衆議院

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第5号 平成14年5月9日(木曜日)

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平成十四年五月九日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 瓦   力君
   理事 衛藤征士郎君 理事 金子 一義君
   理事 久間 章生君 理事 米田 建三君
   理事 伊藤 英成君 理事 玄葉光一郎君
   理事 赤松 正雄君 理事 工藤堅太郎君
      石破  茂君    岩永 峯一君
      岩屋  毅君    大野 松茂君
      嘉数 知賢君    金子 恭之君
      熊谷 市雄君    小島 敏男君
      近藤 基彦君    斉藤斗志二君
      桜田 義孝君    七条  明君
      田中 和徳君    中山 利生君
      西川 京子君    浜田 靖一君
      林 省之介君    増田 敏男君
      森岡 正宏君    山口 泰明君
      伊藤 忠治君    枝野 幸男君
      大石 尚子君    川端 達夫君
      桑原  豊君    首藤 信彦君
      末松 義規君    筒井 信隆君
      中野 寛成君    前原 誠司君
      渡辺  周君    上田  勇君
      白保 台一君    田端 正広君
      中塚 一宏君    樋高  剛君
      赤嶺 政賢君    木島日出夫君
      今川 正美君    東門美津子君
      井上 喜一君    宇田川芳雄君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       武部  勤君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   環境大臣         大木  浩君
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長)
   (防災担当大臣)     村井  仁君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)
   (科学技術政策担当大臣) 尾身 幸次君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   防衛庁副長官       萩山 教嚴君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   防衛庁長官政務官     木村 太郎君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   政府参考人
   (防衛庁長官官房長)   柳澤 協二君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 重和君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君
   衆議院調査局武力攻撃事態
   への対処に関する特別調査
   室長           鈴木 明夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月九日
 辞任         補欠選任
  近藤 基彦君     金子 恭之君
  肥田美代子君     大石 尚子君
同日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     近藤 基彦君
  大石 尚子君     肥田美代子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第八七号)
 武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出第八八号)
 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)


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     ――――◇―――――
瓦委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として防衛庁長官官房長柳澤協二君、法務省刑事局長古田佑紀君、外務省アジア大洋州局長田中均君及び外務省北米局長藤崎一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
瓦委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤松正雄君。
赤松(正)委員 おはようございます。公明党の赤松正雄でございます。
 総理、就任されてから一年余りがたちました。私は、小泉総理が登場されたとき、大変な人気を博されたという状況を私なりに、これは季節外れの大雪現象だと言いました。つまり、小泉さんの登場によって、すべての古い日本の政治、あえて自民党政治と言わせていただきますけれども、そういったものの悪いところを小泉さんの一つのパーソナリティーというもので全部、すべてを覆い尽くした。みんな、その美しい雪景色に感動した。しかし、私は、雪は必ず解けると言いました。今まさに解けたと思います。
 しかし、問題はこれからだと思います。私は、これから、季節外れかどうかは別にして、大水現象が起こる、大水現象を起こしてほしい、こんなふうな期待を実は持っております。小泉さんだから、大水になるかはわかりませんけれども、要するに、古いものをなくす、全部を流してしまうということを、そういう決意を持っておられる限り、私どもはしっかりと支えてまいりたい、そんなふうに思っております。
 これをまず冒頭に申し上げさせていただきまして、今なぜ有事法制なのか。これについては、きょうで実質三日目の審議が行われるわけですけれども、考え方、立場によって大きく二つの、もちろん、ほかにもあると言われるかもしれませんが、二つの立場があるように思われます。
 一つは、本来、国家が備えておくべき緊急非常事態における対応が、不幸にして今まで用意されてこなかった。ようやく今、おくればせながらその論議ができるようになった。平和なときにこそ、いざというときのために、万が一のときのための対応をしよう、これが一つであります。私の立場は、もちろんこれであります。
 もう一つは、本来、戦争を放棄し、解釈によって、自衛権すら持てない、そういう立場に立つ人はいますけれども、そういう人たちにとって、有事を想定することすらおかしいじゃないか、こういう立場があります。それを準備しようというのは、これはアメリカの要請というものも背後にあるんじゃないのか、こういうふうなことがあって、今のタイミングでそういったことを受け皿のように用意しようというのはどうも納得がいかない、こういうお立場の方が、実は私の周辺にも、地元に戻るとおります。
 したがって、きょうこれから私は前半の時間を使って、そういった万が一の、一の部分はいわゆる有事だろうと思いますけれども、残りの九千九百九十九、あとう限り、すべての力を尽くして外交展開、軍事に頼らない、非軍事の努力をし尽くすという部分に私は焦点を絞って前半のお話をしたい、そんなふうに思います。
 その中で、三つポイントがあると思います。一つは、率直に言わせていただいて、アメリカの言うなりになってはいけない、アメリカには言うべきは言えということです。二つ目は、私たちの近隣諸国、アジアに対してしっかりと配慮をすべきだという点が二つ目です。三つ目は、日本の独自性というものを生かした外交を積極的に展開していこうじゃないかという、三つのポイントであります。
 いずれも、総理は、そんなことは言われなくてもやっているよと言われるかもしれませんが、あえて、きょう、国民の皆さん、注目の的でございますので、その点についてもっともっと積極的にアピールしてほしい、こういう思いを込めて、私たちの主張も含めて三点について申し上げたいと思います。
 まず第一、今回のブッシュ大統領の悪の枢軸発言であります。総理は、一昨日も、野党委員の質問に対して、こうおっしゃいました。ラムズフェルドさんの話に関連しての部分ですけれども、事態によっては、アメリカはアメリカの立場があることを表明していると私は理解している、これはごく当然のことを言われたんだと僕は思っています。しかし、総理、先ほど言ったように、今の時代状況、今の背景ということを考えたときに、この小泉総理の発言は少しばかり丁寧さを欠いている、もっとほかで違うことをおっしゃっていると言うかもしれませんが、国民の不安をかえってあおる発言だ、こんなふうに思います。
 このことも含めて、おれはアメリカにしっかり言いたいことを言っている、こうおっしゃる、そういうところがあるなら言ってみてください。
小泉内閣総理大臣 私はごく当然のことを言っているつもりであります。どこの国についても言うべきことは言う、これを貫き通しております。
赤松(正)委員 いや、それは、今おっしゃったのは姿勢を言われたので、具体的にどの場面でどういうことを言ったのかということが、私たち、私でさえという言い方は傲慢かもしれませんが、余り伝わってこないのです。
 むしろ先ほどの発言は、言ってみればごく当然の、国にはそれぞれの行き方があるんだからということをおっしゃっていると思うんですけれども、そういうことについて、やはり、日本の立場としてはこうだよ、この場面、もう少し丁寧にこうされたらどう、誤解を生むよ、こういうふうなことを言われたのはあるか、こういうことでございます。
 例えば、この間、瓦団長あるいは久間筆頭理事等と一緒に、社民党、共産党を除く超党派の議員団でアメリカへ行ってまいりましたけれども、そのときに、アメリカは大変にこの悪の枢軸発言を気にしていました。アメリカといってもそんなたくさん会ったわけじゃありませんが、何人かの人が気にしていました。その中で私が印象に残ったのは、そういう悪の枢軸発言というものが持つ政治的意味合い、すぐに北朝鮮に攻めるとかどうこうということじゃなくて、こういう発言をすることによって、北朝鮮の側が極めて、融和路線、話し合いをするという方向に変えつつあるということを敏感に見るべきだ、こんなふうなことを言っておりましたよ。そういうたぐいのことを言われるべきだ、こういう意味であります。これ以上言っても総理は余り言わないかもしれません。
 いずれにしても、先般、ある高名なジャーナリストがこう言っていました、日本とアメリカの関係は、何だか自民党と公明党の関係に似ていると。私は褒め言葉だと思ったのですが、そうじゃなくて、言うべきことは言わないじゃないか、こういう角度の、いや、公明党はしっかりと総理に、自由民主党の皆さんに言っていると。ところが、世の中的な理解は違う。それは、大体、総理がアメリカに対してきちっと言わないということが背景にあるからだと思うのですが、さっき極めて抽象的な言い方をされましたけれども、あえてもう一回、具体的に、この場面でおれはこう言ったんだということを言ってほしいですね。
小泉内閣総理大臣 言うべきことを言うというのは当然なのであって、新聞で報道するかどうかというのは別問題ですよ。私の発言が常に正しく全部が報道されているとは限りません。あるいは一部だけ報道される場合もあります。それはまあ仕方ないんですが。
 例えば、今お話しになりました悪の枢軸発言にしても、ブッシュ大統領が日本に来られたときも、この北朝鮮に対する問題、話し合いをいたしました。ブッシュ大統領は、話し合いの道は大きくあけてある、私も、韓国の金大中大統領の太陽政策を日本としては支持しているんだ、北朝鮮を話し合いの場に引き出すということが大事なんだということをはっきり申しております。北朝鮮に対応する場合、日本としても日本の独自の立場もあるし、拉致問題の話も当然話題にいたしました。正常化交渉も、日本は真剣に取り組んでいるということもお話しいたしました。
 そういう中で、韓国の立場もある、これから北朝鮮と交渉する場合にも、日本は日本の立場を優先するのは当然だが、韓国の立場、そしてアメリカの立場もあるでしょう。よく連携しながら、北朝鮮には交渉して、何とか北朝鮮を対話の場に引き出すことが重要だ、北朝鮮に対しても、対話を国際社会と持つこと、国際協調が北朝鮮にとってプラスになること、国際社会から孤立するということは、北朝鮮にとっても、北朝鮮人民にとっても、政府にとっても、国民にとっても、決して国際社会から孤立することはプラスにならないんだということを理解するよういかに我々が努力するか、こういうことが大事だということを言っているんですよ。
 ブッシュ大統領は、対話の重要性も認識しておられます。一方では悪の枢軸ばかりが強調されていますが、アメリカはそんな単純なものではありません。アメリカにはアメリカの立場があり、あらゆる選択肢を残していくというのがアメリカの立場でありますから、それはそれぞれの国の事情があるということも理解しなきゃならないと私は思っております。
赤松(正)委員 アメリカにはアメリカの立場がある、日本には日本の立場がある、しっかりそういったことを踏まえた上で、先ほど来申し上げたようなことを留意しての外交展開、そして、それを幅広く日本じゅうに知らせていっていただきたい、そう思います。
 二番目に、アジアへの対応であります。
 去る四月二十一日、靖国神社の例大祭への参拝をめぐって、総理は所感の中で、再び内外に不安や警戒心を抱かせることは私の意に反するところ、こう言われております。ところが、中国あるいは韓国もこれに対して大変に激しい反発をしていることは事実であります。
 で、一昨日の野党の委員の質問に対して、総理はこうおっしゃっています。靖国参拝と日中友好、交流を促進しようという考えとは別物であります、靖国参拝は、私の信条からしたことです、こうおっしゃっているわけです。しかし、この別物、日中友好と別物だと言われましても、相手が友好を損なうというふうにとらえれば結局は一緒になってしまう、こういうふうに思うんですね。
 靖国神社参拝というのは、政教分離原則そして平和主義の原則からいって、やはり私は極めて問題が多い行為だと思っております。それをわかった上で、総理もわかっておられる、わかった上で執拗に参拝にこだわっておられる。執拗に参拝にこだわっておられる総理の行為は、これはやはり懲りない挑発に見える。どうしても見える。向こうも、日本の文化というものを中国も理解が足らないと私は思いますよ。私、個人的に強くそう思います。そう思うんですけれども、しかし、これはどっちもどっちじゃないのかという話になっちゃうんです。これじゃ、やはり小泉総理の本意じゃないはずですよ。
 両方とも内政に目を向けているという言い方はあるかもしれませんけれども、そうじゃなくて、結局こういう事態が続く、毎年こういう事態が起こるというのは全然好ましくない。総理、この打開をどうしようと思っておられますか。
小泉内閣総理大臣 日本には日本の立場があり、中国には中国の立場があり、この靖国の参拝は日中友好を妨げるものではない。すべての問題、すべての立場が、国と国ですから、一致するわけではありません。
 日本とアメリカでも、今鉄鋼のセーフガードをめぐって意見の対立がありますね。日本は言うべきことを言っております。平沼経済産業大臣、今交渉に当たられています。これが日米の友好を損なうか、意見が対立するから。日米の友好を損なうものではないということは、大人の対応を日本もアメリカもしているから、そのときは激しく対立しますけれども、全体のことを考えて、日米の友好は十分考えておる。
 同じように、日本と中国も、日中友好というものをよくわきまえて、これからの交流なりいろいろな分野での協力を展開していこうということでは合意しているわけであります。そこら辺は、もう中国も大人ですから、お互いの立場をわきまえながら、日中友好を阻害しないように配慮しようということで私は打開できるのではないかと思っております。
赤松(正)委員 今のは姿勢論を述べられただけで、具体的な打開、まあ、この場では言いづらいのかもしれませんが、私がここで言いたいのは、これも聞きづらい言葉かもしれませんが、私がいわゆる大学で教えを請うた学問の先輩が、学問の上における師匠筋の方が、日本は対韓謝罪外交、対中位負け外交だということを繰り返し言っていますよ。
 さっき総理は、中国は大人だと言われた。日本も負けない大人の国になってほしい、なるべきだ、こう思います。ぜひとも、今言われた姿勢の上に立って、そういうことだけを繰り返すんじゃなくて、ありとあらゆる角度で、中国と日本との関係というものをうまくするように、知恵を働かせてやっていただきたい、こんなふうに思います。
 そこで、戦没者の鎮魂ということでいえば、私たちは、国立の共同墓地をつくるということは非常に大事だ、こう考えておりますけれども、これについては官房長官中心に一つのいわばプロジェクトチームが動き出しているということを了解しておりますので、ぜひともこの事業というか試みをうまく進めていっていただきたい、こう思って、指摘するだけにとどめます。
 ところで、ちょっとこれは予定していないことだったんですが、若干のコメントをいただきたいんですが、昨日のニュースで、北朝鮮の亡命者と見られる男女五人が瀋陽の日本総領事館にいわば駆け込んだ、逃げ込んだ、それに対して中国側が取り押さえたと伝えています。
 これは明らかに在外公館の治外法権を保障した領事関係に関するウィーン条約違反に当たる、こう見られますけれども、総理は若干のコメントを既に報道機関にされていますけれども、それを繰り返されるんじゃなくて、もうちょっと突っ込んだお話を聞かせていただきたいと思います。
川口国務大臣 委員おっしゃられますように、ウィーン条約の観点から考えますと、これには問題があるわけでございまして、直ちに中国にあります大使館から中国政府に対して申し入れをいたしておりまして、現在、その回答を待っている段階でございます。
赤松(正)委員 そういった域を出る答弁は出ないということで、これで終わります。
 三つ目につきましては、先ほども述べました日本の独自性を生かした平和外交の展開ということでありますけれども、これも、日本外交のプラス面というのは、世界で唯一の被爆国であるということ。そして、非核三原則を今日まで曲がりなりにも堅持してきているということ。それから、私は大事な点だと思うんですが、武器を輸出しないという国であるということ。また、この半世紀、唯一と言ってもいいぐらい世界で戦争をしなかった、かかわってこなかったという国であるということ。また、中東でも唯一手を汚していない国である。こういう世界に誇るべき、そういう平和主義の原理というものをしっかりと持ってきている国だと思います。そういったことを全面的に押し出さずして何のための日本外交かと、私たち公明党は強くそう思っております。
 最近、私の友人の、地元における大学の教授なんかとお話ししますと、どうも最近の公明党は、昔と違って、非軍事に力点を置かないで、軍事的な部分に偏り過ぎている傾向があるんじゃないのというようなことをおっしゃるんですが、違うということを盛んに私は言うんですけれども、なかなか理解がされづらいところがあるわけです。
 これは、この十年、PKO法を成立させて、あの周辺事態安全確保法、そしてテロ特措法、今日の有事法制というふうにつながってきた経緯の中で、私は、日本国憲法というものとそれから日米安保条約というもの両方を、憲法の中でこの安保条約というものをぎりぎりの状況の中でどう生かしていくかということについて限りなく知恵を働かせてきた結果だ、こういうふうに自負をしているわけですけれども、そういった点についての理解がなかなか得られないところがある。そういった点で、ぜひとも非軍事分野におけるところの日本外交の展開というものを全面的に打ち出していっていただきたい。
 そんな中で、幾つかの提案があるんですけれども、一つは、これは既に日本国、外務省が進めておられると思いますけれども、武器輸出に対する国際的なルールづくりなんという問題は非常に大事なテーマだろうと思います。あるいは、国際刑事訴訟法のシステムの確立とか、あるいはまたテロリストへの資金流入の制御、こういった問題についてはもう既に着手されているということはわかります。それは、もうあえてこの現状について問いません。
 ここで私は一つ強く提案をして、総理のお考えも聞いておきたいと思うことがあります。
 これは既に私どもの神崎代表等がいろいろな場面で申し上げていることなので、御理解いただいていると思いますけれども、いわば、今アジアは新冷戦、ヨーロッパと違って、アジアは新しい冷戦という状況が続いている。続いているというか、新しく起こっていると言うべきかもしれません。そういう中で、沖縄が相変わらずのアメリカの世界戦略の拠点になっている。この沖縄をむしろ平和戦略の拠点にしていくべきだ、こういう考えのもとに、私どもは、国連の機関、特に国連アジア本部というのを沖縄に誘致するべきだ。そこで、例えば北東アジアにおける関係各国の安全保障に関する会議をやるとか、さまざまな日本からの、そしてアジアからの発信を世界に出すことはできるじゃないか、こういう提案をしているんですが、残念ながら、昨年、約八百万円足らずだったと思うんですけれども、調査費を計上していただいたのはいいんですが、外部委託をした結果として、これは三つほどの理由、アジアの中でいえばタイにそういう国連の機関が既にある、あるいは沖縄がハブ空港の機能というものがない、国際空港としての機能が弱いのでアクセスとして欠点がある、あるいは言葉の点で、通訳の問題等で問題があるとか、こういうふうな理由を外部機関、調査を依頼したアメリカの機関がそういう結論を出して、だめでしたということでお茶を濁そうと外務省はしている。これはいけない。ぜひとも、もっと執拗に、熱心に、これについて継続的に取り組むべきだ、こう思うんですが、時間がないので、総理のお答えをいきなり聞きます。
小泉内閣総理大臣 この問題につきましては、かねがね公明党から提案をしていただいているということは承知しております。また、国連側におきましてもいろいろ事情を調査しているようであります。費用の点、できるだけ経費も削減しなきゃならないという国連側の事情もあると思います。あるいは、今世界にあるいろいろな国連関係機関を統合しなきゃならないという事情もあるようであります。
 そういう中での話でありますので、なかなか難しい事情もわきまえておりますが、今後とも、日本としてはこの問題、検討を重ねていく必要があるというふうに考えております。
赤松(正)委員 ぜひとも、継続的な姿勢をこの問題に対して持っていただきたい、実現の方向に向けて頑張っていただきたいと思います。
 さて、この法律に関する質問であります。
 日本が万が一外国から武力攻撃を受けたとき、憲法の枠内での対応、さらに国民を保護するための理念、枠組みを包括的に示しておこうというのがこの法案のねらいだと思います。
 そこで、まず、武力攻撃事態というものがどういうものかについては、今までも何回も聞いております。この間も与党同僚委員の質問に対して中谷防衛庁長官が、「我が国に対する武力攻撃の事態である限り、規模とか態様の面で特に限定をすることはなく、およそあらゆる事態を含むもの」、こういう言い方をされました。いろいろな言い方をされているんですが、あえて私はこのくだりをとりました。
 要するに、わかりづらい。事の性質からいって、なかなか言葉で説明するのは難しかろうとは思います。しかし、これは極めて重要な法律における概念規定であるがゆえに、やはりありとあらゆる手だてを尽くさなくちゃいけない。
 私ども、法案を提出する側として、何回かこの議論に参画をさせていただきました。それで、その流れの中で、やはり具体的に事例を出してほしい、あとう限り、考える限りの、こういったケースがあるよ、こういったケースが武力攻撃事態だよということを出してほしいと言ってきたんですが、結局今日の状態、示されないまま今日を迎えています。
 先般、野党委員の方から、このことについて、ぜひ委員会でこの武力攻撃事態に対する明確な考え方というかとらえ方というものについての統一した見解をまとめてほしい、そういう要望がありましたけれども、それをわかった上で質問しているわけですが、これについて私は、今聞いても、恐らく同じような答えが返ってくるか、あるいは、今委員会預かりになっているという答えが返ってくるかもしれませんので、ここで一つの提案というか、角度として、今これから出していただけるとするならば、いや、出さないという答えもあるんですけれども、出していただくとするならば、この武力攻撃事態の認定の基準はこうだというのを出すのか、あるいは、ずっと、幾つになるかしれませんが、先般の周辺事態安全確保法の場合は、私たちの同僚議員の執拗な提起によって六つの具体例が出されましたけれども、そういう幾つかのケースを挙げられるのか、それとも、認定の基準はこうなんだという、こういうふうな形で示そうとされるのか、どっちですか。
福田国務大臣 今委員の御質問にございます点につきましては、なかなか、表現を的確にわかりやすく、こういうことは難しい、そういうこともございまして、その点御理解をいただけていないということもあるのは十分承知をいたしております。
 そういうことで、今現在、具体的にどのような事態を武力攻撃事態というようにするかとかいうことにつきまして、認定の問題も含めまして、先般来この委員会においてもそういう御要請もございますので、どういう形でもってお示しできるかどうか、これを今検討しておるところでございますので、できるだけ早くそれを示したいというように思っております。
 ただ、認定の基準と申しまして、果たして、数値的に申し上げるわけにもいかないし、どういうような表現ができるかというところで苦慮をいたしておりますけれども、いずれにしましても、考え方をお示ししたいと思っております。
赤松(正)委員 さらに、では官房長官に続けてお聞きしたいんですが、今、苦慮している、具体的な考え方を示したい、こうおっしゃいました。では、一つ、私の考え方として、私どもは、有事法制ということを、いわゆる有事法制の議論をしたときに、これはいわゆる自衛隊の防衛出動に関する法律なんだろうから、有事法制という言葉で言うよりも、防衛出動法制というふうな言い方にした方がいいんじゃないのかなと言った時期があるんです。それで、今言った基準というのは、そういう意味で言ったんです。
 つまり、警察が出ていって対応するというのではなくて、自衛隊が対応するべきテーマ、こういう一つの基準があるのかなということを考えた。そういうことを含めて、それに対するコメントがあるならいただきたい。それも含めて今考えているんだということならいいですけれども。
 同時に、いつまで。今、国会でこの委員会が始まってきょうで三日目です。終わったころに出されても困るので早急にと思いますが、いつまでですか。
福田国務大臣 この法案そのものが、具体的な処置の細目について述べている部分もございますけれども、基本的に言えば、理念とそれから手続、それから全体的な考え方といったようなものをお示ししておるものであるということでございますので、今回の法案につきましてできるだけ全体がわかればいいのでありますけれども、まだこれは、二年という期限を区切って細目については詰めさせていただくという猶予を与えていただくわけでございます。
 しかし、今御質問の点につきましては、これはいつというふうに申し上げるわけにいかないのでありますけれども、できるだけ早くというようにただいま申し上げさせていただきます。
赤松(正)委員 そういう答えをもう本当に長く聞いてまいりましたので、どうもこれじゃ余り信用できないな、もう法案に賛成するのをやめようかという気さえ起こってまいりますけれども、そういう、いつまでは言えないなんて言わないで、早急にやっていただきたいと思います。言えますか。
福田国務大臣 できるだけ早くと申し上げたのは、この審議をしている、終わってしまっては意味がありませんから、その審議をしている中でできるだけ早くお示ししたい、こういうふうに申し上げたつもりであります。
赤松(正)委員 金、土、日とありますから、ぜひともよろしくお願いいたします。
 次に、この武力攻撃事態における予測とおそれという問題でありますが、おそれがある事態と予測されるに至った事態ということですけれども、この武力攻撃事態への対処に関する基本理念、第三条の二で、「予測されるに至った事態においては、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない。」これは大事なくだりだと思います。つまり、予測されるから武力でたたけなんということでは断じてないわけであります。しかし、三では、これはある意味で当然ですが、発生した事態では、「排除しつつ」とある。
 それでは、その中間に位置する、中間といっても私は限りなく武力発生にもう紙一枚で接触していると思うのですが、それはそういう思い方でいいのかどうかも含めて、おそれの段階でどう対応するのかというのは書かれておりません。予測事態と武力発生事態については、どう対応するかが書かれていて、おそれについて書かれていないというのは、これは武力攻撃の可能性、つまり、やられちゃってから対応するというのは遅いという意味、そういう部分の極めて細かいニュアンスを残しているということでとらえていいんですか。
福田国務大臣 この第三条二項でございますけれども、我が国に対する武力攻撃が発生していない場合において武力攻撃の発生を回避する、これが至上命題でございますので、そういうことをこの第三条二項で規定をしておる、こういうことでございます。
 この表現は、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」としておりますけれども、武力攻撃事態が予測されるに至った事態は認定できることから、武力攻撃事態のうち我が国に対する武力攻撃が発生していない場合を示す表現として用いたものでございます。
 武力攻撃のおそれのある事態ということにつきましては、武力攻撃がいまだ発生していない事態である点では、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」と同様でございます。基本理念の面では、第三条第二項を言うなれば準用したということになるわけでございます。
赤松(正)委員 余りよくわからないですね。
 私は、戦史をひもといて例を挙げるとわかりやすいと思っていろいろ考えてみたんですが、例えば真珠湾。これも余り例がよくないかもしれませんが、中谷防衛庁長官が出す例よりもいいんじゃないかと思うんですが、要するに、真珠湾攻撃のときに、一九四一年十一月二十六日、あの択捉島単冠湾に旧帝国日本海軍が集結をした。この状態、これは、アメリカ側から見るといわゆる武力攻撃が予測される事態。その単冠湾から船が出ていったという状況をアメリカ側から見ると、おそれ事態なのかなと。
 こういうケースとか、もう時間がありませんので、ほかにいろいろなケースを挙げてみてどうなんだと聞いてみたいところなんですけれども、それは恐らく、あらゆる国際情勢とかそのときの状況、いろいろなことを判断してやらないとわかりませんという答えしか返ってこないだろうと思いますから、もうこれ以上は触れません。
 そういったことも含めて、官房長官、総理大臣、ぜひとも早急にお願いします。先ほどの、うそがないようにお願いしたいと思います。
 次に、この法律は二年のロングランで全体像を決めていこうということですから、今ここで議論しているのは包括法ですから、ある意味で、いろいろなものが抜けているとかどうこうとかという議論が出てくるのはしようがないと思います。それはしようがないと思いますが、やはり大事なことは、国民にとって一番関心事は、国家の行き過ぎに対しての歯どめはきちっと担保されるのかどうかという点だろうと思います。
 そういう意味で、住民の避難措置などにかかわる国民保護に関する法制の内容と整備のいわば時期だろうと思うんですね。これについては、既に官房長官が、国民保護に関する個別法制の整備期間は二年以内を目標というようなことをおっしゃったりしておりますけれども、これも二年以内という言い方では遅過ぎるわけで、総理も先般、私どもの同僚議員の本会議質問に対して、国民への理解を図るための最大限の努力をする、こうおっしゃっております。あとう限り早く、具体的な担当官庁とかあるいは国民保護法制の基本検討項目の例示とか、こういったことを早くやっていただきたいと思うんですが、官房長官、いつまでにそういう法制を出されるんでしょうか。
福田国務大臣 御指摘の点は、これは多岐にわたります。そして、これは関係機関の意見もございますし、また国民的な議論の動向も踏まえるというようなこともございます。十分な国民の理解を得られるような仕組みをつくるということを考えますと、多少時間がかかるのはやむを得ないのではないかと考えております。
 一応、この目標期間は二年以内といたしておりますけれども、この法案が成立した後に関係省庁と協議をいたしまして、これはもうできるだけ早くというふうに申し上げるしかないので、そういうことで法案作成作業に着手したいと思っております。
赤松(正)委員 できるだけ早くのオンパレードですけれども、できるだけ早くお願いいたします。
 最後に、総理にお伺いしたいと思います。
 このいわゆる有事法制というものについては、個別的自衛権の範囲内の話でありますから、集団的自衛権の問題はかかわってこない、これは明確に言い切れると思います。しかしながら、多少の誤解がある。
 そこで、私はぜひこの場面で総理に聞いておきたいと思うのは、総理は去年、いつか時期は忘れましたけれども、集団的自衛権をめぐるいろいろな問題で議論が伯仲したときに、集団的自衛権問題は研究してもよいのではとおっしゃいました、研究してよいのではと。このことについての中身を、どういうふうにどういう方向でそのことを言われたのか。そして、実際に研究に着手せよという指示を出されたのかどうかを聞きたいわけです。
 その前に私は、私どもの立場は、集団的自衛権問題というのはやはり憲法を改正して取り扱うべきマターである、しかし公明党は、憲法を改正したからといって集団的自衛権問題はオーケーだという立場ではありません。ありませんが、私は、集団的自衛権問題をめぐる議論の中で少し混乱がある、整理した方がいい。そういう意味では、僕は総理と同じ問題意識を持っているんじゃないかと実は思っております。ひょっとしたら違うかもしれませんけれども。
 既に現状で集団的自衛権は行使されていると言う人がいる、これは憲法を縮小解釈している人の立場だろうと思います。一方、いや、集団的自衛権はもちろんまだされていない、こういう人たちについては、拡大解釈の立場に立っているだろう。
 そこで、私は適正な解釈をすべきだと思うんですけれども、概念の整理が必要だ、こう思うんですが、総理の考えておられる集団的自衛権を研究する、そういう、いわばしてもよいんじゃないかと言われた方向性、そして、それをどうしようとされているのかについてお聞かせいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 憲法の解釈についても、人それぞれによって全く違う。集団的自衛権の解釈においても、現行憲法の中におきましても集団自衛権は認められているけれども、保有しているけれども、行使してはならない、行使できないというのが今の解釈の積み重ねでそういう議論になっているわけでございます。
 しかし、いろいろな科学技術といいますか兵器の進歩によって、どれが、どういう場合が集団的自衛権に当たるのか、個別的自衛権に当たるのかというのは、その時々の態様によって、見方によって、また人によって解釈が違ってくる。そういう点の議論というのは私は妨げないということを言っているんです。
 いろいろな議論が我が党内においても行われております。それは結構だ、さまざまな角度から研究してもいいのではないかということを言っているのであって、私は、特別に機関を設けてとか委託してとか、そういうことじゃないんです。党内でも自由に議論してくださいということを私は申し上げているつもりでございます。
赤松(正)委員 ありがとうございました。終わります。
瓦委員長 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 まず、質問に入ります前に、ニュースで大きく取り上げております、日本の瀋陽総領事館に、北朝鮮とおぼしきといいますか、北朝鮮の人が館内から中国警察によって連れ去られるということでございますけれども、これに対しまして、事情を照会するのは当然でありますけれども、これは主権国家としてきちっとやはり抗議をして、だれも納得できるような結末をつけていかないといけないと思うんですよね。
 明確なそういう意思を持ちまして対処をされているのかどうか、これは外務大臣の答弁を求めます。
川口国務大臣 おっしゃった件につきましては、八日の夕刻で、午後三時ごろでございますけれども、北朝鮮人と見られる五名が瀋陽の総領事館に突入を試みたということでございまして、総領事館の入り口で三名が中国側武装警察によって取り押さえられ、その後、二名が総領事館内に駆け込みましたところ、これらの者がその場に駆けつけた中国側の武装警察によりまして取り押さえられたわけでございます。
 現場におりました総領事館の館員が、中国側の武装警察に対しまして、これらの者を移動させないように求めましたけれども、武装警察側はこれを聞き入れないで、結局、五名を瀋陽市の公安局に連行をしたということでございます。
 この件につきまして、我が方の中国にございます大使館から中国の外交部に対しまして、もしこの点が事実であるとすれば、中国側の対応が極めて問題である、非常に遺憾である、特に、武装警察が我が方の同意がなく総領事館に立ち入ったということについては、領事関係に関するウィーン条約の第三十一条において定められております領事機関の公館の不可侵に反するものであるということで、中国側に強く抗議をする旨伝達をいたして、抗議をいたしたわけでございます。
 現在、中国側の、申し入れについて説明を待っているところでございまして、同時に、東京におきましても、本日、同様の趣旨を中国の大使に対しまして申し入れをすべく、現在手配中でございます。
