衆議院

メインへスキップ



第4号 平成14年5月8日(水曜日)

会議録本文へ
平成十四年五月八日(水曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 瓦   力君
   理事 衛藤征士郎君 理事 金子 一義君
   理事 久間 章生君 理事 米田 建三君
   理事 伊藤 英成君 理事 玄葉光一郎君
   理事 赤松 正雄君 理事 工藤堅太郎君
      石破  茂君    岩永 峯一君
      岩屋  毅君    大野 松茂君
      嘉数 知賢君    北村 誠吾君
      熊谷 市雄君    小島 敏男君
      後藤田正純君    近藤 基彦君
      斉藤斗志二君    桜田 義孝君
      七条  明君    田中 和徳君
      谷本 龍哉君    中山 利生君
      浜田 靖一君    林 省之介君
      増田 敏男君    森岡 正宏君
      山口 泰明君    山本 明彦君
      伊藤 忠治君    石井 紘基君
      枝野 幸男君    大石 尚子君
      金子善次郎君    桑原  豊君
      首藤 信彦君    筒井 信隆君
      手塚 仁雄君    中野 寛成君
      永田 寿康君    藤村  修君
      前原 誠司君    松野 頼久君
      松本 剛明君    三井 辨雄君
      山田 敏雅君    渡辺  周君
      上田  勇君    白保 台一君
      田端 正広君    中塚 一宏君
      樋高  剛君    赤嶺 政賢君
      木島日出夫君    今川 正美君
      東門美津子君    井上 喜一君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   外務大臣         川口 順子君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   防衛庁副長官       萩山 教嚴君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   防衛庁長官政務官     木村 太郎君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   政府特別補佐人
   (人事院総裁)      中島 忠能君
   会計検査院長       金子  晃君
   会計検査院事務総局第二局
   長            増田 峯明君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (防衛庁防衛参事官)   中村  薫君
   政府参考人
   (防衛庁長官官房長)   柳澤 協二君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁人事教育局長)  宇田川新一君
   政府参考人
   (防衛施設庁長官)    嶋口 武彦君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (財務省大臣官房審議官) 藤原 啓司君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局長
   )            岩村  敬君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君
   衆議院調査局武力攻撃事態
   への対処に関する特別調査
   室長           鈴木 明夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月八日
 辞任         補欠選任
  石破  茂君     後藤田正純君
  近藤 基彦君     谷本 龍哉君
  田中 和徳君     北村 誠吾君
  西川 京子君     山本 明彦君
  川端 達夫君     松本 剛明君
  中野 寛成君     藤村  修君
  肥田美代子君     永田 寿康君
  前原 誠司君     三井 辨雄君
同日
 辞任         補欠選任
  北村 誠吾君     田中 和徳君
  後藤田正純君     石破  茂君
  谷本 龍哉君     近藤 基彦君
  山本 明彦君     西川 京子君
  永田 寿康君     大石 尚子君
  藤村  修君     中野 寛成君
  松本 剛明君     松野 頼久君
  三井 辨雄君     手塚 仁雄君
同日
 辞任         補欠選任
  大石 尚子君     肥田美代子君
  手塚 仁雄君     石井 紘基君
  松野 頼久君     山田 敏雅君
同日
 辞任         補欠選任
  石井 紘基君     金子善次郎君
  山田 敏雅君     川端 達夫君
同日
 辞任         補欠選任
  金子善次郎君     前原 誠司君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第八七号)
 武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出第八八号)
 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
瓦委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として警察庁警備局長漆間巌君、防衛庁防衛参事官中村薫君、防衛庁長官官房長柳澤協二君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、防衛庁人事教育局長宇田川新一君、防衛施設庁長官嶋口武彦君、外務省大臣官房長北島信一君、外務省アジア大洋州局長田中均君、外務省欧州局長齋藤泰雄君、財務省大臣官房審議官藤原啓司君、国土交通省総合政策局長岩村敬君及び海上保安庁長官縄野克彦君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第二局長増田峯明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
瓦委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。米田建三君。
米田委員 おはようございます。
 まず冒頭、基本的なことの確認から入りたいわけですが、相変わらず、この防衛関係の議論が国会で始まりますと、やれ戦争準備だ何だのと、一部の方々が国会の周りでも随分、反対運動なんでしょうか、座り込んでおられる方もおられるし、ああいう方々の主張やあるいは張ってある旗、その他プラカード等を拝見すると、何かとんでもない勘違いというのがぬぐえていないんだなということを思いまして、まず冒頭、やはり確認したいんです。
 国連憲章五十一条にうたわれているとおり、国家は、国際法上、武力攻撃に対して自衛権を行使することが認められているわけであります。
 したがって、今回の政府提案の一連の法案は、この自衛権を行使する際の、防衛庁・自衛隊のみならず、国のすべての機関及び地方公共機関等による国を挙げての有事対応の行動についてこれまで未整備だった部分、この細目を規定していこう、こういうものである、したがって、一部の皆さんがおっしゃるような戦争準備法案などというまがまがしいものではないんだ、このことをはっきり確認しておきたいわけでありますが、官房長官、御答弁をお願いします。
福田国務大臣 御指摘のとおりでございまして、今回の法案は、いわゆる戦争準備法案なんという、そういうものではございませんで、武力攻撃事態という国及び国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態への対処を中心として、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図っているものでございます。
 昨日も、小泉総理からも再三御説明を申し上げているところでございますけれども、平和なときにこそこうした体制準備を進めておくということが重要でございまして、その意味で、いわゆる有事法制というのは国家存立の基本であるということで準備をしなければいけないと考えているものであります。
 武力攻撃事態への対処におきましては、国、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置を講じなければならないと考えておりまして、法案におきましては、このような対処にかかわる基本理念、国、地方公共団体の責務、国民の協力、対処の際の基本方針などの策定等の事項を定めて、武力攻撃事態への対処をすべてこの枠組みの中で行うもの、こういう位置づけをいたしているところでございます。
米田委員 次に、防衛庁長官の答弁をお願いしたいんですが、この間の議論で、しからば、ではどこが攻めてくるんだ、それに対して、総理の備えあれば憂いなしという名答弁もあるわけでありますが、私は、実は、この安全保障体制をハード面、そしてソフト面双方できちんと整備していくということは、防衛力というものは使用せずとも、一つの国家がきちんとシステムとして備えている、そのことだけをもってしても侵略に対する抑止力になっているんだ、これが国際政治の、国際社会の現実であろうというふうに思っておりますが、防衛庁長官、いかがですか。
中谷国務大臣 抑止というのは大変な事態を未然に防ぐという観点でございますので、この考え方は必要であるというふうに思います。
米田委員 私、今国会での法案の成立が、これは我が国の政治家全体にとっての責務であろうというふうに思っております。決してこの成否を政治的な駆け引きの種にしてはならない、この戦後五十年放置されてきた足らざる部分をきちんと補って、次の段階にきちんと進んでいくための大きなステップである、政治家全体の責務であるというふうに痛感をしておる一人であります。
 それでは、本法案の具体的な中身に関連しまして、何点かお尋ねをしてまいりたいというふうに思います。
 まず、既に議論に出ておりますが、私はやはり、この九条二項の一号、「武力攻撃事態の認定」という項がございますが、この事態の認定のマニュアルと申しましょうか、どういう事象でどういう敵国の行動があった場合に武力攻撃事態として認定をするのか。特に、この予測されるに至った事態、またおそれのある事態、これが焦点になろうかと思いますが、これについて、やはり今後、法律の条文としてどうこう規定するという話ではないでしょうが、実際問題として、政府の内部できちんとマニュアルというものを今後詰めていく必要があるのではなかろうか、その点。そして、現状、きょう具体的にお答えできる部分があれば、こういうふうな方向であるというふうにお答えをいただきたい。
 それとまた、もう一つ、この事態認定に際しては、例えば一九七四年の十二月の十四日に、国連総会決議として明確に、侵略の定義に関する決議というものが行われているわけでありますが、こういう国際的な共通した認識等あるいはその他の先例等を参考にしながらマニュアルを策定していく、そういうお考えがあるのかどうか、官房長官にお尋ねします。
福田国務大臣 この武力攻撃事態への対処というものは、そういう事態が発生したときには、国として総合的な意思決定と各種の措置の実施を迅速に行うということがこれは極めて重要なことでございます。そのため、政府といたしましては、法案に定める制度の運用についての研究等を平素から怠りなく進めてまいる所存でございます。
 そのマニュアルという御指摘でございますが、これは、例えば今回提出いたしました法案につきましては、安全保障会議に事態対処専門委員会を設けて、そして武力攻撃事態の認定等の重大な判断を極めて限られた時間的な制約の中で的確に行い得るよう、平素から専門的な検討を行わせ、そして会議の審議を補佐させる、こういうことにいたしております。その際に、当然ながら国際法とか国際社会の武力攻撃に対する認識等につきましても検討対象とする、こういうことを検討の範囲に入れることは当然のことでございます。
米田委員 次に、この定義、二条の三号で指定行政機関の範囲が規定されております。しかしながら、現段階では、防衛庁・自衛隊以外の省庁の有事の際の所掌事務は不明確であります。これは、言ってみれば当然のことで、いわゆるこの国民保護法制等、二十二条の事態対処法制の整備がなされないとどの省庁がどういう責務を有事の際に負うのかというようなことも明確になってこないわけであります。
 法案では二年以内に整備を行うとしておりますが、そこで伺いたいのは、現在のこの提出法案の策定に際しましては、関連省庁から出向した特別の作業チームが官邸で事務的な作業を担ってきたはずでありますが、この作業チームというものはどうなるんですか。これで一段落で終わりですか。あるいは、国民に向かって二年以内という約束をきちんとしておるんですから、私は、この作業チームは続行されて、メンバーのチェンジはあってもいいのですが、さらに一段と馬力をかけないと、二年以内にこの一連の事態対処法制なんかできるわけないというふうに考えているんですが、その作業態勢をどう考えているか、クリアにしていただきたいと思います。
福田国務大臣 今後の法制の整備は、これは法案の第二十三条にございますけれども、総合的かつ計画的に実施しなければならないと考えております。また、その際に、関係機関の意見のほか国民的議論の動向も踏まえながら、十分な国民の理解を得られるように取り組む必要がございます。
 政府といたしましては、法律に定めます二年間という目標期限内に必要な法制の取りまとめができるような具体的なスケジュールや態勢により、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
 それで、御指摘のその作業チームでございます。これは、引き続いて作業をしてもらう、このような態勢を考えております。(米田委員「解散しないで続行するわけですね」と呼ぶ)はい。続行でございます。
米田委員 少し安心しました。ぜひお願いします。
 次に、指定公共機関、二条の五号になるわけでありますが、これに関連してちょっと伺っておきたいのですが、日銀、日赤、NHKは特定され、その他の公益的事業法人は政令で定める、こういうことになっています。現時点で特定しているものが腹づもりとしてあるのかどうかということが一つ。
 それからもう一つ、これは私、ちょっと大事な問題だろうと思うんですが、四月二十六日の本会議で総理は、指定公共機関の従業員に対し国から直接命令を発することは想定していないと答弁しておられるんですね。となりますと、仮にサボタージュや利敵行為があった場合、それらに対抗できる何らかの措置を可能にしておかないと、「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保」という法の目的を達成できないのじゃありませんか。そのときはしようがない、こういう話ですか。その総理の四月二十六日の答弁の趣旨をはっきり述べていただきたいと思います。
福田国務大臣 法案二条第五号において、公共的機関としていろいろ挙げてございますけれども、これはいずれも例示ということでございます。実際に、いかなるものを指定公共機関として政令で指定するかということにつきましては、その業務の公益性の度合い、武力攻撃事態への対処との関連性などを勘案し、当該機関の意見も聞きつつ総合的に判断する、こういうことになります。
 指定公共機関による対処措置が適切に実施されるためには、職員に法律や対処措置の仕組みを十分に理解していただくということが重要でございます。今後、個別の法制の中で指定公共機関の役割を具体的に定めるとともに、当該指定公共機関の協力を得て、職員への周知徹底を図るということになりますが、これは、御指摘のような懸念ということについては、今現在は組織として対応していただくということでございまして、具体的なことにつきましては、さらに検討を進めたいと思っております。
米田委員 つまり、四月二十六日の総理の本会議答弁の、直接命令を国から発することは想定していないというこの線は崩さない、こういう答弁だというふうに理解をいたしましたが、それでは、現状において、私が指摘したように、サボタージュや利敵行為を阻止する決定的な手段はない、現状では考えていない、こういうことになると思いますが、それでよろしいですか。
福田国務大臣 本法案におきましては、組織としての指定公共機関に対する対処措置の実施を求める、こういうことになっておりまして、この個々の職員に対しまして具体的な行為を求めるものではない、そういうことになっております。
米田委員 私は、やはり心もとない部分が残ると思いますので、今後、しっかり検討課題にしていただきたいというふうに思います。
 次に、八条の国民の協力に関して伺います。
 国防は防衛庁・自衛隊のみで達成できるものではありません。私は、これは官民一体で実施すべきものであるというふうに思います。したがって、国家の構成員の一員である国民も応分の負担を行うべきであるというのが大方の国民の常識ではないでしょうか。国家の危急存亡のときに協力では、まるで人ごとのような感じがしてならない、そういうふうに思っている一人であります。
 私は、この間、あるテレビ局のインタビューを受けました。そのインタビュアーは、どちらかというと百三条関連の処罰規定の存在を頭に置いてでしょうが、処罰規定があることはけしからぬじゃないですかというような論調で質問してきたので、私はこう答えたのですね。いや、むしろ、極めて今回限定しておるんだ、軽いんだと。一家が強盗に襲われようとしている、家族みんなで戦おうとしているときに、中で一人だけそっぽを向いて、私は関係ないわなんて、そういう家族がいたらどうしますか、おやじはげんこつを食らわすでしょうという例え話をしたら、なるほど、そのとおりですねというふうに納得していただきまして、その部分はちゃんと放送されたようですけれども、私はそういうことなんだろうと思うんですね。
 そうなると、私は、国民の協力というものは一体何なのか、本来、責務とすべきだというふうに思うんですが、協力を求めるとしたら、じゃ、具体的に何を期待して、どういう協力を求めていくのか。これも事態対処法制の整備が進んでいかないとクリアにならない点がたくさんあると思うんですが、もし現段階で、おおよそのアウトラインでも結構ですから、答弁いただける部分があったら答弁いただきたい。
 それから、災害訓練と同様に、いざ体系がきちんと定まってきたならば、私は訓練も必要になる時期が来ると思いますが、その辺どういうふうに展望しておられるか、伺いたいと思います。
福田国務大臣 この法案におきまして、武力攻撃事態への対応につきましては、国、地方公共団体及び指定公共機関が対処措置の実施について主体的な役割を果たすとともに、国民の協力を得て、相互に連携協力することにより万全の措置を講ずることができると考えているということになっておりまして、このような考え方から、本法案では、国民の責務ではなくて国民の協力として規定をいたしております。
 国民の協力の具体的な内容なのでありますけれども、これは、例えば地域における被災者の搬送など、国民の生命、身体等の保護のために地方公共団体が実施する措置への協力といったような内容を想定いたしております。
 また、協力の中に訓練が必要なのではないか、こういう御指摘がございましたけれども、これは、平時から備えるということはこの武力攻撃事態に対処するための措置としても大事なことでございますので、検討は考えております。
 このために、今後の国民の保護のための法制の整備に当たりまして、必要な組織や訓練などのあり方などについて、関係機関の意見や国民的議論の動向を踏まえながら、十分な国民の理解を得られるような仕組みを考えてまいりたいと思っております。
米田委員 訓練が必要になる段階も視野に入れておられるという答弁でしたが、全くそのとおりだと思います。どうか、しっかりお願いをしたいと思います。
 次に、私は常々不思議に思っているんですが、我が国の安全保障体制の整備あるいは強化に反対する勢力ほど、中国や北朝鮮の軍事力強化については全く批判してこなかった。ほとんど批判しない。このことは私は常々不思議に思ってきたんです。
 そこで、五月二日の産経新聞でありますが、アメリカの国立公文書館で見つかった、朝鮮戦争直後から日中国交正常化前後にかけての中国のスパイ機関の熾烈な対日工作についてのアメリカ国防総省機密文書の中身が報じられました。とりあえず紙面では実名は全部イニシアルになっておりましたが、実際には機密文書には実名が全部しっかり出ております。その中には、日本の政党、政治家、あるいは労組幹部らへの金品提供などの工作が具体的に記されているわけであります。
 私は、戦後日本の表面上の平和の陰にこういった国際政治の厳しい現実があったことを示す資料の一つであろうというふうに思っているわけでありますが、関係当局はこの事実をどのように認識しておるのか。
 また、あわせてもう一点。我が国はよくスパイ天国というふうに言われておりますが、諸外国の情報機関及びその協力者や協力団体の暗躍は今日でも日常的な現実ではないのか。事柄の性格上、言っていただく範囲というものは限られても結構ですが、警察庁の御答弁を願いたいと思います。
漆間政府参考人 委員御指摘の五月二日付の記事につきましては、私も読んでおります。委員が御指摘のとおり、これはアメリカの国立公文書館に保管されている米国防総省の機密文書というものを引いて記事にしておるということでありまして、これについては直接警察としてコメントするという立場にはございません。
 ただ、報道にあるような朝鮮戦争から日中国交回復、これまでの期間という時期に限らず、一般論として申し上げますと、複雑な国際情勢と我が国の枢要な国際的地位を背景として、国外から我が国に対する情報収集活動は巧妙かつ活発に行われているというふうに認識しております。
 スパイ天国だと言われているということでございますが、戦後我が国で検挙されました諜報事件というのは七十件余りに上っております。これを見ましても、対日有害活動について、その取り締まりのために関係法令を駆使して取り締まりをしてきたわけでございますが、このような摘発した諜報事件などから見ましても、対日有害活動は日常的に巧妙かつ活発に行われているということが言えると思います。
 対日有害活動というのは、我が国の国益を害し、国民の生命、身体にも危険を及ぼすという治安上非常に重要な問題であると認識しておりまして、警察といたしましても、関係法令を駆使しながら今後とも取り締まりを徹底していきたいというふうに考えております。
米田委員 ただいま漆間さんから、官房長官、明確に諸外国の情報機関の活発な活動がある、国民の生命、安全を守るために重要な問題であるという答弁がありました。
 そこで、私は、今度の法案に関連してのお尋ねになりますが、国民の中に残念ながら利敵行為を行う者、例えば、有事の際の政府の内定されたところの方針をいち早く敵国に通報する者、あるいは自衛隊の行動の詳細あるいはその予定を敵対国に通報した場合などに対する罰則がきちんと我が国にあるんだろうかということを考えてみたんですね。中国情報機関の暗躍の記事を見た後、考えてみた。ところが、どうもざるなんですよね。
 昨年の秋の国会で、自衛隊法の改正として、秘密保全に係る罰則の強化が行われた。しかし、これは自衛隊の機密を知り得る立場にある出入りの業者等ということです、対象になる民間人は。これは一つはある。しかし、極めて限定されたものですね。例えば、陣地構築をここでやっておるらしいというようなことを敵方に知らせた場合も、それが出入りの業者でない場合にはなかなか、ではどういう根拠で捕まえるんだという話になるでしょう。大変難しいファジーな部分がある、たくさん出てくる。
 一方で、これはもうほとんどレアレアケースで、極めてドラスチックなケースなんでしょうが、いろいろ調べてみると、刑法で外患に関する罪というのは一応はある。外患誘致罪、第八十一条「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。」、外患援助、第八十二条「日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは二年以上の懲役に処する。」というふうに外患に関する罪というのはあるんですが、これもまたドラスチックな大なたですよね。
 今申し上げた二つの法規から外れる、その網から外れる、さまざまな情報をキャッチして、それを利敵行為に使う、こういうことを抑止する法制というものがない。
 ちなみに、言うまでもなく、諸外国ではきちんと対処する法律があるわけであります。アメリカは連邦法で最高刑死刑の法律がある、フランスも最高刑死刑、ドイツは無期拘禁刑、イタリアは十五年以上の懲役、戦時においては無期懲役とか、きちんと先進諸国もなっておりますが、我が国においてその辺のところの配慮が全くないと、幾ら立派な法体系をつくってもざるに水じゃないでしょうか。どうでしょうか。
守屋政府参考人 先生の御指摘の問題でございます。防衛庁としましては、やはりそのような防衛上の秘密、これを保全していくということは重要な問題でございまして、まず防衛庁としてその秘密保全の万全を期してまいりたいということが基本でございます。
 それで、今先生の御指摘のような問題につきまして、確かに現行法の自衛隊法には、そのような違反行為を罰する規定はございません。自衛隊法の改正や新規の立法によりまして、先生の御指摘のような防衛庁・自衛隊の秘密を探知、収集する行為、これを罰則の対象とすること、それから、一般の民間人までこれを対象者として拡大するということにつきましては、表現の自由など国民の基本的権利などにかかわる問題でございまして、私どもとしましては、国民の十分な理解が得られるということが望ましいと考えておりまして、こういう観点から、広く国会等の場において議論され、検討されるべきものと考えております。
米田委員 官房長官、防衛庁に答えさせるとああいうふうにしか言わざるを得ないんでしょうが、私が指摘した、重要な情報が有事前後に、あるいはその最中に、いわゆる敵対国側に漏れることを抑止できない、阻止できない、法整備上、その辺に穴があるということはお認めになりますか。
福田国務大臣 御指摘のような懸念というのは、これはあると思っております。戦争とかそういうような場面におきますれば、これはもとよりのことでございまして、その戦争に有利になるために必死になって、血眼になって情報を求め合うということは、これは過去にもうずっとやってきておるわけでございますし、今でもそれは存在しているだろうというように思っております。
 そういう場合に、今回こういうような法律をつくるわけでございますけれども、この法律を万全なものにするという意味においては、やはり必要最小限度の秘匿というものを、特に国家的なものについてはこれは考えていかなければいけないということは、これは私の意見というだけでなくて、国家的利益ということを考えた場合には当然のことだというように皆さんお考えになるだろうと思います。
 そのためにどうしたらいいかということになるわけでありますけれども、それが罰則とかそういうことになるかどうかということにつきまして、これはその組織体の問題もあるかもしれぬということもありますので、総合的に考えていかなきゃいかぬ問題であるかもしれませんけれども、いずれにしましても、今答弁ありましたとおり、国会における議論等も踏まえて考えていくべき問題だろうというように考えております。
米田委員 極めて深刻な課題であるということを改めて申し述べて、次の質問に移ります。九条の対処基本方針関連であります。
 今回の法案では、隊法七十七条の防衛出動待機命令下令事態、これもまた国会承認を必要とする事態である、こういうことにされているわけでありますが、ちょっと防衛庁長官、素朴な疑問を抱いておりまして、つまりそれは、武力攻撃が予測される段階から、いわば国家としての戦闘の意思を内外に対して明らかにすることになりますよね。これは政治的にも軍事的にも問題があるんじゃないでしょうか。
 自衛隊法の防衛出動待機命令と同様の事態である、こういうことであるならば、長官が総理の承認を受けて命ずればよいのではないかという意見もあるわけでありまして、自衛隊法七十七条の二の規定に基づいて展開予定地域まで官報で告示して、手のうちを明かして承認を受けるという、これは本気で国家の安全を守る気かという、ある方から御指摘をいただきまして、私も非常に素朴な疑問を持っておるんですが、長官、いかがでしょうか、その辺。
中谷国務大臣 まず一つは、国の守りに関して、内外に対してその意思を立法府も含めて示すということは強固な意思の発揮であり、そのことが抑止的な効果にもなるという面はあると思います。
 もう一点は、この基本対処方針というのは、総理大臣が国、地方公共団体等の対処措置を総合調整するとともに、行政の指導監督をするための根拠となるものでありますし、この際、陣地構築等をするわけでありますけれども、そうなりますと、土地の収用等が必要になってくるわけでありまして、国民の理解と協力を得て適時適切に行い、必要に応じて、公権力を必要とする場合もございますので、そういった点で御理解をいただく必要もございます。そういう趣旨で、対処基本方針についてはその内容を、国の安全を害するような内容を含めることなく公示するということにするわけでございます。
米田委員 いや、今のところ、大事な答弁ですよね。国の安全を害することのないような中身で公示するということですか。今そうおっしゃいましたね、たしか。
 それで官房長官、今のこの問題だけでなく、基本方針の閣議決定あるいは国会承認の内容をそれぞれ公示することになっています。これ、同じ問題が出てくるんですよ。防衛上の大事な事態において、手のうちを明かす話にもなるわけでありますから。しかし、今防衛庁長官が、国の安全を害することのないような中身でとおっしゃった。私、大変重要だと思うんですが、その確認なんですが、つまり、この公示内容について、国の安全をおもんぱかりながら中身の制限をすることがあり得るということですね、どうですか。
中谷国務大臣 この対処の基本方針には、武力攻撃事態の認定、武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針、さらには防衛出動待機命令、防衛施設構築の措置等に係る総理の承認及び総理の命ずる防衛出動といった対処措置に関する重要事項を定めるということにいたしておりますが、公表することによりまして国の安全を害するような内容まで含めるということまでは考えてないということであります。
米田委員 少し安心しましたが、公示そのものは一応行われる、こういうことですね。その辺、ひとつしっかり、はっきり言って、細かいことは、すべての分野でこれから詰めるという課題が多いんだろうと思いますが、ひとつ御配慮をしっかりとお願いしたいというふうに思います。
 次に、これまた素朴な質問といいますか、確認になりますが、九条の四項、防衛出動の承認に係る規定なんですが、これ、否定形になっているんですよね。九条の四項、
 内閣総理大臣が第二号に掲げる防衛出動を命ずる場合にあってはその旨を記載しなければならない。ただし、同号に掲げる防衛出動を命ずる旨の記載は、特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合でなければ、することができない。
最近わかるようになりましたが、最初いきなり読んだときにびっくりしました。
 これは要するに、緊急の必要があり国会の承認を得るいとまがない場合は事前承認を受ける必要はないということだと。従来の七十六条に盛り込まれていた、今度削除されることになっているあのくだりと同じことだというふうに理解していいんですか。七十六条からその部分が削除されているだけに心配だと言う人もいるんですよ。しかも、これは否定形になっているから。
 その点と、もしそういう意味であるならば、これは、なぜちゃんとだれにもわかる肯定文にしないんですか。否定形にした何か深いわけでもあるんですか。ちょっとそこを聞いておきたい。
福田国務大臣 御指摘のこの規定は、防衛出動について、原則としてまず国会の承認を求める旨を対処基本方針に記載しなければならないということ、それから、例外的な場合においても、これを命ずる旨を記載しなければならないことを定めた上で、後者の例外的な場合がいかなる場合なのかを定める規定である。こういうことから、この趣旨を明確にするためにこういうような表現にしたということでございます。
米田委員 そうすると、従来の七十六条後段の事後承認もあり得べしというその考え方には変わりはないんですね。
福田国務大臣 それは同じ趣旨でございます。
米田委員 否定形というのはどうもすっきりしませんが、次に移ります。
 対策本部、十条関連で何点か伺います。
 安保会議が従来からある。今度対策本部というものがつくられる。はっきり言って、何かかえってごちゃごちゃしちゃっているんじゃないかという感じもあるんですが、この役割、責任区分をもう一度一言で、だれにでもわかるように明確にしてもらいたいんですよ。役割と責任区分、それが一つ。
 それともう一つ、法案では、対策本部は対処基本方針に係る対処措置の実施の推進を図り、対策本部長は、行政機関、地方自治体、公共機関との総合調整を行う、こういうことになっております。
 そこで、私は、対策本部が実施推進機関であるとすれば、安保会議で審議されたところの自衛隊の純軍事的行動にかかわる方針が、対策本部の行う総合調整の審議の過程で、これは各省庁全部出向してこられているわけですから横並びですわな、基本的に。いや横並びじゃないんだという答弁ならば話はわかってきますが、そういう組織の総合調整の審議の過程で軍事専門家以外のいろいろな思惑が入りまじって、安保会議で決定されたところの思いというものが非現実的な方向に曲がっていくような、そういう事態もあるんじゃないのかと。
 であるならば、この対策本部における防衛庁長官あるいは統幕議長等の軍事の専門家の役割、権限を他の対策本部のメンバーと明確にやはり区分しておかないといかぬのじゃないかという思いがするんですが、その辺、官房長官、いかがでしょうか。
福田国務大臣 安全保障会議というのは、これは今委員も申されたんですけれども、対処基本方針等の武力攻撃事態への対処に関する重要事項について、内閣総理大臣の諮問への答申または意見具申を行って、閣議の迅速かつ的確な意思決定を助ける、そういう会議であります。
 これに対しまして対策本部というのは、閣議が決めた対処基本方針に基づいて国、地方公共団体等が行う対処措置の総合的な推進を行うというものでございまして、対策本部長たる内閣総理大臣は同方針に基づいて対処措置に関する総合調整を行う、こういうことになっております。
 この今の対策本部と閣議の関係になりますでしょうか、閣僚から構成される閣議ということになりますか、それとの関係は、閣僚の集合体である閣議は、これは要するに行政組織を統括するという立場であるわけですね。しかし対策本部の方は、閣議が決めた対処基本方針に基づいて対処措置を行うということであります。これは重なり合っている部分が多いと思いますけれども、しかし、対策本部ではこの対処措置に関する総合調整を行う、こういうことになっておりますので、その点が、機能がそれぞれ違うんだ、こういう理解をしているところであります。
米田委員 質問はそういうことではないんです。
 我が国の防衛上の、軍事上の基本的なスタンスを決めるのは、まず第一義的には安保会議でしょう。安保会議ですね。ところが、今回対策本部というものもできる。すると、そこにおいて、安保会議で筋道がつけられた我が国の防衛上の基本方針、純軍事的方針、軍事上の方針、これが、いわば全官庁からスタッフが集まっている、そして少なくとも今拝見するところでは、特に差別化されているわけじゃない、横並びだ、そういう総合調整の対策本部の中で、安保会議のいわば軍事の専門家以外の方々の意見というものがどの程度の重みを持ってくるんですかという話ですよ。そこにまで影響を及ぼすならば、防衛方針というのは成り立たなくなる場合もあるのではないのかと。
 しからば、防衛庁長官や統幕議長等の、防衛庁長官は当然対策本部のメンバーにもなるんでしょうが、統幕議長はどういう位置づけかわかりませんが、それらの専門家の役割、権限というものを他の省庁から出張ってくる皆さんとは明らかに分けておかないと、そういう安保会議で決められた大筋の我が国の防衛上のスタンス、軍事的なスタンスというものがファジーになっていく、ゆがんでいくことになりかねない、このことを言っているんです。
福田国務大臣 安全保障会議は、この機能の特に今回の法案に関係する部分でいえば、武力攻撃事態への対処に関する基本方針、それから武力攻撃事態への対処に関する重要事項、こういう武力攻撃に関する問題点でありますけれども、安全保障会議の構成員というのは、その必要に応じて、常設の議員というものは決まっておりますけれども、状況に応じて会議のメンバーは、議員は追加することができる、こういうふうな体制になっておりまして、必要に応じて必要な議員によって審議をする、こういう形になっております。
