衆議院

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第2号 平成17年2月28日(月曜日)

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平成十七年二月二十八日(月曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 船田  元君

   理事 石崎  岳君 理事 中谷  元君

   理事 三原 朝彦君 理事 渡辺 具能君

   理事 小泉 俊明君 理事 末松 義規君

   理事 藤田 幸久君 理事 佐藤 茂樹君

      宇野  治君    大島 理森君

      大前 繁雄君    嘉数 知賢君

      川上 義博君    岸田 文雄君

      左藤  章君    桜井 郁三君

      柴山 昌彦君    鈴木 恒夫君

      竹下  亘君    谷本 龍哉君

      寺田  稔君    萩生田光一君

      馳   浩君    浜田 靖一君

      平沢 勝栄君    宮澤 洋一君

      稲見 哲男君    大石 尚子君

      大出  彰君    岡島 一正君

      吉良 州司君    篠原  孝君

      島田  久君    神風 英男君

      首藤 信彦君    鈴木 康友君

      長妻  昭君    本多 平直君

      赤松 正雄君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君    横光 克彦君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   外務副大臣        谷川 秀善君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁人事教育局長)  西川 徹矢君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久保 信保君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月二十四日

 辞任         補欠選任

  西田  猛君     石崎  岳君

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  斉藤斗志二君     鈴木 恒夫君

  竹本 直一君     左藤  章君

  武田 良太君     萩生田光一君

  西村 康稔君     大前 繁雄君

  山口 泰明君     柴山 昌彦君

  照屋 寛徳君     横光 克彦君

同日

 辞任         補欠選任

  大前 繁雄君     西村 康稔君

  左藤  章君     竹本 直一君

  柴山 昌彦君     山口 泰明君

  鈴木 恒夫君     斉藤斗志二君

  萩生田光一君     武田 良太君

  横光 克彦君     照屋 寛徳君

同日

 理事西田猛君一月二十四日委員辞任につき、その補欠として石崎岳君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

二月二十三日

 イラク派兵反対、自衛隊の撤退に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二八一号)

 同(石井郁子君紹介)(第二八二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二八三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二八四号)

 同(志位和夫君紹介)(第二八五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二八六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二八七号)

 同(山口富男君紹介)(第二八八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二八九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

船田委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

船田委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に石崎岳君を指名いたします。

     ――――◇―――――

船田委員長 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として防衛庁運用局長大古和雄君、防衛庁人事教育局長西川徹矢君、総務省自治行政局選挙部長久保信保君、外務省大臣官房審議官遠藤善久君、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君及び外務省経済協力局長佐藤重和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

船田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

船田委員長 この際、政府から説明を聴取いたします。防衛庁運用局長大古和雄君。

大古政府参考人 イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の部隊の最近の活動状況について御報告いたします。

 本日から、第四次群にかわり第五次群が活動を開始しました。第五次群も、医療、給水、公共施設の復旧整備、人道復興関連物資等の輸送といった人道復興支援活動を中心とした活動を引き続き実施します。

 給水活動に関しましては、二月四日から、ODAにより供与した浄水設備のうち、宿営地近傍の二基が稼働を開始したことに伴い、二月五日以降、陸自による給水活動は実施しておりません。なお、昨年三月二十六日から本年二月四日までの給水量は、合計で約五万三千トンです。

 現在、サマワの陸自部隊においては、安全確保に十分配意しつつ、ムサンナ県内のルメイサ、ダラージ、サマワ、マジット、スウェイル及びナジミにおける学校補修、サマワ及びマジットにおける道路整備を引き続き実施しています。これらの活動により、これまで一日当たり三百から九百名程度の雇用を創出しているところです。また、病院における医療活動も引き続き実施しています。

 昨年十二月十三日以降のサマワ周辺の情勢について、主な事件等は以下のとおりです。

 十二月十六日、ムハマド・サドル師を追悼するサドル師派の集会が各地で開かれ、サマワにおいては最終的に約四百五十人のサドル師派が集まり、同市内でデモが実施されたことを確認しております。なお、集会やデモにおいては、サドル師の追悼以外に、反ユダヤ及び反米の主張はあったものの、自衛隊に対する言及はなかったことを確認しております。

 十二月二十二日、現地部隊においては、サマワ北側のユーフラテス川にかかるパイプライン橋において、起爆準備がないTNT火薬等が発見されたことを確認しております。当該パイプライン橋は、石油、水、電気用のもので、人が通行するものではありません。

 十二月三十日、現地部隊においては、陸自宿営地の北側約一・五キロの地点において、未使用の六十ミリメートル迫撃砲弾五発が発見されたことを確認しました。当該砲弾は、発射を準備しているような状態ではありませんでした。

 本年一月七日、現地部隊においては、ヒドルにおいてTNT火薬が発見されましたが、旧フセイン政権時代のもので使用不可能な状態であったことを確認しました。

 一月九日、現地部隊においては、サマワ市内の元バース党が使用していた建物の中で古いロケット弾九発が発見され、すべて警察により回収されたことを確認しました。

 一月十一日午後六時五十二分ごろ、現地部隊においては、宿営地付近で発射音らしき音を一発確認しました。現地部隊が翌日夜明けごろから宿営地内外を捜索したところ、宿営地内の空き地において、信管はついているものの爆発していないロケット弾を一発確認するとともに、当該ロケット弾付近の宿営地内に弾着痕らしきものを発見しました。

 現地部隊においては、二月十四日、サマワにおいてシリア人を含む三人が警察に拘束され、シーア派のモスクに爆弾を仕掛けることを企図していた旨供述していることを確認しました。なお、拘束された者が武装組織に属しているとの情報には接しておりません。

 現地部隊においては、二月十七日、イラク警察がサマワ市内の民家を捜索し、機関銃等の武器や偽造IDを押収した上、犯罪グループの男一人を拘束したことを確認しています。また、本件はテログループとは無関係であることを確認しています。

 これらの事案において現地部隊に異状がないことを確認しておりますが、現地部隊においては、さまざまな情勢を踏まえ、その活動も慎重に行っているところであり、引き続き安全確保に細心の注意を払いつつ活動を実施してまいります。

 ムサンナ県駐留のオランダ軍は、三月中旬には撤退することとなっており、既に二月二十日にはヒドル宿営地がイラク側に引き渡されております。また、オランダ軍撤退後は、イギリス軍約六百名が治安維持等に当たるものと承知しております。他方、先日、オーストラリア政府は、ムサンナ県に約四百五十名の部隊を新たに派遣し、二カ月後にはイギリス軍とともにオーストラリア軍が治安維持等の任務につくことを発表しております。いずれにせよ、今後の三カ国の部隊の協力関係については、イギリス及びオーストラリアと引き続き緊密に協議してまいります。

 航空自衛隊の部隊については、昨年十二月十三日から本年二月二十七日までの間、我が国からの人道復興支援関連、陸自関連及び関係各国、関係機関等関連の人員、物資の輸送を計二十八回実施したところです。

 引き続き、イラク国内の各飛行場の安全性や輸送ニーズ等を慎重に勘案しつつ、C130機による輸送を行ってまいります。

 以上でございます。

船田委員長 次に、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君。

吉川政府参考人 最近のイラク情勢について報告いたします。

 まず、政治プロセスについては、昨年十一月、イラク独立選挙管理委員会が、国民議会選挙を本年一月三十日に実施すると発表し、イラク暫定政府は選挙を予定どおり実施すべく取り組んでまいりました。

 本年一月三十日、国民議会選挙が予定どおり実施されました。我が国としましては、今次選挙の実施はイラクの民主化に向けた大変意義ある重要な一歩であったと認識しており、治安など種々の困難にもかかわらず投票の実施にこぎつけたイラク暫定政府の努力及び投票所に足を運んだイラク国民に敬意を表します。

 今次選挙は、定数二百七十五人で、全国を一選挙区とする比例代表方式で行われました。二月十七日、選挙管理委員会は選挙の最終結果を発表しました。発表によれば、投票率は五八%、投票者総数は約八百五十五万票でした。結果については、一位はシーア派大アヤトラ・シスターニの承認を受けている統一イラク連合で百四十議席、二位はクルド愛国同盟とクルド民主党を中心に作成されたクルド同盟リストで七十五議席、三位は暫定政府アラウィ首相が率いるイラク・リストで四十議席となりました。

 この選挙を受けて、今後の政治プロセス、すなわち、国民議会による大統領及びその代理二名から成る大統領評議会の選出、大統領評議会による首相、閣僚等の指名、八月十五日までに国民議会による憲法草案の起草、十月十五日までに憲法草案についての国民投票の実施、十二月十五日までに新憲法に基づく国民議会選挙の実施、十二月末までにイラク政府の発足という一連の政治プロセスが、イラク社会の持つ多様性を反映する形で進展することが期待されます。

 我が国は、今次国民議会選挙に向けて、資金の提供、要員の訓練といった種々の協力を行いましたが、今後とも、憲法制定を初め、イラク人による国づくりのプロセスを積極的に支援していく考えです。

 次に、イラクの治安情勢については、一月三十日の国民議会選挙実施後も、脅威の度合いは地域により異なるものの、駐留多国籍軍・イラク治安部隊と武装勢力の衝突、車爆弾、ロケット弾等によるテロ等の事案が発生しており、依然予断を許さない状況です。

 国民議会選挙の選挙運動が開始された昨年十二月十五日以降の傾向として、事件は特にバグダッドを初めとする中部地域及び北部地域の一部に集中しており、一月三十日の選挙実施前までは、選挙の妨害を目的とするテロの発生が顕著でした。

 イラク暫定政府は、昨年十一月七日、北部のクルド地域を除くイラク全土に対し非常事態を宣言しましたが、同宣言はその後国家治安維持令に基づき二回延長され、三月六日まで効力を有することになっております。

 サマワについては、予断は許さないものの、イラクのほかの地域と比較して安定している状況に変化はありません。

 最後に、去る二月二十二日、オーストラリア政府がムサンナ県への部隊派遣を決定したことは、イラクの復興に取り組む国際社会を勇気づけるものであり、我が国としてこれを歓迎し、高く評価しております。

 以上で報告を終わります。

船田委員長 これにて説明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

船田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三原朝彦君。

三原委員 ことしに入って初めてのこの委員会でありますけれども、一番バッターを仰せつかって光栄に思います。また、大野長官、町村大臣、予算委員会で多忙なところ、先週末は、それこそ二泊三日ぐらいで行って帰って、アメリカとの2プラス2で議論をしてこられましたこと、御苦労さまでございました。

 まずは、最初そのことから大野大臣にお聞きしたいと思うんですが、2プラス2の後での共同記者会見での発表の中で、イラクの現状及び今後のことについて、新聞報道あたりを見ても多くは書いてなかったんですが、そこのところをもうちょっと。例えば、2プラス2の中でも、またはカウンターパートのラムズフェルドさんとでも、イラクの、今外務省の説明があったように、一月三十日に、選挙までうまくいきました。今度の十二月までの憲法制定議会まで円滑に行けるように我々も望んでおりますけれども、その中で、これから先我が国は、復興支援で協力はしてきておりますけれども、その点を含めて、これからの予測みたいなことを含めて何か議論をより深くされたかどうか、そういう点をちょっと御説明いただきたいと思います。

大野国務大臣 去る二月十九日、町村外務大臣とともに、いわゆる2プラス2、日米安全保障協議会に出席をいたしました。その際に、当然、外務大臣は外務大臣同士の話し合い、それから私は防衛関係大臣、ラムズフェルド長官との会談をやっております。そのいずれにおきましても、イラク問題というのは話題にされております。

 まず第一に、2プラス2でありますけれども、グローバルな課題のもとにおける協力、こういうテーマのもとに、私の方から申し上げたのは、イラクの安定というのは非常に日本にとっても大切なことである。つまり、イラクというのは世界地図を見ますと中東の真ん中に位置していて、イラクの安定というのは中東の安定なんだ。それで、中東の安定というのは世界の安定につながっていくのではないか。世界の安定というのは、やはり日本の平和であり、安全につながってくる。

 こういうように地球が小さくなってきているんだから、我々は世界的な関心を持って臨まなきゃいけないし、しかも石油資源ということを考えると、日本が必要とする石油資源の九割は中東から依存している、こういうことを考えると、日本も大いに世界的な責任を果たしていかなきゃいけない、こういう趣旨を申し上げました。

 ラムズフェルドの方からも、やはりグローバルレスポンシビリティー、世界的な責任ということをしきりに言っておりました。その世界的な責任を果たしていかなきゃいけない、お互いに果たしていこうじゃないか、今後とも協力していこう、こういう話でございます。

 町村大臣に同じ御質問は行ってますか。(三原委員「いいえ、後からまた質問させていただきます」と呼ぶ)それでは、町村大臣の御発言は私失礼して、割愛させていただきます。

