衆議院

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第7号 平成21年4月15日(水曜日)

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平成二十一年四月十五日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 東  順治君

   理事 梶山 弘志君 理事 岸田 文雄君

   理事 櫻田 義孝君 理事 中野 正志君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 大島  敦君

   理事 古川 元久君 理事 赤羽 一嘉君

      江渡 聡徳君    岡部 英明君

      片山さつき君    川条 志嘉君

      木挽  司君    近藤三津枝君

      佐藤ゆかり君    清水清一朗君

      新藤 義孝君    菅原 一秀君

      平  将明君    谷畑  孝君

      土井 真樹君    中野  清君

      橋本  岳君    林  幹雄君

      藤井 勇治君    牧原 秀樹君

      武藤 容治君    安井潤一郎君

      山本 明彦君    太田 和美君

      北神 圭朗君    後藤  斎君

      近藤 洋介君    下条 みつ君

      田名部匡代君    田村 謙治君

      牧  義夫君    三谷 光男君

      高木美智代君    吉井 英勝君

    …………………………………

   経済産業大臣       二階 俊博君

   経済産業副大臣      吉川 貴盛君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           山田友紀子君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小栗 邦夫君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          鈴木 正徳君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            細野 哲弘君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           後藤 芳一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     薦田 康久君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   谷津龍太郎君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       原  徳壽君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            白石 順一君

   経済産業委員会専門員   大竹 顕一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月八日

 辞任         補欠選任

  片山さつき君     越智 隆雄君

  近藤三津枝君     関  芳弘君

  橋本  岳君     冨岡  勉君

  安井潤一郎君     飯島 夕雁君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     近江屋信広君

  越智 隆雄君     平口  洋君

  関  芳弘君     近藤三津枝君

  冨岡  勉君     橋本  岳君

同日

 辞任         補欠選任

  近江屋信広君     安井潤一郎君

  平口  洋君     片山さつき君

同月十五日

 辞任         補欠選任

  小此木八郎君     菅原 一秀君

  高村 正彦君     江渡 聡徳君

  近藤 洋介君     田名部匡代君

同日

 辞任         補欠選任

  江渡 聡徳君     高村 正彦君

  菅原 一秀君     小此木八郎君

  田名部匡代君     近藤 洋介君



    ―――――――――――――

四月九日

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)

同月十四日

 不正競争防止法の一部を改正する法律案(内閣提出第三九号)(参議院送付)

 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)(参議院送付)

同月八日

 中小零細企業の経営安定に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一八〇四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)

 不正競争防止法の一部を改正する法律案(内閣提出第三九号)(参議院送付)

 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

東委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房審議官山田友紀子君、農林水産省大臣官房審議官小栗邦夫君、経済産業省産業技術環境局長鈴木正徳君、経済産業省製造産業局長細野哲弘君、経済産業省製造産業局次長後藤芳一君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長薦田康久君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長谷津龍太郎君、環境省総合環境政策局環境保健部長原徳壽君及び環境省水・大気環境局長白石順一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

東委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島敦君。

大島(敦)委員 おはようございます。民主党の大島でございます。

 本日は、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 前回は合同審査が行われまして、環境部門の方を中心に質疑が行われました。本日附帯決議もつけさせていただくことになるかとは思うんですけれども、これまで環境部門の皆さんとお話しさせていただき、かつ審議を伺わせていただくと、私の理解としては、一つには国内的な問題と国際的な問題と二つあるのかなと思っています。

 これまでの経緯ですと、二〇〇二年に環境サミットで合意されて、二〇二〇年までに各国ともに一定のレベルまで持っていくというアプローチというのかな、取り組みが行われて、恐らくそこに国のスタンスがあるのかなと。

 例えば、ヨーロッパの人たちはなかなか、規制とか、あるいは規制というよりもいろいろな制度とか取り組みについての手順というのを大切にするのがヨーロッパの陣営でして、時々、我が国の規格の戦略がヨーロッパ陣営に負けてくるものですから、このREACHのアプローチを若干伺わせていただくと、ヨーロッパ人らしいアプローチの仕方かなと思っております。すべての化学物質に対して、安全なものあるいは安全性が低いもの、そして気をつけなければいけないものがあって、このすべてについて網羅的に一つのデータベースをつくるという考え方がヨーロッパ人の考え方かなと思っております。

 それに対して我が国のアプローチの仕方は、明らかに安全性の高いものから安全性が損なわれるものまで、それぞれ段階を分けながら、要は安全性についての確認あるいはエビデンスをとって規制をしていこうという考え方かなと思っておりまして、二つのアプローチがあるのかなと思っております。

 一番最初に、基本的なことを副大臣に伺いたいんですけれども、この二〇二〇年の目標に向けた我が国の取り組みというのはいかがでしょうか。

吉川副大臣 二〇二〇年の目標に向けた我が国の取り組みでありますけれども、二〇〇二年にヨハネスブルグで開催をされました持続可能な開発に関する世界首脳会議におきまして、ただいま大島議員が御指摘いただきましたように、二〇二〇年度までにすべての化学物質のリスク評価を終了するとの目標が合意をされたところでございます。

 この目標の達成に向けまして、今回の改正法のもとでは、まず、製造・輸入数量や既に知り得ている有害性情報等を勘案いたしまして優先評価化学物質を指定することにいたします。発がん性が疑われる物質や、有害性の有無が不明な物質で環境への排出量が多いと考えられるものなどにつきまして、二〇一〇年度から二〇一二年度の早い段階にかけて千物質程度が指定されると想定をいたしております。その後、優先評価化学物質につきまして、事業者に対して有害性情報の提出も求めながら、毎年百物質以上のリスク評価を実施するということになります。

 このようなことによりまして、環境サミットでの合意の期限であります二〇二〇年度までにすべての優先評価化学物質のリスク評価を終了させる、そういう段取りでございます。

大島(敦)委員 それでは、政府参考人に伺いたいんですけれども、ただいま副大臣から説明を受けました我が国のアプローチと、ヨーロッパのREACHのアプローチとの違いというのは、どういう違いがあるんでしょうか。

細野政府参考人 お答えを申し上げます。

 今、副大臣の方から申し上げました二〇二〇年までのアプローチの違いでございます。

 REACHにおきましては、かの地におきましてのそれまでの評価方法を抜本的に変えまして、画一的に有害性情報あるいは製造量等の情報を事業者に求めるという形で、事業者側に相当の負担と立証責任を負わせるという格好でスタートしております。これは御案内のとおりでございます。

 一方、我が国におきましては、改正化審法において、これまでのREACHの動向などもよく見きわめまして、まさに国と事業者がそれぞれ果たすべき役割とか、あるいは規制を導入しました場合の影響あるいは波及効果ということをさまざまな観点から検討いたしました。その結果、今委員が御指摘のとおり、今御審議いただいております改正化審法では、リスクが高いと思われる化学物質を段階的に絞り込んで、既に国が有している安全性情報等を最大限に活用する形で、順次、足らざる安全性情報を求めながらリスク評価を進めていく、こういうアプローチをとったところでございます。

 また、REACHは、前にも連合審査のときに御説明を申し上げましたけれども、製造・輸入数量が百トンとか千トンとか大きなカテゴリーを超えない限りにおきましては、一度登録をいたしますと毎年の輸入量と製造量は提出をしなくて済むというシステムをとっておりますけれども、毎年度、製造・輸入数量の届け出を求めてリスク評価を行うという我が国の改正化審法の方が、そういう意味では、実態に即したよりきめ細かな評価を時々刻々と行っていくという側面があることも事実でございます。

 いずれにしましても、このような形で、合理的な、かつ効率的な制度であると自負しておりますけれども、こういう方法でアプローチをすることが、恐らく我が国の経済実態にも、かつ関係の事業者の負担等も勘案して、最もふさわしいアプローチではないかと思っております。

大島(敦)委員 ただいま政府参考人の方から御説明がありましたのは、日本の方は、合理的なシステムで、リスクの高いものをしっかり選んで評価をする。ヨーロッパの方は、これは事業者に負担をさせて、リスクの高いもの、低いものも恐らくすべて評価をするという二つのアプローチの違いがあって、私はその先にある懸念を持っています。先にある懸念というのは、ヨーロッパ的なアプローチというのは、すべての化学物質に対するデータベースを彼らが持ったりしますと、そのデータベースに基づいて、私たちのこの基準に従ったらいいんじゃないのということを言い始める懸念があるのかなと思っております。そうすると、日本のアプローチも合理的でいいアプローチだとは思うんですけれども、将来の規格、標準化の競争になったときに、若干、ヨーロッパ陣営の動向も注意しながら進んだ方がいいのかなと思うんですけれども、その点について政府参考人から、お考えがあれば伺わせてください。

細野政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のような考え方あるいは発想というのはあろうかと思います。

 既に、REACHにおきましては、二〇〇七年から仮登録というのが始まっております。これは、今申し上げましたように、二〇二〇年に向けて段階的に彼らも評価をしていくわけでございますけれども、とりあえず、関係のありそうなものはみんな登録をせよということで、実はもう十五万件を超える登録がなされております。これは、数からいいますと、我が国が二万とか三万とかいっている数から比べますと大変多い数でございまして、恐らく、いろいろな形での重複が各事業者によって行われているんじゃないかと思います。

