衆議院

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第16号 平成14年6月28日(金曜日)

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平成十四年六月二十八日(金曜日)
    午前十時十分開議
 出席委員
   委員長 瓦   力君
   理事 衛藤征士郎君 理事 金子 一義君
   理事 久間 章生君 理事 米田 建三君
   理事 伊藤 英成君 理事 玄葉光一郎君
   理事 赤松 正雄君 理事 工藤堅太郎君
      石破  茂君    岩屋  毅君
      大野 松茂君    奥谷  通君
      北村 誠吾君    小島 敏男君
      近藤 基彦君    斉藤斗志二君
      桜田 義孝君    七条  明君
      谷本 龍哉君    西川 京子君
      浜田 靖一君    林 省之介君
      増田 敏男君    松野 博一君
      森岡 正宏君    山口 泰明君
      伊藤 忠治君    枝野 幸男君
      大石 尚子君    桑原  豊君
      首藤 信彦君    末松 義規君
      筒井 信隆君    中野 寛成君
      肥田美代子君    山田 敏雅君
      渡辺  周君    上田  勇君
      白保 台一君    田端 正広君
      中塚 一宏君    樋高  剛君
      赤嶺 政賢君    木島日出夫君
      今川 正美君    東門美津子君
      井上 喜一君    宇田川芳雄君
    …………………………………
   参考人
   (元防衛事務次官)    秋山 昌廣君
   衆議院調査局武力攻撃事態
   への対処に関する特別調査
   室長           鈴木 明夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月二十八日
 辞任         補欠選任
  岩永 峯一君     北村 誠吾君
  嘉数 知賢君     谷本 龍哉君
  熊谷 市雄君     松野 博一君
  田中 和徳君     奥谷  通君
  川端 達夫君     大石 尚子君
  前原 誠司君     山田 敏雅君
同日
 辞任         補欠選任
  奥谷  通君     田中 和徳君
  北村 誠吾君     岩永 峯一君
  谷本 龍哉君     嘉数 知賢君
  松野 博一君     熊谷 市雄君
  大石 尚子君     川端 達夫君
  山田 敏雅君     前原 誠司君
    ―――――――――――――
六月二十八日
 有事法制反対、憲法九条を生かした国際貢献に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六四六九号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六四七〇号)
 同(児玉健次君紹介)(第六四七一号)
 同(穀田恵二君紹介)(第六四七二号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第六四七三号)
 同(志位和夫君紹介)(第六四七四号)
 同(中林よし子君紹介)(第六四七五号)
 同(春名直章君紹介)(第六四七六号)
 同(松本善明君紹介)(第六四七七号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第六四七八号)
 同(山口富男君紹介)(第六四七九号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六五二五号)
 有事法制立法化反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六四八〇号)
 同(石井郁子君紹介)(第六四八一号)
 同(小沢和秋君紹介)(第六四八二号)
 同(大幡基夫君紹介)(第六四八三号)
 同(大森猛君紹介)(第六四八四号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六四八五号)
 同(児玉健次君紹介)(第六四八六号)
 同(穀田恵二君紹介)(第六四八七号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第六四八八号)
 同(志位和夫君紹介)(第六四八九号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第六四九〇号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第六四九一号)
 同(中林よし子君紹介)(第六四九二号)
 同(春名直章君紹介)(第六四九三号)
 同(不破哲三君紹介)(第六四九四号)
 同(藤木洋子君紹介)(第六四九五号)
 同(松本善明君紹介)(第六四九六号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第六四九七号)
 同(山口富男君紹介)(第六四九八号)
 同(吉井英勝君紹介)(第六四九九号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第六五二七号)
 同(大幡基夫君紹介)(第六五二八号)
 同(大森猛君紹介)(第六五二九号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第六五三〇号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六五三一号)
 同(児玉健次君紹介)(第六五三二号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第六五三三号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第六五三四号)
 同(中林よし子君紹介)(第六五三五号)
 同(春名直章君紹介)(第六五三六号)
 同(松本善明君紹介)(第六五三七号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第六五三八号)
 同(山口富男君紹介)(第六五三九号)
 有事法制三法案の廃案に関する請願(東門美津子君紹介)(第六五〇〇号)
 有事法制の制定反対に関する請願(今川正美君紹介)(第六五二四号)
 有事法制反対、憲法に基づく平和政策に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第六五二六号)
 有事法制反対と平和政策に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第六五四〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第八七号)
 武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出第八八号)
 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)
 安全保障基本法案(東祥三君外一名提出、衆法第二一号)
 非常事態対処基本法案(東祥三君外一名提出、衆法第二二号)
 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――
瓦委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案並びに東祥三君外一名提出、安全保障基本法案及び非常事態対処基本法案の各案を一括して議題といたします。
 この際、去る五日及び七日、各案審査のため宮城県、鳥取県、新潟県及び長崎県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。第一班久間章生君。
久間委員 第一班、仙台班の派遣委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。
 派遣委員は、団長として私、久間章生と、金子一義君、伊藤英成君、赤松正雄君、熊谷市雄君、首藤信彦君、中塚一宏君、木島日出夫君、山口わか子君、井上喜一君の十名で、現地において萩野浩基議員、鎌田さゆり議員が参加されました。
 現地における会議は、江陽グランドホテルにおいて開催し、まず、私から派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序などを含めてあいさつを行った後、意見陳述者より意見を聴取し、これに対して、各委員より熱心な質疑が行われました。
 意見陳述者は、宮城県議会議員村井嘉浩君、守屋木材株式会社代表取締役社長守屋長光君、東北学院大学教養学部教授遠藤恵子君、日本郷友会宮城支部長佐久間博信君、会社役員横田匡人君、東北大学名誉教授・専修大学法学部教授小田中聡樹君、宮城県護憲平和センター理事・黒川郡護憲平和センター理事長菅原傳君、宮城大学看護学部教授山本真千子君の八名でありました。
 以下、その陳述内容につきまして簡単に御報告申し上げます。
 主要先進国が有する国家緊急事態に対処する有事法制がこれまで我が国に存在していなかったことの問題点、シビリアンコントロールの確保と国民を守る有事法制の整備を行うべきこと、有事法制について国民に周知の努力を行い、幅広い議論を喚起する必要性、有事法制の整備に当たり、民間防衛と言われる国民の安全に関する法整備を進めるべきこと、政府として憲法解釈をはっきりと確定し、安全保障の原則を確立させた上で議論する必要性、政府提出案の違憲性及び憲法の平和原則を守る必要性、アジア近隣諸国との平和保障機構の設置及び国連の機能強化により紛争解決を進めるべきこと、有事に際し国家全体として適切な対応をとるため法整備を速やかに行うべきことなどについて、それぞれの立場から意見、要望が述べられました。
 次いで、各委員から意見陳述者に対し、有事法制の整備がおくれた理由、集団的自衛権の行使に関する見解、有事法制についての国民の理解の内容、有事における女性の基本的人権を確保する必要性、ジュネーブ条約追加議定書の批准がおくれている理由、自由党案における国際連合平和協力隊の創設に関する見解、有事法制が戦争状態を創出する可能性についての懸念、有事における国民保護の困難性についての懸念、有事に際し国家及び国民が協力して対処する制度をつくる必要性などについて質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了いたしました。
 以上が第一班の会議の概要でありますが、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。
 なお、速記録ができましたら、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。
 以上をもって第一班の報告を終わりたいと思いますが、今回の会議の開催につきましては、地元の関係者を初め、多数の方々に多大の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。
 以上、御報告申し上げます。
瓦委員長 御苦労さまでした。
 第二班石破茂君。
石破委員 第二班、鳥取班の派遣委員を代表いたしまして、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。
 派遣委員は、瓦力委員長を団長として、大野松茂君、浜田靖一君、永田寿康君、肥田美代子君、白保台一君、樋高剛君、赤嶺政賢君、今川正美君、宇田川芳雄君と私、石破茂の十一名でありました。
 現地における会議は、玉姫殿において開催し、まず団長から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序などを含めてあいさつを行った後、意見陳述者より意見を聴取し、これに対し各委員より熱心な質疑が行われました。
 意見陳述者は、鳥取県西部地区日韓親善協会会長・東京印刷株式会社取締役社長杉原弘一郎君、鳥取大学名誉教授小倉道雄君、税理士大西龍夫君、尾道市議会議員井上文伸君、島根大学名誉教授渡辺久丸君、全日本鉄道労働組合総連合会鳥取県協議会議長生田幸広君、鳥取県知事片山善博君の七名でありました。
 以下、その陳述内容につきまして簡単に御報告を申し上げますと、阪神大震災の経験に照らして、有事の法制度を平時から整備しておくことの重要性、国の究極の役割は国民の生命財産を守ることであるという観点から、有事法制よりも国民の保護やテロ、不審船に備えることを目的とした法制を優先して整備することの必要性、我が国の現在の情報体制で的確な国際情勢判断を下すことの困難さ、国の自衛権を認める以上は、具体的な自衛権の行使に関する法制の整備が必要であるとの観点から、国民感情に配慮して安全保障政策の原則を明確にしていくことの重要性、有事法制の憲法上の位置づけに関する問題と、非戦、非核などの平和外交を推進していくことの重要性、武力攻撃事態が日本周辺事態と重なることもあり得るという政府の見解により、米国の戦争に日本が巻き込まれることへの危惧、有事法制よりもテロ対策を望んでいる国民の意識、有事の際に住民を守るため、国と地域の実情に精通している地方自治体とが一体的に対応できるような役割を整理することの重要性、有事体制整備に当たっては、従来からの縦割り行政の弊害をなくし、国、地方自治体、警察、消防などの機関が一体的、一元的に活動できるような体制を、政治家が官僚を指揮しつつ、十分に議論して整備していくことの必要性、国民を保護する法制度が二年以内に整備することになっているが、その実現性に関する懸念、武力攻撃事態の定義など法案の概念のあいまいさなどについて、それぞれの立場から意見、要望が述べられました。
 次いで、各委員から意見陳述者に対し、国民保護法制は、できるだけ早期に各界の意見を求めて推進していくこと、有事の際には国が中心になりつつ、国、地方自治体、警察、消防が連携していくあるべき体制に関する所見、平時と有事の救急医療体制の量的、質的相違、国民の保護に関する法制に盛り込むべき具体的な内容、情報収集、国民への伝達など国の情報体制に関する所見、我が国の安全保障政策や自衛隊の行動原則に関する所見、武力攻撃事態と日本周辺事態とが重なり得ることにより、日本側が自主的に武力攻撃事態の認定をすることが困難になることの問題、友好関係の樹立など、外交努力を積極的に行っていくことの重要性、国民に有事法制の重要性を理解してもらうために国がなすべき方策、地方の立場から見た有事法案に対する意見などについて質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了いたしました。
 以上が第二班の会議の概要でありますが、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。
 なお、速記録ができましたら、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。
 以上をもって第二班の報告を終わりたいと存じますが、今回の会議の開催につきましては、地元の関係者を初め、多数の方々に多大の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。
 以上、御報告申し上げます。
瓦委員長 御苦労さまでした。
 第三班米田建三君。
米田委員 第三班、新潟班の派遣委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。
 派遣委員は、団長として私、米田建三と、工藤堅太郎君、岩永峯一君、森岡正宏君、山口泰明君、桑原豊君、筒井信隆君、上田勇君、木島日出夫君、山口わか子君の十名で、現地において吉田六左エ門議員が参加されました。
 現地における会議は、ハミングプラザVIPにおいて開催し、まず、私から派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序などを含めてあいさつを行った後、意見陳述者より意見を聴取し、これに対し、各委員より熱心な質疑が行われました。
 意見陳述者は、新潟防衛懇話会会長鈴木廣君、前滑川市長澤田壽朗君、新潟国際情報大学専任講師佐々木寛君、新潟県議会議員志田邦男君、人づくり県民ネットワーク幹事佐々木薫君、新潟大学名誉教授藤尾彰君、新潟大学法学部教授小野坂弘君の七名でありました。
 以下、その陳述内容につきまして簡単に御報告申し上げますと、有事に際して自衛隊がその能力を十分に発揮し、また国民を戦争の被害から守るために、平時から有事、緊急時の対応に関する法律を整備しておくことの重要性、国、国民にとって最も基本的かつ重要な制度を定める有事関連三法案の早期成立の必要性、シビリアンコントロールの観点から、自衛隊の行動の基本に関する法制を平時から整備しておくことの重要性、有事関連三法案によって東アジア地域の軍事的な緊張が高まる可能性、有事の概念、周辺事態との関係、二年以内に整備することとされている国民保護のための法制などについて具体的に説明することの必要性、自衛隊の行動に関して、国際標準に則した責務、権限を法律で整備することの必要性、有事関連三法案が米国による違法な軍事行動に日本が加わる可能性を高めることへの懸念、現行憲法下における有事法制整備の不可能性などについて、それぞれの立場から意見、要望が述べられました。
 次いで、各委員から意見陳述者に対し、国民の生命財産を守り、戦争を抑止するための有事関連三法案の必要性、武力攻撃事態認定の地理的範囲を我が国領域内に限定する必要性、国民保護のための法制という重要な法制の整備が先送りされていることによる武力攻撃事態対処法案の不完全性、同案の規定による国と地方公共団体との関係が地方自治の本旨に反するという懸念を払拭するために必要な今後の議論の進め方、福田官房長官による非核三原則に係る発言に対する見解、我が国に対する外部からの武力攻撃事態発生の蓋然性の有無、戦争反対運動や報道機関に規制を加えようとする有事関連三法案に関する見解などについて質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了いたしました。
 以上が第三班の会議の概要でありますが、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。
 なお、速記録ができましたら、本委員会議録に参考として掲載されますようにお取り計らいをお願いいたします。
 以上をもって第三班の報告を終わりたいと思いますが、今回の会議の開催につきましては、地元の関係者を初め、多数の方々に多大の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。
 以上、御報告申し上げます。
 なお、木島日出夫委員の申し出については、座長において善処いたしました。
 以上です。
瓦委員長 御苦労さまでした。
 第四班衛藤征士郎君。
衛藤委員 第四班、佐世保班の派遣委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。
 派遣委員は、団長として私、衛藤征士郎と、玄葉光一郎君、近藤基彦君、田中和徳君、末松義規君、田端正広君、中塚一宏君、赤嶺政賢君、今川正美君、井上喜一君の十名で、現地において北村誠吾議員が参加されました。
 現地における会議は、ライフステージアイトワにおいて開催し、まず、私から派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序などを含めてあいさつを行った後、意見陳述者より意見を聴取し、これに対し、各委員より熱心な質疑が行われました。
 意見陳述者は、サセボコンパス21代表幹事・株式会社馬郡喜商店代表取締役馬郡謙一君、佐世保市長光武顯君、長崎友愛病院長茅野丈二君、長崎短期大学助教授北川誠一郎君、佐世保商工会議所副会頭・辻産業株式会社代表取締役社長辻昌宏君、長崎総合科学大学助教授前原清隆君、長崎大学教授舟越耿一君、株式会社橋本商会取締役社長室長千田稔君の八名でありました。
 以下、その陳述内容につきまして簡単に御報告申し上げますと、有事法制の早期整備、関連法制整備時までの本案施行の凍結、国民保護法制未整備の問題、周辺諸国の十分な理解の必要性、安全保障に関する基本法制確立の必要性、周辺事態と武力攻撃事態との関連、有事法制の要らない国づくりの必要性、有事に即した自衛隊訓練の充実の必要性などにつきまして、それぞれの立場から意見、要望が述べられました。
 次いで、各委員から意見陳述者に対し、有事法制の必要性、有事法制について国民の理解を得る方策、国民保護法制が未提出であることについての見解、総理による代執行についての見解、関連法整備を早めることについての見解、国連平和協力隊創設及び国連常備軍に関する見解、本案が集団的自衛権の行使につながる危険性、有事の際の民間企業と米軍との関係、有事と地方自治との関係などにつきまして質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了いたしました。
 以上が第四班の会議の概要でありますが、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。
 なお、速記録ができましたら、本委員会議録に参考として掲載されますようにお取り計らいをお願いいたします。
 以上をもって第四班の報告を終わりたいと思いますが、今回の会議の開催につきましては、地元の関係者を初め、多数の方々に多大の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。
 以上、御報告申し上げます。
瓦委員長 ありがとうございました。
 以上で去る五日及び七日に行われた委員派遣の派遣委員からの報告は終わりました。
 お諮りいたします。
 ただいま報告のありました第一班、第二班、第三班及び第四班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕
    ―――――――――――――
瓦委員長 本日は、参考人として元防衛事務次官秋山昌廣君に御出席を願っております。
 秋山参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。
 なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 これより秋山参考人に対して質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田敏雅君。
山田(敏)委員 民主党の山田敏雅でございます。
 参考人におかれましては、本日、御多用のところ出席いただきまして、本当にありがとうございます。
 今回のケースは、台湾の国家安全局、情報機関でありますけれども、この機密文書が暴露されました。その内容が対日工作資金の内訳とその使われ方、数多くの文書が流れました。これは、もし事実であるとすれば、外国であればスパイ罪、死刑に値する。外国にお金をもらってその便宜を図る、こういうことはあってはならないことでありますので、本日はぜひ疑惑を晴らしていただきたいと思います。
 台湾に行ってまいりました。この機密文書を手に入れて、そして最初にスクープをされた方にお会いしました。だれから手に入れたのか、どういう経緯で、どういう事情があって、どういう理由で、こういう質問をいろいろお聞きしました。
 この機密文書そのもののコピーを、ここに、私は手に入れましたので、このページは秋山参考人について書かれたものでございます。この文書が本物であるかどうかということは重要なことでありますので、とりあえずその文書の中身を、手に入れた方の心証を得ました。
 その中に具体的に書いてございます。これは、中身の内容を簡単に申し上げますと、秋山さんが防衛局長在任中に、日米安保の新ガイドライン、これを順調に通過させたキーパーソンであること、それから双方の軍事情報の協力にも貢献していたこと、それによって、秋山氏のハーバード大学の研修を手配し、その資金を提供したこと、そしてその資金については五万ドルを二回に分けて送金すること、そしてそれはアメリカのCSIS、ここに送るということ、その責任者は台湾輸送機械株式会社の会長である彭栄次氏、この方が責任を持つ、そして十万ドルを彭会長に渡したことが書いてございます。これがこの文書の訳でございます。
 そこで、秋山参考人にお伺いいたします。
 防衛庁防衛局長の在任中、日米安保新ガイドライン、これについてその当時の秋山さんの役割はどういう役割をされたんでしょうか。
秋山参考人 まず、御質問がございましたので、防衛局長在任中のことについて申し上げたいと思いますけれども、私は、一九九五年の四月に防衛局長に就任いたしまして、九六年、九七年の六月いっぱいだったと記憶いたしますけれども、防衛局長に在任しておりました。その間、一九九五年に、十一月でございましたけれども、防衛大綱、現在の防衛大綱でございますね、それを作成する仕事に携わりました。同時に、沖縄の米軍基地の問題が非常に大きな問題になりまして、その関係で、大変たくさんの仕事をアメリカあるいは沖縄ともやったと記憶しております。
 それから、日米安保共同宣言というものを一九九六年の四月に出しましたので、その仕事も携わりましたし、その後行われました日米防衛協力のガイドラインの見直しという問題にも携わりまして、九七年の六月に防衛局長を終えたということでございます。
山田(敏)委員 新ガイドラインの作成に関して台湾海峡を含めることについて、何か御意見はそのときございましたでしょうか。それともう一つ、台湾の林金茎駐日代表、その方にお会いになられたでしょうか。
秋山参考人 まず、ガイドラインの問題のその発端は、当時この問題についてかかわった先生方あるいは識者、役所の関係もみんな同じ理解を持っていると思いますけれども、まず一九九五年の十一月の防衛大綱の中に周辺事態対応というものが入ったわけでございます。この周辺事態対応が入るときには国内でも大変な議論がございまして、なかなか意思決定まで大変な道のりでございましたが、九五年の十一月にこの防衛大綱の中に周辺事態の関係が入りました経緯は、これは率直に申し上げますと、九四年ごろから起こっておりました朝鮮半島における北朝鮮の核開発疑惑に絡む問題でございまして、それに関連した日米の防衛協力のあり方、あるいはオペレーションの問題、支援といったようなものが背景にあってこの周辺事態の対応が九五年の防衛大綱に出たわけでございます。
 台湾の御質問がございましたので、ぜひ時系列的に申し上げたいと思いますけれども、防衛大綱の中で周辺事態対応が書かれた十一月の後、四カ月後でございますけれども、五カ月後でしょうか、一九九六年の三月にあの台湾海峡の緊張事案というものが発生したわけでございます。防衛大綱の周辺事態対応につながって、防衛協力の見直しとかガイドラインの見直しとかいうものがあったわけでございますけれども、その途中にこの台湾海峡の緊張事態があったということを、時系列的にぜひ御理解をしておいていただきたいと思います。
 なお、台湾の駐日代表の林さんに私はお目にかかりましたが、これは台湾の駐日代表の方が面会を申し込んでまいりましたので、私は当時のルールに従って、つまり、いろいろ政治的な問題がございましたので、役所の中で会うということはルールとしていけないということでございましたから、役所の外でお目にかかりました。お目にかかりましたが、私の記憶するところでは、たしか一九九六年の一月でございましたから、この台湾海峡緊張以前のことでございます。
山田(敏)委員 短く質問しますので、短く答えていただきたいと思うんですが、その際、林代表から台湾海峡について特に考慮するようにと言われたことはございますか。
 台湾側の記録によりますと、中日断交、すなわち台湾が断交して以来、国交が途絶えて以来、秋山さんは政府の要人が初めて会う最高レベルの国防官僚であって、双方の軍事情報の協力にも多く貢献した、こう記録がございますが、それは事実でしょうか。
秋山参考人 林代表は、とにかく一度お目にかかりたいということで、私もそれを受けたわけでございまして、大変儀礼的な面会、これは夕食をともにしたと記憶をしておりますけれども、率直に言って、どういう話をしたのかはほとんど記憶しておりません。ただ、私の残っている印象としては、防衛庁の幹部に会うということが目的だったというふうに思っております。
 ただ、先ほど御説明申し上げましたように、台湾海峡事案の発生する前の時点での面会でございまして、台湾海峡の話があったとはとても思えません。全然記憶しておりません。
 それから、後半の御質問についてでございますけれども、私、先ほどちょっと申し上げましたけれども、ガイドラインにつながる日本の周辺事態対応の話というのは、朝鮮半島の、まあ有事を想定した形から出てきた話でございまして、先ほど申し上げましたように、九五年の十一月の防衛大綱に向けて、国内で相当の議論をしてやったわけでございます。
 それで、先生御質問の、台湾の中のいろいろな情報につきまして、その内容についてでございますけれども、私の知る限りにおいて、つまり当時の北東アジアの情勢、日米関係、台湾と米国との関係、日本と台湾との関係からいたしますと、とても書いてあることは、私の感じからいたしますと現実から離れているようなことが書いてありまして、後からいろいろ書かれたのではないかというふうに私は思います。
山田(敏)委員 ハーバード大学の留学についてお伺いします。
 ハーバード大学のエズラ・ボーゲルさんに御相談なさって、御本人が留学をしたいという申し出をされたということでございますが、それに間違いございませんか。
秋山参考人 事実は、先方の方から、防衛庁をやめた後ハーバード大学で研究をしないかというお話がありました。研究するに当たって先方からは、研究する課題なり目的を明らかにしてくれということはございましたけれども、当初先方からお話がございました。
山田(敏)委員 ここに、クリムゾンという新聞の記事がございます。これはハーバードの現地の新聞だと思うんですが、この台湾の報道がなされてから、ハーバード、非常に大きなスキャンダルというかになりました。このクリムゾンの記者がエズラ・ボーゲルさんに証言を求めてインタビューをしました。その精細が全部書いてございます。
 これによりますと、エズラ・ボーゲルさんは、今秋山さんがおっしゃったことと違うことをおっしゃっているんですが、秋山さんから手紙をいただいたと。アメリカと日本の安保条約、これについて何か論文を書きたい、これ、ヒズウイッシュと書いてあるんですね、からあったというふうに証言されておりますけれども、もう一回ちょっと正確に記憶を思い出していただけますか。
秋山参考人 エズラ・ボーゲル博士に、先ほど申し上げましたように、途中の段階で、私は何かを書きたい、こういうテーマでやりたいというレターを出したことは確かでございます。しかし、私がハーバード大学で研究をするというきっかけは、先方からお誘いがあったということでございます。
山田(敏)委員 ちょっと、ボーゲルさんと違うことを言われるのであれなんですが、留学をするということは費用がかかります。それで、ボーゲルさんは、お金はありませんというふうに証言しています。秋山さんのためのフェローシップはノーファンドと書いてあります、証言しております。それから、秋山さんの入学を許可するに当たってアプリケーションを出していただきました、その審査をしました、そのコミッティーでですね、こういうことを述べておられます。
 このアプリケーションを出すときに、留学をする費用が、何も根拠がないとアプルーバルをされないわけですね。そのお金についてはどういうふうに向こうから言われましたでしょうか。
秋山参考人 それは、もちろん私はハーバード大学のフェローシップを期待いたしましたけれども、かなり早い段階で、それは難しいということが先方からの話でわかりました。そこで、特別にハーバード大学の方で資金を集めるけれども、集まらない場合には秋山さんの負担になる、それでよいかという話がありましたので、それはやむを得ませんと。ただ、私は、私の意識としては、大学の方からのお招きという意識がございましたので、何とかそれは集めていただきたいということでスタートをしたということでございます。
山田(敏)委員 それはちょっと事実と違いますね。最初から大学がお金を集めるということはない、ノーファンドだということをはっきりボーゲルさんは言ったんですね。では、どうやってそのお金を集めたかというのが、これはどんどん事実が明らかになりました。
 まず第一に、ちょっと資料をお配りいただいて。
 台湾の機密文書に、だれが、どういう順序で、幾ら、どこに送金したかということが書いてあります。それで、今お配りしました資料は、これはネーションという雑誌、この中に、台湾の機密文書に書いてあるとおりの順序とお金と、そして送金の方法が、パシフィックフォーラム、CSIS、ここの、この方は副代表でありそしてスポークスマンです、この方が、すべての送金、それからお金を受け取ったレコード、記録を調べました、その結果、こういうことが明らかになりましたと。
 台湾輸送機械の方から五万ドルが振り込まれました、これは、この台湾の機密文書に書いてあるとおりです。そのお金を、四万ドルをハーバード大学に送金しました、これは秋山さんのフェローシップのために送りました、こう書いてあるんです。この事実は御存じでしたでしょうか。
秋山参考人 私は、ハーバード大学からいろいろと便宜供与を受けましたので、ハーバード大学に確認し、あるいは当時も私は承知をしておりましたけれども、ハーバード大学が米国のCSISから、約四万ドル弱だったと思いますけれども、受領する、あるいはしたということは承知いたしております。
山田(敏)委員 いつの段階で承知されたんでしょうか。
秋山参考人 正確にその日付は記憶ございませんけれども、多分二〇〇〇年の年が明けてからだったと記憶いたします。
山田(敏)委員 もちろんこれは留学される前ですね。
秋山参考人 その点は大変重要な点ですので、ちょっと説明させていただきたいと思いますけれども、私は、防衛庁を辞したのは一九九八年の十一月でございます。そして、一九九八年の十二月以降から、ハーバード大学と客員研究の活動をする調整をしておりました。
 私は、一九九九年の一月に、ハーバード大学といいますか、ボストンに行く予定がございましたので、そこで、エズラ・ボーゲル博士と、それからケネディ・スクールの学長のジョセフ・ナイに会いまして、実はこの御両者からお招きをいただいていたわけですので、御両者に会って、一九九九年の一月に、ハーバード大学で客員研究員としての活動をすることを決意いたしました。そして、二、三カ月の調整を経た後、一九九九年の四月から、私は、宿舎と研究室の提供を受けて研究活動を始めたわけでございます。
 今のお話は、約一年後の二〇〇〇年一月の時点でございますので、私が行く前にこんな話があったということは、全く時系列的にはございませんし、先回も私説明いたしましたけれども、私がハーバード大学に行く、あるいはハーバード大学でのその資金の問題について何か台湾が関与をしたということは、私の知る限り全くないと確信しております。
山田(敏)委員 それじゃ、留学した後でCSISが受け取ったと。今、事実報道されているわけですけれども、これは台湾からのお金であるというのは後でお知りになったということですね。
秋山参考人 CSISが発表をして新聞に報道されたということは私もワシントン・ポストその他の記事で承知しておりますが、私は直接CSISに確認しておりませんので、CSISがどういうふうに資金を集めたのか、私は知る立場にございません。ただ、報道でそういうふうになされていることは私も承知しております。
山田(敏)委員 エズラ・ボーゲルさんとナイ教授が秋山さんを招待したと今おっしゃったんですが、ボーゲルさんの話によると、招待した割には随分お金に苦労されております。もともとそういう資金はないので、これは一生懸命探さなきゃいけないということだそうです。そして、このCSISの会長と秋山さんの費用については話がついた、こういうふうに述べられております。
 そこで、このケリー会長が、台湾の対日工作資金の実質的な責任者であった台湾輸送機器株式会社の彭会長にロサンゼルスで会っています。で、この件について話をされています。その中で、秋山さんが四月に台湾を訪問されて国家安全局に連絡を入れた、こういうふうに述べてあります。これは事実ですね。
秋山参考人 ロサンゼルスという場所との関係では、ちょっと私、今の御質問、よく理解できませんでしたけれども、私は、二〇〇〇年の四月に台湾を訪問しております。私は、日本と台湾の関係が、現役時代からいろいろな意味で大変薄いということを懸念していたものでございますので、役所をやめた後、ぜひ台湾を訪問したいということで、もう前の年からいろいろ計画を立てておりました。その年は台湾だけ訪問したわけではございませんで、一月にはインドですとか、二月には韓国ですとか、三月にはサンフランシスコ、四月に台湾、五月に北京ということで、毎月アメリカの国内外に出ておりました。その一環として台湾を訪問したわけでございます。
 そして、四月に台湾を訪問することでございましたので、その約二カ月前の二月に台湾と連絡をとって、その日程の調整をいたしたということは事実でございます。
山田(敏)委員 その二月に連絡をとった相手は国家安全局、まずそれを確認してください。それから、四月に行ったときにだれにお会いになったのでしょうか。
秋山参考人 二月に先方の方から連絡がありまして、楊さんという軍人の方から連絡がありましたが、私は当初その所属はわかりませんでした。ただ軍人の肩書を持っておりましたので、国防省の方だという理解でございましたけれども、そのうち、国家安全局という組織まで私知りませんでしたけれども、その楊さんがそういう方面のお仕事をやっているということは認識しておりましたが、最初は国防部の軍人の方から連絡があったということでございます。
 それから、私が四月に参りましたときは、李登輝、当時まだ総統でございましたけれども、李登輝総統。それから直後に行政院長になられた唐飛国防部長。それからあと、主要な幹部でございますけれども、外交部ですとかあるいは総統府、それから大陸委員会。それからもちろん国防部、それから安全保障関係の機関。さらには、ちょっと欲張りまして、日本でいうところの海上保安庁あるいは水産庁に相当するところ。そして、当時新しい総統に当選を果たしました陳水扁氏のバックボーンになった中央研究院の李遠哲院長。それと、そこの中央研究員とのラウンドテーブル、あるいは台湾総合研究所等々、大変多くの方とお目にかかることができました。
山田(敏)委員 国家安全局に訪問なさったときに御自身がどういう発言をされたか覚えていらっしゃったら、どうぞおっしゃってください。
秋山参考人 国家安全局に参りましたときは、その組織の性格からいたしまして、軍事問題といいますか安全保障の問題が話題になりました。私からは、防衛大綱の話、もう当時既にガイドラインも終わっておりましたのでガイドラインの話、そういうことを説明したと記憶しております。
山田(敏)委員 秋山参考人、ワシントン・ポストの報道で後で知ったということなんですが、このCSISは、一回問い合わせして、再度問い合わせをして、そして入送金のレコード、記録を全部調べて、そしてスポークスマンが発表しました。台湾からお金を受け取って秋山さんのために送りましたと。そして一方、クリムゾンというリポートでこの記者が、スーザン・マックホーンというハーバード大学のアドミニストレーション、管理のディレクターですから、責任者ですね、この人にこの記録を確認いたしました。両方の記録がぴったり合います。何年何月に四万ドルを送金しましたと。一方、ハーバード大学のアカウンティングの記録によりますと、三万九千六百ドル、四百ドルはいろいろな手数料だと思うんですけれども、CSISから受け取りましたと。これは秋山さんのエキスペンスをカバーするためです、こういうふうに書いてあります。この二つの事実が一致しました。
 もう一方で、台湾の機密書類の、何年何月何と、こう書いてあります。これもCSISと一致いたしました。台湾からお金が来て秋山さんの費用にあてがったという事実が証拠をもって確認されたんですが、これについてどう思われますか。
秋山参考人 報道ベースでございますけれども、CSISに台湾側から、台湾の企業から入った金額は十万ドルということのようでございまして、CSISの方からハーバードの方には四万ドルが資金提供されたと。ハーバード大学に関しては私も承知しておりますし、それは確認できるところでございます。
 ただ、そのことについてどうかという御質問でございますけれども、私自身はハーバード大学との関係で対応しているわけでございますから、大学がどのように資金を集めるのかということについて、私自身は関与したり関知する立場には基本的にはございません。この件はCSISから来たということをもちろん承知しております。
 御承知かと思いますけれども、アメリカの大学では、私は正確にはわかりませんけれども、三割、四割あるいは五割近くの活動資金を一般の企業ないし個人から集めていると聞いております。そのことにつきまして、私はハーバード大学が適正にCSISから四万ドルの資金の提供を受けたということを発表しているということについては納得しておりますし、私自身は大学との関係でしか対応を考える必要はないというふうに考えております。
山田(敏)委員 先日の委員会で、法務省刑事局長をお呼びしました。
 事後収賄という要件についてお伺いいたしました。現職にある方がある程度の便宜を図ってその退職後に何らかのお礼を受け取った場合には、そういう事後収賄という要件が成立するということでございます。
 今おっしゃっていることは、私はハーバード大学しか知らないと。しかし、今証拠をもって三者のお金の流れ、すなわち、秋山さんの留学費用はもとは台湾から出たということをすべての関係者が証拠をもって認めて、事実として明らかになったわけですね。そのときに、やはり秋山さんは相当な地位におられた方ですので、これは責任を感じていただくか、今、私が質問したことに対して何か御意見があると思うんですが、いかがですか。
秋山参考人 もし、私がハーバード大学で研究活動をするということ、あるいはその資金手当ての問題について私が何か台湾と話し合いをした、事前にあるいは事後に、そういうことであれば、それは私は責任があると思いますけれども、私は、事前も事後も、二〇〇〇年の二月以降も、四月訪問したときも、その後も、現在も、その問題について台湾側のどなたともお話をしたことはございません。したがって、私としては、これは私と大学との関係の問題というふうに整理をするのが適当だと思いますし、もし、御指摘のように、何か台湾においてこの資金の問題で問題があるということであれば、私の考えでは、それは台湾の問題ではないか、米国あるいはハーバード大学の問題ではないというふうに思います。
 それから、刑法のお話がございましたが、刑法の問題について一般的な議論をするのであれば別に私はこだわりはありませんけれども、先ほど申し上げましたように、この周辺事態対応、ガイドラインの見直しもそうでございますけれども、周辺事態対応、何度も御説明させていただきますけれども、それの経緯というのは、一九九四年の朝鮮半島の、北朝鮮の核開発疑惑から起こっているわけでございます。これは、当時の先生方あるいは役所あるいは日米の安保当局者、すべてが知っていることでございまして、そして、一九九五年の防衛大綱の見直しのときに国内で大議論をしてそれが入ったわけでございます。台湾海峡の緊張事態というのはその翌年の三月に起こっているわけでございますので、時系列的に見ても、どうして私がそういう刑法上の問題について質問をされ、答えなければいけないのかということは、私は全く理解できません。
山田(敏)委員 事後に、あるいは今、きょう、御自分の留学費用が台湾から出たものであるという事実、これはお知りになったわけですけれども、それについて……(発言する者あり)いや、推理じゃないですよ、ちゃんと認めているんですから。
瓦委員長 静粛に願います。
山田(敏)委員 それは最初から、秋山さんが留学したいというときに、大学側は、この資金はありません、どこかから何とかしてください、こういうふうに言われたわけですよね。だから、だれかが動いてこの資金をどこかから手に入れたんです。それは台湾から出たというのが、入出金伝票、それからすべての証拠書類で明らかになったわけですから、これは重要な問題だ、我が国の防衛政策に重要な問題だと思うんですが、その点については何か責任を感じられるんですか、どうですか。
秋山参考人 私は、そういう資金手当ての問題でこういう報道がなされ、報道ベースではございますけれども、そういう事実を私も知りまして、正直言って大変困惑いたしたのは事実でございますけれども、しかし、私自身は、ハーバード大学での研究生活は大学との関係でやったわけでございまして、それ以外のことについて私が関与する、何か意見を述べるという必要はないと考えます。
 それで、台湾問題も含めまして、北東情勢の安全保障の問題につきましては、私自身の責任で今後とも取り組んでまいりたいと考えております。
山田(敏)委員 防衛庁の最高責任者である事務次官、元事務次官の方が外国からお金を受け取ったという事実が明らかになって、それでも私は関係ありません、こういうことであれば、やはり防衛庁のモラルを厳しく問わなきゃいけない、こう思いますが、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
瓦委員長 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。きょうは、秋山参考人におかれましては、お忙しい中をどうもありがとうございました。
 時間に限りがありますので、端的にお伺いをさせていただきたいと思います。
 今回、米国に留学中に台湾の情報機関から十万ドルの資金提供を受けたのではないかと台湾側の内部文書によって報道がなされているということでありますけれども、今、有事法制の審議もされているこういった状況の中で、防衛庁のOBの方がそもそもこのような疑いを世間から持たれるということにつきましてどのようにお考えでしょうか。
秋山参考人 ことしの三月以降、こういう報道が香港、台北あるいはシンガポール等でなされまして、私も全く知らないことでございましたので、驚愕いたしました。その後の報道あるいはCSISの発表等々により、私も報道ベースではいろいろな事実を知ることができましたが、私としても、こういう結果になっているということについては非常に残念に思っております。
 ただ、私個人のことについて言えば、私は、あくまでもハーバード大学との関係において対応をするというふうに考えておりまして、本件問題についても、ハーバード大学が適正にアメリカの研究所から資金の提供を受けたということを発表しておりますので、それを了解したいと思っております。
樋高委員 感覚がちょっと理解できないんですけれども、ハーバード大学の側から宿舎ですとかオフィスの提供、研究活動経費、支援を受けたということはお認めになられているわけですけれども、その二年間でおおむね金額にして幾らぐらいの支援を受けたという認識を持っておいででしょうか。
秋山参考人 私が個人的にハーバード大学から金額的に明示された形でいただいたお金は、研究活動経費が七千数百ドルでございました、八千ドル弱でございます、その二年間でですね。それからあと、研究活動旅費、交通費につきまして、二年間総枠で五千ドルの範囲内ということで、したがいまして、年がら年じゅう学生と同じディスカウントチケットで走り回っておりましたけれども、それが金額的には私の承知しているものでございます。
 あと、オフィスに幾らお金がかかったのかということはちょっと私もよくわかりませんし、それから、住宅の方も大学の方で払っていたわけでございます。
 ただ、いずれにいたしましても、ハーバード大学の新聞での発表では、外部から全部で約七万ドルの資金の提供を受けたということを発表しておりまして、私もそれを承知しております。
樋高委員 大学がどのように資金の手当てをするのか関与する立場になかったというふうに説明なさっておいでなんですけれども、そもそも、支援を受けたそれだけの大金が、どこからお金が手当てされたのかということを疑問に思わなかったことは、ちょっと不自然なんじゃないかと思うのであります。
 財源について、その立場にあったかなかったかということではなくて、なぜお尋ねをしなかったのかということをお伺いしたいと思います。
秋山参考人 今問題になっておりますCSISにつきましては、かなり前の段階にハーバード大学の方で、ここの研究所から支援があるはずだという話は聞いておりまして、アメリカでも有数の大きな研究所でございましたので、私自身何らそういう資金の提供ソースのことについて懸念を持つということはございませんでした。
樋高委員 その戦略国際研究センター、CSIS太平洋フォーラム、ここを通じて秋山参考人へ要するに資金が提供されたということでありますけれども、では、そこのフォーラムが、先ほども話の中では、個人なり企業なりがみんな寄附をしたり、大学の方もそうじゃないかという話でありましたけれども、台湾から資金援助を受けているという認識は、このCSISに関してありましたでしょうか。
秋山参考人 全くございませんでした。
樋高委員 次に、明徳グループについて伺いたいと思いますけれども、日本や米国の政府関係者らが参加をして秘密協調グループを組織した、その中で、台湾運輸機械公司理事長を対日工作の責任者にしたと。彭栄次氏を、秋山参考人は現職のとき、面識はあられますでしょうか。
秋山参考人 私が多分防衛局長をやっていたときだったと思いますけれども、都内で開かれました安全保障関係のセミナーのパーティーで、東京では一回お目にかかった記憶がございます。
樋高委員 また、その彭栄次氏が、いわゆる年末の贈り物ということで、日本国内で配る目的で訪日をなさって、お歳暮や、台湾の食品や商品券を配ったと。それをいただいたことはございますか。
秋山参考人 ございません。
樋高委員 それでは、その彭栄次氏が、また、一席を設けた、宴会を設けたということ、その中で意見交換をしたということも言われておりますが、参考人は、そういった食事をいただいたりとか、そういう席に出たということはございませんでしょうか。
秋山参考人 二〇〇〇年四月に台湾を訪問いたしましたときに、李登輝総統への面会は彭栄次氏の紹介で、彭栄次氏に連れていってもらったわけでございます。私は、彭さんにごちそうになったかどうかというのは必ずしも明確に記憶がございませんけれども、一回、二回、食事はしたことはございますが、それは彭栄次さんが私にごちそうしてくれたかどうかは、ちょっとそこは正直言ってよくわかりません。どなたがホストだったのかということは、正式にちょっと今私よくわかりません。ただ、彭栄次さんに何か特別に宴席を設けてもらったという記憶は全くございません。
樋高委員 その彭栄次氏がもしかしたらホストである、要するにその宴席代を持ったということも、それは明確に否定はできないということですね。
秋山参考人 私は、二〇〇〇年に二回台湾に行っておりまして、十二月に、これは日本の国際問題研究所と台湾の大体似たような名前の研究所だったと思いますけれども、そこの研究所同士の対話の機会がありましたので参りました。そのときにも李登輝にお目にかかっておりまして、そのときはあるいは、私はよくわかりません、彭栄次さんがホストなのか、だれがホストなのか、ちょっとよくわかりませんけれども、先方の会食に参加したことが一回ございます。
樋高委員 以上で終わります。ありがとうございました。
瓦委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 あなたは、五月二十二日の当委員会で久間委員から質問をされまして、一九九八年十一月に防衛庁を辞しました、その直後から、ハーバード大学のジョセフ・ナイ博士、それからエズラ・ボーゲル博士からアメリカ行きを要請を受けましたと話しましたね。退官をされた何日後ぐらいですか、直後というのは。
秋山参考人 非常に雑駁な言い方かもしれませんけれども、退官後はちょっと、少し静かに家にしていたと記憶いたしますので、十二月に入ってからだと思います。
木島委員 あなたが九八年十一月に防衛庁事務次官を退官されました。それは、当時、防衛施設庁調達汚職事件があったので、当時の額賀福志郎防衛庁長官とともに、事務次官として職を辞したということですね。
秋山参考人 自己都合により辞職いたしました。
木島委員 表の形は自己都合だけれども、実質は引責をしたということではないんですか。
 次に移ります。
 あなたは、CSIS、戦略国際問題研究所から自分のハーバード大学客員研究員としての資金が出ているということを書いてある新聞を知っているとおっしゃられましたが、いつですか。
秋山参考人 私の記憶では、四月の初めのワシントン・ポストの記事だったと記憶いたします。
木島委員 それは、九九年四月ということですか。
秋山参考人 ことしでございます。
木島委員 そうすると、あなたがハーバード大学の客員研究員として渡ったのは九九年四月からでありますから、九九年四月からことしの四月まで、あなたは、自分のアメリカ在留にかかるすべての経費が一体どこから出ていたのか、全く知らなかったということなんですか。
秋山参考人 先ほども申し上げましたけれども、私がハーバード大学で研究活動する決断をいたしましたのは一九九九年の一月でございまして、そして、四月から二年三カ月、研究活動をいたしました。先ほど議論がございましたけれども、当時は、大学の方で後々資金集めをするという前提で、宿舎の提供あるいは研究室の提供あるいは研究活動経費の提供というものをいただいておりましたから、ハーバード大学からいただいているということについては、私は認識しておりました。
木島委員 次に移ります。
 ハーバード大学から金が出ているということを認識していた。じゃ、ハーバード大学にどこから金が出ていたということは全く認識していなかったということなんですか。あなたは、エズラ・ボーゲル博士やナイ博士から招請を受けたと言われました。この二人の博士は、一体どこからハーバード大学へあなたの客員研究員としての諸経費が出ているという話は全くしてくれなかったんですか。あなたも聞こうとしなかったんですか。
秋山参考人 先ほどの議論にも出ておりましたけれども、アジアセンターの所長をしておりましたエズラ・ボーゲルから、CSISがその資金の提供をしてくれるだろうという話は、私は聞いておりました。
木島委員 あなたは今、新聞で、CSISから金が出ているということを知っていると言いました。じゃ、今、CSISはなぜあなたのために四万ドルもの金を出してくれたと考えていますか。
秋山参考人 CSISの意図は私はわかりません。しかし、ハーバード大学とCSISは多分いろいろ関係があるんだろうと思いますし、私の理解では、アジアセンターの所長をやっておりましたエズラ・ボーゲルがいろいろと声をかけていてくれたんではないかというふうに理解しております。
木島委員 次の質問に移ります。
 あなたは、アメリカ滞在中、ハーバード大学側から出るあなたのための金のほかに、他のどこかから金が入ることはなかったですか。
秋山参考人 スカラーシップということで、ハーバード大学がだめだ、したがって、特別の資金集めをするという前提で行ったわけでございますけれども、率直に言って、その他のファンドあるいはファウンデーションの方からのスカラーシップを得るというのは、いろいろやりまして、情報収集いたしましたけれども、あるいは紹介してくれる人もいましたけれども、それは成功いたしませんでした。したがって、私は、研究活動をするための資金提供つまりスカラーシップは、物的供与も含めて、ハーバード大学からいただいたものだけでございました。
木島委員 私は、あなたがアメリカ滞在中、あなたの生活費その他のお金として、ほかにどこかから金は入っていないかと聞いたんですが、では聞きましょう。
 大阪証券取引所の関連会社、中央コンピューターサービス株式会社から、九九年二月からあなたがアメリカ滞在中一年二カ月にわたって、毎月三十三万三千三百三十三円の金、合計四百六十六万円余の金が入ったのではないですか。
秋山参考人 スカラーシップという意味での御質問かと思いまして先ほどそういう答弁をいたしたわけでございますけれども、私自身の生活につきましては、もちろん私も無収入ということでは生活をできませんので、プライベートにいろいろと個人的には努力をいたしました。そのうちの一つとしてその調査委託業務ということを受けたということはございます。
木島委員 ここに、平成十一年二月一日付の、あなたと中央コンピューターサービス株式会社代表取締役松原公一との間で締結されたと思われる経営管理に関する業務委託契約書があるんですが、承知していますね。
 当時大阪証券取引所には、あなたと一九六四年四月に大蔵省に同期入省し、九一年六月に、全く同じ時期に大蔵省を退官した、あなたの無二の友人である野口卓夫氏が副理事長として在職していましたね。
秋山参考人 野口卓夫君は私と同窓でございますし、当時大阪証券に勤務していたということはそのとおりだと思います。
木島委員 野口卓夫氏は、あなたが事実上責任をとって防衛事務次官を退職する、そしてアメリカに渡るということを知って、毎月三十三万円余の金を工面してくれたというのが事の真相じゃないんでしょうか。
秋山参考人 何か大変個人的なプライベートの問題について御質問を受けているように思いますけれども、私自身は、契約に基づきまして調査委託業務を行ったわけでございます。その調査契約に基づいて契約当事者が、一年ちょっとであったと思いますけれども、契約が実行されたということでございます。
木島委員 プライベートだとおっしゃいましたが、そうじゃないんです。その後、大阪証券取引所では、あなたへの四百六十六万円余の金の流れも含めて、不当に資金が使われたとして、調査委員会がつくられ、調査報告書がつくられている。そして、ことし四月には、野口卓夫氏は特別背任の容疑で告発されたということをあなたは知っているんじゃないですか。プライベートじゃないんじゃないんですか。
秋山参考人 私は詳しくは存じませんけれども、大阪証券取引所について、今御指摘のようないろいろな動きがあるということは私も承知しております。
 承知しておりますけれども、私に関して言うのであれば、その契約に基づいて、私は受託した調査業務をかなりの時間をとってやりましたし、そして、大阪証券取引所でこの問題、数年前に起こったときに、私の業務の内容も全部報告をされていると承知しております。
木島委員 時間ですから終わりますが、大蔵省の大臣官房審議官まで務め上げ、防衛庁事務次官まで上り詰めて、施設庁の調達事件で事実上責任をとらされた形となったあなたに、かつての大蔵省の筋や防衛庁の筋からいろいろな便宜が図られたというのが事の真相じゃないか、大阪証券取引所からの金も、台湾からの金もその一つなのではないかという疑念がぬぐえないということを私最後に指摘をして、質問を終わります。
瓦委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党・市民連合の今川正美です。
 きょうは、お忙しい中にわざわざお越しいただきまして、ありがとうございます。
 時間が限られておりますので早速お伺いをしたいと思うのですが、まず最初に、今各党の委員からも御質問があっておりますが、今回の件は、要約的に言いますと、いわゆる台湾の国家安全局が、李登輝総統時代から、台湾の安全保障を強化するための、日米の主要な政治家や官僚に対して工作を展開した。特に注目されるのが、我が国の場合に、対日工作の実行グループとして名前が挙がったいわゆる明徳グループというんですか、の活動であった。
 九八年九月二日付のいわゆる極機密文書によると、対米工作と並行して、台湾側は、自民党に大きな力を持っている元首相への接近を計画するだとか、あるいは、今回あなたにも疑いがかけられている問題として、米国ハーバード大学客員研究員だったあなたに対して、台湾運輸機械理事長であった彭栄次氏などが、米国のいわゆる戦略国際研究センター太平洋フォーラム経由で資金を寄附していたのではないかということが指摘されているわけですね。
 当時、参考人もおっしゃるように、日米の新ガイドラインにかかわる対日工作ということが指摘をされておりまして、それが、元総理大臣であるとか自衛隊、公安警察OBであるとか、あるいは当時の防衛官僚であるとかにいろいろな形をとって資金が提供されたのではないかというふうに言われているわけでありますが、そのことを全体としてどのように御認識をされているのか、お伺いしたいと思います。
秋山参考人 いろいろ報道されている内容につきまして、特に台湾海峡緊張事案の発生前後といいましょうか、あるいはそれ以降の台湾の工作に関する報道につきまして、私の知る限り、あるいは私の個人的な認識に基づきますと、すなわち、当時の北東アジアの安全保障情勢ですとか日米関係あるいは日台関係、対米関係というものを見てみますと、当時そういうことが本当に効果的に何か動いていたのかということについては、私はそんなことはなかったんじゃないかという気持ちを非常に持っております。
 特に、ガイドラインの見直しに関連して台湾海峡の問題が議論されているようでございますし、周辺事態の対応、つまり周辺事態の対象にどこが入るのかとか入らないのかという問題に関連いたしまして、もちろん台湾の関心が非常に後で強くなっていったというのは私も理解しておりますけれども、当時、周辺事態対応というのは、先ほど御説明いたしましたように、朝鮮半島問題から起こっている話でございますし、台湾海峡の緊張事案が起こる約半年前に国内で議論した話でございますので、私の感じとしては、そこに書いてあることが、非常に私の当時の認識、現状認識からは遠いところにあるという感じを持っております。
 細かいいろいろな具体的な話については、私は全く知りません。
今川委員 そこで、あなたは、昨年の五月二十八日、東京で開かれたグローバルフォーラムで、李登輝前総統の対中国政策に関しまして御発言なさったようでありますが、その概要をちょっと教えてください。
秋山参考人 申しわけありません。いろいろとたくさんのセミナーに出ておりまして、このグローバルセミナーでどういう発言をしたのかというのは、今にわかに、正確に思い出せません。
今川委員 それでは、今回の件に限らず、今、例えば日米関係それから米中関係、非常に大事なんですが、その中で、御存じのとおり、台湾というところは非常にデリケートなポジションにあると思うんですね。そこで、台湾の側からしますと、例えば、国家安全局などによる対米工作あるいは我が国への対日工作というロビー活動等が頻繁に重ねられている。こういう事態を、参考人としてはどのような御認識をお持ちでしょうか。
秋山参考人 これは全く私の個人的な感じでございますけれども、時期によって、今の御質問についての答えといいますか、日本の側の対応というのは違っていると思います。
 間違いなく台湾が、アメリカに対してもあるいは日本に対しても、いろいろな工作というか、つながりを持とうという動きがあるのは、これはそのとおりだと思いますけれども、少なくとも、今報道されているような時期に、日本の政策決定の過程で台湾のいろいろなそういう活動が何か影響したのかという点については、私の知る限りほとんど記憶にない、そういう状況でございます。
 ただ、現在どうなのかということにつきまして考えますと、台湾海峡緊張事案あるいは両岸問題というのは非常に大きな問題でございまして、日本にとっても、アメリカにとっても、あるいは日米中、もちろん台湾にとっても、大変大きな問題で、朝鮮半島の安全保障の問題と並んで非常に重要な安全保障の問題であると私は認識しております。
今川委員 ですから、現在もそうなんですけれども、当時におきましても、台湾側からしますと、いろいろな、アメリカの要人であるとか日本の政治家、官僚に働きかけをしていたんだろうなという推測をいたしますが、例えば参考人の場合も、防衛局長あるいは事務次官までお務めになった、日本の防衛政策を考える上では非常に重要な立場におられたということですから、台湾側からいろいろな形でアプローチをしてくるのは、ある面で、台湾側から見ますと当然なのかなというふうに思うんですね。
 そこで、参考人は九八年の十一月におやめになっておりますが、それから、お話によりますと、翌年一、二月にかけて、ハーバード大との間で留学をするための調整をされておったんだというお話のようでありますが、その前段階で、今私が申し上げたような意味合いにおいて、台湾側からの、どなたとは申しませんが、アプローチなど働きかけはなかったんでしょうか。
秋山参考人 台湾海峡問題あるいは台湾の安全保障の問題との絡みで、日米安保体制の再確認あるいは再定義、あるいは防衛大綱、あるいは周辺事態対応に関して何らかのアプローチがあったかと。少なくとも私が知る限り、全くなかったという認識でございます。
今川委員 もうほとんど時間がございませんが、いま一点お尋ねしたいのは、二年間ほどアメリカに行っておられた間、ケネディ・スクール、それとアジアセンターの客員研究員という立場であられたんですね。このケネディ・スクールなりアジアセンターにあなたが赴かれていった。そのケネディ・スクール、アジアセンターの客観的位置、あるいはそうしたスクールやセンターの目的などはどういうものであったんでしょうか。
秋山参考人 客員研究員として研究活動をしたわけでございますけれども、客員研究員というのは、千差万別といいますか、いろいろな方がおります。しかし、私はかなりシニアの方だったと思いますし、ほかの国の政府を退職した人、あるいは大臣を歴任した人、あるいは先ほど申し上げました台湾の唐飛という行政院長、首相でございますが、たしか半年でやめて、やはりハーバード大学の客員研究員になっている。同時に、学生、若い人、あるいはドクターコースに行くといったような人でやはり客員研究員あるいはビジティングフェローといったような形で来ておりますし、勉強する人、教える人、研究だけする人、いろいろなタイプの方がおります。したがって、私がどこに位置するのかということは、ちょっとにわかに申し上げられません。
 アジアセンターというのは、日本に限りませんで、中国その他、韓国、アジア全体の安全保障、もちろん経済、外交、そういった問題を取り扱うセンターでございます。
 ケネディ・スクールは、これはいろいろな部門がございますが、私が関心を持ったものは国際関係の部門でございます。
今川委員 時間が参りましたので、これで終わります。
瓦委員長 以上をもちまして秋山参考人に対する質疑は終了いたしました。
 秋山参考人には、御多用中のところ、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時三十六分散会
     ――――◇―――――
  〔本号(その一)参照〕
    ―――――――――――――
   派遣委員の宮城県における意見聴取に関する記録
一、期日
   平成十四年六月五日(水)
二、場所
   江陽グランドホテル
三、意見を聴取した問題
   安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出)、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、安全保障基本法案(東祥三君外一名提出)及び非常事態対処基本法案(東祥三君外一名提出)について
四、出席者
 (1) 派遣委員
      座長 久間 章生君
         金子 一義君   熊谷 市雄君
         伊藤 英成君   首藤 信彦君
         赤松 正雄君   中塚 一宏君
         木島日出夫君   山口わか子君
         井上 喜一君
 (2) 現地参加議員
         萩野 浩基君   鎌田さゆり君
 (3)意見陳述者
     宮城県議会議員     村井 嘉浩君
     守屋木材株式会社代表取
     締役社長        守屋 長光君
     東北学院大学教養学部教
     授           遠藤 恵子君
     日本郷友会宮城支部長  佐久間博信君
     会社役員        横田 匡人君
     東北大学名誉教授
     専修大学法学部教授   小田中聡樹君
     宮城県護憲平和センター
     理事
     黒川郡護憲平和センター
     理事長         菅原  傳君
     宮城大学看護学部教授  山本真千子君
 (4)その他の出席者
     内閣官房内閣審議官   村田 保史君
     内閣官房内閣参事官   徳地 秀士君
     防衛庁長官官房審議官  横山 文博君
     外務省総合外交政策局安
     全保障政策課長     冨田 浩司君
     ――――◇―――――
    午後一時開議
久間座長 これより会議を開きます。
 私は、衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会派遣委員団団長の久間章生でございます。
 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様御承知のとおり、当委員会では、内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案並びに東祥三君外一名提出、安全保障基本法案及び非常事態対処基本法案の審査を行っているところでございます。
 当委員会といたしましては、各案審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、御当地におきましてこのような会議を催しているところでございます。
 御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただき、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。
 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をお一人十分程度お述べいただきました後、委員から質疑を行うことになっております。なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
 まず、派遣委員は、自由民主党の金子一義君、熊谷市雄君、民主党・無所属クラブの伊藤英成君、首藤信彦君、公明党の赤松正雄君、自由党の中塚一宏君、日本共産党の木島日出夫君、社会民主党・市民連合の山口わか子君、保守党の井上喜一君、以上でございます。
 なお、現地参加議員といたしまして、自由民主党の萩野浩基君、民主党・無所属クラブの鎌田さゆり君が出席をされております。
 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。
 宮城県議会議員村井嘉浩君、守屋木材株式会社代表取締役社長守屋長光君、東北学院大学教養学部教授遠藤恵子君、日本郷友会宮城支部長佐久間博信君、会社役員横田匡人君、東北大学名誉教授・専修大学法学部教授小田中聡樹君、宮城県護憲平和センター理事・黒川郡護憲平和センター理事長菅原傳君、宮城大学看護学部教授山本真千子君、以上八名の方々でございます。
 それでは、村井嘉浩君から御意見をお述べいただきたいと存じます。
村井嘉浩君 村井と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、有事法制関連三法案に関する意見陳述の機会をお与えいただきましたことに、心から感謝を申し上げます。
 私は、この法案をぜひ今国会会期中に成立させていただきたいという立場で意見を述べさせていただきます。十分間という大変短い時間しか与えられておりませんので、細かい点には触れず、大きな視点で論じたいと思います。