 また、この対策本部、この本部員は閣僚でございます。それから対策本部の職員、これは、行政機関を統括する国務大臣ないし所属する行政機関の職員として、おのおのその所掌する事項について十分な識見を有することが期待される、そういうことでございまして、その専門的な判断を尊重されるものでございます。
 例えば、今御指摘ありましたような統幕議長というような立場の方については、軍事に関する専門的な知見を有しているということから、対策本部の職員となる、こういうことになっておるわけであります。
米田委員 その辺、しっかり仕切りをお願いしたいと思うんです。いわゆる船頭多くして何とやらということわざもあります。まして、その船頭の中に、船をこいでいない人も今回船頭の資格を得たなんて言って、見当違いなことを言われて船が変な方に行っちゃいけない、こういう実は心配でありまして、仕切りをしっかりこれからお願いをしてまいりたいと思います。
 次に、十五条の総理の指示権に関しまして伺いたいんですが、地方自治体の長等が対処措置に基づく事項を実行しなかった場合、いろいろなケースが想定されるんだろうというふうに思います。
 例えば、防衛庁長官または政令で定める者は土地の使用、物資の保管の要請書を知事に届ける、しかし、その要請書そのものを受理しない、あるいは、一応受理はしたけれども自治体の職員に業務の指示をせずに自分が保管している、そういう場合。あるいはさらに、職員に指示はしたけれどもその職員が実行しない、そして自治体の長等がそのことについて指導監督もしない。こういう場合、総理がみずから行うといっても、実際だれが、どういう方々がやるのか、想定しておられるのは、自衛隊なのか警察なのか消防なのか、一体だれなんだ。まさか総理がみずから地方へ飛んでやるわけじゃないでしょう。その辺のところをある程度アウトラインをお示し願いたいことと、やはり国のこういう事態において、もしも協力しない自治体の長等が出た場合に罰則がないというのは、これはどうなんですか。その辺の考え方を改めて伺っておきたいと思います。
福田国務大臣 この法案におきまして、国民の保護のため緊急を要する場合など、特に必要がある場合には、別に法律で定めるところにより、内閣総理大臣がみずから、または関係大臣を指揮し、地方公共団体等が実施すべき対処、対応措置を実施することができるということにしております。具体的に国のどの機関がどのような対処措置について代執行などを行うということになるかにつきましては、今後、国民の保護というための法制等の整備に当たって検討してまいりたいというように考えております。
 また、罰則についてでございますけれども、協力をしない場合に、地方公共団体等についてどういう対応をするかということでありますけれども、もし地方公共団体に対して指示をするということになった場合に、この地方公共団体は、この指示に従うという法律上の義務が生じるということになっております。
 それで、この地方公共団体において指示に基づく所要の対応措置が実施されないときには、別に法律で定めるところにより、国がみずから対処措置を実施することが可能でございまして、これによって万全の措置を講ずるというように考えております。
米田委員 何かストレートな答えになっていませんが、私はやはり今後、今すぐ修正しろとは申しませんが、いやしくも国の安全にかかわる事態において、自治体の長が全体の方針に抵抗して仕事をせぬなんということを放置したら、これはもう国家の体をなさないというふうに思うんですね。引き続き、ひとつこれは御留意いただいて、我々もまた政府も考えていくべき課題だろうということを申し上げさせていただきます。
 次に、先ほど、本法案を策定するに当たって各省庁から結集した作業チームは継続するという具体的なお答えをいただきました。その作業チームが残余の個別法案の原案づくりにも当たるんだろうと思いますが、あわせて私はお願いをしたいのは、本法案の二十四条にあります、いわゆる武力攻撃事態以外の緊急事態、これらについても、私はその同じ作業チームでもいいと思いますが、あるいは別途に検討チームを立ち上げるのも結構だろうと思いますが、具体的に作業チームを特定して、私は直ちにこの法整備を図る方向で作業を開始すべきだというふうに思うんですね。
 本法案で言う武力攻撃事態というのは、外部の国家あるいは国家に準ずる組織による組織的、計画的な武力の行使、つまり攻撃主体が明らかな事態であるけれども、現実の国民の不安というものは、攻撃主体の明らかでないさまざまな事態に対する不安というのが今高まっているわけであります。武装工作船問題しかり。
 そういう状況の中で、先ほどせっかく、事態対処法制の残余の個別法案策定のための作業チームは残すんだとおっしゃったので、この問題も私は同時並行で、武力攻撃事態以外の緊急事態の法の整備、これも具体的に取りかかるんだという意思をはっきり、官房長官、政府としてお示しをいただかないと、とかく言われる、これは片肺の法案だ、やれ何十点だと言われるわけでありまして、その意思をやはり明確にお示しいただきたい。せっかく作業チームは続行するとおっしゃったんですから、あわせてこれらの法案についてもお願いしたいんですが、いかがですか。
福田国務大臣 武力攻撃事態以外の緊急事態につきましては、これまで警察・海上保安関係法それから自衛隊法、災害対策関係法などによって体制を整えてまいりました。今後ともこれを一層改善強化するための措置を講じてまいりたいと思っております。
 これらの措置につきましては、情勢に応じて不断に改善を図る必要があるということから、期限を設定せずに、結果を得られたものから随時実施に移すことにいたしております。その際、いかなる事態にも対応、対処できる安全な国づくりを進めるという見地から、法制面の問題も含めて引き続き検討いたしますけれども、そういうことを総合的な観点から推進するために内閣官房においても取り組んでまいりたいと思っております。
米田委員 体系的にまとめて、包括的に考えていくということではなく、個別具体的にという従来方針でいく、そういうお考えの表明だろうと思いますが、いささかそれには意見がありますが、きょうはそれは申しません。ただ、もしそうであるならば、極めて迅速に、一つ一つに対処して具体的な法案というものを国民の前に示さないと、私は政府の信頼は保てないというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
 次に、自衛隊法の一部改正について何点かお尋ねをいたします。
 まずは、防衛出動待機命令下の武器使用の問題であります。防御施設構築時の限定された地域、要員に対して認める、今回こういうことになりました。しかし、私は、これは実は待機命令を受令している隊員全員に拡大すべきじゃないかというふうに思うんですよ、防衛庁長官。
 というのは、既に敵対勢力が潜入をしていたり、あるいは先ほどの警察庁の漆間さんのお話にもあったけれども、我が国にはとにかくうようよしているんですから、外国の国益をしょいながら暗躍するいろいろな人やいろいろな組織があるわけでありますから。この内通勢力が、既に潜入をしておるところの敵対勢力及びその敵対勢力に内通する勢力が、これは自由意思を持って行動するわけですから。陣地構築中のところだけ来てくれよと注文を出すわけにはいきませんからね。自由意思を持って国内を跳梁ばっこするわけでありますから、陣地、防御施設の構築時の、しかも限定された地域、要員だけにこれを限定する合理的な理由が不明なんですね。この辺、拡大すべきだと思いますが、防衛庁長官の御感想を伺いたい。
中谷国務大臣 今回、九十二条の三によりまして、事態が緊迫して防衛出動が発せられることが予測される状況において、この展開地域の予定するところで防御施設の構築を行うに際して武器使用を規定したわけでありますが、これは、この展開予定地域が相手国部隊による攻撃が予想される重要施設や相手国部隊による侵攻が予測される地域等でありまして、不測の事態が発生するおそれも否定できないからでございます。この際、武器使用を認めたわけでございます。
 もう一方で、防衛出動の待機命令を受けた自衛官につきましては、駐屯地に所在する場合は、九十五条の二を昨年の臨時国会で改正いたしましたけれども、この場合にこの警護が可能でございます。また、車両等で移動をする自衛官につきましては、現行の第九十五条の規定によりまして、車両等を防護する際の直接の防御対象として、または車両を防護する反射的効果として防御が可能でございまして、防衛出動待機命令を受けた自衛官の防護のための武器使用規定につきましては、今般の九十二条の三の改正によりまして、所要の整備が可能、なされるというふうに考えております。
米田委員 与党の理事でもあるので、きょうのところは深追いしませんが、長官、今度の新しい本法案の提案されているあれで、待機命令下の防御施設構築時の限定された地域、要員、これは武器使用できる、プラス、その他の場合について九十五条のお話をされた。
 しかし、駐屯地や、あと、車に乗せたり、武器等防護で規定された九つの品目を警護している任務についているだけじゃないでしょう。その他いろいろな任務についている、ほかの任務についている自衛隊員の方が多いはずであって、そういう人たちは武器使用できないじゃないですか、敵に襲われても。漏れる部分がたくさんあるでしょう。ありますよね。
 うなずかれたので、これ以上聞きませんが、私は、やはりこれは今後の大きな宿題でもある、大きな前進であり、かつまた大きな宿題が残されたということを申し上げておきたいと思います。
 次に――終わりましたか。残念でございます。あと十問ありましたけれども。ありがとうございました。
瓦委員長 次に、松野頼久君。
松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。
 きのうから、るるいろいろ、今回の三法について議論がございますが、今回、一つ私が注目している部分というのは、個人の所有財産、また憲法で保障されている財産権を、防衛出動時に国がある程度関与して収用したりする、そういう部分があるわけでありますが、それをまた国が損失補てんするという部分が大きなところではないかと私は思っているわけであります。
 そして、国が収用した場合、どういう基準をもってこの損失を補償するのかということを今どのように考えられているでしょうか。防衛庁長官、お願いします。
中谷国務大臣 詳細につきましては内閣の方でお決めになるわけでございますけれども、一般的に、現行等につきまして、この借料なりその補償等につきましては、公共事業を実施する国、地方公共団体が公共用地を借り上げる場合に適用される算定基準と基本的に同じでございまして、このことを基本に考えられるのではないかというふうに思っております。
松野(頼)委員 確かに、武力攻撃事態が起こった場合に、国民の基本的権利やまた財産等をある程度制限する、このことはわかります。しかし、その一つの例を今挙げさせていただきますと、沖縄の駐留米軍及び防衛施設用地というのがこれに非常に近い例ではないかというふうに私は思うわけであります。
 今、その算定基準をお話しになられましたけれども、お配りをした資料の一をごらんいただきたいと思います。この資料の一でも、「このような借料の算定基準は、公共事業を実施する国、地方公共団体等が公共用地を借上げる場合に適用される算定基準と基本的に同じであり、本土・沖縄に限らず一律に適用されるものである。」という、今と同じお話であるわけであります。
 この算定基準を、以前、沖北の委員会で、私、お示しいただきたいということを申し上げたんですが、また、質問主意書を政府に出させていただいて、この算定基準というものを出していただきたいということを申し上げたんですが、全くお出しをいただけないという現状が実はございます。
 もう一度この場でお伺いいたしますが、この算定基準というのはどのようにお決めになっているんでしょうか。
嶋口政府参考人 お答えいたします。
 累次答弁を申し上げておりますように、昭和二十七年の閣議了解、これが基本でございます。そこでは、宅地とか宅地見込みとか山林とか、そういうものによって計算しなさいと決めております。それから、近傍の価格で補正できる場合は補正しなさいというふうな書き方になっております。
 沖縄につきましては、復帰時の状況から見て、この固定資産税評価額というものは到底とり得ない状況になっていたということもありまして、予定取引価格というものによらざるを得ないということでございます。
 そういうことで、二十七年の閣議了解に基本的には従いながら、と申しますのは、宅地であるとか宅地見込みによりながら、予定取引価格を主体として、算定基準として、毎年通達を発して、それによって算出しているということでございます。
松野(頼)委員 ですから、その算定基準、過去のものでも結構ですが、毎年予算の中で地代が払われているわけでありますが、その地代を払っているもととなる基準の額、確かに、来年度のものを、また、ことしのものであれば、それは交渉事があるわけですから、そこはなかなか出せないというのもわかりますが、過去のものでもいいから、どういう基準、また、幾らで事実上算定して交渉に当たられているのかというのを出していただきたいということを実は申し上げているわけでありますが、防衛庁長官、この算定基準が出ない理由というのは何かあるんでしょうか。
嶋口政府参考人 先生御案内のとおり、私どもと沖縄の地主さんの方々というのは、まさに毎年毎年、借料額について交渉しております。いわば商売に匹敵するようなものでございまして、毎年毎年更新いたしますので、借料額を算定するということでございますので、私どもの見積額、評価額と申しましょうか、こういうものをお出しすることは、今後の私どもの土地連との関係、やりとりがございますので、それに対していろいろな影響を与える、私どもにとって不利な状況になることも当然予想されますので、提出するのは差し控えさせていただきたい。
 それから、先ほど先生の方から、算定基準ということで資料提出ということでありましたけれども、質問主意書では、先生の方からは、その評価額を出せということでございましたので、それは、今申し上げた理由で、残念ながらお出しできない、こうお答えした次第であります。
松野(頼)委員 ですから、今回の有事三法の中で、個人の民有地を使用した場合、また、武力攻撃事態が起こった場合に民有地を借り上げるという場合、この場合も、全く同じように、その評価額というものは全く出さない、これは交渉事があるんだから防衛庁だけわかっていればいいんだというようなことに陥るんじゃないですか。
嶋口政府参考人 私どもが持っているこの評価額というのは、いわば内部の評価でございます。もちろん、毎年契約している金額については公表しているところでございます。
松野(頼)委員 実は、私の、基準値を出してくれという質問主意書に対して、内閣として、評価額の総額を明らかにすることは、右の調整における国の当事者としての地位を不当に害するおそれがあり、これにより防衛庁設置法第五条十二号、第十九号に規定する事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるので、答弁を控えたいということでありました。
 では、その防衛庁設置法の第五条の十二号は一体何なのかといいますと、防衛庁の所管事務は次のとおりであるといって、第十二号は「所掌事務に係る施設の取得及び管理に関すること。」また、十九号は「条約に基づいて日本国にある外国軍隊の使用に供する施設及び区域の決定、取得及び提供並びに駐留軍に提供した施設及び区域の使用条件の変更及び返還に関すること。」とあるんですね。
 ですから、この数字を全く出さないというところ、これは機密であるということは全くこの条項には書かれていないわけですよ。なぜこれでこの主意書に答えられないのか。そこの部分をもう一回お尋ねいたします。
嶋口政府参考人 沖縄の土地の地主さんたちの関係、借料、これについては、賃貸借契約でございますけれども、その仕事の根拠は今申し上げたとおりです。
 当然のことでありますけれども、私どもは国民の税金を使わせていただいています。厳しい財政状況でございます。その中でできるだけ安く交渉したいということでございますので、そういうものに差し支える。言ってみれば、国の業務を、今やっています土地の取得もそうでございますけれども、それをいかに効率的に経費を節減しながらやるかというのは一般的な義務でございますので、そういうことから、この沖縄の土地の地主さんたちとの交渉に当たっても、そういう観点で、私どもはそういう交渉に不利益になるものは出したくない、出せない、こういうふうに申し上げている次第であります。
松野(頼)委員 ですから、では今度の有事三法の中で、個人の所有財産を使用した場合、土地を借り上げた場合、それも交渉にかかわるから全くだれにも出さないぞ、この国権の最高機関であります国会の委員会の資料請求にも応じないということがこれから起こるんじゃないでしょうか。
嶋口政府参考人 武力攻撃事態が起きた場合にどうなるかということについて、私の所管では何とも申し上げられない立場でございますけれども、いずれにいたしましても、私どもはあくまでも部内の見積もりの資料はお出しできない。ただ、実際どのくらいの金額でやったか、契約したかということについては公表しているところでございます。
松野(頼)委員 この土地の価格というのは、「駐留軍ノ用ニ供スル土地等ノ損失補償等要綱」、これは昭和二十七年の閣議決定によって決められているわけであります。
 この第六条、お配りした資料の第三ページ目、これをごらんください。第六条で、土地、統制額のない場合において、使用時の属する年度の固定資産課税台帳に登録された価格に、土地資本に対する年利回りを乗じて得た数字と固定資産税額を合計するとあるんです。
 以前、沖北の委員会で質問したときに、防衛施設庁は固定資産税額を御存じなんですかというふうに伺いましたらば、それは知りませんというふうに長官お答えになっているんですが、この第六条を見ると、使用時の属する年度の固定資産課税台帳、これを基準とするというふうに書いてあるじゃないですか。なぜ固定資産税の総額がわからないんでしょうか。お答えください。
嶋口政府参考人 その件につきましては、先ほど御答弁申し上げたとおり、沖縄は昭和四十七年に復帰した、まさに本土に復帰した。それ以前は米軍の施政下にあったということでございまして、米軍はその当時からも、施政権を持っていた時代に、土地連、地主さんたちと契約をやっていた。その中で固定資産税という方法をとっていない。いろいろ、過去のことで私も詳細に承知しておりませんけれども、復帰になった、ではどうするかといったときに、固定資産に到底よれないような状況があった。やむを得ず予定取引価格というものによってきたという経緯でございます。
松野(頼)委員 いや、それは、復帰以前の米軍が使用していたときのこと、また復帰時のことも私は調べました。しかしながら、現在この第六条に違反をしているんじゃないですか。
 例えば、去年の固定資産税の総額は幾らですかというふうに申し上げたところ、いや、それは知りませんというふうにお答えになっている。全く防衛施設庁として固定資産税額というものを把握していない。
 しかしながら、この六条では、固定資産税に土地の利回りを乗じた額をプラスしてこれを出すんだ、算定基準とするんだということでうたわれているじゃないですか、ちゃんと。これは第六条違反じゃないですか。
嶋口政府参考人 この昭和二十七年の閣議了解につきまして私ども基本的によっておるんであります。
 ただ、金額の出し方においては、先ほど申し上げました沖縄の特殊事情があったということで、それ以後、毎年毎年、契約更新、契約の期間としては、期間の定めのないところで、二十年になっておりますけれども、金額については毎年更新するということで、長期間これによって安定的に使用してきている。
 もちろん、私どもが独自に土地連の人たち、地主さんたちと契約をして、そこで勝手に払っているわけではございません。毎年、概算要求し、予算措置を認めていただいた上で契約しているということを御理解いただきたいと思います。
松野(頼)委員 いや、違う、そんなことを聞いているんじゃないんですよ。(発言する者あり)
瓦委員長 静粛にしてください。
松野(頼)委員 その駐留軍用地の土地の補償等の要綱という、この六条に従って今の金額を算定されているはずじゃないですか。違いますか。
嶋口政府参考人 閣議了解に基本的に従っていますということを申し上げました。そのとおりでございます。
 そのほか、この要綱三条の四項でございます。「コノ要綱ニヨツテ算定シタ土地等ノ賃借料マタハ買収価格ハ、前項ニヨルモノヲ除キ、ソノ土地等オヨビ近傍類似ノ土地等ノ地代、家賃、売買価額等ヲ考慮シテ適正ニ補正シナケレバナラナイ。」ということで、基本的に、このように、閣議了解、固定資産税制度の仕組み、つまりそれは、宅地だとか宅地見込み、山林、農地とかこういう分類になっている、これに従っています。その上で、近傍にそういう取引があった場合に、それについて補正しなさいというのが閣議了解です。
 私ども、毎年そういうことで補正を出して、その上で契約をしている、こういうことでございます。
松野(頼)委員 その話はわかりますけれども、では、何で固定資産税の総額がわからないとお答えになったんですか。
嶋口政府参考人 わからないと申し上げたのではございませんで、こういうふうなものを今使っていませんので、固定資産税評価、そういうものを使っていませんので、私どもはそういう数字については承知していないと申し上げたつもりです。
松野(頼)委員 いや、それはおかしいですよ。だって、この駐留軍の土地を使う損失補償等の要綱、この第六条にきちんと明示してあるじゃないですか、算定基準が。
 私がなぜこのことをこだわって言うかというと、次の第四ページをごらんください。
 土地の値段、もう私が今申し上げることもありませんけれども、全国各地でどういう状態で値下がりをしているかというのは皆さんおわかりになるかと思います。
 この「土地連の要請額と予算措置状況」という第四の資料を見ていただきたいと思います。平成四年度からずっと毎年毎年値上がりをしているんですよ。もっと言いますと、復帰時の七二年には百二十三億だったんです。この三十年間で六倍になっているんですよ。六倍になっている土地が日本全国ほかにありますか。お答えください。(発言する者あり)
瓦委員長 静粛に願います。
嶋口政府参考人 一般的な取引事例については承知しておりませんけれども、私どもが基地、自衛隊施設等のためにお借りしている土地について申し上げますと、沖縄と同様、本土についても約六倍になっております。
松野(頼)委員 では、資料五をごらんください。
 沖縄の土地の変動率の推移というページがございます。これで見ていただいて、公示地、沖縄では確かに変動が少ないんですけれども、平成八年から、〇・一%、〇・二%と下がっていっています。にもかかわらず、同じ沖縄で、防衛施設用地に関しては先ほどのように上がっていっている。
 ですから、今回の、基地の問題を別に議論しているわけじゃなくて、この有事の中で、個人の所有財産を借りた場合、これは武力事態に陥っているところだからこれもまたしようがないんだ、しようがないんだといって野方図に上がっていくんじゃないか、また、そこの部分はアンタッチャブルで全く国民に見せないんじゃないかというおそれがあるから、一つの事例としてこの議論をしているわけであります。
 なぜこうやって価格が、地価が下がっているのに上がっていっているのか、もう一度お答えください。
嶋口政府参考人 一般的な土地の取引そのものが、すなわち私どもの沖縄におきます土地の借料に反映するものではございません。それぞれ、累次御答弁申し上げておりますけれども、交渉いたしまして、それから、その土地の特性、特に沖縄の場合は、基地が中部地域、一番人口の密集した地域にまた集中している、先生御案内のように、瑞慶覧もそうですし、嘉手納基地もそうですし、一番密集した地域に所在しているということでございますので、そのことと沖縄における全般の土地の取引の数字と連動するものではないと承知しております。もちろん、そういう中で、私ども、毎年毎年厳しい交渉をしているわけですけれども、それぞれの土地の実態を見ながらやっている。
 私も、六年前に沖縄に勤務したことがありまして、某銀行の頭取とお話ししたことがございます。バブルが崩壊しているというんですけれども、まだ依然として沖縄では中部地区を中心として土地が下がっていませんというふうなこともじかに聞いたこともございます。
松野(頼)委員 いや、そんなことはありませんよ。沖縄の中で随分多くの部分が軍用地として借り上げられているから、逆に言うと、それによって地価の変動が少ないんじゃないかということを指摘されている学者もいるんですよ。
 ただ、先ほどから御答弁されていますけれども、この沖縄の軍用地の、この第六条、先ほどの基準の要綱、損失補償等の要綱というのがあります。やはりここで、昭和二十七年に、こういう形で大体の賃料は算定しましょうという基準をつくっているじゃないですか。なぜこの基準どおりにこれが行われていないのか。もしこの基準どおりに算定が行われているのであれば、まずこういう値上がりの仕方というのはしていないと私は思います。
 それも質問主意書で、政府に対して、当該土地の固定資産税の総額を出してくれと再三申し上げましたけれども、これは地方税法によるところだから国は固定資産税の額を把握していないという答弁がありました。答弁書に書いてありました。しかしながら、これでは本当にその土地の算定基準がクリアなものなのかどうなのか、オープンにできるものなのかということが議論できないんですよ。再三資料請求をしているんですけれども、資料も出てこない。全く、じゃその目安をはかろうと思って固定資産税の評価額を資料請求しても、それも出てこない。
 結果的に、防衛施設庁が交渉に当たっているんだから、価格は防衛施設庁だけが知っていればいいんだというような態度で今ずっといらっしゃるわけであります。そういう態度の中で、今回の特に民有地を借り上げる有事法制の議論、ここをまずしっかりただしていかなければできないんじゃないかというふうに私は指摘をさせていただきたいと思います。
 そして、資料の六をごらんください。地元の新聞の社説にも、この軍用地料というのが政治価格になっているんじゃないかという指摘がございます。
 そして、その次の資料をごらんください。これは、土地連の平成九年から平成十二年までの事業報告書であります。
 この中に下に線を引いたところがあるんですが、防衛施設庁は当初において、概算要求として前年度を下回る二%後半が精いっぱいであり、防衛予算の圧縮からこれ以上の上積みは厳しいとの態度を示していたが、関係国会議員の全面的なバックアップにより三・二五%の七百六十七億を要求することとなったと。このとき、防衛施設庁は二%台後半しか難しいというふうにおっしゃっていたらしいんですけれども、その折衝の結果、三・二五%に引き上げられた。
 次のページの平成十年度をごらんください。防衛施設庁、これも、当初においては三%が精いっぱいの数字でありとなっていますが、関係国会議員の全面的なバックアップにより三・五%の七百九十四億を要求することとなったと。
 また、その次のページ。二%以上は難しいとおっしゃっていたのが、三・五%に上がっています。
 そして、平成十二年度も全く同じであります。地価動向が鈍化し、下落傾向にあるほか、国の厳しい財政状況から一・七五%が限度であるというところも、これは関係国会議員に強力に要請すると三・三%に上がるわけであります。
 この状況をまず見ていただきたいというふうに思うわけでありますが、これは、八百億の話ですから、一%で八億なんですよ。大きな金額なんですね。それが、毎年毎年、関係国会議員に要請行動をすると、こうして金額が上がっていくという事実。これは、土地連が自分のところの事業報告で書かれている事実なんです。
 このことについて、いかがでしょうか。
嶋口政府参考人 土地連がこういうふうな事業報告を出しているということでございますけれども、今読みました。しかし、それは、土地連の内部でいろいろな事情があってこういうことを書いているのでありまして、そういうことについて申し上げる立場にございません。土地連の内部のことについて申し上げる立場にございません。
 そういうことでありまして、私どもは、この数字が二%後半とかいうことについては、いろいろな形で折衝しながら、いわば交渉でございますので、そういう数字が出たのかもしれませんけれども、毎年毎年契約でしなければいけません。もし契約に応じていただけなければ、楚辺の通信所のように、ああいう時期になりますと一年間不法占拠状態に近い状態になってしまうということもありますので、粘り強い交渉をする。もちろん、土地連の人たちは、地主さんの方々は、自分たちの生活がかかっているわけですから、それだけ向こうも強く粘ってくる。という中で、こういう数字で落ちついているということでございます。
松野(頼)委員 これは、先ほどの損失補償等の要綱に、関係国会議員に強力に要請しろと書いてありますか、この六条に。どうですか。この要綱に基づいて地代を算定しているわけでしょう。違いますか。にもかかわらず、こうして関係国会議員の要請によって地代が上がっていくという現実。
 ここについてもう一回答弁してください。
嶋口政府参考人 先ほども申し上げておりますように、この要綱は要綱でございまして、政府部内の基準でございます。
 もちろん、沖縄の土地の借料というのは、いわば日米安保条約を運用する上で沖縄の基地が非常に重要でございます。米側に私どもは基地を提供する義務があるということでございます。日ごろから使っている土地でございます。新たな取得ではございません。現在使っているものでございます。そこで穴があいては絶対困るということでございます。穴があきますと、繰り返しになりますけれども、楚辺の通信所のように約一年にわたっていわば不法占拠状態になってしまう。これは、日米安保関係、日米関係においても大変信頼を損なうことだということで、何としても私どもはそれは避けたいということでございます。
 その上で、沖縄の基地問題については重要な政策課題になっておりますので、関係の先生方に、こういう状況になっていますということを説明に行くことがございます。土地連は土地連でまた、自分たちの生活を守るために関係の先生方に行くのかもしれません。土地連が関係の先生方に働きかけることについて、私どもは否定することもできません。あくまでも契約の当事者は土地連でございますので、その間で、お互いに粘り強く交渉して円満な解決を図っているということでございます。
松野(頼)委員 いや、そういう話をしているんじゃなくて、これは土地の借料の問題なんですよ、借料の問題。
 確かに私も、沖縄に基地が集中して沖縄の県民の皆さんに過重な負担をかけている、そのことに対しては国は補償していかなければいけないというふうに私も思います。日米安保条約もこれはしっかり守っていき、日本はアメリカと最大のパートナーとして行動していかなければいけない、これは私、個人的にも思います。
 その話とこの借料の問題というのは違うのですよ。日米安保条約に、三十年間で六倍の土地の値段を払えなんてどこに書いてあるのですか。そんな話をしているんじゃないのです。きちっと借料は借料で、個人の私有財産を借り上げた場合の、だれが聞いても理解できるような評価をつくらなければいけないんじゃないですかという話を私はしているのです。
 今回のこの有事法制三法の中でも、これから同じことが行われると思います。これは武力攻撃事態に備えた場合の基地をつくるための土地だから、これは借りておかなければ大変だということで、野方図に高い賃料がそこで払われるようになるんじゃないですかということを私は申し上げているわけですよ。
 ですから、その防衛上の問題と借料の問題、そして、この損失補償の要綱に従ってどうやって借料を算出したのかということを、質問主意書まで書いて私は要求しているのです。だから、そこのところをもう一回答弁してくださいよ。なぜこの借料の基準を出せないのか。こういう状態のいろいろな疑惑がかけられたとしても、この六条に違反しているんじゃないかという疑惑がかけられたとしても、それでも算定の基準を出さないという理由をもう一回答弁してください。
嶋口政府参考人 借料額の算定の基準は、まさにこの閣議了解でございますし、それから、近傍の価格で補正しなさいというのが算定基準でございます。先生が累次御指摘になっていますけれども、私どもが、残念ながら公表はできません、先生に資料を提出できませんと申し上げたのは、その借料の見込み額、評価額、いずれも、これについては交渉に差し支えがございますので提出を差し控えさせていただきたいということでございまして、算定基準は、先生何度も御指摘になっているように、二十七年の閣議了解でございますし、それから、近傍のもので補正しなさいというものが基準でございます。
 それから、単なる借料の仕方と申しますけれども、賃貸借契約と申しますけれども、私どもは、米軍に基地を提供している、継続して提供している。基地機能を麻痺させてはいけないということで毎年毎年契約更新を迫られているという中で、また他方において、地主さん方は自分たちの生活がかかっていますから、当然高く借りてくれというのは私はよく理解できます。私どもは、他方、これは概算要求基準のときに決めておきませんと、お金がないまま契約更新しなきゃいけないということになりますから、概算要求基準のときに何とかその資本を確保したい。
 ただ、繰り返しますけれども、私どももその中で、財政事情が厳しい、御案内のとおり、防衛関係費もほとんど横ばいの中で、ぎりぎりのやりくりをやってこのお金を捻出している。でも、できるだけ払いたくないというのが本音なんです、それは国のお金ですから。という中での交渉でございますので、その点について、一般的な取引事例、一般的不動産の売買から持ってくる、そういうものとは全く異なった要素がある。しかも復帰後、四十七年に復帰されてから以降ずっと、お互いに円満な関係で、それぞれ不満があるのでしょう、また土地連の方々も不満があると思います、そういう中で、長い経過を経てこういう関係を保っているということも御理解いただきたいと思います。
松野(頼)委員 いや、ですから、では概算要求基準で概算要求する場合に、要は基準値があるわけですね。その基準値の価格、過去のものでいいから出してくれと私は言っているわけです。というのも、先ほど出した数字を見ても、その借料として概算要求をしているわけですよね。借料ですよね。借料として概算要求をしているにもかかわらず、借料というのは地代なんですよ。地代だということで概算要求していながら、これだけ毎年上がっていくのはおかしいんです。だから、ここに着目をして質問をさせていただいているわけであります。
 これは、もう一回この場でお伺いしますけれども、概算要求をしているときに、防衛施設関係の借料として、地代の借料として概算要求されているのですね。そこを確認したいと思います。
嶋口政府参考人 先生御指摘のとおりでございます。
松野(頼)委員 では、資料の八番をごらんください。
 これは防衛庁の内部の資料だということで、その次のページに出ています。防衛施設庁が、質問に対する答弁についてということの中で、九番の中で、これはきちんとした防衛庁の内部の資料であるということをお認めになっている資料でありますが。
 この下の方のアンダーラインのところに、見てください、「前沖縄開発庁長官である鈴木宗男衆議院議員にお願いしたことから、当庁は鈴木議員の御指導を頂き三・五%を確保したところであり、土地連も対前年度比三・五%で内諾をしているところである。」という文章が、これは防衛庁の内部の資料で、防衛庁もお認めになっているところとしてあるわけですよ。
 こういう状況を踏まえて、これは別に私、個人のことを言っているのじゃないのです、一つの借料を決める尺度の内容としてこのことを出させていただいているのですが。こういう状態で借料に手心が加わるということを自分のところでお認めになっているじゃないですか。そのことについてお伺いします。
嶋口政府参考人 「平成十一年度概算要求(沖縄借料)について」、平成十年八月二十六日というペーパーは、これは石井先生の方から御指摘を受けまして、私ども探したところ、ありましたというペーパーでございます。
 これは、このペーパーというのは私どもも余り見たことのないような異例な形式のペーパーでございまして、ということもありまして、当時の関係者に聞き取りをいたしました。これは、そのとき部内で説明用に使ったということでございます。
 その中で、やはり「なお、」ということで、二の「対応」で、土地連の方は六・一四%の増額要請があった、「なお、」ということで、「土地連は平成十一年度概算要求増額要請に当たり、前沖縄開発庁長官である鈴木宗男衆議院議員にお願いしたことから、当庁は鈴木議員の御指導を頂き三・五%を確保」ということでございますが、この概算要求の確保をしたというのは、ちょっと意味がよくわかりません。何でこんなことを書いたのかあれなんですけれども、いずれにいたしましても、これはうちの内部の文書であることは間違いございません。