井上(喜)委員 中国の警官が日本の領事館内に、館内といいますか館内の敷地の中に入ったということ、これは事実として確認されているんだと思うんですよね。したがって、やはりそういう事実をもとにして、断固としてこれは抗議すべきはすべきだと思うのでありまして、あいまいな態度で相手方の、先方の意向をうかがうということはおかしいと思うのでありまして、この措置につきましてはきっちりとやっていただきたい、こんなふうに思います。
 時間が余りありませんので、次に、有事法制のことにつきまして質問いたしたいと思います。
 自衛隊法ができまして大方半世紀たちますし、それから、有事法制の研究というようなことが始まりまして大方四分の一世紀たつわけですね。今回やっとこの有事法制の三法ができたのでありますけれども、しかし、これは大変大きな、画期的な意味を持ちます法制だとも私は思います。確かに、法律の中にも書いてありますように、幾つかの点においてこれから整備をされていくようになっているところもありますが、今回のこの立法措置といいますか、法律案の提出ということは大変大きな意味がある、そんなふうに思います。
 そこで、一日も早く有事法制を整備していく、その体制を全体として整えていく必要があると思うのでありますけれども、こういうことにつきまして、まず総理の決意をお伺いいたしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 いろいろな立場があると思いますが、やはり非常時に対し、緊急事態に対し常にどういう対応をしておくかということは、非常時が起きてからでは遅いわけでありまして、平時から、平和なときから考えておく、これは当然のことだと思っております。
 何で今ごろという批判をされる方もおられると思いますが、むしろ、今まで何でしてこなかったか、そういう批判もあるわけでありまして、私は、常に平和なときから非常時のことを考えておくという当然の責務を果たさなきゃならないという観点から今回法案を提出しているわけでありまして、いろいろ議論を積み重ねて、よりよい対応をすべく、この法案を提出したということを御理解いただければと思います。
井上(喜)委員 次の点、武力攻撃事態というような概念がここに出てきておりますけれども、わかりやすく言うと、そういう武力攻撃が予測される段階、あるいはそのおそれの段階に入った状況、現実に武力攻撃がある、こんな段階にこの武力攻撃事態というのを分類されています。分類されているといいますか、そういう概念が包摂されて武力攻撃事態という言葉が使われていると思うのであります。
 これは総理の答弁にありましたが、武力攻撃を受けた場合に、我が国が武力を行使してそれを撃退するんだ、こういうお答えだったと思うのでありますが、これは聞きようによりましては、相手の攻撃を受けて、受けて立つんだ、こういうぐあいに誤解されなくもないわけでありまして、私は、それは違う、そういう場合もあるけれども、まさに攻撃が始まろうとしているようなそういう時点においては、こっちからだって反撃するといいますか、そういう向こうの勢力を排除するようなことはできるんじゃないかと思うんですよね。また、そうやるべきである、それが敵を排除する有効な方法だと私は思うのでありますが、その点について、総理の御見解を伺います。
福田国務大臣 武力攻撃が発生したとき、この意味のことだと思いますけれども、武力攻撃による現実の侵害があってから後、要するに、具体的に言えば、ミサイルが着弾したからということではなくて、武力攻撃の着手があったときである、こういうことでございます。
 これは、武力攻撃が発生し、そして自衛権発動の三要件を満たした場合、これは自衛隊法の八十八条に基づく武力行使ということになっておりまして、そういう状態であれば、この八十八条に基づく武力行使になるということでございます。着手の段階からそれは含まれるというように考えております。
井上(喜)委員 今の御答弁で私なりに理解をいたしますと、必ずしも、向こうから撃ち込まれる、そういう事態の前の段階におきましても我が国は反撃できるというように理解をいたしたいと思います。
 さて、その次に、この武力攻撃事態につきまして、対処基本方針というのをつくるようになっているんですね。その対処基本方針についての中身でありますけれども、三つの項目が分かれておりまして、一つが「武力攻撃事態の認定」ですね。これは私は何となしわかります。まだ攻撃になっていないんだけれどもそのおそれがあるとかあるいは予測されるというような、こういうことでしょう。わからないのは二番目ですね。「武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針」というのは、これはどういうことを書くんですか。これは官房長官か防衛庁長官か、御答弁を願います。
福田国務大臣 この全般的な方針でございますけれども、これは、法案に定めます基本理念を踏まえつつ、現実の事態に即して武力攻撃事態への対処に当たっての統一的な指針を示すということで考えております。
 具体的に申し上げれば、例えば外交上の基本的な方針、国の防衛に当たっての基本姿勢、国民の安全確保についての考え方などを必要に応じて記載するということになりますけれども、その中に、さらに日米共同対処の基本的な方針ということなども記載することもあり得ると考えております。
井上(喜)委員 つまり、日米の共同作戦のようなことも必要に応じてその中に入り得る、こういう御答弁だと思うのでありますが、例えば、大きなテロが発生した、それは武力攻撃の事態と、事態といいますか武力攻撃そのものと認定する、判断しまして措置をとりますね。しかも、そのテロ自身が、第三国ないしはその支配下にありますある種の機関と密接に関係がある、そういうところの指示によって動いているというような場合に、どうも日本独自で、つまり日本からいいますと先んじてたたくということは、これは自衛権の行使の範囲内であればできるわけでありますが、日本自身としてその能力がない場合に米軍の支援を求めないといけない、こういう場合もあり得ると思うのですね。そういうような場合には、そういう米軍の支援もこういう中に入るんですか、書かれるんですか、いかがですか。
福田国務大臣 ただいま委員の御指摘のことにつきましては、日米安全保障条約の第五条の規定で日米共同対処するということになると思います。
井上(喜)委員 それは条約上はそうでありますが、そういうことをこの対処基本方針の中に書くのかどうかということです。非常にこれは大事なことだと思います。
福田国務大臣 これは、先ほど対処方針、全般的な方針ということで御説明申し上げましたけれども、その中に記載されることになると思います。
井上(喜)委員 よく検討して、わかりやすくひとつこういった方針をその場合にはつくっていただきたいと思います。
 その次には、国民の協力ということにつきまして一条を起こしてあるわけですね。およそ国の防衛というのは、国民の協力とかあるいは支持というものがなければできないわけですね。だから、こういった条文があるということは当然だと思うのでありますが、それにいたしましても、国民の協力というのはいろいろな形の協力があるわけでありまして、一体どこからどういう範囲で、主たるものとしてどんなことが考えられるのか、どういうようなことを国民に対し協力を求めていこうとしておられるのか、お答えいただきたいと思います。
福田国務大臣 国民の協力の具体的な内容、範囲ということでございます。
 例えば、地域における被災者の搬送、国民の生命、身体等の保護のために地方公共団体が実施する措置への協力といったような、そういうような内容を想定しておるわけでございます。
井上(喜)委員 ちょっと抽象的でわかりにくいのですね。もう少し具体的にきちっとした、そういうことじゃなくても、こういうこと、こういうこと、こういうことということを例示を挙げていただきたいと思うのです。
福田国務大臣 これから国民の協力の内容、範囲等につきましても法制整備をしていくわけでございますけれども、いろいろな場面が想定されると思いますので、そういうことはその検討の中で考えてまいりたいと思っております。
井上(喜)委員 よく検討していただきたいと思うのです。
 しかし、国を守るということは、国を守ることについての国民の共通の認識がないといけないと思うのですね。ですから、そういう共通認識、つまり国を守るということは非常に大切なことなんだ、基本的に大事なことだというようなことのために、一体、政府はどういうことをしようとされるのか、もし何かおありであればお考えをお聞かせいただきたいと思います。
福田国務大臣 これは、国民の協力を得るためにも国民の十分な理解を得なければいけない。それがなければ、この法案をつくる意味がないというようにも思っております。
 そういう意味で、政府といたしましても、日ごろから情報の提供など国民の広い理解を得るためのさまざまな努力を通じまして、国民の間に自然に自分の国を守る気概がわき上がる、こういうことも期待をいたしておるわけであります。
井上(喜)委員 次に、米軍の地位協定について伺いたいのですが、私は、この法律案が出まして、この地位協定なるものをよく読んでみたのでありますけれども、平時におきましては余り問題も起こらないような協定かもわからないです。
 といいますのは、米軍とかその家族は、原則的に日本の法律を尊重する義務があるわけですね。つまり、法律が適用されないわけです。尊重すればいい、こういうことでありますが、これは有事になりますといろいろな問題が起こってくるんじゃないかと思うのですね、一般の国民との間であるいは自治体との間で。
 ですから、やはり余りトラブルが起こらないような形で米軍が行動できるような、そういう法的な措置ないしはそれにかわるようなものが必要じゃないかと思うのだけれども、先日の川口外務大臣のお話を聞いておりますと、多少それらしいことをするような、するようでないような、漠とした答弁をされているのですよ。これはきちっとしておかぬと、後トラブルになったら厄介だと思うのですね。ここをどういうぐあいにしようとしておられるのか、明確にこれはお答えいただきたいと思うのです。
川口国務大臣 まず、おっしゃるように米軍が、これは我が国に対する武力攻撃が発生した場合には我が国を防衛するということを目的の一つとして、我が国との合意に基づいて駐留をしているわけでございまして、一般国際法上、外国軍隊には法令は適用されませんけれども、尊重義務があるわけでございます。
 それで、この関連で我が国が、米軍の行動が我が国に対する武力攻撃を排除する等といったような場合に、米軍が自衛隊と同様に円滑な行動を行えるように、これは支援を検討する必要がございまして、その際は、日米安保条約の目的の枠内、それから憲法の範囲内で行うということでございまして、今後、法制についての整備を政府全体として考えていくことになるわけでございます。
井上(喜)委員 NATOの地位協定を見ますと、日本の米軍の地位協定と同じような条項もあるんですね。つまり、米国の軍隊等が国内法を尊重する義務があるとあるのだけれども、一つ違っているところがありまして、NATOの場合はその後に、またとありまして、このため必要な措置をとることは派遣国の義務である、こういう規定があるわけですよ。日本の地位協定にはこれはないんですね。だから、派遣国の軍隊等には、派遣先の国の法律のストレートの適用はないけれども尊重する義務がある、それを、派遣国が必要な措置をする、そういうことができますように必要な措置をとると義務づけているわけですよ。
 日本の場合、これがないわけでありまして、だから、これは私は、地位協定の改定というのは難しい問題があるかもわからぬけれども、これはやはりよく検討して、日本もこれに取り組むべきだと思います。
川口国務大臣 尊重義務が一般国際法上あるわけでございますので、ここに仮に書いてないとしても、尊重義務は当然にあるということでございます。
井上(喜)委員 それでは、時間ですので終わります。
瓦委員長 一昨日の岡田克也君の質疑に関連し、桑原豊君から質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。桑原豊君。
桑原委員 民主党の桑原豊でございます。
 質問に入る前に、中国の日本領事館への侵入事件については、外務大臣はるる、何か経過を述べられておりますけれども、一体どういう姿勢で、何を申し入れて、今後どうするのかという、けじめのあるきちっとした対応というのをやはり明確に述べるべきだと思います。もう一回お話を聞きたいと思います。
川口国務大臣 それでは経緯については省かせていただきますけれども、これはウィーン条約の第三十一条に違反でございます。これは、領事機関の公館の不可侵を定めたものでございます。
 ということで、中国側に、在中国の我が方の大使館から、昨日の段階で強く抗議をしたところでございまして、さらに、本日午前中に在京の中国大使に対して同様の抗議をすべく、現在調整中でございます。
桑原委員 今後二人の身柄をどうして、そして今後どうするのか、そこら辺が全然明確じゃないじゃないですか。もう一回。
川口国務大臣 中国に関しては三つのことを昨日いたしておりまして、一つは、先ほど申しましたように、中国側に対して強く抗議をしたということでございますが、その内容といたしましては、総領事館内から連行をいたしました二人についての引き渡しを求めるということでございます。また、事実関係及び中国側の対応につきまして詳細な説明を求める、その二点でございます。
桑原委員 今後どうしていくのかということも含めて、私はしっかりとした対応をしていただきたいと思いますし、総理が、この問題については慎重に対応していこう、こういうふうに記者会見で述べられた、こういうようなお話も聞いておりますが、そのことも含めて、引き続き、私はこの法案の中の問題に入りますけれども、後から同僚議員からさらに質問をさせていただくということで、法案の中身に入らせていただきたいと思います。
 総理は、事あるごとに、備えあれば憂いなし、時には、治にありて乱を思うですか、忘れるなですか、そういう言い方で、この有事対応法案というものをしっかり今のうちにやらなきゃいかぬ、こういう考え方ですね。
 それで、そういったことが、一昨日などは、現憲法ではそれがなかなか難しいところがあるんだ、憲法の改正も展望してと。今の政治課題とはしないけれども、将来的なそういうものも展望していくんだ、こういうふうな議論まで展開をされておるわけでございますけれども、私は、今の憲法というものが有事に対してどういう対応を考えているのか、憲法としてどういう規定ぶりなのか、そこら辺、全く今の憲法はそういった有事とはある意味では無関係なんだ、そんなふうな認識なのかどうなのか、今の憲法が有事をどう考えて対応しようとしているのか、この点についての総理の認識をまずお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 それは、憲法の範囲内で、非常事態にどう対応すべきかということは法律で対応する、当然私は可能だと思っております。
桑原委員 どうもそこら辺がちょっと私の視点と違うんですが、私は、今の憲法もちゃんと有事に備えるそういう考え方があると思うんですよ。それはやはり、基本的な人権を尊重する国にしていくとか、あるいは平和外交、平和主義、国際協調、そして国民主権、そういった憲法の基本的な物の考え方ですね。それそのものがやはり、有事を起こさせない、そういう対応をするのが大前提なんだというところに、憲法の一つの有事対応の考え方があると思うんですね。
 しかし、そういうことをやっていても、なおかつ、万が一のことは起こり得るんだ、そういうことで万が一を起こさない対応はするけれども起きるんだ、では、そのときにはどうするかというのが考え方であって、今の憲法は有事に決して備えがないわけじゃないと私は思うんですよ。
 ですから、外交努力、いろいろな集団的な安全保障の問題なども含めて、どう本当に死力を尽くしてそういうものを展開していくのか。そこにやはり憲法の意義を認めていかないと、それを認めた上で、ではどうするのか、こういう話になると私は思うんです。そこら辺の見識、認識を総理にしっかりとまず伺っておかなければ、なかなかこの議論には入れないと私は思うんです。
 やはり日本の憲法というのは、さきの戦争の反省を踏まえて、力には力で対応するのではなしに、力にはやはり道理と信義、そういうものをもって臨むんだという強い決意でこれがつくられたはずなんですね。そういうところはやはり踏まえた上でなおかつという議論になっていかないと、私は大変おかしなことになると思うので、総理にお聞きしたいのは、日本の憲法の有事に対する考え方というのはどこら辺にあるのかというふうに認識されているのか、こういうことなんですよ。どうですか。
小泉内閣総理大臣 憲法改正論議は妨げないと私は言っているんです。現憲法の中で有事に対応する法整備を図っていこうというのが、小泉内閣の今提出している法案の内容でありますから。
 ただし、御承知のように、今の憲法の解釈によって、自衛隊は憲法違反だと言う方々もおられる。いや、自衛隊は憲法違反でないと言う方々もおられる。私ども政府は、自衛隊は憲法違反でないという立場であります。同じ文章でどうしてこういう難しい解釈が出るんだろうか。しかも、頭のいい、我々よりもはるかに頭のよくて勉強して、研究者の間でも、自衛隊は憲法違反だと言っている方もいるわけです、同じ条文を読みながら。
 一切の戦力を保持しないと言いながら、では戦力とは何かという国民の常識からわかりにくい点もあるということから、私は、憲法はもっとわかりやすいものがいいんじゃないかという改正論議が出てもいいと思うんであります。一方では、実際解釈でやればいいじゃないかと言う人もいます。そういう点は、私は、憲法改正論議は妨げないと。
 今の有事関連法案は、当然、いざというときに憲法の範囲内でどういう法律を制定するべきかということの対応である、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
桑原委員 私は、憲法改正のことをお聞きしておるんじゃなしに、今の憲法の中で有事というものにどう対応していこうとしているのかということについての総理の認識をお聞きをしておるわけなんです。そういうことでは、ちょっと何か議論がすれ違っているようですけれども。
 そこで、この有事関連法案をつくっていくに当たっては、今もおっしゃられたように、憲法の枠内でやっていくんだ、憲法の範囲内でやっていくんだ、こういうふうに言われているわけですけれども、この範囲内、具体的にどういうことでしょうか。
小泉内閣総理大臣 我が国の独立と平和を維持し、国民の生命と財産を守る、国民の基本的人権を守るために有事法制が必要だ、非常事態に対して。そういうことであります。
桑原委員 ここもまたすれ違いになるんですが。
 例えば、憲法の範囲内であるというのは、戦前の大日本帝国憲法下のいわゆる非常大権ですとか戒厳ですとか、そういったものなどのもとで行われたような内容のものをやるんではないとか、そこら辺の具体的な、どういう枠の中身なんだということを聞いているんですよ。それは、今言われたような抽象的な、そんなことを繰り返して言っても枠内というものの説明にはならないわけですので、そこら辺を具体的にお聞きしたいということです。
福田国務大臣 国家の緊急事態についての必要な施策を講ずるということによりまして、総合的な対処態勢を一層充実させて国民の安全を確保するということは、これは国の基本理念ということであり、また、重大な事態に対する基本的な考え方、基本的な態勢ということになるかと思いますけれども、武力攻撃事態への対処及びこれに関する法制の整備は当然のことながら憲法の範囲内で行うことといたしておるわけでございまして、旧憲法下の戒厳令とか徴兵制のような制度を考えておるわけではございません。また、憲法九条に関する従来からの政府の考え方、これも変わっていないわけでございます。
桑原委員 そうしますと、具体的にお聞きしますが、一九三八年に、戦前につくられました国家総動員法、こういったような態勢で国民を総動員していく、そういうようなことも考えていないというふうに理解してよろしいんですか。
福田国務大臣 それはもう当然のことでございまして、今の自衛隊と、それから国家総動員法が発動したときの戦前の軍隊、これの違いかというように思います。
 今の自衛隊というのは専守防衛であり、そして必要最小限の装備、また文民統制ということが貫かれておるわけでございますけれども、戦前の軍隊というのは、海外派兵は認められておる、そしてまた他国への脅威ともなった。また、統帥権の独立、こういうようなこともあったわけで、現憲法下における自衛隊とは全く様相を異にしておると考えてよろしいかと思います。
桑原委員 そこで、この対処法案の三条の理念の中の二項で、いろいろずっと条文が並んでおりますが、その中で、ある意味では唯一、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態においては、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない。」こういうようなことで、そういった事態を回避しよう、こういうようなことが盛り込まれておるわけでして、これは、ある意味では憲法の考え方そのものがかなり明確に出ているのかな、私はこういうふうに見るわけですけれども、これを入れたことの意味、そして具体的にそれを回避しようとしていくための策、そういったことをどう考えておられるのか、お聞きしたいと思います。
福田国務大臣 委員御指摘の、法案の第三条第二項の規定を置きました趣旨は、これは、我が国に対する武力攻撃が発生していない場合においては武力攻撃の発生を回避する、そのことが至上命題だということでございますので、これを基本理念といたしておるわけであります。
 そして、その具体的な手段、要するに発生回避のための手段ということでございますが、これは、我が国に対して武力攻撃を行おうとしている国に対して外交交渉を行うということですね、まず第一に。そして、経済制裁等の対抗措置の発動とかいうようなものも含まれますけれども、国際社会への働きかけもございます。また、当該国に対する、武力攻撃を思いとどまらせるようないろいろな手段を講じなければいけない、こういうことを含むわけでございます。
桑原委員 こういった事態が起きたときへの対処がるる述べられているわけですけれども、その中にあって、そういった形であくまでも回避しなければならないというこの条文、理念の持つ意味というのは、私は全体の中では大変大きなものがあるというふうに思います。そこを最大限やはり生かすために、どう具体化をしていくのか。そこら辺が、これから十分に議論をして、そして具体的なものをやはりつくっていかなきゃならない大切な部分だというふうに指摘をしておきたいと思います。
 さて、この法案の第三条の四項に、これまた理念の部分ですが、国民の権利の問題が明記されております。
 私は、この条文を読んでおりますと、憲法で言うところの国民の基本的人権を尊重しようということをこの法案の中で再確認をする条文だ、こういうふうに説明はされておりますけれども、中身を見れば、これはやはり包括的に、こういう武力攻撃事態になったときには権利は制約されますよと、制約されるということをむしろこの条文で述べているのではないか。そのときには、例えば必要最小限度のものであって適正な手続のもとでやるんだよ、こういうふうに手続は定めておるわけですけれども、私は、憲法の下位の法律にありながら、こういった形で包括的に基本的人権を制約するということそのものがやはり憲法の枠からはみ出すことになるんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、どうですか、その見解は。
福田国務大臣 法案の三条四項は、武力攻撃事態への対処に当たって人権の保障についての基本理念を定めたものでございまして、人権について包括的に制限を加えるものでは、そういう趣旨ではございません。
 また、この基本理念というものは、国及び国民の安全を保つという高度の公共の福祉のために必要最小限の範囲において人権を制約し得るとするにとどめておるわけでございまして、「国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」という、この憲法第十三条の趣旨に沿ったものと理解されるものであります。
桑原委員 では、具体的にお聞きしますが、戦前の反省というものに立つならば、いわゆる言論の自由であるとか、あるいは集会、結社の自由、精神的な自由権と呼ばれるものですね、そういったものが制約をされることによって、あの戦争というものが非常に悲惨な形をとっていった。そして本来なら、ある時期、言論の自由があればいろいろな論議ができて、戦争をこの時点でやめようじゃないか、そういうような議論だって起きたかもしれないわけですね。そういったことが制約をされたがためにああいった悲惨な結末になったんではないか、私はそういうふうな反省もあると思います。
 そういう意味では、この精神的自由権というのはいかなることがあっても、公共の福祉とでも申しましょうか、同じような権利がぶつかったときにそれを調整するという原理でならわかりますけれども、事態対処ということを概括的な、一般的な理由として、制約をしていくということはできないんではないか、してはならないんではないかというふうに私は思います、特に精神的自由権の問題については。
 そこで、具体的にお聞きするんですが、例えば、検閲をするとか、あるいは戦争反対ということを主張してさまざまな集会をしたり示威行動をする、そういったことなどの自由というのはこの状況下で許されるのかどうか、具体的に私は聞きたいと思います。
福田国務大臣 例えば、今、戦争反対の意思表明、御指摘になりましたね。そういう個人の意思表明について、これは明らかに個人の権利、国民の権利だと思います。ですから、ここでは、「公共の福祉に反しない限り、」ということで憲法十三条の規定があるわけでございますけれども、もちろんそういう意味において、集会とか、また報道なんかもそうでありますけれども、こういう自由というものは確保されている、権利として確保されているというように考えております。しかし、それはあくまでも公共の福祉に反しない限り、こういうことであろうかと思います。
桑原委員 私は、公共の福祉とかいう、そういう抽象的な言い方でお話をしているわけじゃなしに、ここには「武力攻撃事態への対処においては、」と、特殊なそういう状況下においての権利の問題を言っているわけですから、そういう状況下にあっても、もちろん公共の福祉という言い方をすれば何でも入ってくるわけですけれども、そういう状況下にあっても、憲法で認められているこの基本的人権の問題というのは何ら変わるところなくちゃんと保障されるんだということなのかということを聞いているわけですよ、具体的な問題を通じて。
津野政府特別補佐人 まず、先ほど、武力攻撃事態において検閲等が行われるのかというようなことの御指摘がございましたけれども、有事においても検閲等は禁止されておりますから、これは行われることはないというふうに御理解いただきたいと思います。
 それから、一般的に基本的人権がどの程度こういう事態におきまして制限されるのかといいますと、これは、憲法の保障する国民の基本的人権と申しますのは、有事においても尊重されなければならないことは当然のことでございます。その趣旨を、先ほど御指摘ありました法案の三条四項で書いてあるわけでありますけれども、他方、憲法十三条は「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と定め、公共の福祉のために必要な場合には、合理的な限度において国民の基本的人権に対する制約を加えることがあり得ると解されているところでございます。
 このような権利の制約がどの範囲で認められるか、これにつきましては、当該権利の内容とか権利を制約する必要性とか、その要件とか制約の態様によりまして異なるところでございまして、どの程度まで国民の基本的人権を制約することが許されるかを一般的に言うことは非常に難しいというふうに考えております。
桑原委員 私は、具体的にいろいろお聞きをしたわけですけれども、どう考えてもこの条文は、武力攻撃事態というものへの対処を前提にして、そしてその際の権利の制限についてはこうだというふうに包括的にやはり定められている、そういう法案ではないか、こういうふうに思わざるを得ません。そういう意味では、このことを理由にしてさまざまな制約が課せられていく危険性なしとしない、そういうふうに思わざるを得ないということをつけ加えておきたいと思います。
 さて、法案の次は、地方公共団体の責務と役割ということでちょっとお聞きをしたいと思います。
 第四条で国の責務、第五条で地方公共団体の責務が定められております。これも大変抽象的な規定の仕方でありまして、これを読んでもどこがどう違うのかというようなことがよくわかりません。六条は指定公共機関、そして七条は国と地方公共団体の役割分担が定められております。
 そこでお聞きしたいのですが、この役割分担、わかりやすくちょっと説明をしていただきたい。特に第七条の、地方の役割ということで、「国の方針に基づく措置の実施」。国の方針に基づく措置というのは一体何なのか。それから、「その他適切な役割」とこう書いてありますね。これは一体何なのか。それから、地方公共団体と申しましても、都道府県あり市町村ありでございます。地方公共団体の中で、それぞれにどういう役割分担があるのか、全然そこら辺が明確な形で伝わってこないわけです。ぜひわかりやすく説明してほしいと思います。
福田国務大臣 この七条では、国と地方公共団体との役割の基本を定めておるのでございますけれども、今後個別の法制を整備していく際の立法の指針となるものでございまして、地方公共団体の具体的な役割を定めているものではございません。
 「国の方針に基づく措置」「その他適切な役割を担う」ということは、住民の生命、身体及び財産の保護に関して、対処基本方針などの国の方針に基づいて必要な措置を実施するとともに、地方公共団体の自主的な判断により必要な措置を実施する役割を担うことを意味するものでございます。
 また、都道府県と市町村の役割は当然異なるものでございますが、その具体的な役割については、今後、個別の法制において定めていこうと考えているところでございます。
桑原委員 またまた、今後定めていくと。
 私は、この法案を本当に国民の皆さんに理解して、審議していただかなきゃならぬということになれば、少なくとも具体的な役割については、こういった大まかな区分けはこうですよ、そして大体主要な役割はこうですよ、それくらいまではちゃんと説明をされなかったら、何でもかんでも、別途の法律でそれは定められるんだからこれから議論をしますでは、これはもうとても議論にならないというふうに思いますね。
 きのうの毎日新聞で、都道府県知事のこの法案に対するアンケート結果が公表されておりました。四十七人のうち三十五人の知事さんは、よくわからないので態度保留だというようなことで、四分の三がよくわからないと。そして、さまざまな国からの情報提供も極めて不十分だという方が三十二名というようなことで、肝心の、この法案ができて具体的な任務を執行していかなきゃならぬその自治体が、この法案はよくわからない、自分たちが何をすべきなのかということがはっきりつかめないということですね、だからわからないわけですよね。そういう状態では、私は、やはり審議にたえられるような内容じゃないんじゃないかというふうに言わざるを得ません。
 ところが、一方では、そういうわからない割には、ちゃんとやらなかったら国が指示をし、かわりに執行するというような制度まで、そういうものだけはちゃんと出てきているわけですね。これではやはり逆に不安になるというふうに思うわけです。
 そこで、さらに具体的にまた聞きますが、この地方公共団体が実施をする、対処基本方針に基づいて行っていく対処措置なんですけれども、この対処措置の内容というのは一体何なんですか。これは主なもので結構です。教えてください。
福田国務大臣 この第五条に記載しております「必要な措置」の具体例でありますけれども、避難のための警報の発令、伝達、被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧等、国民の生命、身体、財産の保護に関係する措置を中心としたさまざまな必要な措置を指したものでございます。
片山国務大臣 今、委員からいろいろお話がございましたが、この法律をつくる過程におきまして、私どもの方は、できるだけ地方団体に情報を提供いたしました。また、法案が閣議決定したときには、その内容を通知いたしましたし、法案の説明会もいたしました。
 今後とも十分な連絡、通知はいたしたいと思いますけれども、具体的に何を地方団体に期待してやってもらうかはこれから個別法制で決めていくんですね。今のこの武力攻撃事態対処法案は、大まかな考え方、大まかな分担を抽象的に決めているわけですから、知事さんや市町村長さんはもう一つそこのところの御理解が不十分かと思いますよ、まだ具体的なことはわからないんだから。しかし、これから個別法制を詰めていく段階で、我々も中に入ってしっかり検討して、その都度連絡をして、十分な理解を得たい、こういうふうに思っております。
 今官房長官がお答えしたのが大体の考え方ですよね。例えば今の、警報の発令や伝達だとか、避難のいろいろな対応だとか、あるいは救助の問題だとか、あるいは施設や設備の応急復旧、こういうことは大きな仕事だと思いますけれども、これから具体を詰めるわけですから、その詰める段階で、地方団体の意見を十分踏まえて中に取り込まなきゃいけません、協力してもらえないから。
 そういうことの段階の上で、まず総合調整をやって、その上で、指示だとか要件を決めて、内容も決めて、あるいは代執行的なことをやる、こういうことになりますから、その辺は今後我々も十分念頭に置いて対応してまいりたいと考えております。
桑原委員 これも、私は、国民にとっては一番、あるいは自治体にとっても一番の関心事はそこら辺だと思うんです。今のところは具体的なイメージはなしということで、これからだと。これじゃ今まで何をしていたのか、やはりこういう話にならざるを得ないんじゃないですか。これを準備して出してくるのが有事法制なんでしょう。
 官房長官、例えば今、避難の問題なんかをちょっと提起されました。具体的にどこまで考えておられるのか聞きたいんです。例えば戦前は、戦前の話をしますよ、というのは、戦争状態、大変な騒乱状態になればまさに同じなんですよ、あの空襲のときと。そういうことを想定して、どうするかという話なんでしょう。そうすれば、対応の仕方だって似通ってくるはずですよ。
 そこで、お聞きをするんですが、空襲に対しては、昭和十八年に時局防空必携というのが出されておりますね。これは時の内務省が、いわゆる重要な都市の家庭には必ずその必携を一冊ずつ備えさせて、そして例えば空襲のときの防空ごう、避難場所をどうするか、そして隣組だとか、いろいろな人たちとふだんの連携を強めて、さまざまな訓練をしてそのときに備える、こういうような内容で、かなり詳細にわたってこれは決められておりまして、その第一には、総理の大好きな備えあれば憂いなしという言葉が出てくるわけですね。そして、ふだんから次のような準備を整え、常に点検し、訓練を重ねて、いつでも役に立つようにしておかなければならないと。
 これは結局、そういったことを含めてやっていくということなんですか、例えば避難なんかの場合は。どこまで考えているんですか、それは。
福田国務大臣 昭和十八年といいますと、本土空襲が始まるかどうかというころだったと思いますけれども、本土空襲ということになれば、それはもう防空ごうを掘るとかそういったようなこともしなければいけないような状況になるわけですね。ですから、その状況ということもあろうかと思います。
 その前に、十六年に戦争を始めているわけでございますからね。ですから、戦争が始まったという事態というのは、これはまさに戦争状態でございますから、そういうような危険性はあるかもしれぬという予知もできるわけでございますけれども。ですから、その状況を判断して、それに応じた対応を考えるということになるかと思っております。
 この法案では、この国民の避難ということについては、これは、国民の生命等を保護するため、または武力攻撃が国民生活等に及ぼす影響を最小とするために実施する諸措置ということでございますけれども、このことの具体的なことにつきましては、個別法制を検討する中で、国、地方公共団体及び指定公共機関の役割等も含めまして具体的に定めていきたいと考えております。
桑原委員 一方では、法案の中では、この事態に対しては万全の措置を講じていかなきゃならぬというふうに決めてあるわけですね。そして具体的に出されてくるこういうことについては、今の段階では具体的にはわからない、これから議論して決めていくんだ。そして今具体的にこの問題についてはどこまでだというふうに聞けば、これは事態の態様に応じて考えていくんだと。
 こういう答え方だと、今の段階で一体どこまで対処措置というものの中身を考えているのかというのが全然国民の前にはっきりしてこないではないですか。役割分担もはっきりしない、具体的な対処措置の中身もどこまで考えるとかということははっきりしていない、避難の問題一つにしてみても。私は、ある意味では極端な、大空襲に対する対応の策を、戦前はこうだったよというふうに言ったわけですけれども、いや、それじゃないんだというような否定をできない。
 だから、どういうところまで考えているのかという具体的なイメージが皆さんの頭の中にどういうふうにあるのかというのが自治体や国民に伝わらなかったら、これは議論のしようがないんじゃないですかね。どうですか。
福田国務大臣 そもそもこの武力攻撃事態対処法案というものは、対処に関する基本理念、それから対処の際の基本方針、こういうものの事項を定めまして、そして、武力攻撃事態への対処の措置はすべてこの枠組みの中で行っていこう、こういうことでありますので、この枠組みを設定したというようにも考えていいのではないかと思っております。
 今委員御指摘の懸念も、今後法制整備するに当たりまして、関係機関の意見とか国民的な議論の動向も踏まえながら、十分な国民の理解を得る、そういう仕組みを考えていかなければいけないものだというように考えております。