 私は、現在地方議員ですが、その前は自衛官として一等陸尉まで国防の任についておりました。自衛隊を退職するきっかけになりましたのは、PKO法案の制定の際に、国会で極めて瑣末な議論をしていたことに大変強い憤りを感じたからでありました。政治に不満があるなら、堂々と政治を訴えることのできる立場に立ちたい、そういう思いで政治家を志したのであります。
 幸いなことに、私が自衛隊を退職してから社会情勢の変化があり、テロ特措法や周辺事態安全確保法に代表されるような法律の整備がきちっとできる環境が整ってまいりました。しかし、こうした法律は、その時点の国際情勢等の求めに応じてつくられたものであり、常に後手後手の法整備になった感は否めません。最も重大で深刻な事態である有事についての対応が、そのような後手に回った対応でよいと考える人はいないでしょう。
 幾ら情報化が進んで国と国との際が低くなり、ボーダーレス化が進んだとしても、また、EUのように通貨が統合されてほぼ自由に国をまたいで行き来できるようになったとしても、それぞれの国家が消滅しないのは、国家の最大の役割が国民の生命と財産を守るところにあり、それぞれの国民が自身の国を必要としているからであります。
 ところが、日本人は平和になれてしまい、この国によってどのように自分が守られているのかといった点に気がついていないのが現状であります。中には、今回の法律の審議を通して、一体どこの国が攻めてくるのかといった意見や、今なぜ有事法制なのかといった疑問を露呈する方までいると伺っております。
 かのクラウゼビッツは、戦争とは他の手段をもってする政治的交渉の遂行とその著書の中に書いております。つまり、話し合いで行う交渉もあれば、武力で行う交渉もまた一つの政治的手段であると論じているのです。人間が国家を形成し、運営している以上、武力で国家間の交渉を行おうとする国が将来あらわれることも十分視野に入れておかなければなりません。これは、イスラエルとパレスチナの紛争を見ても明らかでしょう。
 このように、国家の最大の役割が国民の生命と財産を守ることにあるなら、常に最悪のシナリオを想定しておくことが国家として当然の姿であり、このようなことは議論する以前の問題であります。実際、日本以外のどの先進国も、必ず国家緊急事態の条項はあります。なぜ今なのかではなく、むしろ、なぜ今までなかったのかを問題にすべきだと思います。
 今回の有事法制関連三法案、つまり、武力攻撃事態対処法案、安全保障会議設置法の改正案、自衛隊法等の改正案は、平たく言えば、戦争や危機になったとき、国民と地方公共団体、警察、消防、自衛隊など国家全体がどう連携していくかをあらかじめ定めたチームワークのルールであります。
 有事に際しては、その対応について自衛隊が中心的な役割を果たすことから、有事法制は自衛隊の行動に関する法制だけだというように受け取られがちであります。しかし、ほかにも、日米安保体制の関係から日本を防衛する米軍の行動の円滑化を確保することや、国民の生命財産を保護するための法制も有事の際には必要であり、これらの法制が相まって我が国の独立と安全を守ることができるわけであります。こうした法整備が未整備だと、我が国に対する武力攻撃が発生した場合においては、国民の生命や財産保護などの規定がないために、国民の基本的人権がむしろ侵されることになりはしないかと私は考えております。
 有事法制は、人権と平和を守るためのものであり、それを国家が個人の人権や権利を制限したり抑圧するといった対立概念でとらえるべきではないでしょう。事実、武力攻撃事態対処法案の第三条、基本理念の中で、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」と明記までされております。
 また、周辺諸国に対しても、日本は有事の際にはこういうプロセスでこのように武力を行使するということを明示することによって、逆にそういうとき以外は武力を使わないということを内外に宣言することになり、シビリアンコントロールのもとでの武力行使を明言している今回の法案は、周辺諸国に安心感を与えるものになると考えられます。
 最後に、地方議会に身を置く者として、有事法制における地方自治体への対応に関する私見を述べておきたいと思います。
 マスコミ等でこの点に関してはいろいろな意見が出されております。中には、武力攻撃事態対処法が、「国民の生命、身体若しくは財産の保護又は武力攻撃の排除に支障があり、特に必要と認める場合」、地方公共団体の長等に対する内閣総理大臣の指示権を認め、これに地方公共団体が従わず実施できないときは、内閣総理大臣みずから、または関係大臣を指揮して所要の措置を実施させることができるという点に言及し、これが地方自治体が主体的に判断し対応するという地方自治の基本的な仕組みそのものを否定するものだと強く非難しております。
 しかし、三法案のうち、自衛隊法等の改正を詳しく読んでみますと、自衛隊法の改正ですが、この中には、防衛出動時、自衛隊の任務遂行上特に必要だと認められる業務、例えば医療、土木建築工事、輸送などに都道府県知事が従わなかった場合でも、都道府県知事に対し罰則は与えられないことになっておりました。武力攻撃事態対処法案における地方公共団体の長等に対する内閣総理大臣の指示権や所要の措置は、国民の生命、身体、財産の保護に特に必要がある場合で、かつ地方公共団体が従わない場合、つまり常識では考えられないような場合に限定した極めてまれなケースだと考えるべきであります。
 今後二年間で具体的な権限の行使についての法律の整備がなされるようでありますが、宮城県民の生命財産を守るためにも、具体的な拘束力のある法律を整備していただきたいと強く願うものであります。
 以上、かいつまんで私の意見を述べさせていただきました。
 こうした重要な法律が継続審議になったり廃案になれば、それこそ世界の笑い物になってしまいます。国会議員の皆様は、日本の代表だという認識を持っていただき、三法案の早期制定に取り組んでいただきたいと強くお願いを申し上げ、私の意見陳述といたします。
 御清聴ありがとうございました。
久間座長 どうもありがとうございました。
 次に、守屋長光君にお願いをいたします。
守屋長光君 ただいま御紹介いただきました守屋と申します。いわゆる有事関連法制に関して意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。
 三十年近い前の話でございますが、ちょうど私が学生のとき、東ヨーロッパを当時の大学教授と一緒に旅をする機会がございました。あるとき、突然バスがとめられ、今思えばですが、ワルシャワ機構軍の演習にちょうどぶつかったことがございました。見渡す限り数百台の戦車が地平線のかなたから走ってきて、道路をとめられ、大変驚いたことがあります。生まれて初めて軍事力というものを目の前に見せつけられ、力というのはこういうものであるかということを初めてまざまざと感じさせられました。今思いますと、私が防衛、軍事力というものに関していろいろ考えたという原点であったなというふうに思っております。
 先ほど御紹介いただきましたとおり、私は木材会社を経営しております。皆様からいたしますと大変奇異に感じられるかもしれませんが、今、日本の木材会社は国内よりも海外の調達の割合が大変高くなっております。私どもは物の仕入れのために多くを海外に依存し、私自身も、八万キロ以上の飛行機の旅をすることが毎年あります。
 先進国の大都会へ行くこともございます。それから、いろいろへんぴな地域の国境地帯に行くことが多い。例えば、北朝鮮そして中国の国境、カンボジア、ラオスの国境、インドネシア、ボルネオの国境、そういったところに行くことがございます。また、以前、青年会議所の活動の一環として、多くの場所にNPOとして行ったことも多々ございました。そして、そのようなときに、先ほどの力というものをひしひしと感じさせられる場面が多々ありました。
 そのような中で、日本の自衛力、防衛ということを考えさせられたことがあり、また、多くの国民が国家に期待し求めることの一つに自分たちを守ってもらうということがあり、今回はこの機会に再度自分なりに、現在の防衛が有事の際にどのように自分たち国民を守ってくれるのかということを考えますと、何かが起きる前に、ぜひこの際過去に定めた法令の見直しをし、有事に現実的に対応でき、私どもを守っていただける法整備をしていただきたいというふうに思い、今回の有事関連三法案に対しては賛成の意見を表明させていただきます。
 私は、日本は法治国家であり、そのためには、自衛隊という国家機関を法の下に動く整備をしていただきたいというふうに思います。そのための関連法案というふうに思っております。
 最後になりますが、きょうお聞きいただいております国会議員の先生方にお願いでございます。
 もし、この法案が今国会で可決されれば、その後二年間の中でいわゆる第三分類の法整備をされるそうですが、十数年前に、沖縄にあります自衛隊の資料館で沖縄の戦史についてパノラマで説明をいただいたことがありました。生まれて初めて沖縄戦というものを深く理解したつもりでおります。その際に、どうしてこんなに沖縄の皆さんが自衛隊といったものに対してアレルギーを示すのかがよくわかりました。
 批判するわけではなくて、これはお願いなんですが、武力攻撃事態の予測、おそれの違いに対する言及だけではなく、国家権力そのものがこういう軍事力につながるものだというふうに思います。この力を持った機関のコントロールをしていただけるのは国会の先生だというふうに私は思っております。この機関のコントロールを我々の代表として考えていただき、旧軍の過ちの部分を繰り返さないような法の整備を国権の最高機関として考えて施行していただくことを国民の一人としてお願いし、意見陳述とさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
久間座長 ありがとうございました。
 次に、遠藤恵子君にお願いをいたします。
遠藤恵子君 遠藤でございます。よろしくお願いいたします。
 きょう意見を陳述させていただきますのは、一応東北学院大学教授ということでございますが、それよりは、一般の地方の住民、女性の住民として、幾つか気がついたこと、あるいは気になることを申し上げさせていただきたいと思っております。
 時間もございませんので、五点ほど意見を申し上げたいと思うんですが、その前に、まず前提として、私、今回このお役目をお引き受けしたのはつい最近なんですけれども、その際に、周りの人たちに、どうでしょうかと、気がつく限り多くの皆さんに聞いてみました。そうしたところ、ほとんど知らない人ばかりでございました。学生なんか、全然聞いたこともないというような人が大部分でございました。
 ということは、内閣の皆さんも国会議員の皆さんも、これを地域の人たちに知らせる努力を果たしてどのぐらいなさったのか。この法案を整備する意味、あるいは本当に必要なのかどうかということも含めて、その意味ですとか、それからどういう内容にしたらいいかという議論を国民の間に広く喚起してほしい、議論を喚起する努力をまずしていただきたいというふうに私は思っております。
 何となく、何か有事というのに関する法案が国会で議論されているようだけれどもどうなるんだろう、心配だ、不安だというようなのが大体の反応でございました。こういうことを前提にした上で、以下五点ほど申し上げたいと思います。
 一つは、まず、法律の整備の順序が逆じゃないのというのが第一印象でございました。
 というのは、これまでお二人の陳述人の方が申されましたとおり、私もこの点は賛成なんですけれども、国というものが持っている最も重要な機能、役割というのは、国民の基本的な人権を保障するということ、それから、その生命とか身体とか自由とか財産を保護するということ、これが最も重要な機能だということですね。それを緊急事態においてどう具体的に保護するのかということが、今回の法案で私が読ませていただいた範囲では見えておりません。
 どういうふうに保障するかという法をまず整備して、その手段としての法律がこちらになると思うんです。だから、発想が逆転しているなというのが印象なんですね。そういう方法論をまず議論しちゃって、それに縛られた形で、その範囲内で何かを考えるということではなくて、具体的な人権の保障、そういうことをまずどういうふうにやっていくかということを検討していただきたい。これは本末転倒の議論だなという感じがいたしております。
 とりわけ、緊急時において混乱が予想されるわけですけれども、そういうところで、子供の保護ですとか、それを具体的にどういうふうに方法として保護していくのかということ。それから、一応女性の立場として、こういう混乱のときに女性の基本的人権を確保するということ。この中には、性暴力の被害から保護するということも含まれております。そういうことも明確でないままに当該法案を検討するのは、考え方、発想が逆だなというふうに思っております。これが第一点です。
 第二点としましては、地域住民にとって、緊急事態というか大変な事態、あるいは人権が保障されないような事態というのは、必ずしも武力攻撃事態だけじゃないだろうというふうに思います。生命、身体、それから幸福追求の権利というのも憲法では保障されていますけれども、それが侵害されるのは、外部からの武力攻撃以外にもさまざまございます。テロですとか自然災害ですとか、多様なものがございます。
 どういうものがあるのかなということもあわせて十分議論していく必要があるだろう。それぞれによって対応の仕方や具体的な方法、避難の方法ですとか保護の方法ですとかが多少違ってくるわけですから、それらを検討するということも大きな課題だろう、こういうことを議論する前の段階の課題だろうというふうに思います。
 それから三点目としまして、これはマスコミなんかでも随分取り上げられておりますけれども、幾つか政府というか内閣の見解が示されたようですが、予測とおそれの違いがいまだにわかりにくいということ。
 予測の方が、「客観的に判断される云々」とあります。それから、おそれの方については「客観的に認められる」云々とあるのですが、客観的というのは一体だれが見て客観的か、客観性の担保をどうやってするのかということが余り問われていないように思います。
 どういう機関がこれは客観的であると判断するんでしょうか。地震予知連絡会議みたいなところが、そういう科学的な根拠をもってこれは客観的にこうですよということが、武力攻撃事態ということで果たして可能なのかどうか。内閣総理大臣が判断するのだったら、危なっかしくてしようがないというのが私の印象です。
 それから四番目としまして、緊急時に対応する日常的な予防方策を検討することの方がもっと重要だし、先決じゃないかというふうに思います。
 例えば、感染症対策。もしかしたら、武力攻撃事態というその武力で、生物化学兵器を使うという可能性もないわけではございませんね。感染症対策で、ワクチンなんかちゃんと本当に日ごろ備蓄しているんでしょうか。この間新聞報道で見ましたけれども、はしかに感染して亡くなる人数の方が副作用で亡くなる人数よりも多いというようなことがありましたし、どういう感染症があって、どういう対策、どういう備蓄がちゃんとあるのか。天然痘なんかも、もうWHOでは撲滅したという宣言がされていますけれども、そういうものが使われた場合どうするのか。その備蓄をしておくというようなこと、そういう感染症対策をするというようなことの方がよっぽど大事なんじゃないか。
 それから、避難場所を確保する。こちらの法案に避難誘導のようなことが書いてありますが、どこに避難するのか。避難の場所も確保しないで何を言っているんでしょうねというのが印象なんですね。
 それから、緊急時のインフラは通常時のインフラと違うでしょうから、そういうものも整備しておくとか、あるいは高齢者や病人の安全の確保をどうするかとか、検討すべきことは本当に山のようにあるんじゃないか。それらを検討する前に、ただ手続論みたいなことを先にやってしまうというのでは、本当に本末転倒だなという気がいたします。
 それから五番目、最後なんですが、私が一番不安に思っていることは、「国民の協力」という項目がございます。どういう協力なのか、非常に抽象的で、どの程度の協力なのか不明なために、地域住民としては非常に不安です。際限のない協力にずるずるいくというおそれはないのか。
 ここにいらっしゃる先生方あるいは今の方々は、もしかしたら冷静に判断してこういう程度ですよと思っているかもしれない。でも、法律ができちゃえば、ここにいらっしゃる先生方ですとか今の内閣がかわっても法律は生きるわけですから、今後どういう判断でその協力が際限のないものになるかということがわからない。それでは大変困るわけですから、ここまでですよ、例えば避難勧告が出たときに、それに従わないのではなくて一応避難はしましょうという程度の協力なのか、もっと深刻な協力なのか、そこら辺の線引きもきちっとしていただかないと、国民の協力と言われても困りますねというのが実感なんですね。
 それから、もし協力ができない、あるいは何らかの理由で協力しないという場合、一体国民はどういうふうになるんでしょうか。そこら辺は明記されておりません。この辺についても、非常に不安といいますか危惧を感じる次第です。
 以上のようなことで、私は、全くこの問題の専門家ではございませんで、一般の地域の住民の意見が大体こんなところだろう、私の考え方に近いんじゃないかということで意見を申し上げさせていただきました。
 以上です。
久間座長 ありがとうございました。
 次に、佐久間博信君にお願いいたします。
佐久間博信君 佐久間でございます。
 私は、有事法制に賛成、促進を願う立場で意見を述べさせていただきます。
 委員の先生のところにこういうふうなものが行っていると思います。(図面を示す)これを机の上に出されまして、お話を聞いていただきたいと思います。
 私は、前大戦に陸軍の将校として中国大陸と南方の前線に勤務、戦後、復員しまして、戦災の甚だしい日本の復興に機械関係に勤めてまいりました。現在、戦没者を弔うため、かつて日本の領土であった太平洋の島々、サイパン、テニアン島、樺太と沖縄における軍と国民の防衛戦闘、避難、相互協力などを研究しております。
 私は、大正十一年生まれで、現在八十歳です。当時は、第一次大戦後に国際連盟が発足、日本国民の中には、もう戦争はなくなったとの風潮がありました。現在も、その当時と同じような状況でございます。このため、日本は軍隊を大きく縮小し、兵器の近代化を延期、国民の安全対策も考えられなくなりました。
 この状態で昭和の大戦に突入いたしました。兵器のおくれは精神論で、準備の不足は神に祈りまして、私たちは祖国のために戦い、多くの友が倒れました。日本は島国、他国の侵略が少なく、国土防衛の経験が官民ともになく、危機感に欠け、防衛の陣地の構築も民間の安全対策もおくれました。
 昭和十九年七月、サイパン島の防衛は崩壊し玉砕、ここで初めて政府は国民の避難を法令化し、予算を組むことになりました。このとき、沖縄も、米軍の来襲が近いとして、沖縄の第三二軍が県知事に県民の避難を要望しました。
 県は、まず小学生と六十歳以上の人々を、軍を送ってきて帰る船で本土と台湾に避難させ、さらに、沖縄北部へ避難家屋の建設のため、本省に予算を申請しました。予算がつきましたのがその年の十二月、家ができましたのが二十年の一月から三月末で、米軍上陸の直前でした。このため、多くの住民が避難できず、軍と行動をともにし、無惨な結果となりました。沖縄戦戦没者は十八万八千百三十六名、このうち県民は、ひめゆり部隊等の軍属を含め十二万二千人、全戦没者の六一・五%、軍人よりも多かったわけでございます。
 当時も今も、有事における国民の安全維持の法規、法令が少なく、官公庁に権限移譲の規定と習慣が余りありません。
 昭和二十年五月、ドイツが降伏、日本政府は満州と樺太に、ソ連侵攻の予告と避難の必要を文書で通告しました。しかし、具体的な対策に欠け、いずれも一般国民が大きな被害を受けたのであります。
 大戦後、世界は、民間の戦争被害を防ぐため、一九四九年、昭和二十四年八月、ジュネーブ条約をつくり、日本も昭和二十八年加入、同年七月国会で承認されております。
 今ごらんいただいておりますのは条約で制定された国際記章で、避難所の標示や民間防衛職員の記章に使用しております。この記章は、追加議定書六十六条にあります。日本は、この一九七七年、昭和五十二年の協定にまだ参加しておりません。いわゆる戦争におきますときの避難所の標識、これは、日本語で書いても、来た方はわかりません。
 今審議されております有事法制は、日本と国民を守る入り口であります。早急に成立を進めていただき、国際的におくれている防衛の諸法規、特に民間防衛と言われる国民の安全に関する法規と組織を進めるようにお願いを申し上げ、私の説明といたします。
 この標識の参考のための民間防衛の資料は、先生方のお手元に行っております。お忙しいと思いますので、多分、重要なところには赤い線が引いてあります。先ほども申し上げましたように、万一の場合、果たしてこういう標識が日本にあるのか。実は、この標識はきのうつくりました。私がつくったわけでございます。ぜひ、万が一、本当に万が一のときのために、国民の安全を守れるように、有事法制の促進を心からお願いします。
 以上でございます。
久間座長 ありがとうございました。
 次に、横田匡人君にお願いをいたします。
横田匡人君 本日、こうした機会を与えていただきまして、大変光栄に思っております。新しい時代の責任世代の一人として、大変未熟ながら、このたびのいわゆる有事関連三法案並びに自由党提案の安全保障基本法案、同じく非常事態対処基本法案などについて、今国会で現在審議をされております国の危機管理、非常事態への対処について、私なりの意見を述べさせていただきます。
 まず、基本的な認識として、国の最も重要な責務は国民の生活の安全の確保であり、国民の生命と財産、自由と人権を守ることにあることは言うまでもなく、有事法制は、我が国の安全をどのように確保していくかを具体的に整備をする意味で当然必要な法制であると考えます。
 しかし、残念なことに、今までの国会では、長い間、いわゆる五五年体制のもと、戦争か平和か、また自衛隊は違憲か合憲かなどといった議論ばかりが延々と繰り返され、その結果、日本の安全保障はいつもあいまいな憲法解釈により、現在もなおその原則というものが確立されておりません。
 私は、まず初めに、今回国の有事を法制する場合、その最も基本として、今までどこかうやむやにしてきた憲法解釈を政府としてはっきり確定をし、安全保障の原則を確立させた上で有事法制の議論を行っていただきたいと切に願っております。
 昨年のアメリカでのテロ事件の際にも、後方支援だからいいんだという議論から、アメリカの自衛権に対して無原則に自衛隊を海外まで派遣してしまいました。この行動は、まさに集団的自衛権の行使であり、重大な誤りであったと考えます。
 そうした意味からも、自由党から提案がありました安全保障基本法案は、有事法制の大前提として大変重要な理念であり、安全保障の原則や自衛隊の行動原則を明確に表示することで、日本政府への理解と信頼を国内はもとより国際社会からもいただけるものと思います。
 何をおいても、国民からの信頼なしには成り立たないものと考えます。ここで、仮に今回もそうした議論をなおざりにしたまま、なし崩し的に有事法制をしいても、国民からは、政府や自衛隊の行動などが無原則に拡大することへのおそれを招き、法制に対する理解も、また協力もいただきにくくなるものと思います。
 次に、有事の概念のあり方、とらえ方として、政府が示した案では戦闘機や艦船を使っての武力攻撃事態を想定しておりますが、昨年九・一一、アメリカでの民間航空機を使用した大規模テロ攻撃など、今後予想される国の非常事態は、いかなる手段をもって引き起こされるか、考え得るすべての事態を想定しなければいけないと思います。
 さらに、戦闘行為や国家テロ以外にも、国民生活に大きな打撃を与え得る大規模自然災害、また、食糧・エネルギー危機、ネット機能を悪用した大規模なサイバーテロなどによる騒乱など、通常の既存の危機管理体制では対処できない事態をもこの際非常事態と認定するよう、有事の概念を再度、時間をかけてあらゆる角度から十分に検討をいただきたいと思います。
 また、そのようなさまざまな形で起こり得る非常事態時に、この法制の最大の目的である国民保護のためどのような具体的な対処が行われるか、明記されなければならないと考えます。
 国民保護のため、限定をする形で一時的に国民生活の一部を統制することが必要かと思われます。そうした項目が示されないままでは、むしろ、万が一起きてしまった非常事態に加え、連鎖的に国内に大パニックが発生しないとも言えないと考えるからです。
 また、非常事態によっては緊急対応を要することが予想されますが、政府案では、武力攻撃事態に至ったとき、基本方針を決定し対策本部を設置するとだけなっておりますが、どうか、有事が発生してから方針をつくり、決定をし、そのまた後に対策本部を設置といったぐあいに不要な時間をかけずに対処ができるよう、例えば、自由党案のように、内閣にあらかじめ常設の非常事態対処会議なるものを設置しておくことが望ましいと考えます。
 私たち一般の国民は、日々の生活や仕事に追われる毎日の中、国家の非常事態を考えることは大変重要なこととはどこかで認識しながらも、なかなか深く考え、かつまた話し合うといったところまでには至らない現状があろうかと思います。それゆえ、何とぞ国政を担う皆様に、真の国民の立場に立った国民保護のため、慎重な議論としっかりとした有事法制の整備を期待するものでございます。
 残念ながら、最近の報道を聞きますと、この法案を所管する省庁でもある防衛庁においての例の問題を初め、国民の不信を招く内容のものが政府には多過ぎると思います。一体どこを向いて政治をしているのかと言わざるを得ません。現在の内閣が発足の際、国民が与えた八割を超えた異常とも言えるあの高い支持率は、実は真に国民のための政治をやってくれという悲鳴だったのではないかと考えております。
 最後になりますが、国家国民にとって最も重要な課題とも言えるこの有事法制だけに、具体的で現実に即したしっかりとした法案をつくっていただき、一日も早く整備されることを心から念願をして、私の意見といたします。
 ありがとうございました。
久間座長 ありがとうございました。
 次に、小田中聡樹君にお願いをいたします。
小田中聡樹君 お配りいたしました意見陳述項目に沿って意見を述べたいと思います。
 現在、有事法案は、継続審議ないし廃案の方向に向かっているとも伝えられています。この重大な局面に当たって地方公聴会において意見陳述をすることが一定の意味を持つためには、委員の皆さんが法案及びその審議を白紙の状態に戻し、有事立法の要否、当否、その憲法適合性について根本的に検討し直す姿勢を持たれることが大前提として存在しなければなりません。この点を強く期待しながら、憲法、歴史、現実の三つの視点から、今回の有事立法についての意見を陳述したいと思います。
 まず、憲法の視点から指摘すべきことは、有事法案が武力主義的発想と本質とを持っているということであります。
 単なるおそれや予測の段階をも含む武力攻撃事態なるものを設定し、武力行使でもってこれに対応すべく挙国一致の体制づくりを図る有事法案は、武力攻撃には武力攻撃をという武力主義的発想と本質で貫かれていると思います。
 しかし、憲法は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」して、戦争と武力行使を永久に放棄し、戦力不保持と交戦権否認とを定め、武力主義的な対応をはっきりと否定しています。この点で、有事法案は既に違憲との批判を免れません。
 第二に指摘すべきは、有事法案が周辺事態法と相まって攻撃的な日米共同武力行使システムをつくり上げている点であります。
 有事法案は、単に我が国の領域内の一般国民に対し武力攻撃が現実に加えられ、被害が発生した場合だけではなくて、公海や他国の領域内で周辺事態法に基づき後方支援活動を展開する自衛隊に対して、武力攻撃が実行ないし予測される場合をも武力攻撃事態としてとらえ、これに日米が共同で武力対処するシステムを用意しているからであります。
 このシステムは、憲法が採用する集団的自衛権否認の法理、原則に反するものでありますが、それに加えて指摘すべきは、その攻撃的な性格であります。予測の段階で武力行使の態勢を組み、相手方の攻撃着手と同時に武力行使に移るのを認めることは、自衛隊に先制攻撃に出ることすら認めることに事実上は限りなく近づくからであります。
 しかも、おそれや予測についての客観的な判断基準は用意されていません。一方的な軍事情報に基づき、恣意的な判断が行われる危険が極めて大であります。
 第三に指摘すべきは、有事法案は首相に非常権限を集中して独裁的なシステムをつくり上げており、これによって議会制民主主義が形骸化することであります。
 特に問題なのは、有事法案により防衛出動の国会事前承認の原則性が崩され、首相が緊急の必要ありと認めさえすれば、国会の承認なしに自由に防衛出動できることであります。
 また、地方公共団体に対し、首相は指示権や直接的な実施権を持ちますが、これは地方自治の原則を無視するものであります。
 第四に指摘すべきは、有事法案の反人権性であります。
 自衛隊及び在日米軍の行動の円滑化、効率化、自由化のために、国民生活に関連する広い分野で市民的自由や権利を制限し、物資保管命令違反などに対する刑罰さえも用意し、国民に協力を強制しているのであります。
 しかも、法案は、今後この制限を拡大強化することをうたっております。そして、社会秩序の維持のための取り締まり強化さえももくろんでおります。その反人権性は明らかだと私は思います。
 次に、歴史の観点から述べたいと思います。
 私たちは、近い過去に、自衛の名のもとにアジア諸国に対する侵略戦争を行い、多数の民衆に対して大きな被害を与えると同時に、みずからも核兵器の被害をこうむるなど、大変悲惨、苛烈な戦争体験を持っております。
 この体験を通じて私たちが学んだ歴史の教訓の第一は、自衛戦争なるものの虚構性であります。第二は、挙国一致体制の凶暴なファシズム性と人権抑圧性であります。
 この歴史の教訓に立脚し、日本国憲法は、前に述べましたように、戦争放棄を定めました。そして、それとともに、国家緊急権に関する規定を置くことを拒むことによって、有事立法否定の原則と思想を表明したのであります。
 このような戦争体験と歴史の教訓、そして憲法の有事立法否定の原則と思想に深く学ぶとき、今回の有事法案の持つ危険な本質と実体は明らかであります。あしき歴史を絶対に繰り返してはなりません。
 次に、現実的観点から有事法案の問題点を考えてみたいと思います。
 第一に指摘すべきは、有事立法の前提となるべき武力攻撃発生の現実的リアリティーが欠如していることであります。
 その証拠に、一体どこの国がどのような意図、目的で我が国に武力攻撃を加えようとしているというのか、その蓋然性が果たしてどれほどあるのか、貴委員会の議事録をつぶさに読んでみても一向に明らかではありません。
 それと同時に、武力攻撃事態、とりわけ予測事態が日米の軍事戦略に基づいて意図的、作為的につくり出される現実的危険が大きいこと、有事立法は国民をこの危険に積極的に巻き込んでいくという恐るべき役割を果たすことを強く指摘したいと思います。
 第二に指摘すべきは、有事立法が、日本の軍事戦略や軍事行動に対する世界各国、とりわけアジア、中近東諸国の警戒心を高め、国際緊張を激化させる危険があるということであります。
 第三に指摘すべきは、常に有事に備える平時の有事化、非常時化で、これは、政治、外交のみならず、経済、労働、教育、文化を初めとするあらゆる生活分野に軍事の論理の浸透と横行を許して、国民を警戒、監視、統制、動員するシステムを拡大強化し、人権制限を日常的レベルでも体制化、システム化していくことであります。
 この状況は、人権と民主主義の危機というべきものであります。この危機的状況の一端をかいま見させているのが、昨今問題化している防衛庁個人情報リスト作成事件であります。
 このようにして有事立法がつくり出すのは、戦争の危険であり、人権と民主主義の危機であります。決して国民生活の平和と安全ではありません。そうだとすれば、私たちが選択すべきは有事立法ではありません。平和、民主、人権、福祉の憲法的理念に立脚する積極的な平和保障政策にこそ、現実的有効性と有用性があると私は考えるものであります。
 有事三法案は違憲であり、不要、有害であります。有事立法か憲法か、この歴史的な岐路に立ち、国会が大局的な見地に立って賢明に対処し、この有事法案を廃案とするよう強く望むものであります。
 以上です。
久間座長 ありがとうございました。
 次に、菅原傳君にお願いをいたします。
菅原傳君 私は、国会での有事法制をめぐる論戦を聞きながら、かつて五十数年前の戦争中のことを思い出し、嫌な時代がやってきたなと思っている一人であります。
 当時、私は国民学校の教師でありました。国策に沿って子供たちに忠君愛国を教え、日本の勝利を信じて頑張ろうと説きました。しかし、一九四五年八月十五日、日本政府はポツダム宣言を受諾して戦いに敗れました。何年かぶりでの明るい電灯の下での暮らし、日夜を問わず鳴り響くサイレンの警報もなく、静かな世界が戻り、ほっとした安堵感に浸ったことを覚えております。平和のありがたさを感じたことでありました。
 二学期が始まり登校してきた子供たちに、教師たちは敗戦を説明し、教えたことの矛盾を恥じ入り、わびなければなりませんでした。子供たちの心にはどう響いたのでしょうか。
 敗戦の結果残ったものは、広島、長崎の惨禍であり、B29の爆撃で瓦れきと化した多くの都市であり、親を失ったたくさんの孤児であり、餓死寸前の食糧難でありました。この状況は、現在のアフガンの爆撃で町を破壊され茫然としている人々の姿と二重写しに見えてまいります。戦争はすべてを破壊し、得るものは何一つありません。
 私たち教師は、敗戦の虚脱状態から立ち上がり、教育の中心に平和を据えて戦後の教育復興に取り組んでまいりました。教え子を再び戦場に送るまいと誓った教育でありました。時あたかも日本国憲法と教育基本法が相次いで制定され、新生日本の道しるべとして、大きな光と勇気を与えてくれました。
 今、有事法制の論議を聞きながら、時代の逆流を思わせる動きに、戦争はもう真っ平御免という気持ちと平和こそ宝という思いがますます強まっております。
 新しい日本国憲法のもと、日本は、戦後一度も戦争に巻き込まれることなく現在まで参りました。これはまさしく、憲法九条が大きな抑止力となってきたことを明らかにしております。
 私は、有事法制三法案に一通り目を通しましたが、疑問点がいっぱいあります。有事とは自衛隊用語では戦争のことを指しているそうですが、なぜ今戦争の三法案なのか、理解がなかなかできません。冷戦時代は当時のソ連が仮想敵国とされていましたが、ソ連崩壊後はそのようなものは存在しておりません。
 近隣諸国で、日本に武力攻撃をかけてくる国は一体あるのでしょうか。もしこのような事態が起こるとすれば、それは、アメリカが日本の周辺で軍事介入戦争を起こし、その反撃が出てくる場合が考えられます。これはアメリカとその国の有事事態であって、自衛隊が支援行動をすることは憲法で禁じている集団自衛権の発動となり、違反となります。国会の論議では、自衛隊とアメリカ軍との軍事共同行動が不明確であるというふうに思います。
 仮に日本国土内の戦闘となった場合、沖縄の地上戦のように、狭い国土での被害は甚大なものになると思います。私は米軍実弾演習場の王城寺原の近くに住んでおりますが、付近の住民の皆さんと話をしますと、やがて有事法制の関係で戦場になるのではないかというふうな心配の声も出始めております。
 今、米国の一国主義的突出が批判されております。各国は、米国の対テロ戦にこれ以上つき合うと大変なことになると気づき始めて、慎重になってきております。ところが、日本は一周おくれで世界を追いかけており、その感覚が問われております。米国に追随することなく、主権国家としてしっかりした是非の対応を示す必要があるのではないでしょうか。
 自衛隊法改正の百三条は、病院、土地、家屋の管理、医療、土木、輸送の協力と命令を打ち出しておりますけれども、憲法で保障されている国民の権利を奪うものであり、従わない場合に懲役や罰金を科すやり方は、戦前の国民精神総動員法を思わせる悪法と思います。
 このような国民に余りなじまない法案についての世論調査では、朝日の五月二十一日調査で、法案の内容を「あまり知らない」五一%、「全く知らない」一三%、合わせて六四%であります。共同通信五月一日調査で、今国会で「成立させるべきだ」は三九%、「成立させるべきではない」が四七%で、否定派が上回っております。さらに、共同通信社が行った各県知事のアンケートでも、半数以上の三十四人の知事が賛否を保留し、審議を慎重にと求めております。国会の審議時間も少なく、法案では国民の生命財産の保護については何ら触れられておりません。
 しかも、最近、防衛庁・自衛隊で、情報公開請求者の思想などを調べる組織ぐるみの事件が発覚をいたしました。加えて、福田官房長官が、憲法上は核兵器も保有できるとして、国是である非核三原則の見直しを言明し、広島、長崎を初め国内外から強い反発と批判が沸き起こっております。
 この二つの出来事は底流で有事法制と結びついているのではないかと国民の不安が深まっております。小泉首相は、備えあれば憂いなしと力説をされておりますけれども、軍事のための備えは、近隣諸国に脅威を与え、警戒感を募らせるばかりであります。
 二十世紀は戦争の時代でしたが、二十一世紀は人類平和の時代にしたいものであります。戦争のための有事法案を考えるよりも、いかにして戦争を起こさないかを考えることが二十一世紀の私たちの知恵ではないでしょうか。そのためには、まず、アジア近隣諸国と平和保障機構をつくり、平和、経済、文化などの交流を一層深めるとともに、国連の機能を強化して紛争解決を図るよう、日本政府もその役割を積極的に進めるべきだと考えます。
 政府は、改めて憲法九条の高い理念を大切にし、戦前の誤りを繰り返すことなく、世界に向けて勇気ある行動を展開してほしいと考えます。したがいまして、有事法制法案は速やかに撤回されるよう要望しまして、私の発言を終わります。
久間座長 ありがとうございました。
 次に、山本真千子君にお願いをいたします。
山本真千子君 私は、今回の三法案につきまして、一国民として、賛成の立場から意見を述べさせていただきます。
 まず初めに申し上げたいのは、一九九五年の阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件、九九年の茨城県の東海村の原子力臨界事故などさまざまな災害に対しまして自衛隊が大きな役割を果たしてきたことにより、国民の自衛隊に対する期待はますます大きくなっていると感じております。
 特に、九五年の地下鉄サリン事件では、この事件の被害者の初期治療を担当いたしました病院で実際の治療に当たった私の友人から聞いた話でありますが、国として強力なリーダーシップが欠如していた中で病院自身があれほどの対応ができたことは奇跡であり、偶然とも言えるとのことでした。あのような事態には、国としての強力なリーダーシップのもと、事に当たることが重要であると痛感したということでした。
 今回提出されております法律案は、災害よりもさらに悲惨な状況が考えられる有事におきまして、国の存亡をかけて、国の強いリーダーシップのもと、対応をとるための態勢を整えるものであります。このような仕組みがあって初めて、有事という事態に際して国全体としてきちんとした対応がとれるのだと考えております。したがいまして、私といたしましては、これらの法律案の整備は当然必要であると考えております。
 新聞などの報道によりますと、現在は、冷戦も終わって、世界的な規模の戦争が起こる可能性はないのではないかと言われています。しかし、一方で、昨年九月十一日には、私たちのだれもが想像もしなかったような事態が米国で発生し、たくさんのとうとい犠牲が払われました。また、新聞などでは、インド、パキスタンの領土問題など連日のように報道がなされており、冷戦が終わったといっても決して安心できるものではないと感じております。日本の周辺においても、たびたび出没する不審船のニュースなどを聞きますと、我々の周りにも危険はあるのだなということを感じております。
 まず、武力攻撃事態対処法案についてですが、まさに有事における我が国の対応に関する基本的なことを定めたものであり、これにより我が国の有事対応はしっかりとしたものになると考えられます。また、この法律は、有事への対処に関して、国民を保護するために必要となる法律などを二年以内を目標に整備することを定めております。細部にわたっては国民的な議論を十分に経てつくり上げていかなければならないことであり、全体像を示す今回の法律案を早急に成立させることが肝要かと思います。
 次に、自衛隊法などの改正法案についてですが、これは有事において国民の生命財産を守る自衛隊の行動を円滑にするためのものです。やはり、有事において私たちの生命財産を直接的に守ってくれるのはほかならぬ自衛隊なのでありますから、これが円滑に動けないようでは論外と言えます。ただし、自衛隊を円滑に動かすための法律についてもまだ今後整備する部分があると言われておりますので、この部分は滞りなく二年以内に整備し、国民の安全確保をより十分なものとしていただくこととし、法律案を早急に成立させることを望みます。
 最後に、安全保障会議設置法改正案についてですが、これは有事の安全保障会議の役割を明確化し強化するものであり、特に問題であるというふうには私は考えておりません。
 以上が今回国会に提出されております三つの法律案に対する私の意見であり、速やかな成立を望んでおります。
 私ども国民の生命と財産を守ることは政治の最低限の責務であり、有事や大地震などの自然災害から国民を守る危機管理に強い政府は、私どもの理想と言えます。敗戦以来、私自身は戦争を知らない子供たちの一人でありますが、我が国には有事法制が整備されておりませんので、有事に至った場合、国民の生命財産を守るためには超法規的な行動を余儀なくされる状態にあります。したがって、今回、武力攻撃事態対処法案等の法案が提出され、法治国家として当然の民主的手続を経て有事に対応できる態勢を築くに至ったことは喜ぶべきこととも思っております。
 多くの国民は、このような事態への対応に関する法制の必要性を認識しております。今後、国民の安全確保のための法制など個別法制の整備に当たっては、国民に十分な情報提供を行い、国民一人一人がみずから国を守るという意識を持てるよう配慮しながら法律の整備を行っていただくよう強く要望いたします。
 以上です。
久間座長 ありがとうございました。
 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
久間座長 これより委員からの質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子一義君。
金子(一)委員 自民党の金子一義でございます。
 きょうは、意見陳述人の皆様方、決して防衛関係専門家だとは思いませんけれども、にもかかわらず本当によく勉強されたと言ったら失礼でございますけれども、御理解をいただいて、そして、一方で幅広い皆様方からの御意見も伺っていただいた上できょうこうしていろいろな御意見をお述べいただいた、本当に頭が下がる思いでございます。
 自民党の中にも国防族という防衛をずうっとやっているグループもあるのでありますけれども、私は、こういう防衛を長くやっているわけでは決してありません。しかし、今回皆様方の御意見をお伺いして、本当に高いレベルでの御意見を伺わせていただくことができたと思って感謝しております。
 さて、村井さんからお話が出ました、なぜ今こういう有事法制かということでは、そんなことを言っているのじゃなくて、どうして今までこれができなかったんだということを問うべきだという御意見がまずありましたけれども、村井さんは自衛隊にもおられた経験がある。この点について、なぜできなかったのか。三矢研究等々、ずっと長い歴史がありましたね。何かちょっとポイントを一言おっしゃってください。
村井嘉浩君 やはり、五五年体制の政治体制がずっと続いてきた、それでこの問題がずっとタブー視されてきたというのが最大の理由だというふうに思います。
金子(一)委員 私たちも、政治家の責任として、これまでに議論ができなかった、しかし昨年のニューヨークのテロ、不審船、また東南アジア、アジアにおけるいろいろな事象、状況、こういうところからようやく議論ができるようになってきたという意味で、今法案を通させていただこうという状況になってきたと思っております。
 さっき、小田中さんだったでしょうか、廃案を前提にしてこの公聴会にあなた方は臨んでいるんだろうとちょっとおっしゃられたかと思うんですけれども、全くそうではありませんで、必ずこの法案を通していきたいという気持ちで公聴会に臨ませていただいておりますし、そのために皆様方からもいろいろな御意見を伺いたいし、そして私たちの思いも地方で、全国各地で伝えさせていただきたい、そういう気持ちで改めて私たちの姿勢を述べさせていただいたところであります。
 そこで、もう一つどうしても議論が出てきますのは、この法案は骨格である、したがって、遠藤さんからも御意見が出ました、国会でも出ております、国民の生命と財産を守るのが先ではないか、順序が逆ではないかと。
 これについて、いわば国の役割は防衛、地方自治体の役割というのは、今度は責務として、国民の生命財産を守っていく、避難をさせる、警報を鳴らすとかその他いっぱいありますけれども、この役割を担っていただく。このことというのが、ひょっとすると国民、住民の権利と自由というのをあるいは抑制する部分が出てくるかもしれない。しかしそこは、今遠藤さんは、そういうのがすべてわからないと、協力しろといったってできないとおっしゃられたんですが、これから具体的に法律の中で議論していくんです。
 つまり、避難が出てきます、そのときも法律をつくるんです。一つ一つ法律を丁寧につくっていって、そして、この場合にはあるいは協力、あるいは自由が制限される可能性がありますという部分が法律になってくるので、そのときに議論になってくると思うんですけれども、村井さんは今県議会の立場でもあるものですから、こういう部分がないと今度の法律は通すべきでないという御意見に対しての意見をぜひ伺わせてください。
村井嘉浩君 今の御質問に対するお答えですけれども、この武力攻撃事態対処法案につきましては、前半が基本法で、その後がプログラム法になっております。自由党の方から出ている法案も読ませていただきましたけれども、基本的には基本法の前半に非常に似たような内容でございました。
 法律というのは、まず最初に骨格をしっかりつくって、そこから枝葉をつけていくというのが大前提であります。いろいろな防衛関連の法律も、最初から制定されていたわけではなくて、逐次修正、改正を加えて成り立ってきたわけでありますので、まず骨格法をつくるというのはやはり何よりも最優先で、大前提だというふうに思います。時期的に三原防衛庁長官がこの問題の研究を始めてからもう二十五年以上たっているわけでございますので、この法律をこの国会で通すというのは全く理にかなったことだというふうに考えております。
 したがって、まず基本法を先に通して、その後二年ぐらいかけてしっかりとその他の法律を整備する、それが一番ベストだというふうに思います。
金子(一)委員 遠藤さんにも聞かないとフェアではないものですから、この点に関してぜひお願いいたします。
遠藤恵子君 今回の法律は、基本法とそれからプログラム法とおっしゃいましたけれども、どうもプログラムの方に非常に偏っているというふうに私には思えます。
 プログラムがあるのは、目的があるからプログラムがあるのであって、その目的が定まっていないのに、率直に言いますと、どんなふうに国民の権利を守るかということが決まっていないのに自衛隊員の給料の話が出てくるというのは、大変奇異な感じがいたします。
金子(一)委員 この法案で一番大事なのは、いかにシビリアンコントロールを守っていくか、ここがやはり一番大事な点だと思うんです。
 守屋さん、ポーランドの戦車、非常に膨大な軍備で、いかに国家権力の行使というのが怖いかというお話をされた中で、したがって武力の予測とかおそれとかの解釈をいかに客観的に容認していくかという仕組みが大事だよということをさっきお述べになられました。これについてもう少し何か御主張されたいことがあるのかなと思ってお伺いしていたんですが、いかがでしょうか。
守屋長光君 ちょっと生意気な言い方かもしれませんが、私は一経済人でして、余り上手な表現はできませんが、例えば、今いろいろな経済的な危機が言われている。この会社と取引をしたらどうなるかなというふうに思うことが多々あります。そのときに、私自身の考えですが、今同じような予測、おそれという分類をもししながらいくとしたら、それは私らの方がよくわかっています。これをほかの人たちがもし言ったとしても、どういう仕組みでそのところが崩壊していくのかなというところはやはりよくわかるのです。
 今回、勉強するために、いろいろ国会の方にお願いしたりして、資料をちょうだいしたり新聞の切り抜きとかいろいろなものを見させていただきました。討議されている中で、予測とおそれということに関しては随分言われています。
 ただ、僕も遠藤先生と同じで、周りの友人たちたくさんに聞いてみました。みんなが一番聞きたいのは、そのときにどうやって僕たちを守ってくれるのかということを一番論議してほしいんだ、それから、過去の過ちみたいに、要するに一部の暴走をどうやってとめるのかというところを一番聞いておきたいねというふうな話で、論議の中でぜひそういうことを僕ら国民にもわかるように示していただければなと、私自身もそのように思うということで、そういうふうな表現をさせていただきました。
 ありがとうございました。
金子(一)委員 重ねてちょっと。
 今まさに御指摘されたとおり、どうやって守ってくれるんだ、それから後段で、だれがそこを決断してくれるんだとおっしゃいましたね。つまり、武力攻撃という、守りに入るときの仕組みの問題と決定権者の問題なんですね。これを今この法案の中ではいわば事前承認という仕組みでやっているのでありますけれども、これについて、もし意見があればおっしゃっていただけませんか。
守屋長光君 第三分類というところが今後二年間の中で決められるというふうになりました。その決定権者、それ以降の第三分類にかかわる部分で、どのように保護していただけるかというところも実はやはりみんなが関心があるところでして、そこがどういうふうに決まっていくのかな、今からだと言われていますので、そこを今後の中でよく示していただきたい。
 それで、今の一番の御質問ですが、いわゆる制服組だけじゃなく、シビリアンコントロールとは言われます。昔も、天皇が最高権を持っていたはずです。しかし、結果的にはあのようになりました。そこを、コントロールできない形ではなく、本当にコントロールできる、そのようなところを決めていただけたらなというふうな、これは我々のお願いです。
金子(一)委員 わかりました。
 山本さん、ちょっと飛んで恐縮でございますけれども、今の点なんです。シビリアンコントロールの件なんですが、先ほどちょっと遠藤さんから、そういう客観性の担保、つまり、武力攻撃された、したがってそれに反撃しなければいけないという客観性の根拠が担保されていないじゃないか、だれが担保するんだ、地震予知会みたいなのが決めるのかというお話があった。内閣が決めるんじゃ危ういというお話があった。
 これは、私たちにとりましては、やはり国会というのは信頼されていないな、内閣というのも信頼されていないなという厳しい御意見としてあえて受けとめさせていただきますけれども、内閣が決めて、そしてそれを国会が承認をしていく。したがって、あくまでも制服、軍人さんがこうだと決めるのではなくて、国民の代表である我々が決めさせていただくという仕組みに今なっているのでありますが、これについて、今のシビリアンコントロールという観点との関係で、御意見がありましたらぜひ伺わせてください。
山本真千子君 私も専門家ではございませんので、明確な答えになるかどうかわかりませんが、遠藤先生のおっしゃられた担保というのが、こういった際には一体何であればいいのかということが今の私にとっては不明な点でございます。そして、その決定という段で、国会及び内閣の判断というものがもし信頼できなければ、では何をもってそれを遂行すればいいのかということは、ほかに探すすべがございませんので、そういった意味で、私自身は、基本理念というものを先にとにかく決めていただいて、そこから具体的な細部にわたる細則について検討していただきたいというふうに思っている次第です。
金子(一)委員 遠藤先生からも、この点についてのみちょっとお願いいたします。
遠藤恵子君 先ほど申し上げましたのは、これについての議論が非常に不足だという意味で申し上げました。ですから、小田中先生もおっしゃいましたように、場合によっては内閣に非常に権限が集中して暴走しないという保証はない、それをどういうふうに国会の方できちっとやっていくかということももっともっと議論が必要だ、そういうことでございます。
金子(一)委員 わかりました。
 横田さん、先ほど御意見を伺っておりましたけれども、横田さんの御意見でいきますと、集団的自衛権を認めるという前提での案になるということをサジェストしているように聞こえるんですよ。今、憲法九条の解釈は、自衛権の解釈で集団的自衛権は認めていない。自由党の案というのは、集団的自衛権を認めるという前提に立っているんです。
 私自身は、時の内閣がこういう大事なことを解釈でもって運用していくというのはかえって危険だ、国民の信頼を必ず失うと思っているんです。やるとすれば、憲法改正でやるべきだと思っているんです。
 したがいまして、今提起いただいているように、この問題とは別にして、こういう集団的自衛権まで認めていこうという議論が行われるようになったということは、今までは有事と同じようになかなか議論すらできなかった問題が、ようやく国民の間で議論する、国会でも議論することがタブーでなくなってきたという意味で、私自身は、賛成、反対は別といたしまして、大変いいことであると思っているのでありますが、その点について御意見をいただきたいと思います。
横田匡人君 私も、考え方としては、やはり憲法をきちんと変えて、そういった部分をきちんと明文化するのがいいと思います。
 ただ、今現在そういった状態にありませんので、全部の法案を見させていただいたときに、自由党が示した案は、具体的に自衛隊の行動をこういうふうにしましょう、こういう動き方をさせましょう、あるいは安全保障についてもこういう考え方でやりましょうというのをたしか三原則ぐらい項目を切って記してあったんですが、こういったきちんとした認識を有事法制を行う場合に同時に話し合いをしないと、結果的には、法律はできたけれども、本当に万が一の事態が起こったときにはまた憲法の解釈だ云々だということで、非常に我々国民にはわかりづらい形になってしまうような気がします。
金子(一)委員 冒頭に申し上げましたように、国民の皆様方に少しでも理解をいただいて、そして、今回のこの骨格法あるいは理念法でありますけれども、今国会中に何とか通していきたい、御理解をそのためにも少しでも得られるようにしていきたいということが我々の立場であります。
 最後に、村井陳述人、この法案が通らないと海外から非常にいろいろ疑問視されるよというお話がありました。それを含めて、今度の法案に対していろいろな意見が出ておりますけれども、もう一度ポイント、おっしゃりたいことをどうぞおっしゃってください。
村井嘉浩君 これだけ重要な法案で、かつ諸外国、先進国ですべて憲法等で規定をされているこの法律が、唯一日本だけがないわけです。これだけの重要な法案が、これだけ時間をかけて研究され、そして国会で議論されていて、それで廃案なりあるいは継続審議ということになれば、日本はやはりその程度の国なのだというふうに恐らく周りの諸外国は思うのではないかというふうに私は大変危惧しております。ぜひとも、何としてもこの国会内に通していただけるように、金子先生、よろしくお願いを申し上げます。
 以上です。
金子(一)委員 ありがとうございました。
久間座長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。
 次に、伊藤英成君。
伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。
 本日は、意見陳述者の皆さん方には、本当にお忙しいところ、しかも貴重な意見をそれぞれいただきまして、ありがとうございました。民主党からは、きょう、私とそれから向こうに座っております首藤委員と二人で質問させていただきますが、最初に私から少しお伺いしたいと思うのです。
 まず、守屋さんにお伺いしましょうか。
 先ほど、隣の遠藤さんから五点言われて、その前提としてと言われたことなんですが、いろいろな方に今回の法案について聞いてくださったそうですが、ほとんどの人が知らない、したがって、中身もほとんどの人がよくわからないというお話がありました。
 これは実は大変なことで、実は、今回の法案そのものも非常に難しい、複雑なつくり方をしていると私は思うんですね。多分、自衛隊法を物すごくしっかりとわかっている人でないとほとんどわからないという法律じゃないかと思うんですよ。だから、余計に、もしもこの法律案のことについて若干存在がわかったとしても、なかなか中身もよくわからない、こういうことだと思うのです。
 それで、守屋さんにお伺いするのですけれども、こういういわゆる有事法制を日本でちゃんとやるとしても、国民みんながよく理解したものでないと、コンセンサスの得られたものでないと本当に生きないわけですよね。そんな意味で、今の状況の中で、しっかり審議はしなきゃいけないんだけれども早くつくらなきゃいけない、そういうことはあるかもしれないんだけれども、急ぎ過ぎてはいけない。しっかりとそれなりの時間をかけて審議をしていかないと国民の理解を得られない、こういうふうに私なんかは思うのですが、守屋さんはどういうふうに思われるでしょうかということをお伺いしたいと思います。
守屋長光君 まず、たまたま私の周りは、有事法案という話をしたところ、わかるというメンバーがほとんどでした。
 ただ、今お聞きになられましたように、中身に関して詳しく知っているかというと、いろいろな法律が常に国会で審議され流されていきますが、例えば、ダイオキシンのときでさえも、ダイオキシンというのはみんな知っています。ですが、法案にかかわるもっと詳しいこととなると、みんなわかりません。いつも国民が国会で審議されていることを深く理解しているかというと、そこに興味がたくさんある方は自分で法案の中身に関してきっと勉強されるんだと思いますが、そうでなければうんとよくわかっているわけではないというふうに思います。
 それで、今お尋ねの一番のところで論議ということなんですが、大変難しいところがあります。ただ、一つ言えるのは、よく論議したことは後でみんな守る、だけれども、論議しないことは、えっ、そんなことがあったのということで通り過ぎてしまうところが確かにあります。
 私は、周りが知っていましたので、結構の人は有事法案というのが今あることは知っているんじゃないかなというふうに理解しています。ただ、法案の中身に関しては、いつもみんなが深くわかっているわけではなくて、理解は、どちらかというと、新聞に書かれたこと、テレビで報道されたことで、僕らにわかりやすく解釈されて流されることでもって初めてこれがどういうことなのかということを理解する方が多いのかなというふうに思います。
 今回の出てきているものは、私個人としては、一番の骨格で、まずこれが決まって、自衛隊というものが有事の際にどのようになるのかというのが決まって、その後いろいろな細かいところが決まっていくというふうに解釈しておりますので、私としては、ぜひ今決めた方がいいのではないかというふうに思っております。
 以上です。
伊藤(英)委員 遠藤さんと佐久間さんにちょっとお伺いしたいのですが、先ほど何人かの方から、今回の官房長官が非核三原則の見直しをするかのように報道されている問題が出たり、それから防衛庁の情報公開請求者のリストの問題が出たりしておりますね。
 実は、官房長官も防衛庁も今回のこの法案の提出の責任者なんです。そういう意味では非常に重大な問題だと私は思っているのですが、遠藤さん、佐久間さんは、本件についてはどういうふうに感じていらっしゃるでしょうか。御意見があれば伺いたいと思います。
遠藤恵子君 今回のこの法案ではなくて、これまでの二つの問題についてどう思うかという御質問ですよね。
 そういうことがあるから、今回のこの法案は本当に国民の基本的な人権を保障するのかどうか、それをきちっと保障するんだよということを決めないうちにこういうことを決めては本末転倒だということで御意見を申し上げました。ですから、いかに国民の基本的人権をきちっと保障していくかという議論、その法律を整備した上で、その上で必要ならばこういう法案も検討するということが順序だというふうに思います。
佐久間博信君 今回の場合は、二つの問題があると思います。一つは、確かに情報公開で問題があった、二つは、防衛庁内、いわゆる国を守る、ある程度の秘密を保たなきゃならぬ中のものが簡単に外に漏れている、この二つがやはり問題であると思うのです。
 でございますので、この二つをあわせて今後の対策を立てていくべきだ、こう思います。
伊藤(英)委員 ありがとうございました。
久間座長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 今回は、武力攻撃事態への対処に関する特別委員会の地方公聴会で、仙台で皆さんの御意見をお伺いしているのですが、こうした公聴会は、今回は四カ所でやることになっていますが、私は、全県でやってほしい、なかんずく離島などの島嶼部でやってほしいと思っております。
 というのは、前回の大戦の悲劇を見ると、島嶼部でこそ本当に深刻な被害が発生しているわけでありまして、そういう意味で、地方の意見をきっちり吸収するという意味でも、ぜひ日本全国でこの問題を取り上げていろいろな意見を吸収していきたいな、そういうふうに個人的には考えております。
 とは申せ、現実には時間が大変限られておりますので、私は、基本的には四人の方に御質問をさせていただいて、その後もし時間がありましたら、また次の方に質問させていただきたいと思っています。
 まず、村井陳述人に、自衛隊の体験がおありだということなので、自衛隊法あるいは自衛隊としての行動との関係というのを後でお聞きしたいと思います。
 そして、遠藤陳述人には、緊急事態法制におけるジェンダーの視点という点で御質問させていただきたいと思います。
 佐久間陳述人には、ジュネーブ協定の第一議定書の資料もつけていただきましたので、この最初のところにあります、非武装地帯、無防備都市宣言という言葉がございますが、その点について御質問させていただきたいと思っています。
 そして、小田中陳述人には、御専門の法律の分野だと思いますが、憲法との関係について質問させていただきたいと思っております。
 まず最初に、村井陳述人に御質問したいのですが、一部ちょっと事実認識という点でコメントがあるのですけれども、先ほどから、すべての国が国家緊急権とかそういう条項を持っておるというふうにおっしゃっているのですが、それは決してそうではございませんで、国によっては、もうそれは当たり前だからといって書いていない国もあれば、あるいは明確に書こうという国もあって、必ずしもすべての国が憲法、基本法の中にそれを明記しているわけではございません。中には憲法の書いていない国もございますので、その辺ちょっと誤解がないようにと思っております。
 村井陳述人は、自衛隊が自由にその力を発揮できるようにこうした法律が必要だという御意見を述べられていると思うのですが、しかし、これは国会でも議論になりましたが、自衛隊法の八十八条で、戦時においては自衛隊はその能力を十分に発揮できるような形になっております。
 したがって、なぜさらに有事法制というものが自衛隊の視点から必要となってくるのか。もちろん、自衛隊が緊急時に出動するときには追加的な報酬を払うとか、あるいは部隊移動中に免許が切れたらそれを自動延長できるとか、そういうような話はもちろんございますけれども、なぜ今自衛隊が総合的な有事法制を必要とするのか、その視点がございましたら、ぜひ御意見をいただきたいと思います。
村井嘉浩君 まず、御質問に答える前に、私、先ほどちょっと説明が足らなかったと思うのですが、必ずしも各国の憲法、基本法、そういうところに書いてあると言ったつもりはございませんで、そういうのがもちろん憲法にない国もありますが、そういうときには法律等でそういうのをちゃんと補足しているという意味で、先進国ではあると言わせていただきました。
 それで、御質問にお答えしますが、私はちょっと誤解を招いたかなと思うのですが、必ずしも自衛隊のためにとか自衛官が働きやすいようにするためにとかそういうつもりではありませんで、あくまでもこれは国家国民のために必要であるというような観点から私はお話をしたつもりであります。
 ただ、私が自衛隊にいたときに、よく言われますけれども、本当にここで敵が攻めてきたときに、果たして自分たちはどこで防御をすればいいんだろうかと。私は陸上自衛官だったものですから、どこで防御をすればいいんだろうか。実際、有事の際に、演習場の中と駐屯地と基地でなければ防御できないのではないか。民間のおうちを借りるにしても、一軒一軒承諾書をもらわなければできない、車が走っていて、敵の戦車はどんどんこちらに向かっているのに、こちらの戦車は赤信号になったらとまらなければいけない、このような国の状態で果たして我々は仕事ができるのだろうかというのは常々感じておりました。
 ちょっと時間もないのでこれ以上言えませんけれども、そのようなことを考えましても、このような法律は必要だというふうに思います。先生、よろしくお願いします。
首藤委員 それでは、遠藤陳述人にお聞きしたいと思うのですが、安全保障の分野では、諸国民は自分たちが体験した最後の戦争をもとに新しい戦争に備える、こういうふうによく言われるんですね。ですから、我々の知っている戦争は、すなわち太平洋戦争であり、沖縄戦であるわけなんですが、その視点から、最近起こっている民族紛争、例えばコソボ紛争とかさまざまな新しい紛争が起こっています。そうすると、そういうところで起こっている、例えば人道的介入とか、そういう戦争の中では今当たり前になっている概念が、実は我々は全然知らない概念なんですね。
 同じように、ジェンダーの視点もそうだと思うのですね。例えば、兵士の捕虜に関してはヘーグ陸戦協定というのがあって、兵士の捕虜はどう扱うか、それから四九年のジュネーブ協定、七七年の追加議定書などで、文民や一般市民の被害ということがもう既に対象となってきているわけですね。しかし、最近、例えば兵士の中においても女性もふえてきているとか、それから子供が少年兵などで紛争に巻き込まれていく、いろいろな視点が出てきていると思うのですね。
 特に、今の社会においては、ジェンダーの視点をどうやって緊急事態法制に盛り込むかだと思うのですが、今回の法制にはほとんど入っていないという御意見だと思うのですが、そういう認識でいいのか。また、どういう形でジェンダーの視点を緊急事態法制に盛り込んでいけばいいのか、ぜひ御意見をお伺いしたいと思います。
遠藤恵子君 今回の法制には、どう見てもジェンダーの視点は全く入っておりませんね。
 それで、単に生命、身体、財産――自由というのも書いてなかったように思うのですが、を保護するというふうになっているのですけれども、大体、一般論で聞くと、生命とか身体の中に含まれるんだというふうなことでくくられてしまうんですが、やはり、そうですときちんと守られていないというのはこれまでのほかの法律についても同じです。
 ですから、きちっとその辺は明記していく。性被害に対する保護ですとか、あるいは、例えば自衛隊の中で女性がどういう役割を果たして、男性とどういうふうに同等に扱われるべきかなんということも考えていくと、とても今回の国会でこの法律が成立するなんというのは無謀な話だと思うのですね。
 その辺は、私自身も、きちっとこういう問題とジェンダーとをどういうふうに絡めて検討していったらいいかというのはまだ十分に勉強しておりませんので、これは今後私どもの勉強の大きな課題にさせていただきたいと思います。
 それから、国会議員の先生方も、この法案に限らず、ジェンダーの視点からもいろいろな法案を検討していくということをぜひしていただきたいなというふうにお願いしたいと思います。
首藤委員 それでは、佐久間陳述人にお聞きしたいと思うのですが、先ほどこのマークを見せていただきまして、ありがとうございました。
 現在、実はこういうものは結構学生さんとか皆さんがインターネットに載せたりしていて、インターネットでダウンロードしてカラープリンターでコピーをとればいいのかななんて思ったりもするのですが、ここで佐久間陳述人がお示しになったジュネーブの追加議定書、これは、御存じのとおり、多くの先進国が入っております。実は北朝鮮も入っているんですが、我が国はまだ入っていないということで、この点に関しましては、国会での論議の中で福田官房長官が、早い時期に日本も加入するということを考えているということを明言されておられます。
 しかし、この追加議定書は、第二議定書もあるのですが、いろいろ新しい視点をたくさん含んでおりまして、現在のような、文民や市民が非常に被害を受けるというところから、自治体の非武装宣言、無防備都市宣言ということがジュネーブの追加議定書で規定されているわけですね。
 例えば、仙台が無防備都市を宣言するとか、そういうことも可能性としてはあると思うのですが、佐久間陳述人は、非武装とか無防備都市宣言とかいうものに関してはどのような御意見をお持ちでしょうか。
佐久間博信君 現在、国際法上の言葉では非武装地帯というのはありません。中立地帯と申します。
 中立地帯というのはジュネーブ条約で定められておりまして、それに基づいて中立地帯をつくって、それを相手国それからジュネーブのあれに連絡する、あらかじめやる場合はそういうふうになっております。そのときの標識が、これも決められていますように、先ほどお示ししました標識であり、また、避難所の標識もこれであります。
 と同時に、中立地帯でも避難所でも、万一避難した人たちに対して難民やその他が乱暴したりしないように、武装した兵隊を置くことになっております。ですから、自衛隊の人間もそのことができるようになっておりますし、現在のジュネーブ条約では、軍隊にもこのことを教えるように言われています。ですけれども、日本はジュネーブの追加協定をやっておりませんので、今、多分この標識は日本の避難所のどこにもないと思います。
 以上です。
首藤委員 最後に、ちょっと時間がなくなって申しわけございませんが、小田中陳述人にお聞きしたいのです。
 小田中陳述人は憲法との関係を言っておられるわけですが、憲法は、当然のことながら、緊急事態に関しては何も書いておりません。しかし、それは、国家緊急権を否定している、そのように陳述されましたけれども、否定しているのではなくて、ある意味で憲法外的な存在である。憲法にその箇条がない、したがって、緊急事態というのは憲法外的存在として考えて、新たな法論理を考える必要があるという意見がございますが、憲法との関係でどのようにお考えでしょうか。
小田中聡樹君 私は、国家緊急権というものは憲法が規定して初めて認められるというふうに理論的には考えております。
 そして、日本国憲法は、今御指摘のように、参議院の緊急集会以外の国家緊急についての規定を一切置いておりません。これは、単に規定していないという消極的な意味を持つのではなくて、日本国憲法は、第九条と相まって、あるいは前文とも相まって、緊急権というものをいわば積極的に否定したという考え方でつくられているのではないかという考え方でございます。
首藤委員 ありがとうございました。終わります。
久間座長 これにて首藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、赤松正雄君。
赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。
 本日は、八人の陳述人の皆さん、大変に貴重な御意見ありがとうございました。
