衆議院

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第3号 平成20年4月2日(水曜日)

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平成二十年四月二日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 東  順治君

   理事 梶山 弘志君 理事 鈴木 俊一君

   理事 谷本 龍哉君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 吉川 貴盛君 理事 大島  敦君

   理事 古川 元久君 理事 赤羽 一嘉君

      伊藤 忠彦君    江崎洋一郎君

      大村 秀章君    岡部 英明君

      片山さつき君    川条 志嘉君

      北村 茂男君    佐藤ゆかり君

      柴山 昌彦君    田中 良生君

      平  将明君    谷畑  孝君

      土井 真樹君    長島 忠美君

      丹羽 秀樹君    西本 勝子君

      橋本  岳君    原田 憲治君

      平口  洋君    藤井 勇治君

      牧原 秀樹君    松本 洋平君

      武藤 容治君    安井潤一郎君

      吉田六左エ門君    吉野 正芳君

      若宮 健嗣君    太田 和美君

      北神 圭朗君    後藤  斎君

      近藤 洋介君    下条 みつ君

      田村 謙治君    牧  義夫君

      三谷 光男君    高木美智代君

      吉井 英勝君

    …………………………………

   経済産業大臣       甘利  明君

   経済産業副大臣      中野 正志君

   経済産業大臣政務官    荻原 健司君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   丸山 剛司君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   鵜瀞 恵子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           高田 稔久君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           羽藤 秀雄君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          鈴木 隆史君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          安達 健祐君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          石田  徹君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 望月 晴文君

   政府参考人

   (特許庁長官)      肥塚 雅博君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    長尾 正彦君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    福水 健文君

   経済産業委員会専門員   大竹 顕一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二日

 辞任         補欠選任

  片山さつき君     原田 憲治君

  近藤三津枝君     西本 勝子君

  清水清一朗君     北村 茂男君

  牧原 秀樹君     松本 洋平君

同日

 辞任         補欠選任

  北村 茂男君     平口  洋君

  西本 勝子君     長島 忠美君

  原田 憲治君     田中 良生君

  松本 洋平君     牧原 秀樹君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 良生君     片山さつき君

  長島 忠美君     近藤三津枝君

  平口  洋君     若宮 健嗣君

同日

 辞任         補欠選任

  若宮 健嗣君     清水清一朗君

    ―――――――――――――

三月三十一日

 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律案(内閣提出第三三号)

四月二日

 悪質商法被害をなくすための割賦販売法改正を求めることに関する請願(逢坂誠二君紹介)(第七五九号)

 同(鳩山由紀夫君紹介)(第七八二号)

 同(金田誠一君紹介)(第八一〇号)

 同(川内博史君紹介)(第八一一号)

 同(泉健太君紹介)(第九四五号)

 同(内山晃君紹介)(第九四六号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第九四七号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第九四八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)

 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律案(内閣提出第三三号)


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     ――――◇―――――

東委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房知的財産戦略推進事務局次長吉田大輔君、内閣府政策統括官丸山剛司君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長鵜瀞恵子君、経済産業省大臣官房審議官高田稔久君、経済産業省大臣官房審議官羽藤秀雄君、経済産業省経済産業政策局長鈴木隆史君、経済産業省貿易経済協力局長安達健祐君、経済産業省産業技術環境局長石田徹君、資源エネルギー庁長官望月晴文君、特許庁長官肥塚雅博君、特許庁総務部長長尾正彦君及び中小企業庁長官福水健文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

東委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 知的財産権の充実をずっと訴えてこられた甘利大臣に、こうして特許法等改正案につきまして質問ができることを大変うれしく思っております。

 私は、現行の特許法の有する大きな課題として、国際的連携が必ずしも十分ではないこと、それと、特許の登録ですとか紛争解決に時間やコストがかかり過ぎることをずっと主張してまいりました。今回の改正はその是正に資するものと思いますけれども、まずお伺いしたいのは、特許、意匠、商標の拒絶査定の不服審判請求期間を三十日から三カ月に拡大するという点でございます。これは、もちろん権利保障のためであるとはいえ、さっき申し上げた紛争解決の迅速性の要請からは若干問題も指摘されるところだとも思うんですけれども、この点についてはどういうお考えなのでしょうか。

肥塚政府参考人 お答え申し上げます。

 特許制度については、審査処理件数が増加しておりまして、これに伴って、拒絶査定が行われる件数、さらには拒絶査定に対して不服審判を請求する件数も増加してきております。それから一方で、制度利用者にとっては、各特許出願について審判請求の当否を判断するための調査や検討の時間を十分確保することができないという要望が出されております。

 こういう状況下で、審議会でも御議論をいただきまして、他国の特許制度においては、米国ですとか中国では審判請求期間が三カ月、欧州では二カ月となっていること、それから行政不服審査法で、手続保障の観点から、請求期間を六十日から三カ月に拡大する方向だということを踏まえて、請求期間を三カ月に拡大する提案をしているところでございます。

 今の期間の問題でございますけれども、特許制度では、審判を請求する際に、特許を請求する技術範囲に補正がなされますと、拒絶査定を行った審査官が再度審査をして、適正な補正がなされていますと、みずからの拒絶の査定を取り消して特許にするという制度、前置審査という制度がございます。

 この前置審査、再審査の段階で特許になる確率は非常に高うございまして、いわゆる二〇〇六年の統計で四五%ぐらいございます。また、この審査官による再審査は原則二カ月以内にやるということになっておりまして、補正が行われますとこういうスピーディーな処理がなされるわけでございます。

 今回の請求期間の拡大で、補正の検討可能期間が長くなるということになりますと、適切な補正を伴った審判請求がふえるというふうに思われまして、その場合には、審査官による再審査の結果特許にされる可能性がさらに高まるということで、速やかに権利取得がなされるということになろうかというふうに考えております。

 それから、このように、審判部における審理待ち期間を経ることなく特許になるケースがふえるということになりますと、結果として、特許庁全体として効率的な出願の処理にもなっていくのではないかというふうに考えている次第でございます。

柴山委員 結果的には、件数の処理がうまく回ることによって迅速性の要請に資するという趣旨も今御答弁いただいたかと思います。

 さて、この期間の問題もそうなんですけれども、先ほど申し上げたようにコストの問題も非常に大きな要素になってくると思います。

 特許あるいは商標関係の料金、特に中小企業の負担が大きい十年目以降の特許料ですとかあるいは商標設定登録料の引き下げ、これが実現をしたことは評価をさせていただきたいと思います。

 しかし、その引き下げの理由というのが、いわゆる特許会計におけるシステム化等の歳出軽減というようなところが理由になっているわけなんですけれども、そもそもこの特別会計制度というのは、この際抜本的に見直すべきではないか、同じような趣旨を持っている登記特別会計との統一処理も、場合によっては考えていくべきではないかと思うんですけれども、これについて大臣どのようにお考えですか。

甘利国務大臣 特会というのは、なぜ設定するかといえば、それは受益と負担の関係を明確にするということであります。その意味では、登記特会も特許特会も同じ趣旨にのっとって設置をされた。問題は、その目的が達成されているか、その目的に沿って引き続き行われているかという違いだと思います。

 登記特別会計は、コンピューター化を早急に進めていくという趣旨でもって、受益と負担の関係を明確にする特会として設けられているわけなんですが、平成二十二年度末をもって当初の目的を達成すると考えられることから、一般会計へ統合することになったというふうに聞いております。

 一方で、特許特会の方は、技術革新に合わせて不断に特許事務が高度化される体制を構築していく、財源としての手数料等の適切な改定をそれに沿って行っていくという仕組みでなされているわけであります。

 国内外のユーザーニーズに合わせた制度改正、国際的な出願増に対応したワークシェアリング、それから国際的な制度調和等に不断に対応するために、今後とも、出願人の理解と協力を得つつ、所要の財源を確保するという意味で、特別会計を維持する必要性が依然として特許特別会計にはあるということであろうと思っております。

柴山委員 御指摘の趣旨は大変よくわかるんですけれども、やはり登記にしてもこの登録にしても、しょせんは手数料であるというような部分では共通性を有するのではないかなと思っております。

 また、時代おくれの収支相償の発想を持っていることによって、特許審査関係の請求料を、国際的に見て大変高いと言われている商標の登録料で補っているというような指摘もあります。

 そういうようなことからすれば、やはり抜本的な見直しが必要ではないかということを問題意識としてぜひ提起をさせていただければというように思っております。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 今回の改正では、発明を実施できる通常実施権、あるいは、今回仮通常実施権という形で、出願段階での権利も保護される対象また登録の対象となったわけですけれども、この登録で、ライセンシーの情報ですとかあるいはその権利の具体的な内容についてはマスキングをかけることができるという形になっているわけですね。このマスキングは、例えば利害関係人、特に特許権を譲り受けようとする者の取引の安全を害するのではないかというようにも思われるんですけれども、この点はいかがなんでしょうか。

肥塚政府参考人 先生御指摘のとおり、通常実施権の登録記載事項の開示を制限することによりまして、対抗力を具備した通常実施権者に関する情報は、通常実施権者がサブライセンサーになっている場合も含めて、登録原簿上は不明確となります。この点は御指摘のとおりだと思います。

 ただ一方で、特許権取引の実務は専門家同士で行われることがほとんどでありまして、権利を譲り受けようとする者などの利害関係者は、事前に、ライセンス契約の存在についてのデューデリと申しますか法的監査を行うことを通じて、当該権利に関する情報を取得した上で取引を行う場合が多いということは御承知のとおりでございます。

 また、特許権の譲渡契約においては、表明保証条項あるいは解除条項を設けることが通常でございまして、仮に、契約時に示されたライセンシーにかかわる情報と事実が異なったことによって譲り受け人が不測の損害をこうむることがあっても、これらの条項に基づくと、事後的には金銭的に補われるということになっていると承知しています。

 一方で、特許権にかかわる通常実施権の登録率は、今、十万件に対して千数百件、一%ぐらいにとどまっているというふうに推計されておりまして、登録記載事項の開示制限、ユーザーニーズでございますが、こういうことを導入することによって通常実施権の登録制度が利用しやすくなって、これまで登録されていなかった通常実施権が登録されるようになるということを通じて、特許権の取引の際に、通常実施権の有無について、公示を通じて得られる情報量が全体としてふえるという側面もあるというふうに思っております。また、これらの登録制度の活用を通じて、知財の活用の拡大というのを目指しているのがこの改正の趣旨でございます。

 したがいまして、御指摘のような側面はあろうかというふうに思いますけれども、これら全体を考えますと、登録記載事項の開示制限の導入によって、取引の安全が損なわれるケースは限定的だというふうに考えておりまして、むしろ、通常実施権の保護を図る見地からは、開示制限を導入して登録制度の活用を促していくという方が妥当ではないかというふうに考えている次第でございます。

柴山委員 今、特許権を譲り受けようとする者は、当該特許権のライセンス契約の存否についてはデューデリジェンスをかけるからいいじゃないかというようなお話があったかと思うんです。

 ただ、これについては、今の特許というのは、いろいろ複合的な特許が設定をされているものですとか、あるいは、さっきサブライセンスという説明もありましたけれども、そういう形で派生的な権利が発生しているものもあるわけですね。また、本当にプロだけの間しか特許権が流通しないのか、今後さまざまな形での、信託も含めた形での取引がなされる中で、確かに今登録が、余り普及が進んでいないという側面はあるんですけれども、私はやはりこれをオープンにしていくということが求められているのではないかなというように思っております。

 現に、諸外国における通常実施権の登録制度を比較しましても、ライセンシーの情報ですとかあるいはライセンス期間、またその権利の内容等については登録事項とされている国が大宗であるというように思います。恐らく、審議会ではさまざまな議論があったかと思うんですけれども、こういうこともぜひ配慮をしていただきたいと思いますし、もし説明に追加することがあればお願いをしたいと思います。

 また、今私は、特許権を取得しようとする者についてだけ言いましたけれども、例えば、並列的に別の通常実施権を取得した者ですとか、あるいは一般公衆ですとか、こういったほかの利害関係人に対しても、登録ということをきちんとオープンにしていく要請はないのかということについてもあわせてお聞きしたいと思います。

肥塚政府参考人 まず、今の最後の点でございますけれども、通常、通説ですとか判例でございますと、通常実施権者は、無権原の第三者が発明を実施したとしても、特許権者にかわって第三者に対して権利を行使するということは認められていないというふうに承知していまして、通常実施権者同士の間の関係、確かに実態として複数の、重畳的に通常実施権が与えられるというようなケースもあろうかと思いますけれども、通常実施権の登録自身は、効力発生要件ではなくて第三者対抗要件でありますので、現行制度の中でも、登録簿上にあらわれていない通常実施権が数多くあるというような状況であろうかというふうに思っております。

 さっき先生がお話しになられましたように、海外では開示をする制度をとっている国がございますけれども、その点は、先ほど先生からまさにお話がありましたように、審議会でも議論がございました。ただ他方で、我が国でも動産ですとか債権の譲渡の対抗要件に関する、例の動産・債権譲渡特例法などのような、こういう制度をとっている法制度も徐々に広がってきているのも事実でございまして、したがって、先ほど申し上げましたように、登録記載事項の一般への非開示によって取引の安全性が損なわれるケースは限定的ではなかろうか、むしろ、こういうことの改善を通じまして登録制度の活用を促していく方が、全体としての知財の活用を推し進めるのではないかというふうに考えている次第でございます。

柴山委員 次の質問に移りたいと思います。

 今度の改正法では、特許法あるいは実用新案法における優先権書類の電子的交換の対象国の拡大について処理がなされています。PDFファイルでこの優先権書類をやりとりするということになるかと思うんですけれども、この際私が心配するのは、やはりセキュリティーの問題でございます。どうしても、間に偽造あるいは捏造というプロセスが入ってきてしまうのではないかなと思うんですけれども、これについてはどのような手当てをお考えなんでしょうか。

肥塚政府参考人 先生御指摘のとおり、私どものシステムでも、それから国際的にも、ますます特許の世界は情報化が進んでまいりますので、セキュリティーは非常に大事だというふうに思っています。

 優先権書類の交換につきましては、一番先駆けてやりましたのは欧州特許庁とで、一九九九年から優先権書類の電子交換を開始しております。その後、韓国やアメリカとの間でも優先権書類の交換を実施しておりまして、今、一カ月当たり大体七千件程度の優先権書類が電子的にやりとりをされている状況にございます。

 今回の法改正は、こういう交換実績を積んでいる枠組みを世界各国に拡張しようということの前提として、こういう制度の改正を提案しておりまして、具体的には、欧州特許庁を介してドイツ、フランス、オランダといったような国との優先権書類の交換、それからもう一つは、国際知的所有権機関、WIPOを介して世界各国との優先権書類の交換が可能になるという制度が今議論になっておりまして、WIPOでは二〇〇九年にそのサービスが開始されるということになっております。

 このWIPOの制度を含めまして、今までの欧州、アメリカとの実績のもとで拡大していこうというふうに考えておりまして、当面、欧州特許庁それからアメリカ特許庁を介したもの、それからWIPOを介したものを予定しております。したがいまして、ネットワークセキュリティーが確立して信頼性が高い国、あるいは機関を考えております。

 そういう意味では、現在の優先権書類のやりとりと同等のセキュリティー基準のネットワークでやられていくというふうに考えておりまして、技術的にはいろいろございますけれども、優先権書類の真正は担保されるんじゃないかというふうに考えております。

 ただ、先ほど先生御指摘のように、セキュリティーの問題というのは非常に大事だというふうに考えておりますので、技術的にも、電子化あるいは電子データの交換の過程で、優先権書類の捏造といったことが行われる可能性がないような仕組みを考えておりますけれども、非常に重要な課題でございますので、国際的な専門家会合、これは三極でもWIPOでもございますので、そういう場でも引き続き議論してまいりたいというふうに考えております。

柴山委員 いずれにいたしましても、送信の過程での作為、また出願人が違うデータを送らせるという、やはりこの両面あるというように私は思っておりますので、今の御指摘は、WIPOあるいは欧州各国とか米国とか、そういうセキュリティーのしっかりしたところからデータをもらう、当面はそこに限るというようなお話だったので、今後しっかりと関係各国と連携、またセキュリティーの問題等もきちんと深めた検討を進めていただきたいと思います。

 今回の法律については、喫緊の課題ばかり対応していただけたと思いますので、ぜひ速やかな成立を図っていただきたいと思います。

 時間が参りましたので、私の質問は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。

東委員長 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 おはようございます。公明党の高木美智代でございます。

 本日は、特許法改正の法律案の審議ということで、まず私の方からは、今、暫定税率、大きな課題となっております。昨日、この暫定税率が期限切れとなりました。既に、ガソリン供給など流通面への対策を始めまして、国民生活の混乱を回避するための多くの取り組みを経済産業省はされているということは承知をしております。

 一日明けまして、状況をどのように把握しておられるのか、また、今後さらに重ねての対応また注視すべき事項をどのように認識しておられるのか、大臣の所感も含めてお伺いをさせていただきたいと思います。

甘利国務大臣 四月一日零時以降、ガソリンの供給そのものに多大な支障が生じるといったことは起きておりませんが、例えば、一部のガソリンスタンドでは給油待ちの列ができるであるとか、あるいはスタンドにおいて一時的な在庫切れが生じるとか、スタンドごとに価格に大きなばらつきが生じて、消費者や販売事業者等が購入や価格設定に関し混乱をするであるとか、販売事業者が旧税率下で仕入れたガソリンについてのコストを転嫁できずに事業者の負担が生じる等々といった事態が起きているものと承知をしております。

 総理からは、三月三十一日の夜に、ガソリンの流通面における混乱などを少しでも小さくするよう指示がありまして、私としても、実態把握と混乱の軽減に向けた対応に全力で取り組んでいるところであります。

 具体的に申し上げますと、まず、石油業界に対しまして、最大限の供給量の確保と、警察車両であるとか消防車両など緊急車両に対する優先的な供給の要請を直ちに行うとともに、JAFに対しましても、ガス欠車への給油に万全を期すよう要請をしたところであります。

 また、本省並びに全国九カ所の経済産業局に直ちに緊急対策本部を設置しまして、各地方局では、局長みずから陣頭指揮に立つなどいたしまして、刻一刻変わる状況を注視するなど実態把握に努めているところであります。

 また、消費者や事業者の御質問、御相談にお答えするために、本省並びに地方局に相談窓口を設置しまして、きめ細かな対応を行っているところであります。

 加えまして、販売事業者の経営安定対策として、資金繰り支援等を行うことといたしております。

 引き続き、国民生活や経済活動への影響、混乱をできる限り小さいものにとどめるように、全力で取り組んでまいります。

高木(美)委員 いずれにしましても、今の状況のままいきますと、二兆六千億穴があくというのは当然のことでございまして、地方では、一日換算、単純計算でも二十億、国では四十億入ってこない。長い国会の歴史の中で、予算案が成立しているにもかかわらず歳入法案が成立していないという例は一度もありませんで、これを慣例として今日まで来たわけでございます。参議院では、やっときのうから歳入法案の審議が始まったところでございます。

 ちょうど折しも、昨日、日銀の短観が出ました。踊り場に差しかかった景気の足を政治が引っ張りかねないということも、本日、多くの社説等で掲載されているとおりでございます。

 この日銀の短観もさることながら、これは三月二十八日に発表されました独法の中小企業基盤整備機構、ここが中小企業につきまして、約一万九千社、中小そしてまた零細も含めて業況判断をとっております。

 私は、どちらかといいますと、日銀の短観は大変大企業が中心であるというふうに認識しておりまして、せっかくこのような中小企業一万九千社のデータをとっているのであれば、これをもう少しクローズアップする形で、中小零細企業、ここの動向が今日本経済にとって非常に重要なわけでございまして、これにつきましてもう少しクローズアップをして、そして注視する、このようなことも必要ではないかと思っております。

 原油対策につきましても、既に補正予算で二千億組み、また、中小企業が年度末を越えるための金融支援もとっていただいております。

 これは、済みません、大臣に質疑通告をさせていただいてはいないのですが、今、国も地方も公共工事の入札ストップという状況にございます。まず、予算を円滑に執行できるようにするということが最大の景気対策ではないかと思います。その上で、さらなる景気対策、原油対策が求められるところでございますが、大臣に、そのお考えがどのようにおありか、伺わせていただきたいと思います。

甘利国務大臣 御指摘のとおり、地方でいえば一日二十億、国でいえば一日四十億、予定していた歳入が見込まれないということになります。総計二兆六千億円分の歳入欠陥を放置していれば生じてしまうということは、その分の歳出がなされなくなってしまうということになります。道路事業はほとんど維持管理になってしまう、新設の部分はほとんど手当てができない、あるいは課題になっておりますいわゆるあかずの踏切対策等も改善の実行ができないということが懸念されているわけであります。

 必要な道路はつくるというのは、これは与野党、基本的に考え方を同じゅうするものであります。その歳入をしっかりと確保していくということについては、ぜひ、国会の早期の決断をしていただいて、現状の歳入欠陥状況を一刻でも早く解消するということが望まれるというふうに思っております。