桑原委員 この対処措置は、地域によっていろいろな内容になるんではないかという気がいたします。原子力発電所があるところ、あるいは基地があるところ、重要港湾や空港があるところ、いろいろ地域によって違いが出てくるのではないかと私は思いますけれども、地域的なそういう違い、内容の問題というのは、これはどういうふうに考えておられますか。
福田国務大臣 国が定めます対処基本方針につきましては、個別の地方公共団体が講ずる対処措置まで具体的に記載するものではございません。したがって、各地方公共団体は、国の対処基本方針に基づいて、地域の実情に応じた判断のもとに対処措置を実施することになると考えております。
桑原委員 この対処措置というのは、地方団体がそれぞれの判断で決めていくということになるんですか、法律に基づいて。
 それと、この対処措置の法案をつくる段階で、地方の意見というのがどういうふうにして、どういうふうな仕組みで反映されるようになるんですか。その二点。
福田国務大臣 対処措置は、国、地方公共団体及び指定公共機関が法律及び対処基本方針に基づいてそれぞれに実施するものでございまして、対策本部が決定するものではございません。
 また、対策本部長が総合調整を行う場合は、地方公共団体は対策本部長に意見を申し出ることができる、こういう形になっております。
桑原委員 対処措置そのものを決めていくのは、法に基づいて地方公共団体が決めていくということですか。それでよろしいのですか。
福田国務大臣 そのとおりであります。
桑原委員 その法律をつくっていくときに地方のいろいろな意見を聞くというお話がさっきから出ていましたけれども、それはどういう仕組みの中でそういう意見が決められていくんですか。
片山国務大臣 官房長官の所管でございますので、お答えがあるかもしれませんが、いろいろなルートで、私どもも恐らく中に入って一緒にやるようになると思いますから、地方団体の意見を公式、非公式に我々は集約して、それを法案に生かすような形で、内閣官房を中心に協議してまいります。その点、御心配なく、しっかりやります。
桑原委員 今まで質問して中身がほとんど明らかにされていないのに、御心配なくと言われても、そうですかというわけにはいかないんですけれども。
 そこで、対処措置が実施をされるに当たっては、いわゆる対策本部長たる内閣総理大臣が総合調整を行いますね。その際に自治体は意見を申し述べることができる。そこまでは書いてあるんですが、では、その意見はちゃんと尊重されることになるのか、あるいは、対策本部長は調整役だから、その意見は意見として聞きおく、そういう内容なのか、それはどっちなんですか。
福田国務大臣 地方公共団体等が意見を具申すれば、それは可能な限り尊重するというのは、この法案の趣旨だと思います。わざわざそういう条文を入れたことがそのことを意味していると考えております。
桑原委員 尊重されるのなら尊重するというふうに明記しておかないと、要するにこの意見の結果決められていく対処措置というものが実施をされないときには、その後、国が指示をしたり、あるいは代執行したり、そういう強制的なものにつながっていくわけですからね。私は、もしその意見をちゃんとしんしゃくするなら、その旨を明記しておかなければその後の手続にはつながっていかないんじゃないか、こういうふうに思いますね。
 それから、今申し上げました対処措置が実施されないときには、地方公共団体がその対処措置を実施しない、いろいろな理由があるんでしょうけれども、そのときには、国は実施する旨指示をする。そしてその指示にもさらに従わない場合、そのときには、国はもう地方公共団体にかわってみずからその措置を行う、あるいは実施しない場合でなくても、そのための必要性を認めれば、国はみずからその措置を地方公共団体にかわって行う、こういうような規定が入ったわけでございますけれども、私は、これは地方公共団体に対する国の関与を定めた地方自治法に反するのではないか、地方自治法に触れてくるのではないか、こういうふうに思うんですが、そこら辺、どういうふうに整理をされておられますか。
片山国務大臣 地方自治法が国と地方の関係あるいは国の地方に対する関与を決めているのは、基本的なこと、一般的なことでございまして、今回の法案が想定するような場合、国の独立や平和が乱される、国や国民の安全が脅かされる、こういうときは地方団体も国と一緒になってそれぞれの役割分担に応じて対応するというのは、私は当然のことだ、こう思います。
 したがいまして、今回の法案でも、まず本部で十分な総合調整を本部長がやる。その上で、それにも応じないというような場合には指示を出し、さらにそれにも従わない場合には代執行をやる。
 しかし、それについては極めて場合を限定していますよね。国民の生命、身体、財産を守るためにどうしても必要だ、あるいは、武力攻撃の排除のために支障がある、こういう特定の場合に限って、しかも、段階を踏んでやる。しかも、要件や手続をはっきりと法律で書く。こういうことでございますから、私は、地方自治法に抵触することはないと考えております。
桑原委員 地方自治法の二百四十五条の三は、国の、あるいは都道府県の場合は市町村の、関与の基本原則を定めておりまして、その二項では、国は自治事務の処理に関してはできるだけ代執行しないようにしなければならない、これはそういう規定がございますね。
 それから、その六項でしょうか、今度は、国は、国民の生命、身体または財産の保護のため緊急に自治事務の的確な処理を確保する必要があるとき、そういう場合で特に必要と認められる場合を除き、指示できないようにしなければならない、こういう趣旨の規定がございます。
 私は、この解釈なんですけれども、自治法というのは、ある意味では、他の個別法と対等な位置に立つわけですね。ですから、上位の法律ではございませんから、自治事務についてそういったことをしてはならないという規定は、私はできないと思うんです。個別法をつくればそういったことができる仕組みにはしておかなければならないわけですけれども、しかし、対等だとはいえ、自治法の趣旨としては、自治事務については、そういったことはよほどのことがなきゃやっちゃならないんだよということの規定だと私は理解しているんですね。
 そういう意味で、今回の場合、ある意味では、大変な事態であるがゆえに、自治体というのがその地域の実情に一番明るいわけですよね。住民の身近なところにあって、いろいろな意味で、自治体が責任をいろいろなことに持つというのはそこに意味があるわけです。そこに加えて、国の指示があり、あるいは国の情報が入り、国の支援が入って、自治体が住民のために判断をするということは、私は、最大限尊重、むしろそういうときこそ尊重されなきゃいかぬのじゃないかというふうに思うんですよ。
 そういう意味で、そういうときには、指示に従わないということだけをもって国が一方的にかわりにやるという仕組みではなしに、むしろ、自治体と協議をしてちゃんとやるというような規定の方が本当は国民のためになるんじゃないですか。そこら辺の考え方はどうですか。
片山国務大臣 今の自治法で、自治事務については指示や代執行的なことはできるだけ遠慮しろと。これはそうですね、今、地方団体にある事務を法定受託事務と自治事務に分けたんですから。法定受託事務の方は指示も代執行もあるんです、御承知のように。自治事務も、個別法で書こうと思えば書けるんです。だけれども、できるだけ慎めというのが精神ですよね。
 しかし、今回の場合は、今委員が言われたよほどのことなんですよ。しかも、万一の場合なんですよ。だから、できるだけこういう場合には、こういう担保をとっておって、伝家の宝刀はなかなか抜かぬでもいいんですよ。しかし、抜くという構えでやってもらう、こういうことでございまして、精神は、国と地方が十分相談をして、お互い合意してやるんですよ。しかし、万一の場合にそれができないと国民が困る、国が困る。だから、その場合にはこう仕組みの担保だけとる、こういうふうに私は理解しております。
桑原委員 自治法もそういうことを担保して、自治法の中では、「国民の生命、身体又は財産の保護」これは明記されているんですよ。今回は、それに加えて「又は」ですね、プラスじゃないんです。「又は武力攻撃の排除に支障があり、」それが加わっているわけです。
 私は、やはりその武力攻撃の排除についての判断というのは、これは自衛隊が中心になってやると思うんです。そこら辺に、そういう理由さえつけられれば、地方自治がある意味では停止される、中断される、そういうことに自治法の精神をさらに前提を広げてしまうことになって、非常に私は、地方自治を停止するのに悪用されるんじゃないか、そこら辺を心配いたします。
 有事法制だって、今までの自治法の規定ぶりでやれるわけですよ、はっきり言って。そこら辺、どういうふうに考えてこの「又は」を入れたのか、そこをお聞きしたいと思います。
片山国務大臣 国民の生命、身体、財産の保護のために必要だというのが一つありますね。それから、今委員が言われたように、または武力の攻撃の排除に支障がある場合、この場合が結局はワンテンポあって、また国民の生命、身体、財産の保護に支障があるんですよ。したがって、そこで自衛隊の行動を円滑にするとかということも結果としてはそこに結びつくから、このフレーズが私は入ったと思いますね。
 この「又は」というのは、「又は」は及びと読むので、両方兼ねた場合と単独だけの場合と、両方私は読める、こういうふうに解釈していただきたいと思いまして、問題は、運用上それを理由に今の指示や代執行を乱発されちゃ困る、こういうことだろうと思いますけれども、それは万般言いましたように、この法律はよほどのことがある万一の場合の法律ですから、運用上はそういう精神で、悪用しない、これを多発しない、乱用しないということで行われるべきだと思いますし、そうだと考えております。
桑原委員 「又は」は及びと読めるという、それも甚だおかしな話ですけれども、私はそこら辺にかなり、そういう意図を持って悪用しようと思えば、それを理由にしていろいろなことが地方自治に侵害としてかけられてくる、そういう可能性がやはりあるということを指摘しておきたいと思います。
 そこで、この対処措置は別途法律をもっていろいろ決めていくんだということでありますけれども、具体的にいつごろ、どういう手順で、そして形式的にはどういう形で決めていくのか。それぞれ個別法を幾つもつくってやっていくのか、あるいは何か一つのもので決めていくのか、あるいは自治法の中でそういったものを加えていくのか、それはどういうふうにお考えでしょうか。
福田国務大臣 委員御指摘の点も踏まえて、そういうことも含めて、今後二年以内にそういう法整備をしていこうというように考えておるところです。
桑原委員 そういうことで、総務大臣はどういうふうにお考えですか。
片山国務大臣 法律で二年以内に、こう書いてありますから、国民の皆さんからいいますと、この国民保護法制、個別法制がなるべく明らかになった方がそれは非常に理解しやすいということもありますので、できるだけと、こういうことでございますが、非常に多岐にわたりますし、国民の皆さんのやはり理解の熟度というのもありますから、その辺の時間はかかると思いますが、内閣官房を中心に、関係の私どもも入りましてその個別法制をつくり上げていく、こういうことになると思います。
桑原委員 地方自治体関係ほとんどが、具体的に役割分担も含めてこれから整備をする、これから考えていく、これから意見を聞いていくという、そればかりでございます。一番ある意味ではいろいろな関心を持ち、またかかわりが深い、そういった部分がすべて先に送られているということで、私は、この法律というのは、先ほどもちょっと話をしておったんですが、何か有事法制をつくるための、むしろ、そういう枠組みをつくる、そういう委員会でもつくるための法律をつくった方がよかったんじゃないかと。そこでしっかり議論をして、いろいろな意見を聞いて、みんなでつくっていくというような、そんな中身以外出ていないんじゃないかと。みんな、中身を聞けば、先々だ、こういうことでは、しっかりした、国民の皆さんにある意味では理解をしていただけるような中身にとてもならないような気がいたします。
 さて次に、今までいろいろ議論になってきております、周辺事態と、それから、武力攻撃が予測をされるに至った事態、そういった事態との併存状態におけるときのさまざまな対応について少しお伺いをしたいというふうに思います。
 まず、周辺事態のときに、日本のいわゆる平和と安全にとりまして、周辺でそういう影響を及ぼす事態が起きている、これに米軍が対処している。これに支援活動を行います。いわゆる後方地域支援、船舶検査の問題あるいは捜索救助活動、そういったさまざまな支援活動が行われるわけですけれども、このときは、武力行使と一体化しないということで支援の範囲というものが決められております。
 これが予測事態と併存したとき、そのときに米軍に行われる支援というのは、その範囲を超えて何か行われることになるのか、あるいは、一体化しないという前提のもとで従来どおり行われるということになるのか、その関係を少し整理して教えていただきたいと思います。
福田国務大臣 武力攻撃事態と周辺事態とは、それぞれ別個の法律上の判断に基づくものでございます。我が国に対する武力攻撃事態が発生しているときは、状況によっては両者が併存する、こういうこともあり得るわけでございます。
 武力攻撃が予測されるに至った事態というのは、これは、我が国は武力の行使を行っていない状態であります。そういう状況でございますから、それ自体が武力の行使に該当しません。米軍の武力の行使と一体化するということもないのでございまして、御質問はそういうことだったと思います。
桑原委員 いや、我が国の武力攻撃事態に対する行為が一体化する、そういうことじゃなしに、米軍への支援活動の内容がどういうふうに変わるのか、変わらないのか、それを聞いているんですよ。
福田国務大臣 米軍の武力行使と一体化するものでない支援ということでありまして、米軍の活動に対して行うことについては、これは、集団的自衛権の問題とか、そういうことにもなりますけれども、集団的自衛権の行使の問題にも関係しないし、憲法上の問題は生じておりません。
桑原委員 ということは、周辺事態の際に行われる支援活動の域を超えない、こういうことでよろしいわけですね。
中谷国務大臣 周辺事態における米軍支援の対応につきましては、周辺事態法に基づいて行うわけでございます。武力攻撃事態における米軍支援につきましては、武力攻撃の事態の法律に基づいてやるわけでありますが、先ほど官房長官が御説明したとおり、予測の段階におきましては、武力攻撃が発生していないために、周辺事態と同様に、我が国が武力の行使を行うことはなくて、米軍の武力の行使と一体化をした支援を行うこともございません。
 この武力攻撃事態への対応としての米軍支援のあり方につきましては、今後、法整備を行っていく中で検討していくことになりますけれども、このような考え方が変わるものではございません。
桑原委員 それと、国と地方公共団体とのこの際の関係ですけれども、周辺事態のときには、国が地方公共団体にさまざまな協力を求めることができる。その協力は、基本的には協力という内容ですから、地方団体に正当な理由があればそれを拒むことが可能であったわけですね。
 例えば、港の使用の際などに、既に地方公共団体でさまざまな物資をそこに運び込む船を入れていく、こういうようなことが決められておるような場合に、さらにそれを押しのけて、いろいろな、米艦船が入るとか自衛隊の艦船が入るとかということになれば、それは正当な理由で地方団体は拒むことができるということになっていたわけですけれども、そういったいわゆる正当な理由というものがあれば、この予測される事態のようなときにはどういうふうに対処されることになるんでしょうか。同じように拒むことができるのか、あるいはそれはだめなのか、そこら辺の考え方を少し整理してください。
福田国務大臣 武力攻撃事態におきます自衛隊や米軍の行動に対する支援につきましては、今後整備していくこととなります事態対処法制により定めるということになっております。したがいまして、地方公共団体が講ずべき措置につきましては、当該法制を整備する過程で検討する、こういうことになっております。
桑原委員 だから、それはわかったんです。そういう正当な理由の話を……。
福田国務大臣 周辺事態、周安法との関係につきましては、周辺事態と武力攻撃事態とはそれぞれ別個の法律上の判断に基づくものでございますので、仮にこれらの事態が併存するという場合におきましても、おのおのの法に基づく措置の法的性格は変わりません。
桑原委員 そうすると、周辺事態法のときのような理由でそれを拒むというようなことは、武力攻撃事態のその予測される事態では、そういうふうなことは今から考えるということになるのか、あるいは、それはそういう事態とは違うんだから違う考え方でいくんだということになるのか、それはどうなんですか。
福田国務大臣 ただいま申し上げたとおりなんでありますけれども、地方公共団体が講ずべき措置につきましては、当該法制を整備する過程で検討してまいりたいと考えております。
桑原委員 これからそこら辺は考えていく、こういう内容ですね。
 さて次に、国会の承認ですね。この併存事態というのは大変ややこしいことになるような気がするんですよ。周辺事態における自衛隊の対応措置、さまざまございますけれども、この承認は原則、国会における事前承認、こういうふうになっていますね。そして、今度のこの事態対処法案における対処基本方針の国会承認というのは事後ということに原則なるわけですね。
 この事態対処の法案は事後、同じ時期にある周辺事態の対処法案は事前と、ある時期に二つのものが、同じ事態に対応する問題として二つ承認をされていく、こういうことになるわけですけれども、そこら辺、どうでしょう。見ていると、非常に混乱をし錯綜しているように見受けられるんですけれども。理屈の上では整理はできるんですけれども、具体的にどうですか、そこら辺。どういうふうな対処の仕方をするんですか。
福田国務大臣 これは、それぞれの法律に従って国会との関与というものを決めてあるわけでございますので、国民の理解と協力を得ながら、時期を失することなく所要の措置を講ずるために、適時適切なる国会の関与を経ていかなければいけない、こういうことでございます。
 この国会承認などの枠組みは、こういう観点から、それぞれの法律にその手続が定められているもので、周辺事態と武力攻撃事態が併存するというような場合にも、それぞれの法律に基づいて国会承認を求めるべきであり、国民の理解も得なければいけないと考えております。
桑原委員 理屈というか言葉の上ではそうなるんですけれども、現実に二つの事態が併存して、一方で事前の承認、一方で事後の承認、そして対応の対象になる事態というのは同じ状況なんですね。そこら辺、非常に錯綜し混乱をする、そういう可能性があると私は思います。そこら辺をどう整理されていくのか。
 私は、まずお聞きしたいのは、二つの事態が併存をするというこの考え方、これはどう説明するんですか。日本の平和と安全にとって重要な影響を及ぼす事態、まだ武力攻撃事態ではない事態ですね、それは。いろいろな対応の仕方いかんによっては、そういう事態ではないようにしていくことができるはずです。その事態と、おそれがある事態。やはり私はちゃんとした概念の区分けがあるんじゃないかと思うんですが、どうしてそれが併存するというふうに考えられるのか。具体的な例で説明しないと、これはわからないと思うんですね、観念的には何かあるような気もするんですけれども。それはどうなんですか。そこら辺、どういう理由で、どういうことでそれを説明されるんですか。具体的に。
中谷国務大臣 周辺事態につきまして、最初に国会承認の手続のお話がございましたけれども、周辺事態法の場合につきましては、基本計画をつくって、国会承認は、その実施をするかしないかということを承認するわけでございます。基本計画は国会に報告というふうになっております。そこが違う点でございます。
 それで、事態の違う点はどうかといいますと、周辺事態につきましては、我が国の周辺に起こった事態の中で我が国の平和と安全に重大な影響を与える事態ということで、基本的には後方支援等をしてその事態の鎮静化に努めるわけでございます。
 我が国の武力攻撃事態といいますのは、まさに我が国の国家にとっての武力攻撃に対処するということでございまして、それを念頭に我が国みずからの問題ととらえて主体的に備えをするという点で、基本的な考え方が違っている点で、法律も違いますし、それぞれの対処も違ってくるという概念で整理をしているわけでございます。
桑原委員 これはこの前もちょっと議論になりましたけれども、例えば、公海上で日本の自衛隊の艦船が周辺事態の支援をしているために出ていて、そこに攻撃が加えられた場合、周辺事態とその予測される事態が併存しておって、そこに攻撃が加えられた場合、周辺事態の対処の仕方ではそこから戦闘地域以外のところへ退いて、そこは戦闘地域になっちゃったわけですから区画を変更する、こういうような手続に入るわけですけれども、おそれの事態も併存しているということであれば、そのときの対処の仕方というのはどうなるんですか。それは変わってくるんですか、そういう事態のときは。
中谷国務大臣 基本的には、その船舶に対しまして組織的また計画的な攻撃が発生する場合におきましては我が国の自衛権の発動という事態になりますが、これは武力攻撃が発生した事態でございますので、それ以前の段階の対処等につきましては、周辺事態等におきましては基本的にそういう攻撃から回避をするということになろうかと思いますし、また、我が国の予測される事態というふうな事態におきましては、隊法九十五条に武器防護等がございまして、そういう手段で対処しつつ危険を回避するということになるわけでございます。
桑原委員 そうすると、併存事態のときには、いわゆる退避をするということではないということですね。あるいは、攻撃のあり方が組織的、計画的であれば対処するけれども、そうでない場合には退避をするということになるのか、そこら辺の整理はどうですか。
中谷国務大臣 基本的には、まだ自衛権を発動していない段階でございますので、そういう事態を回避して自分を守るということでございます。
桑原委員 回避をするという中身はちょっとよくわかりませんけれども、基本的には、周辺事態での対処というのを基本に置く、こういうことでよろしいわけですね。防衛庁長官、そういうことでよろしいわけですね。
中谷国務大臣 そのとおりで結構でございます。
桑原委員 次に、米軍の行動なんですけれども、私は、国際法上は米軍の有事における行動、有事でなくてもそうなんですけれども、これは国内法の適用除外だと。しかし、一方では国内法を尊重する義務がある、これは地位協定の十六条にも決められているわけですけれども、適用除外であるけれども尊重義務がある、これはどういうふうに説明するんですか、中身。これは、どなたに聞けばよろしいんですかね、外務大臣ですか。
川口国務大臣 まさにおっしゃるようなことでございまして、尊重義務が一般国際法によってあるわけでございます。適用はないけれども尊重義務があるということでございます。
 それで、そういったことの中身というのは、まさに公益あるいは国民の利益をどうやって守るか、国民に対する影響を考慮に入れる、公共の秩序がどうかといったことで、我が国の憲法の範囲内、それから日米安保条約の目的の枠内において判断をされるということでございます。
桑原委員 そうすると、米軍が共同対処の際に行う諸行動、それは、我が国の国内法を尊重しなきゃならぬ、こういうことになるわけですか。
川口国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
桑原委員 自衛隊のさまざまな適用除外であるとか、あるいは自衛隊の行動にかかわるいろいろな、逆に言う制約であるとか、そういった法律は、では米軍にも同じように適用されるという意味でですか、それは。それは違うんですか。それはどうなんですか。
川口国務大臣 そういった有事の際でございますけれども、米軍の行動に必要な施設、物品または役務の提供ということがあるわけでございますけれども、そういったことの法制につきましては、今後二年以内に検討をしていく、取り組んでいくということでございます。
桑原委員 その尊重義務というのは、中身はどういうことなんですか。尊重義務というのは、尊重するだけという意見もありますし、ちゃんと守らなかったらだめだというのもありますし、どうなんですか、それは。
川口国務大臣 尊重義務の中身、どういう義務があるかということでございますけれども、米軍が我が国の国内法令を尊重するということは、我が国の国内法令を実体的に守るということでございます。
 それで、実体的に守るということは、米軍は、個々の法令につきまして、手続規定を含めて、厳密な遵守を求められているわけではないものの、米軍としては、日米安保条約の目的達成の範囲内でみずからの行動の必要を確保するとともに、公共の秩序や国民生活への影響を考慮しながら、その当該法令の法目的に反しない行動をとる、そういう意味でございます。
桑原委員 法を犯した場合、法に触れた場合、国内法とたがうことになった場合、その場合はどうなんですか、大臣。尊重義務というのは、その内容は、そういう場合にはどういうふうになるんですか。
川口国務大臣 我が国の国内法令に対する尊重義務というのが、その具体的な内容に関しましては、平時においても、それから有事においても、日米安保条約の目的達成の範囲内での米軍の行動の必要性、それから我が国の公共の秩序及び国民生活に対する影響を考慮に入れて判断をされるべきものであると考えております。
桑原委員 いや、私は、だから、尊重の中身は、例えば、それを尊重しないということになったときにどういうことになるんだ、こう聞いたんですけれども、大臣。
川口国務大臣 尊重をするというのが前提でございます。
桑原委員 大臣、尊重するということ、それじゃ意味がないじゃないですか、尊重するというだけでは。尊重しなかったらどうするんだということがはっきりしていて、尊重することはどういうことなんだという意味内容がはっきりするわけでしょう。どうなんですよ、それ。
川口国務大臣 尊重をするということが前提であるということでございます。
津野政府特別補佐人 米軍に日本の国内法規は適用されないといいますか、これは、適用されない、尊重義務があるということになっているわけでございますけれども、一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には、特別の取り決めがない限り接受国の法令は適用されない。それで、接受国の法令を尊重しなくてはならないということになりまして、当該軍隊を派遣している国の一般国際法上の義務になっているわけでございます。したがいまして、尊重するということは、この法令の適用があるということではございません。そういうことではございません。
 この日米地位協定におきましては、駐留軍の移動に関する部分につきまして一定の法律の適用がある場合がございます。そういったケースを除きまして、直接に駐留軍に対して法令が適用されるというようなことはございませんので、したがいまして、法令に違反するというようなことも、適用がない以上あり得ないということでございます。
桑原委員 特別の取り決めがない限りは国内法の適用はないと。
 さて、有事の際の米軍の行動ですね。これに対して、アメリカ軍は日本の国内に基地があり、有事に際しては共同対処する。本当に、アメリカ軍の行動そのものが、日本の平和と安全にある意味では直結をしてくるわけですね。そういった行動を今後我が国としてどういうふうに見ていくのか。
 その際、新たな有事に際しての取り決めのようなものを考えているのかいないのか。地位協定、先ほども御意見がございましたね。地位協定について、これは主に基地使用ですとかいろいろな問題について、平時段階におけるさまざまな取り決めだ。有事のときはどうなるんだと。いや、どうも、手をつけるのかつけないのか、どこをどうしようとするのか、全然今までの議論でははっきりしていないんですけれども、新たな取り決め、まあ新たな法制ですね、あるいは地位協定の改定、そんなことが視野にあるんですか、ないんですか。
川口国務大臣 武力攻撃事態における米軍の行動を円滑かつ効果的にするための措置のあり方につきましては、今後、政府全体として検討していくことになるわけでございますけれども、そのような措置をとるために日米地位協定を改正するということにつきましては、検討はいたしておりません。
桑原委員 時間が参りましたので、最後の質問、一つだけですね。
 韓国の場合は、在韓米軍は有事の際に司令部を統一して対処する。我が国の場合は、これまでのいろいろな議論の中でも、取り決めといいましょうか申し合わせの中でも、それぞれが指揮権を持って対処すると。
 これはどうなんですか。考え方として、どういう考え方に基づいてそういう対応をするというふうに決めているのか。統一してやるということの方が、一般的に考えると有事の際には有効に働くのではないか、こんなふうに見る人もいると思いますし、別々にしてやるということの論拠、理由、それをお聞きして、質問を終わりたいと思います。
中谷国務大臣 それぞれの国においてはそれぞれのやり方があろうかと思いますけれども、我が国に関しましては、我が国の防衛の話でございます。
 日米が共同対処する場合はそれぞれの指揮系統に従って行動するということにいたしておりますけれども、そういう指揮というのはいわば国家の意思が反映されるものでございますので、我が国の場合は、日本の指揮系統そして米軍の指揮系統、両方が共同対処するということで、実施に際しましては、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインに書かれておることでございますが、日米が整合性を確保しつつ適時適切な形で防衛力を運用できるように種々の調整を行うメカニズムをつくっておりまして、そのための枠組みに基づいて対処するということで、指揮権が統一されていなくても特段の問題がないというふうに考えております。
桑原委員 有事対処の際の論拠、理由としては甚だ薄弱きわまりないと思いますけれども、一応、時間が来ましたので、これで終わります。
瓦委員長 この際、渡辺周君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。渡辺周君。
渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。民主党の持ち時間の中で質問をさせていただきます。
 今回のこの法律が提出をされました。国家緊急権のない我が国の法体系の中で、これまで自衛隊法が唯一有事の際の法律であったという中で提出をされました。この国家緊急権がないという我が国の中で今日まで来たわけでありますけれども、ある意味では、この法律を審議しなければいけないということは、これはやはりもう一つの憲法をつくるぐらいの気構えがなければできないことなんだろうと思うんです。
 つまり、この法律によって、憲法学者や法律学者の方の中には、下位法によって憲法を侵害するのではないか、違憲になるのではないかというような指摘もちまたにあるのは承知の上でありますけれども、それだからこそ、これを提出した政府側も、あるいは審議する私ども国会にいる者も、あるいはお茶の間の政治の問題として非常にわかりにくい問題ではありますけれども、この点について、やはり覚悟を決めてこれは議論しなきゃいけない。
 つまり、これは、有事ということになった時点で、武力攻撃が起きた時点で、がらりと世の中が変わるわけですね。平時から有事に変わるわけであります。ですから、これは何かつじつまが合えばいい、とにかく審議時間を積み重ねればいいという性質のものではなくて、これはやらなければいけないということが私の考えでございます。
 それだからこそ、今回の法案で、当初は四月九日に閣議決定をされる予定であった、結果、一週間延びまして、内閣あるいは防衛庁からその説明も受けたわけです。我々が党内で今回のこの法案提出に当たっての質疑、ヒアリングをいたしました、事務当局から。その時点ですら、閣議決定の数日前ですら、条文の一部は未整備だったわけであります。そのことを考えますと、まさにこの一九七七年、福田内閣以来、二十五年にわたって有事法制の整備が言われてきた現状でありながら、現在いまだに、まだ第三分類についてはこれからだというような指摘がございまして、また実際、答弁でもそういうふうに言われているわけでありますけれども、なぜ二十五年たった今になっても第三分類については何ら報告されていないんだろうと。
 我々にしてみますと、全体像が見えないままこの法案が出されたという、先行してきたことに対する不安があるわけですけれども、その点についてどういうことであったのかということはまず各論に入る前にお尋ねをしたいと思います。
福田国務大臣 なぜこの法案が出てこなかったのかといえば、これはやはりそういうことを国会が必要としなかったということになるのかもしれません。これは与党の責任であるかもしれませんけれども、もしくは、国民の理解がそういう事態を容認しなかったというような客観情勢もあったかもしれません。
 そういったようなことで、今回この法案を提出させていただくということは、まさに遅きに失したという見方もあるかもしれぬけれども、ここで出したわけでございますので、これはぜひ成立をさせて、そして国民の生命財産を守るためにもこの法案を有効活用させる。そしてもう一つ大事なことは、自分の国を自分で守るんだという意思を内外に示すということも極めて大事なことだろうというように私は感じております。
渡辺(周)委員 総理大臣にお尋ねしたいんですけれども、今官房長官の答弁の中に、先ほど第三分類と申しましたのは、いわゆる国民保護を中心とした、いずれの所管の省庁もまだ決まっていない、ここであえて申し上げれば、第一分類というのは防衛庁にかかわる法律、第二分類というのが他省庁にかかわる法律、まだ所管官庁がはっきりしない、しかし国民保護等大変重要な問題についてを第三分類としたわけであります。
 この点についての、今申し上げた第一分類は昭和五十六年に、昭和五十九年に他省庁にかかわる部分における第二分類の中間報告がされておるわけです。この時点ですら、我々の最も今回こだわる、あるいはどうしてもこの点だけは譲れないという第三分類については、その時点ですら検討中でありますと。そして、今日に至るまでもいまだ出てこない、見えてこない。しかも、これまでの答弁を聞いていても、これから検討する、これから法に盛り込むんだというような答弁ばかりでございます。
 これはまさに、先ほど申し上げましたけれども、何か本に例えると、上巻、中巻、下巻があって、あるいは上巻、下巻があって、上巻だけ見せられて下巻の方は全然わからない。最もそのエッセンスの部分がわからなくて、ここだけでとにかく賛成をしてくれというわけにはいかないわけでございます。
 その点についてはいろいろ議論を今後進めていくわけですけれども、今ありました国民の意識、国民の理解という点について、では今現状をどうとらえていらっしゃるのか。その点について総理大臣、どういうふうに今御認識いただいていますか。
小泉内閣総理大臣 私は、国民一般から見れば、有事を起こってほしくないと思っていると思います。嫌なことは考えたくない、だれでもそうだと思います。しかし、いざというときを考えるのが政治の責任ではないかと思っております。
 今私は、未整備なところがあるじゃないかという御指摘もありますけれども、この有事法案が出てきたからこそ初めてこういう議論ができるんではないでしょうか。できないから出すなと言ったら、全然しないんですよ。いいんでしょうか。私は、今こういう法案が出てきたからこそ初めて有事に対してどう対処しようかということが議論ができたことは、今まで手抜かりだった、怠っていた点を直さなきゃならないと。やはり嫌なことだけれども、嫌なことを考えて、嫌なことが起こったときにどう対応していこうかというのが、私は政治の責任ではないかと思っております。
渡辺(周)委員 嫌なことはそうなんです。日本というのはやはり言霊の国でございます。こういうことを考えるだけでも忌まわしい、めったなことを言うものじゃないと。日本が戦争になるとか、あるいは、またあの暗い厳しかった時代の生活をするのは嫌だ、そんなことはもう考えるだけでも忌まわしいことであると。実際そういうこともあった。ですから、こういうことを口にすることはタブーだということもございます。だからこそ、なぜ必要かということをしっかりさせなきゃいけないわけです。
 今回のは、まさに自衛隊の活動についての円滑化法の部分は大変先に出てきました。しかし、では我々の生活というのはどうなるんだという点については全然まだこれからです。ですから、嫌なことはもちろん考えたくもないけれども、そのときに、では何を国民は協力をしなきゃならない、あるいは何の制約を受けなきゃならないということについても、これはやはりあわせて考えるべきだと私は思うんですが、もうこれ以上言うと時間がまだ幾らあっても足りません。
 これだけ出てきたから議論が進むんだということではなくて、出すのであれば、ちゃんとしたやはりそこの問題を出さなきゃ……(発言する者あり)いや、だから二十五年かかってやってきたわけですから、ここの部分だけはまだもう二年待ってくれみたいな話であり……(発言する者あり)いやいや、それは二十五年もやってきたわけですから、それについてなぜ議論がされてこなかったのか、あるいは検討されてこなかったのか、その点であります。このことはまた改めてやりますけれども、この中で、国民の意識をどう、ある意味では本当にそこに向けていくか、あるいはこのことを考えていくか。
 正直言って、まあこんなことを言ってはいけませんが、マスメディアの中にも、この点について例えばどうマスメディアは考えているんだと言うと、いや、人権関連法案の方が優先していますということで、この有事法制におけることは余り考えていませんなんて言う人も実際いるわけですよね。つまり、どこか近未来的な、あり得ない話のどうせ議論をやっているんだろうという認識がまだあります。だからこそ、我々のこれからの生活はどうなっていくのか、その時点では国はどうなるのかということを本当に考えなければいけない時点、事態に今来ているわけであります。