 先方からも、選挙の問題が提起されました。私の方からは、選挙が終わって、これから政治プロセスがうまくいって、そのために協力していこう、こういう話もしてあります。

 それから、防衛首脳会議におきましては、私の方からは、今日本の防衛に対する考え方が変わってまいりまして、変えていかなきゃいけない。それは何かというと、やはり世界的な規模で物事を考えていかなきゃいけない。その際に、自衛隊が果たしている国際活動、これを本来の任務化していかなきゃいけない、こういうようなことを言いましたところ、ラムズフェルドから大きく評価されたところでございます。また、全体として、イラク復興支援に携わっている日本に対してアメリカ側から評価をされました。

 以上でございます。

三原委員 次に、やはり2プラス2に御出席された町村大臣にお聞きしたいんですけれども、今まさに大野長官が言われたように、自衛隊の職責は、主たる任務というのはもちろん国の防衛と治安であること、これはもうわかっているんですが、従たるものであった今までの国際協力というものをもっと格上げして、主たるものの一つにしようという考えは我々はありますし、またそれに対して、今アメリカあたりも、それはやはり世界で大いに日本に活躍してほしい、こう言われております。

 ところで、我が国は、世界でもうちょっとプレゼンスを明確にしたいというので、安保理の常任理事国入りに対して我々は鋭意努力をしてきておるんです。そのことは、つまりは、我が国が世界でもっと平和的な活動ができるようになるということになるわけですけれども、安保理常任理事国入りの問題に関しての議論とかディスカッションみたいなことが今度の2プラス2の中、または町村大臣とカウンターパートのライスさんとの中で何かありましたでしょうか。お尋ねしたいと思います。

町村国務大臣 ライス長官との話の中で、私の方から、ことし、国連改革の重要な一年になる、日本が常任理事国になることは小泉内閣のいわば最優先政策課題である、ことし改革できなければまた十年間、当分の間国連改革が望めないのではないだろうか、ついてはぜひアメリカが、アメリカは既に日本の常任理事国入りを前から支持すると言っておりますが、その支持に感謝をするとともに、今後ともぜひ協力してやっていきたいというお話をしたところ、先方からも、日本の安保理入りを支持している、日本政府との間でこの問題に関する対話を続けていきたい、国連改革を国連の広範な改革と位置づけて取り組んでいきたいという発言がありました。

 それらを受けまして、今般の2プラス2の共通戦略目標の世界における共通戦略目標の中に、現在の機運を最大限に活用して日本の常任理事国入りへの希望を実現することにより、国連安保理事会の実効性を向上させるための努力を連携させる、こういう表現が入ったところでございます。

三原委員 ありがとうございました。

 安保理入りも、これは我々の長年の念願でもあります。我々は、我が国の今の立場から考えても、もっと国際社会の中でいろいろな意味での活躍を幅広くやる一つの大きなこれが起点にもなると思いますので、これからも、大臣以下、皆さんで頑張っていただきたい。我々ももちろん大いに支援したいと思います。

 さて、イラクの選挙が終わりまして、我が国のマスメディアの報道あたりでも、イラクへの我が国自衛隊の派遣の終息地点といいますか、そういうことの議論も少し始まったようです。意地の悪い新聞社説あたりでは「出口が見えない」なんということを書いてありますけれどもね。

 私は、今第五次隊が出たということは、つまり、六百人ぐらいとして、六、五、三十で延べ三千人、四千人ぐらいの人が、自衛隊員、陸海空含めて、イラクの地または隣のクウェートの地を踏んで、今度の復興支援のために汗を流してきておられると思うんです。これまでのところ大過なく、すべて順調に所期の目的を達して、三カ月ごとに帰ってきておるんですが、明らかに我が国がやるべき任務も少しずつ減ってきた。

 今、それこそ、大古さんの話がありましたように、水道のことに関してはかなり現地でやれるようになったからその手伝いはしなくなりました。あとは学校とか病院ですとかいうことになっていますけれども、それも、より国が安定してくれば、我々はこれから先は終息していく方向にも行くべきだと思うんですが、その点での目安みたいなことはどのようにお考えですか。お尋ねしたいと思います。

大野国務大臣 イラクでの自衛隊の活動につきましては、基本から申し上げて恐縮ですけれども、一番は憲法九条との関係で、武力行使をしない、武力行使と一体とならない、当然のことでございます。それから、やはり考えていかなきゃいけないのは、自衛隊でなきゃできないこと、このことは考えていかなきゃいけないと思います。そういうことで、まず、自衛隊でなきゃできないこと、それからもう一つの考え方は、現地にニーズがあるかどうか、こういう問題だと思います。

 まず、自衛隊でなきゃできないこと、こういう意味からいいますと、先生御存じのとおり、現地の生活状況というのは大変厳しいものがありまして、なかなかNGO等の民間活動ができない状況でございます。今のところ、自衛隊でなきゃなかなかできないなという感じはあります。そういうことで、自衛隊の手でやっていこう。

 それから次は、ニーズの問題であります。ニーズにつきましては、今先生御指摘のとおりであります。水につきましては、二月五日から給水活動をやめております。と申しますのも、ODAと自衛隊の活動は常に車の両輪と言われておりますけれども、このODAで浄水機を、私も自分の目で見てきましたけれども、日本の宿営地のすぐそばにつくっておりました。その浄水機、給水機で一日七百トンを供給できる。日本の自衛隊が供給しておりましたのは二百五十トンぐらいでありますから、この三倍の供給能力がある。そういうことで、もう自衛隊の給水活動は要らないだろう。ただ、自衛隊自身が使う水が要りますから、その分はやっておりますけれども、給水という活動は取りやめにいたしております。

 しからば、あとの公共事業、学校の修復とか道路の修復でございます。これは具体的に申し上げてもいいのでございますけれども、大ざっぱに申し上げますと、やはりかなり残っている。これは、今修復しているところもございますし、そしてまた、これからもやってくれというところもありますので、このところは相当残って、これからも精いっぱいやっていかなきゃいけないんじゃないか。

 あとは医療活動でございます。医療活動につきましても、相当程度、医療支援活動をやっております。したがって、私が現地サマワに参りましたときも、ムサンナ県のハッサーニ知事から、ぜひともこういうことは今後とも続けてほしい、強い要望がありました。

 したがいまして、まだまだニーズがある、このことは申し上げたいと思います。ただ、今申し上げましたように、現地、イラク人の手でできることはどんどんやってもらいたい。したがって、公共事業をやっている、あるいは医療活動をやっている、これもすべて、なるべくイラク人、サマワの方々の手でやってもらおうということで、日本の自衛隊の活動は、指導する、方向性を考えていく、こういうような活動に限られておりまして、実際のサマワの雇用の創出には役立っているのではないか。

 なお、これからの方針でございますけれども、外務省と一致協力して、日本全体として、サマワのニーズはどこにあるのか、これをしっかり見詰めて、そして、現地の人の手でできるものはどんどん渡していく、こういう方針でやっていかなきゃいけないんではないか、このように思っております。

 現在のところ、自衛隊の派遣延長はことしの十二月十四日までとなっておりますけれども、我々としては、なるべくイラクが復興して、政治プロセスがうまくいって、イラクの経済も復興していって、民生も安定して、そして、イラク人の手でできることはイラク人の手に任せるようになればいいな、こんな期待を持っております。

三原委員 確かに、自衛隊というのは自己完結型ですね。自分たちで行って、自分たちで日常生活をしながら、食事もし、日常一般のことを自分たちの力でしながら、なおかつ人にお手伝いできるということで、そのことが、例えばイラクに行ってもそうだろうし、中越地震のときでも一番に行って、場所がありさえすれば、泥水でも自分で飲めるような装置もあり、日々の生活もできるようになるという、そこのところの機動性というのか、そういうことは大いにこれからも発揮してもらって、イラクの復興のために頑張っていただかなければいけないと思うんです。

 一方、今、ニーズというお話になりましたが、これまた、二月二十五日の新聞ですけれども、我が国が、イラクの政府とか向こうの民間とかへの債権、ほとんど不良化している債権みたいなものが数千億単位で我が国の民間企業あたりが持っておる。それに対して、ヨーロッパの銀行あたりが、ではその不良になりかけた債権、安く買いましょう、買ってあげますからというようなことを言っているような、これは新聞に書いてあったんですよ。そういうことになると、明らかにヨーロッパの企業あたりもどんどんこれから先、チャンスをねらってイラクの市場に、復興のためでもあろうし、オイルのためでもあると思いますけれども、やろうという意識が大いに出てきたんじゃないか、そんな気もします。

 そういうときに、私は、今自衛隊の諸君が行って、苦労して復興支援していただいて、今、ニーズという話がありましたけれども、これから先もニーズに関してはもっといろいろな調査をして、私は、こういうことが必要だとわかったら、それを我が国の民間企業に対して情報提供するぐらいの余裕があっていいと思うんですね。

 例えば今度のスマトラ沖のことでも、小泉総理はすぐに、五億ドル出します、自衛隊の帰りの船もサービスしていろいろなことをやりましょう、輸送艦を持っていって、ホバークラフトを持っていってお手伝いしますということをやってきているわけで、それはそれで麗しい、美しいことですけれども、一面では、どうせ復興するのに他人の手を借りるということになったのなら、もっと我が国はそういう民間の活動にもサイドからいろいろな意味での情報提供をしたり、お手伝いをするようなことがあっていい。結構、諸外国はやっていますからね。我が国が一番そういう意味では少ないんじゃないですか、遠慮がちに、遠慮がちにというのか。そういうところは、私は、もっとやってほしいということをここで申し上げたいと思います。

 それと、いま一つ、私はことしの夏の終わりにヨーロッパへ行きました。ヨーロッパのウィーンにちょっと寄ったら、ウィーンで自衛隊の服装をしている自衛官が何十人もいましたから、君たち、どうしてここに来ていると言いましたら、私たち、ゴラン・ハイツで六カ月間、あそこの停戦ラインにいまして、輸送部隊で働いて、今帰る途中で、ヨーロッパ回りで日本に帰るんです、ちょうど一泊だけ、飛行機の乗り継ぎがありましたもので、ハプスブルク家の遺跡を見に回っていますと。ああ、いいことだ、大いに見聞を広めて帰ってきなよ、一泊二日なんてけちなことを言うんじゃないよ、こう言ったら、上司の人たちは、これはちゃんと決められたことでなんて上の人が言っていましたけれどもね。

 もうちょっと私は、週末ぐらい、もしそれが許されないなら、自分で小さなユースホステルに泊まれるぐらいの余裕を持たせてやって、それぐらいの金は持っているんだから、そういうことで、どうせ行ったなら、四、五日でも見聞を広めるぐらいの、そういう余裕を持たせてやることが大切だと思うんです。

 今度でも、自衛官の諸君が帰りは民間機に乗って帰ってくるんでしょうけれども、ちょっとエジプトでも行ってエジプト文明のピラミッドとスフィンクスぐらい見てくるぐらいの、そういう余裕を持たせたらいい。別に特別お金を出さなくたって、個人のお金をみんな出して行けばいいだけのことじゃないですか。往復の飛行機はどうせ金がかかるんだから。研修ですよ。見聞を広める。

 これから先、もっと世界でいろいろな意味での平和の貢献をやろうというんなら、座学だけじゃなくて、チャンスがあれば大いにそういうことをサービスしてやる、活用してやるということをやはり政府が考えてやるべきだ。そのことは必ずや将来の若者にとっての大いなる成果になると私は信じて疑わない。百聞は一見にしかずです。特に、若いときにそういうところを見ていると、必ずや何かのときに役に立つと私は思うんです。

 だってこの前、何か、大学生以下で調べてみたら、イラクどこにあります、地図を指せる人は一割五分ぐらいしかいなかったというんですね。これほど毎日我々がマスメディアを通して見ているにもかかわらず、イラクの地理どこにあるんでしょうと白地図を出したらポイントできる人が一割五分もいなかった。そういうことではやはりいかぬなと。そういう、小学校からの訓練、教育あたりも大いにやらせてみたらいいんだなということを私は思うんですけれども、最後にそのことを大野長官に質問をさせていただいて、積極的な前向きな答えをいただきたい。

西川政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生の大変貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。隊員が休日等を利用いたしまして、そのような形での中東の歴史あるいは文化等々を学ぶという大変意義あることであると我々も考えております。

 例えば、今回のイラクの任務にございましては、任務終了後の旅行ということでは今は実施しておりませんが、ただ、具体的な方法といたしまして、いわゆるクールダウンということを帰るときにやっております。これで実はクウェートにおいて数日過ごすんですが、そういう期間を使ってやっていただく。あるいは、支援隊が六カ月ほど行っておりますが、その途中で彼らに休養をとらせることもございますが、その際にも一応許可を出して近隣国等へ行かせるとか、こういうこと。あるいは、もっと基本的なことといたしまして、出発前に、イスラム世界のこと、律法等を勉強させるようなこともいろいろやっております。

