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第1号 平成14年11月6日(水曜日)

会議録本文へ
平成十四年十一月六日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
  法務委員会
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 園田 博之君
   理事 棚橋 泰文君 理事 加藤 公一君
   理事 山花 郁夫君 理事 漆原 良夫君
   理事 石原健太郎君
      太田 誠一君    左藤  章君
      笹川  堯君    下村 博文君
      中野  清君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    松島みどり君
      保岡 興治君    柳本 卓治君
      吉川 貴盛君    吉野 正芳君
      鎌田さゆり君    仙谷 由人君
      日野 市朗君    平岡 秀夫君
      水島 広子君    山内  功君
      石井 啓一君    藤井 裕久君
      木島日出夫君    矢島 恒夫君
      植田 至紀君    徳田 虎雄君
  文部科学委員会
   委員長 古屋 圭司君
   理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 馳   浩君 理事 森田 健作君
   理事 山谷えり子君 理事 山元  勉君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 佐藤 公治君
      伊藤信太郎君    小渕 優子君
      大野 松茂君    岡下 信子君
      岸田 文雄君    近藤 基彦君
      佐藤 静雄君    谷田 武彦君
      中谷  元君    松野 博一君
      森岡 正宏君    柳澤 伯夫君
      吉田 幸弘君    大石 尚子君
      鎌田さゆり君    後藤 茂之君
      中津川博郷君    肥田美代子君
      平野 博文君    藤村  修君
      牧  義夫君    牧野 聖修君
      池坊 保子君    黄川田 徹君
      石井 郁子君    児玉 健次君
      中西 績介君    山内 惠子君
      松浪健四郎君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   法務副大臣        増田 敏男君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   法務大臣政務官      中野  清君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   最高裁判所事務総局人事局
   長            山崎 敏充君
   政府参考人
    (内閣審議官
    兼司法制度改革推進本
    部事務局長)      山崎  潮君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制
   部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
   文部科学委員会専門員   柴田 寛治君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案(内閣提出第二号)
 司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)
 学校教育法の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより法務委員会文部科学委員会連合審査会を開会いたします。
 両委員長の協議により、私が委員長の職務を行います。
 内閣提出、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案、司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案及び学校教育法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 各案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付してあります資料により御了承願います。
 これより質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧野聖修君。
牧野(聖)委員 民主党・無所属クラブの牧野聖修であります。
 古い話で恐縮でありますけれども、平成六年の五月と六月、当時羽田内閣が組閣されたときでございまして、法務大臣に、今自由党におられます中井洽先生が就任されました。その下の法務政務次官を当時私が拝命いたしました。大臣を中心に法務当局と、羽田政権下で法務行政については一体どういうことをしたらいいのか、そういう話を何回かさせていただいたことがございます。
 そのときに、司法試験制度の改革とか、それから裁判のあり方を改革するとか、あるいは訴訟法等のいろいろな手続法等の改正を含めて、司法制度の抜本的な改革をしなければいけないだろう、そういう認識に立ちまして、そういう決意を持ったことがあります。しかしながら、残念なことに羽田内閣は短命で終わりました。ですから、私たちはそういう気持ちは持ったにもかかわらず具体的な作業には取り組むことはできなかったんです。
 時を経て、平成十一年になりまして司法制度改革審議会が設置をされて、昨年、意見書といいますか答申を得た。それに基づいて今度法案が提出をされて、改革の一歩を踏み出そうとしているわけです。この流れにつきましては、私はよしとして評価したい、こういう立場でもあるし、気持ちでもあります。しかし、今現在、私は文部科学常任委員会の一員として、教育制度の改革という観点からこのことを見詰めなければいけない立場です。そういう立場になりますと、数点たださなければならないことがありますので、ここで質問をさせていただきたいと思います。
 最初に、法務大臣にお伺いをいたしますが、答申を受けて、いわゆる司法試験制度改革とか、それからロースクールの設置とかということは、法務省の立場はよく理解できますけれども、法曹人口の増強と質の向上というこの課題を克服するためには、教育法の一部を改正して、新しい、いわゆる今まである制度を変えてまでやらなければならないのかというそもそも論があるわけです。
 私の素朴な考え方として、法務省サイド、法務サイドだけで、自己完結的にそちらサイドでこの問題を克服することはできなかったのかどうなのか、そのことについてどんな論議がなされたのか、その点について最初にお伺いしたいと思います。
森山国務大臣 牧野先生が御担当していただいておりました今から八、九年前のころから、既に司法制度の改革の必要性がみんなの頭の中にあって、どうしたらいいかということをいろいろお考えいただいたというお話を承りまして、当時からの先見の明がある皆さん方、そして、それから引き続きの御苦労をいただきました皆さん方のことに思いをはせますと、今こうして議論していただくところまで参りましたのは、本当に感無量の思いでございます。
 国民生活のさまざまな場面におきまして、法曹に対する需要がますます高まってまいりました。そしてさらに、その需要が高度化し多様化しているということから、高度の専門的な能力及びすぐれた資質を有する多数の法曹を養成する必要があるということは、当時からますますそういう傾向が強くなっているというふうに思います。
 一方、現行の法曹養成の制度を見ますと、大体、主として大学の法学部出身の人からあるわけでございますけれども、必ずしも大学の法学部というのは法曹を養成するということに特化したものではございませんで、一般的に法律の教養を身につけるという感じの傾向が強うございます。ですから、大学における法学教育というのが法律の実務からはかなりかけ離れたものである。そして、現行司法試験の受験者について、受験技術とか、そういう目先のことといいますか、試験に受かるというための技術、それを重要視するというような傾向が最近募ってまいりまして、その問題点が非常に指摘されております。
 ですから、多様で、かつ広範な国民の要求にこたえる、そのための質、量を確保するということのためには、養成制度を、大学教育あるいは文教関係の大学の養成機関も含めまして、全体として基本的に見直すという必要があるのではないかというふうに考えております。
 このような観点から、法曹養成のための中核的な教育機関といたしまして法科大学院というものを構想いたしまして、その教育と司法試験及び司法修習とを有機的に連携させた新しい法曹養成制度を考えなければならないというのが私たちの気持ちでございます。
牧野(聖)委員 時代のニーズに対応していくというその趣旨はよくわかります。しかし、仮に司法試験制度の中に、知識偏重で、どちらかというとテクニカルな部分が大変大きくなっているという指摘がございましたけれども、受ける側の人間は、やはり求める側のその姿勢に応じて勉強して対応するんですね。今までの法務省サイドの試験の中身とやり方は、全く十年一日のごとく改革してこない。だから、それに対して、やはり司法試験を受ける受験生の方はそれに対応するわけですから、求めるものをもっと幅広なものとか、それから考えることを重要視するとか、そういうものを受験の中に盛り込んでくれば、択一式にしても論文にしても、そういうものを求める姿勢がそちらにあれば、受ける受験生はそれに対応するわけですよ。
 それから、もう昔から言われておりましたが、合格者の数を、本当に一挙に仮に三千人ぐらい毎年合格させるということになれば、教育制度を改革しなくても、そちらの方に手をつけなくても、それは法務省の方のサイドだけで自己完結型にそのことだけでも解決できるのではないか。私は、今そういう気持ちもあるんですが、そのことについてはどうですか。
森山国務大臣 当然、司法試験の内容につきましても検討いたしまして、従来とはまた違った工夫をしなければいけないというふうに考えておりまして、そのようなことも構想の中に入っております。
 受験生は求められるものに応じて勉強するというお話でございますが、今の試験のやり方でございますと、ある一定の日に、そのとき何を知っていたかということが目標になっておりまして、そのようなやり方でありますと、その日ちょうど出てきそうな試験に対して受かるにはどうすればいいかという非常に目先のことに集中しがちでございますので、そうではなくて、やはり法科大学院という構想の中で、プロセスによって、ある特定の分量のものを覚えるのではなく、お互いに議論をし合うというようなことを中心にした教育の内容にし、そしてその内容と同じラインの線で司法試験の方もそういう観点から見直していくというふうに考えております。
牧野(聖)委員 私の感じでは、どうも最初にロースクールありきのような感じがするんですね、法務省サイドでも。ロースクール万能主義に陥るということは大変危険だと僕は思うのですよ。もっと法務サイドでやるべきことはいっぱいあると思いますので、そのことはくれぐれも忘れることなく準備をとってほしい、こういうふうに思います。
 続きまして、文科大臣にお伺いいたします。
 私は、今度のことは、法務省サイドでも最初にロースクールありきという感じを受けているわけですが、文部省の方の今度の学校教育法の一部改正案は、まさしくロースクールありきで、法務省の方から動かされてきたのじゃないかという感じを受けているんですね。ところが、文部省の方は、そうじゃない、時代の要請でほかのこともいっぱいニーズはありますと言われておりますけれども、次に出てくるニーズ、要請がよくわからないし、それに対するプログラムが用意されていないという感じがするんですね。であるならば、これはやはりロースクールありきで来ているのじゃないかなという感じを持ちますが、その点について、文科大臣どうですか。
遠山国務大臣 委員御存じのように、今、大学改革が大変な勢いで進んでおりますけれども、その大学改革の中でも、大学における高度専門職業人を養成していこうという動きといいますか、そういうことについては大変重要視しているわけでございます。
 平成十年の大学審議会答申を受けまして、専門大学院を既に先行させております。そして、本年八月の中央教育審議会で、専門職大学院という制度をつくろうということで、専門大学院をさらに発展させていこうという考えがございます。一方で、ちょうど平成十三年六月の司法制度改革審議会の意見書におきましても、学校教育法上の大学院として今後の法曹養成の中核をつくっていこう、そういう御提言がなされたわけでございます。
 したがいまして、私どもといたしましては、法科大学院がまずあって、そのために学校教育法を改正するということではなくて、それぞれの大学のこれからの行き方として、社会に役立つ高度専門職業人をつくっていくという、その大きな流れとちょうど法科大学院の構想とがうまくマッチをして、さらに大学における専門職業人の育成に資するというふうに考えているわけでございます。
 ほかの分野はどうかということでございますが、もう既に専門大学院におきましても幾つかの分野が先行いたしております。例えば、経営管理、公衆衛生、医療経営などのほかに、公共政策などの分野につきましても各方面で今準備をされておりますし、既に先行しているということで、私どもといたしましては、法科大学院について考えることも一つのきっかけにもなりながら、日本の大学におけるすぐれた専門職業人の育成というものがさらによくなっていくのではないかというふうに考えております。
牧野(聖)委員 大臣に伺いますが、省令で定めて専門大学院というのをつくって、既に二年たったわけですね。正直言うと、まだ二年しかたっていないわけですよ。にもかかわらず、新しい制度に今度は変えていく。文科行政はそれでは朝令暮改に見えるのじゃないですか。
 もう一度、専門職大学院を法律で定めてやっていくその必要性について、大臣からお話を伺いたいと思います。
遠山国務大臣 確かに専門大学院制度をつくりましてからまだ年月が余りたっていないわけでございますけれども、むしろ専門大学院というのは、これまでの修士課程、これはどちらかといいますと研究者養成に力点が置かれていたのでございますけれども、そういう行き方よりさらに発展をさせて、専門職業人をつくっていくということで、専門職大学院に、むしろ発展形態としてそういう制度をつくろうということでございます。
