衆議院

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第5号 平成15年6月30日(月曜日)

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平成十五年六月三十日(月曜日)
    午後一時一分開議
 出席委員
   委員長 高村 正彦君
   理事 浅野 勝人君 理事 中谷  元君
   理事 浜田 靖一君 理事 松下 忠洋君
   理事 末松 義規君 理事 中川 正春君
   理事 赤松 正雄君 理事 一川 保夫君
      荒巻 隆三君    伊藤 公介君
      金子 恭之君    北村 誠吾君
      小島 敏男君    近藤 基彦君
      新藤 義孝君    高木  毅君
      谷田 武彦君    谷本 龍哉君
      仲村 正治君    馳   浩君
      原田 義昭君    福井  照君
      牧野 隆守君    松浪 健太君
      松宮  勲君    宮腰 光寛君
      森岡 正宏君    伊藤 英成君
      大出  彰君    川内 博史君
      桑原  豊君    首藤 信彦君
      原口 一博君    平岡 秀夫君
      前原 誠司君    山口  壯君
      吉田 公一君    渡辺  周君
      佐藤 茂樹君    丸谷 佳織君
      佐藤 公治君    中塚 一宏君
      赤嶺 政賢君    木島日出夫君
      春名 直章君    今川 正美君
      金子 哲夫君    江崎洋一郎君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   防衛庁長官政務官     小島 敏男君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君
   政府参考人
   (防衛庁人事教育局長)  宇田川新一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 谷崎 泰明君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局軍
   備管理・科学審議官)   天野 之弥君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     石川  薫君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    林  景一君
   衆議院調査局イラク人道復
   興支援並びに国際テロリズ
   ムの防止及び我が国の協力
   支援活動等に関する特別調
   査室長          前田 光政君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月三十日
 辞任         補欠選任
  杉浦 正健君     馳   浩君
 田野瀬良太郎君     原田 義昭君
  谷本 龍哉君     近藤 基彦君
  大畠 章宏君     川内 博史君
  平岡 秀夫君     首藤 信彦君
  渡辺  周君     大出  彰君
  木島日出夫君     春名 直章君
  山谷えり子君     江崎洋一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  近藤 基彦君     谷本 龍哉君
  馳   浩君     杉浦 正健君
  原田 義昭君    田野瀬良太郎君
  大出  彰君     渡辺  周君
  川内 博史君     大畠 章宏君
  首藤 信彦君     平岡 秀夫君
  春名 直章君     木島日出夫君
  江崎洋一郎君     山谷えり子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案(内閣提出第一二〇号)
 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二一号)


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     ――――◇―――――
高村委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案及び平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として防衛庁防衛局長守屋武昌君、防衛庁運用局長西川徹矢君、防衛庁人事教育局長宇田川新一君、法務省刑事局長樋渡利秋君、外務省大臣官房審議官谷崎泰明君、外務省総合外交政策局軍備管理・科学審議官天野之弥君、外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、外務省中東アフリカ局長安藤裕康君及び外務省条約局長林景一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
高村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
高村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。末松義規君。
末松委員 民主党の末松でございます。
 二十五日に引き続きまして、まずは細かい点も含めて議論させていただきたいと思います。
 まず、自衛隊員が実際に現地に行ってみてどうなるかという点でありますけれども、逆に、自衛隊員が困らないような形でこの国会の議論も詰めておかなければなりません。そういった意味で、まずこの前、積み残しというか、私がはっきりとはよくお答えいただいていないところを含めて、再確認も含めて質問させていただきたいと思います。
 この前の私の質問に小泉総理は、自衛隊員が遭遇するであろうケースについていろいろと詰めた質問をしましたら、その可能性が五〇%あるか、あるいは一%でもあったら、それを前提として議論するというのは言葉の遊びだというふうに言われたんですけれども、ただ、私は、言葉の遊びということではないと思うんですね。本当にそういった意味で真剣に議論をしておかないと、これから自衛隊員の皆さんあるいはイラク復興職員の皆さんがある意味では命をかけて頑張っていただくということになるならば、本当に真剣な議論が必要だと思います。
 そのケースでまずお聞きしたいのが、この前も私は質問しましたけれども、自衛隊員が不幸にも拉致をされたケースで、これは捕虜になるのかどうか。
 これは相手側が、例えば戦闘員が、これは非戦闘地域でやるにしても、随時変化をするというお話がございました。そういった意味で、非戦闘地域でやっていたのが、たまたまそこに戦闘員、フセイン政権の残党あるいは残存勢力が来て撃ち合いになって、そして正当防衛的あるいは緊急避難的に対応したときに、自衛隊の方が不幸にも拉致をされてしまった、そういったケースでお聞きしたいんですが、そうなった場合に、捕虜という待遇が与えられるのかどうか。
 この前、外務大臣は、そのようなケースは想定できないということで言われたんですが、石破長官の方は、これは私も必ずしもはっきりよくわからなかったものですから、そこは、捕虜の待遇は与えられるのか。私の考えているところでは、捕虜という待遇は与えられないと考えますが、その点についてはいかがですか。
林政府参考人 お答えいたします。
 まず、事実の問題と、それから法律的な仕組みの問題と分けて考える必要があるかと思いますけれども、実態の問題としては、先日来大臣が申し上げておりますとおり、この法案に基づいて行います我が国の自衛隊の活動というのは、いわゆる非戦闘地域で行われるということでございますので、自衛隊員がイラクに残存する武装勢力等に捕らえられるような事態というのは……(末松委員「もうちょっとゆっくり言ってくれますか、はっきり」と呼ぶ)はい。失礼しました。自衛隊員がイラクに残存する武装勢力等に捕らえられるような事態は想定しておらないというのが基本的な事実の認識としての政府の考え方でございます。
 他方、法的な仕組みとしてどうかということがございますけれども、捕虜というもの、これは非常に一般的な意味での捕まった人というような意味ではなくて、国際法上意味のある形での捕虜という用語の使われ方と申しますのは、基本的には、いわゆる国際人道法、ジュネーブ諸条約等において規定されております考え方というものがございます。
 このジュネーブ諸条約等におきます考え方と申しますのは、あくまで、武力紛争の当事者の間における関係というものをどう規律するかということでできておるものでございまして、当初から一貫して申し上げておりますとおり、我が国の自衛隊は武力紛争の当事者にならないように行動するということでございますので、そういう意味において、武力紛争の当事者でない以上、武力紛争に適用があるジュネーブ条約というものが自衛隊の活動、武力紛争あるいは占領に関しますジュネーブ条約の規定というものがそのまま適用されるということはないということを申し上げておるわけでございます。この適用がないという意味、部分、その中に捕虜に関する規定もある、こういうことでございまして、捕虜となるという事態というのは想定されないということでございます。
末松委員 確かに、私もハーグ陸戦条約とか、あるいは一九四九年のジュネーブ条約、読みました。そして、安保理決議一四八三にも、一九〇七年のハーグ陸戦条約やそれからジュネーブ条約、全部引用があります。
 そういった中でお聞きをしているんですが、そうしますと、今の条約局長のお話ですと、日本の自衛隊が捕虜という待遇を与えられるためには、紛争当事国の戦闘員ではないということがまず第一点ですね。それと、あと、占領軍にも属していないという位置づけ、これもあるということですか。
林政府参考人 言葉足らずで申しわけございません。
 武力紛争の当事国、当事者の間において規律するジュネーブ条約というもののもとにおいて捕虜という待遇が認められるということでございますけれども、武力紛争の当事者でない我が国の自衛隊の要員というのは、そういう捕虜という待遇を与えられるという形にはならない。
 それでは、もうどういう待遇をされてもいいのか、虐待を受けてもいいのかといったことが御指摘として先般もあったわけでございますけれども、そこは、万一自衛隊員が武装勢力等に不法に身柄を拘束されたという場合、今、不法にと申しましたけれども、身柄を拘束するという根拠が基本的にないというのが私どもの考え方でございます。
 これは、ジュネーブ条約のもとでは、相手の要員をせん滅するか、あるいは戦闘能力を失った場合には、これを捕虜として捕獲し抑留することができる、そういう権利というものがあるわけでございますけれども、私どもの考え方では、この自衛隊員は武力紛争の当事者ではない、そういうものである以上、実際には、その自衛隊員は、安保理決議一四八三に応じて現地で復興支援活動を行っておるというわけでございますので、そういう要員を捕獲し抑留するという権利を武装勢力等が持つということはないというふうに考えております。
末松委員 権利がないというところまで言えるんですか。残存勢力からいえば、占領軍に協力している者、そして軍隊の記章をつけ、そしてフォースという言葉を使い、戦闘服も着て、彼らは、フセイン残存勢力からいけば、まさしくこれは敵対勢力、武器も持っている、そういうことになりませんか。彼らがそういうふうに認識しても自然じゃないですか。それを彼らが、不法にとかあるいはアタックをする、そういうことをする権利がないんですか。それは国際法上どうですか。
林政府参考人 これは冒頭申し上げましたとおり、事実の問題と法律の問題でございますけれども、法律関係の問題といたしましては、ジュネーブ条約のもとにおきまして、捕虜をとる資格がございます。捕虜になる、あるいは捕虜をとる、そういう関係に立ちますのは武力紛争の当事者ということでございますので、我が国の立場と申しますのは、武力紛争の当事者であったことはないし、これからもないという前提でございますので、そういう立場にある国の要員を捕虜として捕獲するということはできない、そういう権利がないということでございます。
末松委員 そうしたら、一般の民間人という位置づけなんですか。武装された民間人ですか。その位置づけをはっきりしてください。
林政府参考人 この位置づけというものをどういうふうに考えるかということでございますけれども、私どもの認識といたしましては、これは安保理決議一四八三に応じて、占領当局のもとに施政が行われておる地域におきまして復興支援を合法的に行う活動を行っている要員である、こういうのが国際法上の位置づけであろうというふうに思います。
 それがジュネーブ条約の武力紛争という仕組みの中においてどう評価されるかということをお尋ねなのでございますけれども、そこが、武力紛争という観点というのは我が国の自衛隊に関しては当てはまらないということを申し上げておるわけでございます。
末松委員 非現実的なことは言わないでください。現実的な議論を、今しています。
 要は、防衛庁長官が言われたように、まさしく戦闘地域と非戦闘地域が刻々と変わるということは想定されないということじゃないですよね。防衛庁長官、どうですか。そこはされますよね。
石破国務大臣 刻々という言い方があるいは誤解を与えたとしたら、それは申しわけないことだと思います。
 要するに、これはもう先生百も御存じのとおり、日本の国が武力を行使しないということを制度的に担保しておるわけですから、それは変わり得ることはあります。ただ、これを治安と同義にとらえて、治安が刻々と変化するというのと、戦闘地域、非戦闘地域が刻々と変化する、これはまた違う概念だろうと思います。ただ、これがぴたっと変わらないというものではございません。
 ですから、国際的な武力紛争が現に行われておらず、また活動の期間を通じて行われることが予測されない地域という意味で、それは固定されたものではないということを申し上げたつもりでございます。
末松委員 だから、捕虜として、条約局長に再度お尋ねしますけれども、私の前提の中に、あなたも認めて答えているように、本当に不幸にも戦闘地域に巻き込まれることはないとだれが言えるんでしょう。だれも言えないんですよ。もしそこで、可能性がないと言える人は、この中でいたら、手を挙げて言ってください。だれかいますか、言ってください。
高村委員長 林局長、ないと言えるんですか。
 林局長。
林政府参考人 済みません。今の……(末松委員「端的に答えてくださいね、私の質問に」と呼ぶ)
 もう一度、基本的なところから御説明しますけれども、捕虜の待遇に関する一九四九年の八月十二日のジュネーブ条約というものの第四条というのがございまして、ここに捕虜の定義が明記されておるわけでございますけれども、「この条約において捕虜とは、」と書いてございますが、「紛争当事国の軍隊の構成員及びその軍隊の一部をなす民兵隊又は義勇隊の構成員」等ということになっておりまして、これは、紛争当事国の軍隊の構成員でなければ捕虜という仕組みにはならないということを申し上げているわけです。
 他方、先ほどの御質問というのは、では、事実の問題として、拘束される、あるいは武装勢力の手中に落ちるということがあるじゃないかということをおっしゃっているわけでございますね。それは法律的な仕組みの問題とは必ずしも同じではございませんで、その場合にどうなるかということについては、これも先般来外務大臣から累次お答えしておりますけれども、その場合には、人道法の基本的な原則、精神というものを踏まえた適切な取り扱いというものがなされるべきだということでございます。
末松委員 ここで条約局長が何万言それを繰り返しても、現場の自衛官の助けにはならないんですよ。本当に彼らは、拉致されて残虐な行為を受けるときは受けちゃうんですよ。なぜか。イラク軍が、あるいはフセイン残存勢力がそういうふうに敵対する勢力だと思ったら、それでもうなっちゃうんです。あるいは、彼らが、スパイだ、これは間諜であるというふうに思ったら、それは何をされようが仕方がない話なんです。
 ちなみに、ちょっとお伺いしますけれども、日本ではなくて、では、多国籍軍的にいろいろな軍隊が派遣されています。それは占領軍の一部として彼らは位置づけられていると言われていますけれども、彼らが同じような目に遭った場合、国際法上、捕虜として認識されますか、されませんか。
林政府参考人 お尋ねが、今現在の状況についてのお尋ねでございましょうか。それは、一般論として多国籍軍というものがあった場合にというお尋ねで……(末松委員「今で」と呼ぶ)
 現在の状況におきましては、これは、一四八三でかなり明確に現状認識というのは書かれていると私は思うんですけれども、米英の統一された司令部のもとに、これが当局でございますけれども、そのもとにおきます占領というものが行われているという状況でございまして、そこにおいて関係の加盟国等に復興等の支援を要請している、それにこたえて軍隊あるいはそれに類似した組織というものを派遣しているという状況でございます。
 個々の国によっては、それはそもそも紛争の当初の段階からかなり武力行使に参画していたというような国もあるかもしれません。それはちょっと、私、事実関係でございますので、つまびらかにはいたしませんけれども、基本的には、今の状況において、後から占領地域における復興支援に参画している部隊というのは、これは武力紛争の当事者ではないというふうに私は認識しております。
末松委員 そういうことであれば、では、占領軍と一体を構成しているということの多国籍軍的なものも捕虜にはならないというのが今の回答ですよね。あなたはそう言いましたよね。本当にそうですか。
 日本は、なぜそうかというと、要するに自衛隊の、ある意味では、国際的にぬえ的な性格そのものが非常にそこはわかりにくいから、捕虜じゃないと。あると言った途端に軍隊であり、困るんですよね。だからこういう形なんですけれども、ほかの軍隊は反乱の鎮圧なんかもやるんですよ。そういったところが捕虜にならないとあなたは言い切っているけれども、本当にそうなんですか。非常に私は疑問があるということを指摘しておきたいと思います。
 いずれにしても、捕虜でなければ、やはり武器を持って敵対的な行為を行ったということで、イラク軍がそういうふうに――今ちょっと仲間の方から一四八三の条項が出てきまして、この第五パラですか、「すべての関係者に対し、一九四九年のジュネーブ諸条約及び一九〇七年のハーグ陸戦規則を含む国際法上の義務を完全に遵守するよう要請する。」というのが一四八三に書いてありますけれども、そういうことであれば、基本的にイラクのフセイン残存勢力も、きちんとそこは捕虜として待遇すべきじゃないかということになると思います。
 じゃ、さっきあなたが言われたことは、結局は、それは捕虜にならないと断定したんですね。
林政府参考人 一四八三で、ジュネーブ条約、ハーグ規則等を遵守することをすべての関係者に求めるというくだりが確かにございますけれども、これは、私が先ほど来申し上げておりますのは、我が国のように武力紛争の当事者にならないものについて、武力紛争を規律するジュネーブ条約等の規律は働かないということを申し上げているわけでございます。
 米英軍というのは当初から武力を行使したわけでございます、まあ、これに一部参画した国もあったかもしれませんけれども。そういう米英軍等が武力を実際に行使し、その結果として権力の空白が生じたところを占領しておるという事態というのは続いておるわけでございまして、これはまさに一四八三でも認識されているところでございます。
 そういう中におきましては、占領の実施に当たり、ジュネーブ条約の関係規定というものが遵守されるべきということは当然のことでございます。
末松委員 では、今の、私もここで余り時間をとりたくなかったんですけれども、そうであれば、安保理決議一四八三があるから、だからその後に参加した国々はそれは捕虜にもならない、それは規定が違うんだという解釈はおかしいと思いますよ。
 というのは、なぜかというと、だって、フセイン残存勢力から見れば、まだ戦争は終わっていないんですよ。だって、戦闘地域という言葉、それは国際的な武力紛争をあらわしている言葉でしょう。だから、交戦が行われているんですよ。交戦団体が戦闘を行っているんですよ。ということは、戦争状態は終わっていないんですよ。
 それにもかかわらず、安保理決議の一四八三をもって、その前に武力行使をしていた米英に対してはこれは捕虜待遇であって、じゃ、それ以降に参加した国々が、どうしてフセイン残存勢力に対して交戦をしていないということが言えるんですか。それはおかしいじゃないですか。(発言する者あり)
 そうですね。ここはもう、ちょっと条約局長のレベルを超えていますので、そこは大臣、言ってください。
高村委員長 林局長。
末松委員 大臣、お願いします。
高村委員長 いや、今まさに法律の問題だから、条約局長に。
林政府参考人 私が申し上げておりますのは、武力紛争の当事者になるかならないかというところがメルクマールだということを申し上げておるんで、それでは一四八三に応じて、それはその部隊を派遣している国が、その国によって、あるいはその政策、あるいはその国内法、いろいろあるかもしれません。それは場合によって武力紛争の当事者になるという決断をして、そういう行動をとるところがどこかあるのかもしれません。それは、その場合は私どもとしては承知しておりませんが。
 私があくまで申し上げておりますのは、我が国のように、武力紛争のらち外にある、武力紛争の当事者でない国の要員について、その適用があるということはない。武力紛争の当事者になるような活動を行う国というものがあれば、それは武力紛争によって規律されるということは、もちろん当然のことでございます。
末松委員 それはちょっと、非常に納得できませんよ、それは。ちょっと私は、そこは極めて疑問があるということを指摘させていただいて……(発言する者あり)
 では、大臣に今の話を、条約局長と対話をした中で、あなたの判断というのは――ただ、経緯はもう結構です。私がおかしいと思っているのは、一四八三が終戦決議じゃないということです。そうしたら、そこはどう考えていますか。
 交戦団体、つまり、この法律に書いてあるのは、戦闘地域と言っているんですよ。戦闘というのは、交戦が行われているんですよ。ということは、戦争状態でしょうと。二十五日の質問にまた戻るんですけれども、そういうことを前提にした法律なんですよ。
 そうしたら、イラクの残存勢力から見たら、それはずっと戦争継続でやっているとしか思えないじゃないですか。どうですか。
川口国務大臣 条約局長が国際法の仕組みの問題と、それから事実関係の問題と、これは二つに分けて御答弁をしていると思うんですけれども、国際法の仕組みの問題としては、これはずっと条約局長が申し上げているように、自衛隊の人が仮に捕まったとして、捕虜ではないということですね。
 それで、事実上の問題として、委員がおっしゃるように、それは、そうでないところで活動をするとか、いろいろ捕まらないような仕組みというのはたくさんあるわけですけれども、それでも万が一捕まってしまうということが否定できるかというと、それは完全には否定できない。これは、事実の問題としてはそういうことだと思います。
 その場合に、我が国の考え方というのは、これは捕虜ではない、捕まえてはいけない、直ちに返しなさいということであり、向こう側はそれは違うことと考えるという可能性を否定することは、それは向こう側の考えですから、できない。
 ただ、我が方としてはそう考えていないということでして、これは、仮に捕虜であれば、ジュネーブ条約に基づいて考えれば、向こうは捕虜として長い間捕まえておくということはできるわけですね。だけれども、我が国としては、この人は、自衛隊のこの人は捕虜ではないわけですから、直ちに返しなさい、直ちに釈放しなさいと。どういうやり方で釈放を現実のものにしていくかというのは、ケース・バイ・ケース。
 例えば、相手が、だれが捕まえたかわかっているとかわかっていないとか、いろいろなことがありますけれども、我が国の問題としては、これは最大限の努力を尽くして釈放をさせるといいますか、する、そういうことであるということです。
末松委員 前の答弁に比べて非常に中身的には議論の筋をつかまえた、今、お話だと思います。