 いわゆる有事法制、今、関連三法案の国会での審議が約四十二時間ほど行われてまいりましたけれども、私は、昭和二十年、一九四五年生まれの人間として、戦後、文字どおりこの憲法の中で生きてきた人間として、非常に感慨深いものがあります。
 今、八人の皆さんがそれぞれのお立場から独自の見解を述べられて、思いをさまざまにいたすところがあるんです。
 一つは、日本の憲法が、戦争放棄を憲法第九条第一項でうたい、第二項で戦力不保持、国の交戦権の否定ということを掲げているわけでありますけれども、この憲法九条をめぐって、いわゆる個別的な自衛権の存在まで否定していると見る方々と、そうじゃない、その部分は否定されていないんだという、いわば百八十度ある意味で違うような、そういう見解の違いを生んできた歴史がこの戦後の歴史だろうと思うんです。
 この法律をつくるということは、その分かれてきた見解に、個別的な自衛権をこの国の憲法が持っているということを認める、そういう流れであろう、私はそう思うんですね。そういう意味で、非常に画期的な意味を持つ法整備だろうと思うんです。
 そこで、私たちの立場は、要するに、いかにして戦争を防ぐか。これは、文字どおり、万が九千九百九十九までここに力が注がれるべきだろう、いかにして戦争を防ぐか。
 もう一つは、戦争が起こったときにいかにしてそれに対応するのか。ちょっと戯画化的な言い方をしておりますけれども、万が九千九百九十九の努力、当然これはするんだ、しかし、万が一起こったときにどう対応するのかということを常に用意しておかなきゃいけないだろうということで、実は、公明党もその辺のところの観点に立って、今回の有事法制三法案をじっくりとしっかりと議論した上で成立させたい、そんなふうに思っております。
 そんな中で、先ほど佐久間さんからお話がありました、今も首藤さんからもお話がありましたけれども、まず第一点、佐久間さんにお聞きしたいのは、国際人道法に基づく昭和二十四年、一九四九年のジュネーブ四条約、日本はこれには加盟したわけですが、その後、追加議定書には入っていない。
 いわばこれは、戦争をなくすというんじゃなくて、戦争を前提にして、起こったときの被害に対してどう対応するかということであろうと思うんですが、日本の国の中では全くこれについての議論が、国会でも、あるいは世の中全般でもこのことに関して、ごく一部には強い関心を持っておられる方はいらっしゃると思いますけれども、全体的にはほとんど関心が持たれていない。
 一方で、先ほどもお話がありましたけれども、世界全体を見渡すと、第一次大戦ですか、民間の人々が戦争に巻き込まれて、一般住民が亡くなっちゃうというケースは大体八%ぐらいだった。ところが、今、一九九〇年代になって、八五%ぐらい一般の住民が巻き込まれて亡くなるというケースがある、こういう指摘もあります。
 日本における国際人道法をめぐる議論というものが、全く人口に膾炙しないというか人々の口に上らない、その理由、原因というものをどう考えられますか。
佐久間博信君 私は、かつてアメリカに駐在していました。昨年の九月、あの事件がありました貿易センタービルにおったんですが、アメリカで貿易をやっておりますと、いわゆる信用調査、その国の信用あるいはそこの国の会社の信用というのを調べます。日本の大きな貿易会社もそうですが、戦争があった場合にその国の会社はどのぐらいの影響を受けるかということを必ず調べます。日本が戦争に巻き込まれるというアメリカのそのときの調査は、会社によって違いますが、三%から七%であったと思います。
 要するに、日本人は自分のところは戦がないと思っていますけれども、周りの国は、やはり日本では戦がある、あるいはそれに巻き込まれると。巻き込まれるというのも、一番大きいのはいわゆる通り抜ける戦争、日本は戦争をしなくても日本が戦場になるということはやはりアメリカでは言っておりました。やはりそういうことを考えれば、日本は、あらゆる場面を考えて、日本と日本国民の安全対策を考えるべきである、こう思います。
 以上です。
赤松(正)委員 小田中先生、それから菅原さんにお伺いいたします。
 お二人の御意見はまことに明快で、よくわかりました。その上で端的に、では、小田中先生は、先ほど私が申し上げました、万が一の可能性として戦争が起こったときに、どうこの国を守ると思われるのか、その点についてお聞きしたい。
 菅原陳述人に対しましては、先ほど申し上げましたように、おっしゃる意見には全く賛成です。つまり、ありとあらゆる手だてを尽くして平和外交を展開する、そのとおりなんです。そのとおりなんですが、その流れの中で、万が一起こったときへの対応というのはどう考えておられますか。簡単にお願いいたします。
小田中聡樹君 考えられる事態という万が一の事態がはっきりしなければ、どう対応するかということについての答えは出てこないんですね。
 ただ、基本的にとおっしゃるので私も基本的にお答えしますけれども、それはやはり非武装抵抗だと思います。それしかないと思います。基本ですよ。
菅原傳君 やはりいかにして戦争を起こさないかというのが最大の努力点だと思いますけれども、しかし、そういう中で、万が一の事態が起きた場合にどうするかという問題については、まず一つは、そういったような事態の発生する周りの状況があるのかどうかですね。この点を考えてみますと、まずは考えられないということが現在の周りの状況ではないかというふうに思います。
 そういう点で、今、自衛隊の存在がありますけれども、専守防衛ということで憲法上の解釈も出ているわけですが、やはりそういったような中でどのように国土を守るかということは考えていくべきではないかというふうに思いまして、新しい立法は特には必要はないのではないかというのが私の個人の意見です。
赤松(正)委員 終わります。
久間座長 これにて赤松君の質疑は終了いたしました。
 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚です。
 本日は、貴重な御意見をどうもありがとうございます。
 私は、政府提案が三つあって、それと、私どもも実は安全保障基本法と非常事態対処基本法という法律をつくっておりまして、私自身、我が党案の提案者という立場なんですけれども、この議論をするときに、やはり日本国憲法の議論というものは避けて通れないというふうに思うんですね。日本国憲法の三原則として、私は、国民主権と基本的人権の尊重と、あと国際協調主義、平和主義というものがあるんだろうというふうに考えておりまして、有事であろうがそうでない場合であろうが、これは政府の責務として最大限に尊重をしなきゃいかぬというふうに考えております。
 そういった観点から、政府案と、また、加えまして私どもが提案をしている安全保障基本法案、非常事態対処基本法案ということについてお伺いしたいというふうに思うんですが、政府の最大の責務が、今申し上げましたとおり、基本的人権を守るということで、特に生命、自由、財産に対する権利というのは、何があっても守らなきゃいかぬということだと思うんです。
 そういう意味で、政府案は武力攻撃事態ということだけを扱うための法律になっているわけですが、私は、非常事態というのは武力攻撃事態だけではないというふうに考えておりまして、例えば大規模災害とかテロ、あと例えば急性感染症みたいなのが急激に蔓延をするような事態であるとか、また、地球の裏側ですが、アルゼンチンで突発的な金融危機が起こったといったときにも、これはもう非常事態だというふうに思うんですね。
 そういう事態において基本的人権を守るということがやはり政府の最大の責務なんだろう。通常の危機管理体制であっては対応できないときに限って非常事態に対応する、そういう趣旨をもって実は私どもの案をつくり、今、政府の武力攻撃事態対処法の対案として審議をしているところであります。
 それで、日本国憲法の国民主権の原則ということから考えたときに、やはり国会の関与というものは絶対に外せないだろうというふうに思うんですね。
 遠藤陳述人にお伺いをいたしますが、先ほど来、武力攻撃事態、予測事態、おそれ事態というようなことで、どういうところが判断するんだというふうなお話がありました。私は、国権の最高機関として国民主権に基づいて全国民を代表して国会議員が国会を構成しているわけですから、もちろん今、政治への信頼が著しく低下をしておりますので、なかなかそこのところ、私どもも襟を正さなきゃいかぬとは思いますけれども、やはり国会の事前承認というのは絶対に原則だと思うんですね。
 それに加えまして、私どもは、総理が非常事態の布告というものを発することができるようにしておるんですが、ただ、これは、六十日ごとに国会へ報告して、国会で不承認の議決があったときには当該布告は廃止しなければならないというふうにしているわけです。
 先ほど、第三者機関というお話がございましたけれども、その第三者機関というものが国会をおいてかえ得るものかどうかということについて御意見はいかがでございましょうか。
遠藤恵子君 先ほど、類似の御質問がどなたかからございましてお返事したと思うんですが、第三者機関ということを私は申し上げなかったと思います。ただ、今の状況の中で簡単に決めてしまうということに非常に危惧を感じるから、これをもっと慎重に検討してほしいということでお答え申し上げたと思います。
 それから、このことについて、多分これは前段のところで申し上げたとおりなんですけれども、それから守屋さんの、周りの人は知っている、でもやはり中身は知らないというお話のとおり、大多数の国民が余りわからない。ですから、もっと国民の間に議論を喚起する努力を国会の皆さんもしていただきたいし、それから、こういう法案というのは非常に幅広くすべての国民に影響を及ぼすわけですから、国民の理解がないと実効性を持たないと思うんですね。そういう意味でも、ぜひ議論をもっと深めていただきたいということでお答えしたと思います。
中塚委員 次に、日本国憲法の平和主義という観点からちょっと伺いたいんですが、先ほど来、いわゆる有事法制というのができると戦争に巻き込まれるんじゃないかというふうな御懸念がありまして、そんなことがあってはいけないんですけれども、ただ私は、そういう意見が出るのもしようがないかなと思う部分があるんですね。
 というのも、やはり我が国は安全保障の基本原則というものをしっかりと確立しておりません。安全保障というのは、日本が攻撃をされたという場合だけではなく、国際貢献、国際協調ということも含むわけですけれども、その原則が確立をしていないということが、日本国内はもとより、周辺諸国あるいは全世界に向かって、日本というのは何をするのかわからぬ、えたいの知れないというふうな思いを抱かせることにつながっているんじゃないかというふうに考えておりまして、そういう意味からも、ここでひとつ安全保障の基本方針というものをきっちりと定める必要があるだろうというふうに考えております。
 原則というのは二つありまして、やはり急迫不正の侵害を受けた場合にはそれは排除しなければいけないということ、それはもう決めておくべきだというふうに思うんですが、それに加えて、国際貢献ということについても御意見を伺いたいというふうに思います。
 菅原陳述人にお伺いをしたいんですが、国際貢献ということについて、昨年、テロ対応の特別措置法が成立をいたしまして、国連の武力行使容認決議というのがなくても米軍の後方支援ができるというふうな法律が成立したわけですね。
 それで、十年前の湾岸戦争のときにはできないというふうに言っていたことが、十年間たって、何にも変わっていないにもかかわらず、急にできるようになった。また、いずれも後方支援だということで武力行使ではないという、世界標準から見ても到底理解ができないような理屈でもって今自衛隊が海外で活動をしているということで、今の政府・自民党のやっていることは私は支離滅裂だというふうに思っているんです。
 先ほど、国連機能の強化で紛争解決をするということを言われていたわけですが、国際協調主義、平和主義という考えにのっとって、私は、国際連合の決議をもって行われる活動には、軍事的なオペレーションであれそうでないであれ、積極的に参加するべきであるというふうに考えているんですけれども、そういったことを踏まえて、先ほどの国連機能強化ということについて、補足の御意見があればお聞かせいただけますか。
菅原傳君 現在の国連の機能というのはかなり形骸化している状況がありまして、国連がやろうと思うようなこともなかなか思うようにできない。これは、一つはやはりアメリカが非協力だということもありますし、それから、ある意味では、国連の動きをとめてしまうとか無視をするとか、結局アメリカの全く独自な戦略で進めているというところに大きな障害点と問題点があると思います。
 したがって、国連は各国の方々が集まって、いかに平和を守るかということで議論する場でもありますから、そういう意味では、やはり国連がもっとしっかりして、アメリカのそういったようなごり押しといいますか、そういうような問題もちょいちょい出ておりますけれども、そういうのもある程度抑えて、そして本当に国連が世界の各地の紛争などをみずからの力でとめるというふうな力を発揮しないと、一国主義的な状況がごり押しされて、要らざる紛争も起きてくるということもあると思います。
 そういう意味では、国連の機能を平和的にもっと機能できるように、日本政府も発言をどんどんやって、そして国際的な立場で国連の力が大きく各国に影響するというふうな状況をつくっていく必要があるのではないかというふうに思います。
中塚委員 ありがとうございます。
 最後に、横田陳述人に伺いますが、私どもは、国際協調の場合、日本の国権の発動たる戦争ではない、それを強調するために、自衛隊とは別組織の国際連合平和協力隊というものを創設するべきだということを考えておりまして、この基本法にも盛り込んであるんですが、御意見はいかがでしょうか。
横田匡人君 全く私も同感の考えを持っております。やはり国際社会で信頼を得るためには、まず日本の行動の原則がはっきりしていなければいけませんし、先ほど中塚先生が触れられましたように、国連の平和のための活動をきちんとやるんだということをそういった部隊を通じてきっちりとすることが大事かと思います。
久間座長 これにて中塚一宏君の質疑は終了いたしました。
 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
 八人の陳述人の皆さんには、大変貴重な御意見、ありがとうございました。私に与えられた時間はわずか十分ですから、全員の皆さんから御意見を聞く時間はありません。小田中先生からお話を聞きたいと思います。
 先ほど八人の皆さんから御意見を伺いまして、有事法制制定に賛成される皆さんには共通の前提がつくられているんではないか。それは、国内有事というのを想定していらっしゃる。万々が一に日本が攻められた場合、どう国民の命と財産を守るのか、一つの例では、第二次世界大戦の東京大空襲とか沖縄の地上戦、ああいう事態を想定して、ああいう事態が万々が一起きたらどうするのかという発想に立っておると思うんです。
 小田中陳述人は、有事立法と現実という御意見の中で、その根本のところに大きな疑義を呈されておるのではないか。武力攻撃発生の現実的リアリティーの欠如という言葉で表現されたと思うんです。単に現実的リアリティーが欠如しているだけではなくて、この法体制がつくられることによって、むしろ逆に、先生の言葉で言うと武力攻撃予測事態を作出する、むしろ戦争事態をつくり出すという現実的危険、二つ目には、国際緊張激化の危険、そして三つ目には、平時の有事化、国民監視統制動員システムの拡大強化と人権危機の深刻化というこの三つの危険性をリアリティーのあるものとして述べられたと思うんです。
 恐らく、先生のこの御意見は、最近つくられたPKO協力法とか周辺事態法とかそういう現行法体制、そして日本とアジアと世界の国際情勢に対する深い洞察、そしてもう一つは戦争と平和に対する基本的な認識、こういういろいろな視野から先生は洞察されているのではないかと思います。
 もう一問質問したい点がありますので、四、五分かけて、そういう認識に至っている背景、先生の御意見をもう少し詳しくお述べいただきたい。
小田中聡樹君 私は、今回陳述を命ぜられて、こんなに厚い議事録をつぶさに拝見いたしました。非常に奇異に思ったのは、まさに武力攻撃発生の現実的リアリティーというものについて、この委員会あるいはその背後にある政府の認識というものが一向に明らかでないという点ですね。これは本当に、つぶさに読んでみればみるほど、はっきりと私には浮かび上がってくるように見えたのです。
 先ほどの御質問にもありましたが、万が一のときどうするのだというお話からこの有事立法の話が始まるわけですが、しかし、万が一というその万が一が、本当に我々の人権を制限して、そして中央集権的なシステムをつくり上げて、いろいろなことを犠牲にしながら、つまり日本国憲法のもとで戦後五十何年間か日本国民が築き上げてきたものを一挙にいわば制限してでもそういうシステムをつくらなければならない、そういうリアリティーを感じることが私は全くできませんでした。
 しかし、他方、確かに国際紛争は各地域で発生しており、そしてまたアメリカにおいては同時テロといったような事件も起きている。その中で日本がどういう役割を果たすべきかという場合に、そういう紛争というものに対して、日本国憲法というものの持っている基本的な思想と政策、これは、私はこのレジュメでははっきりと書きませんでしたけれども、言ってみれば、平和を保障するという積極的な政策を政府に要求する、そういうものだと私は理解するんです。そういうものを踏まえてどう対処するかということを議論すべきではないかというふうに考えた次第であります。
 ところが、この委員会の議論を拝聴しておりますと、万が一というそこのところから出発し、現実にこの法案が成立した場合に起きてくる危険、それは何かといえば、先ほどちょっと私も陳述の中で申しましたように、周辺事態法に基づいて出動している自衛隊というものが紛争に巻き込まれ、そしてまた国際緊張の激化が生じていく、ますます激化していく。
 そういう中で日本が有事立法をつくるということは、むしろ日本を積極的にそういう紛争に巻き込んでいく。いわば周辺事態法と有事立法とがベルトがかけられて、二つのものが回転し出しますと、まさに日本の国民に平和と安全を保障するどころか、逆に危険に積極的に巻き込んでいく、そういう役割を有事立法は果たすのではないか。
 これはまさに現実的な危険なのです。万が一の議論ではないのですね。そこのところをやはり委員会の審議でも中心に据えられて、そしてまた私たち市民の側でも、そこのところの認識をきちんと持って、この法案を批判的に見ていくべきだろうというふうに考える次第です。
木島委員 それでは、もう一点。
 先生のレジュメでは、「平時の有事化」、それと「人権危機の深刻化」という言葉が使われております。これが何を言わんとしているのか、あと残された時間は三分足らずでありますが、わかりやすく御説明願います。
小田中聡樹君 備えあれば憂いなしというふうに今の首相もおっしゃっているわけですが、いわば平時から有事を考えるということだろうと思います。
 そのシステムをつくり上げていけばいくほど、実は平時が有事そのものになっていくのです。有事といいますのは、つまり有事に備えた体制というものが常に平時を支配する。ですから、例えばあらゆる事柄を、戦争事態といいますか非常事態というものを想定して組み立てていく。例えば、教育にせよあるいは文化にせよ、そういう一見戦争に関係のないような事柄でも、有事といいますか、そういう非常事態に備えたものをつぎ込んでいく。
 私自身も、実は国民学校で軍国少年教育を受けているわけですが、ああいうことがまさに有事の論理なんですね。それは、文化、教育を初めとして、さまざまなところにこれから用意されていくことになるでしょう。
 現に、例えば今回の法案の中にも、「社会秩序の維持」という項目を挙げております。これは、一たん有事があった場合には、例えば有事に対して批判的なデモとか言論といったようなものが非常に制限されていく、そういう事態を法案自体が考えているということになるわけです。
 しかし、それは単に有事のときだけというのではなくて、常にそういう動きというものが、あるいはその動きの芽を持った人たちの動きが監視され警戒されていくというシステム、これが実は有事立法の思想、基本、メカニズムなのです。それを端的にあらわしたのが、まさに今回の防衛庁による個人情報リスト、いわば防衛庁によって思想調査まがいのものが行われている、こういう事件ではないかというふうに思います。これがまさに平時の有事化ということの端的なあらわれではないかというふうに思います。
木島委員 ありがとうございます。
 ほかの皆さんに質問できなかったことをおわび申し上げまして、私の質問を終わります。
久間座長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。
 次に、山口わか子君。
山口(わ)委員 社会民主党の山口わか子でございます。
 きょうは、本当に長い時間、陳述人の皆様にはたくさんの御意見を聞かせていただいて、ありがとうございました。
 私の方からは、二、三御質問させていただきたいと思いますが、まず菅原さんにお聞きしたいと思います。先ほど大変すばらしい御意見を聞かせていただいて、ありがとうございました。
 今回の有事関連三法案ですが、有事ということを考えた場合に、これはテロとかそれから災害、そういうものでは決してない、つまり、これは戦争のできる国に日本を仕立て上げるという法案としか理解できないわけです。日本が国として武力による防衛の立場をとるということを世界じゅうに表明したことになるというふうに私は思っているわけです。例えば、日本がアメリカに追従してアメリカの軍事行動を後方支援するために国民が総動員される法律だろうと。
 なぜかといいますと、武力攻撃を受けたときだけでなくて、おそれとか予測ということが加わっていますから、このおそれとか予測をどこが判断するかといった場合に、私たち国民には全く見えない状況の中でこういうことが起こってくるだろうというふうに思っています。
 そんな中で、民間あるいは会社、いろいろな方が動員されていくだろうというふうに思うわけですが、菅原先生は戦争の体験がございますのでお聞きしたいと思いますけれども、今まで戦争が本当に国民を守ったのかどうか、防衛したのかどうかということが私は非常に心配になるわけです。
 例えば、第二次大戦のときには、確かに軍人や軍属は補償されました。いまだに年金をもらっていると思いますが、あのときに被害を受けた女性や子供やお年寄りは何の補償もございません。多くの皆さんが殺されましたけれども、それは当然国民として受忍するべきだという考えのもとに、一切補償はございませんでした。
 そして、今こんな平和なときにと思いますが、沖縄は今、日本の七五%を占めるという米軍基地が存在します。果たしてこの米軍基地が沖縄の県民を守ったかどうかということになるわけですが、調査によりますと、一九七二年、本土への復帰以来、沖縄で米兵たちが起こした事件、犯罪は五千件にも上ります。そのうち、凶悪犯が五百二十七件、粗暴犯が九百四十九件もあったわけです。米軍が本当に沖縄の国民を守ったということには決してならない。
 沖縄の皆さんは大変いろいろな事件で苦しめられているわけで、米軍基地があるから守る、例えば、日本には自衛隊の基地があるから守るということに本当になるのかどうか。特に、仙台には二つの自衛隊の基地がございます。有事になったときに、仙台にいる県民の皆さんは、本当に自衛隊の基地があるから守られるんだろうか。そのことを含めて、戦争中の体験を踏まえながらお答えをいただきたいと思います。
菅原傳君 おっしゃるとおり、戦争になって、軍隊と保護されるべき国民の状況、いわゆる地域住民の状況ですけれども、これは沖縄戦の中で明確に答えが出ているわけですね。沖縄戦の場合には、住民が入っているごうの中に日本軍が入っていって、そこから出ていけということで鉄砲玉の飛んでくるところに全部追い出されて、かなり多くの方々が犠牲になって亡くなったわけです。したがって、今でもそうですが、軍隊は住民を守らない、あるいは国民を守らない、沖縄でかつて戦争を経験した方々からは一様にその話が出てきております。
 今は近代戦ですから、戦争の被害は沖縄どころの被害ではないというふうに思います。しかも、非常に発達した兵器ですから、相手の兵隊さんが近くに攻めてくるということよりも、むしろミサイルのようなどこから飛んでくるかわからないような爆撃で重大な被害をこうむるというふうなことなども考えられるわけです。
 私は、戦時中、宮城県の北の方の栗原郡の細倉という鉱山におりまして、そこが爆撃をされました。鉛、亜鉛をつくる工場でありましたけれども、中心部に爆弾を落とされまして、全く機能停止になったわけです。その際に、子供たちを誘導して防空ごうに入れたり、いろいろさんざんな目に遭いました。もちろん軍隊は鉱山には来ませんでしたが、私たち自体が子供の生命を守るというふうなことを役割としてやらされたわけでございます。そういう意味では、戦争になればとにかく軍が守るというのは全く迷信のようなものでありまして、みずからの命はみずから守らなくてはいけないというふうな状態に追い込まれるわけでございます。
 私は、川崎に学徒動員で軍事の兵器をつくるために動員をされましたけれども、頭の上をアメリカのグラマン戦闘機が、敵の飛行士、パイロットの顔が見えるような状況まで低空飛行で飛んできまして、実弾を浴びたこともございます。
 そういうふうな状況だって、万が一こういったようなことが起きてくれば再現されないとは限らないわけでありまして、やはり全く予測のつかない状況に住民は追いやられるということでありますので、住民の生命とか財産の保護というようなことも先ほどから出ておりますけれども、実際に戦闘状況になったならば、果たしてどれほど保障されるのかということは全く頼りにならないという状況が起きてくるんではないかというふうなことで、私の経験から、それらの状況が余り当てにならないというふうな感じで聞いております。
山口(わ)委員 ありがとうございました。
 もう時間が余りないので山本さんにお伺いしたいと思いますが、お聞きするところ、看護大学にいらっしゃるということで、命を守る立場にあるお方だというふうに思うんですが、私は、戦争という行為は人の精神をおかしくしてしまう行為だというふうに思っています。
 私も実は看護職なものですからよくわかるのですが、ちょうど終戦の後、戦争から帰られた皆さんが随分精神状態が異常に陥って、最後は自殺なさる方が非常に多かったんですね。ですから、人間というのは、人を殺す場合も殺される場合も、その状態になったときは決して精神は正常ではいられないというふうに思うんですね。そのくらいやはり人間を痛めつけるものだというふうに思っています。
 今回の自衛隊法の百三条の改正では、医療法の適用除外ということが起こってまいります。つまり、私たちの自治体立病院ですとか日赤病院なんかは自衛隊が使うために野戦病院となってしまう、そこで医療を受けていた県民の皆さんは医療が受けられなくなるという、県民にとっては医療が保障されない事態も起こってくるというふうに思うんです。
 そういう意味から、この法案について看護職という立場から、もちろん看護職として野戦病院に動員されるということもございます、私たちがやりたくないこともさせられるという危険性も出てまいります。そうなったときに、この有事法制に対してどういうふうにお考えになりますか。
山本真千子君 今のお話は、実際に国内の、例えばこの地域が戦場と化するというような前提がまずおありになったかと思うんです。
 もしそういう状況になったりした場合に、例えば看護職、医師もそうですが、そういった医療職における人間が職務を強要されるというような表現を今お示しになられましたけれども、それを拒絶する権利はもちろんございますけれども、では、それを否定できるこの職種の人間が果たしているのだろうかという逆の考え方も私の方にはございます。そして、この法案が今の段階で承認された場合も、本当にそこまでの強制力があるのかというのは、私が読ませていただいた限りでは、ないと思っております。
山口(わ)委員 ありがとうございました。
久間座長 これにて山口君の質疑は終了いたしました。
 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 意見陳述者の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。
 時間に限りがありますので、私は、まず最初に四人の意見陳述者の方に同じ質問をいたしますので、お答えいただきたいのです。その四人は、村井、遠藤、佐久間、山本の各陳述者の皆さんでございます。その後、横田陳述者に対しましては別の質問をいたしたいと思います。
 有事というのは、通常は起こらないことでありますけれども、一たん起こればこれは本当に大変なことになりますので、それはそれなりの対応をしないといけない事態だと思うのであります。
 私は、有事が起こった場合に、国としまして、憲法、法律その他の制度の中で、できる限りの対応をしていくというのは当然のことだろうと思うんです。片や、国民の方も、有事に対してできるだけの協力をしていくというのは、これまた当然のことじゃないかと思うんですよね。つまり、国と国民との共同の関係といいますか、協力があって初めて有事の事態に有効に対処できるのではないかと思います。
 ところが、国民は片方にあって、片や国家と、対立したぐあいにとらえまして、守るのは国の当然の責任だ、国民はそれに対していろいろな意見を言う立場なんだ、こういうことで本当に有事に対応できるのか、私は本当に疑問に思うのです。
 したがいまして、有事の法制、今回の法律案、あるいはこれから二年以内につくられるであろう法律案につきましても、そういう国家と国民とができるだけ協力をして有事に対応するというような制度につくり上げていかないといけないんじゃないか、私はそう思うのです。こういう考え方につきまして、最初の四人の陳述者の方の御意見をお伺いいたしたいのです。
村井嘉浩君 先ほど、私の陳述の中で同じようなことをお話しいたしました。
 今回の有事法制関連三法案は、平たく言えば、戦争や危機になったとき、国民と地方公共団体、警察、消防、自衛隊など国家全体がどう連携していくのかをあらかじめ定めたチームワークのルールだ、私はそのように認識しております。
 したがって、国が、自衛隊がというのではなくて、国家みんなで力を合わせてこの国の危機を何とか救おうというふうに立ち上がるためのチームワークのルールづくりだというふうに思っておりますので、そういう意味では、この法律は非常に重要な法律だというふうに思っております。
 以上です。
遠藤恵子君 危機ですとか有事ですとか、それは一体何なのかというと、国民の生命とか自由とかが侵されるかもしれないということが有事だとか危機だとすれば、それが何らかの形で制限されるのでしたら、あるいは、何らかの形で制限ということがあり得るとしても、それが犠牲になるのでしたら、一体何なんでしょうか。
 有事というのは、あるいは危機というのは、何度も繰り返しますけれども、国民の安全、人権が保障されないという事態を有事というふうに私はとらえております。そうすると、もちろん国民自身も政府自身もそのために全力を挙げるということで協力するのは当然ですから、それは同時に、公共の福祉というのと意味が同じというふうに考えることもできるかと思います。
佐久間博信君 私の生まれた大正十一年から昭和の初めは本当に平和で、まさか戦が起こるとは思わなかった。ところが、我々が知らないところで、既に朝鮮の独立軍の方々がテロをやっておった。それが現在の満州事変の遠因の一つ。
 我々が平和だ、平和だと思っても、どこかここかで火が燃えていることがあります。それがもし来たときに、私は八十ですが、子供だの孫が安心して暮らせる日本、独立が守れる日本であるためには、やはり万一の準備はしておくべきだろうと。
 先ほど申しましたように、アメリカの信用調査は、三ないし八%、日本は何らか巻き込まれる可能性があると言っているわけでございます。我々がこの平和な空と緑を見て何もないんだということは、よそから見れば、あるかもしれぬと言われると思います。やはり有事ということは勉強しておくべきだ、準備をするべきだ、こう思います。
 以上です。
山本真千子君 今までいろいろなお話を伺っていて、有事というものの定義、それから武力攻撃発生の現実的リアリティーの欠如ということになりますと、今私が考えてきた論点とは何か少しずれてしまっているかなと私自身は感じています。
 それで、私自身は、最初から申し上げましたとおり、村井陳述人のおっしゃったように、ルールづくりというところが今論点の一番中心にございまして、そしてそれは、当然ながら、私たちの考える有事を想定したときには必要であるというふうに思っている次第です。
 そして、そのルールづくりは、国家というものもそうですけれども、人が集まる組織の中には必ずルールが必要で、ですから法もあるわけですけれども、その一番大切な基本的な理念部分をとりあえずまずつくらないとそれから先が動かないという部分を一番最優先して、私はきょうの意見を述べさせていただきました。
井上(喜)委員 ありがとうございました。
 それでは、横田陳述者、自由党の案があるのですが、私は詳しく検討したわけではありませんで、ざっと目を通した印象でありますが、幅広いいろいろなことが書いてあります。
 事有事、今の政府の提案いたしました法律案では武力攻撃事態ということでありますが、そういう事態の認識とか、その事態に対処する場合の手続等については、基本的に余り大きな差はないと私は思っています。
 ただ、一点非常に大きな違いがありますのは、自由党の案では、内閣総理大臣が布告をするとなっているんですね。布告というのは法律じゃありません、命令ですね、どういう形になるのか知りませんけれども。これで、ああせいこうせいと命令ができる、こういうことになっているんだけれども、かつてはこれは戒厳令と言ったものですよ。
 あなたのような若い世代にそういうようなことが受け入れられるのか。そういう意見があることは私はよく承知します。そういう対応の仕方があることもよく承知しますが、皆さん方のような若い世代に、布告というようなことで対応できるというようにお考えですか。その点、これは党の立場というのじゃなしに、皆さん方の世代を代表してお答えいただきたいと思うのです。
横田匡人君 これからの時代は、いろいろな議論があるときに、みんなで意見を出し合って、そしてよりよい意見をみんなで決めて、採択をして守っていくということが、当然コンセンサスを得るということで大事だと思います。
 しかし、こういった非常事態を想定した場合には、やはり事前に非常事態の基本法といいますか理念をきちんとつくっておいて、国のリーダーのもとに国民が、先ほどどなたかのお話にありましたが、チームワークでやることというのは、我々、世代を問わずに受け入れられると私は思います。
久間座長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。
 以上で委員からの質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。
 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。
 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして心より感謝申し上げ、御礼を申し上げます。
 これにて散会いたします。
    午後三時四十一分散会
    ―――――――――――――
   派遣委員の鳥取県における意見聴取に関する記録
一、期日
   平成十四年六月五日(水)
二、場所
   玉姫殿
三、意見を聴取した問題
   安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出)、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、安全保障基本法案(東祥三君外一名提出)及び非常事態対処基本法案(東祥三君外一名提出)について
四、出席者
 (1) 派遣委員
      座長 瓦   力君
         石破  茂君   大野 松茂君
         浜田 靖一君   永田 寿康君
         肥田美代子君   白保 台一君
         樋高  剛君   赤嶺 政賢君
         今川 正美君   宇田川芳雄君
 (2) 意見陳述者
      鳥取県知事       片山 善博君
      鳥取県西部地区日韓親善
      協会会長
      東京印刷株式会社取締役
      社長          杉原弘一郎君
      鳥取大学名誉教授    小倉 道雄君
      税理士         大西 龍夫君
      尾道市議会議員     井上 文伸君
      島根大学名誉教授    渡辺 久丸君
      全日本鉄道労働組合総連
      合会鳥取県協議会議長  生田 幸広君
 (3) その他の出席者
      内閣官房副長官補    大森 敬治君
      内閣官房内閣参事官   稲葉 一雄君
      防衛庁防衛局長     守屋 武昌君
      外務省大臣官房審議官  原田 親仁君
     ――――◇―――――
    午後二時三十二分開議
瓦座長 これより会議を開きます。
 私は、衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員長の瓦力でございます。
 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつ申し上げます。
 皆様御承知のとおり、当委員会では、内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案並びに東祥三君外一名提出、安全保障基本法案及び非常事態対処基本法案の審査を行っているところでございます。
 当委員会といたしましては、各案審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、御当地におきましてこのような会議を催しているところでございます。
 御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただき、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただくよう、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。
 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をお一人十分程度お述べいただきました後、委員から質疑を行うことになっております。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
 まず、派遣委員は、自由民主党の石破茂君、大野松茂君、浜田靖一君、民主党・無所属クラブの永田寿康君、肥田美代子君、公明党の白保台一君、自由党の樋高剛君、日本共産党の赤嶺政賢君、社会民主党・市民連合の今川正美君、無所属の宇田川芳雄君、以上でございます。
 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。
 鳥取県西部地区日韓親善協会会長・東京印刷株式会社取締役社長杉原弘一郎君、鳥取大学名誉教授小倉道雄君、税理士大西龍夫君、尾道市議会議員井上文伸君、島根大学名誉教授渡辺久丸君、全日本鉄道労働組合総連合会鳥取県協議会議長生田幸広君。
 なお、本日御意見をお述べいただくことになっております鳥取県知事片山善博君は、公務のため、後ほど御出席をいただくことになっております。
 以上七名の方々でございます。
 それでは、杉原弘一郎君から御意見をお述べいただきたいと存じます。
杉原弘一郎君 本日は、意見陳述の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 しかし、有事関連法案に対しまして大変不勉強でございまして、お恥ずかしい意見になることを初めにお断り申し上げます。私の感じていることを一市民として素直に申し上げたいと思います。
 まず、阪神大震災の際、自衛隊の出動に大変時間がかかり、しかもその際、道路が大渋滞の状況となったわけでありますが、救助活動に向かう自衛隊の車両が迅速に移動するための道交法関係の規定が不備であったため、スムーズに通行ができなかったこととか、神戸沖に米軍の軍艦を入港させ、その船上で治療すれば相当の人が助かったのではないかと聞いております。五千人以上の多くの人々が死亡されましたが、もし、こうした緊急事態に対応するための法制ができていれば、相当数の人が助かったかもしれません。
 世界の中で、憲法等の中に有事の規定のない国は珍しく、あるのが当たり前のことと聞いております。自分の国を愛する気持ち、そして、自分の国は自分の手で守る気概が希薄になってしまっております。自分の国を、そして自分の家族を自分で守る、ごく普通のことですらできない国になってしまっているのではないでしょうか。
 今回、こうして有事のことをお話しさせていただくことができる、あるいは、こうして審議することができるということは、普通のことであり、ごく当たり前のことであると思います。そして、日本もようやく普通の国の仲間入りができるんだと、今回の有事関連法案の成立を心から望んでおります。日本の常識は世界の非常識などと言われないようになりたいものであります。
 私は小さな企業を経営しております。社員が百名ほどおりますが、企業にとっても有事はございます。昭和四十年代、ある日突然、お得意先が倒産をいたしました。当時としては大変な金額のために、不法とは知りながら、夜、社員とともども、その商品を運び出したこともあります。私は、企業を守る上で、その商品の現金化も覚悟した時期もあります。
 このこととは少々話は違いますが、若さのせいでしょうか、企業を愛する気持ちも旺盛でした。これは、国を愛する気持ち、国を守る気概と通じるような気がいたします。今、デフレ不況で、企業も社員も大変な時期であります。私は、企業にとって、社員との間で交わした就業規則がありますが、この時代、お客様の御意向であれば正月でも深夜でも仕事をしよう、そしてお役に立とうと思っています。そうしなければ生きていかれないからであります。これは社員と交わした就業規則に反しますが、会社にとっての有事は、正月でも深夜でも仕事をしなければなりません。その際、社員との間に有事のルールをつくらなければなりません。国の場合は、特に、命にかかわることであります。必ず有事立法はなくてはならないものであると言えます。
 最近、いじめが問題になっておりますが、いじめやすいところがいじめられるということがあります。有事立法により、自分の国は自分で守る態勢を考え、すぐにいじめに対処できれば、いじめにくくなるということも考えられます。
 現在の法律では、相手から攻撃を受けて初めて動くとなれば、最初の攻撃が大きければ、もう私たちは立ち上がることすらできない事態になってしまいます。法律がなければ、その際に、超法規的行動をとらざるを得ないということになりますが、法治国家でそういうことがあってはならないことであります。きちんとした有事立法をつくってこそ、普通の国であると言えます。法律がなければ、有事に際しての行動指針がないために統制がとれず、後悔することになります。これが整備されておれば、有事の際の抑止力にもなると私は思います。そうすれば、自衛隊の行動がどこまでやれるのか明示され、国民を守る上での法整備は、かえって国民の安心感にもつながることになります。
 日本が戦争に負けて、今日まで経済の繁栄を享受してまいりましたが、一方で、国を愛する心、国を守る心が欠落した特殊な国になってしまいました。小泉総理もおっしゃられていますように、備えあれば憂いなし、平和なときにこそ、我が国の平和と独立、国民の生命財産を守るため、国民一人一人が真剣に考えなければならないのではないでしょうか。
 今回政府が提出している法案には、国民の保護に関する法制が何も定められていない等の批判がされておりますが、全体が明らかにならなければ何も決められないということはないと思います。今回の法案は、有事における対応の基本的な考え方、全体の設計図をつくり、今後二年以内を目標に、国民全体で、自分で自分の国を守るためにはどうしていかなければいけないのか、真剣に議論をするための土台をつくるものであり、大変に意味のあることだと思います。
 ぜひとも、今回の有事関連法案の速やかな成立をお願いしたいと考えていますが、最後に、今後、国民の保護のための法制など個別の法整備に当たっては、国民に対して十分な情報提供を行い、国民一人一人がみずから国を守るという意識を持って、積極的に議論に参加できるように配慮しながら作業を進めていただきたいものと考えております。そして、一日も早く有事関連法案成立のための第一歩をしるしていただきますよう一市民として心からお願い申し上げまして、私の意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。
瓦座長 ありがとうございました。
 次に、小倉道雄君にお願いいたします。
小倉道雄君 本日は、本委員会の御要請によりまして、いわゆる有事法案についての意見を開陳いたします。
 私は、昭和時代の初期に生まれまして、日本帝国主義の最盛期に教育を受けましたが、日本国民を悲惨のどん底に陥れ、全国土を焼け野原としてついに壊滅した、かの軍閥の末路も目の当たりにしてまいりました。その後は、新生日本の平和憲法の大切さを身にしみて感じながら、これまで暮らしてまいりました。
 このように、我が国は、二十世紀の前半は戦争に明け暮れしましたが、後半は焦土から立ち上がりまして、敗戦時のどん底経済からの復興、再建をなし遂げてきたのであります。しかしながら、さきの大戦後の処理はいまだに完結していないのが実情だと思います。例えば、沖縄の米軍基地の問題、また、たびたび問題になります靖国神社の問題、さらには従軍慰安婦の問題、またロシアとの平和条約の締結の問題など、半世紀を経た現在、まだ尾を引きずっているのが実情でございます。
 このような時点において、仮想敵国を想定したような有事法案につきましては、その根拠が薄いと考えます。例えば、これまで政府から提出されております周辺事態法や自衛隊による米軍の後方支援などの動きには、さきの太平洋戦争の体験からすると、いささかながら危険なものを感じるわけでございます。
 私の居住地である米子市及びその周辺地域には、陸上自衛隊、航空自衛隊、海上保安庁、さらにレーダー基地といった施設が集積しておりまして、軍事的には特異な拠点であると考えられます。したがって、それだけ余計に、平和に対して私たちが考えなければならないこと、そして、今何が起きているのか知っておく必要があると強く感じておる次第です。
 私は、個人的には、職業として長らく医育機関におきまして医学教育に携わってまいりましたが、その中で、命の重さがはがき一枚に例えられた時代の体験から、命の尊厳について深く考える機会も多くありました。このことは、いわゆる緊急事態とも深いかかわりを持っております。
 以上のことを踏まえまして、今回の有事法案について、幾つかの問題点を中心にして、以下に意見を述べたいと思います。
 まず第一に、国等の究極の役割は、国民、住民の生命、身体、財産を保護することにあると考えます。したがって、緊急事態法制の整備におきましては、それらに対する被害の防止、軽減や被害者の保護などといった、国民生活の保護を直接の目的とした事項を優先して進められるべきでありまして、これが法制定の必要かつ十分条件であると考えます。
 ところが、今回の有事法制案では、国民の保護法制の部分が先送りされております。しかも、それは、将来整備される保証はどこにもありません。国民の立場からすれば、これはとんでもないことでありまして、この部分があわせて提案されていないことには議論のしようがないと思います。
 第二に、このたび有事法制が提案された背景としては、昨年の米国でのテロ事件や日本近海での不審船事件があったかもしれません。しかし、今回提出された法案は、冷戦時代に想定されたような大規模な武力侵攻に対処する仕組みになっております。テロや不審船にきちんと対処できる仕組みを整備するのは理解できますが、その点が欠落しているのなら、何のために今ここで急いで論議するのか、理解に苦しむところであります。
 もし、現在、我が国が何らかの武力侵攻を受ける脅威にさらされているという現実があるのなら、その情報を国民に伝えて、有事法制への理解を得るように努力しなければならないと思います。国民は現在、何らそのような情報を知らされておりません。そのことがない以上、有事法制についての論議への入り口がありません。
 第三に、法案によれば、日本への武力攻撃事態について、「発生した事態」「おそれのある場合」「予測されるに至った事態」の三つに分けられておりますが、「予測されるに至った事態」は、周辺事態と重なる可能性があります。つまり、日本周辺での米国と他国との緊張が、直ちに日本の有事として拡大してとらえられる可能性があると思います。
 このように、武力攻撃事態の概念があいまいであるということは問題であると思います。各事態の定義が明確でなければ、到底、法律として役割を果たし得ないのではないでしょうか。武力侵攻の脅威について、いたずらに幻におびえているということになり、国民に対する説得力はありません。
 第四番目に、法案によりますと、武力攻撃事態への対処基本方針では、総理大臣が国会に承認を求めることになっております。これは、シビリアンコントロールの原則からすれば当然のことであります。ところが、事態の終了に関しましては、国会が関与する仕組みがありません。このことは大きな問題であると考えます。
 つまり、だれが見ても既に事態は終息していると考えられる時点においても、総理大臣の一存でいつまでもその事態の処理が終了していないこととしておけるわけであります。この法案の裏にどのような意図が隠されているか、全く理解できません。
 五番目に、有事法制は憲法上、疑義があるのではないかという指摘が国民の中に多数存在することは事実であります。憲法上にはそのよって立つべき明確な根拠がないので、それは当然であると思います。こうした国の根幹にかかわる重要な課題は、時間をかけて国民にわかりやすい形で審議するのが民主主義におけるあるべき姿だと考えます。
 政府・与党は、一たん単独で公聴会を設定し、評判が悪いと見るやこれを撤回されましたが、本来なら、十分な時間をかけて世論に問い、すべての疑問が解消され、国民の理解が得られるまで徹底的に審議すべき問題であると思います。この点について見ても、このたびの法案審議には疑義を抱かざるを得ないわけであります。
 以上、幾つかの点について指摘してまいりましたが、今回の有事法案にはさまざまな問題が多いので、私は、全面的に反対の意向を表明いたします。自衛隊の超法規的行動を規制するのであれば、一たん法案を撤回され、指摘した点を踏まえて、国民の合意を得ながら、もう一度練り直していただきたいと思います。
 平和こそ、世界各国が外交交渉や外交努力によって守っていくべき人類の貴重な究極の価値であると思います。今日の政府、外務省の現状を見るとき、この視点が最も欠落しているように思います。
 ついでながら、さきに福田官房長官が、我が国が国是としておる非核三原則の見直しに言及され、その政治感覚には耳を疑ったわけであります。
 私は、個人的にも、広島で原爆による惨状を身をもってつぶさに体験し、これこそ人類を破滅に導く凶器であると信じております。世界で唯一の原爆被害国として、予防外交の推進役として各国の先頭に立つことこそ、二十一世紀における我が国の進むべき道であると確信いたします。
 さらにまた、防衛庁では、法にのっとり情報公開を求めた国民についてのブラックリストが作成され、広く流布していた事実が発覚しております。歴史は繰り返し、またも、かつてやってきた道を歩むのかという思いがあります。
 以上でございます。
瓦座長 ありがとうございました。
 次に、大西龍夫君にお願いいたします。
大西龍夫君 税理士をやっております大西でございます。
 私は、御承知のとおり、多くのタックスペイヤーの方々と接しながら、税金はしっかりとお支払いくださいということをいつもお伝えしております。その反面、やはりどのようにその税金が使われていくのかということが大きな問題でございます。新しい法案ができまして、その法案に伴い、また多くの支出がなされる場合においては、その支出が本当に有意義なものであるかどうかということは非常に大きな問題と考えております。
 まず最初に、私の基本的なスタンスを述べさせていただきます。
 皆さん、もちろん、この全世界が平和で共存できれば、すばらしい世界でございます。これには深い愛情と理性が必要でございます。しかし、人間が、この非常にわがままな生き物がそこに到達するためには、まだ当分時間がかかるのではないかと考えております。私の好きな一節で、正義の戦争より不正義の平和という言葉がございますけれども、非常に情緒的で感傷的な言葉であるなと、一方では感じております。
 世界の争い事をなくしていくための第一歩としましては、貧困と差別を排除することでございます。しかし現在、この貧困と差別を排除していくことすら、どれだけの年数がかかるのか、はかり知れない状態でございます。三十年なのか五十年なのか百年なのか、全くまだ予想もつきません。その間、一定期間においては、いろいろな手法を使って、その時期その時期に対応しながら生きていかざるを得ないという状況もございます。
 もちろん、理想的な国家モデルとして、非武装中立を掲げて国家としてのモデルをつくっていくというものもございますけれども、現在、私が感じる中では、日本国国民自体もそのパワーを十分には持ち得ないし、また、行政能力もそれほどの能力を持っていないと感じております。
 残念ですが、仮に我が国がそのような理想国家を旗印といたしましても、過去の実績等々を見ますと、他国から非常にそのことを称賛され、敬意の念で見ていただけるようには感じておりません。それは、過去の実績の積み重ねの中でそのような国づくりをすれば、やはり他の国々の方々もそのように見ていただけましょうけれども、御承知のとおり、約百数十年間の間に、我が国はいろいろなことをやってまいりました。その積み重ねは必ず、他国の方の記憶の中に残っております。その中で非常にきれいな形で言葉を発したところで、実際にその形をつくったところで、信じていただけるかどうかはよくわかりません。
 また、私なりの憲法九条の解釈でございますけれども、簡単に言えば、侵略戦争はいたしません、国際紛争には武力を用いません、また、世界大戦のような大戦には参戦いたしませんということでございます。
 ただ、この憲法の制定時、私どもの国は焼け野原でございました。GHQが入ってまいりまして、彼らは、言葉が適切かどうかはわかりませんけれども、非常にしつけのよい、ペット的な理想的な国をつくろうというふうな考え方をしたのではなかろうかと思っています。憲法自体、非常に理想的な憲法でございます。ただ、これは、しつけのよい中で成立するものであろうと考えております。
 もちろん現在、私ども、日米安保条約がございます。私なりのこの解釈というのは、日米安保条約に関しては、非常に腕のいい用心棒を雇っているという感覚でございます。いわゆる基地のスペースを提供し、相当の金銭的支払いも行っておる、また、地域住民への理不尽な行為も相当我慢しながら、地位協定というわけのわからぬ協定を無理やりのみ込んでおります。食事と寝床をつけて、我々の税金から相当の用心棒料を払っておるなというふうな形で考えております。もちろん、いろいろなわがままも聞きながら、かつ、人的な犠牲もその中にございます。
 私は、このアメリカ軍と、例えば我が国が共同作戦を展開するなどとは一切考えたくございません。ただ、仮に全世界が認めるような国連軍があるのであれば、それは一つの形として、考えの中に入ってくるのではないかと思っております。ただし、いろいろなペイをしているから国の守りはすべて他国任せでよいんじゃないかというのでは、一個の独立した国として、なかなか認知されないのではないかと考えております。
 ここで、具体的に、今回の武力攻撃事態法等の件でお話をさせていただきます。
 先ほどもお話がございましたように、「武力攻撃」「武力攻撃のおそれ」「武力攻撃が予測されるに至った事態」と、非常にわかりにくい言葉、三つの表現がございます。
 この中で一つ大きな問題は、私どもの国家の能力としまして、情報収集力、その情報の分析力、また現状認識の過程で判断力がしっかりとあるかないかということでございます。さきの大戦におきましても、我が国はこの幾つかの要素を非常に甘く考え、奈落の底へ落ちていったわけでございます。
 今回、中谷防衛庁長官の委員会答弁からの一部抜粋でお話をさせていただきます。
 「その時々の国際情勢」という表現を長官はされております。非常に難しいことでございます。先ほども申しましたように、その時々の国際情勢を的確につかむためには非常にいろいろな、機器、設備、人材、経験、資金、ネットワークというものが必要でございます。この各要素で私どもの日本国が十分に足りているとは考えておりません。
 例えば、今現在私どもの国内にございます地上レーダーは、ほぼ陳腐化しておるはずです。ステルスの偵察機、そのような立派な偵察機も持っておりません。偵察衛星もございません。情報収集の専門家もおりません。実績のある国際情勢分析機関というものも我が国にはございません。また、各国大使館勤務の外務省の方々でございますけれども、先般もございましたように、このような事態を想定しながら各地区において活動されておるとは考えられません。すべてないない尽くしでございます。このような中で、的確な判断ができ得るかということが大きな問題だと考えております。先ほどの三つの表現がございましたけれども、それぞれの表現の中でこのすべてのものがそろっていかないと、適切な判断ができるわけがございません。
 またこの後に、中谷長官は、「相手国の明示された意図」という言葉をお使いになっています。戦国時代の武将ではございませんので、名乗りを上げて、意趣を懇々と述べて戦いに挑むなどということはございません。私の父もさきの大戦で、十六年の十二月にはフィリピンの沖の洋上におったそうでございます、その時点で。開戦時にはコレヒドールへ向かっていたそうでございまして、いきなり来るものであるということでございます。
 また、その御答弁の中で次に、いろいろとその状況の中で「一概に申し上げるのは困難」というお言葉をお使いでございます。この困難というのが、非常に事例が多過ぎて、一々、その一例一例を挙げていくのが困難であるとおっしゃったのか。これならばまだよろしゅうございますけれども、具体的にいろいろな例を想定する知識、経験、情報が不足していてその想定ができないという意味であれば、これは大問題でございます。
 例えば、リスクヘッジをしていく場合におきまして、そのリスクの想定が幾つできるかで、そのリスクヘッジの効果が決まってまいります。リスクの想定の時点でほぼ七〇%から八〇%は成功に至っております。あとは、そのリスクをヘッジする方法を考えていけばよろしい。いかに幾つのものを想定していくかでございます。このようなことを考えますと、今の法の中で、この法が完全に機能していくのであろうかということが、何度も申し上げますけれども、一番心配事でございます。
 また、一つはテロと戦争というお話でございましたけれども、ここに「被害としては四千人以上」と、これは昨年のアメリカの同時多発テロの件でおっしゃっております。しかし、これは、数が問題でございましょうか。例えばテロを行っているイスラム教徒の聖戦士たちは、テロ行為を聖戦などと呼んでおります。彼らにとっては戦争という概念なのでございましょう。また、私が考えますには、パレスチナの人々は毎日戦争をしておるのではないかと思います。
 我が国でも北朝鮮の拉致疑惑がございますけれども、二、三十人程度の拉致疑惑など問題ではないと言い放たれた方もいらっしゃるとか聞き及んでおります。しかし、国家は、国民の生命財産を可能な限り守る義務がございます。たとえそれが一人の場合でもであります。それが国のプライドというものと考えます。国家が義務を果たすための費用を国民は税金として応能負担しております。私は税理士として、子供を拉致されたであろう御両親に税金を負担せよなどととんでもなく、よう言いません。
 またこの中で、いわゆる事態、おそれがある事態等の場合においては「国会の承認に係る」ということがございます。これまた今現在、与党内におかれても、この法案に対し、知識、認識、データ、情報、価値観等で全く共通の土俵に皆さんがいらっしゃるとは私は考えておりません。この中でもし審議された場合は、その審議の結果はいかなるものになるかと想像しますと大変なことでございます。実際に不可能な承認行為を前提に武力攻撃を限定するというのは非常に矛盾しておるのではないかと考えております。
 また、いわゆるテロ行為等につきましても、なかなかいろいろと、現在検討中でございますというお話がございますけれども、これは日本国におきましても、過去におきましては日本赤軍という立派な、大きな集団のテロ組織がございました。これについてもケーススタディー、シミュレーション等を全くおやりになっていないんでしょうか。非常に、学習効果がないのであろうかというふうな疑問を持ってしまいます。
 以上のようなことを考えまして、私は、最終的に、法案につきましては極端な選択肢をしております。もちろん、ここにいらっしゃる方で戦地に赴く方は、まずほとんどいらっしゃいません。ただ、私の息子の戦死通知が私の手元に来るのと、私の娘が辱められ殺される場合と二つを想定した場合に、あえて選ぶなら、息子の戦死通知を選んだだけのことでございます。ただそれだけでございます。
 以上でございます。
瓦座長 ありがとうございました。
 次に、井上文伸君にお願いいたします。
井上文伸君 紹介されました井上でございます。
 私は、広島県の尾道市で市議会議員をいたしておるわけでございますが、きょう、こうして有事法制の問題につきましていろいろと意見を述べさせていただく機会を与えていただいたことを感謝いたしております。
 国の自衛権を認めれば、当然、有事法制の整備に至らなくては、首尾一貫した防衛体制はとれなくなってくる。憲法解釈上、我が国が自衛権を持てるという以上、その具体的な行使のために、有事に伴う法整備が必要になるのは論理的必然的な問題だろうと思います。
 現に自衛隊法は、第三条、直接・間接侵略への対処、第七十六条が防衛出動、第九十五条が武器の使用、第百三条が防衛出動時の物資の収用を規定し、有事法制としての性格を持っております。自衛隊はいいが、有事法制は認めないというのは矛盾をいたしているのではないかと私は思うわけでございます。
 それでは、有事法制は必要であるかどうかという問題でございますが、私は、有事法制を整備しておかないと、有事の際、自衛隊が超法規的行動をしてひとり歩きをするおそれがある、あるいは、いざというときに慌てて緊急立法し、国会の審議がおろそかになる可能性があるなど、いずれにいたしましても、結果的には、法に基づいて自衛隊を運用することを放棄し、シビリアンコントロールを空洞化することになるのではないかという心配があるわけでございます。
 次に、安全保障の原則確立の重要性でございますが、有事法制が現在まで整備されなかったのは、戦後、我が国の平和と安全について、国会での不毛の議論の結果ではないかと思っております。自民党、社会党両党が国会で多数を占めたいわゆる五五年体制を通じて、戦争か平和か、自衛隊が合憲か違憲かといった議論が毎日のように繰り返されて、我が国の安全をどのように確保していくか、そのために自衛隊はどのように行動するのかという大事な議論が置き去りになったのが大きな原因になったのではないかと思います。
 我が国の安全保障の原則、自衛隊の行動の原則といったものが明確にされてなかったために、湾岸戦争の多国籍軍への参加についても、PKOへの参加協力につきましても、昨年の米国テロ事件の際の自衛隊派遣につきましても、日本がどのように行動すべきかという基準のないまま、その場しのぎの対応を繰り返しているのが現状ではないかと思います。我が国唯一の実力組織であります自衛隊の行動の原則が明らかでない有事法制に先立って、まず、これを明確にすべきではないかと思います。
 我が国の場合は、過去の戦争経験や国民感情を考えた場合、自衛権の行使はあくまで抑制的に行うべきであり、米国のように、世界の警察官のごとく集団的自衛権を行使するという行動はもちろんとるべきではございません。これは憲法上、許されないことでもございます。現在示されている政府案には、自衛隊を、どういう場合にどのような活動をさせるか明確な方針がないため、なし崩し的に拡大していく危険性が十分あるのではないかと心配をいたしております。
 いずれにいたしましても、いざというときに国民の生命と財産を守ることのできる法制の整備が必要であるが、法律さえ整備すればよいというものではございません。今日我が国の置かれている国際環境、起こり得る事態を想定して、真に有効な体制を整備することが必要であろうかと思います。
 しかしながら、国民保護に関する目配りが後回しにされており、先日の新聞報道でも、国民の生命財産の保護などの法整備は二年以内とは遅過ぎると苦言を言っておられた方もございましたが、まさにそのとおりだと思います。
 有事関連三法案をめぐり、地方議会などでも賛否の議論が熱を帯びております。首相が地方公共団体の長に指示できる権限や、対処措置が行われない場合の代執行権が盛り込まれ、法案に、いわば国への白紙委任、自治の破壊ではと危ぶむ声も多く、六月の議会でも議論が各都市で行われるのではないかと思います。
 私も広島県人であり、このたびの福田官房長官の非核三原則の見直し発言、また、核兵器を保有できる、この発言は被爆県人として許すことのできない発言であります。今この時期に官房長官、官房副長官の相次いでの発言は、何か考えがあって意識的な発言としか思えません。もしこれが何の意図もなく発言されたとしたら、余りにも無責任過ぎる発言であると思います。非核三原則は、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずとする日本の基本政策であります。
 以上のことから、有事関連三法案に対してお願いしておきたいことは、国会審議だけでなく広く地方の声、特に自治体の意見をよく聞いていただきたい。さきにも述べたように、地方公共団体の長に指示できる権限を持つことや、対処措置が行われない場合の首相の代執行権が盛り込まれているのであります。新聞報道されておりますように、全国四十七都道府県の知事に行っているアンケートが、地方の声を聞く必要性を明確に物語っているからであります。大半の知事が法整備の必要性は認めているものの、三法案の賛否では「どちらとも言えない」が多数を占めております。有事の定義や、国と自治体の役割分担が不明確なことに対する戸惑いがあろうかと思います。
 有事法制とは、結局、自衛権と自衛力の保持及び緊急事態における国家の権限、国民の義務が憲法に規定されていないという制約の中で有事に関する国家の枠組みを整備しようとしているものであって、法整備の道のりは非常に長いものではないかと思います。そのことを十分に念頭に入れて、国家のあり方を模索していただきたいと思います。
 最後に、せっかくの場でございますので、国会議員の先生方もたくさんおられますので、一言お願いを申し上げておきたいと思います。
 最近の、政治家の行動による国会運営の混乱、また官僚の問題等、余りにも国民にはかけ離れた政治が現在なされております。そのため日本の社会も混乱しており、それがすべてとは言わないまでも、政治家の責任は極めて重いものがあろうかと私は思います。いま一度初心に返っていただき、国家国民のために生命をかけた政治活動をしていただきますようお願いをいたしまして、私の陳述とさせていただきます。
 ありがとうございました。
瓦座長 ありがとうございました。
 次に、渡辺久丸君にお願いいたします。
渡辺久丸君 渡辺です。
 私は、いわゆる有事三法案、とりわけ武力攻撃事態法案(以下「法案」)について、日本国憲法との関連で意見を述べるものです。
 まず、結論を先に一言すれば、法案は、明白かつ全面的に憲法に違反するということです。
 第一に、だれしも抱く素朴な疑問ですが、有事立法制定の根拠は、一体、憲法のうちに存在するのかどうかです。
 戦前の憲法には、天皇の非常大権、兵役の義務など戦争にかかわる一連の諸規定が存在したから、それらは、有事立法の典型である国家総動員法などの制定の根拠になり得たのです。しかし、戦後の憲法は、平和主義原理などとのかかわりで、戦前の一切の軍事立法、弾圧立法の廃止の上に成立したものです。もちろん、憲法のこの原理は戦争、戦力を全面否認するから、過去の有事立法のみならず、現在と将来のものも否定する立場です。
 だとすれば、戦争に備える今次法案は、憲法に根拠を持ち、これを具体化する合憲的な法律として成立する余地は、憲法論としてはおよそあり得ません。非戦・平和憲法のもとでは、有事立法は超憲法的かつ違憲なものにならざるを得ないでしょう。
 第二に、法案第二条等は、憲法第九条に違反し、日本の領域外で専守防衛の枠を超えて、違憲の集団的自衛権の行使に踏み込む可能性を持つということです。
 そもそも、武力攻撃事態が何かは法案において明確ではなく、政府答弁によれば周辺事態と重なる部分があるのだから、その限りで、後方地域で米軍を支援している自衛隊は米軍と共同作戦をとらざるを得ないのではないか。同じ自衛隊が、周辺事態法では逃げ、武力攻撃事態法では武力を行使するということはあり得ないからです。アーミテージ米副国務長官らが、周辺事態法の制定直後に、それをさらに超えて、集団的自衛権の行使や新有事立法の制定を要請していたねらいもそこにあるのではないか。日本の領土が攻撃されることが想定されていない以上、法案は結局、対米軍事支援法という性格を帯びざるを得ないのではないか。
 第三は、法案第三条が、武力攻撃が予測される段階から、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利」一般を包括的に制限するのを当然視している点にかかわるものです。
 その制約の理由は、「武力攻撃事態に対処するため」です。しかし、第九条はそもそも戦争、軍事力一般を禁止し、軍事的公共性なるものを否定しているから、この人権制限の理由は成り立たないはずです。また、制限は必要最小限にとしていますが、これを第三者ではなく執行当事者が判断するのだから、何ら歯どめにならず、事実上、無制限になるでしょう。
 人権相互間の矛盾、衝突を調整するために、公共の福祉の名で人権を法律で制限せざるを得ない場合でも、人権の永久不可侵性原則から極めて慎重な取り扱いが求められます。戦前の憲法が規定していた臣民の人権は、治安維持法、国家総動員法など法律の範囲内においての存在でしたが、戦後の憲法においては、人権保障は軍事治安立法による制約を受けず、戦前と同質のものではあり得ず、法律による制限を軽々に容認することはできません。
 第四に、法案が、「国民は、国及び国民の安全を確保することの重要性にかんがみ、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が対処措置を実施する際は、必要な協力をするよう努めるものとする。」と規定し、国民に戦争協力義務を課している点でも、憲法上、大いに問題があります。
 この義務に違反しても罰則を科せられるわけではありませんから、法的には拘束力がないかもしれません。しかし、この規定を単純に過小評価はできません。戦争協力を法的義務にすることによって、やがては、戦争協力をする者は正しく、非協力的な者はけしからぬ非国民として扱われかねないからです。
 こうした点で、自衛隊法改正案第百二十五条が既に、自衛隊用物資の保管命令に違反した者に対して六カ月の懲役、罰則を科し、協力を強制しているのは極めて重大です。本来、絶対無制限たるべき思想、良心の自由に基づいて戦争協力を拒否し、物資保管命令に従わないのは、そもそも、憲法が戦争、軍事力を全面的に否定している以上、正当な合憲的行為にほかなりません。防衛庁長官の答弁のように、これを犯罪視し、戦争非協力者の思想、良心の自由を処罰したり、防衛庁ぐるみで思想調査をしたりするのは、法律による憲法破壊、停止というほかはなく、言語道断です。