 これをこれから順次、取り扱いの数量が多いものから順に彼らも本登録をしていくわけでございますけれども、その段階で、既に御案内をしましたような事業者に課したところの有害性情報については一定の蓄積がなされていくと思いますが、我々の化審法におきましても、先ほども副大臣から御答弁申し上げましたように、段階的に絞り込んでいく中で、順次、リスクが高いと思われるものについては絞り込みを行いますが、その過程でいろいろな情報が集まります。

 これまでも御案内をしたと思いますが、既に我が国は、三十五年を超える運用の中でおよそ三千六百の物質については何らかの有害性情報を持っておりますし、また、今度、届け出その他をやった中でいろいろな情報が集まってくると思います。

 したがいまして、有害性情報の蓄積という観点からいいますと、REACHがこれから十五万件をどういうふうに処理されるかわかりませんが、その段階で蓄積をされるある種のデータベース、データの蓄積と、それから我が国におけるデータの蓄積は、アプローチの方法は違いますけれども、段階的にたまっていって、それを共有の財産として活用していくという意味では、共通するものがあろうかと思います。

 後で申し上げるつもりでございましたけれども、我が国におきましては、その過程で蓄積をされ、また共有のものになった有害性情報については極力これを公表して、まさに事業者と国との共通財産にして有用に活用していただくということを考えております。

 したがいまして、一方的にEUの方のREACHが非常にスピード高く、かつ、多量に有害性情報が集まるということでは必ずしもないと思っております。

大島(敦)委員 政府参考人の方から答弁ありましたとおり、情報を公開するということは、国際的というのかな、いろいろな交渉の中だと結構有効だと思うんです。我が国が得た知見を公表していくということは極めて有効だと思いまして、その過程について質問したいんですけれども、日本なりのアプローチというのは理解をさせていただいて、目標の確実な遂行に向けて具体的なスケジュールを明らかにすることが必要なのと、体制の整備や、大臣、予算が必要なものですから、予算の確保も必要じゃないかと思うんですけれども、その点についてお答えください。

細野政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国の化審法を御審議いただいている形で成立させていただきました後は、累次御案内のとおり、順次、品目の絞り込みとリスク評価を行ってまいりたいと思っております。

 二〇一二年ごろまでの早い時期に、いわゆる物質の絞り込みを行いまして、多分、千物質程度を優先化学物質として指定することになろうかと思います。その後、優先化学物質につきましては、順次、必要な有害性情報の追加的な提出を求めながらリスク評価を行っていくわけでございまして、先ほどの答弁と重複をいたしますけれども、大体、毎年、百物質程度を審査の対象といたしまして、環境サミットの合意であります二〇二〇年の目標に間に合わせる、こういうことを考えております。

 お尋ねの、体制あるいは予算でございますけれども、こういったタイムスケジュールの中で、経済産業省それから厚生労働省、さらには環境省が一致して、この目標達成のための努力をさせていただきます。

 体制につきましては、三省で、これにかかわる人員として常時五十人の職員がこれに当たりますし、また、審議会等も入れますとさらに三十人程度の有識者の知見が活用できるような体制をとってございます。

 それから、こういった評価を支えるという意味では、予算も重要なポイントでございます。技術的な観点で進捗をすることと、それから、中小企業の方々に過重な負担をかけないという観点からも予算措置を講じてまいる所存でございます。

 具体的には、今年度の経済産業省だけの予算でございますけれども、有害性のリスク評価を効率的に行うための手法を開発する、これは年々歳々、常に進歩するわけでございますけれども、これの開発のために十五億七千万円を計上しております。それから、中小企業が製造、輸入の大宗を占めるような化学物質につきましては、負担の観点から、事業者にかわって国が外部の試験評価機関等を使いまして安全性の試験を行うということも考えてございまして、このために、単年度で三億八千万円の予算を計上してございます。

 したがいまして、人員とかあるいは必要な経費につきましては、今申し上げましたようなことで、最大限配慮をして臨んでまいりたいと思っております。

大島(敦)委員 大臣、ただいま政府参考人から御答弁ありました中小企業の支援策も必要かと思うんです。なかなか中小企業の資金力がないものですから、その点について、事業者が自主的にリスクを評価、推進することが不可欠で、そのためには低コストで実施できるリスク評価の手法の開発とか普及が重要であると考えております。

 そうしたことも含めて、中小企業に対する支援策についての大臣のお考えをお聞かせください。

二階国務大臣 改正化審法におきまして、届け出に当たって、化学物質についての有害性情報を一律に求めることはしないで、中小企業を初めとする事業者の負担を最低限に抑えるという仕組み、こういうところに配慮をいたしております。

 加えて、優先評価化学物質に指定された後、有害性情報が必要となる場合であっても、中小企業者が製造、輸入の大部分を占める化学物質については、約三億八千万円を計上し、国がみずからの手で安全性試験等を実施する予定であります。

 あわせて、先ほど来御主張のとおり、特に中小企業においても、事業者がみずから低いコストで実施できるリスク評価手法の開発普及が重要であると考えております。そのため、化学物質の環境中における濃度を予測するコンピューターモデルなどを開発、提供したり、リスク評価のためのガイドブックを作成するなど、中小企業の方々の負担の軽減に努めてまいりたいと思っております。

 今後も引き続き、事業者みずからがリスク評価を実施し得るよう環境整備を進めてまいりまして、今先生から御指摘の中小企業の負担の軽減にできる限り努めてまいりたいと思っております。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 政府参考人には丁寧に御説明していただいているんですけれども、改めて確認をさせてください。

 先進国間における情報の一元化とか、特にアジア諸国における実施のスキームの確立など、国際的な協調を推進すべきと考えているんですけれども、その点について、我が国の仲間づくりについてのお考えを伺わせてください。

細野政府参考人 お答えを申し上げます。

 国際的な協調、これは大変重要な観点かと存じます。これまでに、OECDの化学品グループがございまして、この活動等が大変活発に行われております。有害性に関する試験方法でありますとか評価項目について共通化を図ってきておりますし、また、これはOECDのHPVプログラムというのでございますけれども、一カ国で年間千トン以上生産がある、生産量の多い化学物質につきましては、分担をしまして有害性情報を収集して、その結果を共有する、こういうプログラムが動いてございます。これは、政府間の取り組みに加えて、事業者側のコンソーシアムも積極的に参加していただいております。

 さらに、アジアへの取り組みでございます。いわゆるERIAを活用いたしまして、今回改正になります化審法の趣旨とか内容についてできる限り御紹介をさせていただきまして、アジア各国とも共通の実施スキームあるいは情報の共有化を図るということで、できるだけこのスキームが活用される基盤の拡大に努めてまいりたいと思っております。

大島(敦)委員 最後の質問なんですけれども、私が気にしている国際標準というところは、多分、諸外国ですと、ずっと国際標準に携わっている方がいらっしゃって、それがドクターだったりプロフェッサーだったりして、彼らが長年友達のように、国際会議を開きながら標準化をしているわけです。日本ですと、役所の方が二年交代あるいは三年交代で出られたり、民間企業の代表の方が行かれたりして、五年、十年、二十年にわたってその規格あるいは国際標準に長く携わるということがなかなか少ないと思うんです。

 ですから、これまでも何回も指摘があったと思うんですけれども、今後、国際標準の外交交渉の中で我が国がいいポジションを占めていくためには、地味なんですけれども、大切な人材を政治が注目して育成しなければいけないなと考えているんです。その点について、大臣のお考えを伺わせてください。

二階国務大臣 ただいま大島議員からの御指摘は、極めて重要な意味合いを含んでおると私は思っております。

 経済活動がまさにグローバル化が進んでおる中で、企業が市場を獲得する上において、国際標準化ということを戦略的に進めることが極めて重要な時代に入っております。

 このような状況の中で我が国が国際標準化をリードしていくということは、我が国の企業の競争優位を保つためにも極めて重要でありますが、今先生から御指摘の海外のドクターやプロフェッサーの制度等は、長くその立場にとどまって、豊富な経験を持ってその社会でリーダーとして活躍をされておるわけでありますが、私は、我が国でもこういうことはやはり配慮していくべきことだと思っております。

 そして、そういう人が一定の成果を上げてまたこの国に帰ってこられた場合は、やはりそれなりの評価をして温かく迎えることが大事であって、その際は、その知見を十分評価して、天下りだ何だというような、一刀両断に切り捨ててしまうようなことではなくて、そういう人の評価というものはみんなで温かく迎えていくというような雰囲気といいますか環境を与野党を通じてつくっていきたい、こう思っておりますので、今後よろしくお願いを申し上げます。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