 先生御指摘のような、もっと広くという話でございますが、これは今後ともいろいろ検討させていただくといたしまして、こういうことは大変隊員の見聞を広めまして役に立つということを我々も認識しております。

 以上、お答えさせていただきます。

三原委員 終わります。

船田委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 昨年十二月にイラクへの自衛隊の派遣が一年間延長になりまして、その後、閉会中審査を当委員会は行ったんですね。それから約二カ月半ぶりということで、その間、あのイラクで暫定国民議会選挙も無事終えまして、大きな出来事もあったわけですが、きょう、二十分間という時間が限られておりますので、基本的に余り深めた議論を細かくできないと思うんですけれども、私の今持っている問題意識を何とか提示をさせていただきたいな、そのように思うわけでございます。

 まず一つは、ちょっと防衛庁を中心に総務省も含めて見解を伺いたいんですけれども、今、イラク等海外に派遣されている自衛隊員の皆さんの日本国内での選挙への参加問題につきまして、何点か伺いたいと思うんです。

 実は、陸上自衛隊の第六師団、これは山形県の東根市神町駐屯地を主体といたしまして、今回、第四次イラク復興支援部隊の中核の部隊だったんですね。ここの部隊が約三百三十人、あと周りの福島、宮城の両県の駐屯地で、五百人で編成されていた。それが、この第一陣百二十名が二月十九日に無事戻ってまいりまして、これから三月の上旬ごろまでに順次戻ってこられるわけです。無事戻ってこられてよかったな、よかったな、そういうことだけで終わらない問題が実は最近地元の方で大きな問題になっております。

 それは、山形県では一月の二十三日に県知事選挙と東根地区の県議補選が行われたんですね。ところが、このイラクに派遣された陸上自衛隊員というのは、約三百三十名ですけれども、これらの選挙には参加ができなかったわけです。

 山形新聞などに掲載されている記事をそのままちょっと紹介させていただきますと、東根市選管事務局によると、

 不在者投票、期日前投票などの現行制度では対応できず、特例措置もない。

  告示後に実施される期日前投票はもちろん、不在者投票を利用する場合でも、有権者が国内にいるという前提になっている。投票用紙と本人確認の証明書を受け取った後、最寄りの選管に持参する必要がある。今回、サマワに書類を郵送しても最短で二十日間ほどかかるほか、帰国して選管に書類を提出する必要もあるなど、事実上、投票は不可能な状況だという。

  また、外国在住の邦人が利用できる「在外投票」は、衆院、参院の両議員選挙の比例代表を対象にしており、「県知事選などの地方選挙は対象から外れている」

ということである。利用はできない、こういう記事になっているんですけれども、この山形県の東根市神町の駐屯地の選挙へ参加できなかったという問題が、私も山形新聞見ましてぴんときたのは、もう一つ、これだけじゃないと、実は。

 昨年は、夏に参議院選挙がございました。そのときには、陸上自衛隊は第二次イラク復興支援部隊が行っております。これは札幌から、第十一師団、真駒内駐屯地なんですね。このメンバー、さらには航空自衛隊は第三期派遣要員がクウェートにおりました。合わせて七百五十名もこの大事な国政選挙に参加ができていない、そういうことなんですね。

 簡単に言いますと、要するに、国の任務で行っておきながら、どちらの場合も、派遣隊員というのはイラクに三カ月間海外旅行に行っておった、そういう状態と同じであるというふうにみなされて、投票しなければこれは結果として棄権である、そういう状態なんですね。私は、そういう意味でいうと、国の用務で行きながら、海外に派遣されていながら、国民の基本的権利である選挙への参加ができないということについては、やはり国として何らかの対応を今後考える必要があるだろう、そういう非常に問題意識を持っているわけでございます。

 それで、まず、防衛庁長官に伺いたいのは、この事実を把握しておられたのかどうか、また、このような、御自身が命令を下して派遣された隊員が選挙に参加できない、そういう状況についてどのように認識しておられるのか、まず伺いたいと思います。

大野国務大臣 もちろん、事実は十分深刻に受けとめております。先生おっしゃったように、投票するという行為は参政権の中核をなすものです。その権利を国の仕事で奪ってしまっている、こういう格好になっていることは深刻に受けとめなきゃいけない、私はそのように思っております。こういう問題をどういうふうにして解決していくのか、私は、基本に立ち戻って、投票するという行為はまさに基本的な人権ですから、これを絶対に確保していかなきゃいけない。

 それから、普通、外国旅行をする者と自衛隊の関係をどうするか、こういう議論もあるようですけれども、これはみんなにそういう参政権、投票権を与えればいい話であって、そう細かなことで議論する必要もないんじゃないかなという気もいたしておりますが、海外に派遣される、特に自衛隊は大勢です。一人二人で旅行をしているわけじゃなくて、もう六百人から八百人いるわけですから、これだけの人が参政権、投票権がなくなってしまうというのはやはり問題だな、こんなふうに受けとめています。

 これはもちろん所管は総務省でありますけれども、国会議員がみんなでこういう議論を、こういう問題点を意識して議論して、そして直していくという方法も、方向性もあるんじゃないか、こんなふうに思っております。

佐藤(茂)委員 私は、きょうは総務省からわざわざ、三原委員と同郷である、小さいときから神童と言われていた選挙部長、来ていただいておりますけれども、ぜひ役人の範囲での凝り固まった答弁ではなくて、国を背負って本当にとうとい汗を流して国際貢献をしておる自衛隊員の投票権をきちっと保障するというのは非常に大事な問題だと思うんですけれども、選挙制度の改正、特例措置なども含めた、そういう視野も入れた、そういうものを行っていく必要があるんじゃないかと思うんですけれども、総務省の見解を伺いたいと思います。

久保政府参考人 現行の公職選挙法では、御指摘にございましたように、国内に生活の本拠を有する選挙人が一時的に海外に滞在している場合につきましては、船員が船舶内で行います一定の投票を除きまして、海外で投票を行うことはできないということになっております。したがいまして、現行制度のもとでは、一時的に国外に派遣されている陸上自衛隊の隊員は国外で投票することができない状況にあるわけでございます。

 一時的に国外に派遣されている自衛隊隊員に対する投票制度を創設するということになりますと、これも御指摘にございましたが、自衛隊以外の他の一時的に海外に滞在している方々に対してこれをどのように考えるべきなのかという点、あるいはまた、派遣先は我が国の主権の及ばないところでございますから、適正な投票手続をどのようにして確保していったらいいのかといったように、実務上も検討していく課題が幾つかございますので、今後そういったことも慎重に検討していくべき課題であるというふうに考えております。

佐藤(茂)委員 これは自衛隊だけの問題じゃない、そのとおりだと思うんですけれども、しかし、自衛隊の場合は、先ほど防衛庁長官も言われましたが、一度に大量にその地域の方々が派遣されるわけですね。だから、そのほかのことも含めながら、前向きにやはり検討していく必要があるであろう、そのように思うわけです。

 ただ、もう一度、防衛庁長官、ぜひお聞きしたいのは、今回の問題は、しかし、よくよく考えますと、特に山形の第六師団の部隊の場合は人為的ミスもあったんじゃないのか、防衛庁の方に。

 これはどういうことかというと、山形県知事選というのはあらかじめ決まっておった話でございまして、だから、派遣をされる計画の段階でどういうローテーションを組むのか、どこの駐屯地を考えるのかというのは、これはあらかじめそういうことを総合的に勘案すれば避けることも可能だったと思うんですね。そういうことも考えながら、地方選挙の場合ですと、どこの部隊を出すのかというのはきちっと考慮した上で今後派遣すべきであろう。

 その上で、先ほどもありました、我々国会議員もこの件については議論をしなければいけないと思うんですけれども、防衛庁の方からも、今後を考えましたときに、今でも二千四百名海外に派遣されているんですね。九〇年からカンボジアに始まってPKOで非常に実績を積んできております。今後も海外での自衛隊の国際平和協力活動というのは多分衰えることはなくて、ますますふえるんだろう、そのように思うわけでございまして、防衛庁の方からも、ぜひ横の省庁間、総務省などに積極的に働きかけていただきたいなと思うんですが、そういうことも踏まえて、もう一度決意のほどを防衛庁長官、伺いたいと思います。

大野国務大臣 まず第一点の、先生御指摘のどこの部隊をイラクへ派遣するかもう少し幅広い視野から検討しろ、こういう御指摘でございます。その点十分注意して、今後そういう派遣の部隊を選定していきたいと思っております。

 それから第二点の問題でありますけれども、今総務省からのお答えでございますと、自衛隊と、ほかの国民、民間の人とどういうふうにするんだというような問題、あるいは自衛隊の場合には、イラクへ行くと、しっかりとした領事館とか主権の問題、どうなんだ。しかし、考えてみますと、自衛隊の宿営地なんというのは船の中と同じようなものでありますから、全く、宿営地の中できちっとしたルールなり統治がなされているわけでございまして、その点は私、この場をかりまして総務省の方にもうちょっと検討してもらいたいということを申し上げたいと思います。

 いずれにしましても、もう一つの観点は、投票者の主体性を確保する、この点は注意していかなきゃいけない。こういう点を注意しながら私も総務省に訴えかけていきたいし、また、先生の方も、国会議員という、法をつくる立場からそういう問題を応援していただきたいな。

 結論は、国の使命を帯びて大勢行く自衛隊の諸君に、やはり基本的人権である投票権をぜひとも与えてもらいたい、このことをお訴えさせていただきたいと思います。

佐藤(茂)委員 それでは、あと二、三問、外務大臣の方にお伺いをしたいと思うんですけれども、一つは、暫定国民議会選挙が、本当にイラク国民の勇気と決意のもとに成功に終えました。イラクは民主化国家としてこれから大きな一歩を踏み出したな、私はそのように評価をしているところでございますが、当面は移行政府の人事がどういう形になるのかという大きな課題はありますけれども、この後の政治プロセスの中で見ましたときに、最大の山場というのは、移行国民議会によります憲法草案の起草であろう、そのように考えるわけですね。また、それを受けての国民投票。

 それに対しまして、もう時間もないので簡潔にお聞きしたいんですけれども、その非常に重要なポイントを占める憲法草案の作成段階で、我々日本の何らかの形での貢献、積極的な支援というのはできないのかなというように私は問題意識を持っておりまして、今まで我が国のイラク支援でも、そういうソフト面での支援というのは何点かされてきたんですね。

 一つは、イラク要人とか行政官等の招聘、さらには、周辺アラブ諸国における研修事業等をされてきているんですけれども、私は、イラクの民主化のかぎを握る憲法草案の起草作業に積極的に支援をするという観点から、少なくとも二点ぐらいできるんじゃないのかな。

 一つは、具体的に申し上げますと、憲法起草作業をする人、さらには事務局とか、これは国民議会の議員になるなら議員の方でもいいと思うんですけれども、そういう方を日本に招いて、我々日本も戦後の混乱期に憲法制定を行ってきたという過程もございますし、そういう方々に日本の憲法制定の過程とか、さらにそういう構成なんかも含めたノウハウなどをきちっと研修を行うということもできるんじゃないのかということが一つ。

 もう一つは、日本だけじゃなくて、アジアにはイスラム国家であるマレーシア憲法なんかもありますし、さらにはシンガポールであるとかインドなど多民族の国家もあるわけですね。そういうところの憲法を日本が主催してきちっとイラクの担当者に研修してあげる、そういう貢献なども積極的にできるのではないかと思うんですが、町村外務大臣の見解を伺いたいと思います。

町村国務大臣 今委員から貴重な御指摘をいただきました。憲法制定、八月十五日までにということで、本当に大きな山場であろうと思っております。

 今委員お話しのとおり、アジアそれぞれの国に独特のといいましょうか、それぞれの国情に合った憲法というのがあるわけでありまして、今お話があったマレーシア、インド等々、そういう国々の専門家とか研究者の知見をイラクの憲法起草に役立てる、そのための人材育成に貢献をするということは大変有益であろうし、私ども、そういう方向で今内々の接触を少し始めたりしているところでございますが、ぜひ委員の御支援もいただきながら、私どももこの憲法制定を初めとして、イラク人による国づくりに積極的に貢献をしてまいりたいと考えております。

佐藤(茂)委員 私は、ぜひ国づくりの根幹をなす憲法などにも積極的に支援をお願いしたいな。といいますのは、次の質問に当たりまして、お手元に資料を三枚配らせていただいております。

 政府は、自衛隊の人道復興支援活動とともに、ODAを中心とした経済支援を車の両輪と位置づけて、このイラクの復興と国づくりを支援されてきたわけですね。私は、イラクの国民から大変高い評価と期待を得ているんではないか、そのように思うわけです。

