありましょうが回収ウランを回収して、それを今度三番の転換をしていく、あるいはウラン鉱山からのイエローケーキを気化させていく、それをまた濃縮したものを再転換で今度はグレーケーキとでもいうんですかね、それに戻していくという手順でありますから、途中が抜けていることはおっしゃるとおりであります。

 そのために、今回カザフとウラン交渉をしたのは、相互補完関係が確立できるというのは我々にとっても都合がいいし、相手にとっても便利だ、よそと組むよりは日本と組んだ方が両方ともうまくつながっていくという戦略的な部分はありますから、資源エネルギー外交戦略上、そういう視点をしっかり持ち込んでいくということは極めて大事なことだというふうに思っております。

細野委員 カザフの話は後ほど聞こうと思ったんですが、せっかく大臣が御答弁いただいたので、カザフの話へ移りたいと思います。

 私は、ちょうどフランスにいるときにカザフのニュースを聞きまして、かなり前からカザフについてはエネ庁としてはアプローチされていたので、そういう成果もいつかは出てくるのかなと思ったんですが、実は余りフォローしていなくて、思ったより早く出てきたので、正直大変びっくりいたしました。

 というのは、外交上は、日本のウラン需要の約三割をウラン鉱山で確保するということですから、近年でいえば、これは別におべんちゃらで言っているわけじゃなくて、かなりこれはクリーンヒット、それも短打ではなくて長打に近いヒットなんだろうなというふうに見ておりました。

 大臣、交渉された当事者でいらっしゃるので、まずお聞かせいただきたいんですが、カザフで交渉して、相互補完とおっしゃいましたね、では日本はどういうものをカザフに提供できて、カザフは逆にどういうことを日本に提供できるのか、それがうまく締結できた要因はどういうことであるというふうにお考えになっているんでしょうか。

甘利国務大臣 まず日本側にとって、ウラン鉱山を確保して、そして転換をしてもらう。当時、ソ連邦時代は、ソ連邦の政策として、一共和国に完結させない、周辺に散らしています。ですから、濃縮がロシアなんですね。ロシアとも日本はいろいろやっているものでありますから、三国関係でつながっていくとうまくつながっていくと思うんですが、カザフ自身は、鉱山の権益を売買するという付加価値の低いものでなくて、加工して付加価値を上げて販売したい。我が方にとってみれば、一〇〇%供給は成形加工のところからでありますから、そこの前段階までは完全に一〇〇%供給ができないわけでありますから、そういう加工部分を先方がやるということで、こちらにもメリットはあります。

 向こう側が非常に欲しがっているものは、例えば軽水炉。山はあって、一部加工施設はあるのに、しかも研究用FBRみたいなものもあるのに、民生発電所がないんですね。そこの技術は日本に一番蓄積をされていますし、近年は日本の企業の協力なしにはできないというくらいに言われていますから、それは向こう側にとって極めてメリットがあることなんですね。

 でありますから、日本側に欲しい部分は向こうにあって、向こうが欲しい部分は日本にある、向こうが欲しい部分の恐らく一番の点は、軽水炉の設置じゃないかと思っております。

    〔委員長退席、河井委員長代理着席〕

細野委員 大臣、かなり積極的に御答弁をいただいたので、通告はしていませんが、そうすると、カザフとの間でも原子力協定も結んでいくという方針でよろしいんでしょうか。

甘利国務大臣 もちろんそのとおりでございます。

細野委員 大臣、もう一つ確認なんですが、カザフで鉱山を開発して、そこで確保したウランは、これはそこで転換して、成形加工だけして、濃縮は、これはさっき御答弁ありましたが、ロシアでするということになるわけですか。

甘利国務大臣 私は、まだその全部の工程を申し上げているわけではありません。施設として、ロシア側に、ソ連の政策としてそういうふうに散らしていますから、全部はくっついていませんよというお話をしたわけでありまして、これからいろいろな議論、選択肢があろうかと思います。

細野委員 現実にはロシアになるんだろうと思うんですね。ウラン濃縮というのは、これは裏を返せば、それこそ核兵器の燃料になるわけですから、そんなあちこちの国がやれるわけではありませんし、加えて、ノウハウでいえば一番ロシアが蓄積をしています。日本もウラン濃縮をロシアにという話は少し前に報道されています。これも質問しましたが。

 それもこれもありますから、カザフとロシアも原子力に関する協力を結んでいますし、日本とロシアもやっていて、カザフと日本がやれば三角関係ができますねという話になって、そっちの方向に進む可能性は極めて高いだろうというふうに私も思います。これ以上御答弁はいただけないでしょうから。

 そこで、ちょっと一つ気になるのが、シーレーンの防衛なんですね。これは経済産業省の所掌でないという話で、大分きのうから通告のときにすったもんだあったんですが、やはり、こういう国際展開までエネ庁としてやって、ロシアであるとかフランス、イギリスなんかとこの核燃サイクルの中で協力をしていくということを交渉しているのもエネ庁、そして、日本の国内で原子力としてもう一回発電施設で使うのも、これもエネ庁ということですから、経済産業省ということですから、それについては経済産業省としてきちっとした見解を持った方がいいだろうというふうに思うんです。

 当然、ウラン濃縮もありますし、MOX燃料も返ってきますね。今回出てきている最終処分をするこの高レベル廃棄物も、これも海を通って、ほとんどの場合は恐らく太平洋を通って入ってきます。そういった問題について、経済産業大臣として、このシーレーン防衛についてどういうスタンスをお持ちか、まずそれをお答えいただきたいと思います。

甘利国務大臣 核兵器に流用されるおそれがあるものについては、これはその船籍がどこに所属するかで、その国の武装警察あるいは軍、日本でいいますと海上保安庁が警備を担当するということになります。

細野委員 大臣、そこはちょっと認識をきちっと持った方がいいと思うんですね。例えば、高レベルの廃棄物はスワップするという、交換をするという話はあっても、基本的には日本から持っていったものをフランスから返してもらうわけですね。カザフでウランを掘って、加工したものをロシアから今度海へ出すわけです。もちろん旗国主義ですよ。旗を立てている、つまり、その船を所有している国が警護を担当するというのが今までの国際的な確かに慣習法でもあるし、そういう法律の枠になっているんですが、そこは、要するに、余り逃げない方がいいんじゃないか、きちっと日本としてコミットしていった方がいいんじゃないかというふうに思っていますが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 私もこの辺のところは余り詳しくないんですが、一応国際ルールとしてそういうふうにやっているんじゃないでしょうか。もちろん、一気通貫で、自分の国へ来るのは自分の国がという考え方もあるとは思いますが、一応、今私が知る限りは、国際ルールに従って日本も行うということであります。

細野委員 では、ちょっと法律的な部分で確認をしておきたいんですが、まず、海上保安庁にきょう来ていただいていますので。

 今まで実績があるところで結構です。高レベルの廃棄物のシーレーン防衛、もう一つはMOX燃料のシーレーン防衛、これについて、海上保安庁がどこでどういうことができるのか、どういうことをやってきているのか、そのことについてお答えをいただきたいと思います。

石橋政府参考人 海上保安庁としましては、公海上で襲撃された船舶が外国船舶の場合、国際法及び国内法に基づきまして、旗国からの要請等に応じて人命、財産の保護の観点から必要な措置を行うことになります。

 それと、MOX燃料の海上輸送に際しましては、海上保安庁は、我が国の領海内において巡視船艇による所要の警備を実施しております。ただ、この具体的な警備体制については、警備業務の性格にかんがみまして、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

細野委員 防衛省にも来ていただいているので、防衛省としてはどこまで何ができるのか、御答弁いただきたいと思います。

山崎政府参考人 基本的には、防衛省は警察機関ではございませんので、公海上あるいは我が国の領海上におきましては、海上における人命もしくは財産の保護または治安の維持は、海上保安庁さんがされるというふうに当然理解をしておりますが、海上保安庁さんで対処することは不可能もしくは著しく困難な場合には、先生御質問の、例えば外国船舶に対して襲撃があった場合等につきまして海上保安庁が対処できない場合には、海上警備行動で我々としても旗国の要請に基づいて対処が可能であるというふうに考えております。

細野委員 防衛省に確認ですが、領海外でも、旗国の要請に基づいて海上保安庁が対応できないときには海上警備行動において行動することは可能ということでよろしいですね。

山崎政府参考人 先ほど申し上げましたように、海上警備行動の目的を達成する必要な範囲内で海上警備行動の権限は公海にも及び得るというふうに考えております。

細野委員 今のような整理になっていて、大臣もさっき御答弁をされたように、領海内は我が国が、海上保安庁なり防衛省なりが責任を持つんだけれども、航海の最中は、基本的には旗国主義で、そこの船がやりますということになっているんですが、ちょっとそこはもう少し、もちろん旗国主義でいいんですよ、旗国がメーンでいいんだけれども、日本としてきちっと関与した方がいいだろうというふうに私は思っています。

 いろいろ議論をしまして、私もちょっと専門家から話を聞いたりして、若干頭の体操をしてみたんですが、大臣、例えば、最終処分場に持ってくる高レベル廃棄物は、ガラス固化されて相当まとまって来ますから、それを略取して、核兵器に使うことはできません。ただ、太平洋のシーレーンというのは極めて危ないと言われているんですね。

 マラッカ海峡というのは、幅でいえばタンカーがやっと通れる六十キロしかありません。ですから、例えばそのマラッカ海峡で、どこかの地上から迫撃砲を撃って上に落とすことは、これは簡単にできるんですね、もしそのテロ組織がやろうと思えば。要するに、そこでテロ攻撃をすることはできます、物理的にも。可能性がない海域になったらいいですが、これも可能性はありますね。

 さらに、それがMOX燃料や濃縮ウランということになってくると、原子力で使うMOX燃料ですし、原子力で使う濃縮ウランですから、そのもので核兵器にはならないまでも、それを例えば、場合によっては濃縮ウランについては略取することは可能かもしれません。まだ日本はロシアより余り持ってきていないですから実績はありませんが、海上保安庁としても警備したことが、今まで余り経験がないという話でしたが、それを略取することは可能性としてあり得ると思います。

 これは想定の範囲外だという議論もあるんですが、古くは九・一一なんて全く想定外だったわけですね。それと比較をすると、使用済みの核燃料であるとか濃縮ウランが何らかの形で攻撃をされるということは、マラッカ海峡のことを考えれば十分想定をしておかなきゃならない話だと思うんですね。

 しかも、これを日本が権益を確保して、半ばもう、一回占有した上で、一たん再処理を任して運んでもらっているんですよということだけを理由に日本が何もしないということになってしまうと、仮に、そこで攻撃を受けて放射能が漏れてしまって隣国に問題を及ぼした場合、場合によってはそれが略取されてテロ組織に渡った場合に、日本がやはり相当のいろいろな問題を抱え得るだろうというふうに思うんですね。

 これは日本だけの問題ではありません。シーレーン防衛というのは、ほかのアジアの国々も含めての問題なんですけれども、特にこの核のシーレーン、これから運送は相当ふえてきますから、それについてはもう少し日本がしっかりコミットした方がいいと私は思いますが、大臣、御所見いかがでしょうか。

甘利国務大臣 御指摘の問題性はよく理解をいたしました。我が省の所管を超える部分がかなりありますが、この種の問題については、関係省庁とこれからも鋭意協議をしていきたいと思っております。

細野委員 私のここのところの持論なんですけれども、とにかく原子力を日本は国内問題と考え過ぎている。もちろん、東洋町の問題も大事ですし、国内でどうエネルギーを回していくかというのが重要だというのはよくわかるんですが、もう世界はやはりそういうところから離れていて、国益のぶつかり合いになっていますし、安全保障の問題の裏表にもなっていますから、そのことをぜひ御認識いただきたいと思いまして、今その話をいたしました。

 もう一つ、大臣、これは余り明確に通告していないんですが、この間も少し質問をしていますので、引き続きということで御理解をいただいて答弁をいただきたいんですが、日本の周りには原子力を持っている国が三つあります。中国と韓国と、国ではないですが台湾が持っています。原子力は持っていないけれども核武装していると言われている国が恐らく北朝鮮、ちょっと離れますが、インドも核武装しています、パキスタンも核武装しています。そういう国々があるわけですよね。