 これまでの専門大学院におきましてはできなかったようなこと、例えば、標準の修業年限は二年を基本としますけれども、分野によっては一年以上二年未満や三年以上とするということで、専攻分野に応じた修業年限が定められるようにする。あるいは、研究指導とか論文作成というようなものを必須としないで、修了要件としては、一定期間以上の在学と、専攻分野ごとに必要となります単位の修得、すなわちコースワークを必須としていく。それから研究指導教員を必置としないなど、新しい仕組みを取り込んで、そして、本当のねらいであるさまざまな分野における高度専門職業人を養成していく。そういう考えでつくろうといたしております。
牧野(聖)委員 幾つかほかの分野でもこれからを想定して時代の要求にこたえたい、こういうことですから、その気持ちはいいと私は思うんですよ。しかし、今度の専門職大学院には、法務大臣の関与と同時に、専門職大学院の枠組みに他省庁の大臣が関与することが将来的に想定されるという話になりますね。そうすると、日本の大学院制度のあり方が根本的に変わってくるということになるんですよ。そのことについては大臣はどういうふうにお考えですか。
遠山国務大臣 専門職大学院一般としましては、これは私は、大学制度の中できっちり位置づけられて、大学における学問の自由なり大学人の発想をもとに進められていくべきものだと思います。
 一方で、法科大学院につきましては、これは、すぐれた法曹を養成していくということで、三権分立の中の一権の非常に大事な分野に携わる方でございますので、法曹についての将来を考えておられる法務大臣としっかり連携をしながら、日本の国家の骨格の一つである法曹というものがしっかりしたものになるように連携協力をしてやっていくということでございます。
 したがいまして、そのほかのことについて特に各省と何かというようなことはございませんで、私どもとしては、それは、それぞれの大学がそれぞれの目標それからカリキュラム等をみずからの発想と力量においてつくっていただく、その大学のあり方の基本は変えないつもりでございます。
牧野(聖)委員 重要な部分についての答弁をいただきましたので、それはそれでいいと思いますけれども、法科大学院、ロースクールのこの件については、三権分立の一翼を担う司法との関係だから法務大臣の関与も認めるという形でありますが、それも私も納得します。だけれども、あとの分野については、時代の要請にこたえて幾つか出てくるときに、その都度その都度そういうことが許されるようになってきますと、教育の基幹が、根幹が大きく変わってくるということになりますので、そこはしっかりと対応するように注文をつけておきたいと思います。
 時間が迫ってきましたので、私は感想と意見を申し述べさせていただきますが、司法制度改革審議会からの意見書も全部目を通させていただきました。非常に懇切丁寧に立派につくられたものだ、そういうふうに私は評価しております。
 その中で、特に司法試験制度とロースクールのことについては過剰ともいうぐらい細かく触れられておりますね。中には平成十六年の四月に開校を迫る文も書いてあるのです。ところが、第三者評価機関の設置とかそういうものについては、いろいろな基準とかそういうものが全く明確にされていないのです。私は、審議会のメンバーの皆さんがそのことは大変御苦労いただいたと思いますから、そのことについては第三者の皆さんの意見を尊重すべきだと思いますが、あの中身は、ロースクールをつくり司法試験制度を改革するということには一生懸命取り組んでおりますけれども、そのほかのことについては後で決めろということになっている。それを今度の法案で出してくるということは、審議会の答申丸投げの法案だね、これは。本当は、法案にする前には当然、その不備、欠陥、その辺は法務と文科の方でちゃんと詰めて準備をして、これだけ大きな制度改革にもつながっていくことですから、その辺をしっかりと詰めてから法案として出すというのが国民に対する丁寧な姿勢じゃないか、こういうふうに僕は思うわけでございます。時間が来ましたので、これからの論議に譲りたいと思いますけれども、決してそういうことのないようにぜひお願いをしたい。
 それから、これから適正規模にそういうものを全国に配置されると言っておりますが、かつて文科省はスクラップ・アンド・ビルドという方針を出すということでありましたので、全国で教育学部が統廃合の憂き目を待っているわけですから、スクラップだけじゃなくてそういう地域にはビルドという形で、こういうロースクール構想は率先して全国に適正配置するという意味で出すべきだというふうに私は思いますが、この点については、政治性の高いあれですから、河村副大臣の方から御答弁をいただいて終わりたいと思います。
河村副大臣 お答えいたします。
 適正配置の問題、我々もできるだけリーガルサービスがあまねく行き届くように、必要なことだと考えておりますが、今おっしゃった教員養成大学、学部等のスクラップ・ビルドの問題は、やはり教員養成をもっと強化したいという意味もあって、その地域の特性に合わせて、今いろいろ御検討をいただいております。
 と同時に、今度この法曹養成の必要性というのは、これはちょっと性格が違うものでありますから、法曹養成のための教育水準をきちっと確保できるということが大前提になっておりますから、こちらの教員養成をスクラップしたからこちらへ法科大学を持ってくるというのとちょっと性格が違うんではないか、こう思っておりますが、それぞれ地域の要請がございますので、それにはきちっと応じていかなきゃいかぬ、こう思っております。法曹養成の水準をきちっと確保できるということができれば、これは大いにひとつ各地域で各大学、法科大学院をつくってもらいたい、このように希望をいたしております。
牧野(聖)委員 以上をもって終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、日野市朗君。
日野委員 おはようございます。
 私、今まで我が党の中でもこの問題の議論をして、法務の認識と文科の方の認識とがかなり違うのかなという一抹の危惧を持っておりました。しかし、今の牧野議員の話を聞いておりまして、ああよかったなと思います。牧野議員は非常にすぐれた見識を示されまして、法務で何で法曹養成を自己完結型にやれないんだ、こういうことをまくらとして置かれたわけですね。私は、これは非常にすぐれているというふうに思います。本当は、これは法務で自己完結型でやらなくてはいかぬのですよね。
 私は、非常に印象的だった法務での質問に、自民党の杉浦さんの質問があります。彼は司法研修所というものの果たした役割というものを非常に重く見られて、何でこのような形で法曹養成の機関をつくれなかったのだ、何も文科省あたりに御迷惑をおかけすることなしに、それから文科省あたりの好きな権力的介入などを避けながらやるべきことではなかったか、私、今でもこう思っております。
 それで、まず両大臣、それから財務省にも来ていただいておりますね、皆さんに伺いたい。法曹養成をそもそも何と考えておるかということですね。そんなことを抽象的にぱあんと質問しますと、皆さんそれぞれ勝手なことをしゃべられたら困るので、私の方からテーマとして差し上げておきましょう。
 法曹養成というのは、日本における分立する三権のうちの一つ、最も独立性が要請されている司法権の行使に当たる人たちを養成するわけですね。司法権というのは独立していなければなりません。チェック・アンド・バランスの考え方も当然あるし、それから、国家からなされる国民に対する人権の抑圧、これに対する盾でなければならぬ。そういう観点から、これは非常に重要なものであり、国家権力から独立していなければならない、他の二権から独立していなければならない。独立をしているということはどういうことかというと、これはそもそもその養成過程から独立をしているということが非常に大事なことだと私は思います。
 杉浦さんの話を聞きましたから、司法研修所における最高裁の教育の方針というのは非常にすぐれたものであったと私は思う。そこでは司法権の独立について多く語られ、さらにそこでの教官とその生徒たち、司法試験に合格していった生徒たちとの関係についても多くを語られた。
 私は今でも、これはちょっと余談、漫談めくがちょっと聞いてください、非常に印象に残っている研修所の所長の講話があります。安倍恕さんという方がその当時研修所の所長であった。彼は、弟子と先生との関係について話をするんですね。その中で、非常におもしろい話をした。
 夏目漱石が正岡子規の俳門に入門するわけですな。そうすると、何ぼ俳句を書いて出しても、真っ赤に朱筆で訂正される。頭にきた漱石が、自分は漢詩ができるというので漢詩を書いて出した。ところが、正岡子規も、あれは漢学をやっていた家の出なんですな。これも真っ赤に朱筆で訂正された。ますます頭にきた漱石は英語の詩を書いて出した。彼は当時、英文学の泰斗でありましたからね。英語の詩を書いて出した。そうしたら、今度は正岡子規は真っ赤な筆でベリーグッドと書いてきたというんですな。これは、先生と弟子、おまえたちはここにいる教官たちを乗り越える法曹になれと、非常にいい教え方だったと思うし、私もいまだに非常に印象に残っている話であります。
 私は、法曹の教育というのは、やはり権力から独立し、そして常に切磋琢磨をしてきた人たちの間から生まれてきたものをできるだけ吸収し、それを乗り越えて新しい法曹に育っていく、こういうことが期待されていると思う。ところが、文科省なんか見ていると、私、非常に気になるのは、既に中教審答申で大きないろいろな方針を出しておられるわけですね。私は、非常にいい言葉を使われましたので、牧野さんのその言葉をそのままおかりしますが、自己完結型であるべきだ、こういう考え方について、法務大臣、文科大臣、どうお考えになるか、それから財務省あたり、これもどう考えておられるか、ひとつそれぞれお話を伺いたいと思います。
森山国務大臣 法務委員会におきましても同様の御質問を前に承ったような気がいたしますが、そのときもお答え申し上げましたけれども、法曹に求められる社会の需要といいますか、そういうものが非常に大きくなってまいりまして、ますます多様化、高度化しているということはもう御承知のとおりでございます。
 ですから、そのために、新たな要求にこたえるような法曹の養成をしていかなければいけない、中核的な教育機関といたしまして法科大学院を創設して、今までとは違った内容にこたえられるような法曹をつくっていこうということでこのようなことになってきたわけでございまして、全国的な規模で多数の設置をいたしまして、そのことによって各法科大学院が創意工夫と切磋琢磨をする、競争もするということで、さらに第三者の評価も得ながら、その教育内容の充実を図るということが重要であると考えられるわけでございます。今度改正されます学校教育法の規定によります専門職大学院の一つとして法科大学院を創設したいと考えたのは、そのようなわけでございます。
 なお、法科大学院が司法を担う法曹を養成するための教育機関であることにかんがみまして、その設置認可に関する審議会に法曹が委員として参画することのほか、法科大学院の設置基準の制定、改廃等につきましては、司法制度を所管する法務大臣が文部科学大臣に対して必要な意見を述べるということができることになっておりますし、法曹や法務大臣が適切に関与することができる制度ということで設計をしているところでございます。
遠山国務大臣 司法制度改革審議会意見書にもうたわれておりますように、これからの日本を担う法曹というのは、単に法律についての専門的知識だけではなくて、豊かな人間性、感受性あるいは幅広い教養、それから柔軟な思考力あるいは交渉能力などの資質が要るということでございます。そこにおきます当初の御議論から、これは大学院の制度の中で行うということについて御異論があったというふうには私ども聞いていないところでございます。
 私として申し上げたいのは、文部科学省について、何か権威的にカリキュラムを決めたり、あるいは大学の方向性について力を持っているかのようなニュアンスがございましたけれども、大学というのは、私どもといたしましては、最もそれぞれの大学の自主性というものを尊重している分野でございまして、法科大学院につきましても、それぞれの大学において、法科大学院の中でも個性を持ってお考えいただいたらいいと思っております。
 その意味におきまして、これからいよいよつくられていく法科大学院につきましても、それぞれの大学の自主性あるいはどういう法曹をつくろうとしているかということについて、その基本のあり方に照らしながらみずからの大学の特色を出していく、そういう時代になるのではないかと思っております。
 その意味で、自己完結型の法曹養成ということではなくて、むしろ、いろいろな大学の幅広い発想なりあるいは意欲なりというものをベースにした未来の法曹を養成していくということが非常に大事だと思っているところでございまして、まさに教育体系の中の大学、大学院、そういう中で養成され、そのプロセスを経た上で立派な法曹になっていかれる、そういうことがむしろ司法制度改革の目的に合致しているのではないかというふうに思うところでございます。
田中大臣政務官 お答えをいたしたいと思います。
 ただいま両大臣からお話がありましたので同様の趣旨になるかと思いますけれども、やはり質、量ともに豊かな法曹を養成し、司法の人的な基盤を拡充するためにこの改革は非常に重要なことだと思っておりますし、法曹人口の大幅増員、それにふさわしい法曹養成制度の整備が重要だと思っております。
 当然のことながら、総理大臣のリーダーシップのもとで、政府全体で、この新しい時代にふさわしい、国民に身近で信頼される司法制度の構築に全力を挙げて取り組んでいかなければならない、このような認識に立っております。
 以上でございます。
日野委員 さっき牧野委員のお話の中で、やはりもう一つ大事な言葉がありましたね。まずロースクールありきで、まずロースクールというものをつくろうというようなことになって、さあ文科省、その制度設計をやりなさいと言われて、文科省は一生懸命やられた。これは私、そういう努力を非難しているんじゃありません。それはもう当然おやりになることはおやりになるんだろうと思うんです。
