衆議院

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第7号 平成19年5月8日(火曜日)

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平成十九年五月八日(火曜日)

    午後一時八分開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 石破  茂君 理事 渡海紀三朗君

   理事 中谷  元君 理事 西村 康稔君

   理事 松浪健四郎君 理事 神風 英男君

   理事 原口 一博君 理事 田端 正広君

      あかま二郎君    安次富 修君

      伊藤信太郎君    伊藤 忠彦君

      石原 宏高君    今村 雅弘君

      宇野  治君    大塚  拓君

      金子善次郎君    北村 茂男君

      清水鴻一郎君    杉田 元司君

      鈴木 馨祐君  とかしきなおみ君

      冨岡  勉君    中根 一幸君

      西本 勝子君    橋本  岳君

      町村 信孝君    松本 洋平君

      宮澤 洋一君    吉川 貴盛君

      池田 元久君    楠田 大蔵君

      古賀 一成君    後藤  斎君

      武正 公一君    中川 正春君

      長妻  昭君    伴野  豊君

      山井 和則君    江田 康幸君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      阿部 知子君

    …………………………………

   議員           末松 義規君

   議員           原口 一博君

   議員           山口  壯君

   外務大臣         麻生 太郎君

   防衛大臣         久間 章生君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   防衛副大臣        木村 隆秀君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  増田 好平君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月八日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     とかしきなおみ君

  中森ふくよ君     あかま二郎君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     中森ふくよ君

  とかしきなおみ君   越智 隆雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)

 イラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案(原口一博君外四名提出、衆法第一九号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び原口一博君外四名提出、イラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として防衛省運用企画局長山崎信之郎君及び防衛省人事教育局長増田好平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷元君。

中谷委員 まず、民主党提案のイラク法廃止法案についてお伺いをします。

 私は、四年前、このイラク法案が成立した後、この委員会にもおられますけれども、中川議員、丸谷議員、赤嶺議員、阿部知子議員らとバグダッドを訪問いたしました。

 きのうも阿部委員から話がありましたが、そのときに、バグダッド大使館には奥参事官当時、井ノ上書記官がおられまして、彼らが支援を計画し、調整している病院とか施設を見せていただきましたが、そのとき、日本がイラクに平和と安定をもたらす、それを国家の責任において必ずなし遂げるんだという情熱を彼らから聞きました。残念ながら、その後、二人は、優秀な外交官でありましたけれども命を失ってしまいましたが、今まさに彼らの言葉がよみがえります。日本自身が、自分自身の問題としてイラクに平和と繁栄を取り戻す力と使命感を持っているかどうか、これが問われている問題であります。

 確かに、現時点においてはイラクでは治安は回復しておりませんが、今直ちに米国や自衛隊がイラクから撤退してしまったら一体イラクはこの先どうなってしまうんだろうかということを考えますと、イラク法廃止法案の提出者の方々に、今直ちに米国や自衛隊が撤退したらイラクはどうなるかという質問をまずお伺いしたいと思います。

末松議員 今、中谷委員の御質問は、現時点でイラクから米軍、自衛隊が撤退したらイラクはどうなるんだろうという問いでございますが、まず自衛隊について言えば、自衛隊は復興協力という立場で行われておりますから、基本的に、武装されたJICAといいますか、そういった形でのサービス、そういったものがなくなるということだろうと思います。

 米軍について、米軍が撤退したらどうなるかということですけれども、これは多分、委員のお考えの中では、米軍が撤退すればイラクがまた混乱の極致に陥って、そして大変な状況になってしまうということが御念頭にあるのではないかと思います。

 一方、私もイラクに外交官として赴任した経験が二年間ほどございますけれども、そういう中で考えますと、イラク人というのは非常に外国人に対して不信感が強いという歴史を持っております。どういうことかといいますと、例えば古代から、ペルシャの遠征、それからまたアレキサンダーの遠征とか、あのイラクという土地は非常に平らな土地でございまして、ずっと軍隊の要衝の道になっていて、そこで大変な被害をこうむったという状況がございます。したがいまして、外国軍隊の存在というものに対して、国民のアレルギーは非常に強いものがございます。

 ですから、米軍が今存在しておりますけれども、米軍を中心とする多国籍軍、そういったものに対してアレルギーがある中で、とにかく、この外国軍隊、これをイラクから一刻も早く排除したい、そういう中でテロ活動がずっと行われてきたということでございますので、米軍もそれに対して大変なコスト、それから三千三百人を超える犠牲者を払いながら大変な犠牲になってきた。そういうことを考えれば、米軍が撤退した方がむしろイラク人の間で政権、またいろいろな、まとまるというんですか、そういった動きが出てくる、そういうことが予想されると私は感じております。

中谷委員 この問題は米国でも今議論になっていまして、五月の一日ですけれども、米議会において民主党提出の期限つきの撤退法案が成立をしましたが、大統領が拒否権を行使しまして、イラクにやはり米軍の存在が要るんだということをアメリカ大統領が決断をして決めたわけであります。

 それはなぜかと私も日本人として考えますと、やはり、ここで米国軍がイラクから撤退をすれば、治安が乱れて、今の内戦が全土に広がってしまってイラクが大混乱になってしまう。ようやく復興プロセスが積み上がって、大統領が決まり、内閣が決まり、議会が決まり、曲がりなりにも国家として機能をしているわけであって、ここで治安が乱れてしまったら復興支援も援助もできなくなってしまう。つまり、今米軍や自衛隊の支援をやめることは、後は野となれ山となれとなってしまうような無責任な立場で考えておられるように思いますが、本当にそれでいいのかなということですが、どうぞ。