 原子力発電をしている国は、ウラン濃縮ができない、再処理ができない。北朝鮮は、もう既にプルトニウムと濃縮ウランを持っていますから、これはどこかで再処理をしなきゃならない。仮に作業をとめてもこれは残るわけですから、どこかで何とかしなきゃならない。そういう問題があるわけですよね。

 そういう問題も含めて、では、日本は再処理を国内でどうしていくのかというスタンスが必ず必要だと私は思うし、フランスはもうそれをやっているんですが、そういう諸外国の、近隣の諸国の状況について、日本は、技術協力をしますよとか、ウランのフロントエンドについてちょっと協力しましょうよみたいな話は言っているんですが、包括的な枠組みは提示をできていないんですね。

 一つだけ、ちょっとエピソードを紹介しますと、恐らく大臣は御存じだと思うんですが、フランスのアレバの再処理工場とMOX燃料工場では、アメリカの廃棄した核兵器のプルトニウムから原子力発電の燃料をつくっています、MOX燃料。彼らは、MOX・フォー・ピースと言っていまして、おもしろいキャッチフレーズだなと思ったんですよ。ただ、私、フランスの原子力庁の担当者にちくっと言ったんですが、他国の核兵器を再処理して燃料にするなら、自分のところもあるんだから、自分のところの核兵器をまず燃料にしてからやったらどうですかというふうに言ったら、いや、フランスは少ないからいいんだと言っていました。それはおいて、MOX・フォー・ピースという意味では、日本はフランス以上に説得力を持つわけですよ。

 この図に戻るんですが、この四番と七番、ウラン濃縮と再処理は基本的には核兵器を持っている国しかほとんどできなかった。それを日本が今やっています。ただ、やっていることは何かというと、国内の燃料を回すだけにきゅうきゅうとしてやっているわけですね。ですから、何か日本が場合によっては核武装を考えているんじゃないかとか、国内でいろいろな平和を求める団体とか環境団体からも反対をされて、今えらいことになっているわけですよ。

 日本は、やはりそういう国内のきゅうきゅうとした議論から少し脱皮をして、国際的に、平和の問題と核不拡散、核兵器の削減の問題とエネルギー需要にこたえる枠組みを提案するんだ。例えば、再処理とMOX燃料は、アジアでつくれるのは日本だけなんだとすれば、では、これは枠組みを超えてやろうじゃないかという、大臣、それぐらいの強いメッセージを打たないと、原子力の議論というのは、非常にマイナスのスパイラルというか、そこから脱し切れないんじゃないかというふうに思うんですね。

 長々と質問しましたが、ここですべて答えていただけるとは思いませんが、大臣、そういった考え方についてどういうスタンスでこれから臨まれるか、御答弁いただきたいと思います。

甘利国務大臣 まさに、その構想をアメリカがGNEP構想として提案をして、日本とフランスが名乗りを上げている。アジアにおいて、温暖化問題等もあり、あるいは化石燃料の需給がタイト化するということもこれあり、やはり原子力と正面から向かっていかなきゃならないというふうに思います。

 そういう中で、日本が一部を除いてフルセットと言いますけれども、そういう、核保有国以外でIAEAの査察を完璧にこなして、GNEP構想にほかも参加したいと言っているにもかかわらず、日本を有力なパートナーとしてアメリカが見ているということは、まさにそういう役割を果たし得るのではないかというふうに思っております。

細野委員 確かに、アメリカの構想に日本は賛成をしているんですが、フロントエンドについての提案をしているのみなんですね。ウランの安定確保は確かに大事ですし、その部分でウラン濃縮なんかの技術を共有するのも大事ですが、各国、やはりバックエンドに困っているんですよ。

 韓国も使用済み核燃料をどうするかという議論をしているんですね。私驚いたんですが、台湾は、使用済み核燃料を処理し切れなくて、台湾電力は北朝鮮にその貯蔵を頼んだんですよ。それぐらい台湾も困っているんですよ。北朝鮮に使用済み核燃料を渡すなんて、これはとんでもないことで、それぐらいみんな困っているわけです。

 要するに、ウラン濃縮も困っている。みんな、そのうちロシアに頼んで、ロシアは相当強くなって、そこは考え物なんですが、現状しようがないですよ、技術も能力もないわけだし。ただ、バックエンドは、できるだけ早くそういう枠組みをつくっていかないと、各国が困るんです。核武装の危険性もあるわけです。

 その状況を踏まえた上で、フロントエンドだけではなくて、バックエンドもアジアで枠組みをつくるんだという意思を日本は政治的に持つべきだと私は思いますが、いかがでしょうか。

望月政府参考人 ちょっと一点だけ補足させていただきたいんです。

 アジアという枠組み、先生の御提案とちょっとずれますけれども、GNEPで研究、特に技術開発をしてやろうとしている中には、再処理とそれから廃棄物対策についても、これはもっと技術開発しないと、日米で協力しながら、小国の場合は特にどうするんだという問題が、さっき台湾がございましたけれども、これからベトナムとかいろいろ出てまいりますから、そういうときには彼ら自身でできないだろうというところについて、国際枠組みの中でどうしようかという議論は、今回の、大臣がボドマンとやっていただいた日米の中でも入ってまいりますし、それからGNEPの中にも入っているということでございますので、御指摘の点については、意識の中ではそういう方向に努力している面も、先生おっしゃったアジアという面というよりも、アメリカとやりながら世界をという感じはございますが、そういうものになっております。

    〔河井委員長代理退席、委員長着席〕

細野委員 大臣、ちょっとあえて踏み込んで言うんですが、再処理とMOXは、ある程度日本は技術的にこれはやろうという意思を決めて、場所も特定できているわけですね。全部やれるわけじゃないですよ。ただ、言うならば、大きな壁をもう越えつつあるわけですよ。

 片や、最終処分場はまだまだハードルが高くて、何とかしなきゃならないんだけれども、ここを、例えば、国際的な枠組みをつくって、台湾とか韓国とか中国から使用済み核燃料の最終処分を日本でやりましょうなんてことは考えられないわけですよ、要するに地理的にも。それと比較をすると、技術を持っていて平和に貢献できるという意味では、私は、バックエンドのここは可能性があるんじゃないかと思うんですよ。

 さっき望月長官からは、いや、GNEPではそういう枠組みがありますよとおっしゃるが、実際、日本側の提案にはそこは入っていないですよね。そこできちっと地域でネットワークをつくっていきましょうというところまで入っていない。そこが入っているから、ロシアの提案は説得力があるわけですよ。日本側からも、アジアに対してそういうメッセージを発するべきだと私は思いますが、大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 ついこの間までは、国内的にも原子力政策を進めるのがなかなか大変な中で、再処理施設が完成をし、二〇一二年を目指しMOX工場をつくりと、矢継ぎ早に原子力政策が今前へ進んでいっているわけであります。

 そういう中で、アメリカからGNEP構想が提案をされました。この中ではいろいろな議論が進んでいくと思います。そういう中で、どこまで踏み込めるか。なかなか原子力に関しては、いろいろな制約の中で、正直、私も、前へ出ながら、ある意味恐る恐る出ている部分がありますから、積極的に、しかし慎重にいろいろ検討をしていきたいというふうに思っております。

細野委員 同じようなことを繰り返し言って恐縮ですが、日本の使用済み燃料も確かにあって、最終処分をしなければならない高レベル廃棄物も確かにあって、それも現実なんですね。ただ、片や、現実として北朝鮮にプルトニウムと濃縮ウランがあるのも、これも現実なんですよ。どっちが政治的な意思を持って危険かといえば、それは北朝鮮のプルトニウムとか濃縮ウランの方がはるかに危険なんですよね。それを、では、今六カ国協議の枠組みの中で、アメリカはどうしてくれますか、ロシアはどうしてくれますかといったら、これはとりあえず、これ以上のことはしないまでも、とめておきましょうというところでとまっているわけですよね。

 それは、日本にとっては安全保障上は大きな危機ですよ。ただ、それをきちっと解決する枠組みを示すという意味では、これは国民に対して強いメッセージを出す、そういう機会にはなり得るわけですよね。そういうふうにとらえることはできませんでしょうか。

甘利国務大臣 日本がどこまで踏み込んでできるか。これはなかなか、正直、現状の私の立場で、一人で原子力政策の機微にわたる部分について進んでいくことができないという立場は御理解いただきたいと思いますが、私自身、日本の原子力政策を支えてきた技術が、世界、特にアジアをしっかり支えていくべきだというふうな思いは、非常に強く持っております。日本だけがしっかりやっても、よそがしり抜けになっていたら、これは何にもならないわけでありますし、アメリカも原子力について前向きな姿勢が出てきたし、世界が追い風になってきた中で、日本が果たすべき役割は従来よりはるかに大きくなってきているということは実感をしております。

細野委員 では、原子力について最後、済みません、しつこく聞き過ぎました。

 一つキーワードはあってもいいかなと思うんですね。MOX・フォー・ピースというのはおもしろいキーワードだなと思ったんですが、確かにちょっと日本には早いかもしれません、今の日本のMOX工場がまだできていない現状を考えると。できていないところに外から持ってきてやろうというのは早いかもしれないけれども、アジアトムというのはやはり一つのキーワードになるんじゃないかと思うんですよ。これは古くて新しい議論ですね。ユーラトムが五十年以上前にできて、ヨーロッパはIAEAに加えてユーラトムが機能しているので、ウランの安定供給であるとか、いろいろな研究開発が進んでいます。

 それで、アジアにアジアトムをつくろうという話は前からあるんだけれども、なかなかできない。日本が思惑を持って見られたり、いろいろな国内的な事情をそれぞれ抱えてうまくいかなかった部分はあるんですが、いろいろやれることはあると思うんですよ。監視機関のいろいろなハーモナイゼーションみたいなこともできるでしょうし、さっき私が申し上げたシーレーン防衛なんかも、実はアジアの中だけではうまくいきませんから、必ず、ウラン濃縮とか再処理、一時的にはヨーロッパまでやらなきゃなりませんから、そのシーレーン防衛も一緒にできますね。この核燃サイクルを日本の国内だけで完結するのじゃなくて、アジアの地域である程度役割分担をしていきましょうという議論も、私は最終的にはあってもいいと思うんですよ。

 そろそろ、いろいろな国際環境を考えると、政府としてアジアトム、場合によってはヨーロッパというよりはオーストラリアなんかも加えてもう少し枠組みを広げてもいいかもしれませんが、これは検討するべき時期に来ているのじゃないかなと思うんですが、先ほどの議論も踏まえて、大臣、在任中にそういうことについて、例えば省の中でも、省を超えても結構ですが、御検討するお考えはないでしょうか。

甘利国務大臣 このユーラトムの構想は、NPT条約ができる前に、保障措置を自分たちでやると。その後、IAEAができて、両方で査察するということになっているし、それが一番のスタートの、発想の原点だと思うんですけれども、アジアでそういう枠組みを考えるというのは一つのお考えだと思います。

 事実、今動いている動きは、私も参加して動いているわけですけれども、これは、それぞれアジア地域において、あるいはもっと広い枠組みで原子力協力をしていこうと。一国でフルスペックで完結するということは、日本は可能かもしれませんけれども、ほかは不可能ですから、それを相互補完していこうというのは、そういう方向で進んでいっているところでありますし、そうすべきだと思っております。

細野委員 ぜひ御検討いただきたいと思います。

 時間が参りましたので、これで終わりにしたいんですが、最後にちょっと、北神委員に御許可をいただいて、済みません、一問だけ。

 いよいよ天下りの法案が来週あたりから審議をされるのではないかというふうに言われております。私も、この経済産業委員会でも、何度もかなりしつこく天下りの問題をやっていまして、また場所をかえてやるんですが、一つだけ、こちらに置き土産じゃないんですが、天下りの問題で、私は前も一回質問をして、経済産業省で、これは一番まずいなと思っているのが自転車の天下りなんですね。自転車の補助金を使った天下り、これは目に余ります。

