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第6号 平成15年7月1日(火曜日)

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平成十五年七月一日(火曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 高村 正彦君
   理事 浅野 勝人君 理事 中谷  元君
   理事 浜田 靖一君 理事 松下 忠洋君
   理事 末松 義規君 理事 中川 正春君
   理事 赤松 正雄君 理事 一川 保夫君
      荒巻 隆三君    伊藤 公介君
      金子 恭之君    北村 誠吾君
      小島 敏男君    小西  理君
      新藤 義孝君    杉浦 正健君
      高木  毅君    谷田 武彦君
      谷本 龍哉君    中本 太衛君
      仲村 正治君    原田 義昭君
      福井  照君    牧野 隆守君
      松浪 健太君    松宮  勲君
      宮腰 光寛君    森岡 正宏君
      山本 明彦君    伊藤 英成君
      大畠 章宏君    桑原  豊君
      原口 一博君    平岡 秀夫君
      細野 豪志君    前原 誠司君
      山口  壯君    吉田 公一君
      渡辺  周君    佐藤 茂樹君
      斉藤 鉄夫君    丸谷 佳織君
      佐藤 公治君    中塚 一宏君
      赤嶺 政賢君    木島日出夫君
      春名 直章君    今川 正美君
      金子 哲夫君    佐藤 敬夫君
      山谷えり子君
    …………………………………
   防衛庁長官政務官     小島 敏男君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   参考人
   (元防衛庁防衛研究所副所
   長)           前川  清君
   参考人
   (東洋英和女学院大学国際
   社会学部教授)      池田 明史君
   参考人
   (株式会社ゼネラルサービ
   ス取締役統轄本部長)   大野 元裕君
   参考人
   (ジャーナリスト)    角谷 浩一君
   参考人
   (大阪市立大学教授)   松田 竹男君
   参考人
   (慶應義塾大学法学部助教
   授)           藤田 祐幸君
   参考人
   (衆議院議員)      杉浦 正健君
   参考人
   (衆議院議員)      斉藤 鉄夫君
   参考人
   (衆議院議員)      末松 義規君
   参考人
   (衆議院議員)      首藤 信彦君
   参考人
   (参議院議員)      緒方 靖夫君
   参考人
   (衆議院議員)      今川 正美君
   参考人
   (衆議院議員)      山内 惠子君
   衆議院調査局イラク人道復
   興支援並びに国際テロリズ
   ムの防止及び我が国の協力
   支援活動等に関する特別調
   査室長          前田 光政君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月一日
 辞任         補欠選任
  新藤 義孝君     小西  理君
  杉浦 正健君     山本 明彦君
 田野瀬良太郎君     原田 義昭君
  高木  毅君     中本 太衛君
  渡辺  周君     細野 豪志君
  佐藤 茂樹君     斉藤 鉄夫君
  木島日出夫君     春名 直章君
  山谷えり子君     佐藤 敬夫君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     新藤 義孝君
  中本 太衛君     高木  毅君
  原田 義昭君    田野瀬良太郎君
  山本 明彦君     杉浦 正健君
  細野 豪志君     渡辺  周君
  斉藤 鉄夫君     佐藤 茂樹君
  春名 直章君     木島日出夫君
  佐藤 敬夫君     山谷えり子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案(内閣提出第一二〇号)


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     ――――◇―――――
高村委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案を議題といたします。
 本案審査のため、本日、午前の参考人として、元防衛庁防衛研究所副所長前川清君、東洋英和女学院大学国際社会学部教授池田明史君、株式会社ゼネラルサービス取締役統轄本部長大野元裕君、ジャーナリスト角谷浩一君、大阪市立大学教授松田竹男君、慶應義塾大学法学部助教授藤田祐幸君、以上六名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、前川参考人、池田参考人、大野参考人、角谷参考人、松田参考人、藤田参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。
 それでは、まず、前川参考人にお願いいたします。
前川参考人 御紹介いただきました前川でございます。
 現職当時、防衛駐在官としまして中東に広く勤務し、イラクにも足を踏み入れ、退官後は、幾つかの大学で中東の教育研究を続けておりまして、近年は、ゴランPKOの派遣要員に対しずっと中東事情の教育を担当しておるという者でございまして、現在はそのような民間人の一人として、本法案の早期成立を期待する立場から、以下、三つの点を強調して御意見を申し述べさせていただきます。
 まず第一は、日本のイラク復興支援における自衛隊の派遣が、いかに必要であり、かつ効果的であるかということについてでございます。
 湾岸戦争当時、アラブでささやかれた英語もじりのやゆ的なブラックジョークに、ヤバン・イズ・ジャバンというのがございまして、ヤバンというのは日本という意味ですが、似た発音でジャバンというのは憶病だという意味がございます。それが多大な資金協力をした日本への当初の評価だったんですが、ところが、その後、波濤万里、掃海部隊がペルシャ湾で活躍をしまして、対日評価は一変したわけでございますね。言うならば、死に金になりかけていた日本の協力が生き金に変わったというのが、この防衛協力の効果であるということ。その後、平成十三年に湾岸七カ国に遠洋航海が参りましたけれども、その先々で大歓迎をされ、現地の大使からもそういう内話を伺ったわけでございます。
 経済協力に偏向した国際貢献というのが、誤れる対日観を生むだけではなくて、日本への侮りやたかりの風潮をもたらすということを示唆することの一つであろうかと思います。経済協力とともに、防衛協力の黄金比率をどうするか、そのリンケージをどうするかというのが政治の重要な役割ではなかろうかという感じを強くするわけでございます。
 今回の法案を実現した場合の自衛隊の活躍、多面的な効用というのは、もう御存じのとおり、非常に高い自己完結性もありますし、また国際共同性、インターオペラビリティーというような共同性もあるわけですが、国際貢献と同時に、日本及び国際社会に対する新しい脅威に対応するに必要な自衛隊の能力を、新しい能力を開発するという意味でも、イラクへの派遣というのは非常に有効であろうと思います。
 日本が油をたくさん依存しているアラブのことわざに、言葉は雲、行動は雨と。言葉もありがたいけれども、それ以上に水、中東で欲しい水を象徴する行動をしてもらいたいということわざがございますし、きょうの水の一滴はあしたの水の百滴にまさる、水の一滴は血の一滴というようなことわざに象徴されるように、やはり行動で示してもらいたい、あるいは特に必要なものを支援してもらいたいというところが、このことわざの中に象徴されているのではなかろうかと思います。
 第二は、自衛隊による最も効果的な協力というのは何かということでございます。
 法案では幾つかの業務が定められておりまして、それぞれ軽重の差はあれ、重要なものでございますけれども、全体的なニーズ、あるいは自衛隊の特色を発揮するという点で最も効果があろうと思われるのは、先ほどの、行動は雨ということに関連しました水であろうということでございます。これは一石二鳥、三鳥の効果があるものであろうと思います、その水の支援というのは。
 バグダッド周辺の連合軍、これは米軍主体ですけれども、これは飲み水の大半をクウェートから自隊であるいは役務で長距離を運んでいるわけですが、自衛隊がイラクに参りましてバグダッド周辺で浄水・給水支援をするということができるようになりますと、それ自体非常に有益なことですけれども、同時に、治安確保に多くの勢力を割いている連合体、特に米軍ですね、その分を治安確保の方に回すことができるということですね。それによって、治安確保を早期に実施できるという効果があろうかと思います。
 治安確保と人道復興支援というのは非常に密接な関係がございますのは御存じのとおりですけれども、治安復興がなくして人道復興、人道支援というのはできませんし、人道支援ができないと、これは生活危機からいろいろ犯罪が起こるということで、相互に密接に関係しているわけです。
 この水の支援というのは、人道支援面でも、給水の余裕ができれば、イラクの、特にバグダッド周辺の官民にも給水することができるという意味でも、一石二鳥、三鳥の効果があるという意味で非常に大事でありますし、また、日本があるいは自衛隊が、これまでのPKOあるいは国内の災害派遣での経験あるいはそういう装備、能力、これを十分に発揮することができるのが給水活動であろうということを痛感するわけでございます。
 第三点は、安全確保の問題でございます。
 これは、治安情勢等と密接に関係があり、あるいは問題の武器使用基準等とも関係が非常に深うございますが、それ以上に、適切な業務、基幹業務を選定して、それをどこで行うか、どういう要領で行うかということと非常に密接に連動しておるものだと思います。
 例えば、比較的安全な連合軍の全般配置のところで、そこで給水活動、ちょうどユーフラテスの水源というのはそういうところが入っていますから、そこで固定的にやる。それで、こちらから運ぶのではなくて、消費者にとりに来てもらうというような行動をすれば、危険というものも非常にレベルが下がってくる、容易に対処できるということが考えられるわけでございます。
 最近の調査団の報告その他一般の情報から見ると、現地の治安情勢、好転はしつつも用心しなきゃいけないところがございますので、もちろん、不測の事態に対応するという、自隊の警備、危機管理というのは当然、自己完結型の部隊としてやっていただくということでございますけれども、今言ったような態勢をとることによって、場所あるいは業務要領を選定することによって、戦闘地域、非戦闘地域の区分が云々ということは、それほど大きな意味を持たなくなるという側面もあろうかと思います。
 したがいまして、現法案の武器使用基準で有効かつ安全に行える業務の選定、実施場の選定ということで、この安全問題には相当対処できる。しかしながら、いわば武器の使用基準というようなものを現地でさらに柔軟に対応できるような詰めを行っていただいて、それを運用基準にするということが大事なのは言うまでもありません。
 それから、携行武器についても、抑止あるいは対処効果ということを考えまして、装甲車だとかロケット、これは自爆用に突入してくるものに対応するものですけれども、そういうものを携行する。
 ただし、その使用についてはまた別に基準で決めるというようなことでございまして、安全上の問題というのも、今の安全基準の中でやれるという部分を最大限に高めまして、また、武器の使用基準についてもグレーゾーンの部分がございますが、そのグレーゾーンの部分をよく緻密に詰めることによって、武器の使用基準、新しい使用基準というんですか、さらに細部の使用基準をつくるということによって対応できると思っております。
 最後に、これからのさらなる現地調査あるいは情報収集、関係国との密接な連絡調整で効果的な、しかも安全なイラク支援の計画作成というものが望ましいものであると思うんですが、危険を伴う国際貢献に赴く隊員のためにも、幅広い政治的な合意のもとで法案が成立することを心から祈念するわけでございます。
 終わります。(拍手)
高村委員長 ありがとうございました。
 次に、池田参考人にお願いいたします。
池田参考人 池田でございます。
 私は、国際政治を専攻する研究者でありまして、とりわけ、これまでは、中東における紛争問題及び紛争解決のプロセス、あるいは我が国の中東政策の変遷といったものを主たる研究のテーマとして取り組んできた者でございます。その立場から、今回のイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案の審議に際して、若干の意見を陳述いたしたいと考えます。
 何よりも、私は、イラク戦争後のこの地域の安定と復興という問題に我が国が最大限の関心を寄せているというこの事実を、広く国際社会に、そして、とりわけイラクの人々及び中東地域の諸国に対して、明確かつ具体的な形で示す必要があろうかと考えております。
 振り返ってみますと、一九九一年の湾岸戦争を境といたしまして、我が国の中東政治情勢に対する基本的な姿勢は、非常にドラマチックな、劇的な転換を遂げたように思われるわけであります。
 それまでは、要するに、パレスチナ問題とかアラブ・イスラエル紛争、あるいはイラン・イラク戦争など、さまざまな紛争やあつれきを抱えているこの地域の政治情勢に対して、我が国の対応というのはどちらかといえば受動的なものでありました。すなわち、中東が我が国の主たるエネルギーの供給源である、こういう事実を踏まえながらも、そうした経済的な権益を保全するために、政治的には努めて目立たない、ロープロファイルという姿勢を保っていたわけであります。ありていに言えば、要するに、余計な面倒に巻き込まれたくないというような態度に見られても仕方がないような我が国の姿がそこにはあったわけであります。
 これが、冷戦構造の崩壊と湾岸戦争という極めて大きな国際政治上の状況変化によりまして、大きく方向を変えて、我が国はより積極的にこの地域の平和と安定の実現のためにみずからかかわっていくのだ、こういう姿勢を高く掲げるようになったのであります。それまでとは逆に、政治的にできるだけ目立つこと、ハイプロファイルということを心がけるようになったわけです。
 例えば、マドリード会議あるいはオスロ合意以降のいわゆる中東和平プロセスというものにおいて、今や我が国はアメリカとかヨーロッパと並んで欠くことのできない和平支援勢力とみなされるようになっておりますし、このことは、当事者であるパレスチナやイスラエルの人々、あるいはその周辺のアラブ諸国からも大きな評価や期待を寄せられる立場になっているように思えるわけです。
 また、例えばアメリカが悪の枢軸の片割れに位置づけているようなイラン・イスラム共和国に対しても、我が国は、アメリカの敵視政策とは明らかに異なる姿勢、対話と説得、この路線を維持して、アメリカやほかの西側諸国との橋渡しの可能性を持つ相手として、イランからも一定の評価を受けているということであります。
 このように、湾岸戦争以降、我が国は中東地域の政治情勢の中で、従前のいわば透明な存在という状況から一転して、それなりの存在感を積み上げてきている、こういうことが言えるように思えるわけです。しかしながら、一方において中東の安定と平和とを求める我が国の積極的な関与というものを是認して、これを多としつつも、他方ではなおこの地域の人々の胸の中に、我が国の腰が必ずしも本当には定まっていないのではないかという猜疑あるいは不安といったものが残っているような印象もまたぬぐえないわけであります。
 これまでの我が国のかかわりは、事柄の性質上、目に見える部分では資金援助とか財政支援、ODAといったような、いわばお金の面でのかかわりというものがどうしても前面に出てきていたわけですね。技術協力とかNGOの展開といったようなものも確かにあったわけですけれども、しかし、そのような活動というのはどうしても目に見えにくい。したがって、我々が実際に流しているところの汗という部分が一般民衆のレベルでは非常に伝わりにくいというようなところがございました。
 日本はもともと余計な面倒には巻き込まれたくないといったような態度をとってきた国であるというのが、彼らのイメージとして残っているわけですね。だから、積極的な関与と今言っているけれども、今度も結局、簡単に手を出したり引いたりできるところ、つまり経済面とか金銭面での援助でお茶を濁しているだけではないのか、いざとなったら腰が引けてしまうのではないのかといったような疑念というのがどうしても払拭できない、そういう歯がゆい状況が現在あるように思えるわけであります。
 このように考えますと、今回のイラクに対する復興支援活動、こういうものへの主体的な参加というものは、我が国にとってはむしろ非常に大きなチャンスと見るべきであろうと考えているのであります。とりわけ、自衛隊という我が国の国権の究極的な発動を担う組織の派出というものを射程に入れることで、中東地域の安定と平和とを希求する我が国の意思を明確かつ具体的な形でこの中東の地域の内外に示すことができるということの意味は、極めて大きいと言わなければなりません。
 もとより、現実に派出するに際しては、隊員の安全確保とか任務の実現可能性とか、さまざまな要件を細心の注意を払って検討して、その可否を決定する必要があることは言うまでもないわけでありますが、しかし、現時点で何よりも重要なことは、国際社会に対し、あるいは中東地域に対し、とりわけイラクとその周辺の人々に対して、我が国がイラクの復興と安定に本気で取り組む覚悟があるんだ、こういうメッセージを速やかに伝えるというところにあるんだというふうに考えるわけであります。安全なところからお題目のように平和とか安定といったものを唱えているのではないんだ、それなりのリスクを冒しながらも、日本は国家としてこの地域の混乱の収拾に具体的な役割を果たすんだ、こういう強い意思を表明することが大事なんだと考えているわけであります。
 そのことによって、中東和平交渉へのかかわりを初めとする我が国のこれまでの中東地域に対する積極的な姿勢が、単なる技術的、戦術的な政策の集積ではなくて、はっきりとした戦略的な決断に基づく外交路線である、そういうことの裏づけにもなるように思うわけであります。
 もちろん、自衛隊の派出の重要性というものは、その象徴性にとどまるものではないわけですね。私はこれまでに、中東におけるさまざま平和維持活動といったものを検分してまいりました。レバノンのUNIFIL、あるいはゴラン高原のUNDOF、シナイ半島のMNFなどであります。そこではっきりと認識したことは、こうした活動を担える組織というのは軍隊ないしこれと同等の組織以外には考えられないという点であります。
 自衛隊にせよ、他の諸国の軍隊にせよ、もともとはこのような活動を本務として編成されたものではない、これは確かです。その意味では、国際的な平和協力あるいは戦災復興を担う組織としては、細かい部分で数々のふぐあい、あるいは不適合も出てくる、これはしようがないわけであります。にもかかわらず、言葉の本来の意味での自己完結性を備えた軍隊もしくはこれに準ずる体系的な軍事組織のみがこうした任務を担えるということは動かない。他のどのような組織も、実効性という点でこれに及ぶことは不可能であると考えるに至りました。期待される任務への実際的な適合性とか、あるいは具体的な遂行可能性という面において、自衛隊という組織の関与というものが最も合理的であると考えざるを得ないわけです。
 最後に、期待される任務という観点から一言つけ加えて、私の意見陳述を終わりたいと思います。
 今回の特別措置法案の審議において想定されている自衛隊の任務は、主として輸送及び補給にかかわるものであるというふうに理解しておりますが、このうち補給、とりわけ水にかかわる補給問題については、今後の我が国の中東への関与を考えるときに、非常に大きな意味を持ってくるように思われるわけです。
 御承知のように、中東というのは、水資源というものが著しく偏在、偏って存在している地域であります。将来的には、この水の問題が中東における紛争の主要な要因になり得る、これが我々の懸念でもあるわけです。自衛隊を初めとする我が国の復興支援組織あるいは個人が、イラクの現地において水の浄化とか、あるいはその浄化された水の補給とか配給の実務にかかわって、そのノウハウを蓄積するということは、今後の我が国の中東地域における平和協力あるいは安定化への協力といったものを進める上で、大きな財産を手に入れることを意味します。
 任務計画の検討や策定に当たっては、こうした点を十分に踏まえて、より実質的な成果が上げられるような計画が実現することを切に望みますし、また、我々研究者の間においても、中東における長期的な水資源問題への対処という視点から、将来的な我が国の中東地域へのかかわりの幅を広げていく方向で議論を深めていくことが肝要であると痛感しているところであります。(拍手)
高村委員長 ありがとうございました。
 次に、大野参考人にお願いいたします。
大野参考人 御紹介いただきました大野でございます。
 私は、もともとイラクのシーア派を研究している者として、あるいは湾岸戦争時に専門調査員としてイラクに赴任し、あるいは在ヨルダンのイラク班の次席としてイラクを見てきました立場から、私の経験と知識をこの特別委員会に貢献させていただければと思って、意見陳述させていただきます。
 きょう私が取り上げます主題は、イラクの治安状況でございます。
 現在、イラクの戦闘あるいは治安状況、これが話題になっておりますけれども、私は、湾岸戦争直後の掃海部隊、これを担当した者として、あるいは最後のシリアにおきまして、日本が九六年からゴラン高原に自衛隊を送っておりますが、そこで、現地でこういった自衛隊の方々の御苦労を見てきた者といたしまして、ぜひとも、もしも自衛隊がこの地域に派遣される場合には、現地の状況をきちんと把握していただいて、それに対するしっかりとした後詰めをやっていただいて派遣をいただきたいという観点から、この治安状況について述べさせていただく次第でございます。
 最初に、治安状況の悪化でございますが、現在、バグダッドが陥落して以来、その後の治安の悪化にはパターンが見られるところからお話をさせていただきたいと思います。
 お手元に資料があると思うのでございますが、そちらに表で書いてございますが、治安の悪化のパターンには四つのパターンが見られます。
 一つ目は、戦後のどさくさと申しますか、戦後ばたばたとした状況がございまして、そこでは略奪、泥棒あるいは暴行、こういった行為が行われてまいりました。
 これ自体は、発生している場所は大都市圏、例えばバグダッドでの映像が御記憶にあると思いますが、大都市圏で発生しておりますし、現在も、大都市圏の一部におきましては、子供あるいは強盗団、こういったものが略奪を行っております。あるいは、地方の石油施設等の政府関連の施設等が標的にされておりますが、これは時間がたてば安定とともに終息が期待されるものであります。
 そして二つ目には、組織的犯罪、これは、戦争の前にサダム・フセインが恩赦を行いまして、例えばギャング団、テロ組織、こういったものが監獄から出てまいりました。こういった者たちが主体となりまして襲撃、強盗、こういったものを行っています。
 これは場所としましては大都市の中、あるいは人が住んでいないところ、具体的には、例えばヨルダンとバグダッドの間の道路で、簡単に言えばホールドアップ強盗というんでしょうか、こういったものが出ております。さらには都市の周縁部でこういった強盗が出ておりますが、彼らは、行政がしっかりし、民生が安定化すれば恐らく抑えられていくものだろうと思っております。
 そして、ちょっと三つ目は後におきまして、最後に「特殊なパターン」と書いておりますが、政府が逃げるときに役人の人たちが放火を行うとか、あるいは一定の地域でこれまでの指導者層に対して報復の銃撃が行われる、こういったものが出てまいりました。最後に残された、今、米軍あるいはイギリス軍、こういったものが標的となっているテロ、狙撃、衝突行為、こういったものがございます。
 ここについて御説明をさせていただきたいんですが、発生場所、これは後ほどお話をいたしますが、特定の地域、それから大都市圏でございます。これはやはり、後ほどお話し申し上げますが、社会的、構造的不満への対処、これが不可欠であろうと私は考えております。
 今現在、最も深刻な攻撃で、自衛隊が派遣されるときに恐らく直接的に問題となるのは、この三つ目の、今アメリカが標的となっているような衝突、テロ事件だと理解しております。
 時系列で見ますと、二番目ですけれども、バグダッド陥落あるいは主要な戦闘の終結後、これが、サダム政権の残党が引き続き戦闘に加わって事態が不安定になっていたわけではないんです。五月の二十七日にファルージャというバグダッド西側の地域でアメリカ軍がデモ隊に対して発砲を行った、この日を機会として、実は、その後、死傷者を伴う襲撃事件が頻発しております。
 そこだけ見ていただきまして、三番目の、二ページ目に地図がございますが、こういった襲撃行為は、組織性があるかどうかというのは別といたしましても、実は特定の背景のある場所で発生しています。
 これは、大都市を除きますと、こちらの地図にございますけれども、西側のユーフラテス川沿いに上の方に上った地域、それからチグリス川をバグダッドから上に上った地域、この中部の地域に集中しております。この地域は、スンニ派の人たちが住んでおりまして、特に重要なことは、サダム政権とかつて連合関係にあった部族が住んでいる場所なんです。
 この人たちに今何が起こっているかというと、軍が解体され、政府が解体され、あるいはバース党がなくなった。それによって、この人たちはかつて特権層で、一定のお金と利権とそれからポストを与えられていましたが、彼らがいわゆる職を失って地元に帰っているわけです。あるいは、今後標的とされるかもしれないと考えて不安になっているわけです。ある地域、例えばラマディという地域では、ここの人たちは軍人に多く登用されていましたが、極端な言い方をすれば、この人たちが総失業状態になっている。これが現在の状況で、アメリカが入ってきたことによって状況はより悪くなっている。
 したがって、ここに、この人たちが、恐らく不満を持って何かをしている、あるいはサダム政権の残党の隠れみのとなることができる、そういう条件を提供している、こういった状況でございまして、これがまさに今発生している地域の、したがって、組織性とは申し上げませんが、一定の背景を共有しているところで事態が深刻になっています。
 こういった状況を踏まえまして、この三つ目のパターンへの評価でございますが、一つ目は、これまでの戦闘と、通常の戦争とは違って、前線を挟んで対峙するような戦闘というものはもはや発生はしていないというのが私の理解でございます。
 さらに、先ほど申し上げましたとおり、政権と連合関係にある部族は先行きの不透明感と不安を抱えています。したがって、たとえ民生が安定しても、この人たちの層がどう対処されるか、この人たちの将来がどのように処遇されるかということを見せないと、つまり社会的な、組織的な対応がなければ、この人たちの不満というものは解消されないと思っております。
 さらに、大都市にはさまざまな民族、宗教、部族が混在しております。不満を持っている層、持てる層、今後自分たちが期待とそれから希望を抱いている層、こういった人たちが混在しておりますので、何でも起こる可能性があるということです。
 それから、抑止の話が先ほども出ましたけれども、実は、標的となっているアメリカ軍は、イラクの国内でも最も装備にすぐれた軍事装備を持っていますが、残念ながら現実では抑止にはつながっていない。それよりも、残念ながら、武力を使ったことによって、ファルージャで先ほど申し上げましたとおりデモ隊に発砲したことによって、逆に民衆の不満に火をつけてしまったというのが実際に起こったことでございます。
 それから最後には、軍事的な防衛線に関してですけれども、実は、深い防衛線をしいた地域を突破して何かが起こったという事態は、南の方でイギリス軍に対して起こった事件の一件のみでございます。これは恐らく、デモ隊にイギリスが発砲したためにちょっと違った形で起きた事件なんですが、したがって、どちらかというとテロ的な行為、一発撃って逃げてしまう、こういった行為が行われておりますので、組織的に深く侵入するという行為は起こっておりません。
 それから、潜在的なアメリカ軍への不信感、これは非常に強いし、今も存在している。これは、戦前、戦中、戦後と、残念ながらアメリカの態度というのはイラク国民の関心に対してこたえ得るものではなく、逆に不信感をあおってしまった。これがアメリカが標的になっている、ポーランド軍でもなく、あるいはイギリス軍は一件だけございましたが、イギリス軍に対して多発しているわけでもなく、アメリカ軍が標的になっている理由であると思います。
 今後でございますが、シーア派層、これはシーア派層というのはイラクの人口の六割以上を占めていますけれども、このシーア派層も、実は、先ほどのスンニ派層に比較して弱いながらも不満をためていて、デモ等を行っています。実際に、アマラでイギリス軍を標的としたのはシーア派でございました。したがって、今シーア派層は抑えられていますが、今後、きっかけ次第ではシーア派層にもいろいろな事態が拡大する可能性は否定できない。そうなると、国家全土が不安定になってくる可能性も否定できないと思います。
 それから最後に、つい最近起こり始めたことでございますが、計画的で意図を持ったテロ活動の兆しも見え始めています。これは民生を安定させようとする石油に関連いたしまして、パイプラインの爆破事件、こういったものも起こっております。これまでのような場当たり的なものではなくて、組織的、計画的なものが発生していますので、今後は復興とともに、社会的、構造的な問題への対処をしないと、国家全土にこういった事態が広がることを防げないばかりではなく、あるいは、特定の地域においては、我が国の部隊あるいは協力というものをなし得る環境ができないという懸念すら出ているということでございます。
 以上をもちまして、私の陳述にさせていただきます。(拍手)
高村委員長 ありがとうございました。
 次に、角谷参考人にお願いいたします。
角谷参考人 本日は、参考人として意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 私は、ジャーナリストとして、ラジオ番組などで、殊に九月十一日以降の一連の国際社会の動向、それはつまり、アメリカの同時多発テロからアメリカのアフガニスタン侵攻、アメリカ・イギリス軍のイラク攻撃という約二年間に起こった出来事と、我が国の安全保障の考え方の変化について、世論の動きとともにウオッチしてまいりました。
 そして今、我が国は、イラクへの人道復興支援や国際テロリズム防止のための支援活動のあり方に関して議論が進められているわけであります。その間、我が国の安全保障の柱として有事関連三法が可決するなど、安全保障に関する国民の考え方は、現在の国際情勢に即して大きな変化を受け入れたのだというふうに考えていいと思います。
 きょうは、私のジャーナリストの視点から、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別法案についての参考人意見を述べさせていただきます。
 さて、その中で、イラクの人道復興支援のための自衛隊の派遣についてですが、私は、幾つかの問題があるのではないかと考えております。
 一つは、我が国の国連との関係であります。
 我が国は、外交の基軸に国連主義と日米安保に基づく日米関係を掲げていることは承知しておりますけれども、人道支援のみならず治安維持についても、国連が平和維持活動として軍隊の派遣を決議し、かつ日本にも要請があるのならば、日本は積極的に対応する必要があるというスタンスであったと考えておりました。しかしながら、政府がイラク支援法案の根拠としている国連安保決議第一四八三号は、人道支援においても治安維持においても、加盟国に対して占領国への協力を要請したものではないと考えます。
 先週、自民党の麻生太郎政調会長は講演で、戦後、自由主義陣営と共産主義陣営が分かれて、日本は自由主義陣営について利益を得た、この際、国連とアメリカは一体に見えたが、今回初めてこの二つが別々の立場をとった、対米追従とすぐ言うが、これが何を意味するかを考えるべきだ、自民党としては、国連をとるかアメリカをとるかの選択で、断固アメリカを支持したつもりで、そのアメリカが戦争においては勝利し、利益を得ると考えている、国連は安全を保障してくれないと述べています。
 麻生氏の発言は、我が国の戦後政府の一つのハードルとしてきた海外出兵を行わないことを、大義もなく乗り越えてしまうということになりはしないかと考えます。我が国の軍事力を海外に派遣することの基本原則もなく、国連よりアメリカとの関係の維持のための海外派遣というものは、海外出兵を行う整合性についての議論が余りにもお粗末かつ乱暴な感じがいたします。
 その意味では、湾岸戦争以来、安全保障に関して、政府はその根本的、根源的な議論を避け続け、国際情勢の中の利害の選択だけを無定見に、なし崩しに選択してきた時期があったのではないでしょうか。
 また、この海外出兵がだれのために、どんな目的で行われるのか。イラク現地は猫の手もかりたいのは当然だと思います。アメリカでは、NATO軍の派遣要請も検討されていると聞いています。その中で、イラクの暫定政権からの要請ならばともかくも、アメリカの要請による出兵で、アメリカ軍とともに駐留軍として占領軍の一員になるという可能性の説明がいささか足りないのではないかと思います。
 加えて、政府は、イラクとの間で地位協定を結ぶことについても準備を進めています。今、国民のどれほどが、今回のイラク支援法がアメリカ軍とともに駐留軍としての役割を大きく担っているとの理解をしているのでしょうか。