 ただ、問題は、実効的に支配をしているところが、フセイン残存勢力ですから、彼らの言うとおりになってしまうというところが問題で、我が国が捕まえるなと言ったって、早く返せと言ったって、彼らは当然返さずに、残虐な行為を加えても、どうしようもない。やる手がないということがこの問題の一番悲しい点なんですよ。
 だから、捕虜なら捕虜という形の待遇であれば、それはきちんとした待遇を受けられるけれども、民間人の場合は、敵対していなければ、それは武器を持っていなければいいけれども、自衛隊の場合は、肩撃ち式の対戦車砲でも持っていこうとか、そういうふうなレベルになっているのであれば、これはもう敵対的な勢力として見られても仕方がない話なんですよ。だから、そこがこの問題の非常に深刻なところなんです。
 だから、フセイン残存勢力から見て戦争は続いていて、しかも、彼らは別に、私たちが、これは戦闘地域、これは非戦闘地域ですよと幾ら分けたって、彼らにその制限は全く通じませんから、どこでもやっちゃうんですよ、彼らは。だから、この問題の、分ける、フィクションというか、そこが問題だということを繰り返し繰り返し言っているわけなんですね。
 もう時間がなくなってきたので、私が一番聞きたかったことをお聞きしますけれども、安全対策ということなんですね。イラク復興職員の安全対策について私は聞きたかったわけなんです。
 平岡議員がこれについて、この質問をしているわけなんですけれども、そもそもイラク復興職員というのは、どのくらいのレベルというか、規模で送る予定なのか。新聞では、自衛隊員は千人だとか、報道上の情報はいろいろ出ていますけれども、これが数人規模なのか、数十人規模なのか、あるいは数百人規模なのか、数千人規模なのか、その辺について、全くアイデアがないというわけではないと思いますが、いかがですか。
福田国務大臣 いろいろ新聞報道なんかがございまして、誤ったイメージをお持ちになっていただいては困るのでありまして、まだ具体的に、自衛隊員も千人規模とかいうのが先行していますけれども、そういうことを考えているわけじゃありません。もう少し地道な積み上げをしていかなければいけないと思っております。
 今御指摘の復興支援職員につきましては、これも、具体的な活動内容とか規模、派遣時期、人選、こういうことは今具体的な考えというのはございません。ですから、これはいろいろな調査をした上で決定をしていくわけでありますけれども、いずれにしても、安全な地域に派遣をするということが前提でありますので、そういう時期が来るのを待たなければいけない。
 それにしても一体何をするのか、こういう疑問もおありだろうと思いますので、これも頭の体操みたいなものですけれども、ちょっと申し上げますと、例えば、人道復興分野における医療活動、食糧、医薬品等の生活関連物資の配給、分配。これは、例えばボランティア経験のある方を採用しまして、水とか食糧品をイラク人に配給、分配する、こういったようなこととか、また、医療関係であれば、医者、看護婦によるイラク人の治療活動、予防のための教育とか、そういったようなことであります。
 また、その他、行政的な助言指導、こういう分野もあろうかと思っております。それは、例えば、港湾行政の助言のために国土交通省の専門家を派遣する、こういうふうなこともあるかもしれぬ、こういうことであります。
 また、環境被害のアセスメントのために環境省の専門家を派遣する、こんなふうなことなんでありますけれども、これも今、いろいろ今後の状況を見ながら判断をしていくということになります。
 いずれにしても、これからの問題だということであります。
末松委員 そうすると、邦人、企業の方あるいはNGOの方々、こういった人たちも、どんどんイラクに入っていって復興支援をしていこうと思う人たちが多分いるんだろうと思うんですよ。彼らは全く入らないということですね。
福田国務大臣 NGOの方々とか、その他民間の方々も、その適した知見を有する方々に参加していただく、こういうことも可能であろう、こういうふうに思っております。
末松委員 政府が判断して、職員だよ、採用するよという話の人は職員になるけれども、それ以外に企業で、商談を持ってやっている人とか、あるいはNGOで自分たちが一生懸命やりたいという人はこれは職員じゃない、職員と政府が認めなければ職員じゃないですね。
福田国務大臣 これはやはり指揮命令系統ということもありますので、きちんとした枠組みを持ってやらなければいけない。したがいまして、例えば、民間の会社の利益のために活動する人を採用するということにはならないと思います。
末松委員 そうしますと、イラクで働く日本人は三種類いるんですね。自衛隊の、武器を持った人たちと、武器を持たない政府職員になった人たちと、全くそれとは関係ない邦人の方々、三種類ですね。
 安全対策について配慮するというのは、職員の人たちだけですね。一般の邦人の人たちは、在外公館で安全対策をやっている、それで押さえられるということですね。
福田国務大臣 政府の職員として採用した民間の方々の安全については、これはやはり政府として責任を有すると思います。
 民間の方は、これは一般的には、一般的にというか、やはり邦人ですから邦人保護という観点からいろいろと安全に対する配慮というのは、当然政府としてもしなければいけませんけれども、しかし、どこでどういうことをやられるかわからない、そういう場合に、そこまで十分に目が行き届くかどうか、こういったような問題があろうかと思います。
末松委員 だから、十分に安全面での配慮が行き届かないから、その人たちは勝手におやりなさいよというような言い方はしないまでも、そこまでは目が行き届くかどうかというのは、そういうことでしょう。だから、目が行き届かない場合はそれは勘弁してねという話ですよね。
 それであれば、ちょっとお聞きしたいんだけれども、その民間の方あるいは政府、イラク復興職員の人、彼らは当然戦闘地域には行きません、そちらが用意した非戦闘地域の中ですね。ただ非戦闘地域の中でも、これは自衛隊もそうですね、非戦闘地域の中だけしか行かないんだから、その中に三種類の方々が混在するわけですよ。その中で安全か安全でないとは違った概念だというのは、防衛庁長官からも出ました。結局、危ない地域もあれば危なくない地域もあるということなんですよ。
 この安全基準、安全区域というのは、官房長官は安全区域と言っていました、この区域の基準はどういう形で判断するんですか、そしてそれは公表されるんですか、されないんですか。
福田国務大臣 私どもがかねてから申し上げているのは、戦闘区域、そして非戦闘区域、こういう区分けですね。非戦闘区域において自衛隊員は活動するということであります。ただその中でも、非戦闘地域だからすべていいというようには見ておりません、その中でも安全な地域、こういうことで選んでいかなければいけない。
 しかし、安全な区域といっても、自衛隊が活動するような安全な区域と、それから言ってみれば丸腰ですね、武器を一切携行しない職員が活動する分野というのは、やはり丸腰で働けるような場所でなければいけないと思っております。
末松委員 ちょっと議論を先に進めましょうよ。
 私は、それがあるから安全の基準はどうなんですかと言っているんですよ。答えてください。そして、それは公表されるんですかと言っているんです。
高村委員長 川口外務大臣。
末松委員 いや、いいです。これは官房長官の責任だから。委員長、済みません、官房長官にお願いしたいと言っているんですから、ぜひそこはお願いします。
福田国務大臣 その安全の概念というのは、我々が日本において安全だ、安全でないと言っているその概念と変わらないと思っております。
末松委員 日本と同じにしないでくださいよ。
 いいですか。戦闘地域になるかもしれないような、いわばごろごろした危ないところは、私も実際に行っているからよくわかるんですよ。そのときに安全でないか、つまり何が問題かというと、要するに、四十数万人の軍隊がメジャーな戦闘もせずに消えたわけですよ、バグダッドでも三日間ぐらいでさっと。それが武器を持ってうようよしているから怖いということなんですね。だから、安全と思っていた地域が、一瞬にして安全でない地域が出てくるわけですね。そこが今我々が抱えている大きな問題なんです。
 そうした場合に、自衛隊は武器を持っているからまだいいじゃないか。では、丸腰の政府職員は何だ。さらに、丸腰で政府の最低限の保護しか受けられないかもしれないその邦人は大変じゃないかということで、安全の基準ぐらいはきちんと示して、公表すべきじゃないかと思っているわけですよ。いいですか。そうしないと、だって丸腰、それから失業している軍隊の人たちですよ、あるいはいろいろな秘密警察なんかがいますよ。彼らは失業しているから、だから物取りに走るんですよ。やはり生活をしなければいけない、だから物取りに走って強盗になる、野盗になる、そういうことなんですよ。そこは混然一体となっているからあの地域は怖いと言っているんですよ。
 要するにフセイン残存勢力でも、ある日は強盗になって、ある日は交戦団体になっているわけですね。そこが区別できないんですよ。いいですか。そういった意味で、安全基準をきちんと示して、そうしないと、政府職員の人はやはり困りますね。非戦闘地域というんだったら、では、バグダッドは非戦闘地域ですかというふうになるんだったら、例えば、バグダッドで物取りがたくさんあって、今でも夜間は外出禁止ですよ。これは安全地域なんですかといったら困るでしょう。どうなんですか。
川口国務大臣 邦人の安全に関する話でございますので、ちょっと私からその部分についてお答えしたいと思います。
 今、イラクについては、全土について危険情報として避難勧告が出ています。したがって、おっしゃるようなカテゴリーのうちの一つの普通の民間の人、ビジネスの人、その人たちについては、どのような目的であれ、渡航を延期することを政府としてお勧めしているわけです。したがって、その人たちは行かないことが望ましい。
 危険情報のレベルが変われば別ですけれども、そうでない状況では行かないでほしいということを申し上げていて、もちろん渡航は自由ですから、あえて行かれる方というのはいらっしゃるわけですけれども、その方については、基本的にはできるだけ、この前イラクの戦争のときに、あの武力行使をやっているさなかのときにいたしましたように、大使館に連日御連絡をいただくとか、それで大使館からできるだけ情報を差し上げるとか、そういうことで安全を確保することに努めるということで、基本的にそれは、それにもかかわらず行かれた方については、オウンリスクで判断をしていただくという部分が多いということです。
 それから、この法律に基づいて行く人たち、この方々については、これはそういう問題がないところで活動をしていただくということですから、区域を決める段階で安全を確認して区域を決めるということで考えているわけです。
末松委員 安全区域というのはどう決めるの。この法律には安全区域というのはないんですよ。どう決めるんですか。どういうことなんですか、それ。
 私が言っているのは、例えばイラク復興職員の方、高貴な精神でイラクの復興をしようということで行かれます。地方公共団体の方とか民間の方がおられると思う、専門家の方とか。そういった方々が、不幸にも戦闘地域に巻き込まれるとか、あるいは強盗とかに襲われるとかいうことはあるわけですよ。バグダッド近郊でもたくさん起こっているし、バグダッドでも起こっているんだから。
 そういった場合に、その本人は、そこで例えば殉職をしたという、巻き込まれて殺されるケースがあるわけですよ。これは、ないと言える方があったら言ってください。それはだれも言えない。ならば、家族が怒って、後で、何だ、安全地域と言っていたから彼は行ったんじゃないか、あるいは彼女は行ったんじゃないかとそこで訴訟を起こされた場合に、政府が本当に適切な安全の確保に努めていたのかどうか、これが判断をする材料になるんですよ。そのときに、一切基準も何も示さずに、政府が、いや、これはもう配慮をしていました、彼がそれは悪かったんですという話になるのか。政府の責任として、どこまできちんと安全の区域だとかいうことをやるかどうか、それをはっきりしてもらわないと困るじゃないですか。
 どうですか、官房長官。
福田国務大臣 そもそも復興職員については、これはピストルとかそういうものを持っていないわけですよ。丸腰ですよね。ですから、自衛隊も安全なところというように言っておりますけれども、基本的には、復興職員の活動が、安全で、そしてまた安定がほぼ完全に回復された、こういうふうに認められた地域において派遣をする、こういうことになるわけで、では安全とは何かという話になったら、これは絶対安全なのか、事故は一切何もありませんという地域、そういうことは地球上であり得るのかどうかということも考えて、これは常識的に考えたらよろしいんじゃないかと思いますよ。
 要するに、安全及び安定が完全に回復されたと認められる地域、こういうところに総合判断の上送るわけです。そういうことです。
末松委員 そう答えると思っていました。総合的にという言葉が好きですよね。
 いいですか。くしくも外務大臣がさっきおっしゃられた、これは危険地域だと。だから渡航自粛勧告があるんですよ。もともと危険なんです。そうですよね、外務大臣、今言ったから。
 それに対して、その危険な中で業務をやりましょうと、イラクの復興のために。だから、いろいろな諸手当もここに出しているわけですよ。でも、それは危ないからといって、自衛隊が、自分のところは自己完結的だと。本当に完結かどうかわかりませんよ、あの地域みんな、物とかなんとかを供給しなきゃいけないんだから。それで大丈夫ですよと。それは、そこで持っていく武器が、あるいはマシンガンとか肩撃ち式の対戦車砲なんかがあるかもしれないような地域に今議論されているわけですよ。それで、何とか確保すると。
 それで、丸腰の人は、ではどこに行くんですかといったら、官房長官が、いや、完全に治安が回復、あるいは安全、安定が回復されたところを選びますよという話を、本当にできるんですか。もしできるんだったら、そこはきちんと政府として公表して、ここまでは私たちとして考えますよということを示してあげないと、今度もし何かあった場合に、家族として訴訟を起こしたら、政府はそこは当然裁判で負けちゃいますよねというぐらいにここをきちんと考えていないといけないんじゃないですか。まず、そこの安全の基準をぜひつくってくださいよ、そして公表してくださいよ。そうじゃないと、職員としてもそこは安心して行けないじゃないですか。
 再度僕は答弁を求めます。
福田国務大臣 これは、日本人の常識というのがあるんですよ、安全に対する。
 それからもう一つ申し上げると、危険だというから周りを固める、防備を十分にするということによって、かえって危険でない、安全だからといって何にも防備がなかった、そのためにかえって事故が起こった、そういうようなこともあるんですからね。それは、だから、そういう防備も含めた総合判断だというふうに申し上げているんです。
 それから、イラクは、確かに全土が危険情報でよろしくない状況にあるかもしれませんけれども、危険情報といいますと、地区別に細かく出すこともあるわけです。ですから、やはり地域によってその濃淡というのはあるんじゃなかろうかと思います。
 いずれにしても、政府としては、今回のことについては、安全については十分な配慮をしていこう、そういうことについてかねがね申し上げているところでございます。
末松委員 私は、今の官房長官の答弁には納得できない。
 だから、私は委員長にお願いしますけれども、安全の区域の基準というか、あるいは、それをどう考えているのか、そこはぜひ理事会で御議論いただきたいと思います。
高村委員長 理事会で協議をいたします。
末松委員 では、以上です。終わります。
高村委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 私は、九〇年代を通じて、イラクといいますか、メソポタミアの地ということ、この地域こそが、石油資源とまた地政学上の位置からいって、ここの重要性が中東の平和と安定性を左右する、そういうふうに考えておりました。
 この地域はまるでジグソーパズルのようなところで、一たんそれを壊してしまいますと、それを再構築することは非常に難しい。そうした意味から、イラクへのアメリカの攻撃が可能性として高まったときに、イラクに二度足を運び、何とか和平の道を探ろうといたしました。当時、事実上の責任者でもあったラマダン副大統領、ハマディ国会議長とも会って、そうした道を協議しました。
 また、実際に戦争が行われた後は、今月二日から六日まで、民主党派遣団の先駆けとして入りまして、バグダッド、そして中南部のカルバラ、ナジャフへ向かい、人口の約六割を超えるというシーア派の指導者のハキム師、アヤトラ・ムハンマド・バクル・アル・ハキム、彼とも会って、シーア派としてのこの問題に対する取り組みについていろいろ聞いたわけであります。
 また、六月二日にバグダッドに入りましたが、その時点では、フセイン政権崩壊直後の混乱あるいは略奪などのカオス状態というのはかなり緩和されていたと思いました。
 しかし、逆にこのころから、最初はバグダッドの北西部、ティクリートとかラマディとかファルージャ、こうした地域でアメリカ兵への攻撃が始まったんですが、それがどんどんエスカレートしてきて、昨今では、三日に一人というのが、やがて一日に一人、一日に二人というふうにどんどんエスカレートし、また、組織的な攻撃が行われるようになったということで、この将来に対して大変な危惧を持っております。
 また、アメリカとイラクの戦闘は比較的短期間で終了したんですが、しかし、表面的には破壊が少ないものの、見えない部分ではかり知れない人的な、あるいは設備なんかもそうですが、危険をまき散らしている可能性があると私は感じました。
 特に、私ごとですが、南部のカルバラ、ナジャフへ向かう途中に、私も生まれて初めてですが、私の乗っている乗用車が対戦車地雷を踏む寸前まで行ってとまったといういきさつがあります。もう目の前にも、砂の中から半分出てきらっと光った対戦車地雷、その中心線のプラスのところまで焼きついています。ですから、本当にやはり短期間の戦闘ではありますが、この地域の潜在的な危険というものは非常に大きいんだと思っております。
 こうした経験から、この法案について、イラク特措法について幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 基本的な問題というのは既に討議されているわけですが、漠然として、政府の回答は漠としてよくわからない。しかし、比較的明快に答えられている部分がありますので、それを幾つか再確認させていただきたいと思います。
 まず最初に、イラク攻撃の根拠となった大量破壊兵器とテロリズム支援の問題であります。
 イラクとアルカイダの関係は、国連が最近テロ問題の委員会から出した報告書でも、イラクとアルカイダの関係はないというふうに書かれています。イラクは、既に多くの識者が指摘しているとおり、むしろアルカイダのような原理主義テロリズムの防波堤であった。言うなれば、その防波堤であったイラクの世俗主義を破壊しておいて、これからはもうテロリズムがむしろ蔓延することを恐れるわけであります。
 そして、大量破壊兵器。これによってアメリカの攻撃が行われたわけですが、それも最近ではイギリスあるいはアメリカにおいて非常な批判が高まり、間違った情報によって、あるいは情報を故意に政府が隠ぺいしたり、あるいはまたそれを捏造したりすることによって開戦への世論をつくり上げていったのではないかというイラクゲート事件というものが今口に上るようになってきています。
 では、我が国はどうでしょうか。我が国は、アメリカの言うことを信じていたというわけですが、では我が国に全く大量破壊兵器に関して情報がなかったかというと、そうではないんですね。大量破壊兵器のうちの核兵器に関しては、御存じのとおり、IAEAの核兵器査察には日本からも文部科学省から公務員が派遣されていたわけです。文部科学省から、IAEAの核兵器査察においては、どうもイラクには核兵器はなさそうだという情報あるいはまずきっと隠しているという情報、そういうような情報をきちんと把握、インタビューで聞き出しておられて、またその報告書も出ているでしょうか。福田官房長官、いかがでしょうか。
福田国務大臣 私は、そういうものがあるのも、新聞を、もちろん見ているわけではありません。
首藤委員 いや、それはおかしなことですよね。
 では、政府はどういう基準に基づいて、我が国の今までの国是に対して大変な影響を与える、そうしたアメリカの単独主義的な攻撃に対して賛意を、支持を出したのか。独自の調査情報能力を持たなかったら、どうしようもないじゃないですか。どうしてそういうことをされていないんですか。
 そうした情報をきちんと把握しないで、一体いかなる根拠に基づいてやられたんですか。それはアメリカからの情報だけですか。しかし、どんな情報だって、それは裏をとるわけでしょう。どうして独自の情報調査がされなかったんですか。官房長官、もう一回、いかがですか。
川口国務大臣 まず最初に、政府としてIAEAに出向している人に聞かないということは、この人たちは国際機関の職員でございまして、日本政府のために働いているわけではない。日本政府に国際機関の仕事の上で知り得た内容を漏らしてしまうということは服務規律違反になるということでございまして、政府としては、国際機関に働いている、IAEAに出向している人には聞いていないということであります。
 それから、いかなる根拠でこれを考えたかということですけれども、まず、少し前に申し上げたことをもう一度申し上げることにはなりますけれども、イラクが過去において実際に大量破壊兵器を使った、これは現実であるわけです。それから、たび重なる国連の査察団に対して妨害をしたり情報の開示をしなかったりというようなことがあったということでございまして、ここに、イラクに大量破壊兵器があるということについては、我々としては、そういうことであろう、ないということを想定するのは難しいということは、今までも申し上げたとおりであります。
 それで、国際社会として、この国連査察団等の報告がいろいろあったわけでございまして、我が国としては、そういった国連査察団の報告等をベースに、それから関係の各国の情報を参照しながら、このイラクの大量破壊兵器については疑惑を持っているということでございます。
首藤委員 いや、川口大臣、そんなのは子供の話ですよ。どこの国だって、このIAEAにしろUNMOVICにしろ、自国の諜報員を送っているんですよ。諜報員でないと実はこういうことを発見できないんですよ。だから、アメリカだってCIAの人を送り、いろいろなところの人を送っているんですよ。建前上は国連に派遣して、国連の職員で、国連に対して宣誓してやっているんですけれども、そういう人から情報が入っているからこそ、フランスもロシアもそれはもういろいろな独自の行動ができるんですよ。そんなもの常識ですよ。そんなものを全然やらないということは、大変な問題ですよね。しかも、そういう方がもう既に任務を終わって帰って、もう日本にいるわけですから、一体その人たちがどういう情報を持っているのかをぜひ私たちは知りたいですね。
 実は、なぜそう言うかというと、私が二月にバグダッドを訪問したとき、そういう方に何人かお会いしました。もうやはり驚くような情報があるんですね。ですから、その段階でイラクの現状はどうかということがわかったんですね。ですから、やはりこの方たちに対してきっちりと、国民に対しても、もちろん国際的に、国連の契約上、しゃべれないことはしゃべれないでしょう、しかし、開示できること、あるいは個人的に考えたものは、それはそういうふうに言っていただくというのが国民に対する公務員としての責務だと思うんですよね。
 委員長、私は、ですから、その意味では、我々が知り得る唯一の情報への窓口であるIAEAの派遣公務員の参考人招致を要求いたします。
高村委員長 理事会で協議します。
首藤委員 さて、この条文でございますが、さまざまいろいろな問題がありますけれども、大変立派なことも書いてあるんですね。
 例えば第一条でございます。第一条に、我が国がこれに対して「主体的かつ積極的に」、主体的にというふうに書いてありますね。ということは、我が国が例えば人を派遣する、あるいは自衛隊を派遣するというようなことがあった、そういう状態を仮定した場合、それはCPAの傘下あるいは米軍の指揮下ではなく、独自行動をとるということですね。これがやはり憲法上の立場から、あるいは集団的自衛権の解釈から当然の話だと思いますが、その解釈で、そしてまたそのように返答されておりますが、もう一度確認させてください。官房長官、いかがですか。
