衆議院

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第3号 平成15年12月15日(月曜日)

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平成十五年十二月十五日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 斉藤斗志二君

   理事 小野寺五典君 理事 中谷  元君

   理事 西田  猛君 理事 三原 朝彦君

   理事 一川 保夫君 理事 末松 義規君

   理事 中川 正春君 理事 赤松 正雄君

      今津  寛君    江藤  拓君

      金子 恭之君    木村  勉君

      岸田 文雄君    久間 章生君

      倉田 雅年君    小西  理君

      桜井 郁三君    塩崎 恭久君

      竹下  亘君    橘 康太郎君

      谷本 龍哉君    玉沢徳一郎君

      永岡 洋治君    西川 京子君

      西銘恒三郎君    萩生田光一君

      松島みどり君    望月 義夫君

      山下 貴史君    大畠 章宏君

      岡田 克也君    佐藤 公治君

      園田 康博君    田島 一成君

      田嶋  要君    高井 美穂君

      高山 智司君    樽井 良和君

      津村 啓介君    辻   惠君

      中塚 一宏君    長島 昭久君

      原口 一博君    前原 誠司君

      渡辺  周君    遠藤 乙彦君

      太田 昭宏君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君    穀田 恵二君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣        

   (内閣官房長官)     福田 康夫君

   国務大臣        

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   内閣官房副長官      細田 博之君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   防衛庁長官政務官     中島 啓雄君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (内閣法制局長官)    秋山  收君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    奥村萬壽雄君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君

   政府参考人

   (防衛庁人事教育局長)  小林 誠一君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   北島 信一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住部長)          鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            堂道 秀明君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 矢部  哲君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        高木 孝雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月八日

 辞任         補欠選任

  宮路 和明君     萩生田光一君

同月十五日

 辞任         補欠選任

  近藤 基彦君     小西  理君

  竹下  亘君     久間 章生君

  橘 康太郎君     西銘恒三郎君

  野田 聖子君     松島みどり君

  津村 啓介君     岡田 克也君

  原口 一博君     長島 昭久君

  丸谷 佳織君     太田 昭宏君

  赤嶺 政賢君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  久間 章生君     竹下  亘君

  小西  理君     近藤 基彦君

  西銘恒三郎君     橘 康太郎君

  松島みどり君     永岡 洋治君

  岡田 克也君     津村 啓介君

  長島 昭久君     原口 一博君

  太田 昭宏君     丸谷 佳織君

  穀田 恵二君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  永岡 洋治君     野田 聖子君

    ―――――――――――――

十一月二十七日

 一、国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件




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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 議事に入るに先立ち、申し上げます。

 去る十一月二十九日、イラクにおいて、在英国日本国大使館大使奥克彦君及び在イラク日本国大使館一等書記官井ノ上正盛君の両君が、職務中、何者かによる襲撃のため、不慮の死を遂げられました。まことに痛惜の念にたえません。

 ここに、両君の死を悼み、謹んで黙祷をささげたいと存じます。

 御起立をお願いいたします。――黙祷。

    〔総員起立、黙祷〕

斉藤委員長 黙祷を終わります。御着席ください。

     ――――◇―――――

斉藤委員長 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣法制局長官秋山收君、内閣官房内閣審議官増田好平君、警察庁警備局長奥村萬壽雄君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長西川徹矢君、防衛庁人事教育局長小林誠一君、外務省大臣官房長北島信一君、外務省大臣官房領事移住部長鹿取克章君及び外務省中東アフリカ局長堂道秀明君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 おはようございます。自由民主党小野寺五典です。

 本日は、この大きな課題について、特に、昨日報道がありましたサダム・フセインが生地ティクリートで米軍特殊部隊によって拘束された、そのことについて初めにお伺いしたいと思います。

 この問題、恐らく日本全国、あるいは世界じゅうが驚いた、そしてまた期待感を持って受けとめた、そういう報道かと思います。

 この報道の状況を聞きますと、どうもDNA鑑定含め、このサダム・フセインと思われる人物、ほぼ特定できたというふうに考えられます。そしてまた、このことによって、私ども日本が抱えるイラクに対しての人道復興支援、その問題にも大きな影響があると考えられます。

 そこで、まず官房長官にお伺いしたいと思います。

 今回のこのサダム・フセインが捕らえられたということが、我が国にとってどのような意味を持つのか。それからまた、報道によりますと、国連におきましても国連の事務総長が、このフセインの拘束ということで一つ大きな節目になった、そしてまた世界の復興援助が、これについてまた弾みがつく、そういうことを期待感を述べてコメントされていますが、このことについてお伺いしたいと思います。

福田国務大臣 昨日は大変大きなニュースがございました。私ども、大量破壊兵器の捜査も、調査と申しますか、それもはかどらない、そしてまたフセイン元大統領もなかなか捕まらない、こういうことでもって、一体どうなっているのかな、こういう気持ちも実はないではなかった。こういう状況の中で、昨晩、フセイン逮捕、拘束、こういうようなニュースを受けまして、私ども、大変これはよかったなという思いを強くいたしております。

 イラク・フセインのこの悪行、残虐、そしてまた非道の政治をもう二十年以上にわたって続けてきた、彼が治政をとってからずっとやってきたんだというように言っても過言ではないと思いますけれども、その間の悪行は、これはけさ外務省に急遽、どれだけのことをしたのかと言って調べさせたらば、これだけ厚いのが出てきたんですよ。

 いろいろございます。生物兵器、化学兵器とか大量破壊兵器ももちろんございますけれども、イラクの国民に対して大変な抑圧をしてきた。人権上の問題、拷問とか死刑、そういうようなこともしました。児童虐待もした。また、数限りない失踪事件も起こっております。また言論統制、また食糧の配給の停止だとか、そういうことを恣意的にやってきたということもあります。

 そしてその間、この十年間だけ、湾岸戦争以来、経済封鎖もございましたけれども、経済は本当に疲弊をいたしておりました。そして、その前の十年間も経済的には失政を行っておったんですね。イラクの国民は、経済的にも本当にどん底の生活を強いられていた。そして、一部の者が優越的な立場でもって振る舞っていたというのが、これがフセイン政権の実態であったということを考えれば、フセイン大統領が拘束されたということは、これは本当によかったという思いでございます。

 また、フセインを信奉する、そういう暴君を信奉するという人もいるわけでございますから、そういうような人たちの迷妄を断ち切るということから考えても、これはよかったなということでございます。

 しかし、フセイン元大統領が拘束されて、それですべて終わったということではありません。問題は、いわゆるテロ、このテロの根源が何か。これは正直申しまして、イラクで起こっている各地区におけるテロの実態、また背景、それは克明に分析されているわけではないということでありますから、フセインがいなくなればすべて解決するというわけではないのではないかというように私どもは思っております。

 これからも、そういう意味においては極めて慎重に、そしてまた、強力な国際協調を図る中でテロの撲滅ということに向かって一致団結していかなければ、イラクの復興、再建もないし、そしてまたイラクが混乱すれば中東地域の混乱、こういうことも考えれば、イラクの復興はこれはもう本当に喫緊の課題である、大きな課題である。国際社会の中における課題であり、また日本にとっても他人事ではない、そういう観点から、今後も我が国としても、このイラクの復興人道支援とか、そういうような復興に関係するいろいろな形での支援を続けていかなければいけない、そのように思っているところでございます。

小野寺委員 官房長官、昨日からの大変な報道の変化、御対応、大変だと思いますが、御答弁ありがとうございます。

 それで、このような大きな変化があるわけですが、この状況によって、いわゆる旧サダム・フセイン政権というのが本当にこれは終わりだということが、世界各地あるいはイラク人民にとっても再認識されたと思うんですが、この状況によって、いわゆるイラク人道復興支援法の中の大事な要件にあります主要な戦闘の終結ということが再確認されたかというふうに思います。

 そしてまた、イラク再建に対しての我が国の役割が一層求められると思いますが、その中で一つ、私どもが懸念されるのが、このサダム・フセインの捕捉、一部報道によりますと、テロの激化が一時復活するのではないか、そういう不安の声もあります。ぜひ、このことについて、防衛庁長官から、今回、イラクに自衛隊を派遣するに至ってのこの新たな状況の変化についてどのようなお考えがあるか、お答えいただきたいと思います。

石破国務大臣 ただいまも官房長官からお話がございましたが、これは大変大きな一歩だろうと思っております。

 他方、これによって、すべてめでたしめでたしで、テロ行為が全くなくなるというふうに私ども、楽観的には考えておりません。このことによって、確かにサダム・フセインはもう戻ってくることはない、あるいはその恐怖におびえていろいろな復興に協力することをためらっていた、恐れていた、そういう方々が協力してくださる、そういう意味でいい兆候だと思っています。画期的なことだと思っています。しかしながら、これでテロが全くなくなるとは思っておりません。

 そういうようなことで、私どもとしては、従来どおり治安の状況というものを慎重に見きわめつつ、あわせまして、そのようなテロに対して、仮に派遣することになりました場合に、私どもの要員の安全をどう確保するかということに引き続き万全の対策をとってまいる所存でございます。

小野寺委員 この人道復興支援に対しての多くの期待というのが、恐らくこれをもってさらに国際世論として強まると思います。ぜひ自衛隊派遣に関しましては万全の注意を払いまして、くれぐれも二度とあのような、二外交官の不幸のようなことが起きないように対応されることを御期待したいと思っております。

 こういういろいろな事件が今起きておりますが、その中で私考えますのは、実は正義というものの考え方です。

 確かにサダム・フセインは、イラクに対して、イラク国民に対して多くの不幸をもたらしました。しかし、その一方、アメリカ軍に対する自爆テロというのも多発しています。

 この自爆テロという言葉ですが、よく内容を考えると、実は、みずからの命をなげうって自分の一つの抵抗する使命を果たすという、非常に重い、深い意味があると思います。特に、私ども日本人にとりましては、かつて同じようなことを先輩方は経験されたというふうに思います。そういう不幸な歴史あるいはこの問題に対しての重い認識を持つ日本人だからこそ、この正義というものをもう一度よく考える必要があると思います。

 その中で、恐らく、日本国民の大多数あるいは世界の世論にとっても一つの共通の正義というのが、イラクの国民が、先ほど官房長官からお話がありました、サダム・フセインの長い間の圧制に苦しんでいた、あるいは今回のイラクのいろいろな、アメリカ軍の攻撃を含めて、内乱によって何か疲弊している、そういう困っているイラク人に対して国際的に手を差し伸べなければいけない、そしてまた日本もその一翼を担わなければいけない、このことは恐らく間違いのない正義だと思います。今回日本が自衛隊をイラクに派遣するという大きな意味も実はここにあるというふうに思います。

 そこで、もう一度防衛庁長官にお伺いしたいのですが、今回の基本計画を見ると、自衛隊の部隊による人道復興支援として、医療、給水及び学校の公共施設の復旧整備ということがあります。また、人道復興支援物資の輸送というものもあるとこの基本計画に書かれていますが、実際イラクの人たちが現地の生活あるいは日々の糧の中でどのぐらいのものをどういう形で困っているのか、日本に要求しているのか、先般の自衛隊の調査を含めて、もしそのイラクの人たちの現状、そして日本に寄せる期待ということをわかる範囲でお答えいただければありがたいと思います。

石破国務大臣 まず医療について申し上げます。

 これは委員も映像等々で御案内のことがあるのかもしれませんが、例えば日本がつくった病院というものがございますが、それが十分に機能しているかといえば、そういうわけでもございません。設備あるいは医薬品の供給、設備が老朽化している、医薬品も十分に行き届いていない、機材やスタッフも十分ではないという状況であります。したがって、病院はあるが病院が有効に機能していない、運営も十分ではない、その点についての指導助言というものは不可欠だと思っております。

 また、水について申し上げますと、確かに川はあるのです。水はあるのですけれども、これも設備が相当老朽化をしている。それでなくても南部地域というのはサダム・フセイン政権下で大変に冷遇されてきた地域であります。設備も老朽化をしている。したがって、どのようなことになっているかというと、川から直接水をくんできてそれを飲んでいるという状況を、実際に私ども確認をいたしておるわけでございます。そのようなことによって、特に子供たちあるいは病気の人たち、高齢者の人たち、そういう方々の罹患率が非常に高いのではないか、そういう懸念を持っておるところでございます。

 学校につきましては、これも相当に傷んでいる。学校そのものが運営できないような、そのような傷みが非常に激しい施設、そういうものが多くございます。私ども自衛隊として、学校そのものを建てるというようなことは能力的には持っておりません。しかしながら、壊れたところを修復して、少なくとも子供たちがきちんとした授業が受けられるような環境を整える、そのことによってイラクの子供たちにきちんとした教育を受けさせてあげる、そのためのお手伝いは十分になし得る、そのように判断をいたしておるところでございます。

小野寺委員 私も、実は現地のNPOの担当者から刻々とメールが入るんですが、その現地の方のお話でも、やはりこの飲み水の問題というのは非常に大きな問題だと。どうもイラクの川の水というのは大変苦くて、とても飲めるような状況じゃない、これはとにかく浄水して、少しでも早く一般の人たちに広く水が行き渡るということが大事だというふうに、現地の方からもお話を伺いました。

 その中で、この飲み水のこと、多くのことに関係すると思うんですが、どうしても自衛隊ということの活動、これはとても大事なんですが、イラク全土にこういう人道復興支援をするということになりますと、なかなか限界がある。その中で、このNPOの方から一つの御提案がありました。

 それは、どうもイラクというのは、井戸を掘る、特に地中深く七十メートルぐらい深い井戸を掘ると、そこからある程度水をくむことができる。飲料水にするためには、実はそういう深井戸を掘れば可能なんだということを、盛んに現地で活動されて実体験として感じていらっしゃるということなんですが、そこでこういう提案がありました。

 今こういう状況で、実はイラクの人が一番困っているのは仕事がないことだ、そしてまた水がないことだと。その際に、もし、例えばそういう石油掘削等、長年の技術、労働者がたくさんいる国ですから、その方々を日本に招聘して、日本の技術とそれから機材を短期で習得していただいて、それでまたイラクに戻り、そしてイラクで深井戸を掘ったりあるいは水の確保という作業、そういう仕事に従事してもらえれば、仕事の面でもあるいは技術の面でも、そしてまたイラク人によるイラクの人道復興支援という面でも活躍できるんではないか、こういう御提案がありました。

 このことを含めて、今回、まずこの自衛隊の派遣ということがどうしても先兵としては必要かと思いますが、その後必要とされるのが、実は本当の意味での日本の外交的な支援。特に、先般、岡本行夫さんから、私ども委員会理事会で、現地の意見をお伺いしました。その御意見によりますと、イラクの人たち、CPAの皆さんから本当に感謝をされるのは、実は政府の無償援助、日本は十五億ドルを決めたということに関して大変な歓迎を受けている、そのことをお口みずから聞かせていただきました。

 ですから、ぜひ、これからの日本の一つのあり方として、この無償援助を含めて外務省の積極的な活躍が必要かと思いますが、この政府無償援助について、あるいはこれからのイラクの人道復興支援援助について、外務大臣からその方針を伺いたいと思います。

川口国務大臣 我が国は、十五億ドルの無償ということで、委員も今おっしゃっていただいたように、国際的にも大変に評価を受けております。今までのところ、これまで十五億ドルのうち約九千万ドルを超える金額を援助として実施をしたということでございます。

 先ほどおっしゃられた井戸を掘るということも、私は、日本が深い井戸を掘るということはアフリカ等で幾つもやってきていることでございまして、そういった技術を移転する、あるいは機材も込めて行うというのは、一つ検討すべきプロジェクトではあるというふうにお話を伺いながら思いました。

 このほか、いろいろなイラクの人たちのニーズにこたえるための支援をやっていかなければいけませんし、イラクは、今度の戦争でイラクの制度が動かなくなったということだけにとどまりませんで、イラン・イラク戦争以降のサダム・フセイン政権下での、そういった国内のインフラに対して十分に対応していないという、まさにそこにまでさかのぼってやっていかなければいけない支援がたくさんあるということでございますので、引き続きNGOの方々等々と御相談をしながら、そして日本が今既にやっておりますのは、近隣の諸国、エジプトですとかヨルダンですとか、そういった国々と一緒に支援をしていきましょうと。第三国協力といいますか、そういうことも考えておりますので、そういった手法も生かしながら、イラクの復興人道支援をきちんと外務省といたしましてもやっていきたいと考えております。

小野寺委員 今回の日本がイラクに対しての対応、これは恐らく日本国内はもとより、イラクの国民もそうですが、実は中東全体、もしかしたら全アラブが非常に注目をしているのではないかというふうに思います。アメリカとは違った形の、日本型の支援ということも恐らく望まれているのではないかというふうに思います。

 例えば、今回自衛隊が派遣されたその後に、その地域には雇用が生まれ、そしてまた治安もよくなり、またいろいろな基本的なインフラ、飲み水の確保あるいは学校の整備、そういうものが足跡としてきちっと残っていくということが、恐らく日本に対しての中東、そしてまたアラブの国々の大きな意味合い、イメージとして定着していくのではないか。

 ですから、今回のこの人道復興支援というのは、実は日本の中東政策の大きな柱にもなる、そういう大きな課題だと思います。ぜひこの援助の問題、しっかりと今回立ち向かっていきまして、いろいろな問題、たくさんあると思いますが、その先にありますのは、サダム・フセインの長い間の圧制に苦しんだ人々、子供たちの笑顔がある、そういう気持ちでしっかりやっていただきたいと思います。また、私どもも、そのことに対しては懸命に支えていきたいと思っています。

 それから、今回、このような形で自衛隊が派遣されるということになりました。いろいろな国内での議論あるいは考え方があると思います。ですが、今、国際的にどうしてもイラクを復興援助するんだ、そういう大きな流れの中で、日本政府としてもしっかりやっていかなければいけない、そういう思いを恐らく多くの方が思っていらっしゃると思います。その中で、派遣される自衛官の問題、非常に国内の中でも、その安全対策について多くの心配をされていると思います。

 確かに、今回、戦闘が終了している、そしてまたテロが起きているといえども南部の方は安定している、いろんな要件があると思いますが、私ども国民が思いますのは、その上にもさらに念には念を入れてぜひ自衛官の安全については確保していただきたい、そう思っております。ぜひ、その辺の決意を防衛庁長官にお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 これは、この法律をつくりますときから多くの議論がございました。このイラク特別措置法というのは、第九条に、防衛庁長官は派遣される隊員の安全に配慮しなければならない、そういう義務規定を置いております。

 PKO、随分と実績を上げてまいりました。事故というものもありませんでした。あるいはテロ特措法に基づいて、今オペレーションを行っておりますけれども、これも事故もございません。

 しかし、イラクの場合には、さらに困難な事情がたくさんあるということを認識しながら、私は、派遣される自衛官の装備、そしてまた権限、能力、この三つの観点から、本当に想定し得るあらゆることに、これは大げさで申し上げているわけでもなくて、あらゆることに対応できる、そういうような措置を講じる必要があるだろうと思っています。

 先ほど委員が、自爆テロということをおっしゃいました。これは、自爆テロというのは、とにかく抑止力がきかない。これをやっちゃうと自分は死んじゃうんじゃないかというようなこと、それをためらって、やるのをやめよう、そういう意味の抑止力はきかない。そういうことも加えて考えると、極めて困難だと思っております。

 隊員が、もちろん無辜の方々を不法に傷つけるということがあってはなりません。しかし、迷いあるいはためらい、おくれ、そのことによって自分に被害が生じてしまうということもないのか、ここが非常に難しいんです。相手の方にそういうような危害を加えてはならない、しかし自分を守らなきゃいけない。これは理屈じゃなくて、理屈もきちんと覚えなければいけませんが、体で覚えるというところまでいきませんと、一瞬の迷いが大変なことになると思っています。

 そのことを認識しながら、委員の御指摘も踏まえまして、今後さらにきちんとした対応、相なるべくは万全というものを目指してやってまいりたいと思っております。

小野寺委員 今回派遣される自衛隊、派遣される予定の自衛官の皆さん、本当に誇りを持って、また多くの皆さんがみずから志願してこの任に当たるということを伺っております。

 ですから、私ども国民としましてもぜひ、日の丸をつけて、国際貢献のために、イラクの人道復興支援のために、遠いイラクに家族を日本に残して赴くこの方々の気持ち、それを全面に酌み取りまして、ぜひ誇りを持ってこの活動が最後まで全うされますことを心から御支援申し上げるということを私ども自由民主党としても確認しまして、きょうの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 次に、西田猛君。

西田委員 自民党の西田猛でございます。

 私は、今の小野寺議員の質問に続きまして、我が国の安全保障をめぐる法制整備の状況などにつきまして、短い時間ですが、御質問いたしたいと存じます。三大臣におかれましては、早朝から大変お疲れさまでございます。ありがとうございます。

 まず、戦後の我が国の憲法、特に第九条と、そしてその後の我が国の安全保障をめぐるいろいろな法制整備の状況の進化と申しますか、この流れを見ておりますと、私は本当に法律をつくる、法制のこれはもう芸術、アートではないかなというふうにまで思う次第でございます。

 これはもう皆さんもよく御存じだと思いますけれども、我が国の戦後、国際平和協力法、平成四年、そして平成十年の国際平和協力法の改正法、そして周辺事態安全確保法、これが平成十一年、そして平成十三年のテロ対策特別法、そして今回の、平成十五年のイラク人道復興支援特別措置法というふうないろいろな、もちろんそのほかの法律もございましたけれども、流れがございます。これらの中において、かつて日本の領空、領土外には一歩も出ることがならない、いかなる目的であれ出ることができないとされていた自衛隊の皆さんが、今国外に出て活動をすることができるようになった、あるいはすることが求められているという状況、そしてその状況を許すようになったこの法制整備の歴史があるのでございます。それらの問題点、それからこれからの展望を語っていただければというふうに思っております。

 まず、個別具体的な問題点から入りたいと思いますが、今回も、サダム・フセイン元大統領が捕捉されましたけれども、例えば、そもそも今回のイラク支援特別措置法に基づきます、我が国は戦闘行為に参加しないというのがもちろん大原則でございますし、しかもイラクの復興のために人道復興支援活動を中心にして活動するということになっておりますが、それに加えまして安全確保支援活動というものもできるようになっております。これは法によれば、イラクの国内における安全及び安定を回復する活動を支援するために我が国が実施する措置であるというふうになっております。

 そこで、いろいろな概念区分を整理していただきながら、例えばというと仮定の問題には答えられないというふうになるかもしれませんが、いまだにイラク国内においては旧フセイン政権の残党の皆さんとの間において戦闘行為を行っているというふうに、かの地に展開をしている米軍を初めとする各国が戦闘行為を行っているのではないかと評価される場合に、当該我が国の自衛隊が展開したときに、本法に基づいて支援を行えるのかなという点について、まず防衛庁長官からお答えいただけますでしょうか。

石破国務大臣 お答え申し上げます。

 基本的に今アメリカが行っておる掃討作戦というものは、基本的にはでございますが、イラク国内における安全及び安定を回復する活動と思っております。では、イラクにおいて米軍が行っていることで我が国が定義するがところの戦闘行為、すなわち国または国に準ずる組織が行う国際紛争を解決する手段としての組織的、計画的な武力の行使に該当するものがあるか、こう言われますと、これがそうなのだというふうに断定できるだけの根拠を私自身有しておりません。

 つまり、この法律で、委員よく御案内のとおりでございますが、決めておりますのは、我々が行う活動は武力の威嚇、武力の行使に当たるものであってはならないということと、我々がやる活動は非戦闘地域でなければならないということを決めているのであって、日本の一・二倍国土がありますイラクを二つに分けて、はい、ここは戦闘地域、はい、ここは非戦闘地域というような行為を行うことは予定していないのは、委員よく御案内のとおりでございます。

 そういたしますと、理論的には、仮に米軍がやっておることがそのようなものだと仮にいたしましても、我々が行う活動というものが非戦闘地域で行われる、そして武力の行使、武力の威嚇に当たるものでなければ、理論的にはそれは行い得るということなのだろうと私は思っております。

西田委員 今の法制からすると、そのようになるというふうに考えます。

 そこで、よく私たちも耳にすることですけれども、例えば、バグダッドにある日本の大使館を自衛隊もしっかりと防護するべきではないか、あるいは人道復興支援職員として民間人の方がこれからイラクに展開することも考えられますけれども、そういう方たちを、日本の自衛隊もしっかりと邦人を防護するべきではないかなという議論も当然今後出てくると思います。

 この法律に基づけば、そのような大使館あるいは日本人、邦人の防護ということが、展開する自衛隊が可能なのかどうかという点についても、防衛庁長官、お答えいただけますでしょうか。

石破国務大臣 これは、委員御案内のとおり、このイラク特別措置法でもって、大使館の警備あるいは政府職員の警護というものは、この法律に基づく限りはできないということでございます。条文に書いていないことをやっていいなぞということにならないのは、委員よく御案内のとおりでございます。

 そうした場合に、ではあとは立法論としてどうなのだという御議論なんだろうと思います。立法論として、委員冒頭に憲法との関係というお話をなさいました。では、憲法第九条からそのような活動は一切できないという結論が論理的にそのまま出てくるかといえば、これは多くの御議論のあるところなのだろうと私は思っております。

 すなわち、憲法九条が禁じているのは、国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇、武力の行使は行わないということ、そしてまた、国または国に準ずる組織というものがそういうような活動を行っている場合に、我々がそれと一体化したというような評価を受けてはならないというために、非戦闘地域という概念を二重に設けておるわけでございます。

 そういたしますと、立法論の問題として、それが明らかに国または国に準ずる組織でないというような場合に、そのようなことはできないのかと言われた場合、従来からもこれは政府が答弁申し上げていることでございますけれども、そういうのが本当に明らかであった場合には、それは憲法上必ずしも全く許されないというわけではない。しかし、そこを法の技術としてどのように条文を書くのかということになりますと、これは、私どもとしてもいろいろな考え方があるのだろうと思っております。その点につきましては、本当に国会における御議論を踏まえまして私どもとしても勉強してまいりたい。

 その必要性があるというような世の中の御議論がある、御意見があるということはよく存じております。ですから、法律に書いていないことはできないんだというような切って捨てたようなことを私は申し上げるつもりはございません。ただ、これを条文に起こした場合にどのような条文になるのかということが、私自身、まだ答えを出しあぐねておるところでございます。

西田委員 我が国の安全保障ないし国際平和に関する根幹をなすような御答弁をいただきまして、そして、それを踏まえましてさらにお尋ねしたいのですけれども、今回のイラク特措法に基づく自衛隊の派遣についても、国民の皆様方の中にいろいろな概念の混同が見られるというふうに私も思います。

 そこで、ここで一つ整理を大臣の方からしていただきたいと思うのですけれども、私自身が整理するところによりますと、我が国の安全保障をめぐる法制整備、専ら自衛隊を日本の領土外に展開するという法制の中で、やはり二本流れがあるのではないかなと。特に、周辺事態への対応の流れとそして国際社会の平和と安定に対する流れというふうに二本あって、これをまず整理しておかなければいけない。

 そして、今回のイラク特措法は、とりもなおさず国際社会の平和と安定に対する我が国の責務を果たすものであるという流れでございますよということは、はっきりと国民の皆さんの前に何度も何度も提示をしておかなければいけないと思います。

 もちろん、軍備の、武力の行使はもうしない、これはもう行わないというのが大前提ですけれども、特に、国際社会の平和と安定のためにこの法律ができて、そして自衛隊が派遣されるのだということだと思うのですね。

 その意味においては、平成十一年の周辺事態安全確保法や平成十二年の船舶検査活動法とは、私自身の整理によれば一線を画するものであるというふうに整理をしておいた方がいいと思いますが、ただ、自衛隊法という切り口を見れば、実に、これまた驚くべきことではありますけれども、今申し上げたすべての法律は全部いわゆる付随的業務になっているわけですね、これはもう自衛隊法上によれば。ここらあたりが国民の皆様にとっては非常にわかりにくいことだと思うのです。

 周辺事態確保という非常に大切な、我が国の直接の安全保障にかかわる問題のことも付随的業務だし、そして、国際社会の平和と安定、これももちろん我が国の安全保障に直接かかわる大変な問題ですけれども、それも全部自衛隊法によれば付随的業務であるというふうな仕切りがなされているわけです。これはもう、私は、法律を読めばそう思いますし、恐らくそういうことなんだと思うのです。

 したがって、これらのことをこれからきっちりと整理をしていかなければならないのではないかというふうに思うのですが、まず、官房長官、恐縮ですけれども、今回の国際平和協力に関する総括をされる立場から、今後とも我が国が国際社会に対する平和と安定に責務を果たしていかなければいけないという中で、憲法を含めた法制整備をいかになしていったらいいかということについてお答えいただきたいと思います。

 それから、一つ、これは外務大臣に対しても、お尋ねではありませんけれども、申し上げておきたいのは、よく貢献という言葉が政府側から出てくるのですけれども、もちろん国連決議の中で貢献という用語が出てきますから、それを引いての言葉遣いだとは思うのですけれども、私は、今回のイラク問題についても、これは我が国は貢献ではないと思います。まるで、自分には関係ないけれども何かしてあげるというふうな非常に第三者的なことではなくて、石油の問題にいたしましても、我が国はこれはもういわばステークホルダーというか利害関係人ですから、ぜひ我が国は責務を果たすという立場で、私の今の話について、まず官房長官からお話をいただければと思います。

福田国務大臣 委員から今おっしゃられたとおり、これはまさに我が国の国益からの判断でもって、今回の法律に基づいて自衛隊並びに文民を派遣しよう、こういう枠組みになっておるわけでございます。

 こういうことはどういうことか。それは、我が国が国際社会の中でどういう立場にあるべきか、こういうこともありますけれども、しかし、それと同時に、現実の問題として、イラクの混乱は中東の混乱である、中東の混乱は我が国の経済にも直接打撃を与える問題である、そればかりでなく、テロとかいったような温床化するようなことを防ぐ、こういうような観点からも、我が国のまさに国益であるというように考えてこの課題に取り組んでいるというところでございます。

 そしてまた、こういうような我が国の対外的ないわゆる貢献というものは、これはすべて私は国益だというふうに考えております。我が国の国益を考えた上でさまざまな貢献をしているというのが今の実態でございまして、PKO活動というのはまさにそのためであるというように私どもは認識しているわけでございます。

 そして、このことは、今後も同様に、また、その枠を広げて国際平和のためにという枠組みの中であれば、これは私はかなりの活動が今後できるのではないか、また、そういうようなことに向けて法制の整備をするということも必要ではなかろうか、こう思っておりまして、国際平和協力のための懇談会というものも昨年開催しまして、その提言を受けております。そして、今その検討を開始いたしておりますけれども、来年中じっくりと国会でも御議論いただいた上で、この法制整備を進めていきたい、そのように考えているところでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 実は、私自身、平成四年の国際平和協力法ができて、自衛隊の皆さんが日本の外で国際平和協力業務に従事することができるようになる前の、我が国で初めての組織的なPKOへの活動参加として、アフリカのナミビアに二十七名の文民の方を連れて行ったんですね。これは、二十一名の地方公務員の皆さんと、それから六名の国家公務員の皆さんで、選挙監視を中心に行ったんです。非常に私たちとしてはつらい立場、活動の内容ではありましたけれども、一生懸命やってきたつもりでございました。

 その後、こういう国際平和協力法ができて自衛隊の皆さんが行っていただけるようになったということでございまして、その後の法律の流れは、私にとっても非常に、先ほど冒頭、法の芸術だなというふうに申し上げた、ということは非常に、何と申しますか、技術に陥っている感がある、もっと骨太な議論で憲法を含めた根本的な話をしていかなければならない時期に今我が国は来ているのではないかなというふうに思うのでございますが、そのあたりのことを含めて、防衛庁長官、お話しいただけますでしょうか。

石破国務大臣 先生御指摘のとおり、こういう場合は自衛隊法でいうと百条系列というものでやっているわけですね。本来任務ではないということになっているわけです。これから先もそれでいいのかという御議論はPKOの議論のときにもありましたが、これを本来任務化しなきゃいけないんじゃないの、こういうお話がありました。

 ところが、問題は、ではそれだけの能力が我々にあるのだろうか。つまり、我が国の平和と独立も守らなければいけない、その状況が、四面環海、全部静穏かといえば、それはそうではないかもしれない。その中で海外の任務も本来任務化とした場合に、では我々はどうなるんだろうか。

 テロ特のときにも、では自衛隊はそんなに余裕あるのかいというような御質問をいただいたことがありました。余裕なんかございません。本当に、一年に三回も出るようなぎりぎり厳しい中にあって、休みもとれないような中にあって、ぎりぎりいっぱいやってここまでなんでございます。そこをどのように考えていくかということもあわせて、そして、委員御指摘の憲法との問題もあわせて、委員の表現をかりれば骨太の議論をしていきたい。

 自衛隊の能力というものにも、それは当然人間の営みでございますから、限りはあるのです。では、そこをどのようにして配分をしていくのかということは、これはもう国全体でお考えをいただくべきものであります。私どもは、命があればそれにきちんと従うのが務めであります。しかしながら、全体をどう見渡して、どのような能力を与え、どのような任務を与えるべきかということを、また委員の御指導もいただきながら私どもも考えてまいりたいと思っております。

西田委員 それではこれで質問を終わりますが、これからも自民党そして国会で、骨太な、そして国民の利益になる議論をしていきたいと思います。

 終わります。

斉藤委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 三大臣におかれましては、朝早くから御苦労さまでございます。

 冒頭、質問に先立ち、イラク復興支援に尽力をされ、殉職をされた奥大使並びに井ノ上書記官の果たされた、道半ばとはいえ大きな功績をたたえるとともに、お二人の御遺族に心からお悔やみを申し上げるものでございます。

 さて、昨日、サダム・フセイン元大統領の拘束というビッグニュースが飛び込んでまいりました。これによって今後、治安情勢が収束に向かうことを期待するものでありますが、なかなか必ずしも状況は予断を許さないものがありまして、とりあえずの分析、評価につきましては既に御答弁があったわけでありますので、私はもう一つ別の角度からお聞きしたいと思っております。

 それは、サダム・フセイン元大統領の裁判の問題でございます。多分この問題は今後最も大きなテーマになると思われますので、どういう容疑でだれがどこで裁くのかということは今後の大きなテーマになり、また、今後のイラク復興支援問題全体にかかわる重要な影響を与えるものと思われます。これについて、昨日、ブレア・イギリスの首相は、イラク人の手によって裁くべきだとの態度を表明したわけでありますけれども、日本の場合はどうなのか、また、その考えがあれば、イニシアチブをとる用意はあるのか、まずこの点につきましてお聞きしたいと思います。これは外務大臣ですかね。

川口国務大臣 おっしゃるように、裁判の問題ということはこれからの問題になっていくと思います。

 今の時点では、これはいろいろな意見があるわけでして、サンチェス司令官が記者会見をいたしましたときに、これについては今まだ何も決まっていない、今後検討されていくということを言っているわけでございます。それで、今後、関係当局においてサダム・フセイン元大統領に対して尋問が行われていくだろうというふうに思います。その過程で、どういうような処遇を今後していくかということが出てくるんであろうというふうに思います。

 今の時点で、そういう事実関係等々把握をする、まだ始めている状況にございますので、我が国として、どういう形で裁判を行うのが一番適切なのか、そのときに、彼の行ったどういうことについて行うのが適切なのかということについては、まだ申し上げることができない段階でございます。

遠藤(乙)委員 この問題、日本がどういう態度をとるか、これは非常にある意味で重要な影響を持つと思いますので、ぜひとも日本独自の見識を持つことが必要かと私は思っておりますので、ぜひ御検討をいただければと思います。

 次いで、自衛隊派遣の問題。基本計画を決定したわけでございますが、我が公明党の神崎代表も、慎重には慎重を期してということを申し上げたわけでございます。

 特に、国民の目からすれば、人道復興支援のニーズは非常にあることはわかる、また自衛隊でなければできない任務である、自己完結型の能力を持ち、また危険にも対処できる能力を持った自衛隊でなければならないということはよくわかると。

 一番の国民の懸念は、そういったところへ派遣され、任務を行う隊員の安全がどこまで確保できるか、これが最大の関心事でございまして、これが多分今後の派遣の最終決定に対しての最大のポイントだと思うわけでありまして、この点につきまして、これは防衛庁長官にお聞きしたいと思っておりますが、イラクの情勢は予断を許さない、国連ですら今一時退避をしておりまして、国連事務総長の報告によっても、現時点で復帰することは余りにも危険が大きいという判断を示しているわけでありまして、そういった中で、自衛隊を送るかどうかの最終決断が今迫られているわけでございます。

 理論的に言えば、そういったテロに対するためには、テロというのはどうしても脆弱な部分を突いてきますので、やはり自衛隊の側が十分な、切れ目のない抑止力と防御能力を十分に準備できるか、これにかかっているわけでありますが、実際にそれがどこまでできるかということが具体的な問題であると思います。長官も先ほど、あらゆる事態を想定して対処するとお答えになっておりますけれども、具体的に、やはり国民に納得いくように御説明いただきたい。

 例えば、常識的に、テロ攻撃が想定されるのは、部隊の移動中であるとかあるいは作業中、そういったところへ迫撃砲やロケット砲が撃ち込まれる可能性は、非常にこれはあると思います。また、輸送機の離着陸のときに携帯用ミサイルで攻撃をすることはしょっちゅう起こっているわけですから、これにも対処する必要があるかと思っております。

 こういった具体的なケースを含め、手のうちをもちろん見せないことはありますけれども、国民に対して納得できるような、自衛隊の安全確保について御説明いただきたいと思います。

石破国務大臣 手のうちを見せないで具体的にわかるようにというのは、なかなか難しい御質問であります。委員はそのことをすべて御存じの上で御質問いただいておるのだと思いますが。

 結局、委員がおっしゃるように、移動中が危ないんだということ。そしてまた、自爆テロのように抑止力がきかないものに対してどうするのかということ。あるいはそれが、我こそ自爆テロと言って突っ込んでくるようなことはないのでありまして、それは、見た目は本当に普通の市民である、あるいは友好を装っておるのかもしれない、そういうものに対してどう対応するんだ。あるいは、仮に派遣が決まったとして、宿営地をつくった後はそれなりの防御力はあるわけですが、つくっている最中、ここが一番危ないのではないか。そういうようなことを本当に、冗談ではなく、朝から晩まで、土曜日曜なく、実際に赴きます自衛官、そして武器を扱うことに習熟しておる自衛官たちと、この場合はどうだ、この場合はどうだ、この場合はどうだ、すべてのことを検証しながら私どもやらせていただいております。

 例えば、移動中の場合には、それはやはり基本的には前後に警護車両を挟むというようなこともございましょう、そしてまた、防弾能力を高めるということもございましょう、そして、どれだけのスピードで走るのかということもございましょう、そういうこともあわせて考えておるところでございます。

 また、飛行機についてのお尋ねがございました。これはいろいろなところで紹介をされているわけでございますが、私どもが考えられる限りの、相手方が持っておると想定されます武器、その射程、あるいは届きます高さ、それから計算をして、どのような飛び方をすればよいのか、地表面においてどれだけの地域をクリアにすればいいのか、そういうことも含めて、本当にありとあらゆるもの、こういうものは考えられないか、それは、先生御案内のとおり、実際に赴く人たちが一番よく考えております。

 万全ということは世の中にはございません。しかし、その万全に近いものをやりたい。そして、装備だけではない、権限もそうです、訓練もそうです。あわせて、我々は武力の行使に行くわけではない、そして治安維持そのものに行くわけではない、人道支援、そして安全確保支援ということをやるわけです。そのことを幾ら我々がそう思っていたって、相手がそう思わなきゃどうにもならないんじゃないか、こういう御議論があることもよくわかっています。だとすれば、どうやって現地の方々にそれをわかっていただけるか。溶け込む努力もいたしましょう。しかし、そのときにソフトターゲットにならないようにというのは、本当に極めて難しいことだと思っております。そういうことをなし遂げる能力を持っているのも自衛隊ではないのか。だから総理は、自衛隊でなければできないこと、そのようにおっしゃったのではないかと私は思っております。

遠藤(乙)委員 ぜひ徹底した対策をお願いしたいと思っております。

 もう一点、自衛隊の安全確保に関連して、国連安保理のタリバン・アルカイダ制裁委員会というものがありまして、そこの監視グループの報告書が最近出ておりますが、その中で、イラクのテロにおいて生物化学兵器が使われる可能性ありとの報告が出ております。この問題につきましては、準備はありますか。

西川政府参考人 生物化学兵器に備えた対策についてのお尋ねでございますが、内容をつまびらかといいますか明らかにすることは、いわゆる手のうちを見せるということになりますので、詳細なお答えは差し控えさせていただきます。

 ただ、生物化学兵器の検知あるいは防護に必要な装備の携行というものは現在も十二分に検討しているところでございまして、部隊あるいは隊員の安全の確保には最大限の配慮を持って現在やっております。

遠藤(乙)委員 何といっても、自衛隊員の生命の保護、安全確保、最大の国民の関心事項でありますので、念には念を入れ、あらゆる事態を想定して努力をしていただきたいと、この際、強い要望をしておきます。

 そこで、今度、官房長官にお願いしたいんですが、基本計画を決定され、総理はテレビでも会見をされて、力強く説明をされたわけですけれども、国民の九割近くがまだ納得しにくいといういわば世論調査も出ております。