東委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。

 大臣、思い出せば、一昨年の参議院選挙の最中に柏崎で地震が起こって、原子力発電所で今七基とまっております。その直後、当委員会でもすぐ視察をさせていただいて、それぞれ、全部に入れなかったんですが、程度の差がある中で復旧作業が進み、実は昨年も、夏、一年たってどうかなというのを見させていただいたんです。順調にいっているところとなかなかもとに戻らない部分と、いろいろな差はあったものの、昨年もこの委員会、ことしも含めて、できるだけ安全性が確保されたものは、この一週間、非常に暑い日が続いていますし、一昨年も非常に暑い日が続いて、結局、節電を求める中で、電力需要ということでは、大きな問題なく対応ができました。先週の十一日、また火災が、おおよそ地域の合意形成が七号機のスタート、再開でできたような報道がありましたけれども、火災が発生して、またもう一度原因究明も含めてやるということで、当初、早くも今月中にもという話がありましたけれども、どうなるのか。

 七基全体が動くと、我が国の原子力発電所の大体一七%ですか、今、火力発電所で代替をしているわけですから、CO2削減が一年間に三千万トンということで、その効果も含めて、やはりプラスの面も大きく働くということなんですが、この夏に向けて、どんな形で七号機が再開できるのかどうなのかを含めて、やはり安定供給という部分では、安全性確保が大前提でありますが、私はできるだけ早期にという思いがありますけれども、再開に向けての大臣の御見解をまず冒頭お伺いをしたいと思います。

二階国務大臣 この問題で熱心に取り組んでいただいております後藤議員からのお尋ねでございますが、私は、御意見は極めてもっともであって、ほとんど同じ思いをいたしております。

 昨日も東京電力の幹部にお目にかかりまして、経済産業省初め地元の皆さん等が再開に向けていろいろと苦心をしておる最中にこういう事件がまた発生した、まことに遺憾であって、猛省を促したい、同時に、今後においては、再びこういうことのないように、二重、三重の防災体制というものを築き上げるべきだと。

 経済産業省におきましても、けさほども関係者で会議を持って、これからの対策等についても改めて対応しようとしておるところでありますが、いずれにしましても、後藤議員御指摘のとおり、柏崎の原子力発電所において、平成十九年七月の新潟中越沖地震以降、九件もの火災が起きているということはまことに残念であって、関係者は言いわけのしようもなかろうというふうに思っておるところであります。

 再発防止を講ずるということは、口で言うだけではなくて、本当に心底、再びこういうことが起きないように関係者挙げて御協力を願いたいということを申し渡しておるところでありますが、経済産業省自身も、これらに対して、みずからのことと考え、地元の御理解、御安心をいただくように、今後とも全力を挙げてまいりたいと思っております。

後藤(斎)委員 ぜひ、地元の皆さん方の理解も得ながら、できるだけ早い対応ができるように、大臣の御努力も含めてお願いをしたいと思います。

 それでは、化審法の関係に移らせていただきます。

 大臣、この化審法、私、そもそもということで幾つか勉強してみて、やはり国際的にもいわゆる化学物質というものの定義が、定義は元素で構成されている化合物ということのようなんですが、例えば既存、どのくらい化学物質が世界じゅうにあるとか、そういうものがいろいろなデータによって実は違っているようであります。一番多いデータの数字では、全米化学学会のデータベースでは四千五百万以上の化学物質が登録というデータもあるものの、別の数字では、同じ全米化学学会のデータベースでは約三千万種類とか、いずれにしても、かなりたくさんの数があるということは事実のようであります。

 あわせて、ちょうど今の柏崎刈羽の地震のときと一緒なんですが、平成十九年に製品評価技術基盤機構がアンケート調査を行った結果では、化学物質というのはどんなイメージをしますかというアンケートでは、六割の方が、化学物質と聞くと、健康や環境に害をもたらす悪いイメージというようなまとめがございます。

 なぜそうなってしまうかということですが、要するに、別に危険だけじゃなく、有益性があるから化学物質というものが出てくるんですが、これはポイントということでおまとめになっているものを見させていただくと、マスコミによる影響が強いと。例えば、ダイオキシンであるとか、冷凍ギョーザのメタミドホスとか、いろいろな農薬の名前とか出てくると、何か化学物質と聞くと、みんな悪いものみたいなイメージがやはりあるようです。

 ただし、化学的に整理をすると、化学物質というものは、あらゆる物質である。元素で構成されているということですから、当然あらゆることになる。法律上は、化学物質は「元素及び化合物」というふうな明定がございます。例えば化学物質をどう整理するかによっても、この化審法だけではなくて、薬事法であるとか農薬取締法であるとか、いろいろな用途とか目的によって、取り締まりをしたり監視をする法律の体系も違っております。

 もともと自然界に存在をするもので、例えば塩も、電気分解をして海水からやる塩と明石の天然塩みたいなものとは、生成の物質は一緒ですけれども、つくり方が人為的なのか天然なのかによって違う。もともと、例えばダイオキシンとかそういうものも、意図的につくられたものではなくて、長い間、燃焼とかそういう過程で生成をされてしまった。例えば、フロンみたいなものも、当時、戦後の部分でいえば、冷蔵庫とか冷暖房ということでフロンを使ったものがあって、別にそれを、飲むことはないですけれども、吸ったりしても全然問題なかったものが、結局、それが非常に安定性があって、オゾン層を破壊してしまって、今の地球温暖化にも悪影響を与えているということで、使用禁止になっております。

 そんなもろもろを考えて、一つ言えることは、今回の例えば優先評価化学物質というふうに絞り込みをして、これから評価の実施や体制をつくりながら評価をしていくということのようであるんですが、やはりそれも、先ほど、三千万種類から四千五百万種類あるというものが、今までの御説明をお伺いしていると、大体、わが国は既存の化学物質がおよそ二万物質あって、今まで評価済みなのは千六百種類でありますと。これから、優先評価化学物質について、できるだけ早期に、遅くも二〇二〇年という一つの目標があるわけですけれども、やっていきたいというお話でありますが、やはりそこの人材とかそれにかかわる予算というものがあって初めて、例えば非常に絞り込んだ優先評価化学物質というものであっても時間と労力がかかるというふうに思うんですが、その点についてはどのようにお取り組みなのか、お尋ねをしたいと思います。

吉川副大臣 今、後藤議員から、優先評価化学物質に関する評価実施の見通しや体制につきまして御指摘をいただいたところでございます。

 優先評価化学物質の指定につきましては、改正法のもとで、まず、製造・輸入数量や既に知り得ている有害性情報等を勘案して指定をしてまいります。発がん性が疑われる物質や有害性の有無が不明な物質で環境への排出量が多いと考えられるものなど、二〇一〇年度から二〇二〇年度の早い段階にかけて千物質程度が指定されると想定をいたしているところでございます。

 その後、優先評価化学物質につきまして、事業者に対して有害性情報の提出も求めながら、毎年百物質以上のリスク評価を実施することになります。これによりまして、環境サミットでの合意の期限であります二〇二〇年度までに、すべての優先評価化学物質のリスク評価を終了させる予定でございます。

 リスク評価の実施体制につきましては、経済産業省、厚生労働省及び環境省の五十人の職員が作業に当たるほか、約三十人の審議会委員が有害性の専門的な評価等を実施するということになります。

 こうしたリスク評価の実施を支えるために、技術的観点と中小企業に過度に負担をかけない観点から予算措置を講じてまいりたいと考えておりまして、具体的には、今年度の経済産業省関係の予算といたしましては、有害性やリスク評価を効率的に実施するための手法等の開発のために約十五億七千万、さらに、中小企業が製造、輸入の大部分を占める化学物質の安全性点検のために約三億八千万の予算を計上しておりまして、こういう対応をやりながら、二〇二〇年の目標達成に向けて着実な評価の実施に努めてまいりたいと考えております。

 先ほど、優先評価の指定につきましての部分で二〇二〇年と申し上げましたけれども、二〇一二年度の早い段階で千物質に訂正をさせていただきます。

後藤(斎)委員 ぜひそんな形で、お金も当然かかることですし、人的な部分が何よりも必要かなと思うんです。

 もう一つは、この化学物質、いわゆる人為的につくったと言われている化学物質は、千八百九十何年、これも文献によって違うんですが、今から百十年くらい前に人為的につくった化学物質というのが、染め物に使うインディゴというもの。今までは草とか花とかで人工に着色をした、それを青色で、こういう色ですけれども、やったというのが、人為的につくった化学物質の商業的生産というのはこれが初めてだったというふうに言われているそうです。

 わずか百年ちょっとの間にある意味ではすべての生活に化学物質というものが関与して、例えば毎日食べている食品もそうかもしれませんし、着ているものもそうです、靴もそうです、すべてがそうなんですが、先ほども製品評価機構のアンケートでお話をしたように、六割の方が、やはり一般論からいうと何か悪いイメージを持ってしまっている。やはりこれは、有益性と有害性というもののバランスをどうとるか。

 この化審法の目的も、当然そこの審査を事前にきちっとやって、何もないようにするんだというふうなことも必要なんですが、やはり化学工業と言われているものに携わっている方々が、雇用でいえば百万人弱、出荷額でいえば、広義でいえば四十一兆を超すという非常に大きな産業の形になっています。これも御多分に漏れず、この半年間くらいで、いろいろ統計のやり方で違うんですが、三割から四割出荷が減っているというふうに言われております。