 例えば、この資料一を見ていただきたいと思うんです。全部説明していると時間がかかりますけれども、これは欧米の研究所がこの一月に実施した世論調査なんですね。この一番左上を見ていただきたいんですけれども、「イラクを再建すべき国」というのはもう断トツで日本が、これは一番目、二番目、三番目という評価を得たみたいなんですけれども、一番目は二六・四%、二番目一一・八%、三番目一三・〇%で、合わせて五一・二%。ほかの欧米の国、国連などよりもずっと期待度が高い、そういう数字が出ております。

 資料二を見ていただきたいんですけれども、これは一月の初旬に共同通信社がムサンナ州の地元紙に委託して行ったアンケートなんです。陸上自衛隊の活動に関する調査結果ということでございます。例えば問一を見ていただくと、「日本政府の陸自派遣延長の決定を支持しますか」。支持する七八・三%ですね。支持しないの一二・五%を大きく上回っている。二番目、「陸自の活動に満足していますか」。満足している六一・八%。満足していないの三四・三%を大きく上回っている。問四に飛んでいただきますと、「自衛隊はサマワにどのくらい滞在すべきだと思いますか」。一年以上が五〇・三%、一年が二三・一%で、合わせて七三・四%の方が一年あるいは一年以上、そういう評価をいただいている。問八など、「自衛隊を「占領軍」だと思いますか」。思わない七六・三%というように、非常に高い評価を得ているわけでございます。

 私は、期待度が高いだけに、また評価も今のところ高いだけに、今後は、今のイラクの置かれている状況、課題を視野に入れながら、このイラクの国づくりにさまざまな面から、角度から見て貢献するような、そういう貢献策をもう一段階考えていくべきではないかな。つまり、今国民議会選挙を終えたといっても、選挙で露呈しました宗派間であるとか民族間であるとか、さらには宗教と世俗の間の亀裂の修復を図れるような、そういう貢献策、また地域的なバランスをとった貢献策を行っていくべきではないのかな。

 資料の三枚目を見ていただきますと、これは外務省が今提示しておられる資料なんですけれども、これも細かく言いませんけれども、これほどの貢献をされてきたわけです。ところが、ポイントは、私、これで一目でわかるのは、極めて地域的に偏りがある、そういうことが今まででは一つ問題ではないか。ムサンナ県に非常に集中しております。これによって、逆に自衛隊の活動と相まって、サマワを中心とした人々の評価は非常に高い。あとバグダッドも集中しているんですけれども、それ以外のところがまだまだ手薄である。

 これは治安の回復の問題とも非常に関係してくるかと思うんですけれども、それと、今までイラクの計画省などを中心に、窓口にしてされてきたとは思うんですけれども、今後はやはり、現地のニーズに沿いながらも、全体として、先ほど言いました国民融和につながるような、そういう地域的、民族的、宗教的なバランスをとったODA等の経済支援が心がけるべきこととして必要ではないかと思うんですけれども、外務大臣の答弁を伺いたいと思います。

町村国務大臣 私も今この資料を拝見して、実は驚きを感じていたところでございます。何で日本がこんなに一番なのかなと、ありがたいようで結構これもしんどい話だなと思いながら、しかし、これだけの期待があることにやはり適切にこたえていくことが日本の役割、使命なんだなということを痛感した次第でございます。

 委員御承知のとおり、私ども、まず当面のこととして十五億ドルの無償資金協力ということで、そのうちもう十四億ドルまでは電力、教育、水・衛生、保健、雇用創出といったようなところでやってまいりました。全部プロジェクトが完了したわけじゃございませんが、着手しているということであります。今後、中長期的な復興需要にこたえるということについては、基本的には円借款でやっていこうということで、これには三十五億ドルを充てるということを既に表明しておりまして、昨年の年末あたりから、直接バグダッド等に入れないものですから、ヨルダンのアンマンに本部といいましょうか調査拠点を置いて、JICAによる調査を始めているところでございます。先ほど申し上げましたような分野に加えて、さらに電気通信とか運輸といったインフラ分野を視野に入れて、今後の案件に関する調査等、所要の準備を行っているという状態であります。

 確かに、委員御指摘のように、ムサンナ県に偏っているではないかというような御指摘もわかりますが、これは一つは自衛隊の活動ということもありますので、どうしてもそこに集中せざるを得なかったという面もありますが、今後は、国全体を見据えながら、また各地域、各宗派等も念頭に置きながら、バランスのよいイラクの復興のための支援活動をやってまいりたいと考えております。

佐藤(茂)委員 ぜひ、地元の期待度がこれだけ高いがゆえに、本当に全体のバランスをとった、そういう貢献策をお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

船田委員長 次に、鈴木康友君。

鈴木(康)委員 民主党の鈴木康友でございます。

 まず初めに、昨今のイラクの治安の状況について御質問を申し上げたいと思います。

 先日、御承知のとおり、国民議会選挙が終わりまして、新たな政治プロセスの第一歩を踏み出したということで、非常に全体として見ればムードが上がっているという感じがしますけれども、治安の状況を見てみますと、これは逆に、よくなっているというよりも、さらに悪化をしているんではないか、私はこんな気がしてなりません。連日のように自爆テロが起こっておりますし、そんな中で、先日、国連の関係者に話を伺いました。

 その方からのお話でありますと、国連は今のイラクをどういうふうにとらえているかというと、都市部を中心にゲリラ戦状態である、こういう認識を持っているということであります。しかも、そのテロの主体がいろいろ複雑になってきている。国際テロ組織あるいはフセイン政権の残党だけではなくて、アラブ民族主義者とかイスラム教の過激派とか、さらにそうした思想とか宗教とは関係のない犯罪者集団まで加わって、非常に混沌としてきている。しかも、一部に米の占領に対する抵抗という名のもとにそうした組織が提携をする、共同作戦をとるというふうな事態にも至っているということで、非常に治安に対して厳しい認識を持っているということでございますけれども、外務大臣はこういう国連の認識について御承知をしていたかどうかということと、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。

町村国務大臣 イラクの治安情勢につきましては、選挙前あるいは選挙後を通じまして、武装勢力による自爆テロ等の攻撃が発生をしております。したがいまして、地域によって脅威の度合いは違うんでありますが、依然として予断を許さない状況がずっと継続をしているという認識は変わっておらないところであります。今回の選挙が実施をされたというのは大変大きな一歩であった、こう思っておりますが、今後さらにこうした政治的なプロセスが進んでいくことが、テログループが活動するいわば土壌というものが除去をされていくということを期待するわけであります。

 国連における危険度の評価というものもゼロから五まであるというふうに聞いております。日本は御承知のように一から四までありまして、イラクは退避勧告という状況であるということから、日本政府も全体としてこのイラクは退避してくださいという最も危険な地域という分類をしているということからも、私どももこのイラクという状態が先ほど申し上げたような状況にあるという認識は持っているところでございます。

鈴木(康)委員 今国連の危険度の認識のお話がありました。今の外務大臣のお話のとおり、ゼロから五までの段階があるということでありまして、今イラクは国連の危険度の色分けでいきますとフェーズ4であります。

 ただ、フェーズ5、つまり即時撤退というふうにフェーズを上げたいということのようでありますが、なかなかこれはアメリカの方の圧力があってフェーズ5に上げられない。フェーズ5に上がれば自動的に国連が撤退をするということになりますから、そうなりますと、国際協調の枠組みの中でイラクの復興支援をするというそのシンボリックな部分が消えてしまう。そういうことでアメリカが難色を示しているということでありますが、そういう状況があるということについて、外務大臣は御認識されていましたでしょうか。

吉川政府参考人 先生の御質問の部分、国連における危険度の認識、外務省がどういうふうに認識していたのかという御質問でございます。

 若干そもそも論のような話になりますが、昨年の六月に全会一致で安全保障理事会が決めました決議の一五四六という中に、国連は選挙支援について中心的な役割を果たすんだ、また、イラクの復興支援を行うんだということが明記されておりまして、これは、言ってみれば、国連に対して、できるだけのことをやってくれという世界の一種のお墨つきが出て、その中で国連に仕事をしろという期待が出ているわけでございます。

 それに対して国連の方は、デメロさんを含めて二十数名の方、国連の代表を殺された、そういう治安の状況の中でどうやってその世界の期待にこたえるかという悩みを抱えながらこれまで仕事をしてきたんだと思います。

 日本政府は、まさに国連が中心になってイラクの復興を果たしてもらいたいと思うからこそ、これまで国連の安保理決議の採択に向けて一生懸命側面から努力してまいりましたし、東京で、国連が中心になって復興をやろうじゃないかということで東京会議を開いたというのもその努力のあらわれです。

 一番最近ですと、今月の十日に、イラクに国連の職員が帰れるためには国連の職員の安全を確保しないといけませんので、その国連の支援ミッションの警護を拡充するということで七百五十万ドルの拠出を決定しておりますが、こういう形で、国連が安全保障理事会の決議で期待されているような役割が果たせるように、我々としては最大の努力をしてきている、こういう考えでございます。

鈴木(康)委員 今国連の話が出ましたので、少しそのことをお伺いしたいと思います。

 今、国連の役割に期待したいということでありますが、状況は全然逆でございまして、この国連関係者のお話の中にあったわけでありますが、例えば一月の安保理の中で、一月といえばイラクの国民議会選挙が行われるという極めて重要な月であるにもかかわらず、一回もイラク問題について議論されなかったということであります。

 つまり、今、期待とは裏腹に、国連がイラクの復興支援に積極的な役割を果たせる状況にないと私は思うんですが、その点、どうですか。

吉川政府参考人 ちょっと手元に、具体的な公式会合で、安全保障理事会でイラクが議論されたかどうか持ち合わせておりませんので、その点はお答えできませんが、私どもは、一月から安全保障理事会の非常任メンバーになりましたので、日常的に情報が入るようになっております。そういう中で、先生今御指摘のような、イラクの国づくりというものに国連がどういうふうに対応するべきか、これについては、非常に頻繁にいろいろな格好での意見交換が行われているということは承知しております。

 一月三十日の選挙を基本的に支えたのは国連でございます。イラクの独立選挙管理委員会というものができましたが、これを技術的に、また資金的に支えたのは国連であって、国連の関係者はバグダッドでその仕事をやってきております。

 また、一月三十日の選挙の後の国連事務総長の歓迎声明、それから直ちに行われました安全保障理事会における安保理全会一致での歓迎の声明、こういうものを見ましても、現在動いている方向をぜひ支えていこうじゃないかということが安全保障理事会を中心とする国連の中に出ており、先ほど御紹介申し上げたように、日本が七百五十万ドルの拠出をすることによって、国連職員が一刻も早く本格的にバグダッドに戻れるような措置をしたということに対して高い評価が出ているということも事実でございます。

 現在の治安状況を考えたときに、国連事務総長としては、二度とかつてあったような、二十数名の職員が殺されてしまう、そういう状況を繰り返すことはできませんので、当然のことながら職員の安全に最大限の配慮をしながら、どうやって国際社会から期待されている国連の役割を果たすか、こういうことについて日々努力をしているというふうにとらえております。

鈴木(康)委員 もちろん、安保理でこの選挙の結果が悪いなんという決議が出るわけがないわけですから、もちろん歓迎の決議が出たことは私は当然だと思うんですが、実際に、じゃ、イラクで国連の職員がどれだけの活動ができているか。今グリーンゾーンに六十名程度の職員しかいないわけですね。その中で、どれだけの役割が果たせているのか。その辺、どうですか。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 先日、我が方の鈴木敏郎在イラク大使が国連のカジ代表とバグダッドで会っておりますし、鈴木大使が最近一時帰国した後は、臨時代理大使の山田彰がカジさんにお昼を招かれて現地で、これもバグダッドで意見交換をしております。

 そういうところから出てきておりますのは、カジさん、この方はパキスタン出身の国連のバグダッドにおける代表でございますが、このアシュラフ・カジさんの言うには、国連としてはできるだけ早く戻したい。幾つか問題点を指摘しております。

 一つは、安全状況を確保できるような事務所と住宅をグリーンゾーンの中に確保したい、これがまだ十分じゃない。それから二番目は、職員を戻しますと、そのための警護が必要です。この警護に手を挙げてくれる国が今のところまだなかなか出てこないんだ、これは危険度の問題もありますし、派遣についての装備とかお金とか、これは自前で出すことになっているので、そこの部分をちゅうちょする国がある。そういうところについての問題提起をされておられました。

 先ほどから御答弁申し上げていますのは、まさにそういうところを各国とも後押ししようじゃないか。例えばオーストラリアは、フィジーの兵隊さんがバグダッドに行って国連職員を守ってほしい、そのためにフィジーに装備と資金をオーストラリアが提供しましょうということをやっておりますので、現在の状況からいって余り楽観的なことを申し上げるつもりはございません。なかなか、手を挙げてバグダッドに行こうという国が少ないことは確かですが、今度の選挙の結果を踏まえて、新しい状況の中で、国連が本格的に戻れるために努力をしよう、そういう機運が高まっているということは言えるのではないかと思っております。