 ただ、今御三方の意見を聞いた。やはり、我々と感覚的にかなり違うんだなと思いますのは、何度も言います、三権の一つを担う、しかも独立性の高い法曹というものを育成していくわけであって、そのほかに法科大学院、今まで大学でやってこられた専門的な大学院というのは専門大学院なのであって専門職大学院ではないんですな。つまり、こういうことですよ。法曹の育成、そういったロースクールというのは白くそびえる高い峰であって、言うなれば富士山だ。そのほかの専門職というのは、ちょっと言い方が悪いとしたらお許しいただきたいんですが、さむらいへんのつく公認会計士とかそういうところは箱根ぐらいのところかな。それから、そのほかの幾つかの大学院の中でやっていると言われる、さっき文科大臣おっしゃいましたが、例えば国際マネジメント研究科だとか現代経営学専攻だとか、これは箱根ぐらい。箱根ぐらいまでも行かない、もっと低いその辺の丘ぐらいのところかな、私はこんなふうに思うんです。ここいらの、非常にほかと比較できないくらいの重みというものを、あえて今法科大学院という言葉を使わないでロースクールという言葉を使わせていただきますが、それは持っているんだということをぜひとも認識をいただきたい。
 私も弁護士なものですから、法曹の一人だから、そう高く自分自身を持ち上げるというような意味ではありません。これは国家百年の大計としての意味を持つ。歴史上、裁判所が果たしてきた役割というものが非常に大きかったということを、単に日本ばかりじゃなくて各国において持ってきた非常に重要な役割というものをぜひとも認識をしていただきたいというふうに私は思います。
 それでは、これから文科大臣にいろいろ伺います。ぜひとも一問一答的に簡単に答えていただいて結構です、幾つかは法務委員会でも出された問題でありますから。
 まず、法科大学院に対する入試問題ですが、これはだれがつくるんですか。
工藤政府参考人 大学の入試は、努めてそれぞれの大学が実施主体になるものでございます。
日野委員 法務では、大学入試センターなんという言葉が出ていたりなんかしたんですが、あれは間違いですか。
工藤政府参考人 今回の法科大学院の立ち上げに当たりましては、それぞれの大学で、法曹に求められている多様な人材を確保すること、しかもしっかりした教育を行うことが求められているわけでございます。
 その際に、必ずしも法学部等の法学の基礎を有する者ばかりではなくて、全く法律を勉強したことのない方でもお入りいただけるような制度設計をしているわけでございますが、そのためには、アメリカの経験を踏まえまして、適性試験といいますか、法律の専門知識ではなくて、分析力とか判断力とか、いろいろな基礎的な素養を判定するための適性試験を全国共通で実施してはどうかということが提言されてございます。
 それは、各大学ごとに行いますのはロスが大きいわけでございますし、総合的に行うために今、法科大学院協会の準備会というのがつくられてございまして、大学が共同して実施することを前提に調査研究が進められてございます。その際に、どこでどういうふうに行うかということの一つとして、大学入試センターでございますとか、それから日弁連の関連財団の方に調査研究を委託しているという状況でございまして、あくまでも実施主体は大学であることを前提に、実際の実務をどこでお願いするかということを今調査研究しているという段階でございます。
日野委員 結局、文科省の意向が非常に強く反映されていくということになると思いますね。これは非常に大事なポイントですから、ぜひとも大臣にお答えいただきたいと思うんですが、それは局長さんと相談なさることは結構ですよ。第三者評価機関、これはどのような機関になりますか。その構成はどうなりますか。
遠山国務大臣 法科大学院の第三者評価機関といたしましては、大学の第三者評価に関しまして、これまで一定の実績をおさめてきました大学評価・学位授与機構や日弁連の関係団体が検討中と聞いております。
 どういう構成員かということは、それぞれの認証機関がお考えになるところでございますが、恐らくは、法曹関係者あるいは大学関係者ないし有識者等が選ばれるかと思いますけれども、これはまさにそれぞれの認証機関の方針によるものと思います。
日野委員 私は、これは非常に大事なところなんで、文科省は口を出さないでもらいたい。口は出さないでお金は出してもらいたいと思うんですが、法曹教育をほかの権力から独立させるということは、ここのところで非常に大きな意味を持ってくると思うんですね。ですから、私は、これは法曹関係者だけでやるのが一番いいんだろうと思います。場合によっては学識経験者が何人かぐらい入るのはやむを得ないと思いますが。
 外国の例を見ても、法科大学院構想なんというのはアメリカを非常に参考にしているが、大分違っているんですよ、現実的なあり方は大分違っているんです。アメリカでも第三者の評価機関というのがあります。それはアメリカのバーアソシエーションがやっているわけですね。つまり、日本でいえば日弁連です。そのほかのものは入りません。イギリスはどうなっているかというと、バリスターのアソシエーションがありまして、それが評価機関をやっているわけですね。それはちょっときつ過ぎるんじゃないのということで、ちょっと訴訟が出たりなんかしている例もアメリカであるようですけれども、しかし、やはり司法の独立ということを念頭に置いて、ロースクールに対するそういった監督機関といいますか、それから評価機関といいますか、そういったものを完全に法曹だけでやっている。こういうことの意味というのは非常に重いと思う。私は、文科省はここには口を出さないで、法曹を中心にこういった機関をつくるべきだと思いますが、どうですか。
遠山国務大臣 先ほどもお話しいたしましたように、第三者評価機関の人的構成につきましては、法曹関係者、大学関係者、法的サービスの利用者等で構成すべきだと思いますが、そのことは、平成十三年六月の司法制度改革審議会の御意見、あるいは平成十四年八月の中央教育審議会答申におきまして明記されているところでございます。
 ただし、その間の比率でありますとか、あるいはそれ以上に細部にわたるようなことにつきましては、私どもとして、評価機関のあり方についての基準のようなところに定めるつもりはございません。
日野委員 ところで、伺いますが、第三者機関がいろいろ法科大学院に対して物を言うわけですわな。その物を言う行為は、行政的に見てどのような種類に仕分けされますか。
遠山国務大臣 委員の、物を言うという意味がいささか私には理解不足であるかもしれませんけれども、第三者評価機関が出される評価そのものについて物を言うということは、私どもとしてはないわけでございます。
 むしろ、どのような機関を評価機関として社会的に認めるかという角度で、私どもとしては認証行為を考えているところでございます。その認証という行政行為というのは、申請のあった評価機関につきまして、一定の要件に適合しているかどうかを審査して、その適合性を認めて、これを公に証明するために行います、いわば確認行為と考えております。
日野委員 わかりました。法科大学院というものを是認したとすれば、そういうことになるんだろうと思いますね。
 ところで、法務の委員会の中で若干気になる言葉がちょっと出たんです。その評価機関に企業法務の人たちを入れたらどうかというような言葉が出ました。その企業法務の人たちというのは経験が豊かであるというようなことをちょっと言った人もいました。
 私、これは絶対に反対です。企業法務の連中を相手に私も裁判をやったことがありますが、まさにひどいものだ。平気で偽証をする。会社のためになると思えば平気で偽証をする。法曹にとって一番大事なのは法曹倫理ですよ。その一番大事なところをどこかにぶっ飛ばしている連中ですから。こんな者を評価機関に入れたり法科大学院にかかわらせる、または、ひょっとすると、そんなことはなけりゃいいがと思うが、財界筋にはそういうニーズがある、こんなふうにも聞きます。企業法務の連中を優先的に予備試験を受けさせたり何かするというような、そういうニーズがある、私はこう聞いています。
 そんなことがあったらとんでもない話なんで、ちょっと文科大臣の感想を聞いておきたい。
遠山国務大臣 どのような方、どのような人で評価機関が構成されるかということは、それぞれの評価機関がお決めになることでございますけれども、しかし、今法曹が抱えているいろいろな、多様化した、あるいは高度化した問題について対応し得る法科大学院について認証していくということであれば、これはさまざまな、幅広い角度からの御見識も持つ方が参加されてしかるべきではないかと思われます。しかし、これは別に権威的に言っているわけではございませんで、この組織の性格上、申し上げているところでございます。
 企業法務の方についての御意見は、それは日野委員御自身の御意見として承っておくべきもので、私がコメントするべき問題ではないと思いますけれども、それぞれの評価機関が、すぐれた見識なり、あるいは幅広い教養なりということで、きっときちんと選ばれていかれるものであるというふうに考えております。
日野委員 その評価基準、これの細目はもう決まりましたか。
工藤政府参考人 それぞれの評価機関が法科大学院をどういう観点で評価するかという評価基準は、それぞれの評価機関自身がお定めになることでございます。
 この法律が通りまして制度化がなされました暁に、それぞれの準備しておられるところで、内部的に適切な手続を経ながら定められるものと思っておりますが、学校教育法の改正案の六十九条の四の第二項に、大まかな、こういう分野のこういう観点からの評価指標が必要でございましょうということが一応法定で列挙させていただいているわけでございます。その第三項で、これだけではわかりにくいものでございますから、さらにかみ砕いた細目については、文部科学大臣がこれを定めるという仕組みになってございます。
 私どもとしましては、この法律が通りましたら、関係の審議会に早速、法曹三者の御参画もいただきまして、省令として定めたいと思ってございますが、少なくとも、大枠でございますので、例えば、教育課程の編成でございますとか、入学者選抜の状況でございますとか、あるいは教員組織、さらには在籍者と入学定員の関係で余り多数の水増しなどしてはいかがかという観点でございますとか、少人数教育や厳格な成績評価などが適切に行われているかなど、これまで委員会でもいろいろ御指導、御意見をいただいておりますことなども踏まえまして、しっかりした法科大学院を立ち上げるための枠組みということを考えているわけでございます。
日野委員 これは省令で決めると心得ますが、そうすると、その省令はこれから決めますよということを言っているわけですな。法務委員会でもそのようなことだった。
 ただ、細目といっても、どこが大綱であってどこが細目であるか、これはなかなかわかりにくいところがあるんじゃないかと私は思います。私も一応中教審の答申に目を通させていただいて、これは何が細目だ、これは大変なところまで立ち入って文科省が指揮棒を振るんじゃないか、こう思われてならないわけですね。私は、そういうことは法科大学院という法曹養成機関としては最も嫌うべきところではないか、文科省としてはそこは避けるべきところではないか、そう思うんですね。
 それで、まずカリキュラムについて伺いましょう。
 随分細かいところまで決めているんですな。アメリカあたりのロースクールなんかで一番問題になっているのは、中心になる学科を何にするかということなんですよ。私は、日本だってそうだと思いますよ。例えば、司法書士さんの試験に憲法がない。これは司法書士さんたちの行動をえらく制約し、あの人たちに裁判所での仕事をさせないというような一つの大きな制約要因になった。そういうものでありまして、中心になる学科を何にするか、これは日本の法科大学院でも非常に重要なことだというふうに思います。
 このコア学科というものをどう決めるかということについて、中教審答申ではどのようにしていますか。
工藤政府参考人 先ほどの評価基準もそうですが、このカリキュラムにつきましても、大学の自主性なり教育の自由を損なうことを意図するものでは決してございませんで、カリキュラムにつきましても、各大学が自由に創意工夫を凝らしていろいろ特色ある法曹養成に努めていただくことが期待されているところでございます。
 そういう中で、新しい枠組みとしまして、法科大学院の修了者に新しい司法試験の受験資格を与えるということが前提とされておりますので、法曹として必要な基本的な法律関係科目については各大学で一応開講していただく必要があるだろうということで、中教審でもいろいろ御議論いただき、幾つかの科目群が例示として示されてございます。法律の基本科目、それから実務基礎科目、基礎法学科目、さらには展開・先端科目として、各大学の特色に応じて、知財に強い法曹でございますとか国際関係に強い法曹でございますとか、それぞれの特色を持っていただけるような仕組みで各大学のカリキュラム構成を考えてはどうかという御提言をいただいているところでございます。
日野委員 いや、中教審でこのようにずっと答申の中に書き込んでしまえば、そのとおりになるんだと私は思いますよ。全く本当に細かくいろいろ書いてある、主な学科は何だと。それから、実務の基礎科目群、基礎法学・隣接科目群だとか、展開・先端科目、こういった問題についても、それぞれの法科大学院でもう選択の余地なんかない、私はこう思います。
 私なんかこれを見ていて、ちょっともうろうとしましたな。一体何ですか。英語を片仮名に書きかえて書いているわけですね。一体これは何のことだと思ったら、後ろにちゃんと注釈がついている。こんなことはやめなさいよ。やはりここは日本の中教審が日本語でちゃんと書くべきだと思う。特に私なんかは語学に弱いものだから、こんなふうに書かれると、本当にもうろうとしてくるんですな。
 私は、これは非常に強く文科省の方針が貫かれる部分だと思っています。ここを弾力的にやるなんということは、中教審の答申でここまで出されたら、さらに法科大学院の自主性なんということはもうないだろう、ほとんどない、こう思う。
 そして、工藤さん、あなたが気になることを法務委員会で言った。これまでの教授会では法科大学院の運営はできない、こんなことを言っているんですね。これは私は、法科大学院、そんなものはこっちの言うとおりにやってもらわなくちゃいかぬ、こう言っているように聞こえる。ここの点についてどうですか。自由な裁量性が法科大学院の教授会に認められるのかどうか、それから、工藤さんにはどういうつもりでこんなことを言ったのか聞かせてもらいましょう。
工藤政府参考人 さきの法務委員会での御質問への御答弁で誤解を招いたのかもしれませんが、この新しい法科大学院といいますのは、理論と実務の架橋として、新しいスキームで、しかもしっかりした法曹養成に努めていただくことが期待されるものでございます。したがいまして、従来、法学部が置いてあるところが自動的に法科大学院を置けるという安易な形で大学関係者に受けとめられては困るのでございます。従来の延長線上での法科大学院ではなくて、カリキュラムにしろそこに携わる教員スタッフにしろ、それぞれの大学の御見識の問題ではございますが、相当な御努力をいただく話でございます。