 そういう中で、一方で、一昨日ですか、日本の化学工業会社と中国の化学技術会社が合弁をして、新たに中国市場やアジアでの競争力を高めていくと。それもやはり、先ほど大島議員からも話がありましたように、世界じゅうでいろいろな、アメリカもヨーロッパも、アジアの国も日本も含めて、非常にすさまじい競争関係の中にあって、できるだけいいものをつくって、付加価値をつけて、当然、内需主導、内需主導といっても、我が国の需要だけで化学工業の振興というのはできません。世界じゅうが同じものを、あるデータでは、今、四千五百万というふうに既存の化学物質は言われているんですが、一日に一万件以上の新しい化学物質ができているというふうなデータもあるようですから、そういう中で、化学工業というものは雇用や地域の部分も含めて大きな産業に育っているというこの現状を見ながら、どのようにそれをバックアップしていくかということも経産省としてやはり非常に大切な部分だと思うんですが、その点について、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

二階国務大臣 今御審議をいただいている化審法に基づいて、我々はこれから、新たな国際社会での競争の中でこの化審法を活用して、新しい取り組みをしていかなくてはならない。ただいま議員から御指摘ありましたように、一日一万件も新しい化学物質が誕生しかねない、あるいはするであろう、こういう状況であります。私は、それは極めて当然のことだと思います。

 かつて私も、ナイロンが初めてでき上がったようなころに、いろいろお教えを願ったり、あるいはコンピューターの現場等へ立ち会ってみたりしましたが、無数と言っていいほどナイロンができ上がるまでの方程式というのはたくさんあるわけでありまして、その中からどれを選んでいくかというのは、やはりそれだけの費用対効果ということを考えて当然編み出していくわけであります。

 私どもは、そうした状況を念頭に置いて、今後においては、国際社会に伍して決して劣ることのないような対応を、この法案審議でお認めいただいた後に、しっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。

後藤(斎)委員 大臣、さっきもちょっとお話ししたように、ぜひ全体の流れはそういうふうに持っていってもらいたいと私も思うんです。例えば、さっきお話しした塩についても、たくさん塩だけをとれば、それは人工的につくったものと天然のものがあるんですが、とり過ぎると血圧が高くなったり、また急性胃潰瘍になるみたいなことがあるらしいんですが、そうではなくて、やはり塩がないと、人間はバランスがとれなくなって、代謝ができなくなって死んでしまうということです。

 だから、有害性と有益性というものをどうバランスをとるかということは、この間の審議の中でも同僚議員からもお話があったように、そういう周知も含めてやはりきちっとしたものに仕立て上げていくということが、例えば入り口でいかに規制をしていても、やはり塩分もとらなければ死んでしまいますけれども、とり過ぎたら高血圧になる。同じように、今までのフロンもダイオキシンもすべて含めて、今までなかったものが、突然有益から有害に変わったという、多分、量とか時間との関連だというふうに私は思うんです。

 ちょっと話を、最後に大臣にお尋ねをしますから、もしトイレだったら行っていただければと思います。

 実は今、花粉交配用のミツバチが全国的に不足をしていると言われています。私の地元もイチゴや桃とかサクランボをつくって、すべてが花粉交配用のミツバチを使っているわけではありませんけれども、やはりこの原因は、何でミツバチが急に不足をしてしまうのかなということも、何かの自然現象の一つのスタートなのかなと思う反面、農水省にお聞きをしていると、何かその原因はきちっとあるというふうに言われています。

 あわせて、化学物質、特に農薬みたいなものがミツバチの不足に今回影響しているという話もあるんですが、二点について、それぞれ所管が違うようでありますけれども、まず、なぜ交配用ミツバチが不足をしているのか、その現状と今後の対応策についてお伺いをし、その中で、不足の原因として農薬とか化学物質という話もあるんですが、その点の事実関係についてお尋ねをしたいと思います。

小栗政府参考人 ミツバチの不足の問題でございますけれども、ミツバチは、御承知のように、イチゴとかメロンとか、そういった果実的な部分を利用する作物の花粉交配用といたしまして、施設野菜では約四分の一、一万二千ヘクタールほど利用しておりますし、果樹においても梅とかリンゴとかサクランボで利用されているわけでございます。

 これが不足しているということで、不足の原因といたしましては、寄生性のダニによる被害があったのではないかとか、あるいは女王バチの輸入が停止している、そういったことも聞いておるわけでございます。

 この不足状態につきましては、今月上旬に各都道府県に緊急調査を実施しておりますけれども、それによりますと、二十一の都県から、現在不足をしているという報告がなされております。

 これらの都県におきましては、人工授粉などによります代替策にいろいろ取り組んで、不足の影響の回避にも努めているわけでございます。

 農林水産省といたしましても、各都道府県におきまして、園芸農家と養蜂家の間でマッチングするための需給調整システムを立ち上げまして、過不足に関する情報提供や県間調整を行うことなどによりまして、ミツバチの安定供給の確保を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

山田政府参考人 ミツバチの不足につきまして、農薬が原因ではないかという御質問にお答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、ミツバチの大量死の原因というのは解明されておりません。しかしながら、私どもも、農薬が原因ではないのかというような報道につきましては承知いたしております。

 そのような報道の中で、原因の一つではないかとされておりますネオニコチノイドというグループの農薬がございます。このような農薬は、水稲の害虫でありますカメムシを防除するための殺虫剤でございまして、近年広く使われております。

 このネオニコチノイド農薬のミツバチに対する毒性というものを比較してみますと、従来から水稲のカメムシ防除の主要な殺虫剤として使われておりますエトフェンプロックスという剤がございますけれども、それとほぼ同程度でございます。

 とはいえ、なるべくそのようなミツバチの大量死が起きないようにということで、農水省といたしましては、農薬を登録する際には、人、家畜、環境への影響のほか、必要に応じましてミツバチへの影響も審査しております。その結果によりまして、ミツバチの巣箱や周辺にかからないようにする、また放飼中の果樹園等での使用を避けるなどというような使用上の注意事項を定めております。

 また、農林水産省は、農業現場におきまして、農薬のラベルに記載されております注意事項を遵守すること、それから農薬散布の際に養蜂家との緊密な連携を行うことなどにつきまして指導を行っておりまして、本年度も、このような指導を通じてミツバチへの影響の低減を図ってまいります。

 以上でございます。

後藤(斎)委員 実は私、ミツバチが輸入されているとはつい最近まで知りませんでした。少なくとも、私が子供だったころというともう三、四十年前ですけれども、ミツバチというのは、今の時期でいえば、菜の花やレンゲからみつをとっていた、当然交配用もあったんですが。

 お話を聞くと、もともとこのミツバチは、要するに今まで手でやっていた授粉の作業みたいなものを省力化するために導入したというふうなことも言われているようなんです。ですから、例えば一つの農家のハウスから、そこで授粉が終わったら次のハウスにミツバチを持っていって、そういうローテーションみたいなこともやられているようなんです。

 私、これはぜひ要望だけで、もう時間がないから結構なんですが、別に私はミツバチだけを特記して話をしているのではありませんで、やはり今回の化学物質というものがこれからどういうふうに影響を与えるかというのは、例えば先ほど副大臣にお答えをいただいた、一番リスクが高いであろうみたいなものから当然評価の作業をしていただくんですが、そうではないものにも影響を与える可能性があるということなんです。

 それと、例えば現在化審法の対象になっていても、実際農薬取り締まりの方では、もう既に農薬として登録されていないにもかかわらずまだ何か対象物として対応する、何かその辺の整合性というのをもっときちっととった方がいいのではないかなというふうに私は思って、今回の交配用のミツバチの話をしたんです。

 私は、すべてこの自給を、今、例えばオーストラリアとハワイとスロベニアですか、この三カ国から、特に豪州がだめになってというのでアルゼンチンから緊急輸入をするような話があるんですが、やはり自然のものをどううまく使うかというのは、昨年通った農商工連携の法案もそうですけれども、やはり農水省だけで対応ができない部分も当然あります。経産省と連携をすればもっとよくなる場合もあります。私は、そこをぜひ産業の大きな中で考えていただきたいというふうに思うんです。

 一方で、今、例えば先ほどの塩についても、人工的につくったものと天然のものがあるというお話をしました。農水省も、今、できるだけ化学農薬や化学肥料を使わないという政策を、一方で環境保全型農業ということでしています。

 これは、例えばお隣の韓国なんかは、たしか一九九四年だったと思いますけれども、化学農薬の使用量を五〇%減らそうという目標を掲げて、なかなか実行は難しいらしいんですが、そういうふうに具体化をしています。

 我が国ではというと、なかなか大きな目標というのは掲げにくいということで、半減ということはしておりませんが、やはり有機農業の推進であるとか、これは法律もつくってあります。できるだけ化学肥料や農薬が少ないものということは、食の安全ということで、消費者の皆さんからも求められています。

 となると、例えば農薬を今つくっている化学農薬のメーカーさんなんかは、では、これから自分たちはどうしようかという、裏返しで、非常に悩まれていると思うんです。私は別にその代弁者でも何でもありません。普通に考えればですね。

 だから、天然のものと化学的なものというのは、さっきも言ったバランスの問題だと思うんですね。ですから、私は、農薬も含めて、化学肥料を絶対だめだという論者では実はないんです。

