衆議院

メインへスキップ



第6号 平成15年4月18日(金曜日)

会議録本文へ
平成十五年四月十八日(金曜日)
    午前十一時開議
 出席委員
   委員長 村井  仁君
   理事 逢沢 一郎君 理事 砂田 圭佑君
   理事 蓮実  進君 理事 松下 忠洋君
   理事 伊藤 忠治君 理事 細野 豪志君
   理事 漆原 良夫君 理事 東  祥三君
      石田 真敏君    岩永 峯一君
      大村 秀章君    金子 恭之君
      亀井 久興君    北村 誠吾君
      小西  理君    滝   実君
      竹下  亘君    橘 康太郎君
      谷田 武彦君    谷本 龍哉君
      福井  照君    星野 行男君
      松島みどり君    松浪 健太君
      松野 博一君    水野 賢一君
      宮澤 洋一君    吉田 幸弘君
     吉田六左エ門君    石毛えい子君
      大畠 章宏君    後藤  斎君
      今野  東君    島   聡君
      中村 哲治君    平岡 秀夫君
      山内  功君    横路 孝弘君
      西  博義君    桝屋 敬悟君
      黄川田 徹君    西村 眞悟君
      春名 直章君    吉井 英勝君
      北川れん子君    山内 惠子君
      山谷えり子君
    …………………………………
   議員           細野 豪志君
   議員           山内  功君
   議員           吉井 英勝君
   総務大臣         片山虎之助君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣         細田 博之君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   総務副大臣        若松 謙維君
   法務副大臣        増田 敏男君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   総務大臣政務官      岩永 峯一君
   総務大臣政務官     吉田六左エ門君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  藤井 昭夫君
   政府参考人
   (総務省行政管理局長)  松田 隆利君
   政府参考人
   (総務省自治行政局長)  畠中誠二郎君
   衆議院調査局個人情報の保
   護に関する特別調査室長  小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十八日
 辞任         補欠選任
  石田 真敏君     松島みどり君
  松浪 健太君     水野 賢一君
  保坂 展人君     山内 惠子君
同日
 辞任         補欠選任
  松島みどり君     小西  理君
  水野 賢一君     松浪 健太君
  山内 惠子君     保坂 展人君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     石田 真敏君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 個人情報の保護に関する法律案(内閣提出第七一号)
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出第七二号)
 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出第七三号)
 情報公開・個人情報保護審査会設置法案(内閣提出第七四号)
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七五号)
 個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出、衆法第一〇号)
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出、衆法第一一号)
 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出、衆法第一二号)
 情報公開・個人情報保護審査会設置法案(枝野幸男君外八名提出、衆法第一三号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
村井委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、個人情報の保護に関する法律案、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び枝野幸男君外八名提出、個人情報の保護に関する法律案、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官藤井昭夫君、総務省行政管理局長松田隆利君及び総務省自治行政局長畠中誠二郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
村井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島聡君。
島委員 島聡でございます。
 細田大臣とは初の質問をさせていただきます。
 細田博之さん、生年月日昭和十九年四月五日、東大を出られて、石油公団ワシントン事務所長としてアメリカにも赴任された。IT革命小委員会では小委員長も務めておられた。
 個人情報の保護法二条では、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができる」。これは、今私が読み上げたのは、ヤフーというところの検索でさっと出したものであります、生年月日その他すべて。これは後で聞きますが。そういう意味で、こういう時代において、すぐに生年月日等々わかってしまえるような状況の中でこの個人情報保護法の審議がされています。
 質問通告のときに、出版に関して質問をしますという話だけはしておきましたので、そっちの質問を先にしますから。
 きのう、官僚諸君が一生懸命、うちに来て、質問は何ですかというふうに聞きに来られましたけれども、私どもはともかく国会の本義に基づいて政務官に質問通告をする。政務官はだれだと聞いたら、私と仲のいい大村さんだと言うから、だから、後で来てくれと伝えておいたんですけれども、もっと詳しく通告しようと思ったんですが、それでちょっと連絡がなかったものですから、ひょっとしたらもっと詳しくやったときには、それは官僚の皆さんのせいじゃないですから。それは先に言っておきます。
 五十条の話であります。第五十条の適用除外で、出版の方も適用除外をされるという話は、それはもう答弁をされているようであります。
 ただ、第五十条三項というのがあります。第五十条三項、「第一項各号に掲げる個人情報取扱事業者は、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置、個人情報の取扱いに関する苦情の処理その他の個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な措置を自ら講じ」なくちゃいけない。これは出版も入るというふうに答弁をされています。この苦情の処理が問題なんです。
 適用除外となっている報道機関、例えば出版社、雑誌社も入るとこの前細田大臣が答弁されました。ということは、五十条三項の苦情の処理、これは残されていますから、例えば今、松浪議員の問題なんかが出ていますけれども、松浪議員のような問題が出た場合、出版社あるいはいわゆる雑誌社、そういうところが松浪議員にどんどん取材をした場合に、これは、松浪議員が苦情をした場合に苦情の処理をきちんとしなくちゃいけない、そういう法案ですね、細田さん。
細田国務大臣 このような場合には報道に当たると考えておりますので、一切適用除外でございます。
島委員 だから、これ、ちょっと聞きますが、いいですか、適用除外となった報道機関などについても、五十条三項においては、第一項各号に掲げる個人情報取扱事業者は、苦情の処理に対してきちんとしなくちゃいけない、公表するように努めなきゃならない、そうあるでしょう。だから、それはしなくちゃいけないんじゃないですか。
細田国務大臣 報道等の分野につきましては、五十条第一項において、個人情報の第三者提供の制限、本人の求めに応じた開示、訂正などの一般事業者が個人情報を取り扱う際に遵守すべき種々の義務の適用を除外しておるわけでございますが、これらの分野におきましても個人情報が適正に取り扱われるべきことに変わりはなく、このため、第三項において個人情報の適正な取り扱いについての自主的な取り組みを求めておるところでございます。
 自主的な取り組みの内容の適否については行政機関が関与することは認めていないなど、報道活動の制限とはならず、メディア規制をするものではない。あくまでもこれは、完全例外ということではないですよ、自主的にいろいろ御努力くださいという規定に定まっておるわけでございます。
島委員 だから、質問はこの苦情の処理なんですよ、苦情の処理。今は法的なことをきちんと聞きましたけれども、具体的に、恐縮ですが、今たまたま報道されていますから松浪議員の問題でやりますが、松浪議員が苦情を言ってきた、そういうときに、そういう報道があって、これはおかしいじゃないかといって松浪議員が苦情を言ってきた。そうしたら苦情に応じるべきだという趣旨ですかと聞いているんですよ。
細田国務大臣 苦情に応ずる必要はないと思います。私は、それは、別途の民法上の措置等、損害賠償、名誉毀損その他のことで法的措置をとられるのはもちろん可能性がございますけれども、その必要はございません。
島委員 後で事務方からの修正答弁はないですね。苦情に応じなくていい、それでいいですね。もうこれで国会、修正しませんよ。よろしいですか。
細田国務大臣 個別に文句を、文句というとおかしいんですが苦情を言ってきた、そのときに報道機関がどう対応するかというのはもちろん自由でございますが、それは別に法的な意味を有するものではありません。
島委員 ちょっと質問通告がきちんとしていなかったので、政務官から連絡がなかったから。だからこのぐらいにしておきますけれども、今度もっとやりますから、これ。実は物すごく問題があります、今メモが入っただろうけれども。本当はここで詰めたいけれども、それは一つのルールとして。連絡が来ればきちんと通告します。いいですか。
 次に行きます。法案の二十五条についての質問をします。法案の二十五条は、要するに開示の話です。
 法案二十五条は、「当該本人が識別される保有個人データの開示を求められたときは、本人に対し、政令で定める方法により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない」としています。
 しかし、本人確認はどうするんですか。本人に成り済ましまして、他の個人情報の開示を請求するということが出てきますよね。そういうときの本人確認というのはどのように行うんですか。具体的に答えてください。
細田国務大臣 御指摘のとおり、個人情報取扱事業者が開示、訂正及び利用停止の求めを受け付けるに当たりまして、本人であることを確認することは当然のことであります。
 本法案では、本人確認の方法を含め、開示等の求めに応じる手続については、第二十九条第一項において、事業者がその求めを受け付ける方法を定めることができることとしており、本人は当該方法に従って開示等の求めを行わなければならない旨定めております。したがって、事業者において本人を十分確認できるような仕組みとしており、実際に具体的な手続を定めるに当たっては、業種、業態に応じて、主務大臣や事業者団体が策定するガイドラインを参考にすることとなると考えております。
島委員 ということは、今まだ決まっていないということですね、細田大臣。今決まっていない。今決まっていないからこれからやるんだ、そういう話ですね、本人確認。
細田国務大臣 基本においては、先ほども申しましたように、二十九条一項の方法を定めることができるのでありますが、個別にはいろいろな手続、問題があると思いますので、これはこれからやはり決めなきゃならない大事な問題ではあると思っております。
島委員 個人情報を保護する法律で、本人に成り済まして、そしてそれをとんとんとんとやって、向こうの業者側には開示をしなくちゃいけないというのがあるわけだから、そうすると、本人に成り済ましてその業者側のデータベースに入り込んで、そうしたら漏えいしますよね、成り済ましたら。ということは、これは今から決める話じゃなくて、きちんと詰めてから法案を提出するべきだったと思いませんか、大臣。
細田国務大臣 そもそも、成り済ませば情報がとれるという体制は、本来この法律上非常に違反の状態でございますから、そういうことがないように当然するわけでございます。
島委員 今の話は、そういうふうだから別に問題ないんだという話なんです。成り済ましというのはできますよ。IT担当の専門家だからよくおわかりかと思いますが。何でしたら、違法だからやりませんけれども、僕にやり方を教えろと言ったら、僕がやるというと問題がありますから、私のスタッフに出せと言ったら十五分で出してきますよ、それはすべて。そういう時代なんですよ、今。
 今の大臣の答弁は、そういうことはないという前提で出していますと。そういう話なんですけれども、それは、これからやるんじゃなくて、きちんと整理してから出すべきだったんじゃないかと思いませんかという質問ですが、別にそれは整理する必要がなかったかどうかを答えてください。
細田国務大臣 開示の具体的方法は事業者が決められる仕組みでございますので、業種、業態に応じて決める必要があり、これは最初の提案から今二年ほどたってしまったわけですが、これはさらに詳細に詰める必要があると思います。
 確かに、成り済ましが起こった場合、もっと言えば、ハッカーもあるかもしれませんし、いろいろな問題が起きたときどうするのかというときには、委員もそれは違法だから私はやりませんよとおっしゃいましたけれども、それは当然、本来犯罪的行為があればその対象で考えるべきであります。しかし、成り済ましたものを、ここで取り上げておりますのは、気がつかずに、その本人から来たものであるかのように容易に誤解をして非常に単純に対応してしまう、これは絶対に防がなければなりませんので、それは事業者の責任でもあり、また、しかるべき対応が可能であるという前提で考えております。
島委員 これも質問通告がどこまで伝わっていたかわかりませんから、これぐらいにしておきます、本当はもっと幾つか突っ込むところがあるんですけれども。今度はもっと突っ込みますから、そのときは、きちんと質問通告を正確に取れるようにしておいてください。
 次、同じような質問ですけれども、この個人情報保護法というのは、今細田大臣おっしゃったように、IT社会時代においては普通の人が、昔のプライバシー概念というのは、非常に有名人だけだったんです。だけれども、一般の多くの方々が、文字データベースにしたことによって、それによって個人情報を保護しなくちゃいけないという、そういう時代になったという話をされました。
 当然、この個人情報保護法の議論のときには、利用と保護の関係というのが非常に、それを判断するのが政治なわけであります。どうもその観点が極めて、議論をしなくちゃいけない問題だと私は思うんですが、今度は、ITのいわゆる産業、事業者の方からしますと、当然こういう問題も出てくるんです。悪意の請求もあります、今言ったように成り済ましも含めて。クレーマーという人たちもいます。とにかくいろいろ出てくる問題があります。
 二十五条一項二号は、当該事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれのある場合であれば不開示にできると。それ以外ならば、第三十条の規定によって手数料を取ることでしか抑止できない。これはそういう状況になっていますよね。
 二つ質問します。当該業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれのある場合とは、どういうときですか。
細田国務大臣 御質問の内容は、例えばクレーマーとか、興味本位、悪意の請求があった場合でございます。
 それに対しては、島議員がもうあらかじめお示しでございますが、やはり基本的には、開示した情報が利用され、個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合などには、この二十五条一項によりまして、その全部、一部を開示しないことができるという、一応、保護規定という格好で置いてあるわけでございます。
 その点について、それではどういうことを判断基準とするのかという御質問でございますからお答え申し上げます。
 二十五条の開示規定には、保護されるべき個人の権利利益と個人情報の有用性との調和を図るために例外規定を設けておるわけでございます。そして、業務の適正な実施に著しい支障を及ぼす場合というのは、第一に、企業みずからの正当な権利利益にかかわる場合、例えば、個人情報に評価等が含まれており、開示することにより人事管理等の業務の実施に著しい支障を及ぼすおそれがあるというような場合ですね。それから、第三者との信頼関係にかかわる場合、例えば、第三者から取得された個人情報であって、本人への開示により、第三者の信頼を損ない、業務の実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合などが想定されるわけでございます。
 また、第七条による政府の基本方針の中で、各分野において国が講ずべき措置等を定めることとしており、これに基づきまして、多数の開示請求が想定される分野などについては各主務大臣におけるガイドラインの作成等が期待されるところであり、このようなことを通じて円滑な法施行を図っていくという考えでございます。
島委員 また質問する機会もあるでしょうから、そのときに今の問題点はまた指摘します。幾つかあります。
 きょうは片山大臣にもお越しいただいております。もう何回もお会いしておりますので。
 電子政府法案ができました。これができますと、私は便利になる点はあると思いますよ、いろいろな意味で。評価もします。ただ、それゆえに、これはきちんとやらなくちゃいけないことも多いんですね。
 それで、我々野党四党でも出しているんですけれども、データマッチングの問題です。利用目的の異なる二つ以上の情報コンピューターにいろいろな照合、結合をすることによって、非常に個人の利益侵害をすることがあります。特に電子政府になっていきますと、かなりそういうことが可能になってきます。
 御存じのように、アメリカは結構進んでいますから、個人情報保護のためにデータマッチング規制というのが今なされています。アメリカの場合は、コンピューターマッチング及びプライバシー保護法というのが制定されているんですよ。
 大臣、これは、データマッチングというのはかなり大きな問題になると思う、電子政府、施行したら。それについてどういうお考えをお持ちですか。
片山国務大臣 電子政府は、我々としてはできるだけ早く、大がかりに進めたいと。しかし、なかなか時間がかかるかもしれませんが、少なくとも手続ですね、行政手続、申請、届け出は、できるだけ十五年度中に全部やりたい、こういう状況にあります。
 一方、データマッチングにつきましては、そのこと自身が我々は悪いという感じは持っていないですよ。それを目的外に使われる、目的外のどこかに提供される、悪用される、個人の権利利益の侵害、これはいけない、こういうことでございまして、現行の、現行というのは今御審議いただいている法案でも、そこのところのいろいろな仕組みは我々としては入れているつもりなんですね。
 だから、データマッチングだけ取り出して、これを禁止するということになりますと、電子政府の円滑な業務推進がかなり難しくなってくる、こういうあれを持っておりまして、とにかく目的をできるだけ限る、はっきりさせる、それ以外に使わせないということがまず原則。目的外利用や提供については、これは限定的にやる。それは、業務の遂行のためでなきゃいかぬとか、権利利益の侵害になってはいかぬとか、関連性において相当な理由がなきゃいかぬ。
 いつも同じことを言いますけれども、わかりやすいから言うんですが、恩給のデータと援護年金なんかのデータについては、支給調整の規定がありますから、同じ総務省の中ではありますけれども、それはデータマッチングをやらせてもらう、こういうようなことでございます。そこは、データマッチングそのものを取り上げてどうという規定を置いておりませんけれども、個人の情報を守る、極めて限定的にそれは認める、こういうことでは一貫しております。
島委員 今おっしゃったように、データマッチング自身、どこが悪くてどこがだめか、それをきちんとしないといけないと思うんですが、今おっしゃったとおりですよ、目的外をどうするかとか。それに対してきちんとした規制をかける、あるいはきちんとしたものをつくる、法律をつくる、そういう考えはありますかという質問ですが。
片山国務大臣 今の仕組みは、目的外利用を含めて私どもの方が報告をもらいまして、事前通知というものですね、それを我々の方が見て、問題があるものは説明を求めたり資料提供を求めております。だから、今言われているようなことは、将来の検討課題としては我々も考えていくことがあるかもしれませんけれども、当面は現行法制でやらせていただきたい。それで我々はちゃんとやれるだろう、こういうふうに今考えております。
島委員 恐らく、これはきちんと整理して法制にまでしないといろいろな問題が起きてくると思います、電子政府をやっていく過程におきまして。これはまた私、総務委員会でやりますけれども、そういうふうに思っています。
 きょうは経済産業副大臣にもお越しをいただいております。
 いわゆる法案三十六条の主務大臣のところですよね。主務大臣の指定についての条文がありまして、事業者の活動を監督する所管官庁を決めてあるというわけであります。厚生労働省とかそういうのがありますね。しかし、これ、IT社会におけるものというのは、ネットビジネスというのは非常に新しい産業が多いんですよ。クレジットカード業界については、村井委員長が公安委員長のときに、クレジットカードの情報をお互いに盗まれたということもありましたけれども、そういうことがあります。これ、どこの所管になるのか明快でないようなのが結構多くあります。
 例えば、ネットの普通のサイトなんというと、ネットオークションもやっていますし、広告業でもありますし、通信もやっていますし、販売事業もやっているわけです。そうすると、縦割り行政の中でやっていくことになっていきますと、いろいろな問題がかえって起きてくるんです。それで、総理大臣が割り振りを決めてぽんとやるという話になっていますが、例えばこれ、クレジットカード業界、インターネット広告業界、EC業界、そういうガイドラインをきちんと策定していくということでありますが、経済産業副大臣、このクレジットカード業界とかインターネット広告業界とかエレクトリックコマース業界、ガイドラインの策定状況はどういうふうに進んでいますか。
高市副大臣 この法律案の中では、国が「事業者等が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための指針」を策定するということを法定されておりますので、この法案の成立後速やかに、経済産業省としましては、御指摘の、クレジット業界ですとかそれから広告業界、エレクトロニックコマース業界を含めました、経済産業省が所掌する事業全般を対象といたしましてガイドラインを策定いたします。
島委員 クレジットカード業界、インターネット広告業界、エレクトリックコマース業界、経済産業省が所掌するところというのは、どういう根拠法で、どの辺を担当しているんですか。
高市副大臣 根拠法というのはないのでございますが、例えばクレジット業界は金融庁さんと相談の上ということになります。広告業界、エレクトロニックコマース業界に関しましては経済産業省の方でこれまでも所掌いたしておりましたし、このほかにも、大がかりで、ネットを使わなくても、普通の通販ってありますよね、通信販売、それから電力、ガスですとか小売、それから大企業、全般が対象になってまいります。
島委員 要するに、クレジットカード業界一つとっても、割賦販売関係は経済産業省ですし、そうですよね。それから同時に金融庁の方も当然絡んでくる。そういう所掌が分かれているんです、こういう業界は。新しいインターネット広告業界、今、経済産業副大臣、全般でやると言われましたけれども、ガイドラインは。恐らく幾つかの所掌がある分野が多いです、新規産業多いですから。私がこの産業はどこの分野だと言われても、多分総合的でわからない。多分、IT産業担当大臣細田さんはすぐわかると思うんです。次は、これどこですかと聞くつもりですけれども。
 だから、そういうことですから、これ、きちんと、三十六条の運用についても、一体それはどこかと整備しないと、各業界はどういうようにすればいいか、ガイドラインというのが非常に不安になってくる法案なんです。つまり、準備が極めて不足している法案である、そういうことであります。
 最初の細田さんの話に戻ります。
 先ほど、第二条で、「「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」であるという話が二条になっています。さっき私が申し上げた、ヤフーでぽんとやると、生年月日も氏名も全部出てきます。これはここの定義する個人情報なんですか、ないんですか。
細田国務大臣 結論的には、検索エンジン、実際にちょっと委員の皆様に申し上げますと、何か細田博之というようなキーワードで、それで、それが載っているような各情報にアクセスして、その情報を集積してアウトプットするというような仕組みが非常に進歩しておるわけでございますけれども、このような検索エンジンと言われておりますものにつきましては、個人情報としての索引が付されては必ずしもいないということから、これをもって「特定の個人情報を」、中間は飛ばしますけれども、「検索することができるように体系的に構成したもの」ではない。したがって、本法案第二条第二項に規定する「個人情報データベース等」には該当しないというふうに考えております。
島委員 該当しないは非常にいい結論だと思いますが、ちょっと私理解ができないので、もう一回説明してください。
 ここは、いいですか、僕は第二条を読んでいるんですよ。「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」、これは今申し上げたでしょう、私。細田博之さん、生年月日昭和十九年四月五日、選挙区島根県一区、通産省入省、昭和四十二年ですよ、これ。そういうことが全部わかるんですけれども、これが、ないということはいいことです。私はいいと思っています。
 だけれども、この法案を素直に読むと、生年月日、わかりますよ、昭和十九年四月五日。リストになっていないかというと、これはリストになりますよ、だあっと。細田博之さんは有名だから、だあっと出ますよ。何でこれと違うのかということを明快に説明してください。
細田国務大臣 私もたまに、自分がどういうふうに引用されておるかということで出すことがあるんですけれども、非常にびっくりするのは、私の趣味のブリッジか何かで、どこかで優勝したなんというのもぽんと出ているんですね。したがって、そんなものは消してほしいなとは思うんです、私は。
 しかし、大体はいろいろ公表されたところのものを拾っておるということだとは思うんですが、問題は、もちろん個人の情報も検索できるんですが、個人情報保護法についてとやれば膨大な資料が出てくるし、自由民主党とか○○党というようなものとか、いろいろな政策でやってももちろん当然出てくるわけですね。したがって、これは、一般の情報の検索をするために今広範に使われている手段であることは事実でございますけれども、特定の個人情報を検索するために体系的に構成したものではないというふうに私どもは理解しておるわけでございます。
島委員 そう理解してくださっていればいいんですが、この法案を読むと、何か不思議だと私は思います。これは私も前からやっています。内閣委員会の理事をやらせてもらったことがあって、逢沢先生の顔を見ると本当に久しぶりに、あのころからやっておるわけでありますが、全体の法案が、実はインターネット社会のことをよく理解できないでつくられているんです。だから、いろいろな矛盾が出ています。幾つかあります。質問通告していないので恐縮なんですけれども、幾つか聞いていきましょう。
 例えば個人情報で、メールアドレスというのがありますよね。それで、メールアドレスというのは、特定の個人を識別できる場合もあります。匿名で登録された無料メールの場合はどうなるのか。
細田国務大臣 メールアドレスは匿名で登録することが多いわけですね。特に最近は、携帯電話でインターネットでいろいろやりますから、例の法案の成立した、いろいろな不正なアクセスを防ぐために、全部取りかえながら、個人そのものが違う匿名のメールアドレスを持っているわけですね。
 その場合、携帯電話会社との関係がどうかということは、これは別の問題ですが、匿名アドレスというのはたくさんあるわけでございまして、やはり本法案で申します個人情報に該当するためには、当該情報に含まれる記述等によって特定の個人を識別できるか、他の情報と容易に照合でき、それにより特定の個人を識別できることが必要であると考えております。
 つまり、個人との照合関係が極めて明らかであるような場合であるというふうに考えておりますので、匿名で登録されたメールアドレスにつきましては、一般には個人情報に該当することはないと考えております。
 ただ、容易に照合できるというような場合、これは該当するかもしれない。というのは、皆さんのメールアドレスを見てみますと、議員の各メールでも、何のたれべえ何とか、少し加えてアドレスをつくっていますよね、私もそういうふうに実はつくっているんです。その方がずっと政治的にもいい、皆さんにそれを知っていただくという意味では。そういうものはやはり特定できますので、細田博之何とか何とかというメールアドレスの場合は匿名性はないので、そういう場合は個人情報ではなかろうかと思っております。
島委員 要するに、基準はあいまいだということですよね、これも。
細田国務大臣 あいまいだというのではなくて、その個人が強く推定される、個人の特定名が推定される場合には対象になる、匿名性が高い場合にはならない。これは、そのメールアドレスを見ればまず判断できるのではないかということでございます。
島委員 その判断はだれがするんですか。
細田国務大臣 これは事業者の判断だと思いますね、いろいろ問題になったケースの話ですから。
島委員 これも、もう少し突っ込むとありますから、また今度にしましょう、質問通告していないからということもありますから。
 それで、先ほど申し上げたように、この個人情報保護法は、いわゆるネットワーク社会というものに対して余り意識しないでつくってあると私は思っています。つまり、個人情報は当然、ストックの場合とフローの場合があります、ストックとフローというのがあります。これは、皆さんがイメージされているのは、どこかの事業者がデータベースで、ざあっといろいろな個人情報を持っていて、それが漏れたときにどうするかという話であります。
 問題が出てくることがあるんです。例えばフローというのはどういうことか。これは、ある業者からある業者に送ります。一般的に電話回線を使って送ることがあります。当然、PGPとか暗号なんかを使って送るんでしょうね、一般的には。でも、さっきハッカーとぽろっと言われたから、よく御存じだろうからということで質問しているんですが、ネットワーク上にさっと流れているときに、それをぱっと傍受する、とってしまう。そうすると、それが漏えいした。それは、いわゆる個人情報取扱事業者Aから個人情報取扱事業者Bに送ったときに漏えいした。そういうときには、この電話回線業者の責任になるのか、Aの責任になるのか、Bの責任になるのか、どっちですか。
細田国務大臣 おっしゃいますように、いろいろなケースが出得る問題があります、内包しております。本人の同意を得た場合やグループ内で利用する場合など、個人データをビジネスで有用に利用する場合はネットワークを通じ移転することが不可避である。その場合は二十条において安全管理措置を義務づけておるわけでございます、個人情報取扱事業者に。