高木(美)委員 今のこうした状況を踏まえますと、経済産業省そしてまた大臣のかじ取りが、国民生活そしてまた日本経済の今後を決めていく大変重要なポジションにおありかと思います。

 今後とも、ぜひとも適切な対応、そしてまた将来を展望しての、また、このピンチをチャンスに変えていくことが果たしてできるのかどうか、そのことも含めまして、今後の対応をお願い申し上げる次第でございます。

 さて、知財戦略をめぐりまして、今、経済のグローバル化の進展や昨今の円高の影響、特に今、円は九十五円という大変高い状況にありまして、百九円を設定している企業にとりましては大きな痛手でございますが、こうした経済環境が厳しさを増す中で、特に地域、中小企業の底上げを目指した産業政策が重要だと認識をしております。しかも、これは急務であると思っております。

 知財政策におきましても、こうした観点から、地域、中小企業の活性化に向けた取り組みが必要でございます。これまでもさまざま推進をしていただいておりますが、私も、優良中小企業と思います十数社を視察させていただきました。その大半が、世界的に見ても高い革新的な技術を持ちながら、保有している技術とかノウハウを戦略的に、積極的に活用している企業といいますのはまだ少ないという、そのような感触も受けております。

 やはり、当然、中小企業は限られた資金、人材で事業を展開しなければならないということがございます。この知財経営のメリット、推進方法、この徹底につきましてもまだまだ十分な情報提供がなされていないのではないか、これをもう隅々まで、零細に至るまで認識をしていただきたいと思っている次第でございます。

 特に、グローバル化で、中小企業が今世界に進出をしていきたい、このような数が大変ふえております。ただ、そのときに、恐らく、そのように希望されるところは、この知財につきまして、ほぼ準備が終わったところというふうに受けとめられるかどうか、そこは検証しなければなりませんけれども、いずれにしても、進出する相手国の情報であるとか知財の保護状況であるとか、また、そこでマーケットコントロールがどこまで可能なのか、特許というものが果たして守られるのかどうか、こうした検証が必要であると思っております。

 このような点を踏まえまして、経産省がどのように今取り組んでいらっしゃるのか、答弁をお願いいたします。

甘利国務大臣 地域経済の活性化のためには、その地域において中小企業等による知的財産の創造、保護、活用を促進するということが重要であります。

 地域や中小企業が抱える知的財産に関する課題というのは幾つかございまして、例えば知財戦略が構築できていないであるとか、特許出願の審査請求をすべきか否かの判断材料が足りないとか、あるいは特許権の譲渡、ライセンス等のノウハウがないであるとか、また地域ブランドを活用した地域おこしをしたい、そして海外への出願費用負担が大きい等々、多岐にわたっているわけであります。

 経済産業省といたしましては、こうした中小企業の多様なニーズにこたえるために、知的財産を活用したビジネスプランづくりの支援であるとか、無料の特許先行技術調査の支援であるとか、特許流通アドバイザーの派遣、あるいは地域団体商標の活用支援等々、さまざまな支援メニューを用意しているわけであります。

 また、全国商工会、商工会議所に設置をしました知財駆け込み寺の支援、それから全国九カ所、これは地域経済局に設置をしておりますが、地域知的財産戦略本部を拠点とする地域に根差した支援活動を展開しているところであります。

 さらに、地域、中小企業への支援を一層強化し、中小企業の外国出願の助成措置を支援する等を通じまして、中小企業や地域経済の活性化に貢献をしてまいります。

高木(美)委員 引き続き、周知徹底が重要かと思いますので、お取り組みをお願いさせていただきます。

 続きまして、それぞれ中小企業におきまして開発した技術資産を出願しまして、そして公開されますと、技術流出や模倣を招くために、特許を出願しない、そうした声をよく聞きます。特に、それぞれ中小企業におきまして、対象となる技術の内容によりまして出願しない方がいいのか、それともして、そしてこの両方の長所、短所、その場合を検証しまして判断することが必要であると思います。

 ただ、当然のことながら、出願しますと内容が公開される、また法的保護を受けることができる期間が限定をされている、こうしたデメリットもあるわけでございまして、シャープの液晶の製造法であるとか、また企業の一番の根幹にかかわる接着剤の製法であるとか、そうしたところはブラックボックスにして、ここはまさに秘密管理を厳正に行いたい、こういうところも多くございます。

 もしこのような権利侵害が行われた場合、どのような対応策が考えられるか、答弁をお願いいたします。

荻原大臣政務官 特許は出願をしておよそ一年半で公開をされるわけなんですけれども、この公開制度というのは、世界さまざまな国で行われている制度でございます。やはり公開をすることによって、それを見て、同じ技術がもうある、だからこれ以上の投資はやめようと踏みとどまったり、あるいは、もうこういう技術は公開されているので、もっと別の新しい、より高度化した技術を開発しなければいけない、そういう意味で大変重要な制度だと思っております。

 国際的な競争が大変厳しくなる中で、やはり戦略的にこれから取り組んでいただきたいと思っています。

 まず一点は、開発した技術というものを公開して特許を取りに行くのか、あるいはノウハウとしてそれを社外秘といいましょうか、企業秘密にして取り組んでいくのか、いずれにしても戦略的な取り組みが今求められていると思っております。

 こうした中、特許庁といたしましては、先使用権制度ガイドラインというのを策定、公表しております。この先使用権というのは、他人が特許権を取った場合に、無料で特許権の対象となる技術を使うことができる権利、ノウハウを企業秘密としてやっていた人を守ろうという権利でございまして、この先使用権につきまして、要件、範囲を明確化するとともに、立証手段の具体例、企業の取り組みの実例等を紹介しております。

 そしてもう一点は、知財戦略事例集、これは六百近い事例があるわけなんですけれども、これを策定、公表しております。企業における戦略的な知財管理の事例集ということによりまして、これらの普及啓発にさらに取り組むことによりまして、技術流出防止等を図っていきたいというふうに考えてございます。

高木(美)委員 海外におきましても、中小企業が適切に権利を取得できる環境を整備することは非常に重要な課題でございます。

 中国を初めとする発展途上国におきましては、依然として模倣品が横行している、依然としてといいますか、ふえているという傾向にあるかと思います。二〇〇六年の模倣被害調査報告書によりますと、模倣被害があったと回答された企業は二二%、そのうち六九%が中国においてあった、こういう認識でございます。

 中小企業が海外で適切に権利を取得できる環境の整備に向けまして、経済産業省としてどのように取り組まれるのか、中野副大臣に答弁を求めます。

中野副大臣 委員御指摘のように、中小企業が海外における知的財産権の取得を促進すること、これは極めて重要だと思います。中小企業自身が貿易や海外投資を通じて国際的な展開を行っていく、また発展途上国における模倣品問題に対処するためにもそうだと思います。

 経済産業省では、今、専門家による外国出願にかかわる相談体制を整備いたしております。ちなみに、国内では発明協会に委託をいたしておりまして、年間約六百四十件の外国出願相談を受け付けております。そしてまた本年度からは、新たに地域の中小企業の外国出願費用を助成するための事業も開始をする予定であります。補助率二分の一、上限百五十万円という事業でございます。

 海外における模倣品対策に関しましては、ジェトロ等の海外事務所において、権利侵害への相談対応でありますとか現地弁護士の紹介等を行っております。北京、バンコクあるいはソウル、そして台北などの事務所であります。ここに知財専門官を派遣いたしまして、細やかな対応をさせていただいておるところであります。なおまた、現地の知財制度や訴訟手続等をまとめた模倣対策マニュアルを配布するなど、幅広い支援を行っているところであります。

 経済産業省としましては、以上の取り組みを通じまして、中小企業の海外における知的財産権の取得と模倣品対策を積極的に支援してまいる、こういう決意でおります。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

高木(美)委員 そろそろ時間でございますが、今回、出願時でございますが、優先権書類の世界的な電子的交換ネットワーク、その対象国を拡大ということで一歩踏み出すわけでございますが、世界特許システムをつくろう、これは甘利大臣が推進をされ、また我が党も推進をさせていただいているところでございますが、我が国特許庁のみならず、アメリカ、ヨーロッパ特許庁におきましても、審査の順番待ちの長期化が問題となっております。

 我が国はほぼ対応が終わって、ことしの十月にはほぼ鎮静化すると承知をしておりますが、いずれにしましても、今後こうした知的財産の問題、件数もふえることを考えますと、国際的なワークシェアリング、また制度調和を一層推進する必要があるのではないかと思います。

 この点につきまして、経産省の今後の意気込み、そしてお取り組みを、中野副大臣に答弁を求めます。

中野副大臣 委員御指摘のとおりであります。

 審査の効率化あるいは迅速化を図るためにも、各国特許庁間での審査協力による、言ってみれば国際的なワークシェアリングを進めることが必要だと考えております。また、他国の審査結果を最大限利用できる、いわば仮想的な特許庁が構築をされるということが期待されております。

 これらの考え方のもとで、我が国としては、二国間で審査結果の相互利用を行うという、いわゆる特許審査ハイウエーの取り組みを、アメリカ合衆国、韓国、イギリス、ドイツとの間で開始いたしておりまして、この拡大に向けまして、さらにカナダ、オーストラリア、デンマークとも交渉を続けているところであります。

 また、アメリカ合衆国における先願主義への移行を含む特許法改正の機会をとらえて、特許の国際的な制度調和を実現いたすべく、先進国間での議論を推進いたしております。

 これらの取り組みを積極的に推進し、一つの発明が各国において効率的に権利保護される、いわば仮想的な特許庁の構築を目指していきたいと存じております。

高木(美)委員 時間になりましたので、ぜひ積極的にこの世界特許システムに向けまして構築をお願いしたいことと、五月にWIPOの事務局長選挙もあると伺っております。日本がリーダーシップをとるためにも大事なポジションであると思いますので、経済産業省の積極的なお取り組みをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

東委員長 高木さんの質疑は終了いたしました。

 次に、北神圭朗君。

北神委員 おはようございます。

 きょうは、特許法の改正について御質問をしたいと思います。とりわけ特許料の料金の引き下げをきっかけとして、今の特許庁の審査体制が大丈夫かということとか、あるいは今回の料金の引き下げは、まさに中小企業対策という側面が強調されていますが、料金引き下げの前にもっとやらないといけないことがあるんじゃないか、さっき高木先生のお話にもありましたが、そういったことについて触れたい。

 特に、私もこの問題について、知財についてはもともと全然何も知らない素人だったのですが、当委員会に前に大畠さんという先輩がいまして、単にお互い剣道をやっているということだけで民主党の勉強会に入れということで、それがきっかけとなってこのマニアックな世界に迷い込んだわけでございますが……(発言する者あり)マニアックというのは決して失礼なことじゃなくて、マニアックでありながら、やはりこれは日本の国家の産業戦略にとって極めて重要だという認識をさせていただいたわけでございます。

 そういう意味で、いろいろな企業とか弁理士の方とかとお話をしていると、甘利大臣はまさにこの知財に大変詳しい方だということをお聞きいたしましたので、ぜひいろいろと大臣の御意見も聞きたいというふうに思います。

 まず最初に、特許料そして商標関係の料金を引き下げるというのが今回の法案の一つの項目でありますが、商標についてはわかるのですよ。これは確かに、国際比較をすると大分高い、これを引き下げるのは利用者にとって非常に便利になるということはよくわかる、かつ、中小企業にとっても、商標の申請が非常に多いので、そういった意味で中小企業対策にも十分資する、このように思います。

 ただ、特許料の方は、国際比較でやや高いという部分はあると思いますが、本当にこれを引き下げていいのか、それよりもやらなければならないことがあるんじゃないかというふうに思いますので、まず大臣に、今回の特許料に関する引き下げについての改正の趣旨をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 なぜ改正をするかといえば、まず第一に、前回の料金改定に係る改正特許法の施行から四年が経過をしました。法律上は施行後五年の料金見直しということになっておりますし、国会の附帯決議においても、料金体系の不断の見直しの必要性ということを指摘されているわけであります。

 特別会計でありますから、中長期的な収支を予測しなければなりません。そういう中で、我が国の料金体系が適切であるかどうかということを見通す。御指摘のとおり、商標の方について、こっちで稼いで特許に還元みたいな部分がありましたから、これは適切に見直す。それから、それでもなお、収支見通しとやるべきことを考えて、どのくらい余裕があるかということを見通して、これくらいの料金下げ、出願者に対する負担を下げていくということを行った上でも、これから先やるべきことについては一通り対応ができるんではないかという判断に従って、今回の改定をさせていただくというところであります。

北神委員 当然、ガソリン税じゃないですけれども、料金を引き下げて嫌という人は多分余りいないというふうに思います。

 ただ、当然、引き下げるのはいい、国会の附帯決議にも見直しをせいという話もあったということに触れましたが、おっしゃるように、やはり中長期的な見通しというものが大事で、私も、特別会計に対しては、民主党というのはいろいろ物を申してきましたが、特許については、受益と負担の関係がかなり明確になっている。そういう意味で、ほかの特別会計とはまたちょっと、ある意味では非常に趣旨にかなっている部分があるというふうに思うんですが、そういう意味でも、やはり収支がちゃんと中長期に均衡しないといけない。

 さっき、一言で、中期に収支はバランスをするというふうに大臣はおっしゃいましたが、私の資料の一枚目を見ていただければ、前の二階経済産業大臣の参議院の決算委員会の答弁があるんですが、今までもいろいろな議論の中で、この料金の話に絡めて、特会だから、いわゆる埋蔵金じゃないですけれども余剰金があるんじゃないかと。実際、数字上は出てくるわけですよね、かなりの金額が。これについてもっと吐き出すべきだとか、そういう議論が今までもずっとなされてきた。

 ところが、それに対して、二階大臣の答弁なんか象徴的ですが、特許特会につきましては、中期的には収支がバランスするように考えているんだ、言ってみれば、特許料というのは前払い金だと。大体、今は待ち期間が二十七カ月ぐらいですか、そのぐらいの間に前金として料金をもらって、そして二年後、三年後にその審査に取りかかるから、三年ぐらいのタイムラグがある、だから余剰金じゃないんだと。この資料にもありますが、いずれ余剰金がこれは必ず減少していく、いわゆる世間的に言う剰余金ということに当たらないというのが今までの経済産業省、特許庁の立場だったというふうに思うんですが、これは今回で変わったんですか。

 この余剰金、つまり、引き下げられるということは、中長期的には余剰金が発生するということなんでしょうか。これは長官にお聞きしたいと思います。

肥塚政府参考人 剰余金の性格が変わったというふうには考えておりません。中長期的に、審査待ち期間が短くなっていくのに伴いまして減少していく性格のものだというふうに考えております。

 今回の料金下げにつきましては、むしろ大臣からの指示で、今後五年間程度の収支の見通しを出しまして、それでどの程度引き下げが可能か、料金についてどうかということを検討を行いました。

 ごく簡単に申しますと、歳入面につきますと、今、特許件数それから商標件数が増加しているものですから、歳入増要因になります。それからもう一点は、過去、料金を累次上げさせてきていただいておりますけれども、その中での情報システムですとか、いろいろな効率化の効果が出てきている。それから、審査件数がふえておりますので、固定費を割り掛けますと単価が安くなってくるというような側面も、率直に言うとございます。さらに、将来の新システムに伴う歳出増加部分、それからさらに、今度、新システムをつくりますと、情報処理コストが下がるという側面もございます。

 こういうものを中期的に五年ぐらい見通しまして、それで、将来に向かっての収支見通しの上で今回の料金を提案させていただいているということでございます。

北神委員 いろいろな機械化に向けた投資がだんだん効果が出てきている、したがって、歳出が大分削減することが見通せると。それは大体五年間の収支見通しですね。それは、今の審査のスピードのことを前提にしているんですか。例えば、待ち期間が二十七カ月だということを大体前提にしているのか、それとも、今までも審査の効率化、迅速化ということを特許庁はうたってきましたが、そこもちゃんと考えに入れてやっているのかどうか、お聞きしたいと思います。

肥塚政府参考人 十一カ月、甘利大臣のもとに置きました迅速化のプランに沿って、審査の効率化、迅速化を進めていきたいというふうに考えております。

 したがいまして、審査官の定員増、情報システムの投資、それからさらに、外注をできるだけする、検索外注を十数万件から二十三万件ぐらいまでふやす予定にしておりますけれども、そういう増加の歳出を見込んだ上で中長期の見通しを立てております。

北神委員 わかりました。その辺、細かい話ですから私らもよくわからない部分もありますので、中長期的に見通しが立つというのであれば、その部分については一応安心をするということであります。

 もう一つは、さはさりながら、余剰金というか、中長期的に収支がちゃんと立つということであっても、むしろ、本当にこの知財戦略というものが大事で、特許庁の体制というものをさらに強化しなければならないということであるならば、今長官がおっしゃっているのは、料金を引き下げなければある意味では余剰金が出るということですから、そういったものを余剰金として吐き出すよりは、先行投資、投資に向ける。簡単に言えば、審査官をもっとふやすとか、あるいはもっと機械化の投資に向けるとか、そういった発想もあり得るというふうに思うんですね。

 そこはいろいろ判断はあるというふうに思うんですが、私も、決して今回の法案について揚げ足をとるつもりは全くなくて、むしろ、我が国の知財戦略を考えると、さっき申し上げたように、極めて大事だというふうに思っております。それで、そこについて、まさに知財派とされている甘利大臣のお考えもぜひ伺いたいというふうに思います。

 私の問題意識は、二〇〇三年に知財立国ということを宣言してから大体五年ぐらいたつんですが、私も、この一、二年間、企業の方とか弁理士の方とか、あるいは研究所にいる学者の方とか、いろいろ話を聞いていると、やはりまだ現場の声は不満がたくさんあるんですね。

 それは、大きなところでは、国家の戦略がいまいち見えないとか、あるいは審査官がやはり少ない、待ち期間が長い、あるいは審査官の質についても、なかなか理解してくれないとか、最先端の技術というものがやはりなかなか理解されていない、こういったいろいろな現場の声があるわけでございます。

 これは、現場の声として、もしかしたら知識不足なのかもしれないし、あるいは政府がPR不足なのかもしれませんが、申し上げたいのは、極めて重要な知財戦略について、果たして今のままでいいのかどうかということですね。

 今、ずっとこの五年間、いろいろな対策を打っているけれども、この進捗状況を大臣が見られて、なかなか、まあまあうまいこと進んでいるな、それとも、やはり課題があって、それをきっちりさらに強化をしないといけないという危機感があるのか、その辺について、大臣の知財戦略に関する今の認識についてお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 知的財産国家戦略というのは、私が党にいましたときに、労働大臣を終わってすぐ取りかかりましたから、もう八年くらい前になりましょうか。

 日本が大競争社会の中で生き残っていくために何をなすべきかということを考えたときに、高付加価値政策に取り組んでいかなければならない。それは、生活の質を上げながら、なおかつ競争にも勝つ、つまり、世界一高い給与で、なおかつ競争に勝っていく社会をつくらなければならないという思いで、一年間、チームをつくりまして取りまとめたものを、小泉内閣が発足したときに、知的財産国家戦略、知財立国として私が提言をしたものであります。

 それを小泉内閣が所信表明の中に織り込んできたわけであります。知財戦略本部というのもできまして、それから、各大学の中にもTLOと並んで知財戦略本部のようなものが設置をされた。ですから、世の中がプロパテント政策に向かって大きくかじを切っていったということは認識できたと思っています。

 そういう中で知財戦略を都度都度改定、具体的な推進計画を改定して、課題を盛り込んでいきました。いわゆる工業所有権を中心とするものから著作権のものまで含めて、都度都度時代を先取りして課題を取り込んでいって、その処方せんを描いていったということに関しては評価ができるんだというふうに思っております。

 まだまだ、企業の現場がどういうニーズを抱えているか、それを十分酌み取っていないという等の御指摘はあろうかと思います。しかし、国が知財戦略は国家戦略として大事だということで取り組んできた歴史というのは評価ができると思います。これからも現場のニーズを先取りして、知財戦略本部として戦略を立てて、処方せんを描いていくということに取り組んでいきたいというふうに思っております。

北神委員 ありがとうございます。

 評価というのはなかなか難しい。おっしゃるように、今まで取り組んできた、ちゃんと計画を見直しながら、いろいろな課題をまたそこに見つけて、それでまたそれに対して対策を打ってきた、そういうことはそのとおりだというふうに思います。現場の声も現場の声で、主観的な部分もありますから、なかなか評価は難しいんです。

 次にお伺いしたいのは、これも、私もアメリカのヤング・プランとかそういったものを勉強して、日本には、まず知財戦略の前に、産業戦略というものが今まで余りなかった、今までというのは、バブルが崩壊して、九〇年代のある時期ずっと、財政出動、公共事業とかそういったところに景気対策というものを見出して、むしろプロパテント政策とか産業戦略とか、こういったものが余り日本では議論されなかったように記憶しているんですが、この産業戦略についていろいろな手法がある。

 昨年も、安倍総理のもとで経済成長戦略というものを策定されましたが、私のイメージは、産業戦略というのを堂々と国家が、例えばバイオだったらバイオの産業分野というものを伸ばすんだと。というのは、今までの日本、あるいは古今東西の経済成長を見ても、ただ政府が、政府というか勝手に民間が何か新しい動きをつくっていって活力を出していくというよりは、むしろ、やはりそれぞれの時代に牽引する産業というものがある。日本の戦後でも、造船、鉄鋼から始まって、自動車、電機。

