衆議院

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第3号 平成18年4月17日(月曜日)

会議録本文へ
平成十八年四月十七日(月曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 三原 朝彦君

   理事 石破  茂君 理事 西村 康稔君

   理事 松浪健四郎君 理事 渡辺 具能君

   理事 伴野  豊君 理事 田端 正広君

      安次富 修君    石原 宏高君

      今津  寛君    宇野  治君

      江渡 聡徳君    越智 隆雄君

      大塚  拓君    金子善次郎君

      清水鴻一郎君    鈴木 馨祐君

      谷本 龍哉君    玉沢徳一郎君

      土井 真樹君    冨岡  勉君

      中根 一幸君    中森ふくよ君

      西本 勝子君    藤野真紀子君

      町村 信孝君    松本 洋平君

      御法川信英君    宮澤 洋一君

      矢野 隆司君    若宮 健嗣君

      後藤  斎君    神風 英男君

      田島 一成君    武正 公一君

      達増 拓也君    長島 昭久君

      古本伸一郎君    細野 豪志君

      山井 和則君    高木 陽介君

      谷口 和史君    赤嶺 政賢君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     安倍 晋三君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      額賀福志郎君

   防衛庁副長官       木村 太郎君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  井上 源三君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  樽井 澄夫君

   政府参考人

   (防衛庁防衛参事官)   西山 正徳君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛庁人事教育局長)  飯原 一樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 辻   優君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        田島 秀男君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月六日

 辞任         補欠選任

  野呂田芳成君     糸川 正晃君

同月十七日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     御法川信英君

  土井 真樹君     矢野 隆司君

  橋本  岳君     若宮 健嗣君

同日

 辞任         補欠選任

  御法川信英君     宇野  治君

  矢野 隆司君     土井 真樹君

  若宮 健嗣君     橋本  岳君

    ―――――――――――――

三月二日

 イラク多国籍軍からの自衛隊の撤退に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六七四号)

四月十一日

 自衛隊のイラク派遣打ち切りを求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一四八二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

三原委員長 これより会議を開きます。

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官井上源三君、内閣官房内閣審議官樽井澄夫君、防衛庁防衛参事官西山正徳君、防衛庁運用局長山崎信之郎君、防衛庁人事教育局長飯原一樹君、外務省大臣官房審議官遠藤善久君、外務省大臣官房参事官辻優君、外務省北米局長河相周夫君、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君及び外務省経済協力局長佐藤重和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三原委員長 この際、政府から説明を聴取いたします。防衛庁運用局長山崎信之郎君。

山崎政府参考人 政府から御報告を申し上げます。

 イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の部隊の最近の活動状況について御報告をいたします。

 現在、陸上自衛隊のイラク派遣部隊は、安全確保に十分配意しつつ、ムサンナ県内において学校補修、道路整備等を引き続き実施をしております。また、医療支援活動についても継続して実施をしております。

 ムサンナ県における全般的な治安状況は、イラクの他の地域に比較して安定している状況が続いております。

 三月二十八日以降のサマワ周辺の情勢については、主な事件は以下のとおりでございます。

 三月の二十九日、サマワ宿営地から相当程度離れた地点から砲弾が発射される事案があり、サマワ宿営地の外に一発着弾した可能性が高いと考えております。

 なお、本事案において現地部隊の人員に異状がないことを確認しております。

 航空自衛隊の部隊については、陸自のサマワ宿営地に近いタリル飛行場等イラク国内の飛行場に対しC130機による輸送を継続しており、派遣当初から本年四月十四日までの間に、総計二百九十九回、約四百四十二トンの輸送を行ったところでございます。

 以上でございます。

三原委員長 次に、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君。

吉川政府参考人 最近のイラク情勢に関し、御報告申し上げます。

 まず、政治プロセスにつきましては、昨年十二月十五日に行われました国民議会選挙の最終結果が二月の十日に発表され、三月十六日に国民議会の初会合が開催されました。目下、新政府発足に向けた各会派間の協議が精力的に行われており、今後、国民議会議長の選出、大統領の選出、首相の任命、閣僚の任命などが行われることになっております。

 我が国は、イラクが困難を乗り越え、互いに民族、宗派を尊重し合い、国民和解に基づいた安定した政府を早期に発足させることを期待しております。これまでも、小泉総理大臣を初めさまざまなレベルでイラク側に働きかけを行ってきましたが、四月四日には山口新駐イラク大使がタラバニ大統領と会談し、同様の働きかけを行ったところであります。

 イラクの治安情勢につきましては、地域により脅威の度合いは異なりますが、依然、予断を許さない状況が継続しております。

 他方、次のような前向きの動きも見られます。

 イラク治安部隊は、昨年一月に約十三万人でありましたが、四月五日現在、約二十五万人となり、NATOや各国の支援もあり、強化されております。

 多国籍軍に対する武装勢力による攻撃事件は、バグダッドを初めとする中部地域及び北部地域の一部に限定されてきております。

 なお、サマワの情勢につきましては、現地時間三月二十九日に、自営隊宿営地から相当程度離れた地点から砲弾が発射される事案が発生するなど予断は許さないものの、イラクの他の地域と比較して安定している状況に変化はありません。

 以上で報告を終わります。

三原委員長 これにて説明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

三原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浪健四郎君。

松浪(健四郎)委員 自由民主党の松浪健四郎でございます。

 最近のこの委員会に関するメディアの報道を見ておりますと、サマワから自衛隊をいつ撤退させるのか、どういう状況になれば撤退するのかというような議論を散見するわけでございますけれども、これから質疑に立たれる委員の皆さんはおおむねこれらについて御質問されるであろうと予想いたしまして、私は、やはりテロの問題、この原点はあの忌まわしい九・一一にあり、そこから米軍のアフガニスタン攻撃、これがあって始まった、こういうふうに認識しております。

 そして、アフガニスタンの攻撃は、結局、先進諸国が政治プロセスを踏まえて、大体支援活動が軌道に乗りつつある、このように私は認識しておりますし、その中核をなしたのは我が国であるという誇りもございます。すぐに東京で国際支援の閣僚級会議を開催したり、あるいはベルリンで会議を持って、我が国はドイツとともに議長国を務めました。さらには、ことしの一月の終わりには、ロンドンで復興支援のための会議がございました。このように、イラクと違って順調に推移をしておる、カルザイ大統領の指導力もさることながら、国会議員の選挙が新しい憲法のもとで開催されて、順調に推移しておる、こういうように私自身見ております。

 国会議員の中でアフガニスタンに住んだことのあるたった一人の国会議員として、私は、この国がどのようになっていくんだろうか、そしてこの国は、御案内のように、中国であるとかインドであるとか、パキスタン、イラン、こういった国々とも国境線を持ち、地政学的には極めて重要な国であることは他言をまつまでもございませんけれども、もしかしたならば、我々はこのアフガニスタンというのを忘れてはいないだろうか、こういう思いを持っております。

 しかし、政府は、または外務省当局は、この一月の復興支援会議において、四・五億ドルを出すということで、昨年まで約十億ドル拠出してまいりましたけれども、新たに四・五億ドルを出すということで、大変な協力をしておるわけであります。それで、この協力は一体いつまで続くんだろうか。

 そして、目には見えないけれども、ペルシャ湾に我が国の海上自衛隊が出て、そして、米軍の艦隊を初めとして多くの国々に給油をするという支援を行っております。そして、これらの支援も諸外国から高く評価されておるわけですけれども、国内では余り評価されていない。あるとき、私はドバイを訪れて、この給油活動に携わっている海上自衛隊の皆さんとお会いさせていただいたことがございますけれども、あの真っ黒に日焼けをされた自衛隊の皆さんの活動ぶりを見たときに、日本という国がこういう形で支援をしているんだというさまを我々国民は理解していないのではないんだろうか、そういう思いもいたしました。

 この支援を一体いつまで続けるんだろうか。アフガニスタンの我が国の支援というのは、どういうような状況になれば支援をやめるのか。サマワの撤退は、こういう状況になれば大体撤退していいのではないのか。もちろん、NGOを初めとしていろいろな形で支援をしていかなければならないだろうけれども、アフガニスタンの支援について我が国はどういうふうに考えているのかということをまず大臣にお尋ねしたい、こういうふうに思いますし、これは、ペルシャ湾の給油支援、これらも踏まえてお尋ねしたい、こういうふうに思います。

麻生国務大臣 アフガニスタンに対する御指摘をいただきましたのは、大変見識のある御質問だと思って、心から感謝を申し上げたいと存じます。

 まず最初に、いつ引き上げるかというお話に関しましては、これは松浪先生、一概に、こうなればというようなことを申し上げるような状況にはありません。

 ただ、今言われましたように、二〇〇二年の一月に十億ドルの支援を決めて最初にスタートさせていただいたんですが、それ以後、ことしの一月、ロンドン会議で、今御指摘のありましたように、約四億五千万ドルというものの追加支援をさせていただき、アフガニスタンに関する積極支援をさせていただいているのが現状なんですが、今、イラクと違ってここは、間違いなく新しい憲法、いわゆる国会を開会をして、政治機構のプロセスというものをきちんと一応終了いたした上で、また経済の面も見ましても、一応経済成長としては高い経済成長というものになってきているというような点は、私どもとしては評価をすべきところだと思っております。

 ただ、傍ら、治安の方はどうかというと、これは、カブール周辺はともかく、地方を見ますと、なかなかさようなわけにはいっていないのではないかという状況にあろうと思っております。

 したがって、非合法な武装集団のいわゆる武装解除、また、法律がきちんと支配するという法の支配というものの確立、また、GDPの七割とも八割とも言われる、麻薬によります利益というものに頼っているという、麻薬の生産、売買等々に頼っている面が多く見られるという点を考えますと、課題は山積しておると思っております。少なくとも、それがGDPの何十%かになるという話になりますと、これはなかなか、ほかに確たる産業もない、いろいろな理由があろうとは思いますけれども、ここの復興支援というものに関しましては、生半可なことではなかなかいかないという状況にあることもまた確かだと思っております。

 したがって、復興支援というものを考えました場合に関しましては、全然治安の話とは別に復興支援のプロジェクトというものを考えないと、なかなか事は進まないであろうと思っております。今、終了時期の話に出ておりましたけれども、テロの掃討作戦というのが、少なくとも、遅々として進まないというわけじゃなくて、遅々として進んでいる程度のところまでは来ておると思っております。

 また、私どもとして、国際社会の中で、テロとの闘いということで、それの一環として私どもインド洋におけます給油等々に参加しているわけですけれども、こういったいろいろな面がありますので、今この段階で、どれが一つでも片づいたら撤退できるのかと言われると、なかなかちょっとお答えのしにくいところではありますので、治安の問題、経済復興の問題等々いろいろなものを総合的に勘案した上でと思っておりますが、治安の部分というのはかなり大きな要素を占める部分で、依然として治安の部分が大きな要素を占めているということは事実だと考えております。

松浪(健四郎)委員 とにかく、簡単には支援は打ち切らないというお話をお聞きして安心をいたしましたし、私たちは、あの貧しい国を見捨てることなく、イスラムの国であるというだけにとどまらず、ずっと友好国であったということも忘れることはできない、このように思います。

 いずれにいたしましても、テロの温床になった、そして、悲しいかな、今もその残党がアフガニスタンにいるのではないのか。二日前、南部で四十数名の国軍兵士がアルカイダの残党を殺害し、こちら側も六人の犠牲者が出たという報道がありました。タリバンがまだ暗躍しておる、アルカイダも残っておる。そこへ持ってきて、かつてヘズビ・イスラミというイスラム党の党首であったヘクマチャール氏の率いる一派も武装闘争を展開しておる。こういうふうに言われ、大臣が先ほど仰せになられたとおり、治安は安定していない。とりわけ、東部から南部にかけてまだまだ厳しい。そして、これらのテロリスト集団と言っていいのかもしれませんけれども、こういう勢力が我が国にも影響を与えるというようなことがあってはならない。

