衆議院

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第2号 平成14年11月11日(月曜日)

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平成十四年十一月十一日(月曜日)
    午後一時三分開議
 出席委員
   委員長 鳩山 邦夫君
   理事 木村 太郎君 理事 久間 章生君
   理事 中谷  元君 理事 浜田 靖一君
   理事 伊藤 英成君 理事 渡辺  周君
   理事 赤松 正雄君
      荒巻 隆三君    岩屋  毅君
      臼井日出男君    奥山 茂彦君
      嘉数 知賢君    金子 一義君
      近藤 基彦君    竹本 直一君
      谷田 武彦君    西川 京子君
      萩山 教嚴君    林 省之介君
      原田 義昭君    松島みどり君
      森岡 正宏君    山口 泰明君
      山本 明彦君    吉川 貴盛君
      枝野 幸男君    大石 尚子君
      川端 達夫君    桑原  豊君
      玄葉光一郎君    首藤 信彦君
      末松 義規君    筒井 信隆君
      中野 寛成君    長浜 博行君
      前原 誠司君    上田  勇君
      田端 正広君    西  博義君
      中塚 一宏君    樋高  剛君
      木島日出夫君    児玉 健次君
      今川 正美君    日森 文尋君
      井上 喜一君
    …………………………………
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   外務副大臣        矢野 哲朗君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   政府参考人
   (防衛庁防衛参事官)   大井  篤君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 齋木 昭隆君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局長
   )            西田 恒夫君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   衆議院調査局武力攻撃事態
   への対処に関する特別調査
   室長           小倉 敏正君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月八日
 辞任         補欠選任
  竹本 直一君     荒巻 隆三君
同月十一日
 辞任         補欠選任
  菅  義偉君     竹本 直一君
  中本 太衛君     谷田 武彦君
  伊藤 忠治君     長浜 博行君
  肥田美代子君     大石 尚子君
  白保 台一君     西  博義君
  赤嶺 政賢君     児玉 健次君
  東門美津子君     日森 文尋君
同日
 辞任         補欠選任
  竹本 直一君     菅  義偉君
  谷田 武彦君     中本 太衛君
  大石 尚子君     肥田美代子君
  長浜 博行君     伊藤 忠治君
  西  博義君     白保 台一君
  児玉 健次君     赤嶺 政賢君
  日森 文尋君     東門美津子君
    ―――――――――――――
十一月五日
 有事関連法案反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七号)
 同(石井郁子君紹介)(第八号)
 同(小沢和秋君紹介)(第九号)
 同(大幡基夫君紹介)(第一〇号)
 同(大森猛君紹介)(第一一号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一二号)
 同(児玉健次君紹介)(第一三号)
 同(穀田恵二君紹介)(第一四号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第一五号)
 同(志位和夫君紹介)(第一六号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第一七号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一八号)
 同(中林よし子君紹介)(第一九号)
 同(春名直章君紹介)(第二〇号)
 同(不破哲三君紹介)(第二一号)
 同(藤木洋子君紹介)(第二二号)
 同(松本善明君紹介)(第二三号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第二四号)
 同(山口富男君紹介)(第二五号)
 同(吉井英勝君紹介)(第二六号)
 同(小沢和秋君紹介)(第六五号)
 同(大森猛君紹介)(第六六号)
 同(穀田恵二君紹介)(第六七号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第六八号)
 同(志位和夫君紹介)(第六九号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第七〇号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第七一号)
 同(春名直章君紹介)(第七二号)
 同(不破哲三君紹介)(第七三号)
 同(藤木洋子君紹介)(第七四号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第七五号)
 同(山口富男君紹介)(第七六号)
 同(春名直章君紹介)(第一〇二号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一五七号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一五八号)
 同(児玉健次君紹介)(第一五九号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第一六〇号)
 同(志位和夫君紹介)(第一六一号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第一六二号)
 同(中林よし子君紹介)(第一六三号)
 同(春名直章君紹介)(第一六四号)
 同(不破哲三君紹介)(第一六五号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一六六号)
 同(松本善明君紹介)(第一六七号)
 同(吉井英勝君紹介)(第一六八号)
 有事法制法案反対に関する請願(木島日出夫君紹介)(第六一号)
 同(児玉健次君紹介)(第六二号)
 同(松本善明君紹介)(第六三号)
 同(山内惠子君紹介)(第六四号)
 同(今川正美君紹介)(第一〇三号)
 同(土井たか子君紹介)(第一〇四号)
 同(土肥隆一君紹介)(第一〇五号)
 有事関連法案廃案に関する請願(中林よし子君紹介)(第一〇一号)
 同(大森猛君紹介)(第一六九号)
 同(山口富男君紹介)(第一七〇号)
 有事法制立法化反対に関する請願(佐々木秀典君紹介)(第一二七号)
 有事立法と憲法改悪反対に関する請願(大出彰君紹介)(第一四〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第八七号)
 武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第八八号)
 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第八九号)


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     ――――◇―――――
鳩山委員長 これより会議を開きます。
 第百五十四回国会、内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
 お諮りいたします。
 各案につきましては、前国会において既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鳩山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案
 武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案
 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
鳩山委員長 この際、福田内閣官房長官及び石破防衛庁長官より、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。福田内閣官房長官。
福田国務大臣 第百五十五回国会、衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会の開会に当たり、一言ごあいさつを申し上げます。
 武力攻撃事態を含め、国家の緊急事態に対処し得るよう必要な備えをしておくことは、独立国としての当然の重要な課題であります。また、我が国をめぐる安全保障環境が依然として不透明、不確実な中で、昨年の米国同時多発テロや武装不審船事案は、国民に大きな不安を与えるとともに、新たな危機に備えることの重要性を再認識させることとなりました。
 このような昨今の情勢を踏まえ、いかなる事態にも対処できる安全な国づくりを平素から総合的、計画的に進めておくことが必要であり、とりわけ武力攻撃事態に対処するための法制は、国家国民にとって最も重大な事態に備えるという意味で、国家の緊急事態への対処の基礎をなすものと考えております。
 本年四月に国会に提出いたしました武力攻撃事態対処法案等のいわゆる有事関連三法案につきましては、さきの通常国会で精力的な御審議をいただきましたが、継続審査の扱いとなったところであります。政府としては、いかなる事態にもすき間なく対応できる安全な国づくりを進めるため、これらの法案がぜひとも必要であると考えております。
 これらの法案に対しては、さきの通常国会においてさまざまな御意見が提起されましたが、政府としては、それらの御意見も踏まえ、国民の保護のための法制などの個別の法制についても、その内容を深める作業を進めてきたところでございます。特に、国民の保護のための法制につきましては、国民の権利義務とも深い関係を有することから、政府としての考え方を前広にお示しする必要があると考えております。
 法制の基本的な考え方といたしましては、武力攻撃事態における国民の保護について国の責任を明確化するとともに、地方公共団体、指定公共機関や国民のそれぞれの役割についても具体的に定めることとしております。また、国民の権利及び義務に関する措置についても明らかにしてまいります。
 政府としては、国会において有事関連三法案の議論を十分に進めていただくため、このような考え方を内容とする法制の輪郭をお示しすることとしており、委員会からお求めがあれば、資料として提出いたします。
 政府としては、国会における議論を通じて、法案に対する幅広い国民の理解と協力が得られるよう努めてまいります。
 委員長初め理事、委員各位の御理解と御協力をお願い申し上げます。
鳩山委員長 石破防衛庁長官。
石破国務大臣 鳩山委員長を初めとする委員の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。
 冷戦の終結により世界的な規模の武力紛争が生起する可能性が低下する一方、複雑で多様な地域紛争が発生し、大量破壊兵器等の移転、拡散の危険が増大しております。また、昨年、米国において発生いたしました同時多発テロは、想像を超える態様と規模の事態が現実に起こり得ることを示しますとともに、国際社会に対し、テロを新たな脅威として改めて強烈に意識させました。
 我が国周辺に目を向ければ、現在も朝鮮半島の軍事的対峙が継続をいたしております。日朝間におきましても、拉致、不審船、核開発及びミサイル問題等、我が国の国民の生命と安全や、北東アジア地域ひいては国際社会の平和と安定にかかわる重大な課題が存在をいたしております。とりわけ核開発問題に関し、今般、北朝鮮が自国における濃縮ウランを使用する核開発計画を認めたことは、我が国にとって重い意味を持つものであります。先日のケリー国務次官補との会談におきましても、先方より、北朝鮮のウラン濃縮計画をやめさせる必要性等につき言及があったところであります。
 今後、かかる問題に対しましては、日米韓連携のもと、日朝平壌宣言の精神に基づき、日朝国交正常化交渉及び日朝安保協議の場で北朝鮮に対して強い働きかけを行っていくことが重要であり、防衛庁といたしましても、重大な関心を持って積極的に対応していく所存であります。
 このように、予断を許さない情勢において、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、私は、防衛力の本質である抑止力を最大限発揮すべく、各種事態に適切に対応できる自衛隊を構築いたしますとともに、日米安全保障体制の実効性を向上させてまいります。加えて、国際社会における平和への取り組みに積極的に寄与し、内外の期待にこたえてまいります。
 各種事態、中でも武力攻撃事態に適切に対応できる自衛隊の構築のためには、法制面や運用面における十分な体制の整備が不可欠であります。かかる観点から、さきの通常国会において、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしました。
 その提案理由は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保ちますため、防衛出動を命ぜられた自衛隊がその任務をより有効かつ円滑に遂行し得ることが必要であり、このため、防衛出動時及び防衛出動下令前における所要の行動及び権限に関する規定を整備し、並びに損失補償の手続等を整備するとともに、関係法律の適用について所要の特例規定を設けるほか、武力攻撃事態に至ったときの対処基本方針に係る国会承認等が新設されることに伴い、防衛出動命令の手続について所要の整備を行い、あわせて、防衛出動を命ぜられた職員の給与等に関し必要な特別の措置を定める必要があることでございます。
 政府として、本法律案を含む武力攻撃事態対処関連三法案の成立を急務と考え、さきの通常国会での御議論を踏まえて、国民の一層の理解を得るとの観点から、国民の保護のための法制等個別の課題について、その内容を深める作業を進めておるところでございます。
 今後は、法案の成立に向け、国会における審議を通じて、幅広い国民の理解と協力を得られるよう全力を尽くす所存でありますので、委員各位におかれましては、御審議のほど、よろしくお願いを申し上げます。
 また、これと並行いたしまして、テロ・不審船対策等の武力攻撃事態以外の緊急事態への対処態勢につきましても、総点検を行い、必要な検討を進めてまいります。
 また、自衛隊が任務を迅速かつ効果的に遂行するためには統合的見地に基づく有機的運用が必要との考えのもと、統合運用につきましても検討を精力的に行ってまいります。
 さらに、我が国が種々の緊急事態に適切に対応するためには、みずからの防衛努力に加え、日米安保体制をより緊密かつ実効性のあるものとする必要があります。我が国といたしましても、日米防衛協力のための指針の実効性を確保するための施策の推進、テロとの闘いにおける協力等を通じ、日米安保体制がより有効に機能するよう引き続き努めてまいります。また、沖縄県民の御負担を軽減するため、SACO最終報告の着実な実施に全力で取り組んでまいります。
 昨年以降、国際社会の焦点となったテロとの闘いにおきましては、現在、自衛隊はテロ対策特措法に基づき、米軍等に対する給油活動や物資輸送などの協力支援活動等を行っておりますが、これは、国際的なテロの防止、根絶のための国際社会の取り組み及び我が国を含む国際社会の平和と安全の確保に大きく貢献していると確信をいたしております。しかし、残存するアルカーイダによる昨年のテロ攻撃がもたらした脅威は今なお除去されておらず、現在も多くの国がアフガニスタン周辺に部隊や艦船等を派遣してテロとの闘いを継続いたしております。このような状態において、今後とも、我が国といたしましても、国際テロ根絶への取り組みに積極的かつ主体的に寄与してまいります。さらに、これまで自衛隊は世界各地において多様な国際平和協力業務を実施し、現在も中東のゴラン高原と東ティモールに部隊等を派遣いたしております。今後とも、国連を中心とした国際平和のための努力に積極的に貢献してまいります。
 最後に、国民の信頼を得ることが自衛隊にとって喫緊の課題であります。信頼はただ口で唱えるだけではなく、懸命に諸課題に取り組んでいくことで初めて得ることができると考えております。私は、防衛庁・自衛隊は国民の生命、安全を守る最後のとりでであるがゆえに最も信頼を集める組織でなければならないとの考えのもと、信頼の確立に取り組んでまいります。
 一分一秒が真剣勝負であるという思いのもとに、全力で職務に邁進する所存でございますので、委員長を初め委員各位におかれましては、一層の御指導、御鞭撻を賜りますようよろしくお願いを申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
鳩山委員長 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として防衛庁防衛参事官大井篤君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、防衛庁運用局長西川徹矢君、外務省大臣官房参事官齋木昭隆君、外務省北米局長海老原紳君、外務省総合外交政策局長西田恒夫君及び外務省中東アフリカ局長安藤裕康君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鳩山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
鳩山委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥山茂彦君。
奥山委員 先ほど、防衛庁長官並びに官房長官から、この臨時国会における対処についていろいろとお聞かせを願ったわけであります。
 さきの通常国会におきまして、武力事態対処法並びに自衛隊法の改正が上程されたにかかわらず、成立させることができなかったわけであります。その理由はいろいろあろうかと思いますが、一つは情報開示の問題、特に防衛庁の情報開示の問題や、あるいはテロ、コマンド、それから不審船対応、こういった問題がこの武力事態対処法の中には盛り込まれておらないということもあって、各党の見解がなかなかそろわなかったということも、成立をさせることができなかったわけであります。
 このイラクの事態に対して、アメリカは早急に武力行動を起こそうとしておるわけであります。そして、一方において、北朝鮮においては核疑惑の問題が表に出てきて、日朝の国交交渉というものが、非常に大きな障害となっているわけであります。こういった事態を踏まえて、今後、この国会も含めて、国民の期待にどのようにこたえてこの法案を成立させていかれるということになるのか、その辺をまず冒頭にお尋ねを申し上げたいと思います。
福田国務大臣 武力攻撃事態を含めまして国家の緊急事態に備えるということは、独立国として当然の、また重要な課題であると考えております。先国会でいろいろとその御議論を精力的にしていただきましたけれども、その成立に至らなかったというのは極めて残念でありますけれども、今後も、政府としていかなる事態にも対処できる安全な国づくりを平素から総合的、計画的に進めておくことが必要である、そういうような考え方でこの法案の御審議をいただきたいと考えております。
 とりわけ、武力攻撃事態に対処するための法制は、国家国民にとっても最も重大な事態に備える、こういう意味におきまして、国家の緊急事態への対処の基礎をなすものと考えております。
 このような観点から立案されました有事関連三法案でございますので、政府として、国会における御意見も踏まえながら、国民の保護のための法制などの個別の法制について、その内容を深める作業を先国会以来行ってまいりました。また、与党三党では、前国会における議論を踏まえまして、野党側との修正協議のための提案をまとめておられるということも承知しております。
 そういう状況を踏まえまして、政府としては、幅広い国民の理解と協力を得て法案が早期に成立することが重要と考えておりまして、与党と協力しながら、有事関連三法案の成立に向け、引き続き努力を傾けてまいりたいと考えております。
石破国務大臣 今官房長官からお答えがあったとおりでございますが、先ほど先生御指摘のように、それではテロ、不審船にはどのように対応するのか、議論の中で、本当の本格的な武力攻撃よりもテロとか工作船の方が蓋然性は高いではないか、そういうふうなものに対してどのように対応するのかということを、きちんとお示しをする必要があるだろう。
 もう一つは、国民保護法制について一体どういうものであるのかということ。さきの国会におきまして、官房長官からもそういうものについて検討するというような答弁があったやに私は承知をいたしておりますが、国民保護法制というのは何のために必要なのか、それはどのような仕組みであるのか。災害対策基本法があるじゃないかという議論がありますが、では災害と有事というのはどのように違うのか。そういう、前国会での御議論でなお御理解をいただくことが難しかった点を明らかにしていく。
 そしてまた、与党の方での修正もあるやに私も承知をいたしております。よりよい議論ができまして、国民の皆様方の御理解のもと、一日も早い成立をこいねがっておる次第でございます。
奥山委員 今、この中におきまして、さきの国会で上程された武力事態対処法、このものの中に、これは与党の中にもいろいろ意見があったということを聞いておりますが、今防衛庁長官がおっしゃったように、テロ・不審船対応というものが現行法では十分でないというようなこともいろいろ言われているわけであります。
 しかしながら、政府といたしましては、今のところは現行法で十分対応できるじゃないか、こういうことが一方で言われているわけであります。まして、我が国はアメリカと同盟国であることは言うまでもないわけでありまして、我が国に置かれた米軍基地というものは、現状では地球の半分以上をカバーできるだけの機能を持っているわけであります。航空母艦とかイージス艦とか、こういったものさえ日本の米軍基地では修理ができるということは、米軍にとっても非常に数少ない貴重な存在でないかと思います。
 一方、そういうものがあるために、日本は、逆に言うと、今世界に分散したアルカイダとかそういったテロ勢力からはターゲットになりやすい、アメリカと非常に強い同盟関係があるためにターゲットになりやすいということをいろいろ考えると、現在の武力事態対処法だけでテロ、不審船に対して十分対応できるのかどうか。これはやはり、その案文というものは盛り込んで、それに対する十分な対応を考えていくべきでないかと思いますが、いかがでしょうか。
石破国務大臣 自衛隊法にかかわることでございますので、私の方から答弁をさせていただくことをお許しいただきたいと存じます。
 今委員御指摘のように、それでは今ある法律で本当に十分なのかという検証をきちんとしなければいけないと思っております。昨年の国会におきまして、テロ特措法と同時に自衛隊法の改正というのをやらせていただきました。情報収集出動という新しい規定を設けましたし、警護出動というものも設けました。そして、治安出動の規定というものも改正をいたしました。では、それで十分なのかどうかという議論、検証、まずこれを行う必要があるだろうと思っています。その作業が本当にきちんと行われ、国会で議論がなされたかといえば、それはなお十分ではないような気が私自身いたしております。
 例えば、新しい法律ではなくても、能登半島沖の不審船事案というのが三年前にありました。あのときに、海上警備行動で海上自衛隊が出ました。それでは、条文を読みました場合に、海上自衛隊に治安出動は下令できますかということを、あのときは海上警備行動しか出しませんでしたが、条文上は海上自衛隊に治安出動も下令できる、あるいは航空自衛隊に対して海上警備行動も下令できる。だとしたらば、それで一体どこまでできますかという議論をきちっと詰める、防衛庁ではそれを今精力的にやっております。学習会ではございませんので、ここまでしかできない、あるいはここまでできるというものをまず検証する、その上で立法府の御議論、これもいただかねばならぬと思っております。
 テロ、不審船、ゲリラ等につきまして、本当に蓋然性が高いというふうに国民の皆様方も御認識ですから、そういうことにつきますお答えは政府としてきちんと出す責任がある、かように考えておる次第でございます。
奥山委員 今国民が有事法制に関して一番関心と期待を持っておるのは、やはりテロ、不審船、こういった対応が実際に今度の法律改正で、新たなこの事態法でできるかどうかということになるわけでありますので、その辺はきちっとやはり国民に示していく必要があると思いますので、ひとつその点はよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 それから、これは警察庁、国家公安委員長にもお尋ねをしたいわけでありますけれども、モスクワのオペラ劇場がチェチェンのあの武装勢力によって占拠され、大変な被害が出たわけであります。テロ行為というものは、これは本来、警備のきちっとされておるところにはなかなかテロというのは行いにくい、どちらかというとそういうものが手薄なところがねらわれるということで、それがインドネシアのバリ島のああいったところで起こったんではないかということも我々は聞いているわけであります。
