衆議院

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第5号 平成16年2月10日(火曜日)

会議録本文へ
平成十六年二月十日(火曜日)

    午後六時二分開議

 出席委員

   委員長 斉藤斗志二君

   理事 小野寺五典君 理事 中谷  元君

   理事 西田  猛君 理事 三原 朝彦君

   理事 末松 義規君 理事 中川 正春君

   理事 藤田 幸久君 理事 河合 正智君

      今津  寛君    江藤  拓君

      金子 恭之君    木村  勉君

      倉田 雅年君    近藤 基彦君

      佐藤  錬君    桜井 郁三君

      塩崎 恭久君    竹下  亘君

      橘 康太郎君    谷本 龍哉君

      玉沢徳一郎君    西川 京子君

      西野あきら君    野田 聖子君

      萩生田光一君    望月 義夫君

      山下 貴史君    池田 元久君

      生方 幸夫君    岡島 一正君

      首藤 信彦君    田嶋  要君

      達増 拓也君    中野  譲君

      仲野 博子君    長島 昭久君

      原口 一博君    伴野  豊君

      前原 誠司君    松本 剛明君

      山田 正彦君    赤松 正雄君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     福田 康夫君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  宮崎 礼壹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)  堂道 秀明君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長  高木 孝雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十日

 辞任         補欠選任

  岸田 文雄君     西野あきら君

  玉沢徳一郎君     佐藤  錬君

  木下  厚君     中野  譲君

  横路 孝弘君     仲野 博子君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  錬君     玉沢徳一郎君

  西野あきら君     岸田 文雄君

  中野  譲君     木下  厚君

  仲野 博子君     横路 孝弘君

    ―――――――――――――

二月三日

 自衛隊のイラク派兵反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五六号)

 同(石井郁子君紹介)(第五七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第五九号)

 同(志位和夫君紹介)(第六〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六二号)

 同(山口富男君紹介)(第六三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六四号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一八一号)

 同(石井郁子君紹介)(第一八二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一八三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一八四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一八五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一八六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一八七号)

 同(山口富男君紹介)(第一八八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一八九号)

 イラクへの自衛隊派遣反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第九三号)

 武装した自衛隊のイラク派兵反対に関する請願(田中慶秋君紹介)(第一〇一号)

 テロ特措法とイラク特措法の廃止法制定に関する請願(首藤信彦君紹介)(第一一七号)

 同(中村哲治君紹介)(第一一八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 この際、一言申し上げます。

 去る一月三十日の当委員会におけるイラク承認案件の採決につきまして、円滑なる運営ができなかったことはまことに遺憾に存じます。

 今後、公正かつ円滑なる委員会運営を行いたいと存じますので、委員各位の御協力のほどを心からよろしくお願い申し上げます。

     ――――◇―――――

斉藤委員長 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第一部長宮崎礼壹君、防衛庁運用局長西川徹矢君及び外務省中東アフリカ局長堂道秀明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 この際、政府から説明を聴取いたします。防衛庁運用局長西川徹矢君。

西川政府参考人 防衛庁の方から、イラクにおける自衛隊の部隊の活動状況について御報告いたします。

 イラクにおきます自衛隊の部隊の活動状況について御説明いたしますが、イラク人道復興支援特措法に基づきイラク等に派遣されている自衛隊の部隊は、現在、以下のような活動を行っております。

 まず、陸上自衛隊の部隊につきましては、一月十六日に出国した先遣隊約三十名が、一月十九日サマワに到着し、現地において、現地の治安状況等に関する情報の収集、CPA等の関係機関との調整を実施し、自衛隊の活動に関する地元の強い期待と友好的な姿勢を確認するとともに、現地社会との良好な関係の構築に努めています。また、宿営地整備に係る調整等を行っております。

 具体的には、一月二十日には、ムサンナ県知事を訪問し、サマワ市評議会議長代理、部族長、宗教指導者等を含む約三十名と面会をし、自衛隊の到着を歓迎する、日本の人道復興支援活動に期待しており、住民には協力機運が広がっている等の発言があったとの報告を受けております。

 また、一月二十二日には、地元部族長らとの懇談の機会が設けられ、良好な雰囲気の中で自衛隊に対する高い期待感が感じられました。二月二日には、日用雑貨を購入するためにサマワ市中心部の市場に出かけた際、市内を行き交う人々の大半が好意的であり、危機を感じることがなかったなどといった報告を受けております。

 自衛隊の活動のニーズにつきましては、医療関連については、県保健局やサマワ総合病院等との調整により、給水関係につきましては、県水道局等との調整により、施設改修関連では、県教育局や道路橋梁局等との調整により、それぞれ確認するとともに、CPA等との間でも各種調整を行っております。

 宿営地につきましては、予定地を一カ所に選定し、当該土地の地権者に対し、土地の利用の了解を得るとともに、その使用に要する経費についての調整を継続的に実施し、地権者の了解を得て、当該土地の測量作業や、宿営地建設作業の一部として、取りつけ道路を建設しているところであります。

 なお、二月二日、取りつけ道路整地作業中に古い対人地雷と思われるものが一個発見され、オランダ軍がこれを処理いたしましたが、本件が直ちに今後の隊員の安全確保に重大な影響を与えるものであるとは考えておりません。

 また、二月三日に出国した本隊の一部約九十名は、二月十日までにサマワに到着し、主に宿営地建設に従事することとしております。

 さらに、今後、本隊の残余の部隊が、しかるべき時期に本邦を出国して順次サマワに展開し、本格的に人道復興支援活動等を開始していくこととなります。陸自の派遣部隊の人員は、最終的には六百名弱となる予定です。

 具体的な活動としては、病院の運営、維持管理についてイラク人医師等に対する助言指導、運河の水を浄水し、生活用水の不足する地域の住民への配給、学校、道路等の公共施設の改修等を実施することとしています。

 次に、航空自衛隊の部隊につきましては、昨年十二月二十六日以降出国いたしました先遣隊は、十二月二十七日以降にクウェート等に到着し、現地の治安維持等に関する情報収集やC130機の受け入れのための調整等を実施してきているところでございます。

 また、一月二十二日に出国し同二十三日にクウェートに到着した本隊要員、及び一月二十六日に出国し同三十日にクウェートに到着したC130機三機は、現在、クウェートにおいて所要の訓練等を行っているところであります。

 今後しかるべき時期に、C130機により、クウェート国内の飛行場施設を拠点とし、イラク国内の飛行場施設等との間で、人道復興支援物資を中心に輸送を行うことを予定しています。

 最後に、海上自衛隊の部隊につきましては、一月二十六日に派遣部隊の出国を命令したところでございますが、今後しかるべき時期に、陸上自衛隊の部隊の派遣に際して行う人員及び物品の輸送のために、輸送艦等が出国することを予定しております。

 以上でございます。

斉藤委員長 次に、外務省中東アフリカ局長堂道秀明君。

堂道政府参考人 私よりは、イラクの治安情勢について御説明申し上げます。

 イラクの治安につきましては、その脅威の度合いは地域により異なります。いわゆるスンニ・トライアングルを中心に、連合軍、イラク警察及びソフトターゲットに対する攻撃が顕著であるとの構図が基本的には続いております。イラク北部では、二月一日、エルビルで、クルドの二大政党でありますクルド愛国同盟、クルド民主党の事務所に対する同時自爆テロが発生しております。

 昨年十二月のフセイン元大統領の拘束は、イラク国民に対し、フセイン体制の復活がなくなったとの大きな心理的影響を与えたと思われます。また、米軍は、スンニ・トライアングル等で掃討作戦を展開し、フセイン政権の残党、外国人武装勢力その他の過激派、破壊活動分子等の制圧を行い、これまでに多数の容疑者を拘束しております。米軍の発表によれば、米兵の死者数は昨年十一月をピークにしておりますが、フセイン大統領拘束後もテロは継続しており、今後とも治安状況の動向を注視していく必要があります。

 なお、二月三日及び五日に、バグダッド国際空港施設またはその周辺にロケット弾や迫撃砲による攻撃があり、死傷者が出たとの報道がありました。本件事実関係を含め、関連する情報については注視していく必要がありますが、バグダッド飛行場は現在引き続き機能しております。

 これらに対しまして南東部におきましては、バスラ周辺を中心にイラク警察や連合軍を標的とする事件が散発的に発生していますが、イラクの中では比較的安定した状況にあると考えられます。中でも、サマワを中心とするムサンナ県は比較的治安が安定しており、これまで大きな事件もなく、住民は不審者を通報するなど治安当局に協力的であると承知しております。他方、サマワでは、失業者による求職デモ、暫定議会選出について直接選挙を求めるデモが発生しております。具体的には、一月十五日に職を求めるデモがあり、二十日並びに二十一日には直接選挙を求めるデモがありましたが、いずれもおおむね平和裏に収束しております。

 いずれにせよ、治安状況については、今後とも十分注意を払って情報収集に努めてまいります。

 サマワには、一月十九日に陸上自衛隊の先遣隊が、そして二月の八日には本隊の先発隊の一部がクウェートより陸路到着し、地元関係者の盛大な歓迎を受けています。先遣隊の佐藤隊長及び外務省在サマワ事務所の斉藤事務所長は、ムサンナ県知事、地元各部族長等有力者と会談し、精力的にさまざまな意見交換をこなし、自衛隊の活動に対する地元の強い期待と友好的姿勢を確認すると同時に、自衛隊の活動が人道復興支援活動であることについての地元の理解を得るように努力しています。また、かかる努力に際し、雇用対策を初め、サマワが直面しているさまざまな経済社会問題に対する適切な配慮を払うことが重要であります。

 外務省としては、イラクの人道復興支援の推進に当たっては、自衛隊による人的貢献とともに、経済協力を車の両輪として進めていくこととしておりますが、特にサマワについては、雇用対策にも資する各種支援のほか、昨日九日には、ムサンナ県水道局に対する給水車十二台の供与を決定したところであります。

 今後も、医療、教育等の分野で積極的に優良案件を発掘し、実施してまいります。こうした経済協力の実施は、サマワにおける治安状況のさらなる改善につながるものと考えております。

 イラクの治安の改善は、政治プロセスの着実な進展や民生の安定とも密接に関連していると言えます。イラクの政治プロセスに関しては、昨年十一月十五日の統治評議会とCPAの間の合意によれば、二月末までに制定が予定されている基本法に基づき、本年六月末までに移行行政機構が統治権限を承継し、憲法制定や新政府の樹立を準備することとなります。

 これに関連し、国連は、一月十九日の国連、統治評議会、CPAの三者協議会における統治評議会、CPAからの要請を受けて、ブラヒミ事務総長特別顧問をヘッドとするイラクの暫定選挙のあり方を調査するチームをイラクに派遣しています。同チームは、シーア派の指導者であり、直接選挙の実施を主張しているシスターニ師とも会見する予定であると承知しています。

 我が国としては、早急にイラクにおいて政治プロセスの着実な進展と民生の安定を通じ、イラク人による平和で自由な民主国家として再建されることがイラクのみならず地域の平和と安定にも重要であると考えており、国連の調査チームの活動を契機として、統治権限の移譲に向けた現実的かつ実効的な合意がイラク国内の幅広い関係者の間で見出されることを強く期待しております。

 我が国は、従来より、イラク復興支援は国連の十分な関与を得ながら、幅広い国際社会の参画を得て進められるべきと考え、外交努力を行ってきています。我が国は、昨年十月のマドリッドでのイラク復興国際会議の開催に積極的に貢献したほか、米仏独等の関係各国、イラク周辺国及び国連に対し累次の機会に働きかけを行う等、イラク復興へ向けた国際協調強化のための外交努力を行ってきました。また、対イラク支援に際しては、アラブ諸国との協調支援を行うとともに、仏独との間でも協力について協議を行っています。

 今後とも、こうした努力を継続、強化してまいります。

 最後に、イラクの治安情勢は全般として予断を許さない状態が続いており、イラクに派遣されている自衛隊員や大使館員については、必要な安全対策を講じるとともに、常に現地の治安情勢の的確な把握に努めて、万が一の不測事態が起こらないよう、これらの者の安全確保に万全を期することとしています。

 また、在留邦人については、イラク全土に対して退避勧告の危険情報を出すとともに、必要に応じてスポット情報を随時発出し、情報提供に努めるとともに、速やかに退避することを求めておるところであります。

斉藤委員長 これにて説明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今津寛君。

今津委員 自由民主党の今津寛でございます。

 大臣を初め政府関係者、午前中に引き続きまして本当に御苦労さまでございます。お体に気をつけていただきたいと思います。

 きのうでありますか、去る九日に、自衛隊のイラク派遣の国会承認がありました。今、お二人からイラクの状況について大変詳しく御説明いただいたところでありますけれども、連日、テレビの画面などを通じて、頑張っていただいている自衛隊の皆さん方のあの活動を見たときに、心から敬意を申し上げると同時に、御健闘をお祈り申し上げているところでございます。

  六月ごろだったでしょうか、停電が日常茶飯事になって人々の不満が募り始めたころです。バグダッド市内の女子中学校を訪問した私に、一人の女性教師が近寄ってきて、「私たちは今とても苦労しているけど、サッダームの政権がなくなったことだけは本当に嬉しく思っている。外国人のあなたに、そのことだけは伝えておきたかった」と流暢な英語で話しかけられたことが今でも忘れられません。

  自由を手にしたイラクの人々は、テロの恐怖と戦いながらも着実に新しい国造りを進めています。私たちもイラクという国がテロリストの手に落ちないように、懸命の努力をしているイラクの人々と手を携えなければなりません。これは、自由を守るための私たち自身の戦いでもあるのです。

これは、殉職されました奥克彦大使の「イラク便り」の中の一節でございます。

 最初に、我が日本という国のあり方とイラクの復興支援の関係について、外務大臣にお聞かせをいただきたいと思います。

 湾岸戦争のあの苦い経験から、我が国はこれから一体どうあるべきかということで、当時、自由民主党は、幹事長が小沢一郎先生だったと記憶いたしておりますけれども、小沢調査会というものを、各派から選手を出しまして、そして国際貢献のあり方というものを議論いたしました。そのとき、私もそのメンバーの一人だったのでありますが、その後、湾岸戦争のときからずっと、ゴラン高原など、今まで一万人以上の自衛隊の諸君が海外で国際貢献、人的支援で努力をいたしていただいております。

 そういう中で、今回のイラク戦争の関係において、我が国のあり方というものが今問われているわけでありますが、小泉総理は、自衛隊のイラク派遣に関する基本計画を決定した後、記者会見の場に臨んで、日本国の理念、国家としての意思が問われている、日本国民の精神が試されている、決してお金や物だけではなくて、非常に危険ではあるかもしれないけれども、しかし、人的支援を行うということが国際社会から我が国が評価をされるんだという、こういう信念のもとにイラクの派遣を決定したわけであります。

 イラクの人たちが自分たちの手で自分たちの政府をつくっていく、その支援をさせていただく人道復興支援でありますが、このことについて、我が国のあり方とイラク復興支援についての御見解を再度御確認させていただきたいと思います。

川口国務大臣 今先生が最初におっしゃられましたように、お金だけじゃなくて人もということをずうっと我が国は考えてきたのだと思います。

 考えてみますと、平成二年の十月に国連平和協力法案を、これはまさに金の面だけではなくて人の面でも貢献すべきだということで国会に提出をさせていただいて、そして、そのときは廃案になったというのが今から十四年ほど前のことでございますけれども、それから考えると、十四年間の間に多くのことが起こって日本も変化をしてきたというふうに思います。

 改めて申し上げるまでもありませんけれども、日本の平和と繁栄というのは国際社会が平和であるという中に存在をするということでして、我が国は国際社会が平和であることからメリットを受けているわけです。したがって、その国際社会が平和であるようにしていくことが我が国の国益でもあるし、また世界の人々が望んでいることでもあると思います。そういう意味で、日本が国際社会に積極的に貢献をしていくために、さまざまな法律も通し、アフガニスタンその他で今貢献をしているということであると思います。

 我が国としてこれはまさに国益でもあり、それから世界の人々が望むことでもあり、そのために我が国が貢献をするということもまた当然のことであるわけでして、そういった観点から、今イラクには自衛隊の方に行っていただいていますし、それから車の両輪ということで、経済協力についても最大限五十億ドルということでコミットをし、今その実施を図っているわけでございます。

 いずれまた、将来的に治安の問題が今よりも問題でなくなってきたときには、NGOの方、民間企業の人が持っている知恵、そういうことがイラクの人道復興支援のために生きていくということになるというふうに私は思っております。