原口議員 中谷委員が御指摘の御懸念も、私たち、それをはなから否定するものではありません。

 ただ、そもそも、米国によるイラク攻撃のとき私たちが指摘したことも、当時、防衛庁長官として大変活躍をされていた中谷委員には想起していただきたいんです。中東、イラクの複雑な情勢を考えてみても、武力攻撃によってイラクがテロリストの巣窟になってしまうんじゃないか、かえって混乱を広げてしまうんじゃないかと私たち民主党は強く指摘していたことを想起していただきたい。力による支配の限界と矛盾が拡大して、現在、多くの痛ましい死者、そして四百万にも上る難民を出しているのではないでしょうか。

 十五カ国にも上る国が既にイラクから撤退し、英国等も兵力削減を明確にしています。その中で自衛隊が対応措置を終了したとしても、イラクに与える大きな影響はないというふうに考えます。そもそも、米国軍のプレゼンスと自衛隊の活動は同列に議論できるものではなく、米国軍が撤収するかどうかというのは、私たちが判断することではなく、米国民が判断をなさることだというふうに思っています。

 自衛隊の活動については、私たちは、国会が政府の安全確保義務をチェックできるだけの情報を持っていない。今、我が大切な奧大使等のお話をされましたけれども、まさに、安全確保がチェックできているのか、そこを問うていることをぜひ御理解いただきたいと思います。ISGレポートでも米軍の漸次撤退を提言しているように、イラクの民主的なプロセスを支援しながら、軍のプレゼンスが与えている影響についてもやはりもうここらで総括をしなけりゃいけないと私は考えています。

 これまで頼っていたものがなくなった中で、宗派、民族、部族の割合が高くなってしまっています。これまでのイラクの民族間、宗派間の融和の歴史にかんがみれば、イラクにとって大切なのは、本来、宗派だけはなくて生活だったはずです。ところが、戦争による混乱のために、宗派の民兵が守ってくれるという構造ができている。そのために、宗派を名乗らなければ自分たちを守るよすががない。スンニ、シーア派の中でも結婚されている方がまれにいらっしゃると聞きますが、その人たちのところまで同族の方、親戚が押し寄せて無理やり別れさせるということが起きている。このように考えます。

 ですから、直接首相が来られたときも御指摘をなさいましたように、スンニ派、旧バース党も含めて体制内に入れていく、治安を警察的な手法によって回復すること、このことが大切なのではないでしょうか。

中谷委員 その考え方も一理あるということですが、しかし、現実の問題として政府や我々は考えなければならないわけであって、現在のイラク政権、そしてイラク情勢の中で、実際に米国も国連もその復興のプロセスというものを立てています。そのためにはイラクの治安というものがどうしても必要でありまして、大統領もそのことを考えて決断を下しました。

 では、私なりに考えますと、米国のイラク駐留の根底というのは何があるのか。一つは、文明の衝突と言われていますけれども、冷戦後の文化の対立もありますが、それによって発生したテロリスト、これの拡散を防ぐ。それから第二に、やはりイランの政策があって、これは、先進民主主義国がエネルギーの供給を依存する中東地域を、帝国主義と原理主義思想を兼ね備えたイラン、これの支配から守る必要があるのではないかというのが根底にはある。

 そこで、一点のテロリストですが、やはりテロの脅威というものをこのまま放置すれば、テロの波というのが、イラクでますますこれが拡大をして遠くまで広がってしまう。これはやはり現実、私もそう思います。ここで抑え込む努力をしなければ、事態は多分、レバノンや湾岸諸国もこのテロの波というものに譲歩してしまうでしょう。そして、イラク国内の宗派対立、これはますます深刻化して、バルカン半島以上に大量虐殺が繰り広げられる。やはりそういったものは防ぐ努力が要るということで、本来、外交でこれを決着させたらいいんですけれども、しかし、その外交を行う前提として、やはり力というか、外交を行うまでの状況をつくらなければなりません。

 そういう意味で、米国は現実の変化に即応した兵力の配置と調整をして力を示しているわけでありまして、もう少しイラク国軍が力をつければ、民兵の影響力が除去できる、イラク政府がひとり立ちをできる。しかし、今そこに向かうプロセスの中で、やはり米国の力というものが必要であります。

 なぜなら、外交と力という考えで考えてみますと、外交と力を分離しようとすれば、力は方向性を失って、外交はてこを失われる結果になるというのが世界の歴史であります。つまり、外交的安定を図るにはそういった力や内政を安定させなければならないということで、そこでイラクの安定を図れば、そこから外交の道が開けるわけであります。

 イラクをめぐるグループは今二つあると思いますが、一つはトルコ、サウジ、エジプト、ヨルダン、これは、イラクの内戦を早く終わらせて、外からの支配に抵抗する共同戦線を構築できるグループであります。もう一つはシリアとイラン、これは、平和的な地域秩序に彼らを参加させる機会を与える。この二つのラインを外交のてこにできるかどうか、これはまさに国際社会が行うべきであるわけでありまして、その段階に至るようにするというのが今我々日本やアメリカがしなければならないことであって、それが出口論につながっていくと思います。

 民主党におかれましては、では、イラクに平和と安定をもたらすということに、具体的にどうすればいいのか、だれが何をすればいいのか、この点についてお伺いをいたします。

末松議員 今、中谷先生おっしゃられたとおり、イラクにおきまして内政を安定させるためには、まず、内政の第一義的責任というのはイラク国政府にあることは事実でございます。ただ、それがなかなか弱いということでございます。

 ただ一方、なぜそれだけテロリストがたくさん出てきてイラクに内政の騒乱を起こしているかといいますと、先ほど申し上げましたように、キリスト教徒を中心とする、やはりアメリカの軍隊を中心とする多国籍軍、これが活動し、そしてこれに対するテロが起こっている。このテロをどうやってなくしていくかということでございます。