 次世代の産業は何か、これはもちろん役人だけで決めたり政治家だけで決める話ではないというふうに思うんです。その議論はもちろん民間の方とか学者とか、そういう方も入れて議論すべきですが、やはり特定の日本のこれからの経済を引っ張っていく産業というものを明確にして、国家がそのためにどういう政策をとるのかという明確なビジョンみたいなものが必要だ。ところが、それが余りはっきり見えてこないというのが私の印象なんですね。

 総合科学技術会議とか、基礎研究の分野では、四つの重点分野とか四つの推進分野とかいろいろ掲げられておりますし、経済成長戦略の中でも多少連携されているところはあるように見受けられるんですが、やはりもっと堂々と明確に、これから日本の経済を引っ張るのはこの産業だ。今出ている話だったら、バイオとかナノテクとかITとか環境とか、この四つの分野が一番よく言われますが、そういうところをある程度明確にすべきではないか。

 そして、知財戦略というのは、何も特許をたくさんふやすとかそういうのが目的じゃなくて、やはり国家の産業戦略にいかに資するかということが大事で、なかなかそこが私も見えてこないんですね。なぜなら、まず、どの産業をこれから伸ばしていくのかというはっきりしたメッセージがなかなか政府の方から出てこない。これはいろいろな意見があると思うんですよ。

 例えば、普通の経済学者でしたら、いや、そんなことを国が決めるべきではない、それはやはり市場の原理にある程度任せてやるべきだという考え方も一方ではあると思います。これはいろいろな考えがあると思うんですが、私はやはり、民間の財界の方とか学者の話とかいろいろ議論して、ある程度見きわめられれば、国が後押しすることが大事だと。

 アメリカとかイギリスとかも実際はそうやっている。ヤング・プランを見ても、投資銀行、IT産業、これがアメリカの経済を引っ張って、どの国でも勝負できる分野だということをもう既に一九八〇年代に出しておられるわけですよね。それが実っているのが、この九〇年代、二〇〇〇年代のアメリカの経済成長だったというふうに思いますので、その点についての産業戦略の部分に関する大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

甘利国務大臣 おっしゃるように、次の時代を担う産業は何かということは市場から自然発生的に出てくるものであって、政府が特定してこの分野とやるべきではないという議論があることは承知しております。

 ただ一方で、知見を集めて、将来伸びそうな分野あるいは伸ばさなければならない分野を先取りして、そのための環境整備を行っていくということも大事だという議論もあるわけであります。

 経済産業省は、戦後、今日まで、まさに日本の今を、これからを担う産業群とは何かということを見きわめて、それが伸びていくための環境整備をしてきた役所だと思うんです。それはまさに産業政策の極めて重要な部分だと私自身は思っております。

 もちろん、経済産業省がひとりよがりに将来の産業分野、将来のフロンティアを勝手に特定してそこに先導するということは避けなければなりませんけれども、英知を結集して、洞察力を磨いてこの分野ということをある程度特定してロードマップを描いていくということは大事なことだというふうに思っておりますし、そういう面で、見通す力というのを磨いて、投資効果の一番高い施策は何かということでツールを準備するということは今後ともやっていくべきだと思っております。

北神委員 そこはまさに私も考えが一緒でありまして、今まで、大臣も多分参加されている総合科学技術会議の中で、さっき申し上げた八つの戦略分野みたいなものがある。話によると、どうもことしぐらいから、漠然と基礎研究に投資をするんじゃなくて、さっき申し上げた八つの分野に割と限定して、限定というか別枠で、そういったところに集中的に投資をするという話も出てくるらしいんですが、そこの基礎研究の部分ではちゃんとやっていると思うんですね。果たして、明確に経済成長戦略として経済産業省を中心に政府がこれをリードすることに、連携が余りはっきりしていない。

 というのは、経済成長戦略を読んでも、なかなかはっきりとこの分野で勝負するんだということが書かれていない。これは、役人の立場からすれば、余りそういう責任を負いたくないということがあるのかもしれないです。

 要するに、余りこの分野だと言って、もしかしたらそれが外れたりしたり、あるいは実際そんなに伸びなかったとか、あるいは余り国際競争力を持てなかったとか、そういったリスクがあるのも確かだし、大臣もおっしゃったように、私の意見では、間違った小さな政府論というものがまかり通っていて、そもそも国家がそういう産業戦略なんかすべきではないという考え方もある、そういう批判をされるおそれもあると。

 そういう意味でちゅうちょされているのかなというふうに思うんですが、ぜひ、そういう分野、まさにおっしゃるように政治家や官僚だけじゃなくて、まさにヤング・プランなんかは、たしか民間の会社の社長さん、ヤングさん、その人が民間の英知を結集して、それをレーガン時代に取りまとめたということでありますので、そういうことを大々的にやはりやらないといけないというふうに思います。

 これは、これから本当に日本の経済も非常に厳しい時代に入る。多分、いろいろ緊急対策の話も、自民党さんにもほかの党にも出てきているし、我が党にもそういう話も出てきておりますが、恐らく緊急という話ではない。かなり長期間、厳しい経済の失速あるいは減速という状況が出てくるというふうに思うんですが、緊急対策も大事ですが、やはりもう一度、経済成長戦略ももちろん安倍さんのときやりましたが、本格的にそういった産業戦略というものを打ち出すべきではないかと。

 その際に、知財本部というのが内閣にあって、これは全省庁を統括することになっております。以前もこの委員会で私も申し上げました、知財本部があるのであれば、本当はその上に産業戦略本部というものが設置されるべきだと。

 これはやはり全体、バイオとか医療とかは、厚生労働省にもかかわる、農水にもかかわる話もある、そして基礎研究でしたら文部科学省にもかかわる。これは経済産業省がリードして、例えば医薬品の治験の審査の迅速化についても、厚生労働省もっと早くしろと言っても、厚生労働省にしてみれば、経済産業省がまた相変わらず人の縄張りに入ってきて荒らしているだけだ、おれたちの権限を奪おうとしているとか、そういうおそれというか、実際そうだと思うんですよ。

 そういう中で、本当は政府を挙げて産業戦略というものを立ち上げて、今私が申し上げているバイオ、IT、ナノテク、環境、これは今まで出てきた議論で、私も専門家じゃないので本当にここが日本が勝負できるところかわかりませんし、議論をどこまで尽くしたかもわかりませんが、もし尽くしていないのであれば、民間の人とか、英知を結集して、そういう会議を開いて、産業戦略でどの分野をこれから本当に日本として勝負していくのか。

 さらに言えば、バイオとかITとか漠然とした枠組みだけじゃなくて、その中でも恐らく日本が本当に優位性の持てる、技術力のある部分とか、もっと細分化できると思うんですよね。もっと細分化して集中と選択を図って、国家を挙げて産業戦略に取り上げていくべきだというふうに思いますが、ぜひ大臣に、そういうことを実際に行動として打ち出していただきたいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 日本にとってのフロンティアを開いていくということは、総合科学技術会議がその司令塔になっていくんだと思います。そして、総合科学技術会議で、どこのフロンティアにフォーカスを絞って資源を投入していくかということのランクづけといいますか、プライオリティーをつけていく。それと知財本部が連動して環境整備はどうやっていくべきか、その戦略を、総合科学技術会議が見定めた分野を推進していくための知財戦略のあり方というのは連動していくんだと思います。この両方に経済産業大臣は参加をしております。

 そして、それらの見定めた方向に関してロードマップを引いていくということが経産省の具体的な役割。そのロードマップに従って個別の開発のスケジュールをつくって、実用化のスケジュールをつくっていくということなんだろうというふうに思っております。総合科学技術会議がかなり強化されておると承知をいたしておりまして、ここが技術フロンティア開発の司令塔を果たして、それを、文科省や経産省、そして厚労省を巻き込んでいくという形になろうかと思っております。

 革新的創薬の官民対話については、確かに私の方から当時の柳澤厚労大臣に要請をいたしました。厚労省には厚労省の思いがあって、国民の安全、安心の最後のとりでは自分たちなので、どうしても慎重の上にも慎重にならざるを得ない。なかなか踏み出すことができないのは、国民の命と健康を預かっている役所がゆえに、そういう慎重な行動になるのは御理解をいただきたいというのが最初の大臣の発言でありました。それを乗り越えて、三省プラス民との対話、官民対話がスタートしたわけでありまして、あれは極めて有意義なスタートだったと思いますし、成果が出つつあるというふうに思っております。

 これからも、省庁の壁を越えていろいろ我が省がしかけることがあったら、迷惑がられるのを無視して、いいことはどんどんしかけていきたいと思っております。

北神委員 ぜひそれをお願いしたいというふうに思います。

 それでもう一つ、単刀直入にお答えいただきたいのは、では、今大臣は、日本のこれから引っ張っていく産業分野は何なのか、それはどういうふうにお考えなのか、お聞きしたいと思います。

甘利国務大臣 御指摘のように、IT、ナノそして環境等々、今掲げられている何項目はまさに日本にとってのフロンティアだというふうに思っております。

北神委員 これはもう明確に、少なくとも大臣がおられる間は政府の戦略分野だというふうに考えていいわけですね。わかりました。

 次に質問したいのは、今度、知財戦略との関連に移りたいと思います。

 まさにそういう産業の戦略分野がある。そして、では知財は何をするかというと、基礎研究のところで、総合科学技術会議とかで、私は、もっと公的な基礎研究をふやすべきだ。今、日本は民間の比率がむしろ相対的に高過ぎるというふうに思いますので、私はもっと、そういう意味では公的助成を導入すべきだというふうに思っているんですが、そういったところで重点的に、今おっしゃっている戦略分野に関連するような研究にどんどん集中投資をする。そこで上がってくる、いろいろな技術シードみたいなものが出てきて、そこで守るべきものというものをいち早く国際競争の中で保護をするというのが知財の戦略だというふうに思います。

 その後の、それを実際に実業化して、市場化するというところはもう企業の戦略の部分だと思いますが、知財の戦略の部分で私が思うのは、やはりそこも特許庁において同じような頭を持って、戦略分野というものがこれなんだ、それに関連するものについてはある意味では優先して、ほかの、いわゆる戦略分野とは関係ない分野より優先をして取り組むべきだというふうに思っているんですね。場合によっては、早く特許を出すのが必ずしもビジネス戦略としてよくない場合もありますので、そこはもちろん臨機応変にすればいいですが。

 この国際競争の中で、アメリカとかヨーロッパ、これから、中国、インドとか韓国と技術の勝負をしているわけで、知財というのは、私は本当にきれいごとではないと思うんですね。

 これは要するに争奪戦であって、もともとアメリカのプロパテント政策というのも、ビジネスモデル特許とかソフトに特許を与えるとか、日本では考えられないような特許のあり方というものをどんどん打ち出してきた。それは本当に、IBMとかマイクロソフトとか、個別の産業、企業を有利に世界で戦わせるために、特許庁がある意味では非常に柔軟な対応をとってきたという歴史があると思います。

 もちろん、アメリカというのはある意味では異例な部分があるというふうに思うので、そのままそっくり日本の特許庁もそのようにできるとは思いませんが、いわゆる役所の窓口業務みたいに、はい順番、次だれ、それが上がってきて機械的に審査することは知財戦略とはとても言えない。やはりそこで審査官の資質とか数とか、あるいは意識とか志というものが非常に大事になってくるというふうに思うんです。

 次に質問したいのは、だから、前提は、やはりいつでも迅速に審査をできるような体制が極めて大事だというふうに思っております。

 今回、特許料の引き下げの話に戻りますと、今までも、引き上げるときに、特許料を引き上げてきた理屈として、余りにも請求が多過ぎる、審査請求があるいは出願が。だから、ある程度それを抑止するために引き上げてきたという説明がなされてきたんですね。企業のノルマ特許とか余りそんなものがどんどん出てきたらそれこそ戦略にはなり得ないので、そういうものを抑止するために引き上げてきた。しかし、それは逆の発想でいえば、引き下げたらある程度やはりふえるはずなんですよ、出願とか審査請求というものが。

 そういうことを考えると、さっきの話にも関連しますが、引き下げることによってどのぐらい請求あるいは出願がふえるのか、そういったことをちゃんと見込んでいるのかどうか、お聞きしたいというふうに思います。

中野副大臣 委員が御準備いただきましたAMARIプランに基づいて、企業における戦略的な知財管理の促進に努めている私たち経済産業省であります。

 今、私たちの認識では、件数よりもむしろ質を重視する企業が多くなってきた。そういう意味で、出願件数はこれから減少傾向になっていくであろう、こういう認識であります。

 特許庁が実施したアンケート調査によれば、七割を超える出願人から、特許料が引き下げられたとしても出願件数の予測は現状維持または減少傾向、そういう回答がございました。

 御指摘のとおりに、特許料の引き下げによってその分予算が余る、それで別な特許の出願、こういうことにつながることは私たちもあり得るかなとは思っておりますけれども、今お話ししたようなアンケート調査などからいたしましても、特許料の引き下げに伴って直ちに出願件数がどっと増大するということは考えられないであろう、こう思っておるところであります。

北神委員 ちゃんとそういうアンケート調査もして、今後の出願の意思がどこまであるのかとか、そういったことも調査されているということであります。

 今副大臣が指摘されました私の資料の四ページにもAMARIプランというのがありますが、もう少しわかりやすく言えば、その三ページの方を見ていただければ、知的財産推進計画二〇〇七というものが去年出されました。

 その中で、特許審査の準備待ち期間をゼロとするという最終目標に向けて、今大体二十九カ月台ですが、二〇一三年には十一カ月に短縮をするという中期目標を掲げております。これも果たして今の体制で、そして料金引き下げで達成できるのかどうか、その点について、今の進捗状況を含めて伺いたいと思います。要は、心配をしているわけですね。

肥塚政府参考人 先ほども申し上げましたように、知的財産推進計画で二〇一三年までに十一カ月に短縮するという目標を掲げまして、大臣を本部長に本部をつくりまして、今、特許審査の迅速化、効率化に取り組んでいるところでございます。

 具体的に言いますと、任期つき審査官約五百名の増員、それから先行技術調査の外注の拡大、これは、二〇〇五年に十九万件ぐらいでございましたけれども、来年度予算では二十三万件、出願公開されたものについてはほぼ全部、できるものはほとんど外注したいというふうに考えております。

 それから、産業界に対して戦略的な知財管理、これは先ほど先生からお話があったような点でございます。それからさらに、国際的なワークシェアリングにも積極的に取り組んでおりまして、アメリカなどとの特許審査ハイウエーなどといったようなワークシェアリングにも取り組んでいきたいというふうに考えております。

 中期計画の節目にあることしは、大幅な増加が見られた審査請求案件の審査に着手するという年になりますので、本来であれば、審査待ち期間が長期化するということも予想されるところですけれども、こういう取り組みを続けて、中長期の目標達成に最大限努力したいというふうに考えております。

 それから、今度の料金見直しの中でも、実質的にコストがそれを上回っていくということがありますけれども、審査請求の金額については変えておりませんので、それについては前回の料金改正の考え方を受け継いでいるというふうに御理解いただければと思います。

北神委員 大丈夫だということだというふうに思います。

 今大体二十七カ月ぐらいなんですかね、待ち期間が。これが五年後に十一カ月だ、半分以下に短縮をするということなんですが、今御説明があった任期つき審査官とか、あるいは先行技術調査ですか、これを民間に委託するということですね。

 こういった方法とか、いろいろ考えておられると思いますが、これも本当に細かい計算とかいろいろしないといけないので、なかなか一概には言えないんですが、私の心配も多分わかっていただけると思うんですよ。このぐらい知財というものは大事で、特許庁の、今まで審査官をふやしてくれという話がずっとここ数年間あったにもかかわらず、急に料金も引き下げて、そして、今おっしゃった任期つき審査官とか、この辺はもう前から決まっている話ですね、これから新しくふやすとかそういう話ではなくて。恐らくことしの、きのうが最後の任期つき審査官の人たちだったというふうに思います。これ以上ふえない、むしろ減っていく、こういう中で本当に大丈夫なのかなと。

 私の資料の五ページを見ると、一審査官当たりの審査処理件数、これは二〇〇六年の数字、二年前ぐらいの数字ですが、圧倒的にやはり日本の一人当たりの件数が多い。

 これを多分、先行技術調査とかその辺で外部委託をして、そこである程度効率化を図ってきているし、これからも図るということなんですが、要するにバランスの問題で、特許料を引き下げるのもいいんだけれども、そんなにそういう要求も民間からなくて、商標と違って、そんなに特許料の負担になっていないということであるならば、そんなにぎりぎりの運営をしなくても、むしろ堂々と、せっかくこれは特別会計なんだから、上がってきているものを、もっと審査官をふやしたり、いろいろな投資に向けた方がいいのではないかと率直に思うわけでございます。

 だから、単刀直入にお聞きしたいのは、これから審査官はもうふやさなくていいんですか、今の体制で万全だというふうに見ているわけですか。

肥塚政府参考人 先生お話しのように、国内出願はさっき申し上げたような状況ですけれども、海外出願がふえるというような状況も、確かに事情としてはございます。ただ、こういう問題につきましては、国際的なワークシェアリングを進めていくというようなことで努力すべきじゃないかというふうに考えております。

 それからもう一点、我々が留意しておかなきゃいけませんのは、今起こっております現象というのは、俗に審査のこぶという、審査請求期間を短縮したことに伴ってふえている部分がございます。したがいまして、いずれにしろ、こぶはどこかで終わるということになりますので、長期的にどういうふうに採用していくかというのは非常にやはり難しい問題だというふうに思っておりまして、短期的なこぶの処理と長期的な迅速化というものの兼ね合いだというふうに考えております。

 今は五百名の任期つき審査官で、過去を見ますと、二〇〇五年を見ますと二十四万件ぐらいの実は一次審査、ファーストアクションと言っておりますが、着手件数だったのが、二〇〇七年は三十一万件にふえておりまして、今年度は三十三万件にふえてくる。

 そういうふうに見ますと、今五百名の任期つきで入っていただいた方がフル稼働に入ってくる、その中で、俗にこぶと言っていますところをできるだけ迅速に処理するという体制が適切じゃないかと。一方で、さっきの検索外注を、それから、必要な投資としましては、次期の情報化システムはかなり大胆な投資をやっておりまして、そういう効率化を図るということの中で考えていきたいというふうに思っております。

北神委員 ちょっと質問に答えていただいていないんですけれども、では、いろいろ投資とかをやっているし、国際的審査の調和というものを図るから、もう審査官はこれからそんなに、少なくともこの五年間ぐらいは要らないということでいいんですか。

肥塚政府参考人 その中で頑張ってまいりたいというふうに考えております。

北神委員 それは、本当にできるんだったらいいんですが、今までの流れとちょっと違ってきているので質問をさせていただいている次第でございます。

 次に質問したいのは、投資の中でふやすだけが能ではない、それはそのとおりだと思います。実際、審査官の質を向上させるということがやはり非常に重要だ。そういう意味では、教育とか訓練、これも当然財源が必要なわけですから、こういったところもやはりしっかり見ていかないといけない。

 さっきの大臣との議論の中で、やはり産業の戦略分野というものを設けていくのであれば、私は知財の保護をする段階で特許庁における審査というものも戦略的にやるべきだというふうに思います。その大前提として、やはり審査官が、戦略分野というのは何なのか、戦略分野において国際的な技術開発の流れは今どうなっているのかということを知るべきだし、当然、日本の戦略分野に関連する産業や企業の実態、現場感覚、あるいは、商売のセンスというものもやはり養っていかないといけないというふうに思います。

 そういう意味で、教育訓練というものがこれから非常に大事だ。研修をするとかあるいは官民交流を図るというのは、これもやはりお金が必要です。ですから、そういったことも私は非常に大事だというふうに思っております。

 ですから、一つは、専門知識が大事だ、戦略分野に関する専門知識、もう一つは、戦略分野にかかわる企業の現場感覚とかビジネスセンスというものを養わなければならない。こういうことをやはりこれからやらないといけないというふうに思うのです。

 私の資料の六ページに、これまでの特許庁の審査官の研修についての資料がございます。これは特許庁から入手したんですが、これを見ると、大体海外の留学、国内の留学あるいは大学の聴講、学会の聴講、企業実習、あとは研修ですね、情報通信関連の技術研修とか、あるいは特許庁内でいろいろ、多分有識者を呼んでそこで講義をして、みんな審査官が話を聞くということであります。

 どちらかというと、私が申し上げたこれからの審査官に必要な二つの資質の最初の方、つまり、技術の知識とかこういったところにやや偏っているような印象を受けるんですよ。大体、大学の講義とかあるいは学会とか、そういったところに、こういった知識を入手するところに重きを置かれている。

