衆議院

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第3号 平成15年10月1日(水曜日)

会議録本文へ
平成十五年十月一日(水曜日)

    午後六時開議

 出席委員

   委員長 衛藤征士郎君

   理事 赤城 徳彦君 理事 浅野 勝人君

   理事 中谷  元君 理事 松下 忠洋君

   理事 末松 義規君 理事 中川 正春君

   理事 赤松 正雄君 理事 赤嶺 政賢君

      荒巻 隆三君    伊藤 公介君

      小野 晋也君    小渕 優子君

      金子 恭之君    金田 英行君

      北村 誠吾君    倉田 雅年君

      小島 敏男君    左藤  章君

      新藤 義孝君    高木  毅君

      谷本 龍哉君    仲村 正治君

      西川 京子君    福井  照君

      松浪 健太君    松宮  勲君

      森岡 正宏君    山口 泰明君

      吉野 正芳君    一川 保夫君

      大畠 章宏君    桑原  豊君

      佐藤 公治君    中塚 一宏君

      中野 寛成君    原口 一博君

      前原 誠司君    山口  壯君

      渡辺  周君    丸谷 佳織君

      山名 靖英君    木島日出夫君

      児玉 健次君    今川 正美君

      金子 哲夫君    山谷えり子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     福田 康夫君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   国土交通副大臣      佐藤 泰三君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        高木 孝雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月一日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     小渕 優子君

  新藤 義孝君     山口 泰明君

  杉浦 正健君     小野 晋也君

  谷田 武彦君     倉田 雅年君

  松宮  勲君     西川 京子君

  伊藤 英成君     中野 寛成君

  高木 陽介君     山名 靖英君

  木島日出夫君     児玉 健次君

同日

 辞任         補欠選任

  小野 晋也君     左藤  章君

  小渕 優子君     金子 恭之君

  倉田 雅年君     谷田 武彦君

  西川 京子君     松宮  勲君

  山口 泰明君     新藤 義孝君

  中野 寛成君     伊藤 英成君

  山名 靖英君     高木 陽介君

  児玉 健次君     木島日出夫君

同日

 辞任         補欠選任

  左藤  章君     杉浦 正健君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十六回国会閣法第一二一号)




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     ――――◇―――――

衛藤委員長 これより会議を開きます。

 第百五十六回国会、内閣提出、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として防衛庁運用局長西川徹矢君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

衛藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桑原豊君。

桑原委員 これまでいろいろと議論を聞いてまいりまして、本来なら、いろいろな中身がより具体的にはっきりしてくるというのが普通なんですけれども、私は、だんだんいろいろなことが余計わからなくなってきた、こういう感じがいたしております。その中でも特に今重要な点は、この法律の目的の部分でございまして、何をもって目的が達成されたとするのか。

 これは、二年前に九・一一というあの同時多発テロが発生をして、それがテロに起因するものだということで、その根っこを断たなきゃだめだ、こういうことで、アメリカを中心にした取り組みを支援する、こういうことでできたわけでございます。

 そこで、九・一一テロというものと当然のことながら深くかかわっておるわけでありまして、この原因を除去していく。特に、首謀者と言われているオサマ・ビンラディン、それをかくまったということでタリバンの首領であるオマル師、そういった人たちを捕らえるというところが一つポイントであったかと思うんですが、それがいまだに捕らえられていない。

 だんだんテロリストが逃亡し、拡散をする、そういったことになって、その対象範囲が広がっていくというようなこともございますし、どうもテロ一般というものを撲滅するというようなことと何かごちゃごちゃになってきて、どこがこの法律の目的とするところなのか、かなりぼけてきたんじゃないか、あいまいになってきたんじゃないか。

 こういう状況になったからこそ、なお、ある意味では、何が目的なのか。日本が主体的にこの法律をつくって運用していくわけでありますから、我が国自身がそのことをはっきり目標として定めていかなければならないというふうに私は思うんですね。

 そういう意味で、何をもって目的達成とするのかというところをもう一度お聞きしたいと思います。

福田国務大臣 九・一一テロ、これを起こした原因、それを脅威というように言っておりますけれども、それを除去するということは、これは国際社会における共通した認識であるというように考えております。

 この、テロを撲滅と申しますか、テロとの闘いですね、撲滅に向けての闘い、こういうことが今行われている活動の中心であるわけでございますけれども、そういう脅威が除去されればこのテロ特措法の目的が達成された、こういうことになりますので、そういう判断がされた時点において対応措置を終了する、こういうことになります。

 では、どういうような状況になればそういう脅威が除去されたというように判断されるか、こういうふうな問題になるかと思いますけれども、これはちょっと一概には言えないことだと思います。諸般の情勢を見て総合的に判断していく、そういう性質のものだろうというふうに思います。

 はしょって申し上げれば、九・一一のテロのような組織的かつ大規模なテロ遂行能力を喪失させるに至ったと認められるような場合に脅威の除去の目的が達成された、こういうことになるわけであります。

桑原委員 テロにはもちろん背景がありまして、それを生む土壌、いろいろな環境があるわけでして、そういうことをなくしていくということになると、これはもう永遠の課題でありまして、そんな簡単にそういうテロを生む土壌がなくなるはずがないわけですね。

 いや、そうじゃなしに、直接的にあのテロを引き起こした原因をあのテロに限って除去していくんだ、そういうことであれば、首謀者を捕らえて、それをかくまっていたそういうグループを捕らえるというか、せん滅するというか、そういうことで目標が達せられると思うんですけれども、それをあいまいにしていると、ずるずると、もう果てしなく、目的がぼやけて、広がって、遠くなって、だんだんおかしなことになっていく、最初の状況とは似ても似つかない結果になっていくという可能性があるわけですね。

 特に、イラクということで、近くでアメリカが主導する戦争が起きたわけですから、そういう意味では、テロリストもそういった地域のいろいろな問題とかかわってくるということがだんだん起きてくるわけですね。そして、既にもう東南アジアも含めていろいろなところにテロリストが拡散している、そして現にテロが起きている。

 そういう状況を見ていきますと、なおのこと、どこかできちっと日本なりに主体的な判断ができる線を引かないと、これは諸外国と協議して、参加者といろいろ話し合ってやっていきますよというだけでは、それはもう、我が国が主体的に法律をつくって、何のためにやるのかということをはっきり明言してやってきたわけですから、そこを我が国がはっきりさせなかったら、時限立法なんですね、これは。もう二年間延ばしましょう、延ばしてください、こういう話ですから、時限を区切ってやるわけですから、なおのこと、時限立法の性格からいっても、私は、この期間内にこういうことをもって目標とするんだ、これがはっきりしないとだめだと思うんですが、もう一度どうですか。

福田国務大臣 そこが一概に申し上げられないというところなんですよ。どういう状況が来れば脅威が除去されたかということをこれは定量的に申し上げるわけにいかないし、例えばビンラディンを捕まえたらそれでいいというものでもない。捕まえてそれで済むというのであれば、それはそれでもよろしい、それで終了してもいいんです。

 しかし、そうじゃなくて、今は、ビンラディンの下にいた幹部たちが拡散をしている可能性があるということで、それが各地方に行ってまたいろいろな活動をするという可能性があるとかいったようなことがあるわけです。そういう者が海外に行って活動する。インドネシアでやるとかいったようなことがあったわけでありますけれども、そういうようなことがあるので、それは、だれをどうしたら、それから、何人捕まえたらいいんだという話にはならない。

 ですけれども、総合的に判断して、もうこれならば大丈夫だというようなことになるかどうか、そのところはもう少し様子を見て判断すべき問題であるというように考えております。

 それから、インドネシアで幹部が行って何か悪さしているということで、では、インドネシアで活動するのかどうか、我が国がインドネシアに行くのかどうか、こういうことになると、それは必ずしもそういうわけではないんですよ。

 それは、何しろこの法律というのは、国連憲章にのっとって、そして、その目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置、関連する国連決議に基づく人道的措置に関する特別措置、要するに、国際社会の動向を見ながら決めていかなければいけない、こういう問題があるわけです。国際社会と協議する、そしてそういう中で、我が国として、この法律に基づいてできる、また、しなければいけないというものがあればやっていくということですから、それはそういう枠はあるんです。しかし、この九・一一のテロの脅威を除去する、ここのところがポイントですから、ここのところを外すわけにはいかないというように考えております。

桑原委員 今の言い方では、日本がみずから法律をつくってまで、そして時限を切って、主体的にかかわろうとしておられるわけですから、そういうことなのに、目的がある意味でははっきりしない、どこが区切りかということがはっきりしないというのは、本当に私はおかしなことだ。

 では、具体的な活動を通じて、少し目的があいまいになっているんじゃないかという話をしたいと思うんですが、例えば、インド洋上での海上での監視活動ですね。これは、私は、今日的には余り逃亡などということも考えられないし、ゆえに、そういう者を捕らえる必要性などというのは余り考えられないと思うんです。しかし、聞くところによれば、最近でも、月に二千件の無線照会が行われている、あるいは月々三十件程度の船舶への立ち入りもやられている、こういうことですから、いろいろあるんだ、こういうことなんですけれども。

 例えば、イラクでイラク戦争が起きて、海上を行き来する船舶、これらが、例えばイラクから逃亡する人たちを運ぶ、あるいはイラクにアフガンから出ていく、そういう人たちがいるかもしれない。船の場合もそういうふうなことも考えられるということになれば、私は、そういうことは十分考えられるわけで、監視活動そのものも、単にアフガンのそういうテロリストをどうこうするということだけじゃなしに、そういった問題も含めて対象になっているんじゃないか。

 これは、なっているんじゃないかというのは推測でして、具体的には活動の中身が全然明らかにされていませんから、これは私が推測するだけですけれども、諸般の現場の条件から考えていくとそういうことも十分考えられるんではないか、こういうふうに思うんですね。そうなると、もうそういった支援活動そのものも目的が大変にあいまいになっているんじゃないか、そういうふうに思うんですけれども、その点はどうでしょうか。

福田国務大臣 それはあいまいとおっしゃるけれども、法律をあいまいに運用したら、これはいかぬですよ。あいまいになっちゃいます。しかし、そうじゃないんです。この法律に基づいて、この法律の枠内で、範囲内でやっているわけですからね。今、自衛隊が、艦隊がインド洋で活動している。それはあくまでもこの法律の趣旨にのっとったものじゃなきゃできないわけですよ。それ以外のことはできないんです。

桑原委員 しかし、現実に、その海上監視活動なるものを、中身はどうなんだ、具体的に何人捕獲したのかとか、どういう状況のどういう者を捕獲したのかという話は、これは作戦上の問題で言えないという話になっていますから、こっちは全然わからないわけですよ、中身としては。

 しかし、状況からすれば、もうイラク、戦争が行われたわけですから、イラクとの関係でいろいろなことが考えられるわけですね、これは。給油の中身もいろいろ問題になりましたね。イラク戦に使われているんじゃないか、そういう艦船に給油しているんじゃないかという話もありましたし、さきの川口大臣の答弁の中でも、ある意味では、アフガンのそういった支援活動を通じて、イラクへの間接的な意味での支援のような形になるかもしれない、それは結果としてそうなるかもしれないというような話もちらっと私は出たように記憶しておるんです。

 そんなことなどと関連したら、というのは、アメリカは、イラクもにらみ、アフガンもにらんで作戦しているわけですし、テロリストもある意味では連動していると思うんですね。そういった状況の中で、日本が行っている支援活動というものを新たな状況の中でどう位置づけていくのかというのは、私はやはりちゃんと検討しなきゃならぬのじゃないかと思うんですが、そこら辺は全く画然と分けているんだ、そういう言い方をされていても、現実に活動の中身の説明がないものだから、わからないわけですよ。

 私は、海上監視活動なんというのは、どうも、そういう意味では目的外のそういったことも含まれ得る可能性が非常に強いんじゃないかと思うんですけれども、どうですか。

福田国務大臣 これは、この法律の趣旨、目的、このことについては、給油をします相手国に対してよく説明しているんです。そしてまた交換公文も交わしている、こういうことでありまして、そこまできちんとやっているわけですよ。ですから、我々は、それがほかの目的に使われるとか、そういうことは考えておりません。

桑原委員 現場の状況は私もわからないわけですけれども、どうも今のお話は建前というような話でして、現状でそういうことになっているのかどうかというのは甚だ、説明がないわけですから、活動内容の説明がないわけですから、わからないままだということを申し上げておきたいと思います。

 それでは、その次に、海上監視活動について、艦船に対して給油をやっているわけですけれども、この活動についてちょっとお聞きしたいと思います。

 最近は、米国など各国の艦船数ももちろん激減をして、当然ながら、それの海上自衛隊の給油実績も減っておるわけですね。これはなぜこういうふうに急激に減ってきたのか、この理由をまずお聞きしたいと思います。

石破国務大臣 これは先ほどの予算委員会でもお答えをしたことでございますが、最盛期といいますか、一番多かった二〇〇二年の五月は、アメリカの船が四十隻、アメリカ以外は十五カ国の約六十隻ということでございます。

 それから激減をしてきたという御指摘でありまして、確かに現在におきましては、アメリカが四十隻だったものが二隻、そしてそれ以外の国は六十隻だったものが十九隻ということになっております。

 この最盛期というのはアフガニスタン攻撃の時期と重なっておるわけでございまして、そういたしますと、攻撃用の艦船というものもたくさん出ておるわけでございます。それは、海上監視活動、船舶検査活動のようなものでございますが、それを支援するということと、アフガニスタン攻撃に赴く船を支援するという、この二つのことがございます。したがいまして、二つの任務をあわせ持っておったときは確かに数は多かった。現在のところは、それを海上監視あるいは船舶検査に特化をしておるわけであります。それが一つ。

 もう一つは、作戦内容が変わっておりますので、大型艦から小型艦に変わってきたということがございます。油を多く必要とする大きな船から、油を多く必要としない小さな船に変わってきたということでございます。したがいまして、相手の船も数も減りました、そしてまた量も減ったということでございます。

桑原委員 戦闘期、戦闘が行われているときにたくさん集中してやった、攻撃艦船もあった、こういうことはわかりますが、その後、戦闘が終結した後の状況、これもだんだん減ってきていますね、艦船の数が。これはどうなんですか。そういう海上における監視活動の必要性というか需要というのか、そういうものがだんだん少なくなった、こういうふうに理解をしてよろしいのでしょうか。

石破国務大臣 私はそうは思っておりません。

 例えば、アメリカ以外の国の船の推移というのを考えてみましたときに、二〇〇二年の十一月で二十六隻、二〇〇三年、本年の六月は十五隻、それが現在は十九隻にふえておるわけでございます。参加します国も、例えば私どもでも、DDHとイージス艦をどうやってやりくりしていくか、あるいは補給艦をどうやってやりくりしていくかというのが、私どものような相当の船を有しております海上自衛隊においても相当にきついわけでございます。

 例えばギリシャなぞというのは、オリンピックをやる、そのために警備の訓練が必要だ、だから一時期船は下げるけれども、また派遣する。フランスも、一時期下げたけれども、もう一度派遣するということでございまして、六月と九月を比べましても、アメリカ以外の国の船はふえておるわけでございます。アメリカは一隻減りました。しかしながら、ほかの国は四隻もふえておるわけでございます。

 ですから、洋上監視、船舶検査、その必要性が下がってきたではないかという御指摘は私は必ずしも当たらないものだと、この数字から見ても考える次第でございます。

桑原委員 そういう回答をされている反面、いわゆる抑止効果があるんだ、存在することそのものでそういう状況を抑止する効果があるんだ、こういうふうにおっしゃっているんです。

 またさっきの話に少し戻りますが、どういう抑止効果があるのかということも、これは具体的に説明がされないとわからないわけですね。単なる抑止効果だ、こういう言い方だけですから。そこら辺の状況が説明されないものですから、私は、艦船の数が減ってきたこと、あるいは給油の実績も減っていること、そういうふうなことを考えると、全体的にそういう状況がなくなってきている、少なくなってきているのではないか。趨勢から見てそういうふうに判断をするわけですよ。それは、中身が説明されないものですからね。件数も明らかにならないし。