 ここで各論にちょっと入りますけれども、おそれと予測ということについては、もう何度も質問がございました。このおそれと予測という中で、両方とも出てくる言葉の中に客観的にという言葉が出てきますね。我が国への武力攻撃の意図が推測され、我が国への武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態、これが、予測される、予測の定義であります。そしてまた、おそれについても、我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が差し迫っていることが客観的に認められる事態というふうに言っております。
 この客観的ということをちょっと説明していただけないでしょうか。客観的というのが出てくるんですけれども……(発言する者あり)いやいや、今、主観的だというこちらから御指摘がありますが……(発言する者あり)いや、だから、それじゃ客観的というのは何をもって客観的というか、その点について。
小泉内閣総理大臣 官房長官が答弁する前に。
 私は、今渡辺議員、非常にいいことを言われたと思うんですよ。中には、こんなことは起こり得ないんだから、起こり得ないことを今考える必要はないという議論がある。まさにそこなんですよ。これが問題だ。こんなことをやるよりもまだほかのことがあるから、有事法制なんて反対だ、審議なんかする必要はない、出す必要はない、それでは私は政治はいけないと思うんです。あり得ないことは考える必要はない、我々はあり得ないことも考えておこうというのがこの有事法制なんです。できてほしくない、嫌なことも考えておかなきゃならないというのは、各国すべてある、日本がなかった。
 しかし、あり得ないことでも、あるかもしれない、そういうことを考えるのが政治の責任ではないかということで今考えているんであって、私は、今渡辺議員が指摘された点は大変重要なことであり、国民的な議論の中で、この有事法制というものを多くの国民の理解と協力を得ながら、審議を深めて成立させていきたいと思っております。
 貴重な御意見として伺っておりました。
福田国務大臣 先ほどの御質問は、明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態の客観性の問題でございますけれども、この客観的に認められるということは、個々人の主観を離れて、何らかの事象の存在に基づいて通常の人であれば認めることとなる、そういう趣旨でございます。
渡辺(周)委員 では、一つ例を挙げますと、昨年の九月十一日、セプテンバーイレブンスと呼ばれたあの同時多発テロのときに、テロ特措法の特別委員会で、当然、あの問題が起きたときに、本当にテロの首謀者はオサマ・ビンラディンであってアルカイーダであったのか、それに対してのその証拠というのはどこにあるんだということを我々が申し入れました。そして、その後、協議を経た結果、証拠とも何とも思えない、こうであろうというようなペーパー、文書が、我々が言ったから出てきたわけです。あれが本当にそうだったかわからない、全部が出てきたのかどうかはわかりません。そういう意味で言ったんです。そのときに、これが証拠であるという、何か会話記録のようなものがたしか出てきたように記憶しておりますけれども、では、それを、もっと言えば、今おっしゃったように、一般的にと言いますけれども、これは、ほとんど情報を握っているのはある方々だけなんですね。それだから、非常にこれは難しい判断を迫られるわけです。
 このおそれと予測について、ちょっと具体的な例を挙げて申し上げたいと思うんです。
 これで、どこの時点で予測される事態なのか、どの時点がおそれなのかということをちょっとお答えいただければと思いますけれども、イマジネーションの世界で、想像の世界で言ってもなかなかわかりにくいので、実際にあった事例としては、一九九八年のあのテポドンが飛んできたときの事件。あの八月三十一日の午後零時七分、テポドンが発射されて、一段目が日本海に、そして青森県の上空の約六十キロの上を越えて太平洋側の三陸沖五百キロのあたりに着弾したとされているわけですね。
 このときの検証記事等を集めてみますと、この時点で、八月三十一日の時点以前に、もう既に日本の政府あるいはアメリカの関係者から、発射の可能性についてはかなり事前から情報が集められていたというふうにあったわけであります。例えば、申し上げますと、八月十三日には、日本の公安筋が発射準備の具体的な情報をつかんでいるというふうにあるわけです。その後は、ちょっと前後しますけれども、八月十日には、嘉手納基地のミサイル観測機RC135が三沢基地に派遣されている。そうして、その直後には、十四日というふうにされていますけれども、在日米軍から、ミサイル基地での活発な活動を示す偵察衛星の写真も添えられていたということが当時の検証記事を見ると出てくるわけであります。
 例えば偵察衛星の写真というのは客観的な事実、既にもう米軍は恐らく警戒態勢に入ってその態勢をとっている、そして公安筋なり防衛庁筋なり外務省筋にはそうした状況が既に入っている、だからこそ日本側も日本海に自衛艦を派遣して情報収集に当たっていたというふうにあるわけですけれども、例えばこういう事例を、これはイマジネーションの世界じゃないです、現実にあったこととして当てはめると、これはどういう事態になるんでしょうか。偵察衛星が写真をとらえた、そして米軍の関係者から動いてきている。
中谷国務大臣 これは、何といっても、やはりそのときの国際情勢と具体的な事象を踏まえて、それが我が国に対する組織的かつ計画的な武力の行使に当たるかどうかという点を勘案して、その前の段階としてどういう状態かということを検討して判断することでありまして、一概に今の時点で言うことはできませんが、そういう事態が武力攻撃事態になるというふうに判断されれば、自衛隊が行動することもあるわけでございます。
渡辺(周)委員 事実、このときに米軍などから、ミサイルに燃料が注入され、七十二時間以内に発射されるという情報があった。現実に、二十九日に、発射の二日前には、北京で外務省の課長級協議が開かれて、日本側は発射中止を求めたとあるわけであります。
 これは相手の意図がわからないんですね。もしかしたら、つかんでいる人たちは、それはあくまでも、当時は後になって、四日後ぐらいになってから、あれは人工衛星の打ち上げであったんだというふうに言いました。ですから、これはもしかしたら、弾頭には何もついていない、発射実験で、当初は、その数年前にありましたノドンが能登沖に発射された、あれと類似して、あくまでもこれはミサイル売り込みのための、中東の、北朝鮮にすればお客さん向けの一つのデモンストレーションじゃないかというような見方も事前にあったとは聞いていますけれども、だけれども、実際、こういうことは相手の意図がわからない。しかし、もうミサイルは発射台に載っけられて日本に向かっている、その時点で考えれば、これはやはり日本の場合、対応しなきゃいけないんですね。
 この後ちょっと申し上げようと思っていますけれども、そのときに防衛庁長官が、産経新聞の記事の中でも、「仮に今回のミサイルが地上に落ちたり、民間航空機や漁船に被害が出た場合、何をもって日本有事と断定をし、北朝鮮に抗議をし、制裁できるのか。」と、日本有事という言葉を使って、産経新聞の「私にも言わせてほしい」というところで、自民党の元国防部会長という肩書でインタビューに答えられて、あるいは寄稿されているとあるんですね。
 ですから、今の御答弁では、非常に当時のこの歯切れのいい御答弁に比べると、何か本当に納得できない。もうちょっと、もしこの場合はどうだったんだと。実際、この問題は、日本の領海にも、既に漁船なりあるいは航空機が太平洋側を七機たしか飛んでいた、日本海側には既に日本の海上自衛隊が情報収集に当たるために派遣をされていた、そして漁船もそこで操業していたということになれば、これは一つ間違えれば大変なことになっていたわけであります。
 そのときの意図というのがわからない中で考えた場合に、これはどういうふうに今だったら判断できるんでしょうか。せっかくこういうことを当時はおっしゃっているわけですから、大臣の今の御見解をお尋ねしたい。もう一度。
中谷国務大臣 当時は国会議員という立場でありまして、いろいろな情報を知り得ない立場でありまして、私なりに心配をしたことでございますが、その当時の内閣において、さまざまな状況を分析し、判断して措置をされたというふうに考えます。
 したがいまして、やはり政府として、十分に情報を的確に判断した上で、総合的に的確な判断を早期にしなければならないというふうに、私もその担当者として考えております。
渡辺(周)委員 具体的にもうちょっと、私もせっかく具体的な例を挙げてお尋ねしているわけですから。例えば、そういう場合は、ひょっとしたら予測される事態に入るのかどうか、あるいは、もう燃料注入がされているということで極めて切迫している時点で、おそれなのか、予測なのかということをやはり判断できなければ、日本側は対応できないですね。
 このときは、実は、発射されたということは知っていたけれども、発射された後に、総理大臣、当時の総理の耳元にそのことが入ったのが、発射から三時間近くたってからだったということになるんです。つまり、日本は何も当時していなかったわけですね。
 その点について、せっかくここまで歯切れよく、当時は一国会議員とおっしゃいましたけれども、与党の元国防部会長というお立場でコメントされましたけれども、せっかく防衛庁長官になられたんですから、その点、だったらどうするんだと。つまり、この記事では投げかけなんですね、投げかけばかりがされているわけなんです。
 それから、ちょっと続けて申し上げますと、「迎撃する能力がない場合、国家国民を守るため、第二段のミサイル発射を阻止するために、北朝鮮のミサイル基地を攻撃できるのだろうか。」「やられたらやり返すという抑止力が必要である。」「何から何までアメリカに依存したままで、日本は大丈夫なのであろうか。」というふうに言うわけです。この時点ではそうおっしゃっているわけですから……(発言する者あり)いやいや、これはやはり長官にぜひお答えいただきたいと思うんですね。
中谷国務大臣 そのときの気持ちは今でも同じでございます。だから防衛庁長官になれたんだというふうに思います。
 それで、平成十年のケースにつきまして、そのときはどうであったかということでありますが、問題は、やはりその当事国が我が国を武力攻撃する意思と能力があったかということでございますが、当時の、後日の当事国等の分析等によりますと、能力の検証試験であると考えるとか、米国からは通信衛星ではないかというような情報もございまして、いろいろな情報がございました。
 我が国を直接標的としたものかどうか、単発の発射であったかどうか等を総合的に考えますと、当時の政府としては、武力攻撃に予測される事態ではなかったのではないかなというふうな判断をしたのではないかというふうに思います。
渡辺(周)委員 では、ぜひこういうところはお答えいただきたいのです。予測とかおそれという部分について、これは非常にわかりにくいので、あえてこの具体的な事例を挙げたのです。この当時のことは、偵察衛星であったのではないか、だからこそ比較的当時は、緊急の態勢をとることもなく、何か着弾してから一報が入ったような話で済んだ。つまり、意図としては攻撃ではなくて衛星打ち上げじゃないか、あるいは先ほど申し上げた何らかの試射ではないか、デモンストレーションではないか。しかし、実際そういう事態として考えていただいて、日本に向けてミサイルが向かっている、この時点について、これはおそれと予測ということで考えたらどちらに当たると考えたらいいのか。もうミサイルが向かって、燃料が注入されているという時点では、どういうふうに考えておいたらいいんでしょうか。相手の意図がわからないときですね、人工衛星であるか何なのかわからないとき。
中谷国務大臣 仮定の話ですから、お答えはできないわけでございますが、今回、先ほど議員も御質問になりましたけれども、客観的に認められるかどうかという点、それからこういう防衛出動する際におきましても、国会承認という手続で対処基本計画が承認をされる、緊急の場合にはその前に対処するわけでありますが、その際も、内閣において対処基本方針を決定して閣議決定をするわけでございますので、そういう事態であるかどうかという点につきましては客観的な情勢に基づいて判断をする必要があろうかというふうに思います。
渡辺(周)委員 想定外のことを想定したこれは法律なんですよね。先ほど、最初に総理に申し上げました、日本には忌み言葉というのがあって、そんなミサイルが飛んでくるとかテロが起きるとか、我が町でゲリラが上陸してきたらどうするんだということは考えたくない。日本には忌み言葉みたいなものがありまして、そんなことは言わない方がいい。だけれども、実際これは、今回の法律は、あっては困るけれども、あったときに有事ファシズムのような形にならないためにつくる法律だというふうに我々も、ですから有事法制の制定については検討を重ねてきたわけであります。ですけれども、これはもう既にあった問題なんですね。実際あり得たことですから、想定外ではなくて、あり得た問題です。
 ただ、もう時間がありませんから、これだけちょっと、やるなら午後にまた回せればと思いますけれども、そういう意味では、先ほど申し上げた客観性、大臣も、平議員だとおっしゃる当時に、何から何までアメリカに依存したままで日本は大丈夫だろうかと。つまり、情報の入手あるいは情報の分析、客観的な判断ということについても、ほとんどこれ、アメリカの偵察衛星なり早期警戒衛星からの情報であった。その点を考えたとき、日本の客観性というのはこれからどうやって確保していったらいいのか。
 それから、今の御答弁の中では納得いかないので、このおそれということについて、もう一回ぜひ何らかの形で明示をしていただきたいと思うのですけれども。
中谷国務大臣 まず、情報収集につきましては、私も我が国独自の情報収集が必要だというふうに思っておりまして、現在、我が国独自の情報収集衛星を平成十四年打ち上げる計画で準備をいたしておりまして、これも貴重な情報収集の一つだというふうに思っておりますが、これ以外にも、さまざまなデータを分析、解析をして、早期に判断ができるようにする必要がございます。特にミサイルの防衛につきましては、まだまだ整備すべき点が多いわけでございます。
 そこで、おそれということでございますけれども、おそれという事態につきましては、まさに防衛出動が必要な事態と認定をいたしております。その際は、国際情勢、また、相手国の明示された意思ですね、日本を攻撃するというふうに明示をされた意思、また、軍事的行動、部隊の集まりぐあいがどうかとか、予備役が招集されたとか、そういうふうな軍事的行動などから判断をして、かつ我が国への武力攻撃が発生する明白な危険、これが切迫をしているということが認められる事態でございます。
渡辺(周)委員 それでは、この議論をずっとやっていてもどうにもなりません。もう同じことの繰り返しでございますので、ぜひ、おそれという事態、一昨日の岡田委員からは、予測ということについての例示をせよということでお願いいたしました。これをぜひ、おそれという点についても何らかの形で出していただきたいと思うわけですけれども、委員長にお計らいいただけますでしょうか。
瓦委員長 お預かりして、理事会でまた話をします。
渡辺(周)委員 では、また午後に引き続き質問いたします。
瓦委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 政府参考人として外務省大臣官房審議官佐藤重和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
瓦委員長 質疑を続行いたします。渡辺周君。
渡辺(周)委員 それでは、休憩前に引き続きまして質問をいたします。
 先ほど、午前中の質疑の中で、有事法制について私自身の考え方を申し上げました。一昨日だったでしょうか、自由党の藤井さんがおっしゃられました。自分は戦中を経験しているから、その経験からこういうことを申し上げると。私も、昨日議事録の速記を読みまして、感銘を受けたわけです。
 私は戦後生まれでございまして、だからこそ戦争を全く知らない世代であります。それだけに、いろいろなところへ行きますと、例えば沖縄もそうです、サイパンもそうです、あるいは中国や韓国もそうでありますけれども、行くと必ず戦禍の傷跡が残っている。そして、沖縄なんかへ行きますと、いかに非業な死を遂げたかという罪ない若い人たちのいろいろな写真等も、これは総理がよく特攻隊のことを持ち出されますけれども、私も「指揮官たちの特攻」なんというのを読みました。非常に、世が世であったらこの方々は命を落とさなくて済んだのになという方々がまさに命を落とした。
 ここにいらっしゃる方々も家族があり、私も小さい子供の父親でありますから、そういう意味では、二度とこんなことをしちゃいけない。人が人をあやめるようなことだけは、どんなことがあっても、人類の英知を本当に結集してでもこのようなことがあってはいけない。しかし、あってはいけないからではなくて、万々が一それでもあった場合にはどうするかということはやはり議論をしておかなければいけないということで、この後の質問を、また非常に考えにくい、嫌なことを考えながら質問をするわけであります。
 それで、ここで午後の質疑の最初に、ちょっと用語の定義も含めてお尋ねするわけでありますけれども、この法案の中で、武力攻撃の武力ということは何を指すのか。この武力ということについてお答えいただけますでしょうか。
中谷国務大臣 定義でございますので、いろいろなものがございますが、非常に国際的に見ますと不透明、不確実な時代になってきておりまして、世界の武力攻撃の例は千差万別であります。しかしながら、武力攻撃というのは何かといいますと、国家の主権や国民の生命財産に大きな影響を及ぼすものでありますので、我が国としてはいかなる事態にも備える必要があると思っております。
 その攻撃について、攻撃の主体は何かといいますと、国であったり、また国に準ずるものであります。また、期間は長期に及ぶものもあれば短期に及ぶものもありますし、地域は広範囲また限定であります。(渡辺(周)委員「武力とは何かと聞いているんです」と呼ぶ)
 武力といいますのは、人、物を殺傷するものであろうかと私は思っております。
渡辺(周)委員 人、物を殺傷するというのが武力であると。しかし、武力攻撃の武力は定義されていないんでしょうか。その点、もう一回お答えいただけますか。
中谷国務大臣 武力の行使といいますが、国家の物的または人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行動をいうわけでございます。
 したがいまして、この国家の物的・人的組織体による武力の行使でございますけれども、その武力につきましては、やはり人、物を殺傷する能力のあるものの行使であるというふうに考えております。
渡辺(周)委員 ちょっと、お尋ねしていないことまで答えていただいているんです。人、物を殺傷するというものが武力であるとするならば、それは武器じゃないんですか、人、物を殺傷するものは。
 では、ちょっと時間もないので進めますけれども、武力というものは、例えば我々が想像し得る兵器あるいは武器ではなく、ひょっとしたら今回の、昨年の九・一一テロのときには民間の旅客機が使われたわけであります。そうすると、この民間の旅客機が武力になるということもあり得るわけですか。
中谷国務大臣 あり得ます。
渡辺(周)委員 そうしますと、先般の答弁で、たしか、大規模テロが発生した場合も有事に、武力攻撃に含まれる事態があり得るというような趣旨の答弁をされたと思いますけれども、また具体的にお尋ねをしますが、それでは、あのニューヨークで起きた九月十一日の大規模テロ、これは国家の、あるいは国家に準ずるそのときは組織の意図があったわけであります。そうしますと、民間旅客機が武力として今度は変質をしたわけですね、民間旅客機が。
 そうなった場合に、日本でこれが起こることもあり得るわけですね。これがもし起きたときには、やはりあの事例が、先ほどはテポドンを午前中に例に挙げましたけれども、あの大規模同時多発テロが日本で起こった場合には、あれは武力攻撃に認定し得ることがあるわけですね。
中谷国務大臣 日本で起こる場合でございますので、米国と、その背景また国際情勢、若干違うわけでございますが、仮にこういう場合につきましては、まず米国自身は、これをみずからに対する武力攻撃であると認識をいたしておりますし、国連初め国際社会におきましても、これが武力攻撃に該当すること、すなわち自衛権を行使するということについては広く認められたわけでございます。
 したがいまして、米国の同時多発テロ事件についてあえて申し上げると、日本で全く同様の背景に基づいて事態が発生した場合を仮定いたしますと、本法案に言う武力攻撃事態に該当する場合もあり得るというふうに考えております。
渡辺(周)委員 そこで、そうしますと、日本の上空で、例えば日本の旅客機あるいは外国の旅客機が、国内線か国際線がハイジャックをされた。ハイジャックをされて、明確な意図を持って我が国に対する武力攻撃をする。それが、武力が想定していた兵器ではなくて民間の旅客機であったということになったときに、我が国としては、そうしますと、ここの法律の第三条で言います、「武力攻撃が発生した事態においては、武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。」とあるわけですけれども、その場合は、非常にこれも酷な質問をするかもしれませんが、乗員乗客を乗せた民間機であっても、武力攻撃の排除のために撃墜するということはあり得るんでしょうか。
福田国務大臣 民間航空機が攻撃の手段として使用されるといったようなテロ攻撃が発生する、こういう場合には、法律の範囲内で、被害の局限等を含めまして、できる限りの措置をとるということになります。
 こういう場合の新しい形態の緊急事態にどういうふうに対応するか、これは今後重要な検討課題として検討していかなければいけないというふうに考えますけれども、これは今防衛庁長官からもお話ししておりますけれども、ある事態が武力攻撃事態に該当するか否かということは、個別具体的な状況を踏まえて判断すべきものであるというようなことでございますので、これも仮定の話でございますので、このことについて、この分だけで判断をするということは難しいということであります。
渡辺(周)委員 じゃ、武力攻撃と認定された場合には、民間旅客機も武力になるわけですね。そして、それを行使した、まさに自爆突入テロが起きた場合には、これはもう武力攻撃事態と認定することがあり得るというふうにおっしゃったわけですから、そうしますと……(発言する者あり)いや、だからそれを前提に申し上げていますが、そうしますと、これを撃墜するということは解釈上あり得るということでいいですね。
福田国務大臣 武力攻撃と認定された後の話ですね。ということになりますれば、武力攻撃ということでもって、それはすぐに適切なる対応をしなければいけないということになります。
渡辺(周)委員 そうしますと、認定されずに万が一、もう数十分の話なんですね、飛び立ってから上空でハイジャックをされた、そして、それが東京の都心なのか、あるいは横浜の都心なのかに向かって次々に起こり得るという予測がされた場合は、これはやはりその前段階はどうなるんでしょう。
 これは、「自衛隊指揮官」という本を防衛大学校出身の毎日新聞の方が書いているんですけれども、そうした本を書かれる中で、ハイジャック機に対する武器使用の法的根拠ということが防衛庁の内部で検討されたことがあるというふうに書かれています。
 私も本を読んだだけでございますので、これをそのまま聞いてそうなのかということで御質問するつもりはありませんが、そういうふうに書かれているということをもとにして考えれば、そういうこともあり得るのかな。つまり、この新しい事態を受けて、いわゆる旧ソ連が冷戦下において北海道に攻め入ってくるというような想定でつくられた法制が当てはまらない。つまり、今みたいなことが現実もう起きてきた時代において、そうなった場合には、これは検討していなければいけないと思うんですけれども、防衛庁長官、防衛庁ではこういう検討はされているんでしょうか。
中谷国務大臣 この問題につきましては、まだ研究、検討いたしておりません。
渡辺(周)委員 この問題は、本当に想定外の問題ですけれども、実際あった話であります。それだけにこれは考えておかなければいけない問題だ。もう発生から数十分以内に決断を迫られる問題であります。
 この迫られる問題を考えるというのは、これは極めて大変な決断をしなければならないわけでありまして、もう数十分間の間に、乗員乗客の数百人の命と、そしてその後このままいけば起こり得るであろう甚大な被害、これをてんびんにかけて、攻撃をすれば間違いなく乗員乗客の命は絶たれるわけでありますけれども、しかし、そのまま放置しておけば間違いなく何らかの形でさらなる被害が、あのワールド・トレード・センターにぶつかった、そして六千名を超える命が失われたということを考えれば、大変なこれは決断をしなきゃいけないわけであります。
 こういう事態が起きたときには、現状では、それでは何が考えられるんでしょうか。その点について御答弁いただけますか。
福田国務大臣 数十分というお話でございますけれども、本当に数分というミサイルの攻撃もあるかもしれぬということでありますので、これはもう本当に認定作業を緊急にやる、そういうシステムを構築しなきゃいかぬ、こういうことになろうかと思います。これはこれから考えていかなければいけない問題でありますけれども、当面は、治安を維持するという観点から警察権を発動するとかいったようなことで対応することになると思います。
渡辺(周)委員 今回の法案を審議する以前から言われているのは、テロ、不審船に対応できるかということをずっと言われてきたわけです。
 今、警察権と言いましたけれども、実際、空を飛んであと数分後に向かってくるものに対して、これは警察力ではもう対応できないんですね。もちろん、その事前の、そういうことがないような警備の強化でありますとか、あるいは航空機内の治安維持でありますとか、そういうことにおいては確かに警察力ですが、実際そういうことになった場合には、これはもう考えたくないことですけれども、瞬時に決断をしなければならないわけであります。
 ですから、この点を考えておかないと、というのは、こういうことを考えておくことがやはり有事法制だと思うんですね。これは、当たり前のことを当たり前に対応できるようなことでありますと通常の法律でいいわけですから、それだったら、まさに有事法制というものをつくる以前で済む問題です。ですから、この問題で、最も喫緊にあった問題で、最も想定し得る可能性のある問題について、やはりこれは考えておかなければいけない問題だろうと思います。
 こればかりでは時間がなくなりますので、次なる質問に移りますけれども、さてそこで、武力攻撃事態の認定ということであります。
 これは、認定をした後は、どのように手続をして国民に公布をするのか。つまり、今日本は、我が国はこういう状況に陥りました、言うなればまさに戦時下にある、あるいは戦時下と予測されるといいましょうか、準戦時下になるということについては、国民に速やかに公布する必要があると思いますけれども、この点が法には触れられていませんけれども、この点はどのような形でお考えになっているんでしょうか。
福田国務大臣 緊急事態に際しまして、政府は事態の認定、それから対処に関する基本的な方針というような重大判断を極めて限られた時間内に的確に行う、こういうことが必要になります。
 そのために、安全保障会議に対して進言を行う組織として事態対処専門委員会を設けることといたしております。この委員会は、内閣官房長官を委員長とし、内閣官房及び関係省庁の中から専門的知見を有する局長級以上の関係者を委員として任命することを想定しておりますけれども、その任命について、国会の承認その他の関与を求めることは……(渡辺(周)委員「それは後の質問の答弁です」と呼ぶ)では、そこまでで。
渡辺(周)委員 いや、私が聞いたのは、武力攻撃の認定後、どのようにして国民に今我が国はこういう状況にあるということを速やかに広めるか、例えば総理大臣が記者会見をやるのか、そういういわゆる公布ですね。いわゆる、もっと言えば有事宣言をするかどうかということなんです。
福田国務大臣 この手続につきましては、対処方針、この法律の九条の七項です。先ほど申しました安全保障会議の決定を閣議決定するわけでございますけれども、内閣総理大臣は、閣議の決定をして、「直ちに、対処基本方針を公示してその周知を図らなければならない。」こういう規定がございまして、そういう国民に対する公示をするわけでございます。
渡辺(周)委員 そうしますと、その閣議決定を受けてこういうことになったと。それは、いわゆる公示というのはどういう形で出されるんですか。その公示ということについて、もうちょっとわかりやすくお伝えいただけますでしょうか。
福田国務大臣 これはそのときの緊急度にもよりますけれども、記者会見をする、これは総理大臣がするということになると思いますけれども、それから官報でもって公布する、こういうこともございます。
渡辺(周)委員 公示ということが官報に記載されてというふうに我々も理解するわけですけれども、実際、官報というのは、つくっている方には申しわけないですけれども、まず読む方は一般国民の中にはいないだろう。正直言って、我々もどれだけ読んでいるかというと、私も余り読んだことありませんし、ましてや、速やかな対応ということを考えますと、これは何らかの形で直ちに、我が国がそういうことになったと。しかし、テレビメディアに限らず、これはありとあらゆるメディアを使って出さなければ当然いけないわけです。病気で入院していらっしゃる方もいるかもしれない。体の御不自由な方もいるかもしれない。目の御不自由な方、耳の御不自由な方もいるかもしれない。
 そうしますと、もう既に、日本全国津々浦々に至るまで、その点についてはこれは伝えなければ当然いけないわけであります。その場合は、これはどういう形になるんでしょうか。一種の非常事態、有事宣言のような形になるんでしょうか。それとも、こういう事態であるということの認定をしたという事実をお伝えになることなんですか。もう一回だけ確認しておきます。
福田国務大臣 これは、緊急事態であるということを公示することになると思います。その場合に、その周知を図るということが書いてございますけれども、その意味は、あらゆる手段を使う。総理が記者会見もしますけれども、その記者会見自身がテレビとかその他のメディアでもって伝達されるということになりますけれども、あらゆる種類の伝達手段を使って行うということを意味していると思います。
渡辺(周)委員 先ほど我が党の桑原委員からも、地方自治体、地方公共団体との点についていろいろ御指摘がありました。
 そうしますと、この有事を認定し、そして今言ったような手続が進められているということには、当然地方自治体にもそういう形で、何らかの形で通達といいましょうか通告をしなければいけないわけですね。そういうことですか。
福田国務大臣 今この法案の中では、その地方公共団体に対する通告というようなことは規定いたしておりませんけれども、これは当然のことながら、そういうことも含めて今後検討、具体的な規定を盛り込むということになるだろうと思います。
渡辺(周)委員 検討といいますけれども、もうこの法案をつくる以前から、先ほど、午前中から言っていますけれども、もう二十五年という歳月がたって、こういう事態が起きたらこうなるだろうということはある程度考えていなければいけないわけでありますが、検討するというのは、もう何か言葉の上で、本当にそれでよしとされていると思っていらっしゃるのかどうなのか。本音の部分でいえば、当然そういうことだろうというふうに思うんです。
 そうなれば、ちょっと次の質問に行きますけれども、我々の生活は、いざそうなったら、じゃ今度はどうなるかということなんです。やはり国民の大勢の方々が、この法律が通った場合に、この法律が成立をした、そして、あるいはその後二年以内とこの法律には書かれていますが、さまざまな我々の、国民の保護についての法律がつくられる。そして、そうすれば地方自治体も、これを受けた形でさまざまな条例案をつくり、あるいは組織編成をし、平時からそのときに備えなければならないのではないかとやはり思うわけですね。
 法律には「主要な役割」というふうに書いてある。国は「主要な役割」を、地方公共団体は「当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して、国の方針に基づく措置の実施その他適切な役割を担うことを基本とする」というふうにあるわけであります。そうしますと、「主要な役割」というのは国防というふうにとらえていいのか。そして、そうしたときには、その有事の認定を受けた一連の手続を終えた上、今度は、地方公共団体が、まさに一番身近な地方自治体がそこに住んでいる住民の方々のために直ちに態勢をとるということで理解をしておりますけれども、法の解釈はそういうことでよろしいですね。
福田国務大臣 この法案の七条に、地方公共団体の「適切な役割」と書いてございますけれども、これは、地方公共団体の自主的な判断により必要な措置を実施することを指しておるものであります。
渡辺(周)委員 確かに、自主的な判断というふうに今おっしゃいました。それはある意味では、その地域の、よく解釈をすれば、その地域に住んでいる特性でありますとか、あるいは地形でありますとか、あるいはさまざま状況を勘案して、一番ふさわしい対応を地方自治体がするということになるわけだと思うんです。
 もっと言いますと、日本海側に面している地方公共団体とそうでないところ、あるいは、米軍基地や自衛隊基地がある地方公共団体もあれば、そういうものがないというところも当然あるわけでして、日ごろから例えば意識の持ち方なんかも違う。あるいは、その首長さんのお考えによっても、いろいろな形での対応が考えられるわけでありますけれども、ただしかし、私も今回の法律の審議の前にいろいろな地方自治体の方々ともお話を聞きました。例えばこれは、災害を、私は静岡県ですから、大規模地震を想定して、いろいろな形でもう既にいろいろなことが行われています。そういうふうに、ある程度、有事、この有事というのはこの法で言うところじゃなくて、いわゆる非常時があった場合に対応できる準備を既にしているところと、全くそうでないところも正直あるわけであります。
 そうしますと、ある程度これは平時から考えておかなければいけないところになるわけです。例えば、災害であれば、ある程度想定の図上演習ができるわけです。そして、被害予測というものもある程度、時間をかけていけばつくれるわけであります。だから、ここだと震度幾つが予想される、地震の話ですけれども、例えますと、ここだと液状化現象が起きそうだ、だからそれに合わせてどこにどうせよということをしなきゃいけないわけであります。
 そうしますと、これを武力攻撃という事態と今度は置きかえると、これはある意味では雲をつかむような話でありまして、国が国防をやって、地方は住民の生命財産を守れというけれども、ある意味では、これ、攻撃を受けたときの被害想定も地方公共団体がしておかなきゃいけないわけですが、それは、地方公共団体の責任としてやることが、ここの法律の中で出てきます「適切な役割」ということに当然入ってくるんでしょうか。
片山国務大臣 国が「主要な役割」、地方が「適切な役割」と。この「適切な役割」の中には、国と一緒にやる、国に従ってやるというものもありますし、今官房長官言いましたように、自主的にやるものも含まれていると思います。
 そこで、今からということなんですが、個別法制で地方団体の役割がきちっと法定されますから、それに従ってというのが本来なんでしょうけれども、例えば、今お話しのように、災害対策やなんかは、平時からいろいろなことをやっているわけですね。特に静岡県なんか、そういう意味ではモデル県ですよ。そういう意味で、今後、内閣官房とも相談しなければなりませんけれども、国民保護法制ができる、個別法制ができるまでに、どういうことを地方団体にお願いするか、これについても検討いたしたいと思います。
渡辺(周)委員 地方公共団体はやはりいろいろな、事前アンケート等が新聞各社なんかに記事として出ていますが、見ると、国からまだ説明がない、法案の要綱を見ただけで、これから審議を見なきゃわからないというような意見の中に、中には全面的に協力しますという東京都のようなところもあれば、反対だという長野県のようなところもございます。そうなりますと、自治体によってばらつきが出るわけですね。
 先ほども、これは我が党の委員からの質問と重なるかもしれませんけれども、そうしますと、国とともにやっていくとなれば、協力に従わないというところが、もともとおれはこんな法律反対だ、こんな法律は絶対おかしい、違憲じゃないかということで例えば首長さんが判断して、国がそういうふうに言ってきたって一切認めないというようなことになる。例えば、知事は反対だけれども議会はやるべきだという決議を出した。逆に言うと、知事は賛成だけれども議会はだめだということで、これはいろいろな状況が想定されるわけですね。
 そうした場合に、地方公共団体にどのような形で、この法案が成立をした場合に、そして二年後に個別法が出た場合には、全国本当に津々浦々三千三百近くある自治体に対してどのように、これはある意味では一律に、一律になるかどうかわかりませんが、やってもらうんですか。
片山国務大臣 現時点では地方団体の首長さんに理解度にばらつきがあるのは、私は事実だと思います。それは、熱心に勉強されている方もあるし、そんなに勉強されない方も恐らくあったに違いないので。しかし、これはよくわかってもらわないかぬと思いますね。
 基本的には、我が国が攻撃を受けて非常事態になって、そういう中で住民の生命、身体、財産を守るというのは、本来の地方団体の基礎的な一番目の仕事なんですね。それをやらないという地方団体は私はあり得ないと思いますよ。だから、そこについては十分な理解を今後とも求めていきたいと思いますし、そのことについては私はわかっていただけるんじゃなかろうか、こう思っておりますが、ただ、今の段階では、包括的な、基本的な法制を決める段階ですから、まだ事細かに説明はいたしておりませんけれども、さらに詳細な説明をする努力をいたしたいと思います。