 いろいろな人道復興の必要性、あるいは自衛隊が行かなきゃならない必要性もわかるけれども、なぜこれほどの大きな危険を冒してまでこの時点で行くのかということについては、まだまだ国民の大半は納得できない状況にありまして、どういう具体的な国益がかかっているのか、どうしても避けられない国益がある、それをぜひわかりやすく官房長官の口から御説明をいただきたいと思います。

福田国務大臣 委員のおっしゃるとおり、世論調査をしますと、国民の大方は、なぜ自衛隊が行くのか、こういうことでありますけれども、しかし、最近の世論調査をよく見てみますと、復興支援に協力をした方がいい、そういう意見というのは過半数を占めている、こういうようにも見ております。何もしないでもいいというのは少数派だということでございますので、やはり国民は、このイラクの復興に、日本人として、日本は関与すべきだという考え方、これはしっかりお持ちなんだろうと思います。それはやはり日本の国民の全体を見て、平衡感覚を働かせて、日本のあるべき方向としてそれがいいのだという判断をされているんだろうというように思います。

 問題は、今、このテロの多発するような、そういうような時点においてなぜ自衛隊が行かなければいけないのか、こういう点に絞られてくるんだろうというふうに思います。

 確かに、テロの報道は、テロの部分だけ、イラクの国内においてテロの部分だけを事件として報道するということがありますと、それはもうイラクの国内じゅういつもテロがあるんだというような印象を受ける、そういうことはやむを得ないことだというふうに思っておりますので、私は、国民がそのような状況を見て、危ないところに行かせるべきでない、ひょっとしたら戦争を起こすのではないか、こんなようなことを考えていらっしゃるのではないかと思います。

 そこでもって、政府としては、そういうようなイラクに自衛隊を派遣するということの必要性、これはやはり、今は本当に言えばイラクの国民も苦しんでいるときであり、また、米英を初めとする諸外国、三十数カ国の諸外国も同じ悩みを持って今闘っている最中だ、苦闘しているんだろうというように思います。そういうような悩みをお持ちの中で、我が国がそれをただ見ているということでよろしいかどうかということは一つ考えなきゃいけないことだろうというように思います。

 そして、我が国が派遣される場合には、それは憲法上の制約がございますから、戦争をするようなところには行かない、そしてまた安全もこの法律上、確保していく、こういうようなことを、これを法律にも書いてある。ですから、法律に基づいて粛々とその仕事をしに行く、そういうことであって、決して戦争をしに行くものではないわけで、これはもう当然でございます。また、そういうような予知をされるようなところについてはなるべく活動しないようにしよう、まずは、とりあえずは我が国の憲法、そして法律の範囲でやっていこう、こういう考え方で、この辺については慎重の上にも慎重を期して行動しなければいけないというように思っております。そしてまた、危険が予知されるというようなことがあった場合には、法律上撤退をするというようなこともありますし、それは今後、十分にそういうところを見ながら活動していくということになります。

 いずれにしましても、今支援をしない、復興に対して協力をしないでもって、そしてもっと状況がよくなってからしましょうということで、そういうことでもって我々として気が済むのかどうかという問題もあります。

 ですから、可能な限り早い時期に、また、みんなが苦しんでいるときに協力をするというのが、これがあるべき姿ではないのかな。そういうことによって、国際社会の中においても我が国が一生懸命やっているという姿も見えるし、またイラクの人もそのことはきっと理解してくれるものというように思っております。

遠藤(乙)委員 最大限の説明責任を果たしていただきたいということを要望として申し上げておきます。

 続いて、今度は外務大臣にお聞きしたいんですが、今、自衛隊の派遣問題ばかりにいわば焦点が当たっているような気がしますが、実は、大変危険なイラクのバグダッドにおいて、日本人の民間の外交官が、非武装の外交官が既に任務に当たっており、しかも二人のとうとい犠牲者を出しているという厳しい現実があるわけでございます。こういった自衛隊の問題ももちろん重要でありますけれども、民間の外交官がそういう危険な任務に当たっているということに対して、もっともっといわば国として最大の配慮をすべきじゃないかと私は強く思うわけでございます。

 特に、今大体バグダッド等にある外国の公館の場合には、ほとんど自国の軍隊ないし特殊警察が警護に当たっているのが通常でありまして、それから比べますと、日本の場合、在外警護官制度のもとで若干の強化がされている程度でございまして、相対的に見ると非常に手薄であるということが言えるわけでありまして、まさに絶好のテロのターゲットではないか。テロから見れば、心理的、政治的効果が大きい、そして、かつ脆弱性があるということは最大の実はターゲットになる条件でありまして、そういった条件をすべてそろえているのが今の在バグダッド日本大使館ではないかと思っておりますし、また、アフガニスタンも同じような状況にあると私は思っております。

 私は、個人的には、国連すら今退避している状況にあって、日本の公館といえども一時退避の検討をしてもいいぐらいに思っているわけでありますが、なかなかそうはいかないと思いますので、そのためには、何としても最大の防御態勢、警護態勢をとるということが大事だと思っております。

 そういった意味で、今回のお二人の大変とうとい犠牲という事件を踏まえて、どれほどこのバグダッドの在外公館の警備強化に当たったか、そういうことにつきまして御説明をいただきたいと思います。

川口国務大臣 イラクにいたしましても、アフガニスタンにいたしましても、それから、その他の地域にある公館にいたしましても、この安全を確保するということは、我が国が外交活動をきちんとやっていけるということのために大変に重要なことでございます。

 イラクにおきましては、今回のことがございましたので、といいますか、その前からも十分にいろいろ手配いたしておりましたけれども、さらに警備の強化を行いました。

 こういった情報自体が、国際化、グローバル化している世界のことでございますので、どこかが脆弱であるということであればそこにテロリストの攻撃が集中しかねないという状況でございます。したがって、細かく何をしたということは、恐縮ですが申し上げることを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、先生がおっしゃられたような意識ということをきちんと持ちまして、我が国は今行えることはすべて行っているということでございます。

 それで、おっしゃったように、ほかの国でやっている、自国の軍隊あるいは特殊警察による警備ということで、これはほかの国がそうやっているということも事実でございます。我が国として中長期的にどういうようなやり方で警備をやるということが一番いいのか、これはそれなりの広がりを持った問題でもございますので、そういった問題意識を持って外務省といたしましては検討を始めたところでございます。

遠藤(乙)委員 今、自衛隊による警護任務を与えろという議論もありますが、私は、国民感情からいっても、また自衛隊本来の任務でもないし、テロ対策は自衛隊の専門でもないので、これはちょっと適切でないと考えておりますが、他方、在外公館警護の抜本的強化の必要性はあるわけでありまして、例えば、そういうテロ対策に特化した専門チームをどう外務省としてつくっていくかということだと思います。

 例えば、外務省の所轄下にでも、現在の在外警護官制度を発展的にさらに拡大して、仮称、例えば外交警備隊のようなものをつくって、機動性のある、かつ専門的なチームをつくって、そういう危険な地域に直ちに対応できる、機動性のある、また国民からも理解の得られやすい、また目的合理的なそういった制度をつくることは必要だと思っておりまして、第二段階で、例えば、現在の警護官制度のもとでできる限りのそういった充実をする、次の段階では、法整備も含めて、そういったものの検討を考えるといったことが日本のイメージにふさわしい防護体制ではないかと思いますが、これにつきまして、外務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 第二段階としてどのようなやり方で警備を行っていくのか、これについてはいろいろな考え方があると思います。そういったことを幅広く視野に入れまして検討をまさに始めたところでございます。ということでございますので、今の時点で何が一番いいかということの結論を出すにはまだ至っておりません。おっしゃられたようなことも視野に入れて、幅広く検討をいたしたいと思っています。

遠藤(乙)委員 公明党の神崎代表も、政府・与党協議会の場で、在外公館の抜本的警備強化ということを訴えておりますので、官房長官以下、防衛庁長官も含め、ぜひともこの点、御理解を賜り、最大の努力をお願いいたしまして、私の質問にさせていただきます。

 以上で終わります。

斉藤委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党・無所属クラブの渡辺でございます。

 今回の基本計画についての質問を用意しておったんですが、先ほど来質問がありますように、昨日の夜になりまして大変大きな状況の変化が飛び込んでまいりました。そのことも触れながら質問をさせていただきたいと思います。

 まず冒頭、今までの自民党の委員お二方、それから公明党の委員の質問に対しまして、繰り返し、これまでもそうですけれども、答弁されています中で、我が国が自衛隊を派遣するということは、これは兵力を派遣することではないんだということをおっしゃっております。もちろんでございまして、それは、自衛隊を派遣するということによっていわゆる力ずくで占領行政の加担をしたり、あるいは制圧をするということのためには出せないわけでございまして、あくまで国際貢献、そしてイラクの復興支援だというふうにおっしゃってきました。

 そこでお尋ねしたいんですが、しかし残念ながら、イラクの国民の中には、当然、アメリカ、イギリスを中心とする占領軍に対して日本の国が協力をしに来た、何よりも、自衛隊というのは、日本の国内では自衛隊でありますけれども、外国から見れば当然軍隊でございます、実態は。そんなものは今さら議論するまでもないわけであります。

 我々は、逆に言うと、自衛隊などという中途半端な言い方はやめるべきだというふうに私自身は思っております。しかし、我が国では自衛隊である、セルフディフェンスフォースでありますけれども、ただ、向こうの国からすれば、当然、ジャパニーズアーミーがやってきたと。それに対する当然反発も懸念をされているわけでございます。

 そこで、それであるならば、ぜひ私は、日本のこの法案、基本計画を取りまとめた日本政府として、閣僚がイラクに行って、イラクの国民に対して、我々は皆さんの国を、あくまでも人道的な復興支援のために来るのであるということを、イラクの国民に向かって何らかの声明を発表するべきだと。もっと言ってしまえば、私は、イラクに閣僚のどなたかが行かれて、日本国政府の立場を、まさに軍隊を派遣するのではない、皆様方の復興のために力を合わせてやっていくのだということであるならば、行って説明をするべきだと思いますけれども、そのような検討、覚悟はおありでしょうか。どうぞお一人ずつお答えいただきたいと思います。

福田国務大臣 我が国が自衛隊をイラクに派遣することについて国民もいろいろと御心配いただいている、こういうことでございますが、そういうイラクに我が国がなぜ自衛隊を派遣するのか。これはまさに人道復興支援ということに絞られているわけでございまして、武力を行使する、そのために行くわけではない。しかし、必要最小限度の自衛のための手段、これは装備していなければいけない、今の治安状況から考えたらそれは必要だ、こういう判断をしているわけでございまして、一般のPKOにおきましても自己防衛手段というのは持っているわけでございます。

 そういうことで、これから自衛隊派遣する、その際に中東諸国にそういう考え方を説明すべきでないか、それはごもっともなことでございまして、私どももその必要性は痛感をいたしております。

 そこでもって、実は、これは小泉総理の特使として中東各国に特使派遣ということを決めております。そして、もう中東各国に高村元外務大臣、また逢沢外務副大臣に行っていただくということで、逢沢副大臣は先週末に出発をしました。また、高村大臣も今週出発をされる。こういうようなことでもって各国に参りまして、そして各国の首脳に日本の、今これから何をしようとするのか、そして、そういう中東諸国にもイラクの安定のために協力をしてほしい、そしてまた、場合によっては一緒にその安定のための仕事をしていこう、こういう呼びかけをしていこう、こういうことを考えておるわけでございますので、この今の御懸念の点については、我々も、そういう必要性があればもちろんそういうことをしなければいけないと思いますけれども、大事な仕事として今そういうことを始めたところでございます。

石破国務大臣 そういう必要性があれば、私はそういうことは行うべきだと思っています。ただ、委員が、これはぜひとも議論をさせていただきたいと思っているのですが、日本として本当に人道支援に来たんだよということは一生懸命PRをしようと思っています。そしてまた、現地社会の、部族社会の構成もきちんと把握をして、どうすれば我々が人道支援に来たのかということをわかっていただけるような、先ほどまた西田委員の、遠藤委員でしたか、御質問に対してもそういうような、国民の中に入っていこうということも考えています。

 ただ、テロリストというのは、我々がどんなに努力をしようが何しようが、それはやはりねらってくるということはあるのだろうと思っています。我々がやらなきゃいけないのは、一般の善良な、日本軍が来たぞ、いやアメリカの占領軍の手助けに来たぞというような、そういうような反発を本当に多くの国民が持つのかといえば、私は決してそうだとは思っていないんです。そういう人たちにそのような気持ちを持たせないようにするということと、そして、どうであれこうであれ日本に対して襲撃を加えようとする確信犯的なテロリストに対する対策、これは別個にきちんと分けて考えないと妙なことになるだろうと思っています。一種、二律背反みたいなところもありまして、民衆の方々と一緒にやっていくということとソフトターゲット化ということをどのように考えていくか、そこのところは本当に冷静にきちんと考えたいと考えています。

川口国務大臣 先生のおっしゃる、イラクの人たちに、日本がどういう意図を持って自衛隊を送るか、あるいは復興支援をしているかということを直接に伝えるということは、私は大変に重要である、問題意識は全く共有をいたしております。

 それで、我が国として、外務省といたしましても、今までそのことを念頭に置いてかなりのことをやってきたつもりでございます。

 例えば、既にバグダッドの市民の方々からは、草の根無償をやった際に、非常に、日本は口先だけじゃなくて行動をしてくれているんだというようなこと、あるいは、肢体不自由児の施設に対して贈ったときに、涙を流して喜んでいただいたとか感謝状が来ているとか、そういうこともいろいろございますし、例えば、あさって、私は、バグダッドのシティーカウンシルの方が日本にいらっしゃいますので、お話をしてということをやりたいと思っています。また、イラクの暫定評議会の方々とも今まで何人かとお会いをいたしまして、日本の意図についてお話をさせていただいています。

 イラクと並んで、近隣の諸国のテレビやあるいは政府に対してそれを伝えていくことも重要であります。これについても、私は、エジプト、それからチュニジアとか、何人かの政府の方とはお話をさせていただいて、説明をしてきておりますし、また、ごく最近では、イスラムの国も含むASEANの国々との会合がございましたので、そこでもそういう話をしてきているということでございます。この努力は今後とも引き続きやっていかなければいけないと思っています。

 それで、イラクの国内に直接私が行ってその説明をするかどうかということについて、これはどこかの時点で、そういうことができるような時期になったときにやっていきたいというふうに私は思っております。

 今の段階で、これは大使館の人たちの力ということについては制約があります。日本の閣僚が行く場合には、日本の軍隊が警護をするという状況になっていませんので、頼んでやってもらわなければいけないという状況でもあります。

 イラクのテレビ、ここでは今「おしん」も放映をしていて、日本についての理解を深めるということもやっておりますし、その他、この時代ですので、直接行って国民に全部に話しかけるわけにもいかないわけでして、適切な方法をとりながら、委員がおっしゃっていらっしゃるような問題意識は全く共有をしていますので、適時適切に進めていきたいと思っております。

渡辺(周)委員 お三方から御答弁いただいたんですけれども、今外務大臣がおっしゃったのは、どこかの時点でとおっしゃいました。どこかの時点でというのは、それからまたという意味で非常にあいまいでございまして、それはもう余り時期が過ぎたら意味がないわけです。

 つまり、私が申し上げたいのは、自衛隊が派遣命令が下って行く前に、行って、これはイラク国民の皆さんに対して、さっき申し上げたように、制圧をしに行く、あるいは何らかの形で抑圧をしに行くんではない、先ほど来お話がありますように、イラク国民と一緒になって私たちは復興するんです、そしてまた浄水作業や給水事業を通して衛生面での安定やあるいは健康面での貢献に寄与したいんだということを例えばやりに行きますということを言えばいいわけでございます。

 長々皆さん方からいろいろいただきましたけれども、要は、閣僚の方々がイラクへ行くということはあり得ないということですか、今、現状では。

 それは、先ほど石破長官は、必要性があればとおっしゃっています。ということは、御本人としては、行って、イラク国民に、イラクの例えば国営放送などを通して、イラクのどこかのマスメディアに、危険だと言われない地域、例えば南東部に行って、今自衛隊が行こうとしている安全であるというエリアに行って、日本の例えば閣僚が行って、国民の皆さんに向かって説明をします、こういうことで日本の自衛隊がイラクへ来ます、ぜひ御理解いただきたいと言うことはできると思うんですけれども、その点についてもう一回、では防衛庁長官、必要性があればとおっしゃいました、その点については、しかるべき時期に、近いうちに行く覚悟はおありだということでよろしいですか。

石破国務大臣 それは、覚悟という意味であれば、それがなければ私はこんな仕事をやってはいけないことだと思っています。

 問題は、今外務大臣からもお話がありましたが、日本の閣僚が行く場合に、それではオランダに警護をお願いします、アメリカに警護をお願いしますと言うことができるのか。それは恐らくどの国もやっていないことです。その態勢が最低限、最小限できるということが必要なんだということです。それはそういうものなのです。

 それで、覚悟はあるのかということであれば、それは当然あります。

 そして、どうすればそれが一番有効に伝わるだろうかということ。そのことで私は必要があればと申し上げたのであって、これはいろいろなイラクの方からも御意見を聞いて、何が一番効果的な、日本のやろうとしていることを国民に伝えることなんだということを、現在、当庁といたしましても、関係省庁と御相談をしながらプロジェクトを考えておるところでございます。

渡辺(周)委員 それでは、直ちには行かない、それはいろいろな、オランダ軍や米軍に対して警護をお願いしなきゃならない、そういうことが非常に難しいからだと。しかし、覚悟はある。

 であるならば、私は、なぜこういうことを申し上げたかといいますと、これから自衛隊、大前提を申し上げますが、我々は反対でございます。それは、今までのこの委員会での、あるいは予算委員会やさまざまなところで討論をしてまいりました。これは何度も繰り返した議論でございます。これは、つまり武力行使を認めたものではない国連決議である、それから、やはり今度は大義なき攻撃であったということも含めて、我々は一貫して反対をしてきました。ですから、非戦闘地域を前提に活動を展開するこの法に基づく自衛隊派遣については、これは法的に無理である、こういうことを今まで一貫して言い続けてきました。

 しかしながら、基本計画が定められて、そしていずれ派遣命令が出れば、今いろいろ言われているように、もう既に準備が整って、先遣隊が、航空自衛隊が行く、そしてまた北海道の旭川第二師団が行くということになった場合、もし行くというときに、彼らの役割を全うしていただくためには、やはり、少しでも危害が及ぶことを、私たちは日本の政府として、行くからには、送り出す側は、その点をイラクの国民に、私はやはり余計な、今まで言われているような、日本国内での議論では通用するかもしれませんけれども、向こうの国に対してやはり理解をしてもらわなければいけない。

 だとするならば、私は、日本の政策決定者がその国へ行って、国民に、我が国の部隊はこういうことで来たのであって、あなた方に銃口を向けるために来たのではないということを説明することが、派遣される自衛官の危機の度合いを下げることにも当然なると思うわけであります。ですから、そういうことを申し上げました。

 ですから、その点については、覚悟はもちろんおありだとは思います。それならば、ぜひ私たちは、行く方向で、派遣をしていただきたいというふうに思うんです。それがやはり、非常に厳しい、恐らく今地球上に存在する中で最も危険な地域に行く自衛隊の方々に対して、私は最大限政府ができることであろうというふうに思うんです。ですから申し上げました。

 さて、そこで、もう時間が、長い答弁をいただきましたのでちょっと予定の時間を過ぎましたけれども、次の質問の中で、一つ。

 昨日の大きなニュースで、フセイン元大統領が拘束をされた。先ほど来繰り返されておりますけれども、フセイン元大統領が拘束されたことによって、捕まったあの現状を見ますと、変装をして、二メートルぐらいの穴蔵の中に潜んでいた。しかも、おつきが、どうも二人がそばにおったけれども、本人は、何かライフル銃を一丁抱えて息を潜めていた。また、あの風体から見ると、私は、かなり長い間潜伏をしていたのではないのかな。そうすると、外部の、いわゆるフセイン残党と言われるイラク国民に対して何らかの意思の疎通があったかどうかというのは非常に考えにくいことである。だとするならば、イラクの今起きている、いわゆるフセイン派、フセインの残党勢力によるゲリラ、テロ活動は、フセインが生存しているかどうかは別にしても、勝手に行われてきたことであろうと考えるのが妥当だと思います。

 だとするならば、フセインが、言葉は悪いですけれども、生け捕りにされた、これは生きて捕獲されたことによって、捕らえられたことによって、これから、先ほどお話もありましたように、法廷の中でいずれの時期かに引き継がれて、つまり、フセイン政権下で、独裁政権がやってきたあらゆる非人道的な圧制に対しての評価、あるいは裁きが行われるわけです。

 ですから、私は、歴史を一つ解明する上においても、生きて捕らえられたということは評価すべきだというふうに思います。これがもし亡くなっていたんであれば、あらゆる歴史的な事実がやみからやみに葬り去られてしまうというふうに思うわけでございまして、ただ、だからといって、いろいろ指摘されているように、フセイン元大統領が拘束されたからといって、これでフセイン残党の抵抗活動がなくなるかといったら逆でありまして、あってもなくても恐らく同じような危機は続くんだろうと思います。その点に対しての認識を一つ、どうとらえているかということ。

 そして、フセイン政権が、フセインが捕らえられたことによって、フセイン元大統領というのは、現状で、どういうある意味では今後国内の展開が行われるか、日本政府は今後の展開についてどう見ているか、その点についてお答えをいただきたいと思います。外務大臣、いかがですか。

川口国務大臣 フセイン大統領が捕らえられて今後の国内の展開がどうなるかという御質問の趣旨がきちんと私、把握できているかどうかよくわかりませんけれども、イラクの国内において、我々が期待をしていることは、これによってフセイン政権が再びできるということははっきりなくなったということの認識がなされ、そして、そのことが、国内においてさまざまなグループがあるわけですけれども、そのグループが一致団結をしてイラクの復興をやっていこうというところに、直ちにということではありませんが、つながっていくという重要な契機になるというふうにしていかなければいけないというふうに考えます。また、そのようになることを期待をしているということであります。

 おっしゃったように、フセインがどれぐらいテロを組織的に行わせていたかということについては、これは、今後尋問があって事実関係がはっきりしないと、今の段階ではよくわからないということであるかと思います。さまざまな勢力がイラクの国内に入ってテロ行動をやっているわけですから、その人たちが、直接に指示を受けた、あるいは受けなかったにせよ、フセインがいるということを何らかの支えにしてやっていたという可能性もあるわけでございますから、今後しばらく時間が、直ちに物事が解決をする、いい方向に向かうということではないにしても、このことが今後の治安の安定化につながっていくということを期待をいたしていますし、そのようにしなければ国際社会としていけない、これがそのための最近の時点における最大の契機になるということであるかと思います。これを生かさなければいけないというふうに考えております。

渡辺(周)委員 きのう、拘束されてから、血液鑑定、DNA鑑定で本人だと確認された。これからいろいろ尋問が行われて、どのような経緯で今日まで潜んでいたのか、あるいは、現在ゲリラ活動を行っている親フセイン派とどのような意思疎通ができていたということも、これはいずれ明らかにされる、刻々と出てくるでしょうけれども、この状況下において、やはり自衛隊が派遣をされた場合に何が起きるか。その中で、例えば日本の外務省の情報収集、情報管理。

 先般、日本の大使館員お二人の方が、奥大使、そして井ノ上一等書記官があのような形で不幸にも絶命、命を落とされました。その問題をちょっと繰り返しますと、例えばああした活動をしているときに、日本の大使館なりあるいは諸外国との連絡の中で、ああいう危険は未然に防げなかったのだろうか。なぜ危機回避ができなかったのだろうか。現地において、一体どういうふうなことを、機能がなされているのだろうか。

 つまり、これから、基本計画にもありますけれども、バグダッドにある、例えば日本の大使館と、そして派遣されるであろう自衛隊の方々が、これは当然連携を密にしてやっていかなきゃいけない。自衛隊の方々にしてみると、行っても、初めて行くようなところ、初めて行くところ、全く現地の状況もわからなければ現地の地理もよくわからない。そして、その中で活動せよと。

 しかし、今、残念ながら、日本の大使館にいらっしゃる方が七名ですか、たしかそういうふうに聞いておりますけれども、その方々の能力で、いかにしてこの日本の自衛隊の活動を支援することができるか、あるいは情報提供という、危機管理上の情報提供ということにおいても非常に心もとないと思うわけですけれども、まず、このお二方が亡くなったことについて、一体、日本の外務省は現状でどこまで事実関係をつかんでいるのか。

 つまり、だれの手によってこのようなことになったか、なぜ事件発覚まで時間がこれだけかかったのか。そして、ひょっとしたら、大使館を出てから事件に遭うまでの間、何者かにつけられていたんじゃないか、だとするならば、日本大使館の中での情報管理は一体どうなっているのか。こういうことは何か検証されて、今は、事件発生から現状までに、危機管理上のそうした反省は何か生まれているんでしょうか。その点についてはどうなんですか。

川口国務大臣 事実関係につきましては、既にいろいろ御案内でいらっしゃるというふうに思います。事件の後、一時期若干違う情報が流れたということはございましたけれども、それは、それぞれ初動の態勢での聞き込みの際に異なった情報があったということでありまして、これについては直ちに訂正をされたということであります。

 我が国として、今後二度とこういうことがあってはいけないということで、安全の確保についてはさらに十分にいろいろな配慮をいたしております。今後も引き続きそういう状況を、また、必要に応じ、さらに必要が高まるということでありましたらば、それを行っていきたいというふうに思います。

 情報につきましては、イラクの治安の情報、あるいはイラクのまさに支援のためにどのようなニーズがあるかという情報、いろいろな必要な情報がございますけれども、そういったことについて、我が国のイラクにある大使館は、直接に、あるいは他の大使館等々と、CPAも含みますが、連携をしながら情報をとってきております。

 また、我が国のような、みずからの武装した日本の警備が大使館にはいないという状況を踏まえまして、どうやったらば一番身の安全が確保できるかということについても、さまざまな工夫を凝らしてやってきているわけでございます。

 今後、自衛隊の派遣ということがありました場合に、おっしゃったように、基本計画では、日本の大使館が、自衛隊の部隊あるいはイラク復興支援職員と必要な情報の交換を含めて連絡を密接に行って、一致協力をしてイラクの復興支援に取り組むというふうにされているわけでございまして、我が国として、在外公館においては、可能ないろいろな強化、あるいは本省からの支援を行いまして、そういった必要に応じていくという考えでおります。

渡辺(周)委員 いや、私まず最初に聞いたのは、このお二人の外交官が殺害された背景、その点について、あるいはなぜこの方々がねらわれたのかということについて、日本の外務省は今どこまで把握していますかということです。それをお答えいただけますか。

川口国務大臣 今調査を続行中でございまして、今行っていてわかったことについては、これは外にお出しをすることにしておりますので、新聞等で報道されているとおりでございます。だれが犯人であったか、それから、もし必要でしたら新聞等に報道されていることを繰り返しますけれども、どのようなことで、状況下で殺害をされたかといったようなことについては、確たる情報といいますか、これがそうであるという答えというものはまだない状況でございます。

渡辺(周)委員 以前、党にも外務省の方が来られて、この事件のことを報告に来られました。まさにおっしゃったように、そのように聞いています、そのように聞いています、あるいは、新聞に出ていることがすべてですみたいな話だったわけですね。我が党の人間が質問すれば、一番悲しい思いをしているのは我々です、同僚だった我々ですと。そんなことはもちろんわかっています。

 だからこそ、なぜ日本の外務省が、その無念を晴らすためであるならば、もっとそれを調べないのか。一体、もう事件があってからこれだけの日数がたっているわけです。いまだに調査中、調査中と言って、全然出てこない。つまり、背景に何があって、なぜ日本の外務省の人間がねらわれたか。もっと言えば、これは言いたくないことですけれども、外務省の中に、何らかの形でひょっとしたら中から情報が漏れていたかもしれない。この方々がティクリートに向かう途中、どのルートを通っていくということが漏れていたのかもしれない。ひょっとしたら何らかの内通者がいたかもしれない、周辺には。これはどこで情報が漏れたか。

 そういうこともわからなくて、これだけ大きなオペレーションを、これから自衛隊が行く。日本の大使館の中でまさについさっきまでいた方が亡くなったという事件について、全然日本の大使館がその検証もされていない、全くわからない。にもかかわらず、現地に大体行ったかどうか。日本人ジャーナリストは三人も行っている。ところが大使館の人間は行っていない。だれが行ったんだと言ったら、大使館を警備しているイラクの警備会社が行きましたと。このイラクの警備会社という人たちが一体何者であるかも全然我々はわからないわけですね。そこにすべて任せてしまって、それで遺体も車もCPA、米軍の管轄下の中に置かれている。結局、見せられたのは自動小銃であのような無残な形になった四輪の写真だけですね。専門家が一生懸命いろいろテレビ等で分析していましたけれども、なぜ日本は主体的にこの問題についてかかわっていないのだろうか。つまり、お二方が亡くなった、大変使命感に燃えたお二方が、若きお二人がこのような形で絶命したにもかかわらず、日本政府の手で何とかしようという姿勢が全然見られないわけです。そのことに対して情報が全然、何か落ち度があったんじゃないのかと。

 つまり、そのことについてやはり謙虚に反省をして、もうこれ以上言うと時間がなくなりますけれども、その情報管理もできないところで、言うなればバグダッドの日本大使館が司令塔ですね、コントロールタワー、そこに、その情報をもとに日本の自衛隊が大変な規模で行くわけですよ。それが、自分たちの内部の危機管理体制ができているかどうかも我々もわからない、そこに果たして行かしていいものだろうか、そのように考えるのは当然であります。

 ですから、今回のことについて、先ほど、お知りになりたいことがあったら新聞をお持ちしますと言うけれども、そんなものは我々も持っているわけでございます。一体どこまで日本の大使館は現状を把握しているのか。言えないことがあるんなら言えないと言っても結構なんです。これは実はこういうこともあるけれどもここでは言えません、アメリカとの関係の中でこういうこと、それならそれで納得しますから。一体どうなっているんですか。

川口国務大臣 あの不幸な、残念な事件が起こりました後で、即刻現場に行ってその調査をしたいと言ったのは上村臨時代理大使であります。我々はそれをとめたわけです。それはなぜかといいますと、大使館員があの時点であそこに行くということは二次災害のおそれが十分にあった、そしてそれはCPAにおいても同じような意見でありました。その状況は、あそこの地帯であればいまだに続いているということであります。我々としては、二次災害を起こすということは避けなければいけないということは強く思っているということであります。大使館の人たちは引き続き、とにかく無理をしてでも行きたいというふうにまだ思っているということをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

 それから、みずから行かなかったということでありますけれども、大使館としては、自分にかわって、むしろ調査という意味では専門的な知識を持っている人たちを派遣いたしました。だれを派遣したかということについても、これは、その行った人たちの安全の問題がございますので、ここで今申し上げることはできませんけれども、そういった調査の専門家であります。そういった専門家の意見とそれからCPAの、あるいは米軍の調査等々を我々は調査の材料とし、日本の警察当局とも御相談をしながら今調査をしているということであります。

 プレスの方が行かれたということでありますけれども、プレスの方がプレスというサインをつけて行く場合と、大使館が行く場合と大きく異なっている。ですから、我々としては、これは内容についてわかったことは、はっきりわかったことは外に出していくということが重要であると思っていまして、その時点では国会が開かれていなかったので、結果的には我々が明確に言えることについては新聞に出させていただきましたし、それから、そこで出していないということは、だれが犯人であるか、いつそれが起こったか、どういうやり方で殺されたかというようなことについては、今引き続き調査をしておりまして、何もはっきり完全なことが言えないということであります。

渡辺(周)委員 それならば、この事実関係についてはまだ調査中であると。だから、それも調査中、調査中と言って、全くどういう状況下において、つまり、日本人をターゲットとしたようなことがもしあるのであれば、何にも結論がまだ出ていないのであれば、自衛隊は行くべきじゃない。日本をねらった、もしこれが何らかのテロ攻撃だということになれば、これは、どう考えたって、行ってターゲットになるようなことを今すべきではないということなんです。

 つまり、外務省の職員が二人もう既に現実問題として犠牲になっているにもかかわらず、その背景も何も全然わからない、調査中、調査中と。片っ方では、自衛隊はもう近く行くんだというようなことになれば、もしこれが日本人をターゲットにした、日本をターゲットにしたテロであるならば、これはもう絶対に行かせることができないわけです。もう死にに行くのがわかっている、あるいは攻撃を受けるのがわかっている、非常に危険な目に遭うのがわかっていて行かせるという決断はできないわけでございます。つまり、判断するその材料すら今ないじゃないかということなんですね。ここなんです。

 これは、外務省で例えば調査委員会でもつくってこの点についてはやっているんですか。それを最後に確認します。

川口国務大臣 外務省におきましては、その事件についての通報がございました直後から、緊急対策本部を私を本部長として設置をいたしまして、そういった事実関係の解明等々について引き続き取り組んでいるところでございます。

渡辺(周)委員 とにかく自国の国民がもう既に二人現実に被害に遭っているわけです。そのことの原因究明も結局結論も出せなくて、片っ方では、南東部に行く自衛官は安全である、戦闘地域ではないというふうなことには、非常に整合性に欠けるわけでございます。その点についてはここで申し上げて、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなりましたので、幾つかに絞って質問をいたします。

 実際、自衛隊が派遣をされるこの場所、今、劣化ウラン弾による被害というものが、先般ある独立の調査機関から、カナダだったでしょうか、出ました。この点について、劣化ウラン弾が使用されたという認識は、防衛庁長官はおありかどうか。そしてまた、このような汚染された土壌の上で活動するということについては、当然健康被害が懸念されるわけでありますけれども、その点についてはどのようなことを考えているのか、それが一つ。

 それから、続けて防衛庁長官にお尋ねをしますけれども、いわゆる市民と何らかの意図を持ったいわゆるテロリスト、ゲリラ、この人たちとの区別が非常につかない中で、当然隊員たちにしてみると最悪の事態を想定するわけです。日本の自衛官が何らかの形で襲撃を受けた場合もそうでありますけれども、もし日本の自衛官が相手国の国民に対して殺傷した場合、この場合はどう想定していらっしゃるか、その場合はどういうことが今後考えられるのか、その点についても当然考えていらっしゃると思いますけれども、その点についてお尋ねをしたい。

 それからもう一つお尋ねをすれば、そのぎりぎりの極限状態の緊張下の中で、もうこれはアメリカの例を見るまでもなく、行った人間がかなり、これはベトナム戦争以来ずっとそうです、いわゆる外的なあるいは精神、心因的ないろいろ傷を負っている方々の結果が幾つも報告されているわけでございます。その点、もし日本の自衛官がこれで行くとなった場合に、そのメンタルケアはどうされるのか。その点について、これは通告の中にはないかもしれませんけれども、一生懸命探されてもないかもしれません、このメンタルケアをどう考えていらっしゃるか、現地で。その点について、ちょっと三点お尋ねします。

石破国務大臣 後ろの方からお答えをいたします。

 確かに、おっしゃるように、相当極限の精神状態ということになると思っています。そうなった場合に、メンタルヘルスケアというものをどういう形で行うか。それは、私どもの医官は、先生よく御案内のとおりでございますが、総合臨床医ということでありまして、すべてのことができるようになっております。しかし、そういうような精神的なケアというものができるようにというのは、今回のことに始まるわけではなくて、テロ特の場合にもそういうことを考えてまいりました。あるいは、そういうようなことのカウンセリングが行える、そういうような能力を持った隊員も派遣をいたしまして、そういうメンタルな意味でのサポートというものをきちんとしたい、このことも、庁内で今検討をいたし、実効性を持たせたいと思っております。

 その次に、誤って群衆といいますか、イラクの方が負傷したらどうなるのだということでございますが、これは、結局のところは国外犯の規定をどのように考えるかということだと思っております。

 原則的に過失犯は国外犯となっていないのは御案内のとおりでございます。そういたしますと、過剰防衛でありますとか誤想防衛の場合をどのように考えるかということになりまして、その場合に違法性阻却事由としての正当防衛、緊急避難というものをどのように考えるかということになります。

 ただ、私といたしましては、行動基準に従って行動した隊員というものの責任というものは、基本的にこれは問うてはならないのだろうと思っていますが、誤想の度合いあるいは過剰の度合い、それがどのような判断をすべきかというのは、これは、従来の国内法あるいは判決との関係で考えていかねばならない。そういう場合にどういうことになるか、これも場合分けをいたしまして、いずれにいたしましても、隊員の安全ということを第一に考えてまいりたい。

 しかし、相手方に本当に誤想あるいは過剰の防衛行為によって危害が生ずることがないように、それはやはりROEというものを、どんなに頭で教えましても、体で会得する、そして、瞬間にどういう判断ができるか、これは実際に試してみるということができませんものですから、本当に事例を重ね重ね、瞬時の判断ができるような能力を向上させる、これ以外になかろうと思っておるところでございます。

 冒頭の劣化ウラン弾のお話、お答えが逆になって恐縮ですが、劣化ウラン弾についてはどうするかということでございますが、劣化ウラン弾について、実際に被害があったかどうか。

 例えば、IAEAのウエブサイトを見てみますと、ここに、劣化ウラン弾の被曝とがんその他の重大な健康上あるいは環境上の影響の増大について、信頼できる科学的証拠に基づいて証明された関連はないという記述がIAEAのウエブサイトにございます。あるいは、WHOのファクトシートを見てみますと、劣化ウラン弾による環境への影響は着弾地点の数十メートル四方に限定される、こういうふうに記述がございます。

 今回のイラクに派遣されておりますアメリカ中央軍でございますが、アメリカ中央軍がどのように言っておるかと申しますと、劣化ウラン弾が何かに当たったとき、もし危険があるとすればその残滓からであり、それが実際の効果を生むためには直接接近し摂取されなければならない、直接接近をしてそれをとるということでなければならない、このように書かれております。

 私ども、劣化ウラン弾を有しておりませんので、実際にこれまた試してみるというお話には相なりません。しかし、このIAEA、WHO、そういうような国際機関においてそのような記述がなされておるということを考えてみましたときに、それでもなお残存する危険というのがあるとするならどのようなものなのか、それを検知するために何を持っていくかというようなことは、当然考えていかねばならないことだと思っております。

 私が申し上げたいのは、IAEAあるいはWHOにおいて、そういう国際機関において、そのような危険があるとは言われていないということが事実であるということ。そして、中央軍の見解によれば、それを直接摂取した場合には影響がある。では、どのような場合にそういうことが起こり得るのかということまできちんと考えていく必要があるだろうと思っております。

渡辺(周)委員 今の劣化ウラン弾の問題については、これは、防衛庁長官として今現状をどう判断しているのか。つまり、これを、米軍が今回の戦争で使用したその残ったものが当然のことながら存在する危険性を排除できないというふうに考えているのかどうか。そのために、当然のことながら、自衛隊の行動については細心の注意、あるいは行動範囲においても影響を与えるわけでありますけれども、その点について、IAEAや何とかというのはわかります、防衛庁長官はどう認識していらっしゃいますか。その対策はどうしますか。

石破国務大臣 あるいは、サマワにおきます放射能汚染の事実関係は、私どもよりも外務省にお尋ねをいただいた方がより適切なお答えが得られるのかもしれません。

 アメリカ軍として劣化ウラン弾を保有しているということは、このイラク戦争の期間も申しておったと私は記憶をいたしております。しかし、保有をしておるということは申しましたが、実際にそれを使用したというふうにアメリカの方が認めたということを、私としては確認しておりません。それが事実として申し上げられることでございます。

渡辺(周)委員 だとすれば、これは確認をするべきじゃないですか。それは、ここで、いや、確かに使いました、このぐらい、どのぐらい使いましたと、それは公にできない部分も、米軍のも。しかし、もしここまで日本が日米同盟を基軸にやるというんであれば、自衛隊のその外敵テロ、外敵ゲリラから身を守るということ以上に、この果たして行くところが大丈夫なのかどうか。

 つまり、放射能汚染をされて被曝をするような可能性があるところで、もう既に一部そういうことが報じられているわけですね。そこで、自衛官は行かされる。果たして自分は将来大丈夫なんだろうか。将来、そういうことで自分の健康はどうかなるんではないだろうか。当然、そういうことも考えられるわけでございます。その点については、米軍に今確認していないと言いますけれども、派遣する前に確認すべきじゃないですか。どうですか、長官。

石破国務大臣 私どもは劣化ウラン弾を持っていないということと、では、そういうような放射能による障害についての知見がないのかということは別個の議論だと思っています。

 私どもとして、そういうような放射能の影響について、それは、広島、長崎のあの悲惨な例から、いろいろな知見を私どもは得ておるということがございます。他方、劣化ウラン弾を使っていない、少なくとも使ったと言っていないということが一つある。そして、知見を持っているということがある。さらに言えば、いろいろな国際機関によって、直接摂取をした場合には影響があるということが言われている。だとした場合に、私どもとして、どのような装備を持っていき、先ほどどなたかの御質問で、bあるいはcに対する装備を持っているのかという御質問があって運用局長からお答えをいたしましたが、隊員が安んじて行動ができるようにするというのは、それは政府の責務だと思っています。したがって、直接摂取していないから大丈夫なんだ、することは想定されないから大丈夫なんだというようなことを私は申し上げるつもりはございません。どうすれば隊員が直接摂取をするようなことがないような形がとれるかどうか。