 そこで、平成十六年十二月の十日、国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部が幾つかの行動計画を発表されました。まず、テロリストを入国させないための対策の強化をする、テロリストを自由に活動させないための対策の強化、テロに使用されるおそれのある物質の管理の強化、テロ資金を封じるための対策の強化、重要施設等の安全を高めるための対策の強化、テロリスト等に関する情報収集能力の強化等、これらを決定していただいて、そして、関係省庁におかれましてはこれらのことについて徹底をされている、こうお聞きしておるわけでございますけれども、とにかく、対岸の火事ではなくて、我が国も国際テロリストの標的になるおそれがあるということで、気を緩めることなく、いろいろな形でテロ防止のために御努力賜りたい、まずこういうことをもお願いしておきたいと思います。

 そこで、アフガニスタンの風土、地形というのは、住んだ者でなければなかなかわからない、まず想像を絶する風土であり地形であると言っても過言ではございません。それゆえに、タリバンのトップにおったオマール師もいまだどうなっているのかわからない。そして、アルカイダのトップであるオサマ・ビンラディンの行方も、散発的に報道はされますけれども、いまだどこにいるのか、皆目、あのアメリカ軍の捜索をもってしてでも何の情報もつかめない、こういうふうに言われております。

 私自身、衝撃を受けたことがございました。私は、七五年から七八年、アフガニスタンのカブール大学で体育の授業とレスリングと体育学を教えました。また、アフガニスタンのレスリングのナショナルチームにレスリングを指導いたしましたけれども、あるとき、アルカイダの軍事訓練のさまを見ておって驚いたのであります。アルカイダの兵士たちのやっておる体操は、間違いなく私が教えたやり方でやっておったことに驚いたのであります。その意味において、アルカイダの兵の強化の一端を担ったということを私は残念に思っております。

 いずれにいたしましても、行方が知れない。アルカイダのこのオサマ・ビンラディンやタリバンのオマール、ともに行動しているのではないのか、こういうふうにも言われておりますけれども、我が国政府はそれらの状況等についてはどういうふうに把握されておるのか、お尋ねしたいと思います。

麻生国務大臣 オサマ・ビンラディンのその後の捜索内容ということが主たる御質問ですか。(松浪(健四郎)委員「そうです」と呼ぶ)

 御存じのように、このオサマ・ビンラディンの件に関しましては、これは、御存じのオマール師を含めて、両方とも依然として生死のほどは確認されておりません。これはもう御存じのとおりです。

 そこで、今、例の同時多発テロ、九月十一日以降の話ですけれども、このアルカイダ並びにタリバンの掃討作戦というのを、不朽の自由作戦ということでずっとこれまで約四年半にわたりまして継続をいたしております。アフガニスタン並びにパキスタンの国境のパシュトゥン語のあの辺のところが主に実施されているんですが、これはそれなりの成果は上げておると思っております。事実、あの辺の治安はそんなにかつてほどむちゃくちゃではなくなってきておるとも思っております。しかし、とにかくこのアルカイダ、タリバンの一派というか、その関係者というものは各地に分散をしておりまして、御指摘のとおり、南部の方から東部の方にかけまして、明らかに山岳部においてはなかなか掃討は難しいという地形にもありますので、テロとの闘いは依然継続をいたしておると思っております。

 また、この活動を把握するのはしたがって容易ではないんですが、少なくとも、肉声と思われる、いわゆるテープレコーダーで存在をアピールしてみたりしておるのも事実ですし、ことし一月にはオサマ・ビンラディンの肉声というものが新たにテープで流されておりますのも御存じのとおりです。そういった意味では、タリバンの最高指導者でありますオマールの方も同様に、かすれがすれの声ではありましたけれども、お聞きになったと思いますが、肉声で発声をしておりますので、そういった意味で、いずれも、米軍として、また掃討軍としては、両名の生死を確認したとか捕獲したとかいうような話は私どもの方にも入ってきているところではありません。

 したがいまして、この話は、少なくとも、首謀者と思われる二人という者の生死、存在が不明確という状況にありますし、事実、いろいろな形で散発的とはいえ肉声が出されてきておるという状況は、何らかの形で地下活動が継続されていると判断すべきだと思っておりますので、根気強く対策を継続していかねばならぬものだと思っております。

松浪(健四郎)委員 とにかく、オサマ・ビンラディン、オマール、これを逮捕するなりしなければ、国際テロのこの問題の原点だと思いますので、解決しないのではないのか、こういうふうに思っておりますので、その捜索のためにも我が国も協力すべきだ、こういうふうに思います。

 それで、今は東ヨーロッパあたりでは大変麻薬が入ってきておる、おおむねこの麻薬はアフガニスタン製だ、こう言われているそうでありますけれども、世界でつくられているケシの花の八割はアフガニスタンだ、こういうふうにも言われております。そして、アフガニスタンの地形がわかれば、どんなに政府は強固な手をもって取り締まったとしても、なかなか取り締まることができないほど複雑怪奇な地形であります。ですから、撲滅させるのは大変なことだということは私はだれよりも承知する者でありますけれども、しかし、我が国政府は麻薬を撲滅するために積極的に支援をしてまいりました。

 同時に、この麻薬だけにとどまらず、もう一つ国民の心配しておることは、一千万個以上と言われる地雷除去の問題等であります。我が国政府はこのことにも積極的に関与し、支援をし、また国連を通じて金銭的な支援もするというように、積極的にかかわってきたこと、これは高く評価されなければならないわけであります。

 時間がございませんので具体的にお尋ねすることはできませんけれども、この麻薬撲滅のために、または地雷除去のためにどのような対策を我が国政府として講じているのか、お尋ねしたいと思います。

麻生国務大臣 まず麻薬の方でありますけれども、UNODC、国連薬物犯罪事務所の二〇〇五年の統計によりますと、アフガニスタン中央政府並びに地方政府によって行われましたいわゆる麻薬の撲滅運動によって、ケシ畑約五千百ヘクタールが減少ということになっております。アヘンの生産はそのおかげで二・四%前年より減ってはおりますけれども、依然、世界のアヘン、いわゆる麻薬の供給の八七%はアフガニスタン製と言われております。したがいまして、多額の収入というものがありますので、これがアフガニスタン政府のGDPに占める比率は約五割と言われております。これは裏の話もありますので、ちょっと正確な数字と言われると難しいところです。

 しかし、この出されております先が、アフガニスタンから欧州へ向けて行っておりますので、欧州の方はこれは極めて深刻な問題でして、今、イギリスが主たる中心となっていろいろ対策をということで、日本はそれに対して、いわゆるこのケシの実にかわる、金目になる代替生産物を、何か生産する手段を農民なりアフガニスタン国民に教えない限りは、これはほかに食っていくものがないからということも考えて、代替製品というものを考えるというのが大事なところだということで、そういった意味での資金協力として六百五十万ドルを支援。

 また、武装解除というので、日本でいえば刀狩りみたいなものですけれども、武装解除というもので、この麻薬対策の環境整備とあわせまして、治安の改善というものがないとどうにもなりませんので、その点の援助をいたしております。

 また、ケシの実栽培にかわります代替生産手段の側面ということで、今はいろいろソバの畑やら、あそこはソバの花の色も違いますし、いろいろな形のものがありますので、そういった意味で私どもとしては積極的に取り組んでおるのが今申し上げられるところであります。

 地雷の方に関しましては、アフガニスタン地雷対策において既に六千百万ドルの支援を実施してきておりますが、これは、少なくとも地雷というのは極めて非人道的な話で、どれだけ埋められておるかわからぬみたいなぐらいに埋められておりますので、そういったものでは、これはかなり時間のかかる話でありますけれども、かなりの機械を投入し、新しい地雷を発見する機械も日本でいろいろつくってみたり、また、それを除去する新しい機械を日本で開発してみたり、いろいろなものを私どもとしては、人力だけではとてもではありませんので、機械でという話を今主にさせていただきながら、いろいろな形で地雷対策というものに関しまして、アフガニスタンの復興支援にこれは欠かせないものだと思っておりますので、その面に関しての協力もいたしておるというのが実情であります。

松浪(健四郎)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、これからもアフガニスタンに十分な支援をお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

三原委員長 次に、谷口和史君。

谷口(和)委員 公明党の谷口和史でございます。

 当初は質問する予定にはしておらなかったんですけれども、週末にかけまして、さまざまなイラクからの自衛隊の撤収にかかわる報道が出ておりますので、国民の関心の高い問題でもありますし、報道の内容がそれぞれ異なっているということもあり、まず冒頭お伺いをしておきたいと思います。

 例えば産経新聞は、「イラク撤収 次期政権で」ということで、南部サマワに駐留する陸上自衛隊の撤収をこの秋に先送りする方針を固めた、防衛庁が近く小泉首相に報告をするという報道があったり、それから毎日新聞は、イラクの状況を見きわめながら、第十次群による六月から七月中の撤退を模索するというような、こういうお話が出ております。

 先ほども言いましたように、イラクの撤収に関しては、国民の関心も高い問題でありますので、冒頭、政府の検討状況をお伺いしておきたいと思います。

麻生国務大臣 今、その新聞、両方とも余り読んでおりませんので。この種の話は、余り読むと妙な話が先についていることが多いので、私どもは努めて新聞は読まないように心がけております。正直申し上げて、今の新聞を読んだわけではありません。

 ただ、今お話のあっているところでいきますと、私どもの立場としては、今の状況というのは、実は、きょうイラクでは第二回の国会が開会される予定でした。実は、先月の三月の十三日に最初は開かれる予定だったんですが、電話をしたら、いきなり十九日になる、あけてみたら十六日になった。三日早くなった、よかったと思ったら、三十分したら即閉めたという話ですから。それから今日までまた一月ずっと国会が開かれないまま来て、きょう開かれるという予定と聞いておりましたが、きょうはなくなったというような状況が続いております。

 なぜそのようなことを申し上げるかというと、選挙をやって、しかも憲法を決めた上で、その憲法に基づいた上で選挙を正式にやって、選ばれた国会議員によって政権が組閣される、日本だと大体一月ぐらいですぐそういうことになるんですが、とにかく、終わりましてから一月、二月、三月、四月、ほぼ四カ月たって全くという状況が続いております。

 私どもに限らず各国は、これは、イラクの復興支援、イラクの人道復興支援を主たる目的としてイラクに派遣をいたしております。したがって、その派遣をされている人たちを撤退させるに当たっては、少なくともイラクの新しい政権ができて、その政権から結構ですと言われるなり、また治安状況が回復するなり、また、今は治安部隊がかつての十三万人から二十四万人ぐらいにまでふえておりますので、治安部隊というものが確実に整備されつつあるとはいえ、極めて基盤は弱い。また、御存じのように、経済状態等々をいろいろ私ども複合的に考えないと何とも言えませんというのが正直なところです。

 したがいまして、今の段階で復興をどうしていくか等々を考えることも必要ですが、少なくともイラクから自衛隊を撤収できるような今は状況にあるだろうかといえば、相手国からは、まだ何も正式にスタートしておりませんので、何とも私どもとしては、この政権がまずできて、治安に関する権限が移譲されて等々いろいろなことを考えた上、今は、英国、豪州、三国で主たる業務をしておる関係もありますので、その三カ国との関係というものも十分に勘案しなけりゃならぬ等々、いろいろなものを総合的に考えた上で判断しなければならぬという状況にあります。

 したがって、今言われたような話を、こういったらこうなるという、それはシミュレーションはいろいろございますけれども、どれ一つとしてこれでいこうということを決めたという事実はございません。

谷口(和)委員 突然の質問にありがとうございます。

 私自身は、撤退の時期がいつになるかということは別としまして、今後は、この撤退問題というのはそのほかの復興支援とセットでしっかりと考えていかなければいけない、こういうふうに思っております。