福田国務大臣 CPA、決議で当局というように言っておりますけれども、これに対して我が国はどういう関係にあるか、こういうことになりますれば、これはあくまでもその活動を遂行する上で提携する、よく協議して役割分担等も決め、かつ、ほかの部分と抵触するとかいったようなことのないような、むだを省き有効に活用するための十分な相談をする、そういう相手である、こういうことであります。
首藤委員 はい、わかりました。
 私も多少誤解していて、例えば万が一自衛隊が派遣されることになれば、米軍の指揮下に入るのではないかと。指揮というのは、当然のことながらチェーン・オブ・コマンド、要するに命令指揮系統が一本化していなきゃいけない。そこへ当然組み込まれていくわけですね。しかし、そうじゃなくて、あくまでも主体的に行動し、もちろんCPAあるいは米軍とは調整し、連絡をとる、そういう立場だということですね。それは、現状においては、ヨルダン方式と言われるものなんですよ。
 例えば、ヨルダンはアラブの国で隣国でありますから、当然人を派遣する。しかし、アメリカの傘下には絶対入らないということで、独自の野戦病院をファルージャに設けて、何度も出てくるファルージャですけれども、ファルージャに設けて、そこでアメリカ軍の指揮と離れたところで独自行動をとっています。それはまたアメリカも、ヨルダンに対してアメリカ軍の指揮下に入れということは一切言わなかった。それはいろいろヨルダンの苦しい立場を考えてのことだと思うのです。
 それはある意味、そうすると、アメリカもそうした日本の行動がヨルダン方式であるということを大体理解している、そしてまた日本もそのようにとらえるということですよね。もう一度お願いします。
福田国務大臣 委員、中東情勢よく御存じなので、ヨルダン方式というのも今教えていただきましたけれども、ヨルダン方式かどうかわかりませんけれども、我が国は先ほど申し上げたような立場で行動するということであります。
首藤委員 第二条に、人道復興や安全確保の話が載っているわけですが、ここにどうして、武力による威嚇や武力の行使に当たるものであってはならない、こういうのが急に出てくるかということを非常に不思議に思うんですね。後ろの方を見ますと自衛隊なんという言葉がありまして、ああ、これは自衛隊を想定しているのかなというふうに初めて思うわけですが、そもそも、なぜ自衛隊を送る必要があるかということですね。イラクの復興のためいろいろ我々もやろう、我が民主党もそうです、復興のためにはいろいろ力を尽くそうという気持ちはあります。
 しかし、比較優位原則というのがございます。限られた資源でございますから、それを最も効率的にやれる人間が最も効率的な形でやる、これが比較優位原則ですけれども、要するに、得意な分野に集中することが最も効率的になるわけですね。例えば、ネズミをとろうと思ったら、猫はもちろんネズミをとります、ライオンだってネズミをとれるんですよ。では、ネズミをとるのに家にライオンを飼っている人間がいますでしょうか。そんなのいないですよね。ですから、ネズミをとるにはやはり猫が一番いいだろう、規模や現状に合ったものだということだと思うんですね。
 そうなりますと、例えば、イラクの現状を見れば、私が見る限り、現状をよく知っていて、アラブ語も片言しゃべれて、現地にも友人がたくさんいるというNGOの人は、新たに派遣される、全く地縁、人縁もない自衛隊の人たちの百人にまさるんじゃないかな、そういうふうに思うんですね。
 また、軍を派遣する場合は、通常は、もちろん国連の場合は受け入れ国の同意というのがございます。しかし、それは、今イラクが崩壊状態にあって、事実上、国連が認めている暫定占領機構が行政を担っているということがありますから、そのCPAに求められたら行くという考え方もございます。
 しかし、翻ってみれば、CPAというのは、何か国連加盟国の総意ででき上がったものではない。アメリカとイギリスの単独主義的な行動によってそれが占領された。占領されたところが混乱しているというところを、ジュネーブ条約に基づいて混乱をおさめるのは占領者の責任ですよということを定義しているのが国連決議一四八三でございます。ですから、別に、そこに対しては、安保理の五大国の多数、すなわちフランス、中国、ロシアも参加していない。ですから、国際社会の総意ではないわけですね。アメリカとイギリス、そこが求めているということなんですね。
 また、それではイラクの人たちはどう思っているかというと、これは私自身も、民主党の派遣団の中で、スンニ派を代表する、指導者的な扱いを受けているクワイシー教授とか、あるいはシーア派のアヤトラ・ハキムにも会って話しましたが、双方とも、一体、イラクの人は期待していないのにどうして来るんだというふうに言っているんですね。
 ですから、自衛隊を派遣するとしたら、一体その自衛隊を求めているのはCPA以外にはいかなる根拠があるかということを説明願いたいんですが、官房長官、いかがでしょうか。
福田国務大臣 CPAは、この一四八三国連決議、ここでは、安保理は占領軍としての米英の特別の権限を認識している、そしてまた、当局、統合された司令部は、国際的に承認された代表政府がイラク国民により樹立され当局の責務を引き継ぐまでの間権限を行使する、こういうように言っているわけですから、これはやはり国連の決議でなったこと、これは国際社会の共通認識というふうに考えてしかるべきではなかろうかなというように私は思います。
 その上で、自衛隊が求められているのかどうかということになりますけれども、やはり私は求められていると思います。自衛隊が求められているというか、自衛隊の行動ですね、復興支援、人道復興支援活動その他の活動について、これはイラクにおいてぜひその活動は欲しいということだと思います。これは先般の与党の調査団の報告の中にもございましたけれども、ニーズはどこにでもあるということでございます。ですから、その中で我が国の自衛隊ができることをするということが一番適切なのだろう。
 そういう意味においては、治安がよくなっているとはいえ、まだ危ないところもあるという状況の中では、やはり今出動すべきは自衛隊だろうというように考えているところでございます。
首藤委員 いや、それはおかしいですよね。私がインタビューした中では、自衛隊に積極的に来てほしい、要するに外国軍に来てほしいなんて、そんな甘っちょろいことを言うアラブの人は一人もいないですよ。アラブの人たちが言うのは、JICAに来てほしい、教員を送ってほしい、教材が欲しいとかそういうことを言っても、外国の軍隊に来てほしいなんて言う人は、よほど誘導尋問しない限り言わないと思うんですね。
 しかし、そしてまた、派遣するとすると、戦闘地域には当然送れないですよね。では、どうですか、非戦闘地域というのは一体どこを意味していますか。例えばイラクの内部を意味していますか。それともイラクの周辺国までを含みますか。あるいは中東全域を含むんでしょうかね。いかがですか、官房長官。
福田国務大臣 戦闘地域というのは、これはイラクの国内において、今回この法律に基づいて自衛隊を派遣し、活動してもらうというためにそういう概念を設けたわけでございまして、もちろん自衛隊は非戦闘地域で行うわけであります。
 戦闘地域というのは、一般的に言えば、どこだってあるわけですよね。戦争している地域、例えばイラクの周辺で今戦闘地域があるかというふうに言われれば、例えばパレスチナとかイスラエル、ああいう地域がその行動をしているというようにも見えますけれども、その他の地域において戦闘地域があるかというふうに言われれば、ほかの地域ではそういうものはないというふうに言ってもよろしいのではないかと思います。
首藤委員 イラクの内部ということですね。
 では、官房長官、イラクの内部でどこが一体非戦闘地域ですか。それを教えていただけますか。
福田国務大臣 これは、具体的にどこどこということを今申し上げるということではないのでありまして、戦闘地域というのは、言葉のとおり、戦闘をしている地域、もしくは、将来戦闘を行う可能性があるような地域は、これは今回の自衛隊の派遣においては戦闘地域、こういう分類をいたしているところです。
首藤委員 いいことを言っていただきました。ということは、イラクは全域が戦闘地域だということですね。いかがですか。
 実際には、そこで重要なことは、戦闘地域というのを、もちろんこの中で、要するに国家と国家との戦闘ということを想定すればそうでしょう。しかし、御存じのとおり、冷戦構造崩壊後は、国家と国家の戦争なんというのはむしろまれで、NATOが活動したりするボスニアにしても、ほとんどそういうのじゃなくて、国家と国家じゃなくて、現実に戦争行為、戦闘行為が行われているところを戦闘地域、そして行われていないところを非戦闘地域と言われているんですよ。ですから、今の官房長官の定義でいえば、今のイラクで起こっているのは、まさに全域が戦闘地域であるということになりますよね。
 例えば、今、アメリカ軍への攻撃は、私が行くまでは非常に限定的なものでございました。六月の初めから行われるようになったんですね。例えば六月三日、検問所でアメリカ兵士が手りゅう弾を投げられて死亡しました。それから次は、六月五日、六月六日という形でなりまして、六月八日には、病人を助けてくれと近寄ってきたイラク人に米兵が撃たれて死亡しました。それから、十日、十六、十七、十八、十九というふうに続いて、どんどんどんどんエスカレートしているんですよ。
 私が六月二日に入ったときは、アメリカのチェックポイントを含め余りにも脆弱なんで、これはいつかきっとアメリカへの攻撃が行われると思いましたが、どんどんどんどん攻撃が広がってきているわけですね。最近では、例えば六月十九日、ポール・ナカムラさんという米兵が死亡しました。これは、救急車でけが人を運んでいる間に手りゅう弾を投げられて死亡したんですけれども、やはり顔が東洋人の顔をしていても攻撃されるな、こういうふうに思っているんですね。
 ですから、このような状況を考え、そしてまた、この六月二十九日からアメリカは、ガラガラヘビ作戦、これは、大規模な軍隊を使って掃討作戦をしている。これはもう軍事的なオペレーションなんです。
 ということを考えると、今は、今まで最初に考えていたように、イラクの北西部、バグダッドの北西部あるいは北部、これは民族対立が激しい、そして、南部は比較的安全だよと言っていたのが、これはシーア派が抑えているから安全だと言われていた南部が、まさに最近のイギリス軍に対する攻撃、そして、そのシーア派の聖地であるナジャフにおいてもアメリカ兵が殺されているということを考えると、まさに今のイラクは戦闘地域化しているというふうに考えられますけれども、官房長官の解釈はいかがでしょうか。
石破国務大臣 先生御指摘のように、確かに国と国との武力紛争というのは減ってきた、冷戦後そういう世界になってきたというのは、そうなのだろうと思っております。ただ、私どもの憲法の解釈上、日本国としては、国際的な武力紛争というものはできないし、そしてまた、その可能性があるようなことというのは避けなければいけない。
 したがって、確かに、憲法ができた時点と今の時点とそれは違うと御指摘を受ければ、それはそうなのかもしれません。しかし、現行憲法九条の解釈上、やはり、国際的な武力紛争が行われていない、あるいは、行われることが活動の期間中予測されないということで、非戦闘地域でなければ我々の自衛隊が行くことはできない。
 これは、安全か安全ではないかというのと必ずしもぴったり重なる概念ではございません。憲法上のそういうような要請というものを制度的に担保するというふうに何度も申し上げているとおりであって、それでは、どこのどこがそうなのだとこう言われますと、そのこと自体が憲法上の要請から来る一種の抽象的な概念でございます。
 しかしながら、とにかく私どもは、非戦闘地域というものでなければそもそも自衛隊の活動はできない、それは憲法上の要請で、これはどうしても守らなければいけないもので、抽象的な概念であろうが何であろうが、その非戦闘地域というものを設定しなければなりません。
 そしてまた、今度は、安全なのか安全じゃないのか、それが危険なのか危険じゃないのかということになるだろうと思います。ですからそれが、泥棒でありますとか、いわゆる治安がよくない、国または国に準ずる者によって組織的、計画的に行われていない、そういうような地域、その中でも、そういうような頻度が低い地域を何とか選びまして自衛隊が活動するということでございます。
 先生御指摘の砂漠のガラガラヘビでございますが、これは、今まで砂漠のサソリというのをやっておりました。今度、ガラガラヘビということになりました。これは、実際にどういうものなのか、把握をする必要はあるだろうと思っています。
 これは、私どもの自衛隊が仮に派遣をされる、この法律が成立をいたしまして仮に派遣をされる時点で、やはりそれは、専門家が、実際に行く人間たちが行ってみて、どの地域であれば、非戦闘地域の中で日本の自衛隊が活動するにふさわしい地域なのかということを選定することに相なります。この時点でどこがその地域なのだというふうに求められましても、今の時点でそれを申し上げること自体が、私は政府としては不適切なことだと考えております。
首藤委員 いや、石破長官、違うんですよ。私が言っていることは、そんな、法律が通ったら精査してどこかへ行くというんじゃないんですよ。もうイラクの現状は、これは戦闘状態にあって戦闘地域だ、そして将来もまたあるということなんですよ。だからここには、通常の今までの自衛隊派遣の論議でいったら送れないんですよ。そんなのは当たり前のことなんですよ。常識の話ですよ、そんなの。
 さあそれでは、そのイラクに対しては、本当に組織的抵抗がエスカレートしていると思います。私も、ただぶらっと見に行っているわけじゃない。さまざまな情報を持って、旧バース党の組織がどのように再編成しつつあるか大変つぶさに聞いてきました。
 そうしたものはまた別の機会で話すとしても、もう一つ重要な点は、何で自衛隊を送る必要があるのか、そもそも自衛隊のニーズはどこにあるかということですね。
 私は、イラクへ行って、ニーズが一番必要なのはイラク人による政府だと思いました。これはもう早くつくらないと、治安維持も含めてすべての基礎です。ですから、まさにある意味で、今までのORHAと、それから、イラク人による反フセイン連合体による暫定政権、暫定行政機構というのは本当に重要だったんですね。しかし、わざわざアメリカは、ORHAをつぶして、もう一度やり直そうとしているわけですね。ですから、これはもうますますイラク人の政府というものがおくれていく。
 それからもう一つは、フセイン政権の破壊より、制裁下で疲弊したインフラですね。これはもう、制裁の長い間に疲弊していったインフラというのは問題があります。
 さて、最近、自衛隊に対するニーズというのは水だという話がありました。それは、砂漠であれば確かにそうだと思うんですね。砂漠へ水を運んでいく、大変なニーズがあると思います。しかし、御存じのとおり、イラクというものは、穴を掘ったら遺跡か石油か水が出てくるというのですよ。これはもうチグリス・ユーフラテス、どこを掘ったって出てくるんですよ、はっきり言えば。水を運んでいく必要なんかどこにもないんですよ、人間のいるところであれば。もう有史以前からずっとそこに井戸があるんです。だから、簡単な井戸を掘ればいいんです。そこで油が出るから、多少油分がむしろ含まれている。それは傾斜板みたいな簡単な装置で外せるんですね。それから、今でいえば、逆浸透膜の簡単な装置があって、幾らでもつくれるんですよ。
 それからまた、軍用の水タンクではなくて、軍用の水タンクはなぜああいうタンクかというと、それは、万が一弾が当たったとき、穴があいて水が漏れちゃいけないから、厚くつくっているんです。そんなもの要らないんですよ。紛争地に行けばわかるように、逆浸透膜につなげたのは、もうただのゴム風船なんですよ。ゴム風船にびやっと水を入れてぼわっと、この部屋いっぱいぐらいのゴム風船なんですね。それでぽんと上げるんですよ。それを使って、孤児院とか病院とかずっとやっていくんですよ。自衛隊が持っている四輪駆動車の後ろに一生懸命引っ張っていくものとか、五トンしか入らない水タンクとか、そんなものは要らないんですよ。
 ですから、結局要るのは、水とは何かというと、アメリカ兵のペットボトルですよ。アメリカ兵のペットボトルだって、これを自衛隊のそんな水タンクで一生懸命運んで、そういうものに充てんするんじゃなくて、それはヨルダンだろうがクウェートだろうが、さらにはトルコだろうが、膨大な車の流れ、トラックの流れが毎日のように入って、ペットボトルを運んでいるわけですね。ですから、全くニーズがない。
 水はニーズがない。では、輸送はあるかもしれない。C130がある。しかし、これも、何もインフラのない、山しかないといった東ティモールとか、そういうところじゃないんですよ。イラクといえば、フセイン政権がつくった超一流の飛行場が、軍用飛行場も含めて各地に点在している。幾らでも普通の飛行機でも行けるし、さらに、日本と比べものにならないぐらい立派な高速自動車網が全土を走っているんですよ。私も、アンマンからバグダッドへ行くまで平均時速百六十キロですよ、走っていったのは。日本でそんな走れるところないですよね。
 ですから、そう考えてみると、どこにもニーズはない。C130を飛ばしていったって、最近、映像でちらっと見ましたけれども、最近の輸送機は、何と旋回しながらおりてきますね。時々フレアを撃っていますよ。どういう意味か。それは、地対空ミサイルが怖いからですよ。では、C130がフレアを出しながら、旋回しながら急降下でやるなんて、そんな訓練し、そういうところへ果たして日本が、自衛隊がやっていくべきなのかどうかということは問題ですね。
 そしてまた、この法案が万が一通って、自衛隊が派遣されることになっても、実際の派遣が十月となれば、もうとっくの昔に、水の問題も物資の問題もすべて民間企業がやって片づいているわけですね。さらに、十月ともなれば行政機構が確立しているかもしれない。そうしたら、この行政機構があれば、先ほどの話じゃないですが、イラク人は別に外国人に占領してきてほしくないですよ。日本人が来てくれるんだったら、JICAに来てほしいと。JICA、JICAと言っていますよ。
 だから、そう考えると、全くニーズのないことを前提とした、自衛隊派遣の実績をつくるだけの法律じゃないですか。こんなことで日本の若者の命を危険にさらしていいと思っているんですか。福田長官、どうですか。
福田国務大臣 まず、今のイラクの現状それから今後に向けての復興支援、そういうようなことについて、政府と委員のおっしゃることは大分見解が違うように思います。また、見通しも随分違うというように思っております。
 これは、政府としては、イラクにおいては非常に大きな支援のニーズがある、こういう認識をしております。水の問題にしてもしかりでございますけれども、今委員の言われた部分も、それはうそを言っているというふうに思っているわけじゃありませんけれども、ニーズは至るところにあるというように聞いておりますし、また、そういうことについては、今後、よりきめの細かな調査をいたしますので、おのずからわかってくるところでございます。
 それから、そういうところに、若者の危険というようなことをおっしゃいましたけれども、そういう危険を回避するという方策を講じながら今回派遣をしよう、そして、イラクの復興に向けての協力をできるだけしていこう、それがまた中東地域の安定に少しでも役に立てばいい、こういうような気持ちで行くわけでありますので、気持ちというのはちょっと言葉は悪いかもしれませんけれども、そういうことを目指してやるべきであるというのが我々の考え方であります。
首藤委員 福田長官、そんな精神論を言われても困りますよ。法律が通ったらそういうニーズを探すというのじゃなくて、本当にこの法律のもととなるニーズがありますかということを聞いているんですよ。ですから、それを答えていただかないのはもう非常に残念ですが、時間もだんだん迫っていますので、次に、またいろいろな、むしろ外交的な側面をお聞きしたいんですね。
 川口外務大臣、ウラジオストクから帰国したばかりで、大変御苦労さまでございます。私も、実は先週は国後、択捉へ行って、北方四島を視察してまいりました。恐らく問題意識は同じだと思いますが、鈴木宗男事件からこの一年間の空白というものがいかに重いか。今もう北方四島も、既に韓国やアメリカの影響力がだんだんしみ通ってきている。もう本当に、私は、この一年、失った一年間というのは大きいものだ、そういうふうに思います。ですから、今こそ全力を挙げてこの問題に取り組まなきゃいけないと思いますが、それはまた外務委員会で質問させていただきます。
 このイラクの問題に関しては、当初、先ほど言いましたが、ともかくイラク人による暫定政権を何しろつくらなきゃいけない、アメリカは直接統治なんか絶対できないんだから、イラク人による政権をつくろうということで、反フセイン七派による暫定政権、暫定行政機構をつくらせて、ただ、その中で人道援助と石油の問題だけをやっていこうというのがORHAでございました。そこへ、人道援助ならということで私たちも了承をしまして、国家公務員を送り出しました。しかし、どうですか。それが今度はCPAにかわってしまいました。これは、イラク人の上に立つ占領行政機構ですね。根本的に性格が違うんですよ。それは、我々が合意して送り出したそうした人たちと違うんですね。
 ですから、ORHAに派遣している職員、何名かおられますが、それはあくまでも人道復興のためであり、なおかつ日本の大使館との連絡要員だったはずなんですね。ですから、このようなCPAというものの派遣には、おのずからマンデートが違う、派遣のためのマンデートが違うはずですね。それはもう、外務大臣みずからが国家公務員として長くやられたことで、当然、官僚というものはそういうものだとおわかりですよね。
 ですから、こんなマンデートが全然違うものにどうしてまだ派遣し続けているのか。それは当然呼び返すべきじゃないですか。いかがですか。
川口国務大臣 御案内のように、今六人の人間が出ておりまして、これは外務大臣の指示のもとに現地におります。そして、CPAの活動を通ずるイラクの復興、イラク人のために今仕事をしているわけでございます。あくまで指揮権は、外務大臣の指示に基づいて仕事をしております。
 それで、御案内のように、フセイン政権が崩壊をした後、イラクにおいて権力の空白が生じたわけでございます。それで、そのような状況下で、米軍等は、支配下に置く地域の民生や秩序を回復し、維持する義務を有しているわけでして、このために必要な措置の一環として暫定的な統治を行ってきたわけです。
 それで、その上で、安保理一四八三、これは米英の統合された司令部、いわゆる当局ですけれども、そこに対しまして、国際人道法上の権限や責任及び義務を確認するとともに、領土の実効的な施政を通じたイラク国民の福祉の増進に関する権限、イラク開発基金やオイル・フォー・フード計画に関する一定の権限、イラクにおける政治プロセスへの一定の関与の権限を付与したわけでございます。
 我が国として、国連の決議によって権限を付与されたCPAに対して、外務省の職員が、要するに外務省の職員として任命された職員が協力をし、イラクの復興のためにイラク人に貢献をするということは当然であるというふうに考えます。
首藤委員 いや、そうじゃないでしょう。それはそうですよ。だけれども、結局公務員であって、しかもそういう微妙な時期にやっているわけですから、当然のことながら、では、それに新たなマンデートを出して送り出さなきゃいけないでしょう、そういうことをやっていないわけでしょう。
 今、私は、そのCPAに関しては大変な疑問を持っています。七百名と言っています。そのうちガードが二百名ですよ。全体で五百名。これは直接統治をしようとしていますよ、二千六百万人を。これは絶対できないですよね。しかも、行けばわかるように、門からCPAの中に入るまでに二十分もかかる。逆に言えば、CPAの人たちは、その五百名はイラクの各地を把握できないんですよ。それは、そういう職員が外へ行けば当然ターゲットとなって殺されるわけですから、出ていけない。実際、このCPAというのは機能不全に陥りつつあるんですね。