 そういったことで、私は非常に、抑止効果などという言い方も含めて、この効果をはかる尺度というのが極めてあいまいだ、こういうふうに思っているんです。

 具体的に、日本のNGOなんかで現地にいる人の話を聞きますと、アフガンの国内から他国の領土を経て、海上を渡ってそして逃亡する、考えられないことはない、そういうことは。しかし、およそ事実としては余りないんじゃないか、こういうふうに現地にいるNGOの方から話を聞くわけです。そして、例えば逃亡というものだけを考えると、海上で捕らえるということよりも、むしろ陸上で、国境線で、いろいろなところでチェックできるんではないか、こういうふうに思うんですね。

 そうすると、この海上の監視行動というのは、現実的でもないし、どうも中身が具体的に説明されないものだから、これは余りそういう効果がないんじゃないか、こういうふうに思うんです。

 例えば、逃亡の件数はどれぐらいあったのかと聞くと、また言えないという話になっちゃうんですけれども、そこの説明がないものだから、全然先に話が進まない。どうですか。

川口国務大臣 仮に、では、これを中断したらどういうことがあるだろうかというふうに考えてみると抑止効果というのがおわかりいただけるのではないかと思います。

 例えば、今でこそ海上に船がいますから、海上経由では出られなくなっている、アフガニスタンの中に封じ込めが成功しているということであるわけですけれども、これを中断してしまいますと、テロリストあるいはテロ関連の物質が海上経由で移動する、あるいはその沿岸沿いにテロリストの活動が活発化をするというようなことがあるわけですね。それから、艦船は補給がなくなりますから、その補給のためにそれぞれどこかの港まで戻らなきゃいけないということがございますね。そういう意味では、その封じ込めの作業、封じ込めの効果というのが非常に減殺をされるということになるわけです。

 数字で言えば、前にお話をしましたように、例えば三千人のアルカイダが捕まっている、あるいは殺害をされている、それから、タリバン、アルカイダの幹部が四十名、アルカイダの三分の二の幹部が捕まり、あるいは殺害をされたという状況が現に実績としてあるわけですね。それから、アフガニスタンの中で今テロの活動が活発化をする兆しを見せているということもあるわけですから、アフガニスタンの中にテロリストがいなくなってしまったという状況には全くなっていないということでございます。

 ですから、海上でやっているオペレーションをやめてしまえば、その人たちがあちこちに出ていって、テロの活動というのが世界的に活発化をするような危険がある。要するに、封じ込めを今引き続きやっていく必要があるということだと思います。

桑原委員 もしなかりせばという話をされましたけれども、それも一つの想像の世界なんですね。そうあり得るかもしれないという話なんですよ。そうでしょう。そして、何十人捕まえた、あるいは殺した、こういう話だって、海で何人捕まえたかという話は、これは全く出てこないわけですよ。その数字を言えと言っても、それは言えないという話でずっと来ているわけですね。だから、我々の側からすれば、この海上監視活動の効果をはかるものは何にもないんですよ。

 もしこれがなかったらというのも、これも想像ですよ、さっき言ったように。そんな話で、これに効果があるんだという言い方はおかしいし、先ほども言ったように、現実に、人の国を通ってさらに海上から逃げ出すなんということは、まあ考えられないことはないけれども、事実上はあり得ないんじゃないか、こういう現地の人の話もあるわけですから、その効果をはかりようがないんです。

 それに自衛隊が中心的な役割を果たしているということになると思うので、やはり、いま一つはっきりその内容を説明して、見直すべきか否かという議論を私はすべきだと思うんですけれども、どうですか。

川口国務大臣 想像の世界でというふうにおっしゃられましたけれども、現に今、三十カ国の国が兵隊、軍をアフガニスタンに出しているわけですね。それから、七十の国が何らかの形でこのオペレーションに参加をしている。基地を例えば提供するとかいう形で参加をしているわけです。海にはそのうち約十カ国ということですけれども、それだけの国がまだ必要だと思って作業をしている、作戦に参加をしているというのが現状でございます。

 テロに対する闘いというのは、これは我が国の問題であるという認識が必要だと思います。テロが拡散をしてしまえば、テロリストが世界のあちこちに行くようなことがあれば、日本人がニューヨークで殺されたように、あるいはバリで死んだように、そういうことがいつどこで起こるかわからない。そういう状況が続くと拡散を許すということになるわけですから、七十カ国の国が、引き続きこれが必要だと思っている。

 それから、我が国の活動に対しては、これはアメリカだけではなくて、タイからも、ニュージーランドからも、ギリシャからも、フランスからも、ドイツからも、いろいろな国から、あるいはインドからも、アラブ首長国連邦からも感謝をされている。そういった世界的な活動の一環を、我が国として参加をしている、それに携わっているということであると思います。

桑原委員 私は、アメリカの恐らく要請に基づいて各国が艦船を出し、そういう必要性があるというアメリカの考え方で協力をしているんだろうと思うんですけれども、しかし、現実を見たときに、むしろ私は、海上よりも陸上、そこにたくさんの問題があるんじゃないですか。治安が一向に改善されない、政府と地方の軍閥の間に争いが絶えない、軍閥間の争いも絶えない。おっとどっこいといいましょうか、タリバンだってまだまだいろいろな形で勢力は健在ですね。そういう陸上の問題が根本なんじゃないでしょうか。

 私は、我が国の支援の重点も、むしろ、そういった政権の安定であるとか、あるいは治安の回復、武装解除の問題、そしてインフラの整備を含めた復興支援、そういうものにこの二年間の間に重点を移すべき、そういう段階に来ているんじゃないですか。

 私は、やはりそこら辺を、この二年間どうだったのか、どういう変化があったのか、そのことを、やはり日本もかかわってきた以上は、全体像を明らかにして、そして、そういう状況の中で、今後にこんな展望を見出していかなければならないんだ、そのために、今のこの法律については、内容も新しい状況に合わせて見直していかなきゃいかぬ、基本計画だって変えていかなきゃいかぬ、そんな何か一連の議論があって延長だという話ならわかるんですけれども、そこら辺の説明というものが、まとまったものが、ほとんどしっかりとしたものがなくて、ただただ延長だ、テロはなくなっていないんだ、まだまだどういう段階になったら終わるかわからないんだ、それはそのときだ。こんな説明を、二年間いろいろやってきたにもかかわらず、同じようなこんな説明をして、同じような中身で延長するというのはどういうことなんだろうかと思うんですよ。

 そういう意味では、海上監視活動についても、効果がある、なかったらどうなるんだ、そんな言い方だけで、中身は何にも説明しないんだから。そういうことで判断をして、もう二年続けますよと。余りにも、私は、国民に対して、我々に対しても無責任な姿勢ではないか、こういうふうに思うんですけれども、どうですか。

川口国務大臣 海上も重要でございますし、委員が御指摘のように、アフガニスタンの国内での活動というのも私は重要だと思います。そちらの面でも我が国はそれなりのことをやってきているということです。

 今、アフガニスタンの国内がどういうような状況になっているかと申しますと、いい面を申し上げますと、小さな、小規模な経済活動は相当に活発化をしてきているということです。という意味では、国際社会の支援、それからカルザイ政権の自助努力が実を結びつつあるということかと思います。他方で、基礎的なインフラというのはまだ非常に脆弱であるという状況ですし、タリバンの活動が活発化している、軍閥の活動が活発化している、ケシの栽培がふえているというような状況があります。

 日本として今までどういう支援をしてきたかということで申しますと、昨年の一月の復興支援会合で、二年半で五億ドルというコミットをしました。そのうち、ほぼ五億ドル近く、正確に言いますと、四億四千万ドルの支援をしています。

 具体的にどういうことをやっているかといいますと、DDRと言われる復員兵士の定着化、地域の開発といったようなことをやってきているわけでして、それはそれなりに実を結びつつある。

 そういった中で、国際社会が全体としてアフガニスタンの復興に、国内でも、あるいは海上活動においても引き続き貢献をしていくことが大事だというのは、国際社会全体の今認識です。七十カ国の国が参加をしているときに、我が国の問題であるテロの問題に対応するということを我が国がしないで、我が国だけがそれをやめるのかということは国際社会の中で許容されることではないと考えます。

桑原委員 私が言っているのは、日本として、支援のその中身をしっかり検討して、時代の状況に合わせて検討していく必要があるんだ、海を中心に自衛隊の活動をやっているわけですけれども、むしろ、これは陸の段階でしっかりした対応をしていけばいろいろ解決できるという課題じゃないのか、そういうことを日本として考えたらどうなのか。最初に出発したとおりにこれからもやりますよというのは、余りにも、ちゃんとした主体的な姿勢としてはおかしいのではないか、こういうことを言ったわけです。

 そこで、時間がなくなりましたが、これから大変な巨額を要する復興が始まると思うんですね。新聞なんかの報道では三百億ドルだとかというふうなことを書いてありましたけれども、日本はこれから、その復興の経費も含めてどのようなことを考えているのか。アメリカのブッシュ大統領が来られるわけですけれども、そのときに、そういったことも含めてちゃんとした話があるのかどうか、日本はするのかどうか、それはどうでしょうか。

川口国務大臣 今委員がおっしゃられたのはイラクのことであるかと思いますけれども……(桑原委員「アフガンです」と呼ぶ)アフガニスタンというのは、今既に、ここ二年ぐらい、もうそれなりに国際社会は資金をコミットしていて、日本も先ほど五億ドルというふうに言いましたけれども、東京での会議では四十数億ドルの資金がコミットされ、引き続き国際社会として関与していくことが大事であるということで、これはさらなる支援をみんなしていく必要があるというふうには考えておりますけれども、今の段階では、東京会議でコミットをした四十数億ドル、これをきちんと使っていく、その上で国際社会としてはいろいろ考えるということになるだろうと思います。

桑原委員 イラクじゃなしにアフガンなんですよ。ドバイでアフガンの復興支援をめぐる専門家の会合が行われて、二〇〇二年以降五年間で総額三百億ドルの提示があった、復興費用として。そして、アメリカの財務長官も出席をしておりまして、日本や欧州に応分の協力を要請した、こうあるわけですよ。

 ですから、そういった今後の対応はどうなのか、それに対してどう対応するつもりなのかということを聞いたのです。

川口国務大臣 先ほどアフガニスタンについて申しましたように、四十億ドルを超える金額が国際社会から既にコミットされていて、今、それのディスバースといいますか、支出をしているという段階であります。

 今後の、先ほど委員がおっしゃった数字については私も報道で承知をしていますけれども、かなりの部分、民間資金を入れて、どうやってそれを開発あるいは復興につなげていくかということでございまして、それが全部各国の政府が負担をするとか、そういう段階の話には今のところまだなっていない。今後、開発が進むにつれ、あるいはさらなる復興の需要が出てくるにつれて、国際社会としてはいかなる関与をしていくか、どのような貢献をしていくかということを考えていくということになると思いますし、我が国としても、その中で我が国にふさわしい責任を果たしていくということにはなろうかと思います。

桑原委員 最後に、カルザイ政権の安定、そういう支配力が強まるということがアフガンの情勢安定のポイントだと思うんですけれども、しかし、現実の状況は、米軍やISAFの支援がなければほとんど独自で存立することが不可能だ、こういうふうな実態だと思うんです。

 このカルザイ政権の安定についてどう考えているのか、日本としてどうしていくつもりなのか、そして今後の政治日程で、憲法制定も少し先送りになったようですけれども、ロヤジェルガがいつ開かれて、憲法制定、草案の公表も含めてどういう時期なのか、そして総選挙はどうなのか、この点について見通しを述べていただきたいと思います。

川口国務大臣 アフガニスタンは、委員もおっしゃったように、カルザイ大統領という人材に恵まれて、今まできちんとスケジュールどおり和平プロセスを進んできていると思います。

 今後の見通しといたしましては、十月の下旬に憲法の草案が発表されるだろうという見通しになっております。十二月には憲法制定のロヤジェルガが行われるということでございます。

 まだまだ不安定要因がございます。カルザイ大統領の力が及んでいる範囲というのは全アフガニスタンということにはなっておりませんけれども、通貨の切りかえ自体も非常に短期間でアフガニスタンはやってのけたということでもございますし、カルザイ大統領のリーダーシップを得て、また国際社会の貢献、支援、これが続くということで、アフガニスタンは、今までの破綻国家から再び破綻をすることのない安定的な発展への道を歩むということが、我々の期待、希望しているところです。

桑原委員 終わります。

衛藤委員長 これにて桑原豊君の質疑は終了いたしました。

 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 山口壯です。

 きょうは、アフガンの関係あるいはほかのテロの問題も含めて、いろいろな観点からお聞きしたいんです。

 もともとテロの問題というのは、根っこをたどれば、いろいろな意見がある中で、やはりイスラエルとパレスチナというものに行き当たってしまうというような気もするわけです。例えば、イラクにアメリカがなぜ戦争したのか。ネオコンという人たちが今ブッシュ政権の周りにたくさんいるみたいですけれども、どうもそういう影響力というのがあってこういうことが起こったようにも見受けられる。

 きょうは、そういう意味で、順番に聞きたいと思うんですけれども、まずアフガンの問題については、今官房長官から、今の自衛隊のオペレーションがいつまで続くのかということについて、総合的にいろいろ判断されるという答弁はありました。

 官房長官にまずお尋ねさせていただきたいのは、そのニーズというものは、ちなみにだれが判定することになるんでしょうか。

福田国務大臣 これは、いろいろな情報また各国間の協議等ございます。そういうものを総合して政府として決定するわけですけれども、では、だれが最終的に決定するか。これは、部隊の運用については防衛庁長官が責任を負っておりますから、防衛庁長官が判断する。しかし、防衛庁長官は総理大臣の指示にも従う、こういうような関係になると思います。

山口(壯)委員 今、防衛庁長官が判断されるというお答えですけれども、官房長官がおっしゃられた情報の問題あるいは各国との協議の問題、そういう意味では、かなり幅広い情勢判断が必要だと思います。

 そういう意味で、例えば現地の我々の大使館、今、駒野大使が頑張っておられると思いますけれども、そこの情報収集体制。私、パキスタンに勤めたときには、パシュトゥン語の話せる人もいて、ヘクマティアル等と直接会ったりしていろいろ現地でもやりましたけれども、果たして今、アフガンの我々の大使館、十分の情報収集体制というものがあるのかどうか。その辺は、外務大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 我が国は、アフガニスタンでは、ほかの国と比較しても相当に立派な情報収集網を持っていると思います。

 これは、今、ペルシャ語を話す駒野大使がカルザイ大統領等と直接にコミュニケーションをできるという立場にありますし、それから、今二十人の大使館員が活動をしていますけれども、カブールだけにとどまっているのではなくて、地方に行って、例えば先月も、カンダハル、ジャララバード、マザリシャリフというところに行きまして、その先でNGOの人たちと話をしたり、あるいは現地の人たちと話をしたりしている。そういった非常に豊富な広い情報のネットワークを持っているというふうに思っています。それから、もちろん、アフガニスタンの中にあるほかの外国の公館というところとも意見交換をしています。

 そういったさまざまなルートを通じて、日本のアフガニスタンについての情報というのは、世界の中でもトップクラスの情報を持っていると思います。

山口(壯)委員 ペルシャ語というのは、イランの言葉ですね。

川口国務大臣 パシュトゥン人の話すダリ語、これが非常にペルシャ語と似ているということでして、ほぼお互いに通ずるということで、私もアフガニスタンに参りましたときに駒野大使と一緒に行動しましたけれども、ちゃんと話が通ずる、そういうことでございます。

山口(壯)委員 駒野大使以外に現地語で話せる方はおられますか。

川口国務大臣 日本から行っている人では、大使館の上から三番目の人がやはり話せるということでございます。それから、もちろん現地、現採で話せる人たち、日本語もできるという人たちがいます。

山口(壯)委員 確かに、私もパキスタンにずっと勤めたときに、NGOの人たちが非常に大事な情報源でもあったし、それから相手の、当時ムジャヒディンと言われている人たちともいろいろやったわけですけれども、なかなか、文化の違いを超えて情報をとるというのは非常に難しいし、それから、アメリカもこの点は困っていると思いますね。