 ということで調べたところ、六・一四ということもございますけれども、土地連の方はですね、私ども、厳しい財政状況でございますから、そんなの到底払えないということで、いろいろな交渉をした。そういう中で、前、当時、このときは内閣官房副長官であられたと思いますけれども、いろいろ説明に行った際にそういうこともあって、円満に解決をした、土地連とも円満に話がついたということを御指導いただいたというふうな表現をしたのではないか、このように考えております。
松野(頼)委員 では、実際に、その次の9で、これは防衛庁が出された書類だと思いますが、当時、官房副長官をされていたことから、特に沖縄の基地の安定的使用に関心が深かったこともあり、防衛施設庁と土地連との厳しい調整状況について対前年度伸び率を含めた具体的な説明を行い、防衛施設庁の方針に理解を得ていたという状況を示した書類であると。これも防衛庁が出された書類ですよ。
 ですから、土地連との厳しい交渉の中とか、日米安全保障の根幹だからこの土地が借りられなかったら大変だとかいう、そういう情緒的な話をしているんじゃないのですよ。借料を借料としてきちっと決めていかなければいけないんじゃないかということを、これは公平、公正な形で決めていかなければいけないんではないかということをここでは議論をしているわけです。
 先ほどまで答弁をされていた、一番最初の、お示しをした第六条のこの算定基準、閣議決定とこの書類との整合性についてお伺いいたします。
嶋口政府参考人 昭和二十七年の閣議了解、それに基づきまして、さらに、近傍の価格等もございますので補正をしている、そういう算定基準を使って私どもは金額を見積もります。
 ただ、これは政府部内の話でなくして、あくまでも沖縄の地主さんの方々から土地をお借りするという契約交渉でございます。毎年やっている交渉でございます。そういうものでございまして、基本的には、前の算定基準に従い、厳格に見積もります。その中で、また、予算の厳しい状況があるということで、厳しい交渉をしている、適正にやっているということでございます。
松野(頼)委員 資料の十をごらんください。これは、土地連が政治連盟をつくって政治献金をしているんです。その土地連の政治連盟の政治資金収支報告書のコピーであります。こうして平成十二年度、約六百万円という政治献金をしている。
 先ほどからお示しをしている資料の中で出ている関係国会議員への要請行動、そして防衛庁の先ほどの内部の資料、こういうのをトータルして、本当に公平に賃料が算定されている、公平な形で算定されているということが言えるでしょうか。そのことについてお伺いしたいと思います。
嶋口政府参考人 土地連の方々、土地連自身じゃないと思いますけれども、これは土地連ということじゃなくて個人の名前だと思いますけれども、どのような政治活動をするかどうかについて、賃借料、賃貸借契約関係の相手でありますけれども、そういうことは私どもは関与することは一切ございません。関与してはいけないことだと思います。
 したがいまして、土地連がどのような政治的な寄附を行っているかについて、私は承知――いずれにいたしましても、そういうことは私としてはできません。ただ、そういうことも、先生方が働きかけていることも承知はしています。
 いずれにいたしましても、私どもは、繰り返し申し上げますけれども、算定基準に従い、しかも厳しい財政状況で、毎年毎年厳しい状況、その中でぎりぎりの努力をして、何とか基地の安定的使用のために契約を締結しているということでございます。
松野(頼)委員 いや、だから、算定基準を過去のものでいいから出してくださいというふうにお願いをしているわけですよ。例えば、交渉ですから、土地連側はそれは高く要求するでしょう。防衛施設庁は安く要求する。その一番根底になる支払い側と受け取り側の、支払い側はこの金額だ、受け取り側はこの金額だ、一番基礎になる金額を過去のものでいいから出してくれということを再三お願いをしているわけであります。
 算定基準、算定基準と自分のところで言いますけれども、それは算定基準に従って評価をしている、それは防衛庁だけ知っていればいいんだ、だれもそれは知らなくていいんだという口ぶりじゃないですか。そういう状況の中で、今回、有事の法制の中で、個人の所有財産を借り上げ、それを国が損失を補てんするという、この議論が真っすぐ進んでいくんでしょうか。
 ここで、会計検査院の方に参考人として来ていただいていますので、会計検査院として、沖縄の借料が適正なものであるのかどうかということをお伺いしたいと思います。
増田会計検査院当局者 お答え申し上げます。
 私どもといたしましては、沖縄における土地借料の額が非常に多額に上っているということでありますので、当局から提出されます証拠書類等に基づく書面検査、それから、毎年那覇防衛施設局に検査に行っておるわけですが、その際の会計実地検査の際に、地価の動向等を踏まえながら、借料の額が妥当なものであるかどうかといったようなことを中心に、算定方法等につきましても十分注意しながら検査を実施してきているところでございます。
 適正かどうかということにつきましては、現在まで検査したところでは、沖縄における土地借料が著しく高いものになっているというような認識はないところでございます。
 ただ、本院といたしましては、先生が今いろいろと御指摘になった点を十分踏まえながら、今後の検査に当たりたいというふうに思っております。
松野(頼)委員 会計検査院として何回沖縄に飛びましたか。
増田会計検査院当局者 那覇防衛施設局に対する会計実地検査は毎年行っております。
松野(頼)委員 では、どの土地の値段と比べて、この土地の値段、賃料が適正なものだというふうに判断をされましたか。
増田会計検査院当局者 お答えいたします。
 具体的な周辺の地価との比較につきましては、今ちょっと資料がございませんので申し上げられませんけれども、当然、検査の際には周辺の地価を十分勘案しながら、その価格が妥当であるか見ているところでございます。
松野(頼)委員 では、その周辺の勘案した価格は何ですか。
増田会計検査院当局者 一般的に、実勢価格でありますとか、あるいは国土交通省で出されております土地公示価格、そういったものを参考にしながら検査をしているところでございます。
松野(頼)委員 ですから、一般論ではなくて、例えば、では、平成十二年度に防衛施設庁が概算要求をしたこの地代に対して、適正であるというふうに算定をした、比較をした土地は、どこの住所のどの場所ですか。
増田会計検査院当局者 今手元に資料がございませんのでお答えはできないわけですが、一般的に、概算要求の際の借料の額ということではなくて、実際にそれぞれの地主さんに支払われた額が妥当なものであるかどうかというところを私どもとしては検査をしているところでございます。
松野(頼)委員 これは地主さんへの補助金じゃないんです。土地の値段なんです。賃料なんです。ですから、その賃料を、どこの賃料と比べてこの価格は適正であるというふうに評価されたかを伺っているんですが、もう一回答弁してください。
増田会計検査院当局者 お答えいたします。
 ただいま具体的な資料がございませんので、それは後ほどお答えさせていただきたいと思います。
松野(頼)委員 でも、これは通告してあったはずですよ、会計検査院さんに。この沖縄の土地の賃料が適正であるかどうかということを会計検査院さんにお伺いいたしますということで、きのうの夜、きちんとお話もしてありますし、時間もとってお話もしてあります。
 ですから、地代としてこれが適正な地代であるというふうに判断をされた基本的な地代、これは後でも結構ですから出してください。ここの土地とここの土地を比べて遜色がなかったから、それによって適正だったというふうに多分比べられているんじゃないかと思うんですけれども、それがどのような形で行われていたかということ、これは後で提出をいただきたいというふうに思います。
 今回の有事法制の中で、私も、日米安保条約、これはしっかりと守っていかなければいけないし、戦後、日本が敗戦後にこうして米国を基軸として安保体制の中で安全保障を守っていくという議論、これは、先輩たちが本当に苦労されて、安保反対のデモに囲まれて実際に安保を守ったという歴史があるわけですよ。
 しかしながら、何十年かの歴史の時代の流れの中で、こういう形で、安保の根幹にかかわる沖縄の基地の問題、そして、この基地の地代の問題が、地主さんたちが、政治連盟をつくったり政治献金をしたり、そして毎年毎年陳情の要請行動をしたり、また、政治家の介入によって当初の防衛施設庁の提示した額から何%か上がる。米価じゃないんですよ、これは。ですから、そういう形で地代が決まる、毎年毎年何%アップ、また、関係国会議員が働くとそこに少し上乗せをされて何%か上がる、こういう状態の中で、安全保障上の土地の値段、安保の根幹である部分がこういう形で決まっていって本当にいいんでしょうか。
 これから、今回のこの法案の中でも、個人の所有の土地を借り上げるということは起こってくると思います。その中でもまたこういうことが行われていくんじゃないか。今度は、緊急事態だから土地を借り上げるというその土地に対して、またそこが政治連盟をつくって政治献金をし出すんじゃないか。こういうことが行われるんじゃないか。やはり、そこはしっかりと、今回、個人の憲法上の、理由に、憲法上の財産権を、国が有事だということである程度制限を加えていくわけですから、そこのモラルというものをしっかりとつくっていただきたい。
 そして、今の防衛庁のこの沖縄における土地の地代の算定の仕方、今回こうやって質問させていただけばいただくほど不透明でなりません。補償なのか地代なのか、それをしっかりとここは区分けをしていかなければ、今回の二年後に出てくる法案の中でも、どうかしっかり、地代を、個人の土地を借り上げる場合の算定の基準、そして、どういうルールのもとで幾らを払うのかということをぜひ法案の中に盛り込んでいただきたい。
 そして、きちんと防衛庁も、今のままでは個人の財産を制限するこの議論で、全く納得がいかないということを最後に指摘させていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
瓦委員長 次に、石井紘基君。
石井(紘)委員 私は、特に今の防衛庁と外務省に対しまして、これはこの法案の主要な所管官庁でありますので、やはり、国民の命を、あるいは国の将来を、責任を持って、場合によったら戦争状態というようなことの議論をするわけでありますから、きちっとしていなければ、これは、国民はさまざまなこの法案に示されている内容について素直に従う気にはならぬでしょう。そういう意味でいろいろと質問させていただきたいと思います。
 まず、外務省、先日、海自の幹部が横須賀を訪れて、横須賀で在日米軍のチャプリン司令官に対して、日本に対してイージス艦の派遣要請をしてくれ、そういう話をしたんだという報道がございます。これがもし事実だとすれば、これはシビリアンコントロール等々の観点から非常に重大な問題でございます。
 まず、この事実関係について伺いたいと思うんですが、防衛庁長官にまず伺います。この、四月十日に海自の幹部が在日米軍のチャプリン司令官を訪れたということは事実なんでしょうか。事実だとしたら、それはだれが訪れたんですか。
中谷国務大臣 四月十日にチャプリン在日米海軍司令官と当庁の海上幕僚監部の防衛部長との会談が行われたというのは事実でございます。このように在日米海軍司令官と懇談をするというのは月に一度か二度ございまして、双方の情報の連絡等、業務について会合することがございます。
石井(紘)委員 名前は言われませんでしたが、その会談の内容について、概要を、言える範囲で言っていただけませんか。
中谷国務大臣 五月六日にこの新聞の報道がございまして、この点につきまして、この報道にあることが事実かどうかという点を確認いたしましたところ、報道にあるように、アメリカ側から海上自衛隊のイージス艦やP3Cをインド洋に派遣することを要請するように働きかけたという事実はないということを確認いたした次第でございます。
石井(紘)委員 そういう事実があるかないかということを聞いたんではなくて、その会談の内容について、言える範囲で言ってほしいと言ったんですが、そのほかについては、全くこれは秘密に属することですか。
中谷国務大臣 この内容等につきましては、防衛庁内で所要の者が聞き取りを行ったわけでございますけれども、私に伝わってきたことにつきましてはこの報道に関してでございまして、報道にあるような内容の話をしたという事実はないということでございます。
石井(紘)委員 その後、四月の二十九日に与党三党の幹事長がワシントンを訪れた際には、ウォルフォビッツ国防副長官から、やはり派遣の要請が行われた。この四月十日から十九日後ですね。それから、五月六日の新聞には、イージス艦を政府が派遣するという方向で再検討をしておるという記事が載っているわけですが、外務省は、このイージス艦の派遣に関する、今の海自の、海幕の幹部とチャプリン司令官との会談をも含めて、この経過を把握しておられますか。把握しておられる範囲で御答弁をいただきたいと思います。
川口国務大臣 まず、海幕の、一番最初におっしゃった件については、外務省といたしましては承知はいたしておりません。
 この件についての関連で私どもが承知をしておりますのは、四月の二十九日に、訪米中の与党三幹事長がアメリカの国防省でウォルフォビッツ国防副長官とお会いをいたしました際に、副長官からアフガニスタンにおけるテロとの戦いの状況につきまして説明がございまして、その際に、海上自衛隊のイージス艦やP3Cを利用できるようになれば非常に有用であるという御趣旨の発言があったというふうに聞いております。それから、二日に安保関係の議員団がアーミテージ国務副長官とお会いいたしました際にも、日本が決めることであるけれども、イージス船の派遣が実現すれば大変に有意義であるという御発言があったということは承知をいたしております。
 ただ、これはいずれも、両方ともアメリカ側の考え方の説明でございまして、要請があったというふうには承知はいたしておりません。
石井(紘)委員 防衛庁、日本ではイージス艦を、私も見に行ってまいりましたが、たしか四隻保有していると思いますが、米軍のイージス艦の保有等の状況、あるいはまた日本における米軍基地にあるところの、存在するところのイージス艦の状況、これについて、これもまた可能な範囲ということになるでしょうが、お知らせいただけますか。
守屋政府参考人 お答えいたします。
 米海軍のイージスシステム搭載艦の保有状況でございますが、アメリカ全体で巡洋艦二十七隻持っておりますけれども、この二十七隻がすべてイージスシステム搭載艦になっております。それから、駆逐艦でございますが、これは五十六隻ございますけれども、そのうちの三十四隻がイージスシステムを搭載していると承知いたしております。(石井(紘)委員「日本の米軍基地では」と呼ぶ)
 日本に駐留していることにつきまして、ちょっと今資料を持ち合わせておりませんので。
石井(紘)委員 これはやはり重大な関心の持たれるところですので、どうかひとつ、きょうはここまでにしておきますけれども、いわゆるシビリアンコントロールとの関連で、防衛庁長官が知らない、あるいは防衛庁の防衛当局が知らないことが直接制服によって行われる。今、現に防衛庁長官の答弁でも、イージス艦の派遣の要請をしてくれということの要請をしたかどうかだけは聞いたけれども、その会談ないし会見の、面談の内容については知らないと。こういうことでは非常に頼りない、不安だ、心配だということになるわけでありますので、ひとつ十分全体を、やはり情報の把握をしていただかなきゃいけない。外務省についてもそうだろうと思いますので、それは、ぜひよろしくお願いします。
 続いて、外務省でございますが、大変たくさんの国民の不信を買う疑惑が外務省から噴出してきたわけであります。そういう中で、外務省は、単に国内だけではなくて、諸外国からもともすれば白い目で見られる、日本の外務省、ばかにされるような状況に立っておるということだろうと思うわけであります。
 そこで、先日、ある委員会で、前次官の林さんと柳井さん、それから川島さんの、これは責任をとっていわば辞職をさせた、そういう三人でありますが、この方々の退職金というものについて答弁を拒まれたそうでございますが、ここで改めて、その退職金というものは、今や政治への信頼という角度から国民の重要な関心事になっておりますし、また外交機密費等の使途についても不信が高まっている中で、公金でありますから、国民のまさしく税金から支払われている公金の使途でありますから、これは明確に御答弁をいただきたいと思います。
北島政府参考人 お尋ねの件でございますけれども、これまでも答弁させていただきましたけれども、特定職員の退職金の額については、個人情報に当たるため、回答を差し控えさせていただきたいと思います。
 他方、国家公務員の退職金は、国家公務員退職手当法等に定められた一定の基準に従って支給されておりますので、一般論として、一定の官職を経た者の退職金の額について把握できるものというふうに考えております。
 その上で、一般論として申し上げることでお許しをぜひちょうだいしたいと思いますけれども、今、委員から三人の名前が言及されました。事務次官につきましては、指定職十一号俸、これは俸給月額百三十四万……(石井(紘)委員「額を聞いているんだから、そんなことどうでもいいんだ」と呼ぶ)はい。指定職十一号俸……(石井(紘)委員「言わないなら言わないでいい」と呼ぶ)いえ、勤続年数が三十年、五十九歳で勧奨退職する場合ですと、約九千万円の退職金が支払われております。
 その上で、事務次官をやめた後、さらに特命全権大使ということになる場合に、これにつきましては、特別職の職員の給与に関する法律に基づきまして、現在一号俸から四号俸のいずれかが適用されておりますけれども、仮に四号俸の大使、これは非常に大きい国の大使でございますが、四号俸の大使を二年間務めた後に退職する場合、これは、大使をやめる際の退職金が約二百七十万円ということになります。
石井(紘)委員 それで、何ですか、私に計算しろというんですか。そこまで言ったんなら、数字を言いなさいよ。
北島政府参考人 お答え申し上げます。
 事務次官として勧奨退職でやめる場合に約九千万円、それから、その上で、仮に大きな国に大使として赴任して二年でやめるないしは四年でやめる場合に、二百七十万円ないし五百万円程度の退職金が支払われるということでございます。
石井(紘)委員 あなた、私が聞いていることをちゃんととらえて答弁しているのかね。
 そうすると、一々これ今ここでやらなきゃならないの、林さんは何年大使やったとか柳井さんは何年やったとか。わかっているんでしょう、それは。あなたの方は質問時間の時間稼ぎをやっちゃだめだよ。はっきり言いなさいよ。
 委員長、これは私の記憶する限りでは、たしか平成九年に建設委員会で、委員長も建設大臣やられましたけれども、それ以前の、多分亀井静香さんが建設大臣だったころだと思いますが、これは事務次官を初めとする高級官僚の退職金については、その数字をはっきりと出したんですね。それまでは、今のあの人のように、プライバシーだ何だかんだとぐずぐず言っていました。それ以降ずっと、各省庁では退職金の額を出しているんです、聞けば。つい最近は、これは農水省が出しましたね、熊澤さん、八千八百七十四万円だと。
 これ、外務省だけがどうも秘密主義。外務省というのは、何を聞いても自分の都合のいいことしか言わない。内部情報も、自分の都合のいいことしか持ってこない。いまだにこれ、さんざんやられているのに懲りない。
 外務大臣、大臣の方からこれは指示してください、大臣。
川口国務大臣 外務省の情報を公開することについては、私は就任以降、透明化ということには心がけて出すようにしてきたつもりでございます。
 ただ、何をお出しして何をお出ししないかということについての基本的な考え方に基づいてお出しをしているわけでございまして、そのときの基本的な考え方と申しますのは、情報公開法に基づいて、判断をその都度その都度しているわけでございます。
 その情報公開法の判断の基準といたしまして、特に外務省に関係が割にございますのは、一つは、これは個人のプライバシーということでございますし、もう一つは相手国との関係ということでございまして、外交上の機密に係る部分についてはお出しできない、信頼関係が傷つくということでございますのでお出しできないということでございますし、それからまた、内部の検討の状況についての資料は、これも情報公開法にのっとりましてお出しをしていないということでございます。
 すべてについて、そういう考え方で判断をさせていただいているわけでございまして……(発言する者あり)
瓦委員長 答弁中ですから、静粛に願います。
川口国務大臣 今回申し上げましたことについても、そういったことで判断をさせていただいてお出しをしているわけでございます。
 私としては、できるだけ外務省も透明な情報を公開していくということは大事だと思っております。
石井(紘)委員 個人の情報を出さないって、これは別に外務省の情報とも必ずしも言えないかもしれない。外交情報じゃないんだ。これは、公務員の退職金の話なんだよ。
 外務大臣、あなた、だめだね、そんなことを言っているんじゃ。どこの省庁も、あの武部さんでさえも出したんだよ、農水省の。だめだね、もう。
 委員長、これは、ここで退職金の数字を出さないというのは大変問題ですね。大体、今の話を聞いていると、大体全部一億何千万かになるんだよ。(発言する者あり)
瓦委員長 石井君の質問中ですから、静かにしてください。
石井(紘)委員 いやいや、これは私は質問できない、こういうことじゃ、委員長。
 これは早く出してください、退職金の数字を。どこでも全部出しているんだから。これは、もう長年にわたる国会の慣行なんだから。これは、ずっとどこの省庁でもやってきているんだから。
 出すんなら、委員長、あの人を指名してみてくださいよ。同じようなことを言ってはだめだよ。そうしたら、もうこれは質問できないよ、同じようなことを言っていたんだったら。
 委員長、強力に指示してください。
北島政府参考人 委員から、農水省についての武部大臣の御発言についての御説明がありました。
 私どもの理解では、外務省だけが出していないということではないというふうに理解しておりまして……(石井(紘)委員「そんなこと、どうでもいいんだよ。退職金の額を聞いているんだよ」と呼ぶ)
 それで、先般の外務委員会で、私、同じ質問をちょうだいしまして、では、その基本的な考え方を説明しろということも言われました。その上で、先ほど、情報公開についての基本的な考え方を述べつつも……(石井(紘)委員「委員長、これは、国民がこういうことじゃ許さない。これ、やめてください、もう」と呼ぶ)
瓦委員長 しばらく待ってください。待ってください。答弁中です。答弁中です。
石井(紘)委員 だめだ、そんな答弁。そんなのは質問の妨害だ。この答弁は質問の妨害だ。
瓦委員長 それはいけません。
石井(紘)委員 だめだ、質問時間が過ぎるばかりじゃないか。
瓦委員長 委員長の許可をもって……
石井(紘)委員 だめだ、質問時間が過ぎるばかりだ。だめだ、そんな答弁は。(発言する者あり)
瓦委員長 北島官房長、席へお帰りください。
 各党理事、お集まりください。
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
瓦委員長 速記を起こしてください。
 川口外務大臣。
川口国務大臣 先ほどの、次官の、元次官の退職金のことでございますけれども、先ほど官房長から申し上げましたように、これは個人のプライバシーの問題であるということで先ほどの御答弁を申し上げたわけでございますけれども、また同時に、国家公務員の給与であるという側面もあるということでございますので、これは、外務省だけではなくて、各官庁共通する問題でございますので、人事院の方でまとめて出すかどうかということを御判断いただいて、その上で外務省としては人事院の御判断に従いたいと考えております。
石井(紘)委員 大臣、あなたは都合のいいときには、各省庁共通のことだとか、これは外務省のことだとか、秘密だとか言うんだけれども、これは人事院に聞く話じゃありません。外務省、あなたがあなたのところで今発表するだけでいいんです。それはどこにも迷惑かかりませんし、人事院の関係することじゃありません。出してください。この場で出さなければ、あなた、これは進まないんだから、出しなさいよ。
 いいですか、どこでも出しているんですよ。みんな出ているんですよ。大臣も、あなた役人やっていたんでしょう。そんなことわからないの。だめじゃないの、あなた。それだったら、すぐ、今待っているから、こことめて、人事院に聞いてみなさい。人事院は、そんなこと私のところの問題じゃありませんと言いますよ。そんなこと相談しなきゃわからないのかね、大臣で。じゃ、とめて、ちょっと人事院に電話してきなさいよ。
瓦委員長 ただいまの石井君の要求につきましては、後刻理事会で協議いたします。
石井(紘)委員 それは委員長、私はそんな議論をしているわけじゃないんです。今、退職金の金額を、三人のやつを出してくれと言っているわけですから、それは出せばいいだけの話で、理事会は関係ないですよ。
瓦委員長 それに対しまして外務大臣からの答弁がございましたが、石井委員からその答弁はなお承服できないということの応酬でございますので、この件につきましては、後刻理事会で取り計らいたい、こう申し上げておるわけです。
 速記はとめてください。
    〔速記中止〕
瓦委員長 速記を起こしてください。
 川口外務大臣。
川口国務大臣 ただいま人事院に聞きに、連絡をとらせております。
石井(紘)委員 わかりました。
 その点については、それは間もなく出てくるだろうという前提で質問を進めます。少なくともこれは、午後まで私の質問はまたがりますので、遅くても午後一時には、人事院と電話するだけですから、それは人事院は関係ないことですけれども、答弁がいただけるという前提で進めたいと思います。
 次に、外務省と同時に防衛庁も、どうもこれは国の、国民の命を不安なく任せるに足るだろうかどうだろうかという点では大変大きな問題がある。
 ここに久間筆頭理事もおられるわけでありますが、かつて防衛庁長官、名長官でありました。これは余り名長官過ぎて、答弁が随分違っておったんですね。
 それで、私は、この一年間、防衛庁が関連企業に防衛装備品の発注をするのに、払い過ぎをして、天下りを入れてもらうために必要より何倍か多く払って、そしてそれをごまかしごまかし来た。ちょうどずっと久間長官でしたよ。そして、とうとう最後に、平成十年の九月三日についに防衛庁に東京地検の強制捜査が入りました。それを契機にがらっと久間長官は、あのときはもうかわっていましたかね、その後は野呂田長官になりましたですかね、がらっと答弁を一変させまして、この一年間の答弁はすべて間違っておりました、防衛庁がやったことはすべて反省をいたしますという答弁になったわけであります。
 事ほどさように、その後は額賀長官でしたね、額賀長官が、久間長官のかわりにじゃないと思うんだけれども、ついに辞職をせざるを得ないということに追い込まれたわけですね。
 その後、野呂田長官ということですが、野呂田さんもまたうそをついてきたんですね。
 つまり、これから私が取り上げるところの空自の初等練習機の契約について、平成十年に、ちょうどその強制捜査が入った前後ですよ、ここで、行っていたところの富士重工に当時の次官がわいろを受け取っておったとか等々のことがまた問題になって、そして富士重工が選定をされたんだけれども、入札契約はまだ予算がついてなかったからしていなかった。平成十一年にその契約をする予定だった。ところが、そういう事件が起こったものですから、二年間の取引停止ということになったんですね。
 しかしながら、野呂田長官は、平成十一年の二月に、これはその年の春にでも再度、もう一回その選定をして入札をやります、練習機がもう古くなっているので、新しい練習機を導入しなきゃいかぬということはもう至上命題だからそれをいたしますという答弁をしておる。しかしながら、その年はずっとやらなかった。翌年もまた半年以上やらなかった。そして、ちょうど富士重工の処分の期限が明けるのを待つかのように再び初等練習機の入札というものをやったわけです。そこでも野呂田長官もまたうその答弁をされておるわけですね。
 そういうように、これまでの歴代の防衛庁長官は、後でやり玉に上げるところの中谷長官だけじゃない、ずっと、どうも本人がうそをついてきたのか、あるいは役所の事務方に言われたままを答弁していたためにそういうことになったのか、これはわかりませんが、そういうことであって、まことにふがいない、頼りない。これが歴代の、最近の、久間先生を前にして大変言いにくいのでありますが、歴代の防衛庁の長官であった。そしてまた、防衛庁そのものも大うそをついてきたということは厳然たる事実なんですね、かつての装備局長、あるいは防衛局長というのも。事実であります。
 そういう中で、最近、私は、中谷さんが小泉内閣になってから防衛庁長官になられたので、再三再四、あなたはひとつ慎重に、間違わないように、うそを言わないように、そしてかつ責任を持ってということを繰り返し繰り返し申し上げてきたわけであります。
 この初等練習機の調達問題においても、私は、数えてみたら都合十一回、これは議事録を集めてみたら、やっているんですね。そういう中で、中谷長官が当初就任をされたころには幾つかのやりとりがございます。
 例えば、中谷さんは、いわゆる不正入札というものについて、自分の在任中のことではないのでわからないというような答弁をされましたので、私は、それでは時間を差し上げますから、よくひとつ研究をし、調査をしてみてくださいということで、その二週間後にまた質問をし、さらにまた一週間後に質問をし、中谷さんにその都度確認をしてきたんですね。そうしましたら、中谷長官は、よく調査をいたしましたという答弁でした。よく調査をしたというんだったら、例の不正のポイントになっているところの維持経費については数字は聞いたのかと言いましたら、いや、数字は聞いておりませんというような、非常に頼りない答弁でございました。数字は聞いていないんだったら、もう一回また来週までよく聞いてくるようにと言いましたら、数字は聞きました、しかしそれは申し上げられません、こういうようなことでありました。しかし、いずれにしても、私は責任を持ってこの入札は公正公平に行われたということを断言いたしますという答弁でありました。
 したがって、行政の継続性ということからいっても、あるいは大臣の再三再四にわたるところの適正、厳正に行われたというその答弁からいっても、もしこのことが事実でなかったら、おっしゃるとおりの事実でなかったら、これは重大な責任を負っていただかなければならない、そういう問題であります。
 そこで、私は、この十一回に上るところの質問の、きょうは集約的な、いよいよ決着をつけるといいますか、そういう質問をさせていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
 まず、最近の中谷長官の幾つかのうそについて指摘をせざるを得ません。
 あなたは、スイス政府、その前に概要を申し上げたいと思うんですが、これは平成十二年に、防衛庁が総合評価落札方式という方式で空自の初等練習機四十九機を購入するところの入札を行った。それに対して、富士重工とスイスのピラタス社が提案書を提出して応札をしてきた。それで、さまざまな経緯があって、十二年の九月の三十日に富士重工に落札された。入札の提案書、密封された提案書の中にあった数字はといえば、これは最初の二機分、四十九機買うところの二機分が入札にかけられたわけですが、この二機分の数字が、スイスのピラタス社の提案が三億五千五百万円に対して、富士重工の提案は四億八千九百万円。したがって、一機分にいたしますと六千万円以上富士重工の方が高い。にもかかわらず、富士重工が落札をした。
 これはなぜかというと、このいわゆる総合評価方式という口実をもって、三機目以降買う分については一切封をせずに、受け取ってすぐ空幕に運び込んで、これも答弁の中に明らかになりましたが、空幕に運び込んで、深夜、翌朝、早朝までかかってさまざまな、どういう作業をしたかはつまびらかではありませんが、その書類の差しかえが行われたということも、少なくともこれは答弁の中で出てきたわけであります。
 そういうことを行った上で、この、将来七回にわたって、都合七回にわたって買うところの、全体でこれは二百十二億円ぐらいの買い物でありますから、最初の二機分は四億ですから、その将来の機体の価格とメンテナンスの、メンテナンスはこれは相当かかるんですね、その価格を合わせたもの、これは――外務大臣、どうも御苦労さまでした。後で、退職金の額をお待ちしておりますので。
 ということで、その将来のかかるはずの金額というもの、これは密封していないから、入れかえ差しかえ自由なわけですね。そっちの方は富士重工の方が安かったんだということにしたわけです。ところが、その将来かかる、最も値段の張るものは何かといいますと、機体定期整備、いわゆる三年に一度ぐらいに定期整備をする、これに一番金がかかるわけです。車でも、買うと車検に一番金がかかりますけれども、そういうところ。
 しかしながら、これは、その都度その都度、定期整備をやる都度、どこの会社に発注するかということを競争入札で決める、そういうことになっているわけですから、これは将来にならなければわからない価格なんです。それを含めて富士重工の方が安かったと言ったんだから、では、その数字は幾らに出したんだということを言いなさいと言ったら、一年かかっても二年かかっても防衛庁は、さっきの外務省じゃないけれども、どうしても言わない。この数字を出さない。
 これまでは、全部出してきていたんです。整備の費用を全部出してきているんです。T3あるいはT5という飛行機を買ったときも、買った当初に、契約金額の中の明細として、将来のライフサイクルコスト、そしてIRANという定期整備、こういう金額は全部出してきていたんです。ところが、これだけはどうしても出さない。
 そういうさまざまな、もっとたくさんあるんです、これは切りがない、さまざまな疑惑、重要な疑惑が指摘された中で、会計検査院が検査をするということになった。会計検査院が昨年、夏から十一月までかかって検査をして、十一月に検査報告が出された。
 その間、スイス政府は七回にわたって防衛庁に抗議をしてきた。外務省を通して防衛庁に抗議をしてきた。スイスの国内では大きな問題となっているわけであります。現に、ここに二つだけスイスの新聞を持ってまいりましたけれども、スイスの新聞でも、大新聞ですよ、スイスの大新聞が何回にもわたってこうして大きな記事を書いておるわけです。
 この翻訳の一部を紹介いたしますと、こういうことを、最近、四月三日にスイスで出た新聞のフレデリック・シャルル氏の記事の一部を紹介しますと、航空自衛隊練習機調達をめぐる受注競争で二度にわたってピラタス社が締め出された事件が日本の国会で今日再び取り上げられた、同社が日本の富士重工と受注を争い、二度にわたって被害を受けたことは疑う余地がない、あるいは、当時の防衛政務次官にわいろを贈っていた、あるいは、会計検査院の調査においても、調査担当者は評価手続のための行政的ガイドラインが不十分だったと回答しているとか、そういうことを、要するに日本政府は自国の軍需産業を外国のあらゆる競争相手から保護し続けているのであるというようなことを、再三スイスでも大きくマスコミが扱っているというわけであります。
 こういう中で、そのスイスとの七回のやりとりの中で、昨年十二月に防衛庁はスイス政府に対して会計検査院の検査報告というものを送付したわけであります。お手元に資料として配らせていただいておりますが、これは防衛庁がスイス政府に送った書類です。このタイトルには、「防衛庁の新初等練習機の調達についての会計検査報告のポイント(会計検査院作成)」、こういうふうに書いてあるんです。英文の方にはもっと赤裸々に、会計検査院というふうに書いてあるんです。
 そして、そこに要点が三つ書かれておるけれども、その三つとも会計検査院の報告の中に書かれていない文章であります。
 特に、最初に書かれておりますのは、「会計法令等に照らして特に不適切と認められる事態は見受けられなかった。」こういうことを書いているわけですね。これは、先日の安全保障委員会あるいは決算行政監視委員会において会計検査院に確認をいたしました。会計検査院長は、これに対して明確な答弁をいたしております。
 会計検査院長の答弁、その前に、中谷防衛庁長官は、会計検査院とこれは基本認識が同じだからいいんだという答弁をしているんですよ。それに対して会計検査院は、こういうふうに金子検査院長は答弁をしているんです。
  我々の検査結果は、検査報告の中に記述してあるとおりであるわけです。したがって、これ以外のこと、あるいはこれ以上のことは、我々は述べておりません。したがって、検査報告について、防衛庁が我々の意見と同じであるということであれば基本認識は一致していると思いますけれども、そうでないということであれば認識は一致していないということになると思います。