 したがいまして、法科大学院としてそこに携わる方々での教授会が構成されて、そのカリキュラムの編成やら、学生の入学、卒業やら、全体の運営については、法科大学院独自の教員、組織での管理運営がなされることが想定されているわけでございますので、仮に同じ大学に法学部があったとしても、そこの教授会がそのまま法科大学院の運営を牛耳るということではなくて、法科大学院の独立性ということで申し上げた次第でございます。
日野委員 大臣、おっしゃることはありますか。ここまで中教審が答申を出していれば、もう法科大学院の自主性なんというものはなきに等しい、私はこう思いますが、御意見をどうぞ。
遠山国務大臣 私は、法科大学院が未来のすぐれた法曹を養成するという目的に照らして質の水準を確保するというのが一つございますけれども、できるだけその基準というものは本当に基本的なところにとどめるようになっていくのではないかと思います。それが一つ。それから、その基準のあり方につきまして法務大臣からも御意見を伺うことになっておりますし、また幅広く中央教育審議会での御議論を得てということで考えておりますので、しかも、私どもとしては、基本的にそれぞれの大学が自主的にお考えになるということを非常に尊重しているスタンスでございますので、御懸念のことはないと考えるところでございます。
日野委員 法科大学院の自由について敬意を表しながらお話をしているというだけでも、きょうの委員会は少しは意義があったかなと思うんです。
 ところで、ちょっと予備試験との関係で伺いますよ。時間がなくなったので、ほかにもっと言いたいことがあるが、工藤さんのさっきの発言も納得しないから、またやりますよ。
 大体、法科大学院を出て司法試験を受ける人の七割から八割ぐらいが司法試験に合格するように仕組むんだと。そして、それが三千人であるということになれば、法科大学院を卒業する学生の数というのは大体四千ぐらいに落ちつきますわな。そして、そのうちの三千人ぐらいが合格するというような形になる。そんなことで経営が成り立つのかどうか、これはまた後日の検討にさせていただきますが、そうすると、予備試験を通って司法試験に合格していく者なんというものは、ほとんどその余地はもうなくなってきやしませんか。いかがでしょう。私は、予備試験というものは、やはり法科大学院卒業者と予備試験から上がっていった人たちとは平等に扱われなくちゃいかぬ、そうでなければ憲法上の問題が出てくると思います。
 そこで聞きますが、もうここで予備試験合格者の入り込む余地はないんじゃないか。どう考えますか。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、予備試験というのは、法科大学院を卒業した人と同じ能力、同じ力があるかどうかということを判定するものでございまして、それに合格をすれば法科大学院卒業生と全く同じチャンスを得るということになるわけでございます。
 また、法科大学院の卒業生のおよそ七、八割が合格するようにという話はよく出てまいりますけれども、これは、法科大学院の教育がそのようなしっかりしたものであってほしいということを言っているだけでございまして、七、八割が合格するということを保証したわけではございません。
 ですから、先生のおっしゃるような心配はないというふうに私は思っておりますし、予備試験に合格された方は、法科大学院卒業生と全く同じ場所で同じように試験を受け、合格すれば同じような資格を得るということでございますので、御懸念はないと存じます。
日野委員 時間が来ましたので、終わります。最高裁、済みません、来てもらって、さっぱり聞かなかった。それから、財務省も、もうちょっと聞きたいことがあったんですが、勘弁してください、そのうちたっぷり聞きますから。
 終わります。
山本委員長 次に、石原健太郎君。
石原(健)委員 時代の要請に基づきまして、これから大きな司法制度の改革が行われるということ、そして、その第一歩として法科大学院が設置されるというふうに理解しておるわけでありますけれども、この一番のスタートですから、法科大学院の存在というのは将来には、さまざまな意味を含めて、大きな意味を持った存在となってくると思うんです。その法科大学院の設置される際に特に配慮されるような点、設置基準の法科大学院としてのポイントになるようなところをお示しいただけたらと思います。
工藤政府参考人 これは、私どもかかわっておりまして、今回の改正は大学改革の一環でありますとともに、司法制度改革にも沿ったものでございます。したがいまして、新しい法曹養成に求められる人材養成の中心機関として必要な中身を備えていただくようなものにしていただきたいわけでございます。他方で、これまで設置基準の関係は、大学あるいは大学院問わず、できるだけ大綱化して大学の自律的な御努力に任せてきてございます。
 その辺の兼ね合いが難しいのでございますけれども、少なくとも、新しい制度の発足でございますので、法科大学院の設置基準につきましては、これまで中教審の御議論なども踏まえまして、教育内容、方法あるいは入学者選抜等について一定の、この答申の目的が達成されるようなものを規定することを関係審議会で御議論いただきたいと思っております。
石原(健)委員 そうしますと、文部省としては、法科大学院だから特にこういう点を考慮に入れなくちゃいけないというようなことは、大学院の自主性に任せるということで、そこは余り考えておられないというふうに理解してよろしいんでしょうか。
工藤政府参考人 一応、設置基準の考え方は、既にこの八月に中教審の方から御答申をいただいてございますので、そこは、設置基準として書くべきことと、それから第三者評価機関においてさらに自主的に深めていただくことと、両方兼ね備えた性格があるわけでございますが、例えば、どういう科目を少なくとも御用意いただくとか、それから、入学者選抜等について多様な人材を確保するための御努力をいただく必要がありますよねということでございますとか、それから修業年限、さらには一定の試験を受けた方についての短縮のあり方でございますとか、それから、従来の大学院の場合には修士論文あるいは博士論文という形の論文作成というのが一応必須になってございますけれども、この専門職大学院の発足を契機に、論文作成については必須にしないとかいうことなどを定めることを予定しておるところでございます。
石原(健)委員 大学院の規模についてなんですけれども、これは大学院の自主性に任せるのか、それとも、ある程度、学生の数とか先生方の数については、最低限このくらいで最高はこのくらいだとかというような、その辺の何か指針になるようなことはお考えになっているんでしょうか。
工藤政府参考人 入学定員のあり方は、努めて各大学が御自由にお決めいただくことでございます。
 ただ、できるだけ少人数でしっかりした教育をということを前提にしてございますので、これまで中教審で御議論いただいた一応の考え方としましては、学生十五人に一人の教員というのが最低基準であろうということが示されてございます。その中でも、いろいろな幅広い分野の先生方をそろえる必要がございますので、最低限十二人の教員をそろえることが最低条件ということを考えてございますが、そうしますと、十二人の教員で十五人に一人となりますと入学定員は六十人というのがセットでございます。したがいまして、六十人を下回ります入学定員ですと、大変コストがかかるといいますか、非常に少人数で緻密な教育はできるんですけれども、逆にコストがかかるというよしあしがございます。
 ただ、それにしても大学が御自由にお決めいただくことでございまして、推進本部の方でアンケートで各大学の検討状況をお聞きしたことがございますが、それによりますと、三十人以下も含めまして入学定員を五十人以下で検討しているというのが約三分の二ぐらいでございます。比較的小規模のものを想定している大学が多うございますが、他方で、三百人ぐらいのものを検討しているという大学もございますので、大変多様なものが出てこようかと思っております。
石原(健)委員 今回の司法制度の改革は、規制の緩和なんかということも視野に入っての改革ということだと思うんですけれども、大学院の設置基準というようなものも一つの規制だと思うんですよね。この改革の趣旨からいいましても、基準というのはなるべく簡素なものの方がいいんじゃないかと私は考えますけれども、大臣のその辺のお考えをお聞かせいただけたらと思います。
遠山国務大臣 法科大学院につきましては、その設置基準は、教育内容、方法あるいは教育体制などの面で質の高い法曹を養成するためにふさわしい基準であるということは必要でございますけれども、大学としての教育研究水準を維持するための必要最小限の基準であるということが望ましいと考えておりまして、なるべく大綱的なものとして、それぞれの法科大学院の特色が十分に生かされるようにしたいと思っております。
 大学改革の一九九〇年代の流れの中で、大学院につきましては本当に規制改革がずんずん進んでおりまして、その流れもございますし、法科大学院につきましても、質の確保ということはしっかり考えながら、できるだけ大綱的にと、委員御指摘のような方向で考えているところでございます。
石原(健)委員 法科大学院の選抜の際に、合否の判定に学業以外にも考慮されるというような点はあるのでしょうか。
工藤政府参考人 これはそれぞれの大学の御見識でございますが、当然あり得るものと思っております。
 それは、法学部卒業者を前提としてございませんので、多様な方々が入学されやすいように、統一的な適性検査をまず予定しておるわけでございますが、そのほかに、各大学での個別試験でいろいろな試験を予定されております。それは結構多様なものとなることが予定されますので、社会人としての経験を問うとかいうことも含めて、小論文、面接等いろいろな方法が駆使されながら、御指摘のようなことも十分考えられることだと思っております。
石原(健)委員 そうしますと、多種多様な学校ができて、多種多様な法曹を目指す人材が育っていくというふうに文部省としては判断されているわけですね。
工藤政府参考人 これは、十分真剣な議論を重ねられました司法制度改革審議会からの御意見もまさにそうでございますし、それを受けての中央教育審議会の御議論もそうでございますので、社会の多様な方々が、法曹に意欲と能力のある方々が多数入っていただけるような、そういう制度設計を予定しているところでございます。
石原(健)委員 評価機関についてなんですけれども、法科大学院を評価する機関はほかの大学院も評価することができるのでしょうか。
工藤政府参考人 今回の制度改革によりまして、日本の大学の質をもっといいものにしていただきます。それは、それぞれの大学の自己努力ではあるわけでございますが、それをバックアップするために第三者評価という制度を新たにお願いしているわけでございます。その際に、法律の規定にございますように、全学的な評価を行う第三者評価機関と、専門職大学院についてそれぞれの専門職の分野ごとに行う評価機関がございます。
 したがいまして、例えば法科大学院についての評価機関について認証を受けた場合、他の、例えばMBAといいますか、経営管理関係のビジネススクールの評価を行うことは、それは認証を受けておりませんのでできないわけでございます。ただ、一つの評価機関が複数の認証の土壌を用意して、複数の認証を受けることは十分あり得ることでございます。
石原(健)委員 評価機関に、評価機関もあるいはちょっと財政的に容易でないなんというときもあるかもしれないと予想されるんですけれども、公的な財政支援は考えられるのでしょうか。
工藤政府参考人 評価機関の活動そのものは、国からの業務の委託とか代行ということではございませんで、それぞれの評価機関が独自に行っていただく自立的な業務でございますので、その財政基盤も含め、各評価機関が自己責任で行っていただくのが基本でございます。
 ただ他方で、諸外国に比べまして日本の場合に、この評価の仕組みがこれからでございます、大変立ちおくれているわけでございますので、その未成熟な状況をどう制度化し、それを定着させていくかということなども踏まえまして、中央教育審議会の方からも、財政支援のあり方についても検討すべしという御注文をいただいてございます。
 私どもは、これまで関係機関からいろいろ御相談を受けておりますが、中には自立的にやりたいという御意向を漏らされているところもあれば、一定の立ち上げの支援は欲しいというところもございます、多様でございますけれども、財政状況も考えながら、どういう支援が可能なのか、リーズナブルなのかということを今後さらに検討してまいりたいと思っております。
石原(健)委員 評価機関にえこひいきなんかがあったり、何か評価機関が文部省に気を使った評価をしたりとか、そんなことも懸念されるところですけれども、評価機関の公平性はどのようにして保たれるのかを簡潔に御説明いただきたいと思います。
工藤政府参考人 大学の評価というのは何ぴとでもできるわけでございます、今の制度でも。それを今回こういう形で行いますのは、一定の社会的信頼性、それから大学に対する信頼性を確保する観点からも文部科学大臣の認証にかからしめようということなんでございますが、その認証の際の基準としまして、それぞれの定める評価基準でございますとか、運営体制等が適切、公正であるかどうかということを判断しながら行うことが一つでございます。
 仮に、それがうまく機能していないとなりますと、文部科学大臣の方から、資料の請求でございますとか調査をお願いし、それでちょっと不適切なことがありますと改善をお願いし、それでも改善されない場合は、場合によっては認証取り消しということも考えられているところでございます。
 なお、各大学からの不服申し立てという制度もございますので、機関内部の、関係大学間の切磋琢磨といいましょうか、意見の申し出によりその改善がなされるという自己努力の道も期待されているところでございます。
石原(健)委員 連携法に基づいて今いろいろ進められているところだと思うんですけれども、両大臣が今後とも一層連携を深められて、立派な法科大学院ができて、そして司法改革が国民のみんなに喜ばれるようなものとなるよう希望して、質問を終わります。ありがとうございました。
    〔山本委員長退席、古屋委員長着席〕
古屋委員長 佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。