 そういう意味では、どういうふうにアフガンをこれからマネージするのを手伝っていくか。今、同僚の桑原議員から、カルザイさんで大丈夫かという話もありました。私も実は同じような懸念を持っています。ポケットに猫ばばしたといううわさも聞こえてくる。このことが事実かどうかわかりませんけれども。でも、現実に日本として、どういう構想を持ってこれからアフガンの情勢を、テロリストたちが入り込めないように持っていくか、それを考えたときに、カルザイさんで本当に大丈夫か、その辺の情報はきちっととれているのかどうか、その辺をまずお聞きしたかったわけです。

 大臣、どうでしょうか、カルザイさんについて、ポケットに猫ばばしているんじゃないかという話もありますけれども、その辺は大丈夫でしょうか。

川口国務大臣 カルザイ大統領がいなければ、多民族国家であるアフガニスタンは今の状況までこのスピードで戻ってくることはなかったというふうに思います。

 国際社会で、カルザイ大統領は、まさにアフガニスタンの独立、独立というか復興のシンボルであります。かつて、パウエル国務長官が、毎晩自分はカルザイ大統領が暗殺をされるようなことがないように祈っているんだということを私に言ったことがありますけれども、国際社会のカルザイ大統領に対する思いというのは、そういったレベルのものでございます。

 国内的にも、多民族国家で、カルザイ大統領という人間がいなければ、求心力のある人間がいなければ、まとまってその復興の道を歩むことができないということだろうと思います。なかなか、このアフガニスタンのような地形、地勢の国で国をまとめていくというのは大変な努力が要ると思いますし、まだまだ地方に軍閥がいますから難しいわけですけれども、我が国としては、これはまさにアフガニスタンの人たちの国ですから、今まで描かれた移行政権、憲法、選挙、そして本格的な政権へというふうに歩んでいくようにこれを後押ししていくということです。

 それから、我が国のやっている支援という意味では、地域の開発に向けての、これは緒方構想、緒方イニシアチブと言われるものですけれども、それで、地域についても開発あるいは復興の利益を及ぼしていくということが大事だと思っております。日本、アメリカ、サウジアラビア三カ国でつくっている道路というのも、そういったことに資するというふうに考えています。

 アフガニスタンの人たちのつくるアフガニスタンの国家、それを支援していくということです。

山口(壯)委員 現実に、国内的ないろいろな復興の話というのがむしろ根っこの話だと思いますけれども、マクロで考えた場合に、この洋上給油の話というのは象徴的意味合いが私は極めて大きかったと思いますから、そういう意味では、日本政府としてはもっともっと実は的確に情勢の判断をしてもらって、もう象徴的意味合いが薄れているのであれば、これはアメリカに感謝される、そういう部分よりも、むしろアフガニスタン人そのものに感謝される、そっちの方が実はこれから大事になっていくと思います。

 例えば、アフガニスタンの国内で今何が求められているのか。例えば校舎、今青空学校が非常に多いらしいですね、ですから、その校舎の問題。あるいは文房具、文房具が非常に足りなくて困っているという。こういうときに助けられた子供たちというのは必ず一生覚えていますから、その辺は、私は、洋上給油も大事ということかもしれないけれども、象徴的意味合いが薄くなっているのであれば、そこは迅速に、いろいろニーズを把握した上でやった方がいいと思います。お答えは結構です。

 イラクの問題について実はお聞きしたいんですけれども、イラクについて、大量破壊兵器が見つかっていないわけですね。これについて最近いろいろなレポートも出つつあるように思います。

 特に、国際社会の今の認識をずっと見てみると、もうないという結論がだんだん出てきつつある。日本だけが、あるかもしれないと。サダム・フセインが見つかっていないということはあるかもしれないということだなんという議論はもうとっくに終わっていると思いますけれども、早くこれを、国際社会、例えばアメリカがだんだんそういうふうに言いつつあるということも踏まえて、いろいろ議論された方がいいと私は思うんです。

 最初に、大量破壊兵器がまだ見つかっていない、このことについて、川口大臣、まだこれはあるという可能性を残して考えておられますか。

川口国務大臣 これは前の国会でも申しましたけれども、イラク自身が、大量破壊兵器を現に使い、そして国連に対して、何と何と何をどれぐらい持っているということを申告したわけですね。その申告の後、それがどのぐらい廃棄されたかということを国連の査察団がチェックに入って、査察をして、その結果として、何についてどれぐらいおかしいという国連の報告書が出ているわけです。

 我々が日本の政府としてイラクの大量破壊兵器について考えていることというのは、その国連の査察団の報告書をベースにして考えているわけですけれども、幾つも、これは説明をされていない、おかしいというところがあるわけです。それが一体どうなったんだろうかという疑問は引き続き残っているわけです。

 したがいまして、今相当な人数の人間が調査に入っているわけでして、我々としては、その調査について注視を続けていきたいと考えています。

山口(壯)委員 ニューヨーク・タイムズの、私もきのうちょっとインターネットでずっと見ていて気がついたんですけれども、あるあると一番叫んでいたデービッド・ケイというおじさんが、ニューヨーク・タイムズの社説によると、私もきのうインターネットをざっと見ただけだから、これは記事そのものだったかどうか。インタリムレポート、中間報告ですね、デービッド・ケイ、その草案というものがあるというふうに、これは二十六日の「ザ フェイルアー ツー ファインド イラキ ウエポンズ」という社説です。

 そのときに、そのレポートが「セイズ ザ チーム ハズ ノット ファウンド エニイ サッチ ウエポンズ アフター ニアリー フォー マンスス オブ インテンシブリー サーチング アンド インタビューイング トップ イラキ サイエンティスツ」、そう書いた後に、「ザ ウエポンズ アー シンプリー ノット ゼア」、とにかくないんだということを示唆していると。デービッド・ケイというのは最も激しく責め立てたおじさんですけれども、そのおじさんが「シンプリー ノット ゼア」、単に、もうとにかくないんだということを言い始めている。

 私は、日本外交を進められるに当たって、余りその辺は取り残されることがないようにされておいた方がいいと思います。

 この大量破壊兵器の問題というのは、そういう意味で、イギリスでもブレアさんがえらい目に遭っている。ブッシュさんの方も支持率がどんどん落ちている。そして、この一番激しかったデービッド・ケイ自身が「シンプリー ノット ゼア」ということを言い始めている。

 特に今、疑問を持っているというふうにおっしゃいましたけれども、デービッド・ケイがどうもこういうふうに言っている。つくる能力はあるけれども持っていなかったんじゃないかということを言い始めている。つくる能力はあるけれども持っていなかったんじゃないか。日本だってつくる能力はあるわけですね。つくる能力があるということだけで戦争されちゃかなわないわけです。しかも、持っていなかったんじゃないかと。

 じゃ、なぜサダム・フセインはあのときに、おれは持っている、持っていると言ったんだ。この辺は確かにパズルだというふうにいろいろな人が言っている。ただ、これは文化の理解というものも我々はよくやらなきゃいけないと思うんです。彼らにはプライドがあった、どうしても国連の査察団に国内を荒らし回られるということが受け入れられなかったということだったのかどうか。いろいろな理由はあるでしょう。でも、それが戦争する理由として果たして十分だったかどうか。我々は、これが、戦争が既に、ブッシュさん自身は五月に終結宣言を出されて一つの段階を終えているわけですから、検証していく必要が非常に大きいと思うんです。

 その意味で、デービッド・ケイがこういうふうに言い出しているということについて、大臣、同じ答弁は結構です、違う答弁を少しやってください。

川口国務大臣 考えていることは同じですので、同じことを申し上げるしかないわけですけれども、大量破壊兵器は、つくる能力があるけれどもなかったと今委員はおっしゃられましたけれども、実際にあったんですね。これはイラクみずからが、先ほど言いましたように、国連に自分たちが報告をしているわけです。一部については査察団が廃棄したことを認めた、ただし残りは見つかっていないということでありまして、イラクはいずれにしても、そういったことについて、武装解除をし、国連の決議に従ってそれをやっていくということに違反をしていたということでありまして、細かいことは省きますけれども、したがって、決議に違反ということで武力行使になったということだと思います。

山口(壯)委員 国連決議に違反したから戦争になったんでしょうか。

川口国務大臣 これは、ずっと申し上げたように、一言で申し上げればそういうことでございます。

山口(壯)委員 イスラエルが、ウエストバンクあるいはガザ地区から撤退していけという二二四決議、あるいは三三八決議、これに明確に何度も違反していますけれども、そのことで戦争になりますか。

川口国務大臣 イラクは、十六の国連決議に違反をし続け、十年間違反をし続け、たび重なる国際社会の警告にもかかわらず、ずっと違反をし続けた。その結果として、決議一四四一によって、二〇〇二年の十一月ですが、イラクは、決議六八七、これは停戦決議ですが、それらの関連決議に重大な違反を犯し続けていることが決定をされた、満場一致で決定されているわけです。そして、イラクに対して、武装解除の義務履行の最後の機会を与える、これも満場一致で決定されているわけです。そして、イラクが完全なる協力を行わないことはさらなる重大な違反を構成するということが、これも満場一致で決定されているわけです。そして、イラクが継続的な義務違反を続ける結果深刻な結果に直面するという警告を受けている。そしてそれは、その今までの査察団の報告からも、イラクが完全なる協力を行わなかったということが明らかになり、さらなる重大な違反がそれによって生じ、したがって、停戦決議の根拠が、基礎が損なわれ、その結果として、決議六七八によって、これは武力行使を容認している決議ですが、それによって武力行使が行われたということでして、そういったたび重なる積み重ね、それは全くイスラエルと違うわけですね。イスラエルには武力行使の容認決議は今まで一度もつくられておりません。

山口(壯)委員 イラクが十六回違反したと言われますけれども、イスラエルは三十一回以上違反しているわけですね。

 国連決議に違反した云々だけでは戦争には当然理由にならない、そういう答弁でよろしいですか、確認してください。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、イラクに対しては武力行使の容認決議があった、イスラエルに対してはそれがない。単に三十何回とか、そういう回数の問題ではございません。

山口(壯)委員 イラクになぜ戦争が起こったかということを、大臣、もっと深く歴史の認識を持っていただくことが大事じゃないですか。

 このもともとの歴史をずっと行けば、例えば、九六年に、今ネオコンと言われている人たちが、クリストルとかあるいはパール、この人たちが、イラクをとにかく攻撃してくれというネタニヤフ首相との間でレポートをつくっている。九月十一日のテロ二日後に既にそういう話もあったというのが「ブッシュ・アット・ウオー」という本の中にもしっかり出てきていますね。そういう意味では、なぜ戦争したかということについては、後づけの理由であるという見方が非常にだんだん説得力を持ってきている。

 我々政治家というものは、そういう歴史の流れをしっかり見た上でやらないと、国連決議の武力行使がどうのこうの、そういう役人の技術的な観点から言い逃れの詭弁を言っている以上は、我々は真実に迫れないと思うんです。そういう意味では、我々が、イラクに戦争したそのアメリカの動機というものを見抜けないようであれば、これは我々がアメリカとのつき合い方というのも間違っていくと思うんです。

 というのは、ラムズフェルドとパールの間には既にもう意見の食い違いがここのところ二日、三日の間に起きている。パールさんがジェネレーショナルコミットメントということを言い出した。ジェネレーショナル、二十年、三十年、イラクに戦争をやろう、戦争というよりも駐在しようということを言い出した。ラムズフェルドあたりは来年の大統領選挙が非常に気になりますから、そんなことはできぬだろうということで意見が分かれ出した。

 このジェネレーショナルコミットメント、おつき合いするつもりですか。

川口国務大臣 つき合うつもりかというのは、どういう意味でおっしゃっているのかよくわかりませんけれども、歴史的にいろいろな見方はあるだろうと思います。いろいろあると思いますけれども、やはり、武力行使というのは、国際法に基づいてやるということでなければ国際社会はサポートをしない。現に、このイラクに対する戦いについては、四十カ国以上だったと思いますが、国がアメリカをサポートしているわけです。

 もちろん、大量破壊兵器の脅威というのが冷戦終結後の世界で非常に大きな脅威となって人々の心を覆い、そして、みんなが、日本も含めですけれども、それが自分の問題であるというふうに考えるようになったということは一つの大きな要素としてあると思います。

 ですけれども、そういったことについて国際社会が一致してイラクに対して武装解除を迫ったときに、それにこたえなかった、国際社会が持っているイラクに対する大量破壊兵器の懸念というのをイラクは晴らさなかったわけです、晴らすことができなかったということが非常に大きな理由として、直接的な要因としてあると思います。それがなければこういうことにはならなかったわけで、まさにサダム・フセインにこの戦争の責任はあるということだと私は考えています。

山口(壯)委員 国際法に基づいてとおっしゃいますけれども、先制攻撃というのは国際法に基づかなかったわけですよ。その点はどうお考えですか。

川口国務大臣 日本政府としては、これが先制攻撃であったというふうには考えておりません。先ほど申し上げましたように、六七八、六八七、一四四一等の国連決議に基づく武力行使であったというふうに考えております。

山口(壯)委員 先制攻撃でなかったという答弁は、それは間違いでしょう。後で訂正する気があればもちろん訂正されればよろしいですけれども、今の大臣の答弁は、理由がほかにあったからということでお答えになっただけです。先制攻撃でなかった、それはないでしょう。攻撃がなかったのですから。アフガンとえらい違いです。アフガンの場合には、九月十一日というものをみずからへの攻撃とみなしたわけです。

 イラクの場合には、それがなくてもやった。これは、大臣以外は世界じゅうの方がそう思っています。そういう意味では、先制攻撃をやったんです。やったんです。相手に攻撃される前にやったんです。その理由づけをずっと国連の決議に彼らは求めていった、そういうことです。どうでしょうか。

川口国務大臣 どういう定義で先制攻撃という言葉を使っていらっしゃるのかよくわかりませんけれども、武力行使の容認決議に基づいて、国際法にのっとって、アメリカ、イギリスは武力行使を行ったということを申し上げているわけです。

山口(壯)委員 国際法上、武力行使が認められる場合というのは二つだけでしたね。自衛権に基づく場合、そしてもう一つは国連憲章に定められた武力の発動、この二つしかなかったはずです。

 でも、ここでアメリカはあえて先制攻撃というオプションを選んだわけです。そのことは国際法に基づいてやったわけではありません。あえて国際法を新しくつくろうとした、ここは言える。しかし、そのことをほかの国が認めているかどうかというのは全然違いますよ。それは分けて考えられた方がいいと思う。

川口国務大臣 まさに、先ほどおっしゃった武力行使が容認をされているというのは、国連決議に基づいて武力行使が行われたという意味で国際法にのっとっているということです。

 委員が先制攻撃だとお考えになる、それは見解の相違であるとしか申し上げようがないわけです。米国はそういうことではないというのが日本政府の見解であります。

山口(壯)委員 アメリカが一体だということは、決して川口大臣も思っておられないと思います。ワシントンにお勤めになって、そしていろいろ経験がある中で、アメリカというのはいろいろなバランスがとれている国だということはよくおわかりだと思う。

 そして、アメリカの世論が先制攻撃でなかったという点で一致しては全くいません。むしろ、あれは先制攻撃だった。これは当たり前のことです。みずからが先にイラクに攻撃を受けていないのですから。これ以上の理由づけというものは、先制攻撃を認めたという理由づけはあり得ないです。

 それから、国際法の、その国連憲章の御理解は全く間違っていますよ。国連憲章上、国連決議があれば武力行使をしていいということにはなっていない。その辺はもう少しきちっと、訂正があれば訂正してください。

川口国務大臣 決議六七八というのは、イラクに対して武力行使を容認した決議でございます。

山口(壯)委員 国連憲章が多分理解できておられないからそこで突っ張られるんだと思いますけれども、国連憲章上、武力行使が認められているのは二つだけです。一つは自衛権の場合、五十一条です。もう一つは強制権の発動。この場合には、例えば軍事委員会とかいうものが決められている。この二つしか認められていないんです。