鈴木(康)委員 私は、そろそろもうシンボルとしての国連じゃなくて、名実ともに有志連合から国連に復興支援の実体が移っていくという時期に来ているのではないかと思うんですね。

 国連の問題はこれで最後にしたいと思いますが、イラクで不幸にも亡くなられました奥さんが、これは「外交フォーラム」に書かれた「国連は必要とされているか」という論文の中に、最後のところに、今後米国と一部の連合国だけではいずれ背負い切れなくなるので、そのときには国連という機関の役割が必ずや大きくなるだろう、そのときに日本政府が関与できる余地はもっとあるということで、そういう策を講じてこそデメロさんの遺志を継ぐことになるというふうな書き方でありまして、デメロさんの遺志を継いで、あるいはこの奥さんの遺言を果たす意味でも、私はこの件に関してもっと日本が積極的な関与をすべきであろうと思います。

 その点、外務大臣、いかがですか。

町村国務大臣 私もこの奥大使の「外交フォーラム」における文章を拝見いたしました。大変危険な状況の中で書かれたものなんだろうと思いますけれども、まさに彼の実感のこもった文章と重要な指摘であると受けとめております。

 こうした奥大使の意見の具体のあらわれとして、先ほど局長がお答えをいたしましたが、安保理一五四六等の決議の採択ということなども日本が一生懸命努力をしたことでもありますし、さらに、イラク復興信託基金に対して四・九億ドルの拠出を行う、そのための東京会合を昨年十月に開く、あるいは、今月十日に、国連イラク支援ミッションの警護拡充のために七百五十万ドルの拠出をするといったような取り組みは、まさに奥大使の指摘する、国連がもっと大きな役割を果たせるようにという考え方と軌を一にするものでございます。

 現実いろいろな制約があり、十二分な活動体制に国連自身がまだなっていないということはありますが、ここは治安の状況を見ながら、次第次第に国連がより大きな役割を果たすということになっていくんであろうと思いますし、またそういう状況ができるように、私どもとしてはさまざまな努力をしていかなければいけないと考えております。

鈴木(康)委員 引き続き御努力をお願いいたしたいと思います。

 さて、少しサマワの方に話題を移したいと思うんですが、先ほどから御報告にありますとおり、ムサンナ県の治安維持に当たっていましたオランダ軍の撤退によりまして、今度、イギリス軍、それから新たにオーストラリア軍、この混成部隊によって治安維持に当たられるようになるということであります。その数が恐らく六百名になる。オーストラリア軍が入ってくることによって英軍が削減をされていきますから、英軍が百五十、オーストラリア軍が四百五十程度の規模になると思うんです。

 この混成部隊あるいは六百名という数でサマワの治安維持が大丈夫であるのかどうか、まずその点について、大野防衛庁長官にお伺いをしたいと思います。

大野国務大臣 オランダ軍は、イラク・ムサンナ県中心ですけれども、千三百五十人、今まで展開しておりました。そのうち、サマワにおりましたのが大体七百人から八百人、その他のムサンナ県におりましたのが三百人程度、それからムサンナ県外で三百人ちょっと、こういう展開でございます。

 それで、ムサンナ県のサマワだけに限れば、六百と七百、八百の比較になるわけでございます。しかし、そういう比較の問題ではなくて、イギリス側の言い方によりますと、これまでオランダ軍が現地、つまりイラク・サマワの治安関係組織をきちっと育成してきた、こういうことを考えると、六百人で今までどおりの治安が保たれる、このようなことでございます。現に、ムサンナ県でいいますと、五千五百人の治安関係の者がおる。そうしますと、大体百人に一人がそういう治安関係に携わる者でございます。

 そういうことで、六百人という数で、私どもも考えてみますと、従来どおりの治安は維持できる、このように思っております。

鈴木(康)委員 今の長官のお答えですと、現地の治安担当の人たちの能力も向上しているから六百名で大丈夫だ、こういうイギリス軍からのお話があったということでありますが、防衛庁自体として、大丈夫であるのかどうかということをきちっと検証あるいは確認しているんでしょうか。

大野国務大臣 我々は、あらゆる機関あるいは現地の部族と十分連絡をとりながら、情報交換しながらやっております。その中で、第一にサマワの治安は極めて、他に比べるとですけれども、良好である。

 このことを一例で申し上げます。

 例えばムサンナ県でいいますと、多国籍軍を襲撃した事件というのは、一月に一回だけであります。これは残念ながら、日本の宿営地に向けて飛んできたロケット。それから、二月になりまして、通行中のアメリカ軍に対して襲撃事件があった。これ一件でございます。

 したがいまして、一カ月に一回ずつということでありますけれども、例えば一月の多国籍軍に対する総襲撃事件、ちょっとこれは正確に言えませんけれども、全体では千単位あるんですね。そういうことから見て、比較的治安は安定しているということでございます。

 それに加えて、自衛隊の安全確保というのは、みずからの手でも十分やっていっている。このことは御理解いただきたいと思います。

鈴木(康)委員 自衛隊の話は後ほどお伺いしたいと思いますが、今度、ある意味でサマワの治安維持の主体になるオーストラリア軍でありますが、このオーストラリアのハワード首相がサマワの状況について、サマワは危険であるという認識をしている、したがって、犠牲が出ないことを望むがその可能性は否定していないというような御発言をされております。

 外務省は、相変わらず、サマワは予断を許さない状況だけれども他の地域に比べれば比較的安定している、こういう状況認識を変えていないわけでありますが、どうもオーストラリアの首相と日本の、サマワに対する認識に温度差があるというふうに思うんですが、外務大臣、この点いかがでしょうか。

町村国務大臣 二月二十二日のオーストラリア軍のイラク追加派遣に関するオーストラリア・ハワード首相の発表という文書があります。その中に、自分はいかなる軍事的な部隊展開も犠牲者を出すリスクが伴うことを指摘したい、それから逃げるのではなく、公にその可能性を認めるという発言をする一方で、同じ文書の中で、ムサンナ県の治安状況でございますが、相対的に言って暴力がなく、スンニ三角地帯のようなイラクのその他の地域の安全状況とは異なるということを強調したい旨述べたということでございます。

 したがいまして、私ども従来から申し上げておりますように、サマワを含むムサンナ県の治安状況は、予断を許さないものの、イラクの他の地域と比べれば安定している状況であるという累次申し上げてきた認識と、このハワード首相の認識とは、完全に同じかどうかわかりませんが、ほとんど同じ認識に立っているのではないのかな、こう私は考えております。

鈴木(康)委員 その点に関して、例えばハワード首相と外務大臣は直接認識を共有されるようなお話をされているんでしょうか。

町村国務大臣 ハワード首相と小泉首相は電話で話をされました。私は、ダウナー外務大臣と二回電話で話をいたしまして、そうした状況認識も含めての話し合いを行ったところであります。

鈴木(康)委員 私は、もう一点ちょっと気になることがあるんですが、それはオーストラリアの派兵に対する世論なんですね。

 御存じのとおり、十月の総選挙のときには、これ以上増派をしないということを確約したわけでありますが、その前言が今回翻されているということ。そして、この増派に伴って行いましたテレビ局の世論調査によりますと、賛成が二九%で反対が七一%、約七割が反対しているということであります。

 あるいは、さきの大戦のしこりもあって、自衛隊の保護だけを目的とした派兵に反対する空気もあるということでありまして、決してオーストラリアがもろ手を挙げてこの派兵に賛成をしているということではないわけであります。

 もちろん有志連合あるいは米英への配慮ということがありますし、今後の日豪関係ということを考慮したんであろうと思いますが、私は、相当厳しい状況の中での軍の派遣だと思うんですね。

 そうしますと、もし何か事が起こったら、当然オーストラリア軍が撤退ということも考えられるわけでありますが、そういう方針転換の可能性ということもあるわけでありますが、そういう点についてしっかりと検討されているかどうかという点について、お伺いしたいと思います。

町村国務大臣 時間の経緯からいたしますと、イギリス、日本あるいはオーストラリア、こういった多国籍グループが適宜いろいろな状況で議論をしているわけでありますが、その中から出てきた話ではありますが、まず、これはイギリス政府がオーストラリア政府に話を持ちかけたわけですね。その事情は必ずしもわかりませんが、現実に六百名という人数を、いろいろなオペレーションの想定をやった結果、これは自分たちではちょっと難しいかもしれないということではなかったかと思いますが、オーストラリアと一緒にやりたいという話をイギリス政府からオーストラリア政府にした。

 そういう話がイギリス政府から日本政府にも来ました。日本政府からもオーストラリア政府にひとつそういう依頼をしてもらえぬだろうかなというお話があったものですから、それは私が、これはイギリスの外務大臣との話から、まず電話がありました。それを受けた形で私どもはオーストラリア政府に話をしたということでありまして、英豪日の間でのそういう緊密な話し合いの結果、今回の決定があったということであります。

 オーストラリア国内における世論の動向などは私どもには必ずしも十分わからないところがありますが、オーストラリアは、今まで主として海上の支援ということをイラクでやってきた。これが今度陸上に出るということでありますから、それは大変危険なところに行くことになるのでという、オーストラリア世論がそのような反応があることは、ある意味では理解できないわけではないんですけれども、今後、これはオーストラリア国政府と国民との間でどういう対話が行われ、どういう説明が行われ、実際の活動がどうであるかという実績をもって示すことが何よりもの答えなのではないのかな、かように思っております。

鈴木(康)委員 外務大臣、私、ちょっとその認識じゃ困ると思いますよ。今のですと、きちっと戦略的にオーストラリアが来るということではなくて、イギリスから突然頼まれたから、イギリスがオーストラリアに頼んで、日本からも依頼してくれということで派遣が決まった。そのオーストラリア軍が今度四百五十名、恐らく英軍が百五十名程度になると、指揮も豪州軍がとるということのようでありますから、そういうオーストラリア軍に日本の自衛隊の安全をゆだねなきゃいけないわけですね。その程度の認識でよろしいのでしょうか。

町村国務大臣 大野長官が申し上げましたとおり、基本は我が国自衛隊の安全は我が国が守るということでありまして、その基本を踏まえた上で、なおかつ他の多国籍軍の協力も得るということであります。

 ハワード首相の言によれば、この決定は政府にとって簡単な決定ではなかったし、これからもそうであろう、多くの人々にとっては評判のよくないことも知っている、私はそのような人々に自分が述べた理由を考慮してほしい、私はこの決定は正しい決定だと考えている、コアリションの努力に大きな貢献となるし、イラクの復興に大きな貢献となるということでありまして、日本のためにだけ行くという認識ではないということですね。当然イラクの国民のため、そして、国際社会の一員として責任を果たすという意味合いで自分たちはこの決定をしたんだということであって、それは確かにきっかけはイギリス政府の話、日本政府からの話はあったけれども、それらを総合勘案して、オーストラリアの首相としては、まさに国際社会の責務という大義があるから今回の派遣になったんだという説明をしておられると私どもは承知をいたしております。

鈴木(康)委員 みずからの安全はみずからで守るということでございました。

 では、自衛隊のことについてお伺いをしたいと思います。

 今の自衛隊を取り巻く環境というのは、今度大きく変わるわけですね。オランダ軍から治安維持に当たるのが英軍と豪州軍の混成部隊になる、あるいはその数も減る。それから、先ほどの長官のお話にもありますとおり、給水活動等が一段落して、これから外へ出て行くことが多くなるんですね。当然、常識的に考えても、自衛隊の安全の確保ということに対してより慎重にならざるを得ないというふうに思うんですが、その安全確保のために装備や防御を増強したというようなことがあるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。

大野国務大臣 まず、自衛隊の問題をちょっと置いておきまして、前段の例えばイギリスとかオーストラリアの問題でございます。人員規模だけでの議論でございましたが、装備につきましては、これまでと同じような治安を維持するに足るだけのパワー、力を持っていく、こういうような話でございます。

 次に、自衛隊自身の問題でございますけれども、これはたびたび御説明申し上げておりますが、例えば宿営地内の安全の問題、何重かの層を外壁の外に設けている。それから、宿営地につきましては、弾が飛んできても大丈夫なように宿舎は壁を厚くして、どのぐらい厚くしているかというのは御勘弁いただきたいんですが、壁を厚くしている。

 それから、運用の面におきましても、今の例でありますと、砲撃砲あるいはロケットというのは夜中しか飛んできませんから、夜中は何時以降は必ず宿営地に入りなさい、こういう指導をしている。あるいは、監視装置も、従来、監視装置といって性能の余り高くないものでありましたが、高いものをつくる。その上に空中から監視できる装置を備えてくる。こういうような努力をしているところでございます。