 委員お尋ねの、使ったか使わないか米軍に確認してみろということがどれぐらいの実効性を持つものかということも含めまして、隊員にそのような不安が生じないような策は、劣化ウラン弾につきましても懸念が生じないような対策はとってまいりたいと思います。

渡辺(周)委員 確認ですが、それはアメリカに対して確認。昨日のテレビの報道番組の中で、そういう事実があった、そして、実際、何かジャーナリストが計測器を持ってそれをはかっていたわけですね。ですから、その点についてちょっと御確認いただいて、やはりそれについては、アメリカに対してその確認については全力を尽くしてその情報を共有していただきたいというふうに思うんです。ちょっともう数分しかありませんから、その点についてはぜひともやっていただきたい。

 それから、先ほどの、もし民間人に対して何か危害を加えてしまったらどうなるのか、その交戦規定というのはまだ明らかになっていません。これもまた今後議論すべきところではありますけれども、ただ、現地に行って、その極限の状態の中で、例えば水を、市民が受け取りに来るのか、あるいはどこかへ行って供給するのか、その辺についてもちょっとわかりませんけれども、その群衆の中に、一般市民であるかそうでないかということがわからないんですね。それに対して、当然、相手がもし、何かの奇声を上げた、あるいは何かの威嚇をした、そういう連中もいるでしょう。そういうことを考えますと、これは、例えば、かつて、このイラク戦争が終わった、終結直後、米軍に対して、要はイラクの若者が車の中からばり雑言を浴びせる、それだけで彼らはひれ伏せられて銃を突きつけられるわけですよ。つまり、それぐらい神経も過敏になっている。

 つまり、もしそういう似たようなことが起きた場合に、果たして日本の自衛隊が、これまでそうした訓練をしたこともない、まだ実際の経験もない、つまり治安維持を今まで行ったことがない自衛官が、この国へ行って、全く文化も言葉も違う国民に対して、どのような形で一般市民といわゆるテロリスト、ゲリラを見分けるのかということについては、非常にこれは不可能に近いことだと思います。

 その中で、もし何か起きた場合はどうするかということは、当然検討はされているんですね。それは、起こり得る蓋然性の高い話だと思いますよ。

石破国務大臣 検討しております。それは、あらゆる場合を想定いたしております。

 ただ、ROEのお話と、あるいは相手がだれであれ、正当防衛、緊急避難はなし得るということは、これはきちんと峻別して議論をしていかねばいけないことだというのは、先生御案内のとおりでございます。

 そのあたりを整理いたしまして、私どもとして、いずれにいたしましても、相手がテロなのか群衆なのか、それとも全くそういうようなこともなく単にキャッと奇声を発しただけなのか、いろいろな場合分けをしながら、まず何をすべきなんだということ、初動の対応、瞬時の対応、そのことについてすべての場合分けを行っております。

 おまえたちは、というか自衛隊はそういうことをやったことがないじゃないかと言われます。ないことを私はある意味とても幸せなことだったと思っていますが、だからといって、じゃ、ずっとそういうことに備えなくていいのかといえば、そうではないでしょう。

 ですから、そういうことがこれからもないことを祈りますが、しかし、それに対する瞬時の対応ができる訓練というのは、ありとあらゆる場合を想定してやっておるということでございます。

渡辺(周)委員 では、最後の質問をして終わりにしますが、例えばこのオペレーション、活動を休止し、あるいは撤退する場合、この場合は、どのような状況が起きた場合には撤退せざるを得ないのか。

 例えば襲撃を受ける、テロを受ける、戦闘、いろいろなカテゴリーがあるわけです、危害を受ける場合。しかし、現場で活動している人間にとってみると脅威の度合いというのは同じなんですね、その実態がどこであるか、規模はどうであれ。その場合にどの時点で活動を休止するのか。

 そして、その先では、例えば休止して、例えば支援活動ができなくなったという場合は、どの時点で判断するか。つまり、客観的な基準はあるのでしょう、襲撃という場面、テロという場面。つまり、元防衛庁長官の久間さんは、日常的に爆弾が落とされ、弾丸が飛ぶところだ、それが戦闘地域だ、単発的なテロがあっても、それは戦闘地域とは言えないというような言い方も、ある新聞のインタビューの中で言っております。つまり、戦闘とテロと襲撃、どういうふうにカテゴリー分けをするのか。

 これは、長官はどのように判断して、例えば休止をすべき段階では、この時点になったら活動を休止するということはお考えでしょうか。その点についての御見解をいただいて、終わりたいと思います。

石破国務大臣 結局、戦闘地域と判断されるようになれば、それはだめだということでしょう。そして、非戦闘地域という判断が継続したとしても、自衛隊に与えられた権限、装備、能力をもってして、その危険を避け得ないということになれば、これもだめだということなのでございましょう。その両方なんだろうと思っています。

 私は、ですから、いつも申し上げますが、戦闘地域がすべて危険なわけではない。戦闘地域で危険な地域、戦闘地域で安全な地域、非戦闘地域で安全な地域、非戦闘地域で危険な地域、四つあるわけですね。

 いずれにしても、戦闘地域になってしまう、あるいは危なくなってしまう、そういうことになりますと、これはまず危険を回避するために避難をし、そして指示を待つということになりますが、やはり私は、撤退ということを考えたときに、それは法律の要件を満たさなくなった場合ということなんだろうと思うのであります。

 では、どこまで行けば満たさないのということを、ここで、例えばこういう状況になれば満たしませんということを、類型的といいますか、画一的といいますか、定型的といいますか、そういうふうに申し上げることは極めて難しかろうと思っています。

 しかし、それが、私どもがるる申し上げております、何をもって戦闘行為と判断をするか、それに該当するような場合、あるいは、危険というものは、装備、権限、能力と申しましたが、それを超える場合、それはある程度明確な判断が、あるいは、何というんでしょう、抑制的なといいますか、判断、それを顧みず行けという意味ではなくて、それをある程度は、そういうことにならないようにという抑制的な、そういう意味で言葉を使っておりますが、そういうような判断をなすことになるのかなという気が個人的にはいたしておるところでございます。

 いずれにしても、憲法に触れるようなことはしてはならない、そしてまた、自衛官の安全はきちんと確保する、それが私の考えでございます。

斉藤委員長 時間が参りました。

渡辺(周)委員 では、同僚の議員に譲りますが、とにかく、我々が懸念するのは、戦闘状態ではない、襲撃は受けたけれどもこれは戦闘状態ではないんだ、だからオペレーションを続行するんだというようなことでずるずるずるずるいってしまうのが一番悪い。ですから、そこについては今後議論を深めることにしまして、同僚の議員に譲りたいと思います。

斉藤委員長 次に、末松義規君。

末松委員 民主党の末松義規でございます。

 きょうは、官房長官がちょっと記者会見で今出られているということでございますので、官房長官に対しては副官房長官にお願いをしたいと思います。

 まず冒頭、私の外務省時代の同僚でもございました奥大使、それから井ノ上書記官に対して、哀悼の意を表させていただきます。

 その上で、先ほど外務大臣が、現地のティクリートですか、あそこで、今、渡辺議員の質問に対して、調査をするという中で、まだ大使館員が一人も行っていない、ただ、大使館員としては、現地に調査をしに行きたいんだという意向は持っていたというお話がございました。

 あの事件から二週間以上たっているわけですけれども、思うに、アメリカから、今度の事件の調査にはフルサポートをするよと、国務長官からもそういうお話が外務大臣にあったと思いますが、それであるならば、アメリカにフルサポートしてもらって現地に調査に行くということ、これが筋だと思うんですが、いかがですか。

川口国務大臣 これは犯罪の捜査でございますので、我が国としては、しかるべき我が国内のそういったところを担当するところとも御相談をしながら、ただいま進めております。

 それで、これは、そこの現場に行きたいという気持ちは大使館の人たちはもちろん持っているわけでございますけれども、そこで何を調べる、どういうことを見るかといったようなことについて、これは十分なその専門的な知識を持った人が行かなければいけないということでございまして、今、イラクの大使館にはそういう人たちは直接には今の時点ではいないということでございます。

 それで、車も今バグダッドに戻ってきておりますし、その写真もあるということで、一体どういう武器が使われたとか、いろいろなことがまだあるわけでございますけれども、そういうことにつきましては、十分に御相談をしながら今進めている、そういうことでございます。

末松委員 何か答弁が変わっていくんですよ。二次災害が起こるのがいけないから、だから大使館の関係者を行かせるべきでないというのが、あなたの先ほどの、ちょっと前の私の同僚議員に対する答弁だったんですよ。今あなたの方で、専門的知識がなければ調査ができないとおっしゃいましたよね。ならば、日本からその専門知識を持った方を呼ぶような努力はしているんですか、いないんですか。

川口国務大臣 私は矛盾したことを申し上げているわけではありませんで、あの夜、向こうの時間では夜でしたけれども、とにかくすぐにでも現場に行きたいということは大使館からあったということでございます。

 それについては、二次災害の危険があるということでとどめ、そして警備当局からも、あの日いろいろな事件があそこで起こっているわけでございまして、その後も引き続きそういう状況が続いているということで、二次災害を避けるべきであるということを我々は考えている。その人たちが引き続き、捜査のプロではなくても現場にとにかく行きたいという気持ちを持っているというのは当然のことでございまして、それについてはそういうことだということを先ほど申し上げたわけです。

 他方で、大使館として、調査、捜査ということについてはきちんとやらなければいけないという意味で、この道の専門家、これはイラク人ですけれども、言葉もできるイラク人の専門家を派遣して、そしていろいろな情報を取り集めたということでございます。

 そういった情報あるいは米軍から得た情報全部を、これはプロが行わなければいけない捜査でございますから、外務省の外交官、この道の素人がいろいろ、何か具体的に、犯罪について、これを聞けばこういうことがわかるというような知識を持っているわけでもないわけでして、そういったことは日本の捜査当局とも御相談をしながら今進めているということでございまして、何を今の時点でやることが捜査の進展のために役立つかということについては、これは御相談をしながら必要なことを外務省としてもやる、もちろんやるということでございますけれども、そのために今外務省の職員が行かなければ何かが解明されない、そういうことではないというふうに考えております。

末松委員 では、今あなたのおっしゃりたいのは、外務省の職員が現地に行く必要がない、それは専門家じゃないから。そこを最初に言っておけばよかったんですよ。

 つまり、二人が行ったんですよ、専門家として、イラク人、大使館の中で雇った人たちが行ったという話であるならば、あなたが今言ったように専門家が行ったならば、そして米軍との間の情報収集が行われているならば、そうしたら、二週間たっていて、それであれば、この事件、ある程度の概要がわかっていいはずじゃないですか。

 僕は、今、日本から何か専門家を連れていくような手配をとっているのかな、そう思って、それで調査をしている途中かと思ったら、もうその次の日ぐらいにはそういった方が行っているわけですから、そちらの概要が全くこの国会に報告されないというのはおかしいじゃないですか。

川口国務大臣 先ほど渡辺委員の御質問にお答えをして、わかっていることは既にお出しをしてありますということを申し上げたわけでして、それは、たまたま国会がそのときは開かれていなかったので、外務省の方針として、はっきりわかっていることは出していきますということでやらせていただいておりますので、今申し上げられるはっきりわかっていることというのは実は既に出ていることなので、それで、あえて繰り返しましょうかと申し上げましたら、要らないということでございましたので申し上げなかったというのが経緯でありますけれども。

 再度それについて申し上げますと、まず、十一月の二十九日の土曜日午前十時に出発をしたということであります。この目的は、国際機関、NGO復興支援会議への出席のためということです。

 それで、事件の発生現場、これはバグダッドとティクリートを結ぶ幹線道路で、ティクリートの南の約三十キロメートルの地点でございまして、いつ起こったかということについては、これは先ほども申しましたけれども、わかっていない。わかっていることは、最後に電話で上村臨時代理大使と奥参事官が連絡をとったのが午前十一時ごろよりも後の時点であったということですけれども、それ以降、いつそれが起こったかということについては特定をされていないということでございます。

 それから、どういう状況で殺されたかということについても、はっきりこれが答えであるということではありませんが、車両に残された弾痕が、これは新聞でも見ていただいたかと思いますけれども、車体の左側に集中をしているということですので、並走をする車から銃撃をされた可能性が高いということでございます。

 それで、襲撃者、これについては現時点では特定を、聞き込み等をいたしましたけれども、わかっていないということであります。

 それから、使用された武器、これについても今捜査中であって、現時点では特定をされていないということでございます。

 回収された車内に金品が残っていたということでして、今までの得られた各種の情報を総合的に勘案するとテロの可能性が高いというふうに考えておりますけれども、本当にそうかどうか、だれがやったかといったことについては特定をすることができない。

 それが今までわかったことでございます。

末松委員 事細かに言っていただきましたけれども、要は、日本人であることをねらって、そこでこの攻撃が行われたか否か、そこが一番重要なポイントなんですね。それが今度の自衛隊の派遣にもつながっていくということであります。

 最後に、渡辺議員から質問があったサマワの状況です。今、私も関連して、引き続き質問させていただきたいと思います。

 米軍の司令官が、防衛庁長官もよく御存じのように、今これは戦争状態であるというのを七月に司令官が言ったし、サンチェスさんの方も、インゲージメントがイラク・レベル、全土で行われている、ただ、九割近くはスンニの三角地帯だというようなことも言われているわけですが、こういった中で、やはり非常に危険である、さっき長官が言われたように、非戦闘地域だけれども危険であるという認識なのか、サマワは。あるいは、非戦闘地域で危険でない、そういう認識なのか。そこはどうお考えになりますか。

石破国務大臣 基本計画ではイラク南東部ということを記しておりまして、まだサマワという特定をいたしておるわけではございません。

 例えて言えば、サマワの今の現状をどう見るんだというお尋ねにお答えするとするならば、非戦闘地域であり、自衛隊が今後保有する、実際に赴くまでに保有する権限、能力、装備をもって危険が抑止され、危険が回避できる地域ということになります。

 非戦闘地域、これはもう委員よく御存じのとおりで、イラクは、ここは戦闘地域、非戦闘地域と分けるわけじゃなくて、自衛隊がやるところはすべからく非戦闘地域でなければいけないよ、これはもう一体化の議論、賛成か御反対かはともかくとして、そこから出てくる議論でございます。そういうことから考えれば、非戦闘地域である。

 そして、もちろん、今後も情報収集には万全を尽くしてまいりますし、いろいろな今起こっている事象も分析をいたしますが、その上で、装備、権限、能力をもってして危険が抑止され、回避し得る地域という判断をいたしておるところでございます。

末松委員 そうしたら、例えばサマワで浄水の施設をつくって、そしてそれに対していろいろな、防御能力を高めるために外堀をつくるとか、そういったことが行われるということは新聞報道でやられていますけれども、その地域にテロリストがというか、あるいはゲリラが乗り込んできて、そこでミサイル攻撃をしたとか、そういうふうな事件が起こった場合、このときは、この基本計画の中でも、法律に基づいて、非戦闘地域、つまり戦闘行為が行われていない、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域において実施されるということであれば、そういったゲリラ側とか、あるいはレジスタンス、あるいはテロ等、その認識の違いはあるにせよ、そこでミサイル攻撃とかあるいはロケット砲攻撃とか行われた、陣地に向かって、あるいはやっている地域に向かって行われた、あるいは事件が起こった場合には、それは戦闘地域という位置づけになるんですか。

石破国務大臣 必ずしもなるわけではございません。戦闘行為というのは、本当にこれを言うとおしかりを受けるほど何回も同じことを言いましたから恐縮ですが、国または国に準ずる組織ということですから、必ずしもそれが本当のテロリストであった場合にはそういう評価にはならないということでございます。

 ただ、そういうようなことが起こった場合、委員御指摘になりましたように、どちらにしても起こっている危険は一緒だよねという評価はあるのですね。そうしますと、戦闘地域であってはならない、非戦闘地域でなければならないということと、危険が回避できるだけの措置はとらねばならないというその後者の方がきいてくるのだというふうに思っています。非戦闘地域でなくなったという判断よりも、能力、権限、装備をもってして安全を確保することが難しくなったという判断によって、そこから一時、活動を休止するなり退避するなりという判断は当然あり得るものと考えております。

末松委員 さっき外務大臣が、テロリストであるかあるいは何であるか特定はできない、外交官が射殺されたときですね。こういったことはなかなか特定はされないんだろうと思うんですね。

 事件が起こった、あるいは撃ち合いが起こった、あるいは先ほど防衛庁長官言われたように、移動中に自衛隊員がそこで危険な目に遭った、あるいはねらわれて銃撃を受けた、そういったときに、国に準ずる者の攻撃かどうか、これがわからない。当然わからないわけですよ、そう簡単には。そういった場合に、そこでしばらくずっと活動を、それがわかるまで活動を続けるということですか。

石破国務大臣 これは、たしか前の国会でも委員と議論したような覚えがあるのですが、もしもしあなたは国または国に準ずる者ですかと聞いて、そうでございますなどということは絶対ないわけで、それはわからない、正直言って。

 ですから、ただ、決められておりますのは、我々が活動する地域は非戦闘地域でなきゃだめですよ、そして、それは活動を行う期間においてそのようなことが予測される地域であってもいけませんよ、こういうことになっているわけですよね。そうしますと、どちらかわからない場合、そして、能力をもってして回避できない場合というのは、やはり抑制的に動くことになるのではないかという判断だと私は思います。

 ですから、そうじゃない可能性があるのだ、だからそのままそこでやっていくということは、私は、法の趣旨からしてストレートに要求されていることではない、むしろ抑制的に事は考えるべきなのではないかと思っています。

末松委員 まさしくそこが防衛庁長官の職務であろうと思います。極めて判断が難しいところなんですね。ただし、自衛隊の隊員の安全をしっかりと守らなきゃいけない、一番そこの判断に立ってやるべきことですから、そういった場合には、やはり抑制的に考えて、活動休止あるいは撤退をするという位置づけにならざるを得ない、と私は思うんですね。

 そういったときに、そうしたら、日本の場合、イラク南東部という話の中でサマワという地域でそういう事件が起こった場合には、そこの防衛庁長官の判断をもって撤退という話になるならば、それはまた、今度はこの南東部の中でほかに安全であるような地域を選んで、またこの基本計画に定められた活動を行うという形になるんですか。それとも、一たんは日本に帰ってくるなり、撤退をして再準備を行うか、あるいは計画を変えるのか、その判断をすることになるんですか。

石破国務大臣 それは、基本計画に定められたのは、実施区域の範囲という、ややといいますか、広い範囲を指定しているわけですね。そうしますと、今度実施要項において定めます実施の区域というのは、相当に特定された地域になるわけです。

 そうすると、では、この地域でだめになった、しかし実施要項の中でほかにもあって、まだ決めていませんから、何とも仮定のお話で恐縮ですが、例えばA、B、C、D、E、F、G、そういうような地域を書いたとします、範囲よりもさらに絞り込んで。その中のAとBがそういうような状況になりました、そこでは活動を休止する、退避をする。では、そうするとCとDならどうなのだということであれば、実施要項の範囲内でそういうことを行う余地は当然あり得ることだと思っています。そういう場合にすべて日本へ帰ってきて判断を待つということにはならないと私は思います。

末松委員 それであれば、当然その地域にとどまってしばらく判断を待つということもあり得るということですね。今うなずいていらっしゃいますから、そうだろうと思いますが。

 では、もうちょっと聞きますけれども、例えば、サダム・フセインの残党が、日本をアメリカと同等に敵視をして、あるいはアルカーイダですか、そういった国際テロリストと結びついているという情報がございます。

 確かに、イラクの国民感情を見たら、私は非常に怖いと思うのは、例えば、スペインの情報機関の関係者七名、バグダッドの南で亡くなりましたけれども、そのときに、あれをねらって撃ち殺した人間は、あれは組織的な犯行だと思いますけれども、あの後、百人ぐらいの群衆が来て、それは自然発生的に、その地域の住民だろうと思いますけれども、そこでそのスペイン人の死体に対して足で踏みつけていた、そういったことが報道されております。そこは自然発生的にやはり起こったことですから、これはイラク人の、みんなとは申しませんけれども、非常にそういった反米あるいは反西欧感情ですか、そこから発している行為だと思うんですね。私は、あれを聞いたときに非常にショックだったんですけれども。

 だから、これは結局、ゲリラあるいはサダム・フセインの残党の人たち、あるいはスンニ派のサダム・フセインに近かった人が、ごくごく一部ではなくて、スンニ派のあの地域、トライアングルと言われるあの地域にやはり数百万ぐらい、サダム・フセイン政権あるいはバース党政権に同情心を持ったような、そういった人々も数百万の単位でイラクにいるという事実は、私はこれは重いと思うんですね。

 そういったときに、民族感情あるいは宗教感情ですね、つまり、米軍がイラクを解放しに来たと幾ら言っても、これはイスラム教をキリスト教徒がじゅうりんをしに来たととらえる方もかなりおられるし、またそういうことを言っている人もおるわけですよ。

 そういうことからして、例えばアルカーイダとか、東京をテロの、この事件に巻き込ませてやるんだというような、ああいった宣言が行われたり、あるいは世界の日本人のコミュニティーが襲われたりするということは、自衛隊の派遣をもって、日本人に対する脅威として大きくこれから出てくる可能性があるわけです。

 そういったときに、例えば不幸にも、これは起こっちゃいけないと思うし、口にするのは、軽々には言ってはいけませんけれども、もし可能性としてそういう事件が起こったとしても、今のこの法律でいけば、自衛隊の派遣をやめさせるというような法律の立て方にはなっていないし、そういう判断では防衛庁長官はやらないということになりますか。

石破国務大臣 そういうことがあったとして、やめるということにはなりません。

 まず、脅迫があった。自衛隊を出したならば、日本あるいは日本人の海外コミュニティーに対して攻撃を加えるぞという、どこから出たかよくわからない情報がある、あるいは宣言がある。だから自衛隊を出すのはやめるという判断は、私はあり得ないと思っています。あってはならないことだと思っています。

 それでは、実際にそういうことが起こったらどうなるのだ。これはもう本当に委員おっしゃるように、考えるべきではないし、考えたくもないことだけれども、考えなきゃどうにも議論は進みませんから、思考停止はろくなことじゃないと私は思っていますので申し上げますと、そういうことが仮に万々が一起こったといたしましょう。だとすれば、それがイラクにおける自衛隊の活動、すなわち人道支援であり安全確保支援でありということを休止することになるのだろうかといえば、私はそれを直接そういう事由にはならないと思っています。

 どういうふうに全体的な判断をするかですが、私は、やはりテロに屈しないということを軽々に使うことは委員のお嫌いになることだということはよく存じておりますけれども、おどかしを受けたからやめるんだということにはならない。全部の国がそんなことを言い始めたら、これは一体イラクはどうなっちゃうんだということなんだろうと思います。だから国連がやればいいのだという御議論なのかもしれません、一部にある御議論は。しかし国連は、安全が、治安が確保されない限り出ないのだということも他方あるのだと思います。

 では一体どうすればいいのだということを考えてみたときに、私どもとしては、自衛隊の安全というのを最大限確保しながら非戦闘地域において活動する、そのことの意味は私は大きいものと思いますし、法律の要件を満たしている限りはこれをやめるということには論理的にならない、私はそう考えます。

末松委員 そうすると、今テロに屈してはならないんだという位置づけがなされましたけれども、この発言、六十年前か七十年前、第二次大戦で中国に日本が進軍していくときに、これで居留民の保護、これを、安全を守るために多少危険があってもやるしかないんだという言い方に私は聞こえるんですが。

 官房副長官にお尋ねしたいんですが、テロに屈してはならないということであれば、そうすると、先ほど石破長官が言われたように、海外で日本人のコミュニティーが、あってはならないことですが、そういったテロ事件が起きた、そこで何名か何十名か犠牲者が出た。そこで、何らかの組織が、これは自衛隊の派遣ということをきちんと宣言で言って、だからそういった事件を起こしたんだといった場合であっても、これはテロに屈してはならないんだということで自衛隊の派遣を進める、こういう理解でいいですね。

細田内閣官房副長官 テロに屈してはならないということは犠牲者がどれだけ出ても既定方針どおりやるのかというような御趣旨の御質問でございますが、イラク人道復興支援特措法に基づきまして自衛隊を派遣する場合には、現地の治安情勢をよく見きわめて、かつ、必要な装備、部隊運用について十分検討をして、安全の確保に最大限の配慮をもって臨むことになるわけでございまして、活動中に万一戦闘行為が発生した場合に、防衛庁長官が実施区域を変更したり、現場の判断でその場所からの避難等の措置を行うこととしているわけでございますので、そういったことを、現場の状況を十分に判断しながら、防衛庁長官がお答えいたしましたように対応していくということだと思っております。

末松委員 ちょっと私の質問を聞いてから言ってくださいよ。ちゃんと聞いてくださいよ。イラクにおけるテロとかそういった事件は、それは今防衛庁長官が答えたわけですよ。私は、ほかの地域、日本国、例えば東京で地下鉄でテロがあったとか、あるいは南米で日本大使館が襲われたとか、そういったいろいろなことが起こって、そして、そういった犯行声明が自衛隊の派遣というものに言及してやられた場合であっても、そのときでもテロに屈してはいけないということで、それが内閣の判断だよねということを、それを聞いているわけですよ。あなたが言ったことは答弁をそのまま読んでいるだけじゃないですか。

細田内閣官房副長官 国内でテロ等が発生した場合……(末松委員「海外でも」と呼ぶ)あるいは海外で日本人を対象とするテロが行われた場合、どうかということですが、これは、やはり日本の諸行為に対してどういう因果関係があるのかということもはっきりするかどうかわかりませんし……(末松委員「言った場合と言っているじゃないですか」と呼ぶ)言った場合と申しましても、これはどういう因果関係があり、どういう主体でそういうことが起こっているのかは、十分判断しなければならないと思います。しかし、やはり政府としては総合的には判断していかなきゃならない、こう思っております。

末松委員 今、防衛庁長官が、確かに、その法律に基づいて言えばということであれば、その防衛庁長官の答弁はそれなりの答弁なんですね。だから私は、本音を言わせてもらえば、私の個人の本音ですよ。イラクのサダム・フセインを倒す、これは、アメリカが、国連の合意、完全な合意を得ずとも単独でも踏み切ってやったということ、先制攻撃をやったということ。大量破壊兵器、まだ出てきていませんけれども、それについても、それも、証拠も示せずに単独で攻撃をしていった。この強引さに対して、非常に私自身、違和感を覚えるんです。

 日本政府も、そこまで本当に突っ込んでやっていくということに対して、私たちの憲法でも、国際紛争を解決する手段として武力行使をしないというのがこの国の基本でありますから、そこを、アメリカであればそれがやれて、アメリカの憲法だからそれはやれるということで、日本がそのまま従っていくということに、私は本来考えにくい話であります。

 もし日本が本当にイラクのサダム・フセインを武力でつぶしていくんだということであれば、テロのこの行為に屈してはならない、それは非常に説得力を持つんですけれども、私は、これも何回も議論されたことですけれども、アメリカとのつき合い、あるいはアメリカとの日米同盟、これの関係で、イラク戦争に対する小泉総理の支持発言があったり、それから自衛隊を派遣したりするということが本音だというふうに私は見ていますから。

 そういった中で、犠牲者が、例えば数人か数十人か、そういうふうに大変な数にもし上るようなことがあった場合には、これはバランスをきちんと見ながら、本当に今細田副長官が言われたように、やはり総合的に判断していくというのが、それが正しいんじゃないかと私は思うんです、これは政府の立場に立った場合ですよ、私たち民主党はそれに反対していますけれども。防衛庁長官は、そのときは当然、総理の判断、内閣としての判断を尊重するということ、当たり前のことですけれども、そういうお考えになりますよねというのを確認しておきたいと思います。

石破国務大臣 総理の御判断がそういう判断であるとするならば、それに従うことは当然のことであります。

 ただ、先生、本当に時間をまたいただくことがあれば議論させていただきたいのですが、一つは、それによって、総合的な判断と副長官がお答えになったとおりのことなのですが、そうすると、あちらで海外コミュニティーにテロ、こちらに海外コミュニティーにテロということをやればみんな引くのだということになりますとこれは一体何が起こるんだろうかということは、我々、考えなきゃいけないことだと思っております。

 したがって、我々として、そんなことがあったらやめますというようなことは間違っても申し上げるわけにはいかない。やはりそれは法律の要件を満たさなくなったときにというのが基本線であって、そのようなテロの攻撃があった場合には、我々は、もちろん総合的な判断として総理の御判断があればそれに従うのは当然のことでございますが、私は、それに屈しちゃうと本当にテロリストの思うままという世の中が来てしまうのだろう、そうならないためにどうするのだということをあわせて提示しなければいけないことなのだと思っています。

 もう一つは、おつき合いというお話をなさいました。おつき合いというお話をなさいました。これは、日本が冒険をしようとかそういうことを申し上げているわけではなくて、世界三十七カ国が国連の要請に従って軍隊を出しているということをどのように考えるべきなのかということでございます。それをもって冒険と称されれば、それも一つの見方なのでありましょう。

 しかし、これは委員よく御案内のことですが、おつき合いなんぞというつもりで自衛隊を出すという考えは、私どもには毛頭ございません。それは、日本国の国益というものをどのように考えるか。安全保障に置かれた状況、日本は、ロシアともドイツともフランスとも中国とも当然違うわけでございます。日本国の国益ということを考えて、先ほど来委員が御指摘いただいているように、自衛官の命がかかっている話です、そのときに、おつき合いというようなことで私どもは考えているつもりはございません。

 仮に委員がそのようなことをお考えになるということがあれば、どうぞ足らざる点を御指摘いただきたいと思っております。

末松委員 私、日米同盟という私の言葉でそういった言葉になったわけでありますが、別にそんなに軽く考えているわけじゃないんですよ。

 では、あなたの言葉によれば、結局もしテロに屈するという話になったら、ではイラクはどうなるんだ、それはいい教訓を生まない、だから最後までやっていくんだ、つまり自衛隊をずっとイラクに派遣をしていくんだという話でございました。ここ自体、本当に私はそこで、総合的な判断じゃなくて、防衛庁長官の論理でいけば、そこはやめられない、派遣をずっとせざるを得ない、し続けるということなんですよね。これがどうも私は、私ども民主党の立場からいけば、非常な危険を生んでいくんじゃないかと思うわけですよ。

 例えば、私ども民主党は、イラクに派遣された自衛官、これはやはり危険だということはみんな承知しているわけですよ。それはもう当然、あなたが防衛庁を預かっているんだから、まさしくそうだと思う。でも、それを少しでも危険を回避したい、それがために民主党は、国連というものを頭にかぶせて、そしてアメリカの、あるいは米英の統治ということであれば当然イラク人の反発も受けるし宗教的な感情も害していくから、だから、それがもっと国連という形になれば中立性が増すから、それであれば派遣される日本人も危険度が少なくなる、あるいは、イラクの国民政府ができて自治をやっていけばより反発が少なくなる。

 それでも、アメリカ軍がずっと駐留をしていくという話になったら、当然またそれに反発する勢力から、いろいろなテロを含めたゲリラ戦とかの事件が起きてくるわけですよ。それをアメリカ軍が逆に、こんなに治安が悪いから、では自分たちがイラクにずっと残らなきゃいけないじゃないかという議論をするんであれば、それも私はおかしいと思うわけです。

 ですから、申し上げたいのは、テロに屈してはならない、そこだけにこだわっていくと、日本人の犠牲、自衛隊の方は武装しているからいいですよ。むしろ武装していない、あるいは世界の日本人のコミュニティー、これに対しては非常にもっと、日本人のいろいろな世界に散らばっている、あるいは東京も含めて国内、そういった人に対してテロの危険があるということ、これはおどしだけじゃないということをもっと認識してもらいたいと思います。

 その関連でもう一つ聞きますけれども、イラク南東部に派遣される人に自衛隊じゃない人、いますよね。民間人、専門家。これが十名前後いるという話を聞いたんですけれども、これらの人々に対しては、どう安全対策をとっているんですか。

福田国務大臣 イラク南東部ですか。私は今そういう話は聞いていないんですけれども、いずれにしても、文民が行くということになれば、安全ということは大事なことです。自衛隊は自衛隊のできる範囲の、自己防衛とか、そういうことができますけれども、文民にはできません。ですから、その安全対策というものは十分考えなければいけないと思います。

末松委員 そうしたら、学校の補修とか病院の補修とか、あるいは水の管理とか、そういったことについて民間人は一切行かないということなんですか。だれもいないんですか。何か、何名か、あるいは専門家が行くという話を私は聞いていたんですけれども、そこはないんですね。それを確認させていただきたいと思うんです。

福田国務大臣 そういう活動について、それは将来的にあり得るというようには思っております。しかし、今の段階において、まだ自衛隊も行っていない、そういう状況において派遣をしていくということは考えておりません、今の段階で。

末松委員 では、ちょっとそれはないということですね。もう一回確認します。いいですか。今度一月とか二月に行かれるときにはそれはないということでいいんですね。ちょっと確認だけしてください。

福田国務大臣 今後の状況ということもあります。急速に事態が変わって治安がよくなっちゃったということがあれば、それは派遣することはできますけれども、現状において、今派遣するという具体的な考えはございません。

末松委員 確かに、今度サダム・フセインが捕まって、そこは私も非常にうれしい思いがして、これでそういった真相がわかって、まあやっていけばいいと思いますけれども、ただ、非常に危険なのは、やはり宗教的な原理主義者とかイラクのサダム・フセインの残党の人なんかは、サダム・フセインの管理下に入ってああいった事件を起こしていただけではないというような情報もありますから、今後さらに、さまざまな事件が起こる危険性があると思うので、その意味で、万全を期していく、邦人を含めた安全対策、そこは万全を期していくということでいいですね。

福田国務大臣 はい、おっしゃるとおりでございます。

末松委員 一つ聞きたいんですけれども、米軍がいる中で、イラクに自治政府ができるという話がありますけれども、これはどうなんですか。中立的な自治政府ができるというようなことを、ちょっと私はどうも考えにくいんですけれども、米軍に対してあるいは米国に対して、日本政府は、もっと国連の関与を増大させて米軍の存在をもう少し少なくしろというような、そういった働きかけを行っていることはございますか。全くありませんか。

川口国務大臣 国連への働きかけは、武力行使が行われる前から、国連の関与を持った形でということが重要であるということは、もう再三再四働きかけております。

 ごく最近の時点では、私は、アナン事務総長と話をしまして、国連の関与の重要性についてお話をさせていただきましたし、近々中山先生が特使として行かれるということもそういうことでございます。

 そういう働きかけを行って、国際社会全体として協調して行っていくということはイラクの復興には非常に重要であるということは言をまたないわけですが、国連の関与というときに、国連が本来、そもそも何をすべきであるかということと、それから現実の問題として今何ができるかという両方の側面を現実的に考えていかなければいけないというふうに考えております。

 国連が今後、考え方としてどのように関与をしていくかということについては、この間、事務総長が報告書の中でおっしゃっていらっしゃいますし、私がお電話で話をしたときも私にお伝えになられました。

 それで、そういった考え方に基づいて、今まさに国連のイラクへの、一時期、デメロさんが殺された後落ちていた活動のレベルが上がっていきつつある、その端緒にあるわけでして、我が国としては引き続きそういった国連の活動を慫慂しながら、我が国としてもできる協力をしていきたい、そういう考えでおります。

末松委員 時間がなくなりましたので最後の質問ですけれども、今、イラクの復興ビジネスで、アメリカ大統領が、これはもうアメリカ優先である、そこで血を流していない国、あるいはアメリカと共同歩調をとっていない国の企業は、これは排除されるべきだというように言ったとの報道がございますけれども、日本政府はそれに対してどういうふうな立場ですか。

川口国務大臣 これにつきましては、委員がおっしゃったようなことを、アメリカがウォルフォビッツ国防副長官名の文書において発表したということがございます。それで、さらにこれに関してホワイトハウスからは、この措置というのは、米国の納税者が支払っている百八十六億ドルのイラク復興事業分に限定をされるものであって、対象外とされる国については下請の形で受注は可能であるということの説明をしているというふうに聞いております。

 いずれにしても、これが国際ルールとの関係で、例えばWTOとかそういったルールとの関係で、何か問題があることになるのかどうかということは、具体的なその事実の関係についてもう少し情報がわからないと、これがそういうことの観点から問題になることなのかどうか、政府調達であるとしたらば政府調達として、これはかなりルールは限定的でございますので、それに反することになるのかどうか、いろいろなことがわからない状況であって、まず、中身についてどういうことなのかということの究明、これが大事であるというふうに考えています。

末松委員 この辺、何かアメリカがますます自分の独占的な利益というような感じで、占領行政をさらに拡大していくというようなことがまたテロを呼んで、大変なことにならないか。この辺を、もし何かまたいろいろな事件が起こった場合に、日本人が関与していた場合には、当然、政府の政治責任、これが問われることになることを改めて指摘をさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、基本計画の内容について、一つ一つ私の疑問を聞いていきたいというぐあいに思います。

 それで、最初に、基本計画の中では飛行場名が挙げられております。クウェート国内の飛行場はもとより、バスラの飛行場、バグダッドの飛行場、バラド、それからモスルの飛行場などでありますが、こういう地域というのは非戦闘地域ということで設定をするのでしょうか。

石破国務大臣 基本的にそのような考え方に基づいておるわけでございますが、実施要項の中で実施区域を限定いたしますときに、自衛隊は非戦闘地域でなければ活動してはいけない、そこできちんと担保をすることに相なります。

赤嶺委員 想定をしているということであるわけですね。

 それで、あと一点、基本計画の中で、自衛隊の情報収集だとかあるいは連絡調整を行う者、これがあります。バグダッドの連合軍司令部施設やイラクの国境周辺国あるいは湾岸諸国あるいは南東部あるいは空港間、これらの連絡調整を行うということになっているわけですが、連絡調整を行う者は、バグダッドのこの連合軍司令部施設から例えばアンマンへ、例えば南東部へ、サマワへ、あるいは飛行場の間を移動するということになるわけですけれども、そうすると、その間の道路、これも非戦闘地域というぐあいに設定するのでしょうか。

石破国務大臣 自衛隊が活動いたします区域は非戦闘地域に限るということでございます。

赤嶺委員 では、この区域で自衛隊が活動をするということは基本計画で明確なんですが、非戦闘地域として想定しているということですね。

石破国務大臣 何度も同じことをお答えして恐縮ですが、イラクを、ここは非戦闘地域、ここは戦闘地域として二分するというのはこの法律の考え方ではございません。自衛隊が活動する地域というのは非戦闘地域でなければいけない、そして、それは実施要項の中で実施区域というものをきちんと定めることによってさらに明確に規定されるということでございます。

赤嶺委員 そうなると、連絡調整を行う者の活動というのは、バグダッド空港の近くの連合軍司令部施設から例えばCPAに、例えば日本大使館に、こういう活動の区域になっていくわけですよね。そうなってくると、当然、バグダッドの市内も非戦闘地域というような設定をするのかどうか、いかがですか。

石破国務大臣 現在、実施要項の策定中でございまして、今、この地域はどうだ、この地域はどうだということについて、正確なお答えはいたしかねます。

赤嶺委員 ですから、実施要項の中に入れる、そういう範囲としてこれらの場所が出ているわけですけれども、非戦闘地域に指定するということは、当然想定しているからこういう場所が出ているということになるわけですね。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

石破国務大臣 それは、全く可能性としてないものを基本計画に書くような合理性は認められないということです。

赤嶺委員 今、いろいろ聞いてきて、四つの飛行場あるいは連絡調整に当たる者の活動の区域、これは、南東部、サマワの非戦闘地域であるかどうかという議論の前に、かなり広範囲なものが基本計画に書かれているなというようなことを認識することができました。

 それで、今まで、非戦闘地域については御承知のような定義を行ってきたわけです。現に戦闘が行われておらず、これからも活動のすべての期間を通じて戦闘が行われないと認められる地域ということになっているわけですけれども、我々の認識からして、バグダッド飛行場だとかバグダッドだとかあるいはモスルだとか、いろいろな事件がこれまで起こっているわけですね。

 四つの飛行場についても、例えばモスルの飛行場については、挙げられるだけで私たちは三件、それからバラドの飛行場についても三件、バグダッドの飛行場については、ミサイル攻撃を受けた、あるいはミサイルに被弾したというのが四回、数えられるだけで起こっております。あるいはバスラについてもいろいろ事件が起こっているわけですけれども、基本計画の中では想定している。そうすると、そういう地域というのはいわばどういう状況になったときに、あるいはどういう条件があるときに非戦闘地域になることを想定しているんですか。

石破国務大臣 それは、まさしく今委員が条文をお引きになったとおりでございまして、現に戦闘が行われておらず、また、活動する期間を通じて戦闘が行われることが予測されないということが明らかといいますか、そういうふうに認められるようになった場合にそうなるということでございます。

赤嶺委員 そういう場合というのは、これ、一番国民が知りたいところですよ。バグダッド飛行場ではミサイル攻撃が何度も繰り返されている、被弾もしている。そういう中にあって、何でこれが非戦闘地域といういわば想定がされるのか。一体どんな状況になればというところが一番具体的に知りたいところですよ、国民が。基本計画に書かれているわけですから。ですから、もっと具体的に。それは引き続き戦闘が行われない地域になったときなんて、こういうのは何にもわからないですよ。一体どういう状況になったときに非戦闘地域に設定することを想定しているんですか。