 海外派兵や武器輸出に関して、我が国の国会は、結論を導き出さないまでも、議論をし続けてきました。武器や戦力の定義などの議論はそれに当たるでしょう。しかし、国際情勢の変化に対応するというのは、国際社会の政治的駆け引きや政局の取引ではなく、我が国としての安全保障に関する明確な基本原則の確立と行動原則ではないでしょうか。解釈論やすき間を探しての場当たり的な運用に既に無理が生じていることは明らかだと思います。
 政府は、このイラク支援法に対して、何が現場で起こるのか予測不能であるとの見解を示しています。
 自民党を初め与野党は、イラク視察団を送り込んで現場を視察しています。各党の報告やレポートを拝見いたしますと、どこが戦場でどこが戦場でないかという命題に対して、安全だと言い切れないと、一様に、混乱している戦時下であるとまとめているようです。であるならば、時限立法という形で海外派兵というオペレーションを実現化するのではなく、国民的議論にしていく義務が国会にはあるのではないでしょうか。その意味では、政府や国会に国民的議論を喚起させているという印象がいささか薄いように感じます。
 この法案は、国土の安全を守る有事三法とは全く異質のもので、この法案が有事三法の延長線上にあるものと考えるならば、安全保障に対しての我が国の考え方の議論や国益に対しての明確なビジョンや定義も議論して、国民の相互理解を得るべきだと思います。このままですと、自衛官にとっても大義の薄い困惑したままの派遣という認識は取り払われず、我が国の安全保障の根幹がないままの派遣となってしまいます。
 我が国が海外出兵に踏み込むには、総理の言う国力に合った協力ということと同時に、相応の世論喚起や、周辺アジア各国への説明や配慮も必要だと思います。国連主義を切り捨て、アメリカとの関係を維持するための意義とリスクについても、もう少し立ちどまった議論が求められると思います。
 その意味では、我が国は今、安全保障に関して戦後最大の議論のチャンスを迎えています。国際社会の中の日本の役割、この国の十年、五十年、百年のビジョンを明確につくり上げるために、政局の駆け引きなどで成立させようとする議会運営にピリオドを打っていただいて、国民の総意が形成されるまで、立ちどまることを恐れずに、ぜひ丁寧に議論を尽くしていただきたいというふうに考えます。
 私は、放送を通じて、若い人たちに今の国会の様子を伝えています。九・一一以来、若い人たちの安全保障への興味や、国家とか国益という大きなテーマが、自分のものだとか自分の問題になりつつあるように感じます。イラク攻撃にも大きな関心を寄せていました。そして、番組にもたくさんの意見が寄せられています。ただ、その意見が出ている間に議論が次の段階に行ってしまって、どうも若い人たちの議論が置いてきぼりにされているような感じがします。これからの二十一世紀を担う若者たち不在の議論が英知の前例とはならないように、どうか国民的議論に広がりを持たせていただきたいというふうに私は考える次第であります。
 ありがとうございました。(拍手)
高村委員長 ありがとうございました。
 次に、松田参考人にお願いいたします。
松田参考人 大阪市立大学の松田でございます。
 国際法を専攻しておりますので、きょうは、米英軍によるイラク占領統治の法的な性格及び正当性について所見を述べたいと思います。
 本委員会で審議されておりますイラク支援特別措置法案は、イラクに自衛隊を派遣しようという法案でございますが、国際法上、他国の領土にその国の同意なしに軍隊を派遣することは、違法な武力行使に該当し、侵略行為を構成することになります。
 そこで、本法案の第二条三項は、イラクについては、安保理決議一四八三その他の政令で定める国連総会または安保理決議に従って「イラクにおいて施政を行う機関の同意によることができる。」と定めております。問題は、この「イラクにおいて施政を行う機関」が、そのような違法性を阻却し得るような正当な統治権限、法的なステータスを持っているのかどうかということであります。
 そこで、安保理決議一四八三を見てみますと、同決議本文第四項は確かに、オーソリティーに対して、国連憲章及び関連する国際法に従い、領土の実効的統治を通じてイラク国民の福祉を増進するよう要請していますが、前文第十三項によれば、ここでオーソリティーというのは統一司令部のもとにある占領国ということで、同項は、米英両国が占領国として関係国際法上有する特定の権限、責任及び義務を認識するというふうに述べております。
 重要なことは、これらの規定が、占領が国際法に従って行われるべきことを規定しているだけで、新たな権利、権限、義務、責任等を付与してはいないことです。つまり、本決議は、米英両国に占領国としての国際法上の権限、責任、義務を全うするよう求めているだけで、米英両国による占領統治の合法性を承認するとか、新たに占領統治の権限を付与するというものではありません。
 現代国際法では戦争や武力行使が違法化されておりますから、戦争のやり方、武力行使の手段や方法についての規則は本来は存在し得ません。武力を行使する者は、犯罪者か法の執行官か正当防衛か、そのいずれかであって、対等、平等な交戦者という概念はもはや存在し得ないはずです。しかし、現実には今なお多数の武力紛争が発生しておりますし、武力行使の合法性が常に判定できているわけでもありません。そこで、国際法では、戦争や武力行使を違法化しつつ、他方で、現実に武力紛争が発生した場合には、戦争の惨害や残虐さを緩和するために、武力行使が合法か違法かにかかわりなく、すべての当事者が遵守しなければならない人道的な諸規則を整備、発展させてきています。国際人道法とか武力紛争法と呼ばれている法です。
 軍事占領について言えば、他国の領土に侵入してこれを占領するということはもちろん違法ですし、自衛権の行使として他国の領土を占領するということも考えにくいことですから、現代国際法上、軍事占領という制度はもはや存在する余地がないと思われますけれども、現実には、武力紛争の過程でしばしば他国領土の占領が行われております。そこで、国際人道法では、軍事占領そのものの合法、違法は別にして、現に他国領土を占領している以上は、占領地の治安を維持し、住民の生活と福祉を最大限に尊重し、保護するよう義務づけております。安保理決議一四八三は、このような国際人道法上の占領国としての義務、責任を果たすよう求めたもので、占領統治そのものを合法化したものではありません。
 政府は、米英軍によるイラク攻撃は安保理決議六七八、六八七、一四四一に基づく正当な武力攻撃であったと解釈しておりますから、事によると、占領統治もこの正当な武力行使の一部あるいは結果として合法だと考えているのかもしれません。しかし、これも無理な議論と言わなければなりません。
 第一に、米英軍のイラク攻撃が安保理決議に基づいた行動だという主張に無理がありますが、この点は既に何度も審議されておりますので、ここでは立ち入らないことにします。
 第二に、問題は、たとえ米英軍の武力行使が安保理決議に基づいた行動だということであったとしても、その目的や程度は大量破壊兵器の探索、廃棄に限定されているはずで、イラク全土を長期にわたり軍事占領するということは、明らかに必要な限度を超えていると言わざるを得ません。安保理といえども、平和に対する脅威を除去するために必要最小限度を超えて武力行使を行ったり、あるいは許可する権限は持っておりません。
 以上のように、オーソリティー、すなわち「イラクにおいて施政を行う機関」は、国際法上正当な統治権力として認められてはいません。違法な軍事占領と認定されたわけではありませんが、他方で合法的な占領統治と認定されたわけでもないのです。政府は、日本国政府としては合法かつ正当な占領統治と解釈していると主張するかもしれませんが、それだったら、イラク側にも、違法、不当な軍事占領と解釈する同等の権利があると言わざるを得ません。
 かくして、イラクの旧政権の残存勢力には、国際人道法規則を遵守する限り、自国領土を占領している米英軍を攻撃する正当な権利があり、イラク国民にはレジスタンス闘争を行う正当な権利があるということになります。軍事占領そのものが違法、不当とみなされるのですから、米英軍が治安の維持や民生安定、人道支援などいかなる活動を行っていても、攻撃対象とすることが可能です。占領国としての国際人道法上の義務を遂行している最中でも攻撃することが可能になります。
 本委員会では、戦闘行為が行われている地域といない地域とを区分けすることができるかどうかがしばしば議論されていますが、米英軍に対する攻撃が法的に可能であるという意味では、イラク全土が今でも戦闘地域です。現に戦闘行為が行われていない地域というのは、たまたまある時点で戦闘行為が行われていないというだけで、法的には、いつでも戦闘行為を行うことができる地域なのです。このような地域に自衛隊を派遣すれば、自衛隊自身が正当な攻撃対象、軍事目標となることは言うまでもありません。
 米英軍は他国領土の占領という軍事行動を行っているわけですから、その部隊に対する補給や輸送は、武器弾薬であろうと、水、食糧、医薬品であろうと、すべて立派な作戦行動であり、旧政府残存勢力による攻撃や占領地住民によるレジスタンスの対象になります。米英軍に対する支援行為を行っていなくても、自衛隊は攻撃対象になります。オーソリティー、すなわち占領当局の同意を得ているといっても、イラクにはこの占領当局を正当な統治権力と認める義務はありませんから、イラク国民は、自衛隊を、自国の同意なく駐留している違法な侵略者とみなすことが可能なのです。
 なお、本法案の第十七条では、自己または自己とともに現場に所在するほかの自衛隊員等の生命または身体を防衛するため必要な場合には武器を使用できる旨規定しておりますが、イラク側の攻撃またはレジスタンスが正当な戦闘行為であるとすれば、これに対する反撃行為を、自衛あるいは正当防衛と言うことはできません。それ自身もまた同格の戦闘行為です。火中のクリを拾いにみずから飛び込んできた者には、自衛や正当防衛を口にする資格がないのです。
 このように考えてみますと、自衛隊のイラク派遣は、国際法上の合法性を担保されていない軍事行動への参加であり、憲法第九条が禁じる武力の行使に当たると考えられます。
 イラクの復興支援に協力、支援することは確かに必要でありますが、それは、自衛隊の派遣ではなくて、非軍事的な方法で行うことが適切であろうと考えております。
 以上が、私の所見の表明でございます。(拍手)
高村委員長 ありがとうございました。
 次に、藤田参考人にお願いいたします。
藤田参考人 御紹介いただきました藤田でございます。
 私は、今から半世紀以上前、オットー・ハーン、シュトラウスマン、あるいはリーゼ・マイトナーといった物理学者によって発見された、純粋なる物理現象としての核分裂反応、これが二十世紀の歴史に、あるいは政治に非常に深刻な影響をもたらしたということで、核の軍事的な利用及び商業的な利用について、これを厳重に監視していくということが物理学者の一つの責務であるというふうに考えて、これまで活動し、行動し、発言をしてまいりました。
 その観点から申し上げますと、今から十年余り前、湾岸戦争と呼ばれている戦争においてアメリカ軍が初めて使ったウラン兵器、劣化ウラン弾と言われている兵器の問題について、極めて厳重なる問題がある、非常に重要な問題があるとして関心を持ち続けてきております。
 その後、バルカン戦争においてやはりこのウラン弾兵器が使われ、そして今回のイラクでも使われたということで、一九九九年と二〇〇〇年に、私は、コソボ、セルビア、あるいはボスニアなどの地域で劣化ウラン弾の調査及びその健康的な影響についての調査をしてまいりました。そして、本年五月十九日から六月二日にかけて、バグダッド及びバスラ周辺において、今次の戦争においていかなる形態で劣化ウラン弾が用いられたのかどうかということについての実地の調査をしてまいりました。その結果をきょう御報告し、我々が今なすべきことについての御提言をさせていただきたいと思います。
 御承知のとおり、劣化ウランという物質、これは、原子力産業あるいは核兵器産業において、ウラン濃縮過程において発生する産業廃棄物とでも申し上げましょうか、ほぼ純粋なウラン238の同位体であります。それで、このウラン238という同位体は、かつてはプルトニウムの原材料になるということで資源価値を持っておりましたけれども、今では、プルトニウム利用計画というものは各国で破綻をしております。その結果、このウラン238という物質は、単なる産業廃棄物という位置づけになってきております。
 このウランを金属として扱った場合の物理的な特性としては、比重が極めて大きい、それから非常にかたい金属である、そして、経済的な問題から申し上げますと、廃棄物であるがゆえに値段が非常に安い、こういう利点があります。
 イラクに対する最初の攻撃であった湾岸戦争当時、アメリカ軍は、A10というジェット戦闘機から対戦車砲の弾頭としてこのウラン弾を使ってまいりました。ウランという物質は非常に重くてかたいために、戦闘機から発射されて甲鉄板に当たりますと、そこで激しく発熱をいたします。ウランという金属は発火性金属でありまして、鉄の融点よりも高い温度で燃焼いたしますので、その戦車の甲鉄板はたやすく溶け、弾丸は中に入って激しく燃焼して乗組員を焼き殺す、こういう効果を持った兵器であります。
 しかし、その爆発炎上したときに、数ミクロンの大きさのウランの微粒子となりまして環境に噴出いたします。これを吸い込みますと、肺に沈着して重篤なる健康障害を引き起こす、こういうことがよく知られているわけであります。
 この砲弾は機関砲で撃ち出されます。戦車の周辺で撃ち出されますけれども、戦車に当たるのは一発か二発で、大部分のものはそのまま地面に突き刺さります。私がコソボで確認をしたケースで見ますと、地面に突き刺さったウラン弾は、地下一・五ないし二メートルという深さまで突き刺さっております。しかも、衝撃力は熱に至りませんで、金属のまま地中に埋まっている。二〇〇〇年にコソボに参りましたときに、掘り出したウラン弾を見ましたところ、そのウラン弾は半分ほどにやせ細っているということが確認できました。ウランという金属は、水と接触することによって水溶性のウランとなり、地下水へ汚染として入っていくということがそのことによっても確認できるわけであります。
 この十年前、湾岸戦争において大量に利用されましたこの劣化ウラン弾の影響が最初に報告されましたのは、アメリカ軍の帰還兵の健康状態、及び、その帰還兵の子供たちに重篤な身体障害あるいは発がん性といったようなものが次々と発生するということから、湾岸戦争症候群というふうに呼ばれ、社会問題化いたしました。そして、その弾丸を撃ち込まれた側のイラクの子供たちにも同じような影響が出始めたということで、国際的にも大きな社会問題となってきたわけであります。
 このような問題というものが明らかになっているにもかかわらず、今次の戦争において劣化ウランが大量に使われたということが、今回調査をしてきた結果、明らかになりました。
 ここにありますのが、バグダッドの計画省という建物の周辺で発見されたウラン弾であります。(パネルを示す)この上の方にあります金属の棒、これが、純粋なウラン金属、直径一センチ、長さ十センチ、重さ三百グラム程度のウラン金属です。これは十ミリほどで、撃ち出すのは三十ミリ砲ですから、アルミ合金で三十ミリのさやをつくって、その中に入れて撃ち込むわけであります。
 そして、この計画省、これはバグダッドの中心部、サダム宮殿の近くでありますが、その計画省の裏庭から、私たち取材チームがほんのわずかな時間歩き回っただけで、これだけの大量のウラン弾の破片及びウラン弾そのもの、これが発見されました。つまり、今次の戦争においては、対戦車砲としてつくられたはずのウラン弾が建物の攻撃にも使われたということになります。その前の道路などにもこれが散乱しておりました。これを子供が拾ったりすると大変危険であります。これは早急に回収する必要があります。
 それから、バグダッド南部及びバスラ南部の地域において、被弾している戦車を何台か発見いたしました。ここでは、ちょうどバターをナイフで切るように鋭く鉄を切り裂く、そして中で爆発する、こういう跡がたくさん確認されました。これなどは、まさにバターをナイフで切り裂いたがごとく、これは戦車の表面で弾がはね返った状態を示しているものであろうと思われますが、このように、戦車に当たった場合にはこの微粉末が環境に噴き出し、その周辺の地域を放射能で汚染するということになります。
 それから、その戦車の周辺の建物、これは製氷工場でありますが、この製氷工場にもたくさんの銃弾が撃ち込まれておりまして、この工場自体が汚染されている。とても工場の再開は難しいということで、私たちが行って測定をした結果、ここの工場長は頭を抱えて困り果てているという状況が起こっております。
 バスラの母子病院、これは十年前の湾岸戦争によって大量に発生した、そうした子供たちのための小児がん病棟がつくられております。そこには多くの子供たちが、例えばこの子はおなかが大変膨れ上がってしまっていて重病です。それから、この子は目にがんができていて助かる見込みがない。それから、この子は耳の下、甲状腺のところに大きながんができている。さらに、この赤ちゃんはわきの下に頭と同じぐらいの大きさの腫瘍ができている。
 こういう子供たちが湾岸戦争後急増し、当時、例えばバスラ周辺では年間に二十人ほどの小児がんの発生数であったものが、現在では、二〇〇二年の調査では百六十人、八倍にもふえている。人口当たりの統計を見ても、九〇年には十五歳以下の子供の十万人当たり三・九八人であったのが、二〇〇二年には十八・五人と、四・六倍の増加をしている。因果関係についてのさまざまな議論はございますけれども、疫学的に明らかに放射能影響というものがこのバスラ周辺の子供たちに、そしてこの影響はバグダッドでも顕著に見られているわけであります。
 そのほか、死産、流産も非常に多くなっております。そして、先天的な機能不全というものも大変多く見られるようになっております。
 長期にわたる経済封鎖のために、医療器材、薬品、人材など絶望的に不足して、治癒率が極めて低いというのが現状であります。
 ウラニウムという物質の放射能の半減期は四十五億年であります。この時間は、地球の誕生以来の時間に匹敵するわけであります。一たん汚染された大地がもとに戻ることは永遠にないということが言えると思います。ウランは環境の中で循環し、今後極めて長期にわたってイラクとその周辺国の子供と母親たちを苦しめることになります。
 十年前の湾岸戦争の影響が極めて深刻な中で、さらに今次の戦争で大量のウラニウムが撃ち込まれたということは、到底許すことのできることではない。例えば、今イラクで、イラクの原子力産業からイエローケーキというウラニウムが大量に持ち出されたという話があります。これが大変大きな問題になっております。
 ウラニウムという物質を環境にばらまくということは、本来あってはならないこと。これを兵器として意図的にある地域にばらまくということは、到底許されることではありません。目の前で大量に人が死ぬということはありませんが、数年後にはさらに多くの子供たちと母親が悲惨な運命を引き受けることになることは明らかであります。その悲劇は終わることがなく続くことになります。サイレント・ジェノサイドあるいはサイレント・エスニック・クレンジングというべき事態であると私は認識しております。
 その無差別性と大量性、これは大量破壊兵器の定義を満たしております。米国は既に広島と長崎に大量破壊兵器を投下し、しかも、戦後、その犯罪は問われることはありませんでした。そして、湾岸戦争においても劣化ウラン弾を大量にイラクの大地に撃ち込み、その結果についても罪を問われることはありませんでした。そして、今次の戦争においてさらに多量のウラン弾を再びイラクに撃ち込んだということは、到底許されることではない。これは、イラクが大量破壊兵器を隠しているのではないかという疑い、それが理由で大量破壊兵器をアメリカ軍が使ったということになります。
 イラクの人たちは、このウランの被害がいかに深刻なものであるかということをよく承知しておりまして、市民が今最も、僕たちが測定器を持って歩きますと、うちをはかってくれ、うちをはかってくれ、みんながすがるようにして安全を確かめようとすることが、何度も体験いたしました。
 今日本が、この特措法三条に言うように、イラクの国民に対して医療その他の人道上の支援を行うということを真に望むのであれば、武装した兵士をそこに送り込むのではなくて、バスラ及びバグダッドに最新の設備を備えた小児がんセンターを建設することでありましょう。
 アメリカの大量破壊兵器の投下によって、皮肉なことに、日本は放射線治療について非常に多くの経験を重ねてきております。今同じ苦しみをイラクの国民がこれから受けていこうとするときに、この核の洗礼を受けた先進国である日本が今イラクに対してなし得ることは、この我々の経験を伝えていくことであると考えております。
 この不当な戦争に加担したこの日本という国は、その贖罪の意味も込めて、イラクの子供たちのためにがん専門の最先端の医療設備を、若い医者の教育のためのプログラムをイラクに贈ること、これが最も今望まれていることであると考え、それを提言して、私の発言を終えます。
 ありがとうございました。(拍手)
高村委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
高村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森岡正宏君。
森岡委員 私は、自由民主党の森岡正宏と申します。
 参考人の皆さん方、きょうは有意義なお話をいただきまして、本当にありがとうございました。
 私たち、本委員会の審議の中で、二十四日以来、いろいろな議論を重ねてまいりました。昨日は、提出する価値のない法案だと決めつけた委員の方もいらっしゃいました。しかし、私たちは、一日も早くこのイラク支援法を成立させて、そして我が国が国際社会の中で果たすべき役割、イラクへ行ってしっかりとした支援をしたいという思いから、この法案の推進を図っているわけでございます。委員の中にもいろいろな人たちがいる。しかし、参考人の皆さん方もいろいろな意見を持っておられるということがよくわかったわけでございます。
 私は、きょうは短い時間でございますので、早速質問に入らせていただきますが、今までの参考人の皆さん方のお話の中にもございましたが、この法案を審議する前提といたしまして、我が国が国際社会で果たすべき役割、特に中東地域の安定、なかんずく、その真ん中にあるイラクへの支援をすることが、我が国の国益にとって大変大事なことだと思うわけでございます。
 石油エネルギーの八八%を中東地域に依存しているこの日本。しかも、既に米英のほかにも十三カ国の軍隊がイラクに入って治安維持に努めておられる。そして、ほかにも十四カ国の人たちがイラクへの支援を決めているという現実を見ましたときに、先ほど来、前川参考人からお話ございましたように、あの湾岸戦争のときの轍を踏んではならない、お金だけ出して人的な貢献は何もしないのか、日本は憶病か、こう言われるようなことのないようにしていきたい。
 少なくとも、普通の国の支援ができるようにしたいというのが私たちの願いでございますけれども、参考人の皆さん方から、まず、イラクでの貢献、私たちこの日本が果たすべき役割についてどう考えておられるのか、前川参考人と池田参考人、大野参考人、それぞれ一言ずつ、三人の方にお伺いしたいと思います。
 前川参考人からお願いいたします。
前川参考人 今質問がございましたように、中東地域の日本及び世界にとっての重要性、これは申すまでもありませんけれども、世界の石油の埋蔵量の三分の二、しかも輸出量の三分の一、その中東の中で、イラクの埋蔵量というのはサウジアラビアに次いで非常に大きい。これはまだよく調査ができていませんけれども、これから調査をすれば埋蔵量はさらにふえるであろう。そういうイラクの中東における、あるいは世界における重要性ということにかんがみて、イラクが早く復興され平和になるということが、中東の安定はもちろん、世界の安定にも大きく寄与する、日本の中東への石油依存、安定確保にも大きく寄与するということでございます。
 そこで、今回のイラクへの支援でございますけれども、人道復興支援というのと安全確保支援というのは、先ほど申しましたように密接に結びついておるわけでございまして、最終的には人道復興支援が最終でございますが、しかし、安全確保ができなければまず人道復興もできない。
 御存じのとおり、テロ等が横行すると経済が非常に悪化しますし、それで生活が悪化する。さらにそれが犯罪その他を生むというようなローテーションになるわけでございまして、そういう中で、両方が大事なんですけれども、とりあえず安全確保支援というものに、これに役立つような後方支援をするということが人道復興支援にも役に立っていくわけでございますね。それがまた安全にも振り返ってくる。
 先ほど大野参考人から、安全上の、危険上のいろいろ興味深い話を聞きましたけれども、当面の短期的な治安情勢と長期的な治安情勢というのを考えるときに、一番長期的に危惧されるのは、現在イラクに出ております米軍、米軍はバグダッドから、これを含む北あたりの地域の治安維持を図っておるわけで、イギリス軍はバスラ周辺の南の方の治安維持に当たっておるし、それからポーランド軍は中西部の方の治安維持に当たっておるわけですが、長期的にそういう軍が撤退をしなければいけないようなほどに治安状況が悪化するのかということと、いや、そうじゃない、これまでの調査団の報告あるいはそれが新聞で出されるところを見ますと、いろいろ地域差、時間差はありますけれども、逐次好転をしていっているということでございますね。
 したがって、そういう中で日本が、先ほどから申し上げましたような形で治安維持の支援を当面重点にやり、一部人道支援をやるということで、それで大きく治安が回復される、そして人道復興支援の方に重点が志向されるということになろうかと思います。そこに日本のイラクに対する支援の大きなメリットがあろうということでございます。
池田参考人 日本のこれまでの中東に対する貢献というのは、このイラクが初めてということではないわけですね。パレスチナに対して、あるいはいわゆる中東和平支援とかいうような形で、さまざまな関与を行ってきている。あるいは、ゴラン高原において兵力引き離しの国際的な協力というようなものもやっているんですが、いかんせん、どの協力も非常に地味なわけですね。
 中東の中で日本のプレゼンスというものが必ずしも明確に認識されていないという状況というのは残念ながら存在するわけで、その意味においては、イラクに今の時点で日本がかかわっていくということは非常に大きな象徴的な意味を持つ。つまり、日本のプレゼンスをそこで中東の内外の人々に大きく印象づけるという点で、今までのさまざまな貢献というものとはかなり違った、より高いレベルの印象を与えることになるというふうに思っております。
大野参考人 簡単に申し上げます。
 二点申し上げますけれども、一つ目は、イラクにおきましても中東におきましても、今、安全のもとあるいは不安定、両方。安定のもとであり不安定のもとであるのはアメリカです。したがいまして、アメリカが一番安定の方向に力を発揮できるようなやり方を行うのが、まず日本の置かれている現実的な立場だと思います。
 それから二つ目には、アメリカができずに日本が行える役割というのがあると思います。それは、先ほど申し上げましたような、社会的な問題を和らげるようないわゆるインカムジェネレーションあるいは民生の安定、こういったところに関しては、日本の方がアメリカよりもイラクからの信頼を得ておりますので、日本の方がはるかに受け入れやすい立場にあると思いますので、そこに我が国の役割があると私は考えております。
森岡委員 なぜ自衛隊員が行かなければならないのかということが、委員会の大変大きな論点になっております。
 先ほど来もお話が出ておりますけれども、この法案は、武力行使はしないんだ、そして戦闘地域には行かない、憲法上の許される範囲でというくくりになっているわけでございます。先日、公明党の赤松委員が、国内でいうところの災害救助活動という役割をイラクでやるんだ、そう思えばいいんじゃないかということを例え話でおっしゃったわけでございますが、私もそういう考えで行けばいいというふうに思うわけでございますが、野党の皆さん方で、自衛隊員がイラクへ行くことに危惧する方は、まるで武力行使に行くかのごとくおっしゃる方がいらっしゃるわけでございます。
 私は、丸腰の民間人が行くよりは、自己完結性を持っている、こういう自衛隊の組織が行くことがふさわしいというふうに思うわけでございますが、もう一度、前川参考人とそれから池田参考人から御意見を伺いたいと思います。一言で結構でございます。
前川参考人 なぜ自衛隊の派遣、それが効果的か、なぜ自衛隊の派遣が必要かということでございますけれども、先ほどおっしゃったように、自己完結性があると同時に、国際共同性というのを自衛隊というのは持っておりまして、既に参っております外国の軍隊と密接に共同ができるという効率性がございます。と同時に、災害派遣での教訓、そこで得た能力というのを現地でも発揮できる、そういう面の役割も大きくニーズがあろうかと思うわけでございます。
 以上でございます。
池田参考人 一言で、行軍、宿営と申しまして、要するに、自衛隊並びに他国でいえば軍隊ですが、こういう組織というのは、道のないところにも道をつくって進めるわけですね。全く宿がないところにも自分でテントを張って、そしてあらゆる施設を自分でつくり出して、そこで野営できるわけですね。これを自己完結性というわけですが、そのような能力を備えた組織というのは、我が国内には自衛隊以外にはあり得ないわけであります。
 今のようなイラクの情勢の中で、したがって、最も効率的に任務を遂行できるというのは、自衛隊という組織をおいてないというふうに私は思います。
森岡委員 与党のイラク調査団の報告を聞きました。もはや戦闘は終結しているけれども、今なお旧政権の勢力が挑発的な襲撃を行っている、しかし治安状況は日ごとに改善されているということでございました。
 先ほど大野参考人から、治安状況についてお話を伺いました。私は、イラク全土でいまだ戦闘状態が続いているところもあるということでございますけれども、随分地域的な格差があるんじゃないか、そう思うわけでございます。日本より大きな国土、しかも大変な砂漠地帯を持っている、こういう国で、戦闘地域であるのか非戦闘地域であるのか、安全な場所を探すことは可能じゃないかな、そう思うわけでございますが、大野参考人から、この件についてもう一度お伺いしたいと思います。
大野参考人 先ほど申し上げましたとおり、私は、戦闘地域か非戦闘地域かということではなくて、実際に死傷者が出た事件がどこに起こったかということでございまして、今現在の時点では、先ほど申し上げましたとおり、中西部、この地域が、特に第三番目のパターンで治安が非常に悪化している。そして、大都市では何が起こるかわからない状況にある。しかしながら、北部のクルド地域では全くそういった事件は起こっていない。南部では若干起こっておりますけれども、少なくとも今の現状では起こっていないと言うにふさわしい状況があるが、残念ながら不満というものはどんどん高じておりまして、これが中西部に起こって行われたようなきっかけさえあれば、もしかするとこういった戦闘、治安の悪化が拡大する可能性があるというのが私の認識であります。
森岡委員 ありがとうございました。
 残念ながら時間が参りましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
高村委員長 次に、平岡秀夫君。
平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。
 きょうは、参考人の皆さん、大変貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。すべての方に質問したいと思うんですけれども、ちょっと時間がないので、私がきょう説明を伺いました中で、ちょっと質問してみたい事項について限って質問させていただきたいというふうに思います。
 まず、前川参考人に伺いたいと思います。
 前川参考人、大変いい言葉をいろいろと述べられまして、言葉は雲、行動は雨、きょうの一滴はあすの百滴にまさるといったようなことで、確かに今、我々も、イラクにおいていろいろな支援が必要であろうということについては全く否定するものではないんですけれども、今、前川参考人が引用された言葉というのは、多分、イラクの国民の皆さんにとってみて支援が必要であるということを端的に言いあらわされたことであって、必ずしも私は、米軍あるいは英軍あるいは当局といったようなことに対しての話ではないんじゃないかなという印象を持ちました。
 そこで、ちょっとお聞かせいただきたいんですけれども、自衛隊が行える最も効果的、効率的な協力は何かというところで、水の補給関係を言われました。この水の問題は、昨日のこの委員会でも、現地調査をした我が党の委員の方からも、本当にその必要性があるのかどうかということについてかなり議論をしましたので、私は、その点についてはきょうはお聞きしようとは思いませんけれども、仮に自衛隊が水の補給をする、補給活動をするということになる場合に、国連の決議一四八三では統合された司令部、当局と呼んでいますけれども、当局との関係というのは一体どのようになるのか、占領軍との関係はどのようになるのかということについてどのように考えておられるかということを、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
前川参考人 当局との関係では、やはり自衛隊にこういう分野の業務を期待したいというお話がございますでしょう。そのニーズを受けて、自衛隊側が主体的に、これならば十分できる、しかも効果があるということで、そこでその主要業務というのが現実化するんであろうと思うんですけれども。
 それでは、次には、どの地域でやってもらうかということになりますと、水源の問題だとかいろいろなことを考慮しまして、そして現在、例えばバグダッド周辺だと連合軍が主要な地域に駐留しておりますね。そこの安全は確保していますけれども、そういう確保された地域の中で実施をできるとすれば、これは一番安全上有効なわけでございますね。そこらあたりの調整ができるのと、もう一つは、それでは浄水をしたものをどういうぐあいにして配給するのか。これをそれぞれのところからとりに来てもらうということであれば一番安全なわけですね、固定的な配置の中でやるわけですから。それを日本が、自衛隊側が車で運ぶとなると、これは危険を伴いますから、そこらあたりの調整でございましょうけれども、今までの伝えられるところでは、水をとりに行くのは消費側がとりに行くというようなことのようでございますので、そういうような業務態様が成り立つのではなかろうかと思います。