 さらに、例えば、今先生がおっしゃったように宿営地外での活動がふえてくる。このことは非常に大きな問題としてとらえていかなきゃいけないのは、給水活動がなくなりましたから、その分だけ人員を警護に回すという問題が一つございます。

 それからもう一つは、必ず防弾チョッキ、ヘルメットをかぶって出てください、こういう問題があります。

 そしてもう一つ、これは本当に大事なことですけれども、日本の自衛隊、宿営地外で活動する場合には、いろいろな情報を収集している、そして部族との関係でも情報を交換しながらやっている、こういうことであります。

 さらにもう一つだけ言わせていただきますと、こういう日本の自衛隊の活動が現地の皆さんの共感を呼んでいる。自衛隊の活動について本当に現地の皆さんが歓迎してくれている、このこと自体が非常に治安の安定につながっていっているのではないか、私はそのように思っておるところでございます。

鈴木(康)委員 昨年のこの委員会でも質疑がありましたが、派遣隊員の安全確保というのは政府の義務であって、これが確保できなくなったら撤退の理由になるということ、これは総理も確認をしていることでありますので、この点非常に私は大事だと思うんですね。本当はもう少し装備のこと等御質問したかったんですが、時間になりましたので、改めて御質問させていただくといたしまして、私の質問を以上で終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

船田委員長 次に、本多平直君。

本多委員 民主党の本多平直でございます。

 まず、イラクの方の話から質問をさせていただきたいと思います。

 きょう、御説明で改めて、今までイラクでの復興支援活動のメーンとしてきた給水活動は事実上終わったというお話をいただきました。そうなりますと、今後、自衛隊の復興支援活動を続けていく二つは、医療の活動といわゆる公共事業的な活動の二本柱になっていくと思うんですが、これについて伺いたいと思います。

 今、この二月二十二日現在実施中の事業を書いた一覧表の地図の入ったものをいただきました。何げなくちょっと見過ごしかけていたんですが、今まで、例えば学校の方は十一ぐらい終わって、今実施中が八。そして、道路は十五今までは済んだものがあって、今実行中が三。つまり、学校や道路はだんだん減ってきているわけです。そして、その他という分野が、今までもう済んだものが八あったのが、今実行中は十四あるそうです。

 学校の補修というのもどこまで緊急性があるのかという議論はあるんですけれども、これも大分済んできた。それで、今八やっている。そして道路の方も、緊急性があるといえばあるような気もしますが、これは十五済んで、今やっているのは三なんですね。

 では、残りのその他のやっているこの十四事業というのは何かといいますと、大臣も当然御存じだと思いますが、サマワのサマワ・ギャラリー屋内運動場の補修、それからサマワ市民生局ガレージ、それからサマワの公園、ティーチャーズパーク、公園施設の補修、それからサマワ女子高前噴水、噴水の補修。それからもっとすごいのが、サマワの屋外バスケ施設屋外コートの補修、それからサマワ・スポーツクラブ外壁、照明装置、コートの補修。ルメイサ・スタジアム、これも多分運動関係の施設だと思うんですけれども。小さな診療所の工事が十四のうち半分ぐらいありますが、残りの半分は市民の娯楽関係、公園、噴水、スポーツの施設の補修のためにこの危険なイラクへの自衛隊を残すということになっているんですね。

 この辺について、一体、当然これは日本国内、皆さんの選挙区だって直してほしい学校とか、直してほしい噴水とか、直してほしい公園が山ほどあるんですよ。ニーズがあるのは当たり前なんですよ、日本国内にもありますし。これはいつまでこういう事業を続けていくおつもりなんですか。

大野国務大臣 ただいま御質問は、どうも本来の公共事業とか医療活動とかそういうことじゃなくて、少し、例えば文化施設とかあるいはスポーツ施設とかそういう方に移行しつつあるんじゃないか、これをどう思うかという御質問でございます。

 私は、例えば、ウルク遺跡の修復、外壁を修復いたしました。これは文化という価値観を大切にするイラク人にとりましては非常に評価が高かったわけですね。イラクの復興というのは何だろう。そういう学校とか道路とかを修復していくこと、これはもちろん大事な基本的なことでございます。しかし、もう一つ考えなきゃいけないのは民生の安定じゃなかろうか。心が少し落ちついてくる、そして、みずからの手でイラクを復興させよう、こういう機運が盛り上がってくる、そういう分野に少し入ってきたのかなと思っております。

 そういう点は、私は二つの考え方があって、一つは、現地のニーズをどうつかまえていくか。しっかりつかまえていく、どういうニーズがあるんだろうか。このニーズが一体イラクの復興のためにどういうふうに役立っているんだろうか。こういうことをきちっとこれから分析して考えていかなきゃいけないな、こういうふうには思います。

 しかし、先生の御指摘は十分検討させていただきたいと思います。

本多委員 命がけでやる必要のないエジプトとかほかの国で文化施設の補修に例えばODAをやるのは幾らでも、それは国内だけじゃないですよ、そういうことに日本が役割を果たすのはいいことですよ。しかし、命がけで自衛隊を派遣してやっている工事が、給水活動のうちは、給水活動自体にもほかの方法がいろいろあるんじゃないかとか、私たち提案申し上げました。しかし、給水と言われたら、それはイラクの皆さんに汚い水を飲ますわけにいかないなと納得せざるを得なく、今までやってまいりました。

 しかし、バスケット場の補修とか運動スタジアムの補修というようなところまで、学校や道路がどんどん減って、ふえてきている現状というのは、これは、何かニーズというより派遣のために派遣をしているということがますます明らかになってきていると私は思いますので、ぜひとも、これが自衛官の方々が命がけで行きながらやらす作業なのかどうかということを真剣に防衛庁長官として考えていただきたいと思っています。

 そして、さらに医療の方も、実は月に三回ぐらい病院に行って助言をしているそうです。しかし、これが今や本当にこのイラクの地域で必要なことかどうかということももう一度考え直していただきたいと思います。そうなると、石破前長官は、例えば給水というのがまず大きな、サマワの皆さんに水がしっかり行くことが一つのミッションだとおっしゃっていたんですから、撤退戦略を考えていく上でも、そろそろこういう役割がなくなってきているんじゃないかという指摘をしっかりと受けとめて検討していただきたいと思っています。

 そしてさらに、我々の自衛官が命がけでやっているというだけではなくて、鈴木委員からも御指摘をしましたように、今度は、オーストラリアの軍隊に守っていただく、そういう状況になってきているわけです。もちろん、オーストラリア軍は我々を守るためだけに来るわけではありませんが、自衛隊は治安維持の活動ができません。ですから、事実上守ってもらうという要素が出てくるわけであります。

 このことについてなんですけれども、今まで、オランダ軍はアメリカとの同盟関係や当然イラクへの貢献という大義名分、そういったことで来ていたわけです。しかし、今度のオーストラリアの話は、今までやってきたことにプラスアルファで来るわけです。そして、そこは日本の自衛隊が活動をしている地域ということはオーストラリアの皆さんはわかっているわけです。こういう中で、借りをつくっちゃうんじゃないか、そういう議論をする方もいます。

 つまり、オランダという国は非常に、日本とも関係がそれほど深くはない国です。しかし、オーストラリアというのは、貿易の面でも、そして観光、商業の面でも非常に深いつながりがあります。そして、非常に仲のよい国でもあると同時に、例えば、東南アジアをめぐってはいろいろな権限争いを今後していく可能性のある国です。そういうところに、このまま無事にミッションが終わればいいです。そんなこと、オーストラリアという国は心の広い国だと思いますから、ねちねちと貸しをつくるようなことはしないと思いますけれども、万が一、オーストラリアの兵隊さんにもしものことがあったようなときには、私は、オーストラリアとの関係というのは普通ではいかないと思うんですけれども、その辺、外務大臣はどういうふうに認識をされて、イギリスに言われたから渡りに船とばかりに頼んだ、そんな話で済む話なんでしょうか。

町村国務大臣 今のオーストラリア軍の派遣の話で、先ほどお話をいたしましたけれども、これは、オランダ軍の撤退決定を踏まえまして、イギリスがムサンナ県の治安維持のあり方について多国籍軍の関係国と意見交換を実施してきた。その過程の中でオーストラリアの派遣という話が出てきたので、イギリスから私どもに対して、日本からオーストラリアに対して部隊派遣の要請をしてくれないかという依頼があったという経緯があったわけであります。

 そのオーストラリアと日本の関係をそれではどう認識するのか。今委員は、借りをつくるという意見もある、あるいは、いわばライバルとでもいうんでしょうか、そういう関係に立つのではないかというような話もございましたが、私はそう考えてはおりません。

 日豪というのはまれなほどの友好関係が現在存在しておりますし、経済面で多少バッティングすることはあったとしても、しかし、彼らは基本的には資源、食糧を供給する国であります。日本はそれを輸入して、いわばそれで日本の経済を発展させているという極めて高度ないい相互補完関係にあるということでありますから、借りをつくるというのであれば、もともとこれだけ資源を輸入しているというそこの時点で膨大な借りがあると言えば言えないこともない。でも、それは経済行為ですから、お互いにお金を通じてその関係をつくっているということでありますから、私は、別に今回の決定があったからそういうことではない。

 むしろ、オランダ軍が今までいたこと、オランダ軍は戦争中にインドネシアを占領しておりました。そのインドネシアを占領していて、そこに日本軍が行って、いわばオランダ軍と戦ったような形の中からオランダが撤退していったという経緯もあるものですから、逆にオランダ軍の対日感情というのは、今は大変好転をしておりますが、それでも、ちょっと私の知識が正しいかどうかあれですが、たしか日本の天皇陛下かあるいは皇族が行かれたとき卵が飛んだとかというような事件すらあったような気がいたします。

 そういうオランダですら、これは日本を守るということではなくて、まさに国際社会の一員としてのしっかりとした責任を果たそうではないかという意識から、オランダ軍もムサンナ県の治安に当たるということでありますから、オーストラリアの今回の決定も、そういう意味から私はとらえていただければ、こう考えております。

本多委員 ちょっと貸し借りの話というようなことは外務大臣もおっしゃれないと思いますけれども、じゃ、もっと端的に言うと、オーストラリア兵にこの地域で犠牲が出た場合に、関係が悪化する危険というのは大きいものがあると思うんですけれども、どうでしょう。大変仲のいいオーストラリアとそういう関係になる危険性をどう認識されていますか。

町村国務大臣 これはどういう状況で何がどう起きるかということにもよりましょうから、それをあらかじめ想定して、オーストラリア軍に被害が出るということを日本の外務大臣が想定して物を言ったということになると、これは大変なことになりますから、今そのことを具体に申し上げるわけにはまいりませんが、いわばこの多国籍グループはみんなお互い兄弟関係でございます、仲間であります。お互い仲間同士、いい関係を築いていこうということでありますから、私は、今委員が言われたような、そうストレートな関係が発生するとは考えておらないわけであります。

本多委員 そこはしっかりやっていただきたいと思います。

 ちょっと話がずれちゃうかもしれないんですけれども、このことに関して、ある全国紙の社説がこういうことを言っているんですね。オーストラリア軍には感謝をするということですね。「それだけに友軍が攻撃されても、集団的自衛権の行使が認められないからと自衛隊が手をこまねくことは許されないだろう。国際共同行動に加わる以上、日本の「常識」は通用しない。」、こういう、私からいえば悪乗りなんですけれども、議論が出てきているわけです。

 このことを政策的にいいかどうかは、多分この中の委員の間にも意見が分かれると思うので、政策論は置いておくんですけれども、一点、この議論にはちょっと法律的な間違いがあると思うんですね。この友軍が攻撃されても助けられないというのは、このイラクの場合ですけれども、集団的自衛権の話なんでしょうか。この新聞、事実誤認をしていることなので、全国紙の社説なので確認をしたいんです。今、憲法上、我が国は集団的自衛権が認められていないから自衛隊が手をこまねくんでしょうか。

阪田政府特別補佐人 イラクで他国軍を我が国の自衛隊が多分救出に赴くようなことを前提でのお尋ねだと思うんですけれども、あくまでも事実関係いかんによるわけでございまして、一概には申し上げることはできないと思いますけれども、仮に自衛隊の行為が我が国の武力行使に当たるというふうに仮定した場合には、それが他国のための集団的自衛権の行使に当たるかどうかということは、一般論といたしましては、当該他国がとる軍事行動、要するに他国自身も軍事的な行動をとっておると考えられるわけですから、その軍事行動の国際法上の根拠いかんによると考えられますので、この点は、個別具体の事実関係を踏まえた上での国際法の解釈、適用にかかわる問題ということになろうかと思います。

 当局といたしましては、そういう国際法の解釈、適用をするというような立場にありませんし、事実関係についても承知をいたしておりませんので、お答えすることが難しいということを御理解いただきたいと思います。