石破国務大臣 ですから、先ほど条文をそのまま、先生がおっしゃったとおりに申し上げたわけでございます。戦闘行為とは何かということを、もうここであえて繰り返しませんが、国または国に準ずる組織による云々かんぬんということがございます。

 そしてまた、国または国に準ずる組織による国際紛争を解決する手段としての組織的、計画的な武力の行使というふうに申し上げるとするならば、二つ要件があるわけですよね、三つと言ってもいいか。国または国に準ずる組織、そしてまた、組織的、計画的な武力の行使、こう二つあるわけでございます。

 そういたしますと、国または国に準ずる組織であるかどうかはわからない。もしもし、あなたは国または国に準ずる組織ですかということを聞くわけにもいかない。だとするならば、それが攻撃があるのかどうなのかという点に着目をした場合に、今委員御指摘のように、確かにロケット弾あるいはミサイル弾、そういうものによる飛行機への、航空機への攻撃というのはある。しかし、それが相当に頻度が落ちてきた、あるいは、いろいろな対策を講ずることによって攻撃というものが極端に減ったということになるとするならば、それも非戦闘地域というふうに考える要素となり得る。私は、論理的にはそういうことだと思っています。

赤嶺委員 今は、基本計画をつくり、そして実施要項をつくり、地域を指定して自衛隊を派遣する、こういう段階になってきているわけですね。

 そうすると、国民はみんな、常識的に考えて、バグダッドで起こっているミサイル攻撃、航空機への攻撃、被爆、これについて、当然日本政府は独自の調査もやっているだろう、アメリカの情報も得ているだろう、イラクからも情報を得ているかもしれない。そういうものを総合的に勘案してこれこれこういう、今はこういう事件が起こっているけれども、将来については非戦闘地域になり得ることが想定できる根拠がここにあるんだということを僕ははっきり示すべき時期だと思うんですよね。

 これを一向に知らせないで、一向に国民には理解させないで事を進めようとしている。こういうことについて本当に納得のいかないものを持っています。

 それで、サマワあるいは南東部ということなんですけれども、十一月のイラク専門調査チームの報告を読みますと、調査概要を読みますと、こう書かれています。イラク南東部、連合軍に好意的で比較的安定した地域もあるが、襲撃等の可能性は存在していると。南東部でも襲撃等の可能性は存在をしている、このように書かれているわけです。政府の調査概要を読んでみても、結局、この戦闘行為が行われることがないと認められる地域からはほど遠いんじゃないかと思いますけれども、この点はいかがですか。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

石破国務大臣 恐縮ですが、専門調査団の報告書と政府調査団の報告書と違うわけでございまして、委員が後段におっしゃいました政府調査団の報告書からは、そういうような地域からはほど遠いというふうな御指摘ですが、それはどの箇所を指しておっしゃっておられるのか、御教示をいただければと存じます。

 専門調査団の報告では、襲撃の可能性は否定できないというニュアンスのことを書いておろうかと思います。それは、国または国に準ずる者であるのか、あるいは泥棒という意味での野盗のたぐいであるのか、あるいはそれ以外の者であるのか。いずれにしても、そのような者の襲撃の可能性は否定できない、それは事実を事実として書いたものと認識をいたしております。

赤嶺委員 そうすると、襲撃の可能性はあるけれども、否定できないけれども、そこが必ずしも、戦闘地域になるというような政府が考えている概念、これがそろっているわけではない、こういうことですね。皆さんが言う国または国に準ずる者であるかどうかわからない、ただ、襲撃の可能性は否定できないということは認められるわけですね。これは専門調査団の報告の中にも書いております。

 それで、さらに、この専門調査チームの調査概要でこのように言っていますね。「フセイン政権残党は南東部に浸透しようとしているとの見方もある。」、こういう書き方をしております。こういうところでも非戦闘地域になるんですか。

石破国務大臣 それは、相手が何者であるかということはわからない、少なくとも、南東部において、国または国に準ずる組織による組織的、計画的な武力の行使、すなわち、我々が言うがところの戦闘行為というふうな評価が行われるような、そのようなことが確認できたとは報告書は書いていないわけです。

 そこはすりかえないでいただきたいのですけれども、襲撃の可能性はあるというふうには書きました。しかし、それが、委員が後段におっしゃいましたような、国または国に準ずる組織による組織的、計画的な武力の行使の可能性があると書いたわけではございません。

 そして、では、今起こっておる事象はどうなのだということを考えてみましたときに、フセインの残党といいましても、フセインの取り巻きで非常にいい暮らしをしていた、それが、本当にイラク人によるイラク人のための政府が樹立をされた場合に自分たちも裁判にかかってしまうのは嫌なので、それで、あちらでアメリカ十人、こちらでイギリス五人というふうにやってしまって、米国あるいはイギリスの勢力を追い払おうというふうに思ってやったとするならば、それは、フセインの残党であったとしても、国または国に準ずる組織という評価にはならないものと考えております。

 それが、前の国会のときにお家再興というような言葉を使いましたが、それはイラクの主権政府を新たに打ち立てる、すなわち、今国際社会の多くが望んでおりますように、国連が言っておりますように、今の占領というものを早く終わって、イラク人によるイラク人の政府を早くつくろう、これは国連の決議でもあり、国際社会の意思でもあるわけです。それに反対して、そのようなものとは違う主権政府を打ち立てようということであるならば、それはフセインの残党であり、国または国に準ずる者になる可能性がある。そのことは否定をいたしません。しかし、今起こっている事象がそのような評価になるのかといえば、私はそうではないだろうと思っているわけでございます。

赤嶺委員 前、防衛庁長官はフセインの残党という中で、お家再興というような話も出ておりますけれども、今現在、フセイン政権の復活を目指した者だけがフセイン残党として国または国に準ずる者になるのであって、例えばフセインの残存勢力が米英の占領支配に反発をして攻撃している、これらについては、国または国に準ずる者には入らないんだ、防衛庁長官の仕分けによると入らないんだということでいいんですか。

石破国務大臣 それは学術分類事典ではございませんから、これがどうこうというふうにきちんと申し上げることを私が責めとしているわけではございませんが、繰り返しになって恐縮ですが、今起こっていることの中で、イラクのサダム・フセイン政権のもとで栄耀栄華をきわめ、民衆を圧迫し、そういうような人たちが、本当に民主的な政府が打ち立てられたときには戦争犯罪人あるいは民衆に対する犯罪人として裁かれるぐらいであるならば、あちらでテロを働き、こちらでテロを働きということであったとすると、それは、フセインの残党であれ何であれ、国家主権を取り戻すという意味においての評価は、私は明らかに異なるのだろうと思っています。

 それは、おなかがすいたということで日々の糧を得るためにという議論も前の国会でいたしましたが、日々の糧を得るためにということと、それは本質的には相違があるものだと私は思いません。

赤嶺委員 私は、おなかがすいたものとは言っていないんですよ。フセイン政権の復興というんじゃなくて、いわゆる米英の占領支配に反発した人たちが、それにフセイン残党として抵抗している。これは国または国に準ずる者には入らないかどうかを聞いたんです。

 そこで、もう一つ一緒に聞きますけれども、オランダ国防省は、最近、ムサンナ県でのテロリストなどの潜伏状況を議会に報告しているわけですね。これは、旧フセイン政権時代の共和国防衛隊員やその同調者などが最大一万人規模で潜んでいる、最大一万人規模で潜む可能性を示しているということで、オランダの国防省はオランダの議会に報告しているんですが、その報告について政府は情報を得ておられたのか、そして、情報を得ているのであれば、それについての政府の考え方も示してください。

川口国務大臣 政府の考え方については、後で官房長官なり防衛庁長官からお話があると思いますが、オランダ政府が議会に報告をしたものということについては、情報の把握はいたしております。(赤嶺委員「いたして何ですか。最後、語尾が聞こえなかった」と呼ぶ)把握をいたしておりますと申しました。

 それで、その内容によりますと、これは連合軍及び復興プロセスに従事している組織に対する攻撃の推計約九五%がイラク中央部及び北部で発生をしている。残りの五%についても、バスラ県及びマイサン県での事案が多く、ディカール県及びムサンナ県では、それに比べて少ない。さらに、南東部の事件発生件数全体の七五%がバスラ州で発生し、残りの二五%は主にイラン国境のマイサン県での発生となっているということが報告の概要でございます。

斉藤委員長 時間が参っております。

赤嶺委員 もう時間が来ていますので、まとめますけれども、今の質問を通して私が感じたのは、非常にイラクの国土の範囲が広く非戦闘地域として想定されようとしている。それから、国または国に準ずる者という規定においても非常に弾力性を持ってきたなというような感じがいたしました。これでは、皆さんが言う憲法九条、これさえも担保できないということを申し上げて、私の質問を終わります。

斉藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 政府参考人として法務省入国管理局長増田暢也君及び国土交通省政策統括官矢部哲君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑を続行いたします。久間章生君。

久間委員 どうもしばらくぶりでございます。

 イラクが米軍によって解放されましてから大分時間がたったわけであります。国際社会では、やはり一日も早いイラクの復興あるいはまたイラクの人道支援ということで叫ばれておるわけでございますけれども、我が国でも支援の基金として十五億ドルの支出は決められましたけれども、民間の会社がかつて建設した電力とか、あるいはまた病院とか、そういうものの復興に行こうと思っても、現地の状況がなかなかそれを許さないということで、民間でもそれをやることができない。政府もまた、民間人を、あるいはまた政府職員としてやろうと思っていますけれども、なかなかできないということで今日まで来たわけであります。

 しかしながら、その間、総理としては、国際社会の一員としてやはり各国並みに日本もやらなきゃならないという思いに日夜非常に焦られたことだと思います。そういう中で、どうしても、やはり今の時点で行くとなれば自衛隊しかないということで、大変重い決断でやられましたけれども、先般閣議決定をされたわけでありまして、この間の総理が非常に、慎重の上にも慎重ということで熟慮されたことにつきましては私どももよくわかるわけであります。

 ただ、最近の世論調査あるいはまたいろいろな支持率等を見てみますと、必ずしも総理のそういった苦労が伝わっていないんじゃないかなと思われるような点がございまして、やはりこういう委員会の場でもう少し、国民に向かって、どういうわけでこういうことになったのかということを御説明していただきたい、そういう思いも込めて実は御質問をさせていただきます。

 今回、よく世間で言われるのは、自衛隊がイラクの戦争のために行くかのような、そういう誤解を結構持っておられる人が多いんですね。まさか今ごろになってと思いますけれども、いや、イラクに行って自衛隊は戦うんですか、そういうことをいとも簡単に言われる。ということは、やはり、今度の政府が決定した自衛隊の派遣というのが、また、私たちがこの国会で通した法律というのが、あのアメリカが行った戦争の延長線だというような、そういう認識を持っておられるんじゃないか。

 それは何でだろうかということを考えますと、一つには、周辺事態法をつくりましたときに、あれは、我が国の周辺で我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合に米軍と一緒になって行動する、あるいはそれを支援する、そういう法律でした。その次に、テロ特措法で、あのアフガンを米国が攻撃したときに、もしあのようなテロが続けて起こるならば日本としては対応できないじゃないか、この際テロを根絶したいというアメリカの意図でアメリカはあのときに攻撃をしかけたわけでありますけれども、それに対しては、日本もそれは応援すべきであるということで、海上自衛隊でございましたけれども、アメリカのアフガンに対する、タリバンあるいはアルカイダに対する攻撃を支援する形で行ったわけですね。それは、そこまではみんなも認めたわけですけれども、続いて行われる今度のイラクについては、アメリカ軍が行った戦争を支援するための我が国の自衛隊の派遣でないにもかかわらず、その延長線でとらえてしまっているものですから、米国を応援するための法律であるかのような錯覚をみんなが持ったんじゃないかと。

 ところが、今度のものはそうではなくて、戦争は必ずしも、賛成の人も反対の人も、いろいろな意見が国内にあったと思いますけれども、戦争が終わって、疲弊したイラクの国民をどうやって復興させるか、人道支援するか、そういうことについて国連が決議をして、日本も世界各国と同じようにお願いしますよと言ってきたときに、我が国としてもそれはやろうという形で今度の法律をつくった。それぞれの、周辺事態法あるいはテロ特措法、イラク支援法というのは全く内容が違っていて、特に今度の場合は、復興あるいは人道支援、そこに非常に主眼を置いてつくられた法律である、そういう認識が、今までの延長線の中でさっと見ているものですから、さもなくて、アメリカから言われたから日本も出ていくんだ、アメリカの応援のために出ていくんだというような、そういう短絡なとらえ方をみんながしているんじゃないかなと思うわけです。

 だから、この際、そうじゃなくて、今度のものは、明らかに国連の決議に基づいて、それを受けてつくられた法律で、それを受けて日本としても国際社会の、国連の一員として相応の活動をしたい、しかしながら民間ではやれない、あるいは政府職員だけでもやれない、だから自衛隊に行ってもらうことにしたんだ、私たちはそう思っておるんですけれども、総理においてもそのようなお考えかどうか、ひとつお聞かせを願いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 法案の成立過程から十分審議を重ねて理解されている久間さんですから、この法律の趣旨はだれよりも理解されていると思います。

 私どもも、今回の、自衛隊をイラクに派遣するという点につきましても、まずイラク人が希望を持ってみずからの国を立ち上げる、そのための復興支援、人道支援、何ができるかということを考えて、資金的支援のみならず人的支援もするべきだということから、自衛隊派遣を決定したわけであります。その際に、誤解をされている点については、自衛隊が戦争に行くんだということをよく言われておりますが、自衛隊は戦闘行為に参加するわけじゃないし、武力行使もしない。

 そして、日本が国際社会の中で責任ある一員としての役割は何かということを考えると、このイラクの状況、大変困難な状況にある、この中でアメリカ、イギリス初め多くの国々が、できるだけ早くイラク人の政府をつくるように今努力されている。そういう中で、日本としては、民間の方に行っていただくという状況でもない、あるいは外交官の方も過日殺害されるような不安な状況もある、やはり、自分の安全というものを自分たちの組織の中で守りながら役割を果たすという場合には自衛隊の諸君に行ってもらうのがいいだろうと。

 自己完結能力といいますか、自衛隊だったらば、どのような危険があるかということを事前に調査をすることもできる、また回避するすべも持っている、防止する装備も持っていける、そういう中でイラク人の復興支援に当たる活動もできるという観点から、私は、この際、人的支援というのだったらば、多くの国が今汗をかいている、犠牲を払いながら、イラクに民主的な安定的な政権をつくってもらうためには、それぞれの国の事情はあるけれども、国力に応じて貢献すべきだという、国連の決議でも加盟国に支援を要請しているわけであります。

 そういう中にあって、日本としては、やはりこの際人的な支援も必要だろうということで、自衛隊には復興人道支援のために行ってもらうのであって、決して戦争に行くのではないということを何度も言っているんですが、これは、そもそも自衛隊をイラクに派遣すること自体反対だという方々がたくさんいますから、なかなか御理解いただけるのは難しいんですが、その点は、機会を活用いたしまして、丁寧に理解を求めるような説明をしていかなきゃならないと思っております。

久間委員 私の周りでも、かつてのイラクで発電所をつくったり、あるいはまた病院建設をしたり、そういう会社が結構あります。そういう社長さんあるいはまた会社の人に、あなたのところも、もう戦争が終わったんだから、病院も古くなってもおるし、そういうのに建設に行ったらどうですか、あるいは発電所についても、自分のところで昔つくったんだからメンテナンスを兼ねて行ったらどうですかと言いますと、今みたいな状態で行くと、向こうに行って、まず宿泊地をどうするか、食糧をどうするか、水をどうするか、また運搬手段、要するに内部で動き回る手段をどうするか、そういうことを考えると、なかなか民間会社としてはやりたいけれどもやれないんですよという話でございます。

 そういう点は、やはり自衛隊の場合だったら、みずから宿営地もつくれるし、水も食糧も確保できるし、また運搬手段としての車両もみずから持っている。やはりここは自衛隊が活動する以外に今の時点ではやむを得ないんじゃないかな、そういうふうに思っておりましたので、今総理がおっしゃられるように、まさに時宜に適した決定だったんだろうと思います。

 ただ、そのときに、非常に治安状態が悪い、戦闘地域になっているんじゃないか、アメリカの司令官はイラクは全体が戦闘地域なんだというふうなことを言っているというふうなことで、盛んにそういう心配をして言われる方もいらっしゃいます。米軍の司令官の場合は、これはまたほかの人とちょっと違いまして、客観的というよりも主観的な要素、やはり占領を続けているわけですから、戦闘地域でなかったら引き揚げろという話にもなるわけですから、その辺は割り引くにしても、かなりやはり危険な状態であることは間違いないと思うんです。

 幸いにして、きのうフセイン元大統領が身柄を拘束されたということで、これによって若干またこれから先変わってくるということが期待されまして、そういう点では非常によかったと思いますけれども、しかし、これとても、そうなったから本当に安全と言い切るにはまだまだいろいろな要素があるんじゃないか、ちょっと心配じゃないかと思うわけなんです。その辺の認識については、また総理から機会があったら答弁していただいて結構ですけれども、私は、フセイン元大統領が身柄を拘束されたからといって、そう簡単にはいかないんじゃないかと。

 というのは、あのテロを行っている連中が果たしてイラクの残党と言い切れるのか、海外から、国外から入り込んでいるそういう組織もあるんじゃないかなというふうに思っておりますだけに、ここしばらくはやはりこういう危険な状態は続くんじゃないかと思いますので、そういう意味で、自衛隊の派遣はやむを得なかったと。

 そうしますと、自衛隊をそういう危ないところに出していいのかというようなことを盛んに言われる方がいらっしゃいます。そして、それについては、わざわざテレビ局なんか、私の周りでもそうですけれども、自衛隊の家族のところまで行って、御主人が行かれるのは心配でしょう、不安でしょうとマイクを突きつけるわけですね。それはだれだって不安ですよ。しかし、外務省の職員の奥さんにしてもこの間の井ノ上さんにしても、そういう危険も顧みず、外務省の職員としてやはり行くべしだ、日本の国家のためにここは行かなきゃならない、そういう仕事を与えられた場合には敢然と行っているわけでありますから、本人さんたちはどうかというと、自衛隊に、今度行かれる人たちのみんなの話を聞いてみても、もう手を挙げて、私は行きますということで、りりしく、みんな希望を述べて、志願というわけじゃございませんけれども、行きますということを決意して言っておられるわけですから、家族の人に一々突きつけること自体が非常におかしな話だ、私はそういうふうに思いますが、いずれにしましても、そういう形で自衛隊が出ていくことになってきたわけです。

 そこで、一つは、戦闘地域と非戦闘地域というのが盛んに議論されております。私は、この法律をつくりましたときから、戦闘地域という言葉がまだなれていない点があるからどうかなという気はしておりましたけれども、わかりやすく言いますと、戦争状態にあるところとそうでないところ、そういうふうにわかりやすく割り切った方がいいと思うんです。そうすると、イラクの中で今度自衛隊が行く南の地域がそういう戦争状態になっているかというと、テロは確かにあるかもしれません、あるいはバグダッドの空港の中も、テロがないとは言いませんけれども、戦争状態じゃないわけですよ。だから、そこは非戦闘地域だと言い切っていいと思うんです。

 よく例として私は言うんですが、パレスチナとイスラエルとがたがたやっていますね。イスラエルのエルサレムで自爆テロが頻発しているわけです。ところが、エルサレムは戦闘地域でも何でもないわけですよ。むしろ、戦闘地域というのは逆にパレスチナ側のガザ地区、あそこの方が戦闘地域で、イスラエルが時々攻撃していますから。

 こういうふうに国と国、あるいは国と国に準ずるそういう組織、そういうのが敵対関係にあって、組織的、計画的に攻撃がなされる地域、それが戦闘地域であって、テロがたまたま起きたからといってそこは戦闘地域でないわけですから、明らかにイラクの中でも非戦闘地域はたくさんあるわけですよね。そういうことを区別しながら皆さん方にわかってもらうにはどうすればいいのかと思いますけれども、私のこのような考え方が間違っているかどうか、防衛庁長官でもいいし、総理でも結構ですから、答えていただきたいと思います。

石破国務大臣 久間先生のおっしゃるとおりだと私も思います。

 私の御説明の仕方が悪いのかもしれませんが、午前中も答弁いたしましたように、戦闘地域で危険なところ、戦闘地域だけれども安全なところ、非戦闘地域で安全なところ、非戦闘地域で危険なところ、そういう四つあるわけです。戦闘地域だからすなわち危険な地域だというふうに混同して議論をしてしまうことから多くの混乱が生じたのだ。

 つまり、こういう法律の議論というのは、定義をどうするかということをきちんと押さえませんとかえって議論が混乱してしまう。要は、日本国憲法第九条によって禁ぜられている行為を行うことはできないし、そしてまた、その行為が法的に武力行使と一体化されるような、そういうことも避けていかなければいけない。その二つの要請を満たしますために、この法律におきましては、我々の活動は武力の行使、武力の威嚇であってはならないということと、現に戦闘が行われている地域、あるいは活動の期間を通じて戦闘が行われると予測される地域、そこでは活動してはいけない、そういうことを定めておるのであります。

 そのことを混同してはいけないし、戦闘地域、非戦闘地域の概念はまさしく久間先生御指摘のとおりだと私は思っております。

久間委員 それからもう一つは、世間では武力の行使というのがよくわからないというか、武力の行使というのは、憲法上もあるいは自衛隊法その他の法律でも、要するに戦争行為をいわゆる前提とした戦闘状態、戦争行為といいますか、そういうようなこととのちょうど裏腹な形として言葉が使われているわけですよ。

 ところが、武器の使用というのと武力の行使を世間では同じように認識しているものですから、幾ら一生懸命説明しても、武力の行使は行いませんと言っても、じゃ無反動砲を何で持っていくんだというような話になって、要するに、日本国憲法では戦争をやっちゃいけない、武力の行使をやっちゃいけないということは規定しているけれども、攻撃されたときは、本土の場合は自衛するとしても、それ以外のところでも正当防衛として武器の使用は認められておりますし、そのための法律もたくさんつくってきたわけですね。

 ところが、その武器の使用というのと武力の行使というのを同じような概念で皆さん方は持っているものですから、そこでなかなか一つは理解できずに、武力の行使はいたしませんと言っているけれども無反動砲まで持っていくじゃないかというような、武器の使用というと、普通みんなが連想するのは、ピストルとかライフル銃とかそういうたぐいが武器の使用であって、武力の行使というときにはもっと、大砲を使ったりロケットを使ったりするのが武力の行使とか、そういうような誤解があっているんじゃないか。そこにも一つ原因があるんじゃないかと思うんです。

 今度の場合も、そういう意味では、武器の使用は、かなり大がかりなものも持っていきますというのは、どういう形で攻撃されるかわからない、テロがどういう形でやられるかわからないからやられるんだと思いますけれども、あくまでそういうのを持っていくからといって武力の行使にはならない、戦争にはならないんですよということを、もう一回、防衛庁長官、確認のために言っておいてください。

石破国務大臣 自己を守るために必要であり、かつ効果的な装備を持っていくということでございます。

 それは、正当防衛、緊急避難を危害許容要件といたしておりますけれども、それもあくまで自己に対する急迫不正な侵害があった場合に自己を守るために使うのであって、何もないのにこちらから使うということはあり得ない。

 そしてまた、向こうが非常に強力な、私は、今回持っていくものを時々重装備だとおっしゃる方がありますが、これは基本的な装備ではあっても重装備だという判断は軍事学的にはいたしません。向こうが何を持っているかわからない、あるいは、対戦車火器を、誘導弾を使わなければ、対戦車弾を使わなければ自分の身が守れないとした場合に、それを持っていかないということの方がよほど私は危ないのだろうと思っております。

 要は、比例の原則ということ、そしてそれをどう使うかということ。先生御指摘のとおりでございます。

久間委員 それから、総理がこの間記者会見で、武器弾薬の輸送は行いません、そういうことを言われました。そして、その一方で、官房長官が、兵士を輸送することはある、そのとき兵士が武器を携行しておることもあるし、手荷物の中に武器があることもあるでしょうと。

 この辺の議論は、私たちはテロ特措法のときに議論をして、海上輸送をするときに一々その区別はつかぬのじゃないか、その仕分けは、その荷物を載せないなんてできっこないじゃないかという議論をしていますから、とっくにわかっているわけなんですけれども、ここの国会の先生方はみんなわかっていますが、世間では、さも総理の言われたことと官房長官が言われたことと違うみたいな報道がされまして、考えてみましたら、法律をつくったときに関係しておった新聞記者等もすぐ、ぐるぐるかわってしまっていますから、恐らくそのときの議論を余り知った人がいなかったんじゃないかなと思って。こっちはこっちで質問する、こちらで官房長官に質問する、それぞれが自分の書いた記事を掲載するという形で、何か、さも見解が違っているかのような印象を受けましたけれども、その辺は全然違いがないということを、官房長官で結構です、これ、あのときと全く同じ議論で、全然そういう違いがなくて、武器弾薬の輸送は行わないけれども、武器あるいはそういう携行品として弾薬を持っていく兵士の輸送はあり得る、それは全然別のことじゃないんだということを、ひとつ明確におっしゃっていただきたいと思います。

福田国務大臣 今回のこの法律は、人道復興支援が中心的な課題である、こういうことでございます。安全確保支援、そういうことも基本計画に書いてございますけれども、これも仕事としては入っております。この安全確保支援の中には、武器弾薬を込めてもいいんです、考え方として。しかしながら、これは総理から、人道支援ということがはっきりわかるようにということで、武器弾薬は輸送しない、こういうことをはっきりと言われたということでございまして、これはもう、これからイラクで活動する部隊が運用上の問題として解決していけばいいわけでございまして、そういうことにするということを決められたわけですから、そのようにしていただきたい、このように思っております。

 また、向こうでいろいろ活動している部隊、他国の部隊もございます、他国の部隊がいろいろな活動をしているわけです。もちろん武器弾薬等を使うような、いわゆる治安活動、治安の中でもかなり激しい治安活動をするということもあろうかと思いますけれども、しかし、中にはいわゆる町の中の治安、例えば強盗、窃盗とかそういったようなものを防ぐための警官的な立場の者もいる。いろいろな立場の人がいるわけでありまして、そういうような人たちが、兵隊でありますから、通常、警察官であればピストルを持っているけれども、それが少し長い銃を持つということは十分考えられることでありまして、一般的に使うそういう護身用の銃をもって、これを攻撃的なものとかそういうふうなことで規制をするとかいうようなことになりますと、兵隊は一切運んではならない、こういうふうなことになります。ですから、そういう復興、治安の活動をしている兵員まで運ばないといったようなことで輸送活動が円滑に行われるかどうかということはございます。

 ただ、先ほど総理の考えとして、武器弾薬は運ばない、こういうふうに言っておるわけでございますから、そういう趣旨に沿って、兵員の輸送についても、重装備をするとかいったようなことがないような配慮といったようなものは、運用的に考えていくことは十分考えられることだというふうに思っております。

久間委員 法律上は武器弾薬の輸送は行われることがあり得るけれども、可能であるけれども、それをしないという総理の方針は、それは結構だと思います。

 もう時間がありませんから、最後に、日本の自衛隊が行ったときにやはり歓迎してもらえるためには、自衛隊が行った地域では何かそれに合わせていろいろなことをやってもらった方がいいわけです。

 そういう点では、これは要望しておきますけれども、外務省が例えばODAなんかでやったり、いろいろな形でやるときに、やはり相手任せじゃなくて、せっかく行ったら、自衛隊がやって、そこで、活動している周辺でいろいろな雇用につながるような活動をODA等としてもやった方が、私は、そこの地域の皆さん方との融和といいますか、そういう点で雇用を確保するという意味でも非常にいいかと思いますので、今後、そういう点でもひとつ努力をしていただきたいと思いますけれども、総理、よろしゅうございますか。

小泉内閣総理大臣 日本の自衛隊の復興人道支援についても、あるいは民間人がやるものにしても、政府職員が活動する分野におきましても、まずイラク人自身が希望するもの、日本の活動を歓迎してくれるもの、これによく意を用いて活動を展開していきたいと思っております。

久間委員 終わります。

斉藤委員長 この際、中谷元君から関連質疑の申し出があります。久間君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中谷元君。

中谷委員 まず、総理に日本の国益とは何かということをお伺いをいたします。

 政治の決定というのは、十年先、二十年先の日本と世界の姿を見て決定しなければならないと思いますけれども、今から十年前、カンボジアという国は四派、ポル・ポト派などに分かれて内戦をし、何百万人の人が虐殺をされていた。そこで、世界がこのカンボジアを安定させようとして、日本の外交が中心になってマンデートをつくり、そこでPKO活動を実施をしたわけでございますけれども、その中で、民間ボランティアの中田厚仁さん、そして文民警察の高田さんが活動中に犠牲になられたというのは本当に悲しいことでありましたが、十年たった今、このカンボジアはASEANにも加盟をし、経済活動が行われて、国民が幸せになっているわけですね。

 したがって、十年たって思うことは、この国際社会の平和維持活動とか支援活動があったからカンボジアの安定がされたということで、カンボジアの国際平和に貢献された方、またお二人の志には改めて敬意を払わなきゃいけないと思います。

 そこで、今度は十一月の二十九日、イラクにおいて、外交官の奥大使、井ノ上書記官が復興支援会議に出る途中にテロの襲撃に遭って亡くなられました。衆議院のこのイラク特委員会も、八月の初めにイラクに行きまして、現地を見ました。この三日間、この二人にいろいろなところを御案内いただきました。そこで二人が見せてくれたものは、日本の復興支援事業として、学校の修復、グラウンドの整備、そして病院の復旧並びに雇用を促進するために、市内のごみ清掃をして、ごみを回収する、それによって賃金を払う、そして市民の生活を安定させるという雇用対策事業を実施しておりました。

 この成果によって、子供は学校に行けるようになったり、病院に医薬品が届いて、電気がつかなくて手術もできなかったんですけれども、手術ができて人の命が助かるようになったり、また、失業者が報酬を得ることによって生活が安定されたということで、私は直接イラクの人から、日本は非常にありがたい国だ、こう感謝をされて、目に見える、形のできる成果を出していたんですね。まさに彼ら二人が中心になってそれをコーディネートしてまいりまして、まさに日本を代表して、身をもってイラクのため、世界のため、国際社会の一員として働いていたということであります。

 そこで、今回犠牲になったということで、私は、この二人から学ぶべき点としては、日本はイラクの復興支援を絶対になし遂げなきゃいかぬ、そして、イラクの国民のための復興を阻止しているのは、イラクの国民や国ではなくて、テロリストであって、テロとの闘いに決して屈してはいけない。テロの追放というのは世界全体の課題であって、日本自身の問題でもあるということでございます。

 戦後の日本は一国平和主義で、日本だけ繁栄して、日本だけ平和であればいいという考え方が大半でした。しかし、日本は貿易立国であって、世界が安定しているから日本の平和と安全があるし、国民生活にもかかわっている。すなわち、日本の安全と独立というのは国際社会と密接不可分であるというのが事実でございます。

 したがって、現時点において、このイラクの問題について、日本はリスクを払いながらもなし遂げなければならない、そういうことをぜひ国民の皆さんに御理解していただきたいと思っておりますけれども、総理は、現時点で日本に必要なもの、そして国益とは何かという点について、どのようにお考えになられていますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 まず、国益とは何か、国家利益とは何かといえば、一番大事なものは日本の平和と安全を確保することだと思います。日本国民の生命財産を守る、そして、もろもろの施策を平和のうちに推進できるような体制、環境を日本国民自身がつくっていくこと、これが大前提だと思っております。

 今回のイラクの復興支援につきましても、イラクが混乱してテロリストの温床になったらどのような被害が出るかということを考えますと、日本だけはそういうテロから被害を受けないという状況にはないと思っております。日本が自衛隊を出さなければテロの標的にならない、テロからの攻撃を受けない、日本人は安全だという状況にあるとは思っておりません。また、国際社会、国連加盟国として、国連がすべての加盟国にイラクの復興支援に努力するよう要請しております。そういう国際社会の中で日本は生きていかなきゃならない。世界と密接に今やどの国も結びついております。相互依存関係、相互互恵関係、極めて密接であります。

 先ほどカンボジアの例を出しましたけれども、先週、日本とASEANの特別会議が東京で開かれまして、その際、カンボジアのフン・セン首相と会談したときにも、フン・セン首相は、日本の支援に対して非常な感謝を表明されております。現に、日本の援助によってカンボジアの国が、平和に向かって、民主的な体制に向かって、今、懸命の努力をしている、日本の援助はありがたいと。カンボジアの紙幣に橋の絵がかかれているんです。この橋は、日本の援助でできた橋です、きずな橋ですと。自分としては、一国の紙幣に、日本の支援に感謝するという意味で、こういう日本の援助でできた橋をちゃんと描いておりますというお話でございました。日本の支援が生きているな、カンボジアの国民からも喜ばれているなと。

 やはり、一つの支援のあり方、援助のあり方、その国から最も必要な支援を聞き出す、そして、その国の国民が最も必要とする支援をしていくというのが、日本としても今後、支援、援助を考える場合、大事なことではないかと思っております。

 イラクにつきましても、今多くの国が、テロリストのおどしに屈して手を引いたらば、本当にイラクというのは安定した民主的な政権に向かって立ち上がっていけるんだろうかということを考えると、私は日本も、よその国に今の時点でやってください、日本はお金だけ出しますから人的支援は勘弁してくださいという状況か、そういう状況にないと思います。

 今や、日本もかつて多くの国から援助を受けて今日の経済大国までなってまいりました。今や、世界のGDP、アメリカと日本だけ二国合わせて四割程度のGDPを占める経済大国になった。そのときに、やはり、日本も立ち上がることができた、イラクも、できたら日本のように安定した民主的な政権が立ち上がってほしい、イラク人が自分の手で立ち上がってほしいという支援を、国際社会と協力しながら、また米英と協力しながら、イラク人の必要な支援を日本ができるだけのことをしていくのが、考えてみれば日本の国家利益にかなう、中東が安定すれば日本の交易状況、貿易条件も改善されていくと思うのであります。

 そういう点から、イラク復興支援に日本がかかわっていくのは日本の国益にかなうと私は思っております。

中谷委員 ただいま、日本の国益ということを語っていただきました。そして、なぜリスクを持って自衛隊が派遣されるのかということもお話ししていただきました。

 私からは補足として、世界の安全保障観が一変してしまったので、単なるイデオロギーとか国と国との国益の対立ではなくて、国際テロというものに真剣に対応していかなきゃいけないということ。よくマスコミはアメリカに大義があるのかと言いますけれども、ベトナム戦争は、そういう国や民族主義とアメリカが戦っていました。しかし、イラクに関しては、テロリストという国際テロ組織と戦っている、決してイラクの国民と戦っていないという点が違うということ。

 もう一つ、総理は、日米安保、日米協力と言われていますけれども、これはグローバルな意味での日米協力であって、ただ単に我が国の安全保障、そして東アジアの安定を超えて、例えば北朝鮮の国では核、ミサイル、これを開発しております。北朝鮮の首脳も言っております。そのミサイルがイエメンとかイラクとかイランに輸出されて、その技術がテロリストに渡っている。私は、こういう観点からしても、日米協力という観点は、我が国としても、国際的な、グローバルな点でやっていかなければならないということを思っております。

 そこで、総理の決断によって自衛隊員が派遣をされるわけでありますが、総理は記者会見で、国民からの敬意と感謝を持って隊員を送り出してほしいと発言がありました。しかし、依然として、配慮や心ない報道、また市民団体を名乗る反対運動が繰り広げられておりまして、派遣される隊員のみならず、家族や関係者も心を痛めております。

 現在、自衛隊員は、非常に士気も高く、使命感を持ってイラクにおける任務のために準備に励んでいると聞いておりますが、私の経験からしても、この使命感というのは平素から訓練や勤務を通じて身についていまして、黙々と頑張る集団で、これは日本の財産であると思います。派遣が決定された以上、日本そして国民の代表として任務に赴く隊員たちに対してもっと敬意と配慮があってもいいのではないかと思っておりますが、政府はどのような方法で自衛隊に敬意をあらわすのか。例えば、外国では海外に派遣される者には勲章が授与されていることが多いんですけれども、今回の派遣で隊員に対するいかなる名誉を付与するのか。

 そしてまた、派遣手当、これは今財政当局で検討されておりますけれども、財政の理屈でその金額の多寡を決定するのではなくて、派遣される隊員に対して、国家国民の感謝のあかしとして政治がまさに決めるべきものであって、例えば手当は現地へ派遣されても休養日は支給されないと聞いていますけれども、休養日といっても、外出もできません、テレビも見られません、CDも買いに行けません。こういった状況でいいのか。そして、手当というのは課税の対象となるかもしれないと聞いておりますが、いろいろな非課税がありまして、この課税を控除することができないか。

 まさに、この隊員たちに対してどのように国が敬意を払っていくかという問題でございますが、この点、いかがお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、自衛隊諸君は、自衛隊に志願して入隊する際に、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務を完遂するという宣誓をして入隊されております。今、徴兵制ではございません、志願制です。そういうことから、いつも厳しい訓練に耐えて、やるべき仕事はきちんとやる、こういう状況にいながら、みずからの任務に黙々と努力されている姿、大変貴重なことだと思っております。

 論語に、人知らずして憤らず、君子なるかなという言葉があります。人が自分の仕事を理解してくれなくても、決して怒ったり恨んだりしてはいけない、こういう人は本当に立派な人ではないかという意味であります。人知らずして憤らず。自衛隊創設以来、心ない批判を浴びながら、やるべきことをきちんとやるために日ごろから訓練している、こういう自衛隊諸君に対して、私は、一般の国民ができ得ない、きつい、つらい仕事をするわけでありますから、そういう活動なり活躍に対しては多くの国民が敬意と感謝を持って接していただきたいと心から願っております。

中谷委員 では、最後に官房長官に、安全への配意という点で。

 安全は準備によって確保されますけれども、この準備は何かというと、防弾ガラスを車にはめるとか、防弾チョッキを着るとか、そういう点の財政的な面で、まだ予備費が出ておりません。したがって、この準備がおくれていると思うんですけれども、こういった点で、いつごろ準備指示を出されるのか。また、派遣の時期も状況を見てということでございますが、いかなる状況になったら派遣をされるのか。この点についてお伺いします。

福田国務大臣 まず、予算のことでございますけれども、今般決定されました基本計画に定められる派遣部隊の規模、それから活動期間の枠組みなどを踏まえまして、派遣される自衛隊部隊の活動に支障の生じることのないよう留意しながら、現在、関係省庁間において所要の検討が行われております。現段階において、派遣にかかわる経費の規模、財政措置の具体的なあり方については、これは明確に申し上げることは困難な状況でございますが、そのような準備をいたしております。

 派遣の時期ですか。派遣の時期は、今、防衛庁の方で実施要項をつくる、そしてそういう中において派遣の時期は決定されていく、こういうことでございます。

斉藤委員長 時間です。

中谷委員 終わります。

斉藤委員長 これにて久間君、中谷君の質疑は終了いたしました。

 次に、太田昭宏君。

太田委員 公明党の太田昭宏です。

 まず、イラクでの人道復興支援に奔走しておられた二名の外交官、奥大使並びに井ノ上一等書記官が亡くなられたということに対し、衷心より哀悼の意を表したいと思います。

 お二人は、イラク復興のために昼夜を分かたず懸命に尽力をされている中、テロリストの凶弾に倒れたわけでありまして、お二人の遺志を、感情というだけでなく、ウオームハートとクールヘッドを持てという言葉がありますけれども、私は、冷静に受けとめ、そして温かい心で受けとめ、イラクの人道復興支援というものを展開しなくてはならない、このように思っております。

 まず、私は、公明党が今回のイラクへの自衛隊派遣、人道復興支援ということについて言い続けてきたことが二点あるわけです。

 一つは、十一月あるいは十二月九日の党首会談でも話がされているわけでありますけれども、憲法あるいはイラク特措法、そしてテロ等が起き、イラクの情勢がなかなか容易ならざる事態である。同時にまた、自衛隊の安全ということも極めて重要であるということから、第一点は、自衛隊の派遣は慎重にやるべきだ、特に陸上自衛隊の派遣については慎重の上にも慎重を期さなくてはいけない。

 もう一点は、国民に極力わかりやすく、丁寧に説明をするということが大事である。いわゆる説明責任です。私は、そうしたことを丁寧に、そしてこれからも、何度も何度もこの説明責任ということは心がけて、きょうもその一つでありましょうけれども、やるということが極めて重要である、こう思っております。

 総理もこれを受け入れて、十二月九日の党首会談のときには覚書も書かれておりまして、「陸上部隊の活動については、内閣総理大臣は、現地の治安状況を十分に見極め、改めて適切な指示を行うものとする。」そして、本件については、「政府・与党が一体となって取り組むことが重要であり、与党と緊密に協議するものとする。」という項目が、覚書にも書かれているとおりであります。