というふうに、非常に立場の弱い会計検査院は微妙な言い方をしているわけでありますけれども、これははっきりと、検査報告に書いていないことは我々の基本認識ではないんだ、したがって、防衛庁がつくったこの文書は、あるいは防衛庁長官が言うところの基本認識が一致しているということは、会計検査院はそうは認識していないんだ、この文章も違うし、防衛庁長官の答弁の基本認識が一致しているというところも違うんだということをはっきりと答弁をしているわけであります。
 あるいはまた、中谷長官は、このスイスに発したところの回答書簡、この英文がついているわけでありますが、英文は外務省がつくったものだという答弁を二回にわたってしておりますけれども、先ほどまでおられた川口外務大臣は、この四月十七日の答弁の中でも、はっきりとこういうふうに述べております。
 その前に、中谷長官はこういうふうに言っているんですね。「事実関係としましては、この報告そのものの英文、仮訳は、スイス側の理解を得るべく外務省の方で作成をしております」「報告の概要については防衛庁が作成をいたしました」と。そして同時に、これはだれがどういう責任で出したんだと言ったら、中谷長官は、「私の責任において出したものでございます」というふうに言っているわけですね。さらにもう一回中谷長官は繰り返して、「英訳につきましては、外務省の方で作成をしていただきまして、防衛庁の方で確認をしたわけでございます」、こういうふうに述べている。
 そうすると、今度は、たまりかねて川口外務大臣が答弁を求めてきたわけですよ。川口外務大臣は、その前に、外務省の佐々江局長、これは、防衛庁の方で会計検査院の確認を得てこの文書は作成したものだというふうに理解をしていたんだと。だから、外務省の方もこれはだまされたということですね。それで、今言った川口外務大臣の答弁、川口さんは、この英文は防衛庁の方で作成したものでありまして、外務省が作成したものではありません、こういうふうに答弁をしているわけです。
 ですから、防衛庁はそういうふうにして、中谷長官、あなたがいろいろとおっしゃったことは、結局、大変うそが多かったということになりませんか。
 要するに、当初は、これは防衛庁がスイスに対して、この文書は防衛庁が会計検査院といかにも打ち合わせたかのごとくおっしゃったのですね。昨年十二月に、打ち合わせをしました、それで出したものですというふうに答弁をした。会計検査院は、いや、それは、何か回答を出すということは聞いていたけれども、しかしどういう文書を出したのかということは出した後で知ったんだということを会計検査院の方は答弁しておる。この会計検査院の名前を使ったということについても、会計検査院は、私に指摘されて、この四月の三日の日に防衛庁に抗議文を発したんじゃありませんか。そういうことを受けて、防衛庁はスイス政府に対してうそを言っていたということがはっきりしたわけですね。
 これは、防衛庁としてはうそを言っていた。スイスに対して、実存しない、事実でない会計検査院の報告を偽装して出した。少なくとも、最初にくっつけた文書は偽装したものだ。それから、中の英文における翻訳も一部これはごまかしがあるわけですがね。そういうことを防衛庁はここでもって最終的にお認めになるのかどうなのか、そして、それに対する防衛庁の対処方といいますか、防衛庁はどういう善後策をとるのか、それを伺わせていただきたいと思います。
守屋政府参考人 先生から今、このピラタスとそれから富士重の航空機の調達の件について御説明がございましたが、私、論点が幾つかございますので、その論点ごとに申し上げたいと思います。
 スイス政府に、防衛庁が会計検査院作成という文書を送った件でございますが、これは昨年十一月三十日、平成十二年度会計検査院報告書が内閣に提出されました。スイス政府は、かねてからこの会計検査院報告というものに対しては大変関心を持っておりましたので、私どもはスイス政府にこの新初等練習機の調達に係る会計検査院本文を送ることとしたわけでございます。ただ、この会計検査院本文は、送ったわけでございますけれども、これは内容が専門的かつ詳細なということで、約七千字、十三ページにわたる報告書であったことから、私どもとしまして、平易な、わかりやすい要約をつけるべきであると考えたことが一点でございます。
 それから、会計検査院では、この案件は、特定検査対象に関する検査状況というふうに処置されておったわけでございます。
 それで、私どもの方としましては、会計検査院の報告には、不当事項、それから意見表示・処置要求事項、処置済み事項、特記事項、それから国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査の状況の五つに分類されているということでございまして、これを御説明する必要があったということで、この特定検査対象に関する検査状況というのは、これは会計検査院のパンフレットにはございますが、私が先ほど申し上げました不当事項、意見表示・処置要求事項、処置済み事項、特記事項という四つには至らなかった事項であるが、違法または不当の事態であるとの指摘をしたり、改善処置をとることを求めたりするものではなく、国民の関心の高い問題について会計検査院の検査状況を明らかにしたもの等がある、こういう性格でございます。こうした報告書の性格づけについて、適切にスイス政府に伝える必要があると考えたことでございます。
 以上の観点から会計検査院報告のポイントを作成しまして、先ほど申し上げました会計検査院報告本文とともに、昨年十二月十九日、外交ルートを通じてスイス政府に送付したものでございます。
 しかし、この文書は、先ほど先生がおっしゃいましたように、この会計検査院の報告のポイントをごらんになっていただきますと、本院のこれまでの検査では、今回の新初等練習機の調達に関し、入札、契約手続、総合評価、契約内容等について、会計法令等に照らして特に不適切と見られる事態は見受けられなかったという文言がありますけれども、これは会計検査院報告本文にはない文言を記載いたしております。それから、クレジットとしまして、会計検査院に断らず「会計検査院作成」という記述をつけましてスイス政府に送付したということは先生御指摘のとおりでございまして、防衛庁としては遺憾であり反省しているところでございまして、その旨、外交ルートを通じまして、五月七日、スイス政府に伝えたところでございます。
 それから三点目。どうしてそういうふうな、本院のこれまでの検査では、今回の新初等練習機の調達に関し、入札、契約手続、総合評価、契約内容について、会計法令等に照らして特に不適切と認められる事態は見受けられなかったのかということでございますが、ここは、私ども、昨年十一月三十日の会計検査院報告の内閣への送付後、防衛庁として、特定検査対象に関する検査状況として報告されました性格づけにつきまして、会計検査院に、これはどういうふうに国民、国会に対して御説明したらいいかということで確認して作成したもの、防衛庁として検査院とも相談の上作成したものでございます。
 それで、この件につきましては、四月二日の安全保障委員会で会計検査院からも、新初等練習機の調達につきましては、検査をいたしました結果、法令、予算に違反し、または不当と認めた事項として取り上げられるような事態は見受けられなかったという御答弁をいただいているところでございます。
 ただ、いずれにしましても、先生が御指摘になりましたように、私どもの思いが、会計検査院報告本文が大変長文にわたりまして、日本の会計検査院制度の特色をわかりやすく説明するという思いに出たものでございますけれども、会計検査院報告の本文にない記載をしたことと、それから防衛庁が作成したにもかかわらず、会計検査院に断らず「会計検査院作成」という名称を使ったということは、大変防衛庁として遺憾であり申しわけなかったと思っておりまして、この旨、国会でも大臣がおわびしたところでございますし、スイス政府にもその旨、そういう内容を五月七日、送ったところでございます。御理解いただきたいと思います。
石井(紘)委員 大変重大な問題であります。ただ、今、前段にこの内容のことについて触れられたので、私の方からこれははっきりさせておかなきゃいけない。この検査院の検査の種類というものをいろいろ言われた。そんなことは関係のないことで、国会でこうやって議論をして問題があるから、会計検査院がそれを受けて検査をした。
 そして、その結果、検査報告はまさにこういうふうに書いてあるんです。公正性、透明性を高める必要があるんだ、この点において問題があったからこそ、公正性、透明性が欠けているからこそ、これを高める必要がある、そして書類は、入札の場合は封印が必要だということを書いている。それは、入札は封印をやるのが当たり前なんですよ。封印をしないで、後でもって差しかえるような入札というのはどこにあるんだ。そういうことが検査院の報告の中には書かれているわけだ。
 あるいはまた、価格その他の費用、入札書にそうした費用を付記させる必要もあるじゃないか、購入経費とか維持経費等の費用を書かせる必要があるじゃないかと。あるいは、落札者が将来においてその出した価格に拘束されるべきところの主要な項目も示さなきゃいけませんよ、提示内容に係るところの詳細なデータを提出させたりする必要もあるじゃないですかと。
 そしてさらに、もしこの落札者がその提案内容に違反をしたら、履行しなかった場合は、どういう責任を負わせるのかとか損害賠償をとるのかというようなことも防衛庁はやっていなかった等々、防衛庁は、この入札が必ずしも公正性、透明性を貫いていないということを打ち出しているわけですよ、報告で。いかにも、先ほどの答弁を聞いていますと、違法じゃなかったとかなんとかということだから、いいんだというふうに印象づけたいというふうに受け取れます。
 ところが、この総合評価方式で、例えば防衛庁がやる総合評価落札方式の入札については、この法律の所管が、この部分は防衛庁になるんですよ。いいですか。ですから、防衛庁がこのやり方でいいんだと言えば、法に違反しないことになるんですよ。そうでしょう。そんなことを検査院は検査したんじゃないんですよ。検査院は、これは公正であったか、国損を与えていないか、透明性を欠いていないかということを調査して、問題があると指摘しているんですよ、ここで検査院は明らかに。だから、あなた方が書いたのは、これは捏造したんだけれども、中身の意味は違っていないというようなことを盛んに言いたがっておるけれども、中身の意味も全然違うんだ。違うということは、検査院自身が、検査院長自身が言っているわけです。
 こういうものを出した、今の答弁で、五月の七日にスイス政府に対して防衛庁から何か書簡を出したということでありますが、それをお示しいただけますか。
守屋政府参考人 文書はすぐお渡しいたしたいと思います。
石井(紘)委員 私も今初めていただきまして、初めて目にするものでございます。十四年四月三十日付、英文の方は読まないで和文の方を読みます。「防衛庁」と書いてございます。読み上げさせていただきます。
  新初等練習機の調達に関する会計検査院の検査結果については、二〇〇〇年度会計検査院報告書に記述されているとおりであります。
  これに関して、報告書に併せて送付致しました「防衛庁の新初等練習機の調達についての決算検査報告のポイント(会計検査院作成)」について、この文章は会計検査院が作成したものではなく、防衛庁が作成したものであります。
  また、メイン・ポイント中の「本院のこれまでの検査では、今回の新初等練習機の調達に関し、入札、契約手続き、総合評価、契約内容等について、会計法令等に照らして特に不適切と認められる事態は見受けられなかった」との記述は、報告書にはないことを明確にします。
  防衛庁と致しましては、このメイン・ポイントの中に会計検査院に断らず「会計検査院作成」と記述した点については、あたかも会計検査院が作成した文章であるかのような誤解を、また、報告書にはない文言をメイン・ポイントに記述した点については、これがあたかも報告書の中に記述されているかのような誤解を貴国政府に与えてしまったことになり、遺憾であり、反省しているところであります。
こういう文書を送られたそうであります。
 さて、これは、物事は、子供がやったいたずらは、反省して将来直せばいい、謝って済む。しかし、謝って済むことと済まないことがある。ましてや、この日本じゅうの、日本の歴史と文化とすべての人命を、それに責任を持たなければならないところの、有事法制を所管する中心的な役所であるところの防衛庁が、あのたび重なる事件にも懲りずに、またこうやって、国際的にもうそをつき、恥をさらしておるわけでありまして、この十二月にスイス政府に送付された書簡は、明らかに公文書偽造、そして、その行使に当たります。
 公文書の偽造、行使は、これは刑法の百五十五条から四条にわたって百五十八条までに記載をされております。これは片仮名も含んでおりますので読みにくいんでありますけれども、結論は、これを偽造し、行使した場合には、五年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処すというわけであります。公文書の偽造と偽造公文書行使であります。
 これは、防衛庁長官が私のすべての責任においてこれは行ったものであるという答弁を先日されているということは、お認めになると思います。こうなりますと、これはもう日本有事どころか、防衛庁有事ということになってくるじゃありませんか。
 中谷長官は、大変ある意味では温厚で、誠実で、よくお仕事をされる方で、私も、かつて安保委員会で一緒に理事を務めさせていただいて、個人的には本当に立派な方だなというふうに尊敬を申し上げているわけでございますけれども、しかし、あなたのこうした答弁と、そしてまた防衛庁に対する指導力と、そして防衛政策に関する責任という点においては、私は、あなたの大きな責任をここで追及をしなければなりません。これについて、こうした一連のあなたのうそ。
 あなたは田中眞紀子さんと親しいようでございますけれども、田中眞紀子さんは、外務省に対して、あの事務方はだめだと言って、いろいろと、随分、内部の改革と申しましょうか、内部のことについて率先してある意味ではこの問題に対して闘ってきたというところはありますが、あなたは、きのうのこの本委員会の場面を見ても、ことごとく今のように、こういう絵が、守屋さんがそこに、あなたのそばに行って、そして打ち合わせをして、聞いて、そういう場面ばかりじゃありませんか。あなたは、事務方の言いなりになってきたんじゃありませんか。そしてまた、事務方の守屋さんの方も、現場、制服の方に物が言えなかったんじゃありませんか。
 私は、これはもう足かけ三年にわたって取り上げていることですよ。現場に対して、あなたは物が言えなかったんじゃありませんか。守屋さんじゃありません。たしか、あなたはまだ就任して二、三カ月しかたっておりませんから、あなたじゃありませんが。防衛庁長官、あなたの重大な責任をここで聞かなきゃならぬと思いますが、どうですか。
守屋政府参考人 大臣が、国会で、石井先生の御質問に対しまして、防衛庁長官、このことをあなたは知っていたのかということに対しまして、先ほど石井先生が言われたようなことをとっさの御発言でなされたということは私も承知いたしておりますけれども、当時の担当者に聞きましたところ、これは、当時の、所掌するのは防衛局でございまして、防衛局長どまりの決裁で終わっておりまして、大臣には御報告されていないということを改めて国会で明らかにさせていただきたいと思います。
石井(紘)委員 これはまた重大な発言ですよ、守屋さん。委員会では、大臣はこのことを把握しているというふうに答弁をされたんですよ。そうすると、もう一つうそがふえたんですか。
 それから、こういう重大なことを大臣に報告していなかった、大臣はまたそれに対して関知していなかった。大臣の方のこの責任はさらに大きいですよ。これはまさに、防衛庁の統制はとれていないと言わざるを得ませんね。
 防衛庁長官、あなたの責任は重大です。どうぞ。
中谷国務大臣 防衛庁におけるすべての責任は、私がございます。本件につきましては、石井委員からこの一年間厳しく御指摘いただいた点、また私なりに正直に包み隠さず答えたつもりでありますが、一点、外務省に翻訳をお願いしたという点は、私の認識不足でありまして、その点につきましては、さきの委員会でも訂正をしたわけでございます。
 この報告につきましても、内容については報告を受けておりまして、このポイントにつきましても、内容につきましては、今でも会計検査院と認識は一致しているというふうに思います。
 というのは、この会計検査院の報告に指摘された事項を記述いたしておりますし、この会計検査院の報告内容につきまして、私も素人ですけれども、会計検査院のパンフレットを見ますと、一から四の事項が不適切な事態の記述で、通常、指摘事項と呼ばれているものですということで書かれておりまして、このポイントの文書を見ましても、「会計法令等に照らして特に不適切と認められる事態は見受けられなかった」ということでありまして、この認識は同じだと私は思っております。
 しかし、会計検査院作成という点で発出をされたことにつきましては、私も大変遺憾に思い、反省をし、そして、このようなことがないように厳しく省内においても注意をし、やっていきたい。また、自分に対して、さらに、もっともっと注意深く省内を監督しなければならないというふうに思っております。
 そして、この会計検査院から御指摘をいただいた事項につきましては、次年度以降、入札等に関しまして、原本を封印させる、また、拘束内容等につきまして、入札の実施の段階で説明を徹底する、また、この内容を確実に履行するなどの履行の措置を行う等改善に努めまして、先生からこのような御指摘がもう二度と起こらないように、さらに全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。
石井(紘)委員 今の答弁を聞いていると、基本認識はまだ一致しているとかなんとか言って、これはそういう認識じゃ全然だめですよ。これは事実と違うんですから、検査院、言っているんですから。
 午後から私、もう一回検査院を呼びます。あなたの今の答弁では、責任感という点では、全然これはもう話にならない。これは、午後からさらに私はこの問題を続けさせていただきますので、防衛庁長官、昼飯まずいかもしれないけれども、よく、慎重にお考えいただきたいと思います。
瓦委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十七分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 政府参考人として法務省刑事局長古田佑紀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
瓦委員長 質疑を続行いたします。石井紘基君。
石井(紘)委員 先ほどに引き続きまして、防衛庁長官、防衛庁長官の答弁は、スイスに対して発したところの会計検査院の検査報告、ここに書かれてあるところの会計法令に違反していないという部分、これが基本認識だという答弁でありまして、大体いろいろな点については、申し上げた点については反省をされるという意思表示はあったようでありますけれども、この重要な点について、捏造された、偽造された公文書、これの内容においては、依然として間違いを認めておりませんので、これでは話にならない。したがって、この点を明らかにしなければなりません。
 そこで、急遽、先日の四月十七日の決算行政監視委員会でも御答弁をいただいた金子検査院長においでをいただきました。御多用のところ本当に恐縮でございますが、金子院長に私はもう一度質問しなければなりません。会計法令に照らして特に不適切と認められる事項は見受けられなかった、これが会計検査院の検査報告の要約となるという点について御見解を求めたいわけでございます。
 検査院は、検査報告というものはこういうことが内容として当たっているのかどうなのかということを御答弁いただきたいと思います。
金子会計検査院長 石井議員の決算行政監視委員会での御質問にお答えしたとおりでありまして、防衛庁作成のポイントは、会計検査院の報告書に書いていない事項が書いてございます。会計検査院の見解は、検査報告に書いてあるとおりでございます。したがいまして、防衛庁が会計検査院の検査報告をそのままお認めになるのであれば、基本認識は一致しているということになると考えております。
石井(紘)委員 そうしますと、先日の答弁ともあわせて考えますと、今の防衛庁の基本認識は、会計検査院の検査報告そのままですね、それより以上でも以下でもないと言うんですね。ここに書いてある、検査報告に書いてあるそのままということであれば基本認識は一致するんだけれども、ここに書いてある以外のことだと、これは基本認識に一致しないんだというのが会計検査院長の答弁だと思いますが、防衛庁長官、先ほど基本認識が一致していると。もし一致していると思われるのなら、これはあなたの主観にすぎないのであって、これは一方の、検査報告を出したところの検査院は今のように言っているわけですから、客観的には、基本認識は、あなたのところは、こういうことだとすれば、間違っている、あるいは一致していないというふうに言うべきじゃありませんか。もう一度はっきり答弁してください。
中谷国務大臣 今般、会計検査院の検査を受けたわけでございますけれども、会計検査院の御報告にある事項につきましては、まことにごもっともなことと思っておりまして、それと防衛庁といたしましても全く認識が同じでございまして、御指摘を受けた事項につきましては改善をいたしたいというふうに考えております。
石井(紘)委員 そうすると、スイスに送られた、ここに書かれた文言は、すべて撤回をするということですね。
中谷国務大臣 今回、会計検査院から検査をいただきました検査状況につきましては、個別の検査結果である指摘事項の一から四に至らなかったものに関して、特に会計検査院の検査状況を明らかにするための記述であるという検査でございまして、当方としてはそのことを記述させていただいたわけでございますが、この点につきましては、防衛庁の見解でございます。
石井(紘)委員 それじゃ、あなた、基本認識は、ここに書いてあるわけだから、検査院と違うんだ。一致していないんだよ、検査院と基本認識が。だめじゃないですか、そういうわけのわからぬ答弁をしたんじゃ。この期に及んで何ですか、中谷防衛庁長官。
中谷国務大臣 その点につきましては、先ほど石井議員にも文書をお渡ししましたし、スイス政府にも御返答をさせていただきましたけれども、当該ポイントに「会計検査院作成」と記述した点について、あたかも会計検査院が作成した文書であるかのような誤解を与えたことになる、また、会計検査院報告本文にない文言を記述した点については、これがあたかも報告書の中に記述されているような誤解を与えたことになり、遺憾であり、反省しているというふうに考えております。
石井(紘)委員 これは、あなたは、この文書そのものを出したことを反省しているのじゃなくて、この中身は正しいけれども、会計検査院という名前を使って出したところが間違いだったということですか。そういうことなんですか。
瓦委員長 守屋防衛局長。
石井(紘)委員 今長官の答弁に対してやっているんだから。じゃ、いいよ、簡単に触れてください。
守屋政府参考人 この問題については、先生この委員会で経緯を述べられたとおりでございまして、そういう経緯を経まして、今度の五月七日に、私どもの方が先ほど先生に示しました文書どおりの考え方でございます。これは会計検査院の認識とも一致いたしております。
中谷国務大臣 先ほどと同じでございます。
 この会計検査院が作成した文書であるような誤解を与えたり、また報告にない文言を掲載した点については、あたかも報告書の中に記載されているかのような誤解を与えたことになり、遺憾であり、反省しているところでございます。
石井(紘)委員 これは、会計検査院は検査報告に書いたもののみが検査報告であると言っているんで、それ以外のものは会計検査院の認識に外れるところだということを明確に言っているわけです。にもかかわらず、あなた、中谷長官は、この内容ではなくて、内容は撤回もしなければ反省もしない、しかし、会計検査院の名をかたって出したところについてこれを改めるということでありまして、これでは防衛庁長官、これは私は納得することは到底できませんね。
 しかもここには、会計法令に照らして特に不適切と認められる事態は見受けられなかったというふうに書いてあるけれども、あなたのところでつくった英文には、法律に照らして違反していないというふうに、これまたさらにねじ曲げて出しておる。ましてや、会計検査院は、会計法令等に準じているか違反しているかという点でもって調べたというよりは、会計検査院の検査は、この入札にさまざまな問題があり、不正があり、不透明があったのではないかということを検査をして報告を出しているわけですよ。
 この会計法令に照らして云々かんぬんというようなことは、少なくとも、これは司法で争って決着がつけばこれはクロとなると私は思いますけれども、しかし、こういうようなことについては検査院の権限でも何でもないし、検査の目的でもないわけですよ。そういうとんでもないものをあなた方は、いかにもあなた方が行った入札が正しいかのごとく、適正、透明に行われたかのごとく装うためにこういうものを書いたのじゃありませんか。
 あなた方は、決め手となったところの数字を密封をしないで差しかえて入札を行ったのですよ。そして、従来の契約においては、必ずと言っていいほど事後に公表しているところの子細な各項目についての価格についてあなたたちは隠しているんですよ、いまだに。維持経費というものを、あなたのこの最近の答弁を見ても、数字を聞いていなかった、その次には、聞いてきなさいよと言ったら、聞いてきました、しかしそれは申し上げられませんと。不透明じゃありませんか。
 いいですか、このライフサイクルコストという全体の二百十二億円の相当部分を構成するところの将来にかかるお金の中の主要なものは、IRANという機体定期整備の費用なんです。この機体定期整備の費用は出されていないのです。出されていなくて、それを含めた六項目の全体の維持経費、全体の経費として八十六億円という数字が出されたのです。細目はどうしてもお出しにならない。
 では、この八十六億円というのがどういうふうに出てくるのかということを積算いたしますと、T3改という購入をされることになったところのこの練習機は、従来海自が使っているT5と同型機種でありまして、T5の場合にはすべてこの数字が出されておりますから、その数字を当てはめて計算をしていきますと、実にこれは百十七億円になるんです。この機体定期整備の費用だけですよ。費用がそういうふうになる。そうすると、ここに三十一億円の差が出てくるんです。
 あるいはまた、スイスのピラタス社の場合には三十六カ月で定期整備をするということにして、一方の富士重工の場合には四十五カ月まで定期整備しないでいいですよということでもって価格をはじき出した。それをもし、ピラタス社の場合も富士重工と同じように、富士重工よりはるかに優秀な飛行機なんですから、これは。はるかに優秀なんだけれども、富士重工と同じレベルに合わせて三十六カ月で定期整備をした場合には約五十九億円、五十九億円弱でできるんです。
 そういたしますと、この公表されている数字と比べてみると、二十七億円も安くなってくるんです。ちなみに、全体の購入価格は、全体の四十九機分の購入価格は、富士重工が先ほど言いましたように入札で示された価格ですが、約二百十二億円ですね。それに対して、わずかに十三億円高い、二百二十五億円ですか。十三億円しかいずれにしても差がないのですね。だから、防衛庁は、その十三億円、いろいろな操作をして十三億円ピラタス社の方が高いように出して、そして富士重工に落としたわけです。
 それで、その今申し上げたIRAN、機体定期整備というのは、毎年、将来機体整備をやる都度公開入札を行って、そして初めてその結果価格が決まるものなんです。ですから、あらかじめこの価格を算出することはできないのです。
 お配りした資料の中の二枚紙になっておりますところの、富士重工のIRAN等の工数を明らかにした場合はどうなるか。二枚になっておりますが、これは実は防衛庁から私のところに持参をされたペーパーなのであります。
 これを見ますと、簡単に言いますと、もしこのIRANの価格を公表した場合には、将来、定期整備の入札をする際に、富士重工が、下の方から言いますと、一〇〇というふうにしますね、その方がわかりやすいから下から言いますが、一〇〇とした場合、別の企業が入札に参加してきて九九の値段を出した場合に、富士重工は負けてしまう。そうすると、富士重工に対して損害賠償しなければならなくなる。あるいは、富士重工が九八という数字を出して別の会社が九九を出して、富士重工がとったとしても、それは二の損失になるから、その分を富士重工に対して補償しなければならないというのが一枚目の紙であります。二枚目も同様の説明をしたものでございます。
 ということは、既に富士重工から飛行機を買って、富士重工から買うと、機体整備をする企業はどこの会社かというと、富士航空整備という会社になるわけですね。この富士航空整備には防衛庁・自衛隊から一佐以上の方が百二十八名天下って再就職を、天下りといいますか再就職をしている会社であります。富士航空整備。これに、要するに、どうしてもこの仕事が行くようにということも含めて、富士重工にこれを決めなければならない。そういう前提があることは明らかであります。
 しかも、あらかじめ将来行われる入札に関してこういう取り決めがあるということは、入札に反する、これは法律に違反をすることになります。談合であります。明らかであります。こういうことまで行って、この数字を出さない。つまり、どういう角度から見ても、この入札は不正に行われた疑いが強いのであります。
 防衛庁の長官、中谷さんは、四月の二日の安全保障委員会で答弁をしているわけですが……(中谷国務大臣「四月はまだ防衛庁じゃ……」と呼ぶ)そうですね。ごめんなさい。四月の十七日、いや、これはこの間ですね。この数字をまだ、当初は、防衛庁長官に就任したてのころは、数字を見ておりませんと。それじゃ困るからよく聞いてきなさいというふうに言いましたら、数字を、結局、聞いてきたけれども、言えないんだと。
 そのことも、今私が申し上げたことは、つまり、数字を出さなければ、これが、あなたもこの入札がどういうふうに行われたかということが理解できるはずがないんですよ。あなただってその数字を見た上でよく比較対照をしてみてわかると思うんですけれども。そういう点においても、あなたはこの問題に関して、内容においても認識が不十分なのか、あるいはいまだに、そうしたさまざまな不正に対して、これは厳正に公正に行われたというふうなことを繰り返しておる。そういう点においても大変大きな問題があるし、それから、聞いたと言ったり、聞かなかったと言ったり、答えられないと言ってみたり。そうして、確かめてみると、そうすると、いや、実は聞いてなかったんだというようなことを言われてみたり。そういう、非常に優柔不断といいますか、責任ある立場に果たしてたえられるものかどうかということが大変心配になるわけですよ。
 いずれにしても、先ほども申しましたように、あなたはこの内容は間違っているんだということを認めませんけれども、その認めないことも含めて、これは公文書の明らかな偽造でありまして、これを行使したら五年の懲役という、これは重刑ですよね、重罪に当たる、そういうたぐいのものなんです。私がこれを訴えたら、あなたがなるかだれがなるか知らないけれども、防衛庁は公文書偽造、行使、その罪に問われるということになるかもしれない、そういう問題なんですから。これを、これからはきちんとやりますなんという答弁で済むと思うのが、そもそも大きなあなたの認識違い。
 会計検査院長もそういうふうに明確に言っているわけですから、あなたは認めたらどうですか。これは内容も間違っているということを認めなければ、この国際問題はまだまだ尾を引いていくということになりますよ。はっきり答弁してください。
中谷国務大臣 会計検査院の方から御指摘いただきました点につきましては、まことにごもっともなことでございまして、その事項につきましては改善をいたしたいというふうに思っております。
 この会計検査院のポイントというものは、防衛庁が作成した文書でございまして、そういう点で、会計検査院の名前をかたったり、また記述されていない文言が書かれていた点につきましては、まことに遺憾でありまして、心から反省をいたしておりまして、関係者の方々に御迷惑をかけた点につきましておわびを申し上げたいというふうに思っておりますし、私自身も監督不行き届きの点があったことを深く反省いたしている次第でございます。
 その文書を作成した者に対しましては厳しく厳重に注意をいたしまして、今後このようなことがないように対処すると同時に、会計検査院から御指摘いただいた点を改善いたしまして、今後の契約等につきましては公正、透明に行われるように改善に努めたいというふうに考えております。
石井(紘)委員 かつて、つい最近ですよ、防衛庁で過払い事件というのがあったのは。これは、当初は四社事案といって、四社、四つの会社に払い過ぎをしておった、東洋通信機を初め。それでずっと、久間先輩もずっと通してきたわけですよ。ところが、今になったら何ですか、十何社にそれがもうふえてしまった。
 私たちはその当時から言っていたんですよ。四社だけで、そんなことがあるはずがない。七百八十社もの企業に装備品を発注していて、それぞれみんな、多かれ少なかれやっているんだろうと言っていたんですよ。そしたら案の定、当時は四社でもってわずか二十一億円の払い過ぎだったと言っていたんですよ、ずっと一年間、一貫して。そうしたら、これが、捜査が入って、その後いろいろ明らかになってきたら、何と七百数十億円に膨れ上がったんですよ、この過払いが。背任事件ですよ。国損を生じているんですよ。
 今のこの入札の問題だって、これは海上自衛隊で使っているT5というものと比較してみたら、T5の方が、そうすると、結果的には海上自衛隊が数百億円も公金を浪費している、どこかへうやむやにしているということになってしまうんですよ。もしあなたたちのやったことが正しいと言うんであれば。
 これは、いずれにしても富士重工には二十名近い天下りが、高級官僚が天下って行っておる、そして整備をする富士航空整備には二百十八人も行っておる、そういう中で起こった不正じゃありませんか。防衛庁長官、そのような答弁では、これは国民は許しません。あなたの答弁は非常に適切を欠いております。これは、あなたの責任は重大である。
 きょう、私は、この場でもって、本当はあなたがもう少しすかっと男らしく責任を明確にすると思って期待をしておりましたけれども、そうなりそうもありませんので、これは、きょう総集編と冒頭に申し上げましたけれども、総集編になりませんでした。さらに引き続いてやらせていただきますことを申し上げまして、終わります。ありがとうございました。
 あっ、外務大臣にさっきの、これは質問時間外だから、外務大臣にさっきの答弁を、再三御足労いただいておりますので、退職金の答弁をお願いします。
川口国務大臣 石井委員の御質問にいかに前向きにお答えをさせていただくかということと個人情報の保護という二つの間でどういうお答えの仕方があるかと考えまして、これから申し上げるようなことでお答えをさせていただきたいと思います。
 それから、先ほど午前中に、人事院に聞いてというふうに申し上げましたけれども、人事院ではなくて総務省の人事局でございまして、総務省の人事局に問い合わせましたところ、総務省の人事局からは、この問題については、個人情報のプライバシーの問題なので出さないというガイドラインを持っているというお答えがございました。
 ということでございますので、三つのケースを申し上げさせていただきたいと思います。
 仮にAというふうにいたします。A、B、Cについて申し上げますが、A、この方は勤続年数三十七・五年でございまして、退職時の退職金は、四捨五入いたしまして九千百万円でございました。それから、B、次官退任時に三十八・五年の勤続年数でございまして、その後、大使を二・五年務めまして、両方の合計の退職金は八千九百万円でございました。それから、C、次官退任時に勤続年数が三十七・五年でございまして、大使を約四年半、四・四年務めまして、退職金が九千五百万円でございました。
 以上でございます。
石井(紘)委員 もう大体これで、Aの人は川島さんですか、これは。B、Cは……(発言する者あり)いや、私がさっき名前を挙げて聞いたものですから。
瓦委員長 石井紘基君の時間が過ぎておりますので。
 次に、山田敏雅君。
山田(敏)委員 民主党の山田敏雅でございます。
 きょう有事法制、非常に重要なポイントは、防衛庁の信頼性というか、国民にとって信頼に足り得る省庁であるということが非常に重要だと思います。今回、その信頼性が大きく失われる事件がございまして、きょうはそれを御議論させていただきたいと思います。