 したがって、個人データがネットワーク上に流出した責任は、個人情報取扱事業者が安全管理のために必要かつ適切な措置、例えば適切な暗号化措置を講じていたかどうかなどによって判断されるわけであります。
 また、個人データを第三者に提供する際に、ネットワーク上で暗号通信により送信された個人データがハッカーによって解読され流通した場合についても、第二十条の範囲内であり、個人データの提供者に適切な技術的な対応を行う義務が課されております。
 なお、ハッカーにつきましては、個人情報取扱事業者であれば、本法第十七条に規定する適正取得の違反であります。また、本法案以外でも、ハッカーによる個人情報の入手については通信の秘密に違反し、電気通信事業法、有線電気通信法、電波法の違反となり、罰則規定が適用される可能性があります。
 また、サーバーに設定されているアクセス制御機能を侵害してデータにアクセスしたような場合には不正アクセス禁止法の違反となり、罰則規定があります。(発言する者あり)
島委員 全然明快じゃありません。
 今私が申し上げた点、幾つかありました。これは、私の最大の問題意識は、この個人情報保護法案はメディア規制という論点が極めて重要ですから議論したわけでありますが、IT社会において本当にどうなっていくのかということに関しての論点が極めて希薄になっています。
 今幾つか細田大臣答えられましたけれども、実は突っ込めるところばかりでした。そういう意味からいけば、この法案、全くいわゆる個人情報のストックだけ考えていてフローは考えていないということになるし、これは要するにネットワーク社会ということを全く考えていないという法案になっているんです。必ずこれはいろいろな矛盾が出てきますから、きちんと審議を尽くしていきたいので、きちんとそのときに答えられるような質問もしていきたいので、きちんと通告を聞くようにしておいてください。
 終わります。
細田国務大臣 一言だけ。
 非常に個人情報の問題あるいはインターネットその他の問題についてお詳しい島議員の御指摘で、確かに、これからいろいろな可能性があると思います。他方、この野党案もかなり似ているところもありますね。したがって、お互い、これは議会も政府も一緒になって発展に協力しなきゃならない。私は、そういう意味じゃ、議会と政府はよりよいものを、時間もかけながら、また事例に即しながらやらなきゃならないという認識は持っておりますから、また私たちを鍛えていただきたいと思います。
島委員 では、最後に私にも一言言わせてください。
 今おっしゃるとおりで、おっしゃるとおりというか、一部は違いますよ、野党案がどうのこうのというのは。要するに、きちんと専門的に詰めなくちゃいけないことはたくさんあります。本当に個人情報保護というのをしようと思ったら、これをやって悪法、いわゆる法律というのは、運用はいろいろな意味で性善説でやってもいいけれども、性悪説に立って制度はつくっていかないと難しい問題が起きてきますから、そういうことをきちんと指摘して、しっかりと審議していきましょう。
 ありがとうございました。
村井委員長 続いて、細野豪志君。
細野委員 残念ながら片山大臣が今参議院の方に行かれましたので、副大臣を中心にというふうに思っています。
 ただ、一点だけ、ちょっとこれは少なくとも確認しておいた方がいいと思いますので、先ほど答弁を聞かれていた松田局長に伺います。
 先ほど、後で議事録精査をしますが、片山大臣は、目的外利用については事前通知を課しているから問題ないんだという発言をされましたが、それは政府案に本当にありますか。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 現行法におきましてでございますが、個人情報ファイルが規制対象になっているわけでございますけれども、それにつきましては厳格な目的外利用・提供の禁止の法制が整備されておりまして、そのうち一部重要なものにつきまして事前通知の対象になっているということでございます。
細野委員 重要なものに関して事前通知の対象になっているというのは、何条のことをおっしゃっていますか。新法はどうですか。特に新法において今言われたような事前通知の義務は何条に課されていますか。
松田政府参考人 新しい法律におきましても、利用目的の変更が事前通知の対象になっているところでございます。
細野委員 利用目的の変更と目的外利用は違うでしょう。目的外利用についての事前通知なんかないでしょう。大臣さっき、物すごいいいかげんなことを言って帰られましたよ。どうなんですか、あるんですか。
松田政府参考人 大臣が先ほど答弁申し上げましたのは、個人情報ファイル、今、現行の規制につきまして、個人情報ファイルが規制の対象になっております。これにつきましては、利用目的、目的外利用・提供が厳しく制限されているわけでございますけれども、一部重要なものにつきまして、それは法律で列挙されておりますが、それにつきまして総務大臣への事前通知が行われることになっております。そこの中には経常的な提供先等を記載することになっておりまして、そういう意味で事前通知の対象になっているというふうに申し上げたところでございます。
細野委員 後でまた議事録を見ますが、大臣の答弁というのは、今度の新法について議論されたんだというふうに私は思いましたよ。その上で目的外利用を事前通知しますというような答弁をされて、こういう本当にいいかげんな答弁はやめていただきたい。これはきちっと野党案では設けていて、政府案にないんですから、そういう整理はやはりきちっとして答弁をしていただきたいというふうに思います。非常に重要な点なんですよ、ここは。
 ここはまた大臣とやりとりをする機会があればしたいと思うんですが、松田局長の答弁で、これは十五日のものですが、私、幾つか気になることがございます。まず、目的外利用については、現法において、九機関におきまして、ファイルについては約五十のファイルが目的外利用されておると。その五十のリストというのをいただきました。正確に勘定してみると五十八と、ちょっとサバ読んで言ってられるんですが、それは別に細かいことは言いませんが、こっちはまだ、これを見ると、どういう理屈で目的外利用しているかというのはある程度納得できるものがあるんですね。ファイルはやはり目的も書いてありますし、それを目的外に利用するということになるとそれなりの理屈が必要だというのは、これを見てもわかる。これは全く今の議論をしている新法においても同じ構造になっています。
 ただ、私が問題としたいのは、そうしたら、ファイルとして開示をされていないもの、これがどうなっているかということなんですよね。私が松田局長の答弁で問題としたいのは、散在情報については、目的外利用については多々あると。具体例として挙げられているのは、関係業務の個人情報を関係行政の企画立案に使う、統計に使う、行政を委託する側の個人情報を受託する側に利用させる。
 これは、ファイルに掲載をされていなかったら、これ三つ慌てて答えられたんですけれども、統計に利用するなんというのは、名前を消せば個人情報じゃないはずなんですよ、これは。こんないいかげんなことをやっているんですか。なぜこれが許されるのか、そしてどういうふうに利用されているのか、これをお答えください。
松田政府参考人 先般の私の後藤先生に対する答弁は、現行法におきましては、個人情報ファイル、そのうち電算化処理された個人情報ファイル、それが規制の対象になっておりまして、それの目的外利用・提供の状況はどうなっているかという御質問でございましたので、私どもが行っております平成十三年度施行状況調査報告書に掲載されておりますものとして、先ほど先生御指摘の件数を御説明申し上げたところでございます。
 新しい法律におきましては、こういう電算処理された個人情報ファイルにとどまらず、紙の状態のままでの個人情報ファイルも対象になりますし、さらには個々の行政文書に記載されている個人情報も対象になるという非常に厳しい規制のもとに置かれることになるわけでございます。
 そういう個人情報というものは多々あるわけでございまして、もちろんそういう法令で定められた行政事務に使う、それから本人あるいは第三者の権利の侵害にならない、さらに相当の関連がある、そういう大原則の中で目的外利用・提供が行われることになるわけでございますが、それでも多々ありまして、事前の一々の審査にはなかなかなじみにくい、非現実的ではないのかという御説明を申し上げたところでございます。
 そういう例として、個人情報を統計に使う、あるいは関係行政の企画立案に使うということを申し上げたわけですが、例えば行政サービスの対象者の情報がございます。この情報につきまして、それを提供するサイドの、いろいろな制度を改善したり、あるいは見直したりする、企画立案を行うことが当然関連してあるわけでございます。そういうときに、この対象者の情報を統計化したり、あるいはそれを整理して企画立案に使うということはあるわけでございます。そういう意味で、所掌事務の範囲内でありますし、それから、権利を侵害するという可能性もない。
 そういう原則のもとで考えてみますとそういう可能性があるわけでございまして、対象者から改めて調査、報告をとるということも非効率、あるいは対象者自身に大変な負担がかかります。そういう意味で、目的外利用・提供の可能性というのはあるんではないかということを申し上げたわけでございます。
 もちろん、これらの統計あるいは企画立案ということに該当すれば必ず目的外利用が許容されるということでもなくて、個々の事案に応じて、法令の趣旨にのっとって適切に判断していく必要がある、こういうふうに考えております。
細野委員 今回の新しい法律で、電子上のものだけではなくて紙のものも入った、これは確かに拡大をしたという意味では前進だと思います。
 ただ、今私が何を言いたかったかというと、結局、個人情報ファイルに上がってきたものに関しては、確かに開示のときに目的を書くんですね。ですから、目的外利用というものに関しては行政としてもそれなりの合理性を求められて、しかも運用がなされるだろうという予測はできるんです。十分だとは思いませんよ。できると思うんです。ただ問題は、個人情報ファイルとして上がってこないような、この間、局長がくしくも答弁をされた散在している情報ですね、これがどういうふうに扱われるかというのは、これは全くわからないんですよね。
 私が今回問題にしたいのは、新法と旧法で、個人情報ファイルに開示をするしないの基準が全く同じだということなんです。発想としては、個人情報ファイルで、今上がってきていないで散在している情報は、これからはできるだけファイルとして整理をして、きちっとこれを並べて、国民からも見える形にしましょうと。それとは全く別次元で開示をするかしないかという基準はありますよ。ただ、少なくとも存在を明らかにして、散在をしないようにするのがこの法律の趣旨だと私は思うんですよ。
 片山総務大臣に聞きたかったんですが、きょう副大臣がいらしていますので伺いますが、この新法の十条の二項の例外規定、個人情報ファイルに掲げなくてもいいと書かれているこの例外規定、これは本当に合理的ですか。私どもは、一号と二号の、国の安全であるとか犯罪にかかわるもの、ここに特化をしました。これはなぜかというと、ファイルに掲げるということは、これは存在を国民に示すことなんですね。開示、不開示とは全く異なります。ここで適用除外にしなければならないのは、存在そのものを秘匿しなければならないようなものに限るはずなんですよ。そういう趣旨からいって、一年以内に消去とすることになる情報であるとか試験的な情報であるとか、非常に瑣末な例がたくさん挙がっているんですね。これが適切かどうかというのをぜひ副大臣に御答弁いただきたい。
 特に一番問題になるのが九号のところだと思うんですが、本人の数が政令で定める数に満たない個人情報ファイルは開示をされないことになっています。これは現行千件だと聞いていますが、これをどう考えるのか。まずそれを簡潔に御答弁いただいて、ほかの号ですね、これが適切だと思われるかどうか、それをお伺いしたいと思います。
若松副大臣 まずこの十条の、いわゆる行政機関が保有する個人情報、これは原則、基本的には、主務大臣である総務大臣に通知する、こういう制度でありますが、その例外として、今特に細野委員がおっしゃった三号から十一号という、この考え方がどうかというお尋ねだと思うんですが、私どもといたしましては、この三号から十一号、これにつきましては、これらはいわゆる一過性のものまたは小規模のものということが一つの共通的なものではないか、そういうことでありまして、その結果、個人の権利利益を侵害するおそれが少ない、そういうふうに理解した個人情報ファイルでございます。
 これらにつきましても事前通知を義務づけるということになりますと、御存じのように、もうある意味で、何でもかんでも通知しなければいけない、こういうことになりますと、これも過大な負担もあるでしょうし、かえってそれが実効性でさまざまな混乱ももたらすであろう、そういうことから、やはりバランスを考えて、この三号―十一号をこういう形で適用除外にした次第でございます。
細野委員 手短で結構ですので、九号の「政令で定める数」というのは、これは何件を予定されていますか。
若松副大臣 九号につきましては、今後、具体的に新法の世界におきましてはいわゆる政令等で議論するわけでありますが、いずれにしても、現行法の施行令第五条、これは御存じだと思うんですけれども、ここでは本人の数を千人ということでありますので、やはりこれが今後の検討の一つの基準になるかと思っております。
細野委員 いいですか、副大臣。千件以内はファイルで開示しなくていいんですよね。千件ですよ。千件といったら、私から見たらかなり膨大なデータだと思います。それが例外としてあるにもかかわらず、さらに、一年以内に消去とするものに関しては、これ、上げなくていいんですよ。千件を超えるデータを一年以内で持っているということが、これが本当にファイルとして開示をしない理由に当たると思いますか。
 もう一つ言うと、試験的にと言うんだけれども、四号ですね、千件以上の個人データが入っていて、試験的にそれを何かパソコンで使いますからということで、国民から見えないところでこの情報を放置しておいていいと本当に思いますか。
 これは本当に大事な問題なんですよ。個人情報ファイルとして掲げられなければ、開示請求をしようにも、そのファイルがあるかないかわからないんですね、国民から一切。目的が明確にならない。ファイルとして目的がこうですと書いていないから、これ、わからないわけですよね。
 おまけに、今回、罰則を新しく設けましたが、個人情報ファイルの乱用については罰則がかかっているけれども、個人情報ファイルに掲げられないアングラのものについては罰則もかからないんですよ。すなわち、ここの十条の部分ですり抜けられるものに関しては全く今までと変わらない。変わらないだけでなく、どこでどう扱われようが、国民から、少なくとも議会からも含めて一切わからない仕組みになっているんです。副大臣、ここは責任持って答弁してくださいよ、大臣いらっしゃらないんで。
若松副大臣 それは考え方の相違というか、やはりすべてをこの個人情報ファイルとしてしっかり事前通告させるかどうか、それとも、実務のいろいろな運営状況とのバランスも考えて、やはりある程度の適用除外というものも必要ではないか、私はやはりその考え方だと思います。
 私どもは、すべてを事前通告することがかえってマイナス面が大きい、そのように判断させていただいた結果、三号から十一号というものを設けさせていただきました。
細野委員 では、特化して聞きますが、千件以上のデータで、試験的だからといってファイルとして開示をしない、これは合理的だと思いますか。これは副大臣、御答弁ください。
若松副大臣 これもやはり内容次第だと思いますね。試験的というのがかなりの、例えば何百万とかそういうものですとまた別の問題でありましょうし、その試験的な目的がどういうためのものなのか、それは事例ごとに検討させていただきたいと考えております。
細野委員 ここからはもう大臣に聞かなきゃしようがないなと思うんですが、十号にこういうのもあるんですね。「第三号から前号までに掲げる個人情報ファイルに準ずるものとして政令で定める個人情報ファイル」、これも開示しなくていいんですよ。例外をこれだけ設けておいて、さらに政令で定めてふやすことができる。ここは法律の一つの思想をあらわしていると私は思います。
 今散在している個人情報を国民からきちっと見える形で適切に守るというためにつくった法案なのか、それとも、今散在をして、どこに何があるかわからない、プライバシーが侵害されてもわからない、その状況をそのまま追認する法律なのかということなんですよ。私は、この行政機関の方の法律の一番根本的な欠陥はここにあると思っています。ここを本当に変える気があるのか。
 言っておきますけれども、大臣は盛んに、よくなったんです、よくなったんですと言うんだけれども、アングラの部分で、ファイル以外のところに置いておく情報の例外規定は一切変わっていないんですよ。これで本当にいいんですか。大臣、これは責任を持って、この部分に関してはきちっともう一回再検討するおつもりはありませんか。
 これは大臣に聞かなきゃならないので、副大臣として御答弁難しいと思うんですが、せっかくですので聞いておきます。
若松副大臣 せっかくのお尋ねでございますので、答えさせていただきます。
 大臣の答弁のとおり、今回のこの法律改正によりまして、紙情報等もしっかりとなったということはやはり改善でありますし、大きな改善という認識は、全く、大臣、副大臣、一切一致しております。
 補足はいいですか。
細野委員 いや、結構です。後でゆっくり聞きますから。
 委員長及び与党の皆さんにもぜひこの部分は認識していただきたいんですが、やはり、こういう部分できちっと国民から見える形にするのがこの法律の趣旨なんですね。私は、旧法とずっとにらんで見ましたけれども、基本的に、行政機関にとって散在している情報をどう扱うかということがこの法案のやはり一つのかぎであり、そこの部分について前進がない法案というのは非常に残念だなという思いを私自身持っているということを申し上げて、あとは大臣にいつか機会があれば。局長、また聞きますから。
 以上で終わります。
村井委員長 午後一時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
村井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。桝屋敬悟君。
桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。
 午後の部の最初の質問に立たせていただきます。
 皆さん、本当に御苦労さんでございます。この個人情報保護関連法案の審議、午前中の審議を聞いておりまして、いよいよ一周目が終わって二周目のトラックに入ったかな、三周目で大体見えるんじゃないかな、こんな感じもするわけでありまして、双方の立場も大体明らかになってきたな、ただ、これはなかなか相入れないものもあったり、何とかなるんじゃないかと思ったり、そんな気持ちで皆さんの議論を聞かせていただいている一人であります。
 さて、先日、我が党の漆原委員が基本法のポイントを四点に絞って議論をさせていただきましたから、きょうは、私は専ら行政機関関連法案について議論をさせていただきたいと思います。
 その前に、昨日の議論で、野党提案者から、個人情報保護委員会、第三者機関の御提案に係って、その予算が十七億円、こういう数字を御提示いただいたわけでありまして、特に、昨日の議論を聞いておりましたら行革との関連の話でありましたから、ここは、大変大きい意味をこの数字は持つのではないかな、こう思っております。
 野党案では、事業者に対する監督権限、あるいは違法事実の申し出、あるいは適切な措置の要求に対する調査義務でありますとか措置義務、これを課しているわけでありますから、具体的に、どの程度そんな案件を、件数を見込んでおられるのか、あるいはどの程度の事務量をお考えになっているのか、さらには、地方事務所の体制あたりはどのようにお考えになっているのか、ぜひ議論をしたいというふうに思います。
 つきましては、積算根拠、十七億円を、よもやざくっとした数字ではないだろうと思っておりまして、そうした内容もぜひお示しをいただければ次回また議論をさせていただきたいな、この委員会に御提出いただけないかな、こう思っておりますが、いかがでしょうか。
山内(功)議員 野党案は、御案内のとおり、何人にも個人情報保護委員会への違法事実の申し出を認め、それを受けて必要な調査を行い、事実であれば必要な措置をとるという機関になっております。
 この申し出の件数がどの程度になるのか、事務量がどの程度になるのか、これは初めての試みでありますから、今から詳細なことを言えるものではありません。
 ヨーロッパ諸国の監督機関の実態を参考にいたしまして、中央、地方を合わせて二百人程度の規模、人件費や調査活動費などを試算して、昨日、予算は約十七億円と申した次第でございます。
 その比較検討の対象として、例えばヨーロッパで見てみますと、フランスの監督機関は、情報処理及び自由に関する国家委員会と呼ぶそうですが、ここが、登録制度、公的部門への意見具申、個別規則の査定、警告、訴追、苦情の処理、報告書の作成と議会への提出など、多岐にわたる仕事をやっているわけでございまして、事務局スタッフは六十名となっておるようでございます。イギリスも参考にさせていただきましたが、データ保護コミッショナーも大体同様の仕事をしておりまして、事務局体制は約百名。
 そうした例を参考に考えまして、日本の個人情報保護委員会は、地方組織も合わせて、他国との人口数とか国民生活センターへの苦情相談件数の平均値等々を勘案いたしまして、約二百人の規模であれば十分ではないかと考えております。調査活動費や人件費などを考慮した上で、約十七億円と申し上げさせていただきました。
 しかし、情報化の進展は著しいわけでございますので、将来、規模を拡大しなければいけない場合があるかもしれないとは考えております。その時点、その時点で適切に組織を見直していけばよいと考えております。
 積算根拠の具体的な案につきましては、私どもの方で一応の概算を出しておりますが、もし委員がどうしてもということでございましたら、また、委員との友情にこたえまして、委員の方にお渡しをさせていただきたいと思います。
桝屋委員 私がというよりも、この委員会で十七億円という話が出たものですから、今申し上げたように、行革絡みの話でありましたから、ぜひこれは見させていただきたい。委員、この委員会の皆さんの共通の思いではないかというふうに思いまして、ぜひこの委員会に御提出をお願いしたい、その上で、今説明があったような議論もさせていただきたいとお願いをしておきたいと思います。
 では、具体的な内容に入りたいと思いますが、行政機関の方であります。
 まず、罰則の話でありますが、今回、罰則がついた。政府案、罰則がついているわけでありますが、私は、正直言って残念でなりません。当初案ではなかったわけでありまして、ただ、一連の、この前も言いましたけれども、私に言わせれば不幸な議論の中で、防衛庁リスト問題等もあり、これは国民の皆さんに理解をいただくという意味ではやむを得ないかなと思いますが、これは本当に残念であります。
 と申しますのも、もとより公務員は守秘義務も課せられておりますし、当然ながら法令遵守義務、それから違反については懲戒免職、こういうシステムもありますし、私はその世界で十七年以上生きてきたわけでありまして、そこの重さというのは嫌というほど自分自身が感じてきた一人でありますから実に残念でありますが、冒頭申し上げたような状況であります。
 大臣、どうでしょうか。重ねて、中には加重罰もあるわけでありますが、こうした罰則を付された趣旨というものを簡単に御説明いただきたいと思います。
若松副大臣 二巡目になってまいりましたので、副大臣の答弁でお許しいただきたいと思います。
 今委員御紹介いただきましたように、前国会、前々国会等でのこの個人情報保護の審議の中で今言われた御指摘が大変強かった、こういう経緯によりまして、与党の皆様にいろいろと御審議をいただき、そして結果として、行政に対する国民の信頼を一層確保することが不可欠である、このような与党の認識をいただきまして、最終的に与党の修正要綱を取りまとめられた、こういうふうに認識しております。
 これを受けまして、政府としても、基本的には与党のお考えと同じでございますので、その与党の考え方に基づいて、今回新たに行政機関の職員等に対する罰則規定を設けたのが経緯でございます。
桝屋委員 与党の議論の中で、職権乱用による個人の秘密の収集あるいは個人情報の盗用、不正目的での提供、さらにはコンピューター処理されている個人データを漏えいした場合の罰則、三つの形態で我々も決意をしたわけでありますが、これを政府案としてまとめる中では、私は、この個人情報保護、行政機関の保護法に関して、やはり役人の世界で罰則までつけられるという新しい世界に一歩踏み込んだな、こう思っているわけであります。恐らく相当の抵抗もあったのではないかと思うぐらい大きな事実だろう、私はこう思っております。そのことをぜひ国民の皆さんにも理解をしていただきたい。
 そこで、一点だけ確認ですが、私ども、当初、三つの形態の中で、「自己の利益を図る目的で職権を濫用した個人の秘密の収集」という表現をしておりましたけれども、そこが政府案の検討の中で、「専らその職務の用以外の用に供する目的で」、こういう表現になったわけであります。この経緯があったわけでありますが、これは、この表現が変わったというのはどういう趣旨なのか、罰則の適用範囲を狭めるということではないのか、ちょっと気になるので確認をしておきたいと思います。
    〔委員長退席、蓮実委員長代理着席〕
若松副大臣 まず、当初の、いわゆる与党修正要綱の、自己の利益を図る目的とした場合、これはほとんどが自己利益でありましても、少しでも第三者利益があれば、これはいわゆる罰則が適用されない、不可罰になるわけでございます。実質的な法益侵害の程度にほとんど差がないにもかかわらず、罰則の適用に際して差ができるということは適当ではない、こういうことから、「その職務の用以外の用に供する目的」という表現に変えさせていただきました。
 これは、実質的には政府案の方がより厳しい文言にもなっておりまして、与党修正要綱の適用範囲を拡大するということでありますが、この政府案の修正につきましては、行政に対する国民の信頼を確保していただけるという観点からすれば、与党修正要綱の趣旨にも沿ったものであるし、御理解いただけるものと理解しております。
桝屋委員 そこで、野党案との議論をさせていただきたいわけでありますが、野党案、第五十五条ですか、今議論のありました「職務の用以外の用に供する目的」という表現が削除されているわけであります。
 この結果どうなるのかということなんですが、職権を乱用して、まあ職権の乱用というのは、一般的には、公務員が自分の職務で仕事をされる場合、職権の乱用というふうに、そういうことだろうと私は思っておりますが、それで、役人が自分の業務範囲の仕事を自分の責任でする場合に、それだけで、個人の情報を収集したということで罰則の対象となる。
 例えば、よく言われる話でありますが、職務熱心で、一生懸命自分の職務と思って、ここはやはりこの情報は集めた方がいい、このように判断をして、結果的に行き過ぎてしまったという場合もあるかもしれません。そうした場合も処罰の対象となるということでありまして、確かに役人に厳しくしたいというお気持ちはわかるのでありますが、これは余りにも酷ではないかな、こう私は思っておりますが、野党の提案者にお考えを伺いたいと思います。
細野議員 冒頭、桝屋委員に私どもの考え方を申し上げますが、決して私どもも、それこそ役人を懲らしめようという発想でこの罰則規定を設けたわけではございません。あくまで、こういう罰則規定を設けることによって乱用を予防できるのではないか、そんな観点から罰則規定のより厳格なものをつくったということをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。
 その上で、今御質問のあった五十五条でございますけれども、確かに私どもは、構成要件の一つとして政府案が掲げております「専らその職務の用以外の用に供する目的で」という要件、これを外しております。
 ただ、政府案の場合は、逆にこの要件をつけることによりまして、職務の目的が少しでもそこに混在をしていると処罰の対象にならないということになってしまいます。すなわち、本人がこれは職務の目的だと思ってしまえば、それではもう罰則の対象にならないということで、処罰の範囲がこれでは狭過ぎるというふうに考えました。
 野党案では、その目的要件を除外いたしまして、職権を乱用して個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集すれば、それだけで当罰性がある、そういう判断をしたわけでございます。
 総じて言いますと、個人の権利利益をたとえ侵害しても、私は一生懸命やったんだから許してください、免責をされるんです、そういう仕組みはやはり国民からは理解を得られないのではないか、ここに関しては実効性のある処罰規定を設けた方がいいんじゃないか、罰則規定を設けた方がいいんじゃないかということでこういう規定にしたわけでございます。
桝屋委員 職権乱用を防止するという御説明ではありますけれども、私も役人時代、一生懸命仕事をしたつもりでありますけれども、本当にさまざまな、今行政需要というのは日々変わっているわけでありまして、大変な努力をして仕事をしている。それがまさに職務に忠実に、自分の判断で仕事をする場合に、一々これは罰則が適用されるかもしれないと思うと、果たして私は公務員の世界、どうかなと。
 それと同時に、もう一つの問題は、職権乱用に関する他の刑罰の例を見てみましても、職権乱用行為があったことのみをもって罰則の対象とするというものは余りないんじゃないか。いずれも、職権乱用に加えて、人に義務のないことを負わせたりあるいは権利行使を妨害するという、いわゆる社会的な害悪の高い行為があることを要件として、職権乱用プラス職権乱用の結果、今申し上げた社会的害悪の高い行為になっている、そこで初めて構成要件が満たされて罰則の適用、こうなっているだろうと。
 私はいろいろな事例を見てきました。検索してきましたけれども、刑法の公務員の職権乱用罪、それから特別公務員の職権乱用、あるいは航空法であるとか破防法であるとか公職選挙法であるとか、さまざまな法律を見ましたけれども、職権乱用ということのみをもって罰則というのはないんではないか、こういうふうに私は思っておりますが、ここのところは、ほかにこういう例があるんでしょうか。その点、ちょっと私は法律の基礎的な考え方としていかがなものかという気もしているわけでありますが、いかがでしょうか。
細野議員 ただいま桝屋委員の方から、刑法を一つの例として職権乱用の規定の御紹介がございました。
 確かに、刑法の百九十三条によりますと、人に義務のないことを行わせたり、また権利の行使を妨害したとき、職権乱用に加えてこういう要件がかかって刑罰の対象になっているということでございます。
 ただ、私ども野党案も、ただこの職権乱用そのものに罰則をかけるということではなくて、条文に書いてございますけれども、個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集する、これ自体が個人の権利利益を侵害するおそれの極めて高い行為である、そういうことで、ここを構成要件にして、職権乱用とプラスすることによって刑罰の対象にしておるわけでございまして、決して職権乱用そのものを刑罰対象にしているということではないという意味で、刑法ともまた公職選挙法とも十分これは均衡を保てた刑罰規定であるというふうに考えております。
 加えて、職権乱用について公務員の皆さんが萎縮するのではないかというお話がございましたので申し上げますが、職権乱用というのは、これは判例でも出ておりますけれども、公務員がその一般職務権限に属する事項において、職権の行使に委託して実質的、具体的に違法、不当な行為をすることということになっておりまして、単に、例えば新聞で調べるとか、隣の人に聞いてみるとか、図書館で調べるとか、その収集行為が職権乱用に当たるということにはならないわけでございます。
