衆議院

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第7号 平成18年12月20日(水曜日)

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平成十八年十二月二十日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 石破  茂君 理事 渡海紀三朗君

   理事 中谷  元君 理事 西村 康稔君

   理事 松浪健四郎君 理事 神風 英男君

   理事 原口 一博君 理事 田端 正広君

      安次富 修君    伊藤信太郎君

      伊藤 忠彦君    石原 宏高君

      稲田 朋美君    今津  寛君

      宇野  治君    上野賢一郎君

      越智 隆雄君    近江屋信広君

      大塚  拓君    金子善次郎君

      清水鴻一郎君    篠田 陽介君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      平  将明君    玉沢徳一郎君

      冨岡  勉君    中根 一幸君

      中森ふくよ君    西本 勝子君

      福田 良彦君    馬渡 龍治君

      町村 信孝君    三原 朝彦君

      宮澤 洋一君    矢野 隆司君

      山本ともひろ君    池田 元久君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      後藤  斎君    園田 康博君

      武正 公一君    中川 正春君

      長島 昭久君    長妻  昭君

      山井 和則君    江田 康幸君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      菅野 哲雄君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      久間 章生君

   防衛庁副長官       木村 隆秀君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  鈴木 敏郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  宮崎 信敏君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  山本 庸幸君

   政府参考人

   (防衛庁長官官房長)   西川 徹矢君

   政府参考人

   (防衛庁防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁運用企画局長)  山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 西  正典君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            奥田 紀宏君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        佐藤 宏尚君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月二十日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     上野賢一郎君

  越智 隆雄君     近江屋信広君

  西本 勝子君     矢野 隆司君

  橋本  岳君     篠田 陽介君

  松本 洋平君     山本ともひろ君

  吉川 貴盛君     今津  寛君

  田島 一成君     小宮山泰子君

  伴野  豊君     長島 昭久君

  山井 和則君     園田 康博君

  阿部 知子君     菅野 哲雄君

同日

 辞任         補欠選任

  今津  寛君     吉川 貴盛君

  上野賢一郎君     安次富 修君

  近江屋信広君     越智 隆雄君

  篠田 陽介君     平  将明君

  矢野 隆司君     西本 勝子君

  山本ともひろ君    稲田 朋美君

  小宮山泰子君     田島 一成君

  園田 康博君     山井 和則君

  長島 昭久君     伴野  豊君

  菅野 哲雄君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     福田 良彦君

  平  将明君     橋本  岳君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 良彦君     馬渡 龍治君

同日

 辞任         補欠選任

  馬渡 龍治君     松本 洋平君

    ―――――――――――――

十二月十九日

 一、国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官鈴木敏郎君、内閣官房内閣審議官宮崎信敏君、内閣法制局第一部長山本庸幸君、防衛庁長官官房長西川徹矢君、防衛庁防衛政策局長大古和雄君、防衛庁運用企画局長山崎信之郎君、防衛施設庁長官北原巖男君、外務省大臣官房審議官長嶺安政君、外務省大臣官房審議官西正典君及び外務省中東アフリカ局長奥田紀宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原口一博君。

原口委員 民主党の原口でございます。

 政府に対して数点質問をさせていただく前に、この後では、この委員会では初めての自由討議ということで、政府を入れずに議員同士で建設的なテロに対する議論あるいはイラクに対する対策、これを話し合っていこうと。これは初めての試みでございますが、私は、安全保障やあるいはさまざまなテロとの闘いについては、党を超えて、立場を超えて現実的な議論をすることがまず第一だということを思います。

 まず、イラクの問題に入る前に、現在行われております六者協議、この中身について官房長官に伺いたいと思います。

 六者会合は、平和的な方法による朝鮮半島の検証可能な非核化、これを明記した昨年九月の共同声明が基礎であるべきだと私も思います。しかし、基調講演を聞いている限りにおいて、北朝鮮が核実験を行って、その核を放棄するというところまでは至っていないというふうに思えます。現状の認識とこの協議の見通しについて官房長官からお話を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 原口先生御指摘のように、六者協議での冒頭の発言につきましては、建前をかなり述べたというふうに聞いております。

 今御指摘のように、我々としても、去年九月の共同宣言が基本であり、それに基づいてこれからの行動をとってもらいたい、このように思っておりますし、これは、北朝鮮だけではなくて、それぞれの国についてどうすべきかということを書いてあるわけでありますが、それにのっとっていきたいというふうに思っております。

 今のところ大きな前進がないというのは事実でありますけれども、しかし、これは粘り強く、六者協議が再開されたからには粘り強く話し合いを続けていくことによって、北朝鮮の核の計画を断念してもらって、そしてそれぞれ抱えている問題について議論する場をきっちりと設けていくということで話を前に進めていかなければならないと思います。

 基本は、北朝鮮が核保有国として動くということではなくて、これは断念してもらうということを基本にしなければならないと思っております。

原口委員 そこで伺いたいと思いますが、これには何らかの条件が必要なのか、北朝鮮の核放棄は。まさにこれは無条件で、昨年の協議の内容あるいは日朝平壌宣言にも反するものですから。

 報道によりますと、国連での制裁決議あるいはアメリカによる金融制裁の解除といったことも求めているようでございますが、これは私どもの立場とすれば、無条件で核放棄をしなければいけない、このように思うわけですが、政府の基本的なお考えを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 おっしゃるとおり、去年の九月の共同宣言、そしてまたこの七月のミサイルのときの国連安保理決議、十月の核実験の際の国連決議、いずれにおいても核の放棄というのはもう前提となっているわけでありますから、条件なく放棄をしてもらうというのが筋でございます。

原口委員 そこで少し気になるのは、佐々江局長は、拉致、核、ミサイル、この問題についてしっかり提起を基調講演でやっておりますが、一方、千英宇韓国首席代表は、六カ国協議の本会議では核廃棄のための初期措置とこれに対する対応措置だけを議論し、それ以外の問題は当分提起すべきではないということを基調講演でおっしゃったというふうに聞いております。

 これが事実だとすると、二国間の懸案、二国間協議または実務グループを通じて私たちが拉致の問題の解決を強くここで訴えていることは、聞きようによると、六カ国協議で行われる間、各国は六カ国協議の進展に障害を招き得る状況悪化措置を自制すべきだと促したとされておりますが、首席代表のこの御発言は日本に向けたものではないのか、六カ国協議で拉致問題を取り上げるのはやめようと一線を画したのではないかと言う人もおります。

 私は、本来人権の問題というものは何にも優先する問題だというふうに思いますし、北朝鮮が、拉致問題を集中的に取り上げる日本に対して六カ国協議に参加する資格もないなどと言ったことは、とんでもない人権に対する認識の間違いだというふうに思うんですが、官房長官の基本的なお考えを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 今般、国連の方でも改めて北朝鮮の人権に関する決議が可決をされたばかりでございます。

 この北朝鮮による拉致というのは、まさに、平穏に暮らしている家族のきずなを断ち切るという、考えられないような人権上の問題であるわけでございますが、言ってみれば、我が国の国家主権にもかかわる問題であるわけであります。ですからこそ、今回安倍内閣が発足するに当たって、拉致対策の本部を設け、担当大臣も設け、そして全閣僚を入れて、総理を本部長としてこの対策に当たっているわけであります。

 にせ札問題が国家主権へのチャレンジだとするならば、拉致問題というのはまさに人権そのものに対する、国家主権に対するチャレンジでもあるわけであって、我々としては断じて許すわけにはいかない問題であります。

 したがって、これまでの交渉においても、必ず我々は、核、ミサイル、そしてまた拉致の問題を解決ということは大前提として言ってきているわけでありまして、これに変更は全くないということでございます。

原口委員 これは一方で、まだ未確認なんですが、政府の一部の中にも、よその国のミッションあるいは大使館に対して、実は自分たちは今回は核だけだと思っているんだ、官邸が非常に強い意思を示すので仕方なくやっているんだと言わんばかりの対応をしているということも耳に入ってまいります。

 外交はやはり政府が一体となってやるべき政府の専権事項ですから、そういうばらばらとした、これは事実かどうかわかりません、けしからぬ対応が耳に入るようなことがないように御注意を申し上げて、一刻も早く、私たちはすべて、核廃絶に向かうべき被爆国としての責務、そして核廃絶に向けた、今まで何回も私たちがさまざまな努力を積み重ねてきていることに対する、核実験というのはまさに真っ向からの挑戦ですから、北朝鮮に対して一刻も早く核放棄を目指させるように、残りの五カ国もしっかりと足並みがそろうような、そのことを求めて、今回の議題に移りたいと思います。

 さて、今のイラクの状況と今般のイラク特措法に基づく基本計画の変更でございますが、この変更の背景とイラクの現状認識について、それぞれ防衛庁長官、外務大臣に伺いたいというふうに思います。

 イラクの情勢について、パウエル元国務長官は、内戦状態にあるというような旨をおっしゃっています。官房長官、外務大臣は今のイラクの状況をどのように認識されておられるのか、まず、その認識と、今回の基本計画の変更の背景について御説明をください。

麻生国務大臣 今御指摘がありましたように、イラク、特にバグダッドにおきましてはいわゆる宗派間の対立等々が激しさを増しているということに関しましては、私も同様な認識をいたしております。

 その一方で、イラクの政府では、バグダッドにおける集中的な治安対策ということで、この十二月の十六日に国民和解会議を開催するとか、また、和解促進に向けた取り組み等々、いろいろ懸命の努力を払っているということも事実であります。幸いにして、イラクの治安部隊というものは、昨年に比べまして約二十万人ふえて、今三十二万三千人まで増強されております。これらの取り組みが効果を上げることを期待しておりますが、なかなか、今の状況は、申し上げたとおりであります。

 内戦についての話は、いろいろな要人がいろいろな発言を行っておられることは承知いたしております。国際法上、内戦というのは定義が確立をしておりませんのは御存じのとおりです。したがって、内戦について議論をするかどうかよりは、これはやはり、今行われておりますイラク政府の努力というものが治安回復を目指しておるわけですけれども、そういう意味では、日本としては、国際社会と連携をしつつ、イラクの治安の回復、平和、また復興等々というものに積極的に支援していかなければならないというように理解をいたしております。

塩崎国務大臣 基本的に、麻生外務大臣の御認識と私は全く同じでございます。

 特に、最近いろいろな海外の方々とお話しをしていて、やはりバグダッドに集中してテロが多いということが言われているわけであって、それなりに、これまでの国際的な努力を含めた、また、イラクの人たちの努力を含めたいろいろな動きが功を奏している部分もあるわけですけれども、何分にも、バグダッドを中心に激しいテロがまだ続いているということは極めて憂慮すべきだと思いますので、我々としても、何ができるのか大いに考えていかなければならない、こう思っております。

原口委員 今おっしゃったような現状認識、私も共有するわけでございますが、米国の連邦議会の超党派の諮問機関、イラク研究グループの報告書を読んでみましても、これは二〇〇六年の十二月六日に出たものでございますが、この中にも、イラクの状況は深刻で悪化している、成功を保証し得る道はないが、展望は好転し得るというような文章がございました。

 さて、今のような状況を数字で見てみますと、これはまだ私は報道ベースのデータしか持っていませんが、十月の連合軍の死者ももう百人近く、そして対連合軍の攻撃も八十件に上ろうとして、この半年間でも十月は最高の死者、そして犠牲が出ているという状況でございます。

 今お二人の大臣がお話しになりましたように、イラクの治安軍が主にある宗派に偏っているために、バグダッド周辺は、スンニ派の多い地区にまさに治安そのものが行えないのではないかという指摘もあります。そのような状況をもとに今回基本計画を変更されたんでしょうか。基本計画の変更の理由を教えてください。

塩崎国務大臣 今回の基本計画の変更の理由というお尋ねでございます。

 九月に陸自部隊が帰国をしたわけでありますけれども、空自は、国連からの要請も踏まえて、クウェートとイラク国内各地の飛行場で、国連、そしてまた多国籍軍の人員と物資の空輸を続けているわけでございます。

 イラクの今の厳しい状態は今お話があったとおりでございますけれども、この国の民主国家としての再建というのは、我が国を含む国際社会の平和と安全の確保にとって極めて重要であることは、もう原口先生も御案内のとおりであります。

 また、国連と多国籍軍がイラクへの支援を継続する中で、我々が、引き続きイラクの再建とそれから復興に対して、国際社会における我が国の地位にふさわしい独自の責務を主体的な判断でもって果たしていくことが必要なんではないかということで、イラク特措法に基づく対応措置を継続することが必要という判断で、空自部隊の派遣期間を、法律の期限でございます来年の七月三十一日まで延長したところでございます。

原口委員 今の御答弁は今まで何回かなさっていますが、今回、陸自が日本へ帰ってきて、空自だけという理由についてはまた後ほど伺いたいと思います。

 先ほど申し上げましたアメリカのスタディーグループの研究などを見ても、中間選挙の影響もあるのかもわかりませんが、アメリカのイラクの出口戦略が、この提言どおり今の政権が、これは超党派で提言されていますからかなり重いものだと私は認識をしているんですが、もしこのとおりアメリカの政権が提言を採用するとすると、かなり大きなイラク政策への変更になるんではないかというふうに思います。

 ここで言われているのは大きく分けて二つでありまして、イラクと地域における新たな外交的、政治的な努力を強化すること。つまり、イラクの周辺国、シリアであるとかイランであるとか、そういう国々もイラクの混乱を望むものではない、むしろその国々に積極的にイラクの治安の安定に責任と役割を果たしてもらおう、こういう柱が一つであります。

 それからもう一つは、アメリカ合衆国が責任ある形でイラクから戦闘部隊を引き揚げ始められるように駐留米軍の主要任務を変更することというふうに書いています。今は米軍が先頭に立って治安の維持の役割をしているものをイラクの治安軍に引き継ごうという基本的な政策の変更だというふうに解釈をしています。

 そこで伺いますが、これはアメリカのスタディーグループの提言ですから、これを政権がとるといったコメントはどこにもありませんから。しかし、アメリカの国内の議論、あるいは選挙における議論を見てみても、やはり相当当初のもくろみから変わってきた。もともと私たちは、軍備でやれることは少ないんだ、逆に言うと、大量破壊兵器もなかったわけですが、あのタイミングで攻撃をしてしまうとイラクはテロリストの巣窟になるんではないか、日本としたらそういうイラク攻撃を支持すべきではないということを国会でも再三再四言ってまいりました。

 官房長官に伺いたいと思いますが、アメリカのイラクの出口戦略が大きく変更されようとしている、そういう議論が起きているというふうに私は認識していますが、この認識については、官房長官、どう思われますか。

塩崎国務大臣 今回の報告書は、超党派の有力な方々が集まって、かなり緻密な分析をしたものだというふうに認識しておるところでございます。ブッシュ大統領もこれを尊重するというふうにコメントされているように聞いているわけでありますけれども、目下、この報告書を踏まえながら、米政府の中で今後の方針については議論しているというふうに聞いております。

 ただ、一方で、すべての提案に全部従っていくというようなことではなくて、これまでやってきたこととの整合性等々を考えながら、政権としてとり得るもの、とり得ないもの、いろいろやはりあるんだろうと思います。したがって、原口議員のおっしゃるように、これが何らかの出口戦略についての変更に影響を与えるのではないかという意味においてはそのとおりだとは思いますけれども、もう御案内のように、米軍の役割についても、全部を撤退するということを言っているわけではなくて、役割が変わるんだ、こういうことでございます。

 したがって、これから米政府の中で議論をしていく、そして、我々はもちろん独自の判断で今の行動をとっているわけでありますから、当然決めるときも独自の判断で決めていくことになりますけれども、やはり、アメリカがどういうふうにこれから政策を変更していくのか、また、国際社会がそれにどう呼応していくのかということをよく見ながら、そして意思疎通を図りながら、何よりも大事なのは、イラクが平和を取り戻して、国内の新たなる国家建設に立ち向かえるようにしていくということが一番大事でありますから、今回、シリア、イラン、こういったところも関与しながらこのイラクの平穏を回復するということを提案しているわけでありますので、我々としてもその動きをよく見ていかなければならない、そして主体的に判断をしていかなければならないと思っております。

原口委員 その認識については若干私は違うところがあります。イラクの治安部隊は百十二個大隊というふうに言われています。それで、個別でオペレートできる、米軍の支援なしに行動できるのは大体十三個大隊。三年間で十三個大隊という数をアメリカ中心に育ててきたというのは大変大きなことですし、また、目標の三十五万人に近づきつつあるということは、イラク政府がみずからの責任においてみずからの治安を背負う、そういう役割を果たしつつあるというふうには思うんですが、しかし、このスタディーグループの報告書どおり米軍が撤退をもしできるとすると、残りの期限で百部隊を育てられるとはなかなか考えられない。そうすると、それほど大きな支援が集中的に必要なのではないかというふうに私は考えます。

 さて、イラクの自衛隊派遣の合憲性の問題に入る前に、防衛庁長官とは、ちょうど二〇〇一年のあれは八月でございました、サダム・フセイン時代のイラクへ予算委員会から派遣をされて、そしてアーメリアという防空ごう、ここは、米軍の誤爆によって五百人近い女性と子供が亡くなった、そういう防空ごうでございました。また、防衛庁長官とはバグダッド中央病院にも御一緒させていただいて、そこで私たちが目の当たりにした現実は、彼らが言うところの劣化ウラン弾による小児白血病によって苦しんでいる子供たちの姿でありました。

 防衛庁長官は当時予算委員会の理事で、私たちの団の副団長でいらっしゃいましたが、国連の経済制裁が何をもたらすのか、そして、それがかえって政権を強めてしまっていて、逆に言うと、大国の大きな力が逆にテロを生む土壌を生んでいるのではないのかな、私は、そのときそのように感じたわけです。

 防衛庁長官に伺いたいんですが、一向にテロがおさまる、そういう気配を見せないイラクでテロを生む土壌というのはどこにあるのか。あれはジョルダンの外務大臣だったと思いますが、レジスタンスとテロはどう違うのかということも私たちに突きつけられました。防衛庁長官の基本的な、テロが生まれる土壌について伺いたい。何がテロを生んでいるのか。

久間国務大臣 一概に何がということを断言することはできないと思います。よく、貧困がテロを生むと言われていますけれども、必ずしも、貧困だからといってテロが生まれるわけではないわけでして、例えば北朝鮮なんか見ておっても、貧困だけれどもテロは生まれていない。もう完全に抑え込んでいるわけですね。だから、テロというのは、そこのところが何によって行われるかというのはなかなか難しいと思いますけれども、少なくともフセイン政権下時代にはテロはなかったわけであります。

 それで、現在の方が、テロというかそういう内戦というか、私は内戦とはとっていなくて、むしろ治安が悪いという状態で、内戦という場合は、ある組織と政府との戦いとかそういうのが内戦ですけれども、片一方は組織立った形でなくて、何となく治安を乱している、そういう感じだと思いますからそうですけれども、そういうような土壌ですが、やはり基本的には、米軍が今抑え込むことができていない、そして、その米軍に対する反感みたいなものが非常に根強い、そういったのがどうもあるような気がしてならないんです。

 イギリスとアメリカは一緒になって戦争をやったんですけれども、イギリスに対する反感はそれほどなくて、抑えている地域が違うのかもしれませんけれども、アメリカが抑えている地域で非常に反乱といいますかテロが横行している。そういったところにも何かあるんじゃないかなというふうに思いながら、何せ、向こうに行ったことがその後ないわけでございますから現地の状況もわかりませんので、判断すべき情報も得ておりませんけれども、いろいろな人たちから話を聞きますと、そういう反米の感情が非常に根深い、そういったところに一因もあるんじゃないかなとも思っております。

原口委員 ちょうど、当時私たちが二〇〇一年に伺ったとき、イランは第二次ハタミ政権が発足したそのときでもありました。ハタミ元大統領は文明の対話ということを言われて、さまざまな国々がそれぞれの文明を尊重し寛容であることを非常に強調されていました。みずからの国の文化や歴史や伝統を汚されたという思いがある人、あるいは、自分の子供を無残にも、無慈悲にも殺されたという親は、決して暴力を許すわけにはいきませんが、テロとも手を結ぶというような土壌を目の当たりにしたような気がいたしております。

 そこで、自衛隊の今の派遣でございますが、イラクの多国籍軍の実態は、米英等の実質は有志連合軍です。今おっしゃるように、治安の確保がおぼつかない中で掃討作戦の遂行をしている状況でありますが、このような活動を自衛隊が支援しているということについて、武力行使の一体化に関する一九九〇年十月二十六日の政府統一見解からすると果たしてどうなのかという議論をしてみたいと思います。

 武力行使の一体化に関する一九九〇年十月二十六日の政府統一見解は、防衛庁長官に伺いますが、現在も有効という理解でよろしいでしょうか。

久間国務大臣 私は、考え方は同じであろうと思っております。

原口委員 このときの統一見解は、参加という概念のもとに、いわゆる二つの要件を付してしっかりと憲法上の合憲性を担保する、そういう統一見解が出ているわけでございますが、他方で、連合暫定施政局、CPA指令第十七号、これは二〇〇三年の十二月十二日に出されていますが、自衛隊の法的地位は多国籍軍の一員ということで参加となっております。これは、一九九〇年の十月二十六日の、今、防衛庁長官が現在も有効であるとおっしゃった政府統一見解と矛盾しているんではないでしょうか。

久間国務大臣 イラクに行っている我が自衛隊は戦闘に参加しているわけじゃございませんけれども、イラクに行っていろいろな活動をしておりますときに、よその多国籍軍と違って我が国の自衛隊だけが法的な地位を持たないということになるとこれまた大変なことでございまして、向こうの法律で裁かれるということになりますとそれはおかしなことになりますから、そこは多国籍軍と同じような扱いにしてもらう。そういう意味では、今おっしゃられたようになっております。

 しかしながら、あくまでも自衛隊は主体的に我が国の指揮下で動いているわけでございますから、そういう意味では、向こうの組織の中に組み込まれて、その指令のもとに動いているということではないわけでございますから、その辺は整理はできるんじゃないかと思っております。

原口委員 私は、「検証 戦争責任」という本がことし出されて、この中の何人かの方とも議論をさせていただきましたが、一番まずいのは、現状で原則が変わる。六十一年前に終わったあの戦争はなぜ始められたのか、あるいは、なぜ三年数カ月もやめることができなかったのか、それを考えると、間違った対処に間違った対処を積み重ねていく、現状に引っ張られて原則が変わっていく、そのことが最も危険なことであるというふうに私は思います。

 ですから、原理原則を立てたら、それを現状に引きずられて変えるという姿勢はとるべきではないと私は思います。

 さらに質問をいたします。

 その九〇年十月二十六日の政府統一見解の二つの柱というのは、一個目、いわゆる、政府は、統合された司令部のもとにあると言いながら、今、防衛庁長官がおっしゃったように、指揮下にないと主張されています。あるいは、これは二つ目ですが、多国籍軍の中で行動するとおっしゃりながら一員として行動しない。つまり、もうここで論理的に破綻しているんですよ。

 自衛隊は統合された司令部で連絡調整を行っていますが、この統合された司令部というのは何のことですか。政府統一見解に言う統合された司令部の意味するものを教えてください。

山崎政府参考人 多国籍軍の統一した司令部というふうに解釈をしております。

原口委員 そのもとで私たちの自衛隊も活動をしているわけですね。それはその認識でよろしいですか。

山崎政府参考人 委員御指摘のとおりだと思います。

原口委員 私たちは、同盟国であるアメリカの議会で何がどう議論されているかということについても踏まえた上で、きょうここで議論をしているんです。

 アメリカの議会では何と言っているかというと、今局長がお話しになりましたように、自衛隊は、統合された司令部、これは多国籍軍の司令部で連絡調整を行っているということでございますが、アメリカの議会では、この今の司令部は、アメリカ政府は、議会と言いました、訂正します、アメリカ政府は、この統合された司令部ということは米軍司令部と言っているわけです。これはアメリカ議会での答弁ですから、私たちが日本の国会で議論をしているのと同じ重みを持つ答弁であります。

 実態として、自衛隊は、米軍指揮下で、米軍の武力行使と一体化した活動を行っているんじゃありませんか。反論があれば教えてください。

久間国務大臣 いや、決してそういうことではございませんで、先ほど言いましたように、形としては、そういう統合された多国籍軍の司令部、実質的には米軍の司令部がその統合された司令部の長を兼ねておればそうなるんでしょうけれども、その傘下に入っているのは事実でございますけれども、その指揮下で行動するのではなくて、その指揮下に入っていますけれども、主体的に自衛隊はあくまで我が国の指令で動く、そういう形になっておりますから、アメリカ軍の命令によってああしろこうしろで動いているわけじゃございません。調整としてそこに行っていて、調整として行っている以上はそこの指揮下で調整を行っておるということでございますから、武力行使の中に我が国の自衛隊が組み込まれているということではございませんので、そこは整理して、最初からそういう形で、別に原理原則が途中で変わったわけじゃございませんので、御理解賜りたいと思います。

原口委員 いや、だから、わざわざ今アメリカの議会の議論を御紹介申し上げたわけで、実質的にと今おっしゃいましたけれども、まさにこれは米軍そのものですよ。米軍そのもののもとで、指揮下にはないと強弁しながら、司令部のもとで活動しているというのが今の自衛隊の実態であるということを言わざるを得ません。

 しかし、幾ら何でも次のことは否定できないと思います。多国籍軍の一員として行動しているということ、これは間違いないですね。事務方でも結構です。

久間国務大臣 多国籍軍の一員としての扱いを受けておるということについては間違いございません。

原口委員 いや、だから、私が今十分ぐらいの間で議論をしているのは、一九九〇年の政府統一見解で、海外において武力行使と一体となるということは憲法が禁じていますから、その禁じているものに二つ柱がある。それは、司令部のいわゆる指揮下の問題と、それから、一員であるというこの問題。この二つが、少なくとも、指揮下にない、一員でないということがはっきりしなければ、そこは一九九〇年の統一見解を踏み出したことになるのではないかと思うから申し上げておるわけでございます。

 今まで陸自が展開していましたから、そこへ向けての補給やさまざまなこともあったと思います。

 私も、直接、石破元長官やあるいは多くの皆さんと今回、夏、行かせていただいて、大変な御苦労であります。夏のあの輸送機の中はもう五十度を超えるような、そういう暑さの中で、オーストラリア軍やあるいはイギリス軍には犠牲が出る中、大変なお仕事をなさっている、日本の国際貢献について貴重な御尽力をいただいている自衛隊員お一人お一人に私たちも感謝と敬意を表して帰ってきました。しかし、そのことと、私たちが憲法の枠の中できっちり活動しているかということをチェックすること、これはまた別ですから、強くそこのところを申し上げておきたいと思います。