 先生がお考えになるように、多国籍軍を、米軍を特に強化して、そしてイラク政府の軍とそれから警察、それを一生懸命に教育をして、そして訓練をして、そこでテロを抑え込むという方法は、確かに今国際社会で言われておりますが、一方、米軍の存在そのものがテロを引き起こしてきた。そして、この四年間、それに多大の犠牲を米軍そのものも、あるいは多国籍軍そのものも支払ってきたというのが現実でございます。そういうことも考えて、今米議会で、上院と下院で、撤退をさせるという決議を行ったところでございます。

 この米国民主党が主導した決議は、中谷先生に言わせれば、今イラクから米軍を撤退させるということは無責任じゃないかと先ほどおっしゃいましたけれども、それに多分、中谷先生のお言葉をかりれば無責任という話になるかもしれません。ただ、これは米側が自分でお決めになって、もし撤退をしたということになった場合、これは私ども、政府の方にもお聞きをしたいんですけれども、そういったときに、米側に対して無責任だというふうに言うのか。米側の政策そのものについてそういった決断がなされたときに、日本としては、中谷先生が言われるように、米側に対して、無責任だ、とどまれ、自衛隊もとどまる、そういうふうに言われるのか。そこは私ども非常に関心のあるところでございます。

中谷委員 米国も、こういった事態を引き起こしたというか招いたわけでありますので、それは責任があろうかと思います。したがって、米国が撤退するときに、やはり我々としては、一つの考えとしては、イラクの国民から見てもう大丈夫だという時期だと思いますが、やはり我々としても、イラクから見た出口論というものを考えていかなければならないと思っております。

 もう一点民主党にお伺いしたいのは、このイラク法案に反対する理由として、非戦闘地域、これが虚構の概念であると主張しておりますが、では民主党は、自衛隊の海外活動の憲法における根拠、どのような概念で行うべきであると考えておられるのか。

 自由民主党、与党は、現行憲法で自衛隊の海外活動が武力行使にならない、集団的自衛権にならないという前提でテロ特措法やイラク法案を考えていまして、それで非戦闘地域というものを設定して、そこでは活動しない、そして後方支援に限る、武力行使にならないというラインを二重、三重に設定して活動をしているわけであります。また、周辺事態法においても後方地域を設定して、これまた武力行使や集団的自衛権にならないように自衛隊の活動に歯どめをかけているわけですが、では民主党は、果たして、こういった国際活動をしなければならないときに、現憲法において、どのような概念で、どのような範囲内で自衛隊の活動を考えておられるのか、その概念というものをお伺いしたいと思います。

末松議員 中谷先生がまず最初におっしゃいましたように、私ども、与党の戦闘地域、非戦闘地域、これは虚構の概念であるという話をいたしました。それは、なぜそういったことを申し上げたかと申しますと、武装集団に対して国または国に準ずる組織というものを認めないがゆえに、そのために、武装集団そのものに対して、すべてテロリストだと。つまり、イラクから外国軍隊を撤退させたいグループ、そしてそれを実力で撤退させたいグループに対して、すべてテロリストだというレッテルを張ってやってきたので、テロリストがやる武力行為というものは、これは戦闘行為ではない、これがこの定義でございます。

 したがいまして、イラクでは非戦闘地域しかなくなって、そして戦闘地域はないのだ、こういう概念が、国または国に準ずる者というこの主体がそういうことで認められないものですから、そういう解釈になる、そこが一つ虚構だと。

 もし私ども民主党のように、国または国に準ずる者に武装勢力というもの、これを概念上入れ込みますと、これはある意味ではイラクが戦闘地域だらけになるということでございます。そうなりますと、やはり紛争地域、本当の意味での戦時下のイラクということでございます。

 これは、ブッシュ大統領は二〇〇三年、戦闘終了ということで宣言をいたしました。国連もそれで復興という形になったわけですけれども、戦闘終了ということは戦争が終わったということを意味しておりません。そういった戦時下において我が自衛隊を派遣する、これは戦争の大義がない、正当性がないということとも相まって、自衛隊を派遣するということは是認できないということで、私ども民主党として、イラクに自衛隊を送るという法案に反対をしたわけでございます。

 後半部分、先生がお問いになられました、では民主党で、自衛隊の国際活動はどのような概念で、どのような限度、範囲で行うものかというお尋ねに対しまして、民主党の方は昨年末に政権政策の基本方針、マグナカルタと通称呼ばれていますけれども、というものを決めまして、海外における自衛隊の活動について、以下のように定めております。

 すなわち、国連の平和活動は、国際社会における積極的な役割を求める憲法の理念に合致し、また主権国家の自衛権とは性格を異にしていることから、国連憲章第四十一条、第四十二条によるものも含めて、国連の要請に基づいて、我が国の主体的判断と民主的統制のもとに積極的に参加をするというのを決めたわけでございますが、これは、まだ、実態上、国連というものがそういった究極の警察的権能を持っていないという中で、やや非現実的に聞こえるかもしれませんが、本来、国連というものを世界の警察に、そういった概念を入れて、その中で日本がしっかりと世界の平和、安全に貢献をしていこう、こういうことで私どもは整理をしております。

中谷委員 それでは、国連の決議があれば自衛隊はどこへ行って何をやってもいいということですか。

末松議員 ここでの国連の決議、私ども、今まだそこのところの細かいところの議論は、実際言えば、正直、詰めていないところも多々ございますけれども、ただ、そのときの国連の機能として、例えばアメリカが国連軍に入るということを徹底的に拒否をしている、そういう状況下でいますと、それはなかなか、国連の警察的な権能というものができておりません。つまり、この根底にあるのは国連による集団の安全保障という大きな概念、この認識を踏まえて、その中で各国が主権から一歩上に、主権を移譲して、そして国連を中心とする集団安全保障の中で米軍もその指揮権そのものも移譲するような、そういった中でやっていくというのが私どもの今考えているものでございます。だから、いわば究極的な姿ということであろうと思います。