本多委員 以前、石破長官の時期に、石破長官はこう答えられているんですね。同じような議論を我が党の議員としていまして、しかし、こういう、ほかの国の軍隊を守れるか守れないかという話は、「例えばイラクにおいてどの国も自衛権を行使しておるわけではございませんので、集団的自衛権の行使という概念そのものが成り立たないというふうに考えております。」と石破前長官は答弁されていますけれども、いかがでしょう。

阪田政府特別補佐人 先ほど申し上げましたように、そのイラクにおける各国の軍事的な行動がどのような根拠で行われるかということにかかわっているわけでございますので、石破長官がそのように判断されているということであるとすれば、そうであるというふうに思いますが、いずれにしろ、自衛隊の行動が我が国の武力行使に当たるということであるとすれば、それが集団的自衛権の行使に当たるかどうかということとは関係なく、海外で武力の行使をするということは、基本的には憲法との関係で問題があるというのが政府の立場でございます。

本多委員 政府から新聞の社説に訂正を求めるということは非常に難しいことだとは思いますけれども、今我々は重大な安全保障議論の入り口に立っているわけです。ですから、今の日本の法律がいいか悪いかは別なんですけれども、今の政府の解釈をきちんと踏まえて新聞を書いてもらわないと困りますので、私からもきちんと申し上げておきますけれども、それぞれ政府の公式見解と大臣それぞれのお考えといろいろなレベルがあると思うんですけれども、政府の今の憲法解釈と明らかに違うことを、法律はそのままのような書き方をすることに関しては、きちんといろいろな場で説明をメディアの皆さんにもしていっていただければと思っています。

 さて、次の話なんですけれども、戦闘地域、非戦闘地域の話をもうちょっとだけしつこくさせていただきたいんですけれども、町村大臣は、十一月十日イラク特で、我が党の神風議員からの質問に、ファルージャ、これは例えであくまで出したわけです、神風議員としては。ファルージャのように大規模な戦闘が行われた地域でも、戦闘地域なのか非戦闘地域なのかと議論したときに、あそこで対象になっていたのは国に準ずる者ではないのでということを言ったわけです。その答弁をその委員会のうちに撤回をされました。

 これは、どこのところをどう撤回したのかが明確じゃないので、もう一度確認をしたいんですけれども、ファルージャで戦闘行為をしていたのは国に準ずる者ではないということでいいんですか。ないという答弁を撤回して、国に準ずる者としたんですか、それともあいまいなところに戻したんですか。どれなんでしょう。

町村国務大臣 十一月九日の記者会見、それから十日の衆議院のこのイラク特における神風委員の質疑に対する答弁でございますが、イラク特措法の定義に従えば、ファルージャ地域で活動している武装勢力は国家に準ずる組織ではないという旨の発言を行ったところであります。

 他方、大野長官は、同じ十日の委員会における審議で、このイラク特措法では、自衛隊が活動する地域がいわゆる非戦闘地域であると認められることのみが求められ、自衛隊の活動とは無関係に、ファルージャのような同法に基づく活動を実施していない地域において戦闘行為に該当する行為が行われているかどうか判断する立場にない、こういう答弁をされまして、両大臣で意見が違うじゃないか、こういう御指摘がありました。

 そこで、私は、その後の佐藤委員の御質疑に対しまして、政府の見解は大野大臣が答弁されたとおりであり、九日の記者会見における発言及び十日の質疑における答弁は、イラク特措法を適用するとの観点から厳密な判断を述べたものではなく、ファルージャ情勢一般について、報道等に基づく印象を述べたものということで撤回をする発言をしたところでございます。

本多委員 大臣の御認識で、今イラクには国に準ずる者というのはいますか。

町村国務大臣 これは今申し上げたことと全く同じなんでありますが、私どもは一般的に、例えばバグダッド等を中心にして活動しているグループ、団体等があって、これが国または国に準ずる組織であるかどうかということを一義的に述べる立場にないといいましょうか、そのことを法律が求めているわけではないということであります。

本多委員 法律に皆さんが国に準ずる者というのを書いたので、私たちは質問せざるを得なくなっているんですよ。もっとほかに聞きたいこともたくさんあるんですけれども、皆さんがつくった法律なんですね。

 皆さんの解釈によると、私が皆さんの言い方をしんしゃくすると、ひょっとするといないんじゃないかと思うんですね、実は。要は、皆さんは、アメリカ軍と旧イラク・フセイン軍の残党みたいなものが戦ったときには、それは国に準ずる者として認定をしやすかったんでしょうけれども、ここまでの混乱の事態の中で、この法律が既に有効性を全く失っていると私は思っているんです。

 ですから、全体が戦闘地域じゃないかという言い方も我が党は多くの委員がすることもあります。それも一面の真実なんですけれども、皆さんの法律解釈を厳密にしていくと、国に準ずる者なんというのはどこにも存在しないわけで、どんなに大きなファルージャのような戦闘があったって、皆さんが、どっちかわかりませんとか、あれは違いますと言っている限り、戦闘地域なんというものは存在しなくなる。ですから、全く無意味な言葉を入れてきて私たちの議論を混乱させてきたという大きな責任が政府にあると私は思っています。

 もうすぐ時間がなくなってきているので、イラクの話から、私がずっと関心を持っているテロ特措法に基づくインド洋での補給支援活動について伺いたいと思っています。安全保障委員会では、両大臣とやりとりをしましたので御記憶があればと思いますが、この委員会では初めてになります。

 私は、もちろん軍事的なオペレーションですから、すべてを明らかにしろなどということは申し上げていません。しかし、例えば、これだけ、三年にも及んで我が国に三隻、四隻しかない補給艦のうち一隻を派遣している行動に関して、海の名前もインド洋、アラビア海、要はアフリカの先まで行けるわけです。そんな中で、寄港国の国名ぐらいしっかり明らかにしろということをずっと要求してまいりました。そして、それに対して、前回の安全保障委員会での答弁は、大野長官から、隊員の安全に支障がある、それから相手国と約束がある、二点において言えないんだということをおっしゃられましたけれども、その考えは変わっていませんか。

大野国務大臣 寄港地等の名前を言えない、発表を控えさせていただきたい、この姿勢には変わりございません。

 その理由は、一つは、先生今おっしゃったように、やはりこの海上自衛隊隊員諸君の安全の問題が一つあります。それから、港のある国の姿勢の問題、どういう協力をしているのか、どういうふうにやっているのか、こういうことを対外的に公表したくない、知られたくない、こういうようなその国と我が国との信頼関係の問題があります。この二つの問題が主な理由でございます。

 ただし、一方において、我々は、例えばテロ特措法、イラク特措法において、日本の自衛隊がこういうことをやっているんです、こういうことは日本の国民の皆様に説明をさせていただきたい。日本というのはこういうような国際活動をやっているんです、武力行使と一体にならないで、武力行使をしないでこのような活動をやっているんです、このことをお知らせしたい。こういう二つの問題の命題の中で、どうぞひとつ寄港地とかそういうことはどうか秘密にしておいてください、こういうお願いをしているわけでございます。

本多委員 前回の委員会でも、私が、山崎総理補佐官がぺらぺらと自民党の総務会で港の名前をしゃべっている、どうにかしてくれということを言って、大臣から、そういうことのないように今後は国会議員に注意していきますということをおっしゃられました。

 私は、改めていろいろなところを見てみましたけれども、今度またとんでもないものを発見いたしました。今津副長官のホームページ、大臣に事前に見ていただくように言ってありますけれども、あえてこれ、町の名前は私は言いません。九月四日に何とかの海上自衛隊に到着、またまた、私には国の名前も教えられないのが、町の名前までしっかり出ております。これはどう思われますか。今津副長官に聞いていないんですよ。私、大臣に聞いているんです。

今津副長官 私のことでございますので、私から御説明した方が明快にわかっていただけると思いますので、お許しをいただいて、私からお話しさせていただきます。

 今委員が言われましたとおり、私は副大臣になる前の自由民主党の国防部会長のときに、党として初めてでありますけれども、ゴラン高原、クウェートそしてインド洋、イラクにも行きたかったんですけれども、イラクの場合は治安の関係があってちょっと御迷惑をかけてはいけないということで、海外の自衛隊の方々の活動ぶりを視察し、そして激励する、そして今後の政策に反映する、こういう目的で玉沢元大臣などと勉強に行ってまいりました。そのことの内容が実は私のホームページに出ているわけでございまして、これは全く私が配慮が足りなかった、配慮が欠けていたということでございまして、今大臣がおっしゃったことがすべてでございまして、その配慮ができなかった私の責任でございまして、深くおわびを申し上げたいと思います。

大野国務大臣 今後、今津副長官にこういうことがないように、ひとつ厳重に注意をお願いします。

本多委員 この議論をしたときに、今津副長官もいたんですよ。そして、「どこに船がいるかとか、どういうふうに待っているかとかという作戦そのものが知られることで、行動そのものが狂ってしまう、こういうおそれがあるわけです。」とか、私が指名していないのに出てきて答弁されたその方が、いや、笑い事じゃないんですよ。シビリアンコントロールの議論、今ミサイル防衛の話でも大変大切になってきているときに、本当に隠さなきゃいけないことはあるかもしれません。しかし、こんな、副長官がホームページに載せているようなことを国会にも言えない、そんな中で私たちどうやって国会としての統制を発揮できるんでしょうか。本当にそこのところをしっかりと反省をしていただきたい。

 これはイラクでの復興支援活動もそうですし、きょうは時間がなくなりましたからできませんが、三年にわたって海上自衛隊をインド洋に派遣している問題、このオペレーションもだんだん減ってきているわけです。もちろん、いないよりいた方が役に立つのはわかるんです。これはイラクの復興支援でもそうです。

 しかし、スマトラの緊急支援は何かもう見きわめがついたといって、とっとと引き揚げるそうですけれども、物事というのはどこかで切りをつけて、ミッションを決めて、一定のところが来たら撤退をしていかなきゃいけないんです。こういうことをしっかりと情報公開しながら検討していただくことを強くお願いして、私からの質問を終わります。

船田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 かねがね政府は、サマワの自衛隊について、隊員の安全確保に万全を期す、このように言ってまいりました。そして、安全に活動を続けることが難しくなった場合、これは撤退の要件の一つになっています。そこで、サマワの治安の維持について聞いていきます。

 まず、オランダ政府は、昨年の十一月に、イラク南部サマワに駐留する軍部隊約千四百人を三月までに撤退させる方針を表明いたしました。これを受けて、一月二十七日、フーン英国防相は、英軍部隊約六百人を展開し、オランダ軍の治安任務を引き継ぐとの声明を発表しておりました。六百人にしていた根拠についても、治安情勢が安定し、イラク人部隊の訓練も進んでいる、こういうことでありました。

 ところが、この声明から一カ月もしない二月の二十二日、今度はオーストラリアのハワード首相が、イラク南部に四百五十人の部隊を増派することを明らかにいたしました。これによって、英国軍は派遣予定規模を百五十人に縮小する、それでオーストラリア軍と合わせて六百人規模となる見通し、このようになっています。

 突然イギリス軍の部隊が縮小されたのはどういうことでしょうか、外務大臣。

町村国務大臣 オランダ政府が、ことしの三月中旬に撤退をさせるという方針を昨年の十一月ごろ最終的に表明をしたところであります。この地域全体に責任を持っているイギリスは、オランダ撤退後のあり方について、多国籍軍の関係国といろいろな意見交換を行ってきた。日本もその一員としてイギリスと協議を行ってきたところであります。

 そういう中で、イギリスが、一月二十七日、今委員御指摘のとおり六百名を派遣するということを決定したわけでございますが、その協議の過程の中で、豪州派遣の可能性が出てきたということを踏まえまして、一月の末ごろと聞いておりますけれども、ストロー・イギリス外務大臣はダウナー・オーストラリア外務大臣に対して豪州軍の追加派遣を要請し、その後、英国政府から我が国政府に対しましても、日本からも豪州政府に対して部隊派遣を要請してもらえないかという依頼があったところであります。

 イギリス、日本、オーストラリア、三カ国でいろいろ協議をした上で、二月十八日に私からダウナー外相へ、続いて小泉総理からハワード首相に対して電話連絡を行いまして、今回の二月二十二日のオーストラリア政府の閣議において、そうした一連の経緯を踏まえた中からムサンナ県へ四百五十名の追加派遣を決定した、こういう一連の流れになっているところであります。