 では、今回、航空自衛隊部隊のみを残していらっしゃる理由は何ですか。これは官房長官でも結構です。

塩崎国務大臣 空自をなぜ残したのか、こういうことでございますけれども、これまでにも行ってきている多国籍軍の活動の支援に加えて、国連からも要請があったことで、空自の、新たな国連の活動の支援も行うということで継続をさせているわけであります。

 国連については、もう御案内のように、アナン事務総長から当時の小泉総理に要望が、麻生外務大臣にもありましたが、そういうことでございまして、バグダッドやエルビルへの空輸を行っているということでございます。

原口委員 空自を残した理由は国連のアナン事務総長からの要請ということで、これは後で結構ですから、いつ、どのような要請があったかということを文書でこの委員会に提示をお願いしたいと思いますが、理事会でお諮りいただけますか。

浜田委員長 はい、理事会で検討させていただきます。

原口委員 さらに質疑を続けますが、イラク特措法上、武器弾薬の輸送は、これは特措法、私もいろいろな制定過程で議論に加わらせていただきましたけれども、武器弾薬の輸送は特措法上可能でありますか、官房長官。

塩崎国務大臣 今御指摘の、イラク特措法上、武器弾薬については輸送の対象から除外されておらず、可能でございます。

原口委員 さらに、基本計画についてでありますが、基本計画には武器弾薬の輸送を禁じる旨の規定は入っておりませんが、この認識は正しいでしょうか。

塩崎国務大臣 基本計画上、武器弾薬の輸送については明示されておりませんが、輸送の対象からは除外されておりません。

原口委員 しかし、実際には武器弾薬の輸送は行われていないとされています。これはどうしてでしょうか。実施要項において武器弾薬の輸送は行わないこととされているというふうに私は認識をしていますが、この認識は正しゅうございますでしょうか。

久間国務大臣 おっしゃるとおり、内閣で決めました基本計画には入っておりませんけれども、実施要項では外しております。

原口委員 そうですね。つまり、実施要項で外しているということは、武器弾薬の輸送は行わない、そして行われていないという認識を私は持ちますが、それで結構でしょうか。

久間国務大臣 専ら武器弾薬を輸送するということは行われておりません。

 ただ、通常の武器を携行する兵士を輸送する場合もございますから、そういう場合に、弾が入ったピストルを携行している場合に、それは武器弾薬の輸送じゃないかと言われますと、それは実施要項で想定しておる武器弾薬の輸送ではないということで、そういう場合は可能であります。

原口委員 なぜこんなことを聞くかというと、何でもって武器弾薬の輸送は行わないことにされているかというのを明確にするとともに、これから質問いたしますが、イラクにおける陸上自衛隊の活動が詳細に公表されて、そして、イラクの人道復興支援に対する自衛隊の貢献というのは広く国民やあるいはイラクの皆さん、それから世界の皆さんにも知られるところとなりました。それに対して、イラクにおける航空自衛隊の活動が輸送回数と輸送総重量しか公表されていないんですね。

 私は、ここはどうしてなんだろうと思います。片っ方で、陸自では非常に詳細に開示をされて、非常に我が国の人道復興支援に対する貢献を、イラクの皆さんも、また私たち国会もしっかりと確認することができました。しかし、航空自衛隊の活動が輸送回数と輸送総重量しか公表されていない。これは事務方でも結構ですが、理由を教えてください。

塩崎国務大臣 こういった活動について、公開、ディスクロージャーをしていくということが大事であることはよくわかっているわけでございますし、可能な限り公表しているつもりでございます。

 一方、今御指摘のように、空自の活動につきましては、定期的にまとめて、その期間の輸送回数とか大まかな輸送物資等の区分であるとか、あるいは輸送物資の重量などについて公表しているわけでありますが、やはり、この公表に当たって注意をしなければいけない点が幾つかあるということで、今御指摘のようなことになっているわけであります。

 一つは、各国の軍隊などがイラク国内で輸送活動を実施しているわけでありますけれども、それらの国々が基本的には活動内容を公表していないという事実が一つございます。もう一つは、輸送している他国の方々の関係ということもあって、そういった関係諸国との関係、そしてまた安全確保という観点から、おのずと公表できる程度というのは変わってくる。

 そういう点に配慮をしながら、精いっぱい公表できるところは公表しているというところでございます。

原口委員 いや、私がこの委員会の理事会で事務当局から聞いたところによりますと、今のようなお答えではなかったですよ。国連と多国籍軍から公表しないでくれと言われたから公表していないんだということでありました。そこはいかがですか。あるいは、治安維持にかかわっている軍に対する補給活動があるから公開をしていないというようなお答えでありましたが、いかがですか。

山崎政府参考人 各国とも、物資の補給等については、軍事作戦ということもございまして、一切公表をしていないということでございます。

 それともう一つは、そういう物資の流れ等がある程度わかりますと、軍事作戦上、攻撃の対象になりかねないということがあって、要員の安全確保上公表しないということではないかというふうに考えております。

原口委員 いや、局長、この間理事会でお話しになったのは、国連と多国籍軍から要請があったからということであったと思います。

 先ほどるる御答弁を求めましたけれども、武器弾薬の輸送を行っていないんですよ。武器弾薬の輸送を行っておらず、人道復興支援に貢献しているものを開示できない理由が今のことでは、ほかのところはまさに日本国憲法のような憲法はありませんから、武器も運べば弾薬も運んでいるでしょう。そこまで私は開示しろなんということを申し上げているのではありません。そうではなくて、人道復興支援をやっているのであれば、その中身はしっかりと開示をし、そして日本の貢献を世界に対してきっちり御説明し、国民に対しても御理解いただくようにつまびらかにするということは私たちの責務ではないでしょうかということを伺っているわけです。

 もし、安全がどうのこうのと言うのであれば、陸自についても同じことが言えるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

久間国務大臣 陸自の場合は限られた一つのエリアの中で行動しておりましたから、マスコミ等も含めて、割とどういう活動をしているかが報告できたわけでございますけれども、空の場合は、多国籍軍、国連の職員あるいはまた米軍、そういったものを運んだりいろいろなことをやっておりまして、その中身も、それぞれの国によって補給物資もいろいろ違うわけでございます。そして、それぞれの国が、どういう補給物資をどこからどこに運んだかということを明らかにしないでほしいというような思惑がありますから、そうなりますと、運んでいる我々としても手のうちをやはり外に対して言うわけにいかない、そういう点もございます。

 それともう一つは、今度は具体的な話になるかもしれませんけれども、どうも聞いてみますと、やはり、先ほどちょっと話が出ましたが、細かく、例えば、同じ食料そのものを運んでいるとしても、これが治安活動のために働いている人の食べ物なのか人道復興のために働いている人の食べ物なのか、国連の職員あるいはまた多国籍軍、米軍の場合に、それを全部仕分けがなかなか難しいから、どの部分だということを各国ともなかなか言えないんじゃないかと思います。そういうことも背景にはあろうかと思います。

 しかし、いずれにしましても、専ら武器弾薬を運ぶということはいたしておりません。その辺については、それを隠すために公にしていないんじゃないかというふうな、もしそういうおっしゃり方であったとすれば、それは非常に誤解を与えますので、我が自衛隊が運んでいるのは、先ほど言いましたように、たまたま兵士が携行する武器については一緒に運ぶことがございますけれども、武器弾薬を専ら運ぶということはいたしておりませんので、その辺は御理解賜りたいと思います。

原口委員 私は、武器弾薬を運んでいるのを隠すために皆さん隠しているなんて一言も申し上げていませんし、そのようにも考えていません。そのことではなくて、むしろ、今まで陸自が出ていたときは、陸自に対するいろいろな補給もあったでしょう、あるいは国内でのさまざまな物資の調達もあったでしょう。しかし、人道復興支援をやっていると皆さんおっしゃっているわけです。

 先ほど前半で議論をしたように、米軍のほとんどの活動は治安維持ですよ、そしてテロリストの掃討活動であって、テロリストの掃討活動を行っている米軍の兵士を運んでいるということが主であればそれは開示をしにくいでしょうけれども、しかし、国連の人道復興支援、そして我が国が行う人道復興支援事業を開示できないその理由がよくわからないんです。

 安全保障上の理由で、私たちも直接アリ・アルサレムの空軍基地で、米軍の空軍基地から飛び立っていく自衛隊の皆さんともお話をしました、あの方々に危険が及ぶようなことであれば私は絶対開示すべきじゃないと思うけれども、だとするんだったら、百歩下がって、彼らが帰国した後、開示をしっかりと詳細にやるべきだと思いますし、逆に、多国籍軍や国連からの要請があったというんであれば、どのレベルで、だれが何と言ったのかということも私たちに納得のいくように開示をしていただきたいんですが、防衛庁長官、いかがですか。

久間国務大臣 陸自につきましては、活動が終了したことから、各国の意向や動向なども踏まえつつ、将来、同様の活動をすることになる場合の安全確保や運用などに留意しながらできるだけ成果を開示してきておりますが、空自も、活動が終了した後には、陸自と同様な考慮をした上でできる限りの開示の努力を行ってまいりたいとは考えております。

原口委員 イラク特措法に基づく支援実績に対して帰国後しっかりとした開示をするという担保できる答弁をいただいたということで、この問題は次に進みたいと思います。

 先ほどくしくも防衛庁長官がおっしゃったように、治安維持活動と人道復興支援活動の物資が分けられないというふうに御答弁をいただきました。あるいは、国連や多国籍軍からも支援実績を開示しないように要請されると聞きましたけれども、そのことについてもお答えがなかったものですから。

 だれがそんなことをおっしゃっているんでしょうか。国連が、人道復興支援について、それぞれの国が国連決議に基づいて行う人道復興支援事業を開示するななどということを本当に言うんでしょうか。現場のそれこそ責任者の人たちの間で交わされたものを国会で御答弁そのままなさっているということはあり得ないと思いますが、どのレベルで開示をしないでくれと言っているんでしょうか、お答えください。事務方で結構です。

久間国務大臣 国連の場合もそうですけれども、どういうルートで何をどういう量だけ運んでいるという、そういう手のうちをとにかく明かすということは、どこで攻撃されるかわからないときには、やはりみんな避けたいという気持ちはあるわけでございます。だから、現場で、私は、国連は余り言っていないんじゃないかなという思いはしますけれども、具体的にどの国がそれについて反対している、そういうことを言うことすらやはり控えさせていただきたいというのがみんなの気持ちだと思います。

原口委員 防衛庁長官は正直な方ですから、国連は言っていないんじゃないかなと。私は、言うわけないと思いますよ。

 どの国がというよりも、逆にこれは、国連のどのレベルでどのような要請が、非開示の要請が来たかということは事務方の方からお答えいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 空自の輸送活動の内容の公表に当たりましては、イラク国内との間で輸送活動を実施している各国軍隊も、これまで議論がございましたように、基本的には活動内容を公表していないということや、また、自国の軍隊を派遣しております関係諸国、国連との関係や、要員の安全確保といった観点に配慮して、同様にまた国連や各国とも、みずからの要員の安全確保に最大限配慮している、そういう背景がございます。

 空自部隊の活動に関しましては、これまでも国連や多国籍軍関係者と随時緊密に連絡をとり合ってきておりますけれども、こうした相手国等との関係もありますので、やりとりの具体的な内容についてはここでは申し上げることは差し控えさせていただきたい、そういうふうに思っております。

原口委員 いやいや、やりとりの具体的な内容をおっしゃってくださいと言っているんじゃないですよ。開示をするなと。そんな、よその国の議会を見てみても、かなり詳細に報告が出ていますよ、しかも人道復興支援事業であればあるほど。

 国連のどのレベルで、だれが、何を根拠に、我が国の人道復興支援活動について、この国会にも国民にも開示をするなと言ったんでしょうか。そんな国連というのはあるんでしょうか。

鈴木政府参考人 今申し上げましたように、国連も含めました相手方との関係につきましては、そういったやりとりの内容及びレベルというようなことに関しましても、やりとりの詳細に立ち入るものでございますので、ここでは御説明を差し控えさせていただきたいと思います。

原口委員 それは納得できませんよ。国民の税金を使って悪いことをしに行っているわけじゃないんですよ。

 大変な危険を冒しながらテロの掃討で給油活動をする、そういう自衛隊員の皆さんとも私たちはお話をしました。中には、もうこの派遣で三回目になるという自衛隊員の方もいらっしゃいました。そして、日本大使館は、クウェートの大使館で、イラクに展開する米軍やあるいは韓国軍、そして日本の自衛隊の交流の会もなさっていて、私たち、米軍の兵士や韓国軍の兵士も一緒に激励させていただきました。その場では、何カ月かに一度、酒席でございましたけれども、アメリカ軍の人たちは一口もお酒には口をつけませんでした。毎日のように自分たちの仲間が亡くなっていくその事態を、彼らは大変な思いで毎日毎日を過ごしていました。

 そういう状況であるにもかかわらず、だれが要請されたか、国連のだれが言ったかも言えないんですか。そんな審議であれば、国民の疑問に対して私たちがしっかりと誠実に答えることはできないと思いますが、いかがですか。

鈴木政府参考人 今まで累次お答え申し上げておりますとおり、やはり、各国あるいは国連の事情等、特に安全確保等に絡む問題でもありますので、そういったレベルの問題も含めまして、あるいはどういう具体的なやりとりをしているかということも含めまして、現段階ではなかなかここで具体的には御説明しにくい部分があるということでございます。

 他方、先ほど防衛庁長官よりも御説明がありましたように、将来、一段落したようなところで情報開示につきましてはさらに工夫をしていきたいというふうに考えておるところでございますので、そういった中でまた委員御指摘のような点についてはさらに検討、工夫したいというふうにも考えます。

 現段階ではなかなか具体的な点についての御説明はしにくいということでございます。

原口委員 本当に言っているんですか。

 実際に空軍基地へ行ってみますと、この特措法の委員会の中で議論されていたことと現地とでも随分違ったことがありました。例えば飛行機の色。この委員会では、青い色の方が青い空に一体となっていいんだというような御答弁でした。しかし、現地へ行けば、韓国軍や米軍の飛行機は青くありません。灰色ですよ。むしろ青い方が危ないんじゃないかと思えるぐらい砂漠の中では青い色が目立っていました。

 あるいは、この御議論の中で、オーストラリア軍の兵士が地上から撃たれて亡くなったということもあって、厚い鉄板が輸送機には装着をされていました。しかし、一回一回、三人の自衛隊員の人たちで厚い重い鉄板を動かさなきゃいけないということも、現地に行ってわかりました。

 私は、だれが言ったか、どのところから要請されたかも言えないなんということは認めるわけにいきません。何となれば、それは皆さんがおもんぱかっておっしゃっているかもわからないからです、勝手に。

 先ほど、憲法との整合性、いわゆる統合された司令部のもとにあると言いながら指揮下にないと主張してみたり、多国籍軍の中で行動すると言いながら一員として行動しない。もうここに矛盾が出ているんですよ。その矛盾を覆い隠すために、現実は、それこそ多国籍軍と一体となってシャトルのように飛び立っている、それが現実じゃないですか。

 現実にやっていることをどうして国民に示さないんですか。なぜ、今イラクで我が自衛隊がやっていることをつまびらかにできないのか。それも、どこかよその人が言ったからなんというのは決して認めるわけにはいかないということを申し上げて、これも、委員長、引き続き開示を強く求めますので、理事会協議をお願い申し上げます。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

原口委員 最後に、核の問題について少し議論をしていきたいと思います。

 何となれば、これまでの脅威と違って、テロリストは非対称性の脅威を持つ。今回のイギリスでのあの事件を持ち出すまでもなく、核が拡散すると、いわゆるダーティーボムやさまざまな核関連物質がテロに使われる、そういう危険性が増すと思います。

 官房長官に伺いたいんですが、我が国は、一九九四年から累次の国連決議、核廃絶決議を国連に出して、その先頭に立ってきたというふうに思いますが、我が国の核廃絶についての基本的なスタンス、そして認識を官房長官に伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 日本は唯一の被爆国でございます。この重みのもとで、今日まで非核三原則という原則が累次の内閣でもって一貫してとられてきたわけでございますし、また、安倍内閣もそのとおりでございます。

 今お話ございましたように、国連総会への核軍縮決議案の提出であるとかCTBTの早期発効に向けた働きかけ等々、外交においてもこの方向で努力をしているところでありまして、国内的にも原子力基本法やNPT上の義務というものを負っていて、私ども日本政府としてこの考え方を変えるという考え方は全くございません。

原口委員 そこで、核議論について、市井では、日本は核保有を本格的に検討すべきではないかと言う識者もおります。私は、核について、なぜ我が国が核を保有しないか、そして非核三原則を堅持するのか、世界は核廃絶に向かうべきかということをきっちり議論すべきだというふうに思っています。

 一九九六年のハーグの国際司法裁判所で明確なディレクションが出ています。それは、すべての締約国は核廃絶、核の縮小じゃないんですよ、核廃絶に向けた努力義務を負うということが示されているというふうに思います。我が国も、NPT条約の六条、NPTに加わっているすべての締約国はこの責務を負うというふうに私は考えておりますが、官房長官、この認識は間違いありませんか。

塩崎国務大臣 CTBTの批准国として、CTBTの条約上の義務を負っていると思います。

原口委員 NPTについてもCTBTについても同じだというふうに思います。

 さすれば、核というものが拡散する、核を保有する国が出る、あるいは我が国みずからが核を保有する、これは国益に合致したことでしょうか。核を我が国が保有すると、これは我が国も他国と同じように、いわゆるP5と同じように、核を持って強国になるんでしょうか、それとも、我が国が失う利益の方が大きいんでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど来申し上げているように、我が国はずっと非核三原則を言ってみれば国是として守ってきたことであり、またこれからも守るということであります。これを守るということが国益に合致しているというふうに考えております。

原口委員 守るということがどうして国益に合致するんでしょうか。そこのところは私はしっかりと議論をすべきだというふうに思います。

 我が国が核を持たないという決意をしっかりと示して、核廃絶に向けた先頭に立つということがどうして国益に合致するか、この議論は積極的にやるべきだと私は考えていますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 国会等で議論していただくことは結構なことだと思います。

原口委員 いや、国会だけでなくて、そこは麻生大臣にあえて今まで聞いてきておりませんけれども、核保有がどうして我が国の国益にそぐわないか、核を持つといったことを言った瞬間に何が起こるかという議論は、核廃絶に向けた努力をする人間であればあるほど、きっちり国民の皆さんに御理解をいただくように議論しておく必要があると私は思うんです。国会で議論すればいいという話では必ずしもない。

 政府は、我が国が核保有をすることがいかに国益にそぐわないか、政府としてどう考えているか、このことについて少しブレークダウンしてお答えをいただきたい。官房長官。

塩崎国務大臣 核を持たない、そしてまたつくらない、さらに持ち込まないということが我が国の国益に合致をしているということでやってきたわけでありまして、今お話しのように、持たないことが国益になぜ合致するのか、あるいは非核三原則がなぜ国益に合致するのかということは議論すべきだというお考えは、私もそのとおりだと思います。

原口委員 そこで、防衛庁長官あるいは外務大臣にも、なぜ我が国が核を持たないか、あるいは持つことが国益に背くのか、このことの具体的な理由を教えてください。

久間国務大臣 それは、それぞれの政治家のまた考え方が違いますから一概には言えないかもしれませんが、私に言わせれば、日本が核兵器を持ったとしても抑止力に基本的にならない、持たないことによって各国に核兵器の廃絶を迫っていくことの方がより国益にかなう、そう思っているからであります。

麻生国務大臣 基本的に、持つ、持たない、持ち込ませないという話は、昭和四十何年から、沖縄返還、どこかその辺ぐらいから、非常にこの論議が国是みたいな形で話になっていったと記憶をします。

 その当時と今と状況が違ったのでと言った途端に、議論するのはけしからぬと民主党に言われましたので言わなくなったというのがこれまでの議論で、そちらの方からやれと言われると、ちょっと正直、こちらも答弁のしようがないので。これをお答えした途端に、何か、やはりそうじゃないかと言われると、ちょっと正直困りますので。

 党内不統一じゃない、閣内不統一とは言わない、何でしたっけ、そういった話ですので、これは答弁は慎重の上にも慎重の上に、その他、私にいろいろ他の委員会で言われた方々には、原口先生の御質問に対してお答えを申し上げておるので、私の方から申し上げているんじゃありませんよということを重ねて申し上げた上で、僕は、議論の形として、今の方々は、どうしてなのかという原口先生と同じ疑問をお持ちの若い方は圧倒的に多いと思います。

 したがって、この問題に関していろいろな形で議論をされるという機会まで失うのはいかがなものかというのが率直なところであります。

原口委員 私は、核を持たないという決意の論理的な根拠をつまびらかにすべきだということを申し上げていて、自分の本で恐縮ですけれども、この間、石破筆頭理事に御指導いただいて、それを本にいたしました、「平和」という本ですけれども。その中で、石破元防衛庁長官は五つぐらい理由を挙げて、なぜ核保有というものが我が国の国益に背くかということをお話しいただきました。

 防衛庁長官がお話しになりましたように、これは我が国だけではなくて、核自体がもう抑止力にならない。逆に言うと、二万、三万発と言われるような核が世界にあって、それの管理が本当にできているんだろうか。今、その管理のミスで大規模なテロや大規模な戦争に核が使われていないことの方がレアではないか、そちらのリスクの方が大きいんではないか。これがまず第一点。

 二点目は、核に対する、それを無力化するような技術も今進んできていて、そして、核を持つためには実験場が必要であります。日本でどこで実験するのか。その費用も、あるいは我が国の歴史からしてみてもこれは大変不合理なことでありますし、NPT条約にも違反するし、また、私たちは原子力に約四割を頼っていますが、我が国が核保有すると言った瞬間に、我が国はウランの輸入といったことについても大きな支障を来す、そういうことになるでしょう。

 私は、麻生外務大臣、ひっかけるためにきょう質問しているんじゃ全然ないです。逆に言うと、我が国が非核三原則を守り、核廃絶の先頭に立つということをしっかり国会の中で議論すべきで、ただ要人がそろそろ日本も核の議論をすると言ったときに、なぜそれが国益にそぐわないかということを頭言葉で言わないと、ひょっとすると持つということを考えているんじゃないかというあらぬ懸念を抱かれるから、そのことを民主党の議員やほかの野党の議員は指摘しているんであって、核がいかに無残で、そして人間性を無視した兵器であるかということをもっともっときっちり国会でもつまびらかにすべきだということを申し上げておきます。

 これで最後にいたしますが、二つの資料と協議をお願いいたしました。私は、イラク特措法、これ自体がかなり無理のある法律だと思いますし、現在空自がこのような形で出ていることも、一刻も早く帰国をして、そして憲法の原理原則に沿った形にすべきだということを最後に指摘を申し上げまして、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 イラク問題に移る前に、ちょうど一週間前に沖縄の読谷村で、米軍のトリイ通信施設の沖合約二百メートルの海上で、海兵隊のCH53E大型輸送ヘリが、つり下げていた輸送中の米軍車両を落下させ水没させた、こういう事件がありました。

 それについて聞きますが、海兵隊の報道部は、ヘリが乱気流に遭い、乗員とヘリの安全確保のため荷物を投下しなければならなかったと発表しています。車両を落下させた海域はどういうところだ、その認識をまず伺いたいと思います。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 ただいま先生御指摘の件でございますけれども、去る十二月の十三日、午後四時十五分ごろでございますが、米海兵隊所属のCH53Eヘリがトリイの通信施設から車両、これは小型の乗用のバンでございますが、これをつり下げまして、渡名喜村にあります出砂島の射爆撃場、これに向かいまして輸送中に、今先生御指摘のように、乱気流に巻き込まれたことから、安全のために当該車両を同トリイ通信施設の沖の海上に投下したということでございます。

 それで、現段階におきまして、被害等の状況あるいは浮遊している油等は発見されておりませんが、今申しましたその落下地点について、具体的なピンポイントでまだ正確に申し上げる段階にはございませんけれども、これまでのところ、車両も見つかっておりますが、その地点は、陸岸から大体六百メートル、水深二十メートルぐらいのところで見つかっております。

 それから、たった今入った情報でございますけれども、十四時前、十三時五十分ごろでしょうか、当該自動車につきましては先ほど引き揚げをしたという連絡を受けているところでございます。

 いずれにいたしましても、こうした件につきましては、あってはならない事故でございまして、私ども、米軍当局には、その原因究明それから再発防止、何よりも安全確保といったことについて申し入れをしているところでございます。現時点で申し上げられるのは、今申し上げたような内容になります。

赤嶺委員 水没した軍用車両は、米軍が投下させた直後から捜査をしたけれども見つからなかった、周辺海域が荒いため捜査も打ち切ったと。きのう、漁民が見つけているわけですよね。それで米軍に通報して引き揚げさせた、そういう経過だろうと思うんですが、この海域はどういう海域、どういう地域だという認識ですか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 今の海域、すなわち発見されたところが、陸岸から約六百メートル、そこから水深約二十メートルのところでございまして、六百メートルということですので、大変陸岸に近いところであります。いわゆる港、また近くには航路がある。それから、もう少し離れたところではございますが、モズクの養殖場等々いろいろある、また漁船も出ている海域であるということは承知しているところでございます。

 ただ、当該自動車を運ぶに当たりまして、米軍当局は、トリイの施設からいわゆる住宅部分、住宅地の上空は飛ばないということで、すぐに海に出るということで航空路を設定しておりました。それが突風の関係で今申し上げたような事故を起こしたわけでございます。

 いずれにいたしましても、その海域につきまして今申し上げたような状況であるということは、十分認識しております。

赤嶺委員 市街地上空を避けるために海に出たと言いますけれども、そこの海もまさに漁港の近くで、ジンベイザメの生けすがあり、そこには年間で五千人の観光客がダイビングにやってくる、そして定置網も置かれて、家族ぐるみでそういう体験をする、まさに生活圏なんですね。陸地と同じ生活圏、そこに投下したわけですよ。

 にもかかわらず、那覇の防衛施設局長は、乱気流に巻き込まれたためという施設庁長官の今の発言を繰り返して、米軍はそれなりの安全確認をしてつり下げをしているということだから、私がやめろと言うことは考えていない、こう述べているわけですね。安全確認をしておれば、こういう海域で訓練をしていてもいいということなんですか。