 日本は、警察庁によりますと、五百八十カ所の重要警備施設、こういったものが今指定されているわけであります。ところが、こういった人が多数集合するような施設というものは余り含まれておらないということも聞いているわけであります。どちらかというと、原子力発電所とかそれから在日の在外公館とか、そういうところはいろいろ警備対象にはなっておるということは聞いておるわけでありますが、実際にあのモスクワで起こったオペラ劇場占拠事件というものは、日本としてはまさに無防備の状態になっておるのではないか、これは警察だけで対応できるのかどうか、自衛隊も同時にこういう事件が起こったときには出動しなければならないということになり得るのではないかと思いますが、そういった点についてお尋ねを申し上げたいと思います。
西川政府参考人 先生のお尋ねに対しましてお答えを申し上げます。
 御指摘の事案、もう既に報道等で相当詳細に報道されているとおりでございますが、ただ、御質問のような、日本でこういうものが起こった場合という仮定の場合につきまして、自衛隊がどういう形で対応するのかということを一概に論ずるのは大変難しいところでございます。これは本音のところでございまして、ただ、その上であえて一般論という形で申し上げさせていただきたいと思いますが、国内におきますいわゆるテロ事案、これにつきましては、御案内のとおり、第一義的には公共の安全と秩序の維持に当たります警察機関による対応がなされる、こういうふうに原則がなっておりまして、これに対しまして防衛庁・自衛隊はどのようにかかわるかということにつきましては、二つございます。
 一つが、警察機関の活動に対しまして官庁間協力という形で、警察機関からの依頼を受けまして、警察機関の人員あるいは装備、これらのものの緊急輸送支援、化学防護機材等の貸与、こういうようなことを行うことが一つ考えられます。
 それから、もう一つのかかわりの仕方でございますが、いわゆるテロによって引き起こされましたこの種の被害が生じている、こういう事態に際しましては、災害派遣の枠組み、この既存の枠組みを使いまして救助それから救援活動などを実施いたします。もしこれがNBC、こういうふうな特に生物兵器あるいは化学兵器というような場合には、自衛隊の持っております化学防護部隊あるいは衛生部隊、こういうものが中心となりまして、被害状況の情報収集、あるいは除染活動、傷病者の搬送、医療活動等を行う、こういうのが第一段階に考えられます。
 それで、先生がおっしゃられますように、自衛隊はもっと初めから出られるじゃないかと。いわゆる一般の警察力をもっては治安を維持することはできないという事象であるということになりますれば、その段階におきまして治安出動という形で自衛隊が警察機関と連携いたしまして対処する、こういうことになるかと思います。
 いずれにいたしましても、警察機関と自衛隊がそれぞれの能力を最大に活用し、緊密に連絡をして間隙なく効果的に対処できるように努めてまいりたい、このように考えております。
 それから、先生先ほど御指摘ございました警察の方の五百何カ所の重要警備対象でございますか、それについては我々も承知しておりまして、九月のテロ後そういうようなものが指定されて、警察の方でやっておられることを承知しております。
 この関係につきましては、先ほど枠組みの中で申しましたように、警察と自衛隊との間では、例えば治安出動に関します協定をいろいろ実は先般来改正いたしまして、例えば十二年の十二月には政治家の、大臣レベルの協定を巻いてもらいました。それから、その後また、現地レベルのそういう協定も巻いて対応するような、連携をとれるようなことをしております。
 それからもう一点、それに基づいて今後訓練をする必要があろうという形で、先般ちょっと新聞にも公表いたしましたが、来る十一月十八日の日からとりあえずは北海道で訓練をやる、そういうことで考えております。
奥山委員 いずれにいたしましても、とにかくテロの対応に対しては、法的にもすき間のないようにこれはきちっとしておかなければならないということは一番大事なことであろうと思いますし、そして警察と自衛隊が共同でいろいろな訓練をしたということは過去においてはなかったわけでありますから、最近はようやくそれも行われるようになったわけでありますが、ひとつ十分対応してもらいたいと思います。
 それから、国民の保護に関してお尋ねをしたいと思いますが、以前石破長官とも話をさせてもらったときに、戦争は、近代の戦争、そして現代の戦争になるほど、武力と武力の戦いというよりも、一般国民が巻き込まれる戦争、一般国民の被害が近代の戦争、現代の戦争になればなるほど非常に多くその犠牲者を出すわけであります。
 そういうことから考えると、また、かつてドイツが第二次大戦のときに激しい空襲を受けた、しかし、同じように日本も激しい空襲を受けたけれども、一般国民の被害はドイツ以上に日本が多かったというようなことを聞きますと、それはふだんから一般国民を守る日本の法体系というものか、思想というものですか、そういうものが過去においては余り十分でなかったということが言えるんじゃないかと思います。
 日本の国土は、幸いにも海を隔てて、外国からどんどん武力で攻撃を受けたということが過去においては少なかった。しかし、ヨーロッパ諸国は常に戦いの繰り返しだということで、そういった意味で、やはり住民自身もみずからの命を守る心構えも違ったというふうに思っているわけでありますが、どうも国民の保護という思想そのものが日本は欠けているように我々は感じてきたわけでありますので、そういった基本的なことで、この国民の保護に関してお尋ねを申し上げておきたいと思います。
石破国務大臣 先国会において先生からもいろいろお教えをいただいたことでございますが、要は、第一次世界大戦というのは、民間人はほとんど死ななかった。犠牲になるのは軍人の皆様方であった。ところが、第二次世界大戦になると民間人と軍人が同じぐらい犠牲になるようになって、朝鮮半島でそれはひっくり返って、民間人の方がたくさん死ぬようになった。そして、ベトナム戦争になったら、民間人の方がはるかに死ぬ。そして、昨年の九・一一でもそうですが、犠牲になったのは全部民間人でございます。
 どうやって民間人を守っていくか。たとえ戦に勝ったとしても、民間人がたくさん犠牲になったら、これは何にもならないということであります。近年そういうことになってきましたし、ましてやテロとの闘いということになれば、無差別に民間人が犠牲になるというのが特徴であります。さすれば、どうやって民間人を守るのかということを本当に真剣に考えていかなければ有事法制たり得ないのであろう。
 それは、実は、警報を発して民間人を避難させる、まず避難ということがある。そして、被害を局限するということがある。不幸にして被害を受けたとするならば、それをどうやって復旧させるかということがあります。警報、避難、局限、復旧、そういうようないろいろな場面において、どうやって民間人を守っていくのか。いざ武力攻撃があったときに、では、だれが警報を発して、だれが逃げろと言う権限を持っていて、そして、損害があった場合にどうやってそれを局限するのか。
 そして、冒頭申し上げましたように、有事と災害というのは、基本的に違うところはたくさんあります。どうやって民間人を守るかということをきちんと示すということにおきまして、現在、大車輪で作業をやっておるところと承知をいたしております。
奥山委員 官房長官にお尋ねを申し上げたいんですが、現在、武力事態対処法がまた継続して審議されるわけでありますが、これでまいりますと、現状ではなかなか、与党間もまだまだ議論が分かれているような状態じゃないかと思います。ここで法案を修正するというよりも、特にテロ・不審船対応、こういう一項を盛り込むのか、あるいは別建ての法律にするのか、その辺のお考えは、今後どのように対処されていくのか、お尋ねを申し上げたいと思います。
福田国務大臣 先国会でもいろいろ議論がございました。特に国民の保護、これは、今防衛庁長官から答弁したように、極めて大事なことでございますので、これに今後大いに力を入れていかなければいけないと考えております。
 また、ただいま御質問の武力攻撃事態以外の緊急事態、テロとか不審船とかいろいろございますけれども、そういうようなことについてどうするか。これは、この法制の第二十四条に、万全な措置をとるために必要な対応を考えるということが記載されております。そういう中で今後いろいろと検討してまいらなければいけないと思っております。
 そういうことで、これは与党三党の方も、先ほどちょっとお答えしたと思いますけれども、前国会の議論を踏まえていろいろ修正の御相談もしてくださっているというようなことでございますので、幅広い国民の理解と協力を得られるような法案ができるようにということで、与党の御協力を得ながら、今後のこの法案の成立に全力を尽くしたいと思っております。
奥山委員 ありがとうございました。一刻も早くこの法案が成立できるような環境を急いでつくってもらいたいと思います。
 終わります。
鳩山委員長 次に、赤松正雄君。
赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。
 八月の中旬に、前瓦委員長を団長といたしまして、当武力攻撃事態特別委員会のメンバー数人で、ドイツ、ポーランドそしてスイスへと行かせていただきました。なかなかそれぞれ参考になることがあったわけですけれども、なかんずく、私は、ドイツで非常に印象的な言葉を聞く機会がございました。
 それは、今も奥山委員の方から話があったことに関連するわけでございますけれども、ドイツでは、既に一九六八年、基本法を拡充するという形で緊急事態憲法とでもいうべきものが成立しております。いろいろなことを感じましたけれども、ショルツ連邦議会法務委員長、元国防大臣でありますけれども、彼がこんなことを言いました。
 それは、ドイツは、いわゆる有事法制をつくって三十年余りがたつわけだけれども、九・一一以降、国際テロにどう立ち向かうかということ、すなわち、伝統的な国家の有事とは別のテロといった非常事態に対応するためにいろいろ今考えている、警察がまず対応する、軍が出る、その警察と軍の仕分け、こういったことに新たな基本法改正の必要性を痛感している、こんなふうな話がございました。日本がこれから有事法制に取り組むというのならば、ぜひとも、いわゆる伝統的な国家間紛争の対応としての有事法制とそれから緊急事態対処の法制度の確立と両方同時に取り組まれることを望む、こんなふうな話が非常に印象に残っております。
 そこで、まず官房長官にお聞きをいたしたいんですけれども、さきの国会では、残念ながら継続になりました。その原因はどこにあると思われるかということなんです。
 先ほど来お話を聞いていますと、何だか与党の修正に任せるというようなことで、高みの見物を決めようとしておられるような印象も受けるんですけれども、そうじゃなくて、私は、例えば、あの武力攻撃事態特別委員会の冒頭のときの質問でもさせていただきましたけれども、武力攻撃事態、そしておそれ事態、予測事態、このいわば事態の定義そのものが極めてわかりづらい、そしてあとう限り具体的なケースを挙げてもらいたい、こんなふうなことを申し上げたんですけれども、なかなかその後明快な答えが返ってこなかった、そういう印象を持っておるわけです。
 まず、そうした定義の部分についてのわかりづらさということについてはどういうふうな反省を持っておられるかというか、どういう考え方で今いらっしゃるか、これを、与党の修正に任せますというのじゃなくて、官房長官の現在のお考えを聞かせていただきたい、こんなふうに思います。
福田国務大臣 先国会でいろいろ精力的に御審議いただいたのでありますけれども、その中でいろいろな論点がございました。特に、御指摘の武力攻撃事態の定義がわかりづらい、こういうこともございました。また、国民の保護のための法制について内容が具体的でない、こういうようなことも問題として上がったわけであります。いろいろな御意見がございまして、政府といたしまして、この武力攻撃事態の定義などの政府見解をお示しするなどもして説明に努力はしてまいりましたが、必ずしも十分な御理解を得るに至らなくて、継続審査の扱いとなったところでございます。
 与党三党の方では、このような武力攻撃事態の定義などの問題について、前国会の議論を踏まえまして、野党側との修正協議のための提案をまとめられたと承知をいたしております。
 政府といたしましても、幅広い国民の理解、協力を得て法案が早期に成立するということは重要だと考えておりますので、与党と協力してこの成立に努力をしてまいりたいと考えておるところであります。
赤松(正)委員 今、官房長官も、国民の幅広い理解と協力を得てという言葉を使われました。小泉総理も、この国会において、いわゆる有事法制関連のところを耳をそばだてて聞いておりますと、繰り返し、国会審議を通じて幅広い合意を得たい、こんなふうに小泉総理はおっしゃっているわけでございます。
 今、与党の皆さん、こうおっしゃいましたけれども、私は、やはり野党の皆さんの御協力を得ないと、この法案の性格からいって、なかなかこれは難しいものがある。したがって、例えば、民主党の皆さんが前国会で、約十項目にわたる各般のこの法案に関する疑問点、我々はこの点について不審に思うというか、より詳しいことを提示してもらいたいというふうな話がございました。国民保護法制については輪郭を示すというふうなことが先ほどの官房長官の所信の表明にもございましたけれども、既にそれぞれしかるべき回答をされているかとも思いますけれども、そういった、とりわけ野党第一党の民主党の皆さんが提起された問題について、先ほど来申し上げておられるように、与党が提示して野党の皆さんと協議をするという場の中で、こういった点は法案の修正という格好で取り入れられてもよろしいんじゃないかというふうに思っているくだりがございますでしょうか。官房長官。
福田国務大臣 御指摘のとおり、民主党からも、武力攻撃事態の定義、また認定のあり方、また、国民の安全確保と被害最小化への措置への対応、大規模テロや不審船対策などの問題につきまして、さまざまな論点を提起していただきました。政府も、いろいろ、そういうような論点に対して、御理解いただけるように政府見解をお示しするなど説明には努めてまいりましたが、必ずしも十分な御理解を得られなかったということでございます。
 そういうような御意見も踏まえまして、国民の保護のための法制などの個別の法制について、その内容を深める作業を進めてきました。特に、国民の保護の法制につきましては、国民の権利義務とも深い関係がありますから、国会において十分に議論を深めていただくために、法制の輪郭をお示しすることとしており、委員会からお求めございますれば、資料として提出をいたしたいと考えております。また、与党三党は、前国会における議論を踏まえまして、野党側との修正協議のための提案もまとめられたと承知しております。
 民主党から提起されました論点に対しましては、そのような国民の保護のための法制の輪郭に関する議論とか、与党三党でまとめられる修正協議のための提案に関する議論を通じまして御理解をいただき、有事関連三法案の成立に向けて引き続き努力をしてまいりたいと考えております。
赤松(正)委員 今のお話については、さらに、もうちょっと後で少し突っ込んでやりたいと思います。
 防衛庁長官に、先ほど、ドイツの例、ショルツさんの話を申し上げました。先ほど同僚委員からもそういう観点のお話がございましたけれども、有事立法とそれ以外の緊急事態対応と、二つの同時処理ということだろうと思うんですね、現行の有事法制の物の考え方は。二十四条において、いわゆる緊急事態に対する、不審船あるいはテロに対する物の考え方、取り組みのいわば包括的な考え方が述べられています。有事法制、この法制全体の中で、緊急事態にかかわる部分は二十四条に書いてあるような格好でやりますよ、こういうことだろうと思うのです。
 長官御自身がかつて委員としてこの武力攻撃事態特別委員会に所属されておられたときに、かなり長時間にわたってさまざまな論点を提起された。その中で、現行法で対応していくものと、それから新規立法に必要なものと仕分けする必要があるというふうなことも言われたり、先ほど、情報収集活動あるいは警護出動、治安出動等について、かなりこの数年できちっとした対応を進めてきている、ただ、それで十分なのかどうか、今後しっかりと詰めていきたい、こんなふうな話がございましたね。
 先般の安全保障委員会におきましても、これから、それこそぎりぎり詰めていきたいというふうなお答えがございました。また、きょうのここでも、五ページから六ページにかけて、テロ・不審船対策等の武力攻撃事態以外の緊急事態への対処態勢についても総点検を行い、必要な検討を進める、こんなふうにおっしゃっているわけですけれども、ともかく早く、急ぐ急ぐ、こう何回もおっしゃっているわけですが、いつまでに全貌を見せるおつもりなのか。
 たしか、御自身は、今の立場につかれる前には、二年をめどにやれというようなことをおっしゃっておられたようですが、今も、そういうお考えでいきたい、そう思っておられますでしょうか。
石破国務大臣 これは、前、私が委員として質問に立ちましたときに、例えば国民保護法制についてというようなお話をしたんだろうと思うのです。
 国民保護法制について議論があったというのは一体いつごろなんでしょうとずっとたどってみると、大平内閣総理大臣まで戻ってきてしまう。あるいは中曽根内閣総理大臣、藤波官房長官答弁みたいなお話もあって、二十数年も前に同じ議論がされていた。それは非常にぐあいが悪いのではないか、期限というのをきちんと区切らないと答えは出ないのではないか、そういうような趣旨で申し上げたと思います。今もその気持ちに変わりはございません。
 翻って申し上げますと、では二年以内ならいいのかということにもなるだろうと思うのです。私は、本当に、いつまででもいいというだらだらしたものはだめだ、しかし二年以内というのは、もう一年でもいい、半年でもいい、どれだけ早く結論が出るかということについて全力を尽くさなきゃいけないということだろうと思います。
 だから、期限を切るというのは、いつまでたってもいいよという意味ではない、しかし期限を切らないからといってそういうことになるわけではなくて、不断の努力を続けて、あしたにも起こるかもしれないわけですから、そのときに、法律がなかった、ごめんなさいでは済まないわけですから、どうやって早くやるかということは、これは政府のマインドの問題なんだろうと思っています。そのことをきちんとリマインドしておきたいということ。
 そして、先ほど来先生が御指摘のドイツの緊急事態法制というものは、私どもは、本当にきちんと学んでみる必要があるんだろうと思っております。ただ、自然災害から武力攻撃まで段階的にそれが上がっていく、それが一本の緊急事態法制という形になっている、それが本当にいいのかどうか。仮にそういうものを入れた場合には、我が国は、災害対策基本法も含む抜本的な改正ということになるだろうと思います。そうすると、法の精神というものはかなり混在することが予想されまして、そのあたりをどういうふうに整理するか、この辺は、また先生の御教示をいただきながら、一日も早く結論を出したい、このように思っている次第でございます。
赤松(正)委員 石破大臣は、今、二つの有事法制、いわゆる有事法制と、それから緊急事態に対応する部分、この二つのうち、いわば国民保護の部分について自分は二年と言ったんだ、こうおっしゃるのですが、私、前の議事録を見ましたら、テロ、不審船等の対応についても二年というふうにおっしゃっていたように記憶しているのですが、それはいいです。
 この問題についても、今、急ぎやるんだということをおっしゃっているわけですから、あとう限り早い段階でそれぞれの位置づけというものをきちっとして、新たな法律の必要な部分については、早急にその対応をしなくちゃいけない。そしてまた、運用の面で、さらにきちっとした連係プレーが必要な部分についてはしっかりと対応していく、こういったことの全貌を示す機会というものが二年以内になきゃいけない、私はこう思っておるわけですけれども、そのことをしっかりと確認をしておきたいと思います。
 さらに、それに関連するわけですけれども、いわば国民の総意を結集して、二年なら二年の範囲の中で、有事法制にまつわる国民保護の部分、あるいはまた、先ほど来繰り返し言っておりますように、それ以外の緊急事態、二十四条のもとにおけるような事態等についてもどういうふうに法体系をつくっていけばいいのかということについて、国民の総意を得る場を持つべきだという提案をなさっていたわけですけれども、それは、この法そのものができてから、今度、実際に二年かけてやる場面でそういうことをすればいいんだ、こういうお考えですか。
石破国務大臣 私が委員のときに申し上げましたことと政府の立場とは若干異なることを事前にお許しいただきたいと存じます。
 私は、委員のときにそのように申し上げましたのは、国民保護法制というのは、本当に先生御指摘のように広く国民の御理解を得なければいかぬだろう。そのときに、霞が関だけで考えていると実態と乖離する場合があるのであって、地方公聴会でも出た意見ですが、例えば、都道府県知事さんはどのように考えておられるのか、市町村長さんはどうであるのか、では、建築業に従事される方、運輸業に従事される方、建設業に従事される方、医療に従事される方、あるいは報道関係に従事される方、労働者の皆様方、それはどのようにお考えであろうかということを、整備推進本部のようなものをつくってきちんと議論をすることが必要なのだろう。そこにおいて現場の意見というものが反映され、よりうまくワークするような、そういうような知恵を出す場所が必要なのだろうというふうに思った次第でございます。
 ですから、それは、私はあのとき思っておりましたのは、この法律とは切り離して、国民保護法制整備推進法みたいな法律を立てることも一つのやり方ではないかというふうに頭の中では考えて、そのような発言をしたこともございます。
 報道等で仄聞いたします限り、与党修正、そう言うと丸投げかといってしかられますが、与党修正の中でそういうような推進本部をつくろうというようなお考えがあるやに聞いております。それをどういう仕組みにするのか、事務局をどのような形にするのか、いずれにせよ、国民の意見がきちんと反映され、実際に動くものでなければ意味がない。これはもう立場で賛成だの反対だのではなくて、どうやったらば国民が安全に保護されるかということについて、目的は一つのはずですから、そこで有益な議論が短期間になされ、結論が出るということが望ましいのではないか。そういう意味で、私が仄聞しております与党修正はそれに近いものではないかというふうに拝察をいたしておる次第でございます。
赤松(正)委員 官房長官にお聞きしますが、今の点なんですけれども、要するに、石破長官が委員時代に提起されたそういう幅広い国民の合意を得るために、彼はこの法律とは別なところでということも考えたとおっしゃいましたね。
 私も、その辺、二段構えと申しますか、まあ、本当はといいますか、この法律が今の法律の最小必要限の修正なら修正でもってスタートをして、それから、今言われたような国民保護法制にかかわる整理をする本部、そういったものをつくって、そこに広範囲な国民の意見を集中、集約させて、そこから、そこから先の基本的な、具体的なものを考えていくというのが一番望ましいんだろうと思うんですが、仮にそこまで行かない場合、つまり、プログラム法ともいうべきこの法律そのものがなかなかスタートしない場合、その前の段階でいわば整備推進会議のようなものをつくって、その段階で、これから後野党の皆さんがいろいろな御質問をされると思いますけれども、そういった意見も踏まえて、会議体、本部という、この法律そのものを遂行していくという前に、この法律そのものをつくる前段階でそういった意見を聞くというお考えはおありでしょうか、官房長官。
福田国務大臣 国民の保護のための法制は、これは検討事項も大変多岐にわたっております。また、地方公共団体とか関係機関などの意見を聞き、そして国民の理解と協力を十分得ながら整備を進めていく、こういうことが必要でございます。ですから、法制について広く国民の意見を求めて法案の策定作業に反映していく、そういう観点から、御提案の御趣旨というものも貴重な御意見であろうかと思っております。
 いずれにしても、この武力攻撃事態対処法案の早期成立、これが肝要でございますので、これはぜひお願いをしたい。その上で政府全体で、国民の保護の法制整備、体制整備を、関係団体とかいろいろな機関との調整をしなければいけません、そういう調整を含めて本格的に取り組みをしなければいけない、このように思っておるところでございます。
赤松(正)委員 さきの法案、今継続になっておりますこの法案は、私は、やはり政府の側の説明不足、そして、こういう言い方をしてあれですが、国民の側、受ける側としては理解不足、この両方の相乗作用で今日があるんだろうと思うので、ぜひともお互いにしっかりと、国民に向けて有事法制の必要性というものをあらゆる手だてを講じて訴えていきたいということを申し上げまして、質問を終わります。
鳩山委員長 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。きょうは、石破防衛庁長官にお伺いしたいと思うんであります。
 歴代防衛庁長官それぞれ、防衛問題に造詣の深い方だったと思うんでありますけれども、石破新長官はとりわけ本問題については造詣の深い方と承知をいたしております。しかも、専門的にわたる事項につきましても大変お詳しいし、かつまた今の答弁を聞いておりましても大変詰めて考えておられる、そういう方だと思います。ということで、私は極めて初歩的な質問をいたしますが、率直な御答弁をお願いいたしたいと思うんです。
 まず最初に、安全保障という問題ですね。安全保障というのは、国家にとりまして最大のテーマだと思うんですね。一日もなおざりにできない非常に大切な問題だと思うんでありますが、まず、私の認識と余り変わらないと思うんでありますけれども、国家の安全保障につきまして何かこのほかに御意見がありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