 ちなみに、徴兵制を認めている国でさえも、例えばドイツの憲法では「何人も、その良心に反して、戦争の役務を強制されてはならない。」(第四条第三項)と規定して、いわゆる良心的兵役拒否を基本権として容認しています。こうしたグローバルスタンダードに照らしてみても、思想、良心という内心の自由を処罰するこの法案は極めて異常です。
 第五に、法案は、現行憲法の定める国会中心の統治機構を改悪して、軍事行政中心の戦争指導国家体制づくりを目指しているということです。
 一つは、議会との関係で見れば、総理大臣は戦争計画を閣議で決定した後で事後的に国会の承認を求めることになっているから、防衛出動の場合と違って、国会は最高機関として事前にコントロールすることはできません。
 もう一つ、地方公共団体との関係では、法案が総理に、地方公共団体の長等に対し戦争計画を実施すべきことを指示する権限や、場合によっては直接執行する独裁的権限等を与えている問題です。武力攻撃事態においては、首相は、この独裁的権限によって自治体を中央に従属させ、戦争協力機関化し、いわゆる非核神戸方式などは認めず、地方自治、否、憲法そのものを一時的に停止することができます。
 以上の簡単な分析で、平和主義、人権及び統治機構の全分野において、法案は憲法の諸原則をじゅうりんするものであって、その違憲性は既に明瞭になったと思いますが、最後に一点だけつけ加えたいことがあります。
 憲法は、前文で、「日本国民は、」「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」と不戦の決意をした上で、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」しています。これは、日本政府に対して、日本国民が被害者にも加害者にもならないためにも、全世界の国民に対して平和的生存権を非軍事的方法で積極的に実現するよう責務を課しているということではないでしょうか。
 今日の核時代においては、平和に備えるのには、もはや軍事力、したがって戦争に備える有事立法は有効ではなく、むしろ周辺諸国に不安を与え、軍拡競争を引き起こし、かえって、みずから有事を招くだけです。非戦、非核、非同盟、中立の平和外交の推進によって平和に備えることこそ、憲法の求める道であり、第九条の具体化です。法案がこれに逆行する点でも、廃案にすることが至当と考えるものです。
 以上です。
瓦座長 ありがとうございました。
 次に、生田幸広君にお願いいたします。
生田幸広君 まず、意見陳述に入る前に、派遣委員の皆さんに、三枚物の新聞の切り抜きのコピーを用意しております。これは私が四月から五月、約二カ月なんですけれども、いろいろな新聞の切り抜きを自分で張ってつくったその中の一部資料ですので、写りが悪いかもしれませんけれども、御容赦願いたいと思います。
 私は、現在、JR西日本米子支社の鳥取鉄道部に勤務し、JR西日本労働組合と貨物労組で構成するJR総連鳥取県協議会の議長をしております生田といいます。
 私は有識者でも学者でもありませんが、いざ有事となれば、真っ先に引っ張られるのは労働者です。そういう一労働者という立場から、素直な意見を述べたいと思います。
 まず、現在特別委員会で審議されている有事関連法案は憲法違反であると明確に申し上げます。
 日本国憲法のどこを見ればこんな法案を出すことができるのか、そのあたりのことが、テロ、不審船問題に乗じてあいまいにされ、法案提出そして審議開始となっています。これは、民主主義の根幹である憲法が侵されているという異常事態と言わざるを得ません。
 これまで政府・与党は、憲法を拡大解釈してPKO、PKF法案を決め、そして三年前には周辺事態法などの法案を強行的に成立させましたが、今回の法案は、戦争を名実ともに行うことができる仕上げの法律と言えます。しかし、本法案は明らかに、戦争放棄をうたう憲法前文や九条を真っ向から否定するものと言わざるを得ません。それをあえて、憲法違反してまで何が何でも成立させようとする小泉内閣、こんな憲政の根幹を否定する小泉内閣のやり方を許すわけにはいきません。
 今法案について、国民はどのように受けとめているのでしょうか。
 昨年の九・一一テロ、日本近海における不審船銃撃事件は大きな衝撃を与えました。JR総連は、反テロ、反報復の立場で、アフガニスタン難民支援を初めとする取り組みを行っています。国民の意識は、テロは怖い、日本はそんなことがないように空港など万全なチェック体制をしてほしい、海上保安庁も、もっとしっかり沿岸警備をしてほしい、それが多数ではないのですか。
 国民の側から、諸外国からの攻撃がありそうだから、対応できる法律をつくれと言いましたか。そうじゃないでしょう。国民へ、テロへの恐怖心をあおって、知らぬ間に、戦争ができる国との内容をすりかえた法案になっていることを見逃すことはできません。
 しかし、国民はよく見ています。新聞の投稿欄を見ても、有事は戦時のごまかしだ、有事体制は国民一人一人の権利をなくす、かつての国家総動員法を思い浮かべ身震いがする、日本が五十数年、戦争の被害者にも加害者にもならなかったのは憲法九条のおかげだ等の声が多数上がっています。また、野党はもとより、労働組合、民主団体などからも反対の行動が全国的に広がり、五月二十日には大阪で、陸海空の交通労働者がナショナルセンターの枠を超えて数千人が集まり、有事法制反対関西大集会も開催されました。
 さて、鳥取県民はどう受けとめているのでしょうか。
 県は、環日本海交流を積極的に進めており、悪の枢軸と名指しされている北朝鮮との友好関係も強めていますし、私どもJR総連の加盟する連合も、中国との交流を深めています。こうした人間の交流を積み重ねていくことこそ、軍隊の備えより大切なことではないでしょうか。このことが平和憲法の精神と合致していると考えます。
 また、鳥取県西部には航空自衛隊美保基地や、二十四時間体制で電波傍受をし、北朝鮮や中国を監視している象のおりという通信所があります。そして、その目と鼻の先には島根原発もあります。その意味では、仮に有事を想定するなら、原発が襲われる可能性が高いと専門家は言っています。原発が襲われたときを考えただけでも恐ろしいことです。そんなことにほおかむりし、備えあれば憂いなしで国民をあおることは、とても危険だと言わざるを得ません。
 今法案のねらいは何か。アメリカの戦争体制の片棒を担ぐものだと思います。他国からの侵略や武力的な攻撃を想定したものではないと思います。
 防衛庁の元官房長に、竹岡勝美さんという方がおられます。過日、お話も聞きましたし、先日も毎日新聞に記事が掲載されていました。元防衛庁の竹岡さんがおっしゃっているエキス部分は、今日、他国が日本に上陸して攻めてくるなどというのは妄想である、あの冷戦下でもなかったのであると。
 また、一橋大学の渡辺治教授は、主張を新聞に載せられています。その要旨は、今法案のねらいは、アメリカの戦争の後方支援を円滑にするための色合いが強いと言われています。アメリカは、北朝鮮、イラン、イラクのことを悪の枢軸と名指ししています。特にイラクに対しては、言うことを全く聞かないということで緊張は増してきていますが、渡辺教授いわく、仮にアメリカがイラク攻撃をすると、自衛隊の参戦もさることながら、日本の民間企業の修理、補給、調達能力が必要とされていると指摘されています。
 私には、従わない者は力ずくでたたくというアメリカの一国支配戦略、傲慢なやり方に、日本はただただ追従しているようにしか映りません。もしこのまま法案を通したら、靖国参拝問題も絡め、近隣のアジア諸国への緊張感をさらに高め、これまでの友好的な取り組みが水泡に帰す、そういう危惧があります。別に、私は反米をあおっているのではありません。いけないことはいけない、もっと話し合えと、同盟国なら、なぜ日本政府は言えないんですか。北朝鮮の拉致問題や、先般の中国瀋陽総領事館への亡命事件にしても、やはり日本はかつての植民地支配の反省に立って、外交的な努力をすべきです。
 最後に訴えたいことは、この法案提出に賛成された国会議員は、どんな気持ちで賛成されたかということです。
 昨年十一月に、呉港から海上自衛隊補給艦「とわだ」が、戦争地域に入るインド洋沖に、戦後初めて出動しました。私は、出港反対の立場で現地に行ったわけです。後で見送りの御家族の様子をニュースで見ましたが、奥さんや御家族が涙を流して、一生懸命手を振っていました。
 私は労働組合の者であり、自衛隊員の方とは組織は違います。しかし有事となれば、基本的に兵隊にとられる立場ですから、この御家族の気持ちはわかります。しかし、小泉首相初め法案推進派の人に、この戦地に駆り出される者の気持ちがわかるとは思えません。なぜなら、政治家や官僚は行かないからです。自分たちは安全なところにいて、国民へは戦争に行ってくれ、協力してくれなんて、こんな道理を認めることはできません。
 今法案をめぐっては、自民党内でも御高齢の議員から慎重論が出ていることは御存じのとおりです。戦時というものを肌身で実感されているからだ、そう思っています。しかし、二世、三世議員の方からはこのような意見が出ないばかりか、積極的に進められている。福田官房長官の非核三原則見直し発言に至っては、まさに本音が出たのではないですか。次は徴兵制度が準備されているんではないですか。これらの危険な動きは、現在審議中のメディア規制三法と歩調を合わせていると言わざるを得ません。
 多くの国民は争い事や戦争は望んでいない、殺すのも殺されるのも嫌なんです。戦後五十数年、だれが何と言おうと、日本が戦争当事国にならず、巻き込まれなかったのは、平和憲法九条のおかげだと私は思っています。その憲法を否定する今有事関連法案審議の即時中断、廃案を求めるものです。
 以上、終わります。
瓦座長 ありがとうございました。
 片山知事に御出席をいただいておりますので、御紹介させていただきます。
 鳥取県知事片山善博君です。本日はよろしくお願いいたします。
 それでは、片山善博君にお願いいたします。
片山善博君 まず、遅くなりましたことをおわび申し上げたいと思います。
 せっかくの機会でありますので、今次の法制に対しまして私の意見を申し上げさせていただきたいと思いますが、私は鳥取県知事という立場にありますので、専ら知事として、これらの法案をどう見ているかということを中心に意見を申し上げたいと思います。
 レジュメを用意しておりますので、それをごらんいただきたいと思います。
 まず、自治体の長として、知事としてこの有事法制をどう考えるかということであります。
 私は、一昨年の十月に、鳥取県西部地震という大きな自然災害に見舞われました。この際は、鳥取県の災害対策本部長として、できる限りのことを本当に一生懸命、私なりにやりました。それは、災害対策基本法制がありまして、もちろん不備ではありますけれども、十分ではありませんけれども、しかし、知事の役割というのは明定されているわけであります。知事と市町村との関係も明定されているわけであります。その中で、やるべきこと、どこまでが限界かということがあるわけでありまして、ある意味では自信を持って、災害対策に真剣に取り組むことができたわけであります。そのことは大変よかったと私は思っております。
 しからば、自然災害ではなくて有事の場合、例えば先般の不審船がありました。あれは海上の出来事でありますが、例えばあれが陸上に展開をされて危機が生じたような場合に、それでは現時点で知事として、県民の皆さんの生命、身体、財産を保護するに当たって何をすればいいのかというのは、大きな戸惑いを覚えるのであります。
 例えば、潜水艦が上陸をしたということが韓国でありましたけれども、あんなことがあったときに、では、自治体の長として何ができて、何ができないのか。今のままだと何をする義務もありませんから、一緒になって逃げるかというと、これもおかしな話でありまして、やはり自治体の長として、県民の皆さんの生命、身体、財産を保護する立場にあれば、仮に有事法制がなくても何らかのことはしなくちゃいけない。
 そう考えますと、やはり有事法制として、自治体の長が何をすべきか、自治体が何をすべきかということがあらまし決まっていた方が、私の立場としては大変いいわけであります。ですから、有事法制は自治体の長として賛成か反対か、こう言われますと、私は、やはりきちっと自治体の役割、知事の役割を決めていただいておいた方がいいだろうという見解を持っております。
 しかし逆に、例えば、自治体はそういう有事の際に関与すべきではないという意見もあると思います。現にそういうことを言われている方もおられます。そうなれば、実は、私のような立場の者としては非常に楽なのであります。楽なのでありますが、しかし、何かあったときに地方自治体の長として、自治体の、地域のことをよく熟知していて、そして県民の皆さんの人権に最大限配慮する、そういう観点からいえば、やはり自治体がこの問題にも関与した方がいいだろうと私は思っております。難儀なことでありますが、それぐらいのことはやはり自治体として、長としてやるべきだろうと私は思っております。したがって、今回の有事法制に、地方公共団体というものがその法律の中に組み込まれるということは、私は決して不自然ではないと思っております。
 しからば、今回の法制が具体的にどうかと言われますと、それは必ずしも、ベストであるとか理想的であるということは言えないと私は思っております、大変失礼でありますけれども。
 例えばどんなことかといいますと、先ほど自然災害の場合のことを申し上げましたけれども、自然災害の場合にはある程度一体的に、地方レベルでその災害対策に対応できるという仕組みがあります。有事の際には、やはりもっと地方レベルでも一体的な取り組みができなきゃいけないだろうと思うんです。それは政府のレベルでも同じでありまして、政府も有事の際には政府一丸となって対応ができるように、各省が協力をするということで対策特別本部を設けられる、それは私は必要だろうと思うのであります。そうであるならば同じことで、地方のレベルでも、やはり国と連携しながら国民の保護に努めるという意味で、一体的、一元的にこの対応ができるような、そういう仕組みが必要だろうと思うのです。
 今回、そういう観点からこの法制を見てみますと、例えば都道府県と市町村との関係、それから都道府県知事と市町村長との関係、もっと言いますと、都道府県と消防機関との関係、消防は市町村でやっておりますから。そういう関係が全く出ていない。
 これは、後からつくられるということを言われるんだろうと思いますけれども、私たちにとってはこれが一番基本的なことでありまして、本当に有事の際に、県民の皆さんの保護に当たるときに、一元的、一体的、ばらばらでなくて対応できるかどうかという観点になりますと、今回の法制ではそういうことが欠落しているのではないかと思います。地方公共団体という名前が出てまいりますけれども、また地方公共団体の長その他の執行機関という名前が出てきますけれども、県と市町村との関係というのはあいまいである。
 それからもう一つは、都道府県の中の問題も実はあるのであります。これは平時の場合でも今大きな問題を抱えておりまして、都道府県は国と違いまして、国は、内閣が一体的に処理するということになっておりますけれども、都道府県の場合には、例えば教育行政は教育委員会がやる、警察行政は公安委員会がやるということで、独立行政委員会がそれぞれ、やや独立をして分掌しているわけであります。
 そこで、平時においても、首長すなわち知事や市町村長と、独立行政委員会である公安委員会や教育委員会との関係がどうなのかということがしばしば問題になるのでありますが、有事の際に、首長と独立行政委員会である各種の委員会、執行機関でありますけれども、これらとの関係をきちっと整理しておいていただく必要があるのだろうと私は思うのです。
 警察は警察、ばらばらということではやはり困るわけでありまして、責任を持って自治体の長が県民の皆さんの保護に当たるということになりますと、警察というのは大きな戦力であります。その警察を駆使できない、警察は全く別に動くとか、国の指示によって動くとか、そういうことではやはり困るのであります。今回の法制を見ますと、消防はちょこっと、一文字、二文字出てきますけれども、警察はケの字も出てこないというのも、何か私どもにとっては非常に不自然な感じがいたします。やはり有事の際の首長と警察との関係、都道府県と消防機関との関係などは、ちゃんと明定をしておいていただきたいと思います。
 それからもう一つは、国と地方団体との関係であります。
 私は、ここはぜひ先生方に御理解いただきたいと思うのでありますが、法案を読んでみますと、「地方公共団体は、」「武力攻撃事態への対処に関し、必要な措置を実施する責務を有する。」と書いてあります。それはそうだろうと思います。そうであるならば、その地方公共団体の長が責任を持って、その地域においてはその責務を一元的に実施できるような体制が望ましいわけであります。
 ところが、この法案を見てみますと、十四条でありますが、十四条では、対策本部長、これは通常総理だと思いますが、この対策本部長と地方公共団体の長その他の執行機関がそれぞれ各別にその分野ごとに総合調整を行う、または意見具申が地方の側から出てくる、そういう仕組みになっているわけであります。これは具体的に言いますと、対策本部から知事にこういう総合調整がある、それから知事が意見を申し出るという道はもちろんありますが、別途、例えば警察に対して国から総合調整が行われる、警察から国に対して意見具申があるということになるわけであります。
 それから十五条でも同じようなことでありまして、十五条は、内閣総理大臣が地方公共団体の長その他の執行機関にそれぞれ対処措置を実施すべきことを指示する、そういう根拠規定であります。したがって、この場合は総理大臣から知事に対して、こういうことを実施しなさいということが来るのでありましょうが、別途、公安委員会、警察の方にもこうしなさいとか、場合によっては文部科学省系統で教育委員会に対して、子供の保護はこうしなさいとか、そういうものがあり得るかもしれない。
 そういうことが国の各省の、ばらばらの今の縦割りの中から、地方団体の方にばらばらにおりてくる可能性を秘めているわけであります。こういうのは、自治体の長として責任を持って一元的に国民の保護に当たろうとする場合に、非常に厄介な問題なのであります。
 これは実は今でもありまして、例えば先ほど申しました自然災害のときに、私は一生懸命、災害対策本部長として指揮をするのでありますけれども、今の災害対策の法制、これはかなりよくできておりますけれども、その中にもやはり欠陥がありまして、例えば警察でありますと、どっちかというと警察庁の方に早く報告しようということに躍起になる。それは、例えば国の縦割りの中で、だれが一番最初に総理に情報を提供するか、持ち上げるかということで先陣争い、功名争いをするようなところが多分あるのだろうと思いますけれども、そうしますと、どこが先に上げるかということですから、それぞれ、その縦割りの中で報告をする傾向がなきにしもあらずなのであります。
 有事の際に、そういうことは非常に困るんです。やはりそんな、だれが一番最初に功名争いで報告をするかじゃなくて、本当に現場がうまくワークするかどうか、国民の保護がうまくいくかどうかということに専念してもらわなきゃいけない。そうであるならば、地域で一体的に物事に当たれる、そういう態勢が必要なのであります。ですけれども、先ほど来申し上げておりますように、この法制には大きな欠陥があると私は思っております。それは国が知事や公安委員会や教育委員会にばらばらに指揮をする、そういうことが含まれているからであります。
 これは、なぜこういうことを書いたのかなと思って、私もちょっと不審に思ったのですが、どうもこれは、先行いたしております災害対策法制の中に同じ規定があるんですね。それをそのまま引き写したのではないか。
 実は、災害対策基本法というのは古い法律でありまして、そのときにはまだ機関委任事務というのがあったのです。機関委任事務は、それぞれ先ほど言った、国家公安委員会は都道府県の公安委員会を指揮する、それから文部大臣は教育委員会を指揮する、そういう、それぞれその執行機関を直接指揮するという法制があったわけです。そのときに災害対策基本法はできていますから、実はこれも本当は直さなきゃいけないのですけれども、今回、有事法制をつくる際に、どうも安易にそういう先行する、今となってはもうオールドファッションドな条文をそのまま持ってきているというのはいかにも安易で、イージーゴーイングなやり方ではないかなと私は思います。
 これは先生方が法案審議をされるときに、役人の皆さんも一生懸命やりますけれども、こういう見落としとか、いいかげんなところはやはりあるのでありますから、ぜひチェックをしていただきたいと思います。正直言いまして、今のままですと、有事の、本当に体を張ってのるか反るかの事態に対応するときに、私はこのままでは首長として責任を持って県民の皆さんの保護に当たれない、そういう欠陥を含んでいるということを御認識いただきたいと思います。
 それから、「その他」と書いてありますが、これは巷間よく言われていることでありますが、国民保護法制が欠如しているというのは明らかであります。
 これも自治体の長としての立場から言わせていただきますと、自治体の長は、今の法案によりますと責務を負うわけであります、国民の保護という責務を負う。これはいいと私は思います、責務を負いたいと思います。ですけれども、では何ができますかといったときに、その保護法制の作動する部分が全く欠如しているわけであります。例えば避難を命ずる、誘導する、消防をどう使うのか、そういうのは二年間待ってください、こういうのんきなことになっているわけであります。
 それはこれから一生懸命やられるんだろうと思いますけれども、例えば、仮の話、こんなことはないとは思いますが、万が一、この二年の間にこういう有事が発生したときに、私は一体どうすればいいのだろうかと、実は真剣に悩まざるを得ないのであります。責務はあります。責務はありますが、手段はとれない、いわば手足を縛られたまま責任だけ背負わされるということがこの二年間続くことはもう明らかなのであります。
 二年間で本当に国民保護法制がちゃんとできれば、まあまあそれでもいいと思いますが、本当にできるのかどうか。何か宣言規定のようなものが最後の方にちょっと入っていますけれども、いろいろな、政党の離合集散だとか、内閣がかわるとか、国会が選挙があるとかで、本当に二年の間にできるかどうかわからないわけであります。そうすると、これがずっと延びると、手足を縛られたまま責任を背負わされるという状態がずっと続くというのは、これは耐えがたいことであります。ですから、私は知事として、首長として、ぜひ、この国民保護法制の作用の部分、運用の部分と責任の部分はセットにしていただきたい。というのは、これは本当に、私は真剣に考えれば考えるほどそう思います。
 それから、国民保護法制が欠落しているということについては、私はやはり、内閣の一体性がもうちょっと発揮されてもいいのではないかという気がするのであります。
 今回の法案を見ますと、防衛庁の関連の部分が非常に鮮明に出ております。私は、これは防衛庁が悪いとかというのじゃなくて、防衛庁が本当に真剣に考えられているんだと思うのです。もし有事があったときに我々は何をしなきゃいけないのかというのは、防衛庁は本当に真剣に考えられて、だからこそ、こういうきちっとした、防衛庁が仕事がしやすいようなことが出ているのだと思うのですね。
 その割には、防衛庁は国民を守るためにあるわけですから、自衛隊はその前面に立つわけですから、その国民を守る方のところが欠落しているというのは、ちょっと私は寂しい気がしまして、本当に内閣の他の分野の皆さんがこの問題に真剣に今日まで取り組んできたのかどうか、そのことは疑問なしとしないわけであります。ぜひ、この際、内閣の一体性を発揮していただいて、縦割り行政で、あっちだ、おれじゃない、こっちだとかいう醜い省庁間の省益の争いをやめて、本当に、いざというときに国民を保護するためにどうすればいいのかというのは、みんなで省利省益を捨てて考えていただきたいと、私は切にお願いを申し上げたいと思います。
 そんなことで、いろいろ問題もありますし、議論もまだ不十分でありますから、延長の話は私が言う話じゃありませんが、延長でも何でもして、もっと十分に議論をして、ぜひ、大方の国民の合意が形成されるような、そういう国会審議にしていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
瓦座長 ありがとうございました。
 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
瓦座長 これより委員からの質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。
石破委員 陳述人の皆様、本日はありがとうございました。心から厚く御礼を申し上げます。
 自由民主党の石破でございます。
 限られた時間でございますので、皆様方からの御意見すべてにお尋ねできるかどうかわかりませんが、お許しをいただきたいと思います。
 私どもも、今片山知事がお述べになったようなことは党内で相当議論をしてまいりました。要するに、第一分類、第二分類というのは、昭和五十年代に研究成果というのか公表文が出ているわけですね。それからもう二十年たって、いわゆる国民を守るための法制が何にも出ていないというのは一体どういうことであるかということ、それが出ないで本当に国会で議論をしていいのかという話は自民党の中でもさんざんいたしました。
 しかしながら、今回の法案を提出するに至りましたのは、まさしく仰せのように二年という期限を区切る、今までもう二十年近く何もしてこなかったのを二年というめどをつけて、私はこのめどという言葉を落としてもいいと思っているんです、二年以内というふうにきちんと決めて、これは閣議決定でもなくて法案にきちんと書く、国会も責任を負うという点において、できれば一年でもいい、そこできちんとしたことを、今までのような怠慢は許しませんということを国会の意思としてもはっきりさせるということでいくしか仕方がないのではないだろうか。そこで国民を守るための法制がすべて明らかになる、これは御案内のように、警察、自衛隊、消防、海上保安庁、自治体の権限調整をどうするんだという話だけで、もう考えただけで気が遠くなるような話でありまして、これをとにかく二年以内にやるということで私は大きな前進だという判断をしておるわけであります。
 また、テロとかゲリラについての法制が欠けておるではないかという御指摘もありました。これはただ、全くないわけではなくて、例えば海上警備行動、治安出動、領空侵犯措置、いわゆる自衛権ではなくて警察権を使うという意味での自衛隊の行動において相当部分カバーされるものであって、そこの抜けた部分をどう補うのかという議論が必要なんだろうと思っております。
 そういう認識のもとに、私はまず、片山知事にお尋ねをいたします。
 今申し上げましたように、全部そろって本当にきちんとした形で出るのが理想ですが、それを待っておったら何がどうなるかわからない。二年以内という期限を区切って、その間に、各界の御意見を聞きながら、より確実なものにしていくという手法が今とるべきやり方ではないだろうかと思っておりますが、その点、いかがでしょうかということが第一点です。
 それから第二点は、これも知事にお尋ねをいたしますが、正直申し上げて、この国民保護法制の中で、警察をどのように使っていくのか、消防をどのように使っていくのか、そういう議論をきちんと詰めたことは正直ございませんでした。そのことは認めざるを得ないと思っております。
 ただ、これをどう使うかという場合において、御存じのように、災害対策基本法においてもあるいは警察法においても、有事に近い状態もしくはそれに近い災害になりますと、恐らく緊急事態の布告ということになるんだろうと思うんですね。警察法における緊急事態の布告ということが行われますと、各都道府県の警察は内閣総理大臣の指揮下に入ることになるはずなんです。
 平時においては知事さんが公安委員を任命し、議会が承認しという形で、間接的ながら知事がコントロールをする形に相なっているのが自治体警察だと思いますが、緊急事態の布告がなされると、内閣総理大臣の指揮下に入る警察という事態が現出をするわけです。その場合に、消防は市町村長がこれを管理するわけであって、有事において、知事さんと警察と消防と自衛隊というものがどういうふうに有機的に連携をするのが望ましい姿だというふうにお考えになりますか。
 つまり、大規模震災対策法などには、対策本部長である知事のもとに警察ですとか自衛隊ですとかそういうものが入るスキームが考えられているわけですが、そういうような類似の法律、確かに災害対策法は古い法律です、しかしながら、大震災対策法においてはかなりそこが直されている部分がありまして、そういう仕組みを活用するということも今後考えられてしかるべきではあるまいかというふうに思っています。
 整理して申し上げますと、警察の指揮命令系統、消防の指揮命令系統、自衛隊の指揮命令系統と都道府県知事、それがどのようにあるのが望ましいと知事はお考えでしょうか、まずお尋ねをいたします。
片山善博君 最初に石破代議士から御質問がありました二年内でという話は、私は、二年なら二年、ちょっと長いなと思いますが、一年なら一年と区切って絶対にパスはない、先送りはないということは必ず必要だろうと思うんです。
 ただ、そうなったとしても、今の段階で概略ぐらいはお示ししていただかないと、何か項目だけ、短冊だけ書いていて二年内に消防は考えますというのでは、幾ら何でも手抜きではないかと思うのであります。大体こういう形の国民保護法制ができますよと、全部でなくても、例えば私の立場からいうと、私が非常に関心のあることなどについてはやはり概略何かオフィシャルな形で示されるということは少なくとも必要ではないかなという気がします。
 それから、権限争議が大変だというのは、これは私もかつて霞が関にいましたからわかるのでありますけれども、その権限争議をなくさせるとか、もっと上の立場で調整してしまうのが政治の力だろうと私は思うんですね。今、霞が関の自然状態の権限争議に任せている状態があって、調整できたものを上げてきなさいというのはいけないと思うのであります。やはり政治がリーダーシップをとってつまらない権限争議はやめさせる、そういう調整が、私は健全な政治のリーダーシップだと思うのであります。それをぜひこの際、有事立法をする際には、いいチャンスでありますから、やられたらどうかなと思うのであります。
 それから警察、消防について、どういうのがいいのかというのは、いみじくも石破代議士がおっしゃられましたけれども、いよいよになったら警察は総理の指揮下に入る、消防はとにかく市町村の機関なんです。しかも、我が県もそうなんですが、往々にして一部事務組合という形になっていまして、市町村からまたちょっと離れているわけですね。そういうあいまいな存在。
 自然災害のときがそうなんですが、知事が災害対策本部長として采配を振るうという形態はあるんですけれども、では警察はどうかというと、自分の指揮下に入っていない、消防はどうかというと、市町村に遠慮しなきゃいけないということで、名目と実態がかなり乖離があるわけです。しかし、もちろん、皆さんよく協力していただけますから、それなりにかなりのことはできるのであります。しかも、全く私どもの権限外であります自衛隊も、地震のときには本当に献身的に協力をしていただきました。自衛隊が本当に一番協力的だったんです。
 ですから、やりようによっては一体的に、そういう実力を持っている集団を使うということは知事としてできるのでありますけれども、しかし、いつもそういう人間関係が築かれているとは限りませんので、やはりある程度制度的に、有事の際に都道府県知事が県レベルでの対策本部長になるんだとすれば、そのもとで警察と消防は動けるというような仕組みをつくっていただかないと、いざとなったら、警察はぽんと国にとられてしまう、消防は市町村ですといったら、もう本当に何も当てにならないわけであります。では、県の職員だけでやりますかといっても、それは限界があります。
 ですから、その辺は、この立法の中で都道府県知事の立場、私は別に権限が欲しいわけでも何でもないんですけれども、本当に体を張ってやろうと思ったらそういう整理をしておいていただかないと、十全なる責務は果たせないだろうと思います。
石破委員 この議論をもう少しさせていただきたいんですが、今知事がおっしゃいましたように、大規模地震対策特別措置法というのがあって、これの十七条にどういう規定があるかといいますと、知事を長とする対策本部が設置される、その本部員として都道府県警察本部長、陸上自衛隊の方面総監、国の機関である指定地方行政機関の長も参画する、これで対策本部ができる、こういうようなスキームがあるわけですね。もし活用するとすればこのスキームが一番それに近いのかな、これに消防をどう組み合わせていくかというアイデアではないかというふうに思います。
 つまり、鳥取県の場合には西部地震があった。あの後、知事のリーダーシップによって、全三十九市町村の防災体制は本当に十分なのかということで、ユニホームの自衛官を鳥取県が採用されて、現職の消防官の方々と一緒にチームをつくられて、三十九市町村の防災体制というのはきちんきちんと点検をしておられる。まさしくその鳥取県の経験というものを生かすがためにも、このような大規模地震対策特別措置法のスキームというものは考えられてしかるべきではないか。
 それをここ二年の間に、例えばこういうやり方があるだろう、実際に知事さんが責任を負えといっても何も手足がなくてどうするんだというようなことをこれから二年の中に、まさしく知事さん方の意見を承り、市町村長の皆さん方の意見を承り、あるいは消防の方々、警察の方々の意見を承ってつくっていくのが一番あるべき姿ではないかなと思いますが、いかがですか。
片山善博君 私、ぜひそういうことをお願いしたいと思うんです。警察も消防も、仮に知事が今回の対策本部長になるのであれば、そのもとで一体的に活動ができるようなことをしていただきたい。
 それで、その際、できれば大規模震災のときよりはやはりもう少し糾合力といいますか、求心力を強めるような仕組みにしていただきたい。これは本当に私、繰り返し言いますが、自分が権限亡者で権限が欲しいから言っているわけじゃないんです。やはり機動的に、一体的に活動をしようと思ったら、もう少し強い権限がその長には必要であると私は思います。
石破委員 災害と有事、これがどう違うかという話なんですね。私もこの法律を考えたときに、ベースとなるのは災害対策基本法だろうな、こうは思ったんです。
 ただ、こういう言い方をすると誤解を招くといけませんが、大は小を兼ねますけれども、小は大を兼ねないのですね。つまり、災害というのはある意味、もちろん不幸な事態ではありますが、言ってしまえば一過性のものなんですね。何度も繰り返して起こるということはない。ぐらぐらっと地震が来たら、大体一回、大きなものは一回である。自然災害ですからね。それから、一回起これば基本的にはだんだん終息していくものですね。そして、阪神大震災のときもそうですが、被害を受けたアセットもありますが、基本的には自衛隊も来てくれる、警察も来てくれる、消防も来てくれる、いろいろなものが来てくれる、そういうものが災害だと思うのですよ。
 ところが有事の場合には、日本人はこういうことを考えるのも嫌なのかもしれませんが、有事に当たって、自衛隊は来てくれると思わないでもらいたいんですね。自衛隊というのは基本的に、我が国を侵略してきたそういう勢力と戦うのが第一義の仕事であって、いかに早く侵略を撃退して平和な事態を回復するかということは自衛隊でなければ基本的にできない仕事であって、全勢力をそれに傾注するのが普通であろうというふうに思われるわけですね。
 そうしますと、まず自衛隊というのは災害派遣のようなことは考えにくいというふうに想定した方がよろしいと思うんです。そして、被害がだんだん終息していくどころか、どんどん拡大をしていくということも当然にあるだろうということが有事の特徴であり、災害との基本的な相違点だろうというふうに私は思っているわけですね。
 それを含めて、では、どのようなスキームをつくっていくべきかと考えたときに、我々鳥取県、中国地方の中にありますが、隣は岡山、広島、島根、兵庫とありますね。そうすると、この地域の連携というものをどのようにとっていくのか、そのときに、だれがどのようなイニシアチブを発揮するシステムをつくるべきなのかというふうに思うわけです。
 それは、知事はそれぞれ独立をしておられますけれども、国と地方というのが指揮命令の関係に立つことが場合によってはあり得べしなんだろうと私は思っている。代執行のような手続をのんびりととっている暇がないことはあるだろうと私は思っているんですね。その場合に、有事に限って申し上げれば、国と地方というものがある意味で指揮命令関係に立たないと、早い時点での終息というのは難しいことがあるのではないだろうかというふうに思われますが、いかがですか。
片山善博君 私は、一時的に、有事の際に国と地方が、指揮する側と指揮される側に立つことはあり得ると思います。地方分権推進一括法で、一般的には国、県、市町村は対等である、これはそうだろうと思うんです。ですけれども、こういう有事の際には、国と県、国と市町村との関係も、一時的に指揮する、指揮されるという関係はあり得るだろうと思います。ただし、その状態が終わったときには速やかに回復をするということが大前提でありますけれども。
 その場合に、石破代議士がちょっと言われた、例えば県をまたがるような有事というのはあり得るわけで、その場合に、県同士が今のようにばらばらといいますか、今のような状態だとうまく機動的に対応できないので、それこそ、まさに政府が対策本部をつくられるわけですから、政府からそれぞれの県に実施すべき事項が指示される、そういうことでいいのではないかと私は思うんです。
 私が申し上げるのは、そういう指示された事項を本当にやろうと思ったときには、その県の中でやはり一体的に処理できないといけない。県の中でさえ、警察は警察で別途動いている、消防は消防で別途動いている、知事は知事で全責任を負うということでは、私はとても責任を全うできない。ですから、国から実施すべきことを指示されたときには、県の中で一体的に長が取り扱えるようにしていただきたいということであります。それに対して、例えば鳥取県にはこうしろ、岡山県にはこうしろということが内閣総理大臣を長とする対策本部から来ることについては、私は異論は特段ありません。
石破委員 そうしますと、鳥取県は鳥取県なりの対処方針があると私は思うんですね、島根県は島根県なりの、岡山県は岡山県なりの。それは霞が関で考えても、その地区に合った対処方針が出るとは私は思えないんですよ。災害対策基本法に、例えば地域防災計画というのがありますね。では、有事において鳥取県は、島根県は、岡山県は、広島県は、それぞれの地域においてどう対応するんだという計画みたいなものは、都道府県知事が長となって、いろいろな計画をあらかじめつくっておくべきではないかと思うのですよ。
 その計画をつくるときに、自衛隊の方も、市町村長も、警察も、消防も、全部知事がそういう本部長になって、いろいろな事態を想定して、どの場合にはどのように行動する、そういうようなオプションをいっぱいつくっておいて、鳥取県版の、それぞれの地方行政組織版の地域対処計画みたいなものをつくり、それを国へ持ち寄って、国の目で判断をしてみる。それは、いいとか悪いとかそういう話ではなくて、では、それを中国地方全体で見たらどうなるか、西日本全体で見たらどうなるか、海と空をあわせて見たらどうなるかみたいな形で、それがやがて全国に広がっていくという形が一番実態に即したものになるんじゃないかと私は思っているんです。
 これから先必要なものは、どういう事態にだれがどのように対処するか、何か事態が起こったときに、さあどうしましょうか、総理大臣どうしましょうか、防衛庁長官どうしましょうか、これは防衛出動でしょうか、治安出動でしょうか、災害派遣でしょうか、条文は一体どうなっていますでしょうか、そんなことをやっていて間に合うはずは絶対にないのであって、事前に、それぞれの地域に合った地域防災計画の有事版みたいなものをつくっておく。その過程において市町村長の意見、住民の意見を一番身近な地方の自治体がくみ上げていき、それを国において集大成するような形。そうでないと、私は、この対処方針というのは絵にかいたもちになるような気がするんですよ。
 ここ二年間にそういう作業を進めていくということが、この法案をきちんとしたものにするために、そしてまた国民の権利をきちんと担保していくためにも必要なことではないか、そういう仕組みをつくるべきではないかと思いますが、お考えを承ります。
片山善博君 私も大筋賛成であります。
 災害対策で地震に対応したとき、私はたまたま選挙に出るときに防災というのを公約に掲げていたものですから、災害対応の機構を拡充して、地域防災計画以下のマニュアルを逐一点検して、自衛隊等の関係機関との連絡をやり、それから訓練もやったんです。それが本当に役に立ったわけです。
 ですから、一たん有事の際のことも本当に真剣に、だれが何をやらなきゃいけないのかというのはあらかじめ考えておいたらいいだろうと私は思います。もちろん、我々はフロントに立つわけにいきませんから、フロントは自衛隊の方がやられるんでしょうけれども、国民保護の方について、その地域の実情においてどういう対応をすればいいのかというのは考えておくべきだろうと思うんです。それに必要なら計画をつくったらいいと思います。
 ですけれども、その前提としては、それならば地方公共団体で、当該地域においてはだれが本当に一体的な責任を持つのか、だれがその役割を果たすのかというのはやはり法律の中で明示されませんと、今の状態だと本当に、地方公共団体と書いているだけですから、県が前面に出るのか市町村なのか、それも今わからない状態なんですね。今の段階である程度、県と市町村との役割とか、国と地方団体との関係というのはどこが一番の接点になるのかとか、それから計画をつくったりするような場合にだれがコーディネーターになるのかとか、そういうことぐらいはやはり今の段階で本当は、法律上、示しておいていただいた方がいいと私は思います。
石破委員 終わります。
瓦座長 これにて石破君の質疑は終了いたしました。
 次に、永田寿康君。
永田委員 意見陳述者の方々、お集まりいただきましてありがとうございます。貴重な時間でございますので、てきぱきといきたいと思います。
 さて、まず民主党の、この法案に対する一つの審議の姿勢というものを簡単にお話をしておきたいのです。
 戦争準備法案であるからけしからぬというような声も聞こえてくるわけですが、しかし、私たち民主党は、やはりこれはきちっと問題点を洗い出してチェックをして、皆様の御意見も伺いながら、果たして、この法案が国民の目から見て納得できる形で通すべきものなのかどうか、そこを国会の議事録に残る形で審議していきたい、そのような姿勢でおりますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
 それからもう一つ、この法案は、文章でも書いてありますし、審議で答弁もなされているわけですから、中身は大体わかってきた。しかるに、この法案に書かれている国家の一つの権限、これを発動する主体というものが果たして信頼できるものなのかどうかということを思ったときに、大変疑わしい事件が幾つか起こっています。
 例えば直近のもので言えば、防衛庁が、情報公開で資料請求してきた人たちをプロファイリングしてリストをつくっておった、思想調査に近いものまでやっておった。このような人権感覚を持っている役所が、この有事法制というのは、場合によっては国民の、平時であれば当然守られているべき人権をある程度制限する内容を含んでいるわけですから、防衛庁のあるいは政府の人権感覚というものをつぶさに見ていかなければならない。そこで見てみると、今回の防衛庁のリスト作成事件における人権感覚というものはとてもとても恐ろしくて、この有事法制に基づく権限を与えるのはちょっと怖いなというふうに思うのが一般的な国民感覚ではないのかなと思います。
 またさらに、この防衛庁の中で重要な役目を果たしておる事務次官、官房長、これらの二人が今度、このリストの作成事件にかかわって処分されることになりました。しかし一方で、本件事件に関する内部の調査は、これらの人たちを中心に進められているわけであります。果たして、自分たちが処分をされるような立場にいながら、自分たちが中心となって調査をして、一体、何の信頼が置けるのか。こんなことで果たして実態解明ができるのか。ましてや、官房長は国会の中で、今回のリスト作成は組織的なものではなかったと、議事録に載る形で平然とうそをついていた。このようなうそつきの人たちが果たして法律の運用をどのようにするのかということに大変危惧を抱くわけであります。
 また、先日も防衛庁の高官とお話をしましたけれども、防衛庁としては、正直、イージス艦は出したくてしようがないんだ、海外に出したくてしようがないんだというお話を本音で語っていました。イージス艦というのは子供のおもちゃじゃないわけですね。これを出したくてしようがないという気持ちの裏には、やはり今回の有事法制についても、国民を守るという観点から法案をつくったのではなくて、ひょっとしたら、与えられたおもちゃを喜んで使いたいという気持ちがなかったのか、私たちは法案審議の中で明らかにしていかなければならないというふうに思っています。
 さらに、テロ対策特別措置法が去年成立して、インド洋に今でも自衛艦が派遣されています。しかし、この法律が成立をする前に、この自衛艦は既に日本を出発していました。当初は、防衛庁の設置法に書かれている、防衛庁は調査研究をなし得るんだ、このような規定に基づいて自衛艦を海外に派遣したということであります。
 しかし、果たして、そのような調査研究をするのに自衛艦を出す必要があったでしょうか。防衛庁だって調査船はたくさん持っていると思います。何も自衛艦を出す必要はないと思います。また、かつて、このような規定をもとにして自衛艦を海外に出したことがあったでしょうか。そして、この後も行われる見込みはあるのでしょうか。
 このようなことを考えると、やはりテロ対策特別措置法が成立する前にインド洋に向けて船を出発させたかった、このような法律を超えた発想が防衛庁の中で平然とまかり通っていて、そして、防衛庁出身の中谷防衛庁長官がこれをまた認めたんだというような構図が透けて見えるわけであります。
 今回の有事法制の議論の中でも、政府は、防衛出動の前に準備出動というものを自衛隊に対して命ずることができる、このようなことが検討されています。果たして、防衛庁設置法であのような自衛艦を出すことができるのならば、何もこんな法律などつくらずに、防衛庁設置法の調査研究のためだといって鳥取県に自衛隊の部隊を出せばいいわけですよ、ちゃんと道路交通法に従って堂々と高速道路を通過して、ここに今、調査研究のために部隊が参りましたと。なぜ、このようなことをしないのか。
 こういうことを考えると、どうも防衛庁というものは、国民を守るためにこの法律を必要としているという発想ではなくて、自分たちの権限を拡大したい、与えられたおもちゃを使いたい、そのような考え方でつくっているのではないかという思想が透けて見えるわけであります。ですから、きょうお越しになった鳥取の方々あるいはその周辺の方々も、こうした観点からもぜひ、この法案審議を見守っていただきたいと思います。
 さて、せっかくですから本体の質問に入りたいのですが、この有事法制、特にきょう小倉先生がお越しになっているので、医療の現場のお話をお伺いしたいのです。
 有事の際に必要となる医療体制というのは、平時の場合と比べて異なる部分というのがあるのでしょうか、お伺いしたいと思います。
小倉道雄君 お答えします。
 先ほど陳述いたしましたように、この法案につきましては私は反対の表明をいたしておりますが、有事をちょっと読みかえまして、緊急事態という意味での救急医療体制ということにつきましては、いささか基本的には考えております。
 有事の際といいますか、非常時、そういうときと平常時とは、それは内容的にやはり違うと思います。取り扱う疾患も違いますし、量的にももちろん、有事の際の医療体制では、一時に大量の治療を必要とする患者ができると思います。
永田委員 今、量的な問題、つまり例えば爆弾が爆発したら一時にたくさんの傷害を負った方が出るということを考えれば、量的な差があるということはわかりますが、一方で、やはり戦争の意図を持って他国が攻撃をしかけたということになれば、通常の医療では扱わないような、質的な差のある患者さんも出てくると思うんですが、その辺についての御意見はいかがですか。
小倉道雄君 お答えします。
 もちろん、質的な内容が違ってまいることは当然でございます。
 平常の救急医療体制の中では、重大な交通事故とか、それから最も一般的なのは、脳卒中であるとかあるいは心臓病によって緊急を要する患者の医療というのが最も多いと思いますが、ただいまのお話のように、軍事侵攻となりますと、これは大部分が、かつて太平洋戦争でも経験があると思いますが、外傷が多いと思います。特に銃撃や爆撃による場合は、そういう外傷が大量発生するということが多いと思います。
 ただ、現在の戦闘、戦闘ということにつきましては私よくわかりませんが、例えば核が使われますと放射性物質による傷害、それから化学物質によるもの、例えばこの前のオウム真理教の場合のようなサリンといった毒物、こういうことも今後はもっと多くなってくるかとも思いますが、さらに生物兵器、微生物によるもの、これが非常に多くなってくる。
 そうすると、サリンの場合でも、御存じのようにこれを特定するという技術が、なかなか時間がかかりまして、すぐそれに対応して対処するというのが非常に難しくなってくる。そうしますと、どうしてもそれぞれの傷害に対する専門家の集団といいますか、そういう体制が必要になってくると思います。
永田委員 時間が来たようなのであれですが、質的な差があるということをお伺いいたしたので、これでとりあえず終わりたいと思います。
瓦座長 これにて永田君の質疑は終了いたしました。
 次に、肥田美代子君。
肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 陳述人の皆さん、本当にきょうは貴重な御意見をありがとうございました。
 私は、先日、国連の子ども特別総会に出席いたしまして、その席で、これは史上初めてなんですが、子供が壇上に立ちまして演説をしたんですね。そこで、子供にふさわしい世界はすべての人々が住むにふさわしい世界であるという、とても印象的な発言があったと私は感心いたしておりますが、冷戦構造が終わりまして十年が過ぎましたけれども、やはり平和の配当はまだまだ世界の子供たちに行き渡っていない、それが出席した大人たちの実感でございました。ですから私どもは、法整備をするときには、やはり未来から来た子供たちに、この法律をつくったときにどういう影響を与えるか、そういうことをしっかりと考えてつくっていかなければ未来に禍根を残すと思っております。
 それで、今回の有事関連三法案を見ましたときに、本当にこの法案が、国民とりわけ子供たちを守り切る法案であるかどうか、それを考えますと、いささかというよりも大変不安な思いでございます。残念ながら、法案のどこを透かして見ても、そういう大切なことが抜け落ちているように思うわけでございます。
 ここで小倉陳述人にお聞きしたいのですが、国民の保護に関する法制のあり方について、今後の審議の中でいろいろ具体的なことは詰めていかなければなりませんけれども、今先生がお考えの、国民保護法制の中にどのようなものを盛り込むべきかということをちょっとお話しいただきたいと思います。
小倉道雄君 お答えいたします。
 私は、先ほどの陳述におきまして、第一番目に、今回の法案には人権の擁護といいますか、国民の生命財産を保護するというところが欠けておるというふうに陳述いたしましたが、ただいまおっしゃいましたとおり、その点につきましては、やはり憲法が保障する人権の擁護ということが基本的になると思います。そうしますと非常に広くなりまして、いかなる事態においても、現在平時において守られておる人権が保障されるということが大切ではないかと思います。
肥田委員 ありがとうございます。
 それでは、あと五分を残しておりますので、きょうお越しいただきました皆さんに御意見をちょうだいしたいと思いますので、本当に短くて恐縮でございますが、端的にお答えいただきたいと思います。
 もう、きょうが六月五日でございます。今国会の会期は六月十九日、そうしますと二週間を残すのみでございますが、私どもはこの国会で、では、この法案に対してどういうふうに接し、そして対処することが必要なのかということを考えるわけでございます。
 その中で、先ほどから御意見がございましたけれども、この法律の国民に対する情報公開がまだ十分できていないという御意見もございました。それから、保護法制が欠落している。もう一つは、知事さんもおっしゃいましたが、地方公共団体の運用と責務がセットで出されていない、そういう欠陥がある法律であるということもございました。
 しかし、では、これから二年以内にそれが本当につくれるかどうか。これは、政権がかわったり何かすることもございますし、本当に保証することはできないだろう。そしてさらには、同僚議員からもございましたけれども、官房長官そして防衛庁長官への国民の不信感もございます。
 こういう中で、それではこの法律を一体、廃案にするのか、継続審議にするのか、それでも何が何でも通してしまうのか、それとも、もう二年ぐらいかけて十分にじっくりと与野党で審議していく、そういうことが必要なのか。いろいろな考え方があると思いますが、端的にお答えいただければありがたいと思います。お一人ずつお願いいたします。
瓦座長 なかなか難しい問いでございますが、それでは、どうぞ片山さんから順番にお答えください。
片山善博君 私は、徹底して議論されたらいいんだろうと思うんです。いろいろな意見がありますし、私も不明な点がありますのできょう申し上げましたけれども、徹底して議論されたらいいと思います。
 その際、例えば役所が信頼できないとか、情報公開の体質がないとか、不信感があるとか、私もそう思うんです。永田議員もおっしゃったこと、私もそのとおりだと思うんです。それを正すのは政治の役割だと私は思うんです。皆さんが愚痴を言ったり、悪口を言ったりしても始まらないんですね。我々が選んだ国会議員の皆さんが役所を正さなければいけないんですよ。役所が不実であったら、それをちゃんと暴いてやる、それが皆さん方の仕事だと私は思うんですけれども、役所がだめだからこの法律はだめだというのは、我々国民から聞いていますと、何か責任放棄しているみたいなんです。ぜひ役所を正してください。
杉原弘一郎君 とりあえず出発点を早くやっていただきたい、迅速に対処していただきたい、そして、あとは二年以内に内容を詰めていただければ結構だと思います。
小倉道雄君 いろいろな条件がクリアされまして、国民のコンセンサスが得られた状態では、緊急時に対する法制ということは必要だと思います。
大西龍夫君 徹底的に議論していただいて継続審議でございます。
井上文伸君 やはり地方の声を本当によく聞いていただいて、少々時間がかかってもいいと思いますよ、地方の声をよく聞いていただいて、国家のあり方を模索していただきたいと思います。
渡辺久丸君 冒頭発言で申し上げましたけれども、一言言いますと、周辺事態法それからテロ特別措置法でも、武力の行使はやらないといって明文で書いてあるんですよ。ところが、今度の法案は武力の行使を行う、そういう立場で、違憲性はもうはっきりとしているので、だからこれは廃案にすべきだというのが僕の意見です。
生田幸広君 私は、廃案を求めます。
 以上です。
肥田委員 ありがとうございます。
瓦座長 これにて肥田君の質疑は終了いたしました。
 次に、白保台一君。
白保委員 公明党の白保台一でございます。
 きょうは、意見陳述者の皆様方には、大変お忙しい中、また大変貴重な御意見をお聞かせいただきました。
 そこで、まず、私どもの立場を若干申し上げますと、九九年十月に連立政権に参加をいたしました。その際に、やはり有事の際の危機管理体制、こういった問題についてもしっかりと研究をして、できるところからしっかりと整備をしていかなければ国の本来のあり方としていけませんねということで、これは研究をし、そして積み上げて、しっかりした形でもって対応をしていきましょうという取り決めで、考え方を決めて今日に至りました。したがって私どもは、憲法の枠内、そういった中で、しっかりとした形でもってやっていかなければならない、国民の生命財産、そしてまた平時のときからそれを守るための危機管理体制というものをしっかりさせていく、そういうことは非常に重要であるという立場で、今回も与党の一人として参加をさせていただいているわけであります。
 きょう、皆さんの御意見をしっかりとお聞きしましたし、同時にまた、戦後、長い平和の中で、いろいろと今、この法律を出すことによって、なぜ今なんだ、なぜ必要なのかというような意見もあることも承知しております。先ほどの意見の中にもございましたが、慎重に審議すべし、こういう御意見がございました。まさに、そういった一環としての地方公聴会であると私どもも認識をしているわけでございまして、そういう面では慎重に、しかしきっちりとした形でもってつくり上げていかなきゃならないかな、こういうふうに考えているところであります。
 それで、まず小倉参考人にお聞きしたいんですが、先ほどお話を伺っていて、議論がきちっとやられた、そういった中で、究極的には法制定の必要性はある、このようにお考えでしょうか。
小倉道雄君 先ほど申しましたように、いろいろな不備な点とか反対意見がございましたが、その反対となっておる根拠、そういうものがすべてクリアされてということを申し上げたと思います。国民のコンセンサスが得られてということを申し上げたと思います。
白保委員 大変大事なことだと思います。
 そこで、大西参考人にお伺いいたします。
 先ほど、おそれだとか予測だとか事態だとか、そういったことの中で、大西参考人が一番御関心をお持ちのようでございますが、情報収集、どういう判断をするか、その情報がしっかりしているのかどうかというお話がございました。
 そこで、情報収集をどうしたらいいのかという問題が一つあると思いますが、同時に、国民への伝達の方法の問題というふうに受けとめましたが、そのお考えがございますれば御意見を伺いたいと思います。
大西龍夫君 例えば、先ほど永田先生のお話にもございましたように、イージス艦、非常に立派な機能を持っておる船でございます。ただ私ども、昔からよく言われていますように、機械にはたくさん資金をかけていくけれども、人にはかけていない。
 昔、米軍でありますと、ファントムのパイロットの場合は約一〇%の教育費をかけておったというふうに聞き及んでおります。平たく言えば、私どもが新しいパソコンを導入いたしましても、その使い方が、全部とは言いませんけれども、相当わかっていないときっちりした情報は引っ張り出せないということでございます。
 まずイージス艦あたりでも、多分、自衛官の方々は十分に使った満足感はないのではないかと思います。と申しますのは、その持っておる機能をすべて頭にたたき込んで防衛のための情報収集を実際にはやっておられるのかなというふうに考えます。やはりそういうものを十分に使いこなせる条件の中でこの日本近海の、もちろん領海内でございますけれども、情報収集というのはできるのではないかと思っております。
 また、今まで、仮にそのような不審な潜水艦等があったとしても、なかなかそれを国民の方々にお知らせすることはなかったと思います。
 例えば、アメリカ軍のレーダー網によれば、旧ソ連のことでございますけれども、彼らがスクランブル発進する場合の命令の声まで聞こえてくるという状況でございます。そのような収集力を持っております。いわゆる現場の声まで聞けるとか、現場の人の動きまで見えてしまうものも、今はハイテク機能として持っております。こういったものをやはり必要であるならば十分に、人材にも機器にも投入すべきだと思います。必要でないのであれば、先ほど私も冒頭に申しましたように、仕事柄、いかにお国が上手にお金を使っていただけるかということが大事でございます。
 国民が、その方向に確かに行った方が自分たちの幸せが近くなると大多数――先ほどもお話がありましたように、法案等につきましても、一〇〇%のものを求めてでき上がることはございません。私どもが新しい事業を始める場合も、一〇〇%の自信を持って事業を始めることはございません。できれば七、八〇%あたりまで構築できれば、私どもは大体、ゴーサインを出します。ただ、五〇%五〇%、いわゆる五分五分の確率で物事を進めていくことはございませんので、今現在の状況では、まだ五分五分あたりの状況ではないかというふうに私は感じております。
 以上でございます。
白保委員 では、最後になると思いますが、片山知事にお伺いしたいと思います。
 先ほどから、知事として、県民の生命財産そしてまた保護ということを考えた、責任あるお立場での発言が多くありました。大変感じ入っておるわけでございます。
 知事の基本的な考え方は大体わかりました。県内の各市町村長の皆さん方はどのような考え方を持っておられるか、把握しておられますか。
片山善博君 正式に調査したとかヒアリングしたということはありませんので、私の感覚でありますけれども、余り御関心がないのではないかなという印象を率直に持っております。
 これは実は有事の前の、自然災害の場合にもそうなんでありますけれども、やはり関心がそんなに強くないというのが実態でありました。私は、防災について大切ですからということを訴えるんですけれども、なかなか専門のスタッフをそろえてくれないとか、そういうもどかしさがあるものですから、今しきりに、防災面での強化をしてくださいという話をお願いしているのですけれども、まだ有事の方について関心が深いということはないと思います。
白保委員 終わります。
瓦座長 これにて白保君の質疑は終了いたしました。
 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうは、意見陳述の先生方、お忙しい中を御高説を賜りまして、心から厚く御礼を申し上げます。
 今回は中国地方の公聴会の機会を与えていただきましたけれども、きょう、広島の井上先生の意見を伺うことができました。意見陳述の際にも少し触れられておりましたけれども、大事なことでありますので、あえて最初にお伺いをさせていただきたい、このように思います。
 井上先生は先ほど、広島県人であり、福田官房長官が非核三原則の見直しの可能性に言及したことについては、被爆県人として許すことのできない発言であると怒りを述べられたわけであります。
 ましてや、ただいま有事法制が国会で議論されている真っただ中でありまして、地方でもこのような公聴会を開いて国民各層の意見を募っているところでありますけれども、日本は、御案内のとおり、唯一の被爆国であります。中でも、広島と長崎は被爆地であります。そして言うまでもなく、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずという非核三原則について、このような発言が今回の法案を提出した政府首脳の官房長官、いわゆる主務大臣から出されること自体、考えられないことであると私は思います。
 今回の福田官房長官の発言について、地方の声、特に被爆県であります広島の声として、井上先生の思いをもう少しお聞かせいただけませんでしょうか。
井上文伸君 御承知のように、今、インドとパキスタンの軍事的な緊張感が非常に高まってきている中、核兵器の廃絶に逆行するような官房長官の発言に対して、被爆地広島では非常な怒りが、先ほど隣の小倉先生も広島出身ということでございましたが、そのように言われておりましたが、今、非常に怒りが広がっているのは事実でございます。
 戦後五十数年になりますが、広島ではまだまだ多くの被爆者の方が病院で治療を続けておられますし、広島は戦争の傷跡がまだ非常にたくさん残っておるところでございます。そうした中で、官房長官もこういう発言をすればどうなるかということはわかっておったろうと思いますが、この発言に対して、余りにも緊張感がなさ過ぎる思いが私の方ではいたします。
 以上です。
樋高委員 率直な御意見、ありがとうございました。
 今回、有事法制の議論を広島の地から、外から見られて、聞いていらっしゃって、率直にどのような感想をお持ちでしょうか、同じく井上先生にお伺いします。
井上文伸君 まず、今回の有事法制そのものについてでございますが、有事法制とは名ばかりのような気がちょっといたしております。何か古い戦争概念にとらわれたような、冷戦後の安全保障を踏まえていないような、非常に言葉は悪いのでございますが、時代錯誤の印象さえ受けるような気がいたします。
 政府のいろいろな答弁を聞いておりましても、大臣によって肝心なところの定義や解釈が違ってきたり、また合理的な説明がないことも多く、支離滅裂な印象も受けることが多くあります。我々国民の生命財産を本気で守ろうと考えて政府はこの法案を提出したのだろうかという懸念さえ抱かせております。それが私の率直な感想でございます。
樋高委員 ありがとうございます。
 また同じく井上先生にお伺いしますが、意見陳述の中で、我が国の自衛隊の行動の原則が明らかでないというふうに述べられておりますけれども、このことは、我が国日本の有事法制を考えるに当たりまして入り口の部分、非常に重要なことであると思いますので、もう少し詳しくそのことに関しての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
井上文伸君 本来ならば、我が国の安全保障の原則や自衛隊の行動原則につきまして憲法に規定がなければならないわけですが、残念ながら、現憲法にはそれがないようでございます。
 私は、そんな現憲法を補うために、安全保障に関する基本法と非常事態に対する基本法を制定すべきではないかというような考えもいたしておるわけでございますが、先ほども述べましたように、日本の安全保障は、これまで政府の憲法解釈によってなし崩し的に、恣意的に行われてきた。これは、自衛隊をどういう場合に、どのように活動させるのか明確な方針がないために、国民または諸外国に対しましても無用の心配をかけてきたというようなことでもあろうかと思います。
 今回の有事法制の整備に際しましては、安全保障の原則と、それに基づく自衛隊の行動原則を確立していただきまして、内外に言明すべきであると思います。
 以上です。
樋高委員 ありがとうございました。
 それでは最後に、一言ずつ七人の先生方にお伺いしたいのです。
 実は、きょうの日経新聞に、世論調査の数字が発表になっております。最新の状況ですが、この有事法制に賛成が四〇%、反対が四六%、いわゆる賛否が逆転をしたということであります。この日経さんの調査によりますと、二月は賛成が五四%であったのに対しまして、最新の数字は四〇%、マイナス一四ポイント。そして反対が、二月時点では三六%であったのが、プラス一〇ポイントで四六%。賛否が逆転している。これは、全国の男女三千人の電話調査による数値なのだそうであります。
 この状況を踏まえた上で御所見を、一言ずつで結構でございます、大変恐縮でございますが、全員の意見陳述者の先生方、お願いいたします。
瓦座長 時間が迫っておりますが、質疑者からの御要請でもありますので、短目に御返事いただければ幸いです。
片山善博君 それは、そういうことを踏まえて、皆さん方が御議論されて決定されることだと私は思います。
杉原弘一郎君 こういうことが、こういうふうに議論できることが私はありがたいことでありますので、別に比率にこだわらずに、大いに議論をしていただきたいと思います。
小倉道雄君 内容がだんだん明らかになってきて、実体に対して反対がふえてきたのだと思います。
大西龍夫君 一つの出来事で世の中の動きというのはころころ変わっていくもので、断片的な世論調査のみで云々はありません。
井上文伸君 先ほども申しましたように、いろいろな御意見をいろいろな範囲から聞いて、時間をかけて慎重に進めていかれたらいいんじゃないかと思います。
 以上です。
渡辺久丸君 本質が今後さらにわかればわかるほど、これは恐らくもっと上がる。そういうことで、僕は、先ほど言いましたけれども、やはり廃案という方向が正しいんじゃないか、それをますます確信した次第です。
生田幸広君 日経ですか、かたい新聞ですね、余り読まないんですけれども、ただ、統計のとり方あるいは新聞社の論調の仕方、そういった部分があろうかと思いますので、一つの参考ではないか。
 ちなみに、昨日の地元紙、日本海新聞には、賛否を問うんじゃないんですけれども、「有事法案優先 わずか二〇%」というような大見出しが出ているんですね。これだけ見ても、さっき言ったことを自分で言うのもなんなんですけれども、やはりこういったこともあるということで、ぜひともそういうふうに受けとめていただきたいと思います。
 以上です。
樋高委員 慎重に審議をしてくれということでありました。
 どうもありがとうございました。
瓦座長 これにて樋高君の質疑は終了いたしました。
 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 きょうは、意見陳述の先生方、大変貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございました。
 そこで、私は渡辺先生に、憲法の問題と関連して幾つか質問をしたいのです。
 先ほどから、地上戦の話が大分出ておりました。国会で私が取り上げたところ、武力攻撃が予測されるに至った事態とは、つまり周辺事態も一つのケースだ、このように防衛庁長官が答弁しておられます。私は、率直に言って、この法律は、周辺事態法でかなわなかった米軍支援をより強化していく法律じゃないかとふだん考えているわけですが、先生はどのようにお考えでしょうか。
渡辺久丸君 政府の答弁で、周辺事態法と武力攻撃事態法が重なる部分がある。これは先ほど僕が発言しましたけれども、だとすると、重ならない部分があるのかどうかですね。
 といいますのは、これは武力攻撃事態と言っているんですけれども、日本の本土が攻撃されるということはおよそ想定されていないんですよ。だから、これは重ならない部分はないんです。だから、周辺事態と武力攻撃事態が全く重なって、イコールだというふうに僕は考えているんです。
 周辺事態法では、先ほどもちょっと触れましたけれども、あの法律の中では危なくなったら中断するんだ、そういう話でしょう、武力行使はやらない、それから危険な地域には行かないということで。そうだとしますと、同盟国であるアメリカ軍から見れば、これは本当に同盟国の軍隊なのかということになるんですよ。ですから、現場では、これは一緒にやるということが当たり前の話じゃないかと思いますね。そういうことから、周辺事態法にはいろいろな欠陥があるというふうにアメリカは見ているんですね。
 そういうところで、この周辺事態法ができた翌年の十月に、アーミテージ国務副長官や何人かの人が報告書を出しました。その中で、新ガイドラインと周辺事態法では実はまだ足らないんだ、もっとやってほしいんだ、新ガイドラインというのは単なる基盤にすぎないので、あれを上限というふうには理解しないでほしいと。そういうことで出てきたのが今回の法案じゃないか。
 ということで、先ほど申しましたように、周辺事態と武力攻撃事態が全く重なるということでありますと、周辺事態で出動している自衛隊が、攻撃のおそれがあるということで今まで逃げ帰ってきたものが、いや、逃げ帰ってはだめだということにしようというのが今度の法案じゃないかというふうに僕は理解していますので、今度の法案は、本来なら周辺事態法の改正案として提起すべきなんですよ。別の法律で実は周辺事態法の改正というか改悪をやろうとしているのが今度の法案じゃないかというふうに僕は考えているわけです。