 これは多分大臣もそうですし、委員長も私もそうですけれども、本当に、昔は、田植えをした後、収穫するまで、十回くらいは例えば水田の草を取るわけですね。すさまじい労力が以前はかかった。多分、ある方が言うのは、水田十アール当たり五十時間、雑草、要するに草取りだけでかかった、それが今、農薬の普及、性能の向上ということで、二時間くらい、二十五分の一になっていると。

 ですから、私は、絶対使うなという論者ではない。それをどう適正に使うのか。どう適正に使っても、必ずリスクというのはあるはずなんです。それをどうバランスをとるかということなので、ぜひ農水省には、今のお話で、今、環境保全型農業というものを進めている一方で、これから化学農薬の使用量は減っていく、多分、輸出ということを考えない限り、そのメーカーというのは非常に困っているような感じがあるんです。その点、二つについて、一緒にで結構ですから、どのようにこれからお考えになっていくのか、お聞きをしたいと思います。

小栗政府参考人 私から、まず、環境保全型農業の取り組み状況について御説明をさせていただきます。

 国民の環境問題に対する認識が非常に高まっているということで、農水省といたしましても、農業生産全体のあり方を環境保全を重視したものに転換していく取り組みを推進しているところでございます。

 具体的に言いますと、今お話がございましたように、持続的な農業生産方式、土づくりを中心に農薬とか化学肥料を節減するいわゆるエコファーマー、そういったものの育成であるとか、それから、具体的に化学肥料とか農薬を五割以上節減した場合にはそれを支援いたします農地、水、環境保全向上対策であるとか、さらには農薬や化学肥料を使わない有機農業への取り組みの推進ということで、さまざまな観点から環境保全型農業に、非常に大事な課題でございますので、今後ともしっかり取り組んでいきたいというふうに考えております。

山田政府参考人 農薬の面についてお答えしたいと思います。

 我が国の農業におきましては、病害虫の防除が必要不可欠でございますので、将来にわたりまして、例えば毒性が低いとか、それから早く分解して残らないとか、そのような、より安全で効果があって使いやすい農薬というのを確保することが重要であると考えております。

 このため、我が国におきましては、国際的に合意された評価方法を取り入れた登録審査の実施、それから透明性の確保など、農薬登録制度の国際水準との調和が重要な課題となっております。

 この課題を解決するために、農林水産省は農薬登録制度の刷新を進めておるところでございますが、この取り組みを通じまして、より安全で使いやすい農薬の確保に努めているところでございます。

 また、このような農薬を適正に使用していただくことによりまして、病害虫を効果的に防除し、我が国において、より安全な食料をより安定的に供給することができるようになると考えております。

 さらに、農薬登録制度の刷新におきましては、新たな試験の要求スケジュールをあらかじめ業界に示すことなどによりまして登録審査の透明性を確保するということを通じまして、農薬メーカーが経営展望を持って新しい農薬の開発を進めることが可能になるなど、農薬産業の振興にも結果的には資するものであると考えております。

 以上でございます。

後藤(斎)委員 大臣、タイには危険化学物質法という形で基本法的なものがあって、その中に例えば農薬だとか薬だとか毒物だとか、そういう形になっているそうで、危険度に応じて何かカテゴリーが四つくらいあって、高いものから低いものという形で、一つの法体系の中に入っている。

 例えば農薬も、今お答えをいただいたのは多分化学的につくった農薬ということでありますが、もう一つ、農薬取締法には特定農薬という制度がございます。これは、平成十五年に法改正をしたときに、要すれば天然でできているもの、例えば、当時はアイガモとか牛とかコイというのも、そういうふうな特定農薬、特定資材みたいなものでという話がありましたが、結局は、七百四十種類くらいに整理をされ、最終的に現在指定されているものは重曹と食酢、それと地場で生息する天敵という三つが特定農薬に指定するとされているのが現状であります。

 ほか、残ったのが、今から五年、六年前ですから、五年か六年実は時間がたっておるんですが、それ以降、当然、天然のものですから、それが安全性があるかないかとか、いろいろな論点から整理をしなければいけないので、その絞り込みの作業がなかなか進んでいないというふうにお聞きをしています。特に、その特定農薬、特定防除資材に関係する方というのは、地方の例えば隣地、農村の地域の、非常に伝統的に、例えば竹炭とか木炭みたいな、木を一回炭にして、それをどういうふうに使うかみたいなもので、それを土壌に入れると土壌が改良されていいよとか、いろいろな効能があるらしいんですが、なかなかトータルとしたらその作業が進んでいないというのが現状であります。

 私は、農商工連携というのも一つの象徴なんですが、やはり地域活力を使うということは、大臣、やはり二年前からいろいろこの委員会でもやったように、地域資源をどう使うかという観点も含めて、私は別に安全でないものを通すという話をしているわけではありません。やはり五年も六年もたっているわけで、少なくとも七百数十か二百幾つかわかりませんが、それを峻別して、これは絶対だめだよ、まだ可能性はあるよというものに対応しながら、ただでさえ農薬の申請から登録は時間がかかるというふうに言われていますが、その点について、特定防除資材について特になんですが、どのように今後お考えなのか、簡潔で結構だから、お尋ねをしたいと思います。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる特定防除資材としての特定農薬と申しますものは、農家の段階で製造、使用され、人、家畜及び水産動植物に対して安全と考えられているもののうち、その安全性を客観的に確認したものを農薬取締法に基づき農林水産省及び環境省が指定しているものでございます。先ほどおっしゃられましたように、ただいま三種類のものが指定されております。

 確かに、これまで時間がかかりました。客観的に、または科学的に安全性を証明するということで、データを集めないといけない、またその枠組みをどうするのかということに確かにちょっと時間をかけましたので、非常に多く、五百ほどありましたものを、三十五種類ただいま候補になっておりますが、そこまで絞り込んでおります。

 その三十五種類につきまして、安全性を証明するために必要な科学的知見が準備されたものから、順次、専門家による検討を行いまして、さらに食品安全委員会の食品健康影響評価を受けて指定することとしております。

 環境省と連携いたしまして、情報やデータを資材ごとに収集し、指定にかかる期間を短縮していきたいと考えております。

後藤(斎)委員 今の特定防除資材、特定農薬、自然からつくったものもそうなんですが、すべての化学物質というものは、多分、今例えば安全という認定をしても、将来どうするかわからない。これは、例えばアスベスト、石綿にしてもそうですし、ダイオキシンにしてもそうなんです。フロンにしてもそうなんです。

 ですから、私は、今ばらばらに構成をされている、法律を一本化するというだけではなく、例えば健康被害の救済になったときに、農薬であるとか通常の化学物質であるとか、特定のものが各省にばらばらになっている、そういうものを例えば一体化をして補償の制度をやはりつくっていくということが、大臣、非常に大切だと思うんです。

 本来は、時間があったら政府委員と僕は思ったんですが、大臣、すぐできないと思うんです。ただ、各省連携というのも今回の法律の中でもきちっと対応が進んでいくと思うので、やはり何かあったときというのは、それがあれば、例えばメーカーの皆さんもそうですし、健康被害に遭った地域や消費者、国民の方もそうなんです。私は両方にそれがいいと思うんですけれども、そういう観点からの関係大臣への働きかけを、大臣、ぜひお願いしたいんですが、最後にその点だけお尋ねをしたいと思います。

二階国務大臣 御承知のとおり、今私どもは農商工連携等に特に力を注いでいるわけでありますが、同時に、裏返して、今御質問にありましたような農薬の被害その他、だんだんと時代の流れとともに我々が予期しないような問題だって起こってくる可能性もあるわけでありますから、各省とよく協議をして、そうした問題にも備えてまいりたいと思っております。

後藤(斎)委員 ありがとうございました。終わります。

東委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 きょうは、せんだっての連合審査に引き続いて、そのとき予定していたものの続きですね、経産省にかかわるものについて伺っていきたいと思います。

 化学物質は約二万種類強存在しますが、リスク評価が必要と言われる化学物質が約七千種類であると言われ、二〇二〇年までにスクリーニング評価の対象になるのは、現在の第二種特定化学物質、第二種から第三種監視化学物質を含めて約千種類ということですが、私、この点では、やはりリスク評価ということを考えたときには、まずカナダ、EU並みに対象を拡大するということを考えるべきではないかと思うんですが、最初に経産省の方に伺っておきます。

細野政府参考人 お答えを申し上げます。

 環境サミットでの合意を達成するために、今般の改正では、対象といたします化学物質の範囲を広げて、安全性の評価について充実をさせております。

 まず、従来、数の上でまだフォローが十分でなかったいわゆる既存物質を含めましてすべての化学物質について、一定以上の製造、輸入をする事業者に対しましては、その数量及び用途等の届け出を新たに義務づけておりまして、これは御指摘のとおり約七千物質でございます。七千物質が届け出として出てくる見込みとなっております。

 この後、国がこの届け出を受けまして、発がん性が疑われる物質や有害性の有無がわからないもの、こういったものにつきましては、環境への排出量が多いと考えられるものにつきまして、これを絞り込みを行いまして、優先評価化学物質として指定をするというたてつけでございます。これは届け出を受けてからの対応となりますが、現時点では約千物質程度となると見込んでおります。