 以上でございます。
平岡委員 私が質問したかったのをもう少し明確にしておけばよかったかもしれません。
 決議一四八三の中では、占領国でないその他の諸国が当局のもとで活動し、あるいは将来活動をし得るというような表現があって、自衛隊と当局との関係というのはどういうふうになるのかというところをちょっと聞いてみたかったんです。つまり、当局のもとなのか、あるいは、政府が説明しているように、当局と協力してという位置づけなのか、その点だったんですけれども。
 まあ、それはともかくとして、大野参考人にちょっとお聞かせいただきたいと思うんですけれども、大野参考人は先ほど、説明の中に、潜在的な米軍への不信感は常に存在しているんだというふうに言われました。先ほど前川参考人の方からも、給水活動についてのCPAあるいは占領軍との関係をちょっと説明されましたけれども、そのような活動をするときに、現地のイラクの人たちというのは、仮に自衛隊がそういう形で協力しているということを見たときには、一体どのような受けとめ方をするんでしょうか。そして、それに対する安全性といいますか、潜在的な米軍への不信感は常に存在しているという状況の中における危険性、自衛隊が一緒に行動しているという状況の中での安全性についてはどのようにお考えになっているかということをお聞かせいただきたいと思います。
大野参考人 米軍への不信感に関しましては、元来イラク人に根づいていて、なおかつ、戦時中も増幅されたものですが、その後の戦後の処理に関しても、残念ながら、力で抑えようということで、不信感というものはいまだにぬぐい切れていないと思っております。
 日本がイラクに出る場合に、現地の人々は、一義的には軍が来たという形でやはり見ざるを得ない。そのときに私は重要だと思っておりますのは、イラク人のニーズに合ったような行動を行えるかどうかということだと思います。たった今、水のお話が出ましたけれども、例えば水をアメリカに対して補給します、しかしこちらでは水に関して困っているイラク人がほうっておかれている、これはイラク人の不信感を必ずしも払拭するものではないと思います。
 あるいは、水の補給だけではなくて、イラクの場合には、水施設そのものが破壊されている。あるいは、長期的な計画がないがために、長期的な計画といいますのは、実は塩水が湾岸の方からアマラ、百五十キロぐらいのところまで上がってきているんですけれども、そういった長期的な計画を立ててあげないがために、今後、どういう役に日本が立っているのかということがイラク人に見えない場合には、残念ながら同じ不信感の中でくくられる場合もある。逆に、イラク人のニーズにこたえられる場合には、アメリカ軍にどういう感情を抱いていようが、日本の自衛隊に対する評価というものが高まる可能性はあると思います。
平岡委員 次に、松田教授に御質問したいと思います。
 実は、この委員会でも、派遣される自衛隊というのは一体どういう位置づけになるんだろうかというようなことがかなり議論されていまして、例えば決議一四八三の中で、これは第五項のところですけれども、「すべての関係者に対し、特に千九百四十九年のジュネーブ諸条約及び千九百七年のハーグ陸戦規則を含む国際法上の義務を完全に遵守するよう要請する。」という文章があって、これが、例えば仮に自衛隊が派遣された場合に、この規定は自衛隊にも適用されるのかというふうに質問をしたところ、政府の答弁は、「本法案に基づいて我が国が行う活動は、武力の行使に該当せず、また、いわゆる非戦闘地域で行われるため、我が国は、武力紛争の当事者とはなり得ません。さらに、我が国は、イラクを占領するものでもありません。 したがって、本法案に基づく活動について、ジュネーブ諸条約及びハーグ陸戦規則は適用されないと考えます。」というような答弁になっているんですね。
 それからもう一つ。これは、占領行政が行われているということで、そこへ自衛隊が入っていくことでそれに何らかの形で協力をするということになってしまうものですから、その点についても憲法第九条の、例えば「交戦権は、これを認めない。」といったような規定、これを含めて、これは憲法違反ではないかというような議論もしているんですね。そこで政府が言っている答弁というのは、こういう答弁です。「我が国の活動は米英軍の指揮下に入るものではなく、また、本法案に基づく自衛隊の活動は武力の行使に当たるものではありません。非交戦国である我が国が本法案に基づく活動を行ったとしても、交戦権を行使することにはならず、憲法九条に違反するものではありません。」こういう議論が行われているんですけれども、この二点。
 つまり第一は、ハーグ陸戦法規等を中心とした国際法上の義務についての適用が自衛隊に対してあるのかどうか。そしてもう一つは、この占領行政に参加することについての、交戦権を否定している憲法九条との関係、これについてどのようなお考えを持っているかということについてお聞かせいただきたいというふうに思います。
松田参考人 お答えいたします。
 まず第一点の、ハーグ陸戦規則及び一九四九年ジュネーブ条約が適用されるかどうかということですが、自衛隊がイラクに行ってどのような活動を行うかという点も無関係ではございませんが、基本的には適用があると思います。
 現に戦争が行われていて、現実に、戦闘行為自身は下火になっているとはいいましても、米英軍が軍事占領している以上は、一九四九年のジュネーブ条約等は適用されているわけですね。それが本文第五項の意味でもあるわけですが、そこで自衛隊が、これは一つの軍事組織ですので、活動を行えば、当然ジュネーブ諸条約あるいはハーグ陸戦規則の対象になるというふうに考えられます。
 それから二番目の、交戦権の行使になるかどうかということですけれども、これも、一つは交戦権という言葉で何を意味しているのか。それから、自衛隊が実際にどういう活動を行うのかということにもよりますけれども、実際に引き金を引いていない、武器を発射していないから交戦権の行使にはならないというわけではない。やはり、国際人道法なりあるいは武力紛争法上で規律されるような行為を行えば、やはりこれは一種の交戦権の行使に当たるというふうに考えられると思います。
 以上でございます。
平岡委員 次に、池田教授にちょっとお聞きしたいと思います。
 先ほどの御説明の中では、やはり自衛隊が行くことが大切なんだというような趣旨のことを言われたように思います。
 人が行くというのは、技術協力、NGOというのもあるけれども、それだけじゃちょっと十分ではないんだというふうなことで言われたと思うんですけれども、ただ、既に軍隊を派遣している国が十五カ国、そして軍隊を派遣することを決定した国が十四カ国、さらに検討している国が十四カ国ということで、もう軍隊を派遣するということを決めたところは非常にたくさんあるわけですね。
 そういうところの中で、また自衛隊が、軍隊ではないということであったとしても、行くということの国際的な評価というのは、私はそれほど高くはないんじゃないか、むしろ我が国の特性を生かした技術協力なりあるいは資金協力というものをしっかりとしていくことが、逆に国際的な評価というのは高まるんではないかというふうに思うんですけれども、その点が第一点。
 第二点は、先ほどの説明の中で、水の浄化、補給のノウハウを蓄積することは、今後の中東問題において、我が国の協力のあり方については大きな意味を有するんだというような趣旨のことを言われました。ちょっと正確ではないかもしれません。私それを聞いて、あっ、これはイラク問題だけじゃなくて、今後中東のどこかにまた自衛隊がいろいろ出かけていって何かやるというようなことを池田教授は期待しておられるのかなと。
 ただ、逆に言うと、水の補給といったようなことについて言えば、何も自衛隊じゃなくても、いろいろな民間の方々、あるいは、自衛隊ではない政府の職員が行ってやるということも当然考えられるにもかかわらず、あえて自衛隊というふうに特定されたということについて、私は非常に危惧感を持ったんですけれども、その点の真意は何なのかということをお聞かせいただきたいというふうに思います。
池田参考人 まず第一点でありますが、要するに、日本に対する期待というのが非常に大きい。
 私は、本来、パレスチナ問題あるいは中東和平プロセスというのを一番主としてやっているわけで、したがって、イスラエルあるいはパレスチナを中心として、さまざまな研究活動を行ってまいりました。この中で、やはり基本的には、パレスチナ人たちの意識の中で、これは中東一般だと言ってもいいんだろうと思いますが、日本がいろいろな形でかかわろうとしている、あるいは、かかわってきているということについての認識はある程度大きくなっているんですが、しかし、にもかかわらず、日本はほかの国と違って、実際、組織としての自衛隊というのは出している、実際にはゴラン高原にいるんですけれども、これは見えないわけですね。そういう意味で、日本がついに組織として自衛隊を送って、この地域の安定にかかわってくるということは、やはり相当に大きな印象を与えるというふうに私は思います。
 二番目の水の問題でありますけれども、これもやはり同じように、イラクだけではない、さまざまな中東の地域においての問題というのは水がかかわっている場合が多いわけで、とりわけ、今から後、日本が一生懸命支えようとしている中東和平といったようなもの、パレスチナ和平のプロセスというのは、ロードマップなんかも出て、これから後、いろいろな紆余曲折があるにしても、やはり何らかの形で日本により大きな役割を求められる可能性というのは大きいと私は思うんですね。
 とりわけ日本というのは、中東和平の多国間協議なんかで環境部会というものを、ガベルホルダーといいますが、取り仕切っている立場にあるわけで、したがって、その場合には、一体、組織として行くことになるのか、あるいはそのようなノウハウを蓄積した個人の資格で行くことになるのかわかりませんけれども、しかし、今の段階で自衛隊がイラクにかかわって、そこでノウハウを蓄積することが、将来のこの地域全体にかかわる日本の役割といったようなものを膨らませる、あるいは可能性を広げていくよすがになっていく、その自信につながっていくというふうに私は思います。
平岡委員 時間が参りましたので、終わります。
高村委員長 次に、斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。どうかよろしくお願いいたします。
 六人の参考人の方全員にお聞きしたいと思います。一問ずつ、別な質問ですけれども、お聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず前川参考人に、私、実は与党調査団でイラクに行ってまいりました。いわゆる連合軍司令部、CJTF7、コアリション・ジョイント・タスクフォース・セブンというところに行って、司令部の方々にお話を聞いて、自衛隊の派遣についてどう思うかというふうに聞きましたところ、それは、CPA、コアリション・プロビジョナル・オーソリティー、つまり暫定施政局と呼んでおりますが、そちらが決めることであって、我々が言うことではないということでした。
 そのCPAのブレマー長官にも会ってお話を聞きましたけれども、自衛隊の派遣については、それは日本が主体的に決めることなんだということで、いろいろな支援のニーズはある、しかしそれは、どういう内容かは日本が主体的に決めてほしいということでございました。
 そこで、お伺いするわけですけれども、支援の内容についてはこれまで質問が出ましたから省略をいたしますが、各国軍隊が、既に十五カ国行っております。聞いたところによりますと、北部は米軍、南部は英軍、中部をポーランド軍を中心とする各国軍隊でこれから治安状況等したいというふうなお話でございましたが、自衛隊がもし行くとすれば、どの地域、これは治安の状況等もありますけれども、また、既に派遣されている軍隊と、当然これはCPAを通してですけれども、協力をしながらやっていく必要があるわけですが、各国軍隊との相性と言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、どの地域で、またどの軍と協力しながらやっていくのが自衛隊としては一番やりいいか、御専門の立場からお伺いできればと思います。
前川参考人 結論から申しますと、バグダッド周辺地域というのは米軍が主に治安維持等に当たっていますね。それから、もちろん北部地域も米軍が当たっておりますけれども、その地域が一番よろしいんだろうと思います。
 また、主要な業務を考えた場合に、水の補給、浄水、給水というのがありますが、これについても、バグダッド近郊が、ユーフラテスの水源等もありますし、最も適する。しかも、今、バグダッド周辺の米軍は、飲み水の大半をクウェートから運んでおるということですね。バグダッド周辺の地域で浄水、給水をやれば、その輸送は省くことができる、それから、輸送に伴う危険も少なくなる、米軍の隊力もそれだけ削減でき、それが治安維持の方に回すことができるという意味で、バグダッド周辺地域、米軍の地域というのが最もよろしかろうと思います。
斉藤(鉄)委員 次に、池田参考人にお伺いします。
 エネルギー問題との関連、国際政治学の御専門の立場から、我が国はエネルギー無資源国でございますが、エネルギー政策と、イラクという特殊な地域、そこへの今回の支援、エネルギー政策という立場から、国際政治学の観点からどのようにお考えか、先生のお考えを聞かせていただければと思います。
池田参考人 御承知のように、今、我が国の石油というものの大半はペルシャ湾から来ているわけですね。これは、イラクだけではなくて、ペルシャ湾地域全体として考える必要があろうと思うんですが、とりわけ我々の頭の中にすぐ浮かんでくるのは、一九七三年の石油ショックというのが一番大きいんですけれども、その時代と比べて、やはりペルシャ湾地域の必要性というのは、より大きくなってきているというふうに思うんですね。
 それはどういうことかと申しますと、七〇年代というのは、我が国、つまり日本列島だけに石油の安定的な供給を考えればよかったわけでありますが、その後、我が国の企業が中国あるいは東南アジアの諸国、あるいは南アジアまで進出して、そこを生産拠点にしてきているということは、その地域全体に対するエネルギーの安定供給に対して、何らかの役割を日本が果たさざるを得ないような状況になってきているんだろうと思います。その意味からも、イラクを含めてペルシャ湾全体、そこのエネルギー資源というのは非常に大事になってきている、七三年の比ではないというふうに思います。
斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。
 次に、大野参考人にお伺いします。
 イラク人の方ともお話をしたんですけれども、その方は十三年間政治犯で投獄されていたということでした。その方がおっしゃったのが、フセインがいなくなったのはうれしいが、その人はフセインによって投獄されていたわけですが、かといって、今の米の占領軍というのは決して我々は望ましいものではない、不愉快だ、こういうふうにおっしゃっておりまして、正直言って私もちょっとショックだったわけですけれども、そういう中で自衛隊を派遣して、どういう面で貢献すればイラクの方々に喜んでもらえるのか、一番その実情を御存じの大野参考人にお伺いいたします。
大野参考人 先ほどもちょっと申し上げたんですけれども、自衛隊を派遣した場合には、イラク人のニーズというものをいかに考えるか、これが最も重要なことだと思います。
 復興のための環境を整える、それからイラク人が実際に困っている緊急的な人道支援に対処する、それから中期的、長期的に国家を建設する、こういったものがイラク人のニーズとして考えられますが、その中で、自衛隊が持っている制限、我が国ができ得ること、こういったことに一番適合する形が最もよい。さらには、ニーズに合っている限りにおいては、それを広報することによってイラク人に受け入れられる素地ができる、そういったことも当然進めるべきだと考えております。
斉藤(鉄)委員 次に、角谷参考人にお伺いします。
 若い人の意見をお聞きになっているということで、私、選挙区に帰りますと、率直にこう言う方がいらっしゃるんです。地球の裏側まで自衛隊を送りたくないけれども、北朝鮮の問題があるからしようがないよねと、そういう声をおっしゃる方がいらっしゃって、いや、違うんです、今回のイラクの問題はこうなんですというふうにお話しするんですが、そういう、今回の問題を北朝鮮の問題と絡めて、だからアメリカにつき合わなきゃいけないんだというふうな意見も、若い人の意見として寄せられているんでしょうか。それに対して、またどのようにお考えでしょうか。
角谷参考人 私どもが取材していたり、また直接話したりしている感想からいえば、やはり北朝鮮の問題の関心も非常に高いと思います。ただ、その前に、もともときっかけは、例えば外務省の問題があったりと、さまざまな外交の問題に対しての関心がここ一、二年非常に高まったということが一つのきっかけになっていると思います。そこでいろいろ勉強していったり、またさまざまな記事を見るにつけて、その関心が非常に高まっているというところは間違いないところだというふうに感じています。
斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。
 松田参考人にお伺いします。
 今回の軍隊、十五カ国今行っておりますが、それは国際法的な根拠がないということでございました。現在、CPA、コアリション・プロビジョナル・オーソリティーが臨時の政府のような形であって、そこの中心者はまさにブレマーさん、アメリカ人、それからナンバーツーはソーヤーズさん、イギリス人ということになって、外国人がそのトップにいるわけです。
 そのブレマーさんがおっしゃっていましたけれども、七月の中旬にはIIA、イラキ・インテリム・オーソリティー、イラク人による暫定統治機構、これをつくる、こういうお話でございました。このIIAがもしできれば、IIAの要請によって各国軍隊が駐留する、もしくは、日本についても、日本の自衛隊が送られる、これは国際法的に見て許されると私は思うんですが、この点について先生のお考えをお伺いします。
松田参考人 お答えいたします。
 問題は、民族的あるいは国籍上イラク人がつくっているかどうかということではなくて、国際法上の正当性を持っているかどうかということで、仮につくられたイラク人主体の暫定政権のようなものが例えば国連で正式に認証されて、言ってみれば政府承認のような形でその法的なステータスを認められれば、これの同意のもとに行動するということが許されると思います。
 しかし、そうではなくて、国籍がイラクの人によってつくられているというだけで、例えばCPAから自立していないということであれば、やはり法的な根拠にはならないというふうに考えます。
 以上でございます。
斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。
 最後に、藤田参考人にお伺いいたします。
 お話を伺って、もうまさしくそのとおりだと、こういう分野、医療分野について日本も貢献しなくてはならない、このように思った次第です。
 我々、自衛隊を派遣するだけで、そのほかの貢献はいいんだと言っているわけではなくて、こういう人道的な支援をしなくてはならない、そのためにも、ああいう地域ですので、現在は自衛隊の派遣も、そういう人道的な支援をするためにも必要なんだ、こういう考えを持っておりますが、その点についての先生のお考え。
 それからもう一つ、私、広島でして、戦争前に、人文字で、ノーモアDUですか、デプリテッドウラニウム、人文字が私の家の近くでつくられましたけれども、イラクに行くので、私もちょっと勉強しようと思って、この劣化ウラン、文献をそろえようと思いましたが、ないんですね。国立国会図書館にもほとんどありません。
 そこでわかったのは、DU、決していいものだと私は言っているわけではないんですけれども、その被害について因果関係、DUと子供たちの発症との因果関係がまだ科学的に必ずしも立証されていないということが、文献が全くないということからわかったんです。この点についての研究をもう少しこれから進めていく必要があるのではないか、こういうふうに思った次第ですが、この点についても先生のお考えを伺えればと思います。
藤田参考人 お答えいたします。
 まず第一点の問題です。
 イラクの人たちは今、先ほど何度もお話ありますように、外国人、とりわけキリスト教徒の占領下にあるという認識を持っております。しかも、二十前後の若いアメリカ軍兵士が重装備をして、絶えず銃を持って市内を満たしている。あるいは戦車が道路を満たしている。こういう状況で、非常にイラクの市民は敵意とか緊張感とか、そういうものにさいなまれているという状態があります。
 これまでも、イラクのDU問題、医療問題などで、日本のNGOの活動家は何人も現地を訪れて、さまざまな支援活動をしてまいりました。これまでは、したがって、日本とイラクのそうした人たちとの間の友好関係というものは良好なものであったというふうに感じます。しかし今回、このイラク攻撃に対して、日本政府がこれを理解し支持するという表明をしたことは、イラクの人たちはよく知っております。これから君たちと僕たちは敵になるんだという認識を持っています。
 そういう状況の中で、医療支援をしたいという我々の意図と、しかも重装備をした軍隊が目の前にあらわれる、それが銃を撃つか撃たないかじゃなくて、そこに軍隊があらわれるということになりますと、これまでの友好的な関係というものは失われてしまうのではないかということを非常に僕は心配するわけです。
 むしろ、そうした軍事的な貢献ではなくて、医療、しかも日本の最も経験の豊富な放射線医療のきちんとした施設をつくる。とりあえずは、バスラとバグダッドの小児がんセンターに対して、今本当に何の薬もない、器材もない、そういう状況ですから、そこに支援物資を送りながら医療システムを育てていく。
 イラクの人たちは非常に教育程度が高い人たちが多くて、今この状態の中で能力を発揮できない方々もたくさんおられますし、また優秀な方々は、イギリスの大学や病院や研究所で研究をしていらっしゃる方がたくさんいらっしゃる。そういうイラクの人たちの知恵を集めながら、最新の設備を使って、これからふえていくであろう子供たちの悲劇に前もって対処するということが必要であって、そのためには、例えば今、イラクの人たちは仕事がなくなって困っている。建設労働者もたくさん余っているし、周辺のアラブ諸国にはいろいろな技術や資材もたくさんある。そういうものを活用しながら、イラクの人たちの力を結集する努力、そこに向けて日本が協力をしていくということに、それを行うために何のために軍隊が必要なのかということを思うわけです。
 そして、もし日本がそのようなイラクの子供たちに対して懸命な努力をしているということがイラクの人々に知られるようになれば、決してその人たちが危険にさらされることはないわけで、かえって、武装して入っていくことによって相手を挑発し、危険な状態になるということが心配されます。ですから、そうした人道的な支援をするのであれば、なおさらのこと、軍隊の派遣というものは無用なことといいましょうか、そういうことにつながっていって、決して物事をうまく動かすことにはならない、そういうふうに私は考えます。
 第二点、DU問題の因果関係の問題です。
 これは大変難しい問題です。論文が全くないということではなくて、今次々と大量の論文が発表されております。もし国会図書館になかったら、それは国会図書館の怠慢であろうというふうに思いますけれども、僕のところにも膨大な論文、資料は集まってきております。
 ただ、例えば、広島の被爆とチェルノブイリの被曝というものの影響が違ったものであった。つまり、瞬間的大量被曝と低線量長時間継続的被曝、あるいは原発で働いている労働者のように低線量で断続的な継続的被曝、これの医学的な影響というものがそれぞれ違うんだということがだんだん明らかになってきております。
 そして、今度のウランの問題、これは、ウランのアルファ放射体の内部被曝と重金属であるウラニウム金属の毒性との複合的なものであろうかと思いますけれども、今のところ、これが学問的に確立した因果関係というものが認められておりません。しかし、現実にそこに子供たちがいる、疫学的な状況としては明らかに増加の傾向にあるということであれば、そこに手を打つということがまず人道的に先決問題であり、同時に因果関係の研究を進めていけばよろしいわけであります。
 広島の原爆投下の後、がんの発生数がふえているということを指摘したのは、町医者の於保先生でした。しかし、当時の学界も政府も占領軍もこれを認めようとしなかったわけです。それが立証されるには十分なる時間が必要だったわけですけれども、現実にそこにがん患者が発生しているのであれば、それを治療するということが人道的な問題であって、学問の問題とは切り離して行うべきであると私は思います。
 以上です。
斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。
高村委員長 次に、一川保夫君。
一川委員 私は、自由党の一川保夫と申します。
 自由党を代表いたしまして、参考人の方々にお尋ねしたいと思いますけれども、時間の制限もございますので、全員の方からお聞きするのはちょっと無理かと思いますので、ある程度問題点を絞ってお聞きするわけです。
 まず、池田参考人と角谷参考人にお聞きするわけです。
 今回のイラク戦争の問題でいろいろと議論されている、大きな課題の一つになりつつありますけれども、国連という組織と我が国とアメリカの同盟関係というものを両立させていくことが非常に大事だ、我が党はそういう考え方に立っておりますけれども、今回のイラク戦争のいろいろな経験から、なかなかその両立が難しいというようなことをおっしゃる方もいらっしゃいます。しかし、今後の国際的な安全保障ということを考えていけば、私は、やはり国連の機能というものをしっかりと回復しながら、国際平和のために中心的な役割を担っていただきたいという気持ちはございます。
 そういう観点で、両参考人に、国連という機能と日米の同盟関係というものの今後のあり方といいますか、そういうことについて何か御意見ございましたら、よろしくお願いしたいと思います。
池田参考人 このイラク戦争の開戦の経緯というのをよく見てみますと、イラクのサダム・フセインが脅威であるかないかということを国連の中でもめたわけではないわけですね。イラクのサダム・フセインは脅威であるという点では、認識は一致していたと私は思うんです。
 ただ、要するに、その脅威を排除する場合に、イラクのサダム・フセイン政権の例えば大量破壊兵器を除去する、つまり、査察その他で能力を奪えばそれで済むというふうに見るか、いや、そうではなくて、サダム・フセイン政権というのは大量破壊兵器を開発する意図を捨てていないんだから、その意図が問題なので、したがって、サダム・フセイン政権を倒さなければその意図はついえ去らないというふうにアメリカは考えたわけで、能力をつぶせばいいのか、あるいは意図をつぶさなきゃならないのかという対立だったと私は理解しているわけですね、あの安全保障理事会の議論を聞いていて。
 したがって、イラクが脅威であるという根底的な認識においては一致していたわけですから、大状況というか大前提という点で一致して、それをどうやって除去するかという方法論において違ったというふうに思っているわけで、その意味においては、国連というものが真っ二つに、基本的な前提になるところから分かれてしまったというふうには考えておりません。その意味においては、アメリカと今から後の国連との間の関係の修復というのは十分に可能であるというふうに思っております。
角谷参考人 お答えいたします。
 国連に対しての期待感というもの、我が国の持つ、国民の中の国連に対しての期待感、これは、いまだに強いものがあるというふうに感じています。その中で、国連とアメリカとどちらをとるかという価値観は、基本的には国民の中に余りないのではないか。その中で、国連をどういうふうに使っていくかという主体的な行動も、日本の外交の中で大きな役割としてあってもいいんではないか。
 そういう意味では、このイラク攻撃に対してのプロセスに関しては、非常に国連の指導力という問題が問われたかもしれませんけれども、その後の国連の役割に対して、日本は、もう少し期待感を持った対応、そして、国連を軸に何か動かすことができないかという模索はもう一度してもいいんではないか、そういうふうに考えます。
一川委員 それでは、角谷先生に、先ほどのお話の中で、仕事上、日本の若者を対象にしていろいろな意見をお聞きするチャンスがあるというお話の中で、日本の若者のこれからの国際平和に対する考え方と、今回のこのイラク支援に関する国会でのいろいろなやりとりという中に、考え方に大分遊離されたものがあるんではないかというようなお話も含めて、我々は、そういう面では、先ほど先生がおっしゃった中にあったように、国際的な安全保障という観点からするとまだまだ議論不足だというふうに思いますし、もっと基本的な、原理原則的なものを明確にした中で位置づけるべきだというふうな基本的な考え方を持っているわけでございますけれども、日本の若者の考えているそういう考え方、もう一回先生の方からちょっと整理していただいて、今、国会で議論されておる問題意識とどのあたりにずれがあるのか、そのあたりをちょっと御説明願いたいと思います。
角谷参考人 まず一つは、若い人たちが、国益とか国家とか、そういう言葉に対して非常に敏感になってきたということはもう間違いのないことだと思っています。
 その中で、それがどういう立ち位置にあるべきか、また、戦後、この国がどういうふうな立場をとってきたのかというところを再度振り返りながら、これからのこの国はどうしていったらいいのか。また、こういう機会が、今そこにある危機として突きつけられたときに自分たちはどうしたらいいのかというふうな議論をする時間が今大変にあるというところが非常に大事なんだと思います。
 そういう意味では、通常の議論の中での安全保障よりも、有事法制が国会で審議されていたり、またイラクの問題、そして北朝鮮の問題が世の中の非常に大きなテーマになっているときに、この国の将来について、もう一度振り返りながら、またこれからを考える。また、その際に、法律のできるできないにかかわらず、この国がこの後、十年後、二十年、三十年後にどういう国になっていくべきか、また、自分たちがその社会の中心になっていくときにどういうふうな国家であってほしいかということに対しての、国会の審議とは別に、彼らの少しずつ立ちどまった議論というものがいろいろな場所でできている、また起こっている。最近は、インターネットなどの中でもさまざまな議論が同時進行的に行われています。それを国会の議論とどういうふうにリンクさせるか。
 また、そういう意味での、立ちどまって国民的な議論に広げていくかというものに、もしかしたら、今、国会と世の中、また若い人たちの中の議論の遊離やギャップがあるのかもしれない。それをどうやって埋めていくかというのは、多分、私たちの仕事であり、また議会の仕事でもあるというふうに思っておりますので、その部分の喚起。
 それから、建前の部分というよりは、現実的に、この国が今どっちをジャッジするのかという議論に関しての国民的なたくさんの考え方を出し抜くという議論がもう少しあってもいいのかなというふうに感じていますので、そういう意味では、若い人たちの考えていることというのをもっとどうやって吸い上げていくのか、それは、私どもも含めて、まだまだ検討の対象ではないかというふうに考えています。
一川委員 前川参考人に、今回のこの法案がいろいろと根拠に置いている、いろいろなことが「目的」等にうたわれておりますけれども、我が国の唯一の軍事力を持っているこの自衛隊を、今、実質、米英両軍が占領しているイラクの国土に派遣するということについて、この程度の根拠でいいのかな、本当に自衛隊の方々は任務に命をかけて、本当に誇りを持って仕事ができるかなということを非常に心配するわけだけれども、そのあたり、いかがでしょうか。
前川参考人 派遣する任務、今業務と言いかえると、その内容からすれば、この程度のもので結構ではないかと思います。それは、派遣官の安全性の問題とか、それから派遣業務の中の内容の問題等を考慮すれば、現法案下の業務内容というものであれば結構であろうというぐあいに考えます。
一川委員 では、次に松田参考人に、先ほどのお話の中で、今回のイラク戦争はある一定の限度を超えているというような何かお話があったと思うんですね。大量破壊兵器を捜索するという観点から見た場合でも、イラク全土に広げての戦闘行為というのは限度を超えているというような趣旨の何か発言があったように伺ったんですけれども、この限度を超えているというところをもう少しちょっと御説明願えますか。
松田参考人 お答えいたします。
 先ほども申しましたように、現在の国際法では、武力による威嚇あるいは武力の行使というのは原則的に禁止をされております。例外として、例えば自衛権あるいは安保理決議に基づいた強制措置ということがございますけれども、これは一たん認めれば何をやってもいいということでは決してない。自衛権の行使であれば、受けた武力攻撃を撃退するために必要な最低限度の実力行使でなければいけない。したがって、撃退した後、相手国の領土に攻めていってそこを占領するということはもはや自衛権の行使とは認められない、こういうことになります。
 安全保障理事会の方について言いますと、安全保障理事会がどういう場合に軍事的な強制措置をとるかという点については、安全保障理事会にかなり大きな裁量の余地が残されております。しかし、全く無制限ではないわけで、国際の平和と安全に対する脅威がある、あるいは平和が破壊された、そういう場合に限定をされる。しかも、行使できる武力の程度は、脅かされている平和を維持回復するために必要な限度内でとどまらなければいけない、そういうことになるかと思います。したがって、安保理といえども無制限に武力が使えるわけではない、そういう趣旨でございます。