渡辺(周)委員 それは、今後、当然そういうことを、地方自治体の方々も、一体どうなるんだろうということを、全く雲をつかむような話で、この議論の推移を見守っている方々も多いと思うんです。
 先ほど、ちょっと静岡県の地震災害に備えている例を挙げましたけれども、これも大変な時間と、そして組織編成を行い、もっと言えば、予算措置をしてここまで来たわけですね。これは当然、法に基づいてやってきたんです。
 そうしますと、いろいろな国民の保護、住民の保護ということを考えれば、国はもちろんですけれども、地方も、当然のことながら予算措置も含めて、もっと言えば、警察や消防の増員でありますとか役所の組織編成も行う、あるいは新たに新規な県民防護局みたいなものをつくらなきゃいけない。例えばそういうことも当然想定されるわけですけれども、そうした、例えば予算措置なんというのはどういうふうにお考えなんでしょうか。
片山国務大臣 何度も申し上げておりますように、まだ地方団体の具体的、正確な役割が法定されていないんですね。
 今我々はやや想定で物を言っておりますけれども、そういうことになりますれば、やはり今委員が言われたような、予算措置や要員や体制をどうするか、こういう議論になってくると思いますけれども、災害その他でそういう地方団体が訓練というのか経験を経ておりますから、もしきっちりした役割が決まれば、それなりの対応は私はできる、こういうふうに思っております。
渡辺(周)委員 今そういうことになると、これは膨大な作業なんですね。
 静岡県のこの災害対策の、大規模地震に備えての法律ができてから、いろいろな形で、これは災害ですから、例えば公共機関でありますとか、総務大臣はもう御存じと思います、あるいは学校を耐震構造に全部建て直しをする、そしてさまざまなシミュレーションをやって訓練をやったり、避難路であるとか避難地であるとかといろいろな指定をして、そして一種の危機管理、FEMA的なグループをつくってやった。これもやはり時間とお金を物すごくかけてやってきたことなんです。これを自治体がやるとなると、平時からどういう準備をするかという雲をつかむような話の上に、やるとなると、これは膨大な時間と労力がかかるんですね。
 これは、やはりやるべきというか、当然やることになるわけですか、個別法ができれば。
片山国務大臣 いずれにしましても、また同じ答弁になるかもしれませんが、地方団体の役割を、都道府県はどう、市町村はどう、さらには、地域的にあるいは差があるのかもしれませんね、いろいろな状況が。そういうことのあるきちっとした想定ができれば、それに対する対応は、少々時間がかかりましても、予算がかかりましても、それはやらざるを得ない。それは、内閣官房を中心に、総務省その他関係の省庁で十分協議してまいりたいと思います。
渡辺(周)委員 それでは、官房長官にお尋ねをしますが、昨日の答弁の中にございました、市民保護のための民間防衛の組織体、これは当然、今の総務大臣の答弁で、地方自治体がその役割を担うとなれば、最も身近なコミュニティーにおきまして、そうした、例えば負傷者の保護でありますとか運搬でありますとか、そういうことを当然しなきゃいけませんし、また、いろいろな形での避難誘導等に、これは住民が全部出てこなければ成り立たないわけであります。
 その点について念頭に置かれましていわゆる民間防衛のことを御発言されたと思いますけれども、どういうイメージで考えていらっしゃるのか。例えば、消防団のような組織にその役割を担わせるのか。あるいは、いろいろな奉仕団体、日赤婦人会とかございます。こういう例えば奉仕団体の方々に、今からそういう形で意識を持っていていただくのか、そして、その点についての何らかの教育といいましょうか訓練を今からするのか。民間防衛ということについてはきのう御発言されましたけれども、その真意はいかがなものか、お尋ねしたいと思います。
福田国務大臣 いわゆる民間防衛につきましては、その定義が明確でございませんけれども、一般には、侵略や大災害等の事態において、国民の生命、身体等を守るために、主として軍事組織以外の組織が行う救助、避難誘導等の諸活動をいうものであるということであります。
 政府といたしましては、国民の保護のための法制の整備が極めて重要な課題でございます。法案に基づきまして、警報発令、救助、応急復旧等の必要な諸措置に関する法制を整備することにいたしておるわけでございまして、今後の国民の保護のための法制の整備に当たりましては、組織のあり方なども含め、関係機関の意見や国民的議論の動向を踏まえながら、十分な理解を得られるような仕組みを考えてまいりたいと思います。
 民間防衛という言葉は、この法律では規定しておりません。民間防衛につきましては、国民の合意を得ながら、政府全体で広い観点から慎重に検討していくべきであるというように考えております。
渡辺(周)委員 何かイメージがわかないんですけれども、何か言葉の定義みたいなことを教えていただいたんじゃなくて、どういうふうな形で民間防衛と、これはいろいろな、例えばドイツであるとかフランスであるとかスイスであるとか、あるわけですね。そして、民間防衛は国防の一環であるというふうに、例えばもう既に法律でうたっているような国もあります。
 そこで、例えば、連邦政府からの補助金で、州単位にもう既に民間防衛局のようなセクションがあって、そこが日ごろからそういう教育訓練のようなことをしている。中には、教育訓練で学校に行かせているというところもあるわけですけれども、まさにそういうイメージでとらえていいんでしょうか。
福田国務大臣 民間防衛というように申しますと、これは民間防衛というイメージがあるんですね。言葉の定義になっちゃうけれども、民間防衛というのを辞典で引けば、「中央政府の計画指導とそれに基づく地方自治体の組織、指導のもとに主として軍以外の民間人が主体となって行う防護活動。市民防衛」、こういうふうなことなのでありますけれども。
 こういうことにつきましては、どういうことが国民の中に必要なのかということでございまして、まさに国民的議論の対象というか必要性というものが感じられるのではないかと思います。関係機関の意見も当然ございますし、そういうような国民の意見を聞きつつ、また国民の理解を十分に得られるような仕組みを考えてまいりたいと今思っておるところでございます。
渡辺(周)委員 もう時間が差し迫ってまいりましたので、これはまた個別の問題ですので、また改めての機会に質問したいと思います。
 ここで、大変重大な問題で指定公共機関の問題がございます。その中で、民放も指定公共機関に含まれる、先ほど意思伝達の部分についてはお尋ねをいたしましたけれども、まさに、正確かつ速やかな事実の国民への周知ということが非常に大事でございます。
 そうしますと、民放が、ただいろいろな避難に供するだけではなくて、ある意味では市民社会をこれ以上パニックにさせないように無用な情報、無用と言ったら怒られますが、情報が錯綜していろいろな憶測が飛び交わないようにして、マスメディアに対する協力を求めることもこれはあると思うんですね。
 つまり、もうチャンネルをみんな変えるわけですね。そうしますと、あの局ではこう言っていた、ここではこういう人が言っていた、あそこが危ない、ここに上陸したとか、いろいろな情報が入る。そうしますと、これは大変なパニックを引き起こす。これは、災害報道等でも当然何度か言われたことであります。中には、試験放送をやったことがパニックを起こしたなんという例もあるわけであります。
 そして、一つ申し上げますと、一九七八年の参議院の内閣委員会で、防衛庁が有事の研究項目を八つのグループに分けて示した。その中に、マスメディアに触れる部分がございまして、誘拐事件の自主規制を一つ例に挙げて、国益を守るために秘密保護に利用できないだろうか、つまり、協力を待つか、それとも指示するかということで、研究対象にマスコミのあり方ということがこの有事法制研究の中でもあったというふうに聞いているわけでありますけれども、民放も指定公共機関に含まれると。
 さらに、それ以外に例えば新聞社。これは、新聞社は考えにくいのではないかという答弁されましたけれども、今はもうインターネットで瞬時に配信をしているわけですよね。そうしますと、これは速報性の意味においても、もう民放と同じぐらいのスピードを持って、大変大勢のユーザーがいるわけですから、例えばインターネットというものはどうなるのかということも一つ。
 それから、新聞ということに関しても、何らかのやはり報道の自主規制のようなことを求めざるを得ないのではないかと思いますが、その点についてはどういうふうにお考えになっているんでしょうか。
福田国務大臣 民間放送業者については、公益的事業を営む法人として、警報等の緊急情報の伝達のために指定される可能性はありますが、現時点では日本放送協会を主として考えております。
 また、新聞社につきましては、その性格上、警報等の緊急情報の伝達の役割を担うことは一般には考えにくいということなんでありますけれども、新聞社がインターネットを使って、また通信社もあるわけでございますので、そういうような新しい伝達手段については、これは、そういう手段も使って、表現の自由とか報道の規制などとかいうような言論の自由を制限するようなことのない方法でもって十分その任に当たっていただくということは、当然考えられることであると思っております。
渡辺(周)委員 これはまた別途議論したいと思います。
 それでは、残りの時間の中で、安全保障会議、先ほど官房長官から先走って御答弁をいただきました、まだ聞いていないのに御答弁をいただきましたけれども、安全保障会議が今回のいわゆる事態対処の基本方針を決めるに当たりまして大変重要な役割を担うわけであります。このことについては余り今回の質疑の中で出てきていませんけれども、その中にございます対処専門委員会、内閣官房長官が委員長を務められて組織を編成する。これは、平時のときから唯一機能する、今回の法律に基づく組織なんですね。
 そして、ここで決まったことが、さまざまな想定されるであろう事態というものに対して、当然、その中に幾つもの選択肢を持っていなきゃいけないと思うんです。つまり、もう時間の問題でありますから。そうなれば、要は、諮問をして答申を受けて、法律にありますように調査研究をして返事をするなんというそんな悠長なことは言っていられませんから、まず、対処基本方針を定めるに当たって最も重要な、いわゆるシンクタンクといいましょうか、あるいはストックとでもいいましょうか、この対処委員会、平時からどういう役割を果たすのでしょうか。そして、そのことについてどういう人員で臨まれるのか。今のお考えを聞かせていただきたいと思います。
福田国務大臣 先ほど先走ってお答えしましたけれども、この事態対処専門委員会は、平素から専門的な調査分析を行いまして、安全保障会議への進言を行うことによりまして、事態が起こったときの対処に関する会議の審議を補佐するということにしております。
 また、この委員会の委員は、内閣官房及び関係省庁の中から専門的な知見を有する局長級以上の関係者を任命することを想定しておりますが、専任とすることは考えておりません。ということは、専任でなくて、組織の代表として参加する方がより機動的に動ける、こういう判断でございます。
渡辺(周)委員 これは非常に重大な組織なんですよ。ここから、平時においていかなる調査研究をするか。「調査及び分析を行い、その結果に基づき、会議に進言する。」と法案にはありますけれども、もう引き出しをいっぱい持っていて、こういう事態が起きたときにはこう対処する、こういう場合はこうするという、ありとあらゆる引き出しを持っていなければいけないわけであります。
 そうなりますと、我々の生殺与奪、あるいは国民の生命財産すべてにおいて、もっと言えば国家の存亡も含めて、ここでの判断を誤れば大変なことになるわけであります。そうしますと、日常からかなりのことをしておかなきゃいけないと思うのですね。
 そうしますと、これは単なる出身省庁の権益の調整なのではなく、先ほど防衛庁長官がおっしゃった、例えば偵察衛星のようなデータがある、こういうものをどう解析するか、そしてこれを解析できるだけの人間も当然そこに入れていかなきゃならない。まさに客観的に判断できる、そしてあらゆる事態に速やかに対処できる、その方針を幾つもつくっておくということになりますと、これは大変な心臓部というふうに思うわけですけれども、そういう認識ですね。
福田国務大臣 おっしゃるとおり、これは大事な任務を担っている機関だと思います。
 そのためには、その機関が有効に機能するためには、本当に常時からの情報収集、及び事態が起こったときの対応というものをよく考えて活動していかなければいけない、そういう組織であります。
 この委員会がどういうふうに運営されるとかそういうことについては、今後検討する課題も多いのでありますけれども、これは事柄の性格上それ以上のことを申し上げることは不適当だというふうに考えております。
渡辺(周)委員 また検討という言葉が出てきまして、これは我々の、本当に国家の存亡をかけたいろいろなプログラム、シナリオがここにあるわけでして、これがまさに一番大事な部分なんですね。
 もちろん、どういうことをやっているかというものをすべてつまびらかにせよとは私は申し上げませんが、しかし、何が研究され、何が検討されているかということをやはりちゃんとしておかないと、我々としても大変に不安なわけであります。
 だからこそ、どのような研究をしているか、あるいはどのような中間報告が出せるのかということについては、何らかでやはり国会なりにその現状を報告する義務があると思いますけれども、その点についてはどう考えますか。もう一度伺います。
福田国務大臣 なかなか難しい御質問でございまして、平時にどういうことをしているかということを、これを報告するということになりますと、平時に何を想定しているのかというようなことにもつながりますし、これはまた、仮定の議論、その委員会における議論を公表するというふうなことももしかしたらあるかもしれぬということになりますと、これはなかなか発表できないものだろうというように思います。
 問題は、こういう緊急事態が起こるような状況が生まれてきたときに、これは必要なときに何らかの形で発表する方法もいろいろ考えなければいけませんけれども、そういう状況というのはあるかもしれませんけれども、今段階においてそのような状況というものはないだろうというように考えれば、またそういう状況に応じて対応すべきものだと思います。
渡辺(周)委員 これは、対処基本方針がすべてここで決められるということになって、何もわからない。秘密事項がすべてここに盛り込まれることになって、全くの白紙委任のような形になるのですね。そうしますと、やはり国会が、何をしているかもわからない。
 もちろん、全部とは言いません。どの国を想定して、どうなったらというような図上演習のようなことをやっているかもしれませんから、それは、すべてにおいて確かに手のうちをさらすということはすべきでないかもしれませんが、ただしかし、限られた人間には何らかの形で、せめて概要だけでも知らされないと、そのときにならないとどういうシナリオが組まれているかということがわからないわけであります。
 そこはやはり白紙委任に私たちもしたくないわけでありますから、そのことに対して、それでよいと思っていらっしゃるのか、それとも、何らかのまだ考える余地がこれから生まれてくるのか。もう一回、この専門委員会の性質について、役割について、お尋ねをしたいと思います。
福田国務大臣 国会の承認を最後求めなければいけないということがありまして、国会の承認を求めるために、承認していただくだけの情報提供ということも必要なんだろうと思います。
 しかし、それは、そのときの状況に応じて、提供できる範囲というものがもしかしたらあるかもしれぬ。それはそのときに考えるべきことだろうというふうに思います。
 しかし、この対処委員会の重要性というものは、これは先ほど申し上げましたとおり非常に重要なもので、安全保障会議を補佐するということでございますので、最終的には安全保障会議で決定はいたしますけれども、その安全保障会議の決定が適切に行われるように万全を尽くすということでございます。
渡辺(周)委員 何か、まさにブラックボックスのような組織になってしまわないように、当然我々も重大な関心を持ってこのことについてはまた質疑を続けたいと思っております。
 時間が参りました。本日の質問のおしまいに当たりますが、先ほど来出ております昨日の日本総領事館での出来事につきまして、改めて御見解を伺いたいと思います。
 まず、ちょっと状況ですけれども、昨日から大体丸一日たちました。たしか二時だったですかね、昨日の発生が。丸一日たちましたけれども、その後、今どのようになっているのか。中国側に申し入れた結果、説明は何らかあったのか。その点について外務大臣にお尋ねしたいと思います。
川口国務大臣 その後の状況でございますけれども、本日の十一時から、東京におきまして、外務省の次官から、在日の中国大使に対して申し入れをいたしまして、抗議をいたしました。重大な事態であって、中国側に早急に対応してもらう必要があるということを言っております。
 今後とも、中国側に早急かつきちんとした対応を求めていきたいと考えております。
渡辺(周)委員 前も私、安全保障委員会でも申し上げました。昨日潜水調査が終了した例の不審船の問題でもそうでありましたけれども、向こうは、外務大臣なり外務次官なりが出てきて、慎重な態度を求めると日本側に向けて言ってきたわけです。ところが、日本側は、外交ルートを通じてやっている、外交ルートを通じてやっていると言う、中国に対して。結局、十二月に沈んだ不審船をいまだになって引き揚げられない。このことについては前も安全保障委員会で申し上げました。
 そして、今回また、日本の主権を侵す。これは、もちろん不審船は、たまさか中国の排他的経済水域で沈んでいるということですから、もちろん中国の主権が及ぶところは今回の問題と違いますけれども、しかし、今度は、日本の主権を侵害する大きな出来事だったわけです。門から三十メーターから四十メーターぐらいのところに入ってきている、そして、一階のビザ申請のところにいた人間を、要は向こうの公安当局者が捕まえたということであります。
 そのことにおいて、これは過って、追っかけて気がついたら中に入ったとかそういう問題じゃないですね。これは明白に、やはり毅然として抗議をしなきゃいけない。そして、返事が来ないというのは、いつまで待って来なかったら次の行動をとるかということをやはり考えておかなきゃいけないと思うんですけれども、その点は今どうお考えですか。
川口国務大臣 先方として本国に伝えるということを言っておりますので、それを踏まえて次に何をするべきか考えたいと考えております。
渡辺(周)委員 これは、我が国に対する主権への挑戦なんですよ、ある意味では。その侵害に対して、そんな、非常に言葉を、誤解を招かず、招くかもしれません、下手に出て、何かお願いしているような言い方ではだめなんですよ。
 やはり毅然としてこれは対応しなきゃいけない問題でありまして、このことに対して、確かに日本と中国の中でいろいろな分野における交流とかいろいろなことがありますよ。しかし、本当に尊敬をされる国であるんならば、やはり毅然とした対応で、国家としてのやはり主権と威信と、そしてプライドをかけてやらなきゃいけないと思うんですが、そういう覚悟があって申し入れをしているんですか。それで、いつまでに返事がなかったら次のアクションを起こすということはお考えなんですか。やはり時期を区切らないと、言いっ放しで終わる可能性がありませんか、この問題。
川口国務大臣 これは重大な事態だと認識をいたしておりまして、現在毅然とした態度で対応いたしておりまして、今後とも毅然とした態度で対応をしていくつもりでおります。
渡辺(周)委員 いや、これは重大な事態だということはもう本当に認識をされている。本当にこれは大変なことなんですね。これで日本の国が何か事なかれのような態度をとると、世界じゅうから、日本という国は領事館に相手国の、これはたまたま、言葉を選んで言えば職務に忠実の余りやってしまったのかもしれない。しかし、やはり、一つの条約があって、その中で守られるべき人間が守られなかった。ルールが守られなかったことが、世界じゅうで、日本という国はそこまでされても黙っている国なんだということを知らしめることになりますから、これについては本当に毅然とした態度を示していただきたい。もうこれは本当に日本の国として、やはりプライドをかけてやっていただきたい、やらなきゃいけないわけであります。そうしないと、そこまでしないで国が守れるのかというふうにまさに思うわけであります。
 そこで、総理にお尋ねしますが、このことを受けて、昨日、首相官邸で記者団からコメントを求められて、中国の立場、日本の立場もあるから冷静に対応をするというようなことをおっしゃいました。冷静にという発言がございましたけれども、これはどういう御意図で言われたんですか。
小泉内閣総理大臣 外交は常に冷静にしなきゃならないと思っております。
 午前中、外務次官が駐日中国大使を呼んで強く抗議したということでありますし、きのうから私は駐日中国大使と昼間会うことになっておりました。昼間、中国大使が見えましたので、強く抗議し、中国側に対し誠意ある対応を求めるということを申し渡しました。
渡辺(周)委員 実はこの事件は、新聞報道で知るところによりますと、アメリカの領事館にも別の方が逃げ込んだ。そして、もう既にきょうの新聞の一面には新聞社のカメラがその模様を撮っているわけですね。もう既に、これはあらかじめ予測されたことなんではないかというふうに考えるのが妥当だと思いますし、事実、そういうことがあるわけです。
 そうしますと、もう既に日本はそういうことがわかっていたにもかかわらず、それができなかったというふうに判断をするわけなんですけれども、最後に、もう時間もありませんから残った時間でお尋ねしますが、そういうことは事実としてどうなんですか、わかっていたんじゃないですか。
川口国務大臣 あらかじめ承知をしていたということは全くございません。
渡辺(周)委員 あらかじめ承知をしていないなら、なぜカメラマンがそこにいて、あの取り押さえられる写真を撮っていたのか。もっと言えば、なぜ警戒厳重な、身分証明書なりを見せなきゃ中に入れない我が国のまさに領域に、領事館にどうして入れたんですか。つまり、もしかしたら来るんじゃないかと思ってゲートをあけてあったんじゃないですか。
川口国務大臣 瀋陽の総領事館では、ビザを取得するために訪ねる人がいますので、門を一メートルぐらいあけてございまして、内側で、総領事館が雇い入れている警備員が身分証明書等をチェックしているということでございまして、そういう意味で門があいているということでございます。
渡辺(周)委員 しかし、外国の通信社のカメラマンがその瞬間を待って、一番いいカメラアングルのところに記者がいる。常にもうそういう情報がマスコミには伝わっているので、間違いなく日本の領事館にもあったはずだと思う。
 その点をこの問題の一つの問題としてやはり考えなきゃいけないことですし、そしてもう一つ、時間がありませんから最後に申し上げて終わりますけれども、主権を侵害されたということは、まさに先ほど、重大重大というふうにおっしゃられましたけれども、本当に世界から我が国が尊敬される国家である、主権を侵害されたとき、主権に挑戦をされたときには毅然として対応をする、それと、やはり国としての威信あるいはプライドをかけて、外国に向かって我が国はこういう国であるという姿勢を示していただきたい。
 そしてまた、この問題については、外務省がとにかくしっかりと取り組まれることをお願い申し上げまして、強く申し入れまして、私の質問を終わらせていただきます。
瓦委員長 この際、末松義規君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。末松義規君。
末松委員 民主党の末松義規です。
 渡辺議員に引き続きまして、質問をさせていただきます。
 私は個人的に、危機管理というのは、外務省にいたときに湾岸危機というのを体験いたしまして、そのときに担当課の課長代理ということをやっておりましたので、この危機管理の危機というものがどんなものかということを、私自身、自分なりに理解をしております。
 危機とは何かというと、要は、当然にあるものが当然になくて、しかも対応しなければいけない、それが危機なんだろうと思うんです。そういった意味で、例えば時間がない、そしてその体制や人がない、さらに前例が全くない、そして解決するシステムもない、そういったことに対して早急に対応しなきゃいけない、これが危機だろうということで、ある意味では、ボトムアップの日本型システムからいうと、どちらかというと一番苦手な分野なのかもしれません。そういうときこそ、トップダウンできちんとした指導者が判断をしていかないとこの危機を乗り切れないというのが、私の感じ方であります。
 その意味で、アングロサクソンの人たちを見ておりますと、私も先日、瓦委員長、また久間筆頭理事、ほかに与野党のそうそうたる方々と一緒にアメリカに行って防衛協議をさせていただきましたけれども、アメリカという国はやはりすごいなと思ったのは、一番自分たちにとって都合が悪くて、先ほど総理も言われましたよね、もう考えることも嫌だ、忌み嫌うような、そんな事態を想定して、そして、その想定のもとに自分たちでマニュアルとか対応をつくっていかなきゃいけないんだという思いが強くて、それがために、さまざまなシミュレーション、図上演習というんですか、それを使って、きちんとした対応をつくっていっている。だからあの九月十一日の米国のテロのときも、わずか、十一日から一週間から二週間ぐらいで、どこに米国の軍隊を送って、どういう補給を行って、そしてこの作戦をやっていくか、これがもうすべて完成されていたということなんですね。それで十月の初めからもう部隊が現実に動いている。
 なぜそんなことができたのかと米側関係者に聞いたら、これは、何万枚もあるいろいろな緊急時対応計画があって、その中から必要なものをちょっと何十枚か選び出して、その場面に想定できるものを選んだ中で、そこで数日間の間にこの緊急事態に対応する計画として上に上げられるという、その積み重ねがあるからあれだけ早く対応ができるんだと思うんですね。ですから、そういった意味で、まさしく日本の有事立法をやる場合に、その想定をきちんとして審議をしていかないと、ただ単に計画倒れに終わってしまう、そういうことになるんだろうと思うんです。
 そういった意味で、私なんかも解決案として考えているのは、危機時を想定して、できるだけそれをマニュアル化して、ふだんでもできる格好にしていく。このマニュアル化というのが極めて大事だし、それが今有事立法でやっておられることですし、さらに、そのマニュアル化したものを実際に訓練していく、そして疑似体験みたいな形にしていくことがこの危機時を乗り切る一番重要なポイントだろうと思うんです。
 さあ、そこで質問でありますけれども、先ほど渡辺議員から、ある意味では究極的な質問が行われました。九月十一日の飛行機ですね、テロに乗っ取られた飛行機、あれと同じような事件が起きたら日本ではどうするのかということでございますが、私もそれに関連をいたしまして、そこから質問をさせていただきたいと思います。
 先ほど官房長官の方が、これについては今後対応をするというお話がございました。確かに、民間人の乗った飛行機が武器化されて、ハイジャックされて、例えば首相官邸に突っ込むとか、そういうふうなことというのは、まああり得ないし、あり得ないと思ったからアメリカもあれだけ驚いたわけです。でも、そのときに、やはり我々としてアメリカに学ばなきゃいけないのは、アメリカはあれから、ROEというんですか、要するにその対応マニュアルというものをつくった。そこで、基本的には大統領以下、一番トップの人たちが意思決定をするんですが、それで間に合わない場合には現地の空軍司令官まで、撃ち落としてもいいというようなところまでマニュアルが詰められたということなんですね。
 日本ではまずはあり得ないと思うんですが、それで今後検討するという言い方になっていますけれども、ただ、官房長官、あの事件が起こってからもう八カ月たっているんですよ。いつまでも検討を行っているという状況はやはり厳しいと思うんですね。そこは、いつまでにやるというようなことは示せないんですか。
小泉内閣総理大臣 これは、昨年九月十一日のアメリカ・テロ事件のようなことが仮に日本で起こった場合は、アメリカのような対応はできないと思いますね。個別自衛権を発動して、それはとてもアメリカみたいなことは日本はできない。しかしながら、もしあのような事件が起こったらばどうするかというのは、その時々のケースで違いますし、アメリカの事情と日本の事情も違う。あそこは、ワシントン、ホワイトハウスをねらったとか、国防省をねらったとかいろいろありますが、こういう点については、我々としても、今の時点でああするこうするという具体的なことは言える状況にないと思っております。
末松委員 総理、それは政治家の発言じゃないんですよ。
 つまり、一番厳しいと思いますよ。その決定をすることによってとんでもない批判を起こすかもしれないんですが、要は、総理がおっしゃったことは、もしやられたら、日本国として、何もせずにそのまま突っ込ませることを追認したということなんですよ。
 ただ、私たち政治家というのは、そこは政治責任をとらなきゃいけないことなんだから、そこは総理としてやはりきちんと、そこの対応のマニュアルを考えてみろ、最後はおれが決断をするからというところまで言っていいんじゃないんですか。
小泉内閣総理大臣 それは最終的な責任は総理大臣にあると思っています。しかし、今あり得ないことを考えなきゃならないという想定で、それでは、民間航空機がハイジャックされてどこに向かってくるかわからない、総理大臣官邸に来るかもしれない、国会に来るかもしれないといった場合に、民間人が何十人何百人乗っているときに、総理大臣として、そういう情報が入った場合、ではそのハイジャックされた飛行機を撃ち落とせなんて言うことは想像しても、したくないけれども、した場合には、私は、実際できないと思います。事件が発生しないとできない。発生して、しばらくたって、どういう状況かということでないとできないと思います、はっきり言って。
末松委員 今ここで総理が、そこは立場上、日本国の最終責任者として、確かに、今撃ち落とすというようなことは口が裂けても言えないのかもしれません。ただ、その中で、飛行機が本当にねらっていて、確実で、しかも五分後に落ちるとか、そういった場合には、必要な対応をとるということまでは言うしかないんじゃないかと。それはつまり、一番厳しいですよ、人命がかかっている。飛行機に乗っている乗客が危険なんですからね。あとは、例えばここに落ちたら、皆さん含め、国会あるいは霞が関の官庁、まあ飛行機だからそんなに大きなあれじゃないかもしれない。でも、対応を何もとらないという、その決断というのはないんだろうと思いますね。
 もうちょっと厳しい想定をさせていただきたいと思います。
 では、北朝鮮から核のミサイルが飛んでくる。核弾頭でなくてもいいですよ、生物兵器あるいは化学兵器、そういうことがあった場合に、アメリカなんかで聞いてみると、日本の皆さんも御存じでしたけれども、大体六分から八分ぐらいで来るんですね。そういったときに、確かに、先ほど渡辺委員も指摘されていましたけれども、この法案は非常にクラシックな戦争というか、数十年前の戦争を想定して書かれた。でも、それから始めなきゃいけない。それはわかるんですよ。わかるんですが、ただ、この近代戦を今わかっているのは、世界広しといえどもアメリカとイギリス、あとフランスが若干わかっている、そのぐらいしかないでしょう、彼らは実際に戦争をしてきたんですから。彼らがやってきたことで思うのは、そうなったときに、だからミサイルに対応しなきゃいけませんよという大きな防衛の戦略を日本国としてやっていかなきゃいけないし、やっているところだと思いますよ。その重要性は極めてわかるんですが、ただ、核が落ちてきたときに、では、この法律でどういう対応になりますか。
小泉内閣総理大臣 これは、仮定のことで、実に言いにくいことなんだけれども、今御審議いただいているこの法案について、そういうことを想定しているものではない、超えたものだ。実際、それは第一撃を受けた後でないと、対応せざるを得ないと思います。
末松委員 そうなんです。先ほどから申し上げているように、総理の気持ちはわかりますよ、ある意味では。要は、まずは一般的に世界じゅうに必要とされる有事立法をやってから、そのときにまた究極の対応を考えればいいという考え方かもしれませんけれども、ただ、本当の意味で一番怖いのはそこなんですよ。
 ミサイルとか弾頭に何かを、大きな破壊力を持ったものを使われると、正直言って一番日本国にとって甚大な損害をこうむるのは、核兵器でこの近くに飛ばされてごらんなさいよ、我々はみんな吹っ飛びますよ。今やられたらみんな吹っ飛んじゃうんですよ。そうしたら、日本のリーダーシップというのは一体どこにあるんですか。つまり、皆さん閣僚の方がここにおられますよ。ここにいること自体が、ひょっとしたらリスク管理からいったらこれは本当は問題なのかもしれないですよ。アメリカなんかは、大統領と副大統領があのときにぱっと別れたわけですよ。そういうところを含めて、一番根本じゃないですか。危機という一番想定したくないことを考える一番のものはそこであるんじゃないですか。
小泉内閣総理大臣 それは、もしもそのような攻撃を受けた場合は、日本は自衛隊と米軍といいますか、アメリカとの間で安全保障条約を結んでおりますから抑止力になっているんですよ。そのような意図が鮮明になったらば日本はアメリカと共同して対処するという、これは大いなる抑止力になっております。だからこそ日本はアメリカと日米安保条約を結んでいる。抑止力というのは大きい。どういう目に遭うかというのはわかっていると思います。
末松委員 確かに、議論が少しかみ合っていないのは、だから、こんなことを抑止するために日米の防衛協力がある、まさしくおっしゃるとおりですよ。それは私はこれまで機能してきたと思う。
 ただ、そういう事態が起こったときに、総理も死んでしまって、リーダーシップがいなくなったら、だれが日本側なんですか、そこを答えてくださいよ。
福田国務大臣 先ほど来委員から、非常に考えられないかもしれぬけれどもあるかもしれぬという、そういう事態について、いろいろな例を挙げて御質問がございますけれども、それはあらゆる事態に備えなければいけないということは当然のことでございまして、それがために今回この法案をお出ししている、こういうことでございます。
 例えば、今御質問ありましたのは、ここが攻撃をされたらと、こういったようなことかもしれませんけれども、その場合には、現小泉内閣におきましては、この内閣発足時に、内閣法第九条に基づいて内閣総理大臣の臨時代理をあらかじめ五人まで、第五順位まで指定して危機管理に備えております。万一、総理に事故があった場合には、五人のうちで残っている最も先順位の者一人が臨時代理になる、こういう仕組みになっております。
末松委員 具体的にだれですか。五人だったら言えますよね。言ってください。
福田国務大臣 これは小泉内閣として指定しているわけでございますけれども、第一順位が内閣官房長官、第二順位財務大臣、第三順位法務大臣、第四順位経済産業大臣、第五順位金融担当大臣ということになっております。
 この指定の順位の考え方ということを申し上げておきますけれども、内閣官房を統括し、総理と一心同体となって国政運営に携わる立場にある内閣官房長官を最優先の順位として、以下、閣僚の大臣歴、議員歴、所属政党等を総合的に勘案したものでございます。各閣僚においては、臨時代理指定の趣旨を体し、緊急事態が発生した場合には対応に万全を期す、こういうことをお願いいたしておるわけでございます。
末松委員 そうしますと、では、ちょっと重要なことになる。防衛庁長官、閣僚ですけれども、防衛庁長官がもし何かで亡くなった、そうしたら、臨時代理というか、代理はだれになりますか。
福田国務大臣 これは、閣僚に事故等があった場合には、総理が指定する他の国務大臣が臨時代理としてその職務を行うこととする、こういうことになっております。
末松委員 こういう場合、私の次の質問なんですけれども、防衛庁長官というのは、他の大臣がなるというのはちょっと不適だと思うんですよね。やはり、防衛族という方が自民党におられるという話もありますけれども、そういうふうな方がなるのかあるいは知りませんけれども、要するに、ほかの大臣が急に臨時代理でやれるほど防衛庁長官というのは簡単なものなんですか。
小泉内閣総理大臣 それは、最高司令官は総理大臣ですから、いつでも兼任できます。
末松委員 あの法案の中に、それでは、もし事態が起こった場合に、事前であれば国会の承認、あるいは、もし間に合わない場合には、まず対応を行って、直ちに国会の承認を得るとありますよね。国会議員が例えば核攻撃あるいは化学兵器の攻撃を受けて亡くなっちゃった、今度は我々が亡くなった場合、これは、内閣総理大臣として国会の承認を得るとありますけれども、これはだれに得るんですか。
福田国務大臣 これは、国会議員の全員ですか。(末松委員「いやいや、それは例えば半分とか」と呼ぶ)半分ですね……(末松委員「つまり、定足数以下になった場合とか」と呼ぶ)これは、それを補充していただく、定足数が不足すれば補充していただくということになるんじゃないでしょうか。
 そういうような場合が生じた場合には、国会の機能が回復し次第、直ちに事後の国会承認を求める。国会承認を求めるという条件であれば、そういうことになります。
中谷国務大臣 それに加えまして、その際の規定といたしまして、特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合には、対処基本方針に防衛出動を命ずる旨の記載がいたしておりますので、防衛出動をすることは、内閣総理大臣が、閣僚等存命でしたら可能でございます。
末松委員 今の指摘は非常にいいですね。そういう意識でやらないといけないんですよね。