今津委員 イラクへの人道復興支援の大義についてお伺いをしたいと思います。

 よく、今までの議論の中で、戦争の大義というものが議論をされているところでございます。もちろん私は、イラク戦争の大義がどこにあるかということをきちっと整理することは大切だというふうに思いますし、そのための議論も当然必要だと思いますけれども、我が国は戦争に参加するわけでもありません。それから、治安の回復に加わるわけでもありません。我が国は国連決議に基づいて人道復興支援に加わるわけでありますから、まさしく我が国にとって最も大切なことは、人道復興支援に加わる意味での大義というものがどうかということは、私はもっと大切だと思っているのであります。

 国際協調へ我が国は脱却を目指していく、あるいは日英、日米、日米同盟あるいは国益などの議論と同時に、私は、もう一つ大切な大義というものは、テロには絶対に屈しない、ひるまない、たじろがない、こういう決意を我が国はしているということを上げていかなければならないというふうに思っています。

 テロとの闘いは、ある意味では日本の宿命でもあると思っております。昨年八月十九日の国連バグダッド本部への爆破テロ、そして赤十字への攻撃を境に闘いに求められている大義は明白なものになっておりまして、自衛隊派遣の正当性は一層高まっております。一年の九・一一のあの同時多発テロの事件の直後、小泉総理がニューヨークの現場に立って、ウイ・ファイト・テロリズム、我々はテロと闘うと言うことは、記憶に新しいところでございます。また、世界貿易センタービルへのテロ攻撃によりまして、建物内に勤務する我が日本人の同胞二十四人が痛ましい犠牲になったということも、私たちは決して忘れてはならないことだというふうに思っております。

 国内においても、一九七〇年以来の過激派セクトによる爆弾事件から、九〇年代半ばのオウム真理教による松本サリン事件、地下鉄サリン事件、また、北朝鮮による一説には数百人にも及ぶとされる日本人拉致が、この選挙においても圧倒的多数の候補者、当選者が拉致はテロだという認識で一致をしている。こういうテロに対する強い決意というものは、私たち日本国にとっては大切な大きな決断をした事実でございます。

 このテロに対する決意というものを、外務大臣、もう一度お聞かせをいただきたいと思います。

    〔委員長退席、西田委員長代理着席〕

川口国務大臣 イラクにおいて、あるいは世界のほかの場でテロに対して闘い続けなければいけないということは、先生がおっしゃるとおりだと私は思います。

 二十一世紀において、今、冷戦終了後の世界が直面をしている脅威というのはテロであり、そういったテロリストが大量破壊兵器を入手する、あるいは、大量破壊兵器が拡散をしてさらにテロリストの手に渡り、あるいは民主的な統治を持っていない国の手に渡るということが一番の脅威であると私は思います。

 今イラクで人道復興支援をしなければ一体どういうことになるだろうかということを考えてみますと、イラクに対する人道復興支援の重要性と我が国がそれに貢献をしていくことの重要性がよくわかると私は思うのですけれども、イラクが、かつてアフガニスタンがそうであったように、破綻国家になってテロリストが跳梁ばっこする国になってしまうということは、今まさに脅威だと申し上げたようなことが起こる、その震源地にイラクがなっていくおそれがあるというふうに思います。

 ましてや、イラクは世界で第二位の石油の保有埋蔵量を持っている国でありますから、その地域がそういったテロリストの手に入ってしまうということになりますと、世界の経済、あるいは世界のすべての国と言っていいと思いますが、その経済あるいは繁栄が危機に瀕することになると思います。それから、イラクがそういうテロリストの揺りかごになってしまいますと、すぐ近くにある、パレスチナ問題で非常に大きな問題になっている中東和平、パレスチナの地域においても、これにも影響が及ぶということになります。

 そういったことは、全体に世界が平和であって繁栄をし続けるという観点から考えると、我々はどうしても避けなければいけないことでございますので、したがって、日本のみならず、世界の国々がイラクの人道復興支援のために貢献をしていくということが大変に重要であるということだと思います。

今津委員 今までの議論の中で、私は考えるんですけれども、現地の治安が大変心配だ、少し安定してから日本としての果たせる役割を果たしていこう、こういう御意見の方もいたんですね。危険だから派遣を見送るという考え方は、日本というのは大変憶病な国だなという評価を受けると私は思います。また、現地が安定してからできる貢献をしていけばいいじゃないか、日本としてできることをしようじゃないか、こういう考え方は、日本というのは身勝手な国家だな、国民だなという評価も得ると私は思うんですね。

 私は、かつて巨人軍の監督をしていた原選手の、原監督のファンなんですけれども、原選手は、チームが勝つか負けるか、ここで一発ヒットを打てば巨人は大丈夫だというときにはなかなか打てなくて、大体勝負がついて、巨人が五、六点勝った後にパカーンとホームランを打つんですよね。ですから、ホームランを打ってくれるんですけれども、ありがたみが少ないということで、少し辛らつな批判も一時あったんです。日本の国も、もしそういう考え方に立つとすれば、一番大切なときに頑張れないということは、やはり大きな評価をもらうことができないというふうに私は思うんです。

 そこで、隊員の方々が現地でしっかりと任務を果たすためには、派遣に対する国民の理解とバックアップ、名誉や処遇の問題があると私は思います。また、隊員自身の身を守るためには、武器使用の基準とか、あるいは部隊の行動基準というものが不可欠でございまして、これらが本当に大丈夫なのかということも、今までいろいろな場所で議論をされてきたところでございます。

 私は、小牧、それから市ケ谷、それから旭川での陸自の本隊と、いずれも完結式、隊旗授与式などに出席をさせていただきましたけれども、時々、自衛隊の正門の前で、通勤をしている、自転車なんかに乗っている隊員の人を見ていると、ちょっと心細いな、大丈夫かなというようなことを感じないわけでもなかったんですけれども、とにかく、派遣される隊員の人たちと接してみて、そして一人一人握手をしてみて、その凜とした姿、輝くらんらんとした目、国家のためにお役に立つんだ、国際貢献に自分が貢献するんだ、こういう姿というのはまさに胸を打つものがあるわけであります。

 あるとき、第二師団で、幹部の方や派遣をされる隊員の方と親しく懇談をさせていただく機会を得たときに、彼らが異口同音に言うことは、とにかく、決まるまではどんな議論をしていただいても結構だと言うんです、どんな議論をしていただいても結構だと。ただ、派遣が決まれば、我々は危険なイラクへ行くんだ、もちろん最悪のことも覚悟して行くんだと。そのときに我々にとって必要なことは国民の皆さん方の拍手だと言うんです、頑張れという声だと言うんです。

 だから、いずれにしても、決まるまではいろいろな議論があったとしても、それは構わないけれども、派遣が決定した以上は応援してほしいな、こういう隊員の方や御家族の気持ちというものは、私はごく当然のことだというふうに思います。

 ここにも民主党の皆さん方がいらっしゃいますけれども、やはり二大政党を目指す中で、民主党は将来一翼を担っていく政党だというふうに私は思っています。そういう意味では、やはり民主党が真に政権を担い得る政党であるかどうかということは、今、政治的な対立、その構図というものはひとまず横に置いて、民主主義における国民一致の原則に基づいて、国家問題となったこの問題に対処していただきたいなと。つまり、共同体の一員として、自衛隊の派遣が決定した瞬間から、派遣される隊員を支援してほしいと心から熱望するものでございます。

 国民の派遣に対する支持も少しずつ上がってまいりまして、読売新聞の調査では五〇%を超えました。

 官房長官、お聞きをしたいと私は思いますけれども、だんだんだんだん、総理を初め皆様方の努力が実って、国民の方々も派遣に対する理解が日に日に増してきておりますけれども、さらにやはり、先ほどの隊員の方の言葉をかりれば、もっともっと国民の皆さん方に心から支援をしてほしい。こういう意味で、国民の皆さん方の支持を高めることについての方途あるいは御決意がありましたら、お聞かせをいただきたいと思います。

福田国務大臣 今委員がおっしゃっていること、大変もっともな話だと思います。

 イラクに対する自衛隊の派遣、このことに対する理解というのは、これは少しずつでも理解が進んでいるというふうに思います。大体、イラクに復興支援でもしくは人道支援で行くということについての反対は、恐らく国民の間で非常に少ないんじゃないかと思います。基本的には、イラクの復興に貢献したいという気持ちを日本の国民は、多くの国民は持っているんだというように思います。

 ただ、問題は、イラクが危険だというようなことが、実際そういうところはあります。テロという、いつどこで何が起こるかわからぬという、そういう要素もありますので、そのことに対する心配が国民の間にあるんではなかろうかなというように思っております。ですから、政府としても、自衛隊の隊員が安全に活動できるようにということを考えて万全の対応をしてまいらなければいけない、またその責任もあるんだろうというふうに思います。

 自衛隊がこれからいろいろな活動をしてくださるわけでありますけれども、そういう活動を通して、イラクの復興が少しでも進捗していくというような光景が目に見えるような形になってくれば、私は、日本の国民として本当によかったというように思う、そういう時期が来るんではないのかなというような期待をしておるところでございます。

 いずれにしましても、万全の注意を払いながらしっかりと自衛隊に活躍していただき、これは大変御苦労なことでありますけれども活躍していただいて、そして我々がそれを日本の国内からいろいろな形で支えていく、そういう役割があるんだろうというふうに思っております。

今津委員 派遣の意義は評価をしていただいたとしても、でも、自衛隊の方々が本当に自分の身をしっかりと守ってそしてお仕事できるんだろうか、こういう心配も国民の皆さんの中には随分あるんですよね。

 その中で、武器使用の基準についてでありますけれども、刑法の三十六条は正当防衛、そして三十七条は緊急避難、この二つのときにのみ――イラク特措法の十七条四項は「武器の使用に際しては、刑法第三十六条又は第三十七条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。」こういうふうに言っているわけでございまして、せっかく持っていった武器の使用が制限をされるという現実が大変自衛隊の皆さん方の手足を縛って、そして、本当にいざというときに生命の存在そのものも危険に陥るときがあるのではないかな、そのような心配をするところでございます。

 そこで、イラク特措法の九条にはちゃんと「内閣総理大臣及び防衛庁長官は、対応措置の実施に当たっては、その円滑かつ効果的な推進に努めるとともに、イラク復興支援職員及び自衛隊の部隊等の安全の確保に配慮しなければならない。」と。したがって、イラク特措法の武器使用の基準として、新たに刑法三十五条正当行為を加える。正当行為というのは、例えば、普通、人が他人の体を切り裂けば傷害罪になりますが、外科医はそうならない。当然、自衛隊が治安出動したり領空侵犯に対処したり、海上警備活動をしたり海外に派遣をされたときに武器を使用する、これはもう正当行為である、こういう議論もあって罪にならないということでありますが、これについての長官の御認識をいただきたいと思います。

 さらに加えて、活動の中断、休止または避難についてでございます。

 法律がございまして、その中で、中断をしなければいけないとか、あるいは避難をするとかなどといろいろ書かれていて、実際、現地の指揮官も非常に困ることが出てくると思うんですね。私は、やはりこういうことについては現地の指揮官に可能な限り権限を委任していく、そして、現地で起こることが予想されるすべてのことについて政府が全責任を負うと明言をして、そして後顧の憂いなく頑張ってもらいたい、こういう考え方を示すべきだと私は思いますけれども、長官、いかがでしょうか。

石破国務大臣 先生には、自由民主党国防部会長として本当にいろいろなところで御指導いただいており、心から厚く御礼を申し上げる次第であります。

 今の御質問でございますが、私どもはこういう考え方をいたしております。

 自衛官が現地におきまして武器を使用いたします行為は、刑法三十五条正当行為、先生御指摘のとおりでございます、三十五条における法令行為として違法性が阻却をされるわけであります。イラク人道復興支援特措法第十七条の要件に基づき適正な武器の使用を行った結果、流れ弾等により第三者たるイラク住民を死傷させた場合、当該武器の使用は刑法第三十五条における法令行為として違法性が阻却され、武器を使用した自衛官の法的責任が問われることはございません。

 この三十五条をどのように考えるかですが、正当行為ではございます。しかしながら、危害許容要件というのはこれとはまた別の考え方に基づいておりまして、危害許容要件は、正当防衛、緊急避難の場合、危害許容要件として認められるということであります。ですから、正当行為だから何をやってもよいのだというお話にはこれは相なりません。やはり正当防衛、緊急避難の場合に限って危害許容要件として認めるという考え方をとるべきだと私は思っております。正当行為なので何をやってもいいという考え方を私自身はとっておりませんし、政府としてもとっておりません。

 そうしますと、よくあります俗論に、じゃ、向こうが撃つまで撃てないのか、そんなばかな話があるかということがございますが、これも何度か答弁で申し上げましたが、向こうが撃つまで撃てないというようなことを正当防衛の要件できちんと定めておるわけではございません。これは急迫不正というものをどのように考えるかということであって、急迫性というものが判断をされるとすれば、別に向こうが撃たなくてはということではないわけであります。懐に手を入れただけでも急迫性が判断されたということもございます。

 また、警告射撃についての御議論も参議院でも随分ありましたが、本当にそのいとまもない場合にはそれは警告射撃を行わないということだって、それはすべて排除されるものではございません。

 要は、そういう場合に、頭の中で幾ら刑法理論を入れたってしようがありませんので、どれだけ迅速に、的確に、正確に、遅滞なく判断をすることができるか、それはまさしく訓練のたまものであるということだと思っております。

 だれが責任を負うかということでございますが、そのような基準に従って行動いたします限り、個人が責任を負うことはございません。そのようなことはありません。基準に従って行動します限り、個人に責任を負わせることはないわけでございます。また、現場に上官あります場合に、武器の使用は上官の命令に従うということも当然のことでございます。

今津委員 憲法九条だとか集団的自衛権の解釈の問題とか、そういうこともあって長官の御答弁になっているというふうに思いますが、私は、法律を守って国が滅びることになってしまうんでないか、そういう危惧を持っておりまして、憲法の改正の議論に大いに期待をしているところでございます。

 ところで、アメリカ、イギリス以外にテロリストの攻撃によりまして死傷者が発生した国としては、イタリア、スペイン、ポーランド、韓国、タイ、ブルガリアなどがあるんですが、これらに対して、イタリアは、大統領が同盟国及び国連とともに国際テロに対する戦いにおける我々の役割を継続すると、空挺部隊を五十名増員している。あるいはスペインについても、アスナール首相が、イラクからの撤退は最悪の選択である、スペインはその義務を誠実に、冷静に実行する旨を表明しておりますし、韓国も近々、第二次隊の派遣を決定しているなど、テロによる犠牲を理由に撤退を決めた国はなく、また政治責任をとって辞職したという事例も承知をいたしておりません。

 議論の中で、総理に、起きてはならないことがもし起きてしまった場合、その責任はだれにあるんだと。それは総理自身が明快に、自分にあるし、毅然とするということをおっしゃっているわけでございますけれども、国家が自衛隊の皆さん方に国家として、危険なところに、非常につらい仕事をお願いして命令を下して、そして派遣をしている、こういうことからいえば、私は、何が起きたとしても、この責任はすべて国家にあると思うんです。国家が派遣を命令したとすれば、起きたことについては国家がすべてその責任というものを負っていかないと、私は、派遣された自衛隊の皆さん方は非常につらいところで仕事をしなきゃならぬということになって、精神的にもつらいものがあるというふうに思います。

 また、議論の中で政局というものが出てきました。この国がかつてない経験を積もうとしているときに、先ほど私言いましたように、一致団結してこの仕事というものをなし遂げなければならないときに、もし何かあったときに総理は責任をどうとるんだ、政局はどうなっていくんだ、政権がどうなっていくんだ、こういう議論をしているところは、私は日本だけだと思うんですよ。ほかの国に恐らくこんな議論をしているところはないと思うんです。

 そういう意味では、日本はいまだに特殊な国であって、やはり、最初に申し上げましたけれども、日本という私たちの住むこの国家が一体これからどうあるべきかということの中で、このイラクの問題について国民挙げて議論は十分に尽くしながら、しかし、決断をした以上、この仕事をしっかりと成功させて、全員、一人も欠くことなく帰還をしていただいて、そして、日本という国はすばらしい国だな、変わったな、自分たちのことばかり言っているわけではないな、こういう評価をいただくような、いわば憲法の前文のような、国際社会の中において名誉ある地位を占めたいと思う、そういう国のために頑張らなきゃいけないな、そんなことを思いながら、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

西田委員長代理 次に、末松義規君。

末松委員 質問をする前に、先ほど斉藤委員長の方から、今回のこの一月末にありました強行採決、そしてそれに基づく混乱、これに対して遺憾の意が表明されました。理事会でも同じような遺憾の弁がなされましたが、この点をしかと心得ていただいて、二度とこのような混乱が起きないようにしていただくことを委員長に強く申し上げまして、私の質問を始めたいと思います。