 それから、今のような話と同時に、現在の化審法では、いわゆる河川その他自然界ではなかなか分解しにくい、いわゆる難分解性と言っておりますけれども、難分解性の化学物質のみが規制対象となっているわけでございますけれども、今回これを改めまして、いわゆる良分解性の物質もこの対象とさせていただいております。

 既に御案内のように、六十一年の改正におきまして、必ずしも高蓄積性の物質でなくとも規制の対象としておるところでございますけれども、今回はこれに加えて……(吉井委員「要するにカナダ、EU並みに対象を拡大するのかと聞いているんです」と呼ぶ)まず、良分解性につきましてはこれを対象にするということでございます。これは、最近のリスク評価を可能にするいろいろなデータの蓄積とか推計方法の進捗がありましたので、これを背景にしてこうすることにしたわけでございます。

 カナダと今御指摘がございました国並みにするかどうかということでございますけれども、これは思想の上では、良分解性それから低蓄積性のものも含めて、かつ既存物質も一定数量以上のものはすべて対象にするという意味ではかなり包括的なものだと思っております。個別の国の詳細については必ずしも承知をしておりませんけれども、対象とする範囲につきましてはかなり広範なものになっていると思います。

 この良分解性のものを対象にするということにつきましては、前回の連合審査のときにも御答弁申し上げたつもりでございますけれども、難分解であるかどうかというのは、いわゆる絶対評価というよりは、自然界の許容する量との関係で決まるものでございまして、したがって、リスク評価という量と有害性を……(吉井委員「対象拡大の必要を余り考えていないかどうか」と呼ぶ)いやいや、そういうことについて必要があるだけではなくて、リスク評価というアプローチをとる以上はきっちりと対応するということだと思います。

東委員長 ちょっと待ってください。

 吉井委員、質疑のときは挙手をして、きちっと質疑をしてください。

 答弁者も簡略に御答弁をお願いします。

細野政府参考人 良分解性につきましても、リスク評価という考え方のもとで包括的に対象とし、かつ既存の物質についても対象にするということで、対象物質のとり方につきましては広範なものにしてございます。

吉井委員 要するに、対象の拡大の必要性を考えて拡大するのかと聞いているのがポイントで、そのポイントの部分は一言で言えばどうなんですか。

細野政府参考人 答弁が冗長で大変恐縮でございます。

 今の御質問につきましては、対象については今申し上げた範囲で拡大をしております。

吉井委員 スクリーニング評価のためのデータ収集、スクリーニング評価選定基準を明確にするということがまず必要だと思うんです。スクリーニング評価でリスク評価の対象を絞り込むためにも、製造・輸入数量だけでなくてハザード情報が必須だと思うんです。

 したがって、一定数量以上の化学物質を製造、輸入する事業者に対して、化学物質の製造・輸入数量、用途情報に加えて、製造・輸入数量、重篤な毒性に応じて定義されたハザード情報を事業者に提出させる制度とするべきですし、また、行政のリスク評価実施体制、実施スケジュールを含めて明確にするなど、要するに国民に理解できる情報公開の仕組みをどうつくるか、このことが大事だと思うんですが、この点についての考え方を聞いておきます。簡潔でいいですよ。

細野政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のように、規制をするに当たっては、その規制による安全性の担保ということと、それからこれによって課せられる事業者の負担ということについては、両様バランスをとって考える必要があると思います。

 今回は、すそ切りを設けましても新たに七千種類の物質が毎年届け出の対象になります。中小企業も含めて約八百社がこの届け出の義務者になるわけでございまして、これ自体かなり恒常的な負担になるという側面はございます。

 御指摘のように、リスク評価のためには有害性情報については大変重要でございますけれども、事業者の立場から見ますと、いかに安全性評価のためとはいえ、届け出段階から一律に各事業者が有する有害性情報を耳をそろえて提出を求めるということについては、実務的にも過重な負担になりますし、届け出の違反については、これは法律上罰則の適用がございますこと等も考えますと、届け出については、その提出も義務づけするということについては見送ることといたしました。

 ただし、御指摘のとおり、リスク評価というのは有害性情報がないとできないということは事実でございます。今申し上げましたのは立法に当たっての法的な整理でございますので、御指摘のような有害性情報は、できるだけ出していただくということが望ましいわけでございます。いわゆる義務づけではなくて、任意の提出ということをぜひ慫慂していきたいと思っております。

 それからもう一つ、今後のスケジュール、それから、ハザード情報なんかについての取り扱いについて、できるだけ透明性を持った格好でやれという御指摘もございました。

 そのとおりだと思っております。これまで有害性情報につきましては、化審法にかかわる三省がいろいろデータベースをつくっております。通称J―CHECKと言っておりますけれども、こういったものへ順次登録をして、公表していきたいと思っております。

 それから、リスク評価についての具体的な評価方法についても、わかりやすくということだろうと思います。有害性評価にかかわる係数でありますとか推定環境排出量にかかわる考え方についても、この法律が通りましたら速やかに公表をさせていただきまして、関係者の事業の推進に資するようにしていきたいと思っております。

 こういったことで、予定のスキームを順次とらせていただきたいと思っています。

吉井委員 国会質問というのは、わからぬことを教えてもらうのが質問じゃないんです。わかっていることを、それをわかった上で何がポイントかということを聞いているわけですから、答弁書を書いている人たちも、要するに、今私が聞いたのは、情報公開の仕組みをつくるべきじゃないかという、ここなんですね。それに応じた答弁書をつくるようにしておいてもらわぬと、長々長々やっているだけでは物事はだめだということを言うておかなきゃならぬと思うんです。

 要するに、大企業と同じように、今も少し言うてはったけれども、中小企業では、やはり体制を組んで取り組むというのはこれはなかなか難しさがありますから、その支援をどうするのかということについて、大臣の方に伺っておきます。

二階国務大臣 お尋ねの点でございますが、中小企業を初めとする比較的規模の小さい事業者の負担をいかに抑えるかということが政治としても大変大事なことだと思っております。したがって、届け出の内容を製造・輸入数量等として、事業者にとって負担の大きいいわゆる有害性情報については、製造・輸入量と有害性を勘案し、影響の大きいものから段階的に求めることとし、すべての物質について一律に求めるというようなことはいたしません。

 国が安全性を評価する際に、国みずからが行う安全性点検や、これまでに事業者から提出をいただいておる情報等、国が持っております有害性情報を最大限に活用します。

 こうしたことで、中小企業を初め事業者に過度の負担にならないようにということは、十分配慮をしてまいりたいと思っております。

吉井委員 私、この間、連合審査のときにも石綿被害の問題について、大阪の泉南の方の例を挙げまして、大体、日本の石綿産業というのは百年の歴史を持っていますから、戦前の一九三七年に国の方で被害を調査してつかんでいたわけですね。戦後も、一九七二年にWHO、ILOなどで発がん性ありということをやっていたんですが、しかし、日本の場合は管理使用ということで、管理濃度というのを決めてやっていたわけです。

 ですから、こういう点では、これが被害を拡大したという教訓に立って、今、ナノ物質についても、石綿で経験したようなことが起こらないように、やはりこれを対象にして、きちんと研究もし、対策をする。製造、使用、その他についてもちゃんと枠組みをつくっておくということを考えておくべきだと思うんです。これは大臣の方からでも参考人からでもいいんですが、参考人の場合は簡潔に頼みます。

後藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のように、ナノ物質につきまして、その有効性を活用していくためにも、きちっと安全性を確保してまいるというのは大変大事であると思っております。

 ただし、現状につきましては、このナノマテリアルが人ですとか動植物に及ぼす影響につきましては、まだ専門家の間でもいろいろな見解があると承知しております。それに基づきまして、OECDといった場で国際的に協調いたしまして、その解明を進めている状況でございます。

 こうしたように、完全に有害性の有無につきまして明らかになっておりませんけれども、経済産業省といたしましても、ナノであることから生じます性格、場合によっては影響ということについて解明すべく、平成十八年度からナノ粒子の特性評価手法という研究をしておりまして、今年度も四億円の予算を計上してございます。

 こうしたやり方を進めてまいりまして、事業者にも予防的な立場からの取り組みを促してまいるということで進めてございます。

吉井委員 次に、POPsの出発になりました一つに、ダイオキシン問題があるんですね。

 私も実は、一九七一年だったと思いますが、北爆の時代に、ベトナム戦争の時代にハノイで一カ月半ぐらい過ごしたことがありますが、実際の枯れ葉剤の使用というのは、ベトナムではすさまじいものだったんですね。いまだに影響が残っております。

 ですから、それ以来、ダイオキシンということが日本でも問題になるようになりましたが、大阪の能勢町の一般廃棄物焼却場で発生したダイオキシンについては、結構全国的にも有名になりましたし、大臣も地域が近いものですからよく御存じと思いますが、環境省が主導して対策がとられたはずなのに、私、昨年、質問準備をしたときに現地も行きましたが、側溝から基準の二百五十三倍、別の泥からは八十七倍という高い値が検出されておりました。