中谷委員 やはりシビリアンコントロールというのは軍隊を使っていくわけでありまして、今の憲法九条は、もう六十年間の議論で一つのルールができて、それによって自衛隊の活動がされていますが、しかし、現状のままではいろいろ問題点も出ていますので、この点においては、憲法を改正してどうするのかということも含めて、与野党間でまた議論を重ねてまいりたいと思います。

 せっかくの機会ですから、閣法についてもお伺いをいたします。

 まず、防衛大臣に。

 これは飛行開始から三年半経過しまして、現在十二期のイラク復興支援派遣輸送航空隊がクウェートにいるわけで、これは四カ月駐留をしまして、この期間にもう四回目の派遣をされた隊員が五人おられます。

 要するに、二百人の要員の中でC130のクルーが三十人、整備が三十人、残りが管理要員なんですが、クルーと整備要員はすべて小牧の第一輸送航空隊で賄わなければならない。今後もし二年延長になりますと、もうこの回数が六回も七回も派遣をされるということになりますと、当然、疲労や負担、また家族の心配がふえてまいりまして、一般の派遣手当だけの考えではカバーできないような面も出てきますが、さらに派遣の回数がふえる隊員等に対して、さらなる手厚い措置とか処遇というものは考えておられるのかどうか、伺います。

久間国務大臣 今直ちにそういう手当を増額するとかそういうことは考えておりませんけれども、確かにおっしゃるとおり、特にこのC130という非常に限定したメンバーの派遣になりますから、ほかの今までの海外に行っているケースと違いまして、一人の人が行く回数が非常にふえております。特にパイロット等については、しかもC130のパイロットでございますから、そういう点では数も非常に限られておりますので、こういう点が大変厳しい状況にあるのは事実でございます。

 私たちも、この問題については、どう考えていったらいいか、今の委員が御指摘の手当の問題も含めながら、そういうような心理的な負担、いろいろな点で考慮していきたいというふうに思っております。

中谷委員 この問題と、あと、宿舎は六、七人が相部屋で寝起きをしている問題とか、ストレス解消の問題とかありますので、また大いに部内で検討いただきたいと思います。

 それからもう一点、外務大臣にお伺いをしますが、陸上自衛隊のサマワの活動においては、非常に自衛隊と外務省がかみ合って、自衛隊の活動とODAが一つの両輪のごとくうまく成功しましたが、これはやはり自衛隊の活動の安全を外務省の支援でキープできたということでありますけれども、では、バグダッドに向かう航空自衛隊の輸送支援、これはまたやはりいろいろな心配があるので、こういう面において、そのイラクの復興資金などを、バグダッド空港とかまたエルビルの空港周辺の安全確保とか、また、ひいてはイラク大使館の要員の安全を確保するために何か使うべきではないかと思いますが、こういった考え方について何か措置、御考慮されているかどうか、伺います。

麻生国務大臣 御指摘のありましたように、フセイン政権下においてサマワ地区というのはかなり虐げられているというか、かなりフセイン政権下では放置されていた部分、したがって、インフラ等々の基盤整備は他の地域に比べて著しくおくれていたという事情がありました。したがいまして、ODAと陸上自衛隊等々がこれはかなり車の両輪としてかみ合ったというのは、今御指摘のとおりだと思っております。

 他方、航空自衛隊が今行っております地域というのは、これはサマワと異なっておりまして、基本的にはバグダッド、エルビルということになろうと存じますが、ここらのところは今どういうことをということになりますと、基本的には、そういうインフラ等々の整備はむしろバグダッド周辺の飛行場ではされている方だと存じます。加えまして、イラク政府からも、その空港等々に関しての支援というかODA等々の要求というものも、今現時点ではあっていないというのが現状であります。

 したがいまして、今こちらから支援もないところもありますので、今の段階として、その地域に直接ODA等々を使ってインフラ整備を直ちにやるというような考えは、今の段階で持っているわけではありません。

 いずれにいたしましても、この三十五億ドルの円借款等々のうち、張りつけが終わっておりますのは二十一億ドル、残り十四億ドルにつきましてはまだ正確には決まっていないという部分もありますので、イラクの復興支援ということに関しましてどういうところをすべきかということにつきましては、今後の検討課題の一つであろうと存じます。

中谷委員 ありがとうございました。

 政府もイラクの復興に努力をされていると思いますが、どうか、原点である理念それから哲学、これを忘れずに、これからもよろしくお願いいたしまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。

浜田委員長 次に、石破茂君。

石破委員 主に衆法提出者に対して質問いたしたいと思います。

 私は、この質疑を通じてどうしてもよくわからないのは、イラクに派遣をしているというのは、別に日本が勝手にやっているわけではなくて、国連決議一四八三に基づいて出しているわけですよね。国連決議に基づいて出している。我が国は、国連の主要な加盟国としてそれなりの責任を果たさねばならぬ、常任理事国にもならねばならぬ、嫌なこと、つらいことはみんなほかの国に任せてきれいごとだけやっておるという話で常任理事国なんかなれるわけもないだろう。国連決議に基づいて出しているもの。

 そして、イラクの政府、首相も副大統領も我々お目にかかって議論したけれども、民主主義によって選ばれたイラクの政府が、自衛隊の活動を続けてくれというふうに要請しているわけですよね。

 つまり、国連が続けてくださいと言い、民主主義によって選ばれた向こうの政府が続けてくださいと言う。にもかかわらず、なおやめるという理由が私はどうしても理解できないんですよ。つまり、国連の決議はもうよろしい、向こうの政府が何と言おうとよろしい、やめるんだという正当性がよく理解できない。これが一つ。