 私もいろいろとイラクの情報についても集めているところでございますけれども、きょうは、松本剛明議員、民主党の同僚議員から、二月の頭にイラクに行ってきた、サマワに行ってきたお二人を紹介していただいて、お話を聞きました。民主党の仲間の高橋昭一さんという方と成田政隆さんという方なんですけれども、彼らの話の中で、この方々は二月の三日にイラクに入って、バグダッドに行って、その後サマワに二日以上泊まって、そして帰ってきた方なんですけれども、印象として二点言っておりました。

 一点は、治安については、サマワは今は懸念するような状況ではなかったと。二番目に、このサマワという町を見ると、戦闘行動があってこの町が疲弊したわけではないので、そういった意味で、戦闘とは全く関係なく日本が人道支援あるいは復興支援をやろうとしていることに対してどうも違和感がある、そこになぜそんなに大きなお金をかけなければいけないのだろうかと。もっと戦闘が行われて被害があった、この復興というのならわかるけれども、ほとんど戦争が何もない状況の中で、この復興支援、どうしてだろうという疑問が多かったという話でございました。

 さて、そういう点の中で、その治安について、私は、これから、自衛隊の本隊が行ってから、非常に大きなテロとかそういうことが起きる危険性があるという観点から質問させていただきます。

 皆様のお手元の方に、中川正春議員が行った質問主意書とその回答がございます。これを参考にしながら私の質問をさせていただきたいと思います。

 この質問主意書の冒頭に、「テロリストおよびテロ攻撃の定義」というものが書かれております。これについて、この定義は何かということについて、確たることは国際法上も言えないというお話が書かれていますけれども、それに間違いございませんね。

    〔西田委員長代理退席、委員長着席〕

川口国務大臣 ここにございますように、テロリスト及びテロ攻撃については一般国際法上確立した定義があるわけではないというのは、そのとおりです。

末松委員 二〇〇一年九月十一日、あの米国の同時多発テロと呼んでいるのは、あれは一般国際法上テロですか。

川口国務大臣 一般国際法上定義がないと申し上げましたので、一般国際法上何かということは申し上げられませんけれども、そういう観点からは申し上げられませんが、あれはテロであると思います。

末松委員 この答弁書を見ますと、このテロの報復としてアメリカが行ったアフガンに対する戦争、これは国際的な武力紛争ということだというふうに断言しておりますけれども、テロに対して、基本的には武力紛争というのは戦争ですよね、そういうことを行ったということですね、アメリカは。

川口国務大臣 この答弁書の、ちょっとこれはページ数がないのでわかりません、二枚目でございましょうか、のところに書いてありますけれども、九・一一テロ、これを受けて米国は、これに対して個別的または集団的自衛権を行使したということであるわけです。

 それで、一般国際法上、国際的な武力紛争という定義もまたないということでございます。これはどこかに書いてあります。この答弁に書いてあるとおりです。

末松委員 だから、一般国際法上、国際的な武力紛争についての定義はないけれども、ただ、ここで「「国際的な武力紛争」に当たり得る」と書いているのは、国連の安保理決議がそういうふうに言っているからそうだということですね。そういうことですね。うなずいていただきました。

 翻って、日本の場合を考えてみましたら、イラクでテロ攻撃がよくあったと言われますけれども、自衛隊に対して向けられたテロ攻撃、これに対して自衛隊がそれに反撃する、これは武力の行使に当たりませんよね。

石破国務大臣 当たりません。

末松委員 その理由も言ってください。

石破国務大臣 それは、状況を、かくかくしかじかこういう状況でというのを設定した上でなければなかなかお答えはできませんが、一般的に、テロリストというものが自衛隊に対して攻撃をしかけてくる場合、それが組織性、計画性、継続性どうやらこうやらというのはもう委員も何度も何度も議論したことですが、そういうものを具備していない、そしてまた、国に準ずるような組織でもないという場合に、これはそのことを武力攻撃というふうに断ずるということは難しいと思っています。

末松委員 アメリカの場合は、規模は大きかったけれども、あれはテロだと外務大臣言われましたよね。これに対して、それにアメリカはある意味じゃ反撃したわけですね。これは国際的な武力紛争だと言っていて、日本の場合、テロが起きた、それに反撃するというのは武力の行使ではない、これが違うということについてどう思われますか。

石破国務大臣 これは、正直言って、国際法の中でもいろいろな議論があります。もうこれが確定したものだというものがあるわけではないし、国によって考え方も違う、学者によって考え方も違います。

 ただ、事実のみを申し上げれば、アメリカが九・一一の後アフガニスタンに対して攻撃を加えたというのは、これは、それをもってして自衛権の行使という位置づけをした、そしてまたNATOも初めて集団的自衛権というものを行使したという構成だと思っています。ですから、それが国際紛争を解決する手段としての武力の行使かどうかというよりも、自衛権の行使として武力を行使した、これは、戦争はそもそも違法でございますから、そういう位置づけということなのだと思っています。

 それで、日本の自衛隊がイラク国内で活動しているときにテロリストから攻撃を加えられた、自衛権の行使としてそれに対して反撃をするというような法的な位置づけは相当に難しかろうということは申し上げられます。

末松委員 まさしく、そこの理解として私もそれが正しい理解であろうと思うわけでありますけれども、その場合、では、武力の行使に当たらないということであれば、イラクにいる自衛隊は、これは基本的に自分の身を守るために正当防衛という思想の中で武器の使用を行うんだ、こういう理解ですよね。

 そうなった場合に、ただ、テロリストに対しては、これは野盗、強盗と同じたぐいである、国家または国家に準ずる者ではないという位置づけの中でいけば、これは武力の行使には当たらないわけですから、彼らを、襲ってきたら、それに対してせん滅をするということは可能なんですか。憲法上問題はありますか。

石破国務大臣 それはできません。正当防衛の場合でも均衡の理論が働きますので、追いかけていってせん滅というのは、憲法上の議論よりも前に、正当防衛の要件を満たしません。

末松委員 現場の司令官の判断で、テロリストが来て、そして攻撃をしていって逃げようとしている、これを、また来そうだということで撃ち殺すことはできますか。

石破国務大臣 できないと私は考えます。それも相当性の判断であり、そしてまた急迫性というものが多分その時点では失われるのだと思っています。

 つまり、テロリストがダダダダダッと撃ってきた、それに対して反撃をして、ひるんだ、テロリストがこれはいかぬといって逃げて、態勢を立て直そうとして逃げている。逃げているということは、その状況だけとらえてみますと、自己に対する急迫不正のという急迫性が消滅をしている状態であるというふうに判断をいたします。

 しかしながら、それじゃいかぬじゃないか、またそれが戻って、態勢を立て直して我が方に対してまた攻撃を加えてきたらどうするのだという御議論は御議論として十分ありましょうし、我々の内部でも議論をしておるところでございます。しかしながら、正当防衛というものを危害許容要件として考えますときに、逃げている者に対して、それを追撃する、あるいは委員の表現をかりればせん滅するという行為まで正当防衛の予定するところではないと考えます。

末松委員 私もそうだと思うんですね。

 いよいよ私の本題に入っていくわけですけれども、戦闘地域、非戦闘地域、私も、安全性の議論、これは危ないから戦闘地域、あるいは、いろいろと銃火が、あるいはいろいろなロケット攻撃とかあった、そんな事件がたくさん起きた、そこが戦闘地域かなと、一般的にはそういうふうに見られるわけですね。

 ただ、石破防衛庁長官が言われたように、そこは憲法上の要請でこの戦闘地域、非戦闘地域が分けられているだけであるという話でありますが、ちょっと具体的に私ももうちょっと聞いていきますけれども、この質問主意書にも書いていますけれども、イラクに残るフセイン政権の残党、これはこの戦闘行為をなすための条件の国家または国家に準ずる者の行為かどうか、これについて、この質問主意書の答えは、「確定的にお答えすることは困難」と書いてある。これはどういう意味ですか。

 私も、やっている間に頭がこんがらがってきたんですけれども、そこを説明してください。

川口国務大臣 フセインの残党――残党といっても、どういう組織を持ち、あるいはどういう人たちであるかよくわからないということだと思います。

 特措法に言う国際的な武力紛争、これは、国または国に準ずる者の、国家に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争いということであるわけで、このフセインの残党が、残党であるということだけをもって、この国家または国に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争いができる当事者、要するに主体であるかどうかということは、それだけでは判断できない。したがって、そうかもしれないし、そうでもないかもしれないということを書いてあるわけです。

末松委員 わからない。何を言っているんですか。

 つまり、国家または国家に準ずる人なのか組織なのかどうかということがそれだけじゃわからないというのは、では、何が必要なんですか。その何が必要かを言ってください。

川口国務大臣 ですから、例えば、明確な指揮系統があって、そしてそういう政権を再興しましょうと仮に考えて、高度に組織性を持って、そしてそういう能力を持って米英軍に攻撃を続ける、仮にそういうような人たちであれば、それは国または国に準ずる者というふうに、それに該当するというふうに考えることもあり得ることだろうと思います。また逆に、残党であっても、略奪行為をやっているというような人たちであれば、そうではないということなので、そういう場合もあるし、そうでもない場合もあるというふうに言っているわけです。

末松委員 では、あなたが今までテロの襲撃事件を見ていて、あなたが言う国家または国家に準ずる者だというふうに判断したものがありますか。具体例を言ってください。

川口国務大臣 それは、それぞれのケースについて、一体どういう人がやったのか、個別具体的に見ていかないといけないと思います。それぞれの案件についてそこまで詳しい情報がないということで、それは私がここで判断することはできないということだと思います。

末松委員 具体例を一つ挙げてくださいよ。僕は別に難しいことを言っているわけじゃない。

 今、フセインも捕まって、あと五十人、いろいろなカードに顔が表示された人たちがほとんど捕まってきている。それがあなたが言う政権再興をねらっている人かどうか、そんな人が今いるのか、そして高度に組織性があるという人が本当にいるのか。米英軍に対する攻撃をやっている人はいる、そこを実際にあなたが見て、これはそうだなとかいう事件があったら、具体例を一つでいいから言ってください。

川口国務大臣 具体例を挙げることは、申しわけありませんが、できないです。

末松委員 そういうことが実際にできないんじゃないですか。そんなに判断ができないんじゃないですか、あなたは今理屈を言っているけれども。具体例が全く一つも挙げられないというのは、ちょっと納得できませんね。それに、あなたが多分そうだろうというようなものは一切ないというのは、ちょっとおかしいんですよ。

 例えば、さっきでいいますと、戦争で、実はアメリカとフセイン政権がやりました。そして、戦争で負けましたね。負けた人たち、つまりこれはフセイン政権の残党ですよ。この人たちは、国家及び国家に準ずる、そういうことでなくなるんじゃないですか、実際。そこはどう整理しているんですか。

川口国務大臣 イラク特措法上重要なことは非戦闘地域の要件ですから、戦闘、実際にそういう国または国に準ずる者を主体とするような国際的な武力紛争というのがどこかにあったか、なかったか、私は知る立場にはありませんけれども、それは法律が……(末松委員「あることを言ってくれと」と呼ぶ)法律は、ないということで十分なので、あるということを言わなければいけないということではないと考えています。

末松委員 ちょっと私、頭が混乱するんですよ。わかりやすく言ってください。

斉藤委員長 わかりやすく言ってくださいという御質問です。

川口国務大臣 これは法律のお話ですので、石破長官にお答えをいただいた方がよりわかりいいかもしれませんけれども、いずれにしても、戦闘地域と非戦闘地域を色分けるということではないということは、長官が前々からおっしゃっているとおりであります。(末松委員「どういう意味、色分けないの」と呼ぶ)イラク全体を、ここは戦闘地域であります、ここは非戦闘地域ですというふうに線引きをして、この地域は戦闘地域、この地域は非戦闘地域ということではないということをおっしゃっているわけですので、まさに分けないということです。

石破国務大臣 委員の問題意識はよくわかるのです、私も。(末松委員「いや、わかっていない」と呼ぶ)いやいや、何が問題意識なのかはわかるつもりなんですがね。

 ただ、今外務大臣からお答えがありましたように、この法律が求めておりますものは、戦闘地域とは何かということが求められているわけではない。自衛隊が活動するのは非戦闘地域でなければならないのだということが法律で求められているわけです。非戦闘地域とは何かといえば、国際的な武力紛争の一環として武力行使が行われている地域というのが戦闘地域である、国際的な武力紛争の一環として行われている武力の行使というのが戦闘行為である、こういうふうな、もう聞き飽きたと言われるようなお話でございますね。では、それが、我々の活動する地域でそのように評価されていることが行われているかどうかという判断でございます。

 ですから、委員がおっしゃるような、そういうようなことが起こったとして、判断ができるのかい、それはわかるのかいというふうな御指摘をいただくとすれば、そのときに、起こっております事象あるいは対象者が国または国に準ずる組織なのかどうか。

 それは、結局、今の国際法というものが主権国家を主体に構図として、アクターとして構成をされておりますので、主権国家でないものが登場してきた、非対称的脅威が登場してきた、しかし、それがもたらす被害が、主権国家が行う戦争というものと同等あるいはそれ以上のものが起こってきた、これをどのように評価をするかという問題ではあろうと思っておりますが、いずれにいたしましても、私どもとしては、憲法九条の要請、これをきちんと充足するということはいかなる場合においても必要なことだと考えております。

末松委員 まさしくそこが、おっしゃるとおり核心なんですよ。

 つまり、非対称的なもの、これがどこまで戦闘行為に当たるのかどうか、石破長官が言ったように、その判断ができるのかというのが私のその次の問題意識ですね。その前に、イラク・フセイン政権の残党というものが、実際には戦闘行為を行う主体、国または国に準ずる者、組織にもう今の状況ではなっていないんじゃないかということが、私は真剣にそう思っているわけです。いいですか。

 実際に、その主体が国または国に準ずる者以外であれば、それは幾ら計画的、組織的、あるいはあなたが言った、あと継続的、国際的か、幾らそれを言ったとしても、すべてがテロリストという形でひっくるめられて、結局は、相手として実は戦闘行為を行える主体になり得ないんじゃないかというのが私の問題意識なんですが、どうですか。

石破国務大臣 それは、かくかくしかじか、かくなるものを満たせば国際性、はいオーケー、かくかくしかじか、かくなるものを満たせば継続性、はいオーケー、こういうマークシートで物事を決めるような話には多分ならないんだろうと思っておるのです。国または国に準ずる組織といいますからには、やはりそれは、主権国家あるいは主権国家もどきというか、ダッシュというか、そういうものが国際紛争の主体たり得るという考え方、これに基づいているのだと私は考えています。

 そうしましたときに、委員も十分御案内のことで、危ないとか危なくないとかいうことが戦闘地域、非戦闘地域じゃないんですよということを何度も申し上げてきたのは、やはりそれは、日本国として、国際的な紛争を解決する手段として、武力の威嚇、武力の行使、これを行わない、これをきちんと遵守するのだということに基づいているのだと思います。

 したがいまして、イラク全土にそういうものはいないのではないかと言われて、私は答える知識を有しません。しかし、自衛隊が活動する地域においては、少なくとも、そのような国または国に準ずる組織による組織的、計画的、国際的な武力の行使というものは行われていないと判断をいたしております。

末松委員 みずから、自分でその範囲を広げて、一般化できないものだからそういう話に今彼は、私はちょっとずるく立ち回っているんじゃないかという気がするわけですよ。いいですか。

 第二点目に移りましょう。

 そして、僕はこの前質問もしましたけれども、外交官が二名殺されて、いまだにだれがやったかもわからない。調査報告も出ていない。日本はそういう国なんですね。そういったときに、第二点目の、そういう判断を、主体がだれであるか判断することができないということを、石破長官、あなた自身が十二月十五日の答弁で認めているじゃないですか。実際にその主体を特定する難しさ、そこを、この答弁書にも書かれていますけれども、テロリストあるいは攻撃者に対して、「もしもしあなたは国または国に準ずる者ですかと聞いて、そうでございますなどということは絶対ないわけで、それはわからない、正直言って。」という答弁も実際にあるわけですよ。

 実際に、だから、外交官のこの事件だって、だれがやったか、主体が判断できないんですよ。そういったときに、では日本政府は、サマワで何かえたいの知れないものから攻撃を受けた、これだって判断できないんですよ。ということは、これはまさしく、政府が多分強硬に戦闘行為ではないと言う理屈が成り立つ根拠になるんです。