 外務大臣の見解、全くそれは、知識の不足かあるいは故意に憲章を曲解されているか、どっちかでしょう。事務方、よくサポートしてあげてください。

川口国務大臣 米国、英国によるイラクに対する武力行使というのは、国際の平和と安全を回復するという目的のために武力行使を認める国連憲章の第七章のもとで採択をされた安保理決議六七八、六八七及び一四四一、これを含む関連の安保理決議に基づくものであって、正当なものであるということでございます。

山口(壯)委員 今の大臣の答弁は、第七章に基づく武力行使であるということをおっしゃったわけですね。それで正しいですか。

川口国務大臣 ということを申し上げました。

山口(壯)委員 安保理事会で満場一致がありましたか。第七章はそういう要件です。

川口国務大臣 六七八、六八七、一四四一、すべて安全保障理事会で採択をされたものでございます。

山口(壯)委員 イラクに対する武力行使を、五大国の、安保理事会、全会で一致していないわけですね。どうですか。それが第七章の要件です。

川口国務大臣 六七八、六八七、一四四一、それぞれ、安保理の正当なる手続を経て、満場一致で採択をされております。

山口(壯)委員 第七章に基づく武力行使は、安保理事会における五大国の全会一致を要件としています。でも、そういう手続じゃなかったわけでしょう。

川口国務大臣 六七八、六八七、一四四一、それぞれ拒否権は行使をされていない、満場一致の採決をされています。

山口(壯)委員 いや、もう何とも本当に言葉がなくなってしまいますけれども、詭弁と開き直りという……。これは、第七章に基づく御理解が全く間違っているからこういうことになるんでしょうけれども、武力行使に要件とされているのは、全会一致のことです。そして、武力行使という明示がなければいけません。でも、武力行使の明示の文言はなかったわけですね。

川口国務大臣 六七八というのは、そもそも湾岸戦争に対しての武力行使を容認した決議であって、それがおかしいということは世界じゅうだれも言っていないわけです。

 六七八、六八七、一四四一、これが今回の武力行使を正当化する国連の安保理の決議であるということで、湾岸戦争では問題なかった六七八が何でこの際問題になるのかというのは私はよく理解できませんけれども、六七八にはあらゆる手段をとることを容認するということがちゃんと書かれていて、それは武力行使を含むというのは国際的な理解であります。

山口(壯)委員 武力行使の明示的な言及というものがないわけです。そのことについてきちっとしたものがない。

 もうこれ以上、本当に時間をむだにしたくない。委員長、一度きちっとした見解をお示しください。私、かなり我慢してやってきました。そのことについて、委員長、済みませんが。

衛藤委員長 外務大臣におきまして、答弁については、質疑者の意を体しまして、十分な答弁をお願いします。

 川口外務大臣。

川口国務大臣 同じことをもう一度申し上げますけれども、六七八、六八七、一四四一、これが今回のベースであります。

 六七八は、湾岸戦争のときの武力行使を容認した決議であります。あらゆる必要な手段をとることを認めた六七八ということは、これは武力行使を含むというのは、国際社会としての理解、これはエスタブリッシュされた理解でございます。

 委員がおっしゃっていらっしゃることが、何がおわかりにならないのか、ちょっと私はよく理解できませんので、それをクリアにしていただけるとありがたいと思います。

山口(壯)委員 今の答弁は、そういう理解が世界で共通じゃありません。確かに、国際法にのっとってというところからまず間違っておられるし、そしてこの新しい国際法をアメリカは先制攻撃というもので認めさせようとしたんでしょう。でも、アメリカに対して私はきちっと日本がもっと物を言うべきだと思いますよ。

 昔、ユニファイドコマンドというのが一九五一年の安保条約の後、議論になって、攻撃されたときには日本が統合司令部として、全軍が例えばマッカーサーあるいはリッジウェーの指揮下に入るということが議論になったとき、吉田茂が、アメリカに徹底的に対抗していったわけですね、そんなことをやったら日本がアメリカとイコールパートナーじゃなくなると。そうすると、アメリカは怒って、ダレスが、では講和条約、安保条約、どちらも上院で批准はもうやめるぞ、そこまでおどしをかけられても、あえて、吉田茂というのは、イコールパートナーでなければだめだ、ユニファイドコマンドは認められない。アメリカは、NATOでも認めているユニファイドコマンドだから、戦争で負けた日本が反対すると思わなかった。

 だけれども、今おっしゃっているのは、アメリカの立場をとにかく認めよう、そういうことでしかあり得ない。しかも、例えばフランス、そしてロシア、中国、いろいろな議論をお聞きになっておられれば、それが国際社会の共通の認識であったという答弁は出ようがないはずです。でも、それをあえて、それはアメリカの立場に立たれればそうでしょう、でも、我々はそうじゃないことをこれからきちっとしていかなければいけないと思います。

 そういう意味で、もう一つ聞きましょう。

 例えば、戦争が始まって約半年、その間に報道されていないことが一つあります。これも、きのうずっと見ていたら、インディペンデント、イギリスの新聞のロバート・フィスクという記者が書いていることですけれども、一つアメリカが言っていないことがある、それは、毎日毎日、百人から百五十人のイラク人を殺してしまっているわけです。そのことは統計では当然出てこない。だけれども、イラクの病院あるいは霊安室、そこに行っている人間にロバート・フィスクが一生懸命聞いて回った数字です。サウザンド・ア・ウイークという言葉が出てきている。

 例えば、こういう事柄についても我々はしっかり知っておかないと、アメリカが一体どれぐらいの時間イラクにかかわることになってしまうのかという見定めがつかないわけです。だから、アメリカに無条件に従っていくということは、決してアメリカのためにもならない。例えば、来年の大統領選挙でブッシュが勝つなんという保証はどこにもないのみか、むしろその可能性が少なくなってきている。そういう意味では、ネオコンサーバティブと言われている人たちの主張をうのみにして日本の外交政策をとっていかれるというのは、むしろ賢明な方法じゃないと思うんです。

 だから、そういう意味では、イラクにおいてアメリカが一体どれぐらい、毎日毎日例えば百人以上と言われると、百八十日たった今、一万八千から二万人のイラク人が殺されているわけですね。

 そういう状態できちっとした治安が保てるわけもなし。戦闘地域と非戦闘地域、聞かれたってわからないじゃないですかと答えられた方もおられましたけれども、でも、現実に戦闘地域がずっと広がっていると考えた方がこれは無難でしょう。そういう意味では、今、非戦闘地域というのはどこかありますか。

川口国務大臣 戦闘地域についての御質問は、これは防衛庁長官のテリトリーですのであれですが、その前に申し上げたいのは、百数十人という数字をおっしゃいましたけれども、新聞の報道をうのみにできるかどうか。具体的にこういった数字については、きちんとした数字は確たるものは出ていないということですし、さらに、九月二十四日のギャラップ社の世論調査、これはイラクでやったものですが、これによりますと、この戦争について、これによってサダム・フセインが追放されたわけですが、意義があったかなかったか、六二%が意義があったということをイラク人は言っております。

山口(壯)委員 では、外務大臣、アメリカに、一体どれぐらいのこういう状況があったのか、聞かれますか。

川口国務大臣 イラクでの情報については、私どもは米国とは常にいろいろ意見を交換いたしておりますし、必要な範囲で聞くことはできると考えております。

山口(壯)委員 イラクの状況を的確に把握しないと、例えばテロ特措法の改正の状況も含めて、日本の対応が的確にならないわけです。そういう意味で、例えば、アメリカが大体どれぐらいの、今、言ってみれば民間人をやってしまっているか、これはアメリカ人は知っていることです。そして、アメリカのメディアもこれは教えてもらっていない。だけれども、外務大臣が緊密な調整を、あるいは連絡をされているというのであれば、聞かれるべきです。きちっとした数字は、あるいは丸くてもいいから、状況は知っておかれるべきです。

 聞いていただけますか、きちっと。

衛藤委員長 川口外務大臣。

 時間が参りましたので、これは最後の答弁といたしてください。

川口国務大臣 現在のところ、我々が把握をしているということでいえば、具体的な数字は確認できていないということでございます。引き続き、必要に応じ、これについては問い合わせていきたいと思います。

衛藤委員長 山口君、時間が来ておりますから。

山口(壯)委員 最後に、それは必要に応じて聞いていくということではなくて、委員長、これはきちっと聞くように委員長の方からもお願いをしてください。

 終わります。

衛藤委員長 これにて山口壯君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 引き続き質問をさせていただきますが、民主党の渡辺でございます。

 ちょっと関連して、先ほど外務大臣がただいまの山口委員の質問に対して、アメリカの調査会社ギャラップがイラクでやった世論調査、非常に肯定的だったというふうにお答えがありましたけれども、外務大臣にここで引き続き伺いたいのは、世論調査というのは、質問の仕方によってどうにでも答えは引き出せるんですね。大体、世論調査という手法は、私も学生時代にそういうあれをやりましたけれども、結果的には、では、どういう形でサンプルをとってどういう方々に満遍なく調査をできたか、これは、世論調査のやり方というのは、よくいろいろと疑義がある部分もございます。

 今言われたのは、例えば、確かに山口委員がおっしゃったような新聞の報道というのはうのみにできない。しかし、アメリカがやっている、イラクでとった世論調査を、これをまた引き合いに出してきて、こういう意見があるというのは、これは、ある意味では余りにも根拠を欠いたことになりはしないか。そういう意味では、こういう世論調査というのはどこまで信用できるか。つまり、アメリカの調査会社がやって、どういう手法で、だれをターゲットにして、一体どういう形でやったのかというのがわからないわけですから、そういうことは余りこういうところでおっしゃらない方が私はよろしいかと思います。それだけ言って、質問に移ります。

 この点、官房長官あるいは外務大臣、そして防衛庁長官にもお尋ねしたいんですけれども、そもそも、テロというものは一体何であるのか、三大臣どうお考えかということを冒頭に伺いたいと思います。

石破国務大臣 これは、定義というのは、きちっとした定義はありませんが、私は、恐怖の連鎖によって政治体制を揺さぶる、変動させる、それがテロの本質だというふうに理解をいたしております。

 テロが、だれが、なぜ、だれから、どのようにして、いつ攻撃を受けるかわからないという恐怖があちらこちらに連鎖をして起こることによって、社会体制あるいは国家体制に動揺を与える、そして目的を達する、それがテロの本質だと理解をいたしております。

福田国務大臣 テロリズムの定義というのは、これはこの特措法の審議のときにも随分やったんですよ。ですから、そのときに申し上げたのは、これは確立した定義があるわけではないという前提つきなんですけれども、一般に、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れ等を強要し、または社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものと考える、こういう定義を申し上げております。

川口国務大臣 テロについて決まった定義があるわけではないというのは、今までの二大臣がおっしゃったとおりです。

 私なりにテロということでどういうものかと考えているかというと、これは、特定の主義あるいは主張、特に政治的な主張、それを通すということを目的として、公的な手法等の、公的に認められたもの、手段によらずして、みずからが暴力、あるいは脅迫、脅威を与える、そういったものであると考えております。

渡辺(周)委員 私は、別に定義をしてくれということじゃなくて、テロとは何であるかと、皆さん方の、三大臣のお考えを伺ったわけでございます。

 そうしますと、例えば我が国に対する北朝鮮による日本人の拉致、これはテロと言えるのかどうなのか。これは私は、ある意味で、今までの御見解を聞いていますと、やはり我が国に対する脅威の、恐怖の連続で、ただそれが後になって拉致ということがわかったのであって、そのときは、いわゆる物理的な、あるいは有形的な脅威あるいは恐怖としては当時は認識できなかった。しかし、後になってみると、日本人を次々とさまざまな手で、国外で、国内で、あるいは工作員によって次々に北朝鮮がさらっていった。これはもういかんともしがたい事実であります。

 そうすると、北朝鮮による日本人、我が国に対するテロとして、これは三人の大臣はどう考えているか。北朝鮮の拉致は、これはテロなのかどうなのか、その点についてお三方のお考えを伺いたいと思います。

石破国務大臣 先ほど私が申し上げました、定義というわけではありませんが、一つの概念からすれば、まさしく委員が御指摘になったように、では次には静岡県でだれが拉致されるか、次は鳥取県でだれが拉致されるか、福岡県でだれが拉致されるかという恐怖を植えつけることによって何か体制の変革を図ろうとしたわけではない。ですから、一つのテロの定義からいえば、これはテロではないということにもなります。

 ただ、テロと言おうが言うまいが、それは我が国の主権あるいは我が国の国民の人権に対する重大な侵害行為であり、許されざるものであるということにおいて何ら変わるものではないと考えております。

福田国務大臣 先ほど私申し上げましたように、一つの主義主張を、その受け入れを強要するというようなこと、もしくは社会に恐怖を与えるとかいったようなこと、これをテロというように定義をしたわけでありますけれども、北朝鮮のことにつきましても、これは国民の生命と安全にかかわる重大な問題である、こういうことであることは間違いのないことでありますので、これは普通にはテロと言ってもいいのではないかというように考えます。

川口国務大臣 普通にはテロと言うと思います。

渡辺(周)委員 言葉をそれぞれ考えながらも、今、外務大臣はテロと言ってもいいと、そしてまた官房長官もテロであるというふうにおっしゃいました。

 まさにこれは、先ほど、もちろん決まった定義があるわけじゃございません、テロリズムというのが一体何であるかというその定義を伺ったつもりはありませんが、今回の場合はまさに国家による犯罪でございます。まさに石破長官がおっしゃったような、我が国の主権、人権に対する国家による、我が国に対する大変な侵害でございます。ですから、これはお三方はテロであるということをはっきりおっしゃいました。これは日本政府の見解として大変に明快であると私は思っていいと思います。

 そこで、もう時間もあれですから質問をちょっと変えますけれども、今言われているような、拉致事件の全面解決ということで、いろいろと最近、この数日、報道等で出ております。いわゆる、今五人帰ってきていらっしゃる、蓮池さん夫婦、地村さん夫婦、それから曽我さんの御家族が帰ってくるんではないか、この数日こういう報道が一部でされておりますけれども、この点については、官房長官、いかが交渉が進展しているんですか。その点についてお答えできますでしょうか。

川口国務大臣 拉致をされた人たちの北朝鮮に残っている家族の人たちが一日も早く日本に帰ることができるように、我々は日夜努力をいたしておりますけれども、今委員がおっしゃられたようなことが、そういうことになっていますということを申し上げることができたらどんなにいいことかというふうに思いますけれども、今そういった状況を申し上げる段階では全くないということです。

渡辺(周)委員 一部、十月の下旬であるとか十一月のうちだとか年内だとかと、いろいろ言われています。北朝鮮に何か変化の兆しがあるんではないかということは、九・一七、一年たって、この周辺ずっと言われております。

 外務大臣、それでは、今、北朝鮮と一体どういう交渉をしているか、そういうことは外務大臣の耳には逐次報告されているんですか。申し上げる状況にないと言っているのは、知っているけれども答えられないのか、それは何かの配慮があって、それを知っているけれどもここで言うことはできない、交渉の過程で言うことはできない、それとも、先ほどのように、聞けば教えてくれるかもしれないけれども今の時点では私は持ち合わせていないということなんですか。どちらですか。

川口国務大臣 複雑な御質問ですけれども、先ほどの私が申し上げたことが誤解を生むということがあってはいけませんので、そういうことがあるという情報には接していない、日本政府として接していない、そういうことであります。

渡辺(周)委員 この点については、我々は、それでは、拉致の全面解決ということについては、これは一部言われている、マスメディアが言っていることですから政府がどう判断しているかわかりませんけれども、五人の家族が帰ってきた段階で北朝鮮側はもう線引きをしたいと。しかし、我が国としては、拉致の疑いのある、死亡とされて北朝鮮側が発表した、あのわけのわからない診断書が出てきて、みんな同じような筆跡で書いてあるような死亡報告が出て、死亡とされて一方的に報告された方々、これは当然我々は生存を信じているわけでありますけれども、こういう方々の消息が判明するまで、あるいは拉致と疑わしき事件が、失踪された事件がある、次々にこれは発表されているわけですけれども、これのすべてにおいて、この点についてはっきりするまでは拉致事件の解決はあり得ないと思うわけですけれども、日本政府としても、この五人がもし帰ってくるということになった段階で、その判断には揺るぎはないわけですね。その点は外務省いかがですか。外務大臣。

