衆議院

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第10号 平成15年5月14日(水曜日)

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平成十五年五月十四日(水曜日)
    午後零時三十一分開議
 出席委員
   委員長 鳩山 邦夫君
   理事 木村 太郎君 理事 久間 章生君
   理事 中谷  元君 理事 浜田 靖一君
   理事 前原 誠司君 理事 渡辺  周君
   理事 田端 正広君 理事 工藤堅太郎君
      浅野 勝人君    荒巻 隆三君
      岩屋  毅君    臼井日出男君
      奥山 茂彦君    梶山 弘志君
      金子 一義君    金子 恭之君
      菅  義偉君    中本 太衛君
      中山 正暉君    西川 京子君
      萩山 教嚴君    林 省之介君
      原田 義昭君    松島みどり君
      森岡 正宏君    山口 泰明君
      山本 明彦君    吉川 貴盛君
      吉野 正芳君    伊藤 英成君
      大島  敦君    大谷 信盛君
      大畠 章宏君    桑原  豊君
      玄葉光一郎君    首藤 信彦君
      末松 義規君    鈴木 康友君
      筒井 信隆君    中村 哲治君
      平岡 秀夫君    赤松 正雄君
      上田  勇君    中塚 一宏君
      樋高  剛君    赤嶺 政賢君
      木島日出夫君    今川 正美君
      重野 安正君    井上 喜一君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   議員           平岡 秀夫君
   議員           前原 誠司君
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   外務大臣         川口 順子君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   政府参考人
   (警察庁長官官房審議官) 芦刈 勝治君
   政府参考人
   (消防庁長官)      石井 隆一君
   衆議院調査局武力攻撃事態
   への対処に関する特別調査
   室長           小倉 敏正君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十四日
 辞任         補欠選任
  近藤 基彦君     金子 恭之君
  菅  義偉君     梶山 弘志君
  大島  敦君     中村 哲治君
  川端 達夫君     鈴木 康友君
同日
 辞任         補欠選任
  梶山 弘志君     菅  義偉君
  金子 恭之君     近藤 基彦君
  鈴木 康友君     川端 達夫君
  中村 哲治君     大島  敦君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第八七号)
 武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第八八号)
 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第八九号)
 安全保障基本法案(一川保夫君外一名提出、衆法第一四号)
 非常事態対処基本法案(一川保夫君外一名提出、衆法第一五号)
 緊急事態への対処及びその未然の防止に関する基本法案(前原誠司君外三名提出、衆法第一八号)


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     ――――◇―――――
鳩山委員長 これより会議を開きます。
 第百五十四回国会、内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び内閣提出の三法案に対する久間章生君外五名提出の各修正案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案に対する前原誠司君外一名提出の修正案並びに一川保夫君外一名提出、安全保障基本法案、非常事態対処基本法案及び前原誠司君外三名提出、緊急事態への対処及びその未然の防止に関する基本法案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 去る四月三日、久間章生君外五名から提出されました武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案に対する修正案について、提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鳩山委員長 御異議なしと認めます。よって、撤回を許可するに決しました。
 次に、去る四月三十日前原誠司君外一名から提出されました武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案に対する修正案について、提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鳩山委員長 御異議なしと認めます。よって、撤回を許可するに決しました。
    ―――――――――――――
鳩山委員長 この際、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案に対し、久間章生君外九名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守新党の四派共同提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。久間章生君。
    ―――――――――――――
 武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
久間委員 ただいま議題となりました武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案に対する修正案について、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。
 修正の第一点は、武力攻撃事態の定義に関するものであります。
 現在の法律案では、武力攻撃事態については、武力攻撃が予測されるに至った事態を含めて包括的に定義していることから、事態の緊迫度に応じた対処措置の違いが法律案上わかりにくいという指摘や、武力攻撃のおそれと予測の違いがわかりにくいという指摘がなされたところであります。
 このような指摘を踏まえ、修正案では、現在の武力攻撃事態から、いわゆる予測を切り離して事態を二分し、それぞれの事態について、対処の基本理念を明らかにするとともに、対処基本方針に記載すべき重要事項を列記することとし、また、武力攻撃のおそれと予測の定義をそれぞれわかりやすいものにすることとしたところです。
 修正の第二点は、武力攻撃事態への対処における基本的人権の保障についてであります。
 基本的人権の保障については、現在の法律案第三条において、武力攻撃事態への対処に関する基本理念の一つとして規定していますが、その考え方をより具体的に規定すべきという指摘がなされていたことを踏まえ、日本国憲法第十四条等の規定は最大限尊重されなければならない旨の規定を盛り込んだところであります。
 修正の第三点は、国民への情報提供についてであります。
 武力攻撃事態において、政府が国民に対して適切な情報提供を行うことは極めて重要であることから、武力攻撃事態への対処に関する基本理念の一つとして、現在の法律案第三条に、武力攻撃事態における政府による適時適切な国民への情報提供に関する規定を盛り込んでおります。
 修正の第四点は、武力攻撃事態の認定についてであります。
 現在の法律案第九条では、内閣が閣議決定を行い、国会に承認を求める対処基本方針に定める事項として、武力攻撃事態の認定、武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針及び対処措置に関する重要事項を定めることとしております。
 これに関して、事態の認定に当たっては、その認定の前提となった事実を記載すべきという指摘がなされたことを踏まえ、武力攻撃事態の認定に加え、当該認定の前提となった事実を対処基本方針に定める内容としたところであります。
 修正の第五点は、国会の議決による対処措置の終了についてであります。
 現在の法律案では、対処措置の終了については、政府の責任において行うとの趣旨から、国会の関与は規定されていませんでしたが、対処措置の終了について国会の関与を強めるべきという指摘がなされたことを踏まえ、法律案第九条において、内閣総理大臣が対処基本方針の廃止につき閣議の決定を求める場合として、「国会が対処措置を終了すべきことを議決したとき」を加えたところであります。
 修正の第六点は、事態対処法制の整備と、法律案の施行期日に関するものであります。
 現在の法律案第二十二条では、事態対処法制の整備は法律施行後二年以内を目標として行うこととされていたものを、速やかに行う旨の規定に改めたところであります。
 また、これに関連して、武力攻撃事態対策本部長の権限、内閣総理大臣の権限等を規定する法律案第十四条、第十五条及び第十六条について、別に法律で定める日から施行することとしたものであります。
 修正の第七点は、国民の保護のための法制の整備に関連するものであります。
 修正案では、国民の保護のための法制に関し、広く国民の意見を求め、その整備を迅速かつ集中的に推進するため、内閣に、国民保護法制整備本部を設置する等の規定を盛り込んだところであります。
 修正の第八点は、武力攻撃事態以外の緊急事態対処のための措置に関連するものであります。
 政府は、武力攻撃事態のみならず、武装不審船事案、テロなどの事案を含めて、国家の緊急事態にすき間なく対処することとしていますが、現在の法律案では、武装不審船事案やテロなどの新たな脅威に対する政府の対応が具体的に明確でないという指摘がなされたところであります。
 このような指摘を踏まえ、法律案第二十四条を次のように修正することとしました。
 すなわち、第一に、武装不審船事案や大規模テロなどの新たな脅威への対処に取り組む旨を明示しています。第二に、これらの事態に対処するために必要な施策の内容として、情報の集約、分析、評価のための態勢の充実等を明示しています。第三に、これらの事態への対処という課題の緊要性にかんがみ、速やかに必要な施策を講ずべき旨を明示しています。
 修正案の第九点は、緊急事態への対応に関する組織についてであります。
 緊急事態への対処の重要性についての指摘を踏まえ、附則に、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態への迅速かつ的確な対処に資する組織のあり方について検討を行う旨の規定を盛り込んだところであります。
 以上が、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案に対する修正案の提案理由及びその内容の概要でございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
鳩山委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
鳩山委員長 これより各案及び各修正案を一括して質疑を行います。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官芦刈勝治君及び消防庁長官石井隆一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鳩山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
鳩山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玄葉光一郎君。
玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。
 昨年、この委員会の初日に、私は質問に立たせていただきました。そのときに、冒頭申し上げたのは、緊急事態に関する法整備は必要だ、ただ問題は、政府案のできばえだ、こういうことをあのときに申し上げたわけであります。政府案を見ますと、例えば基本的人権に関する規定が十分でなかったり、あるいは民主的統制に関する規定が十分でなかったり、さまざまな問題点があったわけであります。同時に、質疑、審議の中でもそういうことが浮き彫りになってきたわけであります。
 そこで、今回、私たち民主党としては、具体的に対案という形でお示しをいたしました。今回、与党三党と民主党が修正案で合意をしたということは、私は率直に言ってうれしいという思いであります。今回の修正案は、百点満点では私はないと思う。ただ、八十点ぐらいの合格点をつけることができるんじゃないかというふうに思っています。
 うれしいというふうに申し上げたのは、ここにもいらっしゃいますけれども、昨年、伊藤英成委員と一緒に理事をさせていただいた立場もあります。また同時に、実は、今思えば、今の民主党ができる前の古い民主党のときに、私は当時、与党を三年経験した後、野党になったんですね、旧民主党で外務の部会長を私が担当させていただくことになりました。ここにいらっしゃる前原委員が安保の部会長という立場でありました。そのときに、我々は、これから安全保障という国の根幹にかかわる議論、これを神学論争に終わらせないで戦略論争にしていこう。国の中で安全保障の根幹について大きく対立するということは、日本の国益を考えたときによくないだろうということを思いながら、実は我々活動してきたわけであります。そういう意味で、私は一定の感慨があるということを申し上げたわけであります。