 そこでアメリカは、必死になって治安維持を目指して、今、いわゆる刀狩りと言われる武器の強制徴収をやっています。このことが、まさに武器回収のジレンマを生んでいる。すなわち、治安が悪化する、だから市民が武装する、武装すると危ないからこれを強制的に出させる。そうすると一般市民の方は、治安が危ないから持っている武器を拠出させられるわけですから、生存権の侵害になる、これに反発する、こうした問題が出てくるわけですね。ですから、そこのことが、武器回収そのものが、南部におけるイギリス軍の殺害につながってくるわけですね。
 それから、当然のことながら、武器を探し出すとなると、イスラム社会において絶対に不可侵の部分、すなわち女性の生活域に入っていくわけですね。これもみんな外務大臣御存じのとおり、先日、アフガニスタンで、アメリカ兵二人がアフガニスタンの女性に撃ち殺されました。それは、女性の範囲のところに入って、やはり銃を見つけようとしたわけですね。そして、顔を見られたということで、そこにいた女性が家にあった銃で米兵二人を撃ち殺したわけですよ。やはりそれぐらいイスラム社会においては女性の生活域というのは不可侵なんですね。
 ですから、こうした状況の中、これをやればやるほど難しくなってくる。そこで、アメリカは、最近ついにもう一度国連を活用しようという方向に動き出しているんですよ。ですから、今までCPA中心のあるいはアメリカ・イギリス連合軍中心の部隊構成から、もう一度国連PKOをつくろうというふうに動き出していこうとしているんですね。
 私が今申しましたように、CPAは必ず行き詰まって、アメリカは国連をもう一度巻き込む方向へ方向転換する。だからこそ、日本外交もそれを先取りして、国連を中心とした、国連の役割をもっと重視した、そしてそこへ我が国のさまざまな人たちが派遣しやすいような、そういう方向性を主体的に推し進めるべきではないですか。それこそアメリカの同盟国の日本の責任ではないですか。外務大臣、いかがお考えですか。
川口国務大臣 委員がおっしゃいますように、イラクの国内にたくさん武器があって、これをいかに回収をしていくかということが非常に難しい仕事であるということは、そのとおりだと思います。アフガニスタンの例でも、DDRというのが必要であるけれども非常に難しいということであります。
 それで、それについて二つ申し上げたいんですけれども、一つは、CPA、ここについては、今委員のおっしゃるようなイラク人の手によるイラク人の政府ということで、それに動き出している。政治評議会というものをつくり、それから憲法会議を設ける、それによってイラク人のイラク人の手による政府をできるだけ早くつくろうとしているということです。
 それから、国際平和協力法といいますか、PKO、これをさらに立ち上げるということについてどう思うかということに関しましては、これは今の現状として、国連の一四八三に基づいて各国が、貢献をいかにするかということを考え、動き出しているわけであります。したがって、委員がおっしゃるような形で、それが行き詰まってPKOに移ろうという国際的な動きはない。
 今の状況でいえば、この一四八三に基づいての各国の貢献をみんな一生懸命にスタートをさせているわけでして、それを通ずるイラクの復旧のための努力というのがより現実的であるというふうに我が国としても考えていますし、ほかの国も考えているということでありまして、そのような動きは国際的にもないということです。
首藤委員 だからこそ、この法律案にあるように、主体的、積極的に日本はあるべき、そして日本も貢献できる道を探せと言っているのに、全然違う回答をここで言われてもしようがないわけですよね。
 これからいろいろな形で援助職員も出るようになると、当然のことながら邦人保護の問題が重要になります。外務省は組織改革の一環として邦人保護局みたいなものをつくろうというふうなことを聞いておりますけれども、最近、実は二日前ですけれども、イラクでアメリカ軍に拘束されてしまった志葉玲さんとお話しをする機会がありました。
 志葉玲さんの事件はよく御存じだと思うんですね。これは六月八日、フリーのジャーナリストの方ですが、バグダッドから北西部に当たりますでしょうか、ラマディの大学でジャーナリストとしての取材活動をしていた。そうしたらアメリカ軍に拘束されてしまって、そして手を後ろで縛られて、イラク人の一般の不審者と同時にひどい虐待を受けて放置されていたと。そして、その方が、十二日になると、当然のことながら、これは日本人でジャーナリストですから、解放をしてくれるという話があったんですが、十二日になると、どこからか指令が出て、何とまたさらにバグダッドからその収容所に強制連行されて、もう一度収容された。そして、何度も日本大使館へ連絡してこれを解放してくれと言ったにもかかわらず、それがなく、そして一方的に、何と、十七日、もう一週間を超えて、これは国境まで連れていかれて放置された。その間、日本の外務省は全然その安否を把握できなかった、こういうのがありますよ。
 そして、志葉さんは後ろ手に縛られて床に転がされて、水もなく、自衛隊が水を運んでくれるのかもしれませんけれども、水もなく、そしてこういうタグをつけられている。何と書いてあるか、エネミー・プリズナー・オブ・ウオーと。日本人がどうして敵なんですか。何ですか、これは。日本人だけああいうことをして、一生懸命アメリカのことも支持しているんでしょう。どうしてそこの市民が、ジャーナリストが、どうして後ろ手に縛られて、しかもタグをつけられて床に転がされていなければいけないのか。
 では、どのように外務省はこの事件を把握しているんですか。そして、十二日に解放されるはずの人間が解放されなかったら、ひょっとしたらバグダッド大使館から何か情報があったんじゃないですか。そこで、一たん解放に向かった日本のジャーナリストを、これはいかぬということでもう一回収容されて、ヨルダン国境でほうり出されたんじゃないですか。
 外務大臣、この間のいきさつはどうですか。
川口国務大臣 手元にちょっと資料がございませんので細かいことはよくわかりませんけれども、今の時点で、ここで申し上げることができませんけれども、その現地の大使館が、それから、恐らくヨルダンにおける大使館もですけれども、これについてはいろいろな確認をするための努力をしたというふうに聞いております。
首藤委員 これはヨルダンの問題じゃなくてバグダッドの問題ですよ。バグダッドに大使館があるんだから、代理大使もいるんだから。
 委員長、私はこの問題は、当然のことながら、この志葉玲さん、参考人として来て、事実関係を明確に国民の前で説明していただきたいと思います。理事会でぜひ検討していただきたいと思います。
高村委員長 理事会で検討します。
首藤委員 さて、こうしたさまざまな問題が起こっているわけですが、最近、非常に気がかりな事件が起こってきました。それは、イランが非常にまた外交上問題、焦点と私はなってきているということですね。アメリカが、イランの大量破壊兵器、核開発疑惑を根拠に、日本のアザデガン油田開発に対して撤退要求を突きつけています。そういう記事がありますね。これは日本ではカフジ原油に次ぐ日本の独自エネルギー確保、ある意味で日本の悲願の問題ですね。日本のエネルギーの生命線ですよ、日本は石油を産出しないわけだから。
 ですから、私が言わんとしているのは、無定見に、あるいは独自の哲学や戦略なしにアメリカの要求に盲従していると、結局はとんでもないことにつき合わされる可能性があるということですね。
 このイランの問題に対して、外務大臣、どのようにお考えでしょうか。
川口国務大臣 イランにつきましては、これは大分前から核の問題等について疑念が表明をされてきているわけです。先般、IAEAの場においても、イランが例えば輸入したものについて報告をしなかった、査察について、一定の場所についての立ち入りを拒んだ等々の報告がIAEAによって出されております。大量破壊兵器の問題が我が国にとっても他の国々にとっても非常に大きな問題、大量破壊兵器の開発あるいは拡散の問題が非常に大きな問題であるということで、我が国もこれについては疑念を共有しているわけです。
 それで、他方で、アザデガンの油田につきましては、これはたしか二〇〇〇年の終わりぐらいから動いている話でございます。イランとの問題については、米国との間ではさまざまな問題について十分に情報の交換はいたしております。ただ、具体的にそのアザデガンについて今どういうことが話されているかということについては、今動いている話でございますので、ここで詳細をつまびらかにするということは控えさせていただきたいと思います。
首藤委員 そういうことを聞いているんじゃなくて、日本の戦略、日本の外交姿勢について聞いているんですよ。もうそれは、何度質問しても答えはないと思いますので、それにもう意味がないと思いまして、次のことに移らせていただきます。
 自衛隊の派遣上の問題ですね。長官が何か手持ちぶさたなんで質問させていただきますけれども、自衛隊を派遣する、派遣すると言っているけれども、本当にそういう能力があるんですかね。
 例えば武装だけ言っても、例えば六四式歩兵銃とかあるいは八九式とか言っていますけれども、例えば、日本の戦闘行為というのは、敵が着上陸して攻めてくる、これを山陰から撃つとか、そういうことですね。要するに、肩に台じりを当てて撃つものですよ。しかし、御存じのように、今イラクで起こっている戦闘というのは、ほとんどが、AK47あるいはAK47Sを使って、腰だめで撃っているんですよ。腰だめで撃っているそういう戦闘行為に対して、六四式なんかで対応できますか。だから、もともと合わないじゃないですか。
 だから、そうした武装に関してだって、訓練に関してだって、全然できていないわけですよね。それを数カ月でできるとか、とんでもないことですよ。これは、やはり都市戦、市街戦というものの、軍事文化が要るんですよ。市街戦を戦った人間の伝統がずっと生きていて初めてできるんですよ。
 弾だってそうですよね。例えば八九式を持っていく。例えば千人を派遣しますよね。例えばゴラン高原で今どれぐらい持っているか御存じでしょう。四十三名の輸送隊が、ゴラン高原で六四式の一万発の弾丸ですよ。そうでしょう。七・六二ミリですよ。それが今度、千人が例えば十分間だけ戦闘行為に巻き込まれた、十分間千人がやると、一体何発の弾が、大体、概略要ると思いますか。千人が八九式を持って十分間だけ連続して撃つ。どうですか、どれぐらいだと思いますか。長官、どうぞ。
石破国務大臣 済みません。突然のお尋ねですぐにお答えいたしかねますが、それは確かに、先生のおっしゃるようなことは、私はあるんだろうと思っています。ですから、実際に行く人間が行ってみるということが大事だと思います。
 ですから、六四式小銃を持っていったらどうなるかとか、いろいろなことは私もカタログデータとしては一応頭に入れております。ただ、実際に行って使ってみる人たちが、実際の気候条件の中で実際にどのような、危険ではない地域とはいいながら、どういうことが想定されるか、そしてまた、持っていく武器と同時に、装甲防御がどれぐらいのものを持っていくかということも考えなければいけません。
 実際に行く人間がどういうことが必要かということを尊重して決めなければいけないことだと考えております。
首藤委員 そのとおりだと思うんですよね。
 しかし、長官、それこそ兵は、軍事上重要なことは、プリペアドネス、要するに準備していることなんですよ、これから法案が通ったら検討しますじゃなくて。
 例えば、世界各地で起こったPKOなんか、それぞれありますよね。例えば、レバノンでフランス軍は、これはフランス軍のPKOの責任者から聞いたんですけれども、フランスにはファマスという銃があります。しゃれた銃ですよ。しかし、それではジャミングを起こすので、レバノン戦のときには、わざわざブラックマーケットでカラシニコフを買って、そしてカラシニコフを持たせたというんですね。そうでないと、市街における治安活動はできないんですよ。
 ですから、そんなことはPKOで随分わかっているはずなんですね。ですから、そういうことだってきちんと準備していないで、なぜこんな法律が出てくるのかということを問題にしたいわけですね。
 そして、派遣の根拠、これはないわけですよね。本当にいろいろな、例えばPKOであれば百条の七とか、百条というのはもともと土木作業をすることですね。七条何をつけて、一、二、三、四、五、六、七と幾つもつけているわけですけれども、それはあるかもしれない。しかし、本当の、先ほど言いましたけれども、官房長官がよく答えていただきましたけれども、アメリカ軍の指揮、すなわち、同盟国アメリカと一緒に集団的自衛権に基づいて一緒にやるというのではなくて、独自行動で国連の要請でもなく行くという法的根拠はどこにもないんですよ。
 そして、そこへ行って、万が一、例えば友軍を撃ったときはどうなるか、イラクの少年を撃ったときはどうなるか。あるいは、そういうことがあっても、我々は撃てない、日本のルール・オブ・エンゲージメントがあるから撃てないといって何もしなければ、それは、ボスニアのスレブレニッツァで起こったオランダ軍と同じような状況に追い込まれるわけですよ。目の前で虐殺が起こって、何もしない。このことに関しては、ヨーロッパでも大変な非難になって、閣僚が辞任しましたよ。そういう状況をほとんど解決していないじゃないですか。
 私は防衛問題について無知だからぜひ長官にお聞きしたいんですが、例えば、日本の軍法会議はどうなっていますか。憲兵やMPはどういう状況にありますか。実際に戦闘行為に、戦場に近づくと、とてつもないプレッシャーがあって、必ずこういう問題が必要となってくるわけです。それはどのようになっていますでしょうか、教えていただきたいと思います。
石破国務大臣 これは、先生よく御案内のことでございますが、我が国は、軍法会議というものがつくれない、それは憲法に基づくものでございます。
 ただ、これが、自衛官が現地におきまして、それは国外犯をどう規定するかということともかかわることでございますが、現地におきまして犯しました、仮にですね、そういうことがあったとした場合には、それは我々の警務隊で、これも行くわけでございます、しかるべき処分を行うということに相なります。これはもう、現地の国とどういうような立場に立つか、どういうような法的地位に立つか、そのあたりはこれから先議論をしていかねばならないことでございますが、全く裁く状況にないということではございません。
 それから、先ほどの、先生御指摘になりました武器の件につきましては、全く考えていないわけではございません。ただ、高温でかつ湿度が低い地域において、私どもが今から新しいものを調達する、御指摘のように、では今からカラシニコフを買うかということ、例えて言えばですね、そういうことは現在のところ想定はいたしておりません。ただ、今私どもが持っておりますものの中でどういうものがその地域で使えるかということは、当然検討はいたしておることでございます。これは、派遣を前提にしてということではございません。
首藤委員 さっきから私は、日米安保に基づく、あるいは同盟関係に基づく派遣でもない、国連の要請でもないという、さっき官房長官がくしくも、これは独自行動でやれると。独自行動の根拠は、私はどこにもないと思いますよ、法的な根拠は。
 例えば、服務宣誓というのがあります、自衛隊法五十二条または自衛隊法施行規則三十九条。そこで何と書いてあるか。宣誓するんですよ。
 「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、」ずっとあって、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」
 自衛隊の要件は、宣誓は、我が国の平和と独立なんですよ。服務の本旨も、自衛隊法五十二条、我が国の平和と独立なんですよ。我が国の平和と独立を守るということを宣誓している自衛隊が、どうして国連の要請でもないのに、それを超えて派遣されて活動することができるんですか。私はそうしたものは大変疑問だと思いますが、長官、どうですか。
石破国務大臣 これはまさしく、国連の要請でもないのにと先生おっしゃいました。私どもとしては、一四八三、もちろんそれのみを根拠とするわけではございませんが、そこはいろいろなお考えがあるだろうと思います。では、PKOでもどうなんだというお話になってきまして、この服務の宣誓をどう読むかですが、「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、」云々と、こう来るわけでございます。
 仮にこの法案がお認めをいただいたといたしますと、これも日本国における法令でございます。この法令に基づきまして自衛官に派遣命令が下ることになります。もし衆参両院でこの法案をお認めいただいたということになりますと、これもきちんとした日本国の法令に基づく派遣ということになるわけでございます。
首藤委員 そういういいかげんなことを言っているのは、言っている本人も恥ずかしいと思うからこれ以上は追及しませんけれども、そもそもこの法案は、イラク崩壊の、イラク破壊の原因となったアメリカの単独行動主義をそのまま是認するような、大義を欠いた趣旨である。全く脈絡のない条文である。イラクを戦闘がない地域と考えるような非現実的な想定である。すべての面において自衛隊派遣のための準備が不足している。政治の御都合主義で兵を動かすなということですよ。
 兵は国の大事、生死の地、存亡の道、察せざるべからざるなり、孫子が最初に書いているとおりですよ。兵はいいかげんなことで動かしちゃいけない。兵を送るときは、本当に国民が、行ってきてください、日本の平和と名誉のために行ってきてくださいと、本当にみんなが信じられる、送り出せる、そういう状況で送らなければいけない、そういうふうに思うんですね。
 ですから、私は、この法案は、法案としては国会に提出する価値のない法案であると思い、提出者は恥を知るべきであるということを指摘して、質問を終えます。
高村委員長 次に、大出彰君。
    〔委員長退席、浅野委員長代理着席〕
大出委員 民主党の大出彰でございます。よろしくお願いいたします。
 私、きょうは大量破壊兵器について質問をしようと思っております。
 もともと、今度のイラクにおける戦争というのは九・一一からきているわけでございまして、その周辺の質問などを安全保障の中でしたことがございますが、そもそも、戦争の目的というものがだんだんずれてきているというのが今回の特徴なわけです。
 九・一一のテロに対する攻撃だということで、アルカイダ、タリバン、ビンラディンと来まして、それが今度は、アルカイダとの関係があるというふれ込みでイラクということに変わってきて、ところが、本当のところはアルカイダとの関係はなくて、国連の方でもないということを言っていますが、川口外務大臣もないということを前におっしゃっていましたけれども、その中で今度は、いや、それはイラクの大量破壊兵器を武装解除するのが目的なんだ、こう言い始めたわけですね。
 戦時中は何を言っているかというと、フセイン体制を打倒するんだ、こういうように言っているわけですね。そうかと思ったら、今度はフセイン個人を打倒するんだと。戦争の一番最初がそうですから。フセインの命をねらう、攻撃から始まっているわけですから。そうかと思ったら、終盤の方になってきますと、イラク人の自由、解放だとか言うわけですね。それで銅像まで倒しているわけですよ。アメリカ軍がですよ、あれは本当は。映像では民衆のようになっていますが。
 最近になりますと、大量破壊兵器はなかったのではないかということが言われ始めたときになると、今度はイラン攻撃というか、イランに対する批判を始めているわけですね。これが今の現状であり、焦点をだんだんずらしてきますというか、すりかえているといいますか、その現状の中で大量破壊兵器がないんだとするとこれはえらい話なんです。政権の命運を左右するような話でございまして、私は、大量破壊兵器というのが、要するに切迫した脅威なんだと、こうおっしゃっていたわけですから、すぐに見つからなきゃおかしいんですね。すぐに見つからなければ、切迫した脅威に対処なんかできないわけですよ。イギリスなんかの場合には、四十五分で実戦配備できるかもしれないなどと言われていまして、四十五分でそんなものが来るんだとすれば、配備されるんだとすれば、すぐに証拠が見つからなければ、切迫した脅威に対応なんかできないわけですから。
 だから、私は、大量破壊兵器捜しというのはもうタイムアウトだ、もうこれは大量破壊兵器はなかったと同じだということでございまして、そのことをまず最初に申し上げて、そして、支持をしてしまった責任をしっかりおとりになって、まずは支持を撤回し、そして総辞職をするということをまず要求しておきたいと思います。
 そして、ここに実はニューズウイークがございますが、先ほど伊藤先輩に借りたんですが、これはことしの七月二日号でございます。ここに、「ネオコンの誤算と挫折 イラク問題情報操作疑惑 つまずいたブッシュのタカ派世界戦略」こうなっているわけですね。二十ページのところに、「だましたのは大統領かCIAか 情報操作疑惑 大量破壊兵器の未発見問題はウォーターゲート事件に匹敵するとの見方も」こう書いてあるわけですね。まさにアメリカでもイギリスでも大問題になっておりまして、のうてんきなのは日本だけなわけでございますが。
 まずは、イギリスの方からちょっと質問などしてみたいと思うんです。これは報道でございますが、イギリス関係では、ことしの六月十八日の毎日新聞でございますが、昨年の九月二十四日のイギリスにおける報告書について、WMD、大量破壊兵器報告改ざんで公聴会、前外相ら内容誇張と証言という見出しで実は載っておりまして、これが、元閣僚が二人、証人になって証言しているんですね。証言の内容は何かというと、大量破壊兵器について、情報機関が収集した情報から好都合のものだけ選んだり、内容を誇張したと証言をしたんですね、閣僚が二人。
 その閣僚というのはだれかといいますと、一番目の人が、クレア・ショート前国際開発相。この方は何と言っているかというと、ブレア首相は昨年二〇〇二年の九月初旬までにはブッシュ大統領にイラク武力行使支持を伝え、米英政府間で開戦時期を二月中旬と設定したと、前の閣僚が言っているわけですね。このためイラクの脅威を差し迫ったものとする必要があり、英国が昨年の九月二十四日に公表したイラクの大量破壊兵器に関する報告書は、イラクの危険性を誇示する内容となったと証言をしたんですね。ブレア政権の中の前の閣僚がこう証言しているわけですよ。前の閣僚が証言しているわけですから、相当信憑性の高いといいますか、証拠の能力の高い話なんですね。
 もう一人の閣僚が、ロビン・クック前外相でございます、これはね。この人が何と言っているかというと、情報機関が収集した情報から好都合なものだけ抜き出された情報が、フセイン政権は四十五分で生物化学兵器を配備できるなどとした昨年九月の報告書に盛り込まれたとし、我々、これは米英のことなんですが、米英のいずれもイラク内部に情報源を余り持たず、米国は国外に逃亡した反政府イラク人に依存していたと疑問を投げかけた、それに加えて、イラクが明白で重大な脅威でなかったことは明らかだったと語っているんですよ。ロビン・クック前外相がこれなんです。
 これを、大変重い話でございまして、イギリスの方からすれば、内容を誇張したのであるということはもう明白だということを言っているような話なんですが、これについて、まず、どのようなお考えなのか、お聞きします。
谷崎政府参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。
 イギリス政府部内におきまして、改ざんが行われたのではないかという点につきまして、国会、議会の方で問題になっておりますのは御指摘のとおりでございます。
 特に、五月の下旬にBBCが匿名の情報機関幹部の証言として、大量破壊兵器が四十五分以内に使用可能というくだりは原案にはなかったんではないか、この点について改ざんしたんではないかといった等の指摘がなされております。
 これに対しましてブレア首相は、六月四日の首相の質疑におきまして、まず第一点としまして、イラクの大量破壊兵器の問題は、調査グループが捜査を開始したばかりであるということでございます。
 もう一点、閣僚、官僚、官邸スタッフは、いかなる時点においても、いわゆるドシエというのを発表しておりますけれども、このドシエの作成過程において介入するといったことは試みたことはないということを言っております。それは、先ほど申し上げました四十五分間と呼ばれる判断も含んでイギリスの情報機関による単独の判断であり、情報機関がその挿入に反対したとの主張は正しくないという答弁を行っておる次第でございます。