赤嶺委員 そうしますと、周辺事態という事態は、アメリカのアジア地域への武力介入が先にあって始まっていくわけです。一方、武力攻撃事態法には、事態の認定という手続が書かれております。安全保障会議で決めていく、対処専門委員会で事態を判断していく。
 少なくとも、予測される事態、おそれの事態、これらの事態については、今先生のお話ですと、それは日本が主導的に判断をするのか。それともアメリカが主導的に判断をするのか。その判断ができた場合にはこの法律が発動し、国民の協力体制が強制をされていくという仕組みで、大変重要なところだと思うんですが、そこの点はいかがお考えでしょうか。
    〔座長退席、石破座長代理着席〕
渡辺久丸君 周辺事態法では、実は周辺事態の認定についての手続、システム、これは規定がなかったんですよ。
 今度の法案は、安全保障会議法の改正案の中で、先ほどおっしゃいました専門委員会ですか、そこが総理の諮問を受けて答申するという形で、この専門委員会というもので日本は独自に判断できる、自主的なものなんだというふうに恐らく考えている、そういう節があるんですが、僕は、周辺事態法のときにも議論されましたけれども、周辺事態の認定、武力攻撃事態かどうかの認定は、実は、今回の場合は専門委員会のメンバーである自衛隊の幹部、この人たちはアメリカの軍人参事と一緒に常に協議をする、そういう枠組みが新ガイドラインの中でつくられたのですね。ですから日常的に協議していますし、それから、日本側が情報を本当に持っているかどうか。これはやはりアメリカの方で重要な情報は握っておりますので、結局、この武力攻撃事態の認定については、恐らく日本側で自主的に判断をするということは大変困難ではないか。
 これは僕だけが言っているわけではありませんで、軍事専門家がそういう評価をしているということですね。
赤嶺委員 どうもありがとうございます。
 渡辺先生はふだん、憲法の専門家としてずっと研究を続けていらっしゃるわけですが、そうなりますと、明らかな憲法違反ということのお話が先ほどありました。
 私は、九〇年の湾岸戦争以来今日まで、日本の憲法が、対米協力、対米支援という形で少しずつ風穴があけられてきているんじゃないかというぐあいに感じているんですが、その辺は先生、いかがお考えでしょうか。
渡辺久丸君 これはおっしゃるとおりで、僕は、やはり湾岸戦争というのが一つの大きな転機になったと思いますね。
 湾岸戦争の後、九一年四月に、日本の海上自衛隊が、ペルシャ湾に敷設されている機雷を掃海するために出動しましたね。あれが、日本の自衛隊が海外に出動していった一番初めだと思いますね。その後、一九九二年にPKO法ができまして、九二年にカンボジアに出動しました。そして九四年の四月から六月ぐらいに、御承知のとおり、北朝鮮の核疑惑問題というのがありましたね。あのときに、アメリカは北朝鮮を攻撃しようとしたんですよ。日本に対しては後方支援をしてほしいということで要請したけれども、当時の日本としては、やはり有事立法をつくるとかというふうな余裕がなかったわけですね。
 そういう中で、結局、ガイドラインが一九九七年につくられて、周辺事態法が一九九九年、それから昨年はテロ特別措置法、それから今回の法案。これはいずれも自衛隊を、アメリカがアジア太平洋地域で起こす周辺事態戦争、それに参加していくために動員しようということで、これはやはり、憲法の風穴がますます大きく広がってきているというのが現在の状況じゃないかというふうに思います。
    〔石破座長代理退席、座長着席〕
赤嶺委員 時間が残り少なくなりましたが、片山知事に、先ほど、災害に対する大変御熱心な姿勢、意気込み、勉強になりました。
 実は私、沖縄でして、地上戦が繰り広げられたときの住民保護ということについては、いろいろな体験からして意見を持っております、どんな住民保護をとってみてもというのはあります。
 ただ一点だけ、今度の法律の中で、地方自治体も、結局は港湾、空港などの米軍への提供だとか、そういうものが強制される中身も一方であるわけですね。米軍支援と地方自治体は無関係ではないと思うんですが、そこの中身は全く明らかになっていないんですけれども、知事はその辺はどんなふうにお考えなのか、よろしくお願いします。
片山善博君 私は、今度の有事法制が米軍支援のためにつくられているという気はしないんですけれども。
 やはり自衛隊という存在があって、あってはならないことですけれども、有事というものがあるかもしれない、その場合に自衛隊は前線に立って国民を守ろうとする、後方の国民の保護法制がいずれできて、本当は今がいいんですけれども、その際に地方団体が一定の役割を果たす、そういう法制だと思っていますので、私は、その中でできる限り地方団体が国民の保護のために動きやすいようにしていただきたい。そうなった暁には、もし万が一あってはならないことがあったときにも全力を尽くします、そう私は考えております。
赤嶺委員 終わります。
瓦座長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。
 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党の今川正美でございます。
 きょうはお忙しい中、意見陳述者の皆様方、このように御出席いただきまして、心からお礼を申し上げます。
 限られた時間でありますので、何点かお尋ねをしたいと思うのでありますが、まず生田議長にお聞きしたいと思うんです。
 私も各地に参りまして、いろいろ有事法制に関する率直な感想を求めるんですが、多くの国民の皆さん方の平均的な受けとめ方というのは、この御時世に、我が国に本当に本気で武力攻撃をしかけるような国はあるんだろうかという、ごく率直な受けとめ方がほとんどなんですね。
 私は、今度のこの特別委員会で審議に加わっていますが、普通、どの国でもそうなんですけれども、その国の安全保障のあり方ということを考え、議論するときには、当然のことながら、順序からいきますと、特にこういう時代ですので、外交努力をどうしていくのか。日本の場合だと、国際社会といっても、特にやはりアジアと日本の関係だと思うんですね。
 そうしますと、外交を一生懸命重ねてみてもやはり破綻したんだというときが有事というふうにつながっていくと思うんですが、その外交努力とあわせてもう一つ必要なことは、現に今日本は、ODAを含めて、アジアの国々に対して大変な経済援助、経済協力をやっていると思うんですね。それだけの経済援助をしながら、なおかつアジアのどこかの国がいきなり、どういう理由かわからないけれども武力攻撃をしかけてくる、そういうことは、中学生でもわかるんじゃないかなと思うんだけれども、あり得るんだろうか。
 問題なのは、今回一番特徴的なのは、いざというときに自衛隊がどう円滑に行動ができるか、そのための法整備だということがぼんと表に出ていまして、そうすると、それ以前に、外交がどうすれば破綻するのか、あるいはこれだけの経済協力をしながら、なおかつ日本が憎まれなければならない、恨みを買うような事態というのは具体的にどういうことであろうか、そこの議論がすぽんと抜け落ちたまま、いきなり第三段階といいますか最後の、究極のときには武力で対応しなければならないという、ここにいきなり来てしまっているから、やはり非常に現実感に乏しい議論になっているんじゃないかと私は思っているんですけれども、その点、生田さん、いかがですか。
生田幸広君 お答えいたします。
 何点かおっしゃったんですけれども、まず、全国各地でいろいろな意見を聞いている、それで、果たして日本に攻めてくる国があるのか、そういった現実的かつ具体的にどうかということの問いだと思います。
 私は軍事の専門家でもありませんし、あるいはそういった知識も持ち合わせていませんけれども、先ほどもお示ししました、そういった有事の関連法案あるいは平和問題に関心がありまして、いろいろ私なりに新聞等で学んだこと、あるいは労働組合の中で学んだことを総合してお答えしますと、あり得ないんじゃないか。それと、先ほども申し上げましたとおり、防衛庁のOBの方でもいろいろあるかと思うんですけれども、竹岡勝美さんのそういった御講演を目の当たりで聞いて、そういった意を強くしたということであります。
 次に、経済援助をアジア諸国にしている。まず経済援助の関係ですけれども、そういったことをしているにもかかわらず、逆にそういった武力で攻めるということは、先ほどと似たような答えになるかもしれませんけれども、あり得ない。
 最後に、一番重要だと思ったんですけれども、外交努力ですね。これは本当だと思います。僕も戦後生まれの一人なんですけれども、やはり歴史をひもとけば、外交が軍事にといいますか、当時の陸軍とか海軍、そういったことに最後は負けた、それで戦争が始まったというのが、我々市民からいえばそういうふうに映るんですね。
 そういう意味では、朝鮮半島の南北朝鮮、中国というのは非常に、いい意味でも悪い意味でも、この間歴史的にかかわりが強い国であります。そういう意味で、確かに北朝鮮とは国交がないかもしれませんけれども、いろいろな形で外交努力ができると思いますし、あとの二国についても、またほかの諸国についても、やはり日本のそういう真摯な姿勢、具体的に言えば、まだまだ大戦の傷はいえていないと思うんですよ。そういったことを踏まえながら謙虚に話し合う、外交努力をとことんする、そういったことが大事でありますし、そのことが今の審議の中で、僕の知らない部分もあろうかと思いますけれども、抜け落ちているということが非常に大事だなと。
 また、これははっきり言わせてもらいますけれども、マスコミの皆さんの報道のあり方も少し一面的な面もありはしないかな、そういう思いはします。
 以上です。
今川委員 次に、渡辺先生にちょっとお尋ねしたいんです。
 実は、私は長崎県の佐世保なんです。それで、九州では沖縄に次ぐ米海軍基地なり海上自衛隊の基地もございますが、実は今回、有事法制を議論するある意味で前提として、いろいろな情報が、有事か平時かを問わず、どのように国民にオープンにされているのかということでちょっとお伺いしたいんです。
 実は、今まだテロ対策という名目で、インド洋、アラビア海方面に自衛艦が三隻行っております。そうしますと、この中の護衛艦の一隻の乗組員が、この間、非常に不幸なことに亡くなられたんですが、自衛隊の護衛艦とか補給艦がどういう港に立ち寄っているのか、亡くなられた方はどの港に停泊中に亡くなられたのか、委員会で質問しましても、国会の中で明らかにしてくれないんです。
 それから、今、佐世保と沖縄と横須賀にアメリカの原子力潜水艦がたびたび出入りしているわけですけれども、これは御承知かと思いますが、入ってくるときには二十四時間前に事前通告が米海軍から外務省にあり、外務省から当該の地方自治体に来るわけですね。これが去年の九・一一テロ以降、外務省から地方自治体にまでは来るんですが、これまであったようなマスコミとか一般市民にそれを知らせないということがありまして、これは現在でも続いているんです。既に長崎県とか佐世保市の首長さんは、外務省に対して、もうオープンにしていいではないかということを申し入れしておりますけれども、日本政府、外務省は、それをなかなかオープンにしようとしない。
 つまり、はるかかなた、有事といえばアメリカにとっての有事を日本が支援しているわけですけれども、これが、日本の国土が有事になったときということになりますと、かつての戦争のような大本営発表じゃありませんが、今日の国民に対してどの程度きちんと我が国の政府が正しい情報を公正に知らせてくれるのかということに非常に私は疑念を感じるものです。
 どのようにお考えでしょう。
渡辺久丸君 先ほどの自衛艦の問題は、これはやはりどこの港に立ち寄ったかは軍事機密なんですね、それが事前にわかっちゃうと、例えばアルカイダに攻撃されるんじゃないかとか、そういう口実で。ですから、この軍事機密というのはかなりきついもので、これは当然、言論、報道機関を統制するというのは必ずつながりますよ。
 それで、実はここにアーミテージ報告書を持っているんですが、こういうことを言っています。日本の指導者は、機密情報保護法の立法化に向けて国民の支持を得なければならないと。要するに、軍機保護法を日本はつくらないと、アメリカが日本に情報を出しても、危なくてこれはどうしようもないというふうなことで、こういう法律をつくれと。これは、国会で福田官房長官が、軍機保護法を将来つくるようなことをちらっと示唆したこともあるんですね。
 ですから、そういうことになってきますと、言論機関は当然、あれは指定公共機関ですか、今度の法案ではそういうところで位置づけられていますから、これは言論統制というのは必ず始まりますよ。始まりますよというよりも、もう既に始まっているというふうに見た方が僕は正解じゃないかと思います。
今川委員 ありがとうございました。
 時間が来たようでありますので、最後に一言だけ。
 いわゆる戦後半世紀余り、我が国日本は、アジアとの関係においては、二度と戦争をしませんという平和憲法、プラス、先ほど申し上げたようなアジアの国々に対する経済協力、経済支援、この二つの面でこれだけ豊かで平和な今の日本があると思うんですね。だから、そういうアジアの国々に対する信頼関係を損なうような法律だとか行為だとかというのはやはり厳に慎みたいということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
瓦座長 これにて今川君の質疑は終了いたしました。
 次に、宇田川芳雄君。
宇田川委員 無所属の宇田川芳雄でございます。
 無所属だけではおわかりにならないと思いますが、この間まで21世紀クラブの代表をしておりました。
 私がこの公聴会の最後の発言者でございますので、大変長時間にわたって貴重な御意見をちょうだいしてまいりましたが、あとわずかでございますので、どうぞよろしく御指導をお願い申し上げたいと思います。
 私は、個人的には、今の国際環境の中で日本の立場というものを明確に打ち出すためにはやはり有事立法というものが、いろいろ御批判はあるでしょうが、御議論をいただいた上で有事立法というものをやはりしっかり持って、自分の国は自分で守るんだという独立国家としての意識をはっきりとすべきじゃないかな、そう思っております。外交上の問題も出ましたが、外交をきちんとやるためにも、やはり独立国家としての権威、責任というものをしっかり持っていなかったら外交努力も功を奏さないということでありますから、基本的には、この有事の法制はつくるべきだと思います。
 しかし、先ほどから有識者の、きょうの陳述者の先生方のお話を伺っておりまして、多分、ここへ来て、先生方からのお話はこういうことなんだろうなと想像をしていたとおりでありまして、それぞれのお立場で、それぞれの御意見をちょうだいしたところでございます。
 私ども、瓦委員長のもとでこの特別委員会を開催して、もうかなりの時間がたってきたんですが、国会の中でも、今先生方がお話しになったようないろいろな問題が出されました。出されて、それでは解決したかというと、なかなかそういうわけにはいかないというのが実態でありまして、今もって、先生方のお話の中で疑問点あるいは賛成する点、あるいは理解を深めなければいけない点がまだたくさん残っているわけであります。したがって、きょうの御陳述は、今後の国会の議論の中で大変大きな成果を上げさせてくれるんじゃないかと思います。また、そうしなければいけないと思っております。
 実は、先ほどから片山知事さんのお話、地方行政の中での問題、有事あるいは災害対策等についてお話を伺いながら思っていたんですが、私は東京都議会議員を六期やってまいりまして、どっちかというと地方行政寄りの人間でございまして、いつもそう思っているんですが、知事さんや、きょう尾道の市会議員の井上さんもお見えでございますが、地方行政の中でお考えになっていると、何でこんなにみんなにわからない法律が出てくるんだろうということになるだろうと思います。先ほど知事さんのお答えの中に、関心がないんですよというお話が期せずしてありましたけれども、そうだろうと思います。それではいけないわけです。
 今回、この国会でこの有事法が通ったとします、成立したとします。そして、すぐには起こらないかもしれないけれども、いつ武力抗争というのは起こるかわからないわけですから、武力抗争が起こったとします。起こったとした場合に、自衛隊についてはここに決められたとおりにぱあっと動くと思うんですが、国民が、それじゃというので一緒に腰を上げるかというと、ここがなかなか難しいところじゃないかなと私は思うんです。
 太平洋戦争のお話も出ましたけれども、あの太平洋戦争というのは軍閥が練りに練ってやっただけに、国民に、それはそれは行き届いた教育をやってきましたですよ。私どももその当時の若い者ですけれども、死ぬことは怖くなかった、どうせ死ぬのなら友達よりおくれをとりたくないというところまで、きちっとした教育をして国民に浸透させた。それがいいとか悪いとかは別としまして、やはり有事の大事なことは、国民がもっと理解しなければいけないんじゃないかなと思うんです。
 それでは、これからすぐに国民が理解するような方策を通じてやれよといってもなかなかできないと思いますが、これがここで通過したとしても、早く国民にこの点を理解させなければいけない。そのためには、都道府県を中心として区市町村、東京には区というところもあるものですから、区市町村などが、それぞれの自治会であるとか地域の団体を通じて指導をして、こういう形で持っていくんだよ、こういうことになったんだよ、だから地方の行政としても、あるいはそれぞれの地域の自治体としても理解して協力しようじゃないかという気持ちが沸き上がってこないと、もうこれは魂の入らない法律になってしまうということじゃないかと私は心配をしているわけであります。
 すぐには間に合いませんけれども、しかし、片山知事、後で井上さんにもお聞きするんですけれども、いわゆる知事の立場において、どうやったら住民の間にこういったことを理解させることができるか、国にこういうことをやるべきじゃないかという御注文をこの際出していただければありがたいなと私は思っております。
 そして同時に、井上市会議員さんには、一番身近な地域自治体である市という行政の中で、住民に対してこれを理解させるためには、一体、国が県を通じてどういう形でこれを協議してもらうのがいいんだろうか、そういうお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
片山善博君 今先生のお話を伺っていて、国民みんながこぞって何か臨戦態勢みたいになるのは、これはちょっとどうかなという気が私はするんです。むしろ、地方自治体、特に県とか市町村が、一たん有事の際には国民保護のために何をなすべきかということをしっかりとわきまえておくということがまず第一だろうと思います。
 しかし、おっしゃるとおり、自治体だけがわきまえていても国民の皆さんが全くというのではこれはいけませんので、それは適宜訓練をするということが有効だろうと私は思います。
 災害のときにも、防災訓練というのをやるんですけれども、年中行事みたいになってしまいかねないんです。私は三年前から、それではいけないというので、実は本当に真剣な訓練をやったんです。先ほど来ちょっと出ていた意見と関係するんですけれども、まさか地震なんか起きませんよ、特に鳥取県の西部なんて地震が起きたことないんだから、ありっこないよという意見が大勢だったんですけれども、でも、ひょっとしたらというので訓練もしたんです、それは自衛隊や消防や警察の皆さんと一緒に。そうしたら、案の定、訓練した二月後に起きてしまったんです。
 そのときに思いましたのは、ああ、訓練して本当によかったと思いました。それは我々の行政機関が、自分が何をなすべきかということがしっかり身についていましたし、それから周辺の関係の皆さんが、やはりそれなりの認識ができていた。では、県民、住民の皆さんがすべて知っていたかというと、それはありません。ですけれども、核になるところが知っていて、対応方針を過たなければ、住民の皆さんは協力をしていただけます。だから訓練ということだろうと思います。
 あとは、私はやはり最終的には、この問題というのは政治に対する信頼があるかどうかということだろうと思うんです。正直言って、今、本当に信頼を崩すようなことがぼつぼつ出ていますので、それは本当に皆さん方の力で、役所の問題点などはきちっと整序していただきたいと思うんです。
 やはり国民の信頼のためには情報公開というのが一番であります。その情報公開をめぐって今、国民の不信を招くようなことが起きているというのは、これは本当に悲しいことなんですね。絶対にああいうことがないようにしていただきたい。
 それから、本当にきちっと、政治家の皆さんも、それから中央官庁の皆さんにも、国民が信頼を寄せるような素地をつくっていただくということが、私は、この問題を国民の皆さんが広く認識をして、いざというときにはみんなで一致協力して被害を最小限にとどめようという、その力を合わせることにつながるんだろうと思います。ぜひ、そのことをお願い申し上げたいと思います。
井上文伸君 有事の際に、私の場合は市民にどのように徹底させるかということですが、有事にもいろいろ内容はあろうかと思います。
 災害的なものなら、今知事さんが言われたように、本当にまさに訓練以外に道はなかろうかと思います。
 私はもともと、議員になる前は尾道の消防の方におったわけですが、私がやめると同時に神戸の震災があったわけでございます。尾道からも、広島県からもかなりの応援部隊が集結したということもございますが、ああした大きな災害になりますと、今まで日本でもそう例はないわけでございますが、地方から応援に行ったところはなかなか思うようには行動がとれないということもありますし、またその中で、いろいろな反省点を私も聞いたわけです。
 ちょうどメディアの方もおられますけれども、六千人近く、ちょっと何人亡くなられたか人数を忘れましたけれども、あのときに、まだまだふだんなら助ける余地があったということを隊員が言っております。それから、悲鳴とか助けてほしいという言葉が相当なところでしておるんだけれども、上空のヘリコプターの音で全然聞き取れないんだと。これが一番捜すのに、相手の声を聞き取るのに時間がかかったというようなこともありますので、そういうことで、今度はいろいろな面での訓練も、そういう上空のヘリコプターの取材も含めた、いろいろな大がかりな訓練をこういう災害ならやっていかなければならぬのだと思います。
 それで、今片山先生が言われましたように、政治家の信頼が落ちておると。いろいろありますが、私も二、三回ほど国会の傍聴をさせていただいて、たまたまきのうもちょっと本会議を、三分か五分しか時間がなかったんですが、傍聴させていただいたんです。
 その都度私が一番気になるのは、きのうは盛んに一般の人も言われたですけれども、先生方が本会議のときにどういう態度をしておるか、上からみんな見ているんですよ。それで、きのう圧倒的に多かったのは、政治家がこれだけ態度が悪いとは思わなかったというのが出てきたんですよ。議長がいろいろなことを言われても全然聞こえぬのです。先生方も、何か知らぬけれども、メールの電話を持ってこういうふうに一生懸命している人がおる、うちわを持って隣と話をしておる人がおる。その雑談がきのうは特にすごかったということで、きのう観光客の方もかなり大勢傍聴されておるようでございますが、まあちょっとここからも、やはり日本の最高機関の国会議員があの程度ではなかなか教育の問題もできぬのだろうと思いますので、そういうことを含めて、政治家が信頼されるようにひとつやっていただきたいと思います。
 要らぬことを申しまして済みません。
宇田川委員 国会議員の立場で、今の問題についてはみんな拳々服膺しまして、これから気をつけるようにしますけれども。
 地方自治体の行政の方が、国の行政より取り組むことが早いんですね。もちろん、法律を凌駕した条例はできませんけれども、やはり動くことになったら自治体の方が早い。そういう行動力と知恵を私どもにまたこれからも遠慮なくお与えくださいますようお願いいたしまして、終わります。
 ありがとうございました。
瓦座長 これにて宇田川君の質疑は終了いたしました。
 これにて委員からの質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。
 また、この会議開催のために格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして心より感謝を申し上げ、御礼を申し上げます。きょうはありがとうございました。
 それでは、これにて散会いたします。
    午後五時三十五分散会
    ―――――――――――――
   派遣委員の新潟県における意見聴取に関する記録
一、期日
   平成十四年六月七日(金)
二、場所
   ハミングプラザVIP
三、意見を聴取した問題
   安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出)、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、安全保障基本法案(東祥三君外一名提出)及び非常事態対処基本法案(東祥三君外一名提出)について
四、出席者
 (1) 派遣委員
      座長 米田 建三君
         岩永 峯一君   森岡 正宏君
         山口 泰明君   桑原  豊君
         筒井 信隆君   上田  勇君
         工藤堅太郎君   木島日出夫君
         山口わか子君
 (2) 現地参加議員
        吉田六左エ門君
 (3) 意見陳述者
      新潟防衛懇話会会長   鈴木  廣君
      前滑川市長       澤田 壽朗君
      新潟国際情報大学専任講
      師           佐々木 寛君
      新潟県議会議員     志田 邦男君
      人づくり県民ネットワー
      ク幹事         佐々木 薫君
      新潟大学名誉教授    藤尾  彰君
      新潟大学法学部教授   小野坂 弘君
 (4) その他の出席者
      内閣官房内閣審議官   村田 保史君
      内閣官房内閣参事官   前田  哲君
      防衛庁防衛局長     守屋 武昌君
      外務省総合外交政策局安
      全保障政策課長     冨田 浩司君
     ――――◇―――――
    午後一時開議
米田座長 これより会議を開きます。
 私は、衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会派遣委員団団長の米田建三でございます。この会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様御承知のとおり、当委員会では、内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案並びに東祥三君外一名提出の安全保障基本法案及び非常事態対処基本法案の審査を行っているところでございます。
 当委員会といたしましては、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、御当地におきましてこのような会議を開催することといたしました。
 御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただき、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますよう、よろしくお願いをいたします。
 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。
 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々から、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をお一人十分程度お述べいただきました後、委員から質疑を行うことになっております。なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
 まず、派遣委員は、自由民主党の岩永峯一君、森岡正宏君、山口泰明君、民主党・無所属クラブの桑原豊君、筒井信隆君、公明党の上田勇君、自由党の工藤堅太郎君、日本共産党の木島日出夫君、社会民主党・市民連合の山口わか子君、以上でございます。
 なお、現地参加議員として、自由民主党の吉田六左エ門君が参加されております。
 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。
 新潟防衛懇話会会長鈴木廣君、前滑川市長澤田壽朗君、新潟国際情報大学専任講師佐々木寛君、新潟県議会議員志田邦男君、人づくり県民ネットワーク幹事佐々木薫君、新潟大学名誉教授藤尾彰君、新潟大学法学部教授小野坂弘君、以上七名の方々でございます。
 それでは、鈴木廣君から御意見をお述べいただきたいと思います。
 座ったままでどうぞ結構でございます。
鈴木廣君 新潟防衛懇話会会長の鈴木廣であります。
 初めに、有事法制関連三法案に対して、賛成の立場から意見を申し述べます。
 新潟県は、我が国の中央部日本海側に位置し、歴史的、経済的に大陸とも深い関係があって、しかも、極めて長い海岸線、その海岸線には、日本海を目指して流れる幾多の河川がございます。自然災害が起きやすく、一方、原発を含む重要な施設も多数存在し、新潟の安全は、首都圏ひいては我が国の安全保障にも直結しておるのであります。
 高田、新発田という明治以来の伝統を有する駐屯地や新潟地連など、県内の陸海空三自衛隊の存在は、県民の生活に対する安心と安定の最大の基盤であります。
 私は、長年、国防こそ国家にとって最も重要な機能であるとの認識に立ち、安保・防衛問題に関する県民の理解と防衛意識の高揚のため、新潟防衛懇話会を主宰してまいりましたが、特に有事法制の重要性と早期法制化は、長年訴え続けてきた大きなテーマであります。今般、こうして法案が国会に提出され、今国会中の成立に向けて審議されることは、まことに欣快至極であります。
 以下、有事法制の必要性に賛同し、今国会における早期成立を求める観点から、管見を提示します。
 有事法制は、主権国家として当然の法制でありまして、世界じゅうのいかなる国家においても、国家の緊急事態、特に侵略に備えての法制を整備していない国はないはずであります。もちろん我が国においても、自衛隊法を初め一定の法整備がなされていると理解しておりますが、これまで十分な対応がとられなかったことも事実であり、今まで整備されていなかったことを問題視すべきであります。
 世界における主要先進国の一員であり、自由・民主主義を標榜する我が国として、有事法制は当然備えていなければならない最も基本的な法制であります。また、これらの法制がきちんと整備できていることは、我が国に対する侵略の抑止につながるものであると思います。
 二十一世紀の脅威への速やかな備えです。
 先年、新潟沖合で発生した不審船事件、昨年九月の米国同時多発テロ、十二月の奄美沖不審船事件など、冷戦が終結したにもかかわらず、二十一世紀に入ってもなお国民の安全に対する脅威が増していることは、ここ新潟においても実感されるものであります。
 一部に、なぜ今ごろ有事法制かというような奇妙な意見があるようでありますが、新たな脅威は確実に高まってきており、これらに国家として有効に対応するための法制はできるだけ早く整備するべきであると思います。何も起きていないときに整備することが大切であります。
 国を守る自衛隊が、いざというときにその能力を十分に発揮できるよう、また、国民が戦争の被害から守られるために、平時、国民生活や社会が平常に機能しているときに、冷静な立場で有事、緊急時の対応について検討し、法律をつくるのは極めて重要であり、当然のことです。緊急時に整備すればよいという御意見もあるようでありますが、無責任であり、国家国民のことを真剣に考えていない。日本の常識は世界の非常識といつまでも評されていてはいかぬのであります。
 有事法制関連三法案に対しての評価であります。
 国防に対する国、地方自治体、国民の努力の一体化。
 国、地方自治体、国民が一体となって行わなければならない。今回の法律では、武力攻撃事態に対し、国、自治体、指定公共機関の責務及び国民の協力を明記することで、武力攻撃事態に対して自衛隊のみならず国全体で対処するべきことが明確にされており、評価できます。また、このような姿勢を明らかにすることは、国の主権と誇りを守る心構え、国民の国防、安全保障に関する意識高揚につながるものと期待しております。
 武力攻撃事態への対処の重要性。
 一部に、なぜ今ごろ武力攻撃事態に関する法制を整備するのかという議論があると聞いておりますが、我が国の存亡にかかわるような事態に、国家として総力を挙げて対処するための法制をまず整備することは当然と思います。
 仮に、目の前の脅威や事態に対応するための個別の法制を積み上げていったとした場合、これらの法制は不整合で場当たり的になる可能性が大きいと思います。我が国にとって最も深刻な武力攻撃事態への対処を主たる対象としておけば、それは、今後それを土台にしてさまざまな事態に発展させることは十分可能であると思います。
 今後の緊急事態対処、危機管理に関する法制整備の継続を約束しておられます。武力攻撃事態対処法には、今後の法整備へ二年間という期限を限定して設定しまして、残された課題についての立法化を法律の条文に担保していることは重要な点であります。
 今国会に提出された有事法制関連三法案を成立させることで終わることではなく、ひとしく重要な国民の生命財産の保護のための措置、自衛隊の円滑なる行動のため、米軍の行動円滑化のための措置の法整備を約束していることで、有事法制整備の継続性を約束していることを評価するものであります。
 新潟では、横田めぐみさんの拉致問題や先年の不審船事件など、さまざまな不安が県民の間にある。その意味で、テロや不審船など、武力攻撃事態以外のその他の緊急事態に対しても迅速的確な実施のための措置を講ずるよう規定されており、これに基づいて関係省庁等が適切な対応をとられることを評価します。
 今後への期待。
 国会における建設的議論と早期成立をお願いします。これまで申し述べたとおり、有事法制の整備は、国、国民にとって最も基本的かつ重要な法制であり、国会において党利党略を超えた建設的議論を深めていただき、努めて多くの賛同を得て成立させていただきたい。
 有事法制の整備は今でも遅いと認識すべきであって、先送りや廃案などは決して行うべきではない。今国会中に成立されるとの方針をいま一度確認され、努めて早期に成立させるよう期待します。できれば、二年以内と言わず、できるだけ早期に整備されるよう、強く要望するものであります。
 有事法制が有効に機能するための努力。
 法制の成立ですべてが終わるのではなく、むしろスタートラインと考えるべきで、自衛隊の行動が円滑に行われるために、また政府や地方自治体の活動が有効に機能するために、国民の安全確保や国民の協力を獲得することが大前提であります。
 有事法制の内容等について、国民に対してよく説明し、また、平素からしっかりと訓練することが重要であります。
 国防、安全保障問題に対する検討の継続。
 戦後半世紀を経て、また二十一世紀を迎え、我が国の平和と安全、また世界の平和と安定のために我が国が果たすべき役割は飛躍的に拡大しているのでありましょう。そして、これらの責任を果たすための法整備は十分であろうか。
 依然、自衛隊は軍隊かといったような論議を初め、集団的自衛権や海外における武力行使等の憲法問題、我が国の安全保障政策全体にかかわる安全保障基本法のような法制の必要性の是非、国家のためにすべてを捧げる自衛官の地位や処遇の問題など、安全保障、防衛政策にかかわる課題はいまだに山積しております。引き続き、活発な議論と国民全体の意思決定が必要であります。
 終わりに、冒頭にも述べたとおり、有事法制は主権国家として整備されていることが当然であるにもかかわらず、今まで十分でなかったことが問題であり、今、そのことを省みて整備に取り組んでいると思われるところ、政府・与党は早期法案成立に向けて全力を尽くしていただきたい。
 今や、世界は信じられないような速さで変化している。きのうのインクが乾かないうちに、我々は新しい歴史を新しいページに書き込まなければならないのであります。
 中央の議論を必ずしも十分に承知しているわけではありません、的の外れた内容もあったかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。
 改めて、公述人として、本有事法制関連三法案を支持し、今後とも応援してまいりたいと思います。終わり。
米田座長 ありがとうございました。
 次に、澤田壽朗君にお願いをいたします。
澤田壽朗君 隣の富山県の滑川市長を二月まで四期十六年間にわたってやってまいりまして、今はフリーの立場でございます。
 地方自治を今まで担当してまいりまして、やはり一番大事なのは、市民の安心と安全と申しますか、これの確保が、やはり市長として最大の関心事でございました。よく、福祉国家あるいは市民の福祉、福祉最優先ということを聞きますが、私は、最大の福祉は市民の安心と安全の確保にある、こう思っておるわけであります。
 私の町でも、かつて火災が起きて、痛ましい死亡事故等も何件も起きております。これは高齢者の方ですが、幾ら平素福祉に力を入れていても、安心と安全でない対処によって命を落とすというようなことがあれば、これは福祉も何もないという実感を持っております。そういう意味におきまして、国全体の最大の福祉は何かというと、国が安定をし、安心して安全に発展していく、これが最大の国の責務であると思います。したがいまして、私ども地方自治体を預かっておりましたときは、国と一緒になって国の安全を確保し、そして、日本の国民としてあるいは我が市民として安心して、安全に安定した生活が送れるかどうか、これが最大であろう、こう思ってやってきたわけであります。
 そこで、今までもう戦後五十七年たったわけであります。日本はこの間、いわゆる動乱は何にもなしに過ごしてきたというのは世界でもまれなることでありまして、ありがたいな、こう思っておるわけであります。これを逆に、五十七年間を昭和二十年、終戦の年からさかのぼって逆算いたしますと明治二十一年に当たります、一八八八年ですね。それからの五十七年間何が起きたかというと、日清戦争、北清事変、日露戦争、第一次大戦、満州事変、支那事変、第二次世界大戦、もう本当に戦乱多数ありました。ですから、同じ期間、戦後のこの五十七年間、本当に貴重な期間であると、もう実感をしております。
 だけれども、これは日本だけがこの平和を享受しておったわけでありまして、世界各地ではきょうも動乱が起きておるのは御承知のとおりであります。アジア、ヨーロッパ、アフリカ、中近東を問わず、至るところで動乱が起きておりますが、日本は五十七年間無事だった。本当にこれは珍しい。そこで、平和が続いておるので、とかく防衛問題、国の安全ということについてはなおざりにされてきておる傾向がなかったか。
 そこで、明治を振り返ってみますと、明治の時代の政治、外交、軍事、財政経済、これは見事に吻合しておったと思うわけであります。日清戦争の終戦処理を見ても、そのときの外交、財政、もうすばらしい協力であります。残念ながら、その後、政治と軍事は乖離をいたしました。そして、政治と軍事の乖離どころか陸海軍も統一性を失った、不統一であるという時代が続き、したがって、強力に統一された国家意思が確立されていたかどうかということについては、これは大きな反省事項であると思います。
 したがって、私は、これは私見でありますが、特に、明治憲法における統帥権の独立ということが非常におもしになっておりまして、そのために政治と軍事の協調、陸海軍の統一もよくできなかった、こう思います。したがって、あの明治憲法は、昭和の初年に本当は改定しておくべきじゃなかったかというのが私個人の考えであります。それで、あのときに、もっと国の総責任者のもとに国が一体となって方針を決め、行動できる体制をとっておったならば、日本の姿もまた変わっておったんじゃないかという感じがいたします。
 そこで、国の安全と国民の生命財産を守るということを先ほど申しましたが、安全を願う気持ちは非常にとうといわけでありまして、願望は限りなくあります。私どもも、平和で安定した、これが続けばいいということは常に思っておりますが、願望だけでは安全ということは保証の限りではございません。そこで、動乱が起きてからでは、もういわゆるつけ焼き刃、何とかを見て縄をなうようなことをやっていたのでは対処できないので、平穏のうちにおいてこそ最悪の事態を検討し、法律的にきちんと整備しておく必要がある、こう思います。
 きちんとした法体系のもとに、防衛体制を整備し、行動の基本を定めておくことこそシビリアンコントロールの最も大事なことであります。とかく枝葉末節なことでシビリアンコントロールがどうのこうのという話がよく出てまいりますが、私は、政治の最大の責任は、こういうことを平素きちんと決めておくのこそ最大の責任である、こう思います。シビリアンコントロールということはそういうことを言うのでありまして、政治が防衛について責任を持つ、そのためには、政治家も軍事に携わる者も、お互いの理解と協調、これをぜひお願いするものであります。
 先ほど、私は明治憲法の件で申しましたが、当時、統帥権のために、政治家は余り軍事について興味を持たなかった、したがって、余り研究していない、また、軍人は、とめられておったにもかかわらず政治に興味を持ち過ぎたというようなことが国を過った大きな原因になっているんじゃないか、こう思いますが、そういう意味におきまして、平素の政治、シビリアンコントロール、これこそ最大の、これは大事なことである、こう思いますので、よろしく国会の先生方にお願いしたい、こう思っております。
 災害でさえ、突然ぱっと起きて思いがけないことが襲ってきます。阪神大震災、それからこの辺でいいますと、日本海の油流出事故というのも突然です。阪神・淡路、大変だなというので、私はすぐ消防車を二台、急遽神戸まで応援に出しました。ところが、途中で交通は寸断、なかなかたどり着けない、ようやくたどり着いたけれども、残念ながら連絡手段がないんです。無線機を積ませておったけれども、全国波が配当してありませんでした。連絡の手段がないから、せっかく神戸近郊まで行っても長い時間ああいうところで空費をした、こういう経験がございます。後、直しましたけれども。
 こういったようなことの経験は、ああいうことが起きてからばたばたやっておっても間に合わないわけでありまして、その後、いわゆる消防庁では全国波の配当というようなことをきちんとやりまして、今はどこへでも消防車を出します。出して、すぐ連絡をとれるという体制になっておりますが、こういうことは平時にやっておかないと、もう動乱の中ではどうしようもない、手おくれになります。
 特に、防衛問題は、後から反省しておったのでは手おくれになります。終わった後から、ああ、しまった、ああ、やっておけばよかったと言ってもそれは終わりであります。もうそういうものは過ぎてしまったということになりますので、今のうちにやっておく必要がある、こう思います。
 それともう一つ、今、高齢化とともに青少年の減少が言われております。これからしばらくたちますと、昭和二十年あるいは三十年生まれの方々が主力になってまいりますと、防衛問題にいわゆる無経験といいますか、無経験ならいいんですが、無関心な方々がふえてくる。そういう方々が政治をやられてまいりますと、よきにつけ悪いにつけ、戦争を体験した世代がおったときはまだ、どういう事態が起きるとどうなるかということはある程度予測つきましたが、これからはそうはいかない、そう思います。
 したがって、今のうちにきちんとしておかなければ、とっさの場合、右往左往いたしまして、体制ができていなければかえって、突然何かやらなければいかぬということになりますと超法規的な行動がとられやすくなる、こう思います。何も決まっていないんですから、何かをやらなければ、もうとにかくやらなければいかぬ、となりますと、超法規的な行動に頼らざるを得ないということになってはぐあいが悪いわけでありまして、そのためには平素しっかり、安定しているときにこそ非常時の体制、体系を決めておくべきだ、こう思います。
 最後に、現在審議中の法律案につきましては、私は賛成をするものであります。政府案に賛成をいたしますので、今国会中にぜひとも成立をお願いするものであります。
 地方自治体としては、市民の安心と安全の確保が最も大事であります。このためには、当然、国のこの防衛対処方針には協力すべきものである、こう思います。市民も国民の一人であり、市町村といえども国と対立してある存在ではございません、国と一体でございますので、自治は十分やりますが、こういう国家非常の事態においては国も地方自治体も当然協力してしかるべきものということを申し上げたい、こう思います。
 以上であります。
米田座長 ありがとうございました。
 次に、佐々木寛君にお願いをいたします。
佐々木寛君 はい。ありがとうございます。
 私は、私が専門としている安全保障及び平和研究の観点から、当該法案に関する所見を幾つか述べようと思います。時間も限られており、個々の法案の細部にわたって検討することは物理的に不可能ですので、当該法案が持っている包括的かつ政治的な意味について、簡潔にかつ率直に議論させていただきたいと思います。
 まず、当該法案が持つ現実主義の不在、つまりリアリズムが欠如しているという問題について論じたいと思います。
 今までのお二方のお話ですと、まあ一種リアリズムに基づいてこの法案が必要だというお話でしたが、私は全く逆であるというふうに申し上げたいと思います。
 いわゆる有事関連法案の具体的な枠組みを規定する武力攻撃事態法案、この正式な名称というものは、御存じのとおり、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律となっております。しかし、結論から申し上げれば、この法案によって、我が国の平和及び、国及び国民の安全は、近い将来むしろ不安定かつ危機に見舞われる可能性があることを専門家として指摘しておきたいと思います。
 私が専門といたします安全保障理論の基本原則といたしまして、自国の安全というものをひたすら追求することが、むしろ近隣諸国の不安や警戒心を喚起し、かえって自国の安全を不安定なものにするという安全保障のジレンマと呼ばれる、いわば歴史的な法則が指摘できます。
 既に、当該法案の提出が近隣諸国の著しい不安感を高めていることは、個々の例を挙げるまでもありません。近年、日本政府が進めてきたPKO協力法及び周辺事態法、それからテロ対策特別措置法、この一連の整備は、近隣諸国にとって、今回の法案提出と全く無関係だとは映っていません。日本はいよいよ本格的に軍事行動を拡大する、あるいは戦争放棄の束縛から抜け出す、そして今回の法案は、平和憲法改正にまで至る決定的な一歩を踏み出したと見られています。これは各紙が報道するところであり、韓国、朝鮮及び中国の私の友人たちが述べるところであります。
 このことは、具体的には、韓国や中国政府のみならず、特にアメリカ政府によって明確に敵視されている北朝鮮政府の警戒心を著しく高めています。さきの福田官房長官による非核三原則の見直しを示唆する発言は、さらにこの警戒感に追い打ちをかけています。その意味で、本法案は、冷戦後、東アジアでさまざまな地域的協力関係が築かれようとしているまさにそのさなかに、むしろこの東アジアの対話ムードの建設を不可能にし、逆に軍事的な緊張をさらに高めてしまう可能性が高いというふうに考えられます。
 また、一例を挙げれば、特に新潟は世界最大の原子力発電所を抱えています。その大きさは、御存じのとおり、チェルノブイリの原発の比ではありません。事実上、軍事的にこれを故意に破壊することはそれほど難しくはないでしょう。多くの専門家が指摘するように、原子力発電所は脆弱性が極めて高い施設だと言えます。ですから、実は事が起こってしまってからでは全く遅いということが言えます。
 重要なことは、むしろ、今回のいわゆる有事法制化によって、政治的には明確な戦闘上の敵対国となってしまうということです。アメリカは、あれほど国内的にも国際的にも安全保障システムに力を注いできた国です。にもかかわらず、どうしてたびたびあのようなテロリズムに遭ってしまうのでしょうか。その背景を考える必要があります。そして、国民や市民の安全とは本当には何であるのかということを現実主義的に考える必要があると思われます。
 また、これら一連の法案の背景には、万一攻められたらどうするとか、万一こんなことが起こったらという非常事態あるいは例外状況の論理が貫徹しています。日本国憲法には緊急条項がない、だから整備しようということです。もちろん緊急に際しての法的な取り決めは不可欠ですが、これは政治学の基本ですけれども、例外状況の論理を強調することによって、その例外状況の論理が平時の論理を凌駕して押し殺してしまうというのは、我々が世界の歴史に学ぶところです。
 本法案では、有事において国民、地方自治体そのほか市民社会そのものが一方的に協力を要請されますが、それによって何よりもシビリアンコントロールや民主主義そのものが危機にさらされてしまいます。この法案は、全体主義の苦い経験を味わった我々の二十世紀の経験に対して、配慮が著しく欠けていると思われます。
 さらに、本法案では大規模軍事侵攻が前提となっていますが、それは時代錯誤であるだけでなく、一体そもそも、これは現実的に考えて、日本政府はその有事を主体的に判断できるのでしょうか。
 本法案では、武力攻撃事態と周辺事態との関連など、米軍の役割の不明確さが目につきますが、事実上、米国の軍事戦略との一体化が指摘されています。高度な情報技術に支えられ、あらゆる国境や地理的範疇を超えた現代戦争の論理、あるいは、今後世界じゅうで戦争を継続すると宣言し、既に有事化した米国の世界政策をつぶさに検討すれば、これら一連の法案整備によって日本がどのような戦争や危険に巻き込まれていくのかは、はっきりしています。
 最後に、本当の平和政策あるいは本当の現実主義についてお話ししたいと思います。
 一九四五年の敗戦以来、半世紀以上、単純な事実ですが、戦場と認められる地域において戦闘行為によって日本軍の兵士に殺された人間は、この地球上にたった一人もいません。合法化された殺人を半世紀以上にもわたって行わなかったのは日本国民の誇りであります。我々は、再び戦争加害者になるべきではありません。
 本当の安全あるいは平和構想というものは何でしょうか。日本国内の安全保障は国際的安全保障が前提であるというのは、何万、何十万もの死者の上に決意された日本国憲法がその根幹に据えているものであります。東アジア及び世界の平和環境を創出することこそが、真に現実主義的な平和・安全保障政策であるにもかかわらず、そのような展望も一切ないまま、なぜ今急いでこのような緊急法が要請されるのか、理由がわかりません。具体的な脅威が高まっているという発言、あるいはそういうようなメッセージは、冷静な分析に基づいてはいません。
 結論として、当該法案につきましては、日本及び国際社会の平和構想という理想主義はもちろんのこと、まさに現実主義が欠落しているという意味でも、極めて拙劣な法案であると断言することができると思います。
 以上、私からの意見陳述を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
米田座長 ありがとうございました。
 次に、志田邦男君にお願いをいたします。
志田邦男君 新潟県議会の志田邦男でございます。
 まず最初に、今回、いわゆる有事法制案に関しまして、新潟の地を選んでいただいたことに感謝を申し上げます。
 私は、グローバルな視点というより、日常、生活をしている新潟というローカルエリアからの視点で、法案に賛成の立場から意見を陳述させていただきます。
 御承知のように、新潟は、日本海という内海をかけ橋として、戦前から大陸とは活発な交流を展開してまいったところであります。歴史的なことは別にしまして、私が子供のころ、北朝鮮帰還事業が行われており、その光景は日常のような形で見ておりました。現在も、日本で唯一の北朝鮮定期航路が開かれております。また、ロシアとの関係も冷戦時代から、当然のことですが、活発に交流が行われてきました。大やけどを負ったロシアの少年が新潟市民の手によって救われるなど、新潟県民は、とかく暗い話題が先行する北東アジアの一員として、日本海を平和の海にという悲願を持って取り組んでおります。
 一方、このような地理的関係から、日本海を取り巻く国際情勢の動きというものも私たちの生活に密接につながっております。横田めぐみさん、蓮池さん等の拉致事件においても、私たち市民に親しまれている新潟、柏崎の庭先で起こった事件であります。また、テポドンの発射事件あるいは佐渡沖で日常茶飯事に起こっている不審船の行動、これらは県内の漁業者などに不安を投げております。
 ちなみに、冬季、新潟、佐渡の海岸に行きますと、大陸から大量の漂着物が打ち上げられております。その中には大変物騒なものもあります。さらに、新潟県には、先ほどもお話がありましたが、単独の発電所としては世界一大きな発電所、柏崎刈羽原子力発電所もあります。昨年のようなテロのときも、私たちは当然のようにすぐ、この原発、あるいは新潟東港にある日本でも有数のLNG基地、これは大丈夫なのか、このようにすぐ私たちは考えております。そのような状況を見てみますと、平和な日常生活というものが非常に脆弱な、また微妙な国際関係の中にあるということを私たち新潟県民は実感するものであります。
 そういう中で、今の日本は、万が一ではありますが、武力攻撃というような有事の際に、国家として最も基本的な責務、国民の生命財産を守れるのかということを考えざるを得ません。しかし、この最も基本的なことが実は全くできていないのではないかと驚いたのが、あの阪神大震災でした。災害のような緊急事態と今回想定されている有事とは違いますが、日本の危機管理を考える意味で、少し所感を述べさせていただきます。
 あのとき、テレビの画面を食い入るように見ながら、燃え盛る火災現場で、未曾有の非常事態であるとだれしもが考えているのに、情報、通信、救助、すべてにわたって行政機関の立ちおくれが目につきました。中でも、政府及び自衛隊の出動がおくれ、国民の批判が噴出しましたが、時の総理、村山総理がそのことに関して地震直後の一月二十日の本会議で発言した内容、正確を期して議事録どおり引用させてもらいますと、次のように答弁をしていました。
 何分初めての経験でもございますし、早朝の出来事でもございますから、幾多の混乱があったと思われまするけれども、いずれにいたしましても、防災上の危機管理体制の充実は極めて重要な課題であると認識をしておりまして、今回の経験にかんがみながら、今後見直すべき点は見直すこととして、危機管理体制の強化に努力をしてまいりたいと考えているところでございます。
この発言は、図らずも戦後の日本の危機管理の実態を言ったものと思います。初めてで、深夜、早朝であれば多少の混乱が許されるということでは、国家としての責任を放棄したと思われてもいたし方ないのではないでしょうか。
 自己完結の非常事態に対応する能力を持つ自衛隊、これは現在多くの国民が、合憲であり、必要と認めているわけですが、阪神大震災でも明らかになったように、有事の際にこれを迅速に動かし活用するルールがないのです。
 裏返しに言うならば、ルールがないままに武力攻撃という非常事態が発生したとき、国民の生命を守るという大義名分で何でも許されるということになりかねないとの危惧を持つものであります。これは、自衛隊の超法規的行動を許すことになり、シビリアンコントロールを侵害するものであります。したがって、私は、シビリアンコントロールの原則のもと、有事に対する法制化をするのが当然であると考えます。
 ただし、その際に問われるのが、戦前、不拡大方針を次々に覆して泥沼に入り込んだ日中戦争のようにならないのか、日本軍が自国民より軍そのものを守ろうとして起こした数々の悲劇、非常事態の名のもとに行われた報道管制、じゅうりんされた人権、これらに対する懸念はいまだ非常に強いのも事実であります。諸外国、国民の不安を払拭するような国家としての理念、哲学を明確に示した上で、第二次大戦の反省が生かされているのか、だれのための法制化なのか、これは厳しくチェックしなければならないと考えます。
 そのような観点から、今回提出された武力攻撃対処関連法案を見てみますと、第一に、シビリアンコントロールの原則ですが、戦前の軍部の独走を起こさないためにもこの原則の強化が必要と思いますが、今回の法案においては、国会承認事項が現行の自衛隊法より強化されており、承認事項として、特に対処基本方針に防衛出動と待機命令も記載される、あるいは社会経済分野や国民保護に関する対処措置も記載されるなど、武力攻撃事態対処の全般が国会承認事項となったことは評価できるものであります。
 第二に、人権の制限に関しても、一律、包括的に停止されるのではなく、個別の法律によって、しかも公正、適正な手続のもとで行うと規定しており、政府にフリーハンドを与えておりません。これについても評価できるものと考えます。
 そして、最も大事な武力攻撃に対しても、個別的自衛権の行使に限定して対処とするなど、現憲法を十分に尊重したものと考えます。一部に、この法案は戦争するための法整備と言う人もいますが、外部からの武力攻撃排除は、憲法においても国連憲章においても当然の権利として認められており、何ら問題はないものと思います。
 以上のような基本的な内容として、武力攻撃事態対処関連法案は、世界の常識からいっても何ら問題はない、このように私は考えます。
 しかしながら、この問題に関連して国会の質疑を聞いておりますと、まだわからない問題もあります。政府は、有事とは何か、周辺事態との関係、国民保護等、具体的なものをもっと明示すべきであります。また、各委員におかれましても、具体的、本質的な防衛論議を展開していただきたいと要望するものであります。
 最後になりますが、現実の世界にあって、防衛問題は厳しい認識を持って政策立案に当たらなければなりませんが、その根底に、憲法第九条の理念を持って世界の平和に貢献するという国家としての明確な意思がなければ、周辺諸国の誤解を招くおそれが多分にあり、また、有事の際に最も大事な国民の協力が得られません。
 しかしながら、最近の政府の発言の中には、非核三原則の変更と思われるような発言あり、防衛庁における情報公開要求者のリスト回覧など国民に対する裏切り行為ともいうべき失態あり、また、有事回避のための外交努力をする外務省においても、国民の信頼は皆無と言わざるを得ません。政府答弁にしても、国民に理解をしてもらうという姿勢に欠けているのではないかと思うこともたびたびであります。政府のこのような状況は、極めて残念であります。
 あってはならない武力攻撃への対処という国家の最も基本的な問題を論議するに当たり、私は、政府、国会として、世界の平和構築への強い姿勢を明確にしながらこの問題に対処していただきたい、このように要望をして、私の意見陳述とさせていただきます。
米田座長 ありがとうございました。
 次に、佐々木薫君にお願いをいたします。
佐々木薫君 私は、人づくり県民ネットワーク幹事佐々木薫です。
 まず、私は、国家の非常事態に対処する法整備は当然必要であると考えます。重要な法整備なので、まず第一歩を踏み入れることの勇気を評価する意味でも、今国会できちんとした理念を持った法律に仕上げてほしいと思います。これが私の結論で、冒頭はっきり申し上げておきます。
 我々国民は、国会議員が何かをなす、一歩を踏み出す、そういった勇気を称賛し、我々が選んだ議員を信じることが非常に肝要であります。
 昨今のマスコミの風潮、一部の世論においては、政治家をいこじにしてしまい、何もしない事なかれ主義者にしてしまう傾向があると言えます。国民側から見れば、為政者なのに何もしていないと映り、なさざる罪を問うべきだということになってしまいがちで、国民と政治家との間に不信感が漂い、ここ近年出てきた無党派、政治に無関心といった層をつくってしまう悪循環に陥ってしまうのではないでしょうか。これはまことに不幸なことであります。
 さて、本論に入ります。
 私は、国家の非常事態に対処する法整備は当然必要であると考えますが、政府が提出した今回の有事関連三法案は、やはりどうしても基本的な考え方が抜け落ちているのではないかと思えてなりません。そこのところが非常に残念でなりません。国家の一大事にも通ずることを考えるのですから、もっと、大枠から始まり、わかりやすく、基本がしっかりとした法案をお願いしたいところです。
 このような問題を考えようとするとき、この国の安全保障や危機管理を本当にやる気があるのかどうかということになります。そのとき、自衛隊を軍隊として認めるかどうかが重要であり、日本にとって一つの大きな分水嶺になってくると思います。
 政府・与党は、こうした肝心な問題を回避しつつ、国家安全保障のための法律を自衛隊法の延長線上でとらえ、とりあえずの用に備えようとしているのは見え見えで、ごまかしの域を脱し得ないと思わざるを得ません。結局は、行き着くところは憲法問題になってしまうわけです。ここを踏まえてやらない限り、しっかりとした非常事態に対処する法整備はできません。
 これまでの政府見解での憲法のままでは、何が有事なのかわかりません。政治家に、死んでも国民を守るんだという気概があれば、土地がどうだの、家が何だの、国民は言いません。日本国憲法において人権が守られているわけで、乱暴な言い方で恐縮ですが、国がなくなってしまえば、死んでしまえば、人権なんてあったもんじゃないということです。
 原始的な考え方ですが、憲法に何と書いてあろうが、国がなくなってしまえば当然そのもの、憲法自体もなくなってしまうわけで、よって、自分たち国民の生命財産を初め、ふるさとを守るために行動しなくてはならないのは当然です。それとも、我々国民にとって他国の政府がよいというのであれば別です。どうぞ統治してくださいませとなってしまいます。私は、客観的に考えて、日本人として生まれ、育ち、生活をしている今の自分を幸せに感じております。そういった意味で感謝もしております。
 今の日本は、子供料金で国際社会という列車に乗って、好き勝手に騒ぎ、人目を気にせず破廉恥な行為を意に介せずやっている子供に見立てることができます。皆さんも想像できるのではないでしょうか、東京の電車の中で等。権利偏重主義のなれの果てで、自分さえよければよいといった利己主義になってしまっているわけです。
 国家としての権能すべてを有するのが本来自然的であり、この権能を道義によって制御しつつ国家運営をしていくのが大人の国家と言えるのではないでしょうか。大人の国家になるには経済だけではだめだとも言えます。日本がこのまま子供の国家であり続ける限り、国際社会における平和貢献に対して責任ある地位はほど遠く、当然イニシアチブなどはとれません。
 有事法制の話になると、なぜ今ごろ、どこの国が攻めてくるのかなど、こうした問いを社会的地位の高い方が言ってしまう、こんなところにも戦後の日本の異常さがあります。私に言わせれば、重要法案だと言っておきながら、では、いつになったらちゃんとした法整備がなされるのでしょうかと言いたいです。
 そして、戦後日本の平和は、平和憲法、いわゆる日本国憲法のことです、この憲法のおかげであり、これを堅持することが将来も平和であると平気で言う人がいます。これもある意味、少し異常だと思います。
 戦後五十六年、日本が平和でやってこれたのは、憲法のおかげではありません。他国が日本国憲法どおりに行動してくれるなど、間違った幻想にしかすぎません。日本国憲法前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、」云々と書いてあります。日本人だけでなく、本来、この地球上に平和を希求しない民などいないはずはございません。それでも、争いは絶えることなく起きるのが現実世界であります。正直に現象をとらえるのであれば、日本の軍事的防衛力、すなわち自衛隊と日米同盟によるアメリカ軍の抑止力がこの日本の平和を守り保ってきたということは、ほぼ間違いない事実だと私は思います。
 国際政治とか国際社会は、このようなパワーポリティクス、力の枠組みです、力対力による世界であり、現実的力学によって動かされているのは事実であります。そのことをわかろうとしない、避けて通ろうとする文化人、知識人と言われる人がさももっともらしいことを言うから、多くの日本人の思考が幼稚化し、日本がおかしくなるのであります。
 自衛隊は戦力であり軍隊であるということを率直に正面から認めた上で、軍事力、自衛隊ですね、それに対して、国際スタンダードに則した責務権限と暴走しないことを担保するための法律が、現場で国防に従事する自衛隊員を初め国家治安に関係する方々が一番欲していることではないでしょうか。かつ、我々国民も求めておるところでございます。
 私は、国家の非常事態に対処するための法整備をするべきであるとの立場ですが、しっかりとしたものでなくては、やはり国民として不安で納得できません。国民保護などの規定は二年以内などと先延ばししているようですが、少しおかしいのではないかと思います。大人の国家にふさわしい、しっかりとした背骨を持った法律になるよう、かつ、いつの時代でも常にそのときの国会議員や国民が納得できるものに近づくよう、きちんとした法律をつくっていただきたいと願ってやみません。
 要は、我々日本人が日本をどうするかといった基本的哲学が大事であります。そして、諸外国からも称賛を浴び、参考となるようであれば、日本国民として誇りに思いますし、日本国憲法前文の意にかなうところであり、喜ばしいことであると思います。
 最後になりますが、一番重要な基本的理念をごまかさずにきちんと示し、真に国民の生命と財産を守るため、法整備を早急になされますようお願い申し上げて、意見表明とさせていただきます。
 どうも御清聴ありがとうございました。
米田座長 ありがとうございました。
 次に、藤尾彰君にお願いをいたします。
藤尾彰君 ただいま御紹介いただきました藤尾と申します。時間が大変限られていますので、周辺事態と武力攻撃事態との関係に絞って意見を述べさせていただきます。
 御承知のように、周辺事態法は、その第三条第一項第一号で、周辺事態に際して日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っているアメリカ合衆国の軍隊に対して自衛隊が物品及び役務の提供、便宜の供与その他の後方地域支援を行うとされています。
 しかし、自衛隊が行う後方地域支援活動は、周知のように、軍事用語ではロジスティックス、兵たん業務と言われ、アメリカの海兵隊教本は、兵たんは、軍事作戦を実行する攻撃の一部であり、一領域である。兵たんなしに、計画的で組織的な行動としての戦争は不可能である。兵たんなしに、軍事部隊を立ち上げたり、武装することはできない。兵たんなしには、部隊は現場にたどり着けない。兵たんなしには、兵器は弾薬なしになることであり、車両は燃料なしということであり、装備は故障し、使用されないままとなり、病人や傷病兵は治療のないまま放置され、前線部隊は食料や避難所や衣料なしに過ごさなければならない。兵たんは、戦争の不可欠な分離できない一部であると述べています。
 また、アメリカ海軍の海軍作戦法規便覧は、補給、輸送、通信などで敵国の戦争遂行に貢献する働きをしているものは、たとえ第三国の商船であっても攻撃対象となる。さらに、例えば、敵国の軍隊の補助艦としての行動をしている場合や、敵国の軍隊の情報システムに組み込まれているか、または、いずれにせよ敵国を支援している場合も攻撃対象となるというふうに述べております。
 周辺事態法が定める後方地域支援には、確かに、法文上は武力による威嚇または武力の行使は禁止されております。しかし、相手国からすれば、今御紹介いたしました海兵隊教本や海軍作戦法規便覧にもあるように、自衛隊が行う後方地域支援は、兵たん業務として、アメリカの行う軍事作戦と不可分一体の、分離できない構成部分とみなされ、これに対して武力攻撃がなされないという保障はありません。つまり、武力攻撃そのものが現実に加えられる可能性、武力攻撃が加えられるおそれが生じる可能性、武力攻撃が加えられることが予測される可能性、このいずれかが発生します。あるいは、相次いで発生します。
 そこで、武力攻撃が現実に加えられた場合に限って論を進めますと、それはまさに法案が言う武力攻撃事態そのものであり、これに対して我が国が武力を行使すれば、それはアメリカの軍事行動と一体となった共同作戦としての性質を帯びてくることになります。
 この場合、アメリカの軍事行動が自衛権の発動として適法とされる場合と、違法、不当な場合とを区別することが重要でないかと考えます。けだし、第二次大戦後アメリカが行ってきた軍事行動は、ベトナム戦争を筆頭に、グレナダ侵略、リビア空爆、パナマ侵攻、なぶり殺し戦争にも等しい今回のアフガン空爆等、その正当性に疑問符がつくものがほとんどであるからであります。
 さらに、ワシントン時間でこの六月一日、ブッシュ米大統領は、ウエストポイント陸軍士官学校の卒業式で、イラクを名指しすることこそしませんでしたが、テロとの闘いでは守りに回っては勝てない、脅威が現実化するまで待ったら待ち過ぎだと述べ、国際法上違法とされている先制攻撃を公然と肯定したことが報じられております。
 したがって、アメリカが自衛権の行使としての軍事行動に訴えるケースは極めて考えにくいわけですが、仮にそのような場合があったとして、このアメリカの軍事行動と一体化した日本の武力行使はどう評価されるでしょうか。この場合、我が国が現に攻撃されているわけですから、それは個別的自衛権の行使として適法であると言い切れるでしょうか。日本が文字どおり単独で行動している場合であれば、この議論、すなわち個別的自衛権の行使というこの議論も成り立ち得るかもしれませんが、アメリカと日本は互いに支え合って、共同防衛しているのであるから、やはり日本の行為は、政府が憲法上許されないとしている集団的自衛権の行使に当たるというべきではないかと考えます。
 問題は、このようなレアケースではなく、アメリカの軍事行動が違法、不当な場合であります。現にブッシュ米大統領は、ことし一月二十九日の一般教書演説で、イラン、イラク、北朝鮮を悪の枢軸と決めつけ、これに対する武力攻撃、しかも先制的な武力攻撃も辞さないことを公言し、現に、今、アメリカはイラク攻撃の準備を着々と進めていることがしばしばマスメディアによって伝えられております。
 日本がこれに対して後方地域支援を行うならば、既にこの後方地域支援そのこと自体が違法、不当な行為であると考えますが、さきにも述べましたように、相手国が我が国の後方地域支援を兵たん活動であるとして武力攻撃をしてきた場合、これはみずから招いた武力攻撃事態であり、一種の挑発であり、これに反撃を加える武力行使はアメリカの軍事行動と同様、およそ自衛の名に値せず、違法な武力の行使と断定せざるを得ないのではないかと考えます。
 日本が周辺国から侵略を受ける可能性はゼロに等しいほど小さいのに対して、アメリカの違法な軍事行動に、今申し上げましたような経過をたどって日本が違法な軍事行動に加わる可能性は、今回の武力攻撃事態関連三法案が成立するならば、一気に高まることが予想されます。まさに、これらの法案は、有事を招くまがまがしい法案であると言わなければなりません。
 日本国憲法は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と述べ、たとえ国を守るためであっても武力の行使を禁止しております。政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないように決意した者の一人として、アメリカの違法な戦争に加担することに道を開く武力攻撃事態関連三法案の廃案と、既に成立している周辺事態法の速やかな廃止を強く求めます。
 以上でございます。
米田座長 ありがとうございました。
 次に、小野坂弘君にお願いをいたします。
小野坂弘君 まず最初に申し上げておきたいことは、これまでの有事立法の議論は全く不十分であり、今回の公聴会の開催によって法案議決の要件が整ったとしてこれを強行することは、決して許されることではないということをまず申し上げたいと思います。