 例えば、庁内で限られた職員にしかアクセスのできないようなデータベースに入って個人の秘密に属する事項を、これを乱用するというようなケースにあくまで適用されるという趣旨でございまして、公務員の皆さんの行為を不要に萎縮させるような規定ではないと私どもは考えております。
桝屋委員 先ほど細野議員が、私は決して公務員を懲らしめるつもりはないとおっしゃったけれども、どうも私は、お話を聞けば聞くほど、その思いが強いのではないかと。細野議員の頭の中に、どうも去年の防衛庁の事件が大きくのしかかっておられるのではないかなという感じがしてしようがないわけであります。確かに、あの職権乱用の後に、個人の秘密に属する事項が記録された文書、図画または電磁的記録を収集したとき、これがまさに人権の侵害だと。細野さん、果たして本当にそうなのかなという気がしてなりません。
 それで、もう一つ重ねて伺いますと、私は、五十六条、この意味も実はずっとわからなかった。野党の皆さんはこの五十六条をどういう意味でつくられたのか。実はきょう、その意味はどうなんだ、何をしたいんだということを聞きたかったわけでありますが、先ほどの午前中の細野さんの話を聞いてよくわかった。なるほど、こうなのかと思いました。
 細野さんが午前中に質問された中で、役人の、個人情報ファイル簿に載っかっていないようなそんなブラック情報、どうも細野議員に言わせると、霞が関の官庁の中はおどろおどろしいブラックの世界か、私はこう思ったわけであります。だって、国の職員がどういう仕事をやっているかといったら、私は、本当に、場合によってはいろいろな情報を集めながら国民の利益のために仕事をしなきゃいかぬということはあるわけでありまして、その辺はいかがかなと思ったんですよ。
 これは、五十六条、先ほどの御質問の趣旨も聞きながら読んでみますと、行政機関の職員が、正当な理由がないのに、個人情報ファイル簿に掲載されていない個人の秘密に属する事項が記録された個人情報ファイルを利用したとき、五十万円以下の罰金に処すると。
 要するに、まずは個人情報ファイル簿に全部書け、その個人情報ファイル簿に載っていないものをちょっとでも使ったら罰則ですよ、こういうことなわけでありまして、私は、端的に言ってこれは、行政の適正な運営といいますか、効率的な行政事務をやろうとしたときに、いみじくも萎縮させてしまうのではないか、こういう気がするわけであります。過剰な罰則だと私は思っておりますが、いかがでしょうか。
細野議員 あえて桝屋委員と私の立場の違いを強調するとすると、最終的に、やはり行政機関が何のために仕事をしているのかということのような気がするわけでございます。それは、まさに国民のためなわけですよね。今回の個人情報保護法案というのは、まさに今国民が不安を持っている個人情報をいかに行政機関が適切に守っていくかという観点で、この罰則規定も含めて議論がされているわけでございまして、国民の側から見たときに、やはり罰則規定に関してはきちっと担保できるようなものが必要なんじゃないか、そういう観点でつくったということをぜひ御理解いただきたいと思います。
 五十六条が過度に過ぎるのではないかという御指摘でございますが、まさに午前中私が質疑をいたしましたところからも読み取っていただきましたとおり、最大の問題は、やはりきちっと国民から見える形になっている状況に持ってくる、その行政をやっていくということだと私は考えております。
 五十六条は、そこに見えない部分、見えていない部分に関して何か乱用がなされた場合に、全くそこに刑罰対象をかけないということではなくて、むしろそういう扱いをなされているものに関しても乱用された場合に関してはきちっとチェックをしていく、そういう趣旨で設けた条文でございますので、まさに今必要性の高い罰則ではないかというのが私どもの考え方でございます。
桝屋委員 それと、細野さん、さっきの議論を聞いておりまして、個人情報ファイル簿の適用除外の話、午前中議論されていました。野党提案者の細野さんの質問を聞いておりましたら、例えば、例外規定は、人事、給与もしくは福利厚生に関するもの、これは内部データですね、ここはいいのかもしれない。専ら試験的な電子計算機処理の用に供するため、それから、一年以内に消去することになる、それから、物品とか金銭の送付あるいは業務上必要な連絡のために利用する記録情報。それから、千件の話がありましたけれども、あれこそ大変な、千件の情報を試験的にということで、恐らく役人はいろいろなことをするだろうというような前提でお話をされていますが、そっちの案はここを取られているわけですね。
 なおかつ、ファイル簿、僕が役人だったらどうしますかね。例えば、どっかに資料を送らなきゃいかぬな、送り先をばあっとアクセスしてつくる、つくったらすぐそれがその課の情報ファイル簿にぴっと自動的に行くという仕組みでもつくれば別ですけれども、そのたびにつくらなきゃいかぬというのは、細野さん、お役人で、僕は地方の最前線の一公務員でありましたけれども、一公務員で発送簿をつくったり、たまらぬですよ、こういう事務までさせられるのか。しかも、それをやらなかったら罰則になるかもしれないし、おしかりを受けるかもしれないとなったら絶対に萎縮しますよ。円滑な行政運営はできないというふうに私は申し上げたいと思いますが、もう一度御答弁ください。
細野議員 午前中の議論でございますけれども、ここはやはり、本当に個人情報をいかに扱うかということに関してどれぐらい慎重であるかと、かなり最終的に価値観に行き着くところかなという感じがいたします。
 先ほど、委員会が休憩しまして担当の方とも少しお話をしたときに、それはたまらぬですという話が確かに私の方に直接ございました。
 ただ、今、情報公開という流れもあり、皆さん、情報公開に基づいて申請がなされるということを前提にそういう文書もきちっと管理をされるようになったわけですよね。それぞれ皆さん、きちっと管理をされている。
 一般の行政文書以上に、そこに個人情報が入っているものに関しては、それをきちっと見たい、どういう管理をされているのか懸念をするという方が、個人情報に関してはさらに当然関心を持つ方が多いわけです。一般の行政文書であればすべての方が関心を持つ可能性があるけれども、特段それに直接かかわる方がいるかというと、それはさまざまな文書があるけれども、事個人情報に関しては、その本人の情報なわけですから本人が強い関心を持つのは当然なわけでございまして、やはりそこはより慎重に扱っていただく。
 開示、不開示はそのときの判断があると思います。開示、不開示の場合はその判断があると思いますが、少なくともどこにどういう情報があるかについてはきちっと管理をしていただいて、国民の側からも見える形にしていただきたいというのが私どもの考え方でございます。
桝屋委員 先ほどの適用除外、個人情報ファイル簿の適用除外の例で、これを読んでおりますと、私は、さっき言いましたように、では個人が自分の情報として確認をしたいと思うかというと、そういう世界ではないんだろうと思うんですね。やはり細野さん、去年の防衛庁の亡霊に覆い包まれていると私は思うんです。そして、それがためにあえて過度な罰則規定を設けられている、こういうふうに思うんですね。
 それで、確かにそれは極めて重要な点ではあるけれども、法律で、しかも罰則までつくるということになりますと、あえて言いませんけれども、昭和四十九年の最高裁の判決等、およそ刑罰は国権の作用による最も峻厳な制裁であるということで、やはり構成要件等はきちっとしなきゃならぬ。それと、もう一つは行政の円滑な運営。正当な理由というのは一体何なのかなと。
 もう一点聞きますけれども、では、正当な理由というのは何なんですか。どういう御答弁になるかちょっと聞いてみましょう。この五十六条の正当な理由というのは何ですか。
細野議員 お尋ねは、五十六条の、ファイル簿に掲載をされていないようなファイルを利用する場合の罰則がかからない正当な理由ですね。
 これに関しては、私どもは、一つ例として申し上げますと、災害などで個人情報ファイル簿に掲載することがかなわないが緊急にその個人情報ファイルが必要な場合、そういう場合に特定するということでございまして、とにかくこの部分に関しては、きちっとまずファイル簿に上げていただくというのを基本にしているということで御理解をいただきたいというふうに思います。
桝屋委員 わかりました。
 ですから、それだったら、私は、細野議員に申し上げますが、いいときに役人をやめたなと思っておるんですよ。私だったら到底やっていく自信がないなと思うわけでありまして、いや、私は悪い役人ではなかったとみずから思っていますよ。法を遵守し、一生懸命県民、国民のために働いてきた、そんな自負を持っておりますけれども、私は、これでは役人やっていられないな、こう思うわけであります。やはりそこは行政運営の効率性、それとのバランスの問題だろうと思うんですね。
 もう一つ。もう時間がないので、一点だけ。データマッチングについて、時間がなくなりまして最後に議論したいんですが、データマッチングもやはり思っているとおりであります。個人の権利利益の保護と行政の適正かつ円滑な運営、このバランスの問題だろうと私は思っております。
 これも細野議員に申し上げておきたい。マスコミや一連の議論の中のデータマッチングこそ、このIT社会における国民に対する最大の権利侵害だというような過度な報道があって、住基のときにそうだったんですよ。あの住基ネットの住基コードがデータマッチングのコードに使われるなんというようなことが随分議論されまして、データマッチングが大変に罪悪だ、こういう議論があって私は大変残念だと思っているんですね。
 やはりIT社会の中で、コンピューターの世界でデータマッチングができるということが一番の利点でありますから、そのことをもって直ちに権利侵害をもたらすというふうにお考えになることは、私は理論的必然性はないのではないか、こう思っておりますが、データマッチングに対する野党提案者のお考えを伺いたい。
    〔蓮実委員長代理退席、委員長着席〕
細野議員 私どもも、データマッチングに関しては、基本的には情報の目的外利用や提供の一形態であるというふうに考えておりまして、目的外利用できちっと禁止をされる部分で担保されるのが最もいいと考えております。
 しかし、複数の電算処理された個人情報ファイルの照合や結合というものに対する懸念というのは、これは一般の方も非常に持たれているし、私どもも共有するところでございまして、データマッチングが仮に許される場合であっても、行政機関の長はこれが個人の権利を侵害しないように配慮しなければならないという規定をここに導入することは、私どもは、国民の不安にこたえるものである、そう考えております。
桝屋委員 しかも、そこは配慮しなければならないという、これもどうするのかなというのを私は時間があれば議論したいところなんです。
 最後に、時間も終わりましたけれども、自分のために言っておきますと、私は、細野さんと逆に、役人の味方のつもりもありません、それは私もありません、しかし、さっきから言っているように、罰則を今回つけたということは大きいことでありまして、それ以上に野党案のような規定を置きますと萎縮するということを私は最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
村井委員長 次に、滝実君。
滝委員 自由民主党の滝実でございます。
 この一週間、御質疑をお聞きしておりまして、大方の議論は尽くされているんだろう、こういうふうに思うのでございます。しかし、答弁が余りにも短かったり、そういうような部分もなきにしもあらずでございますので、改めて、私なりに、もうちょっとわかりやすいお答えをいただいた方がよろしいんじゃないだろうかなと思った点につきまして、野党案を中心にして、政府側がどういう受けとめ方をされているか、そういう観点から御質問をさせていただきたいと思います。
 まず、保護主体ですね。行政庁の保護主体で、第三者機関にするかどうかという点が、野党案と政府案の大きな違いとしてあるわけですね。
 これを見ておりますと、政府案をおつくりになったときも野党案をおつくりになったときも、いずれも恐らくは、あの一九九五年の、ヨーロッパ共同体、すなわちECの指令というものを相当勉強されて政府側もおつくりになっている、野党側もそれを勉強されておやりになっている。だから、お手本となるところはある程度共通していると思うのでございますけれども、結果的には第三者機関をめぐって大きなずれが出てきている、こういうことになっているわけですね。
 その背景ということになりますと、野党側の案で評価しておりますECの各条文、それを日本の行政機構の中に持ち込んだときにどういうふうに評価するのか、政府側はそれに対してどういうふうに見ているのか、そういうことの違いではないだろうかな、こういうふうに思いますので、そういうふうな問題意識を持ってお尋ねしますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 まず、野党側の案では、三条委員会というようなことで個人情報保護委員会というものを取り込んでいるわけでございますね。これに対して、片山総務大臣は、野党側の案では、三条委員会とおっしゃるけれども、八条委員会に実質は近いんじゃないかということを一言おっしゃっているんです、説明はありませんでしたけれども。それから、細田国務大臣は、この問題について、ヨーロッパにこの種のものが多いと言うけれども、風土が違うんじゃないか、こういうふうにおっしゃっているんですね。
 そういう観点から申し上げたいと思うんですけれども、まず、日本の行政機構の中で、三条委員会として典型的なものは公正取引委員会。野党案の提案者もそういうことに準拠した御答弁をされておりますけれども、公正取引委員会は、もともと、御案内のとおり、強制調査権を持って勧告、あるいはお金の決定までするんですね、課徴金、要するにペナルティーの決定までおやりになる。あるいは審決ということで、最終的な、準司法的な手続に従った司法解決もする。こういうようなことが典型的な三条委員会であろうかと思うんです。
 そういうふうな観点から見ると、やはり私は、野党案のこの三条委員会という立て方は、どうもそういうような意味での、準司法的な手続を厳密に遂行するような立て方になっていないというのが大きな違いのように思うのでございます。
 そうしますと、その辺のところが、何をもって三条委員会の基準にするのかというような問題もあろうかと思うのでございますけれども、先ほど申しましたように、総務大臣は、野党案のこの委員会は、三条委員会と言っているけれども八条委員会に近いんじゃないか、こういうふうに一言おっしゃっていますので、そこら辺の背景というか、考え方の根拠をお示しいただくとありがたいのでございます。
    〔委員長退席、蓮実委員長代理着席〕
片山国務大臣 野党案には二つありますよね。個人情報保護委員会、これを三条委員会と言われて、それから審査会の方は、これは政府案と同じような審査会で、ちょっと私、そこをごっちゃにしておりまして、両方合わせて、整理せずに議論したようなところがありますが、野党案の考え方は、委員会の方は三条機関、審査会の方ははっきりしないんですね。まあ八条だろうと私は思っております。
滝委員 わかりました。そこのところを合わせてお触れになったということはわかりました。
 そこで、もとになるECの指令、一九九五年十月の指令を見ますと、ECの個人情報の立て方が、野党案でも政府案でも一緒なんですけれども、違うんですね。ECの立て方は、ECが加盟各国に個人情報はこういう格好でおやりなさいよと言った指令は、ECの場合は、個人情報を集めるのに事前の調査というものを要求しているんですね。したがって、先ほど来議論がありますように、まとまったデータをつくろうと思ったら、まず政府側に申し出をして事前の調査、そういうようなことをおやりにならないといけない、こういう問題があるわけでございます。
 そうしますと、それなりにまとまって一つの窓口が統一的にやらなければいけないのかな、こういうような感じがあるわけでございますけれども、野党案でも政府案でも、あらかじめの事前調査をしないという意味においては同じだろうと思うのでございますけれども、細田国務大臣はその辺のところはどういうふうに御認識されているんでしょうか。
細田国務大臣 滝議員が御指摘のように、欧州各国では第三者機関が設置されているケースが多いのですが、その前提となる法制度において、EU指令第十八条に監督機関への通知義務が定められているように、事前の届け出を義務づける事前規制型となっているほか、監督機関は強制捜査権や司法機関への告発権を有するなど、事業規制法の体系となっているわけでございます。
 これに対して、我が政府案では、規律の遵守につきまして、まずは事業者の自主的な対応を基本としつつ、紛争についても当事者間の迅速な解決を期待しており、それでも解決されない場合には、最終的に実効性を担保するための、業種、業態の特性に応じた各主務大臣による事後的チェックをする仕組みとしているわけでございまして、我が国の行政庁が多様な産業、業種にわたりましてこれまで地道ないろいろな行政対応をしてきた実績を前提といたしますと、こういうことが最も効率的な、かつ効果のある仕組みではないかと考えておるわけでございます。
滝委員 確かに、私は、今の国務大臣の御答弁のように、どうも、ヨーロッパの場合と日本の場合と、いろいろな民間の事業に対する行政当局の関与の仕方が差があるんじゃないだろうかなという感じがあるんですよね。ヨーロッパの場合には、基本的に、民間企業に対する行政庁の手とり足とりという関与の仕方がどちらかというと薄い。日本の場合には、これはもう昔から殖産興業の伝統を引き継いでおりますから、大変各事業分野にわたって関与をしてきた。こういうような背景がありますよね。
 したがって、当委員会でも議論がございましたように、例えば貸金業の規制に関する法律なんというと、その条文の三十条に、貸金業で協会をつくって、協会は会員に対してどういう指導をするかというと、能力を超えた貸し付けをしないように、こういうようなことを協会がやっている。それに対して、秘密は保てというような条文も既に貸金業法の中で置かれている、こういうような状況がありますよね。
 それなんかを見ると、そういう一つ一つ細かく、協会をまずつくれとか、あるいはつくった協会がメンバーたる個々の貸金業者に対して、個人の秘密情報はきちんと守れとか、そういうようなことをやってきているということからすると、政府案のように、既に各行政主体が個々の事業活動に対して相当細かな関与をしてきているという中では、むしろ、改めて特別な機構を設けなくても、現在の国の機構、あるいは、足りなければ地方団体を動員しておやりになるという方がすっきりしている。
 そういう意味では、日本の場合にヨーロッパ風な特別な機構をつくるとまさしく二重行政になる、こういうふうに理解をいたすわけでございますけれども、その辺のところについてもう一遍、国務大臣の方から、国務大臣は通産省において事業規制等の仕事に携わってこられたわけでございますから相当お詳しいと思いますので、その辺のところの御意見を細田国務大臣にお願いを申し上げたい。
細田国務大臣 滝議員がおっしゃるとおり、明治政府以来、どうも日本は、確かに個別の産業を育成しよう、戦後もあれだけ壊滅的なところから重点産業を決めたり、あるいは新規産業を育成しようというようなことも含めて、いろいろな規制法があったと同時に振興法というものがあり、個別にIT産業についてもさまざまな振興をする政策を担当する官庁があるということで、非常にきめ細かいことをやっておることは事実でございます。また、そのために団体等も設立されている。こういう実態を一九三五年体制などと言う経済学者もいて、これは古い体質であるから断固改めて、こんなものはそれぞれベンチャーもふえておるので新しい体制に変えろと言う方も当然おられるわけです。
 それは、それの欠点の方は是正しなきゃいけないんですが、個人情報の保護といったような観点、それから個別の事案を見てみますと、まだまだ新しいIT時代、インターネット時代におきまして、まだ十分な認識に欠ける場合、体制の整備がおくれている場合というのがございますので、いわば調停と言っては変なんでございますが、潤滑油的な、間を取り持つような主務大臣機構が働き得る日本の行政実態にあることは確かであると思っております。
 欧米等は、そういった業種概念、事業所管概念というものがほぼないと言ってもいいわけでございますから、突然新しいことが生じた場合には、それはすっきりと権利義務を課する特別な委員会で対応しろという発想が出てくることも事情としてわかるわけでございますが、やはり日本の実態というものも踏まえながら対応を検討していくことも、滝議員のおっしゃるように、非常に大切な点ではなかろうか、そういうところに着目しておることは事実でございます。
滝委員 ありがとうございました。
 これは通告しておりませんけれども、最後に重ねてお伺いしたいんでございます。従来からの事業はそれぞれ細かく事業について主務大臣が関与できるような、そういうような部分が多いと思うんですけれども、当委員会でも指摘されておりますように、新しい産業、新しい部門、そういうものについて、その辺の仕分けがうまくいくのかどうか、そういうような疑問というか迷いもあるだろうと思うんでございますけれども、その辺についてはどういうような御見解をお持ちでしょうか。
細田国務大臣 これまでの行政庁は、あらゆる事業について事業所管大臣があるという前提で行政をやってきました。私は、一九七〇年代に技術導入の自由化とか外資導入の問題、許認可業務に携わったことがありますが、ここには新しい産業もあり、外資を導入したい、技術を導入したいという場合に、主務大臣が必ずしも明確でない場合もございます。しかし、そのときに主務大臣を決めてきました。
 それは、やはり申請者の主観をまず尊重いたしまして、ある役所へ行く、そうするとその役所で、完全に自分の所管でないとはっきり判断される場合には、どうぞ何々省へ行ってくださいと言ってそちらに紹介をする。そして、自分が関係あるなと思ったら、わかりました、私のところでやりましょう、ただし関係省には連絡しますよということを言う。どこにもそれが当てはまらないというケースは過去には余りなかったんでございますが、このケースでは、どこも私のところ知りませんよというようなことになるといけませんので、内閣の総理大臣の任務として、これはここの所管であるということを決めることになっております。
 問題は、逆に、我が省の、自分が主務大臣である、あなたは主務大臣じゃありませんよといういわゆる権限争いみたいなことが起こるかどうかということでございますが、こういう個々の問題についてはやはりお互いに連絡調整をしながらやるという規定がございますし、そういうルールも規定しておりますので、私は円滑にいくのではないかと思っております。
滝委員 おっしゃるように、日本の特に霞が関の姿勢は、とにかく何でもかんでも自分のところが主務官庁だと言いたがる人たちの集まりでございますから、そういう意味では心配ないんだろうと思うんでございます。そういうようにこの法案、政府案は出されている。
 ただ、問題は事件が起きたときに逃げるところが出てくる、それについては、今御指摘のように、基本的に内閣でもって仕分けをする、こういうような最終的な仕組みもある、こういうことでございますので、私は、そういう意味で、日本の風土に合うように、同じECの指令をお手本としながらも、そういうようなことになっているという意味では政府案について理解できるのではなかろうかな、こういうふうに思います。
 次に、野党案の個人情報保護法案の基本法の十五条の規定の書き方について、お尋ねを政府側に申し上げたいと思うんでございます。
 日本の翻訳では、特別な個人情報、こういうようなことを、ECの指令の中の、これは何条ですか、八条ですね、EC指令の八条の中では、特別な個人情報という格好で規定をいたしているようでございます。
 その中で、特別に注意をしなければならぬ事項として、ECの八条に該当するものが野党案の十五条の一項の一号で、「思想及び信条に関する事項」、こういうような事柄がうたわれているわけでございます。政府案の方は、こういう特別な配慮をすべき個人情報というような構成の仕方はいたしませんで、個人情報はすべて同じように扱う、こういうことでございますけれども、野党案の方は、一般の個人情報と特別に配慮しなければならぬ個人情報と二本立てに分けているわけですね。これはECの指令に大体準拠している考え方だろうと思うのでございます。
 こういうようなことを考えますと、例えばECの場合は、具体的に取り扱いについて細々とした規定が指令そのものにありますから、あるいはそこでもって判断できるのかもしれませんけれども、この「思想及び信条に関する事項」というようなことになってまいりますと、これが一つ一つの事例に該当するかどうかというのを、仮に野党案を政府側が実行すると、政府は実行しなければいけませんからね、仮に野党案でもそれがこの法文の中に盛り込まれた場合には政府は実行するわけでございますから、そういうときに、この思想とか信条とか、そういうようなフレーズというのは判断できるものなのかどうか、そこのところを細田国務大臣にお伺いしたいと思うのです。
細田国務大臣 すべての個人情報は、情報の内容や性質にかかわらず、その利用目的や方法、利用環境によっては個人の権利利益に深刻な侵害が生ずる可能性があるものであります。このために、何がセンシティブ情報であるかを情報の内容、性質によってあらかじめ類型的に定義することが極めて困難であると思っております。
 午前中の御質問の中でも、私が答えたものでも、情報の中身によっては相当問題のあるようなものもありますよという、非常に範囲についてどうしても広がってくるのじゃないかというような、ちょっと御示唆のある質問もありましたけれども、やはりここには、絶対的ないわばセンシティブ条項だと言っておられます中には、必ずしも個人の財産とか健康情報とか、これは医療だけは何か出ておるようでございますが、そういう非常に微妙な個人のセンシティブな情報等も例示されているわけではございませんし、やはりすべての情報についてひとしく取り扱う。
 当然、したがって、どんな情報であれ、個人は対応をしていく、この法律に基づいて対応ができるということ、そしてきめ細かく措置するということが大事であり、かつ、個別に本当に問題があれば、先般来申し上げておりますように、個別の法制度や施策ごとにきめ細かく措置するということは当然排除しておらず包含しておりますので、その点を申し添えたいと思います。
 また、野党案について、例えば「思想及び信条に関する事項」と書いてございますけれども、これも極めて抽象的、相対的な概念でございますので、具体的にいかなる個人情報がこれにかかわるのかということをはっきりと決めることは難しいのじゃないか。一種の宣言的な意味でどうしても書いた方がいいのではないかという御趣旨かなと思っております。
 というのは、その他これに準ずる正当な理由がある場合については、このように広範で多様な分野を規制しようとすればバスケットクローズ的な規定を置くことはやむを得ないとは思いますが、いろいろ除外措置があるということもこの概念を不明確にしておる面があるのではないかと思っております。
    〔蓮実委員長代理退席、委員長着席〕
滝委員 行政実務の経験からいきますと、思想とか信条というのは最も扱いにくい分野であるだけに、本人がこれは思想、信条だと言ってしまえば、それにほとんど対抗できるような手段がないというか、そういう分野であるだけに、これはなかなか、実際問題として、実務的には惑われる、困るというか戸惑いがある条文の書き方じゃないだろうかな、こういう感じがするものですから、今御意見をお聞きした次第でございます。
 それから、野党案の十七条の三項三号に、国、地方公共団体に個人情報取扱事業者が協力するときには、例えば利用目的を超えて利用する場合でも、特に事務に支障がというか、正確には、事務に「著しい支障」が生じるときは本人の同意を得ずに取り扱える、こういうような条文がありますね。
 ここでもって問題になりますのは、野党案では特に、「著しい」、こういうふうに表現しているんですよね。事務に支障があるというのじゃなくて、事務に著しい支障がある、こういうふうに、非常に限定的にするんだという気持ちがあらわれている表現ではあるのでございますけれども、仮にこういうものを政府側が実務として受け取った場合に、その辺の判断は、著しいとそうでない場合との判断基準というのは行政的には何かあるのでしょうか。
細田国務大臣 利用目的制限の例外規定は、保護されるべき個人の権利利益と個人情報の有用性との調和を図るために、必要な範囲に限り、要件を限定して設けているものでございます。
 政府案におきましては、法令に基づき遂行している、国、地方公共団体またはその委託を受けた者による事務の遂行は適正に処理されるべきであるとの考え方から、本人の同意を得ることが事務の遂行に支障が生ずるおそれがあるときは、本人の同意なく、利用目的の範囲を超えて取り扱えるということにしておるわけでございます。
 野党案につきましては、国等による適正な事務の遂行であっても、その支障が著しいものでない限り、本人の同意を得ないと利用目的を超えて取り扱えないことを法律上容認することとなりまして、このことは国民一般に対する行政サービスの適正な遂行の必要性を不当に扱うものではないかというふうに考えております。
滝委員 次に、まとめて、引き続いて御質問させていただきますけれども、野党案の六十五条というのがあるんですね。どういう規定かというと、マスコミであるとか著述、そういうものを除いている、適用除外にしているところの条文でございますけれども、その三号に「不特定かつ多数の者に対して、情報を発表し、又は伝達する活動」、こういうものは報道と同じような除外規定になっているわけでございます。ところが、その中で、原則はそうなんですけれども、政令で定めるものは除外しませんよ、規制の対象にしますよというような条文がございまして、ほとんどのものは、今言ったように、この三号に該当するものは適用除外になるのですけれども、部分的には、政令で定めたものは除外しない、そういう条文がありますね。
 こういうようなものは、提案するときは野党提案で、議員立法という格好で提案されるのですけれども、政令となりますと、もちろん政令ですから政府の、内閣の定めるものでございますから、そういうものを内閣が定めるときにこういうような条文の立て方で定められるものかどうか、細田国務大臣にお聞きしたいと思うのです。
細田国務大臣 本当は直接、野党提案者にも強くお聞きいただきたいとも思いますけれども、私どもがこれを拝見いたしますと、不特定かつ多数の者に対して、情報を発表し、または伝達する活動の用に供する目的であれば原則適用除外となってしまい、例えば企業が購買履歴リストを第三者に提供する場合も、政令が定められない限り適用除外になってしまうというようなことが懸念されるわけでございます。
 一方、政令への委任範囲につきましては、個人情報を記録した名簿とか、個人の住所の存在を明らかにする地図、その他これらに類する個人情報データベース等と規定されているだけであり、委任範囲がこれでいいのか、不明確ではないのかという感じがいたしております。
 したがいまして、この規定を前提とした場合に、義務規定の対象とすべき業種、業態等は極めて幅広いことから、これらすべてを政令に網羅的に明記することは極めて困難なことではないかと考えております。
滝委員 これは、議員立法の際に、常に悩ましい問題として必ず出てくる問題なんですね。ですから、委員会における質疑を通じてイメージを出していくというようなことになるんでしょうけれども、それにしても、この六十五条三号の条文というのは、これがあるためにいわばほとんどの個人情報が適用除外、規制の対象外になってしまうようなイメージが残るものですから、そこであえて御指摘をさせていただきました。
 以上、時間が参りましたのでこれでおしまいにさせていただきますけれども、あと一つ、カーナビの問題がこの間から問題になっておりました。あれにつきまして、事務当局で専門官の藤井審議官と大臣との間で若干ニュアンスに差があるような御答弁もいただきましたので、最終的にひとつ大臣の方から、常識的な結論、個人が、ユーザーがカーナビのようなものを利用する、そういうものは対象じゃない、しかもそれは今回の法案の全体の体系からも矛盾しないということを最後にお聞かせいただきたいと思うんです。
細田国務大臣 先般、御質問の中で、カーナビ等の利用者の問題が出まして、さらにこれは実態的に詰める必要があるということで申し上げたわけでございますが、次のように考えております。
 本法案第二条三項におきまして、義務規定の適用となる個人情報取扱事業者は「個人情報データベース等を事業の用に供している者」と定義されております。