 つまり、どういうことかというと、フセイン残党勢力を中心とする米英に敵対する勢力が攻撃を行ってきた、これ自体、今、もうフセイン政権としてほとんど崩壊ですね、フセインも捕まって。そういった人たちは、基本的には、国または国に準ずる組織としての実体がもうないわけです。だから、これは、この人たちが戦闘行為を行うということはあり得ない、概念上ですよ。それでもって、日本政府はその主体を判断する能力もないという話であれば、戦闘地域という、戦闘行為が行われる地域というのは実はイラクにはなくて、みんな非戦闘地域にならざるを得ないじゃないですか。そこはどう思われますか。

石破国務大臣 私は、委員相手にずるい議論などした覚えはございませんが……(末松委員「それはだまくらかしているんですよ」と呼ぶ)いやいや、だまくらかしてはないですよ。

 それは、これをだまくらかしたと言われると困るのですが、我々に求められているのは、戦闘地域、非戦闘地域を二分することではないのです。委員おっしゃるように、ひょっとしたらば、それはイラク全土非戦闘地域なのかもしれません、ひょっとしたら。だけれども、我々は、はい、ここは戦闘地域、非戦闘地域ということを分けることをせずに、この法律が求めておりますのは、自衛隊が活動するのは非戦闘地域でなきゃだめだよということが求められているわけであって、イラク全土がどうであるかということについて、我々がそのことについてきちんと調べ、了知をするということは別に求められているわけではございません。

 では、おまえたちは、相手がだれなのだ、例えば、奥さんあるいは井ノ上さんを殺害した人がだれだかわからぬではないかということでございますが、私どもは、あの地域で活動するというわけではない。そしてまた、彼らが殺されたのは何によるものであるかというのは、国会において警察庁からも何度も答弁がございましたが、それはもう全力を挙げて調べてもわからない、現在捜査中ということは世の中には間々あることだと思います。

末松委員 間々あるというだけであの事件を切ってほしくないんですよ。自衛隊の隊員の命にとって、まさしくそれが関係してあるわけですよ。だから、あなただって、警察庁のその捜査がうまくいっていないことに対していら立っているし、でも、車もまだイラクにあるというじゃないですか。そんなことを徹底的に調べる気力というか気概がないんじゃないですか。

 だから、そういったことを踏まえて、今の非戦闘地域というこの概念、虚構の概念、これはまさしく憲法上だけの概念であって、これが実は分けられないんですよ、戦闘地域、非戦闘地域。それ以外にない、今の状況では。そういうことを改めて強調して、質問時間が終わりましたので、これで終わります。

斉藤委員長 次に、藤田幸久君。

藤田(幸)委員 藤田幸久でございます。

 まず冒頭で、筑紫哲也の番組じゃございませんが、イエス、ノーで外務大臣と防衛庁長官から一つずつお答えをいただきたいと思います。

 まず、防衛庁長官にお伺いをしたいと思いますけれども、この国会というのは戦闘地域なのか非戦闘地域なのか、お答えをいただきたいと思います。

石破国務大臣 御質問の意味を解しかねますが、私どもが言っております戦闘地域では間違ってもございません。

川口国務大臣 戦闘地域ではないと思います。

藤田(幸)委員 私も、戦闘地域であるべきでないこのイラク特別委員会が、一月三十日に戦闘地域になってしまったということがあったということを、前回の委員会に続いての委員会でございますので、申し上げたいと思うわけです。たまたま部屋は第一委員会室でございましたが、委員長の周りが戦闘地域になってしまったと言わざるを得ないと思っております。

 と申しますのは、これはやはり委員会の運営の、大変、筆頭同士も含めまして理事会で協議をしながら積み上げてきた委員会の中で、私どもは、強行採決の動議がされた中で、三名の理事のみが委員長のところに行って意見を陳述しようと思ったところ、これは委員会の委員じゃない人間、柔道、合気道の有段者がたくさん集まっておりましたけれども、斉藤委員長の周りを占拠して、そして私ども三人の理事が委員長席に行くこと自体を物理的に排除したというのは、これは戦闘地域にしてしまったということ以外にないと思っておるんです。その意味で、国会は非戦闘地域であるべきところを、この大切な委員会審議の中で戦闘地域にしてしまったという大変ゆゆしい事態であったということをまず申し上げておきたいと思っております。

 それから次に、同時多発テロ以降、アメリカは、悪の枢軸とか、あるいはならず者国家とかいう言い方をしておりますが、そのならず者という認定、アメリカがしておりますけれども、日本はそのならず者国家に入っているかどうかについて、イエスかノーかでお答えいただきたいと思います。

石破国務大臣 それは定義の問題です。定義が異なっていてイエス、ノーを議論しても、余り意味があることだとは思いません。戦闘地域、非戦闘地域ということも、我々は我々の概念するところのということを申し上げました。ですから、委員は、これが自分の考える戦闘地域だと思うがおまえはどうかというふうなお問いかけをなさってイエス、ノーをお求めになれば、もっと適切なお答えができるのだと思います。

 ならず者国家であるかどうかというお問いかけでございますが、いかなる意味におきましても、日本国はならず者国家だと私は考えません。

川口国務大臣 ならず者国家と普通に言われているときには、これはきちんとしたガバナンスのない国ということであると思います。日本は決してそういう国ではないと思います。

藤田(幸)委員 まさにガバナンスのない委員会の中で、この委員会に属さない人々が乱入をしてきて、秩序ある形で、ルール上で理事が委員長席に向かったところをとめてしまった。これはやはりならず者の乱入であると言わざるを得ないというふうに思います。

 よく、生まじめとかばかまじめとか言われる私がなぜこんな質問を申し上げたかというのは、冗談じゃないんです。といいますのは、やはり兵を外に出すということは、これは大変な決断を要する局面にこの私ども委員会は存在しておるわけでございます。

 これは最近読んだものでございますけれども、中国の呉子に「国に和せざれば、以て軍を出すべからず。」という言葉がございます。これはどういう意味かというと、兵を出す前に、不和のない体制を整える必要があると。この不和というのは、国の不和、軍の不和、部隊の不和、戦闘の不和と四つを挙げておりますけれども、この中で、国の不和の中には、国民の政治不信が表に出ているような状態を言っておりますので、そんなときには兵を出すなという意味でございます。

 それからもう一つ、これは孫子ですけれども、「兵は国の大事。死生の地、存亡の道なり、察せざるべからず。」ということが言われておりますが、これはどういう意味かというと、戦争は国民の生死、国の存亡にかかわる大変な出来事だと。戦争を行う前には、敵国と自国の情勢を正確に把握して有利、不利を比較し、十分に考察せねばならないと。

 戦争を行うということは、解釈の違いがあるかもしれませんが、要は、兵を出すということを決めるに当たっては、やはり、国の不和をなしてはならないということと、政治不信が表に出るようなことがあってはならないと。先ほど今津議員が一致団結の議論が必要だと言っておりましたが、本当に一致団結の議論が必要で、その議論をとめてしまったということに対して、言論も含めたこれは戦闘地域にしてしまったということについて、私は、この委員会の委員として非常に残念だと思っておるわけで、こんな形で兵を出すということに関して、三大臣もいらっしゃいますけれども、本当に真剣に考えてこれからも議論をしていかなければいけない、そのことをまず申し上げておきたいと思っております。

 ちなみに、数日前の日本経済新聞に、中曽根元総理と後藤田元副総理の大変大きな談話が出ておりますけれども、後藤田元副総理の方は、「大義は誠に疑わしい。戦は始めるとやめられぬ」という談話がございますけれども、そんな意味で、やはりこの間の強行採決を踏まえて、ああいったことがあってはならない、そして、このやはりイラク特別委員会で現在論議をされていることの重みについて、三大臣を含めてしかと肝に銘じてこれからも対応していただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 そのことと、昨今問題になっておりますこの大量破壊兵器の存在ということは極めて関連しているというふうに思っております。このアメリカの調査団のデービッド・ケイ団長の引用は最近もよく使われておりますけれども、実はそればかりじゃないんですね。最近、総理を初め政府の皆さんは、国連決議で人道復興援助をするんだという、国連決議の方に理由づけを変えていっておりますけれども、その国連の監視検査委員会の委員長をしておりましたスウェーデンのハンス・ブリクス氏が、やはりアメリカやイギリスは大量破壊兵器の脅威を誇張していた、それから、アメリカとイギリスは魔女狩りを行っていたというような表現までしているんですね。

 ですから、これは国連のそういった立場の方自体がそこまであえて言っているということの、この重みというものを私は非常に重要に感じていただかなければいけないと。何か他人事のような感じで最近の政府の答弁がございますが、やはり、大量破壊兵器の存在がなかったということについては、単に傍観者のような遠くな話というんじゃなくて、もっと真剣に受けとめていただきたいと思っておりますけれども。

 それで、最近は、ブッシュ大統領は、大量破壊兵器を持っていたか持っていなかったかという存在ではなくて、大量破壊兵器の潜在能力に言及しておりますけれども、そこでもう一度、今度は防衛庁長官だけで結構ですけれども、日本は大量破壊兵器の製造能力は持っていますか持っていませんか。

石破国務大臣 我が国としては、現在、大量破壊兵器を製造し保有するとの考え方は持ってはおりません。できるのかできないのかということであれば、それは、意思決定をすればできないことはありません。しかしながら、その意思決定を行うことはございません。それは、委員も専門家でいらっしゃいますから、脅威というものは意図と能力を掛けたものであって、意図がゼロであれば幾ら掛け算したってゼロだということは、御案内のとおりでございます。

 我が国は、大量破壊兵器を製造し保有するという意思を全く有しておりません。したがいまして、我が国にその脅威は全く存在しないということでございます。

藤田(幸)委員 ブッシュ大統領は、その意思の存在についての証明はしていないわけで、製造能力のみに言及をしているわけで、製造能力は、今の答弁ですとあるということですね。

石破国務大臣 それは、先生のおっしゃる我が国というのは、我が国政府ということなのか、我が国の民間企業ということなのか、何を指していらっしゃるのか。非合法的な集団も入れれば、オウムがサリンをつくったということから考えれば、我が国にそのような能力を持った集団が存するということを否定することはできません。

藤田(幸)委員 ということは、今まさにおっしゃったその理由でもって、日本は攻撃の対象になり得ますね。

石破国務大臣 どうするとそういうお考えになるのか、私にはよく理解しかねるところでございますが、オウムがサリンをつくる能力があるから我が国は攻撃の対象たり得る、そのような考え方はどこからも出てこないと私は思います。

藤田(幸)委員 いや、論理的にはまさにぴったりそのとおりだろうと思いますけれども。つまり、能力掛ける意思、それが政府、民間にかかわらず存在をするということで、まさにぴったり当てはまる答弁をいただいたと思いますけれども。

石破国務大臣 それは、総理の表現をおかりすれば、可能性を言い出せば切りがないという話ですが、常識で考えてみて、オウム真理教はもうありませんけれども、オウム真理教というものがかつてあって、それがサリンを有していた、したがって日本を攻撃しようというようなことを考える国が世界じゅうにあるとは、とてもとてもとても、私の理解をもってしてはあり得ません。

 戦というものは、先生御存じのとおり、そのような、余りにめちゃめちゃな話によって、荒唐無稽な話によって起こるというものではございません。それは、意思掛ける能力はゼロなのだということを申しました。日本国に、少なくとも日本国政府として、そのような大量破壊兵器というものを保有するという意思は全くございません。そしてまた、民間がそういうことを製造するということもあり得ないことでございます。

 それは、オウム真理教のように法律によって認められない団体が、あの場合に宗教法人として認められたという御議論は成り立つのかもしれませんが、許されない方法によって所持したということはあったとしても、そのことによって我が国が攻撃の対象たり得るということは、世界じゅうどの国にも考えの及ばざるところだと思います。

藤田(幸)委員 ポイントは、今長官がおっしゃったように、荒唐無稽性というものがこれから世界の中でますます認知されていくだろうということ。つまり、戦争の大義がないということが、このアメリカ、イギリスを含めて、ますます世論の中で、そして、そのことに対して独立調査委員会なるものもアメリカ、イギリス等々で設置をされている。ですから、大義がないということがますます確定をしていった場合に、いわば、ある方がある方を一人殺せば殺人ですけれども、戦争を起こすということは、一国のリーダーが戦争という理由で例えば一万人殺しても、これは犯罪にならないということが、この戦争の非常に大きな問題だろうと私は思っておりますので、その意味で、戦争の大義というのは、これは非常に重要なことだろうと思うんですね。

 大義がない戦争というのは、これは犯罪ですよね。ですから、そのことについて、その大義がないということについて、余りにも日本政府は、その大義がないということと人道復興援助というものを絡めた議論が、これはやはりさかのぼって戦争そのものの原因について考えなければ、人道復興援助をするイラクと、あるいはイラクの一般の市民、国民の方々をなぜ支援するのかということの意味にかかわる問題だろうということで私は申し上げているんです。

 というのは、人が単に偶発的に人を殺すというんじゃなくて、戦争というのは、これはやはり組織的に、相手の軍と建物と土地と人と兵士と、いろいろな人々を殺りくし、破壊をするわけですね。これはやはり大変な出来事なわけですね。ですから、その大義があるかないかということは、これは大変な大きな問題でございますので、その大義ということについて余りにも鈍感過ぎる答弁があり過ぎるんではないかということで、この大義ということについて申し上げている次第でございます。

 それで、実は、アメリカはテロに対する戦いというふうに言っておりますけれども、さらにもう一人、国連の関係でいいますと、先ほどブリクス委員長のことを引用いたしましたけれども、ブリクス委員長ばかりではなくて、アナン事務総長自身がこのテロに対する戦いに関して、最近、アメリカとイギリスを批判しているような発言を講演でされているんです。

 それは、御承知の、スイスのダボスの会議でございますけれども、一月の二十三日にコフィ・アナン国連事務総長は、国際テロリズムのみが国際の平和と安定への脅威ではないというふうにおっしゃった上で、テロに対する戦争が文化間、民族間、宗教間の分断を助長し、自由や人権の保護を危うくすることもあるというかなり具体的な表現で、アメリカとイギリスの対応について批判をしているんですね。

 実は、国連の事務総長がここまでおっしゃっているということを、つまり、戦争に対する大義とテロに対する戦いだという理由づけでイラク戦争までいってしまったということに関して、ブリクス委員長、それからコフィ・アナン事務総長までおっしゃっているということの意味の重さについて考えていただきたいと思うんです。

 では、大臣、コメントがあるんでしたら手短にお願いいたします。

川口国務大臣 大変に創造的な御議論であると思って伺っておりましたけれども、この戦争については大義が、武力行使については大義があるということを、もう繰り返し繰り返し昨年から申し上げてきているわけです。

 今また、時間もあると思いますので、繰り返そうというふうには思いませんが、イラクがかつて、実際に大量破壊兵器を持ち、みずから申告し、使用もしたということは事実であって、それから、たび重なる査察あるいは査察の拒否等々の過程を経て、いまだにその疑惑が解消していないというのが事実であって、おっしゃったケイ博士も初め、引き続き査察をする必要があるということを言っているわけです。

藤田(幸)委員 そういう答弁ではもう通用しないから、それ以上に権威もあり客観性もある国連の方の引用までしたわけですから、今までの答弁では通用しないというので、そして、かつ、それを超えなければ、冒頭で申し上げましたように、国の和をもって本当に自衛隊の方々をしっかり送るというようなことはできないだろうという意味からこういう質問をしているわけですから、しっかりと答えていただきたいと思います。

 今のような答弁であれば、こういう議論をしても、一たん戦闘地域になった特別委員会でまたしっかり議論をする意味がないと思いますので、しっかりと今後は、私が申し上げた意味も含めて答弁をしていただきたいと思っております。

 それから、時間がないので、一つ、サマワ評議会に関して、これは政府の報告に関することでございますので確認をしておきますけれども、例の有名になっております、一月二十日に、知事の公邸で、日本の先遣隊の皆さんに評議会の代表だと言われたので会ったらば、それが議長じゃなくて、後で議長代理だったという話がありますが、実は昨年、この市の評議会の議長アリ・ダファーイ氏には、日本政府の関係者が二度ないし三度会っているんですよね。これは外務大臣の方からも答弁いただいていますけれども。

 つまり、日本政府の今までの調査団なり外務省の関係者が議長本人に二、三回会っているにもかかわらず、この一月二十日に知事から紹介した人がその議長でないということがわからなかったということはどういうことですか。

川口国務大臣 正直言って、奥大使が生存をしていらっしゃったらというふうに思うわけでございまして、奥大使もその中にいらっしゃってお会いになられて、今回はおいでにならなかったというのは、大変に残念なことであります。

 それで、奥大使のほかに、その議長に一回だけ会ったという人が二人います。一回ずつ会っているということでありますけれども、二十日の時点では非常に大勢の人がいて、三十人ぐらいいたということでして、そこでどやどやとみんなで会ったということだったので、必ずしも一回の印象だけで判断できなかったのではないかと推測をいたしています。