 今回、民主党の主張をかなりの部分受け入れていただいたというふうに思っていますけれども、総理としては、これまでの修正案ができ上がる一連の経緯、あるいは今回の修正案に対してどのような考えを持っておられるか、まずお伺いをしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私は、かねてより、国家の基本的な問題、いわゆる安全保障に関する問題とか外交政策に関する問題、この点につきましては、与党でも野党でも、ある程度共通の意識を持った方が望ましいという立場に立っておりました。だからこそ、昨年、この有事関連法案を提出した際にも、できれば、できるだけ多くの政党から賛成を得ることができるような状況で成立させてほしい、与党の皆さんにもそのような要請をしていたわけでございます。
 そのような経過を経て、この一年間、真剣な論議が積み重ねられてまいりました。そして、昨日、与党三党、そして民主党、菅党首初め幹部の皆さんと協議をした結果、合意を見たということは、今までの与野党対決の法案と言われていたこの有事関連法案を見た場合、画期的なことではないか。
 特に、安全保障の問題につきましては、過去の経緯を見ましても、日本の防衛、安全をどのように確保するかという問題については、常に与野党激しい対決の形が当たり前ではないかと見られていた状況の中で、現在の国際情勢を考えながら、まず日本の国民の安全、国家の平和と独立をどのように図っていくかという点については、やはり対決ばかりではいかぬ、共有の認識を持とうではないかという雰囲気の中で、このような合意がなされたということは望ましいものだと思っております。
 今後、私は、どの政党が政権をとろうとも、国家の安全保障を図るという場においては、党利党略よりも、国家の利益をどのように図っていくか、国民の安全をどのように確保すべきがいいかという観点から論じるという点において、野党でありながら民主党としても、真剣にこの問題について、是々非々で臨もうという態度を示されて、お互い譲るべきは譲ろう、取り入れるべきは取り入れようという形で進展を見て、今日の経過に至ったということに対しましては、敬意を表したいと思います。
 関係者の間で、連日連夜にわたりまして熱心な協議が行われた。そういう中で、このような形でお互い歩み寄りができた。そして、安全保障の問題につきましても、今後共通の土俵の立場に立って議論ができる場が確保されたという意味において、大きな前進ではないかと思いまして、努力された方々、与野党の皆さんに対しまして、敬意を表したいと思います。
玄葉委員 この委員会でもよく例として出されましたけれども、ドイツなどは、ドイツ基本法あるいは非常事態法をつくるときには、超党派合意ということでございました。今、総理がおっしゃいましたけれども、まさに、どちらが与党であっても野党であってもということじゃないかというふうに思います。
 後ほど法律については質問をさせていただきますが、その前に、一つ、今回の緊急事態に係る法制が、国民の理解という意味で、私は広がっていった側面があると思うんですね。その背景の一つは、一つではありますけれども、やはり北朝鮮情勢というのは否めないのではないかというふうに思いますので、北朝鮮の問題に対する日本の政府の取り組みについて、一言議論したいというふうに思います。
 まず、日本の政府の北朝鮮問題に対する対処方針、基本的な考え方というものを伺いたいと思います。
川口国務大臣 総理が、昨年九月、ピョンヤンに行かれて、日朝平壌宣言を署名なさいました。我が国としては、日朝平壌宣言に従いまして、交渉によって核問題を含む安保問題、そして拉致問題、そういった日朝間の諸懸案を包括的に解決をしまして、北東アジア、この地域の平和と安全に資する形で日朝国交正常化を実現していくというのが基本的な方針でございます。これに変わりはございません。
 そして、このことが北朝鮮の利益になるのだということを北朝鮮側に理解をさせるということが重要であると考えております。
 具体的に進め方としましては、今後、二国間、あるいは近隣の韓国、中国、ロシア、そしてもちろん米国といった国々との連携をとりながら、また国際機関といったところとも協力をしながら外交努力をしていくということによりまして、北朝鮮が国際社会の責任ある国として行動をするようにやっていきたい、働きかけていきたいと考えております。
玄葉委員 確認の意味を込めてお聞きをしたいんですけれども、日本の政府としては、この北朝鮮問題のゴールの設定といいますか、望むべきシナリオというものをどういうふうに描いて外交を積み重ねておられるのかということであります。
 例えば、例えばですけれども、南アフリカのように北朝鮮が核を廃棄して、拉致の問題も解決をされて、中国なんかを参考にして改革・開放に進んでいく、そういう北朝鮮になってもらうことを望むべきシナリオとして、外交交渉として進めているのか。あるいは、例えばかつての東ドイツのように、いわば、こういう言い方が適当かどうかわかりませんけれども、自然崩壊していくような形、そして、朝鮮半島でいえば韓国に吸収されていくような姿、そこには体制の転換というのがあるわけですね。
 前者なんかは、今の体制を是とするかどうかはともかくとして、今の体制のままの政策転換を基本的に考えているということだと思いますけれども、後者はそうじゃないですよね。今の体制は壊れるわけですよね。まさか、恐らく、軍事オプションといいますか、軍事力行使によってハードクラッシュといいますか、北朝鮮を崩壊させるんだ、こういう路線もオプションとしてあるのかどうかわかりませんけれども、どういうゴールの設定をされているのかなということなんですが、総理、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 まず、ただいま外務大臣が話されたように、昨年、北朝鮮と日本との間、あるいは金正日氏と私との間で交わされました日朝平壌宣言、これにのっとって日本と北朝鮮の国交正常化に向けた努力を行うということでありますが、その際、今玄葉議員御指摘の、現体制を壊さないとだめなのかという議論と、現体制のままで関係正常化を望むのかという議論は、今までたびたびいろいろな場面で議論されてきたところであります。
 日本としては、現体制が一日も早く国際社会の責任ある一員になってもらいたい、そういう前提で交渉を進めております。これは、拉致の問題、核の問題、過去、現在、将来の問題、これを包括的に、総合的に解決して初めて日朝国交正常化は成るんだという、これが日朝平壌宣言でありますので、その方向でこれからの話し合いを進めていきたい。
 だからこそ、イラクに対する対応と北朝鮮に対する対応は違うんだということを、私は各国首脳にも話しているところでございます。この問題につきましては、アメリカのブッシュ大統領を初め各国とも理解をし、支持を表明しております。
 今後とも、私は、一日も早く現在の北朝鮮の指導者が国際社会から孤立せずに、日朝平壌宣言にのっとって多くの懸念を払拭する、そして、友好関係を各国と保持することが北朝鮮にとって最も利益になるんだということを粘り強く、日本のみならず関係諸国とともに働きかけていくことが重要だと思っております。
玄葉委員 このゴールの設定で、私、いろいろそれこそ手法が変わってくると思うので、あえて確認の意味で、そうだろうというふうには思いましたけれども聞いたんです。
 ただ、考え方によっては、いや、あくまで自然崩壊を考えていた方がコストが安くて済むんだという考え方だって現実にあるのはあるわけですし、一つの有力なオプションとなり得るわけであります。そのためには逆に正常化を急がない方がいいという人だっているわけで、まさに、さっき戦略論争と言いましたけれども、そこで考え方が変わってくるわけです。
 そこで、私、まだ少しわからないのは、先ほど外務大臣が平壌宣言ということを言いましたけれども、平壌宣言ということをいつも総理もおっしゃるわけですね。
 ただ、北朝鮮を見ていると、多くの人が指摘をしていますけれども、例えばウラン濃縮プログラムを、みずからその追求を認める、こういうこともあった。あるいはイエメンにミサイルを輸出した、こういうこともあった。あるいはNPT脱退、こういうこともあった。もっと言えば、どうも核の再処理、燃料再処理が完了したなんという情報もある。
 こういうふうになってくると、あの平壌宣言を読みましたけれども、これは、少なくとも宣言に反することというふうにだれが見ても言えるのではないかと思いますけれども、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 これは、今御指摘のように、日朝平壌宣言は破綻しているじゃないかという議論があるのも事実でございます。しかし、過去の北朝鮮側の言動を詳細に検討してみますと、表面的な言いぶりと、実際考えていることといいますか真意、こういう問題について慎重に見きわめる必要があるというのも、私は必要ではないかと思っております。
 今、黙っていれば北朝鮮の現体制は崩壊する、あるいはそのときを待った方がいいのではないかという議論のあるのも事実でございますが、これは、それぞれの考え方はありますが、崩壊した後、ではどういう体制が生まれるのか、どういう状況が生まれるのかということを考えると、なかなかはっきりとした見方も出てまいりません。
 私どもとしては、この日朝平壌宣言につきまして誠実に履行するように働きかけていかなきゃならないと思っておりますが、一方では、もう既に誠実に履行していないじゃないかという議論があるのも承知しながら、この日朝平壌宣言を守ることが北朝鮮にとって最も利益になるんだということを、日本のみならず、韓国、アメリカと緊密な連携のもとに、中国やロシア、あるいは関係国際機関とも協力していくことが望ましいんだということについては、韓国も、アメリカも、また中国も、ロシアも、またEUの諸国も、この私の説明に対して理解と支持を表明しております。
 私は、既に破綻したからもう御破算だという考えではなくて、この問題につきましては、まだ希望と期待を持って北朝鮮に働きかける余地は十分にあるのではないか。また、それが現実的ではないかというふうに考えておりますからこそ、既に日朝平壌宣言は破綻しているからもうやめろという議論にはくみせず、この誠実な履行に向かって働きかけていく必要がある。表面の北朝鮮側の言いぶりあるいは挑発に乗らないで、冷静に慎重に対処していくことが必要だと思います。また、これが、今の日本の北朝鮮に対する政策として、政府の一致した見解であるということを御理解いただきたいと思います。
玄葉委員 一度両首脳で交わされた紙をいわばツールにするというかてこにするというその意図は、私もわからないではないんです、率直に言いまして、そういう現体制の政策転換を求めていくという路線をとるとすれば。
 ただ、別に言質をとりたいわけじゃないんですけれども、先ほど申し上げたような北朝鮮の行動が平壌宣言に明白に違反している、これはそうですね。
小泉内閣総理大臣 これもはっきり言えないんですね。確認するすべというものがまだ明らかでない。それぞれ言いぶりがあります。破綻しているではないかということはありますが、これまたはっきり言えないところが、これまた難しいところなんですよ。
 そういうところも、微妙な言い分なりニュアンスがありますので、その辺は各国とも慎重に真意というものを分析調査しなきゃならぬ。そこが私が言っている、表面的な言いぶりと真意というものを十分に調査分析しなきゃならないと言っているところでございます。
玄葉委員 さっきも申し上げましたように、それをツールにするんだというその意味は、私はよくわかるんですよ、そういう路線で行くんだったら、そうだろうなと。
 ただ、別にそこは憶病にならずにおっしゃったらいいと私は思うんですよ。平壌宣言は、双方は、国際法を遵守する、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認したと。同時に、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」と。さっきの行動は、これはどう考えても明白な違反だ。そうじゃないですか。そこはおっしゃったらいいと思いますよ。
小泉内閣総理大臣 その辺が、たびたび言っておりますように、表面的な言いぶりと実態というものをよく見きわめなきゃいかぬ。その辺は、今の政府の立場というものは先ほども申し上げたとおりでございますので、ぎりぎり詰めますと、相手を信頼できるのかできないのかという問題になってきます。これについては、前にも答弁いたしましたが、信頼できるできないという問題以上に、難しい体制であると。難しい国でありますけれども、交渉しなければならない相手であり、話し合いしなければならない政府であるということも、御理解いただけると思います。
玄葉委員 余りこの問題に時間を割きたくないんですが、ただ、やはり今申し上げた、例えばNPTの脱退なんというのは明らかなんですよね。そう思いますが、きょうは法律の方が優先ですから。
 ただ、もう一つだけ。そういう路線を行くのであれば、選択するのであれば、これはもう妥協せずに、かつ対話を続ける、辛抱強く、粘り強く。確かに、そういう手法しかないんですよね。ないんです。それは対話というのは、さっきから総理がおっしゃっているように、中国、ロシアを通じてでもいいんですが、こっちに向かえば解決に向かうんだという出口を示してあげるということなんだろうというふうに思いますし、妥協せずというのは、それは正常化なしには経済協力はないよ、核の問題、拉致の問題なしには正常化はないよ、こういうことだろうというふうに思います。
 ただ、そこに至る過程の中で、政策のいろいろなアローアンスというか許容範囲というのは出てくるんだろうというふうに思うんですね。その中に、例えば経済制裁なんかをする、こういう議論も出てくるわけでありますけれども、この件についてはいかがですか。
川口国務大臣 経済制裁についてお答えする前に、先ほどNPTのお話がございましたけれども、今国際社会で、北朝鮮がNPTを脱退した、これがきちんとそういうことであるということについては、疑義を持たれています。というのは、脱退の手続において、北朝鮮はすると言ったんですけれども、これは手続が正当に適切にされたかということが問題となっているということでございます。
