衆議院

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第12号 平成23年5月27日(金曜日)

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平成二十三年五月二十七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田中けいしゅう君

   理事 石関 貴史君 理事 北神 圭朗君

   理事 楠田 大蔵君 理事 後藤  斎君

   理事 近藤 洋介君 理事 谷畑  孝君

   理事 西村 康稔君 理事 佐藤 茂樹君

      相原 史乃君    石田 三示君

      小原  舞君    緒方林太郎君

      柿沼 正明君    勝又恒一郎君

      金森  正君    川口  浩君

      川口  博君    川島智太郎君

      木村たけつか君    櫛渕 万里君

      熊田 篤嗣君    近藤 和也君

      柴橋 正直君    白石 洋一君

      杉本かずみ君    平  智之君

      高松 和夫君    橘  秀徳君

      玉城デニー君    道休誠一郎君

      中山 義活君    橋本 博明君

      橋本  勉君    花咲 宏基君

      矢崎 公二君    柳田 和己君

      山崎  誠君    山本 剛正君

      吉田おさむ君    加藤 勝信君

      梶山 弘志君    近藤三津枝君

      高市 早苗君    橘 慶一郎君

      西野あきら君    平井たくや君

      望月 義夫君    稲津  久君

      吉井 英勝君    柿澤 未途君

      園田 博之君

    …………………………………

   経済産業大臣       海江田万里君

   経済産業副大臣      松下 忠洋君

   経済産業大臣政務官    中山 義活君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  河内  隆君

   政府参考人

   (人事院事務総局人材局長)            菊地 敦子君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 前川  守君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 武藤 義哉君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 土屋 定之君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房政策評価審議官)       田中  敏君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           井内 摂男君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          安達 健祐君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 細野 哲弘君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     寺坂 信昭君

   政府参考人

   (特許庁長官)      岩井 良行君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    熊谷  敬君

   経済産業委員会専門員   綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  池田 元久君     橘  秀徳君

  熊田 篤嗣君     小原  舞君

  斉木 武志君     橋本 博明君

  斎藤やすのり君    玉城デニー君

  田嶋  要君     石田 三示君

  高松 和夫君     金森  正君

  西野あきら君     平井たくや君

  額賀福志郎君     加藤 勝信君

  山内 康一君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     柳田 和己君

  小原  舞君     川口  浩君

  金森  正君     高松 和夫君

  橘  秀徳君     池田 元久君

  玉城デニー君     道休誠一郎君

  橋本 博明君     山崎  誠君

  加藤 勝信君     額賀福志郎君

  平井たくや君     西野あきら君

  柿澤 未途君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  川口  浩君     近藤 和也君

  道休誠一郎君     勝又恒一郎君

  柳田 和己君     田嶋  要君

  山崎  誠君     矢崎 公二君

同日

 辞任         補欠選任

  勝又恒一郎君     相原 史乃君

  近藤 和也君     熊田 篤嗣君

  矢崎 公二君     柿沼 正明君

同日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     斎藤やすのり君

  柿沼 正明君     斉木 武志君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)(参議院送付)

 不正競争防止法の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、特許法等の一部を改正する法律案及び不正競争防止法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官河内隆君、人事院事務総局人材局長菊地敦子君、内閣府大臣官房審議官前川守君、外務省大臣官房審議官武藤義哉君、文部科学省大臣官房長土屋定之君、文部科学省大臣官房政策評価審議官田中敏君、経済産業省大臣官房審議官井内摂男君、経済産業省経済産業政策局長安達健祐君、資源エネルギー庁長官細野哲弘君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長寺坂信昭君、特許庁長官岩井良行君及び特許庁総務部長熊谷敬君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。望月義夫君。

望月委員 おはようございます。それでは、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、特許法の方から質問させていただきます。

 グローバル競争が激化する中で、我が国の産業の国際競争力を高めるためには、知的財産の戦略的な創造、保護、活用を図ることが極めて重要であります。これは端的に言いますと、より早く、より安く、特許料、申請するのに、それからまた、より強い権利保護といいますか、そういったことが基本理念の中の具体的なことではないかなと私は思っております。

 しかし、我が国の状況を見ますと、十年前には世界全体の四〇%近く特許の出願があった。ところが、二〇〇九年では一五%。それからまた、我が国は知財立国というものを標榜してきましたけれども、これは凋落的な状況にあるのではないかなと我々はまさに心配をしているわけでございます。世界の動向を見ても、アメリカだとか中国、さまざまな国が倍々でふえてきている。それが我が国は一体どういう状況かといったら、まさに十年前には四十四万件だった出願が、今は三十四万件。

 これは一体どういうことなんだろう。基本的な考え方をしっかりしていかないと、我が国は、まさに今原子力の問題でいろいろな問題がありますけれども、エネルギーも、早く言えば資源も何もない国である、まさに知財立国で生きていくしか仕方がない、科学技術立国、さまざまな問題がございますけれども、その基本的な我々の国の大切な財産を失うことにならないよう、今まさにそういうようなときに来ているのではないかな、私はこのように思うわけでございます。

 知的財産を取り巻く環境も全く変化をしているわけでございますけれども、これはイノベーションを通して促進していくことが大切でございますけれども、今言ったような問題を踏まえて、問題意識にこたえて、今回の法改正がそういうことになっているかどうか、基本的な考え方をまず大臣からお伺いしたいと思います。

海江田国務大臣 望月委員にお答えをいたします。

 今望月委員から御指摘のありましたように、近年、我が国の特許の出願数というのは減少をしております。この理由は幾つか考えられますが、一つは、やはりリーマン・ショック以来の景気の停滞ということでございます。それから、出願人が出願を厳選しているということも一つの理由になっておろうかと思います。

 他方、企業等のユーザーが特許権を適切に保護、活用できるようにし、特許権を取得する魅力を一層高めることは、まさにイノベーションを通じた我が国の競争力を高める上で大変重要なことであるという認識を持っております。

 このような観点から、今御審議をお願いしております法律案は、社外の技術も活用して研究開発や製品化を行うオープンイノベーションの進展に対応して知的財産制度を見直すとともに、中小企業等のユーザー利便性の向上や、委員先ほどお話のありました迅速さ、紛争の迅速かつ効率的な解決を図ることを目的としたものでございます。

 以上です。

望月委員 基本的な考え方を聞かせていただきました。

 今、私は、冒頭は若干きれいごとを言っただけのことでございまして、ちょっと心配なのは、四十四万件が三十四万件と余りにも低くなっている。これは一説によると、余りにも多いから、厳選しているというよりも、余りくだらないものをたくさん出すんじゃないよというような指導があったとかないとか、さまざまな意見がございます。これはともかくとしても、そういうようなことに関してさまざまな問題がございますので、ちょっと深く話をしていきたいと思います。

 ライセンス契約の保護の強化ということでございます。

 最近は、一つのものに対してさまざまな特許のライセンスを結んでいるわけでございますけれども、世の中が昔と違って、昔だったら若干いかがなものかなというものが当たり前になってきている時代でございまして、MアンドA、要するに企業買収だとか企業合併だとか、自分たちの足りないところを企業を買収したり合併したりすることによってより強みを増すということもございます。

 これによって、例えば、よく言われることは、DVDの中に一体どれだけの特許が含まれているかというと、約二千件の特許が含まれていると。そうすると、ビジネス界の現場を考えると、すべてを登録しろなんというのは、一つの製品で二千件ですから、それはちょっと不可能に近いような状況にあるということでございます。

 現行法では、特許法の第九十九条に基づいてライセンス登録がされていないと、特許が一つでも譲渡された場合、ライセンスを受けている事業が差しとめを受け、製品全体が製造販売できなくなるおそれがある。

 そういうことでございますので、ちょっとうがった考え方をすると、ライバルの会社をつぶすのにちょうどいい。これは一見合法的な手段で、ちょっとしたその中の一つのライセンスを引っ張り出すことによって、製品を差しとめしちゃう。それによって、最近の製品というのは陳腐化するのが早いですから、その間にどんどんその会社は疲弊してしまうというような形で、ライバル会社をつぶすのには格好のことになってしまうというようなこともございます。

 こういった悪意を避けるために、ライセンスの登録をしなくても第三者に対抗できる制度の導入というのは、産業界では長く要望されてきたことでございますので、これは評価できるとは思います。

 しかし、一方で、この制度が導入されると、第三者にライセンスの存在が登録によって示されることがないため、ライセンスの存在を知らないで高い金を払って、ああよかったというような方に、早く言えば特許権を譲り受けた善意の第三者とも言える人たちに不測の事態が生じてしまうというようなことも起こり得るわけで、これは非常に難しい問題でありますけれども、この不測の被害を防止するため、十分な周知徹底というものは必要だと思いますが、これはどうお考えでしょうか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のように、この法律を通していただきますと、特許権を譲り受けた第三者は、仮にライセンスの存在を知らなかった場合であっても対抗できなくなるというふうな効果を伴うわけでございまして、実務の方を伺いますと、特許権譲渡の際には、通常、ライセンスがあるかどうかということにつきましては、これが売り買いをする特許権の価値を評価する重要な材料になることから、特許権を譲り受けようとする者は、譲り受ける前にライセンス契約がついているかどうかということを確認されるやり方が一般的なやり方としてはあるんだということを承っております。

 したがいまして、特許権を譲り受ける際には、ライセンス契約の有無などを確認する、いわゆるデューデリジェンスと言われておりますけれども、こういったことの励行が、これまででも重要なわけでございますけれども、この法律をお通しいただいた後はさらに重要になってくるのだろうと思います。

 こうしたことがございますので、今後、制度の改正につきまして、全国の主要都市で二十回程度説明会を行わせていただこうと思っておりますし、ホームページ上でも法改正の中身をよく周知をさせていただこうと思いますけれども、今のようなことが非常に重要になってきているという点も重点を置いて、ぜひしっかりと周知をさせていただきたいというふうに考えておる次第でございます。

望月委員 これはしっかり周知徹底をしていただきたいと思います。

 次に、最近は共同研究、共同開発、産学官ということでさまざまな組み合わせ、そして新しいものが次々と生まれる、これは非常にいいことだと私は思っておりますが、最近いろいろ我々が聞くのは、こういう共同研究をしていて、例えば大企業だとか金を出した人たちが、ある日突然に、勝手にと言ったらおかしいんですけれども、特許権の登録をしてしまう。そうすると、中小企業を初め弱い方の人たちは、泣き寝入りをせざるを得ない。だから、大企業や、産学官というものはやりたくないなというような声が出かかっているというのが現状でございます。

 さまざまなトラブルがあるわけでございますが、それでは訴えて権利がもらえるかといったら、そうではなくて、それが無効になるということがありますから、結局は、研究開発した人たちが、オープンになってしまって何も使えないというような悪い状況にあるということになります。これは雲泥の差。だから、訴えることもできない、泣き寝入りをするというようなことになってしまいますので、本来の特許権者に特許権を移転することを認めるべきだというような声がございます。

 今度の法改正によって、特許法第七十四条に移転の規定を設けたことは評価させていただきたいと思いますが、まさにこういったことが未然に防げることで安心して研究開発ができる、こういう点について先ほどのように広く周知徹底が必要だと思いますが、これについてどのようにお考えか、取り組んでいくか、お聞かせいただきたいと思います。

中山大臣政務官 ただいまの問題意識は、そのとおりだというふうに思います。できる限り多くの研究者が共同で研究をするということと、文殊の知恵を発揮して新しいものを生み出していく、イノベーションをつくっていく、こういうことが共同開発の目的だというふうに思うんですね。

 ですから、共同開発をするに当たっては、お互いに共同でやる前にいろいろな申し合わせをちゃんと文書で取り交わすことを周知徹底しようということで、特許庁を初め、経済産業省もそういうようなパンフレットをお配りをして、約二万件、都道府県の窓口であるとかいろいろなところから周知徹底をして、必ず契約を交わしなさいよとか、文書でやりなさいよとか、いろいろな指導をしているところでございます。

望月委員 この辺の周知徹底を、漏れなく、そういった事故の起こる前にしていただきたい、このように要望しておきます。

 次に、今中小企業の話が出ましたけれども、我が国の中小企業は、よくまくら言葉で言われるのは、中小企業が四百二十万社ある、そして、我が国の企業の九九%、大企業というのは一%だと。しかし、我が国がいかに世界に冠たる工業立国というか、そういう国になっているかというのは、その中小企業のレベルが非常に高い、ほかの国と違うんだ、そういう自負を持っているわけでございまして、我が国の産業の中心的な存在である、これはどなたも御存じのことだと思いますけれども、こういった中小企業の知的財産を、事業の発展を支援していくのが、これは大切なことである。

 しかしながら、現状は、これだけたくさんの企業が、さまざまな研究をしていても、特許の出願件数というのは全体の一割にも満たないくらいだと言われております。

 では、一体そこにどんな問題があるのかということであります。

 今までのことをいろいろ考えてみると、資金面で中小企業を支援するための特許料の減免制度は評価をさせていただいておりますけれども、二〇〇八年ごろから、先ほど大臣がおっしゃったように、景気低迷で出願件数が一気に激減している。この状況から早く脱出しなくてはならないということでありますけれども、思い起こせば平成十六年、このとき、我々も反省しなきゃいけないと思います、特許のさまざまな、世界で一番早くというような改正、それで、資金面でいろいろな問題があったものですから、これはたしか倍になったんです、倍の状況になって、このときから中小企業の出願が非常に少なくなっているというのが現状でございます。

 私たちの反省点も加えて、せっかくこういうような改正でございます。今回は、たしか二五%ぐらい低くする、これはまさにやらないよりやっていただいて非常にありがたかったなとは思いますけれども、平成十六年以前に比べると倍になっている。たしか、一件八万円が十六万円だとか十万円が二十万円。物によって違うのかどうか、我々もちょっと内容がわかりませんけれども。そういう状況になってきているということを考えると、そのときに、要するに出願件数をふやすということになるのなら、さっき言ったようにくだらないのはやめてくださいね、しかし、汗をかいて、どんな小さいことでも出す。それから、出すのには金がかかる。十万円が二十万円では高過ぎてとても出せないといえば、件数は減るに決まっております。

 今我々が心配するのは、特許特別会計に一千億ぐらいの余剰金があるじゃないかと。よく我々が聞くと、これは預かり金で必ず戻るんですと言うんだけれども、では、なぜ今回二五%減らすことができるんだ、もとに戻れば五〇%減らすことができるんじゃないか。そういうようなことで我々はこの二五%の根拠というものがよくわからないんですけれども、それだったら五〇%にして、もとに戻すということですから、もとよりも安くするということではないんですから、これぐらいはできないんだろうかということをお聞きしたいと思います。

中山大臣政務官 御存じのように、特別会計の性質上、収支相償といいますか、全体を見て何年後にこのくらいで特別会計が維持できるとか、いろいろなことを考えたわけでございまして、審査料金と特許料、過去は審査料金をずっと下げて特許料を上げるとか、またはいろいろなことをやりながら、私たちもどんどん特許を取ってもらおうといういろいろな誘導作業もやってきたわけで、弁理士会の皆さんともよくお話をしたり、弁理士法改正のときも今先生の言ったような御指摘を随分いただきまして、中小企業に少しでも特許を取ってもらってイノベーションを盛んにしてもらおう、こういうことも過去に随分議論をしてきたことでございます。

 ただ、特別会計という性質上、何とかこれが維持されるように、できる限り無駄を省いて、申請料とか特許料、なるべくそういうところを安くしようと思って……。仕分けなんかも私たちはされました、例えば発明の大切さとかそういう研究を、これは全部文科省の方にやってもらおうと。そういう特別会計の無駄を省きつつも、できる限り審査請求や何かを少しでも安くし、特許料も安くしていこうという、我々の考え方は基本的には変わっておりません。

 二五%がとりあえず目いっぱいでございますが、できる限り特許を取りやすい方向にこれからも考えていきたいと思っております。

望月委員 政務官から、二五%という数字については、我々も、もちろん評価をしますけれども、そういったことについてはより研究をしていただきたいし、一日も早くもとに戻してもらうことを念願させていただきたい、このように思います。

 次に、我が国は、ヨーロッパ型といいますか、先出願主義、先願主義というものをとっております。アメリカはまさに先発明主義というようなことでございまして、特許権を取得するためには特許が公表される前に出願しなくてはいけないというのが原則でありますけれども、これは例外規定で、例えば特許庁長官の指定する学会での発表等の方法以外で公表されてしまうと、特許をとれなくなってしまうことになっています。

 しかし、研究者というのは、一生をかけてというか、自分の時間と労力、それからまた周りの人を犠牲にしてというか、たくさんの人たちで研究してきた、やっとつくり上げたもの、すぐにでも世間に向かって発表したい、こういうようなことで、今さまざまな方法がございますけれども、発表してしまう。発表してしまったら特許がとれないというような状況は、非常に何かしら研究者のニーズに合っていない状況になってしまうわけであります。

 公表者が発表した場合であれば、方法を問わずにこれが保護されるというようなことが今回ありますから、こういうことについては発明の権利化の促進に資する、私はこのように思っておりますが、公表の方法を問わずに保護されるということになると、一体公表の基準がどこにあるのか、何かしらこの法案の内容を見るとよくわからない面があるわけでございますけれども、みずから公表したという範囲、これは明確でなければならないと思いますけれども、この点についてどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 今御質問いただきましたように、今回の改正によりまして、みずから公表した場合は特例として認めよう、法律的に言えば、「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して」という形で書かせていただいております。

 それは例えば具体的にどういうことかという御質問でございましたけれども、今後新たに例外に扱われるものといたしましては、例えばこれまでであれば指定された学会でなければいけなかったのが、特許庁長官の指定のない学会での発表は大丈夫ですよとか、テレビ、ラジオで公開することは大丈夫ですよとか、具体的な例が考えられるわけでございます。

 その範囲は一体どこなのか、どのような場合にできるのかということをきちんと示すことが大事だという先生の御指摘は、まことにそのとおりでございます。そういうことができませんと、本制度の円滑な活用もできないということになろうかと思います。

 したがいまして、特許庁といたしましては、今準備をしてございますけれども、この法律をお通しいただければ、どのような行為が新制度の対象になるのか、可能な限り具体的かつわかりやすいガイドラインのようなものをつくりまして広く世の中にお示しをし、よくおわかりいただくように努めてまいる所存でございます。

望月委員 今さまざまな媒体があって、そういったものを通して発明、発見が広く世の中に一日も早く知られることがこの世の中のためになる、まさに日本が国内だけではなくて世界的にも信頼される国になるということで、こういったものをしっかりと認めていただけるような仕組みをつくっていただきたい、このように思います。

 次に、今回震災がございました、この大震災で、各企業は、さまざまな通常の業務ができない、それが復旧できない困難な状況にあると思います。この震災で被害を受けた企業は期限に定めのある特許料の納付手続をすることが困難だ、こういうことがありますので、当分の間この期限を延長するべきである、このように私は思いますし、加えて、情報の入手が難しくなっている被災地の企業に、情報をしっかりと届ける、こういったことが大切だと思います。このお問い合わせや相談に乗って、しかるべき措置をとる十分な配慮が政府としてしっかりとしているかどうか。

 それからまた、せっかく復旧し、新しい町をつくっていくんだ、都市をつくっていくんだということが盛んに言われておりますけれども、まさにこの知財というものは、そういう意味では我が国特有の、特別な、そしてまた大切なものでありますので、特区というのか、どういう形にするかわかりませんけれども、被災地の新産業の創成に係る企業開発に融資することで新産業の創造、それから新技術の創出につなげていく、こういうことが非常に大切なことではないかな、このように思うわけでございますが、被害を受けた企業ではどのような問題が生じているのか、それに対してさまざまな手だて、それからまた新しい時代をつくる、そういう意味では大臣はこういうことは得意ではないかなと思いますけれども、それについてお答えをいただきたいと思います。

    〔委員長退席、楠田委員長代理着席〕

海江田国務大臣 望月委員御指摘のとおり、特許法では、審査請求、特許料の納付といった権利の取得、維持に関しては期限を設けております。ですから、今回の震災によりまして、被災地の多くの企業がこの期限を守ることが困難になっております。こうした事情を勘案しまして、特許庁では、震災後直ちにこの期限を本年八月末までという延長の措置をとりました。それから、海外については、九十カ国・地域の知財庁に対して、料金納付の手続期間の延期等の特例措置を要請いたしました。既にアメリカ、ヨーロッパ、韓国、中国など、四十五カ国・地域がこの特例措置をとるということを発表してございます。

 それからもう一つ、こうした特例措置あるいは延期の措置があるということを周知徹底させなければいけませんから、そのための専用相談窓口を開設し、特に被災地域各県の知財総合支援窓口とも連携をしながら、被災地の中小企業等に対してこうした救済措置があるということをお知らせしております。五月の二十六日現在で、この専用窓口への相談件数が二百六件ございます。それから、こうした救済措置があるというお知らせを約三千通発送してございます。

 いずれにしましても、今委員からも御指摘がありましたけれども、被災地の復興に向けて新産業の創造や新技術の創出を促進していくためには、知財の活用が重要であるという認識を持っておりますので、今後とも、現地のニーズを十分把握した上で、知財面からもこの地域の復興に最大限の支援をしていきたい、そのように思っております。

望月委員 九十カ国ですか、たくさんの国々で我が国の人たちが特許をとっている。中小企業はそういうノウハウが非常に少ないわけでありますから、ぜひそういった面でしっかりやっていただきたいなというふうに思います。

 次に、件数が多いものですから、大変申しわけないんですが早口でお願いしたいと思いますが、ダブルトラック問題。

 これは、実は現行制度では、従来、特許の有効性は特許庁で争うということになっておりましたが、これが、平成十二年四月キルビーの最高裁判決、あるいは平成十七年四月の特許法第百四条の三の規定によって、侵害訴訟において特許の有効性の判断を争うことが一方で可能となったわけでございます。

 これは、もともとは紛争を早く解決するための改正であったはずでありますが、これによって侵害訴訟の被告に特許無効とするチャンスを実は二重に与えてしまっているということで、例えば特許権者にかえって一方的に不利な状況になっているのではないかというようなことが最近言われております。もちろん、これは試行錯誤で、最初、さまざまな問題で、特許についてはまだまだ新しい法律でございますので、こういったものは改正がなされてきているけれども、そこに不都合が生じているというのが現在でございます。

 現行制度では、企業や個人が裁判所に特許権侵害を提訴しても、訴えられた側は、まず第一に特許権の無効審判を請求してこれに対抗することに加えて、特許法第百四条の三の規定により侵害訴訟において無効を主張することができる、今最初に言ったことでございますけれども。裁判所での訴訟と特許庁の無効審判の双方で特許の有効性が一つのことについて争われる、これがダブルトラックなんですけれども、まさにダブルトラックが発生して、裁判と審決の判断が対立してしまうんですね。

 現実に、特許権侵害訴訟においては権利者が敗訴してしまうというようなことがございます。特許庁に対してしっかりとしたものをつくってもらいたい、登録をして、それによってしっかりと守られていくんだというものが、裁判によって負けてしまう。こういうような例があると、一体何を信じていいのか。特許庁を信じることができない、国を信じることができない、裁判所の方が強い権限を持ってしまうというようなことで、今現場としては非常に混乱をしているというような状況が多々言われております。

 そういう意味では、裁判所でこういうような判決が生まれてきたということでございます。本来の特許庁に、しっかりと申請して審決をいただければこれでもういいんだというような強いものを国としてとっていかなきゃいけないのに、裁判の方に丸投げするような形にだんだんなっていくとなると、日本の特許庁は信頼性がなくなってしまう状況にならないかどうか、これを我々は非常に心配しているわけでございますが、これはどのようにお考えでしょうか。

    〔楠田委員長代理退席、委員長着席〕

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘いただきましたように、特許法第百四条の三ができましたことによりまして、いわゆるダブルトラックという問題が指摘をされております。

 このダブルトラックにつきましては、今御質問いただきましたように、いろいろな問題が発生しているのではないかというような御意見も寄せられております。したがいまして、今般の法改正の検討を行いました産業構造審議会におきましても、この問題をよく御議論いただきました。

 いろいろな議論がなされたわけでございますけれども、大きく言いますと二つ、侵害訴訟の判決確定後に無効審判が確定した場合であっても確定判決が再審により覆されないというような制度的な改善が必要なのではなかろうか、あるいは、無効審判のさらなる審理の迅速化等進行調整の運用の改善をするということも必要ではなかろうか、現状から比べるとそういったことが必要だということを御指摘いただいた上で、そういうことが解決をすれば、現行どおり両ルートの利用を許容するべきではなかろうかというのが今回の審議会の御答申でございました。

 したがいまして、今回、私どもは、御指摘をいただきましたもののうち、再審を制限するというような制度的な改正の案を法律案の形でお示ししたところでございます。また、無効審判の審理を早期に行って、その判断が侵害訴訟での裁判所の判断の参考にするというようなことも運用改善でございますので、努力をしていく必要があるのだろうと思っております。

 今回、この法律をお通しいただきました場合には、こうした再審制限導入後の運用というのがどういうことになっているのか、あるいは、私どもを含めて行わなければいけない運用改善というのがどのような効果を上げているのだろうか、こういったことも真摯に状況を把握いたしながら、指摘されている種々の問題について、私ども、引き続きよく注視をしていく必要がある、こういうふうに考えておる次第でございます。

望月委員 ちょっと話を変えた方面から見て、これは特許庁の信頼というような形で今言ったんですけれども、例えば、昨年、特許庁のシステムをめぐる贈賄事件がございました、大変残念なことでございますが。特許庁及びシステムベンダーの双方から逮捕者が出た、こんなようなところでございます。八月二十日に、外部有識者により構成される委員会によって特許庁情報システムに関する調査報告が発表され、改善措置が答申されたわけでございます。これについてちょっとお伺いしたいと思います。

 本事件から見られるように、特定の業者との間で長期取引が継続し、古くからいる業者のノウハウに依存したシステム開発や保守、運用が行われると、新規の業者の参入が難しくなり、委託者としてプロジェクト管理能力が育たなかったり、そういうような問題が生じるというのはどんな場合においても言えることでありますが、一般競争入札によって新規事業者の参入を実現した、今回はそういったことで理解はしておりますが、現実には、既に二〇〇六年の開発開始から過去二度の稼働延期を行っている状況にある。すぐにでもどんどんやっていかなきゃならないのに二度改善をしている、このような事態に至った原因をどのように認識しているのか、お聞きしたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、特許庁の新システムは、二〇〇六年から開発に着手をいたしましたけれども、これまで二度にわたりまして計画の変更を行った上で、稼働を目指して進んでおるところでございます。

 御指摘がございました第三者委員会においても御指摘をいただいておりますけれども、こうした稼働の延期を行ったような原因といたしましては、そもそもこのシステムが大規模なシステムであって難しいということもございますけれども、受注者が特許庁の業務に精通していなかったこと、あるいは、特許庁側も組織的なコミットが不足していた、そういう問題があるのだという御指摘を既にいただいております。