石破国務大臣 お答えのピントがずれていたらお許しをいただきたいと思います。
 経済は大事です。所得を上げることも大事です。福祉も大事だと思います。権利を守ることも自由を享受することも大事なことなんだろうと思っています。ただ、そういうことは国家が存立して初めてできることなんじゃないんですか、そういう問いかけなんだろうと私自身は思っております。
 有事法制という議論をいたしますときに、国民の権利が制限されるんではないかとか、そういうような御懸念があります。私は、正当な補償のもとに憲法の許された範囲でそういうことはあるのだろう。なぜならば、個人の権利とか自由とか、経済的な幸せとか豊かさとか、福祉とか、そういうものを守ってくれる主体は、あくまで今の世の中においては国家なのだろう。その国家が、もうそんなことはどうでもいい、個人の権利なんかどうでもいい、個人の自由なんかどうでもいい、個人の幸せなんかどうでもいい、とにかく日本をじゅうりんしようという勢力から攻撃を受けたときに、国家そのものが危急のときに、ある程度正当な補償のもとに憲法の許容する範囲において個人の権利が制限されることはあるのではないかということは、国家あってのという考え方でございますが、なお考えが足らざるところ多いかと思いますので、よろしく御教示賜りますようお願いを申し上げます。
井上(喜)委員 我が国の安全保障につきましての憲法上の表現というのは、第九条にまずまず尽きていると見ていいと思うんですね。第九条のこの考え方というのは決して悪い考え方ではないので、国際紛争を武力で解決しないと言うんですから、非常に立派な考え方だと思うんでありますけれども、この規定だけでは必ずしも十分でない、不十分なところが私はあると思うんですね。
 今の内閣の方針もわかります。また、閣僚として内閣の方針に従わないといけない、これもわかりますが、それはそれとしまして、この憲法九条につきましての長官の所見というんですか、個人的な所見と言っていいかもわかりませんけれども、お聞かせください。
石破国務大臣 九条につきましてさまざまな議論がございます。委員御指摘のとおり、今の政府の見解というものに従うのが閣僚として当然のことであるという前提のもとにあえて申し上げますならば、九条というのは一項と二項によって成り立っておる。九条一項というものは、実は多くの国の憲法に、全く同じようなワーディングではございませんが使われておるスタイルだと承知をいたしております。しかし、九条二項というものは、かなり我が国がユニークなものとして持っておる存在であって、一項、二項相まって九条である。それでは、その九条二項というものが、本当にどういうような意味を持つものであり、そしてそれがいかに平和に寄与するものでありということから論証されていくことが必要なのだろうというふうに思っております。
 よく九条、九条というふうに申しますが、九条は一項と二項に分かれておる。一項は大体、不戦条約以来、あるいはハーグの陸戦法規でしょうか、いろいろな国において採用されている文言であります。二項の、本当にユニークさというものを我が国憲法は持っておる。そういう事実は認識をいたしておるところでございます。
井上(喜)委員 安全保障につきまして、幾つか、何といいますか、おかしいところといいますか、常識的には問題があるんではないかと思われるところが多々あるのでありますけれども、例えば自衛隊の根拠ですね、これは憲法上にあるのかないのか、よくわからない。自衛隊というのは軍隊じゃないらしいんですね。これは何なんだ、これはどう理解したらいいのか、非常に私は不思議だと思うんでありますけれども。
 この自衛隊の憲法上の位置づけにつきましては、もちろん自衛権はありますよ、日本は。それはそれでいいんだけれども、隊そのものの、自衛隊そのものの憲法上の根拠はどこにあるとお考えですか。
石破国務大臣 私も憲法調査会の委員でもございまして、委員が御指摘のようなことを、そもそも憲法草案が国会で議論されたときの議事録も全部読み返してみましたが、そういうような議論がなされていない。そもそも警察予備隊も念頭になかったときのお話でございますから、ましてや今日の自衛隊の根拠が、憲法草案が議論された国会で記録が残っていないのは当然のことだろうと思っています。
 さすればどういうことになるかといえば、九条は自衛権を否定していないというところから裏返った論理になって、だから自衛隊はいいのだ、こういうような理論になっております。今の自衛隊というのは、したがって当然合憲であるという立場でございます。
 しかし、先生御指摘のように、ではこれは一体何なの、軍隊ではない、しかし警察でもない、では何なのと聞くと、だから自衛隊ですという、問いをもって問いに答えるようなそういうお話になっております。だといたしますと、これは憲法草案のときから始まりまして、あるいは警察予備隊令というものがどういう形でつくられたのか、そこまで議論をすることが私は必要なことなのかもしれないというふうに個人的には考えております。
 いずれにしても、これは憲法調査会等々でいろいろな御議論が行われていることでございまして、そういうことをよく拝聴してまいりたいと思っております。
井上(喜)委員 時間が限られておりますので、まとめて質問をさせていただくんですが、私が不思議に思いますもののその次は、集団的自衛権という概念なんですね。
 日本の憲法というのは、自衛権はあるけれども集団的自衛権は認めていないというような解釈のようですね。しかも、その集団的自衛権と認定できるかどうかというのは、同盟国と武力行使が一体化すれば集団的自衛権の行使になるけれども、そうでなければいいということで、例えば基地の提供だけだったらいいというのですが、こういう解釈というのは国際法上通用する解釈なんですか、どうなんですか。これが一つです。
 それからもう一点は、これも私は不思議だと思っておりますのは、防衛庁なんですね、国防省じゃないんですよ。これは、さきの御答弁にありましたように、安全保障の問題というのは、国家の存立にとって本当に必要不可欠のものでしょう。そういう国を守る自衛隊が、防衛庁が所管するということになっているんですよね。当然、国防省ないし防衛省じゃないかと思うんですよね。私は、その点については余り違った意見ではないと思うんでありますけれども、もっとそのために、長官を先頭にして防衛庁に積極的に動いていただきたい、こう思うんです。
 この二点につきましての御答弁をお願いします。
石破国務大臣 後段からお答えをさせていただきます。
 全く同じ思いでございます。なぜ防衛庁ではなくて省でなければいけないか、理屈はもう先生よく御案内ですからここでは申しません。きょうは浜田理事もおいででありますが、私ども、何年前でしたでしょうか、省庁再編のときに自由民主党で、なぜ防衛省もしくは国防省でなければいけないかということを国防部会でもさんざん議論して、同志の皆さん方も議論をしました。そのときに、防衛庁は何となく人ごとみたいな感じであったことを、当時の印象としてよく覚えております。
 ですから、防衛庁として、もちろんこれは議員提案のものでございますから、役所としてどうのこうのという立場がどうなのかは別にいたしまして、やはり防衛庁として、なぜ省であるべきなのか。単なる精神論ではない。防衛庁だったら士気にかかわります、防衛省でなければ士気にかかわりますなんということを言うと、じゃ、今は士気が低いのかと言われちゃっておしまいになってしまうわけであります。なぜこれが国家行政組織法上の観点からも必要なことなのかということを防衛庁としてきちんと整理をして、先生方のお力をいただいていくということが正しい姿だろうと思っております。
 集団的自衛権について申し上げれば、例の武力行使の一体化のお話であろうと思っております。ここは我が国も武力の行使をしたとの法的評価を受ける場合があり得る、つまり、実際は武力の行為をしていないとしても、ほかの者が行う武力の行使への関与の密接度などから、我が国も武力の行使をしたとの法的評価を受ける場合があり得るとするものであって、憲法上の判断に関する当然の事理を述べたものである、これが政府の立場でございます。
 私としては、この立場を堅持するのが閣僚としての責務であろうというふうに考えておりますが、実際にそれはどういう場合であるのか、もちろん例示もいたしております。それが、実際に現場においてそのようなことができるのかどうかということは、また国会の御議論によるのだろうと思っています。
 ただ、実際に武力行使はしていないけれども、いろいろな要素からしてそれは一体化されたとみなされるおそれがある、武力行使と同じような法的な評価を受けるおそれがある、だからそういうことは慎もうということであって、それが今の政府の立場でございますが、それが本当に国際法的評価はどうかということでございます。集団的自衛権を使ってはいけない、持ってはいないと言っているのは、私が知る限り、世界の中で日本だけのはずですから、私どもは集団的自衛権を行使していませんよと幾ら言いましても、それは国際法の評価のそもそも対象たり得るのかしらという感じがしております。
 そのあたり、私どもは集団的自衛権を行使できないという立場を堅持しつつ、本当にそれがどのように映るのか、先生御指摘の国際法的な評価はいかがなものかということにつきまして、また国会の御議論を賜り、私どもに御教示賜りたい、かように思っている次第でございます。
井上(喜)委員 どうもありがとうございました。終わります。
鳩山委員長 次に、伊藤英成君。
伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。まず最初に、イラクの問題について伺いたいと思います。
 官房長官に伺いますけれども、先日、この十一月の八日の日に、国連安保理事会で、イラクの大量破壊兵器査察問題で決議案が採択をされました。ようやく採択された、こういうことですね。まず官房長官に、今回のこの決議案についての評価をお伺いいたします。
福田国務大臣 去る八日に、イラク問題に関する国連安保理決議が全会一致で採択されました。我が国は、首脳会談などの機会を通じまして、本件問題に関する国際社会の連携の重要性を主張してまいりました。イラクの大量破壊兵器開発問題に対する国際社会の一致した毅然たる態度を示す今次決議の採択を、そのような意味において歓迎をいたしております。
 我が国といたしましては、イラクが本決議の採択を重く受けとめて、その決議に従い、実際に即時無条件、無制限の査察を受け入れて、大量破壊兵器の廃棄を初めとするすべての関連安保理決議を履行することを強く求めるという立場であります。このために、引き続き必要な外交努力を今後とも継続していく所存でございます。
伊藤(英)委員 ああいう形で、それこそ全会一致で採択をされたという話については非常にいいんですけれども、私自身が見てみても、本当にちゃんとそのとおりになるのかしらんということで、非常に危惧もするわけですね。
 それで、今回のものを見ますと、例えば一週間以内にイラクがその決議案を受け入れる意思表示をする、あるいは三十日以内に大量破壊兵器の開発計画を明らかにする。ただ、このこと自身についても、三十日以内にやるのはなかなか大変ではないかという見方もあったりいたしますね。さらに、四十五日以内に査察再開ということになるんですが、無制限、無条件にこれをやることになっています。
 実際のあの決議の文章を読んでみますと、それこそ、もちろん大統領府の関連施設もそうなんですが、査察官が望むすべてのイラク人あるいはその家族を国外に出国させて云々とか、いろいろなことが書いてありますね。なかなか大変だろうなと。それこそ状況によれば、あの決議案の中に言うさらなる重大な違反ということに結びつく、あるいは結びつきかねない状況というのは非常にあり得るんではないんだろうかということを私なんか思ったりするんですが、官房長官は、この辺のことについてどんなふうに思いますか。結局はイラクへの武力行使になっていくんではないかという見方は結構多い、私はこう思うんですが、その辺はどういうふうに思われますか。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 今回、官房長官から御答弁がございましたように、安保理が一致してこのような決議をもたらしたということにつきましては、私たちが承知する限り、アラブの諸国も含めて、基本的にはこれを歓迎しているということでございます。
 同時に、今委員から御指摘の点も含めつつも、やはりこのような条件で査察を行い、イラクが持っておりますこの大量破壊兵器問題が解決されるということに対する期待というものが、アラブの諸国からも出ているというふうに理解をしているところでございます。
伊藤(英)委員 そうなんですが、なかなか、イラクに対して、イラクが受け入れるようにという国際的な空気は非常に強い。そういう意見は非常に強いんだと私は思うんです。ただ、本当にちゃんとそうなるのかな、なかなか大変じゃないか、容易ではないというふうに思うんですが、そんなふうに思いませんか。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 直接のお返事になっておらないかと思いますが、御案内のように、今回の安保理決議に至るまでの間、イラクと国連との間には、非常に長い間にわたるやりとりがございます。そのような中で、御案内のように、累次の決議案というものをもちまして、国際社会はイラクに対して、同問題に前向きに対応するようにということをこれまで重ねて訴えてきたという経緯がございます。
 にもかかわらず、イラク側のいろいろな意味での妨害等々もございまして、この問題が解決することがなく、場合によっては軍事的な解決もあり得るんじゃないかというような危惧が出てきた中で、今回、ようやくにして決議に至ったという経緯がございますので、今委員御指摘のように、査察につきましても非常に厳しいものになっている。すなわち、従来の査察に加えて、さらに強化された査察になっているというのは御指摘のとおりでございますが、当然のことながら、このようなものに対してイラク側が、一生懸命やってこれにこたえるということが必要なんだというふうに国際社会は考えているということだろうと思っております。
伊藤(英)委員 それでは、もし万一イラクに対して武力攻撃ということが起こった場合、そうしたときに、アメリカの経済、あるいは世界の経済、あるいは日本に対する影響、あるいはその他、テロがさらに起こっていくかもしれない、あるいはイラクの国自身がどういうふうになっていくんだろうかというような影響ということについては、どういうふうに考えられますか。
安藤政府参考人 お答えいたします。
 まず、イラクに対する軍事行動が行われるということが決まったわけではございませんので、そういうことを前提にしたお答えを申し上げるということは差し控えたいと思います。その上で、なお一般論として申し上げましても、仮に、万々一軍事行動が行われるという場合でも、その影響はいろいろな前提によって変わってき得るものでございますので、一概にお答えすることはなかなか難しいように思います。
 そう申し上げました上で、なおかつお答え申し上げますと、石油が、供給がどうなるのか、あるいは価格がどうなるかという点についていろいろな御議論があろうかと思います。
 石油につきましては、一般的に言われておりますのは、短期的には上昇するかもしれないけれども、長期的にはまた安定していくだろうとか、世界経済への影響等につきましては、やはりアメリカ経済への影響を通じて世界経済への影響が出てくるだろうとか、いろいろな御議論はあろうかと思いますが、最初に申し上げましたように、軍事行動そのものの期間であるとか態様であるとか、こういうものによってその影響の度合いというものは大いに変わってき得るものではないかなというふうに思っております。
 それから、御質問の、テロとの関係につきましては、我が国といたしましても、テロ撲滅ということで真剣な取り組みを行っておりまして、関連条約の普遍化や関係国との情報交換などを通じて積極的に携わっているという状況でございます。
伊藤(英)委員 私は、例えば日本がこれからどう対応していくんだろうかというようなことを考えたときに、例えば武力攻撃というのがあった場合にはどんな影響を与えるんだろうか。これはいろいろなケースがあり得るんですよ。いろいろなケースはあり得る。それをどういうふうに考えて、だから、では日本はどうしようかとか。
 言い方をかえますと、ほとんど影響は何もないんだよ、世界に対する影響もアメリカに対する経済への影響もない、テロの波及効果もない、波及効果といいましょうか拡散するとかいうようなこともない、あるいは中東地域における政治的な影響も余りないというならば、それはまたそのやり方もあるかもしれない。
 しかし、非常に大きな影響を受ける、例えば日本経済でも、為替レートというのはすぐ動きますね。動いていますね、今でも。いいですか。日本がこれだけ今大変な経済状況になっているときに、例えばアメリカ経済がどういうふうになるんだ。もしも攻撃という話になったとしましょう。私は、一気に、まず観光業から始まって、経済は基本的にはぱっと収縮していくという形になっていくんだと思うんですよ。そういう危機感はあるのかないのか。攻撃しても余り大した影響はないなという感じなんでしょうかね。
安藤政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、私が申し上げておりますのは、軍事行動がとられるということを前提にして、そうなった場合の影響というのを今の時点でお答えするのは必ずしも適当ではないのではないかということを申し上げたわけでございますが、仮に、万々一その軍事行動がとられるということになった場合にどういうような影響があり得るかというようなことにつきましては、それはいろいろな角度から検討はしていきたいというふうには思っております。
伊藤(英)委員 どういう対応を考えるんですか。
安藤政府参考人 それも、軍事行動の行われる期間であるとか、あるいはその態様であるとか、いろいろな形によって違ってくると思いますけれども、その上で、先ほど委員御指摘のように、経済面での影響、あるいは中東地域の安定性への影響、あるいは先ほど御指摘のテロの問題等々、いろいろな角度から考えていきたいというふうには思っております。
伊藤(英)委員 私はよく言うんですが、特に外務省は、きょう川口外務大臣はいらっしゃいませんが、私は、川口外務大臣は特にそうだと思っているんですが、国会を軽視するのも甚だしいといつも思っているんです。国会の場でいろいろなケーススタディーもしながら、では日本としてどうした方がいいんだろうかということをなぜもっとやらないんだろうか、なぜ。そうなっちゃ困るからというので、武力行使がもしも行われた場合どうなるんだろうかというようなことを考えるとか、そして、もしも大変ならば、行われないようにするためにはどうするんだとかいうような議論がなぜできないんだろうか。
 私は、そんなことをやっているものだから、外務省なんかもう解散した方がいいと言っているんです。最近みたいにお金だけ勝手に使っておいて、あるいは、要らないものを、要らない資産を買ったままほっておいて、会計検査院が云々ときのうもやっていましたでしょう。最近の外務省はなっていないと私は思っているんです。何だ、この外務省は、我が日本の、と思っています。
 それから、今回、では、本当に武力行使に至らないようにするために、あるいはイラクが査察をしっかりと誠実に受け入れるようにというふうに外交努力もされるんでしょう。具体的にどういうことをされるんですか。日本も、イラクを含めて中東に例えば特使を送るとか、いろいろなことがあるんだろうという気が私はしていたんです。そういうことをもっと考えたらどうなんだろうかという気がしたりするんですが、具体的に、武力行使に至らないようにするために日本は何をするのか。どうでしょうかね。
安藤政府参考人 お答えいたします。
 今大切なことは、イラクが査察を受け入れて、即時無条件、無制限の査察を受け入れて、大量破壊兵器の廃棄を行うということ、そして、関連の安保理決議を履行するということでございまして、この点につきましては、我が国といたしましても、イラクに対して二国間あるいは多国間の枠組みの中でさまざまな外交努力を重ねていきたいと思っております。
 具体的には、例えば、本日、私自身、在京のイラクの臨時代理大使、カーシムさんという臨時代理大使でございますが、これを国会から戻った時点で呼んでおりまして、臨時代理大使に対してこの査察を受け入れるようにという申し入れをする予定にしておりますし、今後もさまざまな形で外交努力を続けていきたいというふうに思っております。
伊藤(英)委員 特使なんかを派遣するつもりはありませんか。
安藤政府参考人 特使の問題につきましては、非常に微妙な段階でございますので、仮に特使のような方を派遣した場合に、それがイラクに政治的に利用されるというようなこともあり得るわけでございまして、そういう点にも留意しながら、これは政治的に御判断をいただいていく問題かなというふうに考えております。
伊藤(英)委員 イラクの問題はまた改めて、いろいろな場で取り扱いたいと思っていますが。
 北朝鮮の問題で、きょうはいわゆる拉致問題の部分はちょっと横におきまして、核等大量破壊兵器のことについてちょっと伺いたいんですが、防衛庁長官、北朝鮮が崩壊していく可能性といいましょうか、あるいは、軍事的な行動あるいは暴発といいましょうか、まあ窮鼠猫をかむといいましょうか、これは結論の方だけを聞きますけれども、そういう可能性ということについて、防衛庁長官はどんなふうに考えますか。
石破国務大臣 仮定のことにはお答えできないなぞと言うとまた御不興を買いますが、可能性は否定できないのだろうと私は思っています。
 それは、歴史の上で、いろいろそういうことがありました。じゃ、何で太平洋戦争は始まったのということをなぞらえておっしゃる方もあります。私は、その議論はそのまま正しいとは決して思いませんが、結局、その誤解とかそういうことが積み重なってそういうこともある場合もあるだろう。そしてまた、座して死を待つよりはという議論もあるだろう。あるいはまた、私が昔北朝鮮関係で勉強しましたときに、どうせならば打って出よう、このままいても経済は疲弊する一方である、しからば乾坤一てきという場合もなしとはしない、いろいろなケースがあるのだろうと思っています。
 私どもとしては、暴発しないようにということを、ありとあらゆることを考える、それは、暴発ということが可能性として必ずしも否定できないから、どうすればそうならないかということを全知全能をもって考え、行動するということだろうと思っております。
伊藤(英)委員 ちょっと具体的に防衛庁長官の認識を伺いたいのですが、今、中距離弾道弾のノドン、これが百基くらい配備されているということを伝えられたりいたしますけれども、そしてしかも、それが日本を標的にしているというふうに言われたりいたしますが、そのことについては、その真偽といいましょうか、防衛庁長官はどんなふうに思っていますか。
石破国務大臣 これも確たる証拠があるわけでも何でもございません。ただ、可能性としてそれを否定することは、私はいかがなものかと思っておる次第でございます。
伊藤(英)委員 では、核の問題、核開発の問題については、その核開発の現状といいましょうかね、あるいは核兵器の配備、あるいは核兵器の保有といいましょうか、その辺のことについての認識、さらには、最近核実験の可能性もあるのではないかという話がちょっと伝わったりしていますね。この辺はどんなふうに思われますか。
赤城副長官 お答えいたします。
 北朝鮮の核兵器についての認識、こういうことでございましたが、北朝鮮は、極めて閉鎖的な体制をとっておりまして、核兵器開発の現状について、断定的なことは申し上げられませんけれども、既に北朝鮮が核兵器一、二個を製造するに十分なプルトニウムを抽出、保有しているという指摘や、一つ、場合によっては二つの核兵器を製造している、あるいは少数の核兵器を保有しているという、さまざまな指摘がございます。
 北朝鮮の今回明らかになりました核プログラムにつきましては、これまたその詳細を申し上げる段階にはありませんけれども、アメリカがこの件を発表するに至ったということ、また、北朝鮮がこれを認めたということは大変重い意味を持っているということで、核兵器開発が進んでいる可能性を排除することはできない、こういうふうに考えてございます。
 また、核実験の可能性についてお尋ねがございました。
 北朝鮮がこの核開発計画の一環として地下核実験を近い将来強行するおそれがあるという報道がなされていることについては承知しておりますが、防衛庁としては、かかる情報には接しておりません。
伊藤(英)委員 今最後に、核実験の話について、そういう報道については接しているけれどもと言われましたかね。そういう報道を見て、それで防衛庁としては、その真偽を確かめるためにといいましょうか、何らかのアクションはとったんですか、全然とっていないんですか。
石破国務大臣 核実験というものがどういう形で我々が了知できるかということは、例えば、地震波の測定がどうであるか、衛星がそういうことをキャッチするかどうか、これは、北朝鮮に限らず、いろいろな国の核実験でも、いろいろな国の情報から私どもはそれを知り得る立場にはございます。
 当然のことながら、そういう核実験が行われたかどうかということは、我が国にとって重大な関心事でございますので、そういうことがあるかどうか、そして、それをきちんと正確に把握するべく努力をするように努めておるところでございます。
伊藤(英)委員 では、生物化学兵器。生物化学兵器については、今、北朝鮮に、その存在あるいはその開発の状況等については、どういう認識ですか。
赤城副長官 生物また化学兵器についてのお尋ねでございました。
 これまた北朝鮮の体制から見て、極秘裏に進めている活動については、これは確たることは申し上げられませんけれども、まず、生物兵器については、一定の生産基盤を有していると見られます。また、化学兵器については、化学剤を生産できる複数の施設を維持しており、既に相当の化学剤等を保有していると見られるところでございます。(発言する者あり)