 本日は、法務大臣また文科大臣を前にこの法案の審議をさせていただきますが、今まで議事録、また司法改革、いろいろなものを読ませていただきました、骨太の方針、改革工程表。そういう中で、個々に細かいことを聞いていきたいことも多いんですが、時間の関係上、簡単に一点、二点のことだけお聞きしたいと思います。
 やはりこういう法律を審議するに当たって、おのおのの、司法の制度または司法、法曹のあり方はどうあるべきなのかということと、あとは、文科省におきます教育のあり方という話というものが非常に基本として大事になってくると思います。しかし、いろいろと見させていただく中、私自身また疑問に思うことが何点かございまして、やはり司法の制度または司法行政のあり方、教育のあり方、その大もとにはこの国のあるべき姿ということが最も大事なことであり、これはもう哲学、理念的な話にもなると思いますけれども、そこの基本的なことがあって、それを受けて初めて司法制度、司法のあり方、または教育のあり方というものがあると思います。
 小泉総理、小泉内閣として、この国のあるべき姿の青写真というものが本当にあるのかどうかというのが私自身疑問に思うことでございます。これは両大臣にお聞きしたいと思いますが、小泉総理、小泉内閣で、この基本的な国のあるべき姿の青写真、哲学、理念というものはあるんでしょうか、ないんでしょうか。イエスかノーかでお答えくださいませ。
森山国務大臣 総理大臣は当然国全体を眺めて、このようにあるべきだという哲学をお持ちであると思いますが、この司法制度改革につきましても、小泉総理が司法制度改革推進本部の本部長といたしまして、これをしっかりと進めていこうという態勢で今日まで来ております。
 一言で申せば、司法制度改革の考え方は、国民に身近でわかりやすい、頼りがいのある司法制度をつくること、そして裁判も早く、迅速に片づくことができるような体制を整えること、そのような趣旨のことを本部の会合でもたびたび御発言になっておりまして、そのお考えに沿ってこの改革を進めているところでございます。
遠山国務大臣 総理がお答えになることだと思いますけれども、しかし、日本の将来を見詰めながら本当にしっかりした国にしていきたいということで構造改革に取り組んでいるわけでございまして、私どもとしては、その中で教育あるいは科学技術、文化等の角度からその理想を実現するべく、いろいろ取り組んでいるというのが実際でございます。
佐藤(公)委員 お二人ともあるということで、イエスというお答えをいただきました。では、あるというのであれば、一体全体、その国のあるべき姿、青写真、哲学は何か。お二方、お答えくださいませ。
森山国務大臣 総理大臣にお聞きになっていただいた方がよろしいと思いますが、私にとおっしゃるのであれば、先ほど申し上げたことを繰り返し申し上げるほかございません。特に、司法制度改革については先頭に立って頑張っていただいているということを申し上げます。
佐藤(公)委員 繰り返しになるとおっしゃいますけれども、私が聞いているのは、司法行政、司法のあり方、制度のあり方じゃなくて、この国の社会、この国がどうあるのかという基本的なことです。大臣、それをきちっと答えられなくて、どうやってこの国の法務大臣としての役割を果たせるんですか。
 僕は、通常、国民の皆さんどう思っているかといったらば、総理と大臣との間では同じ哲学を持ち、やはり同じ国のあるべき姿、青写真、設計図があるから、こういう司法制度をやろう、教育をやろうということで進んでいるというふうに普通思うと思います。ですが、きちんと総理がどういうものがあるとおっしゃられる、では、どういうものがあるのか国民の前で簡単簡潔に説明をできなければ、それはあるとは言えないと僕は思いますが、いかがでしょうか。これは両大臣にお聞きしたいと思います。
森山国務大臣 司法制度改革推進本部の顧問会議におきまして、総理が御発言になったお言葉がございます。構造改革の目指す社会とは努力をする者が報われる社会、正しい者が救われる社会である、その意味で、国民に頼りがいのある司法を実現することは現在内閣が総力を挙げて取り組んでいる構造改革の基盤をなすものであるという御発言がございまして、総理のお考えがここにあらわれているんではないかと思います。
遠山国務大臣 法務大臣のお答えになったとおりでございます。
佐藤(公)委員 もう時間がないので、この議論をしていましたら本当に三十分、一時間すぐたってしまいますので、やはりそこの部分をきちっとしていかなくてはいけないというふうに思います。
 そして、僕はなぜこういうことを言うかというと、文科大臣御存じだと思いますけれども、先般の委員会の質疑の中で、このロースクール、学校教育法の改正、こういう議論の中で、工藤局長覚えていらっしゃると思いますけれども、このロースクールが出てきたきっかけの一つとして、人の痛みがわかる人を育てていく、また、そういう人たちを法曹人材として確保していく、そんなお話があったかと思います。
 私自身、いろいろなところをヒアリングしましたところ、やはり同じような話がたくさん出てきます。言葉はもっともっときつい言葉になりますけれども、例えば、血の通う法曹人材とか、もしくは社会適応ができるような人材、正義、哲学が余りにも現段階なさ過ぎるんじゃないか、こんなことがかなりいろいろなところから声が出て、そういう人たちを多く育てていきたい、また求めていきたい、でもこれは本音だと思います。だから僕は、これはこれで否定はしません。
 だけれども、大学院という大変高いレベルの学校においてこういうことが公で論じられるような教育なり国なり人材の基本的な問題があるんじゃないかな、こんな思いがします。本来、人の痛みがわかるというのは、小学校、中学校、高校ぐらいまででせいぜい人格形成、こういったものをつくり上げなきゃいけないのに、それを、大学を飛び越して大学院というところでも同じようなことが公で論じられているというのは考えようによっては異常なんじゃないか、僕はこんな思いがします。
 こういうことが本音でありながら、やはり今の司法または教育のあり方というものを根本的に考えるためには、社会全体のあるべき姿、ここをきちっと総理大臣及び内閣で話し合い、自分たちで設計図を国民にわかりやすく示すことが今とても大事なことではないかと思います。経済にしても何にしてもそうです。国民の目には場当たり的にしか見えません。こういうことを、私はきょう短い時間の中でもお二方を前にして申しておきたかったということでございますが、ぜひこのことに関して、法務大臣そして文科大臣の御意見をお聞きしたいと思います。
森山国務大臣 人の痛みがわかる、あるいは血の通った司法制度あるいは法曹というものが求められるということは全くおっしゃるとおりでございまして、国民に身近で頼りがいのある司法を担う法曹というのが私たちの、表現は違いますが、同じような気持ちをあらわしたものでございます。
 ですから、専門的な法律知識を十分持っているということはもちろん必要でございますけれども、そのほかに豊かな人間性とか社会や人間関係に対する洞察力などが求められるところでございまして、そのようなものを育てていく法曹養成の一環として、いやその中心として法科大学院を置きたいというのが構想の原点でございます。
 そのような観点から、新しい法曹養成制度の中核となります法科大学院においては、法曹倫理に関する授業とか、法律相談等の実社会との接触を内容とする教育に加えまして、司法修習における実務修習等も通じまして、事件当事者を初めとする関係者の立場や心情を思いやり、人の痛みを理解することができる豊かな人間性を備えた法曹を養成していきたいというふうに考えております。
遠山国務大臣 法務大臣の御答弁のとおりでございますけれども、これまでの大学院教育あるいは法曹のあり方というものの反省の上に立って、単に法律の知識ないし技術的な解釈ということだけではなくて、より幅広い教養なり良識なり、その他さまざまな思考力等を備えた、そういう人材をつくっていきたいということで、それを一言にして言うと、人の痛みがわかるというようなさまざまな表現が用いられていると思います。
佐藤(公)委員 ということは、今の法曹、法曹界というか法曹人材は、人の痛みがわからない人たちが多い、血の通わない人たちが多い、適応できないちょっと変わった人たちが多いということになると思いますよね。全部が全部だと思いません。そういう人たちが多いというふうにもとることができると思います。
 今回の法律に関して、私は全部否定しません。いいこともあります。しかし、やはり今こういうふうな形にそういう人たちばかりが、多いとは言わない、出てくる。試験を出す側にも問題があったんじゃないんですか、そういう人たちをつくり上げてしまった試験。だから、現状の制度でも、本来やるべきことというのはたくさんあったはずです。それをそのまま放置してきてしまった。この責任というものをやはりもっと考えてもらいたい。
 先ほど御説明された中で、私は、小泉内閣のこの国のあるべき姿というのはまだ全然わからない。あるのかないのか、これ自身もまだまだ説明が不足されていると思います。そして、先ほどおっしゃいました、まじめに働く人が報われる社会にしたい、またそういうふうにしたい。今、そうなっていますか。まじめに働く人たちがばかを見るような社会に今なっている、または一生懸命やっても全然報われない。それに手を差し伸べるようなことを、どんなことを今までしてきているのか、またこれから早急にしなくちゃいけないのか。中小企業も含めて、みんな死ぬか生きるかです。まじめに一生懸命やって、国の言うとおりにやってきた。にもかかわらず、今知らぬ顔をされる。こういう状況なんじゃないかと私は思います。そういうところを今後、深い議論をまた文科委員会でもしたいと思いますので、どうかよろしくお願いを申します。
 これにて質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。
古屋委員長 山内惠子君。
山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。
 私の持ち時間も十五分と大変短いので、質問したいことがたくさんございますので、短い言葉で御回答いただければと思います。
 初めに、森山法務大臣に質問したいと思います。
 新しい時代の法律家養成のために法科大学院を設立するということが今回の大変大きなテーマですので、司法制度改革審議会の意見書を見せていただきました。二十一世紀の司法制度改革の三つの柱として、国民の期待にこたえる司法制度、司法制度を支える法曹のあり方、国民的基盤の確立と挙げています。ここに、二十一世紀の司法制度のあるべき理念というのは一応書かれているんですけれども、大臣がどのように思っていらっしゃるか、この二十一世紀のあるべき理念、お答えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
森山国務大臣 司法につきましては、かねてから、裁判に時間がかかるということや、国民にとって余り身近に感じられないというようなことが言われておりますし、世の中どんどん進んでまいりまして、複雑化してまいりまして、多様化、高度化、国際化している社会のニーズにもっとこたえていかなければいけないというような問題点が指摘されております。また、いわゆる事前規制型の社会から事後監視型の社会に転換するということでございまして、二十一世紀の我が国社会において司法の果たすべき役割が一層重要となるということは、皆さんが認めているところでございます。
 そこで、このたびの司法制度改革につきましては、このような点を踏まえまして、裁判の充実、迅速化、国民の司法参加等を図るとともに、多様かつ広範な国民の要請にこたえ得る、質、量ともに豊かな法曹を養成するために、法曹養成の中核的な教育機関といたしまして法科大学院を設置して、その法科大学院における教育と司法試験及び司法修習とを有機的に連携させて新たな法曹養成をしていきたいというのが考えでございます。
山内(惠)委員 ありがとうございます。
 今回のこの審議会の一ページ目のところに、「今般の司法制度改革の基本理念と方向」というのが書かれておりまして、この四行目に、「法の精神、法の支配がこの国の血肉と化し、「この国のかたち」となるために、一体何をなさなければならないのか」と書かれておりましたので、一つだけ確認をさせていただきたいと思います。
 当然と思いますけれども、法の精神、法の支配の法というのは憲法のことを基本的に指すということでよろしいでしょうか。
森山国務大臣 憲法ももちろん大切でございますけれども、あらゆる法律を指していると思います。
山内(惠)委員 私は、当然、法の精神、あらゆる法を指すということはわかりますが、基本のところに憲法があるかということで質問したのです。ありがとうございました。
 文部科学大臣に次のところから質問したいと思います。
 新しい事業を起こすときには予算なくしてはできないと考えますので、法科大学院と学生に対する特別な財政支援というのを検討されていると思いますけれども、もう一度大臣、どのような検討をしているかということを短くお答えいただきたいと思います。
遠山国務大臣 学生に対しましては、経済的な事情があって法科大学院へ通えないというようなことがないように、今できるだけ奨学金の問題あるいはローンの問題などについて検討いたしております。
山内(惠)委員 ありがとうございます。
 大学院の設立に関して前回のときも質問しまして、適正配置に配慮をするというお答えもありましたが、このことも追求すれば大変時間がかかりますので、また改めてというときに考えたいと思います。
 私としては、きょう一番にお聞きしたいのが、第三者評価機関と認証の問題についてです。
 大学を評価するというのは、自己評価であれ第三者評価であれ、言うまでもなく、その大学の教育研究の質を高めるということが大変重要だというふうに思います。その意味で、大学自身の自主的な改革を促すものでなくてはならないと考えますが、当然かもわかりませんけれども、よろしいでしょうか。
工藤政府参考人 おっしゃるとおりでございます。
山内(惠)委員 それで、評価機関を文科省が想定しているのはどういうところかということを、先ほどの方のお答えの中に大学評価・学位授与機構とか日弁連とかとおっしゃったんですけれども、そのほかにも検討しているところはおありと思いますが、急いでお答えいただきたいと思います。
工藤政府参考人 私どもは、今のところ他にはお聞きしてございませんが、制度的にはいろいろなものが参入できる仕組みを予定してございます。
山内(惠)委員 大学基準協会とか私立大学協会などというのも部会での説明ではちょっとお聞きしておりましたが、それ以外にも民間機関がこの事業に参入するということも御検討なさっているというふうにお聞きしましたが、この人たちが参入するための条件整備としてどのようなことを考えていらっしゃいますでしょうか。