北原政府参考人 先ほど私が御答弁申し上げましたが、このヘリコプターはトリイから渡名喜村の出砂島の射爆撃場に向かって車両を輸送していたものであります。すなわち、提供している施設から施設の間の移動といったミッションを持っていたわけでございます。そういったことをすること自体、これは現在の日米安保体制のもとでは認められている、そのように考えているところでございます。ただし、そういった移動等に当たりましても、今先生御指摘されております地域の住民の皆さん、あるいは航路、漁協の皆さん、こうした人たちに対して安全を十分確認しなければいけないというのは、当然のことでございます。

 そして、今回突風といった事態で切り離したということを承知しているわけでございますが、その海域、また、たまたまその十三日は天候も悪かったようでございますが、地域の、海の下の、漁船の皆さんとかあるいは遊泳者等々につきましては、当然確認してこれを実施しているところでございます。これは米軍も、地域の皆さんの安全、それから当然米軍の乗組員の安全、両方を判断して投下した、そのように承知しているところでございます。

 くどくなりますが、いずれにいたしましても、訓練、輸送の必要性は私どもとしては認めますが、それを実施するに当たってはくれぐれも十分な安全に配慮をしていかなければならない、そのようにまた強く求めてまいりたいと思っております。

赤嶺委員 そこで、輸送の途中で起きた事故だ、トリイから出砂島に軍用車両を、使えなくなった軍用車両を何で射爆撃場に運ぶのか。そこに車両の廃棄物の処理施設でもあるのか。地域の皆さんは、そういう訓練は、ひっきりなしではないが、しばしば見ると言うんですよ。兵隊がつり下げられていくのを見る、コンテナがつり下げられていくのを見る、今度は軍用車両、廃車になる軍用車両であったと。

 しかも、天候が悪かったと言いますけれども、そんなことないですよ、施設庁長官。天候は本当にいい日和だったんです。私はその何日か後に調査に行きましたが、いい日和ですよ。波もべたなぎ状態。そういう突風や、それが起こるわけがないだろうという疑問をみんな持っていらっしゃるんですよ。

 そういう中で、きのう発見したときに、村と漁業協同組合の人たちが十九日に車両の確認作業を行ったときに、車両とヘリをつないでいたと見られるワイヤの一つが切れた状態であるというのを確認しているんですね。ワイヤが切れていた、いわばワイヤが切れてああいう事故につながったんじゃないかと。天候は非常にいい天候で、べたなぎ状態で、そんなことがあろうはずはないという、事故原因に対しても疑問を呈しているんですが、事故原因について、さっきの施設庁長官は、施設庁、施設局が調査の上でお答えになっていることですか。

北原政府参考人 まず、車を運んでいたということにつきましては、先ほど申し上げましたが、どこへということは、出砂島の射爆撃場でございます。

 この射爆撃場は、その目的は空対地射爆撃でございます。すなわち、空から地面に置いた標的に向かって訓練をする、そのために我が国が提供しているものでございまして、私どもが現在までに承知しているところでは、その車両は標的等の用途に使うというように承知しているところでございますが、いずれにいたしましても、先ほど答弁申し上げましたけれども、現時点で米側が発表している事実がございます。他方におきまして、私ども、この事故が起きたときに、先ほど申しましたけれども、その原因究明、再発防止、それから飛行の安全確保ということを今申し入れているところでございます。

 それから、一本ワイヤが切れているのではないかといった報道についても承知をしているところでございます。いずれにいたしましても、原因究明等については、なお今申し入れを続けているところでございますので、我々として、その米軍の調査の結果を待ちたい、それを受けましたら直ちに地域の皆さんにお知らせをしたい、そのように考えているところであります。

赤嶺委員 米軍の最初の発表は、トリイから伊江島だと言い、途中から出砂島に変わり、それから、乱気流に巻き込まれた、安全対策上ロープをヘリから切り離したんだと言いながら、しかし、第一発見者は、つないでいたロープが途中から切れていた、むしろ不良品、整備不良の結果そういうことが起きたんじゃないかと。安全に留意して運んでいると言うけれども、安全に留意さえしていなかったというたくさんの疑問が出ているわけです。

 読谷村では、一九六五年、小学校五年生の棚原隆子ちゃんが、当時トレーラーのつり下げ訓練をしていた、そのトレーラーが落下をして、押しつぶされて命を奪われるという事件があり、その後も読谷村でヘリのパラシュート降下訓練が続けられ、村民の強い反対でその降下訓練は移設をされたわけですが、今日こういう事故がまた起きたときに、だれしもが、三十年前、四十年前と同じ事故がまた起きる状況にあるんじゃないかという不安を抱くわけです。米軍は安全に気をつけているから安心だという程度の政府の発表には、絶対に納得がいくものではありません。徹底した調査を求めて、しかも、こういう場所でのヘリの訓練はやめるべきだ、陸上も、それから海域とて生活圏ですから、やめるべきだということを強く申し上げて、イラクの問題について聞いていきたいと思います。

 イラクの現状というのは極めて深刻です。米軍は、イラク戦争の開戦以降、ファルージャあるいはバグダッドで軍事掃討作戦を行ってきたわけですが、一向に状況は改善されません。まさに泥沼化の情勢であります。新しく米国防長官に就任したロバート・ゲーツ氏は、米国がイラクで勝利に向かっていないと述べています。こうした状況のもとで、アメリカ政府自身が今イラク政策の見直しに着手しているわけです。ブッシュ大統領自身も、新たなアプローチが必要だと述べております。

 官房長官に聞きますけれども、日本政府としてイラク政策の何らかの見直しが必要だという認識なのか、あるいは、今の枠組みで事態は改善していく、そういう認識ですか、どちらですか。

塩崎国務大臣 今、イラク・スタディーグループの報告書を受けて、米国が、今後どうイラク政策をとっていくのかということを検討していることは、先ほどの原口先生の御質問の中でもお答え申し上げたとおりでございます。

 我が国としては、我が国が主体的にとってきた行動について、特にイラクの復興支援を行うという、それに関しては、自衛隊の活動はもちろんでありますが、それ以外にも、NGOを含めて、連携をしながら、ODAを出していくということを通じてイラクの復興に貢献をしていく、こういう幅広い政策をとってきているわけでございます。

 今後、アメリカがどういう政策をとるのか、私たちもよく注視をしていくわけでございますし、また、アメリカはもとより、他の関係国と連携をしながら、しっかりと我が国としての主体的な判断というものができるようにしていきたい、このように考えております。

赤嶺委員 ですから、アメリカや国際社会、特にアメリカではもう見直しが始まっている、どんな見直しになるか方向は見えませんが、見直しは始まっている。日本政府は主体的に判断すると言いますが、主体的に判断する上で、見直しが必要であるのか、あるいは、今のまま今の枠組みで続けていけばそれでいいんだということなのか、日本政府としてどう認識しているかということなんです。

塩崎国務大臣 日本政府としても、いろいろな変化が起きてくるわけでありますから、今のままでいいのかどうかということを含めて、今後考えていかなければいけないというふうに思っております。

赤嶺委員 今後考えていくのは、どういう点に着目して考えていかれるんですか。

塩崎国務大臣 繰り返し申し上げているように、我々にとって一番大事なのは、イラクが安定的に発展をする国、平和裏で発展してくれる国になってくれる、これが我が国の国益にかなったものだということでかかわり続けてきているわけでございます。

 したがって、そういった観点から、何が私たちにとって日本政府としてのふさわしい主体的な行動なのかということを絶えず考えていくということをやっていかなければならないし、また、当然のことながら、現時点でももちろんそれは日々検証を重ねているところでございます。

赤嶺委員 イラクがどうすれば平和を取り戻せるか、最大の課題だと思うんです。

 そこで、久間防衛庁長官に伺いますけれども、先ほど原口先生にもちょっと説明を始めておられたんですが、十二月七日の参議院の外交防衛委員会で、テロ組織に対処するときのイギリス軍と米軍を比較いたしまして、当時の長官の説明ですと、イギリス軍はドアをノックして調べて、調べが終わったらお礼を言って帰っていく、米軍はドアをいきなりあけて銃を突きつけ、調べていく、その風土とか民族性とかいろいろなことを熟知しないと統治するのは難しい、こういう趣旨のことを述べておられたと思います。ということは、米軍による掃討作戦がイラク国民の感情を悪化させてきたということでしょうか。

久間国務大臣 私が言いましたのは、そういう話をイラクの人から聞いたということを言ったわけでございますが、イギリスは、かつてああいう中東地域を統治しておった、そういう国でございますから、国民性といいますか、そこの風習といいますか、いろいろなことを含めてよく知っている点がある、片一方はなかなか知っていない。そういう点と、もう一つは、非常に危険な地域に行っておりますから、そういう余裕すらなくて、いきなり、とにかく身の安全の方から先に打って出る、そういう点もあるんじゃないか。

 いろいろなことが絡みますけれども、そういう一つ一つが、やはり違いが肌で感じられる、そうすると、統治政策がなかなかうまくいかない一つの原因になっているんじゃないかな、そういう気がするということを申し上げたわけであります。

赤嶺委員 アメリカの統治作戦、掃討作戦、イラクのことをよく知らないアメリカが、イラクに出かけていって国民との間の矛盾を激化させている。

 掃討作戦の問題については、指摘しているのは防衛庁長官だけではないわけです。イラク研究グループの報告書を読んでみました。そこで言われていることなんですが、掃討作戦はうまくいっていない、こう断定しているわけです。ある地区を決めて掃討作戦を集中的に行って、一掃した地区をイラク軍に維持させて復興支援事業をつぎ込むことをやっている、別の地区に移動した途端にまたもとの状況に戻ってしまう、米軍部隊は終わりのない任務にとらわれている、このようにイラク研究グループは指摘しているわけです。

 結局、米軍による掃討作戦がイラク国民の感情を悪化させているというのはもう明らかだと思いますが、この点、では手を挙げておりますので、防衛庁長官。

久間国務大臣 私は掃討作戦と言っているわけじゃございませんで、戦争が終わった後の統治の仕方、それを言ったわけであります。掃討作戦と先生はおっしゃられますけれども、掃討作戦じゃなくて統治の仕方が何かちょっとうまくいっていないんじゃないか。

 そして、これはアメリカのやめられた閣僚の人にも私は言ったことがございますけれども、日本の場合、最初はとにかく全部を追い払ったけれども、追放したけれども、職場復帰させた、やはりイラクの場合も、バース党はだめだということではじいてしまっているけれども、バース党の中でも優秀な官僚、優秀な軍人がおったはずなんだから、それをもう少し上手に使ったらどうですかということも申し上げたことがございます。

 そういうような統治政策というのをどうやったらいいのか、その辺についての配慮に少し欠けていたんじゃないかな、そういう思いがしてならない、そういう気持ちを正直言って持っております。

赤嶺委員 統治政策の中で掃討作戦をしているわけですが、私がお聞きしたかったのは、そういうアメリカの、今のイラク研究グループの報告書の中に、掃討作戦はうまくいっていないと先ほど紹介した部分がありますけれども、この点はどうですかということを伺ったわけです。官房長官、この点、いかがですか。

塩崎国務大臣 現状、先ほど来お話が出ているように、治安が必ずしも改善をしていない部分が特にバグダッドを中心にあるという意味において、必ずしも期待している効果があらわれていないということではないかと思います。

赤嶺委員 うまくいっていないわけですよね。しかも、そういうことも含めてイラク人の感情を傷つけている、イラク人の感情悪化を招いている、特にバグダッドにおいて。

 ところで、そのバグダッドに日本の自衛隊は多国籍軍の人員輸送、物資の輸送という支援活動を行っています。掃討作戦を繰り返しても問題解決につながらないということをアメリカの共同研究グループが指摘し、反発を招いているということも言われている中で、こうした自衛隊の活動、イラク情勢の悪化に手をかしているということになりませんか。

久間国務大臣 イラクの悪化に手をかしている、そういう言い方をされますと、行っている連中は本当に気の毒であります。やはりイラクの人道復興支援、安全確保支援活動、法律の目的の沿ったそういう活動のために行っておるわけでございますから、決して悪化のために、それらを支援するかのような、そういうことはお話しをしてもらってはちょっと困るわけであります。

赤嶺委員 それでは、官房長官、米国自身が、掃討作戦がイラク国民の感情を悪化させている、その掃討作戦を支援している自衛隊の支援というのは一体どういうものなのか。イラク情勢の悪化に手をかしていないかという私の指摘ですが、この辺はきちんと検証したんですか。

塩崎国務大臣 国際社会のイラクに対する支援は、さまざまな形でさまざまな地域に、それぞれのニーズに合った形でやろうという努力はしているはずでございます。

 今回、空自がバグダッドから例えばエルビルに飛んでいる。このクルド地区は、必ずしも戒厳令があるわけでもない、そして少し違う復興ニーズがある、フセイン政権下では光が当たってこなかった、言ってみれば自治が行われた地域であります。そういったところにも、国連の要請もこれあり、航空自衛隊に今物資の輸送等をお願いして支援をしているわけでありまして、掃討作戦のお話をおっしゃって、確かに治安が十分ではないということはもう言うまでもない問題点でございます。しかしながら、さまざまな復興ニーズ、さまざまな治安回復ニーズというものがあるわけでありますので、一つの側面だけで判断をするというのはなかなか難しいと思いますし、幅広いニーズにどうこたえていくのかということをよく考えていかなければ、この国のみずからの手による復興に勢いがついてこないということではないかというふうに思います。

赤嶺委員 イラクの国内にある多様なニーズにこたえる活動のことを聞いているんじゃないんです。バグダッドに多国籍軍の人員や物資を輸送する、輸送した人員や物資はそういう掃討作戦やイラク国民の感情を傷つける活動を支援することになる、そのことがイラク情勢を悪化させているんじゃないか、果たしてそれはいいのかどうかというような検証をして基本計画を見直したのかということを聞いたのですが、官房長官は話をそらされました。

 エルビルの話を聞いていたわけではないんです。主体的に検討すると言いながら、結局アメリカを支援することについては何の疑問も挟まない、こういうことで自衛隊のイラク派遣を続けることはできないと思うんです。

 それで、久間長官に最後にお伺いいたしますけれども、参議院の七日の外交防衛委員会で、イラク攻撃について、ずっと国連決議がたくさんあった、だからといって一番最後に決議がないままに戦争に踏み切ること自体が国連決議と言えるのかなという疑問はいまだにかすかに残っています、こう述べておられます。国連決議に基づかない戦争だったのではないか、こういう疑問を持っているということですね。

久間国務大臣 いろいろな決議がされてきて、それに対する挙証責任がイラクにあったというのは間違いない事実であります。しかしながら、あの踏み切るときに、もうちょっと、あと一歩慎重にやったらどうかなという思いがそのとき私にあったのは事実でございます。

 しかしながら、あのとき私は閣外におりましたから、政府がどういう判断に基づいて、どういう情報に基づいて、あるいはまた、アメリカとの関係で総合的にこれは支持するというふうに決断をしたのか、政府の一員ではありませんでしたので、その辺についてはつまびらかでございませんでした。だから、私の気持ちをそのまま委員会では言ったのと同時に、もう一つは、イラクに行っている自衛隊がさもアメリカの戦争を支持するために行っているかのように御党の方がおっしゃられるので、それだけは違いますよ、戦争が終わってから法律をつくって行ったわけですからという、そこのところを強調したかったわけであります。

 私の気持ちは、そのときと今とでも、やはりもう少し、あと一歩慎重を期してやってもよかったんじゃないか、特に終わった後の処理の仕方についての絵が描けていないんじゃないかという思いがしておりましたが、今もその気持ちは変わっておりません。

赤嶺委員 まさに閣僚にいらっしゃらないときに、そういう早まったんじゃないかと。(発言する者あり)いや、長官、やはり言っていますよ。私個人としては早まったのではないかという思いがそのときしておりましてと、記者会見で長官が述べておられるから使ったんですよ。そうですよね。

 ということは、結局、あの当時、私も外務委員会その他で何度も取り上げたことなんですが、国連査察の委員長を務めたブリクスさんは、当時、数カ月のうちに結論を出せると述べておりました。にもかかわらず、米国とイギリスが査察を打ち切って一方的に攻撃を開始したわけです。長官が早まったとおっしゃっているのは、武力行使ではなく査察による問題解決も可能であったという認識ですか。

久間国務大臣 私は、大量破壊兵器については、やはりこれは実験をしたりなんかするから、もしやっておればどこかで見つかるというような話、そしてまた、イラクの人たちからは、うちの国内ではそういうようなことは恐らくやっていないはずだ、それは隠せない。しかしながら、大量破壊兵器のうちの生物化学兵器については、これはわからない。冷蔵庫の中に隠しておってもこれは隠せるから、これについてはわからない。そんな話をいろいろ聞いておりましたので、この大量破壊兵器という言葉の中で、核兵器と生物化学兵器とを区別して議論されているのかな、そういうような思いもしておりました。

 いずれにせよ、そのときは政府のらち外でありましたから、私自身、正確な情報も、またアメリカとの関係もよくわかっておりませんでしたので、政府は、あのときは、決断は正しかったというふうに、総合的に判断したというふうにおっしゃっておられますし、しかも私は、うかつであったのは、閣議決定までして支持の談話を発表したということを知らなかったものですから、それでちょっといろいろな手違いがございましたが、今としては、あの当時の政府がそういう判断をしたというその前提に立って私たちも政策を考えているところであります。

赤嶺委員 私、閣僚の不一致ということを追及するためにきょうこの質問をしたんじゃないんです。長官は早まったとおっしゃっているわけですから、閣外にいたときと閣内に入った今でも同じような思いをしているわけですから、やはり閣内の中で長官の意見をきちんと主張して、この戦争は間違ったということを安倍総理を含めて認識を整理させるべきではないか。そして、掃討作戦あるいは治安も、統治のやり方も間違っているということを言ってアメリカの認識を変えさせていく、そのことが行く行く、イラクの平和を取り戻す、こういう道につながるんじゃないかということを指摘したくて先ほどの質問をしたわけであります。

 そういうことを申し上げまして、イラクから自衛隊の撤退を求めて、私の質問を終わります。

浜田委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社民党の菅野哲雄でございます。

 久間防衛庁長官は、今も議論にありましたけれども、十二月七日の参議院外交防衛委員会で、イラク戦争への支持について、政府が公式に支持すると言ったことはないと発言して、翌日になって、間違いだったと訂正いたしました。

 しかし、日本の対イラク政策の中枢を担う防衛庁長官が認識不足だったで済む問題なのでしょうか。やはり重大な問題だと言わなければなりません。多くの方が閣内不一致ではないかと指摘されていますが、そう言われても仕方のない発言だったと思います。十分に反省されることを求め、質問に入らせていただきます。

 まず、この問題と関連しますが、今も赤嶺委員が議論しておりましたけれども、久間防衛庁長官は、私の間違いで認識不足だったと発言を訂正した十二月の八日の記者会見の中で、イラク戦争を支持するという政府の見解と自衛隊のイラク派遣は関係ないという趣旨の発言をしております。この認識は間違いありませんか。

久間国務大臣 それは、あの法律をつくるときに、私は胸を張ってつくったわけですから。イラクに派遣したのは、戦争が正しかろうと間違っておろうと、戦争が終わった後の復興をどうするかということで、国連から要請されたときに、私たちはこれは行くべきであるというふうに判断して法律をつくったわけですから、それは私は今でも正しいと思っております。

菅野委員 久間防衛庁長官の今の認識というのは、私は問題があるというふうに思うんです、この間。というのは、政府のイラク戦争支持と自衛隊のイラク派遣は決して無関係ではないと私は思います。

 小泉前総理は、米国のイラク戦争支持を打ち出した平成十五年三月二十日の記者会見で、今後イラク国民のために何ができるのか、イラクの復興のために何が必要かについて、国際社会の一員として責任を果たしていかなければならないと述べ、開戦日に早くもイラク復興支援について言及されています。

 さらに、イラク特措法が成立した第百五十六国会、その閉会に際して小泉前首相は、平成十五年七月二十九日の記者会見で、イラク支援法案は国際協調の上からも日米同盟の上からも私は必要な法案だと思って提出し、成立に努力してきたと述べています。

 小泉前首相は、戦争を開始した米国との同盟関係強化とイラク特措法が密接な関係にあることを強調しているわけです。このときにイラク戦争支持と自衛隊のイラク派遣は別物だとする防衛庁長官の考えは、私は余りにも無理があるのではないのかなというふうに思います。長官の御認識を再度お示しください。

久間国務大臣 でき上がった法律を、それがどういう目的であるかというのは法律の目的を読めばわかるとおりでございまして、日米同盟のためということは一言も書いていないわけでありますから、国連決議に基づいて、イラクの復興支援、安全確保支援活動、このために自衛隊を派遣することを目的とするということを書いておるとおりでございまして、そういう意味で、それはどなたがどう言おうと、書いている法律がその派遣の目的であります。

菅野委員 後でもこれはずっと議論しますけれども、なぜ冒頭でこのことを議論しているのかというと、この法律の中身と現在まで行ってきた自衛隊のイラクの派遣の問題というのが、防衛庁長官、余りにも乖離しているんじゃないですか。アメリカのイラク攻撃と自衛隊が一体をなしてきたというふうに私は思えてならないんです。後でこれは触れますけれども、先に進みます。

 この間の十二月八日の安全保障委員会でも私が指摘したんですが、アメリカのマスコミだけでなく、国連のアナン事務総長も、現在のイラクが内戦状態あるいは内戦に近いという見解を示しています。久間防衛庁長官も、私の質問に対して、イラク政府も米軍も治安を維持することができないような状況になっているんじゃないかと答弁いたしました。現状のイラクは、イラク政府さらには米軍でさえ治安が維持できないような内戦状態にあることを示唆したのではないかと私は受けとめております。

 そこで、防衛庁長官に伺いますが、戦闘地域の概念の中には内戦が激化している地域も含まれるのでしょうか、端的にお答え願いたいと思います。

久間国務大臣 先ほどから何回も言っていますように、内戦というのをどう見るかでありますけれども、治安の状態が悪いというところをとらえてそれが内戦とは言えないわけでありますし、内戦というふうにもし言ってしまいますと、それは戦闘が行われている地域を逆に言えば指すわけであります。

 だから、私が今言っているのは、そういう戦闘地域になれば、そこでは自衛隊は活動しない、帰ってくるということになっているわけでありまして、今行っておりますバグダッド空港では、そういうような戦闘地域ではないから自衛隊が今行っているわけでございますので、戦闘地域になったら要するに法律に従ってそれは引き返すということになるわけであります。とにかく、自衛隊を預かる私としてみれば、法律がつくられたらその法律に従って法律どおりに行動させるというのが立場でございますので、法律上は、現在自衛隊が行っているところは戦闘地域でないところに行かせているわけでございますので、少なくともその辺については御理解賜りたいと思います。

菅野委員 イラク国内では、もうテロに歯どめがかかっていません。ことし十月の一カ月間だけで三千七百九人のイラク民間人が犠牲になっています。宗派間の抗争だとおっしゃるかもしれませんが、同じ十月には米兵の死者数も百人を超えたと言われています。一カ月間でアメリカ兵の死者数が百人を上回ったのは、過去に三度しかありません。内戦の激化に比例して米軍に対する攻撃も強まっていると見るのが、私は自然だと思います。米軍を標的にした戦闘であれば、内戦であれ、いずれにしても現状のイラクは戦闘地域だと言わざるを得ないのではないでしょうか。

 そこで、防衛庁長官、八日の安全保障委員会で、バグダッド空港は安全だとおっしゃいました。これは、首都バグダッドとバグダッド空港をわざわざ分けて答弁されたのでしょうか。バグダッド空港は安全だけれども、首都バグダッド全体で見れば戦闘地域だということなのでしょうか。この間の発言について再度答弁をお願いします。

久間国務大臣 私は、最近バグダッド市内に行っておりませんから、どれぐらい治安が悪いのか、それはわかりませんけれども、よく爆発その他が行われておりますから、やはりかなり治安は悪いのだろうと思います。

 しかしながら、バグダッド空港ではそういうことは行われておりませんし、たまにはいろいろな、鉄砲が飛んでくるとかそういうことがあるのかもしれませんけれども、少なくとも、自衛隊機がこれまで襲撃を受けているというふうな、そういう形での、あそこが戦闘地域になっているという認識はございません。だからバグダッド空港は大丈夫だ、戦闘地域でないと言ったわけでありまして、それ以外の地域が戦闘地域か戦闘地域でないかのその判断は、私自体はするような立場にもございませんし、また、するだけの情報も持ち合わせておりません。

菅野委員 防衛庁長官として、責任ある立場の長官として、今の発言というのは私は許すわけにはいかないというふうに思うんです。

 それでは伺いますけれども、十二月六日の東京新聞の二面で、航空自衛隊のC130輸送機は、携帯ミサイルの脅威から逃れるために火炎のフレアをまき散らしながら離着陸している、こういう記事があります。これは事実ですか。事実だとしたら、バグダッド空港は安全どころではなく、危険地帯だからこそそうした措置をとっていることになるのではないですか。長官、お答え願いたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 航空自衛隊のC130は、安全確保のために離発着時に自動的にフレアをまいて飛行しております。

菅野委員 どうして火炎のフレアをまき散らしながら離着陸しなけりゃいけないんですかと聞いているんです。

山崎政府参考人 当然、航空自衛隊の航空機に対して、何者かよくわかりませんけれども、携行の対空ミサイルを撃つ、それは大体、赤外線追尾のミサイルでございますので、それを航空機自体に当たらせないように誤った形で誘導をさせるということで、安全確保のためにフレアをまいているわけでございます。

菅野委員 バグダッド空港周辺がもう内戦状態、内戦状態を超えて戦闘地域になっているからそういうことをやらざるを得ないんだ。本当に人道復興支援活動ということであれば、非戦闘地域という状況が確認されて初めて航空自衛隊がバグダッド空港に行けるんじゃないですか。そういうこともしなければならない状態でバグダッド空港に物資を輸送しなければならない、こんな異常な状態というのはおかしいと思いませんか。

久間国務大臣 危ない地域というのと戦闘地域というのはやはり違うわけでありますから、そこを、危ないところは戦闘地域だと言わんばかりの言い方でされると困るわけで、危ない地域はやはり用心しながら着陸するというのはごく自然なことでありまして、バグダッド空港には民間機だって今おりているわけですよ。だから、そういうところの民間機だって危ないなというような思いはしますけれども、そこは戦闘地域とは言えないんじゃないでしょうか。だから私は、まだそこから引き揚げる必要はないということを言っているわけであります。