一川委員 では、最後にちょっと角谷参考人に、先ほどのお話の中で、イラクへ自衛隊を派遣するという今回のこの法案というのは、有事三法の議論をしたときのそういう安全保障にかかわる議論と異質のものだというようなお話がございましたけれども、そのあたり、ちょっと整理してお話し願えますでしょうか。
角谷参考人 有事三法の議論は昨年来ずっと進められてきたわけで、ことし成立したわけですけれども、その間の私どものところに来るメールなどの意見でも、これを単純に悪法であるというような意見はほとんどありませんでした。我が国の国土に対しての安全保障の価値観に関しては、非常に若い人たちの中にもコンセンサスはとれ始めているんだというふうに感じています。
 ただ、その直後に、このイラク新法に対しての議論になりますと、やはり、まずイラク攻撃に対しての前提条件やプロセスの段階から、非常に、我が国の対応も含めて不可思議な部分があるというふうな疑念を持っている人たちが多いという部分が一つ指摘されると思います。その中で、イラク新法をつくっていこうとする中の議論の中に、やはりそのプロセスがどうしてもひっかかってくる。そうすると、本当の安全保障を考えなきゃいけないときには、どうしても、イラク新法だけ時限立法でつくるというよりも、この国の安全保障の基本体系をもう少しきちんと徹底的に議論して、そして、新たなものができ上がる中での一つの海外派遣であるとかというふうな議論ができ上がるべきではないかという価値観がどうもあるようだというふうに思います。
 そういう意味では、この法律自体のよしあしよりも、抜本的な議論がもう少し若い人たちのところにもおりてくるような価値観がもう少し醸造されればいいのではないかというふうに考えています。
一川委員 終わります。どうもありがとうございました。
高村委員長 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。きょうは、参考人の先生方、本当に大変御苦労さまです。
 最初に、松田参考人にお伺いいたしますけれども、今回の法案の前提になっております米英のイラク戦争について、特に国際法の専門家というお立場から、先生はどんな見解をお持ちでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。
松田参考人 私の意見ということで全面的に述べるよりも、現在、政府の方で主張しておりますのは、安保理決議六七八、六八七、一四四一の三つの決議を重ね合わせることによって安保理の承認がある、こういうふうに主張しているわけですが、ほかにも、例えば自衛権の行使であるとか、いろいろな理屈がないわけではありませんので、その政府の見解について少し検討してみたいと思います。
 六七八の決議は、クウェートからイラク軍を撤退させるために武力を使っていいというふうにした決議でございますので、大量破壊兵器の廃棄等のために武力を使っていいというふうには言っていない。六七八の武力行使の許可というのは、六八七の決議の第三十三項に基づいて停戦が成立したということで、一たん打ち切られているわけです。
 したがいまして、これを解除してさらに武力を使っていいということであれば、それは安保理の新しい決定が要る。大量破壊兵器の廃棄については、これは六八七の決議で停戦条件として定められた義務でございますので、この義務の違反ということで武力を使うということであれば、改めてやはり安保理決議の承認が要る。こういうことになります。
 問題は、その安保理での新しい決定なり承認なりがあったかということでございますが、政府の理解は、一四四一の決議でイラクが安保理決議に違反をしたと認定をしたというふうに言っております。しかし、一四四一の決議の第一項は、これまで違反をしてきた、今も違反している状態であると言っておりますが、その違反を正すために新たに査察の枠組みをつくっているわけですから、その時点で停戦が停止になった、御破算になったということではございません。新たな査察のメカニズムが機能したかどうか、それから、とりわけ、これではだめだからやはり武力を使うという決定は安保理ではなされていません。
 御承知のように、今年二月二十四日に、アメリカ、イギリス、スペインでそういう趣旨の決議を出して、黙示的ですけれども承認をとろうとしたわけですが、御承知のように、この決議案は、支持する国が非常に少ないということで、結局採択も行われなかったということで、六八七に基づく停戦を解除する、あるいは新たに武力行使を認める、こういう決議は安保理ではなされておりません。したがって、安全保障理事会の許可を得ない武力行使というのは、国連憲章違反であり、国際法違反であるというふうに考えられます。
 以上でございます。
赤嶺委員 それで、続いて松田参考人に伺います。
 このようにして始まったイラク戦争、国際法に違反をしているということになっているわけですが、引き続いて米英によるイラクの占領が行われました。安保理決議一四八三をもって米英のイラク占領が正当化されたかのような議論もあります。安保理決議一四八三が米英によるイラク占領の正当化の根拠になっているのかどうか、あるいは、その米英のイラク占領というのは正当化されるものがあるのかどうか、この点について、松田参考人の御意見を伺いたいと思います。
松田参考人 お答えいたします。
 先ほど少し申しましたように、現在の国際法では武力の行使あるいは武力による威嚇を禁止しておりますけれども、他方で、現実には武力紛争が存在をしているということで、現実に武力紛争がある以上は、やはりその中でも、人々の苦難をできるだけ軽減する、あるいは戦闘行為自身が残虐にならないようにする、こういう二段構えの工夫をしております。
 したがいまして、今回のイラク戦争については、先ほど申しましたように、国際法上の根拠がない、違法であるというふうに思いますけれども、その結果、占領統治自身は私は違法であろうと思います。ただし、安全保障理事会では違法とは認定しておりません。しかし、合法とも認定していない。そういう意味では、法的な評価がまだ有権的には行われていないということになります。
 そのことの結果は、各国がそれぞれ合法、違法と勝手に言うことができる。恐らくは日本政府も、そういう状態で合法であるというふうに言っているんだろうと思いますが、これは裏返して言えば、同じ資格で違法であるという見解も可能ですから、両方がその見解をとれば、これはお互いに力ずくで決着をつける、こういうことになります。
 他方、そういう武力行使あるいは占領そのものの合法、違法は別にいたしまして、先ほど言いましたように、現に占領統治を行っている以上は、その人々の苦難にならないように、治安を維持し、あるいは住民の生活あるいは安全をちゃんと確保しなさい、こういうふうに国際人道法では言っているわけで、私が読んだところでは、一四八三の決議というのは専らその国際人道法レベルで話をしている、規定をつくっているというふうに感じられるわけでございます。
 したがって、イラクの人々の生活や福祉を向上させる、そういう点での規定は置かれていますけれども、占領統治そのものを合法であるというふうに認めたり、あるいは新たに権限を付与してはいないというふうに考えております。
赤嶺委員 実は私も、日本共産党の調査団の一員としてイラクに行ってまいりました。極めて深刻な事態はやはり治安の問題でありました。それから、藤田参考人のお話にもありましたようなイラクの国民の持つ占領軍に対する敵意、これを痛切に感じてまいりました。
 そこで、今、一四八三で占領軍当局に権限を与えた、このように言われております。引き続き松田参考人にお伺いいたしますが、統合された司令部ですね。治安に責任を持つというのはわかりますけれども、権限というんでしょうか、そういうものが新たに付与されたものがあるのかどうか。あるいは、占領そのものが違法であるということと権限を持つということ、あるいは責任、義務を持つということ、この関係はどのように説明されるべきか。この点について、松田参考人の御意見を伺いたいと思います。
松田参考人 お答えいたします。
 先ほども申しましたように、現在の国際法では、基本的には、他国の領土の軍事占領というのは想定されないということになっております。したがいまして、四九年のジュネーブ諸条約等でも、主として、現に占領している以上は住民の生活の安全のためにこういうことを守るようにという義務規定が大部分でございます。
 それでは、占領当局としてどういう権利を持つかということでございますけれども、余り具体的な規定はありませんけれども、さっき言いましたように、占領当局としては占領地の例えば治安を維持しなければいけないということになるわけですから、治安を維持するための行政当局としての権限、例えば、泥棒がいたときに、その泥棒をとりあえず逮捕する。裁判にかけて確定的な判決まで出せるかどうかはちょっと難しい、わからないわけですけれども、少なくとも、現に泥棒がいればそれを捕まえる。これは治安の維持という警察活動ですので、占領自身が合法か違法かとは別に、現にその地域を管理し行政している以上は可能である、そういう権限は持っている。しかし、それ以上に政府なり国家なりの法的地位にかかわるような決定をなし得るかどうかというと、これは恐らく否定的に考えざるを得ないと思います。
 以上でございます。
赤嶺委員 占領当局の権限、責任、義務について改めて御意見を伺いました。
 そこで、そういう占領当局のもとに一四八三決議は各国に軍隊を派遣するように求めているのか。あるいは、その一四八三決議で軍隊を派遣するように求められていて、なお各国は応じなければならないのか。各国ということと、日本に求められているのか、日本は応じなければいけないのか。このあたりは、松田参考人の御意見はいかがでしょうか。
松田参考人 お答えいたします。
 一四八三決議の前文第十五項で、安全保障理事会は、国連加盟国等がオーソリティーのもとに人員、資材その他のリソースを提供することによって、イラクの安全と安定の確保に貢献する意思を持っている、国連加盟国がそういう意思を持っているということを歓迎するというふうに述べておりますが、本文の第一項に行きますと、必ずしも人を出せということは一切述べていない。それから、オーソリティーのもとということも述べていない。したがって、どういう形で人道的な支援を行うのか、あるいはイラクの安全、安定に貢献をするのかについては、安保理としては何も言っていないということになります。
 さらに言いますと、この第一項というのは加盟国に対するアピールでございますから、国連安全保障理事会としては何も拘束をしていないわけですね。裏返して言えば、仮にこの第一項に基づいて日本なりほかの加盟国がこういう行動をするといっても、それはその国の判断で行っている、こういうことになります。
 それから、さらに言いますと、そういうさまざまな支援行動を受け入れる義務も、実はイラクにはありません。第一項はアピールですから、第七章に基づく拘束力ある決定ではありません。したがって、イラクに対して一定の受忍義務を法的に課すということがないわけで、イラクにとってはそのさまざまな支援行動を受け入れる義務がない。したがって、仮に外国の軍隊が来れば、これは違法な侵略者だとみなすことが可能になる、こういうことになるかと思います。
 したがって、政策的に一四八三決議に応じてということはあり得ますけれども、これを日本の行う支援行動の法的根拠にすることはできない、それはあくまで日本政府の決定になるんだ、その責任も日本が負う、こういうことになるかと思います。
赤嶺委員 今の松田参考人のお話と重なる質問になろうかと思いますけれども、いわゆる自衛隊がイラクに派遣された、そうすると、その法的な地位というんでしょうか、イラクの国民との関係で、先ほどレジスタンスというようなお話もありました。いわば、イラク国民の承認を受けない形で当局の受け入れのもとに行くということは、これは国際法上も、先ほどの先生の御意見もありましたが、さまざまな問題を今度生み出す危惧を持つんじゃないかと思いますけれども、この点で改めてつけ加えることがありましたら、よろしくお願いします。
松田参考人 特につけ加えることはございませんが、先ほども言いましたように、軍事組織が派遣をされるということは、やはり基本的には、特別の理由がない限りは違法な武力行使になり侵略になるということでございますので、問題は、その違法性を阻却する理由が本当にあるのかどうかということが厳しく問われるということだろうと思います。
 安全保障理事会でもって明確に合法であるという法的根拠を与えれば別ですが、そういう決定がないときに、日本政府は合法だと考えるというレベルで出ていけば、相手の方は、いや、わしは違法と考えるということで反撃を加える。とりわけ、その行動がイラク領内で行われるとすれば、イラク側にとっては自衛権の行使だ、こういう議論が法的に可能になってまいりますので、そうなれば戦闘になる。それが果たして第九条のもとで許されることなのかどうかは、かなり疑わしいというふうに思われます。
赤嶺委員 どうもありがとうございました。
 もう時間がありませんので終わりますけれども、先ほど、藤田参考人の劣化ウラン弾のお話、大変興味深く伺いました。実は、私は沖縄県ですが、沖縄県の久米島でも、米軍が鳥島で劣化ウラン弾の射撃訓練をしまして、政府の見解は影響なし、調査結果は影響なしという報告書も出ておりますが、そのあたり、やはり沖縄を演習場にして、また今度劣化ウラン弾をイラクで使ったことについても怒りを持っておりますが、そういう私の意見を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
高村委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党・市民連合の今川正美です。
 きょうは、参考人の先生方、本当にお忙しい中に貴重な御意見をありがとうございました。
 私は、まず最初に藤田参考人にお伺いをしたいと思うんですが、実は、きのうの当委員会で、先生が詳しくお話しになった劣化ウラン弾の使用の問題、その危険性の問題に関して川口外務大臣にお尋ねをしたんですけれども、政府の答弁は、米国政府が今回のイラク戦争で劣化ウラン弾を使ったことは否定をしている、それから、十二年前の湾岸戦争あるいはコソボ紛争で実際に使ったけれども、その影響、いわゆる国防総省の関連する機関の報告によればほとんど影響はない、このような答弁でありましたが、私は実は、今月イラクの実情調査に行ったときに同行してくれたJVCというNGOの皆さんが、これは戦争が始まる前から、イラクの、先生から御説明のあったような子供たちの医療支援などに熱心に取り組んでいるわけですね。そうした場合に、バグダッドだけではなくてイラクの全土の中で劣化ウラン弾が使われたところをぜひ知りたい、そういうところはやはり危険だから、せっかく支援活動するのに自分たちの健康が損なわれてしまったら支援活動ができなくなるので、ぜひこれは国会で日本政府の責任においてそこをはっきりさせてほしいという切実な願いもあったわけですね。
 そういう観点で、今私が申し上げましたように、いやしくもといいますか、我が国は世界で唯一の被爆国でありながら、この劣化ウランとか放射能による影響、被害というものに関して非常に我が国政府は鈍感なように思うんですね。その点、先生の立場から、きのうの委員会でそういう外務大臣の答弁があったんですけれども、いかがでしょうか。
藤田参考人 お答えします。
 そういうこともあろうかと、私どもは危険を冒して、まだ戦後の混乱の残っている中で実況の調査をしてきたわけですね。その結果、バグダッドの市内の建物の周辺で大量の劣化ウランの破片が発見されたということ、バスラ及びバグダッドで戦車が被弾をして放射能で汚染されているということを確認したということ、特にバスラの戦車が汚染されていたということは、ちまたに言われておりますように、もしバスラを攻めたのがイギリス軍であるとするならば、劣化ウラン弾を使ったのは、アメリカ軍だけではなくてイギリス軍も派手に使ったという証拠になる。
 それから、先ほど時間がなくて飛ばしてしまいましたけれども、バグダッドのバンカーバスターと思われる巨大な爆弾によるクレーター、直径二十メーターほど、深さ七、八メートルもある巨大な穴があちこちにあります。このバンカーバスターの底におりていって放射能をはかりますと、周辺地域の一・五倍程度の放射能が検出される。ということは、対戦車砲の三十ミリ砲弾だけではなくて、バンカーバスターという地中三十メートルほどまで入って炸裂をする爆弾の弾頭に、単にかたくて重い金属だというだけの理由でウランを使った可能性はある。これは、ちまたに言われていることと一致するわけです。
 ただ、一・五倍程度の放射能で、ここにあるというふうに物理学者としては確証は持てませんけれども、有意の差があることは明らかです。
 そういう意味において、今次の戦争においても、アメリカ軍及びイギリス軍がイラク全土にわたって、僕たちが調べたのは点と点であり、しかもバグダッドとバスラという比較的外国人の目に触れやすい場所においての調査でもこれだけのことが出ているわけで、これ以外の中小都市においてどれだけのことが行われているかということについては、全くわかりませんけれども、かなりひどいことが行われているんではないかということが考えられます。
 コソボの戦争のときに、問題が起こったときに、イタリア軍やスペイン軍、フランス軍、イギリス軍の兵士に湾岸戦争症候群と同じような障害が出たわけです。あのときには、NATO軍として入っていった、その同盟軍の兵士の中にいろいろな障害があらわれ、アメリカ軍としては、どこで使ったのだということがNATO軍の内部からの突き上げに遭うことになり、したがって、アメリカ軍は渋々ながらコソボ地域内における劣化ウランを使用した場所についての地図を公表したわけです。私たちは、その地図に示されている地点を一つ一つ確認をして歩くという調査をいたしました。
 今回も、アメリカ軍及びイギリス軍は、人道的な見地に従って、つまり、友軍の被曝というものが、これから日本軍が入れば友軍の被曝は起こるわけですけれども、その友軍の被曝という事態がなければ明らかにしないというのは絶対に間違いであって、現在、イラクのどこにどれだけの量のウラン弾を使ったのかということについての詳細な地図を発表する義務があると思います。
 それからもう一つは、戦車に当たって爆発をして炎上してミクロンオーダーの粒子になって散ってしまったものについては、もう手の施しようのない環境汚染であります。しかし、我々が、バグダッド市内、計画省の周辺で集めた金属ウラン弾は、金属の状態にあるわけです。ここにウランがあるわけですから、これは回収すれば環境の汚染にはならない。今、早急に回収できるものについては回収するという義務がある。これを放置しておけば、徐々に環境に溶け出していって、手のつけようがなくなってしまうということです。
 それから、バスラ南部で確認したことは、地面に大量のウラン弾が撃ち込まれているということ。我々は、アスファルトの道路にあいた無数の穴に測定器を当てると放射能が検出されることを確認しております。ですから、その下にはウラン弾が埋まっていることは明らかです。しかし、その周辺は砂漠です。砂漠には痕跡も残っていないわけです。どれだけの弾があの砂漠に撃ち込まれているのかということを考えると、ぞっとするわけです。しかし、少なくともそこに撃ち込んだということがわかっているんでありますから、英米軍は深さ二メートルまでの土を全部掘り返してでもこのウラン弾を回収するということが、やはり将来世代に対しての責任のとり方であろう、そういうふうに思います。
今川委員 次に、前川参考人にお伺いしたいと思うんであります。
 私は、長崎県の佐世保に住んでおります。実は、ちょうど湾岸戦争が始まる前年、一九九〇年の四月から六月まで、佐世保と呉に、港の中に、海上にバージ船を浮かべて、米軍の弾薬をコンテナにおさめて海上に浮かべるという、非常に弾薬の集積の仕方としては極めて不安定な奇異な光景があったんですね。それは、結局どこに持っていったかというと、インド洋上のディエゴガルシアの事前集積基地に、オーストラルレインボー号という船で運んでいったんですね。つまり、その年の八月にイラクはクウェートを侵攻するわけですから、私のそういう実体験からして、ああ、米国は、少なくともイラクが事あればクウェートに侵略していくということはその時点からわかっていて事前集積をしていたんだなという、私はあの十二年前の湾岸戦争、湾岸危機をそのような目でとらえ返しております。
 そこで、今、あれ以来、掃海艇をペルシャ湾に派遣をし、それから盛んに国際貢献ということが言われるようになりましたが、私はあの湾岸戦争を肯定的に見る立場にありませんけれども、例えば、軍事アナリストの小川和久さんとも親しくいたしていますけれども、彼が言うのは、日本はお金は出したけれども血も汗も出していないとよく言われるんだが、冗談じゃない、例えば佐世保や呉の弾薬あるいは燃料基地がなければ、米国はあの湾岸戦争をやり抜くことはできなかった、いわゆる日本にある在日米軍基地の存在の評価ということを全く怠っているんではないか、十分過ぎるほどの米軍に対する、米国に対する貢献はしたではないかということをおっしゃっておりまして、私も全く同感なんです。
 そこで、お伺いしたいのは、実は、これは昨日の新聞でしたか、「大島賢三・国連事務次長(緊急援助担当)は二十六日、イラクやアフガニスタンなど危険度の高い地域で人道援助活動を行う国連組織と軍との協力関係を定めたガイドラインをブリュッセルで発表した。」という報道記事がございます。そこでは、結論だけ申し上げますと、国連などとともに食糧や薬品、水供給などの人道援助活動を行う部隊兵士は武器を携行せず、軍事作戦を行う部隊兵士とは明確に区別できるよう求めたという記事がございますけれども、この点を先生の方はどのように受けとめておられるでしょうか。
前川参考人 そういう人道援助にかかわる支援をするということのためにも、やはり危険が伴うわけですから、その危険を守る自衛措置としての武器を持っていくということは当然であろうと思いますが。よろしゅうございますか。
今川委員 今申し上げたのは、日本人である大島事務次長が、国連としてのガイドラインをそういうふうに発表されているということを申し上げたかったわけであります。
 時間もほとんどございませんが、次に、松田参考人にちょっとお尋ねをしたいと思うのであります。
 先ほども申し上げましたけれども、我が国の憲法と自衛隊という組織との論争、違憲、合憲論争というのは、随分長い間この国会でもあったことは御承知のとおりであります。
 私が思いますのは、やはり湾岸戦争を契機にして、ペルシャ湾への掃海艇派遣からカンボジアPKO、そして今は東ティモールだとかゴラン高原だとか、そして二年前の九・一一米国テロ事件以降はインド洋、アラビア海方面に、いわば戦地に自衛隊という武装組織を派遣するという、私の立場からするとやってはならないこと、あるいはそういう領域についに実力組織を派遣してしまった。今回は海ではなくて、さらにこのイラク新法が予定しているのは、イラクというまだ戦争が完全におさまっていないところに自衛隊という組織を派遣しようとしている。いずれも、国際緊急援助あるいはPKOあるいはテロ特措法、新たな事態が生じるたびに、自衛隊法の第三条ではなくて、基本任務を離れたところで、百条、雑則を運用しながら自衛隊を派遣してきたということであります。
 このような、皮肉なことに、冷戦が終結して以降この十数年間に、自衛隊という組織の運用のあり方が大きく変化をしてしまっている。皮肉っぽく言うと、自衛隊ではなくて他衛隊みたいになってきているんではないか、こういう組織の運用で果たしていいのかなと思うんですけれども、法学者の立場からいかがでしょうか。
松田参考人 お答えいたします。
 日本がさまざまな分野で国際社会に貢献をするといったときに、まず第一に、支援の対象、貢献の対象が国際法上合法なものでなければいけない。国際法違反の行動に対して日本がコミットをするというのは、そもそも許されないということになります。さらに、国際法上合法な活動であっても、今度は憲法九条による制限として、日本は軍事的な形での貢献というのはできないんだ、こういう枠がはまります。
 そうしますと、問題は、自衛隊が、とりわけ海外へ出ていって活動するというときに、まず、その対象となる活動が国際法上合法かどうか、これが問題になる。その次に、自衛隊が行う支援活動が武力の行使になるかどうか、こういう点が問題になります。今回の件でいいますと、前者の点の、支援対象の活動が国際法上合法かどうか、この点でまず問題があるということを先ほど申しました。
 それから、今御質問の点は、むしろ武力の行使に当たるような活動、支援はできない、この点になると思いますが、先ほど平岡委員からの質問にもありましたように、日本としてこれは武力行使には当たらないと言っても、問題は、その行為が国際法上戦闘行為とみなされるのかどうか、こういう点にあるわけですね。
 したがって、例えば武器弾薬を輸送するだけである、あるいは水や食糧を供給するだけであるということであっても、武力紛争法上、これが戦闘行為とみなされるような行為であれば、やはり国際的にはこれは武力行使に当たる。他国からはそのようなものとして扱われるし、国際法の適用についてもそのように扱われるということになるわけで、これは憲法上は武力行使にならないよというふうに幾ら言ってみても、それは専ら国内限りの問題で、国際常識ではない、こういうことになるかと思います。
 憲法九条が求めているのは、やはり、国際法に照らしても、日本は最低限、日本の自衛だけで、対外的に武力行使に当たるような行為は行わないということを、一応自衛隊が合憲であるとしても、そういう枠がはまっているということになっているんだろうと思います。
今川委員 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。
高村委員長 これにて午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)
 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時四十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十一分開議
高村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 午前に引き続き、本案審査のため、午後の参考人として、衆議院議員杉浦正健君、衆議院議員斉藤鉄夫君、衆議院議員末松義規君、衆議院議員首藤信彦君、参議院議員緒方靖夫君、衆議院議員今川正美君、衆議院議員山内惠子君、以上七名の国会議員の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人として御出席いただいております国会議員の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人各位におかれましては、各党のイラク調査団として現地へ赴き、視察をされてきたところでございます。本日は、現地の実情などについて忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、杉浦参考人、末松参考人、緒方参考人、今川参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。
 それでは、まず、杉浦参考人にお願いいたします。
杉浦参考人 自由民主党の杉浦正健でございます。
 私は、同席しておられる公明党の斉藤先生、そのほか、自民党の衆議院の岩屋毅君、自民党参議院の阿部正俊君、舛添要一君、公明党参議院議員の山本保君、保守新党参議院議員の泉信也君、そして、外務大臣政務官新藤さん、防衛庁長官政務官の小島さん、以上九名で、与党としてイラクの現地を調査すべしという党の指示に従いまして、六月二十日に出発をして二十五日に成田に帰着したわけでありますけれども、イラクの現地事情を視察いたしてまいりました。
 お手元に、与党イラク現地調査団報告書、六月二十六日付の文書を配付させていただいております。この文書、調査団報告書は、私ども調査団、私が団長を仰せつかりましたので、参議院の自民党の舛添要一君にいわばセクレタリーといいますか書記的な仕事をお願いして、記録、報告書の作成等、事務的な大事な仕事を分担していただいたわけでございます。
 現地に三日おったわけでありますけれども、その最後、クウェートに戻りまして全員で全体会議を開きまして、舛添先生と事務方がつくってくれたたたき台をもとに徹底的な議論をいたしました。その結果、大幅な修正を加えまして、明くる朝も若干議論をしてまた直し、そして帰路、ヒースロー空港、ここで大分時間がございましたので、ここでも合同会議を開きまして、報告書の内容について議論し、かなり修正をいたしました。
 成田に着いてからも若干文言の微調整があったわけですが、要するに、申し上げたかったのは、参加した九名全員のコンセンサスと申しますか、漏れなく全員が異論のない報告としてまとめたものだということを申し上げたかったわけでございます。
 私どもは、党の方からは、現地の治安状況ですとか、CPA、連合軍等の活動状況、あるいは、暫定政府、安保理決議の一四八三で言われておりますその立ち上げの状況、あるいは、この法案が成立した場合には自衛隊を派遣することを考えるわけでありますが、どういうようなニーズがあるのかといった点を調べてこいということで行ったわけでございます。
 私ども調査団の結論は、その三ページ目の四「結論」というところに要約してございますが、ここに記載しましたとおり、イラクでは戦闘は終わっている、そして治安は急速に改善されている。そして国際社会、CPA、戦後の日本に例えればGHQみたいなものですが、あるいは国連も特別代表を置いて活動を始めております。国連の諸機関、すべてイラクに戻って活動を再開いたしております。イラクの復興に国際社会が努力しておる。それから、暫定政府から本格的なイラク人の政府の立ち上げに向けまして、暫定統治機構の立ち上げも、CPAそれから国連が協力しながら進めておるところでございまして、そういった事情が明らかとなりました。
 そういった国際社会の努力の中で、我が国としても、我が国にふさわしい主体的な協力を行う必要性があるという認識に達した次第でございます。
 そのためにも、私どもとしては、現在御審議いただいておりますイラク復興支援法案を早期に成立させることが必要である。そして、私どものは言ってみれば偵察のようなものですが、予備調査といいますか、でございますが、より専門的、実務的な調査を詳細に行った上で、技能と経験を有する自衛隊その他、官民挙げてできるだけ速やかにイラクに派遣することが必要である。このことは、ひとりイラク国民のためのみならず、我が国の国益の上からも極めて重要であるという認識に達した次第でございます。
 以上が結論でございますが、以下、時間の許す限り、若干、その経過、状況及び調査の結果について触れたいと思います。
 私どもが会いましたのは、ブレマーOCPA長官、これは連合暫定施政局、訳は難しいんですが、わかりやすく言えば戦後の日本のGHQに相当する、国連から、イラク人の国家ができるまでの間の施政の権限を認知されております機関であります、その長官。例えて申し上げますれば戦後のあのマッカーサー元帥のような立場の方だと思いますが、に会いました。ナンバーツーのソーヤーズ大使、これは英国の方です。ナンバースリーがケネディさんですが、ケネディさんもブレマーさんと一緒に会いました。
 それから、国連の特別代表デメロさんという東ティモールの代表をなさった方ですが、たまたま所用でニューヨークに行っておられまして、その官房長でございますユーニスさんという女性ですけれども、それから、ケネディさんという副人道調整官と会談をいたしました。
 特筆すべきことは、ブレマーさんは、私ども、当初の計画では会えないことになっておったんです。アンマンでダボス会議がイラク問題について開かれておりまして、そちらへ出ておられるから会えないと伺っておったんですが、わざわざ私どもに会うためにアンマンから飛行機で飛んで戻ってくれまして、夜、会談いたしました。後ほど伺ったところによりますと、その夜またアンマンに帰られたというふうに伺っておりまして、いかにブレマーさんたちCPAが日本の協力に期待しているかということを感じた次第でございます。
 視察した分野は、一番上に、「バグダッド」に書いてございます米軍の活動状況、これはバグダッドは十二の軍管区に分けておりまして、そこに大体一個大隊の軍隊を張りつけまして、治安維持等、言ってみると市役所のような仕事もしておるわけですが、その現場を二時間半にわたって説明を受け、視察いたしました。
 CJTF7、連合軍司令部、これはバグダッド空港の中にありますが、そこにも行って詳細なブリーフを受け、連合軍の活動状況も説明を聞いた次第でございます。
 時間を有効に使うために、昼食の時間には、大使館に頼んでできるだけ、三人しか来れなかったですが、イラクのいろいろな方とも懇談しましたし、夕食の時間には、NGOの方に声をかけまして、ジャパン・プラットフォームとかピースウィンズといった方々十数名、バグダッドにおられる方に来てもらいまして、いろいろと懇談をいたしました。
 その他、サダム・シティー、今サウラ・シティーとなっていますが、わかりやすく言うとスラムだと言っていい地域も見ましたし、いろいろなところを訪ねる関係で、バグダッド市内はかなり、東へ行ったり西へ行ったり走行をいたしました。限られた時間ではありますけれども、これは一日バグダッドでございますが、有効な視察ができたと思っております。
 バスラでは英軍から一時間半にわたってブリーフを受けましたし、その中で、ブリーファーの中にはデンマークの将校も一人含まれておりました。
 アンマンからバグダッドへ、それからバスラ、ウンムカスルからクウェートへ、走行距離千五百キロを超えるハードスケジュールでございました。
 この報告書に盛られておりますことは、その間、私ども九人がそれぞれ感じた、五感で体感したこともございますが、こういった連合暫定施政局のトップとか、一、二、三、国連のいわばトップ、あるいは連合軍、米軍の現地で働いておられる方々、NGO、ごく限られた範囲でありますがイラク人との懇談等、そういうところから私どもが聞き取ったことを報告書にまとめた次第でございます。