 それからもう一つは、何で二年なんだという御質問をよくいただくのですが、あれは何が何でも二年いなきゃいけないという法律じゃないんですよね。二年はいることができますと。

 本当に治安が回復をし、イラクの首相が述べたと伝えられるように、もう自衛隊じゃなくてもいいというふうになったならば、それは一刻も早く引くべきものですよ。しかしながら状況がよくわからないので二年という期間をとったけれども、その理由は昨日防衛大臣がお述べになったとおりだと思いますが、それはいなきゃいけないというわけではありません。目的を果たせば、あるいは考えたくないことだけれども危険になれば、それは当然引くべきものなのであって、なぜ二年なのですかということは、二年いなきゃいけないということを所与のものとしておられるようだけれども、それは違うのだと私は思っているのですね。

 この活動は継続すべきだ、しかしながら私どもは、基本的に、実力組織、普通の国でいえば軍隊、我が国でいえば自衛隊、これを海外に出すことはすべからく抑制的でなければならないと思っているのです。国内における災害派遣でもそうですが、どういうときに出すかといえば、それは緊急性と公共性と非代替性、この三つが充足されなければ実力組織、軍隊なんぞというものを軽々しく動かしてはいけないし、ましてや外国なぞに出してはいけない、そのことは十分に承知をしておるつもりであります。したがいまして、民主党の法案には賛成ができないということを申し述べておるわけでございます。

 きょうは、今、中谷議員と末松議員あるいは原口議員とのやりとりを聞いておって、どうもよくわからぬなということが出てきましたので、一般法も交えましてお尋ねをしたいと思います。

 今、末松議員の方から御答弁がありましたが、その後どうしていいか、まだ法案はきっちりと詰めていない。ということは、これは、引いたらば後はどうするんですか、後はどのようになるんですか。

 そして、今のお話ですと、国連が本来の役割を果たすようになったとしたならば自衛隊もそれに応じて考える。ということは、逆に言えば、国連が本来の役割を果たしたことはないわけですよね。正規の国連軍ができたことは一回もないわけですよね。だとするならば、国連が集団安全保障としてのシステムを持つに至るまではやらないということですか。そうすると、いつになるかわからないんですけれどもね。

 それから、先ほど、主権を離れてというふうにおっしゃいましたね。国連はユナイテッドネーションズであって、インターナショナルガバメントではないのですよ。主権を離れるという概念は恐らくいつまでたっても存在をしない、それは世界政府ができるまでそんな概念は存在しないと思うんですね。だから、主権を離れるからいいのだというロジックは私は相当無理があると思いますが、いかがですか。

末松議員 まず、二点御質問いただいたと思います。

 今、どうしても自衛隊が引くに至る理由が不明であるというお話でございましたけれども、国連もイラク政府も復興支援を日本に要請している、それはまさしくおっしゃるとおりでございます。ですが、国連の方も決議で、自衛隊を派遣しろということは一言も言っておりません。また、イラクから見ても、それは米国との緊密な関係の中で、あるいは米国からブーツ・オン・ザ・グラウンドと日本に言ってきた、これは日本特有の経緯もあるのかもしれませんが、日本に対して、どうしても自衛隊じゃなきゃいけない、こういうことを言われたことは、ちょっと私自身に関する限りは承知しておりません。

 ですから、私ども民主党が言っておりますのは、まさしくここで、フランスとかドイツとかカナダとか、あるいはロシア、中国もあるんでしょうけれども、こういった国々がイラクに対して行っている復興支援、そういうものを日本もしっかりとやっていく。特に私どもが強調したいのは、日本人が中に入れませんから、紛争下における援助の仕方をしっかりここで身につけて、今、世銀なんかがかなりやっています、テレビ電話等で一生懸命、イラク人が自分で自立できるような、そういった支援プログラムをやっています。それが一番復興支援に役立つんでしょう。

 といいますのは、イラクはもともと石油収入があって、非常に独立心が強くて、そして有能な国民性がありますから、それを助長してあげる、そういう援助をしてあげること、これが私どもは求められていると思います。

 それは、米軍の対イラク攻撃に対する大義がないということを含めて、そしてその攻撃に対して私ども反対の立場をとっておりますが、それがそのまま今、先ほど申し上げましたように、イラクにおいて米軍の存在そのものがテロを助長している面、これを見落とすべきではないということでございます。

 二点目は、先ほど私の方で、主権を離れてということで、国連における集団安全保障の話をいたしました。主権を離れてということは、主権から全く飛んでという話ではなくて、委員が一番御存じのとおり、集団安全保障というのは、主権の一部を制限しながら、そして集団の安全保障体制のもとで集団で安全と平和を守っていこうという仕組みでございますので、それが、国連の今の状況を見ますと、私自身が解するには、今直ちに国連軍がないから、だから民主党では荒唐無稽なことを言っているじゃないかという御指摘、御批判がございましたけれども、将来的な形として、そういった国連の世界の警察的な機能、これを充実させていくという前提のもので、私どもの理想をきちんと語っているものでございます。

石破委員 それではお尋ねしますが、これを直ちに廃止しますね。では、どこにだれが行って何するんですか。

末松議員 自衛隊が撤退をした後、私どもは、今までやられている日本のODA、そして国際機関との協力における復興援助、さらにNGOとの協力における復興援助、そして例えばアラブ諸国とかさまざまな外国との共同による復興支援、そして、今私ども民主党として目指しております、紛争下において、リモートマネジメントというんですかね、実際に日本人が入らずともイラクの人たちを、しっかりと自律的に訓練するなりプロジェクトをやっていくなり、そういうリモートマネジメント的な、イラク人が、例えばヨルダンならヨルダン、隣国に来て、そしていろいろと打ち合わせをしながら、後は例えばテレビ会議とかそういったことを通じて一つ一つイラク人の手によって復興をやっていく、そういうことが可能だと思っております。