 私ども、今後のシステム開発におきましては、こうした原因によるさらなる遅延を繰り返すことがないように、第三者委員会による御指摘を十分に踏まえつつ、しっかり取り組んでまいる所存でございます。

望月委員 知的財産立国を標榜する我が国が、さまざまなところから見て恥ずかしくないようなものを構築していかなくてはならない。我々も大いなる反省の上に立って言っていることでございまして、今、政府の皆さんに、そういったことを踏まえて、新しいものを構築していく段階で、ここは大いにしっかりとした視点を持っていただきたいな、このように思うわけでございますが、日進月歩で進むIT業界で五年も前に設計したものがまだ稼働していない、こういうことだったら、オール・ジャパンでこういったものをしっかりやるべきだ、国の威信をかけてやるべきだと思いますが、そのことについて。

 それからまた、こういうような災害があっても、まだしっかりと稼働していないということになると、そういった災害に強いようなシステム、これは、今の政府で二年近くたつわけでございますので、IT政策に対する知見や、やる気やガバナンスが、我々の反省の上に立ってもそうですが、今回もそういった意味では若干欠如しているのではないかなということを心配しております。

 これについて、特許庁システムの完成に向けて今後どのような指針を設けて取り組んでいくのか、大臣、そこら辺の気持ちをしっかりと打ち出していただきたいと思います。

海江田国務大臣 望月委員にお答えをいたします。

 私も、せんだって、これは三月十一日以前でございますが、経産大臣に就任をいたしまして特許庁を視察に行ってまいりました。その中で、今委員からお話のありました過去の問題、そしてそこから立ち直るべく新たなシステムの開発というお話も聞きまして、これは特許制度の基本的なインフラでございますので、本当に一刻も早く、しかも、公正、透明にやるようにということを指示いたしました。しっかりとやっていきたいと思っております。

望月委員 大臣の強い気持ちを聞いて若干安心しましたが、特許庁はこういうことでもない限りは国会において話題が出てくることがなかなかございません。特許庁の職員を見ると、非常に勉強していて、我々がびっくりするぐらいにレベルが高い人たちですから、そういう人たちがしっかりと働けるような状況を、政府としてそういう姿勢を打ち出していただきたいなと思います。

 それから、弁理士のあり方。

 まさに我が国の企業は、今後、労働力の低下、国内市場の縮小という大きな課題に向かっていかなくてはならない中で、中小企業の知財活動に深く関与している弁理士が知的戦略に対して高度な助言を行うような形になってきているわけでございます。

 我々も司法制度改革をやって、隣接法律専門職種という、司法書士とか税理士とか、さまざまな皆さんにさまざまな権限を与え、そして勉強していただいて、例えば弁護士だとか公認会計士が総合病院とすれば、町のお医者さん的な立場でしっかりと中小企業の人たちや一般の市民に、法律にいつでもどこでもだれでもが接することができる、そういうような形の中であるわけでございます。そういう中で、弁理士の皆さんというものは、そういった意味では中小企業の相談相手としては大変大切でございます。

 ところが、一時期からどんどん弁理士の数がふえてきて、何万人体制というような、たくさん数さえあればいいというような、余りにも最初は少なかったものですから、そういう形になってきた。ところが、どうも内容がいま一つ、しっかりできる人もいればそうでない人もいるというようなことで、何か粗製乱造というような形になってしまって、結局はこの資格が、場合によってはそのレベルが非常に低くなってきてしまっているのではないか、そういう心配が弁理士の中からあるわけでございます。

 そういう意味でいきますと、この数が、決して多ければいいというわけではありません。やはり国民の役に立つような人材をしっかり出すためのものになっているかどうかという問題。何しろ数が多くなってくると、ただ安ければいい、能力はともかくとしても安ければいい、そうすれば、中小企業やいろいろな人たちはわからないから安い方に行った、ところが、全然役に立たない、失敗してしまった。こういうことがないように、我々は資格を持った皆さんに対してもそういうようなことを言わなきゃならないし、そういったものをしっかりと位置づける。

 この弁理士のあり方について、大臣の考え方をお伺いしたいと思います。

海江田国務大臣 これも、今委員からの御指摘がございましたけれども、私も委員と同じような考え方を持っております。

 特に、弁理士の方々には、権利の取得だけでなく、まさに知財戦略と申しますか、そうした考え方をしっかり持っていただきたいと思いますし、先ほどこれも委員からお話ありました、海外へ中小企業が進出をしていく際の後押しという役割もしなければいけないわけでございますから、海外における知財の保護でありますとか活用に関する知見を深める、そうした不断の勉強などもしていただきたいということでございます。

 そして、現在、弁理士制度のあり方につきましては、日本弁理士会との間で意見交換を行っているところでございますので、特に、今御指摘のありました、企業の国際展開を支える人材として活躍をしていただこうということを念頭に置きまして、日本弁理士会との間の意見交換から実のある結論を引き出していきたい、そのように思っております。

望月委員 時間が少なくなりましたので、不正競争防止法の方をちょっとだけさわりたいと思います。

 人材や財政力には制約がある中小企業にとっては、特許権の取得をやみくもに目指すのではなくて、みずからの経営にとって核となる技術、ノウハウについて営業秘密として管理をする、他社との差別化を図る、営業秘密として保護し、オンリーワンの技術を長期にわたって守り、周辺特許をとられてしまうことを回避する、これが大切なことでございます。

 これは二年前に衆議院の附帯決議から出された宿題でございますので、今回の法改正は、さまざまそういった意味では評価をしていきたいな、このように思いますが、これは中小企業にとってはかけがえのない技術、ノウハウが営業秘密として保護されるためには、他社に開示する際にもきちんと契約上の縛りをかけたりする。先ほどの特許法とも同じでございますが、適切に管理するということが大変重要なことだと思いますが、秘密管理の手法などをわかりやすく周知していくことについてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

中山大臣政務官 今、お話のとおり、本当に、中小企業がいろいろ開発をする、発明をする、これは会社にとって非常に大切な秘密だというふうに思うんです。

 そういう意味でも、オンリーワンの技術が、いろいろな方と共有したり製品として出したときに、その秘密が裁判で訴えたときに表に出てしまったり、いろいろあるわけですね。それぞれの条件を、営業秘密を守り、管理しようということで、都道府県の各窓口に二万部ほどパンフレットをお渡しして、こうやって企業秘密を守っていくんだよということを、今案内を出しております。

 中小企業にとって、本当に自分のところの製品は、商売にとって一番かけがえのないものですから、そのノウハウをとられてしまったらもう商売できないということにもつながりますので、その辺はしっかり我々も営業秘密を守るためのパンフレットをつくりまして、これを読んでいただけばすべてわかるというような形を今とっております。

 それから、本当は近くの弁理士さんとかそういう方にもしっかり相談をして、本当に自分たちの持っている営業秘密を守っていく、それが自分のこれからの営業に非常に重要であるという認識をさらに深めていただきたいというふうに思っております。

望月委員 時間がございませんので、最後の質問になると思います。

 今回、アクセスコントロール回避装置等に対する規制強化ということがございますが、これはまさにソフトパワーといいますか、クール・ジャパンと呼ばれて、我が国のアニメやゲームといったコンテンツは世界で高く評価されているわけでございまして、次世代の我が国経済を担う極めて重要な戦略である、このように思っております。こういった海賊版の問題に対しては、一層コンテンツ産業の存立基盤を保護するというようなことで評価するところでありますが、この刑事罰についてであります。

 この刑事罰、今まで民事罰だけであったのが、今回刑事罰を入れる。これも私たちも反省しなきゃいけないんですけれども、さまざまなそのときの時代的な背景があって刑事罰は導入しなかった。ちなみに、各国のアクセスコントロールの回避に関する規律における刑事罰導入時期については、アメリカは一九九八年、韓国は二〇〇二年、イギリス、ドイツは二〇〇三年、そういうような状況で、早いうちから刑事罰が入っているというようなことでございまして、導入する必要というものと、遅きに失したのかどうなのか、それからまた、この罰則の基準は適当であるのか、どうして我が国がここへ来てこの刑事罰を導入されたのかということでございます。

田中委員長 望月君、時間が来ていますから。

望月委員 わかりました。

 それと、刑事罰。提供した方と提供された方があるわけでございますけれども、使う方がいるものだから、どうしてもつくってしまうというようなことがございます。これは、例えば使う方の人間にも刑事罰を世界に先駆けて導入するべきではないかというようなことを考えるわけでございますが、これについてどう思いますか。最後にこの質問をさせていただきます。

海江田国務大臣 時間も少なくなって、たくさんの御質問をいただきましたが、遅きに失したかどうかということは意見の分かれるところでありますが、私どもはできるだけ早くというふうに思っております。

 種々回避装置が出てまいりましたので、やはりそれに対応するためにはどうしても刑事罰も必要ではないだろうかということでございます。特に、コンピューターを利用しましたネットショップやネットオークションということがございますので、これは民事措置だけでは限界があるということでございます。

 あと、もし必要があれば答弁させますが、委員の問題意識というのは私どもも共有しておりますので、今後、またぜひ貴重な御意見をお聞かせいただければと思っております。

田中委員長 以上で望月君の質疑は終了いたしました。

 次に、平井たくや君。

平井委員 自由民主党の平井たくやでございます。

 田中委員長におかれましては、ごぶさたしております。きょうは、どうぞよろしくお願いをいたしたいと思います。

 私は、先週の金曜日には内閣委員会、火曜日には総務委員会、そして金曜日は経済産業委員会というように、質問の渡り鳥みたいにやっておりますが、その理由があるんですね。

 つまり、復興ということを考えたら、本気で省庁の垣根を越えなきゃだめだ。しかし、幾ら政治家がそういうふうに言っても、役所の現場の感覚というのは、そんなある日突然変わるようなものじゃないんですよ。ですから、今回、この大震災後の日本の新しい政策に関していくと、内閣官房とか内閣府とか経産省とか総務省なんということを言っていては、全然おぼつかないという問題意識と、この法案に関しても質問させていただきますが、やはり大臣が、ミッションとして重要なのはエネルギーの問題ですよ。ここに関して、菅さんもサミットに行って、四つの方針、新しいポートフォリオになるのか、いろいろ言われておりますが、ここはやはり海江田大臣に頑張ってもらわなきゃいけない分野なので、エールを送りつつ、いろいろと私なりのアドバイスも後ほどさせていただきたいと思っております。

 それで、この知財関連の二法の改正に関しては、やはり趣旨を確認することが一番重要だと思います。特に、最近、世の中の変化が激しい。今、日本が震災対策や原発対応に取り組んでいる間にも、世の中は待ったなしですよ。もうどんどん変化をしている。そういった中で、日本が世界から取り残されずに競争力を持った国であり続けるためには、どうしなきゃいけないかというところが一番のポイントだと思います。

 この改正に関して言えば、今まで毎年のように改正されていましたけれども、今回の改正は平成二十年の改正以来三年ぶりということになります。その間だけでも特許を取り巻く環境は大きく変わったと思います、この三年で。

 どういうことが変わったかというと、一つの特許で一つの製品をつくり、ビジネスを展開するということが一般的でなくなってきたんですね。他社の技術を活用するオープンイノベーション。また、企業の合従連衡も進展していますし、自動車のように燃料電池から電子部品、素材に至るまで業種を超えた協業というものも展開されています。

 また、大きく変わった点は、知財制度の利用者である企業が、発明を世の中にオープンにするかわりに特許権を独占して取得するということと、発明を秘匿して営業秘密としてブラックボックス化してそれを守るということを、ベストミックスさせていかなきゃいけないというのが世界の共通の競争ルールではないかというふうに思います。

 このような、知財、知的財産をめぐる大きな環境変化をお認めの上で、今回の知財関連二法の改正案がこれから我が国の競争力の向上につながると思いますが、その改正の趣旨について大臣の基本的なお考えをお教えいただきたいと思います。

海江田国務大臣 平井委員にお答えをいたします。

 実は、今私が御答弁をしようと思っていたことがほとんど質問の中で盛り込まれましたので、大変私も、困ってはいません、改めてよく御理解をいただいているんだなという認識を持ちました。

 まさに、片一方でオープン化ということが必要でございますが、その反面、企業が汗水垂らして開発をしました重要な知財についての権利もしっかり守る、このバランスが大切だと思っております。

平井委員 何か答弁を先取りするような質問で申しわけないと思いますが、思いが一緒ということであれば、私は、それは結構なことだと思います。

 次は、国際的な特許戦略についてちょっとお聞きしたいんですが。

 中国は成長しています。GDPの規模は昨年我が国を超えたというふうに言われていますし、この数年の間に世界的な企業となった企業がたくさんありますよね。

 こうした中で、我が国が、世界市場の中で我が国の企業も頑張っていますが、海外市場で競争するにはその国で特許を取らなきゃいかぬということになります。このような企業活動を支援するため、今回の法案では、国際出願手数料、我が国企業が海外で出願するための手数料の減免措置が講じられた、これは大変評価したいと思います。

 しかし、我が国企業の国際的な活動にとってより重要なことは、海外の特許制度を日本の制度に倣った使いやすいものにしていくことではないかと思います。

 現時点では、特許の世界では日本の出願特許の件数はまだまだ多いんですよ。主導的な立場と言えるかもわかりません。しかし、中国等が急激に特許出願数がふえているんです。報道によれば、昨年我が国を追い抜いたとも言われていますが、そういう意味で日本が今後どうやって主導的な立場をとっていくかということが問題なんですが、特許の制度のみならず、その運用も含めて、世界的な議論の中で主導的な立場をとっていくためには何が必要だとお考えですか。

海江田国務大臣 委員御指摘のように、最近の中国の特許の出願の件数というのは本当に目をみはるものがありまして、まさにそれが中国の経済的な成長の一つのあかしになっているという状況がございます。他方、私どもの特許の出願の件数がここ十年ぐらい落ち込んでいるというのは、先ほど来議論になったところでございます。

 委員が御指摘をしました、制度面だけじゃなくて運用面での共通の認識、運用面では日本が特に中国との関係において特許制度、知財の考え方などでは先を行っていたわけでありますので、そういう面では、運用面の考え方について日本の考え方を広く世界に対してアピールしていかなければいけないかなというふうに思っております。

 その点でいいますと、間もなくでございますけれども、六月に東京で、日米欧中韓ですか、五大特許庁長官会合が開催をされる予定でございます。私も時間が許すならこの会合に出ていきまして、しっかりと日本の立場、それから、きょう御議論いただいておりますような法改正も踏まえた私どもの考え方を主張してまいりたい、こう考えております。

平井委員 また、特に新興国を中心に特許の海外出願が急増する中、中国語、韓国語でしか発行されない特許文献の比重が高まっていますよね。我が国の企業が海外展開を進めるに当たっては、権利侵害や訴訟リスクを低減するために、こうした特許文献について十分な調査を行って、安定して質の高い特許権を得ていかなきゃいかぬ、これは当然のことだと思います。また、進出先において我が国の企業が特許を取得するに当たって、中国語等の誤訳により内容が不明確となったり、権利の安定性が損なわれるような事例があるとも聞いています。

 こうした現状を踏まえて、特許文献に使用されるような技術用語や専門用語を的確に翻訳して、効率的に文献が検索できるような環境整備は急がなきゃいけないんですが、それは先ほど望月委員が質問していたシステムの基盤の方で、もたもたしていたら追いつかないと思うんですよ。そういう意味で、この環境整備についてどのようにお考えでしょうか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたように、新興国の特許出願が非常にふえてまいります。これまでは日本が非常に多く出願をしておりましたので、日本語あるいは英語で文献を読めば世界の特許情報のかなりの部分がわかるということがあったわけでございますけれども、今後は、新興国、とりわけ中国語の文献を見ないと世の中の流れもわからないというようなことになっているわけでございます。

 また、御指摘ございましたように、そういう情報を見るだけではなくて、中国で出願をするというときに、きちんと自分の権利が確保できるような出願書類が書けるかどうかというようなことも実際に大きな問題になっておりまして、実は、思ったとおりの翻訳ができずに、取れるはずの権利が取れなかったというような事案もお聞きをしてございます。

 その意味で、産業構造審議会知的財産政策部会におきまして、国際化のあり方をどうすべきかということにつき御議論をいただいておりますけれども、その際には、そうした資料、特許文献等を収集し、閲覧できるような、あるいは検索できるような仕組みが必要になってまいります。このことは、特許庁のシステムをつくる際に必ずしも想定をしていなかった新しい任務が発生をしてきておるということでございますので、こうした問題を含めてどのようなサービスの提供をしていくべきか早急に結論を得る必要があるということで、現在検討を進めているところでございます。

平井委員 ですから、もたもたしているいとまはないということで、まさにこれから長官の思い切ったリーダーシップ、長官ですから、頑張っていただかなきゃいかぬなというふうに思います。

 我が国のものづくり中小企業は世界に冠たる技術を持っています。産業競争力を支える重要な存在であります。今回の震災で、大企業の生産活動に不可欠な部品を納める中小企業が被災しました。多くの大企業の生産活動に大きな影響が出ているのを見ても、こうした中小企業のものづくりというのは本当に重要です。

 他方、中小企業は、人材、資金などの経営資源に乏しい、知財を十分に活用して事業を行うことが必ずしもできていないという実態がある。我が国のものづくりの中小企業がその技術を生かして国内外で事業を発展させていくためには、中小企業の知財活動を強力に支援していかなきゃいけないというのは同じ思いだと思います。

 今回、特許料を支払う、資力の乏しい中小企業に対する特許料の減免制度を拡充したということは評価できますが、それだけではなくて、今後、中小企業の知財活動を強力に支援していくためにはどのような対策を講じていくおつもりでしょうか。

中山大臣政務官 御指摘のとおり、実は東北のサプライチェーンはほとんどが中小企業でございまして、これが世界の各大企業に二十一兆円ぐらいの影響を与えたというふうに日経新聞の一面に出ておりまして、中小企業の存在が大きいことは間違いございません。

 そういう面では、先ほど御質問の中に資金がないとか、または調査能力がないということもあると思うんですね、ですから都道府県で総合窓口をつくって、できる限り相談を受けよう、こういうような方法の方がいいのではないかというふうに今考えております。ですから、本当に、中小企業の抱えている悩みを、まずは相談を受ける、こういうことに徹してやっていこうということを考えているわけでございまして、知財総合支援窓口を四十七都道府県に設置しまして、そういう相談を受けるということにいたしております。そういう相談の中からいろいろなことが生まれてくるというふうに私は確信をいたしております。

平井委員 そのようにぜひ中小企業支援をさらに一層強化していただきたいと思います。

 次に、営業秘密関連について少しお聞きをしたいと思います。

 平成二十一年においてなされた営業秘密侵害罪の適用範囲の拡大は、発注元企業による中小企業からのノウハウの取り上げというか、分捕っちゃうというような事態を改善することも改正の目的の一つでありました。

 ある企業が業務提携を前提として図面や試作品を大企業に提供したら、大手企業が勝手に複製を作製し、自社の責任として勝手に製品化してしまうというようなことがあるんですね。このような事態を放置してしまったら、日本のものづくりの基盤というものは揺らいでしまうと思います。中小企業にとっては、時としてみずからのかけがえのない技術やノウハウが生命線であり、その意味でこれらを保護していくということは重要なことだと思います。

 しかしながら、一方で、今回の改正のみで発注元企業による下請いじめのような行為はなくなるのかという心配もあるんですね。その下請いじめをなくすためには包括的な対策を講じていく必要があると思うんですが、この下請いじめ対策というか、中小企業を守るという意味で、その取り組み状況についてお聞きしたいと思います。

中山大臣政務官 下請代金支払遅延防止法などによって、下請いじめがないように今までも厳格に取り締まってまいりましたし、下請の方も、駆け込み寺をつくって、いろいろなことがないように、特に金型等を勝手に大企業が使ってしまってというようなこともよくその駆け込み寺ではあるようでございますし、我々が本当にものづくりの中小企業を守るためには、立入検査などもして、とんでもないことをやっているんじゃないかということをかなり厳しくやっていこう、このように考えております。

 ですから、立入検査によって、そういうことがあったときには、すぐに、下請いじめが行われないように私たちは徹底してやっていきたい、このように考えているわけでございます。

平井委員 中山政務官は、ずっと中小企業の味方で体を張って頑張っておられる、まさに適任だと思いますよ。徹底的にやっていただきたいなというふうに思います。

 次に、アクセスコントロール関連でお聞きをしたいと思います。

 現下の厳しい状況にあっても、今後、我が国の新たな価値創造を行っていくということに手を緩めてはならない。クール・ジャパンと呼ばれるソフトパワーを有するコンテンツ産業は、我が国産業競争力の一つであります。渋谷や原宿の若者のファッション、秋葉原の高機能家電や漫画やアニメ、プロ好みのつめ切りや化粧筆。その意味で、その代表である、日本人の英知の結集ともいうべきコンテンツ産業の基盤を保護するという意味で、今回の提案は非常に評価できるものがあります。しかし、まずもって、経済産業省のコンテンツ産業育成のための全体像がどうなっているのか、ここがいま一つ見えないところでもあるんですね。

 現在のコンテンツ産業の現状や今後の見通し及びコンテンツ産業の支援策、育成策についてお聞きしたいと思います。

海江田国務大臣 まず、私どもがコンテンツ産業の育成に全力を挙げているということは、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 二〇〇九年における市場規模は十二・一兆円でございます。これは米国に次いで世界二位でございます。ただ、平井委員が若干御懸念を抱いているように、近年、コンテンツ産業の市場規模は、やや横ばいになっているという事実は率直に認めなければいけないということでございます。

 経産省としましては、二〇二〇年までに国内外のこの市場規模を二十兆円にしようという目標を定めております。そこへ向けて、成長余地の大きい海外市場での収益拡大を図る観点から、国際見本市等の開催や、特に中国に対する規制緩和の働きかけを行っております。それから、国内新規市場拡大のための書籍等のデジタル化に向けた環境整備、人材育成のための若手クリエーターへの発表の場の提供及びプロデューサー人材の海外留学支援などを実施しているところでございます。

平井委員 マジコン、御存じですよね、いわゆるマジコンなど、コピーガードをキャンセルすることで違法複製ソフトを動作させる機器を規制するというものですが、一方、ユーザー自身がソフトウエアを自主制作することは、創作意欲の高揚やプログラム技術の向上につながるものであり、そういう土壌が最終的にはクール・ジャパンにもつながるところでもあるので、それを萎縮させてはならぬというのが私の思いです。

 このような正当なソフトウエアを実行するための真っ当な機器にまで規制が及ぶことは、まずいなと思うんですよ。ですから、それは、ゲーム機器メーカーによるプラットフォームの囲い込みというものを私は意識しなければならないと思います。したがって、今回の不正競争防止法の改正は、あくまで技術的保護手段の回避を規制するものであって、プラットフォームの囲い込みを保護するものではありませんね。そのことを確認させてください。

海江田国務大臣 そのとおりでございます。

平井委員 それを聞いて安心しました。ここは、日本の、創意工夫、常に頑張っている皆様方の懸念でありましたので、確認をさせていただきました。

 あと最後に、模倣品対策についてお聞きしたいと思います。

 我が国の企業は、多額の投資を行って新たな技術ブランドを生み出し、海外でもビジネスをやっています。我が国企業にとって、今後も市場が拡大していくアジア諸国などの新興国の成長を取り込んでいくことは不可欠であり、こうした海外ビジネスは非常に重要でもあります。

 しかし、海外では、こうした我が国企業の知的財産が模倣品の横行によって大変な危機にさらされています。これは、あるアンケート調査によれば、日本企業の模倣被害率は二五%にも及んでいると聞いています。被害地域については、中国での被害社率が最も高くて、次いで韓国、台湾、タイなどが続いており、いわばアジア地域での被害が深刻だということだと思います。

 このように、経済のグローバル化に伴い増加する模倣品の製造、流通に関して早急な対応が求められていますが、これまで経済産業省、特許庁が模倣品・海賊版拡散防止条約構想を主導的に進めるなど、模倣品問題に積極的に取り組んできたということは存じ上げております。しかし、模倣品問題は解決するというより、世界的に拡大して悪質化、巧妙化しているという側面もあると思うんですね。

 我が国の企業が、成長する新興国の市場において安心してビジネスを展開するためにも、模倣品問題を解決するための取り組みを戦略的に進めなければならない。今後、模倣品問題の抜本的な解決に向けて特許庁としてどのような取り組みをなさるのか、お聞かせください。

中山大臣政務官 私も、先般、APECの方に出席をいたしまして、その際、WTOの議論も随分行われました。ドーハ・ラウンドのものでも相当アメリカと中国が対立をいたしておりまして、新興国の立場を彼らが主張するということでありますが、GDPが世界第二位なんでありますから、もうちょっと本当はいろいろ我々と真剣な議論をして、模倣品に関しては、彼らがステークホルダーとしてしっかりとした結論を出してもらわなきゃならない、このようにも思っておりますが、なかなかかみ合わないところもございます。

 このACTAの方でしっかりASEAN諸国にこういうことを申し上げて、日本が主導的な立場で、模倣品というのが、いかにほかの企業の、自分たちの持っていないものをただまねるだけという形で安易なやり方でございますから、我々もそれについての糾弾は常に行わなきゃいかぬ。特許権であるとか知的財産の侵害ということは、いずれ自分の国にも同じようなことが戻ってくるよということで、ACTAをしっかり主導していきたい、このように思っております。徹底的にここは意識をいたしておりますので、よろしくお願いします。

平井委員 それでは、法案関係の質問はこのあたりにさせていただいて、先ほど望月委員の方からあったシステムのことについて、恐らく国会議員ではそのいきさつも含めて私が一番詳しいと思うんです。ですから、答弁はしなくて結構でございますので、話を聞いておいてください。

 結局、これはどういう流れで起きたかというと、特許庁さんは、データ通信役務契約という契約、要するに、これはベンダーが開発した後で請求書が回ったらその言いなりに払う、ぼったくりすし屋の勘定をずっと払い続けていたという現状を見かねた当時の我々自民党が、それを一回清算しろ、それぞれの所有権も確定した上で手切れ金も渡せという状況があったわけです。それで一般競争入札にして、それは始まった。

 当時、特許庁は、システム関連の開発では優等生だったんですよ。一番最初にこのデータ通信役務契約をやめ、整理をし、そして新しい一般競争入札を始めた。そこまでは優等生だったんです。ところが、今回は劣等生に転落している。この間は、やはり政治家の責任もあると私は思うんです。

 自民党はずっとe―Japan特命委員会とかいって、私はずっと当選以来やっているんですけれども、それぞれ省庁のシステムの開発に関して、赤信号、黄色信号、青信号、このまま行っていいよ、これだったら予算がつけられないから一回とめろ、それをずっとやり続けたんですよ。これは一朝一夕にできることではありません。しつこくずっと勉強して、それに対して具体的なヒアリングもし、なおかつ確認をしながら進めていたんですね。これは自由民主党の隠れた政治主導のいいところだったと思います。(発言する者あり)本当にそうなんですよ。