 治安状況でございますが、私どもが聞いた人全員から、イラクにおいては、もはやコンバット、戦闘は終了している、コンバット・イズ・オーバーということを皆さんが口をそろえておりました。治安は日に日に改善されておると。ソーヤーズさんというナンバーツーの方ですが、七週間前着任したときには、白昼堂々と放火がなされ、略奪が行われておったわけだけれども、もはやそういうことは全くない。ほかの大都市、地球上にある大都市に一般に見られる程度まで改善しているんじゃないかというような評価も聞こえたわけでございます。
 現在、米軍、英軍も一部やられておりますが、散発的な攻撃、襲撃を受けておりますけれども、これは非組織的と申しますか、計画的なものではない。組織的、計画的ではない。統一した司令部があるわけでもない。サダム政権が崩壊して、イラク人に嫌われております、イラク人の支持もございません。軍隊はなく、政府のない、本当の無政府状態でありますから、米軍等が治安の維持に当たっているという状況でございます。
 警察の組織も非常に不完全でありまして、そういった状況下においてはまあまあの水準に達しているんじゃないかというふうな印象を受けました。米兵等が襲撃される場合は、非常にアイソレーテッド、孤立したケースで、買い物の最中にズドンとやられたり、犯罪捜査中にいきなりやられたりという待ち伏せ的な攻撃で、組織的、計画的な攻撃ではない。事態の推移とともに改善していくだろうということでございました。
 国内の社会経済インフラは、極度に劣悪な状況にございます。民主党の調査団にもあったように、戦争による被害は局所的だ。ただし、戦後の略奪行為、また、長年の社会経済インフラへの投資不足、これは経済制裁も影響しておりますが、そういったことのために、停電はしょっちゅうでした。上下水道、ホテルもいい水が出ない、飲めない。一般民衆の状況はさらに劣悪だろうと推測されます。そういった点がございますが、CPAあるいは国連等は、こういったインフラの改善に向けまして全力を挙げているところでございます。
 また、イラク暫定行政機構、一四八三にございました、これにつきましては、五月中旬に立ち上げるという計画がちょっとおくれておりまして、七月中になるということでございました。
 まず、ポリティカルカウンシルと言っておりましたが、これは訳すのは難しいですが、最高評議会といいますか、各勢力のトップをまず集めてつくる、それをもとに大臣を任命していって、崩壊している行政組織を立ち上げていく。大体九月中には暫定政府、政治機構としてのあれを立ち上げられるだろうということをブレマーさんはおっしゃっておられました。
 同時に、並行しまして憲法起草委員会を立ち上げまして、これは数百名規模で、各勢力それから専門家、法学者、司法関係者等を集めまして憲法を起草いたしますとブレマーさんは言っていました。そして、憲法草案ができ上がったら、国民投票に付しまして確定をする。選挙に関する規定も入れまして、各種選挙を行い、イラク人の手による本格的な政権に立ち上げていく。我々は、その任務を終了して、イラク人の手による政府に引き渡したら直ちに帰国するようにと大統領から命令されている、こうブレマーさんはおっしゃっておった次第でございます。
 我が国の果たせる役割については、いろいろな方にお伺いしましたが、いかなる分野でもお手伝いいただけることはたくさんある、日本から申し出ていただければ大歓迎するということを言われました。それでも、何かおっしゃっていただけませんかと重ねて聞きましたら、日本に対してそういうことをお願いするのは失礼だ、やることはいっぱいあるから、ともかく御検討いただいて、御提案を願いたい、こういうことでございました。
 治安が確かに悪いわけであります。改善はされてはおりますが、暫定政府が立ち上がっていく、それから給料も、私ども帰ってから払うようにしたそうですから、これからそういった不満も解消されて、治安は一層いい方向に向かうとは思うんですが、治安が悪いのは事実であります。
 そういった中で、社会経済基盤も不足しておりますので、各国とも軍隊を送っております。現在、十五カ国派遣しておりますし、それは別紙つけてあります。十四カ国が検討中ということでございますが、各国とも自己完結的な組織である軍隊を送って諸般の活動を行っておるというのが実情でございますので、少なくとも当分の間は、自衛隊を派遣することが有用である、有効であると私ども考えた次第でございます。
 もう十五分、終わりましたか。ちょっとまだ申し上げたいことがありますが、とりあえずここで報告を一区切りとさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
高村委員長 ありがとうございました。
 次に、末松参考人にお願いいたします。
末松参考人 民主党の末松義規でございます。
 私ども民主党の方は、一カ月ほど前ですか、六月の二日アンマン、それから三日から八日まで六日間バグダッドにおりまして、その間、この報告書の七ページをごらんいただければありがたいのでございますけれども、二十二人の人間と、二十一人かな、そして、あとは視察をしてきました。
 まず、ヨルダンでは、アブダッラー計画大臣あるいはバック・ヨルダン外務担当国務大臣、それからさらに、CMCという、クライシス・マネジメント・センターの関係の人たちとでお会いしまして、隣国からイラクをどういうふうに見ているんだというのをかなり時間を使って議論しました。
 この団は、私と、それから首藤信彦衆議院議員そして若林秀樹参議院議員ですが、首藤議員の方は先遣隊ということで早くバグダッド入りされて、調査の効果をさらに高めるために、三人合わせて長期間バグダッド等に滞在したということでございます。
 イラクでは、ここに書いてございますように、私ども、シーア派のバーキル・アル・ハキームという、なかなかこれは会えない方なんですが、首藤議員がお会いになり、それから、バルザーニという、これもなかなか会えませんが、クルド民主党の党首、こういった地域の指導者も会って、あと、バース党の地域支部長ということで、バース党の関係者はどういうふうに考えているのか、これは秘密裏にお会いさせていただきました。
 さらに、何人かの関係者とともにイラク人の関係者ともお会いさせていただきましたし、また、石油省顧問にもお会いし、国連では、デメロ国連事務総長特別代表とともに、ドュボアUNDP常駐代表あるいはデロイ・ユニセフ代表とか、そういう方とも、国連とも話をさせていただきました。
 また、CPAという暫定当局では、クロスという、この方はORHAの次長さんで、非常によく物のわかった方ですけれども、彼と同時に、また、ジョーンズという米軍の大佐から、子細にCPAの関係の軍の動きについて説明を受けました。
 それからあと、フランス、ポーランド、そういったところの現地の大使館、さらには、邦人のNGOとか、あるいは現地の邦人の特派員、これらの方々と長時間にわたって議論をしてまいりました。
 そこで、報告のポイントでございますが、この一枚目に「報告ポイント」と書いてあるところをごらんいただければと思います。
 まずは、戦争被害と支援ニーズということについて限って申し上げれば、基本的に米軍の攻撃は、各調査団ともお認めになっていることですが、非常に、クルーズミサイルなんかピンポイントで攻撃がされておりまして、バグダッドについては特にそうなんですが、被害としては戦争の被害はほとんど限定的であったということでございます。むしろ、放火とかあるいは略奪、強盗、そういった物取りによって強奪をされた被害の方が大きかったということです。
 ただ、これも本当は、長期的に、サダム・フセイン政権が軍事優先の経済政策、あるいは、例えば巨大なモスクをつくったり巨大な大統領官邸を幾つもつくったり、そういった政治的な目的のためにつくられた施設が非常に目立ちまして、民生のためにかけられたお金が少ないという、そういった経済政策、これによっても打撃を受けていたということがあるし、国連の経済制裁でさらに厳しい状況に置かれていた、これがボディーブローのようにイラクの経済にダメージを与えていたというのが実のところだろうと思います。
 ここで、ではニーズとしては、緊急ニーズは何があるかということを私どもいろいろと考えてきました。
 人道的なニーズは、例えば食糧なんかについては、国連のWFP等は配給システムをきちんと使って、食糧については不足という感はありませんでしたし、電力それから上下水道なんかは、まだ若干機能していないところもありましたけれども、そこそこ回復してきているかなという印象でございました。むしろ一番の大きな緊急ニーズは、サダム・フセイン政権が倒れて、そして新しい政権を今立ち上げるまでの大混乱期、これをどういうふうに乗り切っていくか、そこに一番大きなニーズがあると思いました。
 ですから、ここはすべて、この第二点目のイラクの治安・統治問題とかかわってくるんですけれども、CPAによる政権の立ち上げ、イラクの暫定政府の立ち上げ、これをいかにスムーズに移行させていくかに一番大きな焦点が当てられると思います。特に、この統治の再編の過程がうまくいかないと、結局、すべてのことがうまく運ばないということになります。
 といいますのは、例えば、四十数万人いたという軍隊が武器を持って消えてしまったというようなことから始まって、非常に武器が出回っていて、彼らは、軍隊に属していた軍人は今失業状態にある、そして、秘密警察、軍事警察あるいは警察官、一般公務員もまだ雇われていないという失業状態にあって、彼らが次第に生活が困窮をしていけばいくほど、今度は治安の大きな問題になってくるわけです。
 そういったことがありますから、緊急にこれらの失業者を吸収する何かの社会的な事業、こういった経済的な事業が必要だというふうに考えましたし、だから、統治過程と治安の問題というのは、ある意味では一対で考えなきゃいけないものというふうに考えられます。
 さらに、国連主導による国際的な援助、これについても、統治過程がきちんとうまく機能しなければなかなかうまくいかないというところもございますし、また、治安がよくなければ経済援助そのものが始められないということでありますから、これらが統治過程の行方にかかっている、そういった意味で、非常に大きな注目はそこになされなければいけない。
 CPAの方は、ブレマーさんが中心となって、諸部族とかあるいは諸宗教の人たちをまとめていくという努力がなされておりましたけれども、なかなかこの過程も一足飛びにはいけない、一山二山越えるんだろうということを現地で聞きました。
 特に、バース党の地域幹部から、米軍というものが侵略の軍隊と映っておりまして、当然のことでしょうけれども、それに、多国籍軍も敵対してきた勢力だということで、何としてもこういった軍隊を追い返すんだという指摘もありましたし、今、本当にそういった意味で戦争をやっているんだということでございました。
 特にサダム・フセイン、生きているかどうか知りませんけれども、彼が中心となってアウダ党という、これはリターニングバックという意味なんですが、政党をつくって、徹底抗戦を呼びかけて、そして、いずれ政権を奪回するんだと。これは実現可能性があるかどうかというと、あるとはなかなか思えませんけれども、少なくとも彼らはそういう意気込みでやっているのが事実であります。
 そして、彼らは、生活に困窮すると物取りをやって、例えば米軍車両を襲ったり、そういうことをやって、結局、そういう正規軍的なサダム・フセインの残存勢力が物取りになったりなんたりするという意味で、非常に治安としては危ない状況がしばらく続くということでございます。
 特に中期的な治安についても聞きましたけれども、彼らは、イラクの歴史の中で歴史的に考えるべきであると。イラクの歴史というのは、スンニ派という中西部を治めている地域の人たち、これはマイノリティーでありますけれども、彼らしか、政権担当した経験がございません。南部の、大多数の人口、六十数%を占めるシーア派、それからクルドは二〇%ぐらい占めますけれども、彼らは地域勢力でありまして、実際にイラクを統括した経験がない。ですから、バース党という支配マシンを使ってきたのがあるんですけれども、サダム・フセインという人物は、中西部のスンニ派の諸部族をまとめて、そして、石油収入でいろいろと彼らに貢献していきながら独裁的な力を高めていったという経緯がございます。
 問題は、この中西部のスンニ派の連中がサダム・フセインと、大きな紐帯といいますか、極めて仲がよかったものですから、これがアメリカをなかなか許さないということで、そういった意味でいけば、アメリカに敵対する力がずっと働いていく危険性がございます。
 そして、彼らをアメリカが寝返らせて、そして親米的なものにするということが起こっても、今度はシーア派の人たちがイランからかなりいろいろなちょっかいが出されているという情報も聞きました。そういった意味で、今度はシーア派の方は、今はおとなしいけれども、もしスンニ派の政権がさらにまたできるのであれば、それに対してぶつかっていく、これはけしからぬということで、そこで不穏な動きに出るというようなことも現地ではささやかれておりました。それがゆえに、今度はアメリカとイランとの敵対関係がさらに進むのじゃないかというようなことも現地で懸念されていたところであります。
 そういうことで、中期的にもかなり一山二山、ブレマーさん、努力しておられますけれども、かなり不安定な状況がこれからも続く、そして米軍の駐留が長期化していくということが見通しとして示されておりました。
 それから、米軍に対して現地でどういうふうな認識があるかといいますと、基本的にはやはり、サダム・フセインを追放したと言う人、いいと言う人と、バース党のシンパの人は、何だと言う人、いろいろな複雑な反応がありました。その中で、米軍に対しては、とりあえず治安維持をやってもらっているからそれはありがたいんだけれども、しかしながら、用がなくなったらとっとと帰ってくれということで、米軍に対しても非常に厳しい指摘をする人もありましたし、特に日常生活が困窮してくるとその憎悪が米軍に向かっていくということが十分に考えられますので、その意味でも、この治安の関係は非常に注目をする必要があると思いました。
 最後に、自衛隊の派遣問題について申し上げますと、派遣についてのニーズはどうかということを我々も子細に見てきました。
 後、質問の中で詳しく述べますけれども、実際に治安維持というものが非常に枢要であるということで、それに対する自衛隊の間接的な支援という意味、補給とかロジスティックス、これについては否定はしません。そういったニーズはあるなということはございましたけれども、ただ、支援といった場合には、イラク国民に直接見える支援が必要であるし、また、イラク国民がもろ手を挙げて歓迎するような支援が必要であるという観点からは、こういった治安維持などへの支援はどうしても隠れて見えないし、また、もろ手を挙げても歓迎されないといったことが考えられるということを多くの人が指摘しておりました。
 さらに、自衛隊については安全問題、これはこの国会でも大変な議論になりましたけれども、やはり現状の治安状況では、戦闘地域、非戦闘地域は区別もできませんし、また、非戦闘地域と呼ばれる中でも、安全面で、一夜にしてあるいは一瞬にして治安状況が変わってくるという危険性がございます。
 最近の、サダム・フセイン残存勢力なんかが、例えば対戦車砲とか手りゅう弾あるいはマシンガンとか、そういったものを使って襲撃している事実、米軍も私たちには、五件から十件、一日平均ですけれども、アタックを米軍にかけられていると言っていました。その中で、報道に出るものもあれば出ないものもあるんだということで、そういった意味ではイラク全土でそういったことが起きている。アメリカの軍は、集中的な作戦には強いんですが、補給部隊を一人一人ねらわれてやっていくには非常に弱い、そういうところが問題だと思いました。そういったことで、安全面では非常に問題がある。
 結局、私たちが自衛隊派遣問題を考えるに当たって最後に考えたのは、やはり日米関係の視点という政治的な、すぐれて政治的な問題という中でこの問題を見るということなんだろう、イラクの支援ということとは直接は結びつかない可能性が十分にあるという現地の報告を踏まえまして、私の報告を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
高村委員長 ありがとうございました。
 次に、緒方参考人にお願いいたします。
緒方参考人 参考人の緒方靖夫です。
 私は、本院の赤嶺政賢議員と一緒に調査に参りまして、ちょうど十日前に戻ってきたところです。ここに報告書を提出しておりますけれども、これを参照していただきながら、私の報告をさせていただきたいと思います。
 まず、イラクの国民生活の現状と、どんな援助が必要かという問題です。
 フセイン政権の中枢の建物の爆撃とかあるいは破壊、これはバグダッドでは大変目立ちましたけれども、同時に、店も開き、そして正常な生活に近づきつつあるという、一見そう見えるんですね。しかし、一歩奥に入るとそれが全く違う、これが私たちにとって非常に大きな印象でした。
 一つは、やはり何といっても、誇り高いイラクの国民が外国の占領下に置かれているという屈辱感、また、占領軍があるという重圧、このことは、私は昨年の十月に、やはり重苦しい雰囲気のフセイン政権のもとで状況を見てまいりましたけれども、やはりその点が際立っていると思いました。
 それから、暮らしの問題でいうと、まず第一に治安の問題、それから電気、電話、医療、飲料水の不足、食糧、雇用、教育、こうした問題が本当に山積みになっている、そういう状況でした。
 治安の回復はその中の特に第一の問題で、市民にとっても、それから国際機関が支援をするにも、これがなければ十分にできない、そういう問題でした。それと同時に、電気がうまく通じない、これが治安にさらに輪をかける、そういう状況があったと思います。
 ですから、占領軍がその治安の責任を第一に果たすべきだ、そういう声があると同時に、やはり、この問題をどうやってイラク人自身の組織によって果たしていくのか。自主的な警察組織が次第に組織されるという状況を見てまいりましたけれども、そういう状況がありました。
 それから電気の問題、これはしょっちゅう停電する、大変な問題ですね。これはやはり、発電所の爆撃等々によって起こっている問題であって、休止の発電所であっても、その修理が進み、さらにそのインフラが進めば対応できるだろうという見通しがありました。この点では、日本政府が進めている援助、これが非常に高く評価され、それをぜひ継続してほしいという話が、現地でもあるいは国連機関からもありました。
 医療では、かつてはバグダッド、イラクの中ではバグダッドは圧倒的に高い水準の医療の設備を持っていたわけですけれども、そこでは設備が動かない、もちろん圧倒的に医薬品が足りない、そういう状況があって、これを補給する、そして設備を改修、修繕していく、使えるようにしていく、このことが本当に大きな問題、課題でありまして、この点でも、日本政府が既に進めている援助、これが評価されていたことも印象的でした。もちろん、NGOも大変頑張っておりました。
 それから水の問題ですけれども、飲料に不適切な水、イラクというのは表面水から水をとるわけですね、湖沼、川から。それが汚染されているわけですよ。ですから、それで一遍に子供たちがやられてしまう。そうすると下痢になる、そして、それが悪循環になって栄養失調等々になっていくという大変大きな問題があって、水の問題は非常に大きな問題でした。そして、これも飲料水が配給されれば解決する、そういう状況でした。私たちが聞いたところでは、タンカーで百隻水を運ぶとか、そういう国際支援も行われておりました。
 その中で生活用水について言うと、これは以前とは変わりなく補給されている、そういう状況も聞きました。私たちは、バグダッド南東の二百十キロにあるクートという町を訪問して、そこでちょうど浄水場を見ましたけれども、まさに自治組織が頑張ってそういう復旧をして、あるいは、その場所を守って水を供給しているという大変感動的な場面も見ましたけれども、まさにそういう問題もありますね。
 それから食糧については、三カ月配給を受けていない、そういう市民の声も聞きましたけれども、大変深刻です。特に乳幼児の栄養失調、これをどうするかというのは本当に緊急課題です。
 今後は、経済制裁解除に伴って、オイル・フォー・フードが打ち切られます。そして十月末までには、WFP、この代表とも会いましたけれども、WFPの緊急援助計画があるわけですけれども、その後は展望がないんですね。ですから、食糧をどう解決するか、これは大きな問題だと思います。特に、イラクでは国営セクターが非常に大きくて、六割の方が公務員。それが失業状態。そして、大体それに照応した数だけの人たちが食糧の国際支援を受けていた。これをどうするのかということが課題だと思います。
 教育。一言で言うと、心の再建だと思います。フセイン礼賛から価値観が一転、百八十度変わっている。それにどう対応するのか。子供たちがそれになかなかついていけない。ちょうど戦争直後の日本と似たような状況じゃないかと想像いたしました。
 新しい教科書づくり。これも、もちろんフセインの写真を消すのは当然なんですけれども、USAID、アメリカの海外支援局は、アメリカでイラクの教科書をつくるという計画を持っているんですね。大変現地には衝撃を与えております。何でイラクの教科書をアメリカがつくるのか。そして、誇り高きイラク人の誇りを一層傷つけているという感じがいたしました。イスラム、イラクの習慣をしっかり守っていく、彼らの習慣を、また心情をしっかりとらえた、理解した対応、これが重要であるということを痛感いたしました。
 次に、それでは人道復興支援、これについてどうかというと、一言で言うと、これは国連関係者が述べたんですけれども、巨大な援助が必要だと、巨大な援助が。大変印象的でした。イラクの国民の暮らしがよくなった、安定した、そういう実感の持てる施策、これが一番求められている。これが、イラク国民の今ある不満、これをおさめていくという上でも一番効果がある。緊急かつ最優先される課題だということが、だれもが強調されていたことでした。そして、今後のイラクの情勢を決めていく重要なファクターにもなろう、そう強調されていました。
 そして、人道支援は非武装が大前提です。軍隊でこの分野を行うということは想定されていないんですね。もうこれは常識中の常識です。人道援助の中心に据えているのが、まさに国連だと思います。
 イラクでこんな話を聞きました。フセイン政権はイラク国民から遊離していました。当然ですね、政権の動きが皆目わからなかった。現在、CPAはもとの宮殿の中にいて、戦車と鉄条網で囲まれている。私たちも行きましたが、大変厳重でした、警戒が。そして、これもやはりイラクの国民からはるかに遊離している存在である。まさにそのことに国民は違和感を持っている。そうしたときに、イラクの国民の心情に合った最善の支援、これは国連の支援だと。国連は国民の中にどんどん入っていくんです。そうしなければ仕事ができません。NGOも一緒に行く。これこそがまさに最適だ、イラクの国民の気持ちともぴったりだ。このことも、大変よくわかる話でした。
 それから、イラクの特性に合った援助。これは痛感したんですけれども、イラクの人たちといううのは非常に中東の中では勤勉であって、高い労働力を持っている、そして民度が大変高い、技術、ノウハウを持った、つまり一言で言うと、マンパワーが大変豊富なわけです。どんな援助が一番効果的かといえば、要するに、そういうマンパワーを組織化する、その支援の一押し、イラク人の背中をぽんと一つ押してほしい、そう言っておりましたけれども、そういう援助が欲しいんだということを強調していた。これも、よくわかる話でした。
 ですから、イラクでは、プロジェクトを丸々下さいとは言わないんです。設計図をもらえば自分たちでできる、そういうことが技術者からも特徴的な話として伝えられました。
 ですから、そういうことで、人道復興支援についてはそのことが言えると思います。
 次に、安全確保支援の問題では二つの側面があると思いました。
 一つは、イラクの国民の安全確保の任務です。占領軍が責任を果たすということは当然なわけですけれども、そのほかの外国軍の役割、これはイラクからは、イラク人からは期待されていない、そう思いました。その点で一番の、もう断トツ一番の課題というのは、イラクの警察の再建です。
 これは、要するに、治安に責任を持つ警察が解体され、その後対応がとられていないために、治安初め交通、もう本当にそれができないわけですね。今やっと一部自主的にそれを行っているという、そんな状況はありますけれども、到底間に合わない。そして、私たち、クート、それから、南東部の百キロの、バビロンのあるヒッラというところに行きましたけれども、そこでは確かに自主的な組織がやっているんですが、追いつかないんですね。
 国連の方々が言うには、警察で一番大事なのは、地元の人たちを知って、地元の地理を知って、もちろん言葉も知っている、そういう人たちによる警察活動なんだ、軍隊では代行できない、このことが大変印象的でした。
 そして、治安の回復のためには、やはり何といっても警察の再建なんですけれども、CPAの方と会ったときには、警察学校を準備している、三カ月、六カ月のコースを準備している、そういう話がありましたけれども、では、いつをめどに、どのぐらいの人たちを養成するのかということについては答えがなかった。やはりその点で、急務ということはわかりながらも、しかしそれが追いついていない、そのことを痛感いたしました。
 二つ目に、もう一つの側面というのは、占領軍の治安、軍事活動への協力という問題です。
 治安は、もちろん戦争終了直後の略奪、放火、今はそのときと比べればよくなっているでしょうけれども、しかし、その後から比べるとやはり治安は悪化している、これは共通した感想でした。
 そして、そうした今国民の不満が高まっているという、その不満に乗じて一部勢力が占領軍に対する攻撃を強めているという状況があるわけです。
 我々の滞在した十八日には、大きなデモ、集会があって、車で動くとそれに出会いました。仕事よこせ、賃金よこせ、そういうデモ、集会でしたけれども、そういう不満の高まりの中で、結局、国民の中には、武器の放出の呼びかけにもかかわらずそれに応じず、相当の重火器をみんな持っているわけです。クートに、ある事務所に行きましたら、カラシニコフが三丁立てかけられている。みんなそれをぱっぱっと手にとれるようになっている。これは当たり前なわけですね。民間のレベルでそうなわけです。
 そして同時に、そういう国民の不満に乗じて、それを背景にしてアメリカに対して攻撃をする、そういう分子、一部分子、今のところそうかもしれませんけれども、それが国民から孤立しない、そういう大きな問題があると思うんですね。その分子の捕捉のためにアメリカは掃討作戦をする、それに対してまた国民の不満が高まる。それはなぜかというと、やたらに検束して、例えば女性をアメリカの男性兵士がボディーチェックする、あるいは、家宅捜索と称して家に入って、そこで片っ端から戸をあけて、子供、女性の部屋にも入り込む。これがどんなにスキャンダルになることかは明白で、そうしたことからますますそういう動きが、掃討作戦を強めれば強めるほどそういう離反が起こる、矛盾が起こる、そういう状況です。
 そして、私たちは、そのアメリカに対する動きというのは、一部分子なのか、恨みとかそういうのを持っている個人の行動なのか、それともある程度組織化され始めているのか、その辺、関心を持って聞きましたけれども、民兵組織がもとに戻りつつあるとかそんな形で、それがさらに組織化される見通しもある、そういう動きもある、そういうことが述べられていたことも大変印象的なことでした。
 ですから、結局、アメリカが掃討作戦を強化していく、それによる国民の反発が強まる、その悪循環が拡大しかねない、そういう状況が見てとれました。
 それから、米英軍への反発が強まる背景には、明確に、一つは暮らしの悪化。二つ目にはイスラムのおきてを無視した行動、これは大変怒りを呼んでいます。それから三つ目に、明るく豊かな社会が来るというアメリカの約束、違うじゃないか、どうなったんだ、そういう不満、怒り。これが背景にあるということも現地で感じてまいりました。
 そして、そもそも米英軍によってイラク全土が軍事行動の対象にされている、このことも大変明らかなことでした。つまり、米軍が移動する、移動したところは、そこは安全であっても、そこが新たにねらわれる、そうしたことになるわけですね、今の状況から。
 私は、そのことは非常に重要なことであって、要するに、最初は歓迎されたんですよ、ごくごく平均的なイラク人にとってみては、フセインを倒してくれたアメリカはウエルカムだったわけですね。ところが、一カ月たったらおかしいなと思い始め、そしてもう少したってみたら不満、怒り、これが強まっていく、これがどんどん大きくなりかねないという状況が今の状況だと思うんですね。
 そうすると何が起こるかというと、安全だと言っているところも、米軍が移動すればそこは攻撃の対象になりかねない、攻撃が起これば危険なところ。そして、その米軍に協力して日本の自衛隊が出ていけばどうなるのか、このこともはっきりしていると思います。
 本当にイラクというのは、日本が大好きな国だったんですよ。ところが、日本政府がこの戦争に賛成、これを表明したから、本当に様子がおかしくなりました。まだいいんですよ、まだ国民全体はそうなっていない、一部の知識人だけだと思います。ヨルダンではかなりそのあれが激しくなっていました。イラクはまだいい。しかし、これが、米軍と一緒に協力してこんなことを進めていったときにどうなるのか。米軍が憎しみの的になっている、その米軍と一緒に行動する自衛隊がどう見られ、しかも、何らかのことでイラク人を殺傷することになったときには一体どうなっていくのか、このことは非常に明確ではないか、そんな感じがした次第です。
 最後になりますけれども、イラク人道支援でも安全確保の問題でも、自衛隊を派遣する必要は全くない、これが私の現地で見た感想でした。そして、自衛隊が派遣されるならば、今後の日本の支援活動にもNGOの活動にも支障を来すだろう、そう思いました。イラクや中東での日本がこれまで持ってきた本当にいいポジション、日本の外交では大変珍しい、そのいいポジションが今後どうなっていくのか、このことを感じました。
 そして最後に、繰り返しますけれども、イラクの支援というのは、イラクの人々の現実に根差して、その心情、文明、習慣、これに根差したものが求められていると思います。そして、このことが国際社会全体に要請されていると思います。したがいまして、現地で、国際機関からも国連からも、そして現地のイラク人からも日本の支援が高く高く評価された、これを続けてほしい、これをもっと大きくしてほしい、そういう声が聞かれましたけれども、私は、こういう声にこたえていくことこそがまさに今の日本に求められている、このことを述べまして、私からの発言といたします。
 ありがとうございました。(拍手)
高村委員長 ありがとうございました。
 次に、今川参考人にお願いいたします。
今川参考人 社会民主党の今川正美です。
 私どもは、六月の十七日から二十三日にかけましてイラクの調査に入りました。調査団としては、私のほかに、山内惠子衆議院議員それから我が党の社会新報の編集部の藤生健君と一緒に参りました。
 まず、一番の印象は、イラク人の運転手を雇い上げて、ヨルダンのアンマンからバグダッド市内まで、約一千キロですか、十時間余りの時間をかけて、平均時速が大体百五十キロぐらいです。そして、特にバグダッドに近くなると、途中で元フセイン支持派が多いと言われる町のわきを通り過ぎるときには、たしか百八十キロぐらい出ていましたね。とにかく、危ないからとまってはいけない、ノンストップで、大変な旅でした。
 特に、帰りの運転手は、元軍人で、大学で国語を教えながら、今、休みに入っているということで、運転手の方が収入が多いというふうなことを言っていましたけれども、彼は、車の中で、裏街道を走って、十一時間、飲まず食わずです。それで、ヨルダンの国境沿いに来たらほっとして、安堵した顔を見せて、マイ・ハングリー、何か早く食べたいというようなことを言っていましたけれども、往復の行程は、そのような状況の中で入っていったわけであります。
 主な視察先というのは、十八日に、ヨルダンのUNHCRの事務所、ヨルダン国境側のパレスチナ難民キャンプ、それから十九日に、国際赤十字社、さらに国連代表部、それから二十日には、赤新月社の母子保健病院と旧国立小児総合病院、CPA本部、ユニセフ、さらにバグダッド市内のパレスチナ難民キャンプ、最終日の二十一日には、バグダッド市内の小学校を訪れました。
 まず最初に、ちょっとした事件と出くわしたのは、ヨルダンのシェラトンホテルに宿泊をしていたときに、我が党の土井党首の事務所からファクスが入りまして、実は、イラクを取材していた日本人フリージャーナリスト志葉玲さんという方が米軍に拘束されたらしいので、すぐ釈放するようにヨルダンなりイラクの大使館とすぐかけ合ってほしいというファクスが入りまして、実はその直後に、十七日の日に無事釈放されたということでありまして、わざわざシェラトンホテルに来ていただいて、十八日の午前中に志葉玲さんと、いろいろな現地の状況をあらかじめ教えてほしいということで、話を伺うことができました。
 彼が言うには、六月の八日にバグダッドの西約百キロ近くのラマディというところに出かけて、案内役のイラク人二人とラマディの病院とかを取材した後、大学を訪れて学生たちにインタビューをしていた。そうしたら、いきなり米軍に捕まって、拘束されて、米軍の拠点と言っていましたけれども、要するに捕虜収容所にほうり込まれた。その収容所というのもきちんとしたものじゃなくて、何かしらコンクリートの地面に鉄条網みたいなので囲っているだけ。一囲いに四、五十人のイラク人がいた、四つ囲いがあるから、大体二百人近くイラク人の捕虜が捕まっていたと言うんですね。
 それで、後ろ手に手錠をかけられて、大変な状態で、食料も満足に与えられなかったという、大変な目に遭ったと言っていました。日本人である自分よりもイラク人の方がもっと虐待されていたと言っていました。これはやはり国際法上、人道上問題になりませんかねと彼は言っておりました。
    〔委員長退席、浅野委員長代理着席〕
 それで、なぜ捕まったんですかと言ったら、いろいろとインタビューをしたんだけれども、その大学構内に米軍の実は秘密の基地、施設があったことを発見されたということで捕まったのが、理由はそうなんだろうなと。しかしながら、どうやらもう反米ジャーナリストというふうに決めつけられたみたいで、パスポートから何から全部所持品をとられたから。これは後ほど何とか戻ってきたみたいですけれども、そういう話でした。