藤田(幸)委員 何回も政府の答弁で、治安に関する政府の報告書というのは積み重ねでやっているんだ、先遣隊だけじゃないんだ。先遣隊だけでその報告書を出したならば、既に日本の防衛庁と外務省の中でできているわけですから意味がないわけで、それに対して今まで何回も積み重ねで報告書をつくったとおっしゃっているわけで、しかも、治安に関してオランダ軍がこう言っている、あるいはイギリス軍からの情報だ、したがってその情報を開示できないとおっしゃってきている中で、市評議会というのは、日本政府が一貫して何回も会ってきた直接情報の数少ない情報源であるわけですね。

 それが、何回も政府の人間が会っていて、かつ、一月二十日、知事公邸で会ったということが報告書に直接表現で出ていながら奥大使という固有名詞でもって逃げられるというのは、調査能力がないし、調査の分析もないし、調査のコーディネーションもできていないということじゃないですか。

 ということは、そういうことが理由になって、何回も会った議長であるにもかかわらず、その議長か認定せずに、しかもその報告書に議長と言ってしまった、あるいは長官が議長と言ってしまった。これでは、この報告書自身が信憑性がないということを証明しているんじゃないですか。

石破国務大臣 これは、いずれにいたしましても、議長代理というものを誤認した。会ったのは一度でございます。先生御指摘のように、何度も会ったわけではございません。また……(藤田(幸)委員「議長に何度も会っているでしょうと言ったんですよ」と呼ぶ)いやいや、ですから、その方に、議長なる方にお目にかかったことを申し上げておるわけです。

 それは、いずれにしても、その場でこの人違うねということがわかっていなければいけなかったではないか、そしてまた、知事がこの人は代表であるよというふうに紹介したときに、あれ、あなた違うね、議長じゃないね、あなた何ですか、何であなた、今知事が代表と紹介したけれども、代表なの、おかしいじゃないのというふうに聞いて、もう本当にその本人の確認をぎりぎりと行えばよかったのだということは、それはあるでしょう、御指摘としてはあろうかと思います。そういうふうに、もっともっと正確を期さねばならない。これは、いずれにいたしましても、より正確を期すべく努力をいたしますということは累次国会でも申し上げているとおりでございます。

 しかしながら、よっておまえたちの書いたものはすべてでたらめであるという御指摘は、それは当たらないのでありまして、サマワ市の治安というものは、これも何度も答弁申し上げたことですが、市評議会であり、あるいは県であり、あるいは部族であり、あるいは宗教指導者であり、それはアラブの世界の治安というものが重層的にいろんな要素によって保たれているのだということは、先生よく御案内のとおりでしょう。そして、今評議会というものが民主主義の生成途上にあってどのような役割を果たしているかということも、御案内のとおりでしょう。

 要は、治安情勢がどうなのかという判断であって、先生がおっしゃる御指摘は、先ほど冒頭申し上げましたとおり、おわびも申し上げるところでありますが、よってすべてでたらめだという御指摘は当たらないものと私は考えます。

藤田(幸)委員 例えば、この今回のケースの場合に、数少ない直接情報で、かつ何回も日本政府の人間が会っているその人、それで、例えば要人については、その要人のファイル、写真等々をとって、そしてその人間、本人確認ということがなければ、今、だって自衛隊の方々送れますか。

 つまり、どんな人が紛れ込んでくるかわからない、どんな立場の人がいるかわからない。その中で、これだけ重要な人、岡本補佐官も市評議会を既に去年の九月から訪問しているなんて、この資料もいただいておりますけれども、それだけ蓄積がある重要な人物の、ある意味ではこの一番主体的な受け皿の中心である人物について、そのファイルもなければ、認定もできなければ、認知する人もいなければ、調査をしても全く意味がない。そして、それも蓄積がされていない。そして、それが日本に届いても、また総理のところに情報が上がるのがおくれてしまった。これでは、一をもってすべてでないということをおっしゃるならば、これ全部否定ができますけれども、肯定のためにこの今回の報告書というのはあるわけでしょう。肯定のための、自衛隊を派遣するために重要である、そういう観点からしますと、これは本当に今までの情報収集体制が、そして分析体制が、あるいは省庁間の調整体制というものが、これだけ余りにもずさんであるということに関して言えば、これから鋭意努力をしますでは済まない。

 では、具体的に、例えば調査団を派遣するとか、そしてその調査の方法についても分析方法についても、具体的な対応をとるとか、そのぐらいのことがなければ、ただ単に一をもって全部を否定されては困るでは済まないと思っているんです。もっとしっかりした答弁をいただきたいと思います。

石破国務大臣 私は、一をもってすべてを否定していただいては困るというふうに申し上げましたが、それは、これから先さらに、さらにさらに詳細に事実の把握に努めるということを否定したものではございません。

 それは、確かに向こうの治安というものは重層的に保たれておるものでございます。我々がこれが正しいと思ってやったことが、違う感情で受け取られる場合もございます。それは、本当にさらに慎重に、そしてまたさらに正確に、そしてさらに適時に、つまり、地元で把握した情報が、時差の関係もございますが、かなりの時間おくれて届いて認識にそごがあるということも判断の相違を来す一因ではないと言い切ることもできません。そういうようなことを今後徹底していかなければいけない。

 開き直るつもりは全くございませんで、今回のいろいろな御指摘を受けて、私どもも外務省も、全体として、情報の連絡体制、分析体制、それをさらにきちんとしていかねばならないと思っております。

藤田(幸)委員 これは、突き詰めて言いますと、やはり今のように、自衛隊の方々とそれから外務省を中心とした方々、そういう制服、軍服を着た情報収集体制というもののある意味では限界があるのではないかと私は思うんですけれども。

 つまり、きょうは時間がありませんけれども、今かなりNGOの方々が実際に現地で人道復興支援をやっているんですね。これは、もう何十年も続けてやっている方々がいる。そういった方々は、むしろ制服を着ていないので標的にされない。制服を着ていない方々というのは、その地域の中に入り込んで情報収集をしている。したがって、一番、治安情報についてもそういった方々が実際に得ることができる。そして、そういった方々が費用対効果の面でも大変いい活動をしている。そして、まさに、今自衛隊でなければだめだという話がありましたが、日本のNGOを含めて実際に入って活動をしているんですね。そういった、オーストラリア、フランス等々の具体的な人道復興活動を一番よくやっている方々は、そういった現地の情報があるので、治安ばかりでなくて、現地の方々の信頼も得て活動ができる。

 したがって、私は、防衛庁長官、これからできるだけ、軍が、あるいは自衛隊が人道復興支援と想定をされているものをできるだけ多く民間に移行するプロセスを、今度の主権移譲の問題も含めまして積極的にやっていく、それが国連の枠の中でやっていけばなおさらいい形になると思いますけれども、そういった形で積極的に移管をしていくということを積極的にやっていただきたいということを、時間がありませんので、要請をいたしまして、それに関する答弁がありましたらしていただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。――では、大臣、お願いします。

川口国務大臣 違う人が行けば違う側面の情報がとれるということは確かにあると思います。NGOはNGOでなければとれない情報もありますし、NGOであるがゆえにとれない情報もあります。ですから、補完し合うということが大事ですが、今おっしゃったような、大勢の日本のNGOがイラクに入っているということは、現在ございません。これは、我々としても退避勧告を出していますし、ゼロあるいは一という世界でしかありません。ほとんどゼロと思っていただいて結構ですけれども、だれもいまいということです。

 それから、制服を着ているがゆえに情報をとるには限界があるということをおっしゃいましたけれども、世界を見渡してみたときに、制服であるがゆえに情報がとれないという話を私は聞いたことがありません。どこの国を見ても、軍というのは非常に情報の宝庫であるということでありまして、話をもとに戻りますと、軍であれ外務省であれ、自衛隊であれ外務省であれ、あるいはNGOであれ民間企業の人であれ、それぞれの立場でとれる情報をとって、そして補完をし合っていくということが一番いいということだと思います。

藤田(幸)委員 補完をしていないということと、日本の軍は、じゃ情報がとれていなかったということを証明されたということが明らかになった、それから、日本のNGOが現在入っているということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

斉藤委員長 次に、達増拓也君。

達増委員 きのう、参議院の方でイラクへの自衛隊派遣に関する国会承認の採決が行われまして、けさ、いろいろ新聞をチェックしておりましたところ、驚くべき見出しに目を奪われました。それは東京新聞なんですけれども、「日米安保の対象範囲 極東超えて世界に拡大」という見出しなんですね。中身を紹介しますと、

  政府がイラクに危険覚悟で自衛隊を派遣した理由の一つは、日米同盟の信頼性の維持だ。日本の防衛が目的の日米安全保障条約の範囲が事実上、中東にまで広がった。

  今回の自衛隊派遣について、小泉首相は「日米同盟と国際協調のため」と説明したが、同時に首相は「日本の危機を国連は守らない」とも指摘。日米同盟への傾斜は明らかだ。今回の派遣で、日米同盟を根拠に、極東を超えて自衛隊が米軍を支援する前例ができた。

これは誤解と言っていいと思うんですけれども、こういう誤解が生じてはいけないと思って、こうじゃないんですよねという質問をきょうしようと思って、きのうのうちに質問通告もしていたところ、早速けさ、こういう新聞の解説記事が出ていたりしまして、やはり、こういう誤解を招いてもおかしくないような今までの政府の説明ぶりというのがあったんだと思います。

 例えば防衛白書の一番新しいもの、平成十五年版の防衛白書を見ますと、「日米安全保障体制」の章に、「テロ対策特措法に基づきわが国が実施している協力支援活動についても、このような課題に対する日米両国の協力の一例ともなっている。」とあるんです。これは、テロ特措法、アフガニスタンのあの戦争を手伝う話ですけれども、テロ特措法に基づき我が国が実施している協力支援活動についても、このような課題に対する日米両国の協力の一例ともなっている。

 「このような課題」というのは、その上の方に書いてあるところを拾いますと、「国際テロのほか、大量破壊兵器などの拡散や、非国家主体によるこれらの入手・使用の可能性といった新たな脅威」などのグローバルな課題というようなことが書いてありますので、そういう課題に対する日米両国の協力ということなんでしょうが、こうした日米安全保障条約に基づいて行われる共同行動以外に、国際テロ、大量破壊兵器、そういったことを、極東を超えてその外で日米が協力して活動するということはあり得ないわけですよね。

 意見交換とか協議のレベルであれば、グローバルな、テロの問題でありますとか大量破壊兵器の問題を日米が意見交換や協議の対象とすることはあるでしょうけれども、防衛白書の書きぶりですと、協力支援活動についても日米両国の協力の一例ともなっている。つまり、米艦船、空母に日本の補給艦が、自衛隊の補給艦が燃料を補給するような活動が、国際テロとか大量破壊兵器といったそういうグローバルな課題に関する日米両国の協力の一例となっている。あれは、建前上、日米同盟とか日米安全保障体制に基づいてやっているわけでなく、日本が主体的に、まあいわば日本版一国主義としてやっているという説明だったはずなんですね。

 ただ、こういう防衛白書の書きぶりを普通の人がさらっと読んじゃうと、あるいは、そういう政府の説明を繰り返し聞かされた新聞記者さんでさえ、あっ、日米同盟がどんどんインド洋や今度はイラクにまで拡大していくというふうに誤解してしまうと思うんですが、防衛庁長官、この点いかがでしょうか。

石破国務大臣 防衛白書に基づく御質問でございますので、あるいは外務大臣からお答えいただくのが適切かもしれませんが、最初に私から答弁させていただきます。

 東京新聞を読んで驚いたのは私も一緒です。私、けさ、車の中で読みまして、恐らく委員と同じ意味で驚いたのだと思います。ああ、こういうとり方があるのかという驚きであります。

 私、衆議院でお答えしたかどうかは忘れましたが、例えば、テロ対策を周辺事態法でやったらどうだという議論がありました、一時期、九・一一の直後に。私はそのときには大臣でも何でもありませんでしたが、こんなものを周辺事態法でやっては絶対だめだということを申しました。

 それは、周辺事態法というのは、日米安全保障条約という言葉が出てきて、日米安全保障条約は極東条項があって、極東の範囲というものが定められておって、これが周辺事態法でいけるんであれば、これはどこまでも広がってしまうよ、そういうようなことは法治国家としてあるべきではないよということで、それが特別措置法、テロ特措法ということになったのだと思っています。

 私は、日米安全保障体制というものと日米安全保障条約というものは、体制が条約を包含する概念ではございますけれども、そこはやはり分けて考えていかなければいけないのだろうと思います。

 日米安全保障体制によってそれがダイレクトに中東に広がったということとは考えませんが、しかし同時に、アメリカ合衆国のみが日本国の同盟国であり、その信頼関係というのは、多分、条約という一片の紙や一条の条項によって成り立っているものではない。今津委員からも御指摘がありましたが、やはりどれだけのことをともにするか、日本国憲法の範囲内においてどれだけのことをともにするかということも、信頼体制の醸成にはつながっていくものなのだと思っております。

 これで何でテロ特をここの項に書いたかといいますと、それは条文にもございますように、国連決議に従って行動している米英その他の艦船というような書き方であったと思いますが、テロ特の条文は。そのようなことからそこの部分に持ってきたものでありまして、そこの部分を、アメリカだけではなくてグローバルな関係でもっととらえるべきではないかと言われれば、そのような書き方もまたあろうかと思います。

 十六年度の防衛白書におきましては、もう一度、委員の御指摘を踏まえて検討してまいりたいと思いますが、いずれにいたしましても、日米安全保障体制というものが世界じゅうに広がるとか、そのような考え方を持っておるものではございません。

達増委員 政府、内閣の一員として、防衛庁長官、驚いているだけではなく、そういう新聞の記事が書かれてしまうことについては、やはり政府としての説明が足りないのかなとか、やはりマスコミをじゃけんにしてはいけないのだなとか、そういうことをちゃんと反省材料にもしてもらわないと困ると思いますし、また、日米安全保障体制の下にこのテロ特措法のことを書くのは、やはり誤解を招くということを重ねて申し上げます。

 この同じ段落に、これは外務大臣に伺いますけれども、去年「五月の日米首脳会談においても「世界の中の日米同盟」を強化することが合意されたように」云々というのが載っておりまして、日米首脳会談で世界の中の日米同盟強化というのが合意されたという、これも基本的には日米安全保障条約の枠を、日本やその周辺を超えて、あるいは極東を超えてグローバルに押し広げていく趣旨ではない、そういうふうに理解していいのかどうかということを伺いたいと思います。

 同盟というのは、先ほど防衛庁長官の答弁の中で、紙切れだけじゃだめだ、気持ちが伴わなきゃだめだという御趣旨の答弁があったと思いますが、古来、同盟というのは、こういうときはともに戦うが、こういうときはともに戦わないというのを明確にして、二十世紀、さらにはその前の十九世紀、例えばドイツが攻めてきたときはともに戦うけれども、ほかの国だったらともには戦わないとかきちんと相手をはっきりさせるとか、また、日英同盟もそうですけれども、適用される地域というものをはっきりさせて、全然関係ないところでの戦いに巻き込まれないような工夫というものが同盟の中にはきちっと入っているわけであります。そういうきちっと一線を画す、むやみに同盟ということで、やらなくていいことをやったり、やってはいけないことをやったりしないような工夫というのが必要不可欠でありますので、改めてこのことについて外務大臣に伺います。

川口国務大臣 私もこの新聞記事で、達増先生や石破長官と同様にびっくりをしたということでありまして、この記事は名前入りでありますので、この方には直接御説明をしたいというふうに思いますけれども。

 それで、日米同盟、日米同盟関係という言葉を使いますけれども、これは幅の広い概念であるというふうに思います。その基盤のところに日米安保条約、日米安保体制があるということだと思いますが、その上に、日本は、例えば自由ですとか民主主義ですとか市場経済ですとか法の統治ですとか、そういった価値を共有している二つの国であるということであって、そういう共通の価値に基づいて、政治面あるいは経済面で幅広い関係を持っているということであるわけです。

 そういう関係を日米同盟関係と通常言っているわけでして、そして、総理とブッシュ大統領が合意をした世界の中の日米関係というのは、まさにそういう広い価値観の共有をする二国、しかも、世界の中の大きな国が世界の中のさまざまな課題に一緒に取り組んでいくという関係を世界の中の日米同盟というふうに呼んでいるということであって、それは、その基盤となっているものとして日米安保条約がありますけれども、そういった世界の中の日米関係を構成するいろいろな活動、これは安保条約とは、法律の権利義務関係という意味では関係がないという分野のことであるわけです。