 今後のイラクにおける復興支援、そして、日本がこれから行う国際貢献について何点か質問をさせていただきたいと思います。

 二年前になりますけれども、我が党の神崎代表が平成十六年の一月の本会議でイラクの復興支援について質問をいたしました。その折に小泉総理からも前向きな御答弁がありましたが、その後の進捗状況また対応について、再確認という意味で質問させていただきたいと思います。

 我が党は、これまで一貫して人間の安全保障を外交の柱に位置づけて、行動する平和主義の立場から復興支援を行ってまいりました。今後も、一国主義にとどまらず、自衛隊による人的貢献とODAによる支援、これを車の両輪として復興支援、国際貢献に取り組んでいきたいというふうに思っております。

 そこでまず、現在までのイラクにおける復興支援のあり方、取り組みについて防衛庁長官としてどう評価をされているのか、お伺いをしたいと思います。

額賀国務大臣 もう委員御承知のとおり、二年余り自衛隊が、道路の整備だとか、学校の修復だとか、医療の整備だとか、さまざまな分野で人道復興支援活動をしてきて、それなりの評価をされているものと思っております。

 また、実際に現地においては、乳幼児の死亡率が三分の一に減ったとか、効果も上げているわけでございまして、その実績を踏まえて、我々は、それをイラクの自律的な経済活動、社会活動にどういうふうに結びつけていくかがこれからの焦点だというふうに思っておるわけでございまして、これが、言ってみれば、自衛隊以降のNGOだとかあるいは民間企業、あるいはその過程でどういう支援活動ができるのか。そういうことをしっかりと考えていかないと、これまで自衛隊が残してきた実績の評価がマイナスになるようなことがあってはいけない。むしろそれが、発展の土台として営々と語り伝えられていくような形で復興支援活動が展開されていくことが望ましい。その環境づくりをぜひ政府を挙げて取り組んでいく必要があるのではないか。

 もちろんそれは、イラク政府の状況の進展にもよることになるわけでございますが、そういう考え方で我々はこれまでの実績をさらに伸ばしていくことができればいいというふうに思っております。

谷口(和)委員 今長官もおっしゃられたとおり、日本の自衛隊は本当によく頑張ってくださっているというふうに思います。現地のサマワの方々からも高い評価を得られていると思います。

 先ほど言及がありましたように、これまで日本の自衛隊は、学校補修、これにより県内の全学校の三分の一に施設が十分に整備されて、全生徒の三〇%がきちっと教育を受けられるようになることができたとか、それから、給水インフラ整備では、延べ約一千二百万人分の給水を実施している等々、さまざまな実績がございます。

 先ほど少し言及がございましたけれども、今後、活動の中で、これまで自衛隊の方々が築いてこられた財産をどう生かしていくのか、また、これをどう現地の方々に伝えていくのか、防衛庁長官の見解をお伺いしたいというふうに思います。

額賀国務大臣 今までの活動の中においても、自衛隊自身が一から十まで全部やってのけるわけではなくて、自衛隊は、現地の人たちのニーズをどういうふうに掘り起こすのか、あるいは行政とどういうふうに連携をして仕事をしていくのか、あるいはまた、民間の企業なり民間のボランティアの皆さん方に、どういう手法で、どういうやり方で仕事を行っていくかというノウハウを教えながら一つ一つの仕事を展開してきた。

 その実績、効果というものが着実に私はイラク人の中に定着しつつあるものと思っておりますので、そういうものが、我々の、言ってみれば、外務省主導でやっているODA活動等々に結びついて、イラク自身がみずからの力によってニーズを掘り起こし、仕事ができるような環境づくりをしていく必要がある。その経済的な支援だとかあるいはまた治安の支援だとか、政府あるいはまた国際社会がそういう形をお互いに連携してやっていくことが大事なのではないか。

 その意味では、国連の活動の割合というのが強まっていくのではないかという思いがいたします。

谷口(和)委員 次に、イラクの雇用についてお伺いをしたいと思います。

 我が党は、雇用対策の一つとして、メソポタミア湿原の回復事業に力をずっとこれまで入れてまいりました。先月も、このイラク南部湿原の保全のための環境適正技術を導入するプロジェクトがありまして、このチームのメンバー、イラク政府関係者十三名の方が日本に来られて研修を受けられて、その際に懇談をさせていただく機会がございました。

 その折、政府関係者の方々から、ぜひともメソポタミア南部湿原の保全にさらに力をかしていただきたい、それにより日本の技術を学ぶことができ、イラクにとっても雇用の促進につながる、こういった発言がございました。

 このようにメソポタミア湿原については、イラク政府の関係者からも大きな期待それから関心もあり、以前、小泉首相からも、メソポタミア湿原については、イラク側とも調整の上、関係国際機関とも提携しながら、可能な支援のあり方について積極的に検討してまいりたいとの御答弁もございましたが、外務大臣に、今後の展開それから対応について御所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 このメソポタミアの大湿原の復興の件につきましては、御指摘のありましたとおりに、国連イラク復興信託基金というのを通じまして一千百万ドルという金額を国連環境計画というものに拠出いたしまして、平成十六年から昨年末までにいわゆるメソポタミア湿原環境保全事業というのを実施してきております。

 今言われましたように、それが雇用の面でというお話でしたけれども、JICAの研修事業の一環として、イラクの関係者計十三名に対して湿地環境保全に関する研修を実施したりもいたしております。

 この事業というのは、大阪と滋賀県に事務所が置いてあります国際環境技術センターというのがあるんですが、ここのところが主な実施機関ということになっております。これまで、湿原のいわゆる水質の管理とか、衛生分野の技術研修、また、湿原情報ネットワークの構築というような話をきちんとつくり上げていきませんと、一カ所だけでやっても、全体の話ですのでなかなかうまくいかないということで、イラクの人たちやら、またイラクの政府等々の協力も得てこれをさせていただいているんです。最初、全く海のものとも山のものともつかぬ話からスタートしたんですが、それなりに形が今でき上がりつつあるというように理解をいたしておりますし、現実に、この種のことに詳しい環境団体の方からも高い評価をいただいているものと思います。

 JICAによります関係者に聞きまして、今申し上げたとおりなんですが、平成十八年度におきましても、国際環境技術センターに対して百万ドルの拠出をさらに行って、技術研修を継続させて、さらなる発展、進展をさせていきたいと考えております。

谷口(和)委員 ありがとうございます。メソポタミアについては、私も懇談させていただいた折、現地の方々からももっと本当に力を入れてほしいというお話が改めてありましたので、今後ともさらに力を入れていただけますようお願いを申し上げます。

 もう時間がありませんので最後の質問になりますけれども、公明党は、これまで、国際人道支援について迅速に対応できる体制を構築すべきだということをずっと訴えてまいりました。日本がこれまで行ってきた人道復興支援の実績といたしましては、国連平和維持活動、そして人道的な国際救援活動、国際的な選挙監視活動、物資協力などさまざまなものがありますけれども、国際社会の中で日本ができる人道支援について、また、国連の中で日本ができることについてお伺いをしておきたいと思います。

 例えば、従来から公明党が訴えております国連待機制度への自衛隊の参加についてでありますけれども、これは、国連PKOの即応性を強化する措置としてこの国連待機制度というのは一九九四年に設置されて、国連加盟国が一定期間内に提供可能な要員の種類、数などを国連側にあらかじめ報告しておき、実際に展開が必要となった場合、国連がこれに基づき各国に要請する、こういう制度であります。

 確かに、日本のPKOは、自衛隊法上の主な任務ではなく、割ける要員も限られる、また、事前申告をしなくてもPKOには参加できる、こういった理由で参加をしてこなかったわけですけれども、小泉首相は、「国際社会の平和と安定のための自衛隊の活動のあり方について現在検討しているところであり、国連待機制度への参加についてもその一環として検討していきたい」という御答弁をされております。ただ、現在においてもこの制度への参加の見通しは立っておらず、その後の対応、進みぐあいについては未定の段階であります。

 そのことも踏まえて、今後の日本の役割について、外務大臣の御見解をお伺いしておきたいと思います。

麻生国務大臣 今、国連のPKOの参加につきましては、たしか二〇〇四年の六月まで東ティモールに行っておりましたし、また、一九九六年以降、ゴラン高原というところで自衛隊の輸送部隊等々が派遣をされておりまして、いわゆる日本の国連のPKOへの参加、派遣というものにつきましては、高い評価をちょうだいしているものと思っております。

 政府としては、この自衛隊の、国際社会の平和と安全とか安定とかいうものに、今後ともその活動を検討するに当たりまして、平成十七年度以降に係る防衛計画の大綱というものを決めさせていただいておりますが、自衛隊が国際平和協力活動というものに取り組むための措置、対応として、各種基盤というのを、いろいろな基盤というのを確立しなきゃいかぬということで、いわゆる措置を検討せにゃいかぬということだと思っております。

 したがって、国連待機制度というものに関しまして、この参加についてもその一環として検討していくべきものだと私どもも考えております。

 いずれにいたしましても、この国連の平和維持活動というのは、従来とはまた違った意味で重要性を増してきておるというのは事実だと思っております。冷戦崩壊後の方がいろいろな地域におけます小さな紛争というものの発生度合いというのは頻度を増しておるというような感じもいたしますので、それを事前に予防するための方法とか、終わった後あれを復興させるためにどうするかとか、いろいろな意味で従来とは違った意味のものが今国連に求められている内容だとも思っておりますので、日本としては、国連というものの中におります一員として、どういった形で国際平和というものの秩序の維持に貢献できるか。それは、かかって日本の国益にも回り回って戻ってくるところでもありますので、私どもとしては真剣に検討していかねばならぬ問題だと考えております。

谷口(和)委員 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

三原委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 きょうは、冒頭十五分、安倍官房長官にお時間をちょうだいいたしましたので、早速質問に入りたいというふうに思います。

 きょうは、一般法、恒久法の進捗状況についてお伺いをしたいと思っているんですが、その前に、時間切れになると残念ですので、もう一つの課題について最初に、冒頭にお伺いしたいと思いますが、それは、集団的自衛権の行使に関する問題であります。これは、恒久法の議論を詰めていくと最後はその問題にも突き当たっていくのかな、こう思っておりますので、きょうは、政治家安倍晋三さんの率直な御意見を伺いたいというふうに思います。

 五年前に小泉総理が就任をなさった直後に、初めての記者会見で小泉総理は、集団的自衛権の行使について、「今後、あらゆる事態について研究してみる必要がある」あるいは「研究してみる余地がある、」このように明言されまして、これまでの政府解釈の修正の可能性も示唆されたわけです。

 その例として、「もし、日本近海で、日米が一緒に共同訓練なり共同活動をして、その時に、一緒に共同活動をした米軍が攻撃を受けた場合、よその国の領土でも、領空でもない、領海でもない。でも、米軍が攻撃を受けた場合に、日本が何もしないということは果たして本当にそんなことができるんだろうか。」このように疑問を呈されたわけです。私は、これは極めて正当な疑問であり、総理大臣としては非常に重大な一つの見方を示された、勇気ある発言だというふうに思っております。

 さて、五年たちました。総理がおっしゃったこの集団的自衛権の行使に関する研究のその後の成果あるいはその研究について、安倍官房長官はどのように認識をされているか、まず見解を賜りたいと思います。

安倍国務大臣 まず、政府の集団的自衛権の行使に関する考え方は、もうこれは委員よく御承知のように、憲法第九条のもとにおいて許される自衛権の行使は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に、武力攻撃から我が国を防衛するための必要最小限度のものに限られるという解釈でありました。集団的自衛権は、我が国に対する武力攻撃に対処するものではなく、他国に加えられた武力攻撃を武力で阻止することを内容とするものでございますので、権限としては有しているわけでありますが、行使は許されていないというのが政府の解釈でございます。

 そこで、ただいま委員が御紹介されました、総理の就任の際の記者会見のこれは総理からのコメントでございますが、これは、総理が、例えばこれは公海上において自衛艦とあるいは米国の艦艇が一緒に併走していて、米国の艦艇に対する攻撃があったときに、集団的自衛権の行使に当たるからといって自衛隊の艦船が全く救援しないことが果たして本当にできるのであろうかという疑問を呈示された。これは、恐らく一般の国民の皆様も共有するであろう、極めて素朴な疑問なんだろう、このように思うわけであります。