 二年前に、さんざんこれをしつこく私はやったんですが、そのとき出していただいた資料だと、平成十七年度に補助金を受け取っている上位三十位の団体、そこに天下っている役員の人の数だけで、二つ補助金があるんですが、機械振興という補助金の方が百二十四人、そして公益振興の方が二十九人、合わせると百五十人以上の方が天下っています。直接的な国の補助金じゃないんですが、公営ギャンブルですから、公営ギャンブルのお金が補助金先に流れて、そこに皆さん天下っていられるわけです。これは、認識をまずしていただきたいんですね。法案をやりますから、そのときにまたやりたいと思います。

 法案の前に、どれぐらい天下りが二年前から減っていて、どうなっているのかということを調べておいてくださいというふうにお願いしておいたんですが、今の時点でわかっていることがあれば御答弁をいただきたいと思います。

細野政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の、日本自転車振興会の行っております機械振興補助事業、それから公益振興補助事業でございますが、十八年度の補助金交付額のそれぞれ上位三十位の公益法人について、国家公務員出身者及び当省の出身者が役員として就任している数について調べてみました。

 機械振興補助事業につきましては、常勤、非常勤を合わせまして総役員七百五十三名の中で、国家公務員出身者が百二十五名、うち当省出身者が百十六名でございます。それから、公益振興補助事業につきましては、総役員三百三十五名中、国家公務員出身者が四十九名、うち当省の関係者が十六名でございます。

 なお、今言及がございました、十七年にお問い合わせをいただきました際の国家公務員出身者の範囲と、今お答えを申し上げました国家公務員出身者の範囲につきましては、昨年の八月十五日に公益法人の設立許可及び指導監督基準が改正されました関係で、国家公務員出身者の範囲が拡大しております。そういうことで、両者の間には相違があることについては御理解を賜りたいと思います。

細野委員 若干、定義が違うということですが、大臣、数からいうとふえています。やはり天下り、これはお土産つきで出すという発想の典型ですよね。私は、これは減っていると思っていましたから、正直、憤りを覚えています。補助金の出し先については適正にやりますと二年前、あれだけ裏金つくって言っていて、ふえているじゃないですか。こういうことでやっていちゃいかぬと思うんですよね。

 これはまたばっちりやります。天下りには、我々は絶対に断固として闘う。大臣もその意識を持っていただいて、こういう問題を見ていただきたい。そのことを最後に言って、質問を終わります。

上田委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 お疲れさまでございます。私も、きょうは特定放射性廃棄物の最終処分について質問をしたいというふうに思います。

 法案そのものより体制の話、先ほど、近藤委員からも質問、やりとりの中でございましたが、本当にこの体制でやっていけるのかということと、後、外務省の松島政務官にもおいでいただきまして、エネルギー外交についてもちょっと触れたいということであります。

 私も、この問題、正直、素人であったのですが、初めてこの法案審査ということで勉強させていただいたわけでございます。近藤委員との議論でいろいろ、本当に今の体制で使用済み燃料の最終処分場というものが確保できるかという問題が指摘されたというふうに思いますが、私も素人ながら同じ感想を持ちまして、それについて若干質問したいというふうに思います。

 具体的に、やはり高知県の東洋町について質問をしたいというふうに思います。

 先ほどもお話がありましたように、先月二十二日に東洋町の町長の選挙がありまして、今回、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の立地調査受け入れに反対をした町長が当選をした。それで、先月二十四日、二日後に、大臣が閣議後の記者会見で、有権者が誤解をしたままその是非を問われると当然こういう結果が出るという発言をされたというふうに思います。誤解をされていたということですが、つまり、誤解を払拭するためにはやはり説明というものが必要だ。それで今回、私の知っている限りでは、原子力発電環境整備機構、NUMOがその説明に当たっていた。

 私がまずお聞きしたいのは、なかなか誤解が解けなかった、では、NUMO、あるいは国もある程度協力してやっていたというふうに伺っているんですが、どのぐらい詳細に、あるいは幅広く説明をされたのかということをお聞きしたいと思います。

舟木政府参考人 お答えいたします。

 東洋町におきまして、原子力発電環境整備機構、いわゆるNUMOと言っておりますが、ここがどのような広報活動を行ったかという御質問でございます。

 このNUMOは、国等と一緒に広報活動を展開しておりまして、住民の方や議会の議員の方、それから商工会等の団体のメンバー等々に対しまして、現地での説明会でありますとか有識者を招いてのシンポジウム、それからガラス固化体の実物大模型の展示や、ビデオやパンフレットの配布等々の広報を実施しております。

 これらの説明におきましては、地層処分事業の必要性や安全性、また段階的な調査地区や最終処分施設建設地の選定手順等を中心に、住民の方々の理解が得られるように努力をしてまいったところでございます。特に、南海地震の地層処分施設への影響、これが地元の方々、非常に御心配ではないかということで、これにつきましては、専門の学識経験者を招きまして勉強会を開催しております。また、所在地の市町村長や知事の意見に反して概要調査地区等の選定を行わないということにつきまして、これも直接、町の議会の議員の方に説明をしたりといったようなことをやってきておりまして、丁寧な対応に努めてきたと考えているところでございます。

北神委員 ありがとうございます。

 どのぐらいの期間、そして、例えば説明会だけでもいいんですが、何回ぐらいやったのか。その辺の、要するにどのぐらい一生懸命やられたのかをちょっと教えてほしいと思います。

舟木政府参考人 東洋町におきましては、昨年の八月から説明会を行っております。説明会は合計、行政、議会への説明会として四回行っております。また、勉強会は、町などが主催した勉強会にNUMOや国がお伺いして説明をした勉強会でございますが、昨年の九月以降五回程度やっているところでございます。

 また、ことしの一月に東洋町から応募があったわけでございますが、この応募後におきましても、議会の特別委員会での説明等々、行政や議会に対しましては三回説明を行っておりますし、また、住民の方々への説明につきましては、専門家を呼んできましたシンポジウム等々を数回実施しているところでございます。

 選挙の期間になりますと、私ども国家公務員は選挙活動をできませんものですから、選挙の期間中は控えています。

 以上でございます。

北神委員 ありがとうございます。

 昨年の八月ぐらいから、かなり詳細に説明会とかを開いてきたというふうに思うんですよ。ただ、もちろん説明が足りないというんだったら、これは切りがない話ですから、幾らでもそれは数をふやしたり、そういうことはできるかもしれませんが、やはり説明が足りないというのもなかなか当たらない話かなというふうに私は個人的に思ったんです。しかしながら、大臣は会見の中で、今回は誤解に基づいてこういった結果になった、その誤解を解くためにやはり説明の方をしっかりしていかないといけないというふうにおっしゃったと思うんですが、これ以上、要するに今回、何が足りなかったのかというふうに認識されておられるのか、お聞きしたいと思います。

甘利国務大臣 恐らく、最終処分施設に対する住民の方々の漠とした印象が、何となく危険なものがやってくるという漠然とした不安を払拭し切れなかったんだと思います。

 現実に、選挙に関してまかれているビラが、この間もちょっと触れましたけれども、事実誤認も甚だしい内容ですね。極めて不安をあおるような、アジテートするような文章でありまして、脳裏の一部にでもそんなことが本当に万に一つも起こるんだろうかということが残れば、これは、もうそんなもの来なくてもいい、来ない方がいいんだという判断が働くと思うんですね。ですから、本当は関係者、賛成、反対の方がお互いに同席する中で、こういう不安についてはどうなんですかということをきちんと説明できるということでもあれば、もっとよかったのかなという思いもいたします。

 とにかく、普通の知識があれば、とてもそんなことはあり得ないというような、まけるはずがないというような文がまかれているということですから、ふだん原子力とそう直接身近に接していない方々があの種の広報に会ったら、これはやはり相当な不安を抱くんだと思いますし、それでどっちがいいですかという行動を、二者択一を迫られれば、やはりそっちに振られる可能性は高いんじゃないかなというふうに思っております。

 国として、心配はありませんということをきちんと、信頼性の確保、原子力施設全般に対する信頼性の確保をもっともっとやっていかなければいけないなと。だから、選挙の中で候補者同士が、いや、これは安全です、安全じゃないですというよりも、もっとこれに関してオーソライズされたところが客観的にきちんと説明をするという機会はもっとあった方がいいんだろうと思っています。

北神委員 漠とした不安があって、それがなかなか払拭されない。選挙の中でそういうビラがまかれてしまって、その中で当事者たちが、余り専門家じゃない当事者たちが、安全だ、あるいは安全じゃないと。そういった混沌とした状態の中でこういう結果になってしまった。

 お聞きしたいのは、通告にはないのでわかればで結構なんですが、選挙の前の住民の感触と、やはりビラが、ビラは選挙期間中にまかれたんですよね、その前はまかれていないのかな。その前からまかれているんですか。やはり、いわゆる反対派のそういうプロパガンダ活動が動いてから住民の感じも変わったということは、そういう感じはしましたか。

舟木政府参考人 先生御指摘のとおり、私の感じを申し上げれば、昨年の八月から説明会を開始したと申し上げましたが、昨年の秋から冬ごろにかけては、地元の方々も冷静にお話を聞いていただいていたんじゃないかなというふうに考えております。

 ただ、昨年の暮れごろから、そういった意味で、推進派の方と反対派の方と非常に議論が厳しくなされ始めたものですから、そのあたりから雰囲気は若干変わったのかなという、個人的な感じでございますが、こういう状況でございます。

北神委員 まあ、印象論ですから、そんなに重きを置くつもりはないんですが、やはり、反対派のこういう活動があると、幾らこれは説明をしてもなかなか厳しいなと。

 それと、選挙の中で、素人の人たちが安全だとか安全じゃないとか、そういった議論をしていても、先ほど大臣がおっしゃったように、権威のある国がそこに出てきて、いやいや皆さん違うよと言うのも、選挙期間中、先ほど話がありましたように、それもなかなかできないということで、私も、私は基本的にこの話、最終処理場というのは当然やるべきだと思いますし、この法案についても基本的な方向性というのは正しいと思っているんですが、とにかく難しい、本当に難しい問題だというふうに思っているわけでございます。

 それで、先ほど近藤委員から、だから、そもそもの体制というものを見直していく必要があるんじゃないかということで、二つぐらい論点があったと思います。

 一つは、先ほど、NUMOに任せるのはちょっと信頼性に欠けるんじゃないかということですね。だから、国がしっかりと責任をとるべきじゃないかということが一つと、もう一つは、今の公募スキームの中で、文献調査の中で交付金を上限として十億円出す、周辺地域を含めたら二十億円入れる、ただし、全体の建設、最終的な建設までの全体像というものははっきりしない、そこをやはりはっきりすることが、国の姿勢というものを示して、これもまた信頼性につながるという話がありました。私は、この二点について、もっともだなというふうに思って、ぜひそれも審議会の中で抜本的に検討していただきたいというふうに思うんです。

 付随的な論点として、では、NUMOじゃなくて国がこれをやり始めたとするじゃないですか、公募方式を。私は、今の話を聞いていると、ではNUMOだから今回説得力に欠けたのかというと、必ずしもそうじゃないと。国がやった方がそれは説得力があったかもしれないけれども、ではそれで今回の選挙の結果が変わったのかというと、そうでもないなというふうに私は率直に思うんですね。

 要するに、この公募方式それ自体に欠陥があるんじゃないか。欠陥というのは言い過ぎかもしれませんが、この公募方式で、文献調査から始めて概要調査、精密調査、最終的な処理場の決定、建設、そこまでいくというのが非常に難しいんじゃないか。

 もちろん、これはもう長いいろいろな議論の中でこういうことに落ちついたんだというふうに思うんですが、公募方式というもの自体が私も審議会でぜひとも見直していただきたい。どうも、役所の皆さんの話を聞いていると、公募方式は、これを動かさないんだ、でも、ほかの周辺の話というのはいろいろ今後見直していくんだということが言われているんですが、私はやはり、この公募方式も本当にこれで機能するのかということを、疑問を呈していきたいというふうに思っているわけでございます。

 この方式は、今財政が非常に厳しい地方が交付金をもらえるという、ある意味ではあめを与えることによって、それで手を挙げるということを期待している、そういったスキームだというふうに思いますが、何回も申し上げますが、今回の東洋町で、それは恐らく、文献調査で手を挙げるというのはなかなか難しいんじゃないかというふうに思います。そこで幾ら国が出てきて、説明をもっと詳細に、もっと説明会をふやしたり展示会をふやしたりしても、なかなかそれは限界があるんじゃないかというふうに思います。