 特にイラクに対していろいろな支援が必要だと思うし、自分もそういう視点でずっと取材したんだけれども、やはり自衛隊派遣のことにも彼は非常に関心がありまして、率直なところどうなんですかと聞いたら、もう迷惑ですよというふうにきつく言われました。それは私もこの委員会の中で何度か報告をし、意見も述べたんですけれども、特に医療とか教育とか、いろいろな形で日本人のNGOも頑張っている、ところが、そこに、自衛隊であろうが米軍であろうが軍服を着た人が入ってくると同じように見られてしまって、一般の民間人だって恨まれかねない、だから非常にそれは迷惑ですよということを率直に言っておられました。
 さて、視察の中身でありますけれども、時間の関係で駆け足になるかもしれませんが、まず、被害の状況の主なものを申し上げてみたいと思います。
 今回は、なるほど、十二年前の湾岸戦争のときのいわば無差別爆撃的な状況からすると、かなりターゲットを絞り込んだ攻撃を加えたんだなということの様子はうかがえます。ただ、そうはいっても、誤爆か何か知りませんけれども、ショッピングセンターそのものが破壊をされてしまったりとか、そういう状況がうかがえました。
 それと、クラスター弾を使って、その子爆弾を手に持った子供が大けがをしたりというのは新聞報道に出ていましたけれども、きょう午前中の藤田参考人の非常に生々しい報告にもありましたように、私たちは、劣化ウラン弾を使ったに違いないという思いを持ちながら入りましたけれども、その証拠そのものを押さえるべき場所には行くことはできませんでした。これは、午前中の藤田参考人が、実際に今回の戦争でも使って、非常に大変な状況にあるという御報告がありましたので、重複は避けたいと思います。
 それから、それぞれ各党の報告にもありましたように、バグダッド市内を初め地方都市でも、やはり略奪や放火による被害がひどいですね。爆撃を受けた後のビルに今度は放火をしてしまうとか、各省庁とかショッピングセンターなどが主にそういう被害の対象になったようでありますし、私たちが最終日に訪れた小学校でも、一番貧しいレベルの小学校だったんだけれども、やはり、とられるものはもうほとんどないと思っていたけれども、お金がほとんど入っていないはずの手持ち金庫が盗まれたとかロッカーが盗まれた、残っていたのは古びれた黒板だけだったとか、そういうふうな状況でありました。
 しかも、驚いたのは、地元のジャーナリストなどの話によりますと、一部では、米軍が手引きをしたというか、盗めと唆したとかと言うんですね。そんなことがあるのかなと思いましたけれども、しかし、それは現地の率直なそういうお話でありました。
 それから、この十二年余りの湾岸戦争後の長期にわたる経済制裁、やはりこの影響が一番大きい。
 これも各党からの報告のとおりでありまして、各種インフラ、例えば電気、水道、通信、特に今回の米軍などの攻撃は、フセインの国家防衛隊の指揮機能を麻痺させるために通信機能を完全に破壊しています。これは、今後戦後復興をやっていく上でも、もう現状は非常に不便です。同じバグダッド市内でも連絡がとれない。衛星携帯電話もままならない。ですから、ほとんどそういう通信手段がないから、いろいろな不便を来している。トランシーバーを使うのがやっとだという状況でありました。
 私たちが特に重点的に視察を行ったのは、医療の関係と教育の関係でございます。
 まず医療の関係なんですけれども、日本は、かつて十三ぐらい立派な病院を建ててあげて、当時は最新の医療機器類を送っているんですね。ところが、もうこの十五年間ぐらいで完全に老朽化をしてしまって、経済制裁のもとで一番必要な部品などすら入らない。それで、工夫をして急ごしらえで部品をつくって、何とかだましだまし医療器材を使っているというありさまでした。
 私たちが訪れた母子保健病院にしても、とにかく衛生状態が悪いです。水の関係ですね。それから電気の関係。電気が十分じゃないために、お昼は、私どもが行ったときで、バグダッドで一日目が四十七度、それから二日目は五十度を超えていました。そうすると、もう蒸しぶろみたいになっちゃうわけで、サウナみたいになるんですね、クーラーがききませんから。そういった中で、白血病などにかかった子供たちが、本当に生きるか死ぬかの瀬戸際で苦しむ中で、そういう本当に最悪の環境の中でベッドの上に横たわっているというふうなありさまでした。
 そして、お医者さんはそれなりにいるんですよと言っていました。ところが、やはり決定的に不足しているのは、看護師が足りませんというふうに言っていましたし、この保健病院では毎月九百人ぐらいのお産の件数を抱えているそうでありまして、ところが、この過酷な状況の中とはいえ、生まれてきた赤ちゃんに与えるワクチンがもうほとんどないということで、せっかく生まれても、かわいそうに、何カ月もしないで亡くなっていくというふうな状況が今なお続いているそうであります。
 それから、一番最後に訪れた学校の方を先に申し上げますと、本来はユニセフの御案内で行くはずだった小学校に行けませんでした。ユニセフで待っていたんですね。そうすると、アラブ時間というのがあるんですかね、午前八時に待ち合わせていたら全然来てくれませんで、たまたまそこに取材に来ていたイラク人の女性ジャーナリストからいろいろなインタビューを受けた後、その彼女が、何だったら私がユニセフの担当者と話をつけてあげましょうといって、訪れた小学校というのは、ユニセフの支援を受けているような学校はまだいい方なんですと、私たちが訪れたのはユニセフの支援すら受けられない小学校ということで、そこの黒板も本当に古びれていましたが、その黒板は、何と、ユニセフなどの支援を受けられる学校で使い古した黒板をいただくんだそうですね。
 たまたまその日は学年を上げるためのテストの日だったからかもしれませんけれども、筆箱を持っているような子が四人程度、それからノートを持っている子はゼロです。こういう白いペーパーを一枚持っている子が何人かという感じなんですね。だから、率直に子供たちが言っているのは、鉛筆ちょうだい、それから、ノートが欲しいなというふうなことを言っていました。
 ちなみに、そういう学校では、働いている先生は女性が多いんですけれども、お給料幾らですかと聞いたら、その学校ではやっとこの間給料がもらえたと。それで、三千ディナールですから、大体米ドルで二ドルです。だから、もうほとんどボランティア状態で一生懸命働いているという感じなんですね。それで、ユニセフの支援などを受けているような小学校の先生たちは幾らですかと聞いたら、そこで二万ディナールですから、約十三ドルぐらいの給料だそうです。それも、やっと最近もらえるようになったということでした。
 やはり、何よりもそうした医療、それから、非常に子供が多いですから教育、ここら辺は一刻も早く国際的な支援を必要としているというふうに思いました。
 それから、上下水道の関係もそうであります。まだ修復が十分いっていませんし、特にイラク国内、私たちはパレスチナというホテルに泊まりましたけれども、やはり飲料水は必ずペットボトルを持ち込まないと、移動するときもペットボトルというふうにしないと、まだ飲めません。
 そのほか気になったのは、いわゆるストリートチルドレン。戦争などの混乱で路上生活をする子供たちですね、戦災孤児。そして、食べるものももちろん満足にないです。結果として、窃盗などの犯罪に走る子供たちもふえているというふうに聞いております。
 それから、女性や子供への暴力の問題。戦争による生活的なあるいは心理的な荒廃状態から、女性への暴力が著しくふえているというふうにお聞きしました。そして、もちろんこれは、戦争で多くの兵士、男性が死んでいますので、母子家庭が急増して、秩序が悪化して、さらにこの危険にさらされている。
 バグダッドの中心街でも、女性とかそれから高齢者の物ごいですね、マネー、マネーと言って、ギブ・マネーと言って群がってくるんです。何か半世紀前の、敗戦後、終戦後の日本を思わせるような状況でありました。
 いずれにしても、各種支援をするに当たって、行政機構が完全に壊れています。普通、戦争といえば、そこの政府というのは残るものだけれども、今回の場合にはフセイン独裁下の政府そのものが吹き飛んでいますので、非常にいろいろな面で支障を来しているというふうに思います。
 ですから、地元の皆さん方は、なるほど、フセイン体制が崩壊したことは大いに歓迎だというふうに本当に言っています。しかしながら、いわゆる米政府が戦闘終結宣言を出してからもう二カ月たちますけれども、米軍やイギリス軍など、要するに外国軍の駐留が長引けば長引くほど、失業、それから、そういうもろもろのインフラが整っていないために、いろいろな反発だとかストレスがたまって、やはりいろいろな米軍等に対する攻撃がかえってふえてくるんではないかという感じがします。
 少なくとも、率直な印象としては、与党の皆さん方は、治安は徐々にではあるけれども回復してきているんじゃないかという御報告のようでありましたが、同じ、似たようなところを見ているのに何でそうなるのかなと率直に思いながら、受け取ったわけですね。
 私は、本当に治安がよくなっているとは、どこから見てもそういう印象を受けません。先ほど申し上げた高速道路を走っていくときの危険性も、強盗に遭うかもしれないと思いましたが、バグダッド市内に入っても、率直に、現地でいろいろな活動をしている日本人の皆さん、それから現地の皆さんからも注意をされたのは、夜歩きはだめだ、できるだけ車で移動するということだけじゃなくて、昼間だって、午後二時過ぎて路地裏とか商店街のシャッターが閉まりかけたときには、歩いたらやはり強盗なんかに遭いかねないから危ないよというぐらいのものがありますし、特に、あそこは金曜、土曜がお休みなんですかね。連日、休みの日は広場で、職をよこせ、そして外国軍は出ていけ、そういうふうなデモとか集会が頻繁に開かれています。唯一、米軍などにさしてそういう敵意を抱いていないのは子供たちぐらいでしょうか。暑いさなかであり、ひなたぼっこか何かかもしれませんね、戦車にくっついていくんですね、とまっていますから。それで、影がある方に子供は寄っていくぐらいのもので、ほとんどの人はかなり反感が強い。とても治安が、徐々にであれ、回復どころか、私は悪くなっていっているというのが率直な印象でありました。
 さて、問題は、自衛隊派遣の是非でありますけれども、私どもはまだ、戦闘地域か非戦闘地域かという議論がこの委員会でも相当交わされましたけれども、たとえ非戦闘地域という認識の場所であっても、いろいろな形で今後、米英軍等に対する反発、抵抗、場合によっては組織的な抵抗も出かねないというふうに思いますし、例えば今回、水の供給だとか輸送だとかというのが政府のお考えのようでありますけれども、あえて危険を承知で自衛隊を派遣するようなニーズはイラク現地の側にはないということをはっきり私は申し上げたいと思います。むしろ、先ほど医療、教育を例に申し上げましたけれども、もっと早急に支援してあげなければならないことがたくさんあるんだ。そういったところを、戦争前から多くの日本人たちがNGOなどの形で、目に見えなくとも、目立たなくとも、イラク人にとって必要なケアを一生懸命しているわけですから、そこら辺を我が国政府がきちっとサポートしていくということが大切だというふうに思いました。
 時間が来ましたので、以上で御報告にかえたいと思います。(拍手)
浅野委員長代理 ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
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浅野委員長代理 この際、一川保夫君から発言を求められておりますので、これを許します。一川保夫君。
一川委員 自由党の一川保夫でございます。
 委員長のお許しを得まして、実は我が党は、今回、イラクに現地の調査団を派遣しておりませんけれども、党の基本的な考え方を一言御報告させていただきたい、そう思っております。
 私はこの審査が始まったときに、野党の理事の皆さん方に、せっかく与党も野党もそれぞれ調査団を派遣して、現地のいろいろな報告をそれぞれされておりますけれども、より正確にお互いに客観的な状況を把握するためにも、情報交換をする場があってよろしいのではないかということを提案したことがございました。それが本日こうして、こういう形式で行われるということは非常に画期的なことでございますし、そういう面では、委員長初め理事の皆さん方に感謝を申し上げたい、そのように思っております。
 さて、私たち自由党は、基本的には憲法の一つの理念にのっとりまして、イラクの戦争後の厳しい現状なり、また、国連とかアメリカ軍、イギリス軍のいろいろなそういう動向とはかかわりなく、国連のPKO派遣決議というものがあれば我が国としてもPKO活動に積極的に対応すべきであるというふうな基本的な考え方を持っております。
 しかし、現実その決議がない以上、我が国の唯一の軍事力である自衛隊をイラクに派遣するという問題は、我が国の憲法上の解釈のあり方あるいは我が国の国際安全保障の基本的なあり方ということを考えてみた場合に、現地調査に入る以前の問題として判断すべき事柄ではないかということで、今回、現地調査に入ることを見合わせておりますということを、まず皆さん方にこの機会に御報告させていただきたいと思います。
 それぞれの各党の現地調査に入った皆さん方に、心から御苦労さまと申し上げたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
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浅野委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松宮勲君。
松宮委員 自由民主党の松宮勲でございます。
 ただいまは、各政党、イラクに、大変お忙しい中を、そして、恐らくは酷暑の厳しい気象条件の中で、ハードスケジュールで現地をつぶさに視察してこられた貴重な御報告を賜りました。大変大変参考になった次第でございます。
 しかし、先ほどの今川参考人のお話にもございましたように、私もつらつらお伺いさせていただきながら、治安状況一つとりましても、認識にどうして百八十度、表と裏、違いがあるのかということを痛感させられた次第でございます。恐らくは、お行きになられた時期、そして訪問された地域、訪問された相手方、あるいは物事を見る物差しによって、随分、コップ半分の水が、もう半分しかないのか、いや、まだ半分もあるぞということがよく言われておりますが、そういう違いのしからしめるところかなという感じもしたわけでございます。
 まず、私は、参考人の皆様方に御質問させていただく前に、時間が限られておりますけれども、今回のこの委員会にかけられておりますイラク復興支援法の立法を目指すゆえんは、一義的には、やはり国連決議一四八三号に求められると思います。
 国連決議一四八三は、御案内の、サダム・フセイン体制の打破を求めて直接行動に出ましたアメリカ、イギリスはもちろんのこと、徹底的に反対をしたフランス、ロシア、中国、そして安全保障の非常任理事国の中ではドイツも含めて、欠席したシリアを除く常任及び非常任理事国十四カ国すべてが全会一致でこれを是認しておる、賛成したという重い事実というのをしっかりと我々は受けとめるべきだと思います。
 そして、改めてもう一回、一四八三号を眼光紙背に徹してつらつら眺め熟読するに、前文の最後のパラのところで、イラクの情勢は改善されつつあるけれども、今なお国際社会の平和と安全にとって脅威であるということを認定しているわけです。そして、その認定の上で、具体的に本文一号から三十何号までいろいろと、国際社会、国連加盟国あるいは関係国際機関等に要請している。その第一項は、御案内のように、イラクの安定と安全の回復のために加盟国及び国際機関等に対する支援を要請し、さらに第二項では、インフラの復興はもちろんのこと、先ほど来御議論になっております復興支援に対しても、ここは加盟各国に対して支援を要請しておる。ここを我々は大変重大に受けとめるべきではないかという感じがいたします。
 なお、議論の過程で、昨日までの本委員会における数次にわたる議論でも、いわゆるCPA、連合国暫定当局の性格についての議論が幾多か展開されておりますけれども、私は、これまた、関係委員の皆様方には、決議一四八三号の第四項をよく熟読玩味していただきたいと思います。
 国連は、安保理事会は、全員一致で、当局、いわゆる占領当局に対して、いろいろな、多少書いてありますけれども、イラクにおける「安全で安定した状態の回復及びイラク国民が自らの政治的将来を自由に決定できる状態の創出に向けて努力することを含む、領土の実効的な統治を通じてイラク国民の福祉を増進することを要請する。」これが、国連決議本体の第四号の、素直なというより字句どおりのことでございますので、私どもはその辺をしっかりと頭に入れた上で、これからのイラク新法の、私自身は支援法の速やかな成立をこいねがうものであります。
 さらには、もう既に参考人の野党の先生方も御指摘されておられますように、十四カ国がイラク支援のために、この決議を受けてのこたえということで、実際に軍隊を派遣しておりますし、十五カ国が派遣を決定している。これもまた、我々にとっては大変重い、日本が国際社会の中でこれからどういう名誉ある地位を希求するのかということで、決定的に重要な判断材料となる重みのある現実があるということも、あわせて認識すべきだと思っております。
 いわば、本日の午前中の参考人、たしか前川参考人なりあるいは大野参考人のお話にもございましたように、石油資源の八十数%を中東地域に依存し、そして中東地域の最も大きな産油国の可能性を秘めて、いわば相対的には経済大国であるイラクの治安の回復とイラク国民の福祉の向上というのは、これは直接的に、先ほど申しました国際社会の安定と平和のためにも必要であるのみならず、我が国の安定と平和のためにも絶対的に必要なことである。こういうことを考えますと、私は、重ねてでございますけれども、ぜひともこのイラク新法の成立というのを願うわけであります。
 換言いたしますと、一国平和主義で再び通すのか、もう一皮むいて、日本が文字どおり名実ともに国際社会にふさわしい名誉ある地位を獲得するのか、この重大な、ワンステージアップすべきかどうかという決断を、今我々はこの新法の制定過程を通じて問われているんだろうと思います。
 そういう文脈のもとで、まず、杉浦参考人にお尋ねさせていただきたいと思います。
 法案で言うところの戦闘地域あるいは非戦闘地域については、もう概念論は申し上げるつもりはございません。私は憲法九条の制約はつとに十分に承知した上で、我々は、交戦権の行使、狭義の、正確な意味での武力の行使のためにイラクに自衛隊を派遣するわけじゃございません。治安は悪化しております。悪化しているからこそ、治安確保のための支援活動が、人道上の復興支援のための活動と車の両輪として法案では規定されているわけでございます。
 問題は、絶対安全は、もう一連の政府側の答弁でも明らかになっておりますが、あり得ません。あり得ないことを求めるんじゃなしに、現に皆さん方が、見方は違っても、治安はそれなりに改善しているのかあるいは悪化しているのかはともかくとして、それは、安全な地域というのは世界じゅうどこにもないわけです。
 翻ってみますと、私は四半世紀以上前にケンブリッジに留学しましたが、ケンブリッジに留学したときに大学側から言われた法第一条は、盗難保険に入りなさい、一人で日中小さな道を歩くなということでございますから、これは、もう世界じゅうどこにおいても絶対安全はないわけでございます。
 それを踏まえて、安全な地域というのが、法案上は防衛庁長官が実施区域を定めるということになっておりますけれども、ごらんになった観点から、杉浦参考人、具体的にごらんになった範囲内で、イラクで、もし自衛隊を派遣するとすると、どういう地域が相対的に安全な地域として想定されましょうか。
杉浦参考人 戦闘地域であるなしの問題はちょっとわきに置かせていただいて、私ども見てまいりまして、先方のニーズといいますか、非常に強い。
 まず、水ですね。水が、ともかく軍隊が二十万人近く行っている、その人たちの飲料、ペットボトル二本で洗濯までしなきゃいかぬという、あの暑い中で大変ですね。それから、一般のあれも不足しています。国連も、私ども会いましたが、日本の自衛隊の浄水能力は高く評価されていますから、日本が水をつくってくれると国連の方もありがたい、連絡を密にしてやってほしいと言っておられました。
 これは、一つは場所ですけれども、バグダッド国際空港の中に連合軍がいるんです。二十八つくったというサダムの宮殿の一つに連合軍が入っていまして、中央司令部ですね、その前に大きな池があるんですよ、池というか沼というか。チグリス川から補給されていて、なくならないそうですけれども、立派な宮殿の池です。一緒に行った自衛隊の方の話だと、百メーター四方の水面があれば、しかも水が補給されていればフルに活動できるとおっしゃっているんです。だから、あそこなんかはいい場所じゃないかと我々は話したんです。
 つまり、バグダッド空港は、五キロ四方をアメリカ軍が厳重に警備しています。もう猫の子一匹入れない。超安全の中、大きな池があってチグリス川から水が入っているわけだから、我々、ここで浄水活動をやったらいいな、つくって受け取ってもらえばいいわけですからね、それはいいなと。
 それから空輸ですね、物資、人員の。これも非常に必要だ、C130を出してもらえるならありがたいということでした。
 というのは、イラクはもう民間航空が壊滅して飛行機が飛んでいませんから、人、物の輸送は、陸上か、あるいはC130が十八機あるそうです、各国が提供して。実働はそのうち半分もないです、整備がありますから。それで、今のところ稼働している空港は四つ、もっとふやすそうですが。その間の人員、日本でいえば民間航空が担っているような移動、物資の補給、急患の移動とか、そういうのを一切やっているんですね。私どもに会いに来たNGOの一人が、北の方のクルド人地域にいたんですが、国連の、国連のというか、C130に潜り込みまして来たと言っていました。そういうようにNGOの移動のためにも、大変なんですね、何機あってもいいと。これは大変重要な、必要とされていることではないかと思いました。
 治安の問題についてもいろいろおっしゃいましたが、イギリスが民間航空を入れるそうです、七月末、二十八日とか言いましたか。バグダッド、バスラ、四千メーター級の滑走路ですから。英軍は、したがって近々移転するそうです。バスラを空港に転用する、ターミナルビルに英軍は入っていますので、別のところへ移転すると言っていました。そういうのが入ってきても、それは骨だけですから、地方空港に人を移動するというようなことになると非常に喜ばれるんじゃないかというふうな印象を受けました。そのほか陸送もありますが、現在はちょっと治安が悪くて危険だとかいうことがありますので。
 ウンムカスルの港は、日本が二百五十万ドル緊急支援して、しゅんせつをやりました。我々見に行ったんですが、しゅんせつが完了して、三万トンクラスの船が接岸できるようになっていました。大きな船が着いて、あれはタイの米と言っていましたね、陸揚げしていました、人道支援米を。将来は、ウンムカスルの港へバルクの支援が来て、そこから陸揚げされて、食糧その他、本格的に供給することになると思うんですが、将来の問題としては、治安がうんと改善されれば陸送もあるかなと、個人的な印象ですが。
 さきの二つは、向こうもぜひということを言っておられました。
松宮委員 バグダッド等に派遣する、相対的に安全な地域というのはあり得るし、また、水の浄水、補給あるいは輸送業務等、派遣された自衛隊が貢献すべき分野はあるというお話でございまして、私も、ぜひともそういう方向での自衛隊の貢献というのを期待いたしたいと思います。
 次に、末松参考人にお伺いしたいと思います。
 陳述の中ではなかったんですが、配付された民主党さんの資料の中に武器使用基準についてのくだりがございまして、「現在の防護武器や、武器使用基準では不十分との見解が多かった。」というのは、お会いになった現地の関係者が御指摘になったことをおまとめになられたのか、それとも、末松参考人御自身あるいは民主党の調査団のメンバーの先生方が一様にお感じになられた認識であるのか。もしそうであるとするならば、具体的に、武器使用基準について、もし自衛隊を派遣するとするならばどうすべきか、お答えいただきたいと思います。個人的には私は、できれば国際スタンダードで自衛隊に出ていっていただきたい、こういう気持ちでございますけれども、いかがでございましょうか。
末松参考人 お答えします。
 武器使用の、武器の程度とそれから基準についてというお話がありました。
 私ども、日本の法律、知っておりますから、そこで現地のいろいろな人たちに、米軍も含めていろいろと聞いてみたんです。実際に、例えば自衛隊が行くとしたら武器はどの程度持っていけばいいんだというふうに会う人ごと聞いていったんです。そうしたら、それは脅威の程度によるだろうと。では脅威は何だという話をしたら、確かに、手りゅう弾、マシンガンそれから対戦車ミサイル、かなり正確に撃ってくると言うんですね。米軍車両がやられて、そしてよく米人が死んでいるという話がございました。だから、そういったことを話した後で、では、やはりけん銃とかじゃ足りないかなと言ったら、当たり前じゃないかという話を言われたということ、それを総合してきたということ。
 あと、日本の特殊な、特殊なといいますか、憲法の制約からくる活動基準それから武器の使用についてというのも、実は、例えば拉致されたら、なかなかそこは憲法上、法律上できないんだとか、それを拉致仕返ししたりするとか、そういったことを言ったら、いや、それじゃやめた方がいいのじゃないか、それはほかの軍で守ってもらえるような状況がない限り厳しいよねという話、そういった話を総合してその報告書に書いたということでございます。
松宮委員 残念ながら、もう終了時間という通告が参りましたが、個人的には私は、名もなき一般の市民も含めて、現地で多くのNGOや国際機関等の人たちが献身的なイラク復興のための努力を毎日酷暑の中でしていらっしゃるわけでございますから、NGO等の人たちが、治安が悪化し、あるいはそうかもわかりません、悪化している中で、懸命なる献身的な活動をしているのであるならば、しっかりとした、武器使用基準は改めないにしましても、ROEについては、現実に即した、柔軟、フレキシビリティーを持たせたROEで、自衛隊が派遣されることになった暁には大いにその任務を果たしていただきたいという期待を最後に述べさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
浅野委員長代理 次に、原口一博君。
原口委員 民主党の原口一博でございます。
 各調査団の皆様に、まずお礼を申し上げたいと思います。
 そして、与党、野党の違いは、やはり治安とそれから具体的なニーズ、ここが違いますので、この二点に絞ってお尋ねをします。
 まず、真っ先にイラクに入り、そしてこのイラク戦争が始まる前からもイラクで定点観測をされてきた、平和の使者であります首藤議員に伺います。
 この政府から出された「実施の可能性があると想定される業務の例」の中に、「イラク国内における水の浄化・補給・配給」といったものが書いてあります。果たしてこれは自衛隊でなければできないものなのか。そして、実際にイラクにはどのようなニーズがあるのか、まず一点お尋ねをしたい。
 二点目は、各国が確かに軍を出していますが、どうも国内には、いわゆる軍を出す、自衛隊を出すことの方がより有効で、国際貢献としては高いんだというような、これは、ある意味では、一種誤解に基づくような議論がされている向きもございます。国際社会の中で、イラクに軍を出している国々がどういうロジックでイラクの復興にかかわっているのか、実際に現場に行かれた立場からお尋ねをいたします。
 それから、末松参考人に、この中で具体的な自衛隊のニーズというのはなかなか見つけ出しにくかった、そして治安についても、この戦争は、ある日イラク軍が軍服を脱いで市中に戻ったような戦争でございまして、先ほど参考人からございましたように、ファルージャでの衝突がきっかけとなって、またさらに治安が悪化するというような御報告がございましたが、治安の現況について。
 以上三点についてお尋ねを申し上げます。
首藤参考人 原口委員の御質問にお答えいたします。
 まず、水の浄化でございますけれども、水の浄化というのは、別に自衛隊だけが得意としているものでもございません。皆さん、余りお気づきにならないかと思いますけれども、例えばガソリンスタンド、ここでいろいろ水を使います。そこで油なんかが入るわけですね。それを実は簡単な装置によって純化して、リサイクルして使っていたりするんです。ですから、今、水の浄化というのは、そうした一般生活用水、例えば洗濯をしたりいろいろしたりするそういったレベル、これは中水と言ったりする場合もありますけれども、そういった水とかはもう簡単につくれるわけです。
 さらに、では紛争地で水はどうやって獲得しているかといいますと、これは逆浸透膜、リバースオスモシスというんですけれども、電気さえあれば、水に圧力をかけまして、逆浸透膜というものを使って、それはちょうど、皆さんが、要するに水道のカルキが臭いとかなんとかいって水道のあれにつけるのがありますが、あれと同じような仕組みなんですね。ですから、実はそれで簡単に、塩分も、それから塩分以外のいろいろなものも取れるわけです。
 ですから、紛争地ではどうしているかというと、それは今までもう幾つもいろいろな紛争地がありまして、NGOでも物すごい巨大な浄水装置を持っていまして、それが二十四時間体制でどこへでも飛べるようになっているんです。特にMSF、国境なき医師団などは、本当に、本部があって、二十四時間でそういうものを運べるようになってくる。
 ですから、そういうものでつくりまして、それを、巨大なゴムの水まくらみたいなものでございますけれども、そこに大量に入れまして、それでいろいろなところに置いておく。それを孤児院とか病院とかで使うということです。
 では、自衛隊の持っている浄水装置はどうかというと、これは戦場で使うための装置なんです。ですから、弾がびゅんびゅん飛んでくるところで、ひょっとしたら浄水車に弾が当たるかもしれないということで、防弾もしている。それから、水タンクに弾が当たっては水が流れてしまって役に立たないので、それも防弾してある。そういうことで、非常に装甲の張ったものをやっているんですね。ですから、小規模であって、余り大きいとねらわれてしまいますから、例えば自衛隊が持っている自走式のものだと大体五トンぐらいですね。
 しかし、実際、皆さん、市中を走っているとごらんになるように、散水車というのは巨大ですね。ああいうものがむしろ今必要となってきて、現実に、パレスチナで水が足りませんけれども、日本がODAを使って出しているものは、そうした巨大な水タンクの車だということです。
 ですから、自衛隊の水処理とか水の運搬というのはあくまでも戦場で使うというものであって、今、戦争が終わった段階では、ほとんど必要のない、むだなものだということであります。
 それからもう一つは、今、確かに各国が軍隊を出しております。先ほどの委員の方から、CPAは世界の国がみんな支援しているということをおっしゃっていましたけれども、そうじゃなくて、例えばフランスとか中国、ロシア、安保理の五大国のうち三カ国はそこに今参加していないんです。
 では、軍隊をたくさん送ってきているじゃないか、偉いなというふうに考えられる方がおられるかもしれませんが、それは誤解でありまして、多くの参加している国は、残念ながら、日本のように設備もなければ、お金もなければ、JICAのような組織もない。とりあえず何かできるとしたら、お金もないけれども唯一あって余っているのは軍隊だということで、まず軍隊を送っているということなんですね。
 ですから、たくさん軍隊を送っている国はありますけれども、それを我が国の場合と並列に並べることはできない、私はそういうふうに考えております。
末松参考人 自衛隊のニーズについてお話がございました。
 自衛隊を派遣するときに、ニーズの観点からいえば幾つかあるんだろうと思いますけれども、一点は、自衛隊に能力があるかどうかというところがあると思います。例えば機雷の除去、地雷の除去、こういったことは、ニーズはあるにはあったんですが、どうも、やはり自衛隊としてそこは余り習熟をしていないという状況でございました。
 それから、では、民間にできるところは任せることがいいんじゃないかという話でございましたので、その観点から、例えば自衛隊でよくやっている橋の補修とか道路の補修とか、そういうことはどうだろうという話がございました。そうしたら、今、民間の専門家、イラク人もたくさんいますので、それを使って、失業している人たちを使ってくれればありがたいというような話がございました。
 それから、先ほど杉浦先生の方で言われました、例えば空港で、絶対安全な地域で、そこで水をという話がありますけれども、むしろ、それであれば、例えばバグダッドの水道施設、これを根本的にきちんと強化してやればいいんだ、これも民間でできることだろうというお話がございましたし、また、いろいろと考えたんですね、C130でヨルダンからバグダッドまでシャトルすればいいんじゃないか。一機大体二十トンぐらい運べるということでございました。それもどうかなと思ったんですが、そうしたら、例えば、私は、国境、行った方は皆ごらんになっていると思いますけれども、数百台、数千台の二十トントラックが毎日毎日往復をしているわけですよ。彼らをどんどんもっと使ってあげればさらにこれはいいのかなと。
 だから、自衛隊でしなきゃいけないといったときに、ちょっと安全面は、やはりそこで考えてきたら大きなネックになる。
 二番目の質問に移りますけれども、治安については、先ほど申し上げましたように、安全面、治安の面で、今失業している軍隊あるいはいろいろな公務員も含めて、こういった人たちがいつ物取りになるかわからない非常に厳しい現在の状況ですし、六十名前後米軍も戦争が終わってから死んでおりますし、そんな状況を考えると、やはり厳しいだろうなと思っております。