 それから、経済制裁ですけれども、経済制裁については、これは今、平和的に問題を解決しようということで外交努力が行われているわけでございまして、この段階で我が国として経済制裁を北朝鮮に対して実施するということは考えておりません。いずれにいたしましても、状況の推移を見ながら、これについては、関係国とも緊密に連携をとりながら常に検討を行っていきたいと考えております。どのような対応をするかということについては常に検討を行っていきたいと考えています。
玄葉委員 これは経済制裁にもいろいろな段階があると思うんですよね。例えば、姿勢を示すという段階と、実際に発動する、実際に制裁を行うという段階はまた違う。制裁の中身だって、いろいろあるわけですよね。これは、余り話し合いだ、話し合いだとばかり言っていると、逆に北朝鮮に対して誤ったメッセージを送る可能性だって、あり得るだろうというふうに私は思うんですね。
 この経済制裁の姿勢を示すというオプション、これは将来あり得ますか、総理。
川口国務大臣 委員のおっしゃっている問題意識というのは私も理解をいたします。これは、対話を続けていくときにどのようなメッセージを北朝鮮に対して送るということが、対話を続けていって、対話を通ずる問題解決につながりやすいかという発想であるかと思います。
 ただ、先ほど申しましたように、経済制裁については、今国際社会のどの国も、経済制裁ということについて議論をしている国はないわけでございまして、今後、事態の推移を見ながら、国際社会の関係国と緊密に連携をとりながら対応をしていくというふうに考えております。将来どのような形になるかということについて今の時点で予測をするということは難しいかと思います。
玄葉委員 私個人の意見は、私は、姿勢を示すということは将来オプションとしてあっていいんだろうと。もちろん、北朝鮮が制裁は戦争とみなすというふうに言っています。これはおどしかどうかわかりません。だれもわからないと思いますが、だから慎重は要するんですけれども、私は、いろいろな段階があるんだろうということをよく踏まえて対応した方がいいんじゃないかと。総理、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 経済制裁という問題については今外務大臣が答弁したとおりでありますが、過去のいろいろな不審な行動につきましては、厳正に対応しなきゃいけないと思っております。また現在も、そのような法に触れるような問題があるかないかということにつきましても、注意深く、配慮しながら、安全確保の面におきましても、日本としては、より一層必要な対策を打っていかなきゃならないという姿勢をより鮮明に出しておりますので、これが私は必ずしも経済制裁かというと、今の時点では、必ずしも経済制裁が適切だとは思っておりませんし、こういう点につきましても韓国とアメリカと緊密に協議を行っておりますので、有効な手だては何か、北朝鮮に対して働きかけていく際に有効な手だては何かという観点から、私は、十分に日本の政府としても検討する必要があると考えております。
玄葉委員 総務大臣、どうぞ、時間がなくなりそうなのでお帰りになっていただいていいです。――では、時間までいてください。何か、十分から二十分の間に質問してくれということでありましたので。
 それでは、時間がなくなりますので法案の質疑に入りますけれども、昨年のこの初日に、私、内閣の情報体制について問うた記憶がございます。私は、危機管理というのは八割はある意味で情報で決まるんじゃないかというふうに思っていまして、つまり情報の収集、分析、活用、伝達、こういうことが十分なされないと、危機管理、対応できないだろうというふうに思います。総理は強化していくということで、去年のこの時期でありますけれども、お答えになりましたけれども、この一年でどう強化されたんですか。
福田国務大臣 御指摘のとおり、情報というのは極めて大事である、こう思います。したがいまして、内閣の情報収集、分析、伝達の体制につきましては、その責任部署であります内閣情報調査室の体制強化を図ってまいりました。
 また、情報を担当する各機関、これは政府の機関でございます、例えば防衛庁とか外務省とか、そういうところの情報を内閣のもとで相互に連携を保つようにするということについて大変意を用いてまいりました。
 そういうような情報を収集、分析いたしまして、内閣情報会議または合同情報会議等におきまして総合的な評価、分析を行って、重要なものについてはその結果を直ちに官邸に報告する、そういうような体制をとっております。
 また、本年三月には、外交防衛等の安全保障及び大規模災害への対応などの危機管理のために必要な情報を収集することを主な目的とした、我が国が自主運用する情報収集衛星二機を打ち上げる、こういうこともしたこともございます。この衛星によりまして、一般論として申し上げれば、例えば、弾道ミサイル基地とか艦艇、航空機等の状況とか地震などの災害、また海外における邦人保護に必要な情報、そういうようなことについても情報入手が可能になるというようなこともございます。
 そんなことで、いろいろな面において情報収集、分析、そしてまたそれの活用というものは考えておるところでございます。
玄葉委員 私は、正直まだまだ十分じゃないと思っています。こういう内閣の情報体制をしっかりさせるためにも、実は民主党は、危機管理庁というものをつくっていこうではないか、これはもちろん一つの理由ではありますけれども、提案をしているわけであります。
 率直に言って、日本の危機管理の大問題点の一つは、結局、危機管理を統括するというか総括する省庁がないということではないだろうかというふうに思いますけれども、民主党の提案者といいますか、修正案提出者の民主党の委員にお聞きをしたいのですけれども、この危機管理庁を何ゆえそれほど重要視したのかということをお聞きしたいと思います。
渡辺(周)委員 今の御質問にお答えしますけれども、危機管理庁がそもそもなぜ必要か。
 とにかく、とりわけ大規模自然災害等は過去何回もございました。その中で指摘をされることが初動対応のおくれ、あるいは機動性に欠ける、あるいはいわゆる各省庁ごとの縦割り行政の弊害、それによって相互連絡の不都合や機能が重複しているということが指摘をされました。それゆえに、民主党の提出の基本法案の中では危機管理庁の創設を訴えてきたわけでございますし、また、アメリカのFEMAが九・一一テロの際もどのような形で事態の収束に対応できたかということをかんがみながら、この危機管理庁の創設というのは必要だろうと考えております。
 また、危機管理庁、新しい役所をつくることによって行政改革に逆行するのではないかというような御指摘もあるわけでございますけれども、先般のこの委員会での参考人質疑でも、既存の省庁あるいは現行の予算の中で、その役割ごとに一つの能力を集結する、機能を集結することによって行政改革につながるのではないかというような心強い参考人の意見もございました。その点につきまして、危機管理庁の設置ということは一つの概念として設けております。
 ただ、今回の修正案におきましては危機管理庁とは触れておりませんけれども、今般の交渉の中におきまして、「政府は、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態へのより迅速かつ的確な対処に資する組織の在り方について検討を行う」ということが合意され、法律の附則に規定されることとなりました。また、昨日の民主党菅代表と小泉総理大臣の党首会談の中でも、その精神を尊重するというような意見があったと伺っておりますので、この我々の考え方は反映されるものだろう、そのように確信をしております。
玄葉委員 委員会でも説明があったんですけれども、官房長官、内閣危機管理監というのがいるんだと。でも、そこで本当に全体の調整が十分できるのか。スタッフは何人ですか。たしか五十人ぐらいだと思うんですけれども、そのぐらいの状況ではないだろうかというふうに思うんですね。
 これは総理も聞いていただきたいんですが、危機管理全般について常に緊張感を持って専門的に対応する政治家としての責任者、国務長官というのが私は必要じゃないか。官房長官は、総合調整するテーマは全部官房長官なんですね。例えば男女共同参画型社会、どうやってつくるか、みんな官房長官なんですよ。常に危機管理に頭が行くわけじゃないんですね。とすれば、そういう組織を真剣につくっていかなきゃいけないんじゃないか。
 これは、私個人の意見では、例えば消防庁とかそういうものをあわせていったらいいと思いますよ。内閣府の災害対策室とか今申し上げたような危機管理室とか、そういうものをあわせて組織をつくっていけばそんなに行革にも反しないわけですから。総理、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 緊急事態にいかに的確に対応するかというのは政府の重大な責務だと私も考えております。その的確に対応するための組織としてどういうものがいいのかという御議論だと私は思います。
 現在も、官房長官は繁忙長官と言われるように、いろいろな問題に対応して、一つの危機だけには対応できないだろうという御指摘だと思いますが、常に官房長官も私も、あらゆる緊急事態には即座に対応できるような注意はいかなる場合にも持っておかなきゃならないという意識で実際の日常の業務に当たっております。
 しかしながら、あるべき組織としても考えていいのではないかという御議論をいただいておりますので、今後政府としては、このような体制を構築する中で、中核をなす組織をどのように持つべきかということにつきましては、今御指摘の点も踏まえまして十分に今後検討してまいりたいと思っております。
玄葉委員 次に、基本法のことでありますけれども、我々、基本法を提案させていただいたわけでございます。それは最も大きな意味は、自民党がお招きをした参考人もこの場の参考人質疑でおっしゃっていましたが、憲法に緊急事態の規定がない、これはやはりいかがなものかということを言っていました。我々もそういう観点が一つはあります。あるいは、実際に対処することになる各個別法の全体の境界整理というか整合性といいますか、そういうものも図っていく、そのためのまさに理念法としての基本法というものをやはりつくるべきなんだろう、考えていくべきなんだろうというのが我々の主張でありますけれども、昨日の覚書等でも幾つか反映されているわけでありますが、総理としての基本法をつくるということに対してのお考えをお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 ただいま玄葉議員が言われた基本法についての問題につきましては、これまで与党と民主党との間での協議でも非常に論議になった、また重点的に配慮がなされた問題であります。昨日の党首会談におきましてもこの問題についても話が出まして、これについては政府としても真剣に検討していくということで、今私ども政府としてはっきり申し上げたいと思いますが、今まで、私はこれまで、国と国民の安全を確保するため、武力攻撃事態を初め、いかなる緊急事態にも的確に対応できる体制を構築することは政府の当然の責務であると考えてきたところであります。与党と民主党との間で検討がなされることとなったことは、私としては高く評価しております。
 今後、与党と民主党との間で緊急事態に係る基本的な法制について具体的な検討が進められる過程では、既存の法令との関係などの問題について国民にわかりやすい成果が上がるよう、十分な議論を尽くしていただきたいと思います。
 緊急事態に係る基本的な法制が必要であるとの考え方は十分共有するものであり、今後政府としても、今回の合意にある必要な措置について真摯に検討してまいりたいと思います。
玄葉委員 次に、基本的人権、これは民主党がとても大切にしてきた主張でありますが、今回、我々の入念規定といいますか、念を入れる規定が修正案の中に入ったということでありますけれども、それについて、特に民主党の提案者の方から、今回の修正で基本的人権に関する規定がどのように盛り込まれて、それをどう評価するか、お伺いをしたいと思います。
平岡委員 民主党は結党以来、緊急事態に対する対処に当たっては民主的統制とそして基本的人権の確保ということが極めて重要である、そういう姿勢に立ってまいりました。今回の事態対処法に対する修正案、そして対案としての基本法案を提示するに当たっても、はるかに詳細に基本的人権に係る規定を盛り込んでおります。緊急時における人権保障というものを重視しているということであります。
 その理由は、委員も御案内のように、緊急事態においてはとかく人権侵害の危険性が生じやすい状況になっているというようなことで、緊急事態においてともすれば侵されるおそれの強いものについて、事態に応じた表現ぶりで入念的にその保障をうたうとともに、権利の救済について必要な事項を明記するということで、具体的には六項目にわたって明記をしたところでございます。
 今回の与党三党そして民主党との修正協議の中で、今回の武力攻撃事態対処法の中に、憲法第十四条、法のもとでの平等、十八条、意に反する苦役の禁止、十九条、思想及び良心の自由、そして第二十一条、表現の自由、その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならないという規定を盛り込むことで合意をしたところでございます。さらに、それ以外の項目についても、民主党、六項目あったということを先ほど申し上げましたけれども、これから行われます国民保護法制で措置されるということが合意されているということであります。
 我々としては、これから行われる国民保護法制あるいは基本法の制定の中で必要な事項について十分に盛り込んでいくよう検討してまいりたいというふうに思っているところでございます。
玄葉委員 修正案を提出された与党の委員にもお伺いしたいんですけれども、きのうの覚書のところで、武力攻撃事態対処法三条四項に関し、民主党が修正を求めている事項については国民保護法制で措置をする、こういうことを覚書で交わされたということでありますけれども、その事項というのは、これは民主党が要求していた六項目すべてというふうに理解してよろしいんですか。
久間委員 民主党さんが書いている項目ごとにという意味ではございませんけれども、民主党さんが求めておられました内容を国民保護法制をつくるときに検討したらいいと。特に、箇条書きされております五項、六項については、これは政府の方もこれまでの答弁で言っていますように、これから先、国民保護法制をつくるときにどのような補償措置といいますか、そういうことについては、適切な補償をするためには法律が必要であるというふうなことを答弁しておられるわけでございますから、国民保護法制のときにそれらもあわせて措置したらいい、そういう意味であのような書き方にしたわけであります。