大出委員 今お答えをいただいたんですが、内容が、ロビン・クックという前のイギリスにおける外務大臣ということでございますので、川口さんはどのように印象を持ちますか。
川口国務大臣 クック氏は、その当時、武力行使が行われたときには院内総務であったわけですけれども、イギリスにおける情報についてのチェックがなされているという動きについては、今後、引き続き関心を持って注視をしていきたいと思っています。
大出委員 これは、閣僚の側から情報が誇張されているんだという話が出ていると同時に、今度は、その逆の意味の情報機関の方からもいろいろな話が出てきているわけですね、先ほどお話がありましたように。
 これを日本の報道で追ってみますと、ことしの五月三十一日の朝日新聞にイギリスのBBCのラジオが言ったことについて出ておりまして、イギリスBBCラジオが五月二十九日に報道ということで、「英政府、加筆し危険強調?」ということで書いてあるんですね。報告書が政府によって書きかえられていたとする情報機関幹部の発言を報道しているんですね。
 何を言っているかというと、先ほどの「「化学・生物兵器を四十五分以内に実戦配備できる」といった表現が情報機関側の意向に反し、書き加えられた」というふうに言っているんですね。「報告書の内容は公表の一週間前、首相府によって改められた。「もっとセクシーにする必要がある」という理由で、原文をまとめた情報機関側では不満の声があがった、としている。」これが載っているんですね。
 当然、こういうことについての政府の側からの反論とかがあるわけなんですが、前閣僚の方と、このBBC放送の報道された情報機関幹部の発言ということを見たときに、どちらがどうしたかということは、まあ押しつけ合っているように見えますが、事実としては、内容が誇張されていたんだということについては一致しているわけなんですね。ですから、これはもうアウトというのと同じだと思うんですが、どうでしょうか。
谷崎政府参考人 お答えいたします。
 ただいまの点につきまして、ブレア首相の方のそういう事実はないという点につきましては、先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。
 他方、事務方としまして、キャンベル首相官邸報道官に対する批判が強くなっておりますが、同報道官の方は、まず生物化学兵器を四十五分で発射できるとの記述について改ざんしたのではないかという点につきましては、自分が情報関係の判断を覆したり、彼らが確信していないことを利用しようとしたとの指摘は全くの誤りであるということを申しております。
 さらに、この報道を行ったBBC等につきましては、首相や統合情報会議議長、先ほど申しましたドシエをまとめたところでございますけれども、そこの議長も否定しておるので、BBCも謝罪すべきである旨の発言を行っておる次第でございます。
大出委員 今のはBBCの放送の話だったんですが、当然、イングラム国防担当閣外相なんかも、当然裏づけのある情報に基づいて戦争に踏み切ったんだと言ったりはしているんですね。先ほどの朝日新聞なんですがね。
 ところが、これが、さっきキャンベルさんという名前が出ましたけれども、反対にストロー外相は何と言っているかというと、こう言っているんですね。四十五分の脅威、あれを四十五分の脅威というタイトルにしているわけですが、「情報機関をまとめる統合情報委員会(JIC)のスカーレット委員長のお墨付きを得た上で、草案段階から政府文書に盛り込まれた、」と二十七日に主張しているんですね。これは朝日新聞のことしの六月二十八日に載っていますが、こういうふうに言っているんですね。要するに、もともと統合情報委員会からオーケーが出ている、つまり、諜報機関の方からもオーケーが出ているんだというような意味合いのことを言っているんですよね。
 ところが、キャンベルさん、先ほどキャンベルさん出ましたけれども、今度、キャンベルさんは逆のことを言っているんですね。官邸のアレスター・キャンベル報道戦略担当局長さんは、統合情報委員会のチェックを受けておらず、外務、国防両省などの官僚で構成する委員会(キャンベル氏が委員長)で作成されたものだと。これは読売新聞の六月の二十六日に載っているんですよ。相反する。これを見ていると、官僚さんと政治家さんとが責任のなすりつけをやっているのかもしれないんですが、こういうふうに言っている。
 ただ、ここまで来ると、内容がやはり虚偽であったということを前提に話が動いているんだと思うんですが、どうでしょうか。
谷崎政府参考人 お答えいたします。
 イギリス政府が発表いたしましたいわゆるドシエにつきましては、昨年の九月に発表いたしました第一のドシエと、それから本年二月に発表いたしましたドシエの第二がございます。
 イラクの大量破壊兵器等につきまして、その疑惑がある点につきまして深く掘り下げた報告は第一のドシエでございます。その中に御指摘の四十五分云々のくだりもございます。第二のドシエにつきましては、いかにイラクが国連の査察に対して協力していないかという点につきまして重点を置いた報告になっております。
 その中で、今御指摘がありました点でございますけれども、ストロー外相の発言は、この第一のドシエにつきましては、すなわち今御指摘の疑惑、改ざんしたのではないかという疑惑がある方でございますけれども、これにつきましては、正確さについては疑問の余地は全くないということを述べております。他方、ストロー外相は、第二のドシエにつきましては、公表前に自分は見たことはないということで、政府にとっても残念なものであったということを指摘しております。
 すなわち、御指摘の一番の問題となります点につきましては第一のドシエでございますけれども、この点については、政府としても責任持って出しているし、自分も見ているし、それは改ざんした余地は全くないということを述べている次第でございます。
大出委員 改ざんしたことはないということは、最初から載せたのは正確な情報だという意味ですね。――はい。
 委員長、これ、おかしいんですよね。イギリスのインディペンデント紙の六月一日に、ブレアはどのようにWMDの証拠をつかんだのかというんですね。その中に載っているのは、たった一人の亡命イラク人の証言に基づくものだったと書いてあるんですよ。ブレアが、戦前、イラクは大量破壊兵器を四十五分以内に移動させることができると発言したのは、たった一人の亡命イラク人の証言に基づくものだったと書いてあるんですね。
 この点をめぐって、だから、相当、セクシーにしろと言ったとかいうことが出たりしているわけですが、かなりとにかく強引に開戦に持っていこうとした様子がわかると同時に、ここまで問題になれば、これはもともと大量破壊兵器なんかやはりなかったんじゃないかということになるんだと思うんですね。
 総合的に考えて、政府の方はどんなふうに考えるんですかね。
川口国務大臣 イラクに大量破壊兵器の疑惑があるということは、現状でというか、実際にイラクが使ったということがまずあるわけです。それから、たびたびの国連の査察団の報告書があるということです。これについて、詳しい話は飛ばしますけれども、最後の段階でも二十九にわたる疑問が呈されているということであります。
 それで、我が国としては、そういったさまざまな情報を、国連の査察団の報告につきまして、これについて精査をし、そして関係各国の情報、これを参照しながら判断をしていったわけでございまして、イラクが最後の機会を与えられて、積極的にみずからが、例えば破棄をした、あるいは破棄をしなければどうしたということについて、積極的にこたえなかったということがあるわけでございまして……(大出委員「それは、いい、必要ない。わかりました」と呼ぶ)ということです。
大出委員 政府の方は、どうも、イギリスの四十五分のものは正確な情報であるということで、正確だというふうに考えているんだとすると、抗議したりすることはないんでしょうけれどもね。
 ただ、私はこの問題、ますます、なぜかと言えば、先ほど言ったように公聴会で証人となって証言をした人が、政権の中にいた前の閣僚であるということなんですよ。この証言の重さというのは揺るがないと思うんですよ。二人も出ているんですよ。そうなってくると、これはもうその政権がたえられないだろうと思うんですよ。
 ですから、これは相当重く考えないと、独自の情報というのは日本というのは当然少ないでしょうから、いろいろなイギリスやアメリカの情報でおやりになっているんでしょうけれども、ただ、支持をしてしまったんですから、大量破壊兵器の問題がすべての出発点でございますから、もし間違っているんだとすれば抗議をしなきゃいけないし、そうでないんだ、知っていてやったんだとすれば、それに加担したことについて、国民に対しておわびをしなきゃいけないでしょう。国民の皆さんが、世論が間違っているといって支持に踏み切っているわけですからね。
 今はイギリスの例ですね。今度、アメリカはどうなっているかということなんですよ。
 大量破壊兵器が見つかっていないわけですから、国内では、CIAの情報などが政治的にねじ曲げられ、開戦の口実に使われたのではないかとの批判が当然ながら出ているわけですね。
 それで、AP通信なんかによりますと、民主党のグラハム上院議員は、サンフランシスコで会見し、今度大統領選に出てこようとしている人ですね、何と言っているかというと、「情報操作やミスリードをしたという深刻な疑問が生じている。大統領には説明責任がある」と主張しているんですね。
 同じく民主党のクシニチ下院議員も、ワシントンで会見して、「「大統領は根拠のない主張に基づき、米国を戦争に導いた」と厳しく非難した。」これは毎日の六月五日に載っていますが、こういうふうになっているんですね。
 それで、それだけではなくて、バイデン上院議員なんというのも、誇大に宣伝したではないか、こう批判しているんですよ。
 一方、アメリカ海軍の方もそうですね。米海兵隊のコンウェー中将は何と言っているかというと、大量破壊兵器が未発見なのは驚きだと表明しているんですね。アメリカ情報機関の情報に従ってあらゆる武器庫を探したが、大量破壊兵器はなかったと述べているんですね。情報が誤っていた可能性を示唆した。これは共同通信の五月三十一日ですが、書いてあるんですね。イラク側が生物化学兵器で米軍を攻撃すると信じていたことも間違っていたと述べた、こうなっているわけですよ。
 このように、いろいろなところから批判が出ているものですから、これはもう議会の方も調査しなきゃならなくなってきたんですね。そこで、上院とか下院で調査するということになるんでしょうけれども、やっておりまして、ところが、それについて、こういう批判が出ているということについて、当然、政府側の方は、ファイス国防次官とかボルトン国務次官は、だれも圧力をかけていないんだという言い方を反論としてしているんです。
 ところが、これについても、ワシントン・ポストが六月五日号で、「チェイニーの訪問により、数名のイラク分析官が圧力感じる」と実は書いているんですね。これはあれですが、「サム イラク アナリスツ フェルト プレッシャー フロム チェイニー ビジッツ」というので書いておりまして、かなりやはり圧力を、これはワシントン・ポストですが、日にちは六月五日ですね、というふうに言っていまして、情報機関を強力にその方向に導いたということ、誘導したということが疑われるんです。
 そのことがあるものですから、アメリカの上院軍事委員会、それから上院特別委員会が調査をするということになったんですね。それは何を調査するかといったら、CIAなどの情報が正しかったのかどうかについて調査をすると。これが共同通信の六月二日に載っています。これで、イギリスもそうだし、アメリカもそうなっているんですね。
 これについて、まずどう思われるのかということと、委員長、我が国も調査を何かしらしないと、これは重大な話ですから、米兵も含めて現地の人たちも死んでいるわけですから、そういう意味でひとつお願いをしたいと思うんですが、質問の方と二つ、お願いします。
川口国務大臣 米国の議会におけるこの情報についての議論につきましては、注視をしてまいりたいと思っています。
大出委員 注視するだけでしょうか。調査というのはこの特別委員会でできたりするんでしょうか。その辺、理事会か何かでお話ししていただけますか。
浅野委員長代理 大出委員の指摘につきましては、理事会で扱いを協議させていただきます。
大出委員 ありがとうございます。
 当然、今回の場合には、CIAだけがやっているわけじゃなくて、いろいろな機関をつくって、特別諜報部門というのをつくってやっているんですね。これは最初から疑問を、要するにおかしいんじゃないかということが最初からかなりありまして、例えばこんなことを書いてあるんですね。ニューヨーク・タイムズなんですが――今のは委員会の調査なんですね。
 それに対して、ことしの六月四日付のニューヨーク・タイムズでは、CIAが昨年の十月の重要諜報報告を再調査する、ロイター電なんですが、ということになったわけですね。これは、米国防総省の特別諜報部門が演じた役割について説明を求めていくんだと。というのはなぜかというと、その重要諜報報告という資料の中身は、イラクが大量破壊兵器を保有し、核兵器開発の再開を目指していると結論づけているからだというわけですよ。だから、CIAも、責任がCIAの方にかぶってくるということがあるので、この部分を再調査するということなんですね。
 そこでまた出てくるわけですが、ニューヨーク・タイムズは、CIAの再調査をよく知るある当局筋が同紙に語ったところというのが六月四日に載っているんですが、一九九八年に米兵器査察官らがイラクを去った後、イラクの兵器開発に関する情報の質は大幅に悪化したと。また、憶測でイラクが兵器開発を続行したと決めつけられた可能性があるということを言っているんですね。
 同じようなことを、いわゆる国連査察委員長のハンス・ブリクスさんが言っておられて、これは朝日新聞の六月五日でございますが、こうなんです。
 開戦後、あなたはイギリス・BBCラジオとのインタビューで、米英が国連などで示した情報の多くを当てにならないものだったと評しました。意図的につくったものではないだろう、しかし、イラクがアフリカのニジェールからウランを買う契約をしたといった情報の誤りを見抜けなかったことは、米英の情報はどこまで信頼できるのかという懸念を生じさせた、この私の懸念は多分正しいはずだ、こう言っているわけですね。
 これはどういうことかといいますと、イラクがアフリカのニジェールからウランを買うよということが、要するに核兵器開発ということにつなげられまして、大統領の一般教書にまで入っちゃっているんですね。ところが、うそだということがわかったわけですよ。現場のブリクスさんか何かにすれば、そんなのはうそというのはなぜ気がつかなかったんだろう、それで情報の質が落ちてきた、こういう話なんですね。
 だから、アメリカとイギリスが中心になって行動を起こしているわけですから、当然こういった情報を日本は信用しながら支持をしていったわけでしょうけれども、ここまでいろいろな問題が起こっているときに、どのように対処なさるのかをお答えいただきたいと思うんです。
茂木副大臣 今大出議員の御質問を聞いておりますと、例えばニジェールからのウランの問題でいいますと、これはハンス・ブリクスが担当しておりますUNMOVICではなくて、IAEAの担当の部分でありまして、そのように、例えば先ほどのイギリスの諜報機関の内容につきましても、昨年の九月、それからことしの二月とあるわけですけれども、若干混同していらっしゃる部分で質問されている部分もあるのかなと思っております。
 少し、報道について大変細かくフォローされているというところがあるんですが、必ずしも報道全部がそのとおりに言っているという部分もないわけでありまして、もちろん我が国の政府としても、イギリスの国内、そしてアメリカの国内での調査の状況、それから、これからまさに、今イラクにおいて千人態勢で、このWMD、大量破壊兵器の捜査を進められているわけでありまして、そういった動向を注視していきたいと思っております。
大出委員 先の話をなさったということなんでしょうけれども……。
 イギリスの場合には、先ほど言った、中に入っていた前の閣僚が証言という形をとって公聴会で証言しちゃっているわけですね。アメリカの場合には、そういった、これは信憑性が高い、確度の高い、証拠になるなというものはなかなか見つからなかったんですが、実は一個ありまして、これはウォルフォビッツ国防副長官なんですが、この方が、これは語るに落ちるということだと思うんですが、これはインディペンデント紙なんです、五月三十日ですね。
 ここで、もともとがバニティーフェアという雑誌の七月号の取材に応じているんですね。ダビド・ウズボンという記者が聞いているんですが、そのときに何を言っているかというと、タイトルが、大量破壊兵器は御都合主義的な言いわけだったというタイトルなんですね。大量破壊兵器はまさに戦争のための御都合主義的な言いわけだったということなんですね。
 どういうことを言っているかというと、「WMD ジャスト ア コンビニエント エクスキューズ フォー ウオー」と言っているんですよ、ウォルフォビッツが。そのほかのところにも書いてありまして、こういうのですね。大量破壊兵器問題はみんなが同意することができるものだったので、問題解決の官僚的理由としてこれを持ち出した。直訳すると、人目を引かないが巨大な正当化であったというような、直訳するとそんなことが書いてあるんですよね。
 これは、要するに、普通ならば大量破壊兵器を武装解除しますという目的なはずなんですが、それを都合よく利用しているんだよということなんですよ。つまり、本来の目的が違うということですね。それを雑誌に向かってこう答えちゃうわけですよ、この方が。どう思いますか、これは。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいまのウォルフォビッツ米国防副長官の発言でございますけれども、私どもも、これは雑誌のバニティーフェアの七月号に掲載されたインタビューに関する記事というふうに了解しております。
 ちなみに、このバニティーフェアというのは女性向けのファッション誌でございますけれども、その中で、タイトルはまさに「ジャスト ア コンビニエント エクスキューズ フォー ウオー」、つまり戦争のエクスキューズという言い方にはなっておりますけれども、これはタイトルでございまして、ウォルフォビッツ国防副長官自身の発言ではないというふうに私ども了解しております。
 国防副長官が何を御発言になったかといいますと、私どもの承知しておりますところでは、サウジアラビア駐留米軍、それに対するオサマ・ビンラーディンの怒り、二〇〇一年九月十一日の同時多発テロとイラクの間には関係がある、大量破壊兵器は米国政府のだれもが同意できる点であった、イラクに関しては、大量破壊兵器、テロ支援、イラク国民への虐待という懸念が常にあったが、大量破壊兵器とテロ支援の連結が最大の懸念であったというふうに述べておられまして、この意味するところは、要するに、イラクが大量破壊兵器廃棄の義務を履行していないことから武力行使が正当化されることについては、米国政府のだれもが同意できる点であったということを示すものだという米国政府の立場を示したものであるというふうに了解しております。
大出委員 まあ、バニティーさんのフェアということでそのようにおっしゃるわけですが、活字としては間違いなくインディペンデントに載っておりますので、だから、その趣旨が違うんだということでございますけれども、私はやはり、最初に国防副長官の、先ほどのニューズウイーク等で問題になっておるということを申し上げたわけでありますし、アメリカでも調査をしているということがあり、この問題には、冒頭申し上げたように、大量破壊兵器という問題自体が切迫した脅威であるということで言われてきたわけでございまして、脅威であるんだということでやったわけですが、すぐには見つかっていない。これから見つかるでしょうとか言っているわけでございます。
 次に行きますが、一応戦争が終わってから、イラクの大量破壊兵器の所在についていろいろなことを言うんですね。いろいろなパターンがございまして、私は、これはごまかしとかすりかえだろうと思っておりますが、例えば戦争が終わってから大量破壊兵器を発見しましたと言うやり方が一個あるんですね。それからもう一つは、発見には時間がかかりますと言ったりするんですね。それから、発見を証拠としないんだとかいう言い方をしたりするんですね。それから、いや、あれはシリアに移動されたんだとか言っているわけですね。それとか、いや、速攻で攻撃をやったから使う時間がなくて証拠を隠滅したんじゃないか、こういう話をしたりとかしているわけなんです。最後には、あと二つあるんですが、ブレアさんなんかは最優先の課題ではないんだとか言ったり、あるいはイギリスの閣僚は逆に責任転嫁みたいな発言をしたりとかするんですね。
 そこで、質問通告してありますが、では、一体、この発見したというもの、ナジャフの化学兵器工場はどうなったのか、それからカルバラの移動式実験車というのはどうなったのか、それからスカッドミサイルはどうなったのか、それから化学兵器防護服というのはどうなったのか、それから移動式トレーラーはどうなったのかというのをまずお聞きしたいと思います。
天野政府参考人 お答えいたします。
 まず、ナジャフの化学工場でございますけれども、これは武力行使後存在が明らかになったものですが、これについてアメリカ側は評価はしておりません。
 なお、この関係で、二月の五日に行われましたパウエル報告の中におきましては、ナジャフとは場所が違いますが、タージの施設の衛星写真を示しまして、タージの施設のうちの四カ所は化学兵器の貯蔵庫であるが、査察官が到着する前に貯蔵庫が片づけられてしまったということを言っております。
 また、移動式トレーラーでございますけれども、米軍は、四月から五月にかけまして、トレーラー二台及びトラック一台を発見いたしました。五月の二十八日、国防総省情報局は、移動式の生物兵器製造施設と結論づけるという共同発表をいたしました。細菌などの物証は見つかっておりませんけれども、この共同報告書によりますと、水の浄化、移動式の医療施設、医薬品の製造といった正当な目的のために使用されたとは考えられないと説明しております。なお、この点につきましても、パウエル報告の中で、移動式生物兵器製造関連施設は少なくとも十八台イラクは保有しているということを言っております。
 カルバラの移動式実験車については、これも武力行使後明らかになったものですが、米軍は評価しておりません。なお、パウエル報告の言及はただいま申し上げたとおりです。
 化学兵器用防護服ですが、これも武力行使後発見されましたが、米軍は、化学兵器用防護服とは言っておりませんで、化学防護服三千が発見されたと言っておりますが、これにつきましてパウエル報告では言及はございません。
 スカッドミサイルは発見されておりません。
 以上でございます。
大出委員 かくて大量破壊兵器は見つかっていないということなんですね。ですから、ブッシュさんが発見には時間がかかるんだというようなことを言ったりしているわけですね。ですが、だれもわからないところに隠してあるという変な話なんですね。というのは、宝探しじゃございませんですね。武器ですから、使うためにあるので、だれも知らないところに隠しておったら使えないわけですからね。ですから、こういうのは、切迫した脅威があるとおっしゃっているわけなんだから、本当はすぐに発見しなければ切迫した脅威に対応できないわけですから、これは最初からなかったという、切迫した脅威なんというのはなかったんだと見るのが普通ではないかと思うんです。
 フライシャー報道官が途中から、発見を証拠としないと言ったりしているんですね。何を言っているかといいますと、捜索の成否について、発見することではなく、その計画に従事したイラク人によって提供された情報にかかっていると述べて、発見を証拠としないんだ。情報ありということは垂れ込みのことでしょうね。
 この点についてどうでしょうか。私は、要するに証拠が見つからないから逃げを打っているんじゃないかと思うんですが、どんなふうにお考えでしょうか。
天野政府参考人 お答えいたします。