原口委員 今お話しのように、イラクに入りますと、皆さんお気づきのように、ほかの中東諸国と違って、チグリス、ユーフラテス川があって、かんがい施設があって、水自体はあるんです。しかしこれが、長年のインフラ整備のおくれによって使える水が少ない、あるいは汚染をされている。
 そこで、杉浦参考人にお伺いします。
 やはり水の問題、これは大事な問題です。攻撃によって水の施設が壊されたのか、それとも、新たに二十万人の皆さんがお見えになって、その人たちに対する水の供給がないのか、あるいは別の原因によって汚染されているのか、その辺はどのようにお考えなのかというのが一点。
 もう一つは、大幅な修正を九名の皆さんで議論されたということでございます。大変率直な、杉浦先生らしい御正直な御報告だったと思いますが、どの点が一番、皆さんの与党の団の中で違いがあったのか。この二点を杉浦参考人に伺います。
 それから、今川参考人、緒方参考人、特に子供の視点で調査していただいたことを非常に大事に思います。五百万人の皆さん、子供たちをいかに学校に戻すかということ。特に劣化ウラン弾の影響について、私もずっと、このイラクに入ってみて、かねてから主張をしているところでございます。きのう外務大臣は、まさにコソボの例を引いて、九九年にコソボ紛争は起こるんですが、二〇〇一年の報告でもってこれは影響ないというようなことをおっしゃいましたが、果たしてこれでイラクの国民が納得できるのか。
 そして、これは最後になりますが、首藤参考人に伺います。
 文化のことについてはどの調査団もお触れになっていません。アイデンティティーというか、米軍のイラク攻撃によって、博物館が襲われて、メソポタミア文明、まさにイラクの人たちが最も大切にしているもの、それさえも略奪を受けたというのは、これはとても大きなことだと思いますので、このことについて皆さんはどう思っていらっしゃるのか。
 以上、たくさん聞いて大変申しわけありませんが、杉浦参考人の方からまずお伺いしたいと思います。
杉浦参考人 まず、水の問題でございますが、水道、浄水場から送水管等の施設は、空爆ではやられていないみたいですね。これはもう投資不足、ともかく根本的に全部やり直さないといけないぐらい投資不足であったということのようです。しかし、これもこれから本格的な復興をさせて、もちろんCPAも国連も全力を挙げて、下水もありますけれども、下水もひどい状態でしたが、やっていくということでございますが、これは復旧に相当時間がかかると思います。一年かかるのか二年かかるのか、専門家が調べないとわかりませんが、お金も時間も要るという認識でございます。
 首藤先生がおっしゃいましたが、自衛隊が当面、水の浄化、供給、配給をやるというのは物すごく期待されているんです。これは国連の諸活動においても、軍の関係者、給水は期待されているという面もあります。クウェートから運んでいるらしいんですよ。クウェートから運んでいるうち、半分ぐらいは水だというんですよ。それは本当にひどい状態で、これは自衛隊の機器を当面持っていってつなぐ、あわせて本格的な水道機能の回復を図っていくでしょうけれども、機能を回復すればもう引き揚げればいいわけです。
 それから、NGOが本格的に入って、何ら治安等に万一の心配がないという状況になればNGOに任せられるときも来るかもしれませんが、丸裸のNGOがまだやれる状況ではないと思います。きちっとこの機能を守らないと、ちょっとふたがあきますとすぐ、ともかく政府がない状態ですから、強奪の対象になるという状況は一方でございますので。
 それから、一般的にインフラが不足していますから、自衛隊のように、食糧から何もかも自分で賄える、電気も発電もできますよ。今、電気はしょっちゅう停電ですから、一般の機械を動かすといったってとても大変じゃないでしょうか。自衛隊の場合は、自家発電機で電力を起こして、それで水を浄化するということですから、当面、半年、一年ぐらいは有用ではないかというふうに思いました。
 それから、修正点はあらゆる面に及びましたが、一番議論したのはやはり治安です、治安についての認識。人それぞれ違いますから、各党とも違うと同じように、私どもも、この表現でいいだろうか、やはりこの方が適切じゃないだろうかという、治安の部分、ほかの面もありますが、一番議論して、これだけよくまとまったと思います。
 以上でございます。
今川参考人 先に劣化ウランの方をちょっと申し上げて、あと、子供の関係は、よろしければ山内参考人の方にと思います。
 劣化ウラン弾のことは先ほどもちょっと触れたんですが、私が先般の委員会で川口外務大臣とやりとりをしたときに、外務大臣の方は、米側の報告による限り今回は使ったとは言っていないだとか、あるいは、仮に湾岸戦争とかコソボでも使ったにしても影響はほとんどないだとかという報告をうのみにするんですかということで非常に私は憤慨したんですけれども、現にNGOの皆さん方が既に支援活動に入っています。
 そうすると、一番懸念すべきことは、治安の状況もあるけれども、それ以上にやはりイラクの人たち及び自分たちの健康状態だということで、先ほどの藤田参考人は、現実に撃ち込まれたというところまで特定して、ガイガーカウンターで明らかにこれはウラン弾だということを特定しているわけですから。やはりこれは我が国政府が、特に先進国の中でも放射能被曝ということに関して非常に医療技術も高いし、詳しいわけですから、ぜひ政府として責任を持って調査団を派遣して、そして米側とも十分協議をしながら、安全なところ、ウラン弾が使われたかもしれないところというのをきちっと区分けしないと、私は自衛隊派遣には反対でありますけれども、自衛隊を派遣しようがNGOを派遣しようが、やはり非常に危険だと思います。イラクの国民の皆さん方は、言っているように、長く放置すればするほど、使われたと見られるところでずっと溶け込んでいって地下水に流れ込んでいくという問題がありますから、これは、どの地域は安全とか安全でないというふうにはならないと思っています。
 私はこの問題を非常に深刻に受けとめていますので、政府の責任できちっとしていただければというふうに考えます。
山内参考人 急遽時間をいただきまして、ありがとうございます。山内惠子です。
 これは学校なんですけれども、ユニセフの支援も来ない学校でした。(写真を示す)この前に戦車がありましたので、治安のために学校を監視しているのかと思いましたら、これは病院のためだそうですけれども、子供たちが近寄って大変危ないのでということでバラ線を張っているので、今は子供たちは行っていません。ここにいる親たちは、治安のために親たちが子供の送り迎えをしている。しかも、この日は進級試験がある日だったので、一時間ごとに入っていく子、帰ってくる子がいるので、親はこれを待っている状況でした。
 これはユニセフの応援のない学校ということで、本当に貧しい学校だったと思いますが、私は、戦前、十二月のところを一週間、戦後も見てきましたが、やはり湾岸戦争以降の経済制裁の悲劇も相当あると思います。先生方は無給で働いていて、二千ディナール、三千ディナールというお金は、紙幣も古いものでもらってしまったので、今は使えない。しかもそれは、ホテルでとったスパゲッティを二皿食べればなくなるような金額、それも使えないそうですけれども、こういう状況です。
 戦争前の子供たちは二部制で、小学校十二クラスあれば、一クラスは午前中、午後はもう一つの一クラスということで使っているそうですから、学校の支援というのは私たちがやれることだと思います。そういう状況に今あります。
 以上です。
首藤参考人 原口委員には貴重な問題を指摘していただいて、本当にありがとうございます。恐らく、原口委員もイラクへ行かれて現場で調査されたときにそういう視点をもし述べられたら、イラクの人たちは本当に、ああ、日本人は問題がわかっているんだ、やはり戦後の苦しい時期を乗り越えてきた日本人だなと、本当にイラクの人は感激したと思うんですよ。
 というのは、我々はみんな、何といいますか、電力がないとか水がないとか食糧がないとか医薬品がないとか言っていますけれども、やはり一番ないのは、文化とか音楽がないこととか、そういうものなんですね。要するに、自分たちが大事にしているものが失われてしまったということがやはり非常につらいわけですよ。
 そして、アフガニスタンで、民主党も早い時期に復興のためにいろいろなことをやりましたけれども、その一つの中に、アフガニスタンの伝統音楽、タリバンが破壊し尽くした伝統音楽を回復させるというのがありました。非常に高く評価されました。
 同じように、やはりイラクの人たちは、自分たちを、イラクというよりはむしろメソポタミアの民として位置づけています。ですから、人類発祥の地であり、ギルガメシュ伝説に見られるように、環境問題もすべて自分のところから始まったんだ、こういう視点なんですね。そういうところで、彼らが一番大事にしている博物館が荒らされたということは、大変大きな問題だと思います。
 それからもう一つ、文化だけではなくて、宗教もそうなんですね。例えば、最近南部でイギリス兵が殺された。その理由の一つに、どうも、隠している武器を探すために犬を使ったんじゃないかということが言われているんですね。犬は、アラブ社会の中でこれはもう非常に忌み嫌われているものなんです。それが、例えば男性が入ることでもタブーなところに、犬が、不浄な動物が入り込んでくるということがまた一つの大きな問題を生み出したんではないかと言われています。
 それから、もう一つ非常に大きな問題としては、今までフセイン政権という、どっちかというと西欧化を目指し、世俗化を目指していた政権がなくなった後に、各地で、今まで抑えつけられた伝統文化、伝統的価値観、伝統的宗教、宗派というものが一斉に立ち上がってきているということです。
 この視点が忘れられているわけで、これは治安の問題とも非常に密接に関係があるんですけれども、例えば南部においては、禁止されていたシーア派の儀式というものが今また復活してきました。つい最近でも、私も行ったナジャフのアリの廟のところで、小さな廟ですけれども、二百万人が集まって、要するに、胸をたたいてシーア派のしぐさをするわけですけれども、それをやったというふうになっています。
 ですから、今後、原口委員御指摘のとおり、このイラクの復興、そして私たちが何をするかという点において、この文化の問題というのは避けて通れない重要な問題であると考えております。
原口委員 与党の中でも治安についての違いがあったということで、やはり法案の中にしっかりと、武器使用基準やさまざまな問題についてもしっかり議論を詰めていかなきゃいけない、このことを指摘させていただきまして、質疑を終わります。
 ありがとうございました。
浅野委員長代理 参考人の先生方に申し上げます。
 質問者はそれぞれ持ち時間十五分で質問をしております。難しいとは思いますが、そのことを念頭に置いてお答えをいただけるとありがたいと存じます。
 次に、丸谷佳織君。
丸谷委員 公明党の丸谷佳織です。どうぞよろしくお願いいたします。
 なるべく各党の議員の皆さんに質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。また、酷暑の中、現場を見なくて議員の発言なしという思いで、各政党、視察にいらっしゃったことに、大変敬意を表させていただきたいと思います。
 では、まず、せっかくいらっしゃいますので、斉藤議員にお伺いをしたいと思うんですけれども、今、各国、イラクにおきまして支援活動、軍も含めてされているという現状だと思いますけれども、各国、それぞれの国内法にのっとり、あるいは憲法にのっとって、各国ができる範囲内で支援をしているというふうに考えます。
 もし、この法律が通過をしまして我が国からも自衛隊が支援をするということであれば、もちろん憲法の精神にのっとって、憲法の枠内でできることをやるということになるんだと思いますけれども、こういった我が国の自衛隊の貢献のあり方について、例えば米英軍等の理解度というのは、理解は得られるものなのかどうか、こういったことに関して何か御感想があればお願いいたします。
斉藤参考人 丸谷さんにお答えいたします。
 我々、CPA、暫定施政局もしくは暫定行政局、国連事務総長特別代表事務所、それからCJTF、これは連合の総司令部、ですから、行政、軍そして国連、それぞれのトップの方にお会いし、また、ナンバーツー、ナンバースリーの方ともお会いをしたわけですが、皆様いずれも、日本の自衛隊の憲法上の位置そして制約については、よく御存じでございました。
 先ほど杉浦団長の方からお話がありましたけれども、そういう制約はよくわかっていると。何が我々に期待されるでしょうかというお話をしましたところ、それは、日本の憲法や法律にのっとってみずから主体的に決めていただくことですということでございますので、日本の自衛隊の置かれている地位についての理解は進んでいる、このように感じました。
丸谷委員 ありがとうございます。
 先ほど来、各党、視察団によって治安というものに関する認識というのが若干違うのかなという印象を、私も、お伺いをしておりまして受けました。
 その中で、治安維持活動及び行政サービスというものについて若干お話をお伺いしたいと思うんですけれども、斉藤議員が与党視察団の中でお会いされた中で、第八二空挺師団の第一大隊長の方に話を伺ったというレポートがございました。この中で、例えばバグダッドであれば、十二区に分けて、一区が三十万から五十万ぐらいの人口規模になるだろうということだったんですけれども、こういったそれぞれの区において、今行政サービスはどのような形になっているのか、また、それを監督しているのは、今、だれがどのような形で行っているのか、この現状をお伺いします。
斉藤参考人 一区三十万から五十万という人口に対して一大隊、ちょっと人数は今ぱっと出てきませんが、ここに書いてございますが、八百人の米軍でいわゆる市役所的な行政統治機構を行っているということでした。私が大隊長に、では、市役所の区長さんですねというふうに聞きましたところ、いや、私は軍人の訓練しか受けていないので、行政のことはわからないんだけれども、できるだけ早くこの行政機能が回復するような支援もぜひいただきたい、こういうことでした。
 そこで、御質問ですけれども、主に警察、給油所、炊事に必要なプロパンガスそれから病院等、特に現在ニーズが高いところにこの八百人が手分けをして出かけていって治安の維持に当たっている、こういうことでございました。
 警察署に行きましたら、そこに派遣されている部隊員は五人、それに対して現地の方が十人程度いらっしゃって、その地域の治安活動の中心拠点になっている、こういうことでございました。
 非常に手薄である、行政についての訓練を受けていない、できるだけ早くCPAもしくはそれに続くIIAを立ち上げて行政機能を取り戻したい、そのための非常に重要な項目として、先ほどからも各党からもありましたように、給料が支払われていない状況だそうでございますので、その点もぜひ早く対処したいというお答えでした。
丸谷委員 ありがとうございます。
 行政サービス、また、ひいては暫定統治機構、そして、本格的な新政権の樹立に向けて我が国がどのような形で貢献をしていけるのか、このことも中長期的な問題として考えていかなければいけないと思いますけれども、末松議員にお伺いをしたいと思います。
 民主党の調査団の方でも、例えばブレマー文民行政官にお会いをされまして、今後七月中旬か、あるいは九月ぐらいになるであろうとも言われておりますけれども、暫定統治機構の設立についてお話をされてきたと思うんですけれども――会っていない。実際に、今後、暫定統治機構の方を設置するに当たっては、最初は六月ぐらいに発足をさせたいということだったのですが、それがだんだん延びてきているという背景には、それぞれ部族とか各宗派による対立等の難しさ、あるいは、占領軍であっても、当然力ではそこを設立できないという非常に難しい、またセンシティブな問題があるというふうに思います。
 こういった分野で、今、国連はその暫定統治機構の設立に向かって力を注いでいることと思うんですけれども、例えばこの分野で我が国ができることもあると思います。そういった国連と協力をしての暫定統治機構の設立に向けた努力等の援助というのはあったでしょうか。
末松参考人 ありがとうございます。
 委員御指摘のとおり、非常にセンシティブなことを今CPAの方でやっております。ブレマーさんとはちょっとお会いはできなかったんですけれども、ただ、そこで、本当に、各諸部族、諸宗派すべてを、民族のモザイクと言われているイラクでうまく統合していかなきゃいけない。しかも、スンニ派という、先ほど申し上げたように、反米とか親サッダームとかいうふうな、そういった部族が多いですから、そこをきちんと束ねるには大変な努力と思います。
 そのために、では日本が何をできるかという話になりますと、統治については、決議一四八三で、第一義的にはCPAが責任を持っていて、国連はそれを、ドナー国が集まって支援をしていこうねということになると思います。だから、国連の観点から日本がやるとするならば、国連に、日本のリエゾンオフィサーを現地へ置いて、そして何がニーズかというのをどんどん発掘していくような、そういったことがまず第一に考えられると思います。それで日本の支援を随時決めていく、この仕組みがいいと思います。
丸谷委員 また、アラビストとして末松議員にお考えをお伺いしたいんですけれども、例えばこういった統治機構の設立に当たっては、国連に対しての非常に強い要請があるというのが、やはり各宗派から、あるいは部族から中立である、ある程度一定の距離が置いてあるというところが理由かなと私は思うんですけれども、例えば、日本がこの法律によって自衛隊を送り出した場合、イラク側にとって、こういった日本に求められている中立性とか、ある一定の距離を置いたという感覚が失われると思われるでしょうか。
 また、この法律によって自衛隊を出さない場合、例えばもう一つの柱としまして、文民による、各省庁の代表ですとか一般民間人の皆さんによる人道復興支援隊というのも一つ柱にありますが、この人たちであれば支援をイラクに出してもいいというお考えなのか。この二点についてお伺いします。
末松参考人 占領軍に対して、やはりさまざまな感情があります。親サッダームのサッダームシンパはとんでもないという話ですし、また、ほかの人は、いや、サッダーム政権は吹き飛んでよかったと、そういった複雑な思いです。
 日本に対してどうかというと、やはり日本は中立というイメージで、非常に親日的なんです。これは、ヨルダンとかあるいはイラクの人たち何人にも当たって聞いてみたんですが、やはり日本の軍隊は行かない方がいいというのが大方の見方だったんですね。それを聞いてきたものですから、私たちとして、できれば、ジャパニーズアーミーととらえられるような、それが、要するに米軍と密接に関連しているようなことは、できたら避けた方がいいなという思いを持ちました。基本的にはそういうことです。
丸谷委員 そうしましたら、緒方議員にお伺いをさせていただきます。
 大変大ざっぱな理解度で恐縮なんですけれども、今、イラクの国民にとって、あるいはイラクにとって求められるもの、それは国連の援助であるというようなお話の理解をさせていただいたんですが、例えばそういった国連の支援をするに当たって、私が伺ったユニセフの方のお話ですと、水道の修理をするに当たっても、やはり治安の維持を確保していただかなければいけない、その治安の維持を確保するのは、ユニセフのような国連機関ではなくて、やはり英米軍のような人たちの任務であるといった発言もあったわけなんですけれども、これだけ、お話に伺ったような治安状況が悪い中、イラクの国民にとって、この治安の回復と治安の維持を図るのは、例えば、米英軍でなく、また自衛隊ではなければ、だれがどういったような形でこの治安の確保と維持をするべきだとお考えになるのか、この点をお伺いします。
緒方参考人 お答えいたします。
 まず、イラクの国民にとっての第一の必要というのは、先ほど話したような山積みの諸課題があるわけです。それをやるために、ではどうするのか。私は、現地でフランス、ドイツの臨時代理大使ともお話ししましたけれども、彼らは共通して、今一番求められているのは国連の役割、しかもその国連にキーロールを与えなきゃいけない、そういう話が大変印象的でした。
 それならば、では、我々が見てきて、治安が問題だと言っているその問題をどう解決するのかということが質問の趣旨だと思いますけれども、それについては、先ほど申し上げましたように、なぜ治安が悪くなっているのかというその原因をよく考える必要があるんですね。
 要するに、治安が悪くなっている理由というのは、一つは、犯罪者四十万人を釈放しちゃったんですよ、戦争の前後に。これが、一つ、非常に悪くなっている理由。それともう一つは、もとの軍人、四十万とも五十万とも言われる軍人、それが武器を持ったまま国民の中に入っている。これが一つ理由になっているわけですね。それが、米軍が掃討作戦をするということによってそういう彼らの策動する余地を国民の中で見出しているという、それが現状にあるわけです。
 だから、どうしたら一番いいか。先ほど言ったように、国連でも、それからまたどこでも、本当に、イラク人による警察の再建、もうこれが、CPAもそうでしたし、どこでもこれが一番課題になっているんですね。これはやろうと思えばできるんですよ。イラクには能力がある、そしてまた国家機構もしっかりしていたので、一番上はともかくとして、そのものを使えるというのが非常に共通した見方でした。
 ですから、私は、その点で、そうした治安をしっかり保ちながら、そして実際に非武装の人道支援が可能になる、そういうふうに考えております。
丸谷委員 時間がなくなりましたので、今川議員、山内議員、質問できませんで申しわけございませんでした。
 以上です。ありがとうございました。
浅野委員長代理 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。
 我々の党が派遣をしなかった、現地視察ということをしなかった理由は先ほど一川委員から話したとおりでございますが、とはいっても、本日、現地に行かれた皆様方よりこうやって状況をお聞かせ願えることができたことを心より感謝申し上げたいと思います。
 さて、私が聞きたいこと、たくさんあるんですけれども、全員の方々に聞くわけには多分いかないと思いますので、聞かれなかった方、大変申しわけございません。先におわびをしたいと思います。
 まず最初に杉浦参考人にお伺いをいたしたいんですけれども、先日、私もマスコミで杉浦参考人の御発言を見たり聞いたりいたしました。杉浦参考人は、戦闘地域と非戦闘地域を分けるのは意味がない、すべて非戦闘地域だというようなことをマスコミにおっしゃられ、そしてそれが、マスコミを通じて私も見たり聞いたりしたわけでございます。
 今、この法案審議に際して、まさに、本当に現地に行かれて見てきた方々のその言葉というのは非常に重いものがあると思います。杉浦参考人、戦闘地域と非戦闘地域を分けるのは意味がない、その意味がないというその根拠、そしてすべて非戦闘地域だという根拠、もしもおっしゃられたその理由というか根拠をお教え願えればありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
    〔浅野委員長代理退席、委員長着席〕
杉浦参考人 今法案で審議されている、戦闘地域か非戦闘地域かという議論がなされているわけですが、その問題については、私ども、私と言った方がいいかもしれませんが、余り意味がないと思ったんです。
 というのは、治安は悪うございます、日々改善されているとはいえ。しかし、これを戦闘状態と言えるかどうか、定義を防衛庁長官、なさっていましたが。米英軍等でサダム・フセイン政権は倒れたわけですね。倒れました。軍隊は雲散霧消いたしました。野党の方もおっしゃっておるように、嫌われているんですね、サダム政権は。イラク国民が、大勢においてサダムの復活を望んでいるとは到底思えないんですね。
 全土は、しかも、今は十五カ国ですが、三十カ国を超える、四十カ国ぐらいになるかもしれませんが、各国軍隊が入って、治安維持から復興支援、人道支援等をやるんですね。政府はなくなっちゃっていますから、だから、もちろんイラクの国民の皆さんの協力を得ながらやっていくわけなんですが、展開してきちっと治安を確保しています。
 ですから、今散発的に起こっている米兵、英国兵に対する襲撃というのは待ち伏せであって、組織的なものではない。統一した司令部があって、あれやれこれやれと戦っているわけではない。せいぜい数名から十名程度のグループで、武器は全社会にありますから、イラクは銃社会、銃文化というのがもう日本では想像できないぐらいで、お祝い事になるとドンドンと撃って、あれは一般的らしいですね、銃を持っているというのは。だから、CPA当局が刀狩りをやったのがいいのかどうか、私は疑問に思うぐらい銃の浸透した社会なんです。
 だから、ちょっとしたことで銃を使ったことが起こる。残党はまだ潜んでいますから、何%かわかりませんが、そういう人たちが散発的に行動する。それは戦闘と言えるのか。テロ行為、犯罪とは言えても戦闘とは言えないだろうというのが私の認識であり、私どもの認識と言ってもいいかと思います。これは日々改善されているし、まだまだ散発的に続いていますが、今後、日を追って改善されていくだろうと思います。
 先ほど申し上げたことに加えまして、もう軍人に対する給料は払うことになったそうです。私は帰路の飛行機の中でニュースを聞きました。二十五万人ともいうんですが、再就職が可能なときまで払うということをCPAは決めたようです。私らが行ったときは決めていませんでした。
 それから、お役所も、暫定統治機構を立ち上げて、最高評議会、ポリティカルカウンシルをつくって、ミニスターを任命して、どんどん立ち上げていく、九月中には立ち上げると言っていました。すると、役人を雇わなきゃいかぬです。雇うと言うとおかしいですが、給料を払わなきゃいかぬですね。軍人、官僚の人たちの失職、給料未払いというのは一番大きい不満の種だったですから、デモがしょっちゅうあったのもそういうことなんですから、その問題は解消するだろう。軍も、何か三年かけて四万人ぐらいの国軍をつくるということもあわせてCPAは発表していましたが、そういう社会不安の種、やはり妻、子供がいるのに給料をもらえない、二月ももらえないというのは、それは大きいと思うんですね。それは解消されると思います、具体的に。
 そういうことが積み重ねられていく一方で、七月には暫定統治機構が立ち上がりますから、最高会議ができて、大臣なんか任命して、立ち上げていく。今のところ、イラク人の手による統治機構はありませんから、壊滅しているんですから、無政府なんですね。ですから、そういう状態も、一方で、国連の任務はCPAがやるのを支援する、このイラク人の手による政府の立ち上げ、そういうことも入っていますから、そういう努力が続けられていけば、私は、改善されていくんじゃないだろうか、時の経過とともにそういったものが治安の改善に役に立っていくんじゃないか、こう認識しております。
佐藤(公)委員 申しわけございません、多分、時間がないので、はしょってお話しされているので、まだまだ説明不足だと思います。
 つかぬことをお伺いするんですけれども、杉浦参考人が視察に現地に入られたときに、格好は私服だったんでしょうか。それとあと、何か携帯、武器をどなたかがお持ちになられていたとか、もしくは護衛とかアメリカ軍が多少横についているとか、そういう中での移動、そんなことはあったんでしょうか。
杉浦参考人 全く私服でございます。護衛も、アメリカ軍、依頼もしておりませんし、ついておりません。
佐藤(公)委員 私が今どうしてそういうことを聞いたかといいますと、皆さん方がもしも自衛隊と同じような服装をして、もしも武器を携帯して移動したのであれば、多分、ここの調査報告書の中で、ヨルダン、バグダッドを経由してバスラ、クウェートへ車で実際に走行した、これが果たして安全だったかどうかというのは、僕は疑問なのではないかなという気がいたします。
 私がイラク関係の方々から聞くに際して、やはりアラブの方々というのは非常にプライドがある。民間人に対してはねらわない、でも、軍人、軍服、こういう認識になると一遍に銃を向けるところがある。そして、先ほど、政府はなくなったというものの、通信網が全部遮断されるものの、人の行き来によって情報が行き交っているというような話も聞いております。また、テロということもお話しされましたけれども、これはあくまでも本当に無差別がある程度前提ですけれども、彼らのプライドからいえばきちっとねらってやってくる。
 もうこれは、まさに国に準ずる組織というものが存在している、法定義でいえば戦闘行為、戦闘地域と言える部分じゃないかというふうに私自身は思っている部分があるんです。そういう意味で、皆さん方がそういった格好で動いていたら果たして安全に帰ってこられたかなと思うと、私服でよかったなという気が今はしております。
 そういう中で、私は、現状どういったニーズが必要かということに関しては、皆さん方からもいろいろなお話、こうやって貴重なお話を聞いています。こういった目先の、目の前のこと、やらなきゃいけないこともさることながら、きょうは、大先輩の政治家としての方々が前に並んでいる中、私は、もう一つ考えなくてはいけないことは、現地に行かれて、政治家として、この戦争が正しかったかどうか、もっといい方法論があったのかどうか。
 また、反省すべき点、まさに総理も含めておっしゃられていることは、ベストじゃないけれどもベターな選択ということをおっしゃられた。もっとこういうふうにしておけばよかった、こういった後悔が残る、また、それにやったこと、まさにこれは支持という表明をし、そしてまた支援ということも、後方支援も含めて今まで日本というのが来たわけ。結局、これをどこで区切るかということになりますけれども、それに、やった責任もやはり私たち日本、政治家は持たなきゃいけないと思う。
 こういった大きなこと、これは短期、中期、長期、これによって判断されるべきことですけれども、私はまず杉浦参考人にお伺いしたいのは、入られてどういう、戦争というものが、現時点、いろいろな情報の中で不確定がありますので、まだそれがはっきりしないんであればそれは結構です。やはりその大きな、もう二度とこういったことを繰り返させないために、よりよい方向に制度改正をしておかなきゃいけない、そんな思いがありましたら簡単にお答え願えればありがたいと思います。
 その後、大変申しわけございません、民主党のお二方のうちお一方、今の大きな話について、もしも御意見なり、思われたことがあればお答え願えればありがたいと思います。
杉浦参考人 あの戦争についての正当性云々は、私は、最終的には歴史が審判することになると思うんですが、いろいろ見方があると思います。
 ただ、国連決議一四八三というのは、イラクに対する武力行使について意見が分かれた理事国が、今度は一致して決議した、これは先ほど松宮さんがおっしゃったとおり。しかも、占領当局に対する権限をついに認めたといいますか、ということでもあるわけですね。国際社会に対して復興その他の支援、協力を呼びかけている。そこの現実からひとつ出発すべきだと思います。その前のことよりもそこが大事だ。
 しかも、イラクが安定して復興していくことが、あの地域の安定のためにももちろん大事なことでありますし、日本はそこから石油の大部分を輸入しているという我が国の実質的国益、我が国の安全保障の見地から見ても、国連のあの一四八三の呼びかけにこたえて、可能な限りで、可能な範囲で、憲法その他、新法は私は必要だと思うんですが、やるということは非常に大事だというふうに思います。私ども代表団、その点では一致した見解になっておると思います。
首藤参考人 佐藤委員の御質問にお答えいたします。
 民主党は、御承知のとおり、この戦争を開始するに当たって、その根拠がない、国連においても新たな武力行使の決議もない。そしてまた、私たち、末松議員もそうですが、この地域をよく知っている者は、一たびここを、ジグソーパズルのようなところを壊したらもう二度と同じ絵はかけない、どこかにぽこっとできて、その一枚を入れようとしたらほかのところが崩れちゃう、だからこれは崩しちゃいけないんだ、だからこれを何とか平和裏に持っていかなきゃいけない、そういう思いを持って最大の努力をしました。
 そしてまた、そのために二度にわたって派遣団を送り、イラク政府に対して、国連査察に全面的に協力するようにと何度も何度も声をかけました。そしてまた日本政府に対しても、そうした状況を伝えて、もっと日本の独自の外交があるはずだ、こんなにアラブの庶民から愛されている日本はやはりもっと違うことができるはずじゃないか、それから、そうした思いはアジアの諸国、例えばマレーシアとか、そういうイスラム諸国も同じような思いを持っているから一緒にやったらどうかと、いろいろ活動もしました。しかし、残念ながら、結果的には私たちの努力を実らすことができなかったという意味において、政党人として、政治家として大変な責任を感じております。
 また同時に、私たちが最後に言ったことは、イラクに対して、国連査察に全面的に協力しなさい、アメリカが言っているU2スパイ機、これにも協力しなさい、アメリカがU2のスパイ機を使いたいと言うなら使わせてあげなさいと。それから、アルサムード2というミサイルが、短距離で百何キロしかないというのは知っていました。それでも、そんな、あなたたちは幾らでも言い分があるだろうけれども、やはりそれも捨てなさいと。最後の段階まで行って、イラク政府は、結局全部捨てました。
 しかし、戦争が起こったらどうでしょうか。アメリカはずっと前からもう戦争を準備して、そして、始まったら、そのU2スパイ機で撮った写真で即空爆を始めました。そしてまた、我々が捨てろ、捨てろと言ったアルサムード2を結果的になくならせたことによってアメリカ軍の侵攻が楽になりました。
 そういう意味では、私は、一政治家としても大変な責任を持っていて、日本が、イラクで起こったこの事態、そしてイラクの人たちが苦しんでいるこの事態を、第三者的にではなく、世界に起こっていることは我々にもみんな責任があるんだ、こういうことをはっきり自覚して、我々政治家は特に責任を自覚してこれから行動しなきゃいけない、そういうふうに思っています。
佐藤(公)委員 もう時間でございます。
 私が言いたいことは、確かに、目の前で今イラク国民が困っていることに関して支援していきたいという気持ちはだれもが一緒だと思います。しかし、日本がこれだけ大もめにもめながら場当たり的な法案ばかり出している。やはり諸先輩政治家先生方に、私たちの未来について本当に真摯に根本論の議論をしていただきますことをお願い申し上げ、私の質問とさせていただきます。