 実は、今非常に重要なことを内閣官房長官が言われたんですよ。つまり、国会議員がかなり多数やられたら、そうしたら後は内閣でばんばん決めればいいということですよ。そういう位置づけですよ。つまり、後は選挙で選ぶ、その選挙がいつあるか知りません、できるかどうか知りませんけれども、そこをやらないと補充にならないわけですよね。
 では、それまでは内閣がずっと対応し、そして選挙があるまで、そして新しい議員がそろってから、その初日かどうか知りませんけれども、そこで事後承認を求める、こういう位置づけですね。これは確認です。
福田国務大臣 これは、恐らく憲法議論の範囲に入ってくるんじゃなかろうかと思います。ですから、そういう事態というものを想定していないのが現憲法であろうかと思います。
末松委員 確かにおっしゃるとおりなんですよ。そこは、憲法自体が緊急時を想定していないところがこの遠因なんですよ。それはわかる。国会自身で我々が決めなきゃいけない。内閣に聞く話ではないんです。それはもう重々わかった上です。
 ただ、ドイツなんかはどうやっているかというと、防衛事態というのを四十八人の合同委員会で決めちゃおうという対応をしていますし、あるいは、フランスとかオーストリアなんかは大統領がそのまま権限としてやれるという位置づけになっていますね。だから、これは将来的な議論になるのかもしれませんけれども、国会の我々も自分たちのことについては必要な危機管理をしていかなきゃいけないということがあろうと思います。
 余りこれにかかずらわっていると時間がなくなりますので次に行きますけれども、これは一番またあり得る想定なんですけれども、私が今聞いているのは、逐次、リーダーシップと言われる人たち、あるいは国の幹部、あるいは役所、これが機能しなくなったときにどうするんだと、そのまさしく有事のときの緊急事態を聞いているわけですけれども、これは防衛庁長官に聞きましょう。防衛庁が、あの市谷ですか、あそこのところが一番ねらわれやすいですね。一番最初にたたいた方が仕返しが来なくていいだろうと。あそこをやられて、中谷防衛庁長官があそこに入っておられるかどうか知りませんけれども、大半の方が亡くなられた場合、そういったときには防衛庁はどういうリスク対応を考えているんですか、あるいは全く考えていないんですか。
中谷国務大臣 防衛庁につきましては、そういう事態に備えまして地下に中央指揮所を持っておりまして、そこで指揮することになっておりますが、不幸にして大人数の損害があった場合におきましては、その欠落が生じた各レベルの意思決定者については、法律や規範に従いまして適切に職務代理を定めまして補職を行いまして、しかるべき武力攻撃に対処するよう万遺漏なきを期するようにいたしております。
末松委員 言葉ではそうなるんでしょうね。何かもっともらしい言葉ですけれどもね。
 それでは、とにかくそのコンティンジェンシープランといいますか、危機時の対応は必ず、それは省外には出ないけれども、そこは、やられた場合というのは想定していただいて、もしやられた場合にはどこの部隊が指揮をとってどうするかということは本当に遺漏なきを期していただきたいと思います。
 次に、では地方の政治との関係で申し上げます。
 例えば、知事とかあるいは市長が国の方針に反対をしたという場合はこの法律で代執行という形が書かれておりますが、では、知事とか市長がやはり戦時下で亡くなった場合、これについてはどういうことで、地方自治法ですか、書いていますでしょうか。
片山国務大臣 今お話しのように知事や市町村長がいなくなったときは、副知事や助役が代行するんです。知事や市町村長がいないとき、あるいは事故があるときは、地方自治法の規定で副知事、助役がやる、こういうことであります。
末松委員 総理の場合は五人でしたよね、代理は。では、副知事が二人とかいるところはあるのかもしれませんけれども、これは副知事なんかもみんな序列で、五人なら五人とか、そういうふうに、あるいは副知事が亡くなったらどうだというふうなマニュアル的なものはつくられているんでしょうか。
片山国務大臣 副知事や助役が複数のときは順番がついています。今三人が一番多いですけれども。
 そこでまた副知事や助役もみんないなくなる、そういう御質問になると思いますので、そのときは、あらかじめ指定した職員が、国の場合と同じように、その順番でつく。それもないときは、これは規則でそれを指定するようになっておりまして、大体総務部長がやるケースが多いと思います。
末松委員 そうしたら、では、そこはリーダーシップの体制はきちんととられていると。
 では、地方議会との関係はどうでしょう。例えば、知事とか市長が反対と言ったのは、それは国の方でやりますと言えばやっちゃうんですね。ただ、その中で議会が、ふざけるな、おれたちはそれをやらないということを議決で決めたとしましょう。これは仮定の話です。そうしたときに、国はそれを、意思をねじ込んでやるんですか。それとも、地方議会というものを尊重してそこは何か対応するというのは、この法律の中に書かれているんですか。
片山国務大臣 地方議会の権限は法律上決まっているんですね。それ以上の権限はございませんので、この件について、地方議会がそれに反対するとかなんとかということはありません。
 ただ、地方議会としての意思の表示はできますよ、決議はできます。しかし、決議はできても、それは法的な効果はありません。制限的な、限定的な権限なんです、地方議会の場合には。
末松委員 例えば、地方では、この法律では、国民の生活を守る義務があると書かれていますけれども、もし地方議会で、これはちょっと想定しにくいかもしれません。ただ、地方議会の意思として、おかしいと思って、そこで必要なことをやらないというふうになったらどうするんですか。
片山国務大臣 先ほども御答弁しましたように、地方議会が、やらないということの、それを権限として決める法律上の根拠はありませんから、法的な効果はないんです。ただ、議会として反対だという意思表示をしたときは、法律上の議論でなくて、政治上のいろいろな議論は出てくるかもしれませんね、政治上の議論は。しかし、それは法律上のあれではありませんので。
 かつてもそういう例が一、二ありましたよ。そういう場合には、事実上、話し合って調整した、こういうことでございます。
末松委員 もうちょっと、では具体的に言いましょう。例えば、神戸市が非核都市宣言、これは、全国自治体の三千数百のうち約七五%が、非核都市宣言というのですか、それをやっているということなんですけれども、そこで神戸市は、核を積んだ艦船、こういったものに対して寄港を拒否するんだということで宣言をしていて、それで実際に米艦がそこを寄港したことがないということなんですね。
 そういった場合に、米側から神戸港を使いたいと言った場合には、今の総務大臣の言い方であれば、これはもう関係ないんだ、米艦が寄港すると言えば、政府が決定すればさせるんだ、ごちゃごちゃ言うな、こういう位置づけになるわけですね、位置づけとしては。
片山国務大臣 港湾施設を使うか使わないかは港湾管理者の権限ですね。港湾管理者の権限、神戸市の権限ですよ。だから、その場合に、神戸市議会は、法的な根拠はありませんけれども、寄港させるな、こういう決議をしましたね。そこで、実際は神戸市は、アメリカの領事館ですか大使館ですか忘れましたけれども、非核の証明書をとりまして、それで市議会と話し合って、市議会も了承したわけであります。
 だから、市議会の決議は法的な効果はないんです。ただ、市議会がそういう一致した意思を示したことを市は尊重して、事実上、非核証明書をとって市議会を説得したわけであります。
末松委員 なるほど、わかりました。
 そうしたら、これはちょっと横並びの議論なので、ここまで追及するのは余り妥当じゃないかもしれませんけれども、地方の議会、例えば東京都議会が核兵器でやられた、議会の、国会と同じような、議員が多数やられた、そういった場合というのは、議会の活動、方針決定、あるいは条例の決定機構について、そういったものは、何か緊急事態法みたいなものは考えておられるんですか。あるいは、あるんですか、ないんですか。
片山国務大臣 今御指摘の点は、内閣官房の方から、我々、相談といいますか、それは受けておりませんけれども、いろいろなケースを想定して、今後、地方議会というものの役割、位置づけをどうするかは個別法制の中で検討いたしたい、こういうふうに思っております。
末松委員 こればかりやっていても時間がなくなりますので、次のトピックに移ります。
 ちょっとホットなニュースになりますけれども、直接には関係が薄いと言われたら薄いところではあるかもしれませんけれども、大きな意味で、国家の危機管理という観点から、あるいは防衛庁の信頼問題というところからお聞きをしてみたいと思います。
 実は、最近、私どもはアメリカへ行き、そして東アジアの関係で台湾の近くの国にも行ってきたわけなんですけれども、日本との関係で今台湾の方で大きな問題となっているのが、台湾のCIAとも言われるような国家安全局、これの秘密が暴露された。官邸の機密費の使い道が暴露されたというのと同じような事件なんですけれども、そこで、非常に向こうは大変な報道がなされている。
 これはどんな事件かといいますと、国民の皆さんは御存じないから簡単に申し上げますと、最近よく週刊誌とか新聞にも出始めましたけれども、李登輝前総統時代に、国家安全局に巨額の秘密資金、これが大体百三十億円ぐらいあったんですが、これがつくられて、議会の監視を経ないで、さまざまな対外的な工作を含む秘密工作資金に使われてきたというのが明らかになったんですね。
 これは、なぜこれが明らかになったかというと、そのうちの、国家安全局の出納課長というのが横領事件を起こしまして、それで海外逃亡をして、その秘密文書を持ち出した。それが今いろいろなマスコミに渡って、この事件が発覚したわけであります。これを明徳プロジェクトというんだそうですけれども、ここで、李登輝元総統、これがさまざまな国にロビー活動をして、非常にさまざまな対外工作を行ったというのが書いてあるんです。
 それで、例えばこれはシンガポールのザ・ストレーツ・タイムズというんですけれども、ここにこういう写真がでかく載っているのが、これは橋本総理とそれから秋山元防衛事務次官、これがきのうも審議されていますし、山田議員が、外務委員会、そしてきのうの審議になってきているわけなんですけれども、これによって、私も実際のものを、この証拠というのが、私も某国に行ってとってきまして、実際に国家安全局がこれだけのお金をこういうふうに使ったというふうなことが出ています。
 そこで、実際にここに今証拠で載っているのは、この秋山元防衛事務次官に対してハーバード大学の留学費用ということで十万ドル、約一千数百万を渡した、そして、彼が日米の防衛ガイドラインのときの防衛局長として非常に台湾との関係で情報収集とか協力をしてくれた、その恩義に報いるんだという位置づけをして、そして秋山さんは、それに対してハーバードの留学費用で、お礼を言って、そして実際に留学をしたということが書かれておりますし、橋本元総理大臣に対しては、一万ドルといいますから百数十万ですかが、お歳暮という形で手渡ったというようなことが書かれているわけです。
 そこで、私の方で問題にしたいのは、この事件の解明ということについてよりも、まず、ここでこれのどんな効果があったかというのが書いてあって、そのときに、書いてあるのが、九五年の李登輝さんの訪米、これに対して非常にビザをおろすために効果があったと書いてあるんですね。それから、これはわかりませんけれども、書いてあるのをそのまま読めば、九六年春、中国のミサイル演習の後、橋本首相を通じ米政府に艦隊派遣を働きかけて、そして米艦隊が出動した、これは台湾の国家安全局の見解なんですよ。実際に金が行ったかどうかは、そこまではわかりません、正直言ってこの橋本さんについては。ですから、そこは御本人が違うという場合には大変な迷惑だろうとは思うんですけれども、私、実はこれの問題意識もあったので、いろいろと調べてもみたんです。
 そこで、米国の関係者とも実は話をし、そして、香港関係の情報筋なんかにもさまざまな情報をとっていろいろと調べていったら、彼らが言うには、台湾ロビーというのが非常にこれは強いものがあって、それで、アメリカの議会なんかでもユダヤロビーの次に台湾ロビーが非常に強いと。そして、台湾ロビーの工作の中心はアメリカで、これはここがポイントなんですけれども、アメリカを動かすことによって日本を動かすんだ、そういう位置づけをしていたというんですね。
 そこで、特に彼らが言っていたのが、日米安保と特に日米のガイドラインですか、あのことは、あれはもう台湾有事のときに、アメリカと日本の防衛関係をきちっと築いて、そして、逆に一言で言えば日本も引き込む、そういう戦略であったんだと。そのためにまず台湾ロビーがやったのは、李登輝元総統が、彼は、インタビューの記事に、このお金は国家の生存のために使ったんだというふうにはっきり言っています。確かに、彼は、台湾という国をどうやって生存空間というものを確保していくかということに一生懸命になっていたんだと思います。その意味ではすごい人だなと思うんですけれども。
 それをお金を使ってまずやったのが、九五年の五月にアメリカに自分が訪米するんだ、そこに台湾ロビーの大変な力を使ったんだということが言われているんですよ。事実、この李登輝の訪米でビザを支給するに当たって、アメリカの国務省は反対したんです。でも、議会が、九五年の米国の議会でビザ支給について決定を行ったんですけれども、これが、米国の下院が、何と賛成が三百九十六、反対がゼロです。そして上院が、九十七が賛成で、反対が一、一人だけ。それだけ大きな、これは台湾ロビーの大成功だと言われているんです。
 そこでどうなったかといいますと、そこで、この李登輝さんがアメリカに行ったことに対して一番腹を立てたのが中国なんですよ。何だという話ですよ。そこで中国はどういう行動をとったかといいますと、その二、三カ月後、台湾の海域で軍事演習を行い始めるわけですよ。そこで二回、台湾北方公海上でミサイル、火砲の実弾射撃訓練を行った後、今度はその翌年、九六年の三月に、三回にわたって台湾近海でミサイル発射訓練を行って、海空軍の実弾演習あるいは陸海空の統合演習を行っているわけなんですね。
 そうなりますと、これが何を導いてきたかというと、アメリカが、これはいかぬというので、空母二隻を、機動部隊が行って台湾海域に入ってくる、そこで台湾海峡の危機というのが出てくるわけなんですね。
 そこで、現地の常識という話で言っていたのが、そこから、今度は、米側が日本に対して、今までの研究の成果を生かした上で日米防衛のガイドラインをここで仕上げてしまおうという話になってくる。そこで、日本側の方に対しても台湾ロビーが非常に働きかけをして、台湾側の認識では、今出ている資料の中で言うと、そこの中心人物が秋山元防衛局長だった、その彼がこの防衛ガイドラインをきちんと仕上げた一番重要な人物だった、それのお礼だということを言うわけです。事実、それから今度は、九六年の四月に日米首脳による日米安保共同宣言、そして、九七年九月の日米安保協議委員会という中での日米防衛協力のための指針というものができて、そして九九年ですか、それが国内法として周辺事態法ということで、日本が何かあった場合にアメリカの後方支援を行っていくということにつながっていくわけです。
 事実関係を見ていくと、そういう、日本がだんだん巻き込まれて、要するに、中台の紛争が起こったときにはやはり日本としては多分何か後方支援をやらなきゃいけないんだろうなという体制が着々とできていっているわけです。それで、九七年、橋本政権の時代に、梶山官房長官が、中台紛争というのは周辺事態に入るのかと言われて、入ると言って中国から猛烈な反発を受けて以来、日本政府は特定地域を想定しないんだということを強調するに至るわけなんですね。
 それで、そういったときに、あと一点だけ申し上げれば、李登輝さんという方は、九九年、台湾新幹線というものが、実は二兆円の総事業費、これが、もとはフランスとドイツ、ヨーロッパ勢が優先的に交渉権を与えられていたのが急にひっくり返りまして、そこで日本連合がとることになるんですけれども、このときは、これは日経ビジネスによればですけれども、直前に台湾の地震があって、耐震構造を持った日本の新幹線の方がいいとか、あるいはヨーロッパで、ドイツで鉄道事故があったりしてちょっとこれはまずいよという話もあったんですが、この日経ビジネスの見る見方の一番の決定打は、李登輝総統が日本の新幹線を支持するという強い意向があって、それが決定打になったと書いてあるんです。
 そういった意味で、要は、私は何が言いたいかというと、台湾ロビーというものがアメリカや日本に対してどんどんやられていく中で、私たちの、国民の、民族の運命がそちらの方に引っ張られてきたような感じがするわけです。それについて、現地で話し、そしてアメリカ側とも話して、アメリカの関係者の中には、賛成する人、いや、そうじゃないんじゃないかと言う人、半々いましたけれども、こういう見方があるんですけれども、外務大臣、どうですか、この見方について、できるところのあなたの考えを教えてください。
川口国務大臣 委員のお話を大変興味深く聞きほれておりましたものですから、感想はと言われても、とっさに何も申し上げることがないんですけれども。
 一番最初におっしゃいました、台湾からの資金と言われることでございますけれども、これは私は報道等では承知をいたしておりますけれども、外務省、我が国は台湾とは委員御案内のように外交関係はございませんので、交流協会等から情報を収集するということでございますけれども、それが事実であるという情報には接していないということを申し上げさせていただきたいと思います。
末松委員 それでは、ちょっと私の方で組織的な、体制的なものを聞きますけれども、私が実は本当に懸念しているのは、こういったロビー活動ということに対して、日本は、正直言って、正面切っては何ら真っ正面から見据えていないんですね。
 アメリカは、これはロビー活動規制法というのがあって、このロビー活動に対して、正式に位置づけもしていますけれども、その金額とかあるいはだれにどうやったとか報告をしろ、ガラス張りにしろという形の法律があるやに聞いていますけれども、これは法務大臣に聞けばいいのかしら、この海外の事例について教えていただけますか、ほかの国ではどうやっているかということを。
森山国務大臣 お尋ねのことにつきましては、政治活動のあり方にかかわる問題だと思いますが、御指摘のようなことについて、法務省として……(末松委員「公務員の」と呼ぶ)公務員についてですか。ロビー活動というお話だったものですから政治活動であるかと思いましたのですが、法務省といたしまして、そのようなことを調査したことはございませんので、把握いたしておりません。
末松委員 ということは、調査もしていないということだし、済みません、私の不勉強で恐縮なんですけれども、私の調べた限りでは、日本にはそういったものを取り締まる法律がないと思うんですけれども、その辺については、個々の収賄とか、そういうことで取り締まっているんでしょうか。
森山国務大臣 そのような法律は、特に外国のロビー活動とか、ロビー活動というようなものを取り締まるという、それ自体の取り締まりをする法律はございませんが、ただ、国内法に違反をした場合、例えば、刑法の贈収賄罪とかあっせん利得処罰法の違反とか政治資金規正法違反などに該当するものがあれば、これらの法律によって適切に対処されるということになっております。
片山国務大臣 政治資金規正法の二十二条の五に、何人も、外国人あるいは外国法人あるいは外国人が中心で組織する団体やグループから、政治活動に関する寄附を受けてはならない、こういう規定がございます。(末松委員「もう一回言ってください、済みません」と呼ぶ)
 政治資金規正法二十二条の五に、何人も、外国人あるいは外国法人あるいは外国人が中心で組織する団体等その他の団体から、政治活動に関する寄附を受けてはならないと。
末松委員 ここでちょっと立ちどまって、別に皆さんだけに質問しているわけじゃなくて、国民の皆さんにも、ロビー活動って一体何だろうというお話があるかもしれませんので、簡単にちょっとだけ説明させていただきます。
 ロビー活動というのが、アメリカの方での定義によりますけれども、昔はアメリカで、依頼者が、立法とかあるいは規制とか補助金とか政策立案について要望を政治家に伝えて、見返りとして金品の提供を行う、もらうということが一般的だったんですが、今はこれが政治腐敗の温床になるということで、現在のロビーイングは、依頼者の利益と合致する可能性の高い議員の政策立案を支援する、これは、情報とかあるいはほかに出てくればあとは金品になるんですけれども、ということによって影響力を行使する、見返りとして、一般的なのが、議員とかスタッフが、日本と同じなんですね、パーティー券の購入とか政治献金を依頼するのが頻繁に行われているということなんです。
 だから、今、総務大臣が言われたように、政治活動に対してそういうことを行っちゃいけないんだよということなんですが、一般の公務員、これはどうなんですか。
片山国務大臣 私が申し上げたのは、政治資金規正法ですね、政治家というんでしょうか、その関係でございまして、少なくとも国家公務員法や地方公務員法に、寄附を受けてはならないというような規定はなかったような気がいたします。確認いたしておりませんが。
末松委員 そうしますと、例えば、今話題として出ている秋山元防衛庁事務次官が、外国から、つまり台湾の国家安全局から、CIAみたいなものですね、ここから金品をもらって、日本政府にとって、要するに、情報を漏らしたりしていたら、その者がそれはスパイということになって日本の国益を害するということになるんでしょうけれども、これは、今の総務大臣の見解でいけば、特に政治活動には当たらないから公務員というのは問題ない、こういうことなんですか。あるいは法務大臣、そこはどうなんですか。
森山国務大臣 公務員の場合は、その権限のあることについて贈賄を受ければ、それは贈収賄に係りますので、それは刑法違反になると思います。(末松委員「海外でも一緒ですか、それは海外からでも」と呼ぶ)海外も同じだと思います。私の感じでそう思いますが。
末松委員 それじゃ、秋山元防衛事務次官について、もう少しお話をさせていただきたいと思います。
 きのう、山田議員の方で、法務省の刑事局長から、事後収賄の要件という形でこの定義があって、事後的にそういう利益供与を受けても、これは事後収賄に当たるんだということだったんですね。
 そこで、山田議員の方で、この秋山元事務次官が退職後、ハーバードに行って研修をするのに、この台湾の国家安全局の十万ドルの資金、これはもう渡ったということは確認されていて、そしてハーバード側もそれをもらったということは確認して、そしてそれに対して、この秘密資料が暴露された記事に、記事というか現物によれば、秋山さんはそれに対してお礼を言ったということになっているんですね。
 その場合は、秋山さんの、ポイントは、それがもともと、彼の言い分は、防衛庁の官房長によれば、それはそんなお金だとは知らなかった、自分はハーバードからフェローシップをもらったのであるという形に今言っているわけですよ。でも、きのうの山田議員との質疑を聞いていたときに、これは防衛庁の官房長に聞いた方がいいんでしょうね、秋山さんは国家安全局に連絡をして、そして自分がハーバードに行くということについてお礼を述べたと。そして、さらにちょっと問題なのは、台湾の在日工作の友人になります、そしてさらに、引き続き秋山さんは国家安全局とも連絡をとり続けます、そして、二〇〇〇年の四月に台湾を訪問しますということが中国のこの記事に書かれているわけですよ、記事じゃなくてこの文に。
 そこで、防衛庁の官房長は、二〇〇〇年の四月にハーバードの旅費負担で台湾を訪問しておられますがということを言った後で、ちょうど二月ごろでございますので、その台湾旅行のアレンジのための電話を、これは国家安全局だと思いますけれども、このお礼の電話を入れたことがあるかもしれませんというのをここで言っているわけですよ。
 私は、ちょっとそこでひっかかったのは、ちょうど台湾側が今度、二〇〇〇年の四月に台湾に来ると国家安全局の文書が言い、そして本人がそのときに実際に行っている。しかも、何でハーバードの旅費負担で、そこで行かなきゃいけないんですかということを、そこはちょっと、防衛庁の官房長、本人じゃないからそんなことは知りませんと言われるかもしれませんが、事情を聞いた範囲内でそこは教えていただきたいと思います。
柳澤政府参考人 ちょっと昨日と重なるところもございますが、全体として申し上げますと、秋山元次官は、御承知のように、平成十年の十一月に退職をされておりまして、退職後、十一年の四月からハーバードに留学をされております。これは、ハーバード大学のエズラ・ボーゲル教授ですとか、ジョセフ・ナイ教授とかねてから親交を秋山さんはお持ちでございまして、その方々と御相談をし、フェローシップということで受け入れてもらうということになったということで、その際ハーバード側から供与を受けたものは研究室と、住まいといいましょうかアパートメントの提供を受け、約八千ドル弱の研究費でございますが、トータルでそれぐらいはいただいた、それから、研究活動の旅費のようなものはハーバードに出していただいていたと。しかしながら、本人は、そのハーバードの財源がどんな形で出ていたかということは全く承知をしなかったし、また、直接台湾側から金品を受け取ったということは全くない、こういうことでございました。
 そして、今の台湾訪問でございますが、私もその点も聞きましたけれども、秋山さんの大変大きな問題意識は、やはり中国、中台の問題を平和的に解決すること、そして東アジアの安全保障の枠組みを考えていくことというのがテーマでございまして、当然、台湾だけでなくて北京の方も、多分台湾よりもたくさん訪問されていたと思いますが、そういう研究過程の一環として、先ほど申し上げました、平成十一年からハーバードへ行っておりますが、十二年の四月に台湾行きをしたわけでございまして、たしかその報道で、二〇〇〇年の二月ごろに台湾の当局と電話でコンタクトをしサンキューと言ったという報道があるとすれば、四月に行ったのであるから、二月ごろのアレンジメント……(末松委員「四月に行ったんですね」と呼ぶ)はい、行っております。ですから、仮に二月にそういうサンキューの電話があったとすれば、そのための、アポイントメントをとってもらったりすることのお礼の電話をしたはずだというのが御本人のお話でございます。
末松委員 私の方としてもうちょっと聞きたいのは、四月に行ったときに何を話し合ったとか、そういうことは彼は言っていられませんか。
柳澤政府参考人 当時は主に、お立場がお立場ですから、国防当局者と相当多くお会いになった、そして当然李登輝さんともアポイントをとってもらって、相当多くの人と会って、いわゆる中国、台湾の将来の問題についていろいろ意見交換をしたということでございます。
末松委員 まあ私も、そういった、ここで捜査機関をどうこうやる気はありません。個人の名誉もあるでしょう。私が知っているこの内部資料ではそういうふうに書かれてあるということです。ただ、そこは、やはり国家の機密情報であるので、私、その信憑性についてはかなり信頼度は高いだろうと。ただ、これは、台湾側がそう認識し、そう工作をしてきたというのは、台湾側にとっては事実であろうと思います。
 ですから、私が本当にやや怖いと思うのは、やはり事実関係は、これは防衛庁がやるのは正直言うと酷なところがあると思います。防衛庁長官がきのう最後に、そんなに言うんだったら司直の手でやればいいじゃないかと。それは多分そうでしょう。ただ、私が思うのは、実際に海外に司直の人が行って、これは本当に事実ですかどうですかと台湾の国家安全局に聞いたって、そんなものはありませんよの一言で終わるんですね。だから、では事実関係というのはこれでお蔵入りになるんですか、結局こういうことなんですかと。
 それで、実際に秋山さんが、だからといって、この方が台湾から何も金品をもらっていないというのは、御本人の自己申告なんであって、それを全然裏づけるものはないんですよ。だから、そういった方が防衛関係の中枢にいて、そこで台湾との連絡を大きくとりながらやっていくということは、やはり非常にロビー関係の大きな問題点が浮き彫りになったと私は思っています。
 というのは、例えば有事の関係でも、有事で、やばいと思って態勢をとろうとしたら、もう至るところで、海外からの、いろいろな人が何か敵のスパイなりいろいろな外国の機関の手先となっている人だったようなケースがあれば、有事態勢といっても、これは全くもう日本の防衛のていをなさないということは、私たち政治家として、そこは一度真剣に考えていかなきゃいけない問題だと思うんです。
 同じく、ちょっと私は法務大臣に聞きたいんですけれども、こういった問題があることで、法務省として、秋山さんあるいは橋本元総理、まあ御病気の回復後なんでちょっと酷かもしれませんが、こういうことで事情をお聞きするというようなことは一切ございませんか。そこをちょっと意思を確認したいと思います。
森山国務大臣 おっしゃいますお話は、非常に個別的な具体的な話でございますが、捜査の活動にかかわる事柄でございますので、法務大臣としてここで何か申し上げるということは控えさせていただきたいと思いますが、あくまで一般論として申し上げれば、検察当局におきましては、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、告発のあるなしにかかわらず、法と証拠に基づいて適正に対処すると思っております。
末松委員 ちょっと小泉総理にもお聞きしたいんですけれども、こういう問題が実はいろいろと報道されて、東アジアでこういう話題が結構持ち切りになっているんですよ。そういったときに、これは刑事当局が必要と認めればやるし、そうじゃなければやらないよ、そういう考えは総理としていかが思いますか。
小泉内閣総理大臣 ただいま森山法務大臣が答弁されたとおりでありますが、こういう個人の人権にかかわる問題、しかも御本人が否定されている問題について、国会の場で、一方的な一部の記事に基づいてされるというのは、慎重であるべきだと思います。
末松委員 私も、一部の記事に基づいてだけこんな質問をするんだったら私自身もそれは軽率だろうと思ったから、だから海外、その現地の近くに飛んで、実際にそんな資料があるのかということを探して、とってきて、そして私は言っているんです。そんなに私は無責任にやっているわけじゃない。
 いいですか。それで、では小泉さん、私は総理に申し上げたいんですけれども、こういうことで、確かに個人ということでいえば、これはどうかわからない、私もはっきり申し上げますよ。そこを、私自身もそんなところを証拠を握っているわけじゃありませんよ。ただ、台湾の国家安全局の事実はそうでしょう、その資料だったんですから。
 ですから、それはそういうことがあるかもしれませんけれども、ただ、このロビー活動とかいうこと、これに対して何ら問題意識を持たずに、何かそういうふうな情報が入っても全く、これは個人にかかわるから実はプライバシーの問題もあって、全然調べる必要はないねというふうに何か非常に割り切るということ自体が、それは、同僚の方をおもんぱかる、あるいは政府の一員をおもんぱかる立場としては、気持ちとしてはわからぬでもないけれども、それはあれとして、やはりこういうことをきちんと規制をする、あるいは政府として問題意識を持つことは重要じゃないかと思うんですけれども、それに対して、このロビー活動について、総理、どう思われますか。
小泉内閣総理大臣 そのようなロビー活動が頻繁に行われているということは、国会議員だったらみんな知っているんじゃないでしょうか、政治家だったら。当たり前だと。そういう中で情報をとりながら、交渉しながら、みずからの見識と国益のために動いているのが政治家だと思います。
末松委員 ということであれば、まあ、そんな不機嫌な顔をなさらないでくださいよ。いいですか。それは確かに私もそう思いますよ。李登輝さんなんかは、国家の生存をかけて、その秘密の金をロビー活動で国家の生存のために使っている。これは指導者として当然のことでしょう。ただ、いろいろな外国のロビー活動が来ることに対して、金品がどんどん入ってくるというようなことである、このことに対して、それはしようがないでしょう、それは個人の見識でやるんですからという話というのは、私はちょっと納得がいかないと思うんですよね。
 では、もうちょっと現在のシステムについてもお聞きをしましょう。
 例えば、今、橋本元総理が一万ドルもらったという話になっています。これは国家安全局の話ですよ。私はそこは証拠はない。例えばこういうふうなことで明らかになった、その場合、国税局というのは動くんですか。要するに、所得税法で違反か何か、そういう形にはなるんですか、あるいはならないんですか。
塩川国務大臣 突然のお話でございましてちょっと予測しておりませんでしたが、さっきおっしゃっているように、私も確認したことはないとおっしゃる話でございますから、架空の話に対して私ども答えられないと思っております。(末松委員「一般論で結構です」と呼ぶ)
 しかし、一般論で申したら、これは雑所得で申告しなきゃならぬものだろうと思いますけれども、これはあくまでも一般論でございまして、そういうことを想定して今お答えしているものではないということを御承知いただきたい。
末松委員 そうしたら、では、政治資金を担当している総務大臣の方にお聞きします。
 これは政治資金規正法か何かで、では、これは一般論として聞きましょう。仮にそういうものが外国から手渡った場合、これはどうなんですか、報告との関係でいけば。
片山国務大臣 それは、先ほども言いましたように、規定は、何人も受けてはならない、こうなっているわけでありまして、お話の件は、やはり具体的な事実をきっちり確認した上での話でございまして、私どもの方にはそういうことは全く何も報告も来ておりませんし、それ以上のことは申し上げられないということでございます。
末松委員 ここの話は具体論ではないということで、確かに私も、別にここでそういったことを、こういう情報があるということは当然紹介させていただいていますけれども、それが本当にどうかということは、私自身はそれは確かにわかっていない。ただ、そうはいっても、これだけ国家安全局のところがここまで情報として流れてきているんですから、やはりこれは国民の皆さんもそれ相応の関心を持つ問題だろうと思いますし、そこで、いや関係ないよということで、この場で私は皆さんからそう言われたとしても、それはおかしいと思いますね。
 だから、むしろそうであるならば、逆に橋本総理なんかは中国側から何と言われているかというと、とんでもないじゃないかと。表では中国の友人として振る舞っておきながら、裏では台湾の国家安全局とつるんで、そして、中台間の対立というかそういうふうなことで問題視をしているという事実が、そこは、私が聞いた人はそういうふうに言っていましたよ。
 だから、そういった意味では、彼の、逆に言えば名誉を守るためにも、私は、そこはきちんと本当に事情を聞いて、そして、まずければ、それは違う、おかしいよということを言う機会をやはり与えるべきではないかと思いますが、その辺についてはどう思われますか。
小泉内閣総理大臣 御本人がいない場で個人の名誉にかかわることを一方的な情報で言うのも、私は慎重であるべきだと思っております。
末松委員 思うんですけれども、あと時間もあれなんで、またちょっと別な話題にもしますけれども、ただ、まさしく外国のロビー活動、これはやはり、ひとつきちんとここで審議をする。民主党の中でも、そういったことに対して、事情と世界の状況等を見ながら立法もしていきたいと思いますけれども、そういう疑われることのないように、我々厳に身を対処していかなきゃいけないと思います。
 それでは最後にちょっと、時間が若干ありますので、別の問題について話をしていきますけれども、自衛隊のことについてなんですけれども、この法律では、軍事法廷的なものというのは、ここは一切ないというふうに考えてよろしいんでしょうか。実際ないんですけれども、その辺について防衛庁長官の見解を問いたいと思います。
中谷国務大臣 我が国は、憲法におきまして、最高裁判所が司法の唯一の最終機関であるというふうに定められていると思いますが、自衛隊員の犯罪につきましては、刑事訴訟法令に従いまして、通常、裁判所において裁判を受けることになっておりまして、旧軍の軍法会議のようなものを設けておりませんが、これは、旧軍の軍法会議のように通常の裁判体系と切り離されたものは、憲法第七十六条によって禁止される特別裁判所に当たると考えられるものなどからでございます。
末松委員 これは私の選挙民の方からも聞かれたんですけれども、これもちょっとあり得ない想定なのかもしれませんけれども、自衛隊の方が、例えば敵前逃亡する。各国の軍隊では、敵前逃亡というのは死罪に当たるというようなことがよく言われておりますけれども、自衛隊の場合、敵前逃亡、これは国民の皆さんのセンスからいけば、それはおかしいよという話になるんだと思うんですね。
 今まで、こんな有事の場合には、こういう言い方をしたらちょっと失礼かもしれませんけれども、一番最初に死ぬ、そして死んでいく覚悟のある方々が自衛隊という方々ですから、そして、国民のために戦ってもらう方々なんで、そういう方々が敵前逃亡するとか、そういうことはないと思いますけれども、これは規則上的には何か特別の規則になっておりますでしょうか。これは選挙区の方が、それはないですよねということを私の方に確認を求めたものですから、あえてお聞きをいたします。
中谷国務大臣 自衛隊法によりますと、正当な理由なくして職場を離れ三日を過ぎた者、または職務の場所につくように命ぜられた日から正当な理由なくして三日を過ぎてもなお職務の場所につかない者及び警戒勤務中、正当な理由がなくて勤務の場所を離れて職務を怠った者に対しましては、自衛隊法第百二十三条一項によりまして、「七年以下の懲役又は禁こに処する。」というふうにされております。
 なお、この規定等につきましては、旧軍は敵前逃亡は、死刑、無期もしくは五年以上の懲役、禁錮とされておりましたけれども、自衛隊法におきましては、反社会性を有して、刑罰をもって制裁を加えることの合理性のある隊員の規律違反につきましては、他の国家公務員との刑罰の関係、また、自衛隊が規律を保持して、国民の負託にこたえる任務ができるようにという趣旨から、この自衛隊法独自の罰則規定で、最高刑が七年というふうになっております。