 インターネットの検索エンジンは個人情報データベース等には該当しない。そして、携帯ナビを含め、インターネット上で公開されているデータベースを利用することは、単に他人が提供するサービスを利用するものにすぎず、個人情報データベース等を事業の用に供しているとは言えない。ただし、インターネット上から政令で定める件数、五千件以上を想定しておりますが、件数以上の個人情報を自己のデータベースに取り込んで利用する場合などは別である。
 また、データを含むカーナビ等を購入などしまして利用する場合でありましても、カーナビ等に含まれるデータが電話番号や住所表示、法人や公共施設等の名称のみであり、個人名が入った個人情報が含まれていない場合や、二番目に、個人情報が含まれたものでありましても、その件数が政令で定める件数を超えるものではない場合には、個人情報取扱事業者には該当しない。
 さらに、カーナビ等が個人情報データベース等に該当する場合であったとしても、本法案は、反復継続し、社会的に事業と認められる者に対して義務を定めているものであり、単に自動車を運転している場合など日常生活において利用する場合については、個人情報取扱事業者には該当しない。
 また、例えば、宅配事業を行う者が個人情報データベース等に該当するカーナビ等を自己管理のもとで宅配事業に利用する場合などにつきましては、個人情報取扱事業者に該当することとなる場合はあり得るが、こうした場合は、大量の顧客データをコンピューター等で取り扱う場合と性格において変わりがない。
 ただし、市販されているカーナビ等をそのまま事業目的の範囲内で使用する場合は、第二条五項の保有個人データに該当せず、開示、訂正、利用停止の義務の対象とならないのみならず、利用目的制限等の義務に違反するケースも実態上ほとんどないと考えられる。
 なお、個人情報データベース等を作成、提供する事業者は、当然ながら本法が適用される。
 以上が今取りまとめました考え方でございますので、また御検討いただきたいと思います。
滝委員 思ったよりも長い、詳細な御答弁をいただきまして、ありがとうございました。終わります。
村井委員長 続いて、後藤斎君。
後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。
 細田大臣、質問通告はしていないんですが、簡単な御質問というか、午前中、今の質疑を含めてちょっと気づいた点がありますので、確認をしておきたいと思います。
 いわゆる第三者機関の設置、野党案では個人情報保護委員会という名称で対応しているものを、二重行政である、行政の肥大化を招くということで難しいというお答えを繰り返しされております。
 ただ、大臣、そうはいっても、仮にそういう形で第三者的なものがなくして、それぞれの主務大臣がそれぞれの役所の中でやる場合であっても、ある意味では独立させた、以前も御指摘をしましたが、課とか室みたいなものが私は必要になってくるんではないかなと。
 いろいろな団体の方の、第三者機関の設置ということでの一番の問題点の指摘は、要すれば、各省庁の裁量の中で恣意的に監督権の行使がなされるのではないかという懸念を払拭するためには、仮にそのまま第三者機関がなくしてスタートをするにしても、それぞれの省庁で創意工夫をする必要性は少なくともあるということはお認めいただけますでしょうか。
細田国務大臣 私も何度か申し上げておりますように、野党案の考え方が一つの考え方であり、それは外国でも採用されている考え方でもありますから、頭からこれはもう全く案にならないようなものであると申し上げているつもりはありません。
 そこで、我が国もいろいろ、情報化の進展によってこれからどうなっていくだろうかということが非常に大きな要素であるということが一つ。それから、先ほど滝議員の御質問にも答えましたように、いろいろな所管の業種につきまして、日本の行政機関の場合にはかなり、もうほとんどの点は目が行き届くようになっている。
 それは、我が国会が、何か起こると、この問題についてはどうなっているんだ、主務大臣やってこいといって、そこに一生懸命対応するような体質になっておりますので、そのうちに新しい産業についてもかなり所管が明確になってきておるという日本的な面があるではないかということで、大半のものは、この間も申し上げておりますように、過失だとか無知だとか、いろいろなことがあってこの八十件ばかりの事件が起こっておりまして、その中で本当に故意の、非常にけしからぬ案件というのは十数件かなと。これは先生方もそのリストはお持ちですから、見ていただきますと、それが実態ですね。ただ、これからもっと膨大に悪いものが出てくるんじゃないかという話とか、それから、行政庁は本当に目が届くのかという話があると思います。
 私は、この間、例示として申し上げたのは、それに対して不信感を持って見るということもあるでしょう。あるいは逆に、委員会をつくると、それ自体が権力として動き出して、かえって、プライベートセクターといいますか、いろいろな活動に支障があるというケースもあり得る。しかし、それは可能性の問題であって、この問題は、まず被害をこうむったと考える人が駆け込むわけですから、駆け込み寺として駆け込んだときに、ていよくあしらわれて、どこにも行きようがなくなったりすることがないようには配慮されていますね。
 それから、今のオープンな時代ですから、行政庁に行って、おれはこんなに困っているんだ、これを何とかしろと言えば、これは当然ながら対応する、消費者行政等でももう皆対応する仕組みがございますので、我が行政庁は、駆け込んでも、無視してどこかに棚上げしておくということは私はないと思いますし、それだけの義務は主務大臣である以上負っておるし、その点は大丈夫ではないかなと思っております。
 そういうことの均衡から見てやや時期尚早かなということと、それから、独立した機関のコストの問題とかいうことを考えますと、日本的な今の行政からいうと、また機関が各行政庁に判断を聞いて、どうなっているんだというような行政が行われますと二重の仕組みになる可能性はあるなということであって、そういう私の気持ちも、あるいは政府の考えも御理解いただきたいと思います。
後藤(斎)委員 今の大臣のお話は通常の第三者機関なんですが、役所にもある程度独立をした形で置くようなことが必要ではないでしょうかということをお話ししたんですけれども、各官庁に。そこはいかがでしょうか。端的で結構ですから。
細田国務大臣 行政には各縦割りの局がありますね、役所によっては。そこが扱うことがいいかどうかは、今の消費者問題で、消費者相談センターとか苦情承りの窓口というのを全部設けて、それがまた省内にも情報として流れ、また業界の組織等に流れる、あるいは問題となっている企業に流れるという仕組みも考えられますので、それは議員の言われる仕組みの考え方ではないか、所管大臣の中での仕組みはもっと考えてはどうかと思っております。
後藤(斎)委員 私は、先ほど、仮に第三者機関がなくしてスタートをしても、各主務大臣におかれては、その辺をきちっと、ある程度独立した、通常行政でない形のものをやはり設置していくことが、今国民から、一部の方かもしれませんが、出ている、それにこたえる一つの手段ではないかなと思いますので、ぜひ細田大臣、その点も含めて、お考えをこれからもしていただければと思います。
 片山大臣、今、情報公開法というものにリンクをさせて、個人情報保護審査会ということでこれから対応する、組織体系を行政に関する保護の方でも対応していくようになっていますが、この組織体制が、現行の情報公開審査会と、これから個人情報保護を中ポツで入れ込んだ審査会の組織体制が拡充されるというふうに、大臣、この間もお尋ねをしましたが、現在がどの程度の人的な規模で、これからどんなふうな人的な拡充になっていくのか、そして、先ほど桝屋議員が野党提案者に個人情報保護委員会十七億の根拠はというお話を聞いておりましたが、どのような視点でその根拠の数字が出てきたのか、あわせてお尋ねをしたいと思います。
松田政府参考人 数字の説明でございますので、私の方から御説明させていただきます。
 情報公開審査会は、現在、委員が十二人でございます。今度、個人情報保護機能を加えまして情報公開・個人情報保護審査会にいたす場合には、これは三人増員をいたしまして、十二人から、十五人の体制でやっていただきたいと考えております。
 それから事務局は、今約三十人の職員がおりまして、そのうち定員は十一人なんですが、各省の併任を含めまして、今約三十人の体制でございます。定員は、この情報公開・個人情報保護審査会になりました場合には、今、十三人を予定いたしておりますが、さらに、併任を含めまして、今後、体制の強化を検討していきたいと考えております。
 ちなみに、三人委員を増員する理由でございますが、現在も、情報公開につきまして、三人の体制で合議体、部会をつくっていただきまして、大変多数の不服申し立てに係る案件を調査審議していただいておりますので、それをワンチームふやすということになるわけでございます。
 その根拠でございますが、各般の問題等を総合的に勘案してこういたしておるわけでありますが、例えば、地方公共団体における情報公開条例と個人情報保護条例の両方を制定している、そういうところを見ますと、個人情報保護条例による不服申し立ての諮問件数は情報公開条例による不服申し立ての諮問件数のおおむね五分の一から四分の一程度でございますので、そのあたりも勘案して体制の強化を図っているところでございます。
後藤(斎)委員 以前、大臣にお答えになっていただいて、今局長から御答弁がありましたけれども、今のような体制でこの審査会の運営等が実際、情報公開と個人情報保護という二つの、まあ類似している部分はありますが、審査会の機能、役割としてはもちろん別個のものでありますし、以前のお話ですと、基本的には、大変な行政の肥大化につながっていく可能性があるという御指摘を第三者機関のところでは細田大臣も片山大臣も繰り返しお話をしてきたところであります。
 仮に三人の委員の増、職員でいえば二名増して、併任を含めるともう少し拡充はするんでしょうけれども、大臣、それで、情報公開法とこの個人情報保護、行政の部分にかかわる部分でしょうけれども、それで十分なんでしょうか。私は、この間もお尋ねをしましたように、組織としてやはり分けて考えていくべきではないかなということを再度お伺いをしたいと思います。
片山国務大臣 後藤委員、私どもが言っていますのは、野党案だと事前に全部そこに意見を聞くとか、いろいろなことになるわけでしょう。それで、今我々が考えている審査会は、これは事後的なもので、例えば開示決定だとかそのほかの決定について不服がある場合に、行政機関の長に言いますよね。そうしたら、行政機関の長は、それを受けて、自分で決められるんだけれども、行政不服審査法で。しかし、それは、この諮問機関、八条の諮問機関である審査会の意見を聞く、こういうことですからね。今までの実績から見て、情報公開の方が十二人でやってきたから、ワンチーム、三人委員を足せば十分ではなかろうか、こういうことなんですね。
 それから事務局の方は、各省から、弁当持ちと言うんですけれども、兼務で来ているのもおりますから三十人ぐらいおるんですが、これはどのくらい案件が出てくるか、これからですからね。もしそれで足りないようならまた考えないといかぬと思いますけれども。
 あくまでも事後的な、不服申し立ての場合に行政機関の長が決められるんだけれども、決める場合の意見を聞く、まさに八条の諮問機関ですから。こういう体制にしているわけでありまして、分けた方がいいではないかということもあるんだけれども、余り小さい審査会をつくるのもいかがかと思いますし、情報公開は広く開示せよと、個人情報保護の方は本人に開示しろと。まあ開示という点では同じですね。それから、開示しない、非開示ということで、これは公共の利益や第三者の利益その他を守るために開示しないわけですから、そこも似ているんではなかろうかと。こういうことで、くっつけたような審査会にしていただいておりますが、行革の観点も実はあるんですよね。ぜひそういうふうに御理解賜りたいと思います。
後藤(斎)委員 今の大臣のお答えが正しいかどうかというのは、これから実際にスタートしてみなければわからない点がたくさんあると思います。
 前回もお聞きをしましたが、政府案では第八条、野党案では第十条になっております「利用及び提供の制限」という中で、以前、大臣には、八条の二項「相当な理由のある」ということで、これも読み方によっては、行政裁量を広げ過ぎているんではないかなという意見。野党の方は、「できなければ当該事務の円滑な遂行に著しい支障が生じる」ということで、行政裁量権をある意味では非常に縮小しているということなんです。
 これも、読み方をどうするかというのは、これからいろいろなものを積み上げながらというお答えが返ってくる、個々のケースにということが返ってくるかもしれませんが、何も根拠がなくておつくりになっているということではないと思いますので、ここの判断基準を、まず大臣、相当な理由というのを再度、目的外利用が、提供が認められる相当な理由というのを、具体的な判断基準を少し、もし明示がありましたらしていただきながら御答弁をお願い申し上げます。
松田政府参考人 具体の例のことでございますので、私の方から御説明させていただきますが、現行法におきます例でございますけれども、この考え方は新しい法律においても同じでございます。
 個人情報の目的外利用・提供が認められる相当な理由とは、原則禁止の例外として認めるにふさわしい事由、だれでも納得できるような、そういう客観的な理由を考えておりまして、個別事案に応じて厳格に判断されるべきものでありますが、決して行政機関が恣意的に解釈していいというものではないと考えております。
 相当な理由があるかどうかは、情報の内容や、当該情報が目的外に利用、提供される目的などを勘案して個別に判断することになるわけでありますが、現行法におきまして相当な理由ということで目的外利用・提供している場合について、これは電算個人情報ファイルのベースでありますが、総務省として施行状況調査等で調査をいたしております。
 そこの例として申し上げますと、例えば、これは総務省の例でありますが、恩給を身近な郵便局で受け取ることができるようにするために、恩給受給者の情報を郵政公社に、今度は郵政公社になりますが、目的外提供をしているわけでございます。この場合にございますように、利用目的が恩給の支給目的に限られておりますし、提供される情報も恩給の支給に必要な範囲に限られております。客観的に見て、合理的な理由として相当な理由があるのではないか。例としてはこのようなものがあります。
後藤(斎)委員 野党提案者に御質問をあわせて、先ほども御指摘をした野党提案の第十条第二項の「できなければ当該事務の円滑な遂行に著しい支障が生じる」というのは、具体的にどのような基準があるのか、御答弁をお願いしたいと思います。
細野議員 野党案のこの部分でございますけれども、私どもとしては、この部分に関して、その保有個人情報の利用目的以外の目的のための利用が、事務の円滑な遂行上ほかの代替手段がないほどの強い必要性がある、そういう趣旨で設けております。
 どの場面でこれが出てくるかという話なんでございますけれども、野党案では、目的外利用の際に、情報公開・個人情報保護審査会の方に意見を聞かなければならないという形になります。その際に、先ほど申し上げました解釈に当たるかどうかという挙証責任が行政側に出てくるわけでございまして、その部分で発揮をされるというふうに考えております。
 ちなみに、審査会の中で、私どもは、目的外利用を取り扱う部会というようなものを、これは三名で設けておりますので、そこでこういう部分で判断をいただけるのではないかというふうに考えております。
 先ほど来、こういう規定を設けると行政の円滑な遂行に支障がある、盛んにそういう答弁をされておりますが、盛んに片山大臣が答えられているような、総務省の恩給と厚生労働省の援護年金の支給調整などの場合は、まさに円滑な遂行に著しい支障が生じる場合に該当する可能性があるわけでございまして、この部分できちっと担保していただければよろしいのではないかと考えております。
後藤(斎)委員 今回の法体系は、基本法の中に、基本理念、国、地方の責務、基本方針の策定ということで、民間部門を含めた義務規定を定めて、行政機関の保有する個人情報保護に関する法律は公的部門ということで、これは、既に先行しております地方公共団体の条例も含めた部門での構成になっております。
 今、仮に本法がスタートをする場合、地方公共団体がどういうふうな状況になっているのかというのが一つ大きな課題にもなってくると思っております。
 基本法の第五条で幾つか考え方は明示をしておりますが、ここでのものが当てはまるかどうか。特性に応じて個人情報の適正な取り扱いを確保するための必要な施策の策定及びこれを実施する責務を有するということが、多分、個人情報保護の条例の策定という部分にもつながってくると思いますが、現状、地方公共団体の条例の策定状況と、本法が制定になった場合、その条例の策定という未整備のところがあると思いますが、これからどういうふうな形で整備をされていくのか、あわせてお尋ねをしたいと思います。
若松副大臣 まず、地方公共団体の保有する個人情報につきましては、従来より、個人情報保護条例の制定などによりまして、各団体において各地域の実情に応じた適切な保護措置が講じられている、このような認識をしております。
 そして、平成十四年四月一日現在でございますが、地方公共団体におきましては、全団体の約三分の二に当たる二千百六十一団体、これは前年度に比べまして百七十九団体ふえておりまして、これらの団体で個人情報保護条例が制定されていると認識しております。また、条例ではなくて、規則または規程、こういった形で対策を講じている団体を加えますと二千六百三十三団体で、全団体数の約八〇%、このようになっておりまして、かなりの団体が何らかの形で個人情報保護対策を講じているというふうに認識しております。
 総務省といたしましては、従来より、個人の権利利益の保護の観点から、地方公共団体に対しまして、ぜひ個人情報保護条例の制定は講じてほしい、このように要請もしてまいりまして、今回の行政機関個人情報保護法案の内容、これを見ますと、今後も引き続き、地方公共団体に対しまして、個人情報保護体制の整備に万全を期すべく、再度要請をしてまいる決意でございます。
後藤(斎)委員 今の若松副大臣の最後の御答弁は、この基本法の第五条に、地方の区域の特性という言葉が入っておるんですが、取り扱いを確保するために必要な施策の策定、実施の責務ということで促進されていくというふうに考えてよろしいんでしょうか。
若松副大臣 御存じのように、地方分権という流れから地方自治体の独自性があるわけでありますが、今回のこの個人情報、審議の過程でやはりこれは重要であるということで、当然、地方公共団体の皆様方の今後のいわゆる自主的な、また積極的な御協力も必要となってまいりますので、総務省としても、そういった流れを適切につくって、築いてまいりたいと考えております。
後藤(斎)委員 それは、五条だけではなく、全体の法案の審議、法律の趣旨も含めてということですか。――わかりました。
 それで、ただ、これは、実際この法律が施行されても、現行でも自治体や国の機関だけがやっているのではなく、委託をしながら、電算処理も含めて外部委託をしながら取りまとめている例がたくさんございます。その主体は、国の機関であれば財団法人であるとか社団法人であるとか、そういうところがメーンながらやっております。
 その全体の状況を昨年総務省の方にお尋ねしたら、まだ各省でやっているから今状況はよくわからないのでということで、実際、取りまとめたものをつくったことがあるんですが、現在のベースでは、総務省は、委託状況、国全体の行政機関について把握をなさっておるんでしょうか。もし把握をしておるのであればその状況と、あわせて、これから委託先の従事者の方についても罰則規定がかかることになっておりますが、それと委託契約を締結する際の罰則規定の関係も含めて、どんな形でこれから委託をしていくのか、あわせてお尋ねをしたいと思います。
若松副大臣 御質問につきまして、行政機関における個人情報に関する電算処理業務の委託、これについて御説明させていただきますが、平成十四年八月現在、三百八十三の個人情報ファイルについて、いわゆるアウトソーシング、委託をしているところでございまして、十三年七月現在の二百七十七と比べますと、個人情報ファイルは増加しております。
 また、委託契約を締結されるに当たっての留意点についてのお尋ねでございますが、現行法によりまして、現在、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の安全・正確性確保の措置に関する指針、いわゆるガイドライン、これがございまして、必要な事項を定めております。
 具体的には、契約書に、いわゆる善良なる管理者の注意義務、善管注意義務、秘密保持義務、また安全確保の措置の義務、これらを明記しているとともに、その他の必要な事項を覚書等で取り交わすという措置も講じているところでございます。
 以上です。
後藤(斎)委員 この個人情報保護法案、特に行政機関の部分も含めてですが、何度か桝屋委員からもお話がありました、住基ネットの稼働に当たって、昨年、一昨年、大きな課題になりましたが、実は、日本で最大の個人情報ファイルを持っている者というのは地方自治情報センターであるということは多分確実だと思っております。
 この地方自治情報センターは、今、総務省の外郭財団法人であるとともに、今回の政府案でも罰則規定を追加、強化していただいた部分と同趣旨のものが既に住民基本台帳法を改正する際に対応していました。
 ただ、この権利義務というか、主体の関係がよく整理できないんですが、この地方自治情報センターは住民基本台帳法の中では指定情報機関という位置づけになっておりますが、それは、今度、個人情報取扱事業者という位置づけで、例えばこれからいろいろな罰則規定や義務規定があわせてかかっていくのか、それとも、あくまでも住民基本台帳法という法律の中で対応がされていくのか。要するに、住基法と基本法との関係を少し整理しておく必要が、やはり日本で最大の個人情報ファイルを有している者ですから、これは大臣にちょっとお尋ねをしたいと思います。
片山国務大臣 住基法の中でかなり体系的な整備はしているんですが、今回の個人情報保護法という基本法が通りますとこの適用も受けるんですよ。
 恐らくこういう関係になるでしょうね。個人情報保護法が基本法で、行政機関個人情報保護法はそれの特別法、さらに住民基本台帳法は行政機関が扱う住基に関する特別法になっていく。だから、基本法の個人情報保護法と、行政機関に係る部分は、行政機関個人情報保護法、それからさらに住民基本台帳法がかかる、こういうことでございまして、ある意味では二重三重になりまして、住基法が一番厳重に仕組みとしてはできていますから、まあ当たり前のことですけれども。そういう、法制的な適用関係はなると思います。
後藤(斎)委員 今の地方自治情報センターが、国の行政機関では直接な委託先ではないわけですね、地方自治体からの委託先であるということになると、ですから、基本法と住民基本台帳法で縛りはあっても、今度は条例がそれぞれ、先ほど副大臣がお答えをいただいたように、逆に言えば、まだ三分の一が未整備であると。要するに、委託者の方から見てどういうふうな関係かというのは、これは契約行為でやられている、その中での対応しかないということでよろしいんでしょうか。
片山国務大臣 だから、都道府県は大体ありますけれども、市町村でないところが約三割あるんですね、三割強。これには至急つくってくれと言っているんですよ。
 ただ、今言いましたように、そのうちの一割幾らは規則や基準で持っているんですね。だから、それを条例にして、内容もできるだけ行政機関個人情報保護法に合わせてくれ、こういうことを言っていまして、住基に係るものは住基の法令が出ていきますから、これは条例より上ですからね、上位規範ですから、そこは大丈夫なんですが、それぞれの市町村の住基に係る個人情報保護についてやはり条例が要るんですね。そういう意味では、条例を少なくともつくってもらって、市町村全般の個人情報を保護していく、こういうことは必要だと思います。住基だけかかわれば住基法が全部かぶりますから。
後藤(斎)委員 時間が過ぎていますが、最後にちょっと一点だけお尋ねをしたいと思います。
 先ほど片山大臣、審査会が情報公開と個人情報保護をやっても、できるだけそこの部分は収れんを、主務大臣がとりあえず処理をしながら、各自治体や窓口でやって、数は少なくなっているというものの、今、現在の情報公開法が施行されて二年たちますが、不服審査が手間取っているという部分がまだあるやに聞いておりますので、本当であればこの政府案というか今の法律にでも、速やかに諮問を行うという規定も、努力規定になるかもしれませんが、入れ込んで、その法目的を達するということもやはり必要だと思うんですが、その点について最後に御答弁をお願いいたします。
片山国務大臣 努力規定は訓示規定ですから拘束力はないんですけれども、気分としてはあった方がいいのかなということもありますが、なきゃ困るというものでもないのでね。それはやはり法律をつくる段階で十分議論をしてお決めいただいたんじゃないでしょうか。気持ちは、できるだけ早く処理する、そういうことでございます。
後藤(斎)委員 終わります。ありがとうございました。
村井委員長 続いて、中村哲治君。
中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治です。
 私は、本日、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案について質問を行います。
 まず、センシティブ情報の取り扱い方について質問をいたします。
 と申しますのは、野党案には、センシティブ情報の取り扱い方については厳しい取り扱いをしないといけないということが書いてありますけれども、政府案にはない。しかし、その立法事実については果たしてきちんと精査されてきたのか、また、この委員会で立法事実についても触れる必要があるのではないか、そういった意味で、立法事実のうちの一つである犯罪の経歴について、その取り扱われ方についてまず確認をさせていただきたい、そのように考えております。
 そこで、まず法務省の方にお伺いいたします。増田副大臣、よろしくお願いいたします。
 犯罪の経歴、いわゆる犯歴の情報というものは、各法律によって、その情報が照会されなくてはならないことになっています。例えば公職選挙法十一条、これは、被選挙権があるかどうか犯歴を調べないといけないことになっております。また、国家公務員法三十八条、地方公務員法十六条、これらは犯歴によってその欠格条項を定めている、そういう条文になっております。このような形で、各地方自治体やまた国家機関においては、当該申請などで各個人にどういう犯歴があるのかについて調べる必要が出てきます。
 このような犯歴がある者について資格制限がある法令というのは二百ぐらいあるんですけれども、こういった犯罪の経歴について今どのような照会の方法が行われているんでしょうか。
増田副大臣 お答えをいたします。
 検察庁におきまして、捜査、公判等の検察事務を適正に遂行するために犯歴情報を保存しております。他方、市区町村における選挙人名簿の調製や身分証明事務に資するため、検察庁から犯歴情報を当該個人の本籍地の市区町村長に提供いたしております。
中村(哲)委員 つまり、検察庁が把握している、そして、当該個人の本籍地のある地方自治体にもその情報は流している、そういったことになっておるということで把握できるんですけれども、それでは、その根拠法は何でしょうか。
増田副大臣 検察庁法第三十二条に基づき定められる法務大臣訓令である犯歴事務規程第三条第四項に基づきまして、犯歴情報を提供いたしております。
中村(哲)委員 これは私は非常に問題だと思っているんですね。与党の皆さんも、今副大臣がおっしゃったことを、ぱっと条文だけおっしゃったので、どういうことかわからないというふうにお感じになっていると思うので、私が少し読ませていただきたいと思います。
 検察庁法の三十二条にはこのように書かれております。「検察庁の事務章程は、法務大臣が、これを定める。」これだけの規定です。検察庁の事務章程にかかわるものだから、法務大臣がこの法律によって、今増田副大臣がおっしゃった犯歴事務規程というものを設けている。法務大臣が一般的に授権されている権限の中で定められているものにすぎないんですよ。
 私はこれは非常に大きな問題だと思います。確かに、三条四項には、その情報は市町村に伝えるということが書いてありますけれども、果たして本当にそれでいいのかどうか。
 増田副大臣、やはり身分の照会という行政事務、特に犯歴というようないわゆるセンシティブ情報を扱うようなものというのは、本来、一元的に国の事務として管理している検察庁こそが行うべき事務ではないかと私は思います。
 国が把握して、まさに国が一律的に定める法律によって欠格事由などにしているものですから、その情報というものは国法により全国一律に取り扱われなければならないような規範を示す必要があるのではないでしょうか。今根拠となっているものは、検察庁法から委任された法務省訓令と、またそれは各地方自治体の方で条例という形になっているでしょうけれども、そういった訓令と条例という形だけで本当にいいんでしょうか。
増田副大臣 委員御案内のとおりでございますが、今委員がおっしゃいましたように、従前は、地方自治法第二条第三項第十六号において、身分証明事務は地方公共団体の固有事務の一例として規定をされておりました。その規定されていたのが、平成十二年の地方自治法の改正後は、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものはすべて自治事務、このようになり、現在においても身分証明事務は自治事務として市町村の事務とされていることは、委員の先ほどの御発言で既に御承知のことかと思います。
 そこで、それらを土台にしながらお答えを申し上げますが、まず、検察庁において犯歴情報を保有している目的は、一般に、裁判の適正を確保し、捜査、公判等の検察事務を適正に遂行するためであります。他方また、身分証明事務は地方自治体の固有の自治事務であることから、犯歴情報の取り扱いにつきましては、必ずしも法律の規定がなければならないということにはならないものと考えます。
 また、犯歴情報の取り扱いにつきましては、各自治体の条例によるほか、委員の御発言のとおりでありますが、地方公務員法に守秘義務が定められ、これに違反した場合の罰則等が規定されていることなどにより慎重な対応が行われている、このように承知をいたしております。
 御発言から考えまして、犯歴情報の行政機関における取り扱いについては、直接個人の権利義務を定めるものではないのでありますが、法律がなければならないとは今は考えておりませんけれども、なお、これについて法律に規定する必要があるか否かについては、その法律の対象とすべき情報の範囲や重要性、取り扱いの内容等を慎重に検討することが必要であると考えております。
中村(哲)委員 お話を伺ったのは法務省として出す側の立場からの意見だと思うんですけれども、それでは総務大臣、今の増田副大臣の御答弁をお聞きになっていて、果たして本当に身分の照会というのは各自治体の固有の自治事務と言えるのかどうか、大臣がそのように考えているのか、またそれはなぜか、それについてお聞かせいただきたいと思います。
片山国務大臣 平成十二年の四月から地方分権一括推進法ができまして、それまであった機関委任事務だとか団体委任事務だとか、いろいろな考えがあったんですよね、行政事務だとか固有事務だとか。それが全部そこで変わったんですね。機関委任事務というのはなくなったんですよ。
 機関委任事務というのは、もう御承知のように、都道府県の知事さんや市町村長さんを国の出先機関と擬制して、フィクションでつくって、国の事務を執行機関にやらせるんですよ。だから、その限りでは、知事さんが、例えば総務大臣の出先機関、市町村長さんは知事さんの出先機関。これは、一つのそういう仮の、フィクションをつくって、そこで総務大臣の仕事をやらせるんですよ。だから、本来、議会は関与できないんですね。これを機関委任事務と言ったんです。これはたくさんあったんですね。これはちょっと、こういう地方分権ではいかがかなという議論でやめちゃったんです。