 それにかわる機能は、残念ながら今民主党にはありません。それは自民党とか民主党とかいうことじゃなくて、今後考えていかなきゃいけないことではありますが。ここでよくわからないのは、担当が玄葉大臣なのかだれなのかということなんですね。このIT担当大臣、どんどんかわられて、だれだということになって。

 それで結局、何でこんなに変になったかというと、大きなシステムの開発というのは物すごいリスクがあるんですよ。そのリスクを発注者と受け手側の企業がシェアして一緒に進まなきゃいけないんです。ほとんどのコンピューターのシステムの発注というのは、今まで人を減らすとか保守のお金が下がるとか、要するにどれだけ業務を効率化できるかという発想だったんですが、特許庁のこの基盤のシステムは違ったんですね。世界でだれもやったことのないようなことを実現しようというプロジェクトだったんです。ですから、リスクはほかのものよりも大きいし、目的は、お金が幾ら下がるかということではなくて、世界最高を目指して進む、そういう日本の特許行政の大きなビジョンのもとにあったわけですよ。

 それが頓挫したから、私もこれはまずいと思っていて……。そこで、これはぶっちゃけて言いますと、調達仕様書を書けないんですよ、特許庁は。つまり、要件定義ができないんです、こういう、だれもやったことがないようなものですから。ですから、これを単に一般競争入札しても、物すごいリスクがあるんですね。

 それと、もう一つ悪かったのは、これは私の責任でもあるんですが、分割発注をしなさいと。これはさんざんやったんですよ、当時。それはガイドラインに書き込みました。これはようかんを切って発注する話なんですが、たまにようかんを切り間違えるんです。そうすると、分割のリスクというものはさらに大きくなってしまう。それが後々、その失敗につながるというケースが今散見しておりますから、この調達のガイドラインも、時代が変わったんですから、ぜひ見直していただきたいというふうに思います。

 そういう状況の中で、まずは特許庁の新システムの開発状況について長官にお聞きしたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど望月委員の御質問にもお答え申し上げましたけれども、特許庁の新システムの開発につきましては、これまで二回の延期を行いまして、既に三年の遅延が発生をしております。

 昨年八月に第三者委員会を開いていただきまして、今後の開発に向けた御指摘をいただいております。この御指摘を踏まえまして、最新の技術動向を踏まえた広い知見を活用するために、まさに今御指摘がありました分割発注でございますけれども、将来、調達可能性のあるようなITベンダーの方に対して、これまでつくってまいりました設計書を公開して、そのことについての御意見をいただくということを今やっておりまして、広く知見を集めて、その内容の分析を現在行っているところでございます。

平井委員 私がここで長官とやりとりしたいという一番の思いは、今回のこの質疑によってこの問題が前に進むということなんですよ、基本的に。今はどうなっているかというと、バルセロナのサグラダ・ファミリアみたいになっているわけです、本当に。いつ完成するかわからない。これは最終的には二十九年の一月なんですよね、工程表では、その稼働が。まだ時間があるんですよ。

 これは、だれだれが悪いということを責めたって前に進まないです。現状を見て、的確に判断して、第三者委員会という名前が何回も出てくるけれども、あそこは決定権者ではありません、アドバイスをする程度のことなんですよ、要はトップがコミットしない限り前に進まない。トップは、長官、あなたですよ。そこを政治が後押しするというのが、今回、一番重要なところなんです。

 ですから、今、CIOの技術審議官を置いたとかいろいろなことを言っていますけれども、まずは、この問題に関して、岩井長官が私の責任でやるんだということをコミットした上で、大臣がそれでは現場に対して万全のフォローをするということがセットできょう発言されれば、私はこの問題はここで終わらせたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 また第三者委員会の引用で恐縮でございますが、第三者委員会の報告書におきましても、歴代の長官を初めとしたマネジメント層による一貫した組織的なコミットメントが不足をしていたという御指摘を受けております。また、今後の進め方につきましては、システム開発部門に任せるのではなくて、長官を初めとしたマネジメント層が直結してこの仕事をやっていけという御指摘を既に受けているところでございます。また、先ほどの御質問にもございましたけれども、地震対策ですとか、新たな文献検索というようなものを一体どう進めていくべきなのかという新たな課題が出ていることも事実でございます。

 先ほど御質問いただきましたように、私どもは、世界に冠たる日本国の特許庁として、特許庁のサービスを世界一のものにするための努力を引き続き続けていきたいと思っております。そのことについて、このシステムの整備が最も重要なことであると思いますので、きょういただきました御指導、あるいは第三者委員会で触れられた、過去のことを含めての反省を含めて、特許庁長官としてしっかり努力してまいりたいと思っております。

平井委員 大臣に一言。

海江田国務大臣 今、長官からも、第三者委員会の指摘を踏まえながらコミットするというふうに私は聞きましたので、それを受けて私も後押しをするということで、やはりだれかが責任をとって前に進めなければ話が前に行きませんので、そういうつもりでおります。

平井委員 結局そういうことなんですよ。長官にしてみれば、これはおれのせいじゃないと。何代もさかのぼる。毎年長官がかわっちゃう、これも本当に特許庁にとっていいのかどうなのか。これも、大臣、一回お考えになった方がいいと思います。

 それと、結局、このシステムの開発というのは、移行とか保守とかトータルのビジョンでまだまだ大変なんですよ。本当にサグラダ・ファミリアなんです。だから、ここは常に政治家が励まして、長官がリーダーシップを発揮しないといいものはつくれません。そのことだけを指摘させていただいて、ぜひこういうものに関して関心をもっと持っていただきたいと私自身は思います。

 時間もなくなってきたので、スマートメーター、スマートグリッド、これは大臣もお詳しいと思いますので、お聞きをしたいと思います。

 ITとエネルギーの結節点として、両方あると思いますね、スマートメーター、スマートグリッド。もう一つは、震災後の、いわば日本はピンチ、このピンチをチャンスにできる一つの政策課題でもあろうかと思います。

 まあ、これからなんですけれども、今、まさにスマートグリッドを世界一必要としているのは日本なんですね。これはそうだと思います、震災と原発停止、電力不足があるわけですから。しかし、正直申し上げて、電力会社にスマートグリッドを牽引する力が今あるか、震災後。私は、そういうことを疑問に思ったりしているんですね。

 実際に、先週、ソフトバンクの孫さんが我々自民党のエネルギーの部会なんかに出てきておられる。もう携帯電話に興味がなくなったのかなというような感じもする。また、NTTは、エネルギーマネジメントのスマイルエナジーでしたか、新会社を設立したんですよね。ですから、通信業界との垣根がない。これは総務委員会でもこの話をさせていただきました。ここは大事なところだと思うんですね。

 私は、例えばスマートメーターと言ったとすると、電気事業法とか計量法にすぐ頭がいっちゃうんですよ。しかし、その両方、電気事業法にも計量法にも電力会社以外のメーターは禁止だとはどこにも書いていない。つまり、スマートメーターというのは、消費者側においてスマートな節電を進める意味で今ニーズがあるんですよ。ですから、十年に一回更新をするような、計量法に基づくスマートメーターだけでなく、そういうものをがっと後押ししていかなければならないと思うんです。

 こういうことは今まで我々の政権のときもあったんです。要するにエコポイントをやったときに、あれはもともと環境省がエコポイントとしてちまちまとやっていたものなんですよね。あれに総務省の地デジ対策と経済産業省の経済対策、雇用対策、環境対策、三つ乗っけて、これこそ政治主導で省庁の垣根を越えて進めたから、この七月二十四日にアナログの電波をとめるところまで奇跡的に物事が進んだんです。

 これも同じようなものなんですよ。今、この電力不足を考える上で、スマートメーターというものを、経済産業省がドライブをもっとかけていかなきゃいけない。そして、通信とかエネルギーの垣根をつくっちゃいかぬと思うんですが、大臣、いかがですか。

海江田国務大臣 確かに、スマートメーターが導入をされることによりまして、ことしの夏、大変な節電などもお願いをしなければいけないわけでございますが、こうした問題が大きく解決をするきっかけになろうかと思っております。

 個別の企業のことをこういう場で余り言うべきではなかろうと思いますが、ただ、最近、スマートメーターのことでは大きな動きも出ておりますので、こうした動きが出てくるということは大変いいことだと私は思っておりますので、しっかりと後押しをしていきたいと思っております。

平井委員 どうも、経産省は電力網とか、総務省は音声市場とかデータ市場みたいな、縄張りの中の発想が抜けていない。そこをやはり乗り越えて、このスマートメーターを進めていただけるものと私は今期待をさせていただいておりますし、省庁の垣根を越えて、新しい競争政策を主導していくことが今一番重要だと思うんですね。

 時間もなくなってきたので、いいことはすぐやろうという例で一つお話しさせていただくと、先週の金曜日の内閣委員会で、節電担当の蓮舫大臣に、東京電力管内のパソコンのOSの設定を全部節電にかえたら三十三万キロワットの節電ができますよという、これは特定のOSになっちゃうんですけれども、しかし、蓮舫大臣はすぐ受けとめて、月曜日に記者会見して、進めていただいています。

 つまり、この事態は、どっちの手柄とか、相手の足を引っ張るんじゃなくて、いいことはすぐやる、そういう局面だと思うんですよね。ですから、このスマートメーターに関して言えば、要するに秋葉原でだれでもすぐ買えるような状況をいち早くつくっていくということが重要だと思っています。

 その中で、今までの計画では不十分なところもあります。過去の取り組みは私は大体存じ上げていますので聞きませんが、現状のエネルギー基本計画を見直した上で、今までの発想を超えて大胆な計画をぜひつくっていただきたいなというふうに思います。

 時間がなくなってきたので、あと一つだけお話を進めさせていただきたいんですが、今、計画停電を避けるために皆さん方に節電をお願いしている。電気事業法二十七条の例外措置とかいろいろやっていただいて、私は、その中でデータセンターを外していただいたことは大変評価しています。これは日本の構造的にしようがないんです。東京電力管内に日本のデータセンターの七二%があるんですよ。二十三区内にその約半分ぐらいがあるわけですね。要するに、これだけ首都圏にデータセンターが集まっている国はないんですよね。

 そういう状況の中で、そこは日本の基幹インフラを支えるデータセンターでもあるので、特段の配慮をするということはいいんですが、ここで大臣に一つ提案です。

 サーバーの仮想化、統合の技術というのは、クラウドコンピューターの世界ではもう当たり前なんですよ。技術的なことをだらだら言っていると長くなっちゃうんですが、要するに企業内にあるサーバーを仮想化してデータセンターに統合することによって、インハウスから出すということも入れて、大幅な省エネを達成できるんですね。省エネを達成できる。これはぜひ経済産業省でこのサーバーの仮想化、統合を……。だって、節電は来年だってやらなきゃだめでしょう。データセンターの分散とデータセンターの省力化、これは物すごく重要な政策です。一番電気を食うのがデータセンター。そのときに、さっき言ったスマートメーターもそうなんですが、例えばこのサーバーの仮想化技術や、要するに省エネに対して今こそ手を入れなきゃいけないと思うんです。その点について大臣のお考えを。

海江田国務大臣 これは、企業は特にコストの問題を言いますね、クラウドに移行するための。ですから、そのコストの問題をどういうふうに私どもが後押しするかということになってこようかと思いますが、方向性からいえば、その方向性は大変大切なわけでございまして、時間をかけるわけにはいかないわけでございますから、低コストでのクラウドサービスの実現に向けた環境整備をしっかりとやっていく、こういうお答えになろうかと思います。

 ただ、委員のおっしゃることはよくわかっております。

平井委員 この内閣がスタートしたとき、最初、菅総理がIT担当大臣だったと思うんですね。私、クラウドについて余り通告をせずに聞いちゃったら、正直言って知らなかった。それはしようがないなと思うんだけれども、問題なのは、二〇〇九年の三月に霞が関クラウド構想というのを発表していたんですよ。そのとき、アメリカは日本にやられたと言ったんですよ。ところが、これは世界に先駆けていた構想発表だったのに、残念ながら政権交代で頓挫したんです。

 今、民主党政権さんにはIT政策を統括して前に進めるというパワーがあるとは思えません、これはよっぽどの覚悟も要るし、知識も要るし、政府CIOみたいなものを整備していかなきゃいけないという意味で。二次補正があるんだったら、大臣、このクラウドとか、例えばスマートメーター、スマートグリッドというものを、体を張ってでもどんと予算をとって進めなきゃいけないと思います。そうじゃないと、結局、発電と節電というのは今や同じ価値でしょう。エネルギーのポートフォリオの中に、節電とか電池とかそういうものがちゃんと入ってくるわけですよ。そこに対する思い切った政策ができるかどうかを私は世界が見ていると思うんですよ。ですから、そこのところはぜひ頑張っていただきたいというふうに思う。

 どっちかというと私は自分でしゃべる方が好きなので、しゃべらせていただきたいと思いますが、ぜひもう一つやっていただきたいのは、さっき言った、データセンターが東京に集中しているという問題を解決してください。

 これは、要するに、効率性とコストの問題というのは相反する問題ですよね。ここの調和をうまくとらなきゃいけないというのと、もう一つ、これは我々の責任でもあるんですけれども、今日本の、霞が関といいますか政府のコンピューターシステムというか、約二千ちょっとあるんですよ。バックアップらしきものができているのが五十、災害に遭っても事業が確実に進められるものは一つもないんですよ。ですから、首都圏災害が来たら、この政府は流れてなくなっちゃうという状況です。

 これをつくったのは我々にも責任があるんだけれども、そこは、震災対応というか、大きな災害ということを考えたときには、やはりちょっと方向転換をして、効率性だけではない、リスクを回避して、なおかつ、地域経済にもプラスになるような政策を進めていただきたい。

 特に、東北の復興というのは、要するに新しい復興政策をつくっていかなきゃいけない。新しい日本をつくるんだということになったときに、全体の自治体のクラウドをつくるなんというのは絶対やらなきゃいけないことだし、例えば、グローバル回線なんかが日本を最近よけているんですよ。今千葉県で陸揚げしているもの、これもこの間切れちゃいましたけれども。そんなものを、東北なら東北、今度の新しい復興計画の中に、グローバル回線の陸揚げも今回の被災地で新しい計画のもとにやるとか、そんな発想が私は必要ではないかなというふうに思うんですね。

 このデータセンターの分散配置という話は、これも縄張りが総務省なのか経済産業省なのかよくわからないというようなことになってしまって、それぞれの省庁が予算の獲得のために動いたあげく今まで縮小するというようなことがあったので、ぜひ広い視野でのクラウドに対する取り組み、大臣の御決意をお聞きしたいと思います。

海江田国務大臣 私は東京の出身で、選挙区も東京でございますが、危機管理都市というものをつくらなければいけないということは、かなり前から考えておりました。日本の危機管理の面からも、そうしたデータセンターなどの分散化というのは必要不可欠だと思っております。

 もう少ししゃべりたいんですが、時間がもう……(平井委員「どうぞ、いいですよ」と呼ぶ)いやいや、きょうは時間があれですから。

 ありがとうございました。

平井委員 私の持ち時間、橘委員の持ち時間、これはずっと続いておりますので、答弁していただいてもよかったんですが、別の機会にまたお話をさせていただきたいと思うんです。

 一つだけ、この委員会でやるかは別にして、予告編としてここで宣言させていただくのは、今、民主党さんが進めようとしている共通番号、要するに社会保障と税の一体化、これは絶対にやっちゃいけない方向に今進んでいます。これはとめなきゃいけない。これは、我々は後悔しているんです。そのことだけ触れさせていただきます。

 そもそも、日本のコンピューターシステムがこんなにつながらなくてぼろぼろになったというのは、一九六八年の佐藤内閣のときにさかのぼって考えなきゃいけないんです。このときに、全国民に個人コードを付与するという計画があった。ところが、このときに野党の反対で、総背番号、国民監視社会というのでつぶれたんですよ。もう一回、八九年に、これは一人一人にIDをつける官民の基盤、住基カードの保有義務づけを目指したんだけれども、住基カードの保有は任意になったり、民間企業は原則禁止、これも野党の反対でつぶれたんです。

 結局、年金の問題も、個人のIDではなくて通帳管理にしてしまう、これは絶対失敗するなと当時の人は考えたと思います。結局、これも野党に妥協したあげくに、そういう問題は今になってどんと重いものになっちゃった。これはだれが悪いと言っているのではないんです。自民党の反省は、中途半端に野党に妥協したために、後で国家に大きな損失を与えてしまったということだと思います。

 今度のカードの話ですけれども、民間にもっと聞いてください。今、役所は責められて、安全でセキュリティーの高いものをつくろうとしています。しかし、十年後の社会でそれがちゃんと世の中の皆さんに使われて、日本の成長力にちゃんと資するものになっているかどうかと考えたときに、ここは思い切って一回とめる必要があるのではないかと思います。

 そういう意味で、そのことは別の委員会でやらせていただく予告編とさせていただきまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

田中委員長 平井たくや君の質問は以上で終了いたしました。

 次に、橘慶一郎君。

橘(慶)委員 それでは、私ども三人の持ち時間の範囲内で十一時四十分まで質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 万葉集で始めさせていただきたいと思います。

 万葉集は四千五百十六の歌がありまして、いろいろな歌がありますが、ぱらぱらいろいろ見ていましたら、今の季節でいうカエルを歌った歌というのが実はありました。それで、それをきょうは御披露させていただくと。カエルが鳴くいい河原にもう一度またいつか来て、またそのいい景色を見たいなという、そういう歌でございますので、お聞き届けいただきたいと思います。巻七、一千百六番。

  かはづ鳴く清き川原を今日見てはいつか越え来て見つつ偲はむ

 ということで、カワズの歌がありました。どうもありがとうございました。

 それでは、お時間をいただいた中で、特許法そして不正競争防止法の改正案ということを主眼にいたしますが、若干、現在の大震災対策、原発問題も少しずつ前後で触れさせていただくということでお許しをいただきたいと思います。

 震災関連の地域対策を三つ最初に聞かせていただきます。

 一つ目、電源立地交付金につきまして、関係自治体には、通常六月交付であるものを前倒し交付するということが前々から言われておりまして、どういうふうに達成されたか、この状況についてまず確認をさせていただきます。

海江田国務大臣 この電源立地交付金の問題につきましては、当委員会でも御答弁させていただきました。従来でしたら六月ということですが、それを前倒しいたしまして、四月中に二件の交付決定を行い、既に七億円の概算払いをしたところでございます。

 また、本交付金により造成しました既存の基金を災害復旧復興対策に充当することも認めており、これはこれまでに十一件、約三十億円の利用があったと承知をしております。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 続きまして、東京電力の原発事故の仮払いの問題であります。既に個人につきましては大変大きな体制をとっていただいて、恐らく今の時期ならもう四万件ぐらいいっているのかなという感じもいたしますし、農業者につきましてはJAさん等を窓口にして五月末には始める、こういうお話になってまいりました。そして、中小企業向けということについてもいろいろな体制を構築してできるだけ速やかに、こういうお話でございました。

 そこで、きょうは、大臣はまたいつものノートも出しておられますから、個人の方がどうなっているかということもお答えいただけるのかもしれませんが、またあわせて中小企業者、これは結局、いろいろな団体と協力してということですが、なかなかこれは、JAさん、JFさんとはちょっとまた違うわけです。

 どういう取り組みになっていて、どうであろうかということについて、現時点でのお答えをいただきたいと思います。

海江田国務大臣 私も、今でも事情が許す限り毎日東京電力に行っておりまして、そこで何をやっているかというと、いろいろなことをやっておりますが、最終的には、仮払いを一刻も早くということで督促をしております。もうちょっとたつとデータというか紙が出てくるんですが、ちょっと間に合いませんでした。

 個人に対する仮払いは順調に進んでおりまして、四万件をもう超えております。ですから、これは一日も早くすべての方々にと思っております。その次が、これも今、橘委員御指摘のありましたように、農林漁業ということで、農林漁業はもう既に、JAですとか漁協を通じての支払いというものが大体話が進みまして、今月末からそうした支払いができるかなということで、残念ながら、中小企業はその後になってしまいます。しかし、中小企業も、商工会に登録をしている企業とそうでない方々がいますので、少し時間がかかるかなというふうに思っておりますけれども、これにつきましても五月末までをめどに取りまとめを目指しております。

 とにかく一日も早くということで、しっかり仮払いをしてもらうように今お願いをしているところでございます。

橘(慶)委員 今大臣からもお話がございましたように、商工会はかなりの組織率になっていると思いますが、そうはいっても、JAさん、JFさんあるいは森林組合に比べると、すべてを網羅しているわけではないというところがあります。別の機会にも申し上げたことがありますが、自治体の窓口あるいは業種ごとの団体、そういったところも場合によっては活用されて、できるだけ体制を構築されて進んでいただくということが大事じゃないかと申し上げておきたいと思います。

 なお、もう一つ、個人仮払いにつきまして、今四万件を超えるということで非常に順調なのは喜ばしいです。たしか五百人ぐらいの体制で取り組んでおられるということも私は記憶に残っております。

 私、はっと気がついたんですが、多分、一日二、三千件ぐらいずつ振り込みされているということからすると、五百人という数字を割り算すると、実は一人五、六件ぐらいになる。それはいろいろな仕事をいろいろ分担されるからそうなるわけですが、意外と大変なものだなと。

 実は、私自身も市長をしておりまして、昔、景気対策で国民の皆さんにお金を支援金という形で配ったということを、現場で取り組んだことがありまして、なかなか厄介なものでございます。結構大きな体制でやらないと、一回体制を構築してしまえばあとは簡単なんですが、そういう体制をつくらないとやっていけない。

 まして今回の場合、恐らく、個人仮払いもまたもう一度、あと一回か二回かわかりませんが、多分三カ月ぐらいごとにはやっていかないと、御家庭の生計費ということを考えれば、今の内閣の工程表等の見通しからすれば、今つくったシステムは何回かまた御利用いただくことになるんだろうと思います。ぜひこれはよろしくお願いしたい。

 これも答弁は結構なんですが、一つ、そのほかにも、きょうはここは原子力のお話だけですが、被災地にはいろいろな形で、生活再建支援金とかいろいろなものを配っていかなければいけない、そういったところでも必ずしもスピードアップしていない部分が実はあるようであります。そういったときに、やはり東電さんの体制の今構築されたもの、そういったものも参考にされないと、なかなかほかの分野、例えば罹災証明を受けたところでお金が欲しいということで申請されている方、そういったところにもいろいろな問題が出てまいります。

 どうか、そういったことはまた政府の中でお話を流通されて、全体に、やはりお金が被災地へ届いていくということが大事だと思いますので、これは答弁は結構でございますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 もう一つ、最後にします。

 せんだって公表されました、福島県と経済産業省さんでの原子力災害に伴う特定地域中小企業特別資金、三千万円以内、期間二十年以内、据え置き五年以内、無利子無担保ということで、総額四百二十一億円、中小機構四百二十億円と福島県一億円ということで六月一日からされていく。

 今、二重ローンとかいろいろなことが言われている中で、やはりこれは一つの前進であろうと思っておりますが、岩手県や宮城県、あるいはほかのところにおきましてもいろいろなお話があると思っております。こういった取り組みをほかの地域、背景事情は違うわけですけれども、そういったものを何か広げていくというお考えはないものか、これだけお伺いしておきたいと思います。

海江田国務大臣 福島県は、今、委員からお話があったような制度の中身になっておりますが、それを包摂するといいますか、福島県以外で使えますものとしては、東日本大震災復興特別貸し付けということになりまして、これは、やはり期間も最長二十年、据置期間最長五年、金利のところが、無利子ということではありませんで大幅に引き下げということになっております。

 私も、委員と同じような問題意識を持ちまして、何とかならないかということでございましたけれども、特に福島県だけに無利子の制度ができたということの背景には、もちろん福島県が協力をしていただいたということもありますが、これは政府の指示によりまして地域の住民あるいは企業の方々が避難を余儀なくされたという、政府の行為とそうした御不自由、御不便が直接結びついておりますので、ここは何とかもう一段頑張らなきゃいけないかなという形でこういう制度ができたということでございます。

 ただ、津波あるいは地震の被災に遭われた方々も、大変厳しい状況というのは同じでございますので、さらなる方策というものは、これはできることをしっかりやらなければいけない、二重ローンなんかの問題もそうでございますが、そういう覚悟でおります。

橘(慶)委員 どうしても究極はバランスシートの問題になっていくんだろうと思っておりますので、そのときはまた金融機関の問題にもなるということも理解しておりますけれども、ぜひこのあたりを、引き続き前進するような検討を続けていただきたい、このことをお願いしておきます。

 それでは、特許法から始めさせていただきます。

 知財戦略を前進させるための特許法の改正は、特許庁さんの方のペーパー等を見ましても、四つくらい大きなポイントがあるかと思います。通常実施権、ライセンス契約の保護の強化、また共同研究等の成果に関する発明者の適切な保護、そして審判制度の見直し、さらにはユーザーの利便性向上ということかと思います。

 このテーマに従いまして、多少、望月議員あるいは平井議員からお伺いさせていただいたところもまた踏まえながら、順番に進めさせていただきたいと思います。

 まず、ライセンス契約の保護の強化でありますが、特許庁への登録をしなくても第三者からの差しとめ請求に対抗できる、いわゆる当然対抗制度という形に改正をするということであります。

 先ほど望月議員からも、非常に特許が細分化されているから登録をみんなしていくのは実務上困難だ云々ということで、そういう背景事情のお話もあったわけですが、改めてここで、今の登録制度でいくということの困難になっている実態、そして当然対抗制度にする理由を確認させていただきます。

海江田国務大臣 これは、まず通常実施権というものがございますが、実はこれの利用度というのが大変低いということで、私どもの調査で、通常実施権についての登録率は〇%または一%未満と回答した者の割合が八七・二%ということになっておりますので、このライセンスの登録率は極めて低い状況がございます。

 その理由としましては、一つの製品開発等に当たり多数のライセンスが許諾されていることも多く、そのすべてを登録するには膨大な手間とコストがかかるということ。それから、登録を行うにはライセンスを受けた者と特許権者が共同して申請をする必要がございますが、特許権者が登録に協力する義務はなく、特許権者の協力が得られない場合があることなどの事情によるものだ、そう考えております。

橘(慶)委員 細分化の事例として、DVDプレーヤーを一つつくるために二千件、こういうお話がいつも出てくるわけでございます。

 DVDプレーヤーのもとの姿を考えますと、トーマス・エジソンが発明した蓄音機ということだと思いますが、蓄音機なら、多分、特許権でいえば特許は一件ということですが、それが二千件というような形になってくるとすれば、今、知財ということを含めて、いろいろな製造業、あるいはいろいろなシステムの中で、恐らく特許というものが非常にふえてきて、それが非常に細分化されているということがうかがわれるんだと思います。