 また、BMDの議論の際には、ある国から日本の上空を飛んで米国に向かっているミサイル、これをもし我が国が落とすことのできる能力を持っていたとしても、それを落とすという場合には果たして集団的な自衛権の行使に当たるのだろうか、こういう議論もあるわけでございます。

 この研究ということにつきましては、これはやはり、国民的な議論が高まる中でなければなかなかこの研究そのものも難しいということもございますし、これは、現在のところ、この問題については極めて微妙な問題でもございます。

 基本的には、今までの政府の解釈を私どもはそれぞれの委員会で申し上げてきているところでございます。

長島(昭)委員 確かに国民的議論というのが必要だというのはよくわかるんですが、ぜひ、国民的人気のある安倍官房長官がこういう問題にきちっと取り組んでいただきたい、こういうように思います。

 官房長官御自身が、〇四年の一月二十六日の衆議院の予算委員会の質疑の中で、岸内閣のときの政府答弁、これは五九年、六〇年と繰り返されているんですが、その答弁を引き合いに出されて一つの重要な問題提起をされたんですね。憲法が要請する、先ほどおっしゃいました八一年の政府見解ですが、必要最小限度を超えない範囲、政府は、必要最小限度を超えない武力行使しか、つまり自衛権の行使として認めないんだ、こういう憲法の要請があるわけですが、その要請している必要最小限度を超えない範囲で、もしかしたら集団的自衛権を行使し得る可能性があるんではないか、そういうことを研究し得る余地があるのではないかと当時の秋山法制局長官に迫っておられました。

 私、ちょうどその場に委員としておりましたので鮮明に覚えているんですが、この問題関心には安倍長官はお変わりありませんか。

安倍国務大臣 当時は、私は幹事長という立場で総理あるいはまた法制局に質問をしたわけでありますが、当時の私の疑問としては、集団的自衛権を権利は持っているけれども行使をできない、その行使は必要最小限の範囲を超えるものである、つまり、絶対観念としてそのものがだめということではなくて、量的観念としてそれを超えてはいけないということであれば、それは行使できる集団的自衛権もあるのではないか、そういう観点から質問をしたということでございます。

 そういう意味においての研究というのも、これはまた議論というのも当然私は今でもなされてしかるべきであろう、このように思っているわけでありますが、政府の立場としては、基本的に今までの答弁は、いわゆる武力行使そのものは、これは、集団的自衛権の行使、つまり、武力行使としての集団的自衛権の行使はこれは認められないということだと思います。

長島(昭)委員 ぜひ私は、ここは与野党超えて議論を深めていきたい、こういうふうに思っているんですね。

 せっかくですから、その岸総理の答弁を御紹介したいと思うんですが、これは一九六〇年の三月三十一日、参議院の予算委員会での答弁。いわゆる集団的自衛権というものの本体として考えられている締約国や、特別に密接な関係にある国が武力攻撃された場合に、その国まで出かけていってその国を防衛するという意味における集団的自衛権は、日本の憲法上持っていない、こういうふうに極めて限定的に集団的自衛権というものを理解して、認識をして、それ以外の分類についてあり得るのではないかということを示唆されているんですね。

 その前年の三月十六日、これも参議院の予算委員会ですけれども、林法制局長官が答弁されています。同じようなトーンです。外国の領土に、外国を援助するために武力行使を行うということの点だけに絞って集団的自衛権ということが憲法上認められるかどうかということを言われれば、それは今の日本の憲法に認められている自衛権の範囲には入らない、こういうことなんですね。

 さらに、岸総理はこういうこともおっしゃっています。六〇年三月三十一日の質疑ですが、一切の集団的自衛権を持たない、こう憲法上持たないということは私は言い過ぎだ、かように考えております、こういうふうに述べておられるんですね。

 あの八一年以来、私たちは、もうさんざんこの国会の審議の積み重ねの中で、集団的自衛権というのは、一括してそれは国際法上保有しているけれども憲法上行使できないんだということをずっと聞かされてきたんですが、私は、この五九年、六〇年の総理あるいは法制局長官の答弁というのは非常にフレッシュな感覚を持っていたし、先ほど安倍長官もおっしゃったように、今、国民の皆さんの常識から考えても、あるいは日米同盟関係の重要性から考えても、こういう問題について何となく腰が引けたような政府解釈を重ねていくということは余り好ましいことではないと思うんですが、もう一度、問題関心も含めて、安倍長官の御見解をいただきたいというふうに思います。

 なぜかというと、安倍長官は、九九年のガイドラインの審議のときに、当時の高村外務大臣に対して、昔は政治家も、総理大臣もはっきりこうやって答弁しているんだ、だからあなたも政治家として答弁してほしい、こういうふうにおっしゃっているんですね。ですから、この場で、長官もお立場はあると思いますけれども、ぜひはっきりした答弁をいただきたいと思います。

安倍国務大臣 確かに、今委員が御指摘になられましたように、八一年の稲葉誠一議員に対する答弁書、昭和五十六年の答弁書でありますが、それ以降、その答弁書に従って政府は基本的に答えてきております。もちろん、政府としては、一貫してこの政府の立場は変わっていないという立場でありますが、具体的な答弁としては、この稲葉誠一議員に対する答弁書をその後はずっとこれは引用した形になっているんだろうと思います。

 ただいま委員が御指摘になられましたように、そういう中において、かつては政府はこういう答弁をしていたということで、当時の岸総理の答弁を紹介し、また、当時は法制局長官ではなく総理自身が答えていたではないかということで、私も質問で例として申し上げたわけでございます。我々政治家として、例えば、自衛隊の諸君をPKO活動あるいは海外での活動に送り出す以上、間違っても憲法に反する行為ということになるようになってはならないわけでありますし、そう疑われる行為になるようになってはならない、これは我々の責任でもあるんだろう、こう思うわけであります。

 そこで、日本としては、権利はあるけれども行使できないという、世界でも極めて珍しいこれは立場をとっている中において、国際社会において、ほかの派遣された軍隊の人たちと一緒に行動していくときに問題が起こるようになってはならないし、また、自衛隊の諸君がこの進退が窮することになってはならないというふうに考えるわけであります。

 その意味におきまして、時代はどんどん進んでいくわけでありまして、時代が進んでいく中においてこの時代の状況も変わっていきますし、例えば武器そのものの進歩が、かなり大きく概念が、例えば戦争の概念が大きく変わるということもあるわけでありまして、そこでの解釈等については、やはり基本的にはわかりやすいものでなければならないんだろうというのが私の基本的な考え方ではあるわけであります。

 しかし、現在のところ、今私が申し上げましたように、この集団的自衛権の行使につきましては、従来からのこの答弁を小泉内閣におきましても申し上げてまいるとおりでございます。

長島(昭)委員 官房長官、そこまでですか。私は、ぜひこれは一緒に考えていきたいと思っているんですよ。

 先ほどの岸総理の答弁をずっと見ていくと、集団的自衛権というものの中核概念というものが浮かび上がってくるんですね。これは、安倍長官も以前御自身の質問の中で触れられていましたけれども、他国防衛のために他国の領海や領空や領土に入っていって、そして実力を行使する、行使して他国に対する攻撃を排除する、これが集団的自衛権行使の中核概念なんですね。ですから、それ以外の、つまり直接な実力の行使に当たらないものや、あるいは、公海上とさっき例を挙げましたけれども、他国の領土や領空や領海に入り込まないでやる行為については、私はまだまだ研究の余地があるんだろうと思っているんです。

 ですから、先ほど、総理が最初の記者会見で挙げられた、公海上で一緒に行動しているアメリカが攻撃を受けた場合に日本も一緒になって排除する、これは、我々は自衛権の範疇で行使する可能性をやはり残しておく必要があろうかと思いますし、ほかには、直接の戦闘行為に当たらない、例えば通信だとか、輸送、補給、整備、警備、情報交換、あるいは医療、それから災害救援、公海上のパトロール、こういったものについては、やはり集団的自衛権といえども一定の条件緩和をしていく必要がある。これはさんざん周辺事態法のときに議論されました。輸送においても武器弾薬はだめだとか、あるいは補給についても、発進準備中の航空機に対する直接の補給はだめだとか、これはやはり、先ほど現代戦争のお話を長官されましたけれども、どう考えても非合理的な考え方にはまってしまうんですね。

 ですから、こういう部分について、長官、最後に、もうお約束の十五分になりますけれども、長官として、これから研究を深めていって、今申し上げたような直接の武力行使に当たらないようなケース、あるいは相手の国に入り込んでやるような場合でないケースについても、我が国が他国と、つまりアメリカと、友好国と一緒になって行動できるようなそういう法体系をぜひ整備していただきたいんですけれども、最後に御見解をいただきたいと思います。積極的にお願いいたします。

安倍国務大臣 それはまさに二年前、ちょうど私が質問したことを今委員が私に質問しておられますので、大変これはある意味ではやりにくいわけでありますが、ちょうどそのときに私が質問した中におきまして、実は、やはり委員が御紹介されましたように、ガイドライン法案を審議したときの際、高村外務大臣は、「集団的自衛権の概念は、その成立の経緯から見て、実力の行使を中核とした概念であることは疑いないわけでありまして、また、我が国の憲法上禁止されている集団的自衛権の行使が我が国による実力の行使を意味することは、政府が一貫して説明してきたところでございます。」このように答弁をしておられまして、かつての岸答弁にある意味では重なるところがある、中核概念という、これを久々にある意味では高村大臣が説明をされたんだろう、このように思うわけでございます。

 そこで大切なことは、これは、日本が国際協力をしっかりと進めていく、あるいは我が国の安全をしっかりと守っていくという中において、憲法の制約の中で何が可能であるかということについては、時代が変わっていくという中において常にこれは検証し、また研究をしていくことが大切ではないだろうか、このように私は考えておりますし、そうしていくべきだろう、このように思います。

長島(昭)委員 もう時間がないんですが、あと二、三分ちょうだいして、恒久法の議論をさせていただきたいと思います。

 恒久法は、国際協力のための一般法が必要だ、つまり、特措法の期限の延長、再延長などというのは法の趣旨を逸脱したものである、こういうことで、今ほどこの一般法の制定が急がれるときはない、こう思うんです。

 〇三年の八月に、恒久法制定のための準備室が内閣官房に設置されました。そして〇四年七月、二年前の七月に対策室に格上げをされました。私、昨年の十月に前の細田官房長官に伺ったんですが、ちょっと十分な答弁をいただけなかったんですけれども、この準備室から対策室に格上げをした一般法、恒久法の議論の進捗状況について、ぜひ詳しくお話ししていただきたいと思います。

安倍国務大臣 チームを発足させたということを、報告を受けております。

長島(昭)委員 そのチームでの議論、もうこれは、最初に小泉総理がシドニーで演説をされているんですね、〇二年の五月に。これから国際協力が必要だ、復興支援や、紛争に苦しむ人々に対して人道的な平和の支援を行っていこう。それを受けて明石懇談会ができて、そしてそれを受けて準備室ができて、今、チームというお話でしたけれども、対策室ができた。この間の議論の一番のポイント、どんな議論をされてきたか、それだけでもお答えください。

安倍国務大臣 ただいま委員が御指摘になられましたように、国際平和協力懇談会等の報告書の提言の趣旨を参考にしながら、我が国の国際平和協力のあり方全般について検討を行っているわけでありますが、今後我が国として、どのような理念に基づいて、いかなる形で国際平和協力に取り組んでいくかなど、広範にわたるものであります。

 政府としての考え方をいつ、どのような形でお示しできるかという、まだ残念ながら具体的なこの段階ではないわけでありますが、いずれにせよ、我が国の国際平和協力のあり方については、国民的な議論を踏まえて検討すべき課題ではございまして、国会における議論も十分に踏まえながら進めてまいりたいというふうに思っております。また、我が国として行うことが適当な業務の範囲や、これに必要な各種権限のあり方などを含めて幅広く検討を進めていきたい、こう思っています。