赤嶺委員 結果として英国軍の規模は縮小されたわけですね。それはなぜかということを私は聞いているわけです。

 イギリスの国内でも戦争への批判が強まっている、現状以上にイギリス軍の活動が拡大することへの反発は予想以上に強い、こういう報道もあります。オランダ軍からの任務引き継ぎを明らかにしたフーン国防相は、英国の下院で、英軍の展開規模が拡大するようなことはない、こう答弁しております。サマワに配置となると新たな規模の拡大が求められる、それは国内情勢からいっても英国は踏み切れない、このような背景があるんでしょうか。いかがですか、そのような背景については。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 イギリスの今般の六百名の派遣の発表の背景でございますが、先生御指摘のとおり、一月二十七日の英国防相の発表の中で、英国政府は、オランダ軍によるムサンナ県の安定確保及びイラク治安組織の能力向上の進展から、英軍の部隊勢力は六百名程度が適切であるという判断に基づいて、この六百名の展開を決めたというふうに承知しております。

 また、先ほど防衛庁の方からもお話がございましたが、装備等を含め、蘭軍と英軍の治安維持関係部隊の能力は同等になるというふうに承知いたしております。

赤嶺委員 今ちょっと答弁が違っているんですよ。私が申し上げたのは、当初、一月二十七日まではイギリス軍で六百人、こうしていたわけです。それが今百五十人になっているわけですよ。規模が縮小しているわけですよ。それは、イギリス国内において規模の拡大に対する反対の世論が強いため、そうではないかということを聞いているんです。外務大臣、いかがですか。

町村国務大臣 オーストラリア軍がこの治安維持活動に参加をするということになりますと、イラク南東部全体の多国籍師団をイギリスが統括をしているわけでありますから、運用面でより多くの柔軟性が持てる、イラク南東部における多国籍軍の治安維持能力全体が向上されるという判断がイギリス側にあった、こういう説明を私どもは受けております。

赤嶺委員 それでは、政府は、イギリス政府が一月の二十七日にオランダ軍の治安任務を引き継ぐとの声明を発表したときに、イギリス政府がオーストラリア軍を想定していた、そういう認識があったのでしょうか。

町村国務大臣 その時点では、ございません。

赤嶺委員 オーストラリアのヒル国防大臣は、オーストラリアのラジオ、2UEのインタビュー、これはオーストラリア政府のホームページに載っておりますが、こう言っているんですね。私は一月にカウンターパートであるフーン英国防相から話を持ちかけられた、このように述べているんです。

 そうすると、一月でもそういう話し合いが始まっているんですが、イギリス政府は一月二十七日には日本政府も知らないうちにああいう発表をした、こういうことになるんじゃないですか。いかがですか。

町村国務大臣 今委員が御指摘になった事実関係については、私は承知しておりませんので、コメントは差し控えます。

赤嶺委員 そうすると、オーストラリアとイギリス政府がどんな話し合いをしていたかということは、日本政府は御存じないわけですね。そういうことですね。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十一月、オランダ政府が本年三月中旬に蘭軍を撤退させるという方針を表明いたしました。その後、英国は、蘭軍撤退後のムサンナ県及び同県を含む英国が主たる責任を有しますイラク南東部地域全体の治安維持のあり方につきまして、多国籍軍の関係国と一般的な意見交換をさまざまな形で実施してきたということを我々は承知しております。

 その上で、英国は一月二十七日、御案内のような決定を行ったわけでございますけれども、我が国も英国とは一般的な形では、多国籍軍として一緒に活動をしておりますパートナーとして、意見交換等は行っているということでございます。

赤嶺委員 サマワにおける治安の維持、安全の確保というのは、撤退にかかわる非常に大事な中核をなす問題でありながら、そしてオランダ軍の撤退の後はイギリス軍が引き受けるというときに、実はイギリス軍はオーストラリアと交渉していた。こんな、余りにも場当たり的じゃないかと思いますが、こんな場当たり的なやり方で一体本当に安全確保できるんでしょうか。

町村国務大臣 約三十カ国の多国籍軍、その中にはお互いの信頼関係もあり、お互いの情報交換もあり、役割分担をしながらイラクの治安維持に努力をしているという状況があるわけでございまして、私どもとしては、今回の一連の経緯の中でそうしたお互いの関係が揺らぐことはない、こう認識をしているところであります。

 したがって、ムサンナ県における治安状況というものが、今回の決定によって何ら変わることはない。その背景には、先ほど大野長官が言われたような、地元の治安維持能力、地元の警察あるいは軍隊の治安維持能力が随分高くなってきたといった大きな背景があるということがまず基本にあるんだということであります。

 それと同時に、みずからの安全はみずから守る、そういう自衛隊の基本が当然あるということは言うまでもないことでございます。

赤嶺委員 イギリスから言われたオーストラリアの側の対応はどうだったか。四カ月前まではハワード首相は、総選挙の中で、イラクへの派兵はあり得ないということを言ってきたわけですから、突然の派兵に国民の間から厳しい世論が起こっている。同時に、肝心のオーストラリアの軍隊、今度の派遣部隊が選抜されるというオーストラリア軍の第一旅団、これの練度や装備に深刻な懸念があることがオーストラリア国内では指摘されております。

 オーストラリアのメディアは、部隊は戦う準備ができていない、それはそうですよ、突然言われたわけですからね、そういう見出しで、いろいろ彼らの能力、装備その他についてこう言っています。主要な分野での装備、弾薬、要員数の不足が、事態に対処するための部隊の即応レベルに影響を与えている場合がある。主要な分野での要員不足、幾つかの弾薬類の不足が、中核的な技術の習得に影響を与え続けている。

 オーストラリア国内のメディアはこのように、派遣されるオーストラリアの部隊についていろいろな議論が起きておりますが、そういう情報は政府はつかんでいたんでしょうか。そして、そういうことについての懸念はちゃんと確かめられているんですか。

町村国務大臣 それは、オーストラリアにも多分反政府的なメディアがあるんでしょう、日本と同じで。したがって、オーストラリアのメディアがいろいろなことを言うこともあるでしょう。

 だから、メディアの言っていることが全面的に正しいという前提に立って私は委員の意見に申し上げるつもりもございませんが、私どもは、今回のオーストラリア政府の決定というものは、イギリスを含む関係国と十分な調整を経た上で行われたものであるということ、そして、イラク南東部全体の治安維持に責任を持つイギリスからは、豪州軍はよく訓練されており、同軍が駐留し、英国軍と連携することによってムサンナ県における治安が十分に確保されると判断しているという連絡を受けているところでございます。

 日本としては、イギリスが豪州軍に寄せる信頼を完全に共有しております。日本が、カンボジアでの経験を含めて、豪州軍とは長きにわたり緊密な協力関係も持っているわけでございまして、そういう意味での日豪双方の良好な連携というものを構築できる、こう考えております。

赤嶺委員 反政府のメディアであるかどうかということは、まさにそういう情報が流れたときに、あなた方が自衛隊の安全確保の上で万全を期すと言うならば、きちんとあなた方が調べるべきじゃないですか。政府のそういう、オーストラリア軍について批判する、あれは反政府だから気にする必要はない、こんなことを言って、国民は納得すると思いますか。余りにも行き当たりばったりな治安維持の活動、そして有志連合との連携、本当にこれが政府の態度なのかということを指摘せざるを得ません。

 私も改めて、治安維持の万全について国民に納得ある説明ができない以上、直ちに自衛隊は撤退すべきであるということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

船田委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。質問させていただきます。

 国民議会選挙が終わりまして、外務省の報告では、駐留多国籍軍、イラク治安部隊と武装勢力の衝突、車爆弾、ロケット弾等によるテロ等の事案が発生しており、依然として予断は許さない状況である、こういう御報告でございます。また、自衛隊が派遣されておりますサマワにつきましては、予断は許さないものの、先ほど御答弁ございましたように、イラクの他の地域と比較してみると安定している状況にある、こういった説明でございますが、私は、状況はかなり変わってきた、刻一刻と変わっていると思うんですね。

 選挙が終わった。そしてサマワの状況も、先ほどから質疑されておりますように、やはりサマワの治安体制、さらには自衛隊を守る態勢、これらがまた変わってくるわけですね。オランダ軍の後にはイギリス軍、そしてオーストラリア軍、こういった形で警護されながら自衛隊活動をさらに続けようとされているわけですが、私は、状況が変わったならば、自衛隊の活動の支援のあり方もやはり変えていくべきではないかという気がしてならないわけでございます。

 先ほどからの質疑を聞いておりまして、改めて、イラクの復興支援が本当に自衛隊でなくてはできないことなのかという疑問が生じてきております。

 先ほどから説明がございましたように、給水活動は一応役割は終えつつある、そしてこれからは学校補修やあるいは道路整備に力を注ぐ。さらに、本多委員の話では、それ以外にも公園とか噴水とかスポーツ施設とか、こういったところにも自衛隊が支援して活動する。道路あるいは学校補修、今言った公園等々の問題はまさにイラク人の手でみずからできることであり、なぜそこにイラク人の力を発揮させるような態勢に我が国は持っていかないのか。そんなところまで自衛隊員の方々がなぜ命がけで支援する必要があるのか、私は非常に疑問に思うわけでございます。

 こういった分野はイラク人のみずからの手でできることでございますので、そういった意味で、私たちの国は五十億ドルという膨大な支援体制を組んでいるわけですから、ODA体制もあるんですから、そういったことを活用してこういった活動のあり方を方向転換すべきではないかという気がしてなりません。

 先般、二十四日に予算委員会の公聴会がございました。そこで、公述人としてアジア経済研究所の酒井啓子参事も出席して意見を述べられたんですね。私の質問に対して、これからの復興支援のあり方についてどういうお考えですかというと、こういう意見を述べられました。

 外国軍にしても外国企業にしても、そうしたものが中心になってイラク国内で活動するというのではなくて、むしろイラク国内にある企業なりイラク国内の組織を活用して、彼らに復興をゆだねるというようなやり方が一番効率的であり、かつ雇用対策になり、そして彼らのあすの復興への意欲を駆り立てるというようなことになるかと思います。現地のイラク企業を中心にした復興計画を改めて練り直すというようなことが必要になってくるかと思います。こういう御意見を述べられたんですね。非常に長い間イラクのことを知っている方の意見として、尊重しなきゃいけないと私は思うんです。

 そういった意味からして、私は、これまでのイラク派遣で自衛隊の活動、活躍は否定をするものではございませんが、要するに、今状況が変わった、少なくとも役割は終えつつあるのではないかという見地から、早急に撤退に向けたスケジュールを検討すべきであると考えておりますが、いかがでしょうか。

大野国務大臣 まず、ニーズの変化の問題があると思います。

 確かに、ニーズの変化があって、そして給水ということは必要がなくなった。しかし、道路にしても病院にしても、道路とか学校なんかはまだまだニーズがあるんですね。そのほかにということで先ほどから議論があるわけですけれども、そういうことがまさに民生の安定につながっていく、このことをどう考えていくかという問題があると思います。

 私は、オーストラリアのヒル国防大臣と話をいたしました。最近、四、五日前かな、話しましたけれども、オーストラリアの大臣は、まさに今こういう選挙が終わって目的地に近づこうとしているときに、日本の自衛隊の活動が一番大事になってくるんじゃないか、こういう発言がありました。また、昨年十二月に現地に行きましたときに、現地のハッサーニ知事からも、ぜひともいてくれ、そして活動を続けてほしいという要望がありました。こういうニーズをどう考えるか。先ほど、世論調査で、佐藤先生からいただきましたけれども、これを見ましても、自衛隊駐留がサマワの繁栄につながるか、イエス六七・四%。こういうことをどう思うのか。

 そしてまた、私たびたび申し上げているんですけれども、自衛隊の隊員が大変現地の共感を得ながら活動している。これはもうソフトパワーとして、中東と日本の間、あるいは日本とイラクとの間の関係をこれから未来にかけて良好なものに保っていく力になるんじゃないか。そういうソフトパワーをどういうふうにお考えになるのか。

 あるいは、若い自衛官が、自分はイラクの復興支援に携わった、これを何年かして思い出して誇りに思える、こういうことをどう思うか、いろいろな問題を考えていかなきゃいけないと思います。

 しかし、ニーズはまだある。そして、イラクのサマワは、先ほど来危ないところでこういう活動をさせていいんだろうかという疑問もありましたけれども、そこは、今回のオーストラリア、イギリス軍の駐留につきましては、現在の治安レベルを維持していけるだけの力を持ってくるんだ。そしてまた、自衛隊もそれぞれ安全確保に留意してやっておりますから、その辺をしっかり踏まえて、しかし、ニーズについては我々はきちっと調べながらやってまいりたいと思っております。

横光委員 今いろいろ述べられましたが、ニーズがあるということ、確かにニーズはそれはずっとありますよ。しかし、もう自衛隊でなくてもできるニーズもあるということ、そして、これまで自衛隊が活動したことは評価されているというお話がございましたし、それはそれで、これまでの活躍を私も否定しないと申し上げましたし、状況を見てやはり考えていくべきである。

 要するに、イラクの人たちに現地のイラクの企業を中心にした復興計画を世界は考えていかなければならないのではないかということを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

船田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十一分散会


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