 そこでやめて、国が地方にやってもらう場合には、法律に根拠を持って受委託、委託する、これが法定受託事務なんですよ。それを法律できちっと限定して決めたものですから、残りは全部自治事務になっちゃったんですよ。自治事務的でないものも、分類は自治事務になったんですよ。
 この犯罪人名簿、犯歴の、これはなかなか難しい事務なんですね。戦前はきちっと整理できていたと思うんですよ、法的根拠もあって。戦後はつなぎでやってきたものですから、そこでその間に地方分権一括推進法なんかできているものだから、受ける方の法的な根拠がなくなっちゃったんですよね。恐らく、出す方の法的根拠もそんなにはっきりしていないと私は思うんですよ。しかし、これは必要な事務なんですね。犯歴をちゃんと本籍地の市町村長が持って、例えば選挙の立候補の欠格条項に該当するとか公務員になれないとか、こういうことのために要るんですよ。
 だから、これは検察庁から通知をしてもらわなければならないと私は思いますけれども、しかし、今のところ法的な根拠は定かでない。これは考えないといかぬと私個人は思っておりますが、これは長い経緯がありますから。扱いとしては慎重にやっています、いずれにしろ、出す方も受け取る方も。当たり前ですよね、犯歴情報ですから。慎重にやっておりますが、何か要るのかなということは思っておりまして、これは十分検討してまいりたい。
 大変いいところを御指摘いただきましたので、その限りでは大変敬意を表します。
中村(哲)委員 個人的な意見ということで、何らかのものが必要だと大臣はお認めになっていますよね。本当にこれは法律で決めないといけないはずなんだと私は思うんですよ。
 というのは、何で戦前からずっと今日までこのような、内務省令という形だったのか、行政内部の形で処理されてきたのか、それが許されてきたのかというと、もともと戦前には、行政は必ず間違わない、国賠法もありませんでしたし。それはなぜかというと、行政というのは間違わないんだ、その中で情報というものは、何も中で配慮しなくても、融通し合ってもいい、そういった、ある種権威的な情報の流れ方というのが許されてきたということだったと思うんです。
 なぜ今日において行政機関個人情報保護法というものが必要になってきたのか。それは、情報というものが社会的に非常に重要な価値を持ってきた、そして、その取り扱いの方法については、やはり法規範としてかなり上位規範である、憲法まではいかないけれども法律できちんと決めましょうね、そういったのが時代の要請として今日あったからだと言えると思うんです。
 そうすると、今大臣が本当におっしゃったように、やはり今の状況というのは問題があるんですよ。出す方、先ほど法務副大臣がおっしゃったように、検察庁法から委任された法務大臣による訓令の形しかないわけですよね。だから、これははっきりした法規範の形とは、訓令という形だから、明文上は書かれておりますけれども、これが権利義務を左右する法令のものじゃなくていいのかどうかということを考えたら、今、片山大臣がおっしゃったように、出す方もはっきりしていない、そういうふうなことになるんだと思うんです。
 片山大臣が今おっしゃったように、受ける方もはっきりしていないということになるとすれば、これはやはり、少なくとも、法律で難しかったとしても、政令ぐらいでは授権している必要があるんじゃないでしょうか。片山大臣、いかがでしょうか。
片山国務大臣 これは納得ずくで出して、納得ずくで受けているんですよ。しかも、それは大変意味があることなんです。だから、あとは、根拠というのかな、法形式なんですね。私は個人的な意見を言えば、政令でしょうね、政令できちっと整える、そういうことが必要だと思いますし、扱いは、これは犯歴ですから慎重にやる、こういうことは必要ですね。これも一種の行政機関の個人情報の一つになりますからね。
 だから、そういうことでの、今、中村委員言われたような、出す方の根拠と受け取る方の根拠をどういう形がいいのか、これもいろいろな議論があると思いますので、検討を要すべき課題だ、こう思っております。
中村(哲)委員 政令とおっしゃいましたけれども、特にどういう政令をつくるのか、どういう観点で政令に授権する法律をつくるのかというところになると思うんですよ。
 片山大臣、今、政令とおっしゃいましたけれども、現時点での法律をもとに授権される政令になると思うんですけれども、どういう法律から授権された政令になるというふうに考えているんでしょうか。
片山国務大臣 法務省関係の法律、私よく知らないんですけれども、ぎりぎり言えば、設置法に基づくあれでもいいんですね。その辺はいろいろなあれが出ますので検討させていただきたい。はっきりした方がいいことはいい、私はこういうふうに思っております。
 もう事実上ずっとやってきて支障はないんですよ。支障はないんですけれども、中村委員のような御疑念を持たれるということはあるものですから、その根拠ははっきりしておく方がいいんではないかと思っています。
中村(哲)委員 片山大臣おっしゃること、よくわかるんですよ。出す方も納得している、受ける方も納得している、だから今支障がない。確かにそのとおりなんです。
 だけれども、情報それ自体に価値を持っているんじゃないかという時代に今来ているわけですよ。そうすると、この情報は、受ける方も出す方も自分の情報ではないですからね、ある意味で。だから、出す方も受ける方も納得ずくなんですよ。だけれども、それを扱われている人が納得しているのかどうかというところが今問題なんじゃないですか。だからこそ慎重な取り扱い、犯歴情報だからしているんですよね。
 犯歴情報だから慎重な取り扱いをしているというふうに片山大臣がおっしゃったということは、やはりそれは、犯歴情報というものが、どういうたぐいのもの、どういう性質のものであるか、暗黙の合意があるからではないですか。だからこそ、出す方も受ける方も納得ずくだけれども、今の取り扱いのやり方は少し問題があるなということを増田副大臣も片山大臣も内心では思っていらっしゃるんではないか。だからこそ片山大臣は、やはり政令ではつくらないといけないよね、そのようなことを御答弁なさったのではないですか。
 そうすると、やはり今の取り扱いのやり方は何らか変えないといけない。つまり、この犯歴の問題で何が明らかになってきたか。それは、時代が変わって、情報が情報として大きな価値を持ってきている、そしてその中にセンシティブ情報というものが、やはり行政の皆さんも暗黙の中で、自分が市民としたらこれは大切に扱ってもらいたいよねという感覚でこのセンシティブ情報というのを見始めているからということと言えるんではないでしょうか。
 細田担当大臣、そういった意味で、やはり犯歴の今の取り扱いのあり方を見ても、私は、これは細田担当大臣と意見は違うかもしれない、しかし、今、犯歴情報を初めとしてセンシティブ情報というものが、この日本国の法規範の中で必ずしもきちんと権利義務が明確化されて適切に取り扱われるとは言えないのではないか。そういった意味では、基本法としてもセンシティブ情報について規定している野党法案の方が現段階の法制としてはいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
細田国務大臣 個人にまつわる情報は、個人にとって極めてセンシティブな情報が多いと思っております。
 私は、ちなみに、これは変だなと思って、クレジットカード会社の申込書というのを取り寄せました。デパートのカード、何々デパートカード申込書を取り寄せました。そこには、あなたはどんな会社に何年間、管理職の有無とか、勤めて、収入が幾らで、あなたは自宅に住んでいるか、アパートに住んでいるか、借家に住んでいるか、何年住んでいるか、家族構成がどうで、学歴がどうでと、みんな書かせますね。それを前に申し上げたら、いや、そんなことあなた関係ないよとおっしゃいました、某党の皆さんは。しかし、個人にとって物すごく関心のある、しかも守りたいセンシティブです。
 それから、保険会社の契約書を取り寄せました。あなたは今妊娠中ですかとか、過去にそういう、産婦人科でどういうことがありましたか、病院にかかったときは何回入院していますか、何カ月、いつですか、あなたは健康情報はどういう分析をしていますか、糖尿病の値は、血糖値の値はどうですか、高血圧ですか、物すごいんですよ。
 こういう情報は、私企業間での私契約とはいえ、これがもし、まあ生命保険に入るんだからしようがないか、あるいはデパート、クレジットカードの情報を提供するんだからしようがないかと思っても、これが蓄積されて出た場合ははるかに大きなセンシティブ情報になりますね。
 本当は、財産、戸籍とか、もちろん土地の所有権とかマンションや家屋の所有権でも、そこにかかっている債権者の根抵当権とか担保、優先順位、こういったものも物すごく大事ですね。所得でも、去年の所得は、あなた高額所得者で何億円ですねとか、高額納税者ですねとか、もうありとあらゆるものが転がっています。
 我が国会議員だって、ちょっと閣僚になれば、何でも届け出ろ、国会議員でも全部届け出ろ。これは公益という別の意味で、届け出ることが正しいと思って、非常に個人個人で見ればセンシティブな情報が例外的に認められる。さっきの登記簿や何かは本人にとってはすごく、大変センシティブだけれども、公益によって、これは公示することが社会的な利益に合致するから出す。
 あるいは、個別の保険会社との関係でいえば、やはり正しく申告してもらって、生命保険料が正しく払われるかどうか、ほかの生命保険を掛けた人に害を及ぼさないか、まあいろいろな大事件もありましたけれども。
 こういったことで、さまざまな個人情報が扱われている中で、本当に、例えば犯歴とか出生地とかなんとかという例示が最優先のものであるのかというと、私はちょっといろいろ、もちろんセンシティブであることは否定しないんですよ。だけれども、やはり例示をこれで出して、これが最も大事であるというよりは、あらゆる情報は同じように取り扱って同じように処理をするということを基本にするということの方が大事なのではないかというふうに考えております。
 もちろん反論はいろいろあると思います。では、そういう場合は個別法で規制したらいいじゃないかというようなこともあると思いますけれども、私は、センシティブというものがしっかりとした例示をできる規定であるかどうかという点についてはなお検討を要するのではないかなというふうにも思っておりますので、そのことを申し上げたいと思います。
中村(哲)委員 いや、それだったら、犯歴情報について今の取り扱われ方というのはどのようにお考えでしょうか。(細田国務大臣「判例」と呼ぶ)犯歴情報。今ずっと議論しておりました犯歴情報について片山大臣は、何か新しいルールをつくらないといけないんじゃないかというような趣旨のお話がありましたけれども、それは細田大臣も同じようにお考えだということでよろしいですね。
細田国務大臣 ちょっと犯歴の問題については、もちろん個人にとって情報として非常にセンシティブであることはわかります。それで、先ほど来総務大臣が御答弁申し上げておりますので、私はその同じ考えを有しております。
中村(哲)委員 一つずつ例示することが適切でないから、一つの例として犯歴情報を挙げたわけです。だから、それについては、私は、一個一個こういうものが出てきたら正していくんですよという答弁をしていただくのが一番よかったと思うんですよね。
 時間がないですから、開示請求の方に行かせていただきたいと思います。
 本法案においては、情報公開法と同じように、保有個人情報の開示義務等が第十四条及び第十五条で規定されています。
 平成十三年の三月二十七日の最高裁判例で、情報公開事案を対象とする訴訟においてでございますけれども、独立した一体的な情報という概念もあらわれてきまして、この場合、一部を黒塗りにして情報開示を行うという公開の権利を否定するというふうに評価される考え方も出てきておりますので、ここに関しては確認の意味を含めまして質問をさせていただきたいと思います。
 総務大臣にお聞きいたします。
 本法案においても、請求された情報のうち全部が開示されなかったとしても、本人に対しては極力部分的な開示をするということが、そういう運営が個人情報保護法制のあり方として正しいと私は思いますが、いかがでしょうか。大事な問題なので大臣にお願いします。
若松副大臣 これもこの法律のかなり重要な部分でありますけれども、この保護法案によりますと、行政機関の長に対しまして開示請求があった場合には、原則として開示する、あくまでも、情報はだれのものかという観点からしますと、やはり原則開示の義務を課しているわけでございます。
 そこで、第三者または公共の利益を保護するために必要があるため開示できない、こういった場合も当然あろうかと思いますので、そういうこともありますが、本人に対し極力開示することは当然でございまして、その上で部分開示の規定も設けている、そういった構成になっていることを御理解いただきたいと思います。
中村(哲)委員 片山大臣、改めてよろしくお願いします。
片山国務大臣 原則として開示ですよね。ただ、いろいろな理由があって、第三者または公共の利益を守るために開示できないこともあります。しかし、それは部分開示で、分けて開示できるんなら開示した方がいいんですよ。そういうことを今副大臣が言われました。同じ考えです。
中村(哲)委員 第十四条二号、第十五条二項というものは、開示請求者以外の個人に関する情報について、第十四条の三号から七号と定め方が異なるなど、一見すると非常にわかりにくい規定の仕方をしています。これは副大臣で結構ですから、特に十五条二項で十五条一項と違う規定の仕方をしているのはなぜでしょうか。あわせて説明を伺います。
若松副大臣 この不開示情報に関する規定につきまして、開示請求者本人の個人情報についての規定を除きまして、基本的には情報公開法に倣ったものでございまして、開示請求者以外の第三者に関する情報につきましては、第三者の権利利益の保護を図るために、氏名等によりまして第三者を識別することができる情報を原則として不開示情報としております。
 第三者の氏名を消せば開示しても第三者の権利利益が害されるおそれがない場合も考えられるということから、部分開示のいわゆる特例規定、第十五条の第二項、これを設けているところでございます。
中村(哲)委員 それを普通の国民が聞いてわかるかどうかという話なんです。
 時間が参りましたので、これはもう少し深めて後日議論をさせていただきたいと思いますけれども、なぜこのような規定があるのか、それは、個人の情報、他人の個人の情報の場合は一括して扱うのかどうか、そして、その基準は何なのか、そういうことを答えてもらわないといけないわけです。だから、非常に問題がある答弁だと思いますので、また後日やらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
村井委員長 続いて、春名直章君。
春名委員 日本共産党の春名直章でございます。
 きょうは一定の時間をいただきましたので、じっくり幾つかの問題について伺いたいと思いますが、同時に、政府への質問とともに野党案についても、両方お聞きするということで進めていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 まず、今も議論になりましたが、センシティブ情報の問題について伺いたいと思います。
 細田大臣に、まず最初に、一般的な原則の問題についてお考えをお聞かせいただきたいと思うんです。
 民間も政府も、国民のプライバシー情報を収集したり取得する、そういう取り扱いをする場合に、基本的には、やはりその本人の利益を達成するために、最小限の限度といいますか、必要不可欠な限度でそれは許されるものである。プライバシー情報を扱う場合は、そういう点が原則だと私は認識しているんですけれども、その点は共通認識だと思いますが、いかがでしょうか。
    〔委員長退席、蓮実委員長代理着席〕
細田国務大臣 基本的にそうだと思っております。
春名委員 その上で、今の認識の上に立ってですけれども、公権力が個人のプライバシーに介入しないということは、当委員会でも議論されてきているように、憲法上の原則だと思います。まして、個人のセンシティブな情報については、行政機関であっても、それから民間の事業者であっても、原則は、当然、収集禁止されるべきだというふうに私は認識します。
 しかし、議論になっておりますように、政府案にはこういう明確な規定がないのが、やはり私自身も不思議でしようがないわけですね。これは、こういう大原則からいいますと、きちっと設ける必要があるんじゃないかというのが、まず質問であります。
細田国務大臣 個人がそれぞれセンシティブな情報を持っているということは一〇〇%認めます。
 問題は、その定義、範囲、先ほどの御質問の中でもちょっとお答えしましたように、お一人お一人のお気持ちから見て考えていただきますと、本当に大切なセンシティブな情報というのは、いろいろな類型があるとは思うんですね。
 その中で、特にこれだけは絶対にこうしてはいけないという情報というのが列記された方がいいのか、それとも、政府案のように、これは全体的に保護すべきであるという観点から律する原理原則、手段を決めた方がいいのかというのは、若干考え方の相違ではありますが、できればあらゆるケースに妥当するように、特に民間の場合にはそういう場合が多いわけでございますから、できるだけ共通の基準によって、どの場合にも律することができるようにという方がいいのではないかということで案ができておるわけでございます。
春名委員 そこで、野党案の提出者に伺いたいと思うんですね。今の御答弁でも、さまざまな対応があるので一概になかなか類型化して明定するのは難しいと、大臣はそういう御認識を持っていらっしゃるということなんだけれども、野党案は、国内の取り組みの現状も踏まえて類型化をして提出していると私は認識しているんですが、この国内の取り組みの現状などについて、どうお考えでしょうか。
    〔蓮実委員長代理退席、委員長着席〕
吉井議員 私の承知いたしておりますところでは、細田大臣も通産OBで通産政務次官も務められておりますのでよく御存じの、旧通産省が九七年に出した、民間部門における電子計算機処理に係る個人情報の保護に関するガイドライン、九七年三月四日の通産告示第九十八号ですが、ここでは、「人種及び民族」「門地及び本籍地」「信教(宗教、思想及び信条)、政治的見解及び労働組合への加盟」「保健医療及び性生活」「の内容を含む個人情報については、これを収集し、利用し又は提供してはならない。」と第七条で明確にしています。
 また、片山総務大臣もよく御存じのところなんですが、現在の総務省、旧郵政省におきましても、九八年に、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン、九八年十二月二日の郵政省告示第五百七十号を出しておりますが、その中では、「思想、信条及び宗教に関する事項。」「人種、門地、身体・精神障害、犯罪歴、病歴その他社会的差別の原因となるおそれのある事項。」について原則として「収集してはならない。」と第三条四項で明記をしております。
 さきに政府答弁の中で、これまで、何がセンシティブ情報であるかをあらかじめ類型的に定義することは極めて困難であるということが繰り返し言われておりますし、また、特定の性質のみに着目して一定の類型のもののみを対象に特別の規律を設けることは適切でないとのことですが、実際には、政府においても、センシティブ情報について類型化し、規定を設けているのが実情である。私たちは、そのことも踏まえて考えておるものであります。
 なお、野党案では、個人情報保護の重要性、特に今日のプライバシーの権利の尊重、基本的人権にかかわるセンシティブ情報の扱いについて、第三条二項の「基本理念」の中に規定し、「特に慎重な取扱いを要する個人情報」として第十五条を設けたものであります。
春名委員 細田大臣にもう一度お願いしたいんですが、今、九七年のガイドラインと九八年の電気通信事業のガイドライン、二つが、政府の省庁の中でも既にそういう類型を明記してセンシティブ情報として扱ってやっているという事態があるわけですから、政府でもそういう切り分けがきちっとできているにもかかわらず、いろいろ類型があるので難しいというふうにどうして今おっしゃるのかが非常に不思議でならないわけですね。その点、お答えいただきたいんですが。
細田国務大臣 本来、そういう例示をすることが絶対的に間違いであるとか、そういうことは申しておりません。
 というのは、ガイドラインというのは、やはりそれぞれの分野の特性に応じまして自主的な遵守を促すためのものでございますので、罰則のような担保がなく、あらゆる分野を包括的にカバーする必要最小限の規律を定めた個人情報保護法案を、こうして案を作成する過程では、個々の、これだけはという例示をすることが適当かどうかという議論もした上で、むしろ一般的規定にしたわけでございます。
 したがって、ポジリストとネガリストのような格好がありまして、十五条は逆に一項でポジリストを書いた、しかし二項でそれを除外するネガリストを書いた、じゃ、ポジとネガの境界線は何だという問題はやはり生ずるわけですから、逆に一般原則を書いて、当然、ここに挙げてあるような事項は、普通、対象になるわけでございます。
 そして、例えば「医療に関する事項」というのが、本当に病院、お医者さんのところへ出かけていった、実績の、一種のカルテ、診断記録等のことであるのか、もっと幅広いものであるのかということもありますし、「福祉に係る給付」についても、まだ福祉に関連したさまざまな事項もあるはずでございますので、そういった概念が、これは私が勝手に読んで感じたことを言うわけでございますから、もちろん十分お詰めになってやっておられるはずですし、政府としては、立法府で野党の御協議の上出された法案を、何かこれはおかしい、おかしいというようなことを言うつもりもありませんので、それはいろいろなこの場の御議論の過程でよりよきものをつくりたいという精神で申し上げているのでございますので、念のため申します。
春名委員 大臣、野党案への批判については、私の質問ではありませんので、それは余り触れないようにしてください。それはそれでわきまえてやっておりますので。
 それで、先ほど言った、旧通産省が出した九七年の、民間部門における電子計算機処理に係る個人情報保護ガイドラインの解説を読みますと、それが、国際的な個人情報保護への動向を踏まえて検討がされた結果このガイドラインを示した、こういうふうになっているわけですね。
 野党の提出者にお聞きしたいんですが、この国際的な個人情報保護の動向をどのように把握して日本での法制化に生かそうとされているのか、この点、お聞かせいただきたい。
吉井議員 私たちは、内外の経験、教訓、実践というものを踏まえて考えてきたものでありますが、リストを挙げて、収集または利用、提供してはならないとか、収集してはならないというこの考え方というのは、これまでの政府のガイドライン等を大変参考にし、研究もさせていただきました。
 なお、従来よりガイドライン等による実践の積み上げの中から法律へという方向がかなり多くあったというふうに見ているものであります。
 今お話あった国際的な動向ですが、一九九五年に採択されたEU指令では、「構成国は、人種又は民族、政治的見解、宗教的又は政治的信条、労働組合への加入を明らかにする個人データの処理、及び健康又は性生活に関するデータの処理を禁止しなければならない。」と第八条第一項で規定しております。
 EUでは、フランスの情報処理・データと自由に関する法律は、センシティブ情報の収集禁止を定めております。これは三十一条にあります。イギリスのデータ保護法も、センシティブ情報を定義しています。これは二条ですが。それから、ポルトガルの自動処理される個人データの保護に関する法律でも、センシティブ情報のデータ処理を禁止しているのがこの国の法律の第七条一項にあります。さらに、スウェーデンの個人データ保護法は、センシティブ情報を定義し、データ処理も原則禁止しております。フィンランドも、個人データファイル法によって、センシティブ情報について、明示的な同意に基づかなければ収集できないと規定しています。デンマークでも、センシティブ情報は、情報主体の同意がなければ登録できないということにされています。
 また、アメリカでも、プライバシー法の中で、憲法修正第一条、宗教、言論、出版、集会、請願の自由により保障された個人の権利行使の態様に関する記録を保持してはならないと規定しております。
 このように世界の多くの国では、それぞれこの扱い方に、文言等に違いがあるにしても、センシティブ情報に対して、法律で規定され、慎重な取り扱いを求められている、こういうことを私たちは踏まえて法案をまとめたものであります。
春名委員 細田大臣、もう一度お聞きしたいんですが、こういうEU指令、そこでも明示されている。そして、それを踏まえて日本の省庁でも、旧郵政省と通産省は、私見たわけですけれども、ガイドラインとして、その類型化をし、そして、それに基づいて運用していくという努力もされてきた。確かに、類型というふうに言いますと、それではその類型以外はという話になったりしますけれども、それは、国と国の区別であれば、かなり価値観が違うので、そういうものはあるかと思うんですよ。
 しかし、日本という一つの国で、そして政府自身もこういう類型化を既にしている。しかも、冒頭に私お聞きしたように、個人の利益を守るということで、必要不可欠のものに限ってプライバシー情報というのは使う、収集するというのが原則でしょう。
 そういう幾つかの角度から見ても、私は、今度の基本法の中に、このようなセンシティブ情報ということを、野党案が示しているような類型を示して、そしてきちっと守っていくということは可能だと思うし、そういう到達点はできると思うんですね。それ、もう一度、どうでしょうか。
細田国務大臣 頭からそういうことは絶対いけないということは申しておりません。一つの考え方です。
 ただ、やはりEU指令の中の例示を見ますと、「人種又は民族」、これは入っていますね。「政治的見解、宗教的又は政治的信条」、入っていますが、「労働組合への加入を明らかにする個人データの処理」というのは入っていない。それから、「健康」とありますね。「健康」というのと「医療」あるいは「福祉」というのはどういう関係にあるか。「性生活」というのは入っていない。
 というように、やはりそれぞれによって実態の差には着目しておられるのかなと思いますのと同時に、最後に、この「法令上の義務の履行のために必要な場合その他これに準ずる正当な理由がある場合」は「適用しない。」ということをどうしてもやはり書かざるを得ないわけでございますから、結果的には、なかなかこれ、どういう差があるかはよく考えていること。
 それから、個別情報ごとに突き合わせてみないとよくわからないと思いますが、それじゃ逆に、政府のように一般論として書いた場合に、個別例示の、この第十五条のような具体事例が書いていないからそれがより甘くなるのかというと、必ずしもそうではない。やはり一般の国民から見たセンシティブな感覚がいろいろな請求権として出てくるわけでございますから、結果とするところがどのように違うのかはちょっとわからないところがあるという意味で、ちょっと遠慮がちに申しておりますが、そういうことでございます。
春名委員 もう一つ、違う角度からお聞きしますね。
 今度は片山大臣にお聞きしたいんですが、個人情報保護を条例で定めている自治体で、センシティブ情報を明記し、既に運用している自治体が六割に及んでおります。これだけの自治体が実際に運用をしているわけですので、私の疑問は、国が例示をし運用することができないということは、どうしても理解ができないわけなんです。自治体でもそういう取り組みをやっている。
 この点については、総務大臣はどういう御認識でしょうか。
片山国務大臣 今委員が言われますように、地方団体の条例の中でセンシティブ情報の収集規制をやっている団体は約六割、確かにありますね。必ずしも私、実態は詳しくないんだけれども、地方団体の条例というのは特区みたいなものですから、自分のところだけですから、いろいろなことを実験的にみんなで相談してやるというのは結構なんですよ。
 ただ、今細田大臣も言われましたけれども、適用除外をつくったり、法令に基づく場合は別だとか、いろいろなものを恐らく地方団体の場合もかけていると思いますので、実態は、センシティブ情報を別扱いにしたって、実際の運用はかなり同じようなことだろう、私はこう思うんですよ。
 今、国の考え方は、何度も細田さんが言っていますように、とにかく全部同じ、すべての情報がセンシティブなんだから、だから、できるだけ目的を明らかにして、その目的の範囲でやって、目的外利用や提供は必要最小限度の、ちゃんと理由があるものだけに限る、こういうことなんですよ。それでも困るというものについては、別の法律をつくるしかないんですよ。それが、例えば金融であったり医療関係であったり何かであるということですから。
 富士山に登るのはいろいろな登り方があるけれども、野党案のような登り方もあるし、政府案のような登り方もあると私は理解しております。
春名委員 自治体で特区みたいなものだと言うんですが、六〇%がそういうふうにしているということですから、これは特区とは言えませんね。それから、運用は同じようなものだろうというふうに言われるのであれば、その運用の状況をみずからお調べになって、現状がどうなっているのかを私たちに伝えていただきたいと思います。
 野党提出者にお聞きしたいと思います。
 野党案を検討する際に、当然、既に先行的にやっている自治体での条例の経験も取り入れていると考えます。自治体レベルのこの扱いはどうなっているのか。
 関連して、政府が、野党案のように、行政機関の長が、医療情報、福祉に係る給付の情報については、原則として情報公開・個人情報保護審査会の意見を聞くとなっていることについて、そういうことをやると負担が大きいということになるんだということも言っておられます。実際に運用しているところでは、こういう点もどうなっているのか、そのあたりを野党提出者にお聞きしたいと思います。
吉井議員 地方自治体それぞれの取り組みというものは、地方自治の本旨に基づいて取り組んでおられるところでありまして、その取り組みというものは、当然のことながら尊重するべきものと考えております。
 私は大阪なものですから、大阪府も個人情報保護条例をつくっておりますが、実施機関はこういうセンシティブな情報を収集してはならないということで、その中に「思想、信仰、信条その他の心身に関する基本的な個人情報」「社会的差別の原因となるおそれのある個人情報」という形で書いております。
 地方自治体の個人情報保護条例の中で、センシティブ情報の収集禁止に当たる、データの種類による収集規制を設けているという自治体は、お話がありましたように、近年急増をしております。
 総務省の方が出している「個人情報に関する条例の制定状況」というのを読ませていただいておりますが、センシティブ情報について収集規制を設けていた自治体は、一九九〇年には六十七自治体でしたが、二〇〇一年には千二百五十二自治体に達しておりまして、最近のデータはもっとふえておりますが、二〇〇一年まででも、実に約二十倍に急増しています。このことは、地方自治体においてセンシティブ情報の収集規制の必要性が近年ますます高まっているということを示していると考えております。
 そして、今お話しの業務負担の問題でありますが、地方自治体の現実の運営を見てみますと、センシティブ情報として収集を禁止すべきかどうかについて情報公開・個人情報審議会の意見を聞く仕組みがつくられておりまして、ある自治体の審議会は、大学の名誉教授、商工会議所理事、ジャーナリスト、弁護士など七名で構成されておりまして、大体年に六、七回会合を持って議論をしておりますが、審議会に意見が求められるセンシティブ情報は、過去に問題になったことも多くて、ある程度類型化されているのが実情であります。
 したがって、持ち込まれる事例には過去の判断が当てはまるケースが数多くあり、その収集を認めるか否かについて審議会が新たに議論を尽くさなければならないというケースは、それほど多くはありません。
 一部にこの仕組みが業務の支障になっているという声がありましたので、幾つかの都道府県について改めてこの点も聞きました。担当者はそういうことはないとおっしゃっていたことを紹介しておきたいと思います。
 確かに、判断が微妙な新しい問題については議論を尽くす必要があります。しかし、センシティブ情報は、個人の尊厳やプライバシーの核心部にかかわる大事な問題ですから、むしろ、議論を尽くすことが必要であり、効率性などを理由に省略すべきものではないと考えるものであります。野党案でも、地方の進んだ実践の経験も踏まえ、同様の仕組みを入れさせていただいているものであります。