菅野委員 バグダッド空港について言えば、自衛隊がまだ攻撃されていないから、先ほども長官が言っていますけれども、非戦闘地域だとおっしゃっております。それは、小泉前首相が言った、自衛隊のいるところが非戦闘地域という詭弁と全く一緒だと私は思います。バグダッド空港とバグダッド地域全体を意図的に分けることについても、納得はいきません。バグダッドは今の内戦の中心地です。ここはイラク特措法に基づいて自衛隊を速やかに撤退させるべきだというふうに私は強く申し上げて、次の質問に移ります。

 今回の航空自衛隊のイラク駐留延長を閣議決定したわけですが、自衛隊のイラクからの撤退にはどのような要件が必要なのか、官房長官、具体的にお答えください。

塩崎国務大臣 撤退の要件というお尋ねでございますけれども、繰り返し答弁申し上げているように、今後、イラクにおける空自部隊の活動について、一つは、まずイラクの中の政治状況がどうなるのか、それから二番目は、現地の治安がどういう状態になるのか、そして三番目は、国連そしてまた多国籍軍がどういう活動を展開するのか、これらをよく見きわめて、イラクの復興の進展状況等をも勘案をして、これはやはり日本として独自に主体的に判断をしていかなければならない、こういうふうに考えているところでございます。

菅野委員 今の官房長官の答弁で、政治状況、治安の状況、あるいは国連を中心とした多国籍軍の状況ということで答弁されました。

 一つは、政治状況、本当にイラクが復興に向かって進んでいく状況なのか、このことは議論の余地があるというふうに思います。それから、バグダッドを中心として、航空自衛隊が今回バグダッド空港までの物資の輸送を行うと変更したという状況の中で、バグダッドはもう本当に内戦状態、私は戦闘地域と言っても過言ではない状況になっている、こういう状況だというふうに思います。

 それで、そういうことを考えたときに、このままでいっていいんだろうかという強い疑念を私は持ちます。長官が先ほど言うように、自衛隊機に一回も攻撃を受けていないんだからこれは大丈夫なんだということが言われていますけれども、私はこのままずっといったら危険な状態に陥るんじゃないのかな、そういうことすらも懸念されるということであります。

 官房長官、本当にイラクからの自衛隊の撤退を今後どのように考えていくのか、私は大きな決断を要することだというふうに思うんですけれども、出口をどのように考えているのか、具体的に考え方を説明していただきたいと思います。

塩崎国務大臣 繰り返し答弁申し上げているように、イラクの人々がみずからの国をみずからの力で築いていくということが一番大事なわけでございます。

 今、バグダッドを中心にテロが引き続き頻発している、憂慮すべき状態であるということは先ほど来お話がありました。一方で、バグダッドに集中をしているということは、その他のところではテロは比較的おさまりつつあるということでもあるわけであります。さまざまな政治勢力、そしてまた宗教グループ、宗派がある中で、産みの苦しみを、あるいは国家建設の苦しみを今なさっているイラクの方々にどういうニーズがあり、そしてどういう支援が国際的に求められているのか、必要としているのかということを絶えず我々は検証し続けながら、それに応じた支援というものをやっていかなきゃいけないんじゃないかということだと思うんです。

 今回のイラク・スタディーグループ、研究グループの報告書の中で書いてあることも、基本的には今申し上げたような角度から検証をし、そしてアメリカがどういう関与をしていくかということについての一つの提案をされているというふうに思われるわけであって、アメリカがこれからどうするのか、それから他の関与している国がどういう支援のあり方をしていくのか、我々としてはよく注視をしつつ、なおかつ連携をしながら、我々としての独自の行動を決めていかなければならないというふうに思っております。

 基本は、繰り返し申し上げますけれども、どうやってイラクの人たちが自分たちの国を自分たちの手で築き上げられるようになるかということが大事だということだと思います。

菅野委員 先ほども国連を中心とした多国籍軍の動向と言うんですが、イラク特措法は来年の七月に期限切れを迎えます。そして、イタリアはもうイラクから撤退を完了しました。来年には韓国やスウェーデンも撤退を検討することになっています。アメリカでも二〇〇八年三月までに戦闘部隊を撤退させるべきだという提言、今もお話があった提言がされる中、まだ日本だけが撤退のめどさえ示せず、基本計画の変更そして延長を行って、ずるずると引きずっているわけであります。

 特措法の期限切れを前に、来年の七月を前に、自衛隊の撤退か駐留延長かを含めたその後の対イラク政策のあり方を、今の答弁を踏まえて、いつ、どのような手順で検討して答えを出していくのか、このことをお示し願いたいと思います。

塩崎国務大臣 基本的な考え方は先ほど申し上げたとおりでございます。つまり、イラクにどう日本がかかわっていくのか、国際社会とともにかかわっていくのかという考え方はさっき申し上げたとおりでありますけれども、イラク特措法が来年の七月末で期限切れを迎えるという中にあって、日本としてはどのようにかかわっていくのかということであります。

 いつ、どのような手順ということでございますけれども、これはもう先ほど申し上げたように、判断をしていかなければなりません。情勢分析をしながら、そして判断をしていくということが大事なわけであって、特措法の期限以降の我が国の対応については、先ほど申し上げたような考え方からさまざまそれは検討はしておりますけれども、まだ現時点で具体的な方針が決まっているわけではないわけであります。

 刻々変わりつつあるイラクの情勢と世界が、先ほどのお話はイラク研究グループがアメリカの政策かのような表現が少しあったかのように思いますけれども、あれはあくまでも研究であって、政府は、まだこれからアメリカとしても決めていくわけでありますので、それらについてもよく見ていきたい、こう思っております。

菅野委員 これまでの自衛隊の活動の詳細や、先ほども議論になっているんですが、私は、駐留の必要性を具体的に示さないままイラク派遣の延長を図ることは、到底許すことはできません。国民が納得いくような説明責任を果たさないことも問題です。

 各国が撤退の検討を真剣に行っている際、日本政府も速やかに自衛隊を撤退させることを強く求めて、私の質問を終わります。

浜田委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 今、質疑をずっと伺っておりましてやるせのない思いに駆られているんですけれども、最後に塩崎官房長官がおっしゃったこと、イラク研究グループは単なる研究だ、このように切って捨てておられましたけれども、その御認識自体が私にはとても信じられないんですね。先ほど、赤嶺委員との答弁を聞いていて、何の偏見もなく、どの党派を支持しているか、そういうことは全く関係なくあの質疑を聞いている国民の皆さんは、明らかに政府の皆さんの御答弁の方が形勢が悪いというか、分が悪いという感じを持ったんじゃないかと私は思います。

 というのは、これは、二百人からの我が国の航空自衛隊の皆さんがまさに命を張って現地におられるわけですね。ですから、我が国政府として決して対岸の火事を眺めているような状況ではないと思うんですね。それが一点。

 それから、今のブッシュ大統領、ブッシュ政権のやり方がうまくいっていない、完全に行き詰まっているという認識は、恐らくこの委員会のどなたもが共有されていると思うんですね。だからこそ、イラク研究グループが九カ月間にわたって、確かに、取りまとめをしたのは平均年齢七十四歳の十人の長老の皆さんですよ。しかし、その下に四十四人の、そのままNSCに入ってシニアのポジションでやっていけるようなそういう中東の専門家あるいは外交や軍事の専門家が九カ月間かかって、あらゆる事態を想定して、そしてまとめ上げたんですね。

 アメリカという国は、日本の審議会と違って、こういう行き詰まったときには外部からそういうある種の知恵みたいなものが与えられて、そしてブッシュ大統領も、先ほど官房長官がおっしゃったように、これを本当に真剣に検討する、こう言っているわけですよ。ということは、単なる研究グループによる、シンクタンクの研究報告のたぐいではないんですね。

 私はずっと聞いていて、はぐらかしも含めて塩崎官房長官の御答弁、イラク・スタディーグループの百六十ページのこの報告書、もちろん、官房長官はお忙しいですから官房長官が全部目を通す必要は全然ないと思いますよ。しかし、目を通された方から、この内容について、こういうところがポイントですという報告が上がっているようには全く見えないんですね。

 まず、この報告書に対する官房長官の率直な御認識と、そしてその内容たる一番のポイントはどこにあるのか、日本政府としてどう把握しておられるのか、お答えいただきたいと思います。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 長島先生のお言葉でございますけれども、私が先ほど申し上げたのは、この報告書の内容が一字一句アメリカ政府の政策変更かのように考えてはいけないということを申し上げただけであります。

 この報告書については、私も要点を見、また本物も、全部は読んでおりませんが見ました。今先生がおっしゃったように、対イラク政策がアメリカにとっていかに重たいことであり、そしてまた多くの命の上に成り立っている政策であり、そして、これをどう変えていくのかということについて今本当に苦しんでいるんだろうなというふうに私も思っております。そのことは多分長島先生と私の思いは何も変わらないわけであって、ただ、自動的にこの研究報告がそのままなるということではないだろうということを言ったまででございます。

 それで、ポイントは何かというテストでありますが、基本的には、アメリカの、特に米軍が関与をし続ける中でどういう役割にしていくのか、つまり、今後はイラク軍の支援をしていくという、後ろに回った役割が中心になるのではないかということで、たしか二〇〇八年の第一・四半期でしょうか、そこまでに役割を変えるという重大な提言をしているというふうに私は思っておるところでございます。

 したがって、これによってどういうふうにどこまで変えられるのか。例えば、ライス国務長官がシリア、イランの役割について否定的なことを言っている、これをどう考えるのか。本来は、ではこれはやはりやるべきではないのかという意見が当然あるわけでありましょうし、日本としてもそれは期待もあると思いますが、それらについてまだアメリカの政府部内でさまざま検討しているところなので、私としては、まだコミットしたことは何も申し上げるような立場ではないだろうなというふうに申し上げたわけでございます。

長島(昭)委員 少し失礼な表現があったかもしれませんけれども、しかし、諸外国は、このスタディーグループの報告書が出たら、これは新聞報道ですけれども、例えばイギリスのベケット外相は、報告書の見解はおおむね我々の見解と一致していると。つまり、これははったりかもしれませんけれども、我々も検討してきたと、主体的にですよ。主体的に御判断されるとさっきから何度も何度も聞いているんですけれども、主体的な判断の前には主体的な状況の分析と評価がないといけないと思うんですよ。そういう分析、評価に基づいて本当にやっておられるのか私は非常に答弁を伺っていて心配になったので、多少失礼だと思いながら、そういう質問をさせていただいたんですね。

 今、ライス長官のお話をされましたけれども、私なりにポイントは二つあると思うんです。

 一つは、まさに官房長官がおっしゃった、イラキナイゼーションというか、イラクの軍隊が、治安部隊がイラクの治安に対して主体的な責任を持つ、そしてアメリカはそのサポートに回るんだと。つまり、アメリカが前面に出ていればいるほどアメリカ兵がターゲットになるし、それは不安定をどんどん助長することになる、こういう認識だと思うんですね。ここはもう今のやり方にこだわらないで、転換しなさいと。これは、アメリカ政府も新しい国防長官が出てこられましたから、多分そういう方向になるんでしょう。

 それからもう一つは、外交攻勢に出ろとこう言っているんですね。そこはイランとシリアの話につながっていくし、それから、包括的な中東和平、アラブ、イスラエルの和平にきちんとコミットしなさいということなんですね。

 今、ちょっと言葉じりをとらえるようでまことに恐縮なんですけれども、そういう提言が出た、そして、今のアメリカの政府がそういう提言をどのように実行に移すかどうかを見きわめたいとおっしゃいましたけれども、これは、今、私たち日本の航空自衛隊の将兵がまさに命をかけている現場の安定を図るという意味においては、隣国のイランとシリアを巻き込んで国際的な協調のもとで事態を安定化させる、地域を安定化させるというのは、我が国にとっても非常に重要な選択肢じゃないんですか。

 つまりは、同盟国として、こういう選択肢がスタディーグループから出たんだったら、それを奇貨として、いや、こういうふうにやったらいいんじゃないかと。むしろ、ブッシュさんが逡巡しているとすれば、年内に見直しの案をみずから出すと言っておきながら年明けに先送りしていますよ、だから、多分アメリカ政府の中でもいろいろな調整をしなきゃならないことがあるんでしょう。だけれども、こういうときこそ同盟国として、こういうシリアやイランを巻き込んだやり方をやっていこうじゃないかと言ってブッシュ大統領の背中を押してあげるのが私は筋だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 本来、外務大臣の領域かと思いますけれども、イランあるいはシリア、これは米国との関係は極めて難しい関係である中でこういう提言を出すということは、いかに外交努力が必要かということを、言ってみれば、アメリカにとっては清水の舞台から飛びおりるようなことをやれという大胆な提案をしているんだろうと私は思っています。

 また、その他の中東諸国を巻き込んでいくべきだという提言もあるわけでありますが、日本としては、例えばイランであれば、アメリカと違って極めて深い関係にあるわけでありますし、言ってみれば日本の外交的な役割というのも十分あり得るし、シリアも日本は決して悪い関係では基本的にはないはずでありますから、そういうこともあり得ると思います。

 したがって、御提言のように、日本が外交面でどういうことをやれるのかということは、アメリカに対して同盟国として提言をすることは極めて大事なことであろうかと思いますが、外務省の方でそれはいろいろ考えておられるんだろうというふうに思います。

長島(昭)委員 もちろん、外務大臣にもお伺いをしたいと思っていました。

 ただ、塩崎官房長官は外務副大臣もされておられたし、基本的には、今NSCを官邸でつくろうとしていますけれども、いつになったらできるかよくわからないし、今までの慣例からいけば、官房長官がNSCのアドバイザー的な役割も担っておられると思ったので伺いました。しかも、組織上は官房長官の下に安全保障・危機管理室がぶら下がっているんでしょうから、分析、評価などはそこでやっているんだろう、こう思ったので伺いました。

 では麻生外務大臣、今、少し塩崎官房長官からお話がありましたが、このイランとシリアの問題は、ブッシュ大統領としてはテロ支援国家と常々呼んできておりますし、それは、お世話になったベーカー元国務長官の提言だからといっていきなりなかなか乗ることはできないと思うんですけれども、アラブ、イスラエルを巻き込んだ本格的な中東和平という問題も提起しています。これはブレア首相も常々言っていた。それが中途半端なものに終わった。

 日本国政府として、外務大臣として六カ国協議で今お忙しいと思いますけれども、この点について日本としてのどんなイニシアチブを考えておられるか、御答弁いただきたいと思います。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 イラク・スタディーグループの話ですが、このISGの話につきましては、先ほどいろいろな御議論が官房長官との間にもあっておりましたように、これは結構部数があるので、日本の名前もその中に入ってくるぐらいですから、いろいろこの中で提言がなされているのは一読に値するものだと私自身も思います。

 ただ、今、長島先生の方から、やはりイランとシリアというのは、今イランと核の話やら何やらやっている真っ最中に仲介をイランに頼むというのは、なかなか現実問題としては難しいのじゃないか、果たして現実的かねと、一番最初にあれを読んだとき、私自身がブッシュという人の立場だったら、この一点はちょっと難しいだろうなと率直にそう思いました。

 それから、今の中近東という話になりますと、イランの場合はこれはペルシャ人であって、その他のアラブ人と少し違いますので、歴史的な背景も大分違いますから、アプローチの仕方としてはほかのアラブの国とはちょっと違う、ちょっと違うというか大分違うということだと存じます。

 それから、モッタキという人が外務大臣なんですが、たびたび日本に来ましたし、また、海外でこのモッタキという人と会うこともありますし電話で話もしますし、駐日大使もしておりましたのでいろいろ話をするのですが、ここが今一番そういう種のことを握っている人のポジションにいるわけではありません。この人に話ができなきゃなかなか難しいんですが、これは宗教的な色彩が強いので、諸外国、我々みたいなイスラムの境遇でない人間からなかなかアプローチができない。これは多分世界じゅう皆同じだと思いますが、そこが正直、実際私どもの置かれている立場で、この外務大臣というカウンターパートを通して話をするんですが、なかなか話が隔靴掻痒の感があるというのが実際の感じです。

 いずれにいたしましても、今この種の話は、我々日本人の場合はこの地域にこれまで全く利害関係がありませんので、向こうとしても何となく話としては聞きやすい相手であるということは、レバノンを通じて、いろいろな国々を通じて間接的に私どものところに入ってきているところでもありますし、いろいろ話を私どもとしてしつつあるのは正直なところですが、決定権のない人の話というのは、話として一ついくと北朝鮮と同じで、最後のところでころっと変わったりするのはとてもたまらぬので、そういった意味では、私どもとしては、なかなかもたもたしているなという感じが正直なところであります。

 ちょっと、これ以上はなかなか言いにくいんですが、実際のところです。

長島(昭)委員 イランについては、我が国はアメリカとは違ったパイプをこれまでも外務大臣は培ってこられたというふうに思いますし、それからシリアとの関係が、どの程度日本は構築してきているのかちょっと私はつまびらかにしておりませんけれども、これは、イラク一国を何とか立て直したいという問題だけにとどまらずに、このイラクにこれだけ膨大なエネルギーをかけているがゆえにアフガニスタンの方が今相当な混乱に陥っていて、アメリカ軍自体も、イラクからなるべく引いてアフガニスタンの方のてこ入れに使いたいと。

 私どもからすれば、そもそもアフガンでやめておいて、イラクはじっくり封じ込めておけばよかったと率直には思いますけれども、しかし、おもちゃ箱をひっくり返してしまった。そういうことで、何とか日本も含めて世界でこの後始末を分担してやらなきゃいけない、こういうことですから、日本の外交力、同盟国としての外交力が私は試されている局面だと思いますので、ぜひそこはリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思います。

 そこで、先ほど来少しお話が出ておりましたが、これは防衛庁長官ですが、航空自衛隊の撤収といいますか、これは今回で三回目の基本計画の延長、こういうことでありますが、任務は、まさに特措法に書いてあるように、人道復興支援それから安全確保支援、この二つだとこう言われていて、先ほど来御答弁にあるように、国連と多国籍軍の支援をしていると。これはイラクの治安部隊の支援はしていないんでしょうか。

久間国務大臣 治安部隊そのものの支援はしておりませんけれども、聞くところによりますと、治安部隊も、治安だけではなくて、復興活動もやはりやっているらしいんですね。だから、両方やっているようなときに、そういう人たちが食べる食料なんかはやはり運んでいるようでございまして、そういう区分けがなかなか難しいという話も聞いております。

 そういう意味では、治安部隊の食料も運んでいるんじゃないかと言われますと、それはノーとは言えない。そういう点では、そういう人たちの食べる分がそれに入っていることはあり得ます。

長島(昭)委員 今の御答弁は多分率直な御答弁だろうと思うんですが、これから例えばアメリカが政策転換をして、なるべくイラク人に治安もそれから統治もしっかりやってもらおう、こうなっていくわけですから、いつまでも多国籍軍、国連、多国籍軍、国連というお題目にはならぬと思うんですね。

 だとすれば、今回の基本計画の変更の中で、では、イラクの治安部隊も支援するようなそういう書きかえというのは考えられなかったんでしょうか。

久間国務大臣 今の時点では、とにかくこれまでやってきたものをそのまま延長する、そういう形にしておるわけでございまして、今ここでいろいろな動きがあっているというのはそれはおっしゃるとおりでございますけれども、それはこれから動いていくんじゃないかと思うんですね。

 だから、そういう動きの中で果たして法律の延長をするのか、するとした場合は、今までみたいな仕事ぶりといいますか仕事の内容でいいのかどうか、それはまた考えますけれども、今の時点では、来年の七月三十一日までは現在やっている内容をそのまま実行する、そういう形の方が私はわかりやすいし、我々活動する方から見れば、そのままの延長をする方がいいと思って基本計画に合意したわけであります。

長島(昭)委員 現場は大変だと思うんです。なかなかそれは、こちらであっちだこっちだと言うのは難しいんだろうと思うんですが、どうもやはり、お話を伺っていると、主体性といいながら、何となく現状維持というか、ずるずるとただ機械的に延長をしているだけのようにどうしても聞こえるんですね、これは多少うがった見方かもしれませんが。

 では、そういう議論が実際政府の中で行われたんでしょうか。今回の基本計画の変更の中で、今までやっていたものに加えてこういうことをやってみようじゃないか。だって、安定確保支援活動というのは、治安を維持しようとして踏ん張っている多国籍軍や、あるいはそこから権限を移譲されているイラクの治安部隊をまさに支援しようという活動ですよね。もちろん、そんな活動はけしからぬと言う皆さんもいらっしゃると思いますけれども、実際はそういう活動をされているんだから、そこをもう少し前向きに、積極的に、主体的に日本から変更するという姿勢があってもいいと私は思っているんです。

 ただ、それとまた裏腹になってしまうんですが、そうすると、本当に任務が終わる出口というのはどこなのかなというのは非常に心配なんです。つまり、陸上自衛隊のサマワで活動していた皆さんは、給水、それから、校舎を直したり医療活動、ある種、かなりはっきりと決まっていました。ですから、給水はもう完了した、それから医療も大体終わった、工事も大体こんなところでいい、だから任務が終わったので帰ろう、こういう話になるんですが、テロ特措法に基づいてインド洋でやっている皆さんとこの輸送活動というのは、イラク・スタディーグループのリコメンデーションの中でも、最後は、緊急対応、特殊作戦部隊、あるいは訓練、装備助言、兵力防衛、捜索、救助活動という部隊が残ると書いてありますから、結局、それに対する輸送支援というのはずっと残るんですね。そうすると、いつになったら任務があらかた終わって航空自衛隊の皆さんが撤退できるかちょっとわからないんですね。下手するとエンドレスになるかもしれない。この辺のところの見きわめはどのようになさるおつもりなんでしょうか。

久間国務大臣 我が国が主体的に判断するというのは、まさに先ほど先生がおっしゃられましたように、自衛隊のうち陸上自衛隊がやめたというのも、これまた主体的に判断したわけでありまして、航空自衛隊はしかしながら残したという。

 この次、この航空自衛隊が続けておる、あるいはアフガンのテロ特措法の場合のいわゆるインド洋での給油を続けておる、こういったのをどうするかというのは、やはりそのときの状況がどういうふうに動くかによって決まってくるわけでありまして、特にイラクの場合は、国連そのものがどういう要請を続けるのか、この国連の決議そのものも期限があるはずでありますから、そういうときにどういう決議をしてくるのか、その辺との絡みもやはり出てくるんじゃないか。そういう気持ちもございまして、今回は、単純に延長したというようなことで理解していただいた方がいいんじゃないかと思います。

長島(昭)委員 にわかには納得しかねる御答弁なんですが、きょうは官房長官がタイムリミットがありますので、次に行きたいと思います。

 こういう議論をしていてやはり思うのは、特措法方式で本当にいいんだろうかな、こう思うんです。つまり一般法の話、恒久法の話です。

 それは、我が党の中でもいろいろな御意見を持っている方がおられるんですが、さきの防衛庁の省昇格に伴って、伴ってというかタイミングがたまたま一致しただけなのかもしれませんが、国際平和協力活動が本来任務化されたと。その国際任務が本来任務化するのと同時に、私たちは、やはり国会のきちんとしたコントロールをきかせるという意味においても一般法への取り組みは非常に重要だ、こう思っているんですね。

 官房長官に伺う前に麻生外務大臣に一点だけ伺いたいんですが、麻生外務大臣も、ことしの五月、NATOで初めて日本の外務大臣として講演をなさったときに、国際平和協力活動への自衛隊のコミットメントというのを明言されました。外務大臣のお立場から、特措法方式を継ぎはぎでやっていくやり方と、きちんとした一般法をつくって、そして国会の承認をきちんと得た形で自衛隊の皆さんが堂々と誇りを持って活動できる、そういう法整備をすることについてどのような御見解をお持ちか伺いたいと思います。

麻生国務大臣 派遣されます自衛隊員が誇りを持って活動できるか否かは、物すごく大きなポイントだと思っております。何となく夜逃げみたいにしてこそこそ行かされるのでは話にならぬ、私は基本的にそう思っておりますので、きちんとした形で送り出されるべき。少なくとも国連の要請を受けて行ったりなんかしているときに、何となくこそこそ行くなどというのはもってのほかだ、私は基本的にそう思っております。

 その上で、日本の場合は、特に国際社会の平和のおかげでこれだけ恩恵をこうむっている国もそうざらにはないんではないか。少なくとも、我々の周辺というものは、過去六十年間、朝鮮事変を除いて、いわゆる紛争とかいろいろな激しかったことというのは、幸いにして、直接影響を受けるようなことがなかったという状況が続いておりましたために非常な恩恵をこうむったことは事実であろうと存じます。

 したがって、世界がいろいろな形で平和とか安定とかいうのを維持が続けられる、もしくは、治安が回復した後もその治安状況が続くというのがすごく大切だと思います。戦闘は終わった、だけれども復興はしないとか、戦闘はおさまったけれども、何となく全然いわゆる治安状況がよくないとか、そういったようなことに関して、日本はそこに何らかの形でその人たちの経済復興なり治安の回復に我々も一緒に手助けできるというのは、私どもがこれまでいろいろ世界から与えてもらった平和に対する恩恵の、今度はこちらがそういったものに貢献をする番になっているのではないかというような考え方、いろいろな考え方が今の若い方の中にもあるように、私どももそう思っております。

 一般法のそれについて整備をすべきということについては、今これは内閣の方でいろいろやっておられるんだと思いますけれども、世界の中において、今のような状況において、責任ある立場とか、いわゆる名誉ある立場とかいろいろな言葉があるんでしょうけれども、そういった国になるという観点から踏まえますと、私は、これは十分に検討されてしかるべきではないか。

 今後とも、冷戦が終わった後の方がいろいろ紛争がふえたことは事実ですから、そういった小さな地域紛争、宗教戦争、いろいろありますけれども、そういった中において、我々としては、戦闘状態が終わった後の暫時、我々は送りますし、また、例えば最近では、クメールルージュで騒ぎになりましたカンボジア、やっとあの戦争裁判が今始まろうとしておりますが、その判事は日本人です。それを日本としては送っておりますし、いろいろな意味で私どもとしては、お役に立てる部分というのは、結構冷静に落ちついて見ると、我々が想像している以上に世界から期待されている部分が多いという現実を踏まえてどうするかということだと存じます。

長島(昭)委員 一般法を推進すべきではないか、そういうお気持ちのこもった御答弁と承りました。

 ドイツの事例を以前安全保障委員会で紹介したことがあったんですけれども、二〇〇五年、つまり去年の二月にドイツは議会関与法というのをつくって、日本と同じような経験を持つ国ですけれども、議会がきちっとコントロールする中で、具体的に海外にドイツ連邦軍を派遣する際の一般法をつくっているんですね。こういうことは我が国もぜひとも必要だというふうに思うんです。