 一方で、同じぐらい大事なのは、企業実習、インターンシップという形が果たしていいのかどうかわかりませんが、企業の現場の感覚というものもやはり大事だ。これは実際、私も中小企業の方とか弁理士の方からお話を伺って、商売でどういうマーケティングをしているのかとか、これからどういうふうに売り出そうとしているのかということをわかっていた方が、当然審査も早くなるし、場合によっては、そこを審査官がむしろ指導して、今国際的な流れではこんなのじゃないよ、こういう分野じゃなくて、むしろちょっとこう改善すれば本当に世界的にも通用する特許になるよ、あるいはいずれはそれが商売になるよというようなセンスも物すごい大事だ。私は、このぐらい特許庁というのは大事だ、やはりそのぐらいの志と気概を持ってやるべきだというふうに思っておるんです。

 申し上げたいことは、やはり官民交流というところをもっと増強しないといけないんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

荻原大臣政務官 今の先生の御指摘はもっともなことだと思っております。特許出願の内容というのは非常に高度化、複雑化しておりますから、常にアップデートするということは大変重要なことだと思っています。

 そして、先生から既に資料も御用意いただいているとおりの研修等をさせていただいているわけなんですけれども、実際は、研修ももちろんそうですけれども、当然業務の方もありますので、これらのバランスをとりながら、審査官の知識、さまざまな技量を向上させていきたいというふうに思っています。

 いずれにしても、先生の御指摘を踏まえて、これからもこれらの研修制度を充実させていきたいと思っています。

北神委員 ありがとうございます。

 ぜひお約束していただきたいのは、研修を拡充する、充実するというのは大事ですが、企業との連携。それともう一つは、さっき申し上げなかったんですが、大学、研究施設、ここの人たちも非常に、知財に余り明るくない人たちが多いというふうに聞いています。これは実際、研究所の方がおっしゃっていて、なかなかみんな学者的な頭を持っていて、いかに実用化するかという人材が非常に不足していると。したがって、審査官にとっても、そういうところに行って、どういう研究開発が行われているかというのを勉強するのは非常に大事なことだし、向こうにとっても、そういう実際に審査をされている方が入ってきたら非常にいい相乗効果を生むというふうに思います。

 ですから、そういったところにぜひ力を入れていただきたい。特許料の引き下げもいいけれども、やはりそういう前向きなところにぜひとも力を入れていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。企業との交流というところと、大学、研究施設との交流というものを重点として研修を充実していくということについて。

荻原大臣政務官 失礼いたしました。既に先生の資料がありましたので、ちょっと省略をさせていただいたわけなんですが、いずれにしても、企業との交流、これは重要なことだと思いまして、現在はインターンシップ制度、これを派遣しております。およそ二カ月から三カ月ぐらい、実際に企業に出向いて、さまざまなノウハウを得ていただく。あるいは大学、研究機関へ留学、これは一年から二年程度行っております。

 いずれにしても、繰り返しですけれども、今の先生の御指摘を踏まえて、これからもこういった取り組みを強化していきたいと思っています。

北神委員 企業のインターンシップ、これも私も申し上げようと思っていたんですけれども、二カ月、三カ月なんですよね。これは、果たして本当にどこまで現場感覚を養えるのかということは極めて難しい問題だ。だからといって、ずっといるのもこれは非常に難しい話だというふうに思いますが。

 いずれにせよ、大臣にもぜひ伺いたいと思うんですが、やはりこの研修のところに力を入れていかないと、本当の意味での戦略的な審査というものができない。そして、これを見て一番思うのは、やはり企業との交流、それと大学、研究施設との交流、この二点だと思って、ぜひそこに力を入れていただきたい、もっとふやしていただきたいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 御指摘の点はよく理解ができます。どういう研修を行うか、どういうところに派遣をするか、どういう交流を行うか、これは知財戦略上も極めて重要なポイントでありますので、お話を参考にしっかり取り組んでいきたいと思います。

北神委員 ありがとうございます。

 特に企業との交流の部分について、今、任期つき審査官の話が長官からも出ましたが、こういう方たちは結構、企業に勤めていた方とか弁理士の先生とか、こういった方が中にはいます。もちろん、大学院を出た方もたくさんいると思います。こういう人たちの評価も、もちろん人によってはさまざま評価はありますが、おおむね、私もいろいろ聞いていると、なかなかいい、現実感覚を持って非常にしっかりしている方もたくさんおられると。

 この任期つき審査官というのは、大体原則五年間の任期で、実際には十年ぐらいいていただけるということであります。普通の特許庁の正規の審査官というのは、審査官になる前に大体三年間ぐらいの研修があるわけですよね。三年間みっちり研修をして審査官になっていく。つまり、十年任期つき審査官でいるうち三年は基礎研修みたいなもので費やされる。あと七年間いるわけですが、これもまさに任期つきでありますので、いずれ期限が来てしまう。

 これは審査官をふやすという意味でも私はいいと思いますし、さらに言えば、さっき言ったような現場感覚を持っているという意味ではこの人たちは非常に貴重な人材だというふうに思っております。いや、やはり給料が安いからやめようという人は強制的に引きとめることはできないと思いますが、正規の職員となって日本の知財戦略のために人生をかけたい、そういう思いの方も私は少なくないというふうに思います。

 ただ、今のままだったら、そういった道がないように思うんですが、いかがでしょうか。正規の職員として雇うという道もあけるべきではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 五百名の任期つき任用の審査官は、かなり優秀な方が多いというふうに報告を受けております。

 この任期が終わった後にも特許庁の有力な人材として確保したいというふうには思っておりますが、正直な話をしますと、定員の枠がありまして、ふやすところはふやす、減らすところは思いっ切り減らすということでめり張りをつけるのでありますが、なかなかそう大幅に人員拡充、拡大ができないということで、苦肉の策でこの方式をとったわけであります。

 そういう前提がついておりますから、なかなか飛躍的にということにはいかないのでありますが、優秀な人材はそれ以降も登用する道を開いていきたいと思っております。

北神委員 ありがとうございます。

 おっしゃるように定員の問題があります。これは総務省にも一回私もこの委員会で申し上げたことがあるんですが、行政改革といって何でもかんでも、どこの役所も同じように一律に減らすというのはやはりおかしいと。これから特許庁なんかはまさに日本の経済産業を担っていく役所なので、こういうところはむしろ拡充すべきだ、あるいは証券取引等監視委員会とか、これから金融の自由化がどんどん進んでいる中で事後規制というものをきっちりやる、あるいは公取もそうだと思いますが、こういったところをむしろ重点的にふやすべきだと。

 小さな政府というのは、ある意味では役人をふやさないといけない部分があるんですね。原則自由だから、それをきっちりルールに従っているかどうか監視しないといけないし、監視で悪いことをしていることが発覚したら、罰則もかけないといけない。そういう意味では、むしろふやさないといけない部分も出てくると思います。

 ですから、そういった問題は、それで私もまたこれから総務省とかにも言ってまいりたいというふうに思いますし、大臣の方からもぜひそういった考えでやっていただきたいと思いますが、人件費とかこういう財政的な問題も、やはり定員をふやすと出てくる。

 そういう意味でも、私はきょう、疑問として投げかけているのは、本当にこんな引き下げを今の段階ですべきかどうかということであります。

 それはさておいて、もう一つお聞きしたいのは、これも大臣のお考えをぜひお伺いしたいんですが、私が思っているのは、特許庁の審査官がそういった優秀な人材をどんどん引き続き育成していって、そういった中で、戦略分野にかかわるものであれば、場合によっては優先的にやる。今、早期審査制度とかいうのがあるのはわかりますが、あれは何か中小企業とか個人とか、枠組みがいわゆる産業戦略ではないんですね。むしろ、産業戦略分野ごとにそういった柔軟な対応をすべきだというふうに思いますが、大臣はその点についてはいかがでしょうか。

甘利国務大臣 早期審査の制度は、おっしゃるように、いろいろな分野についてあるわけです。

 御指摘は、大企業、中小企業云々ということではなくて、戦略分野についてのファストトラックの仕組みをつくれということだと思います。それについては、戦略性という観点からも重要な指摘でありますので、どういう手当てがあるか、少し預からせていただきたいと思います。

北神委員 ありがとうございます。

 これは、なかなか特許庁としても、彼らは、恐らく役人的な発想でいけば、私もよくわかるんですが、そういう非中立的なことに対するアレルギーがあるかもしれません。でも、これはさっき申し上げたように、戦略というのはそもそも優先順位をつけることでありますから、それは当然、どこかを優遇していくということは戦略につきものでありますので、本当はそういう運用をすべきだというふうに思います。

 これも、必ずしも明確な制度として打ち出すべきかどうかはいろいろお考えがあるというふうに思いますが、実際、米国とかの話を聞いていると、これも現場の声ですが、例えば、アメリカの企業は優先して審査をするけれども外国の企業は割と待たせたりする、あるいは、やはりアメリカの国益にかなうような技術については最優先で審査、特許を出している、こういう話を聞くんです。これを否定する専門家もいますから、私は実情はわかりません。

 ただ、私の感覚では、恐らくそういうことは、アメリカはプロパテント政策を立案した国家ですから、そのぐらいは、当然、少なくとも運用の面ではやっているんじゃないか。日本が余り機械的に役所の窓口業務のようにやっているのは、私はおくれをとってしまうというふうに思いますので、大臣から今本当に前向きな答弁がありましたので、ぜひともその点を検討していただきたいというふうに思っております。

 私、もう時間が来たんですが、半ば強制的に、ちょっと古川さんの時間を使わせていただきます。

 もう一つ、今度特許料の引き下げについて、十年目以降の特許料を大幅に引き下げる、これを割と強調されている。しかも、中小企業対策だというふうに言われているんですが、十年目の特許を引き下げるという趣旨についてお伺いしたいと思います。

荻原大臣政務官 特許料というのは、これは毎年支払っていただくことで、一定の期間で徐々に上がっていく累進構造というのはどの国でもとられていることでございます。また、先生既に御指摘のとおり、日本というのは、九年から十年ぐらいから少し海外から比べて高くなってしまうということがございました。それは事実でございます。

 我々としては、企業にヒアリングをいたしましたところ、十年目以降というのはやはり負担感があるということでございます。そして、今お話しのとおり、中小企業対策ということはもちろんそうですけれども、やはり十年以降負担がふえるので、その権利を放棄してしまう、こんなこともあります。

 全体的には特許料というのは引き下げたわけなんですが、そういう先生のお話のとおり、やはりこの十年以降、ここを軽減してあげたいということで、十年目以降を重点的に引き下げたということでございます。

北神委員 二つおっしゃったと思います。一つは国際的な比較で、十年目以降が比較的高い、もう一つは中小企業対策。

 その前者の国際比較の部分についても、それは確かに高いというふうに思いますが、十年目というのは大体特許としても私はかなり成功している特許だと思うんですよ。十年も続いて、それ以降ももつということは、ある程度収入も入ってきていると。そういったところを楽にしてあげるというのも、別に、喜ぶとは思いますが、果たして政策的に本当にそんな今やらないといけないことなのかということが一つ。

 もう一つは、中小企業対策ということであります。というのは、大企業は、このぐらいの金額だったら正直困らないですよ。

 だから、これは中小企業対策ということがやはり目玉だというふうに思うんですが、中小企業にとっても、これも現場の声を聞くと、十年目以降のところを楽にしたりしたら、もう今、分野で例えば電気関係なんかにおきますと、特許というのは、一つの基本特許じゃなくて、いろいろな周辺特許との組み合わせで、例えばテレビとかステレオとかCDプレーヤーとか、そういうものをつくっている。そういう中で余り料金を引き下げられると、大企業にむしろ有利だ。どんどんどんどんいろいろな特許を取られちゃって、中小企業が一つ出すところを大企業は十個も二十個も出してきて、むしろ自分たちにとって不利になる、そういう声さえ上がっているんですね。

 ですから、果たして十年目のところを引き下げるというのは、中小企業対策になるのかなというのが一点。これはもう答弁は結構です。

 もう一つは、これは、平成十九年一月の知財本部の知的創造サイクル専門調査会の中で出てきた意見ですが、そもそも中小企業というのは、こんな中小企業向けの知財政策がとられていることもよくわかっていない。さらに、私の経験でいえば、知財という言葉自体、非常になじみの薄いものだというふうに思います。さっきも質問に出てきたというふうに思いますが、そういうところで、十年目以降の料金を引き下げる以前にやらなければならないことがあるんじゃないか。

 これは、簡単に言えば、私の資料の最後にありますが、七ページに中小企業への料金減免制度の日米比較という資料がありますが、やはりこれが本筋だと思うんですよ。これをやはり周知徹底させて、かつ使い勝手のいいものにすべきだ。これは、知らないという中小企業の方も非常に多い。

 八ページの方を見ていただくと、これは特許庁が委託をしてやったアンケート調査ですが、特許料等の減免制度の利用状況に関するアンケート調査ということで、利用経験ありという方が二・九%、知っているが利用したことがないが二二・一%、知らないという方が何と七五%なんですよ。もちろん中小企業にもいろいろあって、全くそもそも知財と縁のない世界もたくさんあるというふうに思いますから、七五%の数字にそんなに大きく心を動かす必要はないというふうに思いますが、それでもやはり周知徹底が非常に弱いということ。

 もう一つ申し上げたいのは、もう一回七ページに戻りますと、日本とアメリカの中小企業の減免制度の比較において、やはり条件が非常に厳しい。

 日本の場合は、研究開発型中小企業でないといけないか、あるいは資力に乏しい個人、あるいは法人。そして、これもちょっとひどい話だと思うんですけれども、資力に乏しい個人、生活保護を受けていたり税金を払えていない人しかこの減免制度を受けられない。中小企業の法人に置きかえますと、たしか十年間、十年間じゃなかったかな、法人税を払っていない企業しかこの減免制度を受けられない。十年じゃなかったかな、前の年度末で法人税を払っていないところだというふうに思います。

 そういうところについて、弱っているところに知財あるいは特許の申請を促すよりは、やはりこういう条件を、アメリカの場合は基本的に、この右の「対象者」にありますが、小企業、自然人、非営利団体、このように窓口は非常に大きく開いているわけですよ。そのかわり、事後的には厳しいんですよ、もし不正な審査とかがあれば。

 だから、こういったところを私はもっと使い勝手をよくしないといけないというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 アメリカの場合、中小企業というだけで、間口が広く対応されている、日本の場合は、赤字企業であるとかあるいは研究開発型中小企業であるとかいうことに限定されてしまっていると極めて使い勝手が悪いのではないかということの御指摘であります。

 料金についての中小企業優遇ということもそうでありますけれども、いろいろな知財戦略自身に関する、どういう支援の手だてがあるのかということを中小企業自身が把握していない、それをきちっと知らしめることが大事だと思っておりますし、その御指摘もあったと思います。

 そこで、いろいろ、知財駆け込み寺であるとか、あるいは地域経済産業局の中に知財戦略本部をつくって、そこで各種施策に対する相談に応ずる、あるいは知財を活用したビジネスプランづくりの支援であるとか弁理士等による無料相談会とか、あるいは特許流通アドバイザーの派遣、あるいは無料の特許の先行技術調査支援等々、料金以外の部分でも、知財を活用して企業戦略をどう立てていくかということに対する広範なアドバイス、支援があるわけでありまして、それが行き渡りやすいように、こういうところに相談に来ていただければ懇切丁寧にアドバイスをさせていただきますし、こういう手だてがありますよという旨をこれからもしっかりと知らしめていこうというふうに思っております。

北神委員 ありがとうございます。

 ぜひ中小企業対策に力を入れていただきたいと思います。大臣も多分同じ考えだと思いますが、まさに、知財というのはむしろ中小企業にとって非常に大事なものであるということでありますので、使い勝手がいいようにすべきだし、さっきおっしゃったようないろいろな方法で、アドバイスをする、相談する場所とか、そういったところを周知徹底しながら、より活用してもらえるようにしていただくべきだというふうに思います。

 もう時間がございませんので最後にいたしますが、要は、きょうずっと質問させていただいてきたわけでありますが、料金の引き下げ、これも必ずしも私も反対ではございません。ただ、これをやるということは、中長期にやはり余剰金が出てくる、それを生じさせないように、ある意味では良心的に料金を引き下げるという話だというふうに思います。

 一方で、大臣からもお話があったように、やはり知財戦略というものが日本の産業戦略にとって極めて中核的であるということを考えると、私は、今、中小企業の制度とか審査官のあり方とか、いろいろな工夫をもっとしないといけない、投資をもっとしないといけない、そういったことを考えると、ただ料金を引き下げるというよりは、そういったところにむしろ力を注ぐべきではないか、これはバランスの問題だというふうに思います。

 ちょっと探偵のように推測させていただくと、恐らく今回の料金の引き下げは、特別会計に対する批判が厳しくなっているから、特許庁はちゃんとやっているんだよという一つの先手を打たれているというか、そういうふうにやっているのかなというふうに勘ぐらざるを得ないのが一つで、そうでなければ、本当は中小企業の支援対策である本丸の減免制度のところをもっと充実すべきなんだけれども、財務省か何かからだめだというふうに言われて、では、しようがないから料金の引き下げで、これをもって中小企業対策としようかと、これは単なる推測でありますが。

 というのは、この料金の引き下げがそんなに、商標の方はよくわかりますが、特許の方の引き下げが本当にそんな切実な、今やらなければならない問題なのかなという疑問があったわけでありますが、今の質疑を経ても、いまいち気分が晴れないということであります。

 いずれにせよ、大臣の認識というのは私も非常に敬意を表しておりますので、ぜひともこの知財戦略に堂々と力を入れていただいて、それにふさわしい特許庁の制度そして人材というものを育成していただきたいということを申し上げまして、ちょっと早いですけれども、終わりたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

東委員長 以上をもちまして北神圭朗君の質疑を終了いたします。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

東委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。

 私は、特許法の改正について御質問をする前に、知財戦略の中で日本のブランド戦略というものが一項目として掲げられているわけでありまして、それに関連してちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 まず、それに先立ちまして、大臣、ことしもダボスに私も御一緒させていただきましたが、向こうでもお目にかかりましたけれども、出られるのはことしで何回目になられるんですか。初めから三回目ぐらいですか。出られて、ダボス会議の中での日本の存在感といいますか、そういうものについてどんなふうに感想を持たれたか、ちょっと大臣の御感想をお聞かせいただけますか。

甘利国務大臣 ことしは総理が出席をされまして、基調講演をされました。たくさんの方が聞かれましたけれども、あそこで日本の洞爺湖サミットに向けての日本なりの考え方の発信をまずされたわけでありまして、それはかなり評価を受けたと思います。ダボス会議が、歴史を重ねるに従って、その年の世界じゅうが一番取り組む課題の発信拠点のような形に次第になってきているわけですから、そこで日本の存在感を示すということは大事だと思っております。

 私も幾つかのセッションに参加しまして、キーノートスピーチや日本としての考え方等を発表させていただきましたし、議論にも加わりましたけれども、まだ産業界がこれを完全に有効に使い切っていないなという感じがいたしました。ですから、産業界も、いわば一年間のその業界全体の戦略のうちの一つに組み込むという発想も必要なのかなという感じがして帰ってきたところでありまして、あの出席をしてよかったと思っております。

古川(元)委員 私も、ことしは総理も行かれて、毎年いつも、総理初め大臣や政治家ももっと行った方がいいと思っておりましたので、ことしは大勢行ってよかったなというふうには思っております。

 ただ、今、大勢の人が総理のスピーチを聞かれたというお話をされましたが、ちょっと実は、私はびっくりしたことがあるんです。というのは、毎年、ここ数年、サミットの議長国のリーダーが来て、ことしも総理がやられたコングレスホールという一番大きなホールでスピーチをするんですが、私の記憶によると、おととし、ブレアさんが来たときは、もうそこの部屋はいっぱいで、その映像を映すというので映像で見るその部屋もいっぱいでもう入れない、聞くこともできないという状況がありました。去年はメルケルさん。メルケルさんも、もうあのホールはいっぱいで入れない、そういう状況でありました。

 大臣は一番前に座っていらっしゃったので、おわかりになっていらっしゃらないかもしれませんが、実はことしは後ろの方にかなり空席があったんですね。この状況というのは私にとってはかなりショックでございまして、サミットの議長国、しかも総理が新しい総理としてわざわざ日本から来るというにもかかわらず、いっぱいにならない。

 去年までは、総理が行ったりとか、とにかく日本人が大勢行ったらそれなりに存在感というのは示せるんじゃないかと思っていたんですが、どうもことしの状況を見て、もう日本は、ただいるだけでは、それでは済まなくなってきているんじゃないのかな、私は帰ってからこんなふうに申し上げているんです。

 日本は、かつて一世を風靡したアイドル歌手のような状況で、もちろんみんな知っていますよ、しかし、だからといって、今しゅんの売れているアイドル歌手のように、あの人を見たら、一緒に写真を撮ってくださいとかサインを下さいというふうにはいかない。ああ、いるねというくらいの、そういう存在になってしまったんじゃないか。一方で、中国とかインドとか今しゅんのアイドル歌手の方は、ほうっておいても人がどっと集まる。

 ですから、日本は、もう今こういう状況になったら、いつまでも、いれば黙っていても人が寄ってくるというんじゃなくて、やはり自分から売り込んでいく、私は、そういう国家としてのIR戦略というものを立てていかなきゃいけないんじゃないのかなと。そのためにも、今までの日本のブランドといえば、メード・イン・ジャパンや経済大国、そういうのがイメージであったかもしれませんが、やはりそれにかわる新しいブランドの構築が非常に大事なことだと思います。