 それがもし正しいのであれば、やはり今の方法では、ただただ混乱を招くだけで、最終処分場についてなかなか決着を見ることができないというふうに思っておりますが、その点について大臣はどういうふうにお考えでしょうか。

甘利国務大臣 世界じゅう見ても、公募方式のところと政府が主導的に候補地を選定して理解を求めるところと両方あります。やはり、どっちでやっても難しいですね。政府が候補地を絞り込んでいってここということがスムーズにいくかといえば、それはそれでやはりかなり悩みもあるようでありますし、今、世界じゅうでは半々ぐらいなんでしょうかね。

 日本は、旧動燃が調べただけで地域の意向無視という反論が渦巻いて大変な事態になったという、いわばトラウマがありますから、やはり地域から手を挙げていただくのが、それは一番。そして、ステップアップするごとに一つ一つ了解を確認しながら進んでいくという方式に至ったわけでありまして、世界の例を見てもどちらがいいという判断がなかなかできないところに難しさがある。

 ですから、今まで原子力に対してアゲンストな状態の中でしたから、これから原子力を進めざるを得ない、地球環境上もそうだということをみんなが認識してもらう環境ができて、そういう中で、最終処分地というのは、原子力発電を始めた以上はもう避けて通れない課題だ。そして、その安全性は、いわば、最終的な放射性廃棄物を、熱も放射線レベルも冷ましておくだけの施設ですよ。熱も問題なくなって、放射能レベルももうやがてウラン鉱山以下、つまりウラン鉱山のそばにいる以下になるんですよ。要するに、冷ます施設で、置いておくだけですから、そこで何か新たなことが起こっていく施設ではないんですよということを理解してもらう。

 いかなる施設も原子力という名前がつくだけで、世界じゅうなかなか大変なんでありますけれども、それでも、地球環境温暖化防止の言ってみれば最強のツールですから、温暖化だってほっておけば、これはそんなこと、ほかの心配する前に地球に大異変が起きるじゃないですか、それを食いとめるためですよということ等々、次第に原子力における環境が整ってくるということもあわせて期待をしたいというふうに思っております。

北神委員 私も、その大臣の最後の部分は全く同感で、これはもう避けて通れない話だ、最終処分場というのは、もう絶対これは決着を見ないととてももたないと。加えて、最近、温暖化の問題があって、そういった意味で見直しの機運も徐々にある。これが最近、電力会社のいろいろなスキャンダルの問題で水を差すようなことになってしまっているのは非常に残念ですが、そういった機運もある。

 私は、昭和六十年代に旧動燃が衛星撮影をして、それで問題になって、訴訟問題になった。このトラウマ、まさにトラウマなんですよね。このトラウマを乗り越えていかないと、大臣が記者会見とかでもおっしゃっている、国がもう少し前に出る、慎重ながらも前に出るというふうに言われますが、そのトラウマを乗り越えて、やはりいろいろ六十年代とは状況が変わっているんだと。もちろん、いまだに東洋町の反対運動みたいなものもあるんですが、全体として、大義名分というものをより鮮明にしていく必要があるというふうに思うんですね。

 それで、国が直轄で選定をする方式と公募方式と両方ある、大体半々ぐらいで、いずれも難しいというのは、私もそのとおりだというふうに思います。最終的な建設に至るまでは、これはどこの国を見ても非常に難しい。

 ただ、日本の公募方式を見ていると、文献調査までが公募方式になっている。この文献調査というのは何なのかというと、その名前のとおり、いろいろな古文書を見たり、昔、江戸時代に地震があったかどうかとか、そういう本当に資料をあさるような話ですよね、基本的には。中の地域の老人の方に昔話を聞くとか、そういう話も役所の方からありましたが。そういうところで、つまり、この地域が本当に最終処分場として条件がそろうかどうかもわからないような地域について公募でするというのは、私はちょっとやり過ぎじゃないかと。

 つまり、文献調査ぐらいは全国ローラーでやって、ちょっと乱暴な議論かもしれませんよ。でも、ローラーでやって、わからないわけですよね、まだ本当に客観的な条件がそろっているかどうか。それをやって、それで、結果としてはこういう地域が条件が整っていますよと。そして、これはもちろんいろいろな批判を浴びますよ。でも、どうせ批判を浴びるわけですよ、この問題は。それを避けているから全然進まないわけですよね。

 私が申し上げているのは、まず客観的な条件を、極端に言えば机上で判断できるような話を、これを受動的にというか待ちの姿勢で手を挙げるまで待つということ自体が極めて能率が悪いというか、効率が悪い。そして、結局、結果としては先送りになってしまっている。だから、少なくとも、公募方式の中でこの文献調査の部分だけは国直轄でやる。

 それは、もちろんいろいろな批判を浴びると思います。動燃の再来かもしれませんよ。でも、動燃の訴訟の結果でも、結局それがだめということじゃなくて、ちゃんと情報公開をしなさいよということであって、別に何か悪いこと、法律に違反しているようなことをしているわけではないので、政治責任はいろいろそういう議論はあるかもしれませんが、でも、この問題は、大臣がおっしゃっているように、絶対にやらないといけない、解決をしないといけない、先送りは許されない。そうであるならば、やはり少しでも進めるためには、文献調査ぐらいは、こんな公募方式で幾ら説明を強化しても無理だと私は思いますね。ですから、そこぐらいは一歩進むぐらいの気概をぜひ示していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

望月政府参考人 いろいろな経緯があって公募方式に決まったという先ほど来のお話がございましたけれども、ただ、今回の事態を拝見していても、本当のポイントは、公募方式か申し入れ方式かということよりも、公募方式であったとしても、国がどれだけ腰を入れて地元と接触することができるかということにむしろかかっているんではないかという気が、私見ですけれども、非常にするわけでございます。

 例えば、今回の公募方式で参りますと、過去のトラウマとおっしゃいましたけれども、ずっと引っ張られたおかげで、地元に国が説明していくのには、呼ばれないと絶対に行かないという仕組みに実は運用上なっていたわけでありまして、公募であったからといって、国が説明に行くのを私はそこまで待つ必要はないんじゃないかと。つまり、国の説明は、別にもっと行ったらいいじゃないかと。そういうようなことを含めて、国のサイドにおける地元対応の姿勢というものは、何方式をとろうが、やはりもっと積極的にやるべきだ。

 さっき大臣おっしゃった、慎重かつ積極的に、積極的かつ慎重に、そういうお話というのは、まずそこじゃないかというふうに思います。今度、多分審議会でも御相談をいろいろして、御意見を賜りたいと思っていますのは、そういう方式ということよりも、国の役割というのをもう少し、どういうふうに果たすやり方があるのかということを原点に返って少し議論をするということから始まるのかなというふうに思っておりまして、方式をあっちにしたら絶対うまくいくという話ではないというふうに思っております。

北神委員 国がもっと力を入れて、地元と接して、いろいろ説明責任を果たす。これは、もちろんぜひやっていただきたいし、大臣もそれを表明されている。でも、私は、最初にいろいろ質問をしたのは、それでもこれはなかなか難しいと。もちろん、これはどんな方式をとっても難しいんだけれども、文献調査ぐらいはやはり進めないと、そもそも、公募で手を挙げて、そこが本当に客観的条件がそろっているかどうかもわからないようなことに物すごい時間を、そしてコストをかけるというのは、非常に私は効率が悪いんじゃないかと。

 ですから、もう時間がないので、大臣に最後に伺いたいのは、この問題について今度審議会でいろいろ議論される。公募方式もぜひ、結論はそこで専門家がいろいろ議論されると思いますが、やはりそれも論点に含めるべきじゃないかというふうに思うんですが、公募方式自体の見直しを。それを実際どうするかはその審議会の議論によるんですが、その点について、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 今回は、それこそ国が過去のトラウマも引きずってなかなか前へ出られないということもあって、我々の反省点もたくさんありますから、現状の枠組みの中で何が足りなかったかということを中心にやらせていただきたいと思います。方式を全く変えると、またゼロからの組み立て直しということになって、またそれで、やれ、よかった悪かったという議論で延々と費やすと思うんですね。とにかく現状の方式でどこが問題か、どこが足らざる点かということをしっかり検証したいと思っております。

北神委員 延々と議論が続くという話ですが、公募方式全体を見直すというよりは、一部の改変とか微調整とか、いろいろあると思いますので、ぜひそれは議論の俎上にのせていただきたいと思います。

 それで、時間がまだ数分あって、鷲尾委員のお許しをいただいて、少し時間もいただきますので、松島政務官に御登場いただいているので、エネルギー外交について御質問したいというふうに思います。

 これは、アメリカとインドが民生の原子力協力をやった。これは私も余り知らなかったんですが、エネルギー外交とか原子力協力に詳しい人にしてみれば、物すごい衝撃的だったと。というのは、インドというのは、もともと核実験をやって、事実上、核兵器保有国になっていた。そのとき、アメリカと日本が仲よく制裁を科していたわけですよ。それが、九・一一の事件の後にアメリカが、やはりインドは大事だということで、しかも、インドは一方で不拡散を厳格に守っている。核ドクトリンというものを発表して、核の先制攻撃というのはしないとか核実験のモラトリアムとか、そういったものを宣言している。そういったことで、ブッシュ政権が平成十七年にインドのシン首相と共同声明を結んで、事実上インドを核兵器保有国として認めて、民生の原子力協力を合意したということであります。

 日本は、私の知る範囲では、核の不拡散の姿勢というものを持っていて、こういった新興の核兵器保有国というものをなかなか認めたくない、あるいは、場合によってはプルトニウムを核兵器に利用することができることにつながるような民間の原子力協力というものに対して非常に消極的じゃないかなというふうに思っているんですが、実際は、外務省の立場というのはいかがでしょうか。

松島大臣政務官 日本がどうするかということよりも、現在の状況を申し上げますと、確かに、おっしゃいましたように、アメリカとインドの間で民生の原子力協力について合意がなされました。さらに、昨年の十二月、米国におきまして、米印原子力協力法というのが議会で承認されて成立しております。

 しかし、アメリカも直ちにこれで協力をすることはできないような仕組みになっています。と申しますのは、アメリカも日本も入っております原子力供給国グループ、NSGと言います、このNSGは原子力の資機材や技術の輸出管理というのをやっておりまして、他国へこの資機材や技術などを移転する場合、この決まりは非核兵器国へ移転する場合となっていますが、これは、いわゆるNPT体制で言われている五カ国以外の国に移転する場合には、その国がIAEAの包括的保障措置が適用されている国であることを条件としております。インドは包括的な保障措置は受けておりません。ですから、アメリカも直ちにはこの原子力分野、民生分野でも協力することはできないで、このNSGというグループの取り決めに対して、何とかここと調整しようということで議論をしております。日本もその議論に加わっております。

 そしてまた、G8サミット、これは年に二回総会が開かれていまして、二〇〇六年の総会でも、二〇〇七年、ことしの四月の総会でもそういう議論がなされましたし、去年のG8サミットでもこのアメリカとインドのことについては議論になっております。

 ですから、まだアメリカもスタートできないでいるわけですが、日本の立場といたしましては、米国がインドを戦略的に重要な国だと考えていることは日本も認識しておりますし、日本もインドに対してそのような認識を持っております。

 そしてまた、ずっと出ている話でございますが、インドはエネルギー需要が増大している、そしてまた地球温暖化対策を考えますと、原子力を活用することは一般にはよいことである、米国も日本もそこまでは同じ認識であります。

 ただ、先ほど委員がおっしゃいましたように、日本は、核兵器不拡散条約に加入していない国に対して、インドのような国に対する原子力協力については、やはり国際的な核軍縮及び不拡散体制の影響があると考えておりますので、今言いましたようなマルチの、原子力供給国グループのレジームの中での議論に日本も積極的にかかわり、G8サミットの場での議論にも大きくかかわって、インドの姿勢をもっと明確にしていく。インドは、民生用については査察を受け入れるんだと言っていますけれども、これはアメリカに対していわば口約束をしているだけで、十四基については受けると言っていますけれども、それがきちっとした法的定めになるのかどうかといったようなこと、その他いろいろな議論を、その保障というものを得られるように、それを日本は議論の中心国として責任を持って今まだやっている途上という状況でございます。