長島(昭)委員 今の御答弁では枠組みしかわからないので、内容についてもぜひお答えいただきたいんですが、官房長官はお忙しいということですので、もう結構でございます。

 そうしますと、内容についてはお答えいただけますか、官房の方。

 先ほど私はちょっと早口で申し上げましたけれども、これは総理のシドニーでの演説から始まっていますね。そして、〇二年の十二月に明石懇談会の報告書が出て、ここではいろいろな論点が出ていたはずです。武器使用権限の問題、あるいは、どういうことをきっかけにして日本が、国連決議が必要なのか必要でないのか、参加形態は多国籍軍なのかどうなのか、PKOの参加五原則のうちの紛争当事国の停戦合意というものは本当に必要なのかどうか、こういういろいろな議論があって、それを受けて恒久法制定のための準備室ができたんですね。

 それを、〇三年の七月十日、これは参議院の外交防衛委員会ですけれども、当時の福田官房長官、まず大綱をつくります、大綱をつくった上でその大綱に基づいて法律案をつくると。では、大綱を早くつくれと言ったら、いや、そんなのは、つくるにしても半年やそこらかかりますと。ことしが二〇〇六年の四月ですから、もうかれこれ三年過ぎているわけです。大綱をつくる、半年じゃできない。半年じゃできないから三年かかるわけではないでしょう。どんな議論が煮詰まってきているのか、お答えいただきたいと思います。

樽井政府参考人 お答えいたします。

 ただいま先生が御指摘になられましたあの明石懇談会の報告書でございます。この報告書につきましては、内容が大変多岐にわたりまして、極めて重要な問題提起をなさっておられるということでございまして、私ども、内閣官房の準備室ではございません、チームでございまして、まだ準備室に格上げはしていないということでございます。一点そういうことがございます。申し上げておきます。

 このチームの中で、御指摘のとおり、明石懇談会で提言されました非常に重要な問題がございまして、それらにつきまして極めて幅広く検討させていただいているという状況でございます。

 大変申しわけございませんが、現段階において政府としてこういう方針でいくんだということについてはまだ検討の段階でございまして、こういう状況で、個々の論点につきまして先生の御質問に右だ左だというふうにお答えするわけにはちょっとまいらないわけでございまして、その点、ぜひ御了解いただきたいと思います。

長島(昭)委員 三年もかかって論点整理すらできていないというのは、これはやる気がないということですか。これはいつまでに、ゴールは大体どの辺でやりたいと思っているんですか。

 なぜかというと、これは、去年の十二月に一年間の期限延長をいたしました。基本計画、このイラク特措法ですね。先ほど谷口委員がおっしゃっていたように、撤収の期限はこの春だと言われていたものが、灼熱の夏を越えて秋にずれ込むかもしれない。もしかすると、一年延長のことしいっぱいで済まないかもしれないですね。そうすると、再々延長なんですよ、特措法の。

 特別措置法というのは、まさに緊急事態だから、まさにもう時間がないから、本当にこの期間だけお願いしますねということで、私たちも審議をして通しました。当時の防衛庁長官は石破先生でしたけれども。しかしそれを、事情が変わったからまた延長する、そしてさらに延長する、二年のところを一年にして延長したものをまたさらに延長する。これは、緊急な措置としての法の趣旨を著しくゆがめることになる。だからこそ一般法が必要なんですよ。

 そんな、三年も議論しました、論点は多岐にわたりますので整理がつきません。チームをつくっていて、何人のチームでやっているんですか、これ。まず、何人のチームでやっているかお答えください。そして、どういう議論をしてきたぐらいは、私だって今自分なりに六つぐらいの論点を持っていますよ。政府としてそれぐらいお答えできるでしょう。

樽井政府参考人 ただいまの委員の御指摘でございますが、この法律につきましては、御案内のとおり、大変高度の政治判断を要する問題が多々含まれております。そういう状況におきまして、私ども、種々の前例とかこれまでの国会での御議論、それから各党のお立場等々を踏まえて、私どものチームといたしましては、いただいております御指示は、そういうものを広く検討して、素材を集めて検討しろということでございまして、そういう状況の中で種々の論点について検討させていただいているということでございます。

 ただいま御指摘になりました明石懇談会におきます主要なポイントということでございますけれども……(長島(昭)委員「いや、明石懇談会じゃなくて、明石懇談会を受けて政府がどういう論点整理をされたか」と呼ぶ)先ほど申し上げましたとおり、明石懇談会での提言、それから国防懇談会でございますか、安全保障と防衛力に関する懇談会等におきまして提起されております種々の問題点につきまして、それぞれ一つずつ検討を重ねているということでございます。

 そういう意味で申し上げますと、まさに、文民専門家の派遣の拡充、それから文民警察の活用、PKO五原則でございますけれども、明石懇談会でも、もう少し柔軟な対応が必要ではないか、それから、例えば多国籍軍への協力についての一般法の制定などにつきましてもいろいろ御提言いただいております。それから、やはりODAとのきちんとした連携をどうするんだというようなこと、それから協力の幅、どういう射程でどういうものに対して協力していくんだというようなこと等々含めまして、これは、繰り返して恐縮でございますが、最終的には大変高度の政治判断を要する事項でございますので、私どもは、素材の収集それから検討ということで現在努力させていただいております。

長島(昭)委員 満足な答弁ではないのですが、引き続きぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 最後に、もう時間が少なくなってまいりましたが、先ほどから麻生大臣、額賀長官、お待ちいただいていますので、イラクの問題について一点だけ伺いたいと思います。

 私どもも、イラク戦争には反対をし、自衛隊の派遣については慎重な立場で参りましたけれども、しかし、今イラクで展開をしておられる自衛隊の皆様方には、ぜひミッションを無事に完了して、そして元気に帰ってきていただきたい、そのことをやはり国会としてサポートできるようにしたい、そうしなければならない、それが責任だというふうに思っております。

 それで、政府としては、自衛隊撤退のための四条件というものを昨年十二月の期限延長のときに掲げておりまして、政治プロセス、先ほどお話ありました、現地の治安にかかわる状況、多国籍軍の活動状況、それから復興支援の進展状況と。一については一、二カ月おくれている、こういうことでありますし、四については、先ほどの説明がありましたが、ほぼ終了していると言っても過言ではないと思うんですが、問題はこの二と三、治安に係る状況であります。

 先ほどの御報告では、依然として治安については他の地域に比べて安定的であるということなんですが、その安定的だというのは、よくイギリスの国防大臣がおっしゃっているように、治安権限をイラクに移譲できるようになるぐらいに安定してきているのか。もし仮にそうであれば、英国軍も撤退を準備するであろうし、それに引き続いて日本の撤退もあり得るわけでありますけれども、その点、最近の日米英豪の間で開かれた協議の状況について、お答えできる範囲で結構です、治安状況についてお答えいただければありがたいと思っています。

麻生国務大臣 この四月の十日に、日米英豪において実務レベルの一般的意見交換というのをやらせていただいております。イラクにおいて活動しております各部隊のあれで、いろいろお互いさま、情勢分析等々の意見交換をさせてもらったというので、内容をちょっと申し上げるわけにいかないところもあろうとは思いますが、これまで、ほぼ定期的でもありませんけれども、極めて頻繁に通常から行っております意見交換のプロセスの一つと思って、この場で何も決定したわけではありませんけれども、一番やはり各国予想と違っておりましたのは、少なくとも、十二月に選挙が終わったら四月にはやはり政府ができている、三月ぐらいにはできるだろうと正直私どもも思っておりました。イギリスも、三月は絶対だなんて言っていたんですから。

 それが、電話しても何となくちょっと、今度また四月といってきょう開催される予定のものがきょうまた延期になっておりますので、その意味では、ちょっとここのところが一番わかりませんので、これがわからぬと、治安部隊というものが訓練をされ、十三万人が二十四万人まで増員ができ、訓練も、少なくとも分列行進ができるようになったり、徐々に徐々に、時々テレビに出てまいりますので、昔と比べてここまでよくなったというのはCNNなんかに出てくるところですけれども、そういうのが出てきちゃおりますけれども、それに権限移譲するという相手がまだでき上がっていないというところが今最大の問題かと思っておりますので、ここがちょっと、長島先生、正確にきちっとでき上がりませんと、私どもとしてはなかなか難しいと思います。

 治安の状況がより確実にできたという自信が、今の政権でもいいですよ、新しい政権ではもっと確実だと思いますけれども、今の政権でももうこれで大丈夫だというのであれば、それまた一つの考え方だとは存じますけれども、そこが明確でないところが、なかなか各国ともちょっと決定がおろしにくい。したがって、総合的に判断せざるを得ないと先ほどから申し上げております背景がそこにございます。

長島(昭)委員 私どもも、一日も早く自衛隊の皆さんには帰ってきていただきたい、こう思っておりますが、スペインやフィリピンのように、ぱんと自国の都合で撤退するわけにはいかないという事情もよくわかっておりますので、ぜひ、両大臣、自衛隊員の皆さんの安全確保に最後まで努めていただきますようお願い申し上げます。

 これで終わります。ありがとうございました。

三原委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。長島委員に引き続き、質問をさせていただきます。

 小泉総理のこの四年間を振り返ってみますと、この中東地域はまさしく火薬庫になったと言っても過言ではない、そんな状況が続いております。一つ一つの国々の状況を今披瀝するほど時間的余裕もございませんが、暫定政府のアラウィ前首相が、三月十九日でしたか、イギリスのBBC放送との会見の中で、我々は内戦下にあると明言されたように、それこそシーア派の聖廟の爆破以降、まさしくイラクは内戦の初期段階にあるというような状況が続いております。

 また、イランにおいても核開発の問題が活発化してきておりますし、パレスチナにおいては、それこそハマスが圧勝したにもかかわらず、ブッシュ政権はこの選挙の結果に否定的な意向を表している。そんな状況が続いている中、この日本としてどのような対応をすべきか、どのような姿勢でこの中東外交をとらえていくのか、こうした観点から質問をさせていただきたいと考えます。

 中東地域と日本の関係、中長期的なスパンでどのようにとらえているのか、どのような考えに基づいて外交を行っているのか、その点についてまずお尋ねしたいと思うんですが、三年半ぶりに改訂をされたブッシュ・ドクトリン、この改訂版を拝見しますと、それこそ米国は戦時下にあるから始まり、アメリカ外交の究極の目的は世界の圧制の終えんというふうに位置づけています。

 さて、ブッシュ・ドクトリンのこの改訂版、政府はまずどのように受けとめていらっしゃるのか、外務大臣の方から御答弁をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今、田島先生言われましたように、日本と中東との関係を利害だけで見た場合におきましては、やはり、今日日本に輸入されております石油というものは、実に九〇%を中近東に依存しておるという状況にあります。したがって、この中近東という地域が、秩序安定、そういったものが確保されているということは、我々にとりまして、輸入のもとであります石油の観点から考えても極めて重要、したがって、この地域の安定に資するためには日本で何ができるかということであろうと存じます。

 幸いにして日本の場合は、この地域にこれまで過去の歴史上余り利害得失というものを持ってきませんでした。かつて迫害を受けたとかいうようなことの関係は全くありませんので、その意味におきましては、先進国の中では唯一と言ってもいいぐらい、利害関係のない部分だけ、日本からいろいろ人を送りましても、何となくベクトルをかけて見られることもないし、色眼鏡をかけて見られることもない、極めてすんなり日本からというものを受け入れてもらえる状況にあります。これは、イスラエルにおきましてもパレスチナにおきましても、その他の地域におきましてもほぼ同様というのが総じて言えるところだと思っております。