玄葉委員 あと、民主党の委員にもう一つお尋ねしたいんですけれども、我々が大事にしてきた国会のコントロール、民主的な統制は、今回の修正案でどのように措置されましたか。
渡辺(周)委員 お答えいたします。
 国会の対処措置の終了できる旨でございますけれども、政府案では、対処措置につきまして、内閣総理大臣は、対処措置を実行する必要がなくなったと認めるときは、対処基本方針の廃止につき、閣議の決定を求めなければならないとあったところでございます。この対処措置というのは、武力行使はもとより、その他の公権力の行使を含むわけでございまして、国民の権利義務に関係することも多いわけでありますから、私どもとしては、国会の議決を契機として対処基本方針を廃止させる、この旨を盛り込むように主張してまいりました。
 今般の修正案におきまして、第九条四項に盛り込まれました。この点につきまして、与党協議で我々の主張が一〇〇%盛り込まれたというふうに判断をするところでございます。これによりまして、国会の議決によりまして内閣総理大臣が、対処基本方針の廃止について閣議の決定を求めることが義務づけられまして、対処基本方針を廃止する旨の閣議決定を経て廃止されることになる、国会での民主的統制が担保されたと我々は評価をしております。
 以上です。
玄葉委員 大急ぎになりますけれども、もう一つ、国会で担保していただきたいという意味で、与党の委員にお尋ねしたいんですが、先ほども、附則に、この法律は、公布の日から施行する。ただし、第十四条、第十五条及び第十六条の規定は、「別に法律で定める日から施行する。」こういうふうにあるわけでありますが、別に法律で定める日というのはどういう日なのか。国民保護法制が整備、施行される日のものを指すのか、明確にしていただきたいと思います。
久間委員 国民保護法制が一年以内に整備されるように、今度の附帯決議になっておりますが、それとあわせまして一日も早く十四条、十五条、十六条が施行されることが望ましいわけでありますから、一番早い国民保護法制の整備とあわせてこれは施行される、そういうような気持ちで別に法律で定めるということにしたわけであります。
玄葉委員 実はきょうは、きのうの夜、急遽時間が五十分と倍になったと言われて、ミサイルディフェンスの話とか、つまり着上陸作戦よりも恐らく蓋然性が高いであろうと思われるミサイルディフェンスとか、原発テロだとか、サイバーテロの質問を用意してきたんですが、時間が大分なくなってきました。
 ただ、ミサイルディフェンスの問題は、これはうちの党の中にもいろいろ議論がございます。現時点では、パトリオットというミサイルは弾道ミサイルに対しては対応できない、PAC3という新しいミサイルはそれに対して対応できるミサイルなんだということでありますけれども、このPAC3の導入について防衛庁長官としてどういうふうにお考えになっておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
石破国務大臣 これは、委員御案内のとおり、安全保障会議の議を経て決めるものでございます。ただ、PAC3単体としてではなくて、全体のシステムとしてどう見るかということだと思っています。
 パトリオットPAC3というのは、御存じのとおり、低層のミサイルを迎撃する、低層から迎撃するものであります。ですから、中層で、イージス艦に積みましたミサイルで中層のものを迎撃する、それでも撃ち漏らしたものをPAC3で低層で迎撃する、そういうような仕組みというものは考えられるのだろうというふうに思っております。
 どうすれば我が国にとって最も効果的なミサイルディフェンスであるのか、そして、それが幾らかかるのか、法的な裏づけはどうなるのか、そういうことを総合的に判断することになりますが、PAC3というものも、全体的な中でどういうふうに判断するかということだと思います。PAC3の導入というものを排除するということではなくて、そのことも念頭に置きながら、全体としてどういうことが一番望ましいかということが安全保障会議で判断されることになるというふうに承知をいたしております。
玄葉委員 もう時間がなくなりましたので、終わりますけれども、きょうの報道なんかを読みますと、民主党も修正案で合意して、ある意味では与党と同等の責任を負うことになるのではないか、こういう評価といいますか報道があるわけでありますが、もとより、そもそも我々、そういう責任を負う立場で議論しているわけでありますので、これからもそのような姿勢で議論いたしますが、当然その分といいますか、総理初め政府あるいは与党も十分耳をかしてもらって、よりよい案をつくるんだ、自分たちの案だけに固執しないという姿勢でぜひこれからも臨んでいただきたいということを申し上げて、私の質疑を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
鳩山委員長 次に、工藤堅太郎君。
工藤委員 自由党の工藤堅太郎でございます。
 総理が御出席をされて、恐らく当委員会最後の質疑ということになろうかと思いますので、幾つかお聞かせをいただいてまいりたいと思います。
 まず、国会承認、対処措置の国会決議による終了手続について、総理並びに修正案提出者にお伺いをしてみたいと思います。
 日本国憲法の三大理念の一つであります国民主権が国権の最高機関である国会であることは明らかであります。緊急事態、非常事態の際に、最高権力者、最高責任者による迅速な対応を行わなければならないということは言うまでもございません。よって、対処開始においての国会の関与は、できれば事前承認、緊急ならば事後になるのはある意味で当然でありますけれども、事態の成り行きに国会が関与することもまた当然である、このように思っております。よって、対処措置を国会の決議により終了させることができるということが必要であると主張してきたわけでありますが、今回の修正点について総理及び提出者の御見解をお伺いしておきたいと思います。
久間委員 今の議院内閣制では、国会がそのような終了の決議をする場合は、政府は当然のこととしてその前にもう終了する、そういう前提でございましたから、政府原案には入っていなかったわけであります。
 しかしながら、これまたやはり、国会の方がそういう決議をしたならばやめるのは当たり前じゃないか、そして現在の警察法にもそのような規定があって、治安を守るために布告が出されてましたときに、国会が決議したらやめる、そういう規定も現にありますから、やはりそれに準じた形でこのような規定を入れることの方がよりはっきりするだろうということで修正を考えたわけであります。
渡辺(周)委員 お答えをいたしますけれども、今般の与党との協議におきまして、私どもが主張してまいりました国会の関与、国権の最高機関である国会の関与ということがこのたびの修正条項の中に盛り込まれたということで、私どもとしましては、民主的統制が確保されるもの、いかなる事態においても、我が国における有事とされる事態においても、やはり国権の最高機関である国会の関与が認められたということで私どもは判断をし、またこの点につきましても国会が責任を負うという、大変崇高な使命を負ったものと確信をしております。
小泉内閣総理大臣 今回の修正案につきまして、武力攻撃事態への対処に際しては、国民の理解と協力を得た上で対処措置を実施する必要がある、そのため国会の関与は極めて重要であるという観点から修正案が出されたものと承知をしております。そういう意味におきまして、対処措置の終了についても国会の関与を認めるべきとの観点から政府案に対して修正が行われたと承知しておりますし、今後一層、国会と政府との関係が強化されるものと私は認識しております。
工藤委員 次に、基本法についてお伺いをしますが、日本国憲法には緊急事態に対する規定が申し上げるまでもなく欠落しております。その欠落部分を、私ども自由党では、基本法によって補うことを主張してまいりました。日本国憲法を補完するために基本法を規定するという考え方についてお考えをお聞かせください。
小泉内閣総理大臣 基本法につきましては、今後、与党と民主党との間におきまして緊急事態に係る基本的な法制について具体的な検討が進められる過程におきましては、既存の法令との関係などの問題について国民にわかりやすい成果が上がるよう、十分な議論を尽くしていただきたいと思っております。
 また、緊急事態に係る基本的な法制が必要であるとの考え方は与党と民主党との間でも共有しておりますので、今後、政府としては、今回の合意にある必要な措置について真摯に検討してまいりたいと思います。
工藤委員 今の問題、提出者の方からも御答弁をお願いします。
久間委員 今おっしゃられましたように、憲法は確かに緊急事態についての規定が我が国の場合はございません。憲法調査会等でもいろいろ議論があっているようでございまして、こういうのは憲法に盛り込むことも必要じゃないかという議論が非常に強くなってきております。
 憲法にないのをどうするかでございますけれども、今それぞれの法律で対応しているわけであります。そして、緊急事態といいましてもいろいろな緊急事態がありますから、災害の場合もございますし武力攻撃の場合もございますから、それらを全部包括して一つの基本法にした方がいいのかどうか、この辺も議論がいろいろと分かれるところでございます。
 しかしながら、我が党の推薦人も、この間参考人も言っていましたように、何かやはり一つの基本的な考え方がしっかりしている方がいいという、これも事実でございますので、これから先、今回のこの法案の審議を通して感じましたことを旨としながら、民主党さんを初めとしてまた各党とも協議しながら、こういう基本的な法制のあり方について私どもも真摯に検討していきたい、そして一つの結論を得るように努力していきたい、そのように思っているところであります。
平岡委員 民主党としては、御案内のように、今回も、緊急事態に対処するための基本法というものを提出いたしました。その考え方は、先ほど来からありますように、憲法に緊急事態に関する明文の規定がないということで、基本法の立法の重要性ということを強く認識しているという結果でございます。
 今回の修正協議の中でも、与党三党、そして民主党の菅代表との間で協議された中でも、小泉首相あるいは山崎幹事長からも、基本法の必要性については理解する、認識するというようなお話もあったように承っております。先ほどの小泉総理の答弁の中でも、基本法の制定に向けて前向きの答弁をいただいたというふうに理解しておりますけれども、民主党としては、こうした状況と経緯を踏まえて、基本法制に関する主張が政府・与党におかれても受け入れていただいたというふうに理解しておりまして、これからこの基本法制の制定に向けてしっかりと議論してまいりたいというふうに思っているところでございます。
工藤委員 次に、官房長官、また提案者に質問させていただきますが、国民保護法制、基本的人権の保障についてでありますけれども、日本国憲法の三大理念の中でも一番重要なものは、基本的人権の保障であると思います。国民主権や国際協調主義のために基本的人権がないがしろになったり犠牲になったりするということがあってはならないわけでありまして、基本的人権を保障し守ることはすなわち憲法を守ることでもある、このように思うわけでありますが、そこでお伺いをしますけれども、基本的人権の保障ということについて修正案にどのように生かされているのか、また、基本的人権に対する私ども自由党の考え方についてどのようなお考えを持っておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
久間委員 基本的人権につきましては、我が国の憲法で保障されていることでありますし、また、今回の政府原案でも、それは三条四項に規定されておったわけであります。
 しかしながら、本委員会の質疑の中で、やはり武力攻撃事態等の場合にはこの基本的人権が平時の場合と比べて阻害されるおそれが非常に強いんじゃないかというようなことから、そういう事態における基本的人権については最大限に配慮しなければならないことを入念的に規定した方がいいんじゃないかという意見が非常に強うございましたので、今回の修正の提案に至った次第であります。
 また、御党におきましても、憲法のこの基本的人権を保障するということについては、かねてから大変強い御関心を持っておられるということは十分承知しておるところであります。
平岡委員 先ほどもちょっと御答弁いたしましたけれども、民主党結党以来、緊急事態における法制のあり方として、民主的統制ということとそれから基本的人権の確保ということが極めて重要である、そういう立場に立って今回の対案の提示、あるいは修正案の中でも基本的人権のあり方について非常に詳細な規定を設けさせていただいております。これは、緊急事態においてはともすれば人権の侵害が起こりやすい、そういう事態を踏まえまして、事態に応じた表現ぶりで、入念的に基本的人権の保護を行っていくという規定を設けさせていただいたところでございます。
 今回の修正協議の結果として、特に侵害されやすい基本的人権の部分についての憲法の規定をさらに最大限尊重するという規定が設けられましたけれども、それ以外の項目も含めまして、国民保護法制の中できちっと措置していくという合意も成り立っているところでございますので、しっかりと、その立法過程の中でさらにきっちりと規定していきたいというふうに思っている次第でございます。
 さらに、先ほど自由党の基本的人権の考え方ということでお話がございましたけれども、自由党の非常事態対処基本法案の中に、同じように基本的人権についての規定がございます。基本的な考え方としては決して我々とは違っているとは思いませんけれども、我々の考え方としては、もっと具体的に規定することが適当ではないかというふうな考え方に立っておりますので、これからの基本法制あるいは国民保護法制の中でしっかりと検討していきたいというふうに思っております。
福田国務大臣 武力攻撃事態における基本的人権の尊重、これは本当に重要なことでございますので、政府の原案におきましても、そのようなことを規定し、また、そういうことでよいのではないかという答弁もいたしてまいりましたけれども、今回、修正案におきまして、このことについて、さらに、基本的人権を尊重する、そういう理念が明確になったというふうに考えております。