 そうした視点でいえば、この知財推進計画の中に日本としてのブランド戦略を立てるということは非常に大事なことだと思うんですけれども、ただ、これを見ていくと、何か食育が出てきたりとか、直接これはブランドにかかわるのかな。要するに、霞が関によくあることですけれども、とにかく何か関係ありそうなものを全部出せというふうに言って、それだけをつなぎ合わせた形にしか見えないような感じがするんですね。

 経産省だけでも、実はきのう言ってちょっと資料をつくってもらったんですが、どうも、このブランド戦略というものについてよく理解を、一番していなきゃいけないのにしていないんじゃないか。

 実は、私がきのうレクのときにお願いをしたのは、日本のブランド戦略という意味で経産省がかかわっているものについて、どこの部局がどんなことをやっているか、簡単でいいからリストを出してみてくれと。そもそも、経産省の中だって、大臣もよくわかると思いますけれども、経産省というのも個人的にいろいろなことをやっていたりしていまして、全体をよく把握されていないというのは、私がかつて役所にいたころから、お向かいさんはそういう役所だということがあったんですが、そういうことなんじゃないか。

 だから、一回ちゃんとまとめる意味でも出してごらんというふうに言ったら、「ジャパンブランドの確立に向けたイベントの連携強化」ということで、どうもブランドとイベントを混同しているんじゃないか。何かブランド戦略を立てることは、いろいろイベントをやればそれでブランドが確立すると思っているんじゃないか。残念ながら、私が求めたものとは違うものが出てきたんですね。でも、こういう認識ですということで大臣にも知っていただきたいと思って、あえて資料として出させていただいたんです。

 そこを一歩置いておいても、これはイベントでいろいろなことをたくさんやっているんですが、では、これが国家としてのブランド戦略に一体どういうふうにつながっているのか。経産省の中だけで見ても、経産省こそ本当は国家としてのブランド戦略の先頭に立っていかなきゃいけないのに、統一したコンセプトやキーワードというのがあるのかな。とにかく、何かこれもつなぎ合わせてしまっているような感じに見えますが、これを見て、大臣、どう思われますか。

甘利国務大臣 ジャパン・ブランドをかなり広義にとらえて日本らしさというものを発信していく、ジャパン・ブランドと言った場合、狭い意味でこれがそうというのはありますけれども、全体を網羅して、これぞ日本の真髄といいますか、それを一つの説明でつなぐということがなかなかまだできていないんだと思うんです。

 私が大臣に就任をして、日本のよさというのをなかなかうまいぐあいに表現できないけれども、感性価値という見えないものを体現できないかということを投げかけてきたわけであります。同じ物を買うなら日本らしさ、新日本様式なども、どこがどう新日本様式だということはなかなか言いづらいんですが、よそのものと比べてみると共通した何か伝統のよさが込められているという、なかなか体現しにくいものを表現しようというところがなかなか難しいんだと思うんです。

 我が省では、ファッションもそうですし、コンテンツもそうです、日本に独特なものというか、日本の強みが発揮をされているもの、そこの真髄は何だろうかということを探りながら、それを体系化していくということをやっているところでありますし、農水省についても、食文化なるもので日本のよさをどう表現していこうかと。

 そういう中で、各省に共通する日本ブランドを表現するキーワードというのは、横ぐしで刺すようないい感性表現というのがなかなか見つからなくて、何となくちぐはぐな感があるかと思うんですけれども、日本のよさによる差別化ということを、我が省でいえば、産業戦略とどう結びつけていくかということを今模索中なところでございます。

古川(元)委員 わかったようなわからなかったような御説明なんですけれども。

 それでは、日本人の中でも日本ブランドというのがわからないのに、それを外国にどうやって説明するのか。本来やらなきゃいけないのは、ブランド戦略と言っているんですよ。これは、知財計画の中でも国家戦略としてやらなきゃいけないと言っているのに、まず本当にやらなきゃいけないのは、いろいろなイベントをやる前に、その横ぐしとして、こういうものがキーワードですみたいなことをやらないといけないんじゃないですかね。

 もともと、ブランドの話をつくっていく、知財計画の中に入れ込んでいく前提として検討されたんだと思いますが、知財戦略本部のコンテンツ専門調査会の日本ブランド・ワーキンググループなんかでも提案されています。

 そういう中でも、イギリスなんかだと、トレードマーク・ブリテンという言葉のもとに、国家広報戦略で広報特別委員会をつくったりとか、フランスなんかでも、フランスがフランスであるために、そういうキーワードをつくったりとか、アメリカだと、アメリカニズムの福音とか、何かやはり、最初にそういうものをきちんとやらないと、ただ日本ブランドと言って、それぞれの役所で、それで統合していこうとしても、どうも経産省も、見てみると、これが経産省内でどういうふうにこのイベントが統合されているのかな、頭のところに、シナジーを創出すべくと書いてあるんですけれども、これもよくわからないんですよね。多分、大臣もおわかりにならないと思います。

 その大臣が提唱している、例の感性価値創造イニシアティブですか、では、これも横ぐしにずっとなっているかというと、そうでもないんですね。経産省でさえもそうなんですから、いわんやほかの役所をやというか、それこそ食育をやっている農水省とか厚労省にブランドという考え方があるか。例えば、厚労省なんかでいったら、今はメタボの対策で、将来的にそういう生活習慣病にならないように、小さいころから食習慣をきちんとしましょうという発想がベースにあると思うんですよね。そういうところに、ブランドなんという発想があるのかな。

 やはり、そうやって考えていくと、ブランド戦略を国家戦略として位置づけるということで知財本部でやるのであれば、それこそイギリスのように、ちゃんと何か、そういう一番のキーコンセプトを考えて、こういうものだというものを打ち上げて、そこに従って、各役所がそれにかかわるいろいろなことをやっていく、そういう仕組みをつくらなきゃいけないんじゃないかなと思いますけれども、大臣、どう思われますか。

甘利国務大臣 例えば、感性価値創造でいえば、そういう分野に携わっているファッションデザイナーとか建築デザイナーとか、いろいろな人に集まっていただいて、何回も会議をやりました。私も、ずっと通しで会議に参加をしました。ただ、そういう中でも、これぞコンセプトという、横ぐしで明確な表現がなかなか出てこないんですね。それぞれが好き勝手にいろいろ自分の思いを述べていらっしゃるという感じに映る場面があった。ただ、日本らしいものをどんどん挙げていく中に、自然とその概念が構成されていくということもあるんだと思うんです。

 新日本様式では、これぞ新日本様式と思うものを、いろいろなものを選択してもらいました。それ全体を見ていると、何となく日本のよさというのは表現されているんじゃないかな。単に、目新しさじゃなくて、その裏に歴史と文化が蓄積されているようなデザインであるとか、あるいは、漆のような日本独特なものをうまく使ったものとか、そういう、最初からこういうものが日本ブランドですとぴしっと決めるのじゃなくて、周りから見て、あるいは外国から見てあこがれる日本みたいなものはどこが違うんだろうかというところから、次第に凝縮していくという作業が必要なんじゃないかと率直に思っております。

 ちょっと話は違うんですけれども、フェラーリという車のデザイナーは日本の方がやっていたんですけれども、その人に私、フェラーリの曲線というか、フェラーリらしさというのはどこなんですかと聞いたことがあるんです。フェラーリにデザイナーが入るとまず何をするんですか、フェラーリらしさという曲線というのはと。そうしたら、半年間、既存のフェラーリのデザインの曲線を朝から晩までかくんです、かいているうちに、半年間たつと自然に、新しいデザインをするときに、これぞフェラーリの曲線というのができますということを彼が言うんですね。だから、いろいろなものが集積していくうちに、それが凝縮されて、その一本通っている最大公約数みたいなものが出てくるんじゃないかとも思うんです。

 そこで、今は、外国から見て日本らしい感性のものとして評価されている、これが格好いい、クール・ジャパンと言われるようなものを集めていくと、そこから日本の感性価値のエキスというのは出てくるんじゃないかと思っておりまして、最初から、これが日本のエキスというのはなかなか決めづらいから、評価の中から凝縮していくというアプローチが必要じゃないかというふうに個人的には思っているんです。

古川(元)委員 今見ていくと、そういう、凝縮してちゃんとまとめていく、だれがまとめるのかというのが全然ないんですよね。それぞれ勝手にやっているという感じなわけですよ。

 だからこそ、そういうアプローチの仕方もいいと思いますが、それであれば、それをすべて見ていて、その中から何が見えてくるかという、今まさにフェラーリの話をされましたけれども、そういう視点からすべてのものを見る人たちというか、そういうチームをつくらなかったら、みんなそれぞれの役所で、例えば食育をやっている人たちにそういう頭を持てとか言ったってそれは無理ですから、やはりそういうところが必要じゃないかということを言いたいんですね。ぜひその辺は検討していただきたいと思います。

 そうじゃないと、国家としてのブランド戦略といっても、国家戦略なく、ただ何かイベントばかりあちこちでやっているということに終わりかねないわけですから、ぜひそこは、そういう枠組みをつくることを検討していただきたいと思います。

 ブランド絡みで、ちょっと最後に一つ、前にも少し大臣に検討をお願いした件でございますけれども、日本が外に対して売り出していくという意味では、世界経済フォーラムなんかの地域会合というのは非常にいい機会だと思うんですね。御存じのように、昨年からアジアで夏に、サマー・ダボスと称する二千人から三千人規模の大きな会議が開かれるようになりまして、昨年は大連で、ことしは天津で行われる。

 本当は、去年大臣に質問したころだったら、まだ来年のは決まっていなかったんですけれども、どうも、また来年は大連でやるみたいに決まったような話も聞いております。サマー・ダボスが、このままだと、それは中国でやるというふうに固定化されかねないような状況にもあるんですね。

 世界じゅうからいろいろな人たちが集まってくる。ビジネス界なんかのトップクラスの人たちが集まってくる。特にこのサマー・ダボスというのは、ニューチャンピオンと言って、新しい産業分野でどんどんと活躍している人たちを中心に集めているわけでありますから、そういう人たちこそやはり日本に来てもらって、そこはかとない日本らしさというのは、やはり日本に来てもらわないとなかなかわからないわけですね。

 かつてのように、メード・イン・ジャパンの品物が世界じゅうにあって、日本の何だと言ったら、それはソニーのウォークマンだとか、そういうものがぱっとわかる時代じゃなくて、先ほど大臣の話のように、そういう意味でのなかなか目に見えにくいような日本らしさというものであれば、やはり来ていただくということが非常に大事なことであって、そういう意味でも、こういうものをやはり政府としても積極的に招致していくということが大事じゃないか。

 実は、ダボス議連というのが自民党にも民主党にもありまして、先日そのダボス会議の報告を両方の議連が合同で会議でやりまして、そのときには、党派を超えて、ぜひこうした地域会合を日本に招致するような運動もしていこうということを確認したんですけれども、ぜひこれは、やはり政府も積極的に招致に動くような、そういう旗を振っていただきたい。特に大臣には、経産大臣としてそういう旗を振っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 世界経済フォーラムが主催をされる本チャンのスイス・ダボスでの会議と、それからアジア・ダボスとかアフリカ・ダボスとか、いろいろあるんですよね。

 実は、世界経済フォーラムが主催するアジア版について日本が積極的に参画をしていくということについては、大きな意義があると思います。ただ、サマー・ダボスは、中国政府が主催して、それに世界経済フォーラムが乗っかるという形だと、要するに主催がだれかということが大事だと……(古川(元)委員「主催は世界経済フォーラムですよ」と呼ぶ)ああ、そうですか。私が承知しているのは、中国政府が前へ出てほとんど面倒を見て、それで中小企業、先端分野のベンチャー企業等を集めてやられる。政府の意図が余り前へ出ると、よその国、企業が警戒をして、特定な政治的な意図ということで参加しづらくなるという話をちょっと聞きましたので。

 あくまでも、世界経済フォーラムが主催をしてアジア版のを行うという限りにおいては、日本は積極的に関与すべきだと思いますし、どこかの政府の意図が入っているのに日本がその端っこに乗っかるということについては少し慎重にしなければならないと思いますが、アジア版のダボス会議、世界経済フォーラムが主催してそれに開催国が協力をするという限りにおいては、積極的に協力をしていくべきだと思っています。

古川(元)委員 大臣、多分それは博鰲会議と勘違いしていると思うんです。中国が、要するにダボス会議みたいなものをやろうというので、何年か前からやっていたんですけれども、結局それはうまくいかなかったわけですよ。今大臣が言われたような、そういう中国政府の意図。

 それで、今度は何をしたかといったら、本番の世界経済フォーラムにやってもらおうと。中国側は、政府の方は後ろ側でサポートする体制に回ろうというので、サマー・ダボスというのは、これはもう完全に世界経済フォーラムが主催なんですね。完全にやっているんです。

 ただ、何で中国でやるのがいいかといったら、それは条件を物すごく、政府が全面的にバックアップします、世界経済フォーラムでやるのをバックアップします、そういう強いサポート体制があるものだから、それは世界経済フォーラムとして見れば、いろいろな条件が提示される中で一番いい、いわゆるコストも安くやれるところに行ってしまうということになるわけなんですね。

 だからこそ、こういう国際会議を日本に引っ張ってくるということは非常に大事なことですし、またアピールする場としても非常に大事な場ですから、これは一民間団体がやるという発想じゃなくて、政府としてもそれなりのサポートをする。

 もちろん、中国みたいな形でやれないと思いますよ。去年、中国へ行って私びっくりしたのは、通関のところも全部、サマー・ダボス・パーティシパンツという特別レーンで参加者だけすっと行かせてくれるとか、そんなことは日本でできるとは思いませんよ。しかし、ある程度やはり政府が後ろでサポートしていくということがないと、このサマー・ダボスが中国のものにされてしまうような、それは世界経済フォーラムも好ましいと思っていないんです。

 だからこそ、日本からもう少しオファーでもあれば向こうはぜひ乗りたいと思っている気持ちがあるにもかかわらず、いや、それは民間のものですからといって日本政府なんかは手をこまねいてやっていると、それは、上げぜん据えぜんで全部面倒を見てくれるところに行かざるを得ないですよね。そういうところを考えていただきたい。それこそ、国策として、国家戦略として考えていくことじゃないかというふうに思っているんです。

 そういう意味で、もう一度省内でも検討していただいて、政府内でも、こういうものを固定させないように、サマー・ダボス・イコール中国というふうにならないようにぜひお願いをしたいなと思います。

 次に、この法改正絡みの話でちょっと御質問したいと思います。

 まず、大きな話で、今回の改正に我々も賛成です。これは利便性もよくなる、いいと思っていますが、しかし、今回の改正が今後のプロパテント政策に向けての歩みの中でどういう位置づけにあるのか。今回の改正の哲学と言ってもいいと思いますけれども、その点について御説明いただけますか。

甘利国務大臣 知的財産戦略、知財立国というのは、先ほどお話ししましたように、私が党で小委員会をつくって取りまとめた提言、知財立国宣言ということで取りまとめましたが、それを小泉内閣の発足の際に提言をいたしました。小泉総理が大変乗り気で、それを採用し、戦略本部をつくっていただいたわけであります。その中では、知財の創造、保護、活用のサイクルが拡大していく、スパイラル的に大きくなっていくということのための官民挙げての体制をとれという提案を私はしたわけであります。

 その際に、いろいろなプロパテント政策が進んでいく際の問題点を、産業界側から、あるいは学識経験者の側からもその都度提示してもらいまして、それに対して改定計画をつくって、それの具体的な作業を関係省に指示していくわけであります。

 今回も、いろいろ指摘をされていました料金の問題について、改定が必要だという現場からの声、もちろん、良質な申請がどんどん出てくる、審査する以前に認められないのはわかっているのがどんどん出て、作業だけ繁雑になるということにならないように、質のいい特許がスピード感を持って実行されていくような体制をとっていくという大方針にのっとって今回の改定がなされたわけであります。

 現場の声を受けとめて、ライセンスの活用についてもより現場の声に沿った改正がなされていると思いますし、先ほど申し上げました料金体系についても、改定要望を受けて、もちろん、これからなしていくいろいろな取り組みについて支障がないという判断の上に、料金の引き下げということもやったつもりであります。プロパテント政策を前に進めていくという大方針のもとに、今回の改正もその延長線上にあろうかと思います。

古川(元)委員 わかりましたが、その上でちょっと一点、審決取り消し訴訟と特許権侵害訴訟のいわゆるダブルトラックの問題についてお伺いしたいと思います。

 二〇〇四年の特許法百四条の三の導入によりまして、特許権侵害訴訟において、被告側が相手特許の無効を主張することが認められました。これによりまして、特許の有効性に関する判断は、特許庁における無効審判と、特許法百四条の三に基づく裁判所における判断の二つの方法が併存することになりまして、実務上では、特許権侵害訴訟において特許の有効性が争われる一方で、同時に無効審判の審理が進む場合があって、場合によっては、訴訟における裁判所の判断と特許庁の判断が異なる場合がある、そういう状況が出てきた。

 資料の二を見ていただくと、特許侵害訴訟における無効の抗弁が主張されて無効とされた割合とか、かなり高いんですね。無効の抗弁がされた特許侵害訴訟の割合なんかを見てみますと、やはり二〇〇四年以降急に上がってきている。ですから、特許権者の勝訴率の割合というのが、二〇〇七年でいえば二四%ということで、特許権者の勝訴率で見ると、かなりこれは低いんじゃないか。

 特許権の安定性という観点から見ると、これだけ無効の抗弁で負けちゃうということになるとなかなか、特許権者がそれを前提にしてビジネスをやっていくという意味では非常に不安定であって、このダブルトラックの問題というのは、立法上の措置も含めて、もう一度きちんと整理することを検討すべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

肥塚政府参考人 今先生お話しのとおり、従来は、特許の有効、無効の判断は、特許庁の審判を通じて決定される事項で、侵害訴訟において特許が無効であるという判断はできないというふうに理解されていたわけですけれども、さっき御紹介の、最高裁の平成十二年のキルビー判決で、明らか要件と言っていますけれども、特許の無効理由が存在することが明らかであると認められるときはという判例が出ております。

 当時の経緯でございますけれども、産業界は、この判決を評価する一方で、特許無効の理由があることが明らかに認められるか否かという予測が困難なので、明らかか否かにかかわらず、侵害訴訟において特許の有効性の判断がなされることが望ましいという旨の要望が出されておりました。

 こういう要望を踏まえて、司法制度改革推進本部で検討がなされ、その結果、平成十六年に、さっき先生御紹介の、裁判所法等の一部を改正する法律で特許法が改正されまして、それで百四条の三が新設されたという経緯がございます。

 検討の過程で、無効審判をむしろ廃止するという議論も実はありました。ただ、そのときに、一点は、簡易迅速に結論が得られる無効審判の存在意義があるんじゃないか。二点目として、無効審判は、職権探知など、民事訴訟と違う機能がある。それから、件数で申しますと、今無効審判請求件数は、非常に大ざっぱに言うと三百件ぐらい、それから侵害訴訟は四、五十件ということで、無効審判も存続させるべきだという議論がございます。

 その結果、今先生が御指摘のような状況になったわけですけれども、これを解決するために特許法の百六十八条が改正されまして、特許庁で侵害訴訟における関係資料を入手することを可能にすると同時に、その資料を無効審判の審理で活用するという制度を入れております。

 私ども、詳細はちょっと省きますけれども、そういう措置を活用して、できるだけそごを減らしたいというふうに考えております。

 それから、百四条の立法措置という話でございますけれども、十六年に改正された裁判所法等の一部を改正する法律でありますけれども、改正されておるということで、先ほど申し上げましたように、さまざまな議論の上でこういう議論があるものですから、直ちに改正の議論をするのはいかがかというふうに考えています。

 一方で、権利の予見可能性あるいは権利の安定性、それから特許の質というのは非常に大事だと思っていまして、私ども、イノベーションと知財政策に関する研究会というのをつくっていまして、そこでも、審査基準を柱として、その予見可能性あるいは権利の安定性をどう確保するかという議論を今行っているところでございます。

古川(元)委員 お話があった二〇〇〇年のキルビーの最高裁判決というのは確かにおっしゃるとおりなんですけれども、当時は無効審判の結論を得るために相当時間を要していた、そういう状況があって、今みたいに無効審判がかなり早くやられるようになったときには、状況も変更があると思いますから、やはり新しい状況に応じた、必要があれば立法措置も含めたことを、もう入れたからというのじゃなくて、日々変わっていくわけですから、ぜひそのことも検討していただきたいと思います。

 時間が限られていまして、最後にiPS細胞研究に関する政府のサポート体制についてお伺いしたいと思います。

 資料の三を見ていただくと、特許庁の方では、iPS細胞の研究のようなものについては、研究開発プロジェクトの立案段階からいわゆる知財の目というのを言っていらっしゃいますね、そういうのが必要だと。それはそのとおりだと思います。