 したがって、日本として何らかの形でここのところの関係というものを構築していくやり方というのは、そういう色眼鏡で見られない分だけやりやすい部分があろうとも思いますし、また、これらの地域は今は石油だけに頼っていろいろやっておりますけれども、その石油がいずれ枯渇してみたり、また、将来、水素を取り出すことに成功しますと、今度は水素で物が動くようになってみたり、いろいろな形で、化石燃料にかわるエネルギーというものに変わっていくまでの間は、今の金で何かしない限りは先はありませんよということに関しては、いろいろなことを考えて私どもはやっていかねばならぬものだと思って、そこは我々も、考えられたらどうですということは私どもも積極的に申し上げているところでもあります。

 今はアメリカとの関係がございましたけれども、あのブッシュ・ドクトリンの中でかなり長いのが出ておりましたけれども、私どもは、少なくともアメリカが、あの中で国際社会の諸問題について、国際社会と協調しつつリーダーシップを発揮するとの考え方をあの報告書で示している点は評価をいたしておるところでもあります。

 少なくとも、世界の中の日米同盟という中にあって、日本とアメリカの場合は、やれ民主主義とか自由主義経済とかいろいろな共通の価値観を持っておるところでもありますので、私どもとしては、こういう価値観を共有していく国と協調しつつ、世界の中の日本、日米同盟というものをきちんと作動させて、もって国益に資するというような方向にやっていくべきものだと考えております。

田島(一)委員 今、日本のステーク、利害についてまで言及をいただいたわけなんですけれども、果たして本当にこの中東における日本の利益、利害というものは何なのか、ここのところをもう一度おさらいをさせていただきたいというふうに思います。

 今、いみじくも大臣が、石油の安定供給といいますか、石油資源という、その意味での外交手段についてお触れをいただいたと思うんですけれども、では、この数年間というスパンでもう一度振り返ってみたいんですが、この数年間の中で日本としてのステークは、一体どれぐらい何が前進をしてきたのだろうか、また、それが前進する過程において日本が一体どういう役割を果たしてきたというふうに考えられるのか、この点をもう一度振り返っていただきながらお答えをいただけないでしょうか。

麻生国務大臣 今いろいろな国がありますので、ちょっとアフガニスタンを中近東に入れるかどうかは別にして、外して、イラン以西ということで話を限定させていただくことになろうかと存じますけれども、いろいろな、あの地域にあります国々だけで今特に目立ったものは、やはりイラクとイラン。これは、アラブとペルシャ、アーリア人とシャトルアラブ川の東西であれは違いますけれども、同じアラブとは言えませんけれども、中近東ということで言わせていただければ、少なくともそれらの国々との関係の中にあって、今、イラクによりますクウェートに関する侵略というのが行われたのが一九九〇年ということになったと思いますが、ああいったような状況の中にあって、少なくとも、クウェートにあります日本の油田等々はかなり手痛い損害をこうむった。私どもは、そういった中にあってアメリカといろいろな形で協力をし、また、その後、アラビア湾に大量にまかれた機雷の除去というものは、日本のタンカーがあそこを通航する意味においては非常に大きなところでもありますし、そういった戦後のものに貢献をしてきたとも思います。

 また、アラブとの間でこれまで関係が余りありませんでしたので、異文化交流等々に関しましてはいろいろな形でのフォーラムを立ち上げてみたり、私どもとしては、アラブという、これまで異文化、異文明というような感じでかなり遠い感じのあったところで、石油だけみたいなつき合いだった。だけはいかがなものか、もう少し幅広く考えてしかるべきではないかということで、いろいろなアラブとの、中東何とか、僕はちょっと正確な名前は忘れましたけれども、いろいろな形での文化交流というものを立ち上げてみたり、いろいろさせていただいている最中だと思っております。

 いずれにいたしましても、こういった地域との間に、先ほども御答弁申し上げましたように、これまでの利害得失が余りなかったがゆえに、お互いさま初めての交流ということもあり、この間もエジプトの方々がお見えになっていましたけれども、そういった方々と新たに学生交流等々を今スタートさせようとしておりますけれども、そういった形で、これまでとは少し違っていろいろな動きが出てきているというように理解をいたしております。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 私、今回のこのイラクの状況等々を背景にいろいろと考えるとき、やはり歴史は繰り返されるんだなということを実はつぶさに感じ取らせていただくそんな一冊の本と出会いました。きょうちょっとお持ちしたんですけれども、これは「砂漠の女王」という本なんですね。だれが書いたかというよりも、この書かれた方、テーマになっているのが、イラク建国の母とさえ言われたガートルード・ベルの生涯であります。まあ、砂漠の女王といえば普通アラビアのロレンスを想像される方が多いかもしれませんけれども、やはりイスラムの民と一緒になって、それこそイラクの建国の立て役者とさえ言われたこの彼女の生い立ちそれからまた足跡、これを見ると、第一次世界大戦のころ、イギリスがなぜこの中東に対してこのような強引なやり方をしてきたのかということを随分読み取ることができるわけであります。

 そう考えると、今のこのイラクの情勢、中東の情勢というのを考えると、同じことをまた繰り返すのではないか、そんな思いがあるわけですけれども、今回、例えば日本政府としてイラク支援等々に当たられるに当たって、それこそ、第一次世界大戦のイギリスの委任統治下にあった時代背景というものが何らかの形で学習といいますか、一つの前例として踏まえた形で今回このイラク戦争後、例えば、今のイラクで起こっている現状というものを踏まえての対応等々がなされているのかどうかというところに思いをはせるわけなんですけれども、果たしてその点、政府として、その当時、第一次世界大戦後のイラクの状況というものが一つの目安みたいな形で学習のようなことがあったのかどうか、その点、ちょっとお聞かせいただけないでしょうか。

麻生国務大臣 あの当時と一番違ったのは、イギリスの力が落ちて、アメリカというのに力でいきますと置きかわったことと存じます。そこがあの当時と今と大きく違った、いわゆる勢力図が大きく入れかわっておるのが第一点。

 二つ目は、やはりイギリス、フランス等々、これは石油というものに目が行ってからというものは、第二次世界大戦を含めまして、イスラエルの建国に至りまして、かなりいろいろな利害得失があの地域で渦巻いたことは、もう先生御指摘のとおりだと存じます。

 その中にあってイギリスは、スエズの東と言われたイーデン総理大臣の外交方針等々にさかのぼって、それなりにイギリスは外交の中からいろいろ学んだというように私どもはそう思っております。その点に関しましては、それはその地域に直接関係しなかったアメリカの方がもっと直截的だったかなと思いますし、イギリスは、それに対してはかなり何回となく検討に検討を重ねたというのがイギリスの外務省側の認識だというように理解をいたしております。

 ただ、直ちにそれが政治に反映されたか、外交に直ちにそれが反映されたかと言われると、一概にイエスと物事を申し上げられるほどイギリス外務省の中に詳しいわけではありません。

 ただ、イギリスという国は、そういった外交史に関してはかなりよく検討している部分がありますし、私どもの知っている範囲では、今回のイラクに関しましては、アメリカとの関係でかなりはっきり物を言ったのはむしろイギリスの方が多かったのではないかというような話もよく聞くところでもあります。それを反映されたかと言われれば、検討はされた、しかし、それが反映されたかと言われると、ちょっとそこのところまでは何ともお答えのしようがございません。

田島(一)委員 設問の仕方がちょっと強引だったかもしれませんけれども、やはり歴史は繰り返されるという部分が随分出てきているんだな、勢力としては当然イギリスからアメリカに変わったという違いはありますけれども、その国をイギリスからアメリカに置きかえたとしたならば、私は、ほとんどあの当時の歴史を繰り返しているかのような印象を持っております。

 当時、イギリスの利益追求というものを第一義に練られてきたイラク政策、そのことも既に見抜いていたのもこのガートルード・ベルでありました。何かこの本の別に宣伝のつもりで言うわけではありませんけれども、実は、私どもの民主党の女性スタッフがこれを翻訳しているんですね。ぜひ一度、勉強のつもりで読んでいただけたらなというふうにも思いますし、私自身も随分これで学ばせていただいたところでもあります。

 さて、この先、中東の方で一層選挙が実施をされていこうとすると、ますます反米的それから反西洋的な勢力というものが勢いづくのではないかというようなそんな見方も強まっております。一月のパレスチナ自治評議会選挙でハマスが圧勝したこと、これに対して、アメリカやイギリス軍のイラク派遣に理解があった政権が倒されたことによって、イスラム戦争に反対をしてきた勢力が民衆の支持を得るようになってくる、言ってみれば、イラク戦争に積極的に賛成をしてきた、自衛隊を派遣してきた日本に対する見方というのも厳しくなってくるのではないかというふうに私は考えます。

 これまで、先ほどから大臣もおっしゃっていたとおり、イラクの国民からは親日的な扱いで日本に対して注目を集めていた、利害的な対立がない中で非常に親日派の多いというふうに言われてきた国であるわけですけれども、中東では、残念ながら自衛隊もこの多国籍軍の一部というふうに見られているような報道もなされているわけですから、この点やはり、一定心配というか、杞憂かもしれませんけれども、心配せざるを得ないような状況であります。

 この先も、同じように日本が、イラク戦争前のようなそのような親日的な感情でイラクに歓迎されるような国であり続けられるのかどうかという、将来展望としてどのようにお考えか、大臣、お答えいただけませんでしょうか。

麻生国務大臣 今、御指摘のありましたように、昨年からイラクにおいては、イラク国民自身の手で三回いわゆる大きな選挙が行われております。もう御存じのとおりで、そして各会派が選ばれて、今は新政府発足に向けていろいろ努力がされておる最中であります。

 また、御指摘のありましたように、パレスチナで一月の二十五日でしたか、選挙が行われて、ハマスという政党が第一党を占め、そのハマスによります政権が、過半数ではないとはいえ、今スタートをしておるというのが立法評議会の中における実態だと存じます。

 これらの選挙というものは、いずれも、パレスチナの中における人やら、またイラクという国民の中において、少なくともかなり開かれた選挙だと言わざるを得ないのじゃないでしょうか。いろいろな方がいろいろなことをおっしゃいますけれども、選挙に完璧はありませんので、かなり開かれた選挙だったと僕は評価はされてしかるべきだと思っております。

 そういったものの中において、私ども、反米勢力が一挙に一方的に増したかというと、あの選挙の結果を見る限り、そう一方的に増したのではないというように思っております。そんなに好かれていないことははっきりしています。ただ、一方的にだめだったかというと、そうでもないのではないかと。

 それから、これはこの間の朝日新聞の記事ですけれども、あなたは日本の自衛隊が駐留することに賛成しますかというイラク・ムサンナ州におけるいわゆる共同世論調査をやっております。大いに賛成する六〇%、おおむね賛成する二四%、合計八四%の方々が、この朝日新聞の朝刊のあれによれば、ムサンナ州本社共同世論調査という感じの数字になっております。

 したがいまして、今の段階で、今後まだこれは何が起きるかわからぬ世界ではあります。ただ、今の段階において、イラクの南部において活動しております自衛隊にとりまして、少なくとも、この復興活動支援というものを目的としております自衛隊の活動というものに関しては、それなりに評価なり認知をされているのではないか。こういったものは、現地の理解というものがありませんとなかなか効果を発揮し得ないものでもありますので、一部の不満分子というのはいつの世でもあろうとは存じますけれども、総じて、今申し上げたような数値からいきますと、今急に反日的になってきているというような状況ではないというように理解をいたしております。

田島(一)委員 決して、日本に対する反日的な感情を恐れて民主的な選挙を否定している、そんな趣旨で質問したわけでも当然ございません。ただ、この先、本当にどのような形で日本に対する感情が移っていくか、また、民主的な選挙が行われれば行われるほど、勢力の違い、また対立軸のようなものは多分明確化していくであろうかというふうに思われます。