 したがって、イラクに自衛隊を送ったのは日米安保条約というのは関係がないわけですし、例えば、安全保障というか、テロ対策とかそういうことでいうと、日本はアメリカやほかの国と一緒に、PSI、プロリフェレーション・セキュリティー・イニシアチブというのも取り組んでいますし、それから、ロシアの原潜の解体というのも一緒にやっているということであります。

 そういった活動をしていますが、これは日米安保条約とは関係がないということであると思います。

達増委員 日米安全保障条約の外に何か日米同盟というものがあって、それに基づいていろいろなことがあり得るんだという理屈を余り使っていますと、小泉総理も、日米同盟と国際協調のためと今回の自衛隊派遣について説明した、こう東京新聞は書いていますけれども、こう書かれてもおかしくないような答弁や公的な発言が多々あったわけです、日米同盟、日米関係、そしてそれと国際協調を両立とか両方大事だとか。

 だから、多くの国民は、アメリカとの関係があるからイラクに自衛隊を出さなきゃならない。また、北朝鮮の問題もあるというロジックを小泉総理は公の場で使っています。北朝鮮の問題もあるからというロジックを使っているので、これは非常によくないということを改めて申し上げさせていただきます。

 さて、次の質問に行きますけれども、これもまた地元の新聞、岩手日報紙で発見した記事なんです。二月六日の岩手日報紙、これもまた共同通信の配信なんですけれども、ナジャフであのシスターニ師が発砲を受けるという事件があったという。シスターニ師が暗殺目的と見られる発砲を受けたが、けがはなく無事だった、ロイター通信が同師の事務所警備員らの話として伝えたと。

 シスターニ師はイラクのシーア派の最高権威でありまして、特に今、政治プロセスの関係で、直接選挙をやるやらないとかいったことと絡んで、イラクのシーア派の人たちはもちろん、イラクの国民すべて、国際社会全体がこのシスターニ師に注目していると言っても過言ではないところなんです。そんなときに、もしシスターニ師が暗殺されでもしたら、これはもうイラク全土はハチの巣をつついたような大騒ぎになってしまうと思うんですけれども、この報道されていることは事実なんでしょうか、外務大臣。

川口国務大臣 暗殺の試みがあったという報道は承知をしています。また同時に、そういうことはなかったという報道もございまして、両方あるわけです。

 我が方としては、この件についてどうだということの確認はできておりません。

達増委員 このことで改めて思い知らされるのは、政治プロセスというものの脆弱さであります。

 十一月十五日付のイラク統治評議会とCPAの合意が政治プロセスについて規定していて、五月三十一日までに暫定国民議会の代議員を選出するとしているということなんですけれども、この具体的な段取りについては、イラクの十八の県それぞれで地方会議を開く。この地方会議は組織委員会というものが開催するという段取りで、この各県ごとの組織委員会というのは、イラク全体の統治評議会が五人任命、そして県ごとの評議会、地方評議会が五人任命、そして各県五つの主要都市の市評議会が一人ずつ任命。またここに市評議会というのが出てくるんですけれども、その計十五名が組織委員会をつくって暫定国民議会の代議員を選ぶ地方会議を開催するということだそうですけれども、これは事実でしょうか。外務大臣、お願いします。

川口国務大臣 十一月十五日にCPAと暫定評議会との間で合意がありまして、その合意によりますと、おっしゃったような組織委員会というものを各県においてつくるということになっておりまして、その各県における組織委員会の構成というのは、統治評議会によって任命される人が五名、県評議会から任命される人が五名、県内の五大都市の地方評議会が任命するそれぞれ一名ですね、一つの都市から一名で五人ということで組織委員会ができる。そして、その組織委員会の目的というのが、選定会議、要するにコーカス、これを開催することであるというふうにされております。

達増委員 そうしますと、この統治評議会二十五人のメンバーはCPAが選んだものでありますし、県ごとの地方評議会のメンバーや各都市の市評議会のメンバーもCPAが選んでいるわけでありまして、CPA、すなわち連合暫定施政当局、米英等連合軍当局が選んだ人たちがその暫定国民議会の代議員を選ぶということになりまして、これはやはり、冗談じゃないよ、直接選挙をやらせろという声がイラク内に出てきてもおかしくないわけであります。

 したがって、かなり無理なやり方、間に合わせのように決めてしまったなと思うわけであります。実際、やはり直接選挙がいいんじゃないかという声が高まって、ごくごく最近、CPAは国連に対して直接選挙の可能性を調査させているということなんですけれども、こうなってきますと、国連が乗り出して直接選挙の可能性を模索するとなってきますと、この十一月十五日合意、これはそもそも拙速な合意だったと思うんです。この合意はもう既に破綻していると言っていいのではないかと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 まず最初に、統治評議会の二十五名、これをCPAが選んだということは事実そうですけれども、県の評議会それから大都市の評議会、この人たちを、これはいろいろな選ばれ方をされていますので、CPAが選んだとは必ずしも言えない。ムサンナ県の場合でも、十一でしたか十二だかの町においてかなり、直接選挙をやって選ばれた市評議会というのもあるわけです。ですから、五月までの時点でさまざまな、地方のレベルから民主的な選挙をやろうということで今動きがありますので、この段階までCPAが選んだ人ばかりということではないということを一番最初に申し上げたいと思います。

 それから、国連が今調査をしているということは事実そういうことでして、それは、選挙の方法をめぐっていろいろな意見がありますので、技術的にどのような可能性があるかということを、一方の極は間接選挙、一方の極は直接選挙、具体的にはいろいろなバリエーションが真ん中にあり得るというふうに思いますけれども、何が可能かということを国連の調査団が調査するという段階にあることは確かです。

 我々としては、その結果どういうことが結論として出てくるかということを見守りたいと思っていますけれども、じゃ、十一月十五日の合意がもうだめになっているかといえば、それはそうではないということであると思います。

 そもそも十一月十五日の合意というのが何かといいますと、これは、先ほど申しましたように、暫定議会の選挙の手続についてコーカス方式を想定しながら、最終的には、現在統治評議会が制定準備を進めている基本法、この基本法が暫定議会の選出方法を決めるということになっているわけです。

 ですから、国連というのは、CPAとそれから統治評議会の両方の依頼を受けて今調査をやっているわけですから、この基本法でどういうことが決まってくるか。いずれにしても、最終的には基本法で決まるということですので、今の合意がこれでだめになってしまっているということではないということです。

達増委員 この十一月十五日合意は、まず暫定国民議会を立ち上げて、そこがイラク人による政府を選び、その後ゆっくり憲法を制定して、憲法のもとで総選挙をやれという仕組みなわけですが、初めは、アメリカ初めCPAは、まず憲法をつくって、きちっとした選挙をやって、そしてイラク人による議会、政府をつくろうとしていたはずなんですね。それが、アメリカの選挙対策、国内向けに、一日も早くイラクで政権移譲が行われているような体裁をつくろうということで、憲法の前に議会と政府という非常に行き当たりばったりな政治プロセスになっていると思います。

 これは予算委員会で、私は、アメリカ中心のCPAによる治安維持ということが全然機能していなくて、その意味でも占領は失敗していると言っていいということを言ったんですけれども、この政治プロセスについても、もうかなり失敗していると言っていいと思いますよ。このような調子で、本当にイラク人によるイラク人の政府というものがきちっとつくることができるのかは甚だ疑わしいと思います。

 さて、防衛庁長官に伺います。

 実施要項に関する質問でありますが、武器弾薬の輸送についてであります。

 今回の安全確保支援活動は、国際紛争を解決する手段としての武力行使と無関係の活動に対する支援。野盗、盗賊のたぐいですか、そういうのを相手に治安を維持している米英等のところに物を運ぶ、そういうことなので、国際紛争を解決する手段としての武力行使の後方支援をするわけじゃないんだという建前のはずだから、そういう意味では、何を輸送しようとこれはどこからも文句は言われない筋の話だと思うんですが、なぜか、あえて武器弾薬の輸送は行わないと実施要項で決めた理由は何なんでしょうか。

石破国務大臣 それは委員御賢察のとおりでありまして、外国の領域における武器弾薬の輸送につきましては、それ自体は武力の行使ではない。また、活動地域はいわゆる非戦闘地域に限られておりますから、当然のことながら憲法の問題は生じないということでございます。

 しかしながら、このような憲法の議論とは別にして、基本計画におきまして、我が国の活動は人道復興支援活動が中心である、その輸送も人道復興関連物資が対象となるというふうに基本的な方針を示しておるものでございます。実施要項におきまして、人道復興支援活動か安全確保支援活動か、どちらかを問いませず、自衛隊の部隊が「物品の輸送に際しては、武器の輸送を行わない」と定めておりますのは、これは法的な要請ではございません。政策判断の問題でございます。

 ですから、先生御賢察のとおり、いや、そういうところであれば武器を運ぼうが弾薬を運ぼうが構わぬではないかということを言われれば、憲法上は確かにそのとおりということに相なりますでしょう。しかしながら、憲法上の問題あるいは法律的な問題ではなくて、政策判断として「武器(弾薬を含む。)の輸送」は行わないということを実施要項に定めるのは、何ら不自然なことではないと考えておる次第でございます。

達増委員 私は、バグダッド空港でも米軍に対する攻撃などは行われていますし、安全確保支援活動という名目で武器の輸送、武器だけじゃなくいろいろな輸送をするのは、これは立派な後方支援という軍事援助になると思っているので、そういうことはやめた方がいいと思っているんですけれども、そうじゃないという建前なのに武器弾薬の輸送を行わないというのは、どうもわかりにくいことなんです。

 さらにこれをややこしくしているのは、これはテレビで安全確保支援活動の任に当たる航空自衛隊の方がおっしゃっていたんですけれども、記者の質問に対して、運ぶものの中に何が入っているのかチェックするんですかと聞かれて、今回の自衛隊の任務に、輸送する物品の中身を確認する作業は任務ではありません、だから、その箱についている、何が入っているという紙を見て、ああ、中にはこれが入っていると判断するんだというふうにしゃべっていたんですけれども、米軍等の物品、そういう輸送する対象の物品の中身を確認する作業というのは、今回の自衛隊の任務には入っていないと理解してよろしいんでしょうか。

石破国務大臣 任務に入っていないのかという問いをなさいますと、それは任務でございますとは申し上げにくいことであります。

 要は、そういう行為を行うかという質問だとしますならば、私、そのテレビを見ておりませんので、恐縮です、隊員が何と申したか正確ではありません。要は、基本的にC130が物を運びますね、そのときには、日本として、武器弾薬は運ばない、人道支援物資を中心に輸送する、そして非戦闘地域でなければ活動しないということはすべて伝えてありますし、コアリションに参加する国はみんなそれを知っておるわけです。日本はそういう輸送能力がある。それで、バザールみたいなものかどうか知りませんが、そこの場所に、例えばこういう輸送がある、こういう輸送がある、こういう輸送のニーズがあるというのは出てくるわけです。それとそれを合わせてみまして、では、日本に一番適したものは何であろうか、日本が活動できる地域で、かつまた人道支援物資で運べるものは何であろうかということで、それを運ぶことに相なります。

 武器弾薬というものを基本的によその国に運んでもらうような軍隊は存在をいたしません。どの国も自分の国の武器弾薬は自分の国で運ぶ、大体それが通例でございます。したがいまして、委員御指摘のようなことは極めて起こりにくいと考えておりまして、武器弾薬というものがストレートで入ってきました場合は、それは輸送しないということになっております。それが入ってまいりました場合には、我が方として主体的にその輸送を行わないということになるわけでございます。

 それでは、偽装した場合にどうなのだ。チーズとかと書いて武器弾薬だったらどうするのだというようなことでございますが、そこまできますと、それはもう信頼関係を裏切るものでございまして、私どもとしては、そのようなことが起こるとも毛頭考えておりません。

達増委員 まだまだ国民、いろいろ誤解をしているし、わからない、わかりにくいところが多いという現状だと思いますので、国会でまたどんどん質問していかなければならないということを申し上げて、私の質問を終わります。

斉藤委員長 次に、田嶋要君。

田嶋(要)委員 田嶋要です。

 本日、初めての国会質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私、実はきょう、現職の議員にならせていただいてから丸三カ月になりました。それから、通常国会が始まってからきょうで三週間ということでございますが、短い期間ながら、非常にダイナミックな国会を最初から経験させていただいておるというふうな実感をいたしております。しかし、民主主義、国権の最高機関でありながら、非常に乱暴な世界だなというのも、正直、実感をいたしたところでございます。

 質問に入る前に、若干自己紹介をさせていただきたいんですが、私、イラクに関しましては、住んだこともございません。ただ、ヨルダンで一時仕事をしておったり、フィリピン、途上国に五年弱ほど住んでおった経験がございます。

 そういう経験、あるいは留学していたころのことを思い出して、何がそのときに一番得るものがあったかというと、それまで国の名前でしか知らなかった多くの国の実際の人々と友達になれたということだと思います。そして、そういう経験を経ることによって、それまで、南アフリカとかイスラエルとかヨルダンとか、何となく抽象的な存在にすぎなかったものが、本当に自分たちと同じ人がいっぱいいるんだな、同じ血の通った人々がいて、普通の生活が営まれているんだなということを、実感を新たにしました。そのような非常に個人的なつながりがそういった国々とできてくると、それまでその国に対して持っていたイメージが非常に身近なものになってきたのを強く覚えております。

 何を申し上げたいかというと、今回、イラクに対してアメリカが攻撃をしたわけですけれども、本当に、もし一人一人が、自分から遠く離れたところに、個人的な愛する人あるいは友人、そういったつながりがあれば、なかなかあのような攻撃をしかけていくということはできなかったであろうし、あるいは、そういった国に対して支援をする、支持をするといったような判断はできなかったのではないのかな、私はそのように今も考えておるところでございます。

 それで、私の最初の質問に入らせていただきます。

 まず、自衛隊、そう申しましても、既に陸上自衛隊本隊が入ってサマワに到着をしたわけでございますが、そのサマワでの活動ということで、よく自己完結型ということが言われるかと思いますが、その自己完結型というのは、もう一度、どういうことかというところからお伺いをさせていただきたいと思います。防衛庁長官、お願いします。

石破国務大臣 御質問の趣旨と違っていたらごめんなさい。

 自己完結型というのは、要は、人様に迷惑かけず何でもできるということでございます。例えば災害があって自衛隊が参りますね、そのときに、水も自分で調達はできます、食料も自分で調達はできます、宿舎も自分で調達します、医療も自分でやりますと。つまり、災害の場合には人を助けに行くわけですから、そのときに、おれの泊まるところはどこだとか、おれの食事はないぞとか、けがして何とかしてくれとか、そんなこと言ったら、もう助けにも何にもならぬわけです。基本的なことはすべて自分で賄えます、食べ物も寝るところも医療も水も、そういうものを自衛隊の自己完結性と申します。

 そして、それがイラクにおいてなぜ必要なのかといえば、地元の方々に基本的に御迷惑をかけない、すなわち、泊まるところを提供しろとか食べ物はどうしたとか、そういうことを言わずに地元の方々のいろいろな困っていることのお手伝いができるということで自己完結性というふうに申しております。

 かてて加えて申し上げれば、私どもの場合には、それが一日や二日ではなくて相当長い期間継続し得るというところが、軍、私どもでいえば自衛隊の持つ自己完結性のゆえんでございます。

田嶋(要)委員 私も同じような理解をしておりましたけれども、サマワに入る途中でも、現地の方から、民間の業者から借りていた車の故障か何かで予定どおり到着できなかったというようなニュースが入ってきたものですから、それは自己完結、みずからすべてやるというふうに私も理解をしておりましたものですから、冒頭から若干、自己完結という話とは違うなという印象を受けたんですが、その辺はいかがでしょうか。

石破国務大臣 故障しましたのはうちの車ではございません。うちの物資を輸送いたします民間のトレーラーが故障をいたしました。ただ、自己完結だから故障しないというものではございませんで、自己完結でも故障することはございます。そういう場合には自分で直す能力というのは持っているということでございます。

 いずれにいたしましても、私どもが砂漠地帯におきまして行動するということは、もちろんゴラン高原では行動しておりますが、それとはかなり異なりますので、砂漠地帯で行動します場合には、自動車にいたしましても、いろいろな武器等にいたしましても、メンテナンス等々におきましてふぐあいが生じないように、そしてまた、壊れたときにはきちんと自分で直せる、まさしく自己完結性というものを発現するように訓練を積み重ねてきたところでございます。

田嶋(要)委員 そういたしますと、私が思うには、現地の活動においてこれからやはり一番大きな課題になってくるのは、よく言われることですが、期待と現実のギャップということだと思うんですね。