 実は、特許法の審議をする前に鉱業法の審議をしておりました。鉱業法でも、鉱業権の出願、これはまた違った事情で非常にたまっていまして、それの処理ということについては、附帯決議でも迅速にということは付されたわけであります。

 特許が非常に細分化されていく中で、特許の出願は先ほども四十四万件から三十四万件に減少しているというお話もありましたけれども、これの審査待ちの状況なり、その期間とか、そういった特許権をめぐる状況、もろもろの事務の処理状況について、ここで現状を確認させていただきたいと思います。

中山大臣政務官 今お話しのとおりで、出願数とかそういうものについて、平成十三年以降、四十万件前後で推移をしていたんですが、平成二十一年に三十五万件に減少いたしておりまして、それからずっと横ばいになっております。

 審査請求件数は、平成十三年に約二十五万件でありましたが、審査請求ができる期間を七年から三年に短縮した影響もあり、平成十七年には一時的に約四十万件に増加、平成二十二年は約二十六万件というような推移がございます。

 この一時的な審査請求件数の増大の影響もあり、平成十三年に約四十九万件であった審査順番待ち件数が、平成十九年には八十九万件に増加をいたしました。これは人員の問題とかいろいろあったんでしょうが、そのために特許庁は、特許審査を迅速化し、審査順番待ち件数を減少させるための取り組みとして、任期つき審査官の採用による審査体制の強化や、先行技術調査の外注による民間活力の活用等の取り組みを実施いたしております。

 これにより、平成十三年に約二十万件であった審査件数は増加を続け、平成二十二年には約三十八万件となり、審査順番待ちの件数は、平成二十二年末時点で約五十七万件まで減少いたしました。

 今後は、現在二十七カ月である審査順番待ち期間を、知的財産推進計画に定められている、二〇一三年に十一カ月とするため、さらなる特許審査の迅速化を図ってまいりたいと思っております。

橘(慶)委員 もちろん、前回の鉱業権とは大分、審査の仕方もそうですが、あらゆる意味で違うんでしょうけれども、やはり一度発生した、期間を短縮したことによるこぶを取っていただいて、そして、今ほどあった二十七カ月を十一カ月、ぜひこれはまた鋭意お取り組みをいただきたいと思います。

 それから、ライセンス契約の保護の中で、ちょっと細かくなりますが、法の八十四条の二が新設されまして、特許発明の実施が国内で三年以上なされていないときに、第三者が実施の許諾について特許庁長官の裁定を求める際に、ライセンスを有する者が意見を述べることができる、そういう規定が一つ新設をされております。

 この規定の新設の趣旨をお伺いしておきたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの件は、裁定にかかわる制度の整備でございます。

 現行の特許法では、特許発明の実施が国内で三年以上なされていないような場合に、特許庁長官の裁定によりまして、その特許権者等の同意を得ることなく第三者にその特許発明を実施する権利を設定し得るという制度があるわけでございます。

 この裁定をいたします際には、特許を持っている人自身が実施をしていなくても、ライセンスを得ている者が実施をしている場合がございますので、その特許発明が実施されていないかどうかの判断を適切に行うに当たりまして、現行法では、特許権者と登録をされている方、この方に御連絡をいたしまして御意見をお聞きするという仕組みになるわけでございます。

 今回の法律を通していただきますと、通常実施権を行われる方につきましては、登録という行為なく当然に対抗ができるという制度になりますので、登録というやり方では、私どもは権利が使われているのかがわからなくなるという形になります。したがって、このような方には、これまでのようなこちらから御連絡するという形ではございませんけれども、御意見を言っていただくような機会を法律上整備するということで、この裁定というものが権利を使っておられる方との関係で効果を変化させないようにするために措置をさせていただこうというものでございます。

橘(慶)委員 わかりやすくありがとうございました。そういう若干技術的な質問が幾つか出てまいりますが、御容赦をいただきたいと思います。

 続きまして、共同研究等の成果に関する発明者の適切な保護という分野であります。

 これは、改正の背景というのを聞きながらちょっと驚いてしまったわけですけれども、特許庁さんのお話を聞きますと、共同で出願すべき発明を単独で出願されてしまった、権利を侵害された、悔しい思いをしたという企業、大学が四割もあるというようなお話がありまして、これについては、実態についてちょっとびっくりしたというところが正直なところであります。

 どうしてこういうことになっていくのか、そこの理由、背景等を、把握されている限りでお伺いをしたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 いろいろなケースがあろうかと思いますので、御説明いたしますことは典型的なケースになろうかと思いますけれども、もちろん、悪意で人の発明をとってしまったというようなケースもあろうかと思いますけれども、それ以外では大きく二つぐらいのパターンがあるのではないかと思います。

 一番目は、権利の保護、とられてしまうということとも関係するのですけれども、いろいろなことを始める際に、秘密保持契約ですとか共同開発契約ですとか、そういった権利義務をはっきりさせてやっていれば、とられてしまうとか勝手に使われてしまうというようなことがなかったような場合が見受けられます。いろいろお聞きいたしますと、後からそういう契約を結んだけれども間に合わなかったというような事例もお聞きしているところでございます。

 二番目のケースといたしましては、今のケースとも若干似てくるのでございますけれども、でき上がった発明をどういうふうに使うのかとか、その権利をどういうふうに分けるのかというようなことが明らかでなかったものですから、でき上がったものについて、一方当事者が全部自分が使えるものだとお思いになって権利行使をされてしまうというようなケースも多くあるようでございます。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 必ずしも悪意じゃなくて、最初の取り決めがなかったとか、やっていくうちにちょっと事態がそうなっちゃったとか、こういうことで理解をしたわけです。

 しかし、また一面、産学間の共同研究というのは、それぞれの地域、ローカルな地域の経済の高度化や活性化に果たす役割は大きいということで、それぞれの都道府県等においても積極的に実は推進をされているという実態もございます。

 経済産業省において、大きい意味で、この共同研究といったものの実情、あるいはこれを省として支援されているその取り組みの現状についてお伺いをいたします。

中山大臣政務官 産学間の共同開発というのは、やはり日本のイノベーションにとって大変重要な部分だというふうに思います。たまたま、橘先生の地元である富山県において、富山大学と地元企業などが共同研究を行い、カキポリフェノールを配合した肌の老化を防ぐ化粧品の製品化に成功したとか、こういうような事例もございまして、やはり産学間の協同によっていろいろなものが生まれていることは事実でございます。

 先ほどの共同開発または共同研究のいろいろトラブルみたいなものもございますが、やはり協力したことによって起こるイノベーションも大変多いというふうに思います。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 そういう形で共同研究は大事なんですが、そうすると、せっかく研究に参加した方々が後から嫌な思いをしないようにということの中では、先ほど特許庁長官の方からもお話がありました、スタートする段階での秘密保持契約あるいは共同開発契約、こういったものを最初にきちっと結んで共同研究というものはするものだ、言ってみれば、癖がつくと言ったら変ですけれども、そういう形になってくればこの問題はかなり整理されていく。

 そうなりますと、先ほども少し中山政務官からは、そういった文書で確認するようなことを周知徹底云々ということもございましたが、もう一つ私、突っ込ませていただいて、そういった秘密保持契約とか共同開発契約のひな形というもの、ある意味でひな形で十分だと思うんですが、例えばそういったものをおつくりになって、そういうものをPRされるという方法もあると思うんですが、現状はいかがでありましょうか。

中山大臣政務官 共同開発者には中小企業なんかも多いものですから、今言ったようなひな形があればわかりやすいということは事実でございます。

 いろいろパンフレットなども、「知っておきたい特許契約の基礎知識」とか、こういうものも出しておりまして、私たちも、できる限り都道府県等の窓口でそういうものを受けたいというふうに思っております。

 ひな形についてはよく検討して、前向きに考えたいと思います。

橘(慶)委員 それでは、ぜひまた、ひな形ということについては提案と受けとめていただいて、御検討いただきたいと思います。

 さて、残念ながら不幸な事態になって、共同研究の特許がちょっと違った形になっている、返還してくださいという返還請求ということを規定されているわけですが、法第七十四条第一項におきまして、ここは省令事項に落としてありまして、経済産業省令で定めるところにより、出願をした特許権者に対してなされるということになっております。これはどういう手続になるのか、省令の内容を含めてここで確認をさせていただきます。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問は、冒認出願ですとか共同出願違反になったときに、その持ち分を取り戻す、その最終的な返還請求はどのように確定をしていくのかということの手続についてのお尋ねでございます。

 この具体的な手続といたしましては、発明者は、冒認者等との間で権利の帰属について確定をさせてから、特許庁が裁定をするわけではございませんので、確定をしてから、特許庁に対して特許権の移転登録を御申請いただくことになります。したがいまして、具体的には、その御申請をいただく際に、権利関係を証明する書面として、冒認者等との間で合意をしたという場合には合意の書面、あるいは合意が得られずに裁判で決着をしたという場合には裁判所の判決というようなものを添付して手続をしていただくことを予定してございます。

 お尋ねの経済産業省令には、共同出願違反のようなケースもございますので、発明者の発明に対する寄与度とその取り扱いがどうなるのかというようなことを手続面で規定させていただきたいというふうに考えておる次第でございます。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

 まずは、そこは当事者間で決めてから持ってこいというこの手続の仕組み、説明ありがとうございます。

 続きまして、審判制度の見直しによる、言ってみれば期間の迅速化ということについて、順次お伺いをします。

 法第百二十六条第二項の改正によりまして、審決取り消し訴訟提起後の訂正審判の請求が禁止をされました。このことによりまして、説明書を見ますと、キャッチボール現象というようなことがなくなるので、ある程度これは迅速化される、こういうお話になっているわけですけれども、ここで、どういうことになって、どういうふうに迅速になるのかということについて御説明をお願いいたします。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のキャッチボール現象でございますけれども、特許庁がいたしました無効審判につきまして、これをひっくり返そうとする場合には、この審決の取り消しをしてくれという訴訟をしていただくということになります。

 ところが、この無効審判を得た後、それでは、その特許の範囲の中身を訂正するんだということをまた特許庁にしていただくことも可能でございます。そうなりますと、多くの場合、もともと訴えられていた中身が変わりますので、裁判所は、では特許庁の方で解決をしてから持っていらっしゃいと言って、また戻ってきてしまう、このことがいわゆるキャッチボール現象ということになってございまして、紛争の解決に時間がかかるということでございます。

 今回の改正では、今のようなことがないように、キャッチボールが起こらないように、事前に訂正の審判を求めていただいて、それで提訴になった後にはもう戻ってこられないというような格好で事案の解決を図らせていただくということでございますので、それがうまくいきますと、キャッチボールでかかっていた時間、私どもの計算では、実態的な数字を当てはめて考えますと、百日程度審査の期間が短縮をし、迅速に事案の解決が図れる、このような効果を持つ改正になるものと考えてございます。

橘(慶)委員 タイム・イズ・マネーのビジネスの世界ですから、百日、それもやはり大きいものだと思います。よろしくお願いします。

 あと二つばかり、少し細かいところが続きますが、お許しをいただきたいと思います。

 法の百三十一条第三項、これは、訂正審判をする際に、手続ですから、実は幾つかのことを書いて審判を求めなきゃいけないということになっていまして、その中に、訂正審判の請求の趣旨及び理由というものも当然書いて出さなきゃいけないということになっているんですが、今回、この百三十一条第三項の新設によりまして、請求の趣旨及び理由について経済産業省令で定めるところにより記載しなければならないということで、省令事項として、恐らくこの書き方あたりを何か、こういうことをちゃんと書けとかそういうことになるのかな、こう理解するんですけれども、省令事項でありますので、想定されている内容をお伺いいたします。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 この規定は、訂正審判を請求していただく際の手続の規定でございます。現行では、請求の趣旨や請求の理由について、具体的な特段の定めはございませんでした。今般、法律改正をさせていただきますと、この訂正審判が、これまでよりもきめ細かに、請求項ごとに請求ができることになってまいります。その場合に、手続は一体どうなるのかということを明確に定めさせていただきたいというのが今回の趣旨でございます。

 したがいまして、今御指摘もございましたけれども、省令におきまして、訂正審判の請求の趣旨及び理由が対象となる請求項ごとに整理して書かれているということを担保できるように、請求書の中の請求の趣旨や請求の理由についての具体的な書き方を決めさせていただきたいというふうに考えておる次第でございます。

橘(慶)委員 もう一つです。

 法百六十四条の二が新設されておりまして、特許無効審判につきまして、審決をするのに熟した場合に、審判の請求に理由があると認めるときその他の経済産業省令で定めるとき、審決の予告を当事者及び参加人にされることとなりました。

 審判の請求に理由があるということであれば審決の予告、これはわかるんですが、その他の事例というのはなかなか、それ以外に何があるのかなというのがちょっと腑に落ちなかったものですから、省令事項を一応確認させていただきます。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 この省令では、どのような場合に審決の予告をするのかということを定めさせていただきますけれども、御指摘いただきましたように、無効審判の審理開始後、最初に審決をするのに熟したときに審決の予告をするという当然のことを書かせていただくことに加えまして、その場合であっても、特許権者から審決の予告が不要であるというような意思表示があったときや、特許権者の主張を全面的に認容する、したがってその後また変更する必要はないというような場合には審決の予告をしないことができるという、きめ細かな場合分けを書かせていただきたいというふうに考えておる次第でございます。

橘(慶)委員 これであと、そういう細かいのはございませんので、少し大まかなことになってまいります。

 この無効審判の確定審決の当事者以外に対する第三者効、確定審決が出た場合に、今までは当事者間だけではなくて第三者もすべて拘束するということになっていたものを、今回、百六十七条の改正によりまして、それは外すと。ですから、当事者以外については、また自由にそういった無効審判等を出せるという形に変わるわけであります。

 今まで第三者効を認めていた理由、そして、それを今回外しちゃうということについての理由を確認させてください。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでの考え方は、ある権利が有効であるか無効であるかということを判断するのであるから、それが決まれば第三者にも効果を及ぼすのが適当ではないかと、いわば当たり前の考え方で来たわけでございます。

 ところが、いろいろな例を見ておりますと、同一の事実及び同一の証拠に基づいて争うのですけれども、これは、当事者主義をとっておりますので、審判請求人が異なりますと、平たく言いますと、上手に主張ができない、あるべき姿をきちんと御説明ができないという方が先に手を挙げてしまいますと、下手な人が説明して、ほかの人ならうまくそこの権利主張ができたのにというようなことについて、悪い例が固まってしまうということが現実に見られてきたわけでございます。

 したがいまして、審議会で御議論をいただきまして、今のような主張の巧拙が結果に影響を与えるという事例があるのであれば、その効果はその訴えをした人に限って及ぶという形にする方が権利保護のやり方としては適切ではないかというふうな考え方に変えさせていただいて、法改正を御提案させていただいているところでございます。

橘(慶)委員 これはやはり、多分どちらもあるんでしょうね。一回確定してしまったら、それで当事者としては安心したいところですが、しかし、下手な人がやって本当の結論にはなっていないとすれば、当然第三者効は外した方がいい。ここは多分、これから運用されていく中でメリット、デメリットもあるような感じもいたしますので、それはまた運用をされながらぜひ見きわめていただきたい、このように思うわけであります。

 ユーザーの利便性向上のお話の方に移ります。

 もう既にお答えのあったところは少し飛ばさせていただいて、二つ目のところから始めます。

 今回、ユーザーの利便性向上ということで、出願書類で翻訳文がいろいろな事情で提出できないというときに、救済要件としまして、提出できるようになった、提出できない正当な理由がなくなってから二カ月以内から一年以内の間はいいでしょう、こういうことにされたわけであります。

 また、あわせて、特許料を追納して特許権の回復が可能になる時期ということについても、今までは二週間以内、六カ月までというところを、二カ月以内で一年以内、こういう形で、それぞれユーザーサイドに立った緩和をされたわけでありますが、この期間の設定ということについて、何か国際的な横並びのお話であるのか。この期間設定の理由をお伺いしたいと思います。

岩井政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘がありました期間の設定を考えるに当たりまして、私どもは、国際的な調和を目的といたしました特許法条約、PLTというものが平成十七年四月に発効してございまして、そこで、期間の考え方といたしましては、理由がなくなってから二カ月以内で経過後一年以内、こういう形で整理をされておりますので、これを参考に御提案をさせていただいております。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

 次は、特許特別会計の関係であります。

 特許料の減免期間を中小企業や大学につきまして三年から十年に延長するなど、減免制度の拡充ということになってまいりました。

 これは少し望月議員等からもお話ございましたが、二十三年度の特許特別会計の数字を見ますと、歳入、特許料等の、審査料等の収入が一千四十五億円予定されまして、前年度の剰余金の受け入れが一千九百十九億円とありまして、全体の歳入規模は三千四十八億円と大きいわけですけれども、支出については一千百五十四億円、これぐらいで大体逐年回ると。そして、この千九百億円程度の、言ってみれば過去からの積み上がりについては、今後の審査の迅速化とかいろいろな将来のためにとっておく、こういうシステムであるわけです。

 今の段階で、特許の収入と支出が、ちょっと支出が多いくらいのところになっている中で、この一千四十五億円と言われております、これもある意味でこの改正を前提にした数字でもう設定しているのかもしれませんが、今回の減免措置等によってどれくらい減ると考えておられるのか。そして、そのことは、先ほど言われた特許を迅速に審査しなきゃいけないとか、いろいろまた事務的には頑張らなきゃいけないところもある中で、悪さをしないのかということについて確認をしたいと思います。

中山大臣政務官 種々の合理化も含めて、何とか特別会計を回していこうということでやっておりますが、今度の減免措置の改正、これを見ますと、細かく申し上げますと、例えば審査請求料が二十万円だったものが十五万円とか、それから国際調査手数料十一万が八万円、予備審査手数料三・六万円が三万円、意匠登録料三・四万円が一・七万円。いろいろな意味でユーザーの皆さんに大分サービスをしておりますが、長期的に見て、やれるということで、今回は、できる限り審査請求を多く、そしてまた特許に対する思いを中小企業の皆さんにもしっかりやっていただく、こういうことで減免措置をしたわけでございます。

橘(慶)委員 そういった数字を決める際には、もちろんユーザーサイドに立つことは大事なことですけれども、当然、それでどれくらいの収入になるかということの、それなりの見通しというか、それはきちっと決まるものではないでしょうけれども、何割くらいとか、そういう多少の思いがあってやはり決めておられるものだと思います。

 さらなる問いになりますけれども、大体どれぐらい減るかな、でも大丈夫だという、そこの判断のプロセスについてだけ確認をさせていただきたいと思います。

中山大臣政務官 やはり料金を見直しすることによっての減収というのは当然ございます。約百五十億円、現在の見通しがございます。

 しかし、長い目で見た場合に、いろいろやっていけるという、またはリストラ等を含めましていろいろな合理化をしておりますし、先ほどちょっとお話ししましたけれども、例えば特許庁でやっている、発明に対する教育であるとか、そういうのは文科省でやってもらうとか、無駄なものはできる限り省いていくということで、長期の中で見て大丈夫だ、こういうことでございます。

橘(慶)委員 言ってみれば、大体目の子一割から二割の間ぐらいは頑張ろうということで、今受けとめさせていただきました。ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 そして、いろいろな減免をしていく中で、国際出願手数料の引き下げ、今ちょっと中山政務官からもお話ございました。そういったものも予定されております。中小企業においても、今は海外出願というような形で、これは知財戦略ということでしょうけれども、やはり同時に、何かお話を聞いていますと、海外の条約を結んでいる国については日本で出願した日で出願日を確定させることができるとか、日本である程度特許の審査をいただければ、外国における審査の前さばきになって外国における審査が早くなるとか、こういうメリットのところも聞いております。

 そこで、そういったことを含めて、特許庁さんとして、知財戦略の中で、こういう中小企業においての海外出願というものを支援していく、そういうことについてどのようなお取り組みを総合的に考えておられるのか、確認をしたいと思います。

中山大臣政務官 中小企業の海外展開については、大臣を本部長に、今取り組んでいるところでございまして、やはりそこで必要なのは、海外の情報とか特許の状況とか、そういうことを必要にいたしております。その内訳をちょっと話しますと、出願費用とか弁理士費用、翻訳費用など、中小企業にとっては費用面の負担が大変大きいので、負担軽減のニーズがまず高いということでございます。また同時に、深刻な状況が続く模倣被害、これについても対策が不可欠であり、進出先で特許権を取得することも非常に重要なことになってまいりました。

 そういう面でも、中小企業が海外展開する場合に、全面的に特許庁も支えていこう、こういうことでございます。

橘(慶)委員 支えていくということは大体理解したんですが、その際、どんな形で応援しようかというか、例えばこんなことを頑張りなさいとか、そういう手助けというようなところはどういうお考えであるのかというところについて確認をしておきたいと思います。

中山大臣政務官 先ほど申しましたように、出願費用、弁理士費用、翻訳費用など、中小企業にとっては費用面の負担が大きく、負担軽減のニーズは高いということで、これについていろいろやっていくために、経済産業省では、都道府県等中小企業支援センターを通じて、海外の出願手続に係る費用の一部を補助する事業もやっております。

 また、今般の法改正では、国際出願に係る手数料を現行の十一万から八万に引き下げるなど、海外に出願する中小企業に対して積極的な支援を行っていくつもりでございます。

橘(慶)委員 今の御答弁をお伺いしまして、特許庁さんでされることと中小企業庁さんの方でされることとがあるようであります。ぜひ協力して頑張っていただきたいと思います。

 商標法の改正で一問だけお伺いします。

 商標法の改正におきまして、無効審判等によりまして、商標権、いわゆるブランドの、そういったものが消滅する場合、今までは、消滅しても一年間は登録をさせないと。橘屋なら橘屋というブランドがだめだということになったら、一年間は橘屋というブランドはだめだ、こういうことだったわけですが、それを今回廃止いたしまして、すっきりした形にはなったわけですが、そのことによってどういうことになるのか、何をねらったのか、そこだけ確認をさせていただきたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 商標権消滅後の取り扱いでございますけれども、これまでの考え方は、商標権という独占的な権利がなくなったとしても、その商標がよく知れ渡っておりますと、消費者の側から見ると、それはだれがつくっているものであるというような信用感が残っているということがあるのではないか、そういうことを考えますと、一体それはだれがつくっているのかということについて混乱があるというようなことも考えられるので、商標の消滅後一年間を区切って、一律に、その商標と同一または類似のものについては登録をさせないという格好でやっていこうということで運用してまいりました。

 一方で、もうこの商標権は要らないんだといって放棄された方の分についてもなお一年間守るというような仕組みでございますので、今日のように製品のライフサイクルの短縮化が進むなど、そういった状況のもとで、早期権利化を一律に一年間させないというような仕組みはいかがなものだろうかということを考えまして、今回、この規定を廃止いたしまして、無効審判や権利の放棄等により商標権が消滅した場合には、一年を待たずとも直ちに商標の登録を受けることを可能とするという制度に変えまして、新たな方が新たな権利を取れることを慫慂しようというふうに考えたわけでございます。

 もちろん、他人と混同してしまうということがあった場合には、消費者に迷惑がかかります。ただ、現行の法制度でも、他人と、どこがつくったかということの混同を生じるようなおそれがある場合には商標登録は認めないという規定は今も持っておりますので、必要な保護はこの規定により対応するという考え方で法改正を提案させていただいた次第でございます。

橘(慶)委員 混同する場合はちゃんと守られているということで、承りました。

 不正競争防止法について若干お伺いをいたします。

 アクセスコントロール回避装置、私はちょっと世代的にはなかなかわかりません、マジコンというものだそうで、マジックコンピューターを略してマジコンと。それは今までも規制されていたわけですが、今回、改正後の法の第二条第十号におきまして、マジコンの「部品一式であって容易に組み立てることができるもの」ということについても規制をするんだと。この辺も、済みません、私どもはどうもなかなか実態に疎いわけですけれども、マジコンの一部というようなものでもやはり規制をしておかなきゃいけないという、この辺は当然事情があってこうされるんだと思います。具体的にどんなことなのであろうかということについて確認をいたします。

井内政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の「部品一式であって容易に組み立てることができるもの」というものの具体的なイメージあるいは例でございますけれども、例えば、御指摘いただきましたようなアクセスコントロール回避装置でございますマジコン、マジックコンピューターでございますけれども、それを容易に組み立て可能な外部のプラスチックの部品と内部の電子部品とに分けて流通させたりあるいは輸入したりという形の例が挙げられております。

 こういった場合には、完成品ではなく、組み立て可能な部品に分割して一式で取引するということでございますので、こういった組み立てキットのような取引につきましても、脱法的な行為を防ぐという観点で規制の対象といたしまして、対策の実効性を強化することが必要だと考えた次第でございます。

橘(慶)委員 そうすると、やはり、プラモデルのように自分で組み立てて使える、そういうものは困る、そういうことでそれも規制するということであります。

 続きまして、営業秘密の内容を保護しなければならない刑事訴訟手続ということで、これは、営業秘密侵害罪の裁判におきまして、当然、裁判でそういうものを確定させていこうとすると、どんな秘密だったんだということで、それが裁判所の中でいろいろとお話がされたということであれば、せっかく訴えた企業の、原告の秘密そのものが裁判の中で開示されては困る、こういうことで、これは二十一年度の不正競争防止法の法改正の附帯決議といったところからの要請も含めて今回手当てされるわけです。

 実際の実務の中でこういうことがどれくらい生じているのか、その辺の実態について確認をしたいと思います。

海江田国務大臣 一つは、平成二十二年度に発行しましたものづくり白書において、約一八%の企業が、国内において技術流出と思われる事象があったと回答しております。もう一つは、平成二十年になりますけれども、企業を対象に行った調査で、実際に企業秘密の漏えいを経験した三百社以上の企業のおよそ七七%が、刑事訴訟手続において営業秘密の内容を保護するための措置を設けるべきだと回答しております。

 こうした状況にかんがみれば、刑事訴訟手続において営業秘密の内容を保護するための措置が必要となる事件は相当数存在しているという認識でございます。

橘(慶)委員 個々の事件が幾つというのはなかなか難しいでしょうが、そういう希望ということで、七七%のアンケート調査ということであれば、これを手当てする実益が強いということであろうと思います。

 しかし、この法の趣旨を実際に実務で貫徹させるということを考えた場合には、法で規定されている「営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項」、例えば、ヨーグルトならヨーグルトというものを、AならAということで読みかえていく、そうやってやるわけですけれども、それを上手にやらないと、そこに何が入るかわかっちゃうとか、そういうことになると、せっかく改正したことが、実務上、それは裁判記録を丹念に見ればわかっちゃうということになっては大変意味がないことになると思うわけですね。