 では、そういう体制が世界的な研究成果でありますiPS細胞の研究についてできているのかというと甚だ疑問なところがありまして、次の四に、総合科学技術会議で出ました当面の進め方にというところがあるのですが、この中で知財に着目した部分は、四の二の中の将来構想の方に入っているんです。これは一刻も早く措置しなきゃいけないものじゃないかと思っていますが、これは将来構想なんというのでいいのですか。

丸山政府参考人 今御指摘のあったとおり、このiPS細胞研究というのは、世界で日本が先駆けて成果を出したものでございます。国際的に見ても、この分野の研究というのは物すごいスピードで、競争のもとで行われているというのが実態でございます。

 そういうことを反映して、私どもは、予算も平成十九年度六億円から政府全体で三十一億円にふやして、今、京都大学の山中教授を中心に研究体制を整えているということでございます。

 まずは、今現実的な対応として、山中教授を中心に他の大学の研究者といわゆる共同研究を結び、しかもiPS細胞をなるべく多くの研究者に配分することによって研究を加速するということでやっておりまして、まさに先生御指摘のように、将来、オール・ジャパンで、なるべく日本に、数が限られている研究者の頭脳を結集した体制を一刻も早くつくるという点は全く同じ認識でございます。

 総合科学技術会議ワーキンググループで専門家にお集まりいただき、かつ山中教授にも来ていただいて検討を進めた結果、二段階方式で、今の京都大学iPS細胞研究センターを中心にして、ネットワーク型で知財のことも考えながら研究を進める、なるべく早く包括的な研究組織を日本全体として立ち上げる、そこで、知的財産についても、ばらばらではなくて一元管理ができるような体制を研究の進捗に合わせて考えていく、そういう方針でやっているところでございます。

古川(元)委員 大臣、これはちょっとのんびりし過ぎていると思うんですよ。アメリカの方なんかは、ウィスコンシン大学、コンソーシアムなんかもできて、知財は同時にやらなきゃいけないと特許庁も言っているわけじゃないですか。

 特許庁の方の、支援の体制でやっていますというので、資料を見ていただくと五ページ目にあるのですが、一番のiPS細胞の技術動向の公表、これはいいでしょう、これはiPS細胞に関してですから。しかし、やっていますという支援の二番目のライフサイエンス分野における特許の審査基準セミナーとか、特許情報活用のためのセミナーというのは、六や七を見ても、確かにiPS細胞の話も触れていますけれども、別にiPS細胞に限る話じゃないんですよ。iPS細胞の研究の成果が出たから始めたわけでも何でもないわけなんですよ。これは当然やっていかなきゃいけない話であって、それをもって特許庁は支援していますというような程度では、とても知財の目が大事だという認識に基づいてちゃんと行動がとられているとは思えないんですよ。

 知財の目でちゃんとプロジェクトの立案段階からやっていくということであれば、iPS細胞の研究について、知財を起点とした総合プロデュースをする支援拠点というものを、やはり一日も早く政府が主導でやっていくということが必要なんじゃないですか。そういうところに、弁理士会だとかいろいろな企業だとか、そういうところも含めたサポート体制をつくって、これは一刻も早くやらないと、将来とかそんな話では、この世紀の大発明を物すごくもったいないことにしてしまうというふうに私は危惧してならないのですけれども、大臣、どうでしょうか。

甘利国務大臣 私は、まさにそういう危機感を持ちまして、世紀の特許とも言えるこの取り組みに政府全体として支援体制を組めという発言を、実は直後に総合科学技術会議でしたわけであります。そのときに、もうアメリカは既に追いついているのではないか、山中教授のこのアドバンテージも、総合支援体制がないとあっという間に置いていかれるぞという発言をいたしました。

 そこで、予算的には、総合科学技術会議が中心となって、関係省庁がまとまって支援体制を組むということになったわけであります。

 あわせて、知財戦略本部に対しても、うちの役所から、周辺の知財関係の対応について一丸となった体制をとるということは要請をしております。これはしっかり加速させていきたいというふうに思っております。

古川(元)委員 発言や要請だけじゃなくて、とにかく一刻も早く体制をつくってやっていただく、これこそ国家戦略で、国益にかなうことだと思いますので、ぜひそのことは強く要望して、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

東委員長 これにて古川元久君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 大臣、お疲れさまです。

 特許法に入る前に、ちょっと幾つか確認を含めて大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

 まず、今回の特許、知的財産の問題も、先ほど大臣が触れられたように、企業ないし国全体の高付加価値政策ということにどうつなげていくかということが最終的には大変必要だと思っております。

 昨日、日銀の短観も出て、大企業も景況感が非常に悪化をしているということのようであります。

 平成十九年度が終わったわけですが、この十九年度一年間で、東証一部の株価の時価総額も、百五十九兆円、昨年に比べて一年間で減少してしまったということであります。十年前を比較してみると、これも二六%、ほぼ現行と同じような水準で対応している。企業も、トップ二十という企業の株価の時価総額、一九八九年当時は二十社中上位十四社が日本企業だということでありましたが、昨年はトヨタだけ一社、十四位に甘んじているということであります。

 大臣、やはり二〇〇二年に知的財産戦略、大臣のお声がけをいただいてつくられたものが、八年たって、企業でもまた国全体の価値という部分でもそれがなかなか明確になっていないということだと思います。

 確かに、一年間道路特定財源の暫定税率を廃止していけば二・六兆円ということも、当然、国や地方自治体から見れば減収ということでありますが、やはりこの時価総額が東証一部だけでも百五十九兆円、これも家計や企業にもちろん大きな影響を与えていますし、また企業の研究開発への投資という点でも設備投資でももちろんマイナスの影響だと思うんですね。

 ですから、トータルとして、前回の委員会でも御指摘をさせていただいたように、戦略をつくり、それに向けて官民あわせて努力をしていくということが、この十年間、昨年一年間を見てもやはり結果としてあらわれていないというふうに思わざるを得ないと思うんです。

 まず、大臣、やはりこの評価を、百五十九兆円、前年度比二七・五%下落してしまったというこの株価の現状を含めて、今回の知的財産戦略と関連をしてでも結構ですから、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、梶山委員長代理着席〕

甘利国務大臣 きょうは、五百円上げて一万三千百六十円になったそうでありますが、つくづく、世界の主要国経済というのはつながっているな、世界の市場というのは相互に影響されるなという思いを強くするわけでありますが、その中でもよく指摘をされるのは、日本の東証市場の下がり幅が極めて大きいということであります。これは、外需依存度が高いからとよく指摘をされているわけであります。

 ただ、昔と比べますと、輸出から輸入を引いた純輸出の数値は、比率はかなり小さくなっているわけでありますから、輸出もふえるし輸入もふえる、これはある意味バランスのとれた経済であろうと思いますし、国内経済だけで国を運営していくということになりますと、人口減少下ではどうしても限界がありますから、外に出て、二国間のEPAとか地域とのEPAを妥結、成功させて、日本と同じような条件で仕事ができる、商売ができる地域、経済エリアを拡大していくという方向に向かっていかなければ生き残る道はないというふうに思っております。

 今回は、サブプライム問題やアメリカ経済自身の景気の減速懸念というものがダイレクトに日本の市場を襲っているというふうに思っておりますが、日本としても、足腰を強くするために、イノベーションの推進であるとか、あるいは、特にサービス産業はそう言われていますが、生産性が外国に比して劣後している、そういう部分の生産性を引き上げていくということを通じて経済成長を促していくという経済成長戦略、自国内においては、イノベーション、生産性向上、そして経済エリアを拡大していくというEPA交渉の推進、これらを含めて日本経済の足腰を強くしていくべきだというふうに思っております。

後藤(斎)委員 特に、きのうから、暫定税率部分が廃止をされているわけでありますが、国交省の公共事業の箇所づけも含めて、一割から二割くらいしかやらないとか、非常に悲観感の部分、要するに、きょうのどこかの新聞の社説にも、病は気からということもありますけれども、今回の業況悪化というのも、そういう意味では気の部分が、メディアの皆さんがこれだけやはりマイナス効果の部分、いろいろな総合研究所の分析でもマイナス部分、要すれば、景気対策としての減税効果というものをほとんど考慮しない部分、そういう部分がやはり先行している部分もあるんじゃないかなというふうに思うんですよね。

 ちょっと順番は変えますけれども、大臣、きのうの部分では総理も、余り混乱はなかったんじゃないかというコメントを夕方の記者会見で出されたようでもありますけれども、やはり今回ガソリンの価格が引き下がった、これは日経新聞でも、きのう付の新聞では大体ガソリンスタンドは二割くらいしかやらないだろうという予想から、きょうの報道では六割くらいのガソリンスタンドが初日に値下げをしたと。

 当然、消費者の方から見れば非常にウエルカムでありますし、ガソリンスタンドの方々から見れば、かなり無理をしているところも当然あるようでありますが、なぜ私どもが主張していたいわゆる戻し税の部分で、全国のガソリンスタンドを一律にできなかったんでしょうか。

 きのうかおとといの総理からの御指示でも、ガソリンスタンドの皆さんにも、特別利子補給も含めての石油連盟、協会を通じた融資という部分でのサポートはするものの、税の部分が変化をした、その税での対応というものが、政府の中でも御議論があったようでありますけれども、どうしてできなかったんでしょうか。

 そこでダブルスタンダードに、引き下げたガソリンスタンド、引き下げないガソリンスタンド、そして後でまた公取にもお聞きをしますが、直接メーカーから入ったガソリンスタンドとそうではないガソリンスタンドのまた差もあるという非常に不可思議な流通経路になってしまったということについても、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 いわゆる戻し税については、これを実行するにはそれなりの周到な準備が必要であります。よく、酒税の過去の例が引き合いに出されますが、あのときには、半年くらい前から在庫の把握、管理が相当厳しく行われたわけでありまして、そういう周到な準備の上に初めて可能になったんだと思います。

 実は、我が省でも、万が一の場合に備えてどう準備をしておくかということは議論になっていたわけでありますけれども、国会の与野党の努力がなされている最中でありました。話し合いがついて、混乱がないような形で話し合いがつけば、それは一番、政府としてこしたことはないわけでありますから、それをぎりぎりまで見守らざるを得ないということで、いずれにいたしましても、もうぎりぎりの段階で、対応するには準備がし切れないという点があったわけであります。

 そこで、スタンド、小売店のとられる行動に対して被害が最小化、極小化していくような措置として、基金を通じた利子補給制度というのを行うということを宣言したわけであります。

 御案内のとおり、ガソリンというのは軽油と違って庫出税でありますから、もう既にガソリンスタンドのタンクに入っているガソリンは課税済みのガソリンでありますから、それがなくなるまで、厳密に言えば課税ガソリンとして売らなければならないわけでありますから、対応に差が出る。これを一律的に行政や元売の方で、こうしなさいと言うのは独禁法違反になってしまいますので、あくまでもスタンドの経営判断に任せるしかない。その上で、混乱はどうしても起きてしまいますが、その混乱を最小化していくための対応をとらせていただいたというところであります。

後藤(斎)委員 大臣、特別利子補給や債務保証枠の拡大というのは、これは正式にもう意思決定をなさったんでしょうか。それとも、これから検討して……(甘利国務大臣「もう決まっています」と呼ぶ)はい、わかりました。

 それで、ちょっと公取の方に二点確認をしたいんですが、今大臣も触れられたように、当然、三月三十一日まで油槽所を特に経由している部分について、ないしガソリンスタンドで在庫を持っている部分については、暫定税率がかかったときの仕入れたものであるというのは承知しておりますが、これもいろいろな御議論があったというお話は聞いておりますが、暫定税率部分をきのうから差し引いて販売することは独禁法上の不当廉売に当たるんでしょうか。

鵜瀞政府参考人 四月一日以降、当面の間は、暫定税率分が課税されたガソリンと新税率で出荷されたガソリンが流通段階で混在することとなりますので、販売価格もガソリンスタンドによってばらつきが大きくなることもあるというふうに承知しております。

 このような状況は異例の事態でございまして、また一過性のものであることを踏まえますと、少なくとも、周辺のガソリンスタンドの販売価格の下落等の状況から、仕入れ価格に含まれていた暫定税率分を上乗せして販売し続けることが競争上困難になり、結果的にコスト割れで販売せざるを得なくなった場合については、異例の事態のもとで市場の状況に対応せざるを得ないためのものであって、やむを得ないものであると認識しております。

 また、コスト割れにつきましても、暫定税率分を含んでいる旧在庫が暫定税率分を含んでいない新在庫に入れかわる期間において生じる一時的なものにとどまるものと認識しております。

 このため、事実関係について個別に見て判断する必要があるとしても、今申しましたようなコスト割れ販売は、その限りにおいて直ちに不当廉売に該当するとは言えないと考えております。

    〔梶山委員長代理退席、委員長着席〕

後藤(斎)委員 もう一点、部長にお尋ねをしたいんです。

 これはENEOSが数日前に公表した部分で、きのうから暫定税率部分が廃止をされたわけですが、直接製油所からガソリンスタンドに卸す場合には暫定税率がかかっていない、油槽所、ストックするところを経由すると、七日から十日というふうに在庫期間が言われていますが、どちらのルートでというのは、特約店かそうではないかというものにも差があるのかもしれませんけれども、これが独禁法上の優越的地位の濫用になるんではないかなという御議論も公取の中で、部署によって違ったというふうなことも承知しておりますが、正式には、油槽所を経由したものと、そうではない製油所から直接ガソリンスタンドに卸したもの、その二つのスタンダードがあるということについては、このENEOSの事案というのは優越的地位の濫用に当たるんでしょうか。

鵜瀞政府参考人 ENEOSの文書についてのお尋ねでございました。個別の事案についてのお答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

 一般論として申し上げれば、これまで油槽所から配送を受けていた特約店が、高い油槽所のものを一方的に購入させられることになるということで、これにより特約店が不利益をこうむることとなる場合には優越的地位の濫用として問題となることはあり得ると考えております。

 公正取引委員会といたしましては、元売会社の一方的な価格設定の問題について、従前から契約書の改定指導を行っているところでございます。暫定税率廃止に伴う元売の特約店へのガソリンの配送や価格設定をめぐって優越的地位の濫用の問題が生じないよう、元売会社には十分な説明を行って特約店に納得してもらうことが重要であると考えております。

後藤(斎)委員 いずれにしても、きのう、大臣が、緊急調査という部分で全国のガソリンスタンドの値下げ、ないし公取も、不正取引がないかどうかという調査を緊急的に考えているということでありますから、ぜひ、国会の部分は国会の部分として当然責任はございますけれども、政府としてもやはりそこはきちっとしたウオッチをしながら対応していただきたいという要望であります。

 もう一点、特許の問題に入る前に、Jパワーの問題がこの委員会でも何度か議論されました。ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスター・ファンドが欧州委員会の方に、今回のJパワーの事案が欧州と日本の間の自由貿易や投資を阻害しているという旨の書簡を発出したということであります。

 お話を今まで聞きながら、五月の十四日までにはきちっとした外為法上の国の事前許可の部分を審査するというふうなことは聞いておりますが、大臣、以前から私も、電力事業というのは、ある意味ではほかの産業とは、公益性も高いしという部分で慎重な取り扱いを求めてきましたが、その部分で従来と同様にやはり毅然とした形で対応していただきたいという考えを私自身は持っておりますが、大臣の御見解をお願いいたします。

甘利国務大臣 個別の審査中の中身についてコメントするということは控えた方がいいと思いますが、なぜこの審査をするかというのは明確に位置づけられておりまして、公の秩序の維持の観点からということで、審査の必要性がある場合には当然する。これはOECDの資本移動自由化コードに明確に規定されていることでありますし、日本だけの特殊性でやっていることでは全くありません。

 Jパワーであれば、特に大間の、これから原発を持って、プルサーマル政策、日本のプルトニウムを適切に処理するという視点から、これは安全保障上の、IAEAの保障措置の中にある対応でありますから、そっちの点からもちゃんと進めていかなければならないですし、しかも、北海道、本州、四国、九州を結ぶ送電網というのをJパワーが持っている、しかも、サイクル変換の何割かもJパワーの設備で行っているという、まさに国民生活になくてはならない枢要な部分を担当していることでありますから、何の審査もしないでどうぞ御勝手にということにはいかないということは、これはいかなる国といえども理解をすることであろうと思っております。

後藤(斎)委員 ぜひそんな形で、五月十四日、どういう形になるかは別としても、対処をお願いしたいと思います。

 それでは、知財の部分に入らせていただきます。

 大臣、今回の特許法の改正の部分についても、いわゆる今まで、特許庁の部分だけから外に、この法案の改正だけではありませんが、農林省とも連携をしていただいたり、文科省とも連携をしていただいたり、大学とも連携をということで、いろいろなセミナーも通じていろいろな活動をしていることについては非常に評価をしたいと思います。

 大臣、農林省との連携の中で、農業高校の生徒たちが、四角いメロン、カクメロというのを、私は種苗法だと思っているんですが、特許を取っているんですね。四角いメロンです。大臣もごらんになったことはありますか。(甘利国務大臣「スイカは見たことがあります」と呼ぶ)はい。四角いメロン、カクメロというものらしいんですが、これは渥美農業高校の生徒たちが発案をして、先生の指導のもとに開発を開始し、栽培技術を確立したということであります。

 大臣、私、こういう一生懸命やっている高専や工業高校や農業高校の生徒さんたちが若いうちからこういう事案を考えていくのは非常に正しいことだと思いますし、これからもっとそういうすそ野が広くなるようにしていかなければいけないと思うんです。

 一方で、以前も原子力のお話をされたときに、ものづくり全般に共通することでありますが、やはり私も、一番小さいのが今度小学校四年生で、真ん中の男の子も中学三年になるんですが、何とか理科系に、私が行けなかった分、ものづくりの分野に行ってもらいたいという希望は親としては持っているんです。やはり理科というのは、数学もそうなんですが、好き嫌いが一番激しい、小学校、中学校、高校、という分野でもあると思うんですね。

 あわせて、大学に行ったときに、工学部に行くのか、理学部に行くのか、医学部に行くのか、文学部に行くのか、法学部に行く、いろいろ学部の選定のときにも、やはり法学部や経済学部、いわゆる文系の分野はつぶしがきくから、入りやすいということもあるのかもしれませんけれども、工学部だと、やはり結構大学の一年生のときから専門性をある意味では持つと思うんですよね。

 実際、これから人口が減少する、特に子供たちの数が減る、そして理科系に行く数が減っていく。これは人数が減っていくということでありますが、そして、あわせていろいろな学力テストやそういう調査を、国際機関も含めていろいろな話を見聞きする中で、やはり学力水準が落ちている、質の低下だというふうなことも言われ続けて久しいわけです。

 特に、工学部系の卒業生をとった大きな企業でも、技術系の新入社員には以前よりも長い時間をかけて技術研修を行わざるを得ないという指摘もあります。やはりある意味では、工学部離れというのは、イコール製造業、ものづくりの基盤でありますし、今回の法案の知財という部分でも、それを開発する能力を持つ人たちの部分で、人材であります。

 その部分を考えるときに、やはりこのまま理科離れや工学部離れというものが何らかの形でストップできないかなというふうに考えるのは大臣も多分同じでありましょうし、もしそれが人的、質的に足らざるときには、やはり海外から研究員や留学生という部分で招致をしながら企業や大学でも研究をしていただくという、多分二頭立てでこれからはいかざるを得ないかなというふうに考えるんですが、大臣、その点についてどのようにお考えになるでしょうか。

甘利国務大臣 私も理科の授業が余り好きじゃなくて、なぜ好きじゃなかったのかと思うと、化学式とか、実験でもつまらない実験とか、学者の世界みたいになっちゃってとても我々が寄りつく場ではないみたいな印象が多かったんですね。

 最近、米村でんじろうさんという人がよくテレビで理科の実験をしています。あれで思うことは、理科というのはおもしろいし、好奇心を沸き立たせるという感じがするんですね。やはり理科系とか工学系に行くというのは、知的好奇心というか、それを醸成していくということから子供がそっちに向かうんじゃないかと思うんですね。そういう点では、理科というのはおもしろい、あるいは不思議だな、どうしてなんだろうという知的好奇心が一挙にそっちに向かうような、そういう体験をさせるということが大事なんだと思うんです。

 ですから、理科の授業に企業から派遣をして、そういうおもしろい教え方をするとか、実験でも遠くから眺めていてふうんというだけじゃなくて、ああ、こんなことになるのは何でなんだろうというようなプレーアップの仕方というのは幾らでもあると思うんです。だから、教え方の問題で、知的好奇心をうんと醸成させて、こういう方面にもっと進んで解明してみたいという思いが子供たちに大きくなるような、そういう授業のあり方、企業からの派遣、あるいは研究現場の研究者に来てもらってわかりやすく教えてもらうとか、授業のための授業じゃなくて、知的好奇心を膨らませていくような教え方を特にこの分野はしていくべきだと思っておりますし、そういうトライを我が省でも十九年度から、今しているところであります。

後藤(斎)委員 大臣、時間がもう少ししかなくなっているんですが、一点だけちょっと確認を今回の事案でしておきたかったんです。

 特許というのは、知的財産、企業の価値を高める、競争力を高めるということに当然つながるわけですが、一方で、先端技術、知的財産のいわゆるブラックボックス化を始めている企業や研究者の方々もたくさん今出てきたということをお聞きしています。