 今回の有事三法の内容と国会における有事立法の議論を見てみますと、すぐに個々の条文の議論に入ってしまって、いわゆる総論に当たる議論が極めて不十分であるというふうに思います。有事立法のような重大な案件の論じ方としては、全く不当なやり方であると思います。
 このようなやり方では、そもそも有事立法を今なぜ必要としているかという立法事実は何か、どのような基本的な方針のもとで有事立法を議論するのか、そもそも有事立法はやるべきなのか否か、日本国憲法を改正しないでやれるのか、今の政府でやるべきなのかというような重要な論点がすべて議論されずに素通りされてしまうからであります。
 私の結論は、一口で申し上げれば、憲法の改正をしない限りこの有事立法をすることは不可能であるという意見でございます。
 明治維新以来、戦前までの日本は、戦争準備体制と戦時体制の緊急国家でありました。国民は兵役の義務を負い、戒厳令、非常大権の規定がございました。しかし、日本国憲法は、そもそも平和的生存権を保障しており、憲法九条で戦争の放棄を規定しているのですから、兵役の義務はなく、戒厳令、非常大権の規定もありません。そもそも、今の日本は緊急国家ではないのであります。これは、決して憲法の欠陥ではなく、憲法の積極的な意思のあらわれなのです。
 したがって、この考え方を、憲法の基本的な構想を真正面から否定する今回の有事立法は、憲法を改正しない限りはすることができないというふうに思います。国が主役であるという考え方は、国際的にも国内的にも今や時代おくれであります。実態に合っていません。今や国の失態やまずい対応を市民レベルの活動によって乗り越えているというのが実態ではないでしょうか。
 私は、主として、有事立法を論ずる前提として、憲法と有事立法の関係について簡単に述べたいと思います。
 まず最初に、日本国憲法の性格であります。
 日本国憲法は、確かに日本の憲法であることは言うまでもありませんけれども、この憲法は、一七八九年のフランス人権宣言以来二百年、いや、それどころか一六八九年のイギリス権利章典以来三百年にわたる人類の貴重な法文化を体現しているものであります。このような人類の最も貴重な遺産に連なっている憲法というものを議論する場合に、このことを意識せずに日本国内の問題としてだけ論じているということが目立つのであります。
 一九九八年の国連人権委員会の第四回勧告文書に見られるように、日本は、残念ながら、人権という次元ではいまだ先進国と評価されておりません。その点で、このような有事立法をすることによってその懸念がさらに深まる。特に、アジア諸国において極めて懸念が高まっているということを申し上げなければならないと思います。
 国会における憲法の議論を見ていますと、憲法はまず第一に、国の形を決めるものであるというふうに主張されますが、これは大日本帝国憲法時代の憲法思想としては正しいですけれども、日本国憲法の考え方としては全くの誤解です。
 ドイツ語では、憲法はフェルファッスングスレヒトといいます。英語でいいますと、コンスティチューショナルローです。フェルファッスングあるいはコンスティチューションというのは、社会の基本的なあり方という意味で、社会の基本構想、これがフェルファッスングでありコンスティチューションなわけでありまして、したがって、憲法というものは社会の基本的なあり方、社会のあるべき姿を法律で定めたものであります。
 ところで、社会というのは人間関係のネットワークでありますから、したがって、社会の根本思想というのはあるべき人間関係、あるべき人間関係の姿というものであります。それを規定しているのが憲法なんですね。そして、その社会のあるべき姿を規定することによって、それが決まることによって、二次的に国のあり方が定まる、そういうふうに考えなければならないと思うわけであります。
 日本国憲法は、短いながらもいろいろな規定がございまして、これを統一的な形で理解することはなかなか難しいところがあるわけでありますが、私はこれを二つの原理で説明したいと思っております。
 一つは、小松茂夫さんが主張しております目的・手段原理であります。憲法は何のために制定されるのかというと、憲法の基本理念、すなわち平和主義、国民主権、基本的人権尊重主義、これを実現するために憲法は制定されるのであります。そして、それを実現するための手段として、国会、内閣、裁判所、自治体という政治組織がある、このように小松さんは理解するわけでございます。
 実は、これは日本国憲法、憲法学の上で立憲主義というふうに呼ばれてきたものでありまして、これは、大日本帝国憲法をつくるときにその憲法制定の中心人物でありました当時の枢密院議長、伊藤博文が、後で文部大臣になる森有礼の質問に対して答えている中で、このように憲法というものは国の権限を縛るためにつくるものなんだ、それでなければ憲法をつくる意味はないのだということを伊藤博文でさえもわかっているわけであります。
 それで、もう一つは、松下圭一法政大学教授が言われていることでございますが、松下さんは次のように申しております。国、自治体、市民というトップダウンの憲法イメージ、これに基づく国家法人説というものは全くの誤りである。そのような考え方は、国家の統治法あるいは国家の基本法として上から国民を治めるという、そういうイメージで憲法を考えるわけでありますけれども、これは全くの間違いである。現在の日本国憲法はそうではなくて、市民、自治体、国家という形でボトムアップの考え方で考えなきゃいけない。個人の自由、市民自治から出発して、それで自治体、国というふうに考えなきゃいけない、こういうふうに松下さんは言われるわけでありまして、これを松下さんは機構信託原理というふうに言っておられます。それで、この考え方は、地方自治法の直接請求権という形で実現しているわけであります。
 今回の有事立法は、まさしくこのような方向に真正面から挑戦するものであって、認められません。そもそも、自治体にさえも一切の相談をしていないわけです。先ほど冒頭に申しましたように、憲法を改正しなければ到底このような立法をすることはできないというのが私の考えでございます。
 小松さんや松下さんの指摘は、まことに適切であると思います。憲法は、前文において平和的生存権を規定しております。保障しております。それを具体的に規定したのは憲法九条なわけでございまして、このような憲法九条というものは、私の外国で留学した経験によりますと、非常に多くの人によって、将来の憲法のあり方として非常に正しいものだ、これは見本にしなければならないというふうに言われたことが何回もございます。日本は世界に誇るべき憲法九条というのを持っている、そういうふうに皆さん申しておられます。例えば、中国の若者は日本が右傾化しているのではないかということを非常に心配しているわけでございます。
 不審船や北朝鮮のミサイル実験を理由として、国民の意識が有事立法に向かって肯定的になってきているというふうに主張されます。今回の有事立法では、それらの問題に対する対応策は後回しにされて、自衛隊が武力の行使を行う事態についての立法が出されてきたわけであります。これは全く唐突であり、一体、不審船やミサイル実験のほかに今このような有事立法をしなければならない立法事実というのがどこにあるのか。どこの国がいつどこに攻めてくるのかということが、提案理由を読んでもさっぱり理解できないのであります。
 このように重大な法律を制定するに当たって、備えあれば憂いなしということわざで済ませてしまうというのはとんでもない話だというふうに思うわけであります。もし本当に国民を保護するための提案というのであれば、そのような具体的な国民の保護法案と一緒に提案すべきであり、今回のような有事三法を先行させるべきではないというふうに思うわけであります。
 国民が現在政府に対して切実に望んでいるのは、我が国の構造改革と景気回復であり、近未来の社会、国家の姿を明確に素描することだと思います。政治家と金をめぐる不祥事は後を絶たず、政府の本格的な対応策も示されておりません。政治家が自分の出処進退をみずから決めるということができるなどと、だれも国民は信じておりません。
 地下鉄サリン事件、阪神・淡路大震災、九・一一テロ事件、先日の瀋陽の事件、そして防衛庁の情報開示をめぐる事件、あるいは核兵器発言というふうに続いてまいりましたけれども、我が国の危機管理能力のなさと人権感覚のなさはだれの目にも明らかであります。そもそも、サリンの被害者五千人に対するちゃんとした対応策さえもとられていません。政策の優先順位のつけ方が間違っているのではないかというふうに思うわけであります。
 今回配られました参考資料第一号を読みますと、一九八〇年代と最近の答弁の断絶が余りに目立ちます。最近の発言は、あいまいで、中身に乏しく、軽量で、切迫感が感じられません。
 私は、次のような吉本隆明さんの発言に賛成です。これは、朝日新聞の六月二日の朝刊に出ていたものであります。「戦争を知らない戦後生まれの幸運な国民が日本の大部分を占めるようになった現在、それを幸運の極みだと思わないで、「有事」などというあいまいな言葉で、戦争状態や戦闘状態を空想し始めた」小泉内閣の退化。「私は何の役にも立たない、そんな架空の論議よりも、現在の平和を胸いっぱいに享受した方がいいと思う。」私は、この吉本隆明さんの発言に全く賛成であります。
 今回の有事三法の提案は、その手続及び内容の両面において全く不当なものであり、廃案にすべきであると思います。
 以上、私の意見を申し上げました。
米田座長 ありがとうございました。
 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
米田座長 これより委員からの質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森岡正宏君。
森岡委員 私は、自由民主党の森岡正宏であります。
 先ほど来、七名の公述人の方々から、有事法制の必要性、また反対論、御意見をいただきました。しかし、私は、敬意を表して聞く人もあれば、また、反対しているのは大学の先生ばかり、この実態も拝見いたしまして、恐ろしい気がするわけでございます。日本の教育界、一体どうなっているんだろうかなと思わざるを得ないわけでございます。
 私は、先日、元朝鮮総連の中央本部の幹部であった韓光熙という人が書いた「わが朝鮮総連の罪と罰」という本を読みました。日本を舞台に、戦後何十年も北朝鮮に人やお金を送っておったという実態、また、韓国のスパイ工作など驚くべき実態が次々と浮かび上がっていく中で、新潟がその拠点であったということが描かれているわけでございます。
 全国各地のパチンコ業界とか商工関係者から集めた十億、二十億というような巨額の資金を朝鮮総連中央本部の新潟出張所に集めて、そして目立たないように二、三千万円を小さな紙袋に小分けして、そして親族訪問などで北朝鮮へ渡る同胞者に持たせておった。彼らは中に何が入っているのかわからない、そんな状態で運ばせておった。外為法では五百万円以上の現金の持ち出しは届け出が必要ということになっているのに、税関員に接待などで手懐けておいて、そして全く手荷物検査などなしに、そうして北朝鮮へ運ばれておったということが描かれているわけでございます。万景峰号というんですか、マンギョンボンに何十回と乗せました、こう書いてある。また、北朝鮮工作船を利用して密入国また密出国できるように、日本海沿岸にこの方は三十八カ所も接岸ポイントをつくった、それが今も使われているというようなことが描かれていまして、私は大変ショックを受けたわけでございます。
 新潟は、北朝鮮との玄関口であること、また先ほど来お話ございましたように、横田めぐみさんらの拉致事件が発生した場所である、そして、さらには新潟沖合で不審船事件が発生したこと、そういうことを考えますと、新潟県民は、国民の安全とかまた安全保障、防衛について非常に関心を持っておられるだろうと思いますと同時に、不安も持っておられるんじゃないかなとお察しするわけでございます。陸海空の自衛隊員二千四百名が配備されておるということも聞いておりますし、隣には石川県、小松基地がある、そして佐渡にはレーダーサイトもある、そして原子力発電所も持っておる。こういう新潟県は、非常に日本の安全保障上大変重要な場所だと思うわけでございます。
 それでありますだけに、私は、幾ら法律を整備しても、今日本に一番欠けているのは、みずからの国は自分たちの手で守るんですよという気概とか意識、それじゃないかなと思うわけでございまして、有事に際してどうするという訓練も日ごろ行われておりませんし、そんなことを一番心配しているわけでございます。
 まず鈴木さんに伺いたいわけでございますけれども、こういう防衛とか安全保障についての県民の意識の高まり、新潟ではどのくらいか、どの程度高まりがあるか。今回有事法制の法案が提出されて、県民の間にはいろいろ議論もあるかと思いますけれども、どんなふうな関心をお持ちになっているか、ちょっと御感想を簡潔に教えていただきたいと思います。
鈴木廣君 ただいま私もいろいろ拝聴しておりまして、驚いている。まさに王陽明が言うたように、山中の賊は破るにやすく心中の賊を破るはかたし、まことにこれは大変な話だなと思いました。
 先生のお尋ねでございますが、やはり新潟県民は極めて防衛意識が高いのではないかと思います。県民みんなが大学の先生ではございません。そういうことで、有事法制、今回のこの法制は、皆さん待っていたと思いますよ、何十年も。何十年も待っていた。これは先生、政治家の怠慢もありますよ。そう思いますが、ぜひともそういう気持ちが強いということは御理解いただいてよろしゅうございます。
 それから、先生が先ほどおっしゃった、三十億北鮮へ送ったとか、あれはたしか私も「諸君!」で見たような気がします。
 以上であります。
森岡委員 今おっしゃったように、私も国会議員の秘書などをやっておったものですから、長い間日本の政治の動きを見ておりまして、二、三十年前だったら憲法論議さえ国会でできなかった、ようやくこれ、小泉政権になりまして有事法制の法案が国会に出されるようになったわけでございまして、隔世の感があると同時に非常に感慨深いものがあるわけでございます。
 私は、ぜひこの法案を通したいものだという立場から質問をするわけでございますけれども、先ほど来いろいろな先生方からお話ございましたけれども、米ソ両大国の冷戦時代が終わって、これで世界じゅうは平和になるのかな、こう思ったときもありました。しかし、残念ながら、その力の均衡がなくなると、あちこちで、世界じゅうで地域紛争や戦争が起こった。そして、その力の均衡があったときよりもまだひどい状態が現在なお続いているということでありまして、軍事力を持つことは戦争をやることじゃなしに戦争の抑止力になるんだということを、ぜひ国民の皆さん方にわかってほしいなと思いながら、私も審議に加わっておるわけでございます。
 私、たまたまけさ、東京都内のJRの駅前で、共産党の区議会議員でございましたけれども、こういう赤旗の号外を配りながら演説しているのを見ました。それで私もこの号外をもらったわけでございますが、そこには、海外で武力を行使するための法律だ、国民の自由と権利を制限する法律だ、罰則までつけて戦争協力を強制する、また、憲法無視の有事法制、こういう、ネガティブキャンペーンになるこういう言葉がずらりと並んでいるような、まことに私は、国民をミスリードするパンフレットだなと思いながら車中で拝見しながら来たわけでございまして、私は、日本国民の生命や財産を守る法律なんだ、そして戦争を抑止するための法律なんだという思いで一生懸命国会で審議に加わっているわけでございますけれども、こういう、今回の有事法制が戦争法だとかアメリカに協力するための法律だとか、そういうことを言う人たちに対しまして、鈴木さんはどんなふうな感想をお持ちでしょうか。
鈴木廣君 やはりそういう人がおいでになるんだなときょう初めてわかりました。
 大体、日米安保条約もきちっとございますし、今回のこの武力攻撃に対しというのは、我が国が武力攻撃を受けた場合でありまして、何にも米国の戦争に協力する戦争協力法ではないと思いますね。
 それから、憲法九条が世界の人たちから理想だと言われている、自分たちもそういう憲法を持ちたいというような気持ちがあって、一体どの国がそういうふうに憲法を変えた国があるでしょうかね。私はそれはわからぬ。やはり自分の国は自分で守るということが第一だと思います。
 一九九〇年八月二日、あのクウェートへサダム・フセインが侵攻して侵略しましたね。ああいうクウェートになりたいのか、真っ当な民主主義の国として、国民の生命と身体と財産と、そして何よりも大切な人権を守っていく国になりたいのか、その辺の御判断をしていただきたいと思いますね。
 私は、ぜひとも先生にこの法案を通していただきたい。そして、少しでも早く新潟県民、国民の心を安らかにしていただきたい。
 以上であります。
森岡委員 先ほど、佐々木寛公述人が、北朝鮮の警戒感を著しく高めることになるんだ、この有事法制をつくること自体、明確に敵対国にしてしまうというようなことをおっしゃったと思います。
 私は、テポドンや不審船がやってくることを放置していいんだろうか、どう思っておられるんだろうか。また、中国から調査船と称するものが、日本海、日本の周辺をしょっちゅう動き回っている、そして、毎年毎年、中国は十年以上も二けた台の軍事の増強を続けております。そして、北朝鮮からは、あの瀋陽の事件でも見られますように、亡命者が後を絶たない、そんな状態になっている。この東アジアは世界の火薬庫だとまで言われている。それなのに、日本は何もしないで、朝鮮半島や中国からの脅威に対して何もしないでいいんだろうか。
 私は、周辺の国々がそれぞれ備えを持っておるのに、日本国だけが丸腰の状態でいること、これは断じて許してはならない、そんなふうに思うわけでございまして、私は、そういう意味で、先ほど来大学の先生方がいろいろ、有事法制は必要ないんだ、こうおっしゃった、どうにも理解ができないわけでございまして、こういう事態をそれぞれ、佐々木寛公述人、そして藤尾彰公述人、小野坂弘公述人、本当にそれぞれ一分間ぐらいで私の質問に対して答えていただけませんでしょうか。
佐々木寛君 一分間ということで、難しいんですけれども、ぜひ森岡先生にはうちの大学に来てもらって講義を聞いていただきたいと思うのですけれども、もう一つお願いは、「わが朝鮮総連の罪と罰」という本について言及されましたが、ぜひ森岡先生には我が自民党の罪と罰という本も書いていただきたいというふうに思っています。
 冗談はさておいて、冗談で三十秒過ぎてしまいましたが、そういう脅威があるということですね。その脅威というものが、一つ指摘できることは、こういった重要関連法案が通るときに限って不審船が登場してきたりテポドンが登場してくるのはなぜかというのは、前から私、専門家として非常に不思議に思うので、むしろ森岡先生に教えていただきたいと思うのですけれども、それのみならず、具体的に脅威から守るということが目的であれば、今回の法案は、先ほど私が述べたように、全く国民や新潟県民の安全を守るということに直結していないということを先ほどから私は申し上げていたわけです。
 一分来てしまいましたので、終わりにしたいと思います。
藤尾彰君 有事法制を推進される方々は、万々々が一ということをよくおっしゃるわけですけれども、万々々が一、これは、万を三つとしますと、零コンマでいうとゼロが十一つくわけなんですね。これはゼロに等しいということじゃないでしょうか。ところが、ゼロではない。だから、ゼロではないということでもう疑心暗鬼に陥るというのか、非常に後ろ向きの、視野をだんだん狭くしていく。もっと我々の前に、前方に向かって、こういう状況をつくっていくんだといった、そういう積極性が足りないんじゃないか、僕はそういうふうに考えております。
 以上です。
小野坂弘君 質問することが許されておりませんので申し上げたいと思いますけれども、まず、どこの国が一体どういう手段で攻めてくるのかということをはっきりさせていただきたいということです。
 それから、現行の法律で申しますと、警察法、自衛隊法、災害基本法、大規模地震特別措置法、こういう法律で既に有事の体制というのはかなり整っているわけでございまして、その法律を十分に使うことによって対応することは可能であるというふうに考えております。
 以上です。
森岡委員 今の御答弁、私には不満でございますけれども、次の質問に移りたいと思います。
 国民の生命財産の安全確保について、民間防衛の重要性が論じられているわけでございまして、澤田公述人に伺いたいと思うのです。
 国、地方公共団体、国民が一丸となってこの武力攻撃事態に対処することが今回の法律に明記されています。しかし、自衛隊以外の、消防、海上保安庁、警察、こういうところの権限などにほとんど触れられていません。また、県と市町村がどのように役割分担するのか、これも今回の法律にはほとんど入っていないわけです。
 一昨日、鳥取県の知事が、やはり地方公聴会で、国が内閣として一元的、一体的に対応するのと同じく、地方レベルでも一元的に対応できる仕組みをつくってもらいたい、こうおっしゃっているわけでございます。国と市町村、知事と各首長との関係、消防は市町村レベル、警察は公安委員会が独立的に指揮しているものだから知事は統括できない。権限と役割分担について、こういう不安を鳥取県の片山知事が披瀝されたわけでございます。
 市長さんを御経験の澤田公述人に、この県と市町村の役割、そして警察や消防、こういうところの権限、この辺についての御感想を簡潔にお答えいただけませんでしょうか。
澤田壽朗君 今お尋ねの件でございますが、はっきり言いまして、法制的に県知事と市町村長、いわゆる上下関係で、非常事態、災害でも同じですが、いわゆる指揮命令という形にはなっておりません。それから、警察、消防も協力関係で、もちろん消防は市町村で持っておりますので、いざというときには、防災上は当然市長が権限を持って動かします。
 ただ、こういう今ここで問題になっておりますような非常事態に、これは全然法制的には、使命も責任も明文の規定はないんですね。市町村が自衛隊に対して協力するのは、今、募集に協力するというのと、あとは、災害があったときに災害派遣を県知事を通じて要請する、それの第一次初動をとるというだけでありまして、実際の自衛隊の災害派遣出動は知事の権限でやられます。ですから、そういった点で、この間の神戸の災害を見ていても、そこらが非常にもたもたしておったために、準備はできていたんだけれども自衛隊は命令がないから出られないというような事態もあったようでありまして、そういった点は平時でもあったので、今回まず整備されたと思います。
 今、問題になっておりますようなことにつきまして、市民は、もちろんいろいろな意見がありますから、嫌だと言う方もおられるでしょうけれども、私の感じでは、相当多数の方は、いざというときには我々も何かやろうという気概に燃えておる方が大部分だと思います。そういったときに、適切なる法整備、そして体系、組織を設定していただくというのは、これは大事なことだと思います。それができたからといって、やみくもに、一生懸命農業をやっている人を、防衛のために海外へ行ってやってくれなんということは、それはどこの市町村だってそんなことは言いません。また、できるわけもないし。
 ただ、そういった態勢になったときに、土地をそこに提供してくれとか、宿泊のあっせんを頼むとか、食料のあれを頼むとか、そういったときに協力しましょうということは、当然私はやるだろうと思いますが、そこに必ずあと、いわゆる補償とかいろいろな問題がつきますから、そこらの関係を平時のうちに明確に法制的に整備していただくべきだと思います。そうすればできると思います。
森岡委員 ありがとうございます。
 私は、今回の法律、成立がおくれればおくれるほど、国民の防衛とか安全保障に対する不安が消えないと思うんですね。
 先ほど来、七名の方のお話を伺って、私は、人づくり県民ネットワークの佐々木薫さんのお話が一番私にはぴったりと来ました。しかし、今の政治の状況の中では、小泉総理がおっしゃっているような、ああいう立場で、今のような審議の仕方しかしようがないのかなというふうに思いながら、自衛隊は軍隊でないんだという立場をとりながらも有事法制が必要なんだというところで今議論しているわけでございます。
 たとえ五十点と言われようとも、早くこの法律を成立させなければならない。海外からも、日本にはまだそんな法律ができていないのかという不安を持たれているということも伺っております。
 私は、そういった立場で私たち自由民主党の議員、頑張ってまいりたいと思いますので、新潟県民の皆さん方にもぜひ御協力いただきたいことをお願いいたしまして、時間が参りましたので、終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
米田座長 これにて森岡君の質疑は終了いたしました。
 次に、筒井信隆君。
筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。
 外国からの武力攻撃の可能性、将来も絶対ない、一〇〇%ないとはだれも断言できません。ほんの少しでもその可能性がある、そして国民もそう思っているとすれば、私は、やはりそれに対する自衛隊が必要だ、そして自衛隊が行動する条件あるいは範囲を決める有事法制も必要だ、こう思っております。しかし、その自衛隊も有事法制も必要なんですが、一回も発動されない、宝の持ちぐされに終わるというのが一番理想的だ、そういう点が一つ。だから、それを一回も発動しないという方向性での努力を最優先しなければいけないというふうに思っています。
 それともう一つは、その有事法制はまさに非常事態における法律でございまして、国民の権利を制約するし、いろいろな点で大きな問題を生ずるわけでございますから、厳密、厳格でなきゃいかぬ。しかし、今度出された政府の提案というのは、もうあいまい、いいかげん、余りにも過ぎる。これはもう絶対に反対しなければいけない。この有事法制があいまいでいいかげん過ぎて、だれが一番困るか。国民が困るんですよ。しかし、それと同時に自衛隊が一番困るんですよ、当事者が。こんなあいまいな、こんな法律でもって、自分たちの行動さえもいろいろな矛盾が生じてくる。だから、国民のためには絶対にこの法律を私は変えなきゃいかぬと思いますし、自衛隊のためにも、この法律を通したらやはり間違いですよ。
 その一つの例として、私ちょっとお聞きしたいんですが、今度の法律で、武力攻撃事態とはいかなる場合か、これが最大の問題です。そして、武力攻撃事態は、外国からの武力攻撃があったときに認定する、こうなっています。我が国領域における武力攻撃に限っていないんですよ。しかし安保条約は、我が国領域における武力攻撃に限って共同防衛行動をするとなっているんです。全然安保条約と、だから、この点が違うんです。
 その結果、どういう事態が生じてくるか。日本の国にある米軍基地に対して攻撃があった場合には、これは我が国領域における武力攻撃ですから、武力攻撃事態の認定があって、いろいろな準備をする。周辺事態でもって外国の領域に、あるいはテロ特措法で、遠い外国の領域でもって米軍の支援行動をやっている自衛隊に対して武力攻撃があった、これも武力攻撃事態になるんですよ、我が国領域における武力攻撃に限っていないから。
 しかし、外国の領域における武力攻撃が我が自衛隊に対してあって、武力攻撃事態と認定した、そうした場合、どうなるか。その場合には、その遠い外国でもって自衛隊が武力攻撃するんですよ。武力でも反撃するんですよ。しかし、それは安保条約における条件になっていませんから、単独で行動しなきゃだめなんですよ。アメリカの周辺事態における協力関係をとっている最中に武力攻撃された。そのときに、武力攻撃事態と認定し得る可能性がある。そして、それはアメリカ軍とは全然別個でやらなきゃいかぬ。一緒に共同防衛行動をやったら安保条約と矛盾することになりますから。
 だから、まず、私は、この武力攻撃事態の定義自体が完全に広過ぎる、間違っている、我が国領域における武力攻撃に限って武力攻撃事態と認定すべきだ、こう思うわけです。この点を、先ほど明確に今度の政府法案に賛成と言われた方が三人おられます。鈴木さんと澤田さんと志田さんでしたか。武力攻撃事態の認定が行われるのは我が国領域における武力攻撃に限るべきだと私は思うんですが、そういうふうに訂正すべきじゃないですか。その点、どうですか、お三人の方。
鈴木廣君 それは含まれているんじゃないんでしょうかね、既に。我が国が外部から武力攻撃を受けた場合でありますから。アメリカが受けた場合じゃない、そういう意味の武力攻撃ですね。
 それから、先生ちょっと、攻撃をされて初めて武力攻撃というようなお話かと思いましたが、この対処法では、予測とかおそれという、段階的なものがございますね。だから、よくできていると思いますよ、私は。
 それから、完璧なものなんかできない。これはもう時間をかけてやっていく、二年間といって継続してやってくださるというんだから、これは先生方にお願いしておきますよ。何しろ、基本はきちっとお願いしますよ。
澤田壽朗君 いや、同じですね。今、ペルシャ湾まで行って、やられたからといって即活動するということは考えていないんじゃないかと思います。我が国に対するものですが。
志田邦男君 これまでの日本の防衛というものがずっとやられてきた経緯というのが、順番が全く逆だなと思うんですね。いろいろ今まで、安保条約があった、周辺事態があった。ところが、本体の日本そのものの有事の方、この基本はどうなるのかということが、やっと今ごろ出てきた。ですから、今まで既に出てきたものと、さまざまな面でどう調整するのかということ、これは私としても非常に関心があります。
 したがいまして、まず今回の問題、既にあるもの、これらを一たん整理した上で、本当に最も基本的な、日本が攻撃された場合、あるいはおそれ、予測、いろいろありますけれども、その原点からまずきちっと整理をしていただきたい。それを今後の法律の審議の中でやれば、これは十分できると思います。
 それで、一つだけ言いますと、今回の法制案というものはあくまでも基本法的なものである、やはり枠というものを定めた上で、細部にわたっての調整をする今後の国会の審議というものをお願いしたい、このように思います。
筒井委員 武力攻撃事態の認定の場合を我が国領域における武力攻撃に限っておりませんから、この地球上どこでも、自衛隊の艦船や何かに攻撃を受けた場合には、もう武力攻撃事態で戦争準備するということになるんです。これが余りにも広過ぎて、今までの日本の安全保障構想、体制からもう飛躍的に質を変えちゃう。極めてその点で私は危険な法律だと思っていますので、聞いている。
 それで、同じような条件であるドイツにおいては、ドイツ連邦の領域における武力攻撃に限って有事の事態と、はっきりもう法律で決めているんです。この点で私はまず、こんな地球上どこでも武力行使ができるような、それを認めるような法律、しかもそれが今度は、日本の場合には米軍との共同防衛が基本なんですよ、日本の防衛行動は。自衛隊もそれに乗って、前提にしてつくられているんですよ。だけれども、領域外においては、日本が単独で行動しなきゃいかぬという、こんなめちゃくちゃな法律を認めるわけにはいかないと思うんですね。
 それからもう一点、大きな問題点は、武力攻撃の発生、おそれ、それに予測まで含めた点ですよ。予測まで含めてしまった結果、おそれと予測はどう区別するんだ。物すごく広がっちゃった。それで、防衛庁は今まで二十五年間にわたってこの有事法制の研究をしてきましたが、防衛庁の研究じゃ、有事概念ははっきりおそれまで、防衛出動の命令、下令された時点からが有事概念なんですよ。今度突然、予測まで含めた。待機命令の時点からもう有事概念に含めてしまった。
 この結果、どうなるか。おそれより広い予測の段階でもう武力攻撃事態の認定をしちゃうわけですよね。国際的に宣言するわけですよ。これは、武力攻撃事態の認定をするということは、その国に対してこっちは武力行使の準備をしていますよという宣言ですよ。ある意味で宣戦布告なんですよ、事実上の。それを予測の段階からやったら、向こうだって、まだその気になっていないのを、では、日本がそんな準備をしているんだったらこっちもその準備をしなきゃいかぬと、かえって戦争に近づいてしまうんですよ。予測まで含めた点もこの法律の大きな欠陥だと私は思うんです。
 最後に、その予測概念は少なくとも削除すべきではないか、防衛出動下令事態からが有事概念に限定すべきではないか。これはお二人の佐々木さんからちょっと、時間がなくなったようなので、結論だけで結構ですが、お聞きをしたいと思います。
佐々木寛君 今の御発言には大変共感します。予測される事態とおそれのある事態ということが今回の法案に明記されて、非常にあいまいな表現です。
 それから、私がつけ加えたいのは、現代戦争というもののリアリズムですね。その観点から見ると、従来型の戦争想定していたのでは、想定できないことが起こる。つまり、日本軍といいますか自衛隊は、基本的に米軍と全く区別がつかない形で戦争にずぶずぶと参加するようになってしまうというおそれがあるというふうに思います。
 そういう意味で、私は、この法案は戦争のリアリズムというものに欠けているというふうに申し上げたわけです。
 どうもありがとうございました。
佐々木薫君 端的に。そのことに関しましては、安全保障の原則とか、要は自衛隊の行動原則というのが欠けているといった点で、私は、しっかりした法案にしてくれということを陳述させていただいたわけで、その中に含まれていると解釈していただきたいと思います。
米田座長 ありがとうございました。
 委員の質疑予定者の皆さんにお願いをいたしますが、いずれも質疑予定時間をオーバーされておられますので、ルールを守って質疑を行っていただきたいと思います。
 筒井君の質疑は終了いたしました。
 次に、桑原豊君。
桑原委員 民主党の桑原でございます。
 簡潔に、まず佐々木寛先生にちょっとお尋ねをいたします。
 小泉総理は、備えあれば憂いなしということを繰り返しおっしゃっております。当然のことわざでございますけれども、備えのやり方いかんによってそれが逆効果になる、こういうこともございます。しかし、万が一の備えというのはきちっとしておかなきゃならぬ、これは当然だと思います。
 そこで、佐々木さんは、むしろその備えがいろいろな意味で緊張を招いて、そのことが近隣諸国との紛争の種になりやせぬか、そういった御心配もしておられるわけですけれども、私も、やり方によってはそういった過剰反応と映る場合があると思います。ただ、それを本当に力あるものにしていくときといいましょうか、そういう論理を力あるものにしていくときには、やはり一面では、外交というものをしっかりやっていかなきゃいかぬ。
 特に、私は、日本を取り囲む北東アジア、新潟はその最前線にあるわけですね、中国、韓国、そしていろいろと問題を云々されております北朝鮮、そしてロシアもございます。ここの地域の平和と安定というのをどういうふうにつくっていくのか、これがやはり私は日本の平和と安全にとって一つの背骨をなす重要な問題だと思うんですね。
 外交を通じての安全保障、これをどう確保していくかというところで、相当我々も意を決して、本当にある意味では死力を尽くしてでもこういった平和と安全をつくっていくという外交、これをやり遂げていかなきゃならぬわけですけれども、そのことについて、先生としてどういったお考えを持っておられるのか、これが一つお聞きしたいところでございます。
 それから、これはほかの先生方、県議会議員の志田先生にちょっとお聞きしたいと思います。それから、滑川市長をしておられました澤田先生にもお聞きしたいと思うんですが、この備えの中で、私はやはり一番、何か起きたときに、地方自治体、地域の住民の生命や財産、そういったものに一義的に最大の責任を負う自治体の役割というのは極めて重要だと思います。これは、災害のときももちろんそうでございますし、一たん事あったときに、地域の事情に通じていて、いざとなったらどうしたらいいかということをある意味では一番わかっている、そういう自治体の役割というのが大変大きいと思うんですね。その備えの部分の自治体の役割が、残念ながら今回の法案では先送りになっております。
 ですから、自治体からもいろいろな意見が、わかりにくい、どうしたらいいのか、そこら辺がさっぱりわからぬじゃないかと。いや、それはすべて二年以内にやりますよということで、先送りをされているんです。そして、現実には、自治体がやれないときにはかわりに国がやるよというような代執行的なものの考え方だけが打ち出されておりまして、そういう意味では、一番そこら辺が住民に密接な部分でございますから、私は、備えの中の大事なところが今回の法案では抜け落ちてしまっている、考え方そのものも、具体的に明確なものが打ち出されていない、こんなふうに思います。どの範囲でどういう仕事を自治体が主に手がけていくんだというところも、余り明確になっておりません。
 そんな意味で、今回のこの法案についてどういうふうなお考えを持っておられるのか、これは澤田先生と志田先生にお聞きをしたい、こういうふうに思います。
佐々木寛君 おっしゃるとおり、例外状況といいますか、万一の備えということだけを強調するのではなく、ふだんから外交の力によって平和を築く構想力を持つことが必要だという私の意見陳述を酌み取っていただいて、大変うれしく思います。
 その際に、御質問のように、今後外交をどうしていくのかという御質問だったと思いますが、私の私見では、二十一世紀の外交というものは、これまでの主権国家のみが行う外交ではなくて、非常に重層的になっていくというふうに考えています。もっと具体的に言えば、自治体外交あるいは民間外交と言われるような国際NGO同士のつながり、それから大学間交流、こういったような下からの外交といいますか、下からの、国境を越えた人間関係や社会関係のつながりが平和構築のためには非常に重要になってくるというふうに思います。
 しかし、この法案はむしろ、上意下達といいますか、そういった下からのさまざまな安全保障や平和構想の可能性というものを摘み取ってしまうというふうに私は思います。先ほど阪神・淡路大震災のお話が出ていましたけれども、あのときに恐らく明らかになったのは、首相が一番上にいて、上意下達式の対策システムをつくることが、いかに現場から見てうまく機能しなかったかということだったと思います。
 同じように、東アジアは、これまでも冷戦期を通じて、アメリカ・韓国、アメリカ・中国、アメリカ・日本というように、自転車のスポークのようにバイラテラルの関係しか築いてきませんでしたが、これからは多国間の安全保障体制を下からつくり上げていくべきだというふうに思います。それこそ本当の安全保障構想だというふうに思います。
 以上です。
澤田壽朗君 現在、地方自治体には、いわゆる消防、あるいは河川の水害とかそういったことについては、消防を指揮しながらいろいろやる権限並びにある程度の実力は持っております。
 ただ、今ここで問題になっているようなことについては、現在の法律では、市町村は何ら、いわゆるこれに対して貢献できるような実体が定められていないわけですね。
 したがって、あくまでも自衛隊が自分の市町村の領域内で活動するというときに、いろいろ案内したり、あるいは宿泊するなら例えば公民館とかいろいろなそういうものを世話するとか、あるいは病人が出たら医療機関に頼むとか、そういういわゆる協力してあげましょうというような善意の協力は大いにやると思いますけれども、何ら法的な裏打ちというのはございませんし、また、こういうことをやれということを市町村に知事が指示するという権限も今のところありません。
 したがいまして、住民がいざというときに防衛にどこまで参画するかは非常に難しい問題でありまして、そんな大きなものを期待しても無理でありまして、ただ、行動をスムーズにやるように協力してあげる、あるいは行動を阻害しないように気をつけるとかそういったことが主なもので、例えば避難、片一方は下がる、片一方は前へ出ていこうとするというときに、そこらの避難誘導、あるいはそういう部隊の移動との関連をどう調整するかとか、これは警察とかあるいはバイパスをどうやるとか、そういったようなことは当然やると思います。
 したがって、第二次大戦、大東亜戦争の終わりごろでも、では、そんなに市町村がいわゆる竹やり訓練で敵をやるという、それは気持ちの問題としてのあれであって、あれで実際何か参画をするということはないと思いますが、ただ、実際、そんなに防衛に住民が直接加わったという例は、内地においては余りありません。大体似たようなものじゃないかと思います。
志田邦男君 今ほどおっしゃったように、地方の果たす役割はどうなのか、そういう点については、私も非常に不満でございます。それはやはり、一たん有事となった場合に、例えば病院ですとか、そういう負傷者の問題、さまざま出ます。いろいろな問題を処理しなきゃならないというのは、恐らく地方になると思います。
 そういう面で、今まで例えば国がずっと研究してきた第一分類、第二分類あるいは第三分類、こういったのをやってきたわけですけれども、そういうさまざまな国としての研究をやってきたにもかかわらず、そこにきちんとした地方自治体というものを入れなかったということに関しては、大変これはよくない。したがって、今回、大筋としての国の方向性、これはよしとしても、早急にやはり地方自治体を交えてどうあるべきかということもやっていただきたい、このように思っております。
米田座長 これにて桑原君の質疑は終了いたしました。
 次に、上田勇君。
上田(勇)委員 公明党の上田勇でございます。
 きょうは、貴重な御意見を陳述いただきまして、また、それぞれ御多用の中お越しをいただきましたことにまず御礼を申し上げます。
 皆様方の陳述を、御意見を伺いまして、現状認識、考え方、随分開きがあるというか、多様なものだということを受けとめましたけれども、その中に、当然賛同するものばかりではございませんが、せっかくこうした機会に御意見をちょうだいいたしましたので、それぞれ重く受けとめさせていただきたいというふうに思っております。
 意見の中で、特にこの新潟という地域が抱える特有の問題意識というんでしょうか、拉致疑惑とか不審船問題、これも先ほどから話が出ておりますが、北東アジアという地域の不安定さと直面している地域ならではの非常に強い問題意識があったということも感じましたし、また、原子力発電所やエネルギー基地などあるというようなこと、そうしたことも地域の問題として、いろいろな立場からの御意見の中に、そういったものを踏まえた上での御意見を拝聴できたということは、この地方公聴会の意義があったというふうに感謝を申し上げる次第でございます。
 そこで、ちょっと先ほどの委員の御質問とも関係いたしますが、国と地方自治との関係につきまして、地方自治にこれまで経験の深い澤田さんとそれから志田さんに、それぞれの立場からお伺いをしたいというふうに思います。
 今度のこの武力攻撃事態対処法案では、内閣総理大臣である対策本部長が、地方公共団体と対処措置に関する総合調整を行うというような規定がございますし、それでもそうした対処措置が実施されないときには、これは別途法律で定めるという手続を置いてはおりますけれども、総理大臣が地方公共団体の長に対して指示する、あるいは、またさらにそれでも不十分な場合には、関係省庁の長が代執行を行うというようなこと、これも当然、別途法律で定めるということには手続はなっておりますけれども、そういうような規定が設けられております。
 これについて、この法案に反対される立場の方々からは、これは地方自治の本旨を損なうおそれがある、あるいは、場合によっては国家総動員令というような表現を使って批判される方もいらっしゃいますが、今まで地方自治の首長として、また議会の中で経験をされている御両名の方に、こうした懸念というのはお持ちなのか。また、これからそうした手続については別途法律で定めるということになっておりますが、もしそういうような御懸念あるいは御心配があるとすれば、その法律の中で、法律を定めるに当たってはどういうような点に留意をして国会の場で議論をされていったらいいか、その辺のアドバイスをいただければというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。
澤田壽朗君 ただいまの御質問にぴたり合うかどうかわかりませんが、現在の地方自治体、正直言いまして、昔の国家総動員法のようだという気持ちは持っておりません、今議会で問題になっておりますのは。
 いわゆる協力関係を今まで以上に密接に行えるようにするために、総理大臣の答弁があったり、いろいろ、知事とそれから市町村の関係の調整をこれからやる、こういうことでございますが、例えば、実際戦闘行動に市民が直接参加するということは、これはあり得ないわけであります。ただ、それを側面的に、自衛隊の行動をやりやすいように援助するようなことは、そういう局面はあり得るかもしれません。
 ただ、準備段階において、例えば海岸線で、上がってくるかもしれないというために、そこに陣地構築を始める。例えば新潟ですと、昔の連隊が高田とか新発田にあります、こういう連隊が海岸に張りついて防御陣地をつくるというときに、例えばそこには、いわゆる農地法によって普通だったら許可を受けないと転用できないとか、あるいは区画整理をやっているからほかの法律に支障があるとか、いろいろな問題があるわけです。そういったものが、そういう条件のときにはもっとスムーズにやれるような法整備は必要だと思います。
 それから、大量の人員がそこに集まるとしたときに、水道であるとか下水道であるとか、そこらをどう調整するとか、こういった問題も出てくると思います。それから、先ほどちょっとお話が出ましたが、調達の関係で、物資をどういうふうにひとつ協力できるのか。さらに、今度は医療の問題それから交通統制、こういったことを、さまざまなうるさい法律がいっぱいございますので、そこらがもっとスムーズに調整できるような、根本的な法的なそれをつくっておいていただければいいんじゃないか、こう思います。
 というのは、市町村もいざというときには住民はみんなやはり、何か地方自治と国は相対立するかのごとき、これは平時は、いや自治でやるんだと我々も言います、言いますが、いざというときに、我々自治だから国はどうなってもいい、自治だけ、国が倒れて自治もへったくれもないわけでありまして、そこらは皆理解していると思います。
 したがって、そういう前提のもとにおいて、市民も同じだと思います。いざというときには協力する気持ちは当然出てくるし、それを信頼しております。そして、それが動きやすいように法的整備をするのは国並びに議会の方々の責任だ、こう思います。それこそ本当のいわゆる政治による防衛、シビリアンコントロール。最大のものは、そういう体制をきちんと整備していただくというのが最も大事だ、こう常に思っております。
 以上であります。
志田邦男君 有事というものが地方の場において具体的にどうなのかということが、これはなかなか今こうやって議論していても、具体的に想像でき得ないような部分があるんですが、私は、まず一つには、実は私は新潟地震のとき、一番被害の大変ひどいところにいました。そして、あの新潟地震のときに、県知事がそのとき新潟にはおりませんでした。北海道の方へ行っておりました。新潟県知事が留守、空白というような状況の中で、まさに緊急事態というようなことが起きた。
 あのときのことをやはり考えますと、まず一つには、有事の認定というものがきちっと国会でも承認される、これはやはりもう大変な状態だと。そうなったときに、いろいろな今度は地方自治体ではまさに、そこに首長がいる、いない、さまざまこういう事態があります。ですから、今言った大きな一つの対処の流れというものについては、今考えられる中ではこれは大体やむを得ないだろうな、そういうふうに思います。
 ただ、先ほども言いましたように、自治体において、ではこれをどういうふうに受けとめるのかというようなことになったときに、先ほどと同じですけれども、自治体としては具体論がなければなかなか話が進まない。そしてまた、さまざまな補償措置というものもきちっと、これもまた早く明確にしてもらいたい。こういうようなものがないと、では、あと具体的に何を要望するのかというようなこと、これはさまざまあり過ぎます。
 ですから、そういう意味でも、私はまず国の方で、さっきも申しましたように、自治体の関係者も入れた研究機関といいますかチームをつくって、やはり生活隅々及ぼす影響が出ますので、早くこれは、むしろ国の方で、こういうようなことで自治体にお願いしたいということを明示してもらいたい、このように思います。
澤田壽朗君 ちょっと補足。
 今、先ほど私申しましたように、いろいろな自治体のやるべきことが全部そろわなければこの法律を通しちゃいかぬのかと言われると、そうじゃないと思います。根本的な、例えば協力、自治体も協力する責任があるんだ、そういうこと、条文がある、その中の細部は、これからゆっくりひとつ政令でもできるわけですから、それは後でゆっくりやればいい。とりあえずは、そういう根本だけはひとつぜひお願いしたい、こう思います。
米田座長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。
 次に、工藤堅太郎君。
工藤委員 自由党の工藤堅太郎と申します。
 本日は、御意見をいただきました先生方に、まずもって厚く御礼を申し上げたいと存じます。
 御意見をずっとお伺いをしておりまして、それぞれの先生方、御発言をいただいたわけでありますけれども、いろいろなお考えがあるんだというようなことでありまして、このいろいろなお考えがこうして述べられる、こういう国で我が国は本当によかったな、そうでない国も世界じゅうにあるわけでありますから、私はこういう国を誇りに思いながらやっていきたいな、そういう思いをさせていただきました。
 さて、この有事法制でありますけれども、私もこの理事の一人として自由党から参加をさせていただいているわけでありますが、当初、この有事法制の審議をする前に、自民党のある大幹部の方から、これは防衛庁の頭の悪い役人がつくったのだから欠陥だらけだ、修正には幾らでも応ずるといったような発言があったのを御記憶しておられるだろうと思います。確かに欠陥がたくさんある、私もそのように思います。
 例えば、時の内閣総理大臣、あるいはそのときの内閣の考え方でどんどん拡大解釈ができる、こういうような素地を残しているということであります。私は、これではだめだ、このように思いますし、やはり私ども自由党の考え方として、抑止的な、例えば第二次世界大戦のときにどんどん拡大解釈をしてああいうふうになった、それをいわゆるベースにした、その反省の上に立った法律案でなければならない。歯どめが絶対に必要だ。例えば、仮にアメリカから要請をされたからこうするとかそういうようなことではなくて、例えば国連決議がなければやらないとか、そういうような法案が必要だろう。そういうことで、私ども、小沢党首が中心になって、練りに練って、今の政府案に対案として独自の法律案を提出しているわけであります。
 そういったような、いろいろないわゆる欠陥がある法案だと思っておりまして、私どもは、この政府案をぜひ出し直しをして、二年間なら二年間と言っておりますから、それまできちっとしたものを出して、先ほど五〇%でもとか、とりあえず通せとか、そういうようなお話もありましたけれども、これは国の基本にかかわる極めて大事な法案である、このように思っておりますので、そういう立場から若干質問をさせていただきたいと思うのであります。
 先ほど、佐々木薫さんから、法整備は必要だけれども政府案は基本がしっかりしていないというようなお話をちょうだいいたしましたけれども、これについてもう少し、私の考え、先ほど申し述べましたけれども、そういうものも含めて御意見をお伺いできればと思います。
佐々木薫君 冒頭言ったとおり、しっかりとしたものであれば受け入れますけれども、しっかりしていないので納得はしないので、もっと考えていただきたいということを言ったと私は思っております。
 そういったところで、本来、我が国においての安全保障の原則、あと自衛隊の行動原則というのが憲法に規定がないとおかしいと思います。残念ながら、現憲法にはありません。私には、そんな現憲法を補うために、工藤先生や皆様、政治家の方が今いろいろと御苦労されて審議しているというところで、安全保障に関する基本法や非常事態に対処するための基本法というのを制定すべきではないかと提案させていただきます。
 非常にベーシックな部分で、例えば自衛隊はグレーが多いと思います。警察と自衛隊、どこまでが警察の役割でどこまでが自衛隊なのか、はたまた海上保安庁と自衛隊、ではどこまでが海保の役割でどこまでが自衛隊か、では治安維持活動なのかとか、いろいろグレーな、不透明な部分があります。そういった面も含めて、ぜひこういったところを憲法でしっかりとした根っこをつくってから、大きな木、大樹をつくっていただきたい、そんなふうに感じます。
 あと、そういった中で、毎度毎度政府の方々の得意わざといいますか、先ほども言いましたように、憲法解釈の中でなし崩し的に、また自由わがままに、恣意的にというのでしょうか、そんなふうに法律を、ある意味歪曲して適用させるといったような感じがするところもあります。ですから、この有事に関する法案に関しましては、自衛隊という軍事力ですから、これを扱うわけですから、諸外国に無用な心配をさせるようなこともなく、はっきりと国際スタンダードに合わせたものでやってもらいたい、そんなふうに感じます。そんなところです。
 以上です。
工藤委員 本当に余り時間がないのでもう余り申し上げられないのですが、今いろいろ問題になっております、福田官房長官、非核三原則の見直しに言及したというふうなことでありますけれども、これについてお二人からお伺いをしてみたいと思いますが、まず志田邦男さんと佐々木薫さん、お二人にお尋ねをいたします。
志田邦男君 私はやはり、意見陳述のときも話をしましたけれども、このような有事体制とそして日本の防衛、こういったようなものはただ単に戦術的な意味でなされるべきものではない。そのセットとして、日本の生きる道、日本の外交方針、これはどうなのかということをきちっとやはり明確にしなければ、さっきも話をしましたが、いろいろな誤解を招きかねない。その意味で、憲法第九条並びにこの非核三原則というものをやはり日本が明確にアピールをし、そのもとで日本としての平和というのはこのようにして守りますよ、こういう明確な意思を持つべきである、このように考えております。
佐々木薫君 結論から言いますと、無用の長物は要らないということになります。将来にわたっても、こういうものは、唯物的に、客観的に見て判断したいと思います。核兵器とかは一切要らないということを断言します。
 また、こういったことに関して、私は、昔の人のように感情というか、さきの大戦のときの原爆のような、トラウマ的に、核兵器はただ要らないというふうな意見ではありません。無用の長物だから要らないと重ね重ね言っておきます。かえってスパイ衛星などを上げた方が有効的に使えるのではないかと思えるぐらいです。
 以上です。
工藤委員 ありがとうございました。
 いろいろお伺いをしたいことはあるんですが、今、国会で有事法制をいろいろ議論しているわけでありますけれども、外から見て、この我々の議論に対してどのようにお考えになっているかといったようなことを、それでは、もう一人、藤尾先生にひとつお伺いをしてみたいと思います。
藤尾彰君 先ほども申し上げたかと思いますけれども、やはり、万が一、万が一というふうな議論が非常に先行して、そういう一種の心配性というんでしょうか、そういう心配性からみずからの視野を狭めてこういう考え方ばかりしていると、いわば無間地獄に陥るんじゃないか、要するに病的な精神状態に陥るんじゃないかというふうな感じがしております。
 たしかシェークスピアのマクベスが殺人を犯して、その後、疑心暗鬼というんでしょうか、そしてみずから自滅していくようなそういうドラマだったかと思いますけれども、どうも万が一、万々々が一といったような、そして要するに、〇・〇〇〇といっても、〇・〇〇〇〇といっても、一がある限りはあり得るんだ、こういうのは、政治の世界ではむしろゼロと考えた方が正しいんじゃないかと思います。
 そういう考え方をしますと、あれもしなければいけない、これもしなければいけない、ここも足りない、あそこも足りないといったような、本当に疑心暗鬼というか神経質になっていくというふうな、要するに病的な精神状態に陥る危険があるんじゃないか、こういうふうに考えております。
工藤委員 ありがとうございました。
米田座長 これにて工藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
 質問に入る前に、米田座長に一言お願いをしておきたいと思うんです。
 先ほど森岡委員から、こういう発言がありました。反対するのは三人、大学教授だけ、日本の教育はどうなっているのか。まことに、私は、独断に基づく、陳述人に対する暴言だと思います。これは、陳述人の皆さんに対する礼を失するだけではない、当地方公聴会は、委員会として国民の意見を謙虚に聞く場ではないでしょうか。まことに不穏当な発言だと思いますので、私も委員会の理事会に参加する一員であります。この発言に対しては善処されたいとお願いしておきたいと思います。
米田座長 後刻、理事会で協議をさせていただきたいと思います。
木島委員 ありがとうございます。
 それでは、早速質問に移ります。
 七人の陳述者の皆さんにおかれましては、現在国会で論議しております有事関連三法に対して、それぞれの立場からの御意見を拝聴させていただきました。感謝申し上げたいと思います。
 賛成論、反対論、大変鋭い対立があったとお聞きをいたしました。私は、万々が一にも我が国領域に対する外国からの武力攻撃などがあっては断じてならない。とりわけ、新潟は原発のたくさん立地しているところであります。それは断じてならない。
 国の政治の上で、国と国民の平和と安全を守ることは何よりも大事だ、これは七人の皆さんに共通する基本だったと思いますし、私は日本国民全員の思いだと思います。私もその一人であります。
 なぜ、しかし共通する思いの上に立って、こんなにもこの法案に対する意見が分裂するのか。私は、二つあるんじゃないかと思います。一つは、二十一世紀冒頭における今日の日本とアジア、世界の国際情勢をどう見るか、この認識論の問題だと思うんです。この法案あるいは有事法制が抑止力になるのではないか、それを期待するという御意見もありましたが、これも、こういう世界と日本をどう見るかという認識の上に立っての御意見かと思うんです。
 もう一つは、この法律をどう読み込んでいくかという問題についての認識の違いではないか。筒井委員からも御指摘がありました。この有事法制が、国内有事、我が国の領域、領土、領空、領海に対する外国からの攻撃に対する法案だけであるのか。それとも、私、日本共産党でありますが、私自身国会でも質問をいたしましたが、海外での武力攻撃、海外で行動をする自衛艦や自衛隊の航空機等に対する外国からの攻撃。今、日本の法制、三つ持っております。テロ特措法、周辺事態法、そしてPKO協力法でありますが、今、現にインド洋には日本の自衛艦が出ていって、戦争をやっている米軍に給油などして、現に行動をしているわけです。ああいうところに万々が一にも相手国から爆弾が投下されるような事態があったときに、この法律が動き出すのかどうなのか。いわゆる海外での有事、海外での武力行使を容認する法律になっているのかどうなのか。この法律の読み方の違いがやはり基本にあるんではないかと思えてなりません。
 私に与えられた時間はほとんどもうなくなってきましたので、実は私、最初、国会で質問した、「我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。」、この「我が国」という概念は何かということを福田官房長官に質問いたしました。日本の領土、領空、領海だけなのか、海外に出ていって行動している自衛艦船に対する攻撃なども我が国に対する攻撃になるのかと質問をいたしました。それは、本当に大事な問題だと感じたからでありました。福田官房長官は明快に答弁をいたしました。海外に出ていっている自衛艦船に対する組織的、計画的な攻撃も我が国に対する攻撃になるんだと、明確に答弁をされているわけでございます。
 そこで、先ほど森岡委員から我が党のチラシに関する質問も出されておりましたので、ほうっておくわけにいきませんので、鈴木陳述者にお伺いをいたします。
 陳述者は先ほど来、この法律が海外での我が国の武力の行使を想定している法律かどうかについて質問をされ、そうじゃないだろうという答弁もされました。しかし、現実には国会でこんな論議もあるわけでございます。
 それで、二つ質問します。この法律をどう読み込んでいるのかということ、そしてもう一つは、我が国領域への海外からの、外国からの武力行使について、三人の反対の先生方はリアリティーがないとおっしゃいました。どんなリアリティーを考えているのか、簡潔なお考えをお聞きしたいと思います。
鈴木廣君 私、トイレへ行っておりまして、拝聴しておりませんでした。どなたかほかの方にしてもらってください。
木島委員 それでは、残念ですが。
 要するに、海外から我が国の領土、領空、領域に対する武力攻撃があるのかないのか、どう見るのか。この法案に反対する三人の先生方は、そんなリアリティーがないではないか、むしろ逆に、この法律をつくることこそが外国からの我が国への武力攻撃を開いてしまうんではないか、そういう論を立てられました。
 それで、鈴木陳述者から、日本の国内に対する外国からの攻撃を受けるリアリティー、現実性があるのか、その辺をどう考えているのか、御質問をしたいわけです。
鈴木廣君 まあ、万々が一ということでありますね。それから、先ほどどなたかがおっしゃいましたが、いつどこの国が攻めてくるのか、それがわかっていればもう大変な話ですな、そういう事態になってしまっていたら。まあ、そういうことです。
木島委員 わかりました。ありがとうございました。
 佐々木寛先生と藤尾彰先生に一言お聞きいたします。
 両先生は、逆にそのリアリティーはない、この法律をつくり出すことが逆に緊張感を生み出し、安全に対する懸念をつくり出すのではないかとおっしゃられました。その辺の考えの背景、現実認識、その辺をもうちょっと詳しくお考えをお聞かせいただけたら幸いでございます。
佐々木寛君 簡潔に申し上げます。
 今お聞きになられたように、国際情勢をどう見るかということと、この法律をどう読むかということは、非常に密接にかかわっていると思います。
 その際に、国際情勢の問題をずっと私の意見陳述では述べていたわけですけれども、実際私は、海外のメディアをいろいろ見たところ、今回の法案が非常に危機感をもって迎えられているということ、それは一々例を挙げることはできないんですけれども、これは事実として、今回の法案が提出されたという時点で、かなり危機感を与えているということは指摘しておきたいと思います。
 それともう一つは、今回の法案が、これは意見陳述でも述べたんですけれども、テロ特措法あるいはPKO協力法それから周辺事態法とセットになって周辺諸国は見ているんだということ、これは、実際そういうつもりはなかったとしても、政治的な結果としてそう見られているということが非常に重要な事実だというふうに思います。
 以上です。
米田座長 藤尾彰君。
 なお、質疑時間が既に終了いたしておりますので、簡潔明瞭にお願いをいたします。
藤尾彰君 日本国憲法の前文は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と。ということは、日本国としても信頼されるに値する国民にならなければならない、これが憲法の要請している基本的な課題ではないかと思っております。
 それで、そういう努力を不断に尽くすことによってのみ、日本の平和と安全は全うできるんじゃないか。ところが、もし政府がこうした努力を十分に尽くすことなく、もう有事法制も整備したんだから今は後顧の憂いがない、こういう考え方になって軍事力信仰に取りつかれる、あるいは靖国参拝をしてそれが批判されると、私の信念だと言って国会で胸を張る、こういう周辺諸国の人々の神経を逆なでするようなこと、こういうことが、むしろ戦争を近づける危険を持っているんじゃないか。
 そういう点で、有事法制を推進している人々は、万が一この有事法制をつくったがゆえに戦争に巻き込まれたというふうなことも起こり得る、そういうことについてやはり推進している方々は、くれぐれもそのことに十分自覚を持ってほしいというふうに考えております。
米田座長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。
 次に、山口わか子君。
山口(わ)委員 社会民主党の山口わか子でございます。
 陳述人の皆様には、先ほどから長時間にわたって御意見を聞かせていただき、本当に感謝を申し上げます。私が最後になります。よろしくお願いいたします。
 先ほどから聞かせていただきまして、本当にいろいろな御意見があるということをきょうここで実感させていただきました。特に、小野坂先生には、本当にこの有事法制というのが憲法を超えてしまう、憲法を否定してしまう、こうした法案であるということを実に御丁寧に御説明をいただきまして、感謝を申し上げます。
 先ほどからお伺いしまして、まず一つは、外部から攻撃をしてくる、いつ攻撃してくるかわからないということが盛んに言われていたわけですが、なぜ攻撃してくるのか、どこから攻撃してくるのか、その辺が全くわからないままに、どこからか攻撃してくるかわからないということを理由に有事法制をつくってしまうということは、私は非常に危険だというふうに思っています。
 例えば、私たちは、この国を世界の国々と一緒に友好で平和で安全な国にするためには、何が一番大事なのか。戦争をすることが大事なのか、それともほかに海外の人々と仲よくする方法がないのかということが全くきょうは聞かれなかったということを非常に私は残念に思います。
 有事というのは、戦争のできる国にすること以外にありません。これは、災害でもなければ地震でもないわけです。そういうことを考えてきますと、私たちは今までに戦争の経験を持った国ですが、戦争というのがどんなことになるかということは私たちはもう経験済みです。つまり、戦争は人殺し以外の何物でもありません。
 終戦のときに、私も小学校でしたけれども、何十万の人がこの戦争で命を失いました。軍事や軍属に属している皆さんは補償がございましたけれども、女性や子供やお年寄りは何の補償もなく、これは受忍するべきだということで、死んだ補償は一つもありませんでした。
 今、沖縄では、米軍の基地が存在しています。戦争という状態ではありませんけれども、でも沖縄は今でも戦争状態だと言っても過言ではありません。今までにこの沖縄の基地で米軍から起こされた事件は約五千件にも上ります。そのうち、凶悪犯が五百二十七件。こういう状況の中で、沖縄の皆様は決して平穏ではいられないわけです。戦争が仮にないとしても、既に戦争状態で大変な不安の中で暮らしています。
 ですが、もし、日本がこの有事法制を成立させて、日本が戦争状態になったとしたら、一体どこが真っ先に巻き込まれるのでしょう。それは沖縄であり、私は新潟であると思います。新潟には基地もございます。原子力発電所もございます。一番ねらわれやすい場所にございます。
 そういう意味で、私たちが今一番大切に考えなきゃいけないのは、有事法制をつくることではなくて、どういうふうにしてこの有事ということを予防する、つまりなくすことではないかというふうに思っていますが、その辺について、もう少し御意見をいただきたいというふうに思います。
 それともう一つは、この有事法制の持つ危険性の一つに、例えば日本の戦争状態への突入を決めたり国民の動員体制を決める重大な決定は、国会の審議なしにごく少数の閣僚で決められることになり、これは民主主義の破壊であると私は思います。
 それからもう一つは、地方自治体の命運にかかる事柄が、まともに自治体の意思を問うことなく決定されて、自治体はそれに強制的に従うことが命ぜられます。これは、今回の法案でもはっきりしています。
 きょうは、地方自治体を担う多くの皆様の意見が述べられておりますけれども、本当に新潟の県民にどう安全で安心できる自治体にしていくかという大変重要な責任と任務があると私は思っていますが、この有事ということに対して全く無関係ではいられないというふうに思っています。
 そういった意味で、小野坂先生と藤尾先生に御意見をいただきたいと思います。
小野坂弘君 北朝鮮は海軍を持っていませんし大型輸送機も持っていませんから、北朝鮮が部隊をつくって日本を攻めてくるなんということは全く考えられないことだと思うんですね。それで、一番あり得ることは、米軍の軍事行動に日本が巻き添えになって攻撃を受けるということが、これはあり得ると思うんですね。その一番あり得る話を前提にした法律をつくらないで、それを後回しにして、そして今回、この法律をつくろうと提案されているわけですね。
 仮に万々が一、この法律ができたとしても、これを実施するための具体的な個別の立法がない限りは、これは実行できない、大枠の大枠ですから。それを実行するためには個別の法律をつくらなきゃいけないと思うんですね。ですから、仮にこの法律が成立したからといって、有事に対する対応がそれでできるというふうには私は思いません。
 したがって、意見の陳述でも申し上げましたけれども、要するに、米軍支援法あるいは国民保護法の内容と一緒にもっと細かいところまでしっかり詰めた案を出して、それでしっかりと総論、各論の議論をするというふうにやらない限りは、話は進まないんじゃないかというふうに思っているわけです。
 それで、特にバブルの崩壊以後、日本の社会、国家の目標、一体どういう社会、どういう国にしたらいいのかというところが非常にはっきりしない。それで、国民は非常に不安になっているわけでありまして、その近未来における日本社会あるいは日本国家を、特にアジア諸国においてどういうような位置づけで考えるのかということをまず最初に示していただいて、そして議論する必要があるんじゃないかというふうに私は考えております。
 以上です。
藤尾彰君 有事を起こさないようにするためにはどうしたらいいかというお話だったと思いますが、やはりこの問題は、世界の国々、特にアジアの国々と平和友好の関係を、政府レベルはもちろんのこと、民間レベルというんでしょうか、民衆のレベルというんでしょうか、そういうところでも深めていく。そして、お互いに尊敬し合い信頼できるという、そういう関係をつくり上げていくことこそが有事を引き起こさないようにする最大の保障じゃないかというように僕自身は考えております。
 あと、何かありましたですか。いいでしょうか。
山口(わ)委員 ありがとうございました。
 もう時間がありませんので、最後に佐々木寛先生にお伺いしたいと思いますが、今、武力攻撃事態に際してのいろいろな問題が非常に出ていますけれども、私たちが一番心配になるのは、どんなときにどんな状況になるかということが国民に全く知らされないのではないかという心配があるわけです。戦争への動員に際して、例えば反対運動やマスコミの規制を図ろうとする危険性というのが非常に強いのではないかというふうに思うわけです。
 今でも盛んにいろいろなところで事件が起きていますけれども、仮に、私たちが何か反対運動をしたときに、あの人はどういう人だろうとかいろいろな個人のことを調べ上げる、そして別の理由でその個人攻撃をするようなことも心配されるわけです。
 ですから、こういう反対運動やマスコミに対しての規制を図ろうとするようなこの有事法制に対して、やはりどういうふうにお考えになるか、お聞かせいただきたいと思います。
米田座長 佐々木寛君。
 なお、既に質疑時間は終了しておりますので、簡潔に願います。
佐々木寛君 はい、わかりました。
 意見陳述でも述べたのですけれども、例外状況とか万一という話が、もちろんそれについて考えることは重要だと思います。しかし、それが平時の論理を凌駕して押し殺してしまうというのが二十世紀の経験なんですね。私は、それを全体主義の問題だと思います。これは全体主義が独自に持っているメカニズムだと思います。