 そこで、これはどうしても、この法はこうつくった、しかし、裁判を運用していく上では、関係者がみんなこのことについて認識を一にして、あるいは言ってみればスキルアップしていかないと、本当の意味で秘密保護にはならないんじゃないか、こういうことを思うわけであります。

 この辺、事前準備、この法案が通るということを含めて、当然、経済産業省さんにとどまらないわけですから、ほかの関係の皆さん方の準備の状況についてお伺いをしたいと思います。

安達政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、今回の改正により設けられる制度が適切に運用されるためには、訴訟関係者や被害企業において十分な事前準備などをする必要がございます。

 今回の改正法案を検討する過程で、経済産業省と法務省が共同で開催した営業秘密保護のための刑事訴訟手続の在り方研究会には、最高裁判所や最高検察庁からも委員として参画していただいてございます。その議論の中でも、関係機関の連携の重要性が強く指摘されました。それを踏まえて、今後、関係機関の適切な連携を図っていくものと考えてございます。

 経済産業省といたしましては、今後速やかに、法案が可決、成立されればでございますけれども、本制度の円滑な運用に資するよう、営業秘密管理指針の改定などを通じまして、被害企業から検察官に対して行われる秘匿の申し出のやり方とか情報提供の方法、留意点を明らかにし、広くその周知を関係者に図ってまいりたいと考えてございます。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 言ってみれば、訴える方、原告といいますか、その方々をどういうふうに守るかということもあるし、それを実際裁判の中で取り扱う検察官、そしてまたそのことを認める裁判官、そういった方々の連係プレーがないとうまくいかないということだと思いますので、ぜひそこは法の趣旨が貫徹するようによろしくお願いをしたいと思います。

 時間をいただきながら、順調にいよいよ最後に入ってくるわけですが、福島第一原発関連のところへ戻ってまいりたいと思います。

 登録をいただいた方では、富山県、私と同郷であります熊谷部長さんの出番はどうやらなかったようでありますけれども、これはどうかお許しをいただきたいと思います。

 それでは、福島第一原発関連を四問聞かせていただいて、終わらせていただきたいと思います。

 まず、四月二十七日に内閣経産委合同審査で議論がありまして、私どもの西村議員からの質問の中で、東京電力のリバイスされる前の、改定される前の道筋の問題がありまして、保安院から原子力安全委員会に説明がどうであるかということについて、原子力安全委員会の班目委員長の方から、よく説明を聞いていないので云々、こういう答弁があったわけであります。そして、ぜひそこはきちっと説明され、助言を受けるべきだということを西村議員の方から発言があったわけでありますが、その後どういうふうに措置されたのか、これを確認いたします。

寺坂政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる道筋に関しましては、原子力安全委員会にその直後にまず報告しつつ、四月十七日の、最初に発表されました道筋に関しましては、五月二日に開催されました原子力安全委員会におきまして、私どもの方から、安全性に関する確認を行う上で、必要に応じて原子力安全委員会の御意見を伺いながら東京電力に指示を行う、それから全体の進展等につきましても定期的に報告していくということを報告してございます。それを受けまして、冠水措置の実施などについて報告しながら助言をいただいてきております。

 あるいは、五月十七日にまた見直しがなされたわけでございます。そういった中で、道筋の改訂版自体の原子力安全委員会への報告はその後行ってございます。あわせまして、政府といたしましても、東京電力の福島第一原子力発電所事故の収束・検証に関します当面の取り組みのロードマップを取りまとめるに当たりましては、事前に原子力安全委員会の御意見を伺ったところでございます。水のバランスの話、汚染水の処理の話など、今申し上げました全体の動きとあわせまして、個別に安全性の確認あるいはその実施状況などを御報告しつつ、またあわせて、安全委員会からも御意見、御助言をいただきながら、全体として進めているわけでございます。

 今後とも、原子力安全委員会と連携しながら、その道筋の実現に向け、またロードマップの実現に向けまして対応してまいりたいと考えているところでございます。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 そういう意味では、きょう実は私、自分の質問主意書への答弁書も内閣からいただいているんです。原子力安全委員会と経済産業省原子力安全・保安院との間では適切に情報は今や共有されている、こういう答弁書もいただいているわけであります。

 これは海江田大臣に通告はしておりませんが、五月十六日の予算委員会あたりでも、まだ正確な情報をいただいていない云々ということを、時々班目委員長さん、そういうお話もありますけれども、やはり内閣として、今一体として物事に当たらなきゃいけないときに、事務局同士は、お役所の方々ですから当然意思疎通もしているはずですし、どうか余り、そういう周りが心配するような、それは多少、委員長さんというのは普通の方とはまた立場は違うんでしょうけれども、聞いていないとか正確なことは知らない、こういうのはもうそろそろやめていただきたいと思うんです。

 これは特に通告をしておりませんが、何か御感想があればお願いします。

海江田国務大臣 この質問は、通告されましても答弁が大変難しいかなと思います。

 ただ、私も委員会の質問を聞いておりまして、やはり、原子力安全委員会の委員長がそういう認識を持っているということは、これは決していいことではありませんので、それ以降、丁寧に安全委員会にも報告をするように、あるいは意見を聞くようにということを指示したわけでございます。それ以降はスムーズに事が運んでいると認識をしております。

橘(慶)委員 ぜひ引き続きよろしくお願いします。

 そして、十七日に一度目のリバイス、道筋の見直しがありました。私からの提案は、事象はどんどん動いていく、いろいろなことも中に入ってわかってくる、そうであれば、ぜひ、たまたま四月十七日から一カ月で一度リバイス、見直しをされたわけですが、これからもやはり定期的にこの工程表というものをローリングされながら、事態収束に本当に御苦労されている皆さんの認識と目的を一つにされて、今後も継続的に、地道にといいますか、御苦労でありますけれども、事に当たっていただいたらいいと思うのです。

 この定期的な見直しということについての御答弁をいただきたいと思います。

海江田国務大臣 おっしゃるように、五月十七日というのが、最初にこの道筋を策定しましてから一月でございましたから、そこでまさにリバイス、改定を行いました。そして、これからも毎月行っていくつもりでございます。

 あともう一つの区切りが、最初に発表しましたときから三カ月をステップワンとしておりますので、特にステップワンのときは、これが本当にどの程度守られたのか、そしてこの変更はどうすればいいのかということについても、一カ月ごととはまた別途、しっかりと検証をしていきたい、そのように思っております。

橘(慶)委員 よろしくお願いします。

 そして、実は今週、少し経済界の皆さんのお話を聞く機会がありまして、その中で一つ、経済界で御心配をされている向きがあるということがわかってまいりました。

 これは、きょう外務省から武藤官房審議官に来ていただいたわけですが、原子力発電所の今回の事象に伴う損害賠償、それは普通に考えると国内ということではありますけれども、御存じのように、そういったことで大気中に出たとか海洋に云々とか、こうなってきますと、一つの想定としては、海外で、例えばこういうことがあって私たちは迷惑したという、風評被害等を理由として訴訟が起きないとはだれも言えないということであります。

 その場合に、その訴訟、例えばある国で、A国ならA国でやった場合に、ではその裁判はだれがやるのかというと、裁判管轄権はどうなるのかなと。あるいは、そのときに日本国の裁判所じゃない方が判断したとすると、その賠償というのはどうなっちゃうんだろう、こういうことを実は懸念される声が出ておるわけであります。

 質問を一つにしていましたから、ちょっと細かく聞いていきますが、まず現状、今の日本の国際法上に置かれている状況において、今申し上げたような仮定の話の裁判管轄権とか賠償限度額というのはどういうことになるのか、武藤審議官に確認をさせてください。

武藤政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる原子力賠償に関する国際条約の中においては、裁判権が集中するといいますか、そういう事故が起きた国に集中するということがございますが、これを締結している国同士ではそういうことになりますけれども、そうでない場合には、またその他いろいろなところで判断されることになるかと思っております。

橘(慶)委員 どうしてもここはあえて、審議官が来ていただいたということで、確認の答弁をお願いします。

 そうすると、裁判管轄権というのは、普通に考えたら、例えばA国ならA国のところで裁判をされるということでしょうか。また、賠償額については特に定めはないということになるんでしょうか。一応確認をさせてください。

武藤政府参考人 原子力賠償に関する国際条約というものを結べば、先ほど申し上げましたように、その条約にもよりますけれども、基本的には一カ所に、事故の起きたところに集中するとか、賠償限度額等も定められてございますけれども、そういった条約を特に締結していないというようなことであれば、そこは必ずしも一律にこうであるということはないかと承知してございます。

橘(慶)委員 外務省さんのなかなかわからない答弁になっていくんですが。一律に言えない。

 まず、今、日本はそういう条約には入っていないんですよね。

武藤政府参考人 原子力賠償に関する条約については、パリ条約とかウィーン条約あるいはCSC、そういう三つの系統が存在しますけれども、そういったものについて、日本は現在入っておりません。これについてはいろいろ問題がございまして、裁判管轄権の集中にかかわる問題ですとか、そういったさまざまな内容を含んでおりますので、そういったことで、すべての利益、不利益、こういったものを十分に検討して判断していく必要があるというふうに考えております。

 先般、参議院外交防衛委員会で外務大臣の方からこれに関して答弁がございましたけれども、御紹介いたしますと、国際的な枠組みの加入について現段階で進めるという状況にはなっているとは必ずしも思いませんけれども、これを進めるという認識については、私自身も持たなければいけない、このように思っております、しかるべき時期に早急に取り組んでいきたい、このように思っております、このように外務大臣からも答弁しているところでございます。

橘(慶)委員 ぜひ海江田大臣、これは詰めていただいた方がいいと思います。

 もう少しわかりやすく言うと、入っていないので裁判管轄権が向こうへ行っちゃうんじゃないか、そこでクラスアクションとか起こされたらとんでもないことになるんじゃないか、だから早くこれは入った方がいいと。

 もう一つ聞きたかったんですが、実は、一つCSC条約というのを今言われたのですが、これがアメリカ、ルーマニア、アルゼンチン、モロッコ、あと一カ国入ると発効するんですよ。ではそれに今入ったら、今入ったって三月十一日の事象というのは果たしてそれはカバーされるのかどうか、そういう問題で、このことを結構経済界の方は心配をされている、こういう意味なんですよ。

 まず、審議官さんに遡及するかどうかということをお答えいただき、大臣からは、これからどうしようかということをお答えいただきたいと思います。

武藤政府参考人 遡及ということに関しまして言うと、この条約が仮に発効して、締約した場合に、同条約が適用されるかということについては、条約に明文上の規定がございませんので、我が国は締約国でないので、現時点で確定的に解釈することは難しいですけれども、ただ、一般論として申し上げますと、条約というのは不遡及が原則でございますので、既に発生した原子力事故に関して、同条約が遡及適用されるとの解釈をとるのは難しいというふうに考えてございます。

海江田国務大臣 この件につきましては、私もかねてから大きな関心を持っておりまして、外務大臣ともいろいろお話をしているところであります。

 ただ、余りそれ以上申し上げますといろいろな差しさわりがございますので、大きな関心を持って大臣間で協議をしているということだけはお伝えをしておきます。

田中委員長 大臣、早急に準備をする必要があるだろうということなんですが、その辺についての答えもしてください。

海江田国務大臣 まさに早急に準備をする必要がございます。そういう意識を持って協議をしております。

橘(慶)委員 最後になります。これもイエス、ノーで多分お答えできるというふうに事前に聞いていますので、一応確認だけさせてください。

 福島第一原発三号機、これは、昨年十月二十六日、プルサーマル運転を始めております。プルサーマル運転ということであれば、プルトニウムをMOX燃料に加工して軽水炉で使用するということになりますけれども、このことは今回の事故には特殊な影響は与えていないということだと思いますが、確認だけして、終わります。

海江田国務大臣 これも、私はかねて、かなり心配をしまして、イエス、ノーじゃありませんで、少し正確にお答えをいたします。

 実は三号炉の中には、五百四十八体、燃料がございました。そのうち、MOX燃料が三十二体でございます。ですから、およそ五%ぐらい。そのほかの号機というのは大体五百体ぐらい入っていますけれども、五百体のうち、これが燃えますと、一%ぐらい、やはりプルトニウムが出るんですね。

 ですから、その意味からいうと、プルトニウムは出ておりますけれども、それが一体どこに由来をするものということは実はわからないというのが現状でございまして、特別に、この三号炉がプルトニウムが出ているから何か問題があるということではないという認識を持っております。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

田中委員長 以上で橘慶一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲津久君。

稲津委員 それでは、通告に従いまして、順次質問させていただきます。

 法案の案件の審議に関して、まず、知的財産保護のための国際社会とのかかわり方についてということをテーマにして質疑をさせていただきたいと思います。

 最初は、日中韓のFTA締結交渉についてということでございます。

 今月の二十二日に行われました日中韓の首脳会議で、日中韓FTA締結交渉のいわゆる準備段階であります産官学の共同研究、これを本年中に終了させるべく加速化をすることで一致をした、このように承知をしております。この合意が額面どおりであれば、非常に意義のある、大きな話だというふうに思います。ただ、中国がこれまで主要な工業国と一切FTAを締結していないということがありまして、そうしてきますと、その中国が本気で自国の市場の開放をする決意をしたのかどうか、この辺はよくわからないところであります。

 そこで、まず海江田大臣にお伺いをさせていただきますけれども、この中国のFTA締結に向けての本気度というか、中国のこの時点での考え方、大臣はどのようにお思いか、この点からお伺いをさせていただきます。

海江田国務大臣 私もこの日中韓の会議に参加をしておりましたので、特に中国がどういう発言をするかということに注目をしていたわけでございますが、会議の中のやりとりというのは、お互い外交上の件でもございますので御紹介申し上げませんが、最後に共同会見を行いました。その共同会見の中で、実は温家宝総理が、ことしの年末までに三カ国のFTA産官学共同研究を終了させることに賛成し、来年交渉をスタートさせることを目指すことにも賛成をするとわざわざ言及をいたしましたので、私は、中国もそのつもりになっている、そういう判断をしております。

稲津委員 私は、日本の姿勢が非常に大事なことではないかなというふうに思っております。というのは、日中韓のFTAとTPP、これはどっちをどういうふうに見て進めていくのかという大きな課題があると思います。この時点で考えておかなきゃいけないことは、私は、むしろ中国に対しては我が国としては積極的に働きかけていくべきと思っておりますので、まず第一番目にそのことを申し上げておきたいと思います。

 次に移ります。

 次は、先ほど一部御議論もありました、重複しますけれども、確認の意味も含めてお伺いをさせていただきたいと思います。中国における模倣品、海賊版問題の現状分析ということについて伺わせていただきたいと思います。

 まず、我が国のソフト産業、これは御案内のとおり、その製造あるいは組み立て等多くの生産工程が中国を初めとする周辺各国に移管をされているという現実があります。国際的な分業体制が進展するということは、進出先の技術的な能力の向上など、相手国にとっても非常にプラスになる一面、ソフト産業などではいわゆる模倣品ですとか海賊版が発生するというマイナス面もあるわけでございまして、特に中国の市場は、日本製品を含めて先進国製品の模倣品が横行しているということがあり、知的財産権、とりわけその中核であります特許権の保護に対する挑戦が続いている、このように私は承知している次第でございます。

 中国における政治的、経済的リスク、これはいわゆるチャイナリスクと言われておりますけれども、特許庁の二〇一〇年度模倣被害調査報告書を見ましても、二〇〇九年度、模倣被害を受けた国としてやはり中国が第一位、約六六%、このようになっているところでございます。

 この報告書を見れば、近年、両国間で官民あわせて多くの取り組みをしているということ、また強化もしているということはわかります。その上で、このような取り組みによって現状は改善に向かっているのか、それとも、ますます巧妙化していって悪化の方向に向かっているのか、この点についての現状分析をお伺いさせていただきたいと思います。

    〔委員長退席、北神委員長代理着席〕

海江田国務大臣 委員は、特許庁の模倣被害調査報告書を引用されました。確かに、二〇〇九年度で六五・九%、その前の二〇〇八年度が六二・〇%でございますから、ふえているということで、今、その後のデータはございませんが、ふえているというのは、基本的に、日本の企業の中国への進出がふえていく、それに伴ってこうした模倣品や海賊版もふえているということでございますから、その傾向は減少していると考えられるデータは残念ながらまだございません。

 しかし、この問題に対しまして、日本政府は、官民合同訪中代表団の、これは二〇〇二年からたしか七回ほどでございますが、派遣をしております。あるいは、政府間の協議でもしっかりとこの問題を指摘しているところでございます。中国政府も、この問題を重視しまして、知財関連法の改正や知財権侵害の摘発強化を実施しています。中国行政当局による摘発件数は増加傾向にあるなど、一定の改善が見られていると思います。

 ただ、先ほどもお話をしましたが、日本の企業が、進出をしている企業の数が多くなる、それに伴う件数というのも恐らくふえていることが思料されますので、今後も、引き続き、この官民合同訪中代表団あるいは政府間協議などの場を通じて、この問題に対して改善方を中国に求めていくところでございます。

稲津委員 中国への進出が進んでいけば、当然、こうした比率も高まっていくんだということで、その上で、今、その対応についての一部御答弁もありました。

 そこで、今度は、我が国の方から中国に対して働きかけをどうしていくのかということについて、確認の意味も含めてお伺いをさせていただきたいと思います。

 中国の市場で横行している模倣品については、完全に違法であるというもの、それから中国の国の中ではこれは違法でないよ、こうされているものがあるというふうに認識しております。前者の方につきましては、これは中国当局の取り締まりを強化、徹底していく、これである意味では事足りる話ですけれども、後者の問題については、知的財産あるいは特許についての考え方、規制の方法など、中国政府と我が国との経済協議の場を通じて、できる限り、可能な限りここは統一していこう、こういうことが必要ではないか、このように思うわけでございます。日中韓のFTAの交渉が来年から仮に始まるとすれば、その交渉においてこの模倣品の問題ですとか海賊版問題にはどうしても大きく切り込んでいかなければいけない、それが望ましい、このように考えます。

 大臣はこの問題についてどのようなお考えなのか、見解をお伺いさせていただきます。

海江田国務大臣 委員御指摘のように、確かに、日本と中国の制度の違いと申しますか、中国は、製品の一部分のデザインについて権利を保護する法制度が整っていないということもございます。ですから、こうした問題が現在も発生をしておりますし、このまま放置をしておきますとこれからも発生をすることになりますので、今御指摘のような日中韓FTAの交渉開始ということも一つの手法でございますが、これは交渉のスタートを待ってということではありませんで、二国間の交渉なども通じてしっかりと日本側の立場を主張していかなければいけないと思っております。

稲津委員 ぜひ積極的な取り組みをお願いさせていただきたいと思います。

 そこで、次に伺うのは、先ほども議論がありましたけれども、模倣品・海賊版拡散防止条約、いわゆるACTAについてでございます。

 昨年の十月、このACTAの交渉が、交渉開始から二年四カ月で大筋合意、このように承知をしております。このACTAについては、WTOなどの既存の枠組みに頼ることなく、また、地域的な制限がなく、全世界から知的財産権保護に関して好意的な国を募って、その上で自主的な枠組みをつくって、多数の国との間の条約と、このように認識をしているところでございます。

 この知的財産保護に向けた国際的な取り組みとして、早期の署名、批准が望まれるところでありますけれども、発効に向けての見通しがどうであるのか。あわせて、現状、中国はこの条約の交渉に参加していないということについて、今後、我が国としてここのところも働きかけていく必要があると思いますけれども、この点について御答弁をいただきたいと思います。

中山大臣政務官 ただいまACTAのことについて言及がありましたが、ACTAは、昨年十月の東京会合における大筋合意の後、本年五月一日からACTA参加国の署名のため開放されております。今後は、ACTA参加各国が署名、批准の手続を進め、批准国数が六カ国に達したときにACTAが発効することになると思います。

 ACTA発効は、世界経済における知的財産保護の強化の実現に向けた重要な一歩であり、我が国自身の批准も含めて、早期に批准国が必要数に達するよう、参加各国の速やかなる批准を働きかけていきたいというふうに思います。

 私も、実は、APECに行ったときにいろいろお話をしたんですが、ステークホルダーの国家としていろいろそういうこともお願いしますと。また、模造品についてもかなり議題になりまして、各国のいわゆる経済の倫理とかそういう問題も随分出されました。一生懸命引き入れてやっていくという努力が今後も必要だというふうに思います。

稲津委員 その努力とあわせて、私は、このACTAについては、チャイナリスクをとっていくためにはある意味大変大事なポイントかと思っていますので、この点についても申し述べさせていただきたいと思います。

 次は、ITセキュリティーの問題についてなんですけれども、サイバーテロ等に対応したITネットワークのセキュリティー確保、これが安全保障上大変重要な位置づけになっている、このように思います。

 しかし、一部の国においては、政府がいたずらに独自のセキュリティー認証の導入ですとか国産の技術採用等に走ることによりまして、IT機器や設備の自由貿易を阻害するおそれが出てきている。特に中国とインドにおいては、日系のメーカーが非常に困難な場面に直面している、このようにも聞いております。

 中国の方は、二〇一〇年の五月からITセキュリティー製品のいわゆるソースコード開示を義務づけたということでございます。しかし、日、米、ヨーロッパでは連携をしてこの制度の再考、撤回を求める要請の中で、政府調達に限り適用になったと承知をしております。

 一方で、インドの問題です、インドは、昨年の七月に、インド国内の携帯電話の基地局に、新規参入する際はソースコードの提示を義務づける、このように通達をされました。現在、日本とアメリカ、ヨーロッパの反発を受けて、通達の実施を凍結あるいは改定案を検討中と聞いております。

 そこでお伺いをさせていただきたいのは、外国におけるソースコードの開示義務が企業にとってどのような不利益をもたらすのか。また、インドのことですけれども、インドにおける改定案の進捗状況はどのようになっているのか。二点、お伺いさせていただきたいと思います。

松下副大臣 今の委員のお尋ねの件につきましては、委員を初め多くの議員や関係者から関心と強い懸念を示されております。我々も大変心配しております。

 製品のソースコードというものは、これは企業にとって重要な知的財産でありまして、いわば製品の詳細な設計情報そのものであります。ですから、ソースコードの第三者への開示というのは、メーカーの競争条件を悪化させたり、製品のセキュリティー上の信頼性を低下させるおそれが極めて強いと心配しております。

 御指摘のインドの制度は、我が国企業を含む外国メーカーにとっても事実上の貿易障壁となっております。可能性が非常に高いというよりも、なっております。欧米とも連携しながら改善を働きかけているという状況でございます。

 これを踏まえて、インド政府は、規制強化案を今一たん凍結しました。規制案の見直しを行っているというふうに認識をしております。

 今後とも、状況を注視しながら、いろいろな場面で適切にしっかりと対処していきたい、こう考えております。

稲津委員 このソースコードの開示については、今後、ブラジルも同じように導入を検討されている、このようにも聞いております。結局、どこか一カ国でもこの制度を導入して、それが前例になってしまうと、これは大変困ったことになるだろう、こう思っておりまして、私は、ここはしっかりと注視をしていく必要があるだろうと思います。

 そういう意味では、IT製品のセキュリティー確保のために国際相互認証の枠組みがあるというふうに聞いておりますけれども、日本を初め二十六カ国が参加しているこの枠組みの概要とともに、今後、新興国などの各国に参加を働きかけていく必要があるかな、私はこのように思っておりますけれども、この点についてのお考えをお示しいただきたいと思います。

松下副大臣 委員御指摘のとおりだと。同じ土俵に立っております。

 CCRAと略称しています、今委員御指摘のその枠組みですけれども、これは、各国の第三者認証機関がIT製品のセキュリティーを認証する基準を統一化して、認証の効果を加盟国間で相互に有効とするものでございます。これによりまして、メーカーは、外国当局への、いわゆるソースコード、情報そのものですけれども、その開示を行わずともセキュリティーが確保された製品を提供できることとなるということでございます。我が国としても、他の加入国とも連携しつつ、同枠組みにまだ加入していない新興国がございますので、加入を働きかけていきたいと考えております。

 インドは既に新興国として加入済みでございますけれども、御指摘のように、中国、ブラジル、ロシア、ベトナム、タイといった国々がまだ入っていませんので、これはいろいろな場面で、バイラテラルに、あるいはいろいろな国際会議の場を通して、しっかりと我が方の主張をしながら入っていただくように働きかけております。

稲津委員 ぜひ協調すべきところは協調していただきながらも、我が国としても切り込んでいくという姿勢が非常に大事だと思っています。そのことを申し上げさせていただきたいと思います。

 法案に関係する審議はこの辺で一たんとめさせていただきまして、福島第一原発のことに関しまして、若干、通告も一部ありますけれども、質問させていただきたいと思います。

 まず初めに申し上げたいことは、これはきょう御出席の議員の皆さんも御承知おきのとおりだと思いますけれども、東京電力が、第一原発の一号機への海水注入は、結果として中断はなかった、所長の判断で実はやっておりました、注入しておりました、こういうことが報道されました。

 こうなってきますと、正直言いまして、何をどこまでこの発表について信じたらいいのかということが、国民だれしも非常に疑問に思うわけです。

 この新聞報道を見ますと、実際には、海水注入については、総理から了解が得られていないという連絡があって、総理の判断がないからできない、そういう空気を伝えて、テレビ会議で、一たん中断しようと、本店と所長が協議の上合意したということですね。

 ところが、その合意したはずの所長が、なぜ勝手にというか判断でこの継続を決めたのか。官邸の指示にある意味では従わなくて注水を継続したということがどうなのかということがまず一つあります。

 そしてもう一つは、これは実際に東電の方からの、武藤副社長の声ですけれども、原子炉を冷やす技術的判断は妥当だった、報告が今日になったことは残念だと。他人事のような、全く真摯な対応になっていない。

 このことは、きょうここで議論するつもりはありませんけれども、別な機会にしっかり徹底的に議論させていただいて、ただすべきところはしっかりただしていきたい、このように思っております。

 きょうは、その上で、いわゆる警戒区域への一時帰宅について数点お伺いさせていただきたいと思います。

 御案内のとおり、一時帰宅についても順次始まってまいりまして、きょうも一時立ち入り、一時帰宅ということで進んでいると思うんですけれども、実は、一点だけ申し上げますと、私は、原子力災害現地対策本部の一時帰宅の実施要項を見たときに非常に違和感を感じました。図らずも先ほど私が一時立ち入りというふうに触れてしまいましたけれども、実は、これは一時立ち入りのスキーム、要項ということです。

 何が違和感があるかというと、被災者の側に立っていない、そういう姿勢がにじみ出てくる。何も、私は、一時立ち入りと一時帰宅のことを取り上げて、文言をとらえてどうこう言う筋のものではありません。しかし、警戒区域に一時的に入るんだから一時立ち入りだろう、こういうことでこういう要項をつくっているのかもしれませんけれども、実際に、例えば避難してくださいということで警戒区域から移動を余儀なくしてしまったのは、これはまさに政府ですよ。だから、そこのところを考えていくと、これはやはり一時帰宅ということで対応すべきだ、私はこのことをまず冒頭に申し上げたいと思います。