 特に、日本化学会では、物質名などを公表しなくてもよいというルールを設けながら、原則公開でありますが、例外を認めながら情報管理を徹底させているというふうなことであります。これは、特許庁にもお聞きをしたら、非常に深遠なバランス論で、特許を取って企業価値を高める、それとも、そうじゃない部分で競争力ないし販売を維持するのかという、これは実用化という点では、たくさんの研究者がそこに参画をし、全体を底上げすればいいんでしょうけれども、なかなかそうなっていかないということもあるようであります。

 あわせて、日本人の研究者だとか日本の企業には例えばその物質名とかを公開しながら、留学生、海外から来られた研究者にはそういうことは教えないでということで、非常に閉鎖的だというイメージも一方でも与えている。

 これは、先ほども冒頭話をさせていただいたように、なぜ日本の株価が、だんだん競争力とか価値を株価という値段をつける部分で見出せなかったというのも、ある意味では、鎖国ではないにしても、閉鎖的なイメージ、これはイメージだけだと思います、非常にいい研究もしているし、付加価値も高いしということは評価をするものの、やはり社会全体がそう見えないし、企業全体もそう見えなくなってしまっているという部分もあると思うのですが、この先端技術の囲い込みということと、今回の知財を実用化や市場拡大、企業価値の向上というものに生かすということ、このバランスについては、大臣、どのようにこれから施策として講じていくおつもりでしょうか。

甘利国務大臣 特許等の知財をどう企業があるいは産業が戦略的に活用していくかというのは、まさに企業戦略だと思うんです。

 私の地元にある製造企業がありまして、なかなか優秀な企業ですが、そこの製造ラインに私が入っていこうとしても、社長からとめられまして、ここから先は代議士でも勘弁してください、それは何かというと、製造特許がありますと。では、何、それは特許を取っていないのと言ったら、製造工程の特許なんか取って公開しようものなら、どこかで使われて、そこへ立ち入れないんだから、うちの特許を盗んでいるかどうかなんかわからない。だから、ノウハウとして封じ込めて、ブラックボックスの中に置いて、外に出ないようにしておくというしかないんですという話でありました。

 これには、先使用権という手法がありますから、これで、自分が少なくとも使う、自分が発明したものを後でよその人から特許侵害だと訴えられる危険性だけはとめられますから、そういう戦術を使っていく。あるいは、広範に公開して、さらなる上の技術開発を目指す目標にしてもらうとか、重複申請がないようにしてもらう。それは、いろいろ企業が経営戦略として考えていくべき話だと思います。

 ただ、オープンイノベーションの時代でありますから、つまり適正な対価さえ払えばみんなが利用できるという時代に流れは向かっている。特許は、料金もさることながら、だれには使わせるけれども、だれだれには使わせないという占有権があるわけでありますけれども、そこに対して、実は、みんなで共有するために対価を払えば使っていいという方向の考え方だってあるじゃないかということも今あるわけでありますから、その辺はバランスを考えながら、企業は、事業戦略として、経営戦略として考えていくし、国は、それぞれ話し合って、どういう形が世界全体の繁栄のために資するかということを各国間で検討していくべきだというふうに思っています。

後藤(斎)委員 時間が来たのでやめますが、残余の部分は来週またさせていただきますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございます。

東委員長 以上で後藤斎君の質疑は終了いたします。

 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 同僚議員に引き続き、特許法改正案につきまして、質問をいたします。

 本日は、知的財産政策が議論の中心でありますけれども、何のために知的財産を保護するのか、守るのかといえば、その目的は知的財産を適切に守るルールを整えることで、その事業を拡大させて、そしてさらなる研究意欲を高めて、その結果、世の中が発展し、人々の生活が豊かになる、国富がふえる、こういうよい循環をつくるために権利を保護するんだろう、こういうことだろうと思います。

 研究開発というのは、当然のことながら自分で、企業でいえば自前で開発をする、その研究力を高めるということ、それを促すことは当局として大事だとは思いますけれども、同時に、技術が高度になって複雑になってくると、特許を持つ人から実施権を得る、すなわちライセンスを広げて活用してもらうということも知的財産の拡大再生産を促す上で同じように重要だろう、こういうことだろうと思います。

 特に日本では、特許権は設定されているけれども、実際に使われていない特許が、これはいろいろな推計があるようでありますけれども、大体半分ぐらいあるんじゃないか、こう推計されているわけでありますから、その半分の使われていない特許も含めて有効に活用してもらうということは重要であろう。その意味から考えますと、今回の法改正の中にもあります通常実施権等の登録制度を見直すということは非常に意味があろうかと思います。

 残念ながら、現在、特許庁の数字によると、通常実施権が設定されているのは、特許のうち、十万件あるけれども、そのうち登録されているのはわずか一%少しだ、こういうことでありますから、これを広げることなんだろうと思います。

 まず最初、長官にお伺いしたいんですが、この法改正で、では、具体的にどれぐらいの効果があると見込まれているのか、お答えいただきたいと思います。

肥塚政府参考人 今御指摘のとおり、今の現在の登録率は一%程度でございます。

 そのために、現在の登録制度の利用が少ない理由につきまして、企業に対して調査を行いましたら、その約三割が、ライセンスの存在やその内容を対外的に秘密にしておきたいけれども、登録するとそれが公になってしまうので登録制度を利用しないんだという理由を挙げております。

 こういう観点から、今回の見直しの中で、登録制度の登録事項の中で、企業において秘密にしておきたいニーズが強い通常実施権者の氏名等、あるいは通常実施権の範囲の開示を一定の利害関係者に限定するというものにしておりますので、今回の見直しで利用者のニーズがかなり高まりますので、より利用しやすくなるというふうに考えております。ただ、具体的な件数は予測しがたいところがありますけれども、先ほどの調査結果を踏まえると、相当拡大するんじゃないかと。

 いずれにしましても、今回、制度が改正されましたら、十分な周知活動を行って、利用の拡大あるいは知財の流通の促進のために努力していきたいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 ぜひ、一定の効果があるものと期待をしたいと思います。

 この特許はライセンス可能なんだよということがわかれば、なるほど、では、私の企業もそれを申し込んでみようか、こういう話になるわけでしょうし、ライセンスを広げることは、出し手だけではなくて受け手、両方メリットがあるわけだと思います。

 企業の特許の獲得競争というのは、一部のメディアで軍拡競争とやゆされるほど、大企業を中心に激しくなっておるわけでありますけれども、一方で、特許の軍拡がどんどん進むと、これは、ある意味で、理由は、とりあえず取っておこう、危ないから全部総取りにしておこうという、一種、守りの発想の部分だと思うんですね。これは、守りは守りで悪くはないんですけれども、知的財産を活用するという攻めという意味でいくと、やはり、ライセンスをどんどん広げていくことというのは政策的に重要だろうと思うわけです。

 今回の法改正も、一定の効果、それなりの効果を期待いたしますが、さらに一歩広げて、例えば欧州で行われている制度のようですけれども、ライセンス・オブ・ライトというんですかね、ライセンスを特許権者が、特許発明について第三者の実施許諾に応じますよということを登録した場合、名乗り出れば特許料を下げてあげるよという制度、ライセンス・オブ・ライトという制度のようですが、導入されていたりする、こういう話もあるようであります。

 また、あわせて、これはまた違いますけれども、先ほどもちょっと話にありましたが、企業なりベンチャー企業なりがパテントをプールして、パテントプールというんでしょうかね、そして整理をしてそれぞれに実施権を与える、譲渡するというような、パテントプールというのも最近行われているようでありますが、政府として、そういった、さらにもう一歩後押しするということも必要かと思いますが、これはいかがでしょうか。

肥塚政府参考人 近年、技術の高度化あるいは複雑化あるいは経済のグローバル化ということを受けまして、イノベーションの環境が大きく変わってきているというふうに思っております。

 従来の垂直統合型のイノベーションの形態にかわって、オープンイノベーションの環境が広がってきている。その中で、今先生がお話のライセンス・オブ・ライトでございますとか、あるいはパテントのコモンズといったような議論もされているようであります。

 私どもの勉強会でパブリックコメントを求めましたら、オープンイノベーションが拡大する中で、さっき先生がお話しの、自分で特許を取って、自分の技術、生産を守るということではなくて、知財なり技術なり研究開発の成果を流通させる手段としての役割を担う知的財産、そういう役割あるいは流通の円滑化というものが求められているんだという意見もございましたけれども、そういう視点は非常に重要だと思っております。

 特許庁は、これまでも特許の流通データベースの提供、リサーチツール特許あるいはそのライセンス条件の公開といったようなことで特許権の利用の円滑化あるいは流通の拡大ということに努力してきましたけれども、今のオープンイノベーションの環境下でさらに知財の流通促進について何ができるかというのは、今、イノベーションと知財政策に関する研究会というのをつくりまして、そこで、今先生の御指摘の点を含めて、あるいは、さらにオープンイノベーション下での標準と知財といった点も含めまして勉強しているところでございます。

近藤(洋)委員 ぜひ研究を進めて、攻める特許の部分というものの政策体系というのを打ち出していただきたい、こう思うわけであります。

 近年、世界的に特許の出願件数が大変ふえている。資料によると、九五年、世界全体で百万件超だったものが、二〇〇五年で、わずか十年で百六十六万件、五〇%ぐらいアップしている。しかも、そのうちの四割が非居住者ということは、すなわち海外で特許を出しているケースもふえている、こういうことであります。

 これまでも経済産業委員会で、特許法の改正の中で、日本も審査部局を増員するということも含めてやるべきだということを言ってまいりましたが、これだけふえてくると、やはり自国が、それぞれの国が自前の人員をふやすだけでは、もはやある程度限界があるんだろう、こう思うわけであります。

 先ほど公明党の先生も御指摘をされたことで、ちょっと私も、この点、大事な点なので、確認の上、あえて質問させていただきたい、こう思うんですが、やはり世界間の特許庁当局が連携をすることが極めて重要だろう、こう思うわけであります。

 日米間では、昨年来、知財ハイウエーの合意がなされておりますけれども、先ほどもお話ございましたが、仮想的な世界特許庁と言うべきでしょうか、そういった国際連携、分業体制というのをやはりきちんとつくるべきだろうと思いますし、できればこれは年内にも、ある程度期限を区切って、一年以内ではこうする、二年ではこうするというプログラムをつくって打ち出すべきかと思いますが、いかがでしょうか。これは大臣にお答えいただきたい。

甘利国務大臣 御指摘のとおり、世界全体で特許の出願件数が急増しております。そして、その原因の相当部分が外国からの出願でありまして、このままでありますと、関係国のマンパワーに限界がありますから、特許の付与というのはどんどん遅滞していくわけであります。そこで、国際的な審査協力、国際的なワークシェアリングというのが必要になってくるわけであります。

 ただし、その際には、審査の質の均質化ということがまず必要です。日本ではとても特許にならないようなものがよその国でどんどん特許になってしまったということになると、これはワークシェアリングとか国際協力の前段階になってしまいますから、その前段での協力をする。

 それから、各国間の特許制度の調和を図る。よく言われますことが、アメリカだけは先発明主義でよそが先願主義でありますから、これは根本的な違いがありますから、このハーモナイズを図っていかなきゃならない。そして、その上で他国の審査結果を自国の審査に最大限活用できるという状況にすることが大事であります。

 我が国は、既にアメリカ、イギリス、ドイツ、韓国と二国間で特許審査ハイウエーを行っておりまして、二国間の審査結果の相互利用ということに道を開いているわけであります。これをカナダ、オーストラリア、デンマークに拡大している最中であります。

 米国では、今、先願主義への移行を含む特許法の改正の機会が来るようでありますが、この機会に特許の国際的な制度調和を実現すべく、先進国間で議論を推進しているところであります。

 いずれにしましても、いずれ、一カ所に出しさえすればそれが世界のすべての国で特許として通用する、そういう時代が来ることを目標として、各国と協調していきたいと思っております。

近藤(洋)委員 ぜひ進めていただきたい、こう思うわけであります。

 国際機関での議論というのは、いろいろな国々があるわけで、なかなか大変だろうと思いますから、やはりどうしてもバイというか二国間の話し合いが先行するんだろうな、こういう気がいたしますが、ぜひこの辺は早急に、もちろん制度の調和というのが大前提でありますけれども、それも含めて、日本の特許の知見を海外に広める、先進国間は調和を図る、さらには、アジアの各国とは日本の制度を普及させる。

 日本の制度が途上国といいますかBRICs等各国に広がることは、日本の国益にもかなうことでありますでしょうし、バイでの交渉が、二国間の交渉が当面中心になろうかと思いますけれども、積極的に進めていただきたい、こう思うわけであります。

 関連して、国際間の特許について一つお伺いしたいのですが、情報インフラみたいなものの整備でございます。

 既に日本の特許庁のシステムを通じて企業なり個人はヨーロッパの特許文献を見ることはできる。もちろん、直接アクセスをすれば、それは英語であればわかるわけでありますけれども、問題はやはり中国だと思うんですね。中国の知財情報というのは中国語しかない。中国の特許当局によると、翻訳があるのが大体六割弱ぐらいで、あとは翻訳されていない、こういうことのようであります。

 こうなると、大企業は中国語がわかるスタッフもおるんでしょうけれども、中堅企業になると、全部が全部わかるわけではありませんし、中国語の文献を、中国でどういうものが特許になっているのかということがわからないとやはり大変問題だろう、こう思うわけですね。

 自動翻訳システムというのがどこまで機械的に進んでいるかどうか、素人なのでわからないので、すべて日本語にすぐできるかどうか、これも大変かと思いますが、専門用語の多い分野でもありますでしょうし、日本の特許庁が翻訳の手助けをするのかどうするのかはともかくとして、いずれにしろ、中国の特許情報をわかるようにすることは非常に必要ではないか。

 フランスの企業では、特許の存在を知らずに事業展開をして相当額の賠償金の支払いを命じられたという事案も出ているようでありますから、これだけ日中間の関係が深くなると中国の特許情報が極めて重要だろう、こう思うわけでありますが、そうした情報インフラの整備について、整備が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 まさに特許は国際間の協調と連携が必要な最たるものでありますから、基本的に主要国では特許の文献情報を国際語である英語に直してどの国も発信していくということが求められるわけでありまして、日本としても、中国政府に対して特許文献に係る機械翻訳システムの開発を促すとともに、我が国が有している機械翻訳システムに係る知見の提供を行う等、中国政府の取り組みを支援しているところであります。

 他方で、中国の特許文献に係る全文データをもとに、我が国において閲覧が容易となるように、日中の機械翻訳のための辞書の開発に現在取り組んでいるところでございます。

 これらの取り組みを通じて、リアルタイムで中国の特許文献情報を日本側企業が把握することができる、あるいは日本側関係者が掌握することができるというような側面支援をしていきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 これもぜひきちっと進めていただきたい、こう思うわけであります。

 続きまして、特許の数が大変ふえることに伴ってさまざまな問題が起きているわけですが、きょうは、いわゆるパテントトロールと言われている問題についてお伺いしたいと思います。

 トロールというのは何か怪物という言葉のようでありますが、特許の怪物という言葉のようですけれども、この言葉は、要は、研究開発とか製造販売をみずから行わない企業や団体、個人が、他者から特許を集めて、そして、ある企業に対して突然差しどめ請求をする。パテントを集めた個人が、自分は何もしないんだけれども、似たような事業を展開した企業に対して差しどめ請求を行って、そういったことを武器に使って高額のライセンス料や和解金を得るということのようですが、これは既にアメリカでは大変問題になっているということを聞いております。

 現在、日本ではこのパテントトロール問題はどのような事態になっているのか、現状どのような認識を持っているのか、まず長官、お答えいただけますか。

肥塚政府参考人 今先生御指摘のとおり、アメリカではパテントトロールと呼ばれるものの特許権の濫用的な行使というのが非常に大きな問題となっておりますし、日本企業も対象になっているというふうに聞いております。

 パテントトロールの明確な定義は存在しませんけれども、今先生のお話のように、自分では製造、販売をしないけれども、特許権を持って、特許権を行使した人から高額の和解金あるいはライセンス料を取るという個人や団体を指すという見方もございます。他方で、いずれにしろ特許権の行使という意味では変わりはないので、パテントトロールの定義というのは非常に難しい、したがって個別事例ごとに判断すべきだという意見もあるのも事実でございます。

 ただ、アメリカでパテントトロール問題が非常に大きな問題になっていますのは、訴訟費用が非常に高額だ、あるいは三倍賠償規定で損害賠償額が非常に高額になる、何百億円というような金額にもなる。このことがアメリカで、先ほど大臣が申し上げましたように、知財制度の改革、これは司法、立法を含めて非常に大きな動きになっておりますけれども、このパテントトロール問題がアメリカにおける知財制度改革の動きの一つの背景になっている、それほどの問題になっているというふうに認識しております。

 日本ではといいますか、日本特許に基づいて、これまでパテントトロールに関する問題が大きな訴訟まで発展したという事例はないのではないかというふうに思っておりますけれども、日本でも、電子部品に関する特許を用いて、当該特許に係る電子部品を製造する電子部品メーカーだけではなくて、それをさらに使っている自動車業界まで含んで、ある部品を組み込んだ最終製品の販売会社全体をターゲットにして権利を行使するという事例などもございまして、産業界においてはパテントトロールに関する問題意識が非常に高まってきているというふうに承知をしております。

近藤(洋)委員 今長官が御答弁いただいたように、まだ直接日本では大きくは顕在化していないけれども、大変関心が高まっているということだろうと思います。そうだとすると、これは権利の、特許権の濫用の部分もあろうかと思うんですね。

 米国では裁判、判例も出ているようでありますし、差しどめする場合にはこれこれの要件が必要だという判例が出ていたりだとか、また下院では、損害賠償額の算定に当たり、裁判所は発明の寄与分による利益を考慮せよと。すなわち、自分から発明していないで他者から特許権だけを持った人については、損害賠償についてもある程度限界があるんだよというようなことを考慮すべきだという法案を下院では可決された、こういうことであります。

 着々と米国では進んでいるようでありますが、日本でも、少なくとも米国に進出している日本企業が対象になっていることもあるわけですし、何らかの枠組みであるとか対応を検討すべきではないかと思うわけですが、これは大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 パテントトロールというのは、いわば訴訟ビジネスなんでしょうね。パテントを買い集めておいて、そのパテント、特許に、特許侵害してくる企業はないか、ずっと見張っていて、見つかったといったらそこに損害賠償請求を訴訟でしかけていく。そういうのをあちこちしかけて賠償金をたんまりとふんだくるという、いわばビジネスなんだと思います。

 しかし、これが横行しますと、とてもじゃないですけれども、先ほど来話のあるオープンイノベーションなんという社会は来ないのでありまして、危なくてとてもかかわっていられないということになってしまいます。

 これは侵害したら、法外な、もう二度とやりたくなくなるような賠償額を取るぞという三倍賠償とか、それによって得た利益の何倍もむしり取られるというような仕組みがあると、このパテントトロール業というのは繁栄すると思うんですね。買ってくる量と損害賠償を取れる賠償額とがそんなに変わらないということであるなら、この業は成り立たないわけでありますから。ですから、パテント侵害に対する賠償金についても、慎重にいろいろなことを配慮しながら決めるというのは今後とも必要になってくるというふうに考えております。

 我が国では、知財本部におきましても問題意識を持って議論をされているところでありますし、特許庁でも議論を行っているところであります。特許権が濫用的に行使されれば産業の発展自身に悪影響になることも懸念をされるわけでありますから、このパテントトロール問題への対応も、今両方で並行してやっておりますが、今後ともしっかり注視して検討していきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 ぜひ検討していただきたいと思うわけであります。

 この問題は、特許法の議論だけではなくて、独占禁止法の議論にもなろうかと思うんですね。要するに、正当な権利、特許権は独禁法の適用除外といいますか及ばないところでありますが、正当な特許権の行使でなければ、それは独占禁止法上の不公正な取引にもなりかねないわけでありましょうし、特許法と独禁法というのはある意味で全く正反対の法律でありますけれども、この議論は独禁法上の問題にも場合によってはなるかもしれない、こう思うわけであります。

 そういう意味では、独禁法と特許法の関係の整理というのもこれから議論として必要になるんじゃないかと思うわけでありますが、その辺も、知財本部で知的財産計画二〇〇八、六月にはつくられるわけですけれども、こういった論点もぜひ御議論されたらいいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 その視点からもしっかり議論していきたいと思います。

近藤(洋)委員 特許政策というのは本当に、知的財産政策というのは、私は、独禁法の政策と並んでこれからの産業政策のかなめだろう、こう思うわけであります。非常に大事な役所だと思うんですが、この役所をつくったのは、大臣御存じのとおり、初代特許庁長官は高橋是清翁なわけですね。

 「高橋是清自伝」、私も愛読書なわけでありますけれども、ここにもそのくだりが、高橋是清翁が若き三十二、三のときに特許庁をつくろうと思い、そして米国に行き、ヨーロッパに行き、研究をした姿が書かれております。高橋是清翁というのは本当に破天荒な人生で、すばらしい人生、最後はちょっと気の毒な亡くなり方をしてしまいましたが、まさに特許庁をつくったのが、御本人もこの自伝の中にも相当のページを割いてそのところを書かれています。アメリカでは文献がなかなか手に入らないので、女子職員から情報を得るためにダンス教室に通ったことまで、さまざま書いているわけでありますが、それだけ力を込めて高橋是清翁がつくられた。