 今、読売新聞のムサンナ県での日本に対する感情のデータ、八四%がおおむね好意的だという数字を示していただきましたけれども、この数字は……(麻生国務大臣「朝日」と呼ぶ)朝日、失礼しました。必ずしもこの数字は恒常的なものでもありません。ぜひ、こういう状況の変化、また、今後行われていくであろう民主化選挙の流れの中でどのような勢力情勢に移りつつあるのかを適宜しっかりと把握をしていただくこと、これについては異論もないかと思いますので、どうぞ十分にアンテナを高く張りめぐらせていただきたい、このことは強く要望をさせていただきたいと思います。

 さて、国際テロの脅威という点でお尋ねをしたいんですけれども、ここに一つ、三月十八日にイギリスのBBCが三十五カ国の四万人を対象にした調査結果というものがあります。イラクの脅威が増大をしたという回答をしたのが平均で六割を超えたというそんな結果であります。ドイツではアンケートに答えた八〇%の方が増加した、イギリスでも七七%がテロの脅威が増加した、アメリカでさえも五五%と過半数を超え、三十五カ国中三十三カ国で、テロの脅威が増加したというそんな回答をしているようであります。

 実はこのように、国際テロの脅威というものを考えると、世界的にもやはり拡大しているという認識が非常に広がってきているわけですけれども、政府としての認識、改めてお聞かせをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 日本の場合は、中近東から何となく遠いものですから、テロというと何となく中近東の話ばかりになりますけれども、我々はオウム真理教という巨大なテロを霞が関で浴びたことをつい忘れておられる方も多いように思いますけれども、あの大量殺人と言ってしかるべき話にまさるほどのテロというものは、先進国でも毒ガスをまき散らすなんというのは例がなかったと思いますね。そういった意味では、テロというものは、何も中近東に限らず、この日本の国内でも十分にあり得るものだというのを我々に警鐘を鳴らしたんだと思っております。

 今、テロというものを考えましたときに、私どもも注意をしなければならぬと思いますのは、何となくこれが宗教上の対立みたいな話ばかりをあおってみたり、人種間の対立をあおってみたりする話が横行しているように思います。しかし、現地に行かれたこともおありになろうと思いますが、やはりテロの起きます大きな理由の背景として、貧困という問題は目を背けちゃいかぬところだと思っております。少なくとも若者の数十%が失業とか職がないとか、極めて閉鎖的なところでかなり先行きがなくなるというような気持ちがいわゆるテロに走らせる、そういう背景も私どもはそこから目を背けてはいかぬところだと存じます。

 したがって、日本として、やはりそういった地域で、基本的に、先ほどのアフガニスタンの松浪先生のお話じゃありませんけれども、麻薬以外で少なくとも生計が立てられるような経済というものを考えたときに、施すではすぐあれが切れますので、自分たちで稼ぎ出す、そのために日本で、こういうものをやったらこんなものが稼げるんですよ、おたくらはそういったことを全然値打ちがないと思っているんだけれども、実はこれは世界では物すごい値打ちがありますとか、ちょっと現場におりませんので何ともわかりませんけれども、いろいろな面で我々は、農業であってみたり、いろいろなかんがい用水路を引いてやることによってそこがきちんと生計が成り立つ、農業再生産ができるようになる等々いろいろなことが考えられる、そういうように考えておりますので、今言われましたように、長期的に物を考えていきませんと、テロはすべて宗教間格差とか文明の衝突とかいろいろなあおる話は私は余りくみしないので、いろいろ私どもとして、やるべきことがほかにもっと地道なところからあるのではないかというようなのが考え方の基本です。

 したがって、日本としてもそういう面は、むしろ、何も資源のないこの国が世界第二の経済大国になり得たこれまでの経緯というものはほかの国から見てもこれはある程度驚異なんであって、そういったところは、我々の経験をきちんと、こういったことをやった結果こうなったんだということを率直に語り、また、お互いに経験というものを分かち合うというものはすごく大事な方法なんだというように考えております。

田島(一)委員 冒頭の、私、例示として申し上げたブッシュ・ドクトリンのこの改訂版をごらんになられてもおわかりのとおり、アメリカがいわゆる先制攻撃なども辞さないという姿勢で今日までやってまいりました。そのアメリカとともに圧制国家の終えんを目指していくのかどうか、それよりも、中東の民主化であるとかいわゆる貧困を撲滅していくという姿勢に立ってやっていくのか、恐らくこういう姿勢が問われていくのがこの日本の大きなこれからの至上命題であろうかというふうに思います。

 もうこれについてはあえて問うことはいたしませんけれども、テロというのは、おっしゃったとおり、国内でだって過去日本も経験してきた部分ではありますけれども、このイラク戦争後のテロの脅威という点についての認識だけはやはりしっかりと持っていただく中で、今、アメリカとの関係をどのように深めていくのか、また、深めずとも、維持しながらこの中東対策をどのように取り組んでいくのかという点についてだけは、慎重かつまた国際情勢というものをしっかりにらんだ中で進めていただきたいというふうに思います。

 さて、防衛庁長官にもお越しをいただいておりますので、ぜひ、イラク関連の問題についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 自衛隊の今回の撤退に当たって、政府は約百人規模の撤収支援部隊を新たに送り込む方針を固めたというふうに報道がなされたわけなんですけれども、実際にそのとおりなのかどうか、まずお答えをいただきたいと思います。

額賀国務大臣 最近の新聞を見ているといろんなことが自由奔放に書かれておりまして、私も新聞を見てびっくり仰天をしているんです。見出しは見るけれども、中身は見ません。中身は信用できないから見ていないわけであります。私が知らないことが書かれているわけでありますから、信用ができない。私も昔、新聞記者生活を十年間やりましたけれども、よく裏をとってから新聞を書いたのでありますが、最近は余り裏もとらないで書いているんじゃないかなという、国会もそういう場があるような気がしてならないわけでございますけれども。

 そういう意味で、百人派遣部隊を出すとかいうことを全く決めているわけではありません。

田島(一)委員 新聞をお読みになる、ならないはそれぞれの御自由だと思いますし、私どもも、新聞をごらんになられた多くの国民の方々から、本当なのかとか、そういうようないわゆる情報確認というような行為に日々当たることもございます。そうなると、マスコミが先走って、言ってもいないことまでもがどんどんひとり歩きをしていったりする。こういうことに後追い、政府がついていっているようなそんな印象すら与えてしまっているのも事実なんですね。

 なぜ、こういうような情報が本当にひとり歩きしているのか。公式発表、公式見解として発表もされていないのに、もう来月、それこそこの四月の中旬以降、撤退のための支援部隊を百人増派というふうにもう大々的な見出しで出されているということに対して、私どももそれはちょっと話が違うんじゃないかというような思いで実際おりました。

 それだけに、こうした情報伝達であるとか情報管理といいますか、マスコミを通じていろいろと曲がった情報が随分紙面を躍っているこの現状を見ると、だれかがしゃべっていなければこういうことを書かないはずだと思うんですけれども、一体どのようにこれを私たちは理解をしたらいいのか。マスコミにどんどんどんどん批判の声をこれだけ浴びせても何も変わらないような状況を見ていると、恐らく、長官も大臣も同じようにお怒りの気持ちを持っていらっしゃると思うんですけれども、一体どうすればいいとお考えなのか。もう書くだけ書かせておいた方がいいというふうにお考えなのかも含めて、ちょっと感想をお聞かせください。

額賀国務大臣 全く私も田島委員と同じ感想を持っております。一番大事なことは、やはりマスコミそれから我々も、国民をミスリードしてはいけない、きっちりと正しい方向に情報を流して、健全な方向に情報を流して判断を間違わせないことが大事だと思っております。

 私としては、自衛隊八百人が今汗をかいて頑張っているわけでありますから、この安全をいかに確保し、しかもなおかつ、これまで二年半余りやってこられた成果というものを上げてきたわけでありますから、これをしっかりとイラクあるいは世界の中に定着をさせていき、さすが日本の自衛隊だ、さすが日本人のやることだ、さすが日本だ、そういうことが世界の中で評価されていくことが望ましいというふうに思っております。

 いろいろな想定のことは考えます。考えますけれども、どれを選択するかということはまた別問題でございますので、そこのところがごちゃごちゃして報道されているように思いますけれども、そこのところが誤解を与えているなという感じがいたすわけであります。

 我々は、きっちりと言うべきときは言うし、国民の皆さん方にきっちりと申し上げて、御判断を仰ぐときは仰ぐという形でやらせていただきたいというふうに思っております。

田島(一)委員 滞りなく速やかな情報開示、これが、やはり何よりもこうしたミスリードを防ぐ方法だというふうにも考えます。国民に対しての説明責任を果たすという点でぜひこうした対策も慎重にとらえていただきたい、このことは、要望として外務省そして防衛庁に対してもお願いをしておきたいと思います。

 時間も参りました。最後に一点だけ要望としてぜひ聞いていただきたい。

 これは、過日、三月の頭に報道でありました、イラク派遣のアメリカ兵の一割がPTSD、いわゆる心的外傷後のストレス障害に陥った、そういうニュースであります。

 日本の自衛隊八百人を安全に帰してくることが今重要だということも長官もおっしゃってくださいましたけれども、それこそ、先般、イラクから戻ってきた自衛隊員が三名自殺しているというそんな報告も受けたところであります。個人の情報に起因するところでありますけれども、このイラクでの任務が影響したことなのか、またその原因の徹底追及、徹底解明を図っていただくとともに、こうした、アメリカ軍の一割がPTSDを抱えているというようなそんな状況も踏まえていただいた中で対策をとっていただき、安全に帰国いただくような取り組みとしてお考えいただくことをぜひお願いして、時間も参りましたので、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

三原委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうは、航空自衛隊による輸送活動について聞きます。

 政府は、今後の輸送活動について何ら決まっていないとしているわけですけれども、この間の理事懇のやりとりの中で、今後の活動にかかわってイラク国内の飛行場の調査を行っている、こういう説明がありました。

 改めて聞きますが、いつから、だれが、そしてどの飛行場に対してどういう調査を行っているんですか。

額賀国務大臣 今委員が御指摘の航空自衛隊のイラクでの活動につきましては、もう既に約三百回、量にいたしますと約四百四十トン余りの人員、物資の輸送を行ってきているわけであります。何といっても、安全確保の上に立ってこういう仕事を行っていくことが大事であります。

 主にタリル、あるいはまたバスラ空港でございますけれども、我々は、このタリル、バスラだけではなくて、全体的なイラクの状況を把握するために、各飛行場がどういうふうになっているのか、あるいはどういう警戒態勢になっているのか、そういったことについて逐次情報を取得するのは当然のことであると思っております。

赤嶺委員 ということは、南部の空港に限らず調査していると。基本計画の中では、中北部のバグダッド飛行場、それからバラドの飛行場、モスルの飛行場、これらも挙げられているわけですが、現時点では、調査の結果どういう評価をしておりますか、これらの飛行場について。

額賀国務大臣 我々がクウェートそれからタリル間で主に人員、物資の輸送を図っているわけでありますけれども、イラク全体あるいは中近東全体の情報を確保した中で我々の仕事が行われていかなければ、きちっとした安全は確保できないのは当然のことであると思っております。

 したがって、バグダッドにも情報収集のために人を派遣しておりますし、このイラクの情報が集約されるアメリカ本土のタンパにも人員を送り込んで、四方八方で、自衛隊員の安全確保を図るために情報収集活動をしているわけでございます。その上に立って今日の人道復興支援活動等々が行われているということでございます。

 したがって、どこの空港でどうのこうのという具体的なことについて、ここでお答えすることが適当とは思っておりません。

赤嶺委員 理事懇では、いわば調査を進める上で、地対空攻撃の危険性の有無や飛行場周辺の治安活動というのを挙げまして、さっき長官も、南部の飛行場以外のさまざまな情報をとっているということであるわけですが、その際に、今までの航空自衛隊の活動について、今後の活動の方向をしていく上で調査を始めたというお話だったんですよ。