 逆に私どもが問いたいのは、アメリカ軍がもし撤退した場合、石破先生、先ほどと同じ問題なんですけれども、アメリカ軍がもし来年、大統領選挙等を含めて、あるいはその以前に撤退した場合に、日本としてはどういうふうなことをアメリカに対して言うのか。アメリカはもう引き揚げたから、では、もうこれで私どもはやる必要がないのか、自衛隊を送る必要がないのか、そういったことについてのお考えをお伺いしたいところでございます。

石破委員 幾つかの国の例をお挙げになりましたが、アフガニスタンじゃなくて、今イラクにおいて、実力組織、軍隊を全く伴わずにそのような活動を国家として政府としてやっている国はどこがありますか。

末松議員 例えば、軍隊というものを送って、そして治安活動に従事していない……(発言する者あり)ちょっとごめんなさい。私どもの理解では、フランスとかドイツとかカナダとか、そういったものは軍隊として治安機能に従事しているとは私は認識しておりません。

石破委員 いや、いいです、これ以上聞きません。

 要は、それはNGO的なものがやっているのはありますよ。水の浄化でも、確かに、イラク特措法のときに議論になったように、フランスのNGOみたいなものはやっている。どうだ、安いじゃないか、自衛隊がやるよりもはるかに安い水を供給しているじゃないかみたいな議論もあったが、私がお尋ねをしたのは、国家として政府としてやっている国がどこかありますかということだったのです。いいです、いいです、答弁要りません。

 では、観点を変えてお話ししましょう。

 先ほどおっしゃいましたのは、テロ組織も国または国準として考えるというふうにおっしゃいましたね。だとすれば、国際紛争とは何だと思いますか。

末松議員 これは、先生がいつも答弁しておられた、国または国に準ずる者という主体が、計画性、組織性、そして継続性、さらに国際性ですか、そういったことで行っている活動、これが国際紛争だというふうに私も実は理解をしております。

石破委員 いや、ですから、本当に個人的には敬愛する皆様方ですので、本当にきちんとした議論をさせていただきたいと思っているのですよ。反対のための反対でもなく、足引っ張りでもなくね。

 中谷委員が先ほどおっしゃいましたように、この非戦闘地域という概念は、憲法九条をいかにして担保するかということで設けた法的概念なのですよね。弾が飛んでくるとか危険であるとか、そういうこととは全く違う概念であって、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」これを受けているわけですよね。

 つまり、国際紛争を解決する手段としてはやっちゃいかぬということになっているわけで、国際紛争とは何かといえば、国または国に準ずる組織の間における武力を用いた争いですから、定義はそうなんですよね、それを担保するために、非戦闘地域という概念を法的なものとして定めた。

 それは、イラクのどこが戦闘地域だ、非戦闘地域だということじゃなくて、自衛隊が行くところは、行くところがじゃないですよ、行くところは非戦闘地域でなければならないということになっておって、そういうようなおそれがあった場合には活動を一時中断するなどしてと、こういう条文になっているわけですよね。

 そこへ、いや、テロリストであってもテロ集団であっても、これは国際紛争の主体たり得るのだというと、これは今の国際法の概念、秩序というものを根底からひっくり返すことになるわけですよね。それはそれでいいんです。それはそれで、私はだめだとは言わないんだ。

 だから、憲法九条の「国際紛争を解決する手段としては、」という部分も考え方を変えるんだという意味でおっしゃっておられますか。

末松議員 小泉前総理が自衛隊の行くところは非戦闘地域であるとおっしゃって、これは国民は失笑をしたわけでございますが、実はこの概念が、武力行使の一体化から、そういうことになっちゃいかぬという、憲法上つくり出された、そういったシステムであることは私も重々承知をしております。

 ただ、この概念を進めていくとどういうことになるか。例えばファルージャとか、そういった本当に戦闘をばんばんやっているその地域も、石破先生が言うように、国または国に準ずる者、これを武装集団に認めないならば、これは、どんなに戦闘が激しくても、それでもすべて非戦闘地域になってしまうわけであります。

 それは、幾ら憲法上編み出されたシステム、絵柄であるとしても、これこそ、何かアメリカから見ても、アメリカは、コンバットゾーンというのは、実際に戦闘が行われている、これをいうわけであります。それを日本が非戦闘地域ですと世界に向かって言えるかといったら、これは言えないわけです。それは一番石破元長官が苦しんだところでございましょう。

 そこを私どもはしっかりと、国際法上の概念を変えるかという話でしたけれども、それもフロー、完全に固まった概念ではありません。要は、サダム・フセイン政権の残党という、アメリカから見ればそういう位置づけかもしれませんし、その準国家ということがどこまで認められるものなのか。むしろ、相当程度の実力を持った組織というものであれば、それは戦闘を行う行為の主体として、私自身は、そこはある程度認めていかないと、先ほど申し上げたように、とんでもなく非現実的な、虚構的な議論として、言葉の遊びになってしまう。そこが一般国民の皆さんから見ても、これはおかしいよなということだろうと思います。

石破委員 また機会を見て議論をしたいんですけれども、今の問題は、九・一一以降の問題は何かというと、そういうような、従来であれば国家でしかなし得なかった破壊行為というものをテロリストとかテロ集団というものができるようになっちゃった、これを一体どのように考えるべきなのかということなのだと思うんです。

 イラク戦争を始めるときに、ブッシュ大統領は、ザッツ・ウオー、こう言いました。それは戦争なのかどうなのかという議論、ややこしい議論を惹起するつもりはないんだけれども、一体これをどう考えるのか。