 自己完結型でやるという原則がある一方で、そういった現地の方々が、日本の自衛隊が来るということで大変大きな、雇用、言ってみればお金をどれだけ落としてくれるかということだと思うんです。それに対する大きな期待をあのサマワの農村を主体とした小さな村でも人々が持たれているというふうに理解をいたしておりますが、その辺は、実際、自己完結でやりながら、どうやって地元の皆様の期待にこたえていかれるおつもりなのかを教えていただきたいと思います。

石破国務大臣 これは、期待値と実現値の乖離は、いずれにしても埋めなければいけないと私は思っています。

 自衛隊が、本当に大きな、サマワの人々、人口十六万とも言われておるわけでありまして、そのうちの半数以上が失業者である、こう言われております。そうしますと、いずれにしても、そういう方々の雇用に対する御期待を満たすことはできません。自衛隊はアラジンの魔法のランプではございませんので、お願いすれば何でも願い事がかなうというような便利な存在ではございません。

 私どもは、基本的に、水を供給し、そしてまた学校を直し、病院を直し、社会的な基礎的なインフラの整備に当たるということがメーンでございます。そのことをいかに安全に行うかということが、一番果たさなければいけない任務だと思っています。

 そうしますと、雇用ももちろん、例えば警備の方とか通訳の方とか、あるいは清掃をお願いするとか、そういうことはあるかもしれません。しかしながら、まず雇用ありきであって、そちらの方に精力を費やすというよりは、やはり与えられた任務をきちんと果たす。

 何だ、違うじゃないか、自衛隊って、たくさん人を雇ってくれる、何か自衛隊という大企業が来るように思っていらっしゃる方もあるいはいるのかもしれない。でも、そういうものではなくて、それは外務省ともよく連携をとりながら、自衛隊はきっかけである、一つの先駆けである。これから先、治安が安定してくるに伴って、日本政府としてサマワにいろいろな雇用を生み、産業を生み、そこが本当に自立していけるような町にしていく。そのプロセスの第一歩として自衛隊の派遣があるのであり、もちろん現地の方々の雇用にも心がけますが、そこにおいて留意をしなければいけないのは安全性ということ。

 つまり、地元の方に成り済ましてということは避けねばならぬということと、公平性、おれは雇ってもらえたけれども、あいつは雇ってもらえない、あるいはその逆、そういうことがあってはならないということだと考えております。

田嶋(要)委員 アラジンの魔法のランプというお話は日曜日にもテレビで伺いましたけれども、そのとき同じ場面で長官が、段階的によくなっていく、希望をつなげていくプレゼンテーションが大切であるというようなコメントもされておったんですが、今非常に地元の方々の雇用に対する期待が強くなっている、ところが、今おっしゃられたように、基本は、雇う方の話じゃなくて自己完結でどんどん仕事を進めていくことだとすれば、段階的に希望が失われていくんじゃないかなと思うんですね。最初はすごく期待をしていた、それがそのうち、あっ、そういう話じゃなかったのかということになるような気がするんですが、テレビでも言われていた段階的によくなっていく、希望をつなげていくプレゼンテーションというのは、具体的にどういうことを指すんでしょうか。

石破国務大臣 これは、なるほど、委員に言われるとそうかなと思います。段階的に下がっていくんじゃないのということ、これは避けなきゃいかぬ。ですから、私は派遣する前から、この期待値と実現値のギャップは絶対に埋めなきゃいけないということは申し上げてまいりました。それが自衛隊の安全に直結するということでございます。

 ですから、段階的にということは、これから、まず自衛隊がやってくる。その後、日本政府として、これはもう外務省からお答えいただくのが適切かと思いますけれども、例えば草の根無償のようなことを行う、あるいは国際機関を通じた援助を行う、円借を行う。そこにおいて、では、こういうことをやればどれぐらいの雇用が起こるというのが見えてくるはずなのです。

 要するに、ウナギのにおいだけはするけれども、ちっとも食べられないというのが一番よくないわけでありまして、ドジョウを出すのもいかぬですが、少しずつ姿を見せていくということだと思うのですね。いきなり夢みたいな壮大なことを言っても、実現できないことではいかぬのです。徐々に徐々にこういうものができてくる。それによって、私は、あるいは、委員、御経験があったら教えていただきたいのですが、社会主義国で社会主義的な労働をしていた方々に自由主義経済的な労働というものを身につけていただくというのは、私はかなり大変なことだと実は思っているのです。ほとんどが公務員であり、軍務に服していた、そういう方々にどうやったらば雇用の満足感を与えていくかということもあわせ考えていきながら、だんだんだんだん夢が形になっていくというものを示していく。約束だけして何もしないというのがいかぬのであって、少しずつ少しずつそれが充足されていくというような提示を、これは外務省を中心に、私どもも一緒になりながら、日本政府全体としてやっていくべきことだと考えております。

 ですから、例えば今度の浄給水にしても、私どもがやりますのは恒久的な施設ではございません。いつまでも動くというものではなくて、あくまで臨時的なものでございます。例えて申し上げれば、やがて将来的には上水道施設というものをつくらなきゃいかぬのかもしらぬ。でも、それはどういう場合にできるのかということは、やはり現地の人たちと一緒に考えながらやっていくことではないでしょうか。

田嶋(要)委員 サマワというところは農業が中心で、この間の同じテレビで、ある方が言われておったと思うのですが、生産設備というか、そういうものはほとんどないところだというようなことを発言されておったと思うのです。そういったところで持続的なローカルの雇用というのは、では、どのぐらいの規模でつくられるというお考えですか。

 先遣隊で行かれた佐藤さんという方が、十数名ということはないというふうにおっしゃられておったと思うんですね。一方、石破長官は、何万人ということはないという発言があったと思うんですが、その真ん中辺ということでしょうか、どうでしょうか。

石破国務大臣 数十人ということはないが何万人ということはないというのはそのとおりなのですが、そうすると何人かと言われますと、これは、正直言って、申し上げられません。

 というのは、通訳の方とか警備の方とか申し上げました。そこで何百という数字にはならないのだろうと私は思っています。自衛隊の宿営地建設とか今後の運営とかにおいて何百人という、延べでいえばそういうことはあり得ることですよ。でも、延べでいって、精いっぱい何百人ぐらいなのかと。一日当たりの雇用とすれば、百人単位あるいは数十人ということもあり得るのかなというふうに思っております。

 テレビの中で、「日曜討論」かと思いますが、農業というのは確かに物すごく可能性としてはあることです。ただ、どうやってかんがい排水というものをやるか。そして、どのような形であの地域において持続的な農業生産というものを行うのか。私は、あそこの雇用というものは、やはり農業というものとそれからセメント産業、そういうもので雇用というものを充足していくことが必要なのではないかと個人的には考えておるところでございます。

田嶋(要)委員 一方で、四年間で五十億ドルという数字が聞こえてきますけれども、初年度に十五億ドルの無償供与というふうに伺っております。そういったお金をどういう分野で使っていくかということが知りたいわけですけれども、こういったプロジェクトに使っていこう、そうすると、これによってこのぐらいの雇用創出も見込める、そういうような数字が全然ないというのは若干不思議な感じがいたします。

 大枠のお金の部分だけはもう既に決まっておるというところでございますが、どういった分野で使っていこうというふうに考えられておるか、御答弁願えますか。

川口国務大臣 先ほどから石破長官が、現実と期待の間を埋めるということは非常に重要であるけれども非常に難しいということをおっしゃっていらっしゃいまして、経済協力を担当する外務省としても、この期待と現実に何ができるかということの間を埋めていくというのは、実に、大変に難しいことだと思っています。まして、サマワのあるムサンナ県は、イラクの十八県の中でも最も貧しい、これはもうずうっとそういう状況に置かれていた地域であって、潜在的に大変に失業率も高いところであるわけです。

 それで、経済協力をするに当たって、雇用拡大ということは常に視野の中に入れて、それを拡大するということで考えていますけれども、具体的に今まで何をやったかということでいいますと、ハビタット、国連人間居住計画、あそこにお金を出して、そこ経由でサマワ、これはもともとイラク全土ですけれども、にコミュニティーセンター、貧しい人たちのハウジング、それと学校の修復というのをやっています。これは、イラク人を雇って、イラク人がマネージをしてやるということでやっていますけれども、イラク全土で一日当たり二千人ぐらい、サマワでいうと、特にサマワには手厚くということでやっているということもありますが、一日当たり五、六百人ぐらいということでございます。

 それから、もう一つ検討中でありますけれども、これはアフガニスタンでもやりましたが、小さな道具を渡して復旧工事をしてもらう。昔、日本でニコヨンと言われていましたけれども、毎日幾らかのお金を稼ぐというタイプの仕事ですけれども、これは国連の機関と一緒にその話をしているということです。これは比較的雇用効果が大きいプロジェクトであるというふうに思います。

 雇用がふえていくというのは、自衛隊がまず第一段階とすれば、その後、先ほどセメント工場の話もありましたけれども、経済が回っていって、セメント工場とか投資が行われる、全体として経済基盤が活発になっていくという段階になって初めて大量の雇用が可能になるということでして、経済協力でこれを埋めるということには残念ながら限界があると言わざるを得ないと思います。

田嶋(要)委員 いずれにいたしましても、先ほど長官の方が成り済ましの危険というようなことを言われましたが、それに加えて、恐らくは、不公平感というところからくる恨みの問題が非常に自衛隊の安全にとって重要になってくると私は思っております。現に、何か素通りしていった町から文句を言われているとか羊の話が聞こえてきますけれども、そういうことは、私の経験からも、非常に途上国では注意をしなければいけないというふうに思っております。

 時間がございませんので、次の質問に参りたいと思います。

 そもそも論で質問をしたいと思うんですが、小泉総理も、国際協調と日米安保という中で応分の貢献をしなければいけないという発言をよくされておりますが、もし自衛隊が出なかったとしたら何が起こっていたというふうなことを政府は考えられておったんですか。

川口国務大臣 国際協調をしてイラクの人道復興支援をやるということが非常に大事であると思います。日本は、その国際協調をつくるべく、フランスやドイツやほかの国々にも働きかけ、近隣のアラブの諸国にも働きかけているわけです。もともと、日米同盟と国際協調というのは相対立する概念では全くないというふうに我々は考えています。

 それで、日本として、その国際協調の枠組みをできるだけつくっていくことがイラクの人道復興支援に役立つ。みずからが手をそこに、嫌な仕事はやらないということであれば、我が国が人道復興支援をするために国際協調をつくっていくという働きかけも、全く説得力を持たないということになると思います。

 我が国として、お金だけ出す、人は出さない、今の状況であれば自衛隊しか出られないわけですから、人を出さないというような状況であれば、それはフリーライダーであって、物事がよくなった後そのメリットだけをとろうという非難、これは湾岸戦争のときにあった話ですけれども、それの繰り返しになるでしょうし、さらに、先ほど言いましたように、国際協調をつくっていこうという我が国の努力、国際社会における日本のリーダーシップということが問われる、責任感が問われるということになるだろうと思います。

田嶋(要)委員 よく、三十八カ国も出ているのにというお話がございます。これも菅代表がコメントされたと思うんですが、世界じゅうには百九十カ国もあるわけで、その中の二割がそういう行動をしているということで、だから日本もという話には必ずしもならないと思うんですが、その辺はいかがですか。

川口国務大臣 確かに、全部、世界に百八十ぐらいの国があるわけです。数だけでしょうかということを申し上げたいと思います。

 アフリカの、例えば小さなベニンというような国と日本が果たして同じなんだろうか。世界の主要な国というのは、武力行使のときに意見の対立のしこりを残している国々は別として、そして、後から言いますけれども、その国々でも支援をしているわけですから、そういった国々を別にすれば、主要な国々というのはかなり出ているというのは現実だと思います。単純に数だけでは言えない。フランスやドイツも、人道復興支援のために、軍隊こそ送っていませんけれども、実際に人道復興支援に人を送って取り組んでいるわけです。

田嶋(要)委員 そういう御説明を続けられて、加えて、よく、日本が石油という面では九割近くを中東に依存していると。言ってみれば、フランスや中国やロシアやドイツとは事情が違うんだ、非常に特殊な事情だという話をお伺いするんですが、では、国際社会における名誉ある地位を得て応分の貢献をするという意味で、今回の千人という人数は、そういうお話を伺った後で見ると、アメリカが十万以上、イギリスも一万弱という状況の中で千人。世界第二位の経済大国で千人という数字は、これはどういうふうに決まるんですか。何かもっと大きくしていく考えでいらっしゃるんでしょうか。

石破国務大臣 それは、人数の多寡のみによって決まるものではないということでございます。

 私どもとしては、人道支援を行う、憲法の要請もございますからもちろん武力の行使はしない、治安の維持にも当たらないということであります。

 人道支援ということを考えてみましたときに、日本の能力からいたしまして、あのサマワという市において水、医療、学校等々の復旧をしますためには千人程度というものが十分であろう。同時に、委員御案内かどうかは知りませんが、私どもの自衛隊は、何人でも外へ出せるというほど余力を持っておりません。これは、自衛隊の本来任務とそうでない任務という区分けがございまして、自衛隊の海外におきます活動は、日本の国を守るという本来の任務に支障のない範囲において行うということになっております。したがいまして、人員的にも、この千人にいたしましても、相当に無理を重ねて出す数字でございます。

 陸上自衛隊は、今、ゴラン高原におきましても東ティモールにおきましても活動いたしておりますし、海上自衛隊はインド洋でも活動いたしております。ですから、サマワという町のニーズにこたえるだけの人数としてはこれで適当な人数と考えますし、もっともっと出せばいいではないかということになりますと、これは、今政府部内でも議論をいたしております恒久法との関係にもなります。

 どういうふうに日本の海外活動はあるべきかということをまた御議論をいただき、御教授をいただきたいと思います。

田嶋(要)委員 では、最後の質問でございますが、撤退の時期ということに関してお伺いしたいんです。

 そういたしますと、そういう適正規模ということで出したということですが、今回の自衛隊派遣、アメリカやそれ以外の国々が引き続き活動を続けておるという時点において、日本の独自の判断で、任務遂行という形での撤退はあると考えていいんでしょうか。あるいは、その逆に、アメリカ、イギリス等が撤退を始めても、まだサマワにおいて日本は活動を完遂していないという理由で、日本が引き続き残るという判断はあるんでしょうか。

石破国務大臣 これは主体的に判断をすることですから、理論的に言えば、どちらもあり得ることでございます。どちらもあり得ることですが、しかし、この任務というものは、もともと、この法律の仕組みが国連の要請に基づいて出しておるという形でございますから、そのような形をとります中で、一カ国のみで単独行動ということは、どちらにしても想定しにくいことでございます。

 主体的に我が国が判断をしてまいりますが、その場合に、各国と結果的に共同歩調をとることになりますし、そのときには、当然、協議、相談等々がなされるものと考えます。

田嶋(要)委員 時間になりましたけれども、もちろん、私も自衛隊の皆さんが無事に帰っていただきたいというふうに考えております。しかしながら、私は、これまでの国会での答弁、やりとりをじっと見ておりまして、例えば議長に会ったか会わなかったか、報告書が事前につくられていたか、後からまじめにつくったか、あるいは大量兵器があろうがなかろうが、それは余り政府の皆さんにとっては重要なことではなくて、重要なことは、とにかく自衛隊を一日も早く送ることだったのだろう、私はそのような印象を持っております。

 いずれにいたしましても、引き続き、いろいろな事実確認等を含めて、これからもお話し合いをさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

斉藤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうは運用局長も御出席していただいておりますので、いろいろなことを聞いていきたいと思います。

 一月の二十六日に陸上自衛隊本隊の派遣命令が出されまして、二月下旬から三月にかけて、約四百四十人が相次いでイラクに派遣されると言われております。

 その際に派遣される部隊の一部が、この二月八日から二十一日にかけて、東富士演習場と朝霞駐屯地で訓練を実施するということを聞いておりますが、どこの方面隊、どこの師団が東富士や朝霞で訓練をするのでしょうか。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 イラクへの自衛隊の派遣に当たりましては、隊員の安全を確保しつつ的確に任務を遂行できるように、派遣要員に十分な教育訓練を行うことが重要、このように考えておりまして、必要に応じまして、他地域の演習場等でも訓練を行うこともあり得るというところでございます。

 お尋ねの、東富士演習場及び朝霞駐屯地における訓練につきましては、今次派遣されることもあり得るという北海道所在部隊が行う射撃それから警備等に係ります訓練の一部を本州で実施する、こういうものでございまして、これらの訓練を行う人数は百四十名程度でございます。