 そこで、まず第一点目ですけれども、昨日、五月二十六日までの中で一時帰宅の状況はどうなっているのか、この点について御答弁いただきたいと思います。

松下副大臣 今、冒頭御指摘の点は、十分我々も心して、被災者の方たちの気持ちの中にしっかり寄り添ってやっていきたい、そういう気持ちは全員に言い聞かせてこの問題に対応しておりますので、行き届かないところもあると思いますけれども、努力はしてまいります。

 この一時帰宅、一時立ち入りについては、私自身が深くかかわって当初から進めてまいりました。五月十日に第一回の川内村から始まりまして、きょうで、二十七日現在、三百五十世帯、五百八十八人というところまでこぎつけました。

 反省するところもたくさんございまして、タイベックスが上下つながっていますので、非常に暑い。そして、暑さに向かっていって、非常に着づらい、動きができないというところもありまして、これをセパレートにしたり、眼鏡とフードがありますと視野が狭くなりますので、そこをもう少し広くするような仕組みにしたり、いろいろ工夫を重ねながら努力をしております。

 また、透明の袋をお渡ししているんですけれども、黒い袋にした方が中が透けて見えなくていいということで、細かいことにも配慮しながら一つ一つ丁寧に進めております。何よりも健康管理をしっかりやっていくということで、追跡調査も含めてしっかりやっていきたい、こう考えております。

 全体が二万七千世帯、二十キロ以内に住んでおられる方たちは約七万二千人でございますので、その中から希望者を募りながら、恐らく二万世帯ほど、五万人近くになると思いますけれども、これから長い夏に向かって、とにかく丁寧に、そして慎重に、真剣にやっていきたい、こう考えております。

稲津委員 対象が九カ市町村にわたっているということで、今お話がありましたように、大変多くの方々が該当になります。

 その上で、お聞かせいただきたいんです。

 政府の被災者支援に向けた工程表のことなんですけれども、避難住民の方々の一時帰宅を七月いっぱいぐらいまでには一巡させる、このように計画がありましたけれども、私は、現状、新聞報道等を見ておりますと、これはほとんど無理だろう、これはもうこの段階から計画の変更をせざるを得ないだろう、こう思いますけれども、どうですか。

松下副大臣 七月いっぱいに一巡目を終わりたい、こう考えております。大変困難が伴うことは十分わかっておりますけれども、強い希望もございますので、我々がしっかりと準備を整えて、そして多くの人たちの理解と協力も今いただいておりますので、しっかりとなし遂げたい、こう考えております。暑さに向かって健康管理、それからプラントの状況等をしっかり把握しながらこれはなし遂げていかなきゃいけない、こう思っております。

 今、そろりと、四台から五台ほどのバスで予行演習的に第一回目から始めましたけれども、これからは、二十五台あるいは五十台を超えるバスを、それぞれの地点をつくって、恐らく同時にずっと入っていって、とにかく七月中には、不自由をかけている皆さん方にぜひとも必需品は持って帰ってもらうということは全力を挙げてやり遂げたい、こう思っております。きつい日程もありますけれどもとにかく努力したい、そう考えています。

稲津委員 私は決意発表を聞いているんじゃなくて、七月までに一巡をするということを今改めて御答弁されましたけれども、先ほどお話のあった五万人希望されると推定される方々の、一体何人がこの七月中までに一巡ということで考えていらっしゃるんですか。

松下副大臣 今、コールセンターや各役場でそれぞれ希望をずっと募っておりまして、今のところは一万八千世帯、約三万人強の人たちが入りたいという希望をとらえております。

 これはもう少しふえていくかと思いますけれども、とにかく全力を挙げて一巡はなし遂げたい、こう考えております。

稲津委員 あえてこれ以上このことについて触れませんけれども、本当の意味で実効性のあるものを目指していただきたいと思うんです。そのことを強く申し上げたいと思います。

松下副大臣 準備に大変な時間がかかります。これから毎日運行して、このオペレーションを実行します。事前の準備、百人から三百人ほどを動かしますけれども、一人一人におりる場所と、乗っていただく場所の図面、地図をお渡しして、一人一人に線量計、トランシーバー、そして必需品の袋をお渡ししながら、医療関係の態勢もしっかり整えながら、百二十人から百三十人ほどの人たちもそのサポートとして入っておりますので、とにかく暑い夏に向かって大変な労力もかかりますけれどもやり遂げたい、こう考えています。

稲津委員 時間が来ましたので簡潔に終わりますけれども、一時帰宅された方々からどのような意見を伺って、その問題点の解消のためにどう対応するのかということを指摘も含めて伺いたいと思います。

 一つは、多くの寄せられている声の中では、滞在の二時間というのは余りにも少な過ぎるということ。それから、先ほど御答弁いただきましたけれども、一世帯当たり七十センチ四方のビニール袋じゃ、本当に持って帰りたかったものも持って帰れなかったと。これは相当厳しい声が寄せられていますよ。それからもう一つ、次の帰宅の時期はいつになるのか、こういう声もあります。もちろん、今回行った方々については、まだ行っていない方々がいらっしゃいますので、そのことについて直接は触れておりませんけれども。

 そういうことを考えていったときに、ぜひこうした一時帰宅をされた方々の御意見とか問題点をしっかり受けて、そこをいろいろ改善できるような仕組み、システムをつくるべきだ、このように思っております。

 これは今さら言ってもしようがないんですけれども、改善されたことだからこれはこれでいいと思うんですが、冒頭申し上げましたように、避難をしなさいということで実際に避難されている方々の立場に立って物事を決めているのかどうか、ここは大事だと思います。例えば、当初は、防護服着用中は一時帰宅する際はトイレを認めないということも実際にこれには書かれておりました。今は、自宅内だったら防護服を脱いで用を足すことも認めた。それから、自己責任で立ち入るという同意書を皆さんに書かせた。これは、皆さんから非常に違和感があるということで撤回されたというふうに聞いております。

 私は、こういうことを踏まえて、ぜひそうした一時帰宅された方々のお声、問題点、要望をしっかり随時拾っていけるシステムをつくるべきだ、このことを訴えさせていただきますけれども、コメントがあれば、最後に御答弁いただきたいと思います。

松下副大臣 第一回目から予行演習も含めて実行してまいりましたけれども、毎回反省会を開き、入った方たちのいろいろな御意見を伺いながら、滞在時間、持ってくるもの、そこを改善もしております。

 第一番に考えることは、まだ危険地帯に入っているということ、高齢者の方も多いということ、そして依然として線量の高い地域もあるということを含めますと、やはり余り長い時間の滞在も健康上からいって問題があるという御指摘もございまして、これは、今とにかくこれでやりますけれども、二巡目、三巡目、さらに改良を加えながら、避難している人たちの希望がかなっていくように、危険地域の中の状況もしっかり把握しながらやっていきたい、こう考えています。御趣旨はよくわかりますので、しっかりやります。

稲津委員 終わりますけれども、ぜひそういうシステムをつくっていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

北神委員長代理 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、特許法等の一部を改正する法律案と不正競争防止法の改正案と二法でございますが、それぞれ前回の改正は、特許法は平成二十年でございましたし、不正競争防止法は平成二十一年でございました。ですから、それぞれ三年ぶり、二年ぶりということなので、本当は、我々野党の希望としては、しっかりと審議時間をとって法改正の内容について徹底的に議論した方がいい、そういう考え方でございましたが、残念ながら、参議院の審議は、震災の渦中ということも理由に一時間二十分程度で終えているわけでございます。

 我々としては、衆議院としてはしっかりと時間をいただきましたので、主に法案の内容について質疑をさせていただいて、立法者である政府の考え方をぜひ確認させていただきたい、そのように思います。残った時間で、震災関連で若干お聞きすることがあるかもわかりませんので、対応をお願いしたいと思います。

 まず、特許法についてですけれども、今回の改正は、社外技術を活用して研究開発や製品化を行う近年のオープンイノベーションが進展している環境変化に対応して、我が国の経済成長を支える新たな技術や産業の創出を促進するための必要な改正であると私も思っております。

 そこで、事前に特許庁からもいろいろお聞きしておりますけれども、きちっと議事録に残しておかないといけないという点もありますので確認をさせていただきたいんですが、今回の四本柱のうちの一つであるライセンス契約の保護の強化について、まずお聞きをしたいと思うわけであります。

 一つの製品を開発、製造することについても、自社の技術のみではなくて、さまざまな社外技術を活用しての開発というのが多くなってきているわけでございまして、その中で他社の特許発明を利用することが非常に増加している。そういう状況から、ライセンス契約に基づき通常実施権が設定されることが非常に多くなっているんですが、その中で今回の改正のようなライセンス契約の保護の強化というのが必要だということはずっと言われてきました。

 しかし、今まで、現行制度上、通常実施権については登録しなければ第三者に対抗することができない、そういういわゆる登録対抗制度というのがとられてきたんですが、実質この登録対抗制度がどこまで活用されているのか、その実態を見ますと、これは特許庁による国内企業へのアンケート調査でも、通常実施権についての登録率が〇%または一%未満と回答した企業の割合は八七・二%ということで、一言で言うと、ほとんど登録がなされていない、そういう実態があるわけであります。

 こういうライセンスの法的保護の必要性が高まっている一方で、現行の通常実施権登録制度は、この数字を見ても必ずしも十分に活用されていなかったというのが現状であると思うんですけれども、その理由はどういうところにあるというように経済産業省あるいは特許庁として見ておられるのか、まず御答弁いただきたいと思います。

海江田国務大臣 佐藤委員にお答えを申し上げます。

 委員御指摘のように、現行の登録対抗制度は、ライセンスを受けた者がライセンスを特許庁に登録しないと、特許権を譲り受けた者から差しとめ請求等を受け得る制度であります。

 このライセンスの登録につきましては、一つの製品開発に当たり多数のライセンスが許諾されていることも多く、そのすべてを登録するのには膨大な手間とコストがかかること、これが一つの理由。

 それからもう一つは、登録を行うにはライセンスを受けた者と特許権者が共同して申請する必要があるわけでございますが、特許権者が登録に協力する義務はなく、特許権者の協力が得られない場合があることなどの事情がありまして、ライセンスの登録が実務上困難であることから、登録対抗制度は、先ほど委員も数字をお挙げになりましたけれども、十分活用されていないという認識を持っております。

佐藤(茂)委員 それで、今回の改正案では、当然対抗制度、一言で言うと登録を要件とせずにライセンス契約の存在のみで通常実施権を第三者に対抗できる制度というのを導入することが今回の改正案の一つの大きな柱にされているんですけれども、この当然対抗制度を導入することによってどのような効果が実際に得られるのか、その法改正の効果についてどのように考えておられるのか、ぜひ経済産業大臣の見解を伺いたいと思います。

海江田国務大臣 今回の改正によりまして、ライセンスを受けた人の権利を守ろうということが大変大きな考え方でございます。

 そして、こういう形でライセンスを受けた者の地位が守られることによって、片方でイノベーションのオープン化という問題がございますから、そうしたイノベーションのオープン化などの環境変化によって多数のライセンス契約が締結され、多数の特許権が譲渡されている現状において、イノベーション促進の立場から意義があるというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 そこで、私は、きょう質問しようと思っていたのを自民党の望月先生や橘先生もきめ細かく聞かれたので重なる部分が結構あるんですけれども、今改正案について、また積み残された問題等についてさらに確認をさせていただきたいと思うんです。そういう一部重なっている部分はほとんど重複を避けたいと思いますが、党がそれぞれ違うので、先ほど質問があったというような答弁でなしに、しっかりと答えていただきたいんです。

 やはり、これは長年の大きな問題として言われている、ダブルトラックの問題というのが非常に大きな課題だと思います。特許の有効性に関する判断が無効審判ルートと侵害訴訟ルートの二つのルートで行われる、いわゆるダブルトラックの問題については、この二つのルートがあるがゆえに紛争処理の結果の予測というのが非常に困難である。

 要するに、両ルートにおいて判断そごが生じるという点がずっと指摘されておりますし、さらには、重複して争うことによって社会経済的に効率が悪いんじゃないのか、そういうような指摘もありますし、特許権者の手続負担がそれでふえておる、そういう御指摘もあります。

 ですから、私は、今回の法改正に当たって、そういうダブルトラックの問題等について、今まで指摘されている問題をどのように解消されようという方向で法改正されたのか、まず確認をしておきたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 ダブルトラックについての問題でございます。

 この問題につきましては、さきの産業構造審議会でも大きな議論になりました。議論になりました点は、今御指摘いただいた内容と重なってございます。すなわち、特許の有効性が裁判所と特許庁の双方で争われることによって、判断のそごが生じてしまうのではないかという問題。また、特許権者が権利を行使するために裁判所及び特許庁の双方の場で勝たなければならず、特許権者の負担が大きい、こういう問題が非常に大きい問題であるという認識で審議会でも議論をしていただきました。

 審議会での議論の方向性は、まず、今申し上げました判断そごの問題につきましては、無効審判のさらなる審理の迅速化等進行調整の運用により改善できる余地が大きいのではないだろうかということが示されたところでございます。また、後段の特許権者の負担の問題につきましては、無効審判等の審決確定に係る主張を制限して再審による紛争の蒸し返しを防止する、こういった制度的な対応をすることが負担の軽減につながるのではないかというお考えを示されたところでございます。

 今回御提案申し上げております法案の中身は後段の制度改正の部分でございますけれども、私どもにも関係がある運用改善の問題もあわせ御指摘をいただいているというのが、審議会での御議論の結果あるいは方向性でございました。

佐藤(茂)委員 そこで、経緯があって今はダブルトラックと言われる制度になっておるんですけれども、平成十七年四月に百四条の三という規定によってそういうことが可能になってきたことそのものについて、これは産業構造審議会で相当議論もされているとは思うんですけれども、そもそも見直して、要するに、もともと特許庁の判断というものが無効とされるケースが非常に出てきているわけですから、技術専門性の高い特許庁の無効審判制度を本当に生かした制度への再構築というものももう一度考えていくべきではないのかな、そのように私は思うんですけれども、特許庁の見解をぜひ伺っておきたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども御答弁申し上げましたように、この問題は非常に大きな問題でございますので、産業構造審議会でも大変活発な御議論をいただきました。

 その中身は、ダブルトラックに関して現に発生していると指摘されている問題について、二つの点で、再審による紛争の蒸し返しということについては、再審の制限という制度的手当てをすべきである、あるいは無効審判のさらなる審理の迅速化等進行調整の運用の改善を図るべきである、そういうことがなされれば現行どおり両ルートの利用をするということでよいのではないかというのが、産業構造審議会の今回お出しいただいた結論でございます。

 その意味で、私どもといたしましては、まずここでうたわれている再審制限導入という制度の改善をお願いしているわけでございますけれども、このほかに、先ほど申し上げましたように、我々行政サイドあるいは司法サイドともども運用の改善を図らなければならないという宿題もいただいております。その二つのことができれば今のままでよいのではないかというのが産構審の答申でございますので、今、法律を通していただいて、再審の制限というのがどのように運用されていくのか、あるいは我々に宿題として課された運用の改善というのが実を結んでいくのか、しっかり努力をしていく必要がございますし、その中で、このダブルトラックの問題についてどう考えていけばいいのか、引き続き我々は努力をしながら考えていかなければいけない問題である、このように認識をしているところでございます。

佐藤(茂)委員 我々も、この経済産業委員会にいる立場として、今回の法改正で蒸し返しの問題が実効性をどこまで上げるのか、さらに、もう一つ言われた運用の改善についても、本当にこれからどう努力されていくのかということについてはしっかりと見届けていきたい、そのように思います。

 次に、ユーザーの利便性の向上というところに当たるかと思うんですけれども、特許制度における期間徒過に対する対応について確認をしておきたいと思うんです。

 今回、改正点で指摘されたんですけれども、現行の特許制度では、特許料及び割り増し特許料の追納期間等の限られたものを除いて、期間徒過後の救済手続というのは基本的に設けられていないんですね。

 また、特に、今回の部分でさわられていますが、外国語書面出願の翻訳文であるとか外国語特許出願の翻訳文の提出手続については、期間を徒過した場合の救済手続が設けられていないということがございます。

 もう一つは、特許料等の追納期間に関する救済についても、救済が認められる要件が欧米と比べても非常に厳格であって、実質的な救済が図られていないということが指摘をされていたわけでございますが、今回の特許法改正において、そういう期間徒過の問題について、救済手続をどのように図られたのか、その内容についてお尋ねをしたいと思います。

中山大臣政務官 今佐藤委員が言われた項目、一応全部緩和をしていく、こういうことでございます。

 ユーザーがどういうことを考えているか。やはり、自分たちが特許を取っても、何か、今回の災害みたいなときにおくれてしまったとか、いろいろなことがあり得るわけですね。ですから、取った権利が簡単に奪われないように、委員のおっしゃったとおり緩和をするということでございます。

佐藤(茂)委員 それで、望月委員のときの答弁にも出ていましたが、特許法条約というのが平成十七年から発効しております。国際調和の観点からも、この特許法条約というのは、なるべく救済していこうという考え方に基づいた極めてユーザーフレンドリーな手続の導入であるとか、国際的な手続調整を目的とした国際条約なんですけれども、これに準拠したさらなる救済手続というのは常に心がけていかないといけないであろう、これは当然だと思うんですが、今、日本として、PLT、特許法条約への加盟に向けての取り組み、検討というのはどうなっているのか、また、加盟に当たってどういうことが課題だというように考えておられるのか、まず経済産業省の考え方をお聞きしたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のPLTでございますけれども、これは、企業の国際化が進んでくる中で、各国、区々分かれる制度のままではいけないのではないだろうか、したがって制度の調和を図っていくべきだというのが一つ大きな流れとしてございます。その制度の調和を図る際には、実質的な制度の中身の調整を図るとともに、手続の面でも調整を図っていくべきだという考え方がございます。ただ、より重要なのは、中身、実質でございまして、きょう大臣からも御答弁申し上げましたような、国際的な実質的な中身の調和の努力が非常に大事になってきております。

 ただ、なかなかこれは時間がかかりますので、それでは合意のしやすい手続面だけでも先に合意をしようかといって、できましたのがこのPLTでございます。その意味では、PLTの方向性は私ども大変正しいことだと思っておりますけれども、現状は、発効はいたしましたけれども、我が国を初め米国、中国、韓国、欧州、ドイツ、カナダといった特許の主要国は、まだ残念ながらこのPLTには入ってございません。それは、主要国は、今申し上げましたように、まず中身の議論を先に進めていくことが大事だと考えていて、そちらの議論に注力をしているということ、あるいは、PLTに入るといたしましても、いろいろな制度を直さなければいけませんので、非常に率直に申し上げますと、特許制度ができたばかりの国はゼロからPLTに合わせて制度をつくればいいので入りやすいのですけれども、長年の歴史を持っているところは直すコストが大きいというような要素もあろうかと思います。

 他方で、救済の方法につきましては、PLTというのは一つの準拠するべきものでございますので、PLTにどう入っていくかということとは別に、PLTの中身をしんしゃくしながら制度をどうつくっていくかという問題もあわせてあるものと思っております。

 今回の法改正におきましては、PLT準拠ということで検討いたしましたけれども、その中には、例えば特許審査期間、請求期間が過ぎてしまったものをどうするかというような論点がございます。これはPLTでは救済の対象になっているのですけれども、その期間が過ぎてしまえば特許にならないわけでありますので、実は、ユーザーサイドでも賛成という方と反対という方もおられまして、審議会で議論いたしましても、ユーザーサイドの意見がまとまらなかったために救済の拡大ができなかったようなこともあったわけでございます。

 いずれにいたしましても、特許権の使いやすさということと国際的な調和ということを頭に置きながら、引き続き努力をさせていただきたいと考えております。

佐藤(茂)委員 もう一点。これも望月委員と重なるんですけれども、質問された部分は割愛して、今回の改正で、ユーザーの利便性の向上で、特許料等の減免制度の拡充、意匠登録料の引き下げ、国際出願手数料の引き下げ、こういう、料金に絡むものを引き下げされておるんですけれども、政令に関する部分で、審査請求料が、今平均二十万なのを十五万、一言で言うと約二五%引き下げる、この程度に終わっているというのは、私はやはり不十分だと。

 それは先ほどの認識と全く同じ立場でございまして、今は、東日本大震災によって、被災地域だけではなくて全国的に景気が停滞して、産業の競争力というのは弱体化しているんですね。そのときに、これからもう一度復興に向けて産業に力を入れてもらおう、知財についてももっと力を入れていこう、そういう姿勢をやはり政府として示すべきではないか。

 そういうことからいうと、平成十六年の四月に二倍に引き上げたものを、今回二五%カットではまだまだ高いんですよ。やはり、以前の、平成十六年の四月レベルに戻すために五〇%引き下げというところまで思い切った措置を講ずる必要があるのではないか、そのように思うんですけれども、経済産業省の考え方をお聞きしたいと思います。

中山大臣政務官 今お話しのとおり、一時引き上げをした。ただ、審査請求と登録料金をうまく調整したりしていろいろ合理的なことをやってきておりまして、実は、今回も合理的な手段を講じて料金見直しに伴う減収というのは百五十億円、これは大変大きいわけでございまして、特別会計の性質上、何とかうまくやりくりをしていこうということで、二五%ぐらいならばということでございますし、いろいろな減免措置を初めとして、もし中小企業の方がお困りであれば、いろいろな融資、対象もしっかり考えていかなければいけない、このように思っております。

佐藤(茂)委員 もう一つは、今、東日本大震災のことを言いましたけれども、東日本大震災の復興のためには、新規産業の創造であるとか新技術の創出を視野に入れて復興に結びつけていくべきであると私どもは思っております。そのときに、特許制度などの知的財産制度というのは大いに活用していくべきである。そういう観点から、きょう、具体的に、そういうことができるのかどうか、お聞きしたいわけです。

 被災地に本社を置く中小・ベンチャー企業が、もうほとんど、実際のところ工場も被災してしまったとか土地もほとんど使い物にならぬとか、そういうところも出てきているわけですね。その中小・ベンチャー企業がそこで所有している特許権等の知的財産権を担保として、また、それに対して信用保証協会がこれを保証して、復旧または新規の設備投資、あるいは研究開発費用等に特別融資するような制度を今の政府として考えていくべきではないか。

 これは、工場もやられているとか土地もほとんど使い物にならぬということで、立ち上がるのに、再建は容易ではないと思うんですけれども、そういう知的財産を担保とした特別融資制度の創設について、経済産業省としてどう考えておられるか、お聞かせいただきたいと思います。

中山大臣政務官 知的財産を担保にというのはいろいろ議論のあるところでございますが、そういうものも含めてこれからしっかり考えていかなければならないというふうに思っております。

 やはり、知的財産というくらいですから、それは当然財産であって、これをどのくらいに評価するか、そういう査定も必要なのかなというふうに思います。今までも、よく、中小企業基盤整備機構か何かでこれはいい発明だとか言われても保証協会の保証がつかなかったり、こういうことじゃしようがないので、やはり、これが本当に知的財産として有効であればそこにちゃんと貸し付けであるとか保証協会の保証とか、そういうものをつけるべきだと私たちは思っております。

佐藤(茂)委員 私は、新たな一歩を、壁を破るものとしてぜひ考えてもらいたいなと思うんですね。

 もう一つは、今、特別委員会で東日本大震災の復興基本法案の議論をしています、政府案、自民党さんの案。私どもも案をまとめまして、中身をちょっとチェックしたんですけれども、私どもの案の特徴としては、復興特区制度の創設というのを東日本大震災復興基本法案の中にうたっているというのが、実は政府案と自民党さんの案との違いです。

 そういうものが成り立つかどうかは別としても、被災地の経済振興のために、こういう知財のような成長分野について経済特区を指定して、規制緩和された経済特区に、全国、あるいは世界と言ってもいいと思うんですが、そういうところから中小・ベンチャー企業を誘致して、全部の企業というわけにいかない、業種を絞って、例えば、今政権で力を入れている新エネルギーとか省エネ、あるいは健康・医療産業、コンテンツ産業などに特定した産業を起業し、かつ国策として育成していくというのも一つの復興の道ではないか、そのように思うんです。

 そういうところで、税の話は財務省ですけれども、例えば法人税も減免したり、あるいは外国人の入国規制緩和とかした上で、今回テーマになっている特許等の取得、維持に関しても、出願料とか先ほど議論しました審査請求料なども無料化に近いような減免をして被災地の産業復興を加速させるような、そういう思い切ったことをしないと、この地域はなかなか復興していかないのではないか、そういうように私は考えるんですけれども、そういう特区を活用しての、知財を本当に生かしたような復興のあり方について、経済産業省として考えておられることがあれば御答弁いただきたいと思います。

中山大臣政務官 私、最近よくいろいろな会合に出て申し上げるんですが、今こそ政府系金融機関の存在感を示すときでございまして、今委員のお話のようなことについてファンドを設けるとか、政府系金融機関でそういうものをしっかりやる必要があると思うんですね。ですから、私たちの考え方としては、政府系金融機関で今みたいなことをやる。特区という形でなるべく新しいことを創出したいというふうに思っております。

 政府系金融機関の人たちはかなりやる気でおりますので、ひとつよろしくお願いします。

佐藤(茂)委員 あともう一つは、今回、この法改正によって知的財産制度の拡充強化が図られるんですけれども、望月委員も最後に指摘されたと思うんですが、この知的財産制度の担い手である弁理士制度の拡充強化というのも当然不可欠だと思うんですね。先ほど答弁で、平成二十五年の見直しを目指して協議に入っているんだということでした。

 そこで、もうちょっと具体的にお聞きしたいのは、今、一言で言うと、質の余り高くない人が相当ふえてきているのではないのか、弁理士さんの仲間からもそういう声が出てきているわけです。ですから、これからそういう弁理士の試験制度の見直しについては、質が高くて、なおかつ国際性に富んだ、そういう人材をどう育てていくかという視点で、一つは、ほかの士業の方々の免除規定なんかももう一回見直すことも含めて検討すべきだし、あるいは国際条約もしっかりと知識として身につけているかどうかを試験のときにちゃんとチェックする、必須科目にするというような、そういう望ましい弁理士制度というか、もっと言ったら望ましい弁理士の試験制度の再構築のための検討というものを図っていくべきであると思うんです。

 これから検討をされようとしている方向性について、政府の考え方をお聞きしたいと思います。

海江田国務大臣 この弁理士制度の改正は平成十九年ですから、そして五年以内にということですから、まさにこれから新たな弁理士制度のあり方について、今、日本弁理士会と意見交換をしているという状況でございます。