川口国務大臣 拉致問題について今政府が北朝鮮に言っていることは、帰ってきている生存者の家族を一日も早く帰国させるべきである、それから事実関係の解明をすべきである、この二つを北朝鮮に対しては強く要求をしているということであります。

 そういったことが行われ、御家族の方々の、あるいはその関係者の方々が納得をする形で問題が解決をされるということが重要であるというふうに私どもとしては考えています。

 引き続き、北朝鮮に対しては強く働きかけを続けていきたいと考えています。

渡辺(周)委員 最初にお尋ねしてお答えいただいたとおり、相手はテロを起こした国家なんですね。それで、引き続き辛抱強く交渉をというふうな話ではないんです。非があるのはどちらかといったら、テロを行った国家でございます。テロを行った国家が非常に交渉に応じない。この点について、日本政府はやはり、テロを行った国家であるということを先ほどは外務大臣もおっしゃったんです。官房長官もおっしゃいました。それだけに、我が国はもうちょっと、このテロ国家に対してどういう態度をとるかということは、毅然としてもいいと思うんですけれども、全くこの交渉が見えてこないわけでございます。

 外務大臣、先ほどちょっと私の質問にお答えにならなかったんですが、情報は逐一外務大臣のところに上がっているんですか。今北朝鮮とどういうことが、あるいは体制にどういう変化があらわれたとか、その点についてはちゃんと情報は上がっているんですか。そしてまた、外務省の首脳として判断できるだけの材料は持っているんですか。

川口国務大臣 小泉総理に、なぜ私を外務大臣に留任させたかということをお聞きいただきたいと思います。

渡辺(周)委員 それは全然答えになっていないですね。小泉総理大臣が私を留任させたから、それを聞いてくれというのは、それは残念ながら、私は多分質問する場がありませんので。

 外務大臣のところに情報は上がっているんですねと聞いているんですから、別に、それならそうだと言えばいいし、何日に一遍定期的に報告を受けている、そう答えればいいわけで、何か全然答えがよくわからないんですけれども。

川口国務大臣 私が外務省の事務方とこの問題についてどういう関係を持っているかということは、何も委員に御心配をいただくことでは全くないわけです。そういう状況がなければ小泉総理は私を外務大臣に留任させなかったということであると思います。

 もう一度申し上げれば、私は、外務省の北朝鮮との交渉については、情報は全部把握をいたしております。

渡辺(周)委員 何をむきになっているのかよくわかりませんけれども、私は、あなたに情報が上がっているんですねと聞いたんですよ。外務大臣は何か逆切れしましたけれども、言っていることがよくわからないんですよ。先ほど来、自分の不得手な質問を随分聞かれて、大分お気持ちがひょっとしたらささくれ立っているのかもしれませんけれども、私の質問は普通の質問をしただけでございまして、全く意味がよくわからないんです。

 これは、外務大臣、あなた、こういうことで余り感情的になられると外交交渉の上で大変失点を重ねることになりますから、ここでこれ以上のことを言うと、余り私も感情的になってもいけませんので質問を変えますけれども、その辺はぜひお気をつけいただいた方がいいと思います。

 では、ちょっとテロ特措法の問題に質問を変えますけれども、どこの時点で、我々、前からずっと一貫して申し上げてきましたけれども、テロに対する、テロが終結した、あるいはテロの脅威は除去されたということをいつ、どの段階で我が国は判断をするんですかと、これまでも私は小泉総理に対する代表質問でも聞いてまいりました。この委員会でもたしかお尋ねをしましたけれども、その点についてどうなんですか。いまだに納得のいく答えがございませんけれども、どの時点でテロの脅威はなくなったと御判断をされるのか、その点については日本政府はどういうふうな時点で御判断されますか。

福田国務大臣 その質問につきまして先ほど来答弁しているのでございますけれども、これはやはり総合的に判断すべき問題だと思います。ですから、あることをもって、それがなくなったからいいんだとか、あの人物が捕まったからいいんだとか、そういうような話ではないんだろうと思います。また、このことは国際社会といろいろ協議をしていかなきゃいけないということもございます。

 そういう、いろいろな状況を見ながら我が国としての主体的な判断をしていくということなので、どれがどうというふうに申し上げにくい。例えばというようなことであれば、それはそれで申し上げますけれども、定量的に申し上げるべきことではないように思っております。

渡辺(周)委員 ちょっと、総合的とか定量的ということで、よくわからない言葉が出てくるんですが、要は、総合的というのはどういうことなのか、定量的とおっしゃいましたけれども。

 つまり、我が国として、例えば今回のこのテロ特措法に基づく我が国の洋上艦船による給油の支援がある。これによって、今、これまでもずっと議論されてきました、一体我が国がどれだけの貢献をして、その効果がどうあらわれたのか、その点についても明確な答弁がいまだにない。

 このオペレーションが我が国独自で、オペレーションというのは、いわゆるアルカイダの掃討作戦においてテロの脅威がなくなったということは、これは我が国が主体的に判断できるんでしょうか。つまり、それだけの情報を持ち合わせているのか、それは一体だれの判断によるものなのか、日本政府ではだれが判断するんですか。

福田国務大臣 定量的にというのは、今まで政府の方から説明申し上げている中で、例えば、アルカイダのメンバーが三千人以上捕捉されたとか、また幹部の三分の二以上が殺害、拘束されたとかいったような、そういう説明もしているものですから、そういうような数字だけで表現し切れないものがあるということを申し上げているんです。

 今後、では、どういう状況になって終結し、その終結の判断をその前にだれがするかということになりますが、これは、やはり情報入手はもちろんありますけれども、関係諸国がインド洋から撤退しちゃって日本だけ残っているという必要はないわけでございますから、それはもちろん関係諸国と協議をして最終的には決めることだというふうに思います。その上で、我が国として、それ以上続けるべきか、関係諸国に同調してどれだけのことをしていくかということを決める、もしくは撤退するということを決めるわけでございます。

渡辺(周)委員 聞いているとよくわからないんですけれども、つまり、我が国独自ではそういう情報を持ち合わす可能性はあるんでしょうか。防衛庁長官、どうなんでしょうか。

 これは、ちょっと質問を変えますと、我が国として、テロの脅威がなくなってきた、ゼロにはならないけれども脅威はなくなってきた、特に今回の法に基づくオペレーションについてはこの時点である程度判断を、つまり、アメリカの船がいなくなれば我が国も仕事はなくなるんだけれども、しかし、もうここまでだということは日本政府として独自に判断できるだけの情報能力を持っているんですか、あるいはその決断能力を持っているんでしょうか、こういうオペレーションの場合。

石破国務大臣 これは当然、日本で主体的に判断をすることになりますが、では我が国が地球上のすべての地域の情報を知悉しているかといえば、それはしていない場合もあるのだろうと思います。

 テロというものは、またどこで、いつ、何が行われるかわからないものですから、やめるかどうかはもちろん我が国が主体的に判断をすることですし、情報も我が国が相当の努力をしてとっておりますけれども、やはり各国のテロとの闘いはもう世界じゅうでやっているわけですから、各国とのコンセンサスというのもあわせて必要だと思っております。

渡辺(周)委員 我が国には防衛研究をしている研究施設等々もございますけれども、では、今おっしゃったように、例えば、テロとはそもそも何であるか、なぜテロが起きるのか、そして世界にあるそのテロの危険性というのは、どういうグループあるいはどういう国家があって、どういう可能性があるかというところまでは、日本国はそれなりの情報を持ち合わせているんですか。つまり、決断の根拠となり得るような情報は、あるいはそういう人員はいるんですか。その点について教えていただけますか。

石破国務大臣 私ども、先生御案内のとおり、防衛研究所もございます、防衛大学校もございます。これは、先生御存じのことと思いますが、課題をそれぞれ与えましていろいろな研究を行わせており、今までは、ともすれば研究をやっただけでおしまいということがあったのですが、その情報は、やはり防衛庁、政府全体で共有する必要があるであろうということで、いろいろな研究をやらせて、そしてまたその成果を共有するように現在いたしております。

 これは、もし必要であれば、委員各位にも可能な限りその成果というものは提供させていただきますが、防衛庁といたしまして、国際的なテロというものはどういうものなのか、改めまして最大の努力をいたしまして、各部署において研究をいたしておるところでございます。

渡辺(周)委員 研究をして論文をまとめて結果的に立派なものができても、役立たなかったら何の意味もないわけでございます。

 当然、そこにはさまざまな識者たちの情報を集めるでしょうし、既に公開になっているいろいろな文書であるとか、先ほどお話のあったインターネットであるとか、あらゆる文献なんかを集めれば、大体この世に出ているものの八割は、ある程度情報というのは得られる。ただ、二割はヒューミントと言われる、例えば人的な諜報の部分、インテリジェンスの部分。まさにそういうこともあるでしょうし、我が国として、いわゆる判断を間違わない、コアな情報を得るということがやはり私たちはこの国においても必要なんだろうと思います。

 もちろん、これはここで答弁できないこともあるかもしれませんが、我が国がとにかくいかなる状況においても、もっと言えば、アメリカ以上の情報を持つということはあり得るんでしょうか。そこの点はどうですか。つまり、アメリカより情報を持っていないから、アメリカの判断にすべて任せざるを得ないわけですね。

 ちょっと振り返ってみますと、例の九・一一テロが二年前に起きましたときに、これはオサマ・ビンラディンのしわざである、それはある間違いのない根拠に基づくといって、この委員会でたしかやったときに、アフガニスタンに対してアメリカが報復をするのである、そしてオサマ・ビンラディン、タリバンのいわゆる掃討をする、退治をする、その根拠は何だといったときに、いわゆる何か文書が出てきました。それも、我が党の、どなただったでしょうか、委員が政府に対して、その根拠は何であるかと言ったときに、何か出た。しかし、それが本当にその根拠になったかどうかということはわからないけれども、現実問題として、次なる脅威を考えたら、あのときは法を成立させなければいけなかったということがございます。

 その点を考えますと、あれは一体どういう根拠に基づくことでこのオペレーションが始まった、いわゆるアメリカの攻撃が始まったんだろうかと。全くわからなかったんです。もっと言ってしまえば、ECHELONと呼ばれる、いわゆる通話をキャッチするシステムがある。これは、ヨーロッパの議会では、そういうことはあるということをもう既に公式に認めた。ところが、アメリカは、そういうものはないんだと。一説によると、アメリカであるとかオーストラリアであるとかイギリスであるとかニュージーランド、カナダ、英語圏の五カ国は情報を共有しているけれども、それ以外の国はわからない。ビンラディンのしわざであると決めた根拠は、恐らくこのECHELONではないか。だけれども、そういうものが、こんな国際電話を探知しているようなことをもしアメリカ政府なりがやっているとすれば、これは大変な問題になるから公式には認めていないけれども、恐らくこれはあるんだろうと、この問題を研究している方はそう書いているわけであります。

 例えば、これに基づいて、だからそうなんだと、各国の首脳にしか伝わらない中で、根拠はすべてここにあるといって軍事攻撃をもし支持するということになれば、あるいは同じことが、ここでどの時点で、まだこのテロの継続する可能性はあるんだ、つまり、我が国として終結するという情報を持ち合わせていない、それはある意味ではアメリカの言うことを聞かざるを得ないということで、いつまでたってもこれが引きずられることがあるわけでございます。

 少々話が、例示が長くなりましたけれども、その点考えますと、我が国が独自に判断する根拠というのは本当にあるんでしょうか。つまり、この法律が延長されたら、まだまだずるずると延長されるんじゃないか。我が国としてはただ、まだ総合的に判断して、まだ定量的に判断してといって、ずっと総合的に判断したまま、アメリカが撤退しない限りはこのままいってしまうということになるんではないかなという危惧があるからこそ、この議論はずっと繰り返されるわけですが、その点についてはどうなんですか、日本の国は。

福田国務大臣 アメリカの言いなりだ、そういうふうな御意見が、本日、前にもございましたけれども、そんな、アメリカの言いなりで、はいはいといってやっているつもりはありません、本当に。言うべきところはきちんと言って、我が国の考え方も述べて、その上で意見の調整をしながら、同盟国という立場にもありますから、向こうだってそう思っているんですよ、米国の同盟国は日本だ、こういうふうに言っているんだから。ですから、そういうよい関係、良好なる関係を築きながらこのテロ特措法に基づくオペレーションもしている、こういうことであります。

 ですから、それはやはり、基本的には信頼関係ということがありますよ。相互の信頼関係、それがベースにあるのでありまして、後はいろいろな状況を見ながら、我が国は我が国として判断し、そしてその判断を米国にも伝える、こういうことであります。

石破国務大臣 ただいま官房長官から御答弁があったとおりですが、これは委員もすべて御存じのことと思いますが、これに参加しておるのは我が国だけではございませんで、ドイツも参加をしていれば、イギリスも参加をしていれば、ニュージーランドも参加をしていれば、フランスも参加していれば、カナダも参加している。

 私は、この六月以降だけでも、例えば、フランスの国防大臣あるいはニュージーランドの国防大臣、イギリスの国防大臣と話をする機会がありました。随分長い時間話もしましたが、どの国も、おもしろおかしで当然参加しているわけではない。これは、委員も現場を御存じのことと思いますが、大変過酷な状況の中で、物すごい負担、そして国民の負担、乗員の負担においてやっているわけです。

 これは、各国の大臣と話をしましても、この洋上における活動が要らないと言った者は一人もありません。やはり、こういうようなきちんとした監視活動をしていかなければ、テロの拡散というものは防げないんだと。日本の補給というものには本当に感謝している、我々も広い海の中にあって、一々港に帰らなくても補給が受けられるということがどんなにありがたいことなのかということを、フランスの国防大臣もニュージーランドの国防大臣も、会談のときには本当に申しておりました。

 やはり、シビリアンコントロールにおいて国防の任に当たる者というのは、現場がどれだけつらい思いをしながら、そして納税者のどれだけの御負担をいただきながら、でも何のためにやっているのかという思いはみんな共通しておると私は考えております。

渡辺(周)委員 先ほど官房長官がおっしゃいました、言うべきことは言っていると言うけれども、一体何を言っているか全然聞こえてこないんですね。ですから、何か無料のガソリンスタンドみたいな言われ方をして、一体どういう効果があらわれているかわからない。今みたいに質問をすれば、各国の外務大臣から大変高い評価をいただいている、つまり、帰らないで済んでいるんだというようなことを言いますが、では実際、これがテロの退治に役に立っているのかどうなのか。

 つまり、そこのところをやはり国民に言わないと、何をやっているのかといって、下手をすると、インド洋で日本の自衛艦が展開しているなんということを知らない人もいっぱいいるわけですよ。新聞の報道だって、この数日を見れば、最近のを見ると、どんどん少なくなってきて、一体何をやっているか全然わからない。しかも、アフガニスタン国内の治安というのは悪化しているではないか。しかも、どんどんと群雄割拠的な状況になって、ある意味では、国がばらばらになっている。そんな中で、我が国のこの補給活動というのは、給油の量や回数や艦船の数などはもう減っている。やってもやっても、本当は効果がないんじゃないかということになるわけであります。

 そこのところが、先ほど来もうずっと議論されていることなのでありますけれども、もちろん、軍事上のことですから、すべてにおいてつぶさに報告をせよとは申し上げませんが、しかし、これは何らかの形で、どういう効果があらわれているということはやはり言わなきゃいけないし、アメリカに対して我が国は無料のガソリンスタンドじゃありませんよということをちゃんと言ってきたということを、国民に向かって言わないでアメリカに向かって言っていますよとここで言うのじゃなくて、なぜこれが必要なのかということを言わなきゃいけない。

 もっと言うと、このアフガニスタンだけをたたいたら本当に世界じゅうのテロがなくなるのか。逆に拡散するのじゃないか。拡散を防ぐためにここをやっていると言うのですけれども、その割には一向にテロは減らないわけであります。その点については、さっきからの議論になりますから、もう時間もありませんから繰り返しませんけれども。