 そういった意味では、個人情報保護法案も含めて、社会全体が期せずしてそういう全体主義的な方向に行っているんじゃないか。これは私の主観のみならず、多くのアジアの近隣諸国がそのように見詰めているというふうに思います。
 最後に、座長にちょっとお願いしたいのですけれども、このような公聴会でお話しさせていただいて、この公聴会が法案成立のための、行け行けどんどんといいますか、そういうものの儀式になってはいけないというふうに私は考えますので、それを最後にお願いして、答弁を終わらせていただきたいと思います。
山口(わ)委員 どうもありがとうございました。
米田座長 ありがとうございます。
 これにて山口君の質疑は終了いたしました。
 以上で委員からの質疑は終了いたしました。
吉田(六)議員 座長、委員外で一言。地元参加の発言をお許しいただけるかどうか、お諮りをいただきたいと思います。
米田座長 恐縮ですが、理事会の決定事項でございまして、御発言は御遠慮願うことになっております。よろしいですか。
吉田(六)議員 結構です。ありがとうございました。
米田座長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げたいと思います。
 また、この会議の開催のため格段の御努力をいただいた、また御協力も賜った御関係各位に心から感謝を申し上げ、御礼を申し上げたいと思います。まことにありがとうございました。
 それでは、これにて散会いたします。
    午後三時四十二分散会
    ―――――――――――――
   派遣委員の長崎県における意見聴取に関する記録
一、期日
   平成十四年六月七日(金)
二、場所
   ライフステージアイトワ
三、意見を聴取した問題
   安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出)、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、安全保障基本法案(東祥三君外一名提出)及び非常事態対処基本法案(東祥三君外一名提出)について
四、出席者
 (1) 派遣委員
      座長 衛藤征士郎君
         近藤 基彦君   田中 和徳君
         玄葉光一郎君   末松 義規君
         田端 正広君   中塚 一宏君
         赤嶺 政賢君   今川 正美君
         井上 喜一君
 (2) 現地参加議員
         北村 誠吾君
 (3) 意見陳述者
      サセボコンパス21代表幹
      事
      (株)馬郡喜商店代表取
      締役          馬郡 謙一君
      佐世保市長       光武  顯君
      長崎友愛病院長     茅野 丈二君
      長崎短期大学助教授   北川誠一郎君
      佐世保商工会議所副会頭
      辻産業(株)代表取締役
      社長          辻  昌宏君
      長崎総合科学大学助教授 前原 清隆君
      長崎大学教授      舟越 耿一君
      (株)橋本商会取締役社
      長室長         千田  稔君
 (4) その他の出席者
      内閣官房副長官補    大森 敬治君
      内閣官房内閣参事官   礒崎 陽輔君
      防衛庁長官官房審議官  横山 文博君
      外務省北米局長     藤崎 一郎君
     ――――◇―――――
    午前十一時開議
衛藤座長 これより会議を開きます。
 私は、衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会派遣委員団団長の衛藤征士郎でございます。
 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。
 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
 このたびの地方公聴会開会に当たりまして、地元の皆様方には特段の御配慮、御協力を賜り、まことにありがとうございました。公聴会に御出席の方々、御関係の皆様方に衷心より敬意を表し、御礼を申し上げます。
 皆様御承知のとおり、当委員会では、内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案並びに東祥三君外一名提出、安全保障基本法案及び非常事態対処基本法案の審査を行っているところでございます。
 当委員会といたしましては、各案審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、御当地におきましてこのような会議を開催いたしたところでございます。
 御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただき、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますよう、よろしくお願いを申し上げます。
 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたしております。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。
 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をお一人十分程度お述べいただきました後、委員から質疑を行うことになっております。なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
 まず、派遣委員は、自由民主党の近藤基彦君、田中和徳君、民主党・無所属クラブの玄葉光一郎君、同じく末松義規君、公明党の田端正広君、自由党の中塚一宏君、日本共産党の赤嶺政賢君、社会民主党・市民連合の今川正美君、保守党の井上喜一君、以上でございます。
 また、現地参加議員として、自由民主党の北村誠吾君が出席をされております。
 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。
 サセボコンパス21代表幹事・株式会社馬郡喜商店代表取締役馬郡謙一君、佐世保市長光武顯君、長崎友愛病院長茅野丈二君、長崎短期大学助教授北川誠一郎君、佐世保商工会議所副会頭・辻産業株式会社代表取締役社長辻昌宏君、長崎総合科学大学助教授前原清隆君、長崎大学教授舟越耿一君、株式会社橋本商会取締役社長室長千田稔君、以上八名の方々でございます。
 それでは、馬郡謙一君から御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
馬郡謙一君 御紹介いただきました馬郡でございます。
 本日は、このような機会に意見を述べることができまして、大変感謝を申し上げるところでございます。また、当地佐世保市でこの公聴会が開催されることも、大変うれしく存ずる次第でありますとともに、ある意味では、他都市での開催と比して大変意義深いものではないかというふうにも感じるところでございます。
 なぜなら、本年、佐世保市は、実は市制百周年の年を迎えておりまして、市長を初め市を挙げて我々市民も祝賀をいたしているところでございます。また、佐世保市は、その間、国の安全と防衛の拠点として機能をしてまいった町でございます。そのような土地柄でもありますので、ここに住む我々市民、そして多くの住民は、事安全保障ということについての意識は大変高いものがあると自負しておりますし、したがって、今回の有事法制の提出は、ある意味では待望久しいものであったととらえておるところでもございます。
 さらに申し添えますと、佐世保は、海上自衛隊、陸上自衛隊を初め自衛隊の皆様と、隊員の皆様と、実は市民としての立場で相互共存をしている町でもありまして、日ごろより、おつき合いの中で、隊員の皆さん方が士気高く訓練に精励されていることをよく存じ上げております。その隊員の皆さん方、とりもなおさず自衛隊の方々の行動が本当に円滑になるような多くの問題の解決も盛り込まれておりますこの法案については、大変評価もしていきたいというふうに話しているところでもございます。
 しかしながら、ある一面でいいますと、法案自体の提出は、時代を考えますと、遅きに失したなという感も実はぬぐえないところではないでしょうか。
 これはもう御承知であるわけですけれども、昭和二十九年に自衛隊法が制定されまして、我が国に対する外部からの武力攻撃に対しての、ある意味での骨幹は整備されたわけでありますが、その後、この法制で十分かどうかということで、昭和五十二年に有事法制の研究が開始をされ、法制整備の必要性が当時の福田総理、三原防衛庁長官のときに国会に報告をされたのは事実であるわけですが、それから実は四分の一世紀でございます。
 二十五年間、それぞれの分野で研究、そして検討を進めていただいたわけでありますが、我が日本が本当に独立した国家として当然行っておくべきであった我々の国の安全、それから我々国民の生命財産を守るというための万全な体制の整備という観点から考えますと、冒頭に申し上げましたように、もっともっと早くにこの法制化がなされていてもよかったのではないかということも言えるというふうに思うわけです。
 しかしながら、中には、ある意味では冷戦の構造が崩壊した中でなぜ今有事法制というのを整備するのか疑問を投げかけられている向きが多いと聞いておりますが、外に目を向けますと、世界の国々では、この武力攻撃事態に対する法制の整備というのは、御承知のように、はるかに進んでいるのが現状であるわけです。
 事態の可能性が現実のものとなってから仮に議論をしても、間に合わなくなってしまう可能性があるばかりでなく、ある意味では、事態が緊迫する中で、冷静かつ合理的な論議というものができるのであろうかという疑問はありますし、できないということが大いに考えられるんじゃないかというふうに思います。
 だからこそ、国全体として、基本的な危機管理、そういう体制の整備を図るためには、今この平和なときにこそ議論をし、いわゆる国家存立の基本といいますか、日本の存立の基本として速やかにこの法案が成立をするように心から期待を申し上げる一人でもあります。
 それから、いわゆる国民保護法制の整備というところの部分でございますが、今回の法案の枠組みの中で、整備の方針、項目はお示しをいただきながら、事態の対処にかかわる、法案の中にも盛り込まれておりますけれども、避難のための警報発令であるとか、被災者の救助、それから施設等々の応急の復旧などの措置につきましては、ぜひ、地方公共団体、公共機関等のおのおのの役割を明確に、そして具体的に定めていただくことを期待を申し上げます。
 それとともに、関係機関の意見はもとよりでありますが、ぜひ、国民の意見、それからその中での議論の動向というものを踏まえていただきながら、ある意味での仕組みづくりをしていただきたく存じます。
 法案の中には、定めるところ二年という目標期間があるわけでございますが、どうぞ全力を挙げてお進めいただきますように重ねてお願いを申し上げるところでございます。
 きょうは、せっかくの機会でありますので、私は、一つの意見といいますか提言をしたいと思っておるわけですが、この有事法制を考える中で、実は、地球市民型の活動というか、そういうふうなことを提言したいと思っています。
 それは、日本だけが平和であればいいなどということはもうないわけでありまして、また、日本だけが経済的な繁栄を謳歌すればよいということではないと思うわけであります。日本も、地球の中の、世界の中の一市民という意識を持って積極的にその役割を果たすべきだということであります。
 特に、今世界に目を向けてまいりますと、残念ながら、さまざまな紛争が皆無とは言いがたい状況下であると言えると思います。そのような中で、先ほど申し上げましたように、我々が本当に世界の中の、地球の中の市民の一人として考えた場合、国を超えて各国間の協力は不可欠であると思いますし、これはどなたも異論のないところであると思うわけです。そういう中で、協力の手段としてはさまざまなことが考えられますが、世界から見ると、そのことで、我が国に対する、我々日本に対する期待というのは大変大きなものがあるのではないかと思っております。
 なぜこのことを言うかといいますと、だからこそ、まず、その協力を進めていく、期待される我が日本が、我が国が本当の独立国家としての位置を堅固なものにするため、この今回の有事法制の整備という部分には、そういう観点からは大変大きな意味があるのではないかというふうに考えるところでございます。
 私たちは、実は長崎県は被爆県でありますので、平和のとうとさ等々というのは他都市に比べてよく理解をしている県民であるというふうに私ども考えております。
 私たちは、こういう観点からも、本当に自由にこういう議論ができて、民主的に物事を考え、行動することができる、この大変平和な今、こういう濶達な議論ができる、その自由がなぜあるのかをもっともっとよく考え、この法案のそういう包含した意義をいま一度理解しながら、ぜひ速やかに成立ができるようなことを期待を申し上げたいというふうに考えているところでございます。
 以上で、私からの意見は終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
衛藤座長 ありがとうございました。
 次に、光武顯君にお願いいたします。
光武顯君 本日は、当地佐世保市での地方公聴会の開催、並びに市長として意見を申し上げる機会をいただきましたことに、まずもって御礼と感謝を申し上げます。
 武力攻撃が我が国に対して行われた際の我が国の平和と独立、国と国民の安全確保を目的とした関係三法案が去る四月十七日国会に提出されて以降、国政の場は当然のことながら、広く国民の関心事になりつつありますことは、このたびの法案そのものが国の根幹にかかわる事柄だけに、望ましい状況にあると私は考えるものであります。
 まず、結論から申しますと、私は、今般のいわゆる有事三法案の成立を望むものであり、基本的に賛成であります。
 戦後、国の安全確保策をいかにすべきかという論点については、実りある論議が行われてきたとは必ずしも言いがたい状況にありました。戦前のあしき思いがまさしくトラウマとなって戦後の風潮を支配し、いわばあつものに懲りてなますを吹くの悪弊に陥り、真っ正面の議論がなされなかった経緯は、多くの方が理解されるところでありましょう。
 かかる状況の中にあっても、我が国土が直接攻撃されるという事態は、戦後今日まで幸いにもありませんでしたし、今後も、不断の外交努力によって、極限ぎりぎりまでそのような事態を回避するという姿勢は厳として保持しなければならないと考えます。
 しかし、そのような政治的、外交的努力にもかかわらず、我が国土への武力侵攻が万一行われる事態に対しては、国民の生命、身体、財産を守るための法整備はいかなる国といえども常に用意されねばならないことも自明の理であります。もし、それなくんば、戦乱の国土の中で、混乱と無秩序の世界が現出するのみであります。
 私自身、戦前戦後に多感な青春時代を過ごした一人として、いわば超法規的有事の施策のありように思いをいたしますとき、まことにおぞましき感情を禁じ得ず、国民の権利がないがしろにされてはならないとの思いを強くいたすものであります。
 ところで、御案内のように、佐世保市は、戦前戦後を通じまして軍港都市としての歴史を刻んでまいりましたことは疑いようもありません。我が国への初の米国原子力潜水艦、また原子力空母の寄港が日米安保体制のもと行われた町であり、昭和二十年の終戦から朝鮮戦争勃発までの期間を除けば、戦前戦後を通じて、今日まで一貫して佐世保の町は国の防衛政策の最前線を担ってきていると申し上げても過言ではありません。その結果、基地との共存共生という佐世保市政の基本的スタンスは、多くの市民の理解と協力を得て今日に至っているところであります。
 加えて、本市は、本来県レベルの業務である港湾管理者の任務、保健所業務などのほか、ライフラインの一端を担う水道、交通、病院事業、広域消防行政など、深く広く住民生活にかかわっております。
 前置きが長くなりましたが、市民の生命財産を守ることを本来職務の根幹とする市長の立場として、当該法案の今日までの論議に注視してまいりましたが、今なお全体として不備な点もあり、隔靴掻痒的な説明しかできていないのではないかと思われる点もあるわけでありますが、限りある陳述時間でございますので、焦点を絞り、意見を申し述べるものであります。
 まず、いわゆる武力攻撃事態対処法案の第五条、第七条、さらにはそれに密接に関係する第八条には、地方公共団体の責務、役割、そして国民の協力について、いわば総論だけが述べられており、具体的な事柄については、同法第二十三条で二年以内を目標として関係法整備が図られることになっております。
 まさしく、備えあれば憂いなしとの考え方から、基本的性格を持った法案がまず必要であるとの方針はそれなりに理解できるところでありますが、関係法制の整備が成就するまでの間に、万が一の事態発生を想定し、対処方策を思い描いた場合、今回の法律案と関係法制の整備にタイムラグがあるのは理解しがたいところであります。
 つまり、既存の法制により当座は対処せざるを得ないのでありましょうが、国防の要諦ともいうべき国民の安全確保策が、後回し、将来のこととして先送りされていることは、残念ながら憂慮の念をぬぐえないのであります。自治体の長としての私は、事住民に深くかかわる事柄について、早急な、最優先事項として、関連法制の整備が喫緊の課題であると考えます。
 さらに申せば、具体的な一つの意見としてではありますが、このようなことからも、この関連法制の整備が終了するまで、基本法案である武力攻撃事態対処法の施行を待つということができないものかとも思うのであります。
 次に、現下の状況における地方自治体の苦渋を申し上げれば、もし不幸にも武力攻撃を受けた場合、地方公共団体としては、現時点において、国から十分な説明がなされないまま、地方公共団体の役割が先送りのこととして論議されている現状では、たとえ住民から問われても、地方公共団体の説明責務も果たしがたく、かつ、住民の立場からしても、協力に努めようにもできがたいといった、まことに立法の趣旨に逆行する皮肉な結果を招くのではないかと危惧するものであります。
 そう申し上げるには、昨年来私どもの佐世保市が国からの要請を受けてとっております一つの措置があるのであります。これは、テロ対策という、いわば外交、防衛に関する国からの要請として、「米国原子力潜水艦の本邦寄港時における公表に係る要請について」というものが昨年九月二十一日付で外務省から佐世保市に対してあったところであります。
 かねて、米国原子力潜水艦の寄港については、外交上は、一定の文書、いわゆるエドメモワール等により、米国から通常二十四時間前に日本政府へ通報があっており、それを受けて地方自治体である本市へも連絡があっております。今回の要請は、その通報を受けた後、それを市民に公表しないでほしいというものでありますが、当然のこととして、政府とされては、米国からの要請のもと、一定の判断をされ、本市へも非公表の協力を求められたものであります。
 本市といたしましては、あの時点での事態の深刻さもあわせ考え、二十四時間前通報の厳守、本市の放射能測定態勢にいささかの支障も生じさせないことの確約、これらを条件に要請を受け入れたところであります。このことに関し、市議会への報告、説明、また非公表後のたび重なる市民団体等への対応等、多大なエネルギーを傾けざるを得なかったわけであります。
 つまり、こうした例示を挙げて私が申し上げたいことは、国からの要請に際し困惑した状態を生じさせることになったのは、きちんとしたルールなり法的根拠が明確ではなかったことにあるのではないかと考えております。私ども自治体としては、迷いつつも、市民の生命、身体、財産を守る、この一点で協力したというのが偽らざる事実であります。
 例示が長くなり恐縮ですが、どうか、さらに国会での論議を重ねられる中で、この法案の成立過程で地方自治体に対する説明責任を十分果たしていただくようお願いいたしておきます。
 特に、私ども佐世保の市民は、基地との共存共生の中で、国策である国防には、基地が所在しない町では考えられないほどに高い関心を保持しているのであり、また、日常的に住民の保護という面に緊張感を強いられております。それだけに、基本的法案の必要性は当然のこととして、あわせて、いわゆる国民保護法が一日でも早く整備されることを願うのであります。
 今後、地方議会においてもこの法案をめぐる論議が活発に行われることが期待されます。そうした中で、十分地域住民にも事の重大性を御認識いただけるように私どもも努めなければなりませんが、国会におきましては、どうか党派の違いに拘泥されることなく、入り口でとどまらず御議論を進められるようお願い申し上げ、私の陳述を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
衛藤座長 ありがとうございました。
 次に、茅野丈二君にお願いいたします。
茅野丈二君 茅野でございます。
 本日は、どうもありがとうございます。
 まず初めに、有事関連法案というものを考える際に、忘れてはならないことが三つあるだろうと思っております。
 一つは、かつて日本では、昭和の初めから敗戦に至る間の二十年間において、戦争遂行のために、治安維持法を初め多くの法律がつくられました。その結果は、国民が、法律の持つ大きな力と、それがみずからに向かってきたときの恐怖を体験したはずです。
 二つには、日本は世界で唯一、戦争放棄というすばらしい理想を掲げた憲法を持っております。二十世紀の二つの世界大戦を通して数千万の人々の命が奪われました。人々は、二度と戦争を起こしてはならないと決意したはずです。日本国憲法の根底には、その教訓が脈々と流れていると考えております。
 三つには、戦争というものが、どれほど恐ろしくて、いかに悲惨であるかということです。
 私は、長崎で生まれ育ちました。幼いころから原爆の話を父やおばあさんからいろいろと聞いてまいりました。七万人を超す人が一瞬にして命を奪われたのです。その後、それに倍する人たちが後遺症に苦しみ、今日に至っております。それは、私たちの想像をはるかに超えた地獄絵図ではないでしょうか。私は、この恐ろしい悲惨な戦争を二度と起こしてはならない、そういう立場で話を進めていきたいと考えております。
 有事法案の研究は昭和五十二年から開始されています。当時は、ソ連が北海道あるいは日本の海岸線に上陸してきたらどうするか、このような検討がされていたと思います。今回出された法案の多くの部分は、その当時に研究されたものだろうと考えております。しかし、ソ連が崩壊し、米ソの冷戦構造が消滅した今、一体どの国が、あるいはどのような勢力が日本に武力攻撃をしかけてくるというのでしょうか。甚だ疑問だと思います。
 それではこの法案を制定する大義名分がなくなってしまいます。小泉首相は、備えあれば憂いなしと言われます。有事法案が必要だと言われております。ところが、政府答弁では、どこが攻めてくるか明らかなことは言えないと言っているのです。憂える対象がはっきりしないのに、何に備えるのか私には理解できません。
 百歩下がって、武力攻撃の可能性は非常に少ないけれども、確かに存在するのであるから備えなければならないだろうという立場に立って、少し話をさせていただきます。
 しかし、この法案は、実は、日本国憲法が成立して以来、これまですべてに優先をしてきた、そして守られてきた国民の基本的人権に制限を加えるものであります。有事にあっては一般国民にも義務を課すというものです。具体的には、物資の保管に罰則を設けたり、私有地内への自衛隊の立ち入りを拒否したり妨害したりすれば処罰されるというものであります。有事においては国民の基本的人権に制限を加えることができるという点で、これまでの法律とは大きく違っているのです。その意味において、有事法案は、戦後成立した法案の中でも非常に重要な法案だと私は考えております。
 そこで、この法案が果たして国民の納得し得るものかどうかということが重要になってきます。
 内容を見てみますと、確かに、有事において自衛隊がどのように行動できるのか、はっきりと書いてあると思います。ところが、その際に国民の命はどのようにして守られるのか、基本的人権はどこまで制限を受けるのか、こういうことについてははっきりなっておりません。
 さらに、政府と地方自治体との関係においても、有事にあっては政府は地方自治体の協力を求めなければなりません。しかし、抵抗があれば首相が代行できるとしております。名実ともに今は地方分権が進められている時代であります。このような一方的な権限のあり方が妥当なのかどうか、ここにも疑問があります。
 さらに、こうした問題について、この法案を審議しようとする現時点において政府と各地方自治体の間で十分な検討がなされていない、こういうことも大きな問題ではないでしょうか。
 次に、この法案は国会が軽視されているのではないかと考えております。今の自衛隊法、PKO協力法、周辺事態法、テロ対策特措法などでは、シビリアンコントロールを確保する観点から、自衛隊の行動に関して国会の事前承認を求めることになっています。しかし、今回の法案では、この事前承認の項がややぐらついております。運用によってはシビリアンコントロールがきかなくなる可能性を含んでいるのです。
 そして、この法案の中で私が最も重要だと考えているのは、国民の安全を確保する、このことを目的としている法案でありながら、具体的にどのように確保するのかということが明らかになっていないということです。
 皆さんのお手元にお配りしております私の資料の中で、二枚目の方に昭和五十三年の防衛白書の一部があります。その四角に囲んだところを見ていただきたいと思います。
 そこには、その当時、この防衛白書の中でも、武力攻撃を受けたとき何よりも優先して考えなければならないことは、国民の安全であり、住民の防衛、避難誘導などの措置が適切に実施されなければならない、このように述べております。さらに、スイスの例を挙げ、公共の待避所の設置や退避要領、食糧、医薬品の備蓄要領、応急手当ての要領などが書いてあります。
 こうした観点から見れば、私は医者ですので、専門分野である医療においても、武力攻撃が起こった場合に、当然多数の死傷者が出るはずで、早急な医療活動の実施が必要となるでしょう。そうしたときに、医療機関の協力や医療スタッフの確保は緊急の課題であります。それでは具体的にどのように対処するのか、あらかじめ決めておかなければならないはずです。こうした国民の生命を守る具体的な方策が書かれていない法案が、国民の生命と安全を第一に考えたというふうには言えないのではないでしょうか。
 以上述べてきたように、私は、この法案は、戦後五十数年の間に検討されてきた多くの法案の中でも、基本的人権の制限という重大な事項を決めるという点で、非常に重要な法案だと考えております。
 また、初めに述べましたが、法律の持つ力は大きいです。決定されるときは、確かに基本的人権のごく限られた範囲が制限をされるでしょう。しかし、一度決まってしまった法律はひとり歩きを始める可能性があります。水戸黄門の印籠と同じように、この法律が目に入らぬかといったような運用がなされないとも限りません。
 それなのに、今回の法案の提出から審議、決定の動きを見ていますと、この重要な法案に対し国民の理解を十分に得ている、そのようには私は考えられません。政府は法案の成立を目指して急いでおりますけれども、法案の具体的な中身が十分に示されず、重要な部分が隠されたままの審議が急がれているのでは、私はこの法案を認めるわけにはいきません。国民との十分な討議や地方自治体の十分な検討も必要であります。
 国民の基本的人権を制限してしまう法案を、国民の理解を得ずに、このように短期間で成立してしまっていいのでしょうか。有事法案は、決して戒厳令とは言いませんけれども、一度成立すると大きな力を持つ法案であり、運用によっては非常に危険な法案ともなり得るものです。
 また、この法案が本当に国民を守るための生きた法案になるためには、国民と政府との信頼関係が不可欠です。国の将来を政府がきちんと担ってくれるであろう、そして常に国民とともに歩んでくれるであろうという信頼関係があって初めてこの法案が生きてくるのではないでしょうか。ところが、最近の政府のあり方を見ておりますと、国民からの信頼を十分に得ているとは言いがたいものがあります。
 以上述べてきたように、国民の基本的人権を制限する重要な法案を、国民を守る具体的な中身を提示されないままに制定することには反対をいたします。武力攻撃から国民を守るという立場を明確にして、具体的な中身を詳細に提示した上で、国民の理解を十分に得られる討議を通して、国民の審判を仰いでいただきたいと考えております。
 以上です。
衛藤座長 ありがとうございました。
 次に、北川誠一郎君にお願いいたします。
北川誠一郎君 私は、長崎短期大学で国際時事問題とか比較文化論等の授業を担当しております。
 この法案が出まして、最初は本能的にちょっと怖いなと思ったところもございました。ところが、さまざまな新聞等、資料等を見まして、この法案が、国民の生命と財産を守るための明確な必要であるという目的を持っていること、また、憲法の範囲内で対処ルールが定められている、これは簡潔に申し上げますが、基本的人権が尊重されており、集団的自衛権の行使を認めていないこと、対処基本方針が国会承認事項となっていること、財産権制約には損失補償措置が設けられていること等説明がございまして、これは納得できることであるということで、考えてみようということになりました。
 私の基本的なスタンスは、条件つきで賛成ということです。
 条件とは何かと申しますと、すぐ本能的におそれが出てきたものは、まず、日本が負の遺産を今抱えていること、それをどのように近隣諸国等の理解を求めながらこの法案を成立させていくかというところに焦点を当てまして、条件ということで述べさせていただきます。
 そこで、日本国民の、また周辺諸国人民の安全が本位であるということ。また、周辺諸国と申しましても、韓国、中国、ロシア等も含めまして、ともどもに豊かになっていくものでなければならない。また、日本の善意の実態を反映させているものでなければならない。そのためには、国内外にもっともっと説明が必要である。このような条件をつけたいと思います。
 なぜそうなのかと申しますと、どのようにするかということで四つ申し上げたいと思います。
 一つは、周辺諸国の十分な理解を得ること。できれば、もっと進んで、同意を得ていただきたい。
 二番目に、日本政府に対する信用が余りない。首尾一貫性がないとよく指摘されます。幾度となくぶり返す歴史認識の相違と教科書問題、従軍慰安婦問題、靖国神社参拝問題等々が解決もしくは十分な理解が得られないままになっていながら、北朝鮮の核疑惑、ミサイル開発、不審船問題、北方領土問題等々の外部からの脅威のことを示しても説得力がないのではないか。
 三番目、国と国とは約束事の上で動くが、歴史認識の相違や隣国の日本に対する国民感情やイメージは、約束事だけでは片づかない。
 四番目、現在の国会議員の金銭スキャンダルや防衛庁個人情報回覧スキャンダル等々と続いて、日本国民の政府に対する信頼が損なわれているところがある。当該法案とは別問題でありますけれども、国民感情やその悪いイメージは無視できないということです。
 次に、なぜこの条件をつけるのか、これは二つ申し上げたいと思います。
 一つは、私が長崎短大で、在籍する留学生の皆さん及び日本人の学生さんに授業で学習会を行い、討論会を行いました。その結果、留学生では反対意見が多数を占め、日本人学生については、賛成が反対意見を上回ったものの、両者について考えさせられる反対意見、慎重意見も見られました。資料を持っていらっしゃる方は、二ページ目にその結果が出ております。
 留学生が、回答者数三十三名で、ほとんどが反対。日本人は、三十三名で、賛成が十五名、反対が八名、どちらでもないが十名おりました。
 その賛成理由として、留学生は、有事のときに自衛隊をシビリアンコントロールできる法律を持つことは当然である、これは各国で当然であるから持ってもよろしいんじゃないかと。二番、韓国人として反対だけれども、国民の命を保護するためだから持っておいた方がよい。
 日本人。起こってからでは遅いので、今から決めておくべき。抑止力にもなる。侵略を予防する法律をつくるべき。自衛隊が勝手な行動に出るかもしれないから、自衛隊の存在や権限、機能をはっきりさせておくべき。法制が整備されれば、日本ももっと世界に向けても活動できるようになり、もっと貢献できる。日本は、過去に大きな過ちを犯し、他国にも自国にも多大な被害をもたらした。このことをきちんと反省した上であれば、この法律をコントロールできると思う。
 反対理由。
 留学生。一、シビリアンコントロールとか国民保護とか聞こえはよいが、何か裏があるような、この法律だけでは済まないような気がする。信用できない。二つ目、昔から日本は隣国を侵略したことがあるから、このような法律をつくり、戦争の準備をし始めるのではないかと懸念する。三番目、専守防衛で自国のみを守ると言いつつ、その範囲が拡大して、自国以外のところで戦争に参加する可能性もある。四番、結局人を殺すことになるから反対。五番目、法律をつくっても、実際、有事になればうまくいかず、自衛隊が自分勝手に動いてしまうかもしれない。有事にならないようにすべき。六番、日本にはまだ好戦的な軍国主義者がいる。将来、法律が別目的で利用されてしまうのでは。七番、今、日本は平和だ、平和である日本を維持して世界平和をつくろうと努力し続ければ、戦争になることはあり得ないし、このような法律のことなど考える必要がないのではないか。
 また、日本人は、ちょっと時間がないので、二番目の、侵略戦争が万が一でもあるという想定になっているが、侵略する国は当然悪いが、そのようなことを許してしまうようなその当事国の隣国、関係国、友好国にも責任がある。このような法律をつくる前に、侵略行為を絶対起こさせないような隣国同士で率直な話し合いを持ち、まずそのような予防システムをつくるべきだ。等々出ました。
 どちらでもない理由として、日本人の方、一番、他国に侵略されても、戦って人が殺し合うのは反対だし、だからといってそのままにしておくのも怖い。侵略戦争を含めて、戦争を絶対起こさせないように予防すべき。賛成すると戦争を肯定してしまうことになるし、だからといって、つくらなければ、いざというときにどのように対応すればよいかわからなくなってしまう等々。四番目、法案が決まっても決まらなくても、戦争が起きたらたくさんの犠牲者が出る。大体、そういう人の命を何とも思わないくせに、偉そうにしている政治家が嫌いだ。日本人も他国の人も、戦争が起きたら悲しむ人がふえるだけ。何もしないのが、現状維持が一番よい。等々が出ております。
 これを見ますと、資料の一番最後に書いたんですけれども、最も参考にしなければならないと思うのが、どちらでもないと。現在、反対か賛成かで議論がされておりますけれども、私も一般市民、学生も非常に若い、ほとんど女性の学生さんです。その学生さんが、侵略してもされても、それを押し返しても人を殺すことになる、犠牲者が出るということを考えております。
 ここで考えなければならないことは、この法律をつくったところでそういう犠牲者を出してしまう、そのようなことを防いでほしいという心の中の葛藤が非常に感じられること。これを国会議員の方にぜひ伝えていただきたいということも出ました。
 次に、私、国際関係をやっております点で、一つ申し上げさせていただきたいと思います。
 三番目に、現在のグローバル化した情報時代の国際関係を見る三次元のチェスボードゲームとあります。これはハーバード大学のケネディ・スクールのジョセフ・ナイ教授のものですけれども、ホームページもそこに出ております。アメリカが中心になっていますが、日本がアメリカ、隣国、その他の国々に理解を得、友好関係を形づくり、当該法案の隣国理解を得るために参考になるのではと思いまして掲げました。
 上段ボード、中段ボード、下段ボードというふうに分けられているんですけれども、上段ボードでは、安全保障とか軍事、国連等を含む世界システムがファクターとしてある。この本の中で述べられているものは、アメリカの軍事的一国優位性のもとでの国際関係ができている。これは安全保障の面です。中段ボードでは、アメリカ、ヨーロッパ、日本、すぐに中国の四極化された経済関係、これは世界生産の三分の二以上を占めるということで、これが形成されている。下段ボード、トランスナショナルなさまざまな関係、文化、教育、金融などの分野における個人的、グループによる政府の影響が薄い活動が行われる。これは、コンピューターハッカーとかテロ組織による武器輸送等々も含まれております。
 一番最初に、そういう侵略が起こるのであろうかと私は疑問に思ったものですけれども、こういう分析によりますと、下段ボードでトランスナショナルな関係、テロ組織、または、それが中段ボードに、経済、経営等に影響を与え、それが国の一つの主権を侵す可能性を形づくるのではないかという、有事が起きる可能性というのをそれで示されているのではないかと思います。
 ジョセフ・ナイ先生は、現実は、この三次元の複合ゲームで、アメリカのことですけれども、傲慢と偏狭さがアメリカを弱体化させるであろうと警鐘を鳴らしております。
 最後に、安全保障を語る場合も上記のすべての議論が必要であるということ。これを日本国内、国民、隣国に説明するとき、暴力が起きる因果関係を説明することも必要であるということ。
 そして最後に、この統計のどちらでもないの理由の意見から学べることとして、我々市民が持つ、戦争、侵略等が起きた場合に、他者への痛み、苦しみへの想像力、そういうことを持っていただきたい、暴力のエスカレートを防ぐ、そのような精神性を育てていただきたいということを申し上げて、終わりたいと思います。
 以上です。
衛藤座長 ありがとうございました。
 次に、辻昌宏君にお願いいたします。
辻昌宏君 辻昌宏であります。
 本日は、自由党の御推薦により陳述の機会を与えていただきましたことを、ありがたく御礼を申し上げます。ただ、私は、党にも所属をいたしておりませんし、党員でもございません。防衛基地を抱えます佐世保の一市民として、経済人の一人として、意見の陳述を申し述べさせていただきとう存じます。
 私どもの会議所は、重点項目の一つといたしまして、防衛機能の強化をうたっております。これは、自衛隊の海陸空の強化ということと、基地を提供いたしております米軍、米海軍の基地の強化拡充ということでございます。沖縄に米軍並びに自衛隊の基地が集中し過ぎておるということは御案内のとおりでありますし、佐世保はもともと国の西の守りを授かった要衝の地でありますが、かつての戦前と現状の規模あるいは人員を比較いたしますと、比べ物にならないぐらい、まだ少ないということでございます。
 そういう意味で、独立国家といたしまして、自分の国は自分の国が主体となって守るという意味から、そしてまた、北の脅威がなくなりました今日、佐世保の地政学的な位置づけというものは十分に御理解いただけるものというふうに考えております。
 まずもって、今回の有事法制につきましては、基本的に賛成でございます。
 したがいまして、第一といたしまして、有事法制は必要であるということでございます。有事法制を整備しておきませんと、有事の際、いざというときに、何か起こったときに慌てて緊急立法をし、与野党ですったもんだを繰り返している間に、タイミングを失し、自国や国民にとって取り返しがつかない重大な損害や悲劇をもたらす危険性があるばかりではなく、他国の支援、救援もタイムリーにならず、結果的に、莫大な国費を使って信用を失墜するということになりかねないということであります。
 二つ目といたしまして、安全保障の原則確立の重要性であります。
 有事法制がこれまで整備されなかったのは、私は、政治の重大な怠慢ではないかというふうに思うわけであります。戦後の我が国の平和と安全について、国会の不毛の論議の結果であります。すなわち、申しわけありませんが、自民党、社会党のいわゆる五五年体制を通じて、戦争か平和か、あるいは自衛隊が違憲か合憲かといったような論議が繰り返され、我が国の安全をどのように確保していくのか、そのために自衛隊はどのように行動するのかといった大事な論議が置き去りにされてきたということであります。
 我が国の安全保障の原則、自衛隊の行動の原則といったものが明確にされてこなかったため、湾岸戦争時の多国籍軍への参加につきましても、PKOの参加協力についても、先般の同時多発テロの際も、自衛隊派遣はいたしましたものの、一般の自衛隊の派遣はよろしいけれどもイージス艦はいかぬなどという、まことに理解に苦しむ横やりがあって、結果として派遣の効果を大きくそいだということは、まことにナンセンスであり、残念のきわみであります。どのように日本が行動すべきなのかという基準のないままにその場の対応を繰り返してきたというのが現状ではないかということであります。
 我が国の場合、過去の戦争経験や国民感情を考えましたとき、自衛権の行使はあくまでも抑制的に行うべきであろうかと思います。我が国の安全が直接脅かされる直接、間接侵略、またその危険性が高い場合、周辺事態にのみ自衛権を行使するという原則を明確にすべきであるということであります。
 あわせて、日本独自で防衛するというのは現実的ではないのではないか。日米同盟により我が国を防衛することであり、日米安保体制の信頼性の向上を図るというのが二つ目の原則であろうかと思うわけであります。
 三つ目に、自衛権の行使とは別に、国連の平和のための活動、すなわち多国籍軍、PKOなどは、仮に武力を行使することがありましても、それは国際社会が平和を回復、維持するための活動であり、憲法が禁じます国権の発動には当てはまらないということになろうかと思います。国連の平和活動には積極的に参加協力するという原則を明らかにすべきであるというふうに思います。安全保障の原則、我が国唯一の実力組織であります自衛隊の行動の原則が明らかでない。有事法制とあわせまして、これらを明確にすべきではないかというふうに考えます。
 政府提案に対します見解といたしましては、有事法制は必要である、いざというときに国民の生命財産を守るという原理原則にのっとっていただき、法制の整備が必要であろうというふうに思います。今の我が国が置かれております国際環境、そして、起こり得る事態を想定して、真に有効な体制を整備することが必要であると認識をいたします。
 すなわち、我が国への武力攻撃事態を含めました直接、間接の侵略、大規模テロ攻撃、あるいは大規模なサイバーテロ、そして不審船、海賊船あるいは武装強奪集団といったようなものへの対応、地域全体を席巻いたします大規模な災害、全国的な疫病の発生などなど、国民生活に極めて重大な影響が及ぶおそれが生ずる事態につきましては、これを非常事態と認定し、対処措置を講じていただきたいというふうに思います。
 今日、武力攻撃事態そのものが複雑化、多様化、そして頭脳化、悪らつ化しようとしております中で、有事の概念のあり方を拡大再検討する必要があろうかと思うものであります。
 三番目といたしまして、緊急事態に真に機能する体制の構築であります。
 政府案としては、武力攻撃事態に至ったとき、基本方針を策定して対策本部を設けるということでありますが、そのようなことではなく、常時、内閣にあらかじめ常設の非常事態対処会議を設置していただくべきではないか。そうすることによりまして、迅速性あるいは統率性を求めていただけるものと思うものであります。
 内閣の権限の確立でございますが、政府案では、防衛出動や対処措置の終了が内閣総理大臣の判断にゆだねられておるということでありますが、これも、諸外国の例に照らしまして至極当然のことというふうに思うものであります。非常事態に際して、内閣の権限を強化していただき、内閣の判断で迅速、的確に非常事態に対処していただくべきであろう。そして、それらは、国会によるチェックやコントロールのもとに行われるということが好ましいと思うものであります。
 最後に申し上げたいわけでありますが、同じ敗戦国でありますドイツは、今から既に四半世紀も前に有事対応の法規制定を済ませております。そして、普通の国として立派にNATO諸国とともに有事の対応を果たし、その国際貢献は見事に諸外国の高い評価を得ておるわけであります。
 非常に口幅ったいようでございますが、言うまでもありませんけれども、国を治めることは、国政に携わっていただく先生方の崇高な使命であるというふうに思います。決して問題の先送りをすることなく、与野党一致していただきまして、立法を実現していただき、我々国民の生命財産をしっかりと守っていただくようお願いを申し上げまして、陳述を終わります。ありがとうございます。
衛藤座長 ありがとうございました。
 次に、前原清隆君にお願いいたいます。
前原清隆君 御紹介いただきました前原と申します。
 長崎の大学で憲法の教育と研究に携わる者として、常々心に刻んでいる言葉があります。それは、不戦の誓いを日本国の憲法から取り外せば、何よりもまず我々は、アジアと広島、長崎の犠牲者たちを裏切ることになるというものです。そこで、きょうも、そのような観点から法案についての意見を述べることとしたいと思います。
 さて、初めに、私がきょう、これだけはぜひお伝えしたいと思ってまいりましたのは、長崎の被爆者の方々の声です。本委員会での法案審議が始まって間もなく、被爆者団体である長崎原爆被災者協議会の理事会において法案に関して決議が上げられていますので、趣旨を御紹介したいと思います。全文は、レジュメの参考資料として一応つけておきました。
 この決議は、さきの大戦で人類初の核戦争によって悲惨な被害を体験し、今なお悲しみ、苦しみを引きずっている私たちは三法案に反対しますと述べています。その理由としては、私たちは二度と私たちのような戦争犠牲者がつくられることを断じて許すことはできないのですという観点から、これらの法案が再び私たちを戦争に巻き込むのではないかとおそれるからですと述べています。
 そのようなおそれを被爆者の方々はなぜ持たれるのでしょうか。また、そのおそれは根拠のあることでしょうか。この点、決議は次のように述べています。
 「残念なことに、世界の最強大国は」、これがアメリカを指すことは言うまでもありませんが、「世界の最強大国は特定国を名指しで「ならずもの国家」「悪の枢軸」と呼び、それらの国々に対しての通常兵器による攻撃はもちろん核兵器の使用をも公言しています。この国がわが国の「周辺」で武力を行使したとき、国内にその国の出撃基地をおき、その国を「後方」で支援するわが国にも武力攻撃を受ける「おそれ」が生じたり、武力攻撃を「予測できる事態」が生じることは、想像できないことではありません。」
 テレビで法案に関する討論会などを見ていますと、同趣旨の危険性を指摘する意見に対しては、法案推進の側からは、大げさだとか国民を惑わす議論だなどと一笑に付されることが多いように見受けられます。委員の皆様は、今御紹介した被爆者の方々の想像を、果たして同じ言葉で退けることができるでしょうか。
 私自身は、被爆者の方々のこの想像はまさに正鵠を得たものだと考えていますし、法案に反対の立場を共有しています。
 そこで、以下、法案に関する意見を述べたいと思います。
 私の意見は、今のところ、全国の約一千百名の賛同を得て、本日の午後、東京で発表されることになっている「有事関連三法案に反対する学者・研究者共同アピール」をもとにしていることをお断りしておきます。これにつきましても、必要な部分のみですけれども、資料としてつけておきました。
 さて、小泉首相は、三法案を提出する理由として、日本が万一武力攻撃を受けた事態に備えて対処する法制を整備しておくためと述べています。備えあれば憂いなしと言われますと、四十五年前の諫早水害や二十年前の長崎大水害でそれぞれ数百名の犠牲者を出した長崎県民には説得力がありそうです。しかし、憂いをなくすためには備えるしかない自然災害と、防ぐことができ、それどころか、防ぐことが憲法によって求められている戦争とを同列に論じてはならないでしょう。
 私は、そもそも、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないように決意して戦争を放棄した日本国憲法のもとで、政府が戦争の備えをすることは、冒頭に紹介した言葉で言えば、アジアと広島、長崎の犠牲者たちを裏切ることであり、許されないと考えています。
 しかし、ここでは、なるべく法案に即した形で意見を述べることとします。
 まずもって問題になるのは、攻められたときにいかに対処するかを定めたものであるという法案提出理由が、果たして額面どおりに受け取ることができるのかどうか、もし額面どおりでないとしたら、一体本当は何が目的なのかであります。
 武力攻撃事態法案は、武力攻撃事態の定義にあるように、日本に対する武力攻撃が発生したり、そのおそれのある事態のみでなく、武力攻撃が予測されるに至った事態をも武力攻撃事態に含め、法を発動するとしています。
 その際、注目せずにはいられないのは、周辺事態法によりアジア太平洋地域で展開される米軍の軍事行動に日本が後方支援に加わった場合、すなわち周辺事態は武力攻撃事態に含まれると政府が答弁していることです。
 この二つの組み合わせが意味するところは極めて重大です。なぜなら、周辺事態法等によって米軍の戦闘作戦行動に対して日本が後方支援を開始すると、時を移さず、武力攻撃が予測されるに至った事態が生じたと判断されて、この法が発動され、地方自治体や民間の動員がなされる、そのための道が開かれるということにほかならないからです。
 日本が外部から大規模な武力攻撃を受けるおそれがほとんどないことは、政府も再三認めています。それに対し、米軍がイラクや朝鮮、台湾海峡での紛争に軍事行動を起こし、それを日本が後方支援する事態というのは、近い将来極めてあり得ることではないでしょうか。
 ことし一月のブッシュ大統領の悪の枢軸発言に対しても、小泉首相は、他国の指導者とは違って理解を示しました。一方、つい最近の報道でも、アメリカ大統領は、対テロ戦争では積極的な先制攻撃が必要と演説しました。これらの事実を重ね合わせたとき、先ほど述べた予測が的外れだと委員の皆様は言い切れるでしょうか。
 しかも、アメリカの新しい核戦略に関する分析によれば、ブッシュ政権は、核兵器使用の敷居を下げ、通常戦力に近い兵器として組み込み直そうとしており、イラク、朝鮮、台湾にかかわる事態という、まさに日本にとって身近なケースにおいて核兵器が使用される可能性が最も高いと考えているとされるのです。地方自治体や民間が動員されることが避けられないのは、こうした事態においてなのです。
 このように、法案は、首相の言うように、日本に対する万一の武力攻撃に備えるものというより、日本がアメリカの軍事行動を後方支援するために国民を動員することを目指したものであり、それによって、逆に、世界の戦争を拡大し、ひいては日本への武力攻撃を招く、すなわち憂いを呼び寄せる危険性をつくり出すものだと考えられます。これが、法案に反対する第一の理由です。前に述べた被爆者の方々の想像は、妄想どころか、さすがに鋭いと言うべきかと思います。
 次に、法案に反対する二番目の理由です。第一の理由が、何が有事かという武力攻撃事態の概念をめぐる疑問にかかわるものであるのに対し、第二の理由は、だれがそれを判断するのかという、事態の認定のシステムをめぐる疑問にかかわります。
 法案は、武力攻撃事態の認定、さらには武力攻撃事態に際しての対処基本方針の策定を、国会の審議を経ずに、事実上内閣総理大臣と安全保障会議に参加する少数の閣僚にゆだねています。対処基本方針は、閣議決定後直ちに国会の承認を受けなければならないとしていますが、対処措置そのものは国会の承認なしに開始できる仕組みとなっています。
 日本の戦争状態への突入の可否や国民の動員体制を決めることは、この上なく重大な決定です。それが、主権者国民の代表であり、それゆえに国権の最高機関とされる国会の審議抜きに、ごく少数の閣僚によって実質的に決定されるというようなことが、国会の権能と責任に照らし、認められるでしょうか。私は、それは民主主義に著しく反すると考えます。
 なぜなら、首相や官房長官はしばしば、政府を信用してほしいとか、自国の政府が信用できないのは不幸なことだとおっしゃいますが、民主主義の要諦とは、アメリカ独立宣言の起草者、トーマス・ジェファーソンの言葉にもあるように、自由な政府は、信頼にではなく、猜疑、つまり警戒心に基づいてつくられるということにあると信じるからです。
 委員の皆様に対してこれ以上一般的なことを述べるのは、釈迦に説法のそしりを受けるでしょうから差し控えます。しかし、戦争にかかわる決定を少数閣僚、いわゆる政府首脳にゆだねることができるかというこの懸念は、残念ながら現下の情勢では非常にリアリティーを持つに至っているのではないでしょうか。
 申すまでもなく、インドとパキスタンとの緊張の高まりが報じられ、最悪の場合、核戦争で一千二百万人に達する死者が懸念されているというそのさなかに、あろうことか、非核三原則の見直しに対して開かれた発言が、ほかならぬ官房長官によって行われたからです。また、防衛庁も、情報公開請求者の個人情報リストを組織ぐるみで作成していたという重大な問題を引き起こしました。
 官房長官という、有事法案の答弁責任者であり、武力攻撃事態の認定及び対処基本方針の策定という、この上ない重大な決定に関与する立場にある人の今回の発言は、とりわけアジア諸国に誤ったメッセージを発したことは、報じられているアジア諸国の反応を見ても明らかです。防衛庁の事件は、有事法案担当省の人権感覚の欠如、ひいては国民敵視ということにも連なっています。
 憲法研究者ほど猜疑心を持って有事三法案を見ない一般の国民でも、官房長官の発言や防衛庁の事件に直面して、この法案は少なくとも今は制定の時期として最もふさわしくないと考えているはずです。それだけでも法案は廃案とされるべきだと思います。
 法案については、ほかにも、人権保障、地方自治など、憲法の基本原則にかかわる問題点を指摘する必要がありますけれども、時間ですので、以上で法案反対の私の意見陳述を終わります。
衛藤座長 ありがとうございました。
 次に、舟越耿一君にお願いいたします。
舟越耿一君 よろしくお願いします。
 私は、五つの観点から意見を述べます。
 まず、なぜ今有事法制なのかという視点です。
 私の授業をとっています学生たちが、有事法制に関するアンケート調査をしました。サンプル数八百八十七ですから非常にしっかりした調査なんですが、有事三法案の内容を知っていますかという質問に対して、学生は六一%が知らないと答えています。市民も五〇%が知らないと言っています。それから、有事関連三法案の目的は何だと思いますかという質問に対しましては、テロや不審船に対処するため、あるいは大規模災害に対処するためというふうに答えた学生が四四%おります。市民の方も三七%そういう認識であります。
 つまり、今なぜ有事三法案の提出なのかということがほとんど理解されていないと私は考えています。それは、政府の方で常に一般論のみが展開されているからだと思います。
 しかし、私は、有事三法案の本当のねらいは、平和だから有事法制の整備をではなくて、インド洋に自衛艦を派遣していますように、日米の間での軍事協力が進行し、アフガニスタン攻撃をしている米軍を日本は支援しているわけで、その面では日本は戦時下にある、その戦時下であるからこそ、もう一段の有事法制の整備が必要なのだというところが本当のねらいではないかと考えています。
 それは、武力攻撃事態法案に言います、おそれのある場合と予測の事態、これが周辺事態と併存するという国会、政府の答弁、そこに明らかではないかと思います。周辺事態における米軍に対する後方支援、それと国内における陣地構築などの臨戦態勢づくり、それが重なり合って有事対処の国内体制をつくるというところに私は本当のねらいがあるのではないかと思いますが、それが焦点化されていないのではないかというふうに考えます。
 もう一つは、二番目ですが、自衛隊法の改正案は、私は荒唐無稽だと考えます。さらに、時代錯誤だと考えます。
 敵が上陸してきたら陣地を構築して交戦する、そういうような戦争というものは国民は考えることができない。しかも、そういう戦争を想定するというのは、非常に私は冷戦的な思考ではないかと思います。しかも、自衛隊法の改正案を見ますと、国民の生命財産を守ると言いながら、そういう規定はありません。土地、家屋を破壊され、物資の保管命令が出され、従事命令が出されます。ということは、結局、自衛隊は市民一人一人を守るのではなくて、その犠牲の上に国家全体を守る、そういう基本姿勢が出ているのではないかと思います。
 多くの国民は、日本本土への武力攻撃、そんなことは絶対にあってはならないと考えていると思います。そういう事態がないようにしていただくことが政治の使命ではないかと思います。
 三つ目の視点ですが、戦争を容認する気分が非常に蔓延しているように思います。それは、昨年の対米同時テロと報復戦争以降広がっていると思いますが、報復のための戦争あるいは人権や正義を守るための戦争、それは正しい戦争であると考えて、それを容認するような時代の雰囲気があると私は思います。
 しかしながら、テロの原因をそのままにしておいて、これを軍事力で制圧するというような考えは間違っていると思います。テロの背景には、パレスチナ問題とグローバリゼーションがあります。そこのところを置いておいて軍事力で問題を解決しようというのは、私は間違いだと思います。
 その点、憲法前文をしっかり読まなければいけないと思います。専制と隷従、圧迫と偏狭をなくす、世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れる、そのために日本は努力するというふうに憲法前文に書かれております。そういう観点から、戦争を容認する雰囲気というのは私は非常に危険だと考えています。
 四つ目の視点ですが、有事法制の議論がされておるときに、政府首脳は非常に重大な発言をされました。
 安倍官房副長官は、先制攻撃を完全に否定していない、攻撃に着手したのは攻撃であり、基地をたたくことはできる、憲法上は大陸間弾道弾も核兵器も問題ではない、戦術核を使うことも違憲ではないというふうに講演で話されたと報道されています。福田官房長官も、将来、国際情勢が緊迫化したり国民世論が変わってくれば、非核三原則が変わることがないとは言えない、そういう発言をされたというふうに報道されています。
 私は、結局、自衛戦争を認めると、先制攻撃も可能、そして核兵器の保有も可能というふうに、結局は際限のない戦争への道を歩んでいく、そういうことがあり得るということをこの政府首脳は発言しているんだと思います。非常に危険だと思います。
 最後の視点ですが、私は、いま一度憲法の初心に返ることが大切だと思います。
 憲法の初心とは、二度と戦争はしないということであります。ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキという言葉もその初心を表明しています。いかなる戦争であれ、してはいけないという平和主義であります。
 アメリカが大変なテロに遭ったわけですけれども、あれは、世界最強の軍事力をもってしても自国民の安全と生命を守れなかったという証明であります。幾ら有事法制を整備しても守れない、そういう世界の状況にあると思います。
 憲法九条の見直しをということが底流にあると思いますけれども、憲法九条は、世界のNGOの活動の目標になっているということを御想起いただきたいと思います。
 一昨々年、ハーグで平和市民会議が開かれました。私も参加しました。そこで、二十一世紀を展望して、公正な世界秩序のための十の基本原則というのを採択したんですけれども、十の基本原則の第一原則に次のようなものがあります。各国議会は、日本国憲法第九条のような、政府が戦争をすることを禁止する決議を採択すべきであるというものであります。世界のNGOは、自分の国に憲法九条のようなものを決議させたい、そういうふうに願ったわけであります。
 私は、日本国憲法の平和主義こそ平和のための備えだと思います。そして、核時代にあっては、それしかないと思います。決してユートピアではないと思います。
 以上の視点から、私は、三法案を廃案にしていただきたい、そして有事法制の要らない国づくりをやっていただきたい、そういうふうに考えます。
衛藤座長 ありがとうございました。
 次に、千田稔君にお願いいたします。
千田稔君 ただいま御紹介いただきました、橋本商会の社長室長をしております千田でございます。
 私、どの党派の党員でもございませんが、保守党から御推薦いただきまして、心から感謝申し上げます。
 私の論といいますのは、全く賛成の立場でございまして、必要なことはもちろんのことですが、逆に、これまで怠慢であったと思うのですね。それは、制定は遅きに失しているというぐらいでございます。
 平和の今の時点で法案審議をするということこそが時宜にかなったやり方であると思います。なぜなら、先ほどある方からもお話がありましたように、危機が差し迫っていていかほどの冷静な議論や正鵠な審議というものが行われるか疑問でございます。このように一見平時と見られるときだからこそ、危機時、非常時を想定して大いに議論をして、人権等への冷静な配慮のきく法案を確定してもらいたい、こう思うのであります。
 五十七年日本は平和に過ごしてまいりました。しかし、これは、かなりの部分がアメリカの力の庇護のもとにあって達成されたものでございまして、そのことが、ある面では幸せでもあったし、ある面では、平和などというのは平和憲法だけを口にすればすべて達成されるんだというマイナスの、不幸の面も持ってきたと私は思っています。
 以下、論拠について申し上げたいと思います。
 自衛隊というものは、国家危機あるいは国家非常時に備えて対応する有力な危機管理実行機関であることは疑いの余地がない自明のことでございまして、その国家非常時というのは、大規模な自然災害です。あるいは人為的な災害ですね。こういったものに対処するためにあるんです。それがなかったら不要なものです。
 意図ある危機というものは、最大のものが戦争です。あるいはテロであります。大規模テロ、あるいは武装難民、工作活動等があるでしょう。そういったものへの備えだと思うんですね。意図のない人為的なものというのもございます。それは、大規模な航空機の墜落ですとか、一般の企業では回復ができないような、そういったものへの対処だと思うのです。
 自衛隊の国家における地位、役割についてもっと掘り下げますと、他の手段では救助、復旧等ができない場合に自衛隊を使用することになっているものと理解しておりますが、自衛隊は、国家非常時に国家が使用する最後の手段、切り札、これっきりしかないという最後の手段だと考えるのです。これを持っていないものは国家にはないはずです。
 この自衛隊に地位、役割を与え、これを必要に応じて使う、使わないという判断をし、あるいは運用するもの、それこそが政治であります。これも論をまたないところだと思うのですね。いわゆるシビリアンコントロールというのも、その本質はポリティックコントロールのはずです。
 目下の自衛隊における訓練というものを見てみますと、いかなる状況下でも任務を達成し得るようにという、各種状況に適応するための極めて幅広い、基礎的部分を訓練しているように見えます。新しい任務や状況下での任務達成には、そういった平素の訓練を踏まえて、その新しい状況というものをつかんで、最悪事態に修正をして対処するというような姿勢で臨んでいると思うのです。
 今次法案は、最大の人的災害と見られる戦争への対処法でございますが、やや時代おくれ的な部分を含んでいることは否めないと私は思うのです。時代の方が先行していると思うのです。それは、状況が許していなかったんじゃないかと思うのですね。自衛隊に、いかにしたら、某国に攻撃されるという非常事態において、最小限の被害をもって、迅速、効率的に運用して、最大の効果を得さしめるかというふうに考えた面からの法案であるとも見ることができます。
 今のままだと、部隊がどうしてよいか迷うであろうと僕は思うのですね。そして、行動するに当たっては、本当に、どうしていいか迷って、ちゅうちょして、そして時間の経過を待つだけに終わる可能性があります。これは非常に危険だと私は思うのです。
 したがって、自衛隊の諸行動を当該法案に基づいて訓練させて、そしてその手続等もしっかり認識させて、そして戦力を発揮できるところまで持っていって、新しい状況、全く予想した状況というのは起こりませんので、新しい状況に応じてこれを応用または援用させて戦力発揮をさせたらいいと思うのです。
 訓練に多大の時間が必要となることはわかりますよね。とにかく、どこで何が起ころうとも、自分らでも、例えば災害が起こって、地震、雷、こういうときに一体どうしていいか、大体こういうものはこれでわかっていると思っているけれども、自分の持つものもとりあえず、うろたえて、下着一つで飛び出す可能性が往々にしてあります。そういうものを的確にできるようにしていくには訓練が要るわけですよ。これには時間がかかると私は思います。
 したがって、法案が決定されれば自衛隊がその法案どおりに動くと考えるのは間違いでございまして、非常に時間ラグ、タイムラグがここにはあると私は思っています。
 危機管理の要訣というのは、言うまでもなく、釈迦に説法で申しわけないと思いますが、備え、すなわち安全保障の体制を一刻も早くとって、そしてその体制下で不安を除去して、まくらを高くし、あるいはくつろぐことであって、諸措置をとらずに不安を抱えながら生活するというのは、人としてとるべき道ではないと私は思っているわけでございます。そのことを一般に人は、備えあれば憂いなしと一般用語で言うのだと思うのです。
 冷戦末期のNATOとワルシャワ・パクトが非常に緊張した時期、一九八四年から八七年ごろ、私はヨーロッパ、ドイツに勤務した経験があります。NATOサイドの戦える体制、あるいは軍が縦横に動き、戦力を発揮できる態勢、これをとっておりました。この演習は公海でございました。言うならば、NATOがやる演習には、ワルシャワ・パクトの武官だとか軍人の代表者とか、そういった者を見に来させておりましたが、そのことが、これは戦える国だとか、戦える軍隊だということを相手に知らしめ続けていた、そのことが抑止力として核以上に第三次世界大戦を抑止し得た根本の問題だと私は信じています。
 であれば、一刻も早く今次法案を制定して、まず自衛隊を飾り物から真に役立つものにして安心を買うべきではないか、こう思うのです。そういう点から、NATOだとかドイツの抑止達成の歴史、史実を勉強されて、諸先生には与野党協力でこういったものは対処していくべきである、こう思うのです。
 最近の危機は、さきの大戦前とは異なり、規模が極めて大きく、かつ非常に速いテンポで迫り、また進捗していきます。九・一一のあの事案を見ても、アメリカの大テロ、瞬時です。しかも、規模は大規模です。何かの事件の発生やきっかけを待って、脅威が出てきたところで考え、処置すればいいといったときには、事は終わっています。
 したがって、こういうときこそ、十分な時間がある、差し迫っていない脅威、こういったときにしっかり、国民としてどうあるべきか、我々自体の問題だとして考えるべきではないでしょうか。私は、そう思っております。
 次に、民主主義下の法治国家というもので、多数の国民の賛同を得て制定される法律によって国家の方向というものが定まることは民主主義をとる法治国家の基本でございますが、そのことが国家信頼の基本と考えなければならないんだろうと思うのです。
 法の定めがない状況下で非常事態が生起すれば、自衛隊は手をこまねき、座して侵略部隊を迎えるでしょうか。私は、自衛隊が存在する以上、このときは危機だと思うのです。何らかの行動をするだろうと推測します。しかし、その行動は、今のままではすべてが超法規的行動になる可能性があります。それを超法規的行動にさせないこと、それは政治の責任だと思うのです。
 この政治の責任とは何か。それは、法を制定してやって、その手続を明確に示してやることです。それが第一の政治責任だと思うのです。それをしなかったら、自衛隊は超法規的に行動し、あるいは何をするかわからない。こんなことは許されないです。それだけならばともかく、それが終わった後、日本という国は、超法規的行動をする、言うならば、何をするかわからぬ国家だと、国際的信頼を全く根本から失うと僕は思ってなりません。
 したがって、定めるべきは定め、一つのたがをはめ、そして、しっかり国際信頼を獲得していくべきだと思っております。
 そしてまた、部隊あるいは自衛隊、こういったものは士気というものがあります。いわゆるモラールというものが存在するわけですが、このモラールは、どうしていいかわからないというようなことの中に立ったら極めて低下しますね。そういうことも、精神的な部分もお考えになる必要があると思うのですが、そうしているうちにたくさんの犠牲者を、先ほどの話にもありましたが、戦争してもしなくても、自衛隊が動いても動かなくても、大量の血を流していくだろうと僕は思うのですね。それと同時に、国民自体が血を流すと思います。それなら、その中で最小限の犠牲を払うような立場で取り組むべきだと思うのです。
 最後に、国民のライフライン確保とか国民保護法の整備、国民の協力をこの法案はうたっておりますが、この国民のライフライン確保等の法整備についてもできるだけ早く整備する必要があります。諸陳述者の皆さんたちもこれについてはよく言っておりますが、私は、やはり自衛隊が動くというのは、何のために動くのや、それは国民あるいは国民の生命、身体、財産、あるいは国土の荒廃を防ぐためにあるわけでありまして、その中から、自衛隊は動ける、しかし国民についての庇護というものを余り取り上げないというのは片手落ちと思うのです。
 ただ、先ほど言いましたように、自衛隊というのが動く場合でも、訓練というようなものがあって、タイムラグがありますよと。そういう間に一刻も早く、この部分が同時に、非常に広範で、自衛隊関係の問題はある面では絞られると思いますが、それ以外は諸機関、自治体あるいは省庁間の調整に非常に長時間食われるでしょうから、それは若干おくれるかもしれませんが、私は、これは一刻も早く完成させるように努力すべきではないか、こう思うのです。
 大体、大きいところは以上のようなことですが、民主主義国家の国民の権利と義務という問題で、私は、義務なるものが余りない、日本には徴兵制もない、いわゆる諸国家の、近代国家の中で見ると、非常に恵まれているというか、ルーズな面がございまして、ある面では幸せをエンジョイしているのかなと思うのですが、しかし、非常事態においては国民の権利というのはある程度制限されるのは当たり前です。そして、その後に、最小限の被害でエンジョイできる権利を主張できる世界というのを切り開くべきだと思うのですね。それも、全く平和時だけが存在して、緊急時には何もそんなことは制限しないんだというんだったら、ちょっと正常な頭脳で考えられる問題ではないと私は思いますね。
 したがって、ある程度の制限はやむを得ない、しかし、それが無制限でないようにたがをはめる、これが法ではないでしょうか。そう思っております。
 以上で私の陳述を終わります。
 ありがとうございました。
衛藤座長 どうもありがとうございました。
 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
 午後一時から会議を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
衛藤座長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 これより委員からの質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中和徳君。
田中(和)委員 座ったままでお尋ねすることをお許しいただきたいと存じます。自由民主党の田中和徳でございます。
 佐世保市制百周年、まことにおめでとうございます。また、八人の公述人の皆様、本日は、本当に御多忙の中御出席を賜り、それぞれ参考になる御意見を述べていただき、まことにありがとうございました。委員の一人として心より御礼を申し上げる次第でございます。