工藤政府参考人 失礼しました。先ほどの御答弁は、法科大学院についてのお話でございましたので、私どもの聞き及んでいるのは二つだけでございます。
 それから、一般的に、まさにこれは民的な立場で評価機関、私どもいろいろな分野でいろいろなところが名乗り上げていただくことを期待しているわけでございますが、その母体としましては、法律の改正案にもございますように、一定の大学評価基準とか評価方法などが適切であるかどうかということの問題でございますとか、評価の体制が整備されているかとか、大学から申し立ての機会が付与されているかとか、経営的基礎を有する法人、人格なき社団なども含みますけれども、しっかりした団体であるか、そういう外形的な要素が備えられていれば、それが株式会社であろうと民法法人であろうとを問わないところでございます。
山内(惠)委員 新しいことをするのには本当に予算がかかると思いますので、いろいろな意味で文科省が財務省からたくさんの予算を獲得するように、私もエールを送りたいと思っているところです。
 その意味で、大学評価・学位授与機構というのに文科省の予算がついているとお聞きしましたが、どのくらいついているのかお聞かせいただきたいと思います。
工藤政府参考人 大学評価・学位授与機構は、いわば国立大学の仲間といいましょうか、同じ類型の中での位置づけなのでございますけれども、大学の評価と学位授与という事業を行ってございます。
 このうち、大学評価の事業というのは、国立大学を中心に、設置者の立場で国立大学等の質の向上を図っていく必要があるという観点からの事業を、全学的なテーマ別評価とか、教育別、研究別の評価を行っておりますほかに、先ほど来申し上げておりますように日本でこういう大学評価の仕組みが甚だ未成熟なんでございます、国立大学だけではなくて、日本の大学、短大を含めた高等教育機関の評価システムをうまく立ち上げてバックアップできるように、いろいろ調査研究でございますとか情報収集などの事業も行ってございまして、それらをいろいろ含めますと、十四年度予算では六億弱の予算措置をしてございます。
山内(惠)委員 ありがとうございました。
 私の調べたのは、平成十三年度の当初予算のところで六億二千五百八十四万円の予算がついている。その中で、大学評価にかかわっては、人件費が入っていないという計算をしたもので四億円くらいかかっているというふうに聞いています。
 そのことを考えますと、今のお話では、現状で調査研究をするということも含めているから予算をつけているというふうにお聞きしたのですが、それでは、この後、いろいろな形で評価する機関が登場してくるときに、その機関に対してもお金をつけるのか。それから、つけないのであれば、この機構に出し続けるかどうかについてお聞きしたいと思います。
工藤政府参考人 実際にこの大学評価・学位授与機構が認証評価機関になるかどうかというのはこれからのことでございますけれども、少なくとも認証評価の事業は、それぞれの機関が自立的に行っていただくべきものでございます。運営もそうでございますし、財政的基盤もそうでございます。
 しかも、実際に評価するに当たりましては、多数の評価委員を要したり、あるいは実地調査などをしたり、結構手間暇もかかるわけでございます。それに伴いますコストについて、参加校からの一定のお金などもいただくということなども通常は考えなきゃいけないことだと思ってございまして、したがって、大学評価・学位授与機構も含めて、認証評価に係る部分の財政支援をどうするかということについては、これからのことでございます。
 中教審の方からは、一定の支援もすべきだという御意見もいただいているのでございますけれども、財政事情も考え、かつ、それぞれの評価機関の取り組み状況も考慮しながら、今後さらに検討してまいりたいと思っております。
山内(惠)委員 公平な評価をということを極力追求するとしましたら、現在ある大学評価をしている学位授与機構に出す金額と、民間参入する人たちの機関に同じような金額の予算を配置する、もしくは、それは今おっしゃったように、国からの委託ではないので自主的にやれというのであれば、こちらの方も出さないという意味で公平であるべきだと思いますので、その辺も含めて御検討いただきたいと思います。
 実は私は、今回の評価にかかわってですけれども、第三者評価ということは大変重要だと思います。例えば、例を出してどうかと思いますけれども、帝京大学の大学の中の教授会も十分に機能していなかったというようなことがあること自体、やはり正していかなければならないことですけれども、戦後五十七年間、大学の自治ということを進めてきた歴史がある中で、どういう評価がいいかというのは、基本的に大学自身が自主的な改革をしていくということを促すべきだというふうに思います。
 その意味で、国の直轄というのではないということをいろいろおっしゃっていますけれども、設置をするに当たって、この条文で、六十九条の五の二項のところですか、認証を取り消すこともできるという項目があるということを考えたときに、やはり文科省の視点というのが相当強く反映されることを懸念します。その意味で、国の直轄と言われない第三者機関にすべきだということについて、いかがお考えでしょうか。
工藤政府参考人 先ほど先生もおっしゃいましたように、第三者評価というのは、国の事業を委託して、あるいは代行的にどこかにやっていただくということを予定しているものでは決してございません。
 大学評価というのは、今さら申すまでもなく、何ぴとであれできるわけでございます。既に、某新聞社も含めて、大学ランキングという本を発行したり、多様な評価がなされているわけでございますが、大学の質の向上を図るため、諸外国の経験を踏まえて日本でもしっかりしたこういう評価システムを構築していこう。その場合に、たまたま今御指摘ございましたけれども、某大学の何とかグループと言われるみたいに、いわば身内の身勝手な評価がなされて、それがひいては日本の大学全体の足を引っ張るようなことがあってはならないわけでございますので、一定の基準に合致したものについて、これならよろしいんじゃないでしょうかという、大学に対しても社会に対しても信頼性を向上し、教育研究の質の向上に寄与していただくために認証という行為をたまたまするだけのものでございまして、これは、国が評価をするものでも、その評価の中身に立ち入ろうとするものでも決してないのでございます。
山内(惠)委員 基本的に身内の評価であってはならないということは、そうだと思います。その意味で第三者ということをあえてもう既に書かれているわけですから、第三者の評価を義務づけるということで、私はその一点、やはり今まで自主的になされていたところもあるけれども、なかなかやっていないところもあるわけですから、必ず第三者評価を受けることを義務づけるということで十分だというふうに私は思います。
 特に今回、専門職大学院のための大学評価をすることがこの後の大学院の評価にもかかわってくるということを考えるとき、例えば、国の進める国際競争力強化のための知の創造とか、科学技術・人材立国とかいうふうに、願っているものをやっている大学の評価が高くて、そうじゃないところは高くならないとかいうようなことは、当然そちらも思っていないと思いますけれども、文科省が認証し、取り消しもするということがあるときに、その辺が大変心配なところです。
 その意味で、私は先ほど、この法の理念というところが憲法が中心なんだろうということを質問したことの趣旨はここです。憲法というのは、第二次世界大戦その他の戦争を反省してできた、守るべきは権力の座にある者だと言われています。その意味で、私は、やはり一つの価値によってこの認証機関ができるのではなく、多様な機関によって多様な視点から評価をしていくことをいかにして保障していくかということが重要だというふうに思います。
 質問時間がこれしかないことを大変残念に思いますが、私の質問を終わります。
古屋委員長 植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 十五分しか時間がありませんけれども、その限りの中でできるだけ、お伺いできることをようしたいと思うわけですが、先ほど、自由党さんの話を聞いて、おっ、おもろい議論が始まるかなと実は期待をしながら私は聞いておったんですよ。これからの我が国の国の形、未来像。というのは、法務委員会で結構技術的な話が多いものですから。そうしたら、おもしろい話が聞けるかなと思ったら、両大臣、えらい愛想のない答弁でつまらなかったんですが、端的に言えば、我が国が、それは与党であろうが野党であろうが、民主国家であり、民主国家を目指すのであれば、常に我々の作業というのは、民主主義を不断に追求する過程でなければならないわけですね。ですから、一つの言い方で言えば、まじめに生きてきた者は報われる、言ってみれば、みずからの努力と研さんの結果以外に人と人との間に格差や差別というものを生まない、平等社会、公平社会であろうというふうに思います。
 ここで平等と公平の価値を言い始めたところで始まらないわけなんですけれども、というのは、そこでさまざまな見解が分かれてくるわけでございます。ただ、その平等なり公平なりを担保するのが法であるはずですよね。だから法のもとの平等と言うわけでございますから。
 そういう意味で、今回の、いわば法曹人口をふやしつつ、その中で、それこそ今まで以上に国民の身近なところに法曹人がいる、そして我々国民の期待にこたえるそうした法曹人を養成する、そういう描いておられる抽象的な未来像は我々としても理解するわけです。問題の法案の中身についてはまた法務委員会でもやらせていただきますけれども、そこの部分の哲学めいたところはそれなりに首肯できる部分もないわけではない。
 では、そうした理想に近い人材をどう養成するのかという問題が一つあるかと思うんですが、ここでお伺いしたいのは、今度はそれを活用する国民の側も、今まで以上に舌が肥えぬとあきませんですわね。要するに、さらされる側の法曹人の育成と、今度はそれを見据える私たちの目も肥えていかなければならない。そういう意味で、適切な情報を提供し、また国民がその判断をしていく上で適切な素材を提供するという意味における法教育、啓発の重要性というものも当然出てくるだろうと思います。
 まず、ここは端的に、法務大臣、文科大臣それぞれのお立場から、その辺の獲得目標、全般的課題について御教示いただけますでしょうか。
森山国務大臣 委員が御指摘の国民の司法教育に関しましては、司法制度改革審議会の意見におきましても、「学校教育等における司法に関する学習機会を充実させることが望まれる」とされております。この意見でも言っておりますように、国民が司法のさまざまな領域に能動的に参加し、そのための負担を受け入れるという意識改革も求められていると思います。学校教育を初めとするさまざまな面におきまして司法の仕組みや働きに関する国民の学習機会を十分に与えるということは、重要な課題であると考えております。
 そのために、法務省でも、この三月に閣議決定されました司法制度改革推進計画に従いまして、学校での司法に関する教育のあり方などを検討しているところでございますが、今後、その検討結果を踏まえまして、文部科学省を初めとする関係省庁と協力いたしまして、いろいろな御意見を伺いながら、所要の措置を講じていきたいと思います。
遠山国務大臣 植田委員おっしゃいますように、日本は民主主義国家であり、また法治の国であるということを達成いたしますためには、やはり国民各層が法に関する基礎的な素養を身につけるということは大変大事だと考えております。
 こうした観点から、学校教育におきましても、それから社会教育におきましても、生涯の各期間を通じて、各時期を通じて、それぞれの自発的な学習意欲に基づき学習ができますように、法に関する教育の充実が次第に図られているところでございます。
 特に学校教育については、法務大臣も触れられましたけれども、学習指導要領でも明記いたしておりますが、特に社会人を対象とした法律関係の、例えば大学における公開講座はかなり盛んになってまいっております。それから、地域の公民館などを利用しての各種講座の中で法律等に関する基礎的な知識などを習得する学習機会、あるいは放送大学のカリキュラム等で、次第に法律に関する基礎的な素養を身につけるための機会は充実してまいっていると思います。
植田委員 ありがとうございました。
 法務大臣の御答弁にあった所要の措置というようなことについてはまた別途聞く機会があろうかと思いますので、きょうはせっかくの機会ですので、とりわけ文科省にかかわるその辺の所要の取り組みについてお伺いしたいわけです。本来こうしたものは、何もお上がやらなくてもそれぞれ民間が主体的にやっていけばいいことだろうと思うわけですけれども、やはり適切な情報提供なりスキルの提供等も必要でしょうし、きょうは、とりわけ学校教育における法教育について何点かお伺いしたいわけです。
 実際、高校なんかでも、サラ金の問題等々、授業にも取り込まれているというような話も聞くわけですけれども、そうしたものを高校の現場等でやるにはやや限界がある。一つは、実際、ホームルームを活用するか、いわば社会科、そういうところで取り扱うぐらいしかやりようがないわけですし、また、教えられる多くは恐らく社会科の教師の方だろうと思うんですけれども、法律の専門家というわけではありませんから、どうしたカリキュラムを組むんだらいいのか、その辺のところはなかなか悩んでおられるようです。ですから、その辺の一つの言ってみればマニュアルというか要領みたいなものが一定やはり提供されるということは、現場で今既にそうした動きが始まっているということからすれば、非常にプラスになるんじゃないだろうかという点が一点。
 できれば、そうした法教育を義務教育段階からどうした形で展開するのか。法教育を進めていくということについては、私は非常に重要な課題だろうと思う。というのは、法科大学院をこしらえるといったって、それだけではだめなわけであって、そもそも前提からの学校教育においてそうしたことにたえ得る素養というものを一定身につけていくということがやはり前提条件としてあろうかと思いますので、今二点申し上げましたけれども、その点についてお答えいただけますでしょうか。
矢野政府参考人 まず、我が国におきます初等中等教育の法あるいは司法に関する指導の現状を御説明申し上げたいと思うわけでございますが、従来から、小中高等学校を通じまして、児童生徒の発達段階に応じて、社会科あるいは公民科を中心として、法あるいは司法に関する指導が行われてきているところでございます。