 そこで、さっき、内閣で検討しているんじゃないかと外務大臣はおっしゃっていただいたんですが、官房長官に伺いたいのは、今、この一般法の整備、策定を進めている現状はどうなっているか、伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 先生御指摘のように、今まで特措法という形で一つ一つに対応してきた、積み上げをやってきたわけでございますが、一般法という形で我が国の平和貢献のあり方、特に、自衛隊がどういう貢献ができるのかということで話題になっていることはもう御案内のとおりでありますけれども、我々としては、やはり的確な国際平和協力を推進するということが大事であって、それをどうするかという中で一般法のことを今検討しているわけであります。

 内閣官房の方で幅広く検討を今行っているわけでありますが、特に、どこまでの業務の範囲をやるのか、この業務の範囲とか必要な各種の権限のあり方といったようなこと、それから、その他もろもろいろいろな問題点について幅広く今検討してございます。

 いずれにしても、この一般法の整備について、世界において責任ある役割を日本がどう果たせるのかということを国民的なサポートがある中でつくっていかなければならないということをつくづく感じているところでありまして、今回、民主党の皆さんも賛成をしていただきましたけれども、防衛庁の省移行の際に私の地元などでの声を聞いてみても、いわゆる国際平和協力活動というものを新しいこの法律の中に入れ込んだときに、一般の方々の中で、一部やはり、自衛隊は今度外で戦闘をやるんですかみたいな話を感じている方がおられるということを聞いてびっくりしたわけですけれども、裏返してみると、十分これは説明が国民に行き届いていないということなんだろうと思います。

 したがって、一番大事なことは、国民がサポートする中で自衛隊が海外で平和協力活動ができるような法律がいかにしてできるのか、その中で、いろいろな業務の範囲とか活動の範囲とか、それから、今申し上げた、権限をどこにどう定めていくのか等々、テクニカルな話も含めて今総合的に検討している真っ最中でございます。

長島(昭)委員 実は私、この問題で質疑をするのは三回目なんです。ですから、ずっとこの間、三年ぐらいこの問題をトラッキングしておりますので、今の御答弁ではとても納得いかないんです。

 つまりこれは、恐らくお役所の皆さんは相当抵抗されるんですよ、現状を変えていく話ですから。相当政治的リーダーシップが必要だと思うんです。後で、防衛庁長官は少し消極的なのでそこのところについては直接伺おうと思っていますが、ちょっと経緯を皆さんと共有したいと思うんです。

 二〇〇三年の七月十日に参議院の外交防衛委員会の質疑で当時の福田官房長官は、まず大綱をつくります、大綱をつくってから法律案をつくりますとおっしゃったんですね。そのときに質疑者が、では早く大綱をつくってくれ、こう言ったら、官房長官がお答えになったのには、つくるにしても半年やそこらかかりますと言ったんですね。

 そこで私は、半年やそこらどころじゃありません、二年後の十月十七日に本委員会で当時の細田官房長官に伺ったんです。内閣官房に特別チームをつくって検討し始めたようだけれどもどうなんだ、福田官房長官がお答えになってから丸二年たちますよ、こう申し上げたら、いやいや、何かいろいろおっしゃって、結局ゼロ回答なんですよ。そば屋の出前もいいところなんですよ。

 そして私は、さらにことしの四月十七日に、大綱をつくると言ってから三年がたっていますよというふうにただしたところ、政府参考人は、「大変申しわけございませんが、現段階において政府としてこういう方針でいくんだということについてはまだ検討の段階でございまして」云々という、こういう話なんですね。

 こんなスピードであって、それはいろいろ大変なのかもしれませんが、本気で一般法をおつくりになろうというお気持ちがあるのか、これが一点。

 それから、何がネックになって二年も三年も、大綱をつくる、半年ぐらいでできる、半年やそこらかかりますよと言ってから三年もかかってまだ今の御答弁。ポイント二つだけじゃないですか、業務の範囲と権限のあり方を検討しておりますと。こんなものは三年前でも言えることじゃないんでしょうか。もう一度御答弁いただきます。

塩崎国務大臣 過去の経緯はもちろん今おっしゃったとおりのことで、かなり時間がかかっていることは認めざるを得ないと思っております。

 ただ、政府部内でどのような検討をしているのかというのは、すべてを明らかにするわけにもいかないところもあって今のような御答弁をさせていただいたわけでありますが、自民党の中でも、石破議員おいででありますが、かなりいろいろな具体的な形を含めて検討してきていることを私たちもよく認識をしているところであり、ただ、いろいろな点でどこまでの範囲が許容されるのかどうかというのは、例えばPKOの範囲でも、まだいろいろな議論で分かれていて、今できないこともたくさんあるわけであります。そんなこともあり、それでいろいろな形のメニューを検討しながら、どこでまとまるのかというところを今詰めている真っ最中であって、さまざまな組み合わせがあると思うんです。

 それを具体的にということで長島議員としてはフラストレーションを感じておられるというのはお顔を見ていてよくわかるわけでありますが、そこのところはまだ、さっき申し上げたように、今回の省昇格の法律でさえ国民は、戦争をやるのかい自衛隊はというふうにとる人がいるということを考えてみると、よほどのやはりきちっとした説明をしながら、自衛隊が国際平和活動をやるんだということを認めてもらうのにはかなりの手間と努力が要るんじゃないかと私は思っておりまして、先生が推進論者であることはよくわかっております。わかっておりますが、先生一人で多数決が成り立つわけでは決してございませんので、その点をぜひ一緒に考えてもらえればありがたいなと思います。

長島(昭)委員 いや、まさに私はそれを申し上げようと思ったんです。これは大綱をつくっていただいて、出していただいて、それで国民の皆さんと一緒に我々が委員会で、国会で議論すればいいんじゃないでしょうかね。そうすれば、国際平和協力活動というのは何なのかというのが、その議論を通じて国民の皆さんに浸透していくんだと思うんです。

 ちょうど私ども民主党も、かなり難産でありましたが、基本政策というのをこの前取りまとめまして、その外交・安全保障の項目の第八項目で、「国連の平和活動は、国際社会における積極的な役割を求める憲法の理念に合致し、また主権国家の自衛権行使とは性格を異にしていることから、国連憲章第四十一条及び四十二条」、これは軍事措置も含めた、「に拠るものも含めて、国連の要請に基づいて、わが国の主体的判断と民主的統制の下に、積極的に参加する。」いろいろ意見が出る中でここまで決めてきているんです。

 だから、土台は私はあると思うんです。ですから、びびらずにというのはちょっといい言葉ではありませんが、ぜひぱっと出していただきたい。そうすれば、我々もその議論で悪いところは悪いということで議論させていただきたい、こう思っておりますので、ぜひスピーディーにやっていただきたいと思います。

 ちょっと次の問題が重要なので、本当はここで防衛庁長官の反論があるんでしょうけれども、次の課題に。これをやるためにというか、きょうはあと五分しかないんですけれども、官房長官が記者会見ということで大変残念なんですが、実はミサイルディフェンスと集団的自衛権の問題なんです。

 この問題は実は私ここで三回目なんです。だから、防衛庁長官も外務大臣も、ああ、おまえのその話はもう聞き飽きたということかもしれないんですが、役者がそろわなかったものですから、官房長官にぜひこれに加わっていただきたい、こう思っているんです。

 政府が集団的自衛権の事例研究を進める、そして場合によっては、集団的自衛権、今までだめだと一般的に思われていたところも行使が可能になる場合も想定して研究に入っておられると承っておりますが、特に最近議論になっているのは、アメリカのシーファー大使などもコメントされていますけれども、つまり日本向けではない、アメリカに向けて放たれたミサイルを、同盟国である日本が技術的に撃ち落とすことができるのにそれをみすみす見過ごしてしまう、これは本当に同盟国なのか、こういうコメントをしていますね。それとまさに呼応するかのように安倍総理もおっしゃった。それからその後、一カ月前ですけれども、官房長官も記者会見で、そういうケースも含めて検討したいというお話をされていましたが、その姿勢に変化はありませんか。

    〔委員長退席、石破委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 今の御指摘の問題については、これまで憲法解釈あるいは国会での議論の積み重ねというのがあって、これを十分尊重しながら議論するということは、安倍総理もずっと言ってきたことでございます。

 ただ、一番ポイントは、日米同盟がより効果的に機能する、そのために何をどうするのかということを研究しよう、そしてまた、日本の平和あるいは世界の平和をどう日本が能動的に維持をする貢献をしていくのか、こういうことで、いかなる場合が憲法で禁止しているいわゆる集団的自衛権の行使に該当するのかを個別的な、具体的な事例に当てはめて研究していこう、こういうことを申し上げているわけであります。

 今の、ミサイルを撃ち落とす、撃ち落とさないの話については、当然、どういうケースの場合にはいわゆるその集団的自衛権に当たるのかどうかというようなことを個別的に研究していくということは、何も方針は変わっているわけではありません。

長島(昭)委員 私も理念は共有します。

 ただ、防衛庁長官が、これも私何度も申し上げましたが、先月の二十一日の記者会見で、「よそに向かって発射されているミサイルを日本のMDシステムで撃ち落とすことは実際問題としてできない。飛んで来るものを防ぐことはできるが、後ろから追いかけるのは物理的に無理だ」、これは括弧ですけれども、塩崎官房長官が「どういうようなことを想定して話しているのか、よく理解できない」、このように防衛庁長官がおっしゃっているんですね。

 ちょうどお隣にいらっしゃいますので、どういう想定なのか御説明いただけますか、官房長官。

塩崎国務大臣 どういう状況というのは、日本の上空などを飛んでいくミサイルを日本のミサイルディフェンスの仕組みで撃ち落とすことができるのかどうかということを言っているわけであって、久間長官の方は物理的に無理ではないのかというお話がありましたが、それはどのミサイルを指しているのかにもよるんだろうというふうに思っておるわけで、技術的な進歩によってそのできる、できないという話は決まってくる部分もあるわけでありますが、基本的な考え方は、冒頭申し上げたような、日本の上空などを飛んでいくミサイルを撃ち落とすことができるかどうかを研究すべきではないのかということを言っているわけであります。

長島(昭)委員 防衛庁長官、今の御説明で納得されましたですか。それともこういうことというのは、お互いに閣僚懇談会みたいな場で、あんなことを言っていたけれども、こうだああだ、そういう話はされないんですか。いつも何か一方通行になって。

久間国務大臣 私が非常に気にしましたのは、今、日本に導入しようとしているミサイルシステム、これでそういうことまで可能であるかのような誤解をみんなに与えたら非常に間違う。将来、十年先にどんな技術開発が出るか、これまで私は見通せるわけじゃございませんけれども、少なくとも、現在防衛庁が入れようとしておりますミサイル防衛システムではそういうことは不可能であるというのを前提にして物をやはり言わないと、非常に間違った誤解を国民に発する、あるいはまたよその国にも期待を持たせることになるから、それをあえて、露骨といいますか、ああいう形で言ったわけでありまして、現在導入しようとしているミサイルでは少なくともそういうことはできないわけでございますから、そこだけは国民にも知ってもらいたいと思うわけであります。

長島(昭)委員 今、日米で共同研究から開発に移行している、これから九年後にその成果が出てくるわけですけれども、そこで今言ったような理念的な話の意味が出てくるわけですね。

 そこで法制局に伺いたいんですが、たしかこういう答弁がありますね。「他国に向かう弾道ミサイルにつきましては、」つまり、今政府が検討しようとしている、日本ではなくてアメリカに、つまり他国ですね、「他国に向かう弾道ミサイルにつきましては、それが実際に他国に対する武力攻撃であったならば、それを我が国が撃墜するということは、やはり集団的自衛権の行使と評価せざるを得ないのではないかと考えておりまして、それを我が国が行うということにつきましては、やはり憲法上の問題を生じ得るのではないかと考えているところでございます。」この憲法解釈に間違いございませんか。

    〔石破委員長代理退席、委員長着席〕

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと問題を整理して、一般論として御説明したいと思うんですけれども、我が国に飛来する蓋然性のない、他国に向かう弾道ミサイルにつきましては、それが他国に対する武力攻撃である場合には、我が国がそれを途中で撃墜するということは、自衛権行使の三要件に該当しないために憲法上の問題を生じ得ることになるということでございますが、我が国に飛来する相当の蓋然性があって、自衛権行使の三要件を満たすという場合には、これは我が国の自衛権の行使として認められるというふうに解釈しております。

長島(昭)委員 では、もう少し具体的に申し上げますと、今、日米で共同開発をしているシステムというのは、ブースト段階が終わってどこに飛んでいくか方角がわかってきてから、ミッドコースで高度の高いところで撃ち落とす、そういうシステムですよね。あとはもう着弾寸前のターミナルのところで撃ち落とす、地上発射型の。この二つのシステムを研究開発して、もっともっとより早く、より高く飛ぶようにしていこうというシステムだと思うんですけれども、そうなってくると、日本に飛んでくる蓋然性がない、しかし、同盟国であるアメリカに飛んでいく蓋然性は高い、こういう場合のミサイルについて、これを迎撃した場合には違憲なんでしょうか。憲法違反なんでしょうか。

山本政府参考人 ただいまのその技術的な側面を私必ずしも承知しておりませんけれども、一般論として申し上げますと、要するにそれは、我が国に飛来する蓋然性等を踏まえまして、個別具体の例に即して検討されるべき問題だろうと思います。

 それで、先般、安倍総理の方からも、いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な例に即してよく研究してまいりたいというふうにおっしゃっているものと承知しております。

長島(昭)委員 いや、今は個別具体的な例で申し上げたんですよ。

 部長、つまりミサイルというのは、軌道というのは、例えばハワイやグアムに向かったミサイルというのは、日本の上空を飛ぶんですね。西海岸とか東海岸をねらったものは日本列島の上空を飛ばないんですね。それはもうターミナルの段階を過ぎたらわかるんですね。わかってから迎撃するわけですよね。探知をして、そしてそれを迎撃していくわけです。

 つまり、日本に来る蓋然性がないとわかっていて、しかし、同盟国に向かって飛んでいくミサイルだから、我が国は同盟国として迎撃する方が日米同盟にとっていいのではないかという総理のお考え、官房長官のお考えだと思うんですけれども、法制局としては、それについてはきっぱりと違憲というふうにおっしゃるんでしょうか。

山本政府参考人 私どもは先ほど申し上げたような点で尽きておりまして、要するに、我が国に飛来する蓋然性のない、他国に向かう弾道ミサイル等につきましては、それが他国に対する武力攻撃である場合には、我が国がそれを撃墜するということは、自衛権行使の三要件に該当しないために憲法上の問題を生じ得るのではないかというふうに考えております。

長島(昭)委員 集団的自衛権という言葉を落としているんですけれども、前の答弁とちょっと違うんですが、「集団的自衛権の行使と評価せざるを得ないのではないかと考えておりまして、」これは、平成十七年三月二十五日、安全保障委員会。答弁を変えられたんですか。

山本政府参考人 たった今そういう御説明をしたわけですけれども、それを、憲法で禁止されている集団的自衛権の行使ではないかというふうに考えられることもあるというふうにちょっと追加させていただきたいと思います。

長島(昭)委員 事ほどさように、内閣法制局との議論というのはばかばかしいというか現実離れしているというか、私はむしろ、久間防衛庁長官が以前、これはことしの十一月二十四日の安全保障委員会、ちょっと引用させていただきます。

 私自身は集団的自衛権と個別的自衛権と二つに分けるのがいいのかどうか疑問を持っておられる、こういうお話をされた上で、例えば我が国がどこかに攻撃をされて防衛出動が下令されて、米軍がそれに参加した格好で一緒に戦っているときに、我が国周辺ではなくて、米本土を目がけてその応援しているアメリカをやっつけろという形でミサイルが撃たれたときに、我が国はそれに何もできない、あるいはしないでいいのか、そういう問題がある、こういう御発言をされているんですね。

 防衛庁長官、ちょっと補足していただければありがたいんですけれども。

久間国務大臣 従来から政府としては、とにかく集団的自衛権は有するけれども、これは憲法上行使できない、そういう解釈をしてきたわけでございますけれども、私自身が昔から思っているのは、個別的自衛権、集団的自衛権という二つの自衛権があるわけではなくて、国連憲章でも、あるいはまた安全保障条約でも、個別的または集団的な自衛のための固有の権利を行使する、そういう表現がされておりますから、我が国のための自衛権であるならばそういうような自衛権を行使できる、これは可能じゃないかというふうに自分自身は思ってきておりますが、しかし、政府の一員として、従来からの政府の解釈を踏襲する、現内閣でもそういうようなスタンスをとっておりますので、私は、これでいく方が困難がなくていいと思っております。

 ただ、そういうときに、我が国が防衛出動をしなければならないような状態になって、応援する者が応援をしてくれているとき、そちらの応援がなくなるということは我が国の自衛権に重大な影響を与えるということになるわけでございますから、そういう国が攻撃されているときに黙っておっていいかとなると、そこは、自衛権の発動としてそれをカバーするのは我々としての義務じゃないかな、そういう思いもあって今みたいな発言になったわけであります。

長島(昭)委員 麻生外務大臣、少し領域外かもしれませんが、今のやりとりを聞いていて、この集団的自衛権とミサイルディフェンス、あるいは日米同盟をこれからどうやって強化していくかという観点で何か御見解があれば、ぜひ承りたいと思います。

麻生国務大臣 昔から、あるけれども使えない、だれが決めた、法制局長官の見解ですと言われると、何となく私としては、子供を納得させられるかなと。私は、こういう話は子供が納得するかしないかとよく考えるんですけれども、大人は理屈で言っても、子供は何となくぴんとこないんじゃないかな、そのときそう思い続けてもうかれこれ十何年たつんですが、今、見解は多分久間先生とほとんど同じ答えになるんだと思っております。

 限定をして、例えば船が二杯でこうやって訓練していましたといって、こっちに、日本の方に飛んできたら助けて、こっちがやられたときは、そっちは自分でやっておれは逃げるというのは、何か世の中では余り通らない話なんじゃないのかな。友達同士でやって、それは二度と友達とは言われないだろうなという感じはするんですね。

 そういった考え方はありますけれども、ただ、これまでずっとそういう見解で何十年来ておりますので、今さら急に変えるというのでしたら、これはちょっと法制局長官レベルでは、歴代の法制局長官の見解と全然違ったことを今の長官が言えるかと言われると、これはまたなかなか難しいので、そういった意味になりますと、これはもっと違った意味で、総理とか、何かいろいろな世論とかいろいろな形になってくるのかなという感じでありますので、ちょっと所管外なんですけれども、前々から感じているところです。

長島(昭)委員 この問題は、小泉総理が、最初に就任の記者会見のときに集団的自衛権の問題は研究をしようと言って、しかし、五年間あったのに何もしなかった。安倍総理も就任冒頭からおっしゃって、どのくらい進んでおられるのかわかりませんが、今の法制局の御答弁ぶりからするとまだまだだなという気はするわけですけれども、これからの政権でどうなっていくか、ちょっと興味深いところです。

 法制局に一点確認させていただきたいのは、集団的自衛権の行使が認められないのは、憲法第九条で認められる自衛権の行使が必要最小限度だ、こういう縛りがかかっているので、必要最小限度を超えるものという認識から集団的自衛権の行使はできない、こういうことでしたよね。

山本政府参考人 我が国の自衛権行使には三要件があると申し上げておりまして、集団的自衛権の場合は、その第一要件の、我が国に対する武力攻撃がないというところにひっかかると思います。

長島(昭)委員 そういう御答弁は机の上ではできるんですけれども、実は私、ちょっときょうは提案をさせていただきたいと思っているんです。

 それは、これだけ北朝鮮の核とミサイルの脅威に我が国がさらされていて、民主党も、実はこの前まとめた政策の中で、個別的も集団的も区別しないんだ、こういう見解を持ってきたんですけれども、私も久間長官に非常に近い考え方を持っていまして、特に日本は、核やミサイルの脅威について、もちろん核武装はできませんから、ある種アメリカの核の傘に頼って、信頼性に頼っているところがあるわけですね。

 この核の傘の信頼性というのを担保するには何が必要か。一つは日米同盟の信頼性ですよ。これはもう常に保っていなきゃいけない。それからもう一つは、これはよく言いますよね、ロサンゼルスを犠牲にして東京を守ることが本当にアメリカの国民にできるかと。こういうことを考えると、アメリカの本土が安全であることが核の傘をより信頼性の高いものにしていく一つの方法であるんですね。

 ということは、アメリカ本土を守るということは、我が国の個別的自衛権、つまり、我が国に飛んでくるかもしれない、北朝鮮からの攻撃があるかもしれない、そのことについての安全性をより高めること、つまり、広い意味では個別的自衛権の範疇に入るんじゃないだろうか、私はそのように思っているんです。

 そこを、個別だ、集団だ、我が国に飛んでくる蓋然性がないからそれは無視するんだ、こういう話では、僕は、アメリカのシーファー大使も言っているように、そもそも日米同盟関係が成り立たない、このように思うんです。

 私は、イギリスのように、のべつ幕なし地球の裏側までアメリカと一緒に戦闘しろという意味を込めて言っているわけでは全然ありません。ただ、少なくともミサイルディフェンスとか周辺事態での活動とか、そういうことに限って言えば、今までの非常に硬直した、法規的と言うと失礼かもしれませんが、そういう解釈を見直すいい時期に来ているんじゃないだろうか。それについては私たちも、野党という立場ですけれども、十分議論に参加できるそういう基盤は整っている、このように思っておりますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 あと、もう最後になりました。六カ国協議の話から入ろうと実は思っていたんですが、官房長官の時間が足りなかったものですから後先になってしまいましたが、残りの時間を使って六カ国協議についてちょっと伺いたいんです。

 今の北朝鮮の最初の発言を見ても、それから作業部会にかかわるいろいろな北京での様子を見ても、何となくデジャビュといいますか、去年の九月から十一月でやっていたことをもう一回やっているような気が私はします。六者協議はここに至って行き詰まってきたなという思いを強く持ちますし、今さらながら外務大臣のお言葉を思い出すんですけれども、やることに意味があるわけじゃないよと。だから、ここはもしかして、麻生外務大臣からブッシュ政権に対して、これはただやればいいというものじゃないよという話をぜひしていただきたいと思うんですが、私、ポイントが二点あると思うんです。

 一つは、ミサイルを連射した、核実験をやった、この二つが外交的に北朝鮮にとって成功したという形をつくっては絶対いけないと思いますね。これが一つ。これはもうボトムラインとして押さえておかなきゃいけないと思うんですね。どうも今、何かそれをてこにして交渉をし始めていますから、何となくそういう感じがします。

 それから、見通しのない時間稼ぎはどうでもいいんですけれども、何となく見通しのある時間稼ぎを北朝鮮に許すことは絶対できない。私は、この二点あると思うんです。

 その点でいうと、実は六者協議の枠組みというのはいかにも中途半端だと思うんです。私も常々言っていて、いつも外務大臣に否定されてしまうんですが、あのクリントン政権のときの九四年の枠組み合意というのは、もちろん、プルトニウム型の核開発だけではなくてウラン型の核開発もやっていましたから、全体としてはアメリカはだまされちゃったんですけれども、少なくとも寧辺の、つまり、今核実験がやれるほどになって稼働しているあの寧辺の核施設だけは八年間凍結することに成功しているんですね。

 これは船橋さんが最近「ペニンシュラ・クエスチョン」という本で明らかにしていますけれども、パウエル国務長官もブッシュ政権の中で、要するに、枠組み合意全部がだめだと言うな、あの寧辺の核施設については凍結できていたじゃないか、このことについては否定してはいけないんだという言葉が出てきます。だから、本気で北朝鮮の核をとめるんだったら、私は、やはり二国間できちっと検証可能な形で合意をする以外に実はないと思う。中国やロシアや韓国を入れてやっていては私はなかなか難しいと思うんですけれども、そこは外務大臣、どのような見解をお持ちでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘のように、この六者会談の初日は、デジャビュという話をされましたけれども、まさに双方言い値を言い合ったというのが初日だったと思いますが、二日目になりまして、きょうになりましてからはかなり様相が変わっております。内容まで申し上げるわけにいきませんが、様相はかなり変わっております。ただ、隔たりが大きいのは確かです。

 六者協議以外にちょっと枠組みがないと思いますのは、やはりアメリカにしてみれば、マデレーン・オルブライトを使ってだまされたとかいろいろな思いがある。それのおかげでというので、そこをついてブッシュ政権は選挙を勝ってきておりますので、なかなかその話は同じ轍は踏めないというのが、多分本人の置かれている立場だと存じます。

 ただ、基本的なことで、やはり二者だと、とにかく一回だまされていますので、最低もう一者、証人が要ると思っております。今、二者で話はいろいろやっております。二者というのは米朝で。向こうの言い値も出てきております。こちらの方の話も、のめる、のめない話をずっと始まっておるというところまでは来ております。したがって、今御提案のあったような方向になってきておることは確かですけれども、ただ、一対一でやってだまされていますから、必ずもう一人そこにちゃんと証人として、約束を履行していないじゃないかと言える立場の者は、やはりパイプラインのあれを持ったりいろいろする中国の存在が大きいということになります。

 今回は、少なくとも中国は、核実験以降は、今回の六者会合に関しても、議長国としての責任を果たしていないというのに対して、今回は間違いなく努力をしていることは確かです。また、いろいろな会合に関しての情報をいろいろ公開してきていることも確かです。今までとはかなり大きく中国の態度が変わったことは確か、それが今少しずつ動き始めつつあるところがあると思います。これが一つです。

 もう一点は、ミサイルと核を持ったおかげというお話をされましたけれども、この話は私も、いわゆるコンディ・ライス長官とともに、潘基文という、今の事務総長になった前の外務大臣と、核実験が終わって三日後にコンディ・ライスが日本に来て、そのまま一緒にソウルに行ったんですが、そのときには、この人は孤立している孤立していると北朝鮮の話をみんな日本の人はよく言うけれども、とんでもないんじゃないかとおれは思うと。あの人は、ほら見ろ、核実験をやったおかげで、アメリカも来た、韓国も来た、中国も来た、ロシアも来た、みんな来たじゃないか、だから、核を持ったおかげでこんなにおれたちはスポットライトを浴びているんだと、多分今の気持ちとしては極めてハイな状況になっているのではないかというのがおれの分析だけれどもということを言ったんですが、全く正しい、おれもそう思っていると。

 だから、やはり核保有国として認めるというか、こうなってというのは、余り長い状態で置くのはいかがなものかと存じますので、そこのところはきっちり、核保有国として認めて話を開始するというのは基本的には手のうちに乗ることになりますので、そこは五カ国いずれもリジェクト、否定して、そしてその上で今話が進みつつありますというのが、きのうから、後半から起きていることだと存じます。