 私は、沖縄県に次ぐ第二の基地県、横須賀の港とか、厚木、座間の米軍の施設であるとか、とにかくたくさんの軍事施設のあります神奈川県の選出の議員でございまして、基地に関する諸事情や思いについては佐世保の皆さんと共有できるものが多々あるのではないかと思っております。また、きょうもお見えですが、地元の北村誠吾議員からもしばしばいろいろなお話を承っておりまして、きょうは本当に佐世保に来られてよかったな、このようにも思っておるわけでございます。
 各方面から、なぜ今有事法制ですかという声もございますし、一方で、日本では今までどうしてこんな基本的な法整備がなされなかったのかと、こういう意見もたくさんございます。まさしく、私は、お話がありましたように、今までこのような整備がおくれたというのは、何といっても政治の責任が一番だと思っておりますし、私自身、大変責任も感じなければならない、このように思っております。
 それでは、時間の関係もございますのでお尋ねしてまいりますが、まず、サセボコンパス21代表幹事の馬郡さんにお尋ねをしてまいりたいと思います。
 確かに、我が国に対する大規模な国土への侵攻があることを前提としての、以前の冷戦時代に研究された有事法制の中間報告をもとにその法制化を進めることは時代に逆行しているのではないかという批判があることも事実でございます。
 しかしながら、私は、先ほどからお話がるる出ておりますように、昨今の状況を考えたときに、特に米国の九・一一の同時多発テロなどを見るにつけて、冷戦崩壊後の今こそ、武力攻撃の形が、国家間を超えて、まさに千差万別、いついかなる形で国家国民に対する武力攻撃が行われるか、極めて予測困難な時代に突入したな、このようにも思っておるわけでございます。
 そんな時代だからこそ、国内の守りの基本である有事法制の整備を国民の御理解のもとに進めていくことにより、すきのない我が国の国防体制を早期に確立すべきだとも考えておるのでございます。
 馬郡さんは、先ほど、日本の西における守りのかなめである佐世保市民の立場からお考えをお述べいただいたわけでございますけれども、有事法制整備の必要性についてどのように認識をしておられるのか、もう一度お伺いをすることができればと思います。よろしくお願いいたします。
馬郡謙一君 ただいまの田中先生の御質問でありますが、私ども、佐世保に住んでおりまして、自衛隊の皆さん方とのかかわりの中で、自衛隊の皆さん方が精励されていらっしゃることは先ほど申し上げたとおりでございますが、要するに、国がそういう意味で独立国家として生きていく中で、自衛隊の人たちの姿を見ていても、有事立法がないことの方が不思議だというふうに考えているわけであります。
 先ほど私が申し上げましたように、もっと、地球という、世界という規模で見れば、本当に手をとり合ってお互いの平和と安全を守っていくということは必要でありますけれども、それは、何よりも、自国の安全が保障され、そこに住む国民の生活が保障されることが第一だというふうに考えますので、その法制がないということ自体に非常に疑義を感じていたわけであります。ですから、逆に、遅かったんじゃないですかということも申し上げたつもりでございます。
 以上でございます。
田中(和)委員 重ねて馬郡さんにお伺いをいたしますけれども、有事法制に関する必要性やその内容について政府からの国民に対する説明がまだまだ不足しているとの御意見が各方面からございます。私としても、その指摘については同意見を持っておるわけでございます。
 馬郡さんは、サセボコンパス21という経営者の方々による会をつくられて、我が国の安全保障に関して研さんを積んでおられるというふうに私は承っておるわけでございます。大変立派なことだと思います。その立派な経験をお持ちの立場から、どのようにすれば有事法制の整備について国民の御理解がより得られるようになるのか、ぜひこの点についても御意見をお聞かせいただければ幸いだと思います。
馬郡謙一君 先ほど申し上げましたように、世界に目を向けますと、残念ながら、まださまざまな紛争があることも事実でありますので、これは全く仮定論じゃなくして、現実なものととらえて今この時期に考えることであるというのがまず一つであります。
 ただ、先ほど先生御指摘のように、全部を、全文を考えていきますと、先ほど市長もお話しになりました国民保護法制の整備であるとか、その辺は若干、まだまだ今から議論をしていく点があろうかと思いますので、こういう公聴会を通じて知らせしめていくということが大切だというふうに考えております。
 ただ、それより、意義的なものをもう少し国民の皆さんにお知らせをいただきたい。なぜ有事法制かということだけじゃなくて、日本が世界の中で独立した国家であり、治安も含めた中で、守らなければならないもの、国民の財産であるとか、そういうものは、まず形があってからこそ議論をしていくべきだというふうな気がします。法制化が進みまして、また、変えざるものは変えていくべきであろうし、それによって時代も変わっていくであろうと思いますが、ないものの中からは多分何も生まれてこないのではないかというふうに考えております。
 できれば、意義的なこと、先ほど言いました国際という中での意義的なことをもう少しお知らせいただければいいのかなというふうに感じております。
 以上でございます。
田中(和)委員 意義についても、私たちも含めて、しっかりと国民の皆様方に御理解いただけるように努力をしてまいりたいと思いますし、本当に大変いいお話を承ったと思っております。
 済みません、もう一度お尋ねをさせていただきたいんですが、地球市民型の活動という提言をただいまお聞きしたのでございます。日本だけが平和であればいいとか、俗に言う一国平和主義、一国繁栄主義、これはもはや今日とり得ないということは私も全く同感であります。
 現在、我が国も、PKO活動だとかテロ撲滅に対する支援という行動に積極的に取り組んでおるわけでございます。当然に、自衛隊自身もその役割の重要な部分を担うべきことは論をまたないところでございます。
 今述べられた地球市民型の活動として、今後、自衛隊のみならず、政府全体がどのような活動について特に重視をすべきと考えておられるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。
馬郡謙一君 実は、そういう意味では、期待も込めてですけれども、日本がそういう各国共通の地球市民型のリーダーになってもらいたいという気持ちが十分あります。といいますのは、国連等を含めても、アジアの中では雄でありますし、世界の中でも類を見ない繁栄を見たわけでありますから、これは当然だというふうに考えているわけであります。
 これは、援助を含めたそういう金銭的なものじゃなくて、今からは、やはり人的な派遣、マンパワーも必要だというふうに考えるわけです。自衛隊が今支援という形で出ていっていただいているわけですけれども、今後は、もっと国民レベルで、そういうボランティアも含めた中で、そういうこともしていただきたいと思っております、協力の中で。
 ただし、その条件となるのは、我が国がそういう独自の国家としての存立をしていくこと、それは、とりもなおさず、この法案が持つ意義がまずはでき上がってからのことだというふうに考えて、先ほどは地球市民型という言い方をさせていただいたわけでございます。
田中(和)委員 馬郡さん、ありがとうございました。確かに、物、金だけではなくて、身をもって、心をもって国際社会の中に貢献できるような、さらに我が国が発展できるように、私たちも責任を果たしていかなければならないと思っております。
 それでは次に、光武市長さんにお尋ねをさせていただきたいと存じます。
 光武市長さんは、我が党の衆議院議員としても御活躍をされた大先輩でございまして、どうぞ、ひとつよろしくお願いしたいと思っております。
 地方公共団体の責務を決めておきながら、責務を果たすための権限や具体的な仕事は、二年以内に整備されるという個別の法制を確認しなければ不明確であり、法案を二年も先送りするということはどうかと、タイムラグについても厳しい御指摘があったわけでございます。
 そもそも、地方公共団体が住民の生命あるいは身体及び財産を保護するその責務については、この法案により新たに定められるものではなくて、もとより地方公共団体に内在している責務を確認的に規定したものと私どもも考えているわけでございます。この法案をもって地方公共団体の新たな義務が課せられるものでは決してありませんが、今まさに武力攻撃事態が発生した場合には、地方公共団体においても、住民の生命、身体などの保護をするための現行の法律を根拠にして、警察、消防の措置など、可能な限りの努力を尽くすことになると私も考えます。
 そのためには、この法案を一刻も早く成立、施行させて、次の国民保護法制を、広く意見を聞きつつもスピーディーに整備していくことが重要であると私も考えております。
 国民保護法制の整備に当たっては、関係機関の意見のほか、国民的議論の動向を踏まえながら、十分な国民の理解を得られるような仕組みをつくることが必要でありますので、法案では、二年を法整備期間内として取りまとめのタイムリミットにしておるわけでございます。しかし、おっしゃるとおりに、早くこれをやっていく、そのためには、今提案されている法律を我々は一刻も早く成立させるべきではないか、このような立場におるわけでございます。
 そこで、今後、国民の保護法制の整備をしていくに当たって、武力攻撃事態において市町村が果たすべき役割はどのようなものと考えておられるのか、もう一度お伺いをさせていただければと思っております。
光武顯君 この問題については、国会でいろいろな議論があっておりまして、私も関心を持って拝聴しているのでありますけれども、事柄が細かくなりますと、個別法案で整備していくというような答弁が再々あっているわけですね。
 私どもも、実は、しからばこの先行する処理法案が通った場合にどうやって対応するのかということになりますと、既存の、それに似たと申しますか、対応できるものとしては、災害対策基本法というものがございます。そこでは、住民の避難誘導だとか警報の発令だとか、そういったようなことがあるので、私どもとして、今のところ、この災害対策基本法、このことでともかくも対応しなければならないのかなというふうには思うんですけれども、しかし、事柄が、戦時体制という中で、経験のない地方自治体の長として、やはり一つの指針なり方向なりというものが明確にならないと、責任を持って遂行することができない、そんなふうに考えます。
 そこで、実はもう一つ、技術的なと申しますか、本質的な話があるんです。
 つまり、国民の権利を保護するということについて、これが並行的に議論されていくとするならば、例えば私どもも、議会において当然質問がこれからあると思うんですね。その質問に対して、今のような個別法ではというようなことになりますと、結局、私どもも、質問に対する答弁は先送りになる。先送りになるということは、実は、ある意味で質問をはぐらかしてしまうということにもなりかねないわけです。
 本来、先ほど来お話がありますように、こういった非常に国の根幹にかかわることですから、全体が真剣に議論をしなきゃならない。その議論をしなきゃならないことが、国民の保護に関する法案がないばかりに我々としてはそこまで踏み込んでやれないということで、実は、この法案自体が国民的な関心になかなかなりにくいのではないか。むしろ、それがあった方が、私どもとしては、あわせて一本でやったらもっと国民はこの問題に対して関心を持つようになるのではないか。技術論と申しますか、そういったこともございます。
 いずれにいたしましても、しかし、我々としては、これから、今日までの国会の議論等々を踏まえながら、地方自治体の、とにかく今日的に果たすべき役割ということについては勉強していかなきゃならない、そう思っております。
田中(和)委員 地方自治体の長のお立場として、私どもも大変重く受けとめていかなければならない御意見だと思います。ただ、先ほど来少しお話ししておりますように、ややタイムラグが出ております理由も市長さんはおわかりをいただいているんだろう、このように思うわけでございます。
 今、大変いいお話を聞いたわけでございますけれども、その中でも、これから我が党としても、スピーディーな対応で国民保護法制をこの法律をつくり上げた後に整備していかなければならないわけでございますけれども、地方自治体の長として、豊かな政治経験をお持ちの市長さんとして、特に留意をしておかなければいかぬな、こういうことがあれば、率直に語っていただければと思います。
光武顯君 私は、介護保険法が通りました際に、佐世保市内でも十数カ所、私自身が出ていって法案の説明をしたり、それから、介護保険料の決め方などが市民の意思と深くかかわっているといったようなこと、そんなことをやりまして、したがって、皆さんにはその辺のことは十分おわかりいただいたと思うんです。
 今日、この法律が、先ほど申しましたように、国民的な関心が徐々に高まりつつあるとはいえ、どなたかがおっしゃったように、学生さんの六割が知らないといったようなことというのは、やはり国家の根幹にかかわるこうした法律だけに、ゆゆしき問題だと私は思います。
 したがいまして、もっと国の方は、多くの国民がこの問題に関心を持つというようなことで、国を挙げてそういった環境をつくり出すように御努力をいただきたい。我々地方自治体も、いずれ我が地方自治体にかかわる問題ですから勉強したいと思うんですが、国がもう少し、こうした問題、国民から賛同できるというようなことをもしお望みであるということであるならば、そういった環境づくりを御努力いただきたい、そんなふうに私は思っているんです。
田中(和)委員 いよいよ時間がなくなりましたので、最後にもう一度市長さんにちょっとお尋ねをしておきたいと思います。
 法案では、地方公共団体が対策本部長の総合調整に基づいて対処措置を実施しないときは、別に法律で定めるところによって内閣総理大臣による指示や代執行ができることとなっております。
 武力攻撃事態において、極めて限定された場合に、万全の措置を担保するためのこうした措置を講ずることは必要であり、地方自治との関係でも特に問題はないのじゃないかな、私はこのように思いますけれども、その点について一言、市長さんに最後にお尋ねして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
光武顯君 一たん事柄がそういった状況の中にあっては、国、地方自治体が協力をして、そしてお互いの信頼関係のもとに事柄を実行していくということは、私は、絶対必要であると。
 ただ、代執行ということになりますと、それは、国と地方自治体の間で信頼関係ができていないというようなことが想定されるわけでして、そうだとすると、やはり代執行は、地方自治法の精神に照らして、なるべくやるべきではない。とすれば、やはり代執行しないような形での十分な信頼関係の醸成に努めるべきだと私は思っております。
 しかし、基本的には、地方自治体としては、この法律の精神にのっとって協力すべきだというふうに思っております。
田中(和)委員 どうもありがとうございました。終わります。
衛藤座長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。
 次に、玄葉光一郎君。
玄葉委員 御紹介をいただきました民主党の玄葉光一郎です。
 意見陳述者の皆様に、心からきょうは御礼を申し上げたいというふうに思います。それぞれの陳述がとても大事な指摘をされておられたのではないかというふうに思います。
 冒頭、簡単に、私たちの立場といいますか、考えを端的に申し上げたいと思うのですけれども、緊急事態における法制というのは、私たちは必要だというふうに思っています。さまざまな議論もありますけれども、党内のコンセンサスとして、緊急事態における法整備は必要だというふうに思っています。私自身は強く思っている一人でもあります。
 問題は二つありまして、一つは中身ですね、法案の中身、そしてもう一つは、先ほどから話も出ていますけれども、国民の理解と合意、この問題だというふうに思っています。
 特に、中身という意味では、これもほとんどの陳述者の方がおっしゃったと思いますけれども、いわゆる国民の保護をどうするかということ、緊急事態法制というのは、国家を防衛し、国民を保護する、そういう法律なんだと思いますけれども、その国民を保護する部分が残念ながらないというのが本当によいのかどうかという問題意識は、当初から非常に強く持っているのですね。
 各論を言えば切りがありませんけれども、例えば、国会の関与がこれで十分なんだろうかとか、基本的人権は、確かに一部御指摘がございましたように、それは緊急事態において一定の制約を受けるのは当然なんですけれども、でも、絶対受けない、例えば精神的な自由というのは何なのかとか、その他補償の措置というのが果たしてこれで十分なのかという議論も当然あるだろうというふうに思いますし、いろいろ中身も詰めなきゃいけない議論がありますねと、そう思っています。
 それで、一つは光武市長さんに、これは私だれにも予告していませんが、お尋ねをしたいと思うのです。
 とても印象的な陳述でございました。つまり、一つの具体的な提案、関連法整備ができるまで、仮にこのプログラム法が成立をしても凍結をすべきではないかという、これは極めて具体的な、建設的とも言ってもよいのではないかとも思いますけれども、そういう提言があったわけであります。あるいは、もう一つの考え方として、国民の理解を得るためには、おっしゃったとおり、国民保護法制が出てこないとなかなか関心も出ないと。
 我々は最初からこういう立場なんです。本来同時に出されるべきだよね、でも、出てきちゃった以上、さあ、このプログラム法を議論することで、国益とかあるいは新しい公という精神を、ある意味では正面から国民と一緒に議論しながら、議論を継続していく中で個別法が出て、そこで、ある意味では決着を図るというのも一つの方向ですねという感じも実はしているわけでありますけれども、そういう運びの問題ですね。私は、今のこの時点では、運びの問題というのはとても大事じゃないかと。
 茅野病院長さんも、まさに最後に書いてあるとおり、国民を守るという立場を明確にして、詳細を提示した上で、十分な討議を経て審判を仰いでもらいたい、こういう議論がありました。この運びの問題について、光武市長さんと茅野病院長さんに御意見をいただきたい。
 もう一つだけ、恐縮ですけれども、せっかくなので光武市長さんに。
 ここは米軍も、そして海上自衛隊もあるということです。これもまた、おっしゃるとおり、具体的な法整備はこれから、具体的なアメリカとの交渉はこれからということなんですけれども、結局、自衛隊は、これから適用除外を受ける日本の法律もあれば、逆に言えば、守らなきゃいけない日本の法律も出てくるわけですね。では、米軍はといえば、市長さんは御存じだと思いますけれども、接受国の、つまり日本の法律の適用は受けないというのが一般的な原則。ただ、尊重しなければならない。でも、尊重しなければならないということは、守る必要は必ずしもない、守る義務はないということですね。
 ですから、結局、自衛隊の動くルールと米軍の動くルールというのは、このままいっちゃうとある程度変わってくる。自衛隊は守らなきゃいけない、米軍は守らなくてもいい、このままいくとこういう話になりかねないのですけれども、そういう点で、御地元にいらっしゃって、要望があればというか御意見があれば、おっしゃっていただければありがたいというふうに思います。
 以上です。
光武顯君 第一点の、運びの問題についてお答えいたします。
 この問題は、地方自治体の長であれば、どなたでもそんなふうに受けとめておられるのではないかなというふうに私は思うのですね。現実に、自治体の長として例えば指揮命令をするといったようなことになりますと、本来その責務を果たすべき基準というものがなければならないわけですね。ですから、先ほど申しましたように、災害対策基本法みたいなもので、当面何かあったらやらなきゃならないかな、こう思っているわけでして、私としては、あらまほしきといいますか、期待としては、実は、この法案と保護法案が一緒に議論されていればよかったなと。
 ただ、この問題については、既に法案が提案されておりまして、先ほど最終的に申しましたけれども、入り口にとどまらずに進めてもらいたい。しかし、その中で、二年を目標としてと、こういうのは、もう少しきちっとした担保を我々としては欲しいなというふうに思っているわけです。その担保のことについては、先ほど私が言ったようなことも一つの考え方としてあるのではないかということを申し上げたわけです。
 二つ目。米軍と自衛隊のことに関しては、自衛隊法の改正等々も読ませていただいたのですが、これは一般的に言って、戦時になれば、国土で防衛をするということになれば、一定の権利の制限というものは、これはやむを得ないと思うんですね。しかし、どこまで制限されるのか、どこまで保護されるのか、こういうことになってきた場合に、やはり先ほど申しましたような事柄が実は重要になってきて、例えば我々は総合病院を持っておりますが、さて、そうなった場合に、この病院は、市長の命令と申しますか管理下にあるのか、あるいは出動命令が出たときには、いわば病院の保護ということで収用されるのか、いろいろな問題が出てまいりますね。そこら辺のところが、まだ我々としてはよくわからないところがあるわけです。
 米軍につきましては、これはもう日米安保条約、地位協定、そのことについては、我々も今まで何遍となく、言ってみれば、苦しんでいる面もありますけれども、しかし、日本国家が成り立っていく上において日米安保条約を選んだのだということからいけば、それは一定の制限があるということもやむを得ないと地方自治体の長としては考えているわけです。
 今後の問題については、恐らく国土の攻撃ということになってまいりますと、我々がまだ今日予想できないような問題もあろうかと思いますが、一般論として言いますならば、日米安保条約を容認しているという立場からいったら、一定の制限があるのはやむを得ないというふうに思っております。
茅野丈二君 運びの問題ということで、ちょっと一言話をさせてもらいます。
 私、何度もこの話の中で申しましたけれども、実は基本的人権が制限されるんだということが皆さんの中でどの程度重大事として認識されているのか、あるいは国民はそれを実際に知っているのかということを一つ考えております。そして、その上で、国民保護法案が今回具体的に提出されなかった、その提出されなかった行為そのものに、国民の生命を有事に際してもきちっと守らなきゃいけないんだという、そのことが政府の中にどれだけ大きなものとして認識されていたのかどうか、ここにちょっと疑問を感じます。
 とすれば、二年間という一つの基準を今出されているわけですから、例えば二年間をめどにして、この法案そのものの審議を継続するなり、一回これは戻してしまって、そこまできちっとつくった上でもう一回提出をしてもらうという方がすっきりしているのではないかというふうに私は思っております。
衛藤座長 これにて玄葉君の質疑は終了いたしました。
 次に、末松義規君。
末松委員 民主党の末松義規でございます。
 意見陳述者の方々には本当にありがとうございました。大変参考になりました。
 また、ここに来るに当たりまして、地元の高木義明議員にも大変参考的な意見をいただきまして臨んでいるわけでございます。
 私も、今玄葉議員の方から言われたことと全く一緒の印象を持っております。この法案は、要するに自衛隊の軍事活動をできるだけ自由にする、そういった法案が主であって、国民生活の立場から考えた法案がないということそのものが大きな問題だと、今茅野先生御指摘になられましたけれども、同じ立場に立っております。
 そこで、私の方は、もうちょっと具体的に光武市長の方にお伺いをしてみたいと思います。
 もし有事が起こったら、災害対策基本法で当面やる、非常に不安だよねと、一方、政府から一定の方針が出ないとだめなんだということですが。先ほど、千田先生の方ですか、御指摘があったのですが、訓練もしなきゃいけない、そして住民の保護とかいろいろな形で総合的な訓練もしないと身につかない、ただ本で読んだだけでは何ら意味がない、そういうことになると思うのですが、現場を抱えられる市長さんとして、例えば一定の方針が示されて、そしてさらに訓練するようなことをやる場合、大体イメージ的に、何年ぐらいそういったものにかかるんだろうかなという、その感触なりをちょっといただければありがたいと思います。
 それからもう一点だけ。代執行の問題で、この場合は深刻なんですよ。実は、例えば市長さんあるいは知事さん、地方自治体の長の方が、それでは承服できない、だめだと言った場合に、首相がかわって代執行する。この地方自治体の長の御意見というのは、地元の方々の御意思をかなり尊重しているんですね。そんなときに、代執行で中央からぼんと権限で、これやれ、あれやれと言われたときに、では、本当に役所の方々を含め、そういう地元の皆さんの理解を得ないで何か事ができるのか、私はちょっとできないんじゃないかと思うんですが、地元の首長さんとして先ほどちょっと御不安もお述べになられましたけれども、お聞きをしたいと思います。
 それから、続けて茅野先生の方に、突然の質問で恐縮なんですけれども、今ちょっとプロセスの中で二年ぐらいかけてというお話がございました。一方、政府の方からは、とりあえずこの法案を成立させていただいて、そしてその改正という形でやっていけばいいんじゃないかというような、私から見たらやや瑣末な意見に感じるんですが、その御意見に対してどう思われるか、その点をお願い申し上げます。
光武顯君 先ほど、私は、災害対策基本法というものにのってやるべきだ、やるのが当面必要ではないかというふうに申し上げました。
 このことについては、私どもの市、よそでもそうだと思うのですが、毎年一回訓練をやっております。そして、その上に、我が市では、原子力潜水艦が入港いたしますので、原子力潜水艦に万一何らかの事故があった場合にそれにどう対応するか、この訓練も、昨年やろうとしたんですが雨が降ったために流れましたが、ことしはやるようにしております。そういうことを通じての訓練というものが市民の皆さん方には経験としておありですから、個別に決まっていくことに応じての訓練というものは、地方自治体の長としては、市民の生命財産を預かる人間としては、やはりやっていかなきゃならない。
 では、どれぐらい必要なのか。これは、今やっている災害訓練というものも、あくまで訓練であり、それは確かに有効ではあると思いますが、十全であるかどうかということになってくると、これも何とも言えない。したがいまして、どれぐらいあればということはなかなか想定しがたいと言わざるを得ませんが、非常に難しいことではあるというふうに思います。
 それから、代執行について言えば、先ほど申しましたように、ない方がいい、ないように努力をすべきだということを申しました。ただ、イデオロギー的に従わない、こういう指示に従わないということになった場合に、迷惑を受けるのは、やはりそこに住んでいる住民でありますから、一首長さんのイデオロギーでもって従わないといったようなことは余り考えられないのではないか。住民の人が、それではどうすればいいんだ、こういうふうになってきた場合に、私は、やはり法に従ってやるということは、常識的に考えて、あるのではないかというふうに思います。
 したがって、代執行というところに至らない形での状況を、絶えず信頼を醸成するという努力は必要であろうかと、これは、先ほど来言っております期待ということで、余り確実な返事にはなりませんけれども、そういった気持ちを持っております。
茅野丈二君 とりあえず成立をさせるという言い方なんですけれども、私は医療人ですので、例えば医療の世界では、今インフォームド・コンセントという言葉があります。
 例えば、あなたはもう胃がんですよ、だからもう手術をしなきゃいけないんですよ、あとはすべて私に任せなさいというのが今までの医療のスタイルです。ところが今のインフォームド・コンセントというのは、具体的に、あなたはどういう麻酔をかけて、どういうふうに手術をしますよという話をすること、あるいは、手術をしないで内視鏡的に胃がんを取り除くことができますよとか、いろいろな説明をして、そして患者さんが、だったら、こういうふうな手術をしてもらいたいと、そういう納得の上で事を進めていく。これが非常に常識になっているわけで、国と国民の間の関係もやはりそうあらなければならない。具体的な形をちゃんと示した上で、だったらこうだと納得するものを見せてもらって、そして了解をする。それが、これからの国と国民のあり方だというふうに思っております。
末松委員 最後になりました。せっかく長崎の地に来たものですから、非核三原則について、市長さんのお立場を、政府の発言を踏まえて一言お伺いしたいと思います。そして、終わります。
光武顯君 この問題は、私はやはり、日本の国家というものが、言ってみれば非核三原則というものを今国是としてやっているわけでありまして、そのことについては、疑いを持たずに、これからもそういった主張を続けていかなきゃならないというふうに思っております。
 ただ、我々は、日米安保条約という中で、米原子力潜水艦、まあ潜水艦に限りませんが、そうした入港ということを国家が認め、そして、地方自治体としてはそれに従わなければならないということになっておりますから、そういう意味では、観念と違いまして、現実的にその原子力潜水艦を受け入れている。これはしかし、あくまで動力としての推進動力でありまして、武器としての核ではないというふうに我々は認識をしながら入港というものについては受け入れているということになるわけですね。
衛藤座長 これにて末松君の質疑は終了いたしました。
 次に、田端正広君。
田端委員 御紹介いただきました公明党の田端正広でございます。
 きょうは、八人の先生方、どうもありがとうございます。今いろいろお話がございましたが、ざっと皆さん方の御意見を伺っていて、今ようやくこういう議論ができるという意味において、有事に関する法整備を日本国としてやっていくということについて大きな第一歩である、そういう大勢のお話かと思います。一部いろいろ御意見もございますが、大勢の流れはそういうお話だったかなと思います。私たちも、そういう意味では、今までなかなか議論できなかったことが正面から議論できるようになったという意味においては、大きな意味が今日的にあるんだろう、こう思っております。
 そこで、こちらは被爆県であり、そしてまた、先ほど来市長さんからいろいろお話もございましたように、基地との共存という、海上自衛隊及び米軍基地もございますし、そういった意味で、非常に複雑といいますか、そしてまた歴史的にもいろいろな思いのこもった地域だと思いますが、そういう中で、冒頭、光武市長の方から、幸い今日まで国土攻撃のような事態がなかった、そういう中で万一の事態に備えて用意すべきではないかというお話もございました。
 もう一度確認させていただきますが、そういう意味での法制化の必要性ということが、私は国民の五割ぐらいはあるんだろうというふうに世論調査等で感じておりますけれども、市長さんとして、そういう複雑な地域における市の行政の最高責任者として、率直な気持ちとしてどういうふうなお考えといいますか感想をお持ちなのか、もう一度確認させていただきたいと思います。
光武顯君 今回の有事三法でありますけれども、冒頭申しましたように、私は、この法案に対して賛成であります。ぜひ成立をさせてもらいたい。しかし、先ほど来申し上げるようなことがあって、もっとやはり国民的な議論をするということになれば、保護法案的なものもあわせてやっていった方がより国民の関心が高まるのではないかという、技術論といったようなものも申し上げたつもりであります。
 法制化の必要性は、絶対に必要だと思います。
田端委員 ありがとうございます。
 そこで、国民の保護に関する関連法案が入っていない、二年後という、先送りされているということについて、そこのところがはっきりしないから市の行政を預かる責任者としてなかなか難しい面もある、こういうお話でございますが、例えば、私は、来年の通常国会に国民保護関連法が提案されるよう、つまり二年後ではなくて一年後というふうに、これは政府のほうに頑張っていただいたら可能だと思うわけであります。
 そういう意味で、何らかの、例えば総理がそういう答弁をするとか、何か担保すればそういうことはぜひ可能だと思いますので、そこは、そういうふうに一年繰り上げるといいますか、来年の通常国会を目指すようにやっていく、こういうふうにしてはどうかと考えておりますけれども、その点についてはいかがでしょう。
光武顯君 直近であれば直近であるほどよろしいかと思います。
田端委員 ありがとうございます。
 そういった意味で、さらにまた国会の方でもそういう方向で議論を進めさせていただきたい、こう思います。
 北川先生にお伺いいたしますが、国際政治の現場でいろいろと若い青年とのかかわりの中での意見の陳述をきょうはいただきました。大変具体的で貴重な御意見だったと思います。
 特に先生のお話を伺っていて感じた点は、そういった意味で、留学生の方がこの問題に対して大変強い関心を持っているという、数字の上でもそういう形が出ているということで、この点については私も改めて認識をした次第でありますが、ここのところは、日本人の学生の方と留学生の方との感触が、相当温度差があるなと一つは思っております。
 そして、特に留学生の方の場合は、つまり、過去における日本の国の言動といいますか、行動といいますか、そういったことも含めた日本に対するイメージというものがその根底にあるのかなと、こんな感じもしたわけであります。
 そして、こういう大事な、国の基本にかかわるような法案、法律になってきますと、国民の感情としてのイメージというものが大変大事だなということを、この留学生の方の御指摘から私直接今印象を持ったわけでありますが、そういう意味では、いかに日本という国のイメージがこの法律を論議する中で大きく影響しているかということを、現場で教育に当たっておられる先生の立場から、もう一度、イメージの大切さといいますか、日本のあるべき姿というものがいかに大事かということを御報告いただければと思った次第です。
北川誠一郎君 私は、ここ六、七年、留学生さんとつき合ったり、私自身も一九八四年から九二年までアメリカの方に留学しておりまして、外から見る日本、あと、帰ってきて内側で見る日本、そして内側にいる外国人の人たちが日本をどう見ているかということに非常に興味がありまして、常々、何か事あるごとに授業等で取り上げているんですけれども。
 先ほど申し上げました、まずこの法案だけに限って言いますと、きちっと説明すれば、例えば日本人であれば、よくわからないけれども、最後は、これは自衛隊のシビリアンコントロールですよ、それが目的ですよということを言うと、ああ、なるほどと。それでもおかしいと言う人もいますけれども、それはそれで理解がされている。
 ただし、留学生に関しましては、過去の侵略、特に中国、韓国では非常に、特に韓国では非常にそのような教育を最近までやってきました。日本に来ている子たちは、そんなに日本に対する反感はないんですけれども、毎年、教科書の問題とか、歴史認識の違いによる問題とか、首相が靖国神社に参拝するとかなんとか、それがニュースで取りざたされますと、必ず、日本は信用できないというふうなイメージを持ってしまうんですね。前からそうだったけれども、日本へ来て、非常に周りの人たちはよい、ところが政治家はだめだ、政府はだめだ、首相は信用できないというようなことが、日本の側からそういう原因をつくってしまっている。そういうことで、理性に訴えて説明するよりも以前に、もうイメージができ上がってしまっていて、そのような理解ができないのではないか。
 日本に来ている学生さんがこうですから、例えば、先ほど私が申し上げたように、トランスナショナルな行為で議員の皆様が各国を訪問されて説明をするということも当然できますし、首相が直接行ってトップとトップの会談をするということも当然できるんですけれども、そのようなちぐはぐな、我が国の政府、首相とか、そういう行為がそのようなものを邪魔している。そういうことなので、特に、首尾一貫した行動をとる、あと、粘り強い説明ということが必要になってくるのではないかと思いました。
田端委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、学生さんの意見の中に、予防外交、平和外交をもっとやるべきだというお話があったということをさっき御報告いただきましたが、これは大変大事な視点だというふうに思いました。ぜひ、ここのところ、そういう大きな立場でお育ていただいて、そういう世論をもっと起こしていただけるような源泉になって、先生にも頑張っていただければ大変幸せかと思います。
 ありがとうございました。
衛藤座長 これにて田端君の質疑は終了いたしました。
 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚でございます。
 私、おととい、仙台の地方公聴会にも出席させていただきまして、きょうは佐世保でいろいろな御意見をいただきましたけれども、非常にやはり地域色あふれる意見をいただいたなというふうに思いまして、地方公聴会、今後もまた開催をして、また法案の中身、そして多くの皆さんの意見を吸い上げるようにしなきゃいかぬなというふうに思いました。
 それで、今回、政府が武力攻撃事態対処法というのを出しました。外二法出ておりますけれども、私ども自由党といたしましては、それに対しまして、対案として非常事態対処基本法というものと安全保障基本法というものを提出いたしております。
 国の非常事態というのは武力攻撃事態だけではないと私は考えておりますし、また、そういう非常事態においても、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義といった日本国憲法のこの三つの理念というものは絶対に守らなければいけない、守り抜かなければいけないというふうに考えております。そういった観点から意見をお伺いしたいというふうに思います。
 政府の責務は基本的人権を守るということで、これは有事であれ平時であれ変わらないと思うわけです。生命、自由、財産に対する権利というものを擁護するということになるわけですが、政府案は武力攻撃事態ということに特化しておりまして、私どものこの非常事態対処基本法は、大規模災害、テロ、また突発的な金融危機、アルゼンチンのようなところでも起こっておりましたが、そういった場合にも総理大臣が基本的人権を守るという観点に立って非常事態の布告を行なうということができるというふうにしております。
 その基本的人権を守るということについて、次に、日本国憲法の国民主権の原則ということに関しまして茅野陳述人に伺いたいんですけれども、私どもは、総理が非常事態を布告した場合でも国会の事前承認が必要であるというふうに考えております。また、その後も六十日ごとに国会に報告をし、国会で不承認の議決があったときはこの布告を廃止しなければならないというふうに考えております。
 現実問題として、今政治への信頼というのは非常に低下をしていることは私も否定はいたしませんけれども、やはり国会というのは国権の最高機関であって、しかも全国民を代表するという国会議員によって構成されているということで、先ほど意見陳述の中でも国会軽視ということをおっしゃっておられましたが、その点についてもう一度、御意見はいかがでしょう。
茅野丈二君 政府が決めるということで、あるいは首相が決めてしまうということについては、なかなか国民がそれでよしとはしないだろうと私は思っております。国会がいろいろな場合を想定して、そしてちゃんと決めていくという原則をやはり守らなきゃいけない。
 それは、非常に論議が、話していくと非常に極端になって、もう緊急の緊急のさらに緊急のことばかりが非常に主張されてきて、そして、だから国会では論議する時間がないんだという話が出てくるんですけれども、そういう場合というのは非常に少ないと思うんですね。そういうことを考えれば、原則として、あるいは基本的に国会で論議をするということをやはりきちっとしておかなきゃいけないと私は思っております。
中塚委員 特に昨年のテロ特措法なんかでも計画というのが出されたわけですけれども、では、それがいつ終わるんだということについて明らかではなくて、政府自体が終わらせられないときに、やはり国会がそれを終了させるような仕組みというのはつくっておくべきなんだろうというふうに私は思っております。
 次に、日本国憲法の平和主義、国際協調主義ということも含む平和主義だと私は思っておりますが、先ほど来、有事法制ができて戦争に巻き込まれるというふうなお話があったと思うんですが、やはりそういう意見が出るのもむべなるかなと思うところがあります。
 それは、今まで我が国の安全保障の基本原則というものが定まっていないということが一番大きな原因で、例えば武力攻撃を受けた場合に限っても、自衛権を行使する、どういうときに行使をして、そしてそれをどこまで行使をするのかということについて明らかになっていないわけですね。そもそも、自衛権があるのかないのかという議論さえいまだにあるというふうなことで、私は、自衛権の限界あるいは自衛権行使の条件といったことをこの安全保障基本法でしっかりと定めるということにより、日本国内はもとより周辺諸国、世界各国でそういう懸念、不安があるということならば、それを払拭するべきだというふうに思っております。
 また、もう一つ、平和主義の中に国際協調主義ということがあるというふうに思っておりまして、国際貢献ということは、世界第二位の経済大国ということでもありますので、積極的に行う必要があるだろうというふうに考えております。
 昨年、テロ対応特別措置法というのが成立をしまして、国連の武力行使容認決議もないわけですが、米軍の後方支援ができるようになってしまったわけです。十年前の湾岸戦争のときはできないと言っていたことが、急にできるようになった。十年前は武力行使容認決議があった、今回はないのにできるようになったということで、これは、私は、また世界の標準から見ても、政府が使えない、行使できないと言っている集団的自衛権の行使そのものだというふうに考えておりまして、政府のやっていることは本当に支離滅裂だなと。こういうことが、世界じゅうから、また国内から誤解を招く、懸念の目で見られる原因だろうというふうに思っているわけです。
 この国際協調主義というものを明らかにするということ、国際連合の決議をもって行われる活動については積極的に参加するべきだというふうに考えておりますが、辻陳述人にお伺いをいたします。
 自衛権とは切り離して、国際連合の決議によって国際貢献を行うということをより明らかにするために、私どもは今回、この安全保障基本法で国際連合平和協力隊というものを新たに創設するべきだというふうに考えております。そういうふうな組織をつくることにより、将来は国連常備軍というふうなものも視野に入れて、国際連合の中においても日本の積極的な発言というものがちゃんと反映されるような、そういうふうな仕組みに変えていくべきだというふうに考えております。
 先ほど集団安全保障体制のお話がございました。そういう点で、集団安全保障体制のもう少し向こうにあることなんですが、国連常備軍ということと、その国連常備軍に参加をするための国際連合平和協力隊というものの創設について、御意見はいかがでしょう。
辻昌宏君 おっしゃるような趣旨は十分理解できるわけでありますが、やはり戦後五十七年間もたって、国の安全を託す有事法案というものがいまだに制定をされておらず、しかも自衛隊の存在そのものも長年にわたって論議をされてきて、どちらかというと問題の先送りばかりをしてこられたのではないかというふうな気がいたします。
 したがいまして、ここは、有事関連三法案をまず成立をしていただいて、それに派生いたします諸法案というものを進めていただくべきではないかというふうに思います。
 御意向、御趣旨には賛同いたしますが、今申し上げるような意見であります。
 以上です。
衛藤座長 これにて中塚君の質疑は終了いたしました。
 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 きょうは、意見陳述の先生方のお話、大変貴重な御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。
 実は、私、沖縄県の出身でありまして、先ほど来の光武市長の地方自治を預かる立場からの米軍との関係、苦悩、よくその苦悩を共有できる立場に立っている者でございます。
 せんだっても沖縄の県議会で、特に米軍基地の中での米軍の事故について、市民の安全を確保するためにもいち早く通報していただきたい、こういう全会一致の決議が上がったところであります。
 ところで、今度の有事法制について、アメリカはかなり早くから日本に対して意見を言っておりまして、その中に、二〇〇〇年十月のアーミテージ報告がよく言われることなんですが、その報告の中で、有事法制の整備とともに、日本が防衛秘密を共有できるかどうか、この点がかなり強調されております。
 今後、有事法制がつくられて、そして日米間の安保条約に基づく共同対処がますます密接になっていくにつれてアメリカの側からの防衛秘密の共有の要求は大きくなっていくのではないか、このように私は懸念しているところでありますが、いかに安保のそういう要請であろうとも、やはり住民の安全を守るという立場に立てば譲れないものがあるし、原潜の寄港の事前通報については、それが本当に大事なことじゃないかというぐあいに思います。
 有事法制との関連もありますので、いま一度市長の方に御意見を伺いたいと思います。
光武顯君 私、御趣旨について十分理解できたかどうかわかりませんが、アメリカ、米軍が基地を佐世保市内に持っているということによって、今まで事件がなかったわけではありません。ただ、沖縄県のいろいろなことをお伺いしますと、佐世保においては比較的そういった事件も少なく、そして、共存共生といったような市民の理念をアメリカ軍もそれなりに理解してもらっているんだなというふうに常日ごろ感じております。
 ただ、問題は、有事の際にどういうふうになるのかということについては、これはやはり国民の選択というものが重要なのでありまして、私どもも、安保条約、そしてそれに伴う地位協定というものが、これは国民がそう選択した以上、そして我々も国家を守る上においてそのことが必要であるというふうに考えているがゆえに、よその地域、市町村にはないそうした負担というものを負わされているということは事実でありますけれども、一面やむを得ないものと、その中で、市民の生命財産が可能な限り守られるように努めていくのが地方自治体の長としての役目であろうと、私はそう考えて今日まで参っているわけであります。
赤嶺委員 私、意を尽くせず大変申しわけありませんでした。先ほど伺いましたのは、事件のことではなくて、米軍の事故等です。
 いわば、沖縄県では、もちろん原潜の寄港も含まれますが、米軍の部隊の事故、航空機の事故等がなかなか通報されない。そして、米軍の方もいろいろ防衛秘密上の盾があって、そこをうまく意思の疎通がいっていないという問題が起きているわけですけれども、やはりそれらの問題については、地方の住民の命と安全を預かるという立場からは、原潜の事前通報も含めて、譲れない一線があるのではないかということでありますが、いかがでしょうか。
光武顯君 具体的に原潜の通報について申し上げますならば、一度、通報がなされずに寄港したということがございました。私は、国に対して厳重に抗議をいたしますとともに、その際に、その事件の内容、そして今後の対応というものが明らかにならない以上は入港を御遠慮願いたいということを申し上げたことがございます。確かに、その間入港はございませんでした。
 問題は、我々としては、テロ事件が起きた、あの事件のときに、要請があった入港については連絡をするが公表してもらいたくない、こういう要請に対して、地方自治体の長としては非常に考えたのでありますけれども、仮にそのことによってテロ事件が発生したとするならば、これはそれを拒否したという私の責任になりますし、どちらが蓋然性が高いのかということを一生懸命考えながら、我々としては、当面の間、入港について公表しないという選択の道をとったわけであります。
 その間、非常に苦慮したことは今でも記憶をいたしておりますし、今日、その状況があの当時と違ってきているのではないか。そこで、その辺については、政府がまたどう考えるのかということは、今後ひとつ、これまでもお尋ねいたしておりますし、これからもまた政府に問うていきたい、このように思っております。
赤嶺委員 それでは、次に北川先生の方にお伺いしたいんですが、先ほどは、若い人たちのアンケート、意識調査、大変貴重な資料をいただきまして、ありがとうございました。
 それで、先生のレジュメを伺いますと、今回の法律は「集団的自衛権の行使を認めていないこと」という表現があるわけですが、実は国会の中でこのことが大問題になっておりまして、特に武力攻撃事態法の中に、予測されるに至る事態、これが入っているということは、日本に武力行使が起こる以前から、すなわち、国会の答弁では、私の質問等にも答えて、周辺事態はその一つのケースだ、こういうことを防衛庁長官は述べておられるわけです。となりますと、周辺事態ではもう米軍が武力行使を始めている、それが日本が予測されるに至った事態に当たり、そして日本の自衛隊は武器弾薬等の提供もできる、こういう政府答弁になっているわけですね。
 ですから、これは本当に、集団的自衛権の行使につながっていく、そういう危険な仕組みを持った法律ではないかというぐあいに考えるんですが、その点、先生はどんなふうにお考えでしょうか。
北川誠一郎君 私のつたない学習によりますと、集団的自衛権、これが、そのように認定した場合、米軍に対する後方支援ができるようになるために、集団的自衛権の不行使という憲法との関係で、双方の事態を明確に整理する必要があります。私の学習でまだつたないんですけれども、これからその関係について、より議論が深められていくというふうに考えております。
 ここで言明しておりますけれども、当然のこととして積極的に認めていない、そういう意味で私は書きました。
赤嶺委員 それでは、前原先生にお尋ねいたしますけれども、やはりこの法律の仕組みの中に集団的自衛権の行使につながる危険は大いに含まれているのではないかと思いますけれども、先生の御意見はいかがでしょうか。
前原清隆君 私が先ほど、この法案は万一の事態に、いわゆる我が国に対する武力攻撃に備えるというよりか、むしろアメリカ軍の軍事行動に対して後方支援をするものだというふうに言いましたのは、まさにその点にかかわるわけでして、軍事問題の専門家の方々の御意見などを見ましても、今度の法案では集団的自衛権に完全に踏み込んでいるというふうに見られているのではないかというふうに思います。
 その点、今回の法案は、非常に顕著に、先ほど私の意見の中では事態の定義に関して申しましたけれども、認定のあり方自体がアメリカ主導で行われるのではないかというようなことも考えておりまして、安全保障会議設置法の改正案が、武力攻撃事態の認定にかかわる事項はメンバーを絞って審議することを定めておりますけれども、実際にはそこにいわゆる制服組の方が入ることになるというふうにされておりますし、安全保障会議に進言をします事態対処専門委員会というものが設けられることになっていますけれども、この専門委員会というのが、日米ガイドラインの枠組みの中での事態認定を日本側に伝達する仕組みとなるのではないかというふうに指摘されていると思います。
 そのことは今の御質問に大いにかかわると思いますけれども、つまり、事態対処専門委員会ですが、ここにも当然制服組が入ることになると思うんです。その主要メンバーというのが、新ガイドラインによって立ち上げられた調整メカニズムというふうに言われるものの、日米の双務的な共同作戦のための政策的調整と日米両軍の作戦統制でありますとか、執行のために平時から運用されているメカニズムということでありますけれども、そのメンバーと重なるんだということが言われていると思います。
 そのことから、事態対処専門委員会の武力攻撃事態の認定というのは、日米統合司令部の判断に大きく依存することにならざるを得ないと思います。そして、ここで米軍側の判断に対して日本側が対抗するということは不可能なのじゃないかというふうに言われていると思います。
 そういうわけですから、先ほどの意見の中で申しました、武力攻撃事態の概念が新設されたこと、それから、今述べました、認定システムというものがガイドラインの調整メカニズムに組み込まれることによってアメリカの軍事作戦と日本の有事態勢とが結びつけられる、今回の有事法制全体として、周辺事態を含む米軍支援のために作動する保障になっているということが指摘されていると思います。このことは恐らく先ほどの質問と大いにかかわると思いましたので、発言させていただきました。
衛藤座長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。
 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党の今川正美でございます。
 私は、この地で生まれ育ってまいりましたので、このように貴重な地方公聴会がこの佐世保で開かれることをだれよりも喜んでおります。
 きょうは、限られた時間でありますので、まず二点ほど、この有事関連三法案に関しまして私の考え方を申し上げた上で、舟越先生と地元佐世保市長でございます光武市長に、二、三点お伺いしたいと思います。
 まず、私は、この佐世保というのは沖縄と同様に、佐世保の港を見ておりますと、日米安保の姿がよく見える町でもあります。遠くは一九五〇年にこの佐世保市は市民投票で圧倒的な賛同を得て平和都市宣言を行った町でして、この佐世保は、過去の戦争を十分に反省しながら、平和産業港湾都市として発展していこうということを決意しましたが、皮肉なことに、その年、その直後に朝鮮戦争が起こったために、この佐世保の運命というのは大きく変えられていく、そういう歴史的な節目の年でもございました。
 私は、やはりこういう国民の生活に直結する大事な法案であるだけに、これまでの、特にアジアの国々と日本の関係を論じるはずでして、そういった意味では、過去の負の遺産といいますか、アジアに対する侵略であったり植民地支配であったり、そうした過去の歴史に対する謙虚さをなくせば大変な議論になってしまうというふうに思うのであります。
 少なくとも日本は、よく平和憲法と言われますけれども、憲法前文、とりわけ九条で示されたものは、右から見ても左から見ても、これは非武装憲法です。では、いざというときどうするかというのは、少なくとも当時は、吉田首相の国会答弁にもあるように、国連に依拠したいと。つまり、何か生じたときには、どの国であれ、国際紛争を含めて、再び軍備を持って戦うのではなくて、国連ですべて対処をしていく、そういう崇高な理念なり方向性が示された。
 そういった意味で、やはり私は、この日本国憲法のすごさといいますか、すばらしさというのは、それぞれの国が勝手に軍備を再び持って戦うのではない、すべては国連が対処をしていくということにあったんだと思います。その後のことは、冷戦が本格化をすることで、なかなか現実的なものとはなっておりませんけれども。
 そういった意味で、この朝鮮戦争を契機にして、警察予備隊の名のもとに自衛隊が一九五〇年発足しますけれども、先ほどいろいろな御意見がありましたけれども、なぜ今ごろか、もっと早くつくるべきだったという話もありますが、それは、そういうこれまでの半世紀の歴史をしっかり踏まえて見るならば、欧米諸国とは違って、日本だからこそ自衛隊に関しては非常に自己抑制的なさまざまな制約が課せられていたということをやはり客観的に認識して議論をする必要があるというふうに私は思っています。
 今日これだけ平和で豊かな日本があるというのは、二つの要件があったと思います。
 自衛隊とか安保ではない。これは、憲法第九条で、恨まれても仕方のないあのアジアの国々に、そこそこの信頼関係を得たこと。それと、経済的には、サンフランシスコ講和条約で事実上いわゆる戦後賠償を免れたこと。これがなければ、今日、自給自足がやっとの日本であったろうというふうに私は思うのであります。
 いま一つは、時間の関係もありますので簡単に申し上げますが、今回いきなり、自衛隊の行動をどう円滑にするか、そのための法整備というのがぽこんと出てきています。しかし、グローバル経済と言われますように、今日、日本とアジアの関係において見ますならば、日本は大変な経済援助をアジアに与えています。それと、外交問題です。今日の国家間の相互依存関係からしますと、外交努力をどう果たしていくのか、あるいはそういう経済関係、経済協力をどのようにしっかりやっていくのかということがあれば、九割九分、日本の、あるいは一国の安全保障というのは果たされていくだろうというふうに私は思うのであります。
 アジアの国々の実際の戦力を見ましても、日本をいきなり攻撃する、そして制圧し、支配する、そういった能力を持っている国が果たしてあるのだろうか。あるのだとすれば、世界の中で米国を除いてはない。しかし、それは極めて非現実的な話であるというふうになってくると思うんですね。
 そういった意味で、外交問題なり経済協力なり、市民と市民の間の文化交流なり、そういう最も大事な議論を欠いたまま、軍事対応をどうするのかという話だけ、そこの話から始まっているところに、この有事法制の議論の、ある意味で不自然さというものを私は感じてしまうわけであります。
 さてそこで、まず舟越先生にお尋ねなんですが、実は昨日、長崎に米海軍のミサイル駆逐艦が入りました。これは、九二年、ちょうど十年前に当時のブッシュ大統領が、海外に配備をしている戦術核のほとんどは米国に、米本国に撤収するという声明を出されまして、ただし、そのときに、有事の際には再び核兵器を搭載することもあり得るという条件がついていました。
 今回、米海軍にとっては、アフガニスタン戦争をやっているわけですから有事ですね、米軍にとっては。そうしますと、きのう長崎に入ったカーティス・ウィルバーという駆逐艦は、核兵器を搭載している可能性があるんじゃないかと私は思うんです。そうした中で、金子県知事とか伊藤長崎市長は、在日米大使館や日本政府、外務省に何とか入港することを遠慮してほしいということを申し入れられたにもかかわらず、入ってきちゃった。それともう一つは、例の福田官房長官の非核三原則の見直し発言等もございました。
 こうした一連の事実を見たときに、今、日本は有事ではありません、平時の段階で、日米安保条約なり地位協定のかかわり合いで、アメリカとの関係で、日本の主体性がどの程度保持できているのかできていないのかという意味で、私は極めて疑問を持つんです。その点を舟越先生はどう受けとめておられますか、被爆県民として。
舟越耿一君 私は軍事の専門家ではありませんので、的確なお答えはできないと思うんですけれども、九七年の日米防衛協力のための指針というのに、前原さんが言ったように、包括的なメカニズムを日米で構築し、緊急時には調整メカニズムを発動する、それを平素からやっておくということが明確に書かれております。したがって、日米間の米軍と自衛隊との緊密な関係というのは、私は既にでき上がっているんだと思います。
 県と市が入港を回避しても入ってくる、日本政府は別に奨励しているわけじゃない、しかしながら、軍としてはとにかく有事法制を成立させたいというような意図がイージス艦の入港の背景にあるんじゃないかと私は考えています。地元の新聞が、米国の有事が長崎に持ち込まれたと、そういうふうに報道しておりましたけれども、私は、日本政府や自衛隊の判断よりも米軍の判断の方が優先する、そういう状況が進行しているんじゃないかと考えています。
今川委員 時間がほとんどございませんので、本当はもっとたくさん質問したかったんですが、光武市長に一点だけお尋ねしたいんです。
 実は、佐世保の場合には、佐世保重工業、SSKですね、非常に佐世保市にとっても大事な企業だと思うんですが、これはまさに、有事じゃなくて平時の段階でも、例えば第三ドックの問題でございますとか、あるいは現在では第四岸、五岸の岸壁の使用の問題とか、何かにつけて米軍との関係でトラブルが生じやすい問題を抱えているわけですね。非常に市長の御苦労に、御努力に感謝をしたいと思うんですけれども。
 平時でこういう状況でありますので、仮に、あってはならないけれども、有事だというときに、例えば、SSKの現在持っているドックだとか岸壁というのが完全に米軍の手に握られてしまうのではないかという懸念がございますし、また、少なくとも、九四年の例の朝鮮半島危機が言われたときには、米側は具体的に軍事シナリオを持って、その中で、私も驚いたのは、今言うところのSSKのドック、岸壁はやはり掌握をしたい、あるいは、佐世保のどこか知りませんけれども、ミサイルの発射基地を建設をしたいという、在日米軍側の要求項目の中にそういう記載があるわけですね。
 そうしますと、よその土地と違いまして、佐世保の場合には、米軍があったり自衛隊基地を擁しておりますので、いざというときにそういう民間企業が実際的に何もできなくなる、あるいはミサイル基地みたいな物々しいものが建設されかねない。そうしたときに、一地方自治体として断れるのか、あるいは日本政府として米軍側、米国側に対して、それはあんまりだ、そこは遠慮してほしいということが、有事あるいはそのおそれがあるときに、そういう日本の主体的な判断なり物の言い方ということが果たしてアメリカにできるんだろうかという疑念を私は抱きますけれども、地元の市長としてはいかがでしょうか。
光武顯君 ただいまのお話は非常に難しい話でありまして、平時の場合におきましては、かつて六年前に、SSKの第三ドックを明け渡すように米軍から要求がありました。その際、私は、SSKにとっては、もしそれを明け渡すということになれば危機的な状況になる、こういうことで、代替の浮きドックをもって、修繕をして事なきを得たということがございます。
 その後、そうしたことにかんがみまして、今の佐世保の港を可能な限りひとつ再整理しよう、こういうことから、御承知のように、第三、第四というSSKの現在共用しているそこを民間へ払い下げてもらう。したがいまして、ジュリエットベースンに別途岸壁をつくって、そして民間に譲り渡してもらえるものは譲り渡してもらう。これは、昨年、そういうことで一応約束事みたいな話がございまして、今着々と進めているところです。
 我々としては、戦時体制になったときにどうなるかということは、これは自衛隊も含めてそうでありますし、米軍は、日米安保条約等々の問題あるいは周辺事態法といったようなことが背景に、平時とは違った形になるであろう、こういうふうな想定はできますものの、そうしたことがないように、今、不断に努力をしていかなければいけないということでやっているわけであります。
 佐世保の市長といたしましては、将来どのようになるかということについては大きな関心を持ちつつ、いざという場合でも、港の再整理、再編ということによりまして、そうした事態を避けていきたいというふうに願っております。しかし、戦時体制というものは非常に厳しいものでありますし、そのとき日本の国家そのものがどういう選択をしているのかということは、地方自治体にも大きな影響を及ぼすであろうというふうに思っております。
衛藤座長 これにて今川君の質疑は終了いたしました。
 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 きょうは、意見陳述者の皆さん、本当に御苦労さまでございます。
 この佐世保という地域は、自衛隊の基地もありますし、米軍もいる、あるいはこの近くを各国の船が通る、あるいは不審船なんかも恐らく出没している地域じゃないかと私は思うのでありまして、この地域に住まれる皆さん方は、日本の他の地域の人とは若干違った感覚でもって有事のことを考えておられるんじゃないか、そんな思いでこちらに出席をさせていただきました。
 日本は長い間、戦争に負けたということもありますが、経済至上主義というのですか、言葉はきれいですが、言葉をかえて言いますと、これは金もうけですね、金もうけを将来の国家像のようなことにして歩んできたわけでありまして、そういう点で安全保障の体制の整備というのは非常におくれてきたと思うのでありますけれども、今回ようやっとこの有事の三法が提案されるということになってきて、大変いい方向に行きつつある、こんなふうに認識をしております。
 しかし、これまでの経緯から、なかなか皆さんに、こういう有事ということ、通常はないわけでありまして、やはり平和のうちに暮らしていくという最大の努力を政府はするわけでありますから、万々が一の場合になるわけでありますが、そのときにどういう対応をするかということについても、なかなかこれは理解を得られないような状況じゃないかと思うのであります。
 そこで、私は、千田陳述人にお伺いしたいのでありますが、これはどうすればもう少し理解が得られるのか、もちろん政府等の努力も足りないと思うのでありますけれども、どういうことを考えていけば、あるいは対応していけばこの有事の法制の理解が得られるのか、御意見があらばお伺いいたしたいと思います。
千田稔君 やはり戦後五十七年のこの長い月日の中に、日本というのは、どなたかも最初に発言されましたとおり、あつものに懲りてなますを吹いてまいりました。そのことが、そう言えば言うほど、結果的に、本当に平和というのが守られたような形で五十七年が過ぎてきた、こういう一つの錯覚があるんだと僕は思うのですね。このことは、平和というのは、日本の場合は水と空気のようにただでいただける、こういうような感じが非常にあったと思うのですね。
 翻って、ヨーロッパだとかアメリカという戦勝国の方がむしろ逆に戦後も負担をされてきた。したがって、こういった国の、今まで生きてきた、先進国というのが苦労してきた、その分野の安全保障にどれだけ努力してきたのかということをやはり教えるべきだと思うのですね。能動的な努力をしてきたという部分を、日本と同じように彼らも黙っていて平和を享受してきたとまず子供たちは錯覚していますよ。この部分は、教えざるの罪があると思うのです。したがって、多くの犠牲を払いながら安全というのを確保してきたんだということをまず教えるべきだと思うのですね。教育というのは大変時間がかかりますから、一年や二年でできるというものにだけ飛びつきがちなんですけれども、これはしっかり教えるべきではないのか。
 もう一つは、先ほど先生方の中で、留学生の皆さんたちの意見を聞いてみたり、あるいはアンケートをとってみたり、こういうことを幅広うされていますけれども、私は本当にいいことだと思うのですね。こういったことを着実に、生活の場として、茶の間でできるようなことを憶せずに、何か安全保障というとおどろおどろしいものですから、もう嫌ですよね、何か武器、兵器とかいう話、そのことがもともと嫌いな国民ですから、したがって、そういったものが現実としては避けて通れないのだということを、特に二十以上の者には訴えていったらどうでしょうか。私はそう思っています。
井上(喜)委員 どうもありがとうございました。
 この有事の事態というのは、本当に最後の最後の事態なんですね。いろいろな努力をしても、なおかつどうしようもなくなってこの有事の事態に至ると思うのでありますが、私は、そういう意味で、やはり有事こそまさに最優先をして、国も自治体も国民もみんな協力して、同じ方向で対処しなきゃいけないと思うんですね。そうしなければ有効な対応はできないと思うのであります。
 しかし、基本的人権が制約されるなら有事なんてもうやらぬ方がいいんだとか、あるいは自治体、地方自治の建前があるんだ、これを少しゆがめられるようなことがあったら、もう有事なんかはどうでもいいんだ、こういうような意見を言う人がいるんですね。本当にいるんですよ。これは、市町村長さんなんかには余りおられないと思うんだけれども、知事ぐらいになってくるとそういうような意見の人もいるんじゃないかと私は思うのでありまして、何というか、本当に無責任な意見じゃないかと私は思うのだけれども。
 こういう地方自治の建前があるから、建前と相対立するような事態ということ、こういうこともあり得るということですよね。私はあると思うのだけれども、そういうときに、今申しましたように、それはやはり有事よりも地方自治の方が優先するんだというような考え方について、市長さん、どういうお考えですか。
光武顯君 私は、基本的に国家がどういう基本的な理念を持って運営していくかということを、地方自治体の長としては、やはり尊重して、そして考えるべきだというふうに思っております。
 イデオロギー的に違うということでみずからの考え方を、確かにその地方の長という者は、その地域におきます皆さんの多数の支持を得て長になっているわけですから、長としての考え方を政策として執行していくということについては、これは当然のことでありますけれども、しかし、身体、生命に非常に大きな影響があるというときには、本当に国と一体になって、どうやって可能な限りそうした損害を小さくするのか、未然に身体、生命を守るのかということに本気で取り組まなければならないと思うのですね。
 ですから、確かにそれぞれの御意見があるところではありますけれども、私どもとしては、やはり常識の線と申しますか、一たん有事になった場合に、国の方にいろいろな情報等あるいは対処すべき方針というものがあるとするならば、それを理解しつつ協力して遂行していくということは、地方自治体の長としては当然ではないかというふうに思います。
井上(喜)委員 ありがとうございました。
 次に、茅野先生にお伺いしたいのでありますけれども、有事の事態になったときに国民の権利や義務にどういう影響が出てくるんだ、そういうことを個別具体的にはっきりしなければ有事の法律としては不十分じゃないかというようなお話があったように思うのでありますけれども、有事というのは、どういう事態が起こるかわからないんですよね。こういう事態というふうにはっきりしておれば、それはいいのでありますけれども、いろいろな状況が起こると思うのですよね。だから、一々個別具体的にどうするなどというようなことを法律に書くなどというのは、到底これは不可能だと思うのですね。もし何かお考えがあれば、どういう法律をつくったらいいのか、お聞かせいただきたいのです。
茅野丈二君 私は、きょうの議論を聞いておりまして、イメージ的ですけれども、国家あるいは政府と国民の関係は、私たちの医者と患者の関係に非常に似ているなと思っております。
 どういうことかと申しますと、国家は常に正しいんですよ、私たちはすべて情報を持っていますよ、だから、ある程度のことは言うけれども、あとは私に従ってくださいと。医者もそういう立場の人は結構多いわけで、それが簡単なんです。だから、私たちも、何も言わない患者の方がやりやすいんですけれども、しかし、それではだめなんだというのがインフォームド・コンセントなんですね。だから、国家もやはり可能な限りの情報提供をしてもらいたい、そして、その上で、国民を信じて、国民に判断を仰いでほしい、これが私の考え方です。
 ですから、確かにいろいろな具体的なこと、いろいろなシミュレーションはできると思いますし、すべてが出てくるとは思いません。ただ、そういうことをすることが国民の信頼を得ることだと思うのです。今、信頼を得ていないとは言いませんけれども、非常に薄い。だから、そういう具体的なことを一つ一つ国民に提示することが、やはり政府に対する信頼をかち得ていくことだろうと私は思います。ですから、すべて出しなさいと私は思いませんけれども、そういうことをやることがやはり大事だというふうに思っています。
衛藤座長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。
 これにて委員からの質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
 本日拝聴させていただきました御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。
 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、重ねて感謝、御礼を申し上げます。
 それでは、これにて散会いたします。
    午後二時四十二分散会


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