伊藤(英)委員 はっきり言いますか、防衛庁長官。
石破国務大臣 ただいま副長官から御答弁申し上げたとおりでございます。そのことについて極秘裏に行われておるわけで、私どもとしては、そういうことが本当にないかどうかということも日朝平壌宣言の中に入っておる、ですから、そのことを確実に履行するべく努力するということが政府の立場かと存じます。
伊藤(英)委員 今、防衛庁長官が平壌宣言の話をされました。実はこの平壌宣言に、核の問題について、「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」と書いてありますね。
 私はこれを見たときに、核の問題についての、例えば九四年の合意された枠組みとか、それに基づく核の問題の凍結云々は守られている、そういうことを遵守することを確認したという意味だと私は思うんですが、これは防衛庁長官もそう思いませんか。
石破国務大臣 九四年の米朝枠組み合意のことを御指摘かと思いますが、大意そのようなことかと理解をいたしております。
伊藤(英)委員 要するに、だから、これを本当はサインしたときは、今防衛庁長官の言われたとおりの認識でサインをした。だけれども、実際には、この間のケリー国務次官補の話のとおりにといいましょうか、これは防衛庁長官も会われたり、あるいは国会でも答弁なんかしたりしていますが、ああいう事実があった。北朝鮮はいかにもこの平壌宣言に対して不誠実だというふうに思われませんか。
石破国務大臣 これは防衛庁長官という立場でお答えすることが適当かどうかは存じませんが、仮にそういうことであるとすれば、決して誠実という言葉がそのまま当てはまるとは考えておりません。であらばこそ、日朝平壌宣言のきちんとした履行というものを北朝鮮に対して我が政府としては強く要求するということかと思っております。
伊藤(英)委員 実は今の話は、今非常に微妙な言い方をされましたけれども、北朝鮮も本当に不誠実そのものだったという話なんでしょう。
 実は私は今非常に心配しますのは、日本、これは防衛庁長官はまさに外交あるいは防衛問題の、安全保障のプロですよね。そして、そのときに、日本の安全保障を考えたときに、何といっても一番ベースはやはり日米関係です。そして、特に北朝鮮問題やらこうしたことについて考えるときに、いかに日米そして日米韓が共同歩調といいましょうか、そこのところの調整といいましょうか、これがどんなに重要かということですね。
 私は、特に大量破壊兵器に絡むあたりの北朝鮮との関係でいいますと、非常に今微妙になっているんだと思うんです。微妙になっているとはどういう意味かというと、アメリカとの関係で微妙になっていると私は思っているんです、これは。
 そして、必ずしもこれと一緒じゃないんですが、一緒じゃないというか関連があるんですが、今KEDOの問題で、原油の凍結をするかどうかという話が出ています。これについても、報道されるところですと、アメリカは凍結論だよ、日韓はいわば供給を継続するという話が出たりしていますね。
 では、先に伺います。このKEDOの話はどうすべきだと思われますか。
西田政府参考人 お答えをいたします。先週末に行われました日米韓のいわゆる調整会議に出席しておったものですから、そういう立場からもお答えをしたいと思います。
 御指摘のとおり、北朝鮮をめぐる問題、特に安全保障の問題につきましては、これは日米韓でまさに最も緊密な調整を持って北朝鮮に当たるべきことが大事であるというのは御指摘のとおりだと思っておりまして、まさにそのような観点は先般のメキシコのAPECの三首脳の会談でも確認をされましたし、そのときの基本認識に基づきまして、先週末、いわば事務レベルでもってそのようなことのフォローアップをさせていただいたというところでございます。
 その中で、今御指摘のいわゆる重油の供給の問題につきましても、大変に真剣なやりとりをいたしました。それで、一部報道にもございますように、ケリーの方からは、アメリカの国内に大変に厳しい意見がある、今のような状況において重油を今後とも供給するということについては極めて厳しい声があるんだということについての紹介がございました。
 また、そのようなことと同時に、ケリーからは、そのような状況も踏まえて、友人であるところの日本及び韓国とこの問題について十分対応したいということでございまして、最終的には、御案内のように、十四日に予定をされておりますKEDOの理事会に向かって共同歩調をとれるよう、さらに調整を続けていくということで合意を見たところでございます。
伊藤(英)委員 防衛庁長官、ちょっと先ほどの話に戻ります。
 要するに、私は、この平壌宣言、あるいは本当は九月十七日の日朝首脳会談の持ち方、あるいはそこに至る経緯、そして、あの宣言として署名をされた部分の中での特に大量破壊兵器に絡むあたりの安全保障の問題、この辺のことについて考えたときに、日米関係という意味で、もちろん私もよく、日本が自立した外交、アメリカとの関係においてもそういうことを私もよく申し上げたりするんですが、しかし、本件について北朝鮮との関係で考えたときには、私は日米関係について非常に注意をしないといけないということを非常に思うんです。
 そういう意味で、この一連の日朝交渉をめぐる話というのは非常に心配されるなということを私は思ったりしますが、恐らく防衛庁長官も多分私と同じようなことを考えるんだと思うんですが、どんなふうに思われますか。
石破国務大臣 これは当時、先生ともお話しさせていただいたのを覚えていますが、何でKEDOというものが始まったのかねというところまで話はさかのぼるんだろうと思っています。
 クリントン政権のときに、いよいよもう一度北朝鮮に対して攻撃をしかけるかという議論がクリントン政権の中で本当に現実味を伴って行われた。しかし、そうした場合に、アメリカのこうむる損害が非常に大きいのでということで、KEDOということになった。そのときに、じゃ日本がどうしてKEDOにあれだけ拠出をするのという議論になって、そのときに、私が覚えておりますのは、だって、その北朝鮮のミサイル、アメリカまで届かないでしょう、これは日本に届くミサイルなんですよ、だからKEDOによってその危険を減殺するために日本がその分を負担するのは当然でしょう、こういうようなお話であったように記憶をいたしております。
 ですから、核開発をとめさせるというものとKEDOをやるということが同時並行で進んでおった、それはクリントン政権においてそうであった。そして、韓国において太陽政策というものが進んでいた。しかし、今、そこの枠組みがどうも微妙に、本当に、同床異夢とは申しませんが、少しずつずれがあるのかもしれない。そのずれを生じさせないように、日米韓三国で、とにかく北の核開発を断念させ、ミサイル実験を断念させるということのために認識を統一する必要があるんだろうというふうに思っています。
 もちろん、米朝枠組み合意をきちんと守りなさいという場合に、北朝鮮にしてみれば、そんなもの、あなたの国に関係ない、私の国とアメリカとの話なのであなたは黙っていなさいということかもしれませんが、さればこそ、日朝平壌宣言の、すべての国際約束という言葉が生きるのだろうと思っています。
 そういう観点で、私どもとしては本当に日米韓三カ国の認識、これを統一させなければ、向こうの方に、アメリカにはこう言い、日本にはこう言い、韓国にはこう言い、そのときに対応が分かれるということが一番懸念されることであって、認識の一致ということにつきましては、私といたしましても全力を尽くしておるところでございます。
伊藤(英)委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
鳩山委員長 次に、渡辺周君。
渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。
 それでは、質問に入らせていただきます。
 このいわゆる有事法制三法案の中で、私どもがこれまでもずっと、本年議論をしてまいりました。その中でいわゆる武力攻撃のおそれという点でございますが、直近の例をちょっと挙げて考えますと、例えば先般、奄美大島沖で海上保安庁と海上銃撃戦を行いまして沈んだ船がございました。この船が長い時間をかけて引き揚げられまして、そして内部がある程度調べ尽くされた。この点について考えますと、不審船がいわゆる武装工作船だということがはっきりしたんですが、武装工作船が武力攻撃のおそれなのかどうなのかということについては、例えば今回の事案を見た限りではどうなんでしょうか。いわゆる武力攻撃事態があった場合、あるいは武力攻撃のおそれがある、そのおそれというのは例えば今回の場合当てはまるんでしょうか。どうお考えですか。
石破国務大臣 それは一概にこの場合はこうというふうに、例えば昨年の東シナ海沖事案について、それは予測なのかおそれなのかということは極めて難しいと思います。つまり、組織的な、計画的な我が国に対します武力の行使、それが武力攻撃だというふうに私どもとしては考えておるわけでございまして、では、あの工作船が我が方の巡視船に対してあのような形で発砲したということが組織的、計画的な我が国に対する武力の行使という評価ができるかどうか、そのことにつきましてはなお今後検討を要するであろうというふうに思っておりまして、このことにつきまして明確なお答えができませんことをお許しいただきたいと存じます。
渡辺(周)委員 今回の場合、いわゆる不審船ではなかったんです。国籍不明の漁船を装った船が我が国の領海内に入ってきた。しかし、この場合は、単なる密漁船なのか、あるいはほかの目的を持ってきたものなのかわからないけれども、ですから不審船だとされてきた。
 ところが、今回は引き揚げてみたら重武装であった。ある意味では本当に、これは実は先週の安全保障委員会でもやりましたけれども、はっきり言って、これはもう人を殺傷するどころか、相手国の、例えば海上保安庁の船なりあるいは海上自衛隊の護衛艦なりに対しても十分に攻撃し得る、十分なダメージを与えるだけの能力を装備したものであったわけです。
 そうしますと、今後、類推すると、例えば不審船と呼ばれたものが実は武装工作船だった場合に、これを我々はどうとらえたらいいのかなと思ったときに、これはひょっとしたら、意図がわからない、組織的かどうかわからないまでも、ただ、ある国からもう来ている、そしてそれがもうある国のある港を出て既にこちらへ向かっているというのは偵察衛星によってある程度もうわかっているわけですね。そうなった場合、例えばこの事案があった場合に、次またあった場合ですよ、これはもちろん仮定国の話をしています、当然どこの国というのは防衛庁長官もお答えづらいでしょうから。その場合に、ある程度意図を持って、ある国から出てきた船が、これが例えば複数であった、それが何らかのオペレーションを持って日本の、我が国の領海内に来た場合に、これは明白な脅威というふうに感じ取れるんじゃないですか、実際、今回は武装していたわけですから。
 これが今後また起きた場合、要は今までの議論の中でテロ・不審船対策という中でいえば、不審船対策というのは、今度は不審船じゃなくて武装船だったわけですよ。その場合にはこれはもう明白な我が国に対するおそれというふうに判断するべきですか、どうでしょうか。今回の事案を受けてどうお考えですか。
石破国務大臣 これは前提を設定するのがいろいろあるだろうと思うんです。つまり、いわゆる周回衛星の情報収集衛星が、そういう船が某々という港にいる、いついつ出たと。これは、周回衛星も回る頻度によりますから、それがどれだけ確度が高いものかわからない。そして、我が方が、どこの国だか知りませんが、そういうところまでP3CならP3Cを公海上まで飛ばす、あるいは限界線まで飛ばすといたしましょう、防空識別圏の限界まで飛ばす。そこで何がわかるかということによるんだろうと思います。
 ただ、これは国連海洋法条約の無害通航との関係をどのように整理するかということもございましょう。我が国の領海法というのは、実はお魚をとるための法律であって、そういう行為を禁じた、つまり国連海洋法条約に定められていることに対応した法律もございません。そうした場合に何が使えるのかということを本当に整理をする必要があるんだろうと思います。
 ただ、繰り返して申し上げますように、組織的、計画的な武力の行使ということであります。それの予測、そのおそれというものをどのように判断するかということは一概に申し上げることはできません。ただ、あわせて、関係法律というものがどのように適合するかということも私どもとしてはただいま精査をいたしておるところでございます。
渡辺(周)委員 前回の安全保障委員会のときもやりました。実際、こちらは海上における取り締まりとしての海上保安庁、しかし相手は強力な殺傷兵器を持っているという非対称の存在になるわけであります。
 きょうの最初の発言の中にもございましたけれども、武力攻撃事態以外の緊急事態についても総点検を行い、必要な検討を進めていくんだということですが、今回のいわゆる不審船が実は武装工作船であった、果たして海上保安庁だけで第一義的に取り締まるということができるのかどうなのか。つまり、今までも防衛庁長官に就任前から繰り返し発言をされておられましたけれども、この問題についてやはりちゃんとしておかないと、今ある脅威というのはそこにあるんだと。かの国が、例えばいろいろこれから安全保障協議を始めたとしても、米朝の枠組み合意を無視してもう既に核開発をやっていたような国でございますから、この問題については双方のいわゆる脅威とならないようなことを言ったって、また次の手、二の矢、三の矢を撃ってくるであろう。そのときに我々の国はどうするかということをまず第一義に私はやはり議論しておかなきゃいけないと思うんです。
 もう一つだけ質問します。
 いわゆる地下鉄サリン事件がございました。地下鉄サリン事件があったときに、正体不明の例えばこういういわゆる化学兵器テロのようなことが起きた場合に、これはやはり先ほどと同じですけれども、不審船あるいはテロ対策という意味ではこれはどういう形で今後日本の国は対応するようにしてあるのでしょうか。
 つまり、今まで現実に起きたことを私は申し上げているわけであって、今までは、仮定のことでお答えできないから一般論でお答えするというふうに先ほど来答弁を繰り返されていますけれども、現実にあったことですから、この場合の二つのことを例えば考えれば、実際あり得たことをひとつ教訓にしてどのように、先ほど来の私が申し上げている、一般論ではなくて、これは現実の問題として、いわゆる生物兵器テロあるいは化学兵器テロそれから正体不明の武装工作船にどう対応していくんでしょうね。これは先ほどの発言を受けてお尋ねをするわけですけれども、防衛庁長官にそのお考えを聞きたいと思います。
石破国務大臣 前段の非対称というお話でございます。これは、例えば武装において非対称ということもございますよね。しかし、意図において非対称ということ、非常に変な言い方をいたしますが、武装が非対称な場合と、武装はどうということはないんだが意図だけはなぜか完璧な日本に対する計画的、組織的な武力攻撃であったというような場合もございますでしょう。いろいろな組み合わせがあるだろうと思うんです。そして、使われるのがあくまで、海上警備行動であれ治安出動であれ、使われる権限は自衛権ではなくて警察権を使っているわけですね。しかし、出るのは護衛艦であり戦車である、治安出動の場合。そうした場合に、相手が受けるイメージはどうなんだということだと思うんです。そこのところの整理が、いま一つ国民の皆様方にわかりやすいように提示がされたというふうには思っておりません。もちろん議論はきちんとしておりますし、理論も精緻なものをつくっておりますが、そこのところの説明の仕方の問題なんだろうと思っています。
 そしてあわせて、では、第一義的には海上保安庁がやる。しかしながら、海上保安庁の船というのは基本的に商船構造ですから、自衛隊の船のように軍艦構造なわけではない。そういう、先生御指摘のような攻撃に対して弱い。だとすれば、では海上保安庁の船もそういうような軍艦構造にするべきなのかみたいな議論をいたしますと、そうすると物すごくお金がかかってくる。私は、そういう場合に国家としてどういうような資源配分を行うかという視点もあるのだろうというふうに考えておりまして、そのあたりが、私どもで今鋭意検討し、国会の御議論にまたお願いをしたいと思うところでございます。
 それから、後段のサリンはどうだという話でございます。これは可能性として、では、治安出動の可能性があるかどうかということだろうと思っています。昨年、自衛隊法の改正をいたしました。では、こういう場合に治安出動が果たして可能かどうか。あくまで警察権の行使として治安出動、つまり、警察力をもってしては対処し得ないという事態に該当するかどうか、そういうことであろうと思っております。
 地下鉄サリン事件というふうによく言われますし、オウム真理教もテロ集団として認定をされておるかと存じておりますが、では、地下鉄サリン事件とは言いますが、地下鉄テロという言い方が本当に行われているかということも、私どもとして、テロとは何かということについて共通の認識を持つこともまた必要ではないかというふうに思っておる次第でございます。
渡辺(周)委員 余り一般論ばかり議論をしていても、結局、仮定の話にはお答えをできないというような答弁が、一般論、一般論ということで議論されますから、私はあえて、これまであった、現実に日本の我が国に存在した脅威を例に挙げて、その場合どうするかということをお尋ねしたわけです。事実、こういう脅威が存在する中において、では我が国はという話をしてきたときに、やはり今目の前にある脅威に対してどう対応するかということの議論をしなきゃいけない。
 ただ、私自身は、前回の有事法制のこの特別委員会でも質問をいたしましたけれども、やはり国のもう一つの法律をつくるというぐらいの確固たる思いがなければできないと思います。つまり、もっと言ってしまえば国民参加型の、国民が総参加して、有事法制というものはそもそも何か、なぜ我が国の憲法の中には、これは国家緊急権の規定はない、一部参議院の緊急集会の部分が非常にいびつな形で存在してとか言われますけれども、それはやはり国会で、私は、有事法制調査会をつくって、あるいは憲法調査会と同時進行で、これは全政党が参加をして、地方の全首長も参加をする形でやはり本当の議論をしていかないと、国民の中に一体何が議論されているかわからないのではないかと思うんですね。
 私自身は、これは、暴君の為政者が存在したときに法の空白があった方がかえって危険であろうと思います。ルールなきことが一番危険でございます。ですから、この有事法制、有事のときの法体系というのはやはり議論をちゃんとして、ちゃんと成立させておかなければいけないと思いますが、ただ、何か知らないところでどんどん進んで、あっという間に決まったということであってはならないと思います。それは私の持論でございます。
 それに関連して一つだけちょっとお尋ねをしたいのは、現実の今の審議状況についてですが、国民保護の分野についてです。実際、十月の八日ですか九日ですか、官邸で地方の全国の知事会があった中でこの素案が示された。いろいろな意見があったようですが、実際この国民保護という分野について、今地方の首長さんたちはどういう御意見を発していらっしゃるのか。
 一つ例を挙げますと、静岡県には、生活・文化部国際室には専門監がいまして、有事法制を研究するセクションがございます。まだ論点を整理する段階ではないけれども、現在は有事法制の情報収集が主な業務だ。実際これをやるとなれば、地方の役割はどうするのか、地方の権限はどこまで存在するのか、あるいはそれに伴う出資はだれが見るのかといういろいろな、これは地方もこれから出てくるわけですね。
 例えば、国民を避難させるといっても、では一義的にはどこのセクションが持つのか。小さな市町村単位なのか、それとも都道府県単位なのか。市町村単位なら、ある程度住民の生活状況を隅々まで理解しているけれども、都道府県になると、とてもじゃないけれども末端まで行き届かない部分がある。そうすると、地方自治体のどの部分が本当にやるのか。そしてそれについてはどのセクションがやって、今後はそのための、例えば県民保護局なり、緊急事態支援室なりをつくらなきゃいけない。そうした場合の、例えば人員の補充なり予算措置なりはどうするのか。その点については、今どのような検討をされて、また地方からどのような問題点が指摘されているのでしょうか。
福田国務大臣 国民の保護の法制に関しましては、これは国民の安全等に関して極めて重要な内容を含むわけでございまして、これはまさに、多少の時間をかけて、そして国民の御意見等も徴し、地方公共団体その他の機関の御意見を十分に聞いた上で、その内容を詰めていきたい、こういうように考えておるわけでございます。
 その骨格については内閣官房で作業いたしまして、そしてこれは先ほど来御答弁申し上げておりますけれども、委員会の御要請があればこれをお示ししたいというように考えておりますけれども、そういうような段階で、今後具体的に内閣官房を中心にしてその充実を図っていくべく努力をしてまいろう、こう考えておるところでございます。
渡辺(周)委員 今後具体的にということでございますが、いつごろまでをめどに、二年後をめどにされるのか、どうなんでしょうか。その点について、ある程度時期的なものは念頭に置いて考えていらっしゃるのですか。
福田国務大臣 ただいま御審議をお願いいたしておりますこの対処法の成立、施行後二年以内に国民の保護の法制整備をいたしたい、このように考えております。
渡辺(周)委員 またこの議論はしますけれども、やはり国民保護の全容が明らかにならないと、これは正直言って、国民を国はどう守るのかあるいは自治体はどう守るのかというところが全く見えないまま事態対処の法案だけが進むということは、やはり国民の中に、権利と義務と言われますけれども、国民の権利と義務も発生しないと思うのですよ。
 この点については、やはり私は同時に出すべきじゃないかと思うのですが、どうなんでしょうか、国民保護については。
石破国務大臣 当庁とも関連あることでございますので、答弁をお許しいただければと存じますが、そういうお考えはあるんだろうと思います。つまり、国民保護法制というものがきちんとできて、それと同時に出すべきだというお話はそれなりに議論として存在するんだと思います。
 ただ、先生御存じのように、これは本当に複雑多岐にわたることであって、そのことを議論していると一体どれぐらいかかるのかということだと思うのです。ですから、与党の中で、また民主党とも御相談をされることだと思いますが、整備推進本部をつくり、その中にいろいろな各界の代表の方に入っていただいて、議論にドライブをかけていくということなんだろうと思います。
 これができなければ、では武力事態対処法も出せないのか、そしてまた一分類、二分類というものを出せないのかといえば、やはりそれはどちらかが先行するということがあっていいのだろうと私は思っています。結論は一緒なんです。全部そろわなきゃ意味がないということで結論は一緒なんです。
 ただ、そこにおいて、例えば避難なら避難というのがある、警報なら警報というのがある、補償なら補償というものがある。そういう項目については、私は、賛成、反対、方法論は別にして、御異論のないところだろうと思うのです。こういうようなことについて議論をしましょうねというような整備推進本部ができて、そこで本当に議論がされる、結果としてすべてが同じ時期にそろっておるということが一番望ましいんだろうと思います。
 要は、目指すべきものは一緒ですが、それが、輪郭だけではだめだ、項目だけではだめだ、全体ができなければ武力攻撃事態対処法もやるべきではないという御議論には、私は賛成をいたしかねるところでございます。
渡辺(周)委員 私自身は、やはり国民の権利と義務ということを考えれば、当然もし万々が一有事があった場合に我が国の政府が何をするのか、地方公共団体は何をするのか、あるいは指定公共団体は何をするのか。しかし、やはりまず言われなきゃいけないのは、武力攻撃に対する対応のみならず、まずはやはり我が国の国民の生命と財産がどう守られるかということが前へ出てこないと、そのときにはすべてにおいて協力せよということだけでは、冗談じゃない、おれたちは自分たちで勝手に逃げるよということになるわけでございます。
 その点については、国民保護の法制というのは絶対に進めていただいて、これは私自身の考えですが、やはり有事法制の根幹をなすべきものだという形で、これは私は国民の大多数のコンセンサスを得られるような形で、透明性を持って進めていただきたいと思うわけです。ちょっと次の質問がありますから、この議論はまた次回やりますけれども。
 せっかくきょうは外務省をお呼びしています。また新しい事実が発覚をいたしましたけれども、外務省にお尋ねをいたします。北朝鮮問題ですが、いわゆる脱北者の問題でございます。
 お尋ねしたいのは、北朝鮮難民救援基金、これはいかなる団体なのかということをまずお尋ねをしたいと思います。そして、一昨日ですか、新聞等に報道されて、各紙が追いかけましたけれども、いわゆる北朝鮮からの脱北者、この方々を日本の政府が極秘に入国させていた。この点について、まず一つ、北朝鮮難民救援基金という団体はいかなる団体なのか、そして、新聞報道されたことは事実なのかどうなのか。ちゃんとお答えください。
齋木政府参考人 お尋ねの第一点でございますけれども、この団体は、北朝鮮の難民に対して食糧、医薬品、それから衣服、衣料その他もろもろの支援物質を配給しておるNGOでございます。
 第二点目でございますけれども、確かに、お尋ねの件、週末の新聞等で報道がございましたけれども、日本への出入国に関する個別のケースにつきましては、今の御質問の件でございますけれども、御本人あるいは関係者の方々の身の安全に非常に大きく関係することになると思いますし、また、それぞれの方々のプライバシーにやはり配慮しなければいかぬ、そういう観点もございますので、事実関係の有無を含めまして、この場でコメントをいたしますことは差し控えさせていただきたいと存じます。
渡辺(周)委員 今、本人、関係者、家族などの安全に大きく影響を与えるというふうにおっしゃいました。つまり、事実だから答えられないということですね。