 フライシャー報道官が、大量破壊兵器の発見を証拠とはしない、証言でよいとの発言をしたとの御指摘でございますが、これは、フライシャー報道官の会見記録などをいろいろ調べてみましたが、具体的にこのような趣旨の発言をしたという記録は見当たりませんでしたが、それに近いものはございました。
 思い当たりますのは、四月二十五日の会見で、フライシャー報道官が記者団から、大統領は、大量破壊兵器が実際にあるとの証拠はないかもしれないが、開発計画があったことを示す何かの証拠が得られるかもしれないと述べたのではないかと聞かれたわけでございます。これに対して、それは大統領の発言と異なる、大統領は、イラクは一部を廃棄したかもしれないが、一部を拡散させたかもしれないと述べたとフライシャー報道官は応答しております。
 なお、ブッシュ大統領は、六月二十一日に行われましたラジオ演説で、我々は引き続きフセインの大量破壊兵器を捜索する、独裁者の歴史を知っている者は皆、フセインが生物化学兵器を所有しており、化学兵器を使ったことを知っている、フセインの大量破壊兵器プログラムの真の範囲を発見する決意であると述べております。
 また、米国などが、最終的には千三百から千四百名規模から成るイラク監視グループを組織して大量破壊兵器の捜索活動を行っていることから見ましても、アメリカは真剣に大量破壊兵器の証拠の発見に努めているものと考えられます。
大出委員 次の、シリアに移動したというものはどうなりましたか。
安藤政府参考人 シリアにつきましては、パウエル国務長官が五月にシリアを訪問されました。その後、機中で記者会見を行っておりますけれども、その中で、記者の方から、シリアがテロリスト及び大量破壊兵器を隠匿していることに疑いはないのかと質問を提起いたしまして、それに対してパウエル国務長官はこのように答えております。彼らが大量破壊兵器を隠しているかどうかは述べることができない、我々は、それが彼らの利益とならないであろうことをシリアに対して明確にしたというふうに言っております。
大出委員 次は、使う時間がなかったからということに行きたかったんですが、私の時間がなくなりそうなので。
 前の、戦争中にも安全保障委員会で質問なんかもして、スコット・リッターという方が、UNSCOMの元査察団長ですね、「イラク戦争」という本などを書いておられて、そういうのを読んだときに、これはここまで査察をやっていれば大量破壊兵器はないだろう、そういうふうに読めるわけなんですね。
 そんな中で、もともと何を言っているかというと、それでも戦争は起こってしまったわけですが、大量破壊兵器の能力は九〇から九五%まで検証可能な形で廃棄されたんだと主張しているんですね。ところが、これがそもそもの出発点なんでしょうけれども、あとの一〇%とか五%はどうなっているんだということなんですが、これはこの人も言っておりますが、イラクは一方的に、国連の目が届かないところで多くの施設や装置を廃棄したんですね。我々はこれを後になって検証することができたが、問題はイラクによる自主的廃棄は文書記録を残さずに行われたことだ、つまり、この一方的廃棄によって検証の精度への信頼が揺らいでしまったんだと。五%あるじゃないかと頭の中で考えるわけですよね。ところが、そうではないんだ、記録に残っていないだけで、間違いなく廃棄されたんだよということがるる書いてある、その廃棄の仕方みたいなものが全部書いてあるんですね。
 あのころにやはりそういうこともしっかりと見てやれば、間違った報道で大量破壊兵器があるんだということには進まないで済んだのではないか、そんなふうに思いながら、時間になりましたので、私の質問を終わります。ありがとうございました。
浅野委員長代理 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。
 きょうの質問は、先日行われました委員会で私が質問したことをもう一回確認と整理をさせていただきたいと思います。
 まず第一点目というのは、戦闘地域と非戦闘地域の区別ができる、そこには、戦闘地域というものは、長官が何回もこの委員会でもお話しされている、まさに戦闘行為とは、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」であります。では、国際的な武力紛争とは何かといえば、国または国に準ずる組織の間において生ずる一国の国内問題にとどまらない武力を用いた争い、それが戦闘地域であります。こういったことをおっしゃられたんですけれども、前回の質問のときに、では、戦闘地域と指定をするためには、この今の論理展開からいえば、国もしくは国に準ずる組織もしくは者というものが存在をするということが大前提になるということの話をさせていただきました。
 では、今現状、イラクにおいて、この国または国に準ずる組織、者というものが存在するのかどうか、その有無、あるかないか。私が今まで聞いている内容からすると、どうもそれは、今現状では判断ができない、あるかないかわからないというように御答弁をされたようにも思えるんですけれども、もしも今判断ができないというんであればそれで結構でございますので、もう一度お答えを願えればありがたく、よろしくお願いいたします。
石破国務大臣 何度もお答えをしておりますが、この法律の仕組みは、非戦闘地域で行わなければいけない、こういう仕組みになっておるわけでございます。それは当然、憲法上の要請に従いまして、非戦闘地域で行わなければいけません。戦闘地域というものを定めるということは、この法律については予定をいたしておりません。
 戦闘地域を定めるのではなくて、非戦闘地域を定める。それは同じことのように見えますが、実は違う概念でございまして、非戦闘地域を定めるということをきちんと担保しておかなければ我々の自衛隊は活動ができないということなのでございます。ですから、そんなこと、分けることに何の意味があるんだ、こういうふうにおっしゃいますが、非戦闘地域で行うということをきちんと決めておくことが憲法の要請に従うものなのでありまして、これはきちんと定めなければいけません。そういうものであって、自衛隊の活動は非戦闘地域に限られるということは、これはもう何度も申し上げておるとおりでございます。
 国または国に準ずる者というものがあるのかということでございますが、これは今イラクにおいて、国というものはございません。そうしますと、国に準ずる者とは何かということになりますと、これは例えて言えばということでございますが、バース党の残党というものがフセイン政権を再興しようということで組織的な行動を行っている場合、これは国に準ずる者になることがあり得るだろうというふうに思っております。それが単にその日の糧に事欠いて泥棒を働いておるということであるとするならば、これは国に準ずる者ということにはならないわけでございます。
 これは、一にかかって、その状況がどうであるか、絵に映る状況がどうであるかということではなくて、憲法上の要請にきちんとこたえるということであります。ですから、危ないとか危なくないとか、そういうことと全く重なる概念というわけではございません。
佐藤(公)委員 もう一度聞かせていただきます。
 国に準ずる組織、者というものがあるかないか、もしくはわからない、どういう判断を今の政府で下されているんでしょうか。
石破国務大臣 現在、法案を御審議いただいているところでございますから、これが国に準ずる者であるということを具体的に提示することは今できないということは、以前も答弁を申し上げた次第でございます。
 ですから、調査団を出しまして、そういうような地域というものがあるということでなければなりません。つまり、現に戦闘が行われておらず、かつ、活動する期間においてそれが予測されない地域ということでございますから、そこは慎重に判断をすることになります。
 ですから、例えて言えばバース党の残党というようなことを申し上げました。現在、バース党の残党、これは私はテレビ報道をそのまま申し上げるようで恐縮でございますが、バース党の残党というものが活動しておるというようなことがある、それを我々が主体的に、我々の憲法に適合するようにきちんと調査をして把握をするということになります。
佐藤(公)委員 何ではっきり言っていただけないのかなと思うんですが、はっきりお答えしやすいように答えをつくらせていただければ、一番、ある、二番、ない、三番はわからない。一、二、三、どれを選ばれるんでしょうか。
石破国務大臣 何も、はっきりわかることが、これはクイズ番組ではございませんので、どれをとるかというお話ではございません。
 ある、ない、わからないというようなことでここでお答えすることにどういう積極的な意味があるのか、それは、御質問の意図を私ははかりかねるところでございます。
 これは何とも言えません、それは。存在をするということがない、そういう地域でないところで活動しなければいけない、これは、我々が日本国憲法に従ってこの法律をつくり、活動を行うからには、非戦闘地域というものをきちんと確定して、そこに行かなければならない。非戦闘地域であるか否かということはきちんとその場において、この法律をお認めいただいた段階において、そこへ行って把握をするという当たり前のことを答弁しておるわけでございます。今ここで、あるとかないとかわからないということを申し上げるわけにはまいりません。
佐藤(公)委員 ここはクイズ番組じゃないとおっしゃられましたけれども、そういうふうにしているのは、長官、あなたじゃないですか。はっきり答えれば、クイズ番組に、こんなになって、なりませんよ。これがいかに大事なことかということは、長官はよくおわかりになっているはずです。
 これは、もしもわからないのであれば、判断できないのであれば、判断できない、あるならある、ないならない。それは、長官がおっしゃったように、そんなものはわかっていますよ。あるならある、そこで、あるんだったら、ここの地域は非戦闘になるか戦闘になるかということをこれからまた話し合っていく、また調査をしていくことになるじゃないですか。そうでしょう。そんなことはわかったことですよ。そんな、はぐらかさないでくださいよ。
 では、これがいかに大事かということを話させていただければ、これをきちっと決めずに、前提なくして、この法案だけ枠組みができる。あとは政府が、非戦闘か戦闘か、国に準ずる組織があるかないか、者がいるかいないか、それを政府が判断することによって、どこにでも行かせることができるようになっちゃうということじゃないですか。その前提というものをある程度ここで審議をしていく、わからないんだったらわからない、そういうことを論議していくべきじゃないですか。それを、何かはぐらかしているような言い方して、クイズ番組、失礼じゃないですか、そんなのは。
 では、聞かせていただきますよ。では、国に準ずるということ、それをどういう基準で、どういう情報で、どういう内容で決めるんですか。答えてください。
石破国務大臣 何度も同じことを申し上げておりますが、それは、いかに大事かということは、何度も申し上げておりますように憲法上の要請、憲法上私どもは武力の行使を行わないということです。この場において、私ども政府が憲法上の要請という言葉を口にするほど重要なことはございません。それは、重要なことは、委員と同じように、あるいは責任を持つ政府として十分に認識をしておるつもりでございます。私どもは、憲法上という言葉をそんなに軽々しく使っておりません。憲法に反しまして自衛隊は海外で活動することは、絶対にやってはならないことでございます。
 そして、どういう地域がそうであるかということはその時点で、この法案をお認めいただいて、そしてそういう事態があるかないかということをきちんと定める、そしてまた、それは基本計画という形になり、そして総理大臣の承認をいただくわけでございます。そしてまた、その措置につきましては、これはこの法案に従いますれば、国会の関与がかかることでございます。
 ですから、政府が勝手に決めて、あとは政府にお任せ、全く議会の関与も働かない、政府が勝手に決めるというような仕組みにこの法案はなっておりません。それは条文をお読みいただければおわかりいただけることでございます。
佐藤(公)委員 私はマスコミの報道しか見ておりません、与党団長の方が、今イラクは全土非戦闘地域だということを御発言された。きょうの委員会の中でも、首藤委員からのお話を受ければ、全地域が戦闘地域と言える。こういうふうに、もうどっちがどっちだかよくわからない状態の前提で進んでいるということが、この法案を審議するに際しては非常にその根底の部分を揺るがしかねない、私はそう思います。
 では、長官にもう一つお聞きいたします。戦闘地域という言葉、これは、法文上における定義というのはどういう形での定義があるのか、いかがでしょうか。
守屋政府参考人 戦闘行為について御質問でございますけれども、まず、この法案の前提を御理解になっていただきたいと思います。
 実施区域を定めるに当たって、法案では、例えばイラク全土を戦闘地域と非戦闘地域に色分けすることは求められておりません。危険が認められる特定の地域がいわゆる非戦闘地域という要件を満たすことが求められている、こういうものでございます。こういういわゆる非戦闘地域については、国または国に準ずる組織の間において武力を用いた争いが行われているか否か、活動の期間を通じて行われることがないかについて判断するということでございます。
 それで、区分けが可能かどうかということでございますが、このような非戦闘地域につきましては、イラク国内の状況のもと、当該地域の情勢につきまして、我が国が現地視察、あるいは防衛駐在官の情報とか独自に収集しました情報に加えまして、米国や米国以外の諸外国、国際機関等から得られた各種情報を総合的に分析し、合理的に判断することが可能と政府は考えているところでございます。
佐藤(公)委員 今の御答弁からすれば、先ほどから長官がお話をされている戦闘とは、戦闘地域とは、話をしているのは、これは実は法文上、定義としては存在しないということになります。そうですよね。いかがですか。
守屋政府参考人 法文上は、非戦闘地域とは何かということでございますが、これには、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで行われる活動の期間を通じて戦闘行為が行われることのないと認められる地域ということで、国会での御質問で戦闘行為とは何かという御質問がございましたので、これにつきまして、国または国に準ずる組織の間において生じる国際的な武力紛争の一環として認められる武力を用いた争いの一部を構成する人を殺傷しまたは物を破壊する行為である、こういうことを累次御答弁しているところでございます。
佐藤(公)委員 もう一回はっきり聞きます。
 法文上の定義は今おっしゃったことで、これは法律上、戦闘行為、戦闘地域というのは、法文上、言葉の定義は、今長官がおっしゃられていることでいいんでしょうか。
守屋政府参考人 法文上、非戦闘地域ということの中に戦闘行為という言葉を使っているわけでございますが、その戦闘行為をどういうことかということは、答弁で今、私……(佐藤(公)委員「定義でちゃんとこれが確定したものだということでいいんですか」と呼ぶ)国会で政府の考え方を述べておるところでございます。
佐藤(公)委員 では、今のお話を全部聞いていくと、まず調査団を派遣する、そしていろいろな情報、いろいろなところを見て、いろいろなことを調べて、ここの地域にニーズがあるからここに自衛隊を派遣しようということをある程度何カ所か選定をする。そして、そこの地域が選定されたのであれば、例えば五カ所なら五カ所、これが非戦闘地域か戦闘地域かをそこから分けながら、非戦闘地域なら、その五カ所のうち二カ所が非戦闘地域だと判断した場合にはその二カ所に行かせる。こういう手順になっていくんでしょうか、長官。
守屋政府参考人 地域を前提としますのは、私どもの活動する行為が行われる地域が非戦闘地域であるということでございまして、地域があるから私たちの活動がそこで行われるというものではございません。
佐藤(公)委員 もう一度聞きますよ。皆さんが調査団や何かを出す。ここの五カ所の地域、ニーズもあるからこの五カ所に自衛隊を派遣したいと。では、その五カ所というのが、一つ一つ見ていったら、ここは非戦闘地域だ、ここは戦闘地域だ、ここは戦闘地域だ、ここは非戦闘地域だ、ここは非戦闘地域だというふうに、そのニーズや要望、派遣する地域が決まった段階で、非戦闘か戦闘地域かというのを分けて、非戦闘地域に自衛隊を派遣するということの決定となっていくんですね。
守屋政府参考人 手続としましてはそのとおりになると思います、政府内の手続といたしましては。
佐藤(公)委員 では、今まで私たちが思っていたのは、国全体における戦闘地域、非戦闘地域というのをある程度すみ分けをして、その中で非戦闘地域を選んで、中でのニーズに応じた派遣をしていくというふうに私どもは解釈していたんですけれども、それは間違いだということでよろしいんでしょうか。
守屋政府参考人 法案における実施区域を定めるに当たっては、例えばイラク全土を戦闘地域と非戦闘地域に色分けすることが求められるものではございませんで、自衛隊の活動が見込まれる特定の地域がいわゆる非戦闘地域という要件を満たすことが求められると考えているものでございます。
佐藤(公)委員 まあ、どっちが先かということになるのかもしれませんけれども、では、そこでお尋ねしますけれども、非戦闘地域と戦闘地域、どういう情報をもとに、どういう基準でそれを判断するんでしょうか。長官はこの前もおっしゃられました。組織とか指揮系統、命令系統、こういったことを一つの基準とするともおっしゃっていましたけれども、そこの戦闘地域、非戦闘地域、それをずっと突き詰めていけば、国に準ずる組織または者がいる、いない、こういうことになってくると思いますけれども、一体全体、どういう基準で、どういった情報をもとにそれを判断して決めていくことになるんでしょうか。
守屋政府参考人 お答えいたします。
 それは、国または国に準ずる組織によって戦闘行為が行われていない地域でございます。この場合、その戦闘行為に当たるかどうかということでございますが、具体的に、あるテロや襲撃が、その地域で起きておりますそういうテロや襲撃が国際的な武力紛争の一環として行われているか否かの判断でございますから、これは政府といたしましては、当該行為の実態に応じまして、国際的なものか、計画性があるのか、ずっと継続されるものなのか、それから組織的なものなのかという観点から個別具体的に判断すべきものと考えておるところでございます。
佐藤(公)委員 この基準もきちっとある程度明確にすべきだと僕は思いますが、そういったことはこれからということになっていくと、本当に根本の部分がいろいろと変わってくる。そして、私が今、その前か後かという議論においては、最初に聞いているのと私たちはちょっと勘違いをしていたのかなという部分がある。政府答弁が変わってきたのかなというふうにも思える部分があります。
 この戦闘地域、非戦闘地域というのを判断するに際しては、非常に難しい情報または判断ということが必要になると思いますけれども、現段階では、イラク関係者の方ともきのう、きょう、いろいろな話をいたしました。そういう中で、ブッシュさんが勝利宣言をした後、その後から、イラク国内における国に準ずるような組織、者の中では、また武器が充実をしてきているとか立て直しを図っているとか、また残党バース党が若者をリクルートして兵員の増強をしている、こんな話も幾つか聞こえてきます。
 これは、つまり、だんだんだんだん、通常交戦とか普通交戦の場合は政府が残っていく、今回の場合は占領ということで政府がなくなっている、そういう中で残党バース党が若者をリクルートしているなんということが、もしも本当にこういったことがあり得る、つまり、兵力がどんどん本来ならば減っていくはずなのに、逆に、一たん減ってはまたふえていくような状況、これはまさに、本当に究極的な考え方からいえばもうベトナム戦争化しているように思える部分がありますが、この辺の現状の認識を、長官、どうとらえられていますでしょうか。
守屋政府参考人 イラクにおける情勢につきまして、防衛庁としても大変注視しておるところでございます。
 確かに、イラクの戦争が終わった当初はイラク人の方々は米兵による解放を歓迎しておりましたけれども、その後、大変治安が悪くなってまいりまして、日々の生活が、夜、外出が自由にできないとかという不満があるということで、大変そういう治安状況が悪くなっている。そういう治安状況の悪いさなかに、バース党あるいはサダム・フセインの一派の組織的な活動と見られるような動きもございます。
 これは、今、そういうふうな情勢を変えるべく、米英軍がてこ入れをしている状況でございまして、長期的に、私どもが自衛隊の部隊を派遣するまでの段階において、そういう情勢を慎重に政府としては見きわめたい、こういうふうに考えておるところでございます。
佐藤(公)委員 もうこれは各委員が、きょうも質問にもありましたけれども、本当に全土、僕は戦闘地域と言えるんではないかというような状況だと思うんですね。
 実際問題、これは六月二十日等の報道にもよって、今までロケット砲だったのが迫撃砲も加わり始めている。御存じのように、ロケット砲というのは水平でございます。直進での距離が約千メーター、通常だったら三百メーターか四百メーターですか、目標というものがある程度見えているからロケット砲で撃てる。でも、迫撃砲が出てくるというのは、これは最高でも三キロから四キロですか、全く放物線を描いて落ちていくようなことになります。こういうことの武器がどんどん充実してきているというのがこういうのを見てもわかるようにも思えます。
 非常に、今までどんどん充実はしていかない方向に行くはずなのに、今イラク国内では、残党バース党が兵力を増員している、また武器も充実してきている。これはもう全く、終結宣言よりも、また戦闘していたときよりも、より一層悪化しているというのが客観的に見えるところがあります。この辺の認識はちゃんと長官、持ってもらわないと、この先々、話を進めるに際しては、非常に不一致なことになってくるかと思います。
    〔浅野委員長代理退席、委員長着席〕
 この話もたくさんしたいんですけれども、もう一つ時間がない中でさせていただければ、交戦権のことについて話をさせていただきます。
 通常、交戦が行われる場合に、各国においては、どういう状況下において引き金を引いていいのか、相手を撃っていいのか、やはり緻密なその交戦的マニュアルができ上がっているというふうに私は聞いております。これは米英においても、いろいろと戦争に対応するべくマニュアル、つまり、このときにどういう相手に対して撃っていいのかという緻密なマニュアルをつくられていると言われておりますけれども、そういったマニュアルに関しては、防衛庁の方では聞いているんでしょうか。
守屋政府参考人 この法案の前提としまして、非戦闘地域で行うということでございまして、私どもは武力の行使を行うものでございませんから、その交戦権の問題は起きないと考えております。
 ただ、戦闘地域で行わない活動でございますけれども、現地は戦争が終わったばかりの状況でございまして、先ほど先生からも御指摘がございましたけれども、治安が大変悪うございます。こういう治安の悪い状態に世界各国の軍隊、今は十五カ国参加しておりますけれども、その治安の体制に対しましてどのような武器の使用基準をつくっているのか。これは、私どもといたしまして、行く隊員の安全にかかわる重要なことでございますので、どのような武器使用基準で対応しているのかと、これは情報収集に今努めているところでございます。
佐藤(公)委員 では、一応自衛隊の方が行かれるケースの場合にも、その防衛的な部分もしくは危険回避、こういったことでの武器使用ということが今回認められている部分がありますけれども、これも当然マニュアル化したことになっていくことになるんでしょうか。
守屋政府参考人 自衛隊は、部隊行動を旨とする組織的な行動をいたしますので、どのようなケースにどのような武器の使用を行うかというのは、あらかじめ基準を設けまして、これは訓練で徹底していかなければ、現場の不測の事態に柔軟に対応することができません。
 ですから、先生御指摘のとおり、防衛庁としましては、現地の情勢に合った部隊行動基準をつくりまして、十分な訓練をした上で部隊を送りたい、こういうふうに考えておるところでございます。
佐藤(公)委員 では、その場合に、米英におけるマニュアルと日本の、その内容は違います、内容というか目的が違いますけれども、すり合わせということは、今後作業として出てくるんでしょうか。