長島(昭)委員 何となく北朝鮮が妥協する兆候が多少見えてきているというお話ですと、それはそれで非常に興味深いと思うんですが、ここでおっしゃれることは限られておると思うので、だからこそ私は、北朝鮮が余裕の姿勢で六者協議に参加しても、これは私以前も申し上げましたけれども、六者協議というのは意外と危ない場で、あそこが動いている間はまあ北も何ともしないだろうといって、国際社会も北も何かほっとしてしまうというか、そうなってしまったのではいけないので、国連決議一七一八の履行がどの程度きちっとなされているかということを日本政府も折に触れて国際社会に対してアピールしていかなきゃいけないと思いますし、その圧力があって初めて、追い込まれて北朝鮮がテーブルに着いてきちんとやるべきことを誠実に履行する、こういうことになるんだと思います。日本の立場は非常に重要だと思いますので、リーダーシップを発揮していただきたい。

麻生国務大臣 一つだけ。今、妥結する可能性があると言われましたけれども……(長島(昭)委員「妥協です」と呼ぶ)妥協。隔たりはかなりあるということだけはまずしておかないと、いかにもあすは妥結するみたいな話では違いますから。

長島(昭)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 これにて政府に対する質疑は終了いたしました。政府関係者は退席していただいて結構です。

    ―――――――――――――

浜田委員長 これより、国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件につきまして自由討議を行います。

 議事の進め方でありますが、まず、各会派を代表して一名ずつ大会派順に十分以内で発言していただき、その後、順序を定めず自由討議を行いたいと存じます。

 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、各会派の代表者から発言の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木馨祐君。

鈴木(馨)委員 自由民主党の鈴木馨祐でございます。

 本日は、こちらで意見表明の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。また同時に、イラクで日々命がけの任務についていらっしゃる空自の皆様には心より敬意を表したいと思っております。

 本日、自由民主党を代表いたしまして意見表明をさせていただくところでございますけれども、やはり今この国会の場で考えなくてはいけないことは、イラクにいつまで航空自衛隊の派遣を継続するべきであるのか、そういった点であるというところは論をまたないところであると思っております。

 航空自衛隊を海外に派遣する、しかも危険と言われる土地に派遣するということは、決して通常の状況であるとは言えません。我が国国民の、しかも代表である人間が、いつ命を落とすとも知れない、そういった状況にあるのは事実でございまして、これをよしとするにはよほどの事情がなくてはいけないというのは、また自明の理であるというふうに思っております。

 そこで、日本としてイラクに自衛隊を派遣しているのはなぜであるのか、そのことにつきまして若干の意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。

 これまでの議論を聞きますと、幾つかある意見のうちの一つがイラクのため、そういう考え方があろうかと思います。また、国際協調のため、そういった意見もあろうかと思います。これは間接的、直接的にもなりますが、やはり一番大きいのは日本のため、日本の国益、安全保障のためである、そういったことになるのかというふうに思っております。

 このそれぞれについてやはり考えていかなくてはいけないのだと思うんですが、まずイラク自身のためということでございますと、これは、先ほどより話が出ていますISG、イラク・スタディーグループの議論もありますし、国際世論の状況を考えましても、航空自衛隊が絶対にいなくてはいけない、そういう状況であるかについては、極めて検討を要するような事態であるというふうなことが言えるのかと思います。

 また同時に、国際協調のためということであれば、最近の国際的な議論を考えれば、またこれも検討を要することであろうと考えております。

 最後の、日本の国益に関するところでございますけれども、恐らく、この日本の国益というのは何通りかの考え方があるんだと思います。

 まず最初に、テロを抑止して日本の安全保障に直接寄与するということ。このために一番有効なのは、テロの真の理由というのは、貧困であったり経済的な問題であることもまた事実であるわけでございますから、次の、円借款であるとか、そういったステージへの移行というものが恐らく有効なのであろうということは言えるのではないかと思います。

 二点目、日本はエネルギーが、原油その他、天然資源に非常に乏しい国であります。そういう国において、原油の確保という観点からも、この地域の安定と同時に、やはりイラクの政府に対してしっかりとコミットをする、このことの重要性というのは非常にあるのであると思います。

 また、三点目にありますのが、日本がこれまで、自由であるとか民主主義、そういった価値観の国として歩んできた歩みに基づき、その上で、国際社会に対してしっかりとしたその立場でのコミットをすることで日本のプレゼンスを上げる、そういうことも考えられるのかと思います。しかしながら、この点につきましては、今アメリカでの議論もありますように、国際社会での議論もありますように、またこれも慎重に、果たしてそうなのか、その検討が要るのであると思います。

 私が、基本的な立場といたしまして、イラクに自衛隊を危険を冒してまで派遣せざるを得ないと思っている理由といたしましては、やはりアメリカとの関係というものが最終的にはあるのではないかと考えております。

 日本の安全保障状況、地政学的な状況を考えれば、この東アジア地域において、中東ではない東アジア地域においてアメリカのコミットメントがなくてはいけない状況、また、日米同盟に対するアメリカのコミットメントがなくてはいけない状況であるということは、そのことについての認識というのは、恐らくここに御出席の皆様方、余り意見の相違というのはないと思いますけれども、そういう中で、やはりこれは、イラクにコミットしているあらゆるほかの国と比べて日本の状況というのは極めてこの点について異なっている、そういう認識を私は持っております。

 アメリカという一番大きい、今の世界においては強い国家、しかもそこと価値観を共有している日本においては、その国の明確なコミットメントがなければ自分の身の安全、安全保障を維持できない、そういう一番シビアな地域に存立している国で日本はある、そのことは決して忘れるべきではありません。

 これらの状況を勘案して、日本にとって、この地域に、この地域というのは中東ですけれども、中東地域に航空自衛隊を派遣し続けることが必要なのかどうなのか。その結論というのは、恐らく、今の東アジアの状況、まさに北朝鮮問題を抱え、また中国の軍事費等の問題も抱え、そういう状況にある日本としては決して譲れない一線なのであろうというふうに思っております。

 そういう観点から、これは法律上のことを言えば、来年七月三十一日以降どうするのか、また、基本計画についてもそれをどうするのかということがありますけれども、その大前提として、日本の国として、派遣を来年の七月三十一日以降もする余地を残すのかどうなのか、そして、余地を残した上で実際にするかどうか。そのことの判断が極めて厳密に求められるのであろうというふうに私は思っております。

 そういう観点からいきますと、当面、日本としての方向としては、アメリカがいかなる方向に議論をこれから展開しようとも、そのことが非常に不透明であることはまた事実でありますし、まさにブッシュ大統領が、次、イラクについての情勢認識をいつ出すのか。クリスマス前という話もありましたが、来年以降に延びるという話もありますし、それをしっかりと見きわめながらも、やはり日本としては、例えばアメリカがこのまま継続する、そういう姿勢であったとしても、臨機応変に対応できるような器づくりだけはしておくべきであろう。

 そうした上で、先ほどどなたかの質疑にもありましたように、同盟国として、次善の策、三善の策、ほかのオプションとしてこういうオプションがあるんだ、そういったところを示していくことは同盟国としてしながらも、ただし、やはり我々は、アメリカの姿勢というものをもちろんただすことは可能な限りするべきではありますけれども、みずからの安全保障状況も考えれば、アメリカを捨てて、アメリカの意向に反してこの地域から撤退するということが現実的に本当にできるのかどうか。そのことが疑問である以上、やはり検討の方向性としては、当面はこの地域でのコミットメントを続ける、派遣をやめるというオプションはないのではないか、そのように私は考えております。

 以上をもちまして私の意見表明とさせていただきます。どうもありがとうございました。

浜田委員長 次に、神風英男君。

神風委員 民主党の神風英男でございます。民主党を代表して意見表明をさせていただきます。

 十二月八日、政府は、イラク特措法に基づく基本計画を二〇〇七年七月三十一日まで延長することを決定されました。冒頭、イラク特措法の延長に関して、民主党は、自衛隊派遣の根拠自体に問題があり反対であるとの姿勢に変わりがないこと、また、この方針は、防衛庁が省になろうと変更がないことを改めて強調いたします。

 まず、イラク戦争の認識について、ライス米国務長官は、十二月一日、米国の対イラク政策について誤りがあったと認めています。小泉政権のもとで、大量破壊兵器の保有やアルカイダとの関係も不明なまま安易に米国の対イラク政策を支持した我が国も、その支持の方針に誤りがあったことを率直に認めるべきです。

 折も折、晴れて初代防衛大臣になろうという久間長官が、当時の小泉総理が示した米英等によるイラク攻撃支持の方針を正式なものではないと発言されたことは、政府としても一枚岩ではなかったことがはかなくも裏づけられたものと受けとめますが、問題はその方向性であります。政府による支持の方針は明らかであったのであり、久間長官が示すべきであった政府の姿勢は、イラク攻撃に対する支持がなかったという方向で言い逃れをするという姿勢ではなく、逆に、確かに政府による支持方針はあったが、結論としてその方針は誤りであったと明確に認めることであったはずです。

 かつてのベトナム戦争について、我々はなぜ戦争をしたのかを、アメリカ、ベトナム双方の当時の戦争指導者たちが検証したハノイ対話は、私にとって大変大きな衝撃でありました。それに比べ、失敗を隠ぺいし、原因を究明せず、責任を回避しようとする現在の日本政府の抜きがたい悪弊は、いまだに改善の兆しすら見えません。

 さきの久間長官の発言については、翌日撤回された旨伺っておりますが、改めて政府は、イラク戦争についての政府としての総括をすべきであります。

 イラクの現地情勢を踏まえた我が国の活動について、現在のイラクの治安状況は、毎月の死者が三千人を超え、報道機関に加え、アナン国連事務総長やパウエル元国務長官に内戦状態と言わしめるほど悪化をしております。空自の活動拠点の一つであるバグダッドは、十一月下旬の連続爆弾テロ発生以降、無期限の外出禁止令が出されている状況です。政府は、イラク特措法に基づく基本計画の延長決定に当たり、イラク情勢についてどのような認識のもと派遣期間の延長を決定したのか、具体的な根拠を示して、国会や国民に十分に説明する責任を果たすべきです。

 さきの米国の中間選挙ではイラク問題が選挙の争点となり、米国民はブッシュ政権のイラク政策にノーの意思表示を示したものと受けとめられています。選挙結果を受け、ラムズフェルド国務長官は更迭され、国連で強硬な姿勢をとっていたボルトン国連大使の続投もなくなりました。米国では、さきに述べたイラク研究グループの提言により、イラン、シリアとの直接対話を含めた外交の活発化など、イラク政策の見直し機運も出てきたと言えます。

 さて、アメリカの方針が不透明な中、我が国は、日米同盟と国際協調を重視するとの建前から、独自の戦略を持たないまま、国際協調の枠組みが不十分な状態であったにもかかわらず、安易に米国等によるイラク攻撃を支持し、自衛隊のイラク派遣を決定したため、米国の対イラク政策が変更された場合、はしごを外されたような形になる危険があります。いわば、北朝鮮情勢等も踏まえ、半ば同盟維持のためと割り切って進めてきた国際協力活動とも言えます。

 ですから、現地の自衛隊は、肝心の米国が撤退してしまうと、もともと復興支援という名目で駐留してきたためにイラク国民や国連からの復興ニーズという建前を無視するわけにもいかず、さりとて、輸送業務の必要性の面に着目すれば撤退の根拠を見出すことが困難となり、かえって現場に居続けなければならないというねじれが生じてしまうのではないでしょうか。そうこうしているうちに、適切な撤退のタイミングを逸する状態になることを危惧します。

 政府の意思決定のあり方に関して、政府は、航空自衛隊による活動期間の延長の閣議決定の際、主体的に政策を決めてイラクの復興支援をやっているとしていますが、その自衛隊の活動自体が、他国の軍隊やイラク治安部隊による治安の確保という脆弱な前提の上に成り立っているのです。

 イラクの復興支援自体の必要性はだれしも否定できませんが、現実には、空自の派遣期間の延長が決定された一方で、イギリス、イタリア、韓国、デンマーク等で次々にイラクからの撤退決定やその時期を模索する動きが見られます。我が国は、空自の撤収に関して、どのような条件がそろえば撤収させる方針なのか。米軍等の撤退等に合わせれば、かえって輸送ニーズがふえるのではないかとの懸念が指摘をされています。早急に出口戦略を策定する必要があります。

 今後のイラク政策の方向性について、荒廃したイラクの現状を改善するためには、これまで以上に外交力が求められることは言うまでもありません。さきに御紹介をしたイラク研究グループの報告においても、イラン、シリアとの直接対話を含めた外交を検討すべきであると勧告しているとおりです。我が国は、米国とは異なり、シリア、イランを含めた中東諸国全体との間でも良好な関係を維持してきており、独自の戦略のもとに強力な中東外交を展開すべきです。その前提として、米国の対イラク政策見直しを契機に、我が国においても、これまでの政策を徹底的に検証し、新たな方針のもと、しっかりとしたイラク政策を立て直すべきと考えます。

 最後に、国際協力に関する恒久的な取り組みについて考えを申し上げます。

 荒廃したイラクをどう立て直すかについて正面から議論することにちゅうちょすべきではないと思いますが、今回の米英等の攻撃は、国連や国際社会の交渉努力を弱めてしまった面があることも否定できません。

 もともと、国連決議があり、国際協調の枠組みが構築されていれば、我が国自身の慎重な国益判断を踏まえ、主体的に行う自衛隊による国際協力活動についても積極的に関与していくべきであると考えます。しかし、残念であったのは、当時の小泉政権が、冷静かつ慎重な情報分析や国益判断を怠って、イラク特措法の成立を急いだために、海外における自衛隊の派遣原則をあいまいにしたままの状態で派遣を継続していることであります。

 今後、国際社会の平和の確立に関与し、積極的に平和を創造していくためには、将来的に国会によるシビリアンコントロールを徹底する方策の充実を図りつつ、一般的、恒久的な法制の検討をすることもやぶさかではないと考えています。それだけに、無原則、無節操な海外派遣を継続するのではなく、将来にわたって通用し得るようなしっかりとした派遣原則を確立することが中長期的に見て重要だと考えていることを強調し、意見表明といたします。

浜田委員長 次に、田端正広君。

田端委員 公明党の田端でございます。

 冷戦終結後、世界にあって、民族、宗教、領土、資源等をめぐって、さまざまな要因が絡み合って、各地で紛争が多発してきたところであります。紛争解決と国際平和の構築を目指して、当事者間の停戦合意のもとで、我が国も、PKOによる平和維持活動、復興支援活動を展開し、それが、アンゴラ国際平和協力業務を初めとして、カンボジア、モザンビーク、ルワンダ、東ティモール、ゴラン高原等々数々の実績を残してきたところで、評価もされているところであります。

 そういう中で、二〇〇一年の九月十一日、米国同時多発テロ事件というのは大変大きな衝撃でありました。そして、世界は国際テロという新たな脅威に直面し、日本としても、観念的な平和の理念を標榜するだけでなく、各国と連携をとりながら、外交、警察、司法、情報、教育、経済などさまざまな分野でのテロとの闘いを進めることが重要になってきている現下にあります。

 その意味からも、今日の、テロ対策特別措置法に基づく海上自衛隊によるインド洋での給油活動等を初めとしたテロ対策に取り組んでいることは、国際社会の一員として、日本の責務という意味で大きく評価され、現在の自衛隊並びに関係各位のこの努力に対して、私も心から敬意を表したいと考えています。

 そしてまた、イラク特措法によって、イラクのフセイン政権崩壊後二年半にわたって、民間では対応できない不安定な地域にあって、自衛隊の今日までの活動は多大な信頼を現地の人たちから得て、そしてまた、一発の銃弾を発することもなく、一人の犠牲を出すこともなく、イラク南部サマワにおいて、国連決議に基づく人道復興支援活動を成功させたことは大いに評価されるところだと考えています。

 本年六月にムサンナ県が治安権限移譲の最初の県になったことも、これもまた、自衛隊による学校や医療活動など公共施設の復旧整備、あるいは飲料水の供給、物資の輸送等、そうした現地との友好な交流によって功を奏したものと考えているわけでありまして、引き続き、航空自衛隊による輸送業務をもしっかりと見守っていきたいと思います。

 また、自衛隊の支援活動のみならず、我が党が、かつて青年局の人たちが五百五十万の署名活動を行ったことが引き金になりまして、日本政府の支援で、旧フセイン政権により崩壊されたイラク・イラン国境地帯に広がるメソポタミア湿原の再生を目指した、UNEP、国連環境計画によるイラク南部湿原環境管理支援プロジェクトも二〇〇四年八月から実施され、本年九月には、破壊前の湿原面積の四八%に当たる部分で植生と冠水が観測されるようになりました。

 また、水道管の敷設とか共同給水栓の設置等が行われ、二万二千人の安全な飲料水が提供されるようになるとともに、湿原復元の土木工事や設備の保守管理、調査などによって二万五千五百七十二人の雇用も創出されたと聞いております。

 さらに、住民による湿原地帯への帰還や、あるいは家畜の増加、都市向けの酪農製品の生産、アシ工芸品の製作も活発に行われるようになり、この地域でのコミュニティーの繁栄にもつながっているという報告を受けています。

 今後も、このような平和と人道を第一に考えたイラク国民への支援を日本はぜひ進めていくべきだと私は考えています。

 また、一方において大変気になるのが、イラク政府発足後の治安の悪化であります。

 イスラム教シーア派とスンニ派との対立による、あるいは石油利権をめぐる争いも絡んで、国連が先月に発表したイラクに係る人権報告によれば、テロ、襲撃事件等で死亡したイラク民間人は十月一カ月だけで三千七百九人という数字になっていることは実に悲しいことであり、一日平均百二十人の方々が命を失っていることになるわけでありますし、また、失業率も増加し、物価も高騰している、そういう現象も見られています。

 今こそ、こういう意味で、時間をしっかりとかけて治安対策に、構造的な要因を取り除くべく作業をすべきであり、イラク国民から信頼の厚い日本がリーダーシップを発揮した戦略的外交ということを考え、国際社会と連携して、イラク・テロ組織に利用されないようにどう対策を講じていくべきであるかということを考えなければならないときだと思います。

 また、今回、防衛庁の防衛省移行にあわせて、自衛隊の国際緊急援助、国連平和維持活動、周辺事態法による米軍の後方支援、インド洋、イラクでの支援活動等が本来任務化されるわけでありますが、イラクでの自衛隊による復興支援の成果が国民のコンセンサスに大きく貢献したと考えられるわけであります。自衛隊による活動とODAによる支援、そうしたものが日本の国際貢献における車の両輪と位置づけて、今後も日本は力を注いでいくべきだと思います。

 以上、イラクやアフガンなどの状況を踏まえつつ、今後の日本の国際社会での貢献のあり方を考え直す、見直すときに来ているのではないかという思いもいたします。

 PKO活動を考えてみましても、現在、日本はゴラン高原で四十五人が活動しているのみであり、何万人という世界のPKO活動の中からは非常に寂しい状況にあります。

 また、イラクにおけるメソポタミア湿原の再生等には大変な実績はありますが、こういう復興支援にODAとして五十億ドルの最大予算をとりながら、現在は十五億ドル、無償供与によるものが決定されているのみであります。もちろん、これは電力とか教育とか水とか雇用とかには大きく貢献しているわけでありますが、治安の状況がよくないために、三十五億ドルの円借款等におけるインフラ整備等の支援のあり方がまだまだできていないという状況にもあります。

 一方、アフガンを見てみましても、ODAによる約十一億ドルは決定しているわけでありますが、先日、当委員会にカルザイ大統領が来られたときにも、私、お伺いしたときに、麻薬対策に日本の力をぜひかしていただきたいというお話が大統領からもございました。そういった意味では、例えば農業技術支援等が今後大変必要になっていくのではないかと思うわけでございます。

 いずれにいたしましても、イラクもアフガンにおいても出口ということが今後必要になるわけであります。そこで結論を申し上げますと、今後、そういった状況を分析して、そして、国家的戦略において日本がどう平和的な国際貢献をしていくべきかということを論議すべき時期を今迎えているのではないかと思います。

 その意味でも、国民への丁寧な説明と国家的な政策決定ということをしっかりと念頭に置いて、そして、国連の常任理事国入りという大きな背景をも考えながら、文民を含めたPKO活動の展開やODAの支援を内容のあるものに検討して、人間の安全保障を軸とした国際貢献を考えていくべきではないかということを申し上げて、終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 私は、日本共産党を代表して、イラク特措法及びテロ特措法をめぐる現状と課題について意見を表明いたします。

 二〇〇三年三月の米英によるイラク戦争開始から三年九カ月になります。イラクの現状は泥沼化そのものであります。

 米軍が、開戦以降、ファルージャやバグダッドなどで繰り返してきた軍事掃討作戦は、イラク国民と武装勢力の反発と抵抗を生み、イラク情勢の一層の深刻化を招いてきました。

 こうしたもとで、ことし二月の中部サーマッラーでの聖廟爆破事件以降、宗派間の対立も、かつてない深刻な事態に至っています。

 開戦以降のイラク人死者数は、報道記事に基づく集計を行っているイラク・ボディーカウントによると、少なくとも五万人以上に上ります。イギリスの医学専門誌ランセットが十月に発表したジョンズ・ホプキンス大学などによる調査では、ことし六月までの銃撃や暴力、健康悪化など戦争に起因する死者数を、人口の約二・五%に当たる六十五万人以上と推定しています。米軍死者数も三千人を超えようとしています。

 国際社会の圧倒的多数の反対の声を押し切り戦争を開始した米国政府と、それを支持し支援してきた日本政府の責任は極めて重大と言わなければなりません。

 イラク戦争が国連憲章違反の侵略戦争であることは、今や明白であります。戦争の最大の根拠とされた大量破壊兵器はイラクに存在しなかったことが確定し、ブッシュ大統領自身が、昨年十二月、誤った情報に基づいて判断したことを公式に認めています。旧フセイン政権と国際テロ組織アルカイダの関係についても、ことし九月の米上院情報特別委員会の報告書で、両者の関係は一切なかったことが明らかになっています。

 安倍内閣の閣僚の中からイラク戦争の正当性に疑問を呈する発言が出ているのも、こうした戦争の性格に起因するものにほかなりません。この際、政府は、イラク戦争を支持してきたみずからの姿勢を根本から改めるべきであります。

 米英による無法な侵略戦争と、それに続く軍事占領支配に参加し、占領軍の一員としてその一翼を担ってきたのが自衛隊にほかなりません。陸上自衛隊は主としてイラク南部サマワで給水や公共施設の復旧、医療活動を、航空自衛隊はクウェートとイラク国内の飛行場の間で人員、物資の輸送活動を行ってきましたが、こうした自衛隊の活動は、多国籍軍司令部の統制のもと、軍事占領統治の一環として行われてきたものです。

 陸上自衛隊は、バグダッドの多国籍軍司令部などに連絡要員を派遣し、司令部のもとでの調整に基づき活動を進めてきました。ことし六月のサマワからの撤退決定は、イラクの治安組織の育成を担ってきた英豪軍が任務を終了したのにあわせて判断されたものでした。

 航空自衛隊は、カタールの米軍司令部に連絡要員を派遣し、タリル飛行場への陸上自衛隊関連物資の輸送を中心に活動してきました。陸上自衛隊の撤退に伴い、活動区域をバグダッド飛行場、イラク北部エルビル飛行場に拡大し、軍事掃討作戦を行う米軍の人員、物資の輸送を正面から担う事態に至っています。

 こうした自衛隊の活動は、武力行使を目的とした多国籍軍への参加そのものであり、戦争放棄、交戦権否認を規定した憲法九条を真っ向から踏みにじるものにほかなりません。

 イラクは、二〇〇三年五月のブッシュ大統領による大規模戦闘終結宣言以降も、全土で戦闘が繰り返される事態が継続してきました。こうしたもとで、サマワに駐留してきた陸上自衛隊自身、活動期間中に繰り返し宿営地や車両への攻撃を受け、政府が主張した非戦闘地域の虚構の論理も完全に崩れました。

 戦闘が頻発しているバグダッドへの空輸については、飛行場内は非戦闘地域などという議論をまじめに行って活動を開始しています。イラク派兵の根拠はまさに総崩れであります。政府は直ちに自衛隊の撤退を決断すべきであります。

 外務省によると、イラクから既にスペインやイタリアなど十四カ国が撤退し、イラクへの軍隊派遣国は三十六カ国から二十七カ国にまで減少しています。今や、有志連合は世界の一握りにまで孤立しています。

 しかも、一向に改善しない深刻な泥沼化のもとで、ブッシュ政権自身が、今、イラク政策の転換を余儀なくされようとしています。中間選挙での共和党の敗北で、ラムズフェルド国防長官、ボルトン国連大使らが辞任に追い込まれています。

 さらに、ベーカー元米国務長官らによるイラク研究グループが、今月六日、ブッシュ大統領に対し、イラク政策見直しの提言を盛り込んだ報告書を提出しました。国民的な和解と、イラン、シリアとの直接対話を含む中東での包括的な外交努力を強化するとともに、米軍の任務をイラク治安組織の訓練などの側面支援へ移行させ、駐留米軍の約半数を占める戦闘部隊を二〇〇八年三月までに段階的に撤退させることを打ち出しています。ブッシュ大統領は、イラク政策について新しいアプローチが必要だと述べ、同報告書を真剣に検討する意向を表明し、来年一月にも新たな戦略を発表する見通しと報道されています。

 ブッシュ大統領による政策見直しがどこまでの内容を含むものになるにせよ、九・一一テロ以降ブッシュ政権が進めてきたブッシュ・ドクトリン、すなわち先制攻撃戦略の行き詰まりと破綻を示すものにほかなりません。

 新たに国防長官に就任したゲーツ氏は、米上院公聴会で、米国がイラクで勝利しつつあるとは思わないと述べました。外国軍隊によってイラクの現状を打開できないのは、開戦後の経過で既に明白であります。米軍が繰り返す軍事掃討作戦は、情勢の安定化どころか、一層の憎しみと抵抗を生むだけです。占領された住民にとっては、いかなる理由によっても外国占領軍の存在は容認できないのであります。

 ところが、日本政府は、こうした現状について何らの検討を行うことなく、今月八日、イラク特措法に基づく基本計画を変更し、自衛隊の活動を特措法の期限である来年七月三十一日まで延長することを決定しました。一体どういう状況になれば撤退を判断するのか、政府の主体的な判断基準は一切示されていません。結局、米軍が駐留する限り派兵を継続する、アメリカ追随の姿勢と言わなければなりません。