 また、基本的人権に対する自由党の考え方、これは今申し上げた考え方と同じものであるというように考えております。
工藤委員 次に、官房長官並びに提案者にまたお伺いをいたしますが、非常事態に対処するための組織についてであります。
 現行でも安全保障会議があるわけですが、想定だにできない事態に対処するための組織についてはこれで十分だとは言えない、このように思うわけであります。危機管理庁構想であるとか、私ども自由党ではインナーキャビネット構想などがありますが、そのねらいは、省庁間の縦割り行政を排除して迅速に対応できるということなわけであります。
 非常事態に対処するための組織のあり方について、どのようにお考えになっておられますか。お聞かせを願います。
久間委員 今、内閣に危機管理監がおられますけれども、危機管理監というのは独任官でありまして、スタッフがおるとはいうものの、これは併任の形になっております。したがいまして、危機が起きたときに十分かといいますと、やや我々としても、もう少し充実を図った方がいいんじゃないかとかねがね思っているところでもございます。
 しかしながら、どういう形の方がいいのか。というのは、緊急事態といってもいろいろなタイプがございますために、災害の場合もございますし、原子力災害等もございますし、事故等もございます。あるいはテロ等もあります。そういうことを考えますと、どういうものがいいのか。
 民主党さんからは、最初、危機管理庁という形で、言うなれば米国のFEMAみたいな組織を念頭に置いて提案されておりました。しかしながら、アメリカにおけるFEMAを考える場合、アメリカでもFEMAが果たして十分機能しているかどうかという問題が今ございまして、それよりもっと包括的な国家安全保障省みたいな形の、そういうのが構想されて設置されたわけでございまして、我が国の場合も、これは真剣にまた検討しながら、どういう形のものがいいのか検討していかなければならないと思って今回のような附則にしたわけでございます。
 というのは、一つは、我が国の場合、常設機関としてこれを置きますと、今、行政改革等が進められているときに、果たしてそれがどの程度国民から受け入れられるかどうか、この辺も考えなきゃなりませんし、それともう一つは、現在の災害等を念頭に置いて考えますと、警察、消防あるいはまた地方自治体、それぞれがやっていることとの整合性を考えていかなければなりませんので、そういう意味では、これは私たちも前向きで、与党としても考えたいとは思いますけれども、あのようなFEMAをそのまま持ってくるということでいいのかどうか。やはりこれは国民世論を十分に背景にして考えていきたいと思っておりますけれども、これはひとつ前向きに、そういう危機管理の、今のような縦割りといいますか、そういう形でのこれについてはやはり少し問題があるんじゃないかなという気がいたしております。
 情報の収集については、危機管理監のもとで収集できるという仕組みになっておりますけれども、実行部隊としての体制というのはどういう形が望ましいのか、あり方については検討していきたいと思っております。
渡辺(周)委員 民主党では、基本法の中に危機管理庁というふうに明記をしまして、そして、地方にその事務所を置くということも法案の中に規定をしたわけでございます。
 先ほども玄葉委員に対しまして申し上げましたけれども、いわゆる大きな国家的危機が起きた場合に設置されてきた、その都度設置される対策本部というもののやはり指摘される脆弱さは、機動性に欠ける面、あるいは連絡が、例えば情報が不都合を生じている。例えば、これは警察である、これは消防である、これは地方自治体、これは海上保安庁ではなくて、常日ごろから国家的な危機に耐え得る組織のあり方というものを我々は提唱してまいりました。
 そして、できれば公共機関、ライフラインの復旧でありますとか確保でありますとか、あるいは将来的には民間のボランティアの育成も含めて、そうしたものを国家的危機に対応できるセンターとして考えてまいりたいなと。また、その精神、考え方につきましては、このたびの合意の中に盛り込まれましたので、今後、国民的な議論を起こしながら考えてまいりたい、そのように考えております。
福田国務大臣 国や国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態にどういうふうに対処するかということでございます。そういう的確に迅速に対応するというような体制の構築ということは、国家として当然の責務でございます。
 したがいまして、そういう体制を構築するために、あらゆる観点から不断の検討を重ねていくという必要があると考えておりまして、そういう検討の中で組織のあり方についても今後考えてまいりたいと思っております。
工藤委員 もう時間も大分なくなってまいりましたので、最後の質問にいたしますが、安全保障の原理原則について伺います。
 どのような事態が武力攻撃事態かを認定するのは多分に政策判断に負うところが多いだろう、このように思いますけれども、これに対して、どの程度まで反撃するのかということについてはあらかじめ定めておく必要があるんではないか、このように思うわけでありますが、このことについてお答えをいただきたいと思います。
中谷委員 せんだっても、アメリカのフロリダで、テロに対する訓練が大がかりに行われておりましたけれども、やはり事前に準備をしておくということが肝要でありまして、政府も、意思決定をいかに迅速にするかということで、安全保障会議、またこの法案で設置をされました事態対処専門委員会等を設置して、平素から専門的に安全保障会議に助言できるような、そういう準備態勢を万全にとっておくということが肝要であると思っております。
福田国務大臣 こういう緊急事態に、限られた時間の中で的確に重大なる判断をしていくということが求められ、そしてまた、その判断の上、措置の実施を迅速に行う、こういうことでございます。そういうような政府の意思決定については、安全保障会議の果たす役割が重要であると考えております。
 法案におきましては、この安全保障会議の機能の強化を図っていくということを述べております。例えば、安全保障会議に内閣官房長官を長とする事態対処専門委員会を設置しまして、事態発生時に迅速かつ的確に対応できるように平素から専門的な検討を行って、安保会議への進言を行う、こういうふうになっているわけでございます。
 そういうように、法案によりまして、武力攻撃事態への対処に遺漏のない体制が整えられているものと考えておるところでございます。
工藤委員 時間が参りましたので、質問を終わります。
 ありがとうございました。
鳩山委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 総理にお伺いをいたします。
 武力攻撃事態法案ができますと、戦争遂行状態にある米軍に対する我が国の支援措置を可能にする法律、これは我が国は三つ持つことになります。九九年五月に成立した周辺事態法、そして二〇〇一年十月に成立したテロ特措法、そして今度の武力攻撃事態法であります。
 武力攻撃事態法における米軍に対する支援措置を発動できる条件についてお聞きをいたします。
 法案は、我が国に対する外部からの武力攻撃が予測される事態が、発動条件としては時間的に最も早いものになっております。予測事態とは、武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測される事態であります。
 ここで言う「我が国」とは、安保条約第五条で、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」、こう規定しておりますように、日本国の領土、領空、領海だけに、武力攻撃事態法の「我が国」には限定がありません。
 昨年五月八日にこの委員会で私が質問したことに対して、福田官房長官の答弁以来、政府は一貫して、この「我が国」の中には公海上の我が国の船舶に対する組織的、計画的な武力の行使に当たる場合も含むとしております。一貫しております。
 総理に最後の確認をします。総理もそういう解釈でよいのですか。総理に確認します。
小泉内閣総理大臣 今までの議論でもこの質問は出て、幾たびか政府も答弁していると思います。
 我が国に対する武力攻撃とは、基本的に、我が国の領土、領海、領空に対する組織的、計画的な武力の行使を言うと考えております。また、公海上にある我が国の艦船に対するものは、状況によっては我が国に対する武力攻撃に該当し得ると考えることもできます。
 特定の事例が我が国に対する武力攻撃に該当するかどうかについては、個別の状況に応じて判断することとなりますが、いずれにしても、自衛隊による武力の行使は自衛権発動の三要件を満たした場合にのみ可能であり、集団的自衛権等による武力行使の問題は生じないと考えております。
木島委員 今までの政府答弁を踏襲されております。時間がありませんから、細かい論議はいたしません。状況によっては「我が国」に当たる、武力攻撃事態法案の発動可能な、法律的にはなると。
 そこで、総理に続いてお尋ねいたします。
 公海上の我が国の船舶に対する組織的、計画的な武力の行使に当たる場合も状況においては含むという一貫した答弁でありますが、それでは、公海上という答弁でありますが、その公海上に地理的限定はあるんでしょうか。総理。総理だけでいいです。
小泉内閣総理大臣 ありません。
木島委員 そうしますと、武力攻撃事態法を発動できる条件の中で、最も時間的に早く、かつ地理的に我が国領域から最も遠い場合はどういう場合かと想定いたしますと、我が国領土からはるか離れた公海上で行動する我が国艦船、自衛艦船に対して組織的、計画的な武力攻撃が予測される事態ということに法律上なります。これは政府に権限を与える大変大事な権限授与法でありますから、厳格に答弁を聞くわけであります。それで、総理、いいでしょうか。総理です。
石破国務大臣 理屈からいえば、そういうことはあり得ることです。
 それは、だから、ここまで、あそこまでということは区切りません。しかし、実際に、例えば南氷洋においてそういうことがあるのだろうか。そして、それが予測される、我が国に対して組織的、計画的な武力の行使が南氷洋において予測されるというのは一体どういうような事態なのだろうかというふうに思うわけです。
 やはり、我々、法律を考えますときに……(木島委員「南氷洋なんて言っていないよ」と呼ぶ)南極海でも何でもいいです。法律を考えますときに、どういうような事態というものを念頭に置いて我が国の平和と独立を守るかということでございまして、とても想定し得ないような事態を考えまして法律というものはつくっておりません。理屈からいえばそういうことにもなり得ることでございますが、そういう、はるかに遠いところにおいて我が国に対する組織的な武力の行使が予測されるということ、そして、だれがどのようにそれを判断するかということを考えてみましたときに、極めて、極めて、極めて考えにくい事態だというふうに言わざるを得ないと思います。
木島委員 法律の解釈を聞いておるんです。
 理屈からいえばそうなると答弁をされました。認めました。はるかに遠いというそのはるかにはどこまでかというのは、地理的限定がないということも先ほど私の質問に対して総理は答弁しました。想定できないような空論をここで言っているわけじゃありません。もちろんそうであります。
 そうしますと、次に、そうした武力攻撃予測事態におきまして我が国がどのような米軍支援をすることが可能になるのか、ただしたいと思います。
 周辺事態法でもテロ特措法でも、可能な米軍支援措置は、法案の中に、また法案の中の一部でありますが、別表として明記をされておりました。しかし、この武力攻撃事態法案では、今度の修正によって速やかに成立させるとする対処法案で決めるとされておりますが、具体的な中身、どんな米軍支援措置、何ができるのかはこの法案の中には書き込まれていない。具体的な支援措置の中身は先送りされております。
 周辺事態法でもテロ特措法でも、戦争遂行中の米軍に対する支援措置には、提案者である政府もいろいろと、括弧つきでありますが、限定をつけておりました。主なものを三つ、私はここで指摘をいたします。一、米軍支援ができる地域は、我が国領域及び戦闘行為が行われていない我が国周辺の公海及びその上空、そういう地理的限定であります。これがついておりました。二、支援措置を実施している付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予想される場合には支援措置を休止、中断する、こういう時間的、地理的限定がついております。三、武器弾薬の提供はできないとする支援措置の中身、内容の限定であります。
 ところが、この武力攻撃事態法案には、私が言った少なくとも三つの点で限定がついておりません。それだけではありません。速やかに策定されるという米軍支援法制にそのような限定をつけるのか否か。武力攻撃予測事態のことですよ。それに絞って今私は聞いているんですよ。何の明文の規定もありません。この国会審議を通じて、政府から明確な答弁もありませんでした。
 そこで、私は、非常に大事な点でありますから、総理にお聞きをいたします。
 武力攻撃予測事態における米軍支援法制に、周辺事態法やテロ特措法につけられている、さきに私が挙げた三つのいわゆる限定、これをつけるのかつけないのか、総理、政府の最高責任者としての責任ある答弁を求めます。
石破国務大臣 まだ法案も作成をしておりません。この法案に基づいて、ただいま出しております法案に基づきましてやるわけではございません。それは、委員御指摘のように、周辺事態法はそのための法律でございますが、今回の法律はそのための法律ではございません。改めてこれに基づきました法律をつくるということですから、今から予断を持って申し上げることはいかがかと思いますが、ただ、考えてみましたときに、我が国に対する武力攻撃が予測される事態というような事態であります、そのときは。それは周辺事態法とはまたおのずから異なった局面であるということは確かだろうと思います。