 高橋是清翁が特許局をつくり、そして商標法、さまざまな法律をつくり、特許局は独立をすべきだということで独立もさせて、そのときに言った言葉が、この本には、井上馨当時農商務大臣に、東京見物に来た者が浅草の観音様の次には特許局を見に行こうというぐらいにしたいものだと。随分大きい建物をつくったそうですが、そのときに井上大臣からは、随分でかいんじゃないかと言ったら、いや、二十年間でこれぐらいが満杯にならないようでは日本の産業はおぼつかない、こういう気概を持ってつくられたことも書いています。

 それだけ大事な役所なのでありますが、そこに携わるトップ、大臣はトップでありますが、実はここで問題にしたいのは特許庁長官の任期であります。肥塚現長官の前の九代さかのぼって各任期を調べましたらば、何と最短で十カ月、一番長くても二年一カ月でおやめになる。大概一年で交代されているんですね。

 先ほどお話があった米国とのバイのさまざまな交渉であるとか、戦略を練るために、私は、経産省の中でいえば、少なくともエネルギー庁長官と特許庁長官は、最低二年、できれば三年、これぐらいやらないと、特許、知財政策はできないんじゃないか、こう思うわけでありますが、大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 大臣がしょっちゅうかわる時代でありまして、私自身も通商交渉と資源交渉をやっておりまして、やはり外交交渉にかかわる閣僚はある程度腰が落ちつかないと、国際会議に行くたびに初めましてと名刺を配るようでは困るなと思っておるんですが、幸い私は一年半やらせていただきまして、外国の大臣、カウンターパートとも随分顔見知りにさせていただいたというのは、一年を超えてやらせていただいていることが大きいのかなと思います。

 エネルギーも知財も、日本国内だけにとどまる案件ではないわけでありまして、そういう外国との連携や人間関係、信頼関係についても、確かに余り細切れにかわるのがいいのかどうか、それは問題提起として受けとめさせていただきます。

近藤(洋)委員 ぜひ御検討いただきたいと思います。

 ついでに、もう時間が来たので、これは御答弁はあえて求めませんが、歴代長官は、残念ながら、例外なくそこで、お一人だけ、荒井寿光さんが通商産業審議官になられておりますが、退官をされております。

 私は、特許政策をやられるということは、極めて重要な産業政策を担うわけであって、特許庁長官から産業政策局長、これは十分ありだと思うんですね。エネルギー庁長官から通商担当の審議官をやられることも十分だと思うんですね。どうも例外なくローテーションのように人事がかわっているというのは、これはいかがなものかと思うわけであります。

 きょう、当事者の長官が目の前にいるわけですから、大臣の御答弁を受けるわけにいきませんが、どなたがどうというのではなくて、この特許庁長官というポジションは大変大事な意味を持つんだということであります。それがこの十年間、知財本部ができたにもかかわらず、同じような扱いを受けているというのはいかがなものか、高橋是清翁は恐らく泣いているのではないかということを最後に申し上げて、質問を終えたいと思います。

東委員長 近藤洋介君の質疑は終わりました。

 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 最初に、特許庁長官の方に伺いたいと思います。

 日本の特許制度の基本というのは、原則公開だと思うんですね。それは、公開するかわりに権利を保護するというのが一つありますね。それからもう一つは、公開によって、他の企業が研究開発費などで無駄なコスト負担をしないで済むようにするという意味もあると思うんです。例えば、一生懸命研究開発をやっておって、突然サブマリンで浮上してきて、さあ、商品化して売ろうと思ったら、それはおまえ、特許を押さえているからこっちに特許料を払え、払わなきゃ売らせてやらぬと言われたら大変ですから、そこに原則公開という問題があるんじゃないかと思うんですが、最初に確認しておきます。

肥塚政府参考人 我が国の特許法におきましては、その内容が公序良俗に反しない限り、特許出願については、原則として出願から十八カ月を経過したときに全件公開することになっております。それからまた、特許権を取得したものにつきましても、全件公開することとなっております。

 その趣旨は、発明の公表により新技術の存在を公衆に知らせることにより、研究開発の重複投資を防止し、その発明の利用及びそれを土台としたよりすぐれた発明を積み重ねることを促進し、特許権となったものの権利範囲を明確に周知するというものであります。

 これによりまして、特許制度の本来の目的であります発明の保護及び利用を促進することにより、発明を奨励し、産業の発達に寄与することを目的としているものでございます。

吉井委員 そこで、戦前は実は秘密特許があったわけですね。特許権はあるんだが、公開しない。これは、技術を軍事に動員して、民生技術の発展に障害が持ち込まれてくるという意味もありました。ですから、戦後は公開原則にしたんですね。

 見てみますと、一九四八年六月十八日の衆議院の鉱工業委員会で、戦後の法律ができるときの趣旨説明の中で、公開原則については、憲法の戦争放棄の規定との関係で戦前の軍事機密特許については廃止したということが述べられております。

 それで、伺っておきたいのは、しかし、現在も実は秘密特許があるんじゃないですか。それは、出願番号八〇〇〇〇〇台で秘密特許になっているのがありますが、今何件ありますか。それから、特許の中身というのは、秘密特許の場合、だれが知っているのか、だれの判断で秘密特許としているのか、このことを伺います。

肥塚政府参考人 現在、出願から十八カ月の公開のされていないものといたしましては、昭和三十一年、一九五六年に日米間において締結されました、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書に基づく出願がございます。

 この協定は、自衛隊がその防衛力を整備するに当たり、アメリカからの装備品の供与を受け、武器をライセンス生産するための技術援助を受けるための枠組みを定めました、昭和二十九年、一九五四年の日本とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定、MDA協定に基づいたものであり、特許権及び技術上の知識の交流を……(吉井委員「いや、そこはよう知っているけれども、要するに八〇〇〇〇〇台というのは何件あるかと聞いているんです」と呼ぶ)いわゆるこの出願に基づきまして、アメリカにおいて秘密が解除されて公表されたものの件数は、九十五件でございます。

吉井委員 公開されたものの件数だけおっしゃったんですね。実は、公開されていないものが物すごくあるんじゃないですか。それを聞いているんです。

肥塚政府参考人 先ほど申し上げました協定に基づきまして、アメリカ合衆国の特許法に基づいて秘密に保持されている発明が日本に対して出願された場合には、日本においてもアメリカ合衆国と同様の取り扱いをするということにされております。

 具体的に言いますと、特許庁が出願公開を行わず、また審査などの手続も停止するということにしております。

吉井委員 変な話なんですね。日本の特許原則は公開なんです。ところが、特許庁も知らない、審査もしていない、とにかく秘密だ、そういう状態なんですね。

 一九八八年のときに実は、今おっしゃった最初の協定に基づく細目で、日本の特許市場に秘密特許が入ってきたんですね。私、調べてみたんですが、それまでなかったんですが、八〇〇〇〇〇台で秘密特許というのが入ってきて、一九八八年だけで、その後公開された番号からわかってくるもので言うと、全部でこれが三十八件ですね。しかし、実はその後に出たものがあるかもしれない、四十件かもしれない、わからないんです。

 ただ、公開されたものが三十八というのを基数にすると、実は、二十年たっていまだに非公開というのが二十件あるんですね。公開されたのが十八件、半分を超えるものが二十年たっても秘密特許のまま、これが現実じゃないかと思うんですが、いかがですか。

肥塚政府参考人 先ほど申し上げましたように、日本においてもアメリカ合衆国と同様の取り扱いをするということになっておりますので、アメリカにおいて秘密保持が解除されたものについては、日本で特許出願手続が、公開手続を含めて再開されますけれども、再開された後は、審査を経て特許登録がなされる。その特許についてはすべて公開されますけれども、秘密が解除されない場合は手続が進まないということになっております。

吉井委員 特許出願はされているんですね。出願されていて、特許権はあるんです。しかし、どんな特許かは日本の国民にはわからないんです。公開されて、ああ、そんな特許があったのか、こうなるわけですね。これが、一九八八年の細目を取り決めたときから始まった秘密特許以来、この八八年一年だけで、わかっているだけで三十八件出願されて、その中で、二十年たってもいまだに秘密のままというのが二十件あるんですよ。

 実は、これは私も驚いたんですけれども、高周波電気通信という表題の特許があるんですよ。これは後に公開されたんですよ。しかし、高周波の問題というのは、例えばそれで日本の電機メーカーが電子レンジを開発して商品化して、売り出そうと思ったらそれは特許にひっかかるとそのときになってから言われたら、物すごい研究開発費のコスト負担、莫大な損害を受けるんですよ。これが、秘密特許というものが持っている問題なんです。

 それで、現在の特許の中には二種類あって、一つは、特許庁が審査して特許権を与えたものと、もう一つは、今おっしゃった、協定によって、防衛省と外務省の判断で、アメリカ政府等の要請により、アメリカで特許が取得されているから特許だと。日本の国民は、中身は何もわからない、いわゆるみなし特許みたいなものですね。こういうことで権利を与えているものがあるんですが、大臣、やはりこういうやり方というのは、日本の特許制度に穴をあけてしまうんじゃないか。

 これは大臣として、日本の企業が莫大な研究開発の損失をこうむることのないように、やはりきちんとしたことを考えていかなきゃいけないと思うんです。この点は大臣に伺っておきます。

肥塚政府参考人 申しわけございません。ちょっと一点、誤解がございますので。

 アメリカにおける秘密保持が解除されたものにつきましては、日本における審査などが行われますので特許になりますが、アメリカから秘密が解除されませんと特許にはなりませんので、特許になるという審査が始まりませんので、特許にはなっておりません。

甘利国務大臣 我が国の特許法は、すべての特許出願について公開をするということを原則にすることで、発明の利用、奨励を図っているわけであります。

 しかし、御指摘の日米間における協定出願については、米国において発明の内容を秘密にする制度がありまして、その秘密とされる技術を我が国の防衛上導入する必要があるということから、国会承認がなされた日米間の防衛特許協定によって運用されている制度であります。

 他方、いわゆる秘密特許制度とは、国家安全保障上の機微技術の流出防止策の一環として、機微技術の公表が法的に制限されていることを前提として、特許法上も公表を制限する制度でありまして、その趣旨は、安全保障上の機微技術の秘密保護と特許制度の全件公開主義による発明の奨励という相反する二つの利益の調和を図る制度でありまして、現在、秘密特許制度については、安全保障上の機微技術の流出対策について幅広く議論している課題の一つとして検討を行っているところであります。

吉井委員 一九八八年から始まったんですが、その八〇〇〇〇一番ですね、例えばこの技術、これは今公開されているんですけれども、仮に今も非公開だったとして、おっしゃったように、日本の企業がこれで後から出願をしたとすると、先願はアメリカ側なんですね。そっちが生きてくるわけなんですよ。そのことを言っているんです。

 それで、引き続いてこれに関連して伺っておきますが、昨年十一月二十六日の日経新聞、ことし一月六日の産経新聞などで、「軍事特許 非公開制度導入へ」というのが紹介されていました。それから、「軍事転用可能な民生技術の特許を非公開にする制度を導入する方針を固めた。」というのもありました。

 来年度の導入を目指して検討がされているようですが、これはどこで検討をされているのかということと、それから、これは秘密会なのか議事録が公開されたものなのか。

 これは特許制度の根幹にもかかわってくる部分がありますので、秘密でそういうことがどんどん進みますと、日本の科学技術政策、産業政策がおかしくなる部分もありますから。さっき大臣のおっしゃった、機微技術が海外に漏れないとかいろいろなことで議論している、その部分はわかるんだけれども、しかし、議論がそもそも秘密になってしまいますと何もわかりませんから、伺います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の、技術情報等の適正な管理の在り方に関する研究会というものでございまして、この研究会では、技術情報等の適正な管理のための諸方策を総合的に検討するものであります。

 具体的には、一つは、企業、大学等の各主体が情報をどのように管理しているのか。二番目は、管理されている情報をどのようにして外部に流出するのか。例えば、特許による公開や学会での発表のように合法的なルートによるものもあれば、不公正なアクセスのように非合法的なルートで出る場合もあるわけでございます。三番目は、情報流出防止のための対策としてどのようなものがあるかということにつきまして、できるだけ網羅的に、かつ幅広く検討しようというものであります。

 したがいまして、先生御指摘の秘密特許の問題は、このような幅広い検討の中で、安全保障上の機微な技術に関しまして議論している課題の一つという位置づけでございます。

 当研究会の問題意識でございますけれども、従来、企業、大学等の情報管理、それから情報流出の実態把握が必ずしも十分でなかったという問題意識に基づきまして、企業、大学等からヒアリングを通じてできるだけ具体的ケースを集めまして、その実態を分析、解明しようということでございます。

 したがいまして、本研究会では、個別企業の情報管理の手法とか技術情報の流出の実態が議論の中心になってまいりますので、これを公開することにすれば、特定の者に不利益を及ぼすおそれが非常に大きく、加えて出席者による率直かつ自由な意見交換を確保できなくなるため、会議を非公開にすることとなったというふうに理解をしております。

 ぜひ御理解を賜りたいというふうに思います。

吉井委員 そこで、甘利大臣、今の答弁は答弁でずっと聞いたんですけれども、これは確かに、個人の研究とか個別の特定企業の名前が出ることが差しさわりのある場合も、そこはよくわかるんです。AさんでもB社でもいいわけですよ。しかし少なくとも、どういう議論をしているかということがきちんと公開されないと、何にも公開されていないんですよ。昨日言ったら、ようやくのこと肩書つきの参加者の名簿は持ってこられたけれども、中身もさっぱりわからない、これはやはり異常だと思うんですね。

 そこで、大臣、まず日本の特許制度の方からいいますと、特許制度は原則公開、これは、民生技術を軍事転用可能だとしてそこに特許を導入するということは、やはり一つは公開原則の特許制度に反するという問題がありますし、それから、汎用技術として民生機器の普及とコストダウンに実は日本は貢献してきた、特許制度で。非常に貢献して、科学技術の発展を促進する大きな役割を果たしてきたんですね。技術進歩の加速とコストダウンという点で意味があったんですが、防衛省技術研究本部は二百二十二件の特許を持っておりますが、汎用品関係の特許は秘密扱いにされる可能性が今度は出てくるんですね。

 だから、その場合、何が安全保障上秘密とすべき技術なのか、だれがそれを判断するのか。国民生活にかかわる問題は非公開にしないで、やはり公開して、日本の科学技術のこれからの発展にもかかわる問題ですから、基本は公開して、きちんと議論しているものにする、これが大事だと思うのですが、この点を大臣に伺っておきます。

甘利国務大臣 先ほど来話題になっておりますこの研究会というのは、非公開を前提として開催をしておりますゆえに、公開することを前提としたいわゆる議事録は作成をしていないわけであります。

 この議論の内容を公開する、つまり議事録の公開については、出席者の方々の了解がいただけるかどうか、それから、先ほど来話がありますように、特定の者に不利益を与えるおそれがないか等々、懸念事項についての精査を行った上で検討しなければならないというふうに思っております。

吉井委員 日本の科学技術あるいは産業政策の中で、基本はやはり、これまでの特許制度は原則公開ということを守ってきた中には、公開するが、同時に権利はきちんと守る、これを貫いてきたわけです。どうしても権利を守りたいから公開したくないという人は、別に特許申請しなくていいんです。特許申請しなければ、情報も秘匿することができるし、権利もその人は守れるわけです。ただ、広く日本の科学技術全体の発展とか、お互いに切磋琢磨して技術進歩を促し、コストダウンを図りということを考えたときに、やはりこれまでの制度はきちんとした意味があったわけですから、そこに穴をあけようかというこの議論については、内容をきちんと公開するべきだということを申し上げたいと思います。

 最後に、甘利大臣に、京大の山中伸弥教授のiPS細胞の作成成功は、再生医療とか難病の解明と新薬の開発など広い分野の可能性を生み出しました。ただ、この成果が本来多くの人々の幸せにつながるものなのに、海外企業の方が関連特許を押さえてしまうということになると、せっかく日本の研究開発の活用が、逆に特許によって妨げられてしまうという問題が出てきます。ですから、日本の特許をきちっと守りながら、海外からそういう周辺特許を先に押さえられて活用できなくなると、この日本の成果が本当に危うくなるという問題があります。

 そこで、一つは、大学を中心とする純粋な研究環境を整備すること。そしてもう一つ、大学から生まれてくる日本の知的財産が、海外企業の特許戦略によってゆがめられることのないようにする国としての特許戦略、ここはやはり必要だと思うんです。そして三つ目には、大学としての研究教育及びそれらを通じて得られた成果の社会的還元とか、そういう問題は、別な面から見ますと、大学組織が企業等から得る利益、実施料収入なり株式取得等との間には、実は、通常の場合は利益相反という問題が出てくるわけです。ですから、教育研究機関としての大学の使命と、利益を得る企業の職務をすることの事業が可能なのかどうかということについて、やはりルールなりガイドラインをきちんと明確にしていくということが大事だと思うのですが、この三点について大臣に伺います。

甘利国務大臣 iPS細胞については、再生医療の実現につながる極めて重要な技術でありまして、さらなる研究の進展により、今後の再生医療、創薬の加速につながるものと期待をしております。

 そういう中で、研究開発の競争力を高め、イノベーションを促進していくために、論文とともに、特許についても、今御指摘の周辺の特許も含めて、国内外で戦略的に押さえていくといった取り組みが極めて重要と認識しておりますし、この点は私も、さきに総合科学技術会議等で、我が省から指摘すべきということを発言したところであります。

 経済産業省では、知的財産戦略を策定するために必須の技術動向調査等の特許情報を提供することを通じて、効果的かつ効率的な研究開発を支援してまいります。

 また、これを契機に、重要な研究開発においては、研究開発戦略と知財戦略、さらには、生み出された知財の活用をも見据えた事業戦略というものを連携させて取り組むことを支援していく知財プロデューサーの投入を検討してまいります。

 それぞれ、日本の研究開発に携わる関係人が効果的に連携をしてこのプロパテント政策が進んでいくように、環境整備に引き続き努めたいと思っております。

吉井委員 大学とか国立試験研究機関での研究というのは圧倒的に税で賄われているものですから、いい成果を上げてもらうようにするとともに、その社会化、知的財産を社会全体に還元するという点で、そのせっかくの税金を使った研究が、海外に周辺特許を押さえられてしまって日本の社会でうまく還元できないとなると、これはやはり問題ですから、その点は研究環境の整備をきちんと予算をとってやること、そっちもきちんとやる。

 そして同時に、利益相反になるような部分については速やかにきちんとしたガイドラインをつくって、そして、ちょうど昨日でしたか、NHKのテレビでも放映していましたけれども、日本は随分理科系出身者が減ってきているという問題ですね。それで、海外で採用を図る。そうなりますとやはり問題ですから、幾ら国際化といっても、日本の中でもそういう人たちも養成しながら、特に基礎研究ですそ野を広げておかないと、成果だけ幾ら考えたって、ぴゅっとこのピーク値が得られるわけじゃなくて、すそ野があっていろいろな成果というのが生まれてきますから、そういう立場に立った政策も進めていかなきゃならない、このことを申し上げて、時間が参りましたので質問を終わります。

東委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

東委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、特許法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

東委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

東委員長 次に、内閣提出、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。甘利経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

甘利国務大臣 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 中小企業は、多様な事業の分野において特色ある事業活動を行い、多様な就業の機会を提供する等、我が国の経済の基盤を形成しており、雇用の確保や地域経済の活性化等重要な役割を担う存在であります。

 このため、中小企業がその活力を維持しつつ事業活動を継続し、その経営が次の世代へと円滑に承継されていくことは、我が国の経済の持続的な発展を図る上で極めて重要であります。

 しかしながら、中小企業においては、その代表者の死亡や退任によって次の代表者に経営が承継される際に、相続に伴う株式等の分散や、多額の資金需要の発生といった課題に直面し、その後の事業活動の継続に支障が生じる場合があります。

 このような課題に対応するため、中小企業における経営の承継を円滑化するための措置を講じ、中小企業が、雇用等の事業規模を縮小することなく事業活動を継続していくことを可能とする必要があります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、後継者が旧代表者から贈与を受けた株式等について、当該旧代表者の相続開始後の遺留分減殺請求によって分散することを防止するため、当該旧代表者の推定相続人全員の合意により、当該株式等の価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと等を可能とする民法の特例を定めることとしております。

 第二に、事業の実施に不可欠な資産の取得等に必要な資金の供給を円滑化するため、経営の承継に伴い事業活動の継続に何らかの支障が生じていると認められる中小企業者を経済産業大臣が認定し、中小企業信用保険法の特例、株式会社日本政策金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の特例等の支援措置を講ずることとしております。

 第三に、中小企業におけるその代表者の死亡等に起因する経営の承継を円滑化するために、平成二十年度中に、相続税の課税について政府が必要な措置を講ずることとしております。

 以上が、本法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

東委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る四日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十二分散会


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