 しかしながら、では、例えばアルカイダというのは、末松議員御存じのように、英語に直せばザ・ベースなんですよね、アルカイダというのは。もう全く基地でしかないわけです。それはもう国という概念はどこにもないわけですね。アルカイダは国準ですかというと、今の御議論でいえば、そんな破壊力を持っているんだからこれは国準であるみたいな話になるのかもしれない。しかしながら、それは、領域もなければ、国民もなければ、政治体制もないわけですね。ではこれをどう考えるんだ、そして新しい時代の秩序をどうつくるんだという議論をこれからまたやっていきたいと思っています。

 では、もう時間もありませんから、幾つかあとお尋ねしたいのだが、一般法ですね。

 すなわち、この法律は廃止すべきだというお立場はわかりました。我々はそれには賛成はしません。しかしながら、例えば、今回イラ特の期限が来る、十一月には今度はテロ特の期限が来るわけですよね。これは、例えば二年とか四年とかいうふうに期限を区切るわけです。そのときに、きのうも議論があったけれども、国内の政治情勢とかあるいは国際的な政治情勢とか、いろいろなものによって本来やるべきことが左右されかねないということが起こるわけですよ。

 だとするならば、特措法という形、特措法ですから当然限時法、時限法なのであって、期限を区切る。そして、対象とする事態は非常に限局されるわけですね。そうではなくて、一般法という形で、メニューを設けて、それぞれの事態に対応して政府が基本計画をつくり、出すか出さないかは国会が文民統制の考えのもときちんと事前に承認をし、適切な情報開示を行い、我が国として最もふさわしい国際活動というものをすべきではないかという議論が我が党の中にはあって、それを、マニフェストというのかな、政権公約というのか、そこに検討という形で入れさせていただき、党内で約半年議論をして、法律の素案はまとめさせていただいた。

 いろいろな御批判はあるところだろうと思うけれども、民主党さんとして、この特措法ではなくて一般法という考え方について、ざくっとしたお尋ねで恐縮だが、どのような考え方をお持ちですか。

原口議員 先ほど大事な議論がありましたので、新しいテロという脅威をまずどのようにとらえるか、とても大事なことだと思います。

 石破長官の時代に、フセイン政権の残党も国または国に準ずる者というふうに御答弁をなさっている議事録が手元にありますけれども、アフガニスタンにおいて今戦争は継続しているのか、アメリカの自衛権の行使たる戦争は継続しているのか、その相手はだれなのか、これはまさにテロリスト、アルカイダを中心としたテロリストである。とすると、この非対称性の脅威を私たちは憲法上あるいは国際法上どうとらえるかということは、とても大事な議論だと思います。そのことが、その脅威の同定が違うから、戦闘地域、非戦闘地域、これは憲法上の要請における法的な枠組みだと私たちもとらえていますが、そのこと自体が、アルカイダやテロリストを国または国に準ずる者だと認定した瞬間に今までの法的体系が違うんですね。

 私たちは、できれば自衛隊を出すときには全国民的な合意のもとで慎重に出したい、こういうスタンスを持っています。そういう意味からいうと、一般法についても、自由民主党さんで検討されている柱は、国連決議がなくても自衛隊を海外に派遣することができる、もう一つは、現行法では人道復興支援や後方支援に限定されていますけれども、治安維持活動まで考えておられるというふうに考えます。

 我が党は、先ほど末松議員が指摘をしましたように、マグナカルタの中で、「国連憲章第四十一条及び四十二条に拠るものも含めて、国連の要請に基づいて、わが国の主体的判断」、あくまで「わが国の主体的判断と民主的統制の下に、積極的に参加する。」ということを出しています。我が国にふさわしい国際貢献や一般法の制定も含めて、これは自衛隊の国際的な活動のあり方について正面から議論をしていきたい、これが民主党としての基本的な考え方であります。

 また、その前提として、やはり文民統制、これも一回一回特措法でやるというのがどうなのか。一回一回国会の審議や国会の議決を経るという意味からすると、文民統制がきっちりきいているということも言えるかもわかりません。しかし、委員が御指摘のような部分もあり、政府の説明責任の徹底といったことは、この間の本委員会の自由討議の中でも先生の御質問にお答えしたところでございます。

 また、国連決議を必須要件とするかという問題提起について言えば、確かに、一部の国に拒否権を発動されてしまって、どんなに日本の国益に沿うことでも自衛隊は海外に派遣できないという矛盾が生じます。ただ、このことをどのようにとらえるかは、憲法の理念をもとにした慎重で抑制的な議論が必要であろう、こういうふうに考えています。

 また、治安維持活動についてですが、先ほど申し上げたように、冷戦後の脅威の主体の変化に、私は、正直言って、国際法、我が国の法律も含めて、追いついていないのではないかと考えます。そのために議論の混乱があり、集団安全保障と集団的自衛権のこの議論の混乱は目に余るものがありますけれども、そういうしっかりとした国民の議論の中で、戦争の違法化を進めていく上で、自衛権の行使、集団安全保障における武力行使はさらに極めて限定的であるべきだというふうに考えております。

 これからも、党派の枠を超えて、積極的に、共有できる脅威に対してどのように現実的に対処するかということを議論してまいりたい、このように考えています。

石破委員 何か政府の答弁を聞いているような不思議な気分になりましたが。

 これはもう原口議員全部おわかりの上で答弁なさっておられるんだと思います。例えば、今でも国連決議なしに出している国際平和活動というのはありますよね。例えて言うと、スリランカ監視ミッションなんかはそうですよね。ミンダナオ国際監視団もそうだ。アチェの監視ミッションなんというのは、我々身近なところである。あるいはシナイ半島の駐留の多国籍軍監視団なんというのはそうだ。