 自衛隊内につきましては、職務の遂行等につきましては、自衛官の心構えを持って、いざ事に臨んでは危険を顧みず職務を遂行するというような精神を旨といたしておりまして、常に厳正に規律を持って勤務をいたしておりますので、このようなことがなく任務を達成できるように、日々精神教育等にも努めてまいりたいというふうに思っております。
 なお、我が国の場合は志願制でございます。
末松委員 それでは、私の質問を終わりますけれども、最後に、私は、先ほどのこの議論の過程の中で、橋本元総理に対しては、まだ私自身もそこら辺はよくわからないところですけれども、秋山元防衛事務次官に対しては、やはりそこは非常に具体的な証拠と、彼がそういうふうに対応しているような事実関係がありますので、御本人がもし違うというのであれば、違うということできちんと身の潔白を証明していただければいいという意味も含めて、山田議員がきのう求めたように、委員長に対しまして、秋山氏の参考人の招致をぜひお願いしたいと思います。今、理事会でお話しになっておられると思いますけれども、そこは重ねてリクエストをさせていただきたいと思います。
瓦委員長 ただいまのお申し出につきましては、委員長としてこれをお預かりして、後ほど理事会でまた御相談をいたします。
末松委員 では、よろしく御審議をお願いしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
瓦委員長 この際、枝野幸男君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。枝野幸男君。
枝野委員 一昨日から始まりましたいわゆる総括的審議の最後は私になりますが、どうもここまで話を伺ってまいりますと、今回の法律案、成立したとしても具体的に何が起こるんですかという問いには、すべて、これから二年間でつくる法律でということで先送りをされておられる。何か、外側だけはつくったけれども中身が伴っていないという、ほかの政策でもこの一年間よく見るパターンをまた繰り返し聞かされているなというふうに思わざるを得ません。
 ただ、ほんの一部分、今回の法律が成立することで具体的な法律効果が出てくる部分、それは自衛隊法の改正であります。この部分を中心にまず私はお尋ねをしていきたいというふうに考えておりますが、今回、自衛隊法の改正で、防衛出動を命じられたときなどに幾つかの法律の適用除外あるいは特例ということを規定しております。
 例えば道路法で、防衛出動を命ぜられた自衛隊の部隊等が道路工事をする、道路に穴ぼこがあいていたりするので、移動するのに穴ぼこがあいていて困る。道路工事をする際には、道路法の原則では道路管理者に承認を求めなければならない、しかし、防衛出動を命ぜられた部隊がやる場合には事後通知でいい、例えばこういう規定がございます。
 一昨日の岡田委員からの質問の中でも触れておりますが、実際に武力攻撃を受けていわば戦争状態になっている自衛隊の部隊が、例えば事後であっても通知をする余裕があるのか。
 さらに言えば、この道路法はまだ事後通知だから、まあそういうこともあるかなとは思いますが、一方、道路交通法では、道路工事のために道路を使用する際の警察署長に対する許可制度というのがありますが、防衛出動を命ぜられた部隊については事前通知で足りるという法改正をわざわざ置いています。
 戦争をしている、武力攻撃を受けて、それに対して武力を行使している自衛隊が、何かするのに警察署長に事前に通知をしろだなんて余りにもナンセンスだということは当然御理解をされていると思いますが、この法改正はどういうふうに読めばいいのか、改めて確認のためお尋ねします。
中谷国務大臣 まず、防衛出動後の対応でございますけれども、この場合には、総理から行動できる範囲を与えるわけでございますけれども、完全に行政機関がもうストップしているかということを問われれば、戦闘が行われている地域であれば皆さん避難をしてだれもいない地域かもしれませんが、それに至る前の地域におきましては、まだ行政機関も、また一般の国民の皆さんも生活をしている部分がございます。ですから、そういう地域における行動等につきましては従来の行政の手続に従うということも必要でございますが、緊急の場合でございますので、事後承認等の手続、それから、それぞれの省庁とも相談をいたしまして、速やかに目的が達成できる手続にいたしているわけでございます。
枝野委員 よくわからないんですが、防衛出動が命じられてもまだ各行政機関がちゃんと動いているケースは当然あり得ます。だけれども、防衛出動が命ぜられた状況では、例えば道路を管轄している警察署も全部逃げちゃったというケースとか、全部残念ながら亡くなられたというケースとか、いろいろあり得るわけですし、そもそも、戦争をやっている現場の部隊が一々警察署長に届けに行くだなんてばかな話は、戦争をやっているときにあり得るとは思いません。そういう場合については、この法律改正ではどうなるんですか。
中谷国務大臣 わかりやすく説明をいたしますと、武力攻撃があった場合に、その武力の行使が行われている、いわゆる戦闘が行われている地域があります。その地域の周りにはやや戦闘状況が近い地域があって、その外には平穏な地域があります。その戦闘が行われている地域からは、もちろん真っ先に国民の皆さんが離脱をして被害が及ばないようにしていただきたいと思いますし、またその周りの、後方支援がやれるような地域においても、国民の皆さん方は避難を始めて、速やかに逃げていただきたいわけですけれども、我々がこの法律で想定しておりますのは、第八十八条がございまして、これは、国際法規及び慣例を遵守し、かつ事態に応じて合理的に必要と判断される限度内において必要な武力を行使するという規定があります。これはまさに戦闘が行われている地域でありまして、相手も日本の法令を無視して相当なことをやってくるわけでございますので、それを防ぎ得るために、いわゆる正当行為として、この八十八条の規定によりまして、その外部からの侵略行為を行う者を排除するのに努めるわけでございます。
 この八十八条の適用以外の地域におきましては、防衛出動の規定に従って、それぞれ、行政がまだ生きている地域もあればもう行政も離脱をしている地域もございますので、その戦闘が行われていない地域におきましては、今回の改正の所要の規定におきまして速やかに自衛隊の行動ができるというふうな考えに基づいて改正を行うものでございます。
枝野委員 今の話、二つ困ったことがあるんです。
 まず、戦闘が行われている地域については、今回の自衛隊法をわざわざ改正して、防衛出動のときには事前の許可とかじゃなくて通知でいいよとわざわざ法改正するのに、だけれども、戦闘地域ではそれも適用になりません。何のための法改正なんですか。一番、戦争をやっているときの、有事が起こって、まさに命と国をかけてやっている場面のところについて法整備が不十分だからと有事法制をやっているんじゃないんですか。
 その部分のところは、自衛隊法の八十八条という、何か何が書いてあるんだかよくわからない規定でやります、これは戦闘状態に入っていないところです、全然わけのわからない話ですよ。何のための有事法制なんですか。戦争状態に入って一番ドンパチやっているときに何ができるのかできないのか、もちろん細かく決めることはできませんよ、平時と違って。だけれども、そこのところをきちんと決めるための法改正なのに、それはその部分は関係ありません、もう全然法適用されなくなるんです、それじゃ何のための有事立法だかよくわからないですね。
中谷国務大臣 この自衛隊法というのは昭和二十九年にできた法律でありまして、当時の我々の先輩方が非常に苦労をしてよく考えてつくられた法律でございまして、いわゆる日本に対する侵略行為というのは、日本の法律または世界の戦争法規を無視してやってくるわけでございます。それに対応するということは、こちらももう命がけで相当な態勢をとる必要がありますし、また、一般の国民の方はそういう地域からは真っ先に出ていただかなければならないわけでありまして、そういう意味でこの八十八条規定を設けたわけでありますが、それじゃどこでもできるかといいますとそういうわけにはいかず、これは国際法規そして慣例を遵守し、事態に応じ合理的に必要と判断される限度内にとどめております。
 それ以外に、総理から自衛隊が活動してもいいよという地域があるわけですけれども、この戦闘行為が行われていない地域におきましては、まだ行政法規等法令が生きておりまして、そういう行政法規等の法令を遵守するのは当然でございますが、このような場合に、自衛隊の行動の円滑化を確保するという観点から、いろいろな適用除外等につきまして今回の法改正によりまして、それが実現されていない部分がかなりございます、そういう点におきまして、自衛隊法の百三条を初め、各省庁にまたがる部分におきましては各省庁とも調整をいたしまして、総理から示された地域の中の行動においては、現在の法律の適用除外等を設けまして、速やかに戦闘のための準備行為というか態勢がとれるように定めているわけでございます。
枝野委員 八十八条の適用範囲とかについてもまた後で聞きますが、今のお答えで大事なことは、要するに、自衛隊法ができたときから、武力行使をして、要するに戦争、武力と武力がぶつかり合っている状況についての法律は八十八条で存在していたと。
 つまり、今まで皆さんは、日本には有事法制がない、だから早くつくらなきゃならない。少なくともこれは事実誤認ですね。自衛隊法八十八条という有事法制はあったけれども、それでは不十分なところがあったから今回有事法制の議論をして法案を出した。有事法制がなかったというのは今まで間違いでしたね。長官、そうですね。
中谷国務大臣 この八十八条ですべてできるわけではございませんし、極力、必要最小限にとどめるべきでございまして、戦闘が行われている地域におきましてはもう国民の皆さんは安全なところに逃げていかなければなりませんので、そういう意味で限定をしておりますが、そこで自衛隊が活動できるわけじゃなくて、それ以外のところがありまして、やはりそれ以外のところでは後方支援等をして準備をするわけでありまして、その部分において法の整備がされていない部分が多々ございましたので、今回その改正を行わせていただく次第でございます。
枝野委員 あるんだからほかのはやらなくていいと言っているんじゃないんですから。もちろん、これだけでは全然不十分だということはよくわかっているんですが、国民の皆さんを含めて多くの方が、日本には自衛隊はあるけれども有事法制がないというふうに世間ではずっと言われ続けてきていたわけで、それはやはり違う。不十分なものだけれどもあったんです。その不十分なところを今直さなきゃならない。だけれども、それにしては直す中身が不十分ですねというのが我々の議論なんです。
 その八十八条の中身の前に、今回の自衛隊法改正の、逆に法律の読み方なんですが、何もない、防衛出動事態のときにはどうしますとかという例外規定を、初めから特例とか例外をつくっていない行政法規なんかたくさんあった。あるいは、刑法とか民法のように、初めから正当業務行為という特別な例外規定が置いてあるというところについては、はい、これは八十八条がありますからそこのところでは正当業務行為だから手続要りませんねというのは、いい悪いは別として、法の理屈としてはあり得るかもしれない。
 しかし、今回わざわざあえて自衛隊法を改正しています。自衛隊法を改正して、通常の事態では承認が必要なことについて、防衛出動したときには通知で足りますよとわざわざ書いているのです。普通は反対解釈で、防衛出動したときでいろいろ大変でも通知だけはしなさいと読むのが法律の普通の読み方です。違いますか。
中谷国務大臣 戦闘行為以外の場面また地域におきましては、行政法規等の法令を遵守するのは当然でございまして、このような場合に自衛隊の行動の円滑化を確保するという観点から、今回の自衛隊法の改正案におきましては、従来から一部設けられておりました、しかし、不十分でございまして、昭和五十一年の福田内閣以来、どういうものがあるだろうかということを研究いたしまして、各種の行政法規に係る所要の特例措置を設けることによりまして自衛隊の活動が円滑に行われるということで、今回可能な部分につきましては改正をお願いしているところでございます。
枝野委員 戦闘行為は八十八条で手続は何も要りません。だけれども、先ほど、二、三回前の防衛庁長官の御発言で、戦闘行為をしている場面、そのそばで住民の皆さんも皆ほとんど逃げちゃっているけれどもというふうな場面もある、そこは、この自衛隊法の改正したいろいろな道路法なんとかの手続が適用されて通知とかが要る。
 だけれども、戦闘地域のすぐそばだなんというのは、警察署長さんもいなくなっちゃっているんじゃないですか、道路管理者もいなくなっちゃっているんじゃないですか。でも、そういうところも、今回の法改正を通したらかえって、通知が必要になっちゃうんじゃないですか。そんなナンセンスなことをやるんですか。戦闘地域のすぐそばで、住民も警察署長も知事さんもみんな逃げちゃっているところで通知をする。どうなんですか。逃げているところは全部、戦闘地域なんですか。それとも、戦闘地域ではないけれども、皆さんが逃げちゃっていて行政的機能がストップしちゃっている地域が間にあるんですか。どっちなんですか。
中谷国務大臣 実際、外敵がいるところにおきましては相当な危険が及ぶわけでございます。したがいまして、そういった、武力攻撃が行われる場合には相手方は全く自由な、また凶悪な作戦行動をいたしまして、国民の生命財産を脅かすものでありまして、自衛隊は、国民の生命財産を守るために敵を排除するという、戦闘行動を行うという観点で行動するわけでございます。
 ですから、その避難等につきましてはそれぞれの、今後、法的整備をいたしますけれども、あらゆる手段を講じて、国民の皆様方が速やかに避難をしていただくことが考えられるわけでありますが、我々といたしましては、最大限、敵を早期に駆逐をして、安心な状態にしていくということであります。
 なお、行政等の連絡手段等につきましては、最近は携帯電話も普及いたしておりまして、あらかじめ事前に、その際の手続等につきましては、簡便な手続等をもってとり行うことができることも考えられ得るわけでございます。
枝野委員 最後のところの御発言、大変問題なんですが、その前に、尋ねていることにきちんと正確に答えてください。
 八十八条が適用されてしまって、行政手続はもう全く要りませんよという地域と、それから、手続が全部できるように行政機関が生きている地域の二つしかないのか。それとも、その中間的な部分はあるのかないのか。つまり、住民がみんな逃げちゃう、役所もみんな逃げちゃった、自衛隊以外のところは避難しました、そういうところは全部、八十八条の適用される範囲なんですか、どうなんですか。防衛庁長官、逃げちゃったところは全部、八十八条の範囲で、何でもできることになるんですか。
中谷国務大臣 基本的には、戦闘行動に際しまして、行政の法規等の国内法令に従えない場合があるとしても、自衛隊法八十八条の要件を満たしている限りにおいては、それは同条に基づく正当な行為として許されるものと考えておりまして、法的には今言ったとおりでございますが、現実的には、速やかに国民の皆さん、他の公務員の皆さんも安全なところに行っておく必要がございますので、そういった戦闘が行われる地域におきましては、もう人がいないというようになっておくというのが理想でございます。
枝野委員 逆ですよ。戦闘は行われていないけれども、住民はみんな避難しちゃいましたという地域はあり得るんじゃないですか。
 例えば、この地域のどこか海岸線に上陸してきましたと。そもそも僕は、こういう上陸戦ということがまさに五五年体制的というか、古い戦争なんだと思うんだけれども、どこかに上陸してきました、そこから、危なそうな地域、みんな逃げましたと。だけれども、実際に戦闘が行われているのはその中の一部の地域です。だけれども、みんな逃げちゃったところに部隊を展開させて、陣地をつくったりとか、道路を補修したりとか、そういうことがあり得るんでしょう。あり得ますね。そのあり得る部隊は通知するんですか、この新しい自衛隊法の手続で。どっちなんですか。
中谷国務大臣 戦闘行為が行われている場合は通知はいたしませんけれども、人がいないからといって通知しないわけではございません。何らかの手段でその行政の手続をとることになります。
枝野委員 だから、こんな法律をつくったら、かえって有事のときに動けなくなりますよ。
 本当に行政機関がみんな逃げ出しちゃったような、戦闘はその場では行われていないけれども、部隊を展開させていて、住民もみんな逃げているような地域で、道路工事をします、そこに陣地をつくりますと、わざわざ、携帯電話だろうと何だろうと、その担当者、例えば警察署長とかをつかまえて、逃げるときですから混乱して、まあ警察署長ぐらいはちゃんと頑張って最後まで残るかもしれないけれども、役所の人たちはみんな逃げちゃっている、そんなところでどこに通知していいのかわかりませんという状況になるのは当たり前じゃないですか。そんなところで自衛隊の部隊は一々通知しないと道路工事もできない、そんなばかな法律をつくっちゃったらかえって有事に身動きがとれなくなりますよ。
中谷国務大臣 基本的には、一番激しく危険なところから人がいなくなるわけでありまして、戦闘地域には人がいませんが、その周辺のところでは、様子を見るというか、人がいるところもあるわけでございまして、なぜ事前の情報を入手したいかといいますと、自衛隊というのは、全国からいろいろなところへ移動して、基本的には駐屯地から所定の場所に行くわけでありますが、初めて行く土地などにおいては、やはり地元の人また行政の管理者に、ここはこうですよというような情報を聞いてから対応したら、さらに行動におきましても効果的な部分がございます。
 こういう点につきましては、今回の省庁等との話し合いにおきまして、支障がないように実施できるということで取りまとめた次第でございます。
枝野委員 通知しなければならないという行政法上の義務規定を置いているのと、地元の事情をわかっている人に意見を聞くのと、全然意味が違いますよ。
 それはそうでしょう。全然知らない土地については、その地域に住んでいた警察署長さんとかそういう人たちに話を聞いた方がいい。聞けるんだったら聞いて、ここをどうした方がいいとか、いろいろな手続をしたらいいですよ。だけれども、それは任意ですよ。
 まさに、戦闘地域ではないけれども、そのそばで部隊が展開しています、大変ですなんというときに、これは、例えば港とか工事するところがありますね、港を工事しちゃってここは大丈夫かなとか、いろいろあるかもしれないけれども、だけれども、そこで関係者をつかまえてやるのがいいか、それとも、このままえいやでやっちゃった方がいいか、それこそ部隊の現場の指揮官の判断に任せなきゃいけないことじゃないですか。
 だけれども、今回の法改正は、事前に通知しなければならない、わざわざそういう規定を置いているんですよ。これでは現場の指揮官は、もうえいやでやっちゃわないと間に合わない、敵が攻めてきちゃうかもしれないといったって、一生懸命担当者を見つけて通知しなきゃならない。そんなことをやっている間に殺されちゃいますよ。そんな法律を出しているんですよ、今回。
村井国務大臣 たまたま道路交通法の関係を委員が御指摘になられましたので、ちょっと私から。
 委員は、戦闘が行われている状況と、それから行われていない状況と二つに分けられて、そのまた中間的な事態というような三つの設例をお出しになりました。
 私どもが今この法律で考えておりますことは、要するに、現在は警察署長の許可とかいうことにかかわらしめている問題を、一たん防衛出動が下令されました場合の自衛隊に対しては、例えば道路の修復でありますとか、あるいは道路の使用といいましても、例えばバリケードを築くために道路を使用するというような用途もありましょうし、物資の集積のために道路を使用するなんという状況もありましょうし、そういうことに使用することについて、これは警察署長に対する通知のみで足るということに変えるという御提案を申し上げているにすぎないわけでありまして、まさに戦闘が行われているというような場面におけるお話というのはちょっと別でありまして、そもそも、道路交通法を一つの例にとって考えてみますと、道路交通法によるさまざまな規制が必要なのは、そこが道路として通常の市民によって使われる状況であるから道路交通法に基づく規制が必要なんであります。
 そういう意味では、そういう状況の中における特例措置を防衛出動が下令された場合において認める、そういう措置をこの場合には設定した。他の法令においても恐らく同じだろうと存じます。
枝野委員 いや、大臣がおっしゃられたことはよくわかっているんです。ですから、防衛出動が出されたような時点では、事前の承認なんか要らなくて通知にしましょうと。その意図はよくわかるんです。その意図はわかりますし、それから、後で八十八条のことをやりますが、八十八条の書き方はよくないけれども、ここはもうちょっときちんと書かなきゃいけないけれども、まさに戦闘状況の現場においては、普通の法令を普通に適用しちゃいかぬ、それもよくわかるんです。
 だけれども、まさに戦闘地域なのか、それとも後方で日常生活を送れる地域なのか、間なのかという三分割じゃなくて、その間は、もう段階的というか千差万別なわけですね。わざわざこういう法改正をしてしまったら、通知は義務になるわけですよ。その八十八条の適用される、武力行使をしている戦闘行為の現場以外でも義務になってしまう改正をわざわざしているんですよ。
 だから、一条全部くっつければいいんですよ。ただし、防衛の目的のために必要やむを得ない場合には、例えば通知は事後で足りるとか、そういう規定を何で置かないのか。どうですか、防衛庁長官。
中谷国務大臣 自衛隊法、昭和二十九年にできましたけれども、この骨格はそのような考え方にはなっておりません。これは、戦闘行為が行われている地域におきましては、相手の武力行使にはこちらも武力行使で対応をすると。そして、それ以外の地域におきましては、国民の権利を保護し、また、行政の法的な手続のプロセスまた連絡を重視するということで、これは各種の特例措置を設けて通知をするということでございまして、この通知をする際に連絡が確実にとれるかという心配もありますけれども、これは通知をするということでございまして、こちらからその旨を言うということでございます。
 したがいまして、その基本的考え方としては、武力の行使につきましては全力で行うけれども、それ以外のところでは国民の権利義務、また、行政の法規を重視するという考え方でございます。
枝野委員 ということは、まさに武力行使をしていて八十八条の適用をされている場面の外側のところで、もしかすると、間もなく、早くここに陣地をつくっちゃわないとドンパチ撃たれて殺されるかもしれないというところで、例えば港に陣地を構築しましょうということがあったとしても、その港の港湾管理者に通知をするための努力をしている間に手おくれになる、それでもやむを得ない、そういう法律ですよ、これは。
中谷国務大臣 許可をとっていたら手おくれになる場合もございます。そういう意味で、許可ではなくて通知といたしている次第でございます。
枝野委員 だから、要するに形だけつくっているという話なんです。
 確かに許可じゃ、許可なんかとっている間がない、当たり前です。許可をとっている間もないようなときというのは、通知をしている間もないようなことでもあることの方が普通じゃないですか。
 だから、例えば、通知しなければならない、ただし通知先等が見つからない場合は云々とかという規定をちゃんと置けば済むだけの話じゃないですか。何でそういう、きちんと丁寧に、実際に使える法律を出さないんですか。
中谷国務大臣 それはいい提案かもしれませんが、大変乱暴な提案でありまして、自衛隊法というのはそういう法律になっているわけではございません。
枝野委員 ではどうするんですか。本当に、先ほど私が言ったような例のケースですよ。つまり、戦闘地域ではない、そのすぐそばのところでまさに陣地構築とかをするということは、すぐに戦闘地域になるかもしれないという危機があるところですよ。そこで陣地をつくるのに、例えば港だったら港湾管理者に通知する、道路だったら警察署長に通知をする、そういう義務が課せられているからといって、通知しなきゃといって、どこにいるんだろうと捜している間に、どうするんですか、それは。
 それはしようがない、今の自衛隊法の建前、筋立てからは仕方がない、そういうことでは困るから、だから結局何をやるかといったら超法規でしょう、そのときは。そのときは、それは殺されちゃたまらないから、通知と法律に書いてあるけれども、戦闘地域じゃないから八十八条は適用にならないけれども、だけれども、通知したら殺されちゃうから通知しないでやりましょうと、結局、超法規をやるんでしょう。
 だったら、何のために有事法制をつくっているんですか。超法規にしないために、あらゆる事態においても、きちんと法に従った対応で、しかも現実的な対応ができますというものをつくりましょうというのが有事法制の議論なんですよ。全然使い物にならない法律を出してきて、何なんですか。
中谷国務大臣 そういう考え方で自衛隊法というものはできているわけでありまして、これにまだ不十分だということでございましたら、ぜひどうぞ対案を出していただきたいというふうに思います。
枝野委員 不十分なものを出してきて、はい、対案を出してくださいと。確かに野党も、我々、議員立法をたくさん出してきていますよ。だけれども、まさに行政手続の非常に細かい具体的なところを一個一個全部ピックアップしてだなんて、霞が関の皆さんを抱えていたって二年かかると言っているんじゃないですか。我々に霞が関の皆さんを使わせてもらえば、ちゃんと一年ぐらいで出しますよ。霞が関を抱えていてそんないいかげんなものしか出せなくて、何を言って、責任逃れをしないでください。
 今の話でも、この規定自体が全然使い物にならないということを申し上げましたが、先ほどから言っている自衛隊法八十八条、防衛出動をした自衛隊は、我が国を防衛するため、必要な武力を行使することができる。これによって、一昨日の岡田政調会長との議論の中で、例えば殺人罪なんかについて違法性阻却される、民法上の損害を与えても違法阻却されるということをおっしゃいました。これは、どういう範囲でこの八十八条が適用されて違法性が阻却されるんですか。もう一回、念のため確認したいと思います。
津野政府特別補佐人 先日、岡田政調会長ですか、私の方から、民法上の関係と、それから刑法の関係と御答弁をさせていただきました。
 それで、刑法の方は、刑法第三十五条で、法令または正当な業務による行為は罰せられないという規定がございます。
 それから、民法関係では、これは武力の行使に関係しますから、必ずしも直接民法が適用になるわけではございませんで、公権力の行使に係る行為ですから、これは国家賠償法の適用になります。
 その第一条は、要するに、違法に他人の権利を……(枝野委員「それは阻却されるから、だから範囲はどこですか」と呼ぶ)それは、要するにそういう場合には阻却されるということになっております。適用がないことになっております。
 したがいまして、武力の行使をする場合には、これは八十八条の規定に従いまして武力の行使をする。その場合には、これは法令による行為でございますし、違法ではない行為でございますから、それは責任を問われるということはないということでございます。
枝野委員 三十秒で答えられる。必要な武力を行使したときには違法阻却されるということはいいんですよ。そう答えてくれればいいんです。
 では、必要な武力を行使することができる要件は何ですか。時間がかかってしようがないのでこちらから言いますが、我が国を防衛するために必要がある、「合理的に必要と判断される限度」において武力行使できる。今申し上げたのが要件、これでいいですね、法制局長官。
津野政府特別補佐人 この八十八条は、正確に言いますと、その前段の、国際の法規及び慣例に従ってというのがございますし、それから、事態に応じ合理的に……(枝野委員「要件じゃないでしょう」と呼ぶ)いやいや、当然要件になると思いますけれども、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」、こういう限度の範囲内において行うことが、当然法律の規定上は要件として規定されているわけでございます。
枝野委員 戦闘行為の現場では、例えば橋がかかっている。橋の向こう側、谷の向こう側に敵軍がいる。橋を落とさなきゃいけませんね。爆弾を仕掛けたりとか橋を落としたりしますね。それから、相手が占領している民家はともかくとして、このままいくと相手に占領されて、占領されると、それが盾になったりして、こちらが防衛するのに困ってしまうようなビルがある、今空き家になっている。こういうビル、武力行使のときには、戦闘行為の現場では、その橋を壊したり、それからその民家を壊したりする必要が当然出てきますね。これはどういう法的根拠に基づいて合法化されるんですか。
中谷国務大臣 八十八条によりまして、事態に応じ合理的に必要と判断される範囲におきまして適用されるわけでございます。
枝野委員 そうですね、八十八条以外ないんですよね。今回、自衛隊法を改正して、立木はどけることができるとかいろいろ書いてありますが、家屋は壊したりできないですよね。それから、国有財産である橋とかを壊せるとかという規定は全くないです、道路を壊せるという話は。だから八十八条でやるしかないんですよ。
 ところで、あらかじめこの橋を落としておく、戦略上、軍事オペレーション上、この橋を落としておかないといけないとかということは当然ありますね。戦闘の現場でなくても、今後戦闘の現場になるかもしれないところにある橋、あるいはそこの民家をあらかじめ壊しておくということは、軍事オペレーション上、当然必要なことですね。これはどういう法的根拠に基づいてやりますか。
中谷国務大臣 事態に応じ合理的に必要と判断される場合におきましては、八十八条で実施をいたします。
枝野委員 つまり、先ほど来、先ほどの道路法とかの議論のところでは、戦闘行為の現場では八十八条と言っていましたけれども、違いますね。現に戦闘行為が行われていない場所にあっても、八十八条を行使して武力の行使ができる。そうですね。
中谷国務大臣 それも戦闘行為の現場ではないかというふうに思います。というのは、外部からの武力攻撃が行われる際には、相手方は全く自由な作戦行動をとりまして、国民の生命財産を脅かすものでございまして、自衛隊の使命は、国を守り、国民の生命財産を守るというために敵を排除するという戦闘行動を行うわけでございますので、そういった外部からの侵入者がいなくなるように全力を尽くすわけでございます。
枝野委員 ということは、さっきも言ったとおり、今回の有事法制のいろいろな法案が通ろうと通るまいと、この八十八条、もともと有事法制があった。この八十八条があれば、防衛出動がされたときに敵を排除するために必要、条文をきちんと読むと、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」では何でもできますということですよね。そうですね。
中谷国務大臣 実施することはできますが、この法律によりまして自衛隊が行動できる範囲というものは総理大臣によって指定をされるわけでございますし、また、その限度というものは「合理的に必要と判断される限度」でもありますし、また、国際法規というのがありまして、これは傷病者や文民保護のためのジュネーブ条約、民間人や民間施設を保護する観点等から戦闘手段を規制したヘーグ陸戦法規、毒ガスの禁止に関する議定書、対人地雷禁止条約等がございます。これらの国際条約のもとに国際的に適切に行動を行うわけでございます。
枝野委員 その条約は今でもあります。だから、今でも我が国は遵守義務がありますから、有事法制があろうとなかろうと、八十八条があろうとなかろうと、国際条約ですから、我が国は遵守する義務が今でもあります。そして、八十八条で、とにかく防衛出動の対象範囲とされたところだったら事実上何でもできますと。それだったら、こんな大騒ぎして、有事法制がなきゃ国が守れませんだなんていう議論をやめてください。
 我々は、確かに八十八条はあるけれども、こんな抽象的なあいまいな規定だけで武力を行使することになってしまったときには、いろいろと行き過ぎがあったり、あるいは、逆に抑制的に働くことによって、本来の役割を果たさないこともある。だからきちんと、もちろん、さっきも言いましたとおり、有事においてですから、どんな事態が起こるかわからないですから、すべてのことを細かく、平時と同じように手続を規定しておけだなんということを言うつもりはありません。
 しかしながら、もうちょっと八十八条より具体的に、どういう範囲で、あるいはどういう原則に基づいて、どういうことを大事にしながら、あるいはせめてこれとこれとこれだけは絶対やっちゃいけませんということについてきちんと有事法制としてつくることで、例えば自衛官の皆さんも安心して、これは違法じゃないんだ、法律に基づいて、正当業務行為なんだと自信を持ってできる。それから、国民の側も、いざというとき自衛隊がいろいろ動くけれども、戦争のときには必ず行き過ぎが起こるわけですから、その行き過ぎが起こらないように我が国はきちんと法整備をしてもらえているという安心感ができる。だから必要なんだと我々は思っているんですよ。
 ところが、八十八条で、いざドンパチ始まったその現場では、単に国際法令と慣習を守る、そして合理的に必要と判断されるという基準だけで何でもできちゃいますというんだったら、有事法制の必要は逆に言ったらないという話じゃないですか。ここの八十八条をどうやって具体化するかということが、有事法制の整備として一番大事なことじゃないですか。
中谷国務大臣 正当行為でもいろいろなケースがあって決め切れませんし、世界じゅうどんな国でも、先生のおっしゃるような、八十八条がどこでも使えるという国家は恐らくなく、やはり、これは適切に戦闘行為が行われる地域のみの規定でありますし、それ以外の地域におきましては、国民の人権や、また法規を尊重して、できるだけ国民に要らぬ迷惑をかけないように速やかに敵に対峙するというのがこの自衛隊法でございます。
枝野委員 ルールをきちんと守る、原則をきちんと守るということで本当に全部現場が守られるんだったら、戦争犯罪だなんて問題なんか起こらないし、有事法制きちんとやらなきゃなりませんねなんという話は出てこないんですよ。
 万が一の、まさにこういう抽象的な規定は、どこまで適用されるのかよくわからない、どういう現場で適用されるのかよくわからない。あそこの橋とかあなたの家をぶっ壊します、敵はずっと何百キロも向こうにいますね、だけれども、戦略上この橋を壊さなきゃならないとかこのビルを壊さなきゃならないとか、あり得るわけですよ。当然、住民の方は、冗談じゃない、やめてくださいということがあるかもしれないですよ。そういうところでトラブルが起こるわけです。
 それから、オペレーション上、どうしてもやむを得ず自衛隊が先に逃げちゃうなんということがあるのかもしれない。過去の戦争でいろいろ起こっているわけです。いや、我が国はかかわっていないけれども、最近の戦争でもいろいろと、戦争状態のときには行き過ぎがある、問題が起こることもある。
 もちろん、すべてをきちんと細かく決められないのはよくわかっているけれども、八十八条のような抽象的な規定だけではなくて、できるだけその範囲、具体化をさせるための努力をするというのが有事法制をつくっていくことの意味だというふうに私たちは思って、そのための努力をしているんだから。確かに大変ですよ、これを具体化していく作業というのは。だけれども、ここの部分をすっぽり抜いて、有事のときは、本当の有事は八十八条、今までどおりです、それ以外のところをやります、これが有事法制です。有事法制なんて言わないでください、有事準備法制ですよ、これは。そうですね、総理。
中谷国務大臣 これは、自衛隊だけで侵略に対処できることは毛頭考えておりませんで、まさしく国を挙げて、内閣を挙げて取り組む必要がございます。そういう観点で、今回、対処基本方針をつくって、対策本部を設けて、各省庁並びに地方自治体やほかの機関と連携をしてやるわけでございますので、自衛隊のオペレーションはオペレーションといたしまして、また、内閣全体の対応としましては、対策本部でよく協議をいたしまして、国民の生活に関するもの、また事前の調整が必要なもの等につきましては、対策本部で調整をして、国民の皆様方に協力をお願いしながら実施できるということでございます。
枝野委員 全く水かけ論なんで先へ行きますが、政府を挙げてこういった武力攻撃事態には対処しなきゃならない、大事なことです。先ほど、我が党の前の質問の中にもありましたが、そのとき、だれがきちんとこの国の進路、行動をクリップして進めていくかというのは、物すごく大事なことですし、今回の法改正は、まさにどこかから大挙して船から上陸してくるということを想定した一時代前の戦争だけを想定しているようですが、むしろ、やはり一番リスクとしてあり得るのは、突然ミサイルが飛んでくるとか、そういうことの方が、少なくとも同じようなリスクがあるわけですね。
 そこで、防衛出動命令に関する自衛隊法七十六条の一項という規定があって、こういうのはきちんと説明しないとテレビを見ている人がわからないと怒られているので、防衛出動をするためには、今まで、今もそうですが、「内閣総理大臣は、」という主語で、云々かんぬんのときは防衛出動を「命ずることができる。」という規定になっているんですね。ところが、今度事態対処法で、対処基本方針をつくって云々ということが新たに法律でできるんで、その自衛隊法も一部改正されて、それを引用しているわけです。それで、対処基本方針に基づいて防衛出動命令を出します、こういう手続になっているわけですね。
 つまり、どういうことかというと、対処基本方針は閣議決定が必要なんです、最低でも。緊急の場合は国会承認は事後でもいい。だけれども、閣議決定をして対処基本方針は決めるとなっています。そうすると、自衛隊法の主語は、「内閣総理大臣は、」防衛出動を「命ずることができる。」となっていますが、今回の改正で、明文上、閣議決定がないと内閣総理大臣は防衛出動を命じられないということになります。こんなので本当に緊急事態のとき足りるんですか。