北神委員 わかりました。

 まず、原子力供給国、NSGについて、私の理解では、イギリスとかフランスとかロシア、この三国については、インドに対して、もう解除すべきじゃないかという議論、議論なのかあるいは決まったのかわかりませんが、そういうふうに聞いているんですよ。実際そうだと思うんですよ。

 つまり、私が申し上げているのは、ですから、アメリカがそれに制限されているというのはよくわからないんですよね。イギリス、フランス、ロシアというのは、アメリカがそういう動きをしたから、彼らもバスに乗りおくれるなということで手を挙げ始めたというふうに思うので、そこはちょっと事実関係がわからないなということが一つ。

 いずれにせよ、これはアメリカだけじゃなくて、一つの世界的な流れになってきていると思うんですよ、エネルギー外交の。今申し上げたイギリスもフランスもロシアもそうですし、さらに言えば、アメリカはインドの戦略的重要性を認識している、日本も同じようだと。これははっきり言えば中国に対する牽制の話だというふうに思うんですが、その中国でさえ今インドに接近をして、どうですか、原子力協力しましょうかと言っているんですよ。

 ですから、日本がそこで、余り昔ながらの、冷戦時代の核不拡散の姿勢に固執をして、核不拡散の姿勢に固執するのはいいんですよ、それは大事な話だと思いますが、ただ、現実に世界がインドというものを一種自由主義国家として、我々の国際社会の一員として、正当なメンバーの一国だ、それで、核兵器保有国としても、先ほど政務官が言ったようなそういう保障みたいなものさえ得られれば、日本も、バスに乗りおくれるなというのは、また第二次世界大戦をほうふつとして、余り適当な表現じゃないかもしれないけれども、やはりこれは、日本にとっても、産業政策としても非常に重要な話でありますし、さらに言えば、外交の観点から、日本とインドの外交関係を緊密にするという意味では非常に大事だ。インドも、御存じのように、電力について非常に需要が高まっている、日本の世界的な技術というものを非常に欲しがっている。

 そういった中で、こういった民生の原子力協力というのは非常に大事だというふうに思うのですが、いかがでしょうか。

松島大臣政務官 まず、第一問の事実確認につきましては、外務省では、フランスとロシアが前向きであるということはつかんでおりますが、イギリスについてはちょっと確認できていない状況でございます。

 おっしゃいましたように、フランス、ロシア、さらには中国ということも言われましたが、こういった国々については、前向きかもしれませんが、それで直ちに今このレジームを崩したというわけではありませんし、もちろん先に言い出した方が商売上は得なのかもしれませんが、こういった例えば中国にも武器を供与するような国々と日本とは状況が違うこともございますし、そしてまた、今、アメリカ、フランス、ロシアというのは、彼ら自身がNPTにおける核保有国として認められている国で、そして査察も、彼らの民生施設にも余り査察を受けていない、全面的には受けていない、日本の六ケ所村みたいな厳しいことはなされていない国々でありまして、ですから、同じようなことで日本が突き進んでいけるかといえば、そうじゃない。

 先ほど来問題にされておられましたように、文献調査というだけでもその地域の町長さんが大敗をする、そういうような国民感情もやはりございますので、商売ベースに先頭を争うようなことはできないだろう。ただ、日本も断じてだめだと先頭切って反対をしているわけではない、その中での議論をしているという状況でございます。

北神委員 要するに、申し上げたいのは、核不拡散というのは、道徳的な部分と、道徳的というか日本のアイデンティティー的な部分と、戦略的な部分もあったと思うんですよ、岸信介さんが最初にこれを言い出したときには。その状況がやはり変わっているし、国によっても違うから、商売上の話だけではなくて、国家の外交戦略としてもやはり一つのツールだということを申し上げたいだけで、そこは戦略的な柔軟性を持って対応していただきたい。

 そして、もうここで終わりたいと思いますが、それを松島政務官に申し上げたいのと、再度、甘利大臣には、やはり旧動燃のトラウマを乗り越えて、やはり国が責任を持ってやらないといけないんだ、どんな批判を受けてもこれはもうやらざるを得ない、そういう立場なので、審議会等で本当に全体的な、根本的な議論をしていただきたいということを強く要請して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 早速でございますが、質問に入らせていただこうと思います。

 私の地元新潟、柏崎そして刈羽村、世界最大の原子力発電所がございます。そしてまた、巻町というところがございまして、住民投票で原子力発電所の誘致が否決されたという場所もございます。日々、これらの地元の方々の感情といいましょうか、頭の中を皮膚で感じておるわけでございますけれども、そういう意味で、原子力政策、今、大変重要な岐路に立っておるのではないかと私は日々認識しておるところでございまして、こういった観点から御質問させていただこうと思っておる次第でございます。

 まず、今回の、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律案ということでございますが、放射性廃棄物の個々の廃棄体でありましても、処分場という関係からいたしますと二重、三重の規制がなされておる、これは原子力政策大綱でも指摘されておるところでございます。放射性廃棄物の処理処分については、発生者、発生源によらず放射性廃棄物の性状に応じて一元的になされることが効率的かつ効果的である場合が少なくない、諸制度の運用については国が一元的に整備していくことが必要であるというふうに原子力政策大綱でうたわれているわけであります。

 この特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律案、この法律をつくるに当たりまして、こういった観点を盛り込むことが必要であったかなというふうに私自身は思うのでありますが、この点について、経産省さんのお考えというのをお聞きしたいと思います。

 政務官が御質問にお答えいただくという格好でいただいておりますけれども。

高木大臣政務官 済みません。ちょっと打ち合わせと違ったもので、失礼いたしました。

 まず、廃棄物といいましてもさまざまな種類があることは御承知されていると思います。

 まず、文科省との関連につきまして姿勢を申し上げたいと思いますが、大学、研究所、そしてまた医療機関、また工業施設等も含まれますが、こうしたところにおきまして排出されます放射性同位元素利用によります放射性廃棄物につきましては、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律、RI法の規制対象となります。ただ、こうした廃棄物のほとんどのものにつきましては、放射能濃度が低く、浅い地中での処分が可能でございますので、地層処分は不要であると考えております。

 今回の原子炉等規制法の改正につきましては、経済産業省が所管しております高レベル放射性廃棄物等の地層処分につきましての安全規制を追加するというものでございますので、RI法の規制対象とは別のものとしております。したがいまして、この法改正の検討過程におきましては、文科省との間で特にこうした二重規制の議論はいたしておりません。

 この後の回答につきましては大臣からいただくという話に……(鷲尾委員「その前にちょっと一つ」と呼ぶ)そうですか。はい、わかりました。ということでございます。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 それで、当初質問した私のコメント以上に政務官が御答弁いただいたんですが、文科省さんとの連携は余りとれていないという話でございます。

 現状といたしまして、例えば、これは研究所の方ですけれども、人形峠環境技術センターでは、原子炉等規制法の加工事業による規制と使用施設による規制というのを受けているために、共用可能な施設を規制ごとに複数設置しているということなんですね。

 こういうことが現場で行われているという実態があるわけで、私は見ていませんが、同じような施設が、法律にのっとるがゆえにできてしまっている。やはりそれは重複であって、こういうものを一元化していくことがコスト削減というものにもつながりますでしょうし、管理する側としてもやはりそちらの方がいいんじゃないかなというふうに思う次第でありまして、こういう現場での手続の簡素化といいましょうか、監督する側にとっても、そしてまた現場にとってもメリットがあることだと私は思うわけですけれども、これをどんどん進めていくべきだと思いますが、大臣のお考えをいただきたいと思います。

甘利国務大臣 原子力委員会の平成十七年の原子力政策大綱では、放射性廃棄物の処理処分は、発生者であるとか発生源によらずに一元的になされることが効率的かつ効果的である、国は必要な検討をすべきであるとの方針が示されたわけであります。

 このことから、将来、これらの放射性廃棄物の処分について連携して推進をしていくということが重要だというふうに思っておりますが、連携して推進をしていくということが必要な場合に、この大綱の趣旨も踏まえまして、経産省と文科省とは連携をとりまして、適切に対応していきたいというふうに考えております。

鷲尾委員 ぜひともその連携というのを、常時というか、法案をいろいろつくるに当たって、連携をとっていただきたいなというふうに思うんです。

 きょうは文科省さんにも来ていただいておりますけれども、原子力機構において、高速炉サイクル計画にのっとって今研究を続けられているところではありますが、いわゆる研究所や大学で出る放射性廃棄物の費用分担というのがどうなっているのかというのをちょっとお聞かせいただきたいのと、いわゆる電力事業との違いといいましょうか、今回、特定放射性廃棄物として、また新たに長半減期低発熱放射性廃棄物も含まれるという話でありますし、それに従って、当然、その積立金も含めて、今回、改正によって新たに積み立てていくという話があるわけですけれども、原子力機構側としては業務範囲が広がるであろう。一方で、研究を鋭意続けていかなくてはいけないだろう。

 この観点からいきまして、この処分費用の取り扱い、現状がどうなっていて、これからどうしていかなきゃいけないと考えているのかということにつきまして、文科省さんにお聞きしたいと思います。

村田政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力開発機構を例にとりながら、放射性廃棄物、研究所特有の廃棄物がございますので、その処分に関連しての費用負担等々につきまして順次御説明申し上げたいと思います。

 日本原子力研究開発機構がみずから発生いたします放射性廃棄物の処理処分ということでございますと、独立行政法人でございますから、中期計画というのがございます。その中で、計画的かつ安全かつ合理的に実施して、発生者としての責任を果たしていく、そういう基本的な考え方が示されてございますが、これは、電気料金によって処理とか処分費用を確保することが可能である電力事業者とは異なりまして、研究所でございますので、研究機関でありますところの原研機構、これは大学なんかも同じなんですけれども、処理処分費用をあがなう、転嫁することができるような、そういう事業収入というのが非常に少のうございます。

 したがいまして、文科省といたしましては、いわゆる運営費交付金を交付することによりまして必要な費用を措置しているという実態でございます。

 原研機構のような放射性物質を取り扱う施設でありますと、必然的に放射性廃棄物が発生します。これは避けられないことでございます。したがいまして、今後とも、私ども文科省といたしましては、廃棄物の処理処分費用を計画的に確保する、そういうことを通じまして、原子力の研究開発自体の円滑な推進と廃棄物の処理処分を確実にやっていく、そういうことをバランスをよくとりながら進めていくよう配慮していく、そういう基本的な考え方でやっております。よろしくお願いします。

水落大臣政務官 一元化についての見直し、それから経産省との連携はどうか、こういうことについてお答えをしたいと思います。

 日本原子力研究開発機構等に保管されております核燃料物質とこれら以外の放射性同位元素の両方を含む放射性廃棄物の処分につきましては、これまで原子力安全委員会等において検討がなされ、平成十八年四月二十日に安全規制に関する基本的な考え方が取りまとめられております。

 その一つは、これらを同一の処分場に処分する場合には、含有する放射性核種と放射能量を把握し、処分全体についての安全評価を行うことが適当であること、二つ目でございますが、原子炉等規制法及び放射線障害防止法による規制の基準や方法について、双方の規制における適切な調整が望まれること等が指摘されております。

 両法が規制対象物質の特性を踏まえて安全確保を図るための別個の規制体系であることから、先生御指摘の規制の一元化は難しいと考えられるところでございますが、RI・研究所等廃棄物の処分事業を具体的に推進する際には、原子力安全委員会等による指摘を踏まえて、必要に応じて経済産業省とも適切な連携を図って対応してまいりたい、このように思っております。

鷲尾委員 水落先生から一元化はなかなか難しいというコメントをいただきましたけれども、その難しいところを推し進めなきゃなかなか現場もうまく回っていかないというところでございまして、そこは鋭意連携をお願いいたしたいというのと、水落先生も新潟県の御出身でございますし、これは通告させていただいておりませんが、ぜひともひとつコメントいただきたいと思うんです。

 やはり高速炉サイクル開発というのは、今後日本の原子力にとって大変重要な技術であるというふうに私は認識しておるところでございます。特に、今回のプルサーマルで出てくるいわゆるごみ、廃棄物について、含まれている放射能が半減する期間というのは大変に長い。高速炉サイクルが完成すると、違う物質に変えることができて半減期が激減すると言われているわけでありまして、そういう意味でも、高速炉サイクルを開発するというのは、今、二〇五〇年で商業ベースで実用化することを目標としてやられているという話ですが、これは重点的に予算を投入しなきゃいけない問題じゃないかと私自身は考えておるところです。