 学習指導要領におきましては、例えばその点につきまして、中学校の社会科で、法の意義でございますとか、法に基づく政治が大切であるといったことを理解させ、また、我が国の政治が日本国憲法に基づいて行われていること、さらには、日本国憲法が基本的人権の尊重等を基本的原則にしていることなどを指導しているところでございます。さらに、高等学校の公民科では、政治と法の機能、人権保障と法の支配、さらには権利と義務の関係などにつきまして、より深く理解させることといたしているところでございます。
 そこで、そういう状況でございますけれども、委員のお尋ねは、そうした場合の指導のあり方、教材を含めて指導のあり方、あるいは指導者の問題についていろいろ工夫がなされるべきではないかといったような御趣旨であろうかと思うわけでございます。その点につきましては、御指摘のとおりでございまして、教材、それから特に指導者につきましては、なかなかそういう実務的な実社会の経験が少ない教員が多いわけでございますので、そういう意味では、今日、社会人の活用、そうした実務についての経験を持っている社会人を積極的に教育活動において活用するという工夫が取り入れられているところでございます。
 さらに、義務教育段階についてのお尋ねがございましたけれども、今年度から新しい学習指導要領をもちまして、総合的な学習の時間といった新しいカリキュラムがスタートしているわけでございます。そこでは、教材やあるいは指導者等につきましてさまざまな工夫をし、同時に、経験的な活動を重視する教育活動がなされるわけでございますので、そうした教材、指導者またカリキュラムを活用することによって、法やあるいは司法に関する身についた指導が行われるように私どもも努めてまいりたいと思いますし、今後とも、各学校におきまして、児童生徒の発達段階に応じて法あるいは司法に関する教育が適切に行われるように進めてまいりたい、かように考えているところでございます。
植田委員 今局長、二つの話をおっしゃったわけですけれども、前段の話は座学の話ですよね。
 要するに、それやったらあかんというのは後段でそれなりに課題設定をされているわけですけれども、実際、例えばサラ金で追っかけられたらどうなるねんとか、お父ちゃん、お母ちゃんが離婚したときにどうなるねんとか、自分たちの生活の中で法というのがどういうふうに根づいているのか、またそれをどういうふうに我々が活用していくのかということをこれからやっていかないことには、それは憲法がありまして、法の意義がありまして云々かんぬんという話は、これは勉強の話で、やるべきですし、それを別におろそかにしろとは言いませんが、そこは座学の面でしょう。もっと実践的なところが今問われているんじゃないかということだったんです。だから、そこは、今の段階ではそこまでということなんでしょうから、また進展があったときにお伺いしたいと思うんです。
 というのは、なぜそこをしつこく言うかというと、法に対する子供らの考え方というのは、決して人を守るのが法なんだというふうには思いません。僕もそうでした。なぜか。校則があるからです。規則というのは人を縛ったり、取り締まったりするものだという発想から入るわけですよね。例えば、私らでも学校の先生はこう言いました。規則というのがいいか悪いかということが問題なのではなくて、君たちがそれを守るか守らないかが問題なんだ、そういうふうに言われたこともあります。
 悪い法であればそれを変えるという主体的な能力なり、そういう力量というものをやはり法教育ではつけていかないかぬわけですよ、本来。例えば私ら高校時分、バリカンで頭をこうして刈り上げないと散髪検査が落ちる、非常にばかばかしい校則ですよ。でも、それをやらされていたわけです。それをやらないことには般若心経を写経させられまして。そういうこともありました。でも、そんなのはどっちだっていい話なんですよ。
 だから、そういう校則と法教育というものが相矛盾する局面が出てくるんじゃないのかなと私は思うわけですよ。例えば、そういう規則をも子供たちの力で変えていく、よりよきものに変えていこう、そうした言ってみればきっかけを与える、そうした法教育でなければならないと思うんですけれども、この種の話、質問として予定はしていなかったけれども、これは局長より大臣の方がいいかもしれませんね。どうでしょうか。もう時間がありませんから。
遠山国務大臣 今の教育改革の中で大きな取り組みを行っておりますのは、子供たちに、みずから考える力あるいはみずから判断できる力、そういったものを基礎、基本を充実した上で身につけさせようという大きな流れがございます。
 今委員がおっしゃいましたすべてのことをすべての小中学校でできるかというと、それはなかなか難しい面もあるかもしれませんけれども、そういう実生活と関係のある法律の意義、あるいはそれを用いることによってそれぞれが守られていく、あるいは遵法することの大切さというようなものをきちんと教えていくことは大変大事だと思っております。
 大きな教育改革の流れとともに、今のようなお考えも反映できるようになっていくといいなと思いますし、私どもも、そういう御提言をベースにして、またこれからの教育の充実について考えてまいりたいと思います。
植田委員 ちょうど時間が来たので、ほかにもちょっと質問を用意しておったんですが、もう時間切れなので超過はいたしませんが、端的に言えば、子供らに対して、法というのは何であるのと聞かれたら、法というのは私たち一人一人の人間を守るためにあるのよと。そこから出発する法教育ということで、それを実際にどう活用するのかという観点から、ちょっと一回どんなものか考えてつくってみてください。それをまたいずれどこかで点検させていただきたいと思います。
 終わります。
古屋委員長 木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の、法務委員をしております木島日出夫でございます。
 ロースクールを立ち上げることを一つの中心にする学校教育法、司法試験法、連携法、関連三法案について連合審査が行われ、特に、法務委員の私は、ほとんど質問できない文部科学大臣に質問できる機会が与えられたことを大変うれしく思っておりますので、中心には文科大臣に質問いたします。
 今回の三法によって、法曹養成のための中核的な教育機関として、また法曹養成に特化した大学院として、また学校教育法上は専門職大学院として法科大学院が創設されるわけであります。特にこの法科大学院の場合は、一般的な専門職大学院修了者とは全く違って、特典として司法試験の受験資格が与えられる。全く特別な枠組みが創設されようとしているわけであります。
 私は、現在の日本の法曹養成の道筋である一発試験としての司法試験、そして合格者に対する一年半の司法修習は、戦後半世紀を超えて大変立派な役割を果たしてきたという認識には立っております。私もそれを通過してきた一人であります。
 しかし、今日、例えばことし、司法試験受験生は四万五千人を超えています。恐らく合格者の数は法務省の考えですと千二百人であろう。すさまじいわけです。大学法学部の学生も、法学部だけでは到底合格できないというのでほとんどの方々が予備校に行かざるを得ない。そして本当に、法律、判例の、その狭い勉強のために青春を三年、四年、五年、六年とつぎ込んで辛うじて合格する。あるいは、多くの皆さんが合格しないまま青春を費やしてしまう。
 これは、未来を担う日本の青年にとっても、日本社会にとっても、そしていい法曹をつくる、いい法律家をたくさんつくってすばらしい日本社会をつくるためにとっても私はもう限界だなというふうに率直に感じているわけでありまして、それで、昨年の司法制度改革審議会意見書の、点としての司法試験ではなくてプロセスとして法曹養成を考える、法学部、そしてロースクール、そして新しい司法試験、そして新しい司法修習、それは大事だ、基本は賛成であります。問題は、そういう理念が本当に生かされる制度設計にこの関連三法案がなっているかどうかだと思うんです。
 そこにきょうは集中して質問をしたいんですが、その前にまず、今度の法改正が成立をいたしますと法学部の位置づけがすっかり変わってくると思います。今、現行日本の大学の法学部の定員は恐らく四万を超えています。こういう形のロースクールができる、こういう形の司法試験になるということになりますと、やはり高等教育機関としての法学部が質的に変わるのかなと思うんですが、文科大臣にまず、この法改正によって日本の法学部は高等教育機関としてどのように位置づけられようとしているのか、所見をお聞きしたいと思うんです。
遠山国務大臣 御指摘のとおりでございまして、これまでの法学部をどのような形で発展させていくかということは、今それぞれの大学が真剣になって取り組んでいるところだと思います。
 法曹養成に特化した教育というのは法科大学院で行う。そうすると、それ以外の機能を持つべく置かれるところの法学部というのはどういうことかということでございますが、それは、基礎的な教養教育の面でも法学専門教育でも、これまで必ずしも十分でなかったということが指摘されているわけでございまして、今後は、例えば法的素養を中心とした教養教育に重点をシフトしていくものもございましょうし、また、複数の専門分野を同時に履修できるようなカリキュラム上の工夫を行うものもございましょうし、あるいは、法曹以外の法律関係専門職の養成を中心にするものが出てまいると思います。あるいは、これの複合的なものも出てまいると思いますが、こうしたプログラムをどういうふうに組み上げていくかということは、まさにそれぞれの大学が特色を持って真剣に構想を目下練っているところだと思いますし、私どもも、そういう構想の確実な形成と、またそれを実施していくための努力を支援していきたいと考えます。
木島委員 今、法科大学院を設置しようとして準備をされている全国の大学等の準備状況を見ますと、これはもう既に発売が始まっているんでしょうか、本年の十一月十七日のサンデー毎日に一覧表が大学名で出ておりますが、大体四千から五千の定員になるんじゃないかと思われるんですね。そうすると、法学部が今、定数が法学大学院も含めて四万数千という規模だと思うんです。現在の法学部が、必ずしも法曹養成しているだけではなくて、公務員の道、企業へ行く人たち、さまざまな分野で正しい意味での法的社会の前進のために大変大きな役割を果たしているのは当然ですね。しかし、今度法科大学院が、法曹養成に特化した大学院ができて仮に四千、五千の定員になるとしたときに今の全国の法学部の定員はどのぐらいにする、そういう大きな方向性を文部科学省はお持ちになっているんですか。これは基本問題、基本のところですから、大臣。
古屋委員長 まず、数字の問題ですから。
 工藤高等教育局長。
工藤政府参考人 数字の問題ですので私の方からお答えさせていただきますが、現在、国公私の大学で、御指摘がありましたように、入学定員ベースでいいますと四万人を超える法学部があるわけでございますが、卒業生の圧倒的多数は企業に就職しているわけでございます。
 法科大学院を設置後これがどうなるかというのは、それぞれの大学の設置者の御判断でございますけれども、私ども、国立大学について申しますと、国立大学全体の政策といたしまして、こういう財政事情でもございますので、少子化という状況も他方でにらみながらの政策といたしまして、学部レベルの入学定員を若干減らしながら、大学院レベルの充実をここ数年志してきているところでございます。ただ、公私立はそれぞれの設置者の御判断によるところでございます。
木島委員 設置者の判断が基本だというのはそうなんでしょうけれども、やはり基本的な大きな方向づけがどうも文部科学省には見られないというのは大変残念だと思います。
 次に、法科大学院の設置の問題についてお聞きします。
 連携法第二条によりますと、法科大学院の設置目的は、高度の専門的知識、国際的な素養、豊かな人間性、職業倫理を備えた多数の法曹を育成していく、そううたわれております。まことに立派な文言だと思うんです。しかし、本当にこれからつくられる法科大学院がそういうすばらしい人格を兼ね備えた若き法学徒を生み出すことができるかどうかは、条件が必要だと思うんですね。
 最大の条件は、私は、法科大学院が万々が一にも司法試験に合格するための予備校のようなものになってはならぬと思うんです。それは昨年の司法制度改革審議会の意見書にもはっきりうたわれている。今回、法曹養成制度の抜本的改革をするかなめだと思うんですが、そういう認識は文科大臣、ありますか。予備校のようなものになっては断じてならない。
遠山国務大臣 今回の司法制度改革が、まさに委員の御指摘のような内容、それを実現するためのものだと考えます。
 したがいまして、法科大学院が今お話しのような受験予備校的なものにならないようにどういうふうに担保していくかというのがこれからの制度設計に大変大事だと考えておりまして、そのために、一つは、法理論と実務のかけ橋を強く意識した教育を実現するための体系的な教育課程の編成。二つには、少人数教育を基本とした双方向的、多方向的な教育をやっていくこと。三つ目には、厳格な成績評価と修了認定などを行うこと。また、入学者について多様性を確保していくなど、これはそれぞれの法科大学院が構想されていく中でその特色が発揮されていくことと思いますけれども、今申し上げたようなことはそれぞれの大学院も考慮に入れられて新たな制度設計をやってもらいたいというふうに考えております。
木島委員 今大臣は、教育の中身の問題、厳格な修了の認定の問題、それとまた、入学の受け入れの選抜者の問題をおっしゃられました。そのとおりだと思うんです。それの中身については、さらに後からの児玉委員からの質問にゆだねたいと思うんですが、私は、そういう理念、目的が本当に達成できるかどうかの基礎条件がやはりあるんだろうと。それは、法科大学院が司法試験の予備校のようなものにならないために基本的に大事なことは、法科大学院の修了者の数、一年間に何人ぐらいが法科大学院修了者として司法試験受験資格を与えられて輩出されてくるのかというこの定員、この数の問題。そして、片や司法試験合格者の数。
 今度の三法案を読みますと、法科大学院修了者だけではなくて、司法試験予備試験の合格者も対等、平等な形で司法試験を受験できるとあるんです。差はないんです。そうしますと、大量の司法試験予備試験合格者が輩出されてくる。例えば一万人だとします。年間一万人の司法試験予備試験合格者が出てくる。法科大学院修了者が五千だとすると、一万五千人が司法試験に臨む。そして、将来の司法試験合格者は大体三千です。