石破国務大臣 ROEは基本的にどの国も公開をいたしておりません。したがいまして、すり合わせということは予定をしておらないところでございます。
 私どもは、この法案の十七条をお読みいただければわかりますが、十七条に定められたものをどうやってきちんと、委員のお言葉をかりればマニュアル化できるかという作業をやっておるわけでございます。
佐藤(公)委員 では、長官、これは事前質問を出しておりませんので、もうその場の御答弁になってくると思いますけれども、これに関してすり合わせをしないということは、いざというときに日本の自衛隊は、アメリカ軍またはイギリス軍、このマニュアルというものをすり合わせをしていない。どういうときに彼らが撃つのか、攻撃をするのか、守るのか、守られるのか、そういうことがわからない状態で自衛隊をイラクに派遣することになるんでしょうか。
石破国務大臣 ROEというものの性格は、実際、どんなときに、どのようにして撃つかということで、撃つ撃たないという判断のものでございまして、具体的にどうして行うかということは、どの国も公表いたしません。それは、お互いにアーミー・ツー・アーミーの話で、いろいろな議論はいたします、議論はいたしますが、どこもそれをオープンにしているものではございません。
 それをやらなくて大丈夫かということでございますけれども、それは、ROEの性格上、私どもとしてどのような手順で使うのかということをきちんと文民統制の観点からも決めておく、それがROEというものでございます。
佐藤(公)委員 それは当然公表はされません。されないということは私もわかっていて聞いております。
 ただし、今までのいろいろな戦闘地域において、軍の協力関係というのは、必ずこのマニュアルの最低基準のものに関してはすり合わせをするはずですし、してきているはずです。今回は自衛隊は目的が違う、こういう意味で、全くそのすり合わせは、今のお話ですと、していかないということになりますけれども、イギリス軍とか米国軍はこのすり合わせをきちっとしているはずです。それでも日本はしないということになるんでしょうか。
石破国務大臣 それは行うことが違います。私どもは、米軍と一緒になって武器を使用するというようなことが想定をされません。これはもう条文をよくよくお読みをいただければおわかりいただきますとおりのことでありまして、自分を守るためにどのように使うかということでございます。そこにおいて、なぜアメリカ軍とすり合わせる必要があるのか、イギリス軍とすり合わせる必要があるのか、私は御質問の意味をはかりかねておるところでございます。
 ただ、アメリカ軍やイギリス軍がどういう場合に、立場を転じてみまして、どういう場合に我々を守ってくれるようなことがあるだろうか、そういう議論はございましょう。しかしながら、我々が武器を使用いたしますのは、自分を守る、そういうことにおいて使うわけでございます。
 そういうようなことからいたしますと、アメリカ軍やイギリス軍とすり合わせるということがどういうことを指して、どういう必要性を指しておっしゃっておられるのか、御教授いただければ幸いです。
佐藤(公)委員 御教授をしてくださいということを長官から言われましたけれども、もう時間でできませんけれども、またこれは長官も十分わかっておっしゃられていることだと僕は思います。
 外務省の方に聞きたいこと、たくさんあったんですけれども、時間がないがためにこれで終わりにさせていただきますが、次回できれば引き続きさせていただきたく、よろしくお願い申し上げます。
 以上です。
高村委員長 次に、春名直章君。
春名委員 日本共産党の春名直章でございます。
 当委員会で、自衛隊を送るイラクの占領統治の実態がどのような状況になっているか、議論になっております。派遣する先がどのようになっているのか、なかなか政府は明らかにしません。
 そこで、私も、占領統治の機構がどのようになっているかを私なりに調べてみました。今お手元に配っている資料を川口外務大臣にちょっとごらんいただきたいと思います。行っていますか。
 それで、これはアメリカのシンクタンクのCFR、外交問題評議会がインターネット上で公開、掲載している機構図でございます。ニュースソースは国防総省でございます。
 これを見ますと、イラクで実効的な統治を行っているCPA、連合国暫定施政局は、ラムズフェルド国防長官を介してブッシュ大統領の指揮を受けることになっています。
 与党報告書の中身とは少しその図が違うようなんですが、それはおいておいて、これが現地の機構ということで考えてよろしいですか。
川口国務大臣 カウンシル・オン・フォーリン・リレーションズ、外交評議会というのは一つのシンクタンクであるわけで、これのソースが国防省というふうになっていますけれども、国防省そのものがこういう図を出しているかどうかということであれば、それはその国防省の理解としてはそうだということでしょうし、カウンシル・オン・フォーリン・リレーションズが何らかの形で国防省の持っている情報をアレンジしたということであれば、それはそこの原典に当たって調べないといけないというふうに考えております。
春名委員 これは当事国に実力部隊を直接送り込むという法律なんですよね、今度。その実力部隊、自衛隊がどういう向こうの統治機構の中で、指揮下の話も出ていますけれども、どういう形で行動するのか、何をするのかという、いわば法律の前提になる大事な問題じゃないんですか。国防総省から出しているならそうかもしれない、私たちはわかりません、それでは私は済まないと思うんですよね。ですから、きちっとこういうものになっているのかどうかを、私はお示しをしたので、ぜひ示していただきたいと思うんです。
 それで、質問を続けたいと思うんですが、法案の第三条の二項が言っている、例の「国際連合加盟国が行うイラクの国内における安全及び安定を回復する活動」というのがございます。人道支援じゃない方ですね。安全及び安定を回復する活動というのは、左のCJTF7、連合軍司令部でいいですね、これがセキュリティー・アンド・サポートを担うとなっておりますので、この法案三条二項が言っている「国際連合加盟国が行うイラクの国内における安全及び安定を回復する活動」というのはこの連合軍司令部が行っている活動ということだと理解しますが、それでよろしいですか。
川口国務大臣 いずれにいたしましても、連合軍司令部は、このいただいた図にも、直接支援、CPAを支援というふうに書いて、あるいはブレマーを支援というふうに書いてあるわけですけれども、我が国の派遣した自衛隊がCPAの指揮のもとで動くということはそもそもないわけです。指揮下にはない。実際にありますのは、このCPAと調整をしながら活動を、この法にのっとって活動をするということであります。調整をするということであります。
春名委員 同じことを、御答弁繰り返しているので、今度この表を出したんですよ。
 つまり、ここを見ていただければわかりますけれども、連合軍司令部の下に、いいですか、この表をよくごらんになっていただきたい、左は、連合軍司令部は治安及び援助任務なんです。セキュリティー・アンド・サポートなんです。そして、右側のORHAですね、復興人道支援局、これが非治安任務なんです、ノンセキュリティーなんです。分かれているんですね。いいですか。ノンセキュリティー、それでセキュリティー・アンド・サポート、二つに分かれているわけです。左側の連合軍司令部の治安及び援助任務、その部分で、そこで安定、安全の、法案で言いますと「イラクの国内における安全及び安定を回復する活動」というのはここの部分でやっているんじゃないですかということ。もう一回答えてくださいね。これは基本的問題です。
 自衛隊が法案三条の第二項に基づいて、その安全及び安定を回復する活動を安全確保支援活動として行うわけです。この連合軍司令部のもとのセキュリティー・ミリタリー・フォース、下ですね、治安・軍事部隊、こういう部門が行っている活動を、自衛隊は法案三条の第二項に基づく安全確保支援活動として支援をするという理解をするのが自然なんですが、どうですか。
川口国務大臣 安保理決議の一四八三ですけれども、これは、統合された司令部のもとにある占領国としての米英両国の関係国際法のもとでの権限、責任、義務を認識する旨規定した上で、当局に対して、実効的な施政を通じたイラクの国民の福祉の増進に関する権限等を付与しているわけです。そして、CPA、連合暫定施政当局ですけれども、このような占領国としての権限を行使して義務を履行するために設立をされたということで、これが当局を構成するというふうに考えているわけです。国連は当局に対して、したがいまして権限を付与したということになります。
春名委員 全く私の質問に答えていただいていないんですね。その答弁は何度もおっしゃっているのは私はよく認識しておりますので、したがって、今回こういうものをお出しして、もっと具体的に言ってほしいということを伝えているわけです。
 連合軍司令部が治安及び援助任務、セキュリティー・アンド・サポート。復興人道支援局がノンセキュリティー。つまり、安全安定確保活動、安全確保支援活動を自衛隊がやるというのは、ここの治安・軍事部隊が実際行っている活動を、指揮するかどうかじゃないんですよ、それを支援するということになるでしょう。そこを確認しているわけです。
川口国務大臣 それでよろしいかと思います。
春名委員 初めからそう言っていただければいいんです。そんな難しいことを聞いているつもりはないわけでして。
 ところで、この治安・軍事部隊が行っていることは、バース党の残党掃討作戦、今度はガラガラヘビ作戦、あるいはイラク住民のデモ隊の鎮圧なども当然その任務として含まれていると思いますが、確認します。
川口国務大臣 例えば今度のガラガラヘビ作戦、これを指揮命令系統という意味でだれがやっているのかということについては、事実関係を確認する必要があると考えています。要するに、中央軍がやっているのか、その下でやっているのか、そういったことを確認する必要があると思います。
春名委員 こういう答弁なんですね。
 右を見てください。「指揮・統制」、黒い線でなっているんです。中央軍が連合軍司令部を指揮統制するという仕組みになっているんですね。こんなのは常識なわけです。そのもとにある治安・軍事部隊がですよ、今これからやろうとしているガラガラヘビの作戦もそうだし、その前の、現在やっている掃討作戦もそうだし、それから、一般の市民がやはり今非常に占領統治に不満がある、だからデモが起こる、先日は発砲して二人の市民、まあ殺すということになってしまいましたけれども、そういうこともやっている、鎮圧をするということは、こういう部隊がやっている以外にどこがやるんですか。
 だから、治安・軍事部隊がやっているんでしょう、ここの部分で。
川口国務大臣 確認をする必要があるというふうに申し上げましたのは、そういった作戦を中央軍の指揮命令、要するにコマンドのもとでやっているかどうか、そういったことについて確認をする必要があるということです。
春名委員 それは確認してもらえばいいんだけれども、実際はこういう中央軍の指揮を受けて、連合軍司令部、治安・軍事部隊というのはそこにきちっと配置されていて、いいですか、人道の方は右ですから関係ないんです、そういう治安を維持するということで、実際イラクでやっていることは掃討作戦でありデモ鎮圧、やっているわけですよね、現実の問題として。
 だから、自衛隊がどういう活動をしているところに支援に行くのかという、非常に大事な問題なんですね。あたかも人道支援だけかのようなことを言われるけれども、そうではなくて、実際にはこういうふうになっているわけですので、自衛隊はそういう活動を行っている米軍にも支援をするということに率直に言ってこれはなるんじゃないかというふうに思いますが、これはいかがでしょうか。
石破国務大臣 私どもの活動は非戦闘地域に限って行います。ですから、それがどういう地域なのかということです。ですからそれが、要するに我々は武力の行使は行わない、そしてまたそれと一体化するようなことも行わないということです。そして、非戦闘地域というのを決めるのです。そこにおいてしかやらない。
 その砂漠のガラガラヘビ云々かんぬんというお話ですが、それの支援をすることがけしからないというようなお話かもしれません。それは、まさしく武力行使との問題において論ぜらるべきものでございます。
春名委員 非戦闘地域の話はちょっとおいておいてください、さっきからそういう議論になっているので。
 要するに、私は占領統治の統治図をきょうお示ししているわけです。このCRFというのは、御存じのとおり、ブッシュ大統領にも安全保障問題で提言をするような、フォーリン・アフェアーズを出している、そういうところでしょう。それがこういうものに今なっているということで、今先ほど、治安・軍事部隊がそういうことをやっているというところまでは認められつつあると思うんですが、それを自衛隊が出ていってこの三条二項に基づいて支援する活動というのは、ここでやっている、こういう治安・軍事部隊がやっている活動を支援すると。三条一の方の、人道の方はこの右側のORHAになるかもしれないけれども、二項の方はこの左の治安・軍事部隊がやっているところで、そこを支援するということにならざるを得ないわけでしょう。
 これは別に難しいことを聞いているわけではないわけでして、その治安・軍事部隊は掃討作戦をやり、あるいはデモを鎮圧するということを実際やっているわけで、そこを確認しているんです、その事実を。
川口国務大臣 いずれにいたしましても、この図についての御質問の通告をいただいているわけではございませんので、調べないとわからないところがある。例えば、ガラガラヘビの指揮命令系統、どこから来ているかということがわからないということでありますけれども、いずれにいたしましても、我が国の自衛隊がこの法令に基づいて支援をする活動ということは、法令に基づいて適切にやっていくということでございます。
春名委員 出していないから答えられないと言われるんだけれども、占領統治がどうなっているかというのを聞きますよというのは、私は質問を出しているわけですよね。そんな前提の問題であって、そういう議論もしているわけですし、そして私は具体的に聞いているのに、そのことについてもお答えになれない。私、これでは法案審議することはできないんじゃないかと思いますよ。
 少なくとも、実力部隊を領土の中に入れるんですから、そこの統治が一体どうなっていて、指揮命令とかいうことを言わなくていいです、指揮下とか言わなくていいです、それはややこしくなりますから、どこの部門のことを支援するのか。安全安定確保活動、安全確保支援活動ですか、どこをやるか、それぐらいは明確にしてください。それは約束してください。
川口国務大臣 いずれにしても、我が国の支援というのは、ここのくくっていらっしゃる連合軍司令部あるいは復興人道支援局、ここに対してなされるわけでございます。
春名委員 そうでしょう。だから、三条の二項は、左側の治安・軍事部隊のところでやるんでしょうと。そして、その治安・軍事部隊が実際イラクでやっていることは、治安の維持ということでいろいろやっておられるが、その中には掃討作戦もあり、デモの鎮圧ということも当然含まれているでしょう、それを支援するということに当然なるでしょうということを繰り返し聞いているわけであって、なぜ答えられないんですか。
石破国務大臣 あるいは外務大臣からお答えになる方が適当かもしれません。
 この法案、まさしく委員おっしゃいますように「安全確保支援活動」というふうに書いてありまして、「イラクの国内における安全及び安定」云々かんぬん、国連安保理決議千四百八十三号またはこれに関連する政令で定める、こういうふうに書いてあります。
 これは、この組織図からいえば、確かにこの安全確保支援活動というのは連合軍司令部の中にありますといいますか、もとにあります治安・軍事部隊ということを支援することになります。これは国連安保理決議一四八三において行っているわけですから。
 しかし、それを行うということ、ここが対象になるということと、ここがやっておることをすべて自衛隊が支援するということはまた別のお話でございます。ですから、これをやるのだから自衛隊の活動はそういう掃討作戦に加担をするものだとかそういうお話とはまた別の議論になってくるわけでございまして、私どもは、繰り返して申し上げますように、だからこそ活動地域というものを限定するわけでございます。
春名委員 それでは、例えば派遣された自衛隊が水を補給するという任務を安定確保支援活動でやるとします。同じ米軍でも、掃討作戦やデモ鎮圧作戦をやっている米軍には水はやりません、そうでない、いいことをしている米軍に、いいことと言ったら失礼ですけれども、そうでないところには水を渡します、そんな区別、できないでしょう。それ、どうですか。
石破国務大臣 それは、その行為が武力の行使になるか、それともそれと一体化するかという議論でございます。
 この部隊、つまり、委員の表現をかりれば、いいことをしているのには水を差し上げましょう、いいことでないことをしているところには差し上げますまい、それはもう本当に、我が国が、憲法によって禁ぜられておる武力の行使というふうに評価される行為を行うか行わないかということにかかってくるお話でございます。
春名委員 話を次に進めますが、ちなみに、この治安・軍事部隊のもとで活動している外国軍はどこですか、現在。治安・軍事部隊のもとで活動している外国軍はどこですか。
川口国務大臣 今、イラクに対して、送るあるいは送る決定をしたという国は、たしか、ちょっと手元に資料がありませんが、十三カ国あったというふうに記憶しています。
春名委員 先日、六月二十四日現在判明分であなた方が委員会に出した資料では、「安定・安全の確保」の活動で派遣中というのは、リトアニア一カ国ということがここで示されているわけでありますね。
 それで、報道では、六月二十八日の朝日新聞に出ているのですけれども、イラク国内の治安維持などを担うとされる多国籍軍の安定化部隊について、ポーランド軍が九月以降、イラク中南部に展開する約二十カ国の指揮に当たる、それをアメリカが指名したと六月二十八日付の朝日新聞に出ている。その兵員数は約七千人。ポーランド軍は現在、治安回復プロセスの監視などの活動を行っていると。
 防衛庁長官、自衛隊は、例えばこういう二十カ国の中に入るというようなことを検討されているのでしょうか。
石破国務大臣 今、ポーランドのお話をなさいました。要するに、アメリカ、イギリス、ポーランドということになっておるわけですが、私どもが具体的にどこの地域において何をということはまだ決まっておりません。
春名委員 じゃ、一方、六月二十八日付、同じ日の、私、高知県なものですから、高知新聞の一面に、これは共同通信の配信だと思いますが、派遣する自衛隊の拠点を米軍が駐屯し管理下に置いているバグダッド国際空港にするという検討が行われているということが報じられております。こういう検討を防衛庁はされておられるのでしょうか。
石破国務大臣 そのような報道があったことは私も承知をいたしております。いろいろな可能性というものを検討はいたしております、それは、実際に現地に行ってみて、具体的なニーズを把握することになりますから。しかし、今の時点で何ができるのかということで、いろいろな可能性は模索をいたしております。しかし、具体的に、今委員が御指摘になりましたような、米軍の管理下において水の補給というようなことに特定をして検討をしておるわけではございません。
春名委員 じゃ、今の答弁の上にもう一度お聞きしますが、この報道によりますと、政府は、バグダッド国際空港を拠点とすることによって、一、米軍が空港周辺を厳重に警備しており安全性が高まる、二、危険が迫った場合には航空機で退避できる、こういうふうに判断している。
 今、いろいろな可能性を検討しているとおっしゃいました。要するに、政府の言う非戦闘地域というのは、先ほどから議論されていますが、米軍の厳重な警備のもとに、その管理下にある地域なら非戦闘地域、オーケーということで、そういうふうに考えているということなんですか。
石破国務大臣 それは、実際に非戦闘地域がどういう地域であるかということは再三答弁を申し上げておるとおりでございます。そのバグダッド空港なるものがそれに該当するのかしないのかというのは、個々具体的に判断をすることになります。
 私は、済みません、高知新聞を読んでおりませんので、恐縮です。東京新聞、恐らく同じ配信だと思います、それを拝読をいたしました限りにおきまして、私どもの方でそこまで具体的に検討を詰めておるわけではございません。
春名委員 非戦闘地域というのは、この法律が憲法違反でないという根底の概念として繰り返し、先ほど佐藤委員の議論でも、議論されてきたわけです。
 どういう場合が非戦闘地域なのかという、やはりその定義、内容を示さなければならないと思うんですね。それはあなた方に責任があると思うんですね。といいますのは、今議論したのでも、米軍の厳重な警備のもとでその管理下にある地域だったら、一部の地域がそういうものになっている、空港がなっている。しかし、その外では、例えばドンパチやられている。しかし、強大な米軍がそこで支配していて、その部分だけは大丈夫だ、そこに入っていくということすら、こういう考え方でいきますとそれも非戦闘地域だというふうになりますと、一体どういうことになるんだろうか。
 極端な話をすれば、五月一日の大規模な戦闘を終結したと言う前の、イラクの戦争を実際やっているときだって、そういう考え方でいけば、米軍がしっかりそこを確保しているという部分がイラクの中にあればそこは非戦闘地域で、入っていけるなんということにもなりかねないわけですので、そういう問題として、これは、非戦闘地域というのは本当にどういうものなのか、こういうことまで含めて、今排除しないとおっしゃったんだが、明確にしていただかないと、本当に議論できないと思うんですね。いかがでしょう。
石破国務大臣 戦闘が行われておって、つまり本当に、委員の表現をかりればドンパチがそれこそ毎晩テレビで報道されているような、ああいうような状況でも非戦闘地域というのが設定できるではないかというお話ですが、それは極端な議論だと思います。
 私どもが申し上げておりますのは、我々の活動が武力の行使に当たらないというふうにきちんと評価をされなければいけない、したがって、その行動が行われている地域は戦闘が行われない地域でなければいけないという実に当たり前のことを申し上げておるわけでございます。そうでなければ、我々の活動というものが武力の行使に該当してしまう危険性がある。したがって、そういう地域にまず限定をして行動するということでございます。
春名委員 では、委員長に改めてお願いしておきます。
 今の議論の中で、一つは占領統治の実態がどうなっていて、この図が正しいのかどうかも含めて、そして自衛隊がどういう入り方をするのか、もし法律ができたときに。そのことはやはり委員全体で明確にした上で議論する必要がありますので、そのことをぜひ、委員長、お取り計らいいただいて、資料として提出していただくこと。もう一つは、その非戦闘地域、先ほどの佐藤さんのお話もありましたが、中心概念でありますので、ここを、定義を含めて、定義といいますかその中身を含めて明確にしていただくこと、これはぜひやっていただきたいと思います。
高村委員長 理事会で協議します。
春名委員 では、最後に、残りの時間、一言言いたいと思いますが、要するに、今度の法律といいますのは、史上初めて、占領している国に、領土の中に入っていく、地上軍が入っていく、武器弾薬もこの中で輸送することができるという点では、しかも、大規模な戦闘は終わっているという認識ですが、戦闘状態は続いている、そういうところに入っていくという法律は史上初めてのことです。
 例えばPKO協力法、九二年にできました、防衛庁長官、あのときに、憲法の枠内という点で五原則が必要であるということを明確に言われました。私たちはそれも詭弁だと思っておりますけれども、しかし、停戦の合意という第一の原則ということ、今度のイラク戦争、イラクのこの法律の中にはそういう前提もない。しかも、戦闘地域というのはそのまま続いている。非戦闘地域を選ぶということは戦闘地域が残っているということの証左でありますから、大規模なものはなくなっているというふうに言われるのかもしれませんけれども、そういうところに、今までのそういうPKOの議論なんかの上に立ったときに、どうして自衛隊が派遣できるんだろうか、本当に飛び越えてしまっているんじゃないかと率直に私思うんですね。この点、どうですか。