 その方向性でございますが、今、佐藤委員がお話しになりました国際性というんですか、これは、中小企業がどんどん海外でそうした知財の権利をしっかりと確保していこうという流れがございますから、それに適合した弁理士さんを育成する必要があろうかと思いますので、そういう方向で意見交換を今行っているところでございます。

佐藤(茂)委員 そのときには、きょうは質問しませんが、具体的に業に携わっておられる方々の声も、ぜひこれからの検討の中で、されると思いますけれども、しっかりとお聞きして、方向性を間違わないようにしていただきたいと思います。

 あと一分ほどありますので、最後に震災関連で大臣にお聞きをしたいんです。

 今私が気になっておりますのは、五月二十五日に電力不足対策で節電の例外事項というのを発表されました。ただ、その大前提としては、既存の電力の安定供給ができることが必須条件であります。これは、既存の原子力発電所の運転継続を最低限図っていった上でないと、今の節電目標というのは達成できないんですね。

 ところが、今の既存の原子力発電所がどうなっているかというと、全国で五十四基ある発電所のうち、稼働しているのが十九基で、三十五基が定期検査も含めてとまっているわけです。何が問題かというと、定期検査に入った原発が東日本大震災後一基も運転を再開していない、そういう現状があるわけです。これは、定期検査終了後の再稼働には法的には地元の同意は必要ないんだけれども、電力各社は地元住民の不安に配慮して再稼働できないという現状がある。このままいくと、定期検査はこれからさらにされていきますから、国内に五十四あるといっても、三月には原発がほぼすべて停止してしまう可能性も否定できないということを言っている人もおります。

 ですから、私は、ぜひ政府として努力してもらいたいのは、五月十六日に、原発立地自治体の知事らの首長でつくる原子力発電関係団体協議会が、安全性を判断する基準を明示するように政府に求めることで一致されたそうですけれども、今までお聞きしていると、政府としては、浜岡原発はだめだと言ったけれども、浜岡原発以外は非常用電源の多重化などの緊急安全対策によって安全性に問題はない、そういう立場でおられるんです。しかし、地元の自治体は、浜岡をとめているのになぜ自分のところの原発を動かすのかということについて、地元自治体が納得できて、住民に説明できるような、そういう安全性を判断する基準、安全基準を政府で取りまとめて提示すべきだということを強く言われているんだと思うんです。

 私は、経済産業省としても、そういう声を無視するのではなくて、安全性の基準というものはこうこうこうだ、だから浜岡以外は再稼働してもいいんですよということを、もっと強く、明確に基準を打ち出すべきだ、そのように思いますが、経済産業大臣の見解を伺っておきたいと思います。

海江田国務大臣 今度の東京電力福島第一発電所の事故が起きまして、三月三十日でございますが、まず、緊急の安全対策は出しました。それが五月の上旬に、その緊急の安全対策は要件を満たしているということをそれぞれの発電所について通知いたしました。

 そして、知事さんでありますとか、あるいは地元でありますのは、そうした緊急の安全対策だけでありませんで、もう少し中長期的な安全対策をしっかり示して、それに対する適合性というものを明らかにすべきではないだろうかという意見でございます。

 この中長期的な安全対策というのは、津波対策などでは幾つか私どもも出しております。それから、電源関係では容量の大きな電源車などを高台に置くようにというような指示もしておりますが、さらに地域の皆様方が本当に安心できるような基準を出すということには、やはり今回の福島第一発電所の問題ももう少し精査をして、その上でというふうに私は考えております。

 ただ、先ほどお話をしましたけれども、三月三十日、あるいはその後、四月と、四月にも二回ほど出しておりますので、そういった安全基準をクリアしているということを地元で説明するための説明会は、保安院が中心になりまして、たしか二十五カ所程度、あるいは二十五カ所以上ですか、説明会は既に行っておりますが、ここでさらにしっかりとした説明をする、それから、必要があれば私も出向いていって説明をするということはお伝えをしてございます。

佐藤(茂)委員 私は、そういう、原子力発電所がせっかくあるのに、浜岡原発と同様のドミノ現象に陥る危険性を打破するためにも、電力会社任せにするのではなくて、今、海江田大臣が最後におっしゃった、必要があれば私も出向いてということを、海江田大臣初め政務三役が前面に立って、地元の説得、また御納得いただくような説明に努力をしていただくことをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

北神委員長代理 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 最初に、不正競争防止法について伺いたいと思います。

 九九年の不正競争防止法改正で、アクセスコントロール回避機能のみを有する装置等の提供行為を不正競争行為の類型として加え、差しとめ請求、損害賠償請求の対象としました。この「のみ」という要件を付したのは、製品開発や技術開発の萎縮を招かないようにしながら、必要最小限の規制を導入するという観点からだったというふうに思うわけです。

 しかし、近年、いわゆるマジコンと呼ばれる回避機器や回避プログラム、改造サービス等のはんらんにより、コンテンツ産業に大きな被害が生じているというふうに伺っておりますが、まず、被害規模をどのように見ているか、これを伺います。

安達政府参考人 お答え申し上げます。

 民間調査がございまして、それによりますと、例えば、マジコン等によるゲームコンテンツにおいては、不正流通によって、国内だけでも少なくとも約一千六百億円の損害があるという試算がございます。

吉井委員 それから、営業秘密関連の規定について、一九九〇年の不正競争防止法改正で、営業秘密の不正取得、使用、開示行為についての民事的保護、これは差しとめ請求、損害賠償請求などですね、これを導入したわけですが、その後、二〇〇三年に刑事罰が導入されました。二〇〇五年、六年、九年と相次いで改正が行われておりますが、この数度の法改正により規制強化されてきたわけですが、裁判例というのは民事と刑事でそれぞれどれぐらいあるのか、これを次に伺っておきたいと思います。

安達政府参考人 まず、民事訴訟でございますけれども、公的な統計が存在しませんが、経済産業省において把握している限りでは、平成十六年は十件、近年若干の増加傾向にあり、平成二十二年は十六件であると承知してございます。

 他方、刑事訴訟につきましては、同様に公的な統計が存在しませんけれども、当省で把握している限りでは、同罪が導入された平成十六年一月一日以降、二件であると承知してございます。

    〔北神委員長代理退席、委員長着席〕

吉井委員 現実の裁判例が少ない中で、法改正だけが先走っているという感じもするわけですが、憲法で定められた裁判の公開原則及び被告人の防御権の行使に対する制約を生じてはならないということは当然のことだと思うんです。

 本法案で創設しようとしている刑事訴訟手続の特例措置というのは、当然これらの規定を踏まえたものだと思いますが、確認をしておきます。

海江田国務大臣 私どもが今回御提案申し上げております制度は、刑法学者、法曹界、産業界、労働界などの方々から成る有識者の研究会、正式名称は営業秘密保護のための刑事訴訟手続の在り方研究会、これを法務省と共同で開催し、その研究会での御意見を踏まえたものでございます。

 委員が懸念をされております点でございますが、本制度によりまして秘匿措置を講ずる場合であっても、審理が非公開となるものではなく、裁判の争点、訴訟関係人の陳述の状況等は明らかになるため、裁判の公正に対する監視の実効性は十分に図られているということから、公開原則の趣旨に反するものではないと考えられております。

 また、営業秘密の内容を別の言葉に言いかえるための呼称が定められた場合も、被告人、弁護人を含む訴訟関係者に対しては、あらかじめその意味内容が知らされることになります。そうしたことから、被告人の防御権を侵害することとはならないと考えております。

吉井委員 裁判公開の原則と被告人の防御権の問題、ここが非常に大事なところで、今大臣の方から、そういう規定を踏まえたものだというお話でしたが、念のために、もう一言確認しておきたいんですけれども、研究会では、弁護士の委員の方などからもこの点で意見が述べられておりますが、これらの出された意見を全部踏まえて法の執行に当たっていくんだという、この点だけ確認しておきたいと思います。

海江田国務大臣 この研究会で出された意見をしっかりと踏まえて対応していきたいと思っております。

吉井委員 次に、特許法の方について伺います。

 当然対抗制度の導入というのは、中小企業などがみずからの通常実施権の存在を立証すれば第三者からの差しとめ請求権に対抗できる、そしてライセンス契約に基づき企業の事業活動の安定性、継続性を確保することを可能にするものだというふうに考えます。今回の改正がこうしたことを行うのは妥当なことだというふうに考えているものです。

 その上で、特許の通常実施権のライセンス契約と原発の特許権使用とか原子力基本法との関係について、幾つか伺っていきたいと思います。

 原子力基本法では、第十四条で、原発建設に当たっては原子炉規制法に従うこと、第十七条で、特許発明につき、特許法第九十三条の規定によること、第二十一条で、損失を与えた場合には、正当な補償を行わなければならないことなどが定められております。

 特に、第十七条は公益のための経産大臣の裁定について定め、第十八条は譲渡制限を定めておりますが、この趣旨と、これがどれぐらい実施されているかという実施状況について伺っておきます。

岩井政府参考人 原子力基本法十七条で引かれております特許法九十三条のお尋ねであろうということで、特許法九十三条の制度について御説明申し上げます。

 特許法九十三条の裁定制度は、特許発明の実施が公共の利益のために特に必要であって、かつ通常実施権の許諾の協議が成立しなかったときに、経済産業大臣の裁定によって、他人の特許発明等をその特許権者等の同意を得ることなく、あるいは意に反して第三者が実施する権利、強制実施権を設定できる権利でございます。

 これまでのところ、実施例は承知してございません。(吉井委員「一件あるんじゃないの」と呼ぶ)原子力との関係でお尋ねでございましたのであれでございましたが、件数は後ほど確認してお答え申し上げます。

吉井委員 実際には一件ということで、数は少ないわけですよね。

 一方、外国企業のライセンス契約にかかわって、特定の分野では尋常でない契約のあり方というのが今問題になっております。

 それを幾つか伺っておきたいと思うんですが、まず政府参考人の方に伺っておきたいのは、東京電力の福島第一原発の燃料棒取り出し計画を初め、日米チームで事故処理に当たっておりますが、このチームのメンバー企業と何をしようとしているのかについて、事業の概要を伺っておきます。

海江田国務大臣 私ども政府と東京電力の間で、かつては統合本部という名前でございましたが、今は対策室となっておりますが、この中に日米の協力を行う窓口がございまして、この日米の協力の窓口で会議を積み重ねまして、そして、もちろん最終的な判断は私ども日本の政府でございますが、適宜適切にアメリカ側の意見も聞いて、それも参考にしながら私どもの方針を決めている、こういう仕組みになっております。

吉井委員 実は、日刊工業新聞の四月八日付で、東芝とウェスチングハウスで使用済み核燃料の仮設冷却装置などの供給、それからB&Wと東芝で使用済み燃料プールの処理。水素爆発の抑制装置や土壌汚染対策技術はショー・グループと東芝、発電プラントの事故対応プログラムについてはエクセロンと東芝などで、事故処理ビジネスというものが行われているというふうに伝えられておりますが、確認しておきたいと思います。

海江田国務大臣 今お話をしましたように、私どもは、東京電力福島第一発電所の各炉の抑制に向けての方針を、そうしたアメリカのメーカーあるいはアメリカの公的機関などを含めて協議をしているところでございますが、実際の施工あるいは実際の機材の契約などにつきましては、東京電力とそれぞれの事業体、それぞれの企業との間で行っているところでありまして、私どもが、どことどうしろ、こことこうしろというようなことは言っておりません。

吉井委員 政府にこうしろと言うように言っているんじゃないですからね。民間企業が要するに事故処理ビジネスで非常にやっているということを今申し上げたわけです。

 政府参考人の方に先に伺っておきますが、福島第一原発の一号機はGEの特許と技術でつくられました。二号機以降はGE社の特許と技術及び東芝の技術が中心になって、もちろん日立でやったものもありますが、日本の沸騰水型原発メーカーの手でつくられてきました。

 そこで伺っておくんですが、福島原発事故は東京電力の責任なのか、GEと東芝の製造者責任というものが考えられなければいけないのか、双方に責任がかかってくるのか、これを伺っておきたいと思います。

細野政府参考人 お答えを申し上げます。

 二つ御質問をいただいたと思います。

 御指摘のように、第一原子力発電所、一号機から六号機までございます。GEの技術、これは基本特許も含めて、GEの許諾を受けて建設をしております。御指摘のように、その後、東芝あるいは日立、こういったところが関係をしてこの発電所が建設されたことは事実でございます。

 それで、こういう事故が起こった後のいわゆる責任といいますか、今原因究明をいろいろやっていただいておりますけれども、どこにその原因があるかということは事態の解明を待つ必要があろうかと思いますけれども、ここで言うところの損害というものにつきましては、御承知のとおり、原賠法の適用外でございます。したがって、これにつきましては、東京電力とメーカーの間において、一般的な法律、この場合は民法であったり製造物責任法であったり、あるいは個別の契約にのっとって、それぞれの損害賠償の論拠があれば、それに従って請求されるものと理解をしております。

吉井委員 原賠法の集中原則で、東京電力の責任ということになるわけですね。しかし、実際には、製造物責任といいますか、それはやはり本来GEや東芝などにも問われてくると思うんですが、これは免責されているわけです。

 それで、原子力基本法二十一条では、GEは損失を与えたものとして正当に補償しなければならないのじゃないかと思うんですが、しかし、実際には免責されているわけです。これにはGE社の免責の法的根拠、外交上の条約や協定上の根拠というものがあると思うんですが、伺っておきます。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 日米の間の原子力協定について御説明いたしますけれども、福島第一原発が一九六七年に着工されて、七一年に営業運転が開始をされてございます。着工当時有効であった一九五八年の日米原子力協定というもの、これは、六八年に日米の原子力協定が別のが発効して、それによって代替をされた。さらに、この六八年の協定は、現在効力を有している一九八八年の協定が発効したときに終了しているということで、以前の協定の適用を受けていた設備等は、現在、一九八八年の協定の適用を受けているということでございます。

 委員御指摘の部分に当たるかどうかわかりませんけれども、いわゆる責任に関する規定としては、一九五八年の協定には、同協定に基づいて両当事国政府の間で移転される設備等の使用は、これを受領する当事国政府の責任においてなされるものと規定している。六八年の協定にも同様の規定、要すれば、米側を免責するというような規定がございました。

 ただ、現在有効であります一九八八年の協定では、同協定の適用を受ける設備から生ずる損害に関する補償についての規定はない、そういう免責とか、そういったような規定はないところでございます。

吉井委員 福島第一原発一号機はGE社の手でつくられて、GEの技術でつくっていったわけですが、福島原発災害を受けた被災者への全面補償については、東京電力とともに、当然、製造物責任が問われることになるのが普通だと思うんですが、今おっしゃったように、日米原子力協力協定によって、GE社の責任は免責されるということになっているわけですね。

 そこで、引き続いて伺っておきたいのは、もともと一九五五年十一月十四日の日米原子力協力協定があって、それが、アメリカ側から免責条項の挿入の強い要求があって、これで一九五八年の協定第四条、それから第七条Hで免責となり、一九六八年の第五条、第八条I項、第十四条Aなどで免責というふうに、そして、今おっしゃった一九八八年改定で、十三条二項で、ここでは、旧協定を継続すると。要するに、最初から、GE社の責任というものは免責というのが日米間の原子力協力協定で決められていたことではありませんか。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたとおり、一九五八年の協定、それから六八年の協定、これにはいわゆる米側を免責する規定がございました。ただ、八八年の協定にはそのような規定はございません。

 それから、今御指摘の十三条二項、これは「旧協定の下で開始された協力は、この協定の下で継続する。旧協定の適用を受けていた核物質及び設備に関し、この協定の規定を適用する。」つまり、一九八八年の規定を適用するということでございまして、先ほど申し上げましたように、一九八八年の規定にはそういった免責等の規定はございません。

吉井委員 重ねて伺っておきますが、そうすると、要するに、これはもともと、一九五五年の協定署名から始まっているんですね。五五年の協定署名から始まって、免責条項を入れてくれという強いアメリカ側からの要求があって、これで一九五八年の協定へとなっていくわけですね。原発プラントにしろ濃縮ウランにしろ、日本に移ったら、その瞬間からアメリカ側は免責されると。これは原子力協力協定の一番骨格をなす内容ですね。

 それで、今おっしゃった一九八八年の第十三条二項というのは、要するに、旧協定のもとで開始された協力は継続するということですから、免責についても継続するということだと思うんですが、今生起している問題については、これは免責されないということになってくるんですか。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 十三条の、旧協定のもとで開始されたその協力、その対象として、旧協定のもとで始まった協力は新しい協定の対象にもなるという意味で継続としてございますけれども、先ほどおっしゃった免責のような規定がそのままその効力を持って継続するということではございませんで、「この協定の規定を適用する。」とありますので、一九八八年の協定が適用される。つまり、そこの中にはそういった免責の規定はない、こういうことでございます。

吉井委員 よくわからぬ話ですね。要するに、最初に福島第一原発をつくったときは、古い協定でちゃんとつくっているわけですよ。免責条項は入っているんです。今の一九八八年協定によっては、旧協定のもとで開始されたものは全部継続するとなっているんですね。ですから、これは国際協定によって免責ということになっているんですねということを伺っているんです。

武藤政府参考人 あくまで協力そのものが新しい協定の対象になるというだけでございまして、旧協定で免責をされていた、その免責という規定そのものも継続されているというわけではございません。あくまで適用される協定は新しい協定、一九八八年の協定でございまして、そこにはそういう免責という規定はないので、そういうものがない協定が適用されている、こういうことでございます。

吉井委員 そうしたら、重ねて伺っておきますが、今度の福島第一原発事故、GEの技術で始めたものですね。莫大な特許料も払ってきました。技術料も払ってきました。GEの関係者の方たちの話などが今マスコミなどでも紹介されておりますが、これは、当時からマーク1には欠陥があった、格納容器の容積が小さ過ぎたと。最近のマーク3の四分の一ぐらいの容積なんですね。ですから、事故時に、もともと圧力に耐えられない。最初はベントする施設もついていないのでこれもつけることにしたとか、そういったことが出ております。

 言ってみれば、欠陥商品を買って事故が起きたんだけれども、しかし、免責の問題になったら、要するに、これは八八年協定によって免責されることはないんですよという立場なのか、これは旧協定の時代につくられたものなのでGEの責任というものは免責されるんですよということなのか、ここをわかりやすくお話をいただきたいんです。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 旧協定の免責が引き続いているということではございませんで、一九八八年の協定のもとということになりますので、そこで免責されるということにはなっておりません。あとは、具体的には、いろいろな関係法令とか相手方との契約内容とか、そういったことで判断をされるものだと理解してございます。

吉井委員 要するに、今度の場合は、もう全く免責されることはなく、原賠法の話とかはちょっと別にして、製造物責任ということになってくると、GEに対して責任を問うということは協定上はできるというお考えなんですね。

武藤政府参考人 一九八八年の協定には、そういう損害に関する、あるいは免責とか、そういった規定はございませんので、そういった協定で免責をされるということではございません。あと、現実に賠償請求できるかどうか、そこは関係法令とか相手方との契約内容とかそういったところで判断をされるということでございます。

吉井委員 とりあえずきょうのところはこれで締めくくっておきたいと思うんですが、外務省の判断としては、今回のマーク1の、GE社の福島原発一号機の事故については、これは協定上の免責の対象にはならない、ですから必要な場合には製造物責任を問うことはできるんだという御答弁であったというふうに理解をしておきます。それでいいですね。

武藤政府参考人 一九八八年の協定では特に免責とかそういったようなことにはなっていない、こういうことでございます。免責のような規定がない、こういうことでございます。

吉井委員 委員長、わかる。委員長もわからぬ言うてるけれども。

田中委員長 武藤さん、再度答弁してください。

 今、これは大変なことに、その解釈論で大変なことにこれからなっていきますよ。だから、八八年のときのものと現時点で、免責があるかないか、端的に答えてください。

武藤政府参考人 八八年の協定が現在効力を持っている規定でございまして、これが適用になる、こういうことでございますけれども、その八八年の規定には、かつての協定にあったような米側を免責する、そういった規定はございません。

 したがって、協定上、免責をされるということではございませんで、あと現実に賠償請求できるかどうかは契約内容あるいは関係法令等で決まってくることであるということでございます。

吉井委員 要するに、GE社に対して、もう免責の協定はないから、今回の事故について製造物責任を問うていくことはできるという立場に外務省は立っている、そういうふうに確認をしておきます。

 それで、GE社の一号機で事故をやってもGEは免責をされ、使用済み核燃料の仮設冷却装置などの供給、これはさっき言ったウェスチングハウスと東芝とかですね。今後、事故処理ビジネスというふうなものがどんどん、免責が施されたまま進んでいったら大変なことになるんです。今のお話では、八八年協定によって、もう免責はないんだ、だから、かつてのものについても免責はなく、製造物責任を問うていくことはできるし、これからの事故処理ビジネスについても免責はもうないんだ、こういう立場で理解しておいていいんですね。

武藤政府参考人 繰り返しになりますけれども、一九八八年の、今効力を持っている協定においては、米側が免責をされるというような規定はございません。したがって、協定上、この件について免責される、そういうことではございません。

吉井委員 要するに、GE社と東芝、GE社と日立のBWRとそれに関連する事業であれ、ウェスチングハウスと三菱重工とのPWRの契約においても、それからこれからの事故処理ビジネスにおいても、協定によって免責されることはない、これからは免責はないんだ、こういうことで臨まれるというふうに理解しておいていいですね。

武藤政府参考人 この日米の原子力協定において、現在の一九八八年の協定において、米側を免責する、そういう免責についての規定はない、したがって、協定上免責をされるということではない、こういうことでございます。

吉井委員 外交条約や協定上はもう免責はしないということを今お答えになったというふうに考えておきますが、事故処理で、東電が二十日に公表した決算短信によれば、災害特損で一兆百七十五億円、このうち四千二百六十二億円が事故の収束処理費ということになっておりますが、これは事故処理ビジネスとかかわってくる話ですから、この内訳がどういうものかを伺っておきます。

細野政府参考人 お答えを申し上げます。

 去る五月の二十日に、二十三年三月期決算において、決算の範囲内でいろいろな概算額が発表されております。

 今御指摘の第一、第二の原子力発電所に関する費用として八千八百四十五億円計上し、そのうち原子炉等の冷却や放射性物質の飛散防止等の安全性の確保等に係る費用として、御指摘のように、四千二百六十二億円を計上しておるところでございます。

 中身でございますけれども、これは、第一原子力発電所の事故の収束を図るために、原子炉あるいは使用済み燃料プールの安定的な冷却状態を確立する、あるいは放射性物質を抑制するための費用でございます。具体的には、燃料域上部までの格納容器への注水、あるいは原子炉熱交換機能の回復、それから燃料プールへの注水、あるいは汚染された水の保管とか除染処理、場合によっては原子炉等からの燃料取り出しに係る費用の合計と理解しております。

吉井委員 内訳ですから、その一つ一つが何ぼやということを聞いてますねん。

 それで、私、改めて伺っておきたいのは、東京電力の福島第一原発の一号機から六号機、この建設費総額は幾らで、その中で、GE社に支払った特許料や技術料というものは幾らになってくるのか、これを次に伺っておきたいと思います。

細野政府参考人 お答えを申し上げます。

 福島第一原子力発電所には、御指摘のように、六号機までの六つの発電炉がございます。一号機につきましては建設費三百九十億円、二号機につきましては約五百六十億円、三号機約六百二十億円、四号機約八百億円、五号機約九百億円、六号機、これは型が違いますのでちょっと高いのでありますが、約一千七百五十億円でございます。

 そのうち、これらの建設に係る費用については、それぞれ号機ごとにメーカーと総額で契約をしております。したがいまして、これに含まれる、いわゆる特許料あるいは特許使用料という額は、取り出しては確認ができません。

吉井委員 今の金額というのは、現在価格に直しますと、今おっしゃったものの大体六倍から七倍ぐらい掛けなきゃいけないと思うんです。原発は一基つくるのに大体三千億から五千億ぐらいかかるビジネスですから。

 GE社に特許料や技術料を幾ら払ったかについては建設費に丸々含まれているからわからないというお話なんですけれども、これは大体二割とか三割とかいう話がこれまでからありました。事故処理ビジネスについても、項目を挙げられたけれども、要するに、今言われているような、日刊工業で紹介されたような事故処理ビジネスの企業に幾ら支払われていくことになるのかということがよくわからないままなんですね。

 しかし、これは総括原価方式なんでしょう。原価を全部国の方に出させないことには、この電気料金は適正であるとかないとか判断できないわけですよ。ですから、私は、総括原価方式に立つならば、そもそも、建設費はこれだけで丸くおさめて、そこに二割なり三割なり特許料や技術料が入っていますという話では、そのままでは、料金を支払う人たちにこれだけ出してくださいとお願いするのはなかなか、皆さんの方も根拠を持って、説得力を持って話ができるような話じゃないと思うんですよ。

 だから、私は、やはり今の問題については、この場ではどうも出ないようですから、きちんと調べて、後刻御報告をいただきたいと思います。

 それで、これからの免責については八八年協定でということですが、過去の問題は結局あいまいにされているんですよ。過去の製造物責任について、つくったときの協定が生きていますから、それでいきますと免責されてしまうわけです。そして、今の時点で、では幾ら特許料や技術料を払ってきたのかといったら、これもよくわからないと。本来だったら、総括原価方式ですから、全部出てこなきゃおかしいんですが、わからないままというこの状態というのは私はやはりおかしいと思うんです。

 この点では、原子力政策、エネルギー政策は、アメリカに気を使ってしまってなかなか物が言えない、私は対米従属と言ってもいいと思うんですが、そういう原子力政策、エネルギー政策からの根本的な転換というものをやはり考えていかなきゃならぬというふうに思います。

 次に、お手元に資料を配らせていただいていると思いますが、この資料に示したように、実は、東京電力に在籍したまま非常勤の国家公務員として採用をされている方が、内閣官房の副長官補。内閣府の原子力規制機関に当たるはずの原子力安全委員会事務局に、東電から一応、電力中研、電力中央研究所に出向した形をとって在籍出向。文部科学省にも、動力炉や「もんじゅ」開発にかかわる原子力研究開発課に在籍出向というのがあります。各省に伺っておきたいんですが、これは事実ですね。

河内政府参考人 お答え申し上げます。

 省庁再編以降、内閣官房におきましては、これまで、東京電力から在籍のまま内閣官房に非常勤の国家公務員として採用された職員、ございます。特に情報通信技術担当、行政改革等に採用されているところでございます。

前川政府参考人 お答え申し上げます。

 東京電力から内閣府に非常勤の国家公務員として採用した職員の数は、現在は三名。これまで、すなわち内閣府設置以降の累計でございますけれども、十五名おります。このうち、原子力安全委員会への受け入れにつきましては、現在はゼロ、おりませんけれども、これまでの累計では二名でございます。