 私は、特に陸上自衛隊の派遣には慎重の上にも慎重を期せということ、そして、覚書にあるとおりの履行、そして与党また我が党とも十分協議をするということを改めて、きょうは冒頭ではございますけれども、確認をしたい、このように思っております。総理。

小泉内閣総理大臣 基本計画を策定いたしまして、今、実施要項については防衛庁長官を中心にして検討をしている最中でございます。その際、いつ、どのような部隊を派遣すべきかについては、政府のみならず与党ともよく協力関係が維持できるように、十分御理解をいただくように努力していきたいと思っております。

太田委員 特に、総理は、自衛隊法第七条にもありますように、自衛隊の最高の指揮監督権を有するのは総理大臣であるということを明記されているわけでございますので、改めてその辺の安全確認も含めて答弁をお願いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 必ずしも安全とは言えない困難な任務に赴こうとする自衛隊諸君に対しては、安全面において十分配慮しなければいけない。これは、装備もそうでありますが、地域におきましても、よく状況を見きわめながら、そのような配慮の上に派遣をしなきゃいけないと思っております。

太田委員 現在のイラク情勢がどうなっているか、またサダム・フセイン元大統領を拘束した、まさに変化の中のきょうの委員会審議ということになったわけですが、私は、政府もあるいは日本の各界各層、あるいはアメリカもあるいは協力する国々も、できる限りの情勢認識というものを共有していくという作業が非常に大事だというふうに思うんです。一度立ちどまってというわけにもなかなかいかないでしょうけれども、その都度その都度連携をしっかり密にして、アメリカは今後どうするのか、協力する国々はどうするのか、あるいはフランスやドイツやロシア、そして中国、そうした国々も一体どうするのかということを、常に認識の共有というものが私は非常に大事で、今回も橋本特使が派遣をされるとか周辺諸国に行く、私は非常に大事なことだというふうに思うんです。

 私は、総理にも報告をしましたけれども、六月の上旬にイラクに行ってまいりました。公明党派遣団として行ったわけですが、そのときに思ったことは、サダム・フセインの政権が倒れて、イラクの人々は非常に喜んでいるわけですね。きのうの夜のテレビを見てもそういう光景がありましたけれども、その喜んでいるときこそ、ああ、確かにサダム・フセインの時代より、圧制の大変な時代であった、今は本当によくなったな、そういう実感を持つということが実は非常に大事で、そういう意味では、生活実感といいますか、民生の安定というものを早急にやるということが私は非常に大事だということを痛感したんです。

 そのときには、旧バース党の残党が再結集するという動きがありましたから、これは避けるということが大事である。その前に、どちらのスピードが速いか。民心の安定あるいは民生の安定というのが先行するということがあって、残党が再結集するということを防ぐことができるんだ。電気がない、水がない、食糧がない、医療がない。特に私が痛感をしたのは、この十年間の経済封鎖というのがありましたから、なかなか経済活動ができていない。ほとんどの人が、六割が公務員。それが一遍に職がなくなっている。その電気がない、水がない、食糧がない、医療がよくないという上に、特に雇用が不安定であるし、ないということが私は大変な問題で、そういう意味では人道支援というものをこれはスピードを持ってやるということが非常に大事であるという認識をしたわけです。

 その後、これはなかなか容易ならざる事態になったなというふうに私が思ったのは、五月、七月ぐらいまではそういうふうにいって、そして、イラク人による統治評議会がスタートをした。そして、高村派遣団等が行ってみると、警察もイラク人の警察が出てきた。ああ、よかったなと思ったんですが、その後に国連事務所がやられる。テロリストの流入という八月以降の事態というものが一つ変わった。私は、今は第三期、第四期というふうに思うんですが、十月十六日の国連決議というのがあって、そして、かなり、米軍も掃討作戦に入ったから反発も非常に強い。そういう中で昨日のサダム・フセイン元大統領の拘束という事態になったということ、ここはまた、人道復興支援を急ぐというスピードが非常に大事だという局面を迎えたと私は思います。

 テロリストと旧バース党の残党と切り離さなくちゃいけない。その上にもっと大事なのは、イラクの国民の不満というものを本当になくす、この三つが連動してしまうと大変なので、テロリストと旧バース党の残党と、そしてイラク国民の不満というものを遮断するということが私は今一番大事な基本戦略にならなくてはいけないというふうに思っておりますが、その辺のイラク情勢の現時点での情勢をどう見るのか、そしてこの共有作業、そして、人道復興支援には幅広さとスピードが必要であるということを私は思うわけですが、その辺の認識を求めたいと思います。

川口国務大臣 今先生がおっしゃられたことについて、私は全く同じ考えを持っております。

 イラクの今の現状について、まず治安ですけれども、これは全体として予断を許さない状態が続いている。もちろん地域によってその差はあるわけですけれども、全体としてはそういうことであって、今回のサダム・フセイン元大統領の拘束によってこれがいい方向に展開をしていく、そのきっかけに拘束がなればいいというふうに考えております。

 それで、テロリストと旧サダム・フセインの支持者たちを切り離さなければいけないというのは、全くおっしゃるとおりでございます。今、どのような結びつき方があるかということについていま一つはっきりしないということではありますけれども、海外から、国外から流入をしたイスラムの過激主義者たちとともにこの残存勢力がいろいろなことを、テロをやっていた、混乱をさせていた、政治プロセスがきちんとした形で進んでいくことをとめようとしていたということであるわけでございまして、それを切り離さなければいけない。

 また、切り離すためにも重要なことは、まさに先生が御指摘のように、スピード感を持って人道的な支援、復興支援をしていくということであると思います。これは、以前、亡くなった奥大使もそういうことを私に直接おっしゃっていたことがあるわけでございますけれども、これは大事なことであると考えております。

 それらを進めていくために国際社会が関与をしていく、全体としてやっていくということがまた大事でございまして、我が国としてもこのための働きかけを、例えば現在、総理の特使の方が出発をしていきつつある過程にございますけれども、そういった活動を通して、またほかの外交チャネルを通してそういったことをやっていきたいと思っております。私自身も、アナン事務総長とお話をしたり、いろいろな努力をいたしております。

 ここでイラクの支援をきちんと国際社会として関与して前に進めることができなければ、これは武力行使前の立場のいかんを問わず、国際社会全体の責任といいますか、国際社会のかなえが問われるという状況であると思います。日本も、国際社会の重要なメンバーとしてその責任を果たしていきたいと考えております。

太田委員 スピードを持った人道支援というふうに言いましたが、総理、私イラクに入っていって、そのときに、総理がエジプトを通じて医療支援ということをするとか、いわゆる玉突きですね、それから、NGOが非常に現地で活躍をしている。わずか二千万円ぐらいで上水道を確保するとか、いろいろなそういう医療支援もやっていたりと。

 私はそういうことを、自衛隊派遣を含む人道支援とこう言うわけですが、含むのであって、もう少し幅広い、NGOとかあるいは玉突きの援助であるとかさまざまなことを、総理みずからエジプトに働きかけたりすることがあったわけですから、そういうことを奥大使もやろうとしていて本当に走り回っていたわけですから、ぜひとも国民に見える形で、まさにそういうことをさらに進めていただきたいし、また、何をやっているかということの説明を私はもっとする必要がある、こう思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私が五月にエジプトを訪問して、エジプトのムバラク大統領と会談した際に、医療支援というのはエジプトと協力してできるんじゃないかと。日本の医療支援、エジプトにおいては、小児科の病院等について日本がこれまでずっと協力してくれたことに対しては、非常な感謝とこれからの期待を表明されました。

 私は、その日本が建てた病院に行ったんですけれども、もう大歓迎でした。これは、これだけ日本の支援が喜ばれているんだなということを、窓から患者さん、看護婦さん、お医者さん、ずうっと出てきて手を振って、日の丸を振って、日本の協力ありがとうございますという、日本の支援に対して歓迎していただいていることを聞きまして、これはエジプトと協力してイラクの医療活動できることないかということで、イラクにはもう十三の病院、戦前、日本の協力でイラクにはそういう病院が建っている。

 ところが、この病院の機能が戦争によってかなり壊れている。こういうことに対して私は、日本のお医者さんとエジプトのお医者さん、医療関係が協力してイラクの医療支援できないかということで、これはいいなということで進めているわけであります。

 最近、NGOを通じてイラク人の生活基盤の整備に取り組むことができないかと考えておりますが、今、危険だということで民間人が引き揚げている状況です。自分で防備態勢ができない、自分で自己完結性がないということで、民間人はむしろ手を引いている状況でありますので、この際、自己完結性を持った、自分で寝泊まりもできる、自分で食事もできる、自分で給水活動もできるというような組織ではないと、生活基盤の整備においても難しいんじゃないかということで、今回、自衛隊の派遣を決意したわけでありまして、今後とも、日本は、アラブ諸国とも協力して、イラクの復興支援、人道支援、医療活動のみならず、教育活動あるいは生活基盤整備についても、日本独自でできること、アラブ社会、アラブ世界と協力してできること、米英とともにできること、国際社会、国連と一緒になってできること、いろいろな方面に、何をすべきか、まず何をしなきゃならないかということを連携しながら、日本としてできるだけのことの復興人道支援に取り組んでいきたいと思っております。

太田委員 自衛隊でなく民間がいいとか、民間か自衛隊か、私、そういう論議は間違いだろうと。まさに、まず大変危険な状況もある、テロもあるかもしれないというときに、ある人が骨折をしたときの添え木が自衛隊であるということを言いましたが、民間が出られるそういう条件をどうつくるか、あるいはイラクの政府をどうつくるかということについて、今、私は、そういうことの観点をさらに付与して説明をいただきたいというふうに思います。

 防衛庁長官、最後ですが、戦闘地域か非戦闘地域かの議論があって、これはもちろんこの法律は非戦闘地域しか出せないわけですが、私が六月にイラクに行ったときに、北部のモスルというのは非戦闘地域だったというふうに私は実感をしたわけですよ。病院もちゃんと生きていた。ところが、今はなかなか危ない、こういうふうになっている。

 当時から略奪と戦闘は違うとかいう議論もあったし、襲撃と戦闘は違うんだというようなことも最近よく言って、法的にはこうだという説明はできるんですが、実感の問題として、私は、襲撃なのか戦闘なのかなんてそもそも論議が行われて弾が飛び交うところにはこれは出すべきではない、基本的には避けるという慎重さが大事だという認識を持って帰ってきたわけです。私は、正当防衛といっても、撃ち合いになるのを極力避けなければいけないということを胸の中に、防衛庁長官、たたき込んでやってもらわなくちゃ困るとここでくぎを刺しておきますが、いかがでしょうか。

石破国務大臣 先生のおっしゃるとおりだと思います。撃ち合いになるというようなことは、正当防衛の武器の使用の仕方としてこれは想定をされておりません。

 いずれにいたしましても、非戦闘地域でやるというのは当たり前のことなんです。それに加えて、自衛隊の権限、能力、装備をもってして、これはとてもではないが、危険が抑止もできないし回避もできないというような場合には、行動というのは抑制的であるべきだ、それは先生の御指摘、そのとおりだと思っておりますし、私自身、そのつもりで事に臨みたいと思っておる次第でございます。

太田委員 最後に、私が冒頭に申し上げましたように、特に陸上自衛隊の派遣ということについては慎重の上にも慎重を期して、そしてまた、行くならば安全というものがしっかり確保できるということが大事だということで、重ねてでありますが、総理に御答弁いただいて、私の質問を終わりたいと思います。

小泉内閣総理大臣 慎重に、安全面にも十分配慮して、派遣すべきときに派遣したいと思っております。

斉藤委員長 時間が参りました。

太田委員 終わります。

斉藤委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 まず冒頭に、先般イラク・ティクリートで亡くなられた奥大使、そしてまた井ノ上一等書記官、立派な外交官で、また外交官としての使命を果たされたその二人に心から敬意を表し、またお二人の御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。

 さて、総理が出ておられますので、総理中心にお答えをいただければと思います。

 まず、我が党の、今回のイラクへの派遣についてスタンスを述べさせていただきたいと思います。

 我々民主党は、現時点において、イラクに自衛隊を派遣することには反対であります。大きく二つの理由があります。

 一つは、この戦争そのものの大義が問われている。つまりは、国連決議も、一四四一、これは総理もあるいは川口外務大臣もお答えになっているように、これ自体が武力行使を認めた国連決議ではなかったということ。そして、多くの国際社会がさらなる査察の継続というものを求めていたにもかかわらず打ち切って、アメリカによる、あるいはイギリスによる攻撃が行われた。そして、その大義として最も言われていたのが大量破壊兵器、昨日フセインが、元大統領が拘束をされたということで、この大量破壊兵器の問題についても新たな展開が図られるかもしれません。しかし、大量破壊兵器があるあると言って、九カ月も見つかっていない。つまりは、あり場所もわかっていて、しっかりその証拠を握っていて、そして攻撃をしたならまだしも、攻撃してみて捜したらあるだろう、そんないいかげんな大量破壊兵器疑惑の中で攻撃が行われた。そして、その攻撃を行ったアメリカ、イギリスが占領統治を行っている。これに対して、多くの国民あるいは世界の人たちもこの戦争に対する正当性を疑っている。私どももそういう立場であります。

 二つ目には、この法律、イラク復興支援特別措置法という法律が想定をしているイラクの今の治安状況というものが、果たしてこの法律が想定をしたものに合致しているかどうか、この点が極めて私は疑わしいというふうに思っています。よく言われるように、戦闘地域、非戦闘地域の区別というものが果たしてできるのか、そういった問題と同時に、まさに戦争が続いているというふうにも考えられる。戦闘地域に初めて自衛隊を送る。あのテロ特措法による支援というのは、あれはインド洋でした。つまりは、アフガニスタンという現地に行っていない。初めて戦地に赴く法律になる、憲法上大丈夫か。そしてまた、法律に照らし合わせてその前提が整っているかどうか。我々は整っていないという判断をしています。

 その二点から、我々は、大きく言いまして、現時点において、基本計画に基づくイラクへの派遣については反対ということを申し上げているわけであります。その点について少し議論をさせていただきたい、詰めていきたいと思います。

 まず総理にお伺いしますが、大義なき戦争と言われる。私はこの間、基本計画を発表された後の総理の記者会見、ずっと聞かせてもらいました。すべて聞かせてもらいました。そのときに私が思ったのは、イラクの復興支援に国際社会が協力をすることの必要性、それからテロに屈せず、そして日本もその戦線に参加をするという必要性、そしてまた日米同盟関係が必要だという説明、この三つに何ら異存を挟むものではありません。

 しかし、先ほど申し上げたように、その奥にあるもの、つまりは大義なき戦争ではなかったのかと言われているものに対して、では、十分あの記者会見で総理は説明をされたかどうかといえば、私は十分ではなかったと思います。

 国連決議については、湾岸戦争のときの六七八、六八七を引っ張ってきて、また正当性があったという話をされるんでしょう。これはもう水かけ論になりますから、そこは結構でありますが、査察を継続すべきであったということと同時に、大量破壊兵器が未発見である、あるいはアメリカ、イギリスでも問題になっていて、イギリスではその当事者が自殺をされた。情報操作の疑い。

 こういったものについて、どう日本政府として説明をされるのか。総理の口から国民に対して説明責任を果たしていただきたい。

小泉内閣総理大臣 これは、イラク支援法が七月成立いたしましたけれども、その場でもよく議論した段階であります。結論からいうと、見解の相違なんです。

 私は、国連憲章にのっとって、大義名分があるということで支持したんです。そしてイラクに安定した民主政権をつくる。テロの温床にしてはいけない。私は、十分大義名分があったと思っております。

前原委員 ですから総理、見解の相違で片づいたらこういう議論は要らないんです。

 つまりは、今申し上げたように、国連決議の正当性については見解の相違でいいかもしれない、それは解釈の違いでいいかもしれない。私が申し上げているのは、大量破壊兵器がまだ見つかっていませんね。査察継続の必要性が国際社会の中でも言われた。あるいは情報操作についても、アメリカ、イギリスでも、非常にその点については問題ありということで非難されている。そのことについても日本の総理大臣として、支持を表明された総理大臣として、我々国民に説明責任を果たされるべきではないか、そのことを聞いているんです。

小泉内閣総理大臣 それは、イラクが過去大量破壊兵器を使用していたこと、国連の調査団が現に大量兵器を過去発見していること、そして国連であれほどの決議を与えていながら国連の調査団を妨害したこと、こういうことの時点で私は十分大義がある、説明責任を果たしていると思っております。

前原委員 そんなものは全然説明責任を果たしたとは言えないんですよ。つまりは、クルド人に対して化学兵器を使ったということ、それはだれもが知っていること、化学兵器を開発していたということもだれもが知っていること。しかし、九割の化学兵器が廃棄をされて、残る一割はどうなのかということでまさにせめぎ合いが行われていたわけです。

 今の総理の御答弁では、過去に持っていた、使った、そして発見された、だから化学兵器が大量破壊兵器違反だ、これはむちゃくちゃな飛躍、そして余りにもアバウト過ぎる、大ざっぱ過ぎる。つまりは、その一割のものをどう捜すのかということでせめぎ合いをしていたんじゃないんですか。IAEAにしたってUNMOVICにしたって、さらなる査察の継続を主張していたんではないですか。だから、その意味では説明責任は全然果たされていませんよ。総理が答えてください。

小泉内閣総理大臣 それでは、なぜフセインが拒否したのか。フセインがいいとは恐らく前原さんも言っていないと思うんですけれども、あのときフセインが受け入れれば戦争は起こっていないんですよ。なぜ受け入れなかったのか。それが私はおかしい、その方がおかしいと思っています。

前原委員 総理、一国の総理は、事実認識をしっかり踏まえて話をされた方がいいと思うんですね。

 一四四一という国連決議を踏まえて、フセインは一たん査察を受け入れたんです。受け入れたけれどもサボタージュをし、せめぎ合いをしていたんです。

 つまりは、今までも過去、大統領宮殿の査察を受け入れる受け入れないでせめぎ合いがあった。それは当然そうでしょう。自分たちも一番捜してほしくない、あるいは見せたくないところ、それは化学兵器の問題でないかもしれない。しかし、それをまさに国際社会のせめぎ合いの中で、またいろいろな支援と引きかえの中で、あるいは圧力との関係の中でそれをどんどん攻め込んでいって、そしてさっき申し上げたように、IAEAとUNMOVICは、もうちょっとやらせてくれ、そう言っていたにもかかわらず、それで戦争に踏み込んだのは正当性があるというのは、物すごく論理の飛躍であり、フセインがすべてを拒否していたというのは、それは事実に反しますよ。総理が答えてください。

小泉内閣総理大臣 これはもう七月でもさんざん議論した、同じ問題ですよ。もう何回も質問され、何回も答弁しています。即時、無条件、無制限にフセインは受け入れなきゃいけなかったんですよ。それをすれば戦争は起こっていないんですよ。

川口国務大臣 これはまさに総理がおっしゃっていらっしゃるようなことであるということに尽きてしまうんですけれども、大義、WMDがあったかどうかということについて言えば、これは実際に、総理がおっしゃっているように、あった、それを一四四一によってフセインが見せなければいけなかった、それをやらなかったわけですね。そのときに、一四四一は幾つかのことを全会一致で決定をしています。

 まず、六八七等の関連決議、これは停戦決議ですけれども、それに、関連決議に重大な違反を犯し続けているということを決定しています、全会一致で。それから、その最後の機会を与えるということも、これも決定をしています。そして、イラクが完全なる協力を行わないことはさらなる重大な違反であるということも決定をしています。それから、継続的な義務違反の結果深刻な結果に直面するという警告をやっている。それで、これについてどういうような状況で武力行使をするかどうかということを判断するのは、それぞれのメンバーの判断であるわけです。

 したがって、アメリカはそれに基づいて判断をし、武力行使を行ったということでありまして、全く問題はない、正当性はあるということでございます。

前原委員 いや、それは、語るに落ちるというのはそういうことで、アメリカがそう思ったということを最後におっしゃっている、実際問題。つまりは、即時というのはだれが決めるかというと、アメリカの決めたことについて、日本もそうですねとしり馬に乗っているだけじゃないですか。ほかの国々は、即時といっても、もう少しの査察の継続が必要だというふうに言ったわけでしょう。ということは、まさに、情報はすべてアメリカから丸のみ、受け売り、そしてアメリカの言うがままの決定を下したということだけじゃないですか。

 それが、何も問題がなかったんだというふうに居直るということは、私は、主権国家として、後で質問しますけれども、自国の情報収集能力がこれだけ欠けていて、他国に頼りっ放しで、そして、他国から得た情報で、そして自国の判断を立派にやったんだと言える内閣総理大臣、私はちょっと見識を疑いますね。つまりは、どういう情報に基づいていたのか、そして、国際社会がどういうその解釈でしていたのか。違うわけですよ。まさにアメリカ寄りの解釈で行ったということ。まあこれも見解の相違と言われれば見解の相違かもしれません。

 先に行きましょう、もっと聞きたいことがありますから。

 私は、アメリカと同盟関係というのは必要だという認識を持っていますが、ちょっと切り口を変えて、総理、二つのことを聞きたいと思います。同盟関係を続けていくに当たって、二つのことを聞きたいと思います。

 一つは、以前にも総理にお答えをいただいたことです、同じ御答弁で結構ですが、ブッシュ・ドクトリン、つまりは、先制行動に対するブッシュ・ドクトリンについて、私が総理に以前伺いました。戦後の国際社会で、国連加盟国が他国を攻撃していいのは、二つの例外しかない。自衛権の行使と、国連決議があったとき、この二つだと。つまりは、今回は、見解の相違かもしれないけれども、一応、六七八、六八七という国連決議があって、何とか体裁を整えられたけれども、今後はわからないですよ、先制攻撃。

 つまりは、もう一度お答えをいただきたいんですが、この二つの例外以外は認められない、いかに同盟国であるアメリカが攻撃を行ったとしても、それは、二つの例外以外の先制攻撃は認めないという日本の立場は変わりないのかどうなのか、その点について簡単にお答えください。総理に聞いています。

小泉内閣総理大臣 私は、米国の先制攻撃論、こういうことに対してどう思うかということについては、前回の国会でもたしか答弁しているはずでありますが、日本としては、米国は国連憲章を初めとする国際法上の権利及び義務に合致して行動するものと考えておるし、また、我が国が国際法上違法な武力行使を支持しないということは当然であるということを前回にも答弁しているはずであります。この答弁に今も変わりありません。

前原委員 これは大事なところですので、今後の日本の外交を決めていく上では、私は、この答弁というのは極めて必要な答弁だ、重要な答弁だと思いますので、確認をさせていただきました。

 もう一つ。アメリカが小型核というものを、今までは研究段階でしたけれども、実際問題、予算もつけて、これから開発に踏み切ろうとしていますね。この間、日本は国連に対して大量破壊兵器の全廃に対する決議を出して、そして、その提案国になりました。アメリカはその決議に反対をした。

 この小型核の研究から、実戦に使うことを前提としての開発、これに踏み切ったことに対して総理はどう思われるか。

斉藤委員長 川口外務大臣。

前原委員 総理に聞きたい。総理に聞いているんです。

斉藤委員長 川口外務大臣、まず。

前原委員 いや、まずじゃない。総理に聞いているんです。

川口国務大臣 まず、事実関係について申し上げたいと……(前原委員「いや、いいですよ、総理に聞いているんだから」と呼ぶ)

斉藤委員長 私が指名しております。その後してもらいます。その後総理がします。今答えています。

川口国務大臣 まず、事実関係について申し上げたいと思いますけれども、前原委員がおっしゃっていらっしゃる、開発に移ったというのは事実ではないということでございます。開発に移ったというのは間違い。研究段階に入ることについて決定したということであります。事実関係でございますので、お答えをさせていただきました。

前原委員 ちょっと、委員長、外務大臣には聞いていないんですから。ちゃんと仕切ってくださいよ。総理に答えてくださいと言っているんです。

小泉内閣総理大臣 小型核兵器については、研究をしたいと。しかし、これは開発までにはアメリカはたしか議会の了承を得る必要があると思っています。その議会の了承をまだ得ていませんね。いろいろな議論があるのは、私は結構だと思っております。

前原委員 いろいろな議論があるのは結構だ、そんなのんきなことを言っていていいんですか。大量破壊兵器をなくしていこうという国連決議の提案国になっているんですよ。しかも、唯一の被爆国。その中で、いろいろな考え方があって結構なことじゃないですかと。私は、そんな軽々しく答弁されるような話じゃないと思いますよ。

 つまりは、やはりそれに対しては懸念を持っている、アメリカに対してはやはり核は使っちゃいけないものなんだということをしっかり言う、それが日本の総理としてのあるべき立場じゃないですか。

小泉内閣総理大臣 それについては、はっきり懸念を持っているということを表明しております。

前原委員 だれに表明しているんですか。ブッシュ大統領に会ったときに、直接それは言うんですか、言ったんですか。――いやいや、違うんだ。総理に聞いているんです。総理に聞いているんです。

斉藤委員長 川口外務大臣。

川口国務大臣 事実関係でございますので、私からお話をさせていただきたいと思います。

前原委員 ちょっと委員長、おかしいじゃないですか。

 私は総理に聞いているんです。だって、ブッシュ大統領とさしで会われているんだから。外務大臣は同席していないんだから。

川口国務大臣 これは事実関係でございますから、私からお話しさせていただきます。

前原委員 総理しかわからないことを聞いているのに、何で外務大臣が挙手するんですか。

斉藤委員長 これは外務大臣に答えてもらいます。まず答えてもらいます。

前原委員 委員長、おかしいじゃないですか。

斉藤委員長 おかしくない。その後……(発言する者あり)いや、外務大臣にまず答えていただいて、その後、総理に答えていただきます。

前原委員 違う。総理に答えてくれと私が言っているのに、なぜそれを――いや委員長、おかしいですよ、それは。委員長、おかしいです。

斉藤委員長 答弁、答弁中、答弁中。答弁中です。答弁を聞いてください。

川口国務大臣 まず、事実関係について申し上げる、そういう問い合わせでございますので、私からそのお話をさせていただきたいと思いますけれども、これについては外交チャネルで懸念をお伝えしているところでございます。

前原委員 いや、これ認めたらだめですよ。だってもう時間のむだだから。総理に聞いているんですから。ちょっともうとめてくださいよ。ちょっと、こんな委員会審議するんだったら、本当に審議に応じられませんよ、これ。

 委員長、おかしいですよ。委員長の進め方がおかしいと言っているんだ。

斉藤委員長 小泉総理大臣。

 いや、私は総理を指名しました。

前原委員 違う。ちょっと聞いてくださいよ。

 総理が、ブッシュ大統領とさしで会っているんですよ。そういうことも含めて、外務大臣がわからないものがあるじゃないですか。

斉藤委員長 委員会の整理権は私にございますので、御着席ください。私は総理大臣を今指名しました。どうぞおかけください。

前原委員 おかしいですよ、進め方が。

 では、総理、答えてください。

小泉内閣総理大臣 外交の問題ですから、日本には外務省もあるわけです。私は……(前原委員「違う。さっきから、話をしたかどうかということを言っているんです」と呼ぶ)今答弁しますよ。そういう問題は話し合ったことはありませんが、外務省を通じて、アメリカの国務省なりに日本の懸念を表明していると。そういうのは話題になっていません、今のところ。

前原委員 いや、私は、そういう意思を持っておられるのであれば、また、八月六日、八月九日、何度広島、長崎に行かれましたか。そのときの御自身の言葉というのはよく覚えておられるでしょう。そういうことを含めて考えれば、しっかりとそれだけの人間関係を築いておられるということの自負を持っておられるのだったら、御本人がおっしゃるべきじゃないですかということを申し上げて、総理に聞いているんですよ。

 だから、総理、ぜひそれは直にブッシュ大統領に言われるべき問題じゃないですか。その点、お答えください。

小泉内閣総理大臣 それは、アメリカも核実験停止には協力しているわけですから、どういう話題になるかというのは、その時々の話題で私は判断したいと。

前原委員 全く主体性のない外交を行っていると言われても私は仕方がないと思いますよ。(小泉内閣総理大臣「野党と総理とは違うよ」と呼ぶ)野党と総理といったって、我々が与党になったらそんな外交はしませんよ。(小泉内閣総理大臣「国益に反するでしょう、何もしないなら」と呼ぶ)国益に反しないことをしますよ、しっかりと。政権交代なくして、本当に外交も安全保障も全く変わりませんよ。

 法案の内容についてしっかりと聞いていきます。

 さて、次に、我々は先ほどお話をしたように、現時点においてイラクに自衛隊を派遣することは反対だということは申し上げましたが、しかし、先ほど申し上げたように、イラクの復興支援は必要だ、またテロに対しては毅然とした対応をとらなきゃいけない、したがって、日本がしっかりと人も出してイラク復興支援に貢献できるような前提を整えるべきだと。そのためには、大義が非常に疑われている、そしてその大義が疑われているアメリカ、イギリスが占領統治を行っている、それから、やはり国際社会、CPAから国連やあるいは多国籍軍でもいい、国連が事務的に絡み合えないのであれば、特に国連の安保理の常任理事国がしっかりと人も出して、そして治安やイラク人による政権移譲に対して責任を持てるような体制に移行すべきだというふうに思いますが、その点について、総理、どうお考えですか。

小泉内閣総理大臣 必ずしも自衛隊の派遣に反対していないということですか。いや、私は、最初から自衛隊派遣反対と言っているのかと思ったけれども、そういうことですか。

 私は、今各国が復興支援に努力している、何とかイラクに安定した民主的政権をつくりたいというときに、では自衛隊派遣だめで、ほかの人的派遣ならいいと言っておるのが民主党の立場だと思うんですが。

 そうすると、民間の人も今手を引いているわけですね。国連もそれはなかなか必要な職員も出せないということを考えますと、今イラク人が必死になって自分たちの政権をつくろうとしている、そして各国が努力している。国連加盟国全部とは言いません、四十カ国近い国が早くイラクにイラク人の政権を打ち立てることができるように努力している。そのときに、日本としても私は協力すべしと。

 協力する場合、資金だけじゃない、物だけじゃない、人的貢献。民間人は自分の安全面に対して、なかなか確保できるような対策も打てないという際には、人的支援というのだったら、戦闘行為に参加するわけじゃない、武力行使をするわけじゃない、自衛隊だっていろいろな訓練もしているし、自衛隊だったら危険を回避する努力も装備もできるだろうということで、今回、人的支援で自衛隊を派遣するということであって、今は支援しちゃいけない、では、いつになったら支援しろと。みんなどこの国でも、はい、来て、後に自衛隊を派遣しろというのか。私は、その点は民主党の態度はなかなかはっきりしないなと。

 結局、テロ特措法も反対したでしょう。イラク支援法も反対したでしょう。今回も自衛隊、反対する。一体、どういう状況になったら支援しろというんですか。

前原委員 そこまで我々の立場を危惧していただくということは、我々も議席を伸ばして脅威を与えられるようになったのかなというふうに思いましたよ。

 耳をよくかっぽじって聞いていただきたいと思うんですが、まず質問に答えておられない。それから、では、民主党の立場をということであれば申し上げますよ。

 現時点において、我々はイラクに自衛隊を派遣することに反対である。しかし国際社会が、私は後で議論しますけれども、一五一一というものが実行せられるものだと思っていない。新たな国連決議などがあってしっかりと、特に国連常任理事国や、あるいは非常任理事国でもイスラムの国々なんかが本当に人を出して、そしてイラクの復興支援に国際的に協力しようと。そして、それを邪魔する者については、まさにテロに対する、攻撃に屈しないということで、犠牲もいとわずにそのときは人的貢献をすべきだというのが我々の立場であります。

 つまりは、新たな国際社会でのその枠組みというものをつくる努力をまずするということが必要であって、そのことが、今から話をしますが、モラトリアムではなくて近道なんだと。つまりは、そんなボタンのかけ違いをそのまま行って、そしてイラクの復興支援だと言ったって、占領軍に加担をしているとしか見られていないところはいっぱいあるわけです。それを言っているんですよ。それは見解の相違と言われるかもしらぬけれども、私は本質だと思う。

 ちょっと話をしますと、御存じかもしれませんけれども、イラクのこの十年、二十年の歴史というのは非常に複雑なんですね。イラン・イラク戦争のときは、御承知のとおり、アメリカはイラクを支援したんですよ。その前はイラン、シャー政権を応援していた。しかしホメイニ革命で、実際問題、今度はけしからぬと思ったイラクを応援した。そしてイラン・イラク戦争が終わった。湾岸戦争は、多分僕はフセインが読み間違えたんだと思う。アメリカは今まで支援してくれたんだから、クウェートを侵略したってアメリカは動かないだろうと思ったのが、国際社会が動いた。それから問題がまた複雑化してきた。

 そして、その湾岸戦争の後は、まさに経済制裁というものが行われて、フセインもしたたかですから、経済制裁が行われる中で、今度はオイル・フォー・フードという、つまりは人道支援はしなきゃいけないということで、オイル・フォー・フードの考え方が出てきた。その石油の割り当てというのをうまく、米英と仏独ロを分断するために、そのオイル・フォー・フードの割り当てというものをフセインはうまくその三カ国を中心に利用していった。つまりは、今米英と仏独ロの分断が始まったわけじゃなくて、長い複雑な歴史、冷戦の中で生き抜くイラクの知恵もあっただろうし、そしてまた、その中でいかに大国を引き裂いて自分たちのポジションをしっかりと保っていくかというフセインの知恵もあったわけですよ。

 だから、そんなに簡単じゃないことはわかっている。しかし、簡単じゃないことをこのまま行って、まさに私の言うように、ボタンのかけ違いのまま、このまま、つまりは突っ走って、後で、今質問しましょう、復興支援には参加をした者しか入れない、けしからぬ話じゃないですか、この話なんかは。まさに血を流した者だけが自分たちの利益を得る、このむき出しのグロテスクな米英の考え方、これがますますドイツやフランスやロシアの参加、国際社会の関与をできにくくしていっているのは自明のことじゃないですか。

 このことを今総理に、国際社会がしっかりと、そういう長い複雑な歴史を今まさに整えて中東の安定というものを達成するためには、フランスやロシア、ドイツも関与するような国際的な枠組みをつくることがむしろ中東の安定化にとっては我々は近道だと言っているわけですよ。だから、そのための外交努力を行うべきであると言った。モラトリアムなんかでは全然ない。焦って自衛隊を出して、そして、後で質問しますけれども、何かがあって、そして日本の安全保障政策が後退する、あるいは日本の世論というものがどうかする。リスクマネジメントが出ていない中で焦って出すことが、逆に私はモラトリアム、もっとひどい結果を招くと思う。そういうトータルの観点でいかにこの問題を考えるかということが必要じゃないかと言っているわけです。

 もう一度質問します。日本として、ロシア、フランス、ドイツをまさにこの復興の支援の俎上にのせるような外交的な努力を、まさに国連加盟、国連の拠出金二割を払っている、世界第二位を払っている日本として行うべきではないかということを聞いているのでありますが、総理、お答えください。

小泉内閣総理大臣 私は、国際協調体制を築いていくべきだ、国連の関与を強めていくべきだということは事あるごとにアメリカ側にも表明しておりますし、フランスにおいても、ドイツにおいても、国連においても、米英軍の駐留は認めております。撤退しろなんて一言も言っていません。むしろ国連も、今イラクの復興支援にどうかかわろうかと真剣に悩んでいる、そういう状況で、私は、日本としては、米英軍のみならず、国際社会、フランスもドイツも含めて、関与する形でこのイラク復興支援に当たるべきだという考えを持っておりますし、その努力を続けております。

前原委員 政治家というのは、そういう考え方を持っていて、ではどう行動するのかと。特に、総理は日本国の、まさに国連へ拠出をしている第二番目の大国の総理ですよ。

 ある新聞社のインタビューに前の国務次官補のジョセフ・ナイさん、この方が答えているのはまさに、これは我々と根本の立場は違いますよ、つまりはジョセフ・ナイ氏は、日本が基本計画をまとめて、そしてアメリカに協力することは、それはよかったという前提で言っているんです。それは率直に認めた上で、彼はどう言っているか。巨額の費用も出す、そして実際問題自衛隊も出す、それだけの貢献をする日本が、そういった協力というものをてこにしてアメリカの単独主義行動を、いかに国際社会が協力してそれが構築できるようにするか。そういうために、それをてこにしっかりとアメリカに対して物を言うべきではないか。そして、アメリカも実は国務省と国防総省の中での路線対立がある。そういったものをしっかりと日本も踏まえた上で、人も出す、そして資金も出す、それをてこにして、アメリカにも働きかける、あるいはフランスやドイツにも働きかける、ロシアにも働きかける、そういった努力をすべきではないかということをおっしゃっている。我々は本当にそういう思いを持っています。

 今、総理からは、方向性としてはそういう思いを持っているとおっしゃいましたけれども、ではどういうアクションを起こすのか、どういう行動を一国の総理として行われるのか、そのことについての決意をお伺いしたい。

小泉内閣総理大臣 方向性も一致しておりますが、実際の努力も今まで私はしてまいりました。ブッシュ大統領に対しても、シラク大統領に対しても、シュレーダー首相に対しても、同じであります。これからもその努力は続けていかなくてはなりません。

前原委員 ぜひ積極的に努力はしていただきたいと思います。

 また、先ほど少し触れましたけれども、このたびウォルフォビッツ国防副長官が、アメリカに協力しない国は復興支援事業から外す、こういう物言いをして物議を醸し出しております。おもしろいのは、ネオコンの代表者と言われているウォルフォビッツのその発言に対して、ネオコンの論理的な形成者であると言われている人たちが、愚かだ、こういう発言をしているんですね。ウィリアム・クリストル、ロバート・ケーガン両氏、この両氏はネオコンのいわゆる論理的な支柱というふうに言われていますけれども、その人たちでさえ、何というばかげたことをやっているんだ、発表しているんだと、こういう言い方をしていますが、この協力した者しか復興事業にかかわらせないというアメリカ、特にこのウォルフォビッツ国防副長官の発言に対して、総理はどういうふうに思われますか。

小泉内閣総理大臣 私は、アメリカ一流の外交的駆け引きもあるんだと思います。これからイラクの債権問題も絡んでおります。結果を見守らなきゃどういう結論になるかわかりませんが、今国際協調体制をとろうと努力している最中でありますので、見通しについてははっきり申し上げる段階にありませんが、私は、国際協調体制をつくるためにも、今回のほかの国を排除するということについては感心しておりません。

前原委員 総理が指摘をされたように、外交的なカードに使おうとしている部分もあると思います。十五日からですから、日本でいえばきょうからですか、ベーカー元国務長官がヨーロッパを訪問されて、まさに先ほど話をしたドイツ、ロシア、フランスなどの債権放棄について話し合うと。その前に発表したというのは、まさに総理が指摘をされた部分もあると思いますけれども、ぜひ今答弁をされたように、感心しないということは日本の立場として、私、ちょっとある表を見て驚いたんですけれども、日本の五十億ドルというのは相当な額なんですよね、割合なんですね。

 つまりは、一番お金を出しているのは、今総額で決まっているのは五百五十億ドル、それで、その中でアメリカが出そうと議会が承認したのが百八十六億ドル。その中で、二番目に出すのが、当然これは日本、五十億ドル。一方の攻撃の主体であるイギリスなんて本当に微々たるものですね、EU全体で八億ドルぐらい。そのぐらい大きなお金を出そうとしているわけです。

 これについては、それは立場によって意見の相違があるかもしれませんが、私は、やはり、それぐらいのお金も出す、そして、今おっしゃったように感心しないということであれば、しっかりと発言をする、物を言っていく。

 特に、私は、こういう民主主義国家においては、トップだけが外交の機微をわかっていて外交を進められるような状況ではないと思うんですね。国民の理解、世論の後押しがないと外交というのはなかなかできない。長いスパンで考えたときに、本当に同盟関係が必要ということを思うのであれば、アメリカに対しても言うべきことを言っていかなければ、常にアメリカに対しては弱腰だと見たら、国民が同盟関係に対する疑問を呈する。そういう意味からも、感心しないとおっしゃった総理のその言葉をぜひしっかりとアメリカにも発言をし続けていただきたいというふうに思います。

 さて、次の論点について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、総理、イラクにおいて戦争というのは終わっているんでしょうか。アメリカが攻撃をした、アメリカ、イギリスによる攻撃が行われた。アメリカは戦争終結宣言をしましたけれども、本当に戦争は終わっているんでしょうか、どう思われますか。

小泉内閣総理大臣 私は、イラクにおいては、主要な戦闘は終結したけれども、完全に戦闘状況は終わっているというふうには見ておりません。危険な地域もあるでしょう。テロの攻撃もあるということを見れば、完全に終結したとは言えないと思っております。

前原委員 ということは、非戦闘地域、戦闘地域という概念というのは、これは法律の求める要件ではなくて、今の総理だと、実際問題、戦闘地域もある、イラクの中には。そういう判断でいいですね。

小泉内閣総理大臣 実際において、私は、非戦闘地域は存在すると思っております。

前原委員 いや、私が伺っているのは、戦闘地域があると。

小泉内閣総理大臣 非戦闘地域があるということは、戦闘地域もあるということであります。

前原委員 それでは伺いますけれども、二人の外交官が亡くなられたティクリートあるいはバグダッド、そしてそれを一つの三角形の一辺にするスンニトライアングルと言われる地点、これはまさに、いろいろな事件、テロあるいは反撃、そういったものの九三%が集中していると言われている地域ですね。あるいは、日本が今度出すサマワ、これは南部の方でありますが。ティクリートは戦闘地域ですか、バグダッドは戦闘地域ですか、あるいはサマワは戦闘地域ですか。総理がお答えください。