 いずれにいたしましても、私どもは憲法の範囲内で行動するわけでございますが、つまり、そのまま放置すれば我が国に対する危険が及ぶということではなくて、我が国に対する武力攻撃が予測される、そういうような事態でございますから、それは、法案はそのようなことになるのではないかというふうに個人的には考えております。しかしながら、それは、これからできます法案、それを国会において御審議を賜る、そういうようなものだと考えております。
小泉内閣総理大臣 防衛庁長官の答弁のとおりでありますが、武力攻撃事態における米軍の行動の円滑化に対する措置については、この法案の成立後、この法案に示された枠組みに基づいて行われる事態対処法制の中で検討されるものであります。
 いずれにせよ、武力攻撃事態への対処及びこれに関する法制の整備が憲法の範囲内で行われるということは申すまでもございません。
木島委員 武力攻撃予測事態と周辺事態とはおのずから違うと防衛庁長官おっしゃいました。重大な問題がその答弁には秘められている。
 非常に重要な共通項がある。最大の共通項は、日本国領空、領海、領土が攻撃されている場合ではない、日本有事ではないということであります。そして、概念としても、周辺事態というのは、そのまま放置すれば我が国の平和と安全に重大な事態が生ずる、そういう事態。武力攻撃事態は、この法案の中に書き込まれているとおりであります。日本本土有事の場合ではないが、それが予測される場合ですね。非常に似た概念なんですよ。
 だからこそ、周辺事態か武力攻撃予測事態かの切り分けはどうなのか、重なるんではないか、そして併存するんではないか、一年間にわたってここで論議されてきたけれども、いまだに法律的にも実態上も明確な区分けはできていない。それは、そういう概念がそういう非常に似た状況を含んでいるからであります。
 そこで質問であります。
 政府が、周辺事態法において、さきに私が指摘した、三つだけ挙げましたが、そのようないわく限定をつけたのはなぜか。憲法九条の解釈により集団的自衛権は行使できないという政府なりの制約があったからではないかということ。それは、周辺事態法案が審議をされました九九年二月二十三日、参議院予算委員会におきまして、第百四十五国会でありますが、高村正彦外務大臣の国会答弁からも明らかであります。議事録を持ってきておりますから、読みます。「おっしゃるように、後方地域というのは国際法上今まで使われてきた概念ではありません。そして、おっしゃるように、憲法九条との関係で武力行使との一体化を定型的に避けるためにそういう概念をつくったというのもそのとおりであります。」明確なる答弁を高村外務大臣は国会でしているわけであります。
 何を意味するかおわかりでしょう、総理。ここをあいまいにしたまま武力攻撃事態法案の審議を終結してしまう、そして白紙にして次の法案に委任してしまうということは、憲法適合性の審査をしないまま委員会審議を閉じることになるわけであります。国会として審議を尽くしたことにならぬわけであります。
 要するに、何が予測事態で対米支援できるのか。周辺事態においてはどういうことが対米支援できた、それは、憲法上の制約があるから後方地域支援なんて新しい概念も憲法九条との関係でつくったんだ、それで制約をつけたんだ、それを周辺事態法に書き込んだんだから憲法適合性があるんだという説明をしたんですね。今度、武力攻撃事態法にはそれがばっさりと抜け落ちているということは、そのことをだから意味するんじゃないでしょうか。
 それで、総理に質問です。
 総理は、それを今回武力攻撃事態法から脱落させたということで、これまでの憲法九条の集団的自衛権に関する憲法解釈を変更するのか、それとも、先ほど来明確な答弁を避けておりますが、武力攻撃予測事態における対処法制に周辺事態法と同様の限定をつけるのか。どちらなのか、総理の明確な答弁を願います。
小泉内閣総理大臣 今回の有事関連法案というのは、我が国に対する武力攻撃事態が発生するときにどうするか。そして、武力攻撃事態と周辺事態とはそれぞれ別個の法律上の判断に基づくものでありまして、状況によっては、この武力攻撃事態等と周辺事態等のこの法律が、両者が併存することはあり得ると私は考えます。
 しかしながら、このいずれの法制に基づいて行われる今後の措置も憲法の範囲内で行われることは当然であると政府としては考えております。
木島委員 私は、そこに最大のごまかしがあると思うんですね。
 先ほど言いましたよ。この国会で再々問題になりました予測事態と周辺事態との違い、一致点。重なり合う、併存、大体似た概念だ。だからこそ、周辺事態の場合にできることとできないことを政府なりには区分けした。しかし、概念が違うという説明にもならぬ理屈だけで、その最大の、どこまで憲法九条との関係で支援ができるのかのところは今回答弁しない。先送りしているというのは、私は、ここに最大の政府のごまかしが潜んでいるということを指摘をしておきます。
 最後に、民主党修正案提案者にお聞きします。
 五月九日、私は三つの問題点を挙げて、武力攻撃事態法案が我が国領域外でアメリカが行う戦争に我が国を全面的に参戦させる法律になるではないか、そういう危惧を指摘をいたしました。
 一つは、周辺事態と武力攻撃事態と併存、重なり合う事態における米軍支援措置の問題であります。二つは、武力攻撃事態の「我が国」という言葉の定義による米軍支援措置の拡大の問題であります。三つは、アメリカ・ブッシュ政権の先制・単独武力攻撃戦略の発動に起因する武力攻撃予測事態の発動の問題であります。
 そして、私の質問に対して、民主党の修正案でもこの危惧は何一つ解消されていないではないかということを私が指摘しましたが、それに対して民主党提案者は、危惧を持っているということを明らかにした上で、議論の中でしっかり担保していきたいという答弁をされました。しかし、今回、政府・与党三党と民主党が一緒になってお出しになりました共同修正案、全部読みましたが、その中には、そしてこれまでの政府答弁の中にも、いまだに何一つこの危惧を解消する担保はとれていない、入っていない。むしろ逆になっている。先日の筒井同僚委員の質問に対する政府答弁なんかまさに逆になっているということを私も痛切に感じたところであります。
 この問題、民主党の修正案提案者はどういう認識なのか、お聞きをいたします。
前原委員 この間木島委員にも御答弁をいたしましたように、この武力攻撃事態対処法の問題と、また日米安保条約、それに基づく外交関係との問題を混同されているんではないかということを再三再四申し上げました。
 ブッシュ・ドクトリンの先制攻撃戦略については我が党は危惧をしているということは、この間申し上げたとおりでございますけれども、この有事法制自体は、どのような原因に起因するものであれ、日本に予測事態あるいは武力攻撃事態が起きたときにはこれを、法律を適用するということを申し上げたわけでありまして、先ほどおっしゃった問題点というものは、まさにこの法律ではなくて、同盟関係をどう考えるか、それとまた、この間お答えをいたしましたのは、地位協定の改定案というものを我が党は出しておりますけれども、そういったことの中で解消していく問題だというふうに思っております。
 そして、領域の問題、筒井議員が質問された領域の問題でありますけれども、私は、これはきのう石破防衛庁長官が答弁をされたことである程度の担保ができたというふうに思っております。法理念としては、日本の領土、領域、領空以外、あるいは公海上でもそういったことはあり得るけれども、そういったことはほぼ想定をされないということ。それと同時に、法の理屈としてこれが適用されるにしても、次に、公海上であっても自衛権を発動しなきゃいけないわけです。自衛権発動の三要件の中で、それがまさに急迫不正の侵害となり得るのかどうかという判断が求められます。そしてまた、それについては当然ながら対処基本方針に盛り込んで、速やかにその対処基本方針を国会承認しなければいけないというものになっているわけであります。
 認定の話も、きのう桑原議員が、対処基本方針を閣議決定したときに初めて認定されるんだという答弁を引き出しておられます。そういう意味から、民主的統制は私はしっかり生きていると思いますし、それと同時に、我が党の修正案の中で、情報の提供と、そしてまた認定の判断の事実を、その認識も含めてしっかりと政府が出させるということの修正案というものを我々は得たというふうに思っておりますので、今の御指摘は当たらないと思います。
木島委員 時間ですから最後に意見だけ言って閉じますが、答弁者は私が安保条約の解釈と武力攻撃事態法案の解釈を混同されているとおっしゃいましたが、私は混同しておりません。明確に概念を区分けして、安保論は安保論で論議したいんですが、時間がありませんから、武力攻撃事態法案の発動条件についてきちっと法的に質問をしてきたわけであります。
 最後になりますが、この武力攻撃事態法案、有事関連三法案は、アメリカが行う戦争に、繰り返しますが、自衛隊が武力行使をももって参戦することができる、地方自治体初め民間企業や国民を罰則で強制的に協力させる、まさに憲法違反の有事関連三法案でありますから、我が党は断固反対でありますし、特に、大事な部分が審議尽くされないまま、本日、審議終結、採決を強行されようとしていることに対して断固抗議をして、私の質問を終わります。
鳩山委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党の今川正美です。
 きょうは締めくくり総括質疑ということでありますので、小泉総理に何点かについて御見解をお伺いしたいと思います。
 まず、お聞きをする前に、今回の有事関連三法案、ちょうど一年ほど前に政府や与党の皆さんは、平時において冷静かつ慎重に審議をしたい、このようにおっしゃったんですね。ところが、年が明けてみますと、イラク戦争とか、あるいは緊迫する朝鮮半島、こういったことを口実に法案成立を急ぐのは、明らかにこれは信義違反だと私は思うんですね。しかも、大事なことは、総理、この政府原案に対する修正の議論は、本来、この特別委員会で行うべきなんですね。ところが与党は、この委員会の外で民主党との政党間協議を行ったあげく、この合意された新たな修正案というのは、きょうこの場で、この委員会で示されたんですね。ほとんど議論のしようがない。こうした修正案の審議もほとんどできないようなやり方、これは議会制民主主義のルールを破るものであって、国権の最高機関たる国会の権威を著しく傷つけるものだ、そう言わざるを得ないんです。
 さらに、民主党や自由党から提出をされているいわゆる基本法案をろくに審議もしないで、しかも、この締めくくり総括の前に本来ですと中央公聴会をきちんと開いてやっていくべきなのに、本日この場で採決をするというのは、全くこれは国民無視と言わざるを得ない。こういう審議のあり方というのを総理としてどう受けとめられますか。
小泉内閣総理大臣 政治の要諦は、古今東西、治にいて乱を忘れずと言われております。平和なときに乱を忘れてはいけないと。平和時に、本来、いざというときにどのような準備が必要かということを考えておくのは、どこの国でもいつの時代でも変わらない政治の最も大事な点だと思います。そういう意味において、私は、この有事関連法案というのはもっと早く日本国内においても整備されてしかるべき問題だと思っておりました。
 しかしながら、今回、昨年この有事関連法案を国会に提出して、長時間にわたって御審議をいただいた。そしてことし、この国会におきましても、各党の議論を重ね、与党と野党それぞれ、政府案、また、民主党におきましても対案を出してこられました。そういう中で、国会における、委員会における審議と、そして当然、政治家同士ですから、審議が終わってからいろいろ煮詰める問題もあるでしょう、協議する問題もあるでしょう、幾たびか何時間も協議を重ねて合意を見た。その間、公聴会も参考人質疑も行われたと私は承知しております。いわば十分に時間をかけて議論して、いざというときに備える法案が今回、与野党の合意を見てこのような審議が行われていることは、私は、この法案にかかわった多くの方々の、議員の努力のたまものでありまして、敬意を表しております。今言ったような、十分な審議が行われないとか、あるいは、この法案に対しまして、早過ぎるのではないか、必要ないのではないかという議論には私は賛成することはできないということをお伝えしたいと思います。
今川委員 確かに法案が提出されてからは一年を経過しています。しかしながら、御存じのように、昨年の通常国会では、例の防衛庁のリスト問題だとか、あるいは安倍官房副長官の発言にかかわる問題とか、いわゆる法案そのものにかかわる審議というのはまだ極めて不十分だ、私はその点だけははっきり申し上げておきたいと思います。
 さて、次にお尋ねをします。
 今回の有事関連三法案は、戦後五十八年間、憲法が制定されて五十六年間の外交防衛政策の根本的な転換を図るものだと私は認識しています。特に、アジア諸国への侵略と植民地支配という甚大な被害を与えたにもかかわらず、今日の日本がこれだけ豊かで平和な形であるのは、戦争放棄をうたう憲法と、加えて経済協力でアジア諸国のそれなりの信頼を得てきたからではないですか。
 小泉総理、あなたは、かつて憲法前文と第九条の間にすき間があるとおっしゃった。改めて総理の憲法観をお伺いしたい。
 有事法制推進論者の中には、憲法は占領下の米国による押しつけだったという考え方も確かにあります。しかし、実際は、この憲法の起草者の一人であるケーディス証言をまつまでもなくて、天皇制を維持するための、今は亡き昭和天皇の判断と発意によるものであったはずです。当時、幣原首相も枢密院でそのことを詳細に説明されております。
 総理に問いたいのは、こういう戦争放棄という、戦後我が国の原点にかかわる憲法の制定をどのように受けとめておられるか、御見解をお聞かせ願いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 それは、憲法の枠内でこの法律が制定されているということは申すまでもございませんが、憲法の解釈をめぐってさまざまな議論があるということは承知しております。憲法九条におきましても、これまた学者の中でも、自衛隊そのものが憲法違反であると言う学者もおられますし、我々はそういう立場をとっておりませんが、いろいろな議論があります。
 しかしながら、戦争放棄の条項があるといっても、この憲法において我が国固有の自衛権まで否定するものとは私は思っておりません。さまざまな憲法における解釈は承知しておりますが、私は、今回の法案というのは憲法の枠内で制定されておるものである。