 それでは、お三方にまた伺いたいんですが、これからテロはふえるんでしょうか、減るんでしょうか。――では、もう一つ聞きます。

 今回は、このアフガニスタンの九・一一のいわゆる首謀者であるグループに対して、我が国は協力をしてテロをなくす、しかし、さっき石破長官がおっしゃったように、世界のどこでどういうテロが起きるかわからない、残念ながらそこまではまだ持ち合わせていないというふうにおっしゃっていましたけれども、根本的に、このテロというものは続くのもなのかどうなのか。そして、これから拡散していった場合、世界じゅうのテロを根絶するために、今回のことは対症療法ですね、我が国として一体何ができるのかということは、今回のこの委員会の私自身の発言の締めくくりにぜひお尋ねをしたいと思う。

 このことは永久に繰り返します。つまり、テロの憎悪、この憎悪が次の憎悪を生む、これはもう各委員がおっしゃっています。我が国は一体何ができるんですか、何をすべきなんでしょうか。つまりこれは、宗教上の対立であったり貧困であったり飢餓であったり独裁であったり、いろいろなことがある。それに対して我が国は何をすべきかということを、お三人の大臣にぜひ伺いたいと思います。

川口国務大臣 冷戦以降、冷戦が落ちついた今の段階で新たな国際社会の脅威は、テロあるいは大量破壊兵器がそういったテロリストの手に渡ることということであるわけですけれども、私は、しばらくの間、テロは残念ながら増加をするのではないかと個人的には思っております。

 そして、そのためにどういう対策をとるか。これは、もう既に国際社会が一緒になってかなりのことをやっているわけです。

 テロの資金、これを、いろいろ条約がございますけれども、そういったものを使って資金の凍結をするとか、そういったことも今やっております。

 テロリストの国際的な移動、これをどうやってとめるかということで、入管の枠組みをきちんとしたり、あるいはその点について途上国の支援をしたりということをやっています。

 物、テロ関連の物資、これの国際的な移動をとめるということで、先ほども予算委員会でお話がありましたけれども、いろいろな輸出管理の体制をつくって、これも国際的に一生懸命にやっております。

 それから、法律あるいは警察の治安能力の維持、これも我が国は例えばパレスチナにも支援をしておりますし、そういったことで国際的に支援をしております。

 それから、より根本的な問題として、開発、あるいは貧困の撲滅、このためにはODAが必要で、我が国としてはやっています。

 こういったことを二国間、それからさらに情報の交換というのもありますけれども、二国間あるいは多国間で枠組みをつくって、国際社会は今取り組んでいます。こういったことが奏功をしてくるであろうというふうに私は思っています。

渡辺(周)委員 その前に、どうぞお二人の大臣、政治家としてお答えをいただきたいのであって、そんな白書、青書に載っているようなことは、そんなものは読めばわかるわけでございます。どんなことをやっていますといって、テロ撲滅のためにという見出しがずらずらずらと書いてありますから。政治家として、我が国の、日本の内閣官房長官として、そしてまた防衛庁長官として、そんな、今何をやっていますなんというのは、国際機関とどうこうするなんて当たり前のことで、我が国としてやはりどうすべきかということを、テロ撲滅のために、ぜひ政治家の哲学としてお話をいただきたいんです。

石破国務大臣 よく貧困と政治的な強権政治がテロの温床だみたいな話がありますが、そうすると、北朝鮮でテロが頻発しなきゃおかしいんですね。それは、どうもそういうことでは必ずしもないだろう。要は、テロという手段をとらなければ自分の政治的目的が達せられないんだという社会システムがあるところは、やはりそこは直していかなきゃいかぬだろう。

 私は、自由と民主主義というものの価値が非常にあると思っていますのは、自分の欲求というものが、自分の目的というものがきちんと合法的に達せられる社会というものは必要なのであって、貧困がすべてのテロの原因だ、だから貧困を直さなければテロは直らないんだという考え方は、私は必ずしも正確ではないと思っています。

 私どもとしては、まず、テロに屈するような気持ちを持たないこと、そしてまた、それぞれの政治的な目的が合法的に達せられるような社会システム、それはいろいろなやり方があるでしょうけれども、私は、自由と民主主義の価値というのはそこにあるだろうと思っておりまして、内政干渉するつもりはありませんが、それぞれの目的がテロというものをとらないでも達せられる社会、世界、それが必要なことだと考えております。

福田国務大臣 今、テロの根源として、アルカイダ、タリバンというのに焦点が当たっておりますけれども、これ以外にも、今後テロが起こる可能性、これは十分にあるんだろうと思います。

 いろいろな原因によって起こるんだろうというふうに思いますけれども、そういうようなことを考えて、これを根絶するために何をしたらいいか。今防衛庁長官もおっしゃったけれども、そのために国際協調、これが大変大事だろうというふうに思います。国際間の連携ということ、そしてその芽を摘む努力をするということ、それからもう一つは、我が国としても、テロにどう対処するかということ、これを考えていかなければいけない。こういうことだと思いますので、このことについては、私の責任において今後検討してまいりたいというように思っております。

渡辺(周)委員 もう時間がないのであれですけれども、やはりテロの根絶ということのために我が国が何をすべきか、そして効果的な方法は一体何であるかということをぜひ研究し、また、我が国として独自の判断あるいは独自の主張を国際社会に向かってして、我が国としての、テロ根絶に何ができるかというのは永遠のテーマだとは思います。

 これは、必ず世界のどこかで同じようなことが起こるでしょう。これは、モザイク国家、宗教や人種がいろいろ入り組んだ国もあります。歴史的な、もう何千年という憎悪が巻き起こっているような国家もあります。ですから、これは必ず繰り返されますけれども、ただ、私たちの国が、事が起こるたびに、そのたびに、日米同盟だ、これは国際社会の協力だといって、毎回毎回、そのときそのときに、特別措置法、特別措置法ということがないように、これは、我が国としてテロの根絶のために何ができるかということも、ぜひ国を挙げて研究し、またそういう人材も育成をしていただきたいと思います。

 それから、もう申し上げますと、北朝鮮による国家テロによって、我が国は被害国でございます。その点についての、まさにそうであるという当事者意識を持って、北朝鮮のテロ国家に対する我が国の施策については、やはりこれは、我が国として毅然として対応することをぜひしていただきたい。このことだけはぜひ、先ほど三人の大臣は、北朝鮮による拉致はテロだと認めたわけですから、我が国はこのテロを今受けているさなかにある、この点については、この認識を変えることなく、ぜひ続けていただきたいなというふうに思います。

 いろいろ外務大臣には申し上げたいことがございますけれども、議員が大臣に質問をして、あなたにそんなこと心配される必要はないと。あなた、そんなことばかり言っていると必ず失敗しますから、そこら辺のことは本当に私もいろいろ言いたいことがありますけれども、ああいう答弁は答弁でも何でもないです。ただの逆切れですから、本当にこういう公の場で発言されることは厳に慎んでいただきたいなと、そのことを申し上げて、質問を終わります。

衛藤委員長 これにて渡辺周君の質疑は終了いたしました。

 次に、児玉健次君。

児玉委員 日本共産党の児玉健次です。

 テロ特措法のもとで自衛隊がどのような行動をしたか、それを国会にも国民にも秘匿したまま法律を延長する、これは到底許されない。

 今、皆さんに資料をお配りしている。テロ特措法によりインド洋で行動している海上自衛艦隊司令官が海上幕僚長に提出した「協力支援活動等」、そこから先はわからないけれども、「実施について」が、情報公開請求で一部開示されました。

 これは、二〇〇二年四月五日、二〇〇二年九月三十日、二〇〇三年三月十九日に報告され、それぞれ五年間保存となっています。それらのフルテキストは、私、ここに持っています。皆さんにお配りしているのはその一部です。

 そこで、最初に石破防衛庁長官に聞きたいんだけれども、この情報公開請求で提出された「実施について」なる報告ですが、多くの箇所が開示されていませんね。

 皆さん、ちょっと見ていただきたいんだけれども、委員長、この最初のページですね。「協力支援活動等」、そして黒でつぶされて「の実施について」と。「協力支援活動等」以外に何かをやっているんですか。開示できない何かをやっているんですか。長官、お答えください。

石破国務大臣 お答えいたします。

 ここは、ここが開示をされていないからといいまして、この以外の活動をやっているわけではございません。私どもは、法に定められたこと以外はやらないことになっております。当然のことでございます。

児玉委員 大体、これは二十何字分に当たりますね。しかも、「協力支援活動等」、わざわざ「等」と書いてあって、そして、後、非開示の部分がこれだけ出てこなきゃいけない。明らかにして何の、どんな差し支えがあるんですか。もう一遍答えていただきたい。

石破国務大臣 これは、私も、今拝見をいたしましたので、ここに何が書いてあるかということにつきまして、これは透かして見ても見えるわけでもございませんし、わからないわけでありますが、ここで非開示にしておりますのは、具体的な内容等々の場合、これがそうだと申し上げているわけではございませんが、開示をすることによりまして私どもの行動の具体的な内容等々が明らかになり、そのことを開示することが適切でないというふうに判断をされたもの、それは部隊の行動の安全性でありますとか、あるいは作戦全体の遂行における秘匿性でありますとか、そういうものを含めまして非開示にしたものと考えております。

 法に基づいたこと以外のものをやっておるというような御指摘は、私は全く当たらないものと考えておる次第でございます。

児玉委員 テロ特措法によれば、協力支援活動等のみが法で許されているので、私はそれは憲法違反だと前から主張してきていますけれども、それに何らかのことが書かれていて、そしてそこのところは塗りつぶされる。

 三枚目をあけてください。「捜索救助活動等」とある。

 福田長官も御記憶だと思うけれども、ことしの六月二十四日の衆議院本会議で、テロ特措法について、私は日本共産党を代表して質問した。捜索救助活動に関する私の質問に対して、小泉首相は、「捜索救助活動については、出動待機を含めて、現在までのところ、実施したことはありません。」こう答えている。

 もしそのとおりだとすれば、こんなに塗りつぶす必要はないじゃないですか。どうですか。

石破国務大臣 これも、私も今、この報告書なるものをつまびらかに全部覚えておるわけではございませんから、このあいている箇所といいますか、開示されていない場所に何が書いてありましたということを申し上げることはできませんし、不開示である以上、申し上げること自体が不適切だと思っております。

 しかしながら、ここに書いてございますのは、そういうような任務を行ったことはないし、そしてまた物資の輸送支援等に付随する業務と書いてございますから、捜索救難活動というものを単独で行ったことはないということが書いてあるわけでございます。

 あとは、地域においてどうであるとか、あるいは我々の能力的にどうであるとか、それはあくまで推測です、そういうことを開示しますことによって、我々の行動の安全性、任務の正確性あるいはその秘匿性、これが阻害をされるような場合にはこれを不開示にすることがあり得るのでございまして、これを不開示にしたからといって、法律違反、あるいは委員御指摘のような憲法違反のことが記されているということには相なりません。

児玉委員 本会議で総理が、「出動待機を含めて、現在までのところ、実施したことはありません。」と明確に言っているんですね。それがこういう形でつぶされなきゃいけない。

 委員長、私、理事会で協議していただきたいんですが、少なくとも、情報開示で提示されたこの中の未開示のところについて開示するように、理事会協議をお願いします。いかがですか。

衛藤委員長 後刻、理事会で協議いたします。

児玉委員 さっき言いましたように、国会にも国民にも明らかにしないまま、黒でつぶしたまま、そこで何が書かれているかということは防衛庁長官もよく御存じないようで、そのあたり、私はそれはそれで一つの問題だと思いますね。

 そこで、あわせて、この皆さんにお配りしているところの中で私はどうしても、書かれている部分についても、これはと思う箇所が幾つかあります。

 例えばこの場所ですね、二〇〇二年四月の報告書の「成果及び所見」というところがあります。そこで、「強固な日米関係の構築 緊密な連携と親密な連帯感に基づく米国艦艇に対する協力支援活動等を通じ、更に強固な日米関係の構築に寄与することができた。」

 テロ特措法は、強固な日米関係の構築が目的なんですか。福田長官、答えてください。

福田国務大臣 この法律の目的からして、この法律の趣旨にかなうことであるということは第一でありますけれども、しかし同時に、日米間の、ここに書いてあるとおり、日米関係を強固にするということは、これがあって別に不思議はありません。

児玉委員 あなたは、先ほどの同僚議員の質問に対して、特措法の法の範囲での行動が求められているし、やってきていると。ここで先ほど私が冒頭言った「協力支援活動等」、それ以外の部分については消され、そして一方、今言いましたように、「強固な日米関係の構築に寄与」と。この法律のどこを見てもそんなことは書いてないですよ。そして、あわせて、皆さんにお配りしている文書の中には、「今後の新造艦については」「インド洋方面の高温、砂塵等の環境条件での活動に耐え得る性能を有することが必要である」、二〇〇三年三月報告書ですね。

 では、海上自衛隊はこの後永続的にいつまでも海外派遣を主任務にするのかどうか。これは明らかに、海外派遣のための装備強化をあからさまに求めているじゃありませんか。どうですか。

石破国務大臣 主任務とおっしゃるのは、本来任務のことでございましょうか。今は本来任務ではないという形になっておりますので、そういうようなことだと思って答弁をさせていただくとするならば、そのようなことは主たる任務であるかどうか、それは百条系列に入れるかどうかというお話でございまして、これは法律として国会の御審議を経る、そうでなければ、それは本来任務ということには相なりません。

 そのような立法府の権限を侵すようなことを私どもは書いておるわけではございませんが、今、イージス艦のときにも御議論がございましたけれども、DDHというのは四十年代、五十年代の船でございまして、非常に古い船でございます。また、蒸気タービンも採用いたしておりますので、非常に温度が熱い。夜でも、艦内でも三十五度以下に下がらない。そしてまた、砂じん対策等々も十分ではない。

 その中で、過酷な環境の中で隊員がやっておるということでございまして、本来任務であろうがなかろうが、今の百条系列でやっておる特措法でやるといたしましても、行きます場合にはこういうような対策が必要であろう、我が国の国益あるいは我が国の国際的な責務を勘案し、司令部機能を有した船が行く必要がある場合にこのような改善点は必要になるという、当たり前の指摘をしておるわけでございます。国会の立法府の権限を侵すようなことも、あるいはまた新しい法律改正というものを念頭に置いたものでもございません。

児玉委員 私はやはり、このレポート自身の中に今度の特措法が持っているこの二年間の経過というのが非常に雄弁に示されている、これは中身がこの後明らかにされた上でさらに議論をしたい、こう思います。

 次の問題ですが、七月十八日のこの委員会で、私は石破長官と、海上自衛隊補給艦「ときわ」、八千百トンですね、これが、アメリカ海軍海上輸送軍団補給艦エリクソン、四万七百トン、さっき長官は、最近インド洋での艦船は小さくなってきていると言っているけれども、四万七百トンというのは巨大です、それに対する給油の問題を取り上げた。そのとき、あなた自身が、この給油が二〇〇三年三月に行われたということは既に明らかにされている。

 そして、あわせてこの写真を提示したときに、この写真自身は「シーリフト」というアメリカの海上輸送軍団の月刊の機関誌です、正規の月刊の機関誌です。その部分の、これを拡大したのがこの写真ですね。そして、この中では明白にオペレーション・イラク・フリーダム、イラク自由作戦の間にペルシャ湾において「ときわ」から給油を受けた云々、こう書いてあるんですね。

 それで、そのことについて、石破長官は先日の議論の中で、非常に素早く、どこからどういうふうに連絡が行ったのか私はよくわからないけれども、ホームページで訂正が出ていると。そして、その訂正は、イン・ザ・ノーザン・アラビアン・シー・イン・マーチ・ツーオーオースリー、北アラビア海で二〇〇三年三月にとホームページでは出た、こう答えられた。私はそのとき即座に言った。これは活字で書かれた月刊の機関誌であって、そして、その後どのようにそれが訂正されるか、そこを注目したい。