小泉内閣総理大臣 現時点で、どこが戦闘地域とかいうことを限定することは難しいと思います。

前原委員 だったら、何をもって戦闘地域があると判断されたんですか。総理がお答えください。

石破国務大臣 結果としてそういうことは起こり得ることでございますが、この法律において求められていることは、イラクを戦闘地域、非戦闘地域というふうに二分をすることではなく、自衛隊が活動する地域は非戦闘地域でなければいけないということが求められておるわけでございます。

 現象として、国または国に準ずる云々という現象がイラクの中で起こっている、それは否定し得ないことで、総理がお答えになったとおりでございますが、この法律において求められていることは、自衛隊が活動するところは非戦闘地域ということは委員御案内のとおりでございます。

前原委員 総理は明確に戦闘地域があるとおっしゃったんです。戦闘地域があるし、非戦闘地域があるとおっしゃった。

 私どもが問題としたいのは、これは送られる自衛隊員のためでもありますが、法律の要件で線引きをする概念で話をしたいと思っているんじゃないんです。実際問題、イラクの現状に合わせて線引きをしなきゃいけないと思っております。そのときに、この地域はどうですかということについて答えられないというのは、戦闘地域がある、非戦闘地域があると、実際においておかしいじゃないですか、それが言えないというのは。

石破国務大臣 それは午前の質疑でもお答えをしたことでございますが、私どもは、非戦闘地域でなければ活動してはいけないということがまずございます。しかし、それが国、国に準ずる組織であろうがなかろうが、自衛隊が持ってまいります装備あるいは与えられた権限、持っておる練度等々からして、これはとても危険を抑止もしくは回避することができないということになれば、その地域において活動するということは抑制的でなければいけない。

 それは、相手の主体が何であるとしても起こっておることは同じ。そして、能力、装備、権限、それで回避できないとすれば、そこでは活動できない。これは何ら矛盾をするものではございません。そこは委員おわかりいただけると思います。(前原委員「わかりません」と呼ぶ)わかりませんか。

前原委員 法律の概念で線引きをしなければいけない、つまりは、法律の要件というのは非戦闘地域しか自衛隊は出せない、そういうおっしゃり方はわかります。しかし、現実に送られる隊員からしてみれば、そんな法律の概念で、非戦闘地域と戦闘地域を分けて、その非戦闘地域というものしか送れないということではなくて、実際にイラクに送られるわけですよ、自衛隊員は。そうしたら、送られるところが戦闘地域か戦闘地域でないのかということを確定するのは、決めるのは当たり前じゃないですか。だから私は聞いているわけです。ティクリートはどうですか、バグダッドはどうですか、サマワはどうですかと聞いているわけです。

石破国務大臣 それは、現段階におきまして、基本計画を閣議決定したという段階でございます。それは実施する区域の範囲を定めただけのものでございまして、現在、実施要項というものを策定中なわけでございます。そこにおきまして、活動する区域の範囲というのは、それは非戦闘地域ということになるということでございます。

 それは、委員おっしゃいますように、この条文において、現に戦闘が行われていないところ、そしてまた活動の期間を通じて戦闘が行われることを予測されない地域で活動するということになっておるわけでございますが、同時に、この法律の組み立て方からいたしまして、自衛隊の権限、能力、装備をもって危険が抑止、回避できなければ、それはやはりその地域において活動はできない。二つの意味があるということは御案内のとおりでございます。これは決して矛盾するものでも何でもございませんし、派遣される隊員にさらなる負担をかけるというようなことは排しておるものだと私は思います。

前原委員 ですから、ティクリートはいいですよ。ティクリートは外しますが、実際問題、航空自衛隊を送ることになれば、クウェートあるいはアンマンから実際、バグダッド空港に対しての空輸というのはあり得るわけでしょう。そしてまた、サマワに送るということが言われていますよね。ということになれば、我々からすれば、あるいは自衛隊員一人一人でもいいけれども、単純な質問として、バグダッドは戦闘地域ですか、サマワは戦闘地域ですかと聞くのは何の問題があるんですか。そのことを率直にお聞かせいただきたい。それだけですよ。

石破国務大臣 現在、それでは、バグダッドは戦闘地域かと言われて、そうではありませんともそうですともお答えすることは適当ではないと思っています。

 私が申し上げておりますのは、二つあるんですね。一つは、国または国に準ずる組織であるかどうか。それは主体の問題です。起こっていることは同じであっても、それが国または国に準ずる組織である場合とそうじゃない場合と違います。それが一つ。もう一つは、その攻撃自体が……(発言する者あり)ごまかしていません。よく聞いてください。これは、法律というのはそういうもの。定義をきちんとしないで議論しても意味がありません。一つは主体が何であるかということと、もう一つは、その攻撃自体が行われるのか行われないのか、この二つで判断をしなければいけないと思っています。

 その場合に、バグダッドにおいてそのような攻撃が行われるのか行われないのか。行われないということは、抑止が行われているということを逆に言えば意味すると思いますが、どういう場合にその攻撃の抑止が行われているか、そういうことからして判断をすべきものと考えています。

前原委員 先ほど一番初めに総理は、主要な戦闘は終わったけれども、まだ戦闘状況にある地域はある、したがって、非戦闘地域もあれば戦闘地域もある、こうお答えになって、それについては石破防衛庁長官も同意をされているわけです。つまりは、そこがまさに出発点で議論をしなきゃいけない。

 そして実際問題、先ほど申し上げたように、スンニトライアングルと言われるところに、これは政府からの説明で伺いましたけれども、九三%のいわゆるそういうテロというか、そういうゲリラの襲撃というものがあるわけですよね。ということになれば、そしてまた、イラク、バグダッドでも相当人数が今もまだ、米兵も含めて、残念なことながら亡くなられ続けているわけですよ、実際問題。

 ちょっと古い資料ですけれども、十二月八日、つまり一週間ほど前でありますけれども、アメリカ自身の戦闘終結宣言が行われて以降、米兵で亡くなられた方は百九十二名、しかし敵対行動以外で亡くなられた方は百十四名おられて、全部でいうと三百六名なんですね。事故とか、あるいは自殺という方もおられるみたいですね、自殺されている方がおられる。

 そういうことを含めると、また、さっき申し上げたように、そういう襲撃とかが行われているのは、バグダッドも含めたスンニトライアングルです。もう一遍言いますよ。バグダッドも含めた、バグダッドも全然治安上安全な状況ではない、なかなか守れないような状況にあるということは、これは長官も御存じだと思います。

 しかし、そのバグダッドに航空自衛隊を送るということになれば、バグダッドが戦闘地域か非戦闘地域かということを明らかにしなければ出せないわけじゃないですか。今、先ほどおっしゃったのは、要は実施要項を出す、そして最後に出すときに、バグダッドは戦闘地域か戦闘地域でないかということを明確に国民の前に示す、その理由もちゃんと明らかにするということですか。今言えないということをおっしゃいましたよね、先ほど防衛庁長官は。

石破国務大臣 現在作成中でございますので、それがバグダッドということになるのか、あるいはバグダッドの特定の地域を指したものになるのか、あるいは特定の施設を指したものになるのか、そのことは今決まっておりません。いろいろな議論がございます。

 いずれにしても、その地域というものを、これは基本計画ではなくて実施要項でございますから、その地域をすべて明らかにして、これがなぜそのような指定をするに至ったのかということをすべてつまびらかにすることが必ずしも適当だとは思いません。それは逃げておるわけではございませんで、その地域ということを明定し、そしてなぜその判断をするに至ったかということを表に出すことによって、それを判断するに至った経過における外国との関係、つまりいろいろな情報を交換し、その判断をするに至るわけですね。そしてまた、それを明らかにすることによって、手のうちという言い方をしますのは委員に対して失礼な言い方なのかもしれませんが、それを明らかにすることになる。しかし、いずれにしても、我々が行動を行うところが非戦闘地域でなければいけない、それは相手の主体、あるいは攻撃の有無、この両方から判断をされるということなのだと私は思っています。

 そういうことで、私の理解が足りなければお許しをいただきたいのですが、委員がそこに意味といいますか、非戦闘地域でなければいけない、それは隊員の安全を確保するということなのか、憲法に抵触してはいけないということなのか、どこに着目してそういう御議論をしておられるのか、御教示いただければまたいろいろなお答えの仕方があろうかと思います。

前原委員 いや、簡単なんです、防衛庁長官。

 要は、この法律には、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施されている活動の期間を通じて戦闘が行われることがないと認められる地域にしか出せないと法律が書いてあるんですから。だから、そのことをちゃんと説明責任は要りますよと。失礼かもしれませんけれども、結果的に逃げておられることになりますよ、国民に対して。

 だって、この法律に基づいて、まさに今焦点になっているのは、イラクのどの地域が戦闘地域で非戦闘地域なのかということの区別がなかなかつかないといったところで我々議論をしているわけです。法律に基づいて送られるんですか。法律に基づくかどうかというところで、まさにバグダッドの空港に航空自衛隊を送るとすれば、バグダッドが戦闘地域か戦闘地域でないかをしっかりと説明することは、これは防衛庁長官の説明じゃありませんか。

 先ほど、施設とかおっしゃいましたね。では、そのことについて私もつけ加えます。後で質問しようと思ったので。この間、バグダッド空港でC17が被弾しましたね。つまりは、陸は危ない、空は大丈夫だろう、こういうふうに初めは言われていたけれども、実は空も危ないんじゃないかというふうに言われているわけです。だから、そのことも含めて、さっき防衛庁長官がおっしゃったことをなぞらえて言うのであれば、隊員の命も考えて私は質問しているわけです。

 空も危ないかもしれない。つまりは、今、らせん状におりてくる、らせん状にまた上がっていって、できるだけロケット砲など、あるいは地対空ミサイルなどの当たらないような状況の中で訓練をしているという話を聞いていますけれども、実際問題、バグダッド空港の周りですらそういう状況ですね。ということは、もし国民に対して、この法律に基づいてしっかりと説明責任を果たして、バグダッド空港にも行けるんだという説明をするには、まさにバグダッド、あるいはバグダッド空港、あるいはその近くも含めて、どこが非戦闘地域なのかということをやはり明らかにしなきゃいけないと思うんですよ。そうしないと、私は、法律にのっとって自衛隊を出すということにならない。

 ここは大事なポイントなんですよ。ここのポイントが、まさに自衛隊をどこに出すか出さないかの大きなポイントですから、そのことについてはちゃんと説明されなきゃいけないでしょう。

石破国務大臣 繰り返してのお答えで恐縮でございますが、実施要項に示すことになります実施の区域、それをすべてお示しするということは、先ほど申し上げました理由によりまして、必ずしも適当ではないと考えておるところでございます。

 なぜそのような情報を得るに至ったのか、そのことは委員も御経験が深いからよく御案内かと思いますが、なぜそういう判断をするに至ったのかということを決める間にいろいろな情報の交換がございます。それを明らかにすることは、これから先の情報の入手、交換、隊員の安全を確保するものにならないと私は思っています。

 もう一点は、C17の御指摘がございました。同じ考えは、私自身、委員と共有するものでございます。スパイラルでおりてくれば大丈夫だということを言った場合に、それでは、あのカーゴ機、あるいは今回のC17、これを攻撃した兵器が何であり、その射程距離がどれくらいであり、射高がどれぐらいであって、どのようにすれば本当にあのような攻撃ということから守ることができるのかということはきちんと明らかにする必要があると私は思っています。その点は、いいや、わからないからそのままというようなことにはなりません。この点については、私も強い問題意識を有して、確認作業を今最大の努力を傾けて行っておるところでございます。

前原委員 個別の場所をしっかり示すことによって、それが隊員の安全の確保につながらなくなる可能性があるという理屈は一面わかるんです。わかるんですけれども、それは、一番初めに総理に対して私が質問をした政府としての説明責任、では、戦闘地域と非戦闘地域に分けて、非戦闘地域には出しますというふうなことを言うわけですね。そうすると、送られる地域が本当に非戦闘地域かどうかということは説明責任を果たす義務があるじゃないですか。そのことが、まさに隊員や国民への説明責任じゃないんですか。それを隠してしまえば、どこに送ったっていい、この法律がまさに前提として成り立たないということになりませんか。それはやはり隠していること、逃げていることになりますよ。

 そのことが明らかにならないと、私は、それを実施要項でも明らかにしないということになれば、それは大変大きな問題になると思いますよ。

石破国務大臣 委員は決して比較考量という意味でおっしゃっておられるのではないと思います。私は、それを明らかにすることが隊員の安全確保につながらないのでということを申し上げているのであって、それは決して説明責任と比較考量で論ずるべきものだとは思っておりません。

前原委員 では、簡単に防衛庁長官に聞きます。実施要項の中に地名は入らないんですか。

石破国務大臣 現在、策定中でございます。

前原委員 入るか入らないかを聞いているんです。そこのポイントは大事なんですよ。よくわかっておられるでしょう。入るか入らないか、イエスかノーかで結構です。

石破国務大臣 地名というのにどこまで限定をしておっしゃっておられるのか。すなわち、テロ特のときは、行いました活動が洋上でございましたので、東経とか北緯とか、そういうふうな使い方をしたという経緯があったのかもしれません。私も、当時の責任者ではございませんので、つまびらかには存じませんが。ただ、今回は陸上ということを考えましたときに、今、委員が地名とおっしゃいますのは、どこまでを指しておっしゃっておられるのか、お教えいただければと存じます。

前原委員 いや、私が質問しているんです。つまりは、どういう書き方か含めて、地名は入るのか入らないのかと。それを決めるのは政府なんです。私に聞かれても困りますよ。入るか入らないかを聞いているんですよ。

石破国務大臣 基本計画で書いておりますのは、イラク南東部ということを書いております。これも地名といえば地名なのですね。

 それで、実施要項になりましたときにどこまで書くのか。例えば、何々県あるいは何々市、あるいは、日本のように何丁目ということはないでしょう、しかし、何とか地区というような形になるのか。そこにおいて、実施要項の中で定められる実施区域というものがどのような意味を持つのか。すなわち、ある幅を持たせて、つまり、ニーズは可変的なものですから、例えばある地域に水のニーズがあった、それがほかの地域に移るかもしれないということも含めまして、どこまでの範囲で書くのかということを現在検討しておるということでございます。

 そういう意味で申し上げれば、地名という形で、区域を区切った形の定め方になるということは当然あり得ることでございます。

前原委員 それを初めから御答弁いただければもう少し話が進んだと思うんですよ。つまりは、我々が、本当に戦闘地域、非戦闘地域でないのかということについて、やはり説明責任を果たしてもらわなきゃいけない。

 それと同時に、これは総理にお答えいただきたいんですが、きのう、フセイン元大統領が拘束をされて、どういう状況になるのかわかりません。しかし、フセインの残党とともに一番怖いのは、アルカイダなどのテロ組織がイラクに結集をしてきていて、そして、八月ぐらいから、いわゆるソフトターゲット論というのが出てきた。つまりは、アメリカのみならず、アメリカに協力をする、それは国連であろうが民間人であろうが、すべてを攻撃の対象にするということを言って、そしてまた、ブラフかどうかわからないけれども、日本の自衛隊がイラクに足を踏み入れたときには東京がテロの標的になる、そういう話がありました。それは万全を期してもらわなきゃいけないということはありますけれども。

 そういうことを考えると、例えば、今安全だと言われているサマワでも、仮に安全だ、非戦闘地域であると言われても、そういうソフトターゲットをねらうというテロ組織がいる以上は、必ずつけねらわれることになりますね。そのことが、まさに、先ほど総理がおっしゃった、主要な戦闘は行われていないけれども、そういったつけねらうという形での戦闘が行われる可能性というのはあるわけです。

 そうなる可能性がある中で、本当に自衛隊をそういう危険を冒して出す決意をされているのかどうか、もう一度答弁いただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 イラクの南東部においても、可能性を言われれば、私は、ないとは言えないと思っています。だからこそ、安全面には十分配慮しなきゃいかぬ。自衛隊を派遣する際には、いろいろ情報を調べて、安全面に十分配慮する。今、比較的安全な地域においても、場合によっては、可能性はどうかと聞かれれば、全く可能性はないとは言い切れないということはやはり認めざるを得ないと思うのであります。そういうことを前提にして、安全面については十分配慮していく、これが私は必要だと思っています。

前原委員 時間が参りましたので最後にいたしますが、私は、実は、今の安全面の確保と、先ほど情報のことを申し上げました、これは極めて私は重要だと思うのは、今回亡くなられた二人の方の遺志を継ぐという言葉が、私からすれば、少し軽々しく言われ過ぎているのではないかという気がしてならないんですね。私は、この二人の方々の殉職というものをむだにしないためには、やはり同じ間違いをしちゃいけない、そういう思いを持っているんです。

 つまりは、特に奥大使についてはCPAの中で本当に主要な役割を果たしておられて、そして、ロシアなんかは大使館からまさにイラク人を外すぐらい、どこから情報が漏れているのかわからないということを、本当にぴりぴりし始めているわけですね。つまりは、CPAに出入りしているイラク人もいっぱいいるわけです。その中で、例えば黒のランドクルーザーで移動していたのはこれは奥大使であるということが、もうCPAの中では明らかになっていたわけですね。そういった意味で、私は、外務省の危機管理に対する甘さというものがあったんだろうと思います。

 私は、本来ならば、お二人に敬意を表し、またお二人の遺志を継ぐということであれば、その安全確保に誤りがあった、あるいは非常に遺漏があったということをしっかりと認めた上で、今後どうしていくのか、情報管理、情報収集、そして危機管理、送った自衛隊員が本当にそういう目に遭わないための準備というものをやはりやらないと、私は、広い意味で、お二人の遺志を継ぐことにならないと思います。

 今、総理がおっしゃったことを、言葉だけではなくてしっかりと、我々はイラクに今自衛隊を派遣することについては反対ですよ、反対ですけれども、もし政府の意思としてやるということであれば、それは、少なくとも今の言葉というものの重みを総理自身がきっちりととらまえて、そして遺漏なきよう努力していただきたい、そのことを私は最後に申し上げまして、質問を終わります。

斉藤委員長 この際、岡田克也君から関連質疑の申し出があります。前原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。

 まず、質問に先立ちまして、総理に一言お聞きをしたいと思います。

 さきの総選挙が終わった直後だったと記憶をします。総理は、自衛隊をイラクに派遣することがこれで国民に支持をされた、つまり、選挙の結果、与党が勝ったことが、国民がイラクに自衛隊を出すことを支持したことにつながる、そういうふうにおっしゃったと思いますが、今もそういうお気持ちですか。

小泉内閣総理大臣 私もそう思っています。

 イラク支援法を、日本として必要だということで、当時、自由民主党、公明党、保守新党、三党で協力しながら成立させました。そして選挙中にも、この三党の連立体制をつくって、日本としては自衛隊も含めた人的貢献もイラク復興のためにするということをはっきり述べておりました。そういう点から、国民が自民党、公明党、保守新党合わせて安定多数の議席を獲得させてくれたということは、この考え方について基本的に支持をされたと思っております。

岡田委員 私は、今の総理のお言葉には異論があります。

 今の世論調査を見ても、国民のまだ過半数はイラクへの自衛隊派遣に反対をしておりますし、総理は総選挙の最中に、何度か私は総理の街頭演説、後でビデオで見せていただきましたが、その話題の中でイラクの話はほとんど出ておりません。つまり、総理は、イラクへの自衛隊の派遣の問題を選挙の争点にすることを避けながら戦われた。だから、私は、今総理が言ったことは当たらないと思いますが、しかし、きょうはテレビも入っておりますので、テレビを見ておられる有権者の皆さんにも一言申し上げたいと思います。

 よく政治は関係がないとか、どうでもいいという声を聞きます。現実に、さきの総選挙も、投票率は非常に低かったわけであります。しかし、やはり大きなことを決めるのは政治であります。今の総理のその物の言い方に私は異論はありますけれども、しかし、もし民主党政権ができれば、自衛隊がイラクに出ることは今の時点ではなかったわけです。そういう意味で、やはり私は、国民の皆さんに、もっと政治に対してしっかり関心を持っていただきたい、そして、皆さんのそれぞれの投票行動がこの国の行く末を決めるんだということをまず申し上げておきたいと思います。

 さて、質問に入ります。

 まず、総理は、私は先ほどの前原さんの意見と共通するわけですが、説明責任を十分に果たしておられないと思います。十二月九日の総理の記者会見、私はそれを見ておりまして、とても納得のできないところが幾つかありました。その点を中心に、まずお聞きをしていきたいと思います。

 まず、総理は、きょうもそうですけれども、自衛隊派遣はイラクの人道復興支援のためだ、このことを何度も強調されました。人道復興支援のために自衛隊が行くんだということであります。しかし、この法律は、自衛隊をイラクに出す目的は一つではありません。もちろん、人道復興支援は一つの目的であります。しかし、それに並んで安全確保支援活動というものも規定をされている。そもそも、法律の目的そのものが、名称がイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法であって、そこはまさしく並列されているわけであります。そのうちの一方だけを殊さらに言うということは、私は、国民に対する説明として誠意を欠いていると思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 中心的な役割は、復興支援、人道支援なんです。自衛隊は、戦闘行為にも参加しませんし、治安維持活動、これにも参加するということではありません。そういう面で、戦闘行為に行くわけじゃない、戦争に行くわけじゃない、復興支援、人道支援に行くんだということでございます。

 また、最初の質問でありますが、選挙の争点というのは一つだけじゃないんです。政党は、外交だけじゃない、内政、外交、全般にわたる問題、政党の日常活動、候補者のいろいろな日常活動、一つだけ争点になる、一つだけで判断するものじゃないんです。その点は私は御理解いただけるんだと思っております。

岡田委員 せっかくの総理の御答弁ですから申し上げますが、大体、総理は街頭演説、二十分ぐらいされているんですね。その二十分のうちの十五分ぐらいは郵政の民営化と道路公団の民営化なんですよ。イラクの話なんかほとんど出てこない。そのことを申し上げておきたいと思います。

 総理に、さきの質問についてお聞きしますが、人道復興支援についての必要性は、総理は記者会見で述べられたかもしれません。それでは、述べられなかった部分、つまり安全確保支援活動の必要性について、今ここで国民に向かって述べてください。

小泉内閣総理大臣 人道復興支援活動をする地域においては、安全確保をしなきゃできないんです。ある地域に自衛隊が出かけますね。これは、やはり安全面に配慮しろということはさっきの前原さんも言われた。これは自衛隊だからこそできる安全確保支援活動があるんですよ。人道復興支援活動の際にも、無防備でいたら、これは危険な場合がある。だから、復興人道支援活動についても、自衛隊がやる場合は、その復興支援活動、人道支援活動が、安全が確保されなきゃならない。そういう点は、やはり自衛隊は、安全確保活動しなきゃ隊員の皆さんも安心して活動できない、その点はよく御理解いただきたいと思います。

岡田委員 総理は今、隊員の皆さんも安全に活動できないとおっしゃいました。私は、総理官邸で総理から基本計画ができたときの説明を受けて、総理は基本的なことを誤解しているんじゃないかといまだに疑っているんですよ。つまり、安全確保支援活動というのは自衛隊の安全確保を支援するための活動であるというふうに思っておられるんじゃないですか。違うんですよ。これは米英軍などの、例えば戦闘を行っている英米軍なども含めて、そういったところに対する支援活動、それが安全確保支援活動じゃないですか。総理、それに対して、なぜ必要なのかということを説明してくださいと申し上げているわけです。

小泉内閣総理大臣 それは、非戦闘地域で、治安活動をやっているところで自衛隊が活動するわけじゃないんです。比較的、今言いますと、基本計画では、イラク南東部ということを想定しております。そういう際に、復興活動、人道支援活動については安全を確保しなきゃならない。同時に、その周辺で、米英軍以外に今ではオランダ軍も参加している地域もあると思います、南東部で。そういう点については、安全確保の支援活動という点は、私は考えてもいいのではないかと思っております。

岡田委員 私は、必要性を聞いているわけです。

 例えば、空港から空港に航空自衛隊が輸送をする、これは別にイラクの南西部に限る話じゃありません。ただ、バグダッド空港に自衛隊機が、C130が輸送をする、それは自衛隊の荷物ではなくて、例えば米軍の荷物である、これも活動の中身に含まれていると思うんですね。そういったことをする必要性について、きちんと総理は説明しておられないんですよ。人道復興支援活動については説明されました。しかし、そういった他国の軍隊を支援する活動がなぜ必要なのか、なぜ今日本がしなければいけないかということについて、明確に説明しておられないから、今この場で説明してくださいというふうに申し上げているわけです。

小泉内閣総理大臣 それは、英米軍に物資的な支援活動もできます。掃討作戦とか治安活動には参加できませんけれども、各国が、復興支援、人道支援、米英軍は、戦闘活動のみならずイラクの復興活動にも人道支援活動にも当たっていると思うのであります。そういう点について物資の輸送とか人員の協力とか、そういう点については、やれることがあればやるべしと私は思っております。

岡田委員 例えば米兵に、はっきり役割分担がされていて、この人は治安活動をする、この人は人道支援する、そんなこと決まっていないわけですから、バグダッド空港までは米兵を運ぶ、その米兵が治安活動あるいは戦闘行為することもあるし、人道支援することもあるわけですよ。

 総理は、あくまでも人道支援で全部説明しようとしていますが、そうじゃないんですよ、この法律は。そのことを私は申し上げているんです。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 詳しいことは官房長官から話しますが、そういう支援活動はできるというふうに規定されておりますが、それでは、水を持っていった、食糧を持っていった、その水を飲む、食糧を食べる、それを米軍が、いざ、食べてから戦闘活動行ったというんだからこれは戦闘活動と言われちゃ、これは困っちゃう。それは、そこまでは、日本は物資を持っていくことはできるんですよ、それを食べるな、使うなとは言えないでしょう。しかし、日本の自衛隊が戦闘活動に参加するということじゃない。そこまで厳密に、日本の持っていったのは全部戦闘活動に使っちゃいかぬ、そこはちょっと、そこまで言うのはどうですかね。

 物的支援もします、人道支援もします、復興活動もします。あるいは病院、協力します、兵士がけがを負ってやってきた、治ったらまた行く、戦場に行くというんじゃ治療しないと言ったんじゃ、それこそできないでしょう。そういう点は、やはりもっと常識的に考えていただければいいんじゃないか。

岡田委員 問題がいつの間にかすりかえられているわけですが、つまり、総理は人道復興支援しかしないと言っておられますが、そうじゃないということ、それを国民に対してきちんと説明すべきだということを私は申し上げているわけです。

 では、具体的な話をちょっとしますが、総理は、武器弾薬の輸送はしない、こう言われました。その翌日、官房長官が、いや、武装したというか、武器を携帯した兵員の輸送はやるんだというふうに言われました。総理は、その官房長官の発言に対してはイエスなんですかノーなんですか。

小泉内閣総理大臣 それは、武器弾薬は運ばない。しかし、これは自衛隊の諸君だって武器を持っているんですよ、自分の安全を。それを、自衛隊の運ぶのにも、あなた、自衛隊の小銃をおろしなさい、そこはできないでしょう。米軍においても、協力してくれたオランダ軍に対して、復興支援活動、日本と協力してやった、たまたま腰のところかどこかにやはり弾薬を持っていた、小銃を持っていた、それを外せと言うことはできますか。

 そういうことは、私は武器弾薬には入らないんじゃないかと。日本としては武器弾薬を運ばないとはっきりしているんです。人が持っている、自衛隊諸君だって武器を持つんですから、みずからの身を守るために。それも外していけ。そこまで武器弾薬に当たるとは言えないんじゃないでしょうか。

岡田委員 全く議論がすりかえられているんですが、自衛隊の武器は、自衛隊は運ぶんですよ。今度持っていく武器については自衛隊は当然運ぶんですよ。別に携帯しているものだけじゃありませんよ。しかし、米軍のものについてどうか。そして、総理は明確に、いや、武器弾薬は運ばないとおっしゃった。そう言いながら、もう翌日には違うことを言っているから私は申し上げたんです。

 では、武器を携帯した米兵は運ぶ、そういうことでよろしいわけですね。

福田国務大臣 では、私からお答えしますけれども、武器弾薬を運ばないというのは、これは総理が人道支援、復興支援、こういうふうなことでそれを重点に置きたい、こういうようなことで明確に、武器弾薬は運ばない、こういうふうに言われたわけでございまして、そういうことでそれは運ばない。これは、運用上そういうことにできるということに、今防衛庁長官ともお話ししましたけれども、できるということでございますので、そうしたいと思います。

 そして、兵員を運ぶときに銃を持っていたらその武器を運ぶんじゃないか、こういう話ですけれども、これは武器を運ぶんじゃなくて兵員を運ぶんですよ。武器弾薬のために輸送するんじゃないんです。そこのところはやはり考えなければいけない。

 そして、その兵員が、では戦闘行動ばかりしているのか、そういうことではないでしょう。先ほど来お話ししているとおり、イラクにおいては主要な戦争は終わった、しかしテロ行為が方々である、それを守らなければいけない、場合によっては抑止的な効果もあるかもしれぬ、そういうものは持っていなければいけない。

 ですから、そういう兵員がすべて戦闘行為をするんだというわけではない。しかし、それを区分けはすることはできない。しかし、仮に銃を持っているとかいうようなことがあっても、では、警察官を運ぶときにピストルを持っている、それはいかぬということを言っているわけじゃないんでしょう。

 ですから、兵員がピストルでなくて、短銃でなくて、少し長目の銃を持っている、そういうのは通常あることですから、そういうものは、仮にそういう兵員を運んだとしても、それは総理が言われる武器弾薬を運ばないという趣旨に反するものではない、こういうことでございます。

岡田委員 武器弾薬は運ばないという総理のお言葉ですが、それじゃ、例えば米軍の運ぶべき荷物についてチェックするんですか。そんなこと、できっこないでしょう。武器が中に入っているか、その中に小さな武器が入っている、そういう話を私はしているんじゃありませんよ。しかし、弾薬とか、それが弾薬なのか食糧なのか、そんなことは現実にはチェックできないし、それはある意味では大変な秘密ですから、そんなことはできないんじゃないですか。

石破国務大臣 これは、委員もコアリションというものの性質をよく御案内のことかと思いますが、それぞれの国が何ができるか。すなわち、例えばアメリカから、じゃ、Aという国はこれをやれ、Bという国はこれをやれ、Cという国はこれをやれ、そういうお話ではございません。何ができるか。日本としては武器弾薬は運ばないということを申し上げ、しかしながら、常識の範囲として、自分を守るための武器弾薬を携行する、そういうような兵員の輸送は行う。例えばそういうふうに申し上げて、日本はそれしかできないんだね、逆に言えばそういうことができるんだね、それを持ち寄って、そしてコアリションの中で何をやるか、何を運ぶかということが決まってくるわけでございます。

 それはお互いの信頼関係であり、武器弾薬を運びますよという国、どことは申しませんが、それがあるとすれば、その国がそれを運ぶことになるのでしょう。そのときに、一つ一つあけてみて調べろというようなことを言っていたら、これはコアリションなんぞというものは成り立たない、信頼関係というものも成り立たない。

 私は、お互いの信頼関係に基づいて、それぞれの国が何ができるかということをきちんと持ち寄り、それによって効果的なコアリションを形成するのが今回の活動のあり方だと思っています。

岡田委員 私は、今の大臣の発言に対して異論があるわけじゃないんですよ。現実、そうだと思います。

 しかし、裏を返せば、それは、例えば米軍なら米軍に、それを信頼してやる、自分では調べないということですから、信頼してやるということですね。それは、総理が武器弾薬は運びませんといって国民に向かってはっきり明言されたことと余りにも私は距離があると思うんですよ。総理が武器弾薬は運びませんと言ったのは、本当に運ばないということでしょう。それをチェックする、そのことができないんだ、だからそこはアメリカに任せるんだ、私はそれはそういうふうになると思います。

 それであれば、日本としては武器弾薬はなるべく運ばないようにするけれども最終的にはわからないんだというのが、それが本来の言い方じゃないですか。総理の言い方を聞いていると、絶対やらないように聞こえる。そこに私は総理の言い方のトリックがあると思うんです。

石破国務大臣 先生、先生のおっしゃることもわかるのです。しかし、本当に我が国として絶対にこれはやりませんと言って――そちらの方が私はおかしいような気がするんですね。

 我が国として、人道支援物資を中心にしてやります、そして武器弾薬は運びませんというふうにきちんと申し上げる。日本はそうなのか、武器弾薬は運ばないのか、人道支援物資あるいは武器を携行した兵員、そういうものを運ぶんだね、それではそのニーズを日本に与えようね、そのニーズに日本はこたえてねという調整が行われる。それがコアリションというものでしょう。

 絶対に私どもはやりませんということをきちんと申し上げたとしたって、それは何の差し支えのあるものでもございません。それに合った仕事というものが回ってくる。逆に、何でもやりますよという国があった場合には、そこに武器弾薬を運んでもらうということも起こり得るでしょう。コアリションというのはそういうものであって、湾岸戦争時と今回との違い、それはまさしくそこにあると私は思っています。

 お互いの信頼関係でそれは担保されているのであり、日本国としてそれは行わないということをきちんと申し上げることに何の問題もあるとも私は思っておりません。

岡田委員 大臣は問題をすりかえておられるんですが、つまり、アメリカに対して、やりませんときちっと伝えると。いいんですよ、それは。だけれども、そのことの最後の担保はとれていないんですよ。そうであれば、総理は国民に対してそんなことを言っちゃいけないんですよ。そのことを私は申し上げているんです。

 では次に行きますが、法律をつくって以来、総理は、実際に自衛隊をイラクに出すかどうか、それは状況をよく見きわめてというふうにずっと言ってこられました。今回、基本計画ができて、これからいよいよ出ていくということです。状況がどう変わったんですか。状況をどういうふうに見きわめた結果、今回出すということにしたんでしょうか。むしろ、法律ができてから今日までの間にイラクにおける治安状況はどんどん悪化しているというのが現実です。なぜ、法律ができた直後には状況を見きわめてと言って出さずに、今回お出しになるんですか。そこの説明責任が不足しているんですよ。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、我が国の外交官が殺害されたり、あるいは他の国の民間人が殺害されたり、あるいは復興支援活動をしているイラク人が殺されたり、いろいろ安全でない面もあるのは事実であります。

 そういう際に、私は、人的支援をするということを表明しておりましたし、今自衛隊以外の方に、では民間人に行ってくれといった場合に、それはなかなか難しい面もあるのではないか。自衛隊員ならば、非戦闘地域、よく見きわめながら、安全面にも十分配慮しながら復興支援活動ができる分野があるという判断をしたから、自衛隊を派遣するというふうに決定したわけであります。

岡田委員 状況はどういうふうに変化したのかと私は聞いているんです。

小泉内閣総理大臣 状況もいろいろ、各国の軍隊もそれぞれの活動はしております。そういう中で、安全に活動している部隊もあるわけであります。それぞれ、情報交換し、やる分野も違います、また装備も違います。私は、すべてが全く安全と言えない状況でも、危険を回避するすべがある、また自衛隊が活動できる範囲がある、分野があると思うから派遣するわけでありまして、状況がどう変わったのかということをいえば、今必死に各国が努力している。イラク人が今一番支援を求めている。

 確かに、一部には外国の部隊が来ることを望まない人たちもいますが、多数は、何とか安定した民主的政権をつくるためにイラク人が今努力している。希望を持って、イラク人、自分たちの政府をつくりたい。そして、米英初め各国、今国連に来てくれと言っても来てくれない、そういう中にあって、私は、来年できるだけ早く、六月には新しいイラクの政府をつくるために努力している各国と協力して、今自衛隊でもできる分野があるんじゃないか、状況を見て、苦しいけれども、やはり日本として国際社会に責任を果たすべきときだと判断したからこそ、私は自衛隊の派遣を決断したわけであります。

岡田委員 今の総理の御答弁も飛躍があるわけですね。つまり、イラクの国民が自分たちの国を平和で安定した国にしたいと言っていることは、これは事実です。私は大部分の国民はそうだと思います。しかし、そのことと軍隊に来てください、あるいは自衛隊に来てください、これはまた違う話ですから。そこを短絡して総理はおっしゃるわけですが、私に言わせると、十月以降、現実に軍隊を出したのはシンガポールだけです。そしてシンガポールも陸軍は出していないです。そういう中で日本が出すという、それはやはり最初から決まっていたということなんですね。そしてそれを、時期を見ていたというのは国内政治状況を見ていたということでしょう。

 そういうふうに私は上品に言ったんですが、せっかくこの委員会で、今場外で出ていましたから、選挙を見ていたんですよ。つまり、国民に対して説明責任を果たさずに先延ばしをして、選挙が終わったらもう出すということは決めておられたということです。そういうやり方が、私は、国民に対して説明責任をきちんと果たしていないということを申し上げているわけです。

 では、もう一つ聞きましょう。

 先ほど、公明党の太田委員が質問された件に関してもう少し聞きたいと思うんですが、実は、公明党の冬柴幹事長が十二月十一日の公明新聞でこう言われているんですね、陸上自衛隊は、「治安状況が好転するのを見極めて、公明党の意見も十分聞いて判断することになった」と。なったという意味は、それは小泉総理と神崎代表の覚書でなったというのです。総理の認識も同じですか。つまり、状況が今よりも好転して初めて陸自は出せるんだ、こういうふうにもう一方の与党が言っているわけですが、それはそういうことなんでしょうか。そして、では、好転するというのはどういうことをいうんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、七月のイラク支援法が成立する、これは自衛隊を派遣できる法律だ、そして自衛隊を派遣する場合には、状況をよく見きわめて判断するということを言っていたんですよ。選挙中もそうです。選挙が終わってからもそうです。選挙が終わって、調査団も帰ってきました。調査団の報告を聞くと、自衛隊が活動できる分野は十分あるということで、今回自衛隊の派遣を決定したわけであります。

 そして、今の質問でありますが、どういうときに派遣するのかということは、今後与党との調整も必要でしょう、自衛隊の安全面に十分配慮するということも必要でしょう。これはもう政府だけじゃない、自民党、公明党、与党を形成しておりますので、国民の納得を得るためにも、よく協議しながら、そういう点については十分配慮して決定しなきゃならないということを申しているわけであります。

岡田委員 今の総理の答弁は、冬柴幹事長が言われた、状況が好転しない限り出さない、そういう約束はしていない、そういうふうに私は理解をしました。

 それでは、次に参ります。

 総理が記者会見の中で、日米同盟と国際協調の両立ということを強調されました。そこでちょっとお聞きをしたいと思うんですが、まず、この日米同盟と国際協調の両立というのは、具体的にそれは一体何を言おうとしたのか、私にはよくわかりませんでした。まず、御説明いただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日米同盟と国際協調は、相反するものじゃありません。日本の戦後一貫してとってきた方針は、日米同盟、国際協調、これだと思っております。これは現在も、今まで、過去も、将来も変わらないと思っております。

 日本の平和と安全を確保するために、日本一国ではできません、だからこそ、米国と安保条約を締結して、お互いの信頼関係を強めていく、そういう日米同盟を重視していく。

 これから、イラクだけじゃありません、テロ対策においても、あるいは北朝鮮に対する対応においても、さらには海賊等の対策においても、日米協力してやらなきゃならない面がたくさんあります。お互い信頼関係を強めていく。日本にとってアメリカは唯一の同盟国であります。アメリカにとっても、日本というのは信頼に足る同盟国でなくてはいけません。そういうことを考えて、お互いの信頼関係を深めていくような協力体制を形づくっていく。

 それは、安全保障だけの分野にとどまりません。経済の面におきましても、日米協力、これは必要でありますし、なお、国際協調というのは、日本にとっては、世界各国と経済関係、相互依存関係、相互互恵関係を持っておりますので、これからますます、日本と国際社会と歩調を合わせながら、国際社会の中で日本が責任ある一員としての役割を果たしていかなきゃならない。これは、国際協調、もう欠かすべからざることであります。

 そういう点に関して、具体的に、北朝鮮の問題についても、アフガンのテロ対策にしても、そして今度、イラクの復興支援についても、このイラクの復興支援、イラクが破綻国家になったらどうなるか、テロリストの温床になったらどういうことになるのかということを考えると、今苦しいからこそ、私は協力していく必要があると。日本は、イラクの復興人道支援に対しても、まさに国際協調と日米同盟、一番行動で示さにゃならないときだと思っております。このイラクの現在の状況を、テロに屈して日本は人的支援も引き下がるというような状況で果たしていいかというと、私はそう思っておりません。まさにイラクの復興支援というのは、日米同盟と国際協調を両立させる、行動で示すいい時期だと思っております。

 そういう観点から、私は、今までも現在も将来も、日本が平和と安全のうちに繁栄を確保するためには、日米同盟と国際協調の重要性をよく認識して具体的対応をしていかなきゃならないと思っております。

岡田委員 今の総理の御答弁の中で、まず、イラクが破綻国家になったらどうなるのか、そこの問題意識は全く共通であります。しかし、違うのは、だれがそうしたのかということですね。それは、やはりアメリカの単独のイラク攻撃であり、そして同時に、イラク攻撃が終わった後のその具体的な運営のやり方ですよ。そこが完全に失敗しているんですよ。