 台湾の国家安全局の機密文書が、三月二十日以降、かなり報道されるようになりました。中身は、李登輝さんの指示によって百三十億円の工作資金、これは秘密の工作資金ですが、これがいかに使われたかという内容でございます。対日工作及び対米工作でございます。問題は、この中に日本の政治家の名前、そして、防衛庁の幹部の方の名前が出てまいります。それが大変詳しく載っている機密文書がございます。
 私、台湾に行ってまいりまして、いろいろ調査をしてまいりました。その機密文書のコピーが手に入りましたので、この中に書いてあることをちょっと申し上げます。
 最初に、外務省にお聞きしたいんですが、このような対日戦略の、具体的にお金がいろいろ動いて日本の政治家及び官僚が動かされた、この情報収集とその分析はどういうふうに今回されたでしょうか。お答えください。
田中政府参考人 お答えを申し上げます。
 今、委員御指摘のような報道が行われているということは事実でございまして、委員御案内のとおり、私ども、台湾との関係では外交関係を有していない、したがって、民間の窓口でございます交流協会を通じて一定の情報収集に当たっているということでございます。
 現在の状況を申し上げますと、台湾の検察院が告発を受けて機密漏えいの疑いで捜査をしているということ、それから、台湾の国家安全局自身も内部の調査をしているということ、それから、台湾の立法院におきましても、調査委員会を設ける等の内部調査を行っているというようなことがございます。
 私ども、一定の関心を持って調査を、情報収集ということをやっておりますけれども、今報道されている、特に日本との関係においてそれが事実であるといったような情報は一切ございません。
山田(敏)委員 台湾に参りまして、今、大使館に当たる、純粋には民間機関なんですけれども、交流協会の所長さん、在外公館の大使に当たる方なんですけれども、お話をお伺いしました。
 今、一切ございません、事実はございませんということなんですが、この大使に当たる方のお話ですと、これは台湾の恥部である、ですから、日本側としても、これはどういう情報が正しいのか正しくないのか、あるいはこれはどういう日本として影響があるのか、こういうことは余り前向きにやらない、こういうふうなお話でございました。したがって、今おっしゃったような、こういういろいろな機密文書、現物も出ているわけですけれども、写真もフォトコピーもございますけれども、こういうことは本当にどうなのかという調査をなされていない。これは私の印象でございます。
 情報収集能力、これは在外公館ですね、私は去年、タイのODAの調査に行ってまいりました。バンコクに下水処理場の七百億円のプラントがございますけれども、ODAは外国の政治家の汚職と環境破壊についてはやらないという原則があるわけですけれども、そのケースは、五年前からタイの政治家が地上げをやって、それを政府に売りつけるという汚職が、その責任者なんですけれども、あるということを、五年も前から現地のジャーナリストが丁寧に追っている。私がたった三日間いる間で、そのジャーナリストに聞けば、幾らで農民から買って、幾らでどういうことをやって、この汚職は成り立っているんだと。在外公館のODA担当の方にお伺いしたら、これは汚職があるんじゃないですかと。これは汚職はありません、どうしてですか。それは、タイ政府がこれは汚職じゃないと言っているから汚職じゃないんだと。その言っている本人が、副大臣で、この汚職事件の張本人なんですよ。こういう情報収集能力では、非常に私は心もとない。
 今回も、今おっしゃったように、この「壹週刊」という雑誌、この中に初めて出てきたわけですけれども、実際の現物のコピーも全部入っていますけれども、これを書いた記者は、七年間この件をずっと追っていた人は今の交流協会の方に、事実はありませんとおっしゃったんですけれども、これを書いた記者に接触したこともない、会おうともしない。私は、これは会いましたけれども、現実にどんな感触で、どういうルートで、どういうふうに流れてきたのか。私は二日間いたわけですが、そんな人間でもできることを、在外公館の情報収集能力、非常に心もとないと私は思ったんですが、大臣、今私が話したこと、いかがお考えでしょうか。
川口国務大臣 一般論で申し上げまして、いい外交を行っていくということのためには、いい情報収集ができるというのは一つの大事な要件であると思っております。外務省の情報能力あるいは日本政府としての情報能力が一〇〇%満足できる水準であるかというと、まだまだ努力する余地はあると思っております。
 その特定の件につきましては、これは情報源その他の問題もございますので、どういう方にどういう情報収集をしているかということについては、恐縮ですが、申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
山田(敏)委員 私も交流協会の方に直接お会いしたんですけれども、私の印象では、この件について真剣に情報収集を行っていない、質問したことがほとんどちゃんと調査されていないというふうに印象を受けましたので、もう一度、この件は非常に重要な問題でございますので、ぜひお願いいたします。
 法務省に来ていただいていますので、ちょっとお伺いいたしますが、事後収賄の件について、これはどういう要件で事後収賄が成り立つのか、ちょっとお伺いいたします。
古田政府参考人 お尋ねの件につきましては、公務員であった者が、その在職中に請託を受けまして職務上不正な行為をしたこと、または相当の行為をしなかったということに関しましてわいろを受け取ったり、あるいはその要求、あるいは受け取る約束をしたということが犯罪とされているものでございます。
山田(敏)委員 法務省の方はもう結構でございます。
 この機密文書の中の一九九九年十二月十五日付に詳しい経緯が載っております。防衛庁前事務次官秋山さんが米国に研修する際にどういうふうに援助するかという案が載っております。これはその機密文書、極秘という文書の原文でございます。
 これによりますと、秋山さんは日米安保の新ガイドラインを順調に通過させていただいたキーパーソンである、日本で最高レベルの国防官僚である、それから秋山さんがやめられた経緯が、辞職されたわけですけれども、台湾に対する労をねぎらうためにハーバード大学の研修を手配した、感謝するためにハーバード大学の研修を手配した、こういうふうに書いてございます。今後、ハーバード大学以降、学者、専門家として再度台湾に協力していくことが可能だ、これがございます。
 次に、具体的にお金の払い方なんですけれども、一年間に五万ドルずつ二年間、計十万ドルをこの費用として支払う。その払う責任者は、これは彭さんという台湾輸送機器の会社の会長さんなんですけれども、この方に指示する、こう書いてございます。
 ここにその彭さんの、これは原文のコピーなんですけれども、領収書、一千万ドル受け取りましたという領収書、それから、ミッションというか、何のために受け取ったかという書類ですが、その中に対日工作という言葉が出てまいります。
 これは、この「壹週刊」という雑誌の記者に会って私も確かめたわけですけれども、これについて、前回、外務委員会で防衛庁副長官にお伺いいたしました。その時点で、どういうふうに思われますか、今後この件についてどういうふうな責任のとり方があるかということをお聞きしたんですけれども、きょう副長官来ていらっしゃいますが、もう一度この件について、その後、調査を踏まえてお答えいただければと思います。
萩山副長官 お答えいたします。
 前回の外務委員会において、あなたの質問の内容について、防衛庁が仮にこういうことがあるとするなら、副長官としてその責任をとるということをあなたに答弁いたしました。今も変わりはございません。
山田(敏)委員 この文書の裏づけをとった方がいらっしゃいます。ワシントン・ポストの北京の駐在記者なんですが、台湾に飛んで、それからこの舞台になったハワイに行って証言をとってまいりました。その報告書をきょう、私は手に入りましたので、御披露したいと思います。
 この中で、台湾の機密文書に書いてあることと、アメリカ側の受け取った方の側が同じことを書いてございます。この責任者の方の証言ですが、CSIS、センター・フォー・ストラテジック・アンド・インターナショナル・スタディーという組織でございますが、ここの副代表でこの組織のスポークスマン、要するに正式に見解を表明する方です。パーラーさんという方ですが、この方が、四月四日にワシントン・ポストの記者にコンファームしたと英語で書いてありますが、確認をしたと。一九九九年と二〇〇〇年、二回にわたって五万ドルずつのお金を受け取りました、そのお金はハーバード大学に秋山さんのフェローシップの費用として払いました、こういうふうに書いてございます。この事実を御存じだったでしょうか。防衛庁、お答えください。
柳澤政府参考人 お答えいたします。
 今先生がお挙げになりました事実関係と申しますか、私どもも、そういう報道がなされている、その報道の中で御指摘のようなことが言われていることは承知をしております。
山田(敏)委員 官房長、前回の委員会のときに、秋山さん本人に調査をいたしましたというお答えをされましたけれども、前回のときは、秋山さんはこのお金はだれが払ったかわからない、こういう調査結果だと思うんですが、その後、何か調査は進みましたでしょうか。
柳澤政府参考人 先般も御答弁申し上げましたように、私どもとしては、基本的に御本人から当時の状況をお伺いするということを行っておりまして、その後も、若干、例えば台湾に御旅行された経緯ですとか、二、三のことはお聞きをしております。
 いずれにいたしましても、秋山さん御本人は、ハーバードのエズラ・ボーゲル、ジョセフ・ナイと御相談の上、ハーバードに御自分の希望で留学をされたわけであります。それで、研究室とアパートメントとそれから若干の研究費を提供を受けたわけでありますが、そのハーバードにおける財源手当がどんなふうに行われていたかということは、一貫して御存じなかったということを言っておられるわけであります。
山田(敏)委員 もう一枚書類がございまして、その後のことが書いてございます。
 今申し上げましたように、この台湾のお金を払われた経緯と、ワシントン・ポストのそれを受け取った側の人の証言と、これは一致するわけですね。それから、秋山さんが二年間ハーバードに行かれたという事実も、この機密文書の中と一致するわけですね。
 それから、その後に、この件について、二〇〇〇年二月二日付の機密文書にはっきりと書いてあります。これは、秋山氏が国家安全局に連絡を入れた、お礼を述べた。この件について、資金が提供されて、自分がハーバードに行くということについて、連絡を入れてお礼を述べた。その後、書いてあることは、これは中国語で書いてあるんですけれども、台湾の在日工作の人間になると書いてあるんです、これは日本語の訳ですけれども。それで、その後に、これを踏まえて、十万ドルの支出を審査の上許可する、引き続き秋山氏と連絡をとり続ける。許可する条件に引き続き秋山さんと台湾側は連絡をとり続けるということが、二〇〇〇年二月二日の文書に載っております。これは香港の新聞に載りました。その原文を私持っておりますけれども、新聞に載った報道であります。この件、いかがでしょうか。
柳澤政府参考人 その報道に関しましても御本人のお話を聞いておりますが、御本人が、要は、台湾側の関係者と連絡をとったのは、実は、平成十二年の四月にハーバードの旅費負担で台湾を訪問しておられますが、ちょうど二月ごろということでございますので、その台湾旅行のアレンジのための電話を入れたことはある、そして、たしかそのアレンジをしてくれることに対するお礼は述べたことはあるかもしれないと。しかしながら、ハーバードに留学すること自体について台湾側と連絡をとったり、あるいはそのお礼を述べたりということは一切なかったというふうに伺っております。
山田(敏)委員 御本人が言われたからこれで調査は終わりということにならないですよね。本人が言われていることが本当かどうかを調べるのが調査だと思うんですけれども、今私申し上げましたように、客観的なドキュメントといいますか、この双方のドキュメントがある。なおかつ、今おっしゃったように、事実として、台湾に行かれて、国家安全局の方とお話をしてお礼を述べた、こういう事実もここに書いてあることと一致するわけですよね。
 そうしますと、これはやはり事実を解明しないと、この台湾の文書にありますように、秋山さんというのは日本で最高レベルの国防官僚である、しかも防衛庁の、信頼を本当に持たなきゃいけない今回の法律についても責任があると思うんですが、この後の調査について、いかがお考えですか。防衛庁長官、ちょっとお聞かせください。長官。
柳澤政府参考人 前回も御答弁させていただきましたが、基本的には御本人にお話を確認する以外に私どもとしては、あるいは当時の実は官房の関係者にも聞けるところは聞いてございますが、何よりも御本人のイニシアでおやりになっていたことですので、御本人のお話を伺うということが基本であるというふうに思います。
 報道等で新しい事実関係が御本人の関係で報道されれば、その都度私どももさらにまたお話を聞くなりして確認をしていきたいと思っております。
山田(敏)委員 先ほどの法務省の見解にありましたように、公務員が在職中に何かの委託を受けて働いて、やめた後そのお礼を受け取る、これは事後収賄という要件が成立するわけですが、この疑いがこの文書の中から出てきたわけですので、今のような、新聞に出るかもしれないし、出ないかもしれないし、出たときにはやります。でも、調査をやろうと思ったら、このワシントン・ポストの記者みたいにお金が入ったところを見ればいいんです。ハーバード大学が払ったと言うんだから、払ったお金はどこかから出てくるんだから、簡単に調査できるわけですから、中谷防衛庁長官、今、私、三十分やりましたけれども、いかがお考えですか。その責任について、調査に対する責任についてお伺いしたいと思います。
中谷国務大臣 確かに、秋山氏は事務次官でもございましたし、防衛庁のOBとして働いていただいたことに対して敬意を持っておるわけでございますが、その後の当人の人生とかその歩み方等については直接本庁の政策決定とか運営等には全く無関係でありまして、本人を監視をしたりまた関与するものでもございませんし、調査するとしたら、防衛庁の人間が御指摘の行動に対して関与したり関係があったりという点につきましては調査いたしますけれども、それ以上の調査をする必要があるかどうか。私は、防衛庁の職員がかかわったという範囲におきましては調査をいたしますけれども、それ以上調査をすることがどうか、その点についてはよくわかりません。
山田(敏)委員 中谷長官、私がきょうやったことをよく、それは役人が書いた答弁書を今お読みになったんですけれども、きょう私がやったことは、法務省を呼んで事後収賄の要件は何ですかと聞いたんですよ。やめたからもう関係ないという、そんなことは今の要件の中に入っていないじゃないですか。公務員が在職中に行ったことに、事後においてやったことは要件としてあると言われたじゃないですか、ここで。聞いていなかったんですか。やめたから、もう関係ないから調査しません、そんなのはおかしいんじゃないですか。もう一回、ちょっと答弁してください。
中谷国務大臣 防衛庁といたしましては、現在業務をいたしておりますけれども、その職員にかかわる問題につきまして、重要な問題でありましたら責任において調査をいたしますけれども、そういった退職をした人間につきましての調査、捜索等につきましては、司直並びにしかるべきところでやっていただくのが適当ではないかというふうに思います。
山田(敏)委員 私の質問と答えは全然かみ合わないんで、これは、一回その経緯を秋山さん自身にこの場に来ていただいてお聞きすれば、今私どもが持っている資料、その経緯、詳しく書いてあります。何年何月の、いつ、どこに、どういうふうに、だれが責任を持って渡って、その後どういうふうに受け取って、その後、秋山さんとどういうふうに連絡をとったかと書いてありますので、参考人に招致をお願いしたいと思いますが、委員長、検討していただけますでしょうか。
瓦委員長 後ほど、理事会にて取り扱わせていただきます。
山田(敏)委員 以上で、私の質問を終わります。
瓦委員長 次に、金子善次郎君。
金子(善)委員 民主党の金子善次郎でございます。
 まず最初に、防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
 今度の有事法制、緊急事態に対しまして万全の対策を講じていくという一連の流れの中での法案作成ということになってくるわけでございますけれども、現行法、この状態で、仮にあした他国から武力攻撃を受けたというような場合でも今の自衛隊は対応できる、そういう態勢になっているのかどうか、そこをまず最初にお伺いしたいと思います。
中谷国務大臣 現在、有事法制をこの委員会で御審議をいただいておりまして、この法案の成立に基づいて対処できる面がありましたら、速やかに対処できる面がございますが、現在そういう事態が発生したというのでしたら、現行の範囲内で対処するわけでございます。
 この点につきましては、非常に能力的には、日ごろから訓練をし、装備も有しておりますけれども、肝心のソフトの面におきまして支障がある面もございますが、自衛隊としては、最善を尽くして国土に被害が及ばないようにいたしたいというふうに思っております。
金子(善)委員 今お伺いしていますと、そのためにこの法律をつくっていくんだということにはつながってくるんだと思いますけれども、大変心配な答弁だったというふうに思います。
 そこで、お伺いしたいんですけれども、今度の一連の法改正の中で、防衛庁の職員の給与等に関する法律、これは昭和二十七年の法律第二百六十六号でございますが、この改正がうたわれているわけであります。
 この第三十条に「出動の場合の特別措置」という規定がございます。その中で、出動を命ぜられた職員に対する出動手当の支給、災害補償その他給与に関し必要なものは特別の措置を講ずるということで、それを法律で定めるというふうにこの法律にはなっているわけでございます。昭和二十七年にできた法律でございますけれども、恐らく、まあ詳しく調べておりませんけれども、この第三十条という規定はその当時規定されたんではないかと思います。
 考えてみますと、大変長い間、先ほど冒頭質問いたしましたけれども、自衛隊員のいわゆる処遇、そういう問題について、防衛庁は今まで放置されてきたのか。その辺につきまして、万が一今度の法律が通らない状態において、現実問題としてはあり得ないことかもしれませんけれども、あした、あさって、突然の緊急事態が生じたというような場合は全く規定はないわけですが、とにかく、昭和二十七年以来この規定が何ら発動されることなく今日まで至った、その経緯についてお伺いしたいと思います。
中谷国務大臣 金子先生の御指摘のとおり、防衛庁設置法、また防衛庁職員給与法等が制定されて以来、この給与法の第三十条におきまして、従来から出動手当を別に法律で定めるようにしてきたところでございますけれども、大変長い間放置をされてきたわけでございます。
 我々といたしましては、早期にこの法律を制定して手当を制度化すべきというふうに考えておりましたけれども、なかなか国会でそういった御審議をいただくような状況にすることができずに本日まで至っておりまして、こういう点につきましては我々自身も反省をいたしておりますけれども、当初の法律に従って、防衛出動に係る手当を早期に制度化しなければならないという気持ちはずっと持っていた次第でございます。
金子(善)委員 そこで、お伺いしてまいりますけれども、昨年の不審船事件、昨日で沈没した状態の調査が一応の終了を見たというような報道に接しているわけでございますが、この海上保安庁の職員に対しまして、いわゆる特殊勤務手当、これは支給されたのかどうか、これにつきましてお伺いしたいと思います。
縄野政府参考人 お答え申し上げます。
 不審船に対する強制的な停船などに関する業務に対する手当としまして、人事院規則に基づきまして、四隻の巡視船艇の職員六十三名に対して、先月でございますが、四月十六日に支払ってございます。
金子(善)委員 これは、ただいま答弁がございましたように、人事院規則の改正、人事院規則の九―三〇、特殊勤務手当という人事院の規則があるわけでございますが、この改正によりまして、遡及適用いたしまして、昨年の不審船のいわゆる対応について特殊勤務手当が支給されるようになったということでございます。
 そこで、人事院総裁がおいででございますのでお伺いしたいと思いますが、これは、特殊勤務手当の金額というか、どういうような手続で、どういうような基準でこの金額というものが決定されるものなのか、その辺につきましてお伺いしたいと思います。
中島政府特別補佐人 お答えいたします。
 不審船に対する停船業務あるいは検査業務というのは、今海上保安庁長官から答弁がありましたように、危険な業務に従事するということで特殊勤務手当の一つに位置づけられておりますが、国家公務員が従事する業務の中には、それ以外にも著しく危険な業務がございます。
 例えて言いますと、爆発物取り扱いをする、あるいはまたプルトニウムを積載している艦艇を護送する、さらにまた法律違反を犯しておる船舶というものを停船させ検査する、そういう業務がございまして、それぞれに特殊勤務手当が支給されておりますが、不審船への強制的な検査等に係る業務は、それらの中にありましても特に危険性が高いということで、今申し上げました業務に対する手当、それらをにらみながら、かつそれらよりも高い手当を支給するということで、現在の手当額というものが定められておるということでございます。
金子(善)委員 今、人事院総裁の御答弁を聞いておりまして、私は、どういう基準で、どのような考え方でということで御質問をさせていただいたわけでございますけれども、今までの特殊勤務手当、その他の特殊勤務手当というものがあって、それとの比較考量で決めているんだというようなお話だったと思います。
 とはいえ、実際のところ、この特殊勤務手当というのは二千円から七千七百円という幅で決められているわけでございますが、その基準という私の質問に対しては、なかなか、いまいち納得できる御説明じゃないような気がしているわけなんです。その辺について、総裁、どんなふうにお感じでございますか。
中島政府特別補佐人 その基準というのは数学的に一足す一が二というふうにはっきりは出てまいりませんけれども、先ほど私が御説明申し上げました三つの危険な業務に対する手当がございますが、その手当というものをすべてプラスいたしまして七千七百円というのを出したわけでございます。なかなか数学的にこういうことだということは申し上げられませんけれども、現在、危険な業務とされておる業務に対する手当をプラスして七千七百円という額を算出しております。
金子(善)委員 そういうようなことで決めておられるということがわかりました。
 そこで、お伺いいたしますけれども、私は、あくまでもこういう業務に対してそれなりの、特殊勤務手当と申しますか、そういうものを出していくのは当然のことだと思いますし、そうあるべきだというふうに思っている立場から御質問をしているわけです。
 つまり、私がなぜ今こういうことを申し上げているかといいますと、今、なかなか民間の世界も厳しい時代になってまいりました。やはり、この決め方というものがもっと透明性があっていいのではないかなというような気がしているわけなんです。
 一般職の公務員の給与というようなものは、民間の世界を対象に調査をいたしまして、それを基準として定めてきているというようなものがあるわけです。特殊勤務手当、民間に類似のものがないわけですから必ずしもそうはできないんですが、ただ、少なくとも、透明性、情報公開と申しますか、実は私自身も、不審船の作業に従事された海上保安庁の職員の方々、大変な御苦労があったということは想像にかたくないものでございますけれども、遡及適用しましてこういう手当が出ていたということは、皆さん知っていることかもしれませんけれども、私は全く知らなかったわけでございます。
 それで、遡及適用、一般論としてで結構でございますけれども、特殊勤務手当というようなものが遡及して適用していくというような物の考え方、それについて総裁はどんなふうにお考えでいらっしゃいますか。
中島政府特別補佐人 遡及適用というのは、一般的には行わないわけでございますけれども、法律に根拠があり、その法律で授権された規則等で定める、しかも、遡及適用することによって本人にプラスになる、不利益にならないというときには今までも遡及適用というのを行った例がございます。
 今回も、こういう事件についての手当支給ということでございますので、法律論に違反しないということで、私たちは遡及適用ということに踏み切ったわけでございます。
金子(善)委員 ただいまの総裁のお話ですと、一般論としては適当ではない、ただ、いろいろな事情によって、全体から考慮して、遡及適用が適当であるというような判断で踏み切ったというようなお話だったというふうに理解しております。
 そこで、お伺いしたいんですが、これは防衛庁長官にお伺いするということになろうかと思いますが、出動手当、これは政令におろしていく話になっていくわけでございますが、どんな基本的な考え方でこの出動手当というものを考えておられるのか。不審船で銃撃戦が現実あったわけですね、そのときには七千七百円という一回出動当たりのお金であったわけですが、この出動手当、どういうような基準、あるいは諸外国の例、いろいろなものがあるんだろうと思いますが、これは政令におろされてしまいますので、法律の審議の段階で基本的な考え方を明らかにしていただきたいと思います。
中谷国務大臣 今回の防衛庁職員給与法改正案におきましては、防衛出動手当の趣旨及びほかの手当との併給調整に関することを定めて、手当の額、手当の対象から外される職員の範囲、給与方法等の事項について政令で定めることにしたところでありますけれども、この額につきましては、脅威の形態や自衛隊の行動に係る地域の範囲、危険度等を総合的に勘案するとともに、支給調整されるほかの手当の額及びほかの危険度の高い業務に対する特殊勤務手当の水準なども考慮し、また、米国を初めとする諸外国軍隊の戦時給与の制度等も参考にしつつ検討してまいりたいというふうに考えますが、非常に、防衛出動の際は戦闘状況が切迫をする中で行動する危険な中の行動でございます。
 一般に、その業務の内容、業務の危険、不快、不健康の度合い、困難度、その性質、継続期間や勤務環境等を勘案して設定をしてきているところでございますが、この平時の手当の評価要素に加えて、防衛出動時における勤務の強度、勤務時間の特殊性、危険困難性、戦闘またはこれに準ずる業務に対する危険性の評価を行うことになるわけでございます。
 現実といたしまして、実際にその出動を必要とする時期等に近づきまして、そういった状況等を勘案して判断をしていくということになろうかと思います。
金子(善)委員 防衛庁長官の答弁の形で進めていくということに、これはなると思いますが、先ほど私も申し上げましたが、もう少し国民に説明と申しますか、政令の段階で、法律が通った場合という前提でございますけれども、政令でいくということになるわけですが、国民にオープンにする形でこういうものは決めていくというような形をぜひとっていただきたい、要望をいたしておきます。
 次の質問に移らせていただきたいと思います。
 外務大臣にお伺いいたしますが、連休中でございますけれども、アフガニスタンを訪問されまして、御苦労さまでございました。その際、暫定行政機構のカルザイ議長との会談で、同国の外交官五人を日本で受け入れるというようなことを、それで、研修を行うというようなことを表明されたということでの報道がございましたが、これは事実かどうかということと、どんな内容を考えておられるのか、それをお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 毎年五人受け入れるということを申しました。
 ただいまアフガニスタンが必要としていることの中には、さまざま多くのことがございますけれども、一つがやはり行政機構についてキャパシティービルディングをする、人材育成をするということでございまして、そういう意味で外交官について行うということでございますが、その研修の内容につきましては、今検討をしているところでございます。
金子(善)委員 これは冗談ではなくて、私も何人かと、この連休中ですが、大臣の行動を見た方が言っていることとして聞いてもらいたいんですが、今、外務省の信用というのは本当に失墜している、日本の外務省で何を研修するんだというようなところまで話が出ちゃっているわけなんですね。まさかプール金のつくり方を教えるわけでもあるまいというような話まで、実際のところ出ているんですよ。これが今の外務省の置かれた実態だと思います。
 このことについては、外務大臣もいろいろ言いたいことはおありかもしれませんけれども、振り返ってみますと、昨年の一月一日、大新聞の一面にスクープされました松尾事件以来、大変なことが次々と起こりました。在外公館それから沖縄サミット、APEC、すべてこれは不正経理、それから本省におけるプール金、それから特定国会議員による国の外交政策の歪曲と申しますか、こういうのまで、いろいろ挙げますと切りがない、こういうような状態になっているわけなんです。
 それで、私が申し上げたいのは、いろいろな問題が報道され、いろいろなことが明らかになってきている中で、まだ国民の目もあれかなというような状態にあるということかもしれませんが、基本的に何かけじめがついていない、けじめをつける姿勢が外務省に足りないんではないかという感じがするわけですが、この点について外務大臣はどういうふうにお考えでいらっしゃいますか、今の外務省の置かれた立場というものに。アフガニスタンから外交官を呼んで研修する、何をするのかと言われるような、こういう状態を外務大臣としてどう思うか、お答え願いたいと思います。
川口国務大臣 金子委員と常に意見が一致をするというわけでないのは非常に残念でございますけれども、アフガニスタンの研修生の受け入れ等につきまして、これはアフガニスタン政府から要望を受けて受け入れるということにしたものでございますが、外務省で、日本の、我が国の外務省で研修をしたいという要望につきましては、アフガニスタンだけではなくて、アメリカからもほかの国からもあるわけでございまして、それなりに外務省の仕事に対しての評価というのはかなりのものがあると私は自負をいたしております。
 その上で、外務省の今の状況ということでございますけれども、いろいろ御指摘をいただいて、ただいま外務省として、改めるべき点というのはもちろんたくさんあると思っていまして、変える会、あるいは俗称変わる会、これは外務省の中の組織で、自発的に改革をどうやって進めるかということを考えているグループでございますけれども、こういった会の活動、あるいは与党自民党の小委員会からも御提案をいただきましたし、さまざまなそういった、外務省を変えるために何をすればいいかということのお知恵をいただきながら、今変わりつつあるところでございまして、現にかなりのことを既に改革を実施いたしております。
 そういうことでございますので、今後とも引き続き、外務省の何よりも職員が一生懸命に改革をしていくということが重要だと思いますし、私としても、こういった職員の動きをできるだけ前向きに引っ張っていきたいと考えているわけでございます。
    〔委員長退席、米田委員長代理着席〕
金子(善)委員 大臣は、いつも言われると、開かれた外務省というような形で今努力をしていますとよく言われるんです。
 私が、なぜこの点について再度こういう形で外務大臣に対しまして直接質問をさせてもらっているかといいますと、要は、我が党、民主党でございますが、いろいろな資料要求をいたしております。これも、ただ単に資料を要求するということではなくて、いろいろな問題点について、やはり広く国民の間にも知らせる必要があるし、おかしい点については、我々野党の立場からも、いろいろ直してもらうように要求もしていかなきゃならない。そのための基礎的な資料というものがどうしても必要になってくるわけです。
 この間の外務委員会でも、外務大臣に対しまして私申し上げましたように、一般の民間の方が情報公開法で要求した資料よりも、国会議員が国政調査に基づきまして要求した資料の方が情報量が少ないというのは、余りにもひどいじゃないかということを申し上げました。それで、外務委員会の方で理事会の方にお預けいたしまして、その点については理事会の方でよく話をしていただくということになりまして、外務省の方ではある程度の資料を出したつもりでおられるかもしれませんけれども、私の目から見ればまだまだ話にならない。
 ここの場でこれ以上、この外務省の問題についてはちょっと申し上げたくありませんので、大臣から、少なくとも今現在民主党が要求している資料については速やかに提出してもらいたい。大臣、いかがですか。
川口国務大臣 今ちょっと私手元に、民主党の御要求の資料がどれぐらいお出ししないままに残っているのかという情報を持ち合わせておりませんので、よくわかりませんけれども、できるだけ外務省としては透明性を増すということが望ましい、外交の信頼を増すためにも望ましいと思いますので、お出しをするということで考えておりまして、情報公開法の基準、これは相手国があって外交をやっているという立場でもございますし、個人のプライバシーの問題もございますし、あるいは内部の資料についてはという、お出しをしないということについて情報公開法の基準もございますので、その基準にのっとって、その中でできるだけ前向きに資料をお出しするということでやらせていただいております。
 昨年と比べますと、あるいは一昨年と比べますと、御要求の資料が、一昨年と比べると約二倍、昨年、これはいろいろな不祥事ございまして、情報の開示要求が多かったわけですが、そこと比べても一・五倍の量がございまして、人数的にはほとんど変わらない人数で処理をいたしておりますので、時間が多少かかっている点はあるかもしれませんけれども、できるだけ先ほど申し上げたような考え方で出させていただくように努力をしているわけでございます。
金子(善)委員 大臣、そう言われますけれども、実際は、確かに外務省についてはいろいろな不祥事の問題がございました。いろいろな資料要求も確かにあったことは事実だと思います。
 ただ、私が申し上げているのは、我々も無理なことまで申し上げているわけではない。それが二カ月たっても三カ月たっても堂々めぐりみたいなことばかりやっているから、私は改めて大臣に対して直接申し上げているわけでございまして、ぜひとも、外務省の方にお帰りになりましたら改めて、私が指摘している点については幹部の方に対応するように強く指示を出していただきたい、このように思います。大臣、いかがですか。
川口国務大臣 私としましては、できるだけ透明性を増すということで考えたいと思っております。
金子(善)委員 それでは、次のあれに移らせていただきたいと思います。
 民主党といたしましても、緊急事態における国等の対応を法的に規定するとともに、基本的人権、そして民主的統制というものをしっかり守って、国民の生命の安全あるいは財産の保護保全、こういうものを確保するために緊急事態に備える法整備が必要である、こういう基本的な立場には立っているわけであります。
 ただ、今回の提出されております三法案については、幾つかの点で不備があるというふうに言わざるを得ないわけであります。
 私どもは、基本的には、テロ対策の問題あるいは大規模災害というような問題を含めたいわゆる緊急事態、国民にとって大変な状態というものをカバーするような法体系というものが必要なんではないかというふうに思っているところでございます。
 しかも、今回の法案、三法案でございますけれども、これについても、私どもの同僚議員の方でもいろいろ質問をいたしておりますけれども、武力攻撃事態に関する概念あるいは定義、それから国民の基本的人権の制限の問題や、それから地方公共団体の役割の問題、在日米軍の活動とこの法案の関係、その後いろいろ新聞報道でちょこちょこと出たりはいたしておりますけれども、法体系として、国会に提出する法律としては、甚だすべての体系が見えてきていないというのが実際のところではないかというふうに思います。
 そこで、私は、きょうは、地方公共団体との関係につきまして質問をさせていただきたいと思います。
 今度の事態対処法の第五条で、地方公共団体は必要な措置を実施する責務を有するというような表現がございます。ところが、この規定だけ見ますと、極めて漠然とした規定でございまして、地方公共団体が何をまず必要な措置、必要な措置というものはどういうふうに地方公共団体サイドにおいて認識すればいいのかはっきりしていない。この点についてまずお聞きをいたしたいと思います。これは官房長官に。
福田国務大臣 武力攻撃事態対処法案の第五条で必要な措置ということになっておりますけれども、避難のための警報の発令、伝達、被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧など、国民の生命、身体及び財産の保護に関係して必要な諸措置、これを広く想定しておるところでございます。