 次に、テロ特措法の問題です。

 今国会の延長案に対する討論でも指摘したとおり、そもそもテロ特措法は、九・一一テロ以降アメリカが始めた報復戦争に対する後方支援活動に定めた法律であり、憲法上認められないものであります。今回で三回目の延長になるわけですが、事態は、改善するどころか、一層深刻化しています。

 アフガニスタンは、今、タリバンの復活で、かつてない情勢悪化に直面し、治安維持を任務とする国際治安支援部隊、ISAFが、米軍の一部を組み入れ、掃討作戦に乗り出す事態になっています。国際的なテロの拡散も極めて深刻であります。

 報復戦争開始から五年が経過し、戦争でテロをなくせないことははっきりしました。政府は、対テロ戦争支援を中止し、インド洋から自衛隊を直ちに撤退させるべきであります。

 以上、意見の表明といたします。

浜田委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。社会民主党を代表して発言させていただきます。

 私は、これまで、イラク戦争を支持し、自衛隊派遣でイラク復興を支援してきたイラク政策について、日本政府が真剣な検証を行い、自衛隊をイラクから撤退させることをこの場で求めたいと思います。

 私が第一に指摘したい点は、イラク戦争の評価の必要性についてです。

 米国のブッシュ大統領は、フセイン政権下のイラクが大量破壊兵器を保有し、テロ組織の手に渡る可能性があったことをイラク戦争の理由に挙げてきました。しかし、米国政府の調査団は、開戦時にイラクに大量破壊兵器は存在せず、核兵器の開発計画もなかったとする報告書を二〇〇四年十月に発表しています。ことしの九月には、上院の情報特別委員会が、フセイン政権時代のイラクが国際テロ組織と関連性を持っていなかったとする報告書をまとめています。これら二つの権威ある報告書は、イラク戦争開戦の根拠を真っ向から否定するものです。

 小泉前総理は、イラクに大量破壊兵器が存在しないことが明らかになった当時、日本は国連安保理決議に沿って判断したわけだから間違ったとは思わない、イラクが大量破壊兵器はないと証明すれば戦争は起きなかったと述べています。この認識は明らかに誤りであり、無責任です。

 開戦当時、国連のイラク査察団や国連原子力機関は調査活動の継続を求めていました。また、今月いっぱいで退任する国連のアナン事務総長は、開戦時に、あと少し忍耐することができたらイラクは平和的に武装解除できたかもしれないという声明を発表し、武力行使に及んだ米英両国に遺憾の意を表明しています。

 さらに、小泉前総理や政府がイラク戦争支持の根拠に挙げる国連安保理決議一四四一号は、この決議に違反すればイラクが重大な結果に直面するであろうと警告していますが、それは戦争を直接に合法化する規定ではありません。アナン事務総長も、二〇〇四年九月に英国の放送局のインタビューで、イラク戦争は違法だった、攻撃を合法とするには国連安保理による二度目の決議が必要だったと述べ、安保理決議一四四一号をもって戦争を正当化することに異議を唱えています。

 フセイン政権下のイラクに問題がなかったとは申し上げません。しかし、イラク戦争がなかったら、今日のようなイラクの悲惨、悲劇は生まれていなかったのも事実です。イラク戦争の違法性、そして戦争を支持した政府の判断について徹底的に検証することが今必要です。

 第二に、米国を中心とした多国籍軍によるイラク統治の評価についてです。

 イラク政府が最大の焦点となった米国の中間選挙で与党共和党は敗北しました。最近の米国内の世論調査では、ブッシュ政権のイラク政策を支持しないと答えた人が七〇%、六カ月以内に米軍をイラクから撤退させるべきとの回答も六割に達しています。

 ラムズフェルド国防長官は更迭されました。同時に、前国防長官は、更迭直前にイラク政策の転換を促す機密メモを作成していました。

 また、ベーカー元国務長官らの超党派グループは、米国戦闘部隊の二〇〇八年三月撤収を含む新たなイラク政策をブッシュ大統領に提言しています。これらは、米国のイラク統治、イラク政策の誤りを端的に示す事実にほかなりません。

 イラク戦争開戦から今日に至るまで、米軍の死者数は二千九百人を超えています。また、NGO団体であるイラク・ボディーカウントは、米国の大規模掃討作戦などにより、イラクの民間人が最大で五万九千人も犠牲になったとしています。米国の放送局などは、イラクの現状を内戦と位置づけています。国連のアナン事務総長もそれに近い見解です。大義を欠いた戦争と、武力行使を中心とした治安維持活動、その結果が内戦状態では、とても米国のイラク政策が成功しているとは言えないでしょう。

 イラク復興、イラク統治の中心を担っているのは、ほかならぬ米国です。その米国のイラク政策が失敗であることが明確になっている以上、日本もイラク復興支援のあり方について真剣に検討すべきです。

 第三に、日本のイラク復興支援についての評価です。

 二〇〇三年七月に成立したイラク特措法は来年七月末に期限切れになりますが、今回の閣議決定を含め、これまで三回にわたって基本計画が変更されてきました。

 テロは許されない行為です。しかし、テロとの闘いを名目に武力で紛争を解決しようとしても、逆にテロを増幅させるだけなのは、イラクやアフガニスタンの現実が示すとおりです。イラクの現状について詳細な検証をすることなく、国民への説明責任を欠いたまま、期限を迎えれば自衛隊の海外派遣延長を繰り返す政府の姿勢は大変に問題です。

 イラク特措法で言う戦闘地域、非戦闘地域の区分も問題です。

 かつて、小泉前総理は、自衛隊のいるところが非戦闘地域と居直りましたが、それくらいこの区分には根拠がありません。陸上自衛隊が駐留していたサマワには何回砲弾が着弾したでしょうか。航空自衛隊が輸送活動をするバグダッドは内戦の中心地ではないでしょうか。

 社民党はイラク戦争にも自衛隊のイラク派遣にも反対ですが、イラク特措法に照らしても、自衛隊は即時撤退させるべきだと考えます。

 第四に、日本のイラク支援のあり方について述べさせていただきます。

 政府は、今回の航空自衛隊のイラク駐留延長も、国連の要請を主体的に判断した結果だと説明しています。イラク戦争後、ピーク時には、日本も含めて三十六カ国が支援要員をイラクに派遣しています。しかし、スペインやイタリアを初め十四カ国が既にイラクから撤退し、来年には韓国やスウェーデンも撤退するのではないかと言われております。この点、自衛隊をイラクに駐留させ続けたことがイラク復興支援ではありません。

 私は、イラクの現状を放置せよと言っているのではありません。イラク戦争そのものが誤りで、その後の米国主導のイラク統治も行き詰まっている以上、イラク国民への主権移譲を急ぎ、復興支援の枠組みも、米国主導から国連主導へと転換させるべきだと考えます。その上で、国際紛争を武力の行使で解決することを禁じた憲法九条の精神に従い、自衛隊の派遣ではなく、非軍事の復興支援にこそ全力で取り組むべきです。

 久間防衛庁長官は、政府のイラク戦争支持の判断について、早まったのではないかと今でもお考えのようです。そうであるならば、長官みずからが先頭に立って、イラク戦争支持の判断、イラク復興のこれまでの歩みを真剣に検証すべきです。やみくもに自衛隊の派遣延長を繰り返すのではなく、国会の責任でこれまでのイラク政策を検証する必要性を訴えて、私の発言とします。

浜田委員長 これにて各会派の代表者からの発言は終わりました。

 次に、委員各位からの発言に入ります。

 一回の御発言は、五分以内におまとめをいただくこととし、委員長の指名に基づいて、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いをいたします。

 御発言を希望される方は、お手元のネームプレートをお立てください。御発言が終わりましたら、戻していただくようお願いいたします。

 それでは、ただいまから御発言を願いたいと存じます。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 こういう新しい方式を導入していただきまして、本当にありがとうございます。こういう機会はなかなかないものですから、ぜひ率直にお話を伺いたいなと思っているんですが。

 今私も質疑の中で触れさせていただいたように、率直に言って、このイラク戦争の始め方というのについては、アメリカの政府の中でも相当議論が行われたことだと思うんですね。ですから、日本政府は当時は、開戦のときにはもう直ちに支持を表明したわけですけれども、私は、野党としては、あの戦争はけしからぬと言って支持しない、戦争反対だと言うのは、ある意味では簡単なんですね、別に責任とる必要ないですから。それは非常に理論的にもクリアなんです。ただ、与党の皆さんが、あのときに、それは簡単な判断ではなかったと思うんですよ、アメリカ政府自身も相当悩んだ判断だったと思うんです、しかも、さっき鈴木委員がおっしゃったように、本当に国益がどのようにあの判断にかかわっていたのかということを皆さん方がどういうふうに御自分の中で納得されたのか、ぜひ伺いたい。もちろん、政府に入っておられた石破先生もおられるんですけれども、それが一つ。

 それから、特に公明党の先生に伺いたいんです。というのは、平和の党ということでずっとやってこられたし、僕は、公明党の党の立場からしても、かなり大変な御決断だった、御判断だったというふうに思うんですね。ほかに方法はなかったじゃないかと言われるかもしれませんが、これはアメリカの政府内にも出ていたように、もう少し査察を続けていくという選択肢はあったし、それから封じ込めをずっと続けていくという選択肢はあったし、そういうことを考えて、皆さんがそのときにどう納得されたのか伺いたい。

 もう一つは、日本政府は、そうはいっても戦争を始めることはよくないと思っていたわけですね、戦争の前は。ですから、それのためにどれだけの努力を、具体的にアメリカ政府に働きかけたりあるいは国連を通じたり、どのくらいの努力をされたのか伺いたい。戦争が始まった後も、この戦争を早く終わらせるために国際場裏でどれだけの努力をなさったのか、なかなか見えてこないので、この際ですから伺いたいと思います。

石破委員 この件は、私はイラクに自衛隊を派遣したときの長官でありますが、長島委員とも随分と議論をさせていただきました。

 六七八、六八七、一四四一というのを三つ組み合わせることによって、論理的な攻撃の正当性というのは、それなりにロジックとしては組み立てられるんだと思っています。戦争がない方がいい、戦争に至らない方がいいということで、私ども当時の政府としても、外交努力等々いろいろなチャネルで行ってきたと思っております。私自身、担当大臣ではありませんでしたが、そのことについてつまびらかではありませんが、何とか戦争にならないようにならないかということの努力は政府としてきちっとしてきたと思う。

 しかし、これはまさしく長島さんにもお尋ねをしたいことだが、我が国としてどこまでの独自の情報を持っていたのだろうかということが私は問われるんだろうと思っています。つまり、北朝鮮に拉致された人の生存情報もそうですが、小泉総理が行かれて、みんな死んでいるといってぶったまげて帰ってきたわけですが、実は生きている人もたくさんいるということですね。あのときにちゃんと情報がわかっていれば、もっといろいろな対応の仕方があっただろう。

 今回のイラク攻撃でもそうであって、我が国としてどれだけの独自の情報を持ち得たかということになると、我が国のいろいろな情報の能力、それぞれすぐれたものもありますが、特にヒューミントの面において、アメリカ、イギリスの情報以上のものを持ち得る、そういうような能力があったかといえば、それは残念ながら否と言わざるを得ない。だとするならば、アメリカの情報を信じる以外にほかに何かあったのかというと、これがその根拠だというものをなかなか持ち合わせなかったことも事実であります。そうしますと、我が国としていかに独自の情報力を持つかという議論を今後私どもはしていかねばならぬのではないかというふうに考えておるところでございます。

 ですから、繰り返しになりますが、六七八、六八七、一四四一、これを組み合わせることによって、論理的にそういうことはあり得ると思っていたし、今もそう思っています。

 問題は、イラク戦争を始めた、イラク戦争自体は私は極めて早く終わったと思うんですね。これは、ラムズフェルドのドクトリンによって、極めて短期間に、そして米軍の犠牲もイラク人の犠牲も、かつての戦争の中で比類もないほど少なかった。あれは、戦争としてはある意味非常にパーフェクトに近いものだったと思っている。問題は、その後の占領政策というものが、完璧にとは言わないが、相当に間違っていた。もっと軍を送って早く治安を回復すべきだというシンセキなんかの議論も退けてしまったところに私は大きな問題があると思っています。

 ですから、アメリカの人が大臣室にやってきて、日本を占領したのと同じようにやればうまくいくよというふうに言われたので、私は、そんなばかなことはないでしょうと。日本の占領がなぜうまくいったかといえば、それは、陛下がおられたこと、そして四年にも及ぶ戦争に日本国民は疲れ切っていたこと、そしてまた、統治機構、つまり官僚機構をそのまま温存した、もちろん上は排斥しましたが。その三つの理由によってうまくいった。しかし、イラクの場合にはそれが全部逆で、日本の占領をうまくいかせたその理由の全く反対の状況が起こっていて、何でイラクの占領がうまくいくんですかということを私は申し上げたことがあります。

 その点で、イラク戦争の是非というもの、そしてその戦争のあり方というもの、それからその後の統治のあり方というもの、そういうことは分けて議論をする必要があるのではないかと私は思っておるところでございます。

田端委員 先ほど長島先生からの御指名でございますので、お答えになるかどうかわかりませんが、それは党というよりも私の個人的な感触になるかと思いますけれども、大変非常に微妙な問題でございました。正直悩ましく、党内でもまた個人的にも、いろいろな意味で、自衛隊を出すことがいいのかどうかという意味では、大変我々も自問自答、あるいはまた党の中でも相当の議論はいたしました。

 それで、さっき石破先生の方からお話がございました、つまり、国連決議に基づいているということが一つの大きな理論的な支柱であったと思います。しかし、だけれども、では、どういうふうにしてそういうところに、今までの自衛隊がやったことのないようなことをしていいのか、そういう意味では、正直なところ、難しいことでございました。

 しかし、状況からして、あの当時は、大量破壊兵器というものを過去に使ったんだ、それから何千人もという人をフセイン大統領はそういう意味では虐殺してきたじゃないかとか、いろいろな話がありました。そういう意味で、この人道復興支援ということについて、そういうものに限定して自衛隊を出すということで、我々も、イラクの復興のために、そして人道的な支援のために自衛隊が活動するんだという意味で理解をしたわけであります。

 その上で、実はあのとき、思い出しますと、神崎代表を派遣しようと。代表みずからが、自分の目で見ていただくのがいいんだ、こういうことでクウェートまで行きました。クウェートからサマワに入るとき、当時の記録のビデオも後で見せていただきましたが、低空飛行で、二十メートルか三十メートル、ヘリコプターをだあっと低空でサマワに行く。そして、神崎代表の乗っているヘリコプターの中には、米軍の兵士が機関銃を構えたまま、四方をこう構えながら行くところをビデオで見せていただきました。

 そういう、非常に警戒した中で現地に行って、サマワの状況等は、向こうの県知事とかいろいろな方と会っていろいろなことを伺った上で、代表としても、これなら自衛隊を出して、ここで人道復興支援活動をするという意味においては自衛隊に直接大きな被害はないだろうという判断をされて帰ってこられました。

 もう一方で、実は、それよりも少し時差があったと思いますが、浜四津代表代行がイランの国境の方へ、イランから入って国境まで行きまして、メソポタミア湿原、私さっき申し上げましたが、そういったところも視察されました。いろいろな意味で、イランとイラクとの関係も当時もあったわけでありますが、しかし、イラン側から見て、イラクに対しての復興という意味では湿原の再生ということも大きなテーマであるということを、浜四津代表代行も現場を見て帰ってきた。

 そういう総合的な判断の中から、自衛隊をイラク人道復興支援に出すということについては我々も決断しよう、こういうことが正直なところでございましたので、率直に言えばそういうことで、我々も、そういう二人の現場を見ての判断というものが非常に大きな参考になったことは、事実でございます。

原口委員 私は、当時の日本政府のイラク攻撃支持というのは、ここに議事録を持ってきていますが、二〇〇三年の三月二十四日、予算委員会で総理がこうおっしゃっています、「私は、アメリカの方針に正当性があるから支持した」と。この方針は、CIAの方の証言も出ていますけれども、一定の政治的圧力の中で情報がある意味では操作をされて、そして、大量破壊兵器はないという、情報機関そのものがそういう判断に傾いていたものが曲げられているという状況の中で立てられた方針であって、そのことについてはアメリカの中でも多くの総括があります。

 ですから、石破先生がお話しになったように、あのとき真っ先にそれを支持したのは日本政府でありました。国連決議の六七八、六八七、一四四一、それをもとに川口外務大臣はここに根拠があるんだというようなことをずっと繰り返されましたけれども、六七八、六八七というのは湾岸戦争のときの決議であって、それと一四四一をコンビネーションでやるというのはいかにも無理な話であります。また、ヒューミントというお話、私はそこは大変合意するものでありますけれども、やはり独自に情報を集め、分析をし、そして戦略を組み立てる、そこのところはとても大事だと思います。

 ただ、その上であえて申し上げると、あのときのパウエルさんの国連演説の六ページ目から十六ページ目は、これはイギリスの方の、ある方の作文に近いものであったということは、私はそのときの予算委員会で即指摘をさせていただきました。私どもでさえ共有できるものをどうして日本政府が検討をなさらなかったのか。あるいは、国会でそのような指摘をしても、聞く耳持たぬ、アメリカが言うことはそのとおりであると言わんばかりの答弁だったというのは非常に残念なことで、きょう赤嶺先生や菅野先生がお話しになりましたように、武力で解決できるものというのはほとんどないということをきっちり踏まえるべきだし、国連の歩みも、いわゆる戦争の違法化が中心にあって、その中で集団安全保障と個別自衛権のところだけが例外的に、しかも限定的に認められているということをまず中心に置くべきではないか。

 私は専門が心理学ですので、心理学の立場からいうと、いろいろな人たちの恐れに武力行使という恐れのエネルギーを注げば、ますますテロの温床が広がっていくのではないかというふうに思います。

 冒頭、鈴木先生が大変整理された御議論をされたので、私も三つの観点から、当時いろいろな議論を組み立てていました。確かに、極東アジアの置かれた現状を見ると、では、あの当時の日本政府にアメリカ政府のこの決定に異議を唱えるだけの、それだけののり代があったかということは、さんざん議論をされました。しかし、逆に言えば、北朝鮮こそが核開発をしている、そしてもう核実験も行っている。

 結果的に、私どもがあのとき強く指摘をしたのは、米軍のプレゼンスは世界の両方展開は無理だ、一・五ぐらいしかできない、イラクでこのような無謀な戦争に突入すれば、それが結果として北東アジアの米軍のプレゼンスも弱めてしまうことになる。現に、かような北朝鮮が無謀な核実験を行った後も、予算的にも、軍事面でも戦略面でも、アメリカが北朝鮮に対してイラクと同じようなことをやるというオプションもないわけです。私は、軍事行動そのものを否定するわけですけれども、さまざまな制裁をかんがみても、やはりイラク戦争支持に対する総括というのは議員同士でもきっちりやっておくべきじゃないか、そのことを強く主張したいと思います。

中谷委員 イラク戦争の是非についてということですが、あのときに日本が米国を説得することができたかといえば、私はできなかったと思います。

 というのは、一つは、日本が議論する背景と、アメリカの国内事情というものがありまして、アメリカの当時の事情は、九・一一が起こった後ということで、あの悪夢から国全体が脱却できていなかった。国民も不安に感じていましたし、アメリカ政府もどうしたらああいったテロをやめさせることができるのかということで、当時、オサマ・ビンラディンなどが再び攻撃するというような脅迫をしていまして、やはり一国の大統領としては、どうしたら米国を守れるかという中で、そういったテロのネットワークとかフセインの態度に対して疑念を持っていたというのは事実であって、パウエルも国連でテープを紹介したり、ああいった証拠を出してきたことに対して、日本としては、先ほどお話がありましたとおり、独自の情報入手というのがなかなかできないということで、ああいった事実を見て支持をしたという事情があったと思います。

 そして、もう一点は、日本が説得したとしても、アメリカは攻撃しなかったかといえば、単独でもやったわけでありまして、こういう点において、やはり同盟国というか、日本とアメリカの関係を見ましても、アメリカは、まさにテロについてはアメリカの国全体の安全保障という認識を持っていたわけでありまして、当時の時代背景からすると、日本政府は支持することを決断しなきゃいけなかったのかなというふうに私は思います。

長島(昭)委員 アメリカの当時の政策決定の中で、九・一一がある種トラウマのようになっていたのは、私もそう思います。ただ、それはアルカイダであり、それをかくまっていたタリバンであり、直接的にはアフガニスタンの戦争だったと思うんですね。

 ですから、国際社会のいろいろな、各国もアフガニスタンまでは、特にNATOはそうですけれども、一緒に戦うと。アメリカがああいうダメージを受けたことについて、我が国政府もそこはストレートに支援したし、我が党も、恐らく大方の皆さんはアフガニスタンの戦争まではついていけたんですね。そこからイラクに飛んでいくことについてはやはり両論あって、必ずしもアルカイダとサダム・フセインとの関係は当時は明らかでなかったし、大量破壊兵器については、もう少し検証する必要があると主張していた方もアメリカ政府内にはおられた。

 むしろ、アフガニスタンを奇貨として、長年、つまり一九九一年の湾岸戦争で積み残されたサダム・フセインという存在を打倒することにかなり熱心であった、いわゆるネオコンと言われている人たちが主導した戦争がイラク戦争だった。サダム・フセイン自体がアメリカの安全を脅かしていたという事実は実はないですよね。そこはかなり議論が当時あったのであって、そこはなかなか直結しないんじゃないだろうかというのが一つ、反論です。

 ただし、アメリカが決断をしてしまった以上、では日本としてほかに選択肢があったのか、こう言われると、これは当時の私たちの立場を超えて言うとすれば、そこは同盟国として、極東の安全も含めてトータルに考えると、ほかに手段がなかったんじゃないか、ほかに道はなかった、やむを得ずと。

 ですから、私は久間長官に近いんですけれども、この戦争については理解するというのがせいぜいだったんじゃないだろうかというふうに思うので、この理解をするというのと支持をするというのの間には随分大きな差があって、特に九九年のコソボのときは、我々は、はっきりとした国連決議がないということで、あえて理解というところにとどめた。しかし、今回というか二〇〇三年の場合は直ちに支持をした。この辺のデリカシーというか、微妙な使い分けを日本政府もできなかったのかなとは思いますが、トータルに考えると、仕方がなかったのかなとも思います。

三原委員 自民党の三原です。

 私は、三万人から死んでいるというイラクの人に対して、仕方なかったというのは余りにも軽率な物の言い方かもしれませんけれども、確かに一面では、一九九〇年にサダム・フセインがクウェートへ侵略してきて、九一年に今度はアメリカに追い出されて、パウエルがリーダーをやっていて、ああいう一種の冒険主義的なものも、ずっと前から考えれば、一種のアメリカの世界の警察官的意識の正義感に対して、かなり強いインパクトを与えた面も心理的にあったんじゃないかと思います、その後の九・一一もありましたし。

 それで、結論から言うと、石破先生が明確に言われた、我が国を占領したときに、三点を挙げて説明されましたけれども、私自身は、イラクへのアメリカの侵攻が終わった後に、確かにもうちょっと、ある瞬間は、莫大な量の軍事力をもってすればかなりの変化もあったんじゃないかと。それは、九一年でさっと引いちゃって失敗した例をどうしてアメリカは学ばなかったんだろうかという気持ちはありますね。もちろん、今度はリーダーシップがかわっていて、パウエルは国務長官でいて、今回の場合、ラムズフェルドに口を挟む状況ではなかったのかもしれないけれども、そこには明らかにアメリカ国内での戦略的な失敗、作戦の失敗あたりはあったんだろうと思いますね。そういう点から考えると、その後の犠牲というのは余りにも大きかったかなという気もします。

 それともう一つ、鈴木さんが、日本がなぜ賛成してきたかということになると、やはり結論は、長島さんと同じように、では、私は理解するだけじゃなくて、イエスと言わざるを得なかったじゃないか、党だからというんじゃなくて、個人的にも、消去していくと。それ以外に、では日本はどうしたんだと。アメリカは別に前門のオオカミとは言わないが、後門のトラの北朝鮮の状況があったときに、我が国は、長年のアメリカとの同盟関係、アメリカのいろいろな意味での援助、助成があってここまで来た安全保障の状況の中で、日本が選択する道というのは、ではあの当時あったのか、いやなかった、私はそういうふうに思っています。

石破委員 長島委員でも原口委員でもいいのですが教えていただきたいと思うんです。

 一つは、やはり国益というのをどう考えるんだという話だと思うんですよ。フランスはちゃんと反対したじゃないか、ドイツは反対したじゃないかという話がありますよね。ロシアもそうだ。だけれども、結局それぞれの国益というのがあって、賛成した方がよいか反対した方がよいか、それはもう随分いろいろな判断があるんだと思うんです。石油の権益の問題もそうだ。そしてまた、日本はアメリカしか同盟国がないが、彼らはNATOというものに入っている。あるいは、フランスは核を持ち、ロシアも核を持ちということになっているわけですね。そういうことをいろいろ考えてみたときに、結局、賛成、反対というのは国益を考えざるを得ない判断ではないのかなという気が私はしておるところであります。

 長島委員が質疑の中で御指摘になった一般法ですが、ぜひ、民主党の御意見でなくても、それぞれの個人的な御意見でもいいからお聞かせをいただきたいと思うんですね。

 自民党の中で、小委員会で取りまとめたのがあります。これはまだ部会決定でもなければ党議決定でもありません。かなり挑戦的なものというのかな、枠いっぱいみたいなところがあるんです。

 一つは、国連の決議というのは常に必要だろうか、国連の決議がなくても出る場合というのはあるのではないか。拒否権を使われてしまった場合に、例えば我が国と国益を相反する国がある、どことは言わないが。アメリカでもいい、中国でもいい、どこでもいい、そこが拒否権を使えることによって、我が国の自衛隊が国益であるにもかかわらず出られないということをどのように考えるべきか。国連というのはあくまでユナイテッドネーションズだという考え方についてどのようにお考えかということが一つ。

 もう一つは、治安維持の一部を行う、つまり、それは主権国が行うわけですから、日本が出張っていって治安維持なんということをやることは基本的にあり得ないんですね、占領国でもないわけで。しかしながら、例えば今回のサマワでもそうでしたが、治安の維持というのはオランダであり、イギリスであり、オーストラリアがやっていた。そういう危ないことはほかの国がやってちょうだい、私たちは私たちがやられたときだけ自分を守るからねということで本当にいいんだろうかということであります。つまり、国連決議があった場合でも、危険なことはほかの国に任せて、自分たちは自分たちだけ守るんだということが本当にこれからもよいのだろうかということが二点目です。