 どういうパターンで国連の決議がなしに国際平和活動を行えるかというと、そもそも当事者が国連の議論を望んでいないという一つのカテゴリーがあって、もう一つは、国連なんか出てこなくても和平交渉の仲介をする第三国が存在する。あるいは、先ほど原口さん御指摘になったように、拒否権を行使する国がある。

 例えば、ある事態があって、そのことに参加することが我が国にとって死活的に重要であるというような事態があったとしましょう。しかし、それが、どこでもいいですが、拒否権を持っている国にとってはまことに好ましからざる事態であるということがあったとしましょう、どの国でもいいです。それに参加しなければ我が国の国益が死活的に損なわれるにもかかわらず、そうであるがゆえに某国が拒否権を行使したときは、これは自衛隊は出ないということになるんですかね。

原口議員 そういう矛盾が生じているということを先ほど申し上げたわけで、その矛盾についてどのように議論するか、極めて憲法のもとで抑制的に議論をすべきであろう。国連の世界の平和を維持する活動、その力が弱まったという議論が一方であります。しかし、国連は世界における唯一多くの平和と安定をもたらす機構であることには変わりありません。そこでの決議をどのように重きを持ってとらえるかというのは、やはり日本の命運にとっても大変大きな問題である、このように考えています。

 また、付言して言えば、我が国は、湾岸戦争のとき、石破先生、私はその当時国会議員でなかったですけれども、国会での議論に大変不満を持っていました。日本は血を流さない、金だけ出すと言う政治家がいっぱいいました。それはうそだと思います。非軍事分野で、ケネディの平和部隊を倣ってできた日本の青年海外協力隊は世界最大の貢献組織であります。世界最大の非軍事分野でたくさんの日本の若い人たちが傷つき、そして命も落としている。そういうことを考えてみると、安易に、我が国が自衛隊をどこかに出していないから世界に貢献をしていないんだということを世界に向かって喧伝する政治家というのは、私は信用しない、このことだけは申し上げておきたいと思います。

石破委員 では、最後に一問お尋ねしましょう。

 イラク特措法のときに、原口議員やあるいは末松議員と議論させていただいたことですが、例えば、ムサンナ県の中のサマワで自衛隊が活動していますよね。その地域全体の治安を維持しているがところのオランダ軍が攻撃を受けました。あそこへ助けに行けないのは集団的自衛権を行使できないからだろうという御質問をいただいたので、私は、そんなことはございませんと。それこそさっきの議論へ戻っちゃうが、オランダ軍は、テロリスト等々から攻撃を受けたときに、それに対して反撃をするのは、自衛権の行使をしているわけではありませんと。どこの国も自衛権を行使していない。あえてかぎ括弧つきで警察権というならば、警察権の活動をしているのに対して、加勢をする、助けに行くという行為は集団的自衛権の行使であるはずがないのであって、これは政策論であって憲法の要請に基づくものではありませんという答弁をいたしました。それは私はそのとおりだと思っているのですが、今でもその認識に変わりはないから。

 それで、では、治安維持活動を新しい一般法においてするかしないかなのですが、そこにおいて憲法に定められたがところの国際紛争解決手段に当たらないということをきちんと押さえた上で、なおかつそういう行為をしてはいけないと思われますか。すなわち、いろいろな人道復興支援ができるのは、そこにおいて治安が維持されているからですよね。治安が維持されていなければ、人道復興のしようがないわけですよね。そういう危険なことはほかの国がやってちょうだいな、我が国は人道復興支援で人々が喜んでくれることをやりますよということで本当にいいのだろうかと私は思うのです。

 もう一点は、例えばカンボジアであった議論ですが、日本の選挙監視団が来ました、結構治安が悪いです、では、そこを警護するということは可能か不可能か。今、警護はだめなことになっていますよね。だけれども、日本が例えば選挙監視団みたいなものを送り込んだときに、そこにおいて自衛隊が警護をするということが本当にあってはいけないのだろうかと思うわけです。つまり、つらいこと、苦しいことはほかの国やってちょうだいということで本当にいいんだろうか。

 そして、間違いのないように申し上げておきますが、そこの治安を維持するのは基本的にその国の権限を持った機構です。自衛隊がそれを押しのけてやるということではなくて、それとコラボレーションしながら、あるいはその補完的な形で治安維持支援活動というのか、安全確保支援活動というのを今使うと話がごちゃごちゃになっちゃうかもしれないけれども、あくまで主体は当事国であるけれども、自衛隊も何らかのサポート、任務分担をやるべきであるという考え方についてはどのように思われますか。

原口議員 大変本質的な質問だと思います。

 そこで起きている紛争が、先ほどの脅威の同定にもよるんだと思います。脅威の同定、つまり、テロリストであったときに、それをどうとらえるかということが一つ。

 それからもう一つは、確かにイラク特措法の議論のときに集団的自衛権の話がありました。オランダ軍が攻撃されたときに日本が守れないのは集団的自衛権に抵触するからだ、その議論は私はおかしいと思います。憲法上の問題ではなくて政策上の問題であるというのは、おっしゃるとおりであります。

 その上で、では、果たして治安維持の主体というのは、これは石破先生とよく議論をさせていただきますが、本当に自衛隊なんだろうかと。警察権でやる部分と、それからいわゆる防衛力と申しますか軍事力でやる部分と、どちらがより適切なんだろうかと。そこの判断、現実的な判断によるものではないかというふうに思います。もちろん、その前提としては、憲法の要請にきっちりかなっているということが大事なことでありますが、集団的自衛権の縛りがあるから、そこで治安維持活動ができないという論理には必ずしも結びつかないのではないか、そこには大きな飛躍があるのではないか、このように考えます。

石破委員 終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時九分散会


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