 私たちは、「シーリフト」の七月号、その次の号ですね、少なくとも私たちが調べた限りでは記事の訂正はなされていない。

 そして、この「シーリフト」の編集部はアメリカのワシントンにあります。この九月二十八日に、私たちは編集部に問い合わせをした。同誌の、「シーリフト」の部員は私たちの問い合わせにこう答えた。エリクソンの乗員から、給油の海域がペルシャ湾ではなくアラビア海北部だと聞いていると述べました。それはそのとおり述べた。あわせて、エリクソンはイラク・フリーダム作戦に参加したと述べました。七月号には訂正がされていない。

 そして、あのときも私はあなたに示したけれども、特にこの部分なんですよ。この部分については何らのホームページでの言及もないわけだけれども、そこでは明白に、エリクソンは三月二十日、イラク攻撃が始まったときには、強襲揚陸部隊を支援してペルシャ湾の最も北部にいた、こう明記されているんですね。

 そうなってくると、この「ときわ」による給油は、イラク攻撃に対する、それに参加した艦船に対する給油に使われた、テロ特措法から逸脱するものであったということは明白じゃありませんか。長官、どうですか。

石破国務大臣 これは、先生が「シーリフト」の編集部までお問い合わせということだそうでございます。

 そこの「シーリフト」の編集者がおっしゃったことが、ホームページの場所においてはそこの部分に限りまして正しいのでありまして、ペルシャ湾で行っている旨の記述をしておりましたけれども、六月号ですね、これをアラビア海で行っている旨の訂正をいたしておる。これはアラビア海でございますから、間違ったことを書いてはいかぬわけでありまして、正しいふうに訂正をしたというものでございます。

 なお、テロ特措法の目的に反して給油を行ったのではないかという御指摘でございますが、これはるるお答えをいたしておりますように、私ども、アメリカ合衆国との間に交換公文を結びまして、テロ特措法の目的以外には使わない、その旨再三、合衆国政府からも言明を受けておるわけでございます。

 私どもといたしまして、このテロ特措法の目的に反して給油を行ったというふうな認識はいたしておりませんし、そのような事実もまたございません。

児玉委員 これは、認識でなくて事実の問題です。場所がどこかというのは、それはそれで重要な問題です。

 もっと立ち入って言いますと、「シーリフト」の部員は、海域はペルシャ湾と書いていたけれども、乗員に聞いてみたら、ペルシャ湾とアラビア海の境界のあたりだったろうと。そして、あわせて、さっきも言いましたように、アラビア海北部だ、そう聞いていると。

 肝心な点は、ここで行われた給油を受けた艦船が、どのような活動に参加している米艦船に油を入れたかという問題です。そこが肝心なんです。そして、その点でいえば、三月二十日、これはイラクの攻撃が始まった日です。そして、そのときペルシャ湾の最も北部にいた、その点については何の訂正もしていない、この事実こそ動かせないですよ。明らかな特措法逸脱の行為がある、そのことを私は厳しく指摘しておきたい。どうですか。

石破国務大臣 それは認識しておらないと同時に、そういうような事実はないと申し上げました。

 それは、そういうような事実はございません。私どもとして、テロ特措法に反したような、そのような活動を行っておる、そのような給油活動を行っている、そのような事実はございません。そして、それは交換公文というものによって裏づけられているものだということでございます。

児玉委員 交換公文では何らの説明になりません。キティーホークのときもそれを持ち出してきたけれども。

 私は重ねて指摘をしておくけれども、この「シーリフト」の六月号の中で、三月二十日、ペルシャ湾の最北部にエリクソンはいた、この事実については何らの訂正もされていない。明らかに特措法逸脱である、その点を日本政府ははっきり率直に認めるべきだと強く述べておきます。

 そこで、全体としての議論に入りたいと思います。福田長官、川口外相と私はこの議論はしたい。

 特措法の延長について審議するに際しては、報復戦争によってテロの土壌がなくなったかどうか、このことが厳しく検証されなければなりません。

 二年間を経過してアフガンはどうなっているか。私はあれこれのコメントを言うつもりはないけれども、やはり一番正式なものの一つとしては、本年七月二十四日、アフガン情勢についてのアナン国連事務総長の報告。その中のA、全般的な治安状況。二十一節、アフガニスタン全土の全般的な治安状況は脆弱であり、多くの地域では悪化の兆しが見えている、こうはっきり言っています。外相、ごらんになっているだろうと思う。そして二十四番目では、援助団体に対する攻撃がここ三カ月の間、顕著にふえており、国際・国内要員ともその安全が脅かされている。三月には国際赤十字委員会の国際スタッフがウルズガン州で暗殺された云々。

 そうしておいて、直近のものは九月二十四日、つい一週間前のものです、アナン事務総長のアフガニスタンに関する特別会合へのステートメントです。その中で、こう言っていますね。こうした不安な状況は復興活動を妨げ、民衆の幻滅とフラストレーションを増大させる危険性がある。

 こういった状況について、川口さん、どのように見ていらっしゃいますか。

川口国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、七月の二十三日付の国連事務総長報告の中でも、全体的なアフガニスタンの治安状況は依然として脆弱であって、多くの地域において治安悪化の兆候が見られるというふうに、確かに書かれているわけでございます。

 テロとの闘いという意味では、一定の成果を今上げつつあると思います。アフガニスタンはもはやテロリストにとって安住の地ではなくなったということだと思います。ただ、しかしながら、ウサマ・ビンラディンやオマル師はまだ捕捉をされていないわけでございますし、それから、パキスタンと国境を接している東部、南東部を中心として、タリバンやアルカイダやそしてそういった勢力、ヘクマティアル派等がいるということは確かであります。

 そういった面はありますけれども、アフガニスタンの人たちの生活ということでいいますと、確実に進歩があるということでございます。それから政治的なプロセス、平和、和平へのプロセスということでいいますと、一つ一つステップをたどってきて、十月の下旬には憲法の草案が出るというふうにされていますし、十二月にはロヤジェルガがあるということで、そちらの方は前に向いて進んでいるということが今のアフガニスタンの状況であると私たちは把握をしております。

児玉委員 福田長官、この特措法の延長の是非については、私は心から求めたいけれども、やはり国際的な議論がどの方向で進められているか、そこのところを、閉ざされた気持ちでなくて、広く見る必要があると思うんですね。

 今アフガンで起きている事態は、アメリカの強大な軍事力をもってしても、戦争によってテロをなくすことができないことを示している。

 あなたと私は、たしか二年前の十月の特別委員会で随分このことについて議論をしました。そのとき私が、テロも戦争も許さない、この立場で、どうやって世論の力、国際法の力で事態を前進的に進めていくか、そのことが肝心だというふうに言った。

 それで、私は言いたいんだけれども、事実を直視して、そして事態の悪化を率直に見るという点で、私が最近読んだレポートの中で最も説得力があったのはこれです。これは、アメリカのシンクタンクである外交問題評議会とアジア協会がことしの夏前に出した「アフガニスタン アー・ウイ・ルージング・ザ・ピース?」、アフガニスタン、我々は平和を失いつつあるのか、こういう問いかけで始まるものですけれども、そこで私がやはりアメリカの民主主義の懐の深さを感じたのは、こう言っていますよ。

 タリバン政権崩壊から十九カ月が経過した、そう述べた上で、アフガニスタンは再び混乱と不安に脅かされている、経済的、政治的再建の道は立ち往生の危険にさらされている。先ほど川口外相がおっしゃったケシの栽培なんかも、タリバン政権のときに比べて激増していますからね。そういう中で、合衆国の政策担当者の目はよそにそれてしまっている、こう指摘した上で、世界はアフガニスタンをアメリカの戦争だと見ている、ワシントンは手おくれになる前に事態を正常化するための行動を起こす必要がある。

 私は、これは一つの重要な見識だと思う。そういう指摘がアメリカの国内で起きているとき、ただひたすら二年間の延長、この道だけというのは、私は、アメリカにとってもよくないし、日本にとってもよくない。どうですか。

福田国務大臣 それはいつごろの報告書ですか。(児玉委員「六月前です」と呼ぶ)六月前ということは五月ですか。(児玉委員「六月前です」と呼ぶ)ということは、五月ですね、五月以前。

 そのころと大分様子は違っている可能性もありますよ。ごく最近の、七月二十三日じゃなくてごく最近の情報では、カブールはISAFが相当活動しまして、比較的安定、絶対安定じゃありません、比較的安定をしている。それから、北部、西部、これは軍閥の抗争が鎮静化した、こういうようなことで、これも比較的安定化してきた。

 ただ、先ほど外務大臣からも、南部と南東部、東部、これは相変わらず状況は悪いという報告がございましたけれども、そういうようなことで、すべてが混乱の中にというような感じじゃなく、やはり少しずつ改善されている。そしてまた、カブールなんかも割合市民は通常の生活をしている。こういったようなことも聞いておりますので、それは、その五月の、もしくはそれ以前の状況とはかなり違っているんじゃないかな、こう思っております。

 そういうようないろいろな情報それから意見というのはあると思います。懐が深いといえば、日本だって、委員もいらっしゃいますし、懐は深いと思いますよ。いろいろな意見があって、そういうものをお聞きしながら、何が一番いいかということを模索しながらやっていくわけでございまして、これは先ほど来申しているように、我が国として何をなすべきかということですね。

 そういう中で、国際社会におけるプレゼンス、さっきの文書の中にプレゼンスという言葉がございました。これは大変大事なことなんですね。我が国のプレゼンスを示すということができた、できるのであればこんなにいいことはないというように私は思っております。

児玉委員 一番新しいというのは、さっき紹介した九月二十四日のアナン事務総長のレポートそのものですよ。その中で、民衆の幻滅とフラストレーションを増大させる危険があると。

 そこで、長官、この事態に対して私たちがどう対処しなければならないか、この問題です。ただずるずると二年間延長するのか、それとも今の事態を直視して正しい道を選ぶか、その問題です。

 私たちは、九・一一の直後に、テロ根絶のためには、軍事力による報復ではなく、法に基づく裁きが必要だという提起をして、あのとき、あなたや小泉総理と随分激しい議論をしました。

 私、実はその後知ったんだけれども、二〇〇一年の十月二日、第五十六回国連総会で、佐藤行雄国連日本政府代表部大使は、テロリズムの実行者はもとより、テロリストを援助し、もしくはかくまう者を法の裁きに服せしめるために、より効果的な国際的な法的枠組みを創設することは国連総会の厳粛な責任です、そう言い切っていますね。私は、これは非常に重要な指摘だったと思う。

 今、日本が本当の意味で国際社会に貢献する道というのは、この方向しかありません。ただずるずるとこの二年間延長、それでは、既に武力行使と憎悪によるテロリズムの反復連鎖、これを拡大再生産するだけですね。二年間の延長については政府は断念すべきだということを厳しく述べて、私の質問を終わります。

衛藤委員長 これにて児玉健次君の質疑は終了いたしました。

 次に、金子哲夫君。

金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。

 最初に、イラクの問題も大量破壊兵器にかかわる問題ですけれども、中国の遺棄毒ガス弾にかかわる問題で、少し官房長官や外務大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

 御承知のように、一昨日、九月の二十九日に東京地方裁判所で、旧日本軍の毒ガス兵器及び砲弾による事故被害について、原告の請求をほとんど全面的に認める判決が言い渡されたということで、控訴を二週間の控訴期限の中で政府は判断されることになると思いますけれども、その点について二、三お伺いしたいと思いますけれども、今お考えになっているこの検討状況はどのような状況でしょうか。

福田国務大臣 旧日本軍の遺棄毒ガスの訴訟がございまして、これは委員おっしゃるとおり、二十九日に東京地裁でもって、被告、国側が敗訴する、こういう判決が言い渡されました。これはまことに厳しい判決である、国にとっては、被告にとっては。そういうようなものであるというような受けとめ方をいたしております。

 いわゆる旧日本軍毒ガス賠償訴訟、これについては司法の判断も分かれております。五月に行われましたもう一つの裁判では、これは被告が勝訴しているんです、国側が。ということで、勝訴、敗訴と二つに分かれてしまったんです。

 というように、非常に難しい判断を迫られる問題なんだろうと思いますけれども、今後の対応につきましては、判決の内容を十分検討した上で、どういうような対応をするか決定したいというように考えておるところでございます。

金子(哲)委員 今回の判決は、中国の遺棄弾、放置をした問題についてかなり厳しい判決の内容になっておりまして、国交回復の問題がありまして、国側も主張されておりますけれども、国交回復した後も積極的な対応をしないで、遺棄された毒ガスを放置したままであった、その行為にはわずかの正当性も認めることはできないというような厳しい内容になっております。

 ちょっと次にお伺いをしたいんですけれども、とりあえず後でもう一度お伺いしたいんですけれども、ことしの八月四日に中国のチチハルで同様の事故が発生をしまして、一名が死亡され、そして四十数名が入院されるという事故があったわけですね。

 それで、これはちょうど福田官房長官が訪中をされる直前の出来事でありまして、長官が訪中された際の温家宝首相との会談の中でもこのことが話題に上ったというふうに聞いておりますけれども、その際、長官は中国側の要請に対してどのようにお答えになったんでしょうか。

福田国務大臣 そのときの記録がございますので、それを申し上げてもよろしいんですけれども、前提としては、まだ事故が起こってどういう内容であるかわからない、こういう状況の中で私が申したんでありますけれども、もし原因が日本旧軍の責任に帰するものであるということになれば、政府としてもそれなりの対応をする必要があるのではなかろうかと思っておると。いずれにしても、その現地調査の結果を見て判断するべきことであるけれども、この問題について誠実に対応したいということは温家宝首相に申し上げました。

金子(哲)委員 これは九月五日の小泉総理と呉邦国全国人民代表大会常任委員長との会談の中でも取り上げられて、これに対して小泉総理も、政府として誠実に対応したいという約束をされたというふうに報道でもお伺いをしております。

 今、長官、大事なことをおっしゃったと思うんですよね。日本の遺棄弾による、責任による被害であれば誠意を持って対応しなければならないということをおっしゃっています。

 先ほど裁判の判決の件で、九月の二十九日の東京地方裁判所の件、それから、長官も五月の裁判の件をおっしゃいましたけれども、五月の裁判の件でも、この日本が遺棄した毒ガス弾による被害であるということは認めているわけですね。その点については責任があるけれども、中国に何とかしろというようなことが言えるかどうかということになると、それは別の問題だということで、あの判決は政府が勝訴をしておりますけれども、原因としての旧日本軍の毒ガス弾の遺棄毒ガスによって起こった被害だということは認めているわけですね。それが放置をされて起こった事象であるという事実関係については五月の裁判も認めている。

 今、福田官房長官がおっしゃったように、旧日本軍の遺棄した毒ガス弾による被害であれば日本政府は誠意を持って対応しなければならない、このようにおっしゃれば、今回のこの裁判で起こされた問題は、事実上同じ次元の問題ではないかというふうに思うんですけれども、その点についてはどうですか。

福田国務大臣 この問題は、要するに、旧日本軍のことも含めまして、日中間において日中共同宣言を発しましたね、一九七二年ですね、この日中共同声明。このときに、日中間の請求権の問題は、これは放棄をするということで、以後、存在しないということになっているんですよ。そこのところがあるものですから、裁判にもなり、そして国側が勝訴する、こういうことになっているのだというふうに思っております。

金子(哲)委員 それは、このいずれの事件も七二年の日中共同声明以降に発生した事案なんですよね、このいずれの毒ガス被害も。ということになれば、七二年の日中共同声明の問題は、今そこで幾らそれがあったと言っても、そのこととそれ以後に発生した問題は別の問題だと思うんですよ。(福田国務大臣「根源は」と呼ぶ)もちろん、もとに日本軍が遺棄した問題はそうですけれども、しかし、それを適切に処理しなかったために七二年以降に発生した問題ですから、根源としては日本に責任があると思うんです。

 今、福田官房長官は、日本に責任があるとすれば誠意を持って対応しなきゃならない、それが日本軍が遺棄した毒ガス弾だと認められれば誠意を持って対応しなければならないということを中国側との話で話をしましたというお話をされ、小泉総理も、この九月の五日の日の呉邦国常任委員長との会談の中でもそうおっしゃっているわけですね。