 なお、基本的人権にかかわるこのセンシティブな情報の取り扱いをきちんとするということ、原則として収集を禁止することは、憲法の要請、内外の実践経験を踏まえて、野党案の規定は極めて重要なものとして法文化したものでございます。
 以上です。
春名委員 今センシティブ情報を最初に議論させていただきましたが、やはり世界の流れ、それからそれを受けた政府自身の取り組み、それから自治体レベルの取り組みを見ても、こういう問題にきちっと例示も含めて対応していくということが二十一世紀の流れだというふうに私は確信を持っております。そういう点、ぜひ政府も参考にしていただきたいということを改めて申し上げておきたいと思います。
 次に、野党提出者にお聞きしたいと思います。
 民間を対象にした個人情報保護法について、特定分野ごとの個別法とか分野を指定するポジティブリスト方式にする、そうすべきじゃなかったかという声が国民の間からも出されております。質疑の中でも、与党の質問者の方から、野党の考え方も、包括法である野党案に今後個別の措置を上乗せしていくという政府案と同じ考え方があると思うという御意見も出ております。与党案との違いも含めて、この点、御説明をいただけたらと思います。
山内(功)議員 市民団体の皆さんの中に、包括法にした理由とか、個別法にすべきではなかったかというような御意見があることは十分承知しておりまして、懸念される心情については、率直に言って、理解できないわけではないと思っています。
 そこで、私ども野党としまして、何とかして個人情報を実効的に保護しつつ、市民生活の自由、とりわけ表現の自由との両立を図ろうと苦労を重ねてまいりました。
 一つには、対案を準備する過程の中で、義務規定の対象を別表に定める特定の事業のみとするポジティブリスト化方式を検討もいたしました。規制するものだけのポジリストにした場合に、報道などをリストから除外しておけば、政府に対して皆さんがかなり批判をお持ちの、定義づけをしたというような、報道の定義づけをする必要もなくなりますし、主務大臣による恣意的な適用除外は起こり得ないというメリットがあります。また、リストに上がらない非営利団体やあるいは個人には適用されないということにもなります。
 しかし、現実には、保護すべき個人情報は実に多様な企業や諸活動にまたがって存在しておりまして、これを切り分けて、ある事業はリストに載せる、ある事業はリストに載せないということでは、立法技術上、仕分けをしてみますと、非常に難しい点がございました。
 例えば、消費者との接点の多いサービス業などの事業者の場合には、もちろん、当然顧客リストを持っています。しかし、消費者と接点がないかのように思われる重工業の分野でも、株主リストや社員の人事管理上の情報をたくさん保有しています。人事管理上の情報は、本籍地あるいは家族、経歴、給与、健康状態など、私たちが保護すべきだと主張していますセンシティブな情報をも含んでいるわけでございます。
 さらに、非営利団体といっても、例えば介護の市民団体にしても、多数のセンシティブ情報を抱えているわけでございまして、悪意を持って第三者提供したりすることはないにしても、防護措置が十分でなかったことによって盗まれる可能性もないとは言えないわけでございます。
 こうしたことから、適用対象を事業で限定したり、非営利団体を非営利団体という理由だけで適用除外にするということは適切ではないと考えるように至りました。そこで、野党としましては、包括法ではあるけれども、政府案と違って、市民活動、市民生活、特に表現の自由を尊重する立場から独自の工夫をしております。
 第一に、主務大臣が大活躍をする政府案と違いまして、ヨーロッパ諸国のように独立した中立公正な個人情報保護委員会を設置して、恣意的な介入、規制を排除するという姿勢を明確にしたということでございます。
 第二に、野党案は、「報道の用に供する目的」「著述の用に供する目的」「政治活動の用に供する目的」といった、目的だけによって義務規定の適用除外となるようにいたしました。政府案のように、報道機関、著述を業とする者、政治団体などの限定を設けておりませんので、一般市民が今申し上げましたような活動をする場合でも、政府の中では、例えば政治活動を個人一人で行う場合には保護されないという答弁でございますよね。そういうような問題についても、個々人、一人一人の行う政治活動についても適用除外となるようになるわけでございまして、マスコミだけではなくて、普通の市民の表現の自由をもきちんと保障する内容に変えたわけでございます。
 こうした措置によりまして、包括法につきまとう懸念を払拭するとともに、実効ある個人情報の保護が可能となったと考えております。
春名委員 同じく疑問が出されている点でいいますと、なぜ個人情報取扱事業者の範囲について、政府案と同じように営利、非営利を問わない一般の個人も含むということにしてしまったんだという御意見があります。労働組合や市民団体などが規制されてしまうんじゃないかという心配の声が出されているのも事実です。
 野党案は、その考え方と切り分けをどういうふうにしているのか、また与党・政府案との違いがどこにあるのか、この点をお聞かせいただきたい。
山内(功)議員 私どもも、やはり個人情報取扱事業者とは何ぞやと定義をつけるとしたら、「個人情報データベース等を事業の用に供している者」という以外に、定義をつけるとしたらやむを得ないかなと思っているんですね。
 ですから、労組や市民団体も規制を受けるのかと問われますと、労組や市民団体であっても、個人情報データベースを保有して事業の用に供していれば、個人情報が一定量以下でない限り、義務規定の対象となるとお答えするしかないと思っています。
 しかし、例えば政府案ですと、事業のカテゴリーで主務大臣を決めていきますから、例えば労働組合が本来業務である労働組合運動にその個人情報データベースを使っている場合は厚生労働大臣、環境問題の市民団体ならば環境大臣、アフガン難民支援を行っている市民団体、NGOならば外務大臣が主務大臣になると思います。
 これは、各団体の日常の運動がそうした主務大臣と緊張関係を持つこともあるわけですから、主務大臣の監督の対象になるというのは大変気持ちの悪いことだろうと思うんです。主務大臣の権限を制限する規定があるといっても、政府案が出てきた経過、例えば政治家や官僚への批判を封じる、あるいはスキャンダルを隠す、さんざん昨年言われましたよね、そういうメディア規制をも図っているというような、そういう政府案が出てきた経過もあわせて見れば、懸念があるのはやはり当然だろうと思うのです。
 その点、野党案は、先ほどの答弁の繰り返しになりますけれども、政治的思惑や恣意によって介入や規制することがあり得ない第三者機関が監督を行います。より適切な適用除外規定を設けたことと相まって、労働組合や市民団体の皆さんが懸念するようなことはあり得ない仕組みになっていると考えています。
春名委員 どうもありがとうございました。
 さて、私は、今から、行政機関の個人情報保護法案について、幾つか大事なポイントを突っ込んで聞いていきたいと思います。これも、政府案、野党提出者、両方に伺いたいと思います。
 まず、目的規定についてです。
 政府案の目的規定は、「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」こういうふうになっております。政府の考え方でいきますと、行政の適切、円滑な運営がまずあって、その上で、それとの調整の範囲で個人の権利利益を保護するというふうに、そういう立場に立っているとしか見えません。
 なぜこういう目的規定なのかをお答えいただきたいと思います。
片山国務大臣 これは、下の方がメーンなんですよ。個人の権利利益の保護を図る、そこが目的ですよ。その図る場合に配慮しろというのが「図りつつ、」なんです、「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、」と。
 ただ、恐らく質問したいのは、何で「行政の適正かつ円滑な運営」というのが入っているんだろうか、こういうことでしょうけれども、それは、そことの調和なんですよ、今回の法律は。行政というのは、行政機関のためにあるのではないんですよ。国民のためにあるんですよ。国民のために行政を行うんですよ。そういう意味では、それが適正かつ円滑に運営されなければ、困るのは国民ですから、それを図りながら個人の権利利益を図ると。二つの目的を、しかも、個人の権利利益の保護の方がずっと大きいんですけれども、それをちゃんとやっていくと。
 大変よくできた目的規定だと思っております。
春名委員 大変よくできた規定と言われるんですけれども、これは、実は旧法と全く同じ表現なんですね。旧法ができたのは一九八七年、今から十六年前のことなんですね。それで、この十六年間の進歩発展というのをやはり考慮に入れる必要があると思うんですよ。
 つまり、例えばプライバシー権の内実というのは、個人の秘密をさわらないでという権利から、今日議論されているように、積極的に自己情報をコントロールする、そういう権利へと発展をしているわけです。同時に、国民生活のあらゆる場面で大量の個人情報が行政機関によって収集、蓄積されるという事態を迎えているわけです。そして、住民基本台帳ネットワークまで稼働するという事態を迎えているわけです。個人情報が飛び交って、一層膨大に行政に蓄積されるという方向がますます強まっているということだと思うし、それに対して、自分の情報が行政に勝手に使われているのではないかという不安が国民の間に随分広がっていて、それに対して防衛庁リスト問題が出て、その危険性をまざまざと見せつけるということになったという経過があるわけです。
 つまり、二十一世紀に向けて、十六年前のころと全く違う環境の中で新法をつくるということでありますから、今の大臣の御説明は、権利利益の保護が、下にある方がメーンなんだというふうにおっしゃって、ああ、そういうものなのかと私は初めて思ったんですが、メーンであればあるほど、そこを前面に押し出す、それに表現上、見ればそぐわないような「円滑な運営を図りつつ、」ということは、あえて十六年経て今新法をつくる際に入れる必要性を私は感じないわけなんですね。
 そういう進歩といいますか、十六年前と、どうでしょう。
片山国務大臣 真理は何年たっても真理なんですよ。個人の権利利益を守るということと、行政の円滑かつ適正な運営を図る、これはもうだれも疑いのない大命題ですよ、十六年前であろうが二十年前であろうが、十年後であろうが。そのことは変わらないということですよ。
 ただ、中身は、あるいは委員が言われるように、現在の環境に応じたそういう受け取り方をする必要は確かにある、こういうふうに思います。
春名委員 それでは、野党案は、この点についてどうお考えでしょうか。
細野議員 野党案の方では、行政の適切かつ円滑な運営を図りつつという文言を入れておりません。これは、別にこれが全く概念として必要はないということを言っているのではなくて、この法案は何のためにできたのかということをまず一応書かないかぬわけですね。
 そういう観点からすると、これは、あくまで個人の情報をいかに守っていくかということをきちっと書く、そういう意味においては、政府案は、最後に「個人の権利利益を保護することを目的とする。」と極めて簡単に書いてあるわけですけれども、野党案は、その中身も書いているということでございます。
 具体的に違いを言いますと、保有個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する権利についてきちっと定めるということ、さらには、個人情報の取得、利用、第三者に対する提供等に関し本人が関与すること、その他の個人の権利利益を保護すること。この権利性をきちっと書くことによって、この法の本来持つべき目的を明確にしているという趣旨でございます。
 特に、行政機関においては、個人情報コントロール権というのは、いろいろ、生成過程だとかまだ確定していないのだとかという意見がございますけれども、まずもって行政機関でこういう権利をきちっと個人が持っているんだということを書き込むことの意義というのは、極めて大きいものであると考えております。
春名委員 私も、単に目的規定が十六年前と同じだということにとどまらずに、やはり一条の「目的」から始まって、二条以降の中身が、権利利益を本当に保護するというのが第一義で最優先であるということになっていない面が政府案の新法の中には散見できると思っております。
 したがって、目的規定が違うんだ、同じなんだというレベルの話ではないと思うんですね。その点をこれからただしていきたいと思うんです。
 まず第一に、罰則規定問題です。
 先ほど桝屋委員も御質問されておられましたが、罰則規定について私が率直にお聞きしたいと思いますのは、この規定、五十三条から五十五条、とりわけ五十五条についてなんですが、これがあえてつくられた理由は、防衛庁リスト問題があり、非常に大きな不安が広がり、ああいう事案は二度と起こしてほしくない、そのための抑止力であり、きちっと規制をしていくということの、国民の危惧にこたえるという点でこの条文が出されたと私は認識しております。
 率直に聞きますけれども、防衛庁のようなあの事案は、五十五条によって処罰できるのでしょうか。
松田政府参考人 防衛庁のリスト問題を契機にしまして、国会におきまして罰則の議論があり、そして、政府案におきまして、今先生御指摘の五十五条の罰則を追加させていただいたところでございます。
 防衛庁リスト事案自体は既に済んだ話でございますので、刑事訴追の不遡及の原則に基づきまして刑事問題になるということはないわけでありますが、仮に今後防衛庁のリスト問題のような事案が発生しました場合に、この第五十五条との関係で申し上げますと、例えば、海幕三佐が専らその職権を乱用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書、図画または電磁的記録を収集した、そういう事実認定が司法当局等においてなされた場合には、この五十五条の罰則の適用がある可能性があると考えております。
春名委員 それは当然のことでして、条文をそうやって読んで、その認定をすればそうなるに決まっているんです。
 その前提問題なんですけれども、職務の用であれば処罰されないというのが政府案のみそなんですね。ここが今、一番議論になっているわけです。
 そこで、防衛庁の調査報告書、これを私も熟読してみました。去年の六月の十一日に出ているものです。「情報公開業務において開示請求者がどのような行政文書を要求しているのか明確でない事例が多いことを踏まえ、開示請求に対して迅速かつ的確に行政文書の特定を行うためには、開示請求者の背景を知ることが有効ではないかと考え、関連情報の入手に努め、これを開示請求者リストに記載することとした。」と明確に書いてあるわけですね。
 つまり、海幕三佐は、職務の用のために、「反戦自衛官」「受験者(○○で失格)の母」などの、情報公開とは全く関係ない個人の情報を収集していたのです。この罰則規定では処罰されないのは明白じゃないでしょうか。こういう判断をこの調査報告書の中に書いてある。職務の用でやったんだと防衛庁は言っているわけですね。
 だから、ああいうことがやられても、アトピーだというふうな話とか、そういう情報をとっても、この場合は処罰されないということでいいのかということを問うているわけです。
松田政府参考人 一般論として申し上げまして、この政府案における五十五条におきましては、専ら職務の用以外の用に供する目的ということを要件にいたしておりますので、そういう事実認定がなされるかどうかという問題であろうかと存じます。
 政府案におきまして、職務の用以外の用に供する目的を要件といたしましたのは、大臣も先般来御説明申し上げておりますように、収集行為のうち、当罰性が高い、刑罰を科すに値する害悪を伴う行為に限定をしたからでございます。
 野党案におかれましては、職務の用以外の用に供する目的を要件としておられませんが、職務の用に供する目的で収集する際の、当罰性の低い行為までが刑罰の対象となるということについては、やや問題があるのではないかと考えております。
春名委員 ですから私、最初から問題提起をしているのは、防衛庁の事案で、この調査報告書では、職務の用でやったんですと本人が言っていると、そういう調査結果を出して、そういうものが目の前に出ているわけですよね。
 こういう事案について、二度と起こさないようにしなければいけないからといって罰則規定を設けたわけでしょう、国民の批判をかわすために。ところが、こういう同じ事案でも処罰できないということになってしまうんですよね。それでいいんですか、国民の期待にこたえることができるんでしょうかということを聞いているわけなんです。最後の、構成要件がどうこうという話じゃないんです。
片山国務大臣 今回、政府案を直してこういう形で出させていただいたのは、防衛庁だけじゃないんですよ。防衛庁もありますよ、防衛庁がないということはない。ありますが、前の国会から、前の法案について大変国会で御審議をいただき、また世論もいろいろなことを言っていただいて、そういうことを総合的に勘案して、我々は、何度も言いますように、今の刑罰規定と国家公務員法のいわば懲戒処分を組み合わせればちゃんと機能できる、こういうことをお答えしました。しかし、それでは不十分だ、民の方には罰則があるではないかと。ただ、民の方は、指導をして勧告して命令をして、聞かない悪質の者だけ罰則をかけるんですね。こっちの方はそうじゃないんですよ、行政機関の方は。だけれども、そういう多くの方の御意見を聞いた方がいいと我々も考え、与党の関係の皆さんも考えて、今回の法案にしたわけですね。
 そこで、刑罰というのは、そんなに何でも刑罰にかければいいというものではないんですよ。刑罰に値する行為、それを選んでやるものですから、例えば職権乱用なら何でもかけてもいいかというと、そういうことになっていません。刑法の職権乱用罪であっても、よく御承知だと思いますよ、人に義務でないことをやらせるとか、人の権利利益を侵害するとか、それが職権乱用と一緒になった場合だけ職権乱用罪の適用があるので、そこがない職権乱用は刑罰の対象にはならないんですね。
 そこで、今回、この五十五条は、専ら職務の用以外の用に供する目的である場合には刑罰にかけようと。職務の用と思ってやった場合については、これは懲戒処分で対応できる。当該、専ら職務の用以外の用に供したかどうか、こういうことの判断は、最終的には司法ですよ。最終的には司法の判断ですよ。そこで、防衛庁が報告書の中で、職務の用であった、こう判断されたとすれば、それは防衛庁の判断であって、何度も言いますけれども、最終的には司法の判断になる、こういうことでございまして、そういうことで刑罰の規定を、御承知のように三条追加させていただいたわけであります。
春名委員 冒頭に目的規定の議論をしたんですけれども、こういうところにも私はあらわれているなという気がするんですよ。
 つまり、国民の、行政機関が持っている個人情報を守る、その権利利益を守るというのがこの法律であるべきなんですね、その見地が一番大事なわけだと思うんですよ。職務の用だからといって、ああいうセンシティブな情報、全く情報公開とは関係ない情報を勝手に収集する、しかし、ばれたら、職務の用でしたと言えばオーケーだと。逆に言ったら、職務の用なら刑事罰はないとお墨つきを与えてしまうことになりかねないという心配すら私はするわけです。
 行政イコール悪とは私も全然思っていませんけれども、そういう点でいえば、あえて罰則規定を三条にわたって設けているにもかかわらず、最も大事な防衛庁リスト問題との関係でいえば、私はこの点を非常に大きな欠点だなと思わざるを得ないわけでありまして、その点の見解を、野党案提出者にはこの罰則規定についてお聞きしておきたいと思います。
細野議員 大体、私が言いたいことは春名委員がおっしゃったなという気がしなくもないわけでございますけれども。
 目的というのは、これは多分に主観的な要素があるわけでございまして、先ほど春名委員おっしゃったとおり、こういう目的であった、職務と関係あると思っていた、それによって刑罰を科すか科さないかという判断をするのはいかがなものかというふうに私は考えております。
 特に政府案は、「専ら」というふうに書かれているということは、逆に、わずかでも職務にひっかかってくれば、これは全部罰則対象にならないということになってしまいますので、そういう意味では、これは余りに処罰範囲が狭過ぎるというのが私どもの考え方でございます。
 何度も申し上げていることでございますけれども、うっかりやってしまったというものに関しても、これは職権乱用だということになれば、しかも、個人のプライバシーを侵害しているというところがきちっとこの部分で判断がされるようなものであれば、罰則を科していった方がいいというのが私どもの考え方でございます。
春名委員 罰則規定については、この間いろいろな角度から議論されていますが、私、非常に大事な問題だと思いますし、率直に言って、行政機関の新法はこの部分しか変わっていないんですね。あとは全部一緒なんですね。だから、この新しくなった部分ということのポイントがどうなのかという非常に大事なところでして、その議論はやはり引き続きしっかりやっていく必要があるなと、きょうの今の議論を聞いていても改めて感じる次第であります。
 続いて、目的外使用とデータマッチング問題についてお聞かせいただきたいと思います。
 政府案は、第八条で、利用目的以外の目的のために保有個人情報を利用し、または提供してはならないと、目的外の利用を禁止しておりますが、一方で、法令に基づく場合と、相当の理由に基づく行政機関内部での利用等で不当な権利侵害のおそれがない場合は、その限りではないというふうになっております。
 そこで、政府案についてお聞かせいただきたいのは、この「法令に基づく場合」という「法令」とは、現時点でいえば、具体的に何を指すのでしょうか。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 政府案第八条第一項の「法令に基づく場合」とは、法令の規定により利用、提供が義務づけられている場合を指しておりまして、いろいろあると思いますが、具体的には、例えばの例ですが、国会法第百四条に基づく資料要求ですとか、あるいは会計検査院法第三十一条第二項に基づく資料要求などがこれに該当するものと考えております。
春名委員 それでは、今二つの例を挙げていただきましたが、それ以外も含めてあるのであれば、それを一覧表にして出していただけますか。いいですね。
松田政府参考人 検討させていただきます。
春名委員 それで、私、こういう懸念を一つ持っているんです。
 つまり、従来の法令は、個人情報保護について、今日の到達点でつくられていない面があるわけですね。個人情報の保護を十分な意識を持ってつくられているとは言えない。「法令」を緩やかに解してしまうというようなことはないのか。法令というぐらいですから、法律だけじゃなくて政令もそうでしょう。だから、目的外利用が、そういう点で緩やかに解して広く認められるというような心配はないのかどうか、この点を聞かせてください。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 この規定は、第八条で、まさに行政機関の長が、保有個人情報につきまして、利用目的以外の目的のためにみずから利用し、または提供してはならないという、規定の原則が書かれているところでございますので、「法令に基づく場合を除き、」というのは、そういう原則から考えて判断していくべきことだと思っております。
春名委員 よくわからないんですが。
 もう一点聞いておきます。
 目的外利用の判断を下すのは、政府案では行政機関の長ということは、いいですか。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 目的外利用・提供に関する判断は、この第八条にございますように、第一義的には行政機関の長が行うこととなりますが、もちろん恣意的な判断を許容するものではございません。
 行政機関の判断に疑念があるときは、個人は利用停止請求を行うことができますし、その決定に対する不服申し立て、または訴訟におきまして、情報公開・個人情報保護審査会または裁判所による中立的、公正な判断を求めることが可能と存じます。
春名委員 それは事後の話でして、第三者的な機関がその活用についてチェックする仕組みは政府案にはないわけです。
 それで、本当に公正がしっかり保てる、そうなっていただきたいわけだけれども、公正中立、公正が本当に保てる、その根拠を述べていただきたい。
松田政府参考人 お答え申し上げるまでもなく、行政機関の長は、法律を誠実に執行しなければならない。これはもう憲法上の要請でございまして、非常に重い責任を負っているものと考えております。各行政機関の長においては、このような憲法上の要請に従って適切な判断が行われるものと承知しております。
春名委員 それは、そうあればいいわけですけれどもね。それは、言っていることは当たり前のことなんだけれども、その上で、この法律は個人の権利利益を守るという法律なわけですね。その客観性、公正性をいかにしっかりつくるかというところに法律をつくる意味があるわけで、この法律をつくるんですね。
 その点で、野党案についてお聞きしますが、本人同意または本人提供のため以外の目的外利用については、その目的と理由を記録する義務をまず一つは明記をする。同時に、行政機関の長は、情報公開・個人情報保護審査会の意見を聞くことが原則であるということを導入していて、チェックする仕組みを入れているわけですね。
 この考え方の基本、これはどういうもので、あわせて、与党質問などで、そんなことをすると煩雑で事務の負担が大変だという御意見も出ておりますので、この点も踏まえて御答弁いただきたいと思います。
細野議員 この個人情報保護法案の中の目的外利用というのは、最も重要な部分の一つだというふうに考えておりまして、それが先ほど政府の答弁のように、個別に何かけしからぬことがあった場合に不服申し立てをするとか裁判に訴えるとか、そういう話ではなくて、基本的にうまく回る仕組みをつくることが今回の法案の非常に重要なところだというふうに考えております。
 特に、行政機関の中で一回運用される情報というのは、外から見ていると、どう流れているかというのはなかなかわからないわけですよね。その部分での懸念を払拭するために、春名委員御指摘のような、記録に残す部分、さらには情報公開・個人情報保護審査会の意見を聞くという部分を設けたわけでございます。
 煩雑になるという御指摘は、この部分に限らず、あらゆる部分で出てきているわけでございますけれども、これはやはり、大きな懸念が出てきている時代背景というものもかんがみれば、行政機関の方は法案をより高いレベルにしたんだというふうに言ってはいるんですけれども、基本的な構造が現法案と私はほとんど変わっていないと思っておりまして、この部分で何らかの、より厳格に目的外利用を規定した法案の修正というのは、私どもは必要であると考えております。
春名委員 法令に基づくというのを先ほど聞いたんですが、もう一つあるのは、「相当な理由」というところですね。先ほども議論になっていましたけれども、八条の二項二号ですね。「行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利用する場合であって、当該保有個人情報を利用することについて相当な理由」がある場合、目的外利用はよろしいというふうになっております。
 そこで、私はお聞きしますが、法令の定める所掌事務の遂行に必要ではあるが相当な理由はない、こういう場合はあるんでしょうか。実際、これはどんな場合が想定されるんでしょうか。ちょっとお聞かせいただけますか。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 当然、そういうケースもいろいろあろうかと存じます。相当な理由があるかどうかは、情報の内容や、当該情報を目的外に利用、提供される目的、あるいは利用形態などを勘案しまして個別に判断してまいることになるわけでありますが、当初の利用目的との関連から見まして、利用することに合理的な理由がない場合、たとえそれが別途法令に定める所掌事務の遂行に必要なものであったとしても、相当の関連がなければ相当な理由があるということにはならないと存じます。
春名委員 今のはちょっとよくわかりませんね。
 要するに、法令で定める所掌事務の遂行に必要性はあるけれども相当な理由はないという場合にどんな場合があるかとお聞きしたんですが、いや、そういう場合はないんじゃなくて、そういう場合もありますというふうな答弁だけなので、具体的にどういうことが想定されるのか、わからないんですよね。
 大臣、ではどうぞ。
片山国務大臣 郵便局というのは、年賀状のときだとか何かは忙しいですよね。そのときにアルバイトを雇うんですよ、アルバイトを。募集をして、応募で来ていただいたり、そうでなかったりするんですが。その場合に、ある郵便局の郵便貯金をしている人のリスト、その中で若い人の、最近は若い人も貯金しますから、それこそお年玉をたくさんもらったりして。その中で、例えば大学生や高校生だけの郵貯の顧客のリストを抜き出して、それについて、アルバイトの募集をそういう皆さんにする。これは職務ですよね、とにかく大変忙しいときにアルバイトを手当てするというのは。これは仕事。しかし、これは郵便貯金の通帳を持っている、登録している人からリストを抜き出して、そういう人に、どうぞアルバイトしませんかと。これは相当の理由がない。こういうことであります。
春名委員 そういうことがあるんですか。初めて私は知りました。
 では、大臣は非常に博識ですので、もう一点、三号の方を聞きますけれども、三号の方は、他の行政機関や独立行政法人等、個人情報を受ける側の者が、法令の定める事務または業務の遂行に必要で相当な理由がある場合というふうになっているわけですね。
 同じ質問ですが、法令の定める事務または業務の遂行には必要だけれども相当な理由はないという場合は、どんな場合が実際に想定されるんでしょうか。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 例えば大臣から御説明申し上げました今のような例を、別の機関に提供する場合、こう考えていただければよろしいかと存じますが、ある機関で一定の利用目的のために収集した情報、例えば許認可とか、あるいは申請その他の関係で収集された情報を別の機関に提供しまして、別の機関がそれと全く関係のない、今のお話で言いますと、職員の採用に使うとか、そういうような全く別の目的に使うということは、相当な理由、相当の関連があるとは言えないと。
春名委員 今、一つの例を出していただいたんですが、そういう素朴な疑問がこの条文の中からは随分出てくるわけですね。
 したがって、今私が二点聞きました、法令の定める所掌事務の遂行に必要だが相当な理由はないというのはどういう場合か、それから、法令の定める事務または業務の遂行には必要だが相当な理由はない、二号、三号の場合ですね、これがどういう場合があるか、もう少し類型化して示していただければ、「相当な理由」というのは、なるほどという認識の発展にもなるでしょうから、後日またリストを出していただけたらと思います。
 それから、野党提出者にお聞きしたいと思うんですが、この二号、三号の「相当な理由」というのはあいまいだと私は思うんですが、野党案は、そういう規定ではなくて、その「個人情報を利用することができなければ当該事務の円滑な遂行に著しい支障が生じるとき」である、そういう限定をしているのが大きな特徴であります。
 先ほどの御答弁の中で、そういうふうにしてしまうと行政サービスの提供ができなくなって、行政サービスの問題を不当に扱うものだなどの議論も出されておりますけれども、この限定的にしている内容、その考え方の基本について、野党提出者にお聞きしたいと思います。
細野議員 これも午前中、先ほど御答弁したところではあるんですが、野党案では、事務の円滑な遂行上、ほかに代替手段がないほどの強い必要性があるという場合に限るということをこの法案で書いたということでございます。
 もう一つの野党案と政府案の大きな違いというのは、この「相当な理由」というのを、政府案ですと、これは基本的に主務大臣が判断するということになるわけですね。ここの部分でのぶれというのが懸念をされるところでございまして、野党案では、立証責任そのものを行政機関に課した上で、情報公開・個人情報保護審査会にしっかりと意見を聞くという形になっておりますので、省庁間でのぶれというのがなくなるというメリットもあると考えております。