 どうもありがとうございます。
高村委員長 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 私も、今参考人として座っておられます我が党の緒方参議院議員を団長として、現地イラクに行ってまいりました。
 そこで、いろいろ各党の調査団の報告を聞かせていただきまして、やはり人道復興支援、大変大きな課題があり、そして、日本政府が果たすべき役割は今後ますます重要になっていくなという思いを持ちながら伺いました。
 それで、私は、調査団としてイラクに入るときに、この間の委員会の質問のときにも申し上げましたが、ちょうど沖縄県が、本土から分離されて、米軍に支配をされて、その支配のトップに高等弁務官がおり、琉球民政府ができ上がり、琉球行政府ができ上がり、そして行政府の主席は米軍が任命をする、このことに対する県民の怒りというのは大変なものだったんですね。自治を回復しない限り、占領者との矛盾というのは永遠に消えない、敵対関係は消えない。これは、私の生い立ちからしても、今なお持ち続けている感情でありまして、イラクに行って、そのことを改めて思ったところであります。
 そこを念頭に置きながら質問させていただきますが、まず最初に、私が行って調査をした実感ともかなりかけ離れているものですから、改めて与党の調査報告について質問をさせていただきます。
 与党の調査報告の二ページの方に、「今なお旧政権の勢力が散発的な襲撃を行っている。」こうあります。それから、六ページの方に行きますと、一番下の行から、「共和国防衛隊等旧政権の残党等による連合軍への攻撃が散発的に発生している」ということで、攻撃だとか襲撃だとかという言葉を使っていらっしゃいますけれども、結局これはどういうまとめられ方をしているかといいますと、二ページの「旧政権の残党などによる犯罪は続いているが、」このようになっているわけですね。今頻発している連合軍への襲撃だとか攻撃、これと、頻発している犯罪。これは犯罪なんでしょうか、それとも、襲撃とか攻撃とかという表現であらわされる出来事なんでしょうか。いかがでしょうか。
斉藤参考人 この襲撃が犯罪なのか戦闘なのかというその意味を細かく立て分けても余り意味がないと思いますけれども、計画的そして組織的な戦闘ではない、したがって、時間的な空間的なつながりもない、そういう意味で散発的な単発的な襲撃、こういう表現を使わせていただいたところでございます。
赤嶺委員 組織的、計画的な襲撃でないという断定をなさいました。そして、まとめられ方は犯罪という言葉を使っておりますが、犯罪なのか襲撃なのか攻撃なのかというのは余り意味のないことだ、このように言われて、今、ここの調査報告の問題についてどう理解したらいいのかという気持ちなんですが、この点について、今起きている連合軍への襲撃、これは単なる犯罪なのかどうか、この辺は民主党の方はどのように考えておられますか。
末松参考人 私ども、現地でバース党の関係者に聞いたところでは、これはもう侵略者に対する民族の正当な権利であるということから、彼ら、特にサダム・フセインの残存勢力から見ればこれは正当な武力の行使であって、これを犯罪という形ではとらえるべきではないというのが彼らの見方でしょう。
 ただ、彼らの行為の中に、困った者が、そしていろいろな、強盗をやったとかいうことはありますから、そのミックスみたいなということですが、彼らの意識としては正当な権利を行使している、そういう意識だと思います。
赤嶺委員 朝の参考人質疑の中でもこのことが参考人の方から陳述されまして、犯罪に類されるべきもの、そして民族、国民、異民族の支配に対する怒りに区分けされるものということで、かなり細かい参考人の専門的なお話もあったんですが、この点について、社民党の方はどのように調査して感じておられますか。犯罪なのかどうなのかという点です。
今川参考人 委員の質問にお答えします。
 先ほども申し上げたんですが、大がかりな組織的な戦闘行為というのは、確かに私どもが調査に入った時点では見受けることはできませんでした。
 しかしながら、午前中の参考人の御意見にもありましたけれども、軍といっても、特に米軍に対してかなり反感とか憎しみとかというのがあるみたいだ、米軍がイラク人を射殺したことによってそこから急激に件数もふえているという御報告があったとおり、私たちも、犯罪の一番基盤にあるのは、やはり六割と言われている失業率、実際、私たちの実感としてははるかに六割を超えると思っています。先ほども言いましたように、例えば小学校の先生なんかは、米ドルでいくと二ドル、よくても十三ドルぐらいの給料しかもらっていないわけですから、失業状態が蔓延している。
 そこに対する職をよこせという要求と、米軍などに対して、外国軍がいつまでも駐留してほしくないという反発とが相まって、例えば個人的な強盗、略奪であってみたり、あるときには軍に対してそういう反撃が出てきているということですが、そこが混在していると思いますね。
 そういうことを総合して、やはり治安状態というのを、よくなってほしいけれども、残念ながら、外国軍が駐留すればするほどかえって治安は悪化していくんではないかという懸念を私どもは持っております。
赤嶺委員 緒方参考人にも同じような質問をしたいと思うんですが、私たちが向こうで見たことを犯罪ということで一くくりにまとめられるものであるのかどうか、あるいは、やはり異民族支配に対する感情、その点についても御意見をお願いします。
緒方参考人 お答えいたします。
 いろいろなケースがあると思います。一つは、怨念によるかたき討ち、これはイスラム世界でよくあることですけれども、そういうケース。それから、犯罪者が釈放されたことによる物取りのたぐい、それももちろんあると思います。
 ただ、最近顕著になってきているということで強調されたのは、もちろん全国的に司令部があるわけじゃありませんけれども、かなり組織的になってきているパラミリタリーグループによる襲撃、これが顕著になってきているということは明確なものであって、その背景には、イラク国民の不満、怒り、これを土台にしている、したがって、彼らの行動が国民から必ずしも孤立していない、このことが非常に大事な点だと思いました。
 そして、さらに加えますと、私たちが訪問したイラクの南東部の、二百十キロぐらいのところにあるクート、その付近では、アメリカの陸軍に加えて海兵隊が展開していたことなんですね。なぜ海兵隊が展開しているのか、その質問に対して、機動性が必要だからだと。彼らは素早く動き素早く出てくる、したがって、そのために海兵隊が必要だ、そういう話も聞いてまいりました。
 したがって、今の状況が、つまり、国民の不満、これが解消されない事態が続くときに、こうした矛盾が、つまり、アメリカによる掃討作戦の強化、それによる国民の不満の高まり、さっき言った構図が悪循環してどんどん大きくなる。したがって、その中で旧サダム勢力が再結集して、そしてさらに組織的な反撃を強めるという可能性、このことも指摘されていました。
 以上です。
赤嶺委員 私も、ある外国の大使館に行きまして、アメリカの占領統治のことを、イラク国民の気持ちを全くわかっていない統治のやり方だというぐあいに指摘しておられました。異民族の支配、これがイラク国民と占領当局との矛盾の根源にあるものです。そこの解決を抜きにして犯罪だけだというのは、余りにも、あの社会で起きている出来事を一面的に見るものではないかなという感想も抱いております。
 それで、再び与党の調査団にお伺いいたしますけれども、今回の法律で、憲法違反にならないための担保ということで出してきたのが戦闘地域と非戦闘地域の問題でありました。そこで、皆さん、やはり調査団の核心的なテーマだっただろうと思うのですね。いわば、この法案を憲法違反のものではないものとして、担保するものとして非戦闘地域、戦闘地域という概念があったと思うのですが、いかがでしょうか、与党調査団は、向こうに行かれて、非戦闘地域ははっきりと設定できるというような調査結果は得られているでしょうか。
杉浦参考人 戦闘地域、非戦闘地域の定義、線引き等の議論は別にして、非常に危険度は高い、安全ではない地域であることは間違いございません。
 私ども、先ほどの御質問に答えるべきだったかもしれませんが、私どものこの報告書で、「治安状況」、九行でまとめておりますが、これは私どもが話を聞いた、たくさんの人から聞きました。米軍、第八二空挺師団の大隊長ほか、それから連合軍司令部、これは何人も将校が来て、全国展開状況をブリーフしてくれました。ブレマーさん、ソーヤーズさん、ユーニスさん、それからバスラでの英軍、これは副司令官でしたが、デンマークの将校等のブリーフで、皆さんがおっしゃっておられることなんです、ここに書いてあることは。そういう御説明を伺った。
 私どもは、三日間でしたけれども、その行程の間で、不安とか治安の悪さを感じたことは一度もございませんでした。銃声も聞きませんでしたし、バグダッドは商店も半分ぐらい開いていまして、レストランは日常どおりあれされていますし。だから、民主党初め皆さんの調査された時期より私どもが一番新しいですから、日に日に改善されていると彼らは言っていましたから、そういう時間の差もあるんじゃないかと思います。
 サダム・シティーへ行っても、スラム街ですが、もう本当に生き生きとしていますし、子供たちはサッカーをやっていますし、商品はある意味では豊富ですね。盗まれた品物の市場もありましたよ、ロッカーとかなんとか。非常にバッスルしているというか、にぎやかな面もございまして、活力も感じました。ですから、治安がいいか悪いかという状況は、私どもは直接的には、経験的には、判断する余地はなかったんです、御説明を聞く以外には。
 そういうことを申し上げているわけで、バトル・イズ・オーバーということを、もう繰り返し繰り返しいろいろな人から伺いましたが、要するに、サダム軍との戦いは終わった、政権はつぶした、彼らは国民から嫌われている。消えてなくなった軍隊のうち、報復する気持ちを持った人たちは確かにいる、割合にすれば数%いるかもしれないと言った方もいらっしゃいましたが、そういう人たちが起こしている非組織的、命令母体があるわけじゃない、散発的な、それは大変大切なことで、我々はそれを抑止するために全力を挙げているんだと言っておられたですが、そういう御説明があったということをここで申し上げておる次第でございます。
赤嶺委員 もう時間が来ましたので、同じ質問を民主党や日本共産党や社民党にも申し上げたかったんですが、時間がありません。
 ただ、今の杉浦与党調査団長の報告を聞いていましても、非戦闘地域、戦闘地域の区分けはできるという確信を得られたかどうかという点については極めてあいまいでありました。そういう感想を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
高村委員長 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 時間がありませんので、端的に質問をさせていただきたいと思います。
 最初に、社民党の調査団の参考人にお伺いしたいと思います。
 きょうも論議になってまいりましたけれども、今NGOの人たちがもう既にたくさん活動されております。私が聞くところでも、また調査の中でも言われておるように、もし自衛隊が派遣をされる事態になるとNGOの活動にも大きな支障が出るのではないかということが指摘をされておりますけれども、その点について、行動をともにされたNGOの人から直接お聞きでしたら、その点をまずお伺いしたいと思います。
今川参考人 お答えします。
 一点は、先ほど御報告しました志葉玲さんが実際に現地におられて、本当にもう迷惑だというふうに一言おっしゃいました。
 それから、私どもが、往復したんですけれども、行きがけ、同行していただいた、子供たちの医療支援を中心に行っておられる日本国際ボランティアセンター、JVCの皆さんと随分話もしましたし、現地に着いてからもいろいろな状況を伺ったんですけれども、とにかく、自分たちは丸腰だから安全にいろいろな活動ができていると胸を張っておられました。
 しかし、これは自衛隊が好きとか嫌いとかという話じゃないんですと言うんですね。軍人たち、軍服を着て武装、たとえ軽武装でも、ピストルなどを持ってうろつかれると非常に迷惑する。例えばいきなり襲撃を受けたりという、米軍、英軍などが兵隊の中で殺されたりもしていますけれども、やはり何らかの政治的な意図を持ったりとか、あるいは憎しみの対象に対してやるわけであって、何のわけもなく、理由もなく、いきなり襲うということはないんじゃないでしょうかと。
 そういうことで、少なくとも自分たちは人道支援活動に徹しているわけだから、そういうジャンルに、どこの国の軍隊であれ、入ってこられるということは本当に迷惑しますということをしつこいほどにおっしゃっておりました。
 むしろ、繰り返しになりますけれども、そういう余分なことをするんじゃなくて、日本政府は、劣化ウランの、とにかくどこにあるのか、ないのか、そういうことが支援活動の妨げになるから、そこをはっきり政府として責任を持ってやっていただきたい、こういうふうなお話でございました。
金子(哲)委員 首藤参考人のお話をずっとお伺いしながら、中東問題、イラクの問題も含めて、非常に造詣の深い御意見をお伺いしたと思いますけれども、私は、やはりこの占領行為というものが長期化すればするだけ、お話があったように、イラクの人々の感情といいますか気持ちというものが、余計に反米感情というか、そういうことに高まっていくように思います。むしろ、これからの方がそういう出来事が多くなってくるんではないか。一方における強盗とかそういう治安は回復されたとしても、いわば非組織的であるかもわからないけれども、イラク国民全体の気持ちの代言としてのそういう反撃というものが深まるんではないかというふうに私は感じるんですけれども、その点についてぜひお伺いしたいと思います。
首藤参考人 御質問にお答えいたします。
 私は、現在の状況、大変危険な水域にもう達しているんじゃないかな、そういうふうに思っています。
 今、アメリカ軍に対する日常化した攻撃ですけれども、これは明らかに組織的に攻撃が行われているんだと思っています。それと同時に、委員御質問の占領行政に対する反発というものが非常にレベルが高まっているんだと思うんです。
 というのは、もともと、今のCPAの前身であったORHAのときは、イラク人の、特にフセインと反対していた、フセイン政権の中で一生懸命対立していた反フセイン七派という人たちを中心にして、早くイラク人による暫定政権をつくる、そしてそれ以外の人道面だけORHAでやっていこうという話だったんですね。ところが、ブレマーさんが来ましてCPAをつくって、今までの案を全部キャンセルしたんです。ですから、今までフセイン政権と対峙していたクルドのクルド民主党、それから南部にいてイラク人口の約六割のシーア派、これは猛烈な反発を今高めているんですね。
 ですから、今までアメリカ軍が言っていたのは、バグダッドの周辺、特に西部は危ないです、北部はティクリートや、サダム・フセイン元大統領の地盤だからこれも危ないです、それから上のクルドに行くと、実はクルド民族とトルクメンとアラブ人とで紛争があって危ないです、しかし南部は平気です、こう言っていました。しかし、今は南部が危なくなってきたんです。
 最近起こったイギリス軍に対する、六名死亡した事件がありました。これは非常に怖い段階になってきて、やはりそうしたものに対してシーア派が一斉蜂起してくる可能性が強まってきているということです。
 私もシーア派の代表のアヤトラ・ハキームと話し合ってきましたけれども、今は抑えている、我々は静観、じっと見ている、しかし、もしアメリカが我々の約束をほごにしていくんなら我々も覚悟があるということを言っていました。ですから、これは、そうなりますと、占領行政に対してシーア派が戦うということはジハードになります。宗教指導者の指令になりますから、これは聖戦になってくるんですね。
 ですから、そういうことにおいて、この一カ月というのは本当に我々は慎重に状況を見詰めなきゃいけないんだ、そういうふうに考えています。
金子(哲)委員 緒方参考人にお伺いしたいと思いますが、できれば短くお願いしたいと思いますけれども、実効的に、今イラクの国内で最大の権力機構、実効支配している組織というのは何でしょうか。
緒方参考人 お答えいたします。
 もう明らかにCPA、つまり占領軍当局だと思います。
 そして、そこがすべてをやる責任を持っているわけです、治安も含めて、人道支援も含めて。しかし、そこがやり切れていない。そして、計画が変更される。しかも、たびたび変更される。行き届かない。そこにイラクの人たちの憤りがあり、そして、本来、国連決議の趣旨からしても、国連中心にそこをしっかり直さなきゃいけない。そこに今大きな課題があると感じております。
金子(哲)委員 山内参考人に、昨年もイラクに訪問されておりますけれども、きょう、この委員会でも子供たちの問題がたくさん出てまいりましたけれども、昨年の十二月、そして今回と、イラクの子供たちの状況について、学校現場というよりも、子供たちの顔も含めて何か報告しておきたいことがあれば、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
山内参考人 山内惠子です。
 戦前と戦後と二回を見て、今回は本当に大きな風景の違い、そして悲劇が本当に大きかったので、二つほど。
 大きかった衝撃というのは、病院です。湾岸戦争時には生まれていなかった三歳、四歳、五歳の子が劣化ウラン弾の被害と思われる白血病それから末期がんに苦しんでいたのが、前回のときに既に見ておりますが、同じ病院に行って、あのときの悲劇の子供たち、姿がなくなっていた。本当に亡くなったんでしょう。聞く元気もありませんでした。
 前回より悪化していたのは、歯茎から血が出ているのをとめてもとめてもとめられない、ふいてもふいてもとめられない、鼻血もとまらない。それで、お医者さんがおっしゃるには、六カ月ごとに薬を投与すれば再発を防ぐことができる、でも、その薬は経済制裁が終わっても届かないということでした。そして、この後また劣化ウラン弾が使われたとすれば、被害は今後あらわれてくるでしょうという意味でショックでした。
 それから、これは赤新月社という病院で出産された方の写真なんですけれども、この方は二十八歳の女性でダラールさんという方なんですけれども、夫は、民間人三十一歳、爆撃で体に破片がいっぱい入ってしまったので、三回手術したんだけれども、四十五日前に亡くなった。この子は生まれて二日目。それこそ保育器も停電になるととまるような中ですけれども、この子はとにかく出産できたという意味ではおめでとうだったと思いますけれども、お父さんの顔も見ることなくこれから育っていくとしたら、世界の人に言いたいことはと言ったら、戦争はやめてほしい、平和にということでした。
 私は、せめてもの、私たちができるのは、生まれてきたこの子たちが幸せにあるためにも、医療、それから日本が建てた病院が、十三も建てたのにその病院も老朽化しているという意味で、子供たちの未来にやはり私たちが本当の意味の人道支援、医療、病院の建設、応援したいものとつくづく思って帰ってまいりました。
金子(哲)委員 ありがとうございました。やはり我が国が平和憲法のもとにおける最大の、そして有効な支援というものを現地の本当のニーズに応じてやっていくということが一番重要だということを改めて考えさせられております。
 与党の代表団の皆さんにお伺いしたいんですけれども、杉浦参考人は、先ほど給水の問題を出された際にバグダッド空港の話をちょっと出されまして、五キロ四方で米軍が司令部も置いていて非常に安全な場所だというお話で、あそこでやれば一番いいのではないかという感想を持ったというお話をされたように私はお伺いしたんです。ここでも論議になっておりまして、私も、戦闘地域、非戦闘地域という概念を見るときに、まさかその五キロ四方の周囲を米軍が警備している地域が非戦闘地域であるというような認識を持っていなかったものですから、いささかその点ではびっくりしながら聞いたんですけれども、そういうところを非戦闘地域、そして自衛隊が行って活動すべき地域というふうな認識をお持ちなんでしょうか。
杉浦参考人 私どもが行動して、一団で回っていましたから、その地域の中で例えばと申し上げたわけで、あのチグリス川は水量豊富で長いですよね。適地というのはほかにもあり得ると思います。
 私どもの結論は、私どもは本当に短期間ですから、しかも専門家じゃありませんから、報告書にも掲げさせていただいておりますが、法律を通させていただいてやる以上は、専門的、実務的な調査団を送ってしっかり調査して、それで現地のニーズも押さえ、現地の事情も十分調査した上で派遣すべきだというのがちゃんと私どもの結論に書いてございますので、印象として聞かれたから申し上げただけのことでございます、例えばということで。
金子(哲)委員 ただ、この国会の中でもかなり重要な論点としていろいろ論議をされた問題であるだけに、そこの認識を一致させておかないと、やはりそのところがどうもあいまいなまま委員会の論議が進んでいるように私も思えてならないものですから、それで例えば、具体的なこととしてはどうかという問い合わせが委員会論議でもあって、きょうたまたま、与党の調査団として報告された中で、例えばとはいえ、そういう場所が指定されたということですから、そういうことで認識されているのかなということを私は思ったわけで、改めてお伺いしたわけです。
 それで、斉藤参考人には、私も同じ広島ということで、いろいろと被爆者問題では、連携をしながら取り組むべきことは一緒にやらせていただいたりしておりますけれども、先般来、劣化ウラン弾の問題がいろいろ論議になっております。残念ながら、政府の側が明確な調査というようなことを言っておりません。
 私も質問の中で言ったように、これは二つの問題がありまして、一つは、今回使用されて残存しているものの処理のこと、それからもう一つは、十年前の湾岸戦争で使用されたために出てきている、今、劣化ウラン弾の後障害であろうと思われる子供たちの白血病とか、そういった問題が二つあると思うんです。
 一つは、今後のイラクへの支援活動をやるためにも、最初の点は本当にちゃんと調査した方がいいし、そのまま放置されれば二次被曝という問題があるというふうに思いますから、ぜひ、その点は一致すると思うんですけれども。
 もう一つ、きょう原口委員からもお話があったんですけれども、コソボの例も出され、本当にあれで調査結果と言えるのかという話が出ました。これは、お互いに広島で、一番よくわかっていることは、広島の原爆を受けた後、白血病とかがんが発生したのは、私はこの間の質問でも言いましたけれども、五年後とか十年後に具体的には出てくる、晩発性の被害は。ですから、一年後か二年後に調査しても、本当の被害の実態はわからない。
 そうしてみますと、湾岸戦争後十年たった今のイラクの状況というのは、まさに調査をするべき価値があるというよりも、調査をして適切な対処をするということが、これは与野党超えてやはり重要だと思います。そしてそのことは、広島や長崎のことを知っているだけに、イラクの人たちから見ると、そういう日本の医者が来て本当に調査をしてほしいという希望は私は高いと思うんですよ。その点について、斉藤参考人、賛同していただけると思うんですけれども、どのような感想をお持ちか、ぜひお答えいただきたいと思います。
高村委員長 斉藤参考人。簡潔にお願いします。
斉藤参考人 午前中の議論でもさせていただきました。私も、ぜひこの問題については勉強していきたいと思って、国立国会図書館でいろいろ調べたんですが、雑誌の記事はたくさんあるんですけれども、いわゆる疫学研究としての論文がないんです。ですから、科学的な研究がまだ本当に緒についたばかりというのを実感いたしました。
 そういう意味で、疫学研究というのは本当に手間と時間とお金がかかりますけれども、この問題をきちんと議論するためにもその研究は必要だ、このように私も思います。
金子(哲)委員 ありがとうございました。時間になりましたので、終わります。
高村委員長 次に、山谷えり子君。
山谷委員 保守新党、山谷えり子でございます。
 与党調査団の皆様、そして民主、共産、社民の調査団の皆様、それぞれ精力的な御調査、ありがとうございました。より立体的に、復興支援、また、日本ができる日本らしい復興支援を考える材料をいただいた思いがいたします。
 そこで、杉浦参考人に質問させていただきます。
 自衛隊の活動分野として、航空輸送分野への期待がレポートに述べられておりますけれども、陸上輸送についてはどのような考え方、感想をお持ちでございましょうか。
杉浦参考人 私ども団員、議論しましたら、団員の中で、陸上輸送もという点では一致しませんでした。私はしてもいいのでは、将来ですよ、今すぐというわけにはいかないかもしれませんが。
 盗賊団がいるらしいんですね、あちこちにばっこして。野盗のたぐいですかね。バグダッドからバスラへ向かう途中、コンボイに行き違いました。頭としっぽは装甲車が警備して、十何台大型トラックがだあっと並びまして、上をヘリコプターが舞っておりましたね。だから、裸で輸送した場合には危険性があるのかなという感じを受けました。そういう趣旨でございます。
山谷委員 オイル・フォー・フードは四月に再開し、十一月二十一日まで行う。毎月五十万トンの食糧を九千台のトラック、百五十隻の船舶により供給しているということでございますが、この供給方法その他、斉藤参考人、何かお聞きになられたことございますでしょうか。
斉藤参考人 我々、国連特別代表事務所に行きまして、このオイル・フォー・フードについても議論いたしましたけれども、運搬方法については特に議論がありませんでした。
山谷委員 続いて、また杉浦参考人にお伺いしたいと思います。
 イラクの復興支援職員の位置づけ、あり方について、こうした方がよりよい活動ができるんじゃないかというような、イラク復興支援職員の位置づけ、それから、どのような分野でニーズがあるかということについては、何かイメージするもの、意見交換等々ございましたでしょうか。
杉浦参考人 その点は、まさに私どもが一致していますのは、実務家、専門家による時間をかけた十分な調査の上で基本計画をつくるべきだと。
 私ども、わずかの限られた時間で、特にそういうところはこうだという点までいきませんでしたが、向こうの要請を聞いておりますと、あらゆる分野で、自衛隊だけじゃなくてほかのいろいろな分野でということもございますので、そこは、現地の国連とかCPAとか、そういうところとよく協議すれば、こういう分野でというお話は出てくるかもしれません。
山谷委員 続きまして、民主そして共産の参考人にお伺いしたいと思います。
 国連の方からの御意見として、米国主導で学校の教科書を全面改訂する動きがあることに懸念が表明されたと。共産党の方でも、サダム信仰というようなものがあって、教科書の改訂それからカリキュラムの改訂等々に、やはり米国主導で行われることに対する懸念というようなレポートがございますけれども、日本においても、占領軍がやったことが五十七年たってもボディーブローのようにきいているわけでございまして、この辺のことをお聞かせいただきたいと思います。
末松参考人 私どもで聞いたのは、ユニセフの代表から聞いたんですけれども、戦争の始まる一月に米軍の方から依頼があって、そこでイラク人の子供の教科書を全面改訂してくれという話があった。これに対して、イラク人の手によって改訂するんであればまだしも、自分たちはできないという話をしたと。
 それに対して米側の方で、それではということでほかの国際機関に対して頼むということと、それから、自分たちが教育庁に顧問を置いて、そこで全面改訂するからいいやということで、そういう形で言われた。それに対してユニセフの代表が非常に憤慨をしていたというのが事実でございます。
緒方参考人 お答えいたします。
 私もユニセフの次席から、ちょうど所長が東京に出張中だということもあって、次席から聞きまして、新しい教科書をつくらなきゃならない、そのときに、USAIDがつくると言い張っている。一般的に言って、その国の教科書はその国の人たちによってつくられるのが当たり前だ。しかも、アメリカがつくった場合には、例えばパレスチナ問題の記述等々が一体どういうことになるのか、そういうことが非常に懸念されている。しかも、そういうことが実際に行われたときには、これはスキャンダルになるとイラクの人たちが述べているという話を伺いました。
 私は、そういうことを通じて、CPAにとって一番心すべきことは、やはりイラクの人たちの心情、イスラムの習慣、さらに言えば、さっき首藤議員が言われたように、イスラム世界の文明、そのことを本当に尊重することが大事だということを改めて痛感した次第です。
山谷委員 民主党のレポートに、国連スタッフのことについて書かれたものがございます。国連特別代表室に日本人のリエゾンオフィサーを置くとか、あるいは日本人スタッフをふやす。
 杉浦正健参考人にお聞きしたいんですけれども、UNDP、WFP、ユニセフ等々の日本人スタッフを増加してはどうかというようなレポートについて、与党調査団は、何か意見交換とかお考えはございますでしょうか。
杉浦参考人 私は民主党の意見に賛成でございます。私、委員会で外務大臣に質問させていただいたんですが、CPAの中にも、今六人ぐらいですか、入っているんですが、非常に優秀だと感謝しておりましたから、もっと入れると。国連の人事ですから、我が国の国連代表部であれすることなんですが、あそこにもやはりしかるべき人が行った方がいい。いろいろな国の人がおりますので、協力してやるという体制をつくった方が私もいいと思っております。
山谷委員 アラビストまた外交官としての末松参考人にお伺いしたいんですけれども、米英が戦後復興ビジネスプランなどもやっているというようなことで、イラク人によるイラクの復興、あるいはまた中東諸国の発展にもつながるような何かあり方、どのようなお考えをお持ちでございますか。
末松参考人 大きな問題だと思いますけれども、まずは早くイラク人の手による政権をつくって、その政権が、私はやや悲観的なんですけれども、もつかどうかというのはわかりません。そこで、民族の中でまたいろいろな混乱が起こって再調整をするということになるかもしれません。ひょっとしたら、パンドラの箱をあけたように分裂するかもしれない。そこまで非常に大きな危機だと思います。
 だから、逆説的なんだけれども、それはアメリカ軍あるいは占領軍によって実はある程度支えていかなきゃいけないつえみたいなところが、必要というところまで言いたくないんですけれども、そこは一つ事情があると思います。
 ただ、それであっても、それを変えるのであれば、国連主導によって、国連という傘のもとにイラクをきちんと指導していくようなことが、私は、イラク人のプライドを守り、アラブ民族のプライドを守る、そういった形で一番いい方法だと思っています。
山谷委員 与党調査団のレポートにあるわけでございますが、杉浦参考人にお伺いしたいと思います。
 難民五十万人、国内避難民百万人の復帰についてですが、「政治、治安状況が不安定なので開始されていない。」ということでございますけれども、これはどのような形でいつごろ開始されるかどうかというような意見の交換というのはございましたでしょうか。
杉浦参考人 これはユーニスさんという、デメロ特別代表の官房長の方のおっしゃったことなんですが、そういうお話を伺っただけで、いつごろ始まるかとか、そういうことは伺えませんでした。
山谷委員 もう一点、与党の調査団のレポートで、ウンムカスルの港、旧港バースのみ使用にたえるということで、港湾機能の回復というのは大変大事なことだと思いますが、与党調査団の中で、保守新党泉委員は港湾関係の非常にプロの目を持った方だというふうに思いますが、このウンムカスルの港を見たときに、港湾を見たときに、何か意見、感想、当局とのやりとりなどございましたでしょうか。
斉藤参考人 支援物資を運ぶのに大変重要な港、しかしながら、湾岸戦争のときの沈没した船がまだ二けた、正確な数はこの中に書いてありますが、沈んで、大きな船が入ってこられないということで、そのしゅんせつと引き揚げ作業をやっておりました。この作業をできるだけ早く終えたいということで、ここについても日本の支援は必要なのではないかと思います。
 たまたま日本の支援によって新港の一番端の埠頭が使えるようになっておりまして、三万トンのタイの船が入ってきて、タイ米がおろされておりました。これも日本の支援によってこういう支援物資が入るようになったということで、地元のUNDPの方そしてまた地元の方も大変感謝されておりました。
山谷委員 最後の質問でございます。
 与党調査団の報告書に、「現在、近隣国からの支援、イラク国内の事務所を拡大し、各地域で支援活動、情報収集をしている。」ということでございますけれども、周辺諸国の在外公館とのネットワークとか、あるいは、独自に主体的にと私たちはずっとこの委員会でいろいろなやりとりがあるわけでございますが、本当に日本が独自に情報収集が主体的にできているのかどうか、あるいは、もっとこうすればよりよい体制になるのではないかというような御感想をお持ちでしたらお聞かせいただきたいと思います。
杉浦参考人 今、イラクの大使館も手狭なので広いところへ移るとか、スタッフも、今応援を組んでおりますが、やはりもっとふやす、数の面でも質の面でも充実しなければいかぬとか、周辺国の大使館も連動して充実しなきゃいかぬというようなことを外務省の方は考えておるようでございますが、私ども、行った限りでは、今のままでは心もとないな、やはり充実しなきゃいかぬなということを感じました。大使館同士は、中近東全体、横で連絡をとりながら、情報交換しながらやっているようですけれども、手薄だなというのは率直に否めませんでした。
山谷委員 いろいろな御意見を聞かせていただきまして、どうもありがとうございました。非常に参考になりました。
高村委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)
 次回は、明二日水曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十六分散会


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