 ただ、部隊の具体的な所在等につきましては、隊員の安全確保等の観点から、具体的な名前等についてはお答えを差し控えたいと思います。

 また、そのうち何名がイラクに派遣されるかにつきましても、まだ現在何ら決定しているわけではございません。

 また、現地でどのような警備を行うかにつきましても、これも隊員の安全確保の観点からお答えを差し控えさせていただきたい、このように思います。

赤嶺委員 北海道の部隊が朝霞と東富士で訓練を行うということはそういうことですね。それ以外の部隊も入っておりますか。

西川政府参考人 北海道の部隊が訓練をやるということでございまして、その他のところというのは、現在はまだ具体的に何も決まっているものはございません。

赤嶺委員 東富士ではいつからいつまでどんな訓練、朝霞ではいつからいつまでどんな訓練を行うんですか。

西川政府参考人 東富士演習場におきましては、二月の八日から十三日までの間にわたりまして、射場におきます射撃訓練を行います。それから、二月の十五日から二十一日までの間、これは朝霞駐屯地におきまして訓練をいたしますが、警備要領の訓練、こういうことを行うことになっております。

赤嶺委員 朝霞では、宿営地の警備、そういう訓練も行いますか。

西川政府参考人 ちょっとその具体的な訓練の中身、先ほど申しましたように、いろいろな訓練をさせるということで御了解をいただければと思います。具体的なところは答弁を差し控えさせていただきます。

赤嶺委員 朝霞には都市型訓練施設があるやに聞いているんですが、その施設を使っての訓練も行いますか。

西川政府参考人 それは、今のところ考えておりません。

赤嶺委員 答えられないんですか。(発言する者あり)

西川政府参考人 使わないということで今お答えしたつもりでございました。

赤嶺委員 わかりました。

 それで、ここで訓練を行った部隊が全部イラクに派遣されるわけではなくて、この中から部隊を編成してイラクに派遣する、こういうことでいいんでしょうか。

西川政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のような形でこれからその中から選んでいくという格好になってまいります。

赤嶺委員 先ほどの答弁で、東富士では射撃訓練、それから朝霞の方では警備要領の訓練というお話がありました。

 石破長官は、一月二十九日のイラク特別委員会で、「当然のことでありますけれども、警護というものを、警備というものを任務といたします部隊も含まれております。」と、今度の派遣部隊の中には警護を任務とする部隊も含まれているという答弁だったんですが、今度のこの二つの訓練場で訓練をした隊員の中から警護部隊というのが組まれるわけですね。

石破国務大臣 部隊編成の詳細につきましてお答えはできません。しかしながら、警護をする部隊というものは当然参ります。

 そして、今回クウェートからイラクに移動いたします際も、オランダ軍の警護も受けずに移動をいたしました。これから先、宿営地をつくる、あるいは活動するということになれば、それは、警護を任とする部隊、それを編成することはございます。

 その編成につきましては、詳細はお答えできません。

赤嶺委員 警護という部隊もつくる、そして、今訓練を受けている隊員の中からそういう部隊も編成していくという理解をしておきたいと思います。

 それで、警護を任務とする部隊というのは、現地で具体的にどういう活動を行うのですか。

石破国務大臣 警備です。

赤嶺委員 警備というのはどういうことですか。

石破国務大臣 いわゆる警備です。

赤嶺委員 いわゆる警備と、いわゆるということをつけられてもなかなかよくわかりません。

 クウェートからサマワに行く部隊に警備部隊がついていた、警護部隊がついていたということですが、それはどういう任務を帯びていたんですか。

石破国務大臣 任務は警備ですと言いますと、よくわからぬというおしかりをいただくかもしれませんが、要は、治安の安定した地域ではあるけれども、不測の事態が全く排除されるものではない。そういうような不測の事態というものを、一つは抑止ということがございましょう、そういうように武器を持った部隊というものが存在をしておることによって、いわゆる抑止力ということが働くことがまずございましょう。

 そしてまた、敵というか、我に危害を加えんとする者が、仮にその抑止も功を奏せず攻撃をしてきた場合には、正当防衛、緊急避難を危害許容要件として相手に武器の使用を行うということもございましょう、結果として、我に加わる損害をゼロにするということはございましょう。

 それは何をするのか、何をねらっているのかと言われれば、それは常に、これは我々自衛隊でも警察でも同じことです。抑止というものがあり、そしてまた、仮にその抑止がきかなかった場合に、いかにして我が方に加わる損害というものを極小にするかということでございます。

 加えて申し上げれば、それを調査する、つまり、周りを監視することによってその兆候を察知するということも含まれるのは当然のことであります。

赤嶺委員 報道によりますと、これは見出しも幕僚監部明かすということで、抑止力を示す上でも、警備要員が約三分の一、施設部隊の中で占めていることを明らかにしたという報道があるんですが、今度サマワに派遣される自衛隊員の約三分の一は警備要員、警護部隊、このように考えてよいでしょうか。

石破国務大臣 その数は申し上げることができません。必要にして十分な数だとだけ申し上げられます。

赤嶺委員 既に報道では出ているんですけれども。きょうも理事会で問題になったんですが、報道に出ていることさえ明らかにできませんという一点張りで情報公開しないという態度は納得できないですよ。

 大体どのぐらいの比率ですか。

石破国務大臣 報道が必ずしも正確だとは限りません。報道が、だれだれの、つまり、今先生の御指摘のように幕僚によればという話であって、何々幕僚というふうに官、姓名を名乗って明らかにしたものでない以上、それは信憑性に欠けるというふうに私は考えております。したがいまして、それに出ているのになぜ言わないのだという御指摘は、必ずしも正確ではございません。

 そして、なぜ言えないのだということは、これは当たり前の話で、どれぐらいの能力を持っているかということを示すことほど危険なことはございません。したがって、明かせないのは当然であります。

赤嶺委員 この記事は署名入りの記事であります。書いている人は責任を持って書いた記事だろうと思うんですよ。

 それで、具体的にサマワでの活動について聞きます。現地で部隊が移動する場合の想定であります。

 給水というのは、宿営地内で給水をするというのと、それから、サマワの人々に給水車で水を配るという場合もあり得ると思いますが、そういう給水の場合に、大体何名で行動することになりますか。そして、その中で警備を任務とする要員は何名ですか。

石破国務大臣 この数はどれぐらいの数で行い、それに何人の警備がついているかなぞというようなことは、先ほど申し上げた理由で言えません。それを言うことはできません。

赤嶺委員 私は規模のことを言っているんじゃなくて、活動の形態で、外に出ていく場合に、例えば車列を組んで行くことがあるだろうと思います。給水車が入る、これは間違いないことです。そういう給水車と、それ以外に、例えばどういう隊列を組んで行くという一つの形態、事例を聞いているのであります。

石破国務大臣 それは現地の状況によるでしょう。こういうようなスタイルで行いますということを申し上げれば、では、それの裏の裏をかくようなことを相手が考えればそれでいいだけのことでありまして、そのようなことを申し上げることが安全確保につながるとは私は全く思いませんので、申し上げることはできません。

赤嶺委員 私、バグダッドに行ったときに米軍の車列を目撃いたしました。前と後ろ、そこに警備の部隊があったわけですが、自衛隊も前と後ろに警備部隊がつくということでいいですか。

石破国務大臣 先ほど申し上げた理由でございます。申し上げることはできません。

 米軍がそうであったからといって自衛隊がそうであるとは限りませんし、そうであるかもしれません。ここでそのことについて確たることを申し上げることは安全に全くつながりませんので、申し上げられません。

赤嶺委員 実際の活動の中身について本当に知るすべがないという答弁に終始いたしました。

 警備部隊がつくられるかどうかという点では、長い間の国会の議論の背景もあります。今後、毎週一回こういう議論が行われますので、きょうの議論の続きはまた次に回して、時間が来ましたので、終わりたいと思います。

斉藤委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 最初に、外務大臣にお伺いをいたします。

 イラクの国家主権回復過程については、二〇〇三年十一月十五日に、連合国暫定当局、いわゆるCPA、それとイラク統治評議会が、イラク人による統治を前倒しして実施することを合意いたしました。新しい計画によりますと、二〇〇四年六月三十日までにイラク暫定政府に主権が移譲されて、その後、二〇〇五年十二月三十一日までに選挙による新政府が樹立されることになる、こういうふうに理解をいたしております。

 ところで、イラクでは、米英軍の占領統治から暫定政権への主権移譲の第一段階として、暫定政権の骨格を示す基本法の制定期限が、今月、二月末に迫っております。この基本法はいわば暫定憲法に当たるものだと私は理解をいたしておりますが、この基本法制定期限が間近に迫る中で、主権移譲プロセスの発足を目前にして、イラクで民族あるいは宗教間の対立が顕在化をしている、こういうふうに指摘をされておりますが、外務大臣はどのような御認識をお持ちでしょうか、お伺いをいたします。

川口国務大臣 イラクにおいては、昔から、クルドの人たちとスンニ、シーア派の対立があったわけです。したがって、もともとなかったということではない。今おっしゃった基本法の制定、そして、どのような形で選挙をやるかということをめぐっていろいろな意見の対立があるということは事実だと思います。

 これは委員が御指摘になられたスケジュールがあるわけでして、日本としては、このスケジュールに沿った形でイラク人の手に主権が渡るということが重要であるというふうに考えていますし、今、国連の調査団がイラクに入っていますので、その結果、どのような可能性があるという結論になるのか、結果を注視したいというふうに思っています。どのような可能性というのは、選挙法についてです。

照屋委員 イラクにおける治安情勢を見定める上で、部族社会であるイラクの社会的な特質あるいは宗教、民族間の抗争ということを注視しなければいけないだろうと私は思います。

 ところで、この主権移譲プロセス、とりわけ暫定政権設立に際して、直接選挙を求めるイスラム教シーア派の最高権威シスターニ師の言動が注目をされております。きょうの本委員会冒頭における外務省のイラク治安情勢の報告の中でも、直接選挙を求めるデモの発生について触れておりました。さらに、外務省報告は、「イラクの治安の改善は、政治プロセスの着実な進展や民生の安定とも密接に連関していると言えます。」こういうふうに結論づけておるのであります。

 そこでお伺いいたしますが、暫定政権発足をめぐって、治安情勢が流動化をし、あるいは治安の悪化が懸念をされますが、そこら辺について、外務大臣の御認識をお伺いいたします。

川口国務大臣 先ほど、冒頭で御報告をしましたように、デモはありましたけれども、いずれもおおむね平和裏に収束をしているというのが現状であると認識をしています。

 今後の動向については、まさに国連の調査団が、選挙についてどのような方式が可能か。私は個人的には、直接選挙、間接選挙の二通りしかないということではなくて、その間に幾つかいろいろな組み合わせがあり得ると思っておりますので、そういった選挙の方式に向けてどのようなイラクの中の各派の合意ができるかということによると思いますので、国連の調査団の結果、これについて引き続き注視をしたいと思っています。

照屋委員 中東問題に詳しい識者によりますと、治安情勢との関係で最も懸念されるのは、自衛隊がサマワに存在することでサマワの社会構造自体が大きく崩れることだ、こういうふうに指摘をしております。

 例えばどういうことかというと、宿営地の建設をめぐる問題、すなわち、宿営地を借り受ける、あるいは使用させてもらう、そのための賃料や使用料が特定の部族に渡るわけですね。その分け前をめぐる部族内の対立抗争、部族間の対立抗争、あるいはまた、サマワの人たちが、自衛隊だけじゃなくして、まるで大きな日本の企業がぎょうさん来るのではないか、こういう広範な、雇用と生活の向上を望む、過剰な期待というんでしょうか、それによる社会構造の変化、これを危惧しておるわけですが、その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。

石破国務大臣 そのことにつきましては、出発前からよく配意をしなければならないということを徹底をいたしております。

 我々自衛隊の部隊というのは、きのうですか、どこかの委員会で御紹介がございました、参議院の予算の締めくくりでしたでしょうか、自衛隊がほかの国の軍隊と違いますのは、どうやってその国の人たちと一緒にやろうかということをずっと考えてきたということです。おれたちは軍隊なんだ、おまえたちはおれたちの言うことを聞くのだみたいな組織ではございません。ですから、イスラム教のことも、あるいはイラク社会のことも、相当にみんな勉強して出かけております。

 しかしながら、この間の羊のようなことも起こりまして、もう細心の注意を払っても、中には、おれには羊は来なかったと言って怒る人もいるわけでありまして、そのあたりのことはよりより配意をしていかねばならない。先生御指摘のように、不公平感が生じたり、ましてや社会構造を変えるようなことがあってはならないと思っておりまして、より細心の注意を払ってまいりたいと思っております。

 一番考えておりますのは、不公平感が生じないこと、そしてまた、金銭的に妙な暴騰のようなこと、金銭感覚がおかしくなってしまうようなこと、札びら切ってというようなこと、そのようなことをするつもりは全くございません。

照屋委員 今の防衛庁長官の答弁にもございましたが、結局、サマワを中心に陸上自衛隊が人道復興支援を行うわけですよね。いかな自衛隊とはいえ、イラク全土にわたる人道復興支援というのはおよそ不可能なわけですから、地域的に限定をされるわけですね。

 けさのマスコミ報道を見ておっても、サマワに自衛隊本隊が入る過程で、通過する県の人たちから、なぜおれのところに来ないでサマワに行くんだ、こういうふうな話もあったというふうに報じられておるわけですね。そうすると、期待を裏切られた恨みを持つ人々の深刻な社会不安を招来するおそれ、いわゆる善意による人道復興支援が敵意の対象になっては当然いけないわけであります。

 同時に、きょうの委員会冒頭の外務省報告でも、サマワにおける失業者による求職デモの発生が報告をされておりました。七割ぐらいとも言われておりますが、この極めて高い失業率の中で、仕事が欲しい、仕事をよこせ、こういうデモも発生をしている、現実に。

 そのこととの関連で、治安の情勢と、どういうふうな配慮をしていくのか、お答えいただきたいと思います。

川口国務大臣 このデモにつきましても、さきにお話をしましたように、デモがあったけれども、おおむね平和裏に収束をしているということでございます。

 先ほども別な委員の方の御質問でお答えしましたけれども、雇用をどのようにふやすかというのは非常に頭が痛い問題であって、自衛隊がそれをふやすということも難しいし、経済協力という形でそれをふやすということも限界があると言わざるを得ないわけです。

 ですから、遠いようでいて大事なことは、一日も早く治安が回復をして、そして、例えば民間企業がサマワに一つだけあり、セメント工場の基盤整備をやって、リハビリをやって、そこで人が入っていって雇うことができて、そして経済全体が回っていくというような状況にする。そのためには、やはり今の時点でできるだけ多くの人、多くの国、多くの軍隊が入って、治安、そして人道復興支援、これに貢献をするということであるかと思います。

照屋委員 二〇〇四年の六月三十日までに暫定政府を発足させる、暫定政府の発足と同時に、当然ながらCPAの解散、こういうことになるんだろうと思いますね。そして来年、二〇〇五年の三月十五日までに制憲議会を組織するための選挙の実施、こういう運びになるだろうと思いますが、日本政府として、この暫定政権づくりの政治プロセスにどのようなかかわりを持っていくんでしょうか。

 また、米英軍による占領統治、軍政を円滑に終了させるという時期、そのプロセスが今着実に進んでいく中で、各国に大幅におくれて自衛隊を派遣するのは見当違いである、こういうふうに指摘をする意見もございます。私もそういうふうに思うんですが、その点についても、防衛庁長官もしくは外務大臣の御答弁をいただきたいと思います。

川口国務大臣 新しい政治プロセスに日本がどのようにかかわっていくかという御質問の方を先にお答えしたいと思いますけれども、国連というのは、選挙のプロセスにはたくさんの知識、ノウハウを持っています。アフガニスタンでも国連が中心になってやりましたし、ほかの国でもそういう経験があります。国連がそういった経験を持って十分に関与できるように国際的な協調づくりをする、その外交努力をするということが日本ができることであるというふうに思っています。

 それから、自衛隊が出ていくのが遅過ぎるのではないかということは、防衛庁長官からお答えをさせていただきます。

石破国務大臣 私は遅過ぎるとは思っておりません。あるいは、もっと早ければよかったのではないかという御指摘はあるのかもしれませんが、遅過ぎるとは考えておりません。

 やはり治安の状況というものをよく把握をし、そしてまた何よりも大事なことは、自衛隊の権限も能力も装備も、やはり十分なものを与えなければ出せないのです。特に、権限は法律のお話でございますが、装備にいたしましても、砂漠地帯で使えるようなものを整備しなければなりません。そしてまた、訓練も十分なものを積まねばなりません。私は、十分な装備も与えず、十分な訓練もせず出すようなことがあってはならないと考えてまいりましたので、今の時期が適切を欠くとは考えておりません。

照屋委員 時間でございますので、終わります。

斉藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後九時二十分散会


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