中谷国務大臣 自衛隊の最高指揮官は総理大臣でございますが、一国の防衛出動に際して行動する際につきましては、総理大臣並びに閣議の決定が必要でございます。これは、従来の自衛隊法の法文にも書かれているわけでございます。
枝野委員 少なくとも法文には書かれていませんでしょう。法文上は「内閣総理大臣は、」「命ずることができる。」しか書いてなくて、なぜか知らないけれども、解釈上、「内閣総理大臣は、」と書いてあるけれども閣議決定が必要だというわけのわからない解釈をしていたんじゃないですか、違いますか。
津野政府特別補佐人 自衛隊法の七十六条、防衛出動を下命することができるこの「内閣総理大臣」は、内閣の首長たる内閣総理大臣を意味しておりまして、それは自衛隊法のたしか七条で、「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。」というところから、ここの七十六条の「内閣総理大臣」は内閣の首長たる内閣総理大臣であると。
 これは、防衛出動というこういった大変重要な事項、マターを決定することからかんがみまして、そういう考え方で来ているわけでございます。
枝野委員 ですから、まさに、それでいいんだということで本当に有事法制我々やっていますと皆さんおっしゃるんですかという話ですよ。
 有事が起こるのは、国際緊張が高まって、あそこが攻めてくるかもしれない、何とかしなきゃならないという段階をじわじわ踏んで、それで本当に攻めてきましたとやってくれるなら、こんなありがたいことないですよ。それは閣議決定をやって丁寧にやってください、大事なことです。だから、原則は閣議決定を踏み、国会承認を踏む、当然です。我々は、文民統制だなんていうと官僚の統制になっちゃいますから、民主的な統制が必要だ、大事だと思っていますから、当然やってください。やるべきです。だけれども、そういう事態で有事が起こるとは必ずしも限らない。
 この間の九・一一を、あれを自衛権発動できる事態と解釈するかどうかは別問題として、あんなことが突然起こったりすることがあるわけですよ。かつてのイラクのクウェート侵攻は、ある程度予兆があったかもしれないけれども、ある意味では国際的には突然起こったりするわけですよ。そのときに、例えばたまたま閣議をやっているときにミサイルが飛んできてどこかに落ちましたというときだったら、それは幸いかもしれない。あるいは国会でこうやってみんないるところだったら幸いかもしれない。だけれども、全国に散らばっています、閣議ですとみんなに電話かけて何分かかるんですか。その間にミサイルは次から次へと撃ってこられるんですよ。
 防衛出動だなんというのは、とにかく我が国は専守防衛だからまず一発撃たれてからじゃないと撃てないと先ほど総理おっしゃっていましたけれども、二発目、三発目、すぐ来るかもしれない。あるいは爆撃機が日本に爆弾を現に落として、上空を飛んで回っている。一分一秒でも早く自衛隊に出動の命令を出すのが有事法制なんじゃないですか。
 そういうときには、緊急やむを得ない場合には、総理大臣の命令によってまず初動させるということが当然じゃないですか。
中谷国務大臣 この点につきましては、先ほど末松委員からも、危機管理の要諦ということで、事前にマニュアルをつくり、そして訓練をして、検討をして対処しろということでございます。
 この法案等につきましては、安全保障会議の下にその事態の検討委員会のような委員会ができます。そこでこの事態に速やかに対処できるようなルールをつくって、速やかに所要の手続が行われるようにすることが大切なことでございます。
枝野委員 マニュアルをつくれば確かに、日本じゅうに閣僚の皆さんが飛んでいても、それは一時間かかるのが三十分に短縮できるかもしれない。だけれども、法律で閣議ということになっているんだから、その三十分で何人人が死ぬかもしれないじゃないですか。それが有事法制なんじゃないですか。
 そもそも、先ほどの道路法とか港湾法とかの手続の話もそうだし、ここのところもそうだけれども、結局、霞が関秩序とか今の内閣法体系、総理大臣も横並びの一大臣にすぎません、総理大臣には各閣僚に対する指揮命令権はありません、各役所の縦割りの行政法規を大事に守ります、そちらの方が前に出てこの法律をつくっているから、こんな非現実的な話が出てくるんですよ。そこのところを取っ払うべきなんです。
 我々は、有事においても基本的人権はしっかり守らなきゃならない。国民の人権との関係では、有事であろうともきちんと守らなきゃならない。だけれども、まさに有事なんだから、まさに霞が関の縦割りの、役所の何とかかんとかとか、そういったことは飛び越してでもやれることはたくさんある。だけれども、その役所の縦割りのところは一生懸命残して、役所に通知が必要だ、届け出が必要だ、総理大臣一人では、内閣の首長たる総理大臣なんだから閣議をやらないとできません、こういう発想ではやはり今までと変わらないんですよ。
 物事の発想を変えて、有事においては、その役所の縦割りをぶっ壊していく、内閣総理大臣を中心として、どうしても間に合わないときはですよ。もちろん、事後的にはすぐ閣議決定する、事後的にすぐ国会承認する。だけれども、まずはトップリーダーの責任と判断で物事を動かせるようにする。でなければ、安心して、ミサイルが飛んできたらどうしようかとかということに対応したことにはならないということを申し上げておきます。
 もう一点だけ、大事なところを聞いておかなければなりません。
 指定公共機関について、何度も出てきています。事態対処法の二条五号で指定公共機関というのが書かれていますが、指定公共機関は政令で定めるものをいうと言っています。しかし、政令で定められる指定公共機関には、事態対処法の六条で、必要な措置を実施する責務を有するという義務規定が置いてあるんです。法律上の義務を課せられるんです。政令で指定した機関に、しかも中身についてはよくわからない義務を六条で課せられる。こんな規定の仕方をして本当にいいんですか。
福田国務大臣 武力攻撃事態対処法六条におきまして、指定公共機関は、武力攻撃事態への対処に関し必要な措置を実施する責務を有する旨を規定いたしております。
 本条は、特定の措置の実施について、指定公共機関に具体的な義務を課すものではございません。この必要な措置として指定公共機関が実施する対処措置につきましては、今後整備する個別法律の中で具体的に定めるということにいたしておるわけでございます。
枝野委員 確かに、その指定公共機関に対して内閣総理大臣が総合調整をしたり指示を出したりするという規定のところには、別に定める法律に基づきという規定があります。だから、指示や総合調整などは別に法律がなければ行使できない。だから、空文ですよ。今こんな法律をつくったって、何の意味もない。二年後に一緒につくればいいだけの話のことを何で先につくって意味があるんだという、意味のない規定ですよ。六条にも、やはり別に法律の規定がないと何の法的効果もないんですね、今の御発言ですと。
福田国務大臣 今の件は、この対処措置というものが、そもそも法律の規定に基づいて実施する措置、こういうことになっておりますから、この法律に基づいて、その後のいろいろな法整備を行っていく、こういうことになるわけです。
枝野委員 だから、確認させてください。わざわざこの武力攻撃事態対処法の六条には、指定公共機関は「武力攻撃事態への対処に関し、その業務について、必要な措置を実施する責務を有する。」と、責任があるんだと、義務があるんだと書いているんですが、別に法律を定めない限りこの六条は法的効力がない、これでいいんですか。
福田国務大臣 この法律というふうに先ほど私、申しましたかもしれません。これは、別に定める法律に基づく、こういうことでございます。
枝野委員 要するに、私は、総理大臣の指示とかということは、別に法律で定めると書いてありますから、こういうところは全く法律的に意味がないですねと。だけれども、せめて六条ぐらいは、別に法律で定めると書いてないですから、こういうところぐらいは何らかの法的効果はあるのかなと思ったら、ここすらない。この法律、何にも意味がないですよね、二年後まで。施行する必要は全然ないですね、二年後まで。ということを申し上げておきたいんです。
 それに関連して、十六条で、指定公共機関などが総合調整や指示に基づいて措置を実施したときに損失を受けたら、それについて必要な財政措置を講ずるものとするという規定が書いてあります。
 ところが、この規定は、指定公共機関の損失に関してという規定です。指定公共機関の職員、従業員とは書いていないんですね。職員、従業員に対して損失を補償するための、補償とは正確に言っていないですね、全額穴埋めできるかどうかわからないから。損失に関し必要な財政上の措置を講ずるのはもう当然のことじゃないんですか。どうしてこれは機関に対してだけなんですか。
福田国務大臣 この法案におきましては、組織としての指定公共機関に対処措置の実施を求めるということになっているのでございまして、職員個人に対して具体的な行為を求めるものではないということであります。したがいまして、指定公共機関に対する財政上の措置について定めたものでございます。
枝野委員 しかし、指定公共機関だといったって、その機関が勝手に物をできるんじゃなくて、そこで働いている人がいるから指示された行動をとれるわけですよ。例えば、具体的に挙がっているNHKだって、NHKで働いている職員の人がいるから放送電波を流せるんであって、それは、機関に指示を出した、機関にお願いをしたって、実際に行動するのはそこで働いている職員の皆さんですよ。実際には、組織も損害を受けるかもしれないけれども、そこで働いている人たちも損害を受けるかもしれないです。そこのところはどうするんですか。
福田国務大臣 職員というのは、要するに組織に属しているわけですね。ですから、職員の問題については、機関が、組織が責任を持つべきものだというように考えます。したがいまして、もし、職員ということに対して、職員個人に対して何か具体的な行為、こういうことになった場合には、組織が責任を持つということによって、組織に対する、指定公共機関等に対する財政上の措置、こういうふうに決めておるわけでございます。
 個人というものを国民というふうに考えるのであれば、国民の被害、こういうものにつきましては、さまざまなケースがあるというように考えられますので、個別具体的な判断が必要だというふうに考えられます。そうした場合の対応につきましては、これは武力攻撃事態終了後の復興施策のあり方の一環として政府全体で検討すべきものと考えております。
枝野委員 指定公共機関を政令指定にしてしまっているから、今みたいな話では説得力がないのですよ。
 つまり、ここに書いてある、例えば独立行政法人や日本銀行や日本赤十字社や日本放送協会、これは倒産することはないでしょう、破産することはないでしょう、事実上。だけれども、その他公益的事業を営む法人一般を政令指定できるのですよ。当然、一般の株式会社もあり得るでしょう。一般の公益法人もあり得るでしょう。そういうところは、戦争なんか起こっているときですから、いろいろな諸般の事情で倒産をしたり破産をしたりして、従業員の人たちがその内部の問題での求償関係だといったって、それを請求したくても支払い能力がなくなることはあり得るわけです。
 しかも、国は確かに損失を補償して、その分お金がいくからいいじゃないですかと。でも、破産手続に乗っていたら優先的な権利を行使できるかどうかわかりませんよ。
 こうやって機関に義務を課すのだから、義務を課す以上は、当然のことながらそれについて財政上の措置をとりますと規定を置くんだったら、その機関や、必要に応じてそこの職員、従業員に対してという規定を置くのがむしろ当然の感覚じゃないですか。
福田国務大臣 指定公共機関が破壊されたり、つぶれたり、破産というか、そういうような状況になった場合のその職員を救済するかどうかということになれば、この指定公共機関の損失に含まれるようなものについては、その機関が破壊、つぶれたような場合にも、法的に継承するものに対して財産上の措置を講ずることになるということでございまして、あとは先ほど申し上げたとおりでございます。
枝野委員 ここで会社更生法や破産法の話をそんなにしてもしようがないんですけれども、継承するところに損失を国が補償しても、例えばそこで働いて実際にけがをしたとかなんとかという人が優先的にその金を取れるというような法的な裏づけは全くないんですよ。一般の債権者と平等なんですよ。配当が五%だったらその中の五%しか取れないんですよ。だから直接に、もちろん例外的な場合だけれども、例外的に直接に国との関係での規定も置いておくべきじゃないですかということを申し上げているのです。
 同じような視点から、もう一点だけ。
 防衛出動をしたときに、医療関係者、土木建築工事関係者、輸送を業とする人たち、こういう人たちが、従来の法律でもそうですが、都道府県知事が要請することによって、そうした業務に従事しなきゃならないという規定が自衛隊法にあります。それはお手伝いくださいということでしょうね。つまり、自衛隊が防衛出動するようなときには、お医者さんとか、それから土木工事をする人とか、それから輸送をする人は協力してくださいという規定で、それはそれでもっともだなというふうには思います。
 だが、今回、いろいろなこういった規定のところに、罰則をつけたものと、罰則をつけなかったものがあります。ここには罰則をつけませんでした。なぜですか。
中谷国務大臣 枝野先生おっしゃるとおり、この百三条二項におきまして、医療、土木建築工事、輸送を業とする者に対して、業務従事命令を発することができるわけでございますけれども、この業務は、専門的な知識と経験、能力を用いて、能動的かつ主体的に行っていただくことが必要なものでありまして、業務の従事命令は、通常行っている業務をそのまま行っていただくことを基本といたしてございます。
 そういうことですから、我が国が武力攻撃を受けているような事態におきましては、自発的かつ積極的に協力していただけるものであるというふうに期待をいたしておりまして、この命令というものは、防衛庁長官の要請に基づいて都道府県知事がこれらの方々に公用令書をもって命ずるものであることから、仮に、業務命令を受けた事業者の雇用する従業員さんもございますけれども、この業務に従事することを拒否したといたしましても、それは事業者と従業員との間の労使の関係の問題でございまして、こういう問題については、こちらから申し上げる立場ではございません。
 罰則をつけなかったというものにつきましては、やはり自発的、積極的に協力していただけるものと期待をいたしておりますし、また、本来やはり愛国心といいますか、こういう事態に国のことを考えていただくというのは当然のことでございまして、そういうものに期待をしているからでございます。
枝野委員 そこが自発的だということは物すごく大事なことなので、そこは私も全く同感なんですが、この規定で、その業務の命令の名あて人、だれに対して命令を出すんですか。つまり、病院なのかお医者さんなのか、あるいは鉄道会社なのか鉄道会社に働いている人なのか、土建屋さんなのか土建屋さんで働いている人なのか、どっちですか。簡単でしょう。
中谷国務大臣 これは都道府県知事から事業者でございまして、例えば社長さんとか院長さんとか、そういう責任者でございます。
枝野委員 そこで、先ほどちらっとおっしゃったんですが、自発的に協力していただくものだ、だから罰則をつけなかったと。だけれども、それぞれの組織、例えば土建屋さんで働いている作業員の方、鉄道会社で働いている運転手さん、あるいは病院で働いている看護婦さん、いや、自発的と言われても、ちょっと危ないから、うちはおじいちゃん一人だから連れて逃げなきゃいけないから勘弁してくださいということでその人が拒否をした。罰則はない、だけれども雇用契約上の不利益処分を受けるんだとしたら、事実上の強制ですよね。どうするんですか、それはやはり認めるんですか。
中谷国務大臣 従業員の方とか組合の方がそれを拒否するというケースが出てきた場合におきましては、これはやはり、事業者と従業員や加盟されている方々との間の労使の関係の問題でございまして、この問題につきましては特に申し上げる立場にはございません。
枝野委員 自発的協力と言っておきながら、それは、その法人、組織の代表者は自発的に拒否したり受けたりできるかもしれないけれども、そこで働いている人は、労使の関係だとはいいながらも、雇用契約に基づく関係だといいながらも、拒否をしたら雇用契約上不利益処分を受けると思ったら、嫌だけれども、首にされちゃたまらぬからやらざるを得ませんねという話で、事実上強制されるんじゃないですか。
 どうしても、いざというときには国民の皆さんに義務を課して協力してもらわなきゃならないことが全くないとは僕は思いません。だけれども、どうしてもやっていただくことがあるときは、要件をきちっとして、しかもそれに対する対応措置もきちっとしてやるべきであって、こういうふうに、自発的と言いながら、実は雇用関係に基づいて事実上強制をさせられる人が出てくるだなんということはやはりやっちゃいけないんじゃないですか。
中谷国務大臣 それは、何度も申し上げますけれども、事業者と従業員の方々との問題で、労使の問題でありまして、会社の中の問題といたしまして、このような問題に私があれこれ申し上げる立場にはございません。
枝野委員 結局、戦争なんかのときに人権侵害が起こるというのはいろいろなパターンがありまして、一つは、確かに、法律、公権力によって直接人権侵害が起こり得るケースというのももちろん過去にもたくさんある。だけれども、社会的プレッシャーによって、嫌々ながら自発的という名目でやらされるケースもある。
 本当にそれが法的義務を課してやってもらわなきゃならないことだったら、法律できちんと書いて義務を課すかどうかということを国民的な議論をすればいい。だけれども、自発的ですと言いながら、実際には雇用関係に基づいて事実上社会的強制をされるというやり方は一番アンフェアだ。どうしても、こういう業務に従事している人たちはいざというときは自衛隊に協力してくださいと本当に思うのだったら、そういう法律を出して、それで国民的議論に付すのが筋ということで、私は、ごまかしだというふうに言わざるを得ません。
 もう一点聞きたいことがあります。基本理念のところです。
 武力攻撃事態への対処に関する基本理念として、一項から五項までいろいろ書いています。でも、書いてあることは、当たり前のことを改めて確認をしていることではあります。例えば、日本国憲法の保障する国民の自由と権利を守れ、当たり前のことで、書いてなくたって守らなかったら違憲になるわけですから、当たり前のことを書いているわけです。
 ところが、ここに、当たり前のことで大事なことなのに書かれていないことがある。国際人道法を遵守して武力攻撃事態に対処しなければならない。ほかの法律に書いてあるからいいじゃないかとかと言わないでくださいね。だって、人権を守れだなんて憲法にちゃんと書いてあるんですから。
 確かに、国際人道法なんかを守るというのは、さっき議論した自衛隊法にも書いてあります。ほかの法律に書いてあっても、わざわざ基本理念ということでほかのことは改めてここに書いているのに、国際人道法の遵守ということを含まなかったのはなぜなんですか。ケアレスミスですよね。
福田国務大臣 本法の三条五項でもって、武力攻撃事態への対処に関する基本理念として、「国際連合を始めとする国際社会の理解及び協調的行動が得られるようにしなければならない。」旨定めておりますけれども、ジュネーブ諸条約等の国際人道法を含む国際法を遵守することは、このような国際社会の理解等を得る前提であります。したがいまして、本法案におきましては、武力攻撃事態への対処に関する基本理念としては国際人道法の遵守をあえて規定する必要はないと考えたところでございます。いずれにしても、武力攻撃事態への対処に関して、国際人道法を含む関連の国際法を誠実に遵守することは言うまでもありません。
 なお、事態対処法制の整備に当たりましては、本法案第二十一条第二項の規定に基づいて国際人道法の的確な実施が確保されているところであります。
枝野委員 せっかくわざわざ憲法に書いてあることを改めて書いたりとか、基本理念として一番大事なことですと書くのだから、きちんと国際人道法を守りますと明示的になぜ書かないのかという感覚を私は疑うんです。
 残念ながら日本は、一番直近に行った戦争の処理に当たって、いろいろと戦争の途中で国際人道法違反ではないかということで戦後さまざまな国際的な問題になったりしてきましたし、今もその余韻というかその処理が終わっていないという声が世界の幾つかのところでくすぶっていますよね、外務大臣。
川口国務大臣 捕虜の問題につきましては、さきの大戦後、サンフランシスコの平和条約の義務を誠実に履行してきたわけではございますけれども、委員おっしゃるように、現実問題として、捕虜の問題がくすぶり続けているという事実は存在すると思います。
 しかしながら、今官房長官がお話しになられましたように、国際人道法につきましては、二十一条のたしか二項におきまして、今後、事態対処法制を決めていく場合に、この国際人道法の的確な実施が確保をされるということが必要であるということの規定が置かれていますので、そういうことで検討を進めたいと考えております。
枝野委員 さっきからわざわざ申し上げている、ほかのところに書いてあるからいいじゃないかだったら、この基本理念自体が実は全部要らないのですよね。だけれども、大事なことだから、ほかのところに書いてあることでも基本理念として書いてあるわけです。
 これは、戦後といってもむしろ最近にずっと近い戦後ですから、まさに過去の歴史の話なので、ぜひ私自身もいろいろ勉強してみたいと思いますが、ある本で読んだ話ですので、裏づけがもし必要があれば皆さん御勉強をいただいたらいいと思うし、私も勉強したいのですが、日清、日露戦争のときの開戦の詔勅には、きちんと、国際人道法を守りますということをわざわざ開戦の詔勅に書いてあった。ところが、なぜか第二次世界大戦になったらそういうのは落ちていた。それはたまたまなのかもしれないけれども、でもそういうところへの問題意識がきちんと常に向いているかどうか。日清、日露あるいは第一次世界大戦ぐらいまでは日本軍の国際法遵守というのは非常に世界で高く評価されていたのに、なぜか第二次世界大戦では、結果的に、負けたこともあるんだろうけれども、いろいろな問題が指摘されていた。やはり、この問題については国際社会の一員として我が国が信頼されてやっていくためには、常に国際人道法ということを最優先ぐらいのテーマに意識をしておかないと、残念ながらさきの大戦の話の、まだいろいろなことが世界各地で残っていることもあるわけですから、十分な配慮をしなければならないということを申し上げておきたいと思います。
 さて、昨日の石井紘基議員もここで質問させていただきましたが、いずれにしろ、こういうあいまいで抽象的な法律を今回つくろうとしておられる。それを使っていく中心は防衛庁である。抽象的であいまいというのは有事法制の性質上やむを得ないところがあるけれども、それにしても抽象的であいまい過ぎる。その分だけ、防衛庁に対してはより一層の高い信頼がなければ、到底こんな法律任せられない。
 それなのに、昨日石井紘基議員がここで議論をさせていただきましたが、ここに「防衛庁の新初等練習機の調達についての会計検査報告のポイント(会計検査院作成)」つまり、会計検査院が防衛庁のことについて会計検査をした報告のポイント(会計検査院作成)という文書があります。ところが、この文書をつくったのは会計検査院ではなくて防衛庁である。間違いありませんね。きのう、そう答弁していますね。
中谷国務大臣 そのとおりであります。
枝野委員 法務大臣、個別案件については法務大臣お答えにならないのはよくわかっていますから、一般的に聞きます。公文書偽造罪、偽造公文書行使罪、どういう場合に犯罪が成立しますか。
森山国務大臣 公文書偽造罪は、行使の目的で公務所や公務員の作成すべき文書を無権限で作成した場合に成立し、偽造公文書行使罪は、偽造公文書を行使した場合に成立するものと承知しております。
 これらの罪の法定刑についてですが、公務所や公務員の印章や署名があるいわゆる有印公文書の偽造罪の法定刑は一年以上十年以下の懲役であり、その他の公文書の偽造罪の法定刑は三年以下の懲役または二十万円以下の罰金であり、偽造公文書行使罪の法定刑は、これらの公文書偽造罪と同一の刑であると承知しております。
枝野委員 防衛庁には会計検査院の権限はありませんから、当然この文書の作成は公文書偽造罪に当たりますね。ついでに、これは何か、スイス政府か何かに送った。行使罪に当たりますね、防衛庁長官。
中谷国務大臣 この件につきましては、経緯がございますのでお話をさせていただきたいわけですけれども、私の就任の前でありますが、平成十二年の九月の二十五日に、航空自衛隊の初等練習機の後継機であります新初等練習機の調達の入札がございました。これは総合評価落札方式によって行うことといたしたものでありまして、会計法令に基づいて、大蔵大臣に協議の上、入札を実施したところでございます。
 そこで、その後、国会でも本件について御質問がありまして、昨年の一月以降、会計検査院が検査を行っていただきまして、昨年の十一月三十日にこの会計検査報告書が内閣に提出をされまして、この問題に関心を寄せておりましたスイス政府が、この本文を送っていただきたいというような御要望がありまして、新初等練習機の調達に係る会計検査院報告の本文を送ろうとしたところでございます。
 ところが、この会計検査院の本文が非常に専門的で詳細な報告書でございまして、約七千字、十三ページでございますが、平易な、わかりやすい要約をつけるべきであるというふうに当局が考えまして、この結果、ポイントとなる指摘をいただいた主な事項二点と、そのほかにもございますけれども、大きく概要の二点と、そして、この検査の結果でありますけれども、会計検査院は五段階の検査があるそうでございますが、いわゆる指摘事項につきましては一、二、三、四の段階ですが、五段階目は、国会からの検査要請事項及び特定検査対象にかかわる調査状況の五つに分かれておりまして、このことは、会計検査院のパンフレットを見ましても、この五項目は、違法または不当な事態であるとの指摘をしたり改善処置をとることを求めたりするものではなくて、国民の関心の高い問題について会計検査院の検査状況を明らかにしたものであるという点、そのことをスイス政府に伝える必要があると思いまして、それを書いたわけでございます。
 この作成につきましては、会計検査院に、この検査は、結果はどういう内容ですかということを事務的に確認して、それに間違いないということで確認をした上で書いたものでございます。そのポイントを、会計検査院報告の本文と一緒に、昨年の十二月十九日に外交ルートを通じてスイスに送付をいたしました。
 そして、この問題につきまして国会で再び御指摘がありまして、これは防衛庁と同じ認識かという点につきまして、会計検査院からも、「新初等練習機の調達につきましては、検査いたしました結果、法令、予算に違反し、または不当と認めた事項として取り上げるような事態は見受けられなかった」と御答弁をいただいたわけでございます。
 それで、その文書を送ったいきさつでございまして、この点につきましては、会計検査院の本文にない文言を記載いたしました。また、会計検査院に断らずに「会計検査院作成」と記述をいたしましてスイス政府に送付したことにつきましては、防衛庁といたしましても遺憾でありまして、反省をいたしているところでございますし、また、外交ルートを通じまして、スイス政府に対してその旨を連絡して、おわびを申し上げたところでございます。
 こういったことにつきましては、事務的には全く私の監督不行き届きの点がございまして、非常に反省をいたしておりますが、今後、このようなことがないように、庁内を厳しく監督してまいりたいというふうに思っております。
枝野委員 今大臣がおっしゃられたことは、情状面としての主張としてはあるかもしれない。だけれども、公文書偽造、行使という犯罪を犯しているんですよ、これは。犯罪を犯しているのを、ごめんなさいで済むんですか。そんなので済むんですか。犯罪見つけたら、公務員には告発義務があるんですよ。これはだれが主犯なのか告発しなきゃいけないんです。あなた、義務があるんです。
中谷国務大臣 この点につきましては、事務当局が認識が甘いし、私も監督不行き届きであった点はお認めをいたします。この問題につきましては、刑法上の問題ということになりましたら司法の御判断をいただくことになりまして、防衛庁といたしましてはお答えをする立場にはございません。
枝野委員 公務員の告発義務についてどう考えるんですか。告発義務があるんですよ。大臣、告発義務を無視するんですか。同罪ですよ、そうしたら。
中谷国務大臣 この点につきましては何度も委員会でお答えをいたしておりますが、内容的には、会計検査院に事務的に確認をして、こういう性格の検査でしたということをそのまま書いておりますし、その文言も会計検査院の作成したパンフレットに書かれておりまして、国会の会計検査院の方の御答弁も、その認識は同じであるという答弁をいただきまして、内容的には一緒であるというふうに私は思っております。
 ただ、名前を「会計検査院作成」と書いたことにつきましては全く事務的なミスでございまして、スイス政府に対しましても大変申しわけないというふうに考えておりまして、国会の場でもおわびをいたしましたし、スイス政府に対しましておわびの手紙を書いたところでございます。
枝野委員 文書の作成名義を事務的なミスで間違えるんですか。防衛庁の職員は、自分が会計検査院だと思ったりするんですか。そういうことがあるんだったら、事務的なミスだということになりますよ。だけれども、防衛庁の職員だとわかっている人間が「会計検査院作成」だなんていう文書をつくるだなんというのは、意図的にやる以外にあり得ないじゃないですか。
 中身が云々という話は関係ないですよ、文書偽造罪は。中身に書いてあることは仮に正しくても、文書の作成名義を偽ったら、つまり勝手に外務大臣が例えば日本銀行券をつくったら、やはり――これは通貨か。別の大臣のところの文書を別の大臣が勝手につくったら、中身が政府の見解と一致したってやはりだめなんですよ。財務大臣が例えば外務大臣の名前で勝手に外交文書をつくったらやはりだめなんですよ、中身が合っていようが合ってなかろうが。まさに防衛庁が、会計検査院作成と、しかもチェックをされる側がチェックした側の文書を作成しちゃった。明白な犯罪なんですよ。こんな犯罪を、違法行為を放置している大臣のもとで、どうしてその答弁とか出してきた法案を信用しろといって議論させることができるんですか。
中谷国務大臣 このポイントは、国会で質問があったときにお答えできるように、会計検査院の方にこの内容でいいかということに基づいて作成しまして、そのとき国会答弁で、プリントもあると思いますけれども、ここに会計検査院作成と。防衛庁の内部資料でつくった原案をもとにいたしております。
 そして、それを送る際には、事務方として会計検査院に、向こうに送るということを連絡したわけでありますが、事務的な連絡ミスでその旨が上の方に伝わっておりませんで、こちらはもう勝手に、今となっては、その本文にない文言を挿入し、またお名前を書いてしまった点につきましては、全く申しわけないことで、おわびをいたしておりまして、担当職員に対しては、適切でなかったという点があるということで、厳に、厳しく注意をしたところでございます。
枝野委員 今のお話は全部情状なんですよ。確かに、公文書を偽造したから全部必ず実刑で刑務所に入ってくださいなんて思いませんよ。いろいろな情状があって、それは起訴猶予になるかもしれない。
 しかし、いやしくも、きょうまでずっと議論してきているように、こういうアバウトな、非常に抽象的な法律しか書けない、出てきていない。有事においてその法律の運用をする防衛庁が、こんな遵法精神で、こんな抽象的な法律を使わせたら、明示的な公文書偽造のようなことすらいろいろ言いわけをして告発もしない。抽象的な条文の法律をこんな人たちにどうやって使わせるんですかという話になりますよ。現場の人たちは頑張っているかもしれない。でも、まさに大臣がしっかりとした遵法精神を持って、きちんと刑事告発し、きちんと省内処分をし、大臣もきちんと責任をとる。こういうことがなければ、とてもじゃないけれども、こんな法案、対応できないですよ。
 総理、どうですか。
小泉内閣総理大臣 いろいろ今までの御議論を伺いまして、不備な点を御指摘いただいたり、あるいは建設的な議論もいただいておりますし、これからこういう議論が重ねられていくうちに、有事という法整備が議員の中にも必要だということが広がっていくことを私は期待しておりますし、また今後、今言った会計検査院の文書の問題につきましても、これはあってはならないことであり、防衛庁としても厳しく反省しなきゃいけないと思います。
 御指摘の点も踏まえて、より信頼を高めるような努力をしていかなきゃならぬと思っております。
枝野委員 違法行為をやっているんですよ。犯罪に当たる行為をやっているんですよ、役所が。少なくとも構成要件には該当しますよ。そういうことについて、きちんとした遵法精神も持たずに、いや大臣がきちんと、それは確かに泣いて馬謖を切る話かもしれないけれども、省内処分をして、刑事告発する。刑事告発したら起訴猶予かもしれませんよ、確かにこれは。だけれども、犯罪であることについては厳しく対応するという役所であってもらわなければ、先ほど来申し上げているように、アバウトな規定ぶりの法律で国民の人権とか生命とかそういうことにかかわる大事な権能を、防衛庁のもとで自衛隊を動かすんですから、そこのトップの人がその程度の遵法精神で、こんな法律とてもできるわけない。
 どうしても省内処分とかあるいは刑事告発とかしませんか、大臣。
中谷国務大臣 この文書等につきましては、会計検査院と連絡や打ち合わせをしながらつくった文書でございますが、これを送付するときに勝手に会計検査院の名前をつけて書いたということは、事務的に不適切であろうかと思いますので、この職員等に対しまして厳重に注意をすると同時に、今後このようなことが二度と起こらないように、信頼の確保に努め、より的確に事務処理が行われるように努めてまいりたいというふうに考えております。
枝野委員 役所は、法律に違反をしても御注意を受けるだけで守られる。お上はそうやって守られる。そんなもとで、本当に有事のときに国民は守ってもらえるんですかという話です。
 防衛庁長官がそういう感覚だったら、とてもじゃないけれどもこんな法律――しっかりと議論しなきゃいけないと思っていますよ。まず防衛庁長官をかえてください、総理。こんな大臣のもとで、とてもこんな法律を議論できるとは思えない。きちんと防衛庁長官として遵法精神をしっかり持っているんだという姿勢を大臣が示さない限り、大臣にはおやめをいただきたい、そのことを申し上げる。総理、いかがですか。
中谷国務大臣 もう一点弁解をさせていただきたいんですが、この会計検査院の結果である本文は丸々送っておりまして、こちらは好意をもってその要約版というかポイントをつけさせていただいたわけでございますが、このポイントの表に会計検査院と書いたということは非常に重大な、不適切な事務的なミスでございました。
 この点につきましては心からおわびを申し上げたいと思いますが、この本文は丸々すべて送っているということにつきましては、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 中谷防衛庁長官時代の話ではないにしても、中谷防衛庁長官も、こういうことはあってはならないことだと厳しく反省していると思います。防衛庁職員も、このようなことが起こらないように今後さらに注意をし、信頼を得られるような対応をしなきゃならないと思っておりますので、私自身としては、中谷防衛庁長官も、最高責任者として、自分の在任中ではない出来事でありますが、我が事のように感じて厳しく反省しておりますので、今後二度と起こらないような対応をしっかりしていただきたい、そういうことで責任を果たしていただきたいと思っております。
枝野委員 私の議論をちゃんと聞いていただければ、文書偽造を起こしたときの大臣だ、そのことについての責任をとるべきだなんて私は申し上げていません。こうやって文書偽造の事実が出てきたことについて、それにきちんと対応しない、その程度の遵法精神の防衛庁長官では困るということを申し上げているんです。
 とばっちりのようで気の毒かもしれませんが、この内閣、この間いろいろな問題が出てきた。BSEの問題も出てきた、やはり責任をとらない。外務省、田中外務大臣はやめたけれども、その後もいろいろな話が出てくるけれども、大臣がかわったら、さっぱり具体的な事実関係を表に出さなくなってきた。
 そして、こうやって明々白々な防衛庁の違法行為が出てきても、情状面はいろいろ配慮すべきことはありますよ。だけれども、まさに、いやしくもこれだけ強い公権力を、自衛隊という強い公権力を動かす防衛庁は、だれよりも遵法精神が強くなければならない。ましてや、刑事犯罪に触れるような疑いを持たれるようなことがあっては絶対にいけない役所なんだ。
 そんなところの、対応が具体的に出てきても、部下をかばい、それは美しいですよ、部下をかばうのは。だけれども、部下をかばう前に、国民に対してきちんと、違法行為についてはどんな小さなことでも、やはりこれだけ強い公権力を持っているんだから、しっかりと対応しますという姿勢をまずお見せになるべきだ。
 この内閣全体として、こういったけじめとか責任とかという問題について余りにも甘過ぎる。そういうところからこういうアバウトな法律が出てきて、そして、きょう議論したとおり、中身はほとんどない。中身のある部分については逆行するのではないかという部分も含まれている。
 こうしたいいかげんなものしか出てこないということに対しては強い不満を申し上げて、重ねて、中谷大臣がきちんと省内の処分や告発、さらには、こうやって対応がずるずる延びたことに対する責任をきちんと果たされる、果たされないんだったら、きちんとその責任を総理として、内閣として問う、そのことを求めて、質問を終わります。
瓦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時散会


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