 そういう意味におきまして、先ほど政府参考人の方から、これをバランスよく配分するというお話をいただきましたけれども、政務官からそこら辺の御意見をいただきたいんです。これはやはりしっかりと重点的に配分した方が、研究開発、人材育成含めて、二〇五〇年と言わず、ここまで言っていいのかあれですけれども、もっと前倒しにして実現していった方が日本のためになると私は思うんですけれども、政務官からのコメントをいただきたいと思います。

水落大臣政務官 先生の御指摘、そのとおりだと思っておりまして、これからのエネルギーあるいは地球の環境問題、そういうことを考えても、高速炉の問題は前向きに検討しなくちゃいけない、このように思っております。

鷲尾委員 政務官からのコメントをいただきましたので、ぜひとも予算配分についてもいろいろ御配慮をいただいて、長期的な展望に立って、短期的なバランスよりもやはり長期的な、どこに資源を投下しなきゃいけないかということを含めて、ぜひとも検討をしていただきたいと思います。

 それでは、またちょっと話をかえまして、近藤委員そして北神委員から質問があったと思うんですが、NUMOの話、そして東洋町の話について、経産省に少しまたお聞きしたいというふうに思います。

 公募方式の話ですけれども、先ほど北神委員がいろいろと質問をされておったところでありまして、このNUMOの公募方式について、現状の大臣の評価。現状の評価、これでうまくいっているのか、これから改善が必要なのか、改善するとすればどんな点を改善したらいいのかを含めて、ちょっとお聞かせ願えたらというふうに思います。

甘利国務大臣 なかなかうまく機能をするような手だてが不十分であるために、今回の東洋町の選挙でも、事前予測はぎりぎりまでかなり拮抗しているものだという声が、圧倒的な差になったのではないかというふうに思っております。

 公募方式は、世界でもその方式で順調に、順調にというか、大変なんですけれども、日本より進んで、具体的なめどがついているところもありますし、あるいは、国が決めて、調査をして、地元の了解を求めるという方式で進んでめどが立っているというところもありますから、どっちの方式がすぐれていて、どっちの方式が明らかに劣後ということではないんだと思います。

 ただ、いずれにしても、もっと国が前へ出て、きちんと説明をする。説明は、文献から概要、それから精密調査へ至る段階はこういうふうに進んでいくということと、手を挙げたが最後、絶対足を抜くことはできないみたいな誤解が生じないようにということと、いかに多重防護の安全な施設であるかということ、それから、活断層の調査とかいろいろやっていくわけですから、それで間違いないということは、要するに大きな地震の心配がないところということでありますから、むしろ、そういう自然災害からいえば、安全な場所ということが確認されるのでしょうし、いろいろな説明の仕方はあるんだと思っております。その辺をしっかりと総合資源エネ調の小委員会で議論をしてもらいたいというふうに思っております。

鷲尾委員 私が質問させていただいたのは、結果としてうまくいっていない、結果としてうまくいっていない以上、当初の計画といいましょうか、閣議決定で、二十年代前半に精密調査地区を選定する、平成三十年代の後半に最終処分施設建設地を選定するという、これは閣議決定でなされておるわけでありまして、結果として文献調査の公募に応じる自治体がないというのは、これはもう本当に大問題であるなと思っております。

 それは、広報の仕方、いろいろあるんだと思うんですけれども、基本的な認識として、我々は、これだけ電気を使っているわけですから、我々の世代でやはりこれをちゃんと、ごみをどう処分するかということも解決していかないといけない。やはり子供たち、孫たちの世代にこういう問題を先送りしてはいけないと思っております。そういう意味で、ちゃんと結果を出していかなきゃいけないというふうに思うわけであります。

 例えば、先ほど申し上げました最終処分計画の時限設定について、大臣、今、文献調査が平成十九年のこの時期において、結局どこも手を挙げていないような状況だよという認識の上に立って、原子力立国計画には、今後一、二年が正念場とあるわけですね、正念場と。この正念場であるという認識に従った行動というのは今どういうことをやっておるのか。悩ましいのはわかりますが、どういう行動を行っているのか、そして、これから行うべきと考えておるのか。正念場だというわけですから、その正念場の意気込みをぜひとも行動にあらわしていただかないと困るわけでありまして、その点、ちょっと明らかにしていただきたいと思いますが。

甘利国務大臣 原子力関連施設の必要性そして安全性、なかんずく、今最大の問題になっております最終処分地の設置について、国が積極的に前に出て、情報をきちっと住民の方々に伝達できる、そして住民の意思を尊重するという方式と、それから、いかに安全な施設であるかという情報がきちんと届くように、国が責任を持ってやりたいと思っております。

鷲尾委員 これは、責任を持ってやるのは当然として、具体的にどういう行動をするのかということをちょっと一つお尋ねしたいんですけれども、これも通告させていただいておると思うんですが、お願いをいたします。

望月政府参考人 文献調査の公募については、先般、東洋町の話が随分話題になりましたけれども、この間、私どもは、複数の地域でぜひ手を精いっぱい挙げていただいて、そこで、その中から、次のステップに向けてその精密調査の地域を選んでいきたいとか、そういう精密調査も複数であっても構わないというふうに思っておるわけで、ぜひ、そういう幅広くやっていくというプロセスを進めていきたいと思っておるわけでございます。

 東洋町の話が、確かにああいう政治プロセスの中に入ってまいりましたものですから、大変注目されておりますけれども、私ども、今でも、NUMOの方で幾つか重点的にPRをしなければいけないというところはあるわけでございまして、そういう意味で、地道な広報活動を引き続き中断することなくやるということがまず一つあろうと思います。

 その過程で、今回の、先ほど来御議論が出ております広報のやり方については、立ちどまることなくやらなければいけないんですけれども、こういったいろいろ経験の蓄積ができたわけでございますので、それを踏まえて、さらにどんな広報をきちっとしたらいいのかということを、むしろもう少し幅広く有識者の方々の意見を伺いながら加えていかなきゃいけないということでございまして、私どもは今別にここに立ちどまっているわけではないわけでございます。

 その中で、先ほどちょっとお話がございましたけれども、国としても、できれば、今までのように呼ばれてから行くということではなくて、少し積極的に前へ出てみる、若干全体の流れの経緯がございますので、おっかなびっくりのところはあるわけでございますけれども、前へ出ていくということをどういうふうにやったらいいかということも含めて検討していきたいというふうに思っております。

鷲尾委員 当然おっしゃることはよくわかりますし、研究を重ねて、ちゃんと手が挙がるところが出るようにやっていただきたいとは思うんですけれども、この原子力立国計画において、ここ一、二年が正念場だと言っている、では、この正念場での努力としての具体的な目標があるのかどうかということをちょっとお聞きしたいんですけれども。これも大臣に通告させていただいていて、大臣から御答弁をいただくということを経産省さんの方からいただいておるんですが。

望月政府参考人 今、抽象的に申し上げて申しわけなかったんですけれども、例えば広報広聴活動でも、各地域ブロックでのシンポジウムというのをやることになっておりますけれども、それも、三月、七月、八月、十月等々、十数回の、ことしも、既にやったもの、あるいは今後やらなければいけないものの開催を今積み重ねようとしているわけでございます。それから、そのほか、地域ブロック各紙での新聞広告、あるいはテレビ放映、それから、パンフレット、ポスター等の広報素材の全国配布、地層処分の模型展示車というのがあるわけですけれども、これの巡回の展開等々について、今すべきとされているものについて、引き続き実績を積み重ねるというところが現段階の状況でございます。

鷲尾委員 私は、原子力立国計画のここ一、二年が正念場だという、その正念場という重みをやはりしっかりと受けとめてほしいなと思います。

 東洋町の結果でもわかりましたとおり、それまでのいろいろな、例えば岐阜の瑞浪だとか北海道の幌延とか、いろいろ、結局地元の反対活動というのは根強くあるわけで、その世論の状況を見たら、これは、正念場だと言っているんですから、相当な努力がやはり必要になる。

 そのことについて、やはり政府内でもちゃんと統一の見解というか目標をしっかりとつくっていただいて、行動に移していただきたい。そうじゃないとこの先の原子力政策がおかしくなってしまう、計画倒れになってしまう、言っているだけだ、口だけだと言われかねないわけでありまして、その点をぜひとも心してかかっていただきたいというふうに言わせていただきたいと思います。

 これは通告させていただいていないんですが、ちょっと大臣にお聞きしたいんですけれども、例えば刈羽村の話をさせていただきますと、一人頭大体百万円ぐらいの予算があって、行政側がかなり、要するに資金としては潤沢なわけであります。そのおかげか、当然市町村合併も今しておらないわけでありまして、人口も非常に少ない村なんですけれども自立してやっているというところでありますが、最近の風潮といたしまして、その交付金自体はあめなんだ、例えば原子力発電所があるところについてのあめだ、あめを与えてやっているんだという話も私自身は周りから聞こえてくるわけですけれども、これはやはりとんでもない誤解だと。

 例えば、最終処分場の話をさせていただきますと、自分の先祖代々住まう土地の地下にそういう高レベルに汚染された廃棄物を埋めるという話ですから、しかも、要するに文明社会で電気をこれだけさんざん使ったそのごみを自分たちの土地の地中深くに埋めるということですから、もうある意味、国策としてやっていることに対して我々は泥をかぶっているという認識だと思うんです、地元としては、当然ですけれども。

 ですから、文明社会のこういった状況、電気をこれだけ使っているよ、そのごみについて我々がある意味果敢にも手を挙げて最終処分しているんだ、やはりそれに報いるために、私は、あめという認識ではなくて、幾ら交付してもし足りないぐらい、やはりこういう文明社会の利器を享受している我々としては、感謝してもし切れない部分があるのではなかろうかと思います。

 そういう意味において、しっかりとした交付金、手当ても、やはり従来にも増して必要になってくるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、大臣、いかがですか。

甘利国務大臣 これがなければ原子力政策がやがては行き詰まるというくらい大切な施設であります。そして、放射線の危険性でいえば、完璧に封じ込める、極めて多重防護体制になっています。そして、一言で言えば、先ほどから申し上げているとおり、熱と放射能の両方を冷ますというだけの施設であります。そして、そうではありますが、最終的にそれを受け入れていただかなければ、原子力発電所もやがて運転ができなくなるというくらい大切なもの。そうした原子力の施設とともに繁栄をしていくということで、原子力と共生をして町の発展をしていってもらうという意味で各種交付金があるわけであります。

 先ほど来、入り口だけ示して先がというよりも、そこをいわば誘致することによってどういうまちづくりができるか、村づくりができるかという全体像を示せ、そういうお話をいただきました。それは大事な視点だと思って重く受けとめさせていただいております。

 日本の原子力政策に貢献をする、つまり、利便性を享受するということに加えて、地球環境に貢献をしているという誇りを持っていただけるように、しっかりと政策を推進していきたいというふうに思っております。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 最後に、やはり原子力発電所がある土地、そしてこれから最終処分場をつくる土地の皆さんに対して、日本全体として私はもっともっと感謝していただきたい、そういうことを最後に述べさせていただきまして、私の質問を終わらせていただこうと思います。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、田名部匡代君。

田名部委員 民主党の田名部匡代でございます。よろしくお願いいたします。

 いつもは、厚生労働委員会におるものですから、大臣との距離がもっと遠いんですね。ですけれども、きょうは大変近いので緊張いたしておりますが、ぜひやわらかい表情でお答えをいただきたいというふうに思っております。基本的な御認識を伺いますので、ぜひ大臣からの御答弁をお願いしたいというふうに思います。

 これまでの質問の中にも東洋町の選挙のことについてるるお話があったと思いますけれども、私の方からも、先にその件について大臣からちょっとお話を伺いたいと思うんです。

 実は、私の地元の新聞で、デーリー東北という新聞があるんですけれども、そこで、「迫る再処理本格稼働 決まらぬ最終処分場」という記事が連載をされておりました。その中の記事で、東洋町の選挙のときに、安全だというならそのまま六ケ所村で最終処分すればいい、また、低レベル廃棄物も六ケ所から掘り起こして持ってくるそうだ、六ケ所というのは、御存じだと思いますが、私の地元、青森県でございます、さらには、放射能に汚染された青森のものはもう食べられない、こういった声がその町民の間から出ていたということが記事になっておりました。