 それで、なお申し上げれば、地方公共団体が実施する対処措置につきましては、現行法制において実施し得るものもありますけれども、基本的には、今後整備されてまいります個別の法制の中で具体的に定めていくことになるというふうに考えております。
金子(善)委員 ただいま官房長官が御答弁されましたように、一般論的なものとしては、確かにこの法律にも、これから先のいわゆる有事法制というような枠組みの中でそういうものを今後詰めていくというような形をとっているということは、ある程度は理解できますけれども、それでもまだ抽象的で漠然としているというのが実態のところだというふうに思います。
 そこで、例えば責務と必要な措置という場合ですが、これは総務大臣にお伺いした方がよろしいのかもしれませんけれども、原子力発電所が所在する地方公共団体、こういうようなところを前提にして物を考えた場合、必要な措置というものはどういうものが考えられるでしょうか。
片山国務大臣 突然のお尋ねで私も困っておりますが、原子力発電所所在の地方団体は、まず住民の生命、身体、財産の保護を考えていく。消防的な仕事が中心、あるいは救助的な仕事が中心になると思いますけれども、しかしその間は原子力のいろいろな施設の監督官庁との十分な連絡調整を図っていく、こういうことが当面の責務ではなかろうかと考えております。
金子(善)委員 私が御質問しましたのは、必要な措置ということで、責務ということになりますとまた別の観点の質問の仕方があるんですけれども、それはともかくといたしまして、いろいろ新聞報道等によりますと、この法律案が策定される段階において地方公共団体との意見交換や意見聴取というものが余りにもなさ過ぎたんではないかというような報道があるわけでございますが、これは恐らく実名入りの知事あり、市町村長の方々が新聞紙に登場いたしまして、発言をされているわけでございます。
 この法案をつくるに当たりまして、何よりもこの有事法制というのは、国だけでもできない、これは地方公共団体その他、民間の企業もそうでございましょうし、また一般の国民全体が一丸となってこれに対処する、そういう形のものが基本的には有事法制の全体を仕上げる形になろうかと思います。
 そういう観点から言いまして、大変その地域地域において頑張っておられる各地方公共団体の意見というものが、少なくとも有事法制の基本中の基本の今回政府が提出されたこの法案の段階において、余り意見聴取や意見交換をなさっていないということであれば、大変な問題ではないかというふうに思いますけれども、その点、これは官房長官にお伺いしたらよろしいんでしょうか。
    〔米田委員長代理退席、委員長着席〕
福田国務大臣 今回の武力攻撃事態対処関連法案につきましては、内閣官房が、総務省とも連携いたしまして、地方公共団体に対する情報提供に努めてまいりました。また、総務省及び防衛庁とともに、これは内閣官房が一緒になってということでありますけれども、全国知事会等の求めに応じまして、地方公共団体に対する法案の説明なども行っております。
 また、実際の武力攻撃事態において、地方公共団体には、避難のための警報の発令、伝達、被災者の救助、施設及び設備の応急復旧等の諸措置について一定の役割を担っていただくということを期待いたしておるわけでございまして、今後の個別の法制の整備に当たっても、地方公共団体の意見も踏まえつつ、適切に対処してまいりたいと思っております。
金子(善)委員 基本的には、ただいまの答弁を聞いていますと、これからだというようなことのようでございますが、本来でございますと、この法律は恐らく二年以内で全体像をまとめるというような形になっているわけでございますが、少なくとも今回の法律はその中の基本中の基本であるというふうに思います。そういうことで、地方公共団体の方に対して適切な意見聴取なり相談というものが余りなかったというのが、ただいまの官房長官のお話を聞いておりましても、これから詰めていくんだというようなお話だったと思います。
 そこで、これは総務大臣にちょっとお伺いしておきたいと思っておりますけれども、一つの例で申し上げてみますと、有事の場合でございますから、いろいろなことでだれが対応するというようなことは、いろいろな応用問題が出てくるんだろうと思いますが、現在の消防、これは原子力というものに対しては対応できる状態になっているんでしょうか。
片山国務大臣 いろいろな法制上の議論がありますけれども、一応今言いましたように、事が起こった場合の住民の救助、それを中心に一応の対応の態勢はとっておりますし、そういう意味での設備等も一応の整備はいたしております。
金子(善)委員 それでは、時間の関係もございますので、この法案で、内閣総理大臣に、指示と実施、代執行と申しますか、かわって実施するというようなことで第十五条に内閣総理大臣に権限を付与している、こういう条文がございますけれども、実際上の問題といたしまして、こういう規定も必要であるというふうに私としては思います。
 そこで、お伺いしたいと思いますけれども、逆に言いますと、今回の事態対処法というものが成立しないと、内閣総理大臣は地方公共団体に対しまして事実上の事態対処措置というものを指示する、あるいはかわって行う、こういう権限はないというふうに判断してもよろしいんでしょうか。この法律が、もしと申し上げますとちょっとわかりにくいかもしれませんが、成立しないと内閣総理大臣は何もできない、こういう現在の法制になっているかどうかをお伺いいたします。
片山国務大臣 今回の法律が、もしないとすれば、成立しないとすれば、地方自治法等の一般法の適用ですね。そうしますと、例えば法定受託事務、今地方の事務は自治事務と法定受託事務に二分されているんですよ。法定受託事務についてちゃんと地方団体がやらないという場合には、指示ができるんです。ただ、これは事後ですね、是正の指示ができる。しかも、それをさらにやらないという場合には、代執行的なこともできる。これは一般法です。法定受託事務はそういうことで対応できるんだけれども、それ以外の事務についてはできませんね。
 したがって、今回のこの武力攻撃事態対処法があれば、いろいろな場合について、要件をきっちり厳重に決めながら、いろいろな意味での指示や代執行やそういうことができる、こういうことになります。
金子(善)委員 ちょっと時間の関係もございますので、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 四月二十六日の外務委員会で、外務大臣に私はこういう質問をいたしました。アメリカの一九九九年度の米国国務省テロ年次報告書、これで、北朝鮮についてはテロ支援国家と考えているというようなことをこの報告書に書いてあるわけでございます。それに対して外務大臣は、我が国は少なくともテロ支援国家という概念を持っていませんというような趣旨の答弁であったかと思います。
 テロかどうかということはともかくといたしまして、テロのいろいろな概念というか範囲もあるかもしれませんので、それはさておきまして、拉致問題を国際的な犯罪であるというふうにとらえておられるのかどうか、外務大臣にまずお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 犯罪と考えるかどうかというお話がございまして、いずれにしても非常に重大な問題であるという認識はいたしておりまして、北朝鮮に対しては、これが我が国としては国民の生命財産に係る重要な問題なのできちんと対応すること、国交正常化の過程でこの問題は避けて通ることができないということはきちんと言っております。
 その上で、例えば国際法上、これがどういう問題になるか、犯罪と国際的に認識をされるかどうかといったようなことについては、そういった条約なりなんなりということは存在をしないと思います。
金子(善)委員 非常に外務大臣の答弁というのは、そういう姿勢で日本政府はこれまで来ているのかと。私は、犯罪だというふうに認識をいたしております。
 警察庁にお伺いいたしますが、八件十一人について、拉致をされたということを公式に認定されておりますが、これは犯罪行為による拉致なのか、その辺についてどういう認識を持っておられるか、警察の方にお伺いしたいと思います。
漆間政府参考人 私どもが北朝鮮による拉致の疑いがある事案と言う場合には、北朝鮮の国家的意思が推認される形で、本人の意思に反して北朝鮮に連れていかれた疑いがある事案、こういうことでありまして、これを法律に適用した場合には何罪に当たるか、こういうことになるだろうと思いますが、八件十一名については、基本的に、法律に違反しているというふうに認識しております。
金子(善)委員 今の警察庁の答弁は、法律に違反しているということであれば、法律というのは、何も民法に違反しているというわけではなくて、刑法的な意味での違反でしょうから、それは犯罪ということになると思います。
 外務省もこの点の認識をきちっと持っていただかないと、大変な、これは国民に対しても、この間の有本さんのことについても、赤十字の会談では名前さえも出てきていないというような状況で、これは後ほど触れたいと思います。
 皆様のお手元にちょっとお渡ししてございますけれども、元朝鮮総連の財政局副局長の韓光熙さんという方、これはもともと朝鮮総連の大変な大幹部であった方が、暴露本と申しますか、私も一通り読みましたけれども、生い立ちからこれまでの、在日の方としていろいろ苦労してこうしてきたというようないろいろなことが書いてある本でございますが、驚くべき内容も大変多く載っています。
 この拉致に関連しまして、「わが朝鮮総連の罪と罰」、こういう本でございますが、つい最近ですが出版されました。これは、北海道から九州まで三十八カ所あります。この資料を見ていただくとおわかりかと思いますが、そのほかにも、恵谷治さんという方が書いた「北朝鮮 対日謀略白書」というものもございますけれども、警察庁はこういうことは当然把握されておられたのではないかと思いますが、海上保安庁も含めまして、どういうような認識でおられるか、質問をしたいと思います。
漆間政府参考人 委員御指摘の書物については、私も存じ上げております。
 それで、具体的に、「私がつくった北朝鮮工作船着岸ポイント三十八カ所」、こう出ておりますが、この辺について、三十八カ所と私どもが認定しているかどうかは、これは別問題でございまして、着岸地点というのは、これを把握しているかどうかでまさに敵に警察の手のうちを見せることになりますから、したがって、この辺については、どこまで把握しているかということについてはお答えできません。
金子(善)委員 いずれにしましても、これは一つの本という情報から仕入れたものでございますけれども、現実に大変な拉致問題というものが起きてきた歴史がある。歴史と言っては大変、拉致された方々は今現在も北朝鮮の方で元気に暮らしているというような情報も多くあるわけでございまして、一日でも早くとにかく日本に帰してもらう、その努力をしていただかなきゃならない。
 その際に、私は思いますが、この間、赤十字の会談がございまして、その前に有本さんという方の存在が、警察によりまして拉致されたということを公的に認定されたわけでございますが、この赤十字会談で有本さんのことについても何にも出てこなかった、非常に多くの方々ががっかりしたことがあったわけでございます。外務大臣はやはりそのときに、これは報道で見た表現でございますからこのとおりだったかどうかわかりませんけれども、行方不明者の調査再開が確認されたことはよかった、日朝間の人道問題解決の一つの前進だと述べたというような報道がございました。
 これは、ずうっとこういう表現が繰り返されてきているというのが実情でございます。この拉致された被害者を行方不明者と呼んでみたり、その犯罪で拉致された方を、人道問題というような、何と申しますか、問題の本質をねじ曲げた表現で外交の最高責任者がそうしたコメントをなさるというのは、私としては大変納得がいかない感じをしているわけでございます。それは恐らく、また答弁を求めましても同じようなことが返ってくるのではないかと思いますので、何としてでも、これは北朝鮮に対して厳しい姿勢で臨んでもらいたい、これを要望いたしておきます。
 そこで、これも報道でございます。外務省の方の話をよく聞いておりませんけれども、近く外国で、外務省と北朝鮮の当局がまた接触をするというような報道も、きのうきょうございました。それはともかくといたしまして、小泉総理大臣は、拉致問題の解決なしに食糧支援というものは今後困難だというようなことを言っておられるわけでございます。
 現実に、これも報道でございますが、米国の下院の国際関係委員会東アジア太平洋小委員会で、北朝鮮の人権に関する公聴会というものが去る二日に行われたようでございますが、食糧援助というものが本当には役に立っていない、むしろ軍備の強化につながっているのではないかということが、多くの証人によって、アメリカの議会ではございますけれども、そういうことが言われているわけでございます。
 そこで、お伺いしたいと思います。この総理大臣の言葉は重いわけでございますが、拉致問題の解決なしには米支援はあり得ない、これが現在の小泉内閣の姿勢であるというふうに受けとめてよろしいのかどうか、そこをお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 食糧支援につきましては、政府といたしまして、今まで、人道上の考慮に加えまして、さらに種々の要素を総合的に勘案をいたしまして検討し、実施をしたものについては実施をしたということでございます。
 ただ、現時点で、食糧支援を北朝鮮に対して行うということについて、具体的な検討は全く行っていないということでございます。
金子(善)委員 どうもよくわかりにくいんですが、それでは、官房長官にぜひお伺いしたいと思います。
 小泉総理の、拉致問題の解決なしで食糧支援は困難というこの姿勢は、拉致問題の解決を見ない限りは、米、具体的には米の支援でございます、過去七回にわたりまして支援を行ってまいりました。二〇〇〇年の河野外務大臣の時代には、WFPですか、世界食糧計画、この機関が日本政府に対して十五万トンの援助をしてほしいというような話で来たのにかかわらず、五十万トンを出した。しかも、外務省は発表ではいわゆる国際価格での発表をいたしておりますが、現実には農林省のいわゆる食管会計の米を使いましたので、二〇〇〇年度だけで一千億円を上回る援助がなされたわけです。
 そのときも、拉致問題とかいろいろな日朝交渉というものをうまくするために日本もそういう援助をしていかなきゃならないんだというような説明だったと思いますが、何ら進展を見てこなかったという経過があるという前提におきまして、官房長官の御答弁をお願いしたいと思います。
福田国務大臣 拉致問題と食糧支援との関係につきましては、今外務大臣から答弁を申し上げたとおりでありますけれども、今現在、食糧支援をする計画がないということでありますが、これは、我が国の、北朝鮮に対するいろいろな問題に対して、国民感情としてそれが許されないということだろうと思います。
 そういう意味において、この拉致問題を北朝鮮が前向きな姿勢をとって積極的に対応してくださる、そういうことが必要なんだろうと思いますので、そういう北朝鮮側の対応の仕方、今後の対応を見ていろいろと総合的に判断していくべきものだろうというふうに考えております。
金子(善)委員 それでは、昨日まで大変な苦労をなさったようでございますが、いわゆる例の工作船。不審船と呼んでおりますけれども、工作船だと思います。この工作船が、まだ引き揚げてみないと北朝鮮のものかどうかというのははっきりしないというような報道もなされております。
 それは、政府のしかるべき方がそう言われているから、そういうふうな報道がなされているんだというふうに思いますけれども。
 これは仮定の話でございますが、北朝鮮のものと判断されたという仮定をした場合ですが、この制裁措置、どういう制裁措置を講ずるのか。我が国の領海を侵犯されて、しかも銃撃戦までなった。しかもけがをした人まで出た。こういうものに対して北朝鮮のものということがはっきりした場合。
 これとあわせてお伺いいたしますが、これまでも政府の中でいろいろ議論があったやに聞いております。具体的には、いわゆる新潟港に寄港しております万景峰号、これは港湾法上なかなか、つまりその寄港させるとかさせないとかということは港湾法の管轄ではあるけれども、港湾法だけではそういうことが、つまり制裁があった場合に寄港させないとかそういうことは法律上できないという状態になっているということを聞いているわけですが、国土交通省の方においでいただいているかと思いますけれども、まずその点からお伺いしたいと思います。
岩村政府参考人 北朝鮮から来る船の入港を拒否するということ、これにつきましては、現在の港湾法は港湾の管理運営に関し不平等な取り扱いを禁止しておりますので、これを一律に拒否するということは現行法制では可能ではございません。
金子(善)委員 そうしますと、制裁措置と申し上げましても、するのかしないのかというところから始めていろいろな可能性というものがあるんだろうと思いますが、少なくともこの「わが朝鮮総連の罪と罰」という本、これは朝鮮総連の大幹部が、万景峰号でお金を運んだというようなこともいろいろ書かれているわけでございます。
 そうしますと、法律上その船に対して何もできないというような、つまり寄港を拒否するというようなことはできないというような今国土交通省の説明でございましたが、この点について、官房長官、この法律そのものでございますけれども、これは場合によっては改正しなきゃならないというふうに思うわけでございますが、その点、どうお考えでしょうか。
福田国務大臣 万景峰号については、今までいろいろな疑念と申しますか、ございました。制裁とかそういうことを関係なしに一般論として申し上げれば、これは、関税法に基づいて指定された開港は国際通商に開放されている港とされている、こういうことで、先ほどの答弁のとおりなのでありますけれども、それ以上に何ができるかということになろうかと思っております。その点については、関係当局がいろいろと検討しているところでございます。
金子(善)委員 それに関連いたしまして、せっかく財務省の方からもおいでいただいているかと思いますが、実はすべて、この本の話ばかりして恐縮なんですが、事実そうだと思うんですね。大変な金をとにかく、こう手提げで運んだということが、どこの金かこの本に書いてございますけれども、その際に税関を通る場合にほとんどノーチェックだったというようなことがこの本には書いてございます。
 この点について何か、この本を読んでおられるかどうかわかりませんし、ただ、現実にそういうことが言われてきたこともございます。新聞報道でも結構ありました。その点、財務省として、税関業務についての何かコメントはございますか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま御質問がございました点につきましてお答え申し上げますと、先生御承知のように、現金等の支払い手段の携帯輸出につきましては、外為法令によりまして、輸出しようとする支払い手段の合計額が百万円相当額を超える場合におきましては、当該輸出者はあらかじめ財務大臣に届け出なければならないとされておりまして、この財務大臣の届け出書の受理権限は税関長に委任されているところでございます。税関は、旅客の出国に際しまして、上記届け出義務の履行を確保するために旅客に対して適切な指導を行うなど、法令の適正な運用に努めているところでございます。
 今お尋ねがございましたまさに万景峰号といいますか、マンギョンボン92号に対しましては、現地の新潟税関支署におきまして、警察等の関係取り締まり機関との連携によりまして、船を訪ねる訪船者が入港中の船舶に現金等を不正に持ち込むことのないように厳重に警戒しておりますし、また、北朝鮮向けに出国する旅客の携帯品につきましても、開披検査あるいはエックス線検査を行うなど、厳重な取り締まりを実施しているところでございます。
金子(善)委員 これは非常に、今御答弁いただいたのは建前はそうだと思いますが、その点、よく今後も気をつけてやっていただきたい、それは強く要望いたしておきます。
 最後になりますが、せっかく人事院総裁がおいででございますので、いわゆる各省庁で官房付というポストがございます。こういうポストというものは、何のために大体あって、どういうようなときにそのポストが活用されるものであるか、一般論としてお答えいただければと思います。
中島政府特別補佐人 いろいろなケースがあると思います。
 金子議員も御存じだと思いますが、地方の副知事から本省に帰ってくる、次の異動まで待機するということで、異動待機のための官房付というのもございます。また、現在内閣で特殊法人の改革というのを議論されておりますが、そこに各省から職員を派遣するというときに、各省の方で官房付にし、あるいは審議官にするとか、あるいは課長相当職に任命して内閣の方に派遣するというような意味において官房付にしていることもございます。
 あるいはまた、総理大臣の秘書官というものを、総理大臣によっては非常に格の高い人を要望されることがある、そういう場合にも、官房付にして、審議官ということで総理大臣の秘書官に任命するということがございますので、いろいろなケースがございます。
 いずれにいたしましても、公務員としての一つの官職でございますから、それにふさわしい仕事をしていただくということだと思います。
金子(善)委員 これで、質問を終わります。ありがとうございました。
瓦委員長 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうも質疑の時間をいただきまして、ありがとうございました。
 きょうは、主に官房長官と議論をさせていただきたいというふうに思います。
 総理は、このいわゆる有事法制の審議に当たりまして、備えあれば憂いなしという言葉を何度も何度も繰り返しおっしゃっておいででありますけれども、まず冒頭申し上げたいのは、この政府案、備えあれば憂いなし、改め、この備えあれば大いに憂いありであると断言を申し上げたいというふうに思います。
 今回の有事法制関連の三法案というのには、第一に、あるべき緊急事態に対する総合的な国の行政また統治の機構のあり方、ビジョンがそっくりそのまま抜け落ちているというだけではなくて、国民の生命と財産をどのようにして守っていくのか、いかようにして守っていくのかという視点がないわけであります。これがないと有事法制であるとは言えないわけであります。政府案は、一言で言うならば、時代錯誤そのものでありまして、まことに支離滅裂、国民の生命財産を本気で守ろうと考えたとは思えない代物であります。
 自由党は、かねてから真の有事法制の制定を強く主張してまいりました。今日まで提出すらされてこなかったことは遅きに失したものと言わざるを得ないわけであります。政府案は、旧世紀の古い戦争概念にとらわれておりまして、冷戦後の安全保障環境を踏まえておらず、時代おくれのものとなっている。これでは、国民の生命、財産、人権、自由、文化、これらも守ることは到底できないんではないかというふうに考えるわけであります。
 しかも、国家の根幹にかかわる安全保障の原則、自衛隊の行動の原則を明確にしていないのは、有事法制の名に値しない。政府案には自衛隊の行動に関する原則がない。だから、テロやいわゆる大規模災害などの、直接攻略よりも現実に起こり得る、あり得る事態を平気で除外しているわけであります。
 自由党は、国家テロ、大規模災害を初めとするあらゆる緊急事態に対応し得る法案を今まとめている最中でありまして、今国会に提出したいというふうに考えている次第であります。
 我々は、今回、日本国有事のために法律を整備しようとしているわけであります。みずから日本国民を守るための制度を主体的に、なおかつ積極的に確立すべきである。にもかかわらず、今回の政府案は、独立国家として、みずからのことはみずから守る、自分自身のこととして有事に対処していく精神が余りにも希薄であると言わざるを得ないわけであります。今回の法律案は、没主体的、つまり主体的でないと言わざるを得ないのであります。発想が根本的に間違っていると指摘せざるを得ないわけであります。
 そもそも、我々は米国のための有事法制の整備を行おうとしているのではないのであります。日本のためについてであります。自分のことは自分で守る、あるいは守ろうとするのが当たり前だと思いますけれども、法律の中身をよく検証してみますと、主客逆転、主客転倒していると思うのであります。この政府案は米国への便宜供与法案ではないかという指摘も一部ではなされているぐらいでありますが、私には発想自体が理解できないのであります。だれが主体的に有事に対応しようとしているのか、全く見えてこないのでありますけれども、官房長官、いかがお考えでありますか。
福田国務大臣 いろいろと今回の法案に対して御不満がおありのようでございますが、最後に主体性云々という御指摘ございましたので、そのことについてお答えいたしますと、我が国の安全保障を確保するというために、政府としては、外交努力を通じて安定した環境形成に努める、その一方、紛争が発生した場合への備えとして、我が国自身の適切な防衛力の整備を図りながら日米安保体制を堅持するということが重要な柱でございます。
 そして、このことは、我が国の安全保障を米国任せとしていることを意味するものではなくて、日米防衛協力の指針においても、これは九七年でございますが、我が国が武力攻撃に対して主体的に行動し、米国がこれに適切に協力する旨を確認しておるものでございます。
 また、今回、「国は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため、武力攻撃事態において、我が国を防衛し、国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護する固有の使命を有する」ということを第四条に明記しているわけでございまして、この法案の御審議をお願いしていること自体、我が国の安全保障に対する政府としての主体的な取り組みの決意のあらわれであるというように御理解をいただきたいと思っております。
樋高委員 問題は決意ではなくて中身、決意はあって当たり前だと思うんです。防衛は、自分で守るということがまず第一になくてはいけない。米国に頼みますよということではないのであります。
 この政府案は、入り口から、根本から間違っているんではないか。いざとなったらアメリカがやってくれると思っているからこういった中身で上程されたんではないか。何でもアメリカが先にやってくれるという考え方が先に立っている。
 私は親米の立場から申し上げているのでありますけれども、米国が日本防衛の主力であり、それを補完して日米共同防衛に当たるという考え方が抜け切れていないのではないかというふうに思うのであります。最初から米国頼みというのはだめであります。人任せで国の防衛ができるのかというふうに思うわけであります。そもそも、日本の防衛イコール米国に協力するという概念がすっかりしみついてしまっている、頭に印刷されてしまっている。
 誤解しないでいただきたいのは、軍備を拡張しろという意味で言っているのではないのであります。この政府案は精神が自立していないと申し上げているわけであります。防衛とは、自分で守ること。先に米国ありきでは入り口から間違えていると思うのであります。
 例えば、自分の家に強盗が押し入ってきた。家族を守るのに人任せにするんでしょうか。官房長官、いかがですか。
福田国務大臣 強盗が入ってきたら、まず家人が協力してそれを取り押さえるということだろうと思います。警察に連絡するということもあるかもしれませんけれども、その前に、やることはやらなければいけないということだと思います。
 法案の第三条第五項において、「武力攻撃事態への対処においては、日米安保条約に基づいてアメリカ合衆国と緊密に協力しつつ、国際連合を始めとする国際社会の理解及び協調的行動が得られるようにしなければならない。」ということを規定いたしておるわけです。
 そういうように、この法案におきましては、アメリカ合衆国ということを特記しておるのでありますけれども、これは、アメリカ合衆国と日米安保条約を締結しているというからでございまして、また、国際連合とか国際社会の理解及び協調的行動を得ることの重要性についても基本理念としているわけでございます。したがって、本法案が、アメリカ合衆国が我が国にかわって戦ってくれるという考え方に基づくものではございません。
樋高委員 今、官房長官みずからおっしゃっていましたけれども、第二条、第三条、定義とか基本理念のところに特定の国の名前が書いてあるということでありますけれども、これは法律でありますから、一回つくって、日米同盟堅持、そして向上すべきだ、私もそういう立場でありますけれども、しかし、未来永劫にわたってそうであるということではないわけですから、もしそうでなくなったときに、これは法律をまた改正しなくちゃいけないという話になるわけです、そこに特定の国の名前を入れるということは。
 ですから、まず、こういうところから見てしても、ちょっとこっけいな感じが私は否めない、これでは諸外国から笑い物になってしまうのではないかというふうにまず申し上げておきたいと思います。
 次に、見えざる敵との戦いという意味でちょっと質問をさせていただきたいと思います。
 今から二十五年前、昭和五十二年、官房長官のお父様、福田内閣のときに有事法制研究が始められ、それ以来、四半世紀にわたって有事法制の整備が怠けられてきた。これは政府の怠慢そのものであります。しかしながら、まず今ここで考えなくてはいけないのは、原点に立ち返って考えなくてはいけないのは、二十五年前と安全保障環境はがらりと変わっている、いわゆる戦車に代表されるような古い戦争観はもう通用しなくなっている、そのときと今と、イメージがやはり違うのじゃないか。
 そんな中にあって、官房長官に伺いますけれども、危機管理というのは、やはり起こる頻度の高いところから対処をする、発生する可能性の高いところから対策を考えていくというのが私は常識だと思いますけれども、いかがお考えになりますでしょうか。
福田国務大臣 今回の武力攻撃事態対処法は、独立国家として当然の、また最も重要な責任、責務でございまして、政府も、国及び国民の安全を確保するために、いかなる事態にも対応できる安全な国づくりを進めていくということで、この法律を提案しているわけでございます。その取り組みの一環として、武力攻撃事態という国家及び国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態への対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図るために、この対処法案三案を提出しているところでございます。
 今おっしゃられましたような、武力攻撃事態以外の緊急事態のことをおっしゃっておられるんだろうと思いますけれども、これに対する対処を迅速かつ的確に実施するための必要な施策を講ずる旨、この法案に規定をいたしております。
 テロや不審船、そしてまた武力攻撃事態以外の緊急事態については、これまで、警察・海上保安関係法、自衛隊法、災害対策基本法などによりまして体制を整えてまいりましたけれども、今後とも、これを一層改善強化するための措置を講じてまいりたいと考えております。
樋高委員 リスクマネジメントというのは、プライオリティーを考えるというのが大前提、基本ではないかと思うのであります。
 今回の有事法制で言いますいわゆる武力攻撃事態以外、例えば国家テロ、ゲリラ、大規模災害、武装不審船、不審船なんか、これは戦後、確認されているだけでも二十一回来ているそうでありますけれども、またサイバーテロ、現実の国際安全保障環境からいっても、より発生する可能性が高く、国民が一番に懸念して、整備を求めている方を後回しにするということが、率直に言って、どうしてもわからないのであります。なぜなんでしょうか。もう一度お伺いします。
福田国務大臣 テロとか不審船、また、これらの武力攻撃事態以外の緊急事態については、ただいま申しましたように、警察・海上保安関係法とか自衛隊法とか、そういう法律の体制を整えてきております。
 先般の、これは昨年の臨時国会でございますけれども、ここでもって自衛隊法及び海上保安庁法を改正して不審船や武装工作員等に対する武器使用権限の強化なども行ってきているわけでございまして、こういう対処態勢を一層改善強化するために、この対処法の関連の法整備は二年と言っておりますけれども、これはもう随時必要な措置を講じていこうというように考えており、また、法制も整備していこうということで、総合的に考えてまいりたいと思っているところでございます。
樋高委員 要するに、どうしてもよく納得できないのですけれども、一番求められているもの、一番困っていること、一番心配なことに対して国会が法律を整備するのが私は物事の順番であるというふうに思うのでありますけれども、次に進みたいと思います。
 総務大臣に伺います。
 昨今ではインターネットが普及して、私、今回、考えますのは、やはりサイバーテロ、地球の裏側から電話回線一本で、しかも、電話回線というのは遡及していくのが物すごく難しいんだそうです、技術的に。しかも、全世界を張りめぐらされて、いろいろなところを経由すると、その特定の組織、国家もしくは個人でやっているのかも、本当に特定するのが難しいということを伺ったことがあるのでありますけれども、昨今では、コンピューターを若い中学生、高校生が大分研究なさって、大手企業のホストコンピューターに平気で侵入する、パスワードを何かこう、どういうふうに捜すのかわからないのですけれども、という事件もあるぐらいであります。また、先般、外務省のホームページ、日本の役所のホームページが外国からアクセスされて、それで書きかえられたという事件まで起こっているのは記憶に新しいことだと思うのであります。
 こういった電気通信回線を使った犯罪は、国境を越えて物すごい勢いで起きておりますし、いわゆるサイバーウオーという言葉、電子戦争とでもいうんでしょうか、インターネットを使って、例えばビルごと、電気、水道、ガスをとめることができるんだそうです。また、例えば金融取引、今電子商取引を行っておりますけれども、その金融システムに入り込んで、例えば大手銀行のホストコンピューターに入り込んで、それを麻痺させることによって経済を混乱に陥れるということも可能なのであります。
 そういうこともよく考えた上で今回有事法制を考えなくちゃいけないと、私はこのことに対して危機意識を持っているのでありますけれども、そのことに対して、通信業務を所管する大臣として、最近のこういった状況とそのことについての御所見、伺いたいと思います。
片山国務大臣 委員の言われるとおり、サイバーテロというと、これはかなり大がかりな組織的なものになりますけれども、そうじゃなくて、ホームページを改ざんするとか、いろいろな妨害をするとかという例は、去年だけ見ましても、かなりありますね。
 例えば、企業の百以上のホームページが改ざんされて、南京大虐殺の抗議の内容にすり変わったとか、あるいは、非常に感染力の強いコンピューターウイルスの被害の例が幾つも出ていまして、企業だけじゃないんですね、中央の行政機関もやられていますし、政府機関まで入ってきていますね。そういう意味では、IT革命が進展するほど社会経済活動も国民生活もそれに依存するわけですから、この情報システムがおかしくなったら大変なことになるわけですね。
 そういう意味で、我々も、このセキュリティー対策、サイバーテロ対策というものを大変重要に考えておりまして、今、内閣の中にセキュリティ対策推進室というのができまして、内閣、警察庁、私どもの総務省あるいは経済産業省が集まりまして、もう既に不正アクセス防止法というのはあるんですよ。しかし、これが、今委員言われましたように、相手がなかなかわからぬ、特定できないんですね、どこからでも入ってくるわけですから。
 だから、こういうことを含めての技術開発、人材育成、あるいは電気通信事業者にしっかりやってもらう、危機管理計画をつくってもらって、あるいはウイルス対策をやってもらう、あるいはファイアウオールをコンピューターの利用者につくってもらうような総合的な対策を今まとめておりまして、今後、法制的な措置を含めて十分な対応をしてまいりたい。こっちの方はこっちの方でやる、サイバーテロの方はサイバーテロの方でやらせていただく、こういうことでございます。
樋高委員 しっかりお願いをしたいと思いますけれども、サイバーウオーというのは電話回線一本ですから、相手が一人であることもあるんです。一人で国家の機能を麻痺させるということも現実にあり得るわけでありますから、今回の有事法制の法案とは関係なく、そちらの方、しっかりと対策を打っていただきたいというふうに思います。
 やはり見えざる敵、いわゆる直接の武力攻撃以外については、国家テロ、例えば原発事故なんかもそうであります。原発事故というと、すぐ外から攻撃をしかけているというんじゃなくて、電話回線で中のコンピューターを麻痺させるということで原発事故が想定され得る、そちらの方が可能性が高いんだそうであります。また、エネルギー危機、大規模自然災害、爆弾テロ、それらやはり蓋然性が高いものを後回しにするというのが、どうしても私理解に苦しむのであります。