春名委員 この問題の最後に、目的外利用との関係で、データマッチングについてお聞きをしておきたいと思います。
 利用目的が異なる二つ以上の個人情報ファイルを照合し、または結合することを、その点ではデータマッチングと表現させていただきます。これがやられますと、個人の情報が丸裸になっていくということになります。特に住民基本台帳コードが、一億数千万人のうちの個人を特定する十一けたの番号ができたわけですので、このコードがマスターキーになって、あらゆる個人情報を寄せられる土台はその意味ではできているわけです。慎重な上にも慎重な対応が私は必要だと思います。
 政府は、このデータマッチングで個人の権利利益が著しく脅かされる、この危険性についてどういう認識を持っていらっしゃるのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 データマッチングは、電算個人情報ファイルを別の電算個人情報ファイルと照合したり結合したりすることであるわけでありますが、それ自体が直ちに個人の権利利益の侵害をもたらすというふうには考えておらないわけでございます。
 基本は、個人情報をみだりに目的外に利用、提供させないということが極めて重要なことであると考えておりまして、そのために、目的外利用につきましては、法令に基づく所掌事務のため、あるいは本人なり第三者の権利利益の侵害がない、あるいは相当の関連ということで、厳しく制限をしているわけでございます。
 その上で、さらに、個人情報ファイルの公表ですとか、あるいは施行状況調査結果によって目的外利用・提供の状況を公表していくとか、さらには本人の開示、訂正等の請求権、事後による第三者機関によるチェック体制ということで、万全の体制をとろうとしているところでございます。
春名委員 データマッチングそれ自体が権利利益を侵害するものではない、必要なことはあるということを、最初にそういう発言をされると非常に心配になるわけですね。それは、そういう場合も必要だということは認めますけれども、ただし、今、現時点はどうなっているかというと、先ほど言ったように、一億二千万人すべてをコードで管理しているんですよ。そして、十一けたのコードが振られていて、そのコードが、四情報に限っては二百六十四事務に今行っているわけですね。そういう土台が今できているわけです。いろいろな情報が飛び交っているものを、その十一けたをキーにして集めようと思えば集められる土台ができているという認識を持たぬといかぬのですね。
 したがって、私は、行政機関の個人情報保護法の大きなかなめになるべきは、権利利益を保護するという点で考えたら、このデータマッチング問題について、やはり何らかの規定をきちっと置かないとまずいだろうという認識を持つものであります。一般的にはそれ自身がだめじゃないんだという一般論ではなくて、そういう角度からこの法案は問題にしなければならないときに来ていると私は思っておるんですね。
 その点を、野党提出者については、こういう危険をどう認識されて、法文上ではこの危険を排除するための措置をどう明記されているのか、その点を伺いたいと思います。
細野議員 今住基ネットとの関連で御質問がございましたので申し上げますと、特にこういう情報化された中で、データマッチングそのものに大きな問題がこれから出てくる可能性がある、そういう懸念があるというところは問題意識を共有するものでございます。
 野党案の場合も、書き方としては目的外利用の中に入れておりまして、政府案よりは、はるかにそこの目的外利用の部分できちっと担保した上で、なおかつ、データマッチングについては、将来の懸念を排除するという意味で規定を設けました。
 午前中、桝屋委員からの御質問の中で最後に少し申し上げられればというふうに思っておったんですが、「配慮しなければならない。」という若干緩やかな規定になっている部分について、御批判があるのも承知をしております。ただ、ここの部分に関しては、やはり将来の懸念をきちっと担保していくということ、これによって行政機関の中で自主的な努力がなされることを促していくことというのは、今の時期、非常に重要なことであると私どもは考えております。
春名委員 以上で野党案提出者の皆さんへの質問は終わりますので、出ていってというか、出ていったら困るんですけれども、そこのいすにはおられなくても結構です。どうもありがとうございました。
 最後に、私は片山総務大臣に、住民基本台帳ネットワークシステムの問題で残りの時間御質問させてもらいたいと思うんです。これは、今の話も出ましたけれども、行政機関の個人情報保護を考える上で不可欠の前提であり、問題でありますので、お聞きします。
 初めに私の立場を申し上げておきますが、住民基本台帳ネットワークシステムについては、第一に、不正に個人情報を利用された場合の中止請求権、目的外利用についての罰則規定も未整備であること、利用後の情報の消去などプライバシーの権利を守るという点で、住民基本台帳ネットワークシステムの法律自身に重大な欠陥がある、第二に、史上初めて全国民に共通番号がつけられるということについて国民的合意がないこと、第三に、このシステムが中央集権、情報一元化を意図したものであるということを理由に、この導入には私たちは反対でありますし、今稼働しておりますが、これはやめるべきだと考えます。
 このことを表明した上で、住民基本台帳ネットワークシステムの上に乗っかっている四情報プラス二情報、氏名、住所、性別、生年月日、住民票コード、変更情報、これら六情報でありますが、この六情報が法律に明記された利用目的以外にも拡大される危惧について御質問させていただきます。
 八日の本会議で片山大臣が、目的外利用の「相当な理由」の事例について、「出入国に関する不正行為を防止するために法務省の出入国邦人のデータと外務省の持つ旅券管理のデータを突き合わせるような場合、」というのを挙げていらっしゃいます。これはもう御記憶のとおりで、午前中も御答弁がございました。
 ここで言います外務省が持っている旅券管理のデータなんですけれども、この旅券管理のデータといいますのは、住民基本台帳ネットワーク上のこの六情報を提供する事務の一つになっておりますね。その六情報を提供して本人確認を行うことができることになっております。
 そこで、念のためにお聞きをしておきますが、この本人確認をいたしましたら六情報はすぐに消去されるということになっているのかどうか、確認をお願いします。
畠中政府参考人 本人確認情報をすぐに消去するのかというお尋ねでございますが、技術的基準というものを定めておりまして、その中で、本人確認情報の保存を行う必要がある期間経過後遅滞なく消去するというふうに定めておるところでございます。
春名委員 今読んでいただいたのが技術基準ですね。もう一回読みます。「本人確認情報の保存を行う必要がある期間経過後遅滞なく、当該本人確認情報を確実に消去すること」ということですね。そういう表現になっているわけです。
 つまり、これは、確認をしたらすぐ消去というふうに書いているわけではないのです。期間経過後遅滞なく消去するというふうになっているわけです。
 大臣が答弁された旅券の本人確認は、指定情報処理機関から外務省に提供されます。その外務省の旅券管理データは法務省の方に提供されています。不法入国なんかをマッチングして調査するということで、おっしゃったとおりで、旅券管理データは法務省の方に提供されています。
 その際、私が危惧しておりますのは、六情報の一つである住民票コードがあわせて法務省の方に提供されているというようなことはありますか、ないですか。ないと私は思っておりますが、どうでしょうか。
畠中政府参考人 お答えいたします。
 そういうことはございません。
春名委員 これは、あると言ったら大ごとになるわけでして、実は、住民基本台帳ネットワークの議論のときに、当時、野田自治大臣なんかと私はずっとやっていたんですが、鈴木行政局長なども、例えば住基台帳法の三十条の三十四で、データマッチングは禁止になるんだ、目的外利用にしたら禁止されるんだという条文もありますから、そういうことをやったらだめなんですと繰り返し御答弁されております。
 それで、その当時とは大臣はかわられていますので、失礼ですけれども、三十条の三十四なんかに示されている、目的外にコードを利用する、そういうことは絶対あってはならないし、それは禁止されているということは共通だと思いますが、もう一回、これは大臣に確認をしておきます。
畠中政府参考人 お答えいたします。
 条文の規定でございますので、私の方からお答えします。
 先生御指摘のとおり、本人確認情報につきましては、法令で規定している事務以外の事務というのですか、その目的以外には利用してはいかぬというふうに規定されております。
春名委員 三十条の三十四に「処理以外の目的のために受領した本人確認情報の全部又は一部を利用し、又は提供してはならない。」というふうに示しておりますので、本人確認情報、住民票コードは、旅券の管理と出入国管理のデータをマッチングしたときにも、旅券の管理の方には六情報が行くようになっているわけなので、しかし、そのマッチングしたときには、それが一緒についていったら大ごとになる、それはやってはいけない、それでやっていないと。(片山国務大臣「法律に禁止と書いてある」と呼ぶ)だから、法律に書いてあるのでやってはいけないということで、今言われたとおりだと思うんですね。
 ですから、住基ネットの議論の中では、行政局長は、「不要になった情報の消去につきましては、これは、それぞれの機関の安全確保措置の中で消去についてきちっと対処していくということで考えていきたい」、こういうふうに繰り返し当時も答弁をされています。
 そこで、そういう角度から私は今度調べてみたのですが、指定情報機関、自治情報センターから六情報の提供を受ける国の機関の個人情報保護のガイドラインあるいは運営規程を幾つか調べてみました。
 先ほど言ったように、外務省には六情報が提供されることになるわけですが、その個人情報保護のガイドラインを見てみますと、外務省の保有する電子計算機処理に関する情報の安全・正確確保の措置に関する規則というのがあります。十三条の十一号で、「管理者は、」「必要ないと認められる時の削除などの措置を講ずる」という規定だけになっているんですよね。六情報を提供する先の外務省の個人情報を保護するガイドライン運営規則には、「管理者は、」「必要ないと認められる時の削除などの措置を講ずる」ということだけ述べられているわけです。つまり、住基台帳の技術基準には、遅滞なく消さなきゃいけないというふうになっているのだが、もらった側の外務省の規則には、必要ないと認められるときの削除などの措置を講じましょうという一般的な規定だけしか書いていないわけです。
 それから、総務省。総務省の保有する電子計算機処理にかかる個人情報の安全及び正確性の確保に関する訓令、この九条の第二項で、「処理情報について保存期間を定めるとともに、適正な更新、駆除などの措置を講ずる」と、こちらも一般的規定があるだけなんですね。
 つまり、個人情報の六情報が、総務省のいろいろな事務にも行く、外務省の事務にも行く。住民基本台帳ネットワークの技術基準では、遅滞なく消去しなさいとなっている。それを受けたそれぞれの省の事務の保護の規定は非常に一般的な規定でして、さっき言ったように、外務省は、必要ないと認められるときには削除などの措置を講じなさい、総務省では、適正な更新、駆除などの措置を講じなさいという一般的な規定しかないわけです。そして、住基ネットの技術基準も、先ほど読んでいただいたとおり、「遅滞なく、」と。直ちに消去というふうになっていないわけです。
 したがって、はっきり申し上げますけれども、本人確認をしたらすぐ消去するというように、技術基準も各省庁の規程も、はっきり明記するように改定していただきたいということを強く要請したいと思います。その点をどうぞ。
畠中政府参考人 先生御指摘の、省庁の規定ではそうなっていないんじゃないかという御指摘ですが、それは、個人情報一般を対象とした規定でございまして、住基の確認情報でいいますと、先ほど言いましたように、私どもは、技術基準で、必要期間経過後遅滞なく確実に消去すると。
 それから、先ほど言い忘れましたが、指定情報処理機関と指定情報処理機関が提供する行政機関との間で協定を結ぶことになっておりまして、その協定書におきましても、例えば、これは協定書の書き方ですからそのまま読みますと、「甲は、本人確認情報の保存を行う必要がある期間経過後遅滞なく、当該本人確認情報を確実に消去することとする。」というふうに協定で書いてございます。
 それから、すべて遅滞なく消去しろというふうに書けという御指摘でございますが、一般的には、本人確認情報を照合して、必要がなくなれば本人確認情報を消去いたします。例えば、私ども恩給事務のシステムがございますが、恩給のシステムと本人確認情報を照合しまして、必要がなくなれば本人確認情報を遅滞なく消去しております。
 ただ、事務によりましては何カ月間か保存する必要があるものもございます。例えば、先生が例を挙げました外務省の旅券事務でございますね。この旅券の申請書類は、旅券の発行日から六カ月間保存した上廃棄するとしておりまして、本人確認情報を出力しました帳票とあわせて保管する場合もあるというふうに承知しておりますので、その本人確認情報も、場合によっては六カ月間保存しているということでございます。
 このように、事務の性格によりまして保存期間が違ってきますので、私どもの方の技術基準では、必要がなくなった場合は遅滞なく消去するというふうに規定しているところでございます。
春名委員 今の話はちょっと私も初めて聞いたことなので、「遅滞なく、」というのはそういう意味で、事務の性格によって、本人確認情報は、地方自治情報センターから提供されてから六カ月ぐらいまではそのまま保存されているという事務もあるということですね。
 そうしましたら、その六カ月間に、その六情報を使ってデータマッチングをするとか、そういうようなことは本当にないのかどうか。それから、直ちに消去するという事務以外の、ある程度この六情報が残る、保存されるというのは、二百六十四事務の中でどれぐらいの事務があるのか。そのあたりを明確にしていただかないと。
 なぜこれを聞いているかといいますと、さっき私言いましたように、マスターキーになる可能性があるんです、六情報。特に、十一けたの番号を振ったということについて、個人が直ちにその番号十一けただけで特定できるわけですね。それは、情報を集めたい人にとっては物すごい値打ちがあるわけですよ。まあ、これは民間には行かないというふうになっているわけだけれども。ですから、それが六カ月も何カ月も提供したまま残っているというようなことになること自身が、私は非常に不安でしようがないんです。
 したがって、どういう事務がそれぐらいの期間あるのか、そして、すぐ消去するということはできないのか、その辺をもう少し明確にしてほしい。そして、その間にマッチングしたりして別のところに行くというようなことは本当にないのか、そういう疑問に、不安に答えていただきたい。
畠中政府参考人 六カ月というのは、旅券の場合の例を申し上げたものでございまして、その間に目的外に活用されるんじゃないかという御懸念を示されましたけれども、それは法律の規定で、先ほど申し上げましたように、目的外に利用してはいかぬと書いてございますので、そういうことはないというふうに私どもは考えております。
 それから、先ほど私は、旅券の事務とそれから恩給の事務、二つの例を挙げて、恩給につきましては照合した後直ちに消去する、旅券は六カ月保有する場合もあり得ると申し上げましたが、例えば、そのほかの例を申し上げますと、地方公務員共済年金事務につきましては、これは恩給と同じように本人確認情報を直ちに消去するということになっておりまして、大体直ちに消去するというものが多うございますが、場合によっては、先ほど申し上げましたように、旅券の場合、六カ月後に失効するということになっておる関係上、そういうことになっておる例もあるということでございます。
春名委員 では、その問題を三点確認し、最後の答弁をしていただきたい。
 一つは、一定期間六情報が保有されるという事務がどういうものがあるのかを一覧表でお示しいただきたい。
 第二、禁止規定があるから大丈夫だというふうになっているんですが、当時から議論になりましたが、罰則規定はないのです。目的外にそれを利用するということについて、罰則規定もないからだめだという議論が相当あったわけです、この住基台帳のネットワークの議論のときには。確実にするために罰則をつけるべきではないかということが第二。
 第三は、技術基準について、「遅滞なく、」という表現はそういう意味だということですけれども、それぞれの省庁の個人情報保護のガイドラインの記述も、ふさわしく、直ちに消去するというようなものをつけ加えるということも必要ではないかと思います。
 念には念を入れて、これだけの住基台帳に対する不安が広がっているわけでありますので、今述べた三つの点を、今答えられることがあれば答えていただいて、検討も含めて提案をしたいと思います。
畠中政府参考人 第一点の、すべての事務について本人確認情報を直ちに消去しているかどうか調べろという御指摘でございますが、これは、各省庁に確認する必要もございますので、かなりの時間がかかると思いますので、ちょっと検討させていただきます。
 それから、罰則でございますが、これは、罰則規定を設けるかどうかにつきましては、大臣も個人情報保護法の御答弁で答弁されましたように、それだけの当罰性があるかどうかということでございますが、住基に関してお答えいたしますと、いろいろ守秘義務等も課しておりますので、罰則を科すほどのものでもないというふうに考えております。
 それから、省庁の個人情報のガイドラインとか規程に消去期間を設けるべきではないかということでございますが、これは、住基以外の個人情報の取り扱いにも関係いたしますので、ちょっと私どもの方からはお答えは差し控えさせていただきます。
春名委員 最後にしますが、消去の期間を各省庁で設けよというのは、各省庁が持っている個人情報保護のガイドラインをすべてそういうふうにせいという意味ではなくて、そこにつけ加えて、住基台帳からとる六情報を使う場合には、それを使った後には直ちに消去するということをそれぞれの省庁のガイドラインに明記すれば済むことなので、そういうことを検討してほしいということが第一なんです。
 同時に、罰則問題については、当時からも議論がありましたけれども、やはり住基台帳というものの意味合いを認識する必要があると思うんです。一億二千万人すべてに違う番号が十一けたで振られているわけです。その番号がすべての情報を集めるキーになる可能性が十分あるわけですね。したがって、私はさっき、六カ月間も保存されているんだと思ってびっくりしたんですけれども、二百六十四事務に、全部が全部じゃないですけれども、使われていくわけですね。
 ですから、こういうことで厳密に、目的外には住民票コード、六情報は使わないということを本当にはっきりさせないと、それでこそ国民の信頼も得られていくというふうに思いますので、私は、その点はぜひ御検討をいただきたいというふうに思います。
 その点を最後に、よろしければ大臣にも答弁をいただいて、終わりたいと思います。
片山国務大臣 住基法は罰則がないわけじゃないんですよ。守秘義務違反は一番きつい罰則をあれしておりますし、刑罰というのは、勝手にちょっと考えて、これは刑罰にしましょうということにはならないんです。当罰性、具体の権利利益の侵害、構成要件がきちっと書けるかどうかというようなことがありますので、委員の意見は意見として承っておきます。
 それから、住基のネットの確認をした後は、必要がなくなれば消去するのは当たり前なんですよ。必要がある間は残さないと二度手間三度手間になるんです、それだけの話でございまして。それは、指定情報処理機関と各省が御承知の覚書を結んでおりますから、契約を、それをしっかりやっていく、こういうことでございます。
春名委員 では、時間が来ましたので以上で終わりますが、引き続き、いろいろな議論をしなきゃいけないことがあると思いますので、深めていきたいと思います。
 以上です。
村井委員長 続いて、北川れん子君。
北川委員 社民党・市民連合の北川れん子です。
 きょうは、裁判管轄の問題についてお伺いしたいと思います。
 政府案では、開示、訂正、利用停止などの明確な規定を設けることで個人の権利利益を保護することとしていますが、目的外利用、外部提供に対する個人の権利保障としては、利用停止請求と不服申し立てによる行政救済を挙げています。開示、訂正、利用停止については、単に請求権を法で保障しただけでなくて、請求が拒否された場合の行政救済、そして司法救済も含めて権利として保障されたと理解してよろしいのでしょうか。
片山国務大臣 もちろん、開示請求やいろいろな請求がありますね。その決定について不服があれば、審査会の調査審議を経て結論を出す、こういう仕組みになっております。それも不服があれば訴訟が起こせるわけでありますから。そういうことで救済手段をとっておりますし、事前のものについては、総務省が法律の所管でございますので、いろいろな事前チェックをやる、こういうことでございます。
北川委員 今のお言葉では、最近は、行政救済と司法救済を同時並行で請求されている方もいらっしゃるということで、今のは、保障されたと理解していいのかどうか、少しわからないんですが。
 処分庁の所在地によって遠隔地で裁判を行った場合、先日も阿部議員の方から言わせていただいたんですけれども、コストの面から十分に権利が保障されない場合も出てくると考えられます。例えば、原告一人と弁護人一人が沖縄の県庁所在地の那覇から東京地裁に一審で十回通ったとして交通費を試算すると約百三十万円、片山大臣の地元である岡山県から同じ試算をすると約七十万円、細田大臣の地元である島根県からだと百万円弱かかるというふうになります。一方、東京の場合は一万円もかからない。
 憲法の平等性から見てもこういう違反的事項があると思うんですけれども、いかがお考えでいらっしゃいますでしょうか。
片山国務大臣 その金額の積算の基礎が、私、定かでないのでね。まあ、それはそれとしまして、行政事件訴訟というのは、委員、全部そうなっているんですよ。それがおかしいと言うなら、管轄制度を直してもらわないかぬ。司法改革、今一生懸命取り組んでいますから、その中で大いに議論していただきたい、こういうふうに思います。
 行政事件訴訟というのは、被告である行政庁の所在地の裁判所に提起するんですよ。それが、証拠を集めたりいろいろなことで、これは適当だ、こういう判断で今の管轄制度はできているわけですから、それをやめろと言うなら、根っこからひとつ御議論賜りたいと思います。
北川委員 国会での議論という話も出たんですが、今のは交通費なんですよ。JRとかバスとか飛行機とか地下鉄とか、いろいろなものを勘案しまして交通費として出した試算であるとお伝えしておきたいと思います。
 地方に一部権限を移譲されているわけですけれども、多くの個人の情報が、自分の所在地にある、当事者の、個人の所在地にあるというふうなことは、お認めになったと理解してよろしいんでしょうか。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 まさに個人情報はいろいろな行政機関の業務の現場で取り扱われることが多いわけでございまして、教育あるいは大学ですとか、あるいは病院ですとか、そのほかいろいろな許認可事務も現場機関で取り扱っている例が多いわけでございます。したがいまして、現場にできる限り開示の権限を委任いたしまして、できるだけその申請者に近いところで訴訟等が行われるように努力していきたいと思っています。
北川委員 先日の委員会の答弁でも、国立病院や学校を例示して説明をされました。しかしながら、実際に個人情報が地方に分散されているか把握をしていらっしゃるのかをまずお伺いし、国立病院や学校はさまざまな個人情報のある分野の一部分であるということもあり、裁判管轄の特例を設けてはいかがかというふうに思うのですが、どのようにこのことをお思いでいらっしゃいますでしょうか。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 個人情報の所在を全部詳細に把握しているわけではございませんが、先ほど申し上げましたように、個人情報というのは、多くは現場の機関で、申請とか届け出とか、それからいろいろな行政サービスに伴いまして取り扱われるものでございますので、一般的には現場の機関に多く保有されているのではないかと考えております。
 裁判管轄の問題につきましては、先ほど来大臣から御答弁申し上げておりますように、行政事件訴訟法の原則は被告行政庁の所在地、こういうことで、これは民事訴訟法におきましても、被告の所在地で裁判が管轄されるのが原則でございまして、そういう原則の議論として司法制度全体の中で議論されるべき問題で、この個人情報保護特有の問題ということではないのではないかと考えております。
北川委員 九八年の情報公開法の議論の経過を議事録で読ませていただきましたけれども、塩野宏成蹊大学教授も述べられていますが、必要があるときは個別の法律を逐次制定していくというのが民主国家の常道だというふうにもおっしゃっておりますし、先ほど、国会でのという御答弁もありました。
 次に、片山大臣にお伺いしたいんですが、今、先ほどおっしゃいました行政機関情報公開法三十六条では、特定管轄裁判所の管轄の特例が認められて、八カ所の高裁所在地を裁判管轄として条文化したわけですよね。均衡ですよね。あのときに、多くの議論を呼んで、したわけで、均衡からしても、裁判管轄の問題は司法制度の改革の結果を待たなければいけない、判断できないというのは、私はおかしいのではないか、いささかおくれているのではないかという気がするんですが、片山大臣、いかがでいらっしゃいますでしょうか。
片山国務大臣 情報公開法のときには大議論がありまして、あれは衆議院での修正なんですよ、国会の修正なんですね。出した案は、行政事件訴訟の管轄だったんですよ。だから、私は、それは大いに議論していただくのは一向に構わないので、そうなるかならないかは別にして、そう思いますよ。だから、この情報公開法だけが特例なんですよ、あとは全部裁判管轄なんですよ、今言った民事を含めて。
 ただ、情報公開と今度の個人情報保護が違うのは、情報公開の場合には、比較的中央の省庁に決定権があるんですよ。今度の個人情報保護は、個別の、個々人の情報ですから、今言いましたように、統計的に言うと、医療情報と教育情報が多いんですよ。医療情報というのは、病院ですよね。教育情報といったら、大学だとか高等学校だとか教育機関ですよね。そういう意味では、地方にかなり決定権があるので、情報公開とは違うなという感じを私は持っております。しかし、それは、実態はばらばらだと思います、恐らく各省のあれで。
 私どもは所管の省として、各役所には、できるだけ地方におろしてくれと、請求される国民の皆さんの便宜のために、権限をおろしてもらえれば広がるんですから、そういうふうに今お願いしているところであります。
北川委員 転居という事実とかもあったりするわけでありまして、今、司法制度改革検討委員会、行政訴訟検討委員会の方も十五回まで進んでいるというふうに聞いてもおりますし、司法制度改革によって管轄の問題が十分に解決されない、情報公開法、何人も請求できるわけですから、そのとき初めて多くのことに気がついて、特例で認めたわけではなくて、時代背景的に必要なものだということで認めたというふうに思っておりますので。
 時間的に行政機関法の施行に間に合わない可能性は否定できないと思うんですよ。個人情報保護法、今審議をしているわけですけれども、まだ司法改革の検討委員会では結論が出ていないという点もあり、こちらの方が今審議をしている過程であるということを思うと、何の手当てもなくてもいいと思われているのかどうか、その辺もお伺いしたいと思うんです。
片山国務大臣 制度の根幹はなかなか、これは大議論ですから、だから、運用上できるだけ権限を現地におろしていただいて、開示決定等の権限を、そこで国民の皆さんが利用しやすいような、司法救済ですから、そういうふうにしたらどうかと私は考えておるので、何にもしないなんて考えていません。できるだけ委員と同じような立場で、国民の皆さんには便利にした方がいいな、こう思っておりますけれども、制度の問題は、これは根幹的なことですから、これはこれで議論していただかなきゃいかぬなと。運用上、できるだけ利用しやすいものにすべきではないかと考えております。
北川委員 法的に情報公開法で規定があるので裁判管轄の特例を設けても問題はないはずだ、そこの点は一緒の認識であると思うんですけれども、情報公開法について、当時の瀧上総務庁行政管理局長が、九九年のジュリストで「情報公開法の制定経緯及び概要」というのをお書きになっていらっしゃいます。その中では、裁判管轄について、先ほど片山大臣がおっしゃった、「与野党協議の結果、当事者間の公平、証人等の便宜等を考慮して、高等裁判所所在地(全国八カ所)にある地方裁判所にも訴訟提起を可能とする特例規定を設けるとともに、」云々と経緯を説明していらっしゃいます。
 行政機関法案では、今回の法案ですね、こうした当事者間の便宜がどう図られているんでしょうか。一部委任ということをおっしゃったわけですが、それ以外では何かございますでしょうか。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほどの瀧上元局長の説明は、まさに今大臣から申し上げましたように、情報公開法の国会論議におきましていろいろな議論がございまして、情報公開法の場合は、まさに政府の説明責任を全うするという観点からの制度で、割かし東京、中央で開示決定をするようなケースが多いということもこれあり、そういう議論になったものと考えておりますが、この個人情報保護法制の問題につきましては、先ほど来御答弁申し上げていますように、原則は原則として、その上で、できるだけ地方において開示決定が行われるように権限の委任等を進めていくということを考えているところでございます。
 さらに、この訴訟の問題にとどまらず、その前段にございます、行政庁の処分に対する不服審査における情報公開・個人情報保護審査会の審議に当たりましても、できるだけ地方の方たちの便宜を考えるということで、委員の地方出張によりいろいろお話を伺うとか、そういうような規定も審査会設置法のところで設けさせていただいているところでございまして、そういう地方に向けた配慮をしているところでございます。
北川委員 根幹的な配慮が情報公開法のときにできたわけですから、個人情報保護法の折にもできるのではないかという趣旨でお伺いしているわけです。
 第三回の検討委員会の方では、宇賀教授も次のようにおっしゃっています、現状では管轄について不均衡が生じているので行政事件訴訟法第十二条を改正して拡大均衡を図るべきだと。九八年のときの議論のときの参考人として教授が来られたときは少しこの前向きさが違ったわけですが、去年、昨年の第三回のときの検討委員会ではこういうふうにもおっしゃっていますし、例えば阿部教授も、管轄について行政庁のあるところに訴えるのはお上に直訴する時代からの産物ではないか、むしろ逆に、行政庁は適法な処分を原告に送付する義務があるから債務の履行地を管轄する裁判所も管轄権を有するとなるのではないか、被告の方は全国に代理人を送れば困らないと。また、日本弁護士連合会の方では、管轄について、現在は行政庁の所在地を管轄する裁判所に訴えるが、それでは全国の住民から見ると非常に不便なので、情報公開のような特定管轄の制度をつくり、各住民の住んでいる近い地域でも訴訟が提起できるとすべきだというふうに述べていらっしゃいます。
 そこで、官房長官にお越しいただいたのでお伺いしたいと思うんですけれども、この法案のもととなりました個人情報保護法制化専門委員会でも、九八年、平成十年でしょうか、高度情報通信社会推進本部の決定がございます。これは内閣総理大臣が長になりまして、官房長官、通産大臣、郵政大臣が副本部長という形でできておる内閣の意思決定機関の一つでございます。
 官房長官だから、個人情報保護法とは深く、メディア規制の問題、スポークスマンでいらっしゃるという以外に、もっと根幹的な前提として深くかかわっていらっしゃるというふうに私は理解をしております。今のままだと、東京地裁にしか提訴ができないというふうになり、裁判管轄問題にしても、司法制度改革の問題というならば、司法制度改革本部長であるのは総理でいらっしゃるというわけですから、やはりそれを支える官房長官として、ぜひこの議論、検討委員会の方でも、目前まで来ているというところなんですけれども、ゴールは目前というところだと思うんですが、いかがお考えか、お伺いしたいと思います。