 そのことは一言申し上げた上で、私がさっき質問したのは、このイラクに自衛隊を出すということに関して国際協調と日米同盟と言われたので、これは具体的に何なんですかということを質問したわけです。

 例えば、私に言わせれば、今、国際協調とおっしゃるけれども、国際世論は、イラクを何とかしていこうという、そこは一致していますけれども、やり方については完全に分かれていますよ。つまり、米英を中心にして軍を出して、そしてその中でイラクを立て直していこうという見方と、フランスやドイツに代表されるように、もう少し国際的な枠組みをしっかりつくって、米英中心ではない中で国を立て直していこうという見方に明らかに国際世論は分かれているわけで、その中で総理が国際協調とおっしゃるから、私には理解できないと申し上げたわけです。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私は全く理解できませんね。

 国際協調と日米同盟を両立させる、これは、フランスとドイツ、これはNATOという相互安全保障体制を持っていますよ。フランスは核兵器を持っていますよ。ドイツ、フランスは、アフガンのテロ対策においては部隊を派遣していますよ。

 日本は、テロ支援活動にも民主党は反対したんでしょう。後方支援でさえも反対したんでしょう。資金的な援助も、額が多過ぎるといって反対しているわけでしょう。今回、自衛隊はだめだけれども民間人を出せと。民間人はもっと危ないじゃないですか。何でも反対で、日米同盟の信頼関係はどうやって築いていくんですか。これからの日本の平和と安全をどういうふうに確保しようと思うんですか。

 イラクをアメリカが――フセインがあんな独裁政権じゃなかったら、イラク国民はもっと安定した政権をつくりましたよ。国際査察と協力すれば戦争が起こっていませんでしたよ。アメリカが悪い、アメリカが悪いと言うけれども、最も残酷な行動をしたのはフセイン独裁政権自身じゃないですか。こういうところを無視しないで。アメリカが悪い、アメリカが悪い、フランスとドイツと一緒になぜ行動しないのか。日本は一国で核兵器を持つ気はない、フランスみたいに。ほかの国と安全保障の、NATOみたいな相互安全保障条約も持っていない。同盟関係を持っているのはアメリカとだけなんです。だから、日米同盟と国際協調、イラクの復興支援、今手をこまねいてどうするんですか。危険なことはほかの国やってください、そんなことで。日本が、国際協調体制、国連がすべての加盟国に、イラクの復興支援に努力してくれと要請を受けている、そういう際に、資金的な支援も、物的支援も、人的支援も、自衛隊も含めてやるというのは国際社会の中で私は必要だと思っております。

岡田委員 国連決議は確かに全会一致です。しかし、それはやはり、フランスやドイツは、これ以上アメリカと対立したらまさしく国際社会は分裂するという危機感の中で、それは十分賛成はできない、自分たちは軍隊を出すことまでは賛成できないけれども、しかしここは協力をして、一致して国連決議を出さなければいけない、そのことで彼らは賛成をした。そのことを総理はわかっておられないと思うんです。今、総理の御答弁を聞いていて、日米同盟と国際協調の両立と言いながら、やはり中心は日米同盟だというふうに私は理解しました。

 そこで、ちょっと視点を変えてお聞きしたい。

 総理がおっしゃる日米同盟、今回はイラクに対する自衛隊を出すということですね。日米同盟という言葉のもとでイラクに自衛隊を出すということは、いつから日米同盟の範囲がグローバルな、全世界的なものに拡大したんですか。何を根拠に総理はそうおっしゃっているわけですか。そこをお聞きしたい。

小泉内閣総理大臣 私は、今回、イラクに自衛隊を派遣するのは、日本の国家利益にかなっていると思うから派遣しているんです。その国家利益というのは、日米同盟、国際協調、両立させるというものも含んでおります。イラクをテロリストの温床にしないということも含んでおります。中東に安定した、イラクが安定した民主的政権をつくるということも含んでおります。そういうことであって、すべてを包含した判断で、日本は国際社会の一員としてやるべきことをやろうという判断をしたから、自衛隊派遣を決定したわけであります。

岡田委員 総理は全く質問に答えていただいていないんですが、一九九六年に日米安全保障共同宣言がありました。あのときに、アジア太平洋地域全体に日米同盟をいわば広げるという議論があって、最終的には、法律の形では周辺事態法、つまり、日本の周辺であって、周辺地域であって、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合に自衛隊が活動するということで一つの折り合いをつけました。しかし、今の、今回のイラクに自衛隊を出すということはかなりそこから飛び越えているわけですよ。新たな日米共同宣言もなくて、そしてそういう形で飛び越えて、アメリカが言うんであれば自衛隊を、もちろん憲法の枠の中だという前提はつくにしても、どんどん自衛隊を出していくという、そういう日米同盟が今までと違ってきているということについて、総理は全く説明責任を果たしていないじゃないですか。そこをしっかり述べていただきたい。

小泉内閣総理大臣 これは、イラクに行くのは、日本とアメリカが共同して日本を守る、アメリカを守るということじゃありません。戦争に行くんじゃないんですから、戦闘行為に行くんじゃないんですから。復興支援、人道支援活動に行くんです。これはアメリカだけじゃない、イギリスとも協力する、オランダとも協力する、韓国とも協力する、あるいはスペイン、イタリア、ポーランド軍とも、協力するところがあれば協力する。

 これは戦争じゃないんです。集団自衛権の問題でもないんです。イラクに民主的な安定した政権をつくるために日本は何ができるかということで協力するんです。それは日本の国家利益にかなうと思っている。同時に、日米同盟、お互い日米間の信頼関係を醸成させるのにもかなう。国連がすべての加盟国にそれぞれイラク復興支援協力してという要請にもこたえる。そういう国家全体の利益を考えて、日本は資金的後援もします、物的支援もします、人的支援もします、その中で自衛隊の派遣も、戦闘行為には参加しない、戦争、武力行使はしない、復興支援の形で協力をしたいということであります。

岡田委員 日米同盟という言葉を、この自衛隊のイラク派遣について日米同盟を強調されたのは総理自身なんですよ。今のお話は、国益の問題であって、いや、日米同盟じゃない。そうじゃないでしょう。総理御自身が日米同盟ということを前面に出してイラクに自衛隊派遣することをおっしゃるから、私は、いつの間に日米同盟というのがそれだけ広がったんですかということを申し上げているんです。

小泉内閣総理大臣 日米同盟は大事であります。今までも、日米同盟のためにもやる、国際協調のためにもやる、日本国全体の利益を考えてもやるということであります。日米同盟を重視しなくて政権をとろうと思っているんですか、民主党。日米同盟は、日本の平和と安全を確保するために最も大事な同盟である。(発言する者あり)本音でも、本当です、本当なんです。それを否定して民主党が本当に政権をとれるのか。これは非常におもしろい議論ですよ。

岡田委員 全く総理は議論をすりかえているわけですよ。すりかえているわけですよ。

 要するに日米同盟というのは、これは一種の、お互いが、自衛隊ですけれども、しかし、軍事同盟に類似の同盟ですよ。お互いの安全保障のための仕組みですよ。それを総理が安易に日米同盟、日米同盟と今回の自衛隊のイラク派遣に関しても言われるから、それはいつの間に広がったんですかということを申し上げているんです。そのことと今総理が言われたことは全く違うことでしょう。そういうふうに議論をすりかえないでいただきたい。

 それでは総理、質問を変えますが、ブッシュ大統領のその単独行動、先制主義、先ほど総理は、必ずしもそれが日本にとって、あるいは国際社会にとって歓迎すべきものではないというニュアンスでおっしゃったと思います。しかし、日米同盟、日米同盟、あるいは日米関係が重要だと言う中で、もし、どんどんどんどんこのブッシュ大統領の先制攻撃あるいは単独行動、そういったものに日本が後からついていくような形をとれば、これは国連憲章との間に必ず矛盾が出てくるんですよ。そこを総理はどう考えておられるのか。そのときには、国連憲章の枠内できちんと日米協力をやるという立場をとられるのか。それとも、日米同盟はより重要だから、ブッシュ大統領が単独行動、先制主義というのをとられるのであれば、状況によってはこちらを優先して、その結果、国連憲章から離れてしまってもやむを得ないというふうにお考えなのか、そこはいかがなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 そのことは、さっき前原議員の同じ質問ですよ。同じ質問だから同じ答えしかできない。

 我が国としては、米国は国連憲章を初めとする国際法上の権利及び義務に合致して行動するものと考えている、また、我が国が国際法上違法な武力行使を支持しない、これはもうはっきり答弁しているんです。

 私は、日米同盟の重要性は恐らく岡田さんも理解しているんだと思います。そういう前提で、いろいろ批判しなきゃならないという立場からの質問だからわかりますが、私はこの今のイラクの状況を見て、フランスもドイツも、アメリカは手を引けなんて一言も言っていませんよ。それで、国際社会へ協力しろ、これは、イラクに復興支援協力することは、アメリカ、イギリスに協力と同時にイラクに協力することなんですよ。イラクの国民のためにする活動なんです。それは、国際社会が一致協力しやりたい。だからこそ、国連がすべての加盟国に、復興支援に努力してくれと訴えているわけです。それを、アメリカと協力すると国際協調にならないかのような質問の仕方はやめた方がいいんじゃないか。

 私は、国際協力も日米協力も両立すると言っているんです。これは国家利益にかなっている。フランスの例をよく出すけれども、フランスだって、アメリカは手を引けなんて全然言っていないんだから。国連だって、今アメリカに手を引かれたら、だれがやるのか。中東和平含めてですよ。これはできるだけ世界各国が協力しながらテロ対策に取り組まなきゃいかぬ。イラクの安定した政権をつくるためには、米英だけじゃない、各国が協力してやろうという要請を国連もしているわけですから。そういう中で、アメリカと一緒にやるとこれは日本の国家利益に反すると。とんでもない。日米協力、国際協力、日本全体の利益、中東をテロリストの温床にしてはいけない、中東が不安になって一番不安になるのは日本国であります。そういうことを考えて、私は、日米同盟と国際協調は両立させなきゃいかぬ。その具体的な方向なんです。

 日本の平和と安全をどうやって図るのか。日本国、核武装はしない。フランスみたいに核兵器を持てと言うんですか。そうじゃないでしょう。では、ドイツ、フランスみたいに集団安全保障体制、NATOみたいなものをつくれと言うんですか。そうじゃないでしょう。日本一国で平和と安全を確保できないからアメリカと同盟関係を結んで平和と安全を確保しよう、そういう日本の方針。なおかつ、国際社会から孤立してはいけない、国際社会と協力していこうということが、経済の発展を考える意味においても大事だ。まさに、日米同盟、国際協調、両立させなきゃならない、これが日本の国家利益にかなうと私は思っております。

岡田委員 総理は答弁を読み上げられたんですが、結局、今の深刻な状況についての認識が余りにもなさ過ぎるんですよ。

 今、国際社会は、ブッシュ大統領のこの単独行動、先制攻撃、こういったことが本当に行われるようになっていけばそれは国連憲章の理念に反する、そのことについてどこかでしっかりとした折り合いをつけなければ世界の平和は維持できない。そういった問題意識の中で、それぞれの国が、もちろんアメリカは超大国です、ですから、アメリカに対して正面からあなたの言っていることは間違いだとは言えないかもしれない、しかし、そこは何とかして少しずつ軌道修正するように努力をしている。

 総理がおっしゃるように、いや、日米同盟と国際協調は両立するんだ、そんな軽いものではないんですよ。そこは、総理の基本的認識が甘過ぎると私は思うんです。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 では、どうしろと言うんですか、民主党は。日米同盟重視するな、国際協調重視するな、日本は人的支援をするな、どうなんですか。私は、視点がわかりませんね、民主党の言っていることは。

岡田委員 総理はブッシュ大統領と個人的な関係がしっかりできているというふうに誇っておられるわけですから、それはブッシュ大統領としっかり話をしなきゃだめなんですよ。そして、ブッシュ大統領のその考え方について、個別の話を言っているんじゃないですよ、一般論として、しっかりそれを軌道修正していくだけのその信頼関係がなければ日米同盟じゃないということを私は申し上げているわけですよ。総理は、その問題をどんどんどんどんすりかえて、そして、物事の深刻さというものをわざと覆い隠しているんじゃないですか。

 本当に日米同盟だとおっしゃるんであれば、国際社会がこれだけ今問題にしている単独行動、先制主義というものに対してしっかりと述べていただきたい。官僚の答弁を読み上げてそれで終わりだ、それ以上言えないから総理は読み上げたんでしょう。それでは、本当に、この日本の総理大臣として資質を疑わざるを得ない、私はそう思います。

 先ほど総理が言われたことについて、もう一つ言いましょう。

 イラクについて、我々は、どうでもいいなんということはもちろん言っていませんよ。イラクの国民のために、イラクという国を立て直していくことは物すごく大事なことですよ。その前提に立った上で、方法論が違うんですよ。つまり、今のCPA中心に、米英軍中心に、占領軍が今イラクについて一手にイラクを任されてやっている、それではうまくいかないと言っているんですよ。

 先般、外務省の二名、奥さんと井ノ上さんが亡くなりました。葬儀で総理は途中で声を詰まらせて、そして、ごあいさつをされていました。私も後ろで同じ思いで聞いておりました。一人の人が亡くなるということ、その奥さん、小さな子供さん、年老いた御両親、そして関係のある人、本当に多くの人が苦しみを味わわなきゃいけないんですよ。

 我々日本人があのお二人に対して思った思い。では、イラクの人たちはどうなのか。突然戦争が始まって、そして罪のない女性や子供たちが一万人死んで、そして、その人たちの周りの人たちが、一体、戦争相手であるアメリカに対してどういう気持ちを抱いているのか。そういう国がイラクをこれからも牛耳って支配して、そして、幾らイラクを立て直すといったって、それは素直にはそういう気持ちになれないのは当たり前じゃありませんか。だからこそ、国際社会を巻き込んで、国連を中心にしてイラクを立て直していかなきゃだめなんですよ。そのための努力を日本がすべきだ、これが我々の主張ですよ。

 総理、総理はそういった国際的な努力ということに対してどうお考えですか。

小泉内閣総理大臣 だからこそ、今国際協調をつくるように日本は努力しているんじゃないですか。

 では、どうしろと言うんですか。今、アメリカも国際協調体制をつくるように努力している。日本も努力している。国連中心にしろと言ったって、国連は今手を引いている。国連も攻撃されている。国連に実力部隊がない。日本は今、アメリカと国際社会とできるだけ協調体制をつくるように努力しているんです。

 それでは、今、日本も行くな、アメリカも手を引けということは言っていないと言われている。そうしたら何をするんですか。何をするんですか、これは。民主党が日米同盟と国際協調を重要視しないという理念ならわかる。民主党も日米同盟と国際協調を重要視するという考えを持っておられるんでしょう。そうしたら、今、現実に何をしろと言うんですか。自衛隊を派遣しないということは、それはかなうんですか。

岡田委員 総理は自衛隊を派遣することを誇らしげに言われるけれども、しかし、六百人の陸上自衛隊、そして八機の航空機、四隻の船、それを出したからといって、どれだけのイラクの人たちが、実際にイラク国民の生活の安定、平和のためにどれだけの役に立つのか。むしろ、私たちは、そのこと、象徴的なそういう行為をすることで日本に対する一般のイラク人の印象が変わってしまう。

 現実に、NGOの皆さん、言っているじゃないですか。自衛隊が出てくるということになったら自分たちの危険度は高まる。私は、あるNGOのリーダーの人に先週話をしましたよ。最近までイラクにいた人です。彼が言っていたのは、いや、日本政府が本当にイラクのためになることをやってくれるのであれば、自分たちの危険が高まり、命が危なくなっても、それは満足できる、しかし、こんなことで自分たちの活動が阻害されるのは、それはたまらないというふうに言っているんですよ。

 大使館の皆さんだって活動がしにくくなりますよ。本当にわずかの象徴的な自衛隊の派遣で、そういった形でNGOも活動できなくなる、大使館の活動も制約される。それよりは、今、自衛隊をイラクに出すのではなくて、国際的な協力体制をしっかりつくっていく。国連をイラクの支援のために正面に戻す。

 例えば、来年の五月には暫定議会がつくられ、そして六月には行政移行機構ができる、そしてCPAは解散する。これがアメリカの、そしてイラクの統治評議会が合意をした内容です。だけれども、国連事務総長は、国連の果たすべき役割がその中ではっきりしていない、こう言っているんですよ。言い方は遠慮していますが、要するに排除されているということなんですよ。

 もっとしっかり国連をかませる形でイラクの国の立て直しをしていく、そのことこそが今必要なことであって、そして、それに日本がどれだけ協力していくかということが、日本が求められていることではないでしょうか。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それは、自衛隊六百人足らずであったら形だけだと。じゃ、たくさん出せと言うんですか。そうじゃないでしょう。日本だってできることはあるんです、できないことはあるんです。戦闘行為には参加しない、治安活動には参加できない、武力行使はしない、しかし、復興支援、人道支援については、民間人ができないことでも自衛隊だったらやってくれる分野があるだろう。今、NGOの民間だって、危なくて行けませんよ。

 そういう点、日本は、まず日本もできることをやります、そして国際社会、協力してくださいという働きかけを今しているわけであります。(発言する者あり)してない、してないと言うのは、野党だからね、何でも、説明しろといえば、説明していない。それは、意見が違ったから説明にならないといえばそれまでですよ。

 私は、日米同盟、国際協調、重要だから、これは両立させなきゃいかぬ。国家利益大事だから、国際社会の責任ある一員として、やるべきことはやらなきゃいかぬ。民間人ができないんだったらば自衛隊もできることはあるだろう。ふだんから訓練している、あえて困難な任務だけれども、危険を回避するすべも持っている、安全を確保する装備も持っている。民間人にできないからこそ自衛隊が、戦争じゃない、復興支援、人道支援に行ってやる。だから、こういう自衛隊諸君に対しては、反対だとか批判ばかりしないで、たまには激励してあげてくださいと言っているんですよ。

 まさに、日本の平和と安全、自分の国のことだけ考えちゃいかぬ、そういう憲法の理念にも合致する。これが全体で考えれば日本の国家利益だと思うから、日本は、戦争には参加しない、武力行使はしない、戦闘行為には参加しないけれども、人道復興支援についてはできるだけのことをします、資金の支援も物的支援も人的支援もします、そういう中の自衛隊派遣はその一つであります。

岡田委員 私は、自衛隊の皆さんも、出る以上、きちっとした必要性、大義名分、そのもとで出たいと思うんです。出ていったけれども、地元で歓迎をされない、あるいは、どこかの国の兵隊のように、殺された後、多くの民衆に踏みつけられる、死体が踏みつけられる。そういった今のイラクの現状を見て、果たして本当に自衛隊の皆さんが出ることが、それが価値があることなのかどうか、そのことを私は問うているわけであります。そして、もっと国として、日本としてやるべきことがあるんじゃないか、そのことを申し上げているわけであります。

 これはどれだけやっても恐らくもう平行線でしょう。しかし、私は日本の外交力をもっと今しっかり使うべきその場所があるというふうに申し上げておきたいと思います。

 最後に、先ほど前原さんとのやりとりの中で少し気になった点があるので申し上げたいと思います。

 この非戦闘地域、具体的地名はまだだとおっしゃいましたが、バグダッド空港は、これは非戦闘地域なんですか。

石破国務大臣 一言申し上げさせていただきます。

 自衛隊が行くことは役に立たないというふうにおっしゃいました。私はそうは思っていません。先ほど来お答えしておりますように、自衛隊が水をきれいにする、それで、水を飲んだらば体を悪くする赤ちゃんや病人やお年寄りが助かる、それが何で意味がないことなんですか。学校を直すことがどうして意味がないことなんですか。

 そして大事なことは、総理がおっしゃっておられますように、自衛隊でなければできない状況なのだから自衛隊が行くのだということです。それは、大事なことは、向こうに行ってどうするか、それは自衛隊は一生懸命考えます。外務省とも連携して考えます。地元の部族長とも連携して考えます。要は、出かけていくときに、そのようにおとしめたような言い方は決してよくないということを申し上げておるのであります。

 バグダッド空港は入るのかというお話でございますが、バグダッド空港が特定したエリアとして、地域として非戦闘地域となるかならないかということは、その地域に対して、国または国に準ずる組織の組織的、計画的な武力の行使が行われているか否かということによって判断をすることになります。それが、そのような主体ではない、もしくはそのような攻撃自体が抑止されておるということであれば、バグダッド空港であれどこであれ、そういう空港が非戦闘地域というふうに評価をされることはあり得ることでございます。

岡田委員 バグダッド空港は、先ほど前原さんも二つの例を言われましたが、七月以降、四回ミサイルで飛行機が攻撃されているんですね。七月十六日、C130、これは米軍機です。九月七日、米軍の輸送機。十一月二十二日、民間航空機。そして十二月九日、C17輸送機。四回ミサイルで攻撃されていて、これで私は非戦闘地域だという発想は信じられません。

 しかし、この基本計画の中では、バグダッド空港というのは明示されていますね。あなたは、具体的名前が言えない、言えないと言うけれども、基本計画にもちゃんと書いてあるじゃないですか。だから、あなたの言っていることは、やはり逃げなんですよ。まともに答えようとしないから、こういった具体的なこととの矛盾が出てくるんですよ。

石破国務大臣 それは、基本計画と実施要項の差異というものを委員がどう御認識になるかという問題です。そこに書いてあるからといって、実施要項に必ず書かれるというものではないでありましょう。そして、実施要項は、基本計画が範囲であるのに比べまして、それを特定するという意味を持つものです。

 その場合に、なぜそれぞれの地名を明らかにできないことがあるかといえば、これは先ほどどなたかの御質問にお答えをしたとおりのことでありまして、それは、なぜそういうふうに判断するに至ったか、その情報をなぜ入れるようになったか、そして、なぜそれが非戦闘地域と判断するに至ったか、そのようなことを申し上げることが、隊員の安全、今後の情報の確保、それに障害を与える場合があるから申し上げられない。決して逃げで申し上げておるわけではありません。そして、基本計画、実施要項、その差異をよく御認識いただきたいと思っています。

岡田委員 最後に一言。

 大きな地域を基本計画で指定し、そのうちの一部を実施要項で特定するというのはわかります。でも、バグダッド空港というのはこれ一つですから、基本計画に書いてあるということは、これはやるということでしょう。ですから、そこでいろいろ今御託を述べられましたけれども、結局それは逃げなんですよ、あなたの。そのことだけ申し上げておきたいと思います。

 終わります。

斉藤委員長 これにて前原君、岡田君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、総理に質問いたします。

 戦後初めて、自衛隊がイラクという戦争が継続している戦地に派兵される重大な事態です。私は、自衛隊のイラク派兵に反対し、派兵を決めた閣議決定の撤回を求めるものです。

 イラク問題の解決は、米英軍主導の支配をやめ、そして国連中心の枠組みによる人道復興支援に切りかえること、その枠組みのもとでイラク国民に主権を返還し、米英軍を撤退させることだ、これが私たち日本共産党の基本的立場です。

 自衛隊のイラク派兵は、アメリカが始めた国連憲章違反のイラクへの無法な侵略戦争、それに続く不法な占領と現に戦闘が続いている米英占領軍を支援するもので、それはイラク国民の自主的な国の再建を助けるどころか、テロと暴力を拡大し、一層の泥沼化をつくり出すことになります。

 また、戦争状態にあるイラクに自衛隊を派兵し、米英の軍事占領を支援することは、海外での武力行使に道を開くことに結果としてなります。日本は、あの侵略戦争の痛苦の経験から、戦争はしない、軍隊は持たない、国際紛争解決のために軍事力を使わない、このことを決めた国です。この日本国憲法を真っ向から踏みにじり、日本の進路を誤った危険な方向に導く歴史的汚点となるものです。多くの国民がこの点を危惧しています。

 きょうは、具体的に、総理が記者会見で行った活動内容について質問をいたします。

 総理は、先ほどもありましたけれども、今度の基本計画に基づいてアメリカ軍の物資、そして兵員を輸送する、このことは先ほどもそれらしきことを述べましたが、それは認めますね。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 米英軍に物資の協力ができれば、物資の協力はいたします。(穀田委員「兵員」と呼ぶ)兵員とかそれは、日本の活動に対して協力してくれる、場所によって私は違ってくると思いますが、ともかく戦闘行為には参加しない。アメリカ、イギリスができるようなことを日本ではできない場合もある。日本が行くのはあくまでも復興支援、人道支援だ。兵員の輸送の場合も、日本の自衛隊の活動に協力してくれる場合、現地の状況で、それは絶対ない、可能性を言えばね、これからどのような協力をしてくれるかわかりませんけれども、アメリカ軍の方針が、全部兵員だ、一人も輸送しちゃいけないということにはならないと思っております。

穀田委員 総理の答弁で明らかなように、いずれにしても物資も輸送する、兵員も輸送する。問題は、そのアメリカ軍が現地でどんな活動をしているかということなんです。

 なぜ私が自衛隊による米軍の物資や兵員輸送を問題にするかというと、米軍の活動が余りにもひど過ぎるからです。例えば、イラク占領米軍は、五月のブッシュ大統領の大規模戦闘終結宣言から半年余りを経て、空爆を再開しています。そして、具体的には、抵抗勢力の掃討作戦と称してアイアンハンマー作戦を展開しています。低空飛行しながら集中砲火を浴びせる、AC130、さらに戦車の装甲も貫く機関砲を搭載したA10攻撃機、最大一トンにもなる大型爆弾、誘導ミサイルなどの飛行機による攻撃もやっています。

 こういう作戦が一体何をもたらしているかなんです。

 この間、新聞にも報道されていましたように、国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウオッチというのが次のような報告を出しています。米軍が旧フセイン政権幹部をねらって行った空爆は、結果として民間人だけを殺傷した、精密誘導爆弾などで、標的の周辺住民ら数十人が死亡し、事実上無差別攻撃となっている事態を指摘しています。

 また、この間、雑誌に載っていますが、総理も御承知かと思うんです。シジャル村で起こったということはとても悲惨な事態でした。米軍の武装ヘリコプターが一軒の農家に六発のミサイルをぶち込む。そして、農民が二人死亡し、子供二人を含む三人が負傷し、大変なことになっている。これは、引き金となったのは、実は、夜中に犬がほえ、泥棒と思って空に二発撃った、これをきっかけにしてこんな攻撃がやられている。こういう実態です。

 だから、米英軍が、人を人とも思わない乱暴な行為による住民被害が至るところで起こっておる、こういうことが枚挙にいとまがないということなんです。

 問題は、こういう掃討作戦を展開している米軍の物資と米兵を自衛隊が輸送する、そういう活動もやることになるんだなということをお聞きしたいんです、総理。

小泉内閣総理大臣 無辜の市民を犠牲にするということは、これは大変悲惨なことであると私も思っております。こういうことはあってはならない。

 しかし、米軍以上に無謀な、悪逆非道なことを行っているのはテロリストなんです。日本人の外交官、あのように武装集団が殺害する、民間人も殺害する、国連職員も殺害する、赤十字も攻撃する。戦争が起こる前から、ニューヨークのテロでは、何にも関係ない人が三千人近く、テロ活動によって亡くなっているんです。日本人も二十四名の犠牲者を出しているんです。これはイラク戦争の前からですよ。むしろ悪逆非道なのはテロリストじゃないですか。

 このテロをいかに抑止する、そういうことから、イラクをテロリストの温床にしちゃいかぬ。フセイン政権も、今までイラク国民にどのような残虐なことをしていたか、その前にクウェートを侵略してどのような行為をしたか、みずからの国民にどれほどむごい仕打ちをしたか、そういうことをなくそうということで、今、国際社会が協力しているんだと私は思っております。

穀田委員 総理は、そういう米軍の輸送を行うのかということに対する質問に答えていない。

 大体、テロの問題でいうならば、まさにテロを導き寄せているというのは、今日のアメリカやイギリスの占領軍の、無辜の人たちを含めた多くの住民を傷つけているところにあるということは世界も承知しているじゃありませんか。

 問題は、今私が言っているのは、その意味でいえば、テロリストを孤立させる、またテロの土壌を絶つ、そのためにこそ、私は、先ほど基本的な考え方を述べたように、米英占領軍のそういう支配、占領をやめるべきだ、このことを言っているんです。

 問題は、私が問うたのは、そういう掃討作戦、ひどいことをやっている、こういう事態の物資についても米兵についても送るんだな、輸送するんだなということを聞いているんですよ。それについて答えてください。

小泉内閣総理大臣 日本は、そういう戦闘行為には参加いたしません。しかし、日本の物資が米軍兵士に使われる場合もあるでしょう、食糧なり水なり。

 そして、今までの活動に対して、米軍撤退しろと言われますが、国連も米軍撤退しろなんて言っていませんよ、今。フランスもドイツも、米軍にイラクから撤退しろなんて言っていませんよ。共産党は、米軍に撤退しろと言うんですか。撤退した後、イラクはどうなっちゃうんですか。今よりももっと惨たんたる悲惨な状況になるのはイラク国民ですよ。その辺、共産党はどう思っているんですか。

穀田委員 それは、先ほど基本的立場で言いましたように、早期に撤退すべきだ、明らかじゃないですか。そのことを国連も、フランスやドイツ、そして中国やロシアも、早期に移譲すべきだ、そのために早期に撤退すべきだ、そんなことを言っているじゃありませんか。

 問題は、そうじゃなくて、今あなたは、掃討作戦に参加していない、それを言っているんじゃないんですよ。そういう掃討作戦は米軍が行っているんですよ、それを支援する活動になるじゃないかと言っているんですよ。そこをはっきりと答えてください。

 実は、この間の安全確保支援活動、つまり今、総理がいつもおっしゃっている人道支援、一方では安全確保支援活動、これはやっているんですよ。その中に、実は、例えばフセイン残党の掃討作戦をやった場合、それから武装解除のための襲撃や、敵の部隊を打ち破る攻撃や、さらにはイラク人の米占領軍への抗議や抵抗運動に対する鎮圧、これも安全確保支援活動の事例になるということを政府は答弁しているんですよ。だから、私はそれを聞いているんですよ。

小泉内閣総理大臣 それは、安全確保の後方支援活動は物資の支援もあり得ます。しかし、今、米軍撤退しろなんというのを国際社会で言っているというのは私は初めて聞きましたね。今、米軍撤退してどうなるんですか、イラク。もうますます混乱状態になりますよ。そういう前提で話をするというんだったら、合わないのは当たり前ですよ。今、このイラク復興支援、イラク国民が努力している、ここを米英軍撤退して、私はますます混乱すると思いますよ。こういう状況で共産党と話を合わせろというのはとても無理な話ですよ。

穀田委員 それは総理大臣、この間アナン氏が国連安保理に行った報告書を見ていますか。あの中にもちゃんと入っているんですよ。

 高まる治安問題は軍事的手段だけでは解決できない、そういう認識に立って行動することだ。必要なのは政治的解決である。真の権限をイラクの、イラク人の機構に持たせることを意味する。こうした政治的措置は、外国によるイラク占領が短期でなければならない。このとおりちゃんと言っているんですよ。

 ですから、私の質問にちゃんと答えてください。問題は、そういういわば安全確保支援活動という名目で実際にはアメリカが行っている。総理は何か言うと、戦争はしないんです、それから武力行使は行わないんです、こう言うんだが、実際には戦争を行うアメリカを支援するんだということは明確にしてほしいと思うんです。

小泉内閣総理大臣 それは明確にできるわけないじゃないですか、考えが違うんだから。米軍は復興支援に努力しているんですよ。早くイラク人の政府をつくるために努力しているんですよ。占領するために努力しているんじゃないんです。国連も、アメリカすぐ撤退しろなんか言っていませんよ。アメリカの軍の存在は必要だと国際社会は認めているんですよ。これをどうやって国際社会が協力しながら、イラクのイラク人によるイラク人のための政府をつくるかということで今全世界が協力しているんです。

 米軍撤退しろなんという声は今初めて聞いたよ。共産党の議論は議論としていいけれども。共産党がそういう考えはいいですよ、悪いとは言わぬ。共産党独自のお考えだから。しかし、今国連も米英軍の存在を認めている。できるだけ早くイラク人の政府をつくるために国際社会が協力していくということです。だからといって、米軍に手を引けとは全然言っていないんです。私は、今米軍が手を引いて、来年の六月にイラクの暫定政府をつくろうというときに米英軍が撤退したら、混乱はおさまるどころかますますテロリストの思うつぼです。こういうテロリストの温床にイラクをしてはならないからこそ、国際社会は今協力しようと言っているんでしょう。そういうための支援です、日本は。

穀田委員 それは明らかに意見の違いはあるでしょう。しかし先ほど申し上げたように、アナン国連事務総長も、少なくも短期に撤収すべきだ、このことが、今の米英占領軍のこの不当なやり方がテロの温床になっている、これは世界の共通のあれじゃないですか。問題は、そういう武装活動や、また米軍が行う戦闘活動、それに協力するんだということなんです。

 ではもう一つ、人道支援を聞いてみましょう。

 総理は何かというとそういう話をしますが、今行おうとしている人道支援活動について言っても、例えばマイヤーズ米統合参謀本部長は、自衛隊のイラク派兵については、日本も連合軍に参加した、連合軍の一員と明確に言っていますよね。そういうもとで行う活動が、今、幾ら人道復興支援活動と言っても、占領軍が、また軍隊が行う限り、占領軍と一体となって見られて、日本の自衛隊が行けばそのこと自体がイラクの人々の反感を呼ぶ、これは明らかではありませんか。

 自衛隊がそのような標的にされるという認識を総理は持っていますか。

小泉内閣総理大臣 自衛隊であろうと、民間人であろうと、外交官であろうと、テロリストの組織は、ともかくイラクを混乱させよう、安定した民主的な政権をつくらせちゃならないという意図を持って、無差別に、国連だろうが、民間人だろうが、米軍だろうが攻撃しているんだと思います。

 自衛隊が行けば戦争に行くんだ、そういう極端な解釈はしないでほしい。自衛隊は復興支援活動、人道支援活動に行くんです。自衛隊が行けば戦争に行くんだと。そうじゃないんですよ。現にイラクの国民も、自衛隊、歓迎する、復興支援、人道支援だったら歓迎する、どの人であろうが歓迎すると。だから、日本は、自衛隊が行く場合でも、イラク国民が希望する、そういう復興支援活動をしなきゃならない。また、イラク人から評価されるような復興支援はどうあるべきかということを考えながら自衛隊を派遣するんです。自衛隊が行くから戦争に行くんだ、そういう極端な考えはとっていただきたくない。

 現に、今まで十年間のPKO活動、これは既に、カンボジアのみならず、東ティモールにおいても、ゴラン高原においても、あるいはペルシャ湾の掃海艇におきましても、いろいろ評価されているんです。自衛隊が行くから戦争に行く、そうじゃないんです。PKO活動等、そういういろいろ、戦争ではない、戦闘行為でない活動に自衛隊は今まで経験を積んできて、評価されているんです。自衛隊が行けば戦争に行くという状況じゃなくなっている。そのための訓練も装備も、そして決意も持っている。そういう中で、イラクの人たちが歓迎するような、希望するような活動をどうするかということで自衛隊が行くんだということをぜひとも御理解いただきたいと思います。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

穀田委員 私が言ったのは、自衛隊が、アメリカ軍が行うそういう掃討作戦、それに支援することになるんだ、戦争に行かないと言うけれども戦争を支援することになるんだということを言ったんです。それが一つです。

 それと、もう一つ。今、私が述べたのは、国連と占領、占領と人道支援、これは両立しないんだということを言っているんですよ。あなたはわかっていないな。それが問題なんですよ。

 つまり、人道援助という目的によっても、あなたがお会いしたイラクのリカービ氏もこう言っているじゃありませんか。あらゆる外国軍隊のイラクへの派遣と駐留、占領は受け入れられない、今の状況下では、自衛隊を送れば、人道援助という目的によっても、占領軍の一部となる本質を変えることはできない、こう語っているじゃないですか。ここが大事なんです。

 だから、私は、自衛隊と人道復興、これも両立しない、このことを述べて私の質問を終わります。

斉藤委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳でございます。

 冒頭、私は、亡くなられた奥、井ノ上両外交官の御冥福を祈り、御遺族に心からの哀悼の念を表します。

 さて、小泉内閣は、イラク特措法に基づいて、イラクに自衛隊を派遣するための基本計画を決定し、年内にも航空自衛隊を送り出す準備を進めておるようであります。

 社会民主党は、一昨日、第八回定期全国大会を開き、大会の名において、自衛隊のイラク派兵に反対する決議を採択いたしました。社会民主党は、現下の情勢で自衛隊のイラク派兵には反対であります。

 そもそも、イラク特措法は、大義なきアメリカの戦争に協力するためのものにすぎません。イラクへの自衛隊派兵は、憲法第九条が禁ずる国の交戦権の行使につながる暴挙であると考えます。現下のイラクは、戦争状態が拡大、拡散し、もはやイラク特措法による非戦闘地域など見当たらず、その概念は虚構にすぎないと言わざるを得ません。

 私は、十一月二十五日の予算委員会で、イラクへ自衛隊を派遣すると反米武装勢力やテロの攻撃の標的にされるのではないかと小泉総理にただしました。残念ながら、その危惧は現実となり、外交官二名が殺害されるという痛ましい現実となりました。

 そこで、小泉総理にお尋ねいたしますが、総理は、外交官二名に対する銃撃事件は組織的、計画的なテロであったというふうにお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、あの襲撃の状況、写真等を拝見しましたが、あの写真が事実であれば、かなり準備された計画的な犯行であったなと思っております。

 今後、まだわからない点もありますのでよく調査をしなきゃならない点もありますが、少なくともあの写真が事実であり、今言われている、報道されることが事実であるのならば、かなり準備された犯行ではないかなと思っております。

照屋委員 イラク暫定内閣のジバリ外相が、この事件について、旧フセイン政権の情報機関が米軍の統治に協力する日本の外交官をねらい撃ちしたものであるという見解を表明しております。私は、イラクのどこにいても、組織的、計画的攻撃に遭うという懸念をぬぐい去ることはできません。

 小泉総理は、このイラク特措法成立後、現在のイラクの情勢というのは次第に組織的、計画的な色合いを増してきている、こういう御認識はお持ちでしょうか。

小泉内閣総理大臣 テロリストはかなり計画的にこのイラクを混乱させようという準備をしているなというふうに思っております。

照屋委員 総理、この外交官二名の銃撃事件については、日本政府独自の調査、真相究明というのは十分行われているんでしょうか。

川口国務大臣 バグダッドにある大使館におきまして、この事件についての通報があった後、イラクの専門家を現地に派遣して調査を行っております。

照屋委員 私は、二次災害云々の話もありましたけれども、この事実関係の真相究明をアメリカの情報だけに頼らないで日本独自でしっかりやらないと、派遣される自衛隊の生命、身体の安全の確保というのは非常に困難だというふうに思っております。

 ところで、自衛隊派遣の基本計画は、私は、憲法九条を踏みにじるものであって、米国の戦争政策に追従するものであるというふうに考えます。

 総理は、記者会見で、憲法前文の一部を引用して自衛隊のイラク派遣の意義を強調いたしました。一体、小泉総理は、憲法前文と憲法九条の武力行使の禁止、そして交戦権の否認ということをどのように考えておられるんでしょうか、お聞かせください。

小泉内閣総理大臣 憲法前文は、個々の条文の指針といいますか、理念をあらわしているものだと思っております。

 そういう中で、憲法九条、武力行使をしない、前文の国際社会の中で名誉ある地位を占めたいと思うようなあの理念、これをどうやって両立させていくか、それが今、日本国に課された使命だとも思っております。両方、憲法九条と憲法の理念をあらわした前文、よく考えて、この際、国際社会の一員として責任を果たそうということから、私は自衛隊派遣を決断したわけでございます。

照屋委員 基本計画では、派遣される自衛隊員の携行武器が、あるいは装備が定められました。これらの装備あるいは携行武器は、憲法が禁ずる武力行使あるいは戦闘行為の発生を予想したものではありませんか、総理。

小泉内閣総理大臣 これは、奥氏、井ノ上氏が残虐な犯行で命を落とされましたけれども、あの通りで殺害されたのは日本人だけじゃありません。ほかの国の方々もあのような犯行の被害に遭っている。そして、そういう状況から、私は、自衛隊のみならず、今どの国も、民間人を問わず、あるいは政府職員を問わず、国連職員を問わず、場合によっては危険な目に遭うかもしれないという準備はしなきゃならない状況だと思っております。自衛隊が行く場合には、そういう安全面に十分配慮しなきゃならない。

 かといって、武力行使をする、戦闘行為に参加するということと混同していただきたくないんです。みずからを守る、あるいはみずからの安全を確保するという装備が、武力行使を前提にしているんだ、戦闘行為に参加することを前提にしているんだというのとは違うんだと思っております。

照屋委員 総理、私が言いたいのは、現下のイラクの情勢を見た場合に、どんなに装備を強化しても、危険の抑止の効果にはなり得ないんじゃないか。日本の自衛隊は無反動砲などを持参するようでありますが、重装備をしたアメリカだって今ねらわれているんですよ。本当に戦争をしない、それはいいですよ。やっちゃいかない。武力の行使もやっちゃいかない。しかし、危険の抑止力になり得ないということを私は言っておきたいと思います。