 今、国内、国外という話もありましたけれども、例えばその調査というのは、カタールなどの飛行場、これについても含まれているんですか。

額賀国務大臣 もちろん、全般的な情報収集活動はする中で我々の陸上自衛隊及び航空自衛隊の安全を確保するのは当然のことでございます。今の時点において、従来どおり航空自衛隊も人員、物資、人道復興支援活動を中心に活動しているわけでありますから、その安全確保のためにさまざまな状況について調べていくことは当然のことであります。

 ほかの地域の空港についても、治安活動がどうなっているのか、危険性はどうなっているのかということを調べておくことは、みずからの、クウェートとかタリルの空港を考える上で参考になることだと思っております。

赤嶺委員 そうすると、今後、やはり航空自衛隊の活動の中心はいわばサマワにいる自衛隊の人道復興支援活動を中心に行っていき、その他の飛行場への自衛隊の活動、これについてはどのように考えていらっしゃるんですか。

額賀国務大臣 従来どおり、陸自の人道復興支援活動、それから、航空自衛隊も人道復興支援活動を中心として仕事を展開中であるということであります。もちろん、陸上自衛隊の人員とか物資を運ぶのが中心でありますけれども、ほかの国の人員、物資を輸送することもあるわけでございます。

赤嶺委員 理事懇では、輸送ニーズの確認に十分配意をしつつ、そして飛行場の範囲を、イラク国内の飛行場の調査を行っていると言っているわけですよ。私は、サマワの人道復興支援活動が中心というのであれば、何でイラク全土の飛行場の調査活動を行っているのかという点について理解できないんですが、この点、いかがなんですか。

額賀国務大臣 陸上自衛隊は、サマワの人道復興支援活動を行っているのは御承知のとおりでございます。空自の場合は、もちろん人道復興支援中心でありますけれども、ほかの国の人員、物資を運んだこともあるし、これからも運ぶこともあり得るわけでございます。そういうニーズについて一定の情報収集することは、仕事を行っていく上で必要なことであります。

赤嶺委員 そうすると、南部の飛行場以外に、航空自衛隊に人道復興支援以外の多国籍軍の人員を運ぶ活動、これらのニーズについて、人員や武装などの輸送のニーズ、これは、調査した上で、あったのですか。

額賀国務大臣 それはこれまでもいろいろと調査をしたりしてきているわけでありまして、新たに仕事を拡大するために調査をしているわけではありません。

赤嶺委員 いや、ですから、南部の飛行場以外のニーズについてあったんですかと、こういうことを聞いているんです。

額賀国務大臣 従来からも、全体について危険性がどうか、ニーズはどうかということは調査をしているわけでございます。

赤嶺委員 それで、そのニーズの調査の結果ですよ。それはあったのか、なかったのか、この点をさっきから聞いているんですが。

額賀国務大臣 今までも、ニーズがあって、安全性があってということであれば、運んだ場合があるということを言っておるわけであります。

赤嶺委員 サマワからの陸上自衛隊の撤退について先ほどから議論がありました。麻生大臣は新聞は読まないということでありましたけれども、麻生大臣御自身がテレビ朝日の報道番組で、三月決定、五月ぐらいに撤退というイメージを持っていたが、残念ながらそういうわけにはいかない、イラクの政権ができるかどうかが一番大きい、政権ができて話し合いができる状況になれば可能だと言って、決定はなされるが、決定と撤退では時間がずれる、このようにおっしゃっております。

 この発言の意について聞きたいんですが、具体的な撤退のタイミングということは別にして、小泉内閣のもとで撤退の判断をする、こういう意味ですか。

麻生国務大臣 どの内閣の中で決定がされるというようなことを言ったつもりはありません。

赤嶺委員 外務大臣はさらに、イギリスもオーストラリアも残っている中で、日本だけ先にこちらの都合で帰るというふうにはいかない、こうも述べておられます。

 イギリスとオーストラリアと日本の自衛隊とは活動の目的が違うと思うんですね。なぜ、イギリスやオーストラリアの前に自衛隊が撤退するということはできないんですか。

麻生国務大臣 これまでもたびたび答弁をしたと思いますが、政府としては、基本的には四つの条件というのを申し上げてきたと思っております。

 政治プロセスの進展の状況、すなわち、政権のできる、できないの話が一点。また、現地の治安にかかわる状況で、十三万人から二十五万にふえたとはいえ、その治安状況はどうなっているか。そして多国籍軍との関係。これは、一緒に行動しておりますし、少なくとも、撤退作戦をやるときというのは一番難しい行動ですから、そういった意味では、襲われるかもしらぬし、いろいろな意味でこういったときには最も大事なところだと存じます。そして、現地の復興の進展状況。この四つを総合的に判断するということを申し上げているのであって、日本だけ、今言ったような四つ、もともと人道復興支援等々の目的で行っておりますから、私どもとしては、今、四つのものを総合的に判断するというように申し上げてきたと存じますが。

赤嶺委員 日本だけ先に撤退するわけにはいかないという言葉どおり受け取れば、多国籍軍みんな一緒に撤退するんだという、本来の、政府が建前として言ってきた自衛隊の任務から検討するのではなくて、今は本当に撤退論議も泥沼化してきていると思います。

 私は、自衛隊の速やかな撤退を求めて、質問を終わりたいと思います。

三原委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、イラクにおける自衛隊の活動並びに撤退の時期等々で各委員から御質疑がございましたが、けさ方六時ごろでしょうか、たまたまラジオを聞いておりましたらば、サマワで、イギリス軍に対してシーア派のサドル師たちの支持者たちが砲撃を加えたかもしれないというような報道がございまして、実は、私のみならず、日本国民全体が、事の真偽はほかにして、いつもそういう報道がある都度、現在、イラクの治安情勢がどちらに向かうのか、あるいは自衛隊がどのような立場に置かれるのか、本当に薄氷を踏む思いで耳目をそばだてているさなかなんだと思います。

 私は、先ほど田島委員の御質疑の中でございました、特に情報ということの信憑性をめぐって、今は情報をどう判断し、どう使うかというところが非常に重要な時代になっておりますが、アメリカの開始したこのイラクへの攻撃に対しましても、既に本年の二月、いわゆるCIAの中東担当国家情報官のポール・ピラー氏が、米国政府の情報の取り扱いについて、非常にイラク戦争においては、例えば大量破壊兵器の有無、あるいはアルカイダとサダム・フセインの諜報機関の接触等々について、事実をむしろ誘導的に操作するようなことがあったのではないかという告発をしております。

 また、四月に入りましてからは、副大統領の前補佐官であるリビー氏の発言等々で、一体、アメリカ政府はこのイラク攻撃に対してどのように情報を扱い、果たしてこの戦争の正義はあったのであろうかということがアメリカ国内でも問題になっているというふうに報じられております。

 麻生外務大臣においては、このような現在のアメリカの諜報活動と、その諜報活動を用いる政治家の側のいろいろな操作、あるいは国民に対して何を伝えたか等々について、この間一貫してどのようにごらんになっておられますか。一点目、お願いいたします。

麻生国務大臣 阿部先生御存じのように、イラクという国は、十二年間にわたりまして国連のいわゆる安保理事会の決議に違反し続けた国であります。国際社会が与えました平和的解決の機会はすべて生かそうとはしませんでした。そして、最後まで、国際社会の真摯な協力、努力に対しては協力、対応はしようとはしなかったというのが事実だと思っております。

 したがって、日本としては、こういうような認識のもと、安保理決議に従って私どもは決定をしたのであって、この決定は正しかったと思っております。

 また、大量破壊兵器の話につきましては、これは、イラクは過去にクルド人に対して、第一次のときにだったと思いますが、大量破壊兵器を使用したことは事実であります。したがって、国連調査団が指摘をしております数々のいわゆる未解決の問題等を考えてみますと、イラクに対して武力攻撃というものが開始された当時、少なくとも大量破壊兵器があり得ると想定することに足る理由があったと考えておるというのが私の考え方です。

阿部(知)委員 非常に実は頭の回転の速い麻生大臣は、意図して私の質問をはぐらかしたのではないかと思います。私は、諜報活動のあり方と、それを利用する政治家の、いわば一方的に政治利用したのではないかということがアメリカ国内でも問題になっておることについてどうお考えかとお伺いしました。今の大臣の御答弁は、もう三年も前からそんなことを繰り返しておられますが、この間世界じゅうで、イギリスでもアメリカでも、情報の信頼性やそれの利用、いわば、どのように国民に伝えたかというところで今ブッシュ大統領の支持も揺らいでおるさなかであります。

 私は、そうしたことをまた日本が、独自の情報収集活動に基づいたのではなく、同じように繰り返される日本政府の対応というのは、やはり今の情報化時代において、何が真実の情報で、私ども国民に何が知らされて、そして判断がどうなされたかという政治の意思決定プロセスをきっちりと示していないと思います。

 私に与えられた時間は八分でございますので、以上のことは指摘にとどめて、実は、麻生大臣は御承知おきの上今のような御答弁だったのだと思います、決めつけて申しわけありませんが。また別途の機会に、時間のあるときに質疑を繰り返させていただきます。

 もう一つ私は質問予告してございますので、額賀防衛庁長官にお願いいたします。

 先回、私がこのイラク関連の委員会で質疑に立たせていただきましたときに、イラク派遣の自衛隊員も、時期も長くなり、過酷な状況下で勤務をしておる、ついては、自衛隊員の健康面、メンタルヘルスも含めて十分にフォローしていただきたいというお願いをしたのが二月二十七日でございました。その後、新聞報道で三月の十日、これも先ほど田島委員がお取り上げでありましたが、イラクに派遣された自衛隊の隊員内の自殺者の数が出てまいりました。陸上自衛隊四人、航空自衛隊を含めると五人、航空自衛隊が一名おられますので。

 これらの数、いわば第八次までの隊員でございますと、陸上自衛隊ですと四千五百名、そして航空自衛隊はまあ千名になるでしょうか、そのあたりの数だったかと思います。その中におけるいわゆる自殺の発生率は、私は客観的に見ても高いと思います。母集団の大きさによっていろいろな分析ができますが、例えば、この四千五百人の陸上自衛隊のうち四人が自殺されたとすると〇・〇八%で、自衛隊員全体の中、二十四万人の、例えば去年の自殺者数を九十四人といたしましても、〇・〇三にすぎない。もともと自衛隊員というものに多い自殺者があるということも問題でありますが、やはり、このイラクに派遣の自衛隊員が現状五名自殺されておるということは大きな問題で、この前長官が留意してフォローしますとおっしゃったことがどう実現されているのか。私は、これから先まだ続く派遣であれば、大きな危惧を抱いております。

 誠心誠意なお取り組みが必要と思いますが、どのようにお考えでしょう。

額賀国務大臣 先般、阿部委員がおっしゃるように、女性らしい視点で、大変思いやりの御質疑をいただいたと感謝しております。

 確かに、イラクにおいては、夏になれば五十度の暑さ、冬は氷点下もある、砂あらしもある、大変厳しい環境の中で生活を強いられます。しかもなおかつ、復興支援活動という任務も遂行しなければならないということだと思っております。その中で、おっしゃるように、陸上自衛隊四人、航空自衛隊一人がお亡くなりになりました。自殺をしたという結果になっております。

 ただ、その理由が、それぞれフォローしておりますけれども、プライベートな問題もありますので逐一言うことができませんけれども、さまざまな理由がありまして、ストレートに、イラクに行った結果がこういう自殺を招いたというふうに結びついているかどうか、そういうことも含めて今フォローしているわけでございますけれども、私が見る限りにおいては、複合的にいろいろな要因が重なり合っているという場合の方が多いというふうに感じられます。

 いずれにいたしましても、行く前、それから行っている間、それから帰ってきてから、その間にも激務の中で仕事をやりますから、熱中症だとか下痢をしたりとかさまざまな症状を訴えることもあるわけでございますけれども、委員が御指摘のように、しっかりと私どもも対応して、こういう犠牲者が出ないようにさせていただきたいというふうに思っております。

阿部(知)委員 ぜひとも、本当に真剣なお取り組みをお願い申し上げます。

 終わらせていただきます。

三原委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十六分散会


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