石破国務大臣 私どもは、そのように考えておりません。
 これはPKOではございませんので、PKOに求められている五要件というものを充足しない。しかしながら、例えば停戦の合意というものがございます。ここにおいて、そういう停戦の状況というものがきちんとあるということでなければ、いずれにせよ、この法案に基づきましても、私どもの自衛隊が活動するというわけにはまいりません。
 PKOの場合に、Aという国とBという国、あるいはAという勢力とBという勢力、それが停戦の合意があるということは、そこにおいて戦闘が行われていないということを担保するものでございます。今回の場合にも、非戦闘地域というものを選ぶことによりまして、そういう地域で活動しない、ということは、同じような状況が現出をされておるわけでございます。
 したがいまして、委員御指摘の、突き抜けてしまっているというような判断、それは武力の行使を我が国が行わないという憲法の要請というものを突き抜けたとは、私は全く思っておりません。憲法の範囲内において、我が国が国連の要請に基づき国際的な責務をどのように果たすかという考え方は、PKOにおきましても、また、本法案におきましても、テロ特措法におきましても、同様のことでございます。
春名委員 それは本当に詭弁だと思いますよ。今いみじくもおっしゃったけれども、停戦合意を第一の原則にするというのは戦闘が行われていないということを担保するためだとおっしゃったけれども、それが今議論になって、戦闘地域、戦闘している国なんですよ、それはあなた方も認めているじゃないですか。そこに、わざわざ非戦闘地域というのを組み込んで、そういう概念を持ち込んで、何とか入っていこうとしている。停戦合意でそういうふうに、戦闘地域じゃないんだという担保をするんだとあなたおっしゃったから、それは枠を超えているというのはもう明白だと思うんですね。
 しかも、もう時間が来ましたので終わりますが、テロ特措法の場合は、お隣のパキスタンにも陸上輸送、武器弾薬の輸送はしないということになっているわけですね。その面から見たって、実際まだ戦闘が残っているところで武器弾薬も含めて輸送する、幾重にも憲法のそういう条文の、その中身を踏み破ってやっている法律だと言わざるを得ないんじゃないでしょうか。そういうことを改めて明確にして、私の質問を終わります。
高村委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党・市民連合の今川正美です。
 私は、きょう、質問通告をしていない部分、ちょっと川口外務大臣にお尋ねをしたいことがあります。
 実は、今月二十五日の当委員会で小泉総理を相手に質疑をした折、一番最後に、川口外務大臣に大方次のようなことをお願いしました。
 既に、自衛隊と違って、日本のNGOのさまざまな団体がイラクに入って、医療支援活動を初めいろいろな支援活動をやっています。それに関して、彼らが一番懸念しているのは、イラクのこの戦争あるいは十二年前の湾岸戦争で使われた劣化ウラン弾の影響がありますので、今回の戦争で劣化ウラン弾を使った地域あるいは使っていない地域ということで、ぜひ区別をはっきりさせてほしいということを申し上げましたら、そのとき、川口大臣は、「米軍は、今回イラクでそれを使ったかどうかということについては何も言及をいたしておりません。劣化ウラン弾の問題につきましては、これは国際機関でいろいろ調査をしておりますので、我々としては、その国際機関の健康への影響の調査、これを見守ってまいりたい」、このように答弁をされました。
 ところが、実はきょう、質問通告をしていなかったのにあえてお尋ねしたいのは、けさ方、あるテレビ局から電話が入りまして、その二十五日の私と大臣とのやりとりを見ておられたんでしょう。実は、五月の初旬に、これは相手方がありますので名前は伏せますけれども、劣化ウラン弾に詳しい日本の専門家と一緒にイラクのある地域に取材と調査に入ってみたら、明らかに劣化ウラン弾を今回の戦争で使った地域が特定できた、それに関して当地の米軍の責任者に問い合わせたら、確かにこの地域では劣化ウラン弾を使ったんだということを言明したそうであります。
 そういうことがあるものですから、これはNGOだけじゃありません、少なくとも、政府の皆さん方は、この法が成立をすればしかるべき時期に自衛官を派遣するわけですね。派遣される自衛官の健康問題あるいはNGO諸団体の健康問題に重大にかかわってくる問題です。
 これは、昨年の国会の場でも、私は、劣化ウラン問題に関して、十一月でしたか、質問いたしたときに、政府の答弁というのは、これまで米国大統領諮問委員会が発表した最終報告書というものを引き合いに出されて、「湾岸戦争復員軍人が訴えていた健康上の問題の原因であった可能性は低い」というふうに政府はおっしゃった。
 しかし、我々、民間のさまざまな専門家やいろいろな調査をした報告を聞くたびに、劣化ウラン弾の影響、その因果関係、極めて疑いが強いと思っているんです。そういう地域に、自衛官であれ、NGOなどの一般の民間人であれ、危険かもしれないという地域に、アメリカ側の報告なり、調査結果がそうであるから、まあ大丈夫だろうということで派遣をされるのか。
 私は、自衛官の派遣には反対ですけれども、皆さん方があえて派遣するというのであれば、十分に、そうした紛争の危険性だけではなくて、今申し上げている劣化ウラン弾の及ぼす放射能の影響というものをどれくらい深刻に受けとめておられるのか、まず川口外務大臣に再度お答えを願いたいと思います。
川口国務大臣 劣化ウラン弾についていろいろな御意見がおありになるということについては、私は承知をしておりますし、それから、NGOの人たちが、まだ今の時点ではほとんど北部クルド地域にいまして、数が多くないわけですけれども、いずれ、イラクの復興にかなりのNGOの方々に御活躍をいただかないといけないということになると思いますので、そのNGOの人たちの活動が安全に行われるということは大事であると私は考えています。
 それで、劣化ウラン弾、これはもう何回も申し上げていますように、コソボについてWHOで調査をした結果として、これについては、人体及び環境に対する影響はほとんどないという内容であるということでございました、これは前に申し上げましたけれども。我が国としては、今後の調査、これで確定的な結論が出たということではございませんので、今後の調査については引き続き注視をしていきたいと考えています。
 それで、米軍が使ったということを言われたということでございますけれども、我々が聞いておりますのは、三月二十六日に、ブルックス陸軍准将が、御存じのような記者会見で、使ったかどうかということについては言わなかったということでございます。
 それから、その後、我々として、米国政府にもその辺についての問い合わせをいたしましたけれども、今回の対イラク軍事行動において劣化ウラン弾を使用したか否かについては、今後とも明らかにすることは予定をしていないということを聞いております。
今川委員 そういういいかげんな状況認識で、本当に自衛隊を派遣するんですか。
 もう一つ申し上げたいのは、我が国は、御存じのとおり、世界で唯一の被爆国です。だから、そういう核の問題、放射能の影響の問題に関しては、諸外国より先駆けて、あるいは敏感でなければならない。そうでしょう。
 アメリカ側の調査を待つ、あるいは、アメリカ側は今後とも、今おっしゃったように劣化ウラン弾を使ったかどうかを公表するつもりはない。では、小泉総理を初め閣僚の皆さん方がおっしゃっているように、アメリカから今回の派遣を要請されたから行くのではない、日本の主体的な判断、独自に支援をする、こうおっしゃっています。
 そうしますと、今申し上げた劣化ウラン弾の問題は非常に重大なんです。国際機関の調査を待たずに、我が国が放射能に関しては一番専門的であり詳しいんじゃないんですか、そういう専門家集団を編成して、まさに日本が独自に、主体的に、劣化ウラン弾が本当に使われていないのかどうか、あるいは十二年前の湾岸戦争の折使われた劣化ウラン弾の影響が、月日がたてばたつほど影響は甚大になってくるわけですから、独自に調査をするという姿勢すらないんでしょうか。もう一度答えてくださいよ。
茂木副大臣 御意見を伺いますと、我が国政府として、NGOの現地での活動に対して安全確保について配慮が足りない、こういうふうにも聞こえるんですが、例えば、ここにいらっしゃるだれよりも早く私はバグダッドに入っています。それで、その時点で、バグダッドに入っているすべてのNGOの方と意見交換しています、どういう問題点があるのか、どういう危険があるのかと。それから、大使館の方にも指示しまして、連日のように、危険情報等々をNGOに伝えるように話をしております。
 そういう段階にありまして、現時点で、先生おっしゃるような情報というのは、私の方にも大使館の方にも入っておりません。
今川委員 どうも政府は、まず自衛隊派遣ありき、そういう基本姿勢があるものだから、政府にとって自衛隊を派遣するための都合のいい情報は耳に入ってくるけれども、都合の悪い情報は入らないみたいですね。
 私だって、実際にイラク現地に行って、NGOの皆さんとか日本人のジャーナリストの皆さんとか、いろいろな人から話を聞きましたよ。そして、実際に、私どもと同じ今月十七日にイラクに行ったNGOの皆さんが、私たちは子供たちの医療支援を中心にやっている、そうした場合に、今はバグダッド中心の子供病院なんかにいるわけですが、いろいろな地域で、やはりもっと地方でも支援をしたいんだけれども、そこに劣化ウラン弾が使われたのか使われていないのかが現時点で全然わからないからそこが一番怖い、自分たちがせっかく支援しようとしても、自分ら自身の健康が損なわれたらもう支援は継続できないじゃないですか、治安上の心配だけではありません、こういうことだったんです。
 川口大臣、余り、アメリカと信頼関係を持っているのはいいことなんだけれども、何かにつけてアメリカの情報に依存するばかりではだめだと思うんですよ。日本が、やはりこの劣化ウラン弾の問題、放射能の影響がどの程度あるのかないのか、劣化ウラン弾が今回使われたのか使われていないのか、私は少なくとも使われたという印象を持っていますから、必ず影響が及ぶ。
 現に、湾岸戦争以降十二年間、湾岸戦争以前のイラクの子供たちの健康状態と、湾岸戦争があった後この十二年間の子供たちの健康状態は、明らかに、著しく変化が出てきているんです。白血病だとか、いろいろな放射能障害が出てきているんです。データ上も明らかに出ているんです。独自に調査をするお気持ちはありませんか。
川口国務大臣 これは、日本がアメリカの同盟国であるから言うことを聞くとか聞かないとか、そういうこととは無関係の話であります。
 劣化ウラン弾については、国際機関で調査、先ほど申しましたけれども、WHOがし、あるいはUNEPもしております。そして、それぞれの機関の報告において、劣化ウラン弾の人体及び環境に対する影響はほとんどないという結論であったということです。そして、これについて国際的に確定的な結論が出ているということではないので、我々としては引き続きこれを注視していくということを申し上げているわけです。
 それから、条約上、特定通常兵器使用禁止制限条約、CCW条約というのがございますけれども、それの規制対象にも劣化ウラン弾はなっていないというのが現状であるわけです。
 我々としては、これの人体への影響ということについては、引き続き関心を持って注視していくということでございます。
今川委員 外務大臣、今おっしゃった、具体的に聞きますよ。国際機関の報告によるとと。その国際機関の名前、それから何年何月何日なんですか、その報告書は。教えてください。
川口国務大臣 手元に資料がございませんので、この日にちについては調べたいと思いますが、名前を申し上げたのはUNEPとWHOでありまして、そのうちUNEP、先ほどWHOについて言いましたけれども、UNEPの調査報告では、これは一九九九年のコソボ紛争に展開をした欧州各国軍の帰還兵にがんや白血病が発生をしたことによって、米軍により使用された劣化ウラン弾との関係が疑われていたわけで、二〇〇一年三月のUNEPの現地調査報告によれば、環境や健康への被害はほとんどなかったということであります。
 それから、もう一つの世界保健機関、WHOですけれども、これは、同じく二〇〇一年三月の調査報告であって、劣化ウランの放射性は微弱であって、劣化ウランと関係する健康影響を示唆する証拠は得られなかった、そういうことでございます。
今川委員 信じられないですね。
 実は、あした、参考人質疑で、私たち社民党は、この劣化ウラン弾問題に非常に詳しい専門家を参考人としてお呼びしていますので、改めてあした、参考人質疑の中で、この劣化ウラン弾問題に関してはお尋ねをしたいと思います。
 では、時間もありませんので次に移りたいと思いますが、今回のイラクへの自衛隊の派遣、派遣というよりも、これはもう派兵です。この問題を改めて、国際法上どういう問題になるのか、現状、イラクの地位はどういうところにあるのかということを、まず政府にお尋ねしたいと思います。
 これまでの当委員会での各野党の質問に対する政府の答弁は、非常にいいかげんなだけではなくて非現実的なんですよ。石破長官、過日、安全保障委員会のある懇親の席で、石破防衛庁長官はこのようにおっしゃった。一つの決意として、一人の政治家として、この国会における質疑、審議というのは、できるだけお互いに立場を超えて本音をぶつけ合って、これから国の進むべき進路を見つけていかなければならないという趣旨のことをおっしゃった。全く同感です。その石破長官が、やはりこの場では、ちゃんとした長官なりの識見と考えがおありでありながら、本音がこの場で聞こえてきません。
 まずお尋ねしたいのは、今のイラクの現状であります。いわゆる連合軍の占領当局とかいろいろな言葉が使われますが、我が国が一九四五年、敗戦を迎えたとき、例えば六月二十三日は、沖縄で組織的な我が軍の抵抗が終わった日ですね。つい先日、沖縄では慰霊祭があっておりました。例えば、九月に入ってから降伏文書に調印をするとき、それぞれ段階がありますね。あのときは、我が国政府はまだ形がありました。しかし、今のイラクでは、フセイン政権が崩壊して以降、政府そのものがないわけですね。そこが一番大きな課題になっているはずです。
 そうしますと、イラク政府というものが消滅したもとでの、いわゆる降伏調印文書を取り交わす相手もいないわけですし、五月の二日でしたか、ブッシュ大統領が、イラクにおける戦闘行動は一応終了したと宣言しましたけれども、しかし、その終戦合意ということもないわけですね。いわゆる戦闘終結宣言と、イラクの当事者と米英国等による終戦合意もない。
 よくマスコミ報道等でも、今、戦後イラクの復興とかいう表現の仕方がありますけれども、国際法上見てみて、果たして戦後なんだろうか。まあ、組織的な戦争があちこちであっているということではありませんけれども、まだ戦争状態というのは完全に終わったわけではないと思うんですけれども、その点はどうでしょうか。
林政府参考人 戦争の終結というものがどういうふうに国際法上取り扱われるかということでございますけれども、これは、戦前の伝統的な国際法のもとでは、戦時と平時の二元的な状態というものがございまして、開戦手続あるいは終戦手続というものが割合厳密に決められておったわけでございますけれども、戦後の国際法のもとにおきましては、戦時、平時のいわゆる一元化というふうに学説上申しておりますけれども、その区別というものを特に設けるような法的な意味というのはございませんで、実際上、武力の行使が行われているか否かということが武力紛争のメルクマールであるということでございます。
 御案内のとおり、自衛権あるいはその決議に基づく武力行使というものだけが合法的な世界でございますけれども、そういう中で武力の行使が行われるという場合に、これが武力紛争として存在しているのか、あるいは武力紛争として継続しているのかどうかということを見るのは、そこで休戦あるいは終戦といった合意がなされることももちろんございます。湾岸戦争の場合、停戦決議がなされたりしておるわけでございますけれども、ただ、そういうものがなければ終わらないということでは必ずしもございませんで、事実上、武力行使というものが終結する、例えばイラクの場合で申しますと、抵抗勢力が制圧されてしまうということによって終結するといったことが考えられる。
 ただ、今の状況はどうかといえば、従来から申し上げておりますとおり、基本的な、大規模な戦闘が終了しておるということではございますけれども、まだ戦闘行為というものが散発的に継続しているという状況でございます。
今川委員 なぜそのようなことをお尋ねしたかといいますと、自衛隊という組織であるか否かを問わず、日本は、日本国憲法のもとで、国際協力や国際貢献をやれることとやれない場合とがあるはずなんですね、ケースによって。問題なのは、今答弁いただきましたが、現在のイラクにおける権力の所在です。政府はありません。先ほど共産党の委員も図を示しておられましたが、今のイラクのいわゆる連合暫定当局あるいは連合軍、事実上米英軍による軍事占領下にあるわけでしょう。
 そうしますと、今、組織立った戦争状態にはない。確かにそうです。いろいろな地域でゲリラ的な米英軍等に対する攻撃が頻発はしておりますけれども、問題なのは、あくまでもこの軍事占領ということは戦争という概念の一端にあるのではないんですか。どうなんですか。
林政府参考人 戦争という概念の一端とおっしゃられますと、ちょっと、なかなかお答えしにくいわけでございますが、御案内のとおり、先ほど私も申しましたとおり、今日の国際法においては、戦争というものは基本的には違法とされているわけでございます。ただ、平たい意味での武力紛争、武力の行使というものが行われている状態ということであれば、それはまだ完全には終結しておらないということを申し上げておるわけでございます。
 ただ、現在の占領当局というものは、これは政府の立場として従来から御説明しておりますとおり、合法的な決議に基づく武力行使の結果として、イラクという国家の権力を行使しておった政府というものが事実上消滅してしまった、そういう権力の空白が生じた状態においては、占領軍が権限を行使して民生の維持回復、治安の維持等に当たらなければならないということになっておったわけですが、そういう状態を踏まえて、安保理決議一四八三というのが成立をいたしまして、この当局に極めて広範な、ほとんど政府に匹敵すると言っていいと思いますけれども、イラクの領土の実効的な施政を通じてイラクの国民の福祉を増進するということを要請するということで、非常に広範な権限をこの当局に与えたというのが今の状況でございます。
今川委員 今おっしゃった国連決議の一四八三、その第五項には、おっしゃるとおり、米英両国に占領国としての戦時国際法及びその他の国際法の遵守を強く求めていますよね。そのような、事実上占領行政というものに対して、我が国は憲法上、かかわり合いを持つことが可能なんですか。もう一度お答えください。
林政府参考人 今申しましたとおり、占領当局の施政というのは、人道法上の権限を超える広範な権限を有して、実効的な統治、施政を行っている状況でございますけれども、同時に、これが先ほどの武力行使の結果発生した事態であるということで、憲法に言います交戦権の行使というものに当たるのではないか、あるいは、我が国がそれに参画することによって交戦権の行使に当たるのではないかという御議論でございます。
 これは、現代国際法、先ほど来申し上げておりますとおり、交戦関係というものをそのまま受け入れているという状況ではございませんけれども、仮に伝統的な国際法に照らして判断いたした場合におきましても、交戦権を行使いたしますのはあくまで交戦国でございまして、我が国は、武力を行使しておりませんし、今後とも武力を行使する考えはございませんので、そういう意味において、交戦国の立場に立つということは、そういうふうに評価されるということはあり得ない、したがって交戦権を行使することはないというのが、政府の交戦権との関係による説明でございまして、じゃ、我が国が今回の法案によりまして活動するというのは何だといえば、これは、決議一四八三に応じて支援協力を行う、こういうことでございます。
今川委員 政府の見解はいつから変わったんですかね。
 もう一度確認しますよ。それは、憲法上、当然武力の行使はやれません。だから、武力の行使を今回日本がしたかどうかということじゃなくて、我が国が武力の行使に至らないとしても、事実上占領国である米英両国に対して支援をするということは、憲法第九条に関する、相手国の領土、そこにおける占領行政などは、自衛のための必要最小限度を超えるものと考えられるので認められない。昭和六十年、一九八五年九月二十七日の政府の答弁書の中身でしょう。この政府答弁書と明らかに違うじゃないですか。
 今回は、日本は交戦国ではない、確かにそうでしょう。武力行使もしていない。しかし、実際に米英両国がイラクに対して一方的に武力行使をし、軍事占領をする、した、今その状態にあるわけでしょう。日本がさまざまな形でイラクに対する人道復興支援だとかそういうものをやる場合には、少なくとも、イラク人による暫定政府ができる、行政機構ができる、そして、それに基づいて国連からの具体的な要請があったときに、日本として、憲法と諸法律に照らしてできることとできないことを見きわめながら、積極的に支援をしていく、このようになるんではないんですか。
林政府参考人 政府の立場は一貫して変わっておりません。
 我が国が交戦国の立場に立って交戦権を行使する、その交戦権の一態様としての占領行政を行うということであれば、それは別でございますけれども、今回の状況というのは、我が国が国連決議にこたえまして現地に人を派遣するということが、自衛権などで説明されなければならないような行動というのは全くございませんで、我が国自身は全く武力の行使をしない、しておらないし、する考えはない、そういう意味において、交戦国の立場に立つことはない、そういうふうに評価されることはない。したがって、それは、我が国自身が交戦権を行使するということはあり得ない、論理的にあり得ないということを政府は今回申し上げているわけでございます。
今川委員 引き続き関連してお尋ねしたいんですが、では、我が国が、政府が言うように、自衛隊を派遣した場合、これは事実上、占領軍の一員として、あるいは、新聞報道でもいろいろ表現に差がありますけれども、例えば、ポーランド軍が九月以降はイラクの中南部に展開する約二十カ国の指揮に当たることが判明した、こういう報道もあります。ポーランド軍は、米英軍の指揮のもとで、今申し上げた約二十カ国の各国軍に対して指導的役割を担うことになる、さらに、バグダッドに拠点を置く米軍と南部のバスラに拠点を置く英軍の指揮下に入りながら、多国籍部隊のリーダー役として各国間の連絡調整を引き受ける、このような記載があります、報道があります。そうした場合に、我が国の自衛隊は、現実的にですよ、石破長官、どのような形、仕組みでイラクに入り、例えば給水活動だとかいろいろな活動をするんでしょうか。その仕組み、枠組み、そこをちょっと説明ください。
石破国務大臣 これも累次お答えをしておりますとおりで恐縮でございますが、我が国は我が国として主体的に判断をする。どういうニーズがあるか、どこであれば非戦闘地域であり、その中でもどこが安全かということを判断して派遣をいたします。そして、そこにありますのは、まさしく防衛庁長官、その上にあります内閣総理大臣との関係が存在するだけでございまして、現地のいろいろな米軍、英軍、ポーランド軍、そのようなものと指揮関係にはございません。
 枠組みとしては、まさしくこの法案に基づきまして、この法案あるいは自衛隊法九十五条、そういうような武器使用の権限は与えられますけれども、国内法に基づきまして派遣をされる。そして、そこにあります関係は、派遣される部隊と、その長であります防衛庁長官、そして最高指揮官であります総理大臣との間に存在をするものでございます。
今川委員 もう時間が来ましたからこれで終わりますが、ぜひ次回に、例えば派遣されるかもしれない自衛官の心情がどういうことなのか、そういうことも含めて、また改めて質問をしたいと思います。
高村委員長 次回は、明七月一日火曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三分散会


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