 そしてまた、憲法上のいきさつの問題につきましてもこれまたいろいろな議論がありますが、憲法改正の問題におきましては、将来、また改正論者もおりますし憲法を護持しようという論者もおりますが、今後の課題であり、憲法改正論議というのは、どの議員でも活発に行われてしかるべき問題であると思っております。
今川委員 今私が申し上げたかったのは、我が国の今の憲法では、申し上げたように、戦争放棄をうたうこの今の憲法の枠内で戦争をやるなんという、これは子供だましにもならない。そうでしょう。
 次のことを伺います。
 有事法制を早く制定すべきだと言う人たちの中には、有事法制が今までなかったことの方がおかしいし、それは政治の怠慢だと言う人もおられます。しかし、この考え方は歴史を無視する議論だと思うんですね。
 自衛隊の前身たる警察予備隊は、御承知のように、まさしく朝鮮戦争を機に、米国による押しつけでありました。まさしく朝鮮戦争の落とし子でありました。この警察予備隊の創設にかかわったコワルスキー証言をまつまでもなく、自衛隊は憲法に反して誕生した。彼は著作の中で歴史の大ペテンとまで言っています。したがって、自衛隊という名の武装組織が戦力なき軍隊と呼ばれ、他国にはない厳しい法的制約が課されたのは当然であったと思います。
 だから、我が国の場合には、憲法にあえて国家緊急権を規定しなかったり、有事法制をつくってこなかったというのも、そういう歴史的背景があったからではないのですか。小泉総理の御見解を伺います。
小泉内閣総理大臣 それは、戦争をしないような状況にしたいというのはだれでも共通していると思います。
 しかし、我が国にもし戦争状態が起こった場合、あるいは我が国に戦闘をしかける国が起こった場合どう対処するかということを考えるのは、政府としても私は当然の責務だと思っております。戦争放棄という憲法があるから我が国に侵略する国があった場合に何も対処しなくていいのかというのは、私は、かえって無責任ではないかと思います。
 これは、国民の安全を確保する、戦争状態をいかに避けるか、こういう点から考えても、日本において、いざ戦争をしかけようという国があった場合に、相手国に対して、それは相当の犠牲が伴うな、日本国民は侵略勢力に対して強い抵抗の意思を示すんだという決意をあらわすために自衛隊は存在しているのであって、そういう自衛隊すらも否定する、そんな準備をする必要はないということは、逆に、相手にいつでも日本は侵略できる、侵略すれば日本国民はすぐ手を上げる、降伏すると思わせることは、かえって侵略の誘惑を与えるのではないか。
 私は、いざ侵略を受けた場合には日本国民は強い決意を持ってそれに断固として戦う姿勢を見せることが、日本国民の安全を図る上においても大事だということにおいて、今回の有事関連法案におきましては、日本としては、自衛隊の存在も憲法の範囲内である、また、いざそのような戦闘行為をしかける勢力があった場合には断固として戦う、その準備を常に平時から考えるということは政府として当然のことであり、その準備がようやくできた。また、与野党共通の土俵にのって、これからも安全保障をいかに確保するかということについては与党、野党問わず共有した認識を持って対処していくことが大事だということの一つの合意ができたということは、大きな進歩であり、画期的なことだと思っております。
今川委員 次に、総理に、いわゆる国連憲章と日米安保条約との関係について御見解を伺いたいと思いますが、国連憲章は、御承知のとおり、国際紛争の解決原則を、平和的手段を基本にした集団的措置によるというふうにしているわけですね。
 冷戦時代は、確かに安保理機能が麻痺していました。しかし、つい先般のイラク戦争では、国連に対する評価がいろいろありますけれども、私は、予想以上に国連の安保理は機能した、そのように思っています。
 国連憲章の第五十一条は、個別的及び集団的自衛権、いわゆる軍事同盟を認めてはいますけれども、これはあくまでも暫定的な規定なんですね。一番今必要なことは、国連による集団的措置を実効あるものにする、そういう体制をどうつくれるかということが一番肝要だと私は思っています。
 ですから、国際紛争というのは、我が国に仮に武力攻撃があったときのことも含めて、これは国際紛争ですよ、そういういろいろな形の国際紛争を解決する原則というのが冷戦時代はなかなかままならなかったんだけれども、冷戦が終わった今こそ、そういう国連憲章が本来理想とした形のものをつくる、そのために、我が国が平和国家として、それこそ積極的に貢献をしているのかどうかということが問われているのじゃないですか。だから、日米安保条約も、第十条で、国連が措置を講じるまでの間というふうにうたい込んでいるはずです。
 そういう意味合いにおいて、総理は、今度のイラク戦争においても国連中心主義と日米同盟ということを掲げられました。そういう意味で、国連憲章と日米安保条約、これに対して基本的な総理のお考えを聞かせてください。
小泉内閣総理大臣 我が国の安全を確保する上において、私は、日米安保条約は極めて重要なものであると思っております。
 国連憲章と日米安保条約について指摘されましたけれども、この国連憲章第五十一条にも書いてありますように、
  この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。
と、はっきり言っています。
 この自衛権の行使に当つて加盟国がとつた措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。
と規定しております。
 また、日米安保条約におきましては、第五条において、
  各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
  前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
このように、日米安保条約第五条と国連憲章第五十一条、この問題については、私は、何ら矛盾するものではない。したがって、この国連の活動及び日米安全保障条約は、両方相まって、我が国の平和と安全の確保に寄与するものだと私は考えております。
今川委員 もう時間が余りありませんので、今回の武力攻撃事態法案に関して、次の点をお尋ねしたいと思います。
 一つは、事態の認定と、いわゆる日米が共同して戦う場合の指揮権の問題であります。
 特に、北朝鮮の核開発問題に関して、総理も御存じだと思いますが、現在、米太平洋軍は、例の戦争計画五〇二七号の新しいバージョンを策定中であります。例えば、ブッシュ・ドクトリンに基づいて平壌もしくは寧辺の核関連施設を先制攻撃する。そうしたら、当然、北朝鮮の側の反撃は必至ですね。そうしたときに、米太平洋軍が、それこそ、直接今、我が国に武力攻撃があっているわけじゃないけれども、予測される事態だと判断をする。それは、在日米軍を介して日本に伝達をされ、この法案にも記載されているように、閣議でもって事態の認定を行う、こうなるわけですね。
 ところが、問題なのは、あらゆるそうした情報を一番多く持っている米軍がそういう判断を下したときに、例えば、閣議であれ安全保障会議であれ、あるいはこの国会で、それは違うという反論、反証ができるでしょうか。実際にそういう事態が起こったときに、この国会で最終的には承認をしなければいけないけれども、ほとんど情報はないはずなんですね。総理は常々主体的な判断ができるとおっしゃるけれども、これは、実態面に即すればできないと私は思います。
 それともう一点、しかも、いざ日米が共同して戦うといった場合には、ワンコマンダーの原則、つまり、事実上指揮権を握るのは米太平洋軍だ、これははっきりしていますね。これは旧安保条約のもとで、行政協定の日米の非公式協議の中で、当時の吉田総理やあるいは岡崎外務大臣がはっきりとそう述べています。軍事上の常識ではありませんか。
 そういった意味で、日本の主体的な判断とか行動というのは、事実上不可能に近いと言わざるを得ないけれども、これも総理の御見解を聞かせてください。
福田国務大臣 前提としてだと思いますけれども、米軍の先制攻撃、こういうふうにおっしゃったんですれども、米国は国際法上の権利及び義務に合致した行動をとるものというように考えておりますので、どういう状況を想定していらっしゃるかはわかりませんが、そういう国際法上のことに沿っていないことをするはずはない、こういうように考えている。
 いずれにしましても、武力攻撃事態が発生する、そして認定をします。それは、国際情勢または相手国の意図ですね、軍事的行動等を総合的に勘案して、我が国自身の主体的な判断に基づいて行うもの、そういうことになっております。
 また、米軍がすべての情報を掌握している、そういうようなこと。これは確かに、米国からの情報提供は非常に有益なものであるということは、そういうこともあり得ると思いますけれども、しかし、そういうことがあったとしても、この武力攻撃事態の認定にかかわる我が国の判断というもの、これはあくまでも我が国が主体的に行うものでございます。
鳩山委員長 今川委員、もう時間は過ぎております。
今川委員 もう時間が終わったようでありますので、最後に一言だけ。
 いずれにしましても、私たち社民党としては、戦後五十八年間積み上げてきた、日本の、我が国固有の平和外交、アジア諸国との信頼関係をこの上なく損なう、また平和憲法を破壊してしまうような、戦争をできる国へと転換するようなこの有事関連三法案は即刻廃案にしていただきたいということを強く求めて、私の質問を終わります。
鳩山委員長 これにて、ただいま議題となっております各案及び各修正案中、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び内閣提出の三法案に対する各修正案についての質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
鳩山委員長 これより内閣提出の各案及び各修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。田端正広君。
田端委員 私は、自由民主党、公明党及び保守新党を代表して、議題となっております安保会議設置法の一部改正案、武力攻撃事態対処法案及び自衛隊法等の一部改正案並びにこれらに対する与党三党及び民主党提出の修正案について、賛成の立場から討論を行います。
 我が国に対する外部からの武力攻撃を含め、国家の緊急事態に対処し得るよう必要な備えをしておくことは、独立国としての当然の重要な責務であります。とりわけ、武力攻撃に対処するための態勢の整備は、国家が自衛権を行使するという国家国民にとって最も重大な事態に備えるという意味で、国家の緊急事態への対処の基礎をなすものであり、平時においてこそ整備しておくべきものであります。このような観点から、これらの法案は、今日の我が国にとってぜひとも必要なものであります。
 まず、安保会議設置法の一部改正案については、事態に際しての安保会議の機動的な運営を図るため、議員の構成を見直すとともに、安保会議のもとに事態対処専門委員会を置くなど、事態対処における政府の対処態勢を強化する上で重要な改正であると考えております。
 次に、武力攻撃事態対処法案は、武力攻撃事態への対処に対する基本理念、国、地方公共団体等の責務、国民の協力その他の基本となる事項を定めることにより、対処のための態勢を整備し、もって我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的とするものであります。この法案は、まさに、国家の緊急事態への対処態勢を確立するためのかなめとなる法案であると考えております。
 また、自衛隊法等の一部改正案は、防衛出動を命ぜられた自衛隊がその任務をより有効かつ円滑に遂行し得るよう、所要の規定を設けるものであります。武力攻撃事態における自衛隊の活動を円滑に行うことができるようにするための態勢を平時から整備しておくことは、我が国の平和と独立を確保するために不可欠であります。かかる法案は、当然、必要なものであります。
 本日、これらの政府提出の三法案に対するこれまでの審議を踏まえ、与党三党及び民主党は修正案を提出いたしました。すなわち、事態の定義をわかりやすいものにするとともに、テロ、武装不審船等の新たな脅威に対する政府の施策を具体的に明示し、国民保護法制整備本部を設置する旨の規定を盛り込んだほか、基本的人権の保障を含む基本理念の規定や対処措置に関する国会の関与の充実を図っております。また、事態対処法制の速やかな整備や、緊急事態へのより迅速かつ的確な対処に資する組織のあり方等についての検討を規定するなどの修正を盛り込むことといたしました。この修正案は、政府案の基本的な考え方と枠組みを維持しつつ、国民の一層の理解と支持を得ていくという観点から必要なものであると考えます。
 国家の緊急事態に対する態勢の整備は、一時たりともおろそかにすることができません。政府に対し、法案成立後、広く国民の意見を聞き、国民の保護のための法制を初めとする事態対処法制の迅速な整備に向けより一層力を入れることを要請し、政府提出法案並びに与党三党及び民主党提出の修正案に対する与党三党を代表しての賛成討論を終わります。(拍手)
鳩山委員長 次に、大谷信盛君。
大谷委員 民主党の大谷信盛でございます。
 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、民主党が自由民主党、公明党、保守新党の与党三党と共同提案した武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案に対する修正案に賛成の立場から討論を行います。
 民主党は、結党以来、緊急事態に際する対処に当たって、民主的統制と基本的人権を確保しつつ、国民の生命、身体、財産を守るために、緊急事態法制の整備が必要との観点に立って検討を積み重ねてまいりました。政府原案及び与党修正案は、武力事態法案の中に理念、個別手続、プログラム規定が混在し、制度設計に問題があったことから、政府・与党案への対案として緊急事態基本法案と武力事態法案への修正案を提出し、誠実かつ真摯に国会審議に臨んでまいりました。