齋木政府参考人 私はそういうふうに申し上げたわけじゃございませんで、そういう出入国の個別の案件につきましては、大変機微な地域におきます案件ということであれば、なおさら御本人あるいは関係者の身の安全ということをよく考えて対応しなきゃいけないということでございますので、個別の案件につきましては、ここでコメントをすることは差し控えたい、こういうことでございます。
渡辺(周)委員 もう既にこれだけ今までも報道されております。今回、ある意味では一般紙がはっきりと書いたわけですね。これはもう事実だというふうに我々も当然認識しているわけなんです。
 この間、安全保障委員会で申し上げたあの青山健煕さんの例を挙げるまでもなく、既にもう、私は日本政府によって極秘に入国してきているんだという方が何度も発言されているわけですね。
 ですから、この点については一般論としてお尋ねするしかないのかなとは思いますけれども、ちょっと質問を変えますと、じゃ、この北朝鮮難民救援基金と外務省はどういう関係にありますか。
齋木政府参考人 ただいま御指摘がありました基金と私ども外務省との関係でございますけれども、私どもは、基金の方々との間で常時、いわゆる脱北者問題についての意見交換、情報交換をやっておる、そういう関係でございます。
渡辺(周)委員 意見交換をしているということですね。今、そう御指摘がありました。
 金銭的な支援はしていらっしゃいますか。
齋木政府参考人 いたしておりません。
渡辺(周)委員 一部には、外務省から一千数百万円の基金に対する寄附があるんじゃないかというような指摘もありまして、これは調べますけれども、事実として、ないというふうに認めますね。意見交換はしたことがあるけれども、資金の、要は寄附等はしたことがないということですか。
齋木政府参考人 そのとおりでございます。
渡辺(周)委員 では、ないということで、これはもしまた新しい事実が出れば、この問題についてはまたやりますけれども。
 じゃ、一般論として言います。
 脱北者が北朝鮮から逃げ出してきて、いわゆる脱北者といいますが、この方々は中国国境にいると言われていますが、その方々に対する中国当局の取り締まりというのは非常に厳しいものがございます。そういう事実は御存じかどうか。
 そしてまた、その方々は、北朝鮮に戻されますと国家反逆罪。これはあるNGOの方からいただいた資料なんですけれども、まず中国では、住民に対して報奨金を出して、いわゆる不法入国者に対する摘発をやっているということが一点。それから、北朝鮮に送還されるとどんな迫害を受けるかといいますと、北朝鮮刑法四十七条で、反国家犯罪で七年以上の労働強化刑に処する、情状が特に重い場合は死刑及びすべての財産没収刑に処する、こういうことが北朝鮮の国内では行われています。とにかく捕まって戻されたら最後、国家反逆罪で最低でも七年の強制労働、強制収容所に入れられるわけでございますけれども、こういうことがあるとすれば、というよりも、あることを認識していらっしゃるかどうか。
 そして、中国では北朝鮮からそのような入国者はいないということになっていますけれども、日本政府はどういう見解をお持ちなのか。そして、実際、強制送還されればどういう目に遭うか、今申し上げたような事実があるのかどうか。その点はどう認識していらっしゃいますか。
齋木政府参考人 一般論として、北朝鮮からのいわゆる脱出者、脱北者の問題でございますけれども、私どもとしては、実態、これは必ずしも一〇〇%把握しておるわけじゃございませんけれども、こういった方々が北朝鮮を脱出するということは報道にもあるとおりでございますし、また、そういった脱出をしなければいかぬ背景というのは、基本的には、北朝鮮の中における食糧の問題、食糧難の話とか経済難等々、そういった内部事情があるものだというふうに思っております。
 いわゆる脱北者問題につきましては、中国政府と私どもとの間では随時、意見交換、これはやっております。ただ、具体的にどの案件についてどういうやりとりをしているかということになりますと、私が先ほど申し上げたように、それぞれの方々、あるいは関係者、北朝鮮に残っておられる方もおるわけですから、やはりそういった身の安全あるいはプライバシーといったことにかかわってまいりますので、この場でその一つ一つも含めて具体的なことを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
渡辺(周)委員 それではもう一回お尋ねしますが、もしこの報道されたようなことが一般論として事実だった場合に、北朝鮮から中国に川を渡って逃げてきた、そして逃亡するチャンスを息を潜めて待っている、その方々が何らかの手によって第三国へ逃げる手だてを得られた場合に、この方々を日本に入国させるということは、例えば日本国籍を有する方の場合においても、いわゆる他国への、これは中国側ですよ、中国側から見れば、自国への不法入国者を、ある別の国が、要は極秘に出国させ、入国させたということになれば、これは超法規的措置だと思うのですが、一般論ですよ、そういうことで理解してよろしいでしょうか。
 それから、官房長官に最後、お尋ねしますけれども、きょうの記者会見で福田長官は、やはりこの問題で、極秘帰国が判明したということで質問がありましたけれども、本人、関係者、家族などの安全に大きく影響を与える云々と、先ほど齋木参事官が答弁されたとおりのことをおっしゃっているわけですけれども、これは内閣府として、実際こういう問題が明るみに出た、恐らく後追い報道も出るでしょう、新事実もこれからどんどん関係者が発言するでしょう。既に、ある委員会では、こうして帰国した方を参考人質疑として呼ぶということも理事会で決定したというふうに聞いていますので、これは私はもう隠し通せる問題じゃないと思うのですけれども、最後に、官房長官としての今回の問題についてのお考え、それから、今後日本政府としてどう対応するのか、この点についてのお考えを伺いたいと思います。
 まず外務省から。
齋木政府参考人 御質問の前段のところで、いわゆる脱北者の中で日本人、日本国籍を持つ者がおった場合どういうことになるのかというお尋ねだったと思います。
 そもそも、外国、海外で日本人の生命、身体、財産、こういったものを保護する、その安全のためにいろいろとやらなきゃいかぬということは日本政府としての当然の責務でありまして、これは外務省の仕事の一つでもあるわけでございますけれども、いわゆる北からの脱出者、脱北者であるか否かにかかわらず、日本国籍を持っている人が日本の在外公館、大使館、総領事館に保護を求めてこられた場合には、その方々をしかるべく保護し、またその安全を図っていくということは政府としての当然の責務であろうというふうに考えております。
 ただ、お尋ねの中で個別の話がございましたけれども、やはり個別の事案につきまして、その内容あるいは件数も含めまして、御本人それから関係者の身の安全あるいはプライバシーということに大きくかかわってくると思いますので、まことに申しわけありませんけれども、この場でコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。
福田国務大臣 ただいまの問題は、今外務省参事官がお答えをしたとおりでございます。やはり、今の情勢において、今の環境において、身分を明かすとかいうようなことは、本人のプライバシーの問題もさることながら、身の安全、家族の安全とか、それからそれに関係する方々の安全の問題もあるというようないろいろな事情があろうかと思いますので、その辺はなかなか事実関係が明らかにできないという事情があるということは、これは御理解をいただきたいと思います。
 しかしながら、将来どうなのかということになりますれば、そう簡単に申し上げられないものとは思いますけれども、例えば環境が変わってくる、事情が変わってくる、例えばの話ですよ、北朝鮮と日本との関係が大幅に改善された、もしくはその先、正常化されたとかいったようなことがあれば、それは身の安全とかそういうものはお互いに保障される、できるような状況になる。そういうことになれば、その段階においていろいろとまた新しい事実が判明し、そして、それに基づいて両国間でその問題を一つ一つ解決していくという努力を今後していかなければいけない。そういう可能性は十分に将来あるわけでございます。
渡辺(周)委員 それでは質問を終わりますけれども、一言申し上げると、今回なぜこういうことが出てきたかというのは、私は、中国の公安当局に拘束された方に対する、やはり日本政府から何らかの関係があったんではないかと。その点についてはまた改めて事実確認をしますけれども、きょうはこれで終わります。
鳩山委員長 次に、筒井信隆君。
筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。
 きょうは、基本的な点、有事法制についてお聞きをしたいと思います。
 有事法のすべての出発点は、武力攻撃事態の認定でございます。武力攻撃事態の認定がなされてから、政府の対応、自衛隊の対応が始まる。さらには地方自治体の対応、国民の対応、すべてその認定から始まるわけでございまして、どういう場合を武力攻撃事態とするのか、これは極めて重要な問題でございまして、その点で今政府から出されているこの法案、極めてあいまいかつ非常な危険性を持っている。
 特に、この二点についてそう言えるというふうに考えておりまして、一点目は、前国会でもいろいろ議論されましたが、この武力攻撃事態の認定の際に、武力攻撃が発生した事態、おそれのある事態、予測される事態、予測される事態まで含めている、これが極めてあいまいにさせている大きな理由だと思っているんです。
 防衛庁長官にお聞きしたいんですが、予測される事態、これは削除すべきじゃないですか。少なくとも、今の自衛隊法に基づいた、発生した事態とおそれのある事態、それだけに限定しなければ余りにもあいまい過ぎる、こう言えませんか。
石破国務大臣 そういう御議論はあり得るだろうと思っております。
 ただ、私どもは、予測される事態、おそれのある事態、そして武力攻撃事態、それを全部ひっくるめて武力攻撃事態と言うことは、やはり実態と乖離があるのかもしれないという御議論、そういうものは傾聴に値をする話だろうとは思っております。
 この後、与野党でいろいろな修正の御議論がなされるものと承知をしておりますが、ただ、予測される事態まで外してしまうということが本当に適時適切な対応とマッチするかといえば、私は違うような気がします。ただ、それも、武力攻撃事態という概念でくくってしまうことに問題があるという御議論が先国会でなされたことはよく承知をいたしておりますし、私どもとしてもよく検討してまいらねばならぬ、かように考えております。
筒井委員 私がお聞きしているのは、武力攻撃事態の認定に当たってをお聞きしているので、予測するとかしないとか、これが間違いだと言っているんじゃないんです。武力攻撃事態の認定の中から予測される事態を外すべきではないか、こういう質問なんです。その点、もう一度厳密に答えてください。
石破国務大臣 すれ違いの答弁で恐縮です。あるいは先生のおっしゃる趣旨を私は取り違えているのかもしれませんが、それを外すべきだとは思っておりません。
筒井委員 そうしますと、福田長官もそうですか。武力攻撃事態の中から予測される事態を外すべきではない、こうお考えですか。
福田国務大臣 私もそうなんですけれども、現実に武力攻撃が発生する前の段階において、その時点における国際情勢とか相手国の動向、そしてまた我が国への武力攻撃の意図が推測される、こういうことから、我が国に対する武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態において、国全体が一体となって、自衛隊の活動による対処措置、国民の被害を防止するための警報の発令等というようなさまざまな対処措置が迅速に実施されることが重要である、こういう観点から、この予測の事態を必要と考えております。
筒井委員 私は、予測される事態を含めたそれだけで有事法には反対すべきだというふうに考えておりますので、その点を確認させていただきました。
 ただ、この問題は前国会でいろいろ議論されました。きょうは主にもう一つの点、この武力攻撃事態の認定において、「我が国に対する外部からの武力攻撃」と規定されておりまして、我が国領域における武力攻撃に限定しておりません。安保条約では、我が国の施政下における武力攻撃に限定しているわけでございます。安保条約よりずっと広がっている。だから、他国領域において我が国の艦船等に対する攻撃まで含めてしまうことになる。これも極めて重要な大きな問題で、これだけでも私は、このままであれば反対すべきだというふうに思っているわけでございまして、少なくとも、安保条約と同じように、我が国における武力攻撃に限定をして武力攻撃事態の認定をすべきではないですか。
石破国務大臣 私は、そのようには思いません。
 これは、何が一番日本の平和と安全を守るのに寄与するかという考え方の問題なのだろうと思っています。恐らく、先生の御指摘は、我が国領域内で発生したものに限定されなければ、これは集団的自衛権の話まで行ってしまうのではないかという御懸念があるのかもしれませんが、例えば公海上の我が国の船舶、それが公船なのかそうでないのか、軍艦なのかそうでないかということについていろいろ対応は分かれると思いますが、そういうものに対する攻撃は我が国に対する武力攻撃ではないとして排除をする、そういうような必然性というものは私にはよく理解をいたしかねるところでございます。
 なお、日米安全保障条約には確かに、日本の施政下の領域における、このような規定ぶりがございます。逆に申し上げれば、この日米安全保障条約のこのような規定ぶりは、いろいろな安全保障条約の中でかなりユニークもしくは類例を見ないものというふうに承知をいたしておるわけでございまして、例えばNATO条約、ANZUS条約、アメリカ・フィリピンの安全保障条約、あるいは米韓、そのようなものにおいて、公海上における艦船に対する攻撃、そういうものも条約の対象とするというのが一般的のはずであります。
 日本の場合、なぜ領域というふうに限ったかといえば、それは、先生御案内のとおり、北方領土の問題、沖縄の問題、そういうことがあったかとは存じますが、なぜその分が除かれているのか。逆に言えば、公海上で我が国の船が攻撃を受けても、それは日米安全保障条約の対象ではないということ、このことをどう考えるかということと関連をすることかと思っております。
筒井委員 公海上における我が国艦船に対する攻撃が我が国に対する攻撃ではないなんて私は言っていないんです。それも今聞きますが、それと今の、公海上にしても、他国領域内における我が国艦船に対する攻撃、これは日米安保条約上の対象外になることは今申し上げられましたが、それをもう一度確認しますが、日米安保条約の対象外になりますね。共同作戦の対象外ですね。
石破国務大臣 基本的にこの条約はそういうものだと。それは、明文でそういうものが対象と含まれておりません。これがほかの条約と異なる点であろうというふうに考えております。
筒井委員 そうすると、いろいろな矛盾が出てくるんですよ。具体的に聞きますが、例えば今のテロ特措法でもいいですが、他国領域内で行動している自衛隊の艦船、これに対して攻撃を受けた場合にどう対応するのか。
 前国会で中谷防衛庁長官は、それに対してこういうふうに言っています。武力攻撃される危険が生まれたら中断して逃げなければならない、我が国としては集団的自衛権は行使し得ないということです、その地域を離脱するということですと。
 他国領域に私は今限定して聞きます、公海上だとまたいろいろなあれがありますから。他国領域内で行動をしている自衛隊の艦船に対して武力攻撃がなされた場合に、あるいはなされようとしている場合に、今の中谷防衛庁長官の方針でいくんですか、それともそうではないんですか。
石破国務大臣 その前後の問いがどのようなものであったか知らないでお話をいたしますと、あるいは正確を欠くところがあるかもしれませんが、基本的には、そういうような地域では行動をしない、活動をしないということなのだろうと思います。そういうような状況になれば、それは任務を中断するということは、当時の中谷長官のお答えのとおりかと存じます。
筒井委員 それに対して福田官房長官は違う答えをしておりまして、そういう場合にも武力攻撃事態と認定されて反撃する場合がある、こういうふうに福田官房長官は答えておりますが、どうですか。
福田国務大臣 これは、どういうやりとりの中でそういう発言が出たのかわかりませんけれども、それはそういう場合もあり得る、それは状況いかんということですね。例えば、武力攻撃があった、それが連続性、計画性といったようなことで明らかに我が国に対する攻撃といったように認定されるようなときには、反撃することは当然あり得るだろう。
 それからまた、もう一つ、自衛権の発動ということもあるわけであります。自衛権の発動三条件にかなってなければいけないということはもちろんでございます。
筒井委員 外国にあったとしても、我が自衛隊の艦船に対する攻撃、これに対する反撃は私も個別的自衛権の発動だと思うんですよ。それは別に私はそうではないと言っているんじゃないんです。ただ、防衛庁長官は、前防衛庁長官を含めてですが、そういう場合にはその地域を離脱する、逃げると言っている。しかし、官房長官はそれが武力攻撃事態と認定される場合もあり得る、だから反撃する場合もあり得ると言っているわけですよ。ニュアンスの違いじゃない、もう言っていること自体が全然違いますよ。それはどういうふうに統一されるんですか。
石破国務大臣 登場人物が多岐にわたりますので、よく整理をしなきゃいかぬのだろうと思いますが、前中谷長官のおっしゃられたことと福田官房長官のおっしゃったことは全く矛盾をするものではございません。
 それぞれいろいろな対応があるわけでございまして、自衛権発動の三要件に該当するということになり、当然のことながら防衛出動が下令をされなければいけない、下令をされたとしても、なおその三要件を満たさなければ自衛権の行使としての武力の行使はできないということであって、防衛出動を下令する場合にはそれなりの要件があるということでございます。
 そして、テロ特措法に基づいて行動をしておりますときは、当然のことでありますが、防衛出動の状況を想定しておらないわけでございまして、そういう状況で攻撃を受けたとすれば、それはそれなりに自衛隊法の中で、例えば武器等防護等々の規定を使うことはあるにいたしましても、それが反撃、自衛権の行使としての武力行使にならないというのは当然のことであります。その二つの場面は別に相矛盾するものでもございませんし、その場合に適用される法律というのがおのずから異なるのは、先生御案内のとおりでございます。
筒井委員 武力攻撃された場合に反撃するのは、私は個別的自衛権の行使だと思うんですよ、それは反撃するんですから。その反撃する場合に、先ほども官房長官も言われましたが、アメリカ軍の後方支援としてやっている、そのときにアメリカ軍との共同行動はできないんでしょう。それはどうですか。
石破国務大臣 共同行動ができないということは、それは集団的自衛権の行使に当たるような共同行動という御趣旨でおっしゃっているのであれば、それはそういうことかと存じます。
筒井委員 だから、先ほど確認したように、安保条約では、共同行動ができるのは、日本国内、日本の施政下における武力攻撃に限ると、これは確認したでしょう。
 今私が聞いているのは、他国領域内において武力攻撃を受けた場合に反撃すると言われました、反撃する場合もあり得ると。反撃する場合でも、その場合に、アメリカ軍との共同対処はできないんでしょう。それは日米安保条約の範囲を超えちゃうんでしょう。
石破国務大臣 恐縮でございます。それがどういう場面なのか、つまり、同意を得た他国の領海といたしますか、領海でなければ、公海ですとその状況が混乱をいたしますから。同意を得た他国の領海で日本の船が攻撃を受けたと。しかし、それに対して武器等防護等々で反撃をすることは当然に可能であるということ、そしてまた、それは先生、個別的自衛権の行使というふうにおっしゃいましたが、自衛権行使としての武力行使をする場合には、私どもは当然、防衛出動によらねばならないわけで、そのときは三要件を満たさなければできないわけであります。
 そうしますと、共同対処とおっしゃるのが、どのような前提条件を設定されて、どういう場合というふうに、恐縮でございますが、お示しをいただければ幸いでございます。
筒井委員 私は、どういう場合とか何かじゃない、すべての場合に他国領域においてはアメリカ軍との共同対処ができないんでしょうと聞いているんです。それとも、安保条約の範囲を広げて、そこではできるというんですか。
石破国務大臣 それは、できないというふうに断言を私はしておりません。それは条約をお読みいただければよくおわかりになりますことかと存じますが、それは、応援義務が発生をするかどうかという点でございます。つまり、応援義務が発生する要件としては書いていないということであって、義務は発生しませんが、そこで共同の行為をとること、それは可能でございます。それは、領海内、領海外、施政下、施政外、そのことで変わるものだとは認識をいたしておりません。
筒井委員 そうしますと、安保条約でこういうふうに規定している意味を全く無視することになりますね。安保条約第五条で、「日本国の施政の下にある領域における」武力攻撃に対し、「共通の危険に対処するように行動する」と、わざわざそこで施政下における行動に限定をしている。
 今の話だと、じゃ、そんな限定をする必要ないじゃないですか、安保条約。あれだけ大騒ぎして、日本国民は物すごい、国論を二分してこういう議論をしたわけですよ。今の話だと、別に、安保条約でそう限定しているけれども、実際は共同対処行動は限定されないでできる、そういうような答弁じゃないですか。
石破国務大臣 繰り返しで恐縮ですが、米軍はその場合に日本を応援する義務を負わない、こう書いてあるんですよ。条約のときの議論もそういうことであったと思います。義務は負わないんだ、それが日本にとってどうなんだという見方も私はあるだろうと思っています。公海上で日本の艦船が、あるいは民間船舶でもいいんです、日本の民間船舶が攻撃を受けた場合に、米国は当然には応援をしなくていい、応援発生事由を負わないということは我が国の平和と安全にとってどうなのか、そういう議論も私はあるのだろうと思っています。
 共同ではできないなどということを申したわけではなくて、米軍が応援をする義務を負わないという規定がその意味だろうと私は思います。
筒井委員 今度の武力攻撃事態法の第三条の五項に、「武力攻撃事態への対処においては、日米安保条約に基づいてアメリカ合衆国と緊密に協力」すると。この「日米安保条約に基づいて」というのは、今、安保条約五条を含めてでしょう。これに基づいて協力するんでしょう。では、これに基づいてだったら施政下に限定しているじゃないですか。今度の政府の提案の中にもそう限定されているじゃないですか。
秋山政府特別補佐人 ちょっと議論を整理させていただきますが、我が国が武力の行使をすることが許されますのは、先ほどからの両大臣の答弁にありましたように、いわゆる武力行使、自衛権発動の三要件、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、それからほかにこれを排除する手段がないこと、必要最小限度の実力の行使にとどまるべきことということでございます。
 それから、日米安保条約は、我が国の施政のもとにある領域における武力攻撃について、アメリカは義務として、我が国を防衛するために出動する義務があるわけでございます。
 ただ、いざ、我が国の武力行使、自衛権発動の三要件が満たされまして我が国としての自衛権の発動が開始されました後におきましては、特段領域の限定なく、それに対処するために日米は共同して日本の領海、領空に限らないで行動ができるということ、これは累次、政府側としても答弁しているところでございます。
筒井委員 答弁がどうしているか聞いているんじゃないんですよ。共同行動は、はっきりと日米安保条約で限定されている。そして、その日米安保条約に基づいて、今度の有事法でもそれに基づいて協力する。限定しているんですよ。「日米安保条約に基づいて」というのは、第五条に基づいてというのと、言いかえればそうでしょう。さっきからの答弁は全然違うじゃないですか。
秋山政府特別補佐人 日米安保条約で米軍が義務として我が国の防衛のために出動するというためには、我が国の施政のもとにある領域において武力攻撃が発生したということが必要なわけでございますが、その状況になりました場合におきましては、日米共同対処の地理的な制約は特段我が国の領域の中に限られるものではないということが一つと、それから、義務としての米軍の出動は、我が国の施政下にある領域に武力攻撃が発生した場合に限られるわけでありますが、義務ではない、我が国からの要請に基づいて、その状況が発生していない場合にありましても、アメリカが出動することはあり得るわけでございます。
筒井委員 安保条約も先ほど読み上げましたし、今の提案されている有事法、事態対処特別法、これも読み上げたんです。三条の五項というのは、今の提案されている法案の中身ですよ。日米安保条約に基づいて共同対処する。日米安保条約に書いてある共同対処は、日本の施政下にある領域に武力攻撃された場合しか書いていないでしょう。だから、今の条文自体だって、日本の施政下にある武力攻撃の場合に限定しているじゃないですか、こっちの法律も、この今の法律も。そんなあいまいなんですか、この条文は。
秋山政府特別補佐人 我が国領域外で発生した武力攻撃あるいは外における武力攻撃に対する対処、これは、我が国に対する領域内の武力攻撃が発生した以上は日米の共同行動についての領域的な制約がないということが一つと、それから、条件をどのように設定するかでございますが、我が国の領域外で発生した武力攻撃が我が国の自衛力発動の三要件に該当するということで我が国自衛隊が出動しました場合、その後につきましては、その状況では、米軍は、日米安保条約上の義務として出動することは義務として負っておりませんけれども、要請に応じて出動することはあり得るということでございます。