 昨日の議論も聞いておりまして、まずスタンダードな部分から整備するんだということでありますけれども、それをもし、この古い対策をスタンダードとするのであれば、その発想自体が本当に古いんではないかというふうに思うわけであります。また、ミサイルや生物・化学・細菌兵器など、いわゆる国際法で認められていない事態も十分に起こり得るというふうに感ずるわけであります。
 そんな中にありまして、官房長官にお伺いしますが、いわゆる有事ということに対する言葉の定義、どのようにお考えでしょうか。
福田国務大臣 国及び国民の安全を脅かすさまざまな事態に対する対処は、独立国家として当然の最も重要な責務でございまして、政府としては、いかなる事態にも対応できる安全な国づくりを進めていくことといたしております。これは先ほども申し上げましたけれども。
 この法案におきまして、武力攻撃事態への対処は、自衛隊による武力攻撃の排除を含め、「国、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならない。」ということにしておりまして、また、武力攻撃事態以外の緊急事態への対処を迅速かつ的確に実施するための必要な施策を講ずる旨も規定いたしております。
 こういう自衛隊の活動も、こういう政府としての幅広い取り組みの一環として考えるところでございまして、こういう緊急の事態を、これを有事の事態であるというように考えておるところでございます。
樋高委員 有事というのは、いわゆる国家の緊急事態、非常事態ということではないかと思うのでありますけれども、議論を私もずっと追いかけております中で感じたのは、いわゆる今回、内閣が責任を持って、強い決意のもとで国家国民を守る、また自治体や国民もそれを信頼して協力でき得るような法整備という考え方がないんじゃないか。要するに信頼関係だと思うんです。あんた、任せたよというふうに言えるかどうか、やはりここの部分が私一番重要なことではないか。信頼される体制づくりこそ私は大切なんではないかというふうに考えるわけであります。
 さまざまな非常事態、先ほどのサイバーテロ、国家テロ、大規模災害、すべてが同列の非常事態であるという認識をまず持って、それらをすべて、非常事態、起こり得る事態をすべてテーブルの上にのせて、それで安全保障の全体像をみんなで明らかにして、そしてオープンな議論をして、そしてその本質は何なのか、全体の安全保障はどうなのか、その中で自衛隊はどういうふうに動くべきなのかという考え方に立って議論をしていくのが順序だと思うんですけれども、今回、何を慌てていらっしゃるのかわかりませんが、自衛隊の行動だけを先に考えようとするから話がおかしくなっちゃうというふうに私は思うわけであります。まず土台そのものから、安全保障はいかにあるべきかというところから考えていかなくてはいけないというふうに思います。
 次に、対策本部についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 いわゆる対策本部というと、いかにも、言葉だけで見ますと、頼りがいのある何か一つの組織ができたんじゃないかという錯覚に陥りますけれども、そもそも、これ、私、旧態依然たる仕組みではないかというふうに思うのであります。非常事態、緊急事態というのは、私はスピードとの勝負だと思います。いかに事態を把握して、いかに迅速に対処するか、それがあって初めて被害を最小に食いとめられるというふうに考えるのであります。スピードの勝負であるというふうに考えるわけであります。
 そして、いわゆるこの有事というのは、先ほど申し上げましたとおり、国家の非常事態、緊急事態でありますけれども、この政府案では、武力攻撃事態の場合、いわゆる対処基本方針をつくって、閣議決定を経て、武力攻撃事態対策本部を設置して、そしてその後また国会に承認をとってと。
 例えばミサイルが飛んでくるような事態が仮に起こったときに、こうした手続の間に、すぐに対応できないのではないか。ミサイルが落ちてからどうするのか考えるのが対策本部になっちゃうんじゃないんでしょうか、これでは。実態に合わずに、対策本部を立ち上げるころに非常事態はもう最終局面に入ってしまうのではないかというふうに懸念されるのでありますけれども、こんなことでは到底国民の生命財産を守ることができないと思うのであります。
 そこで、お伺いをいたしますけれども、今申し上げたような政府案で、国家の危機に迅速に対応することができると本気で考えていらっしゃるのか、その理由も含めまして、わかりやすく説明いただきたいと思います。
福田国務大臣 迅速に対応できると本気に考えております。
 武力攻撃事態への対処に際しては、国として総合的な意思決定と各種の措置の実施を的確かつ迅速に行うことが重要でございます。このため、今回提出しました法案におきましては、安全保障会議の機能を強化しました。そしてまた、対処基本方針の迅速な策定を図るとともに、対策本部長である内閣総理大臣に総合調整権を付与するということなどによりまして、対処措置の的確かつ迅速な実施を図るということができることになっております。
樋高委員 次に、情報収集について申し上げたいと思います。
 これは防衛庁長官にお伺いしたいと思うのでありますが、有事の際の最も重要なファクターというのは、私は、情報であるというふうに思います。情報の収集、分析の体制の確立抜きにしては、仮に幾ら立派な有事法制が整えられたとしても、判断を間違えてしまったり、また逆に被害を大きくしてしまうこともあり得るのではないかというふうに思うのであります。
 防衛庁長官に伺いますけれども、本法律案の基本理念の中には、武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならないことが定められている、云々と書いてありますけれども、これは当たり前のことでありまして、そのためにはやはり適切な情報収集、分析が必要不可欠である。
 しかし、政府の情報収集に関する法的根拠というのを調べましたところ、自衛隊については防衛庁設置法の所掌事務に関する規定によってしまっているというだけでありまして、極めて希薄なものであるというふうに思われるのであります。
 政府は、どのように積極的な情報収集・分析体制を確立していくのか、そして有事に必要な情報収集に関する法制についてどのようにお考えでありますでしょうか、お伺いします。
中谷国務大臣 防衛庁に限っての情報収集の体制でございますけれども、常に我が国周辺地域におきましての警戒監視活動等を通じまして必要な情報を収集いたしておりますし、在外の大使館やまた駐在武官等、外務省を通じましてその情報をいただいております。
 また、総理官邸には情報集約センターがございまして、内閣情報調査室その他の関係省庁との情報交換や、また書類、資料等の収集、整理、それぞれの外国の商業の衛星画像、こういうものによるデータを解析いたしておりますし、電波情報並びに外国の国防機関等との情報交換等を行いまして、非常に幅広い面で情報を収集いたしております。
 防衛庁の中には情報本部というものがございまして、入手した情報を分析し、また活用できるように体制づくりに努めているのが組織の状況でございます。
樋高委員 今の中谷国務大臣の答弁を踏まえた上で官房長官にお伺いしますけれども、有事の際の情報というのは、黙っていても入ってくるものではない。むしろ、とりにいかなくちゃいけない。しかもそれは、その情報に基づいて戦略とか対処方法を分析できるだけのインテリジェンスでなくてはいけないというふうに思うのであります。
 また、先ほど来申し上げましたとおり、私、そもそも親米の立場であり、日米安保同盟堅持、向上を目指す立場でありますが、やはり日本独自に情報を収集することが欠かせない。米国だけの情報で判断をする、そこまで頼られてしまう米軍の立場に立ってみても、そこまで頼られてしまってもかえってアメリカにとって重荷になってしまう。その情報によって国家存亡の判断をすることも想定し得る、可能性としてないわけではないということであります。
 官房長官に伺いますけれども、やはり情報の分野でも、先ほども申し上げましたけれども、自立をして、もしくは自立しようという努力の上に立ってチェック・アンド・バランスを行う、これが有事法制にとって不可欠であるというふうに考えますけれども、いかがお考えになりますか。
福田国務大臣 最後におっしゃった、有事法制にとって情報は欠かせない、これはまさにそのとおりだと思います。そのために、この有事法制とともにということでなくて、もう既にそのような体制を整えるべくいろいろな工夫をし、また努力もしてきたところでありますけれども、今後ともその方向でさらにそれを改善すべく努力をしてまいりたいと思います。
 一つ例を挙げますれば、我が国も十五年の冬には、ということは一年後ですかね、一年以内ですかね、情報衛星を独自に打ち上げる、こういう今準備もしておるところでございますので、そのようなこと、手段によって我が国独自の情報を入手するという道も開きつつあるところであります。
樋高委員 しっかり取り組んでいただきたいと強く要望いたします。
 次に、国民の権利の制限についてお伺いをいたします。
 今回の有事法制の中で、私権を制限する根拠はどこにあるとお考えか、また、どこまで制限されるのか、具体的に官房長官にお伺いいたしたいと思います。
福田国務大臣 この法案では、基本理念として、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」と明記しております。この基本理念は、日本国憲法における基本的人権についての考え方を規定したものでございます。
 また、こうした権利の制限は、国及び国民の安全を保つという高度の公共の福祉のため、合理的な範囲と判断される限りにおいては、「国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」という憲法第十三条などの趣旨に沿ったものと理解をされております。
 さらに、私権の制限を伴う対処措置につきましては、個別の法制整備におきまして、この今申しました基本理念にのっとり、制限される権利の内容、性質、制限の程度などと、権利を制限することによって達成しようとする公益の内容、程度、緊急性などを総合的に勘案してその必要性を検討するということを考えております。したがって、制限される権利やその内容については、武力攻撃事態対処法案の枠組みのもと、今後整備する法制において個別具体的に規定することとなっております。
樋高委員 官房長官、その具体的な中身を伺いたいんです、要するに、どこまで制限をされるかということを。今、不安なんです。やはりこれをはっきりさせないと理解は得られないんですよ。
 ところで、この公共の福祉という言葉、ありました。きのう、自由党の藤井幹事長、議論ありましたけれども、私、この中で総理は失言をしたというふうに思うのであります。
 公共の福祉という言葉、いわゆる私権の制限に関して藤井幹事長からのお尋ねに対して、言葉というのは幅があっていいじゃないかと、開き直った話でありました。言葉というのは、物事をある意味で限定するためにあるわけでありますけれども、いわゆるこういう抽象的な言い回しもあってもいいじゃないかと。私権の制限についてお尋ねをしているにもかかわらず、幅があってもいいのではないかというのは、私は失言そのものではないかと。
 憲法とか法律に対するいわゆるリーガルマインド、法を治める立場なんでありますから、そういう認識が余りにもちょっといいかげんなんではないでしょうか。いわゆる民主主義の根幹を理解しているというふうには到底思えないというふうに思うのであります。総理みずからそういうことをおっしゃってしまうから、国民も不安を感ずるのであります。
 官房長官、きのうの総理の発言、取り消すべきだと思いますけれども、いかがお考えになりますか。
福田国務大臣 この法案では、基本理念として、今申し上げましたとおりでございますけれども、この制限は武力攻撃事態に対処するために必要最小限のものである、かつ、公正かつ適正な手続のもとに行われるということでございます。
 私権の制限を伴う対処措置につきましては、個別の法制整備において、この基本理念にのっとって、制限される権利の内容、性質、制限の程度等、権利を制限することによって達成しようとする公益の内容、程度、緊急性、これも今申しておりますけれども、総合的に勘案をしてその必要性を検討すべきであり、私権の制限のあり方について一概に述べるということは、これは困難というか難しいんですね、具体的に述べることは。
 公共の福祉にかかわる総理の答弁は、このような考え方について述べたものであると理解いたしております。
樋高委員 具体的に述べることは困難では、国民の理解は私は得られないと思うんです。本当にこれが幅広く国民の皆様方の理解を得て、信頼を得て、じゃ、政府に任せた、自分たちの生命、財産、自由、人権、文化、任せたというためには、どこまで制限されて、どういうケースではどうなのだということをきちんと提示しないと、これ以上前に進むことはできないと思うんですよね。
 やはり公共の福祉という憲法の中からだけ読み取るというのは無理がある。やはり一定の、もちろん、私権の制限をするというのは、私は、ある意味ではやむを得ない部分も当然あると思います。そこの部分は理解しているつもりなんです。しかしながら、それが、事前にどこまで制限するんだよということがはっきりとイメージとして頭の中に浮かばない。抽象的なことばかりずっと並んだって、やはりわからないんですよ。今お話ずっと伺いましたけれども、さっぱり、聞けば聞くほどわからなくなってきてしまうのであります。
 だからこそ、やはりそこには、基本法なり新しくきちっと規定をして明確にするということが私は必要であると思いますけれども、官房長官、いかがお考えになりますか。
福田国務大臣 この、より具体的なことにつきましては、基本理念にのっとって、制限される権利の内容、性質、制限の程度などと、権利を制限することによって達成しようとする公益の内容、程度、緊急性などを総合的に勘案してその必要性を検討するということで、より具体的にするためには、この検討をしなければいけないということになるわけでありまして、今直ちに具体的に申し上げるということは難しい。
 ただ、この問題については、なかなか具体的に申し上げることは難しいんじゃないかと思いますよ。今決めましても、この法制を実際に活用するというような事態が十年後かもしれぬ、二十年後かもしれぬ。そういうときの日本の社会の状況はどうなっているか。いろいろなことを考えながら対応しなければいけないということも含めまして、このことについての規定は非常に難しい規定であるというふうに考えております。
樋高委員 官房長官、十年後か二十年後かと言っていますけれども、法律案、これ、もし成立したら、「公布の日から施行」となっているんですね。ですから、もしかしたら、もうことしじゅうに適用があるかもしれないんですよ。ワールドカップサッカーもありますよ。
 総合的に勘案しなんて、意味わかりますか、皆さん。要するに、それだったらば、じゃ、少しでも想定し得るケースをきちっと具体的に提示するのが国会の役割であると私は思うのであります。そもそも、有事の際に、やはり私権の制限に関する歯どめの考え方をきちっと提示するということがなくては、繰り返しになりますけれども、国民の理解は得られない。
 必要最小限度という言葉がありますけれども、これも極めてまた抽象的であります。どの程度が必要最小限度なのか、これはもっと、ケースによって幾らでも解釈できちゃうわけでありまして、このいわゆる私権の制限について、どのような場合にどこまで制限するのかということをぜひとも明確にしていただきたい。そうしないと、職権の乱用、今いらっしゃる方々は絶対そういうことはないとは思いますけれども、いろいろな方々がいらっしゃるわけですから、また、国民を無用に混乱に陥れてしまうということもあり得るわけでありますから、人間のやることですから、しっかりと考えていただきたいと思います。
 そして、もう時間がなくなってまいりましたので、ちょっと問題点、さまざまちょっと申し上げたいのでありますが。
 私、質問通告しておりませんけれども、この法律案、よく、きのうの夜も、夜中もちょっと眺めてみたんですけれども、例えば総理大臣の立場というのは、これはさまざまな役割を担うんですね、この法律案だと。いわゆる対策本部の本部長、行政府の長、閣議の長、安全保障会議の議長、自衛隊の最高指揮官、そしてその身分、役割を一人で演ずる。それが相互にどのように機能するのかというところは全然説明されていないというところを私思ったのであります。
 また、別の視点なんですけれども、この実態として、いわゆる自衛隊は国防に専念をする、そして国民の生命財産の保護は、結局、県知事さん、都道府県知事さんにゆだねているということが私は実態として読み取れるわけでありますけれども、いわゆる国家が国家防衛、知事が市民防衛を担うという制度とも読み取れるのでありますが、そうしたときに、やはり知事さんにもそれなりの権限を与えなくては守り切れないのではないかという問題点も私は御指摘を申し上げたいと思います。
 そして、きのう、総理の質疑の中でおっしゃっておりましたけれども、総理は不備があったら指摘してくれということを堂々とおっしゃいましたけれども、まことに失礼な話だと思います。そもそも、気持ちとしておっしゃったのかもしれませんけれども、二十五年間温めてきて、国会に上程をして、その法律案は国民の生命と財産を守るという法律案なわけですから、不備なんかないんだと総理は言い切るのが私は当たり前の姿だというふうに思うのであります。
 また、本当に話は尽きないのでありますけれども、湾岸戦争のときには派兵できませんでした。十年たって、解釈を積み上げ、積み上げ、積み上げてきた。そして、昨年の秋、派遣できたわけでありますけれども、解釈の積み上げによって、なぜこうも百八十度変わり得るのか。国民から見て、全然意味がわからない。十年前にできなかったことがなぜできたのかということ、疑問であります。
 また、安全保障法制に関しましては、何かあるたびに法律をつくったり変えたりしてきた経過があります。周辺事態法、またそのオーバーラップする部分はどこなのかということ、これも一つの議論だと思いますけれども、またテロ特措法、そして今回の武力攻撃事態法という流れでありますけれども、今回の法律案で、そういうふうに毎回がらがら変えるということはなくなるんでしょうか。何か起こるたびに後手後手で、場当たり的に法律をつくる、不備があるから、また、こんなことが起こったら改正をする、そういうことの積み上げでいいのかというふうに考えるわけであります。
 最後に、防衛庁長官に伺いますけれども、先ほど公共の福祉ということで、国民の権利の制限という視点からもちょっと考えてみたいのでありますけれども、いわゆる民間の放送局、また民間の新聞社、きのうの答弁、私よくちょっと意味がわからなかったんですが、もっとはっきりおっしゃっていただきたいんですが、いわゆる民間の放送局、民間の新聞社にも、例えば緊急の警報ですとか緊急の情報をお伝えせざるを得ないという状況になりましたときには、これは国から半強制的にお願いせざるを得ない状況になってしまうのではないか、一〇〇%あり得ないとは言い切れないんじゃないかというふうに思いますけれども、防衛庁長官、もう一回はっきりとお願いします。
福田国務大臣 放送のことですね。放送事業者につきましては、警報とか緊急情報の伝達のために極めて有効でございまして、本法案の指定公共機関に指定される可能性がございます。現時点では、法案にも例示されております日本放送協会を主として考えております。
 ということでございますけれども、なお申し上げれば、報道機関を指定公共機関に指定する場合においては、報道の規制などの言論の自由を制限することは全く考えておりません。
樋高委員 よくちょっとわからなかったんですが、いわゆる民間の放送局も、この有事法制、関係あるということのようでありますが、国民の生命財産を守るということでは有事法制の整備は必要でありますけれども、政府案のこの内容では、不備が多い上、根本から発想が間違っている、一歩前進論などとんでもない、何歩も後退である、有事法制の名に全く値しないということを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
瓦委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 有事関連三法、とりわけその中心である武力攻撃事態法案についてお聞きをいたします。法案の提出者であります、所管大臣であります官房長官にお聞きをいたします。
 まず、法案第二条の定義であります。
 武力攻撃という言葉の定義であります。二条一号に書かれております。「我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。」と書かれているだけであります。恐らく我が国国法上初めての武力攻撃の定義だと思うんです。
 そこで、端的にお聞きします。ここで言っている「我が国」というのは何でしょうか。
福田国務大臣 「我が国」というのは、日本国のことであります。
木島委員 我が国の領域内にある国民、そして領域――領土、領空、領海、これが「我が国」の概念の一つであることは、それは私もわかるんです。
 お聞きしたいのは、我が国の領域の外にある我が国の軍用機や軍艦、船舶や航空機、これらもこの法案第二条第一号の武力攻撃の概念である「我が国」に含むんでしょうか。そういう意味であります。
福田国務大臣 我が国の領域内において行われた場合に限らず、例えば、公海上の我が国の船舶等に対する攻撃が、状況によって、我が国に対する組織的、計画的な武力の行使に当たるという場合も、これも排除されないと考えております。
木島委員 お認めになりました。これは重大な問題を含む問題だと思うんです。
 今、公海上にある艦船と述べましたが、他国の領域内にある我が国の艦船、航空機、軍民両方ありますが、とりわけ軍用機や軍艦、これもこの概念の「我が国」の中には入るんですか。
福田国務大臣 それは入りません、基本的には。
 我が国の領海外、公海でないところですね、ほかの国という意味ですね。我が国でない国の領域ということでしょう。基本的には入りません。
木島委員 定義というのは非常に大事なんです。この法律によって、我が国の武装部隊である軍がどう動くか、どういう場合に動くか、あるいは、その結果、我が国の国民の財産等の私権がどう制限されるか、それが定義によって決まるから、非常に大事だということで、厳密にお聞きしたいんです。
 公海上にある軍艦は入るが、相手国領域内にある軍艦は入らない。航空機も同じだ。それは、どうしてそういう解釈になるんですか。この法律からどうしてそういう解釈が出てくるんですか。
中谷国務大臣 相手国の、領域国の領土、領海におきましては、相手国の管轄下にあるからでございます。
木島委員 それじゃ、次に聞きます。
 外国の領土内にある我が国の在外公館、大使館、領事館、公使館、こういうものは、この法律による「我が国」の中には含まれるんでしょうか。官房長官。
福田国務大臣 他国にある大使館等公館が攻撃をされたというとき、それは一般的には該当しないと考えております。
木島委員 そうすると、例外的には該当するときもある、要するに例外的には在外公館に対する外部からの武力攻撃も本法の対象になるときもあるという答弁ですが、じゃ、例外というのはどういうときなんですか。
福田国務大臣 それは、諸般の状況から考えて我が国に対する武力攻撃というように認定されるような状況においては、それは該当するのではないかということでありますけれども、通常においては、外国にある我が国公館については、その国に治安の維持とかそういうことは依存しているわけでございますから、通常においては起こらないのではないかと思っております。
木島委員 諸般の状況によっては在外公館もこの法律に言う「我が国」に含む、こんな答弁では、この法律、とても審議できないですよ。要するに、在外公館に対する外部からの武力攻撃があったときに、我が軍が動けるのか動けないのかということにかかわってくるんですよ。それで答弁を求めているんですよ。そんな、諸般の状況なんというあいまいな概念でこの法律は解釈できないですよ。ちゃんと答弁してください。大事な問題です。
福田国務大臣 過去における答弁のことで申し上げますと、外国において日本人の生命、身体、財産または日本政府の機関が危殆に瀕しているという場合に、特に第一要件である我が国に対する急迫不正の侵害があることという条件を満たすのであろうかということを考えますと、これも断定的な答えをすることはできない場合ではあろうかと思いますけれども、一般的には直ちにこれらの要件に該当するとは考えられない、こういう答弁をしているわけでございます。
木島委員 そんなあいまいなことで、この法律が適用される場合とされない場合が区分けされるなんというのは、私は法律として全くまともなものじゃないと言わざるを得ないと思います。
 では、もっと具体的に聞きましょう。
 我が国領域外にある軍用機、軍艦に対する、それが公海であればこの法律が適用されると答弁されました。九二年にPKO協力法が成立をいたしました。九九年に周辺事態法が成立をいたしました。昨年にはテロ特措法が成立をいたしました。自衛隊が我が国領域外に出動して活動する法制が三つでき上がっているわけであります。
 具体的にお聞きしましょう。
 このテロ特措法、周辺事態法、またPKO協力法で、公海上で、また相手の政府の同意を得て相手国の領域内で活動する我が国の自衛隊、これに対して外部から武力攻撃があったときには、そうするとどうなるんでしょうか。公海上で活動する自衛隊に対する攻撃は、この法律の適用がある、相手国領域内で活動する自衛隊は適用がされない、そう区分けしていいんですか。
福田国務大臣 それが、どういう状況でそういう事態が起こるかということが一つ問題だと思うのでありますけれども、そもそも、我が国の例えばPKOの部隊が戦闘地域とかそういうところに行くことはないんですね。ですから、今おっしゃられるようなそういうケースとは、これはちょっと考えにくいケースだと思っております。
 また、先ほどの在外公館のことについていえば、この法律でもって決めているのは、我が国が武力攻撃を受ける、そういう事態で考えられた対応措置でございまして、その我が国がほかの国に出かけていって何かするということも、これも考えにくい事態であるというふうに考えております。
木島委員 私は、法律の解釈を聞いているんです。この法律が、動けるのか動けないのかを聞いているんです。そういう想定できるかできないかは、政治判断の分野です。そんなことを聞いているんじゃないです。法律の解釈を聞いているんです。だから、定義が一番大事だ。だから、この定義によってどうなるのかということを聞いているんです。
 現に、テロ特措法が成立をして、インド洋、アラビア海に我が自衛隊は出ていっているじゃないですか。相手国の同意があれば沿岸にも入っているじゃないですか。その自衛隊の艦船に外部からの不法な組織的な攻撃、計画的な攻撃、これがあったときに、この法律は動くのかと聞いているんですよ。武力攻撃の概念に入るのか否かと聞いているんです。想定されるかどうかの答弁ではだめです。官房長官。
中谷国務大臣 公海上におきまして仮に我が国の船舶等に武力攻撃があった際には、それが自衛権に該当するかどうか、組織的、計画的なものであるかどうか、いわゆる自衛権発動の三要件に合うかどうかにつきまして、自衛権を発揮するわけでございます。
木島委員 領域内にあったのは、じゃ排除されるんですね。
 少なくとも、相手国領域内、領空、領海、領土、あるでしょう、相手国の。その相手国の領域内で活動する我が国の軍隊、それはPKOのときもあるでしょう、周辺事態もあるでしょう、テロ特措法のときもあるでしょう。それはこの法律の適用から外れるんだとはっきり答弁できるんですか。それを聞いているんです。非常に大事なんです。根幹にかかわる問題だと思いますよ。
中谷国務大臣 相手国の領域内におきましては、第一義的に領域国の責任でございますが、そういう不測の事態等につきましては、正当防衛、緊急避難といたしまして、九十五条の武器防護を適用するというふうにテロ対策特措法でも定めた、またPKO法でも定めているということでございます。
木島委員 それは承知していますよ。そんなことを聞いているんじゃないんですよ。この法律第二条の武力攻撃の概念に入るのかと聞いているんです。今のは、入らないと明言するということですか。入らないから、正当防衛とか緊急避難とかそういう武器使用なんという概念で、攻撃に対しては立ち向かう、そういう答弁ですか。そう聞いていいんですか。――分けて聞いているんです。定義ですよ、定義。定義を聞いているんです。
 これ、定義を聞くということを通告しているので、時間をとめてください。答弁できないなら。
福田国務大臣 それは、相手国の領域の中にある、それが組織的、計画的な攻撃を受けるということを認定できるかどうか、こういう問題だと思います。通常はそういうことは、相手国領域の中で起こり得る、その場合には、相手国がそれを守るということが通常では起こるのではないかと思っております。
木島委員 ですから、通常、相手国がまず第一義的に守る義務があるんだとか、そういう話を聞いているんじゃないんですよ。そういう前提抜きにして、そういう相手国、他国領域内にあって、三法、PKO協力法や周辺事態法やテロ特措法で動いている我が国の軍隊に対する組織的、計画的な武力攻撃がなされたときに、この定義にのるのかと聞いているんです。はっきり答えてくださいよ。これは本当に大事なところなんですよ。
福田国務大臣 繰り返しになりますけれども、我が国に対する計画的、組織的な攻撃だというように認定されるかどうかというところが問題だと思います。
木島委員 そうすると、認定されるような状況があればこの法律が動く、適用になる、そう聞いていいんですね。
福田国務大臣 理屈で言えばそういうことになります。
木島委員 外務大臣に一つだけ聞いておきます。
 本法案第十八条によりますと、政府は、国連憲章五十一条及び日米安保条約五条二項の規定に従って、武力攻撃の排除に当たって我が国が講じた措置について、直ちに国連安全保障理事会に報告しなければならないという条文があります。
 これは恐らく、我が国の講じた措置が、政府は、国連憲章五十一条が認める自衛権を根拠にしているということを示すものだからこういう規定を入れたんだと思われるんですが、それでは、国連憲章第五十一条の武力攻撃という言葉があります。国連憲章第五十一条の武力攻撃と、今私が聞いております本法案第二条第一号の武力攻撃という概念は、同じ概念だと聞いてよろしいんでしょうか。
川口国務大臣 基本的には同じ概念だと存じます。
木島委員 実は、国連憲章五十一条の武力攻撃という定義がいかなるものであるかについては、ありません。非常に難しい論議が、国連安保理、国連総会を中心にずっとこの間論じられてきたわけであります。国連憲章第五十一条の、集団的安全保障の例外としての個別的自衛権を発動できる要件として、国連加盟国に対して武力攻撃がなされたときという概念ですね。だから、武力攻撃の概念が何かというのは決定的に大事だということで論議はされてきたんですが、定義ができていない。
 そして、実は一九七四年十二月十四日に国連総会は、武力攻撃の定義ではありませんが、安全保障理事会が憲章第三十九条に基づいて侵略行為の存在を認定するに際してのガイドラインとしての侵略の定義を決議し、採択しているんですね。七つ挙げています。
 もう時間の関係上七つ全部挙げませんが、例えば第一は、「一国の軍隊による他国の領土に対する侵入または攻撃、あるいは、たとえ一時的であれそのような侵入、攻撃の結果生じた軍事的占領、または武力の行使による他国の領土あるいはその一部の併合。」こういう概念、七つ挙がっています。その概念の四番目に、「他国の陸海空軍兵力あるいは、船舶、航空機に対する攻撃。」とあるんですね。
 ですから、今、官房長官、政府も、事実上法律解釈としてはお認めになったと私は承りましたが、外務大臣が、国連憲章五十一条の武力攻撃とこの法律第二条第一号の武力攻撃が同じ概念だということになれば、その最大の、直接国連憲章五十一条の定義ではありませんが、最もそれに影響を与えているこの国連決議によりますと、他国領域内にある外国の軍隊、軍用機に対して、艦船に対して武力攻撃がされたときには該当するんだということになっているんです。よろしいですか、それで。いいですか、それで。この法律の解釈としてもそれでいいか。官房長官でも外務大臣でも。
福田国務大臣 国連憲章上、侵略行為の存在を決定する権限が安保理にあることを前提としつつ、このような行為も含めて侵略行為を列挙したものでありますけれども、本決議は、あくまでも安保理による侵略行為の認定のための指針としていかなる行為が侵略行為に当たり得るかを述べたものであって、いかなる行為が武力の行使に該当するか否かを論じたものではございません。
木島委員 定義を聞いているんですよ。一番大事なのは定義なんですよ。
 答弁大体お認めになりましたから、では続いて、第二条第二号についてお聞きをいたします。
 本法律の第二条第二号は、武力攻撃事態の定義です。第二号によりますと、武力攻撃事態には三つある。今私がさんざん聞いた第一号の武力攻撃、武力攻撃が発生した場合、二つ目には武力攻撃のおそれのある場合、これがわざわざ法律では括弧して書き込まれています。そしてもう一つが武力攻撃が予測されるに至った事態、三つあることは、これは法律を読めばすぐわかります。
 ところが、非常にわからないのは、この第二条二号もそうですが、その後の条文、ずっと私読んでみましたら、「外部からの武力攻撃」という、生の武力攻撃という概念で使っているのか、この二条二号で言う「武力攻撃のおそれのある場合を含む。」という概念でも、武力攻撃という言葉をこの法律二条二号は使っていますね、二つの種類に使っているんですが、その後の条文、ずっと私読んでいるんですが、物すごくたくさん武力攻撃という言葉が出てきます。
 一つだけ挙げましょう。二条六号の「対処措置」のイの(1)「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」、措置の中心ですよ。それに「武力攻撃を排除するために」という言葉を使っているわけです。ですから、この武力攻撃という概念に、二条一号の生の「外部からの武力攻撃」だけをこの「武力攻撃を排除」の概念を使っているのか、おそれまで含まれた概念の武力攻撃という意味でこの二条六号イの(1)の「武力攻撃を排除」という言葉を使っているのか、決定的に意味が違ってくるんです。それはわからないんです、これは。どうなんですか。
福田国務大臣 この法案では、第二条第二号の武力攻撃事態の定義の冒頭で規定しております武力攻撃、これには、おそれのある場合が含まれております。その他の箇所で規定している武力攻撃には、おそれのある場合は含まれておりません。すなわち、基本的に本法案では、武力攻撃という用語は、武力攻撃が発生した事態など、現実に武力攻撃が発生した場合に使用しております。
 なお、第二条第二号等の「武力攻撃が予測されるに至った事態」の武力攻撃に、武力攻撃のおそれのある場合を含めていないのは、武力攻撃のおそれを予測するとは武力攻撃を予測することと同じ意味である、こういうことでございます。
木島委員 そうすると、この法律の中で、武力攻撃という概念の中に、武力攻撃のおそれのある場合を含むという意味で武力攻撃という言葉を使っているのは、第二条二号の武力攻撃事態、それは要するに、武力攻撃事態という概念のときだけだと切っていいですね。
 そうすると、対処措置についてお聞きをいたします。
 法案の第二条の六号に「対処措置」とあります。「第九条第一項の対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が法律の規定に基づいて実施する次に掲げる措置をいう。」今度は二つ、イとロがありまして、イが「武力攻撃事態を終結させるために実施する次に掲げる措置」として、これは三つ述べております。
 (1)が、今私が指摘をした、「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」です。
 お聞きをいたしますが、この日本語ですが、「武力攻撃を排除するために必要な」という形容句は、「自衛隊が実施する武力の行使」という言葉だけにかかる言葉なんでしょうか、それとも、その下の「部隊等の展開」「その他の行動」、これらの措置にも「武力攻撃を排除するために必要な」という形容句はかかっているんでしょうか。意味が違ってくる。
福田国務大臣 これは全部にかかります。「自衛隊が実施する武力の行使」と「部隊等の展開その他の行動」、これにかかっております。
木島委員 六号イの(1)の全部にかかるという答弁でした。全部というのは、「武力の行使」と「部隊等の展開」と「その他の行動」です。要するに、「武力攻撃を排除するために必要な」という形容句は、おそれは含まないという答弁ですね。