 与党との修正協議において、基本的人権の尊重、国会の議決による対処措置の終了、国民への情報提供、国民保護法制整備までの一部措置の施行凍結、事態の認定の前提となった事実の明記など、政府・与党案の不備であった諸点について、民主党の主張を反映させる大幅な修正を引き出しました。また、危機管理庁を含む組織のあり方の検討について附則に書き込むとともに、国民保護法制の制定期限の短縮並びに指定公共機関について附帯決議を付すことになりました。さらに、緊急事態基本法について、四党間で引き続き真摯に検討して速やかに必要な措置をとるとともに、民主党が修正を求めてきた基本的人権の明記について、国民保護法制で措置することと覚書を交わすことができました。
 私たちは、修正協議を通じ、多くの国民の理解を得られる内容の修正案をまとめることができたものと自負をしております。今後、国民保護法制、基本法の制定など、我が国の緊急事態に際して適切かつ効果的な対処ができることとなるよう必要な法制、態勢の整備に全力で取り組んでいくことをここに確認して、賛成討論を終わります。(拍手)
鳩山委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 私は、自由党を代表して、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案及びこれらに対する修正案に対し、賛成の立場から討論を行います。
 国民の生命、財産、自由、人権、文化を守り、国民生活の安定と向上を図ることは、国家の最大の責務であります。日本国の危機はすなわち国民の危機であり、武力攻撃、テロ、自然災害等の非常事態が起こり、国家の存亡にかかわる事態が生じたときには、政府はすべてに優先して国民の生命財産等を守らなければなりません。
 これに対し、政府提出の三法案は、いわゆる武力攻撃事態を想定しているにすぎず、より緊急性の高い大規模なテロ、事故、自然災害等に対処できない上、自衛隊出動の前提となる安全保障の原則が全く抜け落ちておりました。
 しかし、民主党が与党と修正協議を行った結果、結果として、国会の議決により事態対処措置が終了することとしたこと、また、非常事態への対処組織について根本的に検討していく方向が示されたこと、そして、基本法案の必要性と国民保護法制の早期整備について合意が図られたことなど、自由党のかねてよりの主張が取り入れられており、私どもは、政府提出三法案及び修正案に賛成をいたします。
 なお、安全保障の原則とそれに基づく自衛隊の行動原則、また、武力攻撃、テロ、自然災害等の非常事態に際し、迅速、安全、確実に国民の生命、財産、基本的人権を守る原則と制度を確立することが急務であることを申し上げ、討論を終わります。(拍手)
鳩山委員長 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 私は、日本共産党を代表し、有事関連三法案並びに与党三党・民主党提出の修正案に対し、反対の討論を行います。
 本法案は、日本の平和と安全、憲法の平和原則にかかわる極めて重大な法案であります。昨夜、与党と民主党で修正合意したことによって、本委員会での審議を直ちに打ち切り、採決を強行するなどというのは、断じて許されません。修正案は、今提案されたばかりであります。法案の根本問題でさまざまな疑問が残されています。慎重審議、徹底審議を貫くのが国民の負託を受けた国会の当然の責務ではありませんか。にもかかわらず、公聴会の開催も拒否し、採決を強行するなどというのは、議会制民主主義をじゅうりんし、当委員会の責務を放棄するものにほかなりません。強く抗議するものであります。
 反対理由の第一は、本法案が、政府の言うような日本が攻められたときへの備えなどではなく、自衛隊による海外での武力行使に道を開く法案だということです。政府は、法案の定める「我が国」に、我が国の領域外で米軍支援を行う自衛隊の艦船や航空機も含まれることを認めました。これは重大であります。
 有事法制が発動されれば、海外に展開する自衛隊への攻撃が予測されるおそれがあるとして、その場に踏みとどまって対米支援を続け、攻撃を受ければ応戦することも可能になるのであります。戦闘地域では活動しない、危険になれば活動を中断するという、周辺事態法やテロ特措法に盛り込まれていた政府なりの制約さえも踏み越え、まさに自衛隊による海外での武力行使に道を開くものと言わざるを得ません。
 第二は、アメリカの先制攻撃、単独の武力行使によって引き起こされる事態であっても発動可能な法案だということです。アメリカのブッシュ政権は、昨年九月一日に発表した国家安全保障戦略の中で、いわゆる先制ドクトリンを打ち出し、国際社会の圧倒的な反対にもかかわらず、イラクに対する国連憲章違反の先制攻撃としてそれを実行に移しました。
 石破防衛庁長官は、アメリカの先制攻撃によって引き起こされる事態であってもこの法律が発動できないわけではないと答弁したのであります。アメリカの先制攻撃にさえ連動するというこの法案の持つ危険性は、いよいよ明らかです。
 第三は、こうしたアメリカの無法な戦争に、国民を罰則つきで強制的に動員する法案だということです。有事法制が発動されれば、国民は、土地や家屋を差し出し、医療、輸送、建築、土木など国民生活のあらゆる分野で協力を強制されることになります。ところが、武力攻撃予測事態において、国民、民間、地方自治体にどのような支援が求められるのか、政府は一切明らかにせず、ただ、今後検討するの一言であります。にもかかわらず、首相に強大な権限を与える仕組みだけは導入し、しかも国民を罰則つきで協力させるなどというのは、まさに国民と国会を愚弄するものにほかなりません。
 与党三党・民主党の修正案は、こうした法案の持つ中心的な骨格、危険な本質を何ら変更するものにはなっていません。基本的人権の尊重を明記したと言いますが、あらゆる分野で国民の自由と権利を制限し、強制的に罰則つきで無法な戦争に……
鳩山委員長 赤嶺委員、時間をお守りください。
赤嶺委員 駆り立てるという法案の体系は何ら変わっていないのであります。だからこそ今も、陸海空労組や市民団体を初め多くの国民が反対し、日本弁護士連合会やマスコミ団体が反対声明を出し、自治体関係者から重大な懸念と不安が出されているのであります。国民の不安と疑念は何ら解消されていません。国民の声を聞き、審議を続けるべきであります。
 我が党は、憲法の平和原則をじゅうりんし、アメリカの戦争に国民を強制動員する有事法制の廃案のため最後まで全力を尽くすことを表明して、討論を終わります。(拍手)
鳩山委員長 次に、重野安正君。
重野委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、政府提出の武力攻撃事態法案、自衛隊法改正案、安全保障会議設置法改正案の有事関連三法案、与党三党及び民主党による修正案に対し、反対の立場から討論を行います。
 まず、反対討論を行うに当たって、私は強く強調しておきたいことがあります。それは、いわゆる有事法制の必要性の可否についてであります。この点については、私はその必要性を認めません。
 東西冷戦が終わり、日本が他国の正規軍による直接侵略を受けるおそれはなくなりました。グローバル化が進み、相互依存が深まっている世界では、国家間の正規戦争が起こる可能性はかつてなく小さくなっています。冷戦下で旧ソ連軍による着上陸型侵略からの防衛を前提に検討されてきた有事法制論議の延長線上で提案されている本法案は、その前提としている時代認識が全く誤っていると申さざるを得ません。万が一防衛出動があった場合の自衛隊の任務遂行については、現行自衛隊法の規定で対処が可能であり、あえて新たな法整備を急ぐ必要は全くありません。
 北朝鮮の核問題や拉致問題等は、あくまで外交で解決すべき課題であり、警察や国境警備、国際的核不拡散体制の問題であります。これを防衛力整備や有事法制の論議に結びつけることは、全くの詭弁であり、認めるわけにはまいりません。
 そもそも、本法案で言う武力攻撃事態とされるものの定義はあいまいであります。拡大解釈される可能性が強く危惧されており、現に、武力攻撃を受けた場合だけではなく、武力攻撃のおそれのある場合、武力攻撃が予測されるに至った事態から武力攻撃事態と認定され、自衛隊の活動が始まりますが、この基準は全く不明朗であり、政府の恣意的な解釈に任されるのであります。日本が直接侵略を受けるといった事態とはほど遠い状況から武力攻撃事態と認定され、むしろ軍事的緊張を招き寄せる、あるいは、実際には日本の安全とかかわりのない米国の軍事行動に追随し、その兵たんを支える法的基盤として機能していく、こうしたおそれの方がはるかに強いのであります。
 修正案は、これを武力攻撃事態と武力攻撃予測事態とに分けて整理したものの、原案に対する疑問を何ら解決、解消するものではありません。
 自衛隊の行動に関する法規制を大幅に外す一方、国民に戦争協力を義務づけ、基本的人権を制限する。地方分権に逆行し、自治体の主体性を奪う。いかに有事への備えを理由にしても、日本国憲法の根本理念をこのように大きく突き崩すことは許されることではありません。有事法制は、戦争を否定した日本の法体系に戦時体制を持ち込み、基本的人権の尊重や国民主権の理念をもじゅうりんする憲法破壊法と言わざるを得ないのであります。
 有事法制の制定は、自衛隊の発足、日米安保条約、新ガイドライン関連法と続いてきた日本の再軍備過程を完成させ、改憲なき憲法停止状況をつくり出すものであり、党として強く反対するものであります。
 なお、与党と民主党による修正協議によってもこうした法案の本質は何ら変わりませんでした。そもそも、立法を必要とする客観的事実が存在せず、有事法制自身が不要であるという立場から、社民党としては、修正案についても反対するものであります。
 世界は、紆余曲折を経ながら、軍事バランスによる安定から、人間の安全保障などの発想を中心に据えた、総合的な安全保障体制の構築に向けて進んでいます。悲惨な沖縄戦の経験や、広島、長崎の被爆体験を持ち、世界に誇るべき平和憲法を持つ日本こそが、その先頭に立ち、軍事力への依存を断ち切るための勇気ある道を歩むべきであることを心から訴え、有事関連法案に反対する討論を終わります。(拍手)
鳩山委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
鳩山委員長 これより採決に入りますが、本日の理事会で全理事の合意のもとに本日の採決の日程が組まれておりますので、採決の強行という表現は私には納得できません。
 これより採決に入ります。
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、久間章生君外五名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鳩山委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鳩山委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
 次に、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、久間章生君外九名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鳩山委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鳩山委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
 次に、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、久間章生君外五名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鳩山委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鳩山委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
鳩山委員長 この際、ただいま議決いたしました各案に対し、久間章生君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守新党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。渡辺周君。
渡辺(周)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表しまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、標記の三法の施行に当たって次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。
 一 指定公共機関の指定に当たっては、報道・表現の自由を侵すようなことがあってはならないこと。
 二 国民の保護のための法制の整備は、武力攻撃事態対処法の施行の日から一年以内を目標として実施すること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
鳩山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鳩山委員長 起立多数。よって、各案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。福田内閣官房長官。
福田国務大臣 ただいま御決議のありましたいわゆる武力攻撃事態対処関連三法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたし、努力してまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
鳩山委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鳩山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
鳩山委員長 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時一分散会


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