筒井委員 だから、先ほどから私が確認しているのは、日米安保条約では、日本の施政下にある武力攻撃の際に限定して共同対処する、これは防衛庁長官も認められて、世界的にも珍しいというふうなことを言われた。そして、この有事法では、その場合、日米安保条約、先進国では珍しいその安保条約に基づいて共同対処するとこの法制では書いてあるでしょうが。そうしたら、施政下以外の他国領域における共同対処はできないでしょう、この法律に基づいても、安保条約に基づいても。
石破国務大臣 繰り返して恐縮ですが、義務を負わないと言っているだけのお話でございまして、そこで共同対処をしたからといって、日米安全保障条約を逸脱したことになると私は全く思っておりません。
 ただ、例えば他国の領域において、日本の船舶、それは民間船舶かもしれません、そういうものが攻撃を受けたときに、本当に日本だけで対処ができるだろうか、アメリカが全く応援する義務を負わないということはどうなんだろうか、そういうお話もあるのだろうと思っております。
 委員御指摘のように、それを応援事由として、義務としてとらえなければ、そういう御議論もあろうかと思いますが、何が本当に日本の平和と安全にとって有益なのかという観点に立ちました場合も、私は政府の立場に問題はなかろうというふうに考えております。
筒井委員 アメリカ軍の後方支援で行っているときにこっちが攻撃された、これに対してアメリカの応援がなくてこっちだけが独自にやる、これは前回の国会のときに福田長官がそう答えられたんですよ。今防衛庁長官が言われたように、それはおかしいんですよ。アメリカのところに支援で行っているのに、攻撃された、それを共同対処できないというふうに答えられた。それはおかしいんですよ。共同対処せざるを得ないんでしょう。
 だけれども、それはどういう根拠に基づくんだ。この法律の条文だって、だから規定を変えなければいかぬだろう、修正しなきゃいかぬですよ。修正するということを認めるならいいんです、一つは。さっきから、この条文でいいなんて言っているから、私は、矛盾しているじゃないかと聞いているんですよ。こういうのは、条文というのは厳密でなきゃいかぬのですよ。それを、こういうふうな形でもって厳密ではないからだめなんだ。だから、まずその点を検討してほしい。その点の答えも欲しい。
 それから、先ほどから、義務と義務でないものがあると。では、アメリカ軍の義務に基づく共同対処は安保条約に基づく、義務でないものはどういう法的根拠に基づいて共同対処するんですか。
石破国務大臣 それは、米軍がどのような根拠に基づいて行動するかということの御質問ですか。(筒井委員「いや、米軍も日本も」と呼ぶ)
 米軍も日本も。ですから、共同対処の場合には、日本の場合には、それは個別的自衛権を使う場合には、先ほど申し上げましたように、三要件を満たした場合に個別的自衛権の発動としての防衛出動ですということでありましょう。
 そして、米軍の場合には我が国の要請を受けて行動するということであって、それでは共同対処の法的根拠は、では、何々の場合には共同対処することができる、そういうような条文がなければ共同対処ができないということだとは私は理解をいたしておりません。
筒井委員 そうしますと、義務に基づく共同対処は安保条約に基づく、これが法的根拠だと。義務でないものに関してはそういう法的根拠はないということですね。
鳩山委員長 質問時間が過ぎておりますから、今のは最後の質問ですね。
筒井委員 では、今の点だけで答えてください。それで質問を終わります。
石破国務大臣 失礼いたしました。
 日米安全保障条約四条というのに随時協議という項目がございます。つまり、我が国はアメリカと我が国との安全の問題について協議をすることになっておって、それに基づいて協議をして、その随時協議に基づいて私どもの方からお願いするという形はあります。それは、つまりアメリカの判断に係るものですが、私どもは、そういう来援をしてもらえるという期待、これは期待になるわけですが、しておるわけです。
 ただ、義務的なものではないことは、私ども、かねてから申し上げているとおりで、問題は、この四条の随時協議の中で協議をする、そしてそれに基づいてアメリカが判断を独自に行い、行動をするということが安保条約上どれかと言われれば、そういうことであると思っております。
筒井委員 これで終わりますが、今の答えはいいかげんで、大体、アメリカの自由意思だけじゃない、こっちはその共同対処を、共同行動を受け入れるんだから、こっちの問題でもあるんですよ。今の答弁はまたさらに追及しますので。
 終わります。
鳩山委員長 今最後に委員長の許可を得ないで発言をされましたけれども、今後委員長の許可を得て発言をされるようにお気をつけください。
 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。きょうも質疑の時間をいただきまして、ありがとうございました。
 官房長官はきょう記者会見があられるということでありますので、冒頭集中して官房長官と議論させていただきたいというふうに思います。
 まず、四月十日の党首討論、そして十一月六日の党首討論におきまして自由党の小沢一郎党首が総理にお尋ねいたしました件につきまして、事実上のゼロ回答でありましたので、再度この委員会で官房長官に、政府として、また政治家として、基本的な認識、見識、理念につきましてお伺いをさせていただきたいというふうに思っております。
 パレスチナ、そしてチェチェンの問題であります。
 まず、イスラエルとパレスチナの紛争についてでありますけれども、イスラエルとパレスチナでは今なお日本では考えられないような血なまぐさい抗争、紛争が続いております。若いパレスチナの女性も含めまして、爆弾を抱えて、自分の命を犠牲にしてイスラエルを攻撃したりもしております。
 このような行動に対しまして、イスラエルはテロ行為だと言い、またアメリカもテロ行為だと言っております。日本のマスコミでも多くの方々が自爆テロという言葉を使って報道しておりますけれども、日本の戦時中でいうところの特攻隊でありますが、このようなパレスチナ人の行動は、やはりテロ行為だというふうに認識なさっておいでなのか、あるいは、パレスチナ人の自治を要求する民族の独立運動、抵抗運動であるというふうにお考えになるのか、そのことをお聞きいたしたいと思います。それによって、要するに、日本のかじ取り、態度が決まってくるであろうと思うからであります。
 この事態のよしあしを私は伺いたいわけではありません。要は、暴力、殺人がいけないのは言うまでもないことでありますけれども、ただ、現実に国際社会の中で起きているこのような行為を、日本国の政府を代表する政治家としてどのように認識しておられるかということにつきまして、はっきりとしたお答えをいただきたいと思うからであります。
福田国務大臣 パレスチナも、それから先般のモスクワの劇場占拠のチェチェンの問題もそうなんでありますけれども、これは結果的に一般市民を巻き込んでしまうような惨劇に至ってしまうということであります。パレスチナの自爆テロ、チェチェンのときも自爆テロ的な雰囲気であったようでありますけれども、そういうような事態になってしまうということについて、まことに残念というか、あってはならぬことが起こる。しかしながら、別にパレスチナ、チェチェン問題以外にも、例えばスリランカなどにおいてもそういう自爆テロというものが頻発をしたわけでございます。
 そういうような対立が起こるというその根源について申し上げれば、これは一つ一つ事情は違うわけでございまして、そういうために、そういう問題をなくすためのいろいろな国際社会の働きかけもあるわけでございますけれども、例えば、スリランカの場合には今和平のプロセスに入りつつあります。そして、日本の明石政府代表がその和平プロセスに参画する、こういうようなことになって、これは非常によい方向に向かっておるわけでありますけれども、そのような方向を、パレスチナ問題についても何らかの曙光が見えてきてほしいというように願っておるわけであります。また、そういうような道を探るべく、国際社会全体が協力をしなければいけないというように考えております。
 いずれにしても、どんな理由をもってしても、テロ行為というものは、これは正当化できるものではありません。国際の平和と安全への脅威として非難されるべきものと考えております。
 そういう意味で、十月の二十四日にG8の外相声明というものが発出されましたけれども、そういうような認識が示されているところでございまして、我が国としても、世界の各地に散在しますこういう問題に大いに関心を持ち、そして、機会をとらえてこの問題解決に当たるべく努力すべきだろうと思います。
樋高委員 要は、私がお伺いしておりますのは、テロなのかレジスタンスなのかということを伺っているわけであります。
 先般のモスクワで起こった武装した数十人のチェチェン人によります劇場占拠事件、これは七、八百人の人質をとって、自分たちの要求をロシア政府に対して行いましたけれども、結果的にはロシア軍の特殊部隊が突入をして、百数十人の死者、大勢の負傷者を出しながらも鎮圧された。不正占拠自体は悪いことであるというのは、これはもう当たり前の話でありますけれども、このような事件も、そもそも今までの歴史的な経過があって行われてきた。過去のロシアとチェチェン民族とのいわゆる歴史的な事柄、積み上げが起因をして起こった事件である。
 そんな中にあって、それではまたチェチェンの方について伺いますけれども、ロシアとチェチェンの問題について、先ほどお尋ねをいたしましたとおり政治家として、政府として具体的な対処方針なり対策というのは後からついてくるものでありまして、その前に、政治家としての理念、見識、テロなのかレジスタンスなのかということをお答えいただきたいというふうに思います。
福田国務大臣 モスクワで起こったチェチェン人による事件というのは、これは行為そのものはテロ行為だというように思います。しかし、その根源にあるものは民族的な問題というようなこともあります。そういう意味で、こういう民族的な問題というのはここだけでない、ほかの地域にもある問題でありますけれども、そういうことによってもたらされたテロ行為、こういうような考え方をすべきだろうというふうに思っています。
樋高委員 お答えをいただけないのは大変残念でありますけれども、主権国家日本のかじ取りをする、前回党首討論では総理のお答えでありましたけれども、自爆行為について、要するにみずからの、自分の見識として、政治家の認識としての考え方をきちんと示すことができませんでした。大変情けない限りでありますけれども、やはりこういうときにこそ、日本国のかじ取りを担っている、日本の生命財産、自由、人権、文化を預かっている最高責任者として、リーダーとして、きちんとした見識を示していただかなくてはならないというふうに申し上げたいと思います。
 特にこのチェチェンの問題につきましては、先ほども申し上げましたとおり、歴史的にも、ロシア帝国がチェチェンを軍隊をもって制圧し、併合した歴史的経過、克復するまでの抵抗のすさまじさ、克復した後の激しい独立運動と、ずっと続いているわけであります。だからこそ具体的にロシアとチェチェンの間に立って今何ができるかということは、それはいろいろもちろんあると思いますけれども、この議論の本質的な部分は、やはり具体的な行動については一定の距離を保つとか保たないとか、そういった民族紛争は憂慮する事態であるとかいうことを聞いているわけではないのであります。
 そして、再度お伺いをいたしたいと思いますけれども、総理がその党首討論において、平和が大事だとか話し合いが大事だとか、当たり前の答弁をしていたわけでありますけれども、直接何の関係もない抽象的な答弁をしたって議論は前に進んでいかないわけであります。そのことについて官房長官はどのようにお考えになりますか。
福田国務大臣 我が国は、ロシア側に対しては、チェチェン紛争は基本的にはロシアの国内問題という認識を伝えてきております。したがいまして、この紛争はロシア政府の適切な対応によって早期に政治的に解決されるべきである、こういうふうに考えているところです。
 話し合いだけじゃ何もできないみたいな話をされたけれども、何事も話し合いがスタートなんですよ。そのことによってすべての問題が解決されると私は思っております。いきなり何か神がかりみたいに何かが起こって、そしてその後、急に和平になってしまったなんということは、めったにあることではないのではないでしょうか。話し合いがまず第一なんだと思います。
樋高委員 時間がございませんので、次の質問に移りたいと思いますけれども、前国会での有事法制の議論について話を進めてまいりたいと思います。
 さきの国会では、結局のところ、いわゆる政府が提出をいたしました関連三法案につきましては、国会の理解を得られず成立をしなかったわけですけれども、どういうところに不備があったかと防衛庁長官は認識しておいででしょうか。
 防衛庁長官の今までの発言、いろいろな議事録とか、過去ずっと、私、小沢一郎現自由党党首の秘書を、ずっと自民党時代からかばん持ちとして務めておりましたので、小沢調査会のときから、大分もう十年以上前の議論でありますけれども、先生の発言もさかのぼってしっかりと勉強させていただきました。石破長官の非常に筋の通った、そして明快な発言、私は、一政治家として御尊敬を申し上げるぐらいずっと、その議事録をここ過去十年、また発言についても拝見させていただいたわけでありますけれども、今回、この有事法制において、本当に真の有事法制をするという意味では、私は長官とは差異はないだろうと。
 ただ、やはりつくるのであるならば、本当にすき間のない、より完成度の高いと申しましょうか、長官も今までの発言の中でも、やはり余り中途半端な法律をつくってしまうと、それがゆえに議論がその後、そこで不備であったことが、もうこれでいいんじゃないかということでまた十年も二十年も三十年も先送りされていってもいけないんじゃないかということを率直にお言いであったところに私も共感もいたしますし、だからといって、きょうの議論でも長官は言っておいででした、では完全にでき上がらなくちゃ法案を出してはいけない、もしくは議論してはいけないということにはなり得ないのではないかということもおっしゃった、そのことも私はわからないでもないわけであります。
 その言っていること自体は理解できますけれども、やはり今までの政治家としての御発言、今までの政治家としての理念をここで曲げられずに、防衛庁長官として、最高責任者として、防衛庁のトップとして着任なさったわけですから、きちんと今こそリーダーシップを発揮して、今までの思い、今までの政治家としての安全保障に対する思いをなし遂げる最大のチャンスではないかというふうに私は思いますけれども、今の話を含めまして、防衛庁長官、前回の政府案はどういうところに不備があったと率直にお考えでしょうか。
石破国務大臣 この法案、今先生御指摘の点について私がお答えするのはあるいは適当ではないのかもしれませんが、あえて御指名でございますので、私の答えられます範囲でお答えをさせていただきたいと思います。
 何のための有事法制かという問いかけが私は必要なんだろうと思っています。御議論の中で、まるで有事法制をつくると戦争になるというようなお話があった、戦争参加法案だから反対というような御議論をされる方もあった。私は、戦争にならないための有事法制なんだということはきちんと押さえなければだめなんだと思っています。そこの議論を逃げたらだめなんだと思っています。
 戦争に参加するための法案じゃない、戦争にならないための、そして、私何かの答弁で申し上げましたが、この有事法制はある意味、言葉をかえて言うならば文民統制法とかえてもいいというふうに申しました。権限なしに自衛隊が動くことは絶対にあってはならないのであって、きちんきちんとした法的な権限を与えなければいけない。いざとなったら超法規なんぞということは法治国家において口にするべきことではない。したがって、何のための有事法制なのかといえば、戦争を避けるための有事法制であり、そしてまた、何のためなのかとさらに問われれば、これは権限なくして自衛隊が動いてはいけないということなんだと思います。何のための有事法制かということをきちんと国民の皆様方に御理解をいただくということが一番だったんだろう。
 そして、あるいは自由党の皆様方の御議論を聞いていても思うのですが、要するに、有事においては迅速に物事を決めるシステムは何なのかということなんだろうと思います。一番求められるのは時間だと思う。ちゅうちょしているうちに相手の側が、日本の民主主義国家をじゅうりんしようとする側が勝利をおさめては何にもならないわけで、迅速にするためのシステム、そして、しかしながらそこにおける議会の関与、そういうことが体系的に国民の皆様方に提示をされることが必要であろうというふうに思っております。
 かてて加えて申し上げれば、いわゆる非常事態というものとこの武力攻撃事態というのをどのように切り分けていくのかという整理は要るのだろうと思います。赤松委員の御質問の中にもありましたが、では、ドイツの場合には非常事態法体系という形で武力攻撃から自然災害まで全部一本の法律にしている、しかしそれが我が国の法体系においてどうなんだろう、警察権と自衛権とどのように相乗するのだろう、そしてまた連邦制をとるドイツと我が国と、そこの違いもございます。そのときに、本当に基本的にあらゆる事態に対応できなければいけません、そうでなければいけませんが、それが我が国に最も適合した形は何なのかということを早急にお示しして、成立を図るべきだというふうに考えておる次第でございます。
樋高委員 要するに今までの、例えばこの事態特でも、春には一委員として石破先生は発言をなさっておいででありましたし、また、長官の御地元鳥取にも、私も一委員として一緒に地方公聴会にも参加させていただいたわけでありますけれども、長官の今までの発言を聞きますと、今お出しになっておいででいらっしゃる、春に出された政府案につきましては明らかに否定的な立場であったというふうに、私はどう考えても申し上げざるを得ないわけであります。
 例えば、長官自身のホームページの「メッセージ」の中で、有事法制に関してこのように述べられているわけであります。「そもそもこの法案、特に「武力攻撃事態法」は、議論を詰めないままに急拵えで提出されたものであり、自民党の内部討議でも相当に議論のあった代物である。今後の法整備の課題の手順・体制のみを示す単なるプログラム法的構成にしておけば、このような混乱は生じなかったと思われるが、」云々、「議論が錯綜してしまったことは否めない。」と述べておいでであります。また、前国会の中で、武力攻撃事態法につきまして、「当面最大の課題は、「有事法制それ自体は必要であるが、この法案には問題あり」とする立場の人々に政府・与党としてどう誠実に応えるか、である。」とみずからおっしゃっておいでです。「「提出した法案が最善のもの」などという姿勢を堅持し、無理やりに強行するようなことがあれば、有事法制そのものの議論を決定的に遅らせる最悪の結果を招来することにもなりかねない。」というお考えも石破先生御自身が持たれておりました。文書になっております。
 今回、国会では、まさしく所管の大臣になられて、長官の政治理念に基づいて法案の審議をなされることになるんだと思います。長官自身が以前は明らかにこの法案には問題ありとする立場でありましたけれども、今後なされるべき有事法制を目指した議論は、前の法案とは違った、長官のお言葉をかりれば、議論を詰めた、急ごしらえでない、問題のない完璧なものになる、防衛庁のトップとしても当然目指されるものだと、私は期待をする意味で申し上げさせていただきたいと思いますけれども、長官、どのようにお考えですか。
石破国務大臣 そういう議論は、私は委員として、前回の国会において有事特でいろいろな議論を聞きながらそのように思ったことです。樋高委員も委員として参加をしていらっしゃいました。何が問題かということについては、コンセンサスが大体できてきたのだろうと思っています。そのときに、与党として修正案が出されるというふうに聞いております。それが、あるいは各党から修正案が出て、よりよいものに仕上がるということが望ましいのだろうと思っています。
 私は、確かにそのときにそのように申し上げました。その思いは今も一緒です。ただ、政府の立場で考えましたときに、それが全く無謬であるということではなくて、国会における御議論を真摯に受けとめて、よりよいものにするという姿勢は必要なことだろうと思いますし、私が委員のときに指摘しましたいろいろなことは、今政府の中でこの点はどうだ、この点はどうだ、この点はどうだということでやっておりまして、国会そしてまた政府一体となってよりよいものをつくっていくべきだろうというふうに考えておる次第でございます。
樋高委員 どうして長官が満足できないものを平気で国会で審議しようとするのか、私は意味がわかりません。
 要するに、通常国会で長官御自身が言われた発言、私は一つ一つ、党は超えておりますけれども、もっともっと言ってほしいというぐらい、ある意味で心の中ではエールを送ってきたわけでありますけれども、ここで長官に就任なさって、余りにそのトーンが変わってしまったがゆえに、私は本当に残念でならないんですよ。そもそも、御自身が批判してきたことと矛盾しているんではないか。要するに、頭ごなしに、それは与党案だから賛成とか反対とか、そういうつまらないことを言っているんではなくて、中身の部分で、冷静に考えて不備だらけではないですか、おかしいじゃないですかということを申し上げているわけであります。
 まず、この有事法制につきまして考えるに当たりましては、安全保障の原則、それに基づく自衛隊の行動原則を確立して、その土台の上に、非常事態において国家が国民の生命と財産をどのような手段、方法で守っていくのかということを定める必要があるということで、自由党では先国会におきまして対案を出させていただきました。
 そもそも、さまざまな具体的なことを申しますと議論はありましたけれども、まず、日本の安全保障の体制はどうあるべきか、危機管理体制はどうあるべきかという全体の大枠の議論があって、その中で自衛隊をどういうふうな位置づけにして、まだほかにも日本の生命、財産、自由、人権、文化を脅かす事案というのはたくさんあります。それは、戦争だけではありません。国家テロ、もちろん工作船、大規模自然災害、さまざまな問題をもきちんと網羅する安全保障というか危機管理というか、この政策をきちんとつくって、それも何日も、何年もかけるのではなくて、スピーディーにきちんとつくって、もちろん国民の保護法制もきちんとつくって、その上でやらないと、結局のところ、前回のような、ある意味で時代錯誤の、そして自衛隊の行動原則のみを書かれたような法案を成立されて、それでよかったよかったといって、また十年、二十年、別の部分が放置されるようなことにもなりかねないと長官自身がおっしゃっていたんではないでしょうか。
 まず、私ども自由党では、前回の国会におきましても、安全保障基本法、そして非常事態対処基本法、いわゆるこれまであいまいにしてきた憲法解釈を確定いたしまして、国がどうやって国民の生命、財産、平和と安全を確保するかということについて全体の基本方針を明示しようとしたわけであります。
 その自由党が提出をさせていただきました、今中身も私、まだ再度検討させていただいているところでありますけれども、先ほど長官は、議論の中で、自由党案を勉強していただいたようでありまして、やはり時間的な問題、今そもそも政府が考えておりますのは、物事が起きてから、その後、いわゆる災害対策のように対策本部をつくって、そこで基本方針を決めたりするという、非常にスローリーな、ゆっくりした対策であったわけであります。そういうところが見え隠れするわけでありますが、そういったこと自体そもそも間違いでありまして、やはり危機が起きたときには、いかにスピーディーに対処するか、対策を打っていくか。
 例えば、私ども自由党では、いわゆる平時からウオーキャビネット、つまり戦時内閣というものを組織しておく、そして人数は少ない人数、総理、副総理そして防衛庁長官だけですぐ意思決定をして速やかに対応するなどといった、いわゆる本当に現実的に効果がある、現実的に対応し得るものをきちんと精査をし、前回の国会では提出をさせていただいたつもりでありますけれども、長官におかれましては、この案を再度御検討いただきたいし、お考えをいただきたいし、やはり国会というところは、中学校の社会科では、お互いにいいところを持ち寄って、そしてお互いに悪いところは正していく場である、それが国会である、議会制民主主義の原点ではないかと私は思うわけでありますけれども、自由党案につきまして、先ほども長官からコメントがありましたけれども、御検討をいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
石破国務大臣 国会におきまして自由党からそのような案が出ておる、そしてまた、前国会においても御議論がありました。これは政府として、この自由党の案についてコメントをする立場ではないと思います。
 ただ、個人的にどうかというふうに問われました場合に、私は、それは世の中でこれはベストというものはなくて、委員御指摘のように、何がよりよいものなんだろうかということは模索していかねばならない。私どもは政府案を本当に最善のものと思って出しておりますし、そしてまた、しかし、最善のものと思って出しても無謬であるという保証はないわけであります。
 ですから、いろいろな御修正をいただいて議論をいただくということかと思っておりますが、自由党案について申し上げれば、結局のところ、武力攻撃というものに限っております政府案と、それを自然災害まで広げておる自由党案とどうなのかという点、そしてまた、国会承認のかけ方、それはシビリアンコントロールというものも含めてですが、国会承認のあり方、そういうものについて違いがあるのだろうと思っております。