 そうすると、この対処措置のイの(1)は、武力攻撃事態には三つある、武力攻撃が発生した場合、武力攻撃のおそれが発生した場合、武力攻撃の予測がされるに至った事態、三つあるが、そのうちの武力攻撃のおそれの場合も、予測の場合も、この対処措置のイの(1)は排除される、こう聞いてよろしいんですか。――ちょっととめてくださいよ。こんな基本的なことですよ。意味が全然違ってくるんですよ。委員長、ちょっと、時間もったいないからとめてください。もう法律の基本ですもの。
福田国務大臣 これは、武力攻撃のおそれのあるときも含みます。ということは、武力の行使の準備段階も入っている、そういう意味でございます。
木島委員 そうすると、さっきの答弁は、六号イの(1)の「武力攻撃を排除するために」という「武力攻撃を排除」にはおそれは入っていないんだ、こうおっしゃったじゃないですか。それとどう整合性のある答弁できるんですか。(発言する者あり)
 ちょっと時計をとめてください。だって、こんなの基礎的な質問だもの。非常に大事なことです。ちょっとこれ、とめないとだめですよ。こんなのは、私は質問すると通告しているんだから。こんなの基本じゃないですか。こんな基本的なところが答弁できなかったら、こんな大事な法律で審議できないよ。ちょっととめてくださいよ。こんなの基本的なことだもの。
瓦委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
瓦委員長 速記を起こしてください。
 木島日出夫君。
木島委員 実は、昨日の質疑で、我が党の志位和夫委員もこの件を質問したんです。そうしたら、明確に答弁では、この六号イの(1)の「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、」のこの「武力攻撃を排除するために」という場合は、武力攻撃のおそれの場合も、武力攻撃の予測の場合も入らないという答弁を、総理以下、しているんですよ。先ほどもそういう答弁だったんです。しかし、それで私が聞いたら、「武力の行使」「部隊等の展開」「その他の行動」、全部にここの修飾語がかかるという答弁をして、それでさらに聞いたら、答えられなくなってしまったわけでしょう。
 おそれが入ると言ったでしょう。だから、答弁を撤回して答弁を変えるんなら――これは大事なことで、この法律の中で、武力攻撃という生の言葉、いろいろな形で使っています。武力攻撃の発生という言葉とか、武力攻撃を回避するとか、いろいろな概念を、狭い意味の武力攻撃なのか、おそれを含む概念なのか、使い分けしないで、両方使っているんですよ。だから、非常に大事なことなんです。それによって、全然この法律は変わってきてしまうんです。どういう措置ができるのか、要するに、自衛隊がどういう場合に動けるのか動けないのか、決定的に変わってきてしまうので、キー概念なんですよ。根本概念について、当然答弁できなければいかぬはずの質問を私はしているにもかかわらず、私は、こんな問題まで答弁がすぐにできないということは、この法律がいかに欠陥かということを示しているのじゃないかと思います。
中谷国務大臣 昨日の審議におきまして説明した内容でございますけれども、この法律の組み立てが、最初総則で、この二条につきましては定義を言っております。この定義の中で、イにつきましては、対処措置として実施する措置を列挙したものであって、列挙した各措置は、それぞれの権限法に従って実施されるわけでございます。
 この列挙した武力の行使というものを権限において実施するのは、自衛隊法の八十八条に武力行使の規定がございまして、その武力行使の規定に基づいて行うわけでございますし、また、武力の行使というものは、武力の攻撃が行った後でないと発動しない。これは、従来から何度も御答弁もしておりますし、現実に、自衛隊の出動につきましても、七十六条に書かれておりますけれども、その出動した後でなければ武力の行使はできないわけでございます。
 したがいまして、こちらに書かれているのは、対処措置として実施する措置を列挙したことでありまして、その権限につきましては自衛隊法に明記されておりまして、武力攻撃をする以前に武力の行使をするということはあり得ないわけでございます。
木島委員 そんなことは私、きのう聞いているんですよ、さんざん答弁は。自衛隊法八十八条があるのも知っておる。そして、自衛隊法八十八条では武力行使の三要件を書いているんだということも、きのう答弁を私は聞いていますよ。
 そんなことを前提にして、ただきのう、武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力行使の、その武力攻撃の排除の中にはおそれは入らないという答弁をしたから、政府の方は。きょう、今の私の質問を聞いたら、その修飾句は「武力の行使」だけじゃなくて、「部隊等の展開」や「その他の行動」まで全部かかっているんだと、その形容句が。というんだったら、おそれの場合や予測の場合は、全然この対処措置としてのイの(1)、自衛隊の動きですよ、これは。これができないんですねという質問をしたら、おかしくなったわけでしょう。だから、まともな答弁になっていないんですよ。
瓦委員長 官房長官の方で整理をちょっとして、それではやってください。
福田国務大臣 先ほどの質問に対してお答えいたしますけれども、六のイの(1)ですね。この武力攻勢におそれは含まれておりません、この武力攻撃には。「武力攻撃を排除するために必要な」この最後の「部隊等の展開その他の行動」、これにはおそれの事態や予測の事態におけるいわゆる準備活動は含まれております。
 なお、武力の行使というものは、あくまでも自衛権行使の三要件を満たすときのみに可能であるということで、おそれの事態や予測の事態で行うことはできないということであります。
木島委員 だから、そうなると、さっきの最初の官房長官の答弁はおかしくなってくるんですよ。「武力攻撃を排除するために必要な」というこの修飾句が、部隊の展開やその他の行動までひっかかっているんだなんという答弁が出たんでしょう。そうしたら、おそれの場合はこの条文は動かないんじゃないかと私は質問したんでしょう。それに対してまだ明確な答弁になっていないですよ。
 時間の関係がありますから、次に進みます。
 もとへ戻ります。武力攻撃の概念に戻ります。「我が国に対する外部からの武力攻撃」という概念ですが、これは攻撃する主体は何ですか。国だけですか。それとも、大規模なテロ集団その他、入るんですか。
福田国務大臣 国または国に準ずるものによる組織的、計画的な武力、国に準ずるものという規定になっております。
木島委員 準ずるものだけではわかりません。どんなものが入るんですか。これは非常に大事な部分ですよ。テロ攻撃に対してこの法律が動くのか動かないのかの分かれ道になるから、準ずるものなんという答弁では私は納得できません。
福田国務大臣 これは、具体的に申し上げるべきではないと思いますけれども、国と同等の、もしくは先ほど準ずるというふうに申しましたけれども、準ずる、そういうような組織体というように考えるべきだと思います。
木島委員 これは、この法律というのは、日本の実力部隊である自衛隊が、どういう場合に動けるのか動けないのか、どういう動きができるのか、また、そのときに国民の権利、人権がどう制限されるのかがかかっている法律なんですよ。ですから、どういう場合にこの法律が動き出すのか動けないのかは、まさに日本の国にとっても国民にとっても決定的なんですよ。
 ですから、私は、概念は政府がかわったら変わってしまうなんという答弁では、とてもじゃないけれども、この法律を認めるわけにはいかぬでしょう。だれが考えても解釈が分かれないような、まず明確な解釈が示されて、それで賛成だ反対だができるんじゃないですか。今の答弁では、この武力攻撃、私は一つしか聞いていないですよ。定義、第二条の一号しか聞いていないですよ。その一号だってこんな程度でしょう。納得できないですね。どの程度の規模の攻撃は、この法律は動くんでしょうか。
福田国務大臣 国並びに国に準ずるもの、こういうように申し上げるしかありません。
木島委員 そんなあいまいな定義づけでこの法律がつくられたら、政府の勝手な恣意的な解釈によってどうにでもこの法律は動き出すということを指摘して、断じて認められないということを主張して終わります。
瓦委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党・市民連合の今川正美です。
 このたびの有事関連三法案に関しまして、これはいろいろな問題点がございますが、具体的な各論に入ります前に、何よりも一番大切なのは、いわゆるシビリアンコントロール、これが十分に機能され、発揮し得るのかどうかということが非常に大きな問題だろうと思うんです。
 それで、まず最初にお伺いしておきたいんですけれども、問題は、もし日本に何らかの武力攻撃があったときに、自衛隊と米軍が共同してどう対処していくか、こういう組み立てになっているわけでありますが、例えば四年ほど前の防衛庁調達本部における汚職事件、忘れもしません。きょう午前中にも他の委員から、自衛隊の練習機をめぐる問題が厳しく指摘をされておりました。そうしたことが、では、今日きちんと是正をされているのかどうか。あの事件があってから、なおかつ現在に至るまで、言われるところの防衛庁や自衛隊のOBの天下りは改善されたわけでもありません。また私は、安全保障委員会などで事あるたびに、自衛隊の内部で実際に仕事をしている自衛官の人権問題も何度となく質疑を行ってきました。いまだに、いわゆるいじめやしごきの問題は何ら具体的に改善はされておりません。
 さてそこで、現在、インド洋やアラビア海方面に派遣をされている自衛隊の艦船は、護衛艦二隻、補給艦一隻の三隻であるはずであります。そこで、一部新聞報道によりますと、今月の下旬には、いわゆるこの三次隊と交代をするという記事がありまして、さらに八月中には、いわゆる四次隊の派遣が計画をされており、外務省や防衛当局はその際にイージス艦を含める可能性を探るという新聞報道がございます。
 そうしますと、場合によっては、イージス艦を含めて都合五隻がインド洋、アラビア海方面に行動を展開するということが想定をされるわけでありますけれども、これまで都合六隻がいたのを、今のアフガン情勢の進捗状況を見ながら、先ほど申し上げたように三隻に縮小したはずなのに、今のアフガン情勢とのかかわり合いにおいて、再び五隻態勢に持っていく具体的な、合理的な根拠があるのかどうか、これは防衛庁長官にお尋ねをしたいと思います。
中谷国務大臣 現在の基本計画に基づく自衛隊の期間は五月十九日までとされておりまして、二十日以降いかに対応するかということにつきましては、現在部内において検討中でございまして、報道のように、八月ごろにも三隻の艦艇に加えて二隻を派遣するというような方針を固めた事実はございません。
 それで、五月二十日以降いかにするかという検討でございますけれども、検討中の一般論として申し上げますが、今回の協力支援活動として、燃料等の補給活動を円滑に実施するためには、補給艦一隻が寄港地において燃料の調達を行っていたとしても、ほかの一隻が給油ポイントにおいて活動可能状態にあるように、補給艦は二隻派遣することが望ましいと考えております。
 私も、せんだって現地を見ましたけれども、補給艦が一隻では非常に多忙でもありますし、隊員にも長期間の洋上勤務を余儀なくしておりまして、こういったことを考えますと、艦艇の活動態勢としては、最低限補給艦一隻について護衛艦一隻が警戒監視のために同行することが必要でもございますし、また、現地において、米第五艦隊の司令部における米軍等への補給計画の調整、寄港地における部隊補給等に関する調整及び今後の寄港候補地の調査等を実施する必要がありまして、このような場合には、補給艦に随伴する護衛艦以外の護衛艦により調整を行う必要がございます。
 このような観点でまいりますと、派遣艦艇を五隻態勢とすることが望ましいと考えておりますけれども、現在、海上自衛隊が三隻で実施をしている状況につきましては、これは補給艦の整備等のためやむを得ない措置でございまして、私としましては五隻態勢が望ましいと考えておりますが、いずれの態勢をとるかということにつきましては、五月の二十日までに政府として決定をされるものでございます。
今川委員 次に、きょうのこの委員会でも他の委員から質問がございました点についてさらに質問いたしたいと思うんですけれども、朝日新聞の今月六日付の記事であります。いわゆる海上幕僚監部がイージス艦の派遣を工作していたんではないかという記事でありますが、先ほど中谷長官は防衛部長に実際確かめてみたとおっしゃいましたが、この記事によると、香田洋二防衛部長ということでよろしいんですね。
 その香田洋二防衛部長の話として、一部省略しますが、イージス艦は「多くの標的情報を同時処理し、情報図として書き出す能力が抜きんでている。」米側から「問われれば出させてもらいたいと答えている。」というふうにこの新聞の取材に答えているわけですね。
 では、中谷長官、ここは、在日米海軍司令部に問い合わせておられる、特にこの防衛部長に、具体的に米側とどういう話をしたのかということに関して先ほど具体的に触れておられませんが、その点はいかがでしょうか、具体的に話をしてください。
中谷国務大臣 まず、事実関係でございますけれども、その新聞に出た事実関係につきましては、在日米軍司令部にも、また、言われております海幕の防衛部長本人にも確認をいたしまして、報道にあるように、アメリカの方で海上自衛隊のイージス艦やP3Cをインド洋に派遣するようなことを言ってくれというような要請をするような働きかけをしたことは一切ないということでございます。
 そこで、御質問のありました、新聞に当人のコメントが出ていた件でございますが、これは、四月の二十六日にその新聞社から、一般論として、協力支援活動に係るイージス艦の有用性について御指摘の報道に関係なく問われたことに関しまして、部内的に問われればというようなコメントを出したものでございまして、そのような事実に基づいての発言ではございません。
 この話した内容等につきましては、これにつきまして、細部につきましては日米関係の防衛に関することでございますので、この場につきましてはコメントは差し控えさせていただきます。
今川委員 今、中谷長官がいみじくも最後におっしゃったように、このインド洋派遣というのは、これは日米の合同演習ではなくて、アメリカが実際に行っている戦闘作戦行動を後方から支援するということで出かけていっておるわけですね。そうしますと、必ず肝心なところは、防衛秘密の名のもとに、私たちこの国会の場でも、ましてや国民は一切を知る由がないというふうになってくるんじゃないですか。
 関連しまして、これは実は同じ朝日新聞だったんですが、これもテロ対策特別委員会のときに過日質問いたしましたが、昨年の十一月三十日、いわゆる海上自衛隊の制服組のトップが在日米海軍司令部を訪れて、独自の支援五項目をわざわざ英訳をして、それを持っていって、米海軍にそういう支援ができないものかということを持ちかけた。米側の方はやんわりとこれは断っているみたいですね。その事実を、中谷長官、改めてこの場でお認めになりますか。
中谷国務大臣 まず、テロ支援の考え方でございますけれども、これは、米国や米軍に言われてやっていることではございませんで、やはり我が国としてみずからの意思として、このテロの起こるような情勢、脅威について国家として何ができるかという点について、やはり憲法に照らしてできる限りの支援を主体的に行っているものでございまして、アメリカに追随的に実施しているものではなくて、みずからの安全保障の措置として、そういうふうに考えて実施しているわけでございます。
 それから、昨年のことについてのお問い合わせでございますけれども、この点につきましては、報道があったのは事実でございますけれども、そのようなことの事実はなかったということでございます。
今川委員 実は、先ほどこの議場から、産経新聞も見てみろというやじが飛びましたが、産経新聞では一番詳しかったんですね、「アラビア海からの報告」という囲み連載記事が随分載りまして。それも含めまして、中谷長官、それからきょうはここにお見えではありませんが、安倍官房副長官のところに、自宅もしくは大臣室にいわゆる制服組のトップクラスが押しかけて、イージス艦を出させてほしいだとか、あるいは、やはり命令がある以上、派遣されれば武器の使用をもっと緩和してくれとか、いろいろな話をしているということが、各種報道があっています。
 私が質問する趣旨は、例えば今、中谷長官がおっしゃったように、在日米海軍司令部に中谷長官がじかにおいでになって、イージス艦の問題だけじゃなくて、こういう具体的な支援をやりたいんだが、いかがだろうかということでは問題はないと思います。ところが、制服のトップが中谷長官の頭越しにじかにそういうところに足を向ける、あるいは中谷防衛庁長官や安倍官房副長官のところに制服組がそういう形で足を運び、やるということは、暴走と言うと言い過ぎかもしれませんが、シビリアンコントロールの手前、そういうことがあっていいんだろうかということを今私はお聞きしているんです。そういう事実はあったんでしょうか。どうでしょう。
中谷国務大臣 安倍さんの件につきましては、今伺いまして、確認をしてみる必要がございますが、私としては、そのようなことはないというふうには思います。
 しかし、こういった、政策決定を経ていないのにもかかわらず、そのような形で政策決定を促すような観点で行動するとすれば、シビリアンコントロールの上からはもとより、一般行政組織の運営のあり方としても妥当性を欠くものだというふうに言わざるを得ないと考えております。
今川委員 今の点、もう一度確認ですね。安倍官房副長官はちょっといらっしゃいませんから、中谷長官の長官室もしくは自宅に制服組のトップの皆さん方がおいでになって、いろいろなことを、こうやってほしい、ああやってほしいということを言った事実があるのかどうかを確かめているんです。
中谷国務大臣 制服のトップは私の補佐役でございまして、毎朝会議を行っておりまして、常時話し合いはいたしております。
今川委員 それから、もう一点。
 これも一部報道によりますと、防衛庁が昨年の十一月中旬、石川島播磨重工業を初め民間の防衛産業に対して、例えば艦船のメンテナンスであるとかあるいは航空機の修理であるとかということで、インド洋方面にいわゆる民間の技術者、民間人を派遣できないかということを相談し、昨年の十一月末に横須賀市内で業者を集めて説明会が開かれたというふうに報道されておりますが、この点はいかがですか。
中谷国務大臣 自衛隊の保有をする装備や艦船また航空機の修理は、基本的にはみずからで行っておりますけれども、能力を超える高度な修理などは、能力を有する民間企業に協議をして、合意を得た上で契約に基づいて依頼をいたしております。
 このテロ対策特措法に基づく自衛隊の協力支援活動の実施に当たっても、任務の遂行を円滑にするという観点も踏まえつつ、こうした通常のケースと同様に、あらかじめ関係企業に対して、自衛隊の保有する船舶、装備品、航空機の修理等を依頼する場合があり得るという通知は行ったのは事実でございます。
 しかし、これまでのところ、具体的な修理の所要がないことから、民間企業に対する従業員の海外への具体的な派遣依頼は行っておりませんし、そのように、実際に行く行かないということにつきましては、これはまた契約をした企業と協議をして、合意を得た上で契約に基づいて行われるものでございまして、自衛隊が自衛隊法に基づき公権力の行使として行うもの、今回の法案等に盛られましたものとは異なっておりまして、御指摘は当たらないものでございます。
今川委員 次に、今回のこの有事法制の整備に関しまして、有事法制を早く整備すべしという立場からは、自衛隊創設以来今日までそういう法整備のなかったのがおかしい、国家の体をなしていないなどという御意見もあるようであります。
 これは官房長官にお尋ねしたいと思うんですが、そもそも、一九四五年に日本が敗戦しまして、その後、一九四七年に現在の憲法が施行されるわけでありますけれども、この我が国の憲法に国家の緊急事態だとかあるいは非常事態にかかわるいわゆる国家緊急権をあえて明記をしなかったという、その背景なり理由なりをどのようにお考えでしょうか。
津野政府特別補佐人 お答えいたします。
 事務的に、経緯でございますので事実関係をお答えさせていただきますが、国家緊急権と申しますのは、これは講学上の概念でございまして、戦争とか内乱とか、あるいは恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対処できない、そういった非常事態におきまして、国家の存立を維持するために、国家権力が立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限をいうものと解されているわけでございます。これは、一般的に、学説上、大体このような概念でございます。
 このような国家緊急権につきましては、大日本帝国憲法におきましては、戦争、内乱等の非常事態において、天皇による戒厳、それから非常大権などとして憲法に規定されておりまして、制度化が図られているところでございますが、日本国憲法においては、そういった規定はないわけであります。
 この点につきましては、要するに規定されていないということにつきましては、その具体的な経緯は明らかではありませんが、憲法制定議会におきまして、第九十回帝国議会の衆議院帝国憲法改正案委員会におきまして、金森国務大臣は、非常事態の際に、大日本帝国憲法第三十一条、非常大権のような制度が必要ではないかという質問に対しまして、
 民主政治ヲ徹底サセテ国民ノ権利ヲ十分擁護致シマス為ニハ、左様ナ場合ノ政府一存ニ於テ行ヒマスル処置ハ、極力之ヲ防止シナケレバナラヌノデアリマス言葉ヲ非常ト云フコトニ藉リテ、其ノ大イナル途ヲ残シテ置キマスナラ、ドンナニ精緻ナル憲法ヲ定メマシテモ、口実ヲ其処ニ入レテ又破壊セラレル虞絶無トハ断言シ難イト思ヒマス、随テ此ノ憲法ハ左様ナ非常ナル特例ヲ以テ――謂ハバ行政権ノ自由判断ノ余地ヲ出来ルダケ少クスルヤウニ考ヘタ訳デアリマス、随テ特殊ノ必要ガ起リマスレバ、臨時議会ヲ召集シテ之ニ応ズル処置ヲスル、又衆議院ガ解散後デアツテ処置ノ出来ナイ時ハ、参議院ノ緊急集会ヲ促シテ暫定ノ処置ヲスル、同時ニ他ノ一面ニ於テ、実際ノ特殊ナ場合ニ応ズル具体的ナ必要ナ規定ハ、平素カラ濫用ノ虞ナキ姿ニ於テ準備スルヤウニ規定ヲ完備シテ置クコトガ適当デアラウト思フ訳デアリマス、
と答弁しているわけであります。
 こういったことでございまして、いわゆる国家緊急権が設けられなかった理由が答弁として残されているわけでありますが、ただ、日本国憲法のもとにおきましては、例えば、大規模な災害や経済上の混乱などの非常な事態に対応すべく、公共の福祉の観点から、合理的な範囲内で国民の権利を制限し、国民に義務を課す法律を制定することは可能であり、これまでにも、災害対策基本法、国民生活安定緊急措置法などの多くの立法がなされているところでございます。
 また、今回のいわゆる武力攻撃事態対処関連三法案につきましては、申すまでもありませんが、日本国憲法の範囲内で立法化をしようとするものでありますから、これまで述べてきました立憲的な憲法秩序を一時停止する性格を有する講学上の国家緊急権の制度を図るといったような法律ではないということでございます。
今川委員 こうした非常に重大な法案をせっかく審議する以上は、少なくとも半世紀前にさかのぼって、日本国憲法が制定されたときの原点、それから、サンフランシスコ講和なり旧安保条約が取り交わされるまでの、いわば戦後日本の原点のところをしっかりとお互いに認識をし合いながら議論をすることが大切なんだろうと思うんです。
 私は、今手元に、当時の日本国憲法審議録という、その一部を抜粋したものを持ってきたわけですが、当時、日本国憲法を制定するに当たり、当時の吉田茂総理大臣は次のように述べておられます。
 戦争抛棄に関する本案の規定は、直接には自衛権を否定はして居りませぬが、第九条第二項に於て一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、又交戦権も抛棄したものであります。
このように国会の中で述べられております。
 では、いわゆる戦争放棄、非武装と言っていいこの憲法の規定を置いて、では半世紀前の日本は、周辺諸国との関係が今から比べればはるかに厳しかったわけですけれども、いざ日本に何かがあったときには、ではどういう手段で国の防衛を図ろうとしたのかということに関しては、同じく吉田総理は、その後半で、
 平和国際団体が確立せられたる場合に、若し侵略戦争を始むる者、侵略の意思を以て日本を侵す者があれば、是は平和に対する冒犯者であります。全世界の敵であると言うべきであります。世界の平和愛好国は相倚り相携えて此の冒犯者、此の敵を克服すべきものであるのであります。
というふうに述べておられるわけですね。
 つまり、意図するところは、日本が戦争に敗れて後、憲法を制定したときの一番基本的な考え方というのは、再び日本がアジアに出ていくのではなくて、周辺国のいずれかが日本をまさしく武力攻撃したときに、再び軍備でもって、軍隊でもって戦うということを放棄しますというふうに言っているわけですね。そして、ではどこに依拠するかということは、まさにこの吉田総理が言われる平和国際団体、つまり創設されたばかりの国連に、国際連合に依拠しようとしたということではないかというふうに思うのです。
 それで、これは外務大臣にお尋ねしたいと思うのですが、そういう歴史的な原点を踏まえて、冷戦が終わってから、例えば一九九一年の七月のロンドン・サミットの政治宣言であります。
 その一部を申し上げますと、我々は、今や国際連合にとって、その創立者の希望と夢を完全に実現するための条件が存在しているものと信ずる。再活性化された国際連合は、国際秩序の強化において中心的な役割を果たすこととなろう。我々は、人権を擁護し、すべての平和及び安全を維持し、侵略を抑止するために、国際連合を一層強化し、かつ一層効率的、効果的なものとすることを誓約する。平和維持における国連の役割は強化されるべきであり、我々は、これを強力に支援する用意がある。
 このように政治宣言はうたっているわけですね。我が国として、こうしたロンドン・サミットの政治宣言も踏まえた上で、これからの国際紛争の解決のあり方として、この国連による安全保障という基本的な理念なり考え方に関して、外務大臣の御認識を、御見解を伺いたいと思います。
川口国務大臣 今おっしゃられました九一年の七月のロンドン・サミット政治宣言でございますけれども、これは、国連の権威のもとに国際社会が結集をいたしまして、一致協力することによって湾岸の危機を克服したということを踏まえまして、国際の平和と安全の維持における国連の役割、これが強化されるべきであるという国際社会の認識を示したということであろうかと思います。
 我が国といたしましてどういうふうに考えていくかということでございますけれども、そのような認識を持ちまして、G8を初めとする各国と一緒になって、国連が国際の平和と安全、これを目指して今まで以上にさまざまな課題に有効に対応をしていくことができますように、安全保障、安保理の改革を初めといたします国連改革に積極的に取り組んでいくということで対応をしているわけでございます。
 国連憲章におきましては、この集団安全保障と一緒に、個別的また集団的な自衛権、自衛の固有の権利というのを五十一条で明記をしているわけでございます。日米同盟関係の中核をなす日米安保条約、これは、我が国とそれから極東の平和と安全を維持することを目的としているわけでございまして、我が国といたしましては、国連の活動も、それから日米安保条約も、両方相まって我が国の平和と安全に貢献をしているということで考えております。
今川委員 それでは次に、自衛隊が、日本がいざというときにどう円滑に行動するかということに関して、法の不備であるということがよく指摘をされますけれども、私は、今先ほど申し上げた、戦後日本が、世界でも当時類例を見ない戦争放棄、一切の戦力を放棄するといった憲法を制定してきたこの過程、プロセスというものをしっかり踏まえておるならば、現在の自衛隊が、いざというときに法の不備であるということは、ある意味では非常に歴史的な制約を課せられて、一九五〇年、朝鮮戦争のときに警察予備隊の名のもとに誕生したわけですから、他の国の軍隊とは違って、名前も自衛隊という名前であり、いろいろな形での制約条件を課されたのは私は当たり前であるというふうに思うのですね。
 実は、米国の当時対日政策が大きく変更します。よく言われるように、あれは押しつけ憲法だと言う人もいますが、それは当時の日本の為政者たちが怠けたからマッカーサー・ノートをベースにしてこの憲法九条が押しつけられたというふうに受けとめる向きもあるんでしょうけれども、今私はここに、当時の警察予備隊を創設するときに直接かかわった米軍事顧問団のフランク・コワルスキーという方の、これは初代幕僚長です、この方の本を改めて読んでみまして、非常に当時の警察予備隊が創設されるときのことを生々しく彼は語っています。
 彼は、「憲法の禁止条項と昭和二一年の国会記録をまっこうから無視したこの予備隊および軍備を正当化しようとしても、それは詭弁以外の何ものでもありえない。」というふうにこの本の中で語っていて、この警察予備隊からやがて保安隊に変わり、一九五四年の防衛庁設置と自衛隊創設にかかわっていく過程のところで、これは、せっかく新たな日本国憲法を制定しておきながら、国際社会に対して歴史の大うそだということをこの方は言っているわけですね。これがやはり、今日の自衛隊の一番の原点にかかわるいろいろな制約条件を受けざるを得なかった背景だと私は思うんです。
 ですから、よく軍事専門家の方々と私もいろいろな意見交換をする機会があるわけですけれども、よく言われているのは、アメリカ側も無条件で日本の再軍備を図ったわけではない。ちなみに、核装備はさせない、あるいは空母や原子力潜水艦なども保有させない、あるいはCIAのごとき諜報機関も設置はさせないというのがアメリカ側の意向として当然働いていたというふうに思いますし、そういった意味では、当時、少なくともアジア諸国との関係において、自衛隊を創設しても、これは実質的には指揮権は米軍が握るということが背景に私はあったんだと思うんです。
 そこで、幾つかの点に関して、自衛隊に対する、ある意味で日本の防衛政策に関する幾つかの基本的な国是とも言えるものがあると思うんですけれども、専守防衛、この点に関して中谷長官、この基本的な、防衛政策の基本というのに変わりはないんですね。
中谷国務大臣 今、自衛隊創設期からのお話がございましたけれども、昭和二十九年に政府の統一見解が出ておりまして、
  憲法は、自衛権を否定していない。
  自衛権は、国が独立国である以上、その国が当然に保有する権利である。憲法はこれを否定していない。従って、現行憲法のもとで、わが国が、自衛権を持っていることは、きわめて明白である。
  憲法は、戦争を放棄したが、自衛のための抗争は放棄していない。
  戦争と武力の威嚇、武力の行使が放棄されるのは、「国際紛争を解決する手段としては」ということである。
  他国から武力攻撃があった場合に、武力攻撃そのものを阻止することは、自己防衛そのものであって、国際紛争を解決することとは本質が違う。従って、自国に対して武力攻撃が加えられた場合に国土を防衛する手段として武力を行使することは、憲法に違反しない。
ということが書かれております。
 したがいまして、私も、専守防衛のこの日本国憲法の趣旨に従いまして対処していく所存でございます。
今川委員 いま一点、外務大臣の方にこれはお尋ねしたいんですが、同じように、日本の国として、いわゆる非核三原則それから武器輸出禁止三原則、これも国の基本政策として、基本理念としていまだにきちっと生きているというふうにお考えですか。
川口国務大臣 そのように考えております。
今川委員 実は、この有事法制は、言うまでもなく、日本における有事の際の法整備をなそうとするものでありますけれども、問題は、平時においてもこの日米安保条約、日米同盟の運用が、きょうはちょっと時間がなくてその一部しか触れることができませんけれども、この日米安保条約なり地位協定の運用が余りにもずさん過ぎるということは、安保委員会などでもたびたび指摘をしてまいりました。いわゆる事前協議制度の問題なんです。
 これまでも指摘をしてきましたし、きょうは時間がありませんから、その一々に触れることはできませんが、一九六〇年に安保条約が改定される折に、いわゆる事前協議にかかわるところ、核兵器の持ち込みに関して、アメリカ側は、持ち込むというのはイントロダクションのときというふうにはっきりしています。核兵器を積んだまま日本に一時寄港したりするのはトランジットという使い分けをしているのに、日本の政府は現在に至るまでそれを認めようとはなさらない。そして、この一番肝心な、日米安保の肝心なところは常に密約で取り交わされてきたという重大な問題がある、そのように私は思うんです。
 ですから、これからまさに有事にかかわる法整備をやろうというときに、平時の段階で、この平和な時期のときにも日米安保なり地位協定の運用がそういうふうに余りにもでたらめじゃないか、そうしたら、これをはるかに上回る日本有事に関して日本の主体性なりあるいは日米の関係がきちんと運用されていくのかということに関しては、極めて疑問なしとしないと思うんですね。外務大臣、この点に関していかがですか。
川口国務大臣 密約というふうにおっしゃられましたけれども、歴代の総理、外務大臣が述べていらっしゃいますように、事前協議に関しましていかなる密約もございません。
 事前協議につきましては、米側は、安保条約上の対日義務を誠実に履行すること、日本政府の意思に反しまして行動することはないということを繰り返し述べておりまして、同盟国である米国を信頼しているわけでございまして、この件について米側に確認する考えはないわけでございます。
今川委員 もう時間がありませんので、最後の質問にいたしますが、外務大臣、この間の安全保障委員会のときに、横須賀に空母以下十一隻のいわば空母戦闘群が実質的に配置をされている、母港としている。私が住む佐世保には、強襲揚陸艦エセックスを初め四隻の、海外で唯一の揚陸艦部隊がある。第十一水陸両用戦隊といいます。このことを外務大臣にお尋ねしました。これは明らかに事前協議の対象となるのに、母港という言葉の概念も含めてお聞きしたら、そのとき外務大臣はこうおっしゃいました。米海軍の艦船が長期滞在しているにすぎない。
 冗談じゃないですね。これは、少なくとも当時パウエル米統合参謀本部議長が、一九九二年の一月に国家軍事戦略で次のようにおっしゃっています、明確に。我々は、日本を母港としている一個空母戦闘群と一個水陸両用即応群を維持する計画である。
 この時点では計画です。しかし、今、佐世保でも横須賀でも、申し上げたとおり、パウエルさんがおっしゃったとおりの実動部隊が、艦船が日本を、横須賀を、佐世保を母港としているんです。母港であれば、当然事前協議の対象じゃないですか。事前協議をしたくないから、あれは長期滞在しているにすぎないというふうにおっしゃったんじゃないんですか。その点をもう一度確かめておきたいと思います。
川口国務大臣 同じお答えになってしまうんですけれども、日米安保条約の六条の実施に関する交換公文、いわゆる岸・ハーター交換公文でございますけれども、そこでは、合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、装備における重要な変更につきましては事前協議のテーマとなるということが規定をされているわけでございます。
 それで、配置ということが何かということでございますけれども、これは、米軍が我が国の施設・区域を本拠あるいは根拠地として駐留する場合をいうものでございますけれども、いかなる場合に本拠あるいは根拠地としての駐留に該当するか否か。これは、個々のケースにつきまして、米軍の活動の実態に即して判断をされるべきものであると考えます。
 御指摘の艦船につきましてですけれども、米軍が海外家族居住計画に基づきまして、前方展開の任務についている艦船の乗組員の家族を我が国に居住させることになりました結果、我が国への寄港回数が増加をしたり、寄港の期間が長くなったりということでございまして、これは日本国への配置には該当しない、したがって、事前協議の対象になるとは考えておりません。
今川委員 もう時間が終わりました。最後に一言だけ。
 今の答弁のようなことでは、日米安保の現在の運用が、それほど、そういういいかげんな答弁しかできない。ましてや、有事法制のように、これだけハイレベルの非常に大事な法案が仮に成立しても、運用などおぼつかない。しかも、国民の保護に関する一番肝心なところが、二年以内という形で先送りにされている。そういった意味では、国民、私たちも含めて、全体像が見えない。こういう法案は一たん撤回して、もっと全部が見える形で再度議論をし直したいというふうに申し上げて、終わりたいと思います。
瓦委員長 次回は、明九日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.