 大臣がこのことを御存じだったかどうかはわかりませんけれども、このことに対して大臣はどう思われますでしょうか。

甘利国務大臣 その記事は何……(田名部委員「地元の新聞です」と呼ぶ)新聞に。極めて事実誤認が甚だしい記事だというふうに思っております。

 六ケ所は、青森は、知事さん以下、極めて原子力政策に理解を示していただいて、住民の皆さん方にも本当に前向きな姿勢をとっていただいております。これは、私は原子力政策を進める責任者として極めて感謝をしております。

 ただ、いずれにいたしましても、安全な施設であることは間違いありません。そして、安全を行き届かすために、物理的にも、オペレーションの上でも、何重にも安全の体制をしいていくわけでありますが、ただ、いずれにいたしましても、それぞれそういう大切な機能は分散して引き受けていただく。安全ではありますが、電力の享受は我々がいたします、あとは全部青森で引き受けてくださいというわけにはいかないわけです。みんなでCO2を出さないエネルギーを、利便性を享受しているわけでありますから、それに伴う施設については、可能な限り、日本各地でそれぞれみんなにとって必要な施設を引き受けていただくということがありがたいわけでありまして、そのために我々は努力をしていますし、いかなければならないというふうに思っております。

 原子力施設があるところでできた産物について危険性があるなんということは絶対ないわけでありまして、今、恐らく青森のリンゴというのは超高級品として、台湾や中国で国内価格の恐らく四、五倍の値段がついて、立派にすばらしいものとして売れているわけでありますから、その新聞報道は極めて事実誤認だというふうに思います。

田名部委員 大臣、ありがとうございました。

 大臣の口から、青森県の食べ物は本当においしくて安全なものだということをぜひ言ってほしくて、私はこのことをお伝えしました。私の地元の新聞ですのでごらんになっているとは思いませんけれども、こういった声が東洋町の町民から上がっていたということでありましたので、青森県にとって農林水産業というのは基幹産業でありまして、それについて、ありもしない誤った認識をもって風評被害が出るというのは非常に大問題だというふうに思っておりました。

 現に今、その六ケ所村では長芋がとれるんですが、長芋でつくったしょうちゅう、「六趣」というのがありまして、ぜひそういったものも、すばらしい商品がありますので、大臣方にも一度飲んでいただきたいなというふうに思っております。

 これは青森県のことだけではなくて、東洋町では、放射能が漏れ出て、毎日放射能を吸って生きなきゃいけないだとか、汚染されたものを子や孫に食べさせられるかという、県外からも反核燃団体のメンバーも加わっての選挙戦が繰り広げられたということでありますが、こういった誤った情報に対して、国として何か対策をとったんでしょうか。

甘利国務大臣 その前に、「六趣」は私は飲んだことがありますし、一本、封を切らずに大事に持っておりまして、これは今プレミアがついていて全く手に入りません。極めて人気が高いものであります。

 それで、正確な情報が行き渡らないと、今回も東洋町において、選挙活動に抵触しない範囲でNUMOは一生懸命やったのでありますが、選挙期間に入ってきますとなかなか、できることとできないことがあるわけであります。

 私は、この委員会でも、当選された方のビラにこういうことが書いてあって、これは間違いですよ、極めて事実を歪曲していますということはこの場でも答弁をさせていただきましたし、それはきちんと議事録にも残っておるわけであります。なかなか、では大臣は選挙結果を認めないのかとかいうような反応が返ってきちゃうと、いや、それは選挙は選挙ですから、住民の方々の判断は尊重しなきゃならない、しかし、その前提としての流れた情報は極めて事実を歪曲したものですよという話はさせていただいたわけであります。

 これからも正確な情報をきちんと提供していかなきゃならぬと思いますし、今までNUMOに任せっ切りで、国はちょっと出なさ過ぎたかなという思いは私もあるわけでありますから、その辺のところはもうちょっと国も責任を持って前に出ていこうと思っております。

田名部委員 私も大臣のお考えと同感でありまして、国がもっと責任を持つべきだろう、前に出ていくべきだろうというふうに思っております。

 原子力を初め我が国のエネルギー政策、これは連携というのではなくて、やはり私は国だというふうに、あくまでも国がやるべきだというふうに思っている中で、今、東洋町のお話をさせていただいたのは、あくまでも一例としてでありまして、今後、こういった同じようなことがやはり起こり得る、その可能性は十分あるということを考えますと、日常的に説明をして理解をしていただく、こういう活動が必要なんだろうというふうに思っております。

 役所の方から御説明をいただきまして、各関係省庁、機関、また事業者等も広報活動をしていらっしゃるということは理解をさせていただきました。しかし、広報活動自体の内容が、本当にそれで十分かということに私は疑問を感じました。

 例えば、ホームページ、またメールマガジンというものに、あわせてケーブルテレビでの広報活動というのも行っているんだそうです。ただ、どのぐらいの人がホームページを見るのかな。我が青森県で考えても、インターネットの普及率というか、そういったものを広く見て情報を得て判断する人がどのぐらいいるんだろうということを大変疑問に感じますし、逆に言うと、そういうところにアクセスをして自分で情報を得ようとする人は、それなりに理解をしようと思って、反対であれ賛成であれ、そういうみずから努力をしている人であって、それ以外の、その他多くの全く無関心である人たちにどういう活動ができるかということが非常に重要なのではないか。

 また東洋町のことを例に挙げますけれども、一部の全く反対という人たちの誤った情報で、多くの日ごろ無関心であるだろう方々が、そうなんだ、危険なものなんだという判断をしてしまったというのは、非常に私は残念でもあるし、こういったことを二度と繰り返さないための広報活動にしていかなければならないんじゃないかというふうに思うんです。

 また、シンポジウム、これはどのぐらい行ったんですかと伺ったら、昨年は全国で三回。そのほかに対話の集いというのをやっているんだそうです。それも昨年度は十カ所。どういうところで対話集会をやっているんですかと伺いましたら、関心のある団体、婦人会だとかそういう団体に声をかけて集まっていただいていると。関心のある方に集まっていただくことは非常にまたやりやすいんであると思うんですが、そうではないところにいかに理解をしてもらうか。シンポジウムの案内なんかも、バスの車内広告に張ったとか、新聞の折り込みを使ったとかいうようなことで、やはりこれでは不十分だ、大臣がどうお考えになるか伺いたいと思うんですけれども、もっと広く国民に理解をしてもらうための活動が必要ではないかというふうに感じるんですが、大臣、どうでしょうか。

甘利国務大臣 二つあるんだと思います。

 一つは、既にしている、例えばホームページでも、わかりやすくできているかとか、思わずアクセスしたくなるような魅力的内容かということがあります。

 それから、テレビスポットもNUMOは流しておりますが、もちろん安全で必要な施設、大切な施設、それと同時に、あらゆる原子力施設は地球環境に貢献していますという視点を、私は、自分は意識的に出すようにしていますけれども、世界が原子力を見直してきつつあるというのは、化石燃料にも限界があるということと、それから原子力発電はCO2問題を起こさないということが、だんだん正面からとらえられてきているんですね。

 何度も申し上げていますけれども、従来は原子力反対という、グリーンピースの後ろ盾になっていた環境学者も、たとえ変節をしたと言われようとも、今の地球温暖化を救えるのは原子力しかないという宣言をして、自分のポジションを全く変えたという現象が起きているわけなんですね。

 ですから、原子力にかかわるあらゆる施設の誘致は、そこの県民、そこの住民は地球環境に貢献していますという面をもっともっと出していいんじゃないか。我々がいるから温暖化防止が進んでいくんですよということをもっとPRできるような、そういう側面も必要じゃないかというふうに個人的には思っております。

 ですから、方法についても、いろいろ考え方、いろいろな伝達手段、それから中身について、それから訴える視点についても、新しい視点を取り入れていくべきだというふうに思っております。

田名部委員 青森県でも、最初に施設ができるときは相当な反対があった。しかし、もちろん国も、また機関も事業者も、相当の努力をしながら理解を深めてきた、信頼関係を築いてきたという経緯があると思うんです。

 そういったことを考えますと、もちろんいろいろな印刷物とかホームページなんかでの広報活動も大事ですけれども、やはり、何を住民が不安に感じているのか、そのことに対して、決してそうではないですよという、直接の時間をかけた対話というものが私は必要だと思いますし、それだけではなく、やはり学校教育の中でも取り上げていくべきことなのではないか。つまり、学校教育の中でといっても、頭からこれは安全で必要なものだということではなくて、子供たちみずからが選択して考えて理解をしていく、そういう教育のあり方が必要なんじゃないかというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 私は、エネルギー政策基本法を議員立法でつくりました。そのときに、エネルギー教育、なかんずく原子力教育というものをきちんと学校教育の中からしていかなければならない。それは、もちろん、おっしゃるように、国側の考えを押しつけるのではなくて、正確な知識を持ってください、いたずらに不安にあおられるようなことにならないように、正確な判断ができるような、そういう正確なデータをきちんと学校教育の中でエネルギー教育として与えてください、与えるべきだということも、基本法の中で、重要なことという指摘をさせていただいたわけでありまして、おっしゃるとおり、教育現場の中から正しいエネルギーの知識を身につけるということは、極めて大事だと思っております。

田名部委員 ぜひ、文部科学省とも連携をとりながら、学校教育の中で子供たちが正しい知識を持っていけるように取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に、また、公募制についてもいろいろお話があったと思うんですけれども、私からもちょっと御質問させていただきたいんです。

 例えば東洋町のように、文献調査が始まる前に選挙で町長がかわって中断した、中止になったということではなく、調査が例えばある程度進んだ段階で、お金もかけて、穴も掘ってとか、ずっと何年かかけて進んだ途中で知事またはそこの首長がかわった。承認だったものが、かわった知事並びに自治体の長が、これは承認できませんといったときには、これはどういうふうになるんでしょうか。

甘利国務大臣 これは、文献調査というのは資料を集めるという段階ですが、そして、次の概要調査に行く段階には、やはり地元の理解というものをもらわなければならない。概要が終わって、具体的に精密な調査に入るというときにもやはり了解をとらなきゃならぬ。そういうステップアップをしていくときに了解をとらなきゃならないということが前提になっております。

田名部委員 地域住民の理解を求めるというか、理解をしていただくことは非常に大事なことであると思います。

 しかし、やはり我が国がエネルギー政策、原子力政策を推進していく上で、途中で、例えば十年もかけてからやはりだめだよと言われてしまったのでは、とても計画どおりに進んでいかない。青森県の六ケ所にある施設でも中間貯蔵されておりますが、最大で五十年というお約束です。それまでの間に最終処分場を決めてやっていかなければならない。中間貯蔵施設として受け入れたけれども最終処分が決まらない、つまり、輪がつながっていないことが青森県民にとってはある意味不安となっているわけなんです。これは早急に進めていかなければならない。もちろん、理解をしていただいた上でです。

 ただ、これまで、公募を始めて五年たって、一歩も進んでいない、私はそういう認識でおります。であるならば、もし公募制を続けるのであれば、どこを改善して手を挙げてもらえるようにしていくのか。

 そうでなければ、私は、ある程度調査をして、全国の中で適している地域というものがわかっているんじゃないだろうかと。であれば、そこに理解をしていただく努力、そこに時間をかけた方がずっといいんじゃないか。手を挙げるのを待つのではなくて、やはり全くだめな地域もあれば適する地域もあるわけですから、その適した何件かの場所の中で、地域の皆さんに足を運んで理解をしていただきながら処分場を決定する、それも国がリーダーシップを持ってやっていくという方法もあるのではないかなと思います。

 大臣、このことについていかがでしょうか。もう時間が来たので、これを最後にしたいと思います。よろしくお願いします。

甘利国務大臣 現在は、いわゆる公募方式という方式に従って進めているわけであります。そこで、その足らざる点を、今月にも総合資源エネルギー調査会の小委員会でしっかり議論をさせたいと思っております。