福田国務大臣 お言葉でございますけれども、総理を支えているのは私だけじゃないんですよ。片山大臣も細田大臣も、みんな支えているんです。ただ、この法案の担当大臣は片山大臣それから細田大臣、こういうことになっておりますので、ですから、そういう多少言いがかり的な感じでもって私にお尋ねになるのはいかがかな、こういうふうに思っております。
 先ほど来のお話を伺っておりまして、これは法案担当大臣でございます片山大臣が十分答弁をなさっていらっしゃるというように思います。そういうことでありますので、これをもって内閣としての正式な答弁とお考えいただきたいというように思っております。
北川委員 言いがかりという言い方は少し心外でありまして、その前提は御説明したつもりでありますし、きょうの官房長官のあいていらっしゃる時間と私の質問時間の順番の時間が一緒になりました。一時間であるということで、私の方も質問を準備しておりますので、次々の質問に対してもそういう言われ方をぜひなさらないようにお願いをしたいと思います。
 次に、死者の個人情報という問題についてお伺いをいたしたいと思うわけであります。
 基本法案の方にまずお伺いしたいので、細田大臣が担当というふうになると思うんですが、第二条で、「個人情報」を「生存する個人に関する情報」としております。いかなる死者の個人情報もこの法の対象から外れるんでしょうか。
細田国務大臣 法案第二条第一項では、今御指摘のとおり、個人情報の範囲につきまして、「生存する個人に関する情報」と規定いたしまして、死者に関する情報は除かれております。これは、法案が、個人情報の本人を対象として、本人の権利利益の侵害を未然に防止することを目的としており、遺族などの第三者の権利利益を保護することまで意図するものではないためでございます。
 なお、死者に関する情報が、同時に遺族等の生存する個人に関する情報でもあるという場合には、その生存する個人に関する情報として、法案の対象となります。
北川委員 そうですよね。個人情報は本人からの請求が前提でありますので、今のお答え、そしてこの答弁は、そうではないという御答弁をいただいたと思うんですけれども。
 では、死者の個人情報について、どのような基準で対象とするかを具体的に考えていらっしゃるのかどうか、お伺いしたいと思います。
藤井政府参考人 御説明いたします。
 多分、東京都が開かれた研究会の報告も参考に御質問いただいているんじゃないかなと思っております。
 ただ、率直に申しまして、やはり東京都の研究会というのは、東京都の条例に基づいて、いろいろな東京都の条例の運用上生じてきた問題、それを中心に御検討されたものだと思っております。無論、非常に重要な参考資料ということで、たしか行政機関等の個人情報の研究会を開いたときも、あの資料もいわば検討資料として参考にして議論されていたということは記憶しております。
 いずれにしても、今回、国の法律としてこういう条文を規定したということでございまして、なかなか東京都の事例をそのまま当てはめるというのもちょっと無理があるかなと思っております。
 ただ、いずれにしましても、今大臣から御答弁申し上げた中で、遺族等の情報も、故人の個人情報、亡くなった方の個人情報に相当する場合、いわば競合する場合、具体的に言えば、これは難しいんですけれども、例えば、だれに関する個人情報という場合でも、お医者さんの署名入りの診断書はそのお医者さん個人に関する情報でもありますし、患者さんの名前があったら患者さん個人に関する情報でもあるわけです。というふうに、亡くなった方の個人情報といったって、やはり御家族の方の個人情報でもある場合があるわけでございまして、そういった場合は、御家族の方の御本人の個人情報でもあるわけですから、その方が開示請求なりするということはできるということになろうかと思います。
 ただ、相続人ということになりますと、これはいろいろ、時系列的に、相続人になる可能性のある状態の場合とか、あるいは相続人といったって、お子さんが全員なっておられるわけでもないわけでございます。やはり、いろいろケース・バイ・ケースで考えられるということになろうかと思いますので、なかなか今の段階で基準とかいうのは、お答えするのは難しいかなと思っております。
北川委員 基準は難しいと言いながら、私も聞きたかった東京都のことで今御説明をいただいたわけですが、まさに情報はだれのものというところが基本になっていくと思うんです。
 片山大臣にお伺いしたいわけですが、現行の行政機関法のコンメンタールで、「逐条解説個人情報保護法」では、相続財産に関する情報として、
 死者に関する情報の一例である相続財産に関する情報は、被相続人たる死者に関する情報であるが、これは同時に相続人に関する情報でもある。しかし、相続財産に関する情報が、相続人に関する情報として本法の対象となるためには、さらに、当該情報により相続人を識別できる必要がある。相続財産に関する情報に相続人の氏名が含まれている場合などは、個人を識別できるものとして、本法の対象となる。
ということですね、識別できるので。
 一方、被相続人の氏名等のみを含む場合については、当該情報のみでは、相続人が誰であるかを識別できないので、本法の対象外となる。
そういうふうに解説しているわけですけれども、これだと、相続財産に関する情報でも、相続人の氏名が含まれるなど相続人個人が識別される情報が含まれている必要があるが、政府案ではこの点をどういうふうな扱いとしてお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 現行法の行政機関個人情報保護法の関連のコンメンタールでのお話でございますが、基本的には、新しい行政機関個人情報保護法案におきましても同じような扱いになります。
北川委員 同じになると。
 では、先ほど基準はないとおっしゃったんですけれども、相続財産以外にどのような死者の個人情報がこの法の対象となるんでしょうか。
藤井政府参考人 まさにいろいろなケースがあり得ると思いますものですから、そういったいろいろなケースを今後調査するなりして判断しないとその基準というものはできないということを申し上げたつもりでございます。
北川委員 では、今のところは、調査をしていないから法の対象となるものはゼロだというふうに理解してよろしいんでしょうか。
藤井政府参考人 基本法の問題ということでお答えいたしますけれども、まだ法律が施行されていない段階でございますので、できるだけあらかじめ調査してお答えするのも私どもの務めだとは思っておりますが、そういう段階で、現実にどういう場合があるかというようなのは、そんなにあらゆる状態を調べるわけにもいかないものですから。いずれにいたしましても、法律施行に向けて、必要に応じて調査して検討していきたいと思っています。
 ただ、松田行政管理局長からも御答弁があったように、行政機関の現行法が既に施行されておりまして、それに沿ったものについては、基本法についても同じような取り扱いになるんではないかなと私どもも考えております。
 そういう意味では、現時点でゼロになることが可能性が高いとは全く考えておりません。単純な話でございますけれども、いわばお父様の情報に子供さんの名前も書かれているというような場合は当然あり得るわけですから、そういった場合はお子さんが請求できるということは、当然あり得ることだと思っております。
北川委員 死者の個人情報の取り扱いについては、これから明確にしていくつもりがあるということだろうと思うんです。
 では、死者の個人情報の取り扱いについて、ごく一部は法の規制の対象となっていますが、死者の個人情報は、個人情報保護法制の規制を受けずに行政機関や事業者が自由に利用、提供等ができるということになるんでしょうか。
藤井政府参考人 個人情報保護法制というのは、確かに、個人情報の取り扱いを適正にする、守るという側面と、あと、今よく論点になる、本人がチェックするために開示請求をする、訂正する、そういう二つの局面がございます。
 開示請求とかそういう面では、私ども今まで御答弁したことになるわけですが、前段の、個人情報の適正な取り扱い、例えば目的明確化とか、目的以外の提供を原則禁止しているとか、そういう守るための規律の部分については、これも定義上は死者の情報というのは除かれているわけですから、法律上は保護する必要がないということは、そういう言い方をすればそうなるんですが、現実にはもう一体として管理されているのが通例だろうと思いますので、実態上は、死者の個人情報なんかも含めて適正な管理が維持されていると思っております。
 ただ、別途、不要な死者に関する情報というのは、削除するとか、そういうこともやはりまだやる必要があるという意味で、逆に言えば、死者に関する個人情報というようなのは、個人データベースの中からはもう消去されているということもあろうかと思います。ただし、それも必要に応じということでありますので、いろいろなケースはあろうかと思っております。
北川委員 今のところ、とりあえず法的には死者の情報に関しては担保ができていないということを言われたと思いますので、先ほども違う観点から消去の問題や廃棄の問題が提案されていましたけれども、死者の情報についても、ぜひ引き続き御検討いただきたいというふうに思います。
 それで、個人情報の主体が死亡した場合、どのように生存する個人と死者の個人情報を区別することになるんでしょうか。実務上は、生存する個人と死者の個人情報を分離して管理することは難しいと思うんですが、いかがでしょうか。
藤井政府参考人 お答えいたします。
 これも本当にあらゆるケースが想定されるものですから、一般的にこうなるというような御説明はなかなかしにくいところでございます。
 例えば、年金給付とか、そういういろいろな行政サービスに個人データを使っている場合は、まさに今回の住基ネットなんかとの連結がうまく図られているということで、死者、亡くなられた方の情報というようなのも削除しちゃうということになるので、そういう意味では、先生御指摘のような問題は、むしろなくなるんだろうと思っております。
 それ以外に、例えば私ども意外とびっくりしたのは、個人データベースといっても、著者名の個人データベースなどというのもあるんです。これも、いろいろ仕事に使う場合があって、こういった場合は、亡くなった方を一々削除するかというと、そういうことは余りしないんです。
 あと、例えば論文なんかの作者のリストなんかの場合も個人データベースになっちゃうことがあるんですけれども、こういう場合は、論文は、著者が亡くなられてもやはり重要な参考資料として残す必要があるということでございます。こういった場合は、逆に言えば、死者のお名前、これは残るわけですが、ただ、これは、残ったからといって何か問題があるかといったら、そんなに問題があるということも言えないかと思います。
 要は、いろいろケース・バイ・ケースなんだろうと思います。ケース・バイ・ケースで、やはり、亡くなった方の権利利益を侵害しているのは新たにはないとはいうものの、適正な行政を推進するとか、あるいは民間だったら、事業の適正な執行に支障がある、あるいは、ほかの第三者の権利利益を侵害する可能性があるというような場合は、多分そこは、事業者の方々もチェックして、消去するなり、あるいは必要なものを残すなり、あるいはちょっとうっかり残る場合もあるのかもしれませんけれども、そういうような対応になるかと思うんですが、適正な取り扱いという部分については、そんなに明確に区分して管理するということも、まあ、必要な場合もありますし、そんなに必要のない場合もありますでしょうし、一概に言えないというところかと思います。
北川委員 多分、すべてのことが入っている藤井審議官がそれだけ長くお答えになるわけですから、いろいろな方向にバランスが揺れているということだろうと思うんです。今のをお伺いしていると、ケース・バイ・ケースというお言葉も出ました。住基ネットという問題の深刻さもこの問題ともかかわってくると思うんですが。
 ということになりますと、個人情報に対する開示請求等は一切認めないということではないというぐらいの緩やかな線はあるというふうに理解してよろしいでしょうか。
藤井政府参考人 これも先ほど来大臣以下御説明していたとおりでございますけれども、お亡くなりになった個人情報といっても、その相続人あるいは御家族の個人情報でもあるという場合は、相続人あるいは御家族の方みずからの個人情報に対する開示請求ということで、それは可能な仕組みになっているということでございます。
北川委員 ありがとうございます。
 そうしましたら、次に、みなし拒否規定について質問をしたいと思うわけですが、これも情報公開制度のときに審議になった点であります。
 片山大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、情報公開法では、開示請求に対する決定期限が原則三十日、それで決定できない場合は三十日の延長が認められていますが、さらに特例として、それでも決定できない場合は、期限を法律で明示せずに延長を認めています。
 政府の行政機関個人情報保護法にも、開示請求、訂正請求、利用停止請求について同様の規定があるわけですが、訂正請求、利用停止請求というのは開示が決定にならないとわからないわけですから、なかなかそこに踏み込むのには時間が要ります、非開示という問題もありますので。
 それで、情報公開法では、この決定期限の特例が適用されたケースが、昨年度の運用で五%ありました。そして、決定期限を半年から一年延長したケースは八百六十九件ありました。政府の行政機関法の案にも同様の規定があるため、同じことが起こる可能性があると思うんですね。
 個人情報保護の場合、情報公開法よりももっと、このような長きにわたって、長期間にわたって決定がされないということは非常に深刻な問題、先ほど、遺産の相続とか自分の未成年の子供の死者の情報とかというぐあいに、個人情報というのは密接にかかわってくる問題があるわけですので、特に深刻であると思うわけです。
 そして、きょうも議論になっていた目的外利用や外部提供なんですが、開示、訂正や利用停止請求によって権利を保護する旨の答弁は出ているんですが、もし決定が長期にわたってなされない場合、片山大臣は答弁では、出している、八八%ぐらいまでいけますよとおっしゃっていたんでしょうか、御答弁になっているんですけれども、それでも、その間不当に目的外利用等がされることにもなりかねず、早急な対応が必要なはずであります。政府の法案ではそこは保障されていないようにも思うんですが、いかがでしょうか。
片山国務大臣 情報公開法では、三十日以内の処理が八三%なんです。それから、六十日というのが次の特例ですね。それからさらに、どうにもならぬというのは六十日を超えてもいい、こういうことになっているのが、今ちょっと数字を持っておりませんが、恐らく委員が言われた数字ではなかろうかと。これも大分早くなったんですよ、だんだんなれてきまして。最初はやはり試行錯誤みたいなところがある。
 そこで、今言われましたように、個人情報保護についても同じ仕組みをとっておりますから、各省庁には、できるだけ早く処理をする、こういうことですね、それをさらに徹底してまいりたい、こういうように思っておりまして、言われるように、長引けば長引くほど派生的ないろいろなことが起こりますから、早い処理にこしたことはないと思っておりますので、ぜひそれは徹底してまいります。
北川委員 みなし拒否規定というのは、みなしても訴訟に踏み切ることができるということでありますので、開示決定期限が長期間にわたって延長された場合、不服申し立てや裁判もできないことになります。ますます個人が権利利益を守ることが難しくなり、野党案のような、三十日の決定期限と延長期限三十日の合計六十日を過ぎても開示決定等ができない場合は請求が拒否されたとみなすことができるというみなし拒否の規定を設けることによって、不服申し立てや裁判により個人がみずからの権利利益を守ることができるように立法措置すべきではないかというのが気持ちなんですが、今の御答弁でありました。
 このみなし拒否ということで、先ほど申し上げた点を含みますと、みずから当事者が権利利益を守ることにつながるというふうにお思いになるかどうかだけお伺いしておきたいと思います。
松田政府参考人 開示請求の対象となります行政情報、質、量とも極めてさまざまでございまして、開示の決定に要する期間もさまざまであるわけでありますが、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、情報公開のケースでも、かなり期限を守ってやっておりまして、平成十三年度でいいますと、四万四千件の開示決定をしているわけでありますが、そのうち三万七千件は三十日の期限内、八三%ということでございます。それから、三十日さらに延長というのが五千三百件で一二%。それから、法十一条というのがございまして、大量で、あるいは非常に繁忙で、どうしてもその期間内に行えないものは、ちゃんと期限を付して、理由を示して、さらに一部は必ずその前に出してという制度でやっています。
 しかし、そういうことで、ほぼ一〇〇%近い措置を法令にのっとってやっているわけでありますが、中にはその期限を守らず徒過をしたというものがありまして、そこは厳しく指導しているところでございます。
 そういうことでございますが、先生御指摘の、今の野党案にございますように、そういう期間内に決定がなされない場合にそれは請求を拒否する決定があったものとみなすというような規定を置きますと、これは逆に、後のいわば請求者の手だては、不服申し立てとか裁判に訴えるより仕方がなくなりますので、むしろ、そういう一律の規定を置くのではなく、できるだけその期限内に決定がなされるように努力していくというのが、逆に、請求者にそういう御迷惑をかけないで、負担をかけないでやっていくということにもつながるのではないかと考えております。
北川委員 限りなく一〇〇%に、情報公開制度でも違うという点と、個人情報保護法の性質が違うという点を、ぜひ十分にかみ含めていただきたいなというふうに思います。
 次に、目的外利用と外部提供に移りたいと思うんです。
 政府の行政機関法案では、第十条の「個人情報ファイルの保有等に関する事前通知」というのが、第一項六号で「記録情報を当該行政機関以外の者に経常的に提供する場合には、その提供先」とあります。これは公示してやるわけですけれども、現行の行政機関法に同様の規定があるわけで、先日の答弁で、現行の行政機関法で目的外利用、外部提供した個人情報ファイルとして、五十五件ですけれども、数件あるとおっしゃっていました。
 五十数件というのは、経常的に外部に提供されているものも含む件数なのか、それとも、それ以外に目的外利用、外部提供されたものなのでしょうか。
松田政府参考人 現行法におきます個人情報ファイルの公表の制度でございますが、総務大臣への事前通知におきまして、一定の個人情報ファイルにつきまして総務大臣に事前通知がなされるわけでありますが、その中に経常的な提供先というのが盛り込まれているところでございます。
 それから、別途それ以外に、目的外利用・提供したものを含めまして、施行状況調査ということで把握をいたしておりまして、先般御説明しました約五十数件といいますものは、その両方を合わせたものでございます。
北川委員 ということで、経常的な提供先の分だけが公示になっているということでありますが、では、以外のものはどのような状況になっているのか。要するに、経常的提供以外のものについて逐一記録することは過大な事務負担を招くおそれがあることなどから、法律上一律に義務づけることは適当でなく、各行政機関の判断にゆだねることとしたものであると。
 先ほど、相当な理由、特別な理由のところでも同じような問題で提起がありましたけれども、今、経常提供以外のものの把握というものは、やっていらっしゃるんでしょうか。
松田政府参考人 新しい法案におきましても、総務大臣への事前通知ということで、一定の個人情報ファイルにつきまして事前通知をしていただきまして、その中で、経常的な提供先を含めて公表をいたしておるわけでございます。
 それ以外の、事前通知の対象外になっております個人情報ファイルは、先般来御答弁申し上げておりますように、送付リストのようなもの、あるいは一過性のもの、あるいはテスト的なもの等々でございまして、国民の権利を侵害するという可能性が少ないものでございますので、事前の通知、公表の対象になっていないわけでございます。
 いずれにしましても、それ以外のものも含めまして、本人が開示請求をしたりする関与ができるわけでありまして、かつ目的外利用・提供は厳しく制限されるということでございます。
 今、目的外利用・提供について記録を残しておくべきではないかというお話でございますが、必要な場合は記録を残しておくことも必要かと存じますが、今後、技術面あるいはコスト面を踏まえて、運用の際に検討していく問題であろうかと思っております。
 やはり、個々の個人情報ごとに、これは膨大なものになりますので、一律に記録を義務づけていくということは、実効性にも欠けますし、行政のコストといいますか、そういう面からも非常に問題があるのかなと考えております。
北川委員 それよりも、内部で何が行われているかということを、第三者機関の問題でも、民間法の方はもちろんですけれども、行政法の方においても議論になっています。野党案には盛り込んでいるわけですが。
 政府の行政機関法では、野党案と異なり、第十条二項で、個人情報ファイルの事前通知の対象外となるものを一から十一号まで規定しています。総務省が把握しない個人情報ファイルが大量にあるわけで、大臣答弁では、目的外利用について、総務大臣の方もそういう状況については事前にチェックする権限も与えられておりますので、そういう制度と運用、両面から目的外利用は厳重にやってまいりたいと。
 先ほどの答弁と同じになるわけですが、個人情報ファイルでも、総務省が把握していないものもたくさんあるわけですよね。総務省に通知をするものとしないものとがあるというふうにお伺いをしました。総務省が把握していない個人情報ファイルの目的外利用、外部提供利用については、どのように把握し、これから個人情報保護法の中で管理するつもりなのか、お伺いしたいと思います。
松田政府参考人 御答弁申し上げます。
 先ほども御説明申し上げましたように、一定の重要なものにつきましては、総務大臣への事前通知ということで、あわせてそれが公表されるという仕組みに新しい法案においてもなっておるわけでございますが、そういう事前通知の適用除外になっておりますものは、一つは、特に秘匿性が高くて総務省が事前通知を受けて調整を行う余地が極めて乏しいものということで、国の安全ですとかあるいは外交上の秘密ですとか、そういうものに関連する個人情報ファイルで、防衛上の秘密やテロリストに関するような、そういうものでございます。それからもう一つは、犯罪の捜査等々に関連する個人情報ファイルでございまして、そういうものは事前通知の対象外になっております。
 それで、そのほかの対象外になっておりますものは、その個人情報ファイルの記録項目や利用のされ方から考えまして、個人の権利利益侵害のおそれが小さく、特に事前に総務省に通知を受けて調整する必要がないものということで、例えば職員の関係のファイルですとか、あるいはいろいろなテスト的な、試験研究とかそういうものに使うファイルですとか、あるいは一年以内に消去してしまうようなファイルですとか、あるいは郵便物の伝達の、いわば送付リストのようなものですとか、あるいはごく小規模なファイル等々でございまして、個人の権利利益の侵害のおそれが非常に小さいものというふうに考えております。
 そういうものも含めまして、別途、総務省としては法の施行状況を調査するわけでありますが、事前通知の対象になっております経常的な提供先以外の目的外利用等も含めまして、一定のものにつきましては調査し、取りまとめていきたいと考えておるわけでございます。
 ただ、すべての個人情報の目的外利用について一々に把握するというようなことは、極めて膨大な作業になるわけでありまして、それが、先ほど来申し上げておりますように、対象外になっておりますものは、国民の権利利益の侵害とか、そういう観点からしますと問題のないものが多うございますので、取りまとめていくということは考えておりません。
北川委員 考えていないというところをきっぱりと言われたわけですけれども、先ほど言いましたように、限られた目的外利用と外部提供の状況しか公表されていない、公示されていないわけですから、本人が、自分の個人情報がどのように利用されているかを知ることができないわけですね、通常の場合。よほどの事件、事故になった場合しか、そういうファイルがあろうとも想像だにしないというのが普通の人々の置かれている状況だと思うわけです。
 透明性が確保されていないのに、どのように事後的に権利保護をみずから求めることができるのか、今の御説明を聞いていてもわからないんですが、求めることができるのでしょうか。そしてまた、訂正請求や利用停止請求ができたとしても、これは開示が前提になるわけですけれども、請求が拒否された場合、裁判管轄の問題では、先ほどの御答弁、福田官房長官からも返ってきた答弁というふうになりますし、遠隔地での裁判となると、個人が大変な負担を負うことになります。
 やはり、何度も申し上げておりますけれども、第三者機関によるチェックによって、目的外利用、外部提供の透明性を図ることが根本的に必要なのではないかと思いますが、御答弁をいただきたいと思います。
松田政府参考人 先ほど、事前通知あるいは公表の対象になる、さらには施行状況調査等で目的外利用の状況を把握していく、そういう個人情報ファイル以外のものについては、権利利益の侵害の観点から問題が少ないということで特にそれを把握していくということは考えておりませんというふうに申し上げましたが、もちろん、そういうものも含めまして、個人には、本人には開示請求の仕組み、請求権が与えられるわけでありまして、その開示請求の手続をとっていただいて、みずからの個人情報を把握することが可能であるわけでございます。
 その前提となります行政文書がどのようにあるのかということにつきましては、別途、情報公開法におきまして、行政機関が組織的に用いている文書について、行政文書ファイル管理簿というものをつくることになっておりまして、それが、各機関等に備えつけて、あるいは公表されておりますので、それをごらんいただきながら、その他のものについても開示請求が可能になるわけでございます。
 したがいまして、一定の事前通知あるいは公表、さらには施行状況調査で取りまとめて把握していく一定の個人情報ファイル以外にも、そういう透明性といいますか、個人情報の開示請求に当たっての透明性の措置は講じているということでございます。
北川委員 しかしながら、限定されているものであり、通知が上がっているものだというふうになるわけですから、福田官房長官にお伺いしたいわけですが、目的外利用や外部提供の透明性を図るためにも何らかの対策、私たちは第三チェックを提案しておりますけれども、行革という点からということで否定をされていらっしゃいます。
 では、原則公表というやり方もあると思うんですけれども、この辺のお考えはいかがでいらっしゃいますでしょうか。
松田政府参考人 まさに、本法案は、個人情報についての権利利益を守るということで、個人情報については原則開示という、つまり、原則公表といいますか、本人に対して開示という制度になっております。
 一定の犯罪とか、あるいは先ほどちょっと申し上げましたような外交上の秘密とか、そういうものにかかわらないものにつきましては、原則、本人に開示するというのが本制度、本法案の基本的な趣旨でございます。
北川委員 基本的には、しかしながら、公表をされていない簿冊や通知の要らない簿冊があるということがわかったという上でお伺いしているわけですので、その点をぜひ検討していただきたいというふうに思います。
 それでは、官房長官の方に、この間議論になりました保坂議員のカーナビやインターネット携帯やインターネットの問題などですけれども。
 カーナビには、たくさんの情報があり、数千万の個人情報のデータベースがあると言われています。これを使って仕事や個人で目的地に向かうことは当たり前になっているけれども、この委員会で政府は、カーナビを反復し、継続して事業の用に供する者は取扱事業者だと藤井審議官が答弁し、細田大臣が、本屋さんや米屋さんが商売に使ったら事業者というのは常識論でおかしいと先日答弁され、きょう、午後からでしたか、議論の中で、宅配業者がカーナビを使用すれば事業者というふうな答弁がありました。
 政府内でやはり、きょうの御説明をお伺いいたしておりましても、まだ結論が出ていないというか、厳密には結論が出ていないのだなというふうにも思います。そして……(発言する者あり)いや、先ほど、宅配利用の場合はあり得るというふうにおっしゃっていらっしゃいますので、先日の答弁と余り域は変わっていないのだというふうに理解しております。
 やはり、内閣として責任を持って法案にしているわけですから、この定義の問題については、厳しくこれから問われていかれますし、問われなければならない点だろうと思うわけですね、日々、技術の革新ということもございますので。そこで、官房長官の見解をぜひお伺いしたいというふうに思います。
細田国務大臣 御質問がありましてからさらに詳細に詰めさせていただきまして、先ほども申し上げましたけれども、次のようになっております。私どもの見解でございます。
 インターネットの検索エンジンは、つまり、インターネットによりまして検索するという、この検索エンジンは個人情報データベース等には該当しない。
 それから、携帯ナビを含めまして、インターネット上で公開されているデータベースを利用することは、単に他人が提供するサービスを利用するものにすぎないから、個人情報データベース等を事業の用に供しているとは言えません。
 ただし、インターネット上から、政令で定める件数、五千件を想定しておりますが、それ以上の個人情報を自己のデータベースに取り込んで利用する場合などは別である。
 また、データを含むカーナビ等を購入などいたしまして利用する場合でありましても、カーナビ等に含まれているデータが、電話番号や住所表示、法人や公共施設等の名称のみであり、個人名が入った個人情報が含まれていない場合とか、個人情報が含まれたものであっても、件数が想定しております五千件を超えるものではない場合には、個人情報取扱事業者には該当しない。
 それから、カーナビ等が個人情報データベース等に該当する場合であったとしても、本法案は、反復継続し、社会的に事業と認められるものに対して義務を定めているものであり、単に自動車を運転する場合など日常生活において利用する場合については、個人情報取扱事業者には該当しない。
 また、例えば、宅配事業を行う者が個人情報データベース等に該当するカーナビ等を自己管理のもとで宅配事業に利用する場合などにつきましては、個人情報取扱事業者に該当することとなる場合はあり得るが、こうした場合には、大量の顧客データをコンピューター等で取り扱う場合と性格において変わりがない、そういう場合になり得るということを言っているんで、あいまいなことを言っておるわけではないんです。
 ただし、市販されているカーナビ等をそのまま事業目的の範囲内で使用する場合は、第二条第五項の「保有個人データ」に該当せず、開示、訂正、利用停止の義務の対象にならないのみならず、利用目的制限等の義務に違反するケースも実態上ほとんどないと考えられる。
 なお、個人情報データベース等を作成、提供する事業者は、当然ながら、本法が適用される。
 やや、先ほどもお答えしたのと重なって恐縮でございますが、これはもともと御党の保坂議員の御質問でございますので、きっちりとお答えする趣旨で申し上げた次第でございます。
北川委員 質問時間の終了も来ましたけれども、きょうの分の、前段で聞いている分の段階では、固まったというふうには私たちには思えないわけですね。そして、速度違反の測定目的のオービスとか、いろいろな情報があります。そういうことからいたしましても、今の、事業の用に供する、ここは私たち野党の方でも議論になったところでもありますので、ぜひ、これから以降、この問題の追及を深めていきたいということをお伝えしまして、質問とかえさせていただきます。
 ありがとうございました。
村井委員長 次回は、来る二十一日月曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.