 そうすると、そういう絵柄をいろいろ考えますと、やはりこの数の問題が非常に決定的だ。いかに法科大学院の理念に従って、教育を充実する、修了認定を厳格にする、入学選抜をきっちりやるということを考えても、現実に司法試験という最後の出口のところで大変な修羅場のような状況が生み出されますと、その理念は吹っ飛んでいくということが想定されるからであります。まさに、今、日本の法学部と司法試験の関係がそういう状況になっているからであります。そうさせてはならぬと私は思うんですね。
 それで、お聞きしたいんですが、二〇一〇年の司法試験合格者の数を三千と想定されています。昨年の司法制度改革審議会意見書にあるように、法科大学院の修了者の大体七割から八割が新司法試験の合格者になるような充実した教育が必要だとは書いてあるんですが、数については一切触れていない。これでは前提条件が吹っ飛んでしまうんじゃないかという危惧を私は大変持っているわけでありますが、条件は二つある。
 一つは、司法試験合格者のうち予備試験合格者、言葉は悪いがバイパスですね、これを絞り込まなきゃならぬだろう。法科大学院修了者を中核にする。対等にすると、予備試験合格者はバイパスにする、例外にするという、やはりここは大変だけれども、せつないけれども、しっかり制度設計しなきゃならぬのじゃないかなということ。二つ目には、法科大学院の定員そのもの、今四千ぐらいの手が挙がっていますが、これはやはりしっかり管理しないと吹っ飛んでいってしまうと思うんです。
 前者については、法務大臣の所管でありまして、私はみっちり法務委員会でやりましたから、きょうは後者について、法科大学院の定員の数、どのくらい制度設計しようと考えているのかを文科大臣から。これは非常に大事な基本問題です。数の問題じゃないんです。基本問題ですから、御答弁願います。
遠山国務大臣 司法制度改革審議会の意見書におきましては、今委員御指摘のように、法科大学院ではその課程を修了した者のうち、相当程度ということで、七、八割の者が新司法試験に合格できるように充実した教育を行うべしとございます。それで、法科大学院の入学定員といいますか、規模については書かれていないところでございます。
 一方で、法科大学院につきましては、それぞれの大学の独自性なりあるいは発想というものを大事にしていこう、これは大学行政の基本でございますが、それを基本としてそれぞれの大学で今構想されているところでございます。
 したがいまして、文部科学省がトータルどれぐらいにすべしというようなことを明確にして、そしてそれぞれの大学にその数を実現するようにというような方向というのは、私はこれは文部科学行政としてはとるべきでないと思いますし、そこのところはむしろきちんとコントロール、自己規制をしていくべきものだと思っております。総量規制そのものを文部科学省として行うというのは、これは法曹人口の量的拡大のボトルネックとなるというふうに考えているわけでございます。
 ただ、私どもといたしましては、これは平成十六年からつくり上げていく新しい法科大学院の制度でございます。恐らく一つずつ過程を踏まえながら、新しくつくられていく法科大学院についてしっかりしたものがつくられていく、そういう過程を経ながらそれぞれの大学がまたそれを見ながら充実していく、そういう関係というのは非常に難しゅうございますけれども、本来あるべき姿ではないかと思っております。
木島委員 確かに、自主性、自発性は本当に大事です。法科大学院をつくろうとなされている大学関係者や法曹人の皆さんが本当に自主的にすばらしい法曹人をつくるんだということで、自主的な発想は大事です。
 しかし、法科大学院修了者には司法試験受験資格が与えられる。司法試験の合格者の数は決められる。そして、片やバイパスである司法試験予備試験の合格者も出てくる。まかり間違えば、法科大学院の定員が一万なんという数字になったときに、仮に三千の司法試験合格者しかつくれない、三千のうち、自民党の一部にあるように、半分はバイパスからでもいいんだというようなことになったときに、一万なり八千なりの法科大学院修了者のうち千五百人しか司法試験に合格しないような制度設計になったら、それは全国の法科大学院がまさに予備校化してしまうんではないかという危惧を私はしているんですが、そういう危惧は、文科大臣、ございませんか。
遠山国務大臣 法科大学院を構想しておられる大学の間で準備協会のようなものをつくられております。恐らく、法科大学院の設立を目指しているところが連携ないし情報交換をしながら、今回の新しい構想の法科大学院を本当の目的に合致するようなものにしていくために努力が払われていると思います。また、そうでなければ、これだけの制度改革、新たなさまざまな準備をしながら進めていく趣旨も徹底しないわけでございます。
 その意味で、私は大学人のそういう面についての良識を信頼したいと思いますし、私どもも、アドバイスできる範囲においてはアドバイスをしながら、本来あるべき予備試験との関係でありますとか、あるいは総量のことについて十分ウオッチをしたいと思いますけれども、このことについて、文部科学省がそれぞれの大学の規模について言うということは差し控えてまいりたいと思います。しかし、差し控えながらも、全体としてこういう新たな制度が本格化していくことについて十分注意を払い、配慮を払い、そして支援をしていきたいというふうに今の段階でお答えする、そういう場面であろうかと思います。
木島委員 私の持ち時間が来ましたから終わりますが、法曹養成制度の根幹を変えるこの三法案に関して、法務大臣の側にも、中核たる、本流たる法科大学院修了者とバイパスたる司法試験予備試験合格者の数の関係について、明確な答弁が法務委員会でもありませんでした。きょう文科大臣から、全国の法科大学院の修了者の数についても一定の制度設計についてのお話もありませんでした。
 私は大変危惧をする。再び法科大学院が予備校になってしまうんじゃないかということの危惧、あるいは、場合によっては司法試験予備試験の合格者が大量に生まれて、そちらの方から大量に司法試験、本試験の合格者が生まれていったときに、法科大学院はつぶされていってしまうんじゃないか、社会的に淘汰されてしまうんじゃないかという危惧もある。ですから、そういう危惧を払拭する明確なる制度設計がやはり必要だということを強調いたしまして、私の持ち時間を終わります。
古屋委員長 児玉健次君。
児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
 文部科学委員会に所属しておりますので、いい機会だから森山法務大臣にお伺いします。
 今までの大学院、そして法科大学院を含む専門職大学院を法律で対比的に描き出したものとしては、学校教育法の今度の改正案の六十五条があります。そこで「大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、」と言って、続いて「又は」とわざわざ言っている。「又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、」前者は研究者育成を中心とした大学院であり、後者は専門職大学院、最も先行しているのが今度の法科大学院、そしてこの法科大学院は司法制度改革の論議から提起された、私はそう受けとめております。
 そこで、両者の関連において、法律学の研究と法律実務の修得とを極めて対比的に描き出そうとすることがちょっと多過ぎやしないかと私は思います。
 一八九七年にハーバード大学のロースクールの教授となって、後にハーバード大学の学長も務めたローレンス・ローウェル氏、百年前の話です、この方は、法律実務も法律学の一部であると指摘しました。この指摘は、現在においても重要な意味を持つ、このように考えます。
 学ぶプロセスを重視して法曹養成制度を構築しようとする法科大学院の設置、木島議員も言いましたが、私も基本的に賛成です。賛成ですが、法律実務修得を殊さらに法律学研究と対比させることには若干の懸念を持ちます。法律学というのは多分そういうものではないし、法律実務もそんな単なるテクニックではないだろうと思うんです。これは私だけが持つ懸念ではないと思うので、法科大学院の教育がこの後この懸念にどのようにこたえるか、私は、法務大臣からまずお答えいただきたいんです。
森山国務大臣 いろいろな社会経済情勢の変化に伴いまして、高度の専門的な法律知識や幅広い教養、国際的な素養、これに加えて豊かな人間性及び職業倫理などを備えました多様でかつ多数の法曹が求められているわけでございます。
 このような観点から、新たな法曹養成制度におきましては、各法科大学院がその創意工夫によりまして、教育の充実に自主的かつ積極的に努めるということになっておりますし、国は大学における教育の特性に配慮しなければならないというふうに決めてございますが、先生がおっしゃいましたように、法律の学問というのは法律の知識あるいは研究とその実務とが対比されるものではなく、あわせて重要なのだと私は思いますので、もちろん専門的な、理論的な勉強もしっかりしていただかなければなりませんし、さらに、それとともにあわせて人格の陶冶あるいは教養を深めること、その他倫理の問題はもちろんでございますが、そのようなこともあわせて、質、量ともに十分な法曹を養成していくべきものだと考えております。
児玉委員 さっき私は、先ほどの懸念は私だけのものではないと申しましたが、今もこの委員会の審議の中で、法科大学院は理論的教育と実務的教育を架橋するものと。これはいろいろな答申にも出てきます。左の岸と右の岸を離して、対岸に置いてとらえて、それに橋をかけるという発想、言葉だけの問題であればいいんだけれども、もしそれが法科大学院の教育内容を支配することになれば、今森山大臣がおっしゃった中身は保証されませんね。
 それで、この点について、ことしの六月二十五日に国立大学協会第七常置委員会が大学院における高度専門職業人養成について意見を出しています。文部科学大臣に出しているんだけれども、私は、あえて法務大臣に聞いてほしいんです。
 そこでこう言っている。「大学院において従来のような研究者養成だけでなく、高度専門職業人をより積極的に養成しようとする専門職大学院の構想そのものには基本的には賛成である」としつつ、こう言っています。「社会の実際の業務に役に立つ人材を養成するという趣旨はわかるが、それは理論がいらないということではないのではないか。すなわち、理論と実際、研究と実務家養成というのは密接不可分ではないかとも考えられる。」
 この国立大学協会の意見を法科大学院の教育内容に置いて、先ほどの話にもありましたが、各大学院の自主性、創造性を十分に尊重して、そして国民の期待にこたえ得る法曹をつくり出していく。その点で、法曹のサイドからの厳しい監視の目が必要だと思う。森山大臣、どうでしょうか。
森山国務大臣 今おっしゃいました教育審議会の答申あるいは先生の御意見、全くごもっともだと思います。
 従来は、大学院というものが、どちらかというと研究に傾きが大きく、実務家の養成というところはほとんどなされていないというふうに言わざるを得ない状況でございましたが、理論的な勉強もしっかりとした上で、それを実際に生かすことを勉強していただく。一つのことの表と裏といいましょうか、右と左を一緒にしたといいましょうか、全く同じものであるということで尊重していかなければいけないというふうに考えます。
 ですから、場合によって、法科大学院の自主性を尊重するということで、内容が法曹の目から見て問題がある場合には、私どもの方から、あるいは法曹の方からの意見をいただいて私どもが文部科学省にも御意見を申し上げるという機会もいろいろございますので、そのようなことでバランスのいい立派な法曹が育つようにしていただきたいというふうに考えています。
児玉委員 そこで、もう一つの側面です。
 去年六月の司法制度改革審議会意見書、その中で、公平性、開放性、多様性の確保、これが強調されていて、そして、「かけがえのない人生を生きる人々の喜びや悲しみに対して深く共感しうる豊かな人間性の涵養、向上を図る。」大切なことだと思います。どうやってそれを担保するか、どうやってそれを保証するか。その場合に、一つのメルクマールは、どれだけ多くの大学から、どれだけ多くの学部から入学者を迎えるか、社会人の入学、女性の比率を高めていく、これらが必要だと思います。
 ハーバード大学のビジネススクールについて言えば、入学者約八百人の出身大学は毎年三百大学を超えているそうですね。そして、黒人の比率が一〇%ということで安定していて、女性の比率は高くなりつつある。これは、土屋守章氏の「ハーバード・ビジネス・スクールにて」、七四年刊の本の中にあります。そして、きのう私、このロースクールで学んだ弁護士さんに伺ったら、ロースクールも同じ状況だと言います。
 そこで私は言いたいんです。その際かぎになるのは何かといえば、出身階層において、社会的地位、経済的な力、それが高いところの子弟のみがここに入るのでは、先ほどの人の痛みが痛みとしてわかる法曹は育たない、勤労諸階層からどうやって幅広く入れていくか、この点が重要だと思います。
 そのかぎになるのが奨学制度。既存の奨学制度をあれこれする、私も既存の奨学制度にどんなメニューがあるかというのはよく承知しています、それにこだわるべきではない。給費制度を中心とした思い切った奨学制度をこの際検討すべきではないか。
古屋委員長 質問時間が超過しておりますので、結論をお急ぎください。
児玉委員 それは、皆さんが出された法科大学院の法律の中の第三条にも、「国の責務」というところがあって、その中に「財政上の措置」とありますね。その財政上の措置の重要な部分として奨学制度の充実を図るべきではないか。大臣のお答えを求めて終わります。
森山国務大臣 奨学金の問題は、主として文部科学省が御所管いただいておりますが、全くおっしゃるとおりと私も思いますし、経済力がないために法科大学院に行かれない、あるいは行くことができないというようなことがありましては公平性を甚だしく欠くことになりますので、そういうことがないように奨学金をしっかりと充実させ、また、今までのものに限らず新たな工夫もしていただきたいというふうに考えております。
児玉委員 終わります。
古屋委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。
 これにて散会いたします。
    午前十一時三十四分散会
     ――――◇―――――
  〔参照〕
 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案
 司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案
は法務委員会議録第二号に掲載
 学校教育法の一部を改正する法律案は文部科学委員会議録第一号に掲載


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