 三点目は、しかし、自衛官をそういうところに出すとするならば、当然、武器の使用権限は拡大をしなければいかぬのではないか。少なくとも、危害射撃は正当防衛、緊急避難しか認められないということになっているが、しかしながら、危害射撃と致命射撃というのは違うのであって、肩に向けて撃つとか足に向けて撃つとか、それも危害射撃だからだめというのは、それはいかがなものだろうかということを考えております。

 前後しますが、もう一つ申し上げると、例えば日本のNGOが行きました、誘拐されました、では、自衛隊は助けに行けますかということですよね。その国の治安権限を持っているものと協力してのことですが、助けに行けますか。いやいや、日本人が行っても、ごめんなさい、私たち助けに行くことはできませんということで本当にいいんだろうかということでございます。

 私は、そこにおける政府の基本計画の立て方、そして、それに対して国会がどのようなシビリアンコントロールをかませるべきかということ、国連の決議もなく、しかし、出した場合にはさらにもっとハードルを上げていかねばならないということ、そういうことを総合的に勘案して、仮に政府が出すと言っても、国会として出すべからずという判断もあると思うんです。途中においてもうやめなさいという決議もあるべきだと思うんです。これは、あれもこれもだめだとか、自衛隊が外国に出るとまた何事をやるかわからないというようなことを言っていないで、我々としてこれをどう使うか、どのように国益を実現するか、どのように文民統制をかませるかということから議論をしていくことが私は必要なことではないかなと思っておりますが、個人的な御意見でも結構ですが、御教授をいただければ幸いであります。

原口委員 全部をお答えできる時間はないと思いますが、まず何が国益かというと、私は、このイラク戦争はアメリカの国益も損なうという主張をしました。つまり、アメリカのよさというか、知性のよさは寛容さです。その寛容さを失って国際法と正義を侵したときにアメリカが陥る歴史上の誤りをずっと見てきたからでありまして、それを、確かに三原先生がお話しになるように、現実政治として何かほかのオプションがあったかということを考えると、それはナローパスだったと私も認めます。しかし、あえて逆に言えば、我が国が緊密な同盟国であるからこそ言わなければいけないことがあった、指摘しなければいけないことがあったと私は思います。

 独自の情報を入手できる立場にあるかということですけれども、ほとんどがコリントですよね、お互いの情報を交換するという中から分析する、そのことの体制さえも整えていないということについては、私はやはり問題意識を持っています。

 それから、国連決議と治安部隊の方ですけれども、これは個人的な、民主党としての意見ではないですけれども、やはりシビリアンコントロールをどうきかすかというところが一番だと思います。きょうの質疑、前半の質疑でも明らかなように、中身を開示しないで、とにかく危ない、だれかから言われたから説明できませんというような今の状況で、私は、武力行使と一体とならないという憲法上の要請もしっかり担保できているとは、きょうの質疑の間だけでも実感することができませんでした。逆に言えば、それをきっちり国会がコントロールし、原理原則、法と正義に基づいてやるということであれば、逆に言うと、自分のところだけは安全なところにいますよ、さまざまな治安活動もほかの国に任せますよというのは無責任であろう、このように思います。

 残るところは長島さんから。

長島(昭)委員 前段のところで、さっきのイラク戦争の話ですけれども、確かに反対してすっきりすればいいという意味で私たち言っているわけでは全然なくて、今、原口さんがおっしゃったように、非常にナローパスだったことは間違いない。しかも、独、仏、ロにしても、決してピュアに反対していたわけではなくて、いろいろな利権絡みで言っていたことも我々としては見きわめなきゃいけないことだ。

 ただ、一番私としてこれからも強調していきたいし、さっきの質疑でも私の思いはそこにあったんですけれども、日本政府として、同盟国アメリカ政府に対して、あるいは国際社会に対して、もっともっとアクティブな働きかけというものができないものか。それはおまえ、政権をやってみたら、どんなに難しいかわかるからと言われるかもしれませんが、野党で見ていると、そこの努力はもっともっとできるような気が実はしていたので、そう申し上げました。

 それから、恒久法の、一般法の話ですけれども、論点になるのがその三つだというのは私も全く同感です。多分、党の立場でいうと、国連という枠組みは一つかませざるを得ない部分があるんだろうと思うんです。特に、私たちは、今までの法制局解釈からは少し外れて、自衛権の部分については九条で縛られます、しかし、国連を中心とする集団安全保障体制での活動については、武力行使も含めて九条の縛りの外だ、次元が違う、そういう言い方で整理をしていますので、最後までやはり国連のところはひっかかってくると思います。私自身は国連は万能だと思っていませんので、ここは国連決議が絶対に必要だということになると、それによって国益が損なわれる事態について、ではどうするんだ、こういう話になるので、現実的にはそこでちょっとつじつまが合わなくなることが危惧としてあります。

 それから、治安維持も、もちろんそういう分野にも日本は口をぬぐってほかの国に任せるというわけにはそろそろいかなくなってきているというふうに思いますが、これも国民と一緒にプラクティスをしていってもう少し、少し先の目標になってしまうのかなという気がします。その表裏一体として、武器の使用についてはやはり国際標準でやるべきだ、これは我が党は昔から言ってきている。その一番のベースは、まさに今、原口さんが言ってくれたように、国会の関与だと思います。

 国会の関与も、私も常々言っていますが、秘密会という制度をもう少し整備しないと、結局政府の側は、秘密の縛りがかかっていますし、余りめったなことは言えない。我々は、この委員会室から出たら、取材されたらべらべら言っちゃうような、何の法的縛りもかかっていませんので、そこをやはりきちんとしないと、なかなか行政府と立法府の間で必要な情報の共有というのはできない。必要な情報の共有ができないと、本当に国会が承認すべきかすべきでないかという判断もつかない。

 だから、ある意味でいったら、自分たちで言うのもなんですけれども、今の国会承認というのはある程度ざるになってしまっているということは、我々もやっていて非常にじくじたるところがありますけれども、その部分をもう少し厳格にして、僕はいろいろなバリエーションがあると思うんですよ。事後報告でいい場合、事前の承認が絶対必要な場合、事後の承認でいい場合、あるいは、期限つきの承認で、期限が来たらもう一回もまなきゃいけないとか、あるいは、国会がもうだめと言ったら、拒否権みたいにして、すぐ撤退とか、国会の関与の仕方もいろいろなバリエーションをつけてやっていけば、私は国民の理解は得られるんじゃないかというふうに思っています。

赤嶺委員 さっき、イラク戦争を開始したときの正当性の問題について、アメリカの事情を考えてみたらとか、当時出た六七八、六八七、一四四一の国連決議で十分だったんじゃないかという御説明がありましたけれども、まさに今日の状況というのはそういうことでは説明できなかったというのが現実にあらわれていると思うんですよね、大量破壊兵器の問題といい、あるいはフセインとテロリストの結びつきといい。やはり今日、日本政府は、当時のイラク戦争は累次の国連決議にも基づかない、あるいは防衛庁長官でさえ新たな決議が必要だったんじゃないか、あの決議だけで十分だったかというような発言が国会で行われている、そういう間違った戦争であるということをきっぱりと政府が示す必要があるというのが第一点です。

 それで、では、同盟国アメリカの立場をどうするかというのですが、国際社会の平和の秩序というのは、まさにアメリカの国益優先の態度あるいは日本の国益優先の態度では平和の秩序はつくれないのであって、やはり国際社会の平和の秩序は、国連を中心とした集団安全保障というところを日本はきちんと進んでいくべきじゃないか、そういう方向に国際社会と協力していくべきじゃないかと思っています。

 それから、今一番言いたいことは、ある一つの主権国家がどんな体制であろうと、外国勢力がここに武力攻撃を行い、占領統治するというのは、これはもう、その国の国民との対立を激化させることにしかならないと思うんです。

 日本は占領政策成功したじゃないかとおっしゃいますけれども、まさに日本本土がそういう方向に進んでいたとき、憲法のもとで新しい国づくりに進んでいたときに、沖縄は切り離されて、私たちは米軍の異民族支配、統治下に置かれました。アメリカは繰り返し、私たちはよき隣人であるということを言いました。ところが、よき隣人というのが、米軍が事件、事故を起こす、そういうものが繰り返され、結局は対立関係というのが激化していった。

 私はイラク戦争の攻撃が終わった直後にイラクに二度行きましたけれども、イラクの近隣の日本大使が私を前にして説明したのは、沖縄的な事件がイラクでも起こっていますよと。もう当時から、イラクの女性に対する米兵の暴行事件が起きていた。そういうことが占領統治のもとでは必ず付随して繰り返されている。やはり主権を持った国は、どんな政治体制を選ぶかはそこの主権国家に任せるべきであって、アメリカが介入するとか、いわんやそこに日本が加担するなどということは絶対にやってはいけないということを強く感じています。

今津委員 赤嶺先生もおっしゃったんですけれども、国連ということをよく言われるんですけれども、あのときを思い出していただければいいんですが、バグダッドの国連の人たちは、命が危ないものですから退避をしましたよね。国連というのが現実に全く存在しない状態の中であの戦争が行われたということは、思い出してみなきゃならぬというふうに思うんですよ。

 それで、イラク戦争の正当性というのが議論されておりますけれども、これは、アメリカの中間選挙で民意というのは大分出ているのではないかなということをやはり認めざるを得ないんですけれども、ただ、これは言いわけでも何でもなくて、日本は戦争に参加したわけではなくて、幸か不幸か武力行使ができないものですから、人道復興支援ということで、できないことをやるというのでなくて、できることはやりましょうという形で人道復興支援になったと思うんですね。

 現実に、石破長官のときかあるいは大野長官のときか、アフガニスタンにも自衛隊の派遣というものは恐らく内々打診があったと思うんですが、それは憲法に反するのでできないということで断っているわけですから、できることはやっていく。

 現実に、余りおっしゃいませんけれども、自衛隊が行くことによって乳幼児の死亡率が三分の一に減ったとか、あるいは、水を供給することによってお年寄りの命が救われたとかということは、やはりきちっと私たちは誇っていいことだと思うんですよ。これは、もし自衛隊が派遣されなかったら、どういう形でどうだったんでしょうね。どれだけの数字かわかりませんが、恐らく命を落とす人がいたのではないでしょうか。自衛隊が行くことによって救われた人もいたということを、私は、現実にできることをやっていくという考え方からいえばよかったのではないかなというふうに思うし、幸い、精鋭の自衛隊が行ったものですから、無事に全員帰還をしたということを私たちは素直に誇っていいことだと思うんです。

 クウェートの戦争記念館へ行きましたら、湾岸戦争のきっかけになった、化学兵器を使って殺されたクウェートの人たちの写真だとかいろいろなものが残っていますよ。だから、現実にイラクは、大量殺りく兵器かどうかわかりませんが、化学兵器を現実に持っていたし使用したわけですから、アメリカがああいう形の中でそういうことを信じて戦争に行って、とにかくテロをやめさせよう、自分の国民を守っていこうということをリーダーをとる人が考えたということは、私は案外支持するんですよ。

 そして、最後に一言だけ申し上げたいんですが、やはり我が国の防衛ということを考えたときに、その防衛が破られるときはいかなるときかというと、やはり同盟国アメリカの信頼を失ったときですよ。そのときから私たちの国民の安全というものは非常に不安定な状態になっていくというふうに思いますね。

 だから、同盟国アメリカといかにしてお互いに役割を担いながら国民の安全を守っていくかということがまさに国益だし、そういう面でイラク自衛隊派遣というのは正当化されるものだ、大いに誇っていいものだと私は思います。

中谷委員 石破先生の、国連の決議がなしでも行くことを検討すべきだというお考えでございますが、これはやはり、日本の国内の考え方と外国の考えをどう考えるかということでありまして、憲法は、戦争放棄ということで、九条の一項で武力の威嚇または武力の行使は行えないというところがポイントで、これまでの自衛隊の海外活動においても、集団的自衛権の制約というよりは、この武力行使に当たるか否かということで判断されまして法整備がされております。

 過去、PKOにおいては、五原則がつくられて、相手国の同意とか中立、それから停戦の合意、中断、武器使用という一つの条件がかまされていますし、ガイドラインの周辺事態とテロ特、イラク法案においても、後方地域支援とか戦闘が行われていないところということで、すべて、どう考えても武力行使にならないという一つの枠をはめてやっているというのが一つの原則であります。

 そこで、やはり武器使用においても国際標準にすべきだということでありますが、では、その国際標準とは何かというと、世界各国が集まって、これを国際標準にするといったルールと規約が必要で、それは何かというと国際連合であって、憲法においても国際社会から孤立するようなことがないような日本にしようというのが原則であって、やはり、国連で決められたことによる国際標準というのは、どう考えても今の現状においてはナショナルスタンダードではないかなという気がいたします。

 では、どこからどこまでが武力行使かという点においては、これは政治が決めることであって、我々深く議論をしなければなりませんけれども、最初に申し上げましたとおり、相手国も、多くの国々も、国連も、いやいやこれは武力行使じゃないよというようなお墨つきがあるということが大事だと思いますので、こういう点においては、やはり、国際社会からいかに認知をされるかということが一つの基準になるんじゃないかなというふうに思います。

鈴木(馨)委員 自由民主党の鈴木馨祐でございます。

 先ほどから、何が国益か、同盟とは何か、そんな議論もされているところですので、そのことについて意見を申し上げたいと思うんです。

 私も完全に個人的なスタンスとすれば、あの当時、アメリカが、恐らく幾つかあったイシュー、イラク、パレスチナ、北朝鮮、その中でイラクにプライオリティーを置いたことには正直疑問がなくはありません。もちろん、先ほどから長島先生も、そして原口先生もおっしゃっているとおり、同盟国であるからこそ、いろいろ提言をしていくとかアドバイスをしていくことも大事だということも非常にそのとおりだというふうに思います。

 ただ、やはり我々が常に認識していなくてはいけないのは、日米同盟というのは、常にケアをしていなければすぐになくなってしまうものであるということです。同盟というのはただの紙切れでありまして、やはりこれは、実際にそれが履行されるかどうかということを保証するためには、常々やはり日本としても努力をしていかなくてはいけないわけであります。事安保のことに関しましては、日本とアメリカどちらが優位にあるかといえば、残念ながら、今対等ではないというのはまたこれは事実なんだと思います。そういうこともありますので、やはり日米同盟がしっかりワークしていくように、常に常に日本としてもしっかりと相当細心の注意で動かなくてはいけないというふうに思っております。

 これは日本のことだけではなくて、あの当時を思い出していただければいいと思うんですが、あの当時のイギリスのトニー・ブレア首相の動き、いろいろ本人の心のうちまで知るところではありませんけれども、当初言われていたのは、イギリスとしても、イラク戦争を全面的に支持するのではなくてパレスチナの方がということはあるけれども、それをアドバイスするためにこそブッシュを支持しているんだ、ブッシュに近づいているんだ、そういうことが言われていたのを非常に記憶しておるわけです。恐らくそれも国際政治の本質でして、常に近くにいるからこそアドバイスを聞いてもらえる、そういう状況もあるんだと思うんです。

 そういうことを踏まえた上で、あの当時、日本として、アメリカが実際に決断するまでいろいろアドバイスするのは当然のことなんですけれども、それから先、支持をしませんと言って、それで果たして日米同盟というものはどうなっていたか、やはりそのことは真摯に我々も考えて、その上でこの議論をしていかなくてはいけないというふうに思います。

 以上です。

清水(鴻)委員 自民党の清水鴻一郎でございます。

 いろいろ今大変高邁な話がある中で、私、まだ昨年九月に衆議院議員にさせていただいたばかりなので、過去の経緯というのには大変疎いところがありますけれども、ただ、私がずっと一民間人として、民間人といいますか、国会議員じゃない立場から見ていまして、一番最初、湾岸戦争のときに、私自身はその当時まだ病院の医者でありましたけれども、ともかくやはり、国際社会の中の一員として、そして、少なくとも日本が国際社会の中でリーダーシップを持つ国の一員として何かできることはないのかなということで、医師としてそこに行こうという決意をしたことがありました。

 そして、その後湾岸戦争は、単純に言えば、いろいろな経緯があるわけでしょうけれども、イラクがクウェートに侵攻して、大変クウェートの方々にとっては国を侵害されている。その中で何かできること、つまりそうすれば、日本人としてできることがあれば、やはり人として人的貢献が大切なんじゃないかなとつくづく思っていたわけです。

 湾岸戦争が実際終わって、大変たくさんのお金を日本は出しました。しかし、私がアメリカに留学していたときの友人からも、日本が一体何をしたんだ、つまり、お金は出したかもしれないけれども、そこに人間として何か貢献したのかなということを言われたときに、私は、やはり日本もこれから人的貢献というものが非常に大切じゃないかな、そこに行って何かできることをするということが大変大事だろうと。もちろん、国益ということは大切にされるべきことでありますけれども、国益以前に、やはり人間としてあるいは国際社会の一員としてできることというのを、日本が今の憲法の中で、そして日本が持つ手段の中でやっていくべきではないのかなと。

 そういう中で、今回のイラク戦争の中で、もちろん、結果としてアメリカの判断等も含めていろいろ問題があったことは事実だと思います。しかし、あの段階で日本ができる判断としては、先ほどもあったように、例えば、行った中で、学校の復興や病院の復興、そしてソフト面で、自衛官の医師が行かれて医療に対しての指導をされた中で、まさに先ほどもおっしゃいましたけれども、乳幼児の死亡率が大変改善したとか感染症に対しても大変貢献された等も含めて、やはり僕はそのことの判断というのは正しかったのではないかと思うし、今後ともやはり日本は、日本としてそういう立場からも考えていくべきだというふうに思っています。

 大変いろいろな経緯がある中で少し低次元な話になるかもしれませんけれども、日本国民もやはりそういう日本というものを求めている部分も大いにあると思いますので、発言をさせていただきました。

 ありがとうございました。

菅野委員 アメリカによるイラク攻撃がどうだったかということを考えたときに、先ほどから私も主張しているんですけれども、やはり武力行使では問題解決できないというのがこれははっきりしたというふうに思うんですね。そして、その後イラクの統治は成功したかということを考えたときに、きょうのほとんどの意見もそうなんですが、イラク統治は失敗に終わっているという状況だというふうに思っています。そういう中で今アメリカの国内の動きが出てきている。

 そのときに、今の時点で日本がどう対処していくのかという大きな問題が存在しているというふうに私は思っています。

 テロ特措法においてインド洋にまだ洋上補給艦が行っていて、いつこれが帰ってくるのかも具体的な道筋がつけられていない。そして、イラク特措法に基づいて今後どうしていくのかということなんですが、中馬防衛庁長官の発言にもあるように、出口が見えていない。

 そして、現状において航空自衛隊がイラクで活動していることが本当にイラク特措法から見て妥当なのかということを言えば、私は、人道復興支援活動ということで非戦闘地域という限定した活動であるならば、この航空自衛隊の活動というのは、もうイラク特措法を超えた行動になっているんだと規定しなきゃいけないというふうに思うんです。

 それを正当化しようということでどんどん議論していって、出口の見えない状況が続いていって、そして最終的に、今までは人道復興支援活動で犠牲者は出なかったというふうに言っているんですけれども、万が一これから犠牲者が出ないという保証は、今日の状況においてはないというふうに私は思うんですね。

 そういう意味において、もうイラク特措法を超えているという状況を考えたときに、自衛隊は撤退して、そしてアメリカでも言っているように、今後のイラクの統治機構をどのように再構築していくのかというと、やはり私は、日本というのは中東諸国と今日まで中立的な外交関係を維持してきて、日本こそその中東において大きな役割を果たすことができる国だというふうに思っています。そのことにすっかり外交方針を切りかえるべき時期にあるというふうに思っています。

 来年の七月三十一日まで待つことなしに、私は、政府として大きな決断をすべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。

後藤(斎)委員 民主党の後藤斎です。

 きょう、いろいろな政府の質疑また自由討議の中で皆さんのお話を聞かせていただいて、いわゆる入り口の部分でのいろいろなお話がございました。私もあの当時、正直言ってどんな形でイラクに対するアメリカの戦闘行為が始まるのかなというふうに思っていたときに、三年九カ月前に急遽ブッシュ大統領がイラクに米軍を派遣し、その後四カ月ほどたってから日本がイラク特措法を決めて対応してきたというこの数カ月間のタイムラグというのが、多分入り口論で一番我が国が、当時の小泉総理も、また国会の中でもいろいろな議論がありながら対応が進んできたというふうに思っています。

 実は、先月の十一月十二日から十六日に、第七回のアジア国会平和連合総会というイランのテヘランであった会合に、自民党の松浪健四郎議員と一緒に出させていただきました。

 私があの当時から思っているのは、私は、民主党という党に所属する中で、やはりアメリカとできるだけ共同歩調という個人的な思いもありましたが、党全体の中では早期撤退という話もありました。ただ、先月、テヘランで、特にイランでやったということで、イランの外務大臣や大統領のいろいろな基調演説も含めてお聞きをした中で、アメリカやヨーロッパの報道を中心とした、先ほど石破先生もお話しになったように、情報をどう収集して我が国はそして分析するかというところで、やはりイスラムの国というのは、私どもが常日ごろテレビや新聞で日本語として読んだり見たりしている部分とかなり違うなという思いをしました。

 ただ、やはり千三百年ほど前のペルシャ文明がシルクロードを通っていまだに正倉院にいろいろな御物が保有されているということも含めて、大変イランの方は日本に対して友好的な感じがいたしました。これはイランだけではなくて、その周辺の国もであります。

 私は、そういう中で、これから出口論を考える際に、七月三十一日という来年の法的な期限はありますけれども、イラクの周辺の国とどんな形でメッセージを共有するかということを、やはりこれから対応を考えていかなければいけない。特に、中東和平担当大使で有馬大使がこの一、二年かなり御苦労されて、ロードマップも含めて少し前進をしたというお話を聞いていますが、やはり同じようなことを日本国政府としても、我々も含めてかもしれませんが、イラクの周辺国と、宗教対立を超え、また民族対立を超え、治安回復を含めて、できるだけみずからの力で立ち上がっていくという強烈なメッセージを出すということも踏まえながら、来年の七月三十一日の法律の期限切れまで、できるだけ早く日本国政府としても明確な意思表示をすべきだというふうに感じた次第であります。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 いわゆる一般法、恒久法について意見を述べたいと思います。

 PKO活動やあるいは緊急援助活動、これについてはもう既に、その都度政府の判断で出ていって、国会には報告だけでいいということになりますから、よしあしは別にして、PKOや緊急援助活動については恒久法が存在をしているという話になるわけです。

 では、その上になおなぜ恒久法が必要なのかということになりましたら、今、時限立法でありますアフガニスタンの問題とかイラクの問題、これらに類するように、アメリカの海外での武力介入に日本が機敏に対応できていくような法律、そういう性格を持たざるを得ないと思うんです。

 ですから、日米同盟が大事だとかいろいろ言っておりますが、結局は、アメリカの戦争を支援する法律にならざるを得ないと私たちは考えております。

 それでは、そのアメリカが、本当に今の世界にとってアメリカの軍事活動が求められているのか、あるいは、アメリカのそういう行動が世界の平和の秩序を守るような状態になっているのかということになりますと、今の現実を見たら、イラクでのああいう泥沼化の状況、アメリカの先制攻撃戦略戦争が、そういう武力行使を使ったやり方がもう失敗している、世界の現実に合わないという点からいっても、私たちは、どんな恒久法をつくるかという議論がありましたが、恒久法、一般法というのは必要ないということを考えているところです。

 さらに、石破先生もこちらにいらっしゃいますけれども、自民党の小委員会の中で、先ほど石破先生も申されましたけれども、安全確保活動、ここまで武器使用を広げていくということになりますと、それはもう当然自衛隊の海外での武力行使というところまで拡大し、憲法違反になる。ですから、そういう恒久法はつくるべきではないというのが私たちの意見であります。

伊藤(忠)委員 もう最後の方なんで手短にさせていただきますが、きょういろいろと御議論を伺わせていただきました。驚いたわけではありませんけれども、民主党の例えば長島昭久議員のおっしゃったこと、大変僕は近いものを感じることができました。

 一つ、私、大事なことだなと思うのは、今現場で起こっていることで余り右往左往しないで、私たちは冷静にどうしておくべきかということを考えておかなければならないこと、まさに、例えばいつ兵を戻してくるのかとか、恒久化していく法律をつくっておく必要があるのではないかとか、こうしたことについては、実は、例えばアメリカが失敗したとか成功したとか、あの攻撃はどうだったかというような評価そのものも大変大事なことではありますけれども、しかし、私たちの国は、そうでありながらも、この厳しい世の中に存在していき続けなければならない安全をどう守っていくのかということは、別にきちっと考えておく必要があるのではないかというところが私は大事なところだというふうに思っております。

 イラクにおけるこの総括によって左右されることなく、私たちは私たちの国をどう守っていくかということをきちっと考えておく必要があるということだけは私はここではっきりさせておく必要があるのではないかと思いましたので、発言をいたしました。

 以上です。

原口委員 私は、先ほど清水先生が非軍事分野の人的貢献に言及されたのは、大変時宜を得たことだと思っております。

 バカアというパレスチナの難民キャンプに行っても、そこで最大の感謝をされていることは、日本の教育支援であり医療支援でありました。また、逆に言うと、今度アフリカに目を転じてみると、今中国が国連の常任理事国の中でも大変支持を得ているというのは、直接、そういう非軍事分野の人的貢献で大きな役割を果たしているからだと思います。

 そこで、ただ、湾岸戦争のときに一つだけ私は当時の私たちの先輩の政治家が言っていたことに異議を唱えていました。というのは、日本は血を流さない、汗を流さないという、それはよその国の政治家がおっしゃるのはそのとおりかもわからない。しかし、清水先生がおっしゃった、我が国は非軍事分野の人的貢献は最大でありました。特に青年海外協力隊、この間も私どもの後輩が一人亡くなりましたけれども、日本の若者がどれほど多くの非軍事分野で汗を流し、血を流し、そして命を落としているかということをやはりもう一度考えて、そこからスタートをすべきではないだろうかと。

 今でも、日本は血を流さないというよその国の政治家の口車に乗った意見というのは、私はそれは断じて是認できるものではないし、むしろ逆に言うと、石破先生がおっしゃったように、現実的な安全保障というのは党派を超えてきっちり議論がしていけるのかなと。

 きょう、そのスタートの会を催していただいた委員長を初め皆さんに感謝を申し上げて、意見を終えたいと思います。

浜田委員長 ありがとうございました。

 これにて自由討議を終了いたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十七分散会


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