 そうしますと、ことしの八月四日に起きたことも、そして七二年、今裁判で争われている件も、いわば日中共同声明以降の同じような時点の問題として、これは対処しなきゃいけない問題じゃないかというふうに思うんですけれども、どうですか。

福田国務大臣 ですから、先ほど申しましたように、一九七二年の日中共同声明、これでもってその請求権はもう存在しない、こういうことになったわけですよね。要するに、旧軍というのはそれ以前の、戦争中のことでございまして、そして、それが原因で起こったことについて、以後のことについては責任は負わない、こういうことなんです。

 ただ、誠実に対応します、こういうふうに言ったのは、とはいいながらも、やはり日本軍のものであるということが確認されれば、それは何らかの、お見舞いをするとか、何らかの措置というのはあってしかるべきではないのかな、そういう気持ちをあらわしたことでありまして、法的な問題ではないのであります。

 そしてまた、我が国は、一九九七年に化学兵器条約を結びました。そして、それでもって遺棄化学兵器の、今いろいろと調査をして、そしてそれを処理しているという作業をしているわけですよ。大きな作業をしているわけでございまして、そういうことによって、我々の遺棄兵器による被害がなくなるように努力をしている。

 したがいまして、もし問題が生ずるとすれば、九七年以降に起こったことについての責任というものは生ずるだろうというふうに思っております。

金子(哲)委員 その見解は、私はちょっと納得できないですね。

 確かに、言われたとおり、九七年に化学兵器禁止条約ができて、その後、日本政府は、いずれにしても日本の国内にもまだ毒ガス兵器は残っていると言われておりますけれども、少なくとも、外国に残したもの、遺棄したものについては、製造国の責任で、遺棄した国の責任においてすべて処理をするということで、今中国との中でその処理をされているわけですよね。間違いないじゃないですか、それは。

 それで、しかもその中で、では今すべての遺棄弾が調査が完了しているかといえば、全部できていないんじゃないですか。できていないでしょう。そうしてまいりますと、遺棄弾によって被害が発生することは今後も予測されるわけです。それは、すべての情報が明らかでないわけですから、どこにどのような毒ガス弾が遺棄されたかという状況はありません。例えば、この作業を始める前、日本側が推定し得るのは七十万発だ、一九九七年にスタートするとき。中国側は、これに対して二百万発だと言ったと。これも調査をしなきゃわからないということでスタートを切り、できるものから始めていって、そして今、大量の場所のものを中心にして作業を進めるというのが今の過程なんですよ。

 そうしてまいりますと、この間、ことしの八月四日に起こった事象は、その処理をする過程の中で既に発生しているわけです。全部が完了していないために、まだ依然として作業に入らないままの毒ガス弾が中国国内にある。遺棄されたままの状況である。それによって住民が被害を受けるかもわからない状況にあることは間違いないんです。

 そうしてまいりますと、それはもう七二年以前の問題ということには片がつかない問題じゃないですか、その後に発生した問題は。そこに今回の問題も、私は、きっと政府は、今言われたように、九七年の化学兵器禁止条約が発効して、外国に遺棄した毒ガス弾については、旧日本軍の毒ガス弾については日本側に責任があるようになった。責任を持って処理しなきゃいけない、それは中国の協力を得て作業を進めているということになると、それによって事故が発生すれば、当然日本側が責任を持たなきゃいけないということで、大抵、私は、ことしの八月四日のものについては日本政府は誠意を持ってやらなきゃいけないというふうに考えられたかもわからないですけれども、しかし同じ、明らかに遺棄毒ガス弾で被害を受けた人は、さかのぼった場合にはそれは関係ありません、これは道義的にも成り立たないんじゃないでしょうか。

福田国務大臣 それが要するに請求権を放棄したということで、今までそういうことで来たわけですよ。それは遺棄兵器だけのことじゃないんです。いろいろなことがあったわけですから、戦争ですから。そういうものは、まだ今でも引き続いているものはいろいろあるんですよ。だけれども、今の日中間においては、そういう請求権を放棄するという、共同声明によってお互いに請求をしないということになっているんです。

 条約上のことについては外務省の方で答えさせますけれども、どうぞ御質問ください。

川口国務大臣 今、官房長官がおっしゃったとおりでして、これは請求権を放棄しているということがあるわけです。そして、日本側が、福田長官が誠意を持って対応しますということをおっしゃられた、八月四日に起こった事件につきまして。ということの意味は、これは、日本政府としてそういう誠意を持ってどういう対応をしたかということを申し上げると、事故の処理に協力をするために、事実関係の確認、これの調査チームを送った、それから事故の原因となったドラム缶のこん包チームを送った、そして医療の専門家のチームを派遣したということであって、その事故の対応についての日中間協議をやっているということであって、それがまさに福田長官がおっしゃった、誠意を持って対応するということの意味であるわけです。

 そして、この件について日本政府が、見舞金を支出するとかそういうことを決めたということでは全くないということです。

金子(哲)委員 外務大臣、私は重要な発言であったと思うんですけれども、その調査団を出したことが誠意を持っての対応ですか。調査チームを派遣し、医師団を派遣しただけが誠意を持った日本政府の対応ですか。

 中国の中で、例えば、今、見舞金を出すというようなことは決めていないとおっしゃっていますけれども、例えば見舞金という言葉が、どこがどう言ったかは別にして、マスコミ報道を通じてでしょう、出た。それに対して、中国の国内では百十一万人を超える人たちが署名を集めた、きちっと日本が謝罪しろと。それを、今外務大臣が答弁されたような、調査チームを出して、医師団を派遣した、これが誠意を持っての対応だというレベルでこの問題を解決するということになると、私、これは日中間の重要な問題になってくると思うんですよ。

 といいますのは、この裁判まで、実は、官房長官も御承知かもわかりませんけれども、これらの事案、ことしの八月四日以前のもの、政府間の問題になったことないんですよ、今まで。そして、民間レベルで解決しなきゃならない、日本政府に要望したが解決しないから裁判を起こしたということなんですよね。しかし、今回は、先ほど私が申し上げましたように、八月に官房長官が訪中された際の温家宝首相との会談の中でも取り上げられ、そして先ほどの、九月五日にも、全人代の委員長がお見えになったときに、小泉総理との話し合いの場所にも出てきた政治的な課題になっているわけですよ。

 そうなってまいりますと、今言われたようなことが誠意がある態度というようなことでこの問題処理は、それは一つの段階としてそういうことはあったかもわからないけれども、これで終わりということはないでしょう。

川口国務大臣 この件への対応につきましては、日中で協議をいたしておりますし、引き続き我が国としては、中国側と密接に協力をしながら誠意を持って対応していくというふうに考えております。

 この件が外交的な案件、問題案件というふうになっているということではございませんで、日本と中国は、この点について密接に協議を今やっているということでございます。

福田国務大臣 今の、誠意ある、こういう中身の話ですけれども、この問題が出てきまして、我が国は専門の、本当にいないんです、日本に一人しかいないとかいう、そういう医師を派遣しました、医療チームを派遣しました。それから、この調査チーム、そういうものも派遣しました。これは相前後して三回ぐらいにわたって行ったんじゃないかと思いますけれども、そういうようなことで、できるだけのことは対応していこう、そういう考え方でやってまいりました。

金子(哲)委員 先ほど外務大臣、見舞金の話はないということでしたが、そういう金銭的なものの解決の方向というのは全くないんですか。

福田国務大臣 今、金銭的なことでもってどうこうということではない。原因の究明とか、今後どういうふうにするかとかいったようなことも含めて日中間で協議中である、こういうことでございます。

金子(哲)委員 もう一つだけお伺いしたいんですけれども、もう一度確認なんですけれども、七二年の共同声明で放棄をした。確かに過去のものについては放棄をされたかもわからないですけれども、しかし、その後この事故というのは発生をしているわけですよね、七二年以降に。いずれも、この今裁判になっている件はすべて七二年以降なんですよ。

 そうしてまいりますと、七二年の共同声明で放棄をするというのは、それ以前のものにかかわって放棄したのであって、それ以降に発生したものまで放棄をしたと、これはまあ裁判でも争われている点ですから、今回の東京地裁の判決では、この国側の主張は明らかに誤りであるということで敗訴をしたわけですよね。

 今日、この毒ガスの問題は大量破壊兵器にもつながる問題でありますけれども、大量に、残念ながら、当時の旧日本軍が中国大陸に持っていったものを、本来きちっと処理をして帰ればよかったものを、すべて遺棄して、どこに遺棄したかもわからないような状況で、それが放置されたままになっている。しかも、化学兵器禁止条約ができて、日本がすべて責任を持って調査をし、そしてそれを発掘し、それをすべてにわたって破棄の処理をしなきゃいけないという責任を負っているわけですね。その責任を負っている者が、その間にそれによって事故が発生すれば、すべてに日本の国の責任において破棄をしなきゃならないほどの責任を持つ者は、事故が起きたときに、日本に責任がない、こういうことにはならないんじゃないですか。これは普通の国際的な感覚の中で当たり前のことじゃないんですか。

 それほどにこの毒ガスの問題というのは、化学兵器禁止条約で、なぜ遺棄したものについて、遺棄した側の日本、例えば、今の例でいえば中国の問題ですけれども、日本側が責任を持って処理をしなきゃならないのか、財政負担を。それは、それだけの責任と問題があるからでしょう。それによって、まだ、すぐに、仮に日本が言う七十万発としたら、これを最終的に処理するまでに、実はこの条約では二〇〇七年までの間に処理しなきゃいけないですけれども、今の状況で、もう二〇〇三年ですよね、あと四年間で実質上できるかどうかわからないという状況があるわけです。

 それから、すべての遺棄弾が、すべて調査が済んだかといえば、まだやはり出てくる。それが今の中国の現状でしょう。その点についてはお認めになりますか。今、スタートをした遺棄化学兵器処理の調査で挙がっている数以外にもまだ不明な点があるということについてはお認めですか。

川口国務大臣 幾つかの御質問がおありになったと思いますので、幾つかでお答えをしたいと思います。

 委員のおっしゃっていらっしゃる、日本が残したものだから、そしてその事件が最近起こったことだから、請求権を放棄したといっても関係ないんではないだろうかということをおっしゃったわけですけれども、これは、請求権を放棄したということによって、まさに放棄をされたということの対象になっています。それで、先ほどから申し上げているのは、請求権を放棄したので、その問題の解決のために金銭で請求権の処理をするということはもはやないということを申し上げているわけです。

 それからもう一つ、見舞金の支出、この方針を固めたという事実はないということは申し上げました。そういう方針を固めたという事実はございません。それで……(金子(哲)委員「検討はされているんですか。固めていなくてもいいけれども、そういうことは検討されているんですか」)したがいまして、見舞金ということは、請求権を放棄していますから、それはないわけですね。

 それで、条約により遺棄化学兵器、これは二〇〇七年まで処理をしなければいけないということであります。これはなかなか大変な仕事でございまして、委員がおっしゃるように、まだわかっていないものもあるかもしれないということでもございます。これは、中国の政府と緊密に連携をしながら、この処理については日本政府として最善を尽くしていきたいと考えております。

金子(哲)委員 再度、官房長官にぜひ御確認したいんです。

 もし、今後もこの種事故が、とりあえず裁判の件についてはいろいろ、私は控訴を断念して早く解決してほしいということを思っておりますけれども、先ほどの答弁を聞いておりますと、先ほども申し上げましたように、今既に発見されたものについては管理をし、処理をするための準備や作業は進んでいます。しかし、まだ調査をしてみれば出てくるかもわからないという状況にあることも、また間違いないわけです。

 そうすると、これから発見されるであろうものについて、また事故が起こる可能性があるわけですね。そういうものについては、日本側は全然責任を持たないということになるんですか。その辺はどうなんですか。そういう考え方でいいんですか。

福田国務大臣 今までの考え方というのは、法的にはもう解決済みである、こういうことになっているんですよ。ですから、今後同様のことが起こったときには、今の法的な解釈の上に立って判断していくということしかないんですけれどもね、今現在は。

金子(哲)委員 おっしゃるとおりだと思いますよ、一方で。しかし、現実にそういうことを決めた、今中国の政府の首脳は、今官房長官がおっしゃったことをそのまま言えば、七二年の日中共同声明によってあなた方は放棄したじゃないですか、この問題は今私たちに言う立場にないじゃないですか、こう言わなきゃいけないですよね。しかし、そう言えない問題があるわけですよね、現実的に、やはり遺棄した問題で今起きている問題だから。だからこそ、誠意を持ってこたえるとおっしゃったと思うんですよ。

 そうしてまいりますと、やはりこれは被害を受けた人たちに対して一定の、それなりのことをやっていくということは、私は当然考えなきゃいけないことだというふうに思うんです。見舞金を出すことを決めたわけではないということですけれども、出さないことも決められたわけではないでしょうから、まだ検討されていると私は思いますけれども、今のままで、これだけの、首脳会談で二度にも議題に上った問題が、今言われただけの調査活動だけでこれが終了、済むというふうには到底思えないわけですので、この問題は、裁判の控訴の行方も極めて、中国の側から見ると、民衆も含めて非常に関心を持って見ているという事案であるだけに、私はちょっと、言葉の上で、日中間の重大な案件になりかねないということを言っているわけでありまして、場合によれば、処理の仕方自身によっては。

 その点について、再度、官房長官、直接お会いになっておりますから、ぜひもう一度御答弁をお願いしたいと思います。

川口国務大臣 この件につきましては、官房長官がおっしゃられたように、我が国としては、事故の対応について日中の協議を続けておりますし、引き続き中国の政府と協議をしながら、誠実にこの問題に対応していきたい、そういうことでございます。

金子(哲)委員 もうこの問題は終わりにしたいと思いますけれども、いずれにしても、旧日本軍が遺棄したために発生した問題であるということだけは明らかでありますから、それをもって、やはり日本の政府はしっかりとした対応をするというのは、私は外交上当然のことだというふうに思いますので、その点をぜひ意見として申し上げたいと思います。

 時間の都合で一つだけ質問させていただきたいと思いますけれども、外務大臣にぜひお聞きをしたいんです。

 さきの代表質問の中で、我が党の党首が質問の、質問されたわけではありませんけれども、発言の中で触れられたイラク戦争における劣化ウラン弾の使用の問題です。これについて、さきの国会でも私ども質問しましたけれども、当時、川口外務大臣は余りはっきり、どうおっしゃったかといえば、どちらかといえば、使ったという確認を得ていないという御発言だったように思いますけれども、その後、イラク戦争における劣化ウラン弾の米英軍の使用についてはどのように確認されておりますか。

川口国務大臣 前に申し上げたことは、劣化ウラン弾を米軍が使ったということについては、米軍はそういうことは確認をしていないということを話をしたわけです。その後、政府といたしまして、再度アメリカ側に確認はいたしております。そして、その結果、アメリカは、今回のイラクに対する軍事行動において劣化ウラン弾を使ったかどうかということについては、今後とも明らかにすることはしないということを言っているわけでございます。

 なお、健康被害との関連については、引き続き我が国として注視をしていきたいと考えています。

金子(哲)委員 今発表しないということですけれども、党首も発言の中で申し上げておりますけれども、先日、米軍のブリックス准将は、使用したということを認める発言をしているわけですよね。にもかかわらず、今もってアメリカ軍が認めないというような答弁をここの委員会の中で繰り返すというのは、余りにもひど過ぎるんじゃないですか。この点についてはどうお考えですか。

川口国務大臣 この間の党首の御発言を聞きまして、再度確認をいたしております。そういうことをブリックス准将が言ったことはないということでございます。

金子(哲)委員 いずれにしても、イラクに使われているということは、さきの委員会で参考人が調査活動をもとにしておっしゃっているわけですから、その点については、もし仮に自衛隊を派遣するというようなことになれば、それは当然重大な問題になってくるわけですから、その点について、私は、引き続いて明快にするように努力すべきだということを申し上げて、質問を終わります。

衛藤委員長 これにて金子哲夫君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二日木曜日午後四時に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後九時一分散会




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