 以上です。

土屋政府参考人 お答えいたします。

 現在、文部科学省に在籍してございます東京電力からの出向者は二名でございます。また、文部科学省が発足いたしました平成十三年一月から、文部科学省に在籍しておりました東京電力からの出向者は九名でございます。

吉井委員 要するに、この表は事実だということです。

 次に伺っておきたいのは、この採用というのは、そもそも公募を行って採用したのか、競争試験などの手続を経て採用しているのかを伺います。

菊地政府参考人 お答え申し上げます。

 制度としてのお答えになりますが、非常勤の職員等として採用いたします場合には、公正性が損なわれることがないように、人事院規則八―一二、職員の任免という規則におきまして、原則として、できる限り広く募集を行うということを定めているところでございます。

 ただし、官職に必要とされる知識、経験、技能等の内容あるいは官署の所在地等の勤務環境、任期、採用の緊急性等の事情から公募によりがたい場合には公募によらないことができることが認められておりまして、その判断は各府省にゆだねられているところでございます。

吉井委員 それで、先ほど内閣官房は、これまで合計二十人、電力会社の社員を、東京電力は十二人ですが、会社に在籍のまま、非常勤国家公務員として採用していると思うんです。内閣府の方は、東京電力からは十二人ですが、電力中研から、東京電力の方が三人ということなどを合わせて、電力から六十四人が内閣府へ来ている。企業に籍を置いて、そのまま来ているわけですね。文部科学省は、東京電力から八人ですが、合計二十人の電力関係の社員の方が、在籍したまま非常勤の国家公務員として採用されてきたと思うんです。この数字だけ各省に確認しておきたいと思います。トータルの数字です。

河内政府参考人 内閣官房についてお答えいたします。

 議員御指摘のように、省庁再編以降、在職のまま内閣官房に東京電力から採用した職員の数は、非常勤国家公務員として十二名でございます。また、これまで東京電力以外の電力会社から在職のまま内閣官房に非常勤の国家公務員として採用した職員の数は八名でございます。両方合わせて二十名。事実でございます。

前川政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府につきましては、先生御指摘のとおり、東京電力からは、電中研を経由した三名を含めて、累計で十五名でございますけれども、そのほかの電力会社それから電力関係の公益法人を合わせますと、累計で六十五名でございます。

土屋政府参考人 お答えいたします。

 平成十五年からのデータしか持ってございませんが、東京電力を含めまして、電力会社から私ども文部科学省に非常勤の国家公務員として受け入れました者が十四名でございます。

吉井委員 文部科学省は、二〇〇三年度から直近まで、東京電力から八人、合計二十人の電力会社からの方がおられます。それで、電力会社の中でも特に東京電力の採用が多くて、百四人中三十五人、三三%です。

 それで、次に伺っておきたいんですが、一例を挙げると、二〇一〇年七月二十六日、昨年の七月二十六日ですが、内閣官房副長官補の佐々木さんから東京電力労務人事部長に就任依頼文書が届けられました。七月三十日に、労務人事部長から菅総理大臣あてに、下記の者の就任を承諾するという文書が出されております。同じ七月二十六日には、本人にも就任依頼文書が送られていたんですね。菅さんに送ったのと同じ七月三十日付で、本人から、就任することを承諾しますという文書が出されていたんですが、これはちょっと、政府と電力の関係というのは、官民癒着と言われても仕方がないんじゃないですか。

河内政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣官房が担当いたします各種重要政策等の推進、特に今御指摘になられましたことも含めてでございますが、情報通信技術を推進するに当たりましては、どうしても公益性の高い電力事業を行う電力会社職員が持つ専門的な知識や経験等を内閣官房においても生かしていただくことが有益だというふうに判断しております。その意味におきまして、所要の手続のもと、非常勤職員として採用させていただいているところでございます。

吉井委員 私、民間企業にいたエンジニアがその技術を生かして頑張ってもらうということはあり得ると思うんですよ。その場合は、企業を退職して、二度とその企業には戻りませんと、それでその技術、技能を生かして頑張ってもらう、専門的知見を生かして頑張ってもらうということは、これはあり得ることだと思うんですよ。その個人が社会的責任感の強い方で頑張っていただけるならば、それはそういうこともあり得るかと思うんです。

 ただ、今紹介したように、企業に在籍のままなんですよ。そして、公募もしない、相対取引の形で、この表ではっきりしているように、前任者が東京電力に戻ると、次の人が東電の推薦で翌日から国家公務員として採用される、この構造がずっと続いているんですよ。これは資料を見れば一目瞭然だと思うんですが、これは間違っているんですか。

海江田国務大臣 官民の交流というのは私は必要だと思います。そして、現職で役所に行っていろいろな仕事をやるのも、これも必要だと思っております。しかし、今、吉井委員が指摘をしましたことを全体として見ましたときに、やはりそこは少しおかしなものがあるなという感を正直言って持ちました。

 ですから、これは官房長官ともよく相談をしまして、どういう形でやれば一番本来の官民交流の趣旨が徹底されるかということを検討したいと思っております。

吉井委員 この指定席の問題は、東京電力霞が関出張所という姿だと思うんですよ。何しろ三三%、電力会社の中でも特に東京電力が多いわけですよ。これは典型的な官民癒着です。実は経済産業省には、東電に在籍のまま出向している人はおりません。そのかわり、今度は東京電力への経産省からの天下りが極端に多いんですね。これが特徴です。もちろん、他の電力会社へも天下りは多いわけですが。

 そこで、これは大臣、やはり官民癒着で、特に今度の原発問題が出ているこの構造によく見られるように、言ってみれば、原発利益共同体の重要な一部がこの形で構成されているというふうに見られると思うんです。やはりこういうことはやめるべきだ、これを大臣として、それは閣内でよく協議も必要だと思うんですが、少なくとも経産省に在籍出向はいらっしゃらない、調べてみれば。しかし、天下りは最も多いんです。これが、マスコミ等でいわゆる原子力村と書かれてみたり、いろいろする事態になっているんですよ。

 ですから、やはりこういうことはやめるべきだ、このことを、大臣としてきちんとそういう立場を貫いていかれることが大事だと思うんですが、伺います。

海江田国務大臣 先ほどお話もしましたけれども、本来の意味での官民交流というのはやるべきだと思っておりますが、それが癒着でありますとか、あるいは利権の構造の中に組み込まれているでありますとか、そういうことはあってはならないことだと私は思っております。

吉井委員 官民癒着のもとで東京電力の地域独占によるエネルギー支配、日本の各電力はみんな地域独占なんですよ。それから、総括原価方式によって利益が保証されているんです。これが原発利益共同体の重要な構造を形づくっているんです。

 東京電力任せできちんとしなかったから、三月十一日の対応が東京電力任せで事故をああいうふうに拡大してしまい、すべての被害者への全面補償をあいまいにして、結局、東京電力救済スキームづくりというものが考えられている。これでは、私は、原発依存からの脱却も、再生可能エネルギーの普及と新しい日本の経済産業の創出にもつながっていかないと思うんですよ。

 ですから、ちょうど時間が来たということですから終わりますが、この点では、原発利益共同体の構造をなしている、地域独占と総括原価方式で守られて、そこにメガバンクも入れば、ゼネコンも入れば、鉄鋼その他素材供給メーカーも入って、大きながちっとした体制をつくって、そこから在籍出向だということで官にもやってくる。官民癒着ということでつくられてきたようなこういう構造というものは、やはり打ち破らないことには今回の福島原発問題の本当の意味での解決にはならない、このことを申し上げて、時間が参りましたので、質問を終わります。

田中委員長 吉井英勝君の質疑は以上で終了いたしました。

 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 まず、特許法の改正案についてお伺いをいたします。

 科学技術立国の基盤の一つが特許制度だと思います。日本の特許出願件数は長く世界の首位を独走してきたわけでありますが、しかし、二〇〇一年をピークに減少し始め、今や、アメリカそして中国にも追い抜かれ、世界第三位への転落が必至の情勢、こういうふうに言われています。その背景には、政府が、知財戦略という名のもとに企業に出願を絞り込むように働きかけてきた、こういうことがあるんじゃないかと言われています。

 特許庁は二〇〇四年には審査手数料を一気に倍に引き上げて、結果的には出願を意図的に抑制するようなことになった。同時に、企業に対して、本当に必要な特許以外は出願を控えるよう、重点化ということで要請もしております。知財戦略が大事だと言いながら、号令と全く違う、ブレーキをかけるような、そんな対応をしてきた、そういうふうにも見えるわけであります。

 まずお伺いをしますが、二〇〇四年の審査手数料の引き上げというものが特許出願件数にもたらした影響、効果についてどのように考えておられるのか、お伺いします。

中山大臣政務官 過去のグラフをひもといてみますと、この数は、二〇〇三年、確かに四十一万三千。ただ、これ以降、若干、四十二万三千とか、次の二〇〇五年にも四十二万七千、伸びてはいるんですね。ですけれども、それ以降、徐々に減ってきている。特にリーマン・ショックがあったときにはかなり大きくその数を減らしているということで、先ほど委員が言いましたように、企業にできるだけ、量より質だよというようなことを求めたことも事実だと思いますし、また、審査まで三十五カ月だとか、待つということもあったので、できる限り実効性のある、いい特許を出してもらおう、こういうような政策もあったんだと思います。

 最近は、やはり今、減ったことがございますが、外国へ出しているものは逆に若干ふえているんですね。そういう面でも、特許に対するグローバル化といいますか、そういう方向に行っているので、今後もそういうことをよく見定めて政策をしっかりやっていきたい。

 今回二五%下げたのはまさにそういうことでございまして、また、中小企業に対する、できる限りの特許に対するいろいろな支援もしていきたい、このように考えています。

柿澤委員 これからお尋ねをすることに関してかなりお触れもされて、総論的な御答弁をいただいてしまいましたが、二五%引き下げるということを今回の特許法改正に伴い行うということでありまして、また、他の委員の方々からも、これはやはり半分にして、もとに戻すべきじゃないか、こういう御指摘もあったわけでありますけれども、振り返ってみると、二〇〇四年の審査手数料の引き上げというのが、特許出願件数には、言ってしまえばやはり負の影響をもたらした、こういうことになるのではないかというふうに思います。

 政務官からも言及がありましたけれども、では、政府がなぜ量より質だということで出願件数の抑制方針をとったのかといえば、一因になったのは特許審査の著しい渋滞の問題だったと思います。二〇〇八年には、出願から審査着手までの期間が最大二十九カ月、先ほど三十五カ月というお話もありましたが、こういうことになってしまった。今、そのスピードアップを目指して、一三年には十一カ月に、こういう目標を掲げているわけですけれども、現状の特許審査のスピードを国際比較で見るとどのような水準にあるのかということをお伺いいたしたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 審査請求制度があるかどうかという各国ごとの制度の違いがございますので、一概に比較は難しいのでございますが、各国の最終審査結果までにどれぐらいかかっているかという数字で申し上げますと、日本国特許庁が三十五・三カ月、一方、米国特許商標庁が三十四・八カ月、欧州特許庁が四十一・七カ月でございます。

柿澤委員 各国ともかなり、そういう意味では出願件数の増加に手をやいている、こういう状況が見てとれるわけですけれども、こうした中で、二〇一三年に十一カ月までスピードアップを目指すというのは、大変意欲的である一方で、なかなか高いハードルをみずからに課しているということになるのかなというふうにも思います。

 日本企業の海外での出願件数の推移についてお伺いをいたします。

 海外での特許出願の増加で知財立国を目指していくというのが政府の方針であります。ただ、国際特許出願件数で見ると、二〇一〇年は七・九%増で、これはふえているわけですけれども、中国の五六%増というけた違いの急増とは、やはりこれは比ぶべくもないという状況になっていると思います。韓国も二〇%増、こういう数字になっています。

 国際特許出願件数は国の技術水準をはかる目安とされていますので、日本は世界第二位ですから、まだまだ優位性があるぞ、こういう一方で、アジアの新興国にどんどんキャッチアップをされているのも事実だと思います。

 先ほど、海外での特許出願の件数がふえている、こういう御答弁もいただいたわけですけれども、これをさらにどういうふうにしてふやしていくのか、このことについてお伺いいたしたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 海外での特許申請がふえていくためには、やはり期間の問題、先ほど来先生御指摘の、早く権利になるということが非常に大きいと思います。

 また、先ほど申し上げましたように、外国出願がふえておりますので、外国の特許庁でも審査が遅くなっております。したがいまして、私どもは、各国の特許審査の結果をそれぞれが利用し合うという特許審査ハイウエーという制度を設けておりまして、そのことによりまして、結果として、外国でなされた出願が早期に権利化をするという効果を双方が共有できるような形の協力を始めてございます。

 そのような形をやりますと、特許庁そのものの肩の荷がすくとともに、結果として企業にとって早く権利が得られるということで、こうした早さの点が非常に大きいことがあろうかと思います。

 また、今回、国際出願にかかわる手数料も引き下げさせていただきましたので、そういったことも海外出願の手助けになるものと考えている次第でございます。

柿澤委員 さて、今回の特許法改正では、無効審判が出て審決取り消し訴訟に進んでから九十日以内に訂正審判請求を出せば、実体審理をしないまま特許庁に差し戻されて、特許庁と裁判所の間を行ったり来たりして時間がかかってしまう、いわゆるキャッチボール現象を避けるため、審決予告という新しい制度が導入をされることになっています。

 無効審判において審決をするのに機が熟したと判断されたときに、審判合議体が当事者に心証を開示する、こういうぐあいですよということを開示するというものでありまして、審決予告から本審決までの間に特許権者が訂正請求をできる、こういうたてつけになっております。

 しかし、この審決予告が導入をされますと、審決予告後の訂正請求というのが、事実上、これが訂正するワン・アンド・オンリー・チャンスになる、こういうことになりかねないので、審決予告でどういう内容が示されるかというのが、訂正の機会を付与する程度に充実をしているか。また、本審決との関係はいかなるものであるのか。審決予告が本審決とどのような関係になるのか、もうそのものずばりなのか、あるいはそうでないのか。

 こういうことがあいまいなままですと、特許権者からすれば、訂正請求を出すという場合に、どの程度の範囲を訂正すればいいのか、ワンチャンスなんだから、ここもここもやはり縮減しなきゃいけないのかな、こういうふうに過度に抑制的な訂正請求を出すようなことになりかねないんではないかというような懸念も言われています。また、審決予告から訂正請求ができるという、この日数もはっきりしていない、こういうことも言われています。

 こうした点については、運用していくに当たってどのように行っていくつもりなのか、お伺いしたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 審決予告の内容についてのお尋ねでございます。

 今御指摘いただきましたように、今回の制度は、審決取り消し訴訟提起後の訂正審判の請求を禁止するかわりに、同様の訂正の機会を特許権者に対して確保するというのが改正の目的でございますので、その内容、審決予告の内容は現行の審決と同程度の内容でなければならないというふうに考えてございます。この点につきまして、条文において、審決に記載する事項を準用するというような形で、審決と同内容になるというような制度を考えているところでございます。

 また、訂正できる日数でございますけれども、十分な余裕を持って訂正をしていただく必要があろうかと思います。現行の無効審判における訂正の請求の指定期間を参考に、現時点で、三十日あるいは六十日という期間を設定するということで、どのような日数にするのか、今最終的な検討をさせていただいているところでございます。

柿澤委員 あわせて長官にお伺いしたいと思いますが、要は、審決予告が出てから本審決が出るまでの間というのは、これはどういうふうになっていくんでしょうか、お伺いをしたいと思います。日数です。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 その場合に、予告をいたしまして、そのままでよいというような御判断になれば、それで確定をいたしますし、それを直してほしいということであれば、今申し上げました三十日あるいは六十日で、また訂正の申請がなされます。

 それをどう受けとめるかということについては次の審査ということになりますので、個別のケースに区々分かれますけれども、直ちに確定をする、あるいは一定の期間に訂正をいただいて新たなステージに移っていく、いずれかのケースになるものと考えられます。

柿澤委員 基本的に審決予告というのが本審決とニアリーイコールというか、こういうものであるということが今確認をできました。

 先ほど来、ダブルトラックですとか、さまざまな専門用語が飛び交っていて、私は通常、経済産業委員会を担当していませんので、本当にこの間、特許法を勉強するのが大変だったんですけれども、二〇〇六年の特許法改正で、シフト補正の禁止というのが導入されています。この特許法、本当に専門用語が多くて往生するんですけれども、このシフト補正というのは何かといえば、これは特許請求の範囲に記載された発明のポイントを変えてしまうというものであります。

 現行の法律の条文を素直に解釈すると、これはいわゆる単一性の問題で、場合によっては、どんな補正を行ってもシフト補正に該当してしまうのではないか、こういう話もある。審査基準で法を緩く解釈して、ここはいいですよという、ある種のお目こぼしでしのいでいるなんという話もあるんですけれども、本来でいえば、こういう裁量的なやり方でシフト補正に該当するかどうかが決められるような実態があるとすれば、これは余り好ましいことではない、こういうふうにも思います。

 特に、特許侵害品を発見した場合に、侵害品を含むように特許請求の範囲を補正する、こういうことをやろうとすると、これも大体当初のポイントから外れてしまうので、これがシフト補正に該当して、それはだめですよということになってしまう。そうすると、この部分だけ分割出願しなきゃいけない。こういう手間になってしまうというようなことも実務者から言われているようであります。

 特許庁としては、シフト補正と単一性について再検討を始められるというようなことも少し動きとしてあるやに聞いておりますけれども、二〇〇六年にこのシフト補正の禁止というのが行われて、それがもたらした影響についてどう見ているのかということをお伺いしたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたように、平成十八年改正で、いわゆるシフト補正の禁止ということを導入させていただきました。内容は、今御質問をいただいたとおりでございますけれども、この制度は、一度行われた審査について、それを前提として権利付与を行うべく、補正に一定の制限をかけるということでございまして、先ほど来出ております、早い審査をしなければいけないという、迅速的確な審査を行うための制度として導入をさせていただいたところでございます。

 一方で、御指摘がございましたように、このシフト補正の禁止につきましては、ユーザー側から、どの程度の補正であれば発明の内容を大きく変更しないものとして許されるのかという判断が難しいのではないかという御懸念や、厳格に運用されると発明を適切に権利化することが困難になってくるのではないかという懸念が今も示されておるということは、私どもも承知をしてございます。

 シフト補正の禁止は、法律を通していただきまして、平成十九年四月一日以降の特許出願に対して適用されている制度でございますので、実は、実際の事案の蓄積は必ずしも多いわけではございません。その意味で、そもそもの法律の目的でありました迅速化にどの程度役立ったのか、あるいは懸念されているようなことがどれぐらい起きているのかということについては、必ずしも判断ができるだけの蓄積がなかったのがこれまででございます。

 しかしながら、今のような問題がございますので、具体的な事案の蓄積をしていくにつれ、特許庁といたしまして、効果と懸念の部分をよく調査いたしまして、まず実態の把握をした上で、必要があれば必要な対応をしていくというふうに考えている次第でございます。

柿澤委員 特許法改正案についていろいろとお尋ねをさせていただいてまいりましたが、残余の時間については、原発事故についてお伺いをいたしたいというふうに思います。

 今回の事故では、想定外という聞かされたくない言葉が飛び交いました。その最たるものが福島第一原発の甘過ぎる津波想定だったと思います。菅総理は既に、三月二十九日の参議院の予算委員会で、福島第一原発の津波対策について、予測の基準が低過ぎた、こういうふうに答弁しておられます。

 この点については、海江田経産大臣も同じ認識であるかどうかということをお伺いしたいと思います。

海江田国務大臣 同じであります。

柿澤委員 同じ認識であるということを御答弁いただきました。

 菅総理が予想の基準が低過ぎたとするのは、二〇〇二年の再評価における、五・四から五・七メーターの津波想定についてであります。これは、土木学会の指針に基づいて東京電力が決めたものでありますけれども、五・四から五・七メーターというこの津波想定、現実にはそれを大きく上回る津波に襲われてしまったわけですけれども、規制官庁として、五・四から五・七という甘い津波想定を追認してきた原子力安全・保安院の責任はどのようなものであるというふうに考えておられるでしょうか。

海江田国務大臣 今委員御指摘のありました、五・四メートルから五・七メートル、これは平成十四年二月の土木学会の知見を踏まえた数字でございます。その後、平成十八年九月から耐震バックチェックを行って、津波につきましては、過去の津波の波高、それから津波堆積物等の調査をもとに評価し、想定を見直すこととしておりましたけれども、その評価を最終評価で行うということで、実は東京電力福島第一発電所の津波の検証は終わっていなかったわけであります。

 その意味では、こうした今回のような大変大きな津波を想定した事前の対策を講じていなかったという点において、原子力安全・保安院としてもこの事実を重く受けとめなければいけないと思っております。

柿澤委員 語尾の部分が、この事実を重く受けとめなければならない、こういう語尾でありましたが、私が問うたのは、五・四から五・七メーターという津波想定を基本的に二〇〇二年の再評価で決めたときに、それを追認した原子力安全・保安院の監督規制官庁としての責任はどのようなものであるかということをお尋ね申し上げているわけでありますので、もう一度答弁をお願いしたいと思います。

海江田国務大臣 重く受けとめるということは、重く責任を感じているということでございます。

柿澤委員 重く責任を感じている、こういう御答弁をいただきました。

 では、松永現経産次官でありますが、原子力安全・保安院の次長並びに院長として在任をされておられた経験がおありかと思います。松永現経産次官が原子力安全・保安院の次長、そして院長に在任していた期間をお示しいただきたいと思います。

海江田国務大臣 松永事務次官は、平成十四年七月から平成十六年六月まで、このときは安全・保安院次長でございます。そして、平成十六年の六月から十七年九月まで、安全・保安院の院長を務めておりました。

柿澤委員 松永現経産次官は、平成十四年の七月から平成十七年の九月までの間、一時的なあれはありますけれども、原子力安全・保安院の次長並びに院長に在任をしておられたということであります。

 先ほど申し上げたとおり、菅総理が、予測の基準が低過ぎた、こういうふうに御答弁をされた、五・四から五・七メーターの福島第一原発の甘過ぎる津波想定、これはまさに、平成十四年に決められたものであります。つまりは、今の松永経産次官は、総理が低過ぎたと言ったこの東電の津波再評価をした二〇〇二年に、東電を監督規制する原子力安全・保安院の次長であり、その後も院長であった、こういうことであるわけです。そういう意味では、まさに、保安院のナンバーツー、そしてトップとしてこの津波想定を延々と追認してきた、こういう方なわけであります。

 先ほどの海江田大臣の答弁からも、まさに重い責任を感じている、こういうわけでありますから、松永現経産次官、当時の保安院の院長、また次長として、同じ責任を感じていただかなければいけない、こういうことなんだろうというふうに思います。

 ところが、枝野官房長官は、震災への対応を優先するということで、例年通常国会後に行う省庁の局長級以上の幹部人事を、ことしは事実上凍結するよう各閣僚に要請をしているということであります。ということは、経産省の次官の人事も凍結をするということになってしまうのかどうか、これをお尋ねしたいというふうに思います。

海江田国務大臣 先ほどの委員の御指摘でございますが、松永次官が保安院の次長、そして院長に在任をしていた時期は先ほどお話をしたとおりでございますが、津波の土木学会が平成十四年の二月でございますから、平成十四年七月との間に、五・四メートルから五・七メートル、この評価がえのところが重なるのかどうなのかということは、ちょっと私は今、わかりませんので。それはお調べいただいたのかもしれませんが。

 ただ、いずれにしろ、今、松永さんは次官にあります。それから、当時は安全・保安院の院長でありましたから、過去のことについても責任というのはそれはあるわけでございまして、私もこれまでの原子力行政に対する責任はあるわけでございますから、その責任を感じるということと、今、その後で、今度の人事は小規模にという官房長官のお話があったからということと、直接関係はありません、人事については私が責任を持って行います。

柿澤委員 最後の御答弁の語尾の部分が、枝野官房長官が人事は最小限にと言ったけれども、それは関係がない、自分が決めるんだというのは、方向性としてどちらを向いているものなのかなというふうにも思いますが、これは恐らく、御答弁をいただいても、今後人事を決定していく中で決めることだ、こういう御答弁になると思いますので、さら問いはしないようにしたいと思います。

 寺坂現原子力安全・保安院長についてでありますけれども、寺坂原子力安全・保安院長は、前職はどのような役職でいらっしゃった方でしょうか。

海江田国務大臣 寺坂原子力安全・保安院長の前職は、大臣官房商務流通審議官でございます。

柿澤委員 寺坂保安院長は、前職は商務流通審議官であり、聞くところによると、百貨店、デパートなどを担当されておられたというふうにも聞きます。

 こうして見ても、松永現次官もそうですけれども、そして寺坂現保安院長もそうですけれども、もともとは原子力とか原発とかに縁もゆかりもないと言ってもいいぐらいの氏素性である、法学部卒の事務系の官僚の方々が歴代保安院のトップをやっておられるというわけであります。

 一方で、原子力安全委員会というのがあります。こちらは内閣府に置かれた審議会でありますけれども、班目委員長を見ても、これはちょっと信頼が揺らいでいますが、しかし基本的には、委員は学者や技術者といった専門家で構成をされている。また、事務局も、科技庁出身者が多くいて、大学で原子力を学んだとか、こういう方が多いということであります。

 にもかかわらず、東電の原発に対する安全指導を直接行うのは保安院の方だということになっている。原子力安全委員会は、電力事業者を直接規制するということではなくて、規制官庁である経済産業省原子力安全・保安院に内閣総理大臣を通じて勧告をする、こういうたてつけになっているわけであります。

 電力事業者を直接監督規制をする官庁である原子力安全・保安院の幹部がこういう形で事務系の官僚で占められてきたというのが、これまで保安院の規制官庁としての実効性を阻害してきた、こういう面があるのではないかというふうに思いますけれども、御見解をお尋ねしたいと思います。

海江田国務大臣 院長が直接現場に行って作業するわけではございませんから、大局的な見地から、それこそ、保安行政、原子力安全行政はどうあるべきかという見識を持っていれば十分務まる仕事でございます。

柿澤委員 その一方で、これからの原子力安全また規制のあり方として、原子力安全・保安院も、また安全委員会も含めて、この規制監督のあり方について総合的に再検討し、また新しい組織も含めて検討する、こういうことを海江田大臣はおっしゃっているわけですので、そういう意味では、今回の事故に関連して、原子力安全・保安院がこうしたありようになっていたということは、やはり一つの検証の要素になるのではないかというふうに私は思っております。

 そのことを御指摘させていただいて、ちょうど時間にもなりましたので、質問は終わりとさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

田中委員長 以上で柿澤未途君の質疑は終了いたしました。

 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより両案に対する討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、内閣提出、参議院送付、特許法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、参議院送付、不正競争防止法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

田中委員長 次回は、来る六月一日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十一分散会


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