 同時に、あらかじめ正当防衛行為を予想して携行武器を決めるというのは、私は正当防衛行為論の論理矛盾だと思いますが、いかがでしょうか。

石破国務大臣 それは、アメリカと日本と行う行動が違います。そうすれば、遭遇する場面もおのずから異なるのであって、アメリカでも防げないから、日本がそれだけを持っていって何になるんだという御議論は、私はそれは全く当たらないものだろうというふうに思っております。

 それから、持っていくものによってどうなのかというお話ですが、それは、相手が大きな破壊力を持っているとするならば、やはりそれを持っていかなければ抑止力にならないでしょう。あるいは、抑止がきかないで、自爆テロなどの場合に、真っすぐ突っ込んできた、あらゆる努力にもかかわらず真っすぐ突っ込んできた場合に、どの武器を使ってみずからの生命、身体を守るかということです。何を持っていくかということではなくて、どのような危険に対してどのように使うかということが問題なのであり、武器の種類によってそれは決せられるものではございません。

照屋委員 総理、それから外務大臣、防衛庁長官、去る六月、イラクで、バグダッド付近で、日系米兵のポール・T・ナカムラ伍長が戦死をいたしました。日系の米兵としては、イラクにおける最初の犠牲者であります。

 彼のお父さんはハワイ出身の日系二世でございます。お母さんはウチナーンチュだった。そして、カリフォルニアのデービス知事は、彼は名誉の戦死をした英雄だと言って、三日間、州関連の施設の旗を半旗にした。そのときに、英雄だ英雄だと地域で騒がれた、奉られた。お母さんが何と言ったかというと、息子は死んで英雄になる必要はなかった、結婚して子供をつくって私たちと一緒に生きていてほしかった、こういうふうに言っているんですね。

 私は、そういうポール、ヨーコさん御夫妻のこの悲劇がイラクの民衆にとっても自衛隊にとっても起こらないようにするために、自衛隊のイラク派兵を直ちに中止するよう求めて、私の質問を終わります。

斉藤委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 総理を相手にやりたかったのでありますが、残念なことに、行かれました。

 まず冒頭、私からも、奥大使、そして井ノ上一等書記官の御冥福を心からお祈りしたいというふうに思っております。

 同時に、その犠牲の上に立って、我々の国が過ちないよう、改めてきょうは、方向転換をすべきだ、今すぐの自衛隊の派遣というのは見送るべきだということ、このことを一つの私自身の、あるいはまたうちの党の方向性としてしっかりと持ちながら質問をしていきたいというふうに思っております。

 先ほどもお話が出ていましたが、今回の二人の犠牲者を出したこの状況というのは、自衛隊を派遣すべきかどうかという判断の上に非常に大きな一つの判断のポイントというか、大事な点が含まれていると思うんです。

 それは、先ほども出ていましたが、現地の警察あるいは治安当局の報道官からは、この事件が地域の、地域のというより旧フセイン体制の情報機関による、米国と歩みをともにする、あるいは米国の支援に入っていこうとする日本に対してあるいは日本人に対して意図的に行われたテロであった、攻撃であったという発表をしています。これは、調査中であるというふうな、そんなあいまいな判断で見過ごされていく話ではないというふうに思うんです。

 あれから日にちもたちました。外務省あるいは官房長官自身の、このテロの意図、確かに日本人がねらわれたのかということ、ここについての見解ですね、今の思い。調べているからどうのこうのとごまかさないで、今どういう判断をされているのか、そこのところを改めてお尋ねしたいと思います。

川口国務大臣 テロの可能性が高いということは、先ほど別な委員の方の御質問で申し上げました。

 そのテロが日本の大使館員をねらったものであったかどうかということでございますけれども、これは、当日、ほかの外国人も対象になった同じような事件もあったということもございまして、そうであったかそうでなかったか、これをどちらか判断をするに十分な情報は持っていないわけです。その上で、そういったことについての報道、イラクの政府の方の御発言もあるようでございます。

 我々としては、大使館独自の調査、そして米軍とも最初の段階から密接に情報を交換しながらやっておりますが、この調査を引き続き続けていきたいというふうに考えております。はっきりわかっていないことについてこうであるということを判断するということは、今の時点では時期が尚早であると考えております。

中川(正)委員 十月の十八日に、ビンラディンが、カタールの衛星テレビ局アルジャジーラを通じて、アメリカに協力する国への報復を宣告しています。その中に、イギリス、スペイン、オーストラリア、ポーランド、日本、イタリア、これが名指しで入っておるということ。

 その後、その翌日に、国連の現地本部事務所で、トラック爆破でデメロ事務総長特別代表以下二十人が死亡しました。その後、十月二十七日、これが赤十字の国際委員会。十一月十二日、ナシリヤで、これはイタリア人十九人を含む二十八人が軍の警察本部で自爆テロに遭っています。それから、十一月二十九日、これが我々の外交官二人と、それからスペインの情報機関七人が死亡をしております。そして、続く三十日、ティクリートで、韓国人が二人、技師でありますがやられた。こういうことですね。

 これは、一連の流れを見ていますと、この中にやはり意図がある、そんなふうに解釈をできますし、また、現地の情報、公安部の広報担当者というのははっきりと、日本がターゲットになっていますということ、これを発表している。

 石破長官、このことを踏まえて、今回の自衛隊派遣はこのターゲットになっている可能性があるということを前提に派遣を決断したのか、それとも、いや、これは大丈夫ですよ、このようなテロに意図はありませんという前提で決断をしていくのか、どちらの前提になっていますか。

石破国務大臣 それは、可能性はいろいろございます。そして、いろいろな国を名指しし、今委員がおっしゃったように、いろいろな国の人々がそういうようなテロの犠牲になってきたということもございます。それを覚悟の上で決めたのかというふうにおっしゃいますが、それは、本当にそれがそのとおり行われたのかどうか、知る由もございません。しかし、テロ攻撃に対して、それに対処可能なような権限、能力、装備を与えて、それで出し、テロを抑止し、回避するということは、何度も申し上げておることでございます。

 ですから、そういうようなテロに遭う、それが嫌だ、だから行かないということをすべての国が言い出したならば、これはテロとの闘いなどというのはそもそも成り立たない、委員とも何度も議論をさせていただいたことだと思っております。

中川(正)委員 それは、仮に、外務省がこれから調査していく中で、これが日本の外交官ということを意図して、それを目的にしてテロがなされたということがはっきりしても、やはりこの決断、自衛隊を派遣するという決断は変わらない、そういう意味ですか。

福田国務大臣 東京でテロを起こすとかいうようなこと、これはもう、今防衛庁長官も答えられたように、全く根拠はわかりません。調べてもわからない、そういうことであります。単なるおどかしということもあるかもしれぬし、それ以下のこともあるかもしれぬというようなことでございまして、そういうことで我が国の今回の法律に基づく自衛隊並びに文民の活動が阻害されるということはないものというふうに考えております。

 この間の外交官二名の殺害された、こういうことについて、これが背景がはっきりしたら、それで行動をとめるんだ、これは参考にしますが、そのことによって行動が変わるということはないんではなかろうかというように思います。あくまでもこの法律に基づいて、法律要件にかなう形でもって復興支援活動を行うんだ、こういうことでありますので、この外交官の殺害事件とそこがどういうふうに絡み合うのか、そういう問題だと思っております。

中川(正)委員 先ほど、戦闘地域と非戦闘地域の議論がありましたけれども、そのこと以上に、確実にテロに遭うという可能性というのが、こうして現地の警察の方も日本に対して、それは標的になっていますよという警告を発しているわけです。そのことがはっきりしていて、確実にテロに遭うという可能性がここまで高まっている中で、ただそれを参考にしていく。外務省は、わからない、調べてみないとわからない、その結果が出てこない。その判断だけで派遣をするということ、これは、武力闘争、武力で攻撃をされる、テロ攻撃をされるというその可能性の中で考えていけば、これは武力を前提にした派遣になるわけです。

 防衛庁長官、もう一回言いますけれども、これは外務省の見解をはっきりさせるべきだと思います。外務省自体が、今回のテロの取り組み、テロの意図、その中で我々が持っているリスクの可能性、これをはっきりした上でないと、それは、危険を回避する義務、この規定に防衛庁長官自身が違反をすることになる。

 そこのところを改めてもう一回聞きますが、これは外務省の責任ですよ。外務省、そこは本当に大丈夫ですか。この日本に対するテロというのは意図されたものでない、可能性としては漠然として薄いものだ、ただわからない、それだけでいいんですか。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、我が国として独自の調査もしましたし、いろいろな関連の情報も得ましたけれども、その日にほかの国の人たちも攻撃をされている、あるいは犯行声明も何も出ていないといったようなことがありまして、これがテロであると断定をする、日本をターゲットにしたテロであると断定をするということは今の時点ではできない、はっきりわからないということでございます。

中川(正)委員 防衛庁長官、これはわからないということであるとすれば、これはわかるまでこの自衛隊の派遣というのは延期をすべきだというふうに思うのですよ。

石破国務大臣 そうすると、おどかされたということで延期をしますということでありとせば、それじゃおどかしゃやめるんだという話になって……(中川(正)委員「おどかしじゃない」と呼ぶ)じゃ、仮におどかしじゃないといたしましょう。いや、私がおどかしじゃないといたしましょうと申し上げておるのは、そのことが本当にいかなる組織、いかなるものからの警告なのか、予告なのかということが不分明であるからということで申し上げておるわけでございます。はっきりしていないということがございますね、まず。

 もう一つは、それに対する抑止力を持っているのか、それを回避し得る能力、権限、装備を持っているのか。私どもが本当に今このときも営々と訓練をやっている、そしてROEの習得を一生懸命やっている、そして装備の可能な限りの品ぞろえというものをやっている。それは何のためだ。国民の税金を使わせていただいて、そして隊員が黙々と努力しているのは何のためだ。それは、そのようなテロのおどしに屈しないだけの抑止力を持ち、そしてまた回避する能力を持ち、それにもかかわらず、なお向かってきたときにみずからを守るための最低限の武器の使用を行う、そのためにやっておるのではないですか。それをやっていて、なおかつそのような予告、おどしというものに屈するという選択は、少なくとも私は持っておりません。

中川(正)委員 お話を聞いていますと、戦いますよという宣言だと思うんですね。戦いますよと。だから、あの危険を避けていくという条項というのは、戦いを避ける、そういう意味なんですよ。戦いのないところへ向いて自衛隊は入りますよという意味なんですよ。それが、そこで戦われるということがまさにはっきりしているところへ向いて、自衛隊を持っていって戦いますよというのは、これは義務違反であるし、憲法違反でもあります。

 そこで、改めて言います。改めてもう一回言う。これは見解としてはっきりさせなきゃいけない。確実にねらわれているということがはっきりしているところには出しちゃいけないんですよ、これは。そうだとすれば、出すんだとすれば、外務省の見解、わからないではやはり済まない。そういうことだと思うんです。はっきりさせてください。

石破国務大臣 私の理解能力が多分足りないのだろうと思いますが、確実にねらわれることがはっきりしている地域というのは、これはどういう地域なのでしょうか。例えば、A県B市というのがあって、そこに自衛隊が来たならば確実にテロをしかけるということがどのような組織からどのような形で言われればそういう前提が成り立つのだろうかということが、私にはよく理解しかねるところでございます。

 仮にそういうことがあったといたしましょう、仮にそういうことがあったといたしましょう。その場合にそれを避けるための装備、権限、能力を持つということは、それは、武器使用権限というもの、そして危害許容要件というものと、戦いをやるということは全く別個の概念でございます。戦いをやるということが仮に武力行使ということでおっしゃっておられるのであれば、まず違う。そして、武器の使用というものがごく限定をされたものであり、かつ、危害許容要件が、正当防衛とそして緊急避難、要件が厳格に決められているということから考えましても、委員の御指摘は当たらないのではないかと私は思っているわけでございます。

中川(正)委員 防衛庁長官は地域にこだわりますけれども、大体、戦闘地域、非戦闘地域という概念をここに持ち出して規定しようという、その法律の枠組みそのものがこれは現実離れしているというのは、もう我々の最初からの議論なんです。そうじゃない。今標的にされているのはアメリカなんです。アメリカが先制攻撃をやって、それでそのまま占領統治に入った。そのアメリカの統治を助ける日本あるいは諸外国、その連携というのが今標的になっているんですよ。それがはっきりこのメッセージの中で含まれているし、それが現実の問題として日本の外交官二人に起きた。

 だから、これは行ったら確実にねらわれるという蓋然性、可能性がこれだけ高まっているじゃないか。高まっていないとすれば、それは外務省がそれなりの見解をしっかり持って説明をする必要がある。それにもかかわらず、わからない、わからないというままに派遣をするということは何事だということですよ。

石破国務大臣 委員は決してそんなおつもりがないことをよく存じております。しかし、それを聞く者が聞くと、まさしくそれがテロリストの思うつぼなのだろうと。おどかせば行かないということになるとするならば、それはまさしく、そのテロリストの言うことが功を奏し、日本も来ない、あるいは、日本が引くんだったらば韓国もやめましょう、モンゴルもやめましょう、タイもやめましょう、シンガポールもやめましょう、世界のいろんな国が引いていく、そしてアメリカやイギリスだけが残っていく。それがまさしく彼らの思惑ではないのでしょうか。

 私たちは、そういうようなテロリストのおどしというものに屈してはいけないというのは、何も勇ましい精神論を申し上げておるわけではないのです。それに屈しないだけの権限、能力、装備というものを我々の自衛隊であれば持ち得るし、そのことをきちんと実現できる地域、それが非戦闘地域という概念でしょう。

 委員はフィクションというふうにおっしゃいますが、委員もこれはよく御案内のとおり、日本国憲法の、武力による威嚇、武力の行使は行わない、それは法律にちゃんと書いてあるわけですね。だから、そのことだけをやらないのであれば、その条文だけでいいのです。にもかかわらず、なぜ、非戦闘地域、それは現に戦闘が行われておらず、活動の期間を通じて行われることが予測されない地域というものを入れたか。そして、そういうような地域になった場合には一時休止するなどして指示を待つという条文を入れたか。

 それは、そういうようなことと一体にならないようにということを入れたわけであって、それはフィクションでも何でもございません。自衛隊が憲法に反するような行為をしたという評価を受けないためにわざわざそういう条文を入れておるわけであって、そのことはフィクションでも何でもない。何のためにこの条文を入れたということは、中川委員よく御案内のとおりでございます。

中川(正)委員 大分論点はっきりしてきたと思うのですね。

 テロに屈しないということは、まさに意図するところ、いわゆる政府が意図するところは、テロと戦う、こういう意味ですね。さっきのお話を聞いていると、まさにそうじゃないですか。それだけの装備を持って、負けないように戦うというのが。単純な話でしょう。ところが、総理大臣は、戦争をしに行くんじゃないんだ、人道支援をしに行くんだ、こう言っているんですよ。だから、そこに論理矛盾がある。

 ということは、もともとが、自衛隊あるいは軍隊を派遣するということは、治安維持を想定している。どこの国でもそうです、やっているところは。治安維持を想定して、そうしたさまざまな武力行使もあり得るという想定の中で役に立つ話なんですよ、軍隊というのは。ところが、日本の場合は、それを無理して、いろいろなへ理屈をつけて、人道支援でないとというその憲法の限界の中で、今すれすれの道を探そうとしている。それはなぜかといったら、国際貢献と言っていますが、違いますよ。ブッシュと、それから日本の総理大臣が約束してしまったから。逆に言えば、この小泉政権の維持をしていくためにはアメリカの言うことも聞いていかなきゃいけないという、その強迫観念の中で自衛隊にこだわっている。だから、そのところで、自衛隊、自衛隊、こういうふうになる。

 そういう構図の中で、無理をして派遣される自衛隊の皆さんが、私は、これは悲劇だと。これをやるんであれば、さっきの、もう一回もとに戻りますが、外務省の見解、わからないから何とかしてくださいというような、そんな無責任な話で行けるものじゃない。既に現地の警察官は、これは日本をねらったものだと発表しているんですよ。行ったら必ずねらわれますよと言っているんですよ。そういう想定の中で、この中途半端な派遣をどうしてこだわるんですかと、これが我々のそもそもの問いなんです。

 その中で、例えば国連はどうしているか。国連は、はっきりと割り切り始めています。国連がねらわれたから全部撤退したわけでしょう。その後何を言っているかといったら、国連の役割をはっきりしてくださいよと。アメリカがCPAを運営して、アメリカの占領統治である間は、行ったら行くだけテロを加熱するだけだ、テロを防ぎに行くんじゃなくて、その中でテロがどんどんどんどん増殖してくると。そういう経過の中で入っていくという、この入り方が間違いですねというのが国連の答えじゃないですか。

 日本はなぜそこまでしてこのアメリカの肩を持って、アメリカと同一視されて、テロの標的になって、それが国際貢献だと言えるのか、ここが私は最大の論点だというふうに思います。

 その上で改めて聞きますが、国連は撤退したんですね。外務省の、それこそ大使館そのものも、さっきの想定でいけば、自衛隊だけじゃなくて、さらに確実にねらわれる可能性がある、現地の警察官の発表では。これについては、どのように外務大臣、判断されていますか。

川口国務大臣 外務省の大使館につきましては、これは、二度とそういうことが起こらないように最善を尽くさなければいけないと思っております。あれ以来、イラクにあります我が方の大使館につきましては、さまざまな対応を講じております。

 これは、どういうことをしているかということをここで申し上げること自体が、さらにテロリストの攻撃にある示唆を与えることになってもいけませんので、細かいことを申し上げるということは差し控えさせていただきたいというふうに思っておりますけれども、例えばコンクリートブロックを設置するとか、そういったさまざまな対応をしておりまして、今後引き続き、人的にも物的にもなし得る最大限の警備をしていきたいというふうに考えております。

 それからもう一つ、国連につきましては、この間の事務総長の報告書の中で、今後どのようなやり方で活動を広げていくかという端緒、一度引き揚げた後の新たな出発の端緒に今立ったわけでございまして、我が国としてもこれをできるだけ慫慂していきたいというふうに思います。

 それから、先ほど来委員がおっしゃっていらっしゃる外務省にあった、二人の職員についてあった不幸な事件、これが日本を対象にしたものかどうかはっきりすることについて、それができない限りは次のステップをとるべきではないという趣旨の御議論をなさっていらっしゃるように私には聞こえますけれども、これはこれで、できるだけ早くいろいろな情報を得て、事実関係を解明していかなければいけないというふうに思っております。それの努力をしていきたいというふうに考えております。

 もう一つあの事件が明らかにしたことといたしましては、今文民が復興人道支援に素手で行くということが非常に難しいということをあらわした、証明をしたということであります。

 これは、イラクについて人道復興支援を、まさにけさどなたかの御質問の中にもありましたけれども、時間が重要で、今しなければ国際社会はイラクをもう一つのフェールドステートにしてしまう、そのはざま、その境目にあるわけでして、それをいかにやっていくか、いかに日本としてその国際的な責任を果たしていくかということがかぎである。

 ここで文民でできないということになった場合に、安全に対する対応策を十分に行って、先ほど防衛庁長官もおっしゃったように、自衛隊であればできることということがあるわけですから、そういうことを行って、そして人道復興支援を行うということを考えているわけでして、先ほど委員がおっしゃったように、人道復興支援を自衛隊が行うということとテロの対策を十分にするということとの関係の二つの間に矛盾が全くない、矛盾があるということはないということを申し上げたいと思います。

中川(正)委員 この間、私もイラクにこの委員会から派遣されて行ってきました。ちょうど、これから日本が取り組もうとする水の浄化施設、これを、たまたまアメリカ軍の駐留をしておった昔の宮殿跡、そこで給水施設を稼働している状況を見てきました。

 自衛隊でなければできないという仕事じゃないですよ、あれは。機器さえ持っていけば、それは地元の人たちも含めて自主運営ができるような、確実にいわゆる民生化できるような事業です。必ずしも日本人が行かなくても、ああいうものはどんどんやれるものであります。あるいはライフライン、電気の復興であるとか、あるいは下水道そのものの復興であるとか、まさかこれを見て自衛隊が直接入っていくわけじゃないんだろうと思うんです。

 そういうことじゃなくて、恐らくアメリカが今、物議を醸し出していますが、民間企業に発注をして、その中で新しいライフラインの建設をしていくということ、その中で、地元がやはり一番求めているのは、雇用を生み出す。その意味で、先ほど話が出ていましたが、奥大使が私たちを連れていってくれた、いわゆる日本が主導になった失業対策事業、ごみ集めであるとか、あるいは学校の修理であるとかというふうな、そういう事業化というのがあります。

 これはすべて、自衛隊でなければ、あるいは自衛隊が一番という、そんな話じゃないんです。人道支援というのは、民間の活用の中で、仮に日本人の文民が行かなくても、あの地域の中でもっともっと効果的に、もっと波及効果をさらに大きくして、雇用の創出も含みながら生み出していける事業があるというよりも、それなんですよ。それを自衛隊が逆に分捕ってしまって、私のところでやるというような形態になってしまっている。それはなぜかといったら、そこに無理があるんです。本来は、軍というのは治安にそのまま行ったら、ここが一番素直なんですよ。ところが、治安にそのまま行けないから、そうした人道支援という枠組みを無理やりつくっている、そこに。

 だから、もっと言えば、前にも申し上げましたけれども、既にアフガニスタンで入っているC130の輸送、アンマンからイタリア、何を運んでいるといったら、ずだ袋、食料品を運ぶずだ袋とパレットを運んで、あれにいっぱいにして行き来しているんですよ。そういうものが自衛隊が担わなければならない任務であるとすれば、余りにも中途半端で、余りにもこれは情けない、そういうことだと思うんです。

 だから、そんな派遣のさせ方をして、逆にテロ集団からは確実に、日本とアメリカが組んでいる、同一視されてターゲットにされる。これは何のための復興支援なんですか。そういう図柄がきれいにできているじゃないですか、今。そういう形の派遣というのは、すべてがはっきりするまでは見定めるべきだということと、それからもう一つ。もう一つは、アフガニスタンと比べてみると、これも象徴的にあるんですね。

 アフガニスタンの場合は、さっきも出ていましたが、NATOもそれに協力をして世界の枠組みが決まっている。にもかかわらず、日本の自衛隊は、陸自は行っていないんです。みんな周辺からやっている。ところが、イラクの場合は国際的な枠組みができていない。アメリカ、CPA、これが主体になって占領統治をやっている。にもかかわらず陸自がそれの中に入っていくというのは、これはどういうことを意味しているか。これはやはりアメリカでしょう。アメリカの意向が断り切れないから日本がそれにつき合う。そのために、もっと言えば、小泉政権の持続をするために、その利益のために、日本の国民と国益と、それからアラブに対する中立性というのが毀損されている、日本の国家が犠牲になっている、そういう図式になってきています。

 そのことを改めて指摘しておきたいと思うんですが、さっきのアフガニスタンと今回のイラクと比べて、なぜ向こうは陸自を派遣することをしなかったか、今回なぜイラクはそれをするのか、その比較の上で説明してください。

福田国務大臣 熱弁を振るわれていらっしゃいますが、いろいろお伺いしていますと、何か、いかにしたらイラクの復興支援をしないで済ますか、そういう理屈を一生懸命述べられているようなそういう印象を受けました、はっきり申し上げまして。そういうことでいいのかなということなんですが、アメリカのためにやっているわけじゃないんですよ、これは。我が国の国益でやっているんだということ、これはもう小泉総理もはっきり言っているわけですね。ですから、そういうふうにおっしゃるのは、これはやはり誤解に近いんだろうと思います。

 ただ、国際協調もあるということもあります。日米関係というのは大事であります。ですから、意見は聞きますよ。意見を聞いて、やはり協力する国々が賛同するようなやり方というのは、これは当然あるわけですから、その中で我が国としてできることをするんだ、こういう考え方でやっておるんであって、我が国のその考え方に基づいた復興支援活動、その復興支援活動も、先ほどお話の冒頭のころに、文民がなぜ行かないのかというお話がございましたけれども、文民がそれでは本当に行けるのかどうかということはあります。そういう状況ではないんだ。ですから、自衛隊が行って、そして安全にも配慮しながら活動するということ。自衛隊はそういう活動についてはほかでいろいろ経験しております。

 東ティモールでも七百人行って、延べでいえば千人超えたと思いますけれども、それだけ行って何をしていたのか。それはやはり向こうの、東ティモールの民生の向上ということ、これを考えて活動してきたわけですよ。それは大変な評価を得、感謝をされ、やはり日本の自衛隊がしっかりやっているということは、これは平和的な活動においてしっかりやっているということは、これは世界に示せたというように思っております。

 今回もそれと同じことなんですよ。ただ、治安上の問題があるということで、自衛隊はそっちの面においても十分な配慮をしていくということで、場所も選ぶし、それからそれに必要な装備もする。しかし、装備といったって、これでもって戦争できるような装備はしませんからね、そういうものは持っていきません。戦争なんかとてもできるようなことではない。これはあくまでも自衛の武器でありますのでね。そういう配慮もしていくということ。あくまでも日本の国益を考えてこの活動はすべきであるという判断から実行しようというふうに考えているところであります。

中川(正)委員 これまでのPKOとイラクとは確実に違うんです。それは何が違うかというと、PKOが評価をされた、成功した、うまくいったというのは、中立性があるからです。日本としてあの中に入っていった、日本の中立性が守られて、その中で、PKOという枠組みの中の貢献をしたからです。

 今回のイラクは、問われているのはその中立性なんですよね。アラブ諸国からも、あるいはNGO、あそこに入っている、地域に入っているNGOの声もまさにそうでありますが、今回のこのイラク攻撃の正当性が世界でしっかりと認められていないために、それがテロに大義を与えてしまって、その中で、これはアメリカ自身もそう言っていますが、テロじゃなくて、これはインサージェンス、これは体制に対する群民の蜂起が起こっている、人民の蜂起が起こっている、そういう表現をアメリカ自体がしているんですよ。そういう中で、その中立性が守られないから、日本が、自衛隊が、あるいは文民が攻撃をされるその対象になっているということです。これが基本的な違いであります。

 その上で、もう一つ言えば、どんなことが起こっているかというと、この十一月の二十二日のロサンゼルス・タイムズでありますが、ここで何を取り上げているかというと、今アメリカの軍隊が掃討戦略、掃討作戦をやっていますね。そのいわゆるノウハウ、それから、それをバックアップしている力というのは何かというと、イスラエル軍なんですね。イスラエル軍がパレスチナでの戦い、あのノウハウをそのままイラクに持ってきて、アメリカがやっていること、さらにこれ検証していったら、全くそのとおりなんです。ブルドーザーで都市部の標的を確実に破壊しながら、周りに憎悪を生み出していって、戦い自体が泥沼化していく、そのプロセスをアメリカ軍自体がそのまま取り入れていますよというのがこのロサンゼルス・タイムズの中身なんですが、そういう段階にこの戦いというのはなってきている。

 それだけに、さすがにアメリカも、そうした批判に対して何らかの形で答えを出すということで、六月には、CPAからその権力を、土着のというか、かいらい政権でもつくってその中に移すよ、こういう作戦に出てきましたけれども、そうしたものであるにもかかわらず、中身はどんどんどんどん泥沼化していくということは、これは見えています。

 それに対する日本の自衛隊の派遣、それに対して、まだ向こうのテロの意識もはっきりさせることができない状況、それが非常に、私としては、今回の自衛隊派遣を改めて見送って、さらなる状況がはっきりしてきた上での対応というのをすべきだということだと思っています。

 その上で、さっきもお話が出ていましたが、国連というものに対して、アナンさんは、今、自分の役割がわからない、自分の、自分というのは、いわゆる国連がアメリカに対してどういう位置づけになっていくのかというのを早く議論してください、はっきりさせてください、その上でないと、我々が絶えずアメリカと同一視されてテロの標的になりますよ、裏返せばそういう意味なんですね。ここについて、日本としても、はっきりとした国連に対する役割、こうした形で政権を担っていくべきだという、それを国家の意思としてはっきり出すべきときに来ています。

 そこのことについて、どうした形の表明をしていこうとしているのか。国連にはっきりとした応援をしていくべしというのが私の見解でありますが、そこのところを改めて聞きたいと思います。

川口国務大臣 我が国は、国際社会が協調してイラクの問題に対応するということが重要であるというふうに考えております。これは、武力行使以前の三月以前の段階から、ずうっとそういうことで働きかけを行ってきております。

 今回も、中山太郎先生を初め大勢の方々に、国際社会の協調をイラクの人道復興支援に向けてつくるために、そういった動きをやっております。私も、ついこの前アナン事務総長ともお話をして、国連が早くデメロ特別代表の後任を任命することが重要であるということもお話をいたしました。その後、代行を任命され、また、年が明けて特別代表を任命されるというような方向に国連は考えているようでございますけれども、一例を挙げれば、そのような働きかけをいろいろ行っております。

 それからもう一つ、先ほど委員が、PKOは中立であるからいい、今回は中立的ではないというふうにおっしゃられましたけれども、何をもって中立だというふうに御判断なさっていらっしゃるのか、私にはちょっとよくわからない部分もございますけれども、PKOについても、それから今回の、各国がイラクに対して人道復興支援を行う、あるいは民主主義を定着させるためのさまざまな努力を行うということについても、国連の決議一四八三、一五一一、これできちんとオーソライズをされたことであるわけです。みんな一致をしてそういうことになっているわけで、我が国として、それにのっとって支援を行うということであるわけでして、それがなぜ中立性を欠くのかということについては、私としては十分に、理屈のそこに飛躍があるのではないかという気がいたしております。

中川(正)委員 いつも日本政府の答弁というのは、アメリカの情報、アメリカの見解、それをもとにしてこうして出てくるわけであります。

 中立的でないというのは、既にイラクで起こっていることを見たらわかるでしょう。確実にアメリカの政府と日本の支援というのは同一視されつつある。それが、自衛隊が派遣されるということ自体がそのようにイラク国民からもアラブ諸国からも見られる。しかも、アメリカ軍というのが、イスラエル軍と同調した形でその戦略をつくりながら、あの地域に占領統治を行おうとしている。しかも、アフガニスタンで改めて確認をしたんですが、アメリカ軍のベースというのが、戦乱が終わった後もそのまま引き続いてそこに居続けるという前提の中での統治ですよ、そういう方向性まで出ています。

 そういうことから、流れが確実に相手からは見えているんです。その見えているということが実際の戦いになるんですよ。こっちが幾ら中立ですよ、中立ですよと言っていても、やっていることがブッシュの言うことを聞いているだけだったら、相手から確実に見えていて、それはもう一緒ですねという話になる。戦争というのはそういうものだと思うんです。そういうことをどういう感覚で白々しく答弁をされているのか、そんなむなしい気持ちになります。

 だから、ここまでアメリカの傘下に入って、そのシステムの一部になって、アメリカを弁護して、それで日本の国益を守ると言っている、その辺の感覚ですね。これを改めて、そんな政権ではだめなんだということ、それを指摘しておきたいというふうに思います。

石破国務大臣 先生の言わんとすることが何なのかは大体わかりました。

 ただ、アメリカの言いなり言いなりとか、中立とかいう話ですが、私どもは、アメリカとテロリストの間に立って中立なんということは夢にも思っておりません。要は、テロリストの側につくというようなことは全く考えておらないのでありまして、PKOというのはその活動そのものが国連の活動ですから、当然、中立性というのが出てきますね。そして、アフガンの場合には、アメリカも自衛権を行使しているわけですね。

 今回の場合には、国連による活動でもなければ、自衛権を行使しておるわけでもないのであって、PKOとアフガンとイラクは全く局面が違うわけです。そのときに、中立性というのを持ち出して御議論になるというのは、必ずしも事の本質を見ていないのではないかと私は思っておるところでございます。

 そして、私たちがやらなきゃいけないことは、先ほど委員がおっしゃいました、水の浄化なんかだれだってできるじゃないか、自衛隊がやらなくてもいいだろう、医療の支援なんかだれだってできるじゃないか、自衛隊がやらなくたっていいだろう、あるいは、学校の補修、だれだってできるじゃないか、自衛隊がやらなくてもいいじゃないか。私どもはそうは思っておりません。

 やはり浄化という仕事、それは、きっかけは自衛隊がやらなきゃいかぬのでしょう。そして、それが本当にその地域の人たちによって混乱もなく行われる。今まで、社会資本をどんなに整備してもその日のうちに略奪に遭っちゃう、それでちっともよくならないという例が山ほどあった。では、その人たちが本当に、サマワの人たちで浄水、給水ができるというふうになれば、いつまでも自衛隊が抱えるつもりはありません、お渡ししましょう。そしてまた医療も、それによってきちんと病院が動くようになれば、もちろん自衛隊がいつまでもいる必要はないのです。そしてまた、それは学校の補修についても同じです。

 私たちが申し上げたいのは、自衛隊のやることがすべてじゃありません。本当に大きな大きなグランドデザインがあって、その中の端緒の一部として、自衛隊がまず今の状況であれば行くということを申し上げておるだけのことであって、それは、ブッシュさんと約束をした、そういうようなものではございません。コアリションというのはそういうものではないというのは、アメリカについて御造詣の深い委員であればよく御案内のことでございます。

 それが湾岸戦争時と今において違ったということであり、委員のような御主張がアメリカの一部にあることはよく存じています。しかし、それがすべてアメリカの姿だとは私は思っておりません。

中川(正)委員 基本は、自衛隊にこだわり過ぎるということなんですよ。日本の貢献の幅というのはいっぱいある。その中で、なぜ自衛隊、自衛隊とこだわるか。

 これは、アメリカとの同盟、この言葉であらわしていますけれども、違うんです。これは小泉政権とブッシュ政権のできレースなんです。ブッシュ政権が小泉政権を認知するということによって成り立っているから言うことを聞かなきゃいけないんだ、そういうことをどうしても維持していかなければならないから自衛隊にこだわるんじゃないですか。自衛隊が中立でない形でこのままアメリカと同盟を組んでいけば、これは戦いなんですよ、戦いがはっきりしているところへ向いて派遣をしちゃだめだ、そういうことなんです。中立性が出てくるまではこれは待たなければいけない。中立性をつくろうと思ったら、国連を中心にしてもう一回世界の枠組みを立て直して、日本ができること、自衛隊にこだわらずにその中に入り込んでいくということだと思います。

斉藤委員長 中川委員に申し上げます。質問時間が終わっています。

中川(正)委員 以上、ありがとうございました。私の質問を終わります。

斉藤委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 それでは、外務大臣と防衛庁長官にお伺いいたしますが、私は、イラク特措法が立法された、成立をしたその時点と、現在のイラクの情勢というのは大きく変わっているんではないかというふうに思っております。

 イラクで今、国連の機関や日本の大使館に対する攻撃、あるいはまた日本の外交官二名が殺害をされるというふうな事態、これはまさにイラクでの攻撃が次第に組織的、計画的な色合いを増してきている、濃くしている、こういうふうな認識は両大臣はお持ちなんでしょうか。

川口国務大臣 イラク特措法が成立して以来、イラクの中の情勢については、変わった部分もあれば変わらない部分もあるというふうに思います。

 地域でいえば、おっしゃったように、テロが激しくなった地域もあれば、南部のように、例えばムサンナ県のようにほとんど変わらないところもある、これは地域によって差があると思います。

 また、ごく最近あったように、例えばフセイン元大統領が拘束をされるとか、あるいはイラクの政治プロセスについて来年の六月というようなスケジュールがはっきりするといったような、そういう変化もあるわけで、したがいまして、まとめて申し上げれば、変わった部分もあれば変わらない部分もあるということであると思います。

照屋委員 私は、外務大臣の現下のイラク情勢の認識が、イラク特措法ができた時点と今日比べて変わったところもあれば変わらないところもあるなんという認識では、これは困ったものだなというふうに率直に思いますよ。

 外務大臣、イラク特措法が成立をした時点より、反米武装勢力というかテロというべきか、この攻撃は無差別に標的を定めて激化している、しかも、それは私たちが知り得る情報の限りでも、かなり組織性、計画性を帯びてきたな、こういうふうな認識は外務省は全然持っておらないんですか。

川口国務大臣 何をもって組織的、何をもって計画的とおっしゃっていらっしゃるのかよくわかりませんけれども、先ほど申しましたように、一部の地域では、確かにテロが激化しているというところもございます。また、ほとんどそういうふうになっていない、変化をしていない地域もあるということは、先ほど申し上げたとおりのことです。

 イラク全土が変わってきているということではない。それから、旧サダム勢力及び外国の勢力が一緒に、二つそういったテロをやっているであろうという推測はできますけれども、どの程度それが計画的であって組織的な動きになっているかということについては必ずしもはっきりしない。そういうことが影響を持っている地域もあれば、そうでないところもあるということは、先ほど申し上げたとおりです。

照屋委員 それは、大臣、攻撃の態様だとか攻撃発生の場所、あるいは攻撃発生の回数、あるいは使用された武器等々から私は十分に判断し得るものだと思うんですよ。

 さて、先ほどから外務大臣の話を聞いておりますと、私は、外交官二名のあの痛ましい銃撃死亡事件について、本当に真摯に向き合っていらっしゃるのかなというふうに思わざるを得ないんです。先ほども言いましたが、イラク暫定内閣のジバリ外相が、今度の事件は、旧フセイン政権の情報機関が米軍の統治に協力する日本の外交官をねらい撃ちしたという見解を示しておるんです。

 だから、単刀直入にお伺いいたしますが、外務大臣は、今度のこの痛ましい事件というのは、要するに、日本の外交官がねらわれて起こった事件だ、こういうふうに認識をしておられますか。

川口国務大臣 今回の事件は、私たちにとっては大変に残念なことであって、痛恨のきわみであるとしか申し上げようがないことでございます。したがいまして、そういうことが再び起こらないように、安全については十分に注意をして、警備には警備を重ね、やっていかなければいけないというふうに思っております。これは外務省の職員全員がそう思っております。

 その上で、おっしゃられた、これが日本の外交官をねらったものであるかどうかということについては、先ほど別な委員の御質問に対してお答えをしましたけれども、テロである可能性というのは高いと思います。高いと思いますが、日本の外交官をねらったかどうかということについて、はっきり申し上げられるだけの資料といいますか、証拠は持ち合わせていないということです。

 例えば、そのときに、その日、近くで何人かの外国人がねらわれた、韓国人等ございます、というようなことがありました。それから、これについて、何々組織のだれだれがこういう目的でやったという犯行声明は出ていないということでございます。

 したがって、これが日本の外交官をねらいとしたテロであるということを結論づけるには、十分なその証拠はないというふうに考えております。

照屋委員 外務大臣、私は、この背後関係を含めて事案の真相を徹底的に究明することが、このような痛ましい事件の再発を防ぐことにつながると思うんですよ。では、外務省はどういう独自の調査、真相究明をやられたんですか。

川口国務大臣 これは先ほどの委員の御質問に対してお答えを既にしたと思いますけれども、事件の後、現地にある大使館が、イラクのその道の専門家を派遣いたしまして、現地で聞き込みあるいは警察からの情報の聴取、それから、現地にいる米軍と話し合う等々の調査活動を行っております。

照屋委員 全然具体性がないですね。これで、この程度で、私は、日本政府独自の調査、真相究明というふうにはとても思えない。

 そこで、時間がありませんので、防衛庁長官あるいは外務大臣に一点だけお伺いいたしますが、今度、陸上自衛隊、無反動砲などを持っていきますね。これは一体、派遣をされた自衛隊員に対してどういう急迫不正の侵害を予想しておるんですか。それをまずお答えください。

石破国務大臣 無反動砲の使い方はいろいろございます。別にりゅう弾のみを積むわけではございません。ただ、私どもが想定をしておりますのは、これは自爆テロのようなもの、そしてまたそれが対戦車弾をもってしては対処できないような場面、その場合に、抑止的に、あるいは自分を守るという自己保存的に限定して使うということを想定しておるものでございます。

照屋委員 実定法上の正当防衛論というのは、まさに、あらかじめ予想するんじゃなくして、その時点において、自分の生命、身体に対する急迫不正の侵害が起こった、こういうことでなければ、自分の命を守るために、安全を守るために正当防衛権は行使できないんですよ。それを、あらかじめ予想して、それに備える武器を持っていくなんというのは、私は、論理矛盾だというふうに思います。

 派遣された集団の自衛隊に、組織としての正当防衛という、そういうふうな権利、概念が適用されるんですか。

石破国務大臣 それは正当防衛に対するお考え、認識の違いだろうと思っております。

 先ほどもお答えをいたしましたが、何を持っていくかということではなくて、それをどのように使うかということに私は力点を置いて考えておるわけでございます。このことは、急迫不正の認定に何ら支障を及ぼすものだとは考えておりません。

 それから、集団で正当防衛権を使うことはあるのかというお尋ねでございますが、武器の使用の場合には、それは個人でございます。しかしながら、その場に上官がありますときは、それぞれ個々がばらばらに勝手な判断で撃つということになりますと、かえって不測の事態を招きかねないわけでございまして、上官が現場にあるときは上官の指揮に従う、しかし、それは個人が行うというような法的性質を何ら変更するものではございません。

照屋委員 今の大臣の答弁ですと、それがまさに武力の行使であり、戦闘行為なんですよ。

 そういうことを申し上げて、時間ですので、終わります。

斉藤委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十三分散会




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