 では、その全部を対象にするべきだということは、結局、ドイツの非常事態法というものをどのように見るか。私は、自由党の案を拝見しましたときに、ドイツの法律とよく似た仕掛けだというふうに正直言って思いました。しかし、国のあり方というもの、中央と地方とのあり方というものが違うということ、そして災害に対してどのような対応をすべきかといういろいろな国の仕組み、そういうものについて種々の違いがありまして、こういうふうに自由党案でいきました場合に、では本当に災害等との関係はどうなるのか、自衛権あるいは警察権というものの整理はどうなるのか、そのあたりを、どっちがいい悪いということではなくて、何が一番望ましいのかということの議論がなされるべきであろうと思っております。自由党の側でそういう方の説明もいただければありがたいと思って私は前国会で拝聴したような次第でございまして、政府の立場といたしましては、冒頭申し述べましたとおりでございます。
樋高委員 それでは、その自由党提出案の中にも入っておりましたけれども、テロもしくは工作船の部分についてお尋ねさせていただきたいと思います。
 この事態特におきまして、五月の十六日、石破長官はこのようにおっしゃっています。「従来の第三分類、国民を守るための法律等々は二年以内というふうな期限が定められていますが、ではテロはどうする、工作船はどうするということについて期限がありませんよね。」というふうに長官は発言しておいでです。つまり、この国民保護法制も二年以内という話もきょうはずっと議論しておりますけれども、同時に、テロですとか工作船対策についてもきちんと期限を決めて議論をすべきであるというふうにおっしゃっておいででありましたけれども、その考えに変わりございませんか。
石破国務大臣 たび重ねてのお答えで申しわけありません。期限を決めてというのは、とにかく十年でも二十年でもいいというようなことでは困るので、期限を最低限ここまでにということで必要だという意味で申し上げました。
 しかし、逆に申し上げれば、テロ、そういうものに脅威を国民がみんな実感をしておる、少なくとも脅威として認識しておる以上、二年以内であればいつでもいいやという話ではなくて、それは不断の努力によって、できたものからできたものから、それは法律だけに限りません、運用の改善もあろうかと思います、できたものからできたものからやっていく。
 あるいは、新しい事象、この間どなたか御指摘がありました、ではモスクワの劇場で起こったようなケースが起こったらどうするのというときに、やはり国内でこの場合にはこうということを警察とも連携をしながらやっていかねばならない。必ずしも法改正に尽きるものだとは思っておりません。そういうものを不断の努力でやっていく。それは二年以内という期限をつけるということも一つの考え方かもしれませんが、常にいつでも不断の努力をして、一番いいものを出していくという姿勢であるべきだということを申し上げたかったのであります。
樋高委員 長官、委員会で、期限をつけるべきであるとはっきりおっしゃっておいででありましたよね。要するに、もちろん、先ほど自由党案についてのコメントもいただきましたけれども、私どう考えても、蓋然性の高いテロや工作船対策、こういった事案についてはやはりきちんと、今回、この際、整備をしなくてはならない。やはり、ここの部分、可能性が高い部分を後回しにして、そして可能性が低いところ、もちろん一〇〇%可能性がないとはいいませんけれども、そういった法整備というのは私は真の有事法制とは言えないというふうに思います。
 長官はこういうふうにも発言しております。「いわゆる国民を保護するための法制とか、あるいはテロ、サイバー、」これはサイバーテロの意味でしょうけれども、「工作船、そういうものについて、私は、小泉内閣として責任を持って、政治が責任を持って整備していくべきだと思っているんですよ。」とおっしゃっておいでです。また、「政治のリーダーシップ、小泉内閣の責任においてこれはきちんとやっていただきたい、」「テロについても、工作船についても、できれば二年なり三年なりという期限を設定してやっていただくことが小泉内閣が国民に対して果たすべき責任だ」というふうにはっきりとおっしゃっているわけであります。
 テロ対策、工作船対策、当然有事法制にも盛り込まれるということでよろしゅうございますね。
石破国務大臣 これは誤解を招いているとしたら私の責任だと思いますが、テロとか工作船とか不審船について、では今全く法制的にだめなのかという思いも私にはあるわけです。
 これは、繰り返して申し上げますように、昨年、自衛隊法を改正して情報収集出動というのをつくった、警護出動というのをつくった、治安出動の規定も見直した。そして、では治安出動が海上自衛隊には本当に下令できないのといえば条文上はできるだろう、海上警備行動は航空自衛隊に下令できないのかといえばできるだろう、そういうようなのを本当に全部詰めていった場合に、私は、テロ対策、不審船対策というものが今の法律でも相当にできるというふうに思っているのです。
 そのことをきちんと検証しなければいけないし、紙の上だけできるねと言ってみても、それは図上演習もしなければいけないだろう、実地に演習もしてみなければいかぬのだろう。今までは演習すること自体がいけないことだと言われておりましたが、これは運用局長が先ほど答弁をいたしましたように、そういうことができるようになった。それで一体不備な点はあるのかということを検証した上で、なお法改正が必要であれば盛り込む、そういうふうに申し上げておるわけでございます。
 決して、今テロやゲリラや工作船対策が不備だから法律を検討しなければいけないということを申し上げたとするならば、私はそのようなことを意図しておるわけではございません。その検証をきちんとやろうということでありますし、なお足らざる点があるとするならば、それは有事法制の中とかなんとか、そういう意味ではなくて、法律の中に盛り込むのはそれは政府として当然のことであるし、立法府の御審議はそれでお願いをしたいというふうに考えておるわけでございます。
樋高委員 時間なので終わりたいと思いますが、引き続き、また安全保障委員会などで議論させていただきたいと思っております。ありがとうございました。
鳩山委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 両長官から所信を受けましたので、きょう私は、イラク問題とテロ特措法にかかわって質問をしたいと思います。
 十一月八日に、国連安保理はイラク決議一四四一を全会一致で採択いたしました。決議は、イラクが一連の安保理決議に違反してきたことを厳しく批判し、イラクに最後の機会を与えるとして、査察を即時、無妨害、無条件、無制限で受け入れ、決議受諾を七日以内に回答するよう求めております。
 イラクは、関連する国連安保理諸決議を完全に実施し、大量破壊兵器を完全に廃棄したことを国際社会の前に明らかにする義務を負っていると私は思います。今大事なことは、戦争を回避し、イラクの大量破壊兵器問題を平和的に解決する筋道を広げていくことだと思います。
 決議の十三項にありますが、「安保理はイラクに対し、義務違反を重ねればその結果として重大な結果に直面すると、繰り返し警告したことを想起する。」と最後通告のような文言もありますけれども、その一方で、イラクの今回の決議違反に対しては、改めて安保理で「関連するすべての安保理決議を完全履行することの必要性を検討する。」こととしておりまして、アメリカの自動的武力行使を認めるものにはなっておりません。
 最近も、フィレンツェで五十万規模の反戦、戦争反対のデモ集会が行われたと報道されているようでありますが、ブリュッセルでもそういう反戦の、戦争反対の集会が行われた。今度の決議は、戦争反対のこうした国際世論をアメリカ政府も無視できなかった、その結果だと考えるわけでありますが、官房長官にまずお伺いしたいと思うんです。
 今度の安保理決議一四四一がアメリカの自動的武力行使を認めるものではないということ、日本政府もお認めになりますか。
福田国務大臣 今回の決議は、さらなる重大な違反があれば安保理に報告され、そして安保理決議の完全な履行の必要性を審議するため、安保理は即時に招集されるという規定があります。
 したがいまして、これは安保理においてまた協議をするというものと考えております。米国の代表も、この決議には武力行使に関する隠された引き金も自動性も含まれていない、こういうことを述べておりますので、そのように理解をいたしております。
木島委員 大変大事な点が確認できたと思います。
 確かに、今長官が述べられたように、アメリカのネグロポンテ国連大使は、決議には自動的に武力行使につながる隠れた引き金は含まれていない、こう強調いたしまして、実はこう強調することによってロシアなどが賛成する方向に工作をしたということが伝えられているわけでありますが、一方では、例えばアメリカのパウエル国務長官が、十一月十一日に、イラクが違反したらアメリカは直ちにイラクに対する武力攻撃に踏み切る、こう発言した旨が報道されておりますし、読売新聞の十一月九日の夕刊には、アメリカ高官発言として、イラクが重大な決議違反をした場合、米国は安保理の決議を待たずに独自判断で武力行使する権利を保留していると。こういう発言が日本のマスコミでも伝えられているだけに、そうではない、今官房長官が認めましたように、私が指摘したように、今度の決議は、イラクが決議違反してもそのこと自体が安保理に報告をされ、そこで検討されることになる、アメリカに対して自動的な武力行使を容認するものでない、大変大事な確認だと思います。実は、そういう立場に立って日本政府がこれからの行動を処していかなけりゃならぬじゃないかと思うわけであります。
 昨日、十一月十日のNHKニュースはこのような報道をしておりました。国連でイラクに完全な査察を迫る決議が採択されたことから、政府は、日本政府ですよ、アメリカによるイラク攻撃を想定した対応の検討に入ることになり、アフガニスタンでのアメリカ軍に対する支援の強化など、間接的な形での支援策を検討の方針です、こう報じているわけです。NHKのインターネットにもこの文言が載せられております。
 私は、こうした報道が事実とすれば、二重の意味で大きな問題だと思います。
 第一は、そもそもイラクの他国に対する現実の武力攻撃がない以上、アメリカがイラクに対する先制的武力行使はできないというのが御案内のような国連憲章の基本的取り決めであります。国際法に反するアメリカのイラク攻撃を日本政府が想定して、これに対する支援策を検討するなんということ自体、私は、この国連憲章の根本原則に反する態度だと思います。
 第二は、アメリカのイラク攻撃を支援する我が国の国内法上の根拠もないということであります。テロ特措法は、アメリカのイラク攻撃に対する我が国の支援、協力を認めておりません。
 そこで官房長官に改めてお聞きします。NHKで報道されたような検討に政府は入っておるんでしょうか。
福田国務大臣 今回のイラクに対する国連決議があったその後に、それに基づいて政府が何らかの対応を検討を始めたとか、そういう事実はありません。私の知る限りそういうことはないと思います。
木島委員 NHKが公然と全日本国民に対して報道している事実を否定いたしました。
 私は、こんな報道がNHKによって報道されるということ自体が問題だと思う。むしろ、日本政府としては、国連憲章上、国連原則上、国際法上、イラクの決議違反の問題は平和的に解決されるべきである。現に今イラクが他国を侵略したり武力攻撃しているわけではないんですから、アメリカがイラクに対して先制的に、決議に違反したからといって、武力攻撃するということは国連憲章上許されないんだ。だからこそ、日本政府としては、皆さん方も努力は始まるんでしょうけれども、イラクに対しては決議を守りなさい、そういう立場で堂々と外交を強めていくと同時に、アメリカもそんな形で武力攻撃に一方的に入ることは国連憲章違反ですよという立場できちっと物を言う。こんな報道が出ること自体が問題だと私は思うんです。
 否定されましたから、次の質問に移りましょう。
 十一月九日の読売新聞は、次のように報じました。これは石破防衛庁長官に聞きます。
 ダグラス・ファイス米国防次官は八日、防衛庁で石破防衛庁長官と会談し、米同時テロの首謀者とされるテロ組織アルカイダとイラクとの関係について、過去十年、共同訓練や共同オペレーションも含め、高いレベルで関係していた、要するにイラク政府はアルカイダと高いレベルで関係していた、こう述べた。そして、米軍のイラク攻撃に対してテロ特措法に基づく日本の支援を間接的に要請したと見られる、このような報道記事であります。
 そこでお聞きします。ファイス米国防次官から石破防衛庁長官にこのような話があったことは事実ですか。
石破国務大臣 アメリカ側から、イラクとアルカイーダとは過去十年以上にわたって高いレベルの関係を維持しているという内容の御発言はございました。
木島委員 後段はどうですか。だから、日本は、米軍のイラク攻撃に対してテロ特措法に基づく支援を間接的に要請したと、そこまで要請されたんですか。
石破国務大臣 そのような要請はいただいておりません。示唆もございません。
木島委員 では、アメリカは何のために、イラク政府はアルカイダと過去十年関係していたなんという話を長官にしたんでしょうか。
石破国務大臣 それは、私はファイスでないからわかりません。
木島委員 ごまかしなんですよね、そういうのは。本当にごまかしちゃいかぬですよ、これ。
 では、もっと突っ込んで聞きましょう。イラクとアルカイダとは過去十年間、具体的にどのような関係にあったという話がなされたんでしょうか。具体的な証拠を挙げての話がなされたんでしょうか。ごまかさずに、大事なことですから、はっきりと答弁願います。
石破国務大臣 今突然のお尋ねでございますから、微に入り細にわたってお話をするだけの記憶を持ち合わせておりませんが、そのようなことにつきまして個々具体的にお話をすることはこの場では適当でないというふうに考えております。
木島委員 突然なんといったって、事態は十一月九日の話です。あなた自身が直接関与したことです。伝聞じゃないですよ。答弁できるはずですよ。大事なことですよ。これは、日本の運命にもかかわることでしょう、日本の基本的なスタンスにかかわるものでしょう。大筋は答弁すべきじゃないですか。具体的な証拠まで挙げて、イラク政府は、フセイン政権はアルカイダの幹部とかかわりを持ったんだと。
 なぜここを私が質問するかというと、テロ特措法がつくられたときに、あの九・一一のテロの実行犯とアルカイダとの関係、アルカイダと時のアフガニスタン政権との関係、まさに基本的な問題になったわけでしょう。本当に客観的な証拠があるのか、あの九・一一の犯人が本当にアルカイダなのか、それに当時のアフガン政権が要請したのか、これはアメリカのアフガンに対する武力攻撃の根拠の問題でしたよ。イギリスなどがこれに、集団的自衛権というんでしょうか、これを使って武力攻撃に参画した根拠でしたよ。
 またアメリカは日本政府にそういう話をしてきているわけでしょう。今長官、否定されましたけれども、テロ特措法を改正してくれ、あるいは改正できないのなら現にあるテロ特措法をアメリカのイラク攻撃にも利用させてくれ、そういう趣旨でこういう話を持ち込んでくるんでしょう。客観的に明らかじゃないですか。こんな大事なことを、事実を述べない。突然の質問だからなんという答弁は、本当に私は国会を、立法府を軽視するものだと思わざるを得ません。
石破国務大臣 委員はそのようにお決めつけになりますが、私は決してそうだとは思っておりません。
 これは、何しろ時間が三十分でございます。向こうが、先方が言っていること、ただ、正確を欠くといけませんので、一応通訳をなるべく通すような形にしてお話をしておりますが、全体で三十分の中でこのお話だけしておるわけではございません。KEDOのお話もしておれば、いろいろなことを多岐にわたって向こうの国防次官とはお話をしておるわけです。その中で、本当にそれではこのことだけ微に入り細にわたってお話をしたという事実はございません。ございませんからございませんというふうに申し上げておるわけでございまして、それ以上のものではございません。
 ただ、その中でお話がありましたのは、こういうくだりがございました。ブッシュ大統領がシンシナティ・オハイオで行った演説、そしてまたラムズフェルド長官が二、三週間前に行った記者会見でも述べたことであるが、自分たちの情報を収集した結果としては、イラクとアルカイーダは過去十年ほどにわたって関係を有していた、このイラクとアルカイーダの関係というのはそれぞれの高いレベルの関係で行われていた、その関係は共同訓練であるとか共同オペレーションであるとかそういうものまで含んでいた、これですべてです。隠し立てもいたしません。
 私どもは、このお話だけを微に入り細にわたってやりまして、それではテロ特措法の改正とかそういうものを要請されたというような事実は本当に全くございません。
木島委員 それでは、改めて官房長官と防衛庁長官に、今現に日本政府が持っている認識についてお聞きします。
 アルカイダとイラク政府、フセイン政権との間では、どんな関係にあるのか。もっとずばり聞きましょう。万々が一アメリカがイラクに対する武力攻撃を開始したときに、今のテロ特措法の法律で米軍に対する給油、燃料等の輸送、補給などの支援ができると考えているのかどうなのか、ずばり聞きましょう。お二人に聞きましょう。官房長官、防衛庁長官。
石破国務大臣 それは仮定の御質問でありますから、どういう状況で行われるかということによるのだろうと思っています。それは、今の時点でアメリカが攻撃をするということは私どもとして云々すべきことではなくて、国連決議を守るべく我が国として全力を挙げる、そういうことで、イラクが無条件に、そして無制限に応じればそのような事態が生じないことであって、そのために我々としては全力を尽くすということに尽きようかと思っております。
福田国務大臣 防衛庁長官が答弁したとおりでございまして、仮定の上に立って、その上でどうだ、こう決めつけられては困るんです。
木島委員 仮定の質問じゃないじゃないですか。今現時点での日本政府が持っている知識、認識はどうか。イラクのフセイン政権とアルカイダとの関係、共同訓練の関係とか、アメリカの高官から言われたんでしょう、長官。だから、それは言われたんですよ、アメリカ政府から。証拠を突きつけられたのかどうか私質問したが、答えませんでしたね。それはいいですよ。
 現在、日本政府が持っているイラク・フセイン政権とアルカイダとの関係がどの程度のものなのか、どういう認識を日本政府は持っているのか。現時点でいいですよ。これは答えられるでしょう。仮定じゃないですよ。防衛庁長官、官房長官、答えてくださいよ。日本政府の持っている認識ですよ、知識ですよ。仮定じゃないですよ。
石破国務大臣 私どもが持っておる認識というものについて、かくかくしかじか、これが正確である、これが正確無比であるというようなものは、私ども持ち合わせておりません。ただ、アメリカが、委員が先ほど証拠を示されたんじゃないかというお話がございましたが、かくかくしかじかという証拠の提示を受けたわけでもございません。ブッシュ大統領の演説あるいはラムズフェルド長官の演説というものにも示されているように、こういうレベルでこういうことが行われたということの提示を受けました。
 私どもとしては、もちろんそれは、アルカイーダとイラクがどのような関係を持っているかというのは、先生御指摘のように確かに大きな関心事ではございます。しかし、私どもとして、独自に、これが正しいのだということを今ここで申し上げることは不適当かと思いますし、そのことについて私個人十分な知見を持っているわけではございません。
 いずれにせよ、そういうような関係があるから、テロ特措法でどうだこうだという御議論かと思いますが、そのような攻撃が起きないようにすることが一番肝要であろうかと存じます。
木島委員 逃げているんですよ。
 端的に聞くんですが、今、日本政府が持っている、アルカイダとイラク・フセイン政権との関係、日本政府が持っている認識、この認識で、今の時点の認識でテロ特措法を使えるかと聞いているんです。ずばり、そこですよ。官房長官、使えるのか、法を改正しないでですよ。
福田国務大臣 今防衛庁長官が答弁されたような状況において、状況というのは、イラクとアルカイダの関係というようなことについて政策判断をするというような、そういうようなことをする段階ではないということを申し上げているのではないかと思います。ですから、今の段階において、国連決議を履行させるということが、これが一番大事な課題であると考えております。
木島委員 政策判断を聞いているんじゃないんですよ。テロ特措法の法律を聞いているんですよ。
 今、現時点で日本政府が持っている、イラク・フセイン政権とアルカイダとの関係、アルカイダというのは、テロ特措法をつくったときの政府の認識では、九・一一の実行犯、そのグループなんでしょう。だから、そのアルカイダとイラク・フセイン政権との関係に関する認識、ありますね、現在の日本政府の知識、認識。その状況で日本政府はテロ特措法を使えるのか。使うかどうかの政策判断を聞いているんじゃないんです。テロ特措法の守備範囲を聞いているんです。これは大事ですから、答えてください。
福田国務大臣 私が政策判断と申し上げたのは、テロ特措法を使うという政策判断をするかしないか、こういうことを言ったわけでありまして……(木島委員「前提を聞いているんです。だから、それを使えるだけの法律になっているのかどうかということを聞いているんですよ」と呼ぶ)法律ですか。それは法律的に言えば、イラクとアルカイダとの関係が極めて強い、そしてまた、アフガニスタンとの関係においてもそういうことが明白であるといったようないろいろな状況を勘案した上で、そういう結論が出るということはないわけではないというように私は思います。
木島委員 重大な答弁なんですね。
 だから、今そういう状況にはないわけでしょう。イラク政府、フセイン政権とアルカイダの関係、今政府が持っている認識、知識では、テロ特措法を使えるだけの状況にないと聞いていいですか。答弁してください。
福田国務大臣 今現在、私どもが得ている情報に基づいて、イラク、アルカイダの関係が極めて緊密であるといったようなことでテロ特措法をつくる、そういうような判断をできるような知見はございません。(発言する者あり)
木島委員 はい。このぐらいにしておきましょう。いや、本当にこれは大事なところですから。
 テロ特措法に基づく米軍等のアルカイダに対する武力攻撃に対する支援活動期間が十一月十九日で切れます。政府は、米国の要請を受けて、活動期間を延長する予定ということが、これまた新聞報道されています。御存じのとおりです。
 しかし、アフガニスタンでは、二〇〇一年十月八日から始まった米英両軍の武力行使によって、タリバン政権は崩壊いたしました。昨年十二月二十二日には暫定政権が発足をいたしました。本年六月には、ボン合意に基づいて、カルザイ暫定政権議長を大統領とする移行政権が発足しております。
 我が国がテロ特措法に基づいて米国等の軍隊の活動に対して協力支援活動をする根拠は、現在なくなっているんじゃないかと思いますが、官房長官、どうでしょうか。
福田国務大臣 現在、アフガニスタン国内におきまして、米軍等が東部の山岳地帯を中心にして、アルカイダやタリバンの残存勢力の追跡、掃討、それから施設の捜査による武器弾薬の押収、破壊、さらに、アルカイダやタリバンのメンバーの拘束、尋問による、今後起こるかもしれないテロを阻止するための情報収集などを実施しております。また、海上においては、アラビア海を中心に、アルカイダやタリバンの残党が海路を経て逃走するということがございまして、国際テロの脅威がそのようなことで拡散するということを防ぐための活動も継続しております。
 こういうように、昨年九月十一日の米国におけるテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去のための諸外国の活動は依然として継続をしているという状況でありまして、我が国としましても、引き続きこのような国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与していくということが重要であると考えております。
木島委員 事前に私が防衛庁からいただいた資料にも今官房長官が述べたようなことが記載されておるんです。「アルカイダの拡散と今後も続くテロとの闘い」「辺境地帯に潜伏。陸路または海路で、アフガニスタンから脱出、世界各地へ拡散→更なるテロの可能性」「アルカイダ主要幹部二十八人中、十二人のみ拘束または死亡を確認 タリバン主要幹部二十七人中、七人のみ拘束または死亡を確認」、こういうことがありまして、そしてその文書によりますと、今述べたような「アラビア海等において、アルカイダ/タリバンの残党の海路による逃走等を阻止するための活動を継続的に実施。」と書かれております。
 恐らく政府は、こうして海路による逃走等を阻止するための活動を米英などの艦船がやっている、これに燃料補給しているんだという論理なんでしょうけれども、それではお聞きいたします。
 海路によるタリバンの残党の逃走等を阻止する活動によって、その成果はどうだったんでしょうか。そういう活動によって、タリバンの残党が何人見つかったんでしょうか。また、そういう活動をしている米国などの艦船の活動報告は国連安保理に対してされているんでしょうか。さらに、そういう活動をしている国々の活動報告が、結果も含めて、我が国政府に対してきちっと報告されているんでしょうか、明確なる答弁を願います。
守屋政府参考人 今御質問の、海上における指導者捕捉活動の具体的な成果、どんな方法でどれだけの対象者を挙げているかということについては、オペレーションの具体的な内容にかかわる事柄でございますから、米軍は当然公表いたしておりません。
 ただ、これまでの活動を通じまして、カナダ海軍がアルカイダのメンバーと思われる人間を拘束した事案があるという報道が流れておりまして、これは承知いたしております。
木島委員 日本はそういう活動をしているアメリカ等の軍艦に対して燃料を補給し、輸送してやっているんでしょう。何十億という金額でしょう。何の報告もされない、そんなばかなことはありますか、官房長官。国民の血税をこれだけつぎ込んでいるんですよ。