 能勢町の施設と同型の焼却炉が全国に三十八施設あるんですね。この炉でダイオキシンが発生したけれども、炉の内部に残ったまま、あるいは開放型冷却塔から周辺に散布され、土壌汚染や、その後も集水升のヘドロでダイオキシン汚染が出ております。異なる炉も含めると六百十二の焼却炉が廃炉になっているんですが、まだ解体されているわけではないわけです。また、全国で産業廃棄物の焼却炉で休止・廃炉が三百一ある。

 ですから、報道等で若干拾っただけでも、全国で過去三年間に二十件ものダイオキシンの基準値を超える焼却施設があるということが報じられております。基準値の数倍から数百倍のダイオキシンが検出されることが続いているということについて、これは環境省も認めておりました。

 そこで、環境省に伺っておきたいんですが、やはり、ダイオキシン処理を行ったはずなんだけれども、廃炉にした処理場周辺の土壌や水路の泥から環境基準の数百倍という高いダイオキシンが検出されたり、安定型の産業廃棄物処分場から基準の数倍のダイオキシンが検出されることなど、問題は終わっていないわけですね。ですから、ダイオキシンを完全に分解処理するなど安定化させ、住民に被害が出ないように処理する必要があるというふうに思うわけです。

 処理が解決したと国で考えていたところで問題が発生しているようですから、まず、環境省として、問題の出た地域の現地調査を行い、その上で全国各地の施設周辺の事後調査と必要な対策をどう進めるか、こういう検討というものを、これは能勢だけじゃなくて、実は私、ある農業県のダイオキシンを処理している場所についても取り上げたことがありますが、流出しておったという問題があるんですね。能勢は一例なんですけれども、やはりそれぞれのところで、まず、施設周辺の事後調査と必要な対策をどう進めるのか、こういうことの検討が大事だと思うんですが、これは環境省の方に伺っておきます。

谷津政府参考人 お答え申し上げます。

 能勢の事例を中心に廃棄物処理施設が原因となったようなダイオキシンの対策をどう進めるかということでございます。

 先生御指摘の、能勢と同じようなタイプの廃棄物焼却施設でございますけれども、全国で私どもが把握しておりますのは三十七でございまして、その周辺の環境調査をしたところ、三十七のうちの三つで局所的にダイオキシンの基準値を超えるような土壌が確認された、そういうことで、撤去などの対策、施設面の改良あるいは古い施設の廃止、こういったことを行ってまいっているわけでございます。

 能勢におきましても、所要の汚染土壌の処理、また、汚染された調整池の底にたまっているような底質、こうしたものの処理も平成十九年度に終わっている、引き続きモニタリングも行われているというふうに承知しております。

 私どもといたしましては、廃棄物処理施設が原因となるようなダイオキシンの対策については、引き続き、都道府県、地方公共団体、市町村と協力しながら、モニタリングあるいはその対策に努めてまいりたいと考えております。

吉井委員 役所答弁は大体そういうところだと思うんです。

 役所で一応対策が終わったと。しかし、実際調査してみたら、その後も検出されるところが出ておったということがあるわけです。

 大臣に伺っておきたいんですけれども、私は、能勢の、現地で高い検出値のところも歩いてまいりました。それで、役場の倉庫にとりあえず百四十八本の高濃度のダイオキシンのドラム缶が保管されておる。その場所というのは、小学校の中といいますか、真ん前といいますか、そういう敷地のところなんですが、受け入れ先問題で長い時間を要して、そこから移すということ自体がなかなか大変、積んだままなんですね。保管場所のすぐ前に学校の児童生徒がいる。だから、児童生徒や住民からうんと離れたところへまず移すこととか、早く分解処理して安定化させることとか、地域の汚染土壌の完全除去、これは一例を挙げただけで、各地で漏れたりいろいろしているところがありますから、これらはやはり国とメーカーの責任などで地元自治体とか関係者と協力せぬとできませんからね。

 化学物質の安全問題というのは、こうした一つ一つの積み上げをやることによって、あらゆる問題、後ほどまたVOCなどやりますけれども、やはり一つ一つの積み上げから解決に向かっていくものだと思うんです。法律をつくれば解決するというものじゃなくて、そういう一つ一つの積み上げというものにどういうふうに取り組んでいくかについて、これは大臣に伺っておきます。

二階国務大臣 能勢町は先生の地元でございまして、大変詳しい実情を今お聞かせいただきました。

 環境省におきましても所見を述べたわけでございますが、私どもも、関係省庁とよく連携をとって、これらの問題についていかに対応するかということを早急に研究してみたいと思いますから、これは少しお時間をちょうだいしたいと思います。

吉井委員 私は、せっかく化審法をつくる、化学物質による健康被害とかなくそうというときに、これまでに出てきている問題についても、これは国だけでできる話じゃありませんから、それはよくわかっているんですよ。地方自治体であったりメーカーであったりとか関係者が協力して一つ一つ解決をしていくという、その積み上げの中からこの法律は生きたものになっていきますから、やはりそういう取り組みをやっていただきたいというふうに思います。

 次に、実は一昨年、神戸市の日本テルペン工場跡地から発生したベンゼン等による健康障害の発生というのを取り上げました。ここの土壌から基準値の十倍以上のベンゼン、ジクロロエタンなどが検出されたんですが、これは大体粘膜の弱いところに被害が出るんですね。ですから、気管支炎、皮膚炎、湿疹、かぶれが出て、通院、入院した人が周辺住民の間で多数出ておりました、これは病院の方もお訪ねしたんですが。

 豊洲の東京ガス跡地でも、地下水中にベンゼンは最高一千倍、土壌中でも最高千六百倍が検出されておりますし、大阪の寝屋川のプラスチック廃棄物処理場周辺でもベンゼンが基準値の二・六倍の濃度で検出され、その他化学物質、VOCの影響と複合的被害というのが出ているわけですね。

 年基準で見れば基準にぎりぎりおさまっているとしても、結構季節性があったりとか、暑いときによく蒸発してくるとか、そういうことで短期間に高濃度のベンゼンに被曝したときに健康被害が生まれたりしていますので、そういうときにどういう症状が出てくるのかとか、揮発性有機化合物質、いわゆるVOCによるこれらが複合した健康被害というのはどういう症状が出てくるのかとか、この複合被害について国として研究しているのかどうか、これは最初に政府参考人に伺っておきます。

原政府参考人 お答えを申し上げます。

 複数の化学物質による影響、あるいは単一の化学物質でありましても、吸入暴露と経口暴露、このような暴露の影響について複合影響という形で言われておりまして、それぞれ専門家の指摘がされております。ただ一方で、その影響について、具体的な試験評価手法、これをどうしていくのかということも含めまして、科学的知見が必ずしも十分とはいえない段階であるというふうに認識しております。

 このため、環境省としましては、例えば、クロロホルム等の化学物質について複数の経路による暴露の影響のメカニズムの解明の研究、あるいは複数の化学物質に暴露された場合の健康影響についての研究等について現在進めているところでございます。

 これらの中には、一部に複合影響がある可能性が示唆されるものもございましたけれども、ただ一方で、一方の濃度が上がっていくと逆に今度は下がっていくとか、なかなか複雑な動向もあるようでございますので、もう少し、さらにそのメカニズムも含めて、詳しい研究を今後とも進めてまいりたいと考えております。

吉井委員 大体今のようなことで進めていかなきゃいかぬと思うんですが、ベンゼン、VOCが検出されているところで現実に被害が発生したというのもまた私も見てきたんです。

 それで、年間平均の基準に入っていても、高濃度のときには被害が生じるとか、濃度が低い時間が、低いんだけれども数日続くと緩和されるんだけれども、あるいはまた、発生源からうんと離れていると被害が完全になくなるとか、やはりそういう問題が出ておりますから、こういう問題というのは被害の現実から出発して、もちろん必要なときは疫学調査をやるとか、これはやらなきゃいけませんが、VOCなどの規制基準を決めて、そして対策というものを考えていくということで取り組んでいかなきゃいけないと思うんですが、この点について、簡潔でいいですから、参考人の方に伺っておきます。

白石政府参考人 お答えいたします。

 今御説明させていただきましたように、VOCも総体しての健康影響というのはなかなか明らかでないということでございますので、その中で、今御指摘のありましたベンゼンであるとかトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及びジクロロメタンについては、大気汚染と人の健康影響の関係ということを科学的知見をもとにいたしまして環境基準の設定をしておるところでございますが、そのほかのいろいろなVOC、総体ではないわけでございますけれども、個別のものにつきましては、ある程度指針値による対応等々も含めまして対応させていただいておると思っております。

吉井委員 大体これで最後の質問になると思いますので、大臣に伺っておきたいと思うんですが、岡山大学の環境疫学の津田教授らが寝屋川のプラスチック処理工場で調査されて、工場から二千八百メーター付近の人たちに比べて七百メートル以内の人は十二・四倍も湿疹してしまうという、この発症率が高いということを疫学調査で明らかにされました。それから、目の痛み、かゆみ、皮膚のかゆみ、のどのいがらっぽさなど、粘膜の被害は、神戸のテルペンと同じ訴えが出されておりました。