 そして、青森でお引き受けいただいているものを、きちんと最終的に処分場を設置してそちらに引き受けるという一連の輪がつながっていくように、省を挙げて、国を挙げて、政府を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。

田名部委員 限られた時間の中で実施していかなければならないので、ぜひ全力を挙げて取り組んでいただきたい、そのことを申し上げて、終わります。ありがとうございました。

上田委員長 次に、吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党、吉田泉であります。きょうは、質問の機会をいただきまして、感謝申し上げます。

 私からも、最終処分法等に関連しまして質問をさせていただきます。朝からの大変長時間の質疑でお疲れのことと思いますが、あと二十分程度ですので、ひとつよろしくお願いいたします。

 私の地元は福島県の浜通りというところでして、太平洋岸なんですが、原発は十基を抱える大電源地帯というところでございます。その地元で日ごろ大変心配されている問題からお伺いしたいと思います。それは、使用済みの核燃料の置き場所といいますか、貯蔵の問題であります。

 いっときは、かつては、再処理のためにイギリスそしてフランスに使用済み燃料が搬出されておりました。何ら置き場所の問題はなかったわけでありますが、一九九八年、契約による英仏への搬出が終了いたしました。

 それから既に九年ぐらいたちますが、行くところがないんですね。毎年毎年、この使用済み燃料が現場でたまってきているわけであります。やむを得ず発電所サイドは、プールを増設したり、それから圧力容器の外側にプールじゃない乾式の貯蔵庫といいますか貯蔵施設、そういうのをつくって急場をしのいできたということであります。これは恐らく、全国の発電所で同じようなことが起こっていたというふうに思います。

 ただ、ここへ来て、いよいよことし十一月には六ケ所で再処理施設が稼働する。さらには、これは三年後ですが、中間貯蔵施設も動くということですので、これから近い将来はだんだんこの貯蔵の問題もなくなっていくんだろうというふうに思うんですが、この発電所に貯蔵されている使用済み核燃料、今現在の状況とこれからの見通しについてお伺いします。

舟木政府参考人 原子力発電所に貯蔵されている使用済み燃料の量の御質問でございます。

 電気事業者によりますと、平成十九年三月末現在で、約一万一千七百九十トン・ウランの使用済み燃料が全国の原子力発電所の使用済み燃料貯蔵プール等に貯蔵されております。

 現在、我が国におきまして、年間の使用済み燃料の発生量につきましては、これは原子力発電所の稼働率によって変わってまいりますが、およそ九百トンから一千トン・ウランというところでございます。六ケ所村の再処理工場が本格稼働に至りますと、年間八百トン・ウラン程度が再処理をされる予定となっているところでございます。この六ケ所村の再処理工場で年間八百トン・ウランの使用済み燃料が再処理をされるわけでございますので、これが順調に動き始めますと、年間発生します使用済み燃料の大半を再処理できる。

 しかしながら、発生する使用済み燃料の方がまだ多いものですから、それを先生が今おっしゃいました中間貯蔵施設等において保管するという計画を立てているところでございまして、中間貯蔵施設につきましては、先生御指摘のとおり、現在、平成十九年三月に事業許可の申請を行いまして、経済産業省において安全審査中という状況でございます。

 経済産業省としましては、安全確保を大前提にしまして、これらの計画が適切に推進されますように着実に取り組んでまいりたいと思っております。

吉田(泉)委員 一万一千七百九十トンというのが今の在庫だそうですが、いつごろから減るんでしょうか。

舟木政府参考人 これは、先ほど申しましたように、六ケ所村の再処理工場が本格稼働をいたしますと、年間八百トン・ウラン程度が再処理をされるわけでございます。

 これに加えまして、中間貯蔵施設が稼働を始めますと、その最大貯蔵能力が大体三千トン、最終的には五千トン・ウラン程度の規模のものが青森県のむつ市につくられるわけでございますので、この六ケ所村の再処理工場で再処理をされる分と、それから中間貯蔵施設に中間貯蔵されるために原子力発電所から搬出される分、これが具体的にどれぐらいになるかというのは、電気事業者の事業運営にもよりますので、この場で正確な数字は申し上げられませんけれども、現在の量が著しくどんどんふえていくという状況にはならないというふうに考えております。

吉田(泉)委員 今現在の貯蔵量が大体十二年分ですよね。私はこれは非常に不健全な状態だと思います。本来ですと、プールに水冷期間が大体三、四年ということですから、その程度ならもちろんいいんですが、十二年分の在庫が現場に置かれている。いわば現場の発電所は、地元は予期せぬリスクを今押しつけられているというような状況だと思います。きょうの御答弁では、いつごろから減るのかはっきりしませんでしたけれども、早期に改善をしていただきたいというふうに要望しておきます。

 それから、今回の法改正に関連してでございますが、イギリスで発生した日本のTRU廃棄物、これをイギリスの高レベル廃棄物と交換する、そして日本に持ち帰って、最終処分を日本でする、こういうことであります。その交換は、放射線量で等価な分だけ交換しよう、そこまでは私、一応、よくわかるんです。ところが、それに伴って日本側は手数料を払う。オプション料と言っているようですが、それを六百五十億円支払う予定であるということなんです。放射線量で等価交換のはずなんですが、手数料を六百五十億円払う。

 この六百五十億円の根拠は何であるか、教えていただきます。

舟木政府参考人 六百五十億円の手数料のお話でございます。

 代替取得に伴います手数料は、英国の再処理事業者と我が国の電気事業者との間の合意に基づきまして、両者間で締結される契約に基づいて支払われるというふうに承知をしております。

 昨年の総合資源エネルギー調査会の原子力部会におきまして、電気事業者から報告がございました。これによりますと、この六百五十億円の根拠としましては、まず、イギリスの貿易産業省が公表しておりますレポートがございますが、このレポートには、イギリスに日本以外からも再処理を委託している国があるわけでございますが、イギリスが、イギリス以外の国から委託を受けている再処理に関しまして、日本に提案をしましたのと同様の代替取得を提案しておるようでございまして、トータルで、代替取得によるイギリスの再処理事業者が必要とする手数料といいますか、それが約一千三百億円とされております。それで、この一千三百億円、このうち、イギリスが日本から委託を受けました分は、イギリスが世界各国から委託を受けました分の五〇%程度というふうにされております。

 したがいまして、この一千三百億円の半分程度の手数料は日本の電気事業者が支払うということになるのではないかという報告が行われたところでございます。

吉田(泉)委員 要するに、イギリス側が千三百億円割る二で六百五十億円という要求をしてきて、それをうのみにしているということではないんでしょうかね。何か根拠がわからないままに支払いをするというような姿勢を伺いました。

 私は、要するに、放射線量で等価なんですから、この放射線量というのは恐らく自然の状態に戻るまでに数万年かかると言われていますが、数万年単位で見れば、TRUと我々が引き取る高レベルと、恐らく処分リスクというのは同じはずだと思うんですよね、放射線量が同じですから。処分リスクは同じ。ということは、長い目で見れば、処分費用といいますか、これは同じはずだ。目先は確かに輸送料が安くなったり貯蔵料が安くなったりするけれども、長い目で見たら。

 なぜこの支払いを日本側がしなければいけないのか、ちょっと私は理解できません。ぜひ、よく検討していただきたい。六百五十億円払うなら、私は、その分、高レベルの引き取り量も減らしてもらったらどうかな、そんなふうに考えているところでございます。

 では、お願いします。

舟木政府参考人 代替取得は、放射線の影響が等価になるような評価をした上で交換をすることになるわけでございますが、代替取得をしまして、TRU廃棄物と交換をして、高レベル放射性廃棄物をイギリスから返還してまいりますと、日本側のメリットがございます。

 それは、コストとしましては、TRU廃棄物を持って帰るよりも代替取得によって高レベル廃棄物を持って帰った方が、まず、輸送費用として七百億円減額されますし、貯蔵費用が一千億円減額されまして、さらに、最終処分費用も二百五十億円減額をされるということになるわけでございます。これに加えまして、イギリスから日本への輸送が、TRU廃棄物の場合は三十七回、輸送回数が要るんですが、代替取得をしますと一回で済むというメリットもございます。

 したがいまして、日本側にも非常に大きなメリットがあるという点を御理解いただければと思います。

吉田(泉)委員 そのメリットは十分承知した上で、数万年単位で考えたら、そんなメリットはすっ飛んじゃうんじゃないかというお話を申し上げたわけでございます。何のために等価交換するのかわからなくなってしまうんです。いいです、ちょっと時間がないものですから。ひとつ、この議論もぜひ続けていただきたいというふうに思います。

 先ほど近藤委員の方からもお話出ましたけれども、この処分場、百年ぐらいたった段階で埋め戻しをして閉鎖をする。しかしながら、三百年にわたってNUMOがモニタリング、つまり監視を続けるということであります。モニタリングをするということは、万が一の事態に備える、万が一の事態を察知できるようにするという趣旨だと思いますが、三百年間の間で万が一のことが起こった場合、つまり放射能が地上に漏れてきたとか地下水の汚染があったというようなことをモニタリングの結果わかった場合、どういう対応が可能なのか、伺います。

望月政府参考人 基本的には、この施設については、将来にわたって高レベル放射性廃棄物の漏えいや地下水への汚染による人間環境への影響を生じさせないようにするために、地下深く安定した地層に埋設し隔離することが重要だということで、今回、炉規制法による事業許可の際には処分場の封じ込め機能を確認するとともに、閉鎖を行う際には適切に坑道の埋め戻し等が行われるよう確認するということにしているわけでございます。

 さらに、処分施設周辺の土地の掘削によって放射能漏れなどの問題が生ずることのないよう、必要に応じて、経済産業大臣が処分施設の敷地及びその周辺の区域を保護区域に設定し、土地の掘削を制限するということにしているわけでございますので、基本的にはそういった事態が生じないということでございます。

 なお、仮に将来、放射能漏れや地下水汚染等の不測の事態が生じた場合には、原子力発電整備機構が、最終処分施設が所在した区域の管理業務の一環として必要な措置を講ずることになっておりますけれども、先ほど申し上げたように、長い期間であったり、不測の事態、今予測できない部分もあろうかと思いますので、そういう場合に、機構だけでの対応に限界がある場合には、国が適切な措置を講ずる、直接行うということに制度上なっているわけでございます。

吉田(泉)委員 万が一のとき、地下に埋めたものを回収するという可能性も私はあると思うんです。フランスでは、回収可能な状態を保つために埋め戻さないという方式を採用したのか、もしくは検討しているということを聞いております。私はそれも一手じゃないかなと思うんですよね。また、最終処分場の用地、立地を選ぶときにも、いざというときには回収できますよというのも一つの住民に対する安心感になるんじゃないかというふうに思うところでございます。

 それから、もう時間がないので最後の質問なんですが、これも随分、今までたくさんの方が質問に立ちましたが、東洋町の問題であります。

 この最終処分場、やはりどこでもいいというわけにはいかないというふうに思います、日本の将来を左右するような施設でありますからね。ところが、先ほど田名部委員もお話ししましたけれども、今の仕組みですと、法制上は、法令上は、千八百ある日本の市町村どこが手を挙げてもいいということになっているわけであります。私は、ここがちょっと無理があるんじゃないかなと。やはり、田名部さん言うように、ある程度の条件を、地層とか地下水とか、こういうところの条件をつける。もしくは、ある程度国が調査した上で、ある程度の仕分けをした上で、その中から応募を検討していただく、そういう方が筋じゃないかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 先ほど来申し上げていますが、世界で最終処分場を決めるやり方というのは両方ともあるわけであります。その両方で、めどが立っているところもあれば、やはり悩みを抱えているところも当然あるわけであります。

 私どもは公募方式を選択しているわけでありますが、今回の事態も踏まえて、どういう点が足りなかったということをきちんと検証しなければなりませんし、公募方式でやるとするならば、さらにどういうことに国が前へ出ていくか、そのことをしっかりと総合資源エネ調で検討させたいというふうに思っております。

吉田(泉)委員 いずれにしましても、原子力、まだ未完の技術と言わざるを得ません。これからも柔軟に対応していったらいいんじゃないか、こういうふうに思います。

 ありがとうございました。

上田委員長 次回は、来る十一日金曜日午前十時二十五分理事会、午前十時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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