石破国務大臣 ただいま防衛局長から答弁を申し上げましたとおり、これは、微に入り細にわたって、かくかくしかじか、どこでどれだけの人間を捕捉したというようなことを報告するということがむしろ通常に行われることだとは私は思っておりません。そういうことは報告されないことがむしろ通例であるし、当然であるというふうに考えております。
 そういうことが報告されないからといって、国民の血税をむだ遣いしたというようなことには相ならないと私は考えます。
木島委員 私は、微に入り細をうがって聞こうなんてしておりません。基本の数字だけ聞こうとしておるんですよ。しかし、ああいう答弁ですね。
 私は、なぜこの問題を指摘するかというと、テロ特措法を改正しない場合、テロ特措法は、アフガニスタンに対する、あれは昔タリバーンが政権を握っていた、タリバーンを支援する政権が樹立していた、そこでテロが養成され、その一部の人間が九・一一で実行犯になった、そういう理屈で武力攻撃に入ったわけでしょう、そして今残党がいるというんでしょう。
 しかし、先ほど私が聞きましたね、じゃ、イラクに対する攻撃に米軍が入っていったときにどうなんだと。まともな答弁はありませんでしたが。
 私は、今のテロ特措法のまま米軍のイラクに対する武力攻撃が始まったときに、燃料を補給し続けるということになりはせぬか。まともな検証もしていないわけでしょう、燃料の補給、給油を受けた米軍の艦船などが実際どういう行動をしているのか検証もしないまま、目を閉じられたような形で、ただやみくもに給油しているんじゃないかと思わざるを得ません。
 私は、テロ特措法に基づき米国艦船等に対する燃料等の補給、輸送等の支援協力を自衛隊が行う法的根拠というのは、政府の立場に立っても、現在失われているんじゃないかと思います。とりわけ、米軍等によるイラク攻撃に対して、現在のテロ特措法に基づいて燃料の補給、輸送などの協力支援をする法的根拠はないということをはっきり申し上げたいと思います。
 時間ですから終わりますが、テロ特措法が乱用されて、アメリカのイラク攻撃に対して自衛隊が燃料補給や輸送などを行えば、これは国際法も含んで二重三重の違法を重ねることになる、断じてそのようなことをしてはならないし、認めるわけにはいかないということを主張いたしまして、質問を終わります。
鳩山委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党の今川正美です。
 まず、石破防衛庁長官に、先般、委員会は違ったのですが、今月八日の安全保障委員会で、ミサイル防衛計画に関して御質問をしていたところなんですが、途中、時間が足りませんでしたので、一、二、補足的に質問をさせていただきたいと思っています。
 私は、この間の質問のときには、ミサイル防衛計画に関して、現在、日米の共同技術研究が行われています。このことに関しては、少なくとも技術的な困難性もさることながら、莫大な財政負担、あるいはこのアジア地域に、場合によって、実戦配備した場合には新たな緊張関係を生み出してしまう。特に仮想敵国から飛来するミサイルを撃ち落とすというわけですから、いわば迎撃用のミサイルで網をつくる。そうすると、当然また相手国はその網をどう食い破るかという形で、八〇年代、当時の米ソ間に見られたようなミサイル防衛をめぐる軍拡競争を招きかねない。そういう見地から、共同研究はもとより、ましてや開発段階などに踏み込むべきではないという趣旨で質問いたしました。
 これは、我が国にとっては、今は共同研究ですけれども、開発、そして、これは十一月十日の長崎新聞の記事なんですけれども、米国は二〇〇八年に迎撃ミサイルの初期配備という記事がございます。この記事によりますと、米国の国防総省は、二〇〇八年の初期配備対象を米国のイージス艦と想定、海上自衛隊のイージス艦への搭載は日米間で統合運用システムや迎撃の指揮命令で調整が必要なため、同年以降を見込んでいるという記事がございます。
 これは、いや応なく我が国の憲法が禁じるところの集団的自衛権の行使に踏み込まざるを得ない、そういう重要な要素をはらんでいると私は思っています。
 今、日米間では、いわゆる海上配備型上層システム、NTWDというのがございますね。これは実は米国では、ネイビー・シアター・ワイド・ディフェンスという、海軍戦域防衛の頭文字をとっているというふうに聞いております。
 これは、昨年七月の米国の議会の証言で、ケイディッシュ弾道ミサイル防衛局長が次のように言っています。日米共同研究を地上配備の中間飛行段階での迎撃能力を補完する先端システム研究の一部となると位置づけて、日本の技術と費用分担への期待を述べておられます。つまり、中距離及び長距離ミサイルの脅威に対して、米国本土及び同盟国を覆う包括的多層システムの一部と位置づけているわけですね。
 そうなりますと、もし配備が実現すれば、在日米海軍のイージス艦のみならず、海上自衛隊が保有している四隻のイージス艦にNTWDが搭載されるのでしょう。そうしますと、技術的な詳細な面はわかりませんが、その運用のためには、米国の衛星による敵ミサイルの発射検知システムが援用される可能性が非常に高い、専門家もそのように指摘しています。
 ですから、肝心なことは、日本の防衛とか周辺事態とは無関係に、米国との集団的自衛に日本が踏み込む危険性が極めて大きいシステムだ、私はそのように認識しておりますけれども、防衛庁長官の御認識を伺いたいと思います。
石破国務大臣 冒頭先生がおっしゃいました長崎新聞、これは多分共同通信の配信ではなかろうかというふうに思っております。地方紙数紙にそういう掲載がございました。八年配備をアメリカが伝達したというような内容ではなかったかというふうに思っております。
 この議論は、ミニSSC、十月二十三日に合衆国で行いました審議官級協議の場でそういう話が出たというふうな報道であるようでございますが、米側から研究から開発への移行を早期に決断するよう要請があったという事実は私聞いておりませんし、出席者からもそのような報告を受けておりません。私は、その点につきましては、事実として相違があるのではないかというふうに考えております。
 ミサイルディフェンスにつきましての問題点は、まさしく今、今川委員が御指摘になったとおりだろうと思います。そのことをどのようにこれから議論をしていくかということであって、現段階におきましては技術的な研究をやっておりますから、そのことが、例えばネイビー・シアター・ワイドでいった場合に、あるいはTHAADでいった場合にどうなのか。アメリカの場合には、これだけというふうに限ったわけではありませんで、陸上配備型、洋上配備型、あるいはブースターフェーズ、ミッドコースあるいはファイナルコース、どの時点でどのようなもので落とすか、そして撃ち漏らしたものを最後まできちんと全部落とせるかというようないろいろな研究を多岐にわたってやっておるわけで、技術的に可能かどうかというのが今の段階だと思います。
 それで、それを実際に開発に移行するかどうか。我が国におきましては、これは何度も答弁申し上げておりますとおり、安全保障会議の議を経て決めることでございますから、私がとやかく申し上げることではございませんが、例えばお金はどれぐらいかかるのというお話は当然あるのだろうと思います。
 それに要するイージス艦が、じゃ、今ある四隻で足りるのか。いや、あるいは二隻でいいという説もあれば八隻という説もあるわけですね。専門書を読むと、どれが正しいのか、いろいろなお話がある。イージス艦一隻千三百億ぐらいするわけですから、これはもう大変なお金であります。幾らかかるのかという問題がありましょう。
 もう一つは、委員が冒頭にお触れになりました、もっと根源的な問題、それで軍拡は起こらないかということです。
 ただ、いわゆる相互確証破壊の理論というものが、そういう不道徳的なことはやめよう、恐怖の均衡みたいなことはやめようということで、向こうが撃ったら撃ち返すというもともと恐怖の均衡論から、新たな抑止理論としてBMDは出てきたものというふうに理解をいたしております。そして、いわゆるならず者国家でありますとかテロ集団でありますとか、そういう抑止がきかない場合に防御手段として何ができるかといえば、今考えられる限りにおいては、そういうようなミサイルディフェンスというものは有力な選択肢であろうということを私は否定することができません。
 それで、そうすると軍拡を招くことになるというお話ですが、そもそもそういうような意図を持つということ自体があってはならないことではないか。要するに、千発一遍に落としたならばミサイルディフェンスだって対抗できないだろうということが軍拡だというふうに思っておりますが、そういうことが生じないようにするのが外交努力であって、ミサイルディフェンスをやったから軍拡が始まるというような論理必然の関係にあるとは私は思っておりません。
 集団的自衛権につきましては、特にブーストフェーズでミサイルディフェンスというものを撃ちました場合に、そのミサイルがどこへ飛んでいくのかわからないという状況においてどうなのかということだろうと思っております。それは、委員御指摘のいわゆる早期警戒衛星、静止衛星がどのような能力を持つか、それをどの国が保有をするか。それは我が国は現状においては保有をすることは極めて困難かと思っておりますが、それがどういう関係で伝達をされるか、指揮命令系統はどうなのかということが、憲法論との関係できちんと議論をされねばならないことであろうというふうに思っております。
 問題点の認識は先生と全く一緒でございまして、しかしながら、それが軍拡を招くかどうかということにつきましては、私は、繰り返しになって恐縮でございますが、ミサイルディフェンスをやったから軍拡になるというものだとは理解をしておらないところでございます。
今川委員 私が一番聞きたかったのは、長官、今憲法上のこともちょっと触れられましたが、先ほどちょっと新聞記事を読み上げましたように、もう一度言ってみますと、これは日本政府じゃなくて米国の国防総省が、日本のそういう政治的な事情も十分わきまえているからこそこういうことになるんですね。海上自衛隊のイージス艦への搭載は、日米間で、今おっしゃった統合運用システムとあわせて迎撃の指揮命令で調整が必要である。当然、憲法上のこと、集団的自衛権ですよね。
 私が申し上げたかったのは、これを開発し、そして実戦配備、少なくとも米国の計画によれば、かなり前倒しをして、二〇〇八年には初期配備、こうなってきますと、いや応なく、日本政府の意思に関係なく、そういう集団的自衛権に踏み込まざるを得ないような統合運用システムの中に日本がすっぽりと入ってしまうのではないかということを申し上げたんです。
 ちょっと時間がございませんので、次の問題に移りますが、もう一点、今非常に大事な日朝交渉の途中でありますけれども、今回、北朝鮮が濃縮ウラン施設、いわゆる核開発の意図をはっきり持っていたということが明らかになりました。
 このことに関して、実は、今米国のジョージア大学の教授をなさっているハン・S・パーク氏、彼は自分のことを南北の真ん中にいるコリア系米国人だとおっしゃっているそうですが、一九九四年当時、核危機に際して、カーター元米大統領の北朝鮮訪問を仲介した人らしいんですね。彼が、この北朝鮮の核計画の問題に関して次のようにおっしゃっているんです。米国や関係国は北朝鮮が核計画を恒久に放棄したとは考えていなかったはずだ、北朝鮮は通常兵器の部品も油も欠き、核が唯一国を守る手だてだと考えている、それにまだ朝鮮戦争の戦争中である、停戦協定を和平協定に切り替えない限り、核を含む兵器開発を放棄することはないというふうにコメントしておられます。
 私も、最終的にはやはり、朝鮮半島にかかわる拉致事件あるいは核ミサイル問題、それから北東アジアの安全保障問題、まさに小泉総理のおっしゃるように、包括的に交渉の中で解決をしなければならないと思います。
 そうした場合に、少なくとも私の認識は、やはり、五三年から約五十年間停戦協定のまま続いてきている朝鮮戦争に最終的に終止符を打つ、そのためには、今、残念ながら、関係当事国である、朝鮮国連軍の名のもとに韓国に駐留をしている米国は、ブッシュ政権は、北朝鮮と話し合う意思を示していません。そうしますと、朝鮮国連軍の名のもとに入っていっているわけですから、国連が関与をした形で、北朝鮮及び米国、国連という形で朝鮮戦争に終止符が打てるような、そういうために、日本政府としても積極的に国連に対してでも働きかけていく。
 そういうことで、平壌宣言に盛られた、核問題、ミサイル問題も国際的な合意を遵守するだとか、あるいは拉致事件は再び起こさないだとか、あるいは不審船事案も今後は起こらないだとかとたとえ約束をされても、それを十分担保するだけの国際的な枠組み、あるいは、そうした朝鮮半島にかかわる仕組みをしっかりつくっておかないとだめなのではないかという思いがあるものですから、これは外務省の方にちょっとお答え願います。
矢野副大臣 委員御指摘のとおり、ハン・S・パーク教授でありますか、北朝鮮の外務省に大変太いきずなを持っているということも聞いておりますし、その主張たるや私も聞いております。しかしながら、北朝鮮の核開発についての考え方、さまざまな見方があると思います。しからば、政府として、その一つ一つの意見についてコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 いずれにせよ、北朝鮮による核開発問題は、国際的な平和と安定、核不拡散体制にかかわる問題であるとともに、我が国の安全保障にとっては大変重大な懸念であると考えておりまして、今後とも、問題解決のために、米韓その他の関係国と連携しつつ、北朝鮮側に強く働きかけていくつもりであります。
今川委員 もちろん、今おっしゃったことも必要なんです。私が一番聞きたいポイントは、約五十年間休戦状態のまま続いている朝鮮戦争を、これがいい機会だから、関係当事国なり国連に働きかけて朝鮮戦争にきちっとピリオドを打つ、そこでけじめをつけさせるということが必要なのではないですかということをお聞きしているんです。北朝鮮への働きかけは、もちろん当然必要なんです。その点、もう一度お答えください。
矢野副大臣 確かに、御指摘の考え方もあろうと思うのでありますけれども、今回、日朝平壌宣言において、拉致問題についてはその再発防止、また、核問題やミサイル問題についてはその解決の必要性が確認されているわけであります。
 ですから、これらの諸問題の原因が朝鮮半島における休戦状態、そのことがすべて原因だということには考えておりません。
今川委員 ちょっと、木で鼻をくくったような答弁じゃ困るんですよ。私も、朝鮮戦争が休戦状態のまま続いていることがすべてなんて言っていませんよ。しかし、そこが一番問題の核心じゃないのかということを言いたかったんです。
 時間の関係で、次に移りたいと思います。
 まず、これは内閣官房の方にお聞きをしますけれども、先ほども他の委員からの質問がございましたが、インド洋、アラビア海方面に今自衛隊の艦船を派遣していますが、この期限が今月の十九日で切れます。さらにこれを来年の五月十九日まで半年間延長したいという政府の計画があるようでありますけれども、派遣期間をこれ以上また半年間延長するということの具体的な根拠を簡潔にお答えください。
福田国務大臣 先ほど、その派遣の必要性というものを、理由を申し上げたのでありますけれども、よろしいですね、繰り返す必要はありませんね。――じゃ、繰り返しましょう。
 現在、アフガニスタン国内では、米軍等が東部の山岳地帯を中心にしまして、アルカイダとかタリバンの残存勢力の追跡、掃討を行っております。また、施設の捜査による武器弾薬の押収、破壊も行っております。それと、アルカイダやタリバンのメンバーの拘束、尋問による、さらなるテロを阻止するための情報収集、そういうものを実施いたしております。また、海上におきましては、アラビア海を中心に、アルカイダやタリバンの残党が海路を経て逃走し国際テロの脅威が拡散することを防ぐための活動を継続している、こういうようなことでございまして、昨年九月十一日の米国テロ発生以来、脅威の除去のための諸外国の活動というものは依然として継続しておるということで、我が国としても引き続き、このような国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与していくことが重要であると考えております。
 半年間というのは、前回も半年間ということをお願いしましたけれども、半年たちますといろいろ状況変化ということもあるかもしれぬということで、一つのめどとして半年間ということにしておるわけでございます。
今川委員 今の説明では、これだけ莫大な国民の税金をつぎ込んで、なおかつ、ちょうどもう一年ですよ。あと半年少なくとも派遣期間を延長するということに対する、国民が納得し得るような説明には少なくともなっていないと私は思います。
 さらに、報道等によれば、この活動範囲をソマリア沖あたりまで拡大をするであるとか、あるいは燃料等の提供対象を米英両国以外に拡大することを検討中であるとかということが報道されています。
 私が思うに、今、イラクの大量破壊兵器査察問題が大変重要な局面を迎えていますけれども、一たん撤収しますと、直接アルカイダと関係があるかどうかという物証がないものですから、再度イラク攻撃が仮にあった場合に、非常にテロ対策特措法では派遣しづらいという法的問題もあって、今福田官房長官がおっしゃったような程度の理由でさらに延長しながらイラク情勢を視野に入れているのではないかという疑いを、私は持たざるを得ません。
 政府にお聞きしますが、今申し上げた自衛隊の艦船の行動範囲の拡大の問題、あるいは支援対象国をふやすのかどうか、現時点でどのように検討されているのか、簡潔に御説明をください。
福田国務大臣 まず最初に、こういうような活動をするために当然お金がかかる、そういうことについて国民の理解が得にくいというお話がございましたけれども、しかし、これは国際的な協力活動の一環なんですね。ほかの国も、それ相応の負担をしているわけでございます。我が国だけが負担していることでないということは、御理解いただけるものと思います。
 それから、十一月二十日以降の自衛隊の活動や基本計画の変更内容につきましては、我が国として主体的にその必要性を判断していく、こういうことになりますけれども、現在調整中でございます。確たることを申し上げられる、そういう段階ではございません。
今川委員 次に移りますが、これも先般の安全保障委員会の中でも質問があったようでありますが、今派遣されている自衛艦の修理に民間の技術者が、報道では十二人となっていましたが、政府の答弁では十七名でしたか、これは、テロ対策特措法上の根拠ではなくて、防衛庁設置法の第五条に基づいて派遣したんだというふうに答弁がありましたが、政府として要請した時期はいつなのかということが一つ。それと、対象企業の名前。報道では、石川島播磨重工とか具体的に出てきていますけれども、何社に、いつの時点で要請をしたのか、そこを御答弁ください。
大井政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のように、七月から十月にかけまして、護衛艦の「あさかぜ」、補給艦「はまな」、護衛艦「いなづま」、それから護衛艦「ひえい」につきまして搭載装備品に故障が発生いたしまして、乗員によっては修理が不可能、こういうことから、当該部位の修理技術を有する民間企業と契約を締結して、修理のための従業員が契約先企業から派遣されたということでございます。
 防衛庁がこれらの自衛艦の修理のために民間企業と契約を締結し修理を依頼しましたのは、護衛艦「あさかぜ」につきましては七月八日。それから補給艦「はまな」につきましては二つございますが、七月十六日と八月九日。それから護衛艦「いなづま」につきましては八月十二日。それから護衛艦「ひえい」につきましては十月二十六日でございます。これまで五回にわたり五つの企業と契約をいたしまして、修理のための従業員につきましては計十六名が関係の会社から派遣されたということでございます。
今川委員 次に、これも報道等によりますと、今回、政府は、この期間を延長するに当たって、米側からの要請もあるというふうに伝え聞いていますが、我が国のイージス艦であるとかP3Cを派遣するということを見送ったという報道がありました。
 これは防衛庁にお聞きしたいんですけれども、当然、今派遣されている護衛艦も米海軍との情報のデータリンクはできていますよね。イージス艦を派遣した場合に、集団的自衛権との絡みも含めて与党の中でもいろいろ御意見があるようでありますが、今現在アラビア海方面に派遣をされている護衛艦と米海軍との情報の共有の中身、レベル、そこと、イージス艦を仮に派遣した場合にどの程度の相違が出てくるのか、そこを御説明ください。
石破国務大臣 先生御指摘のとおり、今どきの護衛艦でデータリンクを持っていないなぞという船はごくごく一部でございまして、ほとんどの船がデータリンクを有しております。ですから、それは量的相違はありましても、データリンクが新しくなればなるほど能力的にはすぐれますが、量的相違ではあっても質的相違を来すものではございません。だから、イージス艦だから特にどうのこうのという議論にはならないだろうと思っています。
 他方、情報の共有と集団的自衛権の議論におきましては、野呂田防衛庁長官の答弁にございますように、例えて言いますと、何時何分の方向を撃て、こういうふうに言いますと、これは確かに集団的自衛権に触れる。議論の中にもございましたように、一体化と評価を受ける場合もあるであろう。しかし、その情報が、例えばレーダーを、フェーズドアレーであるか普通のレーダーであるか、そのことに私は相違があると思っておりませんで、そこで収集したいろいろな情報をリンクによってつなぐということにおいて特に何らかの問題が生じるのであろうかといえば、私は、それは質的な差をもたらすものではないというふうに考えております。データリンクというものをイージス艦だけが有しておるわけではないことは、先生御指摘のとおりでございます。
今川委員 今は、自衛隊の艦船は、主な任務というのが、実際やっていることは燃料の提供ですよね。今石破長官がおっしゃったとおり、例えば、イラクの問題はまだ予断を持たないというお話のようですから、ある国に対して、米軍が主力となって武力攻撃を加える、そこに不可欠の情報を提供してしまうと、当然、日本みずからが直接武力行使をしなくとも、やはり集団的自衛権を行使するという領域に入りますよね。どうですか。
石破国務大臣 これは、イラクの場合を前提に物を申し上げることはいたしません。それは先ほど来お話を申し上げるとおりでございます。
 一般論として申し上げました場合に、では不可欠な情報とは何かということでございます。それが不可欠であるのかどうなのかということは、それは例えばくるくるとレーダーを回す、あるいは電波を発射する、そのことによって得られたものをリンクで伝えるということが不可欠であるかどうかによって集団的自衛権に触れるかどうか、そういう問題ではないであろうというふうに思います。
 これが、わざわざ情報をとり、そしてまたそのことに何時何分の方向を撃てというような価値判断を加えて情報を提供いたしました場合には、それは武力の行使そのものではなくても一体として評価をされる場合があるということでございますが、常態的に拾っております情報をリンクによって伝えた、そのことによって集団的自衛権になるという論理必然関係には立たないと思っております。
今川委員 時間が来てしまいましたから、最後に一点だけ。
 この間の石破長官の御答弁の中で、いわゆる米軍と自衛隊との間の作戦指揮統制と戦術指揮統制ということで、これは少なくとも我が国の自衛隊の概念の中にはないという趣旨のことをおっしゃった。ところが、前の国会だったと思いますが、中谷前長官は、軍事上は米軍の指揮下に入るのが常識なんだけれども、我が国としては主体的に行動をしているんだという答弁になっているわけですね。答弁の趣旨が若干違うんです。そういった意味で、この一年間インド洋方面に自衛艦が派遣されて、いろいろな新聞報道を、断片的ですけれども、ずっとチェックをしてみますと、やはり当時派遣された自衛隊の制服のトップあたりは、米軍との情報の共有化というのが非常に不便であるという報道があるものですから逆説的な聞き方をしているんですけれども、そういう意味で、集団的自衛権のことを十分頭に置きながら結構デリケートな判断をしているのかなという思いがあったものですからお聞きをしているんです。情報の共有、提供ということを、もう一度。
石破国務大臣 先生が今のお話の中でお触れになりましたように、本当に情報の共有ができなくて非常にやりにくいなということがある、そういう発言があるということは私は報道等々で承知をいたしております。
 ただ、この間申し上げましたのは、そういうような概念が我が自衛隊においてはない。つまりアメリカで、ちょっと言葉はごめんなさい、正確には覚えておりませんが、アメリカで言われておるようなそういう指揮命令系統に該当するようなものが私どもの自衛隊にはありませんということを申し上げたわけであります。
 今、中谷前長官のお話でございますが、今回はイギリス、フランス、ロシア、イタリア、オーストラリア、各国、軍を派遣しておりますが、連合軍のように一人の指揮官のもとに正式な形で各国が入っているかといえば、調整型で独自の支援を行っている、それは当然よく話し合いをしますので調整がとれた行動であって、今回の場合には一つの軍隊で行っているとは言えないようなレベルではないか。実際に今インド洋で展開をされておるものは、厳密な指揮統制のもとにあるというよりも、こういうような調整型で行われておる、そういうような状況ではないかというふうに思っておりまして、それが日本の場合に、アメリカで言うようなところの指揮統制の概念がそのまま用いられるものではない。
 この辺、ちょっともう一度整理をいたしまして、前長官の答弁との整合性をとってまいりたいと思っております。十分なお答えになりませんで、申しわけございません。
今川委員 時間が参りましたので、これで終わります。
鳩山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十三分散会


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