 二〇〇六年六月の環境調査で、ベンゼンが、国の環境基準に照らして、最高で二・六倍に当たる七・七八マイクログラムが工場から百メートルの地点で確認される。五百メートルと遠いところでも、五・九三マイクログラムを検出しております。別の測定日にも百メートル地点で四・八八マイクログラムと、基準値の一・六倍以上を検出する、そういう状況があります。調査した東大の環境学の柳沢教授は、プラスチックごみ処理施設の危険の一端を示しているというふうに警告をしておられて、同種のプラスチックごみの場合の、ベンゼンやVOCを含む化学物質による大気の複合汚染で被害が生じることを明らかにしておられますが、これは杉並病判決などでも示されているところです。

 以前、寝屋川市の特定の一日の調査では、環境省が一年ならした平均値での基準一ppmに、わずかに低い値だから大丈夫だとしていたんですが、しかし、最近の寝屋川などの関係四市の調査では、二〇〇八年二月一日から十一日までの十一日間のトータルVOCの測定値で、厚労省の暫定の指針値とされる四百マイクログラム・パー・立米をほぼ常時超えているということで、時間帯によっては十倍から二十五倍も検出されるというように、やはり変動があるんですね。

 だから、そういう現実がありますから、疫学調査をきちんとすることで、発がんにまで至らなくても、初期の段階でもベンゼンと被害の因果関係を明確にして、公害環境対策に生きてくる調査研究に国を挙げて取り組んでいくということが、この法律を本当に生かしていく上でも大事だと思いますので、とりあえずこれはVOCについても同じ調査研究が必要だと思いますので、大臣の方に、最後に、調査研究を深めていくという、この点についてのお考えを伺って、質問を終わりたいと思います。

二階国務大臣 VOCが環境に排出されることによる汚染について、委員からるる御指摘がございました。

 我々も早速この問題点について、関係省庁、既に相当の調査、または知見を持っておられると思いますが、それを実行に移さなくては何にもなりませんので、この法律の成立とともに、私たちは真剣な取り組みを行ってまいりたい。

 過去にもこういう問題はたくさんありましたが、いまだにこういう問題が私たちの周辺に存在しているということに対して、相当の危機感を持って対応してまいりたいと思っております。

吉井委員 時間が参りましたので、終わります。

東委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

東委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

東委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

東委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、中野正志君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。大島敦君。

大島(敦)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、産業の基盤であり国民生活において極めて広範に使用されている化学物質の安全性を確立することが国民の生命や環境の保護に不可欠であり、かつ、我が国産業の国際競争力の一層の強化につながることから、その管理・規制に関する体制の整備を図ることが重要であることにかんがみ、本法施行に当たり、次の諸点について適切に措置すべきである。

 一 二〇二〇年を期限とする国際合意の確実な履行に向けて、本改正案による規制強化措置が、事業主のみならず国民全般からの理解を得て円滑かつ着実に実施されるよう、国の責任と具体的な作業スケジュールを明らかにするとともに、調査研究や検査・監督に万全を期するよう体制の整備や十分な予算の確保に努めること。

  また、合意の履行に当たっては、先進国間における情報の一元化等に努めるとともに、アジアをはじめとする関係各国ともその実施スキームの確立や登録情報の共有を図るなど、国際的な協調の下に対策を推進し、本法に基づく化学物質管理スキームが事実上の国際標準として受け入れられるよう努めること。

 二 化学物質のスクリーニング評価に当たっては、化学物質に対する感受性の高い胎児、乳幼児及び高齢者等への直接曝露及び環境曝露を十分に勘案し、詳細な曝露関連情報の提供を事業者に求めること。また、生態影響評価の重要性を踏まえた評価手法の確立及び効率的なデータ収集のための技術開発等に努めること。

 三 化学物質のリスク評価に当たっては、その透明性及び客観性を確保する観点から、評価計画、評価結果等を公開するとともに、評価の審査等には多様な主体を参加させる等の体制を整備すること。また、政府の行ったリスク評価の妥当性を審査する外部委員会を用いて行うこと。

 四 事業者による自主的な化学物質のリスク評価及び管理を推進するために、低コストで実施できるリスク評価手法の開発・普及を図るとともに、データ収集に係る作業の定量化等、事業者の負担軽減に努めること。また、規制の実効性を確保するため、中小企業がこれに円滑に対応できるよう、新たなスキームの十分な周知徹底に努めるとともに、効果的な支援策の実施を検討すること。

 五 化学物質の適切な管理を一層促進するため、化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)に基づく表示、化学物質の安全性情報、リスク評価結果及び管理手法等について、川上事業者から川下事業者に至るまで情報の伝達及び共有ができるようにすること。また、消費者への理解を促進するため、化学物質に関する安全性情報の製品表示等について検討すること。

 六 「エッセンシャルユース」として認められた化学物質については、必要最小限の利用にとどめ、定期的に厳密な評価を行いその結果を公表するとともに、事業者に対し代替化及び低減化に向けた取組を促すこと。

 七 事業者による自主的な化学物質管理を推進するため、化学物質管理を担える人材の育成及び研究機関の充実に努めること。また、大学及び大学院における定量的構造活性相関(QSAR)の手法、計測、リスク評価及び管理に関する専門家育成の検討に加え、学校教育における化学物質に関する教育内容の見直しを図ること。

 八 化学物質による人の健康や生態系への悪影響を未然防止するために、予防的な視点に基づき、懸念のある化学物質については、科学的知見が集積されるまでの間、厳格な曝露管理または代替の検討を事業者に促すこと。

 九 化学物質の適正な利用及び化学物質によるリスクの低減に関する長期的、計画的な施策を推進するに当たっては、関係省庁間の連携を図りつつ、事業者の負担の軽減及び消費者の化学物質に関する理解の促進に資するよう、化学物質に関する総合的、統一的な法制度等のあり方について検討を行うこと。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

 以上です。(拍手)

東委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

東委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、二階経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。二階経済産業大臣。

二階国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。

 ありがとうございます。

    ―――――――――――――

東委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

東委員長 次に、内閣提出、参議院送付、不正競争防止法の一部を改正する法律案並びに外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。二階経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 不正競争防止法の一部を改正する法律案

 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

二階国務大臣 まず、不正競争防止法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 我が国経済が知識集約型へと移行する中で、事業者の経験や知恵の結晶である技術やノウハウ等の営業秘密は、企業の競争力の源泉であり、ますますその保護の重要性が高まっております。

 これまで、我が国において、本法の改正によって、営業秘密の保護を段階的に強化してきました。しかしながら、昨今のグローバル化や情報化の進展により、営業秘密の侵害行為が格段に容易になり、企業は瞬時にして致命的な損害をこうむる可能性に直面しております。その結果、営利や企業への嫌がらせを目的とした営業秘密の開示行為や、従業員による機密情報の不正な持ち出しなど、現行制度では取り締まることのできない営業秘密の流出事案が相次いでおります。

 こうした状況を踏まえ、営業秘密の保護範囲を拡大し、事業者が保有する技術情報等のうち競争上重要なものの流出を防止することにより、事業者間の公正な競争を確保し、我が国の産業競争力を維持強化するべく、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、営業秘密侵害罪が成立するために必要とされている目的について、その内容を拡大します。これまで「不正の競争の目的」のものに限定していたものを変更し、営利目的や加害目的をもってなされた行為も処罰の対象に含めます。

 第二に、任務違反による営業秘密の不正な入手行為についても刑事罰を導入します。営業秘密を管理する者が、任務に違反して営業秘密が記録されている媒体を横領したり、無断で複製したりする行為などを新たに刑事罰の対象とします。

 続きまして、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 我が国を初めとする主要国では、安全保障上機微な技術や貨物が国外に持ち出され、核開発等の懸念ある用途に用いられることがないよう、厳格な輸出管理に取り組んできており、国際社会全体としても、国際連合の安全保障理事会などにおいて、大量破壊兵器等の拡散を防ぐための不断の取り組みが行われているところであります。

 しかしながら、国境を越えた人の移動の活発化や情報化の進展により、技術の国外への持ち出しが容易にできるようになり、技術取引等をめぐる環境の変化が進んでおります。また、不正輸出の事案が頻発しており、抑止力の強化や企業等による自主的な輸出管理の強化が強く求められております。

 こうした状況を踏まえ、事業者等が保有する技術や貨物のうち、安全保障上機微なものの国外への流出防止を徹底することにより、我が国の対外経済活動の健全な発展のための基盤を整備するべく、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、安全保障上機微な技術の対外取引に関する規制を見直します。我が国の居住者と非居住者との間で行われる取引のみを対象としている現行制度を改め、国境を越えた人の移動により容易に変化し得る居住者または非居住者の身分にかかわらず、そうした技術を外国で提供することを目的とする取引をすべて規制対象とします。また、規制の実効性を高めるために、これらの技術が記録された記録媒体の輸出などを規制します。

 第二に、厳格な輸出管理を行うため、無許可の輸出等についての罰則を強化するとともに、安全保障上機微な貨物の輸出や技術の取引を業として行う者に対し、経済産業大臣が定める基準に従って輸出などをすることを求め、経済産業大臣が勧告、命令等を行うことを可能とする制度を新設します。

 第三に、国連安保理決議を踏まえ、仲介貿易取引に対する規制の範囲に、貨物の売買に基づく取引のほか、貸借などに基づく取引を追加します。

 以上が